現代史資料 45

現 代 史資 料

み す ず 書 房

治 安 維 持 法

(45)

日本共産党 関西地方委員会 ノ 「 赤 色 ギャ ン グ」ニ対 スル反駁 ニ関スル件 ・通 報

不 穏 文 書 臨 時 取 締 法(昭 和11年6月13日)

(昭和7年10月17日)

東 京控 訴院 ・同検事局管 内思想実務 家 会 同会議録 ・表紙(昭 和18年7月)

天理本道に対す る結社禁止 の訓令 (昭和14年9月23日)

治安維持法違 反事件(目 的遂行 ノ為 ニ スル行為)大 審院判例(昭 和5年)

勾

引

状 〔 写〕

思想事件聴 取書記載要項

中国共産党員 ・李徳生 訊問調書 (昭和17‐18年)

凡

例

一 本巻 は ﹁治 安維 持 法﹂ と し て、 一九 一九年 から 一九 四 五年 に いた る期 間 の過 激 社 会 運動 取 締 法案 より 治安 維 持法 お よび

そ の改 正を 経 て、 思 想 犯保 護 観 察法 にわ た る関 係 資 料 を、 立 法 ・行政 ・司法 の視 点 から 三部 に構 成 し 、年 代 順 に収 録 す る。 二 本 巻 所 収 の資料 源 に つ いて は、 別 に各 文 書 ごと に示 し て あ る。

三  復 原 にあ た っては、 す べ て原 文 に従 って い るが、 明白 な 誤 字 誤植 は 正 し た。 正 確 な意 味 がと ら え にく い場 合 は、 傍注 に て ︹マ マ︺ と附 記 し た 。

﹁速 記 録 ﹂中 ︹ ︺内 に官 職 を、 ﹁思想 実 務 家会 同 議事 録﹂ 中 ︹ ︺ 内 に人 名 を 補 ってあ る のは、 編 者 によ るも ので あ る。

四  漢 字 は 略 体新 漢 字 に従 った が、 仮 名遣 い、 句 読 は原 文 に従 って いる。 五

そ の他 ︹ ︺ で補 って あ る のは 同様 であ る。 六  抄録 し た資 料 で、 ⋮ ⋮ と あ る のは、 そ の間省 略 の あ る こと を示 す 。 七  本 巻 の編 集 と 解 説 は、 奥 平康 弘 が 担当 し た 。

凡

例

資料解説

目

次

第 一部

三

﹁政 治 ニ関 ス ル 犯 罪 処 罰 ノ件 ﹂ (一九 一九) 

一  朝 鮮 制 令

三

三

二 三

二  過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 (一九二二) 

﹁過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 ﹂ に 関 す る 論 調 (一九二二) 

三  過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第 四十五回帝国議会 ・一九二二)⋮⋮ ⋮五 四

(1) 末 弘厳太郎意見 二 ( 2)加田哲 二意見 二九

四一

( 3) 高柳賢三意見 三三 (4) 福 田徳三意見 

五〇

四 九 ﹁治 安 維 持 ノ 為 ニ ス ル 罰 則 ニ関 ス ル 件 ﹂ (一九 二三) 

(5) 堺利彦意見  五  勅 令

一 一  枢 密 院 会 議 筆 記 (一九二八) 

一〇  治 安 維 持 法 中 改 正 緊 急 勅 令 (一九 二八) 

九  思 想 的 国 難 ニ関 ス ル 決 議 (一九 二八) 

八  治 安 維 持 法 を 論 ず ( 清瀬 一郎 ・一九二六) 

七  治 安 維 持 法 制 定 に 関 す る 朝 日 新 聞 社 説 (一九二五) 

六  治 安 維 持 法 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第五十 回帝国議会 ・一九二五) 

一 一五

一 一 四

一 三一

一〇四

一 〇 〇

五一

一二  緊 急 勅 令 承 認 に 関 す る 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第五十六回帝国議会 ・一九二九) 一 四 六

(2)新聞論説 

一 八 六

一 八 二

一 八〇

一 七 九

一 七 九

(3)美濃部達吉意見 

(1)

牧野英 一意見 

一三  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 お よ び 緊 急 勅 令 に 対 す る 論 調 (一九二八) 

( 4)

一 九三

政府声明 

(5)上杉慎吉意見 

一五  民 政 党

﹁思 想 対 策 要 綱 ﹂ (一九 三三) 

﹁思 想 対 策 要 綱 ﹂ (一九 三三) 

二〇〇

一八 九

一 九六

一六  政 友 会

二〇四

一四  各 庁 府 県 当 局 の 治 安 維 持 法 改 正 意 見 (一九三三) 

一七  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第六十五回帝国議会 ・一九三四) 

一八  治 安 維 持 法 改 正 ・不 法 団 結 等 処 罰 に 関 す る 法 律 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会議録 ︹ 抄︺( 第六十七回帝国議会 ・一九三五) 

二 五〇

a 思想犯保護 観察法 

二 六 九

二 六 八

二 六 八

b 保護観察所官制 

二 六 九

一九  思 想 犯 保 護 観 察 法 関 係 資 料 (一九三六) 

c 保護観察審査会官制 

二七 〇

二 七一

二七 一

f 保護観察所保護司執務規範 

二 七三

e 仮出獄思想犯処遇規程 

g 思想犯保護観察法提案理由説 明 

二 七 四

d 保護観察所 ノ名称位置及管轄 区域 

h 思想犯保護観察法衆議院委員会経過報告 

二 七 四

( )二(一九 三 八) 三

二 一  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹抄 ︺ ) (一(一九 三 七) 三

四〇

二六

一一

二七七

i 加藤勘十議員 の反対発言 

二 〇  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 に 関 す る 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第七十六回帝国議会 ・ 一九 四 一) 

〃

(三)(一九 三 九) 三

二 部

二二 

〃

第

二 三 

二 九  特 高 警 察 例 規 集 ︹ 抄︺(一九 三五年まで) 

二 八  思 想 事 務 ニ関 ス ル訓 令 通 牒 集 ︹ 抄︺(一九三四年 まで) 

二 七  治 安 維 持 法 違 反 事 件 の 再 犯 に 関 す る 研 究 ︹抄︺( 徳岡 一男 ・ 一九三八) 

二 六 

二 五  〃

〃 (六) (一九四 三) 

(五( )一九四 一) 三

二 四  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺( 四) (一九四〇) 三

四 四 五

四一 九

三 九 七

三八 〇

七 四

五一

四 六 四

四 八 九

〇 三  思 想 検 察 提 要 ︹ 抄︺(一九四二)  三 一  刑 事 特 別 事 件 処 理 規 程 (一九四 一) 

一 〇

四九〇

四 九〇

徳 田 球 一関 係 

三 二  予 防 拘 禁 請 求 事 件 記 録 (一九四 一)  (1) ( 2)福 本 和 夫 関 係 五

d  予 防 拘 禁 委 員会 官 制 五

c 予 防 拘 禁 手 続 ニ関 スル禀請 及 報告 方 ノ件 五

b  予 防 拘 禁 手 続令 五

a 弁 護 士 指 定 規程 五

二九

二 八

二七

二三

二三

二三

e 予防 拘 禁 処 遇 令 五

五三一

三 三  予 防 拘 禁 関 係 資 料 (一九 四 一) 五

f  予 防 拘 禁 制度 活 用 ニ関 ス ル件 依命 通 牒 

三 四  学 連 事 件 第 二 審 判 決 文 (一九二九) 五

七 三

三 七

第 三 部

三 五  学 連 事 件 へ の 感 想 (一九二六) 五

七五

五七五

五七三

基 

a 矢内 原 忠 雄 

哲 五

七四

c 栗原

b  大 内 兵 衛 五

d  片山 皓 五

e ﹁目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ノ意 義 ﹂ ニ関 ス ル モノ 

d  ﹁結 社 加 入 ノ意 義﹂ ニ関 ス ル モノ 

c ﹁結 社 ノ意 義 ﹂ ニ関 ス ル モノ 

b  ﹁私 有 財 産制 度 否 認 ノ意 義﹂ ニ関 ス ル モノ 五

a ﹁国 体 ノ意義 及国 体 ノ変 革﹂ ニ関 ス ル モノ 

六一 六

六〇二

六〇一

五九五

八五

五七七

五七七

七六

e 那須

・大 審 院 判 決 (一九 二 九︱ 一九 三 四) 

f  ﹁結 社 ノ組 織 、加 入、 目的 遂行 行 為 ノ包 括性 ﹂ ニ関 ス ル モノ 

六二六

三 六  治 安 維 持 法 違 反 被 告 事 件

g ﹁目 的事 項 ノ実 行 協 議﹂ ニ関 スル モ ノ 

六二九

六二七 天 理 本 道 に 対 す る 大 審 院 判 決 (一九 四 一) 

h  ﹁利 益 供 与 ノ意 義 ﹂ニ関 ス ル モノ  三 七 

三 九  浅 見 仙 作 に 対 す る 大 審 院 判 決 (一九四五) 

三 八  灯 台 社 に 対 す る 第 二 審 判 決 (一九四三) 

六 四〇

六 三 四

付 九  言 論 ・出 版 ・集 会 ・結 社 等 臨 時 取 締法 違 反 事 件 調 査表 

付 八  安 寧秩 序 ニ対 スル罪 ( 流 言 浮 説) 事 件 調 査 表 

付 七  陸 海 軍刑 法 違 反 (造言 飛語 ) 事 件 調 査表 

付 六  不 敬 不穏 落 書 年 度 別 一覧 表 

付 五  不 敬 事 件 調査 表 

付 四  主 要類 似宗 教 関 係 犯罪 事 件 処 理 状 況 一覧 表 六

付 三  右 翼 関係 犯罪 事 件 処 理状 況 一覧 表 

付 二  予 防 拘 禁 事 件 一覧 表 

付 一 治 安 維 持 法 違反 事 件 年度 別処 理 人員 表 

六 五 八

六 五 七

六五六

六 五五

六 五 四

六 五三

五 二

六 五一

六 五〇

六四六

表

付 一〇  治 安維 持 法 改 正法 律 第 一章 図 解 

六 六 〇

付

付 一 一 強 制 捜 査 手続 経過 表 

資 料 解 説

大 正 一四年 四 月 制 定 さ れ た 治 安 維 持 法 は 、 ポ ツ ダ ム 宣 言 受 諾 ・無 条 件 降 伏 を 経 過 し て 、 昭 和 二 〇 年 一〇 月 廃 止 さ れ る

ま で 、 二 〇 年 間 日 本 社 会 を 支 配 し つ づ け た 。 も っと も 、 ひ と 口 で 治 安 維 持 法 と よ ば れ る も の の、 大 正 一四年 の法 律 は 、

昭 和 三 年 六 月 緊 急 勅 令 に よ って 少 な か ら ざ る 改 正 を う け (そ し て、 昭 和 四 年 三 月 、 こ の 改 正 部 分 が 帝 国 議 会 の承 諾 を う

け て 法 律 と し て の 効 力 を も つ こ と と な り )、 昭 和 一六 年 三 月 、 全 面 的 な 改 正 に よ って、 そ の 形 姿 を 新 た に し た も の で あ

る 。 こ の 間 に あ って、 昭 和 九 年 お よ び 一〇 年 二 度 に わ た り 全 面 改 正 が 試 み ら れ た が 、 美 濃 部 達 吉 の ﹁天 皇 機 関 説 ﹂ 問 題

﹁思 想 犯 保 護 観 察 法 ﹂ と い う 単 独 立 法 の か た ち で成 立 し た 。 ﹁思 想 犯 保 護 観 察 法 ﹂ は 沿 革 に て ら し 、 か つ、 そ の 内

の あ お り を う け た り し て 、 廃 案 に な った 。 け れ ど も 、 こ のと き 法 案 の 一部 を な し て い た ﹁保 護 観 察 ﹂ の 章 だ け は 、 翌 一 一年

容 に お い て、 治 安 維 持 法 と 一体 の も の と 理 解 す べ き で あ る 。

そ れ ぞ れ の 時 期 で法 文 を 異 に す る も の で あ る か ら 、 これ を 総 称 す る 用 語 と し て は 、 厳 密 に は 、 ﹁い わ ゆ る 治 安 維 持 法 ﹂ と で も い う こと に な る で あ ろ う か 。

一般 に、 法 律 の 改 正 は 、 改 正 に よ って は じ め て新 し い も の を つ け く わ え る と い う よ り も 、 す で に 改 正 以 前 旧 法 の も と

で事 実 上施 行 され てき た法 状 況 ( 違 法 状 況 、 も し く は法 的 評 価 に疑 問 の余 地 の あ る状 況) を 追 認 す る た め に お こな わ れ る ば あ

い が し ば し ば あ る 。 こ のば あ い、 法 改 正 に よ って 、 そ れ ま で 事 実 上 進 行 さ せ て き た権 力 措 置 は 、 と も か く も 法 的 根 拠 を

与 え ら れ る こと に な る が 、 他 面 、 改 正 を 基 点 と し て 、 権 力 措 置 は さ ら に 新 た な る 増 殖 過 程 に は い る こ と に な り 、 こ れ を

追 認 す る た め には ま た ふ た た び法 改 正 が ほし くな る と いう、 いわば いた ち ご っこが演 ぜ ら れる こと にな る。治 安 維 持法

の諸 改 正 の多 く は 、 ま さ に こ の よ う な 性 格 の も の で あ った と い う こと が で き る 。 そ の こ と を 略 述 し よ う 。

昭 和 三 年 緊 急 勅令 の 改 正 は 、 ふ つ う ﹁国 体 変 革 ﹂ の罪 と ﹁私 有 財 産 制 度 否 認 ﹂ の罪 と を 二 分 し 、 か つ前 者 に た い す る

刑 罰 と し て 死 刑 を 新 設 し た こと に よ って 特 徴 づ け ら れ る 。 こ の こ と 自 体 た し か に そ う で あ る と い う ほ か な い が、 同 時 に

見 逃 し て な ら な い のは 、 こ のと き の 改 正 で ﹁国 体 変 革 ﹂ お よ び ﹁私 有 財 産 制 度 否 認 ﹂ を 目 的 と す る ﹁結 社 ノ 目 的 遂 行 ノ

為 ニ ス ル 行 為 ヲ為 シ タ ル 者 ﹂ を も 治 安 維 持 法 違 反 行 為 と し て 処 罰 す る 規 定 が 設 け ら れ た こ と で あ る 。 こ の ﹁目 的 遂 行 ノ

為 ニ ス ル 行 為 ﹂ は 、 明 ら か に 三 ・ 一五 事 件 に お け る 治 安 維 持 法 適 用 の経 験 か ら ひ き 出 さ れ た 要 求 に 対 応 す る も の で あ っ

た 。 つま り、 権 力 (ここ で はと く に思想 検 察 ・特 高警 察 ) は 、 三 ・ 一五 に よ り は じ め て 大 正 一四 年 治 安 維 持 法 の組 織 的 な 発

動 を お こな った も の の、 権 力 の見 込 に 反 し 、 検 挙 さ れ た 多 く の者 は 日 本 共 産 党 員 ( 大 正 一四年 法 で いう ﹁ 情 ヲ知 リ テ之 ニ加

入 シタ ル者 ﹂) で は な い と い う 事 実 に 当 面 し な け れ ば な ら な か った 。 権 力 は も ち ろ ん非 党 員 だ か ら と い って 規 制 の手 を ゆ

る め る つも り な ど さ ら さ ら な か った 。 こう し て、 ﹁結 社 加 入 ﹂ 罪 で 処 理 し え な い 被 検 挙 者 に た い し て は 、 ﹁協 議 ﹂罪 (﹁ 其

ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協議 ヲ為 シタ ル者 ﹂ ) を も って 対 処 す る こ と と し た の で あ る 。 こ の段 階 で は す で に 、 ﹁協 議 ﹂ 罪

の活 用 は あ る 意 味 で 実 験 済 み で あ った こ と は た し か で あ る 。 治 安 維 持 法 適 用 第 一号 事 件 と し て 知 ら れ る 京 都 学 連 事 件

( 大 正 一五 年 一月検 挙 ) が そ れ で あ る 。 学 連 事 件 当 時 日 本 共 産 党 な る 結 社 は 公 式 に 存 在 し て い な か った か ら 、 結 社 に 関 連

し た 犯 罪 行 為 を 摘 発 す る 余 地 が な い 。 そ こ で 権 力 は 、 ﹁協 議 ﹂ 罪 (お よ び ﹁煽 動 ﹂ 罪 )を も ち 出 し て き た の で あ った 。 こ の

よ う な 法 の 適 用 の仕 方 自 体 、 結 社 取 締 法 た る 治 安 維 持 法 の性 格 か ら み て、 ﹁法 のひ と り 歩 き ﹂ を 意 味 す る も の の よ う に

お も え る が、 そ れ は と も か く 、 こう し て 三 ・ 一五 以 前 、 結 社 と の つな が り の有 無 を 問 わ な い 治 安 維 持 法 の適 用 が は じ め ら れ て いた こと を知 り う る 。

権 力 は 、 三 ・ 一五 で 非 党 員 に た い し て も 、 遠 慮 な く 治 安 維 持 法 を 適 用 し た の だ が 、 し か し 単 に党 の シ ン パ と し て 文 書

作 製 ・配 布 な ど を 手 伝 った に す ぎ な い 者 を ﹁協 議 ﹂ 罪 で 問 う こ と に、 相 当 の無 理 が あ る こ と も た し か で あ った 。 こ のゆ

え に 権 力 は、 三 ・ 一五 の 直 後 、 シ ン パ を も 合 理 的 に 処 罰 の 対 象 な ら し め る よ う な 法 改 正 を も と め る に い た った の で あ る 。

﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル 行 為 ﹂ 罪 が 成 立 し た 事 情 は 、 以 上 の よ う な も の で あ った 。 と こ ろ が 、 こ ん ど は こ の規 定 を 根 拠

に 、 権 力 の 増 殖 が 一層 促 進 さ れ る こ と に な る 。 実 際 、 わ た く し に は 、 昭 和 三 年 の改 正 に つ い て ひ と び と が も っぱ ら 強 調

す る ﹁国 体 変 革 ﹂ 罪 への 死 刑 の導 入 と い う 契 機 よ り は 、 ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル 行 為 ﹂ 規 定 の方 が 、 も っと ず っと 重 要 で

あ った よ う に お も う ( ﹁私 有 財産 制 度 否 認 ﹂ と 区 別 し て ﹁ 国 体 変 革 ﹂ の罪 に厳 罰 をも って のぞ む こと に した こと が 、 一般 市 民 に与 え

た イデ オ ロギ ー効 果 とし て大 き い こと は否 定 でき な い。他 方 し かし 、 法 の実 践 面 で は周知 のよう に少 な く も 国内 で は、 治 安 維 持 法 違

反 の み をも って死 刑 に処 せら れた 者 も、 死 刑 の宣 告 がな さ れ た例 も 、 存 在 し な い こと に注 意 した い)。 ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂

な る 法 概 念 は 、 な に よ り も き わ め て 広 義 ・包 括 的 で 、 権 力 か ら み て、 こ れ ほ ど 便 利 な も の は な か った で あ ろ う と お も わ

れ る 。 だ れ で あ れ 、 ﹁結 社 ﹂ の ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ﹂ (と権 力 が断 定 す る よう な ) 行 為 に か か わ った 者 は 取 締 ら れ る こ と に な る 。

当 初 は 、 こ こ で ﹁結 社 ﹂ と は 日 本 共 産 党 (およ び 共 産 青年 同 盟 、 日本労 働 組 合 全 国 協 議 会 )を 意 味 し た が、 のち 党 お よ び そ の

直 接 の ﹁外 廓 団 体 ﹂ が 壊 滅 さ せ ら れ て 以 降 は 、 コ ミ ン テ ル ン を ﹁結 社 ﹂ と 指 定 し 、 そ の ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ﹂ と

構 成 す れ ば よ か った わ け で あ る 。 日 本 共 産 党 成 立 のは じ め か ら 、 原 理 的 に も 組 織 的 に も そ れ と 一線 を 画 し て い た い わ ゆ

る 労 農 派 グ ル ー プ は、 あ る 時 期 ま で は そ れ 自 体 と し て は 治 安 維 持 法 の適 用 圏 外 に お か れ て い た が ( 権 力 は 、 日本 共 産 党 グ

ルーブ を ﹁正 統 派﹂ と よ ん で いた のは 、 興味 のあ る と ころ で あ る)、 周 知 の よ う に 昭 和一二 年 一 一月 以 降 、 日 本 無 産 党 ・日 本

労 働 組 合 全 国 評 議 会 お よ び 人 民 戦 線 グ ル ー プ へ の弾 圧 に よ り 、 も ろ に 治 安 維 持 法 の適 用 を う け る こ と に な る 。 し か し て、

こ れ を 可 能 な ら し め た のは 、 ほ か な ら ぬ ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ の規 定 で あ った 。 労 農 派 グ ル ー プ は も ち ろ ん 日 本

共 産 党 の ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ に 従 事 し た と は い え な い。 け れ ど も 、 コ ミ ン テ ル ン の 人 民 戦 線 綱 領 に 対 応 し た と い う の で ﹁目 的 遂 行 ノ 為ニ ス ル行 為 ﹂ を お こ な った こと に さ れ た 。

﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ﹂ に つ い て は 、 い ろ ん な こと が 指 摘 で き る 。 た と え ば 、 こ の規 定 が 導 入 さ れ る こ と に よ っ

て 、 ﹁協 議 ﹂ 罪 お よ び ﹁煽 動 ﹂ 罪 は 、 独 自 の意 味 を 少 な か ら ず 喪 失 し (ま った く喪 失 した わ け でな い。 た とえ ば 、植 民 地 の留

学 生 が植 民 地 独立 に つ いて個 人 的 に語 り あ ったと いう だ け で 、 治安 維 持 法 で いわゆ る ﹁協 議 ﹂ を お こな った と し て検 挙 され る 余 地 が

の こされ て いる)、 多 く は ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ に 吸 収 合 併 さ れ る 。 ま た 、 法 は ﹁国 体 変 革 ﹂ な ど の ﹁罪 ヲ 犯 サ シ

ム ル コ ト ヲ 目 的 ト シ テ 金 品 其 ノ 他 ノ 財 産 上 ノ 利 益 ヲ 供 与 ﹂ す る 行 為 を 処 罰 す る 規 定 を も って い た が、 こ の ﹁利 益 供 与 ﹂

も ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ で あ る に ち が い な い か ら 、 あ え て と く に こ れ と 別 に ﹁利 益 供 与 ﹂ 罪 だ け を 問 題 に す る 実

益 は な く な る 。 そ れ ば か り で は な い、 ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル 行 為 ﹂ は ま た 、 け っし て 非 党 員 だ け に適 用 さ れ る の で は な

く 、 れ っき と し た 党 員 に も 適 用 さ れ た 。 か れ ら は ﹁結 社 組 織 ﹂ 罪 ・﹁結 社 加 入 ﹂ 罪 を 問 わ れ る ほ か に 、 な ん で あ れ 党 に

し た が って 極 端 に い え ば 生 存 を 維 持 す る た め の メ シ を 喰 べ る こ と も ふ く め て

関 連 す る 諸 活 動 を 名 目 に ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル 行 為 ﹂ に 該 当 す る と 見做 さ れ る こと に な る 。 こ の ゆ え に 党 員 た る 者 (さ ら に シ ンパ さ えも ) の 一挙 手 一投 足 が︱

﹁︱ 目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ と 認 定 さ れ る 可 能 性 が あ った 。

権 力 が ど ん な に ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル 行 為 ﹂ を 愛 用 し 、 こ れ に 愛 着 を し め し た か は 、 昭 和 一六 年 の全 面 改 正 の な か に

採 用 さ れ た さ ま ざ ま な ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ 諸 規 定 に う か が う こ と が で き る (な お、 こ の点 にか んす る昭 和 一六年 改

正法 の骨 子 は、 す で に昭和 九 年 お よ び 一〇年 の改 正 法 案 に盛 ら れ て いた も ので あ る こ と を指 摘 し て おく べき であ ろ う)。 詳 し く は の ち に言 及 す る 。

さ て 、 以 上 少 し く ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル 行 為 ﹂ 概 念 の問 題 性 に ふ け り す ぎ た か も し れ な い。 さ き を 急 い で 、 昭 和 九 年

お よ び 一〇 年 の 全 面 改 正 の 試 み を 経 過 し て 、 昭 和 一 一年 成 立 し た 思 想 犯 保 護 観 察 法 を 垣 間 み て み よ う 。 こ れ は ﹁治 安 維

持 法 ノ 罪 ヲ 犯 シ タ ル 者 ニ対 シ刑 ノ執 行 猶 予 ノ 言 渡 ア リ タ ル場 合 又 ハ訴 追 ヲ 必 要 ト セ ザ ル為 公 訴 ヲ提 起 セ ザ ル 場 合 ニ 於

テ ﹂ 保 護 観 察 審 査 会 の決 定 で、 本 人 を 一定 の保 護 観 察 の も と に お く 制 度 を 設 け た も の で あ る 。 す な わ ち 、 治 安 維 持 法 に

違 反 し た が、 執 行 猶 予 を 受 け た 者 (そ のかぎ り で自 由 であ りう る 人間 ) お よ び、 検 挙 さ れ た が起 訴 さ れ な か った 者 ( 前者よ

りも よ り自 由 であ りう る人 間 ) を 、 公 的 な 監 視 体 制 のも と に お く (この こと に よ って、 該 当 者 の自 由 を 否 定 す る) 制 度 で あ る 。

刑 の 執 行 を 終 って 釈 放 さ れ た 者 お よ び 仮 出 獄 を 許 さ れ た 者 (す で に懲 罰 を 終 え 自由 を 取得 し た者) も 、 こ の 監 視 体 制 に 服 属

せ し め られ る のも特 徴 的 で あ る。

﹁保 護 観 察 ﹂ は 、 自 由 の否 定 で あ る が ゆ え に 、 刑 法 の刑 名 に な い 新 し い範 疇 の 刑 罰 た る 実 質 を そ な え る も の で あ った と いう べ き で あ る 。 こ の よ う な 制 度 を、 公 式 に 設 定 し た 昭 和 一 一年 の法 律 は 注 目 に値 す る 。

け れ ど も 、 ﹁保 護 観 察 ﹂ 制 度 の 実 体 は 、 け っし て こ の法 律 に よ っ て は じ め て形 成 さ れ た も の で な い こ と を 認 識 し な け れば な ら な い。

三 ・ 一五 お よ び 四 ・ 一六 の 大 量 検 挙 事 件 を 経 過 す る な か で 、 治 安 維 持 法 は け っし て 単 に危 険 思 想 の弾 圧 と い う 消 極 的

な 目 的 に つ か え る も の で は な く 、 よ り 積 極 的 ・攻 撃 的 な 目 的 で あ る ﹁転 向 ﹂ を 強 要 す る た め の も の へと 変 化 し た 。 ﹁洗

脳 ﹂ 手 段 と し て 治 安 維 持 法 が も ち い ら れ た の は 、 け っし て 警 察 ・検 察 の レベ ル に お い て だ け で は な い 。 裁 判 官 も ま た 被

告 人 ら の ﹁転 向 ﹂ に 手 を か し た 。 転 向 ・非 転 向 は 、 裁 判 官 が 執 行 猶 予 を つけ る か つけ な い か、 お よ び 刑 の量 定 を ど う す る か な ど 判 断 す る ば あ い、 考 慮 し な け れ ば な ら な い 要 素 で あ った 。

も っと も 、 あ と で も 一言 す る よ う に 、 治 安 維 持 法 の 運 用 に と っ て は 、 裁 判 は 一種 の フ ァサ ー ド (表玄 関 )で あ る に と ど

ま った 。 被 告 人 ら を 処 罰 す る こと は 大 事 な こ と で あ った に ち が い な い が 、 そ れ は 海 面 上 に 露 呈 し た 氷 山 の 一角 にす ぎ な

い 。 裁 判 ま で ゆ か な い 段 階 で、 被 検 挙 者 を 改悛 さ せ、 ﹁転 向 ﹂ さ せ る こ と の方 が 、 よ り 重 大 で あ った し 、 か か る 事 例 の

方 が 裁 判 例 よ り も は る か に 多 か った 。 本 来 、 検 挙 し た け れ ど も ﹁公 訴 ヲ 提 起 セ ザ ル場 合 ﹂ に あ た る と す れ ば 、 権 力 は そ

こ で手 を ひ く の が 道 理 で あ る はず だ が 、 治 安 維 持 法 のば あ い に は 不 起 訴 措 置 は ﹁無 罪 ﹂ を 意 味 し な い と 考 え ら れ た 。

﹁治 安 維 持 法 ノ 罪 ヲ 犯 シ タ ル者 ﹂ で あ る と い う 事 実 (し かし 、 裁 判 に よ って確 知 され た事 実 で はな いか ら、被 疑 事 実 に す ぎ な

い のだ が)に も か か わ ら ず 不 起 訴 措 置 を 講 じ て や る の だ か ら 、そ れ は 有 罪 の推 定 を の こ し な が ら 恩 恵 的 に 与 え ら れ る慈 悲 だ と 構 成 さ れ る 。 そ し て 慈 悲 に た い し て支 払 わ れ る 代 価 が ﹁転 向 ﹂ の 実 践 に ほ か な ら な い。

こう い った 観 点 か ら み て 重 要 な の は、 昭 和 七 年 一二 月 、 司 法 大 臣 訓 令 と し て 発 せ ら れ た ﹁思 想 犯 人 ニ対 ス ル留 保 処 分

取扱 規 程 ﹂ ( 本 書 四三 二 ペ ージ )で あ る 。 留 保 処 分 と は ﹁治 安 維 持 法 違 反 ノ被 疑 事 件 ニ付 捜 査 ヲ遂 ゲ 犯 罪 ノ 嫌 疑 ア ル コト 明

ナ ル モ被 疑 者 ノ 主 観 及 客 観 ノ 事 情 ニ照 シ 尚 一定 ノ 期 間 其 ノ 者 ノ行 状 ヲ 視 察 シ其 ノ 結 果 ニ因 リ 公 訴 ノ起 否 ヲ 決 ス ル ヲ適 当

ナ リ ト 認 ム ル場 合 ニ対 シ テ 為 ス処 分 ノ 留 保 ヲ謂 フ﹂ (同 規程 第 一条 )。 つま り 、 (起 訴 ) 留 保 処 分 は 、 不 起 訴 処 分 と ち が っ

て、 当 該 被 疑 事 実 に か ん し 起 訴 し な い と い う 決 定 を 毫 末 も ふ く ま ず 、 む し ろ 起 訴 す る か も し れ な い 可 能 性 を の こ し な が

ら 、 被 疑 者 を 監 視 体 制 下 に お き 、 消 極 的 に は い わ ば ﹁再 犯 ﹂ を 防 止 す る と と も に、 積 極 的 に は ﹁転 向 ﹂ を 確 定 せ し め よ

う と す る も の で あ った 。 か か る も の と し て の留 保 処 分 の決 定 に つ い て は 、 ﹁運 動 経 歴 ﹂、 ﹁意 識 ノ 深 浅 ﹂ な ど の モ メ ン ト

の ほ か ﹁思 想 転 向 シ将 来 適 法 ナ ル 生 活 ヲ 営 ム ノ 見 込 ノ 有 無 ﹂ お よ び ﹁適 当 ナ ル身 元 引 受 人 ノ 有 無 ﹂ の ご と き 事 項 が 目 安 に な る こと は い う ま で も な い 。

要 す る に、 留 保 処 分 の よ う な け った い な 、 し か し 権 力 側 に 便 利 な 制 度 が 設 け ら れ た ば あ い に は す で に そ の段 階 で 、 そ れ な り の ﹁思 想 犯 保 護 観 察 ﹂ 制 度 が 前 提 に な って い た の で あ る 。

い う ま で も な い こ と だ が 、 し か し 、 司 法 大 臣 訓 令 で ﹁思 想 犯 人 ニ対 ス ル 留 保 処 分 取 扱 規 程 ﹂ が 定 め ら れ 、 そ れ に 対 応

す る ﹁思 想 犯 保 護 観 察 ﹂ 制 度 が 設 け ら れ る に つ い て は、 当 時 の 治 安 維 持 法 の ど こ を さ が し て も 、 こ れ に 法 的 根 拠 を 与 え

るも のを見 出 す こと は でき な い。 治 安維 持 法 は ひ たす ら、 裁 判 を つう じ て刑 罰 を課 す る メカ ニズ ムし か定 め て いな か っ

た か ら で あ る。 留 保 処 分 と い い 、 ﹁思 想 犯 保 護 観 察 ﹂ 制 度 と い い、 いず れ も 司 法 官 僚 が 事 実 上 つ く り あ げ た 種 類 の も の で あ った 。

昭 和 一 一年 の思 想 犯 保 護 観 察 法 は 、 一面 、 明 ら か に、 す で に 事 実 上 作 ら れ 運 用 さ れ て き た と こ ろ の も のを 、 公 式 に追

認 し 、 い わ ば 治 安 維 持 法 体 系 の制 度 の中 枢 に お こ う と し た も のと 解 す る こ と が で き よ う 。 他 面 に お い て 同 時 に、 こ の法

律 は 旧 来 の ﹁適 当 ナ ル 身 元 引 受 人 ﹂ のご と き あ や ふ や な 存 在 に 依 存 す る の を や め て 、 ﹁保 護 観 察 所 ﹂ と い う 名 の 思 想 監

ッ ショ 体 制 に 即 応 し た も の で あ る こ と も 見 逃 し て は な ら な い。

視 機 関 を 設 け 、 社 会 の な か に ﹁保 護 団 体 ﹂ を は め こ ん で、 町 ぐ る み ・社 会 ぐ る み の監 視 体 制 を 布 く こ と に よ って 、 フ ァ

ま た 、 す で に 指 摘 し た よ う に 、 こ のと き の 法 律 で、 実 刑 を う け な い 者 ・起 訴 さ れ な か った 者 に ﹁保 護 観 察 ﹂ が く わ え

ら れ る と と も に、 刑 の執 行 を 終 った 者 ・仮 出 獄 し た 者 に も 、 同 じ 措 置 を 講 ず る こ と が 定 め ら れ た が、 こ の 点 も す こ ぶ る

注 目 に 値 す る 。 被 疑 者 で あ ろ う と 刑 の執 行 を 終 った 者 で あ ろ う と 無 差 別 に 、 ひ と し く ﹁保 護 観 察 ﹂ に付 そ う と す る た て

ま え の な か に 、 近 代 刑 法 の基 軸 を な す は ず の裁 判 制 度 か ら の い ち じ る し い乖 離 を 看 取 す る こ と が で き る 。

こ の 発 想 の 極 限 的 に 表 現 さ れ た も の が ﹁予 防 拘 禁 ﹂ の制 度 で あ る 。 ﹁予 防 拘 禁 ﹂ は 、 ﹁保 護 観 察 ﹂ と 一緒 に、 昭 和 九 年

の改 正 案 で 登 場 し た が 、 後 者 と ち が っ て 前 者 は さ す が に 世 論 の抵 抗 も 強 く 、 フ ァ ッ ショ 体 制 ・戦 時 体 制 が よ り 強 化 さ れ

る に い た る 昭 和 一六 年 ま で は 立 法 化 さ れ る こと が で き な か った 。 ﹁保 護 観 察 ﹂ は 、 と も か く も 形 のう え で は 市 民 生 活 を

営 む 者 に た い す る 監 視 体 制 を 意 味 し た が 、 ﹁予 防 拘 禁 ﹂ は ま さ に ﹁拘 禁 ﹂ で あ って 、 禁 固 刑 ・懲 役 刑 と い う 刑 名 を も た

な い け れ ど 、 実 質 上 そ れ と 全 く 同 然 の も の で あ った (そ れ が ど ん なも の であ る か の 一端 は、 予 防 拘 禁 処過 令 ︹本 書 五 二 八 ペ ージ

以 下︺ を参 照 され た い)。 ﹁予 防 拘 禁 所 ﹂ は 監 獄 以 外 のな に も の で も な か った 。 順 が 逆 に な って し ま った が 、 ﹁予 防 拘 禁 ﹂

と は な ん で あ った の か 。 そ れ は 治 安 維 持 法 違 反 で刑 に 処 せ ら れ た 者 で ﹁其 ノ執 行 ヲ終 リ 釈 放 セ ラ ル ベ キ 場 合 ﹂ に あ た る

の に、 ふ た た び 治 安 維 持 法 違 反 の ﹁罪 ヲ犯 ス ノ虞 ア ル コト 顕 著 ナ ル ト キ ﹂ 科 せ ら れ る 強 制 措 置 で あ った (昭和 一六年 法 三

九 条)。 再 説 す れ ば 、 当 然 身 体 の 拘 束 を う け る い わ れ のま った く な く な った 者 に た い し 、 実 際 上 は ﹁非 転 向 ﹂ のゆ え に 、

従 前 ど お り 獄 に つな げ て お く こと を 許 す 制 度 で あ る 。 これ は 、 定 期 の刑 を 言 渡 し 、 こ れ を も って 懲 罰 目 的 を 達 成 し た も

の と み な す 裁 判 制 度 そ の も の を ご 破 算 に す る も の で あ った こ と は 疑 い な い (こ の点 に つい ては 、本 書 四 九 〇 ペ ージ 以 下 に 収 録 し た ﹁予 防 拘 禁 請求 事 件 記 録﹂ 中 の徳 田球 一の主 張 が参 照 さる べ き で あ る)。

治 安 維 持 法 は 、 こ のよ う な 改 正 の つ み 重 ね に よ って 、 近 代 法 と は 似 て も 似 つ か な い 摩訶 不 思 議 な も の へと 発 展 す る 。

昭 和 一 一年 の思 想 犯 保 護 観 察 法 が 、 昭 和 一六年 の治 安 維 持 法 の ﹁予 防 拘 禁 ﹂ 部 分 へ の橋 渡 し を す る も の で あ った こと

が 指 摘 さ れ た 。 さ い ご に、 昭 和 一六 年 治 安 維 持 法 の他 の部 分 に 言 及 す る こ と が の こ さ れ て い る 。

昭 和 一六 年 の改 正 は 、 全 面 改 正 で あ って、 あ れ これ の手 直 し 以 上 の も の が あ る 。 時 期 が 時 期 で あ り 、 権 力 側 の要 請 も

や み く も に 肥 大 し て い る か ら 、 こ こ に 登 場 す る 治 安 維 持 法 は あ ま り に も フ ァナ テ ィ ック で あ り 、 か つ、 ほ と ん ど グ ロ テ

ス ク で さ え あ る 。 が 、 そ れ に も か か わ ら ず 、 法 の実 態 と 遊 離 し た 権 力 意 思 の イ デ オ ロギ ー的 な 表 現 と ば か り い え な い 。 こ こ で も や は り 、 既 存 法 の強 行 な 運 用 を 追 認 す る 意 図 が貫 徹 し て い る の で あ る 。

昭 和 一六 年 法 の 主 要 な 柱 は 、 ) (一﹁国 体 変 革 ﹂ に 関 連 す る 行 為 に 的 を し ぼ って、 あ ら ゆ る 角 度 か ら そ の 取 締 り を 徹 底 さ

せ よ う と す る こと 、(二共 )産 主 義 ・社 会 主 義 ・労 働 運 動 な ど 左 翼 運 動 と ま った く 無 縁 な 、 当 時 い わ ゆ る ｢類 似 宗 教 ﹂ の組

織 ・活 動 を 、 名 に し お う 治 安 維 持 法 の規 制 網 の う ち に と り 込 む こ と 、 ) (三 治 安 維 持法 に かんす る刑事 手 続 き を被 告 人 に 不

利 に あ ら た め る と と も に 、 検 察 官 優 位 の 原 則 を 樹 立 せ し め る こと 、 (四 ) ﹁予 防 拘 禁 ﹂ 制 度 を 設 け る こ と 、 に あ った と 要 約 でき る。

こ のう ち (四) に つ い て は す で に略 述 し た 。 以 下 、 ) (一 お よ び) (二 に つ い て 若 干 の考 察 を お こ な う に と ど め る 。 法 は 、 従 前 ど

お り ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る結 社 の組 織 ・指 導 お よ び か か る 結 社 の ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ﹂ な ど の 罪 を 前 面 に 押

し 出 し つ つも 、 さ ら に、 こ の よ う な 結 社 を ﹁支 援 ス ル コ ト ヲ 目 的 ﹂ と す る ﹁結 社 ﹂ と 、 こ の よ う な 結 社 の ﹁組 織 ヲ 準 備

ス ル コト ヲ 目 的 ﹂ と す る ﹁結 社 ﹂ と を 並 べ た て 、 お の お の、 そ の組 織 ・指 導 お よ び ﹁結 社 ノ 目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ﹂

と い う 名 目 で︱

こ の第 一の 結 社 を 支 援 す る た め の 結 社

を 処 罰 の 対 象 と す る こ と と し た 。 話 し が や や こし く て 、 わ か り に く い か も し れ な い が 、 要 す る に ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る 結 社 (これを 第 一の結 社 と よ ぼう ) を せ ん 滅 す る た め に︱

(これ を第 二 の結 社 と よ ぼう ) に 関 係 す る 行 為 と 、 第 一の結 社 そ の も の が 不 存 在 で あ る こ と を 前 提 と し て、 第 一 の 結 社 を

再 建 し よ う と 準 備 す る結 社 (これ を第 三 の結 社 と よ ぼう) に 関 係 す る 行 為 と を 、 処 罰 し よ う と い う の で あ る 。 第 一 の 結 社

に関 す る 行 為 は 、 そ れ そ のも の が ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る も のだ と い い え て も 、 第 二 お よ び 第 三 の結 社 に関 係 す る そ

れ は 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る も の と は い え な い。 いず れ も 、 当 面 の 目 的 は 第 一の 結 社 の支 援 に、 も し く は 第 一 の 結 社 を結 成 し よ うと す る準 備 にあ る から であ る。

こ う し て み れ ば 、 昭 和 一六 年 法 は 、 第 二 ・第 三 の結 社 関 係 行 為 を 処 罰 の 対 象 に と り あ げ る こと に よ って、 事 前 規 制 ・

予 防 規 制 の 性 格 を 一段 と 強 化 し た こと が わ か る 。 実 際 、 第 一の結 社 と の関 係 で 問 題 に な る ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂

は 、 そ れ 自 体 が広 義 ・包 括 的 で あ る こ と を 指 摘 し た が 、 第 二 ・第 三 の 結 社 と の 関 係 で 問 わ れ る こ と に な る ﹁目 的 遂 行 ノ

為 ニ ス ル行 為 ﹂ と いう こと にな る と 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ の 契 機 か ら は る か に 離 れ た 諸 行 為 も 包 摂 さ れ る こ と に な り 、 権 力 の 側 から み れば、 文 字 ど おり 融 通無 碍 に活用 でき る概 念 であ る。

こ の種 の法 文 を 真 面 目 に 考 案 し た 司 法 官 僚 に は 、 脱 帽 し 感 服 を 禁 じ え な い が、 こ れ と て も 、 か れ ら の観 念 の遊 戯 か ら 割 り 出 さ れた も ので はな い こと を知 る べ き でも あ る。

つ ぎ に 、 (二の ) ﹁類 似 宗 教 ﹂ 取 締 り を み よ う 。 法 は 従 前 の ﹁国 体 変 革 ﹂ お よ び ﹁私 有 財 産 制 度 否 認 ﹂ を 目 的 と す る 結 社

の 取 締 り に 付 加 し て、 新 た に ﹁国 体 ヲ否 定 シ 又 ハ神 宮 若 ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ 冒涜 ス ベ キ 事 項 ヲ 流 布 ス ル コト ヲ 目 的 ト シ テ 結

社 ヲ組 織 シタ ル者 ⋮⋮ ﹂な どを 治 安維 持 法 違反 とし て処 罰 す る こと にし た。 規 定 の趣旨 は 、 主 と し て いわ ゆ る ﹁新 興 ﹂

諸 宗 教 が 正 統 的 国 体 イ デ オ ロギ ー (そ れ が積極 的 にな ん であ る か、 一義的 に把 握 でき な い が、宗 教 領 域 で いえ ば、 国 家 神 道 の教

義 のな か に体 現 さ れた 国体 イデ オ ロギ ー と いえ よう ) に 相 反 す る と み ら れ る ば あ い、 当 該 宗 教 団 体 そ の も の を 壊 滅 さ せ よ う

と す る 点 に あ った 。 旧 来 の 法 体 系 のも と で は 、 こ の種 の ﹁異 端 ﹂ 教 説 は 、 個 々 の教 説 者 の行 動 に 即 し て、 あ る いは 刑 法

上 の ﹁不 敬 ﹂ 罪 (刑法 七 三条 な いし七 六 条 ) 、 新 聞 紙 法 ・出 版 法 で い う ﹁安 寧 秩 序紊 乱 ﹂ 罪 ( 新 聞紙 法 四 一条 、 出 版 法 二 七 条

など ) に よ って 規 制 さ れ え た が 、 これ ら は ﹁異 端 ﹂ 宗 教 組 織 そ のも の に お よ ば な い 。 治 安 警 察 法 が あ る 程 度 こ の 種 の組

織 を 規 制 す る 力 を も って い た が 、 か な ら ず し も 効 果 的 で は な か った 。 ﹁異 端 ﹂ 宗 教 組 織 を バ ラ し て し ま う た め に は 、 所 詮 新 し い法 律 が 必 要 で あ った 。 昭 和 一六年 法 は 、 こ の よ う な 要 請 に 対 応 す る も の で あ る 。

け れ ど も 看 過 し て な ら な い こ と は、 こ の種 の ﹁異 端 ﹂ 宗 教 取 締 り は 治 安 維 持 法 の 改 正 を ま って は じ め て お こ な わ れ る

よ う に な った の で は な い、 と い う こ と で あ る。 昭 和 一六 年 改 正 以 前 、 す で に 治 安 維 持 法 に よ る ﹁類 似 宗 教 ﹂ 取 締 り は 、

現 実 に、 か つ、 き わ め て 広 範 ・強 力 に 展 開 し つ つあ った の で あ る。 ﹁類 似 宗 教 ﹂ へ の治 安 維 持 法 適 用 の 先 鞭 を つ け た の

は、 よ く 知 ら れ て い る よ う に 、 昭 和 一〇 年 一 一月 の ﹁皇 道 大 本 教 ﹂ 事 件 で あ る 。 こ の事 件 で、 個 別 ﹁不 敬 ﹂ 行 為 に 対 す

る ﹁不 敬 ﹂ 罪 を 問 う と と も に 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る 結 社 と 断 定 し て、 治 安 維 持 法 が は じ め て 発 動 さ れ た 。 そ れ 以

降 、 昭 和 一六 年 法 制 定 ま で の あ い だ に、 ﹁類 似 宗 教 ﹂ に た い す る 治 安 維 持 法 適 用 例 は 、尨 大 な 数 に の ぼ って い る (主 要 事

件 の裁 判状 況 に つ い ては、 本 書 六 五 二ペ ージ所 載 付 表 四 を、 検 挙 件数 も ふく む統 計 に つ いて は、 六 四六 ペ ージ 以 下所 載 付 一の、 昭和

一〇年 以降 の部 分 を 、 そ れ ぞれ参 照 され た い)。そ し て ひ と た び 起 訴 さ れ た な ら ば 、 裁 判 所 は 唯 々諾 々 有 罪 判 決 を 下 し て き た

( 下 級 審判 決 を網 羅 的 に検 索 す る ことは 不 可能 で あ る の で、 この方 面 の無 罪 判 決 が な いと は 断 言 で き な い ︹ 例 えば 、 昭和 一三年 二 月 、

