編集 荒船次郎 東京大学教授
江沢 洋 学習院大学教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学教授
序
原 子 核 の 存 在 が 最 初 に 認 識 され た の は,Rutherfordが に お い てで ...
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編集 荒船次郎 東京大学教授
江沢 洋 学習院大学教授
中村孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学教授
序
原 子 核 の 存 在 が 最 初 に 認 識 され た の は,Rutherfordが に お い てで あ った.そ
提 唱 した 有 核 原 子模 型
れ 以 来1世 紀 弱が 経 過 し た.こ の 間 に,原 子 核 に 関 す る
さ まざ ま な 実 験 デ ー タが 収 集 され,原 子 核 の 構造 と 反応 に 関 す る膨 大 な情 報 が 蓄 積 さ れ て きた,20世
紀 の 早 い 時 期 に,原 子 核 が 陽 子 と 中性 子(核 子)か ら な
る量 子 力 学 的 多 体 系 で あ る こ とが わ か り,Yukawaの
中 間 子 論 を 出発 点 に して
核 子間 相 互 作 用 が 強 い 短 距 離 力 で あ る こ と も明 らか とな っ た.こ れ らの事 実 に 立 脚 し て,紆 余 曲折 を経 なが ら も,原 子 核 構 造 に 関 す る さ まざ まな 側 面が 明 ら か に な っ て きた. 自然 界 の 中で 原 子 核 は あ る 意 味 で は 極 め て 特 異 な 量 子 力 学 系 で あ る.原 子 核 を構 成 す る核 子 間 に 働 く核 力 は,強 い 相 互 作 用 で あ る に もか か わ らず,原 子 核 の 密 度 は そ れ ほ ど 高 くは な い.む
し ろ低 密 度 で あ り,核 力 の 作 用 半 径 と平 均 核
子間 距 離 とが ほ ぼ 同 程 度 で あ る.ま た 核子 数 は 数 個 か らた か だ か300個 い わ ば 少 数粒 子 の 有 限 多体 系 で あ る.20世
紀 の 約4分
究 に よ り,一 見 簡 単 そ うに見 え る この 原 子 核 が,驚
程 度 で,
の3を 通 じ て行 われ た研 くべ く豊 か で あ り,極 め て
多 様 な 側 面 を見 せ て くれ る 魅 力 にあ ふ れ る系 で あ る こ とが わか っ て きた. それ で は,原
子 核 と い う有 限 量 子 多 体 系 が,現
え る で あ ろ うか.確
在,ど
の程 度 理 解 で きた とい
か に原 子 核 の さ まざ まな 側 面―"顔"―
が ず い ぶ ん理 解
で きる よ う に な っ た こ とは 間 違 い な い.し か し,ま だ まだ わ か ら な い側 面 が 数 多 く残 っ て い る よ うに 思 わ れ る.こ の よ うに原 子 核 が さ まざ まな 異 な った"顔" を見 せ る理 由 の 一 つ は,そ の 多 体 系 の 有 限性 に あ る と思 わ れ る.こ の 有 限性 の 故 に,原 子 核 は と きに は 液 滴模 型が 示す よ うな"強 結 合 的"な 顔 を見 せ る こ とが あ り,と きに は殻 模 型が 描 くよ うな"弱 結 合 的"な 性 質 を示 す こ と もあ る.こ の よ うに,多
くの 研 究 者 た ち は,原 子 核 の さ まざ ま な側 面 を端 的 に 表 現 す る"模
型"を 作 り,そ れ ら を 発 展 させ,互
い に矛 盾 す る と 思 わ れ る さ まざ ま な模 型 の
間 の 関 連 を量 子 力 学 に 立 脚 し て理 解 す る こ と に腐 心 して きた.
有 限 核 子 多 体 系 と し て の 原 子 核 の 構 造 を記 述 す る さ まざ ま な模 型 の うち,最 も基 本 的で か つ 最 重 要 の もの は,殻 模 型,集 団 模 型,お
よび クラ ス タ ー模 型 で
あ る と筆 者 ら は 考 え る.本 書 で は これ ら3つ の 模 型 を 中 心 と して,そ れ らの 基 本 的 考 え 方 や 理 論 的 構 造,そ だ け 簡 潔 に記 述 し,さ
れ らか ら導 か れ る さ まざ ま な 性 質 や 結 果 をで き る
ら に こ れ らの 模 型 が 成 り立 つ 理 由や 背 景,模
互 関 係 な ど につ い て も述 べ,原
型の間の相
子 核 構 造 の統 一 的 理 解 が 得 られ る こ と を 目標 に
し た. い う まで も な い こ とで あ るが,原
子 核 の 構 造 に 対 す る,あ る い は 原 子 核 構 造
の 模 型 に 対 す る上 述 の 考 え 方 は,筆 者 ら の偏 っ た 観 点 に基 づ く もの で あ り,こ れ が す べ て で あ る と か,最 善 で あ る と主 張 す る もの で は な い.奥 行 きの 深 い 原 子 核 に対 して,さ
ま ざ まな 観 点 や 考 え 方 が あ る の は 当 然 で あ り,そ の よ うな 多
様 性 が あ っ て は じめ て 正 しい 原 子 核 の 姿 が 理 解 で き る もの と信 じ る. 原 子 核 物 理 学 は,し ば しば 原 子 核 構造 論 と原 子 核 反 応 論 の2つ 分 け られ る こ とが あ る.前 者 は1つ あ り,後 者 は2つ
の研究分野 に
の 原 子 核 の 構造 を理 解 し よ う とす る もの で
以 上 の 原 子 核 の 間 に ど の よ うな相 互 作 用 が 働 き,ど の よ うな
反 応が 起 き るか を 明 らか に し よ う とす る もので あ る.こ れ ら2つ の 分 野 は 必 ず し も独 立 な もの で は な く,い わ ば 車 の 両 輪 の よ うに,一 方 の研 究 が 他 方 の 研 究 に 密接 に 影 響 を 及ぼ し全 体 の進 展 を促 す わ け で あ る.ま た ,あ る研 究が ど ち ら の 分 野 に分 類 され るか,必 ず し も常 に 明確 で あ る わ けで は な い.本 書 で は,も っ ぱ らそ の 一 方 の分 野 で あ る原 子 核 構 造 論 に 関 す る最 も基 本 的 な テ ー マ を 論 じた . 読 者 は,他 方 の 原 子 核 反 応 論 につ い て も,あ わ せ 学 ば れ る こ と をお 勧 め し た い. 最 近 の 原 子 核 物 理 学 は,従 来 に 比 べ て そ の研 究 対 象 を著 し く拡 大 し,極 め て 短 寿 命 の 不 安 定 核 や 超 高 エ ネ ル ギ ー の 領 域 な ど を含 む 極 限 条 件 下 に まで 広 が っ て きた.本 書 に お い て は 原 子 核 を 核 子 多 体 系 と し て取 り扱 い,核
子 の 自 由度 の
み を取 り上 げ た.し か し,こ れ で 十 分 で あ る と主 張 し て い るわ け で は な い.突 き詰 め て 言 えば,原
子 核 は グ ル ー オ ンを 媒 介 と して 相 互 作 用 す る ク ォー ク多 体
系 で あ る と考 え られ る.し た が って,上 す る原 子 核 物 理 学 で は,ク
の よ う に広 が っ た 領 域 の 研 究 対 象 に対
ォー ク と グ ル ー オ ンの 自 由度 ま で 考 慮 し な くて は な
ら な い で あ ろ う.そ の よ う な研 究が 進 展 し た 暁 に は,原 子 核 物 理 学 の さ ら に発 展 し た姿 が 見 られ る で あ ろ う.た いへ ん 興 味 深 く,期 待 され る と こ ろで あ る. 本 書 を執 筆 す るに 当 た っ て,多
くの 方 々に 一 方 な らぬ お 世 話 に な った.特 に,
本書 の 発 案 か ら執 筆 の 過 程 に お い て,常
に相 談 に の って い た だ い た九 州 大 学 名
誉 教 授 河 合 光路 氏 に は,特 記 し て感 謝 申 し上 げ な けれ ば な ら ない.ま
た原稿
の段 階 か ら数 多 くの 貴 重 な 意 見 をい た だ き,種 々の 事 項 に 関 して ご 教 示 い た だ い た 九 州 大 学 の 清 水 良 文 氏,京 い.そ の 他,九
都 大 学 の 堀 内 艇 氏 に も深 甚 の 謝 意 を表 した
州 工 業 大 学 の 岡 本 良 治 氏,北 海 道 大 学 の 加 藤 幾 芳 氏,信
大 学 の 東 崎(鈴 木)昭 弘 氏,福
岡 大 学 の 田 崎 茂 氏,理
州
化 学 研 究 所 の 間所 秀
樹 氏 に も多 大 の協 力 を願 った.感 謝 申 し上 げ た い.さ らに,筆 者 の1人(K.
T.)
の恩 師 で あ り,か つ て の 共 同研 究 者 で あ っ た 筑 波 大 学 名誉 教 授 丸 森 寿 夫 氏 に は,長 年 に わ た り原 子 核 多 体 問 題 につ い て ご 指 導 い た だ い た こ とに 対 し,特 別 に感 謝 の 意 を表 した い.最 後 に,朝 倉 書 店 編 集 部 の 方 々 に は,遅
々として進 ま
な い 筆 者 らの 執 筆 を,辛 抱 強 く見 守 り激 励 して い た だ き,出 版 まで こ ぎ つ け て 下 さ った こ と に,心 か ら感 謝 申 し上 げ た い. な お,本 書 の 第1章:殻 集 団 運 動,の3つ
模 型,第2章:核
力 か ら有 効 相 互 作 用 へ,第3章:
の 章 お よび 付 録 は 高 田健 次 郎 が 責 任 分 担 し,第4章:ク
ス ター 模 型 は 池 田 清 美 が 責 任 分 担 し て執 筆 した.ま
ラ
た 本 書 全 体 を 通 じ て,記
述 内 容 の バ ラ ン ス や 統 一 な ど の 調 整 は 高 田 が 行 った. 本 書 が 読 者 諸 氏 の 核 構 造 へ の 関 心 を 引 くき っか け と もなれ ば,筆 者 らの 喜 び これ に 過 ぎ る もの は な い.ま た,筆 者 らの 浅 学 非 才 の 故 に,思 わ ざ る誤 り を犯 し て い るや も知 れ な い.読
者 諸 氏 の ご 叱 正 をお 願 いす る 次 第 で あ る.
2001年12月 高 池
田 健 次 郎 田
清
美
目
次
0 原 子 核 構 造 論 へ の 導 入
1
0.1 原 子 核 構 造 論 の は じ ま り
1
0.2 有 限 量 子 多 体 系 と し て の 原 子 核
4
0.3 原 子 核 構 造 論 の 特 質
6
1 殻
模
1.1 jj結
型
7
合殻模型の提唱
7
1.1.1
調和振動子波動 関数
8
1.1.2
ス ピ ン軌 道 スプ リ ッテ ィン グ
9
1.1.3
1体 ポ テ ン シ ャ ル と エ ネ ル ギ ー 準 位
10
1.1.4 対 相 関
14
1.2 配 位 混 合
16
1.2.1
第2量
1.2.2
有効相 互作用の全角運動 量展 開
子化
17 21
1.2.3
対相 関力
22
1.2.4
準 ス ピ ン とセ ニ ョ リテ ィ
23
1.2.5
対 相 関 ハ ミル トニ ア ン の 固 有 値
1.2.6
単 一準 位 のcfp
26 27
(a)1粒
子cfpの
定義
27
(b)1粒
子cfpの
計 算法
28
(c)2粒
子cfp
30
1.2.7 単 一 準 位 の セ ニ ョ リ テ ィ ・ス キ ー ム のcfp (a)最
高 セ ニ ョ リ テ ィのcfp―cfp(hs)
(b)cfp(hs)の
計 算法
(c)低 い セ ニ ョ リ テ ィのcfp―cfp(ls) (d)ま
とめ
31 32 34 35 36
1.2.8 多準位系の基底ベクトル
36
(a)新型CFPの 定義 (b)新型CFPの 計算法 (c)新型CFPに 関する有用な公式 (d)新型CFPの 具体的表式 (e)まとめ 1.3 配位混合の実例と原子核の電磁気的性質 1.3.1 有効相互作用の選択 1.3.2 配位混合計算のいくつかの実例
37 38 39 40 41 43 43 45
(a)sd殻核の例 (b)pf殻核の例 1.3.3 原子核の電磁気的性質と配位混合
45 46 50
(a)磁気双極モーメント (b)磁気モーメントの実例 (c)電気4重 極モーメント (d)電磁気遷移とモーメントに関する定式化 1.4 殻模型に関する結語 2 核力から有効相互作用へ 2.1 核力の概観 2.2 原子核の飽和性とBrueckner理論 2.2.1 密度と結合エネルギーの飽和性 2.2.2 核物質とFermiガス模型 2.2.3 Brueckner理論
51 53 56 58 61 63 63 67 67 69 71
(a)連結クラスター展開 (b)平均ポテンシャルの導入 (c)反応行列(G行 列) (d)まとめ 2.2.4 独立粒子描像はなぜ成立するか
71 76 78 81 82
(a)Bethe-Goldstone方 程式 (b)Pauli原理と回復距離 2.3 有効相互作用
83 86 88
2.3.1
模 型 空 間 と 有 効 ハ ミル トニ ア ン
88
2.3.2
エ ネル ギ ー に 依 存 す る有 効 相 互 作 用
90
2.3.3
エ ネル ギ ー に 依 存 し な い有 効 相 互 作 用
91
(a)有
93
(b)Brueckner理
効 相 互 作 用 の 摂 動 展 開 とQボ
ッ クス
論 と の 関連
94
3 集 団 運 動
99
3.1 球 形 液 滴 の 表 面 振 動
3.1.1
99
表面振動の古 典論
100
(a)質
量 パ ラ メ ー タ ー
101
(b)ポ
テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー
103
(c)角
運動量
105
3.1.2
表 面 振 動 の 量 子 化―
3.1.3
多 フ ォ ノ ン状 態 間 の 電 磁 遷 移
110
3.1.4
実験 との 比 較
112
3.2 4重 極 変 形 核 の 集 団 運 動
116
変 形核の集 団運動の古典論
117
(a)物
体 固定 座 標 系
117
(b)運
動 エ ネ ル ギ ー と ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー
3.2.1
フ ォノン
107
121
3.2.2
変形核の集 団運動の量子化
124
3.2.3
集 団 運 動 の 波 動 関 数 と その 対 称 性
128
3.2.4
回 転 ・振 動 模 型
133
(a)エ
ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル
133
(b)電
気4重
136
3.2.5
極遷移
実 験 との 比 較
3.3 統 一 模 型(集
団 模 型)
139 143
3.3.1
弱結合模型
145
3.3.2
強結合模型
146
(a)Bohr-Mottelsonの
強 結 合 ハ ミ ル ト ニ ア ン
(b)強
(c)変 形 殻 模 型―Nilsson模
(d)強
148
結 合 模 型 の 波 動 関 数 と そ の 対 称 性 型
結 合 模 型 に よ る エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク ト ル
150
153 158
(e)Coriolis力
159
(f)電 磁 モ ー メ ン ト,電
磁遷移
161
3.4 集 団 運 動 の 微 視 的 理 論 3.4.1 Hartree-Fock法
164
164
(a)通
常 のHartree-Fock法
(b)密
度 行 列 とHartree-Fock法
(c)時
間 依 存Hartree-Fock法
3.4.2
乱 雑 位 相 近 似(RPA)
(a)RPA励
(b)簡
(c)RPA方
(d)Tamm-Dancoff近
(e)Hartree-Fock基
3.4.3
準粒子
(a)準
粒 子 とBogoliubov変
(b)ギ
ャッ プ 方 程 式
(c)Bogoliubov変
(d)BCS基
(e)セ
164 168
170
176
と微 小 振 動 解
174
起モ ー ド
単 な 場 合 のRPA方
程式の解
178
程 式の性 質 似,new-Tamm-Dancoff近
179
181
185
似
底状 態 の 安 定 性
186 換
188
191
換 後 の ハ ミ ル トニ ア ン
底状態 の構造
ニ ョ リ テ ィ と 準 粒 子,ギ
3.4.4 Hartree-Fock-Bogoliubov法
(a)一
(b)Hartree-Fock-Bogoliubov
194 195
ャッ プ と 偶 奇 質 量 差
196
197
般 化 され た準 粒 子
198 (HFB)方
程 式
3.4.5 準 粒 子RPA 粒 子RPA方
205
(a)準
(b)(対
3.4.6
集 団 運 動 パ ラ メー ター
(a)球 形 核 フ ォ ノ ン の 弾 性 パ ラ メ ー タ ー
(b)球
(c)変 形 核 の 集 団 運 動 パ ラ メ ー タ ー
相 関 力+4重
201
程式 極 相 関 力)模
205 型
形 核 フ ォ ノン の 質 量 パ ラ メー ター
運 動 量 射 影 法 に よ る慣 性 モ ー メ ン ト
210 214
215
218 220
(d)角
224
3.4.7
遷 移 領 域 核 と非 調 和 効 果
226
3.4.8
ボ ソン写像法
230
(a)SU(2)模
(b)全
型 と その ボ ソ ン写 像
230
236
(c)集 団 的 部 分 空 間 に 対 す る ボ ソ ン 写 像
238
(d)Dyson型
241
相 互 作 用 す る ボ ソ ン模 型
246
(a)IBMの
構 成 要 素 と ハ ミ ル トニ ア ン
246
(b)IBMの
対称 性
247
3.5 高 ス ピ ン 回 転 運 動
252
3.5.1
液 滴 模 型 と 殻 効 果 ―Strutinsky法
252
3.5.2
高 ス ピ ン回 転 運 動 の概 観
257
260
形の型 と回転 スキーム
263
回 転 座 標 系 に お け る粒 子 運 動
266
殻 模 型 空 間 に対 す るボ ソ ン写 像
(e)ま 3.4.9
ボ ソ ン写 像 法 の 応 用
とめ
245
(a)慣 性 モ ー メ ン ト の 角 速 度 依 存 性,バ
(b)変
3.5.3
(a)ク
ラ ン ク した 殻 模 型
(b)非
集 団 的 回 転 ス キ ー ム の 場 合,そ
ン ド交 差
266 の他
3.6 巨 大 共 鳴
3.6.1
和
269 271
(a)双
極共鳴の場合 の和則
(b)ア
イ ソ ス カ ラ ー 型 の 場 合 の 和 則S1,
3.6.2
269
則
S3
278
さ ま ざ まな 巨 大 共 鳴
281
4 ク ラ ス タ ー 模 型
287
4.1 し き い 値 則 とIkedaダ
イ ア グ ラム
288
4.2 ク ラ ス タ ー 構 造 の 概 観
4.2.1
p殻
4.2.2
8Beの2α
4.2.3
sd殻
4.2.4
12Cの3α
291
の は じめ の 領 域 で の ク ラ ス ター 構 造 ク ラ ス ター 構 造
291
293
の は じめ の 領 域 で の ク ラ ス ター 構 造 ク ラ ス ター 構 造 な ど
295
4.3 多 中 心 模 型
4.3.1
ク ラ ス タ ー 系 の2中
297 298
2中 心 α ク ラ ス タ ー 模 型 (a)2α
273
心調和振 動子模型
300
300
(b)2α 系 の2中
(c)2α 系2中
心 模 型 と1中 心 殻 模 型 の 関 係
心模型の重 心座標の分 離
303 306
4.3.2 2中 心 調 和 振 動 子 殻模 型
307
(a)1中
心調和振動 子殻模 型
(b)1中
心 殻 模 型 の重 心 座 標 の 分 離
(c)2中
心 模 型 のSlater行
(d)2中
心 模 型 の 重心 座 標 の分 離
(e)多 中 心 模 型 へ の 拡 張
(f)2中 心 模 型 の1体
(g)荷 電 ・ス ピ ン飽 和 配 位 の 場 合 の 行 列 要 素
(h)近 接 した 極 限 に お け る2中 心 模 型 波 動 関数
307 309
列式
312
312 314
お よび2体
演 算 子 の 行 列 要素
315 318
321
4.3.3 パ リテ ィ射 影 と角 運 動 量 射 影
323
(a)パ リテ ィ射 影
324
(b)角 運 動 量 射 影
(c)内 部 状 態 の対 称 性 とパ リテ ィ ・角 運 動 量 射 影
325
(d)α+16O模
330
型 に よ る20Neの
324
回 転 バ ン ド
4.4 ク ラ ス ター 間 の 相 対 運 動
331
4.4.1 生 成 座 標 法 に よ る ク ラス タ ー 間 相 対 運 動
331
(a)GCM方
332
(b)2体
程式
333
4.4.2 共 鳴群 法 に よ る ク ラ ス タ ー 間相 対 運 動
ク ラス タ ー系 へ の 応 用
334
334
338
(a)RGM方
程式
4.4.3 共 鳴群 法 と生 成 座 標 法 の 関係
(a)RGMとGCMの
同等性
(b)RGMとGCMの
意義
4.5 ク ラス タ ー模 型 空 間 とPauli禁
338
止状 態
4.5.1 重 な り積 分 核 の 固 有 値 問題 とRGM基
339 340
底関数
340
4.5.2 重 な り積 分 核 の 固 有 値 問題 の 解
341
(a)単 一 チ ャ ン ネ ル 系
341
(b)多 チ ャ ン ネル2体
ク ラ ス タ ー系
4.5.3 ク ラ ス ター模 型 状 態 と殻 模 型 状 態 の 関 係
(a)16O+α
系
345
345 346
(b)12C+α
4.5.4
系
347
直 交条件模型
(a)ク
ラ ス タ ー 間 相 対 波 動 関 数 とPauli禁
(b)OCM方
程 式
(c)RGM方
程 式 とOCM方
止状態
程式 の関係
4.6 微 視 的 ク ラ ス タ ー 模 型 の 適 用 例
4.6.1
20Ne系
4.6.2
16O系
の α+12C模
4.6.3
12C系
の3α
4.7
付
の α+16O模
349
349
350
351
353
型
353
型
模型
ク ラス タ ー模 型 に 関 す る ま とめ
355
358
360
363
録
A 回 転 体 の 理 論 B
回 転 ・振 動 模 型 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値
377
C ボ ソ ン 写 像 法 の 一 般 論
383
参考 図書
索
引
395
397
0 原子核構造論への導入
本 章 で は,原 子 核 の 発 見 か ら,そ の 後 の原 子 核 構造 論 の 発 展 の 簡単 な 歴 史 と, 原 子 核 とは い か な る存 在 で あ るのか につ い て 概 観 し,第1章
以 下で 述 べ る原 子 核
構 造 論 が ど の よ うな観 点 で 展 開 され るか につ い て 説 明 し,本 書 の 導 入 部 とす る.
0.1 原 子 核 構 造 論 の は じ ま り
人類 が 原 子 核 の 存 在 を は じめ て 認識 した の は,Rutherfordに 型 の提 唱(1911)に
よ る有 核 原 子 模
お い て で あ っ た.当 時,原 子 の 大 き さが ほ ぼ10-8cmの
度で あ る こ とは,す で に わ か って い た.Rutherfordは,原
程
子 に よる α粒 子 の散
乱 の 実 験 結 果 を合 理 的 に 説 明 す る た め に,原 子 の 中心 に,原 子 の 質 量 の ほ と ん ど すべ て を 荷 い,電 つ原 子 核(atomic
子 の 電 荷 の 大 き さ(e)の 原 子 番 号(Z)倍
nucleus)が
の 荷 電(Ze)を
持
存 在 し,そ の周 辺 を軽 い 電 子 が 取 り巻 い て い る と
考 え た.原 子 核 の 半 径 は 原 子 の 大 き さに 比 べ て極 め て 小 さ く,種 々の 考 察 か ら 10-12cm程
度 で あ る と推 定 され た.こ れ がRutherfordの
有 核 原 子 模 型 で あ る.
当 初 は,原 子 核 は 電 子 と 陽子 か ら構 成 され て い る と考 え ら れ た が,上 記 の小 さい 核 半 径 内 に 電 子 を 閉 じ込 め て お くこ とは 不 確 定 性 関 係 と相 対 論 の 観 点 か ら 困 難 で あ る こ と,な
らび に,原 子 核 の ス ピ ン と統 計 性 の 観 点 か ら も矛 盾が 生 じ
る こ とが わ か り,こ の 考 え は成 立 しな い こ とが 明 らか で あ っ た.そ れ で は 原 子 核 は 何 に よっ て 構 成 され て い るの だ ろ うか. この 謎 はChadwickに
よる 中性 子 の発 見(1932)に
よ って 解 決 され る こ とに
な った.中 性 子 の 質 量 は 陽子 の 質 量 と ほ とん ど 同 じで あ り,陽 子 が 電 子 と同 じ 大 き さ で 反 対 符 号 の 電 荷(+e)を
持 つ の に対 し,中 性 子 の 電 荷 は0で
あ る(表
0.1参 照).現 在 で は,こ れ らの2種 類 の粒 子 は 同一 粒 子 の 異 な る状 態 で あ る と 考 え られ,総
称 し て しば し ば 核 子(nucleon)と
れ るや,IwanenkoやHeisenbergは,直
呼 ば れ て い る.中 性 子 が 発 見 さ
ち に,原 子 核が 陽 子 と 中性 子 に よ って
表0.1 核子の性 質
μN は 核 磁 子.詳
し く は1.3.3(p.50)参
照.
構 成 され る とい う考 え 方 を提 唱 した.こ
れが"原 子 核 構 造 論"の 第1歩
これ 以 後,原
の 陽 子 と,N個
子 核 は有 限 個 の 核 子(Z個
で あ り,
の 中性 子)か らな る量
子 力 学 的多 体 系 で あ る と い う考 え 方 が 定 着 した. この考 え 方 に基づ けば,原 子 核 の 荷 電 はZeで Z+Nで
あ り,質 量 は大 雑 把 に 質量 数A=
き ま る こ とに な る.実 験 結 果 も この 考 え を 支持 して い る.Weizsacker
は 原 子 核 をあ た か も水 滴 の よ う にみ なす 液 滴 模 型(liquid-drop
model)を
考 え,
原 子 核 の 結 合 エ ネ ルギ ー を表 す 質 量 公 式 を 提 案 し成 功 をお さめ た(質 量 公 式 に 関 す る 詳 細 に つ い て は 第2章
参 照).N.
Bohrら
(nuclear fission)に 適 用 し て 成 功 を お さめ,さ 成 果 とい え る複 合 核 模 型(compound-nucleus の 基 本 思 想 は,核
ら に 核 反 応 論 に お け る輝 か しい model)へ
発 展 させ た.液 滴 模 型
を構 成 す る 核 子 間 の 相 互 作 用が 強 い と い う"強 結 合"の 考 え
方 で あ る とい え る.こ の 考 え 方 は,Yukawaの 進 ん だ 核 力 が,強
は 液滴模 型の 考 えを核 分裂
中 間子 論 を 出 発 点 に し て研 究 が
い 短 距 離 力 で あ る こ と と も整 合 して い る よ うに 見 え た.
一 方,原 子 の 構造 に お け る平 均 場 近 似 と 同様 に,原 子 核 に お い て も何 らか の 平 均 場 が 成 り立 つ の で は な い か と い うア イデ ア は,割 合 早 い 時 期 か ら考 え ら れ て い た.し
か し,平 均 場 の 中 を 核 子 が 比 較 的独 立 に 運 動 す る とい う イ メー
ジ の 平均 場 近 似 は,い
わ ば"弱 結 合"の 考 え方 に 立 脚 す る もの で あ り,液 滴 模
型 や 複 合 核 模 型 の 強 結 合 的 な描 像 に 真 っ向 か ら対 置 され る もの と し て,直 は 受 け 入 れ られ る もの で は なか っ た.と Jensenら
こ ろが1940年
ちに
代 の 終 わ りに,Mayer,
に よ っ て,原 子 に お け る周 期 律 に相 当 す る マ ジ ック ナ ンバ ー(Nま
た はZ=2,8,20,28,50,82,126)が,ス
ピ ン ・軌 道 力 を 含 む平 均 場 の 中 の 単 一
粒 子 運 動 に よっ て 見 事 に説 明 で きる こ とが 示 され,弱 結 合 的 な 描 像 に基 づ く殻 模 型(shell model)を は 第1章
認 め な い わ け に は いか な くな っ た(殻 模 型 の 詳 細 に つ い て
参 照).さ ら に こ の考 え 方 は,原 子 核 反 応 論 にお け る光 学 模 型(optical
model)の
成 功 に よ り,確 固 た る もの とな った.
さ ら に 他 方,特
に軽 い 原 子 核 に対 して,上
述 の 強 結 合 的 描 像 と弱 結 合 的 描 像
との 中 間 的 な 描 像 と も い え る α 粒 子 模 型(alpha-particle た.原 子 核 は,2個 され,そ
model)も
主 張 され
の 陽 子 と2個 の 中性 子 が 強 く結 合 した α粒 子 に よ って 構 成
れ ぞ れ の α 粒 子 の 間 の 相 互 作 用 は比 較 的 弱 い とす る 模 型 で あ る.
こ の よ う に,互 い に 矛 盾 す るか の よ う に見 え る異 な っ た描 像 が,描
き出 そ う
とす る 原 子 核 の側 面 に 応 じて 成 立 す る こ とが 明 らか に な り,原 子 核 の 奥 行 きの 深 さ を 示 す こ と に な っ た.そ れ で は,原 子 核 の真 の 描 像 は ど の よ うに 理 解 で き るの か.こ
れ ら の 互 い に 対 立 す る よ う に見 え る種 々の 模 型 は い か に して 統 一 で
き る の か.こ
れ が1950年
代 の 原 子 核 構 造 論 の 最 大 の 問 題 で あ っ た.そ れ と 同
時 に,原 子 核 研 究 者 の 前 に 立 ち は だ か る難 問 は,原 子 核 内 に お い て 強 い 相 互 作 用 に よ る強 い相 関が あ りな が ら,な ぜ 殻 模 型 の よ う な独 立 粒 子 的描 像 が 成 り立 つ の か,と
い う こ とで あ った.こ れ も ま た1950年
代 以 降 の 基 本 的 問 題 の1つ
で あ っ た. 液 滴 模 型 が 描 く強 結 合 的 描 像 と,殻 模 型が 記 述 す る弱 結 合 的 描像 の 統 一 の 手 掛 か りは,原 子 核 にお け る集 団 運動 の研 究 か ら得 られ た.単 純 な殻模 型で は到 底 理 解 で き ない よ うな 励 起 状 態 や,極 端 に大 きい4重 極 モ ー メ ン トの 実 験 値 を 理 解 す る た め に,核 内 の 多 数 の 核 子 が 集 団 的 に 運 動 す る と い う運 動 形 態 を考 え な け れ ば な らな くな った.す な わ ち 集 団 運 動(collective motion)で
あ る.そ の理
論 的 定 式 化 の 最 初 は,液 滴 模 型 か ら 出発 した け れ ど も,A.BohrとMottelson は 集 団 運 動 と単 一 粒 子 運 動 の 双 方 を考 慮 し,そ れ ら を統 一 的 に 考 え なけ れ ば な ら な い こ と に 想 到 し,い わ ゆ る 集 団模 型(collective model)を
提 案 した.こ れ
に よ っ て,つ い に原 子 核 に対 す る相 反 す る2つ の 描 像 が 統 一 され た こ と に な る. し た が っ て,Bohr-Mottelsonの
集 団模 型 は しば しば 統 一 模 型 と も呼 ば れ て い
る(集 団 模 型 の 詳 細 につ い て は 第3章
参 照).
1960年 代 以 降 の 原 子 核 構 造 論 の 中心 テ ー マ は,こ れ らの模 型 の微 視 的理 論 を 構 築 し,そ れ に よっ て 模 型 の 基 礎 づ け と改 良 ・発 展 を 図 る こ とに あ った.そ 内 容 が,ま
さ に 本 書 全 体 で 説 明 し よ う とす る もの で あ る.詳
参 照 して い た だ きた い.
の
し くは 次 章 以 下 を
図0.1 現在 まで に存在が確 認され ている核種の核図表 横 軸 は 中 性 子 数N,縦
軸 は 陽 子 数Zを
表 す 網 目 グ ラ フ と な っ て い る.1つ
核 種 を 表 し,影
の 濃 い 網 目 が 存 在 が 確 認 さ れ て い る 核 種.影
薄 い 部 分 は,未
確 認 で あ る が 理 論 的 に 存 在 し 得 る と 考 え ら れ る 範 囲.軸
の 微 小 な 網 目 が1つ
が 濃 い ほ ど 半 減 期 が 長 い .影
の
が 最 も
上 の 目盛 数 字 は マ ジ ック
ナ ン バ ー を 示 す. LBNL
Isotopes
systematics.html)よ
Project,
Nuclear
Structure
Systematics
Home
Page
(http://ie.lbl.gov/
り.
0.2 有 限 量 子 多 体 系 と して の 原 子 核
前 述 の よ う に,原 子 核 は 有 限 個 の 核 子 か ら な る量 子 力 学 的 多 体 系 で あ る.自 然 界 の 中で 原 子 核 は あ る 意 味 で は極 め て特 異 な系 で あ る.す
なわ ち,核 子 間 に
働 く核 力 は 強 い 相 互 作 用 で あ る に もか か わ らず,原 子 核 の 密 度 は そ れ ほ ど高 く は な い.む
しろ 低 密 度 で あ り,核 力 の 作 用 半 径 と平 均 核 子 間 距 離 とが ほぼ 同程
度 で あ る.ま
た 核 子 数Aは
数 個 か ら た か だ か300個
程 度 で,い
わば少数粒子
の 多 体 系 で あ る.原 子 核 の ご く基 本 的 な これ らの 性 質 に つ い て,こ デ ー タを 示 し て お こ う.
こで 簡 単 に
現 在(2000年)ま
で に存在が確
認 さ れ て い る 約3,000種 (nuclide)が,図0.1の 性 子 数N,縦
で,網
横 軸 を中
軸 を 陽 子 数Zと
る 網 目 グ ラ フ(地 て い る.(大
の核 種
図)上
す
に表 され
幅 に 縮 尺 され て い る の
目が た い へ ん 細 か く,見 づ
ら い の が 残 念 で あ る.)こ 表(nuclear
chart)と
濃 い 影 を つ け た1つ
れ を核 図
呼 ん で い る.
図0.2
の 網 目の小 正 方 形 が1個
電 子 散 乱 に よ る原 子 核 の荷 電 分 布 の 測 定 結 果
の 核 種 を 表 し,そ の 影 が 濃 い ほ ど
そ の核 種 の 半 減 期 が 長 い.し たが って,小 正 方 形 の影 が 濃 い ほ ど安 定 な原 子 核 で あ る.影 が 最 も薄 い 部 分 は,ま だ確 認 され て い な い け れ ど も理 論 的 に存 在 し得 る と考 え られ る 範 囲 で あ る.縦 横 の軸 上 の 目盛 数 字 は マ ジ ッ クナ ンバ ー を 示 す. 原 子 核 に よ る 陽 子 や 電 子 の散 乱 を調 べ る こ とに よ って,原 測 定 す る こ とが で き る.そ の 実 験 デ ー タの 例 を図0.2に 果 や,そ
子 核 の 荷 電分 布 を
示 す.こ れ らの 実験 結
の 他 の 核 反 応 の 分 析 か ら,比 較 的安 定 な原 子 核 の 半 径R0は
と表 され る こ とが わ か っ て い る.つ
ま り,原 子 核 の体 積 は 質量 数Aに
比 例 し,粒 子 密 度 ρや 平 均 核 子 間 距 離dは
お お よそ
原 子 核 に よ らず ほ ぼ 一 定 で あ り,
とな る.こ の よ うに 密 度 が 原 子 核 に よ らず 一 定 で あ る と い う性 質 は,密 度 の 飽 和 性 と 呼 ば れ る. 核 子 間 の 相 互 作 用(核 力)の 作 用 半 径 は 大 雑 把 に い って ∼1.5fm程 と考 え て よい.(核
力 の 詳 し い性 質 は 第2章
度で ある
で 述 べ る.)こ の 作 用 半 径 と前 述 の
平 均 核 子 間 距 離 と を比 べ る と,ほ ぼ 同程 度 で あ る.こ の こ とか ら,原 子 核 は 通 常 の 液 体 よ り も低 密 度 で あ る と考 え られ る.こ の事 実 と,液 滴 模 型 の 成功 とは, ど の よ うに 整 合 させ て理 解 で き るの で あ ろ うか. ま た,寿 命 が 長 く比 較 的 安 定 な 領 域 の 原 子 核 の 結 合 エ ネ ルギ ー の 実 験 値 は, 原 子 核 に よ らず,体 積 に(し た が って 質 量 数Aに)ほ
ぼ 比例 し,1核
子 当た りの
結 合 エ ネ ルギ ー は約8MeVで
あ る.こ の性 質 は 結 合 エ ネル ギ ーの 飽 和 性 と呼ば
れ て い る. これ らの2つ の 飽 和 性(saturation)は
安 定 な 原 子 核 の 著 しい 特 徴 で あ り,こ
れ ら の 性 質 を,原 子 核 が 核 力 と い う強 い 相 互 作 用 に よっ て 結 合 し て い る有 限個 の 核 子 の 量 子 多 体 系 で あ る と い う観 点 か ら いか に 説 明 す るか と い う こ とが,原 子 核 構造 論 の 基 本 課 題 の1つ
で あ り,本 書 で 取 り上 げ な け れ ば な らな い 重 要 な
テ ー マ で あ る.
0.3 原 子 核 構 造 論 の 特 質
上 に述 べ た よ うに,原 子 核 は 自然 界 の 中 で か な り特 異 な存 在 で あ る.構 成 粒 子 の 数 が 比 較 的 少 数 で あ る こ と,平 均 核 子 間 距 離 が 核 力 の 作 用 半 径 と 同 程 度 の 比 較 的 低 密 度 で あ る こ と,核 力 の 強 さに 比べ て 結 合 エ ネル ギ ー が そ れ ほ ど 大 き くな い こ と,等
々,い ろ い ろ な 意 味 で 中 くら い の性 質 を持 っ て い る.そ れ だ け
に 原 子 核 は,質 量 数 や エ ネ ルギ ー や その 他 の状 況 の 変 化 に応 じて,さ 側 面―"顔"―
を見 せ る.一 見 簡 単 そ うに 見 え る原 子 核 が,驚
の 深 い,豊 か な 存 在 で あ り,多 原 子 核 構 造 の研 究 は,核
まざ まな
くべ く奥 行 き
くの 研 究 者 を魅 了 す るゆ えん で あ る.
の さ まざ ま な側 面(顔)を 端 的 に 記 述 す る"模 型"を
作 り,改 良 し,精 密 化 す る こ と の 繰 り返 しで あ っ た.そ
こで は しば しば 互 い に
相 矛 盾 す る よ うな模 型 が 提 唱 され,こ れ らを統 一す る新 た な模 型 が 考 案 され た. ま た,そ れ らの 模 型 を 量 子 力 学 的 多 体 問 題 と し て 基 礎 付 け る こ と も重 要 な研 究 で あ っ た. 研 究対象が極め て短寿命の不 安定核や超高エ ネルギーの領域 などへ拡大 しつ つ あ る 原 子 核 物 理 学 の 今 後 の 研 究 に お い て も,こ の よ うな 原 子 核 構造 論 の 研 究 の 特 質 は 継 承 され る に 違 い な い.そ れ ゆ え に,本 書 に お い て は,原 子 核 構 造 論 の こ の特 質 の 最 も典 型 的 な 部 分 を 取 り上 げ て,読 者 の原 子 核 構 造 の 理 解 に資 す る こ と に す る.
1 殻
模
型
1.1 jj結 合 殻模 型 の 提 唱
原 子 に お い て は,プ
ラス 電 荷 を持 つ 重 い 原 子 核 の 周 囲 に,マ
つ 軽 い 電 子 が 原 子 核 との 間 のCoulomb引
イナ ス 電 荷 を持
力 で 結 合 され,そ れ らの 電 子 が 殻 構
造 を な して い て,こ れ に よ って 元 素 の 周 期 律 が 説 明 で き る とい うこ とが よ く知 られ て い る. 多 数 の 陽 子 や 中性 子 が 集 ま っ て構 成 され て い る原 子 核 に お い て も,同 じ よ う な 殻 構 造 が 存 在 す る の で は な い か と い うア イデ ア は,ず い ぶ ん 早 い 時 期 か ら考 え られ て い た.実
際,陽 子 数(Z)や
な ど の 原 子 核 は,特
中 性 子 数(N)が2,8,20,28,50,82,126
に 結 合 エ ネ ルギ ーが 大 き く安 定 で あ り,元 素 の 周 期 律 表 に
お け る希 ガ ス に相 当す る よ う に見 え る.こ れ らの 数 を原 子核 にお け る マ ジ ッ ク ナ ン バ ー(magic
numbers)と
呼 ぶ が,こ の マ ジ ッ クナ ンバ ー を合 理 的 に説 明 す
る模 型 を 考 案 す る こ とは な か なか 困 難 で あ っ た. 原 子 に お け る殻 構造 は,電 子 が 原 子 核 か ら受 け るCoulomb力 テ ン シ ャル(正 確 に はHartree-Fockポ
に よ る1体 ポ
テ ン シ ャル)の 中の独 立 粒 子 運 動 で 記 述
で き る.こ れ と同様 に原 子 核 に お い て も,全 核 子(陽 子 や 中性 子)が 平 均 的 な1 体 ポ テ ン シ ャル を構 成 し,そ の 中の 各 々 の 核 子 の 独 立 粒 子 運 動 で 原 子 核 の 殻 構 造 を説 明 し よ う とい うア イデ ア に基 づ き,さ まざ まな 形 の1体
ポ テ ン シ ャル を
仮 定 し て上 記 の マ ジ ック ナ ンバ ー を説 明 す る 試 み が な され たが,な く行 か な か っ た.こ れ を解 決 した の が1949年 て 提 案 され たjj結 *1 M
合 殻 模 型(jj-coupling
にMayerお
shell model)で
よびJensenら
.G.Mayer,Phys.Rev.75(1949)1969;78(1950)16.
O.Haxel,J.H.D.Jensen 128(1950)295.
and
か なか うま
H.E.Suess,Phys.Rev.75(1949)1766;Z.Physik
あ っ た.*1
に よっ
Mayer-Jensenのjj結
合 殻 模 型 に お け る 単 一 核 子 の 従 うSchrodinger方
程
式 は
(1.1) で あ る.こ 働 く1体
こ で∇2は
ラ プ ラ シ ア ン で あ り,Mは
ポ テ ン シ ャ ル で あ る.lお
よ びsは
核 子 の 質 量,U(r)は
それ ぞ れ 核 子 の 軌 道 角 運 動 量 お よ
び ス ピ ン 角 運 動 量 を 表 す 演 算 子 で あ る.
はMayerお
よびJensen
ら に よ っ て は じ め て そ の 重 要 性 が 見 出 さ れ た ス ピ ン 軌 道 力(spin-orbit の ポ テ ン シ ャ ル で あ り,こ
核 子に
force)
れ に よっ て は じ め て 上 記 の マ ジ ッ クナ ンバ ーが 説 明
さ れ た す ば ら し い 発 見 で あ っ た.
1.1.1
調 和振動子 波動関数
Schrodinger方
程 式(1.1)の
解 を 調 べ る た め,1体
ポ テ ン シ ャ ルU(r)が3次
元 等 方 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル で あ る 場 合 を 考 え よ う.こ
で あ り,
の と き,(1.1)式
は
(1.2) と 書 く こ と が で き る.エ
ネ ル ギ ー 固 有 値,固
有関数 は
(1.3a) (1.3b) と表 さ れ,主 量 子 数 はn=0,1,2,… り,
で あ る.
は球面調和 関数であ
とす れ ば,動 径 波 動 関 数Rnl(r)は
(1.4) と 表 さ れ る.こ
こ で
はLaguerre多
項 式 で,
(1.5a)
(1.5b)
で あ る.*2 こ こで は1体
ポ テ ン シ ャル と して 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル を採 用 し て そ の エ
ネ ル ギ ー 固 有 値,固
有 関数 を 求 め た.定 性 的,あ
に は これ で 十 分 で あ るが,実
るい は半 定 量 的 な議 論 を行 う
際 の 原 子 核 にお い て 厳 密 な分 析 を行 う場 合,後 で
説 明 す る よ う な もっ と工 夫 され た現 実 的 な1体
ポ テ ン シ ャル を考 え な くて は な
らな い.
1.1.2
ス ピ ン 軌 道 ス プ リ ッテ ィン グ
次 に,ス
ピ ン軌 道 力 を考 慮 し よ う.Schrodinger方
程 式(1.1)に
道 角 運 動 量 と ス ピ ン角 運 動 量 を合 成 し た全 角 運 動 量j=l+sの のz成
分mが
良 い 量 子 数 とな り,Uls(r)がrに
お いて は,軌 大 き さjと そ
よ らず 一 定 な らば,
(1.6a) (1.6b) が 固 有 関 数 と な る.こ Clebsch-Gordan係 ン 座 標 で あ る.ス
こ で,
は 角 運 動 量 の 合 成 を 行 うた め の
数 で あ り,
は 核 子 の ス ピ ン 固 有 関 数,σ
ピ ン 軌 道 力 が 比 較 的 小 さ い 場 合 に も,上
似 的 な 固 有 関 数 と 考 え て よ い.こ
の と き,エ
は ス ピ
の
が 近
ネ ル ギ ー 固 有 値Enljは
(1.7) と 書 く こ と が で き,ΔElsは
ス ピ ン 軌 道 力 ポ テ ン シ ャ ル
に よ る 期 待 値 と な る.す
の
なわ ち
(1.8) で あ る.さ
て
で あ る か ら,
は(l・s)の
固 有 状 態 で あ り,
(1.9) *2 Laguerre多
項 式 の表 記法 は
義 に よ る Nuclear
Shell
,本
をLpqと Theory,
Academic
に よ っ て 異 な る こ とが あ る の で 注 意 を 要 す る.本 表 す 本 も 多 い.(た Press
(1963)).
と え ば,A.
de-Shalit
and
書 の定
I. Talmi:
と な る.し
た が っ て,
(1.10a) (1.10b) Uls(r)が
ス ピ ン に よ ら な い な ら ば,〈Uls〉
核 子 の ス ピ ン は1/2で
あ る か ら,同
角 運 動 量 の 固 有 値 が れ ら の2つ は,(1.10a)式
はj,mに
よ ら ず,n,lの
み で 定 ま る.
一 の 軌 道 角 運 動 量 の 量 子 数lを
と
の2つ
持 ち,全
の 異 な る 状 態 が あ る.こ
の 状 態 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 に 対 す る ス ピ ン 軌 道 力 か ら の 寄 与ΔEls に
を 代 入 し て,
(1.11)
が 容 易 に得 られ る.も
し
押 し下 げ ら れ,
(引 力)な らば,
の 準 位が 上 に押 し上 げ られ る こ とに 注 目 し た い.
ス ピ ン軌 道 力 が な い 場 合 に は,も の2つ
の 状 態 が,ス
の準位が 下に
と も とEnlに2重
縮 退 して いた
ピ ン 軌 道 力 に よ っ て 上 下 に 分 離 し た わ け で あ る.こ
ピ ン 軌 道 ス プ リ ッ テ ィ ン グ(spin-orbit
splitting)で
あ る.そ
れが ス
の 分 離 の 大 きさ は
(1.12) と な り,ス ピ ン軌 道 力 が 一 定(Uls(r)=定
数)な らば,大
きいlほ ど 大 き くな
る.こ の ス ピ ン軌 道 ス プ リ ッテ ィ ング に よ っ て,原 子 核 に お け る マ ジ ック ナ ン バ ーが み ご と に説 明 され た の で あ る.
1.1.3 1体 ポ テ ン シ ャル と エ ネ ル ギ ー準 位 前 項 で は,簡 単 の ため1体
ポ テ ン シ ャルU(r)と
して3次 元 調 和 振 動 子 ポテ ン
シ ャル を と った.こ の と き,エ ネルギ ー 固有値 は(1.3a)式 とす る と,ゼ ロ点 エ ネ ルギ ー ネ ル ギ ー 固 有値 はNだ 固 有 値 は の状 態 は-パ
で 表 され,
を除 け ば"励 起 子"hω のN倍
け で き ま る.す な わ ち3次 で あ る.N=偶
とな り,エ
元 調 和 振 動 子 の エ ネ ルギ ー
数 の状 態 は+パ
リテ ィ,奇 数
リテ ィで あ る.つ ま り3次 元 調 和 振 動 子 に お い て は,同 一 のN
で 異 な る 軌 道 角 運 動 量lの 状 態が 縮 退 し て い る.
3次 元 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル を 原 子 核 の1体 う な値 に な るで あ ろ うか.質 量 数 をAと
ポ テ ン シ ャル と考 え る と,hω
はどの よ
す れ ば,核 半 径 は
で 与 え られ る と考 え ら れ る.原 子 核 を 半 径 がR0の 球 とす る と,こ の 密 度 分 布 に 関 す る 距 離 の2乗
一様 な密度 の
の 平均 は
(1.13) と な る.ま ら,3次
た,エ
ネ ル ギ ー 固 有 値ENは(1/2)(N+1)(N+2)重
元 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル にN=0か
性 子(Z=N=A/2)を
と な る.た
詰 め る とす れ ば,核
だ し,2の
に縮 退 し て い る か
らN=Nの
準 位 まで 同 数 の 陽 子 と 中
子 の 総 数Aは
因 子 は ス ピ ン の 上 向 き,下
向 き を 考 慮 し た た め で あ る.こ
のと
きの 全 核 子 の エ ネ ルギ ー の 総 和Wは
で あ る.Nが
大 き い場 合 に は,こ
れ らの式 か ら
(1.14) が 得 ら れ る.一 方,調 の2倍
和 振 動 子 の 平 均 エ ネ ル ギ ー は ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー の 平 均
に 等 しい か ら,エ
ネルギ ーの総和 の平均 は
(1.15) で あ る.(1.13),(1.14),(1.15)の3式
か らWと
〈r2〉を 消 去 し て
(1.16) が 得 られ る.つ
い で なが ら,こ
の と きの 調 和 振 動 子 波 動 関 数 の 広 が りを 表 す 調 和 振 動
子 パ ラ メ ー タ ー は
と な る.
さて,井 戸 型 ポ テ ン シ ャル の 場 合 に は,調 和 振 動 子 にお い て 縮 退 して い る 同 一 Nに
対 応 す る 状 態 は 縮 退が 解 け,lが
大 きい 状 態 ほ ど エ ネル ギ ー 固 有 値 が 下が
る傾 向が あ る.現 実 の 原 子 核 に お け る平 均 ポ テ ン シ ャル は,井 戸 型 ポ テ ン シ ャル と調 和 振 動 子 ポ テ ンシ ャル との 中 間的 な もの で あ る と考 え られ,Woods-Saxon 型ポテ ンシャル
(1.17)
が よ く 用 い ら れ る.こ
こ で,U0は
テ ン シ ャ ル の 深 さ,R0は
ポ
核 半 径,a
は 核 表 面 で ポ テ ン シ ャ ルが 井 戸 型 と 異 な っ て 滑 ら か に 変 化 す る"滑 さ"(diffuseness)を
らか
表 し て い る.上
に 述 べ た よ う にR0=1.2A1/3fm (1fm=10-13cm)が
と ら れ る.パ
ラ メ ー タ ーaは0.6fm程
度 で あ る.
図1.1にWoods-Saxon型
ポ テ ンシ ャ
ル と調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル の 比 較 が 図1.1
Woods-Saxon型
示 さ れ て い る. 上 記 の よ う に,調
和振動子において
A=40,U0=-50MeV,a=0.6×10-13cm= 0.6fmと
は 縮 退 し て い る け れ ど も,井 戸 型 で は 縮 退 が 解 け,大
きいlの
状 態 のエ ネル
ギ ー 固 有 値 が 下 が る と い う 傾 向 は,も ち ろ んWoods-Saxon型 で も 見 ら れ る.調 (D=適
ポ テ ン シ ャ ル(実 線)と
調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル(破 線)の 比 較
と ら れ て い る.こ
半 径 はR0= な る.
調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル はV0+(1/2)Mω2r2,V0 =-54.2MeVで
あ る.こ
がWoods-Saxon型
ポ テ ンシ ャル
の 場 合,核
1.2A1/3fm=4.10fm,hω=12.0MeVと
れ はr=R0の
点 で の 値
ポ テ ン シャ ル と一 致 す る よ う に
き め ら れ た も の で あ る.
和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル に こ の 性 質 だ け を 付 加 す る に は,Dl2
当 な 定 数28ま
と え ば17Oや17F,に
子 準 位 に 入 る こ と に な り,そ 一 致 す る は ず で あ る.こ た はZ>28の
お い て は,最
れ らの 基 底 状 態 の ス
れ も実 験 結 果 と一 致 して
よ う な 少 し 重 い 原 子 核 で は ,図1.2
子 準 位 が 必 ず し も 正 し い 位 置 や 順 番 を 示 し て い な い の で,実
験 結 果 とは
必 ず し も一 致 しな い.逆
に この よ うな 原 子 核 に 対 して は,実 験 結 果 か ら本 当 の
1粒 子 準 位 の 順 番 な ど を推 定 す る こ とが で きる. そ れ で は,閉 殻 核 の 上 に2粒 子 加 わ った 核 の 全 ス ピ ン は ど うな るか.実 験 に よれ ばNお
よびZが
と もに偶 数 の核(こ れ を偶 々 核(even-even
う)の 基 底 状 態 の 全 ス ピ ン は ほ とん ど例 外 な し に0で の1粒
子 準 位 に2個 の 同種 粒 子が 入 る と,こ の2個
は
あ る.と こ ろ が ス ピ ンj
の粒 子 の 合 成 され た ス ピ ン
が 許 され る こ とが わ か って い る.(波 動 関 数 の 対 称 性 か
らJ=1,3,… J=0の
nucleus)と い
は 許 され な い.)こ れ らの(j+1/2)個
状 態 の エ ネ ル ギ ーが 低 くな って,そ の 結 果,偶
の 可 能 性 の 中 で,特
に
々核の基底状態 の全 ス
ピ ンが 例 外 な く0と な るの で あ る.す な わ ち,同 一 の1粒 子 準 位 に あ る2個 の 同種 粒 子 の 間 に は,合
成 ス ピ ン をJ=0に
組 ませ る よ うな特 別 な 相 関(相 互 作
用)が 働 くと考 え られ る.こ れ を対 相 関(pairing
correlation)と か,対 相 関 力
(pairing force)と 呼 ん で い る. わ れ わ れ は 閉 殻 で な い 不 完 全 な殻 を オ ー プ ン 殻(open よ う.オ ープ ン殻 の2個
shell)と 呼 ぶ こ と に し
の 同 種 粒 子 は ス ピ ンが0の ペ ア ー(対)を 組 むが,さ
ら
に1粒 子 加 わ る とど うな る か.こ の と きは多 くの 場 合,基 底 状 態 の ス ピ ン は 当 該 の1粒
子 準 位 のjに
一 致 す る.
以 上 述べ た こ と を 総 合 し て考 え る と,偶 々核 で は対 相 関 の 効 果 に よ って オ ー プ ン殻 に 入 って い る 同 種 粒 子 す べ て が ス ピ ン0の ペ ア ー(対)を 作 って 基 底 状 態 の 全 ス ピ ンがI=0と
な り,質 量 数Aが
で は,多
後 の 粒 子 が 入 る1粒 子 準 位 の ス ピ ンjが 基底 状 態 の全 ス
くの 場 合,最
奇 数 の 核(奇 核(odd
nucleus)と
い う)
ピ ン に 等 し くな る. それ で は,対 相 関力 は ど こ か ら来 るか.原 子 核 は も と も と多 数 の 核 子 が 核 力 (nuclear force)と い う短 距 離 相 互 作 用 に よ っ て結 合 し た核 子 多 体 系 で あ る.第 0近 似 に お いて,こ れ らの 核 力 は平 均 ポ テ ン シ ャル を作 り,そ の 中で 核 子 は 近 似 的 に独 立 粒 子 運 動 を行 う とい う描 像 が 殻 模 型 の ア イデ アで あ り,こ の 描 像 が か な りよ く成 り立 つ こ とが わ か って きた.し か し なが ら,核 力 の 効 果が す べ て 完 全 に平 均 ポ テ ン シ ャ ル に な る わ け で は な く,当 然 の こ とな が ら平 均 ポ テ ン シ ャル に吸 収 され ない 相 互 作 用 も少 しは 残 る もの と考 え られ る.こ れ を残 留 相 互 作 用 (residual interaction)と 呼 ぶ.も
と も との 核 力 が 短 距 離 相 互 作 用 で あ る こ と を
考 え る と,残 留 相 互 作 用 も同 様 に短 距 離 相 互 作 用 とな る だ ろ う.後 で 詳 し く述 べ るが,同
一 準 位 に あ る 同種2粒
子 間 に 短 距 離 相 互 作 用 が 働 く場 合,J=0の
行 列 要 素が 特 別 に 大 きい こ とが わ か る.こ れ が 対 相 関力 の 源 で あ る.な お,対 相 関力 は 第2章
の2.2.1で
述 べ るWeizsacker-Betheの
質量 公 式(2.7)に
るペ ア リ ング ・エ ネ ル ギ ー δ(A)と 同根 で あ る と 考 え られ るの で,そ
現れ
の強 さは
δ(A)の 値 か ら推 定 で き る. 以 上 述 べ た よ うに,jj結 (1)1体
合 殻 模 型 の 最 も重 要 な 要 素 は,
ポ テ ン シ ャ ル と,そ の 中 に含 まれ る ス ピ ン 軌 道 力 ポ テ ン シ ャ ル,
(2)オ ー プ ン殻 の 中の 核 子 間 に 働 く対 相 関 力. で あ り,こ れ ら に よっ て 原 子 核 の マ ジ ック ナ ン バ ー が 見 事 に説 明 され,多
くの
原 子 核 の 基 底 状 態 の ス ピ ン や そ の 他 の 性 質 が 理 解 で き る よ う に な り,jj結
合殻
模 型が 原 子 核 構 造 論 の 基 礎 とな り,出 発 点 とな る に 至 っ た.
1.2 配
位
混
合
殻 模 型 に お い て は,原 子 核 の 基 底 状 態 は,閉 殻(芯)の 外 の オ ープ ン 殻 の1粒 子 準 位 に,エ ネ ルギ ーが 低 い 方 か ら順 番 に 陽子 や 中 性 子 が 入 る こ とに よっ て 作 られ る.た と えば 図1.3の
よ うに,影 の つ け て あ る 下 部 の 閉 殻(芯)の 準 位 は 完
全 に粒 子 が 詰 ま って い る と し,左 図 の よ うに 閉殻(芯)の
上 の 最 も低 い 準 位 に5
個 の 粒 子(陽 子 また は 中性 子)が 詰 ま っ て基 底 状 態 が で きて い る もの と し よ う. この5個
の 核 子 の うち何 個 か が,右
図 の よ うに,よ
り高 い 準 位 に励 起 す る こ と
に よ っ て 全 体 と し て の励 起 状 態 が で き る. 量 子 数(n,l,j)で
指 定 され る1つ の 準 位 に は,2j+1個
縮 退 して い る の で,図1.3の
の 異 な るmの
状態が
左 図 の よ うな状 態 とい え ど も,一 般 に は 多 重 縮 退
して い る.し か し前 節 で 述 べ た よ うに,オ ー プ ン 殻 の 核 子 の 間 に は残 留 相 互 作 用 が 働 い て い るの で,こ れ らの 多 重 縮 退 して い る状 態 の 中 で,相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー が 最 も低 くな る状 態 が 真 の 基 底 状 態 とな る. ま た,図1.3の
右 図 で 示 され
る 励 起 状 態 の 場 合 も,核 子 の 励 起の仕 方 には極 め て多数の 可能 性 が あ る.こ れ らの 多 数 の 状 態 の 間に残留 相互 作用が 働い てい る は ず で あ る.し
た が っ て,真
図1.3
殻 模 型 にお け る励 起 状 態 の概 念 図
の 基 底 状 態 や 励 起 状 態 は,オ ー プ ン殻 に 与 え られ た 個 数 の 核 子 が 配 置 され るす べ て の 可 能 な状 態(こ れ を配 位(configuration)と 用 を考 慮 して き まる.つ
い う)の 間 に働 く残 留 相 互 作
ま り,真 の 基 底 状 態 や 励 起 状 態 は,す べ て の可 能 な状
態 ベ ク トル で 作 られ るHilbert空
間 の 中で,全
ハ ミル トニ ア ン
(1.19) を対 角 化 す る こ と に よっ て得 られ る.こ こ で オ ープ ン殻 の 粒 子 数 をNと
し,i
番 目 の 粒 子 の1粒 子 ハ ミル トニ ア ン をhiと す れ ば,
(1.20) と 表 さ れ る.∇2iはi番
目 の 粒 子 の 座 標 に 関 す る ラ プ ラ シ ア ン で あ る.残
互 作 用 は 通 常 有 効 相 互 作 用(effective る と 考 え ら れ る の で,そ
interaction)と
呼 ば れ る2体
留 相
力 で 表 され
の ハ ミ ル ト ニ ア ンHintは
(1.21) と書 か れ る.有 効 相 互作 用 につ い て は 後 で 詳 述 す る. この よ うな 殻 模 型 の さ ま ざ ま な 配 位 で で き るHilbert空
間 の 中 で,Hを
対
角 化 し て得 られ る真 の基 底 状 態 や 励 起状 態 は,一 般 に 殻 模 型 の さ ま ざ まな 配 位 を 線 形 結 合 し た混 合 し た状 態 とな るの で,こ mixing)と
の 方 法 を 配 位 混 合(configuration
呼 ぶ.こ れ に よ って 原 子 核 の 真 の 基 底 状 態 や 種 々 の励 起 状 態 を解 析
す る こ とが 可 能 で あ る.し か し オ ー プ ン殻 に 多 数 の 核 子 が 入 っ て い る よ うな 中 重 核 に お い て は,上 記 のHilbert空
間 の 次 元 数 が 巨 大 と な り,ハ ミル トニ ア ン
を 厳 密 に対 角 化 す る こ と は きわ め て 困 難 で あ る.実 際 に配 位 混 合 の 厳 密 な 計 算 が 可 能 な の は,粒 子 数 の 少 な い比 較 的 軽 い 原 子 核 や,閉 殻 核 に 近 い 原 子 核 の み で あ る.少
し重 い原 子 核 や 閉殻 か ら離 れ た 原 子 核 に お い て は,こ の 困 難 を解 決
す る た め の い ろ い ろ な近 似 法 や模 型 が 提 案 され て きた.こ
れ らが 原 子 核 構造 論
の 中心 的 テ ー マ で あ る と い っ て も過 言 で は な い だ ろ う.
1.2.1 第2量
子化
こ こ で は 上 記 の 配 位 混 合 の 定 式 化 を行 うた め の準 備 を し よ う.
粒 子 数Nの 同 種 多 粒 子 系 を 考 え る.系 の 状 態 を 表 す 波 動 関 数 は,独 立 粒 子 の 波 動 関数,す なわ ち殻 模 型 の 波 動 関 数((1.1)式 の よ う な1粒
子Schrodinger方
程 式 の 解)の 積
(1.22) で 展 開 す る こ と が で き る.こ
こ でi番
を ま と め て 第2番
目 の 粒 子 の 空 間 座 標riと
で 表 し て い る.波
目,…,第N番
目 の 粒 子 が,そ
ス ピ ン 座 標 σi
動 関 数(1.22)は,第1番
れ ぞ れ,
目,
の1粒
子状態 に
粒 子 の 入 れ 換 え に 対 し て 非 対 称 で あ る か ら,こ
の ま まで
あ る こ と を 意 味 す る. 波 動 関 数(1.22)は
は 同 種 多 粒 子 系 の 波 動 関 数 に は な ら な い.こ (boson)系
れ を も と に し て ,も
し系 が ボ ソ ン
な らば 完 全 対 称 関 数
(1.23) を作 り,も し フ ェル ミ オ ン(fermion)系
な らば 完 全 反 対 称 関 数
(1.24) を作 っ て,同 種 多粒 子 系 と し て 正 しい 波 動 関 数 に しな け れ ば な ら な い.こ こ で Pは 添 字
に つ い て の 置 換 を意 味 し,符 号 因 子(-1)Pは 偶 置 換 に対 し (1.25)
奇 置 換 に対 し で あ る.な お,ψFは determinant)と
行 列 式 の 形 に 書 く こ とが で き,こ れ をSlater行
呼 ぶ.こ
の よ う に し て 作 ら れ た 対 称 波 動 関 数 ψBま た は 反 対 称
波 動 関 数 ψFは 取 り扱 い が 結 構 面 倒 で,便 に お い て は,第4章 2量 子 化(second Hilbert空 算 子(creation operator)と 状 態,す な わ ち
利 で あ る と は い い 難 い.そ
を 除 くす べ て の 章 で 一 貫 し て,こ quantization)の
operator)と す る.
な わ ち 真 空(vacuum)で
し,cα
こで本書
れ ら と まっ た く同等 な 第
方 法 を 用 い る こ と に す る.
間 に お け る 線 形 演 算 子c†αを1粒
で あ る.
列 式(Slater
子 状 態 α に 粒 子 を1個
を 粒 子 を1個
作 る生 成 演
消 す 消 滅 演 算 子(annihilation
を み た す 状 態 ベ ク トル│0〉 は 粒 子 が ま っ た くな い あ る.│0〉 は 規 格 化 され て い る も の と す る.す
N個
の 粒 子 が そ れ ぞ れ1粒
子 状 態
に存 在 す る 場 合 の 状 態 ベ
ク トル は
(1.26) で 表 さ れ る.ま
た
は 状 態 α に あ る 粒 子 の 個 数 を 表 す 演 算 子 で あ り,
す べ て の 状 態 に つ い て 和 を と っ た も の 個 数 演 算 子(number
operator)で
は系全体 の粒子数 を表す
あ る.
生 成 ・消 滅 演 算 子 が 交 換 関 係(commutation
relations)
(1.27) を み た す な ら ば,状
態 ベ ク トル(1.26)は
ボ ソ ン のN粒
れ ら が 反 交 換 関 係(anti-commutation
子 系 で あ る.ま
た,そ
relations)
(1.28) を み た す な ら ば,状
態 ベ ク トル(1.26)は
に フ ェ ル ミ オ ン 系 の 場 合,反 状 態 に2個 ル(1.26)は
交 換 関 係(1.28)か
ら
子 系 で あ る.特 と な る の で,同
以 上 の 粒 子 が 存 在 す る こ と は 許 され な い こ と に な っ て,状 自動 的 にPauli原
わ れ わ れ の 当 面 の 目 標 は,殻 式 化 す る こ と で あ る.し で あ る.に
フ ェ ル ミオ ン のN粒
理(Pauli
principle)を
態ベ ク ト
み た し て い る.
模 型 の 配 位 混 合 を 第2量
た が っ て,扱
一
子 化 の 方 法 を用 いて 定
う系 は 多 核 子 系 で あ り,フ
も か か わ ら ず ボ ソ ン系 に も 言 及 し た 理 由 は,後
ェ ル ミオ ン系
の 章 で ボ ソ ン系 が 重
要 な 働 き を す る こ と に な る か ら で あ る. さ て,(1.19),(1.20),(1.21)式
の よ うに 普 通 の 表 示 法 で 表 し た多 核 子 系 のハ
ミル トニ ア ン
(1.29) を,第2量
子 化 の 表 示 で 表 せ ば ど の よ うに な る か.
独 立 粒 子 状 態 の エ ネル ギ ー 固 有 値 εα,固 有 関 数 ψα は 固 有 値 方 程 式
(1.30) で き ま る.今 後,1粒
子 状 態(殻 模 型 状 態)を 詳 し く表 さ な け れ ば な ら な い と
き に は,量
子 数
で 表 す こ と に す る.*3こ の 中 で
は 準 位(レ
ベ ル)を 表 す 量 子 数 で あ る か ら,こ
と 表 す こ と も あ る.し
た が っ て,状
れ ら を ま とめ て
態 α に お け る1粒
の よ う に 表 す こ と が で き る.ま εα はmα 第2量
子 の生成演算子 は
た,1粒
子 エ ネル ギ ー 固有 値
に よ ら な い か ら εα と 書 く こ と に す る. 子 化 の 表 示 で 表 し た ハ ミ ル トニ ア ン は
(1.31) で あ る.こ
こで 行 列 要素
は
(1.32) で 与 え られ る.Hintは
反 対 称 化 され た 行 列 要 素
(1.33) を 用 い て,
(1.34) と書 く方 が 便 利 で あ る.反
対称 化 され た行 列 要 素 は
の 反対 称 性 を み た す. (1.29)式 は き ま っ た粒 子 数Nに 化 の 表 示 を と っ た(1.31)式 い.(1.26)式 ば,こ
対 す るハ ミル トニ ア ンで あ るが,第2量
の状 態 ベ ク トル の よ う に粒 子 数が き ま った ベ ク トル 空 間 内 で 扱 え
れ ら2種
類 の 表 示 に よる ハ ミル トニ ア ン(1.29)と(1.31)と
等 で あ る.何 よ り も第2量 子 化 の有 利 な点 は,(1.26)式
る点 で あ る.こ の よ う な有 利 な 点 を 利 用 す る た め,第4章
は完 全 に 同
の よ うに して作 った 状
態 ベ ク トル が 自動 的 に反 対 称 化 され て い て,自 動 的 にPauli原
し て 第2量
子
の ハ ミル トニ ア ン は特 定 の 粒 子 数 を指 定 し て い な
理 をみ た して い
を除 く本 書 全 体 を 通
子 化 の 方 法が 用 い られ る.
*3 陽 子 ま た は 中 性 子 の 状 態 で あ る こ と を 明 示 し な け れ ば な ら な い 場 合 に は に ア イ ソ ス ピ ン(isospin)のz成
分-1/2(陽
子)ま
た は1/2(中
性 子)を
,こ れ ら の 量 子 数 つ け 加 え る.
1.2.2
有 効相互作 用の全角運動 量展開
核 子 の 対 演 算 子(pair
operators)を
次 の よ う に 定 義 し よ う.
(1.35a) (1.35b) こ こ で お い て,mβ
で あ る.-β だ け を-mβ
と し た状 態,す
は1核
子 状 態
に
な わ ち
であ
る.こ れ らの 対 演 算 子 が 次 の 性 質 を持 つ こ と は容 易 に わか る:
(1.36a) (1.36b) 有 効 相 互 作 用Hintが
エ ル ミー ト(Hermitian)演
算 子 で,空
間 回 転 と 反 転,お
よ び 時 間 反 転 に 対 し て 不 変 で あ る と仮 定 す る と,
(1.37) と書 くこ とが で る.こ れ が 今 後 しば しば 使 わ れ る有 効 相 互 作 用 の2粒 運 動 量Jに
よ る 展 開式 で あ る.展 開係 数GJ(abcd)は
子の全角
実 数 とな り,*4次 の 関 係
式 を み た す:
(1.38a)
(1.38b) また
で な け れば な らな い.
つ い で な が ら,オ ー プ ン殻 に2核 子 が 存 在 す る と きの2核 子 系 の波 動 関数(状 態 ベ ク トル)に よる有 効 相 互 作 用Hintの 係 に つ い て 述 べ て お こ う.2核
行 列 要 素 と,上 記 のGJ(abcd)と
の関
子 系 の 規 格 直 交 化 され た状 態 ベ ク トル を
(1.39) *4 す べ て の 行列 要素 が 実数 とな る よ うに状 態 の位 相 を とる こ とが 可能 で あ る.以 後 そ の よ う な位 相 が と られ てい る もの とす る.
と表 す.記 号[…]JMは
全 角 運 動 量 の 大 きさ をJ,z成
分 をMに
合 成す ること
を意 味 す る.角 運 動 量 合 成 を表 す た め に,今 後 こ の 記 号 が しば しば 使 わ れ る. 状 態 ベ ク トル(1.39)に
よる 有 効 相 互 作 用.Hintの 行 列 要 素 は
(1.40) とな る.
1.2.3 対 相 関 力 1.1.4に お い て,オ ープ ン殻 に あ る 同種 粒 子 間 に は粒 子 対 の 全 ス ピ ン をJ=0 に 組 ませ る よ うな 対 相 関 力が 働 くとい うこ と,近 距 離 力 で あ る 有 効 相 互 作 用 が そ の源 で あ る とい うこ とを 述べ た.有 効 相 互 作 用 と して,短 距 離 相 互 作 用 の 極 限 で あ る と こ ろ の δ関 数 型 の ポ テ ン シ ャル
(1.41) を と り,同 種 粒 子 間 の 行 列 要 素 を計 算 す る と,少 し 面倒 な 計 算 に な るが
(1.42) が 得 ら れ る.た
だ し
た はlc+ld+J≠
で あ る.GJ(abcd)はla+lb+J≠
偶 数 の と き は0で
径 波 動 関 数Rnl(r)を
あ る.(1.42)式
の 中 のF0は1粒
偶 数,ま 子の動
用い て
(1.43) と表 され る. 単 一 の 準 位 用 す る場 合 に(1.42)式
にあ る2個
の粒 子 が δ関数 型 ポ テ ン シ ャ ルで 相 互 作
を適 用 して 行 列 要 素 を 求 め る と,
(J=偶
数)
(1.44)
と な る.た
と えば,準
位 の ス ピ ン をj=9/2
の2粒
子 系 の 固 有 状 態 はJ=
と す れ ば,こ 0,2,4,6,8の5通 ベ ル は 図1.4の J=0の
りで あ り,エ
ネ ル ギ ー ・レ
よ う に な る.こ
の結 果か ら
レ ベ ルが 特 別 に 下 が る こ とが わか
り,対 相 関 力 が 短 距 離 力 か ら 由 来 す る こ とが う な ず け る で あ ろ う. こ の よ う なJ=0の
核 子対が特 別に強 く
結 合 す る とい う短 距 離 力 の 特 徴 を強調 した相 互 作 用 が 対 相 関 力(pairing
force)で,そ
の
図1.4
δ関 数 型 相 互 作 用 に よ る2粒
子
系 のエ ネル ギ ー 固 有 値 1粒 子準 位 の ス ピ ン はj=9/2.
行 列 要 素 は通 常
(1.45) と 定 義 さ れ る.G0は 要 素 に
対 相 関 力 の 強 さ を 表 す 正 の 定 数 で あ る.(1.45)式
の 形 のj依
存 性 が 付 加 さ れ て い る 理 由 は,(1.42)式
と 置 い て み れば 直 ち に わ か る で あ ろ う.(1.45)式 相 関 ハ ミル ト ニ ア ン(pairing
を(1.37)式
の行 列 でJ=0
に 代 入 す る と,対
Hamiltonian)は
(1.46a) (1.46b) と 書 か れ る.た
1.2.4
だ し,
で あ る.
準 ス ピ ン とセ ニ ョ リテ ィ
こ こ で は オ ー プ ン 殻 に ス ピ ンjを
持 っ た 単 一 の 準 位(single-j
level)が
存在
す る 場 合 を 考 え る. 以 下 で 準 ス ピ ン(quasi-spin)の
理 論*5を
使 う こ と に す る.準
ス ピ ン演 算 子
S=(Sx,Sy,Sz)は
(1.47) *5 A
.K.Kerman,Ann.of
R.D.Lawson
Phys.12(1961)300. and
M.H.Macfarlane,Nucl.Phys.66(1965)80.
で 定 義 され る.た だ しnは 準位jに お け る粒子 数 演算子 で あ り, で あ る.ま
た
で あ る.こ れ らの 演 算 子 は 交換 関 係
(1.48) をみ た す.こ の 交 換 関係 は 角 運 動 量 の 交 換 関係 と同 形 で あ る ので,準
ス ピンの
性 質 は 角運動 量 の それ と ま った く同様 で あ る.す な わ ち, の 固有 値 をS(S+1)と は 量 子 数(S,S0)で き ま っ たSに
固 有 値 をS0と
指 定 で きる.Sは0ま
す れば,準
ス ピ ンの 固 有 状 態
た は 正 の 整 数 あ る い は半 整 数 で あ る.
対 し,
準 位jにn個 演 算 子Sは
し,Szの
の2S+1個
の 同 種 核 子が あ る場 合,す な わ ちjnの
すべ てJ=0対
が 許 され る.
配位 を考 え る.準 ス ピ ン
の 演 算 子 で 構成 され て い る か ら,全 角 運動 量 演 算 子
Jと 交 換 可 能 で あ る.す な わ ち の 同 時 固 有 状 態
で あ る.し たが っ て,
を系 の 基 底 ベ ク トル とす る こ とが で きる.Szの
定 義 か ら 明 らか な よ うに
(1.49) で あ る.す
な わ ち,S0は
(additional
quantum
系 の 粒 子 数 を 定 め る 量 子 数 で あ る.α number)と
呼 ば れ,基
は付加量 子数
底 ベ ク トル を 完 全 に 指 定 す る た め
に 必 要 な 残 りの 量 子 数 を 意 味 す る. 演 算 子S_を
ベ ク トル
1だ け 減 少 させ る.あ
るSの
に 作 用 さ せ る と,Sを 値 に 対 し て,最
変 え な い でS0を
小 のS0は-Sで
あ る か ら,
(1.50) で あ る.こ
の と きの 粒 子 数 をRacah代
セ ニ ョ リ テ ィ(seniority)ま
数 の 創 始 者Racahに
た は セ ニ ョ リ テ ィ数 と 呼 ぶ.演
粒 子 対 の 消 滅 演 算 子 で あ る か ら,(1.50)式 J=0対
な ら っ てυ と 書 き, 算 子S_はJ=0の
は ベ ク トル
が ま っ た く含 ま れ て い な い こ と を 示 し て い る.(1.50)式
に を 用 い る と,
(1.51)
と な る か ら,準
ス ピ ン の 大 き さSと
セ ニ ョ リテ ィ数υ
との 関 係 は
(1.52) で あ る. 上 に 述 べ た よ う に,jnの れ る.量
子 数Sは
配 位 の 基 底 ベ ク トル は 一 般 に
セ ニ ョ リ テ ィυ を 定 め,量
が わ か っ た の で,基
子 数S0は
粒 子 数nを
と表 さ 定 め ること
底 ベ ク トル は
(1.53) と 書 く こ と が で き る. (1.50)式
を み た す よ う な 状 態 は,セ
う な 特 別 な 状 態│jυ αυJM〉 state)と
呼ば れ る.こ
で あ り,最
ニ ョ リ テ ィ数υ が 粒 子 数nに
等 しい よ
高 セ ニ ョ リ テ ィ状 態(highest-seniority
の よ う な 状 態 ベ ク トル を 具 体 的 に 求 め る 方 法 は 後 で 述
べ る. 粒 子 数 がn,セ 態 にJ=0対 る.す
ニ ョ リ テ ィ数 がυ の 一 般 の 状 態 は,上 の 生 成 演 算 子S+を
記 の 最 高 セ ニ ョ リ テ ィ状
必 要 な 数 だ け 作 用 させ る こ と に よ っ て 得 ら れ
なわ ち
(1.54) で あ る.規 格 化 定 数 は
(1.55) で 与 え られ る.つ ま りセ ニ ョ リテ ィ数 は,J=0対 る.nが
偶 数 な らυ は 偶 数,nが
に 組 ん で い な い粒 子 数 で あ
奇 数 な らυ も奇 数 で あ る.
い う まで も な く,異 な る セ ニ ョ リテ ィを持 つ 状 態 は 互 い に 直 交 す る. 真 空│0〉 はn=0で n=υ=1,お
あ る か らυ=0で
あ る.簡 単 な最 高 セ ニ ョ リテ ィ状 態
よ びn=υ=2は,
(1.56a) J=偶 に よ っ て 与 え ら れ る.Clebsch-Gordan係
と な る こ と に 注 意 せ よ.
数 ≠0
数 の 対 称 性 に よ り,J=奇
(1.56b) 数 の場合
一 般 に,粒 式 にS+を
子 数nのυ=1やυ=2の
状 態 は,そ
必 要 な 数 だ け 作 用 さ せ れば よ い.た
れ ぞ れ(1.56a)式
と えば,υ=2の
や(1.56b)
状態 は
(1.57) で あ る.(た
だ し,J=偶
数 ≠0.)
1.2.5 対 相 関 ハ ミル トニ ア ンの 固有 値 単 一 準 位jに
あ るn個
の 同種 核 子が,(1.46)式
で 定義 した 対 相 関ハ ミル トニ
ア ンで 相 互 作 用 を し て い る もの とす る.こ の 場 合 の 系 の 全 ハ ミル トニ ア ンは
(1.58) で あ る.た
だ し,ε
は 準 位jの1粒
子 エ ネ ル ギ ー で あ る.こ
に 作 用 さ せ,
のHを
状態
を 考 慮 す る と,
(1.59) し た が っ て,
(1.60) を 得 る.す な わ ち,対 相 関 ハ ミル トニ ア ンの 固有 値 は
(1.61) で 与 え ら れ る. 偶 数 核 子 系 の 基 底 状 態 はυ=0と る.励
起 エ ネ ル ギ ー(excitation
な り,す べ て の 核 子 がJ=0対
n=偶
で あ る.奇 数 核 子 系 の 基 底 状 態 はυ=1で
数
(1.62)
あ る.こ の 場 合 の 励 起 エ ネ ルギ ー は n=奇
で あ る.い ず れ にせ よ,励 起 エ ネ ル ギ ーが 核 子 数nに きで あ る.準 位 の ス ピ ンj(し
を組 ん で い
energy)は
数 (1.63)
よ らな い こ と は注 目すべ
たが って Ω)が 十 分 大 きい 場 合 に は,隣
り合 う
固 有 状 態間 の エ ネル ギ ー差 は で あ り,こ れ はJ=0 対 を1個 壊 す エ ネ ル ギ ーが ∼G0Ω る こ と を示 し て い る.図1.5に
であ
偶数核子
系 の 励 起 エ ネ ル ギ ー の よ うすが 示 され て い る.
1.2.6 単一 準 位 のcfp 前 に述 べ た よ うに,原 子 核 に お け る有 効 相 互 作 用 の 最 も重 要 な部 分 は 対 相 関 力 で あ り,1.2.2に お い て議論 した行 列 要 素 GJ(abcd)に
お け る,J=0の
図1.5 jn配
位(n=偶
数)に お け る 対 相
関 ハ ミル トニ ア ン に よる 励 起 エ ネル
部分であ
ギ ー ・ス ペ ク トル
る.し か し対 相 関 力 だ け で は 原 子 核 の 構 造 を 理 解 す る こ と は で き な い.わ れ われ は有 効 相 互作 用 に お け るJ≠0の も考 慮 に入 れ た 配 位 混 合 の 計 算 を し な け れば な ら ない.そ
部分
の た め に は,与 え ら
れ た 核 子 数 の 系 の 規 格 直 交 化 され た基 底 ベ ク トル を求 め な け れ ば な らな い.こ こ で は ス ピ ンjの 単一準 位 の場 合 を 考 え よ う.
(a)1粒
子cfpの
定 義
jn配 位 の 規 格 直 交 化 さ れ た 基 底 ベ ク トル を 状 態 を 指 定 す る た め に 必 要 なn,J,M以 加 量 子 数(additional
quantum
と す る.量
子数 αは
外 の す べ て の 量 子 数 をひ っ くる め た 付
number)で
あ る.規
格直交性 は
(1.64) で あ る. 任 意 の(n-1)粒
子 系 の基 底 ベ ク トル
を作 用 させ る とn粒
底 ベ ク トル
に1粒 子 の 生 成 演 算 子
子 系 の状 態 ベ ク トル とな るか ら,こ れ をn粒
子系の基
で展 開す ると
(1.65) と 書 くこ と が で き る.展
開 係 数
を1粒
子cfp(coefficient
of fractional
parentage)と
と もあ る.(1.65)式
か ら1粒
呼 ぶ.あ
る い は こ れ を
子 の 生 成 演 算 子
と表 す こ
の行列要素 は
(1.66) と な る.あ
る い は,
は
(1.67) と書 くこ とが で き る. 粒 子 数 演 算 子
の行 列 要 素 を 計 算 す る こ と に よ って,cfpの
規格直交性
(1.68) が 容 易 に得 られ る.こ の 規 格 直 交 性 を用 いれ ば,(1.65)式
の逆 の関係式
(1.69) が 得 ら れ る.(1.69)式
は,(n-1)粒
子 系 の 基 底 ベ ク トル か らn粒
ベ ク トル を 作 る 手 続 き を 示 し て い る .し た が っ て,cfpが
子系 の基底
与 え ら れ る な ら ば,こ
の 式 に よ っ て 任 意 の 粒 子 数 の 系 の 基 底 ベ ク トル を よ り少 な い 粒 子 数 の 基 底 ベ ク トル か ら 逐 次 作 る こ とが で き る.
(b)1粒
子cfpの
計 算法
さ て,問
題 は い か に し て
オ ン の 反 交 換 関係 を使 う と,1粒
を 求 め る か で あ る.(1.69)式 子 演 算 子
とフェル ミ
の行 列要 素は
(1.70)
と な る.右
辺 の 第2項
に(1.69)式
と(1.66)式
を 用 い れ ば,(1.70)式
は
(1.71) と 書 き直 す こ とが で き る.た
だ し,
(1.72) で あ る.*6こ
こ で
で あ る.
そ の 行 列 要 素 が(1.72)式 P2=Pを 行 列P(jnJ)の 値 が1に
で 定 義 され る よ う な 演 算 子P(jnJ)は,エ
ル ミー トで,
み た す 一 種 の 射 影 演 算 子 で あ る こ と は 容 易 に 確 か め ら れ る.し 固 有 値 は0ま
た は1で
あ る.一 方(1.71)式
属 す る 固 有 値 方 程 式 に な って い る.つ
た が っ て,
は,行 列P(jnJ)の 固 有 値 が1に
属
す る 規 格 直 交 化 され た 異 な る 固 有 ベ ク トル を量 子 数 α で 指 定(ラ ベ ル)す れ ば,そ
の
成 分 が(jn-1(α1J1)j1}jnαJ)で 行 列P(jnJ)の しか し,上
あ る.し
た が っ てcfp(n→n-1)を
固 有 値 方 程 式 を 解 い て,固 に 述 べ た よ うにP2=Pで
もの が 固 有 値 が1に
ま り,行 列P(jnJ)の
固有
有 値 が1の
計 算 す る に は,
固 有 ベ ク トル を 求 め れ ば よ い.
あ り,行 列P(jnJ)の
各 々の 列 ベ ク トル そ の
属 す る 固 有 ベ ク トル に な って い る か ら,そ れ ら をGram-Schmidt
の 直 交 化 法 で 規 格 直 交 化 す る方 が 数値 計 算 上 は 高 速 で 容 易 で あ る. 行 列P(jnJ)の
行 列 要 素(1.72)は,(n-1)粒
上 の 方 法 で 粒 子 数 を 順 次 増 し てcfpを n=2の
系 のcfpは
子 系 のcfpを
用 い て 与 え られ る の で,
求 め る こ とが で き る.た
と え ば,n=1お
よび
そ の 定 義 か ら 直 接 計 算 す る こ とが で きて,
(1.73)
偶数, 奇数 で あ る か ら,こ
*6
れ ら を(1.72)式
は6j
等 し い.詳
門 書 を 参 照 さ れ た い.た
Momentum,
Princeton 2nd
子 系 のcfpが
-記 号 と 呼 ば れ る 量 で あ り,Racah係
た(-1)a+b+c+aW(abcd;ef)に
Mechanics,
に 代 入 す れ ばn=3粒
ed.,
と え ば,A. Univ. Oxford
Press Univ.
R.
数W(abcd;ef)に
し く は,角 Edmonds,
(1957). Press
D.
M.
(1968).
符 号 肝
運 動 量(Racah代 Angular
Brink
Momentum and
G.
求 ま り,
R.
数)に in Satchler,
を か け 関 す る 専 Quantum Angular
(1.74) とな る.3粒
子 系(n=3)の
場 合,独 立 な状 態 を指 定 す る付 加 的 量 子 数 α は, を み た す 偶 数 ス ピ ンJ'1と な る.
(c)2粒
子cfp
前 々項 に お い て
を説 明 した が,場
合 に よっ て は2粒
子cfp
が た い へ ん 有 用 で あ る. 任 意 の(n-2)粒 子
子 系 の基 底 ベ ク トル
を作 用 させ る とn粒
子 系 の 基 底 ベ ク トル
に2粒 子 対 の生 成 演 算
子 系 の状 態 ベ ク トル と な る か ら,こ れ をn粒 で展 開 す る と
(1.75) と書 くこ とが で き る.こ の と きの 展 開係 数 子
で あ る.し たが って 対 演 算 子
が2粒 の行列 要素は
(1.76) と な る.あ
る い は,
は
(1.77) と 書 く こ とが で き る.ま
た,関
係 式
(1.78) の 両 辺 の 行 列 要 素 を計 算 し,(1.76)式
を使 えば,
の規格直交性
(1.79)
が 容 易 に得 られ る.こ の 規 格 直 交 性 を用 いれ ば,(1.75)式
の 逆 の 関係 式
(1.80) が 得 られ る.
2粒 子cfpを1粒
子cfpで 表 す こ とは 容易 で あ る.な ぜ な らば 対演 算 子
の 行 列 要 素 を1粒 子 演 算 子
の行 列 要 素 に 分 解 す れ ば よい か らで あ る.そ の
結 果 は,
(1.81) こ れ ら の2粒
子
を 用 い れ ば,2体
力 の ハ ミ ル トニ ア ン
(1.82) の 行 列 要 素 は 簡 単 に 表 示 す る こ とが で きて,
(1.83) と表 され る.
1.2.7 単一 準 位 の セ ニ ョ リ テ ィ ・ス キ ー ム のcfp 1.2.6で は,議 論 を簡 単 にす るた め,あ え て セ ニ ョ リテ ィを指 定 し な いで 基 底 ベ ク トル を作 っ た .一 方,殻 模 型 にお け る最 も重 要 な 残 留 相 互 作 用 は対 相 関 力 で あ る.1.2.5で
述 べ た よ うに,単 一 準 位 で 相 互 作 用 が 対 相 関力 だ け で あ れ ば セ
ニ ョ リテ ィが 良 い 量 子 数 で あ る.し か し,一 般 に は系 の 固 有 状 態 は 異 な るセ ニ ョ リテ ィ数 の 混 合 した 状 態 とな る.に
もか か わ らず 対 相 関力 の 強 い 殻 模 型 に お い
て は,配 位 混 合 の 基 底 ベ ク トル とし て は セ ニ ョリテ ィ数 で 指 定 した の 形 を と るの が 便 利 で あ る.こ の よ うな 方式(形式)を
セ ニ ョ リテ ィ ・ス キ ー ム
(seniority
scheme)と
呼 ぶ.以
下 で セ ニ ョ リ テ ィ ・ス キ ー ム に お け る 規 格 直 交
化 され た 基 底 ベ ク トル の 作 り 方 に つ い て 述 べ よ う. セ ニ ョ リ テ ィ ・ス キ ー ム の 状 態 ベ ク トル を 作 る に は,1.2.4で ま ず 最 高 セ ニ ョ リ テ ィ(highest-seniority)の な 個 数 の0対
演 算 子S+を
述 べ た よ う に,
基 底 ベ ク ト ル を 作 り,これ
に必 要
作 用 さ せ て 一般 の 基 底 ベ ク トル を 作 る.
(a) 最 高 セ ニ ョ リ テ ィ のcfp−cfp(hs) 単 一 準 位 に お け る セ ニ ョ リ テ ィ ・ス キ ー ム の 規 格 直 交 化 さ れ た 基 底 ベ ク トル を│jnα
υJM〉
と す る.規
格 直交性 は
(1.84) で あ る.これ
らの 基 底 状 態 の う ち,最 高 セ ニ ョ リテ ィ状 態 を特 別 に
(1.85) と 表 す こ と に す る. 1粒 子
は,1.2.6の
場 合 と ま っ た く 同 様 に,
(1.86) で 定 義 され る.これ
ら のcfpの
略 す:hsはhighest-seniorityの
中 で 最 高 セ ニ ョ リ テ ィのcfp(以 略)を
特 に
後cfp(hs)と と 表 す.す
な わ ち,
(1.87) で あ る.これ
らのcfpの
規格 直交性 は
(1.88a) (1.88b)
と 書 か れ る.(1.69)式
と ま っ た く 同 様 に,
(1.89) で あ る.さ
て,最
高 セ ニ ョ リテ ィ状 態 の 場 合 に は(1.89)式
に対 応 す る 関 係 式 は
ど う な る で あ ろ うか. こ こ で,セ
ニ ョ リ テ ィ・ ス キ ー ム で の 基 底 ベ ク トル を,1.2.4で
ス ピ ン の 表 記 法 を 用 い て(1.53)式 る 事 柄 の み に 限 られ る の で,簡
を 単 に│SS0〉
で 表 す.以
下 の 議 論 は セ ニ ョ リ テ ィに 関 す
単 の た め 量 子 数(αJM)は
と 表 すこ と に す る.状
生 成 演 算 子c† を 作 用 さ せ る と,粒
子 数 が1増
省 略 す る.す
態 ベ ク トル│SS0〉
え る の でS0→S0+1/2と
SはS→S±1/2の2種
類 の 成 分 が で き る.つ
変 化 す る.し
高 セ ニ ョ リ テ ィ状 態
た が っ て,最
議 論 した準
なわ ち
に1粒
子 の な り,
ま り セ ニ ョ リ テ ィが ±1だ
け
にc† を 作 用 させ
る と,
(1.90) と な り,右 辺 の 第1項 が セ ニ ョ リテ ィが1だ し た 成 分 で あ る.し た が っ て,第1項
け増 加 し た 成分,第2項
が1減
少
は 最 高 セ ニ ョ リテ ィ状 態 で あ る.次 に 準
ス ピ ン 演 算 子 を用 い て,演 算 子
(1.91) を 導 入 す る.演
算 子pを(1.90)式
の 両 辺 に 作 用 させ る と,
が 得 られ る か ら,演 算 子pは 状 態 ベ ク トル
の 中 か ら最 高 セ ニ ョ リテ ィ
の 成 分 を 選 び 出す 働 き をす る.し た が っ て 最 高 セ ニ ョ リテ ィ状 態 に対 して は,
(1.92)
と な る.(1.92)式
は,(n-1)粒
子 系 の 最 高 セ ニ ョ リ テ ィ の 基 底 ベ ク トル か ら
n粒 子 系 の 最 高 セ ニ ョ リ テ ィ の 基 底 ベ ク ト ル を 作 る 手 続 き を 示 し て い る .し が っ て,cfp(hs)が
与 え られ る な ら ば,こ
た
の 式 に よ って 任 意 の 粒 子 数 の 系 の最
高 セ ニ ョ リ テ ィの 基 底 ベ ク トル を よ り少 な い 粒 子 数 の 基 底 ベ ク トル か ら逐 次 作 る こ と が で き る.
(b)cfp(hs)の
計 算法
最 高 セ ニ ョ リテ ィ のcfpの セ ニ ョ リテ ィの 状 態 に よ る1粒
計 算 は1.2.6の(b)項
と 同 様 に 行 う こ とが で き る.最 高
子 演 算 子 の 行 列 要 素 は,(1.92)式
を用 いて
(1.93) と書 か れ る.演
算 子pの
定 義 式(1.91)と,関
係式
(1.94) と を使 っ て(1.93)式
を書 き な お す と,
(1.95) が 得 られ る.こ
の 後,少
た す べ き 連 立 同次1次
し ば か りRacah代
数 に 関 す る 計 算 を行 っ た 後cfp(hs)の
み
方程 式
(1.96) が 得 ら れ る.た
だ し,
(1.97) で あ る. (1.71)式 に お け る行 列P(jnJ)の Qを
み たす の で,行
の1組
列Q(jnJ)の
の 解 に な っ て い る.し
法 で 規 格 直 交 化 す れ ば,付
場 合 と 同様 に,行 列Q(jnJ)は
エ ル ミー トでQ2=
各 々 の 列 ベ ク トル そ の もの が 連 立1次 た が って
これ ら を,た
方 程式(1.96)
と え ばGram-Schmidtの
直交化
加 的 量 子 数 α で ラ ベ ル 付 け され た 独 立 な 組 のcfp(hs)が
得 られ る. 行 列Q(jnJ)の
行 列 要 素(1.97)は,(n-1)粒
子 系 のcfp(hs)を
の で,上
の 方 法 で 粒 子 数 を 順 次 増 し てcfp(hs)を
(c)低
い セ ニ ョ リ テ ィ のcfp−cfp(ls)
低 い セ ニ ョ リ テ ィ状 態(lower-seniority 対 の 生 成 演 算 子S+を
用 い て 与 え られ る
求 め る こ とが で き る.
state)は
最 高 セ ニ ョ リ テ ィ 状 態 に0
必 要 な 個 数 だ け 作 用 さ せ るこ とに よ っ て 得 られ る.す
な
わ ち
(1.98) で あ る.規
格 化 定 数Npυ
粒 子 演 算 子
の 行 列 要 素 は
い セ ニ ョ リ テ ィ のcfp(以 求 め られ る.結
与 え られ る.こ
の 状 態 ベ ク トル に よ る1
の 行 列 要 素
質 や 交 換 関 係(1.94)を が,こ
は(1.55)で
は 準 ス ピ ンの 性
使 っ て 容 易 に 計 算 す るこ と が で き る.い の と き だ け0で 後cfp(ls)と
な い 値 を 持 つ.そ
略 す:lsはlower-seniorityの
うま で も な い の 結 果 か ら低 略)が
果は
(1.99) で あ る.
(d) ま とめ 以 上 でcfp(hs)とcfp(ls)を
含 め た セ ニ ョ リテ ィ ・ス キ ー ム のcfpの
に 関 す る 定 式 化 が で きた.これに
すべ て
よ って 単 一 準 位 の 場 合 の 与 え られ た 粒 子 数 の
す べ て の 基 底 状 態 を作 るこ とが で き,ま た 配 位 混合 の 計 算に 必 要 な 種 々の 演 算 子の行 列要素 を は,これ
これ らのcfpを
らのcfpは
用 い て 表 すこ とが で きる.実 際 の計 算に お い て
数 値 デ ー タ と し て計 算 機 の 中に 保 存 され,必
要に 応 じて 呼
び 出 され るの が 通 例 で あ る.
