編集
荒船次郎 大学評価 ・ 学位授与機構教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
序
原 子 核 は た か だ か 二 百 数 十 個 の核 子 が 核 力 で 強...
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編集
荒船次郎 大学評価 ・ 学位授与機構教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
序
原 子 核 は た か だ か 二 百 数 十 個 の核 子 が 核 力 で 強 く結 合 した,孤 立 し た体 系 で あ る.そ の 中で は核 子 が お の お の 一 粒 子 軌 道 上 を運 動 しつ つ 他 の 核 子 と相 互作 用 し,あ る い は 集 団 運動 に よ って 核 表 面 の 振 動 や 核 全 体 の 回 転 を起 こ し,あ る い は 幾 つ かず つ 塊 に な り,核 の 分 子 的構 造 を 形 作 る.そ の よ う な原 子 核 に他 の 粒 子 が 衝 突 す る と さ まざ まな 反 応 が 起 こ る. 核 反 応 の研 究 の歴 史 は 長 く,1909∼1911年
のRutherfordら
が α 粒 子 の 金,
白 金 に よ る 散 乱 の研 究 に よっ て 原 子 核 そ の も の を発 見 し た 時 点 に まで 遡 れ る. 1932年
に は α 粒 子 とBe原
子 核 の衝 突 で 中 性 子 が 発 生 す る こ とが 発 見 され た.
こ の 発 見 は,原 子 核 が 陽子 と中 性 子 か ら な る とい う原子 核 物 理 学 の 基 礎 の確 立 に導 い た.し か し,核 反応 の機 構 に対 す る本 格 的研 究 はFermiら
が1934∼1935
年 に 発 表 し た 中性 子 を 入射 粒 子 とす る 反 応 の 系 統 的研 究が そ の 始 ま りで あ る と 言 え よ う.そ の 後 間 も な く粒 子 加 速 器 を 用 い た 実 験 が 行 わ れ る よ うに な り,加 速 器 ・粒 子 検 出 器 そ の 他 の 実 験 技 術 の進 歩 の 結 果,非 常 に 広 い範 囲の 衝 突 粒 子, 入 射 エ ネ ル ギ ー の 核 反 応 に対 し て,非 常 に 多 様 な 観 測が で き る よ うに な っ た. 最 近 で は,不
安 定 核 を入 射 粒 子 とす る 反 応,相 対 論 的高 エ ネ ル ギ ーの 重 イオ ン
同士 の衝 突,ハ
イパ ー核 の生 成 反 応 な ど の 新 しい 分 野 の 実 験 的 研 究 が 進 展 し て
い る. 一 方,核 反 応 理 論 の本 格 的 な 第 一 歩 は,前 述 のFermiら に よる 説 明 で あ った.以 後,複
合 核 模 型,光
の実験の複合核模型
学 模 型,各 種 の 直 接 過 程 論,前 平
衡 過 程 の 理 論 な ど に よ っ て さ まざ ま な反 応 機 構 が 解 明 さ れ た.現 在,核 反 応 研 究 の 最 先 端 で は 理 論 と実 験 の両 面 か ら さ ら に 新 しい 反 応 の機 構 に つ い て 盛 ん な 研 究 が 行 わ れ て い る. そ の よ うな 中で 本 書 を書 くに あ た り筆 者 ら は,核 反 応 論 の 網 羅 的記 述 よ り も, す で に あ る程 度 確 立 した と思 われ る部 分 の 集 中 的 記 述 の 方が 核 反 応 論 の 正 確 な 理 解 の 上 で も,ま た 今 後 新 し い 核 反 応 論 を 築 く基 礎 と して も役 立 つ で あ ろ う,
また 他 分 野 へ の新 た な 応 用 へ の 道 を拓 くか も知 れ な い,と を核 子 お よび 原 子 核同 士 の 数 百MeVま
考 え た.そ
こ で,的
で の 衝 突 に よ る反 応 に 絞 り,そ れ に 対
す る前 記 の基 礎 的 な 理 論 の 考 え 方,模 型 の導 出,定 式 化,物
理的解釈 などを体
系 的 に 説 明す る こ と に 努 め,個 別 的 な反 応 の記 述,実 験 との 比 較 な ど に つ い て は それ に 必 要 な 範 囲 に 止 め た.ま た,電 磁 的 相 互 作 用 に よ る反 応,ス
ピ ン偏 極,
相 対 論 的 エ ネ ルギ ー で の 核 反 応 は,い ず れ も非 常 に 重 要 で あ るが,割
愛 し他の
書 物 に 譲 る こ とに し た. 第1章
か ら 第5章
ま って 光 学 模 型,多
まで は 核 反 応 論 の 基 本 的 な 事 柄 の 記 述 と 理 論 的 準 備 に 始 重 散 乱 理 論,直 接 反応 の 現 象 論 的 理 論 まで を取 り扱 う.こ
の 部 分 は 河 合 が 担 当 し た.第6章
か らは複 合 核 過 程 の 共 鳴 理 論,統 計 理論,前
平 衡 過 程 につ い て の 詳 論 で あ る.こ の 部 分 は吉 田が 担 当 し た.全 書 を通 じ て 量 子 力 学 の 基 礎 的知 識 を 前提 と して い るが,核 反 応 論 に と っ て必 要 な 散 乱 理 論 は 第2章 で 説 明 して あ る か ら,そ れ につ い て の特 別 な 予 備 知 識 は 不 要 で あ る.し か し,原 子 核 の構 造 に つ い て の 初 歩 的 な 知 識 は あ る こ とが 望 まし い.し た が っ て,本 書 は 核 反 応 理 論 を 初 め て 学 ぶ 人,核 反 応 理 論 に 興 味 を もつ 他 分 野 の研 究 者,こ
の 分 野 の 研 究 者 で も う一 度 基 礎 を振 り返 っ て 見 た い と思 う人 な ど を読 者
と し て念 頭 に 置 い て い る. 本 書 を 書 くにあ た っ て は,多 ズ の 編 集 委 員 で あ る 江 沢 洋 氏,九
くの 方 々の お 世 話 に な った.中
で も この シ リー
州 大 学 の 大 坪 真 一 氏,緒 方 一 介 氏,河 野 俊 彦
氏 に は原 稿 を精 読 し て 多 くの貴 重 な助 言 して 頂 い た.こ れ ら の 方 々に 厚 く御 礼 申 し上 げ る. 最 後 に長 い 間辛 抱 強 く付 き合 って 下 さ り,大 変 お世 話 に な った 朝 倉 書 店 の 方 々 に 心 か ら感 謝 す る. 2002年9月
河
合
光 路
吉
田
思 郎
目
1 序
次
論
1
1.1 核 反 応 の 研 究 の 沿 革
1
1.2 基 礎 的 な 事 柄
4
4
1.2.1 核 反 応 の 種 類 1.2.2
チ ャ ネ ル
1.2.3
断
1.2.4
反 応 を記 述 す る座 標 系
8
1.2.5
実 験 室 系 と重 心 系
9
(a) 運 動 量,運
10
面
5
積
6
動 エ ネル ギ ー
(b) 二 粒 子 系 の 相 対 運 動 量
(c) し き い 値 (d) 散
12.6
11
Jacobi座
乱
12
角
12
標系
13
1.3 核 反 応 機 構 の 概 観
13
1.4 反 応 機 構 と エ ネ ル ギ ー 平 均
18
2 核 反 応 の 量 子 力 学 的 記 述
25
2.1 状 態 ベ ク ト ル,Schrodinger方
程 式,実
験 条 件
2.2 ハ ミ ル トニ ア ン
25 26
2.2.1
ハ ミ ル ト ニ ア ン の 形
26
2.2.2
重 心 運 動 の 分 離,内
27
2.2.3
ハ ミ ル ト ニ ア ン の 対 称 性,不
2.2.4
ハ ミル トニ ア ンの座 標 表 示
30
2.2.5
二 粒 子 チ ャ ネ ル の ハ ミ ル トニ ア ン
33
部 ハ ミ ル ト ニ ア ン 変 性,運
動 の恒 量
2.3 定 常 状 態 の 波 動 関 数 2.3.1
配 位 空 間,内
部 ・外 部 領 域,チ
29
34 ャネル領 域
34
2.3.2
自 由 運 動,平
2.3.3
Schrodinger方
面波
34
程 式 の 独 立 解
35
2.3.4 重 心 運 動 の 分 離
37
2.3.5 二 粒 子 チ ャ ネ ル で の 波 動 関 数
38
2.3.6
40
内部 波 動 関 数
2.3.7 境 界 条 件 2.4
42
Lippmann-Schwinger方
程式
44
2.4.1
Lippmann-Schwinger方
程式
2.4.2
{Ψ(+)γ(Eγ)}の 規 格 直 交 性
2.4.3 Ψ(+)αの 漸 近 形 と 境 界 条 件,T行 2.4.4 時 間 依 存 の 理 論 形 式,断 2.5
波 動 行 列,T行
列 お よ びS行
波 動 行 列
2.5.2
T行
列 お よ びS行
47
2.5.3
S行
列 の ユ ニ タ リ テ ィ,T行
列
49
列
53 53
列
54
2.6 角 運 動 量 表 示
列 の 和 則,光
学 定 理,相
反定理
56 59
2.6.1
基 底 関 数
2.6.2
T行
列,S行
Coulomb相
46 列
熱 的 ス イ ッ チ ン グ,S行
2.5.1
2.7
44
60 列,散
乱振幅
互作用
61 63
2.7.1
Coulomb波
2.7.2
球面波展 開
65
2.7.3
Green関
66
2.7.4
散乱 振幅,T行
2.8 断
面
動 関数
63
数 列
67
積
69
2.8.1
断面積 の一般形
69
2.8.2
二粒 子 放 出 チ ャ ネル の 断 面 積
74
2.8.3
三粒 子 放 出 チ ャネ ル の 断 面 積
75
2.8.4
遠 心 力 ・Coulomb障
76
2.8.5
断面積の角 運動量表示
2.9 反 対 称 化
壁
78 79
3 光 学 模 型
83
3.1 光 学 模 型 の 沿 革
83
3.2 光 学 模 型 と実 測 量
85
3.3 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の概 観
87
3.4 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の探 索
90
(a) 核 (b) 重
陽
子
91
子
98
(c) t, 3He (d) α
粒
99 子
100
(e) 重 イ オ ン
101
3.5 非 局所 ポ テ ン シ ャル と等 価 局 所 ポ テ ン シ ャル
102
3.6 光 学 模 型 の 理 論 的 基 礎 付 け
106
3.6.1
Feshbach理
論 に よ る光 学 模 型 の 導 出
3.6.2 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 実 部 と虚 部 の 分 散 関係
107 110
4 多 重 散 乱 理 論
115
4.1
115
Watsonの
方 程 式
4.2 有 効 相 互 作 用
119
4.2.1 イ ンパ ル ス 近 似
119
4.2.2 最 適 運 動 量 近 似
122
4.2.3
124
G行 列 近 似
4.2.4 有 効 相 互 作 用 の 近 似 の 誤 差
125
4.2.5 有効 相 互 作 用 の 具 体 的 表 示
126
(a) 運 動 量 表 示
126
(b) 座 標 表 示
129
4.3 光 学 模 型 の 多 重 散 乱 理 論 に よる 導 出
132
4.3.1 光 学 模 型 の 導 出
133
4.3.2 光 学 ポ テ ン シ ャル
135
4.4 歪 曲波 イ ン パ ル ス 近 似(DWIA)
140
5 直 接 過 程
149
5.1 直 接 過 程 の 一 般 論
150
5.1.1
直 接 過 程 を 記 述 す る 波 動 関 数 と 有 効 ハ ミル トニ ア ン
150
5.1.2
近
155
似
法
5.2 歪 曲 波Born近 5.2.1
似(DWBA)
157
形 状 因 子 の 一 般 形
163
(a) 移 行 角 運 動 量 表 示
164
(b) 選 択 規 則
166
5.2.2
断 面 積 の 一 般 形
167
5.2.3
非 弾 性 散 乱 に よ る 集 団 運 動 の 励 起
171
5.2.4
組 み 替 え 反 応
175
5.2.5
strippingお
5.2.6
一 核 子stripping,
pick
up反 up反
応
177
応
181
(a)
(b) lxb≠0の
(c) 有 限 レ ン ジ の 補 正
189
(d) 反 対 称 化
190
(e) 分 光 学 的 解 析
190
(f) 天 体 核 物 理 学 へ の 応 用
196
(g) ク ラ ス タ ー 移 行 反 応
196
5.2.7
lxb=0の
よ びpick
場 合
185
場 合
188
二 核 子 移 行stripping,
pick
up反
応
197
(a) 形 状 因 子
197
(b) 殻 模 型 の 描 像 に よ る 計 算
202
二 段 階 過 程
205
5.3 チ ャ ネ ル 結 合 法
206
5.2.8
(a) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式
206
(b) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式 の 解 法
208
5.3.1
非 弾 性 散 乱 に よ る 集 団 運 動 状 態 の 励 起
209
5.3.2
組 み 替 え チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
212
5.3.3
離 散 化 連 続 チ ャ ネ ル 結 合 法(CDCC)
5.4 連 続 状 態 へ の 遷 移 5.4.1
多 段 階 直 接 過 程 のDWBA展
214 216
開
217
(a) 多 段 階 直 接 過 程 の 断 面 積
218
(b) 準 弾 性 散 乱
219
(c) 角 分 布 の 特 徴
220
(d) 半 古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
221
多 粒 子 放 出 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
223
(a) 核 内 カ ス ケ ー ド 模 型
223
(b) 分 子 動 力 学 的 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン
225
5.4.2
5.5
Glauber近
似
6 複 合 核 過 程Ⅰ― 6.1
R行列
6.2
Feshbachの
227
共 鳴 理 論
235
理 論
237 理 論 に 基 づ く分 散 公 式
6.3 光 学 模 型 6.3.1
247 253
一 様 ポ テ ン シ ャ ル の 場 合 の 光 学 模 型
6.4 戸 口 状 態
258 261
6.4.1
強 度 関 数
263
6.4.2
巨 大 共 鳴
267
6.4.3
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
270
6.5 核 反 応 の 時 間 的 記 述
274
6.6 共 鳴 と エ コ ー
281
7 複 合 核 過 程Ⅱ―
287
7.1状
統 計 理 論
態 密 度
7.1.1
287
一 粒 子 の 準 位 密 度
294
7.2 共 鳴 準 位 の 統 計 的 性 質 と ラ ン ダ ム 行 列
296
7.3 準 位 密 度:相
301
互 作 用 の あ る 場 合
7.4 複 合 核 反 応 の 統 計 理 論:現
象 論
308
7.4.1
終 状 態 が 離 散 状 態 の 場 合
308
7.4.2
終 状 態 が 連 続 状 態 の 場 合
311
7.4.3
多 粒 子 放 出 過 程
315
7.4.4
直 接 過 程 の あ る と き の 複 合 核 反 応
316
7.5 複 合 核 の 統 計 理 論:ラ 7.6
Ericsonの
ゆ ら ぎ
7.7 カ オ ス と複 合 核
ン ダ ム 行 列 理 論
317 323 325
8 前 平 衡 過 程
333
8.1 部 分 準 位 密 度
334
8.1.1
独 立 粒 子 模 型
334
8.1.2
ラ ン ダ ム 相 互 作 用
336
8.2 マ ス タ ー 方 程 式 とFokker-Planck方
339
8.2.1
巨 視 的 古 典 論
340
8.2.2
マ ス タ ー 方 程 式
342
8.2.3
Fokker-Planck方
程 式
8.3 統 計 的 多 段 階 過 程
343 345
8.3.1
エ キ シ ト ン 模 型
345
8.3.2
拡 張 さ れ た エ キ シ ト ン 模 型
349
8.3.3
MSDとMSC
351
8.4 多 段 階 直 接 過 程
352
8.4.1
DWBA
352
8.4.2
終 状 態 に つ い て の 統 計
353
8.4.3
中 間 状 態 の 統 計
355
8.4.4
瞬 間 近 似
356
8.4.5
断 熱 近 似
358
8.5 線 形 応 答 関 数
程 式
8.5.1
DWBAと
360 の 関 係
363
8.5.2
近 似 計 算,RPA
364
8.5.3
Fermiガ
ス 模 型
367
8.5.4
有
核
371
限
8.6 多 段 階 複 合 核 過 程
371
8.7
375
TDHF,
8.7.1
Vlasov方 Vlasov方
程 式
程 式
377
参 考 図 書
383
索
385
引
1 序
論
1.1 核 反 応 の研 究 の沿 革
核 反 応 は 原 子 核 に 何 か が 衝 突 し て 起 こ る 現 象 の 総 称 で あ る.核 反 応 の 研 究 の 歴 史 は 原 子 核 そ の も の の 発 見 の と き に 遡 る.1909年 Rutherfordら
か ら1911年
が 行 っ た 実験 とそ の 解 析が そ れ で あ る.彼 ら はPoの
にかけ て 自然 放 射 能
で 出 る α 粒 子 を 金,白 金 の 薄 膜 に 当 て る と大 きな 角 度 で 散 乱 され る確 率 が 非 常 に 大 きい こ と,そ れ が 原 子 の 中心 に あ る非 常 に 小 さ くて 重 い 荷 電 粒 子,す ち 原 子 核,と
α 粒 子 の 荷 電 の 間のCoulomb斥
こ と を発 見 し た[1].そ
なわ
力 に よ る散 乱 に よ る もので あ る
の後,核 反 応 に よ る 中性 子 の発 見,原
子 核 変 換 の発 見 な
ど に よ っ て 今 日の 原 子 核 物 理 学 の基 礎 が 築 か れ た の で あ る. しか し,核 反 応 機 構 の本 格 的 な研 究 に先 鞭 を付 け た の はRoma大 らが 行 った 一 連 の実 験[2]だ っ た.彼 ら は放 射 性Poが
学 でE. Fermi
出 す α 粒 子 をBeに
し て,そ れ か ら出 る 中 性 子 を水 素 か らウ ラ ニ ウ ム に至 る36種
照射
の原子核に当てて
起 こ る反 応 を系 統 的 に 観 測 した.そ の 結 果,次 の 二 つ の 重 要 な こ とを発 見 した. (1)核 が 中 性 子 を 捕 獲 してγ 線 を 出 す 反 応 の確 率 が 非 常 に 大 きい. (2)0エ
ネ ル ギ ー 近 くで の 反応 の確 率 は 標 的核 の 種 類 に よ って 著 し く違 う.
電 磁 相 互 作 用 は 弱 い か ら,(1)は
原 子 核 が 反 応 の 途 中 で γ線 を 出す こ とが で
きる 高 い 励 起 状 態 に 長 時 間留 ま っ て い る こ と を示 す,彼 の 確 率 か ら,そ の 時 間 を10-16sec程
度 と評 価 し た,(2)は
らは,観 測 され た 反 応 共 鳴(resonance)に
よる もの で あ る こ とが 間 もな く明 らか に な った.こ れ は,確 率 が 核 種 ご とに 異 な る特 定 の 入 射 エ ネ ル ギ ー で 非 常 に大 き くな る現 象 で あ る.入 射 エ ネ ル ギ ー が そ れ に ち ょ うど 重 な るか ど うか で,核 Fermiら
の 観 察 を 説 明 す る た め にN.
種 に よ っ て 大 き な違 いが 出 たの で あ る.
は 複 合 核(compound
nucleus)模
Bohrお
よ びG.
型 を 提 唱 した[3].こ
BreitとE.P.
Wigner
の模 型 に よれ ば,核 反
応 で は す べ て入 射 粒 子 と標 的 核 の 強 い 相 互 作 用 に よっ て 入 射 粒 子 の エ ネ ル ギ ー が た ち ま ち核 内 に分 配 され,全 系 が 混 然 一 体 と な っ た,寿 命 の 長 い 複 合 核 状 態 が で き る.反 応 はす べ て この 状 態 を経 過 して 起 こ る.複 合 核 状 態 の エ ネ ルギ ー 固有 値 は 離 散 的で,入 射 エ ネ ル ギ ーが そ れ に合 っ た と きだ け そ の 状 態 が 形 成 さ れ,反 応 の確 率 が 大 き くな る.こ れが 共 鳴 で あ る.そ の共 鳴 の 幅 は 状 態 の 寿命 と 不 確 定 性 関 係 で 結 ば れ て い る.Fermiら
が 中性 子 の 捕 獲 反応 か ら評 価 し た寿 命
で は共 鳴 の 幅 はΓ λ∼10eVと
なり,Γ λの 実 測 値 と一 致 す る.エ
ネ ル ギ ーが 高 くな る と,共 鳴 は 密 接 し,重 な り合 い,見 え な くな る.こ の 場 合, 複 合 核 状 態 か らの 放 出 粒 子 の 角 度 分 布 は重 心 系(1.2.5項)で90°
対 称 で,エ ネ
ル ギ ー スペ ク トル は,熱 せ られ た液 滴 か らの 蒸 発 と 同 じ く,い わ ゆ るMaxwell 型 で あ る こ とが 理 論 的 に予 言 され,多
くの 実験 に よ って 検 証 され た.か
くし て
しば ら くの 間,こ の 複 合 核 過 程 が 核 反 応 の 唯 一 の 機 構 で あ る と思 わ れ た. しか し,1940年 て90MeVの
代 の 後 半 にBerkeleyで90イ
中性 子,200MeVの
ンチ の サ イ ク ロ トロ ン を 使 っ
重 陽 子 に よ る い ろい ろ な 反 応 が 観 測 され た
結 果,放 出粒 子 の 中に は複 合 核 模 型 で予 言 され る よ りは るか に高 い エ ネ ルギ ーで, 前 方 に 集 中 し て放 出 され る も のが あ る こ とが わか っ た.こ れ に 対 して,Serber は 次 の よ う な反 応 機 構 を提 唱 した[4].こ
の よ うな 高 エ ネ ル ギ ーで は,入
射粒
子 と核 内 核 子 との 衝 突 時 間 は 短 いか ら,そ の 間 に核 内 核子 同 士 が 相 互 作 用 して い る 暇が な い.し た が っ て,反 応 は 入 射 粒 子 と1個 の 核 内 核 子 との 衝 突 で 始 ま る と考 え て よい.高 エ ネ ル ギ ー で は,核 子-核 子 衝 突 の 確 率 は 小 さい か ら,入 射 粒 子 また は 衝 突 され た 核 子 が 複 合核 を作 らず,直 が か な りあ る.時
と し て,そ
ち に核 外 に 飛 び 出 す 可 能 性
れ らの 核 子 が 放 出 され る 前 に核 内 で 何 回 か 別 の
核 子 と衝 突 した り,何 個 か の 核 子 の 塊 と衝 突 した りして そ れ らを 叩 き 出す こ と もあ る.い ず れ にせ よ,1回
の衝 突 で 失 うエ ネル ギ ー は 比 較 的 小 さい か ら,こ
の よ う に し て 出 て くる核 子 は 高 い エ ネ ルギ ー を も って 前 方 に放 出 され る.こ れ が,Serberが
考 え た 直 接 過 程 の 描 像 で あ る.こ のSerberの
描 像 を基 礎 に,い
ろ い ろ な反 応 に対 して,具 体 的 な 直 接 過 程 の 機 構が 提 唱 され,実 験 の 説 明 に成 功 した. Serberの 描 像 の提 唱 後 間 もな く,10数MeVの (p)ま た は 中性 子(n)が
重 陽子(d)に
よ る反 応 で 陽子
放 出 され,残 留 核 の 離 散 的状 態 へ 遷 移 す る場 合,放
粒 子 が 前 方 に強 く放 出 され る こ とが 見 い だ され た.pが
放 出 され る場 合,そ
角 度 分 布 が 干 渉 縞 に似 た 極 め て特 徴 的 な 模 様 を示 す こ とが わか っ た.Butlerは
出 の
それが
の よ う に,nがAに 入 り,pはAの
よ ってdか
ら は ぎ と られ て そ の 周 りの 殻 模 型 軌 道 の 一 つ に
外 を相 互 作 用 せ ず に 通 過 す る,と い う"stripping"の
明 で き る こ と を示 し た[5].そ の 逆 過 程 で あ るpick
の 後,こ
機構 で説
の 干 渉 縞 様 の 角 分 布 は,strippingと
そ
up反 応 ば か りで な く,α 粒 子,陽 子 な ど の 非 弾 性 散 乱 を
初 め と し て い ろ い ろ な反 応 に よ る残 留 核 の 離 散 低 励 起 状 態 へ の 遷 移 に お い て 観 測 され,そ れ が 標 的 核 の表 面付 近 で 主 と して 起 こ る こ とに 由 来 す る も の で あ る こ とが わか っ た[6]. しか し,非 複 合 核 過 程 の 普 遍性 を 決 定 的 に 示 した の は1952年
のBarschallの
実 験 で あ っ た[7].彼
中性 子 を 質 量 数
Aの
は 入 射 エ ネ ル ギ ーEn=0か
ら3MeVの
全 領 域 の 標 的核 に 当 て,そ れ に よ る ビ ー ム 強度 の 減 衰,す
(1.2.3項)σtを 数 百keVの
測 定 した.入 射 ビ ー ム は い わ ゆ る低 分 解 能(bad
エ ネ ルギ ー 幅 ΔEnを
structure)と
resolution)で,
もって い たか ら,測 られ た の は σtの ΔEnに
わ た る平 均 値 〈 σt〉 で あ る.ΔEnは 〈σt(En,A)〉 はEn,Aの
な わ ち全 断 面 積
共 鳴 の平 均 間 隔Dよ
りは るか に 大 きい か ら,
ゆ っ く り変 化 す る 関 数 で あ る.そ れ は 粗 い 構 造(gross
呼 ば れ る,山 谷 を もつ 関数 で あ っ た.し か し,複 合 核 模 型 は 単 調
な 〈 σt(En,A)〉 を予 言 す る! Feshbach,
PorterとWeisskopfは,粗
い 構 造 の 原 因 は,入 射 し たnが
複合
核 にす べ て 吸 収 され て し ま うので は な く,入 射 波 の ほか に 核 に瞬 間 的 に 散 乱 さ れ て 出 て くる波 もあ り,そ れ らが 干 渉 す る こ とで あ る,と 考 え た.こ の 瞬 間 的 な散 乱 はnに Vはnが
働 く複 素 一 体 ポ テ ン シ ャルU=V+iWで
表 され る もの と した.