人 民戦 線 事件 の名 目 で検 挙 され た いわゆ る労 農 派 教授 グ ル ープ が、 仙 台 で起 訴 され た宇 野 弘 蔵 と と も に、 それ ぞ れ第 一審 ま た は 第 二

審 で違 反事 実 なし と 無 罪 の判 決 を受 けた のは よ く知 ら れ た事 例 の 一つ。 皇 道 大 本 教事 件 も、 大 阪控 訴 院 で治安 維 持 法 関 係 で は、 同 じ

これ は昭 和 一六年 適 用 事 件 で あ る が︱

を六 四 〇 ペ ー ジ以 下 に あげ てお いた)。

ょ う に違 反 事 実 な し と判 定 され て いる︺。 私 には、 し かし、 無 罪 例 はも し あ った と し ても き わ め て少 数 のよ う に おも わ れ る。 本書 で は、 珍 重 す べき 例 外 と し て、 大審 院 無 罪判 決︱

け れ ど も 、 ﹁異 端 ﹂ 宗 教 に た い し 治 安 維 持 法 違 反 を 問 う こ と は 、 本 来 的 に い って 相 当 に無 理 が あ る 。 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目

的 と す る ﹁結 社 ﹂ と いう 概 念 じ た い、 法 律 制 定 時 に は 明 示 的 に 共 産 主 義 を 奉 ず る 政 治 団 体 た る 日本 共 産 党 お よ び そ の直

接 的 傘 下 団 体 を 意 味 す る も の と 了 解 さ れ (そし てそ のゆ え に、 日本 共 産 党 が ﹁天 皇制 廃 止﹂ を綱 領 中 で謳 って いる事 実 が特 殊 的

に強 調 さ れ 着目 さ れた な ど な ど の権 力 側 の事 実 認 定 論 が出 てく る)、 こ の制 定 時 の了 解 が そ の のち 少 し く あ い ま い に な った と

は い え 、 日 本 共 産 党 と の な ん ら か の つ な が り を と も か く も 論 理 的 に 構 成 し つ つ、 他 の政 治 的 諸 団 体 を フ ッ ク ・ア ップ す

る と い う 法 実 践 が お こな わ れ て き た 。 つ ま り、 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る ﹁結 社 ﹂ は 、 法 概 念 と し て き わ め て あ い ま い

な も の で あ った に し て も 、 し か し そ れ な り にわ く が あ った 。 し か る に い ま 、 い か な る 意 味 で も 日 本 共 産 主 義 運 動 と か か

わ り を も た な い ﹁異 端 ﹂ 宗 教 組 織 を 、 お な じ ﹁国 体 変 革 ﹂ の た め の ﹁結 社 ﹂ を 構 成 し よ う と 試 み る ば あ い に は 、 単 に 従

来 の わ く を 拡 張 す る と い う の で は な く 、 む し ろ ま った く 新 し い わ く を 設 定 す る こ と にな ら ざ る を え な い。

昭 和 一〇 年 以 降 の 治 安 維 持 法 に よ る ﹁類 似 宗 教 ﹂ 取 締 り は 、 し た が って 、 一種 の頬 か ぶ り の も と に 強 行 さ れ た も の と

見做 さ な け れ ば な ら な い よ う に お も う 。 権 力 は 、 こ の無 理 を そ れ な り に自 覚 し て い た に ち が い な く 、 現 実 を 取 繕 う た め

に 、 昭 和 一六 年 法 に よ る 改 正 を は か った と 考 え る 。 す な わ ち こ こ に も 、 先 行 し た 法 状 況 を 事 後 的 に追 認 す る た め の法 改

正 と いう性 格 を読 みと る こと が でき る。

こ う し て 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る 結 社 の代 わ り に、 ﹁国 体 ヲ 否 定 シ 又 ハ神 宮 若 ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ 冒涜 ス ベ キ 事 項 ヲ流

布 ス ル コト ヲ 目 的 ﹂ と す る 結 社 が、 規 定 上 登 場 す る こと にな った 。 こ れ は 前 叙 の よ う に既 成 の法 状 況 を 追 認 す る も の で

あ った と 同 時 に 、規 制 の範 囲 を 拡 げ 、規 制 の深 度 を 強 め た も の で あ る こ と も 明 瞭 で あ る 。 ﹁国 体 ヲ 否 定 ⋮ ⋮ ス ベ キ事 項 ヲ

流 布 ス ル コト ヲ 目 的 ﹂ と す る の と 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ を 目 的 と す る の で は 、 格 段 の 差 が あ る か ら で あ る 。 こ の種 の 規 定 の 挿

入 は 、 治 安 維 持 法 の規 定 上 の性 格 変 化 を し め し て い る よ う に お も わ れ る (な お、 昭 和 一六年 法 の宗教 取 締 り部 分 は、 国 家神

道 を中 心 と す る宗 教 再 編 政策 、 と り わけ て 昭和 一四年 の宗 教 団体 法 ︹法 第 七 七号 ︺ と の関 連 で論 ぜ ら れ る べき 主題 で あ る こ と を 、補 完的 に指 摘 し て おき た い)。

以 上 、 大 正 一四 年 に 制 定 さ れ た 治 安 維 持 法 の、 そ の後 の 改 正 経 緯 に即 し 、 そ れ ぞ れ の意 味 を 略 述 し た 。 そ れ は し か し 、

ど の み ち 法 文 上 の 変 遷 を た ど った に す ぎ ず 、 そ れ に よ って 明 ら か に さ れ た の は 治 安 維 持 法 の全 体 像 の ほ ん の 一部 に す ぎ な い。

概 し て い え ば 、 治 安 維 持 法 は、 権 力 行 使 に 法 的 根 拠 を 与 え た が、 権 力 行 使 に 一定 の 歯 止 め を 設 定 す る 役 割 を ほ と ん ど

果 た さ な か った 。 限 度 一杯 も し く は 限 度 を 越 え た 拡 張 解 釈 が 考 案 さ れ 、 裁 判 所 も か か る 拡 張 解 釈 に た い し て ほ と ん ど ま

った く 抑 制 を 試 み よ う と し な か った こ と は 特 記 さ れ て し か る べ き こ と が ら で あ ろ う 。 こ の よ う な 運 用 を 可 能 な ら し め た

要 因 は 、 第 一義 的 に は 官 僚 構 造 の な か に 見 出 さ れ る 。 と り わ け 、 伝 統 的 に い え ば 内 務 省 的 な 官 僚 法 学 、 伝 来 的 に い え ば

思 想 検 察 的 な 官 僚 法 学 が 重 要 で あ る (既 存 の法 的 わ く組 み を、 いか に権 力 行使 のために 拡 張 し、 理 屈 を立 て るか に専 念 す る 実 用

法 学 )。 そ れ と 同 時 にし か し 、 法 律 の 規 定 じ た い に 、 市 民 的 自 由 を 確 保 す る 観 点 か ら み た ば あ い 、致 命 的 な 欠 陥 が あ った

こ と も 、 忘 却 し て は な ら な い 。 こ れ は 、 官 僚 統 制 を 見 透 し た う え で 、 権 力 増 殖 の 危 険 を 未 然 に防 止 す る た め の細 心 の 注 意 を 払 う こと が で き な か った 帝 国 議 会 の責 任 に 帰 せ ら れ る べ き 問 題 で あ る 。

権 力 増 殖 に 適 合 的 で あ った 法 律 規 定 と い え ば 、 そ の典 型 的 な 例 は さ き に 少 し く 触 れ た ﹁目 的 遂 行 ノ 為 ニ ス ル行 為 ﹂ で

あ る 。 こ の 規 定 を ふ く め 昭 和 三 年 緊 急 勅 令 は 、 翌 年 第 五 六 帝 国 議 会 の 承 認 を う る た め 、 議 員 の討 議 に 付 さ れ た 。 け れ ど

も 、 多 く の 議 員 は こ の規 定 に さ し た る 注 意 を む け て お ら ず 、 わず か に 水 谷 長 三 郎 等 が 疑 念 を 提 示 し て い る に と ど ま る ( 本書 一四 六 ペ ージ 以下 の会 議 録参 照 )。

規 定 の問 題 性 と い う こと で い ち ば ん 重 要 な の は 、 当 初 か ら 治 安 維 持 法 に 採 用 さ れ て い た ﹁国 体 変 革 ﹂ の概 念 で あ る 。

沿 革 に 照 し て い え ば ﹁国 体 ﹂ 概 念 に は と も か く も 一定 の わ く のよ う な も の が あ った 。 こ の こと は 、 政 府 原 案 が ﹁国 体 若

ハ政 体 ヲ変 革 シ ﹂ と 表 現 し て、 ﹁政 体 ﹂ と 対 比 し て も ち い て い た こ と か ら も わ か る 。 他 方 し か し 、 ﹁国 体 ﹂ は 国 学 の ﹁く

に ぶ り ﹂ に 淵 源 し 、 教 育 勅 語 の ﹁国 体 の精 華 ﹂、 さ ら に は 国 家 神 道 教 義 の ﹁万 邦 無 比 の 我 が 国 体 ﹂ に み ら れ る 情 緒 的 倫

理 的 な 観 念 で も あ る の で あ って 、 そ れ は 昭 和 一〇 年 の国 体 明 徴 運 動 へと つな が って ゆ く 復 古 主 義 の伝 統 に 根 ざ す も の で

あ った 。 治 安 維 持 法 の ﹁国 体 ﹂ は 、 つね に右 の 意 味 の ﹁国 体 ﹂ と 意 識 的 に も 無 意 識 的 に も 混 交 さ せ ら れ て き た 。 じ っさ

い、 治 安 維 持 法 の 議 会 討 論 の な か で 、 ﹁国 体 ﹂ を 論 ず る こ と を ﹁恐 れ 多 い こと だ が ⋮ ⋮ ﹂ と の べ る 議 員 も 出 て く る 。 議

会 で論 ず る こ と が ﹁恐 れ 多 い ﹂ と 感 ぜ ら れ る 概 念 が、 法 規 定 と し て 採 用 さ れ て い る こ と の矛 盾 に 気 が つ か な い の は 、 い ま から みて驚 き であ る 。

共 産 主 義 其 ノ 他 ニ関 シ朝 憲 ヲ紊 乱 ス ル事 項 ﹂ の実 行 お よ び 宣 伝 を 取 締 る こ と を 眼 目 と し た 。 無 政 府 主 義 、 共

治 安 維 持 法 制 定 の最 初 の試 み は 、 大 正 一 一年 第 四 五 帝 国 議 会 に 提 出 さ れ た 過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 で あ る 。 こ れ は ﹁無 政 府 主義

産 主 義 と は な に か 、 ﹁其 ノ 他 ﹂ と は な に か な ど は 、 ﹁朝 憲紊 乱 ﹂ と は な に か 、 と と も に 大 い に問 題 を 包 蔵 し て い た (ま た、

政府 原 案 には ﹁ 社 会 ノ根 本組 織 ヲ⋮ ⋮ 不法 手 段 ニ依 リ テ変 革 ス ル事 項 ⋮ ⋮ ﹂ ︹原案 第 三条 、 本書 四 ペ ージ参 照 ︺ が規 定 され て お り、 明

治 国 家 ・明 治 社会 体 制 の温 存 が企 図 さ れ て い た こと も 注意 さ れ る)。 こ れ ら の 難 点 のゆ え に、 政 府 原 案 は 貴 族 院 で 大 は ば に 修

正 さ れ て い る 。 ど ち ら に し て も 、 こ の試 み は 衆 議 院 の 審 議 未 了 で 廃 案 に な った 。 大 正 一四 年 に は、 そ の出 直 し と し て 治

安 維 持 法 が 出 て き た の だ が 、 こ の さ い に ﹁国 体 若 ハ政 体 ヲ変 革 シ 又 ハ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コ ト ﹂ と いう 条 項 が 、 新

登 場 し た の で あ る 。 ﹁国 体 若 ハ政 体 ﹂ 概 念 が 、 ど の よ う な い き さ つ で 出 て き た の か 、 い ま の私 に は わ か ら な い (た だし 、

若槻礼次郎自伝 ﹃古風庵回顧録﹄三九八ページ参照)。 前叙 のよう に議 会 では ﹁若 ハ政 体﹂ が削 除 さ れ て、﹁国 体﹂ のみ が の こ

った 。 立法 者意 思 に よれ ば ﹁国体 変 革 ﹂ を 目 的 とす る結 社 は 共 産主 義 組 織 、 ﹁私 有 財 産制 度 否 認 ﹂ のそ れ は無 政 府 主 義

組 織 が含意 さ れ て い た から、 そ のかぎ り で過 激 社会 運動 取 締 法 案 と 大体 対 応 す る と み て い い。 け れ ども 規 定 の仕 方 と し

て、 ど ち ら が よ か った かと いう段 にな ると、 法 文 上 の限 定 性 と いう 点 で は過 激 社会 運 動 取締 法 案 の方 がま だま し だ った

と お も わ れ る (そし て、貴族院修正案 は政府原案 よりも、 一段とましだ ったと いえ る)。 ﹁国 体﹂ 概 念 の採 用 は、 そ れ が 容 易 に

概 念 のひ と り歩 きを し う る も ので あ った だ け に、 市 民 的 自 由 に と ってた い へん 不幸 な こと であ ったと いわ ねば な ら な い。

実 際、 権 力 は のち にお いて、 治 安 維 持 法 が共 産 主 義 およ び無 政府 主 義 の組 織 と運 動 を 取締 る た め のも のだ と いう 沿革 上

の限界 を、 ﹁沿革 は いざ 知 らず ⋮ ⋮﹂ と いう い い方 で無 視 し てし まう が、 ﹁国 体 ﹂ 概念 は こ の種 の沿 革無 視 の契 機 を それ 自 身 のう ち に ふく ん で い たよ う にお も え る。

過 激 社 会 運動 取締 法 案 にし ろ、 治安 維 持 法 にし ろ、 共産 主 義 ・無 政府 主義 の組 織 ・運 動 の取 締 り を 企図 し た も のと い

う 点 だ け で いえ ば、 当 時 の世 界 の状況 のな か でき わ 立 って特 異 な 試 み だ った とは いえな い面 が あ る。 ア メ リカ の諸 州、

ったと いえ る か ら で あ る。 ﹁過 激 ﹂ 政治 組 織 を 集 団 犯 罪 と し て取 締 る と いう 傾 向 は、 独 占 資 本 末 期 の段 階 の 諸 国 に 共 通

イ ギ リ スな ど を ふ く む欧 米 諸 国 では、 第 一次 世界 大戦 後 に、 こ の種 の取 締 法 を制 定 す る のが、 一種 の流 行 現象 でさ え あ

し てみ ら れ、 か か るも のと し て現 代 版 ﹁治安 立 法 ﹂ へ橋渡し さ れ て いる と い え る。

し かし、 こ の こと から わ が 治安 維 持 法 を世 界 史 のな か で相対 化 し て み て い いと いお う とす る のでは な い (わが権力 は、

治安維持法 と欧米諸国 の趨勢 と軌 を 一にするものとして、正当化した)。 治 安 維 持法 は、 諸 国 の治安 立 法 と 区 別 さ れた 顕著 な 特

異 性 を も って い た こと が 強 調 され ね ば な らな い。 そ の こと は、 ﹁国体 変 革 ﹂ 規 定 に典 型 的 にし め さ れ て いる よ う な 法 文

規 定 上 の特 異 性 にう か が う こと が でき るば か り では な く、 な によ り も、 各 法 文 の適 用 ・運 用 の実 態 に お い て看 取 し う る。

裁 判 を つう じ て刑事 制 裁 を課 す ると い う法 のた てま え は、 治 安 維持 法 の運用 にと って、 ほん の 一部 で し かな か った と い

う こと、 お よ び、 裁 判 官 も ふく め て官 憲 全 体 が思 想 の ﹁転 向 ﹂ を強 要 す る の に専念 した と いう こと、 な ど 特異 ・独 自 な

諸 相 は 枚 挙 に いとま がな い。

特 異 性 を 明 ら か にす る 作業 にと って いま ひ と つ必要 な こと は、 治 安 維持 法 と、 治 安 警察 法 ・新 聞紙 法 ・出版 法 等 によ

って組 み立 てら れた 明治 国家 に おけ る (特 別) 高 等 警 察法 体 系 と の つな が り であ る。 これ は単 に治安 維 持 法 の歴史 的 な

基 盤と いう 意 味 で重要 であ る に とど ま ら な い。 ま さ に治 安 維持 法 の運 用 過程 そ のも の が、 明治 以 来 の伝 統 をし く特 高 警

裁 判 を つう じ

を、 専 ら単 に フ ァサ ード にす ぎ な いも のと させ た要 因 を理 解 す る ため に、 必要 な の であ る。

察 の組 織 と 機能 を不 可 欠 のも のと し た と いう 点 でも 重 要 であ る。 別 言 す れば 、 治 安 維 持 法 のた てま え︱ て刑 事 制 裁 を課 す制 度︱

昭和 一六年 の全 面改 正 を別 と す れば︱

昭

いま ひと つ治 安 維持 法 の特質 と の関 連 で指 摘 し て お きた い こと は、 それ自 体 と し ては フ ァ ッシ ョ法 と し て制 定 さ れた も ので もな く、 戦 時 体制 法 と し て立 法 され た も のでも な い治 安 維持 法 が︱

和 一〇年 代 を境 に展 開 す る ﹁新 体制 ﹂ のな か で、 き わ め て有 効 に フ ァ ッシ ョ法 ・戦 時 体 制 法 と し て機 能 し え たと いう事

実 で あ る。 法 律 規 定 のう え では ﹁国体 ﹂ 概 念 が、 これ を可 能 な ら し め た鍵 であ る が、 そ れだ け で は右 の秘 密 を説 明 し え な い。 い わゆ る ﹁日本 フ ァシズ ム﹂論 とも ど も、 今 後 究 明 を要 す る こと がら であ ろ う。

治安 維 持 法 の運 用 面 に お け る特 高警 察 の役 割 は、 い く ら強 調 し ても過 ぎ る こと は な い。 だ が 同時 に、 司 法 官 僚 (とり

わけ思想検察陣)の役 割 を 過小 評 価 す る 誤 り を お かし て は な ら な い。 従来 、 と かく 特 高 警察 だ けを 着 目 す る きら いが あ っ

た こと と の関 係 で いえ ば (も っとも、 このことは特高警察 の究明が十分になされていると いうことを意味 しな い)、 むし ろ司 法 官 僚 の役 割 を よ り 一層 注 目 す る こと が肝 要 で あ る。

過激 社 会 運 動 取締 法案 も ふく め、 治 安 維 持 法 の立 法 化 に は、 内務 官 僚 より も司 法 官 僚 (とりわけ平沼騏 一郎 ・鈴木喜三郎

など平沼閥)が 熱 心 に立 ち は た ら い た ふし があ る 。刑 事 法 規 の制 定 を契 機 に、これ ま で内 務 官僚 の独 壇 場 であ った思 想統

制 領 域 へ検 察 官 優 位 をか ち と ろう と 企 図 し た よう にお も え る。 ど ち ら にせ よ、 三 ・ 一五 では特 高 組 織 が検 事陣 の指 揮監

督 (東京 地判検事 正 ・塩野季彦)のも と に うご かさ れ る と い う事 態 が 招 来 し、 これ を き っか け に司法 官 僚 の地 位 が格 段 と 上

昇 し た 。 ふ つう、 三 ・ 一五 の のち 、 特 高 組 織 の再 編 強 化 のみ が語 ら れ る が、 実際 には、 こ のさ い、 これと 同 時 に、 これ

ま で東 京 ・大 阪 に かぎ って事 実 上 存 在 し た 思想 事 件 専 門 の検 事 の地位 が、 全 国 主 要検 事 局 に お ける思 想 係 検 事 の配 置 と

いう 制度 へ発 展 し て いる 。 こう し て、 いわ ゆ る 思想 検 察 体 制 が でき あ がり 、 海 外情 報 ・海 外 視 察 な ど を も ふく む情 報 収

集 ・状 況 分析 に従 事 す るよ う に な る。 こ の領 域 で シ ニ セた る特 高組 織 に ど れだ け張 り合 う こと が でき た か疑 問 の余 地 は あ る が、 相 当 のと ころま で肉 薄 し た ことは た し かで あ る。

思 想 検 察 陣容 の制 度 と 関連 し て 重要 な のは、 昭和 六、七年 ご ろ から 年 二 回ず つ定 期 的 に開 催 さ れ た ﹁思 想実 務 家 会 同﹂

で あ る。 この会合 は当 初 思 想 係検 事 の事 務 打 合 わ せ 会 のよう な性 格 のも のであ った が、 のち には、 控訴 院 ・地 方裁 判 所

の判 事 (控訴院所在地 の地裁 の部長判事 およ び各地裁 の予審判事)と 各 検事 局 の思 想 係 検 事 が 一堂 に集 ま り、 中 央 ・地 方 の思

想 情 勢 報 告 を う け、 法 律 の解 釈 ・適 用 の問 題 点 を 出 し合 い、 望 ま し い立 法 措 置 の要求 を提 出 し たり す る大 規模 の公 式 化

し た も のにな った。 判 事 (この ﹁思想実務家会同﹂ では、たえず思想係判事 の新設、特別な思想裁判所 あるいは治安裁判所 の設 置

が、真面目 に、そして熱 心に要望 された。司法当局 は予算上 の困難 を理由 に、そ の実 現ができな いむね答えてい る。と も あ れ、事実

上 の思想係予審判事 は東京地判検事 局などに存在した が、制度 として思想係判事 のご とき は成立しなか った) が、 思 想係 検 事 と 原

則 と し て同 席 で、 治 安 維持 法 の解 釈 ・適 用 を論 じ合 う と いう と ころ に、 た い へん大 き な意 義 が あ った 。 こう い った席 上

で、 た と えば 池 田克 (はえ ぬき の思想係検事 で、 のち大審院検事となる。ちなみに、かれは戦後最高裁裁判官 とな った) の反 フ ァ

ッシヨ統 一戦 線 と 治 安 維持 法 の適 用 にか んす る講 演 ・解説 を聴 き、 そ れ が労 農 派 の検 挙 を生 み、 あ る い は そ の正当 化 に

役 立 つ こと にな ると 同 時 に、 これ にな ぞ ら え た裁 判 の進 行 と判 決 と が 確保 さ れ る こと にな った。

﹁思想 実 務 家 会 同 ﹂ は のち 、 全 国単 位 のも の の ほ か に、 各 控 訴 院 管 区 の規 模 でも も た れ る よう にな り、 裁 判 ・検 察 の 一体 化 が ます ま す 保障 さ れ る こと にな った。

本 書 に収録 し た 資料 は、 末 尾 にお か れ た付表 を別 と し て、 三 つの部 分 か ら構 成 され て い る。 ﹁第 一部﹂ は 治安 維 持 法 の

立 法 過 程 に か んす るも の、 ﹁第 二部﹂ は治 安 維持 法 の運 用 の実際 を う か がえ る よ うな種 類 の資 料 を 集 め、 ﹁第三部﹂ は 治 安 維 持 法 の主 要 な 判 決 (およびそれ に関連 する若干 の資料 )を お さ め て いる。

﹁第 一部﹂ では まず 一およ び 二で治 安 維持 法 の制 定 に先 行 し た立 法 のう ごき がし め さ れ る。 一の朝 鮮 制 令 は ふ つう 本

邦 治 安 維持 法 の先 駆 を な す も のと 理 解 さ れ て い るが、 こ の制 令 が本邦 治 安 維 持 法制 定 にど のよ う に つな が る のか、 ま だ

かな らず し も 明 ら か では な い。 本 邦 で治 安 維持 法 が制 定 さ れ る に伴 い、 大 正 一四年 勅令 一七 五 号 に よ り朝 鮮 、 台湾 およ

び樺 太 にも 同法 が施 行 さ れ る こと にな った が、 これ に よ って右 の朝 鮮制 令 が廃 止 さ れ た わけ ではな い こと に注意 を要 す

る (も っとも、実際 には、治安維持法 の適用例 が増大す るととも に、 この朝鮮制令 の適用例は減少 の 一途をたど った)。二 にあ げ た

過激 社 会 運動 取締 法 案 は、 三 で掲 げ た議 会 ・委 員 会 の議 事録 から わ か るよ う に、 貴 族 院 で難 行 し たあ げ く 大 はば な修 正

を う け たが 結局 衆 議院 の レ ベ ルで審 議 未 了 で廃 案 にな った も の。 こ の法 案 は、 議 会 で大 き な論 議 を よ ん だ ば かり でな く、

議 会 で の批 判 も き び し いも のが あ った。 四 では、 この法 案 にた いす る知 識 人各 層 の論 評 を 拾 って み た。 た と えば 高柳 賢

三 の論 文 のご と き は、 当 時 あ ま り人 の知 ると ころ でな か った 英米 法 の観 点 から批 判 的 考 察 を展 開 し て いる も のとし て関

心 を惹 く 。 な お、 ﹁第 一部﹂ に は、 三と同 様 、治 安 維持 法 関 係 の法 案 に か んす る議事 速 記 録 ・委員 会 議 録 が取 り あげ ら れ

て いる が (六、 一二、一七、 一八および二〇)、 そ れ ら は性 質 上 抄 録 と し て おさ め る ほ か な か った 。 さ まざ ま な 発 言 の ど れ

を抽 出 す る か、 そ の取捨 選 択 に苦労 し た。 そ れ ぞ れ の議 事 の性 格 を特 徴 づ け る発 言、 法 案 の性 質 を浮 彫 り にす る質 疑応

答 を拾 った つも り であ る が、 所 詮抽 出 し た者 の主観 を媒 介 と し てい る の で、 叱 正 を待 つほか な い。

五は、 関 東 大 震 災後 の治 安 秩 序維 持 のため に発 せ ら れ た緊 急 勅 令 で あ る。 過 激 社 会 運動 取締 法 を成 立 さ せ る こと が で

き な か った と ころ、 大 震 災 を 奇 貨 と し て、 そ の代償 措 置 を講 じ た のが これ であ る、 と ふ つう 理 解 さ れ て いる 。し かし、

実 際 に こ の緊 急 勅 令 が 共産 主義 も し く は無 政 府 主義 の集 団 ・組 織 に適 用 さ れ た例 は ほ と んど な く、 むし ろ 各 地 に散 発 的

に生 じ た流 言 浮 説 事件 を押 える た め にも ち いら れ た に すぎ な いよ う にお も われ る。 も っとも、 こ の勅 令 (第四七議会 で承

諾をうけ、法律とし て効力 をも つにいたる) が、 形 式 のう え で治 安 維 持 法 と つな が りを も た さ れた こと は否 定 でき な い。 す

な わ ち大 正 一四 年治 安維 持 法 の成立 が、 こ の勅 令 の廃 止 をも た ら し た から であ り、 治 安 維 持 法 が未 成 立 であ ったな ら ば、

こ の勅 令 は いま しば らく 生 き 続 け て、 治 安 維 持 法的 な運 用 を 経 験 す る こと にな った か もし れな い。

六が本 命 の治 安 維 持法 の制 定 に かか わ る議 事 録 であ る 。議 会 で は、多 く の論 戦 が闘 わ れ た が、 いち ば ん長 舌 を ふ る っ

た のは清 瀬 一郎 であ った。 清 瀬 の大演 説 を議 事 録 から拾 おう と お も った が、 こ こ では か れ の立 論 を 体系 的 にし め す ため

に、 八で か れ の論 文 を お さ め た。 当時 、 い く つか の新 聞 は熱 心 に治 安 維持 法 反 対 の立場 を 明ら か にし た が、 こ の点 の立

場 を いちば んは っき り し め し た の が東 京朝 日新 聞 であ った よう に おも う 。 七で そ の 一連 の社 説 を か かげ て みた 。

昭 和 三年 、 三 ・ 一五事 件 で 日本 共産 党関 係 者 の大 量検 挙 が あ った直 後、 田中 内 閣 は ﹁赤 の恐 怖 ﹂ を か き立 て、 治安 維

持 法 の改 正を 試 みよ う と し た。 改 正法 案 を議 会 に提出 し たも のの会 期 終 了 まぎ わ であ った ことも あ って、 衆 議 院 の段 階

だ け でさ えも 審 議 未 了 と な った。 と ころ が 田中 内 閣 は、 こ の議 会 で廃 案 とな った改 正案 と ほ ぼ そ っく り おな じ も のを、

こんど は 緊急 勅 令 の形 式 で制 定 し よ う と 企 図 し た。 緊 急勅 令 は ﹁公 共 ノ安全 ヲ保 持 シ又 ハ其 ノ災 厄 ヲ避 ク ル為 緊急 ノ必

要 ニ由 リ﹂ (旧憲法第八条)と いう要 件 を そ な え て いな けれ ばな ら な いが、 こ のば あ いそ れ を 制 定 し な け れ ば な ら な い

﹁緊 急 ノ必要 ﹂ が あ る かど う か、 大 い に議 論 の余 地 があ った。 と もあ れ、 緊急 勅 令 発 布 に つき、 内 閣 は枢 密 院 の審議 を

も とめ な け れば な ら な か った。 一一は、 こ の案件 に か んす る枢 密 院 顧 問官 ら の審 議模 様 をう か が える貴 重 な 資 料 で あ る。

枢 密 院 内 の議 論 は、 当 時 の新 聞 が わり と く わ し く報 じ てお り、 あ る程 度推 測 し えた が、 会 議 筆 記 の全文 が明 ら か に さ れ

る のは、 本 書 に お い て はじ め て で あり 、 有 意義 と お もう (なお、緊急勅令発布 をめぐ る状 況については、最 近刊行 さ れ た ﹃小

川平吉文書﹄︹みすず書房、上六 一七ペ ージ以下︺所収 の ﹁ 緊 急勅令発布顛末並に関係記事﹂を参照 された い)。 治安 維 持 法改 正 の

緊 急勅 令 に青 信 号 を出 し た枢 密 院 は、 そ の前 年 、 と き の若 槻 内 閣 が折 から の財 界 危 機 救 済 のた め の緊 急 勅令 をも と め て

き た と き、 す げ な く これ を拒 絶 し、 そ のため 若 槻 内 閣 を し て解 体 を余 儀 な く せ し め た。 す な わ ち こ のば あ い枢 密 院 は、

若 槻 内閣 を倒 し、 田中 内 閣 の成 立 に あず か って力 が あ った。 枢密 院 が このよ う な か たち で政治 的 中 立 を 侵 犯 し、 一党

( 政 友会) に加 担 す る のは けし から ん と非 難 され てい た矢 先 の こと で あ る のを 知 って おく のも便 利 であ る。

治 安 維 持 法 の 展 開 が 、 大 正 デ モ ク ラ シ ー の 終 焉 を 意 味 す る ひ と つ の 現 わ れ だ と す れ ば 、 ま さ に大 正 デ モ ク ラ シ ー のな

か で そ の存 在 が疑 問 視 さ れ は じ め て い た 枢 密 院 が 、 治 安 維 持 法 の展 開 に あ る 意 味 で 大 き く 貢 献 し た のを み る のは 、 た い へん 興 味 ぶ か い こ と で あ る 。

田 中 内 閣 (司 法 官 僚 出身 で平 沼 閥 の鈴 木 喜 三郎 が内 務 大 臣 であ った。 も っと も 、 選 挙干 渉 の責 を 問 わ れ 、 ま も な く 辞 職 ) は 三 ・

一五 事 件 を い ろ ん な か た ち で 利 用 し よ う と し た 。 緊 急 勅 令 発 布 に つな が る 治 安 維 持 法 改 正 の 企 て が ま さ に そ の ひ と つ で

あ る 。 政 府 の こ の よ う な う ご き に 野 党 側 が 投 じ た 牽 制 球 の ひ と つ が 、九 に あ げ た 衆 議 院 決 議 で あ る (この決議 か ら当 時 ﹁思 想 的 国難 ﹂ と いう こと ば が流 布 さ れた )。

一三 に は 、 治安 維 持 法 改 正 、 と く に 緊 急 勅 令 に よ る 改 正 に か ん す る 諸 見 解 が 収 め ら れ て い る 。 期 せず し て 東 京 帝 大 法

学 部 の 三 教 授 の論 文 を な ら べ る こと に な った が 、 美 濃 部 達 吉 が 熱 っぽ く 、 そ し て 鋭 く 緊 急 勅 令 の違 憲 論 を 論 じ て い る の

は 、 あ る 意 味 で 当 然 と お も わ れ る 。 牧 野 英 一が ど っち つ かず と い う よ り も む し ろ 緊 急 勅 令 肯 定 論 を と っ て い る の に反 し 、 上杉 慎 吉 が反 対論 に組 みし て い る の は注 目 に値 す る。

こ の 種 の 批 判 的 な 論 調 が 、 新 聞 ・雑 誌 に 表 明 さ れ る の は、 昭 和 三 、四 年 ま で で あ って 、 昭 和 九 、一〇 年 ふ た た び 治 安 維

持 法 改 正 が 問 題 に な る こ ろ に は 、 お ざ な り の解 説 ・評 論 し か み ら れ な く な る (ち な み に、戦 前 に お い て、 治 安維 持法 を 体 系

的 に批 判 し た 研究 書 は、 風 早 八 十 二 ﹁ 治 安 維 持 法 ﹂ ︹﹃現 代 法 学 全集 ﹄ 第 三 〇 巻 所 収、 昭 五、 日本 評 論 社︺ を あげ う る の み で あ る 。 こ

れを のぞ い て、 ア カデ ミズ ム法 学 が 治安 維 持 法 を 研 究 し た形 跡 はな い。 よ く知 ら れ て い る よう に、 右風 早 論 文 は発 刊 と同 時 に 内 務 大

臣 によ り 発 売 禁 止処 分 に付 さ れ た ︹戦後 、 風 早 八 十 二 ﹃政 治 犯罪 の諸 問 題﹄ 研進 社 、 昭 二 三、 に再 現 さ れ た︺。 お そ ら くは 、 こ の風 早

論 文 の代 わ り にで あ ろう 発 行 さ れ た 三宅 正 太 郎 ﹁治 安維 持 法 ﹂ ︹ ﹃現 代 法 学全 集 ﹄ 第 三 七巻 ・三 八巻 、 日本 評 論 社 、 昭 六︺ は 当 時 現 職 判 事 によ って書 か れ た も の で あ る が、 客 観 的 に叙 述 し た も のと し て利 用 さ れう る)。

戦 時 体 制 へと の め り こ ん で ゆ く 過 程 で、 政 府 は 昭 和 九 年 お よ び 一〇 年 二 度 に わ た り 、 治 安 維 持 法 の 全 面 改 正 を 試 み た 。

一七 お よ び 一八 で、 これ を め ぐ る 議 会 の扱 い が し め さ れ る 。 も っと も 、 昭 和 一〇 年 第 六 七 議 会 で は 、 治 安 維 持 法 改 正 案

の方 は そ っち のけ で、 美 濃 部 ﹁天 皇 機 関 説 ﹂ そ の他 の憲 法 学説 へのば り 雑 言 が ほ し いま ま にさ れ て い る。 前 年 の六 五議

会 で は、 さす が に改 正案 が新 設 し よう とし た ﹁予 防拘 禁 ﹂ に つ いて、 批 判 的 検討 がな され て いる と いう も の の、 す でに

こ の時 期 に は、 治 安 維持 法 の存 在 への根 本 的 な 疑 念 を表 明 す る 意 見 は消 滅 し てし ま って い る。

こ の全 面改 正 案 の議 会提 出 に先 立 ち 、昭和 八年 、政 府 は 思想 対 策 委 員 会 を 設 け て、 ﹁思 想 取 締 方 策具 体 案 ﹂ を答 申 せし

め て いる。 ま た民 政 党 も 政友 会 も 相競 って ﹁思 想 対 策 要綱 ﹂ を 出 し て いる。 ﹁思想 対 策 ﹂ ブ ー ムと でも いえ る よ う な 地

な ら し 作業 が お こな われ つ つあ った 観 が あ る ( ﹁転向﹂したあとの頭脳 を充足すべきものとし ての ﹁日本精神﹂を考究す る国民精

神文化研究所 が設けら れた のは、昭和 七年 八月 であ る)。 一四、 一五 お よ び 一六で、 そ の 一端 が し め さ れ る。

昭和 九 年、 一〇年 企 図 し た 治安 維 持 法 全 面 改 正 の 一部 を、 昭和 一 一年 思 想 犯保 護 観 察法 とし て単 独 立法 化 し た。 一九 は、 この法 律 お よ び関 係 法 令 であ る。

二〇 は、 あ れ これ の運 用 の実 態 を総 ざ ら いし て、 対 抗 意 見 を考 慮 す る必 要 も なく 、 司 法 官 僚 が好 き な よ う に立 案 し た

治案 維持 法 の全 面改 正 で あ る。 思想 取 締 法 の集 大成 であ る にち が いな い が、 これ はま さ に、 憲 法 体 系 そ のも のを 内 部的 に崩 壊 さ せ る て い のも のであ った。

﹁第二部﹂ は、 ふた つ の部分 にわ かれ る。Ⅰ は 、 主 と し て ﹁思 想実 務 家 会 同 議事 録 ﹂ から な り、Ⅱ は、 主 と し て 思 想 検 察 ・特 高警 察 の規 則 類 か ら な る。Ⅱ の後 半 に は予 防拘 禁 関 係 資 料 が収 めら れ て いる。

治 安 維 持法 の運 用 面 にお いて ﹁思 想 実 務 家会 同 ﹂ な る も の が、 独 特 な役 割 を果 た し た こと に ついては 、 既述 し た。 二

一な いし 二四 ( 前半) お よ び 二五 には全 国 的 な ﹁思想 実 務 家会 同 ﹂ の議 事 録 抜粋 を収 め、 二四 (後半)お よ び 二六で は、東

京 控 訴院 管 区 の ﹁思想 実 務 家 会 同 ﹂ のそ れ を取 り あ げ た。 こ の種 の会 同 が、 思想 係 検 事 の事 務 打 合 せ の会 合 から 発展 し、

控 訴 院 ・地裁 の判 事 ら をも 包 摂 す る 大規 模 な も の に発展 し、 さ ら に のち には、 全国 の会 同 のほ か に各 控訴 院 管 区 内 の地

域 別 会 同 をも 並 列 す るよ う にな る に ついて は、 議 事録 の作 成 費 も ふ く め、 結 局 国家 予 算 が そ れ だ け多 く配 分 され るよ う

に な った と い う 背 景 が あ る 。

つま り拡 張 解 釈 の展 開︱

が要 請 さ れ た か ら、 と く に情

﹁思 想 実 務 家 会 同 ﹂ は 、 法 の解 釈 ・適 用 お よ び 量 刑 な ど の統 一化 を は か り 、 効 果 的 な 思 想 取 締 り を 達 成 す る た め に 開 か れ た こ と は い う ま で も な い (情 勢 の推 移 によ って、 法 解 釈 の変化︱

勢 分 析 報 告 が 重要 な 役 割 を果 た し た 。 こ の こと は 、情 勢 認 識 にう と い裁 判 官 にと って、 よ り 一層 必 要 な こと で あ った )。 ま た 、 司 法

省 は 思 想 係 検 事 を 正 式 に お く 以 前 か ら 、 こ れ ま で 内 務 官 僚 の独 壇 場 で あ った ﹁思 想 問 題 ﹂ の調 査 ・研 究 に 心 が け る よ う

に な り、 調 査 ・研 究 の 成 果 を 各 種 出 版 物 の か た ち で 、 各 地 方 の検 事 局 へ配 付 す る よ う 努 力 し て き た 。 こ の実 績 に も と づ

き 、 昭 和 一三 年 に は 国 家 予 算 が つ い て 思 想 特 別 研 究 員 と い う 制 度 が 設 け ら れ る に い た った 。 ﹁思 想 問 題 ﹂ に か ん す る テ

ー マを 研 究 す る た め 、 判 事 ・検 事 を し て 一定 期 間 こ れ に 専 念 せ し め 、 研 究 終 了 後 、 報 告 書 を 本 省 に 提 出 せ し め る こ と と

し た 。 と く に 昭 和 一三 年 度 は 初 年 度 で あ る こ と も あ って か、 多 く の ﹁思 想 特 別 研 究 員 報 告 書 ﹂ が 出 て い る 。 思 想 研 究 資

(名古 屋 区裁 ・検事 ) ﹁所 謂 米

料 ・特 輯 号 に 公 刊 さ れ た も のだ け で 一〇 あ る が 、 本 書 で そ の抜 粋 を 収 録 し た 二七 は 、 そ の ト ップ ・バ ッ タ ー と し て 登 場 し たも の ( 著 者 は当 時 東 京 刑事 地 裁 ・判 事 )。 ﹁思 想 特 別 研 究 員 報 告 書 ﹂ の な か に は 、 吉 河 光 貞

騒 動 事 件 の 研 究 ﹂、 玉 沢 光 三 郎 (東 京 刑事 地裁 ・検 事 ) ﹁所 謂 ﹃天 皇 機 関 説 ﹄ を 契 機 と す る 国 体 明 徴 運 動 ﹂ な ど な ど 、 戦 後 現 代 史 家 によ り利 用 さ れ る も のが多 い。

第 二部 のⅡ の多 く は 、 内 規 ・規 則 集 で あ る 。 内 規 ・規 則 関 係 は 、 個 々 の も の を 単 独 で 捜 す こと は ほ ぼ 不 可 能 に ち か い。

そ の 点 で、 二八 ・二九 ・三 〇 の よ う に 、 執 務 用 に 一括 収 録 し て い る も の は 貴 重 で あ る 。 こ れ ら に つ い て は と く に 解 説 は

不 要 で あ ろ う が 、 三 〇 は 、 昭 和 一六 年 の治 安 維 持 法 全 面 改 正 (およ び国 防 保 安 法 の制 定) に か ん が み 従 来 の ﹁思 想 事 務 ﹂

に か ん す る内 規 類 を 大 幅 に 改 訂 整 備 し た も の で あ る 。 三 一は 、た ま た ま 紹 介 さ れ た 熊 本 地 裁 の規 程 で あ る が 、 ﹁刑 事 特 別

事 件 ﹂ の 特 別 処 理 の仕 方 を 定 め た 内 規 と し て 興 味 ぶ か い (こ こ で ﹁ 刑 事 特 別 事 件 ﹂ と は直 接 に は ﹁国 防 保 安 法 違 反 事 件 ﹂ を 意

味 す る が、 ﹁ 規 程 ﹂ は 治 安 維持 法 違 反 事 件 にも 準 用 す る と あ る から ︹第 一六 条︺、後 者 も ﹁ 刑 事 特 別事 件 ﹂ と し て処 理 され た と い う こ

と であ ろ う )。 ﹁特 設 部 ﹂ と い い 、 ま た ﹁特 設 部 ﹂ の構 成 と い い 、 司 法 官 僚 が 年 来 嘱 望 し て き た ﹁思 想 部 ﹂ お よ び ﹁思 想

係 判 事 ﹂ の制 度 が、 事実 上 成 立 し て いた わ け であ る。

三二は、 昭 和 一六年 改 正法 で新 設 さ れた 予防 拘 禁制 度 の運 用 をし め す資 料 であ る。 も と の文 書 には、 徳 田 球 一・志 賀

義 雄 ・福 本 和 夫 の三名 の関 係 記録 が収 録 さ れ て いる が、 ここ では徳 田 と福 本 と の、 ふた つ の対 照 的な 事 例 をも って制 度

が理解 しう ると判 断 し て、 志 賀 の関 係 部 分 は収 録 し な か った 。志 賀 も、 徳 田と お な じ よう に、 ﹁非 転 向﹂、 し た が って予 防 拘禁 と いう み ち を たど った こと は、 周 知 の こと に属 する 。

三三は、 昭和 一六年 改 正 法 をう け て定め ら れ た予 防 拘禁 関 係 の規 則 類 が主 であ るが、 改 正法 は 治 安 維 持 法 (および国

防保安法)違 反 事件 に つい て、 特 別 な刑 事 手 続 き を定 め て お り、 これ をう け て制 定 さ れ た弁 護 士指 定規 程 を も、 便 宜 上 こ こに収録 し て お いた。

﹁第 三部﹂ は治 安 維持 法 の裁判 例 を集 め た が、 集 め 方 に統 一的 な 原 理 があ る わ け では な い。尨 大な 判 決 を要 領 よ く 拾

う のも 困 難 な ので、 三六で大 審院 判 決 の主 要 な も の (実務上参考 されるべきものとし て、司法省刑事局 が 一冊本 に収録 したも の

ただし本書 では、事実関係の記述を割愛す る等 の作業をくわえざ るをえなか った) を あげ た。 大 審 院判 例 には、 昭 和 一〇年 以 降 にも重 要 な も のが あ るが、 三六を も って、 裁判 例 の趨勢 はう か が え ると おも う。

三四は、 治 安 維持 法 適 用第 一号 事件 とし て知 られ る 京都 学 連事 件 の第 二審 判決 で あ る。第 一審 判決 はす で に いろ い ろ

な と ころ で収 録 さ れ てい る ので、 こ こで は未 発表 の第 二審 判 決 を紹 介 す る こと と し た。 学連 事 件 は 全国 の大学 関係 者 に

た い へん な衝 撃 を 与 えた 。 こ こでは 三五で事 件 に つい て の記 事 差 止命 令 解除 直 後 の大 学 新 聞 が、 関係 者 の コメ ント を 紹 介 し たも のを、 ひと つの事 例 とし て付 加 し て お いた。

既 述 のよ う に、 旧 治安 維 持 法 を ﹁類 似 宗教 団 体 ﹂ に適 用 す る こと は、 ﹁国 体 変革 ﹂ の構 成要 件 の点 でも、 ﹁結 社﹂ の解

釈 問題 のう え でも相 当 に疑 義 が 生 じ う るも ので あ った。 それ だ け に、 昭和 一六年 に は、 あ ま り 無 理 な く ﹁類 似 宗 教 団

体 ﹂ を 取締 ま れ る よう に改 正 せ ざ る をえ な か った ので ある。 実 務 上 は し かし、 す で に昭和 一〇年 皇 道 大本 教 にた いし、

治 安 維 持 法 違 反 と し て あ え て 起 訴 し た の を き っか け に 、 以 降 、 無 数 の ﹁類 似 宗 教 団 体 ﹂ 弾 圧 を 強 行 し た 。 三 七 に 収 録 し

た 天 理 本 道 事 件 は 無 数 の う ち の ひ と つ で あ り 、 三八 ・三九 も そ う で あ る 。 三七 は 、 問 題 の ﹁結 社 ﹂ 性 の 解 釈 が 大 審 院 ま

で 上 告 し た も の の、 大 審 院 が 木 で鼻 を く く った 式 の判 決 し か し め さ な か った 事 件 と し て収 録 し た 。

三 八 に あ る 灯 台 社 事 件 は (同 宗 教 団 体 に た いす る 打 続 く 弾 圧 と と も に) 現 在 で は よ く 知 ら れ て い る 。 こ こ で は キ リ ス

ト 教 教 義 か ら 、 裁 判 官 た ち が 強 行 に ﹁国 体 変 革 ﹂ の 契 機 を ひ き だ し 、 易 々 と し て有 罪 た ら し め て い る 当 時 の典 型 的 (模 範的)な姿 をう か が えよ う。

戦 時 下 一キ リ スト者 の証 言﹄ 待晨 堂 、 昭 四 三増 補 改訂 版 ) に収 録 さ れ て い る な

三九 の事 件 は 、 内 村 鑑 三 の系 統 を ひ く 無 教 会 派 に か ん す る も の で 、 これ も 比 較 的 に よ く 紹 介 さ れ て い る事 件 で あ る 。 判 決 も 、 浅 見 仙 作 自 身 の著 作 物 ( ﹃小 十 字 架︱