1.2.8 多 準 位 系 の基 底 ベ ク トル オ ープン 殻 に単 一 の準 位(single-j level)し か 存 在 しな い 場 合 の 基 底 ベ ク トル
の 構 成 の 方 法 は 上に 述 べ た通 りで あ る.し か し一 般に は オ ー プ ン
殻に 複 数 の 準 位 が あ る 多 準 位(many-levelま 準 位 の 数 をNと
た はmultilevel)系
し,各 準 位 の ス ピン を
が 通 例 で あ る.
とす る.
各 準 位 内 を記 述 す る基 底 ベ ク トル は前述 の よ うに構 成 す る と し て,これ ら の 各 準 位 の 基 底 ベ ク トル の 積 を 作 り,全 体 の 全 角 運 動 量 を 合 成 し た基 底 ベ ク トル
(1.100) を構 成 す る に は も う1段 の 工 夫 が 必 要 で あ る.た だ し, は{1,2,…,N}の
中 の特 定 の 組 で あ り,これ に よ っ てこ の 基
底 ベ ク トル を 構 成 す る準 位 が 示 され る.Iは
全 角 運 動 量 の 大 きさ,Kは
そ のz
成 分,α は 一次 独 立 な基底 状 態 を指 定 す る付 加 量 子 数 で あ る. は,ス
ピンjk1の
が(Jk1, Mk1)に
準 位k1にnk1個
の 粒 子 が 入 って,全
分
角 運 動 量 お よびz成
合 成 され て い て,付 加 量 子 数αk1で 指 定 され る状 態に あ る こ
と を表 し て い る.こ の よ うな 状 態 は1.2.6な
ど の 項 で 説 明 した 単 一 準 位 のcfp
に よ っ て構 築 され る. 問 題 は,(1.100)式
の よ うに 各 準 位 の 基 底ベ ク トル の 積 ベ ク トル か ら,い か
に して 全 系 の規 格 直 交 化 され た 基 底 ベ ク トル を作 るか,とい の 目的 の た め に,従 来 のcfpと
うこ とで あ る.こ
は ま っ た く概 念 を異 にす る新 型 のCFPを
導入
す る.*7 *7 従 来 のcfpと K.
Takada,
は 異 な る 概 念 で あ るこ M.
Sato
and
S.
と を 強 調 す る た めに
Yasumoto,
Prog.
Theor.
,わ
ざ と 大 文 字 で"CFP"と
Phys.
104
(2000)
173.
表 す.
(a) 新 型CFPの N種
定義
類 の"粒 子"
の ス ピンJkが
を 導 入 す る.これ
らの"粒 子"は そ
半 整 数 な ら フ ェ ル ミオ ン,整 数 な らボ ソン と し,(反)交
換 関係
(1.101a) (1.101b) を み た す もの とす る. │0))をこ の"粒 子"の 真 空 とす る
.以 後,"粒
子"が0個
ま た は1個
のみ存在
す る状 態 ベ ク トル だ け を 考 え,規 格 直 交 化 され た 多"粒 子"状 態 を
(1.102) とす る.た だ し,
は{1,2,…,N}の
中
の 特 定 の 組 で あ る. 要 す るに 多"粒 子"状 態(1.102)は,多 異 な る 準 位 の 状 態 を表 す 多 粒 子 演 算 子
準 位 の 多 粒 子 状 態(1.100)に
おけ る
の 置 換に 関 す る対 称性 −
入れ 換 えに 対 し て 符 号 が 反転 す るか 否 か − の 性 質 の み を 表 す た め の仮 想 的 な "粒 子"で あ る . さ てここ で,新
型 のCFP
を次 式
で 定 義 す る:
(1.103) 書 き直 す と
(1.104) が 得 られ
る.iが{k1,k2,…,kn}の
記号(k1,k2,…,kn;i-1)は,(k1,k2,…,kn)の され
てい
る)こ
と を 意 味 す る.
中に
な い な ら ば,こ 中 か らiが
のCFPは0で
あ る.
抜 け 落 ち て い る(消
"粒 子"の 個 数 演 算 子 は
(1.105) で あ る.両
辺 の 行 列 要 素 を 計 算 し,(1.104)式
を 使 え ば,CFPの
規 格 直 交性 は
(1.106) と な る.CFPの
定 義 式(1.103)と
規 格 直 交 性(1.106)と
を使 っ て
(1.107) が 得 られ る.
(b) 新 型CFPの (1.107)式
計 算法
と(反)交
換 関係(1.101)式
と を 用 い て,"粒
子"の 生 成 演 算 子 の 行 列 要
素は
(1.108) と書 くこ とが で き る.右 直 せ ば,CFPが
辺 の{}の
中 の 第2項
み た す べ き連 立 同次1次
を(1.107)と(1.104)式
を使 っ て 書 き
方程式
(1.109)
が 得 られ る.た
だ し,
(1.110) で あ る. 行 列R(k1,k2,…,kn;I)は ベ ク トル そ の もの が 連 立1次 を,た
と え ばGram-Schmidtの
(additional
quantum number)α
れ る.数 値 計 算 上 は の で,後
エ ル ミー トでR2=Rを み た す の で,Rの 各 々の 列 方 程 式(1.109)の 解 に な っ てい る .し た が っ て これ ら 直 交 化 法 を使 っ て 規 格 直 交 化 すれ ば,付
で ラベ ル 付 け され た 独 立 な 組 の 新 型CFPが
これ で も よい が,普
通 は 割 合 小 さいnの
で 示 す よ うに 解 析 的に 求 め たCFPの
(c) 新 型CFPに
加的 量子 数
方 が 有 用 で あ る だ ろ う.
関 す る有 用 な公 式
い ま 考 え て い る 状 態に お い て は,"粒
子"数
は1ま
た は0で
あ る か ら,
ま た は0
で あ る.両
辺 の 行 列 要 素 を 計 算 し,(1.104)式
の 任 意 のiに
求めら
場 合 の み が 必 要 と され る
対 す るCFPの
も う1つ
(1.111)
を使 え ば,{k1,k2,…,kn}の
中
の規格直交性
(1.112) が 得 られ る.こ
の 規 格 直 交 性 を(1.103)式
に 適 用 すれ ば,任
意 のiに
対 して
(1.113)
が 得 られ る.し
たが っ て 新 型CFPが
与 え られ た な らば,こ の 関係式 を使 っ て
低い"粒 子"数 の 状 態 か ら高い"粒 子"数 の 規 格 直 交 化 され た 状 態 を順 次 作 る こ とが で き る.
(d) 新 型CFPの
具 体 的表 式
もち ろ ん,CFPの
表 現 は 唯 一 で は ない.行 列 要 素 が(1.110)で
列Rの1つ
の 列ベ ク トル が1組
か ら ス ター トして 順 次nの 下 にn=4ま
で の1組
記 号i, j, kお
な く,n=2の CFPの
与 え られ る行
も簡 単 なn=1の
場合
大 きい 場 合 の 具 体 的 な 解 を求 め るこ とが で きる.以
の 解 を示 す.
よびlが
を表 す もの とす る.し
の 解 を 与 え るの で,最
それぞれ,第1,第2,第3お
たが って,た
場 合に はiとjの2種
とえ ばn=1の
よび 第4番
目の"粒 子"
場 合に はiの"粒
子"し か
類 の"粒 子"が あ る.
具 体 例 は 以 下 の 通 りで あ る.
n=1の
場 合,
(1.114) n=2の
場 合,
(1.115a) (1.115b) た だ しIは n=3の
を み た さ な けれ ば な ら な い.
場 合,
(1.116a)
(1.116b) (1.116c) た だ し,こ
の 場 合,付
加 的 量 子 数 α は ス ピンI'1で
表 され る.
n=4の
場 合,
(1.117a)
(1.117b)
(1.117c)
(1.117d) た だ し こ の 場 合,付
加 的 量 子 数 α1は ス ピ ンI'1で 表 さ れ,α
は ス ピ ンI'とI"
の 組 で 表 さ れ る.*8
(e) まとめ 準 位 の 数 がN,各 え る.系 る か ら,結
準 位 の ス ピ ン がj1,j2,,…,jNで
の 基 底 ベ ク トル は,各
準 位 の1準
あ る よ うな 多準 位 系 を考
位 系 基 底 ベ ク トル の 直 積 で 構成 さ れ
局
(1.118) *8
は9j-記
号 と呼 ば れ る 量 で あ る.詳
専 門 書 を 参 照 さ れ た い.*6
し くは,角
運 動 量(Racah代
数)に
関す る
と 表 さ れ る.し
た が っ て,系
の 基底 ベ ク トル を指 定 す る量 子 数 を整 理 す る と
(1) 各 準 位 の 粒 子 数:n1,n2,…,nN. (2) 各 準 位 の 付 加 的 量 子 数:α1,α2,…,αN.(こ
れ ら の 中 に は 各準 位 の セ
ニ ョ リ テ ィ も含 まれ る.) (3) 各 準 位 の 多 粒 子 の 全 ス ピ ン:J1,J2,…,JN. (4) 多 準 位 系 の 合 成 に 関 係 す る 付 加 的 量 子 数:α. (5) 全 角 運 動 量 の 大 き さ とz成 と な る.(1.118)式
分:I,K.
の 左 辺 に お い て は,量
子 数(1)-(3)を
ま と め て,
(1.119) と表 示 され て い る. この よ うに し て,各
々の 準 位 のcfpや,こ
成 す る た め の 新 型CFPを
用 い て,多
れ らの 多 準 位 の状 態 ベ ク トル を合
準 位 系 の 完 全 な 基 底 ベ ク トル が 完 成 し,
配 位 混 合 の 計 算 が 原 理 的 に は可 能 に な る.し か しな が ら,準 位 数Nや n=n1+n2+…+nNが
粒子数
大 き くな る と,基 底 状 態 の 数(し た が って 解 くべ き
固 有 値 問 題 の 次 元 数)は た ち ま ち膨 大 と な っ て,現 実 的 に は 計 算 不 可 能 と な る で あ ろ うこ とは 容 易 に推 測 で き る. 一般 に は,2種
類 の 核 子(陽 子 と中性 子)の 各 々の 系 を 合 成 して 全 体 の 系 の 状
態 ベ ク トル を 作 ら な けれ ば な らな い.そ の ため に 次 元 数 は さ らに 増 加 す る.た とえ ば,1s1/2,0d3/2お
よび0d5/2で
構 成 され る い わ ゆ るsd殻
大 の 次 元 数 は 陽 子 ま た は 中性 子 だ け な ら33次 元(陽 子 数Z=6,中 ま た はZ=0,N=6で 合 は15,386次 び0f7/2で
元(Z=6,N=6,I=3の
と き),陽 子,中
性 子 数N=0,
性 子 が と もに あ る場
と き)で あ る.
およ
構 成 され る い わ ゆ るpf殻 に お い て,最 大 の次 元 数 は 陽 子 また は 中性
子 だ け な ら2,468次 の と き),陽 子,中 I=6の
全 角運 動 量I=2の
に お い て,最
元(Z=10,N=0,ま
た はZ=0,N=10で
性 子 が と もに あ る場 合 は232,623,876次
と き)で あ る.比 較 的 軽 いsd殻
全 角 運動 量I=4 元(Z=10,N=10,
やpf殻 で す ら この 次 元 数 で あ るか ら,
中 重 核 に な る と配 位 混 合 の 計 算 を正 直 に 実 行 す る こ と は不 可 能 で あ る.何
らか
の 模 型 や 空 間 の 切 断 や 近 似 が 必 要 に な っ て くる.こ れ こ そが 核 構 造 論 の最 重 要 問 題 の1つ
で あ るだ ろ う.
1.3 配 位 混 合 の 実例 と原 子 核 の 電 磁 気 的 性 質
前節 に お い て,多 準 位 多 粒 子 系 の 基 底 ベ ク トル を作 り配位 混 合 を 行 う方法 につ い て 詳 し く述 べ た.我 calculation)と
々 は しば しば 配位 混 合 の 計 算 を殻 模 型 計 算(shell-model
呼 ん で い る.実 際 の 殻 模 型 計 算 を行 って,ど
構 造 が 理 解 で き るか,以
の よ うに 原 子 核 の
下 で そ の 実例 を示 そ う.ま た,原 子 核 の 性 質 を特 徴 付
け る い くつか の 物 理 量 が 考 え られ るが,中 で もそ の 基 底 状 態(お よび 低 い励 起 状 態)の 電 磁 気 的 性 質 は 重 要 で あ る.原 子 核 の 電 磁 気 モー メン ト(electromagnetic moment)が
殻 模 型 に よ っ て ど の よ う に理 解 で き るか 検 討 し よ う.
1.3.1 有 効 相 互 作 用 の 選 択 原 子 核 は 多 数 の 核 子 が 核 力 とい う短 距 離 相 互 作 用 に よ っ て 結 合 し た 核 子 多 体 系 で あ り,核 力 は平 均 化 され 第0近 似 に お い て 平均 ポ テ ン シ ャル とな るが,こ の平 均 ポ テ ン シ ャル に吸 収 され な い残 留 相 互 作 用 が 残 り,こ れ が 有 効 相 互 作 用 と し て 殻 模 型 に お け る配 位 混 合 を引 き起 こ す 原 因 と考 え られ る.核 力 か ら有 効 相 互 作 用 へ 導 く理論 的 プ ロ セ ス につ い て は 第2章 で 議 論 す る こ と に して,こ で は 当 面,有 効 相 互 作 用 が 短 距 離2体 殻 模 型 計 算 に お け る2核 子i,j間
こ
力 で あ る と し よ う.
の 有 効 相 互作 用 は,通 常
(1.120) と書 か れ る.こ
こ でT,Sは,そ
び ス ピ ン状 態 を表 す.VTSは
れ ぞ れ,2核
子 の ア イ ソ ス ピ ン(isospin)お
有 効 相 互 作 用 の 強 さ(strength),PTSは2核
ア イ ソ ス ピ ン お よび ス ピ ンが それ ぞ れTお
よびSで
よ 子の
あ る状 態 へ の 射 影 演 算 子
で あ る. 有 効 相 互作 用 の 荷 電 独 立 性(charge るの で,当
該 の 核 子 が 陽 子(p)で
に,ア イ ソ ス ピ ン のz成
あ るか 中性 子(n)で
分 が-1/2か1/2か
す た め に合 成 し た ア イ ソ ス ピ ンTを (ppま た はnn)な 場 合 とT=0の
independence)を
らばT=1の 場 合 が あ る.い
仮 定 す るの が 普 通 で あ あ るか を 区 別 す る代 わ り
で 表 し,2核
子 の 荷 電 の状 態 を表
用 い るのが 便 利 で あ る.2核
み,異 種 核 子(pnま う まで もな く,2核
た はnp)な
子が 同種核子 らばT=1の
子 の ア イ ソ ス ピ ン波 動 関 数
はT=1の
と き対 称,T=0の
有 効 相 互 作 用(1.120)の す る 関 数 が と ら れ る.殻 型 やYukawa型
と き 反 対 称 で あ る. 中 のf(r)と
し て,普
通 は2核
子 間の 距 離 だ け に 依 存
模 型 計 算 に お い て よ く用 い ら れ る 関 数 形 に は,Gauss
が あ る.Gauss型
は
(1.121) Yukawa型
は
(1.122) で あ る.こ れ らの 関 数 の 中 の μ は 相 互 作 用 の 到 達 距 離(range;作 数 を表 す パ ラ メ ー タ ーで あ る.ま た 場 合 に よ って は,f(r)と 核 の 表 面 に あ る と き(す な わ ちri=rj=R0の ル タ関 数 型 の力(SDI:
して2核 子 が 原 子
と き)に の み 作 用 す る よ うな デ
surface-delta interaction)を 仮 定 す る こ と もあ る.
したが って,有 効 相 互 作 用(1.120)の 到 達 距 離 の 逆 数 を表 す μ との 計5個 な るが,こ
用 半 径)の 逆
中 に は,相 互 作 用 の 強 さを 表 すVTSと
が パ ラ メー ター と して 含 まれ て い る こ とに
れ ら の パ ラ メー タ ー の 値 は,殻 模 型計 算 の 問 題 ご とに 計 算 の 結 果 が
実 験 デ ー タ をで き るだ け よ く再 現 す る よ うに き めれ ば よい. 有 効 相 互 作 用が 与 え られ た な らば,1.2.2に
お いて 議 論 した行 列 要 素GJ(abcd)
が 求 め ら れ,有 効 相 互作 用 の ハ ミル トニ ア ンHintが
き ま る.こ れ に よ っ て 配
位 混 合 の 計 算 が 可 能 に な る. 上 に 述べ た有 効 相 互 作 用 の 中 のパ ラ メ ー ター は5個 で あ っ た が,も
っ と複 雑
な 関 数 形 を導 入 し,も っ と多 数 の パ ラ メ ー ター を扱 うこ と も可 能 で あ る.パ ラ メー ター の 数 が 増 え れ ば,そ れ だ け 計 算 結 果 が よ り多 くの 実 験 デ ー タ を よ り よ く再 現 で き るで あ ろ う.極 論 す れ ば 可 能 なす べ て の 行 列 要 素GJ(abcd)を
すべ
て 独 立 な パ ラ メー タ ー と して 取 り扱 い,配 位 混 合 の 計 算 結 果 が よ り多 くの 実 験 デ ー タ を再 現 す る よ うに きめ る こ と もで きる.一 般 には あ る領 域 の 原 子 核 を対 象 に した 場 合,行 多 い の で,完
列 要 素GJ(abcd)の
数 よ り再 現 す べ き実験 デ ー タ の 数 の 方 が
全 に それ らを 再 現 す る こ とは で きな いが,全
体 と し て で き るだ け
よ く再 現 す る よ うに行 列 要 素 を きめ る.ま た オ ープ ン殻 内 の 配 位 混 合 で は ど う して も理 解 で き な い よ うな 実 験 デ ー タ も存 在 す る の で,そ の よ うな デ ー タは 再 現 の 対 象か ら除 外 す る.こ の よ うな 分 析 を積 み 重 ね る こ と に よ っ て,対 象 とす る領 域 の 原 子 核 の 構造 や 有 効 相 互 作 用 の 性 質 に つ い て の 理 解 を深 め る こ とが で き る.こ の よ うな 考 え に 基 づ く分 析 は,最 初 にCohenとKurathに
よ ってp
殻 の 領 域(2と8の
マ ジ ッ クナ ンバ ー の 間 の 領域:オ ー プ ン殻が
準 位 で 構 成 され る)に お い て行 われ た.*9そ の 後sd殻
やpf殻
の
にお いて も同様 な
試 み が な され て い る.*10こ の よ うな 方 法 を用 い た 計 算 結 果 につ い て は 後 述 す る. 原 子 核 を構 成 す る核 子 間 に働 く力 は 核 力 で あ る か ら,有 効 相 互 作 用 も核 力 か ら導 か れ る はず で あ る.有 効 相 互 作 用 を第1原 理 か ら(す なわ ち核 力 か ら)導 く の が 最 も望 ま し い こ とは い うまで もな い.し か し,そ の 理 論 に 関 して は さ まざ ま な検 討 が 必 要 で あ り,詳 し くは 第2章
で 述べ る こ と にす る.KuoとBrown
は そ の よ うな 理 論 を用 い て,有 効 相 互 作 用 の行 列 要 素 を数 値 的 に 求 め た.*11そ の 結 果 を 用 い た 殻 模 型 計 算 につ い て も後 述 す る.
1.3.2 配 位 混 合 計 算 の い くつ か の 実 例 上 に述 べ た よ う に種 々 の有 効 相 互 作 用 の 選 択 を 行 い,配 位 混 合 の 計 算 を 割 合 簡 単 に 行 うこ との で きるsd殻
やpf殻
の い くつ か の 原 子 核 を例 に とっ て,エ
ネ
ルギ ー 準 位 の 計 算 結 果 を 実験 値 と比 較 して み よ う.な お,最 近 コ ン ピ ュ ー ター に 関 す る環 境 が 整 って きた の で,配 位 混 合 計 算 を取 り扱 う汎 用 プ ログ ラ ムが い くつ か 開発 され,公
開 され て きた.著 者(Takada)もSato,
Yasumotoと
し て,本 章 で 説 明 した 配 位 混 合 の 定 式 を用 い た 汎 用 プ ログ ラ ムjjSMQを
協力 作成 ・
公 開 した.*12以 下 の 計 算 例 に お い て は,他 の 多 くの 研 究 にお い て 提 案 され た 有 効 相 互 作 用 の パ ラ メ ー タ ーや 行 列 要 素 を このjjSMQに
入力 して 求 め た 結 果 が,
基 底 状 態 の エ ネ ルギ ー を基 準 に して,励 起 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー 準 位 の 形 で 示 され て い る.
(a) sd殻 核 の 例 い わ ゆ るsd殻 核 は,マ ジ ッ クナ ンバ ー8と20の 殻 の1粒
子 準 位 が
お よび
こ の 領 域 の 殻 模 型 計 算 はArimaら *9 S *10 B J. B. *11 T
. Cohen . H. B. A.
and
D.
Wildenthal, McGrory, Brown
Kurath,
Nucl.
Prog. Phys.
Part.
and
B.
Rev. H.
C8
Phys. Nucl. (1973)
Wildenthal,
ープ ン
で 構 成 され る 領域 の 核 で あ る.
に よ っ て 早 い 時 期 か ら精 力 的 に 行 わ れ 73
(1965)
Phys.
11
1. (1984)
5.
693. Ann.
Rev.
. T. S. Kuo and G. E. Brown, Nucl. Phys. *12 こ の パ ッ ケ ー ジ は 九 州 大 学 原 子 核 実 験 室 のFTPサ る.ftp://kutl.kyushu-u.ac.jp/pub/takada/jjSMQ/
間 の 領 域 の 核 で,オ
85
Nucl.
Part.
Science
(1966) 40. イ ト か らanonymous
38
(1988)
ftpで
29. 取 得 で き
た.*13以
下 の 図1.6−
図1.11に
示 は,彼
ら が 選 ん だYukawa型
お い て"Yukawa"ま お よ びGauss型
の パ ラ メ ー タ ー を 採 用 し た も の で あ る.以 は,有
よ う にWildenthalら
い う表
の 有 効 相 互作 用 と まっ た く同一
下 の 図 に お け る"USD"と
効 相 互 作 用 の 行 列 要 素GJ(abcd)を
殻 模 型 計 算 の 結 果 がsd殻
た は"Gauss"と
い う表 示
独 立 な パ ラ メ ー タ ー と し て 変 化 させ,
核 の 実 験 デ ー タ を 全 体 的 に で き る だ け よ く再 現 す る
に よ っ て きめ られ た 行 列 要 素 を 使 っ て 配 位 混 合 を 行 っ た
も の で あ る.行
列 要 素 の 値 は*10の
論 文 で 与 え ら れ て い る.ま
け る"Kuo"と
い う 表 示 は,KuoとBrownが
議 論 し た 核 力 か ら有 効 相 互 作 用
を 導 く理 論 を 用 い て 数 値 的 に 求 め た 行 列 要 素*14を 配 位 混 合 の 計 算 はHalbertら
た以下の図にお
用 い た も の で あ る.実
際の
に よ っ て 報 告 さ れ て い る.*15
こ れ ら の 結 果 を 見 る と,さ す が に 多 数 の パ ラ メ ー タ ー を 探 索 し て 合 わ せ た "USD"が 実 験 値 を 最 も よ く再 現 し て い る .一 方,Yukawa型 お よびGauss型 の 有 効 相 互 作 用 で は 実 験 値 の 大 ま か な 傾 向 は 求 め ら れ る が,詳 ず し も う ま くい く と は い え な い.核
力 か ら 導 い たKuoの
細 に わ た って は必
行 列 要 素 の 方 が,む
し
ろ よ い 結 果 を 出 し て い る こ と は 注 目 す べ きで あ ろ う.
(b) pf殻
核の例
い わ ゆ るpf殻
は,マ
ジ ッ ク ナ ン バ ー20の
お よ び も,陽
閉 殻 の 上 の4つ
子 ・中 性 子 数 が 比 較 的 少 な い 核 は,殻
図1.12お
よ び 図1.13に
模 型 計 算 が 容 易 で あ る.そ
い う表 示 は,上
のsd殻
た も の と ま っ た く同 一 の パ ラ メ ー タ ー を もつYukawa型
に,有
子 準 位, の領域 において
た,"FPD6"と
核 に お い て用 い られ
の有 効相 互 作 用 を使 って
い う表 示 は,sd殻
効 相 互 作 用 の 行 列 要 素GJ(abcd)を
核 に お け る"USD"と
同様
独 立 な パ ラ メ ー タ ー と し て,殻
模 型計
算 の 結 果 が 実 験 デ ー タ を 全 体 的 に で き る だ け よ く再 現 す る よ う にB. ら*16に *13 T Y. *14 T *15 E
よ っ て 決 め ら れ た 行 列 要 素 を 使 っ た も の で あ る.た
. Inoue,
T.
Akiyama, S.
. C.
Halbert,
A523
H.
A.
. T.
Phys. *16 W . A.
Sebe,
Kuo,
4 (1971)
and
Nucl. J.
Phys. B.
M. 325.
and T.
A.
Sebe,
A103
McGrory,
Chap.
Richter, (1991)
Hagiwara
Arima
の例が
示 され て い る.
こ れ ら の 図 に お い て"Yukawa"と
計 算 され て い る.ま
の1粒
で 構成 さ れ る オ ー プ ン 殻 で あ る.こ
B.
Arima,
Nucl.
Nucl.
Phys.
(1967)
71.
H.
Wildenthal
Phys.
A138
and
59
(1969)
P.
Brown
だ し,"Yukawa" (1964) 273
Pandya,
A.
1.
.
Advances
in
Nucl
6,315. G.
Van
der
Merwe,
R.
E.
Julies
and
B.
A.
Brown,
Nucl.
Phys.
.
図1.6 "Exp"は
18Oの
励起準位
実 験 値 を 示 す ."Yukawa"はYukawa型
メ ー タ ー はArimaら*13に
相 互 作 用(パ
ラ
よ る)を,"USD"はWildenthalら*10
の 行 列 要 素 を,"Kuo"はKuo*14の
図1.7
行 列 要 素 を 用 い た 計 算 値 を 示 す.
18Fの
励起準位
記号 の 説 明 な ど は 図1.6参
照.
図1.8
20Neの
励起準位
記 号 の 説 明 な ど は 図1.6参
図1.9 "Gauss"はGauss型 る)を
21Neの
相 互 作 用(パ
用 い た 計 算 値 を 示 す.そ
照.
励起準位
ラ メ ー タ ー はArimaら*13に
の 他 の 説 明 は 図1.6参
照.
よ
図1.10
22Neの
励 起準 位
記号 の 説 明 な ど は 図1.9参
図1.11
24Mgの
照.
励 起準位
記 号 の 説 明 な ど は 図1.9参
照.
図1.12 "Exp"は
42Caの
実 験 値 を 示 す
相 互 作 用(パ "FPD6"はB
励起準位
図1.13
."Yukawa"はYukawa型
ラ メ ー タ ー は 図1.6と .A.Brownら
同 じ)を
44Tiの
励 起 準 位
記 号 の 説 明 など は 図1.12参
照.
用 い,
の 行 列 要 素 を 用 い た
計 算 値 を 示 す.
と"FPD6"に
お い て1粒
子 準 位 エ ネル ギ ー は 同 一 に と ら れ て い る.
こ れ らの 図 か ら わか る よ う に,42Caや44Tiの い0+励
起 状 態 は,考
計 算 で は 閉殻(芯)と
実 験 デ ー タ に見 られ る割 合 低
え て い る よ う な簡 単 な 配 位 混 合 で は 説 明 で き な い .こ の 仮 定 され て い るsd殻 の 励 起 を 考 え な け れ ば 理 解 で きな い
よ うな,や や 特 異 な構 造 を持 った 状 態 で あ る と考 え られ て い る.
1.3.3 原 子 核 の 電 磁 気 的 性 質 と配 位 混 合 原 子 核 の 基 底 状 態 お よび 励 起 状 態 の 波 動 関数 の 構造 を調 べ る に は,そ の 電磁 気 的 性 質が た い へ ん 重 要 で あ る.特 に,磁 気 双極 モ ー メン ト(magnetic-dipole moment)や
電 気4重
極 モ ー メン ト(electric-quadrupole
moment)が
最 も重 要
な 物 理 量 で あ る.さ ら に,原 子 核が 基底 状 態 や 励 起 状 態 間 を遷 移 す る と きに,γ 線 を放 出 ・吸 収 す るが,こ
のγ 線 の 性 質 や 遷 移 確 率 を測 定 す る こ と に よ って,
原 子 核 の 構 造 を調 べ る こ とが で きる. こ こで は,磁
気 双 極 モ ー メ ン トお よび 電 気4重
極 モ ー メ ン トと配 位 混 合 との
関連 に つ い て 述 べ,電
磁 気 遷 移 確 率 に 関す る 定 式 化 と実 例 を示 す.
(a) 磁 気 双 極 モ ー メ ン ト 原 子 核 の 全 ス ピ ンIが0で 持 つ.以
下,慣
な い な らば,原 子 核 は 磁 気 双 極 モ ー メ ン ト μ を
習 に し た が っ て,単 に 磁 気 モ ー メン ト(magnetic
moment)と
呼 ぶ こ と にす る. 原 子 の 中 で 原 子 核 を取 り巻 く電 子 が 作 る磁 場 と,原 子 核 の磁 気 モ ー メ ン トの 間 に は 弱 い な が ら相 互 作 用 が 働 き,原 子 の エ ネル ギ ー 準 位 に お け る縮 退 が 解 け, これ が 原 子 の スペ ク トル に お け る超 微 細構 造(hyperfine
structure)と
して 観 測
され る.こ れ を 調べ る こと に よ って 原 子 核 の ス ピ ンIを 決 定 す る こ とが で きる. 核 子 は そ れ 自 身で ス ピ ン角 運 動 量sに 比 例 す る磁 気 モ ー メ ン トを持 って い る. また,核 子 が 軌 道 角 運 動 量lで 運 動 す れ ば,lに
比 例 す る 磁 気 モ ー メン トを持
つ.た だ し 中性 子 は 電 荷 を持 た な い の で,軌 道 角 運 動 量 に よ る磁 気 モ ー メ ン ト は0で
あ る.し
たが っ て,核 子 の 磁 気 モ ー メ ン トは
(1.123) と 書 く こ と が で き る.gsお
よ びglは
お よ び 軌 道g因
g-factor)と
子(orbital
magneton)
そ れ ぞ れ ス ピ ンg因 呼 ば れ,そ
子(spin
g-factor)
れ ら の 値 は 核 磁 子(nuclear
を 単 位と し て
で あ る.た だ しMは い ま核 子 が1粒
(陽子 に 対 し)
(1.124a)
(中性 子 に対 し)
(1.124b)
核 子 の 質 量 で あ る.
子 状 態
に あ る と し よ う.こ の状 態 で の μ の 期 待 値 を
(1.125) と書 くこ とが 可 能 で あ り,そ の よ うなgを 下 に 示 され る.(1.125)式 で
はx,yお
よびz成
求 め る こ とが 可 能 で あ る こ とが 以 分 の3成
分 に 関 す る 式 で あ るが,
で あ るか ら,実 際 に 意 味が あ るの はz成
分 だ け で あ る.そ こ
の状 態 で の μ の 期 待 値
(1.126)
で も っ て 状 態
の 磁 気 モ ー メ ン ト と 定 義 す る.因
因 子(g-factor)と さ て1粒
状 態
のg
呼 ぶ.
子 状 態
き の 因 子gを
子gを
に 対 し て,(1.125)式
求 め る こ と に す る.ま
が 成 り立 つ こ と を 示 し,そ
ず,jとlは
の と
交換 関係
(1.127) を み た す.こ
れ ら を使 って
(1.128) お よび
(1.129) が 得 ら れ る.状
態
と な る か ら,結
局
に よ る(1.129)式
の 両 辺 の 期 待 値 を と る と,左
辺 は0
(1.130) が 得 ら れ る.同
様 に し て,lの
代 わ り にsを
とると
(1.131) が 得 ら れ る.し
た が っ て,1粒
子 状 態
に 対 し て(1.125)式
が 成 り立 ち,
g因 子 は
(1.132) と書 か れ る.j=l+sか が 得 られ る ので,こ
ら れ ら を(1.132)式
に 代 入 す る と,磁 気 モ ー メン ト μ は
(1.133)
と な る.
で あ る か ら,最
終 的には
(1.134)
が 得 ら れ る.こ
の 結 果 は1核
子 が(nlj)と
い う1粒
子 状 態 に あ る と きの 磁 気
モ ー メ ン トの 値 を 与 え る も の で,Schmidt値(Schmidt れ をjの
values)と
関 数 と し て 描 い た 図 をSchmidt線(Schmidt
1.14,1.15参
lines)と
呼 ば れ,こ
呼 ん で い る(図
照).
多 核 子 が あ る 場 合 に は,磁 メ ン ト(1.123)の
気 モ ー メ ン トの 演 算 子 は そ れ ぞ れ の 核 子 の 磁 気 モ ー
和 で 表 され る.い
を μiと す る と,全
まi番
目の 核 子 の 磁 気 モ ー メ ン トの 演 算 子
体 の 磁 気 モ ー メ ン トの 演 算 子 μ は
(1.135) で あ る か ら,あ る多 核 子 状 態
の 磁 気 モ ー メ ン トは
(1.136) を計 算 す れ ば よ い.こ
こ でsi,zお
よ び 軌 道 角 運動 量 演 算 子 のz成 第2量
子 化 の 表 示 お よび,磁
よ びli,zは 分 を 表 す.磁
そ れ ぞ れ 核 子iの
ス ピ ン演 算 子 お
気 モ ー メ ン トの 演 算 子(1.135)の
気 モ ー メ ン ト(1.136)の
具 体 的 表 式 につ い て は 後
述 す る.
(b) 磁 気 モ ー メ ン トの 実 例 偶 々 核 の 基 底 状 態 の 全 ス ピ ンIは0で 奇 核 は こ れ に1核
あ る か ら,磁
子 を 加 え た も の で あ る か ら,最
た が っ て 最 後 の1核
子 が 入 る 準 位(nlj),に
え る の が 最 も単 純 な 考 え 方 で あ る.要
気 モ ー メ ン トは0で
後 の1核
よ っ て 磁 気 モ ー メ ン トが き ま る と 考
す る に こ の と き は,(1.134)式
値 で 核 の 磁 気 モ ー メ ン トが き ま る と い う こ と で あ る.閉
=-0.2642μNで
与 す る 陽 子 準 位 は0p1/2で あ り,μ(実
験 値)=-0.28312μNで
のSchmidt
殻 ±1の 原 子 核 で は こ
の 考 え が か な り よ く 成 り立 つ こ と が 実 験 デ ー タ か ら わ か る.た 底 状 態 はI=1/2で,関
あ る.
子 が 持 つ ス ピ ン,し
と え ば15Nの
基
あ る か ら μ(Schmidt値) あ る.ま
た17Oの
基底状
図1.14
奇 数 陽子 核 の磁 気 モ ー メ ン ト
奇 数 陽子 核(中 性 子 数 は 偶 数)の 主 と し て基 底 状 態 の磁 気 モ ー メ ン ト の 測 定値 が,核 磁 子 μNを 単 位 と し,ス ピ ンjの 関数 と して描 か れ て い る.各 黒 点 が1個
の 原 子 核 を示 す.2本
の 実 線 はSchmidt線
を
表 す.
態 はI=5/2で,関
与 す る 中 性 子 準 位 は0d5/2,μ(Schmidt値)=-1.9128μN
μ(実 験 値)=-1.8928μNで 図1.14お
あ る(μNは
よ び1.15で
トが 最 後 の1核
核 磁 子).
わ か る よ う に,ほ
トの 実 験 値 はSchmidt値
,
とん ど の 奇 核 にお い て 磁 気 モ ー メ ン
か ら 大 き く異 な っ て い る.こ
れ は 奇 核 の磁 気 モ ー メ ン
子 の み か ら の 寄 与 で は 説 明 で き な い こ と を 意 味 し,原
子 核 の磁
気 モ ー メ ン ト は オ ー プ ン 殻 に お け る 多 核 子 の 配 位 混 合 の 影 響 を 強 く受 け て い る こ と を 示 し て い る.こ
の こ と を 確 か め る た め に ,2,3の
合 計 算 に よ る 磁 気 モ ー メ ン トの 計 算 値 とSchmidt値,お 示 さ れ て い る.こ
原 子 核 にお け る配 位 混 よ び 実 験 値 が 表1.1に
こ に 例 示 し た 核 の 磁 気 モ ー メ ン トは 配 位 混 合 に よ っ て ほ ぼ 説
明 で き る こ と が わ か る.磁
気 モ ー メン トを計 算 す る た め の 定 式 化 につ い て は 磁
気 遷 移 や 電 気 遷 移 の 定 式 化 と ま と め て 後 述 す る.ま
た,図1.14お
よ び 図1.15
図1.15
奇 数 中 性 子 核 の磁 気 モ ー メ ン ト
奇 数 中 性 子 核(陽 子 数 は 偶 数)の 主 と し て 基 底 状 態 の 磁 気 モ ー メ ン トの 測 定 値 が, 核磁 子 μNを 単 位 と し,ス 子 核 を 示 す.2本 表1.1
19Fと21Neの
vances
in Nucl.
C.
G.
325.)い
Van
Phys.
der
J. B.
4(1971)
Merwe,
R.
E.
McGrory,
Chap.
B.
出 のB.
A.
Julies
and
B.
A.
. Arima Noya,
,前
and
よび43Scの
出 のHalbertら P. Pandya,
の 計 算 に よ る.(W. Brown,
Nucl.
A.
Phys.
Richter,
A523
(1991)
子 を 使 っ て い る.
と ん ど の 実 験 値 が2つ
Horieら and
A.
H.
Horie,
Arima
and
のSchmidt線
の 間 に 分 布 し,外
Prog.
Theor.
Horie,
Prog.
Phys. 11 Theor.
側
れ も配 位 混 合 に よ っ て 理 解 可 能 で
に よ っ て 詳 し い 分 析 が な さ れ た.*17
H.
Ad-
計 算 は"FPD6"
の よ う な 磁 気 モ ー メ ン トへ の 配 位 混 合 の 効 果 に つ い て は,か
時 期 にArima,
H.
Wildenthal
Brownら
に 分 布 し な い こ と は 注 目 す べ き で あ る が,こ
*17 A
H.
6, 315.)43,45Caお
ず れ の 計 算 も 自 由 核 子 のg因
で 見 ら れ る よ う に,ほ
あ る.こ
の原
を 表 す.
相 互 作 用 を 使 っ て 配 位 混 合 を 行 っ た もの で
Halbert,
の 相 互 作 用 を 用 い た も の で,前 M.
関 数 と し て描 か れ て い る.各 黒 点が1個
配 位 混 合 に よる磁 気 モ ー メ ン トの 計 算(単 位 は μN)
計 算 はKuoの
の 論 文 に よ る.(E.
ピ ンjの
の実 線 はSchmidt線
(1954) Phys.
509; Suppl.
12 (1954) 623. 8 (1958)
33.
な り早 い
すべ て の 原 子 核 の磁 気 モ ー メ ン トが オ ープ ン 殻 の 配 位 混 合 だ け で 説 明で き る わ け で は な く,オ ープ ン殻 以 下 の 閉 殻(芯)の 核 子 のg因
励 起 や,さ
らに 核 内 に お い て は
子 の値 そ の もの が 自 由 な核 子 の そ れ とは 異 な る とい う効 果 も考 え ら
れ る.
(c) 電 気4重
極 モ ー メン ト
核 の 荷 電 分 布 が 球 対 称 か ら ど の く らい ず れ て い る か を表 す 指 標 とな るの が 電 気4重
極 モ ー メン ト(electric quadrupole
moment)で,演
算子
(1.137) の 期 待 値 で あ る.た だ し,eは す る.核 の 荷 電 分 布,あ 極 モ ー メ ン トは0で
荷 電 単 位 で,和
は 陽 子 に 関 し て の みと る もの と
る い は 陽 子 の波 動 関 数 が 完 全 に球 対 称 な らば 電 気4重
あ る.
い ま オ ー プ ン殻 に1個 の 陽子 が 存 在 し,そ の 陽 子 が(nlj)と にあ る と す る と,こ の 陽 子 に よ る 電 気4重
い う1粒 子 状 態
極 モ ー メ ン トは
(1.138) と な る.Qspの
添 字"sp"は"1粒
子(single-particle)"を
を 核 半 径
意 味 す る.
を 使 っ て
と見 積 も
れ ば,
(1.139) と な る.こ
のQspが
オ ー プ ン 殻 の1粒 動 関 数 は,対
核 内 陽 子 の4重 子 準 位(nlj)にn(奇
数)個
相 関 に よ っ て セ ニ ョ リ テ ィυ=1の
の 状 態 ベ ク トル は(1.54)式 ら 当 然J=jで
極 モ ー メ ン トの"1粒
あ る.こ
の 期 待 値 を 計 算 す る と,結
に お い てυ=1と
あ る.
の 陽 子 が あ る と きの 殻 模 型 の 波 状 態 で あ る と 考 え ら れ る.こ し た も の で あ る.υ=1で
の 状 態 に お い て,M=jと 果 の4重
子 見 積 も り"で
し て4重
あ るか
極 モ ー メ ン トQ
極 モ ー メ ン トQは
(1.140)
と な る.n=1,3,…,2jで (2j+1)/2に Q=0と
あ り,n=1か
ら順 次 陽 子 数 を 増 し て 行 く と,n=
お い て こ の 準 位 に 入 り う る 最 大 粒 子 数 の 半 分と な る.こ な り,そ れ 以 後 のQは
に な る.(1.139)式 前 半 のQは
そ れ 以 前 の もの の 符 号 を対 称 的 に逆 転 し た もの
か ら 明 ら か な よ う にQspの
マ イ ナ ス,後
で あ る の に 対 し,(1.139)式 で あ る.ま
た,39Kの
極 モ ー メ ン トは0で
際209BiのQ(実
な い 状 態 で あ る か らQspの
あ る.39Kの
たが っ
験 値)=-0.37e×10-24cm2 算 値)=-0.22e×10-24cm2
験 値)=0.054e×10-24cm2で
算 値)=0.04e×10-24cm2で
あ る.し
極 モ ー メ ン トの 実 験 値 はQsp
で 計 算 し た もの はQ(計
場 合Q(実
たが って 殻 の
験 結 果 も こ の 傾 向 を 示 し て い る.
殻 ±1個 の 陽 子 が あ る よ う な 原 子 核 の4重
に ほ ぼ 等 し く な る は ず で あ る.実
Q(計
値 は 負 で あ り,し
半 は プ ラ ス と な る.実
閉 殻 の 荷 電 分 布 は 球 対 称 で あ る か ら4重 て,閉
の と き
あ る の に 対 し,
場 合 は 閉 殻 か ら 陽 子 が1個
少
符 号 を 逆 転 し た も の に 相 当 す る わ け で あ る.
オ ープ ン殻 に多 数 の 核子 が あ る場 合 の 核 全 体 の4重
極 モ ー メ ン トは,
複 数 の 準 位 に またが る 配位 混 合 の 効 果 を 反 映 し て1陽
子 のQspと
はか
な り異 な った 値 を示 す.そ の 場 合 の 電 気4重 極 モ ー メ ン トを 求 め る ため の一 般 的 な定 式 化 は,次 項 で 電 磁 気 遷 移 の 定 式 化 と と も に与 え られ る. 奇 核 の 基 底 状 態 の4重 極 モ ー メ ン トの 実験 値 とQspと Zま た はNの
の 比が,奇 数 の
関数 と して図1.16に
描 か れ て い る.こ の 図か ら隣 り合 う マ ジ ッ クナ ンバ ーの 中 間の 領 域 の 原 子 核 の4重 極 モ ー メン トは極 め て 大
図1.16
奇 核 の 電 気4重 実 験 値 とQspと
きい 値 を示 し,場 合 に よって はQsp
横 軸 は 奇 数 の 陽子 数Zま
の20∼30倍
す.各
に もな る こ とが あ る.こ
れ を説 明 す る た め に は オ ープ ン殻 に
黒 点 が1個
科 年 表(平 よ り.
成11年
極 モ ー メ ン トの の比
た は 中 性 子 数Nを
表
の 原子 核 を 表 す.デ ー タは 「理 度 版)」 国 立 天 文 台 編(丸 善)
お け る単 純 な 配 位 混 合 とは 異 な る 別 の 考 え方 が 必 要 に な る で あ ろ う. 表1.2に
配位 混 合 に よ る電 気4重
極 モ ー メ ン トの 計 算 値 が 例 示 され て い る.
こ の 結 果 のQ(計 算値1)を 見 る と,4重 極 モ ー メン トの 値 は1粒 子 見 積 も り│Qsp│
表1.2
Q(計
算 値1)は
配位 混 合 に よ る 電 気4重
陽 子 の 電 荷 をep=1.0e,中
る の に 対 し,Q(計 ep=1.5e,
極 モ ー メ ン トの 計 算(単 位 はe×fm2)
算 値2)で
en=0.5eと
性 子 の 電 荷 をen=0と
は 有 効 電 荷 が 使 わ れ て い る.す し,43,45Scに
て い る.19Fと21Neの
対 しep=1.33e,
計 算 はKuoの
で 引 用 し たHalbertら
し て計 算 され て い
な わ ち,19Fと21Neに en=0.64eと
対 し して 計 算 され
相 互 作 用 を 使 っ て 配 位 混 合 を 行 っ た もの で,表1.1
の 論 文 に よ る.
に 比べ 配 位 混 合 に よっ て大 幅 に 増 加 す る こ とが わ か る.し か し まだ 実 験 値 と比 べ 半 分 以 下 で あ る.そ こ でQ(計
算値2)の
計 算 の よ う に,有 効 電 荷(effective
charge)と
い う考 え 方 を導 入 す る こ と に よっ て,通 常 の 殻 模 型 計 算 で 採 られ る
Hilbert空
間の 狭 さ を実 効 的 に 補 う効 果 を果 た させ るの が 普 通 で あ る.
(d) 電 磁 気 遷 移 と モ ー メ ン ト に 関 す る 定 式 化 原 子 核 の 基 底 状 態 や 励 起 状 態 の 性 質 や 構 造 を 調 べ る た め に,そ の 単 位 時 間 当 た りの 電 磁 気 遷 移 確 率 を 計 算 し,実 る.本
れ らの 状 態 間
験 と比 較 す る こ とが 重 要 で あ
項 で は そ の た め の 定 式 化 を 示 そ う.
い ま 電 気(磁
気)多
重 極 遷 移 演 算 子(electromagnetic
operator)をM(E(M)λ
μ)と す る.た
遷 移 な らM(E2μ)で M(M1μ)で
あ り,磁
あ る.単
気2重
と え ば 電 気4重 極(双
multipole 極(electric
極)(magnetic
transition quadrupole)
dipole)遷
移 な ら
位 時 間 当 た りの 遷 移 確 率 は
(1.141) と 表 さ れ る.Iiお の ス ピ ン で あ る.ω 率(reduced
よ びIfは
そ れ ぞ れ 遷 移 の 前 後 の"始
は 放 出(吸 収)さ
transition
probability)と
状 態"お
れ る 光 の 角 振 動 数 で あ る.Bは
よ び"終
状 態"
換算遷移確
呼 ば れ,
(1.142)
で 与 え ら れ る.右
辺 の 行 列 要 素 はWigner-Eckartの
定 理 を 使 っ て,
(1.143) と書 くこ とが で きる か ら,換 算 遷 移 確 率 は
(1.144) と 表 さ れ る. で,換
は ス ピ ン(角 運 動 量)のz成
算 行 列 要 素(reduced
matrix
移 確 率 を 求 め る た め に は,こ 演 算 子M(E(M)λ
element)と
呼 ば れ る.し
分 に よ ら な い量 た が って 電磁 気 遷
の 換 算 行 列 要 素 を 求 め れ ば よ い こ と に な る.
μ)を 第2量
子 化 の 表 示 で 表 せ ば,
(1.145) と書 か れ る.こ
こ でa,bは
核 子 の1粒
子 状 態 を表 す.ま
た 演 算 子
は
(1.35b)式 で 定 義 され る対 演 算 子 で あ る. 1粒 子 遷 移 演 算 子
は電気遷移 の場合は
(1.146a) で あ り,磁 気 遷 移 の 場 合 は
(1.146b) で あ る.(1.146a)式 しeeff=0と
のeeffは 有 効 電 荷 で あ り,陽 子 に対 しeeff=e,中
す るの が 最 も単 純 で あ るが,多
中性 子 に対 しeeff=δeと
性子に対
くの場 合,陽 子 に対 し
置 き,δeは 適 当 な調 節 可 能 なパ ラ メー ター と して 計 算
結 果 の遷 移 確 率 が 実 験 値 にほ ぼ 合 うよ う に選ぶ の が 通 例 で あ る.同 様 に(1.146b) 式 のglやgsも
有 効g因 子 と考 え,調 節 可 能 な パ ラ メ ー ター と し て取 り扱 うこ
と も多 い. さ て,(1.145)式 表 式 は,少
に 現 れ た 遷 移 演 算 子M(E(M)λ
し面 倒 な計 算 を経 て,電
μ)の 換 算 行 列 要 素 の 具 体 的
気遷移の場合 は
(1.147)
と な る.た
だ し,
で あ る.1粒
子 状 態 の 動 径 波 動 関 数 をRnl(r)と
すれば
(1.148) で あ る.磁 気 遷 移 の 場 合 は
(1.149) (1.150) で あ る. 以 上 で 多 重 極 遷 移 演 算 子 を具 体 的 に 書 き下 す こ とが で きた の で,遷 移 の 始 状 態
お よび 終状 態
を使 って 行 列 要 素 を計算 す れ ば(1.144)式
で換
算 遷移 確 率 が 計 算 で きる. 特 別 な場 合 と して 電 磁 気 モ ー メ ン トの 具 体 的表 式 を与 え て お こ う.多 粒 子 状 態
に お け る λ次 の 電 気 モ ー メン トは
(1.151a) と な り,ま
っ た く 同 様 に λ 次 の 磁 気 モ ー メ ン トは
(1.151b)
表1.3
"計 算 値1"は 対 し,"計 Kuoの
電 気4重
極 換 算 遷 移確 率
陽 子 の 電 荷 をe
算 値2"で
p=e,中
の計 算(単 位 はe2×fm4)
性 子 の 電 荷 をen=0と
は 有 効 電 荷ep=1.5e,en=0.5eが
して 計 算 され て い る の に 使 わ れ て い る.こ
相 互 作 用 を 使 っ て 配 位 混 合 を 行 っ た もの で,表1.1で
よ る.(E.C.Halbert,J.B.McGrory,B.H.Wildenthal in Nucl.Phys.4
(1971)
and
の 論 文 に
P.Pandya,Advances
Chap.6,315.)
で あ る.こ れ ら の 式 の 中 で,遷
れ らの 計 算 は
引 用 し たHalbertら
移 演 算 子 の1粒
は,そ れ ぞ れ(1.147)式
行 列 要 索
子 行 列 要 素
お よ び(1.149)式
や
で 与 え られ,多
粒子
は 配位 混 合 計 算 で 得 られ る.同 様 に して,配 位
混 合 計 算 の 結 果 得 られ る特 定 の 固有 状 態 間 の 電 磁 気 的 遷 移 確 率 も,そ れ らの 固 有 状 態 間 で の(1.145)式
で 与 え られ る多 重 極 遷 移 演 算 子
行 列 要 素 を計 算 し,(1.144)式
に代 入 す る こ と に よ って 求 め られ る.
以 上 の 表 式 を用 い て,配 位 混 合 計 算 に よる電 気4重 示 す."計 合 で,計
算 値1"は
の換 算
有 効 電 荷 を 用 い な い 場 合,す
極 遷 移 の一 例 を 表1.3に
な わ ちep=e,en=0の
場
算 値 が 実 験 値 に比 べ て小 さ過 ぎ,有 効 電 荷 な し に は 到 底 実 験 値 を 再 現
で きな い こ とが わ か る."計 算 値2"で
は 有 効 電 荷 と してep=1.5e,en=0.5e
が と られ て い る.
1.4 殻 模 型 に 関 す る結 語
こ の 章 で 見 て 来 た と お り,jj結
合 殻 模 型 は 原 子 核 の 構 造 を理 解 す るた め の 基
礎 で あ り,出 発 点 で あ っ た.そ れ は 核 力 とい う短 距 離 力 で 相 互 作 用 して い る 核 子 多 体 系 で あ る と こ ろ の 原 子 核 に お い て,第0近
似 と して 平 均 ポ テ ン シ ャ ル が
形 成 され,そ の ポ テ ン シ ャル の 中 を核 子 が 独 立 粒 子 運動 を 行 い,そ の 核 子 間 に 残 留 相 互 作 用 が 働 い て 配 位 混 合 が 生 じ,そ れ に よ っ て原 子 核 の 基 底 状 態 付 近 の さ ま ざ ま な性 質が 説 明 で きる,と い う考 え 方 で あ る.こ の考 え 方 が 確 実 に 成 立 して い る こ とが 明 らか に な っ て きた. し か し な が ら,オ ープ ン殻 に 多 数 の 核 子 が 存 在 す る よ う な 中重 核 に な る と,
配 位 混 合 の 計 算 の た め に は 巨大 な 固 有 値 問 題 を解 か な くて は な らな くな り,極 め て 困 難 と な る.近 年,そ の よ うな 巨大 次 元 問 題 に ア プ ロー チ す る さ まざ まな 試 み も な され て きた.*18 一方,原
子 核 の 基 底 状 態付 近 の 構 造 を 決 定 す るの に,オ ー プ ン殻 の す べ て の
自由 度 が 関 与 して い る わ け で は な く,よ く組 織 化 され た わ りあ い 少 数 の 自 由度 の みが 寄 与 し て い るの で は な い か と い う考 え が あ る.す な わ ち,わ
りあ い 少 な
い 自由 度 を持 つ 空 間で 記 述 で き る とい う考 え で あ る.こ の こ と を確 か め る こ と 自体 が 真 の 原 子 核 構 造 の 姿 を 理 解 す る こ と に な る と思 わ れ る.そ の た め に は, 殻 模 型 空 間 を う ま く切 りつ め て 縮 小 す る方 法 を見 出す こ とが 大 切 で あ る. ま た,た 値 が,殻
と え ば 図1.16の
よ う に,原 子 核 の 電 気 的4重
極 モ ー メン トの 実 験
模 型 で 簡 単 に は 理 解 で きな い よ う な大 きな 値 を もつ 領 域 が 広 く存 在 す
る と い う事 実 は,殻 模 型 を基 礎 に しなが ら も,さ らに 拡 張 され た 新 しい模 型 を 考 え な け れ ば な ら な い こ と を示 唆 し て い る.こ れ が 以 後 の 章 で 議 論 す る こ とに な る集 団 模 型(collective model)や て い くの で あ る.
*18 大 塚 孝 治
,科
学,69(1999)945.
ク ラ ス タ ー模 型(cluster model)に
つ なが っ
2 核力か ら有効相互作用へ
2.1 核 力 の 概 観
原 子 核 は核 力(nuclear
force)と い う短 距 離 力 で 相 互 作 用 し て い る核 子 多 体 系
で あ り,核 子 間 に 働 くこれ らの 核 力 が 第0近 似 で 平 均 化 され て 平 均 ポ テ ンシ ャ ル を作 る とい う こ と は 第1章 子 間 に働 くCoulomb力
で 述べ た.原 子 に お け る原 子 核 と電 子 の 間や,電
に 比 べ て,核 力 は 短 距 離 力 で か つ 極 め て 強 い 相 互 作 用
(strong interaction)で あ る.こ の よ うな 核 力 が なぜ 平 均 ポ テ ン シ ャ ル を 構 成 し,核 内核 子 が なぜ 独 立 粒 子 運 動 を行 うか と い うこ とは,た 難 しい こ との よ うに 思 わ れ た.こ
いへ ん 考 え に く く
の こ とを 明 らか にす る の が 本 章 の 第1の
目的
で あ る.ま ず 核 力 を概 観 す る こ と に し よ う. Coulomb力
と違 っ て,核 力 は そ の概 括 的性 質 は わ か っ て きたが,現 在 で も完
全 に解 明 さ れ た わ け で は な い.通 常,核
力 は 中 間子 理 論 に 基 礎 を お き なが ら,
自 由空 間 に お け る 核 子-核 子 散 乱 や 重 陽 子(陽 子 と 中性 子 の 束 縛 状 態)に 関 す る 実 験 デ ー タ を再 現 す る よ うに きめ られ て い る.し た が って,い 核 力 が 提 案 され,実
際 の 研 究 に 引 用 され て い る.
大 雑 把 に い えば,核 力 の 到 達 距 離(range;作 波 長(Compton
くつ か の 異 な る
wave
length)の
用 半 径)は π 中 間子 のCompton
(mπ は π 中 間子 の 質 量,1fm=10-13cm) の 程 度 で あ り,
の領 域 で は π 中 間 子 交 換 力,す
型 ポ テ ンシ ャル で 表 され,も
な わ ち単 純 なYukawa
っ と近 距 離 で は 重 い 中 間子 の交 換 力 な ど状 態 に 強
く依 存 した 複 雑 な ポ テ ンシ ャル と な り,さ らに 近 距 離 の は 芯(core)と
の領域 で
呼 ば れ る強 い 斥 力 が 働 く もの と考 え られ る.
核 力 の よ り詳 細 に 関 し て は,提 案 され て い る い くつ か の 種 類 に よ っ て 若 干 の
差 異 が あ る.最
近 わ りあ い よ く 引 用 さ れ る も の に,パ
potential)*1と
ボ ン ・ポ テ ン シ ャ ル(Bonn
リ ・ポ テ ン シ ャ ル(Paris
potential)*2が
あ る.こ
古 い け れ ど も 見 や す い 例 と し て,Hamada-Johnstonポ
こで は 少 し
テ ン シ ャ ル*3を 例 示 す
る こ と に す る. 核 力 は2核 と し,ア
子 の 状 態 に 強 く依 存 す る.2核
イ ソ ス ピ ン(isospin)演
イ ソ ス ピ ン 演 算 子 を,対
子 の ス ピ ン 演 算 子 を そ れ ぞ れs1,s2
算 子 をt1,t2と
応 す るPauliス
す る.こ
れ ぞ れ
離 で き る.核
す る.2核
の 部 分 と 相 対 座 標r=r1-r2の
子 は フ ェ ル ミ オ ン で あ る か ら,2核
対 し て 反 対 称 で な け れ ば な ら な い.重 ピ ン 波 動 関 数,ア
数 はS=0が
心 部 分 は 核 子 の交 換 に対 し て 不 変 で あ る
state)と
反 対 称,S=1が
呼 ば れ,そ
とす れ
状 態(singlet
state)お
れ ぞ れ の 状 態 の ス ピ ン波 動 関
対 称 で あ る こ と は い う ま で も な い.ア
ピ ン に つ い て も 同 様 で あ る.す 反 対 称,T=1が
な わ ち,T2の
固 有 値 を
対 称 で あ る.2核
固 有 値 を
S+T+L=奇
固 有 値 を
状 態 は そ れ ぞ れ ス ピ ン1重
状 態(triplet
角 運 動 量 の 大 き さLの
部 分 に分
イ ソ ス ピ ン 波 動 関 数 お よび 相 対 波 動 関 数 の 積 が 核 子
よ びS=1の
よ び ス ピ ン3重
間
子の波動 関数は核子 の交換 に
の 交 換 に 対 し て 反 対 称 で な け れ ば な ら な い.S2の ば,S=0お
子の波動
イ ソ ス ピ ン 部 分 お よ び 空 間 部 分 の 積 で 構 成 さ れ る.空
部 分 は 重 心 座 標
か ら,ス
た そ れ ら の 合 成 をS=s1+s2,T=t1+t2と
関 数 は ス ピ ン 部 分,ア
し,L2の
で 表 せ ば,そ
お よび
で あ る.ま
T=0が
れ ら ス ピ ンお よび ア
ピ ン 行 列
子 の 相 対 運 動 の 角 運 動 量 をLと
と す れ ば,相 偶 奇 性 に 等 し い.し
数 の 場 合 の み で あ る.こ
イソ ス
とす れ ば ,
対 波 動 関 数 の 偶 奇 性(parity)は
た が っ て,許
され る2核
子 の状態は
れ ら を 慣 習 的 に,
1E:1重
偶(singlet
-even)状
態…S=0
1O:1重
奇(singlet
-odd)状
態…S=0
3E:3重
偶(triplet
-even)状
態…S=1
3O:3重
奇(triplet
-odd)状
態…S=1,T=1
,T=1,L=even ,T=0,L=odd ,T=0,L=even ,L=odd
と表 す. *1 M
.Lacombe,B.Loiseau,J.M.Richard,R.Vinh
R.de Tourreil,Phys.Rev.C21 *2 R .Machleidt,K.Holinde
Mau,J.Cote,P.Pires (1980)
and
C.Elster,Phys.Reports,149
R.Machleidt,Adv.Nucl.Phys.19 *3 T .Hamada and I.D.Johnston,Nucl.Phys.34
and
861. (1987)
(1989) 189. (1962)
382.
1.
Hamada-Johnston(HJ)ポ
テ ン シ ャ ル は,
の 近 距 離 の 部 分 に お い て ポ テ ン シ ャ ル が+∞ 核 子 がrcま と呼 び,rcを
な わ ち,2
で 近 づ く と無 限 大 の 斥 力 が 働 く.こ の よ う な 力 を 固 い 芯(hard 芯 半 径(core
radius)と
呼 ん で い る.近
core)
い う.実 際 に は 極 め て 強 い 斥 力 で は あ る が,
も う 少 し 柔 ら か い 芯 が よ り 現 実 的 で あ ろ う.そ core)と
と な る.す
の よ う な 芯 を 柔 ら か い 芯(soft
年 よ く 引 用 さ れ る パ リ ・ポ テ ン シ ャ ル や ボ ン ・ポ テ ン
シ ャ ル は 柔 ら か い 芯 を 持 つ. Hamada-Johnstonポ ル 力 お よ びL2力
の4種
テ ン シ ャ ル は 以 下 に 示 す よ う に 中 心 力,LS力,テ
ンソ
類 の ポ テ ン シ ャ ル の 和 に よ っ て 構 成 さ れ る.す
な わ ち,
(2.1) で あ る.た
だ しrc=0.485fmで
あ る.ま
た
(2.2a)
(2.2b) で あ る.各 ポ テ ン シ ャル の 関 数 形 は
(2.3a) (2.3b)
(2.3c) (2.3d) で 与 え られ る.こ こで,π 中 間子-核 子 の 結 合定 数 は
中間子の
質量 は
単位 と し
で あ る.ま
た,rは1fm=10-13cmを
て 表 し,
(2.4a) (2.4b) (2.4c)
図2.1
図2.3
HJポ
テ ン シ ャ ル(1E)
HJポ
テ ン シ ャ ル(3E)
図2.2
図2.4
HJポ
HJポ
テ ン シ ャ ル(1O)
テ ン シ ャ ル(3O)
表2.1
Hamada-Johnstonポ
テ ン シ ャル の パ ラ メー ター
芯 半 径 はrc=0.485fm.
で あ る.(2.3)式 る.ま
た,各
2.1−2.4に
の ポ テ ン シ ャ ル 中 の パ ラ メ ー タ ー の 値 は 表2.1に 状 態 に お け るHamada-Johnston(HJ)ポ
テ ン シ ャル の 概 観 が 図
図 示 さ れ て い る.
2.2
2.2.1
示 され て い
原 子 核 の 飽 和 性 とBrueckner理
論
密 度 と結 合 エ ネ ル ギ ーの 飽 和 性
陽 子 数Z,中
性 子 数Nの
数A=Z+Nに
安 定 な 原 子 核 を 球 と 考 え た と き の 体 積 は,ほ
比 例 し,し
た が っ て 半 径 は,お
る こ と が 実 験 的 に わ か っ て い る.半
お よ そAの1/3乗
ぼ 質量
に比例す
径R0は
(2.5) と 表 さ れ る. ま た,原
子 核 の 質 量 をM(Z,N)と
す れ ば,結
合 エ ネ ル ギ ーB(Z,N)は
(2.6) で あ る.こ
こ で,Mpお
よびMnは
そ れ ぞ れ 陽 子,中 性 子 の 質 量 で, で あ る.B(Z,N)は
Weizsacker-Betheの
質 量 公 式(mass
半経験 公式 で あ るところの
formula)
(2.7) で か な り う ま く 表 現 で き る こ と が 知 ら れ て い る.こ に な ぞ ら え た 液 滴 模 型(liquid-drop
model)に
の 質 量 公 式 は原 子 核 を 液 滴
基 づ い て 考 案 さ れ た も の で あ る.
(2.7)式
の 右 辺 第1項
は 体 積 に 比 例 す る 体 積 エ ネ ル ギ ー(volume
質 量 公 式 の 主 要 部 分 で あ る.第2項 energy),第3項 (Coulomb
い.し
energy)で
あ る.同
の 効 果 が 第4項
ら に 第1章
じ 質 量 数 な らZが
を す る.第5項 で あ る.各
にZとNの
数 のZま
ネルギ ー
大 き い ほ どCoulombエ
ネル
比 べ てNが
大 き
差 が 小 さい ほ ど エ ネ ル ギ ー の 得 を
の 対 称 エ ネ ル ギ ー(symmetry
で 議 論 し た よ う に,核
す る 対 相 関 力 が 働 き,偶
力 に よ るCoulombエ
量 数 が 大 き い 原 子 核 で は 一 般 にZに
か し 核 力 の 対 称 性 か ら,逆
す る.こ
は 表 面 張 力 に よ る 表 面 エ ネ ル ギ ー(surface
は 陽 子 間 に 働 くCoulomb斥
ギ ー で 損 を す る の で,質
energy)で
energy)の
項 で あ る.さ
内 に お い て は 同 種 核 子 はペ ア ー を作 りや す く た はNは
奇 数 の 場 合 に 比べ て エ ネル ギ ー の得
は こ の 対 相 関 力 に よ る 偶 奇 質 量 差(even-odd
mass
difference)
項 の 定 数 は 実 験 値 に 合 う よ う に き め ら れ,
(2.8a) とな る.ま た 偶 奇 質 量 差 の項 は
(Z=偶
数,N=偶
(A=Z+N=奇 (Z=奇 で あ る.図2.5に,1核 の 質 量 公 式(2.7)に
数), 数),
数,N=奇
(2.8b)
数)
子 当 た りの 結 合 エ ネ ル ギ ー の 実 験 値 とWeizsacker-Bethe お い て δ(A)を
除 い た 値 とが 比 較 され て い る .
上 に 述 べ た よ うに 核 半 径 が 質 量 数Aに
比 例 す る と い う こ と は,核
ず 密 度 が 一 定 で あ る こ と を 意 味 す る.こ
れ を 原 子 核 の 密 度 の 飽 和 性(saturation
of density)と
呼 ぶ.核
の種 類 に よ ら
の粒子 密度 ρは
(2.9) で あ るか ら,平 均 核 子 間距 離dは
(2.10) と 考 え ら れ る.
一方Weizsacker-Betheの 量 公 式 に よ れ ば,原
質
子核の結 合
エ ネル ギ ー の 主 要 部 分 で あ る 体 積 エ ネ ル ギ ー も ま た 質 量 数A に 比 例 す る.す
な わ ち核 の 大 き
さ に よ ら ず,核
子1個
当 た りの
結 合 エ ネ ル ギ ーが 一 定 で あ る こ と を 意 味 す る.こ
れが結合 エネ
ル ギ ー の 飽 和 性(saturation
of
binding
れ
ら2種
energy)で 類 の,密
あ る.こ
度 と結 合 エ ネ ル
ギ ー の 飽 和 性 は,安
定 な原 子 核
の 著 し い 特 徴 で あ る. Weizsacker-Betheの
質 量 公
式は原 子核 を液滴に見立 てた液 滴 模 型 に 基 礎 を 置 い て い る.液
図2.5
滴 は そ れ を構 成 す る粒 子 が 互 い に 強 く結 合 し て い る と い う 強 結 合(strong
coupling)の
考 え に
立 脚 して い る.一 方,第1章 模 型(independent-particle が 弱 い と い う弱 結 合(weak
点 は 実 験 値.実
核 子 当 た りの結 合 エ ネ ル ギ ー
線 はWeizsacker-Betheの
に お い て δ(A)を
除 い た 値.A.Bohr
telson,Nuclear
Structure,Benjamin,Vol.I
Chap.2よ
質 量 公 式(2.7) and
B.R.Mot (1969),
り.
で 見 た よ う に,原 子 核 で は 殻模 型 とい う独 立 粒 子 model)が coupling)の
よ く成 り立 つ.こ れ は構 成 粒 子 間 の 結 合 考 え 方 で あ る.し たが っ て,こ の2つ
の 模 型(描 像)は 概 念 的 に極 め て 矛 盾 し て い る よ うに 思 わ れ る.こ の矛 盾 は ど の よ う に し て解 決 で き,そ し て上 述 の 原 子 核 の 飽 和 性 は ど の よ う に説 明 で き るの で あ ろ うか.こ れ が 本 節 で 解 くべ き問題 で あ る.
2.2.2
核 物 質 とFermiガ
ス模 型
上 記 の 問題 を検 討 す る にあ た っ て,原 子 核 の 体 積 の 有 限 性 と表面 効 果 を扱 うこ と を避 け て 問題 を簡 単 化 す る た め に,無 限 に 広 が った 核 物 質(nuclear
matter)
を議 論 の対 象 と し よ う.核 物 質 は 同 数 の 陽子 と中性 子 か らな る密 度が 一定 の無 限 に広 が っ た理 想 化 され た 物 質 で あ り,陽 子 間 のCoulomb力
は無 視 す る こ と にす
る.つ ま り核 物 質 とは,原 子 核 の 中 心 部 分 の 性 質 を持 っ た無 限 に 広が っ た物 質で
あ る.し た が っ て 核 物 質 は 粒 子 密 度 が(2.9)式 ギ ー がWeizsacker-Betheの
で あ り,1粒
子 当 た りの 結 合 エ ネ ル
質 量 公 式 に お け る 体 積 エ ネ ル ギ ーCV=15.6MeV
で あ る よ う な 抽 象 化 さ れ た 物 質 で あ る と 考 え る. こ の 核 物 質 を 扱 うた め の 準 備 と し て,Fermiガ
ス 模 型(Fermi
gas model)に
つ い て 述 べ よ う. Z=N=A/2個
の 核 子 が,1辺
じ込 め ら れ て い る も の と す る.壁 た,い
がLの
立 方 体 の ポ テ ン シ ャル の壁 の 中 に 閉
の 内 部 の ポ テ ン シ ャ ル の 値 を-U0と
ま 想 定 し て い る の は 核 物 質 で あ る か ら,Lは
とす る.1核
す る.ま
ほ とん ど無 限 大 に 近 い もの
子の波動 関数は平面波
(2.11) で 表 され,系
の基底状態は
(2.12) と書 か れ る.kは
平 面 波 の 波 数 ベ ク トル で,hkが
核 子 の 運 動 量 で あ る.系 の基
底 状 態 は,こ れ らの 平 面 波 の 状 態 に運 動 量 の 小 さい ほ うか ら最 大 の 運 動 量hkF まで 核 子 を 詰 め た状 態 で あ る.こ れ をFermiガ 運 動 量(Fermi 類 あ り,1つ
momentum)と
の1つ
ス模 型 と 呼 ぶ.hkFはFermi
呼 ば れ る.た だ し,核 子 は 陽子 と 中性 子 の2種
の 核 子 は 上 向 き と下 向 きの2つ
の ス ピ ン状 態 が あ る の で,平 面 波
の 状 態 に は4個 の 核 子 が 入 る こ とが で きる.波 数 ベ ク トル 空 間 にお け る
状 態 密 度 は
で あ る か ら,
(2.13) と な る.し
た が っ て,Fermiガ
ス の 粒 子 密 度 を
とす れ ば
(2.14) が 得 られ る.原 子 核 の密 度 は(2.9)式
で 与 え られ るか ら,核 物 質 の 密 度が これ
と 同 じ で あ る とす れ ば
(2.15) と な る.
つ い で な が ら,核 物 質 中 の1核 子 当 た りの 平 均 の 運 動 エ ネ ル ギ ーTと シ ャル の深 さU0を
ポテ ン
見 積 もって お こ う.核
物 質 中 の 最 高 の 運 動 エ ネ ル ギ ー はFermi 運動 量 に対 応 す る エ ネル ギ ー で あ る か ら
(2.16a) で あ る.こ
こでMは
図2.6
Fermiガ
ス模 型 の 概 念 図
核 子 の 質 量 で あ る.平 均 の 運 動 エ ネ ル ギ ー は
(2.16b) (2.16c) と な る.原 子 核 か ら1核 子 をは ぎ取 るの に必 要 な平 均 の エ ネル ギ ー は約8MeV で あ る.し た が っ て,核 物 質 中 の 最 高 の 運 動 エ ネル ギ ーTFに え た もの が ポ テ ン シ ャル の 深 さU0に
この8MeVを
加
な る はず で,
(2.16d) で あ る(図2.6参
2.2.3
照).
Brueckner理
論
核 物 質 の 密 度 や 結 合 エ ネ ル ギ ー を 第 一 原 理 か ら,す み がBrueckner*4に で あ る.後
な わ ち 核 力 か ら導 き 出 す 試
よ っ て 提 唱 され たBrueckner理
にBetheやGoldstoneに
Bethe-Goldstone理
theory)
よ っ て 補 強 さ れ た の で,*5Brueckner-
論 と も 呼 ば れ る.こ
す べ き重 要 な理 論 の1つ
論(Brueckner
の理 論 は 原 子 核 構 造 論 の 中 で も特 筆
と い え る で あ ろ う.
(a) 連 結 ク ラ ス ター 展 開 粒 子 数Aの
核 物 質 を考 え る.核 物 質で あ る か らAは
ほ とん ど 無 限 大 に 近 く
大 きい もの とす る.こ の核 物 質 の基 底 状 態 の 波 動 関数 をΨ0,エ ネル ギ ー をEと *4 K
.A.Brueckner
and
C.A.Levinson,Phys.Rev.97
K.A.Brueckner,Phys.Rev.100
(1955)
K.A.Brueckner and *5 H .A.Bethe,Phys.Rev.103 H.A.Bethe
and
J.L.Gammel,Phys.Rev.109 (1956)
1344.
(1958)
1023.
1353.
J.Goldstone,Proc.Roy.Soc.A238
J.Goldstone,Proc.Roy.Soc.A239
(1955) 36.
(1957)
(1957) 267.
551.
す れ ば,系
のSchrodinger方
程式 は
(2.17) で あ る.こ
こ で,H=T+H'は
系 の 全 ハ ミ ル トニ ア ン で,
(2.18) で あ る.Tは
運 動 エ ネ ル ギ ー,H'は
iと 粒 子jの間
相 互 作 用 の ハ ミル トニ ア ン,υ(ij)は
粒子
に 働 く核 力 で あ る.
Schrodinger方
程 式(2.17)を
通 常 の 摂 動 展 開*6で
展 開 の 次 数 を 明 確 に す る た め に,パ
取 り扱 う こ と に す る.摂
ラ メ ー タ ー η を 導 入 し,H'=ηhと
動
お く.
無摂 動 系 の 基 底 状 態 を
(2.19) と し,演 算 子Fを
導 入 して
とす る.Ψ0とEの
摂動展 開 を
(2.20a) (2.20b) と書 く.Φ0お よびΨ の 規 格 化 を
(2.21) とす る.い
う まで も な く,無 摂 動 系 の 基 底 状 態 Φ0はFermiガ
ス模 型 の 波 動 関
数 と同 等 で あ る. 無 摂 動 系 の 基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー はE0で た た め に基 底 状 態 の エ ネル ギ ーがEと だ け の エ ネ ル ギ ー ・シ フ ト(energy エ ネ ル ギ ー で あ り,こ れ が 粒 子 数Aに
あ るが,こ
れ に相互作 用が加 わっ
な っ た わ け で あ るか ら,ΔE=E-E0 shift)が 生 じ る.ΔEが
核物 質の相互作用
比 例 す る こ とが わ か れ ば 結 合 エ ネ ルギ ー
の 飽 和 性 が 示 され た こ と に な る. Schrodinger方
程 式(2.17)を
(2.22) *6 Rayleigh
-Schrodingerの
性 が 悪 い の で 使 え な い.
摂 動 展 開 で あ る.Brillouin-Wignerの
摂 動 展 開は この 場 合収 束
と書 き 直 し,(2.17)式
と(2.21)式
と を 考 慮 す れ ば,エ
ネ ル ギ ー ・シ フ トは
(2.23) と書 か れ る. (2.20)式
の 摂 動 展 開 を(2.17)式
に 代 入 し,両
辺 の η の 同 一 べ きの 項 を 比 べ
て 次 の 各 式 を 得 る.
(2.24a) (2.24b)
(2.24c) ただ し
(2.25) で あ る.ま
た 演 算 子Q/bは
プ ロ パ ゲ ー タ(propagator)と
呼ばれ
(2.26) で 定 義 され る.演 算 子Pは
無 摂 動 系 の基 底 状 態 へ の 射 影 演 算 子 で あ り,Qは
そ
れ 以 外(励 起 状 態 の すべ て)へ の 射 影 演 算 子 で あ る. これ らの 摂 動 展 開 係 数EnやFnは,原
理 的 に はn=1,2,…
こ とが で きる が た いへ ん 複 雑 で あ る.Tとhを
第2量
と順 次 求 め る
子 化 の 表 示 で 書 くと,
(2.27a) (2.27b) と 表 され る.た で あ る.ま (2.24a),
だ し
た (2.24b)式
は1粒
は2体
が1粒
子 エ ネルギ ー
力 の 反 対 称 化 さ れ た 行 列 要 素 で あ る.(2.27)式
へ 代 入 す る.
と 同 等 で あ る.Fermiガ
子 状 態 α の 運 動 量,
はFermiガ
を
ス 模 型 の 波 動 関 数(2.12)式
ス 模 型 に お け る 最 高 準 位(Fermi運
動 量hkFの
準 位)を
(a)
(b) 図2.7
Fermi面(Fermi
surface)と
(c)
Feynman図
呼 び,記
号Fで
(d)
次 説 明
表 す.し
た が っ て,
(2.28) (2.29) で あ る.同 様にE2は
(2.30) と な る.た
だ し (2.31)
それ以外 で あ る.こ
れ は 摂 動 展 開(2.30)の
中 間 状 態α',β'が,Pauli原
理 に よ りFermi
面 よ り 高 く励 起 し な け れ ば な ら な い こ と を 意 味 す る. 以 上 の よ う な 議 論 を 高次 の 項 まで 続 け るの は た い へ ん 面 倒 なの で,Feynman 図(Feynman
diagram)を
あ る 状 態 α がFermi面 態(particle
state)と
(hole state)と
用 い て 少 し わ か りや す く し よ う. よ り 上に あ る 場 合(α>Fの
呼 ん で 上 向 きの 矢 印 線 で 表 し,
場 合),こ
れ を粒 子 状
の場 合 は 空 孔 状 態
呼 ん で 下 向 き の 矢 印 線 で 表 す こ とに す る(図2.7参
照).
演 算 子 は,状 態γ,δに あ る2粒 子 が 相 互作 用 後,状 態α',β' に移 る こ と を 意味 す る.状 態α',β'γ,δす べ て が 粒 子 状 態 な らば,こ れ を図2.7 次(a)で
表 す.水 平 の 破線 は 相 互作 用 を 意 味 す る.粒 子 の演 算 子
な どの 並 び
は,右
か ら左 へ 時 間が 進行 す る もの と考 え,図 の 上 で は 時 間 は 下 部 か ら上 部 へ
進 行 す る もの とす る.状 態 α,βが 粒 子 状 態,γ,δ が 空 孔 状 態 な らば 図2.7の (d)で ある.そ
の 他 は 自明 で あ ろ う.
1次 の 摂 動 展 開E1,す
な わ ち(2.29)式,に
け る
は 空孔 状 態 α,β にあ る
2粒 子 が 相 互 作 用 して,そ
お 図2.8
の 後 も同 じ状 態 に 留
1次 の 摂 動 展 開E1
ま る こ と を意 味 す る.(相 互 作 用 後 に 元 の 状 態 に戻 るの は, 算 す る の で あ る か ら 当 然 で あ る.)し たが って,こ
で 期 待 値 を計
の 相 互 作 用 は 図2.8で
表さ
れ る. 2次 の 摂 動 展 開E2は の摂 動 展 開E3は
図2.9で
図2.10の
表 され る.3次
よ うに本 質 的 に 異 な
る4種 類 の ダ イ ア グ ラ ム で 表 され,4次
の摂 動
展 開 に な る と もっ と多 数 の種 類 の 図 が 現 れ る. さ て,図2.10に
お け る4種
図2.9
類 の ダ イ ア グ ラ ム を 眺 め る と,(a),(b),(c)は
い ず れ も 図 全 体 が 相 互 作 用 の 破 線 で つ な が っ て い る.こ タ― 図(linked-cluster
diagram)と
ス タ ー)に 分 離 し て い る.こ diagram)と Bruecknerは
2次 の 摂 動 展 開E2
呼 ぶ.一
方,(d)は
の よ うな図 を連 結 ク ラ ス 図 が 左 右2つ
の 部 分(ク ラ
の よ う な 図 を非 連 結 ク ラ ス タ― 図(unlinked-cluster
呼 ぶ. 具 体 的 に4次
の 摂 動 展 開 ま で 計 算 し,非
(a)
(b)
(c) 図2.10 (a),(b),(c)は
連 結 ク ラ ス ター 図 か ら
(d) 3次
の 摂 動 展 開E3に
連 結 ク ラ ス タ ー.(d)は
お け るFeynman図 非 連 結 ク ラ ス タ ー.
の 寄 与 は そ の 次 数 内 と そ れ 以 下 の 項 で 完 全 に 相 殺 さ れ,そ
の 結 果,連
グ ラ ム の み を 考 慮 す れ ば よ い と い う こ と を 見 出 し た.*7こ
れ が 摂 動 の 無 限次 ま
で 一 般 的 に 正 し い こ と はGoldstoneに
の摂動展 開は連結ク
ラ ス タ ー 展 開(linked-cluster Goldstoneに は,そ
よ っ て 証 明 され,こ
expansion)と
結 ダ イア
呼 ば れ て い る.*8
よ れ ば 基 底 状 態 の 波 動 関 数Ψ0,お
よ び エ ネ ル ギ ー ・シ フ ト ΔE
れぞ れ
(2.32) お よび
(2.33) と書 か れ る.た だ し
はす べ て の 次 数nに
お い て 連 結 ク ラ ス ター 図 の
み の 和 を とる こ と を 意 味 する.
(b) 平 均 ポ テ ン シ ャル の 導 入 上 述 の連 結 ク ラ ス ター展 開 に よ っ て 核 物 質 の 基 底 状 態 に対 す る摂 動 展 開 法 が か な り見や す くな っ た け れ ど も,実 際 の計 算 に 適 用 す る こ とは で きな い.な ぜ な らば,核
力 は そ の 短 距 離 部 分 にお い て 強 い 斥 力 芯 を持 ち,相 互 作 用 の行 列 要
素ν αβγ δは 極 め て 大 きな 値 と な るか らで あ る.特 に 固い 芯(hard
core)の 場 合
に は行 列 要 素 は 無 限 大 と な る.し たが っ て,低 次 の 摂 動 展 開 で す ら発 散 して し ま うの で ある.こ
の 困難 を 解 決 す る た め に,特 別 に重 要 な連 結 ダ イ ア グ ラム を
ま とめ て 無 限 次 まで 和 を と る よ う に工 夫 す る.こ れ がBrueckner理
論 の真髄で
あ る. 2体 力 の 行 列 要 素 の 対 角 成 分 の 和 を と って,1体
ポ テ ン シ ャ ル を 次 の よ うに
定 義 す る:
(2.34) 連 結 ク ラス ター 展 開(2.33)の た な らば,そ *7 K
. A.
K. *8 J
A.
は な くuで あ っ
の よ うな項 は い か な る ダ イア グ ラム で 表 され る だ ろ うか.た
Brueckner
and
Brueckner,
. Goldstone,
中 間 状 態 に お け る相 互 作 用がhで
C.
Phys. Proc.
Roy.
A.
Levinson,
Rev.
100
Soc.
Phys.
A239
(1955)
Rev.
36.
(1957)
267.
97
(1955)
1344.
とえ
図2.11
ば 最 も簡 単 な3次
1体 ポ テ ン シ ャ ルuに
く り込 まれ るFeynman図
の場合 は
(2.35) で あ る.(2.34)式 2.10(c)に
のuの
等 し い.す
グ(環)状
定 義 を 考 慮 す る と(2.35)式
な わ ち 中 間 状 態 にuが
の 連 結 ダ イア グ ラム は 図
挿 入 さ れ た 項 は,粒
子 の 線 に リン
の グ ラ フ が 連 結 さ れ た ダ イ ア グ ラ ム に な る.
さ て2つ
の 演 算 子x,
yに 対 し て,公
式
(2.36) が 成 り立 つ.こ
の 公 式 を 用 い る と,
(2.37a) (2.37b) と な る.以
後,1粒
子 ポ テ ン シ ャ ルU',U'0を
導 入 し
とした新 しいプ
ロパ ゲ ー タ を
(2.38) と 表 す こ と に す る.こ
の 新 し い プ ロ パ ゲ ー タ は 粒 子 の 線 に リ ン グ(環)状
のグ ラ
フ が 繰 り返 し 連 結 さ れ た ダ イ ア グ ラ ム を 無 限 次 ま で 加 え た も の に な り,図2.11 を 計 算 し た こ と に な る.し 2.11の
た が っ て,連
結 ク ラ ス タ ー 展 開(2.33)に
よ う な ダ イ ア グ ラ ム の 部 分 は,プ
ロ パ ゲ ー タ を
お い て,図 と置 き
換 え る こ と に よ っ て す べ て 取 り 入 れ る こ と が で き る. 以 上 の 結 果 を ま と め る と,(2.34)式 入 し,新
し い1粒
子 ハ ミ ル トニ ア ン
で 定 義 さ れ る 平 均 ポ テ ン シ ャ ルU'を
導
を 使 っ て プ ロパ ゲ ー タ を
図2.12 無 限 次 まで 加 え て2粒
は しご 型 ダ イ ア グ ラ ム
子 演 算子G(1)に
く り込 まれ る.こ れ を新 し い相 互 作 用 と
考 え て 波 線 で 表 す.
と す る こ と に よ っ て,図2.11の
よ う な 粒 子 の 線 に リ ン グ(環)
状 の グ ラ フ が 繰 り返 し 連 結 さ れ た ダ イ ア グ ラ ム を 無 限 次 ま で く り込 む こ と が で き た.こ し,新
れ は,Q/bの
プ ロ パ ゲ ー タが 自 由 粒 子 の 進 行(伝 播)を 意 味 す る の に 対
し い プ ロ パ ゲ ー タQ/b(1)は
ルU'に
多 体 系 の 中 に埋 もれ た粒 子 が 平均 ポ テ ン シ ャ
よ っ て 力 を 受 け な が ら 進 行 す る こ と を 意 味 す る.
Feynman図 がQ/bで
に お け る"実 線"は あ る かQ/b(1)で
に 断 ら な い 限 りQ/b(1)で
(c) 反 応 行 列(G行 次 に 図2.12の の 第1項
プ ロ パ ゲ ー タ を 意 味 す る の で,プ
あ る か に よ っ て"実
線"の
後,特
あ る と す る.
列)
よ う な は し ご 型 ダ イ ア グ ラ ム(ladder
は 図2.10(a)に
ロパ ゲ ー タ
意 味 が 異 な る.以
現 れ て い る.こ
diagram)を
考 え る.こ
れ ら を 無 限 次 ま で 加 え た も の は,2粒
子演算子
(2.39) の行 列 要 素
に 等 しい.た
間 に 働 く核 力 で あ る.こ のG(1)は2粒
だ し,υ は い ま対 象 に し て い る2粒 子 子方程式
(2.40) と 書 く こ とが で きる.こ trix)と
かG行
のG(1)の
列(G-matrix)と
し た が っ て2粒
よ う な2体
演 算 子 は 反 応 行 列(reaction
呼 ば れ て い る.
子間 に 核 力 が 繰 り返 し 働 く"は
か ら 無 限 次 ま で 加 え て,2粒 粒 子 間 の 相 互 作 用 が
ma
子 演 算 子G(1)に
し ご 型 ダ イ ア グ ラ ム"を1次
く り込 む こ とが で き る.つ
と 置 き 換 わ る わ け で あ る.
ま り2
図2.13
バ ブ ル 型 ダ イア グ ラ ム
こ こ で プ ロ パ ゲ ー タ(実 線)は 子G(0)に
とす る.無
限次 まで 加 え て2粒
2粒 子 方 程 式(2.40)の
中 の プ ロ パ ゲ ー タQ/b(1)は(2.38)式
で 与 え ら れ る.
こ こ に は2粒 子 の 中 間状 態 に働 くPauli原 理 を表 す 演 算 子Qが 無 視 す れ ば こ の 方 程 式 は 平 均 ポ テ ン シ ャルU'の あ る.2体
子演算
く り込 まれ る.こ れ を新 し い相 互 作 用 と 考 え て 波 線 で 表 す.
中 で の2体
あ るが,こ れ を 散 乱 問題 と等 価 で
散 乱 で は た と え相 互 作 用 に強 い斥 力 芯 が あ った と して も,反 応 行 列
が 発 散 す る こ とは な い,し
たが っ て 図2.12の
よ うな"は しご 型 ダ イア グ ラ ム"
の 各 項 は 発 散 して も,無 限 次 まで 加 え る と結 果 は 有 限 な 反 応 行 列 を与 え る の で あ る. さ ら に,中
間 状 態 で 励 起 した 粒 子 が,Fermi面
以 下 の励 起 し て い な いす べ て
の 粒 子 と繰 り返 し相 互 作 用 す るダ イア グ ラ ム の 寄 与 を 考 え よ う.図2.13の うな バ ブ ル 型 ダ イ ア グ ラ ム(bubble ロパ ゲ ー タ はQ/b(1)で せ る た め
diagram)で
は な く,元 のQ/bと
あ る.こ
よ
こ で い ま しば ら くプ
し て お く.こ の こ と を は っ き りさ
と書 い て お く.こ の 寄 与 は2粒
子演算子
(2.41) の 行 列 要 素 の 和
とな るか ら,結 局 相 互 作 用が
と
置 き換 え られ た こ とに 等 し い, 前 項 で 議 論 した プ ロパ ゲ ー タへ の く り込 み た と こ ろ の 励 起 した 粒 子 とFermi面 み と を 同 時 に 考 慮 す る に は,プ シ ャルU',U'0を 互作 用G(0)で
と,こ こで 検 討 し
以 下 の 粒 子 と の 相 互 作 用G(0)へ
ロパ ゲ ー タQ/b(1)の
中 に 現 れ た1粒
の く り込 子ポ テ ン
構 成 す る 際,相 互 作 用 と し て 元 の 核 力υ の 代 わ りに 新 た な相 置 き換 えれ ば よい.す
な わ ち,G(0)の
反 対 称 化 され た 行 列 要 素
図2.14
最 終 的 プ ロパ ゲ ー タQ/eに 波 線 はG(0)に
を
くり込 まれ る ダ イア グ ラ ム
よ る相 互作 用.
と し て,
(2.42a) (2.42b) に よ っ て 新 し い 平 均 ポ テ ン シ ャ ルU, U0を
定 義 し,プ
ロパ ゲ ー タ を
(2.43) と2段 2.14の
階 の 置 き換 え を や れ ば よ い.こ
の 結 果 の 最 終 的 な プ ロ パ ゲ ー タQ/eは
図
よ う な ダ イ ア グ ラ ム を 加 え 上 げ た も の に な る.
最 終 的 に プ ロ パ ゲ ー タ はQ/eと の で,核
物 質 内 の1粒
な り,1粒
子 ポ テ ン シ ャル はU,
U0と
なった
子 エネルギ ーは
(2.44) と書 か れ る. この 最 終 的 プ ロパ ゲ ー タQ/eを
使 っ て 図2.12に
グ ラム を計 算 す る と い う こ とは,2粒
お け る"は し ご 型"ダ イア
子方程式
(2.45) を 解 い てGを Bruecknerの
求 め る こ と と 同 等 で ある.こ 反 応 行 列(reaction
プ ロ パ ゲ ー タQ/eの と,こ
中 の1粒
matrix)ま
は 核 力 で あ り,こ
た はG行
のGが
列 で あ る.
子 ポ テ ン シ ャ ルU, U0を
の プ ロ パ ゲ ー タ を 用 い て(2.45)式
は な い.し
こ でυ
か ら 求 め たG行
き め る 反 応 行 列G(0) 列 とは 同 一 演 算 子 で
か し こ れ ら が 等 し く な る ま で 繰 り返 し 計 算 す る こ と に よ っ て よ り よ
図2.15 最 終 的 に エ ネ ル ギ ー ・シ フ ト ΔEを 構 成 す る ダ イア グ ラ ム 波 線 はG行 列 に よ る 相 互作 用.2次 の 項 は 存 在 し ない.
いG行
列,ひ
い て は よ り よ い 平 均 ポ テ ン シ ャ ル が 得 ら れ る は ず で あ る.つ
りHartree-Fock法 で あ る.し
と 同 様 な 自 己 無 撞 着 法(self-consistent
た が っ て,(2.42)式
と(2.45)式
method)の
ま
考 え方
と を 連 立 させ た 方 程 式 を 自 己 無 撞
着 的 に 解 く こ と をBrueckner-Hartree-Fock法(Brueckner-Hartree-Fock method)と
呼 ぶ.
(d) ま と め 強 い 斥 力 芯 の あ る 核 力 に よ っ て 相 互 作 用 し て い る 核 子 多 体 系 で は,摂 は 発 散 し て そ の ま ま で は 取 り扱 い 不 可 能 で あ る.こ 物 質 に お け る 連 結 ク ラ ス タ ー 展 開(2.33)を し て きた.そ
の 結 果 は 次 の2つ
動 展開
の 問 題 を 解 決 し な が ら,核
いか に し て計 算 す るか に つ い て 議 論
の ス テ ッ プ に ま と め る こ と が で き る:
(1) プ ロ パ ゲ ー タ の エ ネ ル ギ ー 分 母 に1粒
子 ポ テ ン シ ャ ル を 導 入 し,く
り込 み
可 能 な ダ イ ア グ ラ ム を 無 限 次 ま で す べ て こ の ポ テ ン シ ャ ル の 中 に 取 り こ む. (2) 相 互 作 用 の 繰 り返 し の 無 限 次 ま で の 和 を と り,発
散 し な いG行
列 に くり
込 む. こ の2つ
の ス テ ップ は 連 動 し て い る.す
の 行 列 要 素 を 用 い て 計 算 さ れ,そ
のG行
な わ ち,1粒
子 ポ テ ン シ ャ ル はG行
列 は 計 算 され た1粒
列
子ポテ ンシャルを
使 っ た プ ロ パ ゲ ー タ の 下 で 計 算 さ れ る と い う 仕 組 み で あ り,こ れ がBrueckner 理 論 の 論 理 構 成 で あ る.こ
の よ う に して 核 物 質 に 対 す る摂 動 展 開 を発 散 し な い
よ う な 量 で 書 き 表 す こ と が で き た.そ 図2.15に
の エ ネ ル ギ ー ・シ フ トは
表 さ れ る よ う な 連 結 ダ イ ア グ ラ ム の 和 と な る.こ
ラ ム に 現 れ る相 互 作 用(波 線)は G行
の 結 果,(2.33)式
も は や 裸 の 核 力 で は な く,発
列 で あ る こ と に 注 意 す べ き で あ る.
れ ら の 各 ダ イア グ 散 す る こ との な い
図2.15の 第1項(1次 の 項)が 核 物 質 の エ ネ ルギ ー ・シ フ ト ΔEの 主 要部 分 で あ り,し た が っ て 核 物 質 の 結 合 エ ネ ル ギ ーB. E.の 主 要 部 分 は
(2.46) で あ る. 核 物 質 は ほ と ん ど 無 限 に 広 が っ た 多 体 系 で あ る か ら,並 invariance)か
ら1粒
式 に 等 し く,G行 あ る.し
進 不 変 性(translation
子 波 動 関 数 は 平 面 波 で あ り,Fermiガ
列 の 行 列 要 素 は1/L3に
た が っ て 図2.15に
エ ネ ル ギ ー は 粒 子 数Aに
比 例 す る.た
お け る3次 比 例 す る.ま
ス 模 型 の そ れ(2.11) だ しL3は
系 の全 体 積 で
以 上 の 項 を 無 視 す れ ば,核 た ,さ
物 質 の結 合
ま ざ ま な 検 討 の 結 果,3次
以上 の
項 か ら 結 合 エ ネ ル ギ ー へ の 寄 与 は あ ま り大 き な も の で は な い と さ れ て い る.以 上 の 議 論 か ら,Brueckner理
論 に よ っ て結 合 エ ネル ギ ー の 飽 和 性 が 説 明 で きた
と 結 論 し て よ い. で は,2.1で
見 た よ う な 現 実 的 な 核 力 か ら 出 発 し,Brueckner理
論 を用 い て
1核 子 当 た りの 結 合 エ ネ ル ギ ー の 計 算 値 は ど の よ う な 値 に な る で あ ろ う か.図 2.16に
種 々 の 現 実 的 な 核 力 を 用 い た 結 合 エ ネ ル ギ ー の 計 算 値 が 示 さ れ て い る.
こ こ で 用 い ら れ た 核 力 は,い
ず れ も 重 陽 子 や 低 エ ネ ル ギ ー の 核 子-核 子 散 乱 の 実
験 デ ー タ を よ く再 現 す る よ う に きめ ら れ て い る.核 算 値 は 密 度(し 最 も 大 き いkFの
た が っ てkF)に
物質の結 合エネルギーの計
よ っ て 変 わ る.図2.16の
値 は 結 合 エ ネル ギ ーが
点 を 示 し て い る.
こ れ ら の 結 果 か ら,現
実 的 な 核 力 か ら 出 発 し てBrueckner理
1核 子 当 た りの 結 合 エ ネ ル ギ ー の 計 算 値 がWeizsacker-Betheの 推 定 さ れ る"実
験 値"の
約16MeVを
た 安 定 な 核 子 密 度 も"実 る こ と が わ か り,密
2.2.4
質量公式 か ら
ほ ぼ 再 現 す る こ と が 明 ら か に な っ た.ま りや や 高 い と は い う も の の,近
い 値 が 得 られ
度 の 飽 和 性 も ほ ぼ 説 明 で き る こ とが 明 ら か と な っ た.