核 か ら受 け る平 均 場 の ポ テ ン シ ャ ル で あ り,Wは
複 合核過程 に流束
の 一 部 が 吸 収 され る こ とに 対 応 す る.こ の模 型 を光 学 模 型(optical model),
U
を光 学 ポ テ ン シ ャル(optical potential)と い う[8]. そ の 後,光 学 模 型 は 核 子 か ら重 イオ ン まで の すべ て の 入 射 粒 子,標
的核,入
射 エ ネ ル ギ ー に対 し て 普 遍 的 に 成 り立 つ こ とが わ か り,現 在 で は核 反 応 論 の基 礎 的概 念 の 一 つ に な って い る. か くして,現 代 の 核 反 応 論 は複 合 核 模 型,Serberの 低 エ ネ ルギ ー直 接 過 程 の 模 型,光
直 接 過 程 の 描 像,各 種 の
学 模 型 な ど を基 礎 に し て研 究 が 進 ん で い る.
そ れ ら の 現 象 論 的 模 型 の 理 論 的 基 礎 付 け もか な りの 程 度 行 わ れ て い る.ま
た,
こ れ ら さ ま ざ まな 反 応 過 程 を統 一 的 に説 明す る枠 組 み も,あ る程 度 で きて い る. しか し,す べ て の 多 彩 な核 反 応 を 統 一 的 に記 述 す る 理 論 は まだ な い.
1.2 基 礎 的 な 事 柄
1.2.1 核 反 応 の 種 類 核 反 応 は,普 通,一 つ の入 射 粒 子 が 一 つ の 標 的 核 に 衝 突 し て起 こ る.(星 の 中 で は 二 つ の 入 射 粒 子が 同 時 に 標 的核 に衝 突 す る 反 応 が 重 要 な こ と もあ る.)反 応 の結 果,い
くつ か の 放 出 粒 子 が 放 出 され,後
に 残 留 核 が 残 る.核 反 応 を観 測
す る に は,普
通,標 的 核 を 含 む 標 的 を実 験 室 に 固 定 し,入 射 粒 子 を一 方 向か ら
平 行 な 束(ビ
ー ム)と
し て 照 射 す る.入 射 粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー を入 射 エ ネル
ギ ー とい う.放 出粒 子 の 種 類,放
出 方 向,エ
ネ ルギ ー,強 度 な ど が 各 種 の測 定
装 置 を使 っ て測 定 され る. 標 的 核A,入
射 粒 子aで
始 ま り,残 留 核B,放
出 粒 子b1,b2,…,bnで
終 わる
反応 を
(1.1a) また は
(1.1b) で 表 す.も 表 す.も
し,入 射,放 出 粒 子 だ け に着 目す る と きは(a,b1b2…bn)の
し,b1=b2=bの
と きはb1b2の
代 わ りに2bと
よ うに
か い て も よい.普 通,
b1,b2,…,bnの
順 番 は 問 題 に しな い.し か し,特 に粒 子 の 放 出 の順 番 を 問 題 に
す る と き は,早
く放 出 され る もの を左 に 書 く.以 後,入 射 粒 子,標
粒 子,残
的核,放
出
留 核 を 一 括 し て反 応 粒 子 と呼 ぶ こ とに す る.各 反 応 粒 子 は素 粒 子 また
は い くつ か の粒 子 か ら な る複 合粒 子 で あ る.入 射 粒 子 に は 核 子,原 子 核,π,K 中 間子 な ど の ハ ド ロ ン,電 子,ミ
ュ ー オ ン な ど の 軽 粒 子,光
子 な ど,い ろ い ろ
の もの が あ る.本 書 で 取 り扱 うの は 主 と し て核 子 また は原 子 核 を入 射 粒 子 とす る 反 応 で あ る.し か し,一 般 に ハ ド ロ ン に よる 反 応 は そ れ と共 通 点 が 多 く,理 論 的 に は そ れ に準 じた 方 法 で 取 り扱 う こ とが で き る.以 後 簡 単 の た め に,特 に 断 らな い 限 り,軽 粒 子 と光 子 を除 く粒 子 を単 に粒 子,そ を複 合 粒 子 と呼 ぶ こ と にす る.
の い くつ か の 束 縛 状 態
核 反 応 の 中 で 最 も 簡 単 な の は 弾 性 散 乱(elastic こ の 反 応 で は,そ
方 ま た は 双 方 が 励 起 さ れ る.そ
ず,運
弾 性 散 乱(inelastic
性 散 乱 と 同 じ く,反 応 粒 子 の 種 類 は 変 化 せ ず,入
よ びA(a,a*)A*で
A(a,a)Aで
あ る.
の 前 後 で 反 応 粒 子 の 種 類 も 内 部 状 態 も 変 わ ら な い.
弾 性 散 乱 以 外 の 過 程 が 狭 義 の 反 応 で あ る.非 で は,弾
scattering)
scattering)
射 粒 子 と標 的 核 の 一
れ ら は 普 通 そ れ ぞ れA(a,a')A*とA(a,a*)Aお
表 さ れ る."*"は
励 起 状 態 を,a'はaの
内部状態 は変化せ
動 エ ネ ル ギ ー の 一 部 が 失 わ れ た こ と を 表 す.A(a,a*)A*は
相 互 励 起 と呼
ば れ る. 変 換 反 応(transmutation)で
は,反
そ れ は 組 み 替 え(rearrangement)反 構 も 多 様 で あ る.放
応 の 前 後 で 反 応 粒 子 の 種 類 が 変 わ る:A≠B. 応 と も呼 ば れ る.そ
出 粒 子 が 一 つ で あ るA(a,b)B型
の 種 類 は 多 く,そ
の機
の 反 応 は 特 に 詳 し く研 究 さ
れ て い る.
1.2.2
チ
ャ
ネ
ル
2反 応 粒 子 の 衝 突 に よ る 反 応 で は 一 般 に
(1.2)
の よ うに,い ろい ろな残 留 核 と放 出 粒 子 の 組が そ れぞ れ あ る確 率 で 発 生 す る.始 お よび 終 状 態 で の それ らの 組 の そ れ ぞ れ をチ ャ ネ ル とい う.(1.2)の
左 辺 の α ≡{A,a}を
辺 の
入 射 チ ャ ネル,右 の それ ぞ れ を 放
出 チ ャ ネ ル とい う.一 つ の 反 応 は 入 射 チ ャ ネ ル か ら放 出 チ ャネ ル の 一 つ へ の 遷 移 と見 る こ とが で き る. 一 般 にM個 の 反 応 粒 子 か らな るチ ャネ ル をM粒
子 チ ャネ ル と呼 ぶ こ とに す
る.正 確 な 議 論 の た め に は チ ャ ネル を反 応 粒 子 の 種 類 だ け で な くそ の状 態 まで 指 定 す るの が 便 利 で あ る.(1.2)で 乱)チ
ャ ネ ル{A*,a'}を
弾 性(散
乱)チ
ャ ネ ル{A,a}と
区 別 した の は そ の例 で あ る.時
また は 放 出 粒 子 の 名 前 だ け で 呼 ぶ こ とが あ る.た
非 弾 性(散
と して チ ャ ネ ル を 入 射
とえ ば1個
の 中 性 子(n)が
入
射,放
出 す るチ ャ ネ ル を 中性 子(n)チ
るチ ャ ネ ル を2pチ
ャ ネ ル,2個
の 陽 子(p)が
入 射,放
出す
ャ ネル と呼 ぶ な ど で あ る.
系 に複 数 の 同 種 の粒 子が 含 まれ て い る 場 合,量 子 力 学 的 に は それ ら を区 別 で きない.し
か し,議 論 を 進 め る上 か らは,あ た か もすべ て の 粒 子 が 区 別 で きる
か の よ うに取 り扱 い,こ の 区 別 不 可 能性 は 計 算 が 終 わ っ て か ら,た
と えば 波 動
関 数 の 同種 粒 子 の 交 換 に 対 す る対 称 また は 反 対 称 化 な ど に よ っ て,別 途 考 慮 す るの が 便 利 な こ とが 多 い.そ
こで,以
下,特
に 断 らな い 限 り,す べ て の 粒 子 に
番 号 をつ け て 番 号 が 異 な る粒 子 が 区 別 で き る とい う取 り扱 い を す る. 一 つ の チ ャ ネル を 構 成 す る粒 子 の 静 止 エ ネル ギ ー の和 をそ の チ ャ ネル の 内部 エ ネル ギ ー とい う.こ れ と粒 子 の 運 動 エ ネ ル ギ ー の和 が 系 の 全 エ ネ ル ギ ーで あ る.全 エ ネ ル ギ ー は 運 動 の 恒 量 で あ るか ら,反 応 の 前 後 で 変 化 しな い.反 応 前 後 の 内 部 エ ネ ル ギ ー の 差 を そ の 反 応 のQ値
とい う.反 応(1.1a)の
部 エ ネ ルギ ー を εに 粒 子 の 名 を付 け て表 せ ば,そ のQ値
各粒 子の 内
は
(1.3) で あ る.Qβ α>0の
反 応 を 発 熱 反 応,Qβ α0
は Ψ(+)scが外 向 き 散 乱 波 で あ る こ とを保 証 す る.そ れ ゆ え,Ψ(+)α は 境 界 条 件 (2.80)を 自動 的 に満 た して い る.η の物 理 的 な 意 味 に つ い て は 後 で 時 間依 存 の 理 論 形 式 の 中で 明 らか に す る.
(2.85)は 略 す)と
Ψ(+)αに 対 す るLippmann-Schwinger方 呼 ば れ る.Hα
子,(2.85)は 呼 ぶ.以
下LS方
は 微 分 演 算 子 だ か ら,(Eα-Hα+iη)-1は
積 分 方 程 式 で あ る.そ
下,記
程 式(以
程式 と 積分演 算
の 核(Eα-Hα+iη)-1をGreen関
数 と
号 を 簡 単 に す るた め に
(2.86) と 書 く.(2.85)の
形 式的な解 は
(2.87) (2.88) で あ る. [証 明] (2.85)の
右 辺 第2項
を左 辺 に 移 項 し,左
か らe(+)α(E)を
これ か ら直 ちに(2.87)を 得 る.ま た, ら(2.88)が
か ける と
で あるか
得 られ る.
(証 明 終 わ り)
こ れ ら の 解 は,分 Schrodinger方
母 にHを
含 ん で い る の で,正
確 に計 算 す るの は 元 の
程 式 を解 くの と 同 じ程 度 に 困 難 で あ る.形 式 解 と呼 ば れ る の
は そ の た め で あ る.そ れ に も 関 わ らず,(2.87),(2.88)は
理 論 の 展 開 に極 め て
有 用 な 式 で あ る. Gell-Mann-Goldbergerの
恒等式
(2.89) を使 うと,任 意 の チ ャ ネル β に対 して
(2.90) で あ る か ら,(2.88)を
次 の よ う に 変 形 す る こ と が で き る.
(2.91) 特 に β=α な ら, は(2.85)に 帰 着 す る.β ≠ α で あ れ ば,η →0の
で あ るか ら,(2.91) と き(2.91)の 右 辺 第1項 は
0に な る か ら,
(2.92) と 書 く こ とが で き る*2. Ψ(+)α(Eα)に 対 し て,
(2.94) を 導 入 す る.Ψ(-)α は Ψ(+)αと 同 じSchrodinger方 散 乱 波 を 持 つ 解 に な る.散 保 証 す る.内
乱 波 が 内 向 き で あ る こ と は,第2項
く と(2.87),
(2.88),
以 上 の 議 論 で は,Φ
か し,理
の 分 母 の-iη
(2.91)で
η を-η
に 断 ら な い 限 り,こ
2.4.2
の解は 解
で 置 き換 え た 方 程 式 が 得 ら れ る.
α(Eα)は 二 粒 子 チ ャ ネ ル の 平 面 波(2.78)で
程 式(2.85)∼(2.94)は
が
論 的 に は 非 常 に 有 用 で あ る.(2.94)を
明 ら か に Φα(Eα)が
Ψ(±)α(Eα)が そ れ に 対 応 す る(2.81)の 下,特
出チ ャネル に 内 向 き
向 き散 乱 波 と い う も の は 観 測 す る こ と は で き な い か ら,こ
実 験 条 件 に は 対 応 し な い.し
し か し,方
程 式 の,放
あ る と し た.
一 般 の 平 面 波(2.52),
解 で あ る と し て も 成 り 立 つ.そ
こで 以
の 一 般 的 な 場 合 を 想 定 し て 議 論 を 進 め る.
の規格直交性
固有関数系
*2 エ ネ ル ギーE
α に お い て,チ
は規格直交系をなす:
ャ ネ ル β ≠ α に 入 射 平 面 波 が あ る 場 合 の(2.85)方
程式は
(2.93) で あ る.(2.92)と(2.93)を
見 比 べ る と,(2.93)の
解 に(2.92)の
解 の 任 意 の 定 数倍 を加
え て も や は り(2.93)の 解 に な る こ と が わ か る.し た が っ て,こ の 極 限 で は(2.93)の 一 意 的 で な い .こ れ をLippmann-Schwinger (LS)方 程 式 の 解 の 非 一 意 性 と い う.こ η →0の
極 限 を 不 用 意 に と っ て は な ら な い こ と を 示 す.し
式 は 成 り立 っ て い る の で あ る か ら,LS方
か し,い
ず れ に せ よ,LS方
解は れは 程
程 式 か ら 演 繹 さ れ る す べ て の 方 程 式 は 成 り立 つ.
(2.95) [証明]
に(2.87)を 使い,得られた式の第1項
の Ψ(+)β(Eβ)に(2.92)で
α と β を交 換 し た もの を 使 えば
(2.96)
こ こ で, で あ る か ら,(2.96)の
第2項
と 第3項
は 相 殺 す る.
よって
ゆ え に,(2.60)に
よ り(2.95)が
成 り立 つ.
同様にして,
が証明 できる. (証 明終 わ り)
関数系
は 一般 には完 全系で はない.Hに
場 合 に は,そ の 波 動 関 数{ΨB}は
束縛状 態が存 在 す る
散 乱 状 態 の 波 動 関 数 と直 交 す るか らで あ る.
は{ΨB}を 付 け加 えては じめて完全系 にな る:
(2.97)
2.4.3 Ψ(+)αの 漸 近 形 と境 界 条 件,T行
列
次 に,α が 二 粒 子 チ ャネ ルで あ る場 合 Ψ(+)α が 境 界 条 件(2.80)を
ことを確か めよう.チ ャネル βにおいて,
満 た して い る
の漸近形は次の ように
して求まる.Ψ(+)α(Eα)に(2.92)を 代入 し, を使 えば
(2.98)
ただ し
(2.99) とな る.た だ し,
は βチ ャネルでの相対 運動 のエ ネルギ ーで
あ る. まず,β が 二粒 子 チ ャネル であ る場合 を考 え よ う.Green関
数の座 標表 示
は二体 の散 乱問題で よ く知 られ てい
る よ う に,
(2.100) で あ る.た だ し,μ β,kβ は そ れ ぞ れ β チ ャ ネル で の 相 対 運 動 の 換 算 質 量 お よ び 運 動 エ ネ ル ギ ーEfに
対 応 す る波 数 で あ る.G(+)(rβ, r)のrβ≫rで
の漸近
形は
(2.101) で あ る.た
だ し,
で あ る.(2.101)を(2.99)に
代 入すれ ば ,
Ψscβ の 漸 近 形 は
(2.102) と な る.こ
こに
(2.103) で 与 え ら れ る.た
だ し,
(2.104) で あ る.よ
っ て,(2.98)に
よ り,
の 漸 近 形 は,
(2.105) と な る.(2.105)は ら な い.よ
確 か に(2.80)の
っ て,Ψ(+)α は,二
形 を し て い る.fβ α(Ωβ)は 散 乱 振 幅 に ほ か な
粒 子 放 出 チ ャ ネ ル に 関 す る 限 り,境
界 条 件(2.80)
を 満 た す. 行 列(Tβ α)を 反 応 α → β の 遷 移 行 列(transition と い う.T行
列 要 素 はVβ
matrix,略
し てT行
列)
の レ ン ジ 内で の 波 動 関 数 の値 に よ って 決 まっ て し ま
う.し たが って,(2.103)お
よび(2.104)は
も と も と波 動 関 数 の 漸 近 形 に よっ て
定 義 され て い た 散 乱 振 幅 を,Vβ の レ ンジ 内 の 情 報 だ け で 計 算 で きる こ とを意 味 す る.多
くの 場 合,波
動 関数 を無 限 遠 まで 正 確 に 求 め る こ とは 困 難 だ か ら,こ
れ は 実 際 上,非 常 に 有 用 で あ る. 次 に,β が3個 以 上 の 粒 子 か らな る チ ャ ネル で あ る場 合 を考 え よ う.す で に述 べ た よ うに,こ の場 合 に は Ψscβの漸 近 形 を一 般 的 に書 き下す こ とは 困 難 で あ る. しか し,ど れ か 一 つ の 粒 子,た と えば1,が ほ か の粒 子 全 体 の 重 心R'か
そ れ ぞ れ 決 ま った エ ネ ルギ ー を持 つ
ら無 限 に離 れ た場 合 の 漸 近 形 の1の 座 標 に 関 す る部
分 は,二 粒 子 チ ャネ ル の 場 合 と同 様 に して 求 め る こ とが で きる.こ の 場 合 に は,
ほか の粒 子全体Cを 質量M'=M-m1,エ
ネルギ ー
を 持 つ 一 つ の 粒 子 で あ る と考 え れ ば,系 は1とCと て,相 対 距 離
の 二 体 系 で あ る.し たが っ
で は,Ψscβ は,(2.102)と
同 じ く,
(Ψscβ の 漸 近 形)
と な る こ と は 明 らか で あ る.た だ し, で あ る.ゆ え に,粒 子1は
ほ か の粒 子 に対 して 外 向 き球 面 波 と な っ
て 伝 搬 し て い く.こ れ は任 意 の粒 子 に対 して い え るか ら,Ψscβ は境 界 条 件 を満 た す こ とが わか る. 以 上 を 総 合 す る と,Ψ(+)αの 漸 近 形 は
(2.106) が 得 ら れ る.た れ は(2.80)と
だ し,ψ(+)scは 三 粒 子 以 上 の チ ャ ネ ル の 外 向 き 放 出 波 を 表 す.こ 一 致 す る.す
な わ ち,Ψ(+)α は 境 界 条 件 を 満 た し て い る.
2.4.4 時 間依 存 の理 論 形 式,断 熱 的 ス イ ッ チ ン グ,S行 LS方 程 式 のGreen関 波 を導 くGreen関
数 に は常 に η→0+が
列
入 っ て い る.こ れ は外 向 き散 乱
数 の 特 異 点 の 処 理 の た め 数 学 的 に 導 入 され た.し か し,実 は
そ れ に は 物 理 的 な 意 味 が あ る こ と を,以 下 に 時 間依 存 の 理 論 形 式 を使 っ て 説 明 し よ う[1].
Schrodinger描
像 で は,系
の 状 態 ベ ク トル Ψ(t)は
(2.107) に よ って 変 化 す る.あ る一 つ の チ ャ ネル α に注 目す る と,Ψ(t)の 変 化 の う ち相 互 作 用 ポ テ ン シ ャルVα だ け に よ る もの を取 り出 す に はユ ニ タ リー 変 換
(2.108) を 行 っ て 相 互 作 用 描 像(interaction と な る 任 意 の 時 刻 で あ る が,以 と(2.108)に
picture)に
移 れ ば よ い.〓
後 簡 単 の た め に
は
と す る.ΨIα(t)は,(2.107)
よ り,
(2.109) を み た す.た
だ し,
(2.110) で あ る.も
し,Vα=0な
ら,ΨIα(t)はtに
よ ら な い.す
な わ ち,自
由運動の
相 互 作 用 描 像 の 波 動 関 数 は 時 間 的 に 変 化 し な い. 二 つ の 描 像 で 時 間 を 移 す ユ ニ タ リ ー 演 算 子U(t,t0)とUIα(t,t0)を
で 定 義 す る と,(2.107)か
(2.108)か
ら 有 限 のt,
それぞれ
t0に 対 し て
ら
(2.111) で あ る.(2.111)か
ら有 限 のt,
t0に 対 し て 直 ち に
(2.112)
(2.113)
(2.114) が 得 られ る. 実 際 の 反 応 で は,各
反応 粒 子 は 空 間 的 に 局 在 す る波 束 を な し,そ れ らが 接 触
す る短 い 時 間だ け 相 互 作 用 し,そ の前 後 で は 相 互 作 用 しな い.し か し,そ の 取 り 扱 い は 面 倒 な の で,相
互 作 用 を時 間 的 に 変 化 す る もの で 置 き換 え る こ とに よ っ
て シ ミュ レー トす る.す な わ ち,衝 突 が 時 刻t=0を
中心 に起 こ る場 合,各 チ ャ
ネ ルγ で の 相 互 作 用Vγ を
(2.115) で 置 き換 え る.こ の 相 互 作 用 は│t│が 大 きい と き,す な わ ち反 応 の 前,後 で は0 に な り,衝 突 が 起 こ るt=0付
近 で は元 のVγ に ほ ぼ 等 し い.η が 小 さけ れ ば
時 間 的 に ゆ っ く り変 化 し,η →0の
極 限 で は す べ て の 時 刻 でVγ に な る.し た
が って こ の 極 限 で は,Vγη に よる 反 応 は元 のVγ に よる そ れ と同 じで あ る,と 考 え られ る.実 際,こ
の よ うな方 法 を使 って 計 算 し た 断 面 積 が 波 束 を使 っ た計
算 の 答 え と一 致 す る こ とが 証 明 され て い る(た
とえば[2]).(2.115)に
換 え を相 互 作 用 の 断 熱 的 ス イ ッチ イ ン グ(adiabatic switching)と 合,断
よ る置 き
い う.こ の 場
熱 的 とは 「ゆ っ く り変 化 す る 」 とい う意 味 で あ る.
さて,入 射 チ ャ ネ ル α の平 面 波か ら始 ま る反 応 で は,遠 い過 去 の 時刻t0で
は
(2.116) で あ る.ゆ
え に,ΨIα(t)と
で あ る.こ
れ に 対 して
Ψ(t)が 一 致 す る 時 刻t=0で
は
(2.117) が 成 り立 つ.た
だ し,Ψ(+)α(Eα)はLS方
程 式(2.85)の
解 で あ る.
[証 明] t〓0と (2.114)に
す る.ま
ず,あ
るt01の
い う.時 と して,n=∞
の場 合 が あ る.た
… と相 互
の相 互作 用 で 反 応 が 終
場 合 を一 括 し て 多段 階 直接 過 程 と とえ ば,集 団 運 動 の 励 起 の 場 合,集
団 運 動 状 態 間の 遷 移 の 確 率 が 強 い の で,そ れ ら の 間 を無 限 回遷 移 し た の ち反 応 が 終 わ る のが 普 通 で あ る.い ず れ の 場 合 も,全 過 程 に 要 す る時 間 は非 常 に短 く, 励 起 され る系 の 自由 度 は 非 常 に 少 な い.た
とえ ば,n段
階 過 程 で 励 起 され る 自
由度 は,入 射 粒 子 と核 の 双 方が 励 起 す る こ とを 考慮 して も,た か だ か2n個
であ
り,集 団 状 態 間 の 遷 移 の 無 限 回 の 遷 移 の 場 合 で も,少 数個 の集 団 運動 状 態 間 を 遷 移 す る に す ぎ な い.し たが って,こ の段 階 で 複 合 核 が 形 成 され る こ とは な い. 直 接 過 程 の散 乱 振 幅 は,そ の 所 用 時 間がΔtで 2I=h/ΔEに
あ る とす る と,散 乱 振 幅 を 幅
わ た って エ ネル ギ ー平 均 した もの で 与 え られ る.2Iは
光学模型
で の 平 均 の エ ネ ルギ ー 幅 と同程 度 で あ る. 直 接 過 程 は 非 常 に 多 彩 で あ る.一 つ の 反 応 に 二 つ 以 上 の機 構 の 直 接 過 程 が 寄 与 して い る場 合 もあ る.そ の 研 究 は核 反 応 論 の 中 心 的 課 題 の 一 つ で あ る.多 数 の 個 別 的 な 直 接 過 程 の 反 応 機 構 が 詳 細 に 研 究 され,そ れ を記 述 す る た め に い ろ い ろ な模 型 が 提 出 され,大 第4章
きな 成 功 を収 め て い る.
で,そ の 一 つ で あ る広 義 の 非 弾 性 散 乱 の 一 段 階過 程 に対 す るDWIAを
論 じ,そ れ が 多 重 散 乱 理 論 に よ っ て 二 体 の 核 力 か ら組 み 立 て る こ とが で きる こ と を示 した.し か し,こ の よ うな 第 一 原 理 的取 扱 い を 一般 の 反 応 に 拡 張 す る の
は 困 難 で あ る.そ れ ゆ え,多
くの 現 象 論 的 な 理 論 が 提 出 され 成 功 し て い る.こ
の 章 で は,ま ず そ れ らの 理 論 の 一 般 論 を 述べ,つ
い で それ に 基 づ い て個 別 的 な
反 応 機 構 に つ い て詳 論 す る.
5.1 直 接 過 程 の一 般 論
5.1.1 直 接 過 程 を記 述 す る波 動 関 数 と有 効 ハ ミル トニ ア ン 直 接 過 程 で は 系 の 少 数 の 自 由度 が 励 起 され るか ら,そ れ に 直 接 関与 す る 系 の 内 部 状 態 γ は 入 射 ・放 出 チ ャネ ル α お よび β の そ れ と た か だ か 少 数 の 自由 度 の 状 態 だ け が 異 な る.波 動 関 数 のHilbert空
間 中 に,そ の よ うな 内 部 状 態 γ の
波 動 関 数 φγの 系{φ γ}が 張 る 関 数 空 間 をP,そ 入 射 ・放 出 チ ャ ネル の波 動 関 数 は,当 然,P空
れ 以 外 をQと
呼 ぶ こ と にす る.
間に 含 まれ て い る.φ γは 連 続 状
態 で あ る場 合 もあ る か ら,φ γの 個 数 は必 ず し も少 数 で は な い.直 接 過 程 で は, 系 は α チ ャ ネ ル か らP空
間 中 の 何 個 か の 内 部 状 態 を 経 由 し て β チ ャ ネ ルヘ 遷
移 す る.直 接 過 程 の 理 論 はP空
間 中 で の 波 動 関数 の振 る舞 い を 取 り扱 う.
P空 間へ の 射 影 演 算 子 をPと
す る と,系 の 波 動 関 数 Ψ のP空
舞 い はPΨ
に よ って 記 述 され る.PΨ
に 対 す るSchrodinger方
間 中で の振 る 程 式は
(5.1) で あ る.こ ば,そ
こ に,H(P)はP空
れ はFeshbachの
間 内 で の 有 効 ハ ミル トニ ア ン で,3.6節
に よれ
公式
(5.2) で 与 え られ る.た だ し のP空
,ま たQ=1-Pで
あ る.H(P)
間 内 の チ ャ ネ ル γ に対 す る具 体 的 な形 は
(5.3) で あ る.た
だ し,hγ
は 内 部 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ン,Kγ
は相 対 運 動 の 運 動 エ ネ
ル ギ ー,
(5.4) は チ ャ ネ ル γ で の 有 効 相 互 作 用 で あ る.