ど 、 す で に 紹 介 済 み の も の で あ る が 、 こ こ で あ え て 収 録 し た 。 そ れ は 、 治 安 維 持 法 の無 罪 例 と し て 珍 重 す べ き も の で あ

り 、 し か も 、 い ま か ら み れ ば 当 然 の論 理 だ が 、 宗 教 の世 界 (霊 的 な 世界 ) の 教 義 か ら 直 接 地 上 主 権 への 実 質 的 害 悪 を ひ き

高 く 評 価 さ れ る べ き で あ ろ う 。 な お 本 件 は 昭 和 一六 年 の改 正 後

出 す こと の誤 り を 指 摘 し て い る の は 注 目 に 値 す る か ら で あ る 。 裁 判 長 ・三 宅 正 太 郎 の 眼 識 と 人 格 を 表 現 す る も の と し て 当︱ 時 の世 情 ・裁 判 実 務 の 大 勢 を 背 景 に し な が ら︱

(お よ び国防 保 安 法 )違 反 事 件 で は 三 審 制 が 廃 止 さ れ て 二 審 制 が と ら れ て い る た

の 治 安 維 持 法 違 反 事 件 で あ って、 し た が って 、 ﹁国 体 変 革 ﹂ で は な く ﹁国 体 ヲ否 定 ス ヘキ 事 項 ヲ流 布 ス ル コ ト ﹂ が 問 わ れ た も の で あ る こ と 、 ま た、 治 安 維 持 法

め 、 地 裁 段 階 か ら い き な り 大 審 院 に 上 告 し た 事 件 で あ る こ と を 念 の た め 指 摘 し て お く 。 こ の良 識 あ る 判 決 に 当 時 の 司 法

官 僚 ・特 高 警 察 が ど ん な 反 応 を し め し た か 大 い に 知 り た い と ころ で あ る が 、 ど ち ら に し て も 、 こ の判 決 は 敗 戦 直 前 のも

の で あ る か ら 、 実 務 上 与 え た 影 響 が も し あ った と し て も 、 僅 少 の も の に と ど ま った は ず で あ る 。

資 料 源 に つ いて

﹁ 東 京 朝 日新 聞﹂ (大 正 一四年 一月 一七 日、 二 月 一四 日、 三 月 五 ・ 一二 日)

﹃清瀬 一郎 政論 集 ﹄ (大 正 一五年 一二月、 人文 会 出 版部 )

八  治 安 維 持 法 を論 ず (清 瀬 一郎 ・一九 二 六)

一〇  治 安維 持 法 中 改 正 緊急 勅 令 (一九 二八 )

﹁官 報 号 外﹂ (昭 和 三年 四月 二六 日)

九  思想 的 国 難 に関 す る決 議 (一九 二八 )

一一 枢 密 院会 議筆 記 (一九 二八 )

一 朝 鮮制 令 ﹁政 治 ニ関 スル犯罪 処 罰 ノ件﹂ (一九 一九) 二  過 激 社会 運 動 取 締法 案 (一九 二 二)

﹁東京 朝 日新 聞 ﹂ ( 大 正 一 一年 三 月 二 ・

﹁ 東 京 朝 日新 聞 ﹂ ( 大 正 一一年 三 月 一七 ・

八)

新 聞 論 説︱

(1)政 府 声 明︱

﹁東京 朝 日新 聞﹂ (昭和 三年 四 月 二 八 日 ・五

﹁東 京 朝 日新 聞 ﹂ (昭 和三 年 六 月 二 三 ・

﹁法 学志 林 ﹂第 三 十巻 八 号 (昭和 三年 八

美 濃 部 達吉 意 見︱ ﹁ 帝 国 大 学新 聞 ﹂ (昭和 三年 六 月 四 日) ︹ ﹃現代 憲 政 評論 ﹄ 昭和 五 年 、岩 波書 店 、所 収 ︺

月 一八 日)

(2)

(3)

﹁東京 朝 日新 聞﹂ (昭和 三 年 六月 一三 日)

一三 治 安 維持 法改 正 法 律案 およ び緊急 勅 令 に対 す る論 調 (一九 二

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特輯 第 八号 (司法 省 刑 事 局、 昭和 八年 一〇 月)

帝 国 議 会 ・一九 二九 )

一二 緊 急勅 令 承 認 に関 す る議 事速 記 録 並 委 員会 議 録 ( 第 五十 六回

三  過 激 社会 運 動 取 締法 案 議 事速 記 録 並 委 員会 議 録 ( 第 四十 五 回

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特 輯第 十 号 (司法 省 刑 事 局、 昭和 八年 一二月)

帝 国 議 会 ・ 一九 二 二)

三 ・四 ・九 日)

末 弘 厳 太郎 意 見︱

四  ﹁過 激 社会 運 動 取 締法 案 ﹂ に関 す る論 調 ( 1)

高 柳 賢 三意 見︱

( 2)加 田哲 二意 見︱ ﹁ 東 京 朝 日新 聞﹂ (大 正 一 一年 二 月 二 八 日、 三月 一・二 日) ( 3)

一八 ・二〇 ・二 五 ・二六 日) ﹁改 造﹂ ( 大 正 一一年 四月 号)

(4) 牧 野英 一意 見︱

(4)福 田徳 三意 見︱

(5)堺 利 彦 意 見︱ ﹁ 解 放﹂ ( 大 正 一 一年 四 月号 ) 五  勅 令 ﹁ 治 安 維 持 ノ為 ニ スル罰則 ニ関 ス ル件 ﹂ (一九 二 三)

(5 上 杉 慎吉 意 見︱ ) 二 四 日)

﹁ 改 正治 安維 持 法 義 解 ﹂(未 定 稿 ) ( 内 務 省警 保 局 保 安 課 、 昭 和

一四  各 庁 府 県 当局 の治 安維 持 法 改 正意 見 (一九 三 三)

月 ・法 政 大 学 発 行)

六  治 安 維 持法 案 議事 速 記 録 並 委員 会 議 録 ( 第 五十 回 帝国 議 会 ・ 一九 二五 ) ﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特 輯第 七号 (司法 省 刑 事 局 、 昭和 八年 一〇 月) 七  治 安 維持 法 制 定 に関 す る朝 日新 聞 社説

九 年 一月 ) ︹内 務 省用 箋 、 タ イプ 印刷 ︺

﹁東 京 朝 日新 聞 ﹂ (昭 和八 年 七 月 一七 日)

一五  民 政党 ﹁思 想 対策 要 綱 ﹂ (一九三 三 )

一六  政 友 会 ﹁ 思 想 対 策 要綱 ﹂ (一九 三三 ) ﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特輯 第 一七 号 、七 七 三︱ 八〇 ペ ージ 、(司 法省 刑事 局、 昭 和 九年 一二月)

帝 国議 会 ・ 一九 三 四)

一七  治 安 維 持 法改 正法 律 案議 事 速 記録 並 委 員 会議 録 (第 六十 五 回

﹁思 想 研究 資料 ﹂ 特 輯 第 一七号 (司法 省 刑 事 局 、 昭和 九 年 一二 月)

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂特輯 第 四五 号 ( 司 法 省刑 事 局 、 昭和 一三 年 八 月)

二 三  思 想実 務 家会 同 議事 録 ) (三(一九 三九 )

﹁思 想 研究 資料 ﹂ 特 輯 第 六 四号 (司法 省 刑 事 局、 昭 和 一四 年 九 月)

五月︱

一五年 八月 ) 東京控訴院 東 京 控訴 院 ・ 同 検事局管内思想実務家会同議事 録 ( 同検 事 局 、 昭和 一五 年 九月 )

﹁思 想 研究 資 料 ﹂特 輯 第 七 九号 (司法 省 刑事 局、 昭 和

二四  思 想 実務 家 会同 議事 録(四)(一九 四〇 )

九月︱

﹁思 想研 究 資料 ﹂ 特 輯 第 九〇 号 (司法 省 刑事 局 、 昭 和 一七 年 一

二五  思 想 実 務家 会 同議 事 録( )五(一九 四 一)

月)

一八  治 安維 持 法 改 正法 律 案 ・不法 団 結等 処罰 法 に関 す る議 事速 記 録 並 委員 会 議 録 (第 六十 七 回帝 国 議 会 ・ 一九 三 五 )

東京控訴院 東京控訴院 ・同検事局、 同検事局 管内思想実務家会同会議録 ( 昭和十八 年 七 月 ) ︹ 謄 写刷 ︺

二 六  思 想実 務 家 会同 議 事 録 (六( )一九 四 三)

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特輯 第 二〇 号 ( 司 法 省刑事 局 、 昭 和 一〇 年 五 月)

﹁ 思 想 犯 保護 観 察 法竝 附属 法 規 ﹂ ( 司 法 大 臣官 房 保 護 課)

一九  思 想 犯 保護 観 察 法関 係 資 料 (一九三 六 )

二〇  治 安 維持 法 改 正 法 律案 に関 す る議 事 速 記録 並委 員 会議 録 (一

八)

七 二  治 安 維持 法 違 反事 件 の再 犯 に関 す る研究 (徳岡 一男 ・ 一九 三

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂特 輯 第 四 六号 ( 司 法 省 刑事 局 ・昭和 一三 年 一

九 四 一) ﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特 輯 第 八 三号 (司法 省 刑 事 局、 昭和 一六 年 三

二 月)

二九  特 高 警察 例 規 集 (一九 三 五)

月)

﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂特 輯 第 二 一号 (司法 省 刑事 局 、 昭和 一〇 年 五

二八  思 想 事務 ニ関 ス ル訓 令 通 牒 集 (一九 三 四年 ま で)

月) 二一  思想 実 務 家会 同 議 事 録(一( )一九 三七 ) ﹁ 思 想 研 究資 料 ﹂ 特 輯 第 三 七号 (司法 省 刑事 局、 昭和 一二 年 七 月) 二二  思想 実 務 家会 同 議 事 録︵二( ︶一九 三 八)

﹁特高 警 察 例 規 集 ﹂ ( 内 務 省 警保 局保 安 課 )

﹁思想 検 察 提 要 ﹂ ( 司 法 省 刑事 局 、 昭和 一七年 一〇 月)

三〇  思 想検 察 提 要 (一九 四 二)

三 一 刑 事 特 別事 件 処 理規 程 (一九 四 一) ﹁思 想 月 報 ﹂第 九 六号 (司法 省 刑 事 局 思 想部 、 昭 和 一七年 七 月) 三 二 予 防 拘 禁 請 求事 件 記 録 (一九 四 一) ﹁思 想 資 料 パ ン フレ ット﹂ 特 輯 第 三 七号 (司 法 省 刑 事 局 、 昭 和 一七 年 一二月 ) 三 三  予 防 拘 禁 関係 資 料 ﹁思 想 検 察提 要 ﹂ (司 法省 刑 事 局 、 昭和 一七年 一〇 月 ) 三 四  学 連 事件 第 二審 判 決文 (一九 二 九) (大 原社 会 問題 研 究 所所 蔵 )

﹁ 帝 国大 学 新 聞 ﹂ ( 大 正 一五年 九月 二〇 日)

三五  学 連 事件 への感 想 (一九 二六)

﹁ 思 想研 究 資料 ﹂ 第 四八 号 ( 司 法 省 刑事 局、昭 和 一〇年 三 月)よ

三 六  治 安 維 持 法 違反 被 告 事件 ・大 審 院 判決 (一九 二 九︱ 三 四)

り収 録 。 各 判 決 は ﹁大 審院 刑 事 判 例集 ﹂ (以下 、刑 集 と略 す) の

a 一 刑集 、八 巻 、 三 一七 ペ ージ

次 の個 所 にも 収載 さ れて い る。

a二  刑集 、 一〇 巻 、三二 五 ペ ージ a三  刑集 、 一三巻 、 一六 八 二 ペ ージ b 一 刑集 、 八 巻 、 一八 六 ペ ージ b二  刑集 、 一 一巻 、 九 五 一ペ ージ b 三  刑集 、 一三巻 、 一六 八 二 ペ ージ

c 一 刑集 、 一 一巻 、 五 三〇 ペ ージ

c二  刑集 、 一 一巻 、 一九 一四 ペ ージ

d 一 刑集 、 一三巻 、 八 二 三 ペ ージ

e 一 刑集 、 九巻 、 七 八八 ペ ージ

e二  刑集 、 一〇 巻 、 二 三九 ペ ージ

e三  刑集 、 一 一巻 、 一九 八 ペ ー ジ

e四  刑 集 、 一二巻 、 一四 六 二 ペ ージ

f 一 刑 集 、 九巻 、 七 九 ペ ージ

f二  刑 集 、 一〇 巻 、 六 三 四 ペ ージ

f 三  刑集 、 一 一巻 、 三 二 四 ペ ージ

f 四  刑集 、 一 一巻 、 一六 四 九 ペ ージ

g 一 刑集 、 八 巻 、 五〇 六 ペ ージ

h 一 刑集 、 一三巻 、 一四 四 九 ペ ー ジ

﹁大審 院 刑 事 判 例集 ﹂ 第 二〇 巻 、 四 四七 ペ ージ

三 七  天 理本 道 に対 す る 大審 院 判 決 (一九 四 一)

﹁思 想月 報 ﹂ 第 一〇 三号 ( 司 法 省 刑 事 局思 想 部 、 昭和 一八 年 六

三八  灯台 社 に対 す る第 二審 判決 (一九 四 三)

月)

﹁ 判 決 総攬 ﹂ 二四巻 、 五 六 五 ペ ージ お よ び浅 見仙 作 ﹃小 十 字 架

三九  浅 見 仙 作 に対 す る大 審 院判 決 (一九 四 五)

戦︱ 時 下 一キ リ スト者 の証 言﹄ ( 待晨 堂 、 昭和 四 三 年 増 補 改 訂 版 ) 六 五 ペ ージ 以 下

謄 写 刷 一五枚 綴 のうち

付表 一︱九

﹁国防保安法並治安維持法改正法律 の運用﹂(東京刑事地方裁判

付表 一〇︱一一 所検事 局司法警察官吏訓練資料 ・特第十輯、 昭和十六年六月、 東京刑事 地方裁判所検事局)

第

一 部

一  朝 鮮 制 令

之 ヲ適用 ス

第 三条  本 令 ハ帝国 外 ニ於 テ第 一条 ノ罪 ヲ犯 シタ ル帝 国臣 民 ニ亦

減 軽 又 ハ免 除 ス

第 二条  前 条 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 発覚 前 自 首 シタ ル ト キ ハ其 ノ刑 ヲ

法 第 二 編 第 二章 ノ規 定 ニ該 当 スルト キ ハ本 令 ヲ適 用 セ ス

﹁政 治 ニ 関 ス ル 犯 罪 処 罰 ノ 件 ﹂(一 九一九)

大 正 八年 朝 鮮 制 令 ﹁ 政 治 ニ関 ス ル犯 罪処 罰 ノ件 ﹂ ( 大 正八 年 四 月 一五 日、 制 令 七 号 )

第 一条  政 治 ノ変 革 ヲ目的 ト シ テ多 数 共 同 シ安寧 秩 序 ヲ妨 害 シ又 ハ妨害 セ シメ ムト シタ ル者 ハ十 年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス但 シ刑

ル者 罰前 項 ニ同 シ

前 項 ノ事 項 ヲ実 行 ス ル コト ヲ勧 誘 シタ ル者 又 ハ其 ノ勧誘 ニ応 シ タ

ス

宣 伝 シ又 ハ宣 伝 セ ムト シタ ル者 ハ七年 以下 ノ 懲 役 又 ハ禁錮 ニ処

二  過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 ( 一 九二) 二

一 過激社会運動取締法案 ( 大正十 一年 二月十八 日政府 ヨリ議会 ニ提出) 第 一条 無政府主義 共産主義其ノ他 ニ関 シ朝憲 ヲ紊乱 スル事項 ヲ

二第 条  前 条 第 一項 ノ事 項 ヲ実行 又 ハ宣 伝 スル目的 ヲ以 テ結 社

集

ル事項 ヲ宣 伝 シタ ル者 ハ三 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

第 二条  外国 人 又 ハ本 法施 行 区域 外 ニ在 ル者 ト 連絡 シ前 条 ノ事 項 ヲ

ハ三 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

実 行 又 ハ宣伝 スル目 的 ヲ以 テ結 社 集会 又 ハ多 衆 運動 ヲ為 シ タ ル者

会 又 ハ多 衆 運動 ヲ為 シタ ル者 ハ十 年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

リ テ変 革 ス ル事 項 ヲ宣 伝 シ又 ハ宣 伝 セ ムト シタ ル者 ハ五年 以 下 ノ

ル者 ニ亦之 ヲ適 用 ス

第 八 条  本法 ハ本 法 施 行 区域 外 ニ於 テ第 一条 乃至 第 六 条 罪 ヲ犯 シ タ

ノ刑 ヲ減 刑 又 ハ免 除 ス

第 七条  前 六 条 ノ罪 ヲ犯 シ未 タ官ニ 発 覚 セ サ ル前 自 首 シタ ル者 ハ其

テ処 断 ス

シタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ之 ヲ受 ケ タ ル者 ハ各 本 条 ニ定 ム ル所 ニ従

第 六条  第 一条 乃至 第 三 条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ムル目 的 ヲ以 テ金 品 ヲ供 与

ル者 ハ 一年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

第 五 条  第 一条 又 ハ第 三条 ノ罪ヲ 犯 ス目的 ヲ以 テ其 ノ予備 ヲ為 シタ

第 四条  第 一条 又 ハ第 三条 ノ未 遂罪 ハ之 ヲ罰 ス

項 ヲ宣 伝 シ タ ル者 ハ二年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

織 ヲ暴 動 暴 行脅 迫其 ノ他 之 ニ類 ス ル不 法手 段 ニ依 リ テ変 革 スル事

第 三条  外 国 人 又 ハ本 法 施 行 区域 外 ニ在 ル者 ト連 絡 シ社 会 ノ根 本組

三第 条  社会 ノ根 本 組 織 ヲ暴 動 、暴 行 、脅 迫 其 ノ他 ノ不法 手 段 ニ依

懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス 第四条  前 三 条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル目 的 ヲ以 テ金 品 ヲ供 与 シ若 ハ其 ノ

)

他 ノ方 法 ヲ以 テ便 宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 テ之 ヲ受 ケ タ ル者 ハ 各 本条 ニ定 ム ル所 ニ従 テ処 断 ス 第五 条  前 四条 ノ罪 ヲ犯 シ未 タ官 ニ発覚 セサ ル前 自 首 シタ ル者 ハ其 ノ刑 ヲ減軽 又 ハ免 除 ス 第 六条  本 法 ハ本法 施 行 区域 外 ニ於 テ第 一条 乃至 第 四条 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス

二  過激 社 会 運 動 取締 ニ関 ス ル法 律 案 過激 社 会 運動 取 締 法 案 ヲ貴族 院 委 員 会 ニ於 テ修 正 シ ( タ ルモ ノ ニシテ大 正 十 一年 三 月 二十 四 日 同院 本 会 議 ニ於 テ可 決 サ レタ ル モ衆 議院 ノ審 議 未 了 ト ナ ル

第 一条 外国人又は本法施 行区域外 ニ在 ル者ト連絡 シ朝憲 ヲ紊乱 ス

其 普 及 を 図 る者 が近 来 著 しく 増 加 し た の であ りま し て、 此 事 は 洵 に

中 にも 外 国 の是 等 の派 と 気脈 を 通じ ま し て、 所 謂 過 激 主義 の宣 伝 と

( 第 四十 五回 帝 国 議会 ・一九 二 二)

三  過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺

速記録第 一号

に於 き ま し て、 此 運 動 を 取締 る に付 て適 当 の法 規 が存 在 を致 さな い

国 家 社 会 の為 に憂 慮 に堪 へぬ次 第 であ り ます 、 併 な が ら現 在 の法 律

のであ り ま す、 取 締 法 と 云 へば 或 は 新 聞紙 法 、 或 は出 版法 、 治 安警

一

な い やう にな つて居 り ま し て、 却 つて是等 の法 規 の欠 陥 に乗 じ ま し

分 の活 用 を為 し て居 り ま し た が、 毫 も 其為 に気 勢 を 殺 す こと が出 来

察 法 、 警 察 犯処 罰 令 、 又 刑法 、 云 ふも のが あ つて、 僅 に其 取 締 に幾

平

健 岡

て、 主 張 者 は盛 ん に活 動 を致 し まし て、其 法 規 の不 備 を却 つて逆 に

田 良

伊 沢多 喜 男

大 島

第四十五回帝国議会過激 社会運動取締法案特別委員会議事 貴 族 院 

過激社会運動取締法案特別委員会委員氏名 厚 基

益 

祐 弘 

大 久 保利 武

委 員 長 公爵  二 条 副委員長  東 良 長 

河 村 善

子爵 伊 川

利 用 し て、 さ う し て荐 り に気 勢 を挙 げ て居 ると 云 ふ や うな 実 状 であ

男爵 中

竹 越 与 三郎

主 意 であ る ので あり ま す 、 依 て此 法 律 の不備 、其 欠陥 を補 は んと す る

所 がな け れば な ら ぬと 云 ふ考 で、 政 府 の存 在 を 否 認 す ると 云 ふ所 謂

る の で、 是 が茲 に過 激 社 会運 動 取締 法 案 を提 出 いた し まし た 大 体 の

大正十 一年二月二十 五日 (土曜日)午後 一時十九分開会 ○政府委員 (山内確 三郎君)︹司法次官︺ 私 より簡単 に此法案 の趣

ふ過 激 な る共 産 主 義 、苟 も国 家 存 立 の、或 は社 会 の根 本 組 織 を根柢

から 覆 へす所 の性 質 の事 項 に付 まし て宣伝 をす る、 或 は勧 誘 を す る、

無 政 府 主義 、 或 は私 有財 産制 度 の根 本 か ら之 を 破壊 し て仕 舞 ふと 云

或 は 其 目的 の為 に結 社 を作 り、 多 衆 運 動 をす る、或 は 又歴 史 と時 代

外国に於 て我帝国 の国家 又は社会 の組織と全く相容れな い所 の過激 派、過激主義と云ふやうなも のがありまし て、其 運動 が益 々活気を

旨 を御説 明申上げた いと思 ひます、本会議 に於 て申しました通りに、

呈 して居 るやうな次第 で、其勢 は遂 に我国 にも及 びまし て、我国人

と の基 礎 の上 に確 立 いた し て居 りま す る所 の社会 組 織 の根本 我国 道

関係 な い の であ り ます け れど も、 社 会 の根 本 思 想 を不 法 の手 段 を以

を加 へんと す るや う な宣 伝 、 さう 云 ふ宣 伝 も 亦、 是 は 国憲 に は直 接

のは之 は別 であ り ま す、 所 謂 直 接行 動 を以 て社会 の根 本組 織 に変 革

て変 革 す ると 云 ふ こと の宣 伝 を す る所 為 であ り ます から、 之 亦 情 に

て んと す る種 の宣 伝 の運 動 の如 き、 是 等 は皆 此法 案 に依 て取締 を必 要 とす る過激 運動 と見 て居 る のであ り ま す、 固 よ り過 激 社会 運動 と

余 ほ ど之 亦 我 国 の根本 の組 織 を動 かす も の であ り ます から、 五年 以

於 て は前 二条 の罪 に比 し ては軽 い のであ り ま す け れど も、 併 な がら

義 の観 念 等 に至 りま し ても、 之 を根 本 から直 接 行 動 に依 て変 革 を企

見 る べき も の ゝ全部 を是 で取 締 らう と 云 ふ の では な い の で、其 思 想

下 の体 刑 を以 て之 に臨 む と云 ふ のを適 当 と 致 し た次 第 であ り ます 、

其 も のを取 締 る と 云 ふ意 味 では な い の であ り ま し て、 取 締 の必要 あ

此 取締 の主 要 の目 的 は 此 三点 にあ る の であ り ます、 更 に第 四 条 に於

と 云 ふ こと に致 した の であ り ま す、 第 五条 は自 首 に関 す る規 定 であ

る も のに限 つて之 を取 締 ら ん と す る のが此 案 の主旨 であ り ま す、 で

り ます が、刑 法 も自 首 に関 し ては特 に減 軽 の規 定 も あ り ます けれ ど

取締 の直 接 の目 的 は即 ち 人 の思 想、 主 義 、 其 研 究 を致 し て居 る者 に

のを、 之 を国 家 は社 会 に有 害 な るも のと 認 め まし て、 而 し て此 法 を

も、 本 案 は 更 に自 首 に対 し て減 軽 又 は刑 を 免 除す る、 此両 方 の恩 典

ては、 是 は従 犯 の規 定 に 関し て特 別 に 定 め を致 し た のであ り ま す、

以 て取締 り之 を刑 す る、 罪 す る積 り であ る ので あ りま す、 そ こ で各

従 犯 であ り ます け れど も 、本 案 に於 ては正 犯 と 同 一の刑 罰 を 科 す る

条 に付 て の事 を大 体 申 上 げ ます と 、 第 一条 は即 ち 朝 憲紊 乱 に関 す る

るが必 ず し も 主 旨 で はな い の であ り ます 、 こ の運 動 の国 家 社会 に有

を与 へる こと ゝな る、 其 理 由 は 本案 は徒 ら に過激 運 動 者 を厳 罰 にす

に基 く宣 伝 、 勧 誘 、結 社、 集 会 、 多 衆 運動 、 斯 う 云 ふ行 動 に出 るも

事 項 の宣 伝、 此 宣 伝 と 申 す ことは 、 是 は本 会 議 に於 ても問 題 にな つ

対 し て取 締 を す ると 云 ふ やう な 考 は毫 もな い の であ り ます 、 其 主義

た の であ り ま す が、 要 す る に個 人 間 に向 つ て勧 誘 す る の でなく 之 を

す る こと が固 よ り 主眼 とす る所 で あ りま す か ら、 既 に其運 動 の非 な

害 で あ ると 云 ふ こと を能 く 悟 ら し め て さう し て其 運 動 を根 絶 せ んと

る こと を悟 つて官 に自 首 し 来 た な らば 事 情 に依 ては之 を 減 じ、 事 情

ち公 衆 に向 つ て朝 憲紊 乱 の事 項 を宣 伝 し 、 而 し て其 主 義 に傾 く やう

に依 ては之 を免 ず る と 云 ふ こと を 相当 と致 しま す 、第 六 条 は 是 は外

公 衆 に向 つ て の勧 誘 、 之 を吾 々は宣 伝 と 解釈 い たし て居 る ので、 即

に勧 誘 す る 底 の行動 は最 も 之 を 取締 らな け れば な ら ぬ、 云 ふ ので 一

国 に於 て帝 国 の国 憲 或 は帝 国 の社 会 の根 本 組 織 を 破壊 す る底 の宣 伝

を致 し た者 に対 し て此 法律 を適 用 す ると云 ふ のは 刑法 の二条 は其 趣

は其 目 的 は 同 じ で あ りま す 、 詰 り国 体 、 国 家 の国憲 を紊 乱 す ると か、

旨 は 同 じ に な つて居 り ま す 、大 体 此 案 の趣 旨 は さう云 ふ所 にあ る 、

条 は 之 を七 年 以 下 の体 刑 を 科 す る のを相 当 と し た ので、 第 二 条 の分

り、 其 他 多 衆 集 ま つて運 動 を す る と 云 ふ やう な 行 為 が あ りま し た な

まし て私 な り 他 の政 府 委 員 から な り御 答 弁申 す こと に致 し た い

尚 ほ詳 細 の こと に付 まし て御 不審 の点 が あ り ます れば御 質 問 に応 じ

或 は之 を究 行 し 、或 は之 を 宣 伝 す る為 に集 会 を 作 り、 或 は結 社 を作

にな つて居 る、 第 三条 は法 規 に依 て認 め ら れた 適 当 の手 続 に依 るも

らば 是 は重 い所 為 と し て、 之 を 十年 以下 の体 刑 に処 す る と 云 ふ こと

第 四十 五回帝国議会 過激 社会運動取締法案特別委員会議事 貴 族 院  速 記録 第 三 号

大 正十 一年 三 月 四 日 (土 曜 日) 午 前 十 一時 三 十 三分 開 会

な つて居 り ま す、 そ れ が何 故 に現 行 法 で取締 が出 来 ま せ ぬ かと申 し

ます と 、 御承 知 の通 り 刑法 に於 き ま し ては内 乱 罪 に付 まし て、 予備

陰 謀 等 ま で罰 す る の であ り ま す が、 内 乱 罪 の方 は 暴 動 の手 段 に依 て

た事 実 の場 合 は、暴 動 の方 法 に依 て国 家 を覆 へさう とす る のぢ や ご

事 を 遂 げ む とす る場 合 でな け れば 該 当 いた し ませ ぬ、所 が今 申 上 げ

○政 府 委 員 (林頼 三郎 君)︹司 法 省刑 事 局 長 ︺

法 の内 乱 と 云 ふ の に該 当 い た しま せ ぬ、 さう す ると刑 法 には 他 に罰

て内 部 か ら国 家 組 織 を 破壊 し やう と 斯 う 云 ふ計 画 であ りま す 、 現行

ざ いま せ ぬ、 危 険 な る 主義 思 想 を 段 々に 人 心 へ滲 込 ま し て、 さ う し

し た判 決 例 は、 調 査 いたし ま し て唯 今 御 手 許 へ差 上 げ ま す か らし て

が 一つも ござ いま せ ぬ、 そ こ でさ う 云 ふ国 家 の組織 を破 壊 せ む とす

す る規 定 がご ざ いま せ ぬ、 而 し て他 の特別 法 にも 之 を処 置 す る規 定

○委 員 長 (公 爵 二条 厚 基 君 ) そ れ では是 か ら開 会 を 致 し ます

御 覧 を願 ひま す 、此 場 合 に私 よ り此 法 案 を提 出 す る こと を痛 切 に感

過 日御 要求 にな り ま

ず る に至 り ま し た最 近 の実 例 に付 て、 一応 申 上 げ て置 かう と 考 へま

を達 す る こと が出 来 な い、 斯 う 云 ふ こと を感 じ ま し た次 第 であ り ま

れ を広 く 配 付 し ま し て、 或 は 電 信柱 で あ ると か、 其 他 、 人 の見 易 い

義 思想 を有 つて居 り ます 者 が、 色 々不穏 な る事 柄 を書 き ま し て、 そ

た 次第 で ござ いま す、 それ から 、第 二 の事 実 は矢 張 極 端 な る 社会 主

る企 てで、 金 を 貰 つて来 て活 動 す ると 云 ふ こと が 明白 であ る のに、

す 、 其 第 一は 社会 主 義 者 の某 な る者 が外 国 へ参 り ま し て、 外 国 の社

所 へ貼 付 け て、 さう し て其 思 想 を広 く 伝 へむ と図 つた こと が あり ま

す、 そ れは 具 体的 に現 はれ ま し た事 柄 が三 つあ り ま す の で、其 の具

会 主 義 者 と聯 絡 いた しま し て、 日本 の国 内 へ過激 な る思 想 を宣 伝 せ

如 何 と も致 方 がな い、 そ こ で斯 ふも のは どう し ても何 か 一つ の法 律

む と試 み まし て、 外 国 人 よ り数 千 円 の金 を受 取っ て内 地 へ参 つた こ

す、 是 も ど う し ても 取 締 る必要 が あ ると 思 ふ のでご ざ います が現行

を 作 つて之 を 取 締 ら な け れば な ら ぬと 云 ふ こと を、 痛 切 に感 じま し

と が ご ざ いま す 、 其 事 実 が 明瞭 にな り ま し た か ら、 之 を放 任 す れば

よ り外 に途 が無 いの です 、出 版 法 に依 りま す と安 寧 秩 序 を紊 乱 す る

法 では ど う な つて居 る かと申 し ます と 、出 版 法 に依 て之 を処 置 す る

か ら、 斯 の如 き 不都 合 な る行 動 を差 止 め て、 国 家 の安 寧 を保 つ目的

内 地 に於 て盛 ん に宣 伝 を為 し 、 且 つ其 主 義 を達 す べ く色 々 の行 動 を

体 的事 実 に付 ま し て、 現 行 法 では如 何 にも 取 締 が 不十 分 であ り ます

す る で あ らう と 云 ふ こと は、 予 想 が出来 た ので あ りま す が、 現 行 法

止 めま し て、 其 差 止 め に反 し て更 に発 売頒 布 を致 し ま す れば 、始 め

て是 は処 罰す る こと が出 来 る こと にな つ て居 りま す、 そ れ故 に其 規

記 事 を 掲 げ て、 斯 の如 き事 を し まし た 場合 に於 て、其 発 売 頒 布 を差

定 に依 り ます ると 云 ふ と、 一旦 は発 売 頒 布 さ れ て仕舞 ふ、 世 の中 の

の下 に於 て此 程 度 に於 て何 等 取 締 る法 規 が ござ いま せ ぬ、 そ れ故 に

は釈 放 し 其 金 銭 は下 渡 しま し た 、 そ れ が為 に其 者 は其 金 銭 に依 て其

取 調 は致 し ま し た け れ ども 如 何 と も処 置 の仕 様 がな い ので、 其 身 柄

後 国 内 に於 て盛 ん に其 主 義 の為 に活 動 し た、 斯 う 云 ふ やう な 関 係 に

人 は 之 を す つかり 知 つて仕舞 ふ、 そ れ を差 止 め てそ れ で も未 だ や る と 云 ふ時 でな いと 、実 際 的 に は取 締 が付 か ぬ こと にな り ます 、 併 し さ う 云 ふ不 穏 の事 柄 を書 いた 物 を 広 く世 の中 に頒 布 す る やう な場 合

第四十五回帝国議会 激社会 運動取締法案特別委員会議事 過 貴 族 院  速 記録 第 四号

禁錮 と 云 ふ こと にな つて居 る の で、 制裁 と し ては 甚 だ力 が弱 い の で

ま す、 併 な が ら治安 警 察 法 の規 定 では刑 罰 と 云 ふも のは 一年 以 下 の

是 は 現行 法 に依 り ます と云 ふと、 治安 警 察 法 で罰 す る規 定 はご ざ い

を組 織 いたし ま し て、 さう し て色 々画策 をし て居 る事 実 が あり ま す、

端 な る 過激 思 想 を持 つて居 る者 が 、其 目 的 を 達 す る 目的 で秘 密 結 社

斯 う 云 ふ こと を感ず る に至 り ま し た 、 そ れか ら第 三 に は矢 張 是 も極

そ こ で其 点 に付 ても ど うし ても 一つの新 し い取 締法 が 必要 だら う、

ば、 之 に 先 んじ て取締 ると 云 ふ こと の途 が設 け ら れ な け れば な ら ぬ、

と に致 し ま す、 現在 の法 律 で斯 様 な る運動 を取 締 り ます るも のは、

○ 政 府 委員 ( 宮 城 長 五郎 君 ) ぢ や先 般 の前 回 御 質疑 に御 答 す る こ

○ 委 員 長 (公爵 二条 厚基 君) 差 支 あ りま せ ぬ

せ ぬか

と 云 ふ こと で あ りま し た が、 便 宜 上 本 日 此処 で申 上 げ て差 支 あ り ま

案 と 他 の現在 存 し て居 り ま す る法 律 と の関係 と云 ふ こと を知 り た い

○ 政 府 委 員 (宮城 長 五 郎 君) ︹ 司 法 事 務 官︺ 先般 大島 委 員 から 、 此

疑 を 願 ひた いと思 ひま す

御 質 疑 を先 に御 願 ひし ま し て、 そ れ でな け れば 矢張 箇 々に亙 り御 質

て御 質疑 を願 ひた いと思 ひ ます が、 成 る可 く な らば 矢 張全 体 に亙 る

大 正 十 一年 三 月 六 日 ( 月 曜 日) 午 後 一時 二十 八 分開 会

には、 其 前 に差 止 め ま せ ぬと 、実 際 の効 果 と 云 ふ も のはご ざ いま せ

あ り ま す、 国 家 の根 本 を破 壊 す るや うな 不 都 合 な考 で結 社 をし た と

先 づ 刑 法、 治 安 警 察 法、 新 聞 紙 法 、 出 版 法等 であ り ます 、 刑 法 か ら

ぬ、 所 が今 申 し ま す やう に出 版 法 の規 定 と 云 ふ も のは左 様 にな つて

ふ云 や うな 者 に対 し て は、 今 少 し く強 い所 の制裁 を 科 し て之 を 防 ぐ

委○ 員 長 (公爵 二条 厚基 君 ) 開 会 い た し ま す、前 回 に引 続 き ま し

と 云 ふ こと は 、 どう も 必 要 であ ら う と考 へる、 そ れ が実 際 に起 り ま

居 り ま す、 是 は ど う し ても 未 だ頒 布 もし な い中其 の こと が発 覚 す れ

し た事 柄 の第 三 で あ りま す 、 さう 云 ふ やう に最 近 に起 りま し て、 具

通 り朝 憲 を紊 乱 す る 目的 を以 ち ま し て暴動 を為 す事 柄 でご ざ いま す、

る犯 罪 は 内乱 の罪 及 び 騒擾 の罪 でご ざ いま す、 内乱 の罪 は 御 承 知 の

す 、 之 に対 す る取 締 の途 と 云 ふ も のが如 何 にも不 完 全 で、 さう 云 ふ

暴動 に立 至 らな か つたな ら ば 内 乱 の罪 と し て問 ふ こと は 出 来 な い の

申 し ま す る と 云 ふと、 刑 法 に於 き ま し ては先 づ之 に関 係 いた し ま す

こと が主 な る原 因 と な り ま し て、 此 法 案 を作 らな け れば な ら ぬ と 云

でご ざ い ます 、 従 ひ まし て内 乱 の予 備 、陰 謀 準備 罪 、 斯 様 な 犯罪 が

体 的 に頻 々と し て起 る事 実 に付 て、 現 行 法 が 如何 に も不 備 であ り ま

ふ こと にな り ま し た次 第 であ り ます 、 其 実際 の関 係 だけ を大 体御 耳

刑法 に規 定 し てあ り ます るけ れど も、 暴 動 を企 てると 云 ふ こと の為

に陰 謀 し、 予 備 準備 を す ると 云 ふ事 柄 に相 成 りま せ ぬと云 ふと、 刑

に入 れ て置 き た いと 考 へま す

る し 五十 円 の罰 金 も あ りま す るし、 二十 円 も あ り ま す るし 、 左様 な

り ま す、 其 無 届 の場 合 を罰 し て居 り ます 、 それ は 或 は 三十 円 のも あ

運動 を為 す 、 此 場 合 に於 きま し ては 届出 で ぬと 云 ふ こと にな つ て居

と 云 ふ と、 治 安 警 察 法 に於 きま し ては結 社 を為 す 集 会 を為 す 、多 衆

多 衆 運動 、 此 案 の第 二条 に関 係 し て治安 警 察 法 の事 柄 を申 しま す る

ま し た る のは此 案 の宣 伝 に関 係 す る こと で あり ま す 、結 社 、 集会 、

し た る文 書 、 演 説 、斯 う 云 ふも のを 取締 つて居 り ま す、 最 後 に述 べ

締 る、 集 会 を 取 締 る、 多 衆 運 動 を取 締 る、 安 寧 秩序 を掲 載 いた し ま

のは治 安 警 察 法 でご ざ いま す 、治 安 警 察 法 に於 き ま し て は結 社 を 取

て之 を取 締 る欠 陥 が あ る のでご ざ います 、 次 に関 係 いた し ま す る も

を著 け る こと が出来 な い のでご ざ い ます 、 従 て尚 ほ 茲 に も刑法 に於

云 ふ 不法 の方 法 にま で立至 らな か つたな らば 、 騒擾 の罪 とし ても手

擾 の罪 と し て処 断 す る こと が出来 る も の で あり ま す が、 暴 行脅 迫 と

し て、 是 は 何 等 の目的 を問 はず 唯 多 衆 集 合 し て暴行 脅 迫 をな せ ば 騒

ざ い ま せう が、 多衆 集 合 し て暴 行 脅 迫 を為 す 、斯 様 な の でご ざ いま

が あ る や に考 へて居 る の でご ざ いま す 、 騒擾 の罪 、 是 も 御 承知 でご

法 で は何 と も 手 が 付 け られ な い のでご ざ いま す、 其 処 に刑法 の欠 陥

秩 序 を紊 し﹂ 斯 う 云 ふ こと にな つて居 り まし て、 状 況 が安寧 秩序 を

布 、朗 読 若 く は 放吟 又 は言 語 形 容 其 他 の作 意 を為 し、 其 の状 況安 寧

自 由 に交 通す る こと を得 る場 所 に於 て文 書 、 図書 、 詩 歌 の掲 示、 頒

ます る条 文 は十 六 条 でござ いま し て、 此十 六 条 は ﹁街 頭 其 他 公衆 の

ふ こと が出 来 る の であ り ます 、 次 に治安 警 察 法 の宣 伝 に関 係 い たし

の方 へ参 り まし て又結 社 を為 す 、集 会 を為 す 、多 衆 運動 を 為 す と 云

う に軽 い のであ り ま し て、 而 かも 一つ の地 で解散 を命 ぜ ら れ ても 他

以 下多 衆 運動 も 其 通 り にな つて居 り ま す、 で刑 も唯 今 申 し ま し た や

ふと 六 月 以下 の自由 刑 であ りま す 、集 会 に付 い て申 しま す る と 二月

取 締 が十 分 でな い の であ り ます 、 而 し て結 社 に付 いて申 し ま す と 云

名 称 に移 ると 云 ふや う な事 柄 であ り ま し て、 ど う も治 安 警 察法 では

終 り ま す と乙 地 に行 き甲 の名 称 で解 散 を命 ぜ ら れ ま すと 云 ふと 乙 の

は治安 警 察 法 で如 何 と もす る こと が出 来 な い の であ りま す 、甲 地 で

其 他 左様 な方 法 で以前 と同 じ やう な結 社 を他 の方 で致 し ま し て、 是

ゝと 云 ふ と解 散 を 致 し ます る、 併 し な が ら名 前 を変 へ、 場所 を更 へ、

され ます か ら、 継続 す るも のは な い ので あり ま す、 解 散 を命 ぜ ら る

社 に解 散 を命 じ た に も拘 は ら ず 、 尚 ほ継 続 いた し ます と 云 ふ と処 罰

な つて居 りま す、 で結 社 に付 き ま し て特 に申 上 げま す と 云 ふ と、 結

運動 な り が安 寧 秩 序 を紊 す に至 つた と 云 ふ事 実 がご ざ い ます と 云 ふ

出 来 な い のでご ざ いま す、 併 しな がら既 に禁 止 を命 ぜら れ ま す る以

禁 止 を 致 しま し て、其 命 に従 ひま す と 云 ふと 治安 警 察 法 では処 罰 が

し紊 ま す ると 云 ふと 警 察官 が之 に禁 止命 令 を 下 さ す のでご ざ いま す 、

次第 で罰 金 刑 で、無 届 で結 社 を為 し集 会 を為 し、 多 衆 運動 を為 し た

と、 警 察 官 が之 に解 散 を命 ず る の でござ い ます 、 結 社 に し て安 寧 秩

て、 其後 に禁 止 を命ず ると 云 ふ やう な こと が、後 で参 り ま す る のが

前 に於 き まし ては 安 寧秩 序 を紊 す や う な事 柄 に相 成 つて仕 舞 ひ まし

るも のを取 締 つて居 る ので あ りま す、 で此 集 会 な り 結 社な り、 多 衆

序 を紊 す も のと認 めま す る と 云 ふと 、之 に解 散 を命 ず る のでご ざ い

多 く の事 例 にな つて居 り ます 、 左 様 な 次第 で治安 警 察 法 にあ りま す

ま す 、解 散 を命 じ た にも拘 は らず 尚 ほ継 続 し て居 り ま す と 云 ふと 罰 せ ら る ゝ の でござ い ます、 集 会 も 其 通 り、 多 衆 運 動 も 左様 な 事 柄 に

多 衆 運 動 、宣 伝 と云 ふ こと の取 締 の実 を挙 げ る こと が出 来 な い ので

ま す 、 左様 な次 第 で十分 治 安 警 察 法 のみ を以 ち ま し て は結 社集 会 、

而 かも 其 刑 た る や禁 止 に違 反 いた し ま し た る刑 が 一月 以下 でご ざ い

る所 の十 六条 に付 い ての取 締 は 不 十 分 にな つ て居 る ので あり ます 、

れば 投 書 を 致 した る者、 此 者 は 処 分 す る こと も な い の であ り ます 、

は 十 分 と申 す こと は出 来 な いと思 ひ ます 、 のみな らず 新 聞 紙 法 に於

体刑 で処 分 す る こと にな つ て居 り ま す、 併 し な が ら二年 以下 でも 刑

ま す る と云 ふと 、新 聞 紙 法、 出 版 法 に於 き ま し て何 れ も 二年 以 下 の

いま す、 そ れ が二年 以 下 に な つて居 り ま す、 朝 憲紊 乱 の事 項 に至 り

唯 、 其 新 聞紙 に署 名 いたし ま し た 所 の編 輯 人 、斯 う 云 ふ者 が処 罰 を

き ま し ては、 其 記事 を掲 げ や う と欲 し まし た る者 、 言換 へて見 ま す

多 衆 運 動 、 さ う 云 ふ場合 と同 じ でご ざ い ます 、 唯 、安 寧 秩 序 を紊 す

受 け る こと に な つて居 る ので あり ま す、 其 点 に付 ま し ても 現在 の新

に於 き ま し て も、 無 届 の場 合 を罰 し て居 りま す る こと は集 会 結 社、

べ き 記 事 に関 係 いた しま し た る場 合 、此 場 合 に於 ては内 務 大 臣 が 発

あ りま す、 次 に新 聞 紙法 に付 い て申 上 げ た いと 思 ひま す、 新 聞 紙法

売 頒 布 を 禁 止 す る の でご ざ いま す 、 此禁 止 に違 反 いた し た る時 に 六

ると 云 ふ所 か ら此 案 のやう に投 書 を いた した る者、 宣 伝 す る意 思 を

る目 的 以 外 のも の を取締 る や うな 形 にな つて居 り ま し て、 欠 点 が あ

以 て宣 伝 す べ き事 項 を 投書 いた し た る者 ま で罰 し な け れば な ら な い

聞 紙 法 、出 版法 では ど う も取 締 の手 が十 分 でな く、 又取締 ら む とす

も 禁 止 命令 違 反 でご ざ い ます 、 朝 憲紊 乱 に関 す る事 柄 に な りま す と

と 云 ふ やう な 必要 も感 じ た 次第 でご ざ いま し て、斯 様 な案 が出来 る

月 以 下 の体 刑 で処 分 を受 け る こと にな つて居 る の でご ざ いま す、 是

乱紊 いた す記 事 でご ざ いま す ると 、 発行 人 、 編 輯 人、 印 刷 人 と 云 ふ

こと にな つ て来 た の でござ いま す 、 そ れ が先 づ 大体 の説 明 でご ざ い

云 ふと 、新 聞 紙 法 の四十 二条 で是 は 禁 止 を俟 たず 記事 自 体 が朝 憲 を

者 が二 年 以下 の体 刑 で処 罰 され る こと にな つて居 る の でござ いま す、

ます

大 正 十 一年 三月 十 四 日 開 議

第四十五回 貴 族 院 議 事 速 記 録 過激社会運動取締法案 帝 国 議 会  ( 政 府 提出 ) ( 第 一読 会 ノ続 )

そ れ から出 版 法 の事 を申 し ます と 云ふ と、 矢 張 無 届 出 版 と 云 ふも の は 取 締 つ て居 りま す る、 け れど も 是 も軽 い刑 で あ りま す 、出 版 法 に 於 き ま し て も、 新 聞紙 法 と同 じ に安 寧秩 序 を紊 す べき出 版物 であ り ま す と 云 ふ と、 是 は禁 止 す るも の でござ いま す 、 発 売頒 布 の禁 止 を