独立粒子描像 はなぜ成立 するか
上 述 の よ う に,原 で き た.一
験 値"よ
論 を 用 い れ ば,
方,第1章
(independent-particle
子 核 の 飽 和 性 はBrueckner理 で 述 べ た よ う に,原 picture)が
子 核 で は 殻 模 型 と い う独 立 粒 子 描 像
成 り立 つ.こ
点 か ら ど の よ う に 理 解 で き る で あ ろ う か.核
論 に よ って 説 明 す る こ とが
の こ と はBrueckner理
物 質 中 の2粒
論 の観
子 の 相 対 運 動 の波 動
図2.16 4角
種 々 の 現 実 的 な 核 力 を 用 い た 場 合 の,核
形 は 質 量 公 式 か ら 推 定 さ れ る"実
験 値".粒
が 大 き い ほ ど 密 度 が 高 い こ と に 注 意.た
物 質 の 結 合 エ ネ ル ギ ー(B.
子 密 度 は
と え ば"HJ"は2.1で
の 他 の 核 力 の 詳 細 に つ い て は,下
れ ら の デ ー タ は 主 と し てB.
D.
B.
はK.
Wiringa, Suzuki,
phys. R.
Rev.
Day,
Rev.
Mod.
Phys.
Okamoto,
C32(1985)1057か M
Kohno
S. Nagata,
の 原 論 文 を 参 照 さ れ た い.こ
50(1978)495;
ら と り,最
and
計 算 値
示 し たHamada-Johnston
ポ テ ン シ ャ ル を 意 味 す る.そ
R.
E.)の
で あ る か ら,kF
Nucl.
B.
D.
Day
and
も 新 し い 計 算 結 果"Bonn Phys.
B"
A665(2000)92か
ら と ら れ て い る.
関 数 の 振 る舞 いか ら,独 立 粒 子 描 像 の 成 立 の ゆ え ん を議 論 し よ う.*9
(a) Bethe-Goldstone方
程式
2.2.3に お け るBrueckner理
論 か ら 明 らか な よ う に,核 物 質 中の2粒
子の相
関 を きめ る方 程 式 は(2.45)式 で あ る.こ の方 程 式 は 平均 ポ テ ン シ ャルUの 運 動 し な が ら核 力 υで 相 互 作 用 す る2粒
子 の"散 乱 問 題"を 記 述 して い る.通
常 の 散 乱 と異 な る 点 は プ ロパ ゲ ー タQ/eに れ て い るQ/eは
演 算 子Qを
散 乱 す る と き,Fermi面
A.
Bethe
K.
A.
Brueckner
L.
C.
Gomes,
and
J. D.
で定義 さ 子が
以 下 のす べ て の 状 態 は他 の 粒 子 に よっ て 占め られ て い
J. Goldstone, and
あ る.す な わ ち,(2.43)式
含 ん で い る.こ の 演 算 子 は,核 物 質 中で2粒
*9 こ こ で の 議 論 の 内 容 は 次 の 論 文 に 負 っ て い る H.
中を
J. L. Walecka
Proc. Gammel, and
V.
.
Roy.
Soc.
Phys.
Rev.
F.
Weisskopf,
A238(1957)551. 109(1958)1023. Ann.
Phys.
3(1958)241.
るの で,中
間状 態 に お い て2粒 子 は必 ずFermi面
ば な ら ない と い うPauli原 この 演 算 子Qが
よ り上 の 状 態 に励 起 しな け れ
理 に よ る もの で あ る.独 立 粒 子 描 像 の 成 立 に とっ て,
た い へ ん 重 要 な 働 き をす る こ とが 後 で 明 らか に な る .
い ま核 物 質 中 で 相 互 作 用 す る2個 の 粒 子(粒 子1と 粒 子2)に 子 の 励 起 は す べ て 無 視 す る こ と にす る.こ の2粒 は,(2.45)式
子 のG行
注 目 し,他 の粒
列 を きめ る方 程 式
から
(2.47) と 書 く こ と が で き る.こ ネ ル ギ ー 演 算 子,U1, を 通 常 のSchrodinger方
こ で υ12は2粒
U2は2粒
子 間 の 核 力,t1,
t2は2粒
子 の運動エ
子 に働 く平 均 ポ テ ン シ ャ ル で あ る.こ
の方 程 式
程 式 の 形 で 表 示 す る と,
(2.48) と表 され る.こ の 形 の 方 程 式 をBethe-Goldstone方
程 式 と呼 ぶ.*10要 す る
に平 均 ポ テ ン シ ャル 中 の2粒 子 が 核 力 に よ って 散 乱 す る状 態 を記 述 す る方 程 式 で あ るが,通 常 の 散 乱 と異 な るの はPauli原
理 に起 因 す る演 算 子Q12が
介在す
る とい う点 で あ る. 核 物 質 中 の1粒
子 状 態 α は 運 動 量hkα で 示 され る.平 均 ポ テ ン シ ャ ルUの
行 列 要 素Uα は 波 数kα の 関 数 で あ るが,核
力 に強 い斥 力 芯が あ る の で,kα が
大 きい ほ ど(す な わ ち 近 距 離 に な るほ ど)斥 力 的 にな るで あ ろ う.こ れ を単 純 に
(2.49) と近 似 して お く.し た が っ て 核 物 質 中の1粒
子 エ ネ ルギ ー は
(2.50) と 書 か れ る.た
だ し
(2.51) で あ る.こ
の 結 果 は,核
物 質 中 の 核 子 の 質 量 が 裸 の 核 子 の 質 量Mで
で あ る と 見 な さ れ る こ と を 意 味 す る.M*を 実 際 の 核 物 質 の 計 算 結 果 か ら ∼0.6Mの *10 H
. A.
Bethe
and
J. Goldstone,
Proc.
Roy.
有 効 質 量(effective
は な く,M* mass)と
程 度 で あ る と 考 え られ る. Soc.
A238(1957)551.
呼 び,
1粒 子 ポ テ ン シ ャ ル(2.49)お
よ び 有 効 質 量 を 用 い る と,Bethe-Goldstone方
程 式(2.48)は
(2.52) と な る. る.こ
は そ れ ぞ れ 粒 子1,粒
子2の
座 標 に 関す る ラプ ラ シ ア ンで あ
の 方 程 式 の 解 ψ12の 性 質 を 定 性 的 に 調 べ る た め,以
や ア イ ソ ス ピ ン の 自 由 度 は す べ て 無 視 す る.2粒 相 対 運 動 量 を
Bethe-Goldstone方
子 のス ピン
子 の 相 対 座 標 をr=r1-r2,
全 運 動 量 を
は 相 対 距離
後2粒
と し,核
力
の み の 関 数 と す る.
程 式(2.52)は
積分方程式
(2.53) と書 くこ とが で きる.こ
こで
は平面波で
(2.54) で あ り,Green関
数
は
(2.55) で 定 義 され る.た だ し
で あ る.ま た
は 演 算 子Q12の
運 動 量 表 示 で,
(2.56)
その 他 で あ る.
当面 の 目標 は,2粒 子の相対運動の波動 関数 こ と で あ る か ら,簡 と す る.さ る.波
単 の た め2粒
ら に 相 対 運 動 の 角 運 動 量 はL=0と
動 関 数 の 動 径 部 分 をu(r)と
の定性 的性 質 を調べ る
子 の 重 心 が 静 止 し て い る 場 合 を 考 え,P=0 し,S波
す る な ら ば,こ
の み を考 え る こ と にす
の 場 合 のBethe-Goldstone
方程式 は
(2.57)
と な る.こ
こ でjl(x)はl次
の 球Bessel関 で あ る.ま
数(spherical
たGreen関
Bessel's
function)で,
数 は 次 の 通 り で あ る:
(2.58) Bethe-Goldstone方
程 式 を解 く に 当 た っ て,核 力 υ(r)が 固 い 芯(hard
持 つ 場 合 に は 少 し 工 夫 が 必 要 で あ る.い
ま 芯 半 径(core
力 υ(r)が 固 い 芯 だ け の 場 合 を 考 え る.す な わ ち に 対 し
の 場 合 で あ る.こ
の 場 合 の2体
radius)をrcと
core)を す る.核
に対 し
散 乱 の 問 題 は,Schrodinger方
程式 におい て
(2.59) と 置 き,境
界 条 件
証 明 で き る.証
明 は,有
に よ っ て定 数 λ を きめ る こ と と 同等 で あ る こ とが 限 の 高 さV0の
の 極 限 を と れ ば よ い.し
箱 型 ポ テ ン シ ャ ル に よ る 散 乱 問 題 を 解 き,
た が っ て 固 い 芯 の 外 側(r>rc)に
ル υa(r)が あ る 場 合 に は,Schrodinger方 方 程 式(2.58))に
お い て
程 式(い
ポテ ンシャ
ま の 場 合 はBethe-Goldstone
の 代 わ りに
(2.60) と 置 き,境
界 条 件u(rc)=0に
Goldstone方
よ っ て 定 数 λ を き め る.そ
の 結 果,Bethe-
程 式 は 以 下 の よ う に な る:
(2.61) (2.62a) (2.62b)
(b) Pauli原 簡 単 の た め2粒
理 と 回復 距 離 子 相 互 作 用 υ(r)と し て 固 い 芯 の 外 に 井 戸 型 ポ テ ン シ ャ ル が 加
わ っ た 形 の ポ テ ン シ ャ ル を と り,2粒
子 の 相 対 運 動 量 が
種 々 の 値 に 対 し て,Bethe-Goldstone方
程 式(2.61)の
の 場 合 の 結 果 が 示 され て い る.た
だ しFermi運
の範 囲の
解 を 求 め る.図2.17に 動 量 は(2.15)式
と同
じ く
と し,芯 半
径 は
井戸 型 ポテ ン
シ ャ ル の 半 径 は
また
核 子 の有 効 質 量 は し た.図2.17に
と
お い て,実 線 は
Bethe-Goldstone方 物 質 中 の2粒
程 式 に よる核
子散乱の相対 波動関
数 で あ り,破 線 は 同 じ相 互 作 用 に よ る 自 由 空 間 中の2核
子 散 乱 の相
対 波 動 関 数 で あ る.ま た,点 線 は 図2.17
自由粒 子(相 互 作 用 が な い と き)の
場 合 のBethe-Goldstone方
程 式 の解(実 線)と,自
相 対 波 動 関 数 で あ る.こ れ ら を比 較 す る と,2粒 子 間の距 離 が 相 互作
k=0.6kFの 散 乱(破 線)お
由 空 間 内 の2粒
子
よび 自由 粒 子 の 相 対 波 動 関
数(点 線)の 比 較
用 の 到 達 距 離(相 互 作 用 半 径)程 度
芯 半 径 は
ンシ ャ ル の半 径 は
井戸型ポテ 有 効 質量 は
とと られ て い る.
に な る と 実 線 と点 線 が ほ ぼ 重 な っ
て し ま う こ とが わ か る.と こ ろが 破 線 と点線 とは 遠 方 まで 重 な らない.す なわ ち Bethe-Goldstone方
程 式 の 解 は,相 互 作 用 半 径 を 越 え る と た ち まち 自由粒 子 の
相 対 波 動 関数 に回 復(heal)し て し ま う.こ の 距 離 を回 復 距 離(healing と呼 ぶ.核
物 質 中 の2粒
distance)
子 散 乱 の 相 対 波動 関 数 の 回復 距 離 は 相 互 作 用 半径 の 程
度 で あ るの に対 し,自 由空 間 中 の2粒 子 散 乱 の 回復 距 離 は無 限大 で あ る.す な わ ち ど こ まで も回復 し な い.こ れ らの 性 質 は 相 対 運 動 量hkの
大 きさには よら
な い こ とが 確 か め られ て い る. 自 由 空 間 内 の2核
子 散 乱 とBethe-Goldstone方
か.核 物 質 中で は2粒 子 が 散 乱 す る と き,Fermi面 粒 子 に よ っ て 占 め られ て い るの で,2粒 Fermi面
程 式 の 場 合 とで は何 が 違 う 以 下 の すべ て の 状 態 は他 の
子 の 中 間状 態 はPauli原
理 に よ り必 ず
よ り上 に 励 起 し な け れ ば な ら な い.こ れ がBethe-Goldstone方
(2.48)に お け る 演 算 子Q12の
出現 で あ り,そ の 結 果Green関
数(2.58)に
程式 おけ
るk'に つ い て の 積 分 範 囲 が
とな る.自 由空 間 内 の2核 子 散 乱 の場 合 の
Green関
にお け る 積 分 範 囲 を[0,∞]と す れ ば よい.
数 は,い
こ の と きのGreen関
ま の 場 合(2.58)式
数 の 解 析 的表 現 は容 易 に 求 め る こ とが で き,そ れ を用 い て
計 算 した のが 図2.17の
破 線 で あ る.
以 上 の 結 果 を ま とめ る と,核 物 質 中 にお い て は2核 子 の 相 対 波 動 関 数 は 相 互 作 用 半 径 の 程 度 の 回復 距 離 で た ち ま ち 自 由粒 子 の それ に 回復 す る.し た が って, (2.10)式 で 与 え られ る平 均 核 子 間距 離 く らい 離 れ る と,波 動 関 数 は 自由 粒 子 の そ れ とほ とん ど 変 わ ら な い とい う こ と に な る.こ れ が す な わ ち原 子 核 に お い て 独 立粒 子 描 像 が 成 り立 つ メ カニ ズ ムで あ り,そ の 最 大 の 原 因 はPauli原
理であ
る とい え る.
2.3 有 効 相 互 作 用
第1章
殻 模 型 で 述 べ た よ うに,原 子 核 は 多 数 の 核 子 が 核 力 とい う強 い 短 距 離
相 互 作 用 に よ って 結 合 した 多 体 系 で あ り,第0近
似 において核力 は平均ポ テン
シ ャル を 形 成 し,そ の 中で 核 子 は"独 立 粒 子 運動"を 行 い,そ の 核 子 間 に"有 効 相 互 作 用"が 働 い て 配 位 混 合 が 生 じ,そ れ に よ って 基 底 状 態 付 近 の さ まざ ま な 性 質 が 説 明 され る. そ れ で は,こ
の 有 効 相 互 作 用 は核 力 か らど の よ うに して 導 き出 せ るで あ ろ う
か.こ の 道 筋 を論 じ る理論 を有 効 相 互 作 用理 論(theory と呼 ぶ.こ
of effective interaction)
の 理 論 はず い ぶ ん 以 前 か ら多 くの 研 究 者 に よ っ て論 じ られ,さ
まざ
ま な形 の 有 効 相 互 作 用 理 論 が 提 案 され て きた.近 年 に至 り,こ の 分 野 の研 究 に か な りの 進 展 が 見 られ,種
々の 理 論 の 間 の相 互 関 連 な ど も明 らか に な っ て きた.
しか し,そ れ らの 成 果 の 詳 細 を述 べ る の は 本 書 の主 旨 を 越 え る と思 われ る ので, こ こで は有 効 相 互 作 用 理 論 の 基 本 的 な 考 え 方 と,前 節 で 議 論 し たBrueckner理 論 と の 関 連 に つ い て の み 議 論 す る こ と に す る.*11
2.3.1 模 型 空 間 と有 効 ハ ミル トニ ア ン 核 子 多 体 系 の 全 ハ ミル トニ ア ン をH=T+Vと
す る.こ
こで の核 子 多 体 系
は無 限 に 広 が っ た 核 物 質 で も,あ る い は有 限 の 大 き さ を 持 った 現 実 的 な 原 子 核 で もか まわ な い.Tは ち核 力)で あ る.い テ ンシ ャルUを *11 本 節 の T.
T.
運 動 エ ネ ル ギ ー,Vは
相 互作 用 ハ ミル トニ ア ン(す な わ
ま無 摂 動 系 と し て 殻 模 型 を考 え,適
導 入 す る.Uと
し て は,た
当 に 選 ば れ た1粒
子ポ
とえば 調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャル が 考
議 論 の 内 容 は 主 と し て 次 の 論 文 に 負 っ て い る. S.
Kuo,
鈴 木 賢 二,岡
Lecture 本 良 治,日
Notes
in
Physics,
Vol.
本 物 理 学 会 誌,42(1987)263.
144(Springer-Verlag,
1981)p.
248.
え ら れ る.全
ハ ミ ル トニ ア ンHは
(2.63) と書 く こ と が で き る.H0が
無 摂 動 ハ ミル トニ ア ン,H1が
摂 動 ハ ミ ル トニ ア ン
で あ る. い ま,無
摂 動 系 の 固 有 状 態iの
と す る.す
なわ ち
エ ネ ル ギ ー 固 有 値 を εi,固 有 ベ ク トル を
(2.64) で あ る. わ れ わ れ が 殻 模 型 計 算(す な わ ち配 位 混 合 計 算)を 行 うの は,多 Hilbert空 間 の 中 の ご く限 られ た 部 分 空 間内 で あ る.第1章 とえ ば"sd殻"な "pf殻"な らばN
粒子系 の全
で 示 した よ うに,た
らば 調 和 振 動 子 の 固 有 値 がN=2n+l=2の =3の
空 間 で あ り,
空 間 で あ る.こ の よ うな 限 られ た 部 分 空 間 内 で 有 効 相
互 作 用 を 含 む模 型 ハ ミル トニ ア ン(model
Hamiltonian)を
対 角 化 す る のが 配
位 混 合 で あ り,こ の よ う な 部 分 空 間 を模 型 空 間(model
space)と
い ま,あ る模 型 空 間 を 考 え る.こ の 模 型 空 間 をP空
間 と呼 び,そ
dと す る.P空
呼 ぶ. の次元数 を
間へ の 射 影 演 算 子
(2.65) を導 入 す る.P空
間以 外 の 空 間(補 空 間)をQ空
間 と呼 べ ば,Q空
間へ の 射 影
演 算 子Qは
(2.66) で あ る.い
う ま で も な く
が 成 り立 つ.
さ て,系
の 真 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値Eα,固
有 ベ ク トル
はSchrodinger方
程式
(2.67) の 解 で あ る.P空 け るd個
の す べ て の 固 有 値 が,も
い な ら ば,Heffを わ ち,有
間 内 で 定 義 さ れ る あ る ハ ミ ル ト ニ ア ンHeffのP空 と の ハ ミ ル トニ ア ンHの
有 効 ハ ミ ル ト ニ ア ン(effective
効 ハ ミ ル トニ ア ン と は,模
型 空 間(P空
真 の固有値 に等 し
Hamiltonian)と 間)内 のd次
間 内 にお
呼 ぶ.す
な
元 の固有値 問題
(2.68)
のd個
の 固 有 値 が,Schrodinger方
程 式(2.67)の
真 の 固 有 値(の
中 のd個)を
与 え る よ う な ハ ミ ル トニ ア ン で あ る.こ
の よ う な 有 効 ハ ミル トニ ア ンHeffが
ら れ る な ら ば,い
ま 目 標 に し て い るd個
の 真 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 を求 め る た め
に は 全Hilbert空
間 を 考 え る 必 要 は な く,狭
化 す れ ば よ い こ と に な り,真
いd次
に 精 確 か つ 有 用 な"模
で は,ど
の よ う に し て 有 効 ハ ミ ル トニ ア ンHeffが
2.3.2
エ ネ ル ギ ー に依 存 す る有 効相 互 作 用
元 の 模 型 空 間 でHeffを 型"が
得
対角
得 ら れ た こ と に な る.
求 め ら れ る で あ ろ う か.
こ こ で は 有 効 相 互 作 用 に 関 係 し て し ば し ば 引 用 され るFeshbach理
論*12を
紹
介 す る. も と も と のSchrodinger方 Qを
作 用 さ せ,(2.66)式
程 式(2.67)の
両 辺 に 左 か ら 射 影 演 算 子Pお
よび
を考 慮 す る と
(2.69a) (2.69b) が 得 ら れ る.(2.69b)式
か ら
(2.70) が 得 ら れ る の で,こ
れ を(2.69a)式
に代 入 す る と
(2.71) と な る.左 辺 の括 弧 内 の 演 算 子 はP空 効 ハ ミル トニ ア ン
間内 だ け で働 く演 算 子 で あ り,こ れ を 有
とす る.す
なわち
(2.72) と す る と,(2.71)式
は
(2.73) とな る.さ
ら に,
で あ り,射 影 演 算 子Pお
有 状 態 で 定 義 され て い る の で,Pお *12 H
. Feshbach,
Ann.
Phys.
19(1962)287.
よびQはH0と
よびQはH0の
固
交 換 可 能 で あ る.し たが っ
て,Heffは次
の よ う に 書 きか え る こ と が で き る:
(2.74a) (2.74b) こ れ ら の 式 を 一 見 す る と,こ
こ で 得 ら れ た(2.74a)式
提 唱 し た 有 効 ハ ミル トニ ア ン であ り,(2.74b)式 き 有 効 相 互 作 用 で あ る か の よ う に 見 え る.確 間 の そ れ の よ う に 見 え,そ
の で あ る.な
のVeff(Eα)が
の 固 有 値 は 真 の 固 有 値 を 与 え る は ず で あ る.し こ で 得 ら れ た"有
のHeff(Eα)に
エ ネ ル ギ ー 固 有 値Eα
間 内 の 固 有 値 方 程 式 の よ う に 見 え る(2.73)式
固 有 値 方 程 式(2.68)と
Hilbert空
効 ハ ミル トニ ア
は 最 終 的 に 解 くべ きエ ネ ル ギ ー
固 有 値 が 入 っ て い る か ら で あ る.Heff(Eα)が
方 程 式(2.67)を
か し
提 唱 さ れ た 有 効 ハ ミ ル トニ ア ン と は 本 質 的 に 異 な る も
ぜ な らば,(2.74)式
な っ て い る の で,P空
ま さに 求 め るべ
か に 固 有 値 方 程 式(2.73)はP空
こ れ は 外 見 的 に そ の よ う に 見 え る だ け で,こ ン"Heff(Eα)は2.3.1で
のHeff(Eα)が2.3.1で
は 異 な る も の あ る.(2.73)式
変 形 し た だ け で,実
の関数 に
は,d次
元の
は も と も と のSchrodinger
際 に は 同 等 な 方 程 式 で あ り,無
限次 元 の 全
間 に お い て は じ め て 解 く こ と の で き る 方 程 式 であ り,d次
元 のP空
間 内 の み で 解 く こ と は で き な い.
2.3.3
エ ネル ギ ー に 依 存 しな い 有 効 相 互 作 用
上 述 の よ う な エ ネ ル ギ ー に 依 存 し た 有 効 相 互 作 用 で な く,模 空 間 の 効 果 を 完 全 に く り込 ん だ,真
にP空
と が で き る よ う な 有 効 相 互 作 用 は,ど
型 空 間 以 外 のQ
間 内 の み で そ の 固 有 値 問 題 を解 くこ
の よ う に 導か れ る であ ろ う か.こ
れが本
節 の 主 題 であ る. 全 ハ ミル トニ ア ンHの な わ ち, 分 に
真 の 固 有 状 態 のP空 である.ま
た,
間 成 分 を
のQ空
間 成 分
と する.す はP空
演 算 子 ω を 作 用 させる こ と に よ り 得 ら れる も の と する.す
間成
なわ ち
(2.75) と する.d個 な い.ケ
のP空
間 成 分
ッ ト ・ベ ク トルの 組 を 導 入 し,
は 互 いに 直 交 する と は 限 ら に 対 し,ブ
ラ ・ベ ク トル の 組
を み た す よ う に 双 直 交 系(biorthogonal
system)を
導 入 す る こ とが で きる.こ の 双 直 交 系 を使 え ば,P空
間へ の 射 影 演
算 子Pは
(2.76) と 表 さ れ る の で,(2.75)式
におけ る ω は
(2.77) と書 か れ る.ω はP空
間 の 成 分 をQ空
間 の 成 分 に変 換 す る演 算 子 で あ るか ら,
(2.78) の 性 質 を 持 つ.PQ=0で
あ る か ら,
さ て ω の 従 う方 程 式 を 求 め よ う.ω に,全
を み た す. の定 義 式(2.75)か
空 間 に お け る 固 有 状 態 は
と も と のSchrodinger方
で
ら容 易 に わ か る よ う ある.し た が っ て,も
程 式(2.67)は
(2.79) と書 く こ とが で き る.両 辺 に 左 か ら(Q-ω)を
作 用 させ る と,
で ある か ら αの い か んに か か わ らず 右 辺 は0で
あ る.ゆ
えに
(2.80) が 得 られ る.こ
の 方 程 式 を解 けば ω を決定 する こ とが で きる.
固 有 値 方 程 式(2.79)の
両 辺 へ 左 か らPを
作 用 させる と,P空
間 に お け る固
有値方程 式
(2.81) が 得 ら れ る.こ 値 方 程 式(2.68)で
れ こ そ ま さに2.3.1で あ り,し
提 唱 し たd次
元の 模 型 空 間に お け る 固 有
たが って
(2.82) が 有 効 ハ ミル ト ニ ア ン で あ る.*13 *13 模 型 空 間 に お け る 固 有 値 方 程 式(2 い.演
.68)に
導 く有 効 ハ ミル トニ ア ン は(2.82)が
算 子 ω を 用 い て 表 さ れ る 有 効 ハ ミ ル トニ ア ン は,一
唯 一で は な
般 に
(2.83) と 書 か れ る:K. 単 なm=0の
Suzuki
and
場 合 が(2.82)式
R.
Okamoto, であ
る.
Prog.
Theor.
Phys.
71(1984)
1221.最
も 簡
(a) 有 効 相 互 作 用 の 摂 動 展 開 とQボ
ックス
(2.81)式 で 示 した よ うに,系 の 全 ハ ミル トニ ア ンが る もの とす る.H0が のH0の
無 摂 動 項,H1が
固 有 値
とす る.た
と表 され
摂 動 ハ ミル トニ ア ンで
ある.P空 間内 で
は すべ て 縮 退 して い る もの とし,そ の値 をE0
と えば,H0が
調 和 振 動 子 ハ ミル トニ ア ンで,P空
有 状 態 の 主量 子 数 が 一 定 のNに
間 を構 成 す る 固
限 定 され て い る場 合 は この 条件 に 当 て は ま る.
しか し一 般 に は そ の よ うに は な らな い の で, し,こ の平 均 値 か ら の差 は 摂 動 項H1に
の 平 均 値 をE0と
入れ る こ とに す る.し た が っ て
(2.84) と 考 え て よ い. さ て 有 効 ハ ミル ト ニ ア ン(2.82)を2つ
の 部 分 に 分 け て 有 効 相 互 作 用Veffを
(2.85) と定 義 す る.有 効 相 互 作 用Veffの 摂動 展 開 を 求め る た め に,演 算 子
(2.86) を 導 入 す る.こ (2.36)の
の 演 算 子Q(ε)は
公 式 を 用 い れ ば,Qボ
し ば し ばQボ
ッ ク ス(Q-box)と
呼 ば れ る.
ッ クス は
(2.87) と摂 動 展 開 で き る.た だ し
(2.88) で あ る.(2.80)式 Qボ
と(2.85)式
と を 使 っ て ω を 消 去 す る と,有
効 相 互 作 用Veffは
ッ ク ス を用 い て
(2.89a) (2.89b)
と 書 か れ る.*14(2.89a)式
を 逐次 代 入 す る こ と に よ っ て,Veffの
展 開公 式
(2.90) が 得 ら れ る. 表 式(2.89)か
ら 明 ら か な よ う に,Qボ
ッ ク ス さ え 計 算 で き る な ら ば,そ
微 係 数 を 数 値 的 に 計 算 す る こ と に よ っ て 有 効 相 互 作 用Veffが (2.86)式
と(2.45)式
と を 比 べ る と,Qボ
ッ ク ス がBrueckner理
行 列 と ほ と ん ど 同 様 な 構 造 を 持 っ て い る こ とが わ か る.し に 固 い 芯(hard
core)の
発散 しない量で (2.90)式 のVeffは
た が っ て,摂
動 項H' ック ス は
ある と 考 え ら れ る.
のVeffに
よ り エ ネ ル ギ ー に 依 存 し な い 有 効 相 互 作 用 が 得 ら れ た.こ 依 存 す る が,こ
型 空 間 を選 べ ば き ま る もの で
の エ ネ ル ギ ー 依 存 で は な い.有 る の は 当 然 であ
た
論 に お け るG
よ う な 特 異 的 な 相 互 作 用 を 含 む 場 合 で も,Qボ
模 型 空 間 の 無 摂 動 エ ネ ル ギ ーE0に
性 であ り,模
の
求 め ら れ る.ま
れ は 模 型 空 間の 属
ある か ら,(2.74)式
の よ う な意 味 で
効 相 互 作 用 は 模 型 空 間 を ど の よ う に と るか に よ
り,模 型 空 間 の 属 性 で
ある と こ ろ のE0に
依 存 す る の は 自然 な
こ と であ る. 殻 模 型 な ど で 用 い ら れ る 有 効 相 互 作 用 は エ ル ミ ー ト であ る こ と を 仮定 す る の が 通 例 であ る.し
か し,こ
こ で 得 ら れ た 有 効 相 互 作 用(2.89)ある
厳 密 に は エ ル ミ ー トで は な い.し と す れ ば,Qボ
と え ば(2.83)式
に お い てm=-1/2
ッ ク ス お よ び そ の 微 係 数 を 用 い て エ ル ミー トな 有 効 相 互 作 用 を
作 る こ と は 可 能 であ る.こ
(b) Brueckner理 2.2.3で
か し,た
い は(2.90)は
こで は これ 以
上の 詳 細 は 割 愛 す る.
論 との 関連
述 べ たBrueckner理
論 は,核
力 とい う強 い 斥 力 芯 を持 つ きわ め て特
異 的 な力 で 相 互 作 用 し て い る 核 物 質 の 基 底 状 態 の 結 合 エ ネ ル ギ ー を求 め る こ と を 目 的 と し て い た.Brueckner理 た と え ば16Oや40Caの
論 は 有 限 の 広 が り を 持 っ た 現 実 的 な 原 子 核,
よ う な 閉 殻 核 に 適 用 す る こ と もで き る.Brueckner理
論 は 結 合 エ ネ ル ギ ー の み な らず,基 を 反 応 行 列(G行
底 状 態 お よび 励 起 状 態 に お け る2核
列)の 形 で 求 め る こ と が で き る.ま
*14 J . des Cloizeaux, Nucl. Phys. 20(1960) B. H. Brandow,
Rev. Mod.
321.
Phys. 39(1967)
771.
た,核
子相 関
子が基底状態 におけ
る 他 の 核 子 か ら 受 け る 平 均 ポ テ ン シ ャ ル も 同 時 に 求 め ら れ る.そ 行 列 は こ れ ら の 系 に お け る2核 こ のBrueckner理 て お こ う.両 空 間(P空
子 間 の"有
者 の 根 本 的 な 違 い は,考
間)へ の 射 影 演 算 子Pを
元 で あ る.一
方,本
式 で 定 義 さ れ て い て,P空 い ま た と え ば16Oを は,0s1/2,
0p1/2,お
め た2重
元,す
間 はd次 考 え よ う.無
よ び0p3/2の
た が っ て こ の 場 合P空
間
影 演 算 子Pは(2.65)
摂 動 ハ ミル トニ ア ンH0の
準 位 に8個
の 陽 子 と8個
基 底 状 態
の 中性 子 を完 全 に詰
あ る.こ
で あ り,P
の と き(2.90)式
で 与 え られ る 有 効 相
論 で 求 め た エ ネ ル ギ ー ・シ フ トΔEに
ほ か な らな
連 結 ク ラ ス タ ー 展 開(2.33)で
論 と本 節 の 有 効 相 互 作 用 理 論 と は完 全 に 同
.
子 が 加 わ り,こ
考 え よ う.こ
れ ら は1s1/2,
の 場 合2個
よ び0d5/2の
れ ら の3つ
の1粒
の 中 性 子 の 独 立 な 状 態(す
れ ら の 縮 退 し た14の
な り,有
の 系 は16Oの2重
0d3/2,お
殻 に 入 る も の と 考 え ら れ る.こ
空 間)と
論 にお
の 場 合 の 射 影 演 算 子 は
な わ ちd=1で
別 の 例 と し て18Oを
存 在 す る.こ
れ は模 型
元 で あ る.
計 算 す る こ と が で き,Brueckner理
す る.こ
あ る.そ
見 れ ば 容 易 に わ か る.Brueckner理
た が っ て こ の と き のVeffはGoldstoneの
一内容 とな る
型 空 間"に
節 の 有 効 相 互 作 用 理 論 で は,射
互 作 用Veffは,Brueckner理 い.し
え て い る"模
で 定 義 さ れ て い る.し
閉 殻 状 態 で あ る.こ
空 間 は1次
あ る.
論 と本 節 に お け る有 効 相 互 作 用 理 論 との 関連 につ い て 述 べ
け る 射 影 演 算 子Pは(2.26)式 は1次
効 相 互 作 用"で
の 意 味 で はG
閉 殻 の 外 に2個
の 中性
準 位 か ら な る い わ ゆ るsd 子 準 位 が 縮 退 し て い る もの と
な わ ちH0の
固 有 状 態)は14個
状 態 か ら な る 空 間 が こ の 場 合 の 模 型 空 間(P
効 相 互 作 用Veffは14×14行
列 と な る.こ
れ た 有 効 相 互 作 用 を 用 い て 配 位 混 合 計 算 を 行 え ば,18Oの
の よ うに し て得 ら 基 底 状 態 お よび 励 起
状 態 が 計 算 で き る わ け で あ る. 2.2.3で
述 べ た よ う に,Brueckner理
表 す こ とが で き た.し Brueckner理 こ と に よ る.す て,摂
か しd>1の
論 は す べ て を(2.45)式
論 に は 生 じ な い 困 難 が 発 生 す る.そ な わ ち,(2.90)式
のG行
列で書 き
場 合 の 有 効 相 互 作 用 の 計 算 で は,d=1の
のVeffを
れ は 無 摂 動 状 態 に 縮 退が あ る
評 価 す る と き,そ
の高 次 の 項 にお い
動 展 開 の 中 間 状 態 で プ ロ パ ゲ ー タ の エ ネ ル ギ ー 分 母E0-QH0Qが0に
な る 場 合 が あ る こ と に よ る.そ
の よ う な 項 は,図2.18の(b)の
よ う に粒 子 の
(a)
(b)
図2.18
折 れ 線 ダ イア グ ラム を考 慮 し たG行
列
水 平 な 破 線 は 核 力 を表 す. (a)はBrueckner理 論 に おけ るG行 列 で,は しご 型 ダ イ ア グ ラ ム の み で 構成 され る. (b)は(a)のG行 列 に 折 れ 線 ダ イア グ ラ ムが 無 限次 まで く り込 まれ て い る.○ 印 の 線 はP空 間 に属 す る1粒 子 状 態 で あ る.
図2.19
Brueckner理 第1近
波 線 はGを
論 に お け るG行
列 を 核 内 の2核
似 と した と き,有 効 相 互 作 用Gを
表 す.こ
子 間 の 有 効 相 互 作 用Gの
構 成す る ダ イア グ ラ ム
こで は 折 れ 線 ダ イア グ ラム の 項 は ま っ た く無 視 され て い る.
線 を折 り曲 げ た 折 れ線 ダ イア グ ラ ム(folded
diagram)*15で
置 き換 え る こ と に
よ って 計 算 で きる こ とが 明 らか に な り,原 理 的 な 問題 は 解 決 され た.現 在 で は 折 れ 線 ダ イア グ ラ ム に 関 す る規 則 も確 立 され,Brueckner理 あ ったGoldstoneの
論 の1つ
の主 柱 で
連 結 ク ラ ス タ ー展 開 の定 理 が こ こ で も 同様 に成 り立 つ こ と
が 明 らか に な っ た.こ れ ら につ い て の 詳 細 は,あ
ま りに も専 門 的 に な るの で 割
愛 す る. さて18Oの
場 合 の よ うに オ ー プ ン殻 に2核
子 が あ る場 合 の 有 効 相 互 作 用 に
*15B .H. Brandow, Rev. Mod. Phys. 39(1967) 771. M. B. Johnson and M. Baranger, Ann. Phys. 62(1971) 172. T. T. S. Kuo, S. Y. Lee and K. F. Ratcliff,Nucl. Phys. A176(1971)
65.
お い て,折 れ線 ダ イ ア グ ラム の 項 を無 視 す れ ば,核 内2核 の 第1近
似 はBrueckner理
Brueckner理
論 のG行
子 間の 有 効 相 互 作 用
列 で 表 され る.図2.15で
示 し た よ うに,
論 に お け る相 互 作 用 エ ネル ギ ー(エ ネル ギ ー ・シ フト)ΔEの
要 部 分 はG行 互 作 用 の 第1近
列 に よ る1次の
ダ イ アグ ラ ムであ っ た.ゆ
似 であ る と考 え られ る.し か し,図2.15に
え にG行
主
列が 有効相
お け る3次 以上 の
効 果 も無 視 す る こ とは で きな い.し
たが っ て,こ れ ら高次 の 効 果 を 取 り入 れ た
核 内有 効 相 互 作 用Gは,図2.19の
よ うな ダ イア グ ラ ム の和 で 表 され る こ と に
な る.こ のGの がsd殻
行 列 要 素 をGに
つ い て2次
まで 取 り入 れ て 数 値 計 算 し,こ れ
核 に 共 通 した 近 似 的 な 有 効 相 互 作 用 であ る と考 え て 配 位 混 合 計 算 に 用
い た ものが1.3.2で う表 示 の
示 した 結 果 である(図1.6−
図1.11に
お け る"Kuo"と
い
ある デ ー タ).こ れ らの 結 果 を 見 る と,折 れ 線 ダ イア グ ラ ム の効 果 を 無
視 し た り,か な り荒 っぽ い 近 似 を し て い るに もか か わ らず,実
験 値 を わ りあ い
よ く再 現 して い る こ とが わ か り,有 効 相 互 作 用 定 論 の 信 頼 性 と有 効 性 が 確 立 さ れつつ
ある こ と を示 して い る.今後,こ
精 密 に 行 わ れ る こ とが 望 まれ る.
の よ うな分 析 が よ り広 い範 囲 で,よ
り
3 集
原 子 核 に は2つ 1つ は 第1章
の顔が
団
運
動
ある.
で 学 ん だ 殻 模 型 の 顔 であ る.こ の模 型 は,原 子 核 内 の 核 子 間 の
相 互 作 用 が 第0近 似 と して 平 均 ポ テ ン シ ャル を作 り,この ポ テ ン シ ャル の 中 を 核 子 が 独 立 に1粒
子 運 動 を行 うと い う"独 立粒 子 描 像"で
ある.この 考 え に基
づ くjj結 合 殻模 型 に よ って,数 多 くの 原 子 核 の 基 底 状 態 の ス ピ ンや 低 励 起 状 態 の性 質 を 説 明 する こ とが で きた. 他 の1つ
は"集 団 運 動 的 描 像"ある い は"強 結 合 的描 像"であ
れ た 原 子 核 を水 滴 に なぞ らえ た液 滴 模 型 は そ の 典 型 の1つ で
る.第2章
でふ
ある.この 模 型 は,
核 内 核 子 が 独 立 粒 子 運 動 で は な く,核 子 間 の 相 関が 比 較 的 強 く,全 体 と し て歩 調 を 合 わせ た 運 動 を行 う とい う考 え に基 づ い て い る.液 滴 模 型 は 原 子 核 の 質量 (結 合 エ ネル ギ ー)を 大 局 的 に よ く説 明 する こ とが で きるWeizsacker-Betheの 質量 公 式 の 基礎 と な っ て い る.ま た,こ の 考 え 方 は核 分 裂(nuclear 説 明 す る ため の模 型 と して,jj結
fission)を
合 殻模 型 の提 唱 よ り以 前 か ら検 討 され,成 功
を お さめ て い る.*1 こ れ ら2つ の 顔 は,一 見 互 い に矛 盾 して い る よ うに 見 え る.こ の 矛 盾 を解 決 し,こ れ らの2つ
の"描 像"を い か に統 一 して 定 解 し統 一 模 型(unified
model)
に到 達 す る か とい うこ と,ま た そ の 微 視 的構 造 な らび に そ の発 展 を学 ぶ こ とが 本 章 の 目標 で
ある.
3.1 球 形 液 滴 の 表 面 振 動
上 に 述 べ た よ うに液 滴 模 型 が 原 子 核 構 造 の1側 面 を表 し て い る とす る な らば, 当然 そ の"液 滴"の 振 動 運 動 とい う集 団 運 動(collective motion)が
考 え られ る.
こ の 集 団 運 動 が ど の よ うに定 式 化 され,そ れ が 現 実 の原 子 核 で ど の よ うに観 測 *1 N . Bohr and J. A. Wheeler, Phys. Rev. 56(1939) 426.
される かが 第1に 検 討 され なけ れ ば な らな い 課 題 で
ある.*2
3.1.1 表 面 振 動 の 古 典 論 原 子 核 を密 度 が 一定 の ほぼ 球 形 の 液 滴 と考 え よ う.原 子 核 の 中心 を座 標 原 点 と し,原 子 核 の 表 面 を 中心 か らの 距 離
で 表 す こ とに する.
を
球面調和 関数で 展開す ると
(3.1) と 表 す こ とが で きる.*3R0は の 第2項
原 子 核 が 球 形 の 場 合 の 半 径 であ り,右
が 球 形 か ら の"ず
の 度 合 い を 表 し,こ 面 振 動(surface
れ",す
な わ ち 変 形 を 表 す.し
れ が 時 間 と と も に 変 化 し,振
vibration)を
た が っ て,
が 変形
動 す る こ とに よ っ て 液 滴 の 表
表 す こ と になる.つ
ま り
動 と い う 集 団 運 動 を 記 述 す る 集 団 座 標(collective は 実 数 であ り,ま
辺 の 括弧 内
が原 子核の表面振
coordinates)で
た
ある. で
ある か ら,
(3.2) が 得 ら れる.さ な い.し
らに
は 座 標 系の 回 転に対
た が っ て,
な わ ち
は
と 同 じ 変 換 性 を 持 た な け れ ば な ら な い.す
は λ 階 の 既 約 球 面 テ ン ソ ル(irreducible
原 子 核 の 表 面 を(3.1)式 の 場 合に 分 け て 図3.1に
で 表 し た と き の 変 形(振 動 運 動)の
こ の 型 の 振 動 は 起 き な い.原 mode)と
tensor)で 型 が λ=0,1,2,3
度 が 一定(非
圧 縮 性)の
条 件 の も とで は
子 核 は 厳 密に は 非 圧 縮 性 で は な い の で 呼 吸 モ ー ド
呼 ば れる こ の 型 の 振 動 運 動 が 考 え ら れ る が,励
心 の 平 行 移 動 を 表 す の で,重
起エ ネル
場 合 は 球 形 を保 っ た ま ま の 重
心 静 止 の 条 件 下 で は 考 え な く て も よ い.し
際 に 問 題 と な る 振 動 運 動 は
の 低 い 振 動 運 動 は λ=2の4重 重 要 な も の が λ=3の8重
ある.
場 合 は 球 形 を保 っ た まま半 径
ギ ー が 高 い の で 当 面 考 え な くて も よ い.λ=1の
て,実
spherical
示 さ れ て い る.λ=0の
が 収 縮 ・膨 張 す る 変 形 であ る か ら,密
(breathing
して ス カ ラー量 で な けれ ば な ら
の モ ー ドであ る.通
極 振 動(quadrupole 極 振 動(octupole
vibration)であ
vibration)であ
たが っ
常 最 もエ ネ ル ギ ー り,次
に
る.
*2 早 い 時 期 に
,原 子 核 の 液滴 模 型 の集 団 運動 は次の 論 文 で 検 討 され た:S. Flugge, Ann. Physik, 39(1941) 373. *3 以下 の集 団運 動 の記 述 に 関 し ,そ の多 くを原 子 核 理論 の 分 野 で の最 重 要論 文 の1つ A. Bohr, Mat.
Fis. Medd.
Dan.
Vid. Selsk., 26(1952)
No. 14に 負 って い る.
図3.1
液 滴 の 表 面 を(3.1)式
で 表 した と きの 変 形(振 動 運 動)の 型
λ=0は
球 形 を保 っ た ま ま半 径 が 収 縮 ・膨 張 す る.λ=1は
λ=2は
楕 円 体 型 の 変 形 で あ り,λ=3は"お
は,核
む すび"型
球 形 の ま ま重 心 が 平 行 移 動 す る. の 変 形 で あ る.図
中 の矢 印 の 細 線
物 質 が 渦 な し流 体 と考 え た と き のそ の 移 動 の よ うす を 示 して い る.
これ ら液 滴 の 表 面 振 動 が 微 小 振 動 で あ る と し よ う.す な わ ち αλμお よび αλμ が 微 小 量 で あ る とす る.表 面 振 動 の運 動 エ ネ ルギ ーTは
核 の 変 形 の 速 度 の2次
形 式 で 表 され るで あ ろ う.ゆ え に αλμの2次 形 式 に な る と考 え られ る.ま た ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ルギ ーVは
変 形 に よるエ ネ ルギ ー の 変 化 分 で 与 え られ,こ れ
を微 小 量 αλμのべ き級 数 に展 開 し,2次 エ ネ ルギ ーT,お
まで と る こ とに す る.振 動 運 動 の 運 動
よび ポ テ ンシ ャル ・エ ネル ギ ーVは,座
標 回転 に対 して ス カ
ラ ーで な け れ ば な ら な い か ら
(3.3) と 表 さ れ る は ず で あ る.し 同 等 で あ る.そ parameter)Bλ
た が っ て,液
滴 の 表 面 振 動 は調 和 振 動 子 の 集 ま りと
れ ぞ れ の 振 動 子 の 固 有 振 動 数 ωλ は,質 と 弾 性 パ ラ メ ー タ ー(elasticity
量 パ ラ メ ー タ ー(mass
parameter)Cλ
と で 与 え ら れ,
(3.4) とな る.
(a)質 量 パ ラ メ ー タ ー 質 量 パ ラ メ ー ターBλ
は"液 滴"を 構成 す る 核 子 群 が ど の よ う に 運 動 す る か
に 依 存 して き ま る量 で あ る.も っ とつ きつ め て い えば,最 互 作 用 に よっ て き まるべ き量 で あ るが,こ で は な い.そ
終 的には核子 間の相
の 観 点 か ら理 論 的 に 求 め るの は容 易
こ で"液 滴"を 構 成 す る 流 体 が 非 圧 縮 性 で 粘 性 が な い もの と し,
"渦 な し"(irrotational)の
運 動 を考 え
,Bλ
度 を ρ,流 体 内 の あ る1点 に
を 見 積 も る こ とに す る.流 お け る 流 れ の 速 度 をυ
体の密
と す る と,連
続の方程式
(3.5) が 成 り立 つ.ρ=一
定 で あ る か ら,
(3.6) で あ る.流
体 力 学に よ れ ば,υ
は 速 度 ポ テ ン シ ャ ル(velocity
ば れ る ス カ ラ ー 関 数 に
potential)と
呼
よって
(3.7) と 表 さ れ,Φ
はLaplace方
程式
(3.8) を み た す.原
点 で 正 則 なLaplace方
程 式 の 解 は,一
般 に
(3.9) と 表 され るが,液 滴 が 球 形 に な った 瞬 間 の,表 面 に お け る速 度υ の 表 面 に垂 直 な成 分 は, の
と な り,こ
時 間 微 分 に等 しい か ら,
れ に(3.1)式
が 得 ら れ る.こ
と(3.9)式
れ を(3.9)式
を 代 入 す る と,
に 代 入 す る と,速
と
の関係式
度 ポ テ ン シ ャ ルΦ
は
(3.10) と な る.
さて,流 体 全 体 の 運 動 エ ネ ル ギ ーTは
(3.11) で あ る.こ る と,結
れ に(3.10)式
を 代 入 し て 積 分 を 遂 行 す る.α λμが 微 小 量 で あ る と す
果 は
(3.12) と な り,渦
(b)ポ
な し 流 体 の 場 合 の 質 量 パ ラ メ ー タ ー が 得 ら れ た こ と に な る.
テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー
次 に ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ーVに 討 し よ う.Vは ら れ る.1つ
お け る 弾 性 パ ラ メ ー タ ーCλ
変 形 に よ る エ ネ ル ギ ー の 変 化 分 か ら 導 か れ,2つ は 変 形 に よ り 液 滴 の 表 面 積 が 変 化 し,こ
の 変 化 で あ り,も
う1つ
は 変 形 に よ るCoulombエ
まず 表 面 エ ネ ル ギ ー を 考 え る.一
般 に
に つ い て検
の 由来 が 考 え
れ に よ る 表 面 エ ネル ギ ー
ネ ル ギ ー の 変 化 で あ る. で 表 さ れ る 曲 面 の 表 面 積S
は
(3.13) で 与 え ら れ る.R(θ,φ)=R0+ζ(θ,φ)と (3.13)式
の 中 の 平 方 根 を 展 開 し,2次
か ら,ζ/R0の2次
し,変
形 分 ζ(θ,φ)が 小 さ い と し て
の 項 ま で と る.さ
ら に体 積 不 変 の 条 件
ま で と る と,
(3.14) が 得 られ る.こ れ ら の 結 果 を用 い る と,球 形 か ら 変 形 した こ と に よ る表 面 積 の 増 加 分 ΔSは
(3.15)
と な る.
(3.16) を(3.15)式に
代 入 し, に
関す る 少 し面 倒 な積 分 を遂 行 す る と,結 果 は
(3.17) と な る.単
位 面 積 あ た りの 表 面 張 力 σ をΔSに
エ ネ ル ギ ー の 増 加 分ΔVSで 式(2.7)の R0の
あ る.表
掛 け た も の が 変 形に よ る 表 面
面 張 力 σ はWeizsacker-Betheの
中 の 表 面 エ ネ ル ギ ー の 項 か ら 求 め る こ と が で き る.す
球 面 の 表 面 エ ネ ル ギ ー4πR20σ に 等 し い は ず で あ る か ら,核
質量 公 な わ ち,半
径
が 質 量 公 式(2.7)の
中 の 表 面 エ ネル ギ ー
半 径 と し て(2.5)式
のR0を
用 い れ ば,
(3.18) と な る. さ ら に 変 形 に よ るCoulombエ と し,そ
ネ ル ギ ー の 変 化 を検 討 し よ う.荷 電 密 度 を ρe(r)
れ に よ る 静 電 ポ テ ン シ ャ ル をu(r)と
す る と,Coulombエ
ネ ルギ ー は
(3.19) で 与 え られ る.液 滴 内 部 で は 荷 電 密 度 は 一 定 で
(3.20) で あ る と し,外
部 で は0と と す れ ば,変
す る.表
面 エ ネ ル ギ ー の 時 と 同 様 に,
形に よ るCoulombエ
ネ ル ギ ー の 増 加 分ΔVCは
(3.21) と書 か れ る.
を球 面 調 和 関 数 で 展 開 し,体 積 一 定 の 条 件 式(3.14)を
併 用 し,や や 面 倒 な 積 分 計 算 を行 っ て
(3.22) を 得 る.
以 上 を ま と め て,変 分 の 和 る の で,弾
形に よ る 表 面 エ ネ ル ギ ー とCoulombエ が(3.3)式
ネル ギ ー の 増 加
の ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー で あ る と 考 え ら れ
性 パ ラ メ ー タ ーCλ
は
(3.23) とな る.
(c)角 運 動 量 液 滴 表 面 の 振 動 運 動 は 図3.1に
示 し た よ うに,液 滴 内 の 流 体(核 子)の 集 団
的 な 流 れ で あ るか ら,そ れ ら は 当然 角 運 動 量 を持 つ はず で あ る.こ こ で 表 面 振 動 の持 つ 角 運 動 量
を求 め る こ と に し よ う.ρ を液 滴 内 の 核 物
質 の 一 定 な密 度 とす れ ば,Lは
(3.24) で与 え られ る.Lx, Lyの2つ
の 成 分 の 代 わ りに を
使 い,そ れ
ぞ れ を極 座 標 で 表 す と,
(3.25a) (3.25b) (3.25c) と な る.(3.10)式 を 用 い れ ば,た
を 使 い,液
滴 表 面 を
と し て(3.16)式
と え ばL+は
(3.26) とな る.た だ し と の
で あ る.右 辺 の第2番 部 分に 分 ける.す
なわ ち
目の積 分 の 範 囲 を
と す る と,[0,R0]の
部 分 の 積 分 は θ,φに よ ら な い の で,(3.26)式に
の θ,φ に つ い て の 積 分 が0と
な り,
変 形 ζが 十 分 小 さ い と す れ ば,こ
と 考 え て よ い だ ろ う.し
おける最初
の 部 分の み を 考 え れ ば よ い.
の部分の 積分は
たが って
(3.27) が 得 ら れ る.こ
れ に(3.16)式
を 代 入 し,よ
く知 ら れ た 式
(3.28) を使 え ば 角 度 積 分 は 容 易 で あ る.L-やLzも
同 様 に し て 計 算 す る こ とが で き
る.結 果 を ま と め る と
(3.29a) (3.29b) (3.29c) と な る. こ こ で 後 の 都 合 の た め,集 mentum)
を 導 入 す る.
団 座 標
に 共 役 な 正 準 運 動 量(canonical
mo
は
(3.30) で 定 義 さ れ る.こ
れ を 用 い れ ば,液
滴 の 表 面 振 動 のHamilton関
数 は
(3.31) と書 か れ,上
述の角運動 量は
(3.32a)
(3.32b) (3.32c) と書 くこ とが で き る.こ れ に よっ て 液 滴 表 面 の 振 動 運 動 の持 つ 角 運 動 量 が,集 団座 標 と それ に 共 役 な正 準 運 動 量 とで 表 現 で きた こ とに な る. 上 記 の 角 運 動 量
Lzの 代 わ りに,次 の 表 式
(3.33) を 用 い れ ば,(3.32)式
は よ り 統 一 的 か つ 有 用 な 形 で 表 現 で き る.す
なわ ち
(3.34) で あ る.この
は 角 運 動 量 の 成 分Lx, Ly,
Lzか
ら構 成 し た1
階 の 既 約 テ ン ソ ル で あ る.
3.1.2 表 面 振 動 の 量 子 化―
フ ォノン
上 述 の 液 滴 表 面の 振 動 運 動 を量 子 化 し よ う.通 常の 正 準 量 子 化 を行 う.す な わ ち,集 団 座 標
とそ れ に 正 準 共 役 な運 動 量
を演 算 子 と考 え,そ れ ら
の 間に 交 換 関係
(3.35) を導 入 す る.(3.2)式に
対 応 す る関 係 式 は
(3.36) で あ る. 演 算 子
の 代 わ りに次 の 演 算 子
(3.37)
を 使 う の が 便 利 で あ る.こ り,ω λ は(3.4)式
こ でBλ
は(3.3)式
の 固 有 振 動 数 で あ る.この
に現 れ た 質量 パ ラ メ ー タ ーで あ 演 算 子
が ボ ソ ン の交 換 関係
(3.38) を み た す こ と は,交
換 関 係(3.35)か
の 振 動 の 量 子 は ボ ソ ン で あ り,通 (3.37)式
ら容 易に 確 か め られ る.つ 常 こ れ を フ ォ ノ ン(phonon)と
ま り,液
滴表面
呼 ん で い る.
か ら
(3.39a) (3.39b) が 得 ら れ る の で,こ
れ ら を(3.31)式に
代 入 し て 表 面 振 動の ハ ミル トニ ア ンH
を 求 め る と,
(3.40) と な る.た る.基
だ しnλ=Σ
底 状 態│0)は
し て
μb†λμbλμ は 量 子 数 λ を持 つ フ ォ ノ ンの個 数演 算子 で あ
フ ォ ノ ン が ま っ た く な い 状 態(真
を み た す 状 態 で あ る.│0)は
な わ ち(0│0)=1で
空)で,す
べ て の λ,μ に 対
規 格 化 さ れ て い る も の と す る.す
あ る.
(3.34)式
に 演 算 子(3.39)を
代 入 し,量
と な る.こ
れ を 求 め る に あ た っ て,
子 化 さ れ た 角 運 動 量 演 算 子 を 求 め る と,
(3.41)
を用 い た.一 般 に 角 運 動 量 λ を持 つ ボ ソ ン(こ れ を λボ ソ ン と呼 ぶ)を 角 運 動 量(LM)に
組 んだ対演算子 は
(3.42)
で 定 義 され る が,2つ
の ボ ソ ン 演 算 子 が 交 換 可 能 で あ る こ と と,Clebsch-Gordan
係 数 の 性 質 〈λμ'λμ│LM〉=(-1)2λ-L〈
λμλμ'│LM〉
(L=奇
か ら,
数)
(3.43)
と な る こ と に注 意 す べ きで あ る.つ ま り,同 一 の 角 運 動 量 を持 つ2個 が 全 角 運 動 量Lhに
組 ん だ 対(ペ ア ー)を 作 る と き,Lが
のボ ソン
奇 数 の 対 は 許 され な い
とい う こ とで あ る. さて フ ォ ノ ンが1個
だ け 存 在 す る状 態
L2x+L2y+L2zとLzを
を考 え る.こ の 状 態 にL2=
作 用 させ る.容 易 に わ か る よ うに (3.44a)
(3.44b) と な る.し
た が っ て,1個
λ フ ォ ノ ンがn個 こ と に し よ う.今
の フ ォ ノ ン
励 起 し,全 後,こ
は 角 運 動 量 λ〓 を 持 つ こ とが わ か る.
角 運 動 量 が(L,
M)の
状 態 を│λnαLM)と
の よ う な 状 態 を 多 フ ォ ノ ン 状 態(multi-phonon
表す states)
と 呼 ぶ こ と に す る.α
は 多 フ ォ ノ ン 状 態 を完 全 に 指 定 す る た め の 付 加 量 子 数
(additional
number)で
quantum
あ る.n=1,2の
場 合 は 簡単 に
(3.45a) (L=偶
と 書 く こ と が で き る.一
般 の 個 数nの
数)
多 フ ォ ノ ン 状 態 は,n-1個
(3.45b)
の 状 態 に1
個 の フ ォ ノ ン を加 え て
(3.46) と 作 る こ と が で き る.た
だ し 係 数(λn-1(α1L1)λ│}λnαL)は
(coefficient
parentage)で
of fractional
あ り,第1章
λ ボ ソ ン のcfp
で 出 て き た フ ェ ル ミオ ン
の 場 合 のcfpを
ボ ソ ン 系 に 焼 き な お し た も の で あ る.こ
ミ オ ン のcfpと
ほ ぼ 同 様 に 求 め る こ と が で き る.相
の ボ ソ ン のcfpは
フェル
違 点 は フ ェ ル ミオ ン の 生 成 ・
表3.1
多 フ ォ ノン状 態
注:λ=3,
n=3,
に お い て許 さ れ る 全 角 運 動 量Lの
L=3の
場 合,独
立 な 状 態 は2個
消 滅 演 算 子 が 反 交 換 関 係 を み た す の に 対 し,ボ 点 で あ る.い 対 し,ボ
存 在 す る.
ソ ンの そ れ は 交 換 関 係 をみ た す
い換 え れ ば 多 フ ェ ル ミオ ン系 の 波動 関 数 が 反 対 称 関 数 で あ るの に
ソ ン の 場 合 は 対 称 関 数 と な る こ と で あ る.こ
若 干 の 相 違 を も た ら す が,そ
ん 可 能 で あ る.)し す る 式 で あ り,こ
の こ とがcfpの
計 算法 に
の 他 は ま っ た く 同 様 に 扱 う こ と が で き る.(フ
ミ オ ン の セ ニ ョ リ テ ィ と 同 様 に,ボ
ェル
ソ ンの セ ニ ョ リテ ィを 考 え る こ と も も ち ろ
た が っ て(3.46)式
は フ ェ ル ミ オ ン の 場 合 の(1.73)式
に対応
れ に よ っ て 順次 大 き い フ ォ ノ ン 数 の 独 立 な 状 態 を 作 る こ と が
で き る.表3.1に,λ=2と
λ=3の
さ れ る 全 角 運 動 量Lが 状 態 は2個
値
あ り,こ
場 合 のn=1,2,3の
示 さ れ て い る.λ=3でn=3の
多 フ ォ ノ ン状 態 の 許 場 合,L=3の
独立な
の と き に は こ れ ら を 区 別 す る た め に 付 加 量 子 数 α(=1,2)
が 必 要 に な る.
3.1.3
多 フ ォ ノン 状 態 間 の 電 磁 遷 移
上 記 の 多 フ ォ ノ ン状 態 間 の 多 重 極 電 磁 遷 移 確 率 を 計 算 し よ う.ま 電 分 布 は 一 様 で(3.20)式 子 は(1.146a)式
で 与 え ら れ る ρ0で あ る と す る.電
か ら
ず 液滴の荷
気 的多 重 極 遷 移 演 算
を 液 滴 全 体 に わ た っ て 積 分 し,Coulomb
エ ネ ル ギ ー の 計 算 と 同 様 に し て,
(3.47) が 得 られ るの で,こ れ に(3.39a)式
を代 入 して量 子 化 す れ ば よい.そ の結 果,Eλ
遷移演 算子は
(3.48)
と表 され る.こ の演 算 子 はボ ソ ン の数 を ±1だ け 変 化 させ るの で,Eλ
遷移の選
択則 は
(3.49) で あ る. ここ で,電 skopf
気 的 遷 移 確 率 の 大 き さ を 表 す た め に 便 利 なWeisskopf単
units)を
導 入 し よ う.*4い
て 起 き る も の と 考 え る.こ (1.147)式
始 状 態bの
な ど に 依 存 す る が,そ
の 陽子 の状 態 の変 化 に よっ
の 場 合 の 換 算 遷 移 確 率 は,殻
を 使 っ て 見 積 も る こ と が で き る.す
結 果 は 終 状 態aや
表 す.す
ま 電 気 的 遷 移 が1個
ス ピ ンjaやjbに
位(Weis
模 型 を 用 い,(1.145)式,
な わ ち"1粒
子 見 積 も り"で あ る.
関 係 し たClebsch-Gordan係
の 部 分 を 無 視 し た も の をWeisskopf単
数
位 と 呼 び,BWで
なわ ち
(3.50a) で あ る.通
常 は
と して
(3.50b) が よ く 用 い ら れ る.磁 が,こ
気 的 遷 移 確 率 に 対 す るWeisskopf単
こ で は 省 略 す る.
つ い で な が ら1フ
ォ ノ ン の 励 起 エ ネ ル ギ ーhω λ を 概 算 し て お こ う.(3.23)式
で 与 え ら れ る 弾 性 パ ラ メ ー タ ーCλ る.そ
位 も定 義 され て い る
こ でCoulombエ
の う ち,表
ネ ル ギ ー に よ る 第2項
量 パ ラ メ ー タ ー と を(3.4)式
に 代 入 す る と,表
面 張 力 に よ る 第1項 を 無 視 し,こ
が 主要で あ
れ と(3.12)式
の 質
面 振 動 の 固 有 エ ネ ル ギ ーhω λ は
大雑把 に
(3.51) と な る. さ て,電 気 的 遷 移 演 算 子(3.48)を る こ とが で き る.い
ま(3.46)式
用 い て 多 フ ォ ノ ン状 態 間の 遷 移 確 率 を 求 め
で 定 義 され る多 フ ォ ノ ン状 態
から
へ の 遷 移 を 考 え る .そ の 場 合 の換 算 遷 移 確 率 は
(3.52) *4 V
.F.Weisskopf,Phys.Rev.83(1951)1073.
と な る.n=1やn=2の
場 合 は,(3.52)式
の で 結 果 は 簡 単 で あ る.も
ち ろ ん(3.45)式
あ る.た
と え ばE2遷
移 でn=1の
の ボ ソ ンcfpは
す べ て1に
等 しい
を 使 っ て 直 接 計 算 す るこ と も容 易 で
場 合,
(3.53) とな る.ここ て(3.51)式
で2+1は 第1励 起2+状
態,
は 基 底 状 態 を 意 味 す る.hω λ と し
を,ま た 質 量 パ ラ メー ター と して(3.12)式
れ ば,
を使 い,Z〓A/2と
∼40BW
が 得 られ る.こ の 値 はA=50の ,A=100の
と き ∼70BWに
もな り,1粒
す とき
子 見 積 も りBWに
比べて
1桁 以 上 大 き くな る.つ ま り,原 子 核 の 表 面 振 動 は 多 数 の 粒 子 の 集 団 的 運 動 で あ り,そ の た め に 大 きな 電 気 的遷 移確 率 を もた らす の で あ る. 液 滴 の 表 面 振 動 に よる 磁 気 モ ー メ ン トは 角 運 動 量Lに
比 例 す る はず で あ る.
し たが って 磁 気 的 遷 移 演 算 子 は
(3.54) と書 か れ る で あ ろ う.ここ でg(λ)は 表 面 振 動 に 伴 う核 物 質 の 集 団 運 動 の 詳 細 に 依 存 す る 量 で あ る.μNは
核 磁 子 で あ る.(3.41)式
フ ォ ノ ン数 を変 化 させ な い.し
たが っ て,フ
か ら 明 らか な よ う にLは
ォ ノ ン 数 の 異 な る多 フ ォ ノ ン状 態
間 の 磁 気 的 遷 移 は 生 じな い と考 え られ る.
3.1.4 実 験 との 比 較 上 述 し た 液 滴 模 型 の 表 面 振 動 に相 当す る振 動 運 動 が,現
実の原子核 において
生 じ るか 否 か を い くつ か の 実 験 事 実 に 照 ら し合 わせ て 検 討 し よ う. 質量 数 の 全 範 囲 に わ た り,ほ と ん どす べ て の偶 々核 の 第1励 起 状 態 の ス ピ ン ・ パ リテ ィは2+で
あ る.以 後こ の 状 態 を2+1状 態 と 書 く.添 え 字 の"1"は
ル ギ ー の 低 い 方 か ら順 に1番
目の2+状
態 と い う意 味 で あ る.こ の 表 示 法 で は
基 底 状 態 は0+1と 書 か れ る.図3.2に2+1状 3.3に3-1状
態 の 励 起 エ ネル ギ ーE(2+1)が,図
態 の 励 起 エ ネル ギ ーE(3-1)が,示
い て ほぼ 系 統 的 な分 布 を示 し て い る.図3.4に ら基 底 状 態 へ の 換 算 遷 移 確 率
エネ
され て い る.閉 殻 核 の付 近 を 除 は
の 領域 の2+1状 態 か
の 実 験 値 がBWを
単位 にして
表 され て い る.こ の 図 か らわ か る よ う に,こ れ らの2+1状 態 か ら基 底 状 態 へ の は いず れ もWeisskopf単
位 に 比べ て1桁 以 上 大 きい値 で あ る.
図3.2
偶 々核 の 第1励
横 軸 は 質 量 数.hω2(流 タ ー(3.23)と S. (K.
G.
図3.3
起2+状
態 の 励 起 エ ネ ルギ ー
質 量 パ ラ メー タ ー(3.12)と
を 使 っ た と き の 励 起 エ ネ ル ギ ー で あ る.O.
Nilsson,
Siegbahn
体)は
Alpha-, ed.)
Beta-
North-Holland
偶 々核 の 第1励
and
Gamma-Ray (1955),
起3-状
弾 性 パ ラ メー Nathan
and
Spectroscopy, Chap.
10に
よ る.
態 の励 起 エ ネ ル ギ ー
横 軸 は 質 量 数.hω3(流 体)は 質 量 パ ラ メ ー ター(3.12)と 弾性パ ラ メー ター(3.23)と を使 っ た と きの 励 起 エ ネル ギ ーで あ る.3.2図 と 同 じ文 献 に よる.
図3.4
AεFの1粒 を"空
呼 び εFで 表 す(図3.26参
な わ ち 真 の 真 空 で あ る.
state)と
子 状 態 を"粒 呼 ぶ.関
子 状 態"(particle
よ び 空 孔(hole) state),
数
(3.206)
を使 っ て,生 成 演 算 子c†αを
(3.207) と書 くと,右 辺 の 演 算 子c†αは 粒 子 状 態 α に"粒 子"を 生 成 す る演 算 子 で あ り, 演 算 子bα は 空 孔 状 態 α の"空 孔"を 消 す 演 算 子 と な る.容 易 に わ か る よ うに,
(3.208) で あ る か ら,Hartree-Fock基 空"と
底 状 態│Φ0〉 は"粒 子"お
よび"空
孔"に
対 す る"真
な っ て い る.
こ の"粒
子 ・空 孔"表
示 を 用 い る と(3.204)式
の ハ ミ ル トニ ア ン は
(3.209a) (3.209b) (3.209c) と 書 き 直 す こ と が で き る.こ 演 算 子 を":"の product)で
こ で,(3.209a)式
記 号 で は さ ん だ 表 式 は,粒
に お け る:
:の よ う に,
子 ・空 孔 に 関 す る 正 規 積(normal
あ る.*16
Hartree-Fock法
は 上 記 のSlater行
を 変 分 関 数 と し て,系 を 極 小 に す る よ うに
列 式│Φ0〉 を 構 成 す る1粒 の ハ ミル トニ ア ンHの
子 波 動 関数
期 待 値
を決 定 す る近 似 で あ る.規 格 化 条件
を 付 す た め のLagrange未
定 乗 数 と し て εα を と れ ば,変
分 方程 式 は
(3.210) と 書 か れ る.そ Fock
の 結 果,1粒
子 状 態 を きめ るHartree-Fock方
程 式(Hartree-
equation)
(3.211) *16 生 成 演 算子 を最 左 方 に
,消 滅 演算 子 を最 右 方 に並 べ る演 算 子 の積 を正規 積 と呼 ぶ.Wick の定 理 を用 い て,演 算 子の 積 を 正規 積 の形 にす る と,定 数 項が 真 空 期待 値 とな る.
を 得 る.た
だ し,変
分 方 程 式(3.210)の
主 旨 か ら わ か る よ う に,こ
空 孔 状 態 に 対 し て 導 か れ た も の で あ る が,粒 す な わ ち,1粒 ま た,非
子 状 態 まで 拡 張 す る もの と す る .
子 状 態 α は 空 孔 ・粒 子 の す べ て の 状 態 を 意 味 す る も の と す る .
局 所 的 な 平 均 ポ テ ン シ ャ ル,す
(Hartree-Fock
の方程式 は
potential)
な わ ちHartree-Fockポ
テ ン シ ャル
U(q,q')は
(3.212) で 与 え ら れ る.Hartree-Fock方 テ ン シ ャ ルU(q,q')の
中 に 解 くべ き1粒
自 己 無 撞 着 的(self-consistent)に 1粒
程 式(3.211)は
εαβ は,α
も と で,系
子Schrodinger方
程 式(3.211)の
程 式(3.203)の
解
解 を と れ ば,(3.209c)式
の
ま た は β の 一 方 が 粒 子 状 態 で 他 方 が 空 孔 状 態 の と き に は0と
ら,(3.209a)式
の 右 辺 の 第3項
均 ポ
子 波 動 関 数{φ α}が 入 っ て い る の で ,
解 か な け れ ば な ら な い.
子 表 示 を き め る た め に 使 っ た1粒
{φα}の 代 わ り にHartree-Fock方
非 線 形 方 程 式 で あ り,平
は0と
な る.し
た が っ て,Hartree-Fock近
な るか 似の
の ハ ミル ト ニ ア ン は
(3.213a) (3.213b) (3.213c)
(3.213d) (3.213e) (3.213f) (3.213g)
図3.27
残 留 相 互 作 用 の ダ イ アグ ラム
上 向 きの 矢 印線 は 粒 子 状 態.下 向 きの 矢 印 線 は 空 孔 状 態.丸 HXは 粒 子 数 お よび 空 孔 数 を 変 化 させ な い 相 互 作 用 で あ る.
印が 相 互 作 用 の バ ー テ ック ス.
(3.213h) (3.213i) と 書 か れ る.(3.213h),(3.213i)式
に お け るh.c.は
意 味 す る.U0がHartree-Fock基
直 前 の 項 の エ ル ミー ト 共 役 を
底 状 態 の エ ネ ル ギ ー,H0が1粒
ル トニ ア ン で あ り,全 ハ ミ ル トニ ア ン の う ちHartree-Fock近 H0に
入 り き れ な か っ た 残 留 相 互 作 用 がHintで
空 孔 ・空 孔,Hphは
ミ
似 の も と でU0や 粒 子 ・粒 子,Hhhは
粒 子 ・空 孔 の 間 の 相 互 作 用 で あ る.
と 表 す こ と も あ る.HXは HVとHYと
あ る.Hppは
子(空 孔)ハ
粒 子 数 お よ び 空 孔 数 を 変 化 させ な い 相 互 作 用 で あ る.
は 粒 子 数 お よ び 空 孔 数 を 変 化 させ る.こ
イ ア グ ラ ム が 図3.27に
れ ら の残 留 相 互 作 用 の ダ
示 され て い る.
自己 無 撞 着 的 に 決 定 され た 上 述 の 平 均 ポ テ ン シ ャルU(q,q')(3.212)は 的 に は 非 局 所 的 な1体
ポ テ ン シ ャ ルで あ るが,こ
1章 にお い て議 論 し た殻 模 型 の1体
一般
れ を近 似 的 に 表 し た ものが 第
ポ テ ンシ ャル で あ る と考 え られ る.
(b) 密 度 行 列 とHartree-Fock法 Hartree-Fock法 が あ る.以
を密 度 行 列(density
matrix)を
用 い て 表 現 す る と都 合 が よ い 場 合
下 で 簡 単 に 説 明 し よ う.
い ま ,あ るA粒
子 系 の 状 態 ベ ク トル
を考 え る.一 般 に
(3.214) と書 か れ る.
は 引 数
に 関 し て 反 対 称 関 数 で あ る.
この状 態│Ψ〉にお け る密 度行 列 ρΨ の行列 要素
は
(3.215) で 定 義 され る もの とす る.し
たが って密度 行列 の行列 要素 は
(3.216) と な る.以
後 ρΨ の 添 字"Ψ"は
省 略 す る.
い ま状 態 ベ ク トル│Ψ〉 がHartree-Fock状 行 列 式)で あ る な らば,密
態(す な わ ち規 格 化 され た 単 一 のSlater
度行 列 は
(3.217) を み た す.逆
に密 度 行 列 が(3.216)式
れ た単 一 のSlater行
を み た す な らば,そ
列 式 と 同 等 で あ る.こ
の 状 態 ベ ク トル は 規 格 化 さ
のとき
(3.218) で あ る こ と は 容 易 に わ か る. 規 格 化 され たHartree-Fock状
態 ベ ク トル に 対 す る 系 の エ ネ ル ギ ー 期 待 値EHFを
密 度 行 列 を 使 っ て 表 す と,
(3.219a) (3.219b) と な る.し
た が っ て,エ
ネ ル ギ ー 期 待 値EHFは
密 度 行 列 ρ の 汎 関 数 で あ り,
(3.220) と な る.
Hartree-Fock近 ち(3.217)式
似 は状 態 ベ ク トル を単 一 のSlater行
を保 持 し た ま ま,ρ に 微 小 変 分 を 与 え,汎
こ とで あ る.こ
列 式 に 保 持 し た ま ま,す 関数EHF[ρ]を
なわ
停留 値 にす る
れ は微 小 ユ ニ タ リー 変 換
(3.221) を 行 う こ と と同 等 で あ る.fは お け るfに
微 小 な エ ル ミ ー ト演 算 子 で あ る.(3.221)式
関 す る 級 数 展 開 の1次
まで と る と,δ ρ=i[ρ,f]が
の 右辺 に
得 られ る の で,EHFの
変分 は
(3.222)
と な る.最 て,任
後 の 等 式 は
意 のfに
を 使 っ て 得 ら れ る.し
対 して
たが っ
とな るため に は
(3.223) で な け れ ば な ら な い.こ
(3.223)式
は,ρ
れ がHartree-Fock近
を対 角 的(diagonal)に
る こ とが で きる こ と を意 味 す る.そ
似 の 条 件 で あ る.
す る 表 示 に お い て,hも
同時 に対角 的にす
のとき
(3.224) で あ る.hの
定 義 を使 っ て 具 体 的 に書 く と,こ の 方 程 式 はHartree-Fock方
程 式(3.211)
と 同 等 で あ る こ とが わ か る.
(c) 時 間 依 存Hartree-Fock法
と微 小 振 動 解
前 に 述 べ たBohr-Mottelsonの
集 団 模 型 に お い て は,原
子 核 の 集 団 運 動 は平
均 ポ テ ン シ ャ ル が 時 間 と と も に 回 転 ・振 動 す る 運 動 で あ る と 考 え た.こ 方 を 表 現 す る 近 似 法 が 時 間 依 存Hartree-Fock法
で あ る.*17こ
の考 え
こ で これ を説 明
し よ う. 時 間 に 依 存 し たSchrodinger方
程式
(3.225) は,試 行 関 数│Ψ(t)〉に何 らの 制 限 を加 え な い と きの 変 分 方 程 式
(3.226) と 同等 で あ る こ とが よ く知 られ て い る. 試 行 関 数│Ψ(t)〉 Hartree-Fock る.こ
と し て 単 一 のSlater行
(TDHF)法(time-dependent
の と き のSlater行
列 式│Φ 〉 を と る 近 似 法 が 時 間 依 存 Hartree-Fock
列 式 を 構 成 す る1粒
子 波 動 関 数 は,時
method)で
あ
間に依存す る も
の と 考 え る の で あ る. 時 間 依 存Hartree-Fock法
に お け る 微 小 振 動 解 を 求 め る た め に,次
有 用 で あ る. *17 野 上 茂 吉 郎 R.
A.
,素
Ferrell,
粒 子 論 研 究,10 Phys.
Rev.
107
(1956)
600.
(1957)
1631.
の定理 は
[定理](Thouless)A粒
子 系 のHartree-Fock型
の 波 動 関 数(Slater行
列 式)を
(3.227) と す る.
と 直 交 し な い 任 意 のHartree-Fock型
の波 動関数 は
(3.228) と 表 す こ と が で き る.係
数Cμiは
式 の 形 の 波 動 関 数 はA粒
子 系 のSlater行
[証明] Hartree-Fock型
一意 的 に き め る こ と が で き る.逆
の 波 動 関 数
粒 子 波 動 関 数 を そ れ ぞ れ{φi}お
に(3.228)
列 式 で あ る.*18 お よ び
を 構 成 す る 規 格 直 交 化 され た1
よび{ψ α}と し,そ れ ら の 間 の 関 係 を
(3.229) と す る.も
ち ろ ん これ は ユ ニ タ リ ー 変 換 で あ り,
(3.230) と な る.こ
れ を 第2量
子化 の表 示で表せ ば
(3.231) で あ る.し
た が っ て,
(3.232) と書 か れ る.
は
に 直 交 し な い と 仮 定 し て い る の で,
(3.233) と規 格 化 す る こ とが で き る.た だ しdet(fαi)はfαiを
行 列 要 素 とす るA×A行
の 行 列 式 で あ る.行
す る と,
列(fαi)の 逆 行 列 を行 列(Fiα)と
列(fαi)
(3.234) *18 D
. J.
Thouless,
Nucl.
Phys.
21
(1960)
225.
で あ る.さ
てA×A行
列(Fα β)を 用 い て
(3.235) と変 換 す る.(3.230)式
お よ び(3.234)式
を用 い て
(3.236) と な る か ら,変
換(3.235)はA×Aの
ユ ニ タ リ ー 変 換 で あ る.さ
て 係 数Cμiを
(3.237) と 定 義 す る と,(3.235),(3.231),(3.234)の
各 式 を 使 って
(3.238) と な る.し
たが って
(3.239) と な る.係
数Cμiは
(3.240) に よ っ て 一 意 的 に 決 定 され る. [証明 終 り] い ま,ユ ニ タ リ ー 変 換eGを とす る.任
意 の2つ
考 え る.た だ し
の 演 算 子A,Gに
対 す る よ く知 られ た 公 式
(3.241) に お い て, はc†μ の1次
と す れ ば, 結 合 で 表 さ れ る.し
と な る か ら, た が っ て,ユ
ニ タ リ ー 変 換(3.238)は
一般 に
の 形 に 書 くこ とが で き る.す
なわ ち
(3.242) と な る か ら,前 述 のThoulessの [定理]
定 理 は 次 の よ う に書 き換 え る こ とが で き る.
をHartree-Fock型
と す る.
の 波 動 関 数(Slater行
と 直 交 し な い 任 意 のSlater行
列 式)
列 式│Φ 〉は
(3.243) と 表 す こ と が で き る.た
だ し,a† μ お よ びb†iは そ れ ぞ れ│Φ0〉 に 関 す る 粒 子 お
よび 空 孔 の 生 成 演 算 子 で あ る. さ て,時 Mottelsonの
間 依 存Hartree-Fock法
に よ る 微 小 振 動 解 を 解 く こ と に よ り,Bohr-
集 団 模 型 に お け る 集 団 運 動,す
な わ ち 静 的 なHartree-Fock解│Φ0〉
の ま わ りの 微 小 振 動 が 解 け る は ず で あ る.こ
れ を 検 討 し よ う.
時 間 依 存Hartree-Fock近
分 方 程 式(3.226)に
は(3.243)式
似 に お い て は,変
の│Φ 〉の 形 を 持 つ は ず で あ る.こ
変 化 す る も の と し て,変
分 方 程 式(3.226)に
の│Φ 〉の 中 のGが
お け る 時 間 と と もに
おいて
(3.244) の 形 の 定 常 解 を 考 え る.こ
こ で
に よ る ハ ミル トニ ア ン(3.213)の 考 え て,そ
の2次
で あ る. 期 待 値 を 計 算 し,gμi(t)は
微小 量 と
ま で と れ ば,
(3.245a)
(3.245b) と な る.変
分 方 程 式(3.226)は
す べ て の(μ,i)の
組 につ い て
(3.246) と書 か れ るか ら,
(3.247) が 得 られ る.い ま振 動 解 を 考 え て い る か ら,
(3.248) と置 く と,固 有 値 方 程 式
(3.249) が 得 ら れ る.こ y(μi)が
3.4.2
の 固 有 値 方 程 式 を 解 く こ と に よ っ て 固 有 振 動 数 ω と 振 幅x(μi),
得 ら れ る.
乱 雑 位 相 近 似(RPA)
前 述 の 時 間 依 存Hartree-Fock法 モ ー ド(excitation
mode)と
│Ψ0〉を ハ ミ ル トニ ア ンHの る.す
な わ ち
時 間 に 依 存 す るSchrodinger方
の 微 小 振 動 解 は,別
の 観 点,す
な わ ち励 起
い う 観 点 か ら 見 直 す こ とが で き る. 真 の 基 底 状 態 と し,そ で あ る.こ
の と き,
の エ ネ ル ギ ー をE0と
す は
程式
(3.250) の 解 で あ る.
さて,方
程式
(3.251) を み た す エ ル ミ ー ト演 算 子G(t)を
考 え よ う.状
態 ベ ク トル
(3.252) も ま た 時 間 に 依 存 す るSchrodinger方
程式
(3.253) の 解 で あ る. こ れ を 証 明 す る の は 容 易 で あ る.(3.250)式
が 得 られ る.こ
の 両 辺 に 展 開 式(3.241)を
か ら
適 用 す る と,
(3.254) と な る.と
こ ろが
で あ る か ら,こ
の 関係 式 と(3.251)式
と を(3.254)式
が 得 られ る.こ
れ は 方 程 式(3.253)に
ほ か な ら な い.
こ こ で 方 程 式(3.251)の
へ 代 入 す る と,直
ちに
振動解
(3.255) を 考 え よ う.こ
のG(t)を(3.251)式
に 代 入 す る と,
(3.256) と な り,演 算 子O†λ,Oλ は 調 和 振 動 子 の 生 成 ・消 滅 演 算 子 の よ うに 振 る舞 う. この よ うな 振 動 解O†λ,Oλ を形 式 的 に 書 くこ とは 常 に可 能 で あ る.Hの
厳密
な 励 起 状 態 を│Ψ λ〉 と す る.す ギ ー を
な わ ち,
で あ る.励
起 エ ネル
と し,
(3.257) と す れ ば,こ
れ ら のO† λ,Oλ は(3.256)式
を み た す こ と は 明 ら か で あ る.関
係式
(3.258) か らわか る よ うに,演 算 子O† λ は基 底 状 態 に作 用 し て励 起 状 態 を 生 成 す る励 起 モ ー ドの 生 成 演 算 子 で あ り,逆 にOλ は 消 滅 演 算 子 で あ る.
(a) RPA励
起 モー ド
上 記 の 厳 密 か つ 形 式 的 な 励 起 モ ー ド の 代 わ りに,近 よ う.O†
λと し て1粒
子1空
似 的 な 励 起 モ ー ド を考 え
孔 モ ー ド(one-particle-one-hole
mode)
(3.259) を 採 用 す る.(3.255)式
のO† λ の 代 わ り にX† λ を 代 入 し た 近 似 的 なG(t)を
ば,
は 時 間 依 存Hartree-Fock波
X†λ の み た す べ き 方 程 式 は(3.256)式
使 え
動 関 数 で あ る.
に お い てO† λ をX† λで 置 き 換 え た も の
(3.260) で あ る.こ relation
の 方 程 式 を 近 似 的 に み た す よ う に 固 有 振 動 数 ωλ や 相 関 振 幅(cor
amplitudes)
を き め る.ハ
ミ ル トニ ア ン(3.213)を
用
い て,
(3.261) が 得 ら れ る.た
だ し:Z:はa†aとb†bの
規 積 の 形 か ら な る 項 で あ る.(3.261)式 す る と,(3.249)式
形 と を(3.260)式
と 同一 の 固 有 値 方 程 式
に 関 す る4次 に 代 入 し:Z:の
の正
項 を無 視
(3.262) を 得 る.す
な わ ち,時
間 依 存Hartree-Fock法
の 微 小 振 動 解 と,:Z:の
視 す る と い う近 似 と は 同 等 で あ る,と い う こ と に な る.こ (RPA)
(random-phase
approximation)と
動 方 程 式 の 方 法(method
of linearized
と 呼 ば れ る こ と もあ る.(3.262)式
RPA方
お よ びMarumoriら 上 のRPA方
るいは線形化運
of motion)と
かSawada近
似
は プ ラ ズ マ 振 動 を 記 述 す る た め にSawadaに
よ っ て は じ め て 導 か れ た も の で,し ば れ て い る.*19
の近 似 は乱 雑 位 相 近 似
呼 ば れ て い る.あ
equation
項 を無
ば し ばRPA方
程 式(RPA
equation)と
呼
程 式 を 原 子 核 の 振 動 運 動 に 最 初 に 適 用 し た の はTakagi で あ る.*20
程 式 はBohr-Mottelson
の 集 団模 型 を微 視 的 に忠 実 に表 す こ と を 目 ざ し て い る が,こ
こで 重 大 な 問題 点が
あ る. RPAモ
ー ド は ア ク テ ィブ な 空 孔 軌 道
(準 位)か
ら ア ク テ ィ ブ な 粒 子 軌 道(準
位)へ
粒 子 が 励 起 さ れ た 粒 子 ・空 孔 励 起
(particle-hole
excitation)の
演 算 子 の重
ね 合 わ せ で 作 ら れ る(図3.28参 た が っ て,実
図3.28
照).し
際 の 原 子 核 にRPAを
実 際 にRPAが
適 用 され る
殻 模 型 空 間の 概 念 図 εFはFermiエ
適 用
ネ ルギ ーで あ る.
す る と き,粒 子 軌 道 と 空 孔 軌 道 が 明確 に 定 義 され て い な け れ ば な らな い.閉 殻 核 の 場 合 は何 ら問 題 は な い が,そ れ 以外 の 場 合,す
なわちオープ ン殻の準位 を
粒 子 が 不 完 全 に 占め て い る場 合 に は,粒 子 軌 道 と空 孔 軌 道 を明 確 に 区 別 して 定 義 す る こ とが で き な い.前 に 見 た よ うに,こ の よ うな オ ー プ ン殻 核 の 場 合 こ そ 集 団 運 動 が 最 も重 要 とな るが,こ
の と きRPAが
適 用 で きな い と い う こ とは 理
論 上 の 大 問 題 で あ る.こ の 問 題 点 は,後 で3.4.5に お いて 説 明 す る準 粒 子RPA を用 い る こ と に よ っ て,う *19 K
. Sawada,
*20 S T.
. Takagi, Shiozaki
Phys. Prog. and
Rev. Theor. S.
Takagi,
ま く回避 す る こ とが で きる.
106
(1957)
372.
21
(1959)
Phys. Prog.
Theor.
174; Phys.
K.
Ikeda, 22
(1959)
M.
Kobayashi, 663.
T.
Marumori,
(b) 簡 単 な 場 合 のRPA方 RPA方
程 式(3.262)は
程式の解 一 見 通 常 の 固 有 値 方程 式 の よ うに 見 え るが,実
際 はエ
ル ミー トな 固 有 値 方 程 式 で は な く,そ の 固有 値 は 必 ず し も常 に 実 数 とは 限 らな い.し たが っ て後 の都 合 の た め に も,RPA方
程 式 の性 質 につ いて は少 し詳 し く
検 討 し て お くこ とが 必 要 で あ る. 一 般 的 な議 論 をす る 前 に,有
効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 が 分 離 可 能(separable)
な 場 合 を例 示 し よ う.い ま有 効 相 互 作 用 の 行 列 要 素 が
(3.263) で あ る と す る.た だ し相 互 作 用 の 強 度xお す る.こ の と きのRPA方
よ び 行 列 要 素Qμiは
実数で あ る と
程式 は
(3.264) と な る.こ
の2式
にQμiを
掛 け て μ,iに つ い て 加 え,
に 関 す る 式 を 作 る と,固
有 値hω
を決 定 す る 方 程 式
(3.265) を得 る.こ の 形 の 方 程 式 を 一 般 に 分 散 式(dispersion を使 っ て 固 有 値hω を 求 め る に は,図3.29に
relation)と 呼 ぶ.分 散 式
示 す よ う にグ ラ フ を 用 い る の が
わ か りや す い. 図3.29に
お い て は,粒 子 準 位 μ と 空 孔 準 位iの 可 能 な 組 み 合 わせ が3つ
場 合(n=1,2,3)を
例 示 し て い る.し た が っ てRPA方
方 程 式 で あ り,固 有 値hω は6個 の 強 さxの
あ る.実
程 式 は6×6の
曲線 で 表 され るS(ω)と,相
の
固有 値 互作 用
逆 数 を表 す 水 平 の 線 との 交 点(黒 点)に お け る横 軸 の 値 が 固有 値hω
を 与 え る.6個 な らば-hω
の 固 有 値 の う ち3個 は 正,3個 もま た 固 有 値 で あ る.い
は 負 で あ り,hω が1つ
ま3個 の 正 の 固 有 値
み 考 え よ う.図 か ら明 らか な よ うに,x>0(引
力)の 場 合,最
の 値 は 他 に 比 べ て特 別 に低 くな っ て い る.逆 にx0)の
り│x│が
場 合,虚
数 解 が 現 れ る.
大 き く な る と,固
有 値hω0の
く な る こ と を 意 味 す る.x>0(引 えx>xcと
な る とhω0は
状 態 は 特 別 に 集 団 性(collectivity)が
力)の 場 合,臨
界 値(critical
value) xcを
高 越
虚 数 と な る.
固 有 値hω λ に 対 す る 振 幅xλ(μi),yλ(μi)はRPA方
程 式(3.264)か
ら容 易 に
求 め る こ と が で き,
(3.266) と な る.こ
こ でNλ
は 規 格 化 定 数 で あ る.規
結 果 か ら 直 ち に わ か る よ う に,固 のxλ(μi)とyλ(μi)と
有 値-hω
格 化 に つ い て は 後 で 述 べ る.こ λ に 対 す る 振 幅 は,固
の
有 値hω λの 解
を 交 換 し た も の と な っ て い る.
(c) RPA方 程式の性 質 こ こ でRPA方 程 式 の 一 般 的 な性 質 につ い て述 べ る.RPA方
程 式(3.262)は
(3.267a) と 書 く こ と が で き る.た
だし
(3.267b) で あ る.1.2.2で うに系 の1粒
も述 べ た よ う に,相 互 作 用 の すべ て の 行 列 要 素 が 実 数 に な る よ
子 状 態 の 位 相 を とる こ とが で きる.以 下 で は すべ て そ の よ うに と
られ て い る もの とす る.し たが って 上 のRPA方 や
程 式 に お け る 行 列 要 素
は す べ て 実 数 で あ る.
い ま可 能 な 粒 子 ・空 孔 の ペ ア ー(μ,i)の 数 がNで 式(3.267a)は2N×2Nの
固有 値 方 程 式 で あ る.直
つ のhω λが 固有 値 な らば-hω
あ る とす れ ば,RPA方
程
ち に わ か る よ う に,あ る1
λ も また 固 有 値 で あ る.
前 項 の 例 で もわ か る よ うに,固 有 値hω λは常 に 実 数 とは 限 ら な い.い ま正 の 固有 値 の モ ー ドに注 目す る と,最
も集 団 性 の 高 い モ ー ドの 固有 値 は,相 互 作 用
が 引 力 で そ の 強 さが 大 き くな る に したが って小 さ くな り,あ る 臨界 点 に お いて0 と な る.こ の 臨 界 点 を越 え る と固 有 値 は複 素 数 とな る.*21以 下 の 議 論 は,RPA 方 程 式 が 意 味 を持 つ 場 合,す な わ ち2N個
の す べ て の 固 有 値hω
数 の場 合 に 限 る こ と に す る.こ の と き2N個 のN個
の 固 有 値 の う ちN個
λが0で ない 実 は 正,あ
と
は 負 に分 類 され る.
さて(3.267b)式 れ ぞ れA,Bと れxλ,yλ
の
を 行 列 要 素 とす るN×Nの
し,
を 要 素 と す るN列
と す る と,RPA方
実行列 をそ
の 列 ベ ク トル を そ れ ぞ
程 式(3.267a)は
(3.268) と書 か れ る.た だ しIはN×Nの
単 位 行 列 で あ る.こ の結 果 か ら固 有 ベ ク トル
の 規 格直 交 性 は
(3.269a) と な る.い
ま,す べ て の 固 有 値hω λが 実 数 で あ る 場 合 に 限 っ て い る の で,ω λ,yλ
は 実 ベ ク トル で あ る.し
た が っ て,規
格 直 交 性(3.269a)は
(3.269b) と 書 く こ と もで き る.*22た
だ し
(3.270) で あ る.ま
た(3.269)式
の 規 格 直 交性 か ら 完 備 性
*21 こ の 臨 界 点 の 物 理 的 意 味 に つ い て は *22 前 述 の(3
.266)式
の 規 格 化 定 数Nλ
,次 項 お よ び 次 々 項 で 議 論 す る. は,こ の 規 格 直 交 性 に 基 づ い て 決 定 され る.
(3.271a) (3.271b) (3.271c) を 導 く こ とが で き る.
上 に述 べ た よ うに,あ る1つ の も ま た 固 有 値 で あ る.こ ル(相
関 振 幅)は,互
(backward
が 固 有 値 な らば の 正 負1組
い に 前 方 振 幅(forward
amplitude)yλ(μi)と
に 対 応 す るRPAモ
の固有値 に属す る固有ベ ク ト amplitude)xλ(μi)と
後方振 幅
を 交 換 し た も の と な っ て い る.固
有値
ー ドを に 対 し て)
と す れ ば,
(3.272a)
に 対 応 す る モ ー ドは
に 対 し て) (3.272b)
と 書 く こ とが で き る.し
た が っ て,
(3.273) で あ る.つ
ま り,負
ネ ル ギ ー のRPAモ
エ ネ ル ギ ー のRPAモ
構 成 さ れ て い る.こ
RPAに
孔 が1つ
粒 子 ・空 孔 対 の 生 成 演 算 子 と 消 滅 演 算 子 の1次
方 振 幅yλ(μi)の
す べ て を 強 制 的 に0に
お け る 基 底 状 態│Ψ0〉 は(3.258)式
結合で
す る わ け で あ る.
の 最 後 の 式,す
ま 考 え て い る 近 似 の も と で は,基
底 状 態│Φ0〉 そ の も の で あ る.つ も な い 状 態 で あ り,励
子 ・空 孔 対 が1組
似
れ を 生 成 演 算 子 の 部 分 の み に 限 定 す る 近 似 を 考 え よ う.す
で 与 え ら れ る か ら,い Fock基
似,new-Tamm-Dancoff近
ー ド(3.259)は
な わ ち,後
応す る正エ
ー ド の 消 滅 演 算 子 と な っ て い る.
(d) Tamm-Dancoff近 RPAモ
ー ド の 生 成 演 算 子 は,対
ま り,こ
の と き 基 底 状 態 は 粒 子 ・空
起 状 態
励 起 し た 状 態 で あ る.こ
な わ ち
底 状 態│Ψ0〉 はHartree-
は 基 底 状 態 か ら粒 の よ う に,1つ
の 状 態 に あ る粒 子 お
図3.30
実 曲 線 が 関 数 値S'(E)を い る.そ れ らの 交 点(黒 と示 し た破 線 は,RPAの
分 散 式(3.276)の
グ ラ フ
示 し,与 え られ た 相 互作 用 の 強 さχ の逆 数 が 水 平 の線 で 表 され て 点)に お け る 横 軸 の 値 が エ ネ ルギ ー 固 有 値Eλ を与 え る."RPA" 場 合 の 分 散 式(3.276)の
対 応 す るS(ω)を
描 い た もの で あ る(図
3.29と 比 較せ よ).
よ び 空 孔 の 数 が き ま っ た 一 定 数 で あ る よ う に す る 近 似 はTamm-Dancoff近 (Tamm-Dancoff
approximation)と
Tamm-Dancoff近
似
呼 ば れ る.
似 に お け る 励 起 モ ー ド の 演 算 子 を
と 表 せ ば,
(3.274) で あ る.こ の モ ー ドの エ ネ ル ギ ー 固 有 値
と振 幅
固 有 値 方 程 式 は,(3.262)式
と した もの で あ るか ら,エ ル
にお い て
を決定す る
ミー トな 固有 値 方 程 式
(3.275) で あ り,い うまで もな く固 有 値
は 常 に実 数 で あ る.
(3.275)式 に お け る相 互 作 用 の 行 列 要 素
と し て,(3.263)式
能 な 相 互 作 用 を 考 え よ う.こ の と き固 有 値 方 程 式(3.275)は
の分離 可
分散式
(3.276) と 書 くこ と が で き る.こ
の 分 散 式 はRPAの
を グ ラ フ に 表 し た もの が 図3.30で と 比 べ て み る と,特
場 合 の(3.265)式
あ る.RPAの
徴 が 明 ら か で あ ろ う.