求 め るPΨ
は(5.1)の 解 で,チ ャネ ル α に 入射 波 が あ り,開 い た チ ャネル に 外
向 き散 乱 波 が あ る,と い う漸 近 形 を もつ もの で あ る.そ れ を 接 過 程 を記 述 す る 波 動 関 数 は 節 で 述 べ た よ うに,
とす る.直
の エ ネ ル ギ ー 平 均
で あ る.1.4
に対 す る 方程 式 は(5.1)の 両 辺 を エ ネ ルギ ー 平均
した
(5.5) で あ り,〈H(P)〉IはH(P)の
中 のEをE+iIで
置 き換 え れ ば 求 まる:
(5.6) こ れ に よ ってVγ(E)は に な る.〈Vγ(E)〉Iは 複 素 数 で,エ ネ ル ギ ー に 依 存 し,非 局 所 型 の 複 雑 な演 算 子 で,そ れ を正 確 に計 算 す る こ とは 多 くの場 合 不 可 能 で あ る.そ
こで 直 接 過 程 の現 象 論 で は,物 理 的 な考 察
に よって,そ れ ら を比 較 的 簡 単 な演 算 子 で 近 似 す る.具 体 的 に は,各 チ ャ ネル γ に対 して 〈Vγ 〉Iを 簡 単 な 現 象 論 的 ポ テ ン シ ャルVγ で 置 き換 え る の で あ る.こ れ に よ って,〈H(P)(γ)〉Iは
現 象 論 的 な 有 効 ハ ミル トニ ア ン
(5.7) で 置 き換 わ る.こ に は,γ
の 置 き 換 え は 任 意 で は な く,H(γ)(P)は,少
な くと も近 似 的
に よ ら な い:
(5.8) と い う条 件 を 満 たす もの と す る.逆 ル に対 す る 表 式 で あ る.H(P)に
に い う と,H(γ)(P)はH(P)の
対 応 す る 波 動 関 数 を
γチ ャネ とす る と,
(5.9) と な る.H(P)と
が それ ぞ れ 直接 過 程 の現 象 論 的 ハ ミル トニ ア ン お よ
び 波 動 関数 で あ る. Vγ をど う選 ぶ か は個 々の場 合 につ い て検 討 せ ね ば な らな い.最 は,Vγ=Vγ
とす る こ とで あ る.こ れ はVγ に 対 す るQ空
も単 純 な 仮 定
間 か らの 寄 与 を 無視
す る近 似 で あ る.こ の 場 合Vγ は 核 力 の 知 識が あ れ ば 既 知 で あ る.し か し,そ れ は 特 異 性 を 持 つ か な り複 雑 な もの で あ るか ら,簡 単 な 現 象 論 的 な ポ テ ン シ ャ ル で代 用 され る こ とが 多 い.
はP空
間 を張 る 内 部 波 動 関 数 の 組{φ γ}に よ っ て
(5.10) と展 開 で き る.た だ し,Xγ は 内 部 状 態 φγに対 応 す る 相 対 運 動 の 波 動 関数 で あ る.{φγ}は 離 散 的状 態 と連 続 状 態 を 含 む.そ れ ら のす べ てが 直接 観 測 可 能 とは 限 らな い.ま た,{φγ}は 必 ず し も直 交系 で は な い.Sγ は 離 散 的状 態 に対 す る和 と連 続 状 態 に対 す る積 分 を表 す. 直 接 過 程 の 現 象 論 で は,{φγ}は 既 知 と し て,Xγ 漸 近 形 が 反 応 α → β の,こ べ て の γ ∈Pに
を 計 算 す る.そ の 解Xβ の
の 直接 過 程 に よ る 散 乱 振 幅 を与 え る.(5.9)か
らす
対 して 得 られ る
(5.11) の 左 辺 に(5.8)と(5.7)を
使 えば
(5.12) が 得 ら れ る.た
だ し
(5.13) (5.14) お よび
で あ る.(5.12)が
基 礎 方 程 式 で あ る.左 辺 の ポ テ
ン シ ャルUγ は相 対 運 動 だ け に働 くポ テ ン シ ャ ルで,内
部 状 態 を 変 え ない.そ
れ は 歪 曲 ポ テ ン シ ャル(distorting potential)と 呼 ば れ る.右 辺 のUγγ'が 二 つ の状 態 φγと φγ'を結 合 す るポ テ ン シ ャ ルで あ る. Xγ に 対 す る境 界 条 件 は 「漸 近 形 が,(1)γ=α (2)Eγ>0な
ら外 向 き散 乱 波 が あ る.(3)Eγ0だ
れ が,前
述 し た,対
相 関 に よる 断 面 積 の 高 揚 に ほ か な
ら な い. B. 形 状 因 子 の 標 準 形 (5.209)の
右 辺 を 計 算 す る に は 座 標 変 換(r1A,r2A)→(rxA,r21)を
し,そ
れ
に 伴 う 角 運 動 量 の 組 み 替 え,
から へ
をせ ね ば な ら な い.座 標 変 換 は,一 般 に は,直 接 解 析 的 に 実 行 す る こ とは で き な い.し か し,一 核 子 波 動 関 数 が 調 和 振 動 子(H.O.)型
であ る場合
には
(5.218) の 展 開 が 成 り立 つ.こ
こ に,
波 動 関 数 系 で あ る. ば れ る も の で あ る.そ
は そ れ ぞ れH.O.型 は 既 知 の,Moshinsky-Talmi係
れ は
の
数 と呼
の と き に 限 っ て0で
な い.一
般 の
に 対 し て も,そ
の 波 動 関 数 系 で 展 開 す れ ば,
れ をH.O.型
は 二 つ のH.O.型
関 数 の 積 の 和 の 形 に 書 け る.
5.2.8
二 段
時 と し て,直 態 群{γ}を
階
過 程
接 反 応 α → β に は 一 段 階 過 程 の ほ か に,α,β
経 過 す る 二 段 階 過 程 α →{γ}→
た と え ば,集
とは 別 の 内 部 状
β が 重 要 で あ る 場 合 が あ る.
団 運 動 の 二 フ ォ ノ ン状 態 を 一 段 階 で は 励 起 で き な い が,一
状 態 を 経 由 す れ ば 二 段 階 で 励 起 す る こ とが で き る.一 段 階 の(p,d)反 の1粒
子2空
孔(1p-2h)状
フ ォノン
応 で 閉殻 核
態 を 励 起 す る こ と は で き な い が,(p,t)(t,d)反
応 では
可 能 で あ る.(16O,15C)は
一 段 階 で は 不 可 能 で あ るが(16O,17O)(17O,15C)ま
は(16O,14C)(14C,15C)な
ら可 能 で あ る.(3He,t)で
は 一 段 階 過 程 は,運
角 運 動 量 移 行が 大 きい と き
動 量 の 不 整 合 の た め に 著 し く弱 く,代 わ っ て(3He,α)(α,t)が
主 な 機 構 に な る[10].二 で あ る[11].(p,t)反 (p,t)反
た
核 子 移 行 反 応(18O,16O)は 応 に お い て す ら,継
主 に(18O,17O)(17O,16O)
続 移 行 反 応(p,d)(d,t)が
一段 階の
応 と 少 な く と も 同 程 度 の 強 さ で 寄 与 す る こ と が 知 ら れ て い る[12].
二 段 階 過 程 のT行
で 与 え ら れ る.こ
列 要 素 はDWBA展
開 の 第2近
似 で,(5.34)に
れ は,
よ り
で あ る か ら,
(5.219) と書 く こ と も で き る.こ H(P)は
れ を 二 次 のDWBA
(second
order
一 般 に チ ャ ネ ル δで
の う ち ど れ を と る か,そ
に 対 し て
い う.
の 形 を と る.α
γ → β が 組 み 替 え 反 応 で あ る場 合 に は(5.219)の δ と し て α,γ,β
DWBA)と
右 辺 の 二 つ のH(P)に
→ γ, 対 して
れ ぞ れ 二 通 り の 選 択 が あ る.α
→ γ
と とれ ば
(5.220) と な る. し遷 移 α → range近
はDWBAのprior γがpick
upな
ら,そ
formの
形 状 因 子 で あ る.し
れ はDWBAの
似 な ど を 使 っ て 計 算 す る こ とが で き る.し
た が っ て,も
計 算 で よ く知 ら れ て い るzeroか し,α
→ γがstrippingで
あ る と そ れ は で き な い.strippingに
適 合 す る の はpost
form,
の 方 で あ る が,
(5.221) であ る.
がDWBAのstrippingの
の 右 辺 に は 第2項
形 状 因子 で あ る.し か し,(5.221)
が あ る.そ れ は
に等 しい こ とか
ら もわか る よ うに,チ ャ ネ ル α と γ の非 直交 性 に 由 来 す る.非 直 交 項 と呼 ば れ る.同 様 に して 第2段
階 γ→ β で は,そ れ がstrippingな
子 の 計 算 だ け で す み,pick
らDWBAの
形状 因
upで あ れ ば 非 直 交 項 も計 算 せ ね ば な らな い.非 直
交 項 は微 分 演 算 子 を含 むか ら計 算 が 面 倒 で あ る.し か し実 際 に は,そ の 寄 与 は 比 較 的小 さ い と して,そ れ を無 視 し た計 算 が 行 わ れ る こ と も多 い.
5.3 チ ャ ネ ル 結 合 法
DWBA展
開 で は,系
し か し,実
の 異 な る 内 部 状 態 間 の 結 合 が 弱 く,摂 動 論 が よ い と し た.
際 に 起 こ る 反 応 の 中 に は,チ
な い ほ ど 強 い 場 合 が あ る.こ of coupled
channels以
の 場 合 に 有 効 な 現 象 論 が チ ャ ネ ル 結 合 法(method
下 略 し てCCと
は 前 か ら 使 わ れ て き た が,核 24Mg(p
,p')24Mg*(第1励
ャ ネ ル 間 の 結 合 が 摂 動 論 で は 取 り扱 え
呼 ぶ)で
あ る.こ
の 方 法 は原 子 物 理 で
反 応 論 に そ れ が 導 入 さ れ た の はYoshidaに 起.2+,一
フ ォ ノ ン 状 態)の
よる
計 算 におい てであ る
[13].
(a) チ ャ ネ ル 結 合 方 程 式 CCは5.1節
の 一般 論 でP空
の近 似 下 で の
間が 二粒 子 チ ャネ ルか らな る場 合 を取 り扱 う.CC
を ΨCCと 書 くこ と にす る と,そ の 座 標 表 示 は,た
とえば
(5.222) の形 を して い る.{φ γ}は 二粒 子 系 の 内 部 波動 関 数 を表 す.右 辺 は 第1項 か らそ れ ぞ れ,入
射 チ ャ ネル,非
弾 性 チ ャ ネ ル,組 み 替 え チ ャ ネ ル,入 射 粒 子 が 二 つ
の破 片 に 分 解 した チ ャ ネル に対 応 す る.分 解 チ ャ ネル の 項 のkは 片 間 の 相 対 運 動 の 運 動 量 で あ る.CCで
分 解 した2破
は,{φ γ}を 既 知 と して 未 知 関 数{χγ}
を計算す る. ΨCCに
対 す る方 程 式 は(5.11)よ
り
(5.223) 相対 運 動 の 波 動 関 数{χγ}に 対 す る 方 程 式 は,(5.12)よ
り
(5.224) で あ る.境 界 条 件 は,漸
近 形が 開い た チ ャネ ル に 対 し て は
(5.225) 閉じたチ ャネルに対 しては
(5.226) で あ る.た だ し,cγ は 定 数, 実 際 の 計 算 で は,歪
で あ る.
曲ポ テ ン シ ャル{Uγ}は
ル で 置 き換 え られ る.そ れ を 用 い たCC計
しば し ば 現 象 論 的 な ポ テ ン シ ャ
算 が 実 験 結 果 を説 明 で きる よ うに,
そ れ に含 まれ るパ ラ メ タ ー を調 節 す る こ と も あ る.い ず れ に せ よ,Uγ
は,そ
れ だ け で は 弾 性 チ ャ ネ ル の 散 乱 を 記 述 しな い か ら,光 学 ポ テ ン シ ャルで は な い. そ れ は,チ
ャ ネ ル 結 合 が な い と きの ポ テ ン シ ャル,と
ポ テ ン シ ャル"と 呼 ば れ る.し か し,Uγ
い う意 味 で"裸 の(bare)
と し て は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル と似 た 複
素 中 心 力 と,ス ピ ン軌 道 結 合 力 な ど を持 つ ポ テ ン シ ャ ル を 仮 定 す る のが 普 通 で あ る. Uγ γ'は チ ャ ネ ル γと γ'が 同 じ粒 子 構 成 で あ れ ば 局 所 ポ テ ン シ ャ ル で あ る. した が っ て,{γ}が 弾 性 ・非 弾 性 散 乱 チ ャネ ル だ けか らな り,結 合 す る チ ャ ネ ル が 核 の 有 限個 の 離 散 状 態 の そ れ で あ れ ば,(5.224)は 程 式 に な り,比 較 的 容 易 に解 け る.し か し,(5.222)の 連 続 状 態 を含 む 場 合 に は,結 合 す る チ ャ ネル の 数,し
有限次元 の連立微 分方 よ うに非 弾 性 チ ャ ネル が たが っ て(5.224)の
次 元,
は 連 続 無 限 に な る.こ の 場 合 の 処 理 に は 特 別 な工 夫 が 必 要 で,そ れ に つ い て は 5.3.3項 で 詳 論 す る. γ と γ'が組 み 替 え チ ャネル で あ る と,φ γ と φγ'は直 交 せ ず,そ の結 果Uγ γ'
は 非 局 所 型 に な る.し
た が っ て,{γ}が
は 連 立 微 積 分 方 程 式 に な る.こ
(b)チ
組 み 替 え チ ャ ネ ル を 含 む場 合 は,(5.224)
の 場 合 に つ い て は5.3.2項
で 論 じ る.
ャ ネル 結 合 方 程 式 の 解 法
連 立 方 程 式 を 実 際 に 解 くた め に さ まざ まな 方 法が 使 わ れ て い る.例
と して,
そ の 中 の い くつ か の 原 理 を 簡 単 に 説 明 す れ ば 次 の通 りで あ る. (1)逐 次 近 似 法 はDWBA展 算 す る に は,第(n-1)次
開 そ の もの で あ る.Xγ
の 第n次
近似X(n)γ を計
近 似 まで を既 知 と して
(5.227) をX(n)γに対 す る 非 斉 次 の微 分 方 程 式 と して 境 界 条件(5.225)ま
た は(5.226)の
下 に 解 け ば よい.こ れ を解 が 数 値 的 に収 束 す る まで 繰 り返 す.た だ し,収 束 は 保 証 され な い.も
し,入 射 チ ャ ネル α と の結 合 の 強 さの 順 に γ を並 べ る こ とが
で きれ ば,そ の 順 に(5.227)型
の 方 程 式 の 右 辺 の γ'の中 で す で にX(n)γ'が求 ま っ
て い る もの に対 して はX(n-1)γ'をX(n)γ'で 置 き換 え れ ば 収 束 が 速 い[14]. (2)連 立 方 程 式 を 直 接 解 くに は,ΨCCを
全 角 運動 量Jの
固 有 関 数 ΨJMで
(5.228) と展 開 す る のが 便 利 で あ る.(J,M)は
運 動 の 恒 量で あ るか ら,(5.223)は 各 ΨJM
に対 す る 方程 式 に な り,異 な る ΨJMが
混 ざ る こ とは な い.ΨJMを
各 チ ャ ネル
で の 角 運 動 量 の 固 有 関数 に展 開 して
(5.229) の 形 に書 く.た だ し, 性 の ゆ え に,動 径 関数 は は 等 しいJの
で あ る.回 転 対 称 はMに
よ らな い.こ の 表示 を使 うと,(5.223)
の連 立 方 程 式 に な る.そ れ を解 く実 際 的 方 法 に は 次
の よ うな もの が あ る. (a)rγ の座 標 軸 を 適 当 な 大 き さの 区 間(メ
ッシ ュ)に 分 け,各 分 点rγiで の
を未 知 数 と し,数 値 微 分,数 値 積 分 の公 式 を使 って
す る 連 立 一 次 斉 次 方 程 式 を導 く.
に対
に 対 し て 一 組 の境 界 条 件 を 課 せ
ば,一 組 の 独 立 解 が 得 られ る.こ の よ うに し て,
の数 に等 しい 数 の 独
立 解 を 求 め て お く.
は そ の よ うに し てす べ て のJの
す べ て の連 立 方 程 式
に 対 して 求 め た独 立 解 の 一 次 結 合 で あ る.一 次 結 合 の 係 数 は,そ れ が 境 界 条 件 (5.225)お
よび(5.226)を
満 た す,と い う条 件 で 決 ま る.
(b)連 立 方 程 式 を 直接 解 く代 わ りに,次
の よ う な逐 次 近 似 で 解 く方 法が あ る
[15].弾 性 ・非 弾 性 散 乱 チ ャ ネル だ けが 結 合 す る場 合,
に対
して
とお く.
は チ ャネル 結 合 が な い とし た と きの 方 程 式 の 解 で,そ
れ ぞ れ 振 幅1のr=0で
正 則 な 解 お よび 無 限 遠 で 外 向 き進 行 波 の 漸 近 形 を持
つ 解 で あ る.
はrに 緩 や か に依 存 す る 関 数 で,一 階 の 連 立 微
分 方 程 式 をみ たす.そ れ らに 境 界 条件: を 課 し,逐 次 近 似 で 解 く.第0近 ∞ か らr=0ま
似 で は す べ て の
で 積 分 して
の 第1近
と して,r=
似 を得 る.た
だ し,cJMLは
とな る係 数 で あ る.そ れ を使 って,r=0
か ら ∞ まで 積 分 す る こ とに よって
の 第1近 似 を得 る,等 々で あ る.
こ の 方 法 で は 数 値 微 分 は 不 用 で あ り,数 値 積 分 は容 易 で あ る. (c) を適 当 な基 底 関 数 系 で展 開 し,そ の 展 開 係 数 を 未 知 数 と し て そ れ に対 す る 連 立 方 程 式 を 解 く,と い う方 法 が あ る. gγi(rγ)を,た とえ ば レ ンジが 等 比 数 列 を な すGauss関
数 な ど,適 当 に と って 置
く と,よ い 精 度 の計 算 が か な りの 部 分 解 析 的 に で きる,と い う長 所が あ る[16]. 以 下 に,い
5.3.1 CCは
くつ か の典 型 的 な場 合 に対 す るCCの
応 用 例 を見 て み よ う.
非 弾 性 散 乱 に よ る集 団運 動 状 態 の 励 起
まず,p,α
な どの 軽 イ オ ン非 弾性 散 乱 に よ る集 団運 動 状 態 の励 起 の 記
述 に 大 き な成 功 を納 め た.同
じバ ン ドに属 す る集 団 運 動(振 動,回 転)状
チ ャ ネ ル の 間 に は 強 い 結 合 が あ る.し たが って,集
団運 動 の 励 起 状 態 へ の遷 移
の 記 述 に は,そ れ と強 く結 合 す るチ ャ ネル を取 り込 ん だCC計 こ の 場 合 に は,P空
算 が 必 要 で あ る.
間 の す べ て の チ ャ ネル の 内 部 座 標 ξ,相 対 座 標r,お
び ハ ミル トニ ア ンH(P)は
態の
よ
共 通 で あ る.ま た,異 な るチ ャ ネル は 同 じ核 の 異 な
る 固 有 状 態 に対 応 す るか ら,そ れ らの 内 部 波 動 関 数 は 直 交 す る.し
たが って,
(5.230) と な る.Vγ(r,ξ)は 集 団運 動 の 励 起 を引 き起 こす 現 象 論 的相 互作 用 で,DWBA で 使 わ れ て い るポ テ ン シ ャル と同 じで あ る.遷 移が フ ォ ノ ンの励 起 に よる もの で あれ ば(5.92)お
よび(5.93)で,ま
た 回転 運 動 状 態 間 の 遷 移 で あ る場 合 は(5.98)
で 与 え られ る.Uγγ'は これ ら のVγ を相 互作 用 とす るDWBAの
形 状 因 子 とま っ
た く同形 で あ る.た だ し,γ も γ'も一 般 に は励 起 状 態 で あ るか ら,遷 移 には 励 起 と脱 励 起 とが あ る. 以上 の よ うに し て,集 団 運動 励 起 の チ ャ ネル 結 合 の ポ テ ンシ ャル が 与 え られ る と,前 記 の 一 般 論 に従 っ て(5.224)を CCは
解 い て 散 乱 振 幅 を計 算 す る こ とが で き る.
多 くの(p,p'),(d,d'),(α,α')な
ど に よ る 球 形 核 表 面 振 動 の 励 起,歪
ん だ核 の 回 転 状 態 の 励 起 に 適用 され,実 験 の説 明 に大 きな成 功 を収 め た.図5.4 は50MeVで
の154Sm(α,α')154Sm*に
分 断 面 積 のCCに
よ る 回転 準 位2+,
4+,
よる計 算 と実 験 との 比 較 の 例 を示 す.CC計
状 態 と基 底 状 態 お よび8+の
6+の 励 起 の微 算 で は これ らの
回転 準 位 が 結 合 され て い る.
集 団 運 動 の 中 で,回 転 状 態 の 準 位 は 一般 に数 が 多 く,相 互 の 結 合 は 強 い.し た が って,そ れ らの 励 起 をCCで
扱 うに は 多 次 元 の 連 立 微 分 方 程 式 を解 か ねば な
らな い場 合が あ る.し か し,回 転準 位 間の 間隔 は 入 射 エ ネ ルギ ー に比 べ て は るか に小 さい の で,近 似 的 にそ れ を無 視 し,す べ て の 回 転準 位 が 縮 退 し て い る とす る こ とが で き る.こ の 近 似 は 物 理 的 に は,回 転 運 動 が 反 応 粒 子 間 の相 対 運 動 に 比 べ て 非 常 に遅 い と仮 定 す る こ と を意 味 し,断 熱 近 似(adiabatic
approximation)
と呼 ば れ て い る.こ の近 似 の も とで は,核 の 内 部 ハ ミル トニ ア ンhAはP空 中の す べ て の状 態 に 対 して 同 じ 固有 値 ε0を もつ こ とに な るか ら,H(P)の hAを
ε0で 置 き換 え る こ とが で きる.そ
うす る と,H(P)は
動 関数 に対 す る演 算 子 で は な くな る.H(P)は で 与 え られ る相 互 作 用 ポ テ ン シ ャルV(r,Θ)を 過 ぎ な い.ゆ
間 中で
もは や 核 の 内 部 波
回 転 運 動 の集 団座 標Θ を(5.98) 通 じて パ ラ メ タ ー と して 含 む に
え に,(5.223)は
(5.231) とな る.Θ は 歪 ん だ 核 の 対 称 軸 の 空 間 固 定 軸 か らの 方 向 のEuler角 たが って,V(r,Θ)は
で あ る.し
そ の 方 向 に 固 定 され た歪 ん だ核 が 入 射 粒 子 に お よぼ す 力
の ポ テ ンシ ャル で あ る.(5.231)は
単 な る常 微 分 方程 式 で あ るか ら,連 立微 分 方
図5.4
50MeVの(α,α')に 実 験 値(黒 β2,β4,β6は (D.L.Hendrie
程 式 で あ る(5.224)に
よ る154Smの
丸)と
計 算 値(実
線)の
そ れ ぞ れ2+,4+お et
al,Phys.Lett.26B
回転 準 位 の励 起 の 微 分 断 面 積 の 比 較
よ び6+状
態 の 変 形 度 を 表 す. 127
(1968)に
よ る.)
比 べ て は るか に 簡単 で あ る.境 界 条 件 は 漸 近 形
(5.232) で 与 え られ る.f(Ω,Θ)は
核 の 対 称 軸 の 方 向がΘ で あ る と きの 散 乱 振 幅 で あ る.
全 体 の散 乱 振 幅 は
(5.233) で 与 え られ る.た だ し,φ α(Θ),φβ(Θ)は核 の 波 動 関数 の 回転 座 標 部 分 で あ る. 粒 子 座 標 の 部 分 は 変 化 を 受 け な い の で,そ の 重 な りは 規 格 化 積 分 に な り,1を 与 え る. 断 熱 近 似 で は,核 は 準 位 間 隔 をDと
の 回 転 準 位 が すべ て 縮 退 して い る と した.回 転 運 動 の 周 期 す る とお よそ ん/Dの 程 度 で あ るか ら,こ れ は 回転 運 動 が 入
射 粒 子 の 運 動 に くらべ て 非 常 に 遅 い と仮 定 し た こ と を 意 味 す る.し た が っ て, 散 乱 が 起 こ る 間 そ の核 の 方 向Θ が 変 化 し な い こ とに な る.(5.231)は
正 にその
描 像 に符 合 し て い る. か くして,CCは
軽 イオ ン の非 弾 性 散 乱 に よる 集 団運 動 励 起 に対 す る標 準 的 な
理 論 に な っ た[17].ま -16Oな
た 重 イ オ ン 反 応 で も,低
エ ネ ル ギ ー で の12C-12C,12C
ど の 比 較 的軽 い重 イ オ ン 同士 の散 乱 に 現 れ るい わ ゆ る分 子 共 鳴 の 説 明 に
大 き な 寄 与 を す る[18]な 時 に は,DWBAで
ど 成 果 を 挙 げ て い る.
始 −終 チ ャ ネ ル の 一 方 ま た は 両 方 が そ れ ぞ れ 別 の チ ャ ネ ル
と 強 く結 合 し て い る 場 合 が あ る.た
と え ば,(d,p)反
が 集 団 励 起 状 態 で あ る 場 合 が そ れ で あ る.こ
ャネルの残留核
の よ う な 場 合 に は,歪
結 合 を 取 り入 れ たCCの
解 を 使 う必 要 が あ る.こ
近 似(coupled
Born
channels
応 のpチ
曲波 に そ の
の 近 似 を チ ャ ネ ル 結 合Born
approximation,略
し てCCBA)と
い う.