の体 刑 で罰 す る こと にな つて居 り ま す、 そ れ から 国憲紊 乱、 出 版 法

す る の でござ いま す、 其 禁 止 に違 反 い た し ます ると云 ふ と 一年 以 下

で は朝 憲紊 乱 と 申 し て居 りま せず 、 国 憲紊 乱 と 申 し て居 り ます が、

の経 過竝 に結 果 を御 報 告 いた し ます 、 吾 々委員 会 は去 る二 月 二十 一

○ 公 爵 二 条 厚基君

日 に委 員 の附 託 さ れま し て、 二 月 の二十 五 日第 一回 の委 員 会 を開 き

過 激社 会 運動 取 締 法 案 に付 まし て、 特 別 委 員 会

趣旨 は朝 憲紊 乱 と 解釈 いた さ れ て居 り ます 、 国 憲紊 乱 であ りま す と 云 ふ と、 発 売 頒 布 の禁 止 を命 令 が参 り ま せ ぬし 、 之 に該 当 いた し ま

ま し て、 爾来 八 回 に亙 り ま し て審 議 を致 し た のでご ざ いま す、 其 中

︹マ マ ︺

す る出 版 物 を出 す と 云 ふと それ 自 体 に依 つて処 罰 を受 け る のでご ざ

い取 締 り の法 規 を作 ら な け れ ば な ら ぬ と云 ふ のが、 先 づ大 体 の御 趣

を取 締 るも ので はな い、 即 ち個 人 の思 想 、 個 人 の主 義 、 個 人 の研究 、

の三 回 は懇 談 会 を致 し ま し て、 他 の 一回 は秘 密 会 と な つて居 りま し

さう 云 ふ も のに は毫 も 触 れ な い ので あ つて、 唯 々政 府 側 の御希 望 は

る かと 申 し ます る と、 政 府 の御 説 明 に依 りま す と単 に漠 然 た る思 想

では あ り ま せ ぬ が、 唯 委 員 会 に於 き まし て、 角 張 らず に御 互 に打 寛

其 思 想 な り 主義 な り研 究 の範 囲 を超 え まし て、 或種 の運 動 例 へば 宣

意 であ る ので あ り ます 、 而 し て其 取 締 の目 的 と 云 ふ も の はど こに あ

い でさ う し て多 少 秘 密 の点 も 十 分 に交 換 が出 来 ると 云 ふ やう な こと

伝 とな り 勧 誘 とな り或 は 又結 社集 会 其 他 多 衆 運 動 と 云 ふ やう な事 が

て置 く 方 が 宜 か ら うと 思 ひま す る が、 是 は 別 に大 き な意 味 が あ る訳

から 致 し ま し て、 懇 談 会 を催 し た訳 で ござ いま す、 其 上 に 又懇 談 会

事 実 と な り 運動 とな つて現 は れ て来 た其 時 に、其 事 が朝 憲 の紊乱 に

た 、 何故 に 懇談 会 をし た かと 云 ふ こと に付 ま し て、 ち よ つと 申 上 げ

りま す 、斯 の如 く に致 し ま し て質 問 応 答 、 細 に入 り 微 に入 り まし て、

れ等 を 取 締 る ので あ る、 其 必 要 を初 め て感 ず ると 云 ふ やう な こと で、

な り或 は 又 社会 の根 本 組 織 に相 触 れ る と云 ふ場 合 に於 て、初 め て そ

を 開 いた 方 が よ り多 く 纏 ると 云 ふ や う な こと も 含 れ て居 つた の であ

に原 案 を 修 正 いた し まし て、 更 に修 正案 とし て委 員 会 の決 議 を致 し

充 分 に吾 々委員 に於 き まし て審 議 を遂 げ た のであ り ま す、 其 結 果竝

ま し ても其 御趣 意 の下 に此 法案 を慎 重 審 議 研 究 を致 し た ので あ り ま

す 、 そ こで 我 々委 員 会 に於 き ま し て は先 づ第 一に其 用 語 に関 す る解

此 取 締 法 案 が提 出 さ れた と 云 ふ ので あ りま す るが、 我 々委 員 に於 き

釈 から 研 究 を し た の であ りま す、 此 法 案 は 色 々新 し い字 句 が這 入 り、

た の でご ざ いま す、 而 し て本 日 茲 に御 報 告 を申 上 げ ま し て諸 君 の御

に概 括 的 の経 過 、竝 に結 果 に付 て御話 を致 し た ん であ り ます け れど

色 々我 々の解釈 し て居 る其 観 念 が其 色 々の文 句 に付 て 区 々で あ る、

審 査 を 仰 ぎ た いと 云 ふ次 第 であ り ま す、 以上 申 上 げ ま し た こと は誠

ます 、 此 法 案 の政 府提 出 の御 趣 意 と 云 ふ も のはど う 云 ふ所 に あ る か

も 、 更 にも う 少 し 内容 に立 入 つて御話 を申 上 げた いと 思 ふ ので あ り

ま し て の質 問 を致 した 訳 でご ざ います 、 是 は 速 記録 にも 載 つ て居 り

と は話 に齟 齬 を来 す と 云 ふや う な こと から 致 し ま し て、其 用語 に付

ます る から 、詳 細 の事 は それ に付 て御 覧 を 願 ひた い と思 ふ ので あ り

是 は先 づ 事 を計 る 上 に於 き ま し て御 互 の観 念 が 区 々であ ると 云 ふ こ

運 動 が最 近 にな り ま し て頗 る活 気 を 呈 し て参 りま し た、 我 邦 人 に於

ま す、 而 し て其 用語 の こと を質 問 を終 りま し た 後 に、 次 には内 容 に

の方 の御 趣 意 と 致 し ま し ては 我 国 家 又 は社 会 組 織 と 相 容 れ な い所 の

き まし ても 外 国 人 と盛 ん に気 脈 を通 じ て所 謂 過 激 な る主義 を宣 伝 し

と 云 ふ こと を 、 先 づ委 員 会 で御 質 を し た ので あ りま す 、其 時 に政 府

又 は勧 誘 し或 は又 秘 密結 社 の如 き も のを結 び まし て、 盛 ん に そ れ が

のは、 第 一条 にご ざ いま す る朝 憲紊 乱 、 朝 憲紊 乱 と 云 ふ こと の観 念

に付 て の こと や、 又宣 伝 せ ん と し た る者 、 或 は 又社 会 の根 本 組 織 と

付 ての質 問 を 致 し た のであ り ま す、 で其 中 に最 も深 く 質 問 を致 し た

云 ふ事 柄 が不鮮 明 であ つて、其 為 に非 常 な る悪 用 を さ れや しな い か

以 上 は、 茲 に其 運 動 に対 す る取 締 と 云 ふ も のが必 要 にな つ て来 な け れば な ら ぬ、 然 るに現 在 の諸 法 規 に於 き ま し ては 十 分 に其 取 締 を行

増 加 し 且 つ其 色 彩 が強 め ら れ て来 ると 云 ふ や う な現 在 の有 様 で あ る

ふ 上 に欠 陥 があ ると 云 ふ の で、 是 非 之 は其 欠 陥 を補 ふ為 に、 其 新 し

そ れか ら延 き ま し て更 に私有 財 産 の制 度 の こと に付 、 或 は 又 家族 制

と云 ふ やう な 質 問 が最 も 主 な る質 問 であ つた ので あ りま す 、而 し て

ま し て から 原 案 を修 正 す る こと に相 成 つた ので あ りま す 、其 修 正 の

読 会 に移 る こと にな つた 次 第 で あ り ます 、 そ こで第 二 読 会 に這 入 り

つ出 来 る だけ 其 範 囲 を狭 めた いと 云 ふ希望 の下 に、 原 案 を修 正 す る

必要 を認 め ま し た 理由 は、 出 来 るだ け明 瞭 に其 適 用 範 囲 を定 め、 且

こと に多 数 の意 見 が定 ま つた のであ り ます 、 之 に於 き まし て遂 に修

度 の こと に付 まし て色 々質問 応 答 があ つた ので あ り ます 、 要 す る に

正案 と 云 ふも のが出 来 ま し て、 皆 様 の御手 許 にそ れ が配 付 さ れた 次

刑 の適 用 の範 囲 の不 鮮 明 で あ る、 従 つて其 為 に国 民 の不 安 と 云 ふ も の が少 く な いと 云 ふ やう な 点 に 付 まし て、 各委 員 は政 府 側 に対 し て

第 でご ざ いま す 、其 修 正案 に付 まし て、是 から 大 体 の理由 を御 話 し

う な極 端 な荒 々し い文 字 を 使 は ず し て、 其多 く の人 々が余 り 心 の動

其 了 解 を十分 に求 め た の であ り ま す、 先 づ 其 点 が 一番 に主 な る注 意

揺 を起 さな いや う にも う 少 し 穏 か な意 味 を 付 け た いと 云 ふ やう な案

す べき 点 で あ つた のであ りま す、 其 外 に第 一条 乃 至 第 三条 に掲 げ て

云 ふ や うな 御 質問 も あ つた のであ りま す、 其 他 此 法 案 の提出 の動 機

が出 ま し て治 安 維持 法 と 云 ふ やう な 名前 は ど う か、 或 は又 治 安 保 護

が出 た のでご ざ いま す 、 大多 数 は 一般 の人 の心持 を 此 過 激 と 云 ふ や

に竝 経 過 は どう 云ふ こと で あ つた かと 云 ふ や う な御 質 問 も あ つた の

法 と 云 ふ題 は ど う で あ る か、 或 は 又 社会 運 動 取締 法 と 云 ふ言 葉 は ど

た いと 存ず る の であ り ま す、 そ れ で先 づ初 の題 に付 ま し て大 分 議 論

であ り ま す、 色 々と 数 回 に亙 り まし て此質 問応 答 が ござ いま し た の

う で あ る かと 云 ふ風 に色 々と議 論 は 出 た のでご ざ いま す が、 結 局 意

あ り ます 所 の最 長 期 の刑 罰 の年 期 で あ り ます る が、 七年 、十 年 、 五

であ りま す る が、 結 局 各 委員 に於 き まし ては 政府 の御 趣 意 も 大 体 に

年 と あ る、 此 七年 、 十 年 、 五 年 の標 準 は何 に依 つて求 め ら れた かと

於 て分 りま し た の で、 そ こ で 一と 先 づ質 問 を 打 切 り ま し て、 さ う し

ると 云 ふやう な 議 論 が 大多 数 を占 め ま し て、 遂 に法 律第 何 号 と 云 ふ

味 のあ る題 よ りも意 味 の無 い題 の方 が最 も此 際 相 応 は し いも のであ

題 を 付 け る こと に決 定 いた し た ので あ りま す、 そ れ から其 次 に第 一

て委 員 会 に於 き ま し て は、 第 二読 会 を開 く こと に致 し た のでご ざ い

で あ り ます 、其 理由 は内 容 が まだ 十 分整 つて居 な い、 も う 少し 練 返

に差 上 げ てあ り ます 通 り始 め の冒頭 に ﹁無 政 府主 義 共 産 主 義其 他 に

条 に移 り ま し て、 さ う し て審 議 を致 した ので あ り ます る が、 御手 許

ます る が、其 時 に第 二読 会 に移 す べ か らず と云 ふ動 議 も出 まし た の

し て次 の議 会 に提出 さ れ た いも の であ る と 云 ふ意 味 から し て、 第 二

不鮮 明 であ るか ら し て、 寧 ろ さう 云 ふ ことな れ ば、 之 を全 部 取 除 い

関 し﹂ と 云 ふ こと は是 が甚 だ 、殊 に其 他 と 云 ふ こと に対 し て、 実 に

読 会 に移 す べ からず と 云 ふ所 の動 議 が出 た ので あ りま す るが、 併 な がら 又 一方 に於 ては 是 は ど う し ても 第 二読 会 に移 さな け れば な ら ぬ、

る こと に致 し た次第 で あ り ま す、 そ れで冒 頭 に直 に朝憲 を紊 乱 す る

た方 が宜 から う と 云 ふ やう な御 議 論 が出 ま し て、 さ う し てそ れ を取

何 と な れば 用 語 の点 、 取 締 上 の点 に於 て十 分 に出 来 るだ け 審 査 し て、 さう し て我 々 の希 望 を十 分 に充 たす と云 ふ風 にし な け れば な ら ぬ の

事 項 と 云 ふ こと を掲 げ た ので あ り ます るが、 所 が此 朝 憲 を紊 乱 す る

であ る以 上 は、 茲 に第 二 読 会 を開 いて さう し て逐 条審 議 に移 る のが 当 然 であ る と 云 ふ やう な 御 議 論 が出 まし て、 茲 に大多 数 を以 て第 二

と 云 ふ も のが、 其 中 に含 ま れ る と 云ふ こと で あ り ま し て、 其 中 の未

ま し て、 政 府 の御 言 葉 に従 ひます ると 、 未 遂 と 予備 と そ れ から 陰 謀

た ので あ り ま す、 此 宣 伝 せ むと し た る者 と 云 ふ こと は、 大 体 に 於 き

之 を 移 し て 此 第 一条 に於 ては全 部 取 上 げ てし ま つた と 云 ふ形 にな つ

て其 一部 分 を 取 る為 め に他 の部 分 に於 て第 四 条 乃 至第 五条 の方 面 に

ら取 去 り ま し ても 、 是 が全 部此 法 案 の中 から 取 去 つた の では な く し

か う と 云 ふ や うな 意 味 で、 先 づ之 を取 去 つた ので あ り ます 、 併 な が

う な意 味 か ら申 し まし て、之 を成 る可 く 鮮 明 に、 成 る可 く狭 め て行

な る言 葉 で あ つて普 通 一般 の人 に不 安 を 起 す 所 の基 で あ ると 去 ふや

ま す る が、 其 宣 伝 せむ と し た る者 と云 ふ こと が 、是 が 又誠 に不 鮮 明

さ う し て其 次 に ﹁宣 伝 又宣 伝 せむ とし た る者 ﹂ と 云 ふ こと がご ざ い

事項 と 云 ふ こと を此 所 に止 む を得 ず 置 いた 次 第 で あ る の であ り ま す、

勧 誘 と 云 ふ こと を 入 れ な く ては な ら ぬ と 云 ふ こと で茲 に入 れ た の で

誘 す る ので あ る から 茲 は どう し ても 宣 伝 と 云 ふ ことを 入 れた 以上 は

人 に対 し てす る こと であ る、 併 し 勧 誘 にな る と特 定 の人 に対 し て勧

宣 伝 と 云 ふ こと は政 府側 の御 説 明 に依 ると 云 ふ と、 不 特 定 の多 数 の

に書 かな け れば な ら ぬと 云 ふ こと にな り ま し て入 れた の であ り ます 、

り ま す が、 此 勧 誘 と 云 ふ こと は宣 伝 と 区 別 し てど うし ても 茲 に 明 か

た し ま し て実 行 の次 に ﹁宣 伝 又 は勧 誘 ﹂ と 云 ふ こと を入 れた ので あ

を 以 て﹂ と 云 ふ こと にな つ て居 りま す る が、 茲 に 更 に更 に改 正 を い

省 いた ので あ りま す 、 そ れ で ﹁前 条 の事 項 を 実 行 又 は宣 伝 す る 目的

条 の第 二項 が取 れた 以 上 は 当然 な く ても 宜 いも ので あ る とし て之 を

審 議 でご ざ います が、其 中 で先 づ ﹁第 一項 ﹂ と 云 ふ 三字 は是 は 第 一

の修 正 は終 つた次 第 であ りま す、 そ れ か ら其 次 の第 二条 に移 つ て の

云 ふ言 葉 を第 一項 の終 ひ に結 附 け た の で あり ま す 、斯 う し て第 一条

の方 に附加 へまし て、 さ う し て ﹁其 の勧 誘 に応 じ た る者 亦 同 じ ﹂ と

す る ことを ﹂ と 云 ふ 是 は総 て朝 憲 を紊 乱 す る事 項 と云 ふ こと に這 入

遂 と 予備 は 已 む を得 な い が陰 謀 だ けは 是 はも う 少 し範 囲 を狭 め る上

あ り ま す、 茲 で ﹁実 行 宣 伝 又は 勧 誘 す る 目 的 を 以 て結 社 集会 又 は多

事 項 と 云 ふ ことは 誠 に不鮮 明 で あ りま し て、 政府 当 局 の此 言葉 に対

に於 て取去 つた方 が宜 いと 云 ふ意 味 であ つた ので あ り ます 、 斯 く し

衆 運動 を為 し た る者 は十 年 以下 の懲 役 又 は 禁錮 に処 す ﹂ 斯 う 云 ふ風

る訳 で あ る と 云 ふ意 味 で、 其 ﹁勧 誘 し た る者 ﹂ と 云 ふ ことを 第 一項

て此 第 一条 の法 文 は ﹁朝 憲 を紊 乱 す る事 項 を 宣 伝 ﹂ し ﹁又は ﹂其 次

に修 正 し た次 第 であ り ます 、 其 次 には 第 三 条 で ご ざ いま す が、 此 第

す る説 明 が十 分 に了 解す る こと は 出 来難 か つた ので あ りま す る が、

の字 を 抜 か し て勧 誘 と 云 ふ字 を 入 れ た の であ り ま す、 ﹁ 勧誘したる

三 条 が中 々議 論 が多 く あ つた条 文 で ご ざ いまし て先 づ冒 頭 の ﹁社会

﹁又 は其 の勧 誘 に応 じた る者 罰前 項 に同 じ﹂ と 云 ふ其 事 柄 を第 一項

も の は七年 以 下 の懲 役 又 は禁錮 に処 す ﹂ 斯 う し た ので あ りま す るが、

の方 に移 し た ので あ り ま す、 さう 致 し ま し て第 二 項 の後 半 の 即 ち

此 勧 誘 と 云 ふ こと を何 故 茲 に附 加 へた かと 申 し ま す る と、 第 二 項 の

の根 本 組織 ﹂ と 云 ふ こと が是 が中 々我 々委 員 に於 き まし ても 了解 し

併 な が ら之 を除 い て外 に代 は る べき 言葉 が あ る か と申 し ま す る と、

﹁前 項 の事 項 を実 行 す る こと を勧 誘 し た る者 ﹂ 其 ﹁ 勧 誘 し た る者 ﹂

悪 か つた点 で あ りま し た 、而 し て此 事 に付 ま し て委 員 諸 君 は、 非 常

是 が 又容 易 に求 め得 ら れ な いの で あり ま し て、 遂 に朝 憲 を紊 乱 す る

を こち ら に持 つ て来 た訳 であ り ま し て既 に 二項 に於 き ま し て ﹁実 行

規 定 し た な らば 、 如 何 で あ る か と 云 ふや う な こと が大 分 議論 さ れま

代 つ て何 か例 示 的 に箇 々 の場 合 を想 像 し て、 そ れを 加 へた ら どう か

し て、 遂 に其 結 果 其 他 ﹁之 に類 す る不 法 手段 ﹂ と云 ふ やう な議 論 が

と 云 ふや う な色 々な 説 も出 た の で あり ま す るけ れど も 、結 局 さう 致

大 体 に於 て の政 府 側 の御 趣 意 を 速 記 の中 に例 示 し て戴 いて さう し て

十 分 優 勢 にな り まし て遂 に多 数 決 で、 ﹁之 に類 す る不 法 手 段 ﹂ と 云

な る研 究 を致 し て此 範 囲 の鮮 明 な る こと に又成 るべ く狭 く す る 上 に

そ れ で留 め て置 き た いと 云 ふ や う な こと も 出 ま し た ので あ りま す 、

ふ言 葉 で決 定 を致 した 次 第 で ご ざ い ます 、 そ こで其 手 段 に来 り ま し

於 き まし て努 力 を致 し た ので あ り ます る が、 中 々此文 字 に付 ま し て

要 す る に此 社会 の根 本 組 織 と 云 ふ事 柄 が誠 に不 鮮 明 で あ る と 云ふ こ

て変 革 す る事 項 を宣 伝 し 、 又 は 宣 伝 せむ と し た る者 と 云 ふ こと を次

し ま し ても矢 張 不 十 分 な 点 が沢 山 あ る と 云 ふ の で、結 局 暴動 、 暴 行 、

と は遺 憾 な が ら多 く の委 員 に於 き ま し て も感 じ て居 る点 で あ りま し

に議 した ので あ り ます が、 こ ゝも矢 張 第 一条 と 同 じ やう に ﹁宣 伝 せ

脅 迫 と 同 じ程 度 の不 法手 段 、 其 他 の不 法 手段 と 云ふ 風 な 意味 に於 て

て、 併 な がら此 社会 の根 本 組 織 と 云 ふ 字 を三 条 から 抜 去 つた なら ば

む と し た る者 ﹂ と 云 ふ こと を 省 き ま し て、 ﹁宣 伝 又 は 勧 誘 ﹂ と 云 ふ

れ故 に或 る委 員 の如 き は 之 を例 示 す る こと が出 来 な け れば 、 兎 に角

此 条 文 は丸 切 り 骨抜 き に な つてし ま う、 無 意 味 にな ると 云 ふ所 から

は 容 易 に適 当 な る修 正 を 致 す こと は困 難 であ つた ので あ りま す 、 そ

致 し まし て、 已 む を得 ず 茲 へ置 いた 次第 で あ り ます 、 そ れ か ら兎 に

こと に修 正 を 致 し た次 第 であ り ま す、 其 理由 は第 一条 の申 上 げ ま し

次 は 第 四条 でご ざ います る が、 是 は原 案 の第 三条 が此 所 に嵌 る べき

角 ﹁社会 の根 本 組織 を暴 動 暴 行 脅 迫 其 他 の不法 手段 ﹂ と 云 ふ こと に

で あ り ます るけ れ ど も、 そ れ を第 六 条 の方 へ持 つて参 りま し て、 第

た 理由 と 同 じ意 味 で書 いた ん であ り ま す、 そ れ で第 三 条 は ﹁社 会 の

いか と 云 ふ やう な こと か ら致 し ま し て、脅 威 と 云 ふ やう な 字 も協 議

な つて参 る ので あ り ま す る が、 其 他 の不法 手 段 と 云 ふ こと が 又是 が

に 上 つた のであ り ま す、 脅 威 そ れ から 暴 挙、 暴 行 でな くし て暴挙 と

四 条 と第 五条 には 第 一条 の宣 伝 せむ と し た る者 、 又 は第 三条 の矢 張

根 本 組 織 を暴動 、暴 行 、 脅 迫 其 の他 之 に類 す る不 法 手 段 に依 り て変

ふ云 や うな 字 も 大 分 相談 に上 つた の であ り ま す、 併 な がら 結 局是 も

宣 伝 せ む と した 者 を そ れ を分 類 いた し ま し て、 さう し て第 四条 に未

非 常 な る吾 々 の不 可解 と す る点 でご ざ いま し て、 此 点 に付 て出 来 る

煎 じ 詰 め れば 面 白 く な い字 で あ ると 云 ふ意 味 で ど う し ても 此 三字 は

遂 罪 の こと を規 定 いた し て、 第 五条 に於 き まし ては 予 備 の こと を附

す ﹂ と 云 ふ こと で 、此 第 三条 は相 定 ま つた訳 で あり ま す、 そ こで其

此 儘 にし て置 い て、其 他 の不法 手 段 と 云 ふ こと に 付 ま し て、 兎 に角

加 へま し て、 さう し て第 六条 に原 案 の第 三条 、 第 七 条 に原 案 の第 四

革 す る事 項 を 宣 伝 又 は勧 誘 し た る者 は 五年 以 下 の懲役 又 は禁錮 に処

此 外 の言 葉 で現 は す こと が出 来 れば そ れ にし た いと 云 ふ やう な意 味

条 を 入 れ た訳 でご ざ いま す、 茲 に第 四 条 の未 遂 罪 と 云 ふ こと を入 れ

だ け其 範 囲 を定 め た いと 云 ふ こと に委 員 会 で努 力 した の であ り ます 、

で 、 非常 に研 究 を 続 け た ので ござ いま す 、併 な が ら其 他 の不 法 手段

ま し た のは、 詰 り此宣 伝 せむ と した る者 の 一部 分 であ つ て、是 は矢

先 づ 初 め の暴 動 暴 行脅 迫 と 云 ふ字 に付 ても其 外 に更 に適 当 な字 がな

と云 ふ こと は其 内 容 の漠 然 た る こと は勿 論 であ り ま す る が、 そ れ に

( 政府提出)(第二読会 ノ続)

第四十五回 貴族院議事速記録 過激社会運動 取締法案 帝 国 議 会 

張 当 然 加 へな け れば な ら ぬも のであ ると 云 ふ意 味 から 致 し ま し て此 所 に入 れた 訳 であ り ます 、 第 五 条 の予備 の こと に付 ま し ても、 是 も

大正十 一年 三月 二十四日開議

過 激 社 会 運 動 取締 法 外国人又ハ本法施行区域外 ニ在ル者ト連絡シ 第 一条  無 政 府 主義 、共 産 主 義 其 ノ他 ニ関 シ朝 憲 ヲ紊乱 スル事 項 ヲ

は同削除

厚 基

色 々範 囲 が随 分 に 区 々であ り ま し て、 色 々の箇 々 の実 例 を挙 げ て考

過激社会運動取締法案

へま し ても 中 々不鮮 明 な 場 合 も多 少 あ る の であ り ま す る け れ ども 、 併 な が ら さ う か と申 し ま し て此 言 葉 以外 に宜 い言葉 が な く已 むを 得

家 達 殿

公爵 二 条

右特別委員長 川

(小字は再審査特別委員 の修正、︱

貴族院議長 公爵 徳

大 正十 一年三月二十 三日

右 別冊 の通修正せり依 て及報告候也

ず 矢 張 此所 に予 備 の言 葉 を 入 れ た訳 であ り ま す 、 さう 云 ふ風 にな り ま し て第 四条 と 第 五 条 は出 来 上 つた 次 第 で あ り ます 、 で第 六 条 は是 は此 内 容 に於 き ま し て、 原 案 と少 し も違 は な い、 そ れ から 第 七条 も 矢 張 原 案 の内 容 は 少 し も違 つて居 り ま せ ぬ、 順 送 り に第 八 条 も亦 原 案 と 第 六 条 を以 て参 り まし て唯 其 中 の第 一条 乃至 第 四 条 と 云 ふ も の

の符号なり)

を 第 六 条 に変 へた訳 であ りま す 、 先 づざ つと 斯 う 云 ふ 風 に修 正案 が

も 、其 適 用 範 囲 と 云 ふも のは内 容 と云 ふ も の が多少 の制 限 を さ れ て

出 来 上 つた ので あ りま す るが、 是 は実 際 の場 合 に当 つ て考 へまし て

ニ関 スル法律

宣 伝 シ又 ハ宣伝 セム ト シ タ ル者 ハ七年 以 下 ノ懲 役 又 ハ錮 禁 ニ処 ス

過激 社会運動取締 法案

し ても 、 又 は此 全 体 の原 案 に付 ま し ても 全然 反 対 さ れた 委員 も ござ

前 項 ノ事 項 ヲ実 行 スル コト ヲ勧 誘 シタ ル者 又 ハ其 ノ勧 誘 ニ応 シタ

四 日 に此 修 正案 を 議 し ま し て、 さ うし て茲 に委 員 会 の修 正 案 が多数

居 る と 云 ふ こと は言 ふ ま で もな い と思 ひま す、 而 し て最 後 の三 月十

いま し て、 多 少 の意 見 の相 違 の点 も あ る ので あ りま す るが、 大 体 に

を 以 て決 議 さ れた ん で あ り ます 、 併 な が ら 此全 体 の修 正 案 に付 き ま

於 き ま し ては 、此 修 正案 に付 て多 数 の同 意 があ りま し て、 さう し て

会 又 ハ多 衆 運 動 ヲ為 シ タ ル者 ハ十年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 外国人又 ハ本法施行区域外 ニ在ル者ト連絡シ 之 ニ類スル 第 三条  社 会ノ 根 本 組織ヲ 暴 動 、 暴 行 、 脅迫 其 ノ他 ノ 不 法 手 段 ニ

三

茲 に修 正案 の全 文 を御 報 告 す る こと にな つた 次 第 で ご ざ い ます 、 細

ル者 罰 前 項 ニ同 シ 外国人又ハ本法施行区域外ニ在ル者ト連絡シテ 第 二 条  前 条 第 一項ノ 事項ヲ 実行 又 ハ宣 伝 ス ル目的 ヲ以 テ結 社、 集

か い点 に付 ま し ては 、 尚 ほ速 記 録 が ござ いま す から其 点 で十 分 に御 調 査 を願 ひ ま し て、 茲 に 諸君 の慎 重 な る御 審議 を仰 い で、 速 に御 賛 成 あ ら ん こと を希 望 す る次 第 でご ざ いま す 。

依 リ テ変 革 スル事 項 ヲ宣 伝 シ又 ハ宣 伝 セム ト シ タル者 ハ五 年 以 下

れ て居 る ので あ りま す 、 で ござ いま す から し てよ り多 く不 完 全 な り

八条君 も 此 修 正案 自 身 が余 り完 全 な も の でな いと云 ふ こと は 述 べ ら

す る が、 之 に対 し て極 く簡 単 に自 分 は反 対 の意 見 を述 べ て置 き ます 、

ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 一条又 ハ第三条ノ未遂罪 ハ之ヲ罰ス 第 四条  前 三 条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル目的 ヲ以 テ金品 ヲ供 与 シ若 ハ其 ノ

と 云 ふ こと を 述 べ る必 要 は な いかも 知 れ ま せ ぬ、而 し て湯 浅 君 が 過

他 ノ方 法 ヲ以 テ便 宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 テ之 ヲ受 ケ タ ル者 ハ

刻 此修 正案 に対 し て縷 々其 不完 全 な る点 を述 べら れた ので ござ いま

す か ら し て、 余 り私 は余 計 述 べ ま せ ぬが 、 一言 述 べ ます る のは、 此

と が出来 ず し て、 却 つて政 府 が目的 と せざ る所 の、 取締 を 必要 と せ

修 正 案 に依 り ま す れば 、 政 府 が所 期す る所 の取締 の目 的 は達 す る こ

各 本 条 ニ定 ム ル所 ニ従 テ処 断 ス 第 一条又ハ第三条ノ罪ヲ犯ス目的ヲ以テ其ノ予備ヲ為シタル者 ハ一年以下ノ 第 五 条  前 四条 ノ罪 ヲ犯 シ未 タ官 ニ発 覚 セ サ ル前 自首 シタ ル者 ハ其 懲役又ハ禁錮ニ処ス ノ刑 ヲ減 刑 又 ハ免 除 ス 第 六 条  第 一条 乃至 第 三条 ノ罪 ヲ犯 サ シム ル目 的 ヲ以 テ金 品 ヲ提 供

対 を さ れま し た 、 私 と雖 も勿 論 何 等 意味 な くし て外 国 人 の御 機 嫌 を

を取 る必 要 がな いと 云 ふ や う な意 味 から し て、 私 の申 し た こと に反

云 ふ結 果 に終 る ので あ り ます 、 そ れ か ら第 二 に先 刻 外国 人 の御 機 嫌

思 を発 表 し やう と 云 ふ、 国家 の為 に最 も 必要 な る行 動 を阻 害 す ると

操觚 者 であ る と か 、斯 の如 き人 の自由 討 議 、 若 く は 自由 に自 己 の意

ざ る所 の、 も う 少 し申 し ます な ら ば、 例 へば 学 者 で あ ると か、或 は

シ タ ル者 又 ハ情 ヲ知 テ之 ヲ受 ケ タ ル者 ハ各 本 条 ニ定 ム ル所 ニ従 テ 処断 ス 第 七 第  第 六条 ノ罪 ヲ犯 シ未 タ官 ニ発 覚 セサ ル前 自 首 シタ ル者 ハ其 ノ刑 ヲ減 軽 又 ハ免 除 ス 第 八 条  本法 ハ本 法 施 行 区 域 外 ニ於 テ第 一号 乃 至 第 四 条 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス

修 正案 に依 り ま す と 云 ふ と、 どう 云ふ結 果 にな る かと 申 し ます ると

た いと 思 ひ ま す、 私 は本 修 正 案 に 対 し て反 対 の意 見 を 述 べ た い と存

の御 聴 き 苦 し い点 が沢 山 あ ら う と 存 じ ま す る が、 暫 く 御 清 聴 を煩 し

斯 様 な 一体 立 法 と 云 ふも のが、 今 日 の各 国 と雖 も 親 善 な る交 際 関 係

上 の事 犯 を 致 し ま し た場 合 に何 等 の制裁 を受 け な い ので あ り ます 、

裁 を受 ける 、 去 り な が ら内 国 人 が同 様若 く は同 様 の事 犯 を、 同 様 以

と言 ひま す れば 、 外 国 人 が此 第 一条 の事 項 を宣 伝 す る場 合 に は其 制

な いと 云ふ こと に な る ので あ りま す 、 そ こでど う 云 ふ結 果 にな る か

若 く は 本 法施 行 区 域 外 に あ る も の でな け れば 此 第 一条 の制 裁 を受 け

云 ふと 、 第 一条 に ﹁外 国 人 又 は本 法施 行 区域 外 に在 る者 と連 絡 し ﹂

取 ら う と云 ふ やう な 考 へは 毛頭 な い ので ご ざ いま す 、 去 り な が ら本

第四十五回 帝 国 議 会 貴族院議事速記録 過激社会運動取締法案 (政府 提 出 ) (第 三読 会 )

と 云 ふ斯 様 な 言 葉 を冠 し た のであ り ます 、 其 結 果 と し ま し て外 国 人

私 は最 近 に病 気 を 致 し ま し て身 体 が甚 だ 疲労 いた

大 正 十 一年 三 月 二十 四 日 ○伊 沢多喜男君

じ ま す 、 先 づ 先刻 八条 君 から し て修 正案 維 持 の御 説 がご ざ いま し て、

し て居 りま す る為 に十 分 に大声 を 発 す る こと が出 来 ま せ ぬ で、 諸 君

湯 浅 君 の説 を 反 駁 さ れ、 且 つ自 己 の御 主 張 を述 べ ら れた ので あ り ま

湯 浅君 が引 用 し ま し た、 森 戸 事 件 の如 き に致 し まし ても 、第 一審 、

こと は、 誠 に明 瞭 で、 学 者 の説 悉 く違 つて居 り ます 、 判 決 例 を 先刻

た に法 律 を制 定 す る場 合 に斯 の如 き 意 味 不 明瞭 な る言 葉 を 選 ばな け

を 結 ん で居 る場 合 に、 出 て然 る べ き も の であ り ま せう か、 ど う で ご

れ ば な ら ぬと 云 ふ理 由 が 何処 にご ざ い ます る か、 其 外 ま だ ﹁社会 の

ざ いま せ う か、 全 く 斯 様 な事 犯 に付 い て外 国 人 と内 国 人 と に大 な る

さ う し て第 一条 に当 る事 犯 を出 し たと 云 ふ場 合 がご ざ いま す 、是 は

根 本組 織 ﹂ であ ると か、或 は ﹁其 の他 ﹂ で あ ると か、 或 は ﹁其 の他

第 二審 、 第 三審 悉 く 違 つて居 る、 其 違 つて居 る と云 ふ こと は 詰 り朝

此 第 一条 に依 つて制 裁 を受 け る の であ りま す 、併 しな がら 内 国 人 が

憲紊 乱 と 云 ふ意 義 に付 いて、 悉 く判 決 例 が違 つて居 る ので あ る、 新

数 万 円 の金 を出 し て、 さ う し て此 第 一条 の事 犯 を犯 さし め た 、若 く

り ます 、 併 し 不 明 瞭 で も仕 方 がな い のだ と 云 へば 誠 に簡 単 で あり ま

之 に類 す る﹂ と か挙 げ来 れば 誠 に不 明 瞭 な る言 葉 が沢 山 あ る の であ

人 若 く は 外国 に在 る者 から し て、 仮 に茲 に七 千 円 の金 を 貰 つて来 て

は 犯 し た と 云 ふ場 合 に於 ては、 是 は何 等 の制裁 を受 けな い ので あ り

差 別 を加 へる のであ り ま す、 も う少 し例 を 以 て申 し ます れば 、 外 国

ま す、 斯 様 な る不 権 衡 な る こと は法 律 立 法 の場 合 に於 て許 さ れ る こ

のであ りま し て、 左様 な こと は 我 々共 は到 底 許 す こと が出 来 な い の

であ りま す 、 八条 君 の修 正 案 維 持 に対 す る駁 論 と し ま し て は之 で 止

す るけ れど も 、是 は所 謂 立 法 技 術 の誠 に拙 劣 と云 ふ こと を表 明 す る

め ます 、 次 いで 私 の意 見 を述 べ ま す、 私 が本 案 を扱 ひ ま し た大 体 の

と で あ り ま せう か、 又斯 様 な 法 律 を 制 定 す る と云 ふ こと は、 一体 外

ら ざ る こと であ ら う と思 ふ ので あ りま す、 そ れ から 第 三 点 は字 句 が

君 の言 ふ如 く 単 に外国 人 の御 機 嫌 を 取 る、 左 様 な 軽 々に看 過 す べ か

国 に対 し て如 何 な る影 響 を及 ぼす 積 りで ご ざ いま せう か、 是 は 八条

不 明 瞭 であ る、 字 句 が 不明 瞭 であ るけ れ ど も新 し き 事 柄 に対 し て新

て本案 提出 の動 機 及 び経 緯 即 ち いき さ つは ど う で あ る か、 次 で本 案

がご ざ いま す、 私 は本 案 の特 別委 員 と な りま し て、 先 づ政 府 に対 し

云 ふ こと は致 し 方 が な い、 斯 様 な る大 体御 議 論 でご ざ いま し た、 併

ふも ので あ る か と 云 ふ こと を第 二 に質 問 し ま し た、 そ れ から し て所

提 出 を 必 要 と す る に至 つた 沿革 的 の事 実 と 、 現 在 の事 実 と は ど う 云

態 度 及 び径 路 に 付 い て 一言 、意 見 を 先 づ述 べ る前 に、 一言 申 す 必 要

し な がら 左 様 には 私 は申 せ ぬと 思 ふ ので あ り ます、 殊 に此 朝 憲紊 乱

し い字 句 を用 ゐ る のは 已 む を得 ぬ、 で あ る か らし て字 句 の不明 瞭 と

と 云 ふ言 葉 は長 い間 用 ゐ来 つた言 葉 で あ る か ら不 明 瞭 で も差 支 な い

に対 す る 政府 の御 答 弁 は 多 く は事 秘 密 に亙 ると 云 ふ こと で あ り ま し

か、 若 く は其 数 が激 増 し た か、 斯 様 な事 実 に付 い て伺 ひま し た、 之

こと は 是 は申 す 迄 もな い こと であ り ま す、 先 刻 も 湯 浅 君 の指 摘 し た

て、 十分 に要 領 を得 る こと が出 来 ま せ ぬで あ り まし た 、是 は 私 とし

謂 、 世 に所 謂 危 険 主 義 者 と 云 ふ者 の性 質 、 是 が大 い に近 頃 激 変 し た

通 り、 此 朝 憲紊 乱 な る言 葉 は明 治 十 五年 でご ざ いま す る か、 それ 以

ま し て は甚 だ遺 憾 に存 じ ま し た け れど も 、 致 し方 が無 いと 私 は存 じ

ぢ やな い かと 云 ふ や うな こと も ご ざ いま し た が、新 し く法 律 を制 定

来 用 ゐ来 つた 言葉 であ つて、 頗 る長 い間 使 ひ古 し た言 葉 で あ りま す 、

た ので あ り ます 、 そ こで 政府 の御 答 弁 に依 つて私 は色 々研究 を致 し

す る場 合 に法 律 に欠点 が あ るな ら ば、 之 を十 分 に正 し くす る と云 ふ

併 し な がら 使 ひ 古 し て居 るけ れ ど も、 此 言 葉 の不明 瞭 であ ると 云 ふ

安 警 察法 、 是 等 のも のを 修 正増 補 し て行 つた な ら ば、 そ れ で此 目 的

君 が述 べ ら れ た通 り、 新 聞紙 法 と か、 出 版 法 と か、 集 会 結 社 法 、 治

で は な い か と云 ふ やう な 心持 が致 し た ので あ り ます 、 即 ち 先 刻 湯 浅

ふ も の は、 大 体 現 行法 の範 囲 に於 て十 分 に取締 る 目的 が達 し 得 る の

て見 た の であ り ま す る が、 政 府 が取締 ら む と し て居 る所 の事 実 と 云

て少 数 で自 分 の意 見 は 行 は れ ま せ ぬで あ りま し た 、然 る に本 議 場 に

ま し て は、 私 は 委 員 会 に於 て反 対 でご ざ い まし た け れ ど も不 幸 にし

り も広 汎 に亙 つた 、斯 様 な も の でご ざ います 、 此 第 一修 正 案 に対 し

し ま す れば 原案 も 第 一修 正案 も同 様 で あ る が、 第 一修 正 案 は 原 案 よ

罪 に準 ず べき も ので あ る、 左 様 な 主義 を採 つた ので あ りま す 、再 言

九 名 の特 別委 員 に 付託 さ れた も のが十 五名 の委 員 に付 託 さ れ ま し て、

例 であ る所 の再 審 査 と 云 ふ こと を致 し た ので あ り ます 、 即 ち是 ま で

こと が出 来 な か つた の でご ざ いま せう 、 誠 に貴 族 院 に於 て は稀 有 な

ても 、 警 察 の取締 法 と云 ふ主 義 の下 に特 別 法 を作 り得 る も ので あ つ

再 審 査 を 試 みた ので あ り ます 、 其 再審 査 の結 果 出 て来 たも の が即 ち

於 き ま し て は原 案 に付 い ても、 第 一修 正 案 に付 き ても満 足 を表 す る

て、 又 斯 う す べ き も のであ る、斯 様 に 大体 考 へた の であ り ま す、 斯

茲 に あ りま す 第 二 の修 正案 で あ りま す る、 即 ち 今 日 第 二読 会 を通 過

は 達 し得 る ので は な いか と云 ふ こと を考 へた の であ り ます 、 言 換 へ

様 な 見 地 から し ま し て、 私 は 尚 ほ政府 委 員 に問 ふた ので あ り ま す、

し た所 の修 正 案 が私 の謂 は ゆ る第 二 修 正案 で あり ま す、 此 第 二修 正

ま す れ ば是 は警 察 の取 締 規 定 と し て仮 に特 別 法 を 設 け る に致 し まし

べ た やう な大 体 出 発 点 か ら出 て居 る の では な い、 全 く出 発 点 が違 ふ 、

所 が政 府 当 局 者 の説 明 に依 りま す ると 本法 案 の趣 旨 は私 の只 今申 述

の申 し ます る警 察 の取 締 法 的 のも の であ る ので あ りま す、 所 が法 文

案 な る も のは刑 期 の最 長 期 と、 其 外 から し て見 ま す ると 云 ふ と、 私

は単 に ﹁外 国 人 又は 本 法 施 行 区 域外 に在 る者 と連 絡 ﹂ す と 云 ふ言 葉

ど う 云 ふ こと であ る かと 云 ふ と、 是 は 刑 法 の補充 法 であ つて所 謂 準

を加 へた に過 ぎ な く て、 法 文 はど う や ら準 犯 罪、 準 反 乱 罪 的 の法 案

反 乱罪 で あ る、 反 乱 罪 に準ず べ き治 安 を取 締 る目 的 であ る、 も う 少 し 言 ひ ま す れば 反 乱 の予 備 行為 で あ る と 云 ふ意 味 に大体 な る の であ