に 対 応 す る.こ
場 合 の 分 散 式 の グ ラ フ 図3.29
れ
Tamm-Dancoff近 (3.275)か
似 の 場 合 は,固
ら わ か る よ う に,こ
る 相 互 作 用 は(3.213)式 参 照)の
み で あ る.ま
有 値方程式
の方 程 式 に寄 与 す
の 中 のHph(図3.31(a) た,す
こ の 近 似 の も と で は,基
で に 述 べ た よ う に,
底 状 態 は 粒 子 ・空 孔 が
1つ も な いHartree-Fock基
底 状 態│Φ0〉 で あ り,
励 起 状 態 孔 対 が1個
は 粒 子 ・空 励 起 し た 状 態 で あ る.し
の 状 態 は 図3.31(b)図 そ れ で はRPAの 程 式(3.262)あ に,RPAで
場 合 は ど う な る か.RPA方
あ る(図3.32(a)参
ドの 演 算 子 の 定 義 は(3.259)式
き め られ る か ら,基
子2空
孔(2p-2h),4粒
せ で 構 成 さ れ る.す
照).ま
で あ り,粒
結 合 で 構 成 さ れ て い る.こ
しhω λ>0)で と2粒
らわ か る よ う
取 り上 げ ら れ る 相 互 作 用 は(3.213)
式 の 中 のHphとHVで
子 の1次
図3.31
で 表 さ れ る.
る い は(3.267)か
(b)
(a)
た が っ て,こ (a) Tamm-Dancoff近 入 れ られ る相 互 作 用.
似 で取 り
(b) Tamm-Dancoff近 起 状 態.
似 で の励
粒 子 ・空孔 対 が1個
励 起 され る.
た,RPAに
お け る励 起 モ ー
子 ・空 孔 対 の 生 成 演 算 子 と 消 滅 演 算
の と き 基 底 状 態│Ψ0〉 は 底状 態は
子4空
一 般 にHartree-Fock基
孔(4p-4h),…
(た だ 底 状 態│Φ0〉
が 励 起 した状 態 の 重 ね 合 わ
なわ ち
(3.277) で あ る.右
辺 の 各 項 の 係 数C(0),C(1),…
も と で が っ て,基
は,RPAの
を 解 く こ と に よ っ て き ま る は ず で あ る.し 底 状 態│Ψ0〉 は 図3.32(b)の
た
よ う な 粒 子 ・空 孔 対 で 作 ら れ る 閉 じ た
ダ イ ア グ ラ ム の 重 ね 合 わ せ で 表 さ れ る.ま 3.32(c)の
近似 と同等 な近似 の
た 励 起 状 態
は図
よ う な ダ イ ア グ ラ ム で 表 され る.つ
ま り1つ
の 状 態 に お け る粒 子 お
よ び 空 孔 の 数 が 一 定 で な く(た だ し 粒 子 数=空
孔 数),さ
まざ ま な数 の 重 ね 合 わ
せ に な っ て い る.こ (new
Tamm-Danncoff
Tamm-Dancoff法
の よ う な 近 似 法 は し ば し ばnew approximation)と と も呼 ば れ て い る.
呼 ば れ る.し
Tamm-Dancoff近 た が っ てRPAはnew
似
(a)
(b)
(c)
図3.32
(a) New
Tamm-Dancoff近
(b) New 念 図.
Tamm-Dancoff近
(c) New Tamm-Dancoff近 の概 念 図.
Tamm-Dancoff近 Dancoff近
似 とnew
似(RPA)に
似(RPA)で
取 り入 れ られ る 相 互 作 用.
似(RPA)で
の基 底 状 態 を 構 成 す る ダ イア グ ラ ムの 概
似(RPA)に
お け る励 起 状 態 を構 成 す る ダ イ ア グ ラム
Tamm-
よ る 第1励
起状
態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー を 比 較 し よ う.こ れ は 図3.30か き るが,わ
ら も読 み取 る こ とが で
か りや す く模 式 的 に 表 示 し
た もの が 図3.33で 互 作 用(引 力)の 第1励
あ る.図
の横 軸 は相
強 さχ を 表 し,縦
図3.33
軸は
Tamm-Dancoff近 に よる 第1励 の模式 図
起 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー を 示 す.
似(TD)とRPA 起 状 態 の励 起 エ ネル ギ ー
χ が 大 き く な る に し た が っ て,Tamm-Dancoff近
似 で の 励 起 エ ネル ギ ー は直 線
的 に 下 が っ て い く.RPAで
似 よ り も 激 し く下 が り,臨 界
はTamm-Dancoff近
値 χcに お い て 励 起 エ ネ ル ギ ー は0と
な り,こ
理 的 に 意 味 の あ る 解 は 得 ら れ な い.こ
の 臨 界 点 はHartree-Fock基
安 定 に な り始 め る 点 で あ る.こ RPAす
れ を越 え る と複 素 数 と な っ て物 底状態が不
の 点 に つ い て は 次 項 で 述 べ る.
な わ ちnew-Tamm-Dancoff法
で は,Tamm-Dancoff近
似 におい て
考 慮 す る こ と が で き な か っ た 粒 子 数 ・空 孔 数 を 保 存 し な い 相 互 作 用HVを 入 れ る こ と に よ っ て,基 取 り込 まれ た.こ
底 状 態 そ の も の にHartree-Fock基
底 状 態 に な い相 関が
の 相 関 は し ば し ば 基 底 状 態 相 関(ground-state
と 呼 ば れ て い る.ま
た 相 互 作 用HVを
ら す こ とが で き た.こ
correlations)
取 り入 れ た こ と に よ り,図3.33で
れ る よ う に 励 起 エ ネ ル ギ ー が 下 が り,特
取 り
見 ら
に 臨 界 点 χc近 傍 で 強 い 集 団 性 を も た
の 基 底 状 態 相 関 こ そ が,Bohr-Mottelsonの
集 団模型で
取 り上 げ ら れ た 中 重 核 に お け る 強 い 集 団 性 に 対 応 す る も の と 考 え ら れ て い る.
(e) Hartree-Fock基
底 状態 の安定性
上 に 述 べ た よ う に,RPA方
程 式 に お い て は,相
くな り,あ る 臨 界 点 に な る と,エ は 一 般 に 複 素 数 とな る.こ Hartree-Fock法 値
互 作 用 が 引 力 で,そ
ネル ギ ー 固 有 値hω が0と
の 臨 界 点 の 意 味 に つ い て 簡 単 に 説 明 し よ う.*23
は,単
一 のSlater行
列 式│Φ0〉 に よ る系 の ハ ミル トニ ア ン の 期 待
を 停 留 値 に す る と い う条 件 に よ っ て1粒
で あ っ た.い
の 強 さが 大 き
な り,こ れ を越 え る とhω
子 波 動 関 数 を 決 定 す る近 似 法
ま│Φ0〉 か ら わ ず か に 変 化 させ たSlater行
列 式│Φ 〉を
(3.278) とす る.た だ しGは に 対 し て をGの
微 小 演 算 子 で あ る.Hartree-Fock法
は,換
言 す れ ば,任
を停 留 値 に す る とい うこ とで あ る.公 式(3.241)を
意 のG
使 って
べ き級 数 に 展 開 す る と,
(3.279) と な る.容
易 に わ か る よ うに 右 辺 の 第2項
は
(3.280) で あ るか ら,確 か に
は
小 点 で な い な らばHartree-Fock基
の 停 留 値 に な っ て い る.し か し この 点 が 極 底 状 態│Φ0〉 は 安 定 とは い え な い.す
と低 い エ ネ ル ギ ー を 持 つ 別 の 安 定 なHartree-Fock基 る.
な わ ち,も っ
底状 態が 存 在す る こ とを意味 す
が 極 小 と な る た め に は,(3.279)式
の 右 辺 の 第3項
が
(3.281) で な け れ ば な ら な い.ハ
ミル トニ ア ン(3.213)を
用 い て(3.281)式
を具体 的 に書 き下
す と,
(3.282) と な る.行
列 要 素
Hartree-Fock基 (3.282)式
は 実 数 で,(3.267b)式
底 状 態 の 安 定 性 条 件(stability に 現 れ た ベ ク ト ル をRPA方
と展 開 す る.こ れ を(3.282)式
condition)で
と 同 一 で あ る.こ
程 式 の 固 有 ベ ク トル で
の 左 辺 に 代 入 し,規
格 直 交 性(3.269)を
す と, *23 D K.
. J.
Thouless,
Sawada
and
Nucl. N.
Phys.
Fukuda,
21
(1960)
Prog.
れが
あ る.
225;
Theor.
22 Phys.
(1961)
78.
25
(1961)
653.
使 って 書 き 直
(3.282)式
が 得 ら れ る.も
の左 辺
ち ろ ん こ の 展 開 は す べ て の 固 有 値hω λが0で
な い 実 数 の と きに の み
可 能 で あ る. で は 固 有 値hω λが 複 素 数 に な る 場 合 は ど うな る か.(3.282)式
に現 れ た 行 列 を
(3.283) と表 そ う.こ の 行 列が 正 値(positive る な らば,行
列A1/2を
definite),す な わ ち そ の す べ て の 固 有 値 が 正 で あ
定 義 す る こ とが で き る.こ れ を用 い てRPA方
程 式(3.268)は
(3.284) と書 か れ る.た
だし
(3.285) で あ る.固 有 値 方 程 式(3.284)は あ る.し
たが っ て,RPA方
な い.つ
ま り(3.282)式
エ ル ミー トで あ る か ら,固 有 値hω λは す べ て 実 数 で
程 式 の 固 有 値hω λが 複 素 数 な らば 行 列Aは
正値 とは限 ら
の 左 辺 は 正 に な る と は 限 ら な い.
以 上 の 結 果 を ま とめ る と, (1) RPA方
程 式 の 固 有 値hω
が す べ て0で
な い 実 数 の 場 合,Hartree-Fock基
底状
態 の 安 定 性 条 件 は み た され る. (2) RPA方
程 式 の 固 有 値hω に 複 素 数 が 現 れ る と きに は,Hartree-Fock基
底状 態 の
安 定 性 条 件 は 必 ず し もみ た され な い. つ ま りRPA方
程 式 の 固 有 値hω が0と
な る 点 は,Hartree-Fock基
領 域 か ら不 安 定 と な る 領 域 の 境 界 で あ る.し 式 が 複 素 数 解 を 持 つ な ら ば,よ
た が っ て,こ
底状 態が安 定 な
の 境 界 を越 え,RPA方
り低 い エ ネ ル ギ ーの 新 た なHartree-Fock基
程
底状 態 を
求 め な くて は な らな い.そ の 意 味 で この 点 は あ る種 の"相 転 移"(phase-transition)へ の 臨 界 点 で あ る.
3.4.3 第1章
準 粒子 で 述 べ た よ う に,原
子 核 内 の有 効 相 互 作 用 の 最 も主 要 な 部 分 は平 均 化
さ れ て 平 均 ポ テ ン シ ャ ル(Hartree-Fockポ 留 相 互 作 用 の う ち,第 が っ て,集
テ ン シ ャ ル)に
一 に 重 要 な 部 分 は 対 相 関 力(pairing
団 運 動 の 微 視 的 理 論 を 考 え る と き,Hartree-Fock場
れ ば な ら な い の は 対 相 関 で あ る.
く り込 ま れ,残 force)で
あ る.し
る残 た
の次 に 考 え な け
第1章
で は,準
ス ピ ン や セ ニ ョ リテ ィ量 子 数 と い う概 念 を 用 い て,単
お け る 対 相 関 を 取 り扱 っ た.こ
場 合 の 配 位 混 合 計 算 に は 有 用 な 定 式 化 で あ っ た.し 的 理 論 で は,多 を,で
一準 位 に
れ は オ ー プ ン 殻 に お け る粒 子 数が 比 較 的少 な い
数 の ア ク テ イ ブ 軌 道(多 準 位)に
か し なが ら集 団 運 動 の 微 視
お け る多 数 の粒 子 の 間 の対 相 関
き る だ け 見 や す い 形 で 取 り 扱 う こ と の で き る 定 式 化 が 要 求 さ れ る.こ
目 的 の た め に 導 入 さ れ た の が 本 節 で 説 明 さ れ る 準 粒 子(quasi-particle)で 準 粒 子 の 導 入 の 意 図 を 明 ら か に す る た め に,第1章
の1.2.3に
た 対 相 関 ハ ミ ル ト ニ ア ン を 検 討 し よ う.以
下 で は1粒
(na,la,ja,mα)で
す る.こ
表 し,α=(na,la,ja)と
法(notations)と
同 一 で あ る.状
ま た,対
演 算 子A†(ab)等
と る.い
ま,多
H0と
態 α の 代 わ り に(ja,mα)と
々 に 関 す る 表 記 法 もす べ て1.2に
準 位 配 位 を 考 え,系
対 相 関 力
の ハ ミ ル ト ニ ア ン は1粒
の み を 含 む も の と す る.す
あ る.
おいて定義 し
子 状 態 は,量
れ ら は1.2節
の
子 数 α=
にお け る表 記
表 す こ と も あ る. お け る もの と同 一 に 子 ハ ミル トニ ア ン
な わ ち,
(3.286) と す る.こ
こ で 準 ス ピ ン 演 算 子S+(a),S-(a),Sz(a)は
(3.287) で あ り, 1.2.4で
で あ る. 詳 し く述 べ た よ う に,各
々 の 準 位aに
同 時 固 有 ベ ク トル の と き,準
位aに
お け る 粒 子 数 をNa,セ
お い て は,S2(a)とSz(a)の
を 基 底 ベ ク ト ル とす る こ と が で き る.こ ニ ョ リ テ ィ を υaと す れ ば,
(3.288) で あ る. 準 ス ピ ン演 算 子 は,準 位 が 異 な れ ば 互 い に 交 換 可 能 で あ るの で,全 系 の 基 底 ベ ク トル を
(3.289) と 書 く こ と が で き る.
ハ ミル トニ ア ン(3.286)か ら,各
ら 直 ち に わ か る よ う に,
で あるか
準 位 に お け る セ ニ ョ リ ティ υaは 良 い 量 子 数 で あ る.し
リ テ ィ(total
た が っ て,全
セニ ョ
seniority)
(3.290) も良 い 量 子 数 で あ る.全 セ ニ ョリテ ィυは そ の 状 態 に含 まれ る0対 な い 粒 子 数 で あ る.と ころが 各準 位 の粒 子 数演 算 子naはHと たが っ てS0(a)(あ (3.289)はHの
るい はNa)は
良 い 量 子 数 で は な い.つ
交 換 しな い.し ま り,基 底 ベ ク トル
固 有 状 態 で は な い.全 系 の 固有 状 態 にお いて は,全 セ ニ ョ リテ ィ
υは 一 定 の確 定 値 で あ るが,各
準 位 に さ ま ざ まな 数 の 粒 子 が 入 った 状 態 の重 ね
合 わせ と な って い る.し か し,い
ま対 相 関 力が 引 力 で あ る(G0>0)と
い る の で,υ が 小 さい 状 態 ほ ど エ ネル ギ ーが 低 い と考 え られ,特 数 の核 の 基 底 状 態 は υ=0で
上 述 の よ う に,引 態 で 表 さ れ る.し 数 存 在 す る.こ
換
力 の 対 相 関 力 に 対 し て は,基
底 状 態 は 低 い セ ニ ョ リ テ ィ状
か し 多 準 位 配 位 の 場 合 に は υ=0と
れ はJ=0対
い え ど も独 立 な 状 態 は 多
が 多 くの 準 位 に 分 布 し,分
布 の仕 方 が 多 数 あ るか
伝 導 を 説 明 す る た め の 理 論 で あ るBardeen-Cooper-Schrieffer理
論 あ る い はBCS理
論(BCS
theory)で
状 態 が 変 分 法 的 に 求 め ら れ,こ り,"超
考 えて
に粒 子 数 が 偶
あ る こ とが 容 易 に予 想 され る.
(a) 準 粒 子 とBogoliubov変
ら で あ る.超
に組 ん で い
伝 導 状 態"と
基 底 状 態(BCS
は,こ
の 分 布 の うちエ ネ ル ギ ー最 低 の
の 状 態 が 特 別 にエ ネ ル ギ ーが 低 い 基 底 状 態 を作
な る こ とが 示 さ れ て い る.こ
ground
い ま 偶 数 粒 子 系(粒
state)と
呼 ば れ る.*24
子 数=N=偶
数)を 考 え る.こ
の よ う に し て 求 め ら れ る か.次
の2点
(ⅰ) 全 セ ニ ョ リ テ ィが0(υ=0)で (ⅱ) Hartree-Fock法
の 基 底 状 態 は し ば し ばBCS
の 系 のBCS基
底状態 はど
が 要 請 さ れ る. あ る こ と.
の 場 合 と 同 様 に,近
似 的 に1粒
子 モ ー ドで 記 述 され る
こ と. 要 請(ⅱ)の *24 J
. Bardeen,
意 味 は 次 の 通 りで あ る.い
L.
N.
Cooper
and
J. R.
ま考 え て い る ハ ミル トニ ア ン は(3.286)
Schrieffer,
Phys.
Rev.
108
(1957)
1175.
で あ り,書 き直 す と
(3.291) で あ る.対 Fock基
相 関 力 が な い と き,す
な わ ちG0=0の
と き の 基 底 状 態 はHartree-
で あ るが,対
相 関 力 が 強 くな っ た と き,1粒
底 状 態
子 モ ー ド
の 代 わ り に 別 の 新 し い1粒
子 モ ー ド
が 導 入 され,
ハ ミル ト ニ ア ンHが
(残 りの 相 互 作 用) の 形 に 書 か れ る こ と が 望 ま し い.こ (quasi-particle)と
呼 ぶ.つ
ネ ル ギ ーE0と1準 あ る.こ
の 新 し い1粒
(3.292)
子 モ ー ド
ま り対 相 関 力 の 主 要 部 分 が,準
粒 子 エ ネ ル ギ ーEaと
を準粒子
粒 子 の"真
空"の
エ
に く り込 ま れ る こ と を 要 請 す る の で
の 要 請 を み た す よ う な ユ ニ タ リ ー 変 換 が 可 能 で あ る.
階 数(rank)κ
の 準 ス ピ ン ・ テ ン ソ ル(quasi-spin
tensor)Tκqは
(3.293a) (3.293b) で 定 義 さ れ る.こ
こで
(3.294) と す る と,こ は1/2階
れ ら の 演 算 子 は(3.293)式
の 準 ス ピ ン ・テ ン ソ ル(ス
上 記 の 要 請(ⅱ)を を 導 入 す る.準
を み た す の で,1粒
ピ ノ ル:spinor)で
み た す よ う に 新 し い1粒
子 演 算 子,す
粒 子 が フ ェ ル ミオ ン で あ る た め に は,変
が ユ ニ タ リ ー で な け れ ば な ら な い.こ
子 演 算 子(c†α,cα)
あ る. な わ ち 準 粒 子 換
の ユ ニ タ リ ー 変 換 をUと
す る と,
(3.295) で あ る.準 粒 子 に 対 す る"真 空",す な わ ちBCS基
で き め ら れ る.一
方,真
の 真 空│0〉 に 対 し て は
底 状 態
は
で あ る か ら,
(3.296)
と な る. で は ユ ニ タ リ ー 変 換Uは 上 述 の 要 請(ⅰ)に
ど の よ う な 性 質 を 持 た な け れ ば な ら な い だ ろ う か.
よ り,BCS基
底 状 態
は υ=0で
あ る.し
な け れ ば な ら な い.す
な わ ち,Uは
い.換
準 ス ピ ン 空 間 の 座 標 軸 の 回 転 で な け れ ば な ら な い.こ
言 す れ ば,Uは
回 転 をR(n,ω)と で あ る.付
表 す.nは
録Aの(A.8)式
た が っ て,Uは0対
な け れ ば な ら な い.
│0〉は も ち ろ ん υ=0で
の み を生 成 す る演 算 子 で
準 ス ピ ンの 大 きさ を保 存 し な け れ ば な ら な
回 転 軸 に 沿 っ た 単 位 ベ ク トル で あ り,ω
の
は 回転 角
に な ら え ば,
(3.297) と書 か れ る.異
な る準 位 の 準 ス ピ ンS(a)は
のユ ニ タ リー 変 換Uは
互 い に 交 換 可 能 で あ るか ら,上 述
次 の よ うに な る:
(3.298)
い ま特 定 の 準 位aに す.す はD関
注 目 し よ う.回 転
な わ ち, 数(付 録A参
をEuler角
で表
とす る.こ の 回 転 の2次
元表現
照)を 用 い て
(3.299) と な る.し
た が っ て,1/2階
の テ ン ソ ル(ス
ピ ノ ル)は 次 の よ う に 変 換 さ れ る:
(3.300) さ て,z軸
の ま わ りの 回 転
式 か ら
お よ び
変 換 に な っ て い な い の で 無 意 味 で あ る.そ を 考 え る.こ
の と き,(3.298)式
を 考 え よ う.(3.299),(3.300) が 得 ら れ るが,こ こ で,y軸
れは実質的な
の ま わ りの 回 転
か ら
(3.301)
が 得 ら れ,ま
た(3.299),(3.300)式
か ら準 粒 子 は
また は
と な る.た
だ し
で あ る.*25変
Bogoliubov-Valatin変
換(Bogoliubov-Valatin
単 にBogoliubov変
approximation)と
変 換(3.302)は
換(3.302)は
transformation)あ
換 と 呼 ば れ て い る.*26ま
似 的 な 基 底 状 態 を 求 め る 方 法 を,準 近 似(BCS
(3.302)
た,こ
るいは
の よ うに準 粒 子 を用 い て 近
粒 子 法(quasi-particle
method)と
かBCS
呼 ぶ こ と に す る.
粒 子 の 生成 演 算 子 と消 滅 演 算 子 の1次 結 合 で あ るか ら,こ の 変
換 は 粒 子 数 を保 存 し な い.つ ま りBogoliubov変
換Uは,系
の セ ニ ョ リテ ィは
保 存 す るけ れ ど も,粒 子 数 は保 存 し な い ユ ニ タ リー 変 換 で あ る.
(b) ギ ャップ 方 程 式 Bogoliubov変
換Uに
は 係 数(ua,υa)を
お い て,準
ス ピ ン 空 間 の 座 標 軸 の 回 転 角 度 θa,あ る い
き め な け れ ば な ら な い.そ
変 分 関 数 と 考 え,係
数(ua,υa)を
上 述 の よ うに,Bogoliubov変
の た め,BSC基
底 状 態
を
変 分 パ ラ メ ー タ ー と し て 変 分 法 を 用 い る.
換 は 粒 子 数 を保 存 し ない.そ こで 変 分 法 を適 用
す る に 当 た っ て,系 の 粒 子 数 演 算 子
(3.303) の 期 待 値
が 与 え られ た 粒 子 数Nに
エ ネ ル ギ ー 期待 値
等 しい とい う条 件 を付 け て
を極小 にす る.そ の た め に は,λ をLagrange
の 未 定 乗 数 と し て,H'=H-λNの ハ ミ ル トニ ア ン(3.286)ま
期 待 値 を極 小 に す れ ば よ い. た は(3.291)を
用 い て,
(3.304a)
*25 変 換 係 数 υ aと
準 位aに
号 を 用 い て い る の で,混 *26 N
. N.
Bogoliubov,
JETP,
お け る セ ニ ョ リ テ ィ と は ま っ た く別 の 量 で あ る.習 同 し な い よ う に 注 意 す る こ と. USSR,
34
(1958)
58;
73.
N. N. Bogoliubov, Nuovo Cimento 7 (1958) 794. J. G. Valatin,Nuovo Cimento 7 (1958) 843.
慣 的 に同 一 記
(3.304b) (3.304c)
(3.304d) H4=(a†,aに と な る.た
つ い て4次
の 正 規 積)
(3.304e)
だ し
(3.305) で あ る.
で あ る か ら,パ
と に 注 意 し て,
ラ メ ー タ ーuaと
υaと は 独 立 で は な い こ
す なわ ち
を計 算 す れ ば,
が 得 ら れ る.し
た が っ て,
(3.306) と な る.こ
の 結 果 を(3.305)式
に 代 入 す る と ギ ャ ッ プ 方 程 式(gap
equation)
(3.307a) すなわ ち
(3.307b) が 得 ら れ る.こ ,す
の ギ ャップ 方 程 式(3.307)と,粒
子 数 の 期待 値 を与 え る式
なわ ち
(3.308)
(a)正 常 状 態 図3.34
(b)BCS基
1粒 子 準 位a,b,c,…
横 軸 が 占有 確 率 を表 す.完
底状 態
を粒 子 が 占め る 占有 確 率 υ2aの概 念 図
全 に 占有 され て い る と きは1,完
影 をつ け た 部 分 が,(a) 正 常 状 態,お れ て い る確 率 を示 す.
よび(b) BCS基
と を連 立 させ て 解 くこ と に よ って,Δ
全 に 空 い て い る と き は0で
あ る.
底 状 態 に お け る 粒 子 に よ って 占有 さ
お よび λが 求 め られ る.
容 易 に わ か る よ う に,対 相 関 力 が 弱 く
(3.309) の 場 合 に は,ギ に は,BCS基
ャッ プ 方 程 式(3.307b)は
解 を 持 た な い.し
た が っ て,こ
の場合
底 状 態 は 存 在 し な い.
も と も と の ギ ャ ッ プ 方 程 式(3.307a)は
単 純 な 解 Δ=0を
持 つ.こ
の 場 合,
(3.310) で あ り,こ あ る.こ
の と き の 基 底 状 態 はHartree-Fock基
の 状 態 はBCS基
常 状 態(normal
で
底 状 態 と い う 特 異 な 状 態 で は な い と い う 意 味 で,正
state)と
さ て,Bogoliubov変
底 状 態
呼 ば れ る こ と も あ る. 換 の 係 数(ua,υa)の
意 味 を 考 え よ う.(3.308)式
を書 き
直す と
(3.311) と な る.ゆ (occupation
え に
はBCS基
probability)を
底 状 態 に お い て,粒
子 が 準 位aを
意 味 す る こ と が わ か る.こ
占める占有確率
の 占有 確 率 の 概 念 図 が
図3.34に
示 さ れ て い る.図
はFermiエ
ネ ル ギ ー εFを 意 味 し,占
(空 孔 準 位)は BCS基
底 状 態(b)に
の 準 位 は
段 状"に
(粒 子 準 位)は
の と き,
お いては λ な っ て い て,
完 全 に 空 い て い る.
お い て は 占 有 確 率 は な だ ら か に 分 布 し,空
で あ る.こ
energy)と
常 状 態(a)に
有 確 率 の 分 布 は"階
完 全 に 占 め ら れ,
位 の 区 別 が つ か な い.こ
Fermi
か ら も わ か る よ う に,正
孔 準 位 と粒 子 準
の 準 位 の 占 有 確 率 は
の 場 合 の λ は 有 効Fermiエ
ネ ル ギ ー(effective
呼 ば れ る.
を 極 小 に す る 変 分 原 理 と し て,変 分 パ ラ メ ー タ ー
(ua,υa)の 代 わ りに,粒 子 数Nを
連 続 変 数 と考 え てNに
も同等 で あ る.こ の 変 分 に対 し て も δE0=0と
で あ る.し
関する変分 を考え て
な って い るは ず で あ るか ら,
た が っ て,
(3.312) と な る.す
な わ ち,λ は 系 の 粒 子 数Nの
当 す る の で,BCS基 potential)と
変 化 に と も な うエ ネ ル ギ ー の 変 化 率 に 相
底 状 態 に お け る λ は し ば しば 化 学 ポ テ ン シ ャ ル(chemical
呼 ば れ る.
(c) Bogoliubov変
換 後 の ハ ミル トニ ア ン
ギ ャ ッ プ 方 程 式 の 解 Δ,λ を 用 い て ハ ミ ル トニ ア ン(3.304)を (3.304d)式
のH20は0と
な り,そ
の 結 果Bogoliubov変
書 き 直 す と,
換 後 の ハ ミル トニ ア
ンは
につ い て4次
と な る.準
粒 子 エ ネ ル ギ ー(quasi-particle
の正規積
(3.313)
energy)Eaは
(3.314) で あ る.1準 ら,Δ
粒 子 の エ ネ ル ギ ー の 最 小 値 は Δ で あ り,常
を エ ネ ル ギ ー ・ギ ャッ プ(energy
残 りの 相 互 作 用H4を
無 視 す れ ば,ハ
gap)と
にEa>Δ
であ るか
呼 ぶ.
ミル ト ニ ア ン(3.313)の
1準 粒子励起状態
励起状態 は
2準 粒 子励起状態 3準 粒 子励起状態
の よ う に,準 粒 子 数 で 特 徴 付 け られ る こ とに な る.
(d) BCS基 BCS基
底状態の構 造
底 状 態 は
で あ り,Uは(3.301)式
で 与 え ら れ る.い
ま
(3.315a) (3.315b) と す れ ば,
(3.316) と 書 か れ る.
の 性 質 を使 え ば,
とな る.し
た が っ て,BCS基
底状 態 は
(3.317) と 表 さ れ る.Bardeen-Cooper-Schriefferは
超 伝 導 状 態 が こ の 波 動 関 数 で 表 され る こ
と を 示 し た.*27 *27 J
. Bardeen,
L.
N.
Cooper
and
J.
R.
Schrieffer,
Phys.
Rev.
108
(1957)
1175.
(e) セ ニ ョ リテ ィ と準 粒 子,ギ 上 に 述べ た よ う に,BCS基
ャップ と偶 奇 質 量 差
底 状 態 は系 の全 セ ニ ョ リテ ィを υ=0と
す る条 件
の もと で,変 分 法 を用 い てエ ネル ギ ー が 最 低 とな る よ うに作 られ た.ま た,こ の 状 態 は準 粒 子a† の真 空 で あ るか ら,い う まで もな く準 粒 子 数 は0で あ る.そ れ で は υ≠0の 状 態 は ど の よ うな 状 態 で あ るだ ろ うか. これ を検 討 す るた め に,ス ピ ンjの
単 一準 位 にn個
の粒 子が あ り,そ れ らが
対 相 関力 で 相 互 作 用 し て い る場 合 を考 え る.こ の と きの ギ ャップ 方 程 式(3.307) と方 程 式(3.308)と
の 連 立 方 程 式 は 直 ち に 解 くこ とが で き,
(3.318a) (3.318b)
(3.318c) と な る.し
たが ってBCS理
論 に よ る基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー は
(3.319) と な る.一 (1.61)式
方,対
相 関 ハ ミル ト ニ ア ン の 正 確 な エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は 第1章
のE(n,υ)で
与 え ら れ て い る の で,υ=0と
正 確 な エ ネ ル ギ ー で あ る.す
の
お い た ものが 基 底 状 態 の
なわち
(3.320) で あ る.(3.319)式 一致 す る の で さ て,1準
,BCS近
と(3.320)式
と を 比 較 す る と,
の と き両 者 は よ く
似 が よ い 近 似 で あ る こ とが わ か る.
粒 子 エ ネ ル ギ ーEaは
い ま の場 合
(3.321) で あ る.し
たが っ て,υ 個 の準 粒 子 が 励 起 す る と きの 励 起 エ ネル ギ ー は
(3.322) で あ る.こ れ を セ ニ ョ リテ ィが υの 励 起 状 態 の 正 確 な励 起 エ ネ ル ギ ー
(3.323)
と比 べ る と,υ=2の く一 致 す る.こ
と き に は 一 致 し,そ
の 結 果 か ら,あ
の 他 の 場 合 で も
で あ る限 りよ
る状 態 にお け る準 粒 子 数 と そ の 状 態 の セ ニ ョ リ
テ ィ 数 と は 対 応 す る,と い え る.
BCS基
底 状 態 は 偶 数 粒 子 系(偶 々核)を 記 述 し,そ の セ ニ ョ リテ ィは υ=0
で あ る.偶 数粒 子 系 の 励 起 状 態 の セ ニ ョ リテ ィは もち ろ ん 偶 数 で あ る.し た が っ てBCS近
似 の も とで は,偶 数 粒 子 系 の 励 起 状 態 は 偶 数 個 の 準 粒 子 が 励 起 し た
状 態 と して 表 され,奇 系 のBCS基
数 粒 子 系 は 基 底 状 態 も励 起 状 態 も含 め て,隣
の偶 数 粒 子
底 状 態 か ら奇 数 個 の準 粒 子が 励 起 した 状 態 と し て 記 述 され る.
偶 数 粒 子 系(N=偶
数)の 基 底 状 態 の エ ネ ル ギ ー は,BCS近
で 与 え られ る.(3.312)式
似 の もとで
か らわ か る よ う に
(3.324a) とな る.奇 数 粒 子 系 の 基 底 状 態 の エ ネル ギ ー は
(3.324b) で 与 え ら れ る.こ
こ でEaは
に お い て,ε'aが
い よ う な 準 位aの
粒 子 エ ネ ル ギ ー で あ る.す 有 効Fermiエ
準 粒 子 エ ネ ル ギ ー で あ る.し
る.Weizsacker-Betheの (3.324)式
最 も 小 さ い1準
質 量 公 式(2.7)に
な わ ち,
ネ ル ギ ー λ に 最 も近
た が っ て
と考 え られ
現 れ た 偶 奇 質 量 差 δに 相 当 す る 量 を,
を 用 い て 求 め る と,
(3.325) が 得 ら れ る の で,BCS理 Betheの
論 に お け る エ ネ ル ギ ー ・ギ ャ ッ プ Δ はWeizsacker-
質 量 公 式 に お け る 偶 奇 質 量 差(even-odd
mass
difference)δ
に相当す
る 量 で あ る と い え る.ゆ
え に δの 実 験 値 か ら エ ネ ル ギ ー ・ギ ャ ップ の 大 き さ が
推 定 で き る.図3.35に
中 性 子 に 対 す る 実 験 値 お よび(2.8b)式
れ て い る.陽
子 に 関 す る 図 も 似 た よ う な も の な の で,こ
図 か ら わ か る よ う に,中
の経 験 式 が 示 さ
こ で は 割 愛 す る.こ
重 核 の エ ネ ル ギ ー ・ギ ャ ップ は1∼1.5MeVで
の
あ ると
推 定 さ れ る.
3.4.4
Hartree-Fock-Bogoliubov法
3.4.1のHartree-Fock法 お け る"独
立 粒 子 描 像"の
と3.4.3のBCS近
似 と に よ っ て,原
理 論 的 な 柱 が 確 立 さ れ た.ま
子核多体 系 に
ずHartree-Fock法
では
図3.35 横 軸 は 中 性 子 数.実 が ギ ャ ップ.エ Nuclear
中性 子 に 対 す る 偶 奇 質 量 差 の 実 験 値
線 は 経 験 公 式
[(2.8b)式]を
ネ ル ギ ー に ほ ぼ 等 し い も の と 考 え ら れ る.図
Structure,
Benjamin,
Vol.
I (1969),
Chap.
示 す.こ はA. 2よ
Bohr
こに示 され る偶 奇 質 量差 and
B.
R.
Mottelson,
り.
核 内 有 効 相 互 作 用 の 最 も重 要 な 部 分 が 平 均 ポ テ ン シ ャ ル(Hartree-Forkポ シ ャ ル)に
く り込 ま れ,BCS近
導 入 さ れ,第2に
似 に お い て はBogoliubov変
重 要 な 核 子 間 相 関 で あ る と こ ろ の 対 相 関 が"ペ
テ ン シ ャ ル"(pairing
potential)あ
子 描 像 の 中 に く り込 ま れ た.そ な り,励
テ ン
換 に よ り準 粒 子 が ア リ ン グ ・ポ
る い は エ ネ ル ギ ー ・ギ ャ ッ プ と し て 独 立 粒
の 結 果,系
の 近 似 的 基 底 状 態 はBCS基
底状態 と
起 状 態 は こ の 基 底 状 態 の 上 に 複 数 個 の 準 粒 子 が 励 起(生 成)さ
れ た状 態
と し て 記 述 さ れ る こ と に な っ た. 以 上 の 定 式 化 に お い て,わ
れ わ れ は 系 の ハ ミ ル ト ニ ア ン と し て1粒
ル ト ニ ア ン(運 動 エ ネ ル ギ ー+Hartree-Fockポ を 考 え た け れ ど も,一 る.し
た が っ て,一
対相 関力 のみ
般 に 核 内 有 効 相 互 作 用 は も っ と多 種 の 相 関 を含 ん で い
般 論 と し て は,上
立 さ せ た 形 で 統 合 し,一
記 の(Hartree-Fock法)+(BCS近
般 化 し た 理 論 に 発 展 さ せ る 必 要 が あ る.こ
説 明 す るHartree-Fock-Bogoliubov method)で
テ ン シ ャ ル)と
子 ハ ミ
似)を
連
れが 以下で
(HFB)法(Hartree-Fock-Bogoliubov
あ る.
(a) 一 般 化 され た 準 粒 子 い ま考 え て い る1粒 子 空 間 がM次
元 で あ り,し た が っ て1粒 子 状 態 の 個 数
がMで
子 状 態 に 対 し て そ の 時 間反 転 状 態 が 必 ず
あ る とす る.通 常,あ
存 在 す る の で,Mは *28 Tを
る1粒
偶 数(M=2m)で
時間反転演 算子 とす ると
あ る と考 え て よい.*283.4.1で
,1粒 子 状 態 で あ る.
説明し
の 時間反転状 態 は
たHartree-Fock法
に お い て は,こ
のM次
元 空 間 内で の ユ ニ タ リー変 換
(3.326) を 行 い,Hartree-Fock基
底 状 態(単 一Slater行
列 式)に
が 極 小 に な る よ う に そ の ユ ニ タ リ ー 変 換 を 決 定 し た.こ お け る ユ ニ タ リ ー 変 換UHFで
BCS近
よ るエ ネル ギ ー期 待 値 れ がHartree-Fock法
に
あ る.
似 に お い て は,Bogoliubov変
換 に よ って この1粒
子状態 とその時間
反 転 状 態 とを 結 び つ け る2次 元 の ユ ニ タ リー 変 換
(3.327) を行 っ て 準 粒 子
を 導 入 し,こ の 準 粒 子 に対 す る"真 空"す な わ ちBCS
基 底 状 態 で のエ ネ ル ギ ー期 待 値 を極 小 にす る とい う条 件 で 係 数(ua,υa)を た.(1準
粒 子 状 態 α はM個
あ るか ら,正 確 に い えば2M次
きめ
元 の ユ ニ タ リー変
換 で あ る.) こ れ ら の2段
階 の 変 換 を 統 合 し,一
particle)
般 化 さ れ た 準 粒 子(generalized
を 考 え る こ と が で き る.す
quasi-
な わ ち変 換
(3.328) で あ る.変 換 は2M次
元 空 間 の 変 換 で あ り,
(3.329) と書 か れ る.UTはUの
転 置 行 列 で あ る.変
化 さ れ たBogoliubov変
換(generalized
換(3.328)ま
Bogoliubov
た は(3.329)は
一般
transformation)*29と
呼 ば れ て い る.
一 般 化 され た準 粒 子
が フ ェル ミオ ンで あ るた め に は
タ リー で な け れ ば な らな い.す
,変 換Wは
ユニ
なわ ち,
(3.330a) *29 N
. N.
Bogoliubov,
Sov.
Phys.
Usp.
2 (1959)
236.
または
(3.330b) で あ る.(3.328)式
の 逆 変 換 は 次 の よ う に 表 され る:
(3.331) Bloch-Messiahの Wの
定 理(Bloch-Messiah's
theorem)*30に
型 の ユ ニ タ リ ー 変 換 は 次 の よ う に3つ
よ れ ば,上
記の
の ユ ニ タ リ ー 変 換 に 分 解 で き る:
(3.332a) た だ し,Cお
よ びDはM次
元 の ユ ニ タ リ ー 行 列 で あ り,U,Vは
(3.332b)
と 書 か れ る.こ
こ でUi,Viは2×2の
行列
(3.332c) で あ る.た
だ し
で あ る.
一 般 化 さ れ たBogoliubov変 (3.332a)は,こ
換WのBloch-Messiahの
の 変 換 が 次 の よ う に3段
定 理に よる分解
階の変換
(3.333)
か ら構成 され て い る こ と を意 味 す る.最 初 の 変 換Dは
(3.334a) *30 C
. Bloch
and
A.
Messiah,
Nucl.
Phys.
39
(1962)
95.
で あ り,通 goliubov変
常 のHartree-Fock型
の 変 換 で あ る.次
の 変 換U,Vは
通 常 のBo
換 と同じ型の変換
(3.334b) で あ り,最 後 の 変 換 は これ らの 準 粒 子(α,α†)の間 の 変 換
(3.334c) で あ る. た と え ば,球
形 の1粒
たHartree-Fock 態pと
子 状 態 か ら ス タ ー トし て,最
そ の 時 間 反 転 状 態pと
を 作 り,最
初 の 変 換Dに
1粒 子 状 態 へ 移 り,次 の 変 換U,Vで
よ り変 形 し
変 形 場 に お け る1粒
を結 合 す るBogoliubov変
子状
換 に よ り準 粒 子(α,α †)
後 に こ れ ら の 準 粒 子 間 で 付 加 的 な ユ ニ タ リ ー 変 換Cを
行 う よ うな
ケ ー ス が 想 定 さ れ る. そ れ で は こ の 一 般 化 さ れ たBogoliubov変
換Wは
ど の よ うな 基 準 で 決 定 さ
れ る で あ ろ うか.
(b) Hartree-Fock-Bogoliubov
(HFB)方
程式
考 え て い る多 体 系 の あ る波 動 関 数│Φ 〉に 関す る次 の 対 演 算 子 の 期 待 値
(3.335) を 行 列 要 素 と す るM×M行
列 ρ,κ を そ れ ぞ れ 密 度 行 列(density
よ び ペ ア リ ン グ ・テ ン ソ ル(pairing
tensor)と
matrix)お
呼 ぶ(ρ に つ い て は(3.215)式
参
照). い ま 波 動 関 数│Φ 〉 と し て,
(3.336) で き め ら れ る 準 粒 子 演 算 子 の"真 空" liubov
(HFB)基
底 状 態 を と る.こ
,す な わ ちHartree-Fock-Bogo の と き の ρ お よび κ は,(3.331),(3.330b)
式 を 用 い れ ば,
(3.337)
と な る.ρ
は エ ル ミー ト行 列,κ
を 使 っ て,関
は 反 対 称 行 列
で あ る.(3.330)式
係式
(3.338) が 確 か め られ る.こ れ らの密 度 行 列 とペ ア リング ・テ ン ソル を統合 して2M×2M の 一般 化 され た密 度 行 列Rを
定 義 す るの が 便 利 で あ る.す な わ ち
(3.339) で あ る.Rは
エ ル ミ ー トで あ り,
(3.340) を み た す.容
易 に わ か る よ う に,
(3.341) で あ る.つ
ま りHFB基
底 状 態 に よ る一 般 化 され た 密 度 行 列 は対 角 的 に な っ て
い る.こ の よ うな表 示 の もと で,変 換Wを
ど の よ うに きめ るか が 以 下 に述 べ
る 問 題 で あ る. さて こ こで,変 分 法 を使 って,HFB基
底 状 態
に よ る系 の エ ネ ルギ ー
期 待 値 を極 小(停 留 値)に す る よ うに 一般 化 され たBogoliubov変
換Wを
きめ
る こ と にす る. 系 の ハ ミル トニ ア ン を
(3.342) と表 す. BCS近
似 の場 合 と同様 に,変 換Wは
粒 子 数 を保 存 し ない.し たが って,HFB
基 底 状 態 に よ る粒 子 数 の 期 待 値 を,与 え られ た粒 子 数 に等 し くす る と い う条 件 の もとで 変 分 法 を行 うた め, (Nは
粒 子 数 演 算 子,λ はLagrangeの
上 で は,変
換Wに
の 期 待 値 を極 小(停 留 値)に す る 未 定 乗 数).
よ って 得 られ る一 般 化 され た 準 粒 子 を
の 準 粒 子 に対 す る"真 空"がHFB基
底 状 態
と し,こ
で あ る と し た.同 様 な 型
の 別 の 変 換W'に │Φ'0〉 が
よ る 一 般 化 さ れ た 準 粒 子 に 対 す る"真 に 直 交 し な い な ら ば,一
空"を│Φ'0〉
と し よ う.
般 に
(3.343) と 書 か れ る こ と が 知 ら れ て い る.*31こ 一 般 化 した もの で あ る
のThoulessの
定理 を
.
上 述 の 変 分 法 を 行 う に は,係
と す れ ば よ い.ハ
の 定 理 は(3.228)式
数
を変 分 パ ラ メ ー タ ー と して
ミ ル トニ ア ンH'=H-λNに(3.331)を
代入す る と
(3.344) と な る.こ
こ でH(4)は
β†,β に 関 す る4次
の 正 規 積 で あ る.ま
た
(3.345a) (3.345b) (3.345c) で あ る.た だ しTはTijを T+Γ-λ
行 列 要 素 と す るM×Mの
行 列 で あ る.ま たh=
で あ る.Γ お よび Δ の 行 列 要 素 は
(3.346) で 定 義 さ れ る.Γ
は 一 般 化 さ れ た"平
ン グ ・ポ テ ン シ ャ ル"で │Φ'0〉に よ るH'の
均 ポ テ ン シ ャ ル"で
あ り,Δ
は"ペ
ア リ
あ る.
期 待 値 を 変 分 パ ラ メ ー タ ーZ*kk'の
べ き級 数 に 展 開 す れ ば,
(3.347) *31 H
. J. Mang
and
H.
A.
Weidenmuller,
Ann.
Rev.
Nucl.
Sci.
18
(1968)
1.
と な る.こ
の期 待 値 を停 留 値 とす るた め の 条 件 は
(3.348) で あ る.こ
の 条 件 は 変 換WのBloch-Messiahの
け る 第3段
階 の 変 換C,す
条 件(3.348)を
な わ ち 変 換(3.334c)に
満 足 さ せ な が ら,H(11)を
る.Bloch-Messiahの
定 理 に よ る 分 解(3.333)に
対 角 化 す る 変 換Cを
定 理 の 重 要 性 の1つ
し た が っ て,(3.345a),(3.345b)式
は 依 存 し な い.し
お
た が っ て,
行 う こ とが で き
は こ の 点 に あ る.*32
か ら わ か る よ う に,変
換Wを
決定す るこ
と は,
(3.349) を対 角 化 す る問 題 と な り,固 有 値 方 程 式
(3.350) を解 く と い う 問 題 に 帰 着 す る.こ bov
(HFB)方
HFB方
の 固 有 値 方 程 式 をHartree-Fock-Bogoliu
程 式(Hartree-Fock-Bogoliubov
程 式(3.350)は
equation)と
非 線 形 方 程 式 で あ る.な
呼 ぶ.
ぜ な らば 一 般 化 され た 平 均
ポ テ ン シ ャ ル Γ や ペ ア リ ン グ ・ポ テ ン シ ャ ル Δ の 中 にHFB方 が 入 っ て い る か ら で あ る.ゆ
え にHFB方
程 式 の 解U,V
程 式 は 自己 無 撞 着 的 に解 か な け れ ば
な ら な い. HFB方
程 式 を 解 い て ユ ニ タ リ ー 変 換Wが
き ま っ た の ち,変
換 さ れ た ハ ミル
トニ ア ン は
(3.351) とな る.つ ま り,ハ ミル トニ ア ンの 主 要 部 分 は 一 般 化 され た1準 粒子 エ ネ ルギ ー Ekに H(4)と
く り込 まれ,残
りは準 粒 子 に 関 す る4次 の 正 規 積 で 書 か れ る残 留 相 互 作 用
な る わ け で あ る.BCS近
似 的 な 基 底 状 態 はHFB基
似 の と き と同 様 に,偶 数 粒 子 系(偶 々核)の 近
底 状 態
で 表 され,励
起 状 態 は 偶 数 個 の準 粒
子 が 励 起(生 成)さ れ た 状 態 とな る.奇 数 粒 子 系(奇 核)は 隣 の偶 数 粒 子 系(偶 々 *32 こ の こ とは 式 のH20を0と
,BCS近
似 に お い て(3.304b)式
のE0を
極 小 に す る 条 件 が,ち
す る 条 件 に な って い る こ と に 対 応 す る.
ょ うど(3.304d)
核)のHFB基
底 状 態 の 上 に 奇 数 個 の 準 粒 子 が 励 起(生 成)さ れ た 状 態 で 記 述 さ
れ る. こ の よ う に し て,Hartree-Fock法
とBCS近
似 と を 統 合 し た 原 子 核 の"独 立
粒 子 描 像"の 理 論 が 確 立 され た こ とに な る.
3.4.5
準 粒 子RPA
原 子 核 に お け る集 団 運 動 は平 均 ポ テ ン シ ャ ルが 時 間 的 に揺 動 す る こ とに よ っ て 生 じ る と い うBohr-Mottelsonの で き る と い う こ と を3.4.2で に は な っ て い な くて,そ
集 団 模 型 の 考 え 方 が,RPAの
説 明 し た.そ
こ で のRPAモ
こ で は ま だ 対 相 関 を 陽 に考 慮 した 形
ー ド は1粒
し か し な が ら 現 実 の 原 子 核 に お い て,対 い.実
際,図3.35に
子1空
孔 モ ー ド で あ っ た.
相関 を考慮 しな いわけ には いか な
お け る 偶 奇 質 量 差 が 示 す よ う に,中
ギ ー ・ギ ャ ッ プ Δ は1∼1.5MeVで
あ り,多
ギ ー ・ギ ャ ッ プ が あ る と い う こ と は,ほ (Hartree-Fock基
重 核 に お け る エ ネル
くの 原 子 核 に こ の よ うな エ ネ ル
とん ど の 偶 々核 の 基 底 状 態 は 正 常 状 態
底 状 態)│Φ0〉 で は な く,BCS基
こ と を 意 味 す る.つ
方法 で記述
底状 態
ま り 大 抵 の 原 子 核 の 基 底 状 態 は"超
とな って い る
伝 導 状 態"で
あ るとい
え る. し た が っ て,RPAモ
ー ド もHartree-Fock基
底 状 態 に 基 づ く粒 子 ・空 孔 表 示
で は な く,対 相 関 を あ ら か じ め 考 慮 し た 準 粒 子 表 示 を 用 い て 表 さ れ る よ う に 拡 張 し な け れ ば な ら な い.こ わ ち 準 粒 子RPA
れ が 以 下 で 説 明 す る 拡 張 さ れ た 乱 雑 位 相 近 似,す
(quasi-particle
(a) 準 粒 子RPA方
RPA)で
あ る.*33
程式
偶 々 核 の 近 似 的 基 底 状 態 をBCS基 a† α, aα の"真
空"で
あ る.核
式 で 示 し た よ う に,こ
底状態
と す る.
. Kobayasi
T.
Marumori,
R.
Arvieu
M.
Baranger,
and
T.
Prog.
れ ら 準 粒 子 は 次 のBogoliubov変
and
M. Phys.
Marumori, Theor.
Rev.
Prog. Phys.
Veneroni,
Compt. 120
は準 粒 子
子 の 生 成 ・消 滅 演 算 子 をc†α,cα と す れ ば,(3.302) 換 で 得 ら れ る:
また は
*33 M
な
(1960)
(3.352)
Theor.
24 (1960) rend. 957.
Phys.
23
(1960)
331. 250
(1960)
992.
387.
ここで,
であ り,
であ る.
Bogoliubov変 換後のハ ミル トニ アンは,(3.313)式 で示 した よ うに,
(3.353a) (3.353b) (3.353c) と表 され る.平 均 ポ テ ン シ ャル お よび 対 相 関力 の 効 果 の 主 要 部 分 が1準 ミル トニ ア ンH0に
く り込 まれ た あ との 残 留 相 互 作 用 がHintで
よっ て 集 団 的 励 起 が 引 き起 こ され るの で あ る.Hintの
粒子ハ
あ り,こ れ に
具 体 的 な形 は,次 の よ う
に 表 され る:
(3.354a) (3.354b) (3.354c) (3.354d) た だ し,h.
c.は
直 前 の 項 の エ ル ミ ー ト 共 役 を 意 味 す る.ま
た,記
号
を使 っ て
(3.355a) (3.355b)
(3.355c) と書 か れ る.こ れ ら の残 留 相 互 作 用 を グ ラ フ に 表 し た もの が 図3.36で
あ る.粒
子 ・空 孔 表 示 の 場 合 と違 っ て,準 粒 子 の場 合 に は粒 子 準 位 と空 孔 準 位 の 区 別 が ない.1つ
の 準 位 は 部 分 的 に 占有 さ れ,部 分 的 に 空 い て い る か らで あ る.し た
が って 図3.36に 示 す 矢 印が ない.
お い て は,準 粒 子 の 進 行(伝 播)を 示 す 実 線 に は粒 子 と空 孔 を
図3.36
準 粒 子 表 示 に お け る残 留 相 互 作 用 の グ ラ フ
粒 子 ・空 孔 表 示 のRPAモ
ー ド(3.259)を
拡 張 し て,準
粒 子RPAモ
ー ドの 演
算子 を
(3.356) とす る.こ の 準 粒 子RPAモ
ー ドが 近 似 的 な励 起 モ ー ドで あ る な らば
(3.357) で あ る.し た が っ て 通常 のRPAの
場 合 と 同様 に,
(3.358) と し て,準
粒 子a†α, aα に つ い て4次
位 相 近 似(RPA)を
行 って,エ
び 相 関 振 幅
の 正 規 積 で あ る:Z:の
ネ ル ギ ー 固 有 値(固 有 励 起 エ ネ ル ギ ー)hω λ,お よ を 決 定 す る 固 有 値 方 程 式,す
方 程 式(quasi-particle
RPA
項 を無 視 す る 乱 雑
な わ ち 準 粒 子RPA
equation)
(3.359a) が 得 ら れ る.た だ し行 列 要 素
は 実 数 で,
(3.359b) で 与 え られ る. 準 粒 子RPA方 式(3.267a)と
程 式(3.359a)は
一 見 して 粒 子 ・空 孔 表 示 の 普 通 のRPA方
程
同形 で あ り,同 じ性 質 を持 つ.す な わ ち,固 有値hω λは相 互 作 用
が 弱 い 範 囲 で は 実 数 で あ るが,あ
る臨 界 点 を 越 え て 相 互 作 用 が 強 くな る と複 素
数 の 固有 値 が 現 れ る.物 理 的 に意 味 の あ るの はす べ て の 固 有 値 が0で
な い実 数
の 場 合 で あ る か ら,以 下 の 議 論 で は 固 有 値hω λは す べ て0で し たが っ て,相 関 振 幅
な い実 数 とす る.
もす べ て 実 数 で あ る.
こ の と き,準 粒 子RPA方
程 式(3.359a)の
解 の性 質 は,普 通 のRPA方
程式
(3.267a)の 解 の 性 質 とほ とん ど 同 じで あ る.異 な る点 は 相 関 振 幅xλ,yλ の対 称 性 に あ る.RPA方
程 式(3.267a)に
状 態 を意 味 し,iは
空 孔 状 態 を意 味 す る.し た が っ て,μ とiと の 間 に は対 称 性
は な い.と で は,α
こ ろが 準 粒 子RPA方
お け る振 幅
程 式(3.359a)に
で は,μ は粒 子
お け る振 幅
と β との 交 換 に対 して そ れ らは 反 対 称,す
な わ ち符 号 を 反転 させ る は
ず で あ る.こ の こ と を考 慮 す る と,相 関 振 幅 の 規 格 直 交 性 は
(3.360) と な る.こ
こ で σλは(3.270)式
に 対 し σλ=-1で
あ る.ま
で 与 え られ,
に 対 し
た こ の規 格 直 交 性 か ら 完 備 性
(3.361a) (3.361b) (3.361c) を導 くこ と もで き る. 準 粒 子RPAに
お け る"真 の"基 底 状 態(true
る.│Ψ0〉 は 準 粒 子RPAモ し
ground
ー ド に 対 す る"真 空"で
state)を│Ψ0〉 とす
あ り,
をみ たす よ うに きめ られ る はず で あ る か ら,BCS基
と そ の 上 に4準 粒 子(4qp),8準
粒 子(8qp),…
(た だ 底状態
が 励 起 した 状 態 の重 ね合 わせ で
構 成 され る.す な わ ち
(3.362) と な る.ま た励 起 状 態 は
(ただ しhωλ>0)で
与 え られ,そ の 励 起 エ ネ ル
ギ ーがhω λで あ る.こ れ らの状 態 を構 成す るダ イアグ ラム の概 念 図が 図3.37の (a)基 底 状 態,お
よび(b)励
起 状 態 で あ る.準 粒 子RPAで
は,基 底 状 態,励 起
状 態 と も に,さ まざ まな数 の準 粒 子 が 励 起 した 状 態 の 重 ね 合 わせ とな っ て い る.
(a)
(b)
(c)
図3.37
(a) 準 粒 子New Tamm-Dancoff近 ダ イア グ ラム の 概 念 図.
似(準 粒 子RPA)で
(b) 準 粒 子New Tamm-Dancoff近 る ダ イア グ ラ ム の概 念 図.
似(準 粒 子RPA)に
(c) 準 粒 子Tamm-Dancoff近 念 図.
れ を 準 粒 子new
Tamm-Dancoff
approximation)と ー ド に お い て,前
振 幅(backward
BCS基
Tamm-Dancoff
底状態
で あ る.こ
Tamm-Dancoff近
approximation)の
似 と準 粒 子new
き た.こ
粒 子Tamm-Dancoff近
起 状 態 は2準
場 合 に は,基
底状態 は
粒 子(2qp)の
みの状態
あ る. Tamm-Dancoff近
粒 子new
似 に お け る励 起
Tamm-Dancoff近
関 し て 図3.33 似 におい
似 で 取 り上 げ る こ と が で き な か っ た 相 互 作 用
よ る 基 底 状 態 相 関 を 取 り込 む こ と に よ っ て,強 れ こ そ がBohr-Mottelsonの
の準 粒
の み を と り,後 方
子 ・空 孔 表 示 の 通 常 のRPAに
で 示 し た も の と ま っ た く 同 様 で あ る.準
new
す る 準 粒 子Tamm-Dancoff
れ を 図 示 し た も の が,図3.37の(c)で
エ ネ ル ギ ー の 比 較 に つ い て は,粒
HVに
れ に対 し,(3.356)式
amplitudes)xλ
を 強 制 的 に0と
そ の もの で あ り,励
準 粒 子Tamm-Dancoff近
て は,準
似(quasi-particle
呼 ん で い る.こ
方 振 幅(forward
amplitudes)yλ
近 似(quasi-particle
お け る励 起 状 態 を構 成 す
似 に お け る励 起 状 態 を 構 成 す る ダ イ ア グ ラム の 概
し た が っ て,こ
子RPAモ
の基底状 態を構成す る
い 集 団 性 を 得 る こ とが で
集 団模 型 に お け る 強 い 集 団性 に対 応 す る
も の と 考 え ら れ て い る. 準 粒 子RPAに
関 し て 強 調 し な け れ ば な ら な い 点 は,こ
の 方 法 が 集 団 運動 が
最 も重 視 さ れ る 閉 殻 か ら 離 れ た オ ー プ ン 殻 核 に も適 用 可 能 で あ る こ と で あ る. 3.4.2に は,粒
お い て,粒
子 と 空 孔 を 明 確 に 定 義 す る こ とが で き な い オ ー プ ン 殻 核 で
子 ・空 孔 表 示 の 通 常 のRPAは
適 用 で き な い と 述 べ た.し
か し,準
粒子表
示 で は粒 子 準 位 と空孔 準 位 とは 区別 され な い.こ の こ とに よっ て,準 粒 子RPA が 閉 殻 か ら離 れ た オ ー プ ン殻 核 に 適 用 可 能 と な っ た の で あ る.そ の 結 果,い や(Hartree-Fock近
似)+(BCS近
似)+(準 粒 子RPA)に
ま
よっ て,集 団 運 動 の 微
視 的 理 論 の 基 礎 が 確 立 され た とい う こ とが で きる.
(b) (対 相 関 力+4重
極 相 関 力)模 型
(3.213)式 で 表 され る残 留 相 互作 用 中 で,特
にHppお
た.1.2.2で
よびHhhを
の
代 表 す る 核 内で 最 重 要 な 相 関が 対 相 関 力 で あ っ
述 べ た よ う に,有 効 相 互 作 用 の行 列 要 素 ναβγδを
(3.363) と 角 運 動 量 展 開 し た と き,J=0の 化 し,行
列 要 素GJ(abcd)と
項 が 特 に 大 きい と い う際 立 った 性 質 を 単 純
し て(1.45)式,す
なわ ち
(3.364) に よ っ て 対 相 関 力 を 定 義 し た.こ
の と きの ハ ミ ル ト ニ ア ン が(1.46)式
れ る 対 相 関 ハ ミ ル ト ニ ア ン(pairing
で与え ら
Hamiltonian)
(3.365) で あ る.た だ し
で あ る.
対 相 関力 に次 い で 重 要 な相 関 は,原 子 核 の集 団 的振 動 運 動(フ ォノ ン)を 励 起 す るHphで
あ る.特 に 大 抵 の 偶 々核 の 第1励 起 状 態 が2+状
え る と,粒 子 ・空 孔 間でJ=2の
態 で あ る こ とを 考
組 に特 別 に 強 い相 互作 用が 働 い て い る と考 え
られ る. 2体 力 の行 列 要 素 ναβγδは次 の よ う に書 くこ と もで き る:
(3.366) 行 列 要 素
は 実 数 で あ る と考 え て よ い.ま た そ の 対 称 性 は
(3.367)
で あ り,FJ'(acdb)とGJ(abcd)と
の 間 に は 次 の 関 係 式 が 成 り立 つ:
(3.368) 粒 子 ・粒 子 お よ び 空 孔 ・空 孔 間 で ス ピ ンJに
組 む 行 列 要 素 がGJ(abcd)で
こ れ をGタ
子 ・空 孔 間 で ス ピ ンJ'に
イプ(G-type)と
要 素 がFJ'(acdb)で
呼 ぶ.他
あ り,こ
集 団 的 振 動 運 動(フ
方,粒
れ がFタ
イプ(F-type)で
ォ ノ ン)を 励 起 す るHphを
プ に お い て 特 にJ'=2の
あ り, 組 む行 列
あ る.
代 表 す る 相 互 作 用 は,Fタ
項 が 強 い と 考 え られ る.こ
イ
れ を単 純 化 して
(3.369) と し よ う.こ
こ でq(ac)は
(3.370) で 定 義 さ れ る.す 用 を4重 さ て4重
な わ ち
で あ る.こ
極 相 関 力(quadrupole
force)と
極 演 算 子(quadrupole
の よ う な相 互 作
呼 ぶ.
operator)
を
(3.371) で 定 義 す る.こ の4重
極演 算 子 を 用 い て4重
極 相 関 力 の ハ ミル トニ ア ンは
(3.372) と 書 か れ る.4重
極 相 関 力 は し ば し ばQQ力(QQ
force)と
呼 ば れ る.
ア ク テ ィブ 軌 道 に 存 在 す る 核 子 の 粒 子 ・ 粒子 お よび 空孔 ・ 空 孔 間 の 相 関Hpp, を 代 表 す る の が 対 相 関 力 で あ り,粒 子 ・空 孔 間 の 相 関Hphの (QQ力)で
あ る と考 え て,こ
れ ら2種
極相関力
類 の 相 関 の 絡 み 合 い に よ って 中 重 核 の 集 団
運 動 の 性 質 を 調 べ る と い う 方 法 が,Bohr, て 提 唱 さ れ た(対 相 関 力+4重
中 心 が4重
Hhh
Mottelsonお
よび そ の協 力 者 ら に よ っ
極 相 関 力)模 型(pairing-plus-quadrupole-force
model)で
あ る.こ れ は 簡 略 化 してP+QQ模
型 と も呼 ば れ て い る.こ の模 型
の ハ ミル トニ ア ンは
(3.373) で あ る.H(0)はHartree-Fock
1粒 子 ハ ミ ル ト ニ ア ン((3.213)式
で あ り,H(pair)は(3.365)式 る.つ
ま り こ の 模 型 に お い て は,原
力)と,楕 とxの
の 対 相 関 力,H(QQ)は(3.372)式
に お け るH0) のQQ力
子 核 を 球 形 に 保 た せ よ う と す る 力(対
円 体 型 に 変 形 さ せ よ う と す る 力(QQ力)の
型 に お い て は,H(pair)お
そ の 考 え 方 を 貫 くた め に,以 (1) H(P+QQ)を
よ びH(QQ)は
たが っ
一 種 の 機 能 概 念 で あ り,
下 に 述 べ る よ う な 取 り扱 い を す る の が 普 通 で あ る:
再 度Hartree-Fock近
へ く り 込 む こ と は し な い.ま 作 る.Bogoliubov変
相 関
強 度 の パ ラ メ ー タ ーG0
競 合 に よ っ て 原 子 核 集 団 運 動 を 理 解 し よ う と す る も の で あ る.し
て,P+QQ模
であ
似 を し て,H(pair)+H(QQ)か ずBogoliubov変
換 はH(pair)の
ら1体
場
換 を 行 っ て 準 粒 子a†,aを
み で(H(QQ)の
効 果 は 入 れ な い で)決
定 す る. (2) H(QQ)を
準 粒 子a†,aの
の 項(a†a,a†a†,aa)は 子 に 関 す る4次
表 示 に 書 き 直 し た と き現 れ る 準 粒 子 に 関 す る2次 す べ て 無 視 す る.し
た が っ て,H(QQ)か
らは 準 粒
の 正 規 積 の み 取 り上 げ る.
(3) 以 下 に 示 す 交 換 項(exchange
terms)((3.375d)お
よび(3.376d))は
すべ て
無 視 す る. 上 記 の 処 方 箋 に し た が っ てBogoliubov変
換 後 の 準 粒 子 表 示 を し たP+QQ模
型 の ハ ミ ル ト ニ ア ン は 定 数 項 を 除 い て,
(3.374a) (3.374b) (3.374c) と 書 か れ る.た
だ し,
(3.375a) (3.375b)
(3.375c) (3.375d) お よび
(3.376a)
(3.376b) (3.376c) (3.376d) で あ る.ま た
で あ り,準
粒子対 演算 子は
(3.377a) (3.377b) で 定 義 され る.ま た
で あ る.
上 に 述 べ たP+QQ模 が4重
型 の ハ ミル トニ ア ン の 中 で,準
極 の 準 粒 子RPAモ
粒 子 間 の4重
極相関
ー ド,す な わ ち4重 極 フ ォ ノ ン を作 り出 す 相
互 作 用 で あ る と考 え られ る.こ の 場 合 の 準 粒 子RPAモ
ー ドは
(3.378) で 定 義 さ れ,3.4.5で
述 べ た よ うに 方 程 式
(3.379) に 乱 雑 位 相 近 似 を 行 っ て 準 粒 子RPA方
程 式 を つ く り,こ
て4重
の 考 え に 沿 っ た詳 細 な分 析 と実 験 と の
極 フ ォ ノ ン
比 較 が,割 *34 L
. S.
No.
合 早 い 時 期 にKisslingerとSorensenに
Kisslinger 9;
を き め る.こ
Rev.
and Mod.
R. Phys.
A.
Sorensen, 35
(1963)
Mat. 853.
Fis.
れ を解 くこ と に よっ
よ っ て 行 わ れ た.*34そ Medd.
Dan.
Vid.
Selsk.,
32
の結 (1960)
図3.38
Kisslinger-Sorensenに の4重
太 い 実 線 が 計 算 値.丸
よ るP+QQ模
印 が 実 験 値.同
一Zの
ア イ ソ トー プ が 実 線 で 結 ば れ て い る.使
た パ ラ メ ー タ ー な ど,詳
細 に つ い て は 原 論 文L.
Mod.
853を
Phys.
果 の1例
35 (1963)
が 図3.38に
型 を用 い た 中 重 偶 々核
極 フ ォ ノ ンの 励 起 エ ネ ルギ ーの 分 析
S.
Kisslinger
and
R.
A.
Sorensen,
わ れ Rev.
参 照 さ れ た い.
示 さ れ て い る.図
は 中 重 偶 々 核 の4重
極 フ ォ ノ ン の励 起
エ ネ ル ギ ー を 分 析 し た も の で あ る. P+QQ模
型 の ハ ミ ル ト ニ ア ン の 中 に は 準 粒 子4重
対 相 関 力 か ら 生 じ た 準 粒 子 単 極 相 関 力(monopole る.こ
極 相 関 力H(QQ)intの
ほ か に,
force) H(pair)intが 含 ま れ て い
れ に よ っ て生 み 出 され る集 団 的 振 動 モ ー ド
(3.380) は 対 振 動(pairing
vibration)*35と
呼 ば れ,中
重核 において重 要な役割 を果た
す.*36
3.4.6 3.1お
集 団運 動 パ ラ メー タ ー よ び3.2の
各 節 で 述 べ た よ う に,球
を 特 徴 付 け る の は 弾 性 パ ラ メ ー タ ーC2と *35 D . R. Bes and R. A. Broglia, Nucl. *36 対 振 動 モ ー ド(3 .380)は 準 粒 子 の0対 せ な い.し υ=0の
た が っ て,BCS基
状 態 で あ る.す
振 動 状 態 は υ=0の
Phys.
形 核 の4重
極 集 団 運 動(フ
質 量 パ ラ メ ー タ ーB2で 80 (1966)
ォ ノ ン)
あ り,4重
極
289.
で 構 成 され て い る の で,系
の セ ニ ョ リ テ ィを 増 加 さ
底 状 態 か ら 対 振 動 モ ー ドが 励 起 し た 状 態 は 全 セ ニ ョ リ テ ィが
な わ ち,BCS基
励 起 状 態 で あ る.
底 状 態 は υ=0の
エ ネ ル ギ ー 最 低 状 態 で あ り,対
変 形 核 の 集 団 運 動(回 転 ・振 動)を 特 徴 付 け る の は 慣 性 モ ー メ ン トJと 動 の 質 量 パ ラ メ ー タ ーBβ,Bγ,お る.こ
β,γ 振
よ び ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ーV(β,γ)で
あ
れ らが ど の よ う に して 得 られ るか が 集 団運 動 の微 視 的 理 論 の 重 要 な 問 題
で あ る.
(a) 球 形 核 フ ォ ノ ン の 弾 性 パ ラ メ ー タ ー 質 量 数Aの
原 子 核 が,球
形 の 平 衡 点 の 近 傍 で 十 分 ゆ っ く り と4重
る 場 合 の 弾 性 パ ラ メ ー タ ー を,断 検 討 し よ う.変
熱 近 似(adiabatic
極 振 動 をす
approximation)の
も とで
形 の 大 き さ を パ ラ メ ー タ ー α で 表 し,
(3.381) とす る.
は(3.371)で
分 ゆ っ く りで,パ
定 義 され る4重 極 演 算 子 で あ る.変 形 α の 変 化 が 十
ラ メ ー タ ー α の 値 ご と に系 の エ ネル ギ ー
が 変分的
な 意 味 で 極 小 に な る もの とす る.球 形 か ら微 小 変 形 α が 与 え られ た と きの 系 の エ ネル ギ ー の 変 化 分 を計 算 し よ う.そ の た め に は次 の 定 理が 有 用 で あ る. [定理] BCS基 真 空 で,
底 状 態 を
とす る.同 じ型 の 状 態,す な わ ち別 の準 粒 子 の
に直 交 し ない 状 態
はユ ニ タ リー 変 換eFに
よって
(3.382) と 表 さ れ る.た
だ しF†=-F,す
こ の 定 理 は(3.343)式
な わ ち
で あ る.
で 示 し た 一 般 化 さ れ たThoulessの
定 理 を,ユ
ニ タ リー
変 換 の 形 に 書 き換 え た もの で あ る.
球 形 の 基 底 状 態 を れ た状 態 を
と し,こ の 状 態 か ら微 小 な4重
と して,こ れ を(3.382)式
の 関 数 で あ り微 小 量 と考 え る.(3.381)式
極変形 αが与 え ら
で 表 す.そ の と き
をみ たす とい う条 件,す
はα なわ ち
(3.383) と い う 条 件 付 で,エ の 未 定 乗 数 と し て,変
ネ ル ギ ー 期 待 値 を 極 小 に す る.そ
の た め に μ0をLagrange
分原理
(3.384)
を 用 い る.ハ
ミ ル トニ ア ンHと
ン(3.353)お
よ び(3.354)式
展 開 公 式(3.241)を
し て は,準
粒 子 で 表 し た 一 般 的 な ハ ミル トニ ア
を と る こ と に し よ う.
用い ると
(3.385) と な る.右
辺 の 展 開 に お い て,微
小 量
あ る い は α に つ い て2次
まで
と る と,
(3.386) と な る.右 ら ば,下
辺 の 最 後 の 項 は2次
の 微 小 量 で あ る こ と に 注 意 す べ き で あ る.な ぜ な
で 明 ら か に な る よ う に,μ0は
微 小 量
あ る い は α と同 じオ ー
ダ ー の 微 小 量 で あ る か ら で あ る. ハ ミ ル トニ ア ン(3.353),(3.354)を
用 い て 具 体 的 に 計 算 す る と,
(3.387) が 得 ら れ る.た
だ し,係
と 同 一 で あ る.ま
た4重
数
は(3.359b)式
で 定 義 され た もの
極演算子 は
(3.388) と 表 さ れ る.た
だ し
で あ る.こ
の4重
極 演 算 子 の 表 式(3.388)を
使 え ば,
(3.389) と な る.変
分 方 程 式(3.384)は
(すべ て の αβの 組 に 対 し) と 同 等 で あ る か ら,(3.386)式 連 立1次
に(3.387)お
よ び(3.389)式
を 代 入 す れ ば,次
の
方 程 式 が 得 ら れ る:
(3.390) こ の 連 立1次
方 程 式 を 解 く こ と に よ っ て,
め る こ とが で き る.他
方,Lagrangeの
を求
未 定 乗 数 μ0を き め る 条 件 式(3.383)は
(3.391) と書 く こ とが で き る. 系 が α だ け4重
極 変 形 し た こ とに よ るエ ネ ル ギ ー の 増 加 分 は
(3.392) と な る.こ
こ で 係 数C2は
(3.393) で あ る.こ
のC2こ
そ 球 形 核 の 集 団 的4重
シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー の パ ラ メ ー タ ー,す タ ー で あ る と 考 え ら れ る.
極 振 動(フ な わ ち3.1な
ォ ノ ン)に
対 す るポ テ ン
ど に現 れ た 弾 性 パ ラ メー
(b) 球 形 核 フ ォ ノ ン の 質 量 パ ラ メ ー タ ー まず,断
熱 摂 動(adiabatic
perturbation)法
対 す る ク ラ ン キ ン グ 公 式(cranking
を 用 い て,質
formula)の
量パ ラメーターに
一 般 形 を 求 め よ う.
系 の ハ ミ ル トニ ア ンが 集 団 座 標 α(た と え ば 変 形 パ ラ メ ー タ ー)を を 通 じ て 時 間 に 依 存 す る も の と す る.す と す る.そ
含 み,こ
な わ ちH=H(t)=H(α(t))で
れ ぞ れ の α の 値 に 対 す るH(α)の
れ ある
固有 状 態 を
(3.394) と す る.時
間 依 存Schrodinger方
程式
(3.395) を考 え る.状 態 ベ ク トル
を 規 格 直 交 系
で 次 の よ うに 展 開
す る:
(3.396) た だ し,時 間 に 依 存 す る位 相
は
(3.397) で あ る.(3.396)式
を(3.395)式
に 代 入 し,an(t)が
従 う 方 程 式 を 求 め る と,
(3.398) が 得 られ る.た だ し,
で あ る.
ここ まで は厳 密 な議 論 で あ る.こ こか ら断熱 近 似 を考 慮 し よ う.時 刻t=0に お い て 系 は 純 粋 な状 態 で あ る.ハ
にあ る もの とす る.し たが っ て
ミル トニ ア ン
す る に し たが ってn≠0の
の 時 間 依 存 性 が 小 さ い な らば,時
間が 経 過
状 態 は"ゆ っ く り"と 混 合 す るで あ ろ う.す な わ ち,
(3.398)式 にお い て位 相 因 子
の 時 間 変化 に 比べ て
微 小 な 量 で あ る と考 えれ ば,(3.398)式
が
は
(3.399)
と 書 か れ る.
は 微 小 な 定 数 と 考 え る こ とが で き る の で,
(3.399)式 は 容 易 に 積 分 す る こ とが で きて
(3.400) と な り,断 熱 摂 動 論 に よる系 の 状 態 ベ ク トル
は
(3.401) と な る.こ
の 状 態 ベ ク トル を 用 い て 系 の エ ネ ル ギ ー を 計 算 す る と,
(3.402) と 書 く こ と が で き,質
量 パ ラ メ ー タ ーM(α)は
(3.403) と な る.こ
れ が よ く知 ら れ た ク ラ ン キ ン グ 公 式(cranking
あ る."ク
ラ ン キ ン グ"と
一般 形 で
い う 命 名 の 由 来 は 後 で 説 明 す る.
さ て 上 記 の ク ラ ン キ ン グ 公 式 を 使 って,球 質 量 パ ラ メ ー タ ーB2を
formula)の
求 め よ う.ク
形 核 の4重
極 振 動 運 動(フ ォ ノ ン)の
ラ ン キ ン グ 公 式(3.403)に
お い て
と して 前 項 で 採 用 し た状 態
(3.404) を と る.た
だ しF†=-Fで
る 微 小 変 形 を 持 ち,準
あ る.こ
の 状 態
は(3.383)式
で 与 え られ
粒子
(3.405) の"真 空"で あ る.い ま変 形 の 大 き さ α は十 分 小 さい と考 え て い る の で,"励 状 態"│Φn(α)〉 と し て は2準
起
粒子状 態
(3.406) を考 え れ ば 十 分 で あ る.し たが っ て,ク
と な る が,
ラ ン キ ン グ公 式 の 中の 行 列 要 素 は
で あ る か ら,質
量 パ ラ メ ー タ ーM(α)=B2は
(3.407) と な る.Ec,Edは1準
粒 子 エ ネ ル ギ ー(3.353b)で
方 程 式(3.391)を
解 い てfγ δを α の 関 数 と し て 求 め れ ば,4重
量 パ ラ メ ー タ ーB2が 3.4.5に
の 結 果,連
立1次
極 フ ォ ノ ンの 質
計 算 で き る の で あ る.
お い て 説 明 し たP+QQ模
形 核 に お け る4重 C2を
あ る.こ
型 の 場 合 に は,前
項 お よび本 項 で 述 べ た 球
極 フ ォ ノ ン の 質 量 パ ラ メ ー タ ーB2お
よび 弾 性 パ ラ メー ター
あ ら わ に 表 す こ とが で きて,
(3.408a)
(3.408b) と な る.*37
(c) 変 形 核 の 集 団 運 動 パ ラ メ ー タ ー 4重 極 変 形 核 の 振 動 運 動 を 特 徴 付 け る の は,β と γ 振 動 の パ ラ メ ー タ ーBγ,Cγ た 方 法 を4重 き る が,過
度 の 詳 細 を 避 け る た め こ こ で は 割 愛 す る.詳
本 項 で は,回 . Marumori,
振 動 の パ ラ メ ー タ ーBβ,Cβ
れ ら は前 々項 お よ び 前 項 で 述 べ
極 平 衡 変 形 し た 原 子 核 に 拡 張 す る こ と に よっ て 求 め る こ とが で
Marumori-Yamamura-Bandoの
*37 T
で あ る.こ
論 文*37を
参 照 さ れ た い.
転 運 動 に 対 す る 慣 性 モ ー メ ン トJに M.
Yamamura
and
H.
Bando,
し くは 前 項 で 引 用 し た
Prog.
Theor.
つい てのみ述べ る ことに Phys.
28
(1962)
87.
す る.一 般 形 の クラ ン キ ン グ公 式(3.403)を
導 い た と き と同様 に,Inglis*38に
よ っ て 最 初 に 提 唱 され た 断 熱 近 似 の 考 え方 を 用 い る. Nilsson模 Hを
型 の ハ ミル トニ ア ン(3.178)の
考 え る.Hに
よ うな 変 形 殻 模 型 ハ ミル トニ ア ン
含 まれ る1体 ポ テ ンシ ャル は 自己 無 撞 着 的 な 平 均 場 で あ り,
回 転 軸 の まわ りに 角 速 度 ω で ゆ っ く りと 回転 し て い る もの とす る.平 均 場 中 の 核 子 の 運 動 は,平 均 場 の 回 転 に 比 べ て 十 分 速 く,し た が っ て 回 転 の 角 度 ご とに 自己 無 撞 着 的 に平 均 場 が 形 成 され る もの とす る.実 際 の 実 験 結 果 にお い て も, 粒 子 運 動 の エ ネル ギ ーが 回 転 運 動 の エ ネル ギ ー に 比 べ て 十 分 大 きい ので,こ
の
状 況 に よ く対 応 して い る と思 わ れ る.こ の と き時 間 依 存 の 波 動 関 数 が 求 ま る な らば,回
転 の 角 運 動 量 の 平均 値 を計 算 す る こ とが で き,そ れ は 角速 度 ω に比 例
す るで あ ろ う.そ の 比 例 係 数Jが
慣 性 モ ー メ ン トで あ る.
平均 ポ テ ン シ ャル は 回 転対 称(軸 対 称)変 形 してい る もの とす る.図3.39 の よ うに 対 称 軸 をz軸 垂 直 なx軸
と し,こ れ に
の まわ りを 一 様 な 角 速 度
ω で ゆ っ く りと 回転 す る もの とす る. この と きの ハ ミル トニ ア ンH(θ)は 図3.39 対 称 軸(z軸)に
ω=微
小 定 数,
と 書 か れ る.時
ク ラ ンキ ン グ公 式 の 概 念 図 垂 直 な 回 転 軸(x軸)の
まわ りで,
ゆ っ く り と一 様 な 角 速 度 ω で 回 転 す る.
(3.409)
間 依 存Schrodinger方
程式
(3.410) に お い て,
(3.411) と す れ ば,Schrodinger方
程 式(3.410)は
(3.412) と 書 き 直 す こ とが で き る.*39こ 間 に 依 存 し な い.方
程 式(3.412)の
の 段 階 で の"ハ
ミ ル トニ ア ン"H−hωJxは
定 常 解 を│Φ 〉と し,
*38 D . Inglis, Phys. Rev. 96 (1954) 1059; 97 (1955) 701. *39 e-iθJxは 空 間 固 定 座 標 系 か ら 物 体 固 定 座 標 系(回 転 座 標 系)へ (付 録A参
照),し
た が っ て(3.412)式
時
のユ ニ タ リ ー変 換 で あ り
は 物 体 固 定 系 に お け るSchrodinger方
程 式 で あ る.
(3.413) と 置 け ば,
(3.414) と な る."無
摂 動 系"(ω=0の
回 転 し て い な い 系)の
固有状態 を (3.415)
とす る と,ω が 微 小 量 で あ る か ら,方
程 式(3.414)は
摂 動 的 に 解 く こ とが で き て,
(3.416) と書 か れ る.こ の状 態 に お け る 角 運 動 量 の期 待 値 は,ω の1次
まで と っ て
(3.417) と な る か ら,慣
性 モ ー メ ン トJは
(3.418) と な る.こ
れ が 有 名 な 慣 性 モ ー メ ン ト に 対 す る ク ラ ン キ ン グ 公 式(cranking
formula)で
あ る.*38上
度 ω で ま わ し(ク る.こ
述 の 考 え 方 は,変
ラ ン ク し),そ
形 物 体 の 軸 に ハ ン ドル を付 け て角 速
の と き の"慣
性"(抵 抗)を
求 め る こ とに 相 当 す
れ が こ の 公 式 の 命 名 の 由 来 で あ る.
い ま 変 形 殻 模 型 ハ ミ ル トニ ア ンHと (3.178)を
と り,ク
し てNilsson模
ラ ン キ ン グ 公 式(3.418)に
さ δ に お け る 基 底 状 態 と す る.つ
ま り,変
型 の ハ ミル トニ ア ン
お け る│Φ0〉 を あ る 変 形 の 大 き 形 δ に お い て,Nilssonダ
イア グ ラ
ム に エ ネ ル ギ ー の 低 い 方 か ら順 に 与 え られ た 数 の 核 子 を 詰 め た 状 態 で あ る.Jx は1粒
子 演 算 子 で あ る か ら,(3.418)式
│Φ0〉を 真 空 と す る1粒 孔 状 態 をiで
表 せ ば,ク
子1空
に 寄 与 す る 励 起 状 態│Φn〉(n≠0)は,
孔 状 態 だ け で あ る.こ
の と き の 粒 子 状 態 を μ,空
ラ ン キ ング 公 式 は
(3.419) と な る.
図3.40
ク ラ ン キ ン グ 公 式(3.420)を
縦 軸 は A 193
用 い た慣 性 モ ー メ ン トの 計 算 結 果 と実 験 値 との 比 較
J. Meyer-ter-Vehn,
(1972)
60よ
J. Speth
実 際 の 原 子 核 の 慣 性 モ ー メ ン トは,上 よ り1/2∼1/3小
さ い.こ
J. H.
Vogeler,
Nucl.
Phys.
記 のInglisの
慣 性 モ ー メ ン ト(3.419)
れ は 平 均 場 の 中 に あ る 核 子 間 の 相 関(残 留 相 互 作 用)
の 影 響 に よ る も の と 考 え られ る.最 変 形 殻 模 型 に お け るBCS理 結 果,ク
and
り.
も 大 き い 効 果 は 対 相 関 で あ る.Belyaevは
論 を 使 っ て,対
相 関 の 効 果 を 取 り入 れ た.*40そ
の
ラ ンキ ング 公 式 は
(3.420)
と な る.i,jは ギ ーは
変 形 殻 模 型 の1粒
子 準 位(Nilsson準 で 与 え ら れ る.準
ル ギ ー ・ギ ャ ップ Δ を 含 む の で,一 り,現
較 し た 例 が 図3.40に
. T.
あ り,準
粒子 エネル
粒 子 エ ネ ルギ ー は大 きい エ ネ
般 にJBelyaevはJInglisに
比 べ て小 さ くな
実 の 値 に 近 く な る.
ク ラ ン キ ン グ 公 式(3.420)を
*40 S
位)で
Belyaev,
Mat.
用 い た 慣 性 モ ー メ ン トの 計 算 値 を 実 験 結 果 と 比
示 さ れ て い る.
Fis.
Medd.
Dan.
Vid.
Selsk.,
31
(1959)
No.
11.
(d) 角 運 動 量 射 影 法 に よ る慣 性 モ ー メ ン ト 核 内 の 有 効 相 互 作 用 の 効 果 を 十 分 に 取 り入 れ な が ら慣 性 モ ー メ ン トを計 算 す る も う1つ の 方 法 に つ い て 説 明 し よ う. 平 均 ポ テ ン シ ャル が 大 き く回転 対 称(軸 対 称)変 形 して い る もの とす る.こ の と きのHartree-Fock基
底 状 態 を
と し よ う.β0は 変 形 パ ラ メ ー ター で
あ る.空 間 固定 座 標 系 か ら見 た 変 形 ポ テ ン シ ャル の 主 軸 方 向 を表 すEuler角 とす れ ば,こ の と きのHartree-Fock基 で あ る.た だ し 算 子(A.9)で
は付 録Aに
お け る 回転 演
あ る.
系 の ハ ミル トニ ア ンHは
本 来 回転 不 変 で あ るか ら,状 態 ベ ク トル
に よ る エ ネ ル ギ ー 期 待 値 い.し
を
底状 態 は
たが って,よ
はEuler角
りよ い変 分 関 数 を作 るに は,Euler角
Ω に依存 しな
Ω を さ まざ ま な方 向
に 回転 させ た もの を重 ね 合 わせ て
(3.421) と す る の が よ い.*41対
称 軸(z'軸)方
式 に お け る 重 み 関 数f(Ω)がD関
向 の 全 角 運 動 量 の 成 分 をKと 数
す る.(3.421)
に 比 例 す る も の と し,
(3.422a) とす る と,こ の 状 態 ベ ク トル は 全 角運 動 量 の 固 有 状 態 と な る.す な わ ち,演 算 子
(3.422b) は 全 角 運 動 量 の 大 き さがI,z成
分 がMの
状 態 へ の 射 影 演 算 子 とな って い る.
以下 で示 す よ うに,こ の証 明は 簡単で あ る.演 算子PIMKを
*41 パ ラ メ ー タ ー α を 含 む 波 動 関 数 Φ(α)に
を 作 り,変
分 方 程 式
,重
み 関 数f(α)を
Euler角
か け て重 ね 合わせ て 試 行 関数
を 解 く こ と に よ っ てf(α)を
的 な 固 有 状 態 を 得 る 方 法 を 生 成 座 標 法(generator-coordinate 論 の 各 方 面 で よ く 用 い ら れ る.パ
展 開 し,
method)と
ラ メ ー タ ー α を 生 成 座 標 と呼 ぶ.い
Ω を 生 成 座 標 と考 え る こ とが で き る.
求 め,系
の近 似
呼 び,原
子核 理
ま の 場 合,回
転の
と書 く.α',α"は
角 運 動 量 の 量 子 数 以外 の す べ て の 量 子 数 を ま と め て 表 して い る.行
列 要 素
は
とな る.こ
こ で 付 録Aの(A.22)式
のD関
数 の 直 交 性 を用 い た.こ
の 結 果 を使 っ て,
演 算 子PIMKは
(3.423) と書 か れ る.こ れ は ま さ にPIMKが る こ と を 示 し て い る.す
角 運 動 量 の 固 有 状 態(I,M)へ
な わ ち,(3.422a)式
の射影 演算子 で あ
の│ΨIM〉 は 全 角 運 動 量 の 固 有 状 態 で あ
る こ とが わ か っ た. (3.422a)式
の 状 態│ΨIM〉
に よ る 系 の エ ネ ル ギ ー 期 待 値EIは
(3.424) と な る.偶 M=0を
々 核 で はK=0で
あ り,系
考 え れ ば よ い.し
の エ ネ ル ギ ー はMに
よ ら な い の で,
た が っ て,
(3.425)
と な る.こ
こ で,
お よ び(A.17)式
は 行 列 要 素
で 与 え ら れ る.Jyは
標 系 に お け るy成
で あ り,付 録Aの(A.16) 系 の 全 角 運 動 量 の 演 算 子Jの
空 間 固 定座
分 で あ る.
PeierlsとYoccozは,変
形 が 大 き い と き に は(3.425)式
のEIが
(3.426) と 展 開 で き る こ と を 示 し た.*42し て 慣 性 モ ー メ ン トJが *42 R
. E.
Peierls
J. Yoccoz,
and Proc.
J.
た が っ て,(3.425)式
を計 算 す る こ とに よ っ
得 ら れ る. Yoccoz,
Phys.
Soc.
Proc. A 70
Phys. (1957)
Soc. 388.
A 70
(1957)
381.
次 の よ う な,慣
性 モ ー メ ン トの も う少 し ス マ ー ト な 計 算 法 が あ る.系
ル ギ ー 期 待 値EIが,か
のエ ネ
な り正 確 に
(3.427) の 形 に 書 か れ る も の と 仮 定 す る.変 は,さ
形 し たHartree-Fock基
ま ざ ま な 全 角 運 動 量Iの
底 状 態
状 態 を 含 ん で い る か ら,
と書 く と,
と な る.EIに(3.427)式
を代 入 す る と,
と な り,同 様 に し て
が 得 ら れ る.こ
れ ら の2式
か らE0と1/(2J)を
解 く と,
(3.428a) (3.428b) が 得 られ る.*43(3.428b)式 演 算 子HJ2やJ4は4粒
の 右 辺 を計 算 す れ ば慣 性 モ ー メ ン トが 求 め られ るが, 子 演 算 子 で あ るか ら,実 際 の計 算 はか な り難 し くな
るだ ろ う.ま た 同 様 に し て,(3.426)式
の 展 開 の 高 次 の項,た
とえ ば
の項 の 展 開係 数 の 表 式 を得 る こ とが で きる が,実 際 の 計 算 は た い へ ん 困難 で あ る と思 わ れ る.
3.4.7 遷 移領 域 核 と非 調 和 効 果 球形 核 の4重 極 振 動(フ ォ ノ ン)や 変 形 核 の 回 転 運 動 が,原 子 核 にお け る典 型 的 な集 団運 動 で あ る こ と はす で に詳 し く述 べ た.回 転 運 動 の エ ネル ギ ー ・スペ ク *43 T
. H.
R.
Skyrme,
Proc.
Phys.
Soc.
A 70
(1967)
433.
(a)
(b) 図3.41
(a) 102Ruの
励 起 ス ペ ク トル の 実 験 値,
(b) 対 応 す る2+フ
トル はI(I+1)に 特 徴 で あ る.そ る.こ
比 例 し,し
た が っ て
り,2フ
nuclei)と
ォ ノ ン励 起 の0+,2+,4+状
示 さ れ て い る.こ
102Ruの
呼 ぶ.一
方,4重
極 振 動(フ
ォ ノ ン)は
ソ ン)の 励 起 に 近 い と 考 え ら れ る の で, 態 や3フ
状 態 が 近 似 的 に 縮 退 す る は ず で あ る.こ 3.41に
と な る こ とが そ の
の よ う な 規 則 に 極 め て よ く一 致 す る 例 は 数 多 く見 出 す こ と が で き
れ ら を 回 転 核(rotational
調 和 振 動 子(ボ
ォ ノン の励 起 スペ ク トル.
とな
ォ ノ ン励 起 の0+,2+,3+,4+,6+
の 性 質 を か な り よ く表 し て い る 例 が 図
の よ う な 原 子 核 を 振 動 核(vibrational
ス ペ ク トル(図3.41)は
振 動 核 の 典 型 と は い え,励
高 く な る に し た が っ て 縮 退 が 解 け て,調
nuclei)と
起 エ ネル ギ ー が
和 振 動 子 の 励 起 の 性 質 か ら ず れ て く る.
こ の よ う な 調 和 振 動 子 か ら の ず れ の 効 果 を 非 調 和 効 果(anharmonic か 非 調 和 性(anharmonicity)と
3.42に
示 さ れ て い る.こ
中 でN=86の15266Dyは 158 66Dyは
回 転"相
ら 回 転 核(変
形 核)へ"相
の 性 質 が 徐 々 に 変 化 し,
転 移"す
の 図 で わ か る よ う に,Dyア
る.そ
が図
位 体)の
ほ と ん ど 完 全 に 振 動 ス ペ ク トル を 示 し,N=92の
閉 殻 核 に 近 い の で,殻
転 移"の
の1例
イ ソ トー プ(同
ほ と ん ど 完 全 に 回 転 ス ペ ク トル を 示 し て い る.(14866Dyは
り,15066Dyは
effect)と
呼 ん で い る.
原 子 核 を 構 成 す る 中 性 子 や 陽 子 の 数 が 変 わ る と,そ た と え ば 振 動 核(球 形 核)か
呼 ぶ.
別 の 例 が 図3.43に
閉殻核 であ
模 型 的 な ス ペ ク トル を 示 し て い る.)振 示 さ れ て い る.こ
動 ・
の 図 か ら わ か る よ う に,
図3.42
Nd,Sm,Gdア 転 型 へ"相
66Dy同
位 体 にお け る振 動 ・回 転 相 転 移
イ ソ トー プ に お い て はN=88とN=90の 転 移"す
こ の よ う な"相
間で 振 動 型 か ら 回
る と 思 わ れ る.
転 移"を
微 視 的 に見
る とど の よ う に 理 解 で きる で あ ろ う か.振
動 核 と 回転 核 の 根 本 的 な 違 い
は,そ
れ ら のHartree-Fockポ
テンシ
ャ ル(平 均 ポ テ ン シ ャ ル)の い に あ る.い
はHartree-Fockポ で あ る が,回 円 体)変
形状の違
う ま で も な く,振 動 核 で テ ンシ ャル は球 形
転 核 で は 通 常4重
形 し て い る.3.4.2で
よ う に,球
極(楕 述べ た
形 のHartree-Fockポ
シ ャ ル が 不 安 定 に な り,エ
テ ン
ネル ギ ー 的
に よ り低 い 安 定 なHartree-Fockポ ン シ ャ ル に"遷
移"す
る の は,球
テ 形の
平 均 ポ テ ン シ ャ ル の も と で のRPAモ あ る.RPAモ
ー ド に 寄 与 す る 相 関(い
臨 界 点 を 越 え る と 安 定 なHartree-Fockポ 3.43の とN=90の
場 合 のNd,Sm,Gdア 間,あ
図3.43
Nd,Sm,Gdア
イ ソ トープ に おけ る
振 動 ・回 転"相 大 西 直 毅,日
転 移"
本 物 理 学 会 誌,28
(1973)
ー ド の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 が0と ま の 場 合4重
606よ
な る点 で
極 相 関)が 強 く な り,こ
テ ン シ ャ ル は 変 形 す る.た
イ ソ ト ー プ に お い て は,こ
の
と えば 図
の 臨 界 点 がN=88
る い は そ の 近 傍 に 存 在 す る の で あ ろ う.
り.
図3.44
Hartree-Fockポ で あ り,さ
球 形 核 か ら変 形 核 へ の 励 起 準 位 の 遷 移 の概 念 図
テ ン シ ャ ル が 変 形 す る と い う こ と は,回
ま ざ ま な 方 向 の 変 形 に 対 し てHartree-Fock基
的 に す べ て 縮 退 す る こ と に な る.こ
れ は あ く ま で1体
転 対 称 性 を破 る こ と 底状 態はエ ネルギー
場 近 似 の 枠 内 の 話 で あ り,
全 ハ ミル ト ニ ア ン は 本 来 回 転 不 変 で あ る か ら,Hartree-Fockポ ら な か っ た 残 留 相 互 作 用 を 考 慮 す れ ば,回 は ず で あ る.こ
復"(restore)さ
れ る
の 回 転 不 変 性 の 回復 に と もな っ て エ ネ ル ギ ーの 縮 退 の 小 さ な分
離 が 起 き る.こ も た ら す.こ
転 不 変 性 は"回
テ ンシ ャル に入
れ が 回 転 核(変
形 核)に
れ に よ っ て,図3.42や
お け る 回 転 の エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル を 図3.43に
見 られ る よ う に 回 転 核 の 励 起
エ ネ ル ギ ー が 振 動 核 に 比 べ て 著 し く低 く な る こ と が 理 解 で き る で あ ろ う.