5.3.2 組 み 替 え チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
P空
間が 組 み 替 えチ ャ ネ ル を含 む場 合 に は,組
み 替 えチ ャ ネ ル 間 の 結 合
(5.234) が 現 れ る.右
辺 の 計 算 に はH(P)の
で の そ れH(P)(γ'),を の 経 験 に よ る と,遷
使 う.右
チ ャ ネ ルγ で の 表 式H(P)(γ),ま
辺 はDWBA展
移 γ → γ'がpick
up
た は γ'
開 に 現 れ た 表 式 で あ る.そ (stripping)の
を 使 う の が 便 利 で あ る.た
と え ば γ→
と き はH(P)と γ'がpick
upの
こで して 場 合,
と す る と
(5.235) と な る.た
だ し,
(5.236) (5.237) で あ る.Vγγ'をUγ γ'の相 互 作 用 項,Nγ γ'を非 直 交 項 とい う.Nγγ'は 組 み 替 え 反 応 に特 有 な 項 で φγ と φγ'の非 直 交 性 に 由 来 す る.実 際,も
し γとγ'が 同
じ反 応 粒 子 の異 な る 内部 状 態 に対 応 す る場 合 は,φ γとφγ'は同 じ 内部 座 標 を持 ち互 い に 直 交 す るか ら,Nγ γ'=0で DWBAの
あ る.
場 合 と同様 に,ξ γ をチ ャネ ル γ と γ'に共 通 な 内 部 座 標 ξγγ'と γ
を構 成 す る 二粒 子cとCの
相 対 座 標rcCに
分 け,ξ γ'につ い て も 同様 にす る と,
(5.238)
と な る.rcC,
rc'C'はrγ
とrγ'の
一 次 結 合
(5.239) で あ る.そ
こ で,(5.236)の
積 分 を ま ず ξγγ'に 対 し て 行 い,次
に 変 数rcCを
t'rγ'に 換 え て 行 う と,
(5.240)
(5.241) と な る.γ → γ'がstrippingの
場 合 に も同 様 な 変 形 が で きる.た だ し,こ の場
合 はNγ γ'の中 にKγ'が 現 れ,そ れ は未 知 関 数χγ'に 作 用 す るの で,そ れ を 避 け るた め にGreenの 要 が あ る[19].非
定 理 を使 って 部 分 積 分 し,そ 直 交 項 は,演 算 子Kγ-Eγ
うな らな い よ うに変 形 す る必
が 無 限 の レ ン ジ を も って い る の
で,非 常 に 長 い レ ン ジ を 持 つ[20]. この よ うなUγ γ'を含 む(5.12)は 連 立微 積 分 方程 式 で,そ れ を使 った計 算 法 は 組 み替 えチ ャネル 結 合(coupled channels,略
し てCRC)法
reaction channelsま
た はcoupled
と呼 ば れ て い る[21].CRCの
rearrangement
計 算 は 非 弾 性 チ ャネ
ル だ けが 結 合 す る場 合 に 比べ て,非 直 交 項 の 処 理 が 面 倒 で あ る.た だ し,こ の 項 の 効 果 の 大 き さ は 反応 に よ って 異 な り,無 視 して よい場 合 もあ る.数 値 計 算 に は,5.3節(b)項 CRCは
で あ げ た よ うな い ろ い ろ な 方 法 が 使 われ る.
比 較 的軽 い重 イ オ ン(C,Oな
ど)間 の 反 応 の解 析 に精 力 的 に使 われ,
成 果 を あげ て い る.二 つ の核 の 間 で 核 子 が 繰 り返 しや りと りされ る機 構 が 重 要 で あ る こ との 発 見 は そ の 一 例 で あ る[22].複 を 取 り入 れ てCCに
合粒 子 間 の衝 突 で 同 種 核 子 の交 換
よ る計 算 をす る 方 法 に は,波 動 関 数 の 反 対 称 化 を正 確 に取
り入 れ た,共 鳴 群 の 方 法(resonating
group
method,
RGM)が
あ る.こ の場
合 に は,核 子 の 交 換 に よって 反 応 粒 子 間 に 粒 子 の 組 み 替 えが 起 こ る か ら,CRC に よ る計 算 が 必 要 で あ る.こ の 方 法 に よる計 算 が 比 較 的軽 い 核 同 士 の 散 乱 に 対 し て 行 われ,い
ろい ろ な 近似 法 も 開発 され て い る[23].
5.3.3 離 散 化 連 続 チ ャネル 結 合 法(CDCC) 入 射 粒 子aが
重 陽 子,
の よ うに,弱
く結 合 した 二 つ の 破 片 か らな る場 合 に は,aは
反 応 の 途 次,標
的核 との 相 互 作
用 に よ って 容 易 に 変 形 し た り,分 解 し た りす る.そ の よ うな 状 態 はaの 連 続 励 起 状 態 の 重 ね 合 わ せ で あ る. こ の よ う な過 程 をCCで
取 り扱 うた め の 現 象 論 的 ハ ミル トニ ア ンH(P)は
の 形 を して い る.A,1,2の
内 部 状 態 は 反 応 を通 じ て不 変 で あ る と し て,そ れ
ら の 内 部 ハ ミル トニ ア ン は省 い た.V1AとV2Aは の 相 互 作 用 の 現 象論 的 ポ テ ン シ ャル で あ る.た
そ れ ぞ れ1-Aお とえ ば,1-A間
よび2-A間
お よび2-A間
の
光 学 ポ テ ン シ ャ ル や 相 互 作 用 の 畳 み 込 み ポ テ ン シ ャル に適 当 な 虚 数 部 を付 け た もの な ど で あ る. 座 標 系 と して は,a-A間
の相 対 座 標rと1-2間
使 う.説 明 の 簡単 の た め に ス ピ ンを 無 視 し,aの をそ れぞ れ
お よび
の それr21の
型を
基 底 状 態 と連 続 状 態 の 波 動 関 数
とす る.
の相 対 運 動 の 運 動 量
い わ ゆ るT字
はa内 で の 二破 片
軌 道 角 運動 量
の 固 有 関数 で あ る.ΨCCJMは
(5.242) と展 開 され る.
は
動 関 数 で,hP(k)とhLは
に対 応 す る,a-A間
の 相 対 運 動 の波
そ れ ぞ れ 運 動 量 お よび 軌 道 角 運 動 量 で あ る .
は
(5.243) を 満 た す.(5.242)に (5.242)の そ こ で,P空
ス ピ ン の 自 由 度 を 取 り入 れ る こ と は 容 易 で あ る.
右 辺 は 連 続 無 限 個 の 未 知 関 数 間 を 離 散 化 し て,連
続 無 限個 の未 知 関 数 を有 限個 の そ れ で 近 似 す
る の が 離 散 化 連 続 チ ャ ネ ル 結 合 法(coupled た はcontinuum
discretized
離 散 化 の 方 法 は,(a)lを
を 含 む.
coupled
discretized
channels,略
continuum し てCDCC)で
有 限 値 λ ま で に 制 限 す る:
channelsま あ る[24]. (b)各lに
対 し
て,連 続 無 限 個 の
を有 限Nl個
で近
似 す る.し た が っ て(5.242)は
(5.244) で 近似 され る.ΨCDCCJMがCDCCの 近似 内部波 動 関 数,
の と りか た は一 意 的 で な い.最 も よ く使 われ るの は, を等 しい 大 きさ
に分 け,i番
の小 区 間
目の 区 間 内 の
と して は 小 区 間 内 の
のkに
で の 当 なNlm個
のCCの
とす る.か 一 般 のkに
の 基 底
間点
に よ っ てhaを
対
とす る,と い う,"pseudo-state"
くし て得 られ た 有 限 個 の 離 散 化 され た チ ャ ネ ル に 対 し て通 常 を解 く.そ れ ぞ れ の
値kiを 対 応 させ,(5.243)に
に 対 して,適 当
よ って そ れ に対 応 す るP(ki)を
決め
く して,離 散 的 なP(ki)に 対 す る 短χlLが 求 まる.そ れ を内 挿 す れ ば 対 し て が 求 まる.
以 上 の 方 法 はaだ
け で な く,標 的核Aも
拡 張 す る こ とが で き る.CDCCはd,
連 続 状 態 に励 起 す る 場 合 に も容 易 に
6,7Li, 12Cな ど の 弾 性 散 乱,弾 性 分 解 反
応 な ど に適 用 され て,実 験 と よい 一 致 を示 し た.図5.5に CDCCに
た は,中
な ど を とる こ とが で き る.運 動 量 ビ ン の 方 法
手 法 を使 って
な方 法 でkの
とす
bin)の 方 法 と い う.
つ い て の 平 均,ま
角 化 し,そ のi番 目の 固 有 関数 を の 方 法 もあ る.か
を代 表 す る適 当 な 関数 を
る方 法 で あ る.こ れ を運 動 量 ビ ン(momentum
の ほ か に,適
はi番 目の
はそれ に対応 す る相 対 運動 の未 知 の波 動 関数 で あ る.
離散 化 の基 底 区 間
波 動 関 数で あ る.
先 だ っ て,弱
く結 合 した2破 片 か らな る 入射 粒 子 に よ る反 応 を取 り
扱 う方 法 と し て 断 熱 近 似 が 導 入 され た[25].こ あ る程 度 以 上 高 け れ ば,結
そ の 実 例 を 示 す.
の 近 似 で は,入 射 エ ネ ル ギ ー が
合 エ ネル ギ ーが 小 さな 粒 子 の 内 部 状 態 の準 位 間 隔 は
それ に 比 べ て小 さ く,ほ とん ど 縮 退 し て い る と見 な して よい,と 仮 定 す る.こ の仮 定 は 内 部 運 動 が 非 常 に ゆ っ く りし てい る とい う近 似 で,5.3.1項
で述べた 回
転 準 位 の励 起 に 対 す る 断 熱 近似 と本 質 的 に 同 じで あ る.こ の 近 似 は 重 陽子, の弾 性 散 乱 に適 用 され,成
功 を 収 め た.同
じ近 似 で,
図5.5
56MeV58Ni(d,d)58Niの
実 験 値(o)[N.Matsuoka とCDCCに
微 分 断 面 積 のRutherford比 et
よ る 理 論 値(実
al.Nuc.Phys.A455 線),dの
413
の (1986)]
変 形 を 無 視 し た 計 算 値(破
線)
and
M.
と の 比 較. (M.Yahiro,Y.Iseri,H.Kameyama,M.Kamimura Kawai,Prog.Theor.Suppl.No.89
32(1968)に
よ る.)
(d,p)のzero-range DWBAは 歪 曲ポ テ ン シ ャル をpとnの 光 学 ポ テ ンシ ャル の 和Up+Unと した もの に な る.こ の 場 合 も,実 験 との 一 致 は,弾 性 散 乱 ほ ど で は な い が,改 善 され る.断 熱 近 似 は,CDCCで
入射 粒 子 の すべ て の 内 部 状 態
が エ ネル ギ ー 的 に縮 退 して い る,と い う近 似 を し た もの と数学 的 に等 価 で あ る. した が っ て,そ
の 近 似 の 良 否はCDCCに
して,CDCCは CDCCを
よ って 評 価 す る こ とが で き る.か
弱 く結 合 した 粒 子 を 含 む反 応 の 標 準 的 現 象 論 の 一 つ に な っ た. 組 み 替 え チ ャ ネ ルが 結 合 す る 場 合 に拡 張 す る こ と も行 わ れ て い る.
計 算 を実 行 す るの は必 ず し も容 易 で は な い.組 で使 ったT字
く
み 替 え チ ャ ネル に対 し て は,上
型 の 座 標 系 が 不 適 当 だ か らで あ る.こ の場 合 に 対 して は,変 分 法
な ど に よ る 近 似 的 な計 算 法 も研 究 され て い る[26].
5.4 連 続 状 態 へ の 遷 移
前 節 まで は 残 留 核 の 離 散 的 準 位 へ の 遷 移 を取 り扱 った.し か し,入 射 エ ネル ギ ー が 十 数MeV以
上 の 核 反 応 で は,残 留 核 の 連 続 状 態 へ の 直 接 過 程 に よ る遷
図5.6
非 弾 性散 乱 の 放 出 粒 子 の エ ネル ギ ー ・スペ ク トル
移 も重 要 で あ る.実 際,放
出粒 子 の エ ネル ギ ー ・ス ペ ク トル を は 図5.6の
よう
に な って い て,残 留 核 の 離 散 的状 態 の 励 起 に対 応 す る線 スペ ク トル と複 合 核 か ら の 蒸 発 に よ るMaxwell型
の 山(第7章
参 照)の間
に 広 い 平 坦 な領 域 が あ る.
こ の 領 域 で は,放 出 粒 子 の角 度 分 布 は前 方 に 強 く,明 らか に直 接 過程 が 重 要 な 寄 与 を し て い る.入 射 エ ネ ル ギ ーが 数 十MeV以
上 に な る と,こ の平 坦 な スペ
ク トル を背 景 に して 巨 大 共 鳴 な ど の 山が 現 れ る こ と も あ る.こ の平 坦 領 域 は 直 接 過 程 と前 平 衡 過 程(1.3節)に 体 に つ い て は第8章 い て,DWBA展
5.4.1
よ る もの と考 え られ て い る.前 平 衡 過 程 の 全
で 詳 し く述べ る.こ の節 で は そ の 中 の 多段 階 直接 過 程 につ
開 に よ る解 釈 と,反 応 の シ ミュ レー シ ョ ンに つ い て 論 じ る.
多 段 階 直 接 過 程 のDWBA展
開
残 留 核 の連 続 状 態へ の 遷 移 は 原 理 的 に はDWBA展
開 の 方 法 で 取 り扱 え るが,
組 み 替 え 過 程 を伴 う多段 階 過 程 の計 算 は 非 常 に複 雑 で あ る.実 際 上,取
り扱 え
るの は広 義 の 非 弾 性 散 乱 で あ る.ま た,こ の 種 の 反 応 で は 複 数 個 の粒 子 が 放 出 され るが,そ
れ ら に つ い て の 個 別 的 断 面 積 を扱 うの は 二 核 子 放 出 の場 合 を除 き
困 難 で あ る.最
も簡 単 で,実 験 デ ー タが 多 い の は1個
括 断 面 積(inclusive
の 放 出粒 子 に注 目 した 包
cross section)お よ び そ れ に伴 う ス ピ ン偏 極 量 で あ る.多
数 の 粒 子 に つ い て個 別 断 面 積 の 計 算 に は,次 節 で 述 べ る シ ミュ レ ー シ ョ ンに よ る 記 述 が 必 要 に な る. 例 と して 核 子 の 非 弾 性 散 乱A(N,N')A*の め に,核 子 の ス ピ ン を無 視 し,入 射 核 子0は
包 括 断 面 積 を 考 え よ う.簡 単 の た 常 に 核 内核 子i=1∼Aと
区別で
き,そ れ が 終 状 態 で 観 測 され る もの とす る.以 下 の議 論 に は これ ら の制 限 は 本
質 的 で は な い.実
際 の 計 算 は それ らの 制 限 な し で 行 わ れ て い る.
(a) 多 段 階 直 接 過 程 の 断 面 積 この 場 合 の 包 括 断 面 積 は 核 子0の
エ ネル ギ ー と放 出 方 向 に つ い て の 二 重 微 分
断面積
(5.245) で 与 え られ る.た だ し,εA(εA*)は
核 の 始(終)状
態 の 内部 エ ネ ルギ ーで あ る.
この 節 で は 相 対 運 動 の始 状 態 をi,終 状 態 をfで 表 す こ とにす る.多 段 階過 程 に は 中 間状 態 が 現 れ る の で,そ れ と の 区別 を 明確 に す るた め で あ る.こ の 記 号 で, は 反 応 の移 行 エ ネル ギ ー で あ る.ま た, で あ る.こ の 包 括 断 面 積 は,系
の0以 外 の部 分 に 起 こ る すべ て の 事 象 の 断 面 積
を含 ん で い る. DWBA展
開で は,Tα'α は
(5.246) で 与 え られ る.
はn段
階 過 程 のT行
列要 素で
(5.247) で 与 え られ る.た だ し,φA(φA*)は
核 の 始(終)状
はk段
中で の 核 子0と 標 的 核 の 相対 運動 のGreen
階 後 の 歪 曲ポ テ ンシ ャルUkの
関数 で あ る.反 応 を 引 き起 こす 相 互 作 用Vは
で あ る と仮 定 す る.υ(r0-ri)は 用(4.2節)で され て い る.歪
態 の 波 動 関数 で あ る.ま た
二体力 の和
入 射 核 子 と標 的 核 内 の 核 子iと の 有 効 相 互 作
あ る.そ れ に は 相 互 作 用 の 核 物 質 の 媒 質 効 果 に よ る 変 化 も考 慮 曲波 展 開 で は座 標 表 示 を使 うのが 便 利 で あ る.
(5.247)か ら明 らか な よ うに,断 面 積 は移 行 運 動 量q=ki-kfと
移行エ ネ
ル ギ ー ω の 関 数 で あ る:
(5.248) (5.245)に(5.246)を し,そ
代 入 す れ ば,nが
れ ら は 一 般 に 大 き くな く,ま
か ら,各n段
異 な る
た
の(q, ω)依
の 干 渉 項 が 現 れ る.し 存 性 はnに
か
よ っ て違 う
階過程 の断面積
(5.249) を議 論 す る こ と は物 理 的 に 意 味が あ る こ とで あ る.次 に,そ れ らの 定 性 的 な性 質 を見 よ う.
(b) 準 弾 性 散 乱 入 射 ・放 出粒 子 の エ ネ ル ギ ーが 高 く,そ れ に く らべ て歪 曲 ポ テ ンシ ャル も,衝 突 され る核 子1の て 入 射 粒 子0と
核 に よ る束 縛 エ ネ ルギ ー も小 さけ れ ば,衝 突 は大 ざ っぱ に い っ 自 由空 間 中 の核 子1と
階 過程 前 後 の 核 子1の
の衝 突 に ほ ぼ 等 し い.し た が って,一 段
運 動 量 は そ れ ぞ れk1お
よびk1+qで
あ り,反 応 の移 行
エ ネ ル ギー は
で あ る.こ 大 で,反
の 値 はk1の
大 き さ がFermi運
平 行 の と き 最 小 で あ る.よ
動 量kFで,qと
平 行 で あ る と き最
って
(5.250) で な け れ ば な らな い.も
し上 記 の仮 定 が 厳 密 に 成 り立 つ な ら,
は
(5.250)が 成 り立 つ 場 合 に だ け 値 が あ る で あ ろ う.こ の 条 件 を満 た す 散 乱 を準 弾 性 散 乱(quasi-elastic scattering)と い う.実 際 に は,核 子1は
核 内に束縛 さ
れ て 運 動 して お り,歪 曲 ポ テ ン シ ャル は 入 射 ・放 出粒 子 の 運 動 量 を変 え るか ら, 準 弾 性 散 乱 で な い 散 乱 も起 こ る.し か し, る 山が あ り,
に は 準 弾 性 散 乱 に対 応 す
は そ の 周 りに広 が る,と い う形 を 示 す で あ ろ う と予 想
され る.こ の 予 想 は 実 験 事 実 と合 っ て い る.
(c) 角 分 布 の 特 徴 次 に,一 定 の ω に対 す る
の 角 分 布 につ い て 考 察 し よ う.
(5.251) ここで
を使 い,絶 対 値2乗
を開けば
(5.252) と な る.こ
こ に,
(5.253) ただし
(5.254) で あ る.K(r1,r'1)は4.4節
で 導 入 した 応 答 関 数 と本 質 的 に 同 じ もの で あ る.
は遷 移 密 度(transition さて,(5.252)の はr0とr'0で
density)と呼
ば れ る.
右 辺 で,被 積 分 関 数 の最 初 の 因子
発 生 し た放 出 波 の 干 渉 を示 す.も し,互 い に 干 渉 を 起 こすr0と
r'0の 領 域 が あ る程 度 以 上 広 けれ ば,そ
の 干 渉が 断 面 積 の 角 分 布 に 干 渉 縞 模 様 と
な っ て 現 れ る.し か し,も し そ の 領 域 が 非 常 に狭 け れ ば,断 面 積 は ほ と ん ど 各 点 で の 断 面 積 の和 に な るか ら,実 質 上 干 渉 は な い に等 し く,干 渉縞 模 様 は現 れ な い.こ
の干 渉 領 域 を決 定 す るの はK(r1,r'1)で
は 短 い か ら, は 値 を持 た な い か らで あ る.
あ る.な ぜ な ら,υ の レ ン ジ の と き しか ほ と ん ど
残 留 核 の 一 つ の 離 散 的状 態 へ の 遷 移 で は,
(5.255) で あ る か ら,K(r1,r'1)は│r'1-r1│に
よ ら な い.し
が 値 を 持 つ,核
た が って,干
渉は
の 大 き さ程 度 の 広 さの 領 域 に わ た る.こ
れ が 断 面 積 に 干 渉 縞 模 様 が 現 れ る原 因 で あ る. これ に 反 し て 連 続 状 態 へ の 遷 移 の 場 合 に は,(5.253)の K(r1,r'1)は
右 辺 が 示 す よ うに,
非 常 に多 くの 縮 退 し た φA*に つ い て の 和 か らな って い る.φA*の
位 相 が 乱 雑 で あ れ ば,そ れ ば 非 常 に小 さい.し
の 各 項 も 同様 で あ るか ら,そ の和 はr1〓r'1で
た が っ て 先 に述 べ た理 由で
なけ
の角分布 は干 渉
縞 模 様 が な い,な だ らか な もの に な る で あ ろ う.こ れ は 実 験 的観 測 と符 合 し て い る.た と えば 巨 大 共 鳴 は 位 相 が 揃 った φA*の 成 分 を持 つ か ら,上 記 の 乱 雑 位 相 の 議 論 は 成 り立 た ず,む
し ろ離 散 的 状 態 へ の 遷 移 と同 様 に な る.し た が っ て
の この部分 は干 渉縞模様が現れ る.し か し,そ の背景 とな る平坦 な
部 分 は 前 記 の な だ らか な角 分 布 を持 つ と予 想 され る.こ れ も実 験 結 果 と一 致 し て い る.
(d)半
古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
の具 体 的 な 表 式 を 求 め る に は遷 移 密 度 ρA*A(r1)が 必 要 で あ る.核
の 波 動 関 数 に 独 立 粒 子 模 型 を 使 えば,
で あ る.た だ し,
は核 の 始(終)状
核 子 状 態 の 波 動 関 数 で あ る.し
態 で 核 子1が
占 め る単 一
たが っ て
(5.256) と な る.た
だ し,FはFermi準
状 態 で あ る こ と,衝
位 で あ る.h,
突 の 際Pauli原
が 完 全 系 を な す か らclosure
pに 対 す る 制 限 は,始
理 が 満 た さ れ て い る こ と を 表 す.
propertyを
も つ.し
た が っ て,(5.256)の
の と き に だ け 値 を 持 つ こ とが 予 想 さ れ る.実 型 を 使 っ て 評 価 す る と,核 程 度 で,核
状 態が 基 底
際,右
辺 をFermiガ
の 平 均 的 な 密 度 に 対 し てK(r1,r'1)の
半 径 に く らべ て は る か に 小 さ い.
右辺 は ス模
レ ン ジ は2fm
│r'0-r0│がこの程度の大きさであれば,歪 曲波 に 対 し て 局 所 半 古 典 近 似(semi-classical
distorted
waves
approximation,
SCDW)
(5.257) が使える.た だし,
の局所波数,Kf(r0)は
(5.257)を 使 う と 度Fermiガ
は点r0で の のそれである.(5.256)と
に 対 す る 閉 じ た 形 の 簡 単 な 表 式 が 導 け る.局 所 密
ス 模 型 を使 った 場 合 の それ は
(5.258) で あ る.こ
こで
(5.259) は 点rで
の 二 核 子 衝 突 の 平 均 断面 積 で あ る.hF(r)は
の 大 き さ,ρ(r)は
点rで
のFermi運
動量
核 の 粒 子 数 密 度 で あ る.
(5.260) は 核 物 質 内 で の,有 効相 互 作 用 に よ る二核 子 散 乱 微 分 断 面 積 で あ る.
が そ の 際 の 移 行 運 動 量 で あ る.
(5.258)は 非 常 に 簡 単 な直 感 的解 釈 を許 す. 出)粒 子 が 点rに
到 達 す る(rか
の
は 入 射(放
ら無 限遠 に 到 達 す る)確 率 で あ る.局 所 平均
断 面 積 に粒 子 密 度 を 掛 け た もの は,そ の 点 で 衝 突 が 起 こ る断 面 積 で あ る.求 め る 断 面 積 は そ の 局 所 平 均 断 面 積 と前 記 の到 達 ・放 出確 率 の積 の和 で 与 え られ る. (5.258)で は,異
な る 点 で 発 生 した 放 出 波 の 干 渉 は 核 の 終 状 態 に 対 す る和 を と
る こ とで 消 え て し まっ た.し た が って,「衝 突 点 」 とい う概 念 が 意 味 を 持 つ.こ の こ とは 次 節 で 述 べ る カ ス ケ ー ド模 型 の 基 礎 を 与 え る.
Ⅱ. 多 段 階 過 程 多 段 階過 程 は 複 雑 で あ るか ら,そ の 断 面 積 の 特 徴 に つ い て 一 段 階 過 程 と 同様 な 議 論 をす るの は 困 難 で あ る.し か し大 ざ っぱ に い って,衝 突 が 起 こ る度 に累 積 移 行 運 動 量 ・移 行 エ ネル ギ ーが 変 化 す る か ら,衝 突 回 数 が 多 い ほ ど 反 応 の 移 行 運 動 量 も移 行 エ ネル ギ ー も大 き くな り うる.し た が って,n段 積
はnが
増 え る ほ どqと
依 存 性 は な だ らか に な る.
階 過 程 の 断面
ω の広 い 範 囲 に広 が り,そ れ ら に対 す る の平 均 的 な 大 き さは,摂 動 論 の 常 と して,
nと と もに小 さ くな るが,q,ω
の 値 に よ っ て はnの
大 きな 過 程 の 寄 与 の方 が
大 き くな る場 合 も あ る. 多 段 階過 程 の にGreen関
に対 す る(5.258)に
数 に 対 す るEikonal近
対 応 す る表 式 は,近 似(5.257)の
ほか
似
(5.261) を使 えば 求 ま る.Km(r)は
点
で の 局 所 波 数 で あ る.
体 的 な式 は 省 略 す るが,(5.258)と
の具
同様 な,直 感 的 に 非 常 に わ か りや す い 解 釈 が
で き,次 項 で 述べ る核 内 カ ス ケ ー ド模 型 の基 礎 付 け を 与 え る.そ の
を使 っ
て 三 段 階過 程 まで の 数 値 計 算 が 行 わ れ,実 験 と よい 一 致 が 得 られ て い る[27].