で あり ま す、 之 を評 し ます れば 、夢 の如 き 法 案 で あ る の であ り ま す、

出 し、 第 二次 に於 ては是 よ り も広 汎 な る第 一修 正 案 に同意 し、 今 度

りま す 、斯 様 な訳 でご ざ いま す か ら し て、 大 体 此 原 案 及 び第 一修 正

は 又夢 の如 き 第 二修 正 案 に賛 意 を表 し て居 る のであ りま す 、此 法 案

案 、 此 二 つ のも のは準 反 乱 罪 主 義 の法 案 で あ つた の であ り ます 、 然

云 ふ性 質 のも ので あ る か、 私 は此 第 一の修 正案 と 云 ふ のは 政府 の原

は誠 に詰 ら ぬ案 でご ざ いま す るな らば 、 政 府 が屡 々其 態 度 を変 更 さ

府 の態 度 に付 い て頗 る疑 を有 つ者 であ り ます 、 政 府 は自 己 の原 案 を

案 よ りも よ り以 上 に範 囲 が広 汎 にな つた も のだ と思 ふ の であ り ま す、

れ ると 云 ふ こと に付 い ても 、 或 は恕 す べき 点 が あ る かも 知 れ ま せ ぬ

然 る に政 府 は 又 々此第 二修 正 案 に賛 成 を し た ので あ り ます 、 私 は 政

所 謂 準 反 乱 罪 的 の主 義 がも う少 し 押 し 拡 ま つた修 正案 と 考 へる の で

け れど も 、是 は如 何 でご ざ りま す か、 世 の中 で は之 を思 想 征伐 案 と

る に政 府 は第 一の原 案 を維 持 され た のみ な らず 、 第 一の修 正案 が出

あ り ま す、 政 府 は之 に対 し て賛 成 を し た の であ り ま す、 例 へば 刑 の

ま した 時 には直 に之 に賛 成 し た ので あ り ます 、 第 一の修 正 案 は ど う

最 長 期 は 七年 、 五年 と 云 ふ や うな 長 い刑 期 に致 し ま し て大 体 此 反 乱

の学 説 を発 表 せむ が為 に、 例 へば 友 人 を 訪問 し ても 此 法 律 には 引掛

云 ふ こと は除 きま し た け れ ど も、 予備 を罰 す る と 云 ふ こと にな つて

か り得 る、 鉛筆 を 一本 買 つても 此 法 律 には 引掛 か り得 る、斯 様 に申

居 り ま す か ら、 宣 伝 せ む と す る と 云 ふ こと ゝ大 差 はな い の であ り ま

修 正 案 と 云 ひ、誠 に頼 りな いも ので あ る、 如 何 にも 不 安 心 で あ ると

し て居 る の であ り ま す、 私 は専 門 家 で ご ざ り ま せぬ か ら し て、 果 し

る案 に対 す る政府 の態 度 とし ては 、 実 に驚 き入 らざ るを 得 な い、 併

云 ふ こと を感 ぜざ る を得 な い ので あ り ます 、 私 は 少 し く 修 正案 に対

て其 説 が正 し いか ど う か は十 分 に存 じ ま せ ぬ、 併 し な が ら是 は私 が

言 つて居 る、 私 も確 か に左 様 に存ず る ので あ り ま す、 斯 様 な 重 大 な

し て批 評 を試 み た いと 思 ふ ので あ り ます が、 此 修 正案 も 大体 原 案 か

相 当 に尊 敬 す る学 者 の説 で ござ いま す か ら し て、 斯 の如 き で あ らう

し な がら 私 は 敢 て政 府 を攻 撃 す ると 云 ふ こと が目 的 で はな い ので あ

ら 流 れ出 し て来 て居 る修 正案 で ご ざ りま す るか ら し て、 原 案 の批 評

と 云 ふ こと を 今 日 の場 合 で は信 じ て居 る のであ り ま す、 次 に此 法 案

の予 備 行 為 でご ざ いま せ う、 又予 備 の予備 、或 学 者 等 は自 分 が自 己

が 直 ち に此 修 正案 の批 評 にも な り得 る の で あり ま す、 私 の聞 く 所 に

は 大 体 法律 万能 主 義 と 申 し ま す る か 、或 は警 察 官 、検 察 官 及 司 法 官

す、 其 宣 伝 其 事 柄 は 一つ の矢 張 縦 し や反 乱 と 致 し ます な らば 、 反乱

依 り ま す る と 云 ふ と、 此 原 案 の出 ま した る動 機 に付 い ては、若 くは

りま す 、如 何 にも此 法 律 案 は 原 案 と 云 ひ、 第 一修 正 案 と 云 ひ、 第 二

経緯 に付 き ま し て は、 誠 に驚 く べ き こと があ る の でご ざ り ます る が、

万 能 主 義 と で も申 し ませ う か、 誠 に偉 い力 を是 等 に与 へてあ る ので

判 決 例 も実 に個 々区 々で あ る、 又 ﹁其 の他 之 に類 す る﹂ と云 ふ や う

そ れ は ど う 云 ふ こと であ る か と 云 ふと 、 此 原案 の又其 前 の原 案 と で

な文 句 が用 ゐ てご ざ いま す、 其 の他 の之 に類 す ると 云 ふ やう な も の

る不 明 瞭 な言 葉 であ りま し て、 先 刻 か ら申 述 べ ます る法 学 者 の説 も

にな つ て来 ます と 云 ふ と、 何 処 ま で行 く も のに な る か、 此 位 不 明瞭

あ り ま す、 ど う云 ふ こと で あ る か と申 し ま す る と、 朝 憲紊 乱 既 に頗

ます る、人 倫 と は何 ぞ や 、 人 倫 破 壊 と は 何 ぞ や と 云 ふ こと を聞 き ま す

者 は罰 す る と 云ふ や う な る大 体 の意 味 の規 定 で あ つた さう でご ざ り

な法 文 は私 は無 いと思 ふ ので あ る、 宣 伝 同 じ く然 り、 社 会 の根 本 組

も申 し ます べき も のは 、如 何 様 な こと を 規 定 し て居 つた かと 申 し ま

る と 云 ふと 、 教 育勅 語 に違 背 す る者 は 即 ち是 な り、 教 育 勅 語 に は沢

す る と 云 ふ と、私 の伝 聞 す る所 に依 れば 、人 倫 を 破 壊す る行 為 を な す

て、 種 々の道 徳 の徳 目 も挙 げ てご ざ り ま す る、 言 換 へま す れ ば 道徳

山 の謂 はゆ る 日本 の道 徳 の基 本 な るべ き も のが ご ざ り ます るか ら し

何 様 に此 法 案 に現 は れ て来 て居 る か と申 し ます る の に、 詰 り本 案 に

原 案 の原 案 と で も申 す べき 一つの思 想 な ん で ござ りま す 、 そ れ が如

所 期 の目 的 以 外 のも のが沢 山 引掛 つ て実 に危 険 千 万 で あ る が、 何 と

りも 、 此 法 律 に現 れ て居 る こと は 、如 何 に も広 汎 で は な いか、 是 は

に於 て政 府 当 局 者 に聴 き まし た 、 一体 政府 が取 締 ら ん と す る目 的 よ

私 の申 まし た やう に、 司 法 官 万能 主 義 で、 私 は幾 度 か之 を 委員 会 等

織 亦 然 り、 予 備 を 罰 す る刑 の最 長 期 が非常 に長 い、 是 等 の事 が 只今

於 き ま し ては 宣伝 の行 為 を 罰 せ む と す る、 若 く は 宣 伝 せ む と す る行

かす る 工夫 は な い か、 今 私 の挙 げ来 つた やう な事 に 付 て幾 度 か質 問

の範 囲 を総 て法 律 を 以 て規 定 し や う 、斯 の如 き事 柄 が 一体 此 法案 の

為 を 罰 せ ん と す る、 修 正 案 に於 き ま し て は、 同 様 宣 伝 せ む とす る と

力 を 以 て之 を圧 抑 す る、 幾 つも の方 法 は あ る だ らう と 思 ふ のであ り

の方法 でご ざ いま せ う、 そ れは 刑 罰 の力 を 以 て之 を圧抑 し若 く は暴

ま す 、昔 か ら の歴 史 を 調 べ て見 ます れば 、斯 様 な事 をし た例 は沢 山

法 と し て、 力 を 以 て圧抑 す る⋮ ⋮ 力 を 以 て圧 抑 す ると云 ふ こと も 一

置 け ば 漏 れな い こと は 漏 れ な い でご ざ いま せ う、 併 な がら 漏 ら さ ゞ

あ る ので あ り ます 、 私 が申 さ なく ても 皆 様 が能 く御 承 知 のや う に支

し た ので あ り ます 、其 時 に当 局 者 の答 弁 は常 に斯 くし て置 いた方 が

ら ん と 欲 し て、 引 掛 つては な らな い も のま で引掛 か る と 去 ふ やう な

漏 れ な い のであ る、是 が当 局 者 の答 弁 であ り ま し た、 成 程 斯 く し て

法 律 を 作 る と 云 ふ こと は、 是 は何 人 と雖 も危 惧 の念 に襲 は れ る のは

の始 皇 が思想 を 圧迫 せ んが為 に書 を燔 き 儒 生 を 坑 にし たと 云 ふ こと

は、 古 来 有 名 な事 実 でご ざ いま す、 併 な が ら其結 果 は どう であ つた

那 の歴 史 で最 も有 名 な る こと は秦 の始 皇 の例 だ ら う と思 ひま す、 秦

か、 儒 教 は単 り 支 那 に其 後 盛 に行 はれ た と 云 ふ こと のみな らず 、 我

当 然 であ り ま す、 そ こ で私 は尚 進 ん で此 思 想 取 締 と 云 ふ こと に関 す

た通 り に、 此 国 家 社会 に対 す る危 険 運動 を防 止 す る、 さ う し て思 想

日本 に来 つて実 に立 派 な る道 徳 の基 本 と な つて居 る ので あ りま す 、

る事 柄 に付 て、 大体 述 べ て見 た いと思 ひ ま す が、 私 は 上来 述 べ ま し

を向 上 せし め若 く は発 展 せし め ると 云 ふ こと に付 ま し ては 、決 し て

又 日本 に仏 教 伝 来 の時 の歴 史 はど う でご ざ いまし たら う か、 非 常 な

る危 険 思 想 と し て力 を 以 て非常 な る圧 迫 を 加 へた の でご ざ い ます 、

と に 付 て熱 心 な る こと は、 何 人 にも 劣 ら ざ る積 り でご ざ いま す る 、

併 な が ら今 日 日本 に於 て仏 教 と 云 ふも のは 非常 に社 会 に対 し て実 に

反 対 せ ざ る のみな らず 、 国 家 社 会 に対 す る危 険 を防 止 す ると云 ふ こ

ると か云 ふ 人 々が、 余 り に現 在 の国 家 制 度 と か 社会 制 度 と か云 ふ も

で ご ざ います る から し て、 例 へば 学 者 であ ると か、 或 は 操觚 者 で あ

て居 る ので あ り ます 、 先刻 湯 浅君 の引 用 さ れま し た耶蘇 の如 き 如何

有 益 な る、 日本 の道 徳 を維 持 す る 上 に於 て最 も有 効 な る宗 教 と な つ

でご ざ いま す か、 ﹁キ リ シ タ ンバ テ レ ン﹂ と 云 は れ て、 所 謂 天 草 事

の に遠 ざ か つた 一の ﹁ユ ート ピ ヤ﹂ を唱 へら れ て、 そ れ が社 会 若 く

件 等 の実 に恐 る べ き戦慄 す べ き事 柄 が起 つた ので ご ざ いま す け れ ど、

は 国 家 に悪 影 響 を与 へると 云 ふ こと は、 私 は大 に慎 ん で頂 き た いと 云 ふ こと を 常 に考 へて居 る ので あ り ま す、 さ りな がら其 方法 とし て

必要 な る宗 教 と な つた、 数 へ来 れ ば彼 此 皆 然 り、是 等 の宗 教 と か是

其 後 日本 に於 て耶 蘇 教 と 云 ふ のは 矢張 道 徳 を維 持 す る 上 に於 て最 も

等 の思 想 と か云 ふ も のが始 め て其 国 に這 入 つて参 りま し た場 合 には、

こ と は、 大 に考物 で あ ると 存 ず る ので あ り ます 、 御断 り申 し て置 き ます が私 は是 が絶 対 に非 な りと は 申 し ま せ ぬ、 さ りな が ら之 に 付 て

法 律 の峻 厳 な るも のを設 け て、刑 罰 を 以 て之 に臨 ま ん と す る やう な

は大 に考 へな け れ ば なら ぬと 思 ふ ので あ り ます 、 思 ふ に思想 を善 導

に力 を 以 ては 之 を抑 圧す る こと が出 来ず し て、 い つ の間 に や ら深 く

人 心 に這 入 つて さう し て却 つて国 家 社 会 の為 に有 益 な る も のとな つ

幾 多 の悲 惨 な る事 柄 を演 出 し て居 る ので ご ざ いま す る け れ ども 、 遂

て居 る のであ りま す 、私 が政 府 当 局 者 に実 は聴 き た いと思 ふ ことは 、

す る と 云 ふ こと に付 き まし ては 、 床 次 内 務 大臣 の如 き も 以前 か ら屡

考 へて居 り ます 、 詰 り思 想 を善 導 す る為 には、 只 今 申 し た 思 想 は思

々言 は れ る如 く 、 思想 は思 想 を 以 て之 に向 ふ べ し、 私 共 は其 通 り に

想 を 以 て善 導 す ると 云 ふ ことも 一の方 法 であ る、 又善 導 す る 一の方

も の を取 り来 つ て考 へて見 ま す ると、 共 産 主 義 の根 本 観 念 は何 で あ

様 に存 ず る のでご ざ いま す る 、 併 な が ら例 へば茲 に共 産 主義 と 云 ふ

す 、 外 来 思 想 の中 にも 無 論 恐 るべ き も のがあ ると 云 ふ こと は 私 も左

一体 外 来 の思想 が最 も 恐 ろ し いと 云 ふ こと を度 々聞 く ので ご ざ いま

りと は申 し ま せ ぬ、 併 な がら 今 回 の原 案 若 く は修 正案 の如 く非 常 な

繰 返 し て申 し ま す る が私 は法 律 の力 を 以 て為 す こと は 絶 対 に 不可 な

化 し て、 今 日 の日本 の文 明 を 成 し て居 ると私 は思 ふ ので あ り ます 、

大 和 民 族 の立派 な る 心 を発 揮 いた し ま し て、 斯 様 な る思想 を悉 く消

な いと は申 し ま せ ぬ、 去 り な が ら さう 云 ふ思 想 な ら ば、 日本 の在 来

教 危 険 な り、 仏 教 危 険 な り 、黄 老 の学 問 危 険 な り、 私 は之 を危 険 で

く ので あ り ます 、 其 思 想 其 物 が非 常 に危 険 な りと 云 ふな らば 、 耶 蘇

黄 老 の学 問 な ど に も斯 様 な 思 想 が あ る ので はな い かと 云 ふ こと を聞

は な いか と 申す のであ りま す、 も う少 し申 し ま す れ ば黄 老 の、 支 那

学 者 な ど は 申 す のでご ざ いま す 、 又或 学 者 な ど は 耶 蘇 教 に も あ る で

ば 、 此 思 想 と 云 ふ も の は仏 教 の中 に も あ る では な いか と 云 ふ こと を

と は出 来 ま せ ぬ け れど も 、 学 者 等 の説 を聞 き まし て申 し ま す るな ら

で はご ざ り ま せ ぬ で あ り ます る故 に、 勿 論 自 分 が確 信 を 以 て言 ふ こ

否 認 と云 ふ観念 は 我国 に は 一体 な い ので ござ い ます か、 私 は思 想 家

又 或時 代 に は社 会 政 策 、 社 会 政策 と 云 ふ言葉 を用 ゐ る こと す ら 、頗

之 に向 つて警 察 は種 々 の取 締方 法 を講 じた こと が あ る のであ り ます 、

へば 学者 が社 会 学 を 研 究 す る、 忽 ち之 を社 会 主義 者 な りと 云 ふ ので、

浅 君 の引 用 せら れた 判 決 例 な ど も其 滑 稽 の 一つで あ り ます る が、例

実 に或意 味 か ら言 へば 滑 稽 千 万 な こと が あ る ので あ り ます 、 先刻 湯

日も 致 し て居 る かも 知 れ ま せ ぬ が 、此 歴 史 な ど で考 へて見 ま す る と、

の であ り ま す、 曾 て此 社 会 主 義 者 な る者 の取 締 を致 し まし た 、 又今

て修 正案 と 云 ふ やう な も のが 又 一つ の思 想 の流 れ で は な い かと 思 ふ

思 想 と 左 に流 れ る思 想 と が現 は れ た も のと思 ふ ので あ り ます 、 而 し

し た 通 り 、 此法 律 案 の経 過 を述 べま し た が、 是 は 明 か に右 に流 れ る

常 に異 つた る思 想 が流 れ つゝあ ると 思 ふ の であ り ま す 、先 刻 述 べま

に於 て申 し た いと存 じ ま す る が、 大 体 我 国 には 今 日 に於 て 二 つの非

こと は断 じ て賛 成 す る こと が出 来 な い のでご ざ いま す 、私 は此 機 会

の社 会 に有 り得 る のだ 斯 様 に 私 は思 ふ の であ り ま す、 単 に外 来 の思

る嫌 は れ た時 代 があ る ので あ り ま す、 某 国務 大 臣 は衆 議 院 に於 て社

る広 汎 な る範 囲 に於 て 且 つ峻 厳 な る刑 を科 し て之 を 取 締 ら う とす る

想 を 法律 の力 を 以 て、 若 く は剣 戟 の力 を以 て、 武 力 を 以 て之 を抑 へ

会 政 策的 の租 税 政 策 を 執 ら う と思 ふ と 云 ふや う な こと を述 べら れ た

る かと 申 し ま す れば 蓋 し 私 有 財 産 の否 認 、私 有 財 産 の否 認 と 云 ふ こ

や う と 云 ふ やう な こと は 屡 々試 み ら れ て さう し て曾 て成功 し た こと

と が大 体 の根 本観 念 だ らう と 思 ふ ので あ り ます 、 抑 々此 私有 財 産 の

は な いと 云 ふ こと は、 古 今 東 西 を 通 じ て殆 ど 争 ふ こと の出 来 な い事

ので あ り ます が、 貴 族 院 に参 り ま す と曾 て左様 な こと を申 し た こと

私 は其 人 の意 思 を忖 度 す る限 り で はご ざ いま せ ぬけ れ ども 、 社 会政

は な い、 斯 様 に申 す ので あ り ま す、 ど う 云 ふ こと でご ざ いま す る か、

策 即 ち社 会 主 義 な り 、危 険 思想 な り、 極 端 に申 せば 斯 様 な思 潮 があ

る思 想 を 鼓 吹す べ し、 非 常 な る勇 気 を揮 つて破 邪 顕 正 の為 に尽 す べ し 、 日本 人 は先 刻 来 述 べま す 通 り幾 度 か危 険 な り と 言 へば 危 険 な る

実 な ので あ り ます 、 私 は 外 来 の思 想 が危 険 な りと せ ば、 大 に健 全 な

宗 教 と か 思 想 と か 云 ふも のに逢 著 し た の であ り ま す、 併 な が ら常 に

る 、斯 様 な当 局 者 の考 で、 此 右 と 左 に流 れ つ ゝあ る思 想 の疑 惑 を調

右 に動 き 、左 か ら突 け ば左 に倒 る ゝ、 又 上 の方 へ押 せば 之 に つか ま

に私 は 不 安 に堪 へな い ので あ り ます 、 先刻 の如 く 右 から押 さ れ ゝ ば

す 、然 る に此 法 案 を通 じ て、 今 日 の為 政 者 のなす 所 を見 ま す と、 実

為 政 者 と し て大 に考 へな く て はな ら ぬ こと だ と私 は思 ふ の であ り ま

者 の疑 惑 を如 何 にし て調 和 し て行 く か､ 調 和 し て行 く と 云 ふ こと は

た 思 想 の流 れ て居 ると 云 ふ こと は確 かだ と思 ふ の であ り ま す 、此 両

せ ぬが 、 兎 に角 日本 の此 現代 に於 て 二 つの驚 く べき 右 と 左 の相違 し

の思 想 に対 し て決 し て賛 成 をす る者 でも 何 でも あ り ませ ぬ、 あ り ま

居 る学 者 操 觚者 が あ る ので あ り ます 、 吾 々共 は斯 様 な る極 端 な る 左

る の であ りま す、 所 が 一面 に於 て は随 分 極 端 な る左 の思 想 を 有 つ て

ふ こと の結 果 を計 量 し ま す る と 云 ふと 、 私 は寧 ろ之 を否 決 す ると 云

云 ふ こと、 是 が不 幸 にし て不議 了 に終 る、若 く は之 を 否決 す る と 云

り、 又 湯 浅 君 が過 刻 来 述 べ る通 り、 斯 様 な る 不完 全 な る案 を通 す と

な い ので ご ざ い ます 、 完 全 な る案 が出 来 ず に、 私 が過 刻来 述 べ る通

所 謂 立 法 能 力 の少 き為 に、遺 憾 な がら 完 全 な る案 を作 る こと が出 来

出 来 る限 り の努 力 を致 し た ので あ りま す 、併 な が ら自 己 の微 力な る、

で はご ざ います け れど も 、 此法 案 の修 正 と 云 ふ こと に付 ま し ては、

重 大 な る責 務 で あ ると 思 ふ ので ご ざ いま す か ら し て、 私 は 甚 だ微 力

十 分 に極 め て、 之 に適 応 す る法 案 を作 ると 云 ふ ことは 、 我 々御互 の

す 、 併 な が ら 私 は貴 族 院 の立場 と致 し まし て、 兎 に角 事実 の真 相 を

も出 さな け れ ば な ら ぬと 云ふ こと を信 ず る訳 に参 らな い ので あ り ま

へて見 ま す る と 云 ふ と、 私 は 左様 に慌 て ゝさ う し て不 完全 な る案 で

ふ こと が、 国 家 の為 に確 か に利 益 であ ると、 斯 様 に私 は深 く考 へる

和 し て行 く と 云 ふ こと は、 私 は到 底 信 ず る こと が出 来 な い ので あ り ま す、 而 し て此 法 案 に は そ れ がま ざ ま ざ と現 は れ て参 り ま し た、 私

に数 千 円 と か、 或 は数 万 円 の⋮ ⋮数 万 円 と 私 は申 し ま せ ぬ、 数 千 円

の であ り ま す、 私 は茲 に 一つ の事 実 を 申 上 げ た いと 思 ふ ので あ りま

と 云 ふ方 が宜 しう ご ざ いま せう 、 数 千 円 位 の金 を以 て宣伝 に来 た と

が 此 法案 に対 し て非常 な る憂 慮 を以 て反 対 し ます る のは 大 体右 様 の

ま し た、 ま りな がら私 が伺 ひま し た 限 り に於 き ま し ては、 斯 の如 き

す が、 詰 り 政府 で は、 外来 の或 る思 想 の這 入 つて居 る こと を非 常 に

不完 全 な る法 案 を出 さな け れ ば な ら ぬ と は考 へら れ な い ので あ り ま

云 ふ こと の為 に、 国 家 が 日本 が震 撼 され る と 云 ふ虞 がござ い ま せう

次 第 で ご ざ い ます 、 そ こで尚 ほ進 ん で不 完全 では あ るけ れ ど も 此法

す 、 併 な がら 私 は当 局 でご ざ り ま せ ぬ か らし て、十 分 に事 実 の真 相

か、 私 は 日本 の国 家 は 左様 な る憐 む べ き 国 で はな いと信 ず る の であ

恐 れら れ て、 殆 ど内 乱 が起 り は せ ぬ かと 云 ふ 心持 から 、準 反 乱 罪 と

を得 る こと は 出 来 な い のであ り ま す、 先刻 も申 上 げ ま し た やう に、

り ま す、 同 時 に 日本 国 民 も百 人 や二 百 人、 千 人 や万 人 の、 何 と申 し

し て此法 案 を出 す 、 斯 う 云 ふ のでご ざ いま す が、 一体 我 日本 国 が僅

当 局 者 は常 に秘 密 な り と云 ふ て、 多 く言 明 を 避 け ら れ ます る から し

ま す る か、 外 国 人 の力 に依 つて急 に⋮ ⋮急 にと 申 し ま す、 急 に国 家

あ り ます 、 私 は委 員会 其 他 に於 て当 局 者 か ら し て、 色 々事 実 を伺 ひ

て、 私 は事 実 の真 相 を得 る こと は出 来 ぬ、 是 は 甚 だ遺 憾 で あ りま す 、

が震 憾 さ る ゝと 云 ふや う な虞 はな いと 私 は思 ふ ので あ り ます 、 現 に

案 を 通 す が宜 し いか通 さな い が宜 し いか と 云 ふ こと に逢 著 す る ので

併 な がら 朧 気 な が ら当 局 者 の云 ふ所 に依 つて、 事実 と 云 ふ こと を 考

か ら し て誠 に数 万 の兵 は無 事 に苦 ん で居 る であ ら う 、私 が申 し ま す

備 で あ る、 守 備 と 云 ふ のは戦 争 を す る のと は違 ふ ので あ る、 であ る

西 比利 亜 に於 て従 事 し て居 る こと は何 で あ る かと 云 へば、 地 方 の守

軍 規 の下 に居 ると 云 ふ こと を、 是 は 私 は疑 ひ ま せぬ 、併 な が ら現 に

る 、 如何 でご ざ いま せ う か、 西 比 利亜 に参 り まし て、無 論 厳 正 な る

政 府 は巨 額 の国 帑 を費 し、 数 万 の壮 丁 を 西 比利 亜 に送 つて居 り ます

す る に最 終 の問 題 に付 まし ては 私 は決 し て御 心 配 は要 ら ぬ、 御安 心

こと に慌 て る必要 も何 も な い、 若 し恐 れ るな ら ば之 を恐 るべ し 、要

上海 辺 り から し て 五千 や七 千 の金 を持 つて三 人 や 五人 の人 間 が来 た

う で ござ りま せ う か、 若 しや 赤 化 運動 な るも のを 恐 れ ら れ るな らば 、

ふ や うな 心 持 が す る の であ り ま す 、之 に依 つて受 く る所 の影 響 は ど

て、 数 万 の留学 生 を出 し て居 ると 云 ふ やう な こと で はな いか、 と 云

なす つて否 決 し て然 る べし 、斯 様 に論 結 を致 す ので ご ざり ま す

末 弘厳 太 郎 意 見

役 人 に ﹁斯 く の如 き法 案 を出 す 精 神其 も のが不 可 い何 う 直し た ら 可

方 の意 見 は何 う で あ る か ﹂ と頻 に探 り を 入 れ る。 其時 私 は そ こ で其

分 世 間 で は非 難 が あ る や う で あ る、 実 は 私 は本 案 に反 対 で あ る が貴

怖 が つて探 り に来 た ので あ ら う。 ﹁ 今 度 此法 案 が提 出 にな つ た が 大

来 た 。私 が本 案 に対 し て何 う思 つて居 るか、 私 が何 う 云 ふ だ らう と

実 に機敏 な のに驚 いた事 は其 翌 日早 速 内 務省 の或 役 人 が私 を訪 ね て

伝 へし た い。 それ は 数 日前 本 案 が議 会 に提出 さ れた 時 の事 で あ る が、

本 論 に入 る に先 だ ち 本法 制 定 の裏 面 を物 語 る 一の面 白 い挿 話 をお

のあ るを説 かう と 思 ふ 。

府 の所期 せ る効 果 を 挙 げ得 ざ る のみ か反 つ て反 動 運 動 が恐 る べ きも

私 は之 に対 し 左 の四 つ の見 地 よ り見 てそ の非 な るを 論 じ、 到 底 政

四  ﹁ 過 激 社 会 運 動 取 締 法 案 ﹂ に 関 す る 論 調 (一 九二) 二

れば 露 西 亜 の中 に政府 は数 万 の国 帑 を費 し て⋮ ⋮ 数 億 の国 帑 を 費 し

(1)

過激社会運動取締法案 に就 て 末 弘 厳 太 郎(一)

今 回政府 は過激社会運動 取締法案なるも のを制定せんとし先 づ之 を貴族院 に提出し て目下其審議中 であ る。

か と思 ふ程 機 敏 だ と感 じ た ので あ る。 そ れ と同 時 に自 信 のな い法 律

で﹂ と云 つた ので あ る。 私 は警 察 と云 ふも のは読 心 術 を心 得 て居 る

いと か直 す とか 云 ふ事 は殆 ど問 題 にな ら な い其 精 神 を 直 し て お 出

此解 放 の思 想 即 ち 法律 上経 済 上 若 く は 社会 上 人 間 ら し く取 扱 は れ て

得 る と考 へるや う にな る。 処 が思 想 も下 ら ぬ思 想 な ら兎 に角 我 々 の

頼 ん だ人 間 は恐 るべ き も ので終 には 力 を 以 て人 間 の思 想 をす ら 圧 へ

熱 心 な る願 ひは 実 に否 定 す べ か らざ る力 強 き 志 想 で あ る。 而 し て此

居 な い人 間 が何 と か し て自 分 も 人 間 の恰 好 に生 れ た 以 上法 律 上 、 経

解 放 の思 想 と之 れ に対 す る今 迄 の特権 階 級 の圧 迫 、其 二 つ の者 の争

済 上、 社 会 上 人間 と し て取 扱 は れた いと 云 ふ こと を希 望 す る、 其 の

茲 に聊 か此 問題 に就 いて私 の所 感 を 述 べ て見 た いと 思 ふ 。 そ れ は

闘 の記 録 が即 ち 我 々 の歴 史 の全 体 だ と 云 ふ こと が出来 る程 で あ る。

を拵 へて我 々に何 う思 ふ か と は何 事 であ る か、 そ の意 を 解 す る に苦

先 づ第 一に本 案 は道 徳 的 の見 地 から 見 て極 め て不 穏 当 のも ので あ り、

如 何 に人 間 の力 を 以 てし て も斯 く の如 き思 想 迄 は到底 抑 圧 し得 るも

し ん だ様 な 訳 で あ った。

ら云 つて此 法律 は実 に滅 茶 々々な も ので あ る。 終 り にそ れ を作 る精

ので はな い。 今 迄 屡 々幾 多 の人 間 は力 を 以 て圧 迫 し よ う と し た け れ

次 に功 利 的 見 地 か ら見 て亦 愚 な も ので あ り、 更 に立 法 政策 的 見 地 か

ど も そ れ は暴 動 乃 至革 命 を喚 起 し た ば か り で何 等 の効果 な く し て今

日 に至 った ので あ る 。 そ れ で此 解 放 の思 想 は実 に今 日 の日 本 国内 の

神 が行 政 政 策 の上 か ら見 て誠 に当 を得 ざ るも の であ ると 云 ふ此 四 つ

先 づ第 一に道徳 的 見 地 か ら の議 論 であ る が、 兎 角 人 間 と 云 ふ も の

の見 地 か ら申 述 べ た いと思 ふ。

な 大 きな 解 放 を 要 求 し た か、 即 ち 巴 里 講 和会 議 に際 し て日 本 人 は人

比法 案 を審 査 し て居 る処 の 人 々は今 か ら 三年 前 に世界 に向 って何 ん

種 平 等 を叫 んだ で は な い か、 人 種 の平 等 と は何 ん であ る か 、或 者 は

下 層 階 級 の人 間 だ け が抱 いて居 る の では な い。 現 に此 の法案 を出 し

と、 力 で以 て何処 迄 も や り得 る やう に見 え る が、 人 間 が耐 へ得 る処

は自 分 の力 が付 いて来 ると 力 を 頼 んで無 理な こと を す るも ので あ る。

の境 を越 え ると力 は全 く 駄 目 にな る事 を知 る。 人 間 には 耐 へ得 べき

此 力 で何 でも 出来 る と思 ふ も の であ る 。所 が我 々人間 の歴 史 を見 る

限 度 があ る。 無力 の如 く 見 え て居 た 柔順 なも のが忽 ち 反 対 に 力 の圧

も何 う か人 並 の取扱 を し て呉 と いふ願 で あ る。 其 願 は今 国 内 に於 て

し て居 る。 之 に反 し て有 色 人種 は人 間 ら し い取 扱 を受 け て居 な い私

そ ん な に記憶 が好 く な く と も 昨 年 秋 に財 界 の 一大 勢 力 で あ った が力

多 数 の人 間 がど う か 私 も政 治 上 人 並 に取扱 つて呉 れと 云 つ て普 通選

優 越 で あ ってそ れ だ け が本 当 の人 間 ら し い取 扱 を受 け て人 間 の顔 を

の為 め に倒 さ れ た人 や 又 政 治 上 に於 て此 人 の力 には到 底 敵 はな いと

迫 を 倒 す と 云 ふ こと は明 か に我 々 の歴 史 が証 明 し て居 る。 又 我 々は

思 は れた其 人 が力 の為 め に倒 れ た のであ る。 一語 す ら も発 せず に倒

ら と 云 つ て願 出 る。 又労 働 者 は 自 分 も何 う か経 済 上 人 並 の生活 が出

来 る やう にし て貰 ひ た いと 願 つて居 る のに多 数 の力 を恃 ん で 此普 通

挙 法 の施 行 を 希 つ て居 る。 又女 も私 も 人 並 に政 談 演 説 が聴 き た い か

て居 る。 此 明瞭 な 事 実 を 歴 史 が教 へて居 る にも拘 らず 之 を忘 れ、 近

選 挙 法 の要 望 を 圧迫 し 又婦 人 が政 治 上 の集 会 に出 る こと を 圧迫 し又

れ ざ るを得 な か った ので あ る。 斯 く の如 く 立 派 な歴 史 が之 を物 語 っ

時 の政 府者 流 は力 を 以 て何事 も為 さ んと 考 へて居 る ので あ る。 力 を

労 働 者 の如 き は罪 人扱 にし て唯 縛 らう とば か りし て居 る 。内 に向 っ

のも のだ から 、 そ れ が行 為 にな つて外 に出 て来 る所 を捕 へる よ り外

る。 思 想 を幾 ら圧 迫 し やう と し ても、 思 想 は 思 想 だ け で は全 く 無形

法 律 の手 で は如 何 と も い た し方 がな い如 何 に悪 事 を 考 へて居 ても 悪

て斯 く の如 く ﹁人 に な り た い、 人 にな り た い﹂ と 云 つて出 て来 る処 の如 何 にも 人 間当 然 の声 を抑 圧 し て置 き乍 ら外 に対 し ては ﹁人 に な

に出 な い思 想 を 力 を 以 て圧 迫 せ んと し ても其 結 果 は 単 に思想 の現 れ

事 を外 に現 さな い以 上法 律 の力 で何 う と も為 し得 な い ので あ る。 外

る形 式 を変 へ得 るだ け で思 想 其 物 を動 か す こと は到 底 出 来 な い。 現

り た い人 にな り た い﹂ と叫 ん で居 る。 そ んな も のを外 国 のも のが容

に最 も手 近 い例 と し てビ ス マー ク が千 八 百 七十 八年 に作 つた 社会 主

れ て呉 れ ると 思 ふ のは此 れ位 痴 け た こと は な い。 私 は斯 く の如 く人 にな りた いと 云 ふ こと は人 間 と し て尤 も な希 望 だと 思 ふ、 只 実際 政

併 し其 実 施 十 二年 間 の後 に何 れ だ け の効 果 を得 た か と 云ふ と 、 千八

治 家 とし て は 一時 に急激 に之 を容 れる こと は出 来 ま い が、其 時 に 対

百 七 十 八年 愈 々彼 の法律 を 作 る時 其 選 挙 に際 し て社 会 主 義 者 は 独逸

ゆ る権力 有 らゆ る武 力 を 以 て社 会 主 義 者 の圧迫 に従 事 し た ので あ る。

な い何 う か頼 む から も う少 し我 慢 し て呉 れ﹂ と 云 つて 心 の中 に涙 を

全 国 に於 て約 五十 万 の投 票 を集 め得 た に過 ぎ な か った のであ る。然

義 者 鎮圧 法 を見 ても 其事 が分 る、 ビ ス マーク は此 法 律 を作 つ て有 ら

流 し てお願 ひす べき で あ る、 処 が今 日新 聞紙 の伝 ふ る処 に依 る と 先

る に吾 等 は十 二年 間 陰 忍 の後遂 に約 三 倍 即 ち 百 五十 万 の投 票 を 集 め

以 上 人と な りた い のは当 然 で あ る併 し 今 日 直 ぐ に と 云 ふ訳 には 行 か

日普 通選 挙 運動 を取 締 つた 処 の警 視 庁 は 民意 を 圧 へ付 け得 た と 信 じ

得 た ので あ る。 此 十 二 年 間 に於 る彼 等 の陰 忍 振 り に就 いて は注 目 す

す る彼 等 の態 度 は 何 う あ る べき か と云 ふ に ﹁ 実 際 人 間 と し て生 れ た

て鹿 を 一匹 買 つて来 てお 祝 の酒 を飲 ん だ と 云 ふで は な いか、 祝 杯 を

動 を鎮 圧 し 得 た か ら と 云 つて、 祝 盃 を挙 げ る やう な 思 想 を持 つた 彼

中 で は涙 を 流 し てく れと お願 を し た い のであ る。 然 る に普 通選 挙 運

私 は今 か う 云 ふ法 案 を提 出 し た 政府 当 局 者 に向 って、 せ め て心 の

御 用 新 聞 に斯 ん な こと ま でも 書 かせ た。 ﹁ 吾 々のす べ き こ と は 社 会

張 し て同 志 の軽 挙 を戒 めた 。其 結 果 ビ ス マー ク は焦 慮 り に焦 慮 つ て

首 領 ベ ーベ ル ・リ ープ ク ネ ヒト等 は此 際 吾 々は動 いて 不可 な いと 主

は暴 力 を 以 て答 ふ べし と 説 い て暴 動 をす ゝめ た け れ ど も、 社 会 党 の

べき こと が多 い。 当 時 モ ー スト ・ハ ッセ ル マン等 は し き り に暴 力 に

︹マ マ ︺

挙 げ ると は 抑 も何 た る事 であ るか 。

等 に果 し て それ だ け の誠 意 と 人 間 ら し さ が あ る であ ら う か。 そ れ を

主義 者 をけ し かけ て憤 ら せ る こと だ、 さ うし て接 迫 詰 つ て往 来 に飛

疑 は ざ る を得 な い ので あ る。

次 に功 利 的 の見 地 から 考 へて本 案 が極 め て愚 な る も の であ ると い

つた 。併 し外 面 上 は黙 つ て居 たも の ゝ此 十 二年 の後 には 何 う 云 ふ結

そ れ に も拘 らず 当 時 の社会 主 義 者 は 少 し も動 か な い で実 際 黙 つて居

狸 か何 かを 犬 に追出 さ せ て鉄 砲 で射 つや う に考 へて居 た ので あ る。

出 し た ら鉄 砲 で射 つ て了 へ﹂ と かう 新 聞 に書 か せた の であ る。 恰 で

ふ こと を申 述 べ た い。 古来 ﹁思 想 ﹂ を ﹁力 ﹂ によ つて圧 迫 し や う と

(二)

企 てた 人 間 は幾 ら も あ る。 併 し 乍 ら そ れ は実 際 上 不 可能 の こと であ

る。 そ れ から 又 ビ ス マ ーク は本 法 に依 つて労 働 組 合 を圧 迫 し其 解 散

所 が現 在 法 律 を 立 案 す る政 府 の方 方 のお考 へは 此 点 に於 て頗 る間 違

能 く調 べ て見 な け れば な ら ぬ 。 之 は誰 にも 判 る 当然 の理窟 で ある。

先 づ 第 一に、 法 律 を作 る に就 いて其 基 礎 と な る べ き 社会 の事 情 を

と 云 ふ こ とを申 し た い。

を 計 つた。 け れ ど も本 法 施 行 当 時 即 ち 千 八 百 七十 八 年 に僅 に五 万 に

果 にな つた か。 実 に彼 等 百 五 十 万 と 云 ふ多 数 投 票 を集 め 得 た のであ

過 ぎ な か つた 組 合労 働 者 が愈 法 律 が廃 止 にな つた千 八百 九 十年 に は

つて居 る。 只 自 分 の智 恵 だけ を恃 ん で行 つて居 る。所 が元 来 法 律 の

に 巧 く当 て嵌 ま る法律 を作 る の であ る か ら、 人 間 には容 易 に出 来 ぬ

適 用 を受 け る のは 我 々人 間 で あ る、 人間 の沢 山 集 つた複 雑 な世 の中

仕 事 で あ る。 そ れを 兎 に角 何 ん とか し て作 らな け れば な ら ぬ 地位 に

つ て思 想 を圧 迫 し や う と企 てた 為 め 、 今 迄 表 に大 ぴ ら に論 ぜ ら れ た も のが全 く下 に廻 つて非 常 に険 悪 な も の にな つた。 そし て千 八百 九

廿 五 万 と 云ふ 多 数 にな つた の であ る。 加 之 当局 は極 力 法律 の力 に依

斯 く の如 く ﹁思 想 ﹂ を ﹁力 ﹂ によ つて圧迫 し やう と云 ふ やう な考

十 年 に は法 律 で は 如 何 と も手 が付 け ら れな いや う な状 況 にな つた。

義 務 を果 す こと が出来 る か と 日夜 惧 れな け れば な ら ぬ ので あ る。 所

置 か れ た のであ るか ら実 は自 ら 謙 遜 し自 ら慎 んで 何 う し た ら自 分 の

際 自 由 に述 ら れ発 表 出来 る も のな れば 何 も 乱暴 し や う と は考 へるも

何 な る 人 と雖 も 自 分 の本 当 の思 ふ処 の思 想 が若 も平 和 的 、 そし て実

人間 は誰 しも 命 は惜 し い。 命 位 大 事 な も のは な い ので あ る から如

之 は吾 輩 の道 徳 であ る お前達 は 之 に従 へと 云 ふ ので あ る。 法 律案 が

瓦 の家 の中 で外 国 の本 を 二 三 冊 も読 ん で自分 勝 手 な法 案 を作 つ て、

云 ふ ので あ る。 之 が 為 め に兎 角 民情 を調 べ や う と し な い で、 赤 い煉

準 を 以 て お前 達 の為 に作 つた法 律 であ る。 お前 達 は皆 な 之 に従 へと

は天 下 道 徳 の標 準 で あ る。 吾 輩 の道 徳 標 準 を 以 て、 吾 輩 の善 悪 の標

が 現在 法 律 を作 る人 間 は何 う考 へて居 るか と 云 ふと 之 は 吾 輩 の思 想

へは 実際 上到 底 行 ひ得 ざ る こと であ る の みな らず 、 反 つ て悪 い結 果

のは な い。 然 る に人 に な り た い と云 ふ人 間 ら し い希 望 を力 によ つ て

を 惹起 す も の であ る。

無 理 矢 理 に圧 迫 しや う と す る か ら其 処 に反 動 が起 る のは当 り前 で あ

こそ実 に恐 るべ き思 想 だと 私 は思 ふ のであ る。

今 度 の法案 の如 き も 提 出 す べ き何 れだ け の理 由 何 れ だ け の事 実 が

出 来 た 時 それ に批 評 を 加 へると 嫌 が る、 中 には怒 る も のも あ る。之

あ る か、 吾 々は何 も 知 ら な い、 僅 に 近藤 某 と 云 ふ人 の事 件 が 一つ、

る 。 私 は今 此 法 案 を出 す 政府 当 局者 に言 ひた い。 政 府 当 局 者 が今 日

築 かう と し て居 る。 此 ﹁堰 ﹂ を築 い て向 ふ から 流 れ て来 る彼 の水 が

為 す べ き こと は ﹁運 河 ﹂ を掘 るこ と で あ る。 然 る に 政府 は ﹁堰 ﹂ を

で あ る。 ﹁ 運 河 ﹂ を 造 ら う と は せず し て ﹁堰 ﹂ を 造 つて居 る 所 の 政

段 々溜 つた時 には も う何 うす る こと も 出来 な い危 険 な状 態 にな る の

あ る か。 之 と 同 じ問 を議 会 に於 て発 せ ら れ た時 に山 内 次 官 は実 に曖

け で あ る、斯 く の如 き広 汎 な る法 律 を 出 さ ねば な ら ぬ事 実 が何 処 に

其 外 には 英 人 グ レー の事 件 が稍 そ れ に似 通 つて居 ると謂 は れ て るだ

之 が功 利 的 見 地 から 見 て本 案 の極 め て愚な る も のと 云 ふ所 以 で あ る。

昧 な こと を云 つて居 る ﹁さ う で あ る かも 知 れ ま せ ん﹂ と か ﹁自分 も

府 当 局者 を以 て私 は 極 め て迂 愚 な こと をし 見 るも のだ と謂 ひ た い。

第 三 に立 法 政策 の見 地 か ら見 て此 法 案 は 極 め て愚 な るも ので あ る

れ ば事 実 は 之 だけ であ るが兎 も角 之 だけ のも のを作 つて呉 れな け れ

要 の限 り に於 て法 を作 るべ き で あ る。 今 の政 府 当局 者 の云 ふ処 によ

こと で あ る。 法 を作 る に は実 際 の事 実 を 調 べ て事 実 必要 な ると き 必

く の如 く事 実 を全 く 調 べず し て法 を作 ると 云 ふ こと は実 に恐 るべ き

能 く調 べ て見 な い ので判 ら な い の であ りま す ﹂ と か 云 つて居 る。斯

さ り乍 ら国 民 を し て十 分 に穽 のあ る処 を 知 ら し めず 穽 を伏 せ て置 い

政 府 と雖 も豈 夫 我 々が刑 罰 に繋 る こと を 希望 し ては居 ら ぬ であ ら う。

判 ら な い。 そ れ で は到 底 国 民 は安 心し て歩 く こと が出 来 ぬ 。 恐 ら く

のと 同 じ こと であ る。 国 民 は何 処 に穽 があ る か判 ら ぬ。 穽 の深 さ も

の判 ら ぬ法 律 を 拵 へて置 く と 云 ふ こと は恰 も 陥穽 を予 め 作 って置 く

り に力 を 以 て普 通選 挙 を 阻 止 し て快哉 を叫 び、 又 治 安警 察 法 第 五 条

る云 ふ 一片 同情 のあ る処 の政府 な らば 兎 も角 、 只 今 の政府 の如 く 濫

て呉 れ と希 望 し て居 る。 之 等 のも のに対 し て真 実 心 か ら気 の毒 であ

し く 取扱 は れ た いと 云 ふ希 望 で あ る。 労 働 者 は人 並 の取扱 ひ を与 え

訳 には行 か な い。 既 に述 べ た如 く普 通 選 挙 運 動 は 人 に な り た い人 ら

ま れ て居 り、 色 々な 種 類 があ る にも拘 らず 、 斯 く の如 き不 明 な る文

共 産 主義 ﹂ と 云 は れ る此 概 括 的 な 名称 の中 には 実 に色 々の思 想 が含

云 ふ こと で あ る が、 誠 に御 尤 も な質 問 で あ ると 思 ふ。 ﹁ 無 政府 主義

人 から ﹁無 政府 主 義 共 産 主 義 ﹂ と は何 か と云 ふ 質問 が提 出 さ れた と

共 産 主義 ﹂ と 云 ふ文 字 であ る。 聞 く処 に拠 れば貴 族 院 に於 ても 或 る

其 文 字 に就 て 一々詳 し く は 申 上 げ な い が、 先 づ 第 一に ﹁無 政 府 主義

本 案 を見 る に其 全 部 が曖 昧 不 明瞭 な る文 字 の羅 列 で あ る。 今 私 は

て何 ん に も知 らず 歩 い て来 て若 し お つ落 ち た ら捕 へると 云 ふ 法 律 を

の撤 廃 を 婦 人 が如 何 に熱 心 に希 望 し ても、 そ れを 顧 みやう とも せ ず 、

字 を 以 て刑 罰 を課 す る標 準 にし や う と云 ふ こと は、 我 々を し て殆 ど

作 る のは 実 に恐 る べ き こと であ る。

し か のみ な らず 治 安 警 察 法 第 十 七 条 を濫 用 し て、労 働 者 を拘 束 し 縛

何 が法律 で あ る か を判 ら な く せ し め るも の であ る と信 ず る。 若 し も

の政府 の方 々に いざ と 云 ふ時 に お抜 き にな る処 の宝 刀 を謹 ん で奉 る

る こと だ け を考 へて居 る、 斯 く の如 き思 想 の人 間 の集 ま り た る政 府

不 幸 にし て本 案 が議 会 を 通 過 し た なら ば 、 政 府 は全 国 の警 察 官 及 び

ば いざ と 云 ふ時 に困 ると 云 ふ。 併 し私 は遺 憾 乍 ら 只今 のやう な 志 想

に向 つ て此 恐 るべ き宝 刀 を予 め 奉 る こと は何 う し ても出 来 な い の で

年 位 の間 、 共産 主 義 無 政 府 主 義 の何 た る かを 講 習 さ せ ねば な ら ぬ と

司 法 官 を集 め更 に天 下 の学 者 、 社会 主 義 研 究 者 を招 い て半 年 乃 至 一

あ る。 (三)

私 は 思 ふ 。自 分 に も判 ら ぬも のを 以 て人 を縛 り 人 を牢 屋 に入 れ る と

云 ふ こと は如 何 な る人 と雖 も 良 心 の上 に於 て為 し得 るも の では な い。

次 にも 一つ立 法 政策 上 考 ふべ き は 、 元来 刑 罰 は刑 を 課 せ ざ るを 以 て 目的 と す るも のだ と 云 ふ こと であ る。法 律 と 云 ふも のは国 民を し

先 づ講 習 会 を 開 いた後 法 を実 施 す る が宜 から う と思 ふ。

った 事 、自 分 の書 いた 事 の拡 が る こと を欲 し な いも のは な か ら う。

其 次 に ﹁宣伝 ﹂ と 云 ふ こと が あ る が、 恐 ら く何 人 と雖 も 自 分 の言

て依 る所 を知 ら し む べ き も の であ る。刑 罰法 規 を設 け て其 刑 罰 に触 れ る やう な 人 間 のな か ら ん こと を 希望 す べ き も の であ ると私 は思 ふ。 然 る に曖 昧 空 漠 た る文 字 を以 て法 律 を 作 り、 か くし て国 民 に は意 味

こそ で あ る。 而 し て ﹁宣 伝 ﹂ と は 此 拡 がら せ やう とす る こと を 云 ふ

る も の でな け れ ば な ら な い から で あ る。(四)

理想 は国 民 を し て出 来 るだ け 自由 に安 心 し て活動 す る こと を得 し む

終 り に行 政政 策 の上 か ら見 て本案 が何 う で あ る か と 云 ふ に第 一に

我 々が物 を言 った り本 を書 い た りす る のは拡 が ら ん こと を 欲 す れば

ので あ る。 で あ るか ら斯 く の如 き 不 明 な文 字 を法 律 の中 に使 用 す る のは全 然 言 論 を 抑 圧 す る こと ゝな る。 殊 に此 言葉 は我 国 に輸 入 さ れ て尚未 だ 日 の浅 いも ので あ つて、其 証 拠 には 次 のやう な 面 白 い話 も