原 子 核 は た か だか 数100個
の核 子 か らな る有 限多 体 系 で あ る.そ の た め 物 性
論 で 取 り扱 わ れ る無 限多 体 系 で の 理 想 的 な 相転 移 と違 っ て,原 子 核 にお け る"相 転 移"は そ の 遷 移 が 徐 々 に発 生 す る.た
と えば 上 に述 べ た 球 形 ・変 形 相 転 移 が
そ の 例 で あ る. そ れ で は,こ
の 徐 々 に お きる 球 形 ・変 形 遷 移 の 中 間 領 域 は ど の よ うに考 えれ
ば よい で あ ろ うか.こ
れ らの 中 間領 域 は通 常 遷 移領 域(transitional
呼 ば れ て い る.す べ て の 原 子 核 を 図 に 表 した 核 図表(nuclear
region)と
chart)の
中 に は,
か な り広 い 遷 移 領 域 が 存 在 す る.こ の遷 移 領 域 核 を 球 形 核 の 側 か ら眺 め る と, 非 調 和 効 果 が だ ん だ ん 大 き くな っ て 調 和 振 動 子 的 運 動 か ら 回 転 運 動 へ 規 則 性 を も っ て徐 々 に 移 行 し て い く.図3.44に
示 され る よ う に,振 動 核 の 励 起 スペ ク
トル は 非調 和 性 が だ ん だ ん 大 き くな っ て,回 転 スペ ク トル につ なが って い くと 考 え ら れ,実 際 の 実 験 結 果 は こ の事 実 を示 し て い る.*44 こ の よ う に考 え る と,原 子 核 構 造 論 に と って 遷 移 領 域 核 の 微 視 的研 究 は不 可 欠 で あ り,こ れ に はRPA法
を越 え る理 論 が 必 要 とな るで あ ろ う.有 力 な その1
つが 次 項 で 説 明す る ボ ソ ン写 像 法 で あ る.
3.4.8 ボ ソ ン 写 像 法 Bohr-Mottelsonの
集 団模 型 に お い て は,原 子 核 の 集 団 運 動 は 平均 ポ テ ンシ ャ
ル の 時 間 的揺 動 で あ る と考 え られ,微 視 的 には(準 粒 子)RPAフ る こ とが わ か って きた.球 形 核 に お け るRPAフ
ォ ノ ンで 表 され
ォノ ン は,近 似 的 に は 調 和振 動
子(ボ ソ ン)の よ うに振 る舞 うが,遷 移 領 域 に お い て は 非調 和 効 果 が 大 き くな り, 次 第 に 回転 的 な励 起 準 位 に 移行 す る と考 え られ る.し た が っ て,非 調 和 効 果 の 微 視 的研 究 は,原 子 核 に お け る"相 転 移"の だ ろ う.そ の 鍵 を解 き明 か す た め,さ
ま ざ まな 試 み が な され て きた が,中
以 下 で 説 明 す る ボ ソ ン写 像 法(boson
mapping
つ で あ る.Belyaev-Zelevinski*45お に よ って,核
メカニ ズ ム を明 らか に す る鍵 で あ る
method)は
でも
最有 力の方 法の一
よびMarumori-Yamamura-Tokunaga*46
構 造 論 にボ ソ ン写 像 法 が は じめ て 導 入 され て 以 来,多
くの 人 た ち
に よっ て,そ の 理 論 構 造 の研 究 や 実 際 の 原 子 核へ の 応 用が 精 力 的 に行 わ れ た.*47 以 下 で は,簡 単 な模 型 を用 い て,ボ
ソ ン写 像 法 の基 本 的 な 考 え方 を 説 明 す る
こ とか らス ター トし よ う.
(a) SU(2)模
型 と その ボ ソ ン 写 像
最 も簡単 なボ ソ ン写 像法 の例 を示 す た め,2準
位 殻 模 型 を取
り上 げ よ う.フ ェル ミオ ンのN 粒 子 系 を 考 え る.い
ま図3.45
に示 す よ うに,同 一 の ス ピ ンj を 持 つ2つ *44 M
. Sakai,
*45 S
. T.
の 準 位 か ら 成 る単 Nucl.
Belyaev
and
Phys.
A
V.
G.
104
. Marumori, M. Yamamura *47 ボ ソ ン 写 像 全 般 に 関 し て は (1991)
375が
(1967)
and ,総
型 に お け る2つ
の1粒
子準位
けが 完 全 に 占有 され る.
301. Nucl. A.
合 報 告A.
参 考 に な る だ ろ う.
SU(2)模
フ リー の 基 底状 態 で は,準 位0だ
Zelevinski,
*46 T
63
図3.45
Phys.
Tokunaga, Klein
39
(1962)
Prog. and
E.
582.
Theor. R.
Marshalek,
Phys.
31 Rev.
(1964)
1009.
Mod.
Phys.
純 な 殻 模 型 を 考 え る.*48エ 位 をi=1と …
す る.し
,j-1,jで
はN=2Ω N個
ネ ル ギ ー の 低 い 準 位 を 準 位 番 号i=0と
た が っ て,上
下2本
の 準 位 は,そ
構 成 さ れ,2Ω=2j+1重 で あ る と す る.粒
の 粒 子 は 準 位i=0を
に 縮 退 し て い る.さ
位i=1は
い準
れ ぞ れm=-j,-j+1,
子 間 に 相 互 作 用 が な け れ ば,基
完 全 に 占 め,準
し,高
ら に系 の粒 子 数 底状 態においては
完 全 に 空 い て い る.こ
れ
を フ リ ー の 基 底 状 態 と 呼 ぶ.
さ て, す る.い 孔"演
を準 位i(=0ま
ま 準 位1に
算 子 を
た は1)に
お け る"粒 子"演 とす る.す
お け る粒 子 の 生 成,消
算 子 を
と し,準
位0に
滅演 算 子 と お け る"空
なわ ち
(3.429) と す る.フ
リ ー の 基 底 状 態│0〉 は
(3.430) を み た す こ とは 明 らか で あ るか ら,フ
リー の 基 底 状 態│0〉 は これ ら粒 子,空 孔
演 算 子 に対 す る"真 空"で あ る. 次 に 準 ス ピ ン 演 算 子(quasi-spin
operators)
S=(Sx,Sy,Sz)を
次 式 で 定 義
す る:*49
(3.431) ただ しnpお
よびnhは,そ
れ ぞ れ 準 位1に
お け る"粒 子"お よび 準 位0に
おけ
る"空 孔"の 個 数 演 算 子
(3.432) で あ る.こ Lie代
数(Lie
れ ら の 準 ス ピ ン 演 算 子 が,2次 algebra),す
元 特 殊 ユ ニ タ リ ー 群(SU(2)群)の
な わ ち角 運 動 量 の 交 換 関係
(3.433) *48 h =1と す る 単 位 を用 い る. *49 こ こ で 定 義 す る 準 ス ピ ン と1
.2.4で 扱 っ た 準 ス ピ ン と は,物
学 的 構 造 は ま っ た く 同 じ で あ る.
理 的 意 味 は 少 し 異 な るが,数
をみ た す こ と は容 易 に 確 か め られ る. 上 述 の 準 ス ピ ン演 算 子S+は で あ り,S-は
合 成 ス ピ ンがJ=0の
粒 子 ・空 孔対 の生 成 演 算 子
消 滅 演 算子 で あ る.粒 子 間 の 相 互 作 用 が 演 算 子S=(Sx,Sy,Sz)
の み で 表 され る よ うな 模 型 で は,系 の 物 理 的 に 意 味 の あ る状 態 は すべ てJ=0 の 粒 子 ・空 孔 対 で 記 述 され る.こ の よ う な模 型 をSU(2)模
型 と呼 ぶ.*50い ま
ハ ミル トニ ア ン を
(3.434) と す る.こ
こ で,ε
は2準
互 作 用 の 強 さ(実 定 数)で の1次
位 間 の エ ネ ル ギ ー 間 隔 で あ り,V1,V2お あ る.こ
の 系 に お い て は,固
結 合 で 表 さ れ る.つ
ル を 求 め る た め に は,ハ
よびV3は
有 状 態 は
ま り 系 の 正 し い 固 有 値,固
ミル トニ ア ンHFを
相
有ベ ク ト
部分 空間
(3.435) の 中 で 対 角 化 す れ ば よい.│n〉 は 規 格 直 交 性
をみ た す.準 ス ピ ン
演 算 子 の 行 列 要 素 は,
(3.436)
と表 さ れ る.こ れ らを 用 い れ ば ハ ミル トニ ア ンHFの
行 列 要 素 は容 易 に 書 き下
す こ とが で きる. さ て フ ェ ル ミ オ ン 部 分 空 間(3.435)に
対 応 す る イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間
(3.437) を導 入 し よ う.た だ しbは 交 換 関係
(3.438) *50 こ の 模 型 はLipkinら H.
J. Lipkin,
N.
に よ っ て 詳 し く調 べ ら れ た の で Meshkov
and
A.
J. Glick,
Nucl.
,Lipkin模 Phys.
62
型 と も 呼 ば れ て い る. (1965)
188.
を み た す ボ ソ ン 演 算 子 で あ り,│0)は
ボ ソ ン の 真 空 で あ る.今
ル ミ オ ン の 状 態 ベ ク トル を 表 し,│…)は す る.容
易 に わ か る よ う に,(3.436)式
(3.437)の
後,│…〉
は フェ
ボ ソ ンの 状 態 ベ ク トル を表 す こ と に の 行 列 要 素 は,イ
デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間
中で
(3.439)
と表 され る.こ れ は フ ェル ミオ ン演 算 子Sが
ボ ソ ン演 算 子 に
(3.440)
と 変 換(写
像:map)さ
Primakoff型
れ る こ と を 意 味 す る.こ
写 像(Holstein-Primakoff-type
ば し ばHP型(HP-type)と (3.440)式
mappimg)で
あ る.*51以
後,し
簡 略 表 示 され る.
のHP型
(3.434)は
の 型 の 写 像 がHolstein-
写 像 を 使 え ば,フ
ェ ル ミオ ン 空 間 で の ハ ミル トニ ア ン
ボ ソ ン 空 間 に 写 像 さ れ て,
(3.441) と 書 か れ る.こ
の ハ ミ ル ト ニ ア ン は エ ル ミ ー トで あ り,HP型
ユ ニ タ リ ー 変 換 で あ る こ と が わ か る.(3.440)ま を 展 開 す る と 無 限 級 数 と な る.し HP型
ボ ソ ン 展 開(boson
expansion)と
フ ェ ル ミ オ ン 部 分 空 間(3.435)か はHP型
た が っ て,こ
に 限 る わ け で は な い.も
た は(3.441)式
Holstein
and
H.
Primakoff,
Phys.
の平方根演算子
の 型 の ボ ソ ン 写 像 は,し
ば しば
呼 ば れ る.
ら イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間(3.437)へ う1つ
の 有 用 なDyson型
*51 磁 性 体 中 の ス ピ ン 波 の ボ ソ ン 表 現 の た め のHolsteinとPrimakoffに T.
写 像(3.440)が
Rev.
58 (1940)
1098.
の写像
写 像(Dyson-type よ る 考 案 に 由 来 す る
.
mapping)*52に れ る.こ
つ い て 述 べ よ う.こ
の 型 の 写 像 に お い て は,フ
〈n│と ケ ッ ト(ket)ベ ト ルL(n│と
れ は し ば し ばD型(D-type)と
簡略表示 さ
ェ ル ミ オ ン 部 分 空 間 の ブ ラ(bra)ベ
ク トル
ク ト ル│n〉 に 対 応 す る イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の ブ ラ ・ベ ク
ケ ッ ト ・ベ ク ト ル│n)Rを
(3.442) と 定 義 す る.こ
れ ら の ボ ソ ン 基 底 ベ ク トル は 双 規 格 直 交 性(biorthonormality)
L(n│n')R=δnn' をみ たす.HP型
とD型
の ボ ソ ン写 像 にお
(3.443)
フ ェル ミオ ン空 間
イデ アル ・ボ ソン空間
け る基 底 ベ ク トル の 対 応 関 係 が 図3.46に 示 され て い る. い ま 考 え て い るD型 に な る た め に は,フ
写像が 正 しい写像
ェ ル ミ オ ン 演 算 子S=
(a) (Sx,Sy,Sz)の
行 列 要 素(3.436)が,写
像 さ
れ た 演 算 子 の 双 直 交 基 底 ベ ク トル(3.442)
フェル ミオ ン空 間
イ デア ル・ボ ソ ン空 間
に よ る行 列 要 素 に 等 し くな らな け れ ば な ら な い.こ
れ を 実 現 す る に は,演
算 子Sの
写像 を
(b) 図3.46
(3.444)
フ ェ ル ミオ ン 空 間 と イデ ア ル ・ ボ ソ ン空 間 の 基 底 ベ ク トル の 対 応関係
(a) HP型
と す れ ば よ い.こ
ボ ソン 写像.(b) D型
ボ ソ ン写像.
れ に よ っ て フ ェ ル ミ オ ン 空 間 と イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に お け
る 行 列 表 示 が 等 し く な り,
(3.445)
*52 F
. J. Dyson,
Phys.
Rev.
102
(1956)
1217,
1230.
と な る.D型
ボ ソ ン 写 像(3.444)を
ニ ア ン(3 .434)は
用 い れ ば,フ
ボ ソ ン 空 間 に 写 像 さ れ て,D型
ェ ル ミオ ン 空 間 で の ハ ミル ト ボ ソ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン
(3.446) が 得 ら れ る.
D型 ボ ソ ン ・ハ ミル トニ ア ン(3.446)は,(3.441)式 簡単 で あ る.HP型
の 場 合 は(3.440)や(3.441)式
を展 開 す る と無 限級 数 とな るが,D型
のHP型
に比 べ てず っ と
に平 方 根 演 算 子 が 現 れ,そ れ
に お い て は(3.444)や(3.446)式
に有 限次 の 多 項 式 で あ るか らで あ る.い ま考 え て い るSU(2)模
は厳密
型 の よ うな簡 単
な模 型 に お い て は,平 方 根 演 算 子 の 中 に現 れ る の は 単 な るボ ソ ン の 個 数 演 算 子 b†bだ けで あ るか ら,平 方 根 演 算 子 を わ ざ わ ざ 展 開 す る必 要 は な く,そ の ま ま 厳 密 に扱 う こ とが 可 能 で あ り,し た が って,有 限 級 数 に な るD型 べ て 特 別 な 優位 性 は な い.し か し後 で 述 べ る よ うに,一 般 のHP型
がHP型
に比
の場 合 には,
平 方 根 演 算 子 を直 接 扱 う こ と は で きず,級 数 展 開せ ざ る を得 な い.こ の 点 にD 型 写 像 法 の 決 定 的優 位 性 が あ る. と こ ろ がD型
写 像 法 の 不 利 な 点 も あ る.た
と え ば,も
と も と の フ ェ ル ミオ
ン の 準 ス ピ ン 演 算 子 は エ ル ミ ー ト演 算 子 で あ り,(S-)†=S+を 確 か にHP型
写 像(3.440)で
保 た れ て い る が,D型
は((S-)HP)†=(S+)HPと
写 像(3.444)で
ト性 は 保 存 さ れ な い.つ
は ユ ニ タ リ ー 変 換 で は な い.そ ミ ー トで あ る が,D型
ボ ソ ン.ハ
な り,エ ル ミ ー ト性 は
は
ま りHP型
み た し て い た.
と な っ て エ ル ミー
写 像 は ユ ニ タ リ ー 変 換 で あ る が,D型
の 結 果,HP型
ボ ソ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン は エ ル
ミル ト ニ ア ン は エ ル ミ ー トで は な い.こ
た い へ ん 不 利 な 点 で あ る と 思 わ れ る.し
写像
か し,後
で 述 べ る よ う に,こ
れ は
の困難 は
避 け る こ と が で き る. さ て,上
述 のHP型
お け る"物
理"を
お よ びD型
う ア イデ ア に 基 づ い て い る.い ル ミ オ ン 空 間(3.435)の 元 数 はN+1で
ボ ソ ン 写 像 と もに,フ
イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 写 像 し て,よ
あ る.と
ソ ン の 数 に 制 限 は な い.し
ま扱 っ て い るSU(2)模
粒 子 数(=空
孔 数)はNで
ェ ル ミオ ン 部 分 空 間 に り容 易 に 取 り扱 お う と い 型 に お い て は,元
あ り,し
の フェ
たが って 空 間 の 次
こ ろ が イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間(3.437)に
お い て は,ボ
た が っ て イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の 次 元 数 は 無 限 大 で
あ る.す
な わ ち,イ デ ア ル ・ボ ソ ン空 間の 中 に は 元 の フ ェ ル ミオ ン 空 間の 基 底
ベ ク トル に 対 応 し な い状 態 が 無 数 に 含 まれ て い る こ と を 意 味 す る.つ ン空 間(3.437)に
お い て,n>Nの
ま りボ ソ
状 態 は 元 の フ ェル ミオ ン空 間(3.435)に
対
応 物 が な い.こ の よ うに,元 の フ ェル ミオ ン 空 間 に対 応物 が な い よ う なボ ソ ン の状 態 を非 物 理 的 状 態(unphysical
states)と 呼ぶ.一 般 にボ ソ ン写像 に お い て
は,元 に な る フ ェル ミオ ン空 間 よ りボ ソ ン空 間の 方 が は るか に大 きい.し たが っ て ボ ソ ン空 間 は必 ず 非 物 理 的 状 態 を 含 み,こ れ が 真 に 意 味 の あ る物 理 的状 態 に 混 じ る こ とに よ って 悪 い 影 響 を もた らす 可 能 性 が あ る.本 項 で 扱 ったSU(2)模 型 の よ うな 簡 単 な場 合 に は,非 物 理 的状 態 を取 り除 くた め には 単 にボ ソ ン 数 を と制 限す れ ば よい.し
か し,一 般 に は もっ と複 雑 な検 討 が 必 要 に な る.
こ の点 に つ い て は 後 で 再 び 議 論 す る で あ ろ う.
(b) 全 殻 模 型 空 間 に 対 す るボ ソ ン 写像 偶 数 粒 子 系 の 全 殻 模 型 空 間(フ ェ ル ミオ ン空 間)か ら イデ ア ル ・ボ ソ ン空 間へ の 写 像 を考 え よ う.詳 し くは付 録Cを
参 照 され た い.系 の 状 態 ベ ク トル は,
(3.447) と 表 さ れ る.偶
数 粒 子 系 の 全 殻 模 型 空 間 は,す
れ る フ ェ ル ミ オ ン 空 間{│m〉}で
あ る.一
方,イ
べ て の 可 能 な│m〉
に よっ て張 ら
デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間{│n)}は
(3.448) に よ っ て 張 られ る.ボ
ソ ン演 算 子
は,交 換 関 係
(3.449) を み た す も の と す る.
イデ アル ・ボ ソ ン空 間{│n)}の
中で,物
理 的 に意 味 の あ る状 態│m)は,フ
ェ
ル ミオ ンの 状 態│m〉 に対 応 して い な けれ ば な らな い の で,反 対 称 化 され た ボ ソ ン の状 態 ベ ク トル
(3.450) で 与 え られ る((C.4)式 る部 分 空 間{│m)}と
参 照).こ れ らの 反 対 称 化 され た 状 態 ベ ク トル で 張 られ
フ ェ ル ミオ ン空 間{│m〉}と
の 間 に は 完 全 に1対1対
応が
あ り,し
た が っ て イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の 中 の 部 分 空 間{│m)}は
間(physical
subspace)と
呼 ば れ,そ
subspace)と
呼 ば れ る.ま
た イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の 中 で,物
の 射 影 演 算 子Pは(C.10)式 全 殻 模 型 空 間(フ
はDyson
(D)型
HP型
れ 以 外 は 非 物 理 的 部 分 空 間(unphysical 理 的 部 分 空 間へ
で 定 義 さ れ る.
ェ ル ミ オ ン 空 間)か
法 が 有 力 で あ る.1つ
物理的部分空
ら イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 へ の2つ
はHolstein-Primakoff
(HP)型
ボ ソ ン 写 像,も
の写像 う1つ
ボ ソ ン 写 像 で あ る.
に お い て は,フ
ェル ミオ ン対 演 算 子 は
(3.451a) (3.451b) (3.451c) と 変 換 さ れ る.他
方,D型
に お い て は,
(3.452a) (3.452b) (3.452c) と な る.た
だ し 演 算 子A†,A,B†,ρ
は
(3.453) で 定 義 され る. フ ェ ル ミ オ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン をHと トニ ア ン を そ れ ぞ れHHPお
よ びHDと
に フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子a†,aの4次
し,HP型 す る.相
れ る.そ
互 作 用 ハ ミ ル トニ ア ン の よ う
れ ぞ れ を 上 記 の(3.451)ま
の ボ ソ ン 写 像 で 置 き 換 え る こ と に よ っ て,全 の 上 で,(C.15a)式
ボ ソ ン ・ハ ミル
形 式 で 書 か れ て い る よ う な 演 算 子 は,2つ
の フ ェ ル ミ オ ン の 対 演 算 子 の 積 で あ る か ら,そ (3.452)式
お よ びD型
たは
体 の ボ ソ ン写 像 が 得 ら
を 用 い れ ば,
(3.454)
の 形 に 書 く こ とが で き る.た
だ し,HHPはA†,A,ρ
な い.ま
の 積 で 書 か れ,Pを
た,HDはB†,b,ρ
か る よ う に,演
算 子A†,Aは
た が っ て,HHPは
含 ま
含 ま な い.(3.453)式
か らわ
を 含 む の で,こ
れ を級数
平 方根演算 子
展 開 す る と 無 限 級 数 に な る.し HDは
の 積 で 書 か れ,Pを
無 限 級 数 と な る.と
こ ろ が,
有 限 級 数(多 項 式)で あ る.
HP型
ボ ソ ン ・ハ ミル ト ニ ア ンHHPに
対 す るSchrodinger方
程式 を
(3.455) と す る.(C.34)式
を使 え ば
(3.456) が 得 られ る.し にPを D型
た が っ て,系
作 用 させ,0で
の 固 有 状 態 を 得 る た め に は,HHPの
な いP│Ψ
固 有 状 態│Ψ λ)
λ)を 求 め れ ば よ い.*53
に つ い て も 同 様 で あ る.
以 上 の 結 果 か ら,系 の 固 有 状 態 を 求 め る に はHHPま ル を求 め れ ば よい こ と に な るが,上 り扱 い が 困 難 で あ る の に 対 し,HDは C.5の 説 明 の 通 り,D型
た はHDの
述 の よ うに,HHPは
固有 ベ ク ト
無 限 級 数 で あ り,取
有 限 級 数 で 問題 は な い,し か も付 録Cの
ボ ソ ン写 像 にお け る左 右 の 固有 値 問 題 をHP型
値 問 題 に転 換 す る こ と もで きる の で,HP型
に比 べ てD型
の固有
ボ ソ ン写 像 法 が 圧 倒
的 に有 利 とな る.
(c) 集 団 的 部 分 空 間 に対 す るボ ソ ン 写像 前 項 で 述べ た よ うに,全 殻 模 型 空 間 に 対 す るボ ソ ン写 像 法 と し て は,理 論 的 に は確 か にD型
写 像が 有 利 で あ る け れ ど も,そ の ま まで は 実 際 的 に は ほ とん ど
実 用価 値が な い と い え る.な ぜ な らば,こ れ ら の ボ ソ ン写 像 は全 殻 模 型 空 間 を 忠 実 に イデ アル ・ボ ソ ン空 間 に写 像 し た もの で あ る か ら,ボ ソ ン空 間 で 取 り扱 い 可 能 な 問 題 は,当
然 も との フ ェ ル ミオ ン空 間 で 取 り扱 い 可 能 だ か らで あ る.ボ
ソ ン写 像 が 実 際 的 に 意 味 を 持 つ の は,全 殻 模 型 空 間 を写 像 す るの で は な く,目 標 と して い る集 団 運 動 の 自由 度 の 記 述 に必 要 な 全 殻 模 型 空 間 内 の 集 団 的 フ ェル *53 射 影 演 算 子Pは
ボ ソ ン の 無 限 級 数 で 表 さ れ る の で ,│Ψ λ)にPを
な い よ う に 思 わ れ る が,こ C35
(1987)
807.
れ に は う ま い 方 法 が 提 案 さ れ て い る:P.
作 用 させ るの は 容 易で S. Park,
Phys.
Rev.
ミ オ ン 部 分 空 間(collective
fermion
subspace:以
下CFSと
略)を
写像す る場
合 で あ る だ ろ う. 前 述 し たSU(2)模 にCFSを
型 の 場 合 のCFSは,部
ど の よ う に と れ ば よ い か は,考
関 わ る 問 題 で あ る が,当
面 はCFSは
分 空 間(3.435)で
あ っ た.一
般 的
え て い る多 体 系 の 集 団 運 動 の 本 質 に
与 え られ て い る も の と し よ う.た
と え ば,
4重 極 フ ォ ノ ン の 非 調 和 効 果 を 記 述 す る 空 間 と し て 最 も普 通 に 考 え ら れ るCFS, す な わ ち 単 純 な 多 フ ォ ノ ン 空 間(multi-phonon
space)
(3.457) を 考 え よ う.Nは ノ ン 演 算 子
フ ォ ノ ン の 最 大 数 で あ り,適 当 に 選 ぶ も の とす る.4重 は3.4.5で
述 べ た 準 粒 子Tamm-Dancoff近
が 最 低 で 最 も 集 団 性 の 強 い4重
極 フォ
似 で の エ ネ ルギ ー
極 フ ォ ノ ン ・モ ー ド が よ い だ ろ う.す
な わ ち,
(3.458) で あ る.こ の多 フ ォ ノ ン空 間が,集
団 的 部 分 空 間 と し て 十分 意 味 を持 つ とい う
こ とは,厳 密 解 が 求 まる 簡 単 なモ デ ル を用 い た分 析 で 確 か め られ て い る. CFS
(3.457)に
以 下CBSと
対 応 す る 集 団 的 ボ ソ ン 部 分 空 間(collective
boson
subspace:
略)は
(3.459) で あ る
は4重
極 ボ ソ ン の 生 成 演 算 子 で,交 換 関係
(3.460) を み た す も の と す る.
CFS
(3.457)か らCBS
間 にお け る完 全 に1対1対
(3.459)へ の 正 確 な 写 像 を定 義 す るた め に,双 方 の空 応 す る基 底 ベ ク トル を 導 入 し よ う.ま ず,CFSに
い て,行 列 要 素 が 化 す る よ うな 表 示 を と る.Nに
で あ る よ うな ノ ル ム行 列Nを
お
考 え,こ れ を対 角
対 す る固 有 値 方程 式 を
(3.461)
集 団 的 フ ェル ミオ ン 部分空間
集団的ボソン 部分空間
(CFS) 図3.47
(CBS)
集 団 的 フ ェ ル ミオ ン部 分 空 間(CFS)と
とす れ ば,固 有 値 が をa=a0で
集 団 的 ボ ソ ン部 分 空 間(CBS)と
で あ る こ と は容 易 に わ か る.特 にna=0の
表 す.固 有 解 の規 格 直 交 性 を
有 解 を 使 っ て,ベ
の対応
固有 解
とす る.こ れ らの 固
ク トル
(3.462) を 作 る と,こ
れ ら は 規 格 直 交 系 を 作 る.す
式 の ベ ク トル は
な わ ち
で あ る.(3.462)
に 対 し て の み 定 義 さ れ て い る.a=a0に
対 して は,
が0ベ
がCFSの
基 底 ベ ク トル とな る こ とが わ か っ た.こ れ に 対 応 す るCBSの
ク トル に な る こ と に注 意 す べ きで あ る.こ の よ うに して{│a》} 基底ベ
ク トル は
(3.463) で あ る.も
ち ろ ん,こ
れ ら は 規 格 直 交 性
こ こ で 注 目 す べ き は,CFSの CBSの
(3.457)よ
含 む こ とで あ る.こ
り広 い こ と を 意 味 す る(図3.47参
物 理 的 部 分 空 間 はCFSに1対1に の 非 物 理 的 部 分 を 取 り 除 い て, CBSに
基 底 ベ ク トル が
基 底 ベ ク トル{│a))}がa=a0を
の 方 がCFS
を み た す. で あ る の に 対 し, れ はCBS 照).CBSに
(3.459) おけ る
対 応 し て い な け れ ば な ら な い の で,a=a0 で な け れ ば な ら な い.す
な わ ち,
お け る 物 理 的 部 分 空 間 へ の 射 影 演 算 子Pは
(3.464)
で あ る.CFSか
らCBSへ
のHP型
写 像 演 算 子Uは
(3.465) と定 義 され る.他 方,D型
写像 は
(3.466) で 与 え ら れ る.付 トル を,U†2は
録CのC.3と
フ ェ ル ミオ ン 空 間 の ケ ッ ト ・ベ ク
ブ ラ ・ベ ク トル を ボ ソ ン 空 間 に 変 換 す る.U†U=1,UU†=P
で あ る か ら,HP型 D型
同 様 に,U1は
写 像 は エ ル ミー ト型 で あ る.他
方,U1≠U2で
あ る か ら,
写 像 は 非 エ ル ミー ト型 で あ る.
CFSに
お け る 任 意 の フ ェ ル ミオ ン 演 算 子OFは,こ
てCBS内
の ボ ソ ン 演 算 子OHPま
れ ら2種
類の写像 によっ
た はODに
(3.467a) (3.467b) と 変 換 さ れ る.
(d) Dyson型
ボ ソ ン写 像 法 の 応 用
上 述 の(3.467a)お
よ び(3.467b)式
に よ っ て,HP型
像 が 形 式 的 に は 完 成 し た こ と に な る.し OHPま
た はODの
要 素
か らわ か る よ う に,行
の 具 体 的 表 式 を 求 め な け れ ば な ら な い.こ
こ ろ が,こ
の ボ ソ ン写
際 に写 像 され た ボ ソ ン演 算 子
具 体 形 を 得 る た め に は,(3.467)式
空 間 の 行 列 要 素 で あ る か ら,正 る.と
か し,実
お よ びD型
列
れ は元 の フ ェ ル ミオ ン
確 に 計 算 す る こ と は 一 般 的 に は 困 難 な こ とで あ
こ で は 集 団 的 部 分 空 間 に 対 す る ボ ソ ン 写 像 を 考 え て い る か ら,
も と も との フ ェ ル ミオ ン 空 間 を 集 団 的 部 分 空 間 で 近 似 す る こ と が 意 味 を 持 つ と い う前 提 に 立 っ て い る.し
た が っ て,こ
的 取 り扱 い が 許 さ れ る で あ ろ う.そ approximation)あ *54 K K.
. Takada, Takada,
の 前 提 に ふ さ わ し い と思 わ れ る 適 当 な 近 似 こ で フ ォ ノ ン 切 断 近 似(phonon-truncation
る い は 閉 じ た 代 数 近 似(closed-algebra Nucl. T.
Phys.
Tamura
A439 and
(1985) S.
Tazaki,
approximation)*54
489. Phys.
Rev.
C31
(1985)
1948.
と呼 ば れ る近 似 法 を用 い る こ とに す る.こ れ は(3.458)式 ン演 算 子X2M,X†2Mお
よ び そ の 交 換 子
で 定 義 され る フ ォ ノ
が"閉 じ た代 数"を 形 成
す る よ うに 自 由度 を 強 制 的 に制 限す る とい う近 似 で あ る.す
なわ ち,交 換 関 係
(3.468) を仮 定 す る の で あ る.こ
こで 係 数CLは
(3.469)
で あ る.(3.468)式 が 現 れ るが,そ
の左 辺 の 交 換子 を忠 実 に計 算 す る と,X2Mに
比 例 しな い 項
れ ら を すべ て 無 視 す る のが フ ォ ノ ン切 断 近 似(あ る い は 閉 じた
代 数近 似)で あ る.こ の 近 似 を仮 定 す る と,行 列 要 素
を
(3.470) の 形 に 書 く こ とが で き る.こ ノ ル ム の 固 有 値nbが
れ を(3.467b)式
に 代 入 し,(3.461)式
を 用 い る と,
消 去 さ れ て,
(3.471) と な る.つ
ま り,D型
変 換 に お い て は,元 の フ ェ ル ミオ ン空 間 に お け る ノル ム
の情 報 は,変 換 後 のボ ソ ン 演算 子 に お い て は 完 全 に 消 去 され て い る.他 方,HP 型 変換 に お い て は そ の よ うな消 去 は起 こ らな い.こ の 点 がHP型
とD型
の写像
法 に お け る最 大 の 相 違 点 で あ る. (3.470)式 のfikは,具
体 的 なOFの
各 々の 場 合 に つ い て 計 算 し な けれ ば な ら
な いが,こ れ は難 し い こ とで は な く,一 般 にあ る簡 単 なボ ソ ン演 算 子(OF)Dの ボ ソ ン空 間 に お け る行 列 要 素 の 形 で 表 され る.す な わ ち
で
あ る.し た が っ て,変 換 後 の ボ ソ ン演 算 子ODは
(3.472)
と 書 くこ と が で き る.Pは ン 演 算 子(OF)Dは
物 理 的 部 分 空 間 へ の 射 影 演 算 子(3.464)で
フ ェ ル ミオ ン 演 算 子OFのDysonイ
あ る.ボ
メ ー ジ(Dyson
ソ
image)
と 呼 ば れ る. 1例
と し て,4重
極 フ ォ ノ ン 演 算 子 のDysonイ
メー ジ は
(3.473a) (3.473b) と な る.注
目 す べ き は,こ
れ ら の 式 か ら わ か る よ う に,Dysonイ
に ボ ソ ン 演 算 子 の 有 限 級 数 で 表 さ れ る こ と で あ る.な で あ る か ら,D型 一 方,HP型
メー ジ は 一 般
お,
写 像 が ユ ニ タ リ ー 型 で な い こ と が 明 ら か で あ る. の 場 合 に も,変
換後の演算子 は
(3.474) と 表 され る が,(3.467a)式 で,一
に お け る ノ ル ム の 固 有 値na,nbが
般 にHolstein-Primakoffイ
メ ー ジ(OF)HPは
消 去 され な い の
ボ ソ ン演 算 子 の 無 限 級 数
と な る. こ こ で は 簡 単 の た め,た
だ1種
ミ オ ン 部 分 空 間(CFS)を
考 え て き た が,4重
ノ ン(対 振 動)な り,そ
類 の4重
極 フ ォ ノ ンで 構 築 さ れ る 集 団 的 フ ェ ル 極 フ ォ ノ ン の み な ら ず,単
ど を含 む多 種 類 の フ ォ ノ ンの 場 合 に拡 張 す る こ と も容 易 で あ
の 場 合 のDysonイ
メ ー ジ を 具 体 的 に 書 き 下 す こ と も可 能 で あ る.*55ボ
ソ ン 写 像 法 を 実 際 の 原 子 核 の 集 団 運 動 の 分 析 に 応 用 す る 場 合,多 位(1粒
子 状 態)が
の 多 数 の1粒
と ら れ る の が 一 般 的 で,集
の ノ ル ム 行 列Nの
数 の1粒
団 的 フ ォ ノ ン演 算 子X†
子 状 態 が よ く混 じ っ た 演 算 子 で あ る.し
の フ ォ ノ ン の 場 合 で も,多 り,そ
極 フ ォ
た が っ て,た
子準
は これ ら とえ 多 種 類
フ ォノ ン空 間の フ ォ ノ ン数 を極 端 に大 き くし な い 限 固 有 値naが0に
方 程 式(3.461)がa=a0の
な る こ と は な い.す
解 を 持 つ こ と は な く,現
な わ ち,固
有値
実 的 な 原 子 核 に お い て は,
常に
(3.475) で あ る と 考 え て よ い. *55 最 も 一 般 的 な 表 式 はK れ て い る.
. Takada,
Prog.
Theor.
Phys.
Suppl.
141
(2001)
179に
与 え ら
(b)計 算 値
(a)実 験 値 図3.48
Geア
イ ソ トー プ の 低 い 励 起 状 態 の エ ネル ギ ー 準 位 の(a)実
と(b)Dyson型 説 明 が な か な か 困 難 な 励 起0+状 Nucl.
Phys.
448
(1986)
上 述 の よ う に,フ Dysonイ
態 を 割 合 う ま く 再 現 し て い る.K.
Takada
and
S. Tazaki,
56.
ォ ノ ン演 算 子 の み な らず す べ て の フ ェル ミオ ン対 演 算 子 の
メ ー ジ を 具 体 的 に 書 き下 す こ とが で き る の で,*55そ
ミ オ ン ・ハ ミ ル ト ニ ア ンHFに HDが
験 値,
ボ ソ ン写 像 法 に よる 計 算 値
代 入 す れ ばDyson型
の結 果 を フ ェル
ボ ソ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン
得 ら れ,
(3.476) の 形 に 表 さ れ,HFのDysonイ のDysonイ
メ ー ジ(HF)Dは
メ ー ジ(HF)Dは
非 エ ル ミ ー ト で あ る が,付
説 明 し た 方 法 を 用 い て,非 に 転 換 し て 解 け ば,エ
ボ ソ ン の 有 限 級 数 と な る.こ 録CのC.5に
おいて
エ ル ミ ー ト固 有 値 方 程 式 を エ ル ミ ー ト固 有 値 方 程 式
ネ ル ギ ー 固 有 値 お よ び 固 有 ベ ク トル が 求 め ら れ る.*56
こ の よ う に し て,Dyson型
ボ ソ ン 写 像 法 が 現 実 の 原 子 核 の 分 析 に応 用 可 能 と
な っ た.そ
図3.49に
の 例 が 図3.48と
る 集 団 的 フ ェ ル ミオ ン 部 分 空 間(CFS)と 極 フ ォ ノ ン(対 振 動 モ ー ド)に
*56 付 録CのC
.5で 解 説 し たD型
く ま で 近 似 で あ る.し Sato,
数 種 類 の4重
と も,元
にな
極 フ ォ ノ ンと単
の 例 か ら 見 て も,多
フ ォ ノ ン部 分 空 間 に対 す
ボ ソ ン 写 像 法 が 遷 移 領 域 核 の 分 析 に 有 用 で あ る こ とが わ か る.
方 程 式 へ 転 換 す る 方 法 は,集
M.
し て,複
の2例
よ っ て 構 築 さ れ る 多 フ ォ ノ ン 部 分 空 間 をDyson
型 ボ ソ ン 写 像 し た も の で あ る.こ るDyson型
示 さ れ て い る.こ
Y. R.
の 非 エ ル ミ ー ト固 有 値 方 程 式 をHP型
の エ ル ミ ー ト固 有 値
団 的 部 分 空 間 に 対 す る 写 像 の 場 合 は 厳 密 に は 成 り立 たず,あ
か し そ れ が 極 め て 良 い 近 似 で あ る こ と が 確 か め られ て い る.
Shimizu
and
K.
Takada,
Prog.
Theor.
Phys.
102 (1999)
287.
(a)実験 値 図3.49 い わ ゆ る2フ
(b)計算 値
114Cdの 低 励 起 エ ネ ル ギ ー準 位 の(a)実 ン写 像 法 に よる計 算値 ォ ノ ン 状 態 の 付 近 の 余 分 な0+状
態 が,4重
験 値,と(b)Dyson型
極 フ ォ ノ ン と と もに 対 振 動 フ ォ ノ
ン ・モ ー ド を 取 り 入 れ る こ と に よ っ て は じ め て 再 現 で き た.M. Theor.
Phys.
他 方,HP型 Tamura,
100
(1998)
581よ
ボソ
Sato
and
K.
Takada,
Prog.
り.
ボ ソ ン 写 像 法 を 現 実 の 原 子 核 の 分 析 に 応 用 し た 例 はKishimoto,
Sakamotoに
よ っ て な さ れ た.*57HP型
の 場 合 は,複
数種類の フォノ
ン を と る こ と が た い へ ん 困 難 で あ る.
(e) ま と め 上 述 し たボ ソ ン写 像 法 の 要 点 を ま とめ て お こ う: (1) 有 力 な2種 類 の ボ ソ ン写 像 法 の うち,Holstein-Primakoff
(HP)型
は変換
が ユ ニ タ リー型 で あ り,変 換 後 の ボ ソ ン ・ハ ミル トニ ア ン は エ ル ミー トで あ るが,無
限級 数 展 開 と な る.Dyson(D)型
は 変換 が 非 ユ ニ タ リー型 で,変
換 後 の ボ ソ ン ・ハ ミル トニ ア ンは エ ル ミー トで は な いが,有 (2) ボ ソ ン 写 像 法 を 実 際 の 問 題 に適 用 す る に は,フ 部 分 空 間 を写 像 す るの が 実 際 的で あ るが,多 す る場 合,HP型
限級 数 とな る.
ェ ル ミオ ン 空 間 内 の 集 団 的
種 類 の フ ォノ ン 自由 度 を考 慮
は 変 換 後 の ボ ソ ン演 算 子 が 無 限 級 数 展 開 と な る の で 困 難
で あ る.他 方,D型
で は この 困難 は 起 こ ら な い.
(3) D型 ボ ソ ン写 像 に お け る 非 エ ル ミー トの 固 有 値 方 程 式 は,(厳 密 に,あ るい は 極 め て 良 い 近 似 で)HP型 *57 T H.
. Kishimoto Sakamoto
and and
T. T.
Tamura, Kishimoto,
の エ ル ミー ト固 有 値 方 程 式 に 転 換 可 能 で あ る. Nucl. Nucl.
Phys. Phys.
A270 A486
(1976) (1988)
317. 1; A528
(1991)
73.
以 上 の 結 果 を 総 合 す る と,Dyson型
ボ ソ ン写 像 法 が 圧 倒 的 に有 利 で あ り,実
際 の 原 子 核 の 集 団 運 動 の微 視 的研 究 に 十 分 応 用 可 能 で あ る. 上 述 の ボ ソ ン写 像 法 は,す べ て偶 数粒 子 系 に 関 す る もので あ った.も
し これ
が 奇 数 粒 子 系 な ら,イ デ ア ル ・ボ ソ ン空 間 に写 像 で きな い余 分 の1粒 子 が 残 る. この 場 合 に は,ボ
ソ ン とは ま っ た く独 立 で 交 換 可 能 な1個
の イデ ア ル ・フェ ル
ミオ ン を付 加 し た イデ ア ル ・ボ ソ ン ・フ ェ ル ミオ ン空 間 に す れ ば よい こ とが わ か っ て い る.*58そ の場 合 で も,や は りDyson型
写 像 法 が 優 れ て い る.そ の 説
明 は紙 数 の 関 係 で 割 愛 す る.
3.4.9
相互作 用す るボソン模型
前 項3.4.8に て,原
お い て 述 べ た ボ ソ ン 写 像 法 と は ま っ た く異 な っ た 考 え 方 に 立 っ
子 核 の 集 団 運 動 を 取 り扱 うボ ソ ン模 型 がArimaとIachelloに
唱 され た.*59相
互 作 用 す る ボ ソ ン 模 型(interacting
で あ る.IBMは
そ の 提 唱 以 来,そ
論 争 の 渦 に 巻 き 込 み,燎
boson
れ に 賛 成 す る 者,疑
よ って 提
model),略
称IBM
問 視 す る 者 を,と
もに
原 の 火 の 如 く原 子 核 物 理 の 世 界 を 席 巻 し,理
論 ・実 験
を 問 わ ず こ の モ デ ル に 関 す る お び た だ し い 数 の 論 文 が 出 版 さ れ た.そ
れ ら は極
め て 多 岐 に わ た り,こ
こ で す べ て を 説 明 す る こ と は で き な い.こ
こで はIBMの
最 も 基 本 的 な 事 項 の み を 述 べ る こ と に す る.
(a) IBMの
構 成 要 素 とハ ミル トニ ア ン
IBMの
構 成 要 素 はsボ
lπ=0+の
ボ ソ ン で,そ
の ボ ソ ン で,そ
ソ ン とdボ
ソ ン で あ る.sボ
の 生 成 ・消 滅 演 算 子 をs†,sで
の 演 算 子 をd†μ,dμ で 表 す.添
数=-2,-1,0,1,2)で
ソ ン は ス ピ ン ・パ リ テ ィが
あ る.こ
表 す.dボ
ソ ン はlπ=2+
字 μ は ス ピ ン のz成
れ ら の 演 算 子 は,交
分(磁
換 関係
(3.477)
(その 他 の 交 換 子)=0 をみ た す もの とす る.IBMに
お い て は,す べ て の物 理 量 は これ らのsボ
dボ ソ ンで 構 成 され る もの と し,次 の2項 *58 T K. *59 A A.
. Tamura, Takada
Phys. and
K.
Rev. Yamada,
C28
(1983) Nucl.
. Arima
and
F.
Iachello,
Phys.
Arima
and
F.
Iachello,
Ann.
気 量子
ソンと
を基 本 的 な 仮 定 とす る:
2480. Phys. Rev.
Phys.
A462 Lett. 99
(1987) 35
(1975)
(1976)
253;
561. 1069. 111
(1978)
201;
123
(1979)
468.
(1) 1つ の 系(原 子 核)の
ボ ソ ン 数(sボ
ソ ン とdボ
ソ ン の 個 数 の 和)は
一定で
あ る. (2) 系 の ハ ミ ル トニ ア ン はs,dボ
ソ ン の1粒
子 エ ネ ル ギ ー と,ボ
ソ ン 間 の2体
相 互 作 用 を 含 む 回 転 不 変 な エ ル ミ ー ト演 算 子 で あ る. ボ ソ ン の 個 数 演 算 子 を
(3.478) とす る.ボ
ソ ン 数 が 良 い 量 子 数 で あ る こ とや,回
転 不 変 性 な ど を 考 慮 す る と,
最 も一 般 的 な形 の ハ ミル トニ ア ン は
(3.479) で あ る.た
だ し,∈ はsボ
で あ る.ま
た,
ソ ン とdボ
ソ ン の1粒
子 エ ネ ル ギ ー の 間 隔
で あ り,[…]LMは
を 意 味 す る.IBMに
お け る4重
角 運 動 量(LM)へ
の合 成
極演 算子は
(3.480) で 定 義 され る.し y,wの6通
た が っ て,IBMに
り とxと
(b) IBMの
含 まれ る 基 本 的 パ ラ メ ー タ ー は ∈,c0,c2,c4,
で あ る.
対称性
1群 の 演 算 子{Xa}が
交換 関係
(3.481) を み た す と き,{Xa}はLie代
数 を 作 る と い う.い
ま,{Xa}と
して 演 算 子
(3.482) を と る.た
だ し,ボ
ソ ン 演 算 子b†lはsボ
ン(l=2,m=-2,-1,0,1,2の5種
類)を
ソ ン(l=m=0の1種
類)とdボ
ま と め て 表 し た も の で あ る.こ
ソ れ ら
6×6=36個 き,演
の 演 算 子 は6次
算 子(3.482)は
元 ユ ニ タ リ ー 群U(6)のLie代
群U(6)の
生 成 子(generators)と
数 を 作 る.こ 呼 ば れ る.
あ る 群 の す べ て の 生 成 子 と 交 換 可 能 な 演 算 子 をCasimir演 erator)と
呼 ぶ.た
で あ る が,全 Casimir演
と え ば,回
転 群O(3)の
べ て と 交 換 す る か らL2は
た が っ て,系
子 と 交 換 可 能 で あ る な ら ば,そ
算 子(Casimir
op
生 成 子 は 角 運 動 量 の 演 算 子Lx,Ly,Lz
角 運 動 量L2はLx,Ly,Lzす 算 子 で あ る.し
の と
回転群の
の ハ ミ ル トニ ア ンが あ るCasimir演
のCasimir演
算
算 子 の 固有 値 は系 の 良 い 量 子 数 で
あ る. 群U(6)は
部 分 群U(5)を
含 む.さ
O(3)はO(2)を
含 む.こ
⊃O(3)⊃O(2)と
書 か れ る.系
連 鎖 のCasimir演 ら のGasimir演 IBMの
ら にU(5)はO(5)を,O(5)はO(3)を,
れ ら の 部 分 群 の 連 鎖(chain)はU(6)⊃U(5)⊃O(5)
算 子 の1次
の ハ ミ ル トニ ア ンHが,こ 結 合 で 書 か れ て い る な ら ば,系
の 固 有 状 態 は これ
算 子 の 固 有 値 で 分 類 ・指 定 さ れ る.
一般 的 な ハ ミル トニ ア ン(3.479)は
が っ て,い
の ような部分群 の
ま 考 え る べ きU(6)の
け れ ば な ら な い.U(6)の
回 転 不 変 性 を 仮 定 し て い る.し
部 分 群 の 連 鎖 に は 必 ず 回 転 群O(3)を
そ の よ う な 連 鎖 は3種
た
含 まな
類 あ る こ とが わ か っ て い る.そ
れ ら は 次 の と お りで あ る:
(3.483)
ハ ミ ル トニ ア ンHが
連 鎖(3.483)の
れ か の 部 分 群 のCasimir演 Casimir演
U(5)対
算 子 の1次
た は(Ⅱ)ま
結 合 な ら ば,固
算 子 の 固 有 値 の 関 数 と し て 書 か れ る.以
た は(Ⅲ)の
いず
有 エ ネル ギ ー は こ れ ら
下 で こ れ を 説 明 す る.
称性 の場合
ハ ミ ル トニ ア ンHが,(3.483)式 Casimir演 Hは
中 の(Ⅰ)ま
算 子 の1次
一 般 形(3.479)に
の 連 鎖(Ⅰ)の 部 分 群U(5),O(5),O(3)の
結 合 で 書 か れ る 場 合 で あ る.こ お い てw=y=0と
の 場 合 の ハ ミル トニ ア ン
置 い た も の で あ る.こ
の場 合 の エ ネ
ルギー固有値 は
(3.484)
図3.50 IBMに エ ネ ルギ ー準 位 の 実 験 値 とIBMに
110Cdの
おけ るU(5)対 称 性 の例 よ る 理論 値 の比 較.理 論 値 は(3 .484)式 の4個
の パ ラ メ ー タ ー の 値 を適 当 に選 ん だ もの.大 前 線20),共
と な る.た
立 出版(1988)よ
だ し,ndはdボ
塚 孝 治,"相
互 作 用 す るボ ソ ン模 型"(物 理 学 最
り.
ソ ン の 個 数,υ
は ボ ソ ン ・セ ニ ョ リ テ ィで2個
ボ ソ ン が 角 運 動 量0の
対 に 組 ん で い な い 個 数,nΔ
量0に
状 態 の 全 角 運 動 量,Mは
組 ん だ 数,Lは
c0,c2,c4で
が 角運動
分 で あ る.α,β,γ
称 性 を 持 つ と 考 え ら れ る 典 型 的 な 例 と し て,110Cdの
ネ ル ギ ー 準 位 の 実 験 値 とIBMに の 中 の4個
よ る 理 論 値 の 比 較 が 示 さ れ て い る.理
は
エ 論 値は
の パ ラ メ ー タ ー ∈,α,β,γの 値 を 適 当 に 選 ん だ も の で あ る.
図 中 の 括 弧 の 中 の 量 子 数 は(υ,nΔ)で
SU(3)対
そ のz成
ソ ン の3個
き ま る 定 数 で あ る.
図3.50にU(5)対
(3.484)式
はdボ
のd
あ る.
称 性の場 合
ハ ミ ル トニ ア ンHが,(3.483)式 演 算 子 の1次
の 連 鎖(Ⅱ)の
結 合 で 書 か れ る 場 合 で あ る.こ
部 分 群SU(3),O(3)のGasimir
の 場 合 の ハ ミル ト ニ ア ンHは
(3.485) と な る.た だ し,(Q・Q)は(3.480)の4重
極 演 算 子 に お い て,
と
置 い たQμ の 内 積(ス カ ラ ー 積)
(3.486)
156Gdの
図3.51 IBMに お け るSU(3)対 称 性 の例 エ ネル ギ ー 準 位 の実 験値 とIBMに よる 理 論 値 の 比較 .理 論 値 は(3.487)式
の パ ラ メ ー タ ー の 値 を適 当 に 選 ん だ もの.大 前 線20),共
立 出版(1988)よ
で あ り,(L・L)は
塚 孝 治,"相
の2個
互 作 用 す る ボ ソ ン模 型"(物 理 学 最
り.
演算子
の 内 積(ス カ ラ ー積)で あ る.κ,κ'
は相 互 作 用 の 強 さを 表 す 定 数 で あ る.こ の 場 合 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は,
(3.487) と な る.
SU(3)対 (L,M)で
称 性 の 場 合 の 固 有 状 態 は,SU(3)に 指 定 され る.す
な わ ち,(λ,μ)で1つ
ド 内 で 励 起 エ ネ ル ギ ー がL(L+1)則 図3.51にSU(3)対
の2個
のバ ン
よ る 理 論 値 の 比 較 が 示 さ れ て い る.理
エ 論値 は 中の
あ る.
称 性の場合
ハ ミル ト ニ ア ンHが,(3.483)式 Casimir演
の バ ン ド が 指 定 さ れ,そ
に 従 う"回 転 バ ン ド"を 作 る.
の パ ラ メ ー タ ー κ,κ'の 値 を 適 当 に 選 ん だ も の で あ る.図
括 弧 の 中 の 量 子 数 は(λ,μ)で
O(6)対
角運動量
称 性 を 持 つ と 考 え ら れ る 典 型 的 な 例 と し て,156Gdの
ネ ル ギ ー 準 位 の 実 験 値 とIBMに (3.487)式
特 有 の 量 子 数(λ,μ)と
算 子 の1次
の 連 鎖(Ⅲ)の
部 分 群O(6),O(5),O(3)の
結 合 で 書 か れ る 場 合 で あ る.こ
の場合のエ ネルギー固有
値 は,
(3.488)
図3.52 IBMに エ ネル ギ ー 準 位 の 実 験 値 とIBMに
118Ptの
お け るO(6)対 称性 の 例 よ る理 論 値 の 比 較 .理 論値 は(3.488)式
の パ ラ メー タ ー の値 を 適 当 に選 ん だ もの.大 前 線20),共
と な る.σ
立 出 版(1988)よ
はO(6)に
塚 孝 治,"相
の3個
互 作 用 す るボ ソ ン模 型"(物 理 学 最
り.
特 有 な 量 子 数 で あ り,〓,ν Δ はO(5)に
特 有 な量 子 数 で あ
る が 説 明 は 省 略 す る. 図3.52にO(6)対
称 性 を 持 つ と 考 え ら れ る 典 型 的 な 例 と し て,118Ptの
ネ ル ギ ー 準 位 の 実 験 値 とIBMに (3.488)式
の3個
よ る 理 論 値 の 比 較 が 示 さ れ て い る.理
の パ ラ メ ー タ ーA,
B, Cの
エ 論値 は
値 を 適 当 に 選 ん だ も の で あ る.図
中 の 括 弧 の 中 の 量 子 数 は(σ,ν Δ)で あ る.
IBMの が,現
基 本 的 対 称 性U(6)に
含 ま れ る3種
類 の 対 称 性,U(5),
形(振 動)核
に 相 当 し,SU(3)お
も ち ろ ん,こ
トル を,対
よ びO(6)対
称 性 は 変 形(回 転)核
れ ら は 理 想 的 な 場 合 に お け る 対 称 性 で あ っ て,こ
性 質 を 示 す 原 子 核 も 多 い.し
か し,Bohr-Mottelsonの
称 性 と い う 見 方 で 見 直 し,少
は,IBMのsボ
ソ ン とdボ
組 ん だ 核 子 対 で あ る と 考 え た.し
的"核
大 き な 功 績 で あ ろ う.次
Iachelloら
は こ れ を0+お
か し 殻 模 型 の 観 点 か ら見 る と,そ
に
よ び2+に の よ う な0+
の 中 の い か な る"集
ソ ン に 対 応 す る の か は 不 明 で あ る.*60ま
述 べ た ボ ソ ン 写 像 法 と,ど
れ らの中間的 な
集 団 模 型が 示 す ス ペ ク
組 む 可 能 な 核 子 対 は 極 め て 多 数 存 在 し,そ
子 対 がs,dボ
に 対 応 す る.
ソ ンが 原 子 核 内 の い か な る 実 体 を表 現 し て い るの
い う 点 に 興 味 が 持 た れ る.Arima,
お よ び2+に
O(6)
称性は球
数 の パ ラ メー ター を使 っ て 見事 に 整 理 ・
分 類 す る こ と が で き る こ と を 示 し た こ と は,IBMの
か,と
SU(3),
実 の 原 子 核 集 団 運 動 に 見 ら れ る こ とが 明 ら か に な っ た.U(5)対
た,3.4.8に
の よ う に 関 連 す る の か い ま だ 明 ら か で な い.今
団
おい て 後の
研 究 が 待 た れ る. 3.5 高 ス ピ ン 回 転 運 動
本 章 に お い て こ れ ま で に 述 べ て き た 原 子 核 の 集 団 運 動 は,主
と して 安 定 な 原
子 核 の 基 底 状 態 に 近 い 比 較 的 低 い 励 起 エ ネ ル ギ ー 領 域 に お け る も の で あ っ た. し た が っ て,扱 転 で あ り,状
っ て き た 変 形(回
態 の ス ピ ンIも
変 形"に
の と 考 え て き た.し
ス ピ ン 状 態"す
デ ー タ が 得 ら れ,ま
の 回 転 運 動 も,割
あ ま り大 き く な く,ま
大 き く な い(δ=0∼0.4)も 進 展 に よ っ て,"高
転)核
な わ ち"高
た 変 形 の 大 きさ もそれ ほ ど
か し な が ら,近
速 回 転 状 態"に
rotational
motion)を
年実験技 術の
関 す る 多 くの 実 験
た 高 速 回 転 状 態 に お い て 実 現 す る
つ い て の 情 報 も得 ら れ る よ う に な っ て き た.こ
運 動(high-spin
合 ゆ っ く りと し た 回
に も な る"巨
大
の よ うな高 ス ピ ン 回 転
調 べ る こ と に よ っ て,Bohr-Mottelson
に よ る独 立 粒 子 運 動 と集 団 運 動 の 統 一 と い う統 一 模 型 の 考 え 方 の 理 解 を よ り 一 層 深 か め る こ と が で き る で あ ろ う.本
節 で は,高
ス ピ ン 回転 運動 に 関 す る基 礎
的 な 部 分 に つ い て の み 簡 単 に 述 べ る こ と に す る.*61
3.5.1
液 滴 模 型 と殻 効 果 ―Strutinsky法
原 子 核 は,基 底 状 態 近 傍 の 低 い励 起 状 態 に お い て は,あ い る もの と考 え られ る.し か しな が ら,高
る一 定 の変 形 を して
ス ピ ン 回 転状 態 や 少 し高 い励 起 状 態
を 考 え る と き,基 底 状 態 の 近 くに お け る の と 同 じ変 形 度 を保 つ と は 限 ら な い. 独 立 粒 子 運 動 と集 団 運 動 と を統 一 的 に よ り深 く理 解 す る た め に は,独 立 粒 子 運 動 が 原 子 核 の 変 形 に ど の よ うな 影 響 を もた らす か を考 え,変 形 が 起 き る機 構 を 検 討 す る必 要 が あ る. 原 子 核 の1粒
子 状 態 を記 述 す る 最 も一 般 化 され た定 式 化 は,3.4.4で
Hartree-Fock-Bogoliubov *60 Janssenら
(HFB)法
はArima-Iachelloと
で あ る.近 年,Skyrme力*62と
は 独 立 に
唱 し た.D. Janssen, R. V. *61 本 節 の 多 く を ,清 水 良 文,"夏
Jolos
and
,ま
F.
の 学 校 講 義 録:高
Nucl.
Phys.
A224
ソ ン 模 型 を提 (1974)
Phys.
9 (1959)
A238
(1975)
力 と3体 615; 29.
力 と を 含 む.T. M.
Beiner,
H.
H. Flocard,
R.
93.
速 回 転 お よび 巨 大 変 形 の 極 限 状 態 に お け
る 原 子 核 構 造"(2000)に 負 っ て い る. *62 原 子 核 内 の 有 効 相 互 作 用 を 扱 い や す い 形 で 近 似 し た も の と 考 え ら れ る .δ 依 存 し,2体
呼ばれ る
っ た く 別 の 観 点 か らSU(6)ボ
Donau,
説 明した
Skyrme, N.
Van
Phil. Giai
Mag. and
P.
関 数 型 で 密 度 に
1 (1956) Quentin,
1043; Nucl.
Nucl. Phys.
有 効 相 互 作 用 を 用 い て,軸
対 称 な ど の 対 称 性 に 制 限 を付 け な いHFB計
算が可
能 に な り,核 図 表 上 の広 い 範 囲 に わ た る原 子 核 の 基 底 状 態 の性 質 を よ く再 現 す る こ と に成 功 して い る.こ の よ うなHFB計
算 が 原 子 核 の 変 形 な ど を理 解 す る
最 も正 統 的 な手 法 で あ る こ とに 間 違 い な いが,も しや す い 方 法 が,以
っ と直 観 的 で 本 質 を よ り理 解
下 で 述べ るStrutinsky法(Strutinsky
method)*63で
あ
る.*64 質 量 数Aの
原 子 核 の 全 エ ネ ル ギ ーEtot(A)を
べ た よ う に,Etot(A)は Weizsacker-Betheの
質 量 公 式(2.7)に
な わ ち 殻 補 正(shell
る と,全
の2.2で
model)す
correction)で
滴 模 型 の 値ELDMか
あ る.こ
述
なわ ち
よ っ て か な り よ く再 現 で き る が,閉
付 近 で は 結 合 エ ネ ル ギ ー が 大 き くな っ て,液 る.す
考 え る.第2章
大 局 的 に は 液 滴 模 型(liquid-drop
殻核
らず れ が 生 じ
の 殻 補 正 の 部 分 を δEshと
す
エ ネ ル ギ ーEtotは
(3.489) と表 され る. い ま全 エ ネル ギ ーEtotの な る とELDMは
変 形 度 依 存 性 を考 え よ う.多 くの 場 合 変 形 が 大 き く
単 調 に大 き くな る.こ れ は 主 と して,変 形 に よ る原 子 核 の 表 面
積 の 増 加 に と もな う表 面 エ ネル ギ ー の 増 加 に よる もの で あ る.し か し,殻 補 正 δEshは 単 調 に は 変 化 せ ず,複
雑 な殻 効 果(shell effect)が 現 れ る.こ の 効 果 は
系 を 構 成 す る1粒 子 準 位(厳 密 に はHFB理
論 の1準 粒 子 エ ネ ルギ ー)εiが 一 様
に 分 布 し て い な い こ とに よ る.図3.53に1粒 (a)は 一 様 分 布 の場 合,(b)は1粒 殻模 型 あ る い はHFB理
子 準 位 の模 式 図が 示 され て い る.
子 準 位 の分 布 に濃 淡 が あ る場 合 を示 して い る.
論 の 立 場 か ら は,系 の 全 エ ネ ルギ ー は
表 され る は ず で あ る.図3.53の(a)の
場 合 の よ うに1粒
て い る 場 合 に は,1粒 子 当 た りの エ ネ ル ギ ーEsh/Aは 質 量 数Aに 一定値 を示すが ,(b)の よ うに分 布 に濃 淡 が あ る場 合 に はFermiエ の 位 置 に よっ てEsh/Aが い て,
一 定 で な く,多 寡 が 生 じ る.つ
の と き はEsh/Aは
少 し小 さ く,
で
子準位 が一様分布 し よ らず ほぼ ネ ルギ ー εF
ま り(b)の
場 合にお
の と きに はEsh/Aは
少 し大 き くな る.こ の 凹 凸 こそ 殻 効 果 で あ る. *63 V
. M. Strutinsky, *64 本 項 の 内 容 の 多 Springer-Verlag
Nucl. く をP (1980),
Phys. . Ring Chap.
A95 and 2に
(1967) P.
420;
Schuck:
負 っ て い る.
A122
(1968)
The
Nuclear
1. Many-Body
Problem,
(a) 図3.53
(b)
原 子核 に おけ る1(準)粒 子 エ ネ ルギ ー準 位 の模 式 図
(a) 準 位 が 一様 に分 布 して い る場 合.(b) 準 位 の 分 布 に 濃 淡 が あ る 場 合.
図3.54に
単 純 な 軸 対 称4重
極 変 形 した 調 和 振 動 子 模 型 の1粒 子 準 位 が,変
形 パ ラ メ ー ター〓 の 関 数 と し て 示 され て い る.こ の 場 合 の 調 和 振 動 子 の 定 数 は
(3.490) と表 され る.も
ち ろ ん ωxωyωz=一
Nilsson模 型 で 使 わ れ た(3.179)式
定 で あ る.(上 の 変 形 パ ラ メ ー タ ー〓 と
の δと は 定 義 が 少 し異 な るが,数
ほ とん ど 同 じで あ る.)し た が っ て,楕 円 体 変 形 の 長 軸Rzと
短
の 比 は
で あ る.図3.54か
短 軸 とが 整 数 比 に な る 点 で,1粒
子 準 位 に ギ ャップ が 現 れ,大
値的 には
軸Rx=Ryと
らわ か る よ う に,長 軸 と きい 殻 効 果 が 生
じ る こ とが 予 想 され る.こ の よ うな殻 効 果 の 変 形 度 依 存 性 を 考 慮 して 全 エ ネ ル ギ ー を変 形 度〓 の 関 数 と し て模 式 的 に 表 し た ものが 図3.55で す よ うな 核 に お い て は,基 底 状 態 は 少 し変 形 し(〓=〓0の く変 形 し た準 安 定 な 状 態(〓=〓1の
あ る.本 図が 示
点),励 起 状 態 に大 き
点)が 見 出 され るで あ ろ う.後 で 述べ る よ う
に,長 軸 と短 軸 の 比 が2:1(〓=0.6)に
対 応 す る と思 わ れ る 巨 大 変 形 状 態 を実
際 の 実 験 結 果 に見 る こ とが で きる. さ て 準 位 密 度(level
density)をg(ε)と
の 間 の 準 位 数 をg(ε)dε
す る.す
なわ ちエ ネル ギ ーが
と す る と,
(3.491) と な る.こ
れ に よ りFermiエ
ネ ル ギ ー εFが き ま る.殻
模 型 にお け る 準 位 密 度
図3.54
軸 対 称4重
極 変 形 し た調 和 振 動子 模 型 に よる1粒
子 エ ネ ルギ ー 準 位
横 軸 εは 変形 パ ラ メー ター.上 部 の 横 軸 の 目盛 りは 回転 楕 円体 変 形 の長 軸Rzと との 比.
図3.55
あ る 系 の 全 エ ネ ル ギ ーEtotの
短 軸Rx=Ry
変形度
依存性の模式図 ELDMは
液 滴 模 型 に よ る値.δEshは
あ る.松 柳 研 一 他,"岩
波 講 座:原
殻補正で 子 核 の 理 論"
(1993) よ り.
9(ε)は
(3.492)
で あ り,系
の 全 エ ネ ル ギ ーEshは
(3.493) と書 か れ る. 上 記 の 準 位 密 度g(ε)は デ ル タ関 数 で 書 か れ て い る か ら,極 め て 特 異 性 の 高 い 関 数 で あ るが,仮
に εの 連 続 関 数 で 近 似 で き た と して も,単 調 増 加 関 数 とは
な らな い.な ぜ な らば,た 考 え る と,1粒
と えば1粒
子 ポ テ ン シ ャル と して調 和 振 動 子 模 型 を
子 準 位 は
のエ ネルギ ー 間隔 ご と に ま と
ま って 束 に な り((1.16)式 参 照),し た が っ てg(ε)はhω0を
周 期 に して 振 動 す
る と考 え ら れ るか ら で あ る.こ の と きの 準 位 密 度 の平 均 的 値 をg(ε)と し よ う. この 平 均 準 位 密 度 が 求 め られ る な らば,
(3.494) に よ っ て対 応 す る有 効Fermiエ
ネ ルギ ー εFが 得 られ,殻 模 型(あ る い はHFB
理 論)に よ る全 エ ネ ル ギ ー の 平 均 部 分Eshは
(3.495) と な る. この 平 均 部 分Eshが
核 の 全 エ ネルギ ー 中の 液 滴 模 型 で 再 現 され る部 分ELDM
に相 当 す る と考 え る と,(3.495)式
で 述 べ た 殻 補 正 δEshは
(3.496) で 与 え られ る こ とに な る.し たが って,Nilsson模
型 の よ うな変 形 殻 模 型 やHFB
理 論 に よ って 殻 補 正 δEshを 計 算 し,液 滴 模 型 に よるエ ネルギ ーELDMに る と系 の 全 エ ネ ル ギ ー (Nilsson模 型)を 用 い る場 合 に は,そ 欠 落 す る の で,BCS理
が 得 られ る.な お,変
加え
形殻模 型
の ま まで は 重 要 な対 相 関 に よ る殻 補 正が
論 を使 って δEpairを計 算 し,加 え な け れ ば な らな い.以
上 の 方 法 に よっ て,液 滴 模 型 に 殻 効 果 を 入 れ,全 エ ネ ル ギ ー の 変 形 依 存 性 な ど を 正 確 に算 定 で き る よ うに な り,原 子 核 の 巨 大 変 形 や 核 分 裂 を詳 し く研 究 で き る よ う に な った.
平 均 的 エ ネ ル ギ ーEshを
計 算 す る た め に は,平 均 準 位 密 度g(ε)が 必 要 で あ
る.こ の ため に は,(3.492)式 け て 平 均 化 す れ ば よい.す
の厳 密 な 準 位 密 度g(ε)に 適 当 な 重 み 関 数fを
か
な わ ち,
(3.497) で あ る.た
だ し
重 み 関 数fと
は 重 み 関 数fの
広 が り の 幅(width)で
し て ど の よ う な 関 数 が よ い か に つ い て は 種 々 検 討 さ れ,Gauss
関 数 に 適 当 な 多 項 式 を か け た も の を と る こ と が で き る,と な っ て い る.ま
た,重
が 必 要 で あ る.そ Strutinsky法
み 関 数fの
幅aの
い う こ とが 明 ら か に
取 り方 に よ っ て 結 果 が 変 化 し な い こ と
の よ う な 条 件 の 検 討 も な さ れ て い る.*65 を い くつ か の 実 際 の 原 子 核 に 適 用 し,全
の 関 数 と し て 計 算 し た も の が 図3.56に Nilsson模
あ る.
型 に よ る1粒
示 され て い る.こ
子 準 位 を 用 い て δEshを
取 り入 れ て δEpairを 計 算 し て い る.こ
エ ネ ル ギ ー を 変形 度 〓 れ ら の 図 に お い て は,
計 算 し,BCS理
れ ら の 図 か ら,原
論で対相 関を
子 核 の変 形 に殻 効 果 が
い か に 寄 与 す る か が 明 ら か で あ ろ う.
3.5.2
高スピ ン回転運動の概観
原 子 核 の 高 速(高 ス ピ ン)回 転 状 態 を調 べ る に は,原 子 核 へ 何 らか の 方 法で 大 きな 角 運 動 量 を持 ち込 まな け れ ば な ら な い.そ の 方 法 と して 重 イ オ ン 反応 が 用 い ら れ る.中 で も核 融 合 反 応 が 効 果 的 で あ る. た と え ば,標
的 核124Snに
融 合 反 応 を起 こ し て164Erが MeVの
加 速 した 入 射 核40Arを
衝 突 させ る と,両 者が 核
で き る.こ の と きの164Erは,エ
励 起 状 態 に あ り,一 般 に,高 速 に 回 転 し,大
ネルギ ーが 数10
きい ス ピ ン を持 っ て い る
不 安 定 な状 態 に あ る.こ の状 態 か ら数 個 の 核 子(特 に 中性 子)が 蒸 発 して エ ネ ル ギ ーが 持 ち 去 られ る.こ れ が 第1の
過 程 で あ る.こ の 過 程 で はエ ネル ギ ー は 下
が る け れ ど も,角 運 動 量 は あ ま り持 ち去 られ な い.そ の結 果,融 合核 は高 ス ピ ン を保 っ た ま ま励 起 エ ネ ルギ ー を下 げ るの で あ る.次 に 第2の 過程 とし て,γ 線 の 放 出 に よ る脱 励 起(deexcitation)が 別 され る.第1は *65 M V.
. Brack M.
and
Strutinsky
起 き る.こ の と きの 主 な γ線 は2種 類 に大
角 運 動 量 をほ とん ど 持 ち去 ら な い統 計 的E1遷 H.
C. and
Pauli, F.
Nucl. A.
Phys.
Ivanjuk,
A207 Nucl.
(1973) Phys.
255
401. (1975)
405.
移(ΔI=0,1)
図3.56
い く つ か の 原 子 核 に 対 す るNilsson-Strutinsky計
算 の 例
横 軸 は変 形 度〓.実 線 がEtot,破
線 が δEsh,一 点 鎖 線 が 対 相 関 か らの 殻 補 正 δEpair,点 線 は
液滴 模 型 の エ ネル ギ ーELDMで
あ る.清
水 良文,"夏
形 の極 限 状 態 に お け る原 子 核 構 造"(2000)よ
で あ り,第2は
角 運 動 量 を2h持
を状 態 の ス ピ ン とす る.hΔIは 一 般 に,あ
ピ ンIを 表 す.(E,I)平
移(ΔI=2)で
あ る.(hI
遷 移 の始 状 態 と終 状 態 の ス ピ ン差 で あ る.) 持 つ エ ネ ル ギ ー の最 も低 い 状 態 を
あ る.縦 軸 が 励 起 エ ネル ギ ーE,横
面 で イ ラ ス ト状 態 をIの
line)で あ る.こ の(E,I)平
る統 計 的E1遷
速 回転 お よび 巨 大 変
state)と 呼 ぶ.上 記 の 脱 励 起 の 過 程 を,(E,I)平
的 に表 し た もの が 図3.57で
ト線(yrast
ち去 る 回転 的E2遷
る角 運 動 量(ス ピ ン)の 値Ihを
イ ラス ト状 態(yrast
の 学 校 講 義 録:高
り.
面で模式
軸が 状態の ス
関数 として結んだ線が イラス
面 で 見 る と,上 述 の 第1の 脱 励 起 で あ
移 は 主 に縦 方 向 の 脱 励 起 で あ り,第2の
回 転 的E2遷
移 は イラ
ス ト線 に 沿 っ た横 方 向 の 脱 励 起 で あ る. い う まで も な く,イ ラス ト線 の 下 に は 原 子 核 の 状 態 は 存 在 しな い.逆 と,イ ラ ス ト状 態 とは(10∼20MeVと
にい う
い う よ うな)高 励 起 状 態 で あ る に もか か
図3.57 4nな
ど の 等 高 線 は4つ
の 統 計 的E1遷
典型的な γ遷移の模式図 の 中 性 子 を 放 出 し た後 の分 布 を 示す.縦
移 と イラ ス ト線 に 沿 っ た 回転 的E2遷
方向
移が 起 こ る.
わ らず,そ の 励 起 エ ネル ギ ー の す べ てが 回 転 運 動 に費 や され て い る よ うな 状 態 で あ る.し たが って,イ
ラ ス ト領 域 で は 原 子 核 の 内部 励 起 は ほ とん ど な く,こ
の意 味 で 基底 状 態 と 同様 に"冷 え た"温 度 の低 い状 態 で あ る と考 え られ る.す な わ ち,イ ラ ス ト領 域 で の 準 位 密 度 は 低 く,γ 遷 移 は 離 散 的 な ス ペ ク トル と して 観 測 され,こ れ に よ り原 子 核 の構 造 を詳 細 に 調べ る こ とが で きる と期 待 され る. そ れ で は重 イオ ン 反応 に よ って,原 子 核 に は ど れ だ け の 角 運 動 量 を 持 ち込 む こ とが で きる で あ ろ うか.原
子 核 が あ ま りに 高 速 に 回転 す る と,引
て核 分 裂 を起 こ し て し ま う.図3.58(a)に
回 転 す る液 滴 模 型 に よっ て 予 想 され
る原 子 核 の持 ち う る角 運 動 量 の 限 界 値 を示 す.こ の 図か ら は,
きち ぎ られ
の 中重 核 で
程 度 まで の 高 ス ピ ン状 態 が 存 在 で きる こ とが わか る.た だ し,3.5.1
で 見 た よ うに 液 滴 模 型 で 取 り入 れ られ な い 殻 効 果 も重 要 で あ り,こ の評 価 は お お よそ の 目安 と考 え るべ きで あ る.現 在 の と ころ,通 常 の 変 形 核 で は 程 度,後
で 述べ る 大 き な 変 形 を もつ超 変 形 核 で は
の
程度 の高 スピン状態
が 観 測 され て い る. 重 イ オ ン核 融 合 反 応 で は 角 運 動 量 だ け で な く,大 き な励 起 エ ネ ルギ ー も持 ち 込 まれ る.図3.58(b)に
は(E,I)平
面 上で 研 究 対 象 とな りう る高 速 回 転 状 態 の
存 在 領 域 が 示 され て い る.上 側 の 境 界 は 核 分 裂 に よ る もの で あ るが,下 界 は イ ラ ス ト線 で あ る.図 中 の 破 線 は 中性 子 分 離 エ ネル ギ ーSnで よ り上 で は 中性 子 放 出 を 起 こす.
側の境
あ り,こ れ
(a)
(b) 図3.58
(a) 回 転 す る液 滴 模 型 に よっ て 推 定 した 原 子 核 が 持 ち う る角 運 動 量 の 限 界 値.Bf=0お よ び8MeVの 曲 線 は,そ れぞ れ 核 分 裂 障 壁 が0, 8MeVと な る と き核 分 裂 を起 こす と仮 定 し た もの.S.
Cohen,
F. Plasil and
W.
J. Swiatecki,
Ann.
Phys.
(b) (E,I)平 面 上 で の 原 子 核 の 高 速 回 転 状 態 の 存 在 域.Sn(中 よ り上 で は 中 性 子 放 出 を 起 こ す.
典 型 的 な 高 ス ピ ン 回 転 状 態 を 示 す1例 3.59に
82 (1974)
557よ
り.
性子 分 離エ ネ ルギ ー)の 破 線
と し て,164Erの
励 起 ス ペ ク トル を 図
示 し て お こ う.
(a) 慣 性 モ ー メ ン トの 角 速 度 依 存 性,バ 図3.59に
示 し た164Erは,プ
ン ド交 差
ロ レ ー ト変 形 し た 典 型 的 な 回 転 核 で,基
底バ
ン ド や γ バ ン ド はI(I+1)則
に か な り近 い 回 転 バ ン ド を 示 し て い る.し
か し
他 の 多 く の 回 転 核 と 同様 に,そ
の イ ラ ス ト ・レ ベ ル を 見 る と 慣 性 モ ー メ ン ト は
必 ず し も 一 定 で は な く,ス か な り変 化 す る.こ
ピ ン や エ ネル ギ ーが 高 くな る に し たが って そ の 値 は
の よ うす は 慣 性 モ ー メ ン トを角 速 度 の 関 数 と して 見 る とわ
か りや す い.
い ま角 運動 量 をIhと
し,回 転 バ ン ドの エ ネル ギ ー をE(I)と
書 く.古 典 力 学
で は 回 転 角 θ と角 運 動 量 と は互 い に 正 準 共役 で あ り,し たが って 正 準 方 程 式 は
(3.498) と な る.現 実 のIは
離 散 的 で あ る か ら,上 式 のIに
え る と,実 験 値E(I)か 速 度 ω はIの
関 す る微 分 を差 分 で 置 き換
ら 回転 の 角 速 度 ω が 得 られ る.(3.498)式
関 数 と な るか ら,逆 に 角 運 動 量Ihは
に よっ て,角
角 速 度 ω の 関 数 で あ る.こ
図3.59 矢 印 はE2遷 い る.矢 O.
C.
A. 1417よ
W.
お け る 回転 バ ン ド構 造
だ し バ ン ド 間 の遷 移 の 矢 印 は 省 略 され て
印 の 側 の 数 字 はE2遷 Kistner,
C17(1978)
の と き,慣
16468Er96に
移 を 表 す.た
Sunyar
移 に よ る γ 線 の エ ネ ル ギ ー(keV). and
E.
der
Mateosian,
Phys.
Rev.
り.
性 モ ー メ ン トは
(3.499) と 定 義 さ れ,そ 164Erの
の 結 果,慣
性 モ ー メ ン トは 角 速 度 ω の 関 数 と な る.
イ ラ ス ト状 態 を 結 ん だE(I)か
ら(3.499)式
を用 い て 得 られ る慣 性
(b)
(a) 図3.60
(a)164Erに お け る イ ラ ス ト ・レベ ル の慣 性 モ ー メ ン トを 角 速 度 の 関数 と し て 描 い た もの. 図 中 の 実 験 値 の 側 の数 字 は ス ピ ンIを 表 す.I=16前 後 で 後 方歪 曲 現 象 が 見 られ る. (b)164Erの(E,I)平 差 が 起 こ っ て い る.
モ ー メ ン ト を,角
面 に お け る基 底 バ ン ド とsバ
間で バ ン ド交
速 度 の 関 数 と し て 描 い た も の が 図3.60(a)で
の あ た りで 角 速 度 がIの に 大 き く 変 化 す る.こ ば れ,プ
ン ド.I=14と16の
増 加 に 反 し て 減 少 す る た め,慣
あ る.I=14,16
性 モ ー メ ン トがS字
れ は 慣 性 モ ー メ ン トの 後 方 歪 曲(backbending)現
ロ レ ー ト型 変 形 核 に 系 統 的 に 見 られ る 現 象 で あ る.後
当 初 は た い へ ん 注 目 を 集 め た が,現 ド と は 内 部 状 態 が 少 し 異 な るsバ
在 で は 図3.60(b)に
示 す よ う に,基
ま り,164Erに
以 下 の イ ラ ス ト状 態 は 基 底 バ ン ド に 属 す る が,I=16か
象 と呼
方 歪 曲現 象 は発 見
ン ド*66と が バ ン ド交 差(band
こ す こ と に よ っ て 生 じ る と 考 え ら れ て い る.つ
型
底バ ン
crossing)を
起
お い て は,I=14
ら は イ ラ ス ト状 態 がs
バ ン ド に 乗 り移 る と い う こ と で あ る. 角 運 動 量Iが
大 き く な る と,Coriolis力((3.189)式
子 の 角 運 動 量 ベ ク トルjは alignment)と
呼 ぶ.上
参 照)の 作 用 に よ っ て,核
回 転 軸 方 向 に 整 列 し始 め る.こ れ を 回 転 整 列(rotation
記 の164Erのsバ
ン ド の 内 部 状 態 は,2個
の中性子が変
形 ポ テ ン シ ャ ル と 対 相 関 の 束 縛 を 脱 し て 回 転 整 列 し た も の と 考 え ら れ る.
*66 Stockholmの
グ ル ー プ に よ っ て 発 見 され た の でsバ
ン ド と呼 ば れ て い る .
(b) 変 形 の 型 と回 転 ス キ ー ム 原 子 核 に は さ まざ ま な励 起 モ ー ドが 存 在 す る.そ れ らの 中 の ど の 種 類 の モ ー ドが 高 ス ピ ン回 転 状 態 を構 成 して い るか とい う こ とが そ の 状 態 の 性 質 を きめ る. イラ ス ト状 態 の 近 傍(イ ラス ト領 域)の 高 ス ピ ン状 態 の 特 徴 は,系 の 角 運 動 量 を ど の種 類 の 励 起 モ ー ドが 担 っ て い るか に よっ て 分 類 す る こ とが で き る. 大 きい 角 運 動 量 を効 率 よ く生 成 す る励 起 モ ー ド と して,集 立粒 子 運 動 が 考 え られ る.3.4.7で
述 べ た よ うに,集
団 的 回転 運 動 と独
団 的 回転 運 動 は 平 均 ポ テ
ン シ ャル が 変 形 して 回 転 対 称 性が 破 れ た こ と に伴 っ て 発 生 す る 集 団 運 動 で あ る こ とを 思 い 起 こ そ う.し た が っ て,軸 対 称 変 形 の場 合,対 称 軸 の まわ りに集 団 的 回 転 運 動 は 起 こ りえ な い.他 方,独 立 粒 子 の 軌 道 運 動 は,対 称 軸 方 向の 成 分 が 大 きい か 小 さ いか に よ っ て,合 成 した 角 運 動 量 ベ ク トル の方 向 は 異 な っ て く る.つ
ま り集 団 的 回 転 運 動 と独 立粒 子 運 動 と を と もに 重 視 し な け れ ば な ら な い
高 ス ピ ン回 転 状 態 で は,基 底 状 態 の 場 合 と は違 っ て,変 形 を指 定 す る軸 の ほか に,回 転 の 方 向(す な わ ち全 角 運 動 量 ベ ク トル の 方 向)と い う新 た な軸 を考 慮 し な けれ ば な ら な い.高 ス ピ ン 回転 状 態 で は,こ れ らの 変 形 軸 と 回転 軸 とが ど の よ うな 方 向 に 向 い て い るか,そ
の 相 互 の 関係 が 重 要 に な る の で あ る.
い まわ れ わ れ は イ ラ ス ト領 域 の 高 ス ピ ン 回 転 運 動 を 考 え て い る.そ こ で は比較 的単 純 な回転 運動 が 期待 さ れ,回
転 軸 は 変 形 の 主 軸 と一 致 し て
い る で あ ろ う.通 常,回
転 軸 をx軸
とす る のが 習 慣 で あ る.一 般 に 高 ス ピ ン状 態 で は 非 軸 対 称 変 形(γ 変 形)が 起 こ り うる.変
形 の 形 の み を指 定 す
るた め に は
で 十分で
あ るが,変
形 の 形 と そ の と きの 回転
軸(x軸)と
を と もに 指 定 す る た め に
は
の 範 囲 の γの
値 を指 定す れ ば よい.図3.61に
楕円
体 に変 形 した 平均 ポ テ ン シャル の場 合 に起 こ りう る 回 転 ス キ ー ム(rotation schemes)が
示 され て い る.
図3.61
楕 円体 変形 し た 原 子 核 に お け る 回転 ス キ ー ム 回 転 軸 をx軸 と す る.
軸 対 称 の 変 形 の 場 合 に は,図3.61に 考 え ら れ る.γ=0°
お よ び-60°
図 示 す る よ う に4種 の 場 合 に は,回
類 の 回 転 ス キ ー ムが
転 軸 は 対 称 軸 と 垂 直 で あ り,
集 団 的 回 転 モ ー ド が 回 転 運 動 の ほ と ん ど す べ て を 担 っ て い る と 考 え られ る.こ れ を 集 団 的 回 転(collective
rotation)ス
キ ー ム と い う.γ=0°
お よ び-60°
の
対 称 軸 回 り の 回 転 状 態 は,そ
れ ぞ れ プ ロ レ ー ト型 お よ び オ ブ レ ー ト型 の 変 形 整
列(deformation-aligned)状
態 と も呼 ば れ る こ とが あ る.な
ぜ な ら ば,ほ
ど す べ て の 独 立 粒 子 モ ー ド は 変 形 ポ テ ン シ ャ ル に 束 縛 さ れ て お り,系
とん
の全 角運
動 量 は ほ と ん ど す べ て 集 団 的 回 転 運 動 に よ っ て 担 わ れ て い る か らで あ る. 他 方,γ=60° ら な い の で,系 る.こ
お よ び-120°
の 場 合 に は,対
の 回 転 運 動 は 主 と し て独 立粒 子 モ ー ドの み に よっ て 担 われ て い
れ を 非 集 団 的 回 転(non-collective
お よ び-120°
称 軸 の 回 りに 集 団 的 回転 は 起 こ
の 回 転 状 態 は,そ
整 列(rotation-aligned)状
rotation)ス
れ ぞ れ オ ブ レ ー ト型 お よび プ ロ レ ー ト型 の 回 転
態 と も 呼 ば れ る.こ
れ ら の 場 合,集
独 立 粒 子 モ ー ド が 対 相 関 の 束 縛 か ら 離 れ て 励 起 し,そ 回 転 軸 の 方 向 に 揃 え る(align)こ
キー ム と い う.γ=60°
団 的 回 転 が な く,
れ らの 各 々の 角 運 動 量 を
とに よ っ て 系 の 全 角 運 動 量 が 生 成 され る か ら
で あ る.
図3.62に
は これ ら2つ の 回
転 ス キー ム の スペ ク トルの 典 型 例 が 示 され て い る.右 側 の 集 団 的 回転 スキ ー ムが 規 則 的 なス ペ ク トルで あ るの に対 し,左 側 の 非集 団的 回転 スキ ー ム の スペ ク トル は不 規 則 で あ る.回 転 運 動 を担 うモ ー ドの 違 い に よって 極 め て大 きな定性 的違 いが 現 れ る こ とが わ か る. 古典 的剛 体 の 回転 運動 を考 え る と,与 え られ た 角運 動 量 の 下 で の 最 低 エ ネル ギ ー状 態(イ ラ ス ト状 態)は,最
も大 きな 慣 性
非集団的 回転 図3.62
非 集 団 的 回 転(左)と トルの 例
モ ー メ ン ト を 持 つ 主 軸 の ま わ りの 回 転 で あ る.こ た は γ=-60°
集 団的回転 集 団 的 回 転(右)の
の 描 像 に 基 づ く と,γ=0°
が 好 都 合 な 回 転 ス キ ー ム に な る.実
際,通
スペ ク
ま
常の変形核 の基底状
図3.63 矢 印 はE2遷 J.
F.
移 を 表 す.矢
Sharpy-Schafer,
波 講 座:原
れ たI(I+1)則 れ る.γ=0°
Prog.
子 核 の 理 論"(1993)に
態 近 傍 で は γ=0°
15266Dy86に
お け る励 起 ス ペ ク トル
印 の 側 の 数 字 はE2遷 Part.
Nucl.
移 に よ る γ 線 の エ ネ ル ギ ー(keV). Phys.
28(1992)
187;松
柳 研 一
他,"岩
よ る.
の プ ロ レ ー ト型 集 団 的 回 転 運 動 が 実 現 し て お り,よ く知 ら
に し た が い,強 いE2遷
移 で 結 ば れ た 回転 スペ ク トルが 観 測 さ
の場 合 の 典 型 的 な例 が 図3.59に
見 られ る.
しか しなが ら,現 実 には そ の よ うな ス ペ ク トル だ け で な く,核 種 に よって,エ
ネ ル ギ ー に よ って さ ま ざ まな ス ペ ク トル が 見 られ,近 似 的 に 軸 対 称 な 変 形 を も つ 上 記 の4つ
の 回 転 ス キ ー ムの す べ て に 相 当 す る現 象 が 観 測 され て い る.紙 数
の 関 係 で そ れ ら の例 をす べ て 図 示 す る こ と は で き な い の で,1つ 図3.63に152Dyの
励 起 ス ペ ク トル を示 す.こ
で あ り,低 励 起 イラ ス ト状 態 は2+フ れ るが,
だ け例 と して
の 核 は,基 底 状 態 近 傍 で は 球 形
ォノ ンの 多 フ ォ ノ ン状 態 で あ る と考 え ら
の イ ラ ス ト状 態 に な る とス ペ ク トル は不 規 則 に な り,明 ら
か に 独 立 粒 子 励 起 に よっ て 状 態 が 作 られ て い る こ と,す な わ ち 回転 整 列状 態 で あ る こ とが わ か る. この よ うな 非 集 団 的 回 転 スキ ー ムの 場 合 の 特 筆 す べ き特 徴 は,イ ラ ス ト状 態 に そ の 励 起 エ ネル ギ ー の 高 さ を考 えれ ば 驚 くべ き長 寿 命 の 異 性 体 状 態が 存 在 す る こ とで あ る.こ れ らは 高 ス ピ ン 異 性 体(high-spin モ ー メン トやg因
isomer)と
呼 ば れ,4重
極
子 な ど の 性 質 が よ く調 べ られ て い る.非 集 団 的 回 転 ス キ ー ム
の も う1つ の 特 徴 と して は,そ れ ぞ れ の状 態 は 不 規 則 で 互 い に 関係 が な い よ う に 見 え るが,平
均 と し て は 対 応 す る変 形 を持 っ た,(一 様 な 密 度 分 布 の)剛 体 の
慣 性 モ ー メ ン トに 対 応 した 回転 状 態(剛 体 的 回転)を 成 し て い る こ とで あ る. 図3.63の152Dyの
励 起 ス ペ ク トル にお い て,Iπ=22+か
ら60+に
もお よ
ぶ きれ い な 回 転バ ン ドが 見 られ る.こ れ は3.5.1で 述べ た 長軸 と短 軸 の 比 が2:1 (変形 度 が に相 当)の 回転 楕 円体 の 回転 状 態 で あ る と考 え られ る.こ の バ ン ドは"巨 大 変形"で あ る ため,バ ン ド内のE2遷 移 のB(E2)値 はWeisskopf単 位 の2660倍
に もお よび,超 変 形 回 転バ ン ド(super-deformed
rotational band)
と呼 ば れ て い る.
3.5.3 回 転 座 標 系 に お け る 粒 子 運 動 前 項3.5.2で で きるか,そ
概 観 し た高 ス ピ ン 回転 運 動 に 関 す る 実 験 事 実 をど の よ う に理 解 の 最 も基 礎 的 な 方 法 に つ い て 簡 単 に 述べ よ う.
(a) ク ラ ン ク し た 殻 模 型 い ま変 形 した1粒 子 ポ テ ン シ ャ ルが 変 形 の 主 軸 の 回 りで 角 速 度 ωrotで一 様 に 回 転 し て い る場 合 を考 え よ う.図3.61の
よ う に,回 転 軸 をx軸
に とることに
す る. 空 間 固 定 座 標 系 か ら回 転 して い るポ テ ンシ ャル に固 定 され た 回転 座 標 系 に 移 っ て 考 え るの が 便 利 で あ る.回 転 座 標 系 に お け るハ ミル トニ ア ンH',あ
るい は 平
均 場 近 似 の ハ ミ ル ト ニ ア ン(1粒
子 ハ ミル ト ニ ア ン)h'は
(3.500) と書 か れ る.1粒
子 ハ ミル トニ ア ンhdefと
ミル トニ ア ンhNilsson,あ た はh'の
第2項
し て は,た
と え ばNilsson模
る い は 超 伝 導 状 態 に あ る と き に はhBCSを
−hωrotJxは
ク ラ ン キ ン グ 項(cranking
term)と
型のハ
と る.H'ま 呼 ば れ,回
転
座 標 系 に 移 っ た た め に 現 れ たCoriolis力
お よび 遠 心 力 の ポ テ ンシ ャル か ら な っ
て い る.こ
間 固 定系 に お い て 一 様 に 回 転 し て い る
れ ら の ハ ミル ト ニ ア ン は,空
ハ ミ ル トニ ア ン に 関 す る 時 間 依 存Schrodinger方 変 換(3.411)に
程 式(3.410)を,ユ
よ っ て 回 転 座 標 系 に 変 換 し たSchrodinger方
れ る 時 間 に 依 存 し な い ハ ミ ル トニ ア ン そ の も の で あ る.し 系 に お け る1粒
子 状 態 は,時
ニ タ リー
程 式(3.412)に た が っ て,回
間 に 依 存 し な い 定 常 状 態 のSchrodinger方
現
転座 標 程式
(3.501) の 解 と し て 求 め る こ と が で き る. ク ラ ン キ ン グ 項 −hωrotJxは に 依 存 し な いSchrodinger方
別 の 見 方 を す る こ と もで き る.す
な わ ち,時
間
程 式
(3.502) は,拘 束 条 件
(3.503) を付 けた変分 問題
(3.504) と 同 等 で あ る.た
だ しIhは
ωrotは 拘 束 条 件(3.503)を
系 の 全 角 運 動 量 の 大 き さ で あ る.こ
の と き角 速 度
み た す よ う に き め ら れ るLagrangeの
未 定乗 数で
あ る. 回 転 系 で の 独 立 粒 子 運 動 は(3.501)式 法 を ク ラ ン ク し た 殻 模 型(cranked 系 で の エ ネ ル ギ ー 固 有 値e'(ωrot)を ダ イ ア グ ラ ム と 同 様 に,独
を 解 く こ と に よ っ て 得 ら れ る.こ
shell model,
CSM)と
ル ー シ ア ン(Routhian)と
呼 ぶ.ま
の方
た,回
転
い う.Nilsson
立粒 子 のル ーシ アンを角速 度 の関数 として描 いた
ル ー シ ア ン ・ダ イ ア グ ラ ム(Routhian diagram)は,集
団 的 回 転 に 対 し て独
立 粒 子 運 動 が ど の よ う に反 応 す るか を 示 し,た
いへ ん重 要な役 割 を果 た
す.図3.64に
そ の 一 例 を 示 す.こ
図 で は 変 形 し た1粒 ンhdefと
の
子 ハ ミ ル トニ ア
し てhNilssonが
と られ て お
り,対 相 関 の 効 果 が 取 り入 れ ら れ て い な い の で,具 hBCSに
体 的 に解析 す る場 合 に は
し な け れ ば な ら な い.ま
こ の 図 で は 実 線,点
線,破
線,一
た, 点鎖
線 に よ っ て 独 立 粒 子 状 態 の パ リ テ ィや シ グ ネ チ ャ ー(signature)と
い った 重
要 な 量 子 数 を 表 し て い る が,こ
れ らの
図3.64
回 転 系 で の 中性 子 に 対 す る 独 立 粒 子 エ ネ ル ギ ー を 角 速 度 の 関 数 と して 示 す
量 子 数 に つ い て の 説 明 は 省 略 す る.
4重 極 変 形 度 は ∈2=0.26,16重
ク ラ ン ク し た 殻 模 型(CSM)の 重 要 な 応 用 例 は,対
最 も
称軸に垂直な軸の
0.01,γ=0で164Er近 清 水 良文,"夏
極 変 形 度 は ∈4=
傍 の 原 子 核 に 対 応す る.
の学 校 講 義 録:高 速 回 転 お よび 巨大
変形 の 極 限状 態 に お け る原 子核 構 造"(2000)よ
り.
回 りに 回 転 す る 集 団 的 回転 ス キ ー ム に
従 う原子 核 の イラ ス ト領 域 の 回 転 ス ペ ク トル で あ る.基 底 状 態 近 傍 の あ ま り高 ス ピ ンで な い 基 底 状 態 回転 バ ン ド(基 底 バ ン ド)の 性 質 は 慣 性 モ ー メン トJに よって き まる.3.4.6に 求 め る に は,ク
お い て 詳 し く述 べ た よ うに,慣 性 モ ー メ ン トを微 視 的 に
ラ ンキ ン グ公 式 が 最 も一 般 的 で あ る.最 初 に提 案 され たInglis
の ク ラ ンキ ング 公 式(3.419)に ン グ公 式(3.420)に
対 相 関 の 効 果 を取 り入 れ たBelyaevの
クランキ
よ っ て,実 験結 果が よ く再 現 され る こ と はす で に 述 べ た.