5.4.2 多 粒 子 放 出の シ ミュ レー シ ョン 連 続 領 域 へ の遷 移 の 多 段 階 直接 過 程 で は 一 般 に 反 応 の 各段 階 で 粒 子 が 放 出 さ れ る.そ の 全 体 像 を と ら え る に は,そ れ らの 放 出粒 子 の 各 々 に つ い て 運 動 量 分 布 な ど を 知 らね ば な ら な い.そ れ を 記 述 す る に は,前 項 ま で の よ うな理 論 は現 象 が 複 雑 す ぎ て 手 に 負 え な い.そ
こで,威 力 を発 揮 す る のが シ ミュ レ ー シ ョ ン
で あ る.こ の 項 で は 最 も成 功 して い る二 つ の 方 法 に つ い て 解 説 す る.
(a)核 内 カ ス ケ ー ド模 型 直 接 過 程 の 模 型 と して 最 初 に 導 入 され,現 核 内 カ ス ケ ー ド(intra-nuclear
在 で も盛 ん に使 わ れ て い るの が,
cascade, INC)模
型 で あ る.こ
初 の計 算 は 入 射 中 性 子 に よる 反応 に 対 してGoldbergerに
の模 型 に よ る最
よ って 行 わ れ た[28].
こ の模 型 で は 反 応 を次 の よ うに見 る.そ れ は 入 射 中性 子 と標 的核 内 の 一 つ の 核 子 の 二 体 衝 突 に よっ て 始 ま る.衝 突 後 の 二 核 子 は そ の ま ま核 外 に 放 出 され るか, ま た は ほ か の 核 内核 子 と衝 突 す る.こ の 繰 り返 し に よ って 核 内 核 子 は次 々 と励
起 され る.こ れ が 核 内 カ ス ケ ー ドで あ る.こ の 過 程 で 放 出 され る 核 子 が 直 接 過 程 に よ る もの と して観 測 され る.新
た な核 子 が 励 起 され る た び に 個 々 の核 子 の
平 均 エ ネル ギ ー は 下が り,核 外 に 出 られ な くな る粒 子が 増 え,や が て 複 合 核 が 形 成 され る. 計 算 の 概 略 は 次 の 通 りで あ った.入 射 ・励 起 核 子 の 運 動 は古 典的 に 記 述 す る. 計 算 で は,ま ず 入 射 粒 子 が 核 内 に 入 る点 を 偶 然 事 象 を使 っ て 確 率 的 に 決 め る. 核 に 入 った 核 子 は 距 離xだ の 平 均 自 由行 程(mean
け 動 く と流 束がe-x/λ だ け 減 る.た だ し,λ は核 内
free path,略
してm. f.p. )で あ る.そ れ は ほ か の 核 内
核 子 との 衝 突 に よ る もの で,核
内で の衝 突 の 平 均 全 断 面 積 を 〈 σt〉,核の 核 子 密
度 を ρ とす る と,
で あ る.入 射 粒 子 の最 初 の 衝 突 が 入 射 方 向 の直
線 上 の 重さ の
等 確 率 に 分 け られ た細 区 間 の どれ の 中 で 起 こ るか を偶 然 事
象 に よ っ て決 め る.標 的 核 にFermiガ
ス 模 型 を 仮 定 す る と,エ ネ ル ギ ーEの
入射 粒 子 に対 し て 〈 σt〉は
(5.262)
で 与 え られ る.た だ し,EFはFermiエ
ネ ルギ ーで あ る[29].同
じ くFermiガ
ス模 型 の 仮 定 の 下 に,衝 突 され る 核 内 核 子 の 種 類 と運 動 量,衝 突 後 の 両 核 子 の 運 動 量 を,二 核 子 散 乱 の 断 面 積 を 重 み と しPauli原 れ 等 確 率 な 領 域 に 分 け,そ
理 を 考 慮 に 入れ て,そ れ ぞ
の どれ が 生 起 す る か を偶 然 事 象 に よ っ て 決 定 す る.
こ の操 作 を直 接 過 程 が 終 わ る まで 入 射 お よび 励 起 され た 核 子 の す べ て に つ い て 繰 り返 し,最 終 的 に放 出 され る 核 子 の 運 動 量 分 布 を生 起 す る頻 度 に よ って 測 る. こ の よ うな 計 算 法 はMonte こ の計 算 はINC計
Carlo法
と呼 ば れ て い る.
算 の 原 型 で,電 子 計 算 機 の 到 来 に よ って この 手 法 に よ る大
規 模 計 算 が 可 能 と な り[30][31],計
算 機 の発 達 と と もに 著 し く発 展 し て 今 日に
至 っ て い る[32]. こ の模 型 で 重 要 な点 は,粒 子 の 運 動 を古 典 的 に取 り扱 う こ と の ほ か に,衝 突 点 と い う概 念 を使 うこ とで あ る.量 子 力 学 的 に は,核 内 の 異 な る点 で 発 生 し た 散 乱 波 は 互 い に 干 渉 す る か ら,古 典 的 な 意 味 で の衝 突 点 とい う概 念 に は 意 味 が
な い.し た が って,こ
の衝 突 点 と い う概 念 の 正 当性 は量 子 力 学 的 に 検 証 す る必
要 が あ る.前 項 で 述 べ たSCDW模 る.SCDWは
型 は そ れ に対 す る肯 定 的 な答 え を与 え て い
また,量 子 力 学 的歪 曲波 を使 うので,歪
子 軌 道 の 曲が り,流 速 の 吸 収 の ほ か,古
曲ポ テ ン シ ャル に よ る粒
典 的 に 到 達 で きな い 場 所 で の 衝 突 も含
ん で い る こ と を付 け加 え て お く.
(b)分
子 動 力 学 的 シ ミュ レー シ ョン
前 平 衡 過 程 の シ ミュ レ ー シ ョン とし て 近 年 非 常 に成 果 を挙 げ て い る のが 量 子 分 子 動 力 学(quantum
molecular
力 学(anti-symmetrized
molecular
個 々 の 核 子 の 波 動 関 数 はGauss波
dynamics,
QMD)[33]お
dynamics,
AMD)[34]で
よび 反 対 称 化 分 子 動 あ る.両
者 と も,
束
(5.263) で あ る と仮 定 す る.
(5.264) が 位 相 空 間 中 の 波 束 の 中心 で あ る.波 束 の 幅υ は 定 数 で あ る.系 の 波 動 関 数 は QMDで
は
(5.265) AMDで
は,Slater行
列式
(5.266) と仮 定 す る.た だ し,Nは
全 系 の核 子 数 で あ る.
応 じて 複 数 のSlater行 列 式 を 仮 定 す る.パ
で は,必
要に
リテ ィの 固有 関数 を作 る に は,そ れ
は 必 須 で あ る.
または
は時間依存変分法 (5.267)
の 試 行 関 数 で あ る.{Zj}を
変 分 の パ ラ メ ター と して(5.267)を
解 け ば,{Zj}
に 対 す る 運 動 方 程 式 が 得 られ る.そ れ が 平均 場 の 中で の 各粒 子 の 中心 の 運 動 を
決 め る.QMDの の 場 合 は,よ
場 合 は,運 動 方程 式 は 古 典 的Hamilton方
程 式 に な る.AMD
り複 雑 で あ る.後 に述 べ る 初 期 条 件 を与 え て それ を解 けば,{Zj}
が 時 間 の 関数 と して 求 ま る.そ れ は 各 核 子 の,自
らの 運 動 に伴 って 時 間 的 に 変
化 す る 平 均 場 の 中の 運 動 を表 す. Pauli原 理 をAMDは
自動 的 に 満 た す.QMDは
そ うで は ない の で,同 種 の2
個 の 核 子 が 空 間 の 同 じ場 所 を 占 め るの を妨 げ る よ う なad
hocな
ポテ ンシャル
をハ ミル トニ ア ン に付 け 加 え て お く.そ の ポ テ ン シ ャル は 一 意 的で は な い. 核 子-核 子衝 突 は,二 つ の核 子 波 束 の 中 心が あ る 距離 よ り近 づ い た と き起 こ る, と仮 定 す る.衝 突 後 の両 者 の運 動 量 はMonte
Carlo法 で 確 率 的 に決 め,そ れ を初
期 条 件 と して 再 び 運動 方 程 式 を解 く.QMDで
は,衝 突 は
に よ って 記 述 され る.し か し,AMDで
子 の 物 理 的 中 心{Wj}は{Zj}
で は な く,衝 突 はWjに
は,粒
よ って 記 述 され る.{Zj}と{Wj}は
線 形 変換 に よっ
て 結 ば れ て い る.衝 突 後 の 運 動 の 計 算 を続 け る に は,{Wj}を{Zj}に す る必 要 が あ る が,そ れ が 不 可 能 な 場 合 が あ る.こ れ は,そ
逆 変換
の衝 突 がPauli原
理 で 禁 止 され て い る こ と を示 す,と 解 釈 す る. 衝 突 す る各 粒 子 は衝 突 前 に は そ れ ぞ れ の 基 底 状 態 に あ る.そ を 極 小 に す る{Zj}(複 結 合 を使 う場 合 に は それ ぞ れ の 中の{Zj}と に は,任 意 の{Zj}を
の波動 関数 は
数 のSlater行 列 式 の 一 次
一 次 結 合 の係 数)を 決 め る.そ れ
初 期 値 と して"摩 擦 冷 却 方 程 式"
(5.268) を解 く.た だ し,λ は任 意 の,ま た μ は μ 〓0の 実 定 数 で あ る.そ の 解 に 対 応 す るE({Zj})は
を満 た す か ら,E({Zj})はtと の{Zj}が
と もに 減 少 し,や が て 極 小 値 に な る.そ の と き
基 底 状 態 の 波 動 関 数 Φ({zj})AMDを
与 え る.
こ の よ うに して 得 られ た 入 射 お よび 標 的 核が,互
い に 遠 く離 れ た い ろ い ろ な
衝 突 係 数 の位 置 か ら与 え られ た 相 対 速 度 で 動 き出す,と る.そ れ 以 後 の{Zj}の,運
い うの が 初 期 条 件 で あ
動 方 程 式 と 上 記 のstochasticな
二 体 散 乱 に よ る,
時 間 変 化 を追 跡 す る.十 分 時 間が 経 つ と,各 核 子 はば らば ら に,あ る い は い く つ か ず つ が ク ラ ス ター(塊)に
な って 核 外 に 飛 び 出 し,ま た は核 内 に と らわ れ
る.こ の よ うに し てで きた 始 原 的 な ク ラ ス ター は 統 計 的 平 衡 状 態 に あ り,そ こ か ら 粒 子(核
子 ま た は原 子 核)が 蒸 発 され る とす る.こ の 操 作 を十 分 多 くの 場
合 に つ い て 繰 り返 し,起 以 上 がQMD,
AMDの
こ る頻 度 に よ っ て 注 目す る 事 象 の 断 面 積 を計 算 す る. 概 略 で あ る.両 者 は さ まざ ま な改 良が 加 え られ,そ
れ ぞ れ 発 展 を続 け て い る.そ の適 用 範 囲 は軽 イオ ン反 応 か ら重 イ オ ン反 応 まで, 中 エ ネ ル ギ ー か ら高 エ ネ ルギ ー まで 非 常 に 広 い.ま た,重
イオ ン衝 突 で の α粒
子 の よ うな ク ラ ス ター の 放 出,放
動 量 の 流 れ の記 述 な
出粒 子 の 質 量 数 分 布,運
ど,ほ か の 方 法 で は取 り扱 え な い 事 柄 の定 量 的 記 述 に も成 功 し て い る.量 子 力 学 的 に 見 て,AMDはQMDよ
り優 れ て い る こ とは 明 らか で あ る.特 に原 子 核
の 束 縛 状 態 の 構 造 に つ い て は 波 動 関 数 の 反 対 称 化 は 重 要 で あ る.そ の か わ り, シ ミュ レ ー シ ョン に 要 す る計 算 時 間 はQMDの
5.5
Glauber近
方 が は るか に少 な い.
似
高 エ ネル ギ ー 入 射粒 子 に よ る反応 に使 われ る有 力 な 近 似 法 の 一 つ にGlauber 近 似[35]が あ る.入 射 チ ャ ネ ル αか ら始 ま る広 義 の非 弾 性 散 乱 を考 え よ う.反 応 を記 述 す る波 動 関 数 Ψ(+)α が 満 た すSchrodinger方
程式 は
(5.269) で あ る.Glauber近
似 の 第 一 の 仮 定 は,入
射 エ ネ ル ギ ー,し
た が っ てE,が
の 反 応 に よ る 内 部 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー よ り は る か に 大 き い,と る.こ
の 仮 定 は,断
熱 近 似(5.3.1項)の
動 に く ら べ て 非 常 速 い,と い てhα
そ れ と 同 じ く,系
い っ て も よ い.い
こ
い うこ とで あ
の相 対 運 動 が 内 部 運
ず れ に せ よ,そ
れ は(5.269)に
を 入 射 チ ャ ネ ル で の 値 εα で 置 き 換 え て よ い こ と を 意 味 す る.ゆ
お え に,
とす る と
(5.270) と な る.い
ま,入
射 波 の 波 数 ベ ク トル を κα と し
(5.271) と置 く と,(5.270)は
(5.272)
と な る.こ
れ は ξα を パ ラ メ タ ー と し て 含 む 方 程 式 で あ る.
Glauber近
似 の 第 二 の 仮 定 は,Eα
入 射 波 の1波
長 内 で のVα
が│Vα│に
比 べ て は る か に 大 き く,か
の 変 化 が 無 視 で き る ほ ど 小 さ け れ ば,す
つ,
なわ ち
か つ な ら ば,f(rα,ξ
α)はrα
の 激 し く変 動 す る 関 数 で あ る
り と変 化 す る,と
す る こ と で あ る.た
し(5.270)でVα
を 無 視 す れ ば Ψ(+)αは 平 面 波 に な り,f(rα,ξ
た く よ ら な くな る.し
か し,Vα
で 急 激 に 変 化 す る と,入
だ し,aはVα
に比べ てゆ っ く
が 小 さ くて も,も
の レ ン ジ で あ る.実
しVα が1波
射 波 は そ こ で 反 射 さ れ,f(rα,ξ
そ の よ う な こ とが 起 こ ら な い た め に は, の 条 件 が 満 た さ れ て い れ ば,(5.272)左
際,も
α)はrα
に まっ
長 よ り狭 い 範 囲
α)も 急 激 に 変 化 す る.
の 条 件 が 必 要 で あ る.こ
辺 のΔ αfの 項 は 無 視 で き る.こ
れ ら
の近似
の 下 に(5.272)は
(5.273) と な る.こ (z,b,φ)を
こ で,rα=0を 定 義 す る.bは
原 点 と し,κ α をz方
向 と す る 円 筒 座 標 系rα=
入 射 粒 子 の 衝 突 係 数 とい う物 理 的 意 味 を持 つ.κ α∇rα=
κα∂/∂zで あ る か ら,(5.273)は
(5.274) と な り,そ
の 解 は,
と し て,
(5.275) で あ る.た あ る.今
だ し,ψ(b,φ)とg(ξ の 場 合,ψ(b,φ)とg(ξ
α)は そ れ ぞ れbと α)は,Ψ(+)α
φ お よ び ξα の 任 意 の 関 数 で
が
で入射平面波
(5.276) に な る,と い う物 理 的 条 件 で 決 め られ る.そ の た め に は
(5.277) で な け れ ば な ら な い.こ
れ を(5.275)に
代 入する と
(5.278)
とな る.こ の 関 数 はzが した が っ て,も
しdは(6.96)に
現 れ る動 的偏 極 ポ テ ンシ ャル で あ る.
こ こ で 得 られ た 透 過 行 列 の式 は 正確 で あ るが,複 導 い て お こ う.そ れ に は 準 位 行 列(6.99)を
合 核 共 鳴 の 幅 で 表 した 式 を
チ ャ ネ ル行 列
(6.119) を 使 っ て 書 き直 す.す な わ ち(6.99)の 主 要 項 と し,残
りの 項 をQ空
第2項
の 分 母 を
間 の 行 列 と して,べ
を
き展 開 し,次 にQ空
間の行
列 と し て和 を と る と
(6.120) から
(6.121) が 求 め られ る.エ ネ ル ギ ーがEで
あ るチ ャ ネ ル だ けが0で
ない行列要素
(6.122) を 使 う と,(6.121)は
(6.123) と な る.さ
ら にXの
虚 数 部 を無 視 す る近 似 を と る と
(6.124)
と な る.ρ
λは
(6.125) で 定 義 さ れ る 準 位 λ の 密 度 で あ る.(6.114),(6.123)か
ら透 過 行 列
(6.126) が 求 め られ る.チ ャネ ル 間 の直 接 結 合 の影 響 を無 視 す る とX(E)は
対角形にな り
(6.127a) (6.127b) が 求 まる.(6.127b)は
の と き成 り立 つ[20].
透 過 係 数 に 関 係 した 観 測 量 は 強 度 関 数 で,弾 性 散 乱 に 対 す る 平 均 の 共 鳴 幅 (6.93)と 平 均 準 位 間 隔
の比
(6.128) は,3.2節
に お い て 定 義 さ れ た 強 度 関 数(3.8)で
て は る か に 小 さ い エ ネ ル ギ ー 領 域 で は,1に 係 数(6.127b)に
あ る.共
鳴幅が準位 間隔に比べ
比 べ て は る か に 小 さ い 量 で,透
過
よ り
(6.129) と表 され る.こ の 式 に よ り光 学 ポ テ ンシ ャル が 与 え られれ ば 計 算 で きる.強 度 関 数 は低 エ ネ ルギ ー の 中性 子 散 乱 の実 験 デ ー タか ら求 め られ るが,s波 p波 まで で あ る.
は 貫 通 因 子 に比 例 し(6.44),(6.45),貫
か せ いぜ い
通 因子 は(6.51)
で 与 え られ る た め,強 度 関 数 は エ ネル ギ ー に依 存 す る 量 で,理 論 と比 べ る と き に はs波 の 場 合 に はs波 強度 関 数
(6.130) が 用 い られ る.E0と
し て は 適 当 なエ ネ ルギ ー(た と えば1eV)を
選 べ ば よい.
6.3.1 一様 ポ テ ン シ ャル の 場 合 の光 学 模 型 光 学 模 型 の波 動 関 数,透 過 係 数 な ど を最 も簡 単 な系,一 様 な複 素 ポ テ ン シ ャ ル を例 に とっ て 計 算 す る.時
間 に依 存 す るSchrodinger方
程式 は
(6.131)
で あ る.Vは
実 数 部,Wは
虚 数 部 の 光 学 ポ テ ン シ ャル で あ る.こ れ か ら次 の連
続 の方 程 式
(6.132) が 導 か れ る[20].こ
こ で,密
度 ρ(r,t)と 流 束j(r,t)は
(6.133) で 与 え られ る.こ
こ で ξ はr以
外 の 積 分 変 数 で,(6.132)の
は虚 数 ポ テ ン シ ャ ルWに
右辺 に現 れ る
よ る吸 収 の 割 合 で あ る.
こ れ を 最 も簡 単 な1次 元 の 一 様 な ポ テ ン シ ャル に 適 用 し て み る.ま ず 時 間 に 依 存 しな い 方 程 式
(6.134) のエ ネ ル ギ ーが 実 数 の 定 常 解 は
(6.135) と な るが,波
数は
(6.136) (6.137) で,全
波動関数 は
(6.138) で 与 え られ る.こ れ か ら密 度 を計 算 す る と,
と な り,x=0と
x=Lの
区 間 を考 え て み る と,密 度 は 吸 収 の た め,x=0に
x=Lに
お い て
で あ るか ら,x=0に
お い て ρ=1か
ら,
に減 少 す る.一 方,流 れ は お い て に 減 少 す る.そ
か ら,x=Lに
おける
の差が ち ょうどこの 区 間で吸収 さ
れ る る 流 れ か ら,出 る 流 れ を差 し引 い た もの で,そ れ は
に等 し い.透 過 係 数 は 入 で与
え られ る.こ れ が 普 通 使 わ れ て い る 時 間 に独 立 な 光 学 模 型 の 波 動 関 数 に 対 応 す る(3.3節 参 照).
も う一 つ の 簡 単 な 解 は 波 数 が 実 数,エ
ネ ルギ ー が 複 素 数 の 場 合 で
(6.139) で 与 え ら れ る.こ
こで
(6.140) で あ る.す
な わ ち 密 度 は 座 標xに で 位 置xに
Wに
は よ ら な い, よ ら ず,密
と な る.流
れ は
度 と流れ は と もに 吸 収 ポ テ ン シ ャ ル
よ り一 様 に 時 間 と と も に 減 衰 す る.
境 界 条 件 が 課 せ ら れ るR行 テ ン シ ャ ル で は 作 れ な い.い Rosenfeld[10]の
列 理 論 の 波 動 関 数 は,以 まKapur-Peierls[5]と
固 有 関 数 を 考 え て み る.一
ま で 広 が り
の 境 界 条 件 を 課 す.波
は
の 関 係 が あ る.す
x=Lで
は
で あ る.
と も に 指 数 関 数 的 に 減 少 す る が,こ
る と,x=0に
kR,kIは
れ は ポ テ ン シ ャ ルWに
分 はxと
の で,kILの
に よ り打 ち 消 さ れ る[10].具
体 的 にx>Lの
波 と な る.
方,エ
ネ ル ギ ー の 虚部 は負 で な け れ
な る.し
と も に 指 数 関 数 的 に 増 大 す る.し
エ ネル
よ る 吸 収 とx=L
と 書 く とエ ネ ル ギ ー は 固 有 値 方 程 式 を 解 い て 求 め る.一
数kと
お け る 流 束 は0で,
素 数 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は 離 散 的 で あ る.こ
ば な ら な い か ら,kR>0な
らx=L
の 密 度 ρ(x,t)は 時 間 と
に お け る 流 失 の 二 つ に よ っ て 引 き起 こ さ れ る.こ
数 を
は 少 し 異 な るHumblet-
様 ポ テ ン シ ャ ル がx=0か
ギ ーEに
複 素 数 で,複
上 の よ うな一様 な ポ
たが って波 動 関数 の 空 間部
か し こ の 増 大 は 時 間 部 分 の 振 幅 を 書 く と,
(6.141) と な る.こ
こ で 波 束(6.5節
参 照)を
に あ る とす る と,波 束 は速 度 波 束 の 位 置 はx=L+υtで
考 え,そ の 中心 がt=0に でx=Lか
与 え ら れ るの で,上
束 で 見 て い れ ば 差 し引 き0と な る.
お い てx=L
ら遠 ざ か る.こ の と きの の 式 の 右 辺 指 数 の 実 数 部 は波
6.4 戸
前 の2節
口
状
態
で 複 合 核 を取 り扱 う理論 の 枠 組 み を 説 明 した が,こ れ か ら そ の 内 容
に 立 ち 入 る.複 合核 に 至 る まで に は複 雑 な 経 路 を た ど るが,そ 戸 口状 態が こ の節 で 導 入 され,そ
の第一歩であ る
の性 質が 調 べ られ る.入 射 核 子 が 核 内 に 入 る
と,核 に よる平 均 ポ テ ン シ ャル を感 じ,そ のエ ネル ギ ー はFermiエ
ネルギー よ
りは る か に 高 い.入 射 核 子 が 核 内核 子 と衝 突 す る と,そ れ にエ ネ ルギ ー と運 動 量 を与 え,Fermiエ ち1粒
子 と1空
2p-1h状
ネ ル ギ ー よ り低 い状 態 か ら高 い状 態 に押 し上 げ る.す な わ 孔(1p-1h)の
対 が で き る.も
し標 的 核 が0p-0h状
態で あれば
態 に な る.入 射 核 子が また 核 内核 子 に 衝 突 す る と,新 た な1p-1hの
が で き,3p-2h状
態 に な る.こ の粒 子 と空 孔 の 数 の 和m=p+hは
さ を示 す 指 標 に な る の で,エ キ シ トン(exciton)数
にΔm=±2,0で
状 態の複雑
と呼 ば れ て い る.こ れ は 固
体 物 理 の エ キ シ トンか ら とっ た と思 わ れ る.核 子 の 衝突 で,エ だ け 増 え る と言 っ たが,反
対
キ シ トン 数 は2
対 に減 る こ と もあ り,変 わ らな い こ と もあ る.一 般
あ る.こ れ は 有 効 相 互 作 用 を 二 体 力 と仮 定 し た 結 果 で あ る.
反 応 の 初 期 で はエ キ シ トン 数が 大 きい ほ ど状 態 数 が 大 き くな るの で,Δm=2 が お こ りや す いが,だ
んだ んmが
大 き くな る と状 態 数 は ピ ー ク に達 し,そ れ か
らは 減 少 に 転 ず る(8.1.1項 参 照).し
たが っ てmも
あ る と こ ろ まで 達 す る とそ
の あ た りで 停 滞 し 一 種 の 定 常 状 態 に な る.こ れ が 複 合 核 で あ る. 粒 子 の 状 態 と して は 束縛 状 態 と散 乱(連 続)状 態 が あ る.全 部 束 縛 状 態 か らな る エ キ シ トンmの
状 態 は6.2節 で 述べ た よ うにQ空
上 の 粒 子 が 散 乱 状 態 に あ れ ばP空
間 に属 す る.も し 一 つ 以
間 に 属 す こ と に な るが,二
つ以 上の連続 状
態 の 粒 子 は 今 後 考 え な い こ とに す る.核 反 応 の 初 め の 状 態 はP空 1回 の 衝 突 後 の 状 態 はQ空 に 落 ち る と,P空
間 の こ と もあ りP空
間 で あ るが,
間 の こ と もあ る.一 度Q空
間
間 に戻 る の は最 後 の粒 子 放 出 の と き に な る こ とが 多 い.こ の
よ うな 様 子 は 図6.2に 示 され て い る.最 初 の 衝 突 で で きたQ空
間 の エ キ シ トン
3の 状 態 の うち,励 起 され や す く重 要 な役 割 を果 た す 状 態 は複 合 核 状 態 へ の 入 り口 で あ る とい う こ とか ら,戸 口状 態(doorway 核 の エ キ シ ト ン数 がm0な の 次 の エ キ シ トン5のQ空 (hallway
state)と
state)と 呼ば れ て い る.(標 的
ら戸 口状 態 で はm=m0+3).つ
いでに戸 口状態
間 に属 す る励 起 され や す い 重 要 な 状 態 は 廊 下 状 態
呼 ば れ て い る.
図6.2
エ キ シ ト ン数mに
入 射 核 子 が 平 均 場 で 散 乱 され て,m=3の
よ り示 す 核 反 応 の 進 行
状 態へ い く割 合 が あ ま り大 き くな
い と き は,こ の散 乱 は 光 学 模 型 で よ く記 述 され る.m=3ま 上 にい く割 合 が 大 き くな けれ ば,m=3の
で は い くが そ れ 以
戸 口状 態 が 重 要 な 役 割 を果 た す.こ
の と きの 断 面 積 の エ ネ ル ギ ー変 化 は 一 体 の 共 鳴 と複 合 核 共 鳴 と の 中 間 で,核 反 応 の 中 間 構 造 と し てMITの S行 列 の 一 般 式(6.75)に
グ ル ープ[21,22]に 現 れ るQ空
態 な の で,こ れ を特 別 扱 い し てdと と し,Q=d+qと HPQ=HPdと
よっ て 発 展 させ られ た.