を維 持 す ると 云 ふ 保安 の職 務 があ る ことは 事 実 で あ る。 併 し 乍 ら其

保 安 と 云 ふ目 的 だ け に国 家 が専 心 し て居 つた 時 代 は 過 去 に於 け る警

国 家 の目 的 と 云 ふ 見 地 か ら 申す と国 家 は 一方 に於 て社 会 の安 寧秩 序

言 ふ疑 問 が起 り、 結 局 陸 軍 の方 と外務 省 と は 夫 々違 つた 訳 字 を 用 ふ

に、国 家 社 会 自 ら が創 造的 進 化 を す る、 其 創 造 的 進 化 を助 成 す る 任

察 国 の時 代 であ る。今 日 の国 家 は保 安 と云 ふ 一つの大 き な任 務 の外

あ る位 で あ る。 私 が講 和会 議 の当 時 巴 里 に居 た時 に聞 いた 噂 です が、

る こと にな り、 外 務省 は ﹁宣 伝 ﹂ と 云 ふ字 を 使 つた が、 陸 軍 の方 は

何 で も当 時 プ ロパガ ンダ と 云 ふ言 葉 を 日本 語 に何 う訳 し た も のか と

今 不幸 に し て字 は 忘 れ た が何 で も漢 字 四字 の変 な 文 字 を使 ふ こと に

其 意 見 を聴 い て如 何 に社 会 を進 化せ し む べき か に就 き 心 配 せ なけ れ

な ら ぬ 。 社会 の真 面 目 な 研 究者 学 者 等 を し て自 由 な 意 見 を 吐 かし め

べき か の問 題 に就 て は何 う し ても之 を社会 の 先導 者 に聴 か な けれ ば

て、吾 々仲 間 の笑 話 にな つ て居 り ま し た。 即 ち ﹁プ ロパ ガ ンダ と は

ば な ら ぬ のであ る。 殊 に現 在 の我国 の如 き は 旧 い思 想 の持 主 た ると

務 を持 つて るも のだ と 云 は ねば な ら ぬ 。而 し て国 家 が 如 何 に進 化 す

元 来 自 己広 告 の意 にし て個 人 に就 て は悪 き ことな れ ど も国 家 と し て

新 し い思想 の持 主 た ると を 問 はず す べ て何 ん と か此 社 会 を 改革 せね

な つた。 所 が陸 軍 の本 省 か ら プ ロパ ガ ンダ と は何事 かと 聞 い てよ こ

は已 む を得 ざ る場 合 あ ら ん ﹂ と、 か う 云 ふ変 な 電 報 を打 つたと 云 ふ

ば 不 可 ぬ と 云 ふ こと を 感 じ て居 る の であ る。 此 社 会 を何 う にか せな

し た のに対 し て、 陸 軍 から 次 ぎ のやう な珍 妙 な 返 事 を出 し た と 云 う

れ は ホ ン の笑 話 に過 ぎ な いけ れ ど も、 之 を 以 て見 ても如 何 に此 宣 伝

評 判 が吾 々巴 里 に於 け る日 本 人 間 の笑 話 とな つて居 た ので あ る。 之

と は何 ん で あ る か に就 て正 確 な る知 識 を持 つて居 るも のは余 り沢 山

造 的 進 化 を助 成 す る こと を 全 く 忘 れた も ので あ ると 云 は ね ば なら ぬ。

新 し い思 想 を抑 へると 云 ふが如 き は国 家 の大 な る任 務 た る社会 の創

し、 只 自 分勝 手 に独 り で可 いと思 ふ こと を無 理 や り に社 会 に強 ひ、

に考 へな け れば なら ぬ大 問 題 で あ る其 時 代 に於 て徒 ら に言論 を抑 圧

は な いと思 ふ。 さう 云 ふ意義 不 明な 文 字 を法 律 の中 に使 ふ のは刑 罰

次 にも 一つ行 政 政 策 の上 から 見 て我 々の十 分 に考 へねば な ら ぬ こと

け れば な ら ぬ と 云 ふ こと は 現在 の輿 論 であ って、 此 際 国 家 が真 面 目

法 規 と し て最 も慎 ま な け れ ば な ら ぬ も のと 私 は考 へる ので あ る。 然

と 云 ふ 文 字 が新 し い意 味 の分 り憎 い文 字 であ る か ゞ分 る と思 ふ。 有

ら ず む ば国 民 は何 が法 律 で あ る か を 正確 に知 る こと が出 来 ず 、 到 底

があ る。 云 ふ迄 もな く 我 国 も 現在 で は兎 に角 世 界 大 舞 台 の 一員 にな

能 な る陸 軍当 局 に於 てす ら 既 に然 り、 況 し て多 数 の日本 人 には 宣 伝

安 心 し て生活 し活 動 す る こと が出 来 な い か ら であ る。而 し て国 家 の

て最 も 進 ん だ処 の政 治 が行 は れ 、国 民 は皆 極 め て自 由 に も のを 言 ふ

あ る。 然 るに 我国 以 外 の国 に於 て は今 や種 々進 歩 し た る考 へによ つ

った 。 鎖 国 の昔 を離 れ て今 は 諸 外 国 と 共 に 生 き る時 代 と な った の で

考 へる我 々 から 見 て実 に遺 憾 千 万 の こと であ る。 茲 に私 は私 の考 へ

が万 一今 議 会 を 通 過 す る やう な こと が あ れば 真 面 目 に我 国 の将 来 を

も、 立 法 政 策 行 政政 策 の上 から論 ず る も、 全 く 取 る に足 らざ る本 案

の概 略 を 述 べ て広 く之 を世 間 に宣 伝 し 以 て本 法 案 の通過 を未 然 に阻

二

止し た いと 思 ふ ので あ る。

加 田哲 二意 見

田 哲

こと が出 来 、 政 府 も 其 点 を能 く 弁 へて 立派 な政 治 を し て居 る。 此 時

特殊

(2 )

社会運動取締法制定 の効果

一

加

に当 つ て我国 のみ が独 り 反 対 の政 治 を施 き さう し て徒 ら に言 論 を抑 圧 し て保 守的 態 度 で進 ん だ な ら ば世 界 に於 て我 国 は 何時 迄〓 国 と し て扱 は れ るよ り 外 に仕 方 が な い こと にな ると 思 ふ。 之 に就 て は 明瞭 な例 が あ る。 私 は 今 か ら 二年 程 前 に伊 太 利 に居 つた が当 時 伊 太 利 の新 聞殊 に社 会 党 の新 聞 又 は社 会 党 の新 聞 で な く と も少 し 自 由 主 義 的 の新 聞 は 口を 極 め て日 本 の悪 口を言 ふ。 何 故 悪 口を 云 ふ かと 云 ふ に個 人的 に は何 も 日 本 人 が憎 いと 云 ふ の では な い。 又経 済 上 日 本 に反 対 す る 理由 があ る訳 で も な い寧 ろ伊 太 利 は 国 土 は瘠 せ て居 り 人 間 は多 過 ぎ る。 移 民 問 題 に就 て は世 界 で 日本 と 伊 太利 が最 も 同 一

運動 を取 締 る のを 目的 とし て ゐる。 さう し て、 そ の刑 罰 は十 年 以 下、

高 橋 内 閣 は所 謂 過激 思 想 の宣 伝 取締 の必要 を 痛感 し て ﹁過 激 社 会

感 情 を持 つ て居 る ので あ る。 そ れ に も拘 らず 伊 太 利 の可 成 り有 力 な

七年 以 下 、 五 年 以下 と 云 ふ が如 き、 行 為 の程 度 に比較 す れば 甚 だ し

運 動 取 締 法 案 ﹂ な る も のを 貴 族 院 に提 出 し た。 そ れ は無 政 府 主 義 共

は ら な け れ ば な ら ぬ の であ る か ら、 此 時 に当 つて我 国 が徒 ら に保 守

い峻 烈 苛 酷 のも ので あ る。 私 は、 か く の如 き 法 制 を 必要 とす るま で

新 聞 は 日 本 の悪 口 を云 ふ。 何 故 で あ る か と聞 い て見 ると 日本 の特 殊

的 な 政 治 を 行 ひ言 論 を 抑 圧 し て居 た な らば 到 底 我 国 は少 し も進 化 を

に我 国 の社 会 運 動 が発 達 し て来 た か否 か を知 ら な い、 と同 時 に こ の

産 主 義 そ の他 に関 す る朝 憲 紊 乱 ま た は現 在 の社 会 組 織 の否 定 の宣 伝

し な い、 余 処 の国 は進 化 を す る 、其 後 に残 さ れた 我 国 は果 し て世 界

過激 社 会 運 動 取 締法 を 以 て勃 興 し つ ゝあ る社 会 運動 が鎮 圧 せら る ゝ

ると 云 へば夫 迄 のやう で あ る が 、 我 国 が世 界 の 一員 と し て世 界 に交

から 何 れだ け の取 扱 ひを 受 け るか 。自 分許 り如 何 に威張 った処 が、

か否 かを 予 言 す る こと は出 来 な い。乍 然 如 斯 法制 の制 定 には 、 一時

的 態 度 を 憎 いと 云 ふ の であ る 。 他 国 で 何 と 云 はう が我国 は 我国 で あ

世 界 か ら 特 殊 国 の取 扱 ひを 受 け る やう で は結 局我 国 は 世界 の立 場 を

的 の階 級 的 憎悪 と 云 ふ やう な 感情 以 外 に、 甚 だ 周到 な る考 慮 を 必 要

失 は な け れば な ら ぬ こと にな ると 思 ふ。 斯 く の如 く 道徳 的 見 地 から 見 ても 、或 は功 利 的 の見 地 か ら云 つて

と す る。 私 は こ の意 味 にお い て本 法 律 案 批 判 の 一材 料 と し て、 一八

五 、一九 〇 、二 五 四 に対 し て 、三五 一、九 五 二、 選 出 議員 九 名 、 一八 七

票 一二 四、六 六 五 、 選出 議 員 二名 、 一八 七 四年 に於 い ては 総 投 票 数

七 年 に於 い ては 五 、四〇 一、 〇 二一に 対 し て 四九 三 、二 八 八、 議 員 十

七 八年 以来 制 定 せ ら れ て、 約 十 二 年 に渉 つ て施 行 さ れた 独 逸 社会 民 主 主 義 運動 鎮 圧 法 の始 終 を 記 し て、 大 方 の識 者 の参 考 に供 し た いと

二名 の割 合 に な つて ゐ る。

こ の社会 主 義 運 動 の勃 興 に、 そ の神 経 を悩 ま し た のは 、鉄 血 宰 相

思 ふ。 二

こと を 提 議 し て ゐ る が、 そ れ は主 と し て英 国 政府 の不同 意 によ つて

一年 に社会 運 動 取 締 のた め に、 列 国 の政 府 が 共同 の態 度 に出 づ べき

の名 を持 つて ゐ たビ ス マル ク公 で あ つた 。 ビ ス マ ルクは 既 に 一八 七

サ ルが 一八 六 三年 全 独 逸 労 働 者協 会 の総 裁 に就 任 し た と き から 始 ま

以 て社 会 主義 運動 に対 抗 す る の策 を樹 て、 一八 七 四年 五月 に ﹁帝 国

成 立 す る こと が出 来 な か つた 。 そ こ で独 逸 政府 は先 づ言 論 の取 締 を

独 逸 に於 け る社 会 民 主 主 義 運動 の発 達 は、 フ ェルヂ ナ ンド ・ラ ッ

ると 云 つて い ゝだ らう 。 彼 の不幸 な る急 死 の以 後 にお いて も、 直 接

した も の には、 二年 の禁 錮 、 事 情 の酌 量 す べき も のに は六 百 馬克 の

出 版 法 ﹂ を制 定 し、 直 接 行 政 官 に多 大 の権 能 を 与 へ、 この法律 に反

︹マ マ ︺

彼 の後 継 者 で あ った ベ ル ニ ハルド ・ベ ッカ ア の無 能 暴慢 のため に、

ツ ェルによ つ てラ ッサ ル派 の社会 主義 者 は そ の勢 力 を増 進 維 持 し た

罰金 を課 す る こと ゝな つた 。 更 に二年 後 には 婚 姻 、家 族 、 財 産 の詰

幾 分 そ の勢 力 を失 つたけ れど も、 有 能 な る指 導 者 フ ォ ン ・シ ュワ イ

制 度 に関 し て攻撃 も し く は破 壊 を企 てた も のに 対 し て も刑 働 を賦 す

月十 一日独 逸 皇 帝 ウ ヰ ル ヘルム は そ の皇 女 と共 に伯 林 のウ ンテ ル ・

ので あ つた 。然 る に独 逸 の生 ん だ最 大 な革 命 的 社 会 主義 者 カ ア ル ・

デ ン ・リ ンデ ン街 に馬 車 を駆 つて ゐた。 無 識 無 頼 の青 年 ヘエデ ルは

マ ルク スは 当時 ロ ンド ンに亡 命 し て ゐた。 彼 の弟 子 ウ ヰ ル ヘ ルム ・

彼 に短 銃 を 向 け た 。 二 発 の弾 丸 は 空 を 飛 ん で皇 帝 は無 事 で あ つた 。

る こと ゝな つた 。乍 然 当 時 の権 力 階級 と そ の代 表 者 ビ ス マル クと は、

の主 要 潮 流 を な す も ので あ つた。 然 る に 一八 七 五年 に至 つ て マルク

で あ つた。 ラ ッサ ル派 と マ ルク ス派 、 こ の二派 が独 逸 社 会 主義 運動

国 民 は激 憤 した 。 さう し てビ ス マ ルクは単 に ヘ エデ ルが ベ ー ベ ル、

リ ー プ クネ ヒト は独 逸 に於 る マル ク ス派 の社 会 主 義 者 の指 導者 で あ

ス派 と ラ ッサ ル派 と の間 に妥 協 成 立 し 、 さ う し て両 派 は 社 会 主義 の

満足 し な か つた 。彼 等 は機 会 を待 つた。 機 会 は 来 た 。 一八 七八 年 五

た め に、 一丸 と な つ て運動 を続 け た ので あ つた。 そ の社 会 主義 運動

リ ープ ク ネ ヒト 等 の写真 を逮 捕 の当 時 懐中 し て ゐた と 云 ふ 理由 の み

単 な る言 論 取 締 を 以 て増 大 し つゝあ る社 会 主 義 に対 し て ゐ る こと に

は労 働 組合 並 に 一般 社 会 上 に影 響 を及 ぼし た こと が甚 だ 大 で あ つた。

で、 彼 を社 会 民 主 党 と 関係 せ し め た。 ビ ス マ ルク の待 つ てゐ た機 会

つた。 リ ープ クネ ヒト の教 導 によ つ て アウ グ スト ・ベ ーベ ルも ま た

これ を 社会 主 義 の政 治 的活 動 に就 て見 ると 、 一八 七 一年 の帝 国議 会

は来 た のであ つた 。 二 日後 に政 府 は ﹁社会 民 主 的 過 激 運動 鎮 圧 法 ﹂

社会 主義 の陣 営 に馳 せ参 じ て、 天 成 の雄 弁 を、 そ の宣 伝 に用 ひ た の

議 員 選 挙 の全 部 投 票 数 三 、八九 二、一六 〇 に対 し て、 社 会 主 義 者 の得

れま た は こ の種 の運 動 を職 業 と し て ゐる も のは文 書 の頒 布 発売 を禁

を議 院 に提 出 し た。 そ の法 案 によ ると す べ て の社 会 民 主 主 義 の目的

止 され る こと、 集 会 を 開 催 す る場 合 には警 察 官 の許 可 を 必要 と し 、

き は之 を 没 収 し 、救 貧 基 金 に繰 入 れ る こと 、本 法 律 によ つて罰 せら

これ を犯 す も のは重 刑 に処 す る のが 目的 で あ つた 。 議 院 は 五 七 に対

文 書 の頒 布 は 街路 も し く は 公 園 等 にお いて行 つては な ら ぬ こと 、 危

物 の発 行 禁 止 、 寄 附 ま た は寄 附 募 集 の禁 止 及 び、 寄 附 金 あ り た る と

す る 二五 一の多 数 を以 て こ の法 案 のあ る条 項 を否 決 し た ので、 同 法

を達 す るた め の結 社 、 印 刷 物 は 禁 止 せ ら れ、 集 会 の権 利 を も剥 奪 し、

案 は 撤 回 せ ら る ゝ の已 む な き に至 つた。 け れど も機 会 は更 に来 つた

険 性 を 有 す る者 は 一定 の場 所 から 退去 を命 ず る こと 等 で あ つた 。 さ

的 人物 に 対し て は重 刑 を 課 し て ゐ た 。 ベ ーベ ル の云 ふ と ころ に拠 る

う し て罰 則 と し ては 通 常 五 百馬 克 の罰 金 また は 三箇 月 の禁 錮 、指 導

の であ る。 一八 七八 年 六 月 二 日 ド ク ト ル ・カア ル ・ノ ビ リ ング が リ ンデ ン街 の二階 の窓 から皇 帝 ウ ヰ ル ヘル ム に短 銃 を 以 て重 傷 を 負 は し た ので あ つた。

と 最高 刑 は 五年 の禁 錮 であ つた。

社会 党 員 は最 も 平 和 的 に こ の法 律 を迎 へた 。彼 等 は官 憲 に対 す る

の党員 を し て平 静 な ら し む べ く努 力 し た ので あ つた 。 社 会党 の機 関

反 抗 が、 官 憲 に機 会 を 与 え る も ので あ る こと を知 つた。 さ う し て そ

三 こ のノ ビ リ ング の事 件 があ ると直 にビ ス マル クは 社会 運動 取締 法

誌 は当 時 ﹁前

の制 定 を急 ぐ た め に、 議 会 を解 散 し た 。 そ の結 果 、 政 府 の強 力 な 干

論 調 を拡 げた 。 け れ ど も官 憲 は何 等 の仮借 も な か つた 。法 律 が発 布

進 ﹂ 以 外 に 五十 に及 んで いた が、 一斉 に そ の攻 撃 的

に対 し て九 名 の議 席 を維 持 す る こと が出 来 た。 ビ ス マ ル ク は 直 に

渉 と宣 伝 と によ つて保 守 派 の大 勝 利 に帰 し、 社 会 党 は前 回 の十 二 名

事 す る も のに あ らざ る こと を 主張 し た。 け れ ど も 社 会主 義 者 並 に進

極 力 同 法 案 の成 立 に反 対 し 、 社 会 民主 主 義 が決 し て暴 力 的 運 動 に従

導 者 ウ ヰ ル ヘル ム ・リ ープ クネ ヒト、 ア ウグ スト ・ベ ーベ ル其 他 は

さう し て こ の同 志 が党 員 を 戒 め て平 和 を守 れと 云 つた人 情 と 理 智 と

も 不 拘 、 十 一月 二十 八 日、 二 十 四時 間 以内 に伯林 退去 を命 ぜら れ た 。

散 を命 ぜ ら れ、 六十 七 名 の社 会 民 主 主 義 は殆 ど死 せ る が如 き 沈 黙 に

の資 料 を 奪 は れ た のであ つた 。 さ う し てす べ て の社会 主 義 団 体 は 解

二 つを 残 す のみ で あ つた 。 か く て社 会 主義 の評 論 家 は殆 ど そ の生 活

さ れ て から 一箇 月 の間 に五 十 の社 会 党 機関 は殆 ど 撲 滅 の状 態 で僅 に

歩 主義 者 の反 対 は決 し て院 議 を動 かす には 足 りな か つた。 法 案 は十

を 兼 ね備 へた宣 言 書 さ へも官 憲 は これ を取 り押 へた。 さう し て 一年

﹁社 会 民 主 主 義 的 運動 取 締 法 ﹂ を 議会 に提 出 し た 。 社会 民 主党 の指

一日公 布 せら る ゝに至 つた。 全 部 二十 二条 か ら成 る同 法 の主 要 内 容

へ警察 の手 は届 かう と し て ゐ た。 け れ ども これ は議 会 の抗 議 に会 つ

後 には、 絶 対 の自 由 と 安 全 と を さ へ保 証 さ れ てゐ た議 員 の身 辺 へさ

月十 九 日 一四九 に対 す る二二一 の多 数 を以 て議 院 を 通過 し、 同 二十

は次 の如 き も ので あ つた。 社 会 民 主 的 又 は共 産 主 義 的 運 動 によ り て

て実行 せ ら れな か つた 。 か く の如 き 事 情 の下 にあ つて社 会 党 は殆 ど

社 会 また は国 家 の現存 の秩 序 を破 壊 す る の目的 を 有 す る結 社 の禁 止、 同 一傾 向 を 有 す る集 会 の解 散 、 並 に同 一目的 を促 進 す るた め の印 刷

革 命 的 手 段 を考 へる やう にな つて 行 つた。

平 和 を維 持 し て時 を待 ち 他 の 一派 は 一挙 にし て敵 の中 心 を衝 く べき

ので あ つた。 かく て苛 酷 な る サ ー ベ ルの監 視 の下 に 社会 党 の 一派 は

或 ひ は山 間 辟 地 に、 或 ひは極 め て秘 密 の間 に同志 と の会 合 を催 し た

そ の活 動 の方 法 を断 た れた。 け れ ど も彼 等 は 、種 々な方 法 に よ つて

主 義 の側 にあ った 。 一八 八 七 年 二月 議 会 は 軍事 費 問 題 に関 し て 解散

主 義 の鎮 圧 は無 効 な る か の如 く で あ つた 。 輿 論 は大 体 にお いて 社会

労 働権 を承 認 せ ん許 り の程 度 に進 ん だ。 こ の柔硬 両 手 段 によ る社 会

クは そ の社 会 問 題 に関 す る 見解 を急 進 せ し め、 殆 ど労働 者 に対 し て

翌 年 七月 六 日 には傷 害 保険 法 案 を以 て之 を補 つた。 かく てビ ス マ ル

され た が、 そ の結 果 は よ く こ の こと を表 は し て居 た。 こ の総選 挙 に

か ゝ る間 に 一八 八 一年 の総 選挙 は来 た。 さう し て社会 主 義 者 は甚

選 挙 用 の宣 伝 小 冊 子 で あ つた。 か く の如 き困 難 にも 拘 らず 、 社 会 主

戦 の四 週 間 だ け で さ へ百 六 の印 刷 物 の禁 止 があ り、 そ の内 八十 八 は

集 会 は 禁 止 せ ら れ、 宣 伝 用 の小 冊 子、 ビ ラ等 は違 法 で あ つた。 選 挙

お い ても、 社 会 主 義 者 は鎮 圧 法 に よ つて非 常 な 不利 な立 場 にあ つた。

だ し い不 利 な 状 態 にお い て そ の勝 負 を争 は なけ れば な ら な か つた。

四

集 会 と 言 論 の自 由 は制 限 せ ら れ、 小 冊 子 の頒 布 は極 め て危 険 で あ つ

ので あ る が、 議 員 数 は 反 つ て十 四名 から 十 一名 に減 少 し た。 さ う し

義 者 は 一八 八 四 年 の得 票 に約 四割 を 増加 し て七六 三一 二

ら れ、 社 会 党 に対 す る寄附 金 も 一八 八二︱ 三年 に は十 一万 馬 克 に達

主 主 義 ﹂ と ﹁自 由 ﹂ と は社 会 運 動 鎮 圧 法 の制定 前 にも 増 し て購 読 せ

の勢 力 が増 加 し た のみ で は な い。 著 名 な る社会 党 の機 関 誌 ﹁社 会 民

次 この勢 力 を増 大 し来 つて、 独 逸 帝 国議 会 の最 大 政党 た る に至 つた

会 主 義 鎮 圧法 を廃 止 せし む る に至 つた ので あ る。 かく て社 会 党 は 漸

論 の勃 興 と は、 ビ ス マル ク政 府 を し て 一八九 〇 年 九 月 三十 日 限 り 社

て多 く の投 票 があ つた の であ る。 か く て社 会 主義 者 の勢 力 増 大 と 輿

て不思 議 な こと に は干 渉 圧 迫 の激 烈 な 地 方 程多 く社 会 主 義 者 に対 し

八 とな つた

の選 挙 の九 名 に三 名 を増 加 し た。 単 に政 治 上 に於 い て の み社 会 主 義

た 。 け れど も 社 会党 の得 票 は減 少 を 見 た が、 当 選 議 員 は 一八 七 八 年

こと を是 認 し て、 一八 八 一年 三月 三十 一日 ま で の施 行 期間 を更 に 二

し た 。 政 府 の報 告書 も、 同 法 が全 く 社 会 主 義 鎮 圧 に効 果 が な か つた

私 は 一通 り 社会 党 鎮 圧 法 の下 にお け る 社会 主 義 の鎮 圧 に就 て述 べ

の は、 長年 月 を要 し た こと では な か った のであ る。

三十 日 に到 つて廃 止 され て ゐる が、 延長 に対 す る賛否 の投 票 は時 の

年 間 を 延長 し て、 更 に数 次 の延長 に 延長 を重 ね て、 一八九 〇 年 九 月

政 府 は苛 酷 な る法 制 を 以 て社会 主義 に対 抗 し た 許 り で は な い。 ビ

般 民 衆 を し て苛酷 な る法 律 の対 照 と し て の社会 主 義 者 に深甚 な る同

主 義 が暴 力 によ る所 謂 行 為 の宣 伝 を 行 つた こと であ る。 そ の三 は 一

者 が真 面 目 に な つた こと で あ る。 そ の二 は 一部 の社会 主義 者 無 政 府

た が、 こ の こと か ら何 が学 ば る べ き で あ ら う か。 そ の 一は社 会 運 動

ス マルク は そ の所 謂 国 家 社 会 主義 を実 行 す る こと によ つて社 会 主 義

情 を表 せし め た こと で あ る。 さう し てそ の法 律 も十年 、 七年 、 五年

経 る に従 つて政 府 側 の不 利 に傾 い てゐ た。

に対 す る労 働 者 の帰 依 を 阻 止 し や う と し た。 即 ち 一八 八 三年 六 月十 ︹マ マ ︺

五 日 に は礦 山 労 働 者 の他 に対 す る疾 病 保 険 法 案 を 成 立 せ し め、 更 に

を 限 度 と し て、 最 高 のも のも 五年 を出 でな か つた ので あ る。 更 にか

と 云 ふ が如 き長 期 の刑 罰 にあ らず し て、 普 通 三 箇 月 ま た は六 百 馬克

達 よ り も 此等 左 傾 思 想 家 に管 見 の遙 な る鋭 さを 発見 す る。

に法律 の職 能 と いふ立 場 から 此 現象 を見 ると 私 は国 粋 論 者 や資 本家

喜 ぶ べき 契 機 を捕 へ得 べし と な し て 一言 反 対 の声 を挙 げず と か、誠

賢

三

縁 の巧 妙 な る悪 辣 手 段 等 挙 げ来 れ ば限 り もな い策 略 を駆 使 した 、 然

及 び外 国 への追 放 、 自 由 思 想 を 抱 懐 せ る議 員 のデ ユウ マ ( 議 会 )絶

過 激 思 想 団 体 に会 員 とな れ る事 実 のみ を 以 て の処 罰 さ ては シベ リ ア

る家 宅 捜 索 、 故 な き捕 縛 、 書 類 の押収 、 過激 政 治 思 想 家 の厳 罰 或 は

西 亜 は定 期 刊 行物 の検 閲 を厳 重 にし 発 売禁 止、 法 律 の手 続 に よ らざ

の根 源 の思 想 に加 へん とす るも の であ る、 此 方 法 を 実 現 せ ん為 に露

は政 府 の方 策 に違 反 す る思 想 を絶 対 に圧 迫す る に在 つて強 き斧 を そ

ロ マノ フ王 朝 治 下 に於 け る露 西 亜 に見 る こと が出 来 る、 これ が 方針

四 つ の区別 があ り得 る、 第 一は絶 対 鎮 圧 主義 で あ つて これ が適 例 は

由 来 過 激 な る政 治 的 又 は経 済 的 意 見 に対 す る 国家 の方 策 に理 論 上

く の如 き法 律 の制 定 さ れ た のは、 約 半 世 紀 (四十 四 五年 ) 以 前 であ

高柳 賢 三 意 見

高 柳

る こと も 私 は特 記 し て置 き た い と思 ふ。 (一九 二 二 ・二 四夜)

(3) 過激社会運動取締法案非なり

(一)

の であ る 、第 二 は絶 対 自 由 放 任主 義 で あ つて こは 只無 政 府 主 義 者 の

理 想 と し て のみ存 続 し得 る者 で あ つて現 実 直 視 の根 拠 に立 つ社 会的

も 遂 に其 結果 は偉 大 な る失 敗 に終 つて物 凄 き 露 西 亜革 命 を醸 成 し た

執 り 保 守 派 の人 々は 毫 も意 見 の発 表 をし な いや う で あ る 、思 ふ に所

り各 人 の欲 す る処 即 ち 社 会 公益 の欲 求 す る処 と合 致 し社 会 に何 等 の

方 策 と し ては無 価 値 であ る、 社会 の各 構 成 分 子 が 夫 々聖 人 君 子 と な

過 般 過 激 社 会運 動 取 締 法 案 の議 会 に提 出 せ ら れ た る後 之 に対 す る

謂 国 粋論 者 或 は資 本 家 系統 の人 は暗 に此 法 案 の通 過 が彼 等 にと つて

輿 論 の傾 向 を 注視 す る に進 歩 主義 の思 想 家 は猛 烈 な る攻 撃 的 態 度 を

最 も祝 福 す べ き こと であ つて怖 る べき 過 激 社会 運動 が これ によ つて

を 心掛 け同 時 に此 経 綸 に違 反 す る あら ゆ る思想 を其 根 柢 よ り壊 滅 せ

国 を指 導 す る政 治 家 に確 固 た る社 会 政 策 的 経綸 あ つて着 々之 が 実行

ては夢 想 に過 ぎな い、第 三 は社 会 政 策 と 圧 迫 主義 の併 用 であ つ て 一

ん と す る方 策 であ る、 ビ ス マ ルク の執 つた態 度 の如 き 之 が良 き型 で

衝 突争 闘 矛盾 なき 理 想 境 に於 ては考 へら るべ き も到 底 現 実 社 会 に於

に鋭 感 が あ るな ら ば 先 ん じ て か ゝ る法 案 の通過 に全 力 を尽 し て反 対

せ る次 第 で あ る、 若 し 国粋 論 者 資 本 家 達 が今 少 し彼 等 の主 義 と 利 益

あ ら う 、第 四 は社 会 政策 と自 由 放 任 主義 と の併 用 であ って之 に あ り

に思 は ざ る の甚 だ し き も の で あ つて彼 等 の無 智 短 見 を 遺 憾 な く暴 露

す る で あら う 、 聞 く処 に よ れば 左 傾 的 社会 主義 者 の多 く は 此法 案 の

絶 滅 さ る ゝと信 じ以 て歓喜 の沈 黙 を守 つて居 る ので あ らう 、 こは 実

通 過 に よ つて 日頃 の主 義 主 張 の実 現 に 一段 の深 刻 味 と 底 力 を加 ふ る

も 法 律 秩 序 を 明瞭 且確 実 に害 す る場 合 に之 を制 限 す る の であ る、言

るが 如 き 行為 を禁 止す る こと は 勿論 政治 的 又は 経 済的 論 議 で あ つて

ては 言 論 は 必ず し も絶 対 に自 由 な らず 、 言 論 が直接 他 の個 人 を害 す

従 来 の言論 取 締 の法 規 に就 ても立 法 論 と し ては大 いに改 正 の余 地 あ

主 義 の併用 と に移 りゆ く べ き であ ると信 ず る、 か ゝる見 地 よ り し て

亦 布 かれ ん とす る時 に於 て は言 論 畠 に対 す る方 策 は社 会 政 策 と放 任

く 思 ふ、 さ りな がら 普 通 選挙 が今 や只時 期 の問 題 と され 陪審 制 度 も

此種 社 会 運 動 の言 行 取締 規 則 が現 在 不完 全 な る を以 て これ が徹 底 的

論 から 生ず る影 響 を推 測 し て之 を禁 圧す る を許 さず 又 そ の言 論 は社

修 正 を加 ふ る に在 り とす る らし いが 法案 の文 言 よ りし てそ の真 の目

りと 考 へら れ る、 然 る に今 次 の過 激 社 会 運 動 取締 法案 は 此 趨勢 に逆

過 激 思 想 は 或意 味 に於 て社 会 の欠 陥 を 指 摘 す る よす が と な る か ら

的 が 過激 な る社 会 運 動 のす べ てを そ の根 源 に於 て絶 滅 す る法 的 力 を

行 す るも ので あ る、 政 府 が か ゝる法 案 を提 出 す る に至 る動 機 と な つ

之 を或 程 度 迄 自 由 に発表 さ せ る こと は 国 家 が社 会 政 策 的施 設 を 行 ふ

政府 に付 与 す る に存 す る こと明 瞭 であ る 、 日本 現 実 の社 会 運動 の状

会 秩 序 の破壊 と極 め て近接 な も ので な く て はな ら ぬ、所 謂 間 接 因 果

上 に大 切な 要 件 で あ り国 家 は過 激 思 想 によ つて社 会 一般 の不平 の所

況 が斯 く の如 き 峻 烈 な る法 律 を 以 て取 締 る必要 あ る程 果 し て悪 化し

関 係 の理 論 を 応用 し て言 論 が社 会 秩 序 を 直下 に破 壊 す る作 用 な し と

在 を知 り得 る ので あ る、 只 不 遜 な る文 言 が 暴行 暴 動 脅 迫 に近接 せ る

つゝあ るで あ らう か、 私 は 否 と答 へた い、 従 つ て政府 は現 在 に於 け

た具 体 的事 実 に就 ては私 は多 く之 を知 ら な い、 僅 に近藤 栄 蔵 と いふ

時 に のみ取 締 るを そ の要 諦 とす る此 方 策 は 英国 及 米 国 の伝 統 的 主義

る 日本 の社会 運 動 の実 質 と 範 囲 と を十 分 に調 査 す る こと な く 此法 案

人 が上 海 から多 大 の金 額 を支 給 さ れ て実 際 運 動 費 と な し た る こと 及

で あ つた、 以 上 の中 現代 の文 明 国 と し て採 り得 る方 策 は 恐 ら く 第 三

の起 草 を 急 いだも の と思 は れ る、 只欧 米 先 進 国 の立法 的 例 は 可 な り

す る も の であ る、 此 第 四 の方 策 は 要 す る に成 る べく 如 何 な る危 険 な

と第 四 と の二 つの孰 れか で あ らう 此 点 に就 ては 我 国 に於 け る思 想 家

研 究 し て制定 さ れ た と見 得 る点 が あ る殊 に戦 時 中 戦後 の亜 米 利 加 が

び英 人 グ レ ー事件 を思 ひ起 す ば か り だ、 当 局 者 提 案 の表 面的 理 由 は

の意 見 は わ か れ る であ ら う、 第 三 の政 策 は要 す る に開 化的 専 政 の色

思 想 でも 行為 と な つて現 れ る場 合 又 は これ に近 接 し た関 係 を持 つて

彩 を脱 しな い、 第 三 の主 義 は動 も す れ ば為 政 者 の所謂 社会 政 策 とな

さ れ て居 るら し い、 法 案 の文 言 が広 汎 曖 昧 模 糊 な る点 及刑 罰 の如 何

聯 邦 及 各 州 に於 け る 過激 社 会 運動 鎮 圧 に関 す る法 律 が著 るし く斟 酌

居 る場 合 でな け れ ば自 由 に放 任 せ ん と す る のであ る。

つ て真 に 社会 の欠 陥 を 繕 は ざ る弊 が伴 ひ易 い、 第 四 の主 義 は 立 憲 的

圧 法 に求 む る方 が 一層妥 当 な りと 思 ふ 。

の数 あ つた が私 は これ が対 照 た る べき 立法 を亜 米 利 加 の社会 運 動 禁

迄 我 法 案 を ビ ス マルク の社 会 運 動 鎮 圧法 に比 較 し て論 ぜ ら れ た るも

に も峻 烈 な る点 は、 亜 米 利 加 の法 律 と そ の軌 を 一にし て居 る、 これ

色 彩 豊 富 にし て社 会 の欠 陥 如実 に指 摘 せ ら れ て改 善 の途 が開 か れ易 い の であ る。 (二) 私 は日 本 現 代為 政 家 の方 針 は 社会 政 策 と圧 迫 主 義 の併 用 に あ る如

元 来 亜 米利 加 に於 け る無 政 府 主義 者 取 締 に関 す る法 制 は 一九 〇 二

做 し て正義 人道 の ため の戦 争 に対 し て最 も危 険 な る妨 害 な り とし 盛

動 を起 す が如 き 事 頻 出 し た 、輿 論 は是 等 を以 て独 逸 間諜 の仕 業 と 看

妨 害 し或 は義 勇 兵 募 集 に反 対 し 極 端 な る場 合 には サ ボ タア ジ ュや 暴

ん に私刑 (リ ンチ ング ) の宣 告 が是 等 主 義 者 の頭 上 に落 ち た、 聯 邦

年 の紐 育 無 政 府 主 義 法 に初 ま る、 此 法律 は マ ッキ ン レー大 統 領 暗 殺

議 会 は是 等 戦 争 妨 害 者 を 抑 圧 す る 目的 を以 て遂 に 一九 一七年 間 諜 法

後 に制 定 さ れた も ので あ つて無 政 府 主義 を言 語 又は 書 面 によ って 主 張 し 又 は教 へ或 は 無 政府 主義 を標 榜 す る団体 に属 し そ の集 会 に出 席

を 制 定 し た、 更 に 一九 一八 年 そ の処罰 の範 囲 を 拡張 し た此 等 の両 法

の適 用 に関 す る陪 審 の態 度 は著 るし く平 時 と趣 を異 にし来 つて無 知

す る こと を 重 罪 と し て罰 す る、 無 政 府 主義 と は組 織 的 政 府 を暴 力暗

無 辜 の良 民 も時 々僅 な る誤 解 によ つて此 法 規 に引 か ゝり迷 惑 を感 じ

殺 そ の他 の不 法 手 段 に よ つて顛 復 せん と す る学 説 であ ると 狭 く 定義

を許 し たも の、 無 政 府 主義 的 事 項 を包 含 す る書 籍 の編 輯 人 及 出 版 者

た るも のが多 か つた学 者 は之 を 以 て スタ ア ・チ ェンバ ア の復 活 であ

る苛 酷 な も のと な つた 、 然 も 此間 諜 法 は非 常 に厳格 に施 行 せ ら れ そ

又 は か ゝ る記 事 を掲 載 せ る定 期 刊 行 物 の編輯 人 及 び主 筆 を 重 く 罰 し

ると 見 た ので あ つた、 又 大 審 院 も輿 論 に動 か され て平 時 の態 度 を 離

で は最 高額 罰 金 一万 弗 最 長 期禁 錮 二十 年 或 は右 二個 刑 罰 の併 課 等 頗

て居 る、 然 し 此 法律 は殆 ど 二十 年 間 適 用 を見 な か つた、 最 近 に至 つ

れ てす べ て を有 罪 と評 決 せ ざ れ ば 止 ま な か つた 、戦 争 心理 が裁 判 に

を下 さ れ て は居 つた が兎 も角 言 論 を圧 迫 す る 一点 は英 米 の伝 統 的 政

て総 同 盟 罷 業 を 主 張 し た紐 育州 議 会 議 員 にし て社会 主 義 者 た りしべ

及 ぼす影 響 は随 分 強 か つた 、 か ゝる言 論 自 由 の圧迫 を 目的 と す る立

策 を離 れた も ので あ つた、 尚 此 法 律 は 情 を知 つて無 政 府 主 義 の会 合

ンジ ャミ ン ・ギ ッテ ロウ を罰 し た る 一例 が あ る、 そ の後 かな り の運

や又 政策 と し て賢 明 な るも のな り や否 や に就 ては論 者 の意 見 分 れ或

法 が米 国 憲 法第 一修 正 が保 証 し て居 る言 論 自 由 の精 神 に違 反 せざ る

者 は戦時 中 は 止 む を得ず 絶 対 に違 憲 に あ らず 且 良好 の政 策 な りと考

の法 律 と同 じ く 無 政 府 主義 の主 張 を罰 す ると 同時 に治 安 妨 害 を行 ひ 又 は法 律 及 裁 判 所 に対 す る不敬 を奨 励 す る傾 向 あ る文 書 の頒 布 を も

用 を見 て居 るら し い、 一九 〇九 年 の ワ シ ント ン州 の法 律 は 亦 紐 育 州

進 ん で罰 す る。 更 に 一九 〇 八年 ニ ュウジ ア ジ ー州 の法 律 にも 同 じ く

へた れど 之 に反 対 せ るも のも多 か つた。

ン の欧州 に対 し て為 し た る借〓 を保 護 す るた め に労 働 者 が戦 争 に引

働 者 が亜 米 利 加 の参 戦 は 畢 竟 す る に資 本 家 の為 の戦 ひ で あ り モ ルガ

せら る ゝに至 つた、これら 立 法 の内 容 は必ず し も同 一で はな い、最 も

に於 ても 過激 社 会 運 動 抑 圧 の目的 を も つた立 法 は壮 ん に各 州 に制定

以 上 の間 諜 法 は戦 時 に於 て のみ適 用 せ ら る ゝ立法 た りし が休 戦後

(三)

危 険 思想 の伝 播 者 を 罰 す るも のが あ る が是 は適 用 の範 囲 を 前 者 に比 す る とず つと限 定 され た も のだ亜 米 利 加 の世 界 大戦 参 加 は 過 激 思 想

きず り出 さ れ る ので あ る と 主張 し武 器 弾 薬製 造業 の職 工 に同 盟 罷 業

穏 健 な も のは 一九 一九 年 の マサ チ ュセ ッツ州 の立法 で あ つて無 政府

に 対 す る亜 米 利 加 の輿 論 に非 常 の変 化 を 齎 し た、 同 国 の過 激 社 会 労

を煽 動 し 又亜 米 利 加 が採 用 せ る検 覈 的 徴 兵制 度 に対 し て そ の施 行 を

の罰金 ) 一九 一九 年 ペ ン シ ルベ ニア州 立法 (二 十年 の禁 錮 百 弗 以上

Common 一万弗 以下 の罰 金 ) 一九 一九 年 ウ エ スト ヴ ァージ ニア州 法律 (一年

主 義 其 他 過激 な主 張 を 絶 対 には禁 止 せず 只 重 大 な確 定 的 過 激 主 義 犯 罪 行 為 の勧誘 を禁 止 し た に過 ぎ な い。此 種 の法 律 は 畢 竟

に別 種 の過激 思 想 取 締 法 は 犯 罪的 サ ンデ ィ カリズ ム法 であ つ て其 内

禁 錮 百 弗 以 上 一万弗 以 下 の罰金 、 再 犯 一年 以 上 五年 以 下 の禁錮 ) 更

容 は 同 一にあ ら ざ るも 其 文 言 の曖 昧 にし て広 汎 な る点 に於 て は前 の

Law の勧誘 罪 に関 す る 規 定 を成 文 の形 に改 め た る に過 ず し て 実 質

い へど も最 長 期 禁錮 三年 最 高 額 罰 金 千 弗 の程 度 であ つた 、 一九 一九

せ ら れ た国 家 権 力 に 対 す る抵 抗 を 惹起 す る が如 き傾 向 を有 す る言 語

煽 動 法 と 似 て居 る仮 令 一九 一八年 モ ンタ ア ナ州法 律 で は適 法 に構 成

的 と し て は刑 罰 の重 くな れ る点 を 異 にす るば か りだ 、 し か も 重 し と

年 のイ ンデ ィ ア ナ州 に於 て制 定 せら れた る法 律 に は産 業 の 一般 的終

カ地方 法 律 (十 年 禁錮 罰金 五千 弗 ) 一九 一八年 ア リゾ ナ州 法 律 (禁

を も罰 し て居 る ので あ つて此 種 立 法 の例 とし ては 一九 一九 年 ア ラ ス

止 によ る革 命 の主 張 を 罰 し そ の刑 罰 は最 長 期禁 錮 五年 最 高 額 罰 金 五 千 弗 と な つて居 る、 他 の立法 で は煽 動 法 が著 る し いも の であ つて こ

ワイ法 律 ( 禁 錮 十 年 罰 金 五 千 弗) 一九 一七年 ミ シガ ン州 (禁錮 十年

錮十 年 罰金 五 千弗 ) 一九 一九年 カ リ フ ォ ル ニア州 立 法 一九 一九年 ハ

れは 極 め て広 汎 な る範 囲 に於 て過激 思 想 を 抑 圧 す る も のであ る、 一

ト州 政 府 を 顛 覆 す る目 的 を も つ て社 会 運動 をな せ るも のは重 い が単

九 一九 年 コネ テ ィカ ット 州 の法律 で は合 衆 国 政 府 又 は コネ テ ィ カ ッ

せ し む る意 思 を以 てな し た る主 張 又は 組 織 的政 府 に対 し て反 抗 を 示

も此 種 の立 法 を 制 定 す べ し と の提 議 が多 数 あ つて そ の数約 七十 に達

激 社 会 運 動 の状 況 を察 す る に足 るで あ らう 、 又 米 国 聯 邦議 会 に於 て

の分 類 は必 ず し も厳 密 な りと 言 ひ得 ざ るも 亜 米 利 加各 州 に於 け る過

罰 金 五 千弗 ) 一九 一九 年 ネブ ラ スカ州 法 律 ( 禁 錮 一年 以 上 十 年 以 下

す 如 き意 思 の宣 伝 を為 し た るも のは最 長 期禁 錮 五年 最 高 額 金 罰 五 百

し た と 云は る、 そ の中 グ レ ェア ム法 案 は死 刑 を規 定 し た ので あ つた 、

に学 説 を宣 伝 し た も のは 最 長 期 三 年 の禁 錮 、 最 高 額 罰 金 五 百弗 を課

弗 に処 す る、 此 種 立 法 は 可 成各 州 に採 用 され た ので あ つて そ の内容

これ が下 院 の司 法委 員会 に採 用 さ れ て直 に制 定 す べ し と推 薦 さ れ た

一九 一九 年 オ レゴ ン州 法 律 (禁錮 一年 以上 十 年 以下 罰 金 千 弗 ) 以 上

は 幾 分 異 る が 一九 一八年 ハワイ の立 法 (一年 以 上十 年 以下 の禁 錮 百

ので あ る、 そ の理 由 と す る所 は司 法 大 臣エ ・ミ ッチ ェル ・パ ア マア

罰 金 一千 弗 ) 一九 一九 年 オ ク ラ ホ マ州 法 律 ( 禁錮十年罰金五千弗)

弗 以 上 千弗 以下 の罰 金 ) 一九 一九 年 イ リ ノイ 州 立 法 (一年 以 上 十 年

せ ら るゝ の み であ る、 同 年 更 に改 め て制 定 さ れた 同 州 の法律 で は合

以 下 の禁錮 ) 一九 一七 年 ア イオ ワ州 立 法 (二 十 年 の禁 錮 千弗 以上 一

の言 に よ れば ワ シント ン市 のセ ント ラ リア に於 け る兵 士 の銃 殺 そ の

衆国 の政体 及 び軍 隊 を誹 謗 し 一般 民 衆 を し て合 衆 国 政 府 其 他 を 軽蔑

万 弗 以 下 ) 一九 一七年 ル イ ジ ア ナ州法 律 (廿 年 の禁 錮 一万 弗 の 罰

ふ にあ る、 然 し て司 法 委 員 会 は 現 行法 が何 故 に是 等 の暴 動 を 取 扱 ふ

て現 れ た無 政府 主 義 的 学 説 の旺 盛 が頗 る そ の範 囲 を拡 め 来 つた と い

他米 国 の制 度 存 立 を 破 壊 す るが如 き多 く の実例 及 最 近 の調 査 によ つ ︹マ マ︺

金 ) 一九 一九年 モ ンタ ア ナ州 法律 (一年 以上 廿 年 以 下 の禁 錮 二百 弗

五十 弗 の罰 金 ) 一九 一八 年 ニ ュウ ジ ア ー ジ州 (二 十年 の禁錮 一万弗

以 上 二万 弗 以 下 の罰 金 ) 一九 一九 年 ニ ュウ ハム シア州 (十年 の禁 錮 、

故 にと 述 べ た る に過 ぎ な い、 之 に対 し司 法 大 臣 のパ ア マア は こ の提

に不 適 当 な る か に就 て は何 等 言 及 せず 只危 険 な る思 想 が存 在 す る が

理等 を 研 究 し た か ?