しか し なが ら,高 ス ピ ン に な る に した が って,す な わ ち回 転 の 角 速 度 ωrotが 大 き くな る に したが って,回 転 系 に お け る特 定 の1粒 子 状 態 のエ ネ ルギ ー(ル ー シ ア ン)が 下 が り,2個
の 準 粒 子 が こ の1粒
子 状 態 を 占 め る ほ うが エ ネル ギ ー
的 に 有 利 と な っ て 回 転 バ ン ド の 内 部 構造 の 変 化 が 起 こ る.こ の よ う な準 粒 子 の 励 起 を 回 転 整 列(rotational
alignement)と
呼 ぶ.な ぜ な らば,そ れ まで 変 形
軸 の 方 向 に束 縛 され て い た 準 粒 子 の 角 運 動 量が 回転 軸 方 向へ 整 列 す る こ とに 対 応 して い る か らで あ る.こ れ が 図3.60に
示 し たバ ン ド交 差 現 象 で あ り,慣 性
モ ー メ ン トの 後 方 歪 曲現 象 で あ る.こ の よ う なバ ン ド交 差 現 象 は基 底 バ ン ド だ
けで は な く,励 起 回転 バ ン ドに お い て も系 統 的 に 観 測 され て お り,CSMに
より
そ の 機構 が 理 解 され て い る.
(b) 非 集 団 的 回 転 ス キ ー ム の 場 合,そ
の他
ク ラ ン ク した 殻 模 型(CSM)は,対 称 軸 回 りに 回 転 す る非 集 団 的 回転 ス キ ー ム の場 合 に も応 用 可 能 で あ り,前 項 と ま っ た く同様 にCSMの 準粒子 ルーシア ン を考 え る こ とが で きる.し か しなが ら,こ の と きの 角 速 度 ωrotの 意 味 に は 若 干 の 違 い が あ り,注 意 が 必 要 で あ る.非 集 団 的 回 転 ス キ ー ム の 場 合 に は,集 団 的 回転 が な い の で 変 形 ポ テ ン シ ャルが 角 速 度 ωrotで 回転 し て い る と考 え る こ と は で き な い か らで あ る.こ の 場 合 の ωrotは,(3.502)∼(3.504)式 うに,回 転 軸 方 向 に 角 運 動 量 を生 成 す る た め のLagrange未 た す もの と考 え れ ば よい.こ の よ うに解 釈 して,CSMの
で述べ た よ
定乗数の役割 を果
準 粒 子 ル ー シ ア ン を計
算 し,具 体 的 な 原 子 核 に応 用 して 非 集 団 的 回 転 ス キ ー ム の解 析 が な され て い る. こ こ まで の議 論 で は,高 ス ピ ン状 態 で の 原 子 核 の 変 形 が ど の よ うに きま る か につ い て は論 じな い で,あ が ら,3.5.1で
らか じめ 形 を 仮 定 して 議 論 を行 って き た.し か しな
述 べ た よ う に,核 変 形 は独 立 粒 子 軌 道 の 殻 効 果 に 強 く依 存 す る.
この 殻 効 果 を評 価 す る方 法 がStrutinsky法
で あ っ た.し た が って,イ
域 で の 変 形 を 自 己無 撞 着 的 に求 め る た め に は,Strutinsky法 模 型 の 場 合 に 拡 張 す れ ば よい.す
な わ ち,ク
を ク ラ ン ク した 殻
ラ ン ク し たStrutinsky法
実 際 に その よ うな 方 法 を応 用 し て,た とえ ば 図3.63に
ラス ト領
で あ る.
示 し た よ うな球 形 多 フ ォ
ノ ン ・バ ン ド,小 さ くプ ロ レ ー ト型 変 形 し た 集 団 的 回 転 バ ン ド,オ ブ レ ー ト型 変 形 の 非 集 団 的 回 転 スキ ー ム,さ に 説 明 で き る こ とが 示 され,高
ら にプ ロ レ ー ト型 超 変 形 回 転 バ ン ドが 合 理 的
ス ピ ン 回 転 運 動 の 統 一 的 理 解 が 得 られ る に至 っ
て い る.
3.6 巨
大
共
鳴
こ こ まで に議 論 して き た原 子 核 に お け る 集 団 運 動 は,特 に 集 団 性 の 強 い低 励 起 状 態(そ の 典 型 は 偶 々球 形 核 の2+フ
ォノ ン励 起 状 態 や 変 形 核 の 集 団 的 回 転
状 態 な ど)で あ っ た.は た して こ の よ うな低 励 起 集 団 運 動 状 態 だ け が 原 子 核 の 集 団 運 動 な の だ ろ うか.
図3.65 実 線 はBreit-Wignerの 4.2MeVと Vol. Ⅱ
と ら れ て い る.A. (1969),
Chap.
偶 々 核 の 第1励
197Auに
よ る光 吸 収 反 応 の 断 面 積
共 鳴 公 式(3.507)の
6よ
起2+状
Bohr
and
B.
値 を 示 す.た R.
Mottelson,
だ し,Eres=13.9MeV,Γ= Nuclear
Structure,
Benjamin,
り.
態(2+1)の
励 起 エ ネ ル ギ ーE2+1の
実 験 値 は 図3.2に
示 され て い る.一 方,E2+ 1を 流 体(液 滴)模 型 で 見 積 もっ たhω2を1/5倍 した ものが 同 じ 図 に 実 線 で 示 され て い る.こ れ らを 比べ る と,大 雑 把 に い え ば 質 量 数依 存 性 は 再 現 され て い る とい え な くは な い.し か し全 体 的 に流 体(液 滴)模 型 が 実験 値 を よ く再 現 して い る とは い い難 い.特 に,E2+
1の 殻 構 造 依 存 性 は,流 体(液 滴)模 型 に よっ て は ま っ た く説 明 で きな い こ とが 明 らか で あ る. また,実 験 的 に は2+1状
態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー と,基 底 状 態0+1へ の 換算 遷 移
確 率 との 間 に は 強 い相 関が あ って,質 量 数 の 広 い 範 囲 に わ た っ て
(3.505) が よ く成 り立 つ こ とが 知 ら れ て い る.*67流 体(液 滴)模 型 で は,B(E2;2+1→0+1) は(3.53)式
で 表 さ れ る か ら,(3.505)式
に 対 応 す る 量 は,液
滴 模 型 で は(3.12)
式 を考 慮 す れ ば
(3.506) と な っ て,両 者 の 質 量 数 依 存 性 が 異 な る. これ ら を総 合 的 に考 慮 す る と,液 滴 模 型 はBohr-Mottelsonの
集団模型の ア
イデ ア の 出 発 点 に な った と は い え,こ れ をそ の ま ま適 用 し て特 に 集 団 性 の 強 い *67 L
. Grodzins,
Phys.
Lett.
2(1962)
88.
2+低 励 起 集 団 運動 状 態 を理 解 す るの は 無 理 で あ ろ う.そ れ で は 原子 核 に は 流 体 (液 滴)模 型 が もっ と うま く当 て は ま る よ う な集 団運 動 は 存 在 し な いの で あ ろ う か?そ
の よ うな 集 団 運 動 こ そ,以 下 で 述 べ る 巨 大 共 鳴(giant
resonance)で
あ
る と考 え られ て い る. 巨 大 共 鳴 は 高 い 連 続 エ ネ ル ギ ー 状 態 の 中 に 見 出 さ れ る 集 団 的 励 起 状 態 で あ る. そ の1例
と し て,図3.65に197Auに
双 極 共 鳴(giant
dipole
よ る光 吸 収 反 応 の 断 面 積 に見 られ る 巨 大
resonance; Iπ=1-,T=1)が
巨 大 共 鳴 の 励 起 断 面 積 σ(E)はBreit-Wignerの
示 さ れ て い る. 共 鳴 公 式 に よ っ て,
(3.507) と 表 さ れ る.こ
こ でEresは
共 鳴 エ ネ ル ギ ー(resonance
大 共 鳴 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー で あ り,Γ 巨 大 共 鳴 状 態 の 励 起 エ ネ ル ギ ー は,粒 ギ ー 状 態 で あ る か ら,時
energy),す
は 共 鳴 幅(resonance
なわ ち巨
width)で
あ る.
子 放 出の し きい値 よ りも高 い 連 続 エ ネ ル
間 と と も に 崩 壊 す る.こ
の と き の 寿 命〓
と共 鳴 幅Γ
と
の 間には
(3.508) の 関係 が あ る. 上 記 の 巨 大 双 極 共 鳴 は 最 も古 くか ら知 られ た 典 型 的 な 巨 大 共 鳴 で あ り,多 く の原 子 核 で 観 測 され て い る.そ れ らの 共 鳴 エ ネ ル ギ ーE(1-)は,大
雑把 に実
験式
(3.509) で表 され る(図3.66参 弾 性 散 乱 や,荷
照).巨 大 双 極 共 鳴 の ほか に,さ まざ まな粒 子 を用 い た 非
電 交 換 反 応 な ど に よ り,種 々 の 巨 大 共 鳴 が 見 つ か っ て い る.こ
れ ら につ い て は 後 で 概 観 す る(表3.2(p.285)参
3.6.1 和
照).
則
原 子 核 に お け る集 団 運 動 の 全 体像 を 理 解 す るた め に,和 則 は た いへ ん 重 要 な 役 割 を は た す.以 下 で こ れ につ い て 説 明 し よ う. い ま系 の基 底 状 態│0〉 に作 用 して,1粒 状 態)を 作 り出 す エ ル ミー トの1粒
子1空
孔 励 起 状 態(た とえ ば 巨 大 共 鳴
子 演 算 子Fを
応 に よ り核 を 励 起 させ る場 合 に は,1粒
考 え る.原 子 核 の 光 吸 収 反
子 演 算 子Fは
電 磁 的 な外 場 で あ る.こ
図3.66
さ まざ まの 原 子 核 の 巨 大 双極 共 鳴 の共 鳴エ ネ ルギ ー
横 軸 は 質 量 数A.実
線 は 実 験 式(3.509)の
Nuclear
Benjamin,
Structure,
の1粒 子 演 算 子Fに
Vol.
値 を 示 す.A.
Ⅱ (1969),
関 す る和 則(sum
Chap.
Bohr 6よ
and
B.
R.
Mottelson,
り.
rule)は
(3.510) で 与 え られ る.こ
こで,状
態│n〉 は 系 の ハ ミル トニ ア ンHの
固 有 状 態 で あ り,
そ れ ら は完 全 系 を作 る もの と し,そ の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 をEnと は1粒
子 演 算 子Fに
す る.Sk(F)
よ る励 起 強 度 関 数
(3.511) の κ次 の モ ー メ ン ト
(3.512) で あ る.{│n〉}の
完 全 性 を 用 い れ ば,
(3.513) と 書 か れ る.
さて,演 算 子Fに
よ って 励 起 され る状 態 の"エ ネル ギ ー"
(3.514) を 考 え る.kの
い ろ い ろ な 値 に 対 す る こ の"エ
数 の さ ま ざ ま な 情 報 が 得 ら れ る.も
ネ ル ギ ー"に
よ っ て,励
し あ る エ ネ ル ギ ー の 値 の1点
起強度関
に鋭 い ピ ー ク
が あ る と き に は,す
べ て のkに
対 す るεk(F)は
そ の ピ ー ク の 点 のエ ネ ルギ ー に
一 致 す る.
た とえ ば
(3.515) を適 当 な 模 型 を用 い て 見 積 も る こ とが で きれ ば,演 算 子Fに
よっ て 励 起 され
る状 態 の 平 均 の励 起 エ ネル ギ ーが 得 られ る.そ の 結 果 を実 験 値 と比 べ る こ と に よっ て,そ の 模 型が 正 当 で あ る か 否 か を判 断 す る こ とが で きる.
(a) 双 極 共鳴 の 場 合 の 和 則 前 に述 べ た原 子 核 に よる 光 吸 収 反 応 に お け る ア イ ソベ ク トル 型(T=1)巨
大
双 極 共 鳴 の場 合 の 和 則 につ い て 検 討 し よ う. 電磁 場(光)が 原 子 核 へ 及 ぼ す外 場 は 荷 電 を持 つ 陽 子 だ け に作 用 す るの で,い まの 場 合,双
極 共 鳴 状 態を 生 成 す る双 極 子 演 算 子F(E1)は
(3.516) と 書 か れ る.た
だ し
(陽 子 の と き) (3.517)
(中性 子 の と き) で あ る.(3.516)式
を
(3.518) と書 き直 す と,右 辺 の 第1項 例 す る.つ
ま り外 場F(E1)の
は Σiziに 比 例 し,こ れ は 系 の 重 心 のz座 標 に比 中 の こ の 項 は 系 の 重 心 運 動 を励 起 す る け れ ど も,
内 部 励 起 は 起 こ さな い.わ れ わ れ の興 味 が あ る の は 原 子 核 の 内 部 励 起 で あ るか ら,以 後 この 項 を無 視 し,
(3.519) と す る.
(3.519)式
の 演 算 子 に よ るk=1の
H=T+Vに
お い てVが
和 則 値S1(E1)は,系
の ハ ミル トニ ア ン
座 標 の み の 関 数 で あ る と す る な ら ば,
(3.520) とな るか ら容 易 に計 算 す る こ とが で き て,結 果 は
(3.521) と な る.*68Mは
核 子 の 質 量 で あ る.一
の 励 起 エ ネ ル ギ ー ε1(E1)を ば な ら な い が,こ
方,(3.515)式
に よっ て 双 極 共 鳴 の 平均
見 積 も る た め に は,和
則S-1(E1)を
の た め に は 少 し 工 夫 が 必 要 で あ る.*69ま
計 算 し なけ れ
ず和則
(3.522) の物 理 的 意 味 を 考 え て み よ う.た だ しFは
双 極 子 演 算 子(3.519)で
偶 々核 を 考 え,そ の基 底 状 態│0〉の ス ピ ン ・パ リテ ィを0+と 光 を当 て,外 場F(E1)を を加 え る と,1次
あ る.い ま
す る.こ の 原 子核 に
作 用 させ る.す な わ ち摂 動 ハ ミル トニ ア ンH'=F(E1)
の摂 動 まで 考 えて,系
の 波 動 関数│Φ〉は
(3.523) とな る.こ の 状 態 で 双 極 子 演 算 子F(E1)の
期 待 値 を計 算 す る と
(3.524) と な る か ら,Dは
和 則S-1(E1)に
基 底 状 態│0〉 がHartree-Fock基
ほ か な ら な い.
演 算 子Fは1体 態 で あ る.し
底 状 態 で あ る と し よ う.(3.519)式
の双極子
演 算 子 で あ る か ら,こ れ に よる励 起 状 態│n〉 は1粒 子1空 孔 状 たが って 状 態│Φ〉は1つ
のSlater行
列 式 で 表 され る はず で あ る.
*68 い ま原 子 核 の 内部 励 起 のみ を議論 の対 象 に して い るか ら
,厳 密 に いえ ば,(3.520)式
の運
動 エ ネルギ ー演 算子Tか
ら,重 心 運動 に関す る部 分 を除か なけ れば な ら ない.し か し,重
心 の 効 果 は 全体 の1/Aの
程 度 で あ る と推 定 され るので,こ こ で は無 視 し た.
*69 こ の 部 分 の 説 明 は に 負 っ て い る.
,鈴 木 敏 男,"原
子 核 の 巨 大 共 鳴 状 態"(物 理 学 最 前 線19),共
立 出 版(1988)
そ のSlater行
列 式 を 構 成 して い る1粒
子 波 動 関 数 を
とす る と,
(3.525) とな る.こ
こで,
は そ れ ぞ れ 中性 子 と 陽子 の密 度 分 布 で あ り,
(3.526) で あ る.(3.525)式
のDが
ρnと ρpの 差 で 構 成 さ れ る の は,(3.519)式
の双 極 子
演 算 子 に〓zが 入 っ て い て,陽
子 と 中 性 子 に 符 号 が 逆 の 作 用 を 及 ぼ す か らで あ る
(ア イ ソ ベ ク トル 演 算 子).換
言 す れ ば,原
め,陽
子 核 に 光 と い う外 場 を 作 用 さ せ た た
子 と 中 性 子 の 分 布 が 変 化 し て 偏 極(polarization)を
モ ー メ ン ト を 持 つ こ と に な っ た わ け で あ る.こ Dが
和 則S-1(E1)で
あ る.こ
生 じ,原
子 核が 双 極 子
の と き の 偏 極 度(polarizability)
の 概 念 図 が 図3.67に
示 さ れ て い る.
そ こ で,以 上 を考 慮 し なが ら,液 滴 模 型 を用 い て 和 則S-1(E1)を
見積 も
る こ と に す る.原 子 核 が一 様 な 密 度 を 持 っ た 半 径Rの
球 とす る.核 子 の 密
度 分 布 をρ(r)と す れ ば,
(3.527) 図3.67
陽 子 と中 性 子 が 一様 に 分 布 し て い る原 子 核 の 基 底 状 態 が 光 を吸 収 す る と,陽
で あ る.核 子 密 度 ρは(2.9)式 で与 え
子 と中 性 子が 逆 方 向 に励 起 ・移 動 し,偏
られ る.陽 子 と 中性 子 の 分 布 は そ れ ぞ れ
極 が 生 じ る.
(3.528) と な り,
(3.529) を み た す. さ て,Weizsacker-Betheの E(Z,N)=-B(Z,N)が,ρ,ρp,ρnの と 仮 定 す る.つ
質 量 公 式(2.7)で
与 え られ る 核 の エ ネ ル ギ ー
関 数 で あ る と 考 え,エ
ネ ルギ ー 密 度 を
ま り,こ の エ ネ ル ギ ー 密 度 を 積 分 し た もの が(2.7)
式(の 逆 符 号)を 与 え る もの とす る.こ こで は特 に(2.7)式 の 右 辺 第4項 の対 称 エ ネ ルギ ーの 項 に 注 目す る.こ の項 に対 応 す るエ ネルギ ー密 度 を と す れ ば,そ れ は
(3.530) で あ る と 考 え られ る.実
際,(3.530)式
に(3.528)式
を 代 入 し て 積 分 す れ ば,
(3.531) が 得 られ るか らで あ る. この核 に外 場(3.531)を
作 用 させ る と,当 然 偏 極 が 生 じ,核 のエ ネ ルギ ー,し
た が っ てエ ネ ル ギ ー密 度 に 変 化 が 生 じ る.そ の 変 化 分 は で あ るか ら,対 称 エ ネル ギ ー の エ ネ ルギ ー密 度 は
(3.532) で あ る.外 場 と核 の 偏 極 とが 釣 り合 い を保 つ た め に は,
(3.533) の は ず で あ るか ら,
(3.534) が 得 ら れ る.こ
の 結 果 と(3.527)式
と な り,
とを(3.525)式
で あ る か ら,和
に 代 入 し,積
分 を行 えば
則S-1(E1)は
(3.535) と な る.
(3.521)式 す る と,ア
の 和 則S1(E1)と(3.535)式
を(3.515)式
に代 入
イ ソ ベ ク ト ル 双 極 子 共 鳴 の 平 均 の 励 起 エ ネ ル ギ ー ε1(E1)を
見積 も
る こ と が で き て,
の 和 則S-1(E1)と
図3.68
双 極 共 鳴 に 対 す る 和 則 値 の 実 験 値S1(E1)expと
実 験 値 はE=30MeVま Nuclear
で 積 分 し た もの.横
理 論 値S1(E1)theorと
軸 は 質 量 数A.A.Bohr
Structure,Benjamin,Vol.Ⅱ(1969),Chap.6よ
と な る.Weizsacker-Betheの と す れ ば,流
体(液
の比
B.R.Mottelson,
り.
質 量 公 式(2.7)に
滴)模
and
型 に よ る ε1(E1)の
し た が っ てCsym=23.3MeV
値 は
(3.536) と な り,こ (3.521)式 れ た.こ
の 結 果 は 実 験 式(3.509)に の 和 則S1(E1)は
模 型 に 依 存 せ ず(model-independent)に
の 結 果 と 実 験 値 と を 比 べ る こ と に よ っ て,観
を 知 る こ と が で き る.光 積 分)と
よ く 合 致 し て い る. 求め ら
測 され た 巨大 共 鳴 の 性 格
吸 収 反 応 の 全 断 面 積(す べ て の エ ネ ル ギ ー に つ い て の
和 則 値 との 関 係 は
(3.537) で あ るか ら,実 験 値 の 全 断 面 積(た と えば 図3.65の ら和 則 の 実 験 値S1(E1)expを
求 め,(3.521)式
種 々 の 核 に対 して 描 い た もの が 図3.68で 和 則 値 の 実 験 値 が 理 論 値 の ほ と ん ど100%を
断面 積 を積 分 した もの)か
の 理 論 値S1(E1)theorと
の比 を
あ る.こ の 図 か ら,巨 大 双 極 共 鳴 の 尽 く して い る こ と が わ か る.こ
の よ う に,巨 大 共 鳴 は 一 般 に 和 則 の ほ とん ど す べ て を尽 くす の が 特 徴 で あ る. GoldhaberとTellerは
この 点 に最 初 に注 目 し,巨 大 双 極 共鳴 は核 の す べ て の核
子 が 関与 し,陽 子 流 体 と 中性 子 流 体 の2種
類の流体が位相 をそろえて逆方 向に
運 動 す る 集 団 運 動(図3.67)で
(b)ア
あ る こ と を 指 摘 し た.*70
イ ソ ス カ ラ ー 型 の 場 合 の 和 則S1,
い ま1粒 子 演 算 子Fを
S3
ア イ ソス カ ラー 型(T=0の
子)に 限 る も の とす る.さ
ら にFは
状 態 の み を 励 起 す る演 算
粒 子 の 座 標 だ け に依 存 す る もの とす る.つ
まり
(3.538) と す る.ま
た 全 ハ ミ ル ト ニ ア ンH=T+Vに
依 存 す る 部 分 は 無 視 す る も の と す る.こ 容 易 に 求 め る こ と が で き る.す
お い て,相 の 場 合 に は,k=1の
互 作 用Vの
運動量 に
和 則 値S1(F)は
な わ ち,
(3.539) で あ る.し
た が っ て,個
々 の 励 起 状 態│n〉 の 詳 細 を 知 る こ と な し に,(3.539)式
の 右 辺 を 計 算 す る こ と に よ っ て 和 則 値S1(F)を
演 算 子Fが
求 め る こ と が で き る.
λ次 の 多 重 極 演 算 子 の場 合,す な わ ち
の
場 合 の 和 則 値Sl(λ)は
(3.540) と な る.右 辺 の 〈r2λ-2〉 は基 底 状 態 で の 期 待 値 で あ り,半 径Rの
一 様 な球 形 の
密度分 布の場 合
(3.541) で あ る.
次 にk=3の
和 則 値S3(F)は
(3.542) と 書 か れ る.た
*70 M
. Goldhaber
だ し,
and
E.
Teller,
Phys.
Rev.
74
(1948)
1046.
で あ る.し
た が っ て,
(3.543) とす れ ば,和 則 値S3(F)は
(3.544) とな る.こ の 場 合 もS1の な し に和 則 値S3(F)を
演算子Fが
と き と同様 に,個 々の 励 起 状 態│n〉 の詳 細 を知 る こ と
求 め る こ とが で き る.
多重極演算 子
の場 合に は,
(3.545)
で あ る.
た と え ば,Fが4重
極 演 算 子(λ=2)の
場 合 に は,任 意 の 関 数
に 対 し て 直接 計 算 を行 っ て,
(3.546) が 得 られ るか ら,
(3.547) と な る.こ こ で,〈T〉 は 基 底 状 態 に お け る運 動 エ ネ ル ギ ー の 期 待 値 で あ る.(3.540) と(3.547)式
を 用 い れ ば,λ=2に
対 す る(3.514)式
の"エ
ネ ル ギ ー"は
(3.548) と な る.
い ま粒 子 の 運 動 が 通 常 の 殻 模 型 で 記 述 で き る とす る な らば,す
な わ ち調 和
振 動 子 ハ ミル トニ ア ン に 従 う とす る な ら ば, で あ る か ら, ギ ー"
で あ る.こ の"エ ネ ル
が ア イ ソス カ ラー 型4重 極 励 起 状 態 の 平均 の 励 起 エ ネル ギ ー を
表 し て い る と考 え られ る.(1.16)式
に 示 した よ うに,通 常 の 殻 模 型 に お い て は
で あ る か ら,ア quadrupole
イ ソ ス カ ラ ー 型 巨 大4重
resonance;Iπ=2+,T=0)の
極 共 鳴(giant
励 起 エ ネ ル ギ ー は
(3.549) と な り,*71表3.2(p.285)に
示 さ れ て い る 実 験 結 果 に よ く合 致 し て い る.
早 い 時 期 に は,(3.540)式
にお
い て λ=2と
した と きの2+(T=
0)の 和則S1(λ=2)の
理論 値が 表
す 集 団運 動 は,集 団性 の極 め て 強 い低 励 起2+状
態 で あ るだ ろ う と
考 え られ た.し か し,こ れ らの 低 励 起2+状
態 に よる 和 則 の 実 験 値
図3.69
を求 め た とこ ろ,理 論 値 の た か だ か10%程
度 しか 尽 くし てい な か っ
た(図3.69参
照).残 りの90%以
低 励 起2+状 態 に対 す る和 則 の 実 験 値 の 理 論 値 に 対 す る比
黒 丸が 実 験 値.横 軸 は 質量 数 を 示 す.鈴 核 の 巨 大 共鳴 状 態"(物 理 学最 前 線19),共 よ り.
上 が 行 方 不 明で 謎で あ った.上 述 の ア イ ソス カ ラー 巨 大4重 これ が 和 則 の90%以
極 共 鳴 が 発 見 され,
上 を 尽 くす こ とが わ か り,謎 が 解 け る に 至 っ た.
上 述 の λ=2の4重
極 励 起 と 同 様 に,λ=0の
考 え る こ と も で き る.こ (breathing
木敏 男,"原 子 立 出 版(1988)
mode)で
ア イソスカラー型集団励起 を
れ は 球 形 の 原 子 核 の 半 径 が 収 縮 ・伸 張 す る 呼 吸 モ ー ド
あ り,核 物 質 の 非 圧 縮 率 に 関 係 し て い る.こ
演 算 子 は
で あ る こ とが わ か っ て い る.λ=2の
ア イ ソ ス カ ラ ー 型 巨 大 単 極 共 鳴(giant
monopole
の と きの励 起
場 合 と 同 様 に し て,
resonance; Iπ=0+,T=0)
の励 起 エ ネル ギ ー は
(3.550) と な り,表3.2(p.285)に き の 和 則 の 理 論 値 を,巨
示 さ れ て い る 実 験 結 果 に よ く 合 っ て い る.ま
大 単 極 共 鳴 の実 験 値 が ほぼ 尽 くして い る こ とが わか っ
て い る.
*71 T
. Suzuki,
Nucl.
Phys.
た この と
A217
(1973)
182.
3.6.2
さ まざ ま な 巨 大 共 鳴
光 吸 収 反 応 に よ っ て 最 も以 前 に見 出 され た 巨 大 共 鳴 が,す (λπ=1-)振
動 状 態 で あ り,図3.67に
で に述べ た双極
示 され た よ うに,陽 子 群 と 中性 子 群 が
逆 位 相 で 振 動 す る とい う古 典 的 描 像 に対 応 し た 集 団 運 動 状 態 で あ る.こ の 状 態 を励 起 す る 演 算 子(3.516)が ル 型(T=1)の
ア イ ソス ピ ン演 算 子τzを 含 む ので,ア
イ ソベ ク ト
振 動 とい う.す で に述 べ た よ うに,こ の 巨 大 共 鳴 の 特 徴 は和 則
の ほ とん どす べ て を 担 って い る とい うこ とで あ る.こ れ は 核 を構成 す る全 核 子 が 関 与 す る集 団 運 動 で あ る こ と を意 味 す る. 1970年 代 に 入 り,電 子 や 陽 子 や α 粒 子 の 非 弾 性 散 乱 にお い て 新 た に 観 測 さ れ た のが,陽 子 群 と中 性 子 群 が 同位 相 で4重 ラ ー 型(T=0)の ん ど(90%以
極(λπ=2+)振
動 す る ア イソ ス カ
巨 大4重 極 共 鳴 で あ り,そ の 励 起 演 算 子 に 対す る和 則 の ほ と
上)を 担 うこ とが 見 出 され た.*72さ ら に 引 き続 い て 同 種 の 非 弾 性
散 乱 に よっ て,ア
イソ ス カ ラ ー 型(T=0)の
巨 大 単 極(λ π=0+)共
鳴が 見 出
され た.こ れ らア イ ソ ス カ ラ ー の 振 動 モ ー ドに 対 す る古 典 的 描 像 の概 念 図が 図 3.70に
示 され て い る.図3.70の(a)に
示 す λπ=0+の
単極振動 モー ドは核
の圧 縮 ・膨 張 運 動(呼 吸 運 動)に 対 応 し,核 物 質 の 圧 縮 率 に関 す る情 報 を与 え る もの で あ り,こ の 情 報 に よ り核 の 非 圧 縮 率(圧 縮 率 の 逆 数)Kが
(3.551) で あ る こ とが わ か った.な お,図3.70の(b)が ラ ー 型 巨 大4重
上 記 の λπ=2+の
ア イソ ス カ
極 共 鳴 の 古 典 的描 像 で あ る.
上 記 の よ うに 古典 的対 応が 必 ず し も直 接 的 で な い 振 動 モ ー ド と して,(p,n)反 応 な ど の荷 電 交 換 反応 に よって 励 起 され る 陽子 と 中性 子 の荷 電 を交 換 す る荷 電 交 換 モ ー ドが あ る.1960年
代 の は じめ に(p,n)反 応 で非 常 に狭 い 幅(数100keV)
の共 鳴状 態 と し て見 出 され た ア イ ソバ リッ ク ・ア ナ ログ 状 態(isobaric analogue state:IAS)が
それ で あ る.*73こ の 共 鳴 状 態 はN>Zの
統 的 に 存在 し,励 起 前 の 親 核(N,Z)か *72 S
.Fukuda
M.Nagao R.Pitthan
and
Y.Torizuka,Phys.Rev.Lett.29
and
Y.Torizuka,Phys.Rev.Lett.30
and
M.B.Lewis and *73 J .D.Anderson,C.Wong
Th.Walcher,Phys.Lett.36B
ら測 った 励 起 エ ネル ギ ーが,い (1972) (1973) (1971)
F.E.Bertrand,Nucl.Phys.A196 and
中重 核 や 重 い 核 に系
J.W.McClure,Phys.Rev.126
1109. 1068. 563.
(1972)
337. (1962)
2170.
ちば ん 外
(b)
(a) 図3.70 (a)が
側 の1個
λπ=0+の
ア イ ソス カ ラー 型 の 振 動 モ ー ドの概 念 図
単 極振 動(圧 縮 ・膨 張 振 動).(b)が
の 陽 子 のCoulombエ
ネ ル ギ ー(Δc)と
λπ=2+の4重
極 振 動.
な る と 考 え られ た.す
な わ ち,
演算子
(3.552) を 考 え る と,T_が T_に
中性 子 を 陽 子 に 変 換 す る演 算 子 で あ る か ら,IASは
よ っ て 励 起 され る 状 態
と 考 え ら れ,そ
この
の エ ネ ルギ ー は
で あ る とみ な され た.*74 つ ま り,親 核 の1個
の 中性 子 が 消 滅 し,ス ピ ン ・軌 道 状 態 が 変 化 し な い1個
の 陽子 が 生 成 され,荷
電 の み が 交 換 され た 励 起 状 態 が 生 成 され る の で あ る.集
団 運 動 の 観 点 か ら考 え る と,特 にN≫Zの の1空
核 で は,荷 電 交 換 に よ って 中性 子
孔 が で き,そ れ と 同 じ ス ピ ン ・軌 道 状 態 の 陽子 の1粒 子 状 態 が 多 数 で き
る.IASは
こ の よ うな多 くの1粒
子1空
重 ね 合 わ さっ た 娘 核(Z+1,N-1)の
孔 状 態 が コ ヒー レ ン ト(coherent)に
集 団 的 励 起 状 態 で あ り,荷 電 が 変 化す る
こ と に よ る 対 称 エ ネル ギ ーの 引 き戻 す力(復 元 力:restoring
force)に よ って生
じ る振 動 モ ー ドで あ る と理 解 す る こ とが で き る.*75 そ の と きの 励 起 エ ネ ルギ ー は
(3.553) と な る.こ
こ で,ハ
ミ ル トニ ア ンHの
し な いCoulomb力
中 の 大 部 分 はT_と
な ど の 部 分Hcの
み が 残 る.こ
交 換 す る の で,交
換
の場合 の 和則 は
(3.554) *74 A
. M.
Lane
506. *75 K . Ikeda,
and
S.
Fujii
J.
M.
and
Soper,
Phys.
J. I. Fujita,
Rev.
Phys.
Lett.
Lett.
7 (1962)
2 (1962)
250;
169.
Nucl.
Phys.
37
(1962)
図3.71
90Zr(p,n)90Nbで C.
と な る.も
Gaarde,
見 出 さ れ たGamow-Teller巨
Nucl.
Phys.
し ほ と ん ど 厳 密 に
子 へ の 荷 電 交 換 がPauli原 100%近
くがIASに
発 見 は,荷
よ る陽 子 か ら中 性
の 原 子 核 で 系 統 的 に 見 出 され た.こ
則の
起 演 算 子
に よっ て
の 状 態 は 理 論 的 に は 早 くか ら 予 言 され て い 1980年
代 に 入 りN-Z>1
れ が 巨大 双 極 共 鳴 と並 ん で 典 型 的 な 巨 大 共
鳴 で あ る と こ ろ のGamow-Teller巨 あ る.図3.71に
と な っ て,和
験 結 果 も そ う な っ て い る.
に は じ め て 実 験 的 に 観 測 さ れ,*77
こ のGamow-Teller巨
り.
電 交 換 と 同 時 に ス ピ ン を 反 転 させ る よ う な 振 動
な わ ち,励
励 起 さ れ る 集 団 運 動 状 態 で あ る.こ
GTR)で
大 共 鳴
127cよ
理 で 禁 止 さ れ る な ら,
モ ー ド の 存 在 を 示 唆 す る.す
1975年
(1982)
で あ り,T+に
集 中 す る は ず で あ り,実
こ の よ う なIASの
た が,*76
A396
大 共 鳴(Gamow-Teller
示 し た90Zr(p,n)90Nbの
giant resonance;
デ ー タ は そ の1例
で あ る.
大 共 鳴 は 荷 電 交 換 と と も に ス ピ ン を 反 転 させ た 多 数 の
1粒 子1空
孔 励 起 状 態 が コ ヒー レ ン トに 重 ね 合 わ さ っ てで きる 集 団 的励 起 状 態
で あ り,そ
の 励 起 エ ネ ル ギ ー
はIASの
場 合 と 同様 に
次 式 で 推 定 で き る:
*76 K *77 R 35
. Ikeda, . R.
S.
Fujii
Doering,
(1975)
1691.
A.
and
J. I. Fujita,
Galonsky,
D.
Phys. M.
Lett.
Patterson
3 (1963) and
G.
271. F.
Bertsch,
Phys.
Rev.
Lett.
(3.555) こ こ で,ハ
ミル トニ ア ンHの
演 算 子Y_と
中 の ス ピ ン 依 存 力HsとCoulomb力Hcな
交 換 し ない 部 分 の み が 残 る.ス ピ ン依 存 力Hsは
ど,
ス ピ ン軌 道 力 に
よ る部 分 εlsとス ピ ン依 存 の 中心 力 な ど の 部 分-α(N-Z)/Aで
近似す ること
が で きる.ま た こ の 場 合 の 和 則 は
(3.556) と な る.*78こ の 和 則 の90%以 験 的 に は,IASが100%近 50%∼60%し
上 がGTRに
集 中 す る と予 想 され て い た が,実
くで あ った の に対 し,こ の エ ネ ルギ ー 領 域 に お い て
か 観 測 され な か った.*79こ の失 わ れ た(missing)和
則 を め ぐ って,
(ⅰ)スピ ン依 存 力,特 に π 中 間 子 な どが もた らす 強 い テ ン ソ ル 力 に に よ る高 い エ ネル ギ ー領 域 へ の 分 散,と(ⅱ)π 中 間 子 と核 子 との 共 鳴 状 態 で あ る Δ 粒 子 (T=3/2,S=3/2)と
の 結 合 に よ る,*80も の と考 え られ た が,現
在 で は,そ
の 失 わ れ た和 則 の 多 くが 高 い エ ネ ルギ ー 領 域 に 分 散 して い る こ とが 実 験 的 に 確 か め られ て い る.*81 以 上 述 べ た よ う に,多 種 類 の さ ま ざ まな 巨 大 共 鳴 が 観 測 され て い る.そ れ ら の 主 な もの を整 理 し た の が 表3.2で
あ る.こ の表 に 上 げ た もの 以 外 に も,よ
高 い 多 重 度 を もつ 多 重 極 型 巨 大 共 鳴 や,ス
り
ピ ン振 動 型 や ス ピ ン ・ア イ ソス ピ ン
振 動 型 の 巨 大 共 鳴が 観 測 され て い る.*82ま た,そ の他 の 型 の励 起 演 算 子 に よ る 巨 大 共 鳴 の 存 在 が 理 論 的 に 予 想 され て い る. *78 IASお
よ びGTRの
のFermi型
励起 演算 子は
∫1お
移 はFermi型
,原 子 核 の β 崩 壊 に お け る 許 容 遷 移 の 演 算 子 で あ る と こ ろ
よびGamow-Teller型
∫σ に 対 応 す る.N>Z核
に お い て は 非 常 に 強 く抑 圧(hinder)さ
で は,低
れ,Gamow-Teller型
い状 態へ の遷
に おい ては 強 く
(∼1/10)抑 圧 され る こ とが 知 られ て い た.こ の 抑 圧 は こ れ ら の 集 団 運 動 状 態 の 存 在 に よ っ て 理 解 され る こ とが 示 され た[J.I.Fujita,S.Fujii and K.Ikeda,Phys.Rev.133 (1964) 549].(3.554)式 れ ぞ れFermiお
お よび(3.556)式
と 呼 ば れ る よ う に な っ た. *79 C .Gaarde,Nucl.Phys.A396 *80 鈴 木 敏 男 *81 酒 井 英 行
,池
*82 J .Speth Review
の 強 度 関 数S±
よ びGammow-Tellerを
の 添 え 字"(F)"お
示 す.こ
(1982)
127cよ
本 物 理 学 会 誌37
(1982)
,若 狭 智 嗣,日 (ed.),Electric
本 物 理 学 会 誌52 and Magnetic
(1997) 441. Giant Resonances
Physcis,World
Scientific
大共鳴
り.
田 清 美,日
of Nuclear
よ び"(GT)"は,そ
の こ と か ら,Gamow-Teller巨
664.
Publishing
in Co.,7
Nuclei (1991).
International
表3.2
主な巨大共鳴
† A>60の
原 子 核 に 対 す る大 まか な 表 式 で あ る .
注:IASは
ア イ ソバ リ ッ ク ・アナ ロ グ状 態 の略.IASは
1種 と考 え て よい.GTRはGamow-Teller共
鳴 の 略.
共 鳴 幅が 狭 い けれ ど も巨 大 共 鳴 の
4 クラス ター模 型
1個 の 原 子 の 性 質 は,原 子 の 中心 とな る原 子 核 の 周 囲 の 平 均 ポ テ ン シ ャル の 中 の 多 数 の 電 子 の 状 態 に よ っ て き ま る.同 様 に,第1章 型 は,原 子 核 の さ ま ざ まな 性 質 が1つ
で 述 べ たjj結
合殻模
の 平 均 ポ テ ン シ ャル 内 の 多 数 の 核 子 の 状
態 に よ っ て 決 定 され る とい うア イデ ア に 立 脚 し て い る.し
たが っ て,殻 模 型 は
い わ ば 原 子 核 の"原 子 的描 像"で あ る. これ に 対 し,原 子 核 の"分 子 的 描 像"も 考 え られ る.前 に 述 べ た よ う に,原 子 核 は ほ ぼ 一 定 の 密 度 の 液 滴 状 の多 核 子 系 で あ る と考 え る こ とが で き る.こ の 液 滴 に わ ず か ば か りの エ ネル ギ ー を 加 え る と,核 子 の す べ てが ば らば ら に な る の で は な く,い くつか の 核 子 の か た ま りに 分 割 され る と い う事 実 か ら,原 子 核 は い くつ か の 核 子 の 集 合 体 で あ るサ ブ ・ユ ニ ッ ト,す な わ ち核 子 の ク ラス タ ー (cluster)に よ って 構 成 され て い る とい うア イデ ア も成 立 し うる の で あ る.こ れ が 原 子 核 の"分 子 的描 像"で あ る. 原 子 核 の 分 子 的 描 像 に立 脚 し,あ る原 子 核 を い くつ か の ク ラス タ ーか ら な る と考 え て,そ
の ク ラ ス ターの 内 部 励 起,ク
ラ ス ター 間 の 相 対 運 動,お
よび そ れ
らの 間 の 結 合(相 互作 用)を 取 り扱 う模 型 を ク ラ ス タ ー模 型(cluster model)と 呼 び,こ
の模 型 で よ く記 述 され る構 造 を ク ラ ス タ ー構 造(cluster
る い は 分 子 的 構 造(molecule-like け る 分 子 的描 像 は,各
structure)と
structure)あ
い う.し たが っ て,原 子核 に お
々の ク ラ ス タ ー 内 の 核 子 間 の結 合 が 比 較 的 強 く,ク ラ ス
タ ー 間 の 相 関 が 比 較 的弱 い場 合 に初 め て 意 味 を持 つ こ と に な る.こ れ を 簡 約 し て 述 べ る と,"内
部 相 関が 強 く,外 部 相 関が 弱 い"と い う こ とが で きる.
それ で は,実 際 の原 子 核 が この よ うな ク ラス ター構 造 を 示す で あ ろ うか.1960 年 代 か ら始 まっ た 軽 重 イ オ ン原 子 核 反 応 の 実 験 に お い て,α ク ラス ター 構 造*1 と考 え られ る 状 態 が,特
に 軽 い核 に お い て 少 なか らず 発 見 され た.も
ち ろん α
*1 2個 の 陽子 と2個 の 中性 子が 比 較 的強 く結 合 した α 粒 子 を核 内 の クラ ス ター とす る クラ ス ター 構 造 で あ る.
クラ ス ター だ け が 核 内 の ク ラス ター で は な く,そ の他 の ク ラ ス ター も考 え られ る.本 章 に お い て は,上 述 の"内 部 相 関 が 強 く,外 部 相 関 が 弱 い"と い う分 子 的描 像 が 原 子 核 に お い て ど の よ う に成 り立 っ て い るか,そ れ らが 核 子 間の 相 関 (核力)か ら出 発 し て,い か に 理 解 で き るか を検 討 す る こ とに し よ う.
4.1
し きい 値 則 とIkedaダ
イアグ ラム
原 子 核 に お け る"分 子 的 構 造"と は い う もの の,実 際 の 分 子 と は 大 い に異 な る 点が あ る.実 際 の 分 子 に お い て は,原 子 核 に お け る ク ラ ス ター に相 当す る の が 分子 を構 成 し て い る原 子 で あ る.原 子 に は 中 心 と な る原 子 核 が あ るが,原 核 に お け る ク ラ ス ター に は そ の よ うな 中心 とな る"核"が
な い.し
子
か も原 子 核
に お け る ク ラス ター を結 合 させ るの も,ク ラ ス ター 間相 互 作 用 を もた らす の も, そ の源 は と もに 核 子 間力(核 力)で あ る.こ の こ とが 実 際 の 分 子 と原 子 核 に お け る"分 子 的 構 造"と を 著 し く異 な る もの と して い る.こ の 点 を 明 らか にす る た め に 図4.1を 図4.1に
見 て い た だ きた い. はH2分
子,8Be原
子 核,お
よび 重 陽 子 の 場 合 の 結 合 ポ テ ンシ ャル
と相 対 波 動 関 数 の 概 略 が 示 され て い る.結 合 ポ テ ン シ ャル と して は,H2分 場 合 は水 素 原 子 の 原子 間 力 ポ テ ンシ ャル,8Be原
子の
子 核 の 場 合 は α-α ポ テ ン シ ャ
ル,重 陽 子 の 場 合 は 核 力 の 中 の 中心 力 ポ テ ンシ ャル が 描 か れ て い る.図4.1で
図4.1 H2分
H2分
子,8Be原
子 核,お
よび 重 陽子 の場 合 の 結 合 ポ テ ン シ ャル と相 対 波 動 関 数 の概 略
子 の 場 合 は 水 素 原 子 の 原 子 間 力 ポ テ ン シ ャ ル,8Be原
子 核 の 場 合 は α-α
ポ テ ン シ ャ ル,重
陽 子 の 場 合 は 核 力 の 中 の 中 心 力 が 描 か れ て い る.相
対 距 離 は 近 距 離 斥 力 の 作 用 半 径Rcを
て い る.エ
各 々 の 場 合 に 対 し て,そ
子,核
子 の 質 量 で あ る.)A.
I (1969) よ り.
ネ ル ギ ー の 単 位 はh2/(M0R2c)(M0は
268;
J. Hiura
Bohr and
R.
and
B.
Tamagaki,
R.
Mottelson, Prog.
Theor.
Nuclear Phys.
Structure, Suppl.
単 位 と し
れ ぞ れ 水 素 原 子,α Benjamin, 52 (1972)
粒 Vol.
Chap.
2
わか る よ うに,水 素 分 子 の 場 合 に は 結 合 ポ テ ン シ ャ ル に 比 べ て 結 合 エ ネル ギ ー が 比 較 的 大 き く,水 素 原 子 間 の 相 対 波 動 関 数 は極 め て 狭 い 領 域 に 局 在 化 され て い る.こ れ に対 し,8Be原
子 核 の 場 合 に は,結 合 エ ネ ルギ ーが 比 較 的小 さ く,相
対 波 動 関 数 は た いへ ん 広 い領 域 に広 が り,現 実 の 分子 と比 べ て ク ラ ス タ ー 的 構 造 が 弱 い こ と を示 して い る. この こ とか ら も推 測 され る よ うに,原 子 核 に お け る分 子 的構 造 あ る い は ク ラ ス ター 構 造 を 示 す 状 態 は,系 の エ ネル ギ ーが 構 成 要 素 と な る ク ラス タ ー に 分 解 す る し きい(閾 ま た は 敷 居)値(threshold
energy)の
近 傍 に あ る と き に現 れ る.
この こ と は実 験 的 に も確 か め られ て い る.た と えば,8Beは を もつ 典 型 的 な原 子 核 と して 良 く知 られ て い るが,そ
α ク ラ ス ター 構 造
の 基 底 状 態 は2個 の α 粒
子 か ら構 成 され る 準 安 定(不 安 定)な 結 合状 態 で,そ の ま まで は2α に 分 解 し て し ま う.つ ま り,8Beの
基 底 状 態 は α+α に分 解 す る し きい 値 の す ぐ傍 に あ る.
この よ うに ク ラ ス ター 構 造 を 示 す 状 態 は,そ の 系 の エ ネ ルギ ー が そ れ らの ク ラ ス ター に 分 解 す る し きい 値 の 近 傍 にあ る と きに 現 れ る と い う"法 則"で て,さ
もっ
まざ まな 軽 い 核 の 励 起 状 態 の ク ラ ス ター構 造 を整 理 す る こ とが 可 能 で あ
る.こ の 法 則 を し きい 値 則(threshold
energy rule)と 呼 ぶ.*2こ の し きい 値 則
は前 に 述 べ た"内 部 相 関 が 強 く,外 部 相 関が 弱 い"と い う分子 的 描 像 と完 全 に 整 合 して い る. こ の し きい値 則 を規 範 に して,α
クラ ス ター を 基 本 単 位 とす る分 子 的構造 の
系 統 図 を描 くこ とが で き る.そ れが 図4.2に diagram)で
あ る.*3図4.2に
示 したIkedaダ
イア グ ラ ム(Ikeda
は,軽 い 自己 共 役4n核(Z=N=2n:(2p+2n)
を単 位 に し て,そ の 整 数 倍 の 核 子 に よ っ て 構 成 され る原 子 核)に お い て,よ 小 さい4n核
り
か らな る ク ラス ター 群 に分 解(分 裂)す る し きい 値 が 質 量 数 の 関 数
と して 示 され て い る.4n核
で は α 粒 子 が ク ラ ス ター の 基 本 単 位 で あ り,n個
の
α 粒 子 へ の 分 解 の し きい 値 が この 図 の 上 限 を与 え る.下 限 は そ の 系 の基 底 状 態 で あ る.す な わ ち,図4.2に
お い て,個
々 の ダ イア グ ラム は"し きい 値 則"に
則 っ て 考 え られ る可 能 な サ ブ ・ユ ニ ッ ト(ク ラス ター)を 示 し て い る.た と えば 12Cが3個 の α粒 子 にば らば ら に分 解 す る し きい 値 は7 .27MeVで あ り,励 起 *2 K
. Ikeda,
N.
Takigawa
(1968) 464. *3 本 ダ イ ア グ ラ ム は 化 図"と H.
,当
and
K.
Ikeda
Horiuchi,
初 原 子 核 の"分
呼 ば れ て い た が,現
Horiuchi,
H.
and
Prog.
Theor.
子 的 構 造 系 統 図",あ
在 で は 国 際 的 に も"Ikeda Y.
Suzuki,
Phys.
Prog.
Theor.
Suppl.
る い は"分
diagram"と Phys.
Suppl.
Extra
Number
子 的 構 造 へ の 系 統 変 し て 定 着 し て い る. 52
(1972)
Chap.
3.
図4.2 各 ダ イ ア グ ラ ム は"し
き い 値 則"に
Ikedaダ
イ ア グ ラ ム
則 っ て 考 え ら れ る 可 能 な サ ブ ・ユ ニ ッ ト(ク
ラ ス タ ー)を
示 し て い る.括 弧 内 の 数 字(単 位MeV)は し き い 値 の 実 験 値.対 角 線 上 に配 置 され て い る 8Be以 外 の 安 定 核 の 基 底 状 態 は ,殻 模 型 的 状 態(す な わ ち 原 子 的 描 像)で あ る と 考 え ら れ る. K.
Ikeda,
N.
(1968)
464;
(1972)
Chap.
Takigawa H.
Horiuchi, 4よ
and K.
H.
Horiuchi,
Ikeda
and
Prog. Y.
Theor.
Suzuki,
Prog.
Phys.
Suppl. cxtra
Theor.
Phys.
number Suppl.
52
り.
エ ネ ル ギ ー が この 値 に近 くな る と,12Cに
お い て は3個 の α ク ラ ス タ ーか ら構
成 され る ク ラス ター 構 造 が 顕 著 に な る わ け で あ る.ま た,図 の対 角 線 上(下 限) に 配 置 され て い る8Be以
外 の安 定 核 の 基 底 状 態 は,す べ て殻 模 型 的 状 態(す な
わ ち原 子 的 描 像)で あ る と考 え られ,そ の 近 傍 の 状 態 は1中 心 の平 均 ポ テ ンシ ャ ル で 記 述 され る通 常 の殻 模 型 に よ っ て理 解 で き る と考 え られ る. し た が って,Ikedaダ
イ アグ ラム は,安 定 な 基 底 状 態 で は殻 模 型 的 描 像(原 子
的描 像)が 成 り立 つ 原 子 核 にお い て も,エ ネル ギ ー が 高 くな るに した が っ て種 々 の ク ラ ス タ ー構 造(分 子 的 描 像)へ 質 的 変 化 を生 じ る と い う こ と を 主 張 し,ど のエ ネ ル ギ ー 領 域 で ど の よ う な構 造 変 化 が 生 じ るか を 示 唆 して い る.Ikedaダ イア グ ラ ム が 示 す この よ うな 構造 変 化 を模 式 的 に表 した も のが 図4.3で
あ る.
Ikedaダ
イアグ ラム に整 理 され た
実験 事 実 と,そ れが 示唆 し てい る 構 造 変 化 が,真
に量 子 力 学 的 な
分 子 的 ク ラ ス タ ー構 造 へ の 構 造 変 化 と して 理 解 で き るか 否 か は, 微 視 的 理 論 と し て の ク ラ ス ター 模 型 を用 い て そ れ らの 状 態 を 詳 し く解 析 す る こ と に よ って は じ め て 明 ら か に され る.こ の こ と
図4.3
Ikedaダ
イア グ ラ ムが 示 す構 造 変 化 の概 念 図
原 子核 の 基 底状 態 は 殻 模 型 的 構 造 が 下 限 で あ る.励 起 エ
を 検 討 す る の が 本 章 の 目標 で あ
ネ ルギ ー の 上 昇 と と もに,ク
る.*4
ラス ター に 分 解 し,分 子 的
構造 へ の 変 化 が 起 こ り,上 限 の α ク ラ ス ター 群 の 分 子 的構 造 へ 至 る.逆 に エ ネ ルギ ーが 下 降 す る に し たが って, 分 子 的 構 造 か ら融 合的 変 化が 起 きる.
4.2
ク ラ ス タ ー構 造 の 概 観
こ の 節 で はp殻(p-shell:2と8の び0p3/2の1粒
マ ジ ッ ク ナ ン バ ー の 間 の 領 域:0p1/2お
子 準 位 で 構 成 さ れ る)やsd殻(sd-shell:8と20の
ン バ ー の 間 の 領 域:
お よ び0d5/2の1粒
よ
マ ジ ック ナ
子 準 位 で 構 成 さ れ る)に
お け る 典 型 的 な 原 子 核 の ク ラ ス タ ー 構 造 の 実 際 を 概 観 す る.
4.2.1
p殻 の は じめ の 領 域 で の ク ラ ス タ ー構 造
原 子 核 にお い て ク ラ ス ター 模 型 が よ く成 り立 つ た め に は,2つ で あ る.1つ
は,強
の条件が必要
く相 関 し合 う核 子 群(サ ブ ・ユ ニ ッ ト)が 空 間 的 に局 在 化 し
た ク ラ ス ター を作 る とい うこ とで あ り,も う1つ は,そ の ク ラス ター 間 の 相 対 運 動 が か な り良 い 運 動 モ ー ドで あ る とい うこ とで あ る.そ の 意 味 で 核 内 にお け る ク ラ ス ター の最 有 力 候 補 は,2個
の 陽 子 と2個
の 中 性 子 が 結 合 した α ク ラ
ス ター で あ る.α ク ラ ス ターが 自由 空 間 に 孤 立 して 存 在 す る と きに は α 粒 子 (=4He)で
あ る.α 粒 子 は 表4.1に
示 す よ うに,周
大 きい 結 合 エ ネル ギ ー を持 っ て い る.さ *4 次 節 以 降 の 記 述 は International に 負 っ て い る.
,主
Review
と し てH. of Nuclear
Horiuchi Physics,
辺 の 核 と比 較 し て 際 立 っ て
らに α粒 子 には,基 底 状 態 か らエ ネル and
K.
World
Ikeda,
Cluster
Scientific
Model
Publishing
of the Co.,
Nucleus, 4 (1986)
1
表4.1
こ こ には2核
子,3核
=2H),3Heお
子 お よび4核
子 系 の安 定 核 の結 合エ ネル ギ ー な ど
子 系 の 安 定 核 で あ る と こ ろ の,重
よび α 粒 子(=4He)の
(し きい 値:Ethres)が で あ る.Jπ
2-4核
結 合 エ ネ ル ギ ー(B.E.)と
示 され て い る.Tは
ア イ ソ ス ピ ン,Tzは
陽 子(d=2H),3重
陽子(t
最 も低 い 分 解 種 の 分 解 エ ネ ルギ ー そ のz成
分 で,
は 全 ス ピ ン とパ リテ ィで あ る.
ギ ー が20.21MeVに
な る ま で 励 起 状 態 が な く,し
た が っ て 極 め て"堅
い"核 子
系 で あ る と い え る. 結 合 エ ネ ル ギ ー の 大 き さ で 見 る と,核 有 す る核 は α 粒 子 で あ り,次 に3重 に 至 る と わ ず か2.224MeVの
内 の ク ラ ス タ ー と して の 最 適 な 資格 を
陽 子(t)や3Heと
続 く.し か し,重
結 合 エ ネ ル ギ ー し か 持 た ず,と
陽 子(d)
て も ク ラ ス ター と
し て の 資 格 を 有 す る と は い い 難 い. p殻 の は じ め の 領 域(ZやNが た はp),2核
子np,3核
子nnp(ま
る 原 子 核5He(5Li),6Li,7Li(7Be)お (p),d,t(3He)お energy)に
少 な い 領 域)に
お い て,α
た はnpp)お
粒 子 に1核
子n(ま
よび α 粒 子 を付 け加 え て で き
よ び8Beの
基 底 状 態 か ら,そ
れ ぞ れn
よ び α 粒 子 を 分 離 す る と き の 分 離 エ ネ ル ギ ー(separation
注 目 し よ う.こ
れ は 各 々 の ク ラ ス タ ー を,自
由 空 間 に あ る対 応 す る原
子 核 と 仮 定 し た と き の ク ラ ス タ ー 間 の 結 合 エ ネ ル ギ ー で あ り,そ
れ らの 実 験 値
は そ れ ぞ れ,-0.89MeV
(1.578MeV),
-0 .09189MeVで
(-1.97MeV),1.475MeV,2.468MeV あ る.
分 離 エ ネ ル ギ ー が 負 で あ る と い う こ と は,そ
の 系 に は 束 縛 状 態 が な く,そ
系 の 基 底 状 態 が 対 応 す る ク ラ ス タ ー 核 に 崩 壊 す る 共 鳴 状 態(resonance
の
state),
す な わ ち 準 束 縛 状 態 で あ る こ と を 示 し て い る.5He(α-n)(5Li(α-p))と8Be (α-α))が こ の 場 合 に あ た り,そ れ ぞ れ の 分 離 エ ネ ル ギ ー が 対 応 す る ク ラ ス タ ー 核 に 崩 壊 す る と き に 放 出 さ れ る エ ネ ル ギ ー で あ る.そ は 分 離 エ ネ ル ギ ー は 正 で あ り,そ み な さ れ る.注
れ ら は2つ
の 他 の6Li,7Li(7Be)で
の ク ラ ス ター の 結 合 エ ネ ル ギ ー と
目 す べ き は,6Li(α-d)と7Li(α-t)の
結 合 エ ネ ル ギ ー が,各
の ク ラ ス タ ー そ の も の の 結 合 エ ネ ル ギ ー よ り小 さ い か,あ
々
るいはわずかに小 さ
い 値 で あ る こ と で あ る.こ
れ ら の 事 実 が,LiやBe領
的 ク ラ ス ター 模 型(microscopic
cluster
域 の 原 子 核 の 構 造 を微 視
model)に
基 づ い て 系 統 的 に研 究 して
き た ゆ え ん で あ る.*5
微 視 的 クラ ス ター 模 型 とは,各
々の クラ ス ター を構 造 の ない 粒 子(質 点)の よ
うに考 え た 初 期 の 素 朴 な ク ラス ター 模 型 と 違 っ て,そ れ らが 核 子 の 集 合 体 で あ る と い うこ と を考 慮 し,核 子 の そ れ ぞ れ の 自 由 度 をあ か ら さ まに 微 視 的 に 取 り 扱 う よ うな ク ラ ス ター 模 型 で あ る.微 視 的 ク ラス ター 模 型 に は,種
々 の表 現 法
が あ り,そ れ らの 詳 細 につ い て は 以 下 の 節 で 説 明 す る.混 乱 を生 じ る恐 れ が な い 限 り,以 下 で は しば しば 微 視 的 ク ラ ス ター模 型 を単 に クラ ス ター 模 型 と呼 ぶ こ とが あ る.
4.2.2 8Beの2α
クラスター構造
上 に 述べ た よ う に,自 由 空 間 で 孤 立 し た状 態 に お い て,結 合 エ ネル ギ ーが 際 立 っ て 大 きい の が α ク ラ ス タ ー で あ り,2個 ギ ーが0に
の α ク ラ ス ター 間 の 結 合 エ ネル
近 い ク ラ ス ター構 造 を もつ 系が8Beで
あ る.こ の系 は2つ の α ク ラ
ス ター か ら な る微 視 的 ク ラ ス タ ー模 型 を用 い,合 理 的 か つ適 切 な 核 子 間 力(核 力)に 基づ い て,早
くよ り詳 細 な理 論 的研 究 が な され た.*6そ の 結 果,基 底 回転
バ ン ドの3つ の 共 鳴 状 態 を α-α散 乱 の共 鳴状 態 と し て理 論 的 に 再 現 す る こ と に *5 1950年 代 後 半か ら
,微 視 的 ク ラス ター模 型 に よる クラ ス ター構 造 の研 究 が 徐 々に増 加 し,
1960年 代 に 入 る と系 統 的 に研 究 が な され て きた.代 表 的 な もの は, (1) K.
Wildermuth
Phys.
E.
W.
(2) V.
G.
Schmid
R.
Nucl.
and
Phys.
Tamagaki
and
(3b) I. Shimodaya,
Th.
Kanellopoulos,
Nucl.
Phys.
7 (1956)
150;
Nucl.
449.
Neudatchin
Prog. (3a)
and
9 (1958/59)
R.
K.
Wildermuth,
and
Yu.
10
(1969)
H.
Tanaka,
Tamagaki
F.
Nucl.
Phys.
Simirnov,
26
Atomic
(1961)
463.
Energy
Rev.
3 (1965)
157;
275. Prog. and
Theor.
H.
Phys.
Tanaka,
34
Prog.
(1965)
191.
Theor.
Phys.
27
(1962)
585;
36
(1966)
793. (3c) J.
Hiura
and
I. Shimodaya,
Prog.
Theor.
Phys.
30
(1963)
977.
わ が 国 で 最 も精 力 的 に 行 っ た の が 北 大 グ ル ー プ(3)で 成 果 に 基 づ い て い る.そ (3d)
J. Hiura
あ り,以
下 の4.2.2は
それ らの研 究
の 成 果は
and
R.
Tamagaki,
Prog.
Theor.
Phys.
Suppl.
52
(1972)
Chap.
Theor.
Phys.
27
(1962)
793.
に ま と め ら れ て い る. *6 I
. Shimodaya,
R. Tamagaki
R. and
Tamagaki H.
Tanaka,
and
H.
Prog.
Tanaka, Theor.
Prog. Phys.
34
(1965)
191.
2
成 功 し て い る. 基 底 回 転 バ ン ド を 構 成 す る3つ 値 よ り わ ず か0.0919MeVだ 励 起2+状 起4+状
態(励 態(励
底0+状
態(α 崩 壊 の し き い
け 上 に あ り,狭 い 崩 壊 幅Γ α=6eVを
起 エ ネ ル ギ ーEx=2.9MeV,
)で あ る.こ
の 共 鳴 状 態 以 外 の 励 起 状 態 は16.63MeVに
た が っ て,こ
持 つ),第1
),お よ び 第2励
起 エ ネ ル ギ ーEx=11.4MeV,
バ ン ド の3つ る.し
の 共 鳴 状 態 は,基
の 回転
お い て は じめ て 現 れ
の 回 転 バ ン ドと α ク ラス タ ーの 内部 励 起 との 結 合 は ほ とん
ど な い と 考 え て よ い だ ろ う.つ
ま り,こ
の 回 転 バ ン ド は2個
相 対 運 動 に よ る も の と 考 え て よ い だ ろ う.そ
の α ク ラ ス ター の
こで 系 全 体 の 波 動 関 数 を
(4.1) と仮 定 す る.φ(α1)お よび φ(α2)は2つ の ク ラ ス ター の 内 部 波動 関 数 で,自 由 空 間 内 の α 粒 子 の それ に等 しい もの と仮 定 す る.XJ(ξ)は 波 動 関 数 で あ り,Aは
系 の8個
ク ラ ス ター 間 の 相 対
の す べ て の核 子 に 関 し て全 波 動 関数 を 反 対称 化
す る 演 算 子 で あ る. (4.1)式 に お い て,α 動 関 数XJ(ξ)が
ク ラ ス タ ー の 内 部 波 動 関 数 は 与 え ら れ て い る の で,相
み た す べ き方 程 式 を 求 め,そ
有 エ ネ ル ギ ー や 固 有 関 数 を 計 算 す る と い う方 法 は,共 method)*7と
呼 ば れ,し
ば しばRGMと
つ い て は 後 で 述 べ る こ と に す る.適 よ っ て2個
鳴 群 法(resonating
簡 略 表 示 さ れ る.そ
group
の 詳 しい 定 式 化 に
切 か つ 合 理 的 な 核 子 間 力 を 用 い,RGMに
の α ク ラ ス タ ー 間 の 相 対 運 動 の 散 乱 状 態 の 位 相 の ず れ(phase
が 求 め られ,上
対波
れ を解 くこ とに よって 相対 運 動 の 固
述 の 実 験 デ ー タ を よ く再 現 す る こ とが で き た.そ
shift)
の 結 果,8Be
の 基 底 回 転 バ ン ド は α-α の 典 型 的 な ク ラ ス タ ー 構 造 を も つ 状 態 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た.*8こ
の 分 析 の 結 果,α-α
間 相 互 作 用 は 次 の2つ
の 特 徴 を もつ こ
とが 明 ら か に な っ た: (1) α-α 間 の 近 距 離 領 域(内 部 領 域)に は,芯 る.こ
れ は,α
ク ラ ス タ ー がPauli原
あ る こ と に よ る.し
た が っ て,構
半 径
の 斥力 芯 が あ
理 に 従 う核 子 の 集 合 体(複 合 粒 子)で 造 的 斥 力 芯(structural
repulsive
core)
と 呼 ば れ て い る.*9
(2) 遠 距 離 領 域(外 部 領 域)で は,2個 *7 J *8 J *9 R
.A.Wheeler,Phys.Rev.52 .Hiura .Tamagaki
and
(1937)
の αが 接 触 す る 距 離 ∼3.5fmま
1083,1107.
R.Tamagaki,Prog.Theor.Phys.Suppl.52 and
H.
Tanaka,
Prog.
Theor.
(1972) Phys.
34
(1965)
191.
Chap.2.
でが 引
力 ポ テ ン シ ャ ル で あ り,そ の 強 さ は,Coulomb斥 ギ ー が ∼1.4MeVの
束 縛 状 態 を た だ1つ
力 を 除 く と,結
作 る程 度 で あ る.
こ の α-α間 相 互 作 用 の ポ テ ン シ ャル を2原 子 分 子H2や た もの が 図4.1で
合エネル
重 陽 子 の場 合 と比 較 し
あ る.こ の 図 か ら,α-α 間相 互 作 用 はH2の
場 合 に比 べ て は
る か に弱 く,重 陽 子 の場 合 よ りわ ず か に 強 い こ とが わ か る.
4.2.3
sd殻 の は じめ の 領 域 での ク ラ ス タ ー構 造
原 子 核 に お け る分 子 的 構 造 を持 つ状 態 が,p殻
の は じ め の 領 域 にの み 限 られ
る わ け で は な く,も っ と広 い領 域 で 発 現 す る 可 能 性 が あ る こ とは,殻 模 型 で 説 明 し 難 い 種 々の 不 思 議 な 回転 バ ン ドが 存 在 す る こ と に よっ て示 唆 され て いた が, 16Oや20Neで2体 分 子 的 な構造 が 見 られ る こ とに よ っ て確 実 とな った . 図4.4に16Oと20Neに さ れ て い る.Kは 成 分 で,1つ
回転 バ ン ドが 示
当 該 の バ ン ド 内 の 各 レ ベ ル の 全 角 運 動 量Iの
の バ ン ド を 通 じ て 共 通 の 良 い 量 子 数 で あ る.(詳
Bohr-Mottelsonの 16Oは
お け るKπ=0+とKπ=0-の
し く は 第3章
の
集 団 模 型 の 項 を 参 照 す る こ と.)
殻 模 型 の 言 葉 で い え ば2重
る.Kπ=0+の
閉 殻 核 で あ り,基
底 状 態 はIπ=0+で
回 転 バ ン ド は 励 起 エ ネ ル ギ ー が6.05MeVの
を バ ン ド ・ヘ ッ ド と し て そ の 上 に 形 成 さ れ て い る.ま バ ン ド は0+基
対称軸 方向の
第1励
起0+状
た20NeのKπ=0+回
底 状 態 を バ ン ド ・ヘ ッ ド と し て そ の 上 に 形 成 さ れ て い る.
図4.4
16Oと20Neに
お け るKπ=0+とKπ=0-の
回転 バ ン ド
各 々 の 準 位 の 上 の 数 字 は 励 起 エ ネル ギ ー の値(単 位MeV).
あ 態 転
他 方,こ
れ ら2つ
の 系 のKπ=0-バ
ン ド の エ ネ ル ギ ー は,と
バ ン ド よ り高 く,Iπ=1-,3-,5-,7-の る.し
も にKπ=0+
各 状 態 は α 崩 壊 の し き い 値 よ り上 に あ
た が っ て こ れ ら の 状 態 は α 散 乱 で の 共 鳴 状 態 と し て 観 測 され る.Kπ=0-
バ ン ド の 各 状 態 の α 崩 壊 幅 の 解 析 に よ っ て,こ
れ ら すべ て の 共 鳴状 態 に お い て
α ク ラ ス ター が 核 表 面 に 滞 在 す る 確 率 が100%に 事 実 は,16Oお
よ び20NeのKπ=0-バ
び α-16Oの2体 さ て,負
ン ド の 構 造 が,そ
れ ぞ れ α-12Cお
の よ
ク ラ ス タ ー 構 造 で あ る こ と を 示 し て い る.
パ リ テ ィ のKπ=0-回
る な ら ば,分
近 い こ と が わ か っ た.*10こ
転 バ ン ドが2体
子 物 理 学 で よ く知 ら れ た 反 転2重
え に 基 づ い て,2重
ク ラ ス ター 構 造 で あ る とす
項(inversion
doublet)*11の
考
項 の も う 一 方 の 片 割 れ の 正 パ リ テ ィの 回 転 バ ン ドが 近 くに
存 在 す る は ず で あ る.パ
リ テ ィ2重 項 の 対 称 性 か ら,対
れ の エ ネ ル ギ ー はKπ=0-バ に 上 に 述 べ たKπ=0+回
転 バ ン ドで あ り,*12そ
エ ネ ル ギ ー 準 位 は(2重
称 状 態 で あ る そ の片 割
ン ド よ り低 い と 予 想 さ れ る.そ
の片割れが まさ
れ ら のバ ン ドの 各 メ ンバ ー の
項 の 中 央 か ら 測 っ て)
(4.2a) (4.2b) と し て よ く表 さ れ る.た る.し
だ し,ΔE0は
た が っ て,"16Oお
バ ン ド は,(α+コ す",と
パ リ テ ィ2重 項 の 間 の エ ネ ル ギ ー 差 で あ
よ び20Neに
ア ー 核)と
お け るKπ=0+とKπ=0-の
回転
い う ク ラ ス タ ー 構 造 に 基 づ くパ リ テ ィ2重 項 を な
い う こ と が で き る.
この 考 え 方 が 提 案 され た 当初 は,な か なか 受 け 入 れ られ 難 く,殻 模 型 的考 え 方 に 基 づ く検 討 も種 々な され たが,現 した もの とな っ て い る(4.6の"微 *10 R
.H.Davis,Proc.of
mar,1963 *11 H .Horiuchi
*12 20Neの
the
(Univ.of and
Third
California
強 い 状 態 と見 な され て い た.特
and
Conf.on
Reaction
between
Complex
Nuclei,Asilo
Press),p.67.
K.Ikeda,Prog.Theor.Phys.40
基 底 回 転 バ ン ドや16Oの
プ ン 殻 の4粒
在 で は この クラ ス ター 構 造 の 見 方 は 確 立
視 的 ク ラ ス ター模 型 の 適 用 例"参 照).
(1968)
励 起 回転 バ ン ドは に16Oの
277.
,殻 模 型 研 究 か ら α ク ラ ス タ ー 相 関 の
励 起 回 転 バ ン ド は,α
ク ラ ス タ ー 相 関 が 強 く,オ ー
子 と 芯 核 が 弱 く結 合 し て い る とす る 弱 結 合 殻 模 型(A.Arima,H.Horiuchi
T.Sebe,Phys.Lett.24B
(1967)
造 と し て 理 解 で き る と す る も の で あ る.
129)が
提 案 さ れ て い た.そ
れ を α ク ラス ター構
4.2.4
12Cの3α
ク ラ ス タ ー構 造 な ど
3体 以 上 の 多 体 ク ラ ス タ ー 構造 に 関 し て は,典 3α ク ラ ス タ ー 構 造 が 確 認 さ れ て い る.そ
型 的 な 例 と し て12Cに
れ 以 外 に は,16Oに
し き い 値 近 傍 の 励 起 エ ネ ル ギ ー 領 域 に,4α
おいて
お い て4α 分 裂 の
の 線 形 鎖 状 構 造*13の
状 態 を示 唆 す
る 実 験 情 報 が あ る だ け で あ る. 12Cに
お い て 確 認 さ れ て い る3α
の わ ず か に 上 に あ り,励 10.3MeVの2+2状 い る.こ
ク ラ ス タ ー 構 造 は,3α
に 分 裂 す る し きい値
起 エ ネ ル ギ ー がEx=7.66MeVの0+2状
態 で あ る.こ
れ ら の 状 態 で の3つ
れ ら の2つ
態 とEx=
の 状 態 は 大 きい α 崩 壊 幅 を持 っ て
の α ク ラ ス タ ー は,線
形 鎖 状 で は な く,3α
が互
い に 緩 く結 合 し て い る状 態 で あ る と 考 え ら れ て い る. 16Oに
お い て4α
線 形 鎖 状 構 造 と 推 定 さ れ て い る 準 位 は,励
起 エ ネル ギ ーが
態 を バ ン ド ・ヘ ッ ド と し て,Kπ=0+回
転 バ ン ドを
Ex=16.95MeVの0+状
形 成 す る よ う に 見 え る 準 位 群 で あ る.*14こ
れ ら を 回 転 バ ン ド と み な せ ば,4α
線
形 鎖 状 構 造 を 予 想 さ せ る よ う な 極 め て 大 き い 慣 性 能 率
図4.5
16Oに
お け る4α
の 線 形 鎖 状 構 造 と 推 定 さ れ る 高 い 励 起 状 態 か らの 種 々 の 崩壊 モ ー ド
図 の 中 央 の,16.95MeVの0+状 Y. Suzuki,
H.
Horiuchi
*13 α ク ラ ス タ ー が1直
態 か ら 始 ま る 回 転 バ ン ド と み な さ れ る 状 態 群 が そ れ で あ る. and
K.
Ikeda,
Prog.
Theor.
Phys.
線 上 に 並 ん で い る よ う な構 造 .串
47
(1972)
1517.
刺 し さ れ た"だ
ん ご"を
連 想 すれ ば
よ い だ ろ う. *14 P. 160
Chevallier (1967)
, F. 827.
Scheibling,
G.
Golding,
I. Plesser
and
M.
W.
Sachs,
Phys.
Rev.
を持 つ.図4.5に
お け る中 央 に描 か れ て い る0+状
態 か ら始 ま る 回転 バ ン ド と
み な され る1群 の レベ ル が そ れ で あ る. Morinagaは
軽 い 自己 共 役4n核
るい は8粒 子 励 起,に
に お い て,多
粒 子 励 起,た
と えば4粒
子あ
よっ て 系 全 体 が 再 組 織 され 大 き く長 く伸 び た 変 形 構 造 か,
あ る い は α ク ラス ター の 線 形 鎖 状 構 造 を考 え な けれ ば な らな い0+,2+状
態が
存 在 す る とい う考 え を提 案 した.*15こ の 考 え は ク ラ ス ター構 造 へ の 構 造 変 化 の パ イオ ニ ア 的研 究 と して 大 き な 影 響 を与 え た.い
まで は これ らの 状 態 は 線 形 鎖
状 構 造 で は な く,相 互 に緩 や か に 結 合 して い る 典 型 的 なnα ク ラス ター構造 で あ る と考 え られ,こ の 考 え は図4.2のIkedaダ 1960年
イ ア グ ラ ム に取 り入 れ られ て い る.
頃 か ら盛 ん に 行 わ れ た 重 イ オ ン核 ど う し の 反 応 の 実 験 は,原 子 核 の 分 子
的 状 態 に 関 す る 重 要 な 情 報 を 与 え た.特 12C+16Oお
よ び16O+16O反
に 軽 重 イ オ ン反 応,た
と え ば12C+12C,
応 に お け る 分 子 共 鳴(molecular
象 や 散 乱 励 起 関 数 に 見 出 さ れ る マ ク ロ 構 造 な ど で あ る.*16こ 子 的 描 像 の 拡 張 と 深 化 に 重 要 な 役 割 を は た し た.*17こ
resonance)現 れ ら は原 子 核 の 分
れ ら の 情 報 もIkedaダ
イ
ア グ ラ ム に 取 り入 れ ら れ て い る.
4.3 多 中 心 模 型
い くつ か の ク ラ ス タ ー か ら 構 成 さ れ る ク ラ ス タ ー 構造 状 態 を,個
々の核 子 の運
動 の 自 由 度 に 基 づ い て 微 視 的 に 記 述 し よ う とす る の が 微 視 的 ク ラ ス タ ー 模 型 で あ る.微
視 的 ク ラ ス タ ー 模 型 に は い ろ い ろ な タ イ プ が あ るが,そ
で も あ り,そ model)で
れ ら の 模 型 の"原
の1つ
の タイプ
も い え る も の が 多 中 心 模 型(multi-center
あ る.
こ の模 型 にお い て は,各 *15 H
型"と
ク ラ ス ター が 異 な る 中心 位 置 に あ り,各 々の ク ラ ス
.Morinaga,Phys.Rev.101
*16 実 験 結 果 の ま と め は
(1956)
254.
,
R.H.Siemssen,Proc.INS-IPCR Sympo.on Clustering Phenomena in Nuclei,ed. by H.Kamitsubo,I.Kohno and T.Marumori,(1975) p.233. D.A.Bromley,Nuclear Molecular Phenomena,ed.by N.Cindro,(North-Holland, 1978) p.3. *17 Y
.Abe,Y.Kondo
and
T.Matsuse,Prog.Theor.Phys.Suppl.68
B.Imanishi,Nucl.Phys.A125
A.Tohsaki-Suzuki,M.Kamimura 5.
(1969)
(1980)
Chap.4.
350.
and K.Ikeda,Prog.Theor.Phys.68
(1980) Chap.
タ ー に 属 す る 核 子 の 状 態 は,そ の 中心 位 置 を原 点 とす る調 和 振 動 子 ポ テ ン シ ャ ル に従 う殻 模 型 で 記 述 され る もの とす る.ま た,核 子 は も ちろ ん フ ェル ミオ ン で あ り,全 系 の 波 動 関 数 は 任 意 の2核
子 の交 換 に対 し て 反 対 称 化 され て い る こ
とが 必 要 不 可 欠 で あ る.こ れ ら の2核 子 が 同 一 の ク ラ ス ター に 属 す る と否 と に か か わ らず,こ れ ら2核 子 の 交 換 に 対 し て全 系 の 波 動 関 数 は 反 対 称 で なけ れ ば な ら な い. さ て,系
がn個
の ク ラ ス タ ー(C1,C2,…,Cn)に
中 心 位 置 が ベ ク トル(R1,R2,…,Rn)で
よ っ て 構 成 さ れ,そ
表 さ れ る も の と す る.こ
れ らの
の場合の多
中 心 模 型 の 波 動 関 数 は 次 の 形 式 で 与 え ら れ る:
(4.3) こ こで,ψ(Ci,Ri)はRiを ク ラ ス ターCiを
中心 位 置 とす る
記 述 す る調 和 振 動 子 型 の 殻
模 型 の 反 対 称 化 され た 波 動 関 数 で あ る.N0 は 規 格 化 定 数,Aは
異 な る ク ラ ス ター に 属 す
る核 子 間の 交 換 に対 す る反 対 称 化 の演 算 子 で あ る. 1例
と し て,図4.6に3体
の3中
心 模 型 の 模 式 図 が 示 され て い る.こ
図 に お い て,3つ の 中 心 位 置 は,原
クラス ター系 の
の ク ラ ス タ ー(C1,C2,C3) 点Oか
ら の ベ ク トル 図4.6
(R1,R2,R3)で
示 さ れ て い る.3つ
ス タ ー の 核 子 数 を そ れ ぞ れ(A1,A2,A3)と
の クラ す る と,こ
3体 クラ ス ター系 の3中 の模式図
れ ら の3つ
心模 型
の ベ ク トル は
全 体 の 重 心 の 位 置 ベ ク トル
(4.4a) と,2つ
の 相 対 位 置 ベ ク トル
(4.4b) に 変 換 さ れ る.
この 多 中心 模 型 の 波 動 関数 は 取 り扱 いが 便 利 で,こ れ に よ るハ ミル トニ ア ンや さ まざ ま の演 算 子 の 期 待 値 な ど の計 算 が 比 較 的 容 易 で あ る.こ の多 中心 模 型 は,
そ の 多 中 心 の 位 置 を 生 成 座 標 と す る 生 成 座 標 法*18で 取 り扱 うた め にBrinkに と 呼 ば れ る.こ
よ っ て 導 入 され た の で,Brink模
model)*19
よ っ て 用 い ら れ た の で,
動 関 数 と 呼 ば れ る こ と も あ る.*20
実 際 に 応 用 さ れ る 多 中 心 模 型 は,ク
系)で
型(Brink
の 模 型 波 動 関 数 は 古 く はMargenauに
Brink-Margenau波
系 で あ る.本
ク ラ ス ター 間 の 相 対 運動 を
節 で は,ま
ラ ス タ ー 数 がn=2,3,4の
ず 最 も 簡 単 な α ク ラ ス タ ー の2体
そ の 波 動 関 数 の 性 質 を 詳 し く検 討 し,次
α ク ラ ス タ ー の3体
系(3α
多 ク ラス ター
に 他 の2ク
系(2α
クラ ス ター
ラ ス タ ー 系,お
よび
ク ラ ス タ ー 系)の 多 中 心 模 型 の 例 を 示 す こ と に す る.
4.3.1 2中 心 α ク ラ ス タ ー模 型 8Beは2個
の α ク ラ ス ターか らな る典 型 的 な ク ラ ス ター構 造 を持 つ 原 子 核 で
あ り,ク ラ ス ター 模 型 の原 点 で あ る.こ れ を 記 述 す る2中 心 ク ラス ター 模 型 の 波 動 関 数 の 性 質 に つ い て 述 べ よ う.
(a) 2α ク ラ ス タ ー 系 の2中 2α ク ラ ス ター 系 の2中
心調和 振動子模型
心 模 型 の 波 動 関 数 は,(4.3)式
から
(4.5) と 表 され る.Aは
反 対 称 化 演 算 子,N0は
規 格 化 定 数 で あ る.α
2個 の 陽 子 と2個
の 中 性 子 か ら な る4He核
ター の 中 心 位 置 が そ れぞ れRi(i=1,2)に と きの1核
ク ラ ス ター で あ る.2つ
ク ラ ス ター は の α クラ ス
あ る調 和 振 動 子 模 型 を 考 え る.そ の
子 の 波 動 関数 を
(4.6) と表 す.た だ しr=(x,y,z)は
核 子 の位 置 を示す 位 置 ベ ク トルで あ る.
は
核 子 の 荷 電 と ス ピ ンの状 態 を表 す 波 動 関 数 で あ り, で あ る.し
た が っ て,核 子 の 荷 電 ・ス ピ ン状 態 に は4つ
は 次 の4つ
の 異 な る場 合 が あ り,
の 異 な る値 を と る:
(4.7) *18 p
. 224の
*19 D by *20 H
脚 注*41参
照.
Proc.
International
. Brink, C.
Bloch,
. Margenau,
(Academic Phys.
School
Press, Rev.
1966)
59 (1941)
of Physics p. 37.
247.
"Enrico
Fermi"
course
36
(1965),
ed.
他 方,空
間 部 分 φ0(r-R)は
EN=(N+3/2)hω
調 和 振 動 子 波 動 関 数 で あ り,エ
が 最 小 のN=0の
示 でN=2n+lと
波 動 関 数 で あ る.*21す
し て,n=0,l=0の(0s)軌
はN=nx+ny+nzと
ネル ギ ー 固有 値
な わ ち,極
道 状 態 で あ り,直
し て,(nxnynz)=(000)の
座標表
角座標表示で
軌道状 態の波動 関数
(4.8) で あ る.た
だ し,Mを
核 子 の 質 量 と し て,
標(x,y,z)を(x1,x2,x3)と に よ り,直
表 し て い る.(4.8)式
角 座 標 表 示 を
の 異 な る4つ
た,座
は 直 角 座 標 表 示 で あ る.場
合
と表 記 す る こ と も あ る.
α ク ラ ス タ ー を 構 成 す る4つ ン が(4.7)式
で あ る.*22ま
の 核 子 は す べ て(0s)軌
の 状 態 に あ る の で,i番
ス タ ー の 反 対 称 化 さ れ た 波 動 関 数 は1つ
道 に あ り,荷
目(i=1,2)の1個
のSlater行
電 とスピ の α クラ
列 式 で 表 さ れ,
(4.9)
と 書 か れ る.こ
こ で(0s)軌
道 の 波 動 関 数 φ0(ik)は
(4.10) を 意 味 す る.(4.9)式
に お い て,粒
α1(i=1)に
対 し て は(1,2,3,4),2番
(5,6,7,8)と
と る.ま
た,後
子 番 号(i1,i2,i3,i4)は1番
目の ク ラ ス ター
目 の ク ラ ス タ ー α2(i=2)に
の 便 利 の た め,(4.9)式
の
対 し て は を
(4.11) と 書 くこ と に し よ う. *21 調 和 振 動 子 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 *22 第1章1
,固 有 関 数 に つ い て は,第1章1.1.1参 照. .1.1の 調 和 振 動 子 の 固 有 関 数(p.8)に お け る 調 和 振 動 子 パ ラ メ ー タ ー ν と,本
章 に お け る ν と は,定
義 が 異 な っ て い る こ と に 注 意 せ よ.
(4.9)ま
た は(4.11)式
の
は
(4.12) と書 か れ る.α ク ラ ス ター を構 成 す る4つ
の 核 子 は すべ て(0s)軌
道 に あ るか
ら,波 動 関 数 の 空 間部 分 は 完 全 対 称 とな り,荷 電 ・ス ピ ン部 分 が 完 全 反 対 称 と な るの は当 然 で あ る.空 間 部 分 の 対 称 性 を記 号[4]で 示 し,そ の配 位 を(0s)4と 表 す. 2α ク ラス タ ーの2中 心 波 動 関 数
は,
と
と
を(4.5)式 に代 入 し,
(4.13) と書 か れ る.こ こでAは
異 な る α ク ラ ス ター α1と α2に 属 す るす べ て の 核 子
間 の 交 換 に対 す る 反 対 称 化 の 演 算 子 で あ る.こ の 反 対 称 化 を行 う と,行 列 式 の 定 義 か ら,2中
心 波 動 関数 Ψ(R1,R2)は1つ
のSlater行
列式
(4.14) で 表 され る. 系 の ハ ミル トニ ア ンは,核 子 の 運動 エ ネルギ ー
と核子 間の相 互 作 用 Σ υij
とで 与 え られ,
(4.15) と書 か れ る.た だ し,わ れ わ れ の 興 味 は もっぱ ら原 子 核 の 内部 運 動 の み で あ る か ら,重 心 の 運 動 エ ネルギ ーTGは
除 か れ て い る.
2中 心 模 型 の波 動 関 数(4.14)に
よ る系
の エ ネル ギ ー 期 待 値 は 容 易 に計 算 す る こ とが で き る.2中
心 模 型 に 含 まれ て い る
パ ラ メー ター は,2つ
の α ク ラ ス ター の
中 心 位 置(R1,R2)お
よび 調 和 振 動 子 パ
ラ メ ー タ ー ν で あ る.こ れ らは 系 の エ ネ ル ギ ー期 待 値 を最 小 に す る と い う変 分 法 に よっ て きめ る こ とが で きる.す な わ ち,
=最
小値
(4.16) 図4.7
の 結 合 エ ネル ギ ー を α ク ラ ス タ ー 間 距 離dの
と す る よ う に パ ラ メ ー タ ー(R1,R2)と
関 数 と し
て 表 し て い る.
ν を き め る わ け で あ る. Y.
の 場 合 の 計 算 例 が 図4.7 に 示 さ れ て い る.図
固 定 し,2つ
and Phys.
N.
値 はd0=3.0fm程
(b) 2α 系 の2中
52
Prog. (1972)
228
の α ク ラ ス ター 間 の 相 対 距 離
を 変 え た と き の エ ネ ル ギ ー 期 待 値 の 変 化 が 描 か れ て い る.エ な るdの
Takigawa,
Suppl.
よ り.
にはエ ネルギ ーが 最 小
と な る よ う な ν=ν0を
Abe
Theor.
ネ ルギ ーが 最 小 と
度 と な っ て い る.
心 模 型 と1中
心殻模型 の関係
2中 心 模 型 の波 動 関 数(4.14)が
中心 間 の 相 対 距 離
の よ う に 変 化 す るか を調 べ よ う.特 に,d→0の
と と もに ど
と き に1中 心 殻 模 型 の 波 動 関
数 に 移 行 す る こ と に注 目 し よ う. わ か りや す くす るた め に,2つ わ ちR1+R2=0と
の α ク ラス ター の 重 心 を座 標 原 点 に と る.す な
す る.d=R1-R2と
す れ ば,
とな る. Slater行 列 式(4.14)に お け る1粒 子 軌 道 波 動 関 数 とは 互 い に 直 交 し て い な い.そ
こで,次
の よ う に直 交 す る2っ
と の波 動 関 数 に変
換 す る の が 便 利 で あ る:
(4.17a)
(4.17b) こ の 変 換 を(4.14)式
の 波 動 関 数 に 対 して 行 う と,2中
心模 型の波動 関数は
(4.18) と な る. 新 た な1粒
子 軌 道 波 動 関 数
は 互 い に 直 交 し,そ お よ び − のパリティ r→
れ ぞ れ+
を 持 つ.す
な わ ち,
−rに 対 し て φ+は 対 称,φ − は 反 対
称 関 数 で あ る.ま
た,そ
関 数 の 中 心d/2と
れ ら は2つ
−d/2の
(a)
の波動
図4.8
ま わ りの(0s)
(b) 1粒 子 軌 道 波 動 関 数 の変 換 (4.17a)の
軌 道 を,そ れ ぞ れ 対 称 お よ び 反 対 称 に 重 ね
模 式図
合 わ せ た 軌 道 へ の 変 換 で あ り,原 子 分 子 物
(a):変 換 前 の波 動 関 数.ク ラ ス ター の 中 心が d/2と −d/2に 位 置 す る非 直 交 の1粒 子 波動
理 学 で の 原 子 軌 道(atomic
関 数 φ0.(b):変 換 後 の波 動 関 数 φ+と φ−. 互 い に 直 交 す る.矢 印 を 逆 に し た逆 変換 が 変
分 子 軌 道(molecular 対 応 し て い る.こ (a)が
orbital)か
orbital)へ
動 関 数 で,互 変 換(4.17b)で
の変換に
の 変 換(4.17a)を
変 換 前 の 波 動 関 数 で,ク
に 直 交 し な い"原
子 軌 道"波
ら
換(4.17b)で
模 式 的 に 示 し た も の が 図4.8で
ラ ス タ ー の 中 心 がd/2と 動 関 数 φ0で あ る.(b)は
い に 直 交 す る φ+と
あ る.
φ− で あ る.図
−d/2に
あ る.図
位 置する互い
変 換 後 の"分
子 軌 道"波
中 の 矢 印 を 逆 に し た 逆 変換 が
あ る.
こ こ で ク ラ ス タ ー 間 の 距 離dが
小 さ い場 合
の
のふ る
まい を見 よ う.そ の た め に は 直 角 座 標 を使 って 表 し,(4.8)式
の
と
の 表 示 を用 いれ ば,
(4.19) と 表 さ れ る.し
た が っ て,d→0の
極 限 や,dが
小 さ い 場 合 に お い て は,
(4.20a) (4.20b)
とな る.こ
こ で
底 状 態,φ1は
で あ り,φ0は 調 和 振 動 子 の 基
振 動 子 の 量 子 が1個
生 成 さ れ た 第1励
起 状 態 で あ る
こ の 結 果 か ら明 らか な よ うに,対 称 な(+パ φ+(r,d)は1中
心 殻 模 型 の(0s)軌
軌 道 φ−(r,d)は1中
リテ ィの)分 子 軌 道
道 に移 行 し,反 対 称 な(− パ リテ ィの)分 子
心 殻 模 型 の(0p)軌
道 のz方
向 成 分(0p)m=0を
持 つ軌道
に 移 行 す る こ とが わ か る.こ の結 果 か ら,
(4.21) と な り,d→0の
極 限 で,
位 を持 つ8Beの
配 位,あ
る い は[(000)4(001)4]配
殻 模 型 状 態 に 比 例 し た状 態 に な る こ と を 示 して い る.*23
以 上 の結 果 か ら 明 らか に な った 大 事 な こ とは,2中 の 中心 に 近づ く(d→0)に
心 模 型 で は2中 心 が1つ
し たが って,殻 模 型 の特 定 の 配 位 が 表 現 され る(現
れ る)こ とで あ る.上 記 の 例 で は,2中
心 を結 ぶ 軸 の 方 向 に4つ
の核 子の軌 道
状 態 が(001)と
な る[(000)4(001)4]の
た が っ て,dが
大 き く2つ の α ク ラ ス ター が 互 い に そ の 表 面 が 少 し重 な り合 っ
て い る程 度 の 場 合 に は,2中
配位 を持 つ 状 態 が 現 れ る こ とで あ る.し
心 模 型 は 発 達 した2α
ク ラ ス タ ー 構 造 を表 現 し,
dが 小 さ く2つ の α ク ラ ス タ ー の 重 な りが 大 きい 場 合 に は,2α
ク ラ ス ター構
造 は 衰 退 し,殻 模 型 的 構造 の状 態 を表 現 す る こ と とな る.こ の と きの 殻 模 型 的 構 造 は,2中
心 を 結 ぶ 軸(z軸)方
向 に沿 って 核 子 密 度 が 大 き くな って い る こ と
か ら,ラ グ ビ ー ボ ー ル 状 に変 形 して い る構 造 とい う.殻 模 型 で は,そ の よ うな 変 形 の 構 造 は 通 常(x,y,z)軸
方 向 の 調 和 振 動 子 の量 子 数 の 分 布(配 置)の 仕 方
で 表現す る.そ の よ うな表現法 をSU(3)殻
模型 またはSU(3)
模 型 と い う.*24
*23 (4
.21)式
の 波 動 関 数 はd4の
因 子 を 含 む か ら,d→0の
極 限 でO(d4)の
な る が,こ の 因 子 は 規 格 化 定 数 に 吸 収 さ せ て 考 え れ ば 問 題 は な い. *24 J . P. Elliott, Proc. Roy. Soc. A245 (1958) 128, 562. J. P.
Elliott
and
M.
Harvey,
Proc.
Roy.
Soc.
A272
(1963)
557.
オ ー ダ ー で0と
(c) 2α 系2中
心 模 型 の 重 心 座標 の 分 離
前 述 した よ うに,わ れ わ れ は 特 に 原 子 核 の 内 部励 起(内 部 運 動)に 興 味 が あ る. した が っ て,系 の 全 波 動 関数 が,系
全 体 の 重 心 座 標 に 関 わ る部 分 と 内 部 座 標
に 関 わ る 部 分 と に分 離 され て い るの が 望 ま し い.こ こ で,上 述 の2α 系 の2中 心 模 型 の 波 動 関 数 か ら,重 心 座 標 を 分 離 す る方 法 を述べ て お こ う. は じめ にRiに
中心 を持 つ1つ
の ク ラス タ ー を 考 え る.ク ラ ス ター 内 の4個
の 核 子 の 位 置 を これ まで は位 置 ベ ク トル
は4核子の重心
で 表 した が,今 後
からのベクトル
表 す こ と に す る.こ れ らの ベ ク トル
で
は 重 心XiGと
は独 立
の 内 部 座 標 とな る.こ の 内 部 座 標 を用 い る と,関 係 式
(4.22a) (4.22b) (4.22c) が 得 ら れ る.こ れ ら の 関 係 式 を(4.12)式
に 代 入 す る と,中 心 位 置 がRi(i=1,2)
に あ る α ク ラ ス タ ー の 波 動 関 数 は,重
心 座 標 と内 部 座 標 が 分 離 され た 形 に 表
さ れ,
(4.23) と な る.た り,内
だ し,φ(αi)(i=1,2)は
部 座 標
各 々の α ク ラス タ ー の 内 部 波 動 関 数 で あ だ け で 書 か れ て い る.*25
以 上 の 結 果 を 用 い る と,2α
系 の2中
心模 型 の 波 動 関 数 は
(4.24) と書 か れ る.こ こでAは
反 対 称 化 演 算 子 で あ り,
(4.25a) *25 内 部 座 標 ξ κ は κ=1,2,3,4の4個
あ る よ う に 見 え るが,
自 由 度 か ら 重 心 座 標 の 分 だ け 減 っ て い て,独
で あ る か ら,全
立 な 内 部 座 標 は 実 質 的 に は3個
で あ る.
(4.25b) と す れ ば,波
動 関 数(4.24)は
(4.26a) と な っ て,重
心 座 標 が 分 離 さ れ た 形 と な る.た
だ し,
(4.26b) で あ る.
4.3.2
2中 心 調 和 振 動 子 殻 模 型
前 項4.3.1に お け る2中 心 α ク ラ ス ター 模 型 を,さ らに 一般 の軽 い ク ラス ター の2中
心 模 型 の 場 合 に 拡 張 す る.拡 張 され た2中
数 の 特 徴 は 次 の2点
で あ る:
(1) 2中 心調 和 振 動 子 殻 模 型 の波 動 関数 は,2つ の1粒
心調和振動子殻模型 の波動関
の 中心 位 置 にあ る核 ク ラス ター
子 波 動 関 数 か ら構成 され る1つ のSlater行
列 式 で 与 え られ る.