間 の 状 態 の 中 で 一 番 重 要 な の は 戸 口状
し,廊 下 状 態 を含 め た そ の ほか の 状 態 をq
書 く.す る と入 射 チ ャネ ル とqの 結 合 は な い と仮 定 す る と なって
(6.142) と な る.そ
こで
(6.143) とq空 間 を前 と 同 じ や り方 で 消 去 す る こ とが で き る.こ こでHQQか
ら の寄 与
の一つは
(6.144) で あ り,Γ ↓は 分 散 幅(spreading
width)と
呼 ば れ,戸
口 状 態 が も っ と複 雑 な 状
態qへ
崩壊 す る幅 で あ る.も
う一 つ の 寄 与 は
(6.145) で,Γ ↑は 脱 出幅(escape
width)と 呼 ば れ 連続 状 態 へ の 崩壊 に対 応 す る.Γ ↓+Γ ↑
は 戸 口状 態 の 幅 で,一 粒 子 幅 よ り小 さ く,複 合 核 の 幅 よ りは 大 きい. 戸 口状 態 は い ま述 べ た 核 子 散 乱 の 場 合 の2p-1h状 1p-1h状 態 で あ る巨 大 共 鳴 状 態,ま 移 行 反 応 の 場 合 の1p状
た(d,p)あ
態 あ るい は1h状
態 の ほ か,光 反 応 の場 合 の
る い は(p,d)反
応 の よ うな核 子
態 な どが あ る.以 下,戸
口状 態が も っ
と複 雑 な状 態 に 崩 壊 す る様 子 を強 度 関 数 を 使 って 調 べ る.そ の あ と,巨 大 共 鳴 と ア イ ソバ リ ッ ク ・ア ナ ログ 状 態 を 例 に と り,戸 口状 態 の崩 壊 を議 論 す る.
6.4.1
強
度
関
数
強 度 関 数 の 歴 史 は 古 い が,Lane-Thomas-Wigner
[23]は 低 エ ネ ル ギ ー 中性
子 散 乱 に現 れ る 巨 大 共 鳴 現 象 は 光 学 ポ テ ン シ ャ ル の 実 部 に よ る 共 鳴が 残 留 相 互 作 用 に よ り多 くの 複 合 核 状 態 に 分 散 さ れ た もの と い う解 釈 を 示 し た.そ 後Bohr-Mottelson Breit-Wigner型
の
[20]は 簡 単 な 模 型 を使 って,強 度 関 数 は 一 定 の 条 件 の 下 で に な る こ と を示 した.最 近Lauritzenら[24]は
もっ と一 般 的 な
条件 の 下 で,こ れ を 定 式 化 し,ま た大 規模 殻模 型 の シ ミュ レ ー シ ョ ン[25]と 比 べ た.以 下[24]に 従 っ てQ空
間 内で,戸
口状 態 が 残 留 相 互 作 用 に よ り,も っ と
複 雑 な状 態 に拡 散 して い く有様 を 強度 関数 を使 って調 べ る.す な わ ちQ=d+q 空 間 内 で 計 算 を 行 う.戸 口状 態 は独 立粒 子 ハ ミル トニ ア ンH0の 定 す る.(H0の
固 有 状 態 と仮
定 義 を 少 し変 えれ ば,巨 大 共 鳴 も扱 うこ と も可 能 で あ る.)戸 口
状 態 μ は,
(6.146) を 満 た す.次 H0+Vと
に 残 留 相 互 作 用Vを
し,そ
考 え,Q空
間 で の ハ ミ ル ト ニ ア ン をH=
の 固 有 値 ・固 有 関 数 を εα,│α〉と す る と,
(6.147) を満 た す.こ れ ら の 二 つ の 状 態 は
(6.148)
で 結 ば れ,そ
の 展 開係 数 には
(6.149) の 関 係 が 成 り立 つ.戸
口 状 態 μ の 強 度 関 数(strength
function)を
(6.150) で 定 義 す る[20].
(6.149)よ
り
(6.151) を 満 た す の で,こ
の 強 度 関 数 は 規 格 化 され て い る.(6.128)の
す る た め 規 格 化 され た 強 度 関 数 と呼 ぶ こ とに す る.d空
強 度 関 数 と区 別
間 の 有 効 相 互 作 用 を用
い る と,規 格 化 され た 強 度 関 数(6.150)は
(6.152) とな る.戸
口状 態 μ は ほか の 戸 口状 態 と相 互 作 用 が な い とす る と,
(6.153) と 書 け る.Σ
μ(ε)は
(6.154) で 与 え られ る.固 有 関 数│λ〉は
(6.155) を 満 た す が,一
般 に状 態│λ〉を具 体 的 に 求 め る こ とは 難 し い.
しか し次 に説 明 す る弱 結 合 の 条 件 が 満 た され る と きに は Σμ(ε)のエ ネ ル ギ ー 平 均 Σμ(ε)は,戸 口 状 態 μ と そ の つ ぎ に複 雑 な 廊 下状 態 ν との 行 列 要 素Hμ ν と準 位 密 度 ρν(ε)によ り
(6.156)
で 与 え られ,容 易 に 計 算 す る こ とが で き る.弱 結 合 は 戸 口状 態 μ と(6.155)の 固 有 状 態 λ との 行 列 要 素Hμ λの 分 布 関 数
(6.157) の 広 が りΔ εが 弱 結 合 で 計 算 し た分 散 幅Γ μ(ε)よりは るか に大 きい と き成 り立 つ[25].こ
の と き規 格 化 され た 強 度 関 数 は
(6.158) のBreit-Wigner型
に な る.
初 め の 状 態 が1粒 で,幅
子 か1空
は エ キ シ ト ン 数3の
比 例 す る こ と に な る(8.1節 高 く な る と,ず ル ギ ー の2乗
準 位 密 度 に 比 例 し,そ 参 照).励
で は な く1乗
に
起 エ ネ ル ギ ー が 低 い 場 合 は よ い が,少
し
[26,27]に
よ る と,励
起エ ネ
に 比 例 す る ほ うが 大 局 的 に 合 う と い う.図6.3に のEが
空 孔 の 場 合 に 対 応 し,正
子 の 結 合 エ ネ ル ギ ー よ り 高 く な る と,散
い が 必 要 と な る.図
態なの
の 励 起 エ ネ ル ギ ー ε の2乗
れ が 生 ず る.EsbensenとBertsch
の 実 験 値 と の 比 較 を 示 す.負 応 す る.核
孔 の 場 合 は 戸 口 状 態 は2p-1hか1p-2h状
核
の場合は粒子に対
乱 状 態 に な り,別
の 取 り扱
を 見 る と,
(6.159)
図6.3
エ ネル ギ ーE-εFで
エ ネ ル ギ ーが 負 は 空 孔,正
プ ロ ッ トし た 核 子 の 分 散 幅Γ ↓
は 粒 子 に 対 応.曲
せ た カー プ で,V字 型 点線 は(6.159)に デ ー タか ら と った[28].
線 は 実 験 デ ー タに 合 わ
対 応.中
空円は弾性散乱の
が 全 般 的 に よ い 近 似 に な って い る こ とが わ か る.次 て か ら,残 留 相 互 作 用 に よ り,廊 下 状 態,さ
に戸 口状 態 が 核 反 応 で で き
らに 複 雑 な状 態 が 混 じ っ て戸 口 状
態が 崩 壊 す る 有 様 を 時 間 を追 っ て 調 べ て み る.状 態│μ〉はt=0に
生 成 され た
とす る と,こ の と きに は 状 態│α 〉の 位 相 が コ ヒー レ ン トに な り,戸 口状 態 を形 成 し て い る(6.148).時
刻tに
お い て は
に な るの で,状 態
│α〉の位 相 に 乱 れ が 生 じ,初 め の状 態 が 残 っ て い る確 率 振 幅 は
(6.160) と な る が,こ
れ は 規 格 化 さ れ た 強 度 関 数(6.150)のFourier変
換
(6.161) に な っ て い る.弱 ら,こ
結 合 の 場 合 は 強 度 関 数Fμ(ε)は(6.158)で
与 え られ て い るか
れ を 代 入 す る と,
(6.162) と な り,生
存 確 率(survival
probability)は
(6.163) と な る.す
な わ ち,戸
口 状 態 の 生 存 確 率 は 指 数 関 数 的 に 時 間 と と も 減 少 し,そ
の 寿 命 はh/Γ↓μ で 与 え ら れ る.し
か し こ れ は 弱 結 合 の 場 合 で,一
般の場合 には
指 数 関 数 的 に 減 少 す る と は 限 ら な い. こ こ で 強 度 関 数(6.128)と る.(6.79),(6.93),(6.150)よ
規 格 化 さ れ た 強 度 関 数(6.150)の
関係 を調 べ て み
り
(6.164) を得 る.こ こで Γμαは 戸 口状 態 μの残 留核 が 基 底 状 態の 脱 出 幅 で あ る*3.(6.150) よ り 〈Dλ〉を複 合 核 状 態 λの 平 均 状 態 間 隔 とす る と,
(6.165) *3 この 戸 口状 態 μ は1粒 子 の 共鳴 状 態が 重 要 なの で ,6.2節 算 子Qに
のFeshbach理
論 で は,射 影演
よ り結 合 状 態 に限 られ,共 鳴 状態 は取 り扱 うこ とはで きな い.Q空
変 えるか,R行
列 理論 に拠 らざ る をえ な い.
間 の定義 を
な の で,強
度 関 数(6.128)は
(6.166) とな る.す な わ ち強 度 関 数 は 規 格化 され た強 度 関 数 に 比 例 し,弱 結 合 の と きに は Breit -Wigner型
6.4.2
巨
に な り,エ ネ ルギ ー で 積 分 す れ ば 一 核 子 状 態 の 脱 出幅 とな る.
大
共
鳴
戸 口 状 態 の 一 例 と し て,巨
大 共 鳴(giant
れ に つ い て は 文 献[30]の3.6節 論 す る.γ 線,電
子,核
子,軽
resonance,
GR)を
に 論 じ ら れ て い る の で,こ イ オ ン,重
イ オ ン,π
な ど に よ る散 乱 な ど に よっ
て い ろ い ろ の ス ピ ン ・パ リ テ ィ の 巨 大 共 鳴 が 観 察 さ れ る が,そ 古 くか ら 知 ら れ,ま を 考 え る.こ 双 極 子(ED)モ
た 顕 著 な,巨
大 双 極 共 鳴(giant
れ は ア イ ソ ス ピ ン1,ス
取 り 上 げ る.こ
こ で は 崩 壊 を主 に議
dipole
ピ ン ・パ リ テ ィ1-の
の 中 で,も resonance,
っ とも GDR)
量 子 数 を 持 つ,電
気
ー メン ト
(6.167) に よ り励 起 さ れ る.tzは
ア イ ソ ス ピ ン のz成
え ば 核 の 基 底 状 態 に 作 用 さ せ る と,ス 起 の1次
分 で あ る.こ
ピ ン1-,ア
の 演 算 子Mを
たと
イ ソ ス ピ ン1の1p-1hの
励
結合
(6.168) の波 動 関 数 を持 った 状 態が 生 成 され る.も し核 に調 和振 動 子 模 型 を用 い れば,励 起 エ ネル ギ ー は1hω0で あ る.こ の 時 の 各成 分 の振 幅Cμ,phは 行 列 要素 に比 例 す る の で,基 底 状 態 か らこ の状 態 へ の 電 気 双 極 子 モ ー メン トMの 素 を計 算 す る と,各 成 分 は み な 同 じ符 号 で,遷 て こ の 状 態 は 集 団 励 起 状 態 で,ま 現 実 の核 で は 各ph励 ので,ハ
行列要
移 確 率 は増 強 され る.し た が っ
た 戸 口状 態 で あ る.
起 の エ ネル ギ ー も一 定 で は な く,残 留 相 互 作 用 もあ る
ミル トニ ア ン を対 角 化 す る と,成 分 の 数 だ け の エ ネル ギ ー を 持 つ 状 態
が 得 られ る.μ は そ れ ら を 区別 す る.そ の 中 で,一 番 エ ネ ル ギ ー の 高 い の が 実 験 値 態 に よ く似 て い る.こ
に近 く,そ の波 動 関 数 は い ま述 べ た 戸 口状 の エ ネル ギ ー以 下 に 現 れ る状 態 は 大 体 は集 合 励 起 状 態 で
は な く,遷 移 確 率 も大 体 一 粒 子 励 起 の 大 き さで あ る.
(a)
(b)
図6.4
巨 大 共 鳴 の 幅 へ の 粒 子 と 空 孔か らの 寄 与
上 向 き矢 印 は粒 子 を,下
こ の 戸 口状 態 に は6.4.1項
向 き矢 印 は 空孔 を表 す.
で 説 明 し た 強 度 関 数 の 計 算 で 弱 結 合 が 適 用 され る
と期 待 され る ので,(6.156)式 る.す
(d)
(c)
で,戸
口状 態 μ を 巨 大 双極 共 鳴(GDR)状
態 とす
る と,
(6.169) とな り,廊 下 状 態 νは2p-2h状 子pと
空 孔hの
態 で あ る.巨 大 共 鳴 の幅 は独 立 粒 子 模 型 で は 粒
幅 の 和 と な るが,(6.159)を
用い る と
(6.170) とな る.次 に 残 留 相 互 作 用 を 考 え る.巨 大 共 鳴 μ は 多 くのphの あ るが,初 pがphの 態phに
め そ の 一 つ のphか 組qを
つ く り,そ れがpと
戻 る 場 合(a),同
ら もphに きはhと
ら 出 発 す る と考 え る.図6.4に 相 互 作 用 し てphの
じ く空 孔hが
つ き対 角 型 で あ る.次
示 す よ う に粒 子
組qが 消 え,も と の状
相 互 作 用 を す る場 合(b)が
に(a)と
同 じ にpが 組qを
相 互 作 用 を して,終 状 態 がp'h'に
ら 同 じ終 状 態p'h'に 進 む 場 合(d)の4つ
重 ね合わせで
あ るが,ど
作 るが,消
な る場 合(c)と,(b)の
ち
える と
中 間状 態か
の 場 合 が 考 え られ る.非 対 角 型(c)を
式 で 書 くと,
(6.171) と な る.こ
の 干 渉 効 果 の た め,対
角 型 の み を と っ た 計 算 よ り,一 般 に 小 さ く な る.
図6.5に 独 立 粒 子 模 型 の 場 合 の 幅(6.170)を
点 線 で 示 し,そ れ を 巨大 双 極 共
鳴 の 実 験 値 と比 較 して あ る.次 に 脱 出 幅 を考 え る.核 子 の 放 出 は 陽子 ・中性 子
図6.5
巨 大 双 極 共 鳴 の 幅[27]
カ ー ブ は 実 験 値 で,点 表6.1
208Pbの
線 は 理論 値.
中 性 子 幅Гn(keV)[31]
Jπ は 中 性 子 放 出 後 の 残 留 核 の ス ピ ン ・パ リテ ィ
と もに 可 能 だが,陽 は(6.145)を の 粒 子pが
子 の方 がCoulomb障
用 い て行 うが,そ
壁 の た め 抑 圧 され る.脱
こ に現 れ る 相 互 作 用Hpdの
そ の ま ま連 続 状 態 で 出 て 行 く場 合 と,1回
出幅の計算
た め,GDRの
衝 突 し てphを
なか 作 って 出
て 行 く場 合 が 考 え られ るが,後 者 は エ ネ ルギ ー 的 に不 利 で あ る. こ こ で208Pbを
例 に と り,巨 大 双 曲 共 鳴(GDR)の
鳴 エ ネ ル ギ ー はEGDR=13.4MeV,全 幅Гnの 計 算 値 を 表6.1に
ら最 大500keVぐ
らい まで で,全
比 べ て小 さい.中 性 子 脱 出 幅 の 実 験 値 は測 定 が 困難 の た め,個 々
に は 正 確 に 測 定 され て い な い が[29],そ で,直 比 は3%く
あ る.中 性 子
示 す.残 留 相 互 作 用 の と りか た に よ って 大 きな 変 動
が あ るが,総 計 は 表6.1に 示 し た120keVか 幅 の4MeVに
実 験 値 を示 して お く.共
幅 は ΓGDR=4.0MeVで
の 断 面 積 の 全 吸 収 断 面 積 に対 す る比 は
接 の 中 性 子 崩 壊 の 割 合 は小 さ い.計 算 値 の 幅 の
ら い で 大 体 合 って い る.し た が っ てγ 吸 収 でGRが
ま ま 中性 子 が 放 出 され る よ り,1p-1h状
態 か ら,2p-2h,3p-3hと
で きる と,そ の 複 雑 な 状 態 へ,
さ ら に複 合 核 に進 み,そ れ が 崩 壊 す る よ うな 過 程 が 主 要 な もの に な る. 以 上 は 巨 大 双 極 共 鳴 の 例 で あ っ たが,ス いl=2,3の
ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン の励 起 を伴 わ な
場 合 も同 様 で あ る.し か し ス ピ ン ・ア イ ソス ピ ンの 励 起 が あ る場
合 に は 事 情 が 変 わ り,干 渉 の結 果,幅 が 増 大 す る場 合 が あ る こ とが 期 待 され る [32,33].光
反 応 な ど で 励 起 され る これ らの 戸 口状 態 は 集 団 状 態 で,そ の励 起 関
数 は 強 め られ,顕
著 な 山 と して 認 め られ る.し か し,反 応 と して は大 部 分 は複
合 核 を 作 っ て か ら崩 壊 す る.巨 大 共 鳴 状 態 は核 の 基 底 状 態 上 につ くられ る とは 限 らず,高
い 励 起 状 態 の上 に あ った り,ま た 二 つ の 巨 大 共 鳴が 重 な っ て つ くら
れ る場 合 もあ る.こ れ らに つ い て は[34]を み よ.
6.4.3
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
戸 口 状 態 の も う 一 つ の 例 と し て,ア analog
state, IAS)を
取 り上 げ る[35].ア
は 古 くか ら 知 ら れ て い た が,一 性(charge
イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(isobaric
independence)を
イ ソ ス ピ ンが よい 量 子 数 で あ る こ と
方Coulomb相
互 作 用 が あ り,こ
破 る こ と も 明 ら か で,Zが
れが荷 電独立
大 き い 重 い核 で は ア イ
ソ ス ピ ン は も は や よ い 量 子 数 と は 見 な さ れ な か っ た. こ れ を 打 ち 破 っ た の が(p,n)反 応 に よ るIASの 40Ar(p ,n)40K反 応 を 考 え る[36].40ArはZ=18,N=22だ 状 態 はT=Tz=2で あ る の で,一
あ る.40Kの
発 見 で あ る.例
と し て,
か ら,基
底
基 底 状 態 の ア イ ソ ス ピ ン はT=Tz=1で
番 起 き や す い 荷 電 交 換 反 応 は 過 剰 中 性 子(excess
neutron)f7/2の
軌 道 を ま っ た く変 え ず に た だ 荷 電 状 態 を 中 性 子 か ら 陽 子 に 変 え る 反 応 で あ る. こ の と き 入 射 陽 子 も 軌 道 を 変 え ず に 荷 電 状 態 だ け を 変 え て 出 て 行 く.こ な 反 応 はLaneポ
テ ン シ ャ ル[37]と
の よう
呼ばれ る光学ポ テ ンシャル
(6.172) に よ り記 述 され る.こ こ で,Tは
標 的 核 の ア イソ ス ピ ン演 算 子 で,tは
子 の ア イソ ス ピ ン演 算 子 で,U0,U1は で は 標 的 核 の 状 態│TT〉 にT_が
入射核
一体 ポ テ ンシ ャル で あ る.荷 電 交 換 反 応
作 用 し,IAS
(6.173) が で き る.こ
の 状 態 の 荷 電 状 態 以 外 は 親 の 状 態 と ほ と ん ど 変 わ ら ず,そ
ネ ル ギ ー は 過 剰 中 性 子 のCoulomb置 energy)と IASが
非 常 に よ く 一 致 す る.ま
換 エ ネ ル ギ ー(Coulomb
displacement
た 実 験 か ら 求 め られ たQ値
戸 口 状 態 と し て 現 れ る の は(p,p)反
を 考 え る[39].208PbはT=Tz=22で,陽
応 で あ る[38].例
のエ
と も 一 致 す る. と し て208Pb(p,p)
子 はT=1/2,Tz=-1/2な
の
図6.6
208Pbの
209Pbの
過剰 中性 子 の軌 道 とIAS
図6.7 209BiのIASの 実 験[39] 陽子 に よ る弾 性 散 乱 の微 分 断 面 積 を 入射 エ ネル ギ ー で プ ロ ッ
トし た.
で,こ
の 二 つ の 合 成 系 は209Biで
態 はT=43/2で,IASはT=45/2に で あ る.209Pbの T_を
属 す.こ
基 底 状 態 は208Pbに
作 用 させ る と,図6.6に
は な く,6つ
ク が い くつ か 見 え る.最
付 い た も の で あ る.こ
れ に
中 性 子 か ら陽 子 に 変 わ るだ け で
の 軌 道 の 過 剰 中 性 子 が 陽 子 に 変 わ る.こ
陽 子 散 乱 の 共 鳴 状 態 と し て 現 れ る.実
底状
の 親 は
中 性 子g9/2が
示 す よ うにg9/2が
で あ る.基
の よ う に し て で き たIASが
験 デ ー タ を 図6.7に
低 の ピ ー ク は209Pb基
示 す が,幅
底 状 態 のIASで
の狭 い ピ ー
あ る が,そ
れ よ
り上 の ピ ー ク は 励 起 状 態 で,g9/2の 付 い た の に 対 応 し て い る.最 な の で,209Bi 一方
IASの208Pbを
,親 核209Pbの
代 わ り にi11/2,j15/2,d5/2な
低 のIASの
ど が208Pbに
陽 子 の 入 射 エ ネ ル ギ ー は14.828MeV
基 準 に し た エ ネ ル ギ ー も14.828
基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー は-3.94MeVな
の エ ネ ル ギ ー の 差 は18.768MeVと
な り,Coulomb置
MeVで
あ る.
の で,IASと
親核
換 エ ネ ル ギ ー18.69MeV
と 一 致 す る. IASは
陽 子 散 乱 に 対 す る 戸 口 状 態 で あ る.IASの
状 態│π 〉にT_を ら な い.そ
定 義 と し て,親
核 の 固有
掛 け た もの を と っ て もそ の 波 動 関 数 は 正 確 な 固 有 状 態 に は な
れ は ア イ ソ ス ピ ン 対 称 性 を 破 る 相 互 作 用 が あ る か ら で,そ
要 な の はCoulomb相 Coulombポ
互 作 用 で あ る.し
た が っ てIASは
幅 を 持 ち,そ
テ ン シ ャ ル が か か わ っ て い る こ とが 予 想 され る.IASの
出 幅 は(6.144)と(6.145)か IASのAと
ら 求 め ら れ る が,全
そ れ 以 外 の 状 態qに
の 最 も重
空 間 をP+Qに,さ
れ には
分 散 幅 と脱 ら にQを
分 け る とQ=A+qで,Aq=0が
成 り立 つ.
分散幅 は
(6.174) で 与 え られ る.こ
こ に現 れ る 行 列 要 素
(6.175) の 計 算 か ら は じめ る.複 合 核 状 態qとIAS
Aと
は 直 交 す る の で,
(6.176) が 成 り立 ち,
(6.177) とな る.交 換 子[H,T_]に
は 核 の ハ ミル トニ ア ンの ア イ ソ ス カ ラ ー の 部 分 の 寄
与 は な く,ア イ ソ ス ピ ン対 称 を破 る 部 分 か ら の 寄 与 の み で,そ な の はCoulomb相 子 は 一 様 な 半 径Rcの 用VC(r)
の 中 で 最 も重 要
互 作 用 で あ る.こ の 相 互 作 用 は 二 体 力 で あ るが,一
方 の陽
球 に 分 布 し て い る と近 似 し た,一 体 のCoulomb相
互作
(3.18)を 使 う.交 換 子 は
(6.178) と な る.
表6.2
脱 出 幅 はq空
209BiのIASの
幅
間 を消 去 した と きのA+P空
間 の有 効 相 互 作 用
(6.179) を使 い
(6.180) とな る.こ こでHPPは(6.179)か Hの
ら求 め られ たP空
行 列 要 素 の 計 算 は 分 散 幅 の 場 合 と ま っ た く同 じで,や
作 用が 主 要 な役 割 を果 たす.状 態Pと が,中
間の 有 効 相 互作 用 で あ る. は りCoulomb相
し て は,陽 子 を放 出 す る過 程 は 寄 与 す る
性 子 か ら は ほ とん ど寄 与 し な い.そ の 理 由 は[H,T_]が
変 え るの で,中
互
中性 子 を 陽子 に
性 子 は 出 て こ な い か らで あ る.も っ と複 雑 な過 程 か ら くる寄 与
は 小 さ い の で,無
視 す る こ とに す る.さ てP状
態 の 波 動 関 数 はIASの
直 交 し な け れ ば な らな い と い う条件 が あ る.IASの
それ と
崩 壊 で は,親 核 の 中性 子 が
ア イ ソ ス ピ ン 以外 の 量 子 数 を変 えず に,陽 子 に変 わ っ て 出 て い くの で あ るか ら, 残 留 核 は過 剰 中性 子 に 一 つ 穴 が 空 い た 状 態 で あ る.散 乱 状 態 の 陽 子 の 波 動 関 数 は 普 通,基 底 状 態 の 残 留 核 に対 す る 光 学 模 型 の 解 を使 うの で,IASと な い.し
は 直交 し
たが っ て 陽 子 の 波 動 関 数 は直 交 化 しな け れ ば な らな い[35].