ま で其 の背 後 に あ る米 国 の社 会 事情 、 社 会 組 織 、 法律 組 織 、 社 会 心

政 府 が是 等 米国 の諸 立 法 を参 照 し た とす れば 、 果 し て如 何 な る程度

法 資 料 と す る こと は非 常 に危 険 且 つ非 科 学 的 な や り方 であ る。 も し

究 熟 考 の上 参 照 さ れた 事 と 思 ふが 私 は之 を左 の六 つ の点 から 述 べ て

寡 聞 にし て未 だ聞 き 及 ば ぬ が 恐 ら く十 分 な 研

ム法 案 は頗 る極 端 な も のであ る が他 の法 案 も 亦 可 成 り酷 烈 な も の が

案 支 持 を 拒 絶 し下 院 で は之 を 握 り潰 し た の であ る、 兎 に角 グ レェ ア

見 たい

第 一、 先 づ是 等 の米 国 法 は 世界 大戦 の米 国 人 に 及 ぼ せ る心 理 的影

を 伝播 す る外 国 人 を国 外 に追 放 す ると か帰 化 市 民 の市 民制 を剥 奪 し て無 籍 者 と し た る 上国 外 に追 放 す ると か或 は 又グ ワ ムに 犯罪 植 民 地

し な け れば な ら ぬ。

響 の未 だ 脳 裏 に鮮 か で あ つた 時 分 に制 定 さ れた も ので あ る事 を 注意

多 か つた 、 或 は 不法 な る論 議 に対 し 廿年 の刑 を科 す ると か危 険 思 想

を作 つて本 国 人 と雖 も危 険 思 想 を伝 播 す る も のは之 に送 る と い ふ が

を妨 げ んと し て或 は徴 兵 制 度 に反対 し武 器 軍 需 品 工場 の労 働 者 に罷

欧 洲 大 戦 中米 国 に於 て は I ・W ・W等 の過 激 な 団体 が戦 争 の遂行

如 き があ つた 、 此等 の法 案 に対 し ては亜 米 利 加 の労 働 組合 そ の他 の 団 体及 新 聞 雑 誌 によ る猛 烈 な る反 対 が あ つて遂 に法 律 と な ら な か つ

業 を起 させ た り あ らゆ る陰謀 を逞 う した の であ る が、 米 国 の輿論 は

述 べた 間 諜 法 の制 定 さ れた のも実 に此 の気 運 の高 潮 に達 し た 一九 一

た。

七 ︱ 一八年 で あ つた ので あ る。 之 に対 し て過激 思 想 の抱 懐 者 は益 々

之 に対 し て大 に沸 騰 し そ の不 逞 の行 動 を大 に憎 ん だ のであ る。 先 に 今 回 過 激 社会 運動 取 締 法 案 提 出 に就 ては政 府 当 局 者 は ビ ス マー ク

(四)

の社会 主 義 鎮 圧法 の如 き 旧式 な も のを模 範 とし た ので は な く右 に述

激 し各 地 に於 て多 大 の騒 擾 を醸 す に至 つた 。

米 国 の過 激思 想 に対 す る態 度 は之 を独 逸 の間諜 制 度 に此 す れば そ

べ た る が如 き米 国最 近 の取 締 法 に範 を と つた のであ ると 云 つて弁 護

の動 機 全 く 異 り 正義 人 道 の為 に独逸 のミ リ タ リズ ムを打 破 す る神 聖

す る かも 知 れ な い。 果 し て然 ら ば是 等米 国 の立 法 は 模 範 と す る に足 る も のであ るか と 云 ふ問 題 が起 る、 私 は 些 か此 の点 に就 い て考 へて

な 戦 争 を 背 後 か ら脅 かす も のだ と 云 ふ義 憤 的感 情 に発 した も ので あ

治 の立 法 も、 米 国 の国 情 、 米 国 人 の社 会 心 理並 に他 の諸制 度 と の関

聯 せ し め て始 め て其 本質 を知 り得 るも ので あ る。 米 国 の過激 思 想 退

べ から ざ る重要 な点 であ る。

のであ る。 此 の点 は米 国 過 激 運動 取 締 法 を 観 察 す る に当 つて看過 す

可 能 な ら し め た のは戦 争 心 理 が米 国 人 の輿 論 を 支 配 し て居 た が為 な

む に足 ら ぬ 。而 し て先 に掲 げ た 諸法 律 は平 時 立法 で は あ る が、之 を

る。 此 の戦 争 に依 つて生 じ た 心 理 が休 戦 後 尚 存続 し た事 は 別 に怪 し

見 た い と思 ふ。

係 に関 聯 せし め て考 へな け れば 全 然意 義 を な さ ぬも のと言 は なけ れ

メ ー ト ラ ンド が 述 べ し如 く 一国 の法律 は其 の国 民 生 活 の全 体 に関

ば なら な い。 立法 に際 し て各 国 法 の条 文 を其 儘 翻 訳 し て之 だ けを 立

第 二、 此 の立 法 の背 後 に は外 国 人 特 に敵 国 系 外 国 人 の活動 が あ る

等 は往 々にし て成 文 法 を 軽視 し甚 だし き に至 つては 之 を無 視 す る事

で な く慣 習 法 を典 型 的 の法律 と考 へる様 に な つて居 る。其 の結 果 彼

は伝統 的 に歴 史 的 に発 達 し た コム モ ン ・ロ ー の合 理 性 を信 じ成 文 法

律 家 の訓 練 は所 謂 コム モ ン ・ロー で出 来 た も のであ る が故 に、 彼 等

欧 州 か ら来 た 移 民 は本 国 に於 け る政 治的 或 は経 済 的 圧迫 を免 れ ん

事 を 見 逃 し ては な ら な い。

が為 め、 政 治 上 の自 由 、 経 済 上 の富 源 豊 な新 大 陸 を 択 ん だ者 で、 そ にな る 。

さ て此 の非 法 律 家 と 法律 家 の異 つた 法律 思 想 は 所 謂 違憲 立法 問 題

の多 く は労 働 者 で あ る か ら従 つて資 本 主義 的 経 済 組 織 に 対 す る反 感

一般投 票 に よ る裁 判 官 の罷免 及 び判 決 破棄 の問 題 であ つて、 一九 一

に関 し て最 も 如 実 に現 れ る ので あ る。 其 の政 治 的 形 式 を と つた の が

が強 い。 而 も 彼 等 は多 く米 国 の語 に通 ぜず 、 自 国 語 で仲 間 同 志 のみ 話 す場 合 多 く 、 殊 に敵 国 系 米 人 が何 を 仕出 来 す かも 判 ら な いの で、

二年 の大 統 領 選 挙 の際 ローズ ベ ルト氏 は前 者 に基 い て是 等 二制 度 を

米 国 が之 を不 安 に思 つた のも 無 理 がな い。 尤 も 教 育 の方 法 に依 つて 彼 等 を米 国 化 す るに ベ ストを 尽 し ては居 る が十 分 効 果 の挙 が らざ る

る或 る事 を看 取 せざ るを 得 な い。

であ る が、 実 は其 背 後 に対 立 す る 二大 法律 思 想 の鮮 かな 衝突 の現 れ

つ て反 対 を試 みた 。 而 し て其 の論 争 は政争 の重要 論 点 を 形成 した の

設 く べ き を主 張 し 、 之 に対 し タ フ ト及 びウ ィ ルソ ン両 氏 は後 者 をと

此 の点 は日 本 の社 会 の如 く 殆 ど 全 部 同語 同 種 の国 民 か ら成 れ る国

時 に当 り彼 等 の活動 を 一般 に危 険 だ と 感 じ た のは 亦 当然 で あ る。

第 三、 次 に重 要 な事 は米 国 に於 け る立法 の 一般 的 性質 を 理解 す る

情 と頗 る趣 を 異 にす る事 を思 はな け れ ばな ら ぬ。

律 は 主権 者 の命 令 で あ る と 云 ふ考 へを有 つ て居 る。而 し て主権 者 と

米 国 の非 法 律 家 の法 律 思 想 は著 るし く オ ー スチ ン流 で あ つて、 法

が法 令 全集 を飾 る事 世 界 に冠 た る の奇 観 を 呈 し、 法 律 の条 項 と実 際

制 限 を 殆 ど考 慮 の中 に入 れ て居 な い、 従 つ て ﹁実 際 行 は れ ぬ法 律 ﹂

結 果 に関 す る 研究 は 著 るし く 欠如 し、 学 者 の所 謂 立 法 の社会 心 理的

彼 等 は其 の欲 す る所 を直 に法律 と し て表 さ ん事 を望 み、 而 し て其 の

以 上 の如 き を 以 て非 法 律 家 は 立法 に対 し て著 るし く 楽 観 的 で あ り

云 ふ のは 米 国 で は人 民 そ のも の であ る 。米 国 人 は 人 民或 は そ の代 表

こと で あ る。

機 関 た る議 会 によ つて直 接 或 は間 接 に制定 さ れた 制 文 法 を 以 て典 型

米 国 の立法 を参 照 す るに 当 つて は是 非 此 の点を 深 く 察 せ ね ばな ら

の間 の阻 隔著 る しき こと 米 国 の如 き はな いと 云 ふ状 態 を 示 す に至 つ

﹁試 み の立法 ﹂ な るも の が非 常 に多 い、 つま り熟 考 を経 ぬ法 律 が頗

な い。 上 述 の過 激 法 の如 き 、米 国 最 近 の立法 も国 民 輿 論 の結 晶 と見

た の であ る。

る多 いと 云 ふ結 果 にな る の であ る 。然 る に法 律 家 の法 律 思 想 は之 と

るを得 べ き も のであ る が、其 の輿 論 も先 に述 べた る如 く 畢竟 戦 争 の

的 の法 律 であ る と考 へる。 而 し て其 の人民 主 権 な る 観念 は著 る し く

反 対 に歴 史的 哲 理的 であ る。 米 国 法 学界 に於 ては オ ー ス チ ン の法 理

産 物 で あ る が故 に、 是等 の法 律 は戦 時 中 及 び戦 後 暫 く の間 は厳 格 に

立 法 的 活 動 を激 成 し 、 所 謂 法 律 の生 産 過剰 な る現象 を 生ず る、 所 謂

学 は頗 る不 人気 で寧 ろ オ ー ス チ ン批 評家 が最 も持 囃 さ れ る。 米 国 法

執 行 さ れ る かも 知 れ な い が、 此 の輿論 が 正当 な 状 態 に帰 し た場 合 遂 に は実 際 行 は れ ぬ も のにな り はせ ぬ か、 遂 には 法 例 全集 の飾 り物 に な つて了 ひは せ ぬ か、 之 れ私 の大 に疑 ひ を存 じ て見 ん と欲 す る点 で

第 四、 米 国 に於 け る立 法 は常 に之 を所 謂 司 法 権 の優越 と関 連 さ せ

あ る。

第 五 、米 国 の立 法 を観 察 す る に当 つては常 に其 の陪 審 制度 と関 聯

米 国 の多 く の州 に於 ては非 常 に広 汎 な 有 罪無 罪 の決 定 権 を陪 審 官

させ て見 な け れ ばな ら ぬ。 刑事 立 法 に於 ては殊 に然 り であ る。

に与 へて居 る。 或 る州 に於 ては事 実 問 題 の みな らず 法 律 問 題 に対 す

る最 後 の決定 権 を さ へ与 へて居 る。 而 し て陪 審 官 な るも のは其 地 方

た場 合 裁 判 所 は 之 を無 効 と 宣 告 す る ので あ る、 即 ち 裁 判所 は所 謂 違

米 国 に於 ては 議会 が聯 邦 憲 法 或 は 州憲 法 に違 反 した 法律 を制 定 し

国 禁 酒法 で も之 に反 対 な 地 方 の陪 審 官 は、 禁 酒 法 違 反 の罪 を無 罪 と

も 陪 審官 は輿 論 に従 つて之 を無 罪 と 宣 言 す る に躊 躇 し な い。 彼 の全

何 と も思 は な い。 仮 令 法律 が或 る行 為 を 処 罰 す る事 を規 定 し て居 て

が其 地 方 の輿 論 の反 対 を受 け た とす ると 陪審 官 は之 を無 視 す る事 は

の輿 論 を 著 る し く反 映 し て居 る所 に其 の特 色 が あ る、 若 し或 る法 律

憲 立 法 審 査 権 を 有 す る の で あ る。 之 は 米 国 立憲 政 の他 と 異 る点 で あ

て考 へねば な ら ぬ。

る。 故 に法 例全 集 に掲 げ ら れた 法律 でも違 憲 な り や否 や に つき 裁 判

此 の点 から見 て、 米 国 憲 法 第 一修 正 の言 論 自 由 の保障 に関 す る条

適 用 し た の で あ る が、 漸次 国 情 平 静 に帰 し人 心安 定 す る に至 れば 、

によ つて彼 等 の行 動 を 憎 め る が故 に陪 審官 も多 く の場 合厳 格 に之 を

是等 戦 時 中 に制 定 され た 過激 思 想 退 治 の新 法 律 も 輿論 が戦 争 心 理

評 決 す る を常 と す ると 云 ふ 有様 であ る。

項 に違 反 す る や否 やと 云ふ 事 は今 尚 問 題 と し て残 つて居 る の であ る、

るや否 や、 従 つて陪 審官 が杓 子 定 規 に之 が適 用 を 主 張 す る や否 や は

果 し て米 国 輿 論 が戦 時 中 の如 く是 等 の法律 の厳 格 な る適 用 を要 求 す

る かど う か を知 る こと が出 来 ぬ 。

所 の判 決 確 定 す る ま で は そ れ が果 し て生 き た法 律 、 現 行 の法 律 で あ

先 に述 べた 間諜 法 と言 論 の自 由 に関 す る憲 法 上 の保 障 の関 係 に つい

米 国 の特 殊 事 情 から 見 て 一の疑 問 と 言 は ねば な ら ぬ点 で あ る。

ては 大 審 院 に於 て は ﹁憲 法 に違 反 せず ﹂ と判 決 し た が之 は戦 時 立 法 であ る こと を忘 れ て はな ら な い。 名判 事 ホ ルム ス、 ブ ラ ンダイ ス両

第 六、 是 等 の法律 に 対す る学 者 の意 見 は殆 ど全 く 一致 し て反 対 で

心 理 か ら復 帰 し た場 合 、是 等 の立 法 は右 の憲 法第 一修 正 に違 反 す る

は 大 に注 目す べ きも の であ る。 一般 か ら言 つても 国 民 の感 情 が戦 争

意 見 と な つ て来 る のを常 と し て居 た のに徴 し ても彼 の此 の反 対 意 見

斯 る立 法 をな す の不可 な る点 に つ いて は 一流 の法律 学者 は殆 ど す べ

叩 いた が、 戦 時 に於 け る言 論 取 締 に つい て は意 見 分 れ た が、 平時 に

し て非 難 さ れ て居 る 。 私 も滞 米 中是 等 の立 法 に関 す る諸 家 の意 見 を

是 等 の法 律 は 米 国 の伝統 的 の法律 政策 に著 るし く 背反 せ るも のと

あ る。

と 云 ふ意 見 が裁 判 所 を 支 配 す る に至 る かも 知 れ ぬ。 之 は米 国 憲 法 の

て 一致 し て居 た 。

ホ ル ム ス氏 の意 見 は常 に十 年後 に於 ては裁 判 所 のオ ル ソド ック スの

氏 が之 に反 対意 見 を陳 述 し て居 る事 を忘 れ ては な ら ぬ。 過 去 に於 て

歴 史 に 照 し て頗 るあ り 得 べ き事 で あ る。

米 国 の如 き 司 法権 の優 越 、 陪 審 官 の広 汎 な る裁 量 権 等相 当 な る調

さ れば彼 等 を徒 に牢 に投 じ た と し ても 果 し て危 険 思 想 な るも のが根

実 に斯 る法 律 は真 に危 険思 想 を退 治 せ ん と し て過 激 思 想 を 研究 す

気 を 醸 成 す る事 は大 に慎 む べ き こと であ ると考 へる。

と 思 つ て居 る の であ る が、 更 に夫 に余 計 な 圧迫 を加 へて陰 険 な る空

私 は 現在 日本 の状 況 で も も つと自 由 な 空気 が注 入 さ れね ば な ら ぬ

る ゝ ので あ る。

陰 険 巧 妙 な る手 段 を 以 て其 の目的 を達 せ ん と努 め し む る に至 る を恐

ので は あ る ま い か､ 換 言 す れ ば言 論 圧 迫 の結 果 は 不平 家 を し て益 々

令 表 面 上消 滅 し たと し ても更 に陰 険 な 形 式 で潜 在 的 に存 続 し て行 く

絶 や し さ れ る かと 云 ふ に、 苟 く も不 平 あ る 以 上、 苟 く も 社 会組 織 に

＊

節機 関 あ る国 で す ら学 者 が挙 つ て反 対 をす ると 云 ふ事 は大 に注 意 せ

＊

欠 陥 あ る 以 上、 不 平 的 言論 の消 滅 す る こと は非常 な 疑 問 であ る。 仮

＊

ざ る べ から ざ る 点 で あ る。

以 上 述 べ た る諸 点 か ら観 察 し て私 は米 国 の制 定 せ る是 等 の法 律 も 之 を我 模 範 とす る に足 ら ぬも ので あ ると 談 ず る に躊 躇 しな い。 (五) 終 り に過激 社 会 運 動 取 締 法 案 或 は之 に近 き 案 が通 過 し た なら ば 如

本 法 通 過 の結 果 に つい ては 先 づ 二種 の予 想 があ り 得 る 一つは之 が

何 な る結 果 を来 す か に就 い て考 へて見 た い。

第 一、 の場 合 を見 る に、 元来 過激 な思 想 の発 生 及 び宣 伝 は社 会 的

ば 自 か ら 研究 と 云 ふも のは 不便 且不 可 能 にな つて来 る。 発 表 の出 来

るを 大 に躊 躇 す る に至 るは 明 か な事 であ る。議 論 の発 表 を 躊躇 す れ

る人 を 威 嚇 し其 の研 究 を鈍 ら せ る結 果 と な る 。此 法 律 の如 き頗 る広

不 平 の現 れな る事 が多 い、 子供 が面 白 半 分 に窓 硝 子 を破 る と同 じ 様

ぬ研 究 は少 数 稀 有 の篤志 者 な ら いざ 知 らず 、 多 く の者 は 無 用 の業 と

文 字 通 り厳 格 に執 行 さ れ る場 合 で、 他 は実 際 に於 ては執 行 さ れず に

な 心 理 で社 会 組 織 に挑 戦 す る者 は少 い。 故 に現在 の社会 組 織 を 維持

考 へ其 の結 果 一般 人 は 過激 思 想 な るも のが如 何 な る内 容 、 プ ログ ラ

汎 な 処 罰 の規 定 があ れ ば学 者 等 が此 等 の思 想 に関 す る議 論 を公 にす

せ ん とす るな ら ば、 先 づ彼 等 の不 平 を 識 り 、 間違 ひ あ れば 反 対 議論

ムを有 す る かを 知 る事 が出 来 な く な る、 従 つて過 激 な る主義 と穏 健

法 例 全 集 を飾 る に過 ぎ ぬ場 合 之 れ で あ る。

へて其 の不 平 を 明 か にす れば 賢 明 此 の上 な し で あ る が之 は 万 人 に求

を 以 て之 を 匡 正 す べ き で あ る。 勿 論 宣 伝 者 な る者 も冷 静 に理 性 に訴

に至 る のであ る。

な る主 義 と の闘 争 に於 て穏 健 な る者 は 大 に ハンデ ィ カ ップ を受 け る

右 二点 より観 察 す る に現 在 の法律 秩序 、 社 会 組 織 は此 の過激 社 会

め得 べ から ざ る所 、 彼 等 は其 の境 遇 の生 め る 心 理 か らし て激 す る事 多 く議 論 に熱 が出 て来 れば 脱 線 し 、 可成 り過 激 な 極 端 な 方 策 を主 張

運動 取 締 法 によ り て安 固 な る 地位 を 保 ち得 る に非 ず 反 つて大 い に危

之 に熱 烈 な る反 対 を起 さ ぬ か、 私 は 之 を怪 し む者 であ る。

険 な る地 位 に陥 れ ら るゝ に非 ざ るか。 熱 心な る現 行 制度 の維 持 者 は

す る様 にも な つて来 る のであ る。然 し彼 等 の心理 に立 入 つ て考 へて 見 れば 実 際上 は大 し た 害 を な す も のでな く 、 反 つて社 会 の欠陥 を指 摘 し て呉 れ る点 に於 て社 会 に利 益 を与 へるも のと 見 ら れ る ので あ る。

第 二、 若 し 此法 律 が実 行 され ぬ法 律 と し て止む と し た ら どう で あ

彼 是 云 ふ のは 無駄 な 様 な 感 じ もす る。 殊 に此 文 を載 せ た ﹃改 造 ﹄ が

て居 る次 第 であ るが、 然 し 一度 あ る事 は 二度 な いと は限 ら ぬ、 又 た

迭 し て居 る か、 兎 に角 此 法案 は到 底物 にな ら ぬ も のと 多少 安 心 も し

世 に出 る ころ には、 貴 族 院 で否 決 し終 つて居 るか、 乃 至 は内 閣 が交

そ れ はビ ス マ ルク の社会 主 義 者鎮 圧法 の運命 で あり 紐育 無 政 府 主

ら う。

義 取締 法 の運 命 で あ つた。 此 の場 合 に は実 際 上 の弊 害 は 少 い かも 知

い。 内務 省 や司 法省 に は、 此頃 は大 分物 の分 つた若 手 の官 吏も 居 る

他 の内閣 が此 んな 愚劣 な 法案 を案 出 す る虞 は 決 し て無 いと は 云 へな

田 徳

三

consolidate

and

amend

the

N但 oし v略 .1 し9 て14 Defence

5.C.8.27th

to

Act

of

the

Defence

Act と1云 9ふ 1) 4(これ に は其後 幾 多 の追 加、 修 正 並 に施

の作 用 を有 す るも のであ つて、 就 中、 社 会 主義 者 を目 の敵 と す る 点

事 情 は全 く 違 つて は居 るが、 其 実施 の跡 に就 て見 れば 、殆 んど同 様

も 無 い平 常 時 に突 然 天 降 り来 つて平 地 に波 瀾 を起 す も のと は成 立 の

常 法 と し て制 定 せ ら れた も ので、 我過 激 社会 運動 取 締法 の如 く何 事

間 諜 取締 法 (Espionag )eであ Aら cう t。 両者 共 何 れ も名 は 戦時 非

行細 則 が加 は つて居 る) と、 千 九 百十 七 年 六 月十 五 日 の米 国 の敵 国

Realm

5.Ges.

も 云 ふ可 き は、 千 九 百 十 四年 十 一月 二十 七 日 の英 国 の国 防 法 (An

つた。 就 中其 国 柄 か ら見 又 其 励 行 の猛 烈 さ か ら見 て、 此 案 の藍 本 と

此 案 と 同 じ様 な 取締 を励 行 し た例 は此度 の戦 時 中 外国 には若 干 あ

(二)

らう と 思 つて、 簡 単 に卑 見 を 陳 述 し て置 く こと と す る。

る から 、 二度 と再 び此案 の様 な悪 法 案 が世 上 の問題 と な る ことも あ

遺 憾 な く行 は れ て、 頑 迷 固陋 な 人 々の方 が兎 角 に勢 を制 す る事 であ

やう だ か らと て、決 し て安 心 は なら ぬ 。官 場 では グ レシア ム法 則 が

れ ぬ、 然 し 乍 ら何 時 政 権濫 用 者 に依 り て之 が利 用 さ れ ぬと も限 ら ぬ

又 一面 執 行 す る自 信 な き法 律 を 制 定 す る こと は反 つて国 民 の尊 法

危 険 は依 然 とし て存 し て居 る。

心 を 鈍 らす と云 ふ 忌 む べき結 果 を生 ず る。 此 の二点 から 見 て、 第 二 の場 合 は立 法 政策 上 策 の得 たも のでな い と 断 言 す る こと が出 来 る。 以 上論 じ た る が如 く、 政 府 が範 をビ ス マルク の法 でな く 米国 最 近 の立 法 に執 れ りと な すも 、 本法 案 は承 認 す べ から ざ る も ので あ り、

福

一朝 議 会 を 通過 す る に於 ては国 家百 年 の長 計 よ り見 て極 め て憂 慮 す

福 田徳 三意 見

べき も ので あ ると 信ず る の であ る。

(4)

過激社会運動取締法案 に就て

(一)

既に各方面から完膚なく批判 された過激社会 運動法案 に就 て今更

o

行 の治 安 警察 法 に含 ま れ て居 る ので彼 法 が却 つて社 会 民主 党 を繁 栄

鎮圧 法 の集 会 、 結 社 、出 版 の鎮 圧 は粗 ぼ同 程度 に於 て、既 に我 が現

行 の治 安警 察 法 の方 に縁 の近 いも のと見 るが適 当 であ らう 。 独逸 の

独逸 社 会 党鎮 圧 法 は 此法 案 と は寧 ろ 縁 の遠 いも ので、 彼 法 は 却 て現

に於 て甚 だ似 寄 つた も ので あ る。此 等 に比 べ る と千 八 百七 十 八年 の

たも のだな と思 つて居 た 。幸 ひ我 邦 で は戦 時中 は何 事 も な く て済 ん

会 主 義者 取 締 を や つた のを 見 て、 私 は此 れは物 騒千 万 な 事 が始 ま つ

最 自 由国 と して 知 ら れ て居 る英 米 二国 共 右 に云 ふ極 端 に反動 的 な 社

迷 立 法病 は暫 ら く鳴 を静 め て居 た。 然 る に此度 の大 戦 争 中 、世 界 の

にも其 れは 治 安警 察 法 、 新 聞紙 法 、出 版 法 程度 に止 ま つ て、 其後 頑

法 以 上 の反 動 的頑 迷 法律 が出 て来 そ う であ つた か ら であ る 。処 が幸

だ が、今茲 大 正 十 一年 にな つ て、 単 に 近藤 某事 件 一つが あ つたと 云

せ し めた 作用 は、 同 じ 程度 に於 て我治 安 警 察 法 に就 て云 は る可 き と 思 ふ。 牧 野博 士 は東 京 日 々に寄 せ た論 法 鋭 利 な論 文 に於 て、 主 と し

つ の幸 は、 此化 物 案 は支 離 滅 裂 な頭 の善 い の悪 い のを超 越 し た チ ヨ

ン髷案 で あ る丈 け 、 早 くも 其 正 体 を見 顕 は さ れた 事是 れ であ る。 恐

ふ こと を 口実 と し て愈 々 スペクト ルが其 正 体 を 現 は し て来 た。 唯 一

ら く此 法 案 位無 茶 苦 茶 な法 案 はあ るま い。其 れ丈 け之 を退 治 す る に

て此 の鎮 圧法 を引 照 し て居 ら れる 。博 士 の論 ぜ ら る ゝ所 は私 も全 然

ので はな いか と私 は 考 へる。 過 激取 締 法 案 若 し霊 あ らば 独逸 の鎮 圧

骨 が折 れな く て済 む わ け で あ る。

同感 で あ るが、 其 は 寧 ろ 治安 警 察 法排 斥 に こそ好 き論 拠 を 与 ふ るも

法 と 比 べら れ る のは 余 り名誉 過 ぎ るを嘆ず る であ ら う。 何 と な れば

﹃ド ー ラ﹄"Dor "a と、 呼 ぶ、 ソラ ﹃ド ー ラ﹄ が 又暴 れ出 し た ぞ 気

英 国 の国 防法 は、 口善 悪 なき 人 々が其 名 を正 し く呼 ばず に、唯 だ

( 四)

此案 は独 逸 の彼 法 に比 し て遙 か に其 固陋 さ其 頑 迷 さ に於 て数 等 の上 に出 る も ので あ る から であ る。 牧 野博 士 は右 の論文 に於 て ﹃曾 ては

邦 で も そ れ に類 似 の こと が 実 現 され るに違 ひな いと待 ち 設 け て居 た

を 附 け うと 云 つて労 働 組合 員 や社 会主 義 者 は警 戒 を 加 へる。 ﹃ド ー

ド イ ツで社 会 民 主主 義 者鎮 圧法 と いふ も の があ つた、 そ れ で私 は我

ンと 我治 安 警 察法 、 新 聞 紙 法、 出 版 法 に於 て実 現 せ ら れ て居 ると 云

ので あ る﹄ と 云 は れ て居 る が、 実 は其 は待 設 け る ま でも な く、 チ ヤ

D(efe) nO c( ef) (th )R e (ea) lA m(c )t

ラ﹄ と云 ふ のは法 律 の名 が法 性寺 入道 的 に長 い から其 頭 字 丈 け を取 つ て 一語 と し た の であ る

つても 過言 で は あ る ま い かと思 ふ。

る ﹃英国 現 行 の諸 法 律 中 此 法律 位 徹底 的 にし て広 汎 な 権 力 を有 す る

デ ーリ、 メ ー ル、 イ ーア ブ ルクす ら其 の千九 百 十 九年 版 に云 つて居 私 は寧 ろ モ ツト非 道 い事 が起 る であ ら う と思 つて居 た、其 は明 治

て蹂躙 し た。 少 し でも 疑 はし い人物 は容 赦 な く収 監 又は 追 放 さ れ、

も のは他 にな い。 ﹃ド ー ラ﹄ は戦 時 中英 国 民 の最貴 最 重 の自 由 を 凡

(三)

四十 年頃 の事 であ る。 当 時 (四十 一年 四月 ) 私 は ﹃独逸 社 会党 鎮 圧

徴 兵 反対 の言論 は 一切 鎮 圧 せ ら れ少 し で も軍事 に妨 げ あ り と認 め ら

法 の始 終﹄ と 云ふ論 文 を当 時創 刊 早 々の ﹃国 民経 済 雑誌 ﹄ に のせ て、 後 に拙著 ﹃続経済学研彼時既 に治 安警 察 識 者 参 考 の便 に供 し て置 いた 。 究 ﹄ に収録して置 いた

取 締 ら れ る。 事 実 に於 て我 々は、 現 英 国 に於 て 一体如 何 な る種類 の

れた も のは直 ち に長 期 の懲役 に処 せら れ、 商 業 取引 の多 く は 厳 重 に

付 いた ので はな いか と思 ふと、 自 ら失 笑 を禁 じ能 は ぬ。

会 に提出 し たと か 云 ふ。 我 過激 法 案 の ﹃ 其 他 ﹄ は此 れ から で も考 へ

案 ) を新 た に制定 す可 き こと を主 張 し 、 政府 は 其 議 を容 れ て案 を議

思 ふ に我政 府 は 、英 米 二国 す ら既 に然 り、 況 んや後 進 の我 邦 を や

(六)

行 為 丈 け が此 法 に触 れず し て済 む か を知 る こと が 出 来 な い の で あ る﹄ と 。 (五)

は存 し て居 ら ぬ のであ る。 平 時 は 集会 、 結 社、 出 版 を 甚 だ自 由 に取

冷 静 にし て考 へて頂 き度 い。 英 米 二国 に は治安 警 察 法 のよう な 蛮法

と でも 言 ふ て、 彼 の復 古 的 法 案 を 弁護 す るで あ らう 。然 し少 し頭 を

ア リ ング (社会 主 義 平 和主 義 を奉ず る 一壮 年 経 済 学 者 )裁 判 顛 末

米 国 の ﹃敵 国 間諜 取 締 法﹄に就 て は、ヒ ルク ヰ ツト が ス コツト ・ニ

Scott の N 序e文 aに r於 in てg 、 ﹃独 1探 91 を9 取締 る

目的 の為 め に作 ら れた と 云 ふ所 謂 間 諜取 締 法 ﹄ の条 項 に依 つて罪 に

の脅 威 (と 多 く は速 断 盲信 す るも の) に出 会 つた から 、 彼 の如 き 立

扱 つて居 る ので あ る。其 れ が戦 時 非常 の場 合 と、 ボ ルシ エヴ ヰズ ム

of

問 は れ た外 探 は実 は 一人 も な い の であ る。 其 反対 に此 法 に触 れ たも

て、 廃 止 を主張 し、 英 国 に於 ては 決 し て長 い生命 を保 つことな か る

法 を敢 てし た ので あ る が、 其 は 米 国 に於 て は、検 事 総 長 が先 にな つ

trial

のは 急進 主 義 者 並 に平 和 主義 者 計 り 一千 名 もあ る。 大 抵 の社 会主 義

Ｔhe

者 は 何 れ も此 法 によ つて極 刑 に処 せら れ た。 我 ニア リ ング が無 罪 の

が付 け てな か つた が、 議 会 で は三 年 限 り と 云 ふ期限 を付 け てや つと

可 き暫行 の法律 で あ る。 独逸 の社 会 党 鎮 圧法 も 政府 の原 案 に は期 限

へら れた如 く、 朝 憲紊 乱 其 他 の公 け の安 寧 を害 す る処 為 に対 し て は、

で茲 刑 法 の事 に迄 論及 す る積 はな い が、牧 野 博 士 が屡 々我 々に教

(七)

たe の で、 我 過激 法 の如 き無 期 限 の永 久 法 ではな い ので あ る。 o通 f過 し th

ンや ゴ ード マンも 亦此 法 によ つ て米 国 か ら追 放 せ ら れ た の であ る。

Russian とIW .o Wr .k We .rの s 会 員 は続 々とし て此

Federation

宣 告 を受 け た のは誠 に稀 有 の僥倖 と 云 ふ可 き であ る﹄ と。 バ ーク マ

of

其 後 も 主 と し てボ ル シ エヴ ヰズ ム の宣 伝 者 や Union

発 し た時 の検 事総 長 グ レゴ リ ーと 云 ふ人 は最 も徹 底 的 に社会 主 義 者

我刑 法 は 十 二分 に取締 つて居 る。 殊 に大 逆罪 に就 ては ﹃危 害 を加 へ

法 に よ つて処 罰 せら れ て居 る ので あ る。 ス コツ ト ・ ニア リ ング を告

狩 り を実 行 す 可 く此 法 を縦 横 無 尽 に振廻 し た 人 で、 悪 魔 の如 く看做

んn と, しtた 加oへ seditio hる e者 ﹄ Pも ro﹃ m -た る者 ﹄ と全 く 同 一に取扱 ふ程 に徹 底的 厳

り、 我 々は既 に此 種 の取締 の十 分 以上 な る こと に驚嘆 し尽 し て居 る

Punishment th重 eな rも ef のo でr あ, るa 。n 其d外 に f治 o安 r警o 察t 法h あeり r、新 聞 紙 法 あ り、 出 版法 あ

defining

さ れ て居 る 一人 で あ る。流 石 に彼 の後任 者 パ ー マーは 、 此 の如 き 法 bill

thereof,providing

の曲 解 を正 し からず とし 、A ｔion

ｐurpos (誘 e惑 s其 の促 進 の意 義 の限定 並 に其 所 罰 及 其 他 に関 す る

近藤 某 事 件丈 け で慌 て ゝ此 法 案 の様 に行 き が け の駄 賃的 に 一掃 的 鎮

を感 ず る様 な ケ チな 国 で は 日本 は断 じ て無 い。 (B) 近藤 某 事 件 の

ので はな いか。 千 八 百 七十 八 年 の独逸 と も大 分 事 情 が違 ふ、 況 ん や

如 き を取 締 る法 規 が欲 し いな ら 、刑 法 に 一箇 条 を加 へれば其 れ で済

であ る。 近藤 某 が何 千 何 万貰 つた か知 ら な いが、 其 れ位 の事 で危 惧

指弾 し つゝあ る のであ る。戦 時 非常 と 云 ふ特 別 の事情 が あ つた か ら

む。 (C) 然 し其 手 数 も実 は無 用 で あ る。 次 に (二) に答 へよ う 。

圧令 を布 く こと は愚 で あ る は勿 論、 国 の体面 とし ても見 苦 し い限 り

こそ そ んな 法 律 が 通 つた ので、 今 日 な れば 決 し て夢 想 だ も出 来 な い

今 日 の英 米 二国 と をや 。英 米 二国 の例 は決 し て例 と す る こと は出 来

の であ る。 然 る に近藤 某 唯 一件 の為 め に、 何 等 の危 険 も な い平 地 に

罰 の軽 過 るか 重 過 る かは刑 法 の間題 であ る 。軽 過 ると 思 つた ら刑 法

な い のであ る。其 れ でも英 米 の識 者 は囂 々と し て其 不当 な る取 締 を

俄 か に雲 を呼 び風 を起 す 底 のク ーデ タ的 法 律 を 提案 す ると は。 実 に

な り其 他 の現 行法 を改 正 す れば 済 む。 別 に新 法 を布 く 必要 は 毛頭 も

思 は れ な い。 逸 独 の鎮 圧法 の罰 は遙 か に軽 い こと は牧 野博 士 が既 に

な い。 然 し 我 々 の素 人 考 に は、 罰 は寧 ろ重 過 ぐ ると も 軽過 ぎ る とは

驚 い て物 が 云 へな い のであ る。 (八)

の取 締 規 程 は な い。 英 国 で は ﹃ 或 る学 説 又 は主 義 の宣 伝 。 例 へば智

き法 規 がな い と。 先 づ最 後 の項 か ら答 へよ う。 成 程金 品 の供 給 云 々

る (三 ) 外国 人 から 宣伝 用 と し て金 品 の供給 を受 く る者 を 取締 る可

ら れ る。 宣伝 を取 締 る と そ れは 必竟 言 論、 思 想 の自由 を抑 圧す る こ

法手 段 を行 ふ とき 、 之 を罰 す れば 其 れで取 締 の目 的 は十 二 分 に達 せ

で決 せら れ る。 真 に朝 憲 を紊 乱す ると き、 暴 動 、 暴 行、 脅 迫其 他 不

最 後 に (一) に答 へよう 。 宣伝 を 含 む か含 ま ぬ かは、 一々の場 合

(九)

此 く 云 ふ と、 政 府者 は云 ふ で あら う 、成 程 朝 憲紊 乱 、 暴動 、 暴 行 、 十 分 に説 明 し て下 さ つた。 脅 迫 其 他 の不法 手 段 に対 し て は現行 法 に於 て取 締 つ て あ る。 然 し

識 、 道 徳 の発 達 を含 む 保守 主 義 の宣 伝 、 社 会主 義 の宣 伝 、 非 ヴ イ ヴ

と にな る。更 ら に、 宣 伝 せ んと した る者 を罰 す る に至 つては、 実 に

(一)其 は宣 伝 をも含 む か含 ま ぬ か十 分 明瞭 でな く (二) 罰 が軽 過

イ セ ク シヨ ン主 義 の宣伝 等 の為 め にす る醵金 は之 を慈 善 行 為 と看做

言語 道 断 で あ る。

これは 牧野 博 士 の詳 示 せら れ た如 く 、大 逆 罪 に就 て のみ承服 し得

す 、 但 し 此等 の学 説 主義 が道 徳 を破 壊 し 其 他有 害 な る とき は、慈 善 行 為 と 認 めず 、 然 る場 合 には 、其 学 説 、 主義 の内 容 を吟 味 す るを要

る とし ても、 決 し て其 他 の罪 に延 長 す 可 か ら ざ る極 端 の事 例 であ る。

laws 現 oに f危 害 Eを n加 gl d者 と V、 I単 . に加 へんと し た る者 と を同 一に取扱 ふ へa たnる

す (ラ ツ セ ル対 ジ ヤ ツク ソ ン事件 ) 主 と し て問 ふ所 は其 目 的 た る可 Halsbury,The

こと は、常 識 上、 健 全 な 理性 の判 断 上 、 決 し て妥 当 と は思 は れな い。

of

IV.1908.pp.116 )。& 我 邦1の 2 現3行 法 規 に は、此 種 の 金 品 の

唯 事極 悪 事 に関 す る が故 に今 日迄問 題 にせ ら れ な か つた ので、其 延

し﹄ と し てあ る。 (Earl

受 授 に就 て何 等 の規 定 のな い こと は、 事 実 で あ る。然 し (A) 単 に

単 に宣 伝 せ ん と し た る者 に之 を 延 長 せ ん とす るは 、 実 に驚 く 可 き事

長 は 他 の如 何 な る場 合 にも 断 じ て不可 な る は言 ふ迄 も な い。 然 る を

る。 恐 ら く是 れ は後 から 付 いた 下 司 の智 慧 で あ らう 。 立案 当時 は、

府 主 義 は 必 ず朝 憲 を紊 乱 す 、 共 産 主 義 は 必ず し も然 ら ず と 云 つて居

る事 項 云 々と あ る 。政 府 委 員 の貴 族 院 に於 け る説 明 によ る と、 無 政

政 府 は 一体無 政府 主 義 とは 何 、 共 産 主 義 と は何 を 云 ふ か を知 つて

ソ ンナ区 別 等 は 少 し も考 へて居 な か つた 事 と思 ふ。

であ る。 此 法案 中 私 が最 も 反 対 す る処 は、 実 に此 点 に在 る。 此 く の 如 き は法 理 も常 識 も 一切蹂躙 せ ら れ る次 第 で あ る。 ( 十)

か らう 。 然 り其 れ で十 分 では な いか 。 何 故特 に無 政 府 主義 共 産 主 義

甚 だ悪 い こと で あ る か ら其 れ は 七 年 で も 五年 でも 懲役 にす る は宜 し

れ は漢 学 者 の 口吻 を 生 写 にし た も のと 思 ふ が、 兎 に角 文字 の表 では

居 る ので あ ら う か如 何 か。 朝 憲紊 乱 と 云 ふ事 は甚 だ 漠 然 た る語 で こ

事 あ る の み。 而 し て私 は恐 ら く 此 が 立案 者 の事 実 上 最 も 重 き を置 く

此 く考 へて来 る と残 る所 、 自 首 者 に対 す る刑 の減 軽 又は 免 除 の 一

点 で はな い かと 想像 す る者 であ る。 近藤 某事 件 も 中 々真 相 が 得 ら れ

廉 丈 け で尾 行 を 附 け る、 家 宅 捜 索 を や る 。然 る間 に他 方 で は 一国 の

繰 返 し て居 る。 人 と し て極 て穏 健 な 人 で も社 会 主 義 の巨 頭 な り てふ

社 会 主 義 者 や労 働 運動 者 に対 し て は常 に見当 違 ひ の検 挙 騒 ぎ 斗 り を

を ﹃味噌 漉 し摺 子木 其 他 を以 て人 を 殺 し た る者 は死 刑 又 は無 期 若 く

も実 際 上 にも 一つもな い の であ る。 仮 り に現 行 刑 法 の第 百 九 十 九 条

あ る。 無 政 府 主義 、 共産 主 義 丈 け を茲 に特出 し た理由 は、 理 論 上 に

か らう 。 否 ﹃凡 て﹄ も要 ら な い唯 だ ﹃朝 憲紊 乱 す る事 項﹄ で沢 山 で

も 可 笑 し いと思 ふ だ らう から モ ツト 簡 単 に ﹃凡 て﹄ と 改 正 し たら よ

乱紊 す る事 項 ﹄ と す る方 が勝 で あ るが ソ レ ハ如 何 に無茶 苦 茶 な 人 で

首 相 が首 都 の大 玄 関 で白 面青 年 の為 に刺 さ れ て如 何 と も出 来 な い。

は 三年 以 上 の懲役 に処 す ﹄ と し た り 、 第 二百 九 条 を ﹃鬼 ゴ ツ コ、 隠

其 他 に関 し と し た のか。 モ ツト 明 瞭簡 単 に単 に ﹃其 他 に関 し朝 憲 を

警 察 と 云 ふ も のは 、間 抜 け の代 表 者 かと も思 は れ る。 ソ コデ 自 首奨

れ ん坊 其 他 に関 し 過失 に因 り人 を 傷 害 し た る者 は五 百 円 以下 の罰 金

な か つた 。 ﹃お め で た いこと ﹄ の筆 者 、頒 布 者 は二 年 近 く 経 つ た 今

励 が 大 に 必要 と な る。警 察 は自 己 の無 能 を十 分 に知 つて居 つてと て

又 は科 料 に処 す ﹄ と し た ら如 何 な も のだ と思 ふ か。

日未 だ に分 らな い。 日本 の警 察 は 一体 何 を し て居 る の であ ら う か、

も 自 力 で は 過激 主 義 者 を 検挙 し得 な い から、 七年 と か 五年 と かで驚

乱 云 々は冗 語 で あ る。 単 に ﹃無 政 府 主 義 又 は共 産 主義 を宣 伝 し 又 は

主義 の宣 伝 又は其 予備 行 為 を 罰 せん と す る も のと解釈 す れば 朝 憲紊

反 対 に立 案 者 の頭 を常 人 並 と 前 提 し て、 コ レ ハ無 政府 主 義 、 共 産

( 十 二)

し て置 いて、 さ て可 成 自 首 を奨 励 す る。 ソ レデ 幾 分 か責 任 が軽 く な

にも 程 が あ つた も ので 文 明国 の大耻 辱 と 断ず る 外 は な い の であ る。

る 、 と で も考 へて居 るも ので はな から う か。 さ り と は意 気 地 のな い

( 十 一) 法 案 の第 一条 に は無 政 府 主 義 、 共産 主 義 其 他 に関 し朝 憲 を紊 乱 す

宣 伝 せ ん とし た る者 は ﹄ とす れば 、 兎 に角 理窟 は通 る。然 し 左様 す

然 し其 れは 主義 其 物 の エツ セ ン シア ル では な い。単 に方 法 上 の 一見

上 でも 今 日 か ら明 日 へと 直 ち に 理想 を 実 現 せ ん とす るも のも あ る が、

な どと 考 へる馬 鹿 は已 め て貰 ひ た い。 無 政府 主義 者 中 には無 論 理 論

し よう と 云 ふ 方法 論 を取 るも のは、 成 程 政 府 委 員 の云 ふ如 く 必ず 朝

ると此 法 案 は 更 ら に無 用 のも のと な る。共 産 主 義 の宣 伝 又 は其 予 備

憲 を紊 乱 す と も 云 へよう 。 殊 に ﹃テ ロリ スト ﹄ に至 つては 然 る ので

行 為 が悪 いと 云 ふ のは 、 社会 全 体 に就 て云 ふ か、 個 々 の場 合 に就 て

白 川視 察 記 を公 け にし た 藤森 氏 以下 私 ま で 悉 く皆 宣 伝 し た るも のと

あ る。 然 し 其 即時 実現 論 者 と雖 も、 必 ず 理 論 上 不法 手段 によ る可 し

き将 来 の実 現 を期 す る も のも あ る の であ る 。今 日 か ら明 日 へと実 現

し て罰 せ ら れな け れば な る ま い。 甚 だ 物 騒 な 次第 であ る。否 日本 の

と主 張 す るわ け で は な い。 否 、 一切 の合 法 性 を 厳 守 し て其 実 現 を期

解 であ る。 他方 に無 政 府 主 義 者 の中 に は、 共産 主義 者 同 様 極 め て遠

古 代 に は、 共 産 主 義 は 随 処 に行 は れ て居 た事 は歴 史 上 の儼 然 た る事

す可 し と 主 張 す るも のも あ る ので あ る。 否 々無 政 府 主義 の学 理 上 の

云 ふか。 個 々の場 合 な ら 、現 に共 産 主 義 を 実 行 し て居 る も のあ る を

実 では な いか。 否 独 逸 法 の飜 訳 た る現 行 の民 法 に さ へ ﹃入 会 権 ﹄ と

如 何 せ ん や。 飛 弾 の白 川 の人民 は続 々此法 に問 は れ る こと にな り、

云 ふ共 産 主義 時 代 の遺 物 を チ ヤ ント認 め てあ るで は な い か。 民法 こ

開 祖 た る英 国 の ウ ヰリ ア ム ・ゴド ウ ヰ ンは三 の ﹃シ ステ ム﹄ 換 言 す

は辻

ゴド ウ ヰ ン の書 は 少 し 進 ん で経 済 学 を 研 究 せ ん とす る者 は 必ず 読

﹃自 我 経﹄

まね ば な ら ぬも の であ る ので あ る。 無 政 府 主義 が 一切朝 憲 を紊 乱 す

( 十四)