(2) 2つ の核 ク ラス ターの 調 和振 動 子 パ ラ メー タ ー ν1お よび ν2が等 しい(ν1= ν2)場 合,2中
心 調 和 振 動 子 殻 模 型 の 波 動 関 数 は,重
心 座 標 の み を 含 む部
分 と,内 部 座 標 の み で 表 され る 内部 波 動 関数 の 部 分 に 分 離 され る. これ らの2中
心 模 型 の 波 動 関 数 の 性 質 は,1中
心 調 和 振 動 子 模 型(通 常 の 殻
模 型)の 波 動 関 数 の 持 つ性 質 か ら導 か れ る の で,ま ず は じめ に1中 心 調 和 振 動 子 殻 模 型 につ い て復 習 を し て お こ う.
(a) 1中 心 調 和 振 動 子 殻 模 型 1中 心 調 和 振 動 子 殻 模 型 に つ い て は,第1章1.1.1に て い る の で,こ
お い て 詳 し く述 べ ら れ
こで は 以 下 で 必 要 と な る 要 点 の み を あ げ て お く.
原 点 を 中心 とす る調 和 振 動 子 殻 模 型 の1粒
子 ハ ミル トニ ア ンは
(4.27)
表4.2
"記 号"'は
準 位(nl)のl=0
"縮 退 度"は
で あ り,エ
調 和 振 動 子 模 型 に お け る1粒
子 状 態(N〓2)
,1,2,… を 分 光 学 の 記 号"s,p,d,…"で 表 し た も の で あ る. 状 態 数 で あ り , で 与 え ら れ る.
そ の 準 位Nの
ネ ル ギ ー 固 有 値,固
有 関数 は
(4.28) で 与 え ら れ る.い
う ま で も な く,量 子 数 α はx,y,z軸
の 量 子 数 の 組 み 合 わ せ α=(nxnynz)で る.ま
た 第1章
子 数lお
の(1.3)式
よ び そ のz成
こ れ ら の1粒
の1粒
向 き の2つ
を 入 れ る こ と が 可 能 で,結
局1つ
の1粒
殻(closed
れぞ れ に 陽子 と 中性 子 の 核 子 を 入れ る こ
状 態 に 核 子 を4個
つ め た(000)4の に核子 を
配 位 で あ る. よ びN=1の
shell)と
準 位 を 核子 が 完 全 に 占
な っ て い て 配 位 は 唯 一 で あ る.し
か し,
れ らの 準 位 を核 子 が 部 分 的 に 占 め る こ とに な
ま ざ ま な 配 位 が 可 能 で あ る.た 場 合,配
た は(nlm)
な わ ち α 粒 子 の 配 位 で あ り,
こ れ ら の 中 間 の 核 に お い て は,こ
性 子 数〓8)の
子 状 態(nxnynz)ま
子 状 態 に は 合 計4個
配 位 は そ れ ぞ れN=0お
め た 配 位 で あ り,閉
り,さ
指定 す
子 状 態 が 示 さ れ て い る.
の 状 態 が 縮 退 し,そ
つ め た(000)4(001)4(100)4(010)4が16Oの
4Heや16Oの
組 み 合 わ せ α=(nlm)で
の1粒
ネ ル ギ ー が 最 低 のN=0の
配 位(configuration)が4Heす 16個
運 動量 量
子 状 態 に エ ネ ル ギ ー の 低 い 方 か ら 順 番 に 核 子 を 入 れ て い く と,
ピ ン が 上 向 き,下
と が で き る.エ
あ
れ ら の 量 子 数 は 主 量 子 数n,角
分(磁 気 量 子 数)mの
さ ま ざ ま な 殻 模 型 の 状 態 が で き る.1つ は,ス
元調和振動子
指 定 さ れ,N=nx+ny+nzで
の よ う に,こ
る こ と もで き る.表4.2に
上 の1次
と え ば(0p)殻
核(2〓
陽子数 または 中
位
(4.29) に お い て
や
の 種 々 の 組 み 合 わ せ が 可 能 と な る.こ
れ ら の 各 々 の 配 位 に 対 す る 波 動 関 数 が1つ
のSlater行
ら か で あ る.し
配 位 は そ れ ぞ れ,た
た が っ て,4Heや16Oの
列 式 で 表 され る こ とは 明 だ1つ
のSlater
行 列 式 で 表 さ れ るが,中 わ せ と な る.す
間 の 核 の 波 動 関 数 は い くつ か のSlater行
な わ ち 第1章
の1.2で
列 式 の重 ね 合
述 べ た 配 位 混 合(configuration
mixing)
で あ る. こ こ で は1つ
の 配 位 のSlater行
る こ と と す る.i番 の 中 心 がRiに
列 式 で1つ
の 核 ク ラ ス タ ー の 状 態 を 代 表 させ
目 の 核 ク ラ ス タ ーCiがAi個
あ る も の と す る.各
の 核 子 か ら な る も の と し,そ
々 の 核 子 の 荷 電 ・ス ピ ン 状 態 を 含 む1粒
動 関 数 を
と す れ ば,ク
ラ ス タ ーCiの
子波
波 動 関数 は
(4.30) と 書 か れ る.た
だ し,
(4.31) で あ り,
は(4.28)式
で 与 え られ る 調 和 振 動 子 殻 模 型 の1粒
子 波 動 関数,
は(4.7)式 の 荷 電 ・ス ピ ン波 動 関 数 で あ る.あ と の便 宜 の た め,簡 単 な 場 合 の
の 具 体 的 な 関 数 形 を記 し て お こ う:
(4.32a)
(4.32b) こ こ で 調 和 振 動 子 パ ラ メ ー タ ー は
で あ る.
(b) 1中 心 殻 模 型 の 重 心 座 標 の 分 離 1中 心 調 和 振 動 子 殻 模 型 の 波 動 関 数 は,重 心 座 標 と内 部 座 標 に 関 す る部 分 が 分 離 され る こ とが 知 られ て い る.*26す な わ ち,(4.30)式
の 波 動 関 数
が 次 の 形 に 分 離 され る の で あ る:
(4.33) た だ し,Xiは
ク ラ ス タ ーCiを
構 成 す るAi個
の核子 の重心
(4.34) *26 J
. P.
Elliott
and
T.
H.
R.
Skyrme,
Proc.
Roy.
Soc.
A232
(1955)
561.
で あ り,
はXiを
含 まず,内 部 座 標 の み で 記 述 され る ク ラ ス ターCiの
内
部 波 動 関 数 で あ る.
(4.33)式 の よ う に,波 動 関 数 こ と を,(0p)殻
が 重 心 部 分 と 内 部 波 動 関 数 と に分 離 され る
核 の 場 合 に つ い て 説 明 し よ う.
(4.31)式 に お い て1つ
の ク ラ ス タ ー を と り上 げ,こ
の ク ラ ス タ ー を 構 成 す る1粒
波 動 関 数 を考 え よ う.簡 単 の た めRi=0と
す る.す
振 動 子 波 動 関 数 φα(r)を 考 え る.(4.32)式
に 示 し た よ う に,こ
子
な わ ち,原 点 を 中心 と した 調 和 の 波 動 関 数 はGauss
型 の 指 数 関 数 部 分 と多 項 式 の 部 分 とに 分 け ら れ て,
(4.35) と表 され る.こ
れ を(4.31),
(4.30)式 に 代 入 す る と,指
数関数 部分 は行 列式 の外 に く
く り出 す こ とが で き て,
(4.36a) (4.36b) と な る.(4.36a)式
に お け る指 数 関 数 の 部 分 は
(4.37) と 書 か れ る.(4.36),
(4.37)式
とRi=0と
置 い た と き の(4.33)式
と を 比 較 す る と,
こ の と き の 内 部 波 動 関 数 φ(Ci)は
(4.38) と 表 さ れ る.こ
の φ(Ci)が 重 心 座 標Xiを
な って い て,全
体 の 波 動 関 数(4.36a)は
含 ん で い な い な らば 真 の 内 部 波 動 関 数 に
重 心 座 標 が 分 離 され た こ と に な る.こ の こ と
を確 か め よ う. あ る 関 数が 重 心 座 標Xiを け 平 行 移 動 させ た と き,す
含 な い と い う こ とは,す べ て の 粒 子 の 座 標 を 一 様 にaだ なわち
(4.39) と し た と き,そ の 関 数 がaに とでrκ-Xiが
よ らず 不 変 で あ る とい うこ とで あ る.こ
不 変 で あ る こ とは 明 らか で あ る か ら,φ(Ci)の
の平 行移 動の も
中の指数 関数 部分は不
変 で あ る.し
た が っ て,残
移 動(4.39)に
対 し て 不 変 で あ る こ と を示 せ ば よい.
い わ ゆ るp殻
核(2〓
が 平行
りの 行 列 式 の 部 分det
陽 子 数 ま た は 中性 子 数 〓8)の
場 合,配
位(4.29)に
行 列 式 部 分 が 不 変 で あ る こ と を示 そ う.こ の 行 列 式 を構 成 す るAi個 通 し番 号k=1,2,…,Aiを の 部 分 の1粒 はPαk(r)=1で
で あ る.ま
付 け,最 初 の4つ
子 状 態 とす る.こ れ ら4つ
たk=5,6,…,Aiの
子波動 関数の 多項式 部分
対 す るPCik(rk)は,そ
軌 道 状 態 は(001),(100),(010)の
そ れ ら の 多 項 式 部 分 は(4.32b)式
対 して 子状態に
の 状 態k=1,2,3,4を(000)4=(0s)4
の 状 態 に 対 す る1粒
あ る か ら,k=1,2,3,4に
の1粒
れ ぞれ
いず れ か で あ り,
の φ1(x)で 与 え られ る.し た が っ て,こ れ ら の1粒
子 波 動 関 数 の 多 項 式 部 分 の 平 行 移 動(4.39)に
よ る変 化 は,a=(ax,
ay, az)と す れ ば,
(4.40a) (4.40b) (4.40c) (4.40d) と な る.こ
れ ら の 結 果 か ら,行
列 式 部 分 は 平 行 移 動(4.39)に
より
(4.41) と な る.た だ し,
はax,
は い て,行 1行-4行
ay, azの いず れ か で あ り, の い ず れ か で あ る.行
を状 態 番 号,列
を粒 子 番 号 と す る と,5行-Ai行
列 式(4.41)に
お
の 定 数 に 比 例 す る 部 分 は,
に 比 例 す る こ と に な り,行 列 式 の 性 質か ら こ れ ら の 寄 与 は0と
な る.し
た
が っ て,
(4.42) が 成 り立 ち,平 行 移 動(4.39)の
も とで 行 列 式 部 分 は 不 変 で あ る こ とが わ か る.つ
波 動 関 数 φ(Ci)は 確 か に 重 心 座 標Xiを さ ら に,調
和 振 動 子 殻 模 型 に お け るsd殻
場 合 に も,(0s)殻 され る.
芯,(0p)殻
ま り,
含 ん で い な い. 核(8〓
陽 子 数 ま た は 中 性 子 数 〓20)の
芯 が 閉 殻 で あ る 限 り,(4.33)式
の よ うに 重 心 座 標 が 分 離
(c) 2中 心 模 型 のSlater行 2中 心 模 型 の2つ
列式
の ク ラ ス ター の そ れ ぞ れ の 波 動 関 数 が(4.30)式
つ のSlater行
列 式 で 与 え られ る な らば,全
つ のSlater行
列 式 で 表 され る こ と を 示 そ う.波 動 関 数
の よ う に1
体 の 波 動 関 数
も また1 は
(4.43) と 書 か れ る.た
だ し,Aは
2式 に お け る 反 対 称 化Aは,異 べ て に わ た っ て 行 わ れ,そ Pに
符 号 因 子(-1)P(=1(偶
系 の 全 粒 子 数A=A1+A2で な る ク ラ ス タ ーC1, れ は 第3式
あ る.(4.43)式 C2に
な ら な い.し
た が っ て,全
属 する核子の置換
置 換 の と き))を 付 し て す べ
て の 置 換 に つ い て の 和 を と る こ と に よ っ て な さ れ る.こ 行 列 式 をA1×A1とA2×A2の
属 す る核 子 の組 の す
に お け るC1とC2に
置 換 の と き),-1(奇
の 第3式
行 列 式 に 分 解 す るLaplaceの 系 の 波 動 関 数 は1つ
の 第
のSlater行
はA×Aの
展 開定 理 に ほ か 列 式 で 表 さ れ,
(4.44) と書 か れ る.こ のSlater行
列 式 を用 いれ ば,全 系 の 核 子 に 関 す る物 理 量 の期 待
値 や 行 列 要 素 が 容 易 に計 算 で き る.
(d) 2中 心 模 型 の 重 心 座 標 の 分 離 1中 心 模 型 に お け る重 心 波 動 関 数 と内 部 波 動 関 数 を分 離 した 形 式(4.33)を い れ ば,2中
心模 型の全波動関数 は
用
(4.45) と な る.た れ2つ
だ し
お よ び
はそれぞ
の ク ラ ス タ ー に 属 す る 核 子 の 重 心 で あ る.
2つ の ク ラ ス タ ー を 構 成 す る 調 和 振 動 子 パ ラ メ ー タ ー ν1と な わ ち
ν2が 等 し い,す
の 場 合 に は,
(4.46a) と な る.こ
こ で
で あ る.ま
た,
(4.46b) (4.46c) で あ る.し た が っ て,こ の 場 合 の全 系 の 波 動 関 数 は 重 心 座 標 が 分 離 され て,
(4.47) とな る.こ
こで 重 心 座 標 の 部 分 を反 対 称 化 演 算 子Aの
きた の は,そ
の 演 算 に 対 してXGが
不 変 で あ る か らで あ る.
調 和 振 動 子 パ ラ メ ー タ ーが2つ ち
の と き に は,重
外 に く く り出す こ とが で
の ク ラ ス タ ー に よ っ て 異 な る と き,す な わ
心 座 標 は(4.47)式
の よ うに 簡 単 に は 分 離 され な い.
の場 合 に お い て 波 動 関 数か ら重 心 座 標 を取 り除 き,内 部 座 標 の み を含 む 内部 波 動 関 数 を作 る に は,複 雑 な 変 換 が 必 要で あ り実 際 的 で は な い.し た が っ て ν1=ν2を
仮 定 し て,(4.47)式
の よ う に重 心 座 標 が 簡 単 に分 離 で き る利 点 を
活 用 す るの が 模 型 と して 有 利 で あ る. 重 心 座 標 部 分 が 分 離 され て い る波 動 関 数(4.47)の な くて す む 点 で あ る.通 常,ク をRG=0と
利 点 は,重 心 座 標 を 考 え
ラ ス タ ー の 中 心 を 示 す パ ラ メ ー タ ーR1,R2
な る よ う に と る.こ
の 場 合,波
動 関 数 の重心 座 標部 分 は常 に
で あ る か ら,
と な る.一
方,物 理 的 な演 算 子Oは
重 心 座 標 を含 まな いの で,Oの
行 列 要 素 を計 算 す る に
あ た っ て,波 動 関 数 の 重心 座 標 部 分 は 考 え な くて よい.す
なわ ち,RG=0の
条 件 下 で,
(4.48) と な る.N0,N0'は
そ れ ぞ れ ブ ラ お よ び ケ ッ トベ ク トル の 規 格 化 定 数 で あ る.
(e) 多 中 心 模 型 へ の 拡 張 上 述 の2中
心 模 型 を 多 中心 模 型へ 拡 張 す る こ と は容 易で あ る.3中
例 に あ げ て,そ
心模型 を
の 要 点 を示 そ う.
3中 心 の 位 置 を示 す パ ラ メー ター(R1,
R2, R3)を,図4.6と(4.4)式
れ るパ ラ メー ター
に示 さ
に 変換 す る と,2中
の 場 合 の 波 動 関 数(4.47)に
対 応 して,3中
心 模 型 波 動 関 数
心模 型 は
(4.49a) (4.49b) と な る.た
だ し,
(4.49c) で あ る.(4.44)式 心 の 波 動 関 数 1つ のSlater行
の2中
心 の 波 動 関 数 Ψ(R1, も,3中
心 の1粒
R2)と
同 様 に,(4.49a)式
の3中
子 軌 道 殻 模 型 波 動 関 数 か ら成 る
列 式 で 表 さ れ る こ と は 明 ら か で あ る.
(4.49c)式
の よ う な 座 標 の 取 り方 は,任
こ とが で き る.こ Jacobi座
意 の数 の多 中心 の場 合 に順 次 拡 張す る
の よ う な 座 標 をJacobi座
標 を 用 い れ ば,一
般 のn中
標(Jacobi
心 波 動 関 数
式 と 同 様 な 形 の 重 心 分 離 型 に 表 さ れ る こ と は,ほ
(f) 2中 心 模 型 の1体
お よび2体
子 波 動 関 数 のSlater行
る.こ れ らの1粒
呼 ぶ.
が,(4.49a)
と ん ど 自 明 で あ る.
演 算子の行 列要素
2中 心 模 型 の 波 動 関数 は,(4.44)式 わ りの1粒
coordinates)と
に 示 す よ うに,2つ 列 式,あ
の 中心(R1,
子 波 動 関数 は 互 い に 直 交 す るわ け で は な い.多
ミル トニ ア ン や そ の 他 の 物 理 演 算 子 は,1体
R2)の
ま
る い は そ の 重 ね 合 わせ で 与 え られ
ま た は2体
くの 場 合,ハ
演 算 子 と し て 与 え られ
る.し た が っ て非 直交 の1粒 子 波 動 関 数 に よ って 構成 され るSlater行 列 式 に よ る,1体
お よ び2体 演 算 子 の 行 列 要 素 を計 算 す る方 法 につ い て 述べ よ う.
全 系 の ハ ミル トニ ア ンHは,重 ギ ーTと
核 子 間の2体
心 運 動 エ ネ ル ギ ー を 除 いた 内 部 運 動 エ ネ ル
相 互 作 用Vで
次 の よ うに 与 え られ る もの とす る:
(4.50a) (4.50b) こ こで ∇2iは 粒 子iの 座 標 に 関す る ラ プ ラ シ ア ン,∇2Gは
重心座標 に関す るラ
プ ラ シ ア ンで あ る. 2体 相 互 作 用Vを
中 心 力 に 限 る もの とす れ ば,1,2番
目の 核 子 間力 の ポ テ
ンシャルは
(4.51) と書 か れ る.定
数WはWigner力(普
通 の 中 心 力)の 強 さで あ る.定 数B,H,M
は そ れ ぞ れBartlett力,Heisenberg力,Majorana力
の 強 さ を 表 す.こ
種 類 の 力 が 交 換 力(exchange
子 の ス ピン座 標 を交換 す
forces)で
あ る.PBは2核
るBartlett演
算 子,PHは
演 算 子PMは
位 置 座 標 の み を 交 換 す るMajorana演
れ ら3
位 置 座 標 と ス ピ ン 座 標 を と も に 交 換 す るHeisenberg 算 子 で あ る.2核
ン 座 標 お よ び ア イ ソ ス ピ ン 座 標 を 交 換 す る 演 算 子Pσ,P〓
は,そ
子 の スピ
れぞれ
(4.52)
と表 され る か ら,PB=Pσ
で あ る.核 子 は フ ェ ル ミオ ン で あ り,位 置 と ス ピ
ン と ア イ ソ ス ピ ン座 標 の す べ て の 交 換,す
な わ ち粒 子 の 交 換 に対 して 反 対 称
で な け れ ば な ら な い か ら,
と な り,し た が っ て
で あ る. ハ ミル トニ ア ン(4.50)は 次 の よ うに1粒 子 演 算 子 と2粒 子 演 算 子 に分 け る こ とが で き る:
(4.53a) (4.53b) 以 下 に お い て,非 直 交1粒 子 波 動 関 数 か ら作 られ るSlater行 列 式 に よ る行 列 要 素 の 計 算 法 を述 べ る.2つ
のSlater行
列式
(4.54a) (4.54b) を 考 え る.た だ し, 2組 の 非 直 交1粒
お よび
子 波 動 関 数 で あ る.物 理 演 算 子Oは
は, 核 子 の 交換 に 対 して 完 全
に 対 称 で あ るか ら 次 式が 成 り立 つ:
(4.55)
重 な り積 分 ま ず,波
動 関 数 Φ と Ψ の 重 な り積 分(overlap
式 に お い てO=1と
integral)を
求 め よ う.(4.55)
置 く と,
(4.56)
と な る.第2式
は(1,2,…,A)の
て の 和 を 意 味 し,符 で あ る.ま
す べ て の 置 換(P(1),P(2),…,P(A))に
号 因 子 は(-1)P=1(偶
たBは1粒
つい
置 換 の と き),=-1(奇
置 換 の と き)
子 状 態 の 重 な り積 分
(4.57) を行 列 要 素 とす る 行 列,│B│は
そ の 行 列 式 で あ る.
1粒 子 演算子 の行列 要素 1粒 子 演 算 子 を
と な るが,右
とす る.こ
れ を(4.55)式
辺 の積分
分 の 行 列 式│B│の
第i行
に 代 入 す る と,
は,(4.56)式 を
の 重 な り積
で 置 き換 え た もの に
な っ て い る.こ の 第i行 に つ い て 展 開 す る と(Laplaceの
展 開 定 理),
(4.58) が 得 られ る.た
だ し,(B-1)jiは
行 列Bの
逆 行 列B-1の(ji)行
列 要 素 で あ る.
2粒 子 演 算 子 の 行 列 要 素
2粒子演算子 計 算 の 都 合 上,あ
の行列要素を求める.いま
る1粒 子 状 態 の 完 全 系
と にす る.こ れ を用 い る と,2粒
を導 入 す る こ
子 演 算 子Oijは
(4.59a) (4.59b) と 表 さ れ る.こ
の 表 示 を 使 う と,
となるが,右 辺の最後の積分
は,
(4.56)式の行列式│B│の 第i行 を で置き 換え,第j行 を で置き換えたものになって いる.この行列式の第i行 と第j行 について展開すると(Laplaceの展開定理),
が 得 られ る.し た が っ て最 終 的 に2粒 子 演 算 子Oの
行列 要素は
(4.60) と な る.
(g) 荷 電 ・ス ピ ン 飽 和 配 位 の 場 合 の 行 列 要 素 α,16Oや40Caな はZ=N=偶
ど を1つ
の ク ラ ス タ ー と 考 え る と,こ
数 で あ り,1つ
の 空 間 状 態 に 属 す る4つ
状 態(n↑),(n↓),(p↑),(p↓)の
量 数Aiを
の 異 な る 荷 電 ・ス ピ ン
す べ て を 核 子 が 占 め て い る.こ
を 荷 電 ・ス ピ ン 飽 和 配 位(saturated わ ち,質
れ ら の核 ク ラ ス ター
spin-isospin
持 つ 核 ク ラ ス タ ーCi(i=1,2)に
態
が あ る と し て,1つ の4つ
configuration)と
い う.す
対 し,Ai/4個
な
の 空 間状
の 空 間 状 態 に 対 し
の 荷 電 ・ス ピ ン ・空 間 状 態(こ
1粒 子 状 態 と い う)の す べ て を 核 子 が 占 め て い る こ と に な る.こ
ス ピン飽和配位 を
の よ う な配 位
と表す こ とにす る.
れ を ま とめ て の よ うな 荷 電 ・
荷 電 ・ス ピ ン飽 和 配 位 を持 つ2つ
の ク ラ ス タ ー か らな る2中
心模型 波動 関
数 は,
(4.61) と書 か れ る.こ れ ら の 表 記 の 順 序 を荷 電 ・ス ピ ン状 態 を 共通 に す る もの の 順 に 並 べ 替 え る と,
(4.62) と書 く こ と が で き る. (4.61)式
の Φ と 同 様 に,も
う1つ
の 荷 電 ・ス ピ ン 飽 和 配 位
を 持 つ2中
心模
型 の 波 動 関数
(4.63) を考 え,こ れ らの 波 動 関 数 Φ お よび Ψ に よ る物 理 演 算 子 の 行 列 要 素 の 計 算 を 行 う. 重 な り積 分 Φ を構 成 す る1粒 子 状 態
お よび Ψ を構 成 す る1粒
子 状 態
の重 な り積 分 は
(4.64a) (4.64b)
と な る.Bi1t1s1 びDと
,i2t2s2お
よ びDi1i2を
行 列 要 素 と す る 行 列 を そ れ ぞ れBお
よ
す る と,
(4.65) と な る.行
列Bは,(A/4×A/4)の
列 で あ る.行
列Bの
小 行 列Dを
逆 行 列B-1も
ま たDの
対 角 成 分 と す る(A×A)の 逆 行 列D-1を
行
用 いて
(4.66) と表 され る.以 上 の結 果 か ら2つ の2中
心 模 型 波 動 関 数 Φ,Ψ の 重 な り積 分 は
(4.67) とな る.た だ し,│B│お
よび│D│は,そ
れ ぞ れ 行 列Bお
よびDの
行 列 式 で あ る.
2体 相 互 作 用 の 行 列 要 素 (4.53)式 の ハ ミル トニ ア ンの 中 の1体 演 算 子 の 部 分 の 行 列 要素 は 簡 単 で あ る の で 割 愛 し,2体
相 互 作 用 の 部 分 の み の 結 果 を示 し て お こ う.
2体 相 互 作 用Vを
交 換 力 を含 む 中心 力 に 限 定 す る と,(4.51)式
の よ うに 表 さ
れ るの で,
(4.68) と書 か れ る.演 算 子P〓 お よびPσ は,そ れ ぞ れ 荷 電(ア イ ソ スピ ン)お よび ス ピ ン の 交 換 演 算 子 で あ るか ら,
(4.69a) (4.69b) が 成 り 立 つ.こ
れ ら を(4.60)式
に 用 い れ ば,
(4.70)
が 得 ら れ る.た
だ し
(4.71) で あ る.
この よ うに,荷 電 ・ス ピ ン飽 和 配 位 を 持 つ2中 心 模 型 の 波 動 関 数Φ,Ψ に対 す る重 な り積 分(4.67)や
行 列 要 素(4.70)に
に関 す る計 算 は す で に完 了 し,残
お い て は,ア
イ ソ ス ピ ン とス ピ ン
りの 空 間 軌 道 状 態 に 関す る計 算 の み を行 え ば
よい こ とに な る.
(h) 近 接 した 極 限 に お け る2中
心 模 型 波 動 関数
2つ の ク ラ ス タ ー の 中 心間 の 距 離 をR=│R1-R2│と
す る.2つ
タ ー が ち ょ う ど 接 触 す る 程 度 の 距 離
に な る と,2中
型 の 波 動 関 数Ψ(R1,R2)は え ら れ る.そ R→0の
れ で は2ク
よ く発 達 し た2体
の 場 合 に つ い て 前 述 し た よ う に,そ
い う よ り ほ と ん ど 重 な っ た)
ど の よ う に な る で あ ろ う か.8Be=α+α の 答 え は,R→0の
極 限 に お い て1中
和 振 動 子 殻 模 型 の 波 動 関 数 に 帰 着 す る と い う こ と で あ る.8Be=α+α に つ い て は す で に 述 べ た の で,こ
心模
ク ラ ス ター 構 造 を表 現 す る と考
ラ ス タ ー 間 が 近 接 し た(と
極 限 で は,Ψ(R1,R2)は
の クラス
こ で は
心調 の場合
の場合について見てみ
よ う.
模 型 の2中
と る と,
心間 相 対 ベ ク トル をR=R1-R2と と な る か ら,2中
す る.重 心 位 置 を 原 点 に 心 模型 波動 関数 は
(4.72) となる.Aは
反対 称化演 算子 で あ る.規 格 化定 数Noは
(4.73)
で きめ ら れ,行
列Dは
(4.74) で 与 え ら れ る.│D│はDの
行 列 式 で あ る.た
だ し,1粒
子 軌 道 状 態(000)"お
よび
(nxnynz)'は
(4.75) で あ る.(4.32)式
の1粒
子 波 動 関 数 を用 い る と,
と な る か ら,
が 得 ら れ る.簡
単 の た め,ベ
す る.(4.75)式
の(000)"を(00nz)'で
ク トルRをz軸
と な る.こ れ らの 結 果を(4.72)式
とな る.し
た が っ てR→0に
に 沿 っ た 方 向 に と り,R=(0,0,R)と
展 開 して
に代 入 し,
の 場 合 の 波 動 関 数 を求 め る と,
お い て 次 の 結 果 が 得 られ る:
(4.76) (4.76)式 で 示 した よ うに,R→0の
極 限 で の2中
心 模 型 の波 動 関 数 は,1中
心 調 和 振 動 子 殻 模 型 の波 動 関 数 に ほか な らな い. 調 和 振 動 子 模 型 に お け る多 粒 子 基 底 状 態 は,通 常SU(3)対 子 数(λ,μ)で 分 類 され る.こ の量 子 数(λ,μ)と,3軸
称 性 を表 現 す る量
方向の調和振動 子量子数
(Nz,Nx,Ny)と
は 次 の よ う な 関 係 が あ る.い
ま,(x,y,z)軸
が
と な る よ う に と ら れ て い る も の と し て,
(4.77) で あ る.こ れ らの 関係が 図4.9に 簡単 に図 示 され て い る.図 の3本 の水 平 の棒 グ ラ フ が,そ れ ぞ れ 核 子 に よって 占有 され て い る 3軸 上 の 調和 振 動 子 の状 態 を表 し,し た が って棒 グ ラ フの 長 さが 量 子 数Nz,Nx,Ny 図4.9
を表 す.3軸
に共通 して粒子が 占めてい
る 配 位 の 部 分(〓Nyの け られ て い る.こ
部 分)に 影 が つ
の 部 分 の 配位 は 調 和 振
動 子 殻 模 型で の 閉 殻 配 位 に対 応 して い て, SU(3)変
SU(3)の
量 子 数(λ,μ)と
調和 振 動
子 量 子 数(Nz,Nx,Ny)と 3本 の 棒 グ ラ フが,占
の 関係
有 され て い る3軸
調 和 振 動 子の 状 態 を 表 し,し フ の長 さが 量 子 数Nz,Nx,Nyを
上の
た が っ て棒 グ ラ 表す.3軸
と もに 核 子 が 占 め て い る配 位(〓Nyの
部分)
に 影 が つ け られ て い る.
換 に 対 して 不 変 で あ る の で,実
質 的 に 必 要 な 量 子 数 は(Nz,Nx,Ny)の3つ
で は な く,(λ,μ)の2つ
となって
い る.
た と え ば(4.76)式 (λ,μ)=(8,0)で
の 波 動 関 数 で は,Nz=12,Nx=Ny=4で
あ るか ら
あ る.こ の 内 部 波 動 関 数 に お け る核 子 の 密 度 分 布 は,z軸
方向
に伸 び た 軸 対 称 な ラグ ビ ー ボ ー ル 型 に変 形 して い る.こ の よ う に変 形 に対 応 す る量 子 数(λ,μ)を 持 つSU(3)殻
模 型 の 内部 波 動 関 数 は,系 の 全 角 運 動 量 の 固有
状 態 で は な い.こ の 波 動 関 数 か ら全 角 運動 量 の 固 有 状 態 を 作 るた め に は,次 節 で 述 べ る角 運 動 量 射 影 が 必 要 と な る.上 記 の(λ,μ)=(8,0)の ら射 影 され て で き る状 態 の 角 運 動 量 は,L=0,2,4,6,8で は20Neの
内部波動 関数か
あ る.こ れ らの状 態
基 底 回転 バ ン ド と呼 ば れ る状 態 に よ く対 応 す る こ とが 知 られ て い る.
4.3.3 パ リテ ィ射 影 と 角 運 動 量 射 影 本 節 で これ まで に議 論 して き た ク ラ ス ター 模 型 波 動 関 数 は,一 般 に 定 ま った パ リテ ィや 角 運 動 量 の 固 有 状 態 で は な い.こ れ らの 波 動 関 数 は,核 子 が 原 子 核 内で ク ラ ス ター 化 す る 相 関 や,成 長 し た ク ラス ター 構 造 を 自然 にか つ 直感 的 に わ か りや す く記 述 す る こ と を第 一 目標 に し た 結 果,ハ
ミル トニ ア ン の持 つ 空 間
反 転 不 変 性 や 回転 不 変 性 の よ うな 対 称 性 を と りあ えず 無 視 し て い る.し か し, 実 際 の 原 子 核 の 状 態 を よ りよ く記 述 す る た め に は,こ れ らの 波 動 関 数が 定 ま っ た 角 運 動 量 や パ リテ ィ を持 つ よ うに す る こ とが 望 ま しい.本 項 で は,こ れ ら模 型 波 動 関数 の 反 転 対 称 性 や 回 転 対 称 性 を 回 復(restore)す る方 法 と し て,射 影 法(projection
method)*27に
つ い て 述べ よ う.
(a) パ リテ ィ射 影 模 型 波 動 関 数Φ が パ リ テ ィの 固 有 状 態 で は な い も の と し よ う.空 間 反 転(space inversion)の
演 算 子 をPと
す る と,
(4.78) と な り,P2=1で
あ る.
波 動 関 数Φ か ら,パ 作 る に は,Φ
リ テ ィ が+ま
た は-に
に 射 影 演 算 子(projection
定 ま っ た 模 型 波 動 関 数Φ(±)を
operator)(1±P)/2を
作 用 さ せ,
(4.79) と す れ ば よ い.こ
れ を パ リ テ ィ射 影(parity
projection)と
呼 ぶ.
(b) 角 運動 量 射 影 角 運 動 量 射 影 法 に つ い て は,す
で に 第3章
の3.4.6で
説 明 し た の で,こ
こで
は 重 複 を 避 け て 簡 単 に 述 べ る こ と に す る.*28
模 型 波 動 関 数 Φ が 角 運 動 量 の 固 有 状 態 で は な い もの とす る.本 節 で 考 えて き た2中 心 模 型 の 波 動 関 数,た る.2中
と えば(4.24),(4.44),(4.45)式
心 模 型 を例 に し て説 明 し よ う.2中
とす る.模 型 波 動 関 数Φ に お け るRの 回 転 させ た波 動 関 数 はR(Ω)Φ 付 録Aに
心 の 相 対 ベ ク トルをR=R1-R2
方 向 をEuler角
と表 され る.た だ し,
お け る回 転 演 算 子(A.9)で
な どが そ の 例 で あ
だけ は
あ る.系 の ハ ミル トニ ア ンは 回転 不 変 で あ
るか ら,状 態 ベ ク トル
に よ るエ ネ ル ギ ー期 待 値
はEuler角Ω
たが ってRの
特定のも 方 向 に は 特 別 な優 位 性 は
な く,さ まざ ま な方 向 Ω に 関す る重 み 関数
をか け て重 ね 合 わせ る こ
*27 R *28 p
. E.
に 依 存 し な い.し
Peierls
. 224参
照.
and
J. Yoccoz.
Proc.
Phys.
Soc.
A70
(1957)
381.
とに よ っ て,角 運 動 量 の 固 有 状 態 に す る こ とが で きる.す な わ ち
(4.80) とす る と,ΨJMは
角 運 動 量 の 固 有 状 態 に な っ て い る.演 算 子PJMKが
動 量 の 大 き さ とz成 章 の(3.423)式
分,(J,M),の
状 態 へ の 射 影 演 算 子 で あ る こ と は,す で に 第3
で 示 し た 通 りで あ る.こ
projection)*27で
系の全角運
れ が 角 運 動 量 射 影(angular-momentum
あ る.
模 型 波 動 関 数 Φ が き まっ た 量 子 数K(波
動 関 数Φ に お け る 角運 動 量 のz軸
方 向 の 成 分)を 持 つ 場 合 に は,Φ=Φ(K)と
書 くこ とが で き るの で,そ
の場 合
の角運動量射 影は
(4.81) と書 か れ る.し か しΦ が 異 な るKの よっ て,同 一 の(J,M)の が 得 られ,Kの
値 を含 む よ うな場 合 に は,角 運動 量射 影 に
固 有 状 態 で あ りなが ら,異 な るKを
持 つ 状 態ΨJMK
混 合 を 考 え な け れ ば な らな くな る.こ の 点 につ い て は,問 題 ご
とに 考 慮 され る で あ ろ う.
(c) 内 部 状 態 の 対 称 性 とパ リテ ィ ・角 運 動 量射 影 α や16Oの
よ う な 閉殻 核 ク ラス ター か ら な る系 で,ク
ラ ス タ ー構 造 の 内 部 波
動 関 数 の 持 つ対 称 性 とパ リテ ィ ・角 運 動 量 射 影 との 間 に ど の よ うな 関 係 が あ る か を,2つ
の 具 体 例 を 通 じ て 示 そ う.な お 空 間 座 標 の 原 点 は 重 心 の 位 置 に とる
もの とす る. [I] α+16O系
2つ の ク ラス タ ー の 中 心 位 置 を結 ぶ 方 向 をz軸 と16Oは
とす る(図4.10(a)参
異 種 ク ラ ス タ ー であ るか ら,こ の 場 合 の2中
照).α
心模型 波動 関数はパ リ
テ ィ射 影 に よっ て ± 両 方 の パ リテ ィの 固 有 状 態
(4.82) が 得 られ る.Pは α+16Oの2体
空 間反 転 の 演 算 子 で あ る. ク ラ ス ター 系 の 内 部 波 動 関 数 Φ が 持 つ 対 称 性 には 次 の2つ が
あ る: (I-1) z軸 まわ りの 回 転 対 称 性(軸 対 称 性).
(b)
(a) 図4.10
(a)α+16O系,お
(I-2) xz平 [II] 正3角
よび (b)正3角
形 配 置3α
系 の ク ラス ター 構 造 の 模 式 図
面 に 関 す る 反 転(σv(xz):(x,y,z)→(x,-y,z))対 形 配 置 の3α
3α が 正3角
称 性.
系
形 に配 置 され て い る系を 考 え る(図4.10(b)参
照).こ の 場 合 の
3中 心 模 型 の 内 部 波 動 関 数 は 次 の よ うな 対 称 性 を持 って い る: (II-1) z軸 の ま わ りの 角 度2π/3お (II-2) y軸
の ま わ りの 角 度π
(II-3) xy平
回 転 に 対 す る不 変 性.
の 回 転 に 対 す る 不 変 性.
面 に 関 す る 反 転
これ ら[I],[II]の2つ 性 が,パ
よ び4π/3の
対 称 性.
の 場 合 を例 に と っ て,上 記 の 内部 波 動 関 数 の 持 つ 対 称
リ テ ィ ・角 運 動 量 射 影 し た 波 動 関数 の 性 質 に ど の よ う な影 響 を もた ら
す か を 以 下 で 検 討 し よ う. ま ずz軸
ま わ りの 回 転 に つ い て 述 べ て お く.z軸
般 的 な 回 転 の 演 算 子(A.9)に た も の で あ り,し 数Φ
お い て,Euler角
を θ1=θ2=0,θ3=θ
た が っ て 回 転 演 算 子
を 回 転 させ,重
み 関 数
ま わ りの 角 度 θの 回 転 は,一
で 生 成 さ れ る.い
と置 い
ま,模
型波動関
を か け て 重 ね 合 わ せ,
(4.83) を作 る と,Φ(K)は
角 運 動 量 のz成
分Jzの
固 有 値Kの
固有 状 態 で あ り,
(4.84) と な る.し Kの
た が っ て,演
算 子PKは
模 型 波 動 関 数Φ
固 有 状 態 へ 射 影 す る 射 影 演 算 子 で あ る.こ
と 呼 ぶ.(4.84)式
の 証 明 は 容 易 で あ る か ら,各
ま た はΦ(±)か
の 射 影 をK射
らJzの
固 有値
影(K-projection)
自 試 み ら れ た い.
注 目 しな けれ ば な ら な い こ とは,(4.80)式 で 与 え られ た 角 運 動 量 射 影が,す で に(4.83)式 のK射 影 を含 ん で い る こ とで あ る.付 録Aに お け る 回転 演 算子 (A.9)とD関
数(A.16)の
具 体 的 な 形 を参 照 す る と,角 運 動 量 射 影 が
(4.85) と書 か れ る こ とが 容 易 にわ か る.す な わ ち,角 運 動 量 射 影 に お い てEuler角 第3成
分 θ3に 関 す る重 ね 合 わせ は,K射
の
影 に ほ か な らな い.
以 上 の 諸 点 を 考 慮 し な が ら,(Ⅰ-1),(Ⅰ-2),(Ⅱ-1),(Ⅱ-2),(Ⅱ-3)の
対称性 か ら
引 き 出 さ れ る パ リ テ ィ ・角 運 動 量 射 影 さ れ た 波 動 関 数 の 性 質 を 議 論 し よ う.
z軸 まわ りの 回転 対 称 性 この 対 称 性 は
(4.86)
(任 意 の 回転 角 θに 対 し) と 表 さ れ る.こ
れ を(4.83)式
に 代 入 す る と
が 得 ら れ る の で,
(4.87) と な る.
z軸 まわ りの 角 度2π/Nの
回 転 に 対 す る不 変性
こ の 不 変 性 は
(4.88) と 表 さ れ る.こ
れ を(4.83)式
る の で,
に 代 入 す る と の み を と る こ とが で き る.す
が得られ なわ ち
(4.89) と な る.
xz平 面 に 関す る反 転 不 変 性 xz平
面 に 関 す る 反 転(σv(xz):(x,y,z)→(x,-y,z))は,空
(x,y,z)→(-x,-y,-z))とy軸
間 反 転(P:
の ま わ り の 角 度 π の 回 転((x,y,z)→(-x,
y,-z))を て,こ
合 成 し た もの と な る.す
な わ ち
で あ る.し
たが っ
の 変 換 に対 す る不 変 性 は
(4.90) と 書 か れ る.こ
の 第2式
か ら
(4.91) が 得 ら れ る. (4.91)式 は 次 の よ う に して 導 か れ る.(4.90)式
から
(4.92) と な る.し
た が っ て,次
式 が 得 られ る:
(4.93) と こ ろが 一 般 に,任
意 のEuler角Ω0に
対 して
(4.94) が 成 り立 つ.こ
の 関 係 式 は,PJMKが(3.423)式
こ とか ら容 易 に 証 明 で き る.(4.94)式
の よ う に 表 され る射 影 演 算 子 で あ る
を(4.93)式
に 用 い る と,
(4.95) と な っ て(4.91)式
が 得 られ た.な お(4.95)式
d関 数 の 性 質(A.19d)に
お い て,θ2=0と
の 最 後 の 関係 は,付 録Aに
示 され て い る
し た と きの
を使 っ て 得 ら れ た. さ て,(4.91)式
に お い てK=0と
す る と,
(4.96) が 得 ら れ る.こ の 関係 式 か ら 次 の 結 果 が 得 られ る:
(4.97a) (4.97b)
α+16Oな
ど の2体
α+16Oの
ク ラ ス ター 系 の対 称 性
よ う な 異 種 の2体
う に,(Ⅰ-1)のz軸
ク ラ ス タ ー 系(図4.10(a)参
ま わ りの 回 転 対 称 性 と(Ⅰ-2)のxz平
と を み た し て い る.し
た が っ て,こ
動 関 数PJMKΦ(±)はK=0で 0ま た は 偶 数(奇 数)の
照)は,前
述 した よ
面 に関 す る 反 転 対 称 性
の 場 合 の パ リ テ ィ ・角 運 動 量 射 影 さ れ た 波
あ り,パ
リ テ ィが+(-)に
み が 残 る こ と に な る.つ
対 し て 角 運 動 量Jが
ま り 異 種 の2体
ク ラ ス ター 系 に
お い て は,
(4.98) の 状 態 の みが 許 され る. α+α +パ
の よ うな 同 種 の2体
リテ ィ射 影 を 行 う と
ク ラス ター 系 の 場 合 に は,パ
リ テ ィ し か 残 ら な い の で,Jπ=0+,2+,4+,6+,…
正3角
形 配 置 の3α 系 の 対 称 性
正3角 は,一
の み が 許 さ れ る.
形 配 置 の3α 般 にD3h対
系(図4.10(b)参
照)の 持 つ 対 称 性(Ⅱ-1),(Ⅱ-2),(Ⅱ-3)
称 性 と 呼 ば れ る も の で あ る.こ
運 動 量 射 影 さ れ た 波 動 関 数 で(Ⅱ-1)の2π/3回 は,(4.89)式
か らK=0,±3,…
の 系 に 対 し て,パ
リ テ ィ ・角
転 不 変 性 を課 して 生 き残 る 状 態
で あ る.す
なわ ち
(4.99) で あ る.
(Ⅱ-2)のy軸
まわ りの π の 回転 に 対 す る不 変 性 を,パ
リテ ィ射 影 し た 波 動 関
数 に 適 用 す る と,
(4.100) が 得 ら れ る.(4.90)式
か ら(4.91)式
を 導 い た の と 同 様 な や り方 で
(4.101) を 得 る.こ
こ でK=0と
お く と,(-1)J=1を
み た すJの
み が 残 っ て,
(4.102) と な る.
(Ⅱ-3)のxy平
面 に 関 す る 反 転 σh(xy)に
対 す る不 変 性 は
(4.103)
と書 か れ る.こ の不 変性 は Φ(±)(K)に 対 し て 次 の 条 件 を 課 す こ と に な る:
(4.104) し た が っ て, (パ リ テ ィ ≠(-1)K)
(4.105)
と な る.
以 上 の 結 果 を ま とめ る と,3α の 正3角 性 を持 つ 系 で は,パ
形 配 置 にお い て み た され るD3h対
称
リテ ィ ・角 運 動 量 射 影 した 波 動 関 数 で 生 き残 る の は 次 の 状
態 で あ る:
(4.106)
(d) α+16O模 4.2.3で
型 に よ る20Neの
述 べ た よ う に,20Neの
回転バ ン ド
ラ ス タ ー 構 造 を 持 つ も の と 考 え ら れ る.こ
の 回 転 バ ン ド の 状 態 は,α+16Oク れ ら の 状 態 が,2中
心 模 型 で よ く記
述 で き る こ と を 示 そ う.
パ リテ ィ ・角 運 動 量 射 影 した 波 動 関数
に よる エ ネ ル ギ ー 期 待 値(エ ネル ギ ー 曲 線)
が,図4.11に
示 され て い る.ψ 「(α-16O)は(4.72)式
で 与 え ら れ る.エ
曲 線 の 極 小 点 を と っ て エ ネ ル ギ ー 準 位 を 描 く と,図4.4の20Neの を よ く再 現 す る.こ
の 結 果 の 特 徴 は,
ネル ギ ー
回転 バ ン ド
(1) エ ネ ル ギ ー 極 小 点 に お け る ク ラ ス タ ー 間 距 離Rは,Kπ=0-状 方 が 大 き く,Kπ=0+状 さ い.J=1,3の
態 の方 が 小
状 態 のエ ネ ル ギ ー
極 小 点 で は, は2つ
態の
で あ り,こ れ
の ク ラ ス タ ー の表 面が 接 触 す
る程 度 で あ る.す
な わ ち,Kπ=0-
状 態 に お い て は,ク
ラ ス ター構 造 が
よ く発 達 し て い る と 考 え ら れ る. (2) Jπ=0+と0-の ギ ー 差(パ
極 小点 のエ ネル リ テ ィ2重 項 の エ ネ ル ギ ー
差)は,約6MeVで 5.78MeVに
あ り,実 験 値 の よ く 一 致 し て い る.
(3) Kπ=0±
の 各 々 の 回 転 バ ン ド内 の
状 態 につ い て は,エ
ネル ギ ー極 小 点
図 4.11
20Neの
α+16O模
型 に よ る
エ ネル ギ ー 曲線
のRの
値 はJが
大 き くな る ほ ど 小
さ くな る.こ の 振 る舞 い はSU(3)殻
エ ネ ル ギ ー は α+16Oの 照)を
模 型 の 観 点 か ら も 自然 に 理 解 で きる.
し き い 値(図4
基 準 に し た 結 合 エ ネ ル ギ ー.用
.4参 い られ た
有 効 相 互 作 用 な ど の 詳 細 に つ い て は,原
論 文
A.Arima,H.Horiuchi,K.Kubodera
and
N.Takigawa,Advances Vol.5,ed.M.Baranger (Plenum
Press,1972)p.345を
in
Nucl.Phys. and
E.Vogt 参 照 せ よ.
4.4 ク ラ ス ター 間 の 相 対 運 動
微 視 的 ク ラ ス ター 模 型 に お い て,ク
ラ ス ター 間 の 相 対 運 動 を個 々の 核 子 の 自
由 度 か ら導 き 出 す こ と は 最 も重 要 な課 題 で あ る.本 節 で は,こ の 課 題 のた め の 方 法 を検 討 す る こ と に す る.
4.4.1 生 成 座 標 法 に よ る ク ラ ス タ ー 間 相 対 運 動 ク ラ ス タ ー 模 型 の 模 型 波 動 関 数 Ψ は,そ ラ メ ー タ ー れ る.た
と え ば,前
の 模 型 を特 徴 付 け るい くつ か の パ
を 含 ん で い る.す 節4.3で
な わ ち,
述 べ た 多 中 心 模 型 に お い て は,n個
と書 か の ク ラ ス ター
の 中 心 位 置 を 示 す ベ ク ト ル が パ ラ メ ー タ ー と な り,模
型 波 動 関 数 は
と 表 され る.*29
この よ うなパ ラ メー ター α を含 ん だ 模 型 波 動 関数 Ψ(α)を 変 分 関 数 と考 え る と,そ の パ ラ メー タ ー の 最 適 値
は,変 分 原 理
(4.107) に よ っ て き め る こ とが で き る.そ の 場 合 で あ る.こ と し て,系
の1例
が 図4.7に
の 図 に お い て は,2α
の エ ネ ル ギ ーE(d)が
間 の 距 離
記(4.107)式
は,α=α0を
をパ ラ メー ター
描 か れ て い る.パ
ネ ル ギ ー が 最 小 に な る 一 般 に,上
示 さ れ て い る8Be=α+α
ラ メ ー タ ーdの
最適値 はエ
と 考 え ら れ る. のE(α)が
最 適 値 α0の 周 囲 で 鋭 く変 化 す る 場 合 に
持 つ 模 型 波 動 関 数 Ψ(α0)は 系 の 基 底 状 態 の 波 動 関 数 の 良 い 近 似
を 与 え る で あ ろ う.し
か し ゆ る や か に 変 化 す る 場 合 に は,最
適 値 α=α0の
わ り の 異 な る α の 値 を 持 つ 模 型 波 動 関 数 に 適 当 な 重 み 関 数f(α)を 合 わ せ,f(α)を
ま
か けて重ね
変 分 法 で きめ る こ と に よっ て 波 動 関 数 の よ り良 い近 似 を得 る
こ とが 必 要 に な る.こ
の と き の α を 生 成 座 標(generator
こ の よ う な 方 法 は 生 成 座 標 法(generator-coordinate
coordinate)と
method:略
呼 び,
称GCM)*30
と 呼 ば れ て い る.
(a) GCM方
程式
生成座標 法の波動 関数は
(4.108) と定 義 され る.規 格 化
(4.109) の 拘 束 条 件 の 下 で,ハ
ミル トニ ア ンの 期 待 値 を最 小 に す る と い う変 分 原 理 に よ
り,重 み 関 数f(α)が
きめ られ る.す なわ ち,Lagrangeの
*29 この 場合
,重 心位 置 を示す パ ラ メー ター メー ター は ク ラ ス ター 間の 相 対ベ ク トル のみ で あ る.
*30 D J.
. L.
Hill
J. Griffin
and
J. and
A.
Wheeler,
J. A.
Wheeler,
Phys. Phys.
Rev. Rev.
89
(1953) 108
未 定 乗 数Eを
導入し
は必 要 で な く,実 際の パ ラ 1102.
(1957)
311.
て,生 成 座 標 が み た す べ き方 程 式,す
な わ ちGCM方
程 式(GCM
equation)
(4.110) が 得 ら れ る.た
だ し,
(4.111) で あ る.積
分 核H(α',α)お
核(Hamiltonian
GCM方
よ びN(α',α)は,そ
kernel)お
よ び 重 な り積 分 核(overlap
程 式(4.110)は,生
底 状 態 の み な らず,励
れ ぞ れ ハ ミル トニ ア ン 積 分 kernel)と
呼 ば れ る.
成 座 標 α の 領 域 を適 当 に広 くと って お けば,基
起 状 態 に対 す る良 い近 似 解 も与 え る こ とが で き る の で た
いへ ん 有 力 で あ る.
(b) 2体 ク ラ ス タ ー 系 へ の 応 用 2つ の ク ラ ス タ ーC1お
よびC2の
は そ れ ぞ れ R=R1-R2で
お よび あ る.2つ
が 等 し い
重 心 位 置 を座 標 原 点 と す れ ば,中
と表 され る.た
だし
の ク ラ ス ター を構 成 す る調 和 振 動 子 の パ ラ メー ター
とす る と,重 心 座 標 が 分 離 され る.(4.47)式
波 動 関 数 を用 い れ ば,こ
心位 置
の 系 のGCM方
の2中
心模型
程 式は
(4.112a)
(4.112b) と な る.Aは GCM方
反 対 称 化 演 算 子 で あ る. 程 式(4.112a)を
実 際 の 問 題 に適 用 す る 場 合 に は,部 分 波 展 開 して お
くのが 便 利 で あ る.(4.112b)式
に 現 れ た 相 対 波 動 関 数
を部 分 波 展
開す る と,
(4.113a)
(4.113b) と な る.こ る.ま
こ でr,
たil(z)は
Rは
ベ ク トルr,
変 形 球Bessel関
Rを
極 座 標 表 示 した と きの 角 度 成 分 で あ
数(modified
の 関 係 に あ る.部
分 波lに
spherical
Bessel
対 す るGCM方
function)で,
程式 は
(4.114a)
(4.114b) と 書 か れ る. こ れ ら の 部 分 波 展 開 し たGCM方
程 式(4.114)は,も
と のGCM方
を 角 運 動 量 射 影 す る こ と に よ っ て 得 る こ と も で き る が,詳
4.4.2
程 式(4.112)
細 は 省 略 す る.
共 鳴群法に よるクラスター間相対 運動
種 々 の ク ラ ス タ ー構 造 を 持 つ 状 態 を 重 ね 合 わ せ て 軽 い 核 を 記 述 す る 目 的 で, Wheelerに
よ っ て 提 唱 さ れ た 方 法 が,以
method:略
称RGM)*31で
あ る.本
下 で 述 べ る 共 鳴 群 法(resonating 項 で は,RGMとGCMと
group
の 関係 に つ い
て も言 及 す る.
(a) RGM方
程式
簡 単 の た め,2体
ク ラ ス タ ー 系(Ck1,
内 部 状 態 がk1,第2がk2で の 波 動 関 数
Ck2)を
考 え よ う.第1の
あ る こ と を 意 味 す る.RGMに
は 種 々 の チ ャ ン ネ ル(channel)の
ク ラ ス ター の
お い て は,系
波 動 関 数
全体
の重 ね 合
わせ
(4.115a) (4.115b) で 表 さ れ る もの とす る.こ 動 量,kは *31 J
. A.
こで,Aは
反 対 称 化 演 算 子 で あ り,Jは
チ ャ ン ネ ル番 号 で あ る. Wheeler,
Phys.
Rev.
52
(1937)
は 第1の 1083,
1107.
系の全角運
ク ラス ター の 内 部 波 動
関数 で あ り,こ の ク ラス ター に属 す る 核 子 の 相 対 座 標 の み の 関数 で あ る こ とは い う まで も な い.ま た そ の 内 部 状 態 がk1に を示 す.第2の
ク ラ ス ター
角 運 動 量 の 大 き さIへ
あ り,内 部 ス ピ ンがIk1で あ る こ と
に つ い て も 同様 で あ る.記 号[…]Iは
の 角 運 動 量 合 成 を 意 味 す る.ま た,
ター 間 の 相対 運 動 の波 動 関数 で,Lkは
は ク ラス
そ の 相対 角 運 動 量 の 大 き さ を示 す.し た
が っ て 量 子 数(チ ャ ン ネ ル 番 号)kは
をまとめて表
示 し た も ので あ る.
さて,相 対波動関数を RGMの 波動関数(4.115)は
とすると,
(4.116a) (4.116b) と な る.A'kは
反対称化演 算子
(4.117) で あ る.こ
こ で,Akは
ク ラ ス タ ーCk1に
属 す る 核 子 とCk2に
属 す る核 子 を交
換 す る 演 算 子 で あ る.
(4.116a)式 のRGM波
動 関 数 に含 まれ る相 対 波 動 関 数uk(rk)が
あ る.こ れ ら を ま とめ て 動 関 数uは
未知関数で
と表 す.こ れ ら相 対 波
変分原 理
(4.118) に よっ て きめ る こ とが で き る.す な わ ち,上 記 の 変 分 方 程 式 か ら
(4.119) が 得 られ,こ の 方 程 式 は 次 の よ う にチ ャ ン ネ ルkが
そ の 他 の チ ャ ン ネル に結 合
し た積 分 方 程 式 の 組 とな る:
(4.120a)
(4.120b)
これ らの 結 合 チ ャ ン ネル 方 程 式 はRGM方 ク ラ ス ター 間 の 相 対 座 標{rk}を
程 式(RGM
equations)と
変 数 とす る方 程 式 で あ る.RGM方
体 の ク ラ ス ター の 束 縛 状 態 の み な らず,共
呼 ば れ, 程 式 は2
鳴状 態 を含 む散 乱 状 態 に も適 用 で き
る方 程 式 とな っ て い る. RGM方
程 式 に お い て,ど の よ うな チ ャ ン ネ ルが 結 合 す る の か,具 体 例 で 見 て お こ う.
閉殻 核 ク ラ ス ター か ら な る2ク
ラ ス ター系,
で あ るか らIk=0で,J=Lkと α+12Cの Ik2=0,2,4と
場 合,12Cの
内 部 励 起 状 態 と し て 回 転 バ ン ド を 考 え る と,Ik1=0,
な る か ら,Ik=0,2,4で
合 成 さ れ て 全 ス ピ ンJと
あ り,こ
な る.た
対 し て 許 され る チ ャ ン ネ ル
程 式(4.120)の
対 し て は(Ik,Lk)=
ャ ン ネ ル と な る.
積 分 核
る 部 分 を 抜 き 出 す と,RGM方
を 整 理 し,局
所 的(local)に
な
程 式 の 中で そ の 局 所 的 積 分 核 に対 応 す る部 分 は
程 式 の 形 に な る の で 見 通 し が よ く な る.積
に な る の は,k=k'の あ り,こ
相 対 運 動 の 角 運 動 量Lkが
ャ ン ネ ル,Jπ=1-に
(0,1),(2,1),(2,3),(4,3),(4,5)の5チ
通 常 のShrodinger方
のIkと
と え ば,Jπ=0+に
は(Ik,Lk)=(0,0),(2,2),(4,4)の3チ
RGM方
な ど で は,Ik1=Ik2=0
な る 単 一 チ ャ ン ネ ル の 方 程 式 と な る.
弾 性 的 過 程(elastic
れ を 次 の よ う に2つ
process),す
な わ ち
分 核が局所 的 で
の 部 分 に 分 け る:
(4.121a) (4.121b)
(4.121c) 系 の ハ ミ ル トニ ア ン(4.50)を
書 き 直 す と,
(4.122a) と 書 く こ と が で き る.た り,2つ
だ し,
の ク ラ ス タ ー の 内 部 ハ ミ ル トニ ア ン
で あ は
(4.122b)
と な る.こ Xkpに
こ で,
は そ れ ぞ れ の ク ラ ス タ ー(p=1,2)の
関 す る ラ プ ラ シ ア ン で あ る.(4.122)式
重心座 標
の ハ ミ ル ト ニ ア ン を 用 い れ ば,
(4.123a) と な る.た
だ し,
(4.123b) で あ る.Erkは (Ek1+Ek2)を
全 系 の エ ネ ル ギ ーEか 差 し 引 い た,2ク
の エ ネ ル ギ ー で あ る.ま potential)と
た,ポ
ら2つ
の ク ラ ス タ ー の 内 部 エネ ル ギ ー
ラ ス タ ーへ の分 解 し きい 値 か ら測 っ た相 対 運 動 テ ン シ ャ ルVDkk(bk)は
直 接 ポ テ ン シ ャ ル(direct
呼 ば れ,
(4.123c) で 定 義 さ れ る.(4.123a)式 りの 積 分 核
で 明 ら か な よ う に, は,演
算 子(Ak-1)に
は 局 所 的 で あ る.残 よ る核 子 の 交 換 に と もな う積 分
核 で 一 般 に 局 所 的 で は な い.
α+α
の よ う な 同 種 の ク ラ ス タ ー か ら な る 系 の 場 合,す の 場 合,Ck1の
核 子 がCk2の
も 交 換 し な か っ た 場 合 と 同 等 で あ る.こ 分 核 を
な わ ち
核 子 とす べ て 入 れ 替 わ っ た 交 換 は,何
の 交 換 を
と し,こ れ に 対 応 す る 積
とす る と,こ の 項 も局 所 積 分 核 に 繰 り込 む こ とが で きる.
し た が っ て,局 所 積 分 核
は
(4.124) と定 義 され る.こ の と き の
は 局 所 積 分 核 に 繰 り込 ん だ 項 が 差 し引 か れ て 定
義 され る こ とは い う まで も な い.全 核 子 の 入 れ 替 え は 相 対 座 標 の 反 転 を 意 味 す る の で,
と な り,こ の 場 合 の 局 所 積 分 核 は(4.123a)式
の
に
を掛 け た もの と な る.こ れ は よ く知 られ た 同 種 核 の 統 計 性 で,Ak1(=Ak2)が 数)の 場 合,相
対 角 運 動 量 は 偶 数(奇 数)の 値 の み とな る こ と を 示 して い る.
偶 数(奇
結 局,RGM方
程 式(4.120a)は(4.123a)式(ま
た は(4.124)式)の
積分核 を
用 い て,
(4.125) とな る.こ のRGM方
程 式 に お い て,最 初 の 項(第1行)の
とす る と,直 接 ポ テ ン シ ャ ル
み を と り,残 りを0
の 下 で の 相 対 運動 のSchrodinger方
と な り,ま た単 一 チ ャ ン ネル の 場 合 は 右 辺 が な い の で 第2項
程式
の交換項 を含む微
積 分 方 程 式 とな る.
4.4.3 共 鳴 群 法 と生 成 座 標 法 の 関 係 (a) RGMとGCMの
同等性
ク ラ ス ター 間 相 対 運 動 を記 述 す る た め に,共 鳴 群 法(RGM)と (GCM)の2つ
生 成座標 法
の 方 法が あ る こ とを示 した.こ れ らの 間の 関係 を理 解 す る ため に,
2ク ラス ター系 を例 に と り,ク ラ ス ターの 内部 波 動 関 数
が 調和
振 動 子 殻模 型 で 記 述 され,そ れ らの 振 動 子 パ ラ メー ターが 等 しい もの とす る. い まの場 合 のGCM波
動 関数 は,(4.47)式
基 底 関 数 とし,R=R1-R2を
で 与 え られ る2中 心模 型 波 動 関 数 を
生 成 座 標 とす る.
と な る よ うに 座 標 原 点 を と る と, と な る か ら,Aを
反 対 称 化 演 算 子 とす れ ば,基 底 関 数 は
(4.126) となる.た だし, である.したがって,GCM波
動関数は
(4.127) と書 か れ る.(4.127)式
のGCM波
動 関 数 に対 応 す るRGM波
動 関数 は
(4.128) で 与 え ら れ る.(4.127)式
に お け る 未 知 関 数X(r)は(4.118)式
理 に よ っ て き め ら れ る べ き も の で あ る.一 て は,∫dRf(R)Γ(r,R,γ)が
方,GCM波
の よ うな 変 分 原 動 関 数(4.127)に
対 応 す る 未 知 関 数 で あ る.し
た が っ て,こ
おい れ ら
の未 知関数 を
(4.129) と 等 し い と 置 く こ と が 可 能 で あ る.こ の 波 動 関 数 を 除 け ば,(4.127)式 あ る と い え る.*32そ X(r)が GCM方
直 接RGM方
部 運動 に 関 係 し な い 重心 運 動
の ΨGCMと(4.128)式
の 同 等 性 を 表 す(4.129)式
の ΨRGMと
求 め ら れ,そ
て た た み 込 む こ と に よ っ てRGMの
積 分 方 程 式(4.112a)は,通
常,生
程 式 の 解X(r)に
X(r)は,多
用い
求 め ら れ る.
成 座 標Rを
離 散 化 して 適 当 な 個
と り,積 分 を和 に 置 き換 え て 連 立1次
式 の 形 に し て 解 か れ る.こ の 方 法 で 解 か れ た{f(Ri)}を,(4.129)式 RGM方
は
は最 初に
の 解 を 積 分 核 Γ(r,R,γ)を
解X(r)が
数 の 離 散 的 な 値R1,R2,…,Rnを
は 同等 で
か ら わ か る よ う に,RGMで
程 式 の 解 と し て 求 め ら れ る の に 対 し,GCMで
程 式 の 解 と し てf(R)が
GCMの
の と き,内
変 換 す る こ とが で き る.こ
方程
を使 っ て
の ようにして求め られた
くの実 例 に お い て,比 較 的 少 な い 数 の 離 散 化 点 の場 合 で も,RGM
方 程 式 を直 接 解 い た 解 と非 常 に良 い精 度 で 一 致 す る こ とが わ か って い る.
(b) RGMとGCMの
意義
上 述 の よ うに,RGMとGCMが れ ら2つ
同等 で あ る こ とが わ か っ た.そ れ で は,こ
の 方 法 は ど の よ うに意 義 付 け られ る で あ ろ うか.
ク ラス タ ー 間 の 相 対 運 動 を記 述 す る の はRGM波 対 波 動 関 数X(r)で し く理 解 さ れ る.つ *32 H
. Horiuchi,
Prog.
動 関数(4.128)に
お け る相
あ り,こ れ を解 くこ と に よ って ク ラ ス ター 間の 相 対 運 動 が 正 ま り,相 対 波 動 関 数X(r)を Theor.
Phys.
43
(1970)
375.
解 くこ とが 目標 で あ る.そ の
た め の 実 際 的 な 手 段 とし てGCMが 容 易 なGCMの
極 め て有 力 で あ る.た と えば,計
積 分 核(行 列 要 素)を あ らか じ め 求 め て お き,こ れ をRGMの
積 分 核(行 列 要 素)に 変 換 す る こ と も可 能 で あ る.ま た,ま ずGCM方 き,そ の 解f(r)を(4.129)式 る.こ の よ う にGCMの の 解X(r)を
算が よ り
に よ り相 対 波 動 関 数X(r)に
程式を解
変 換 す る こ と もで き
有 利 な点 を 活 用 す る こ と に よっ て,目 標 とす るRGM
求 め る こ とが 容 易 に な っ た.*33
4.5
ク ラ ス タ ー 模 型 空 間 とPauli禁
4.5.1 重 な り積 分 核 の 固有 値 問 題 とRGM基
止状態
底 関数
核 子 間が 完全 に 反対 称 化 され て い る2体 クラス ター系 のRGM波 基 底 関 数 を 考 え る.2つ
の ク ラ ス ターC1,C2の
動 関 数 の直 交
内部 角 運 動 量 がIC1=IC2=0
で あ る 単 一 チ ャ ン ネ ル の 場 合 に つ い て 述 べ る.そ の と きのRGM波 一般 的に
動 関数 は,
(4.130a) と書 か れ る.た だ し,Aは
反 対 称 化 演 算 子 で あ り,
(4.130b) で あ る.(4.130a)式 波 動 関 数X(a)を
の右 辺 は,RGM波
動 関 数が Φ(a)を 基 底 関 数 と し,相 対
振 幅 と して 線 形 結 合 し た 表 式 と な っ て い る.し か し,こ の 基
底 関 数 Φ(a)は 規 格 直 交化 され て い な い ので,そ
の 重 な り積 分
(4.131) を 対 角 化 し て 規 格 直 交 化 され た 基 底 ベ ク トル を作 ろ う. 重 な り積 分N(a,b)に
対 す る固 有 値 方程 式
(4.132) *33 H
. Horiuchi,
Prog.
A.
Tohsaki-Suzuki,
M.
Kamimura,
Prog.
Theor.
Phys.
Suppl.
Prog.
Theor.
Phys.
Theor.
Phys.
62
(1977)
Suppl.
Suppl.
62
62 (1977)
Chap.
3.
(1977)
Chap.
Chap.
5.
4.
を考 え る.そ の 固 有 解
は,
をみ た す よ うに 規 格 直 交 化
され て い る もの とす る.固 有 値 が この 規 格 直 交 系{Xk}を
で あ る こ とは 容 易 に わ か る.
用 い て,
の 固有 解 に対 して
(4.133) を作 る と,
は
を み た す 規 格 直 交 化 さ れ た 基 底 関 数 と な る.
の 固 有 解 に 対 し て は,
と な る か ら,対
応 す る 基 底 関 数 は 存 在 し な い.つ
の 場 合 の 反 対 称 化 さ れ たRGM波 な 状 態 はPauli禁 state)と
動 関 数 は0と
止 状 態(Pauli
forbidden
ま り, な る(消
state)と
の 固 有 解Xk(r) え る)の
で,こ
の よう
か 余 分 な 状 態(redundant
呼 ば れ る.
単 一 チ ャ ン ネル の 場 合 のRGM波
動 関 数 の基 底 関 数 につ い て の 上 述 の 内 容 は,
2体 ク ラ ス タ ー系 で の 一 般 的 な多 チ ャ ン ネル の場 合 に 容 易 に拡 張 す る こ とが で き るが,詳
細 は 割 愛 す る.そ
の場 合 には,Pauli禁
止 状 態 は単 一 の チ ャ ン ネ ル
で は な く,複 数 の チ ャ ンネ ル に ま たが った 形 で 成 立 す る こ と に な る.
4.5.2 重 な り積 分 核 の 固 有 値 問 題 の 解 クラ ス ター の 内 部 波 動 関数 が,同 殻 模 型 で 構 成 され て い る場 合,RGMの
一 の 振 動 子 パ ラ メー ター を持 つ調 和 振 動 子 重 な り積 分 核 の 固 有 値 問題 の 解 は 解 析
的 に解 くこ とが で き る.以 下 で そ の典 型 的 な例 をあ げ よ う.解 析 解 の 有 用 性 は, 次 節 で 説 明 す る直 交 条 件 模 型 を 構 築 す る際 や,ク
ラ ス ター 分 解 反応 の 分 光 学 的
因子 を計 算 す る 際 に 活 用 され る点 にあ る.
(a) 単 一 チ ャ ン ネ ル 系 2つ の ク ラ ス ターC1, C2の 内 部 角 運 動 量 がIC1=IC2=0で くべ き固 有 値 方 程 式 は(4.132)式
あ る とす る.解
で あ る.内 部 波 動 関 数 が 共 通 の 振 動 子 パ ラ メー
タ ーν を持 つ 調 和 振 動 子 波 動 関 数 で 構 成 され てい るの で,解 とな るべ き相 対 波 動 関数 も,対 応 す る振 動 子 パ ラ メー ターγ=(A1A2/A)ν(た を持 つ 調 和 振 動 子 波 動 関数 こ の 推 定 が 正 し い こ と は,以
だ しA=A1+A2)
と な るで あ ろ うこ とが,容 易 に 推 定 され る. 下 の よ うに 確 か め る こ とが で き る.
い ま積 分Inlm(a)を
次 の よ う に 定 義 し よ う:
(4.134) こ の 積 分Inlm(a)を
完 全 系
で 展 開 し,
(4.135a) と 表 す.た
だし
(4.135b) で あ る.こ
の 展 開 係 数(行
あ る な ら ば,す
列 要 素)Anlm
,n'l'm'が(nn'),(ll'),(mm')に
な わ ち
方 程 式(4.132)の
関 して 対 角 で
で あ る な ら ば,ψnlm(r)が
固有 値
解 で あ る こ と が 証 明 さ れ た こ と に な る.
い う ま で も な い.し
た が っ て,
は
を 示 せ ば よ い.
系 の ハ ミル トニ ア ン を 次 の よ う に表 す:
(4.136a) こ こで,hkはk番
目の 核 子 の1粒
心 の ハ ミル トニ ア ン,HCiは り,hrは2つ
子(調 和 振 動 子)ハ ミル トニ ア ン,hGは
ク ラ ス タ ーi(=1ま
た は2)の
系全体 の重
内 部 ハ ミル トニ ア ンで あ
の ク ラ ス タ ー の 重 心 間 の 相 対 運 動 の ハ ミル トニ ア ン で あ る.す
な わ ち,
(4.136b) (4.136c) で あ る.も は2つ
ち ろ ん,h(i)Gは
ク ラ ス タ ーi(=1,2)の
重 心 の ハ ミ ル ト ニ ア ン で あ り,∇2r
の ク ラ ス ター の 重 心 間 の 相 対 座 標
(4.136d) に 関 す る ラ プ ラ シ ア ン,Mは ハ ミル トニ ア ンHC1,HC2,hrは
核 子 の 質 量 で あ る. す べ て 同 一 の エ ネル ギ ー 量 子hω を 持 つ 調 和 振 動
子 で あ る か ら,そ れ ぞ れ に 対 して 調 和 振 動 子 量 子 数(エ ネ ル ギ ー 量 子 の 数)の 演 算 子 を
(4.137a)
(4.137b) (4.137c) と定 義 す る こ とが で き る.演 算 子Nは 演 算 子Aと
交 換 可 能 で あ る.2つ
は それ ぞ れ 演 算 子NC1,NC2の とす る.ま
た,ψnlmはNrの
核 子 の 交 換 に 対 し て 対 称 で あ る か ら,反 対 称 化
の ク ラ ス タ ーC1,C2の
内 部 状 態 φ0(C1),φ0(C1)
固 有 状 態 で あ り,そ れ ぞ れ の 固 有 値 をN(C1),N(C1) 固 有 状 態 で あ り,固 有 値 は2n+lで
あ る.す な わ ち,
(4.138a) (4.138b) し た が っ て,
(4.139) と な る.つ
ま り こ の 式 は,行
列 要 素Anlm
,n'l'm'が
対 角 的 で あ り,
(4.140) (4.141) と な る こ と を示 し て い る.
以 上 の 結 果 か ら,振 動 子 パ ラ メー ター が の 波 動 関 数 ψnlmが,RGMの
で あ る調 和 振 動 子
重 な り積 分 核 の 固 有 関数 で
(4.142) を み た し,固 4.5.1に
有 値 μnlは(4.141)式
お い て 述 べ た よ う に,RGMの
対 応 す るRGM基 (4.141)式
で 与 え ら れ る こ と が わ か っ た.
底 関 数 はPauli禁
重 な り 積 分 核 の 固 有 値 が μnl=0に 止 状 態 で あ り,存
で 与 え ら れ る 固 有 値 μnlは ど う な る で あ ろ う か.GCMを
ば μnlを 解 析 的 に 求 め る こ と が で き る.こ
2つ の ク ラ ス タ ー が α,16O,40Caの 合,固
有 値 μnlはN=2n+lに
μnl=μNと
在 し な い.で
書 く こ と に す る.
は上 述の 利 用すれ
れ を 以 下 に 示 そ う.
よ うな 調 和 振 動 子 殻 模 型 の 閉 殻 核 で あ る 場
の み 依 存 す る こ とが わ か っ て い る の で,以
下では
GCMの
重 な り積 分 核((4.112b)式
参 照)の 対 角 成 分
(4.143) を 考 え よ う.
を調 和 振 動 子 固 有 関 数
で 展 開 し,
(4.144a)
(4.144b) と 表 し,(4.143)式
に 代 入 す れ ば,
(4.145)
が得られる.ところが展開式 と置けば,
において,θ=0 が得られるから, (4.146)
し た が っ て,2体
ク ラ ス タ ー 系 の 具 体 的 な例 に お い て,GCM重
NGCM(R,R)がRの
関 数 と し て 与 え られ る な らば,(4.146)式
な り積 分 の 対 角 要 素 か ら μNを 容 易 に 求
め る こ とが で き る. 以 上 の 結 果 を α+16O系 式 で 与 え られ る行 列Dの
に 適 用 して み よ う.こ の 場 合 のNGCM(R,R)は(4.74) 行 列 式│D│を
用 い て,
(4.147) と な る.こ
れ を(4.146)式
に 代 入 し て,
(4.148)
が得られる.ただし,
である.この結果から, (4.149)
を 得 る.θ(x)は また,(4.148)式
階 段 関 数 で,x〓0の の 右 辺 をRの
と き θ(x)=1,x20の れ ら は 一 般 に2n+l〓8のSU(3)殻
模 型状 態
重 ね 合 わ せ に よ っ て 表 現 され る.
系
こ こ で は12C+α
の ク ラ ス タ ー 模 型 を 考 え,こ
の 中 に ど の よ う な16Oの
殻模型
状 態 が 含 ま れ て い る か 検 討 し よ う.議 論 の 対 象 と す る 殻 模 型 状 態 と し て は,16Oの 閉 殻 配 位((0s)4(0p)12)と,こ
の 閉 殻 配 位 か ら1核
子 が 励 起 し た1粒
子1空
孔 配位
に 限 る こ とに す る. こ の 場 合 の ク ラ ス ター 模 型 波 動 関 数 は
(4.162)
で あ る.こ
こ でAは
Iπ=0+,2+,4+の
反 対 称 化 演 算 子 で あ る.φI(12C)は12Cの 回 転 バ ン ド を と る もの とす る.ま
タ ー 間 の 相 対 運 動 の 角 運 動 量lと12Cの と き ク ラ ス ター 状 態
内 部 状 態 を表 し,
た
は クラス
内 部 状 態 の 角 運 動 量Iと は 量 子 数 演 算 子N(T)の
の 合 成 を表 す.こ
固 有 状 態 で,そ
の
の 固有
値NTは
(4.163) で あ る.12Cの
配 位 は((0s)4(0p)8)で
16核 子 系 の16Oの の2重
あ るか ら,N(12C)=8で
あ る.
最 低 の 調 和 振 動 子 の 量 子 数 を持 つ 配 位 は,ア
イ ソ ス ピ ンT=0
閉殻 配位
(4.164) の み で あ り,こ の 状 態 はN(T)の が っ て,T=0の16核
固 有 状 態 で,そ
子 の12C+α
の 固 有 値 がNT=12で
系 に 対 し て は,N(T)の
あ る.し た
固 有 値 は12よ
り大 き く,
(4.165) で な け れ ば な ら な い.こ 態 と な る.す NT=12に
の 条 件 が み た され な い よ う な ク ラ ス タ ー 状 態 はPauli禁
な わ ち,
に 対 し て は
対 し て は,
で あ る.ま
たNTが
の み が 許 され る状 態 で あ る.し
止状 最小 の
た が っ て,
(4.166) と な る.こ
こ で,I=l=0,2,4の
次 に 閉 殻 配 位 か ら1核 S=T=0に
い ず れ を と っ て も 同 一 状 態 で あ る.
子 が 励 起 し た1粒
子1空
孔 配 位
限 る と,殻 模 型 状 態 と し て は 次 の2つ
を 考 え る.
が 考 え られ る:
(4.167a) (4.167b) Jπ=1-の
殻 模 型 状 態 で は 重 心 運 動 の励 起 状 態 が 混 じ るの で,係 数 α,βを適 当 に と っ
て,重
心 運 動 の 励 起 を 取 り除 か な けれ ば な ら な い.一
は,重
心 運 動 の 波 動 関 数 は 常 に 励 起 し て い な い(0s)状
し た が っ て,各
々 のJに
対 して1つ
のNT=13(あ
方,ク
ラ ス ター 模 型 波 動 関 数 で
態 の ω0(XG)が
る い は2n+l=5の)殻
付 加 され る. 模 型状態
が 対 応 し,
(4.168) と な る.(種 注 意 せ よ.)
々 の 異 な る(l,I)の
組 み 合 わ せ は,い
ず れ も 同 一 の Φ1hω,Jと
なる ことに
以 上 の よ うな ク ラ ス ター 模 型 空 間 と殻 模 型 空 間 との 比 較 は,他 い て も 同様 に行 う こ とが で き る.そ の結 果,ク
の軽 い核 に つ
ラ ス ター模 型 空 間 は,低 エ ネル
ギ ー 領 域 に お い て 重 要 な 殻 模 型 状 態 を よ く表 現 で きる模 型 空 間 と な っ て い る こ とが 明 らか に な っ た.
4.5.4
直交条件模 型
(a) ク ラ ス タ ー 間 相 対 波 動 関数 とPauli禁 2ク ラ ス タ ー系 を 構 成 す る2つ ν=ν1=ν2で は1組
の ク ラ ス ター の振 動 子 パ ラ メ ー タ ーが 等 し く
あ る 場 合,前 節 で 述べ た よ うにRGM重
のPauli禁
表 す.記 号Fは RGM波
止状態
な り積 分 の 固 有 状 態 に
止 状 態 が 存 在 す る.こ れ ら を 禁 止 状 態(Forbidden
と
states)を 意 味 す る.こ
の ときの全系の
動 関数は
(4.169) と な り,消 え て し ま う こ と は 前 節 で 述 べ た と お りで あ る.し 程 式 の1つ
の 解X(r)に,Pauli禁
は りRGM方
程 式 の 解 で あ る.な
つ ま り,RGM方 あ る.こ
止 状 態XF(r)を
程 式 の 解X(r)に
の不 定 性 を利 用 して,得
解X(r)を,次
ぜ な ら ば,次
はXF(r)だ
た が っ て,RGM方
任 意 に 重 ね 合 わ せ て も,や の 式 が 成 り 立 つ か ら で あ る:
け の 不 定 性 が あ る とい うこ とで
られ た 解X(r)か
らPauli禁
止 状 態 を除 いた
の よ うに 作 る こ とが で き る:
(4.170) この 解 は
(4.171) をみ た し,明
らか にPauli禁
後 の 便宜 の ため に,X(r)の
止 状 態 と直 交 し て い る. 関数 空 間 をPauli禁 止 状 態 の 部 分 空 間 とPauli許 容
状 態 の 部 分 空 間 に分 け,Pauli許
容 状 態 の 部 分 空 間に 射 影 す る射 影 演 算 子 Λ を,
(4.172) と 定 義 す る.
こ の よ う に 定 義 さ れ たX(r)の Pauli禁
止 状 態XF(r)に
一 般 的 特 徴 は,(4.171)式
直 交 す る と い う条 件 に よ り,内 部 領 域(r=│r│の
領 域)に お い て 振 動 的 な 振 る 舞 い を す る こ と で あ る.こ oscillation)と
で 示 さ れ る よ う に,
の 振 動 を 内 部 振 動(inner
い う.*34
具 体 例 をあ げ て 内 部 振 動 につ い て 説 明 し よ う.前 節 で 述 べ た よ う に,重 固 有 値 が0で
な い 固 有 関 数 に 対 応 す るRGM波
数 と な って い る.た
とえ ば α+16Oの
動 関 数 は,調
位 のSU(3)(8,0)の
は 内 部 振 動 を持 つ.た
あ り,unl(r)は4個
のPauli禁
動 関 数 は,
殻 模 型 波 動 関 数 で あ る こ と は,前 節 で 示 した.こ の 節(nodes)を
(rが 小 さい 部 分)の 内 部 領 域 に4つ の4個
容 状 態の 相
に 対 応 す るRGM波
波 動 関 数 の 動 径 部 分 は,n=4で
な り積 分 の
和振 動 子殻 模 型波 動 関
場 合,N=2n+l=8のPauli許
対 波 動 関 数 (1s0d)4配
小 さい
持 ち,最
の相 対
と え ばl=0の
外 の4番
場合
目 の 節 よ り内 側
の 山 を持 つ 内 部 振 動 が あ る.こ れ はn=0,1,2,3
止 状 態 と 直 交 す る と い う条 件 か ら 生 じ る の で あ る.
上 記 の 殻 模 型 状 態 の 動 径 波 動 関 数unl(r)の
内 部 振 動 の 振 幅 は,外
節 の 位 置 よ りrが
大 き い 部 分 の 振 動)の 振 幅 と 何 ら 変 わ ら な い.こ
の 特 徴 で あ る.と
こ ろが,ク
部 振 動(最 外 の
れが 殻 模型 的状 態
ラ ス タ ー 的 構造 が よ く発 達 し た状 態 に お い て は,内
部振
動 の 振 幅 は外 部 振 動 に 比 べ て 格 段 に 小 さ くな り,外 部 領 域 の 振 幅 が 大 き く な る の が 一 般 的 特 徴 で あ る.逆
にRGM方
程 式 の 解 が こ の 特 徴 を 示 す 場 合 に は,ク
ラ ス ター 構 造
が 発 達 し て い る と判 定 す る こ とが で き る.
(b) OCM方 RGM方 て,得
程式
程 式 に基 づ い て 軽 い 核 クラ ス ター 間の 散 乱 過 程 を扱 っ た 実 例 にお い ら れ た 相 対 運 動 の 波 動 関 数X(r)の
特 徴 は 次 の と お りで あ る:
入 射 エ ネ ル ギ ー が 低 い 場 合,エ
ネ ル ギ ー の か な り広 い 範 囲 に わ た っ て 内 部 振
動 の 振 幅 は あ ま り変 化 し な い.特
に 著 し い 特 徴 は,内
ん ど 変 化 し な い と い う こ と で あ る.こ ク ラ ス タ ー 間 のPauli原
の こ と は,内
理 に よ っ て 支 配 され,そ
直 交 性 に よ っ て ほ と ん ど き ま っ て し ま う,と を 取 り 入 れ,ク
*34 R
model;略
. Tamagaki
S. Okai *35 S . Saito,
and
and Prog.
部 領 域 の 波 動 関 数 が2つ の 特 徴 がPauli禁
S.
C.
称OCM)で H.
Tanaka,
Park,
Theor.
Phys.
下 で 説 明 す る 直 交 条 件 模 型(orthogonality
Prog.
Theor.
Rev. 40
の性 質
単 に 取 り扱 う こ と が
あ る.*35
Phys.
(1968)
145
Phys. (1966)
893;
41
34
(1965)
787. (1969)
705.
の
止 状 態 との
い う こ と を 示 し て い る.こ
ラ ス タ ー 間 の 相 対 運 動 を わ か りや す く,簡
で き る よ う に 工 夫 さ れ た 模 型 が,以 condition
部 振 動 の 節 の位 置 が ほ と
191.
OCMが
考 案 され た 物 理 的 背 景 は,次 の よ うに ま とめ る こ とが で き る:
(1) 相 対 波 動 関 数X(r)の
内 部 領 域 に お け る 振 る 舞 い は 主 と し てPauli原
よ っ て 支 配 さ れ,Pauli禁
(2) 外 部 領 域(最 外 の 節 の 位 置 よ り外 側)で き く な く,Pauli原
は,2つ
の ク ラ ス タ ー の 重 な りは 大
理 の 効 果 は 小 さ い と 考 え ら れ る.し
程 式 に お け る 積 分 核(4.121a)に 項(4.121c)の
理に
止 状 態 と の 直 交 性 で 記 述 さ れ る.
お い て,粒
た が っ て,RGM方
子 交 換 に よ る非 局 所 積 分 核 の
作 用 が 小 さ く,直 接 ポ テ ン シ ャ ル(4.121b)が
こ の 考 え に基 づ い て 導 入 され たOCM方
主 で あ る.
程式は
(4.173) で あ る.こ
こ で,μ
は2つ
の ク ラ ス ター の 換 算 質 量,∇2は
ラ プ ラ シ ア ン で あ り,Er=E-(EC1+EC2)で 有 効 ポ テ ン シ ャ ル で あ り,第0近 と し て よ い.す X(r)に
あ る.ま
似 と し て はRGMの
な わ ち,OCMと
は,RGM方
よ っ て 近 似 す る 方 法 で あ る.こ
交 させ る 条 件 を 除 け ば,通
相 対 座 標rに た,Veff(r)は
関す る 局所 的
直 接 ポ テ ン シ ャ ル(4.123c)
程 式 の 解X(r)を(4.173)式
のOCM方
程 式 は,Pauli禁
常 の ポ テ ン シ ャ ル 問 題 と 同 じ で あ り,物
の解 止 状 態 と直 理 的内容 の
理 解 が 容 易 な 模 型 と い え よ う.
(c) RGM方 RGM方
程 式 とOCM方 程 式 とOCM方
程 式 の 関係
程 式 の 間 の 関 係 を 調 べ,OCMがRGMの
いか なる
近 似 に な っ て い る か を 明 ら か に し よ う.*36 RGM方
程 式 は 形 式 的 に 次 の よ う に 表 す こ と が で き る:
(4.174a)
(4.174b) こ の解Xが
た と えPauli禁
止 状 態 を含 まな い.RGM方 *36 S
. Saito,
Prog.
Theor.
止 状 態XFを
含 ん で い た と し て も,NXはPauli禁
程 式 は す べ て,Nの0で Phys.
Suppl.
62
(1977)
Chap.
な い 固 有 値 に属 す る 固 有 2.
ベ ク ト ル で 張 られ るPauli許 論 は す べ てPauli許 算 子N-1が
容 空 間 内 で 取 り扱 う こ とが で き る の で,以
容 空 間 内 で 行 う も の と す る.し
定 義 で き,N-1/2も
算 子 を 用 い れ ば,RGM方
た が っ て,演
下の議
算 子Nの
定 義 で き る
逆演 この 演
程 式(4.174a)は
(4.175) と 書 か れ る.
はPauli禁
び
止 状 態 を 含 ま な い か ら,
と な る こ と に 注 意 す れ ば,(4.175)式
お よ は
(4.176) と 書 き 直 さ れ る.こ
のRGM方
程 式 を 基 に し てOCM方
程 式(4.173)を
なが め
る と,
(4.177) と 置 き 換 え を 行 っ た こ と に な っ て い る.つ
ま り,OCM方
程 式 は,RGM方
に お け る 複 雑 な 非 局 所 的 ハ ミル トニ ア ン 積 分 核
程式
を,(4.177)式
の 右 辺 の 局 所 的 ハ ミ ル トニ ア ン に 置 き換 え る と い う 近 似 に よ っ て 得 られ る.軽 い 核 ク ラ ス タ ー を取 り扱 う場 合 に は,有 て 直 接 ポ テ ン シ ャ ルVD(r)で
効 ポ テ ン シ ャ ルVeffは
似におい
置 き換 え ら れ る こ とが 知 ら れ て い るが,一
は 粒 子 交 換 に 由 来 す る 項 を 実 効 的(effective)に し た が っ て,(4.177)式
第0近
般的に
含 む も の と 考 え る.
の 近 似 の も と で,RGM方
程式 は
(4.178) と 書 か れ る.つ
ま り,OCM方
解,す
な わ ち(4.178)式
て,入
射 エ ネ ル ギ ー をErと
程 式(4.173)の
の 解
解X(r)は,RGM方
程式の近似
で あ る と 考 え る わ け で あ る.こ
れに よっ
し た と き の 散 乱 問 題 を 取 り扱 う際 の,解
の規格直
交性が
(4.179) と き ま る.こ
の よ う に し て,一
程 式 と 考 え ら れ る.
般 的 に(4.178)式
が 直 交 条 件 模 型(OCM)の
方
4.6
4.1お
よ び4.2で
微 視 的 ク ラ ス タ ー模 型 の 適 用 例
述 べ た よ う に,8Beの
ほ か に12C,
16O,
20Neに
達 し た ク ラ ス タ ー 構 造 が 存 在 す る こ とが 明 ら か に な っ て い る.4.3, 4.5の
諸 節 で 示 し た 微 視 的 ク ラ ス タ ー 模 型(GCM,
い た 研 究 は,原
RGMお
も,よ
く発
4.4お
よび
よ びOCM)を
用
子 核 の 中 に よ く発 達 し た 分 子 的 構 造 状 態 が 存 在 す る こ と を 認 識
させ る の に 大 き な 役 割 を 果 た し た.*37 微 視 的 ク ラ ス タ ー 模 型 の 重 要 な 点 は,こ
の 模 型 が,よ
くク ラ ス ター 化 した 状
態 を 理 論 的 に 再 現 す る だ け で な く,殻 模 型 状 態 を も あ わ せ 統 一 的 に 導 く こ と で あ る.そ
れ は,前
述 し た よ う に,ク
ラ ス タ ー 模 型 空 間 が,低
励 起 エ ネルギ ー 領
域 で 見 ら れ る 重 要 な 殻 模 型 配 位 状 態 を 包 含 し て い る か ら,い 本 節 に お い て は,こ
わ ば 当 然 で あ る.
の よ う な 特 徴 を持 つ 微 視 的 ク ラ ス ター 模 型 を 適 用 し た 例
と し て,20Ne系,16O系
お よ び12C系
を 取 り上 げ て,そ
の 結 果 の 概 要 を示 す
こ と に す る.
4.6.1
20Ne系
20Ne系
に 対 す る α+16O模
問 題 で あ る.そ
の α+16O模
のGCM方
型 型 は 典 型 的 な 単 一 チ ャ ン ネ ル の2体
程 式 は(4.112)式
で あ り,RGM方
程 式 は(4.120a)
式 の 右 辺 の 他 チ ャ ン ネ ル と の 結 合 が な い 場 合 の 方 程 式 で あ る.こ の 解 を 求 め た 結 果,明 のKπ=0±
ら か に さ れ た20Neの
ク ラス ター
れ ら の方 程 式
結 合 状 態 と 共 鳴 状 態 は,次
の3つ
の 回 転 バ ン ド の 状 態 群 で あ る:
(1) 励 起 エ ネ ル ギ ー が5.78MeVの ン ド.こ
か ら 始 ま る
の 回転 バ
れ ら は 大 き な α 崩 壊 幅 を 持 つ 共 鳴 状 態 で あ る.(α
崩壊幅 に関す
る 詳 し い 説 明 は 割 愛 す る.) (2) 上 記(1)の 態(0+1)か (3) α+16Oク
バ ン ド とパリティ2重 ら 始 ま る
ラ ス タ ー 模 型 で 新 た に 導 か れ た
基 底 回 転 バ ン ド よ り1だ *37 代 表 的 な 総 合 報 告 は Y.
Suzuki
項 を なす と見 な され る基 底 状
の 基 底 回 転 バ ン ド(図4.4参
and
E.
,Y.
Uegaki,
の 励 起 回 転 バ ン ド.
け 高 い ノ ー ド(node;節)を
Fujiwara, Prog.
H. Theor.
Horiuchi. Phys.
K. Suppl.
照).
Ikeda,
持 つ 状 態 で あ る.実
68
M. (1980)
Kamimura, Chap
K. 2.
験
Kato,
表4.3
20Neの
チ ャ ン ネ ル 半 径 はa=5fmと は,T. 706よ
Matsuse, り.実
M.
α+16O
計 算 結 果 と実 験 値 の 比 較
と ら れ て い る.10+と11-は
Kamimura
験 値 は,F.
RGMの
and
Y.
Fukushima,
Ajzenberg-Selov,
Nucl.
的 に 見 出 され て い る8.03MeVの0+4状
観 測 さ れ て い な い.理 Prog.
Phys.
A166
Theor.
Phys.
(1972)
1よ
論 値
53 (1975) り.
態 の 上 にあ る α 幅 の 非 常 に 大 きい
状 態 群 に 対 応 す る と 考 え ら れ る. 上 記 の(1),(2)の
状 態 に 関 す るRGMに
よ る 計 算 結 果(エ
換 算 幅 θ2α(a)),お よ び 対 応 す る 実 験 デ ー タが 表4.3に ネ ル ギ ーEは
α+16Oの
ン ネ ル 半 径a(い
確 率 に 比 例 す る 量 で あ る.つ
中の エ
換 算 幅 θ2α(a)はチ ャ
に お い て α ク ラ ス タ ー と16Oク
ラ
離 の あ た りで の α ク ラ ス タ ー の 存 在 確 率
たが って α 換 算 幅 は そ の 値 が 大 きい ほ ど そ の 状 態 が よ りよ
く ク ラ ス タ ー 化 し て い る こ と を 意 味 し,ク る と も い え る.こ
α
し て い る)に お け る α ク ラ ス タ ー の 存 在
ま り,20Ne系
ス タ ー が 接 触 す る(反 応 を 起 こ す)距 を 示 す 量 で あ り,し
示 さ れ て い る.表
し き い 値 か ら 測 っ た 値 で あ る.α
ま の 場 合a=5fmと
ネ ル ギ ーEと
ラ ス ター構 造 の 度 合 い を 示 す 量 で あ
の 点 を も う 少 し 見 や す くす る た め に,20Ne系
算 幅 振 幅yL(r)を,次
にお け る α 換
の よ う に 導 入 す る:
(4.180a) (4.180b) こ こ で,(4.180b)式 で あ る.し
のuL(r)はRGM方
た が っ て,α
換 算 幅 振 幅yL(r)は
ラ ス タ ー の 存 在 確 率 振 幅 で あ り,r=aに
程 式 を解 い て 求 め られ る相 対 波 動 関数 ク ラ ス タ ー 間 距 離rに お け る
おけ る α ク
が上 述の α換算 幅
図4.12
20Ne系
の α+16O模
比 較 の た め,SU(3)殻 F.
Nemoto
and
型 に よ る0+1お
模 型 に よ る0+1の H.
Bando,
Prog.
よ び0+4状
態 に 対 す る α 換 算 幅 振 幅yL(r)
α 換 算 幅 振 幅 が 破 線 で 示 さ れ て い る.J.
Theor.
Phys.
Suppl.
52
(1972)
173よ
Hiura,
り.
に な る.
上 の表4.3の
α 換 算 幅
は
の 値 か ら,
の 共 鳴 状 態
の よ く発 達 した ク ラ ス ター 構 造 で あ り,
(Jπ=6+,8+)は Jπ=0+状
の 共 鳴状 態
殻 模 型 構 造 に 近 い 状 態 で あ る と い え る.ま た,
態(基 底 状 態),お よび 上 の(3)で
ス タ ー化 の発 達 の 度 合 い を見 るた め に,Jπ=0+1お 振 幅yL(r)を
図4.12に
示 す.Pauli禁
の
述 べ た 高 ノ ー ド状 態 に お け る ク ラ よび0+4に 対 す る α換 算 幅
止 状 態 と 直 交 す るた め に現 れ た 内部 振
動 の 振 幅が 減 少 し,外 部 振 幅 が 増 大 して い る よ うす が 見 て 取 られ る.