208Pb(p,p)の
例 を 表6.2に
デ ー タか ら求 め た.脱
示 す[39].全
幅 Γ,弾 性 散 乱 の 脱 出 幅 Γ↑cは 実験
出 幅 に は 非 弾 性 散 乱 に対 応 す る もの が あ るが,こ れ は 過
剰 中性 子 が 陽 子 に 変 わ っ た もの の 脱 出 に対 応 す る もの で,実 験 が 難 し く一部 の デ ー タ しか 得 られ て い な い.そ れ で,207Pb(p,p)の208Bi0+で の 基 底 状 態 のIASに
ち ょ うど208Pb
対 応 す る非 弾 性 散 乱 のデ ー タか ら と った 非 弾 性 脱 出幅 をそ
の ま ま持 っ て き て,そ れ を208Pb(p,p')の
脱 出 幅 とす る.こ の よ うに して 求 め
た 弾 性 ・非 弾 性 の 脱 出 幅 の 和 Γ↑を 全 幅 Γ か ら 引 い た もの を 分 散 幅 Γ↓ と し
て 表6.2に
載 せ て あ る.こ れ を見 て わ か る こ と は分 散 幅 は 全 幅 に比 べ 小 さ い こ
とで あ る.こ れ は 巨 大 共 鳴 とは異 な り,IASは で,そ
戸 口 状 態 で 崩 壊 す る のが 大 部 分
れ よ り先 に 進 むの は比 較 的 少 な い こ と を示 して い る.
分散 幅 の計 算 は(6.174)を 使 って,qと
して 陽子 の 独 立粒 子 状 態 を とる と,実 験
値 よ りは るか に大 きい値 にな る.こ れ を説 明 した の はMekjian
[40]で,Coulomb
相 互 作 用 で 転 移 す るの は 個 々の 状 態 へ で は な く,集 団 状 態 で あ る ア イ ソベ ク ト ル 単 極 子(IVM)状
態 で あ る と した.こ
れ はIVM演
算子
(6.181) に よ って 生 成 され る 集 団 状 態 で あ る.こ のIVM演 作 用(3.18)のr0の
の場 合 をエ コ ー(echo)と
場 合 を 共 鳴 と呼 び,dδ/dEで
(8.77) を満 た す(6.147).殻 数 をumμ
模 型 の エ キ シ ト ンがmの
μで 指 定 され る 状 態 の 波 動 関
≡│μ>で
(8.78) を 満 た す の で(6.146),こ
れ ら2つ
の基 底 の 間 に は
(8.79) の 関 係(6.148)が
あ る.ま
た 展 開 係 数 の 間 に は 関 係(6.149)が
成 り立 つ.遷
移
確率 は
(8.80) と な り,さ
ら に(8.79)に
よ り 展 開 し,終
状 態 の エ ネル ギ ー につ い て の 平 均 を行
う と,
(8.81) と な る.標
的 核 は 簡 単 の た め0p-0h状
る 状 態 は1p-1h状
態 のphで
と き の 重 み の 関 数 で,Iは (6.150)を
あ る.こ
態 と し た の で,νoptに
よ って 励 起 され
こ で δI(ε-ε β)は エ ネ ル ギ ー 平 均 を す る
そ の 幅 で,I→0で
δI(ε)は δ 関 数 に な る.す
る と
拡張 した
(8.82) を 使 っ て,(8.81)は
(8.83)
と な る.終 状 態 で粒 子bが
観 測 され るの は残 留 核 にphが
和 時 間,こ こで は(6.170)か
ら求 め られ るph状
で きて か ら,核 の 緩
態 の 寿 命,に 比 べ て 長 い 時 間が
経 っ た後 で あ る.そ の 間 に残 留 核 は 平 衡 状 態 に な っ て い る. 一つ のph状 で,IをΓ
態 は 分 散 幅Γ ↓の エ ネル ギ ー範 囲 に分 布 し て い る と考 え られ るの
↓よ り大 き くとれ ば,違
うph状
態 の干 渉 は 消 え て
(8.84) が 成 り立 ち,遷 移 確 率 は
(8.85) と な る.上
の 式 に は 部 分 準 位 密 度 ρph(ε)を 含 む が,こ
れ は 強 度 関 数(6.150)と
同 じ で あ る.
8.4.3 中 間 状 態 の 統 計 中 間状 態が 現 れ るの は,二 段 階過 程 以 上 な の で,二 段 階 の 遷 移 確 率 を書 くと,
(8.86) とな る.こ の 中 間 状 態 を ど の よ う に取 り扱 うか を 考 え る.そ れ に は 連 続 状 態 の 粒 子 が 核 に衝 突 す る 平 均 時 間 とで きたphの 近 似 を使 う こ とが で きる.そ phに
つ い て は6.4.1項
の た め6.4.1項
の(6.159)で
寿 命 に 大 差 が あ れ ば,断
熱や 瞬間
で 導 入 し た 生 存 確 率 を評 価 す る.
与 え られ る よ うに,分 散 幅 は
(8.87) とな る.集 団 状 態 の 場 合 は6.4.2項 で 述べ た よ うに 一般 に は これ よ り小 さ くな る. 次 に 連 続 状 態 の 粒 子 の 場 合 は,核 物 質 を考 え る と,光 学 ポ テ ン シ ャ ルUの
虚
数 部 の 絶対 値 の2倍 が 幅Γcに な る.有 限 の核 で は,特 に 表 面 吸 収 型 の 場 合 の 評 価 は 難 しいが,等
価 な体 積 吸 収 型 に 直 して,そ の2倍
を近 似 的 な分 散 幅 とす る.
(8.88) さて 二 段 階 過 程 の最 初 の衝 突 でphを
作 った 時 刻 をt=0と
続 状 態 の粒 子 の 衝 突 が 起 こ る時 刻tに お い て,こ
のph状
して,2回
目の 連
態 と連 続 状 態 の 粒 子
が 生 存 して い る確 率 は,生 存 確 率 の積 の 衝 突 を 連 続 状 態 の粒 子がdtの
に よ り与 え られ る.2回
間 に 起 こす 確 率 はΓcdt/hで
目
あ るか ら
(8.89) とな るが,こ れ を 瞬 間 指 標 と呼 ぶ こ と にす る.Γcは,吸
収 も含 む の で,非 弾 性
散 乱 の 幅 に 置 き換 え た ほ うが よ り正確 に な る.
8.4.4
瞬
間
ま ずPs〓1す
近
似
な わ ちΓc≫Γ↓phの
場 合 を 考 え る.式(8.86)に
現 れ るT行
列
要素 は
(8.90) で あ る.最 初 の 衝突 で はphが Green関
で き るの で,状
態0は
きわ め て小
さ な 数 とす る.原 子 核 の 方 程 式 は
(8.106) と な る.こ れ を1次 の 摂 動 と し て解 く.原 子 核 の 状 態 をν で 表 し,方 程 式
(8.107) を満 たす もの とす る.t=-∞
で 基 底 状 態ν=0に
あ るとし
(8.108) と 展 開 す る.(8.108)を(8.106)に
代 入 し,H'(t)に
つ い て1次
の項 をとる と
(8.109)
を 得 る が,こ
れ を-∞
か らtま
で 積 分 し て,
(8.110) と な る.波
動 関 数 は(8.108)よ
り
(8.111) で 与 え られ る. 摂 動 に よ り核 の 状 態 が(8.111)の
よ う に変 わ っ た.こ れ に 伴 っ て密 度 行 列 の
期待値 は
(8.112) と な る.こ の 計 算 で
の よ うな 項 が 現 れ るが,運 動 量 保 存 則 が
満 た され な い の で 落 と し て あ る.
のFourier変
換は
(8.113) とな る.こ こ で 単 位 刺 激 に 対 す る応 答
(8.114) を 偏 極 伝 搬 関 数(polarization 義 す る.こ
の 式 は1956年Kubo
propagator),そ [34]に
の 虚 数 部 分 を線 形 応 答 関 数 と定
よ っ て 最 初 に 求 め ら れ た.
応 答 関 数 を 一 般 の 場 合 に 計 算 す る に は,摂
動(8.104)を
一 般 化 して
(8.115)
と書 く.そ し て 密 度 行 列 の期 待 値 を 計 算 す る と
(8.116) とな る.偏 極 伝 搬 関数 は
(8.117) で 与 え られ る.密 度 は
(8.118) と 表 され る.ρ(0)は
基 底 状 態 の 密 度 で あ る.
8.5.1 DWBAと
の関係
これ で 線 形 応 答 関 数が 求 ま った が,こ て お く.こ こ で は2∼5章
れ と従 来 の 核 反応 理 論 との 関係 を 述べ
と同 じ く運 動 量 表 示 で,波
使 う.し た が っ て チ ャネ ル 指 標aは
数 に よ る規 格 化(2.59)を
αsκ を示 す.DWBAに
よ る と核 に対 す る
摂動は
(8.119) とな る.Vは
入射 粒 子 と核 内核 子 の相 互 作 用 で,ξ は核 内核 子 の 座 標 で,(8.119)
は 一 体 の 演 算 子 を表 し て い る.こ れ が(8.104)の
摂 動 に 対 応 す る.DWBAの
断面積 は
(8.120) と 書 け る((2.232)参
照).遷
移行 列 要 素
(8.121) の δ関 数 を 書 き直 す と
(8.122)
とな る.Oを
生 成 消 滅 演 算 子 を使 っ て 表 す と
(8.123) と な る.(8.123)の は な い が,こ
右 辺 を(8.117)の
右 辺 と 比 較 す る と,(8.117)の
右 辺 第2項
れ は 通 常 寄 与 は な い.
8.5.2 近 似 計 算,RPA 以 上 の 計 算 は核 の 状 態 は 正 確 に わか って い る と し たが,そ
の よ うな場 合 は 少
な く,一 般 に は近 似 の 波 動 関 数 を使 う.原 子 核 の 波動 関 数 は平 均 場 近 似 を用 い, Slater行 列 式 で 表 され る とす る.各 軌 道 は 核 子 が 占 拠 して い るか,空
で あ るか
の いず れ か で あ る の で,密 度 行 列 は
(8.124) を 満 た す.密
度 行 列(8.116),
(8.118)の
運 動 方 程 式 を 求 め る と,Φ(t)は(8.106)
を 満 た す の で,
(8.125) を得 る.平 均 場 近 似 の も とで 計 算 す る と(8.125)は
(8.126) と な る[32].f(t)は
行 列(fkl)のFourier変
換 で あ る.摂
動fの1次
の近似で
(8.127) で あ る.h0は
摂 動 の な い と き の 平 均 場 の ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.ま
でf(t)=0と
す る と,TDHFの
密 度 行 列 ρ は(8.118)の
方 程 式 と な る(8.7節
た(8.126)
参 照).
よ う に 書 け る の で,δ ρ に つ い て1次
の 項 を と る と,
(8.128)
を得 る.平 均 場 近 似 に よ り
(8.129) と な る.こ
こ でFermi準
位 よ り 上 の 準 位 をp,下
の をhと
記 し た.ρ(1)に
つい
ては
(8.130) が 成 り立 つ.ま
た
(8.131) で あ る.こ
れ ら を 使 っ て(8.128)のhp,
phの
行 列 要 素 を と る と,
(8.132) と な る が,こ
こで
(8.133) で,
(8.134) は 有 効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 で,残 留 相 互 作 用 の 密 度 依 存 性 を 無 視 す れ ば 二 体 相 互 作 用 の 行 列 要 素 に な る.方 似(random
phase
右 辺 でf=1と
approximation,
程 式(8.132)で RPA)の
置 くと ρ(1)はRPAのGreen関
た と きの 線 形 応 答 関 数 はRPAに
右 辺 を0と
置 く と乱 雑 位 相 近
方 程 式 に ほか な ら な い[32].ま
た
数 で あ る.平 均 場 近 似 を使 っ
対 応 す る.こ れ ら を 次 に具 体 的 な 式 を用 い て
示 そ う. RPAの
方程式 は
(8.135) と 書 け る.こ
こで
(8.136)
で
(8.137) で あ る.
も(8.135)の
解 で,そ
の 固 有 値 は-ん Ωνで あ る の で,二
つの
解 を行 列
(8.138) の 形 で 書 く.固 有 値 も
(8.139) と 表 せ る.(8.135)の
左辺 の行列 を
(8.140) と 書 く と,(8.135)は
(8.141) とな る. RPAの
固有 関 数 に つ い て は,直 交 関係 が 成 り立 ち,規 格 化 条 件 と と も に
(8.142) と な る.RPAのGreen関
数Gの
満 た す 方 程 式 は(8.132)の
右 辺 を-1と
お き
(8.143) と 表 さ れ る.Green関
数 の 固 有 関数 展 開
(8.144) を(8.143)に
代入 する と
(8.145) と な り,Green関
数 は
(8.146) で 与 え ら れ る.こ
れ は(8.117)の
偏 極 伝 搬 関 数 に 対 応 す る.
次 にGreen関
数 の 別 の 形 の 方 程 式 を 求 め よ う.(8.140)のSを
独 立粒子模型
の 部 分 と相 互 作 用 の 部 分 に分 け る.
(8.147) S(0)は(8.133)の る.こ
行 列Aminjの
れ を(8.143)に
右 辺 第1項
の み か ら な る も の で,ν
は 残 りで あ
代 入す ると
(8.148) を 得 る.次
にν=0の
数 をG(0)と
す ると
場 合 のGreen関
数,す
な わ ち 独 立 粒 子 模 型 のGreen関
(8.149) を 満 た す.(8.148)と(8.149)か
ら方 程 式
(8.150) が 求 め ら れ る.Green関
数 が(8.150)を
解 い て 求 ま れ ば,(8.132)よ
り,密 度 行
列は
(8.151) と な る.
8.5.3 Fermiガ
ス模型
線 形 応 答 関 数 の 最 も簡 単 な場 合 と し て,平 面 波Born近 た核 子 のFermiガ
似(PWBA)を
用い
ス に よる 散 乱 に応 用 す る.入 射 核 子 と核 内 核 子 との 相 互 作 用
は 二 体 の ポ テ ン シ ャル の 和
(8.152) と し,中
心力
(8.153) を 仮 定 す る.a0,
a1は
定 数 で あ るが ア イ ソ ス ピ ン に よ っ て も よ い.ス
し な い 部 分 を 摂 動 と す れ ば ス カ ラ ー 応 答(scalar
response)が
ピ ン に依 存
得 ら れ,ス
ピンの
部 分 を とれ ば ス ピ ン 応 答(spin
response)を
得 る.さ
ら に 後 者 は 運 動 量 移 行hq
につ き
(8.154) の よ う に ス ピ ン 縦(spin
longitudinal)と
ス ピ ン 横(spin
transverse)の2成
分
に 分 け ら れ る. 入 射 ・散 乱 粒 子a,
bの ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 量 子 数 をa, bと 書 く と,核
摂 動(8.119)はPWBAに
へ の
よ り
(8.155) と な る.ξ
は 核 内 核 子 の ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 変 数.例
と して ス カ ラ ー 応 答 を
考 える と
(8.156) と な る.hqは
運 動 量 移 行 で あ る.υ(q)はυ(r)のFourier変
換 で
(8.157) で 与 え ら れ る.密
度 のFourier変
換 を 使 っ て,摂
動は
(8.158) と な る. 偏 極 伝 搬 関 数(8.114)は
(8.l59) で あ る.密
度 のFourier変
換(8.105)は
(8.160) と 書 け る.こ
こで 中 間 状 態 を
(8.161)
と す る と,(8.159)の
右 辺 第1項
の分子 は
(8.162) と な る の で,κh=κ
と 書 く.第2項
も 同 様 に 計 算 し,κp=κ
と す る と,
(8.163) とな る. 線 形 応 答 関 数 す な わ ち 偏 極 伝 搬 関 数 の 虚 数 部 だ け を 考 えれ ば,(8.163)の 辺 の 第2項
は0と
右
な る.し た が っ て
(8.164) と な る が,
(8.165) こ こ でκ
とqと
の な す 角 を θ と し た.(8.164)の
積分は
(8.166) と な る.こ
こ でν
は 核 の 体 積 で あ る.
こ こ で 非 相 対 論 的 ス ケ ー リ ン グ 因 子(non-relativistic
scaling
factor) [35]
(8.167) を 導 入 す る と,
(8.168) と な る.す
る と,
(8.169)
した が っ てκ2の 積 分 範 囲 は
(8.170) に よ り決 ま る.上 の 式 の 左 辺 の2量 の 大 小 は
(8.171) の 正 負 で 決 ま り,
な の で,
(8.172) の 場 合 は 上 の 式 は
とス
ケ ー リ ン グ 因 子 の み の 関 数 と な る. 運 動 量 κFで あ ら わ す と 関 数 の グ ラ フ を 示 す.相
と し て,核
と な る.図8.12に(8.172)の
互 作 用 の な いFermiガ
相 互 作 用 の あ る 場 合 は(8.150)を
図8.12 横 軸 は と して 示 し た.た
の 体 積 をFermi
Fermiガ
ス の 偏 極 伝 搬 関 数 が 求 まれ ば,
使 っ て 求 め る こ とが で き る.
ス模 型 に よる 線 形 応 答 関 数[37]
を,縦 軸 は だ しq=q/κF.
応答
を
を単 位
8.5.4
有
限
核
有 限核に対 する応答 関数は独 立粒子模型 の偏極 伝搬 関数
(8.173) に(8.150)に
従 い 相 互 作 用 を 導 入 す れ ば 求 め られ る.pとhは
態 を 表 す.巨 大 共 鳴 の 励 起 に 対 す るRPA応 多 い[36].こ
答 関 数 はr表
粒 子 と空孔 の 状 示 で 行 われ た もの が
の 表 示 で は 式(8.173)は
(8.174) と 書 け る.φ0k(r)は
軌 道kの
互 作 用 を 使 う と,(8.144)の
波 動 関 数,相 計 算 はrの
互 作 用 と し て δ関 数 形 のSkyrme相 各 点 を足 に もつ 行 列 の 簡 単 な計 算 に帰
着 す る. ス ピ ン ・ア イ ソ ス ピ ン 応 答 関 数 は π 中 間 子 凝 縮(pion 係 が あ り,多
condensation)に
も関
く の 人 々 に よ り研 究 さ れ て い る[38].
8.6 多 段 階複 合 核 過 程
多 段 階 複 合 核(MSC)過 結 果 は(8.48),(8,49)に
程 は す で に8.3節 示 さ れ て い る.本
で マ ス タ ー 方 程 式 に よ り取 り扱 わ れ, 節 で は 複 合 核 に 対 し,7.5節
よ う に ラ ン ダ ム 行 列 理 論 に よ る 基 礎 付 け を し て,8.3.1項 す る こ と を 示 す[39].出
発 点 は7.5節
部 分 状 態 密 度 の と き の よ う に,ク
の結 果 は 弱結 合 に相 当 あ る が,8.1.2項
ラ ス 分 け に エ キ シ ト ン 数 を 使 う.相
行 列 要 素 は ラ ン ダ ム 行 列 と し,Gauss分 で あ る.S行
の(7.147)-(7.149)で
布 を 仮 定 し,2次
で行 った
の
互作用 の
モ ー メ ン トは(8.15)
列 の ア ン サ ン ブ ル 平 均 は チ ャ ネ ル 間 の 直 接 結 合 を 入 れ な い の で,
対 角 型 の み で,準
位 密 度 の 場 合 と 同 じ に 計 算 で き て,
(8.175) と な る.σ0はHubbard-Stratonovitch変 添 え 字 が つ く対 角 行 列 で あ る.h0は
数 の 鞍 点 に お け る 値 で,ク ハ ミル トニ ア ンHの
ラ スmの
独 立 粒 子 部 分,Wは
脱 出 幅 で,(7.149)の
指 標 μ をmμ
に 変 え る と得 られ るが,エ
ネルギーのず れ
を以 下 無 視 す るの で,
(8.176) で あ る.こ れ よ り透 過 行 列 を計 算 す る と
(8.177) を 得 る.Δmは(7.96)に
対 応 し,σmの
虚 数 部 で 準 位 密 度 に 比 例 す る.
(8.178) こ こで
は エ キ シ トン数mの
チ ャ ネ ル につ い て 対 角 行 列 で ク ラ スmのQ空
状 態 数 で あ る.透 過 行 列 は
間へ の 吸 収 に対 応 す る.
S行 列 の ア ンサ ン ブ ル 平 均 の 計 算 は 簡 単 で あ るが,2点 の ア ンサ ンブ ル 平 均)の
関数(2個
のSの
積
方 は 複 合 核 の 場 合 よ り クラ ス 分 け が あ るだ け 複 雑 で あ
る と考 え られ る.事 実,同
じ精 度 の 計 算 はで きな い.し か し前 平 衡 過 程 で は多
くの チ ャ ネル が 開 い て い る の で,脱 な り,か え って 簡 単 に な る.2点
出 幅が 大 き く,そ の た め 摂 動 計 算 が 可 能 に
関 数 の 式 は σmを 含 むが,被
積分 関数はすべ
て の σmに よ り,ま た σmは 互 い に 交 換 し な い.そ れ で 平 衡 過 程 の場 合 の よ う に 鞍 点 の 多 様 体 に つ い て 正 確 に 積 分 す る こ とは で きな い.指 数 の 中 の 対 数 項 は 結 合Wを
含 むが,そ
れ は チ ャ ネ ル に つ い て の 和 を 含 み,そ
い て は 非 常 に大 きい.し
の 数 はMSCに
お
たが って 対 数 項 は σmの 対 角 部 を 中心 に して,べ
き展
開が で き る.最 終 結 果 は
(8.179) とな る.右 辺 のΠ は エ キ シ トン 数 に つ い て の 行 列 で,次 の確 率 平 衡 方 程 式 を満 た す.
(8.180) (8.179)のTabは TextmnはP空
透 過 行 列(8.177)で,実 間 を 経 由 し て 状 態mか
際 の 計 算 は(8.40)を らnへ
の遷移確率 で
使 っ た 方 が よ い.
(8.181) で 与 え られ る.Eと
εは それ ぞ れE(1)とE(2)の
平 均 と差 で あ る
.P空 間 に
関 す る幅 は
(8.182) で 与 え ら れ る.
一 方
,内 部 遷 移 の 方 は
(8.183) で,分 散 幅 は
(8.184) と な る.(8.183)に でMSC過
現 れ るgmnは2次
程 の 断 面 積 が 求 め ら れ る が,強
れ に 反 し て8.3.1項 Mantzouranis る が,こ
モ ー メ ン トMmnの
結 合 近 似 を 仮 定 し た も の で あ る.こ
で 現 象 論 か ら 求 め た もの,あ
[27]が
逆 行 列 で あ る .こ れ
る い はAgassi-Weidenmuller-
ラ ンダ ム行 列 を使 い 求 め た もの は 弱 結 合 近 似 の 仮 定 で あ
こ で 求 め た 強 結 合 の 結 果 か ら 形 式 的 に 導 く こ とが で き る.残
用 が 弱 い と 部 分 準 位 密 度 は 独 立 粒 子 模 型 の ρ(0)に 変 わ る.内
留 相互作
部 遷移の確率 は
(8.185) と な る.こ れ は8.3.1項 で 求 め た(8.37)と
同 じで あ る.
前 平 衡 過 程 の 断 面 積 は 弱 結 合 ・強 結 合 と もに 同 じ形(8.180)の 確 率 伝 搬 関数 Π(ε)によ り記 述 され る こ とが わ か った.こ れ らの議 論 の詳 細 は[10]に 譲 りMSC とMSDの
関 係 に つ い て 触 れ て お く.こ こで 説 明 し たMSCで
ら す ぐ にQm空
間 に 入 る よ うに な っ て い るが,8.3.3項
ル ギ ーが 高 い と き に はチ ャ ネ ルaか
らP空
間 をMSDで
は チ ャネ ルaか
で 触 れ た よ うに,エ
ネ
経 過 し て か らMSC過
程 に 入 る方 が 起 こ りや す い.こ の と きは 透 過 行 列(8.177)にMSDに
お け る遷
移 を組 み 込 まな け れ ば な ら な い.こ れ は[40]で 行 わ れ,簡 単 な場 合 の 数 値 計 算 は[41]で な され て い る. こ こで 時 間 に 依 存 す る 定 式 化 に 移 り,平 衡が 成 り立 つ 条 件 な ど を求 め て み よ
う[27].(8.180)に
お い て ε=0と
し た も の か らQ行
列
(8.186) を定 義 す る.こ れ は2π ρで 割 っ て い る の で エ ネ ル ギ ー の次 元 を 持 ちエ ネ ルギ ー 幅 に 関係 し て くる.行 列Qは
実 数 で 対 称 行 列 で あ る か ら,直 交 変 換 に よ り対 角
化 され る.こ れ をqと す る と,
(8.187) す ると確 率伝搬 関数は
(8.188) と 書 く こ と が で き る.こ
れ を(8.179)に
代 入 し,そ
のFourier変
換 を行 う と
(8.189) と な る.す qjは
な わ ち 前 平 衡 過 程 は い ろ い ろ な 幅qjの
最 も寿 命 の 長 い モ ー ドで,平
少 し 調 べ る.和
モ ー ド に 分 解 さ れ る.最
衡 過 程 に 最 も 近 い.次
公 式(8.182)と(8.184)を
使 っ て(8.186)を
にQの
小の
固有 値 を も う
書 き直 す と
(8.190) と な る の で,(8.187)を
使 うと
(8.191) と 変 形 さ れ る.も
しtr(Tm)が
小 さ く無 視 で き る と す る と,変
換
(8.192)
は 最 低 の 固 有 値q1=0を で は(8.10)に
よ り,エ
近 似 され る.tr(Tm)を
与 え,寿
命 無 限 大 で 平 衡 過 程 に 対 応 す る.平
キ シ ト ン 数 は
を ピ ー ク と し たGauss分
小 さ な 摂 動 と 考 え,(8.192)を(8.191)に
衡 状態 布で
代 入 す る と,
(8.193) を得 る.こ れ が 複 合 核 の 幅 で,透 過 係 数 の チ ャ ネ ル 和 の 平均 に比 例 し,分 散 幅 は 寄 与 しな い. 複 合核 は6,7章 Q空
で 論 じ られ,7.7節
に お い て 要 約 し た よ う に統 計 は 考 えず に
間 の 有 効 ハ ミル トニ ア ン の対 角 化 あ る い は 大 規 模 殻 模 型 の 計 算 に よ り求 め
られ,GOEの
よ うな統 計 的 計 算 と合 う結 果 を得 て い た.こ
こで は 初 め か ら統
計 を仮 定 しマ ス タ ー 方程 式 を解 い た結 果,一 番 長 寿 命 の モ ー ド と し て得 られ た の が 複 合 核 で あ っ た.そ れ は す べ て のエ キ シ トン状 態が 状 態 数 に従 い統 計 的 に 分 布 し(8.192),そ
の 寿 命h/q1は
8.7
殻 模 型 の 結 果(7.173)と
TDHF,
重 イオ ン反 応 につ い て は 現 象 論,輸
Vlasov方
一致 した.
程 式
送 方 程 式 に よ る もの,そ れ と本 節 に 述 べ
る 微 視 的 な もの が あ る.現 象 論 は8.2節 で 簡 単 に説 明 し た.輸 送 方 程 式 に よ る もの に は い ろい ろ あ る が,前 節 のMSDと 重 イ オ ン に 応 用 し た もの で,こ
れ をTDHFか
ら始 め る.エ ネ ルギ ーが 高 くな る と
古 典 版 で あ るVlasov方
程 式 が 使 わ れ るが,そ
ら導 く.高 エ ネ ル ギ ー で は 核 子-核 子 衝 突 が 重 要 とな る の で,そ
れ を取 り入 れ,さ
ら に エ ネ ル ギ ー が 高 くな る と方 程 式 を ま と もに 数 値 的 に 解 く
こ とは 困 難 に な り,Monte
Carloの 方 法 を使 う.核 子 を 点で は な く波 束 で 表 し,
量 子 効 果 の 一 部 を い れ た のがQMDで,こ TDHFの
方法を
こで は省 略 す る.本 節 で は,低 エ ネル ギ ー で 適
用 され る,平 均 場 を 基 礎 とす るTDHFか 古 典 近 似 が よ くな り,TDHFの
ラ ン ダ ム 行 列 に よるMSCの
歴 史 は 古 くDiracに
時 に 一 体 のHartree-Fockポ
れ も最 後 に 簡 単 に 触 れ る.
は じ ま る[42].こ れ を重 イオ ン衝 突 に 応 用 した
テ ン シ ャルが 時 間 的 に ど う変 わ っ て い くか を 初 め
に 描 い て み よ う.初 期 状 態 で は 二 つ の 一 体 ポ テ ン シ ャ ル は 形 を変 えず そ の 二 つ の 重 心 は近 づ い て い く.二 つ の ポ テ ン シ ャ ルが 接 触 を は じ め る と,初 め の 二 つ の 球 に近 い 形 か ら一 つ の 球 形 に 近 い 形 に段 々 と変 化 す る.し ば ら くす る と また 2部 分 に 分 か れ て 飛 び 去 る.し か し 各 々の イ オ ンに 対 す る ポ テ ン シ ャ ル の 形 は
一 般 に は静 止 し て い な い で ,振 動 す る こ と もあ る.こ の と き の波 動 関 数 は 時 間 に よ り変 化 す る 一 つ のSlater行
列 式 で 表 され,
(8.194) 独 立 粒 子 波 動 関 数 φα(r,t)は 時 間 に依 存 す る と し,こ れ を 自己 無 撞 着 に決 め る の がTDHFで
あ る.そ の 方 程 式 は 次 の 量
(8.195) の 変 分 原 理 か ら求 め られ る.ハ ミル トニ ア ンHのSlater行
列 式 に よる 期待 値 は
(8.196) で あ る の で,Iの
φ*α に つ い て の 変 分 の 停 留 値 を求 め る と
(8.197) の 方 程 式 を 得 る.Hartreeポ
テ ンシャルは
(8.198) で,Fockポ
テ ン シ ャル は
(8.199) で 与 え ら れ て い る.こ の 中で 密 度 行 列 は
(8.200) に よ り表 さ れ て い る.TDHFの 共 役 に φα を か け,辺
方 程 式 は(8.197)に
φ*αを 掛 け,(8.197)の
複素
辺 引 き 算 を し た も の を α に つ き和 を と り,
(8.201)
と い う密 度 行 列 の 方 程 式 に書 き換 え られ る.こ
こでUはHartreeとFockポ
テ
ン シ ャル の 和 で あ る. TDHFの
方 程 式 を解 くに は初 期 の 波 動 関数 を与 え な け れ ば な らな い.こ れ に
は まず 衝 突 前 の 二 つ の 核 の 波 動 関 数 を 静 的Hartree-Fockの
近 似 で 求 め,次
に
二 つ の 核 の 距 離 を十 分 離 し,一 定 の 速 度 で 互 い に 近 づ く よ うな 波 動 関数 を つ く る.こ の と きの衝 突 径 数 か ら相 互 運 動 の 角 運 動 量 が 決 ま る.こ の 初 期 条 件 の 下 で 方 程 式 を解 い て い く と,二 つ の 核 が 近 づ き,接 触 し,一 つ の 塊 に な る.こ れ が そ の状 態 を 保 ち な が ら振 動 回 転 をあ る時 間 た とえ ば2,3回
転 ぐ らい 続 け れば
核 融 合 反 応 が 起 こ っ た とみ な す.も し 二 つ の 核 に す ぐ離 れ れ ば 深 非 弾 性 衝突 が 起 こ っ た と考 え る.こ の と き二 つ の 核 は 通 常 励 起 状 態 に あ る.二 つ の 核 の運 動 方 向 か ら角 分 布 を,ま た そ の 相 対 運 動 の エ ネ ル ギ ーか ら エ ネ ル ギ ー 損 失 が,ま た 二 つ の 核 の お の お の の 質 量,荷 電 量 か ら 質量,荷
電 分 布 が 求 め られ る.し か
し初 期 条 件 を決 め る と それ に 対 応 した 一 定 の 反 応 が 起 こ る の で,量 子 力 学 を全 面 的 に 使 った と きの 波 動 関 数が い ろ い ろの 型 の 反 応 の振 幅 の和 に な っ て い る の と異 な る.そ れ でTDHFは TDHFの 積,深
古 典 近 似 とみ な され る.
計 算 は 比 較 的低 エ ネ ル ギ ー10MeV/A以
下 で 行 われ,核
非 弾 性 衝 突 の 断面 積 な ど 実 験 と合 う結 果 が 得 られ て い る.ま
融 合 断面 た生 成 核 の
平 均 質 量 や 荷 電 数 も よ く合 っ て い る.し か し 質 量 や 荷 電 の分 布 の 広 が りにつ い て は過 小 評 価 して い る.TDHFは 結 果 を 与 え るが,分
布 幅 の よ うな 二 体 以 上 の 演 算 子 の 期 待 値 に は よい 結 果 が 得
られ て い な い.TDHFの
8.7.1
Vlasov方
平均 場 近似 な の で 一 体 演 算 子 の期 待 値 は よ い
計 算 の 一 例 を 図8.13に
示 す.
程 式
エ ネ ル ギ ーが 高 くな る とTDHFの
計 算 は 難 し くな る 一 方,古 典 近 似 が よ く
な る.古 典 論 の 方 程 式 はVlasov方
程 式 と よば れ,TDHFの
う に し て 導 くこ とが で きる[44].密
度 行 列 のWigner変
方 程 式 か ら次 の よ 換
(8.202) を使 ってTDHFの
方 程 式(8.201)のWigner変
換 を行 うが,右 辺 の 第1項[K,ρ]
の 計 算 に は 運 動 量 表 示 の 方が 容 易 で あ る.そ れ で 運 動 量 表 示 の 密 度 行 列 は
(8.203)
図8.13
84Kr+209Bi重
イオ ン 衝 突 のTDHFに
よ る計 算 結 果(Elab=600MeV,l=140)
計 算 は2次 元 空 間(軸 対 称 を仮 定 し,回 転 の 影響 は コ リオ リ力 の 形 で 入 れ た) で 行 い,時 間 の 単 位 は10-21s[43].
で 表 せ るの で,Wigner変
換 した密度行列 は
(8.204) と表 す こ とが で き る.こ れ を使 う と
(8.205) と な る が,k=p+q/2,k'=p-q/2と
変 数 をpとqに
変 換 す る と,
(8.206) と な る.(8.204)を
使 うと
(8.207) を 得 る.次
に(8.201)右
辺 第2項
のWigner変
換は
(8.208) と な る.一
体 ポ テ ン シ ャ ル と し て 局 所 的 な
を と る と,
(8.209) とな る.一 体 ポ テ ン シ ャ ル のrに
よ る 変化 は小 さい と し て1次
近似
(8.210) を使 う と
(8.211) が 得 られ る.し た が ってTDHF方
程 式(8.201)は
(8.212) と な る.こ れ がVlasov方
程 式 で あ る.こ れ はTDHF方
程 式 の古 典 近似 で あ っ
て,核 子-核 子 の 衝 突 の 影 響 は 入 っ て い な い. 一 方
,Boltzmann方
程 式 は
(8.213) で 与 え られ る.右 辺 は 衝 突 項 で,次 の2項 し,そ れ が も う一 つ の 核 子2と
か ら な る.核 子1の
衝 突 し て1'と2'に
衝 突 に よ り減 少 す る.こ れ と反 対 に1'と2'が 増 加 す る.こ のfの
密 度 行 列 をfと
な っ た とす る と,fは
衝 突 し て1と2に
この
な る と,fは
増 減 を 散 乱 断 面 積dσ/dΩ を使 って 書 くと
(8.214) こ こ でυ12は
衝 突 す る 二 核 子 の 相 対 速 度 で あ る.(8.214)で
グ 効 果 が 入 っ て い る が,も
と のBoltzmann方
の 右 辺 の 終 状 態 に 対 す る1-fを1で
はPauliブ
ロ ッキ ン
程 式 で は 入 っ て い な い.(8.214)
置 き 換 え る と,Boltzmannの
衝突項が
得 ら れ る. 平 均 場 と 衝 突 項 を 入 れ た 輸 送 方 程 式(8.214)はBoltzmann-UehlingUhlenbeck
(BUU)方
式 と 呼 ば れ て い る.こ
程 式 あ る い はVlasov-Uehling-Uhlenbeck
(VUU)方
程
れ ら の 方 程 式 を 解 い て 重 イ オ ン 衝 突 が 研 究 さ れ て い る.
そ の 中 で い ちば ん 簡 単 なの は カ ス ケ ー ド模 型 で,平 均 場 を無 視 し た 古 典 模 型 で あ る.初 期 条 件 と して 重 イオ ン を表 す 二 つ の 球 の 中 に核 子 を ラ ン ダ ム に 分 布 さ せ る.与 え られ た 衝突 径 数 で 衝 突 す る よ うに 二 つ の イオ ン に 速 度 を与 え て,こ の 系 の 時 間 的 変 化 を み る.二 つ の イ オ ンが 接 近 す る と核 子-核 子 相 互 作 用 が 働 き,二 核 子 は 散 乱 す る.こ の散 乱 を純 古 典 的 に解 く と核 子 の 散 乱 方 向 は確 定 す る.Pauliブ
ロ ッキ ング 効 果 は 入 らず,散 乱 も古 典 的 で あ る.
カ ス ケ ー ド模 型 に平 均 場 の 影 響 を 入れ た の が 分 子動 力 学 模 型 で,さ
らに 量 子
効 果 を 近 似 的 に入 れ る と量 子 動 力 学 模 型 と な る.こ れ らの 模 型 に つ い て は す で に5.4.2項 に 述 べ られ て い る.
文
献
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索
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実 験 3,84
G行 列
態 204
Bohigasの
124,125,131,140,145
Gamow因
推 測 326
Boltzmann方
引
程 式 379 程 式 379
公 式
Butlerのstripping理
換 8,9
Gell-Mann-Goldbergerの
Boltzmann-Uehling-Uhlenbeck方 Breit-Wignerの
子 78
Galiei変
236,244,251 論 2
Glauber近
位 相 差(phase
214
shift)関
cumulant展 optical
CDCC
Grassmann
位 相 差 64,238
数
散 乱 振 幅 64,255
積 分 301,303
302,338
Green関
数 45,66,192,218,223,250,301,
304,365
置 換 エ ネ ル ギ ー 270
Greenの
波 動 関 数 63-65,238
CRC
232
数 230
Coulomb
Sommerfeldパ
定 理 240
ラ メ タ ー 63,238 Hartreeポ
212,213
テ ン シ ャ ル 376
Hauser-Feshbachの DWBA
Hubbard-Stratonovitch
断 面 積 167
変 換 305,320
展 開 156,217
prior
form
DWIA
140,
Eikonal近
156,163 identity
二 次 の ―
変 数 338,371
156,163
form
post-prior
理 論 307
公 式 309,316
156,352,363
post
数 230
開 232 limit
profile関
障 壁 14,76-78,89,269,314
恒 等 式 45
似 227
157
IAS
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態 を 見 よ.
205 Jacobi座
144
似 223
標 系 座 標 系 を 見 よ.
Laneポ
テ ン シ ヤ ル 270
Ericson
Levinsonの
の 公 式 334
Lippmann-Schwinger方
定 理 284
の ゆ ら ぎ 323
Lorentz型
重 み 関 数 22,253
Lorentz変
換 8,121
程 式 44,45
Feshbach 射 影 演 算 子 107,150,247
M3Y
有 効 ハ ミ ル ト ニ ア ン 108,150,249
Markoff過
Fermiガ
ス 模 型 145,367
Moller因
Fermi分
布 328
Monte
fm
101,131,132,145 程 343 子 121 Carlo法
224,305,315,336,375
14
Fokker-Planck方
程 式 339,343,344
nuclear
Ramsauer効
果 284
Perey効 Perey
果 105 factor
Poisson分
ア
105
布
行
296
Porter-Thomas分
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態(IAS)
布 300
246,270-273 Q値
ア イ ソ ベ ク トル 単 極 子 274
6
粗 い 構 造 3,84 R行
ア ン サ ン ブ ル 平 均 371
列 理 論 237,238
Rutherford散 RPA
鞍 点 338,371
乱 64
鞍 点 法 290,305,318,320
365
SCDW
移 行
225
運 動 量 9,159,219,222,360
Schrodinger 描 像
エ ネ ル ギ ー 74,218,219,223,360 50 角 運 動 量 166
方 程 式 25,35
位 相 体 積 73 一 段 階 過 程 157
Serberの
描 像 2
Sinaiの
玉 突 き 326
Sommerfeldパ S行 列
因 果 律 22,279
ラ メ タ ー 63,238
イ ン パ ル ス 近 似 119,120,136,140
53,55,238,239,250,262
角 運 動 量 表 示 62 共 鳴 公 式 253
平 面 波―
141
歪 曲 波―
140,144
相 反 性 57,251 運 動 の 恒 量 29
対 称 性 251 ユ ニ タ リ ー 欠 損 256
運 動 量 中 心 系 座 標 系 を 見 よ.
ユ ニ タ リ
運 動 量 の 整 合
TDHF T行
ー 性 56,57,59,62,250
エ キ シ トン 334,364,375,379 数 261,334,336,345
列 48,54,61,68
模 型 345,346,349
角 運 動 量 表 示 62
エ コ ー 280,281,284 相 互 性 58 反 対 称 比
エ ネ ルギ ー 160,163
和 則 57 post prior
form
153,156,163
form
Vlasov方
identity
殻 外(off
energy
shell)
121
殻 上(on
energy
shell)
121
半 殻 外(half
153,156,163
post-prior
159
157 平 均
18-22,109,151
内 部― 程 式 375,377,379
Vlasov-Uehling-Uhlenbeck方
off shell)
の ず れ 239
6,36
エ ル ゴ ー ド性 程 式 379
317
遠 心 力 障 壁 76 エ ン ト ロ ピ ー 288,292,327 Watsonの Wigner変
方 程 式 換
情 報―
ロ ッ ト 341
Woods-Saxon型
ポ テ ン シ ャ ル 92,282,296 98
応 答 関 数 146,147,360 ス カ ラ ー― ス ピ ン― 線 形― zero-range近
327
378
Wilczynskiプ
対 称―
116
似
158,186,201
367 368
333,360,362,365
温 度 288,292,314,327
121
16,237,
双 極 267
カ
行
中 性 子 幅 269
回 転 29
組 み 替 え 5
運 動 の 励 起 173
チ ャ ネ ル 結 合 法(CRC)
外 部 領 域 34,237 カ オ ス 325,328 量 子 カ オ ス 326
K系
CRCを
見 よ.
反 応 175
形 状 因 子
138,158
326
化 学 ポ テ ン シ ャ ル 288
光 学 定 理 57,86
角運動量
光 学 ポ テ ン シ ャ ル 3,14,134,346
移 行 164 の 整 合 159
運 動 量 表 示 136,138 概 念 図 89
角 運 動 量 表 示 59,61,237,249 散 乱 振 幅 の―
自 動 探 索 90
62
不 定 性 91 一 般 化―
断 面 積 の― 78 S行
列 の―
62
T行
列 の―
61
広 域―
109
,134,135
91,101
光 学 模 型 3,83,236,253
拡 散 係 数 344
古 典 近 似
281,294,325
核 内 カス ケ ー ド模 型 223,314 核 の ポ テ ン シ ャ ル 281
サ
行
角 分 布 7,172,186,220,311 確 率 伝 搬 関数 374
最 近 接 距 離
確 率 平 衡 方 程 式 372
最 適 運 動 量 近 似
過 剰 中性 子 270
酒 瓶 型 ポ テ ン シ ャ ル 92
可 積 分 系 325
座 標
荷 電 交 換 反 応 140,174,270
122-124,136
回 転 変 換 29
荷 電 独 立 性 270
鏡 映 変 換 29
換算幅 振 幅 241,243
13,313
内 部 32
Galilei変
換 8,9
総 和 則 245
Lorentz変
慣 性 能 率 292
座 標 系 8
完 全 融 合 反 応 339
運 動 量 中 心 系 12
貫 通 因 子 239,244,258
実 験 室 系 8,9-12
換 8,121
重 心 系 8,9-12,38,39
吸 熱 反 応 6
Jacobi座
球 面 波 展 開 60,62,65
作 用 積 分 283
標 系 12
鏡 映 変 換 29
散 乱
強 結 合 近 似 373
位 相 差 276,281,282
強 度 関 数 87,258,263,264,355
境 界 条 件 43
239,250,262
行 列 53
規 格 化 され た 264,266 境 界 条 件 42,43,64,152,241,326
剛 体 球 239
共 鳴 1,281
時 間 の 遅 れ 274,277,279,282
共 鳴 幅 分 布 関 数 300
時 間 の 進 み 279
共 鳴 領 域 17
振 幅 21,42,48,61,62,68
局 所 エ ネ ルギ ー 近似 102 局 所 波 数 281
Wignerの
上 限(時
局 所 密 度 近似 125,144 巨 大 共 鳴 16,267
間 の 進 み)
残 留 相 互 作 用 153,307,314,328,334,337
時 間 反 転 29,243,251
280
時 間 を 移 す ユ ニ タ リ ー 演 算 子 50
相 関 エ ネ ルギ ー 323
し き い 値 6,12
相 関 関 数 324
自 己 相 関 関 数 323
増 強 因子 322
実 験 室 系 座 標 系 を 見 よ.
相 互 作 用描 像 50
射 影 演 算 子
相 対 運動 量 11,33
107,133,150,247,253
P空
間 247
相 対 論 的光 学 ポ テ ン シ ャル 97
Q空
間 247
双 直 交基 底 243,252
弱 結 合 近 似 373
相 反 定理 57,58
自由
粗 視 化 342
運 動 34
タ
行 程 224
行
ハ ミ ル トニ ア ン 28
大 正 準 集 団 288
重 心 運 動 の 分 離 27,28,33,37,38 系 座 標 系 を 見 よ. 集 団 励 起
多重 微 分 断 面 積 7 畳 み 込 み ポ テ ンシ ャル 87,101,136 多段 階
171-173,209
重 粒 子 ス ト リ ッ ピ ン グ 176 準 位 間 隔 分 布 297,299,326
過 程 223,345 直 接 過 程 149,217,333,351,352 統 計 過 程 333
準 位 密 度 287,301,306 一 粒 子 294
複 合核 過 程 333,371 複 合核 反 応 351
瞬 間 近 似 352,356
DWBA
準 弾 性 散 乱 219,341
353
脱 出 幅 16,263,268,272,273,347
状 態 密 度 287-290
弾 性 散 乱 5
衝 突 係 数 228
形 の―
衝 突 点 222,224 深 非 弾 性 散 乱 339,341,342
準―
85,134 219
複 合―
85
断 熱 近似 210,215,274,352,358 ス カ ラ ー 応 答 367
断 熱 的 ス イ ッチ ング 51
ス ト リ ッ ピ ン グ 5,176,177,181,197 一 核 子―
181
二 核 子―
197
三 重微 分―
ス ピ ン 応 答 368
76
三 粒 子 チ ャ ネル の―
ス ピ ン ・ カ ッ ト オ フ ・パ ラ メ タ ー 293,335 ス ペ ク トル の 剛 性
断 面 積 6,69 一 般 形 73
299,326
全―
全 弾性 散 乱― 全 反応―
正 準 分 布 288
7
7
生 存 確 率 266,356
多 重微 分― 二 重微 分―
遷 移
二 粒 子 チ ャネ ル の―
確 率 70,346,350,353,354
微 分―
7,78,169,171
行 列 T行
包 括―
217
列 を 見 よ.
75
7
7 7,75 74
密 度 220
チ ャ ネ ル 5,42
漸 近
ス ピ ン 41,255
形 48,49,67 振 幅 187
内 部 エ ネ ル ギ ー 36 波 動 関 数 240
領 域 42 選 択 規 則
166
前 平 衡 過 程
15,217,225,333,342,345,373
前 方 散 乱 57,86
領 域 34 チ ャ ネ ル結 合Born近
似 212
チ ャ ネ ル 結 合 法 156,206
ノ ッ ク ・オ ン 176
方 程 式 解 法 206,208,209 組 替 え―
212,213
離 散 化 連 続― 中 間 共 鳴
ハ
218
行
15
超 対 称
配 位 34
行 列 303
配 位 空 間 34
行 列 式 303
媒 質 効 果 124 パ イ 中 間子 凝 縮 371
ト レ ー ス 303 ベ ク トル 303,319
波 束 26,51,274
理 論 301,302,338
裸 の(bare)ポ
直 接 過 程 2,15,149,236,316,333
発 熱 反 応 6
角 分 布 2,172,186,220
波 動 行 列 53,142 ハ ミル トニ ア ン
対 相 関 293
座 標 表 示 30
テ ン シ ャ ル 207
対 称 性 29 不 変 性 29
停 留 値 290,305,320,376 天 体 核 物 理
自 由―
196
28,31
内 部 運動―
因 子 78
27,32
複 合 粒 子 の― 有 効―
透 過
反 対 称 化 79,81,82,130,131,160,163,170, 178,190
行 列 256,316,318,346,372 係 数 256,259,308 等 価 局 所 ポ テ ン シ ャ ル 97,102,104 動 的 偏 極 ポ テ ン シ ャ ル 110,253,257 戸 口 状 態
32
108,150,249
15,236,261,263,265,267,272
バ ー ン 6 パ リテ ィ 29,167 反対 称 化 分 子 動 力 学(AMD)
225
反 応 粒 子 4
共 鳴 16
半 古 典 歪 曲 波 近 似(SCDW)
ド リ フ ト速 度 344
221
ト ン ネ ル 効 果 14
非 干 渉 274 ナ
行
非 局 所 型 ポ テ ン シ ャル 90,96,102 微 細 構 造 84
内部
非 相 対 論 的 ス ケ ー リ ング 因 子 369
運 動 28 エ ネ ル ギ ー 6,36
非 弾 性 散 乱 5,171,209 ピ ッ ク ・ア ップ 176,177,181,197
座 標 32,157
核 子―
波 動 関 数 35,40
二 核 子―
ハ ミ ル ト ニ ア ン 27,32,35
非平 衡 過 程 333
領 域 34,237
標 的 核 4
181 197
表面 振 動 励 起 172 二 次 のDWBA 2次
203
モ ー メ ン ト 305,337
複 合 核 325,375
二 重 畳 み 込 み ポ テ ン シ ャ ル 101
過 程 2,15,235,325
二 重 微 分 断 面 積 7,75
共 鳴 237
二 段 階 過 程
形 成 断 面 積 87
2点
205
関 数 372
寿 命 236,252,322,325,375
入 射 エ ネ ル ギ ー 4
状 態 15
入 射 チ ャ ネ ル 5
模 型 1,235,308
熱 浴
複 合 弾 性 散 乱 85 複 合 粒 子 4
288
複 素 直 交 変 換 252 部 分 準 位 密 度 334,337
有 効 質 量 105
部 分 幅 244
運 動 量 表 示 126
振 幅 244
近 似 の 誤 差 125
分 解 能 8
座 標 表 示 128 ス ピ ン縦 ・横 方 向成 分 127
有 効 相 互 作 用 101,117,261
分光学的
G行 列―
因 子 192-195,202
125,128,140,144
Love-Franeyの―
解 析 190
分 散 関係 105,111
M3Y―
130
131,132,144
分散 幅 16,262,265,272,346,356,373
有 効 ハ ミル トニ ア ン 110,150
分 配 関 数 289
有 効 ポ テ ン シ ャル 281 ゆ らぎ 20
分 離 エ ネ ル ギ ー の 方 法 191
ラ
平行 移動 29
行
平 衡 過程 333,375 乱 雑 位 相 近 似 365
平 面 波 34 平 面 波 イ ン パ ル ス 近 似 141 平 面 波Born近
似 367
ラ ン ダ ム 行 列 296,317,342 EGOE 307 GOE
変換 反応 5
298,300,301,312,325-327,329,
334
偏 極 7, 8 偏 極 伝搬 関 数 147,362,366,368
GSE GUE
329 329
ラ ンダ ム 変 数 304,317
崩壊 曲 線 279 振 幅 251
離 散 化 連 続 チ ャ ン ネル 結 合 法(CDCC)
崩壊 確 率 308,315
流 束 6,69,81,259
放 出 粒子 4
量 子 分 子 動 力 学(QMD)
母 関 数 301,318 ポ テ ン シ ャル 障 壁 281
励 起 関 数 7
225
連 続 状 態 へ の 遷 移 145,216 マ
行
連 続 状 態 に 埋 ま っ た束 縛 状 態 15 連 続 方 程 式 259
摩擦
連 続 領 域 17
力 340 冷 却 法 226 マ ス ター 方 程 式 315,339,342,351
廊 下 状 態 15,261,264 ワ
密 度 259 密度 行列 146,362-364,376
行
歪 曲波 143 歪 曲 波 イ ンパ ル ス 近 似 140,144 歪 曲 波 ボ ル ン近 似 156
無 反 挑 近似 181
歪 曲ポ テ ン シ ャル 143,152 ヤ 有 限 レ ン ジ の 補 正 189
行
214
著者 略歴 河
合 光
1930年 1953年 1976年 現 在
路
吉
東 京都 に生 まれ る 東 京大学 理学部 卒業 九 州大学教 授 九 州大学 名誉教授 理 学博士
田 思 郎
1923年 東 京都 に生 まれ る 1949年 東 京大 学理学 部卒業 1974年 東 北大 学教 授 現 在 東 北大学 名誉教授 理 学博 士
朝倉物理学大系19 原子核反応論 2002年11月25日
定価 は カバー に表示 初 版 第1刷
2005年3月25日
第2刷
著
者 河
合
光
路
吉
田
思
郎
発 行 者 朝
倉
発 行 所
ISBN
無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 4-254-13689-7
邦 倉
造 書
店
東 京 都新 宿 区新 小 川町6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
〈検 印省 略 〉 C2002〈
株式会社 朝
C
3342
三美 印刷 ・渡辺 製本 Printed
in Japan