4.6.2 16O系 16O系
の α+12C模
に対 す る α+12C模
題 で あ る.12Cク
型 型 は,典 型 的 な 結 合チ ャン ネル の2体 ク ラ ス ター 問
ラ ス ター の 基 底 回転 バ ン ドの3つ
の 状 態(0+,2+,4+)と
相対
運 動 との チ ャ ンネ ル結 合が 考 慮 され る.実 験 との対 応 を明確 にす る た め,RGM (ま た はGCM)の
代 わ りにOCMを
きい 値 エ ネル ギ ー と12Cの も,OCMで
用 い る こ と にす る.こ れ は,α+12Cの
励 起 エ ネル ギ ー をRGMか
し
ら導 くのが 難 しい け れ ど
は そ れ ら を 実 験 値 で 置 き換 え る こ とが で き るか らで あ る.こ の 結
合 チ ャ ン ネルOCM方
程 式 を解 い て得 られ た 状 態 は,10数MeVま
で のT=0
の ほ と ん ど すべ て の 観 測 され て い る 状 態 に対 応 して お り,実 験 値 をか な り よ く 再 現 し て い る. この 場 合 に 模 型 波 動 関 数 は(4.116)式
の1例
で あ り,
(4.181) で 与 え ら れ る.Iπk=0+,2+,4+と し て 全 角 運 動 量Jと
な る.結
ルu=(u1,u2.…)で
ク ラ ス タ ー 間 相 対 運 動 の 角 運 動 量lkが 合 す る チ ャ ン ネ ル の 相 対 波 動 関 数 の 組 を,ベ
表 す と,結
合 チ ャ ン ネ ルOCM方
程 式 は(4.176)式
結合 ク ト と同
形 と な り, (4.182) と 表 さ れ る.た
だ し,T,V,Eは
行 列 で あ り,そ
で与 え られ る.重 な り積 分 核Nの
の行列 要素は
固 有 関 数 を 求め,Pauli禁
止状 態 を 除い て 許容
状 態 の み で 張 られ る 関 数 空 間へ の 射 影演 算 子 Λ が 定 義 され る.ま た,EIi(12C) とE(α)は
実 験 値 で 置 き換 え る こ とに す る.こ の よ う に して 作 られ るOCM
方 程 式 を解 い た エ ネル ギ ー ・ス ペ ク トル が 図4.13に 軸 は 励 起 エ ネ ル ギ ー で あ り,α+12Cの 7.16MeVで
分 解 し きい 値 は 励 起 エ ネル ギ ー に し て
あ る.図 の左 端 に 観 測 され たT=0の
は 基 底 状 態(0+)お
よび 主 成 分 が(1p-1h)の
α ク ラ ス ター 的 状 態 が 示 され て い る.α
ラス ター と α+12Cの
準 位 が 示 され て い る.(1)
殻 模 型 状 態 で あ る.(2)-(6)に
は
ク ラス タ ー 的状 態 は,波 動 関数 の 主 要
成 分 の 結 合 様 式Iπ ×lに よっ て 分 類 され て い る.こ れ12Cク
示 され て い る.本 図の 縦
こで,Iお
よびlは それ ぞ
相 対 運 動 の 角 運 動 量 で あ る.こ れ らの 結 果 か
ら,α ク ラ ス ター 的状 態が どの よ うな性 格 を持 っ て い るか が 理 解 で き る.*38 殻 模 型 的 状 態 と ク ラ ス ター化 し た状 態 の 大 きな 違 い は α 換 算 幅 振 幅 に最 も よ く現 れ る.α 換 算 幅振 幅 は *38 波 動 関 数 の 主 要 成 分 が 結 合 様 式Iπ 回 転 運 動(Iπ)と
×lに よ っ て こ の よ う に 分 類 され る とい う こ と は ,12Cの
ク ラ ス ター 間 相 対 運 動(l)と
が 弱 結 合 し て い る こ と を 意 味 す る.殻
視 点 か ら α ク ラ ス タ ー 相 関 の 重 要 性 を 端 的 に 示 し た 弱 結 合 殻 模 型(A. and
T.
Sebe,
Phys.
Lett.
24B
(1967)
り は じ め て 明 ら か に さ れ た と い え る.
129)の
成 り立 つ 機 構 が,こ
Arima,
模型の
H. Horiuchi
の α+12C模
型によ
(1)
図4.13
16O系
の
α+12C
計 算 さ れ た エ ネ ル ギ ー 準 位 は,(1)に れ て い る.α い る.こ Y.
Suzuki,
Theor.
よ びlは
Prog.
Phys.
Theor.
Suppl.
で 与 え ら れ る.典
68
0+2と0+3に
そ れ ぞ れ12Cク Phys. (1980)
1751,
2よ
(6)2+×4
よ るエ ネ ル ギ ー ・スペ ク トル α ク ラ ス タ ー 的状 態 が 示 さ
ラ ス タ ー と α+12Cの
55 (1976) Chap.
(5)2+×2
56 (1976)
×lに
よ っ て分 類 され て
相 対 運 動 の 角 運 動量 で あ る. 111;
Y.
Fujiwara
et
al., Prog.
り.
の 状 態(0+1,0+2,0+3)に
つ い て,
へ 分 解 す る α 換 算 幅 振 幅 を 図4.14に
示 す.基
内 部 振 幅 と 外 部 振 幅 と が あ ま り 変 わ ら な い 殻 模 型 的 状 態 で あ り, お い て はy0(00)とy0(22)と
内 部 振 幅 が 減 少 し,ク
も に 外 部 振 幅 が 大 き く外 に 張 り 出 し,
ラ ス ター 化 し た 状 態 で あ る こ と を 示 し て い る.
こ れ ら の 性 質 を見 る 他 の 方 法 は,全
(4)2+×1
動 関 数 の 主 要 成 分 の 結 合 様 式Iπ
型 的 な 例 と し て,3つ
と 底 状 態(0+1)は
OCMに
(3)2+×0
殻 模 型 的 状 態 が,(2)-(6)に
ク ラ ス タ ー 的 状 態 は,波
こ で,Iお
(2)0+×1
表4.4
160の
低 い3つ
の0+状
態 の エ ネ ルギ ー構 成
エ ネル ギ ー に お け る 運 動
エ ネ ル ギ ー とポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー の 寄 与 を見 る こ とで あ り,そ れ らが 表4.4に い る.殻
示 され て
模 型 状 態 は 大 きな 運 動
エ ネ ル ギ ー と大 き な 相 互 作 用 エ ネ ル ギ ー と の 相 殺 が 生 じ るの に
,は
そ れ ぞ れ 運 動 エ ネ ル ギ ー,ポ
テ ン シ ャ ル ・エ ネ
ル ギ ー の 期 待 値 で あ り,は12Cの
平均 励 起 エ ネ
ル ギ ー で あ る.単
et al.,Prog.
位 はMeV.Y.Fujiwara
Theor,Phys.Suppl.68(1980)Chap.2よ
り.
(a) (b) 図4.14 左 図(a)に Prog.
の α+12C
はy0(00)(r)が,右
Theor.
対 し,ク
16O系 Phys.
OCMで
得 られ た3つ
図(b)に
Suppl.
68 (1980)
の 低 い0+状
はy0(22)(r)が p. 103よ
態の α換算幅振幅
示 さ れ て い る.Y.
Fujiwara
et
al.,
り.
ラ ス タ ー 的 構 造 の 場 合 は そ れ と 対 照 的 で あ る.
4.6.3 12C系
12C系
の3α
に 対 す る3α
種 々 の 微 視 的3α
模型 模 型 は 典 型 的 か つ 基 本 的 な3体
模 型 に よ る 分 析 が あ る が,こ
ク ラ ス タ ー 問 題 で あ り,
こ で はGCMに
よ る分 析 結 果 の
主 要 点 を 示 そ う.*39 全 系 の 波 動 関 数 は3α れ るGCM波
動 関 数 で,パ
配 置 と し て は 一 般 の3角 て,ク
の 種 々 の 配 置 の3中
心 模 型 の 重 ね 合 わせ に よっ て 表 さ
リ テ ィ ・角 運 動 量 射 影 さ れ た も の を 用 い る.空 形 配 置 で あ る が,直
線的配置
ラ ス タ ー 間 距 離 も適 切 に と ら れ て い る.(正)3角
間 距 離 を 同 時 に 小 さ くす る 極 限 で は,殻 状 態 が 得 ら れ る.こ を 生 成 し,観
測 さ れ て い る 基 底0+1状
れ ら の 状 態 が3α
態,4.42MeVの2+1状
に 示 さ れ るKπ=3-の
*39 Y
. Fujiwara
et
al., Prog.
態,13.35MeVの た,正3角
形 配 置 が 含 まれ
で3α
に ク ラス ター 化 した 構
論 的 に 明 ら か に す る こ とが 重 要 で あ る.
Theor.
Phys.
位 の
回 転 バ ン ド も期 待 さ れ る.こ
模 型 で 再 現 で き る か 否 か,12C系
造 が ど の よ う に 現 れ る か,理
ク ラ ス ター
基 底 回 転 バ ン ド(Jπ=0+,2+,4+)
4+1状 態 が こ れ ら に 対 応 す る こ と が 知 ら れ て い る.ま て い る の で,(4.106)式
もそ の 中 に 含 まれ て い
形 配 置 で3α
模 型(0s)4(0p)8のSU(3)(04)配
の 配 位 はKπ=0+の
間的
Suppl.
68
(1980)
Chap.
2.
励 起 エ ネ ル ギ ー が15MeVま GCMで
得 ら れ たT=0の
で の, エ ネル ギ ー ・
ス ペ ク トル を 図4.15に
示 す.実
の 比 較 が 示 さ れ て い る が,1つ (12.7MeVの1+1)を
験 と の例 外
除 い て は,実
に 観 測 され て い る 準 位 と1対1対 つ け ら れ る.(こ ら1粒
の 例 外 は,基
験 的 応が
底状態 か
子 が ス ピ ン 反 転 して で きた状 態
と 考 え ら れ,3α い.)励
模 型で は記述 で きな
起 エ ネ ル ギ ー に 関 し て も,基
回 転 バ ン ド の2+1,4+1を
除 い て は,実
験 値 を ほ ぼ 再 現 し て い る.基 ン ド の2+1,4+1状 あ り,3α
底
底回転バ
態 は殻 模 型 的構造 で
模 型 で は 十 分 記 述 で き な い.
α ク ラ ス ター 化 の 指 標 と な る α 崩 図4.15
壊 幅 の 分 析 の 結 果 が 表4.5に て い る.表
に は,12Cの
12C系
示 され
の3αGCMで
計 算 され た
エ ネ ル ギ ー ・ス ペ ク トル こ れ ら の エ ネ ル ギ ー は3α
α崩 壊 し きい
の し き い 値 エ ネ ル
ギ ー を 基 準 に し て い る.計
値 よ り上 に あ り,実
験 値 が 得 られ て い
る 状 態 に つ い て
wara 68
, の 部 分 幅 と,そ
et (1980)
Theor.
れ
al., Chap.
Theor.
実 験 値 はF. A248
全 崩 壊 幅 か ら換 算 幅
表4.5
崩 壊 幅 Γ は0+2を Phys. A248
Suppl. (1975)
12C系
1よ
り.
Suppl.
E.
Uegaki
(1977)
1262;
Phys.
1よ
et
62 (1979)
E.
al., Prog. Uegaki
et
1621よ
り.
Nucl.
り.
ャ ン ネ ル 半 径 をa=6.0fm
を 求 め る と ,そ
れ ぞ れ
の 励 起 状 態 の α 崩壊 幅 の 理 論値 と実 験 値 の 比 較
除 い てkeVを 68 (1980)
Fuji
Phys.
Ajzenberg-Selove,
(1975)
実 験 値 を 極 め て よ く再 現 し て い る こ とが わ か る.チ と し て,0+2と2+2の
57
算 値 はY.
Theor. 2;
Phys.
al., Prog.
ら を あ わ せ た 全 幅 と が 記 さ れ て い る.
Prog.
Chap.
単 位 と す る.理 2よ
り.実
論 値 はY.
験 値 はF.
Fujiwara
et al., Prog.
Ajzenberg-Selove,
Nucl.
Theor. Phys.
Phys.
0.72と1.6と
な り,こ
れ ら2つ
の 正 パ リ テ ィ状 態 は 非 常 に 大 き い α ク ラ ス タ ー
化 の 確 率 を 有 し て い る こ と が わ か る. 主 だ った 状 態 の α ク ラス タ ー
表4.6
12Cの
特 徴 あ る状 態 の エ ネ ルギ ー構 成
化 の 度 合 い を 見 る 指 標 と し て,表 4.6に,エ
ネ ル ギ ーEを
運動エ
ネ ル ギ ー 〈T〉と ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー 〈V〉 に 分 け た 値 が 記 さ れ て い る.0+1,2+1状
態 は殻 模 型
的 構造 状 態 で あ り,0+2は タ ー 化 が 発 達 し,ク
クラス
ラス ター が
ゆ る や か に 結 合 し て い る構造 で
〈T〉,〈V〉 は そ れ ぞ れ 運 動 エ ネ ル ギ ー,ポ
テ ン シ ャル ・
エ ネ ル ギ ー の 期 待 値.単
Fujiwara
al., Prog. 2よ
Theor.
Phys.
位 はMeV. Suppl.
Y. 68
(1980)
et
Chap.
り.
あ る こ とが よ くわ か る.ま た,1-1が0+2に
準 じた クラ ス タ ー化 し た 状 態 で あ
り,3-1は ク ラ ス ター 化 が あ る程 度 進 ん で 殻 模 型 的 構 造 と ク ラ ス ター 的構 造 の 中 間 的 構 造 で あ る こ とが 読 み 取 られ る.こ の こ とは α 換 算 幅 振 幅 に よっ て も確 か め られ る.
4.7 ク ラ ス タ ー模 型 に 関 す る ま とめ
微 視 的 ク ラ ス ター模 型 と軽 い 核 の 構 造 変 化 に つ い て コ メ ン トす る こ と に よっ て,こ
の 章 の 締 め く く り と し よ う.
軽 い 核 に お け る2つ の 異 な る構 造 状 態,す
な わ ち殻 模 型 的 構 造 と ク ラ ス ター
構 造 の 間 の構 造 変 化 が,微 視 的 ク ラ ス ター 模 型 に よ っ て ど の よ うに理 解 され る か,図4.16に
模 式 的 に示 す.軽 い 核 に お い て は 図 に 示 す よ うに,殻 模 型 的構
造 を持 つ 状 態 が 基 底 状 態 に現 れ,ク
ラ ス ター 構 造 の状 態 が エ ネ ル ギ ー 的 に わ り
あ い 近 接 し た励 起 状 態 に現 れ る.こ れ ら の2種 類 の状 態 は,微 視 的 ク ラ ス ター 模 型 で 共 に再 現 す る こ とが で き る.殻 模 型 的 状 態 の特 徴 はPauli禁
止状態 と直
交 す る こ と に よっ て 生 じ た 内 部振 動 の 振 幅 が 大 きい こ とで あ り,波 動 関 数 の 最 も外 側 の 振 幅 と ほぼ 同 程 度 で あ る(図4.16の(a)参
照).こ れ は 大 きな 運 動 エ
ネル ギ ー と と もに 大 きな ポ テ ン シ ャル ・エ ネ ル ギ ー を もた ら し,そ れ らの 相 殺 に よ って 基 底 状 態 の 結 合 エ ネ ルギ ーが 生 まれ る.ひ と たび 基 底 状 態 が 殻 模 型 的 状 態 と な る と,励 起 状 態 はPauli禁
止 状 態 と この 基 底 状 態 と に 直 交 し なけ れ ば
な らな い と い う直 交 条 件 が は た ら き,そ の状 態 の 性 質が 強 く制 約 され る.励 起
(a) 図4.16
(b)
(c)
殻 模 型 的構 造 と ク ラ ス ター 構 造 の 間 の 構 造 変 化 の機 構 を示 す 模 式 図
状 態 の エ ネル ギ ーが 基 底 状 態 の それ とあ ま り大 き くは 変 わ ら な い とい う こ とか ら,上 述 の 直 交 条 件 の 下 で 内部 振 動 が 抑 え られ,最 (図4.16の(c)参
外 の 振 幅 が 伸 張 させ られ る
照).そ の結 果,ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネルギ ー,運 動 エ ネル ギ ー
と も に値 が 抑 制 され,適 度 な励 起 エ ネル ギ ー と な る(図4.16の(b)参 機 構 が4.6で 例 示 した12C, い る.ク
16Oお
よ び20Neを
ラス タ ー構 造 状 態 の み に注 目す れ ば,こ
照).こ の
は じ め,軽 い核 で 共 通 に働 いて の よ う な機 構 は ク ラ ス ター 間
相 対 運 動 に 対 す る 一 種 の 構 造 的 斥 力 芯 の 働 きの よ うに 理解 す る こ とが で きる. つ ま り,あ た か もク ラス ター 間 の 相 互 作 用 に 斥 力 芯が 存 在 す るか の よ うに 見 え るの で あ る.そ の 典 型 的 な例 が8Be系
に お け る α-α間 相 互作 用 に お け る"斥 力
芯"で あ る. 微 視 的 ク ラス ター 模 型 の 重 要 性 は,し
きい 値 則 に基 づ くIkedaダ
イア グ ラ ム
に見 られ る 軽 い 核 の 性 質,す な わ ち わず か な エ ネ ル ギ ー を与 え た だ けで い くつ か の ク ラ ス ター に 分 割 され る性 質 に よっ て,殻 模 型 的 状 態 が 現 れ るの と同 一 の エ ネ ルギ ー 領 域 に ,ク ラ ス ター 構 造 状 態 が 多 数 現 れ,両 者 が 共 存 し,結 合 しあ っ て い る 状 況(状 態)を 記 述 で き る こ と にあ る.そ れ ゆ え に,ク ラス ター模 型が 軽 い核 の か な り広 い エ ネ ルギ ー領 域 にお け る 構 造 を 包括 的 に 記 述 す るた め に不 可 欠 の模型 で あ り,殻 模 型 と並 んで 軽 い 核 の 基 本 的 な模 型 とな って い る ゆ え ん で あ る.
付録A
回転 体 の 理 論
物 体 回 転 の 量 子 力 学 に 関 し て,本 行 う.*1中
心 と な る 問 題 は 空 間 固 定 座 標 系(space-fixed
物 体 固 定 座 標 系(body-fixed
coordinate
A.1
空 間 固 定 系K(x,y,z)か 間 固定 系Kか
system)と
Euler
coordinate
system)と
の 間 の 関 係 で あ る.
角
ら物 体 固 定 系K'(x',y',z')へ
ら見 た 物 体 の 方 向 を示 す3つ
(双方 の系K,
の 座 標 軸 の 回転 は,空
のEuler角(θ1,θ2,θ3)で 表 され る.
K'は 原 点 を共 有 す る もの とす る.)
空 間 固 定 系Kのx,
y, z軸 上 の 単
位 ベ ク ト ル を そ れ ぞ れx1, と し,ま
文 で 必 要 と され る 最 小 限 の 範 囲 の 説 明 を
x2, x3
た 物 体 固 定 系K'のx',
y',
z'軸 上 の 単 位 ベ ク トル を そ れ ぞ れ x'1, x'2, x'3と す る. Euler角
は 次 の3つ
定 義 さ れ る(図A.1参 (1) も と のz軸 y軸
の 回転 角 で 照).
の ま わ りでx軸,
を角 度
だ け 回 転 す る.し
た が って,x,
y軸 は 新 し い 位 置 へ 移 動 す る.
(2) 新 し い位 置 に移 動 し たy軸(図 軸,z軸
図A.1
Euler角(θ1,θ2,θ3)
で は ベ ク トルe2で
を角度
示 され る)の まわ りでx
だ け 回転 す る.し たが っ てx軸,z軸
は
新 し い位 置 へ 移 動 す る. *1 以 下 の 説 明 の 多 ory)
Vol.
く をJ
1, North-Holland
. M.
Eisenberg (1987)
and Chap.
W. 5に
Greiner,
Nuclear
負 っ て い る.
Models
(Nuclear
The
(3)新
しい 位 置 に移 動 し たz軸(図
軸,y軸
で は ベ ク トルe3で
を 角度
示 され る)の まわ りでx
だ け 回転 す る.し たが っ てx軸,y軸
は
新 しい 位 置 へ 移 動 す る. こ れ ら の3段
階 の 回 転 の 結 果,新
ぞ れ 物 体 固 定 系K'に 都 合 に よ り,こ を 導 入 し た.こ
し い 位 置 に 移 動 し たx軸,y軸,z軸
お け るx'軸,y'軸,z'軸
れ ら の3つ
で あ る.
の 回 転 の 回 転 軸 に 沿 っ た 単 位 ベ ク ト ルe1,
れ ら と 空 間 固 定 系Kのx,
お よ び 物 体 固 定 系K'のx',
が それ
y, z軸 上 の 単 位 ベ ク トルx1,
y', z'軸 上 の 単 位 ベ ク ト ルx1', x'2,
e2, e3 x2, x3,
x'3と の 間 に次 の
関 係 が あ る こ と は 容 易 に わ か る:
(A.1a) (A.1b) た だ し,
(A.2a)
(A.2b)
(A.2c)
(A.2d) で あ る.(A.1a)と(A.1b)式
か ら{ei}を
と な る か ら,あ
お よ びK'系
(x1,x2,x3)お
る 点 のK系
消 去 す れ ば,
よ び(x',y',z')=(x'1,x'2,x'3)と
に お け る 座 標 を そ れ ぞ れ(x,y,z)= す れ ば,
(A.3)
で 座 標 変 換 で きる.た だ し変 換 行 列R=(Rij)は
(A.4) で あ る.
A.2
空 間 固 定 系Kか ベ ク ト ルnと
ら 物 体 固 定 系K'へ
関
の 座 標 軸 の 回 転 は,回
の 回 転RはEuler角(θ1,θ2,θ3)で
の と き はR(θ1,θ2,θ3)と
転 軸 に 沿 った 単 位
か らK'系
す る.前
節
表 す こ と もで き る.こ
書 く.
へ の 座 標 軸 の 回 転 に よ り,空
トルrのK系
に お け る 座 標(x,y,z)は,K'系
変 換 さ れ る.位
置rの
間 内 の あ る 点 の 位 置 を示 す ベ ク に お け る 座 標(x',y',z')に
み に よ っ て き ま る 関 数,た
座 標 変 換 に よ り 関 数 形 が 変 わ り ψ'と な る.こ ψ(x,y,z)と
数
そ の ま わ り の 回 転 角 θ と で き ま る .こ れ をR(n,θ)と
で 述 べ た よ う に,こ
K系
D
ψ'(x',y',z')と
し た も の で あ る か ら,も
座標
と えば 系 の波 動 関 数 ψ は この
れ を
と 表 す.
は 同 一 の 関 数 の 同 一 点 で の 値 を別 の 座 標 系 で 表
ち ろ ん 等 し い.つ
ま り
(A.5) で あ る.こ の 式 に よ って 座 標 変 換 に よ る 関 数 の 変 換 性が き ま る. い ま系 の 全 角 運 動 量(一 般 的 に は 軌 道 角 運 動 量 とス ピ ン角 運 動 量 を合 成 し た もの)をJ=(Jx,Jy,Jz)と
す る.Jは
角 運 動 量 の 交 換 関係
(A.6)
を み た す.(都 合 に よ りhが 省 か れ て い る こ と に 注 意 され た い.)軸nの
まわ り
の無限小 回転は (ε=無
で 与 え られ,有
限 小)
(A.7)
限の回転は
(A.8) と 書 か れ る こ と は よ く知 ら れ て い る.こ
れ をEuler角
を 使 っ て 書 け ば,
(A.9) で あ る.
空 間 固 定 系 か ら物 体 固 定 系 へ の 座 標 系 の 回 転 が,全
角 運 動 量 の 固有 ベ ク トル
へ 及 ぼ す 変 換 性に つ い て 検 討 す る.量 子 力 学 で よ く知 られ て い る よ うに, の 規 格 化 され た 同 時 固 有 ベ ク トル│jm〉
は
(A.10a) (A.10b) で あ る.(hが
省 か れ て い る こ と に 注 意.)Jx,
Jy, Jzの
行列 要素 は
(A.11a) (A.11b) で あ り,こ
れ 以 外 は す べ て0で
(A.11)式 ら,上
か ら 明 ら か な よ う に,演
の│jm〉
じ る.つ
あ る.
に 回 転Rを
算 子Jx,
Jy, Jzはjの
作 用 させ る とjが
値 を変 化 させ ない か
同 一 で 異 な るmの
状 態 の みが 混
ま り,
(A.12) と書 くこ とが で き,係 数
は
(A.13)
と な り,こ れ はD関
数 と呼 ば れ て い る.(通 常 のD関
数 の 定 義 と複 素 共役 だ け
異 な る.原 子 核 理 論 で は便 利 の た め 本 書 の定 義 が よ く使 わ れ る.) 定 義 か らR(θ1,θ2,θ3)は ユ ニ タ リーで あ るか ら,D関
数の直交性
(A.14a) (A.14b) が 容 易 に 求 め ら れ る. ベ ク トルrで
指 定 さ れ る 空 間 内 の 任 意 の1点
(r,θ,φ)で 表 し,同 の 場 合,J2とJzの
一 点 を 物 体 固 定 系K'に
に よ り│lm〉はR│lm〉
間 固 定 系Kに
お い て(r,θ',φ')で
同 時 固 有 ベ ク トル│lm〉 ごあ る.(A.12)式
を,空
で 示 さ れ る よ う に,回
数=l
転
と な る よ う な ベ ク トルr'の
間 固 定 系 に お け る 極 座 標 は(r,θ',φ')で
あ る か ら,│lm〉
点 の 値 と,R│lm〉
点 の 値 と は 等 し い.す
で あ る.し
表 す.j=整
の 極 座 標 表 示 は 球 面 調 和 関 数 で あ り,
に 変 換 さ れ る.Rr'=γ
の 極 座 標 表 示 のrの
お い て極 座標
空
の 極 座 標 表 示 のr'の な わ ち,
た が っ て,
(A.15) が 得 られ る.こ れ が 球 面 調 和 関 数 の 空 間 固定 系 か ら物 体 固 定 系 へ の 座 標 変 換 で あ る. D関
数 の 定 義(A.13)か
ら 直 ち に わ か る よ う に,
(A.16) と な る.関 数
は 実 関 数 で あ り,具 体 的 に は
(A.17)
と書 か れ る.た だ し μは 各 階乗 の 引 数 が 負 に な ら な い範 囲 の 整 数 で あ る.ま た これは
(A.18) と 書 く こ と が で き る.こ 多 項 式)で
こ でF(α,β,γ;x)はGaussの
まの 場 合
あ る.
djm'mやDjm'mの
定 義,な
ら び にGaussの
の さ ま ざ ま な 性 質 を 求 め る こ と が で き る.以 djm'mの
超 幾 何 関 数(い
超 幾 何 関 数 の 性 質 か ら,そ
れ ら
下 に い く つ か を ま と め て お こ う.
対 称 性は
(A.19a) (A.19b) (A.19c) (A.19d) Djm'mの
対称性 など は
(A.20a) (A.20b)
(A.20c) (A.20d) j=整
数=lの
場 合,特
殊 なD関
数 は 球 面 調 和 関数 と関 係 が あ り,
(A.21) とな る.ま たD関
数の直交性 として
(A.22) が 成 り立 つ.
A.3
角
運
動
量
物 体 が 時 間 と と も に 回転 す る と い う こ とは,物 体 固定 系 の座 標 軸 が 時 間 と と もに 回転 す る こ とで あ り,Euler角(θ1,θ2,θ3)が れ で は 物 体 回転 の 角 運 動 量 演 算 子 はEuler角 そ の 定 義 か ら 明 ら か な よ う に,Euler角 回 転 軸 と し た と き の,そ e1,e2,e3の
で どの よ うに表 され るで あ ろ うか. は3つ
の 単 位 ベ ク トルe1,
の ま わ り の 回 転 角 で あ る(図A.1参
照).い
e2, e3を ま回転軸
ま わ り の 微 小 な 回 転 角dθ1, dθ2, dθ3か ら な る 微 小 回 転 を 考 え よ う.
こ の 微 小 回 転 の 空 間 固 定 系Kに と す る.す
時 間 変 化 す る こ とで あ る.そ
お け るx,
y, z成 分 を そ れ ぞ れ
なわ ち
(A.23) で あ る.eiとxiと
の 関 係 は(A.1a)式
で 与 え ら れ て い る の で,こ
れ を(A.23)
式 に代 入 す る と
また は
が 得 られ る.空
間 固 定 系Kに
(A.24)
お け る3つ の 座 標 軸 の まわ りの 角 運 動 量 演 算 子
(ま た は 無 限小 回転 を 生 成 す る 演 算 子)は
(A.25) で 与 え ら れ る.通 常 の 角 運 動 量 演 算 子 と違 って,hが
省 か れ て い る こ と に注 意
され た い.関 係 式
を使 えば,
(A.26) と な る.行 列Uの
逆 行 列U-1は(A.2c)式
量演算子 は具体的 に
で 与 え られ て い るの で,上 の 角 運 動
(A.27) と 表 さ れ る.こ
れ ら の 角 運 動 量 演 算 子 に お い て,記
す る 演 算 子"と
い う 意 味 で あ る.
号"^"は"Euler角
に作 用
これ らの 角運動量演算子が 交換関係
(A.28) を み た す こ とは,直 接 計 算 に よ り容 易 に確 か め られ る. 次 に 物 体 固 定 系K'に
お い て 角 運 動 量 演 算 子 をEuler角
で 表 す こ と を考 え よ
う.最 も正 統 的 に は 上 述 の 空 間 固 定 系 の 角 運 動 量Lを(A.4)式
の変換 行列 を
使 って
(A.29) と 変換 す れ ば よい.も
っ と簡 単 な 方 法 は,上 述 の 空 間 固定 系 に お け る角 運 動 量
Lを 求 め た や り方 を その ま ま踏 襲 す る こ とで あ る.そ の と きの微 小 回 転 の 物 体 固定 系K'に
お け るx', y',z'成 分 を
とす る.す な わ ち
(A.30) で あ る.eiとx'iと
の 関 係 は(A.1b)式
で 与 え ら れ て い る の で,こ
れ を(A.30)
式 に代 入 す る と
また は
が 得 られ る.前
(A.31)
と同 様 に し て 物 体 固 定 系K'に
お け る3つ
の 座 標 軸 の まわ りの
角運動 量演算子 は
(A.32) で 与 え ら れ る.
行 列Vの
逆 行 列V-1は(A.2d)式
算子 は具体的 に
で 与 え られ て い るの で,上
の角運動 量演
(A.33) と表 され る.こ れ らの 角 運 動 量 演 算 子 にお い て,記 号"〓"は"Euler角 す る 演 算 子"と い う意 味 で あ り,記 号"'"は"物
体 固 定 系K'"に
に作用 おけ る成分
で あ る と い う こ と を 表 して い る. こ れ ら の 角 運 動 量 演 算 子 が 交 換 関係
(A.34) を み た す こ とは,直 接 計 算 に よ り容 易 に確 か め ら れ る.注
目す べ きは,こ の 交
換 関 係 が 空 間 固定 系 に お け る角 運 動 量 の 交 換 関 係 の 符 号 を 逆 転 し た もの に な っ て い る こ とで あ る. 両 方 の 系 に お け る 角 運 動 量 の2乗
の 演 算 子 は 等 し く,
(A.35) と 表 さ れ る. 演 算 子L2は
演 算 子L1,L2,L3,L'1,L'2,L'3の
す べ て と 交 換 可 能 で あ る.す
な
わ ち,
(A.36a) (A.36b) が 成 り立 ち,ま
た
(A.37) が 成 り 立 つ.し
た が っ てL2,L3,L'3の
と が で き る.こ
れ を
規 格 化 さ れ た 同 時 固 有 ベ ク トル を作 る こ
と す る.す
なわ ち
(A.38a) (A.38b) (A.38c)
である.た だし
であり,
で あ る.こ れ らの 固有 値 は,角 運 動 量 の 交 換 関 係 か ら固 有 値 を 求 め るた め に通 常 行 わ れ る方 法 を用 い て,交 換 関係(A.28),(A.34)だ
け を使 って 導 くこ とが で
きる. 角 運 動 量 演 算 子 の0で
ない行列 要素は
(A.39a) (A.39b) (A.39c) (A.40a) (A.40b) (A.40c) で あ り,そ
の 他 は す べ て0で
る の は,交
換 関 係(A.28)と(A.34)の
A.4
あ る.(A.39b)と(A.40b)式
の符 号 が 逆 転 し て い
符 号 が 逆 転 し て い る こ と に よ る.
角 運 動 量 の 固 有 関 数 と して のD関
数
角 運 動 量 演 算 子L2,L3お
よびL'3の
は前 節 で 述 べ た.し か し,そ
こで は その 具 体 的 な 表 示 は示 さな か っ た.本 節 で
は│j,m,m'〉
をEuler角
で 表 示 し,D関
同 時 固 有 ベ ク トル│j,m,m'〉
数 が 角 運 動 量 演 算 子L2,L3お
について
よびL'3
の 同 時 固 有 関 数 で あ る こ と を示 す.ま ず その た め の 準 備 を す る. (A.9)式 で 示 した よ うに,Euler角(θ1,θ2,θ3)で 算子
表 され る座 標 軸 の 回転 は 演
で 与 え られ る.し た が っ て,任 意 の 波 動
関数Ψ に 対 し て
(A.41a) (A.41b) (A.41c)
が 得 られ る.た だ し
で あ る.任 意 の2つ
の 演 算 子A,F
に対 す る よ く知 られ た公 式
(A.42) を 用 い れ ば,関 係 式
が 得 ら れ る の で,こ
れ ら を 使 っ て(A.41b)と(A.41c)式
は
(A.43a)
(A.43b) と 書 く こ とが で き る.物
体 回 転 の 角 運 動 量 演 算 子 は,(A.26)式
角 の 微 分 演 算 子 で 表 さ れ る.(A.26)式 与 え ら れ る の で,(A.26)式
に お け る 行 列Uの
に よ っ てEuler
逆 行 列 は(A.2c)式
で
に 上 記 の(A.41a),(A.43a),(A.43b)の
各 式 を代 入
で あ る.Ψ
は 任 意 で あ る か ら,
す る と,
が 得 ら れ る.た
だ し
一般 に
(A.44) が 成 り立 つ.注
意 す べ きはLκ はEuler角
に作 用 す る演 算 子 で あ り,Jκ は 空 間
座 標 や ス ピ ン座 標 に作 用 す る 演 算 子 で あ る と い う点 で あ る.つ はEuler角
ま り,(A.44)式
で 表 した 角 運 動 量 と通 常 の 全 角 運動 量 との 間 を 関 係づ け る重 要 な 関
係 式 で あ る. 上 のLκ やJκ は 空 間 固定 系Kに 系K'に
お け る成 分 で あ っ た が,こ れ ら を物 体 固 定
お け る 成 分 に 変 換 す る こ と は(A.4)式
の 座 標 変 換 行 列Rを
使 って容 易
に行 われ る.そ の 結 果 は
(A.45) で あ る.こ
こで も注 意 すべ きは,L'κ がEuler角
に作 用 す る の に 対 し,J'κ は通
常 の 全 角 運 動 量 の 演 算 子 の 物 体 固 定 系 に お け る成 分 で あ る とい う こ とで あ る. また
(A.46) が 成 り立 つ こ と も容 易 に わ か る. 以 上 で 準 備 が で きた の で,D関
数 が 角 運 動 量 演 算 子L2,L3お
時 固有 関 数 で あ る こ と を示 す.D関
数 の 定 義 式(A.13)と(A.46)式
よびL'3の
同
と を用 い て
(A.47) と な る.こ
こ で,記
号"〓"が
作 用 す る 演 算 子 で あ り,つ
つ い て い る 演 算 子LはEuler角(θ1,θ2,θ3)に
い て い な い 演 算 子Jは
あ る こ と に 注 意し な け れ ば な ら な い. トル で あ る.ゆ
え に
通 常 の全 角 運 動 量 の 演 算 子 で の同時固有ベ ク と な り,
(A.48) が 得 ら れ る. ま た,(A.44)式
を用 い て
(A.49) で あ る か ら,
(A.50) が 得 られ る.次 に
(A.51)
と な る.こ こで │jm'〉はJ3の
固有 ベ ク トルで あ り,J'3の 固有 ベ ク トル で は ない こ
と に注 意 しな けれ ば な らない.空 間固 定系 で の 全角 運 動 量 演算 子 と物 体 固 定 系 で の 全 角 運 動 量 演 算 子
とはユ ニ タ リー 変 換R(θi)
に よ って 関係 づ け られ,
であ るか ら
(A.52) と な る.し
た
っ て
が 得 ら れ,結
局
(A.53) が 得 ら れ る. (A.48),(A.50)お びL'3の
よ び(A.53)式
同 時 固 有 関 数 で あ り,そ
か ら,関
数 がL2,L3お
れ ぞ れ の 固 有 値 がj(j+1),m'お
よ よ びmで
あ
る こ と が わ か っ た.
A.5
物 体 の 回転 はEuler角
D関
が 時 間 と と もに変 化 す る こ と を意 味 す る.物 体 回 転 の
運 動 エ ネ ルギ ー を 求 め る た め に,D関 D関
数の 時間変化
数 の 時 間的 変 化 を求 め なけ れ ば な らな い.
数 の 時 間微 分 は
(A.54) で あ る.(A.32)式
か ら
(A.55) が 得 ら れ る.Euler角θ1,θ2,θ3は で あ る か ら,そ
単 位 ベ ク トルe1,e2,e3の
の 時 間 微 分θ1,θ2,θ3は
の 成 分 で あ る.こ
そ れ ぞ れe1,e2,e3の
の 角 速 度 の 成 分 を 物 体 固 定 系 のx',y',z'軸
まわ りの 回 転 角 ま わ りの 角 速 度 成 分,す
なわ ち
に 変 換 す る と
(A.56)
と な る.(A.55)式
を(A.54)式
に 代 入 し,(A.56)式
を 使 え ばD関
数 の 時 間微
分は
(A.57) と な る.(A.45)と(A.52)式
を用 い て
(A.58) と な り,こ
れ を(A.57)式
に 入 れ て,最
終的に
(A.59) が 得 ら れ る.
付 録B
回転 ・振 動模 型 のエ ネ ルギ ー 固有 値
4重 極 回転 対 称(回 転 楕 円体)変 形 し た原 子 核 の 回 転 ・振 動 運 動 の ハ ミル トニ ア ン は(3.127)式
で 与 え られ る.回 転 運 動 と振 動 運 動 の 間 の結 合Hrot-vibを
視したときのハミルトニアンの主要部分
無
のエネル
ギ ー 固 有 値 を 求 め よ う.
B.1
回
転
運
回 転 の ハ ミ ル トニ ア ンHrotは(3.127b)式
動
で 与 え ら れ,
(B.1) で あ る か ら,そ の 固 有 値 は
(B.2) と な る こ と は 明 ら か で あ る.
B.2
β 振 動 の ハ ミ ル ト ニ ア ンHβ
β
振
は(3.127c)式
動
で 与 え ら れ,
(B.3) で あ る.こ の ハ ミル トニ ア ン は1次 元 調 和 振 動 子 の そ れ と同 等 で あ るか ら,エ ネル ギ ー 固 有 値 は
(B.4a) と な る.た
だ し,
(B.4b) で あ る.
B.3
γ 振 動 の ハ ミル トニ ア ンHγ
γ
振
動
は(3.127d)式
で 与 え ら れ,
(B.5) で あ る.こ のハ ミル トニ ア ンは2次 元 調 和振 動 子 を極 座 標(r,φ)で 表 した と きの 動 径 部 分(rの
部 分)の ハ ミル トニ ア ン と同 型 で あ るか ら,エ ネ ルギ ー 固 有 値 は
(B.6) と な る こ とが 予 想 され る.確 か に この 予 想 が 正 し い こ と は後 で 明 らか に な る. しか し2次 元 調和 振 動 子 の 場 合 と γ振 動 の 場 合 とで は 大 き く異 な る点 が あ る. 2次 元 調 和 振 動 子 の 場 合,変 数rの
領 域 は[0,∞]で
あ り,波 動 関 数 が この 領 域
に お い て 規 格 化 可 能 で あ る と い う条 件 に よっ て エ ネル ギ ー 固有 値 が きま る.と こ ろが γ振 動 の 場 合 に は,波 動 関 数 は 変 数 γ の領 域[0,π/3]で 規 格 化 され る こ とが 要 求 され,波 動 関 数 の 境 界 条 件 は2π/3を あ れ ば よい こ とに な っ て,こ
周 期 と す る 滑 らか な 周 期 関 数 で
の こ とか らエ ネ ル ギ ー固 有 値(B.6)を
こ とは 難 し い.γ 振 動 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 を得 る た め に は,少
直 ちに得 る
し 異 な るや り方
が 必 要 と され る よ うで あ る.こ れ を以 下 で 説 明 し よ う. これ まで は振 動 運 動 を 集 団 座 標(β,γ)で 表 示 し て きた が,あ (a0,a2)を 用 い る こ と に す る.(β,γ)と(a0,a2)と
の 関 係 は(3.65)式
れ る.す な わ ち,こ れ まで は 集 団 座 標 と して の代 わ りに
で与 え ら
を と った が,そ
を採 用 す る わ け で あ る.
い ま考 えて い る平 衡 変 形 は す る と,平 衡 変 形 点 に お い て は わ りの 集 団 座 標(a0,a2)の
らためて座 標
で あ る.こ れ を(a0,a2)の
値 に換算
で あ る.こ の 平 衡 変 形 点 の ま
微 小 振 動 を考 え る.し た が って微 小 振 動 の 変 数(ξ,η)
を
(B.7)
と し よ う.こ れ らの変 数(ξ,η)を 用 い て 振 動 運 動 に対 す る ポ テ ン シ ャ ルVの
平
衡 点 の まわ りで の 展 開(3.126)は
(B.8) と書 か れ る. 集 団 座 標
を と る と振 動 運 動 の 運 動 エ ネ ル ギ ー の 演 算 子 は
(B.9) とな る.い
まの 場 合 の 体 積 要 素
(B.10) に お い て,dΩ
は(3.97)式
と 同 じ くEuler角
に 関 す る 部 分 で あ る が,座
標(a0,a2)
に 関 す る 部 分dT1は
(B.11) で あ る.い
ま,振
動 運 動 の 波 動 関 数 をΨ(a0,a2)と
す れ ば,規
格化は
(B.12) で あ る.そ
こで 変換
(B.13) に よ っ て 新 し い 波 動 関 数Ψ(a0,a2)を
定 義 す る.そ
の規格化 は
(B.14) で あ る. こ の 新 し い 波 動 関 数Ψ(a0,a2)が
変 換 前 の 波 動 関 数Ψ(a0,a2)と
等 な 物 理 内 容 を 記 述 す る た め に は,集
まっ た く同
団 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ンHcollを
(B.15)
と 変 換 し な け れ ば な ら な い.こ な ら な い.回
れ は 相 似 変 換(similarity
transformation)に
転 ・振 動 の 結 合 ハ ミル トニ ア ンHrot-vibを
無 視 す れ ば,こ
の変換
に よ っ て 作 用 を 受 け る の は 振 動 運 動 の 運 動 エ ネ ル ギ ー の 演 算 子Tvibの り,回
転 運 動 の ハ ミル トニ ア ンHrotや
受 け な い.Tvibは
ポ テ ン シ ャ ルV(a0,a2)は
他
みで あ
何 らの影 響 も
こ の 相 似 変 換 に よ り,
(B.16) と な る.変
数(a0,a2)を(B.7)式
を使 っ て(ξ,η)に 置 き換 え,こ
べ て 微 小 量 で あ る と 考 え て 展 開 し,最
低 次 を とれ ば,回
れ ら が β0に 比
転 ・振 動 の 結 合Hrot-vib
を 無 視 し た 集 団 運 動 の ハ ミル ト ニ ア ン の 主 要 部 分H(0)collは
(B.17a) (B.17b) (B.17c) (B.17d) と な る.回
転 の ハ ミル トニ ア ンHrotは(3.127b)ま
じ で あ る か ら,そ ル ト ニ ア ンHξ る か ら,そ
の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は(B.2)式
た は(B.1)式
の 通 りで あ る.ξ
は β 振 動 の ハ ミ ル ト ニ ア ン(3.127c)ま
の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は(B.4)式
β 振 動 そ の も の で あ る.残 注 意 す べ き は,振
振動のハ ミ と同等 で あ
な わ ち,ξ
振動 は
り の η振 動 が γ 振 動 に 対 応 す る 運 動 で あ る.た
た 表 示 で 表 し た こ と に な る.し
子 数 で あ る か ら,微
た は(B.3)式
の 通 りで あ る.す
動 を 記 述 す る 変 数 が 異 な っ て い て,同
ハ ミ ル トニ ア ン(B.17d)の
と ま っ た く同
だ し
一 の 振 動 運 動 を異 な っ
た が っ て γ 振 動 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 は η振 動 の
固 有 値 を 求 め る こ と に よ っ て 得 ら れ る.Kが
良い量
分方程式
(B.18) の 固 有 値Eη が η振 動 の エ ネル ギ ー 固 有 値,す 値 と な る.さ
らに
な わ ち γ振 動 の エ ネ ルギ ー 固 有
とお く と,(B.18)式
は
(B.19)
と 書 か れ る.し
た が っ てgK(η)の
漸近形 は
で あ る.gK(η)を
(B.20) とお き,
とす る と,関 数fの
み たす べ き方 程 式 は
(B.21) と な る.
さ て こ こで 関 数f(ρ)を 次 の よ う に ρの べ き級 数 に展 開 し よ う:
(B.22) こ の べ き 級 数 を(B.21)式
に 代 入 し,ρ=0と
す る と,関
いて 発散 しない ために は
ρ=0に
お よ びa1=0で
ば な ら な い こ と が わ か る.ゆ
え に,(3.121)式
で あ る こ と に 注 意 す れ ば, L(ρ)が
数f(ρ)が
お
な けれ
で 示 した よ うに が 得 ら れ る.し
た が っ て,べ
き級 数
み た す べ き方 程 式 は
(B.23) と な る.た
だ しL',L"は
そ れ ぞ れLの1階
程 式 に べ き級 数(B.22)を
お よび2階
の 微 分 で あ る.こ
の方
代 入 す る と,
(B.24) が 得 ら れ る.こ る.た
れ に よ っ て 原 理 的 に は べ き級 数L(ρ)の
だ しa1=0で
あ る か ら,L(ρ)は"偶
数 べ き"の
すべ ての項が 決定で き み と な る.と
の と き
と な る か ら,L(ρ)が η=∞
無 限 級 数 と な れ ば ρ=∞
に お い て 波 動 関 数gK(η)が
数 と な る た め に は,あ ら な け れ ば な ら な い.す
るi(=偶
(B.25)
でL(ρ)が
発 散 す る.L(ρ)が 数=2n2)に
こ ろが
発 散 し,そ
の結果
発 散 し ない よ うに有 限級
対 し て(B.24)式
の 分 子 が0に
な
な わ ち,
(B.26)
と な る.し
た が っ て,エ
ネ ル ギ ー 固 有 値Eη
は
(B.27a) と な る.た
だ し
(B.27b) で あ る.こ
のEη
が γ振 動 の エ ネ ル ギ ー 固 有 値 で あ る.
B.4
以 上 の 結 果 を ま と め る と,回
ま
と
め
転 ・振 動 の 結 合 ハ ミ ル トニ ア ンHrot-vibを
無視
す れ ば,回 転 ・振 動 模 型 の エ ネ ル ギ ー 固 有値E(0)collはハ ミル トニ ア ンH(0)collの 固 有 値 で あ り,
(B.28) と な る.た
だ し
は そ れ ぞ れ(B.4b),(B.27b)式
で 与 え られ る.
付 録C
ボ ソ ン写 像法 の 一般 論
偶 数 フ ェ ル ミオ ン系 の 全 ヒ ル ベ ル ト空 間か ら イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 へ の 一 般 化 され た ボ ソ ン写 像 法 に つ い て,本 文 で 必 要 と され る最 小 限 の 説 明 を行 う.*1
C.1
フ ェ ル ミ オ ン 空 間 と イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間
以 下 で は 粒 子 数 が 偶 数 の フ ェ ル ミオ ン系 を扱 う も の と す る.a† α,aα を そ れ ぞ れ フ ェ ル ミオ ン の 生 成,消
滅 演 算 子 と す れ ば,系
の 状 態 ベ ク トル は,
(C.1) と 表 さ れ る.偶
数 粒 子 系 の 全 ヒ ル ベ ル ト空 間 は,す
張 ら れ る フ ェ ル ミ オ ン 空 間{│m〉}で 一 方,イ
べ て の 可 能 な│m〉
に よ って
あ る.
デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間{│n)}は
(C.2) に よ っ て 張 られ る.こ
こで ボ ソ ン演 算 子
は,交 換 関 係
(C.3) をみ た す もの とす る.イ デ ア ル ・ボ ソ ン空 間{│n)}の る状 態│m)は,フ
中 で,物 理 的 に 意 味 の あ
ェ ル ミオ ン の 状 態│m〉 に対 応 して い な けれ ば な らな い の で,
反 対 称 化 され た ボ ソ ンの 状 態 ベ ク トル
(C.4) *1 こ の 付 録 のC.1-C R.
V.
Phys.
Jolos,
Nucl.
Rev.
C 38
.4の Phys. (1988)
内 容 の 多 A
172
2450に
く を,D.
(1971) よ る.
145に
Janssen,
F.
負 っ て い る.ま
Donau, た,C.5の
S.
Frauendorf 内 容 はK.
and Takada,
で 与 え ら れ る.た Pは
だ し,規
格 化 定 数 は
添え字
に 関 す る 順 列 を 表 す.記
が 偶 順 列 な ら1,奇
順 列 な ら-1で
張 ら れ る 部 分 空 間{│m)}と
の 間 に は 完 全 に1対1対
空 間 の 中 の 部 分 空 間{│m)}は
応 が あ り,し
フ ェル ミオ ン
た が っ て イ デ ア ル ・ボ ソ ン
物 理 的 部 分 空 間(physical
そ れ 以 外 は 非 物 理 的 部 分 空 間(unphysical
C.2
号(-1)PはP
あ る.
反 対 称 化 さ れ た ボ ソ ン 状 態(C.4)で 空 間{│m〉}と
で あ り,*2
subspace)と
subspace)と
呼 ば れ,
呼 ば れ る.
物理 的部分空 間への射影演算子
われ われ が い ま 目標 とす るボ ソ ン写 像 法 は,元 に な るフ ェル ミオ ン空 間{│m〉} か ら イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 内 の 物 理 的 部 分 空 間{│m)}へ
の写 像 で あ る.そ の た
め に以 下 の 議 論 で しば しば 現 れ る,物 理 的部 分 空 間へ の射 影 演 算 子(projection operator)
Pに
つ い て 説 明 し て お こ う.
反 対 称 化 され た ボ ソ ン状 態 ベ ク トル│m)は
次 の よ う に表 す こ とが で き る:
(C.5) で あ る.容
た だ し
が 成 り 立 つ か ら,こ
れ ら を(C.5)式
易 に 確 か め ら れ る よ う に,
に適 用 す る と
(C.6) が 得 ら れ る.た
だ し
(C.7) *2
で あ る.こ の操 作 をn回
繰 り返 す と,結 局
(C.8) が 得 ら れ る.こ れ が 反 対 称 化 さ れ た ボ ソ ン 状 態 ベ ク トル の 別 の 表 現 で あ る.(C.8) 式 に お い て,例
え ば2ボ
ソ ン 状 態 を と っ て み る と,
(C.9) と な り,確 か に 反 対 称 化 され た ボ ソ ン状 態 とな って い る. ボ ソ ン状 態(C.2)で
作 られ る イデ ア ル ・ボ ソ ン空 間{│n)}は,反
対 称 化 され た
物 理 的 部 分 空 間 の み な らず,反 対 称 で な い非 物 理 的部 分 空 間 も含 ん で い る.イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の 中 の 物 理 的 部 分 空 間へ の 射 影 演 算 子Pは
(C.10) で 定 義 さ れ る.も
ち ろ ん│m)は(C.4)ま
れ た ボ ソ ン 状 態 ベ ク トル で あ る.い
た は(C.8)式 う ま で も な くPは
で 与 え られ る 反 対 称 化 さ エ ル ミ ー トで あ り,
(C.11) を み た す.ま
た,容
易 に わ か る よ うに
(C.12) お よび
(C.13)
が 成 り立 つ の で,
(C.14) と な る.こ れ らの 結 果 を用 い る と,重 要 な 関係 式
(C.15a) (C.15b) が 成 り立 つ.た
だ し,
(C.16) で あ る.
C.3
Usuiに
Dyson型
よ っ て 提 唱 され たUsui演
ボ ソ ン写 像
算 子*3
(C.17a) (C.17b) を 導 入 す る.こ
れ らがDyson型
の 写 像 演 算 子 で あ る.ま
ボ ソ ン 写 像(Dyson-type
た,イ
boson
mapping)*4
デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 内 の 物 理 的 部 分 空 間{│m)}
の 双 直 交 基 底 ベ ク トル を
(C.18) *3 T *4 F
. Usui, . J.
Prog.
Dyson,
Theor. Phys.
Phys. Rev.
102
23
(1960)
(1956)
787. 1217,
1230.
と す る.こ
れ ら は 双 直 交 規 格 化 さ れ て い て,
を み た す.こ
れ ら の イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の ブ ラ 基 底 ベ ク トル{L(m│}と ル{│m)R}と
を ま と め てDyson型
ケ ッ ト基 底 ベ ク ト
基 底 ベ ク ト ル(Dyson-type
basis vectors)
と 呼 ぶ こ と に す る. (C.17)式
のDyson型
ボ ソ ン 写 像 演 算 子 を 使 え ば,フ
ク ト ル│m〉
がDyson型
ボ ソ ン 基 底 ベ ク ト ル(C.18)へ
ェ ル ミオ ン空 間の 基底 ベ 次 の よ う に 変 換 され る:
(C.19a) つ ま り,U1は
フ ェ ル ミオ ン空 間 の 基
底 ベ ク トル│m〉
を イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空
間 の ケ ッ ト基 底 ベ ク ト ル│m)Rへ し,U†2は
変換
フ ェ ル ミオ ン空 間の 基 底 ベ
ク ト ル 〈m│を イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 の ブ ラ 基 底 ベ ク トルL(m│へ 像 演 算 子 で あ る.こ
変換 す る写
れ らの 逆 写 像 は
図C.1
Dyson型 ボ ソ ン 写 像 法 に お け る フェ ル ミオ ン 空 間 の 基 底 ベ ク トル と イデ ア ル ボ ソ ン 空 間 に お け るDyson型
基底ベ ク
トル の対 応 関 係
(C.19b) で あ る.フ Dyson型
ェ ル ミ オ ン 空 間 の 基 底 ベ ク ト ル と イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に お け る 基 底 ベ ク トル の 間 の 対 応 関 係 が 図C.1に
(C.19a)式
示 され て い る.
か ら 直 ち に わ か る よ う に,
(C.20) と な る の で,フ
ェ ル ミオ ン 空 間 に お い てU†2U1は
次 に 任 意 の 演 算 子 の ボ ソ ン 写 像 を 考 え る.い Oと
す る.(C.19)式
と な る か ら,Dyson型
単 位 演 算 子(=1)で ま,あ
あ る.
る フ ェル ミオ ン演 算 子 を
を 用 い れ ば,
ボ ソ ン 演 算 子(Dyson-type
boson
operator)
ODを
(C.21)
で 定 義 す れ ば,フ
ェ ル ミオ ン空 間 に お け る行 列 要 素 と イデ ア ル ・ボ ソ ン空 間 に
お け る 行 列 要 素 が 等 し くな り,
(C.22) と な る.し Dyson型
た が っ て,フ
ェ ル ミ オ ン 空 間 内 の"物
理"の
す べ て が(C.17)式
の
ボ ソ ン 写 像 に よ っ て イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 変 換 さ れ た こ と に な る.
容 易 に 確 認 さ れ る よ う に,
(C.23) が 成 り立 ち,そ の 結 果
(C.24) が 得 ら れ る.す
な わ ち,Dyson型
ボ ソ ン演 算 子 を 非 物 理 的 状 態 に 作 用 させ る と
0と な る. フ ェ ル ミオ ン 空 間 内 の"物
理"の
す べ て がDyson型
ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 変 換 さ れ る と い っ て も,こ い の で,フ
ボ ソ ン写 像 に よっ て イデ
の 変 換 はユ ニ タ リ ー変 換 で は な
ェ ル ミ オ ン 空 間 内 で の エ ル ミ ー ト演 算 子 で も,変
換 後 のDyson型
ソ ン 演 算 子 が エ ル ミー トで あ る と は 限 ら な い.例
え ば,系
フ ェ ル ミ オ ン 空 間 内 で は エ ル ミー トで あ る が,変
換 後 のDyson型
ボ
の ハ ミル トニ ア ン は, ボ ソ ン ・ハ ミ
ル ト ニ ア ン は 非 エ ル ミ ー トで あ る. さ て,最
も基 本 的 な フ ェ ル ミ オ ン の 対 演 算 子a†αa† β,aαaβ,a†αaβ のDyson型
ボ ソ ン 写 像 の 具 体 形 を示 す と,
(C.25a) (C.25b) (C.25c) と 表 さ れ る.ρ
の 定 義 は(C.16)式
に 与 え ら れ て い る.
相 互 作 用 ハ ミル ト ニ ア ン の よ う に フ ェ ル ミ オ ン の 演 算 子a† やaの4次 で 書 か れ て い る よ う な 演 算 子 のDyson型 対 演 算 子 の 積 と 考 え,そ よ い.例
え ば,4次
ボ ソ ン 写 像 は,2つ
れ ぞ れ を 上 記(C.25)式
の 演 算 子a†αa† βaδaγ のDyson型
形式
の フ ェ ル ミオ ンの
の ボ ソ ン 写 像 で 置 き換 え れ ば ボ ソ ン写 像 は
(C.26)
と な る.最
後 の 関 係 式 は(C.15a)式
を 使 っ て 得 ら れ る.
以 上 の 結 果 か ら 明 ら か な よ う に,任
意 の フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子OのDyson型
ボ ソ ン 写 像ODは,
(C.27) の 形 に表 す こ とが で きる.た だ しODは あ る.こ の よ うにODが
ボ ソ ン 演 算 子 の 有 限 級 数(多 項 式)で
ボ ソ ンの 有 限 級 数 で 表 され る 点 がDyson型
の特徴 で
あ る.
C.4
も う1つ
Holstein-Primakoff型
の 有 用 な ボ ソ ン 写 像 法 はMarumoriら
がHolstein-Primakoff型 ping)*6で
ボ ソ ン写 像
に よ っ て 提 唱 さ れ た.*5こ
あ る.そ
ボ ソ ン 写 像(Holstein-Primakoff-type
boson
れ
map
の 写 像 演 算 子Uは
(C.28) で 定 義 さ れ,Marumori演
算 子*5と
こ の 変 換Uに
ェ ル ミ オ ン 空 間 の 基 底 ベ ク トル│m〉
よ っ て,フ
呼 ば れ る. は反対 称化 さ
れ た ボ ソ ン の 基 底 状 態│m)へ,
(C.29) と変 換 され る. 容 易 に わか る よ う に
(C.30) と な る か ら,フ
ェ ル ミオ ン 空 間 に お い てU†Uは
単 位 演 算 子(=1)で
あ る.ま
た
(C.31) が 成 り立 つ. *5 T *6 T
. Marumori, . Holstein
M. and
Yamamura H.
Primakoff,
and
A.
Phys.
Tokunaga, Rev.
58
Prog. (1940)
Theor. 1098.
Phys.
31
(1964)
1009.
任 意 の フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子Oを,演 し たHolstein-Primakoff型 operator)
算 子Uで
イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 変 換
ボ ソ ン 演 算 子(Holstein-Primakoff-type
boson
OHPを (C.32)
で 定 義 す れ ば,フ
ェ ル ミオ ン 空 間 に お け る 行 列 要 素 と イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に
お け る 行 列 要 素 が 等 し く な り,
(C.33) と な る.し
た が っ て,フ
Holstein-Primakoff型 こ と に な る.こ
ェ ル ミ オ ン 空 間 内 の"物
理"の
す べ て が(C.28)式
ボ ソ ン 写 像 に よ っ て イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 変 換 さ れ た
の 変 換 は ユ ニ タ リ ー 型 の 変 換 で あ る か ら,フ
お け る エ ル ミ ー ト性 は ボ ソ ン 空 間 に お い て も保 存 さ れ る.す Primakoff型
の
ェル ミオ ン 空 間 に な わ ち,Holstein-
ボ ソ ン ・ハ ミ ル トニ ア ン は エ ル ミ ー ト演 算 子 で あ る.ま
た,
(C.34) が 得 ら れ る か ら,Holstein-Primakoff型 せ る と0と
ボ ソ ン演 算 子 を非 物 理 的状 態 に作 用 さ
な る.
最 も基 本 的 な フ ェ ル ミ オ ン の 対 演 算 子 makoff型
のHolstein-Pri
ボ ソ ン 写 像 の 具 体 形 を 示 す と,
(C.35a) (C.35b) (C.35c) と 表 さ れ る.ρ
の 定 義 は(C.16)に
与 え ら れ て い る.
相 互 作 用 ハ ミ ル トニ ア ン の よ う に フ ェ ル ミ オ ン の 演 算 子a† やaの4次
形式で
書 か れ て い る よ う な 演 算 子 のHolstein-Primakoff型
の フェ
ル ミ オ ン の 対 演 算 子 の 積 と 考 え,そ き換 え れ ば よ い.た ボ ソ ン写 像 は
と え ば,4次
ボ ソ ン 写 像 は,2つ
れ ぞ れ を 上 記(C.35)式
のボ ソン写像で置
の 演 算 子a†αa† βaδaγ のHolstein-Primakoff型
(C.36) と な る. 以 上 の 結 果 か ら 明 ら か な よ う に,任 Primakoff型
意 の フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子OのHolstein-
ボ ソ ン 写 像OHPは (C.37)
の 形 に 書 く こ と が で き る.OHPは,(C.36)式 含 む の で,こ
れ を2項
で わ か る よ う に平 方 根 演 算 子 を
展 開 す る と 無 限 級 数 と な る.こ
の 点 がDyson型
像 の 場 合 と 大 き く異 な る 点 で あ り,Holstein-Primakoff型
ボソン写
ボ ソ ン写 像 の不 利 な
点 で あ る.
フ ェ ル ミオ ン の 対 演 算 子 作 る.こ
れ はN次
の 間 の 交 換 関係 は 閉 じ た代 数 を
元 特 殊 直 交 群(SO(2N))のLie代
数 で あ る.Nは1粒
態 α の 数 で あ る.BelyaevとZelevinskiは,フ
子状
ェル ミオ ン の対 演 算子 に対 応 す
る ボ ソ ン の 無 限 級 数 で 表 され る 演 算 子 を 考 え,そ
の 各 次 数 ご と に この 交 換 関 係
(Lie代 数)を み た す よ う に 級 数 展 開 を きめ れ ば,フ ェ ル ミオ ン空 間 の す べ て の "物 理"が イ デ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 に 変 換 で き る は ず で あ る ,と い う ア イデ ア に よ る ボ ソ ン 展 開 法 を 提 唱 し た.*7Holstein-Primakoff型
ボ ソ ン 写 像(C.35)に
い て,射
を 級 数 展 開 し,正
影 演 算 子Pを
除 い て,平
方根演算子
形 に ア レ ン ジ し 直 し た もの が ま さ にBelyaev-Zelevinskiの
お
規積 の
ボ ソ ン展 開 にな っ て
い る.
C.5
ボ ソ ン 空 間 に お け るSchrodinger方
フ ェ ル ミ オ ン 空 間 の ハ ミル トニ ア ン をHと
程式
し,Schrodinger方
程 式 を
(C.38) と 書 く.Holstein-Primakoff型 に よ っ て,こ
ボ ソ ン写 像Uお
のSchrodinger方
程 式 は,そ
よ びDyson型
ボ ソ ン写 像U1,U†2
れぞ れ
(C.39) *7 S
. T.
Belyaev
and
V.
G.
Zelevinski,
Nucl.
Phys.
39
(1962)
582.
お よび
(C.40) と 変 換 さ れ る.た
だ し,固
有 ベ ク トル の 変 換 は
(C.41) で あ り,Holstein-Primakoff型
お よ びDyson型
ボ ソ ン ・ハ ミ ル ト ニ ア ン は,そ
れ ぞ れ
(C.42) で あ る. (C.39)式 り,固
はHolstein-Primakoff型
ボ ソ ン写 像 法 に お け る固 有 値 方 程 式 で あ
有 ベ ク トル の 規 格 直 交 条 件 は
(C.43) で あ る.他 方,(C.40)の2つ
の 式 はDyson型
ボ ソ ン 写 像 法 に お け る右 固 有 値
方 程 式 お よび 左 固有 値 方 程 式 で あ る.Dyson型
ボ ソ ン写 像 法 に お い て は,ボ
ン ・ハ ミル トニ ア ンHDは
たが っ て左 右 の 固有 値 方 程 式 が
非 エ ル ミー トで,し
ソ
必 要 と な る.こ の 場 合 の規 格 直 交 条 件 は
(C.44) と書 か れ る.規
格 直 交 条 件(C.44)だ
を 決 定 す る こ と は で き な い.な 定 数 を か け,後
け で は 左 右 の 固 有 ベ ク トル
ぜ な ら ば,た
と え ば 前 者 に あ る0で
者 を そ の 定 数 で 割 っ て 得 ら れ る1組
な い任 意 の
の 左 右 のベ ク トル も また 固
有 ベ ク トル に な っ て い る か ら で あ る. ボ ソ ン ・ハ ミル トニ ア ン の 行 列 要 素 の 計 算 は,Dyson型 方 がHolstein-Primakoff型 し,Dyson型
ボ ソ ン写 像 法 のHHPよ
ボ ソ ン 写 像 法 に お い て は,上
ボ ソ ン 写 像 法 のHDの
り は る か に 容 易 で あ る.し
か
述 の よ うに 固 有 関 数 の 規 格 化 が 確 定 し
な い こ とが 決 定 的 に 不 利 な 点 で あ る と 考 え られ て き た.し
た が っ て,Dyson型
ボ
ソ ン 写 像 法 の 有 利 な 点 を 生 か し な が ら計 算 し た 行 列 要 素 を,Holstein-Primakoff 型 ボ ソ ン 写 像 法 の 行 列 要 素 に"転 換"(convert)す る.こ
れ を 以 下 で 説 明 し よ う.
る こ と が で きれ ば 理 想 的 で あ
{│i)}を イデ ア ル ・ボ ソ ン空 間 内 の 物 理 的 部 分 空 間の 基 底 ベ ク トル と し,そ の 規 格 直 交性 を
とす る.さ ら に,こ れ ら の基 底 ベ ク トル は(C.16)式
で 定 義 され るボ ソ ン の 個 数 演 算 子Nの
固 有 状 態 とす る.す な わ ち,そ れ ぞ れ の
基 底 ベ ク トル は き ま っ た ボ ソ ン数Niを 基 底 ベ ク トル は,ボ
ソ ン数Niと
持 つ もの とす る.一 般 的 に は これ らの
と もに,た
と え ば 角 運 動 量 の 大 き さや そ のz
成 分 の よ うな量 子 数 で 指 定 され る はず で あ る.こ れ らの 量 子 数 はNと 能 な い くつ か の エ ル ミー ト演 算 子 こ こで,Kは
交換 可
の 固有 値 で あ る.
基 底 ベ ク トル{│i)}を 指 定 す るた め に必 要 な量 子 数 の 個 数 で あ る.
ボ ソ ンの 基 底 ベ ク トル│i)は(C.28)式 ク トル│i〉に逆 変換 され,さ ク トル│i)R,L(i│に
のUに
ら に(C.27)式
よ って フ ェ ル ミオ ン の 基 底 ベ
のU1,U†2を
使 っ てDyson型
基底ベ
変 換 され る.す な わ ち
(C.45) と な る.ま
た 演 算 子CHP(k)に
型 ボ ソ ン 演 算 子 をCD(k)と
対 応 す る フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子 をCF(k), す れ ば,そ
Dyson
れ らの 間 の 関 係 は
(C.46) で あ る.フ
ェ ル ミオ ン 演 算 子CF(k)は
あ る こ と は 明 ら か で あ る.こ
の よ う な 演 算 子 は フ ェ ル ミ オ ン 対 演 算 子a†αbβ ま
た は そ れ ら の 積 で 構 成 さ れ る.と う に
フ ェル ミオ ン数 を変 化 させ な い 演 算 子 で
こ ろ が,(C.25c)と(C.35c)式
で あ り,し
か らわか るよ
たが っ て
(C.47) で あ る. Dyson型
基 底 ベ ク トル│i)Rお
有 ベ ク ト ル で あ り,(C.47)式 し た が っ て,そ
れ ら は│i)ま
よ びL(i│は,そ
れ ぞ れCD(k)の
か ら そ れ ら はCHP(k)の た は(i│に
右 お よび 左 固
固 有 ベ ク ト ル で も あ る.
比 例 し て い る は ず で あ る.す
な わ ち,
(C.48) で あ る.こ Oを
こ で,kiは0で
な い 定 数 で,正
の 実 数 と 考 え て よ い.
任 意 の フ ェ ル ミ オ ン 演 算 子 と し,そ
Holstein-Primakoff型
のDyson型
ボ ソ ン 写 像 を そ れ ぞ れODお
ボ ソ ン写 像 お よび
よ びOHPと
す ると
(C.49)
が 成 り立 ち,し たが っ て エ ル ミー ト共 役 の 性 質 か ら
(C.50) と な る.OD≠(OD)†
に 注 意 す べ き で あ る.(C.48)式
を 用 い る と,
(C.51) と な る か ら,
(C.52) と な る.こ の式 に よ り,Dyson型
ボ ソ ン写 像 の 行 列 要 素 をHolstein-Primakoff
型 へ 転 換 す る こ とが で き る. (C.52)式 に お い て,フ
ェル ミオ ン 演 算 子Oと
と る と,
して 系 の ハ ミル トニ ア ンHを
で あ る か ら,
(C.53) が 得 ら れ る.こ
の 結 果 を 用 い る と,Dyson型
問 題 がHolstein-Prirnakoff型
ボ ソ ン 写 像 の 非 エ ル ミー ト 固 有 値
の エ ル ミ ー ト固 有 値 問 題 に 転 換 さ れ た こ と に な る.
参
考
図
書
本 文 中 で 参 考 に した 文 献 は そ の都 度 脚 注 にあ げ た の で,引 用 し た 原 著 論 文 を あ ら た め て リス トア ップ す る こ と は しな い.こ
こで は,本 書 の 多 くの 章 や 節 の
広 い 範 囲 に わ た っ て,執 筆 の 際 に特 に 参 考 に させ て い た だ い た 図 書 を あ げ て, 読 者 の 便 宜 に 資 す る と と も に,感 謝 の 意 を表 した い と思 う. 本 書 全 体 を 通 じ て 参 考 に した 図 書 は,以 下 の(1)-(5)で (1) 高 木 修 二,丸 森 寿夫,河 理 学 の基 礎 」 第9巻),岩 (2) 野 上 茂 吉 郎:原
(3) 市 村 宗 武,坂
子 核,裳
and
合 光 路:原 子 核 論(第2版,岩
波 講 座 「現 代 物
波 書 店(1978). 華 房(1973).
田文 彦,松 柳 研 一:原 子 核 の 理 論(岩 波 講 座 「現 代 の 物 理
学 」 第9巻),岩 (4) P.Ring
あ る.
波 書 店(1993).
P.Schuck:The
Nuclear
Many-Body
Problem,Springer-
Verlag(1980).
(5) A
Bohr
and
B.R.Mottelson:Nuclear Structure,Benjamin,Vol.I
(1969);Vol.Ⅱ(1975)[中 寺 国 晴 訳:原 朗 人,寺 巻,講
また,本
村 誠 太 郎 監 修,有
子 核 構造
沢 徳 雄,市
第1巻,講
村 宗 武,矢
馬 朗 人,市
談 社(1979);中 崎 紘 一,大
村 宗 武,久
保
村 誠 太 郎 監 修,有
馬
西 直 毅 訳:原
子 核 構 造 第2
談 社(1980)].
書 の そ れ ぞ れ の 部 分 で 特 に 参 考 に した 図 書 は,以 下 の(6)-(14)で
あ る. (6) A.de-Shalit
and
I.Talmi:Nuclear
Shell
Theory,Academic
Press
(1963). (7) M.G.Mayer Shell
and
Structure,John
殻 模 型 入 門,三
J.H.D.Jensen:Elementary Wiley
省 堂(1973)].
&
Sons(1955)[寺
Theory
of
沢 徳 雄 訳:原
Nuclear 子 核 の
(8) J.M.Eisenberg
and
W.Greiner:Nuclear
Models(Nuclear
Theory)
Vol.1,North-Holland(1987).
(9) 大 塚 孝 治:相 互 作用 す るボ ソン模 型(物 理 学 最 前 線20),共 立 出版(1988). (10) F.Iachello University
and
A.Arima:The
interacting
boson
model,Cambridge
Press(1987).
(11) 鈴 木敏 男:原 子 核 の 巨 大 共 鳴 状 態(物 理 学 最 前 線19),共 (12) K.Wildermuth Springer
and Tracts
W.McClure:Cluster
in Modern
(13) K.Wildermuth
and
Representation
立 出 版(1988). of Nuclei,
Physics,Vol.41(1966).
Y.C.Tang:A
Unified
Theory
of the Nucleus,
Vieweg.Braunschweig(1977). (14) Y.C.Tang:Microscopic ory,Lecture
Notes
Description in Physics
of
the
Vol.145,Springer
Nuclear
Cluster
Verlag(1981).
The
索
引
α ク ラ ス タ ー 297
Brueckner-Hartree-Fock法
α ク ラ ス タ ー 287, 306,
289,
291,
293,
294,
354
Casimir演
α 粒 子 模 型 3
cfp 27,
Alagaの
規 則 139,
Arima
45,
143
算 子 248-250 28,
30-32,
Chadwick
251
34,
Clebsch-Gordan係
135,
β バ ン ド 136,
158,
138,
220,
109
数 9, 25,
149,
109
159,
162,
262,
― エ ネ ル ギ ー 68,
104,
105
267
Coulomb
377
140
β 崩 壊 284
― 力 63,
Bardeen-Cooper-Schrieffer理
35,
1
Coriolis力 β 振 動 134,
81
300,
論 188
69
― 励 起 139,
140,
157
Bartlett ― 演 算 子 315
δ 関 数 型 の ポ テ ン シ ャ ル 22
― 力 315
D型
BCS
D関 ― 基 底 状 態 188-190, 209,
214,
193-198,
205,
208,
215 196-199,
204,
205
Bethe
223,
268,
71
定 理 200,
Bogoliubov-Valatin変 Bogoliubov変
367,
372,
375
, 244 237,
241,
244,
246,
386,
130,
132,
369,
換 188, 201,
370,
87
204 Eulcr角
換 191
205,
一 般 化 され た ―
191,
206,
A.
3, 100, 127,
Bohr,
N.
2
193,
194,
198,
212
199
Bohr,
, 200,
―
372,
373,
224,
125,
127,
363,
365,
129, 366,
375
の 時 間 微 分 125
Fermi ― 運 動 量 70,
― の 集 団 模 型 148, 173,177,
184,
150, 205,
Breit-Wignerの
153,
158,
164,
209,
230,
251,
共 鳴 公 式 270
Brink-Margenau波
71,
― エ ネ ル ギ ー 165, ― ガ ス 模 型 69-72
270
―
73,
86
177,
194,
253,
面 74
Feshbach理
論 90
Feynman図
74
動 関 数 300
型 300
―理 論
190,
143
― の 強 結 合 ハ ミル ト ニ ア ン 148
Brueckner
118-120,
148,
202
Bohr-Mottelson
Brink模
244
224,
392 程 式 83-85,
Bloch-Messiahの
170,
イ メ ー ジ 243
391 ― 型 写 像 233,
Bethe-Goldstone方
199,
241,
122,
ソ ン 246
― 230,
238,
Dyson
― 理 論 188 Belyaev
235,
― の 時 間 変 化 375 dボ
― 近 似 191,
234,
数 118-120,
γ 振 動 134,
71 67,
135,
γ バ ン ド 136, 71,
Brueckner-Bethe-Goldstone理
76,
81-83,
94-96 論 71
g因
子 52
軌 道 ―
51
158,
138-140,
159, 143,
220, 260
378
256
ス ピ ン ― G行
51
列 78,
Gauss型
44,
Gaussの
K射
46
L2力
超 幾 何 関 数 368
GCM
332,
―
334,
338,
71,
344,
, 339,
353
340,
353
Laguerre多
Lipkin模
Hamada-Johnstonポ
テ ン シ ャ ル 64,
Hamilton関
124
数 123,
189,
193,
165,
65,
型
199,
205,
近 似 165,
―
場
―
法 81 , 164-166,
67
168,
224,
181,
226,
183-186,
229,
274
方 程 式 166,
167,
185,
197,
199,
170
ポ テ ン シ ャ ル 157,
167,
186,
198,
―
基 底 状 態 201
―
法
―
方 程 式 201,
198,
演 算 子 315 力 315
228,
297
Mottelson
3,
new
― ダ イ ア グ ラ ム 154-157, ―
―
基 底 状 態 201
―
法 198
―
方 程 式 201
, 202,
イ メ ー ジ 243 型 写 像 233,
350,
p殻
245, 241,
389, 244,
392
45,
245
Janssen Jensen jj結
353,
型 212-214,
― の 量 子 化 124
合殻 模 型 7
256,
356
345,
225 42,
45,
46
Q空
間 89, 92
Qボ
ッ ク ス 93, 94
QQ力
211,
347,
349-352,
294,
350
360
, 74, 84, 86-88, ス ピ ン 行 列 64
―
Peierls
383
254,
220
343,
356,
標 315 252,
355,
350
― 原 理 19 290
268
2, 7, 8
222,
355
― 禁 止 状 態 341,
251
イ ア グ ラ ム 288,
352,
― 許 容 状 態 349,
pf殻 Jacobi座
221,
291
355,
1
268
Pauli
281
221,
222,
間 89, 92
P+QQ模 237,
238,
157,
方 程 式 350-352,
P空
―
Iwanenko
209
250
― 204
, 204
―
Inglis
184,
257
Holstein-Primakoff
247,
183,
ポ テ ン シ ャ ル 157 ― 模 型 153-155,
204
HFB
246,
似 181,
253
OCM
Ikedaダ
143
Tamm-Dancoff近
O(6)
233-235,
230
2, 7, 8
Morinaga
1
―
220,
Nilsson
Hartree-Fock-Bogoliubov
―
177,
Mayer 168,
229
Heisenberg
Marumori
― 演 算 子 389
186
197,
― 力 315 167-170
205
IBM
232
Majorana
166,
―
IAS
318
―演 算 子 315
基 底 状 態
HP型
267,
65
Hartree-Fock
―
217,
― 方 程 式 102
LS力
―
215,
項 式 8
― の 展 開 定 理 317,
86
283
―
202,
Laplace 直 交 化 法 35
数 85,
未 定 乗 数 191,
332
76
Gram-Schmidtの
GTR
327
65
Lagrangeの
339,
方 程 式 332-334
Goldstone
Green関
影 326,
80, 94
212
Racah
24
―
係 数 29
Rainwater RGM
ア
294, 353,
334,
335,
338,
339,
341,
343,
351,
355
ア イ ソ ス カ ラ ー 型 278, ア イ ソ ス ピ ン 20,
― 方 程 式 334, RPA
行
116
174,
176,
336,
177,
338,
339,
181-184,
207
ア イ ソ ベ ク トル 型 273,
―フ ォ ノ ン 230
安 定 性 条 件 185,
― 方 程 式 177-180, モ ー ド 177 , 181, ― 励 起 モ ー ド 176 ―
Rutherford
183,
185,
205,
207
186,
281
64
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ 状 態 281
349-354
205,
280,
43,
281
186
208 位 相 の ず れ 294 1重 状 態 64
1
1粒
子1空
孔 モ ー ド 176,
205
1粒 子 ポ テ ン シ ャ ル 77, 80 一 般 化 さ れ た 準 粒 子 198 , 199
sバ
ン ド 262
sボ
ソ ン 246
イデ ア ル ・ボ ソ ン 空 間 232-237,
Schmidt
383
―
井 戸 型 ポ テ ン シ ャ ル 11 線 53
イラ ス ト
― 値 53 SDI
― 状 態 139,
44
sd殻
42,
45,
Skyrme力
46,
295
―・
253
Slater行 185,
列 式 18,
165,
274,
301-303,
275,
166,
169-171, 307,
262,
, 263, レ ベ ル 260
268,
269
312,
252,
253,
257,
, 262
渦 な し 102,
114
液 滴 模 型 2,
249
260,
― 殻 模 型 305,
323,
331,
347
67,
Tamura
似 181,
182,
184,
209
―
定 理 171,
173,
203,
215
対 称 ―
68
体 積 ―
198,
68
に 依 存 す る 有 効 相 互 作 用 90
―
248
表 面 ―
算 子 386
68
ペ ア リ ン グ ・― 遠 心 力 136,
Weisskopf単
位 111
Weizsacker
2
16
267
オ ー プ ン 殻 15
Weizsacker-Betheの
質 量 公 式 16, 67, 99, 277
197,
オ ブ レ ー ト 型 121 折 れ 線 ダ イ ア グ ラ ム 96
定 理 166
Wigner-Eckartの Wigner力
定 理 59
カ
行
315
Woods-Saxon型
ポ テ ン シ ャ ル 11
回 転 ―
2
― 型 44
ス キ ー ム 263, ― 整 列
, 46,
63
255,
205,
に 依 存 し な い 有 効 相 互 作 用 91
248
Yukawa
, 197,
―
U(6)
Wickの
253,
68
・ギ ャッ プ 194
U(5)
275,
252,
― ・シ フ ト 72, 81
170
253,
99,
エ ネ ル ギ ー
245
Thoulessの
69,
270
Coulomb― Tamm-Dancoff近
Usui演
266
269
型 232
TDHF法
263,
運 動 エ ネ ル ギ ー 121
Strutinsky法
SU(3)
259,
173,
308,
314-316
SU(2)模
258,
― 線 258-260 ― 領 域 259
―
262,
体 363
264,
264, 266,
266 268
223
257,
―
対 称 134,
―
対 称 性 229,
149,
―
楕 円 体 116,
150,
154,
221,
基 底 状 態 相 関 184,
224
基 底 バ ン ド 136,
263 117,
120,
121,
134,
268,
255,
266
209
138,
139,
143,
260,
262,
既 約 球 面 テ ン ソ ル 100
―
バ ン ド 135
ギ ャ ッ プ 方 程 式 191-193,
―
領 域 144
9j-記
回 転 運 動 123,
377
高 ス ピ ン ―
257,
263
の 運 動 エ ネ ル ギ ー 126 の 波 動 関 数 127
―
ハ ミ ル ト ニ ア ン 133
回 転 座 標 系 148,
266,
149
相 互 作 用 133
―
模 型 133 , 136, 377,
回 復 距 離
146
―
的 描 像 3, 99
―
模 型 146,
150,
267
139-141,
143,
144,
382
―
エ ネ ル ギ ー 271
―
状 態 292
―
幅 271
分子 ―
86-88
化 学 ポ テ ン シ ャ ル 194
334,
338
曲 線 座 標 124
角 運 動 量 105
巨 大 共 鳴 269-271,
―
射 影 323-325,
―
の 交 換 関 係 24,
277,
Gamow-Teller―
殻 効 果 252-254,
285
297
共 鳴 群 法 294,
合 成 22
158
ア イ ソ バ リ ッ ク ・ア ナ ロ グ ―
137,
―
153,
共 鳴
・振 動
―
数 86
強 結 合 2, 69,
, 134,
196
号 41
球Bessel関
252,
― ―
回転
141,
269
327, 231,
329,
330,
365,
371
358
4重
極 共 鳴 280,
双 極 共 鳴 270,
269
281,
285
283
281 273,
274,
277,
363,
365-367
281
単 極 共 鳴 280
核 子 1 核 磁 子 51,
112,
162 空 間 固 定 系 118,
核 種 5
空 間 固 定 座 標 系 363
核 図 表 4, 5
空 間 反 転 324,
核 物 質 69
殻 補 正 253,
255,
空 孔 165, ―
計 算 43
核 力 15,
63 317,
319-321,
333,
340,
344,
核 333,
340,
86,
341,
343,
345,
94
・ス ピ ン 飽 和 配 位 318,
319,
173,
181
165-168,
208,
222
291,
293,
294,
293,
331,
353
297
換 算 遷 移 確 率 58,
59,
換 算 幅 354,
359
355,
振 幅 354-358,
慣 性 モ ー メ ン ト
123,
287,
289,
354 ―
構 造 287,
―
模 型 62,
291 287,
ク ラ ンキ ン グ
321
荷 電 独 立 性 43
―
α―
356
荷 電 交 換 281 荷 電
166,
状 態 74,
α―
350
固 い 芯 76,
205
ク ラ ス タ ー 287
重 な り積 分 316,
―
196-198,
偶 々 核 15
256
殻 模 型 2, 7, 99 ―
327
偶 奇 質 量 差 68,
核 分 裂 2, 99
111
―
項 267
―
公 式 218,
219,
221-223,
ク ラ ン ク し た 殻 模 型 266-269 360 127,
222,
224,
260-262,
269
結 合 エ ネ ル ギ ー 67 ―
の 飽 和 性 6, 69
完 全 対 称 関 数 18
結 合 チ ャ ン ネ ル 方 程 式 336
完 全 反 対 称 関 数 18
原 子 核 1 ―
奇 核 15,
148,
153,
159-161,
163,
204
の 半 径 5
原 子 的 描 像 287,
290
268
300,
306,
光学模型 2
―
変 形 核 116,
交 換 力 315, 320
―
高 スピン 異 性 体 266 回 転 運 動 252 , 257, 263
―
状 態 252, 259, 263, 269
モ ー メ ン ト の1粒
射 影 演 算 子 73, 324-326, 弱
高 速 回転 状 態 252, 259, 260 後方
89,
349,
結合 2, 69,
的 描 像 3
―
模 型 145
重 イ オ ン 反 応 257,
―
歪 曲 262, 269
重 心 座 標 306,
215,
116
固 有 座 標 151 ― 系 151 , 152, 154 固 有4重 極 モ ー メ ン ト 117, 137, 139 固 有 励 起 158, 159
サ
99
形 配 置 326,
3重
状 態 64
329,
330,
―
の 波 動 関 数 128,
―
の ハ ミル ト ニ ア ン 127,
―
の 微 視 的 理 論 164,
186,
―
パ ラ メ ー タ ー 214,
220
117, 118,
170,
173,
174
磁 気 遷 移 59
―
双 極 遷 移 58
―
双 極 モ ー メ ン ト 50,
51,
163 ―
292,
55,
294,
296,
60,
112
297,
337
177,
215
239,
269
268
149,
試 行 関 数 165,
144 257,
259
150,
170,
154,
221,
224
191,
196,
205,
207-210,
167,
168,
204,
221,
269
, 207, 208, 198 , 199
演 算 子 211,
215-217,
―
振 動 100
―
相 関 力 211
―
フ ォ ノ ン 114
―
変 形 116,
247,
279
166,
189,
215,
219,
196,
199,
231,
233
105,
107,
―
の 運 動 エ ネ ル ギ ー 127
―
の 波 動 関 数 127,
―
の ハ ミ ル ト ニ ア ン 133,
132,
201-203,
123
133, 149
侵 入 者 準 位 14 芯 半 径 86
123,
ス ピ ン 軌 道 ス プ リ ッ ティ 124,
127,
215
213
36-40
真 空 18,
振 動 領 域 144
極
―
201
芯 63
振 動 運 動 99-101,
自 己 無 撞 着
199, 213
法 191
208,
297
198,
消 滅 演 算 子 18
224
289,
235
程 式 205
新 型CFP
則 288-290
81,
209,
143, 256,
一般 化 され た ―
モ ー メ ン ト 51-53,
し き い 値 289,
法 81
185,
準 粒 子 186-189,
―RPA方
極 遷 移 58
的
135
210,
124
演 算 子 24, 231, ・テ ン ソ ル 189
―RPA ―
―
128,
120
178,
準 位 密 度 254,
― ―
―
133
準 ス ピ ン 23
時 間 依 存Hartree-Fock法
自 己 共 役4n核
, 143
集 団 模 型 3, 99, 358
残 留 相 互 作 用 15
軸 対 称 134,
333
集 団 ハ ミ ル トニ ア ン 127 63
3角
―2重
243,
116
集 団 的 回 転 ス キ ー ム 264,
状 態 25
238,
391
的 描 像
集 団 性 114,
作 用 半 径 44,
385,
―
集 団 座 標 100,
最 高 セ ニ ョ リ テ ィ 32, 34
218
237,
309-313,
99,
変 形 核 の ―
行
214,
224,
259
307,
集 団 運 動 3, 62,
個 数 演 算 子 19
4重
144,
146
―
振 幅 181, 209
呼 吸 モ ー ド 100, 280
114,
92,
356,
―
―
134,
子 見 積 も り 56,
質 量 パ ラ メ ー タ ー 101,
構 造 的 斥 力 芯 294, 361
―
133,
実 験 室 系 118
― ―
―
117,
220
交 換 関係 19
ス ピ ン 軌 道 力 8, 13,
ン グ 9, 10
14,
16
153
205,
正 規 積 166,
176,
203,
204,
207,
212
―
的 144
正 準 運 動 量 106 正 常 状 態 193,
194,
205
チ ャ ン ネ ル 334-336,
生 成 演 算 子 18
結 合 ―
生 成 座 標 332, ―
法
224,
333,
339
300,
331,
― 332,
338
芯 294
摂 動 展 開 72,
75,
76, 93
セ ニ ョ リ テ ィ 23-25,
187,
188,
196,
249
354,
359
―
のCompton波
―
理 論 63
長 63
197,
320
超 伝 導 状 態 188,
195,
205,
267
超 微 細 構 造 51
最 高 ― ―
半 径
中 心 力 65, 315,
31,
345
中 間 子
生 成 子 248 斥 力
341,
方 程 式 336
25,
32, 34
・ス キ ー ム 31,
低 い ―
超 変 形 回 転 バ ン ド 266, 32
調 和 振 動 子
35
遷 移 確 率 50,
―
58
遷 移 領 域 226,
269
8
パ ラ メ ー タ ー
11,
301,
303,
307,
313
229,
230,
244
選 択 則 111
直 接 ポ テ ン シ ャ ル 337,
351,
352
直 角 座 標 124
前 方 振 幅 181,
209
直 交 条 件 模 型 349,
350,
352
占 有 確 率 193 線 要 素 124
対 演 算 子 21 対 振 動
相 関 振 幅 176,
181,
207,
208
相 互 作 用 す る ボ ソ ン 模 型 246 相 互 作 用 半 径 87,
88
双 直 交 系 91 相 転 移 186,
243-245 186
―
ハ ミ ル ト ニ ア ン 23,
―
力
15, 22,
23,
27
強 い 相 互 作 用 63
タ
デ カ ッ プ リ ン グ ・パ ラ メ ー タ ー 160,
行
対称 エ ネルギ ー 68
―4重
極 遷 移 58,
―4重
極 モ ー メ ン ト 50,
136-138 56,
57,
163
267,
268
遷 移 59
電磁 気
体積 要 素 124, 127
―
遷 移
第2量
―
的 性 質 50
―
モ ー メ ン ト 43
子 化 17, 18
楕 円体 117 多重 極 遷 移演 算 子 58, 110
58,
110
テ ン ソ ル 力 65 転 置 行 列 199
多準 位 36, 187 多 中心 模 型 298-300, 脱 励 起 258
161
電 気
―
128
体 積 エ ネ ルギ ー 68
314, 331
多 フ ォノ ン ―
26,
186
227-230
速 度 ポ テ ン シ ャ ル 102
対称性
214,
対 相 関 14,
空 間 239, 243
― 状 態 109, 110 単 極 相 関力 214
統 一模 型
3, 99,
到 達 距 離 44,
143,
独 立 粒 子 ―
運 動 88,
―
的 描 像 143
弾 性 パ ラ メー ター 101, 114, 214, 215
―
描 像 82,
断熱
―
モ ー ド 264
―
模 型 69
近 似 215, 218, 221
―
摂 動 法 218
252
特 異 パ リ テ ィ 準 位 14
弾 性 的過 程 336
―
144,
63
144,
99
252,
263,
309,
表 面 振 動 100
ナ
行 フ ェ ル
内 部 座 標 306,
307,
309,
内 部
355,
361
振動 350,
310,
313
フ
ミ オ
ン 18
ォ ノ ン 107-109, 213-215,
滑 ら か さ 12
245,
111,
閉 殻 14
2体
散
2中心 模 322,
227,
210,
211,
230,
243,
269
36,
39,
109
複 合 核模 型 2
乱 79
型
146,
226,
付 加 量 子 数 24, 27, 2重
144,
217-219,
物 体 固 定 系 118,
300,
324,
303-307,
312,
315,
319,
330
ハ
221,
321,
行
363,
120,
125,
365-367,
物 体 固 定 座 標 系 117,
363
物 理 的 部 分 空 間 237,
240,
プ ロ パ ゲ ー タ 73,
129,
131,
243,
384
148,
154,
374
77-80
プ ロ レ ー ト 型 121 配位
分 散 式 178
17, 308
荷電 ―
・ス ピ ン 飽 和 ― 混 合 16
, 17,
318,
43, 45,
319,
分 子 軌 道 304,
321
は し ご 型 ダ イ ア グ ラ ム 78-80 8重
305
分 子 的 構 造 287
309
分 子 的 描 像 287,
288,
290,
297
極 振 動 100
バ ブ ル 型 ダ イ ア グ ラ ム 79
ペ ア リン グ
ハ ミ ル ト ニ ア ン 積 分 核 333,
352
パ リテ ィ ―
射 影
323-325,
―2重
項 296,
327, 331,
329,
330,
358
353
―
・エ ネ ル ギ ー 16
―
・テ ン ソ ル 201,
―
・ポ テ ン シ ャ ル 198,
2重
―
反 交 換 関 係 19
―
領 域 144
321,
333,
反 転2重
334,
299,
300,
340,343,
302,
306,
347
平 均 ポ テ ン シ ャ ル 76, 168,
135,
262,
―
138,
136,
基 底 ―
―
14
平均 核 子 間 距 離 5
バ ン ド 135
γ ―
135, 268,
228,
140
138-140, 138,
260
139,
141,
186,
230,
143,
260,
144,
269
121,
147,
偏 極 275, ―
80
149,
139,
141,
143,
276
変 形 球Bessel関 272,
273,
148,
124 150,
151,
153,
221-223,
変 形 パ ラ メ ー タ ー 141, 224,
微 視 的 ク ラ ス タ ー 模 型 293,
331,
353
非 集 団 的 回 転 ス キ ー ム 264,
266,
269
226,
227,
229,
230
230
飽 和性
254,
104,
384 105
154,
155,
157,
218,
255
6, 67
結 合 エ ネ ル ギ ー の― 密 度 の―
非 物 理 的 部 分 空 間 237, 表 面 エ ネ ル ギ ー 68,
数 334
変 形 整 列 264
277
状 態 35
非 調 和 性 227,
134,
167, 224,
256
低 い セ ニ ョ リ テ ィ 35
果
133,
147, 221,
度 275
100
光 吸 収 反 応 270,
非調和効
144,
220
変 形 核 の 集 団 運 動 117,
非 圧 縮 率 281
―
116,
203-205,
263
変 形 殻 模 型 147, 非 圧 縮 性
80,
198,
並 進 不 変 性 82 262,
・ヘ ッ ド 159
反 応 行 列 78,
170,
平 衡 変 形 117,
143,
269
交 差 260,
204
平均 場 近 似 2
項 296
β ―
203,
閉 殻 14, 308
パ リ ・ポ テ ン シ ャ ル 64
反 対 称 化 の 演 算 子 294,
202
6, 69
5, 68
ボ ソ ン 18 ― 写 像 法 230
, 238,
241,
244,
245,
383
― 展 開 233
, 391
ポ テ ン シ ャ ル ・エ ネ ル ギ ー 103,
121,
ラ
131
行
ボ ン ・ポ テ ン シ ャ ル 64 乱 雑 位 相 近 似
マ
174,
177,
205,
207,
213
行 粒 子 165,
マ ジ ック ナ ンバ ー 2, 7, 12
166,
173,
177,
粒 子 運 動 144-152,
181,
158-161,
183 163,
164,
221,
266
密 度 行 列 168, 202
粒 子 ・空 孔 166, ― 対 181,
密 度 の 飽 和 性 5, 68
180,
181,
183,
205-207,
183
― 励 起 177
模 型 空 間 88-90,
95
模 型 ハ ミル トニ ア ン 89
ヤ
臨 界 値 178,
184
臨 界 点 180,
184-186,
リ ン グ(環)状
の グ ラ フ 77, 78
207,
228
行 ル ー シ ア ン 268,
柔 らか い 芯 65
―
有核原子模型 1
励 起 モ ー ド 174,
有 効 質量 84
連 結 ク ラ ス ター
有 効 相 互 作 用 17, 21, 43, 88, 93, 95 エ ネル ギ ーに 依 存 し な い― 91 エ ネル ギ ーに 依 存 す る― 90 ― の 全 角 運 動 量 展 開 21
269
・ダ イ ア グ ラ ム 268
176,
182,
― 図 75 ― 展 開 71
, 76
連 鎖 248 連 続 の 方 程 式 102
― の 強 さ 43 ―理 論 88
ワ
有 効 電 荷 58, 59 有 効 ハ ミル トニ ア ン 88-90
和則 271-275,
277,
280
行
183,
263
209
著 者 略歴 高 田健次郎
池
1935年 山口県 に生 まれ る 1958年 京 都大 学理 学部卒 業 1989年 九州大 学教授 現 在 九州大 学名 誉教授 理 学博 士
1934年 大 阪府 に生 まれる 1957年 京 都大学 理学 部卒業 1977年 新 潟大学 教授 現 在 新 潟大学 名誉 教授 理 学博士
田 清 美
朝倉物理学大系18 定価は カバー に表示
原 子 核 構 造 論 2002年4月20日
初 版 第1刷
著
者 高
田
健 田
清
美
発 行 者 朝
倉
邦
造
ISBN
無 断 複 写 ・転 載 を 禁 ず 〉 4-254-13688-9
倉
書
店
東京 都新 宿 区新 小 川町6-29 郵 便 番 号 162-8707 電 話 03(3260)0141 FAX 03(3260)0180 http://www.asakura.co.jp
〈検 印 省 略 〉 2002〈
郎
池
発 行 所 株式 会社 朝
C
次
C
3342
三 美 印 刷 ・渡 辺 製 本 Printed
in Japan