潤 氏 の手 に よ つて刊 行 せ ら れ て居 る の であ る。

実 現 の方 法 を 少 し も 説 いて居 ら ぬ ので、 現 に其 書 の邦 訳

るで はな い か。 又 徹 底的 最 純 の無 政府 主義 の唱 首 た る ス チ ルネ ルは

れ ば 三階 段 を 説 い て順 次 に之 を経 過 す る も の とし て詳 し く教 へて居

そ共 産 主 義 宣 伝者 のチ ヤ ム ピオ ンと 云 ふ可 き であ る。 (十 三) 更 ら に、 社 会 、国 、 全 体 を あ げ て の共 産 主 義 実 現 と云 ふ意 と す れ ば 、 其 れは 宣 伝 位 で行 は れ るも ので な い の は分 り 切 つた話 であ る。 共産 主 義 者 自 ら と雖 も 先 づ社 会 主義 を 実現 し、 長 い経過 の後 に共 産

ーも全 く 同 じ で あ る。 左 様 な 大 仕掛 な 而 も遠 い将 来 の事 を宣 伝 す る

主 義 にな ると 云 つ て居 る こと は 、 独 逸 の社 会 党 も レ ニ ン、 ト ロツ キ

のが何 の害 にな るか 。其 為 に朝 憲 を紊 乱す れば 、 其 れ は無 論 悪 い事

るも のな ら、 ゴド ウ ヰ ンや ス チ ルネ ルの書 は其 頒 布 、飜 訳 を禁 止す

無 政 府 主 義 の誤 謬 を指 摘 す る ことな し には 、 社会 政策 の根 本 理論 を

可 き で は な いか。 然 し マサ カ左 様な 暴 挙 は出 来 ま い。 私 共 は学 理上

無 政 府 主 義 は 、其 れ と は事 が無 論 違 ふ 。然 し普 通 云 ふ無 政府 主 義

と階 級 闘 争﹄ の序 論 に於 て、 少 し論 じ て置 いた)。然 る に 反 対 論 者

講 ず る こと は迚 も出 来 な い の であ る。 ( ダ カ ラ私 は 近 著 ﹃社 会 政 策

で罰 す 可 き であ るが、 然 る場 合 は 、朝 憲紊 乱 とし て罰 す れば 済 む で

は 実 は ﹃テ ロリズ ム﹄ で あ つて、 正 当 の無 政府 主 義 を唱 ふ る も のは

は な い か。

其 れ と は同 一視 す 可 き で はな い。 ク ロポ ト キ ン斗 りを無 政 府主 義 者

具 にな る 外 はな い。 口を 押 へ付 け ら れ て居 るも のに議 論 を吹 か け た

に官 人 た りと は云 へ情 け な い にも 程 が あ る、 否 我 々は為 す ま じ き も

制 定 の必要 を認 め る のみ か大 い に其 必要 を力 説 し て居 る のは、如 何

これ は当 然 至 極 の事 で あ る が、 此 れ 丈 け物 の分 る頭 を持 ち乍 ら 本法

可 からず 。

と て何 に もな ら ぬ。 ソ レデ事 が済 めば 宜 し と す る か、 決 し て事 は済

のは宮 仕 への感 を 深 く す る の外 はな い。

た る無 政府 主 義 者 に 一切 言論 を 禁 じ て仕 舞 つた ら、 学 問 の研 究 は 不

ま ぬ。 言 論 を杜 絶 さ れ る者 は 必ず 他 の方法 で其 思 想 を表 現 す る に相

る事 は、 外 国 の歴史 を知 らず と も 日本 の歴 史 だ け知 つて居 れ ば、 之

大 化 の改 新 、 明 治 の維 新 何 れ も 社会 の根 本 組織 を変 革 し た も のな

(十 六)

違 な い。 其 れ こ そ危 険 千 万 で あ る。 敵 にも十 分 口 を開 かせ て、扨 此 方 か ら そ れ に応 戦 す る のが 一番 穏 当 で有効 な方 法 で あ る。 所 謂 ﹃ 思 想 は思 想 を以 て﹄ と は実 に此 謂 であ る 。政 府 委 員 の答 弁 は 、誠 に 一 知 半 解 噴 飯 に堪 へな い耳学 問 を実 証 す るも のであ る。

で、 変 革 一日 止 む れは 即 ち 社 会 は死 ん で仕舞 ふ こと 、 我 々 の肉 体 の

に進 化 の過 程 を経 て変 革 し て行 く か ら こそ 活 き 且 つ発 達 し て行 く の

を否 定 す る こと は出 来 な い。否 社会 は絶 へず 間 断 な く其 組織 を徐 々 次 には 第 三条 の社 会 根 本 組織 の変革 云 々が来 る。 此 点 は政 府 も 多

( 十 五)

少 物 が分 つた こと を云 つて居 る。即 ち 二月 十 九 日時 事 新 報 掲 載 の内

組 織 が時 々刻 々新 陳 代 謝 し て変 化 し つゝあ る のと同 じ であ る。 一日

社 会 も 亦 然 り で あ る。 内 務当 局某 氏 には 是 れ丈 け の事 は 能 く分 つて

でも 便 通 が な け れば 、 心 地 が悪 い、 三 日も便 通 が止 れば 病気 にな る。

務 当 局 者 談 な る も の に左 の通 り あ つた。

居 る。 誠 に結構 で あ る。

暴 動 、 暴 行 、脅 迫 等 の 不法 手 段 を 以 て、 社 会 の根 本 組織 を変 革 せ んと す る 者 を も厳 罰 に処 せ ん と し た る は、 之 亦 適 当 な る措 置 な り

き は 、 国 家的 反 逆 な りと 云 ふ も 過言 にあ ら ず 。 而 し て根 本組 織 の

り であ る 。然 し暴 動 暴 行脅 迫 其 他 の不 法 手段 は︱

行 脅 迫其 他 不法 手 段 によ る場 合 が いけ な いと 云 ふ。 そ れも全 く其 通

然 ら ば其 変革 を期 す る事 の内 何 が取 締 ら る可 き かと 云 へば 暴 動 暴

( 十 七)

と 云 ふ 可 し。 社 会 の組 織 は 云 ふ迄 も な く歴 史 と 時 代 と を基 礎 と せ る最 も 健 全 な る も のな ら ざ る可 か らざ る に拘 ら ず 、 不 法 手段 即 ち

変 革 は 必ず し も悪 き 問 題 にあ らざ る の みな ら ず 、 実 際変 革 を必 要

前 記 暴動 、暴 行 、 脅 迫 等 の不 法 手段 を以 て其組 織 を 変革 す る が如

と せ ば 、 之 を励 行 す るも 敢 て差 支 な き事 な るが 只 其 の場 合 は適 法

の変 革 を 目的 とす るも せ ざ るも 何 れ も いけな い ので あ る。 ダ カ ラ此

丈 け で其 れ が悪 い事 と 云 ふ事 は分 つて居 る で はな いか︱

社会組織

不 法 手段 と云 ふ

の手段 を 必要 と す 。 即 ち 議 会 に対 し て建 議 し 若 く は 決議 し 其 他 合

第 三 条 を少 し道 理 の通 つたも のと し よ う とな れば

法 的方 法 を以 て為 さ ざ る べ か らず 。 要 は 法 律 の範 囲 を出 で ゝ行動 せ ん とす るも のを 取 締 る に在 れば 、 決 し て過 酷 な る法 律 と は 云 ふ

る事 項 並 にせ ざ る事 項 を 宣 伝 し 又 は宣 伝 せ ん と し た るも のは 五年

﹃暴 動 暴 行脅 迫 其 他 の不 法 手 段 に依 つて社 会 の根 本 組 織 を変 革 す

激 な る 反動 思想 を表 現 す る も の にし て、 其 取 締 の主 な る 対象 とす

は 、 文 明 国社 会 政 策 の理 論的 並 に実 際 的 根柢 を顛 覆 せ ん と す る矯

﹃今 回 政 府 が貴 族 院 に提 出 し た る過 激 社会 運動 取 締 法 案 な る も の

不 知 不 識 法制 の統 一を 害 す る の過 に陥 れ る も のに外 な らず 。 況 ん

る者 を 極 刑 に問 は んと す る が如 き は頑 迷 固陋 な る偏 見 に囚 は れ て、

に重 複 の法律 を新 た に制 定 し特 に単 に宣 伝 し 又 は宣 伝 せ ん と し た

之 れ か 処罰 の規 定 を 具 備 し て 些 の遺 憾 を 止 め ざ る にも 拘 らず 、更

暴 動 、 暴 行 、脅 迫其 他 の不法 手 段 に対 し て は 、帝 国 の現 行 諸法 規

る朝憲 を紊 乱 す る事 項 、 若 く は社 会 根 本 組 織 の変 革 を 目 的 と す る

以下 の懲 役 又 は禁錮 に処 す ﹄ と した ら 可 か ら う。 然 し 左 様 す る と滑 稽 な も の にな る。 此 滑 稽 を免 れ ん とす れば ﹃暴 動 、暴 行 、 脅 迫 其 他 の不 法 手段 を宣 伝 し 又 は宣 伝 せ んと し た る も のは ﹄ と しな け れ ば な ら ぬ。 即 ち 社 会 の根本 組 織 云 々は全 く の冗 語 と な る

の健 全 な る社 会 思想 の発 展 を 阻礙 す 可 き、 極 端 に し て理 路錯 綜 せ

の であ る。

口し て、 漫 に 人 民 の自 首 に俟 ち て以 て当 路 者 の無 能 を 掩 は ん とす

や 外 国 人 よ り 金 品 の供 給 を受 く る者 に対 す る取締 法 規 の不 備 に藉

従 つて残 る所 は (一) 宣 伝 し 又 は せ ん とす るも のを (二) 特 に重

る復 古 的 法 律 を 設く る は、 文 化 国家 の本 義 に背反 す る亦 大 な る に

る は、 法 治 国 の威厳 を 損 ず る 甚 し き も のあ るを悟 らず 、 延 て国 民 く罰 し (三 )金 品 の供 給 を 受 く る者 を取 締 り (四) 可 成 自 首 させ て

の制 定 に反 対 す るも の なり 。

於 てを や。 吾 人 は茲 に学 理 研 究 者 と し て の見 地 よ り、 断 じ て本法

( 十八)

警 察 官 の無 能免 責 をす る。 と 云 ふ 事 丈 け に結 局 な つ て仕 舞 ふ。 而 し

大 正十 一年 三 月

右決議す

て此 四点 に於 ては前 に其 の不 当 を 論 じ て置 いた 通 り で あ る。 かく て全 文 六 ケ条 一字 と 残 し て置 き得 る文 字 はな い こと にな る。 乃 ち私 は 、 此 く の如 き 無 用 冗 長 な る 法案 は即 決 否 決 す可 き も のであ

其実現

る こと を 言 へば 其 れ で足 り る と 思 ふ、 況 ん や此 位頑 迷固陋 な反 動 思

の否 決 な ど の到 底 日を 同 う し て談 り難 き 時

想 を憶 面 も な く サ ラ ケ出 し た も のは な く、 其 通 過 は 普 選︱ は 単 に時 の問題 た る︱

代 錯 誤 た るを や 。 (三月 七 日認 む)

( 附 言 ) 社 会 政策 学 会 会 員 有 志 は 昨 三 月 六 日左 の決 議 を し て之 を 世 上 に公 表 し た参 考 の為 め 附 記 し て置 く。

(5)堺 利 彦 意 見 や るな ら お や りな さ い

堺

利

彦

い。 十年 、 七年 、 五年 と いふ 重 刑 を 科 す る権 利 が殆 ん ど無 条 件 で裁

判 官 に附 与 さ れ る程 、 それ ほ ど 裁判 官 の判 断 が 信頼 さ る べき も ので

あ るな ら 、其 の年 限 の規 定 も 無 用 な筈 だ。 い つそ の こと、 死 刑 以 下

勝 手 次 第 と し てよ さ さう な も のだ 。若 し殺 す だ け は 余 り だと 云 ふ の

な ら、 無 期 の懲役 も しく は禁錮 以 下 勝 手 次第 とす れ ば い ゝ。 然 し 国

家 の重大 犯 人 な ら殺 し た つて い ゝ筈 だ 。 遠慮 す る には 及 ば な い。

議 会 に於 け る政 府委 員 の説 明 を聞 く と 、 あ の法 律 は是 々 の場 合 に

適 用 す る積 り で、 是 々 の場 合 に は適 用 す る積 り でな い、 と いふ様 な

のぢ や な いか。 然 る に法文 に現 は れ て ゐな い (殆 んど 全 く 現 は れ て

す れ ば い ゝ筈 だ 。 それ だ け で は不 安 心 だ か ら こそ明 白 な法 文 を作 る

も のな ら、 初 から 法律 の判 定 は無 用 であ る。 政府 が宣 言 を出 し さ へ

達 よ り 以 上、 自 由 な 立 場 にあ る進 歩 主 義 者 の意 見 は分 りき つて ゐる

ゐな い) 政府 の ﹃積 り﹄ を説 明 し て、 それ で法 律 の通 過 を 計 る の が

事 を 云 つて る。 政 府 の ﹃積 り﹄ だ け で、 議会 も国 民 も 安 心 が出 来 る

筈 だ 。 法案 の当 の相 手 た る社 会 主義 者 や、 共 産 主義 者 や、 無 政 府 主

法 案 に対 す る批 評 は 、 敬末 広 厳 太 郎 氏 、牧 野 英 一氏 等 の法 律 学者

義 者 や 、労 働 運 動 者 な ど が、 区 々た る批 評 を し て見 る のは馬 鹿 げ て

と した ら 、 実 に 又 これ ほど を かし い事 はな い。

実 にを か し い。 若 し 議 員 がそ れ で安 心 し て、 そ れ な ら宜 し いと 云 ふ

的 批 評 で 沢 山だ と 思 ふ。 あ の人達 が あ の位 に云 ふ のだ から 、 あ の人

ふ る。 労働 運動 者 等 が示 威 的 に反 抗 運動 を や つて居 ると聞 いて ゐ る

合 次 第 、 随 分 無 遠 慮 に そ れを 抜 いた 実例 も あ る。政 府 とし ては、 そ

ふ約 束 を し て、其 の宝 刀 を手 放 す ま いと努 た 実 例 も あ る。 そ し て場

尤 も 、 政 府 は これ ま で にも 、 治安 警 察 法 の ﹃宝 刀﹄ を抜 かぬ と い

が、 そ れも 何 程 の効 果 が あ ると は思 へな い。 や るな ら や つて 見ろ と 云 ふ だけ で沢 山 だ 。其 の結 果 に対 す る責任 は あち ら 様 に在 る のだ か

れ が 一番 好 都 合 に相 違 な い。 今 度 のも其 格 だ と す れ ば別 に不 思 議 は

ら、 我 々の知 つた事 で は な い。 然 し を かし いと 思 ふ事 だ け少 しば か りお慰 み に 云 つて見 る。謂 ゆ

な いが、 只 随 分 を か し な わけ だ と 云 ふま で の事 で あ る 。

政府 が法 文 に現 は れ て ゐな い ﹃積 り﹄ を附 加 し て法 律 を拵 へる。

怖 い事 件 にブ ツ つかる と、

議 会 も国 民 も 其 ﹃積 り﹄ に信 頼 し て稍 や安 心 す ると し て、 警 察 官 や、

る 三権 分 立 の立 法 府 た る者 が、 い よ〓

かし い、 あ んな 抽 象 的 な 、 ど う に でも 解 釈 さ れ、 ど う に でも 適 用 さ

検事 や、 裁 判 官 は 、果 し て其 ﹃積 り﹄ を奉 戴 す るだ ら う か。 法 文 に

殆 ん ど総 て の事 を行 政 府 と 司 法府 と に 一任 し てし ま ひ さう だ か ら を

れ さう な法 律 を作 るな ら 、 そ れ は即 ち 立 法 府 が態 と自 分 の権 限 を 放

従 ふ よ り も ﹃積 り﹄ の方 に従 ふだ ら う か。若 し従 ふ と し た ら、 法 律

棄 す るも のだ と 云 ふよ り外 は な い。 尤 も 、刑 の最 高 限 だけ は 規 定 さ れ て あ る が、 そ れ が 又実 にを かし

るわ け で あ る。 若 し又 従 は ぬ と した ら 、 ﹃積 り﹄ は単 な る 胡 麻 化 し

れ ざ る主 義 ﹄ と あ る。 之 に依 ると 、 女 子 を私 有 す る事 が我 国 の社 会

﹃女 子 を私 有 す べ からず と云 ふ が如 き 我国 の社 会組 織 の根柢 と相 容

そ れ から 今 一つ、 司法 次 官 の談 話 の中 に 面 白 い事 が あ る。 即 ち

いわ け だ。

と な り、 ウ ソとな るわ け で あ る。 いづ れに し て も随 分 を か し な も の

と いふ者 は、 ﹃積 り﹄ と いふ曖 昧 な 約 束 以 下 の効 力 し かな い者 に な

だ。

り、 政 談 集 会 の自 由 を要 求 し た りし てゐ る今 日、 女子 私 有 が社 会 組

織 の根柢 であ ると は、 呆 れ て物 も 云 は れ な い始 末 だ け れど も 、 司 法

組 織 の根 抵 の 一つにな つて ゐ ると 見 え る。 女 子 が参 政 権 を要 求 し た

次 官 閣 下 の談 話 と し て新 聞 紙 上 に公表 さ れ て見 れば、 万ざ ら 嘘 と も

若 し 又、 何分 にも 之 は ﹃過 激 思 想 ﹄ と いふ特 別 な 恐 ろ し い事柄 に

い つそ特 別 つい で に、 此 の件 に限 り、 裁 判 を 用 ゐな い事 、 内 務大 臣

つい て の取締 であ るか ら 、特 別 な規 定 を 設 け る のだ と 云 ふ のな ら、

も し く は 司法 大 臣 の勝 手 次第 た る べき事 と し て はど う だ 。 或 は更 に

思 は れな い。 女 子 諸 君、 以 て如 何 と為 す。

)

ヲ 以 テ流 言 浮 説 ヲ ナ シタ ル者 ハ十 年 以下 ノ懲 役 若 ハ禁錮 又 ハ三 千 円

ノ 目的 ヲ 以 テ治 安 ヲ害 ス ル事 項 ヲ流 布 シ又 ハ人 心 ヲ惑 乱 ス ルノ目 的

身 体 若 ハ財 産 ニ危 害 ヲ及 ホ ス ヘキ犯 罪 ヲ煽 動 シ安 寧秩 序 ヲ紊 乱 スル

出 版 通 信 其 ノ他 何等 ノ方 法 ヲ以 テ ス ルヲ問 ハス暴 行騒 擾其 他 生命 、

﹁治 安 維 持 ノ 為 ニ ス ル 罰 則 ニ 関 ス ル 件 ﹂(一 九二三)

一歩 を 進 め て、 総 て警 察 官 任 せ た る べき 事 と す れば 、 一層 世 話 がな

五  勅 令

大正十二年勅令第四百三号 治安維持 ノ為 ニスル罰則 ニ関 スル件 同年 ノ第 四十 七 議会 ニ於 テ承 諾 セラ レタ ル モ其 ( ノ後 治 安 維持 法 附 則 ニ依 リ廃 止 ト ナ リ タ ル モ ノ

以下 ノ罰 金 ニ処 ス

則

第 五十回 衆議院議事速 記録 治安維持法案 (政府提出) 帝国議会  (第 一読 会 )

大 正 十 二年 勅 令 第 四 百 三号 ハ之 ヲ廃 止 ス

附

ニ亦 之 ヲ適 用 ス

第 七条  本 法 ハ何 人 ヲ問 ハス本 法施 行 区 域 外 ニ於 テ罪 ヲ犯 シ タ ル者

ハ免 除 ス

第 六条  前 五 条 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 自首 シ タルト キ ハ其 ノ刑 ヲ減 軽 又

ハ其 ノ要 求 若 ハ約 束 ヲ為 シ タ ル者 亦 同 シ

タ ル者 ハ五 年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮ニ 処 ス情 ヲ知 リ テ供 与 ヲ受 ケ又

六  治 安 維 持 法 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺( 第五十回帝国議会・一九二五)

治 安 維 持法 案 (政 府提 出 )

治 安 維持 法 第 一条  国 体若 ハ政 体 ヲ変革 シ又 ハ私 有 財 産制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ 目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ又 ハ情 ヲ知 リ テ之 ニ加 入 シ タル者 ハ十年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス 前 項 ノ未 遂罪 ハ之 ヲ罰 ス

議 ヲ為 シタ ル者 ハ七 年 以 下 ノ懲役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

第 二条  前 条第 一項 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協

シタ ル者 ハ七年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

第 三条  第 一条 第 一項 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ヲ煽 動

ハ財産 ニ害 ヲ加フ ヘキ犯罪 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ十年 以 下 ノ懲役 又 ハ

第 四条  第 一条 第 一項 ノ目 的 ヲ以 テ騒 擾 、 暴 行其 ノ他 生 命 、身 体 又

○ 国 務 大 臣 (若 槻 礼 次郎 君 ) 我国 に於 き ま し て、 無 政 府 主 義 者、

大 正十 四年 二 月 十 九 日 開議

共 産 主義 者 其 他 の者 の 運動 が近 年 著 し く発 展 を 見 る に至 りま し て、

禁錮 ニ処 ス

金 品其 ノ他 ノ財 産 上 ノ利 益 ヲ供 与 シ又 ハ其 ノ申 込 若 ハ約 束 ヲ為 シ

第 五 条  第 一条 第 一項 及前 三条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル コト ヲ目的 ト シテ

を得 る に至 る こと で あ ら う と思 は れ ます、 要 す る に各 種 の社 会 運 動

ます が、 其結 果 は彼 我 の来 往 頻 繁 とな り、 過激 運動 者 は各 種 の機 会

第 で あ りま す、 加 之 日露 の国 交 も 早 晩 回復 を見 る に至 る こと と存 じ

は社 会 主 義的 過激 運 動 と提 携 せし む るや う に努 め つゝあ るや うな 次

に対 し ても危 険 な る思 想 行 動 を 鼓 吹 し、 以 て運 動 を悪 化 せ し め、 又

動 も 漸 次 熾 な ら ん とす る の状 況 に在 り ます のを 奇 貨 と 致 し て、 是 等

模 に行 は れ んと す る所 の状 況 に在 り ます 、 而 し て最 近各 種 の社 会 運

動 を 計 画実 行 せん と す る者 が あ り ます 、 運動 自 体 も組 織 的 且 つ大 規

部 の者 は外 国 の同 志 と 通謀 し 又 は海 外 よ り資 金 を仰 ぎ 、 過 激 な る運

ま し て、 其 運 動 を 一層 深刻 に導 き た る の感 が あ り ます 、 続 い て其 一

殊 に露 国、 独 逸 の革 命 に関 す る過 激 な る情 報 は 一部 の者 を刺 戟 致 し

○ 星島 二 郎君  諸 君 、吾 々は 現政 府 を信 任 致 し て居 る 一人 で あ り ま

︱ 星島 二郎君

順 次 之 を許 し ま す。

○ 議 長 (粕 谷 義 三君 ) 本 案 に対 し ては多 数 の質 問 通 告 があ りま す、

協 賛 を与 へら れ ん こと を切 に希 望 致 し ま す。

案 の趣 旨 で あ る の であ りま す 、願 く は慎 重 に御審 議 の上 、 本案 に御

会 を 戒 め 、不 穏 な る行動 に出 づ る が如 き 事 を 予防 せ んと す る のが本

す る 、最 も重 大 な る危 険 と弊 害 と を尠 から し む る と同時 に、 一般 社

で た る金 品利 益 の授 受 を禁 じ て、 現 今 の過激 な る社 会 的 運動 中 に存

不法 な る結 社︱

は ん とす る が如 き、 我 が国 家 組 織 の大 綱 を破 壊 せ ん とす る が如 き 、

る や う な事 柄 、 又 は私 有 財 産 制 度 を 根 本 か ら否 認 し て共 産 主 義 を 行

分 の問 ひた いと 思 ふ 要点 だ けを 伺 つて見 た いと思 ふ ので あ り ます 、

法 案 に対 し て沢 山 の質 疑 を致 さ れ る方 が あ り ます るか ら 、極 め て自

す 、 普 通選 挙 を断 行 せん と し 、貴 族 院改 革 を致 さ ん とす る現 政 府 を

其 謀 議 と 煽 動 及 叙 上 の犯罪 を醸 成 す べ き 目的 に出

は漸 を 追う て旺 盛 と な る こと で あ ら うと 思 は れ ま す る し、 此 間 過 激

第 一に本 法 を提 出 す る根 本 の意 思 、 而 し て現在 政 府 が此 日本 の社 会

支 持 致 し て居 る 一人 であ りま す 、然 る に其 与 党 に属す る私 共 が 突如

みな らず 、其罰 則 を適 用 し得 る場 合 と雖 も概 ね軽 き に失 し ま し て、

分 にし て、 屡 々危 険 な る行 動 を 全 く 取締 り得 ざ る場 合 があ り ま す の

に 対 す る 一種 の思 想 政策 、 ど う 云 ふ風 に 一体考 へて居 ら れ るか、 ど

な る思 想 を有 す る者 等 が 帝 国 の治 安 を紊 る の目 的 を 以 て 不穏 な る行

罰 則 を賭 し て不穏 な る行 動 を敢 行 せし む る の結 果 とな り、 為 に取締

ん な 風 に 一体 せら れん と す る のか、 此 根 本 に私 は疑 点 を持 つ て居 る

動 に出 づ る の傾 向 は 益 々増 加 す べ き も のと 認 む る の外 な い のであ り

の実 を挙 ぐ る こと を得 ざ る の憾 がな いで は あ り ま せ ぬ、 以 上 の理由

ので あ り ま す、 近時 成 程 表 面 か ら 見 ます ると 云 ふと、 如 何 にも 思想

と は、 洵 に遺 憾 至 極 に存 ず る次 第 であ り ま す (拍 手 ) 私 は今 日 の此

に依 り まし て本法 案 を 立案 し た次 第 であ り ま す が、 法 案 の内 容 は、

は 動 揺 致 し て居 る、 色 々な 社 会 現 象 は 不安 であ る、併 し 私 は発 達 す

此 法 案 に、 而 も反 対 の意 思 を以 て質 疑 を し なけ れば な ら ぬと 云 ふ こ

万 世 一系 の皇 室 を 奉 戴 し て居 る、 帝 国 の此 国 体 を 変革 し やう と す る

ます 、 然 る に是 等 の行 動 に対 す る取締 法 規 と し て は刑法 、治 安 警 察

や う な事 柄 、 又 明 治 大 帝 陛 下 の大御 心 に依 つ て創 定 せ ら れ た る、 我

る所 の国 家 は 常 に動 揺 す るも ので あ ら う と 思 ふ の で あ り ま す (拍

法 、 新 聞紙 法 、 出 版 法 等 が存 し て居 り ます け れど も 、 其 規定 が 不十

が立 憲 政体 を変 革 し て、 議 会 否 認 を為 す と 云 ふ やう な事 を せ んと す

手 ) 其動 揺 の根 源 に よ り以 上 向 上 した いと 云 ふ若 し意 思 があ るな ら

も のがあ る かも 知 れ ぬ け れ ども 、 之 を十 分 消 化 し 尽 し た御 互 尊 い光

本 は今 日 の仏 教 がや つ て来 た、 儒 教 がや つ て来 た そ れ等 の仏 教 や儒

栄 あ る歴 史 を持 つ て居 る のであ る (ヒ ヤ〓

教 の其 思 想 の根 源 に至 れ ば、 随 分 日本 の団体 や政 体 にも合 致 しな い

国 民 を信 頼 し て宜 し い、 私 は さう 云 ふ意 味 合 から 日 本 が此 光 栄 あ る

る平 和 は望 まな い、 月 の如 き世 界 は 御 互 が望 ま な い普 通選 挙 の思 想 にも 、貴 族 院 の問 題 にも 、婦 人 の参 政 権 も 、奴 隷 制 度 を否 認 す る此

歴 史 を持 ち 殊 に明治 大 帝 の大 御 心 に基 い て、 明 治 の改 革 以 来 今 日 の

ば 此 動揺 は寧 ろ歓 迎 致 し て宜 し いと 思 ふ ので あ り ます (拍 手 ) 死 せ

公 娼制 度 の廃 止 案 も 、 有 ゆ る意 味 に於 き ま し て其 根 源 をも つと 立 派

所 謂 立 憲 政 治 が布 か れ た のであ り ます 、 立 憲 政 治 と は何 か、 言 論 の

自 由 是 は最 も 重要 な るも ので あ り ます 、 集 会結 社 の自 由 、是 は 最 も

) 政 府 は もう 少 し 日本

ふ根柢 があ る から 、普 選 が少 々騒 が し く も貴 族 院 改 革 が少 々激 烈 に

な る社会 に した い、 も つと よ り良 き 人 間 ら し き生 活 を営 みた いと 云

な り まし て も、其 事態 は御 互 が歓 迎 せ ん け れば な ら ぬ ので あ り ます

が ら今 此 大 正 の御 代 に将 に普 通選 挙 を施 行 せ ら れ、 貴 族 院 も 改革 せ

ら れん とす る際 に何 故 そ ん な に慌 て、 さう し て之 を 取 締 るや う な法

自 由 な る も ので あ りま す 、 お 互 が既 に経 験 し 光 栄 あ る歴 史 を持 ちな

規 を 必要 とす る か、 私 は 只今 の大 臣 の説 明 で は十 分 に受 取 ら れな い

( 拍 手 ) 常 に圧 迫 政策 を執 つて居 る国 は 亡 ん で居 る、 衰 へて居 る、

ク ﹂ はど う 云 ふ 政策 を執 つた 、 独 逸 の最 後 はど う で あ る、 今 内 務 大

の であ り ます 、 政 府 は 此 日 本 の光 栄 あ る歴史 を信 じ 、 日本 の国 民 を

露 西亜 の ﹁ピ ー タ ー ニ コラ ス﹂ は ど う で あ つた 、 独 逸 の ﹁ビ ス マル

臣 の例 示 さ れた露 西亜 独 逸 は ど う し て亡 んだ かと 云 ふ 根本 に至 りま

信 頼 し て、 も つと 自 由 に、斯 う 云 ふ法案 を出 さな いで 、 自由 な る此

立 憲 政治 の根 本 に復 つ て、思 想 政 策 の樹 立 の上 に 一体 如 何な る考 を

で あ るま い か、 私 は さう 云 ふ意 味 に於 き まし て、若 し 日本 が欧 米 の

持 つ て居 ら れ る ので あ る か其 根 本 を 承 り た い ので あ り ま す、 私 は当

す れば 、 彼 等 が 極端 に圧 迫 政 策 を執 つた から 今 日 の状態 にな つた の

例 を採 るな ら ば、 英 吉 利 の如 き 、亜 米 利 加 の如 き、 実 に此 自 由 を 極

初 政府 が出 来 ま し た時 に、 無 論 此 政 府 は普 選 をや る、 貴 族 院 の改 革

い新 聞紙 法 は 改 正 す る に相 違 な い、現 在 の古 い所 の治 安 警 察 法 も 改

を や る、 此 二大 政 綱 か ら発 す るも のと し まし て は、当 然 現在 の古 臭

に三 百 人 四 百 人 の共 産 党 が出来 ても、 そ れ が為 に英 国 の国 体 は びく とも す る ので な いと 云 ふ こと を 現当 局 が言 う て居 る で はな い か、 私

端 ま でや る が宜 し い、 英 国 には 現 に共 産 党 があ る、 此 間 も 実 に英 国

は 日本 政 府 の当 局者 が さう 云 ふ 風 な度 胸 であ つ て欲 し いの であ る、

一体 出 る筈 では な いか、 未 に新 聞 紙法 の改 正 も 治 安警 察 法 の改 正 も

出 て来 な い時 に、 俄 に未 だ十 分 に三 派 が練 る に練 つて練 らな い前 に

正 す る に相 違 な い、 斯 う 云 ふも の が進 ん で普 通 選 挙 を提 出 す る前 に

振 はな いで はな い か、 そ れは自 由 であ る から宜 し い のであ る 、 欝憤

に今 日 の世 相 を 見 ま し て政 府 は思 切 つた 自 由 の政策 に出 づる 御意 思

斯 う 云 ふも のが現 れ る と 云 ふ こと は、 私 は洵 に遺 憾 で あ りま す 、故

亜 米 利 加 は 普 通選 挙 を施 行 し て相 当 年 月 が経 つ て居 る、 亜 米 利 加 は

が晴 ら せ る か ら宜 し い ので 、露 西 亜 や独 逸 のや う に之 を圧 迫 し た ら、

極 端 に自由 で あ る、 其 亜 米 利 加 の自 由 の中 に今 日社 会 党 は 一向 諸 君

却 て反撥 的 に斯 う 云 ふ団 体 が醸 成 さ れ る ので あ り ます 、 私 は 一体 日

承 り た いと思 ふ の であ り ま す 、第 二番 目 には 此提 案 を さ れ ます ま で

対 す る態 度 を執 ら れ る か、 此 根 本 に付 て十 分 の御説 明 を 先 づ第 一に

はな い か、 今後 如 何 な る方 針 で 此 日本 の思 想 、 此 日本 の社 会 現 象 に

ふ こと を望 む者 は 一人 も あ る と は信 じ な い、 併 し仮 にあ る と し ます

あ り ま す所 の ﹁国 体 ﹂ と 云 ふ文 字 、 日 本 の国 民 に国 体 の変革 斯 う云

の字 句 に対 し て、 御 尋 し た いと 思 ふ ので あ り ます 、 第 一は第 一条 に

小 さ い事 は問 ひま せ ぬ が、 本 法 案 の根 本 とも な つて居 り ます る三 つ

り ま す、 第 三 番 目 には︱

未 だ 沢 山 の質 疑 者 があ り ま す か ら、 私 は

に、 内 務 大 臣或 は司 法 大 臣 は有 志 と会 見 され ま し て、 色 々 の説 明 を

れ ば 、 そ れ は今 日 の刑法 で は取 締 ら れざ るや、 又 ﹁国 体 ﹂ と 云 ふ文

字 に付 ては 、今 日大 学 の教 授 に す ら色 々の議 論 が あ る が、 政 府 は 一

さ れ まし た 、是 は過 激 法 案 と は 全然 違 ふ ので あ る、 過 激法 案 の如 き

体 之 をど う 云 ふ風 に解 釈 され る のか、 具 体 的 な説 明 を し て欲 し い、

字 が所 謂法 文 に現 れん と す る のは是 が初 め てだ が ﹁国 体 ﹂ と 云 ふ文

は 此 壇 上 に於 て、 実 に色 々な る奮 闘激 戦 をし て之 を 葬 つた、 其 歴 史

は静 に之 を 見 ま す れば 、 どう し ても往 年 憲 政 会 は、殊 に革 新 倶 楽 部

を持 つて居 る所 謂 社会 運 動 取 締 法 案 、其 沿革 を持 つて居 るも ので あ

し と言 つた では な いか、 今 日尚 ほ疑義 あ る文 字 を使 ふ のは如 何 で あ

現 に彼 の美 濃 部 、 上杉 両 博 士 の憲 法論 争 に、 国 体 と政 府 と は区 別 な

内 容 は有 つては居 な いと 云 ふ こと を色 々御 説 明 があ り ま し た が、 私

る 、其 変 形 であ る と 云 ふ こと は、 是 は ど う し て も私 は否 ま れな いと

る、 第 二 は ﹁政 体 ﹂ と 云 ふ文 字 であ り ま す、 政 体 の変 革 は狭 く解 釈

思 ふ ので あ りま す 、 此 歴史 此 沿 革 を持 つて居 る法 案 、 而 し て輿論 は

べし と 云 ふ 若 し此 運 動 を せ ん が為 に結 社 を 造 る、 言 論 をす る、是 即

し ま す れば 是 は 立 憲政 体 、 所 謂 民 選 制 度 に依 る所 の今 日議 会 制 度 の

ち 政 体 の変 革 で あ る、 是 が政 体 の変 革 でな いと 云 ふ ことは ど ん な に

既 に法 文 の文 字 や 或 は字 句 よ りも 、 さう 云 ふ案 を出 す と云 ふ其 思 想

閣 にし ま し て、 尚 ほ之 を 出 さ う と言 は る ゝは 、 或 は 世 上流 布 さ れ て

説 明 し ま し て も、 此 二 字 だ け を 以 て は到 底 そ れ は説 明 をし 切 れ な い、

変 革 と 云 ふ こ と にな る ので あ り ませ う 、 け れ ど も之 を 広義 に解 釈 し

居 りま す現 内 閣 の二 大 方 針 で あ る、 成 立 の根 本 と も謂 ふ べ き即 ち 普

若 し斯 う 云 ふ法 案 が通 過 し ま し て、 是 が司 法 当 局 の手 に移 つた る場

の根柢 に疑 を挾 ん で、文 句 や条 文 よ りも さ う 云 ふ案 を出 す と 云ふ 政

選 を 能 く 通 さ ん が為 に、 貴 族 院 の改 革 を完 全 に遂 行 せ ん が為 に、 其

合 に於 き ま し て、 広 い意 味 に解 釈 さ れ、 若 し 貴 族院 の改 革 運 動 、或

府 の方針 に対 し ま し て、 既 に反 対 の世 論 が や か ま し いの であ り ま す、

障礙 を 突 破 す る 一の手 段 と し て、 或 筋 より 交 換 的 に何 か条 件 を附 け

は枢 密 院 を 廃 止 す べし と 云 ふや う な こと が此 法 案 に触 れ ま し て、 十

てし ま へと 云 ふ ことは 、 是 は即 ち政 体 の変革 で あ る、 貴 族 院 を廃 す

ま し て、 已 むな く 斯 う 云 ふ案 を 出 し た ので は あ るま いか、 そ れな ら

年 も やら れる と 云 ふ こと は、 是 は 実 に由 々しき 日 本 の立憲 政治 を 毒

ま す れ ば、 枢 密 院 や法制 局 のや う に や かま し い、 あ んな も のは廃 し

ば 多 少 私 共 も同 情 す る点 があ る ので あ りま す 、 然 ら ば 修 正 の如 き は

ふ内 閣 にし まし て、 私 共 の、其 他 の部 面 に於 ては絶 対 に信 頼 す る内

思 切 つて修 正 し て宜 い、 斯 う 云 ふ御 意 見 であ る かど う か、 此 点 は可

す るも の であ つ て、御 互 が未 だ 立 憲 政 治 を布 き ま し て漸 く 三十 有 余

之 を 見 ても尚 且 つ此 普 選 を断 行 し やう 、 貴族 院 の改 革 を や らう と 云

な り世 間 に伝 は つて居 り ます る から、 明 にし て欲 し いと思 ふ の であ

十 年 に罰 す る や うな 者 は無 いか も 知 れな い が、 併 し 此内 閣 が迭 つて、

如 何 に没暁 漢 の裁 判 官 でも 、貴 族 院 の廃 止 、 枢 密院 廃 止論 を 以 て、

徹 底 し た る場 合 に於 て は、 ま さ か斯 う云 ふ法 案 が通 過 し ま し ても 、

院 改 革 を や ら ん とす る やう な内 閣 があ る場 合 、 此立 法 の趣 旨 が十 分

説 明 を願 ひ た い と思 ふ ので あ り ま す、 成 程 普 通 選挙 を断 行 し、 貴 族

是 は 所謂 非 常 な非 立 憲 な る文字 で あ つて、 此 点 に関 す る明 かな る御

化 す る原 則 でな け れば な ら ぬ、 そ れを も 止 め てし ま ふ と 云 ふ こと は 、

良 き 政体 を 造 りた いと 云 ふ こと は、 是 は人間 が進 化 す る、 社 会 が進

年 、 日本 の国 体 も 変 ら な い、 日本 の国 体 を基 礎 とし て、 も つと よ り

殊 に此 ﹁私 有財 産 ﹂ と 云 ふ文 字 に付 ては 、私 有 財 産 制 の根 本 に付 て

際 に於 ては 、御 互 は非 常 な 脅 威 を 感 ぜ ざ る を得 な い ので あ り ます 、

若 し 司法 当 局 が︱

事 が却 て禍 を し て、 刑 に問 は れ ると 云 ふ結 果 に相 成 ら ぬ か (拍 手 )

其 思 想 を宣 伝 す る場 合 に、 真 に社 会 を思 ひ 日本 の将来 を思 う てや る

営 が宜 いか も知 れ ぬ、 斯 う 云 ふ議 論 を 以 て御 互 が或 は 国体 を作 つて

将 来 の社 会 を本 当 に考 へて見 ま す れ ば、 或 は家 屋 の如 き は市 営 、 国

屋 の如 き は 、是 れ最 も 大 な る 消 費 財産 で あ り ます け れ ども 、 日本 の

のは いけ な い、 斯 う 云 ふ風 に別 け て見 ま す れば 、 家 庭 の基 礎 た る家

学 者 が所 謂 経 済 上 生産 に属 す る も のは そ れ は宜 い、消 費 に関 す るも

是 も 面白 い、 こゝ が宜 い宜 いと 計算 し た所 が何 が後 に残 る か、 若 し

裁 判 官 が 狭 く 広 く 此 文字 を自 由 自 在 に使 は れ た

私 が仮 に当 局 者 と な つ てや る な らば

反 動 内 閣 が 天下 を取 りま し て、 此条 文 を楯 に取 つ て若 し言 論 を圧 迫 し 、 結 社 を 圧迫 す るな らば︱

で あ る、 此 家 庭 本位 、 家 族 本 位 の此 思 想 を 日本 の社 会 に合 致 せし め 、

考 へる に、 日 本 は 他 の国 より も 或 意 味 に於 き ま し て家 族本 位 の国 柄

日本 の政 治 を 能 く 運 用 す る こと に依 りま し て、 日本 の国体 は発 揮 出

此 法 案 の 一条 で 以 て、 日本 の大 部 分 の結 社 を踏 潰 す こと が出 来 る、

之 を 解 散 し 之 を ふ ん縛 る こと も 出 来 る ので あ り ます 、 だ か ら斯 う 云

で あ る か、 そ れは 言葉 は ま づ いけ れど も 、 一種 の共 産 であ る、 家 庭

来 る と思 ふ ので あ り ま す、 諸 君 、 家 庭 の本位 、 家 族 主 義 の根 源 は 何

若 し 普 通 選 挙 が布 か れ た後 に於 き ま し て、 無 産 政 党 が出 来 る な らば 、

ふ茫 漠 た る文 字 を書 か れ ると 云 ふ こと は最 も遺 憾 で あ り ま す 、内 務

議 さ れ ま し て、 有 志 の会 見 に於 き ま し て大臣 も御 説 明 であ り ま し た

思 ふ の であ りま す 、 第 四番 目 に私 は 本 案 の第 二条 は、 学問 の研 究 を

ど う し ても 斯 の如 き 文 字 を採 る と云 ふ こと は、 非 常 な 間違 で あ ると

る、 私 は斯 う 云 ふ意 味 に於 て、茲 に 日本 の将 来 の思 想 に於 き まし て、

が平 和 であ れば あ る だ け家 庭 は 専 制 でな い、 そ こに 日本 の思 想 があ

大 臣 は之 に対 し て如 何 な る考 を 持 つて居 ら れ る か 、 第 三 に は 所 謂

が、 鉄 道 国 有 を 断 行 し た 日本 の政 治 、 土 地国 有 論 の や かま し い今 日、

﹁私 有 財 産 の制 度 ﹂ と 云 ふ文 字 であ り ま す、 是 も 先 程 来既 に度 々論

電 力 国 有 のや かま し い今 日、 此 国 有 と 云 ふ も のが此 私 有 財 産 制 に反

究 を す る のが国 家 に命 ぜ ら れ た る所 の使 命 で あ り ます 、 国 家 に関 す

る学問 をす る為 に極 端 に自由 を許 さな け れば な ら ぬ、 其為 に は進 ん

非 常 に障 害 す る こと には な ら な い か、 凡 そ 大 学 の教 授 は、 学 問 の研

で新 し い社 会 組 織 を 研 究 し な け れば な ら ぬ、其 組 織 を研 究 し ます る

し た る制 で あり 、 共産 と 云 ふ言 葉 には 当 らな い け れど も 、其 思想 の

上否 ま れ な いと 思 ふ ので あ り ます 、 私 は寧 ろ 日本 の将 来 は 土 地 国 有、

根 本 に於 て は、 そ れと 同 じ所 の意 味 であ る と 云 ふ こと は、 是 は 学説

或 は面 白 いかも 知 れな い、 船 舶 の国 有 、 是 も 面白 い、 電 力 の国 有、

二少 し 脱 線 し た のが あ つた かも 知 れ ま せ ぬけ れど も、 真 に今 日 の社

学 校 の最 も純 真 な る青 年 達 が社 会学 研 究 会 を 開 き ま し て、 中 には 一

ことは 、若 し本 法 に触 れ る やう な 心配 は無 き や、 先般 我 が全 国 高 等

ぬ (拍 手 ) そ れ で あ りま す故 、 言 論 文 章 の自 由 は何 所 まで も 尊重 致

文 章 は 自由 であ ると 云 ふ こと で は国 家 の治安 を保 つ こと は出 来 ませ

あ りま す、 国 体 を破 壊 し ても、 経 済 組 織 の根 本 を破壊 し ても、 言 論

掛 け て居 る所 で あ りま す (ヒ ヤ〓

事 であ り ま す (﹁ノ ウ〓

ら ぬと 云 ふ のが、 今 日此 治 安維 持 法 を提 出 し た 所 以 で あり ま す、 後

し ま す け れ ども 、 其 害 毒 最 も 甚 しき も のは 取締 つて置 かな け れば な

) 唯 々併 し是 に は 一定 の制 限 が

会 現 象 を 見 て純 真 な る青 年 が研 究 し た いと 云 ふ のは、 是 は慶 ぶ べき

之 を解 散 せ し め、 福 岡 の高 等 学 校 で は、 二 名 以 上 の学 生 が 一緒 にな

の法 律 が抽 象 的 の文 字 を 使 はず し て、 国 体 を変 革す る とか 、 政体 を

に御 質 問 にな つて居 る事 項 に御 答申 上 げ ると 自 然 に判 りま す 、此 度

﹂) 然 るに文 部 大 臣 は其 当 局 を 通 じ まし て

つて社 会 学 を 研 究 し た ら、 厳 罰 に処 す る、 放 校 に処 す る と 云 ふ、 佐

に意 を用 ゐ てあ る所 で あ りま す 、 ( 拍 手 ) 第 二 段 の御質 問 の 普 通 選

の如 き 人 の言論 文 章 の自 由 を 害 せ ぬ や う に努 め た のが本 法 案 の非 常

変 革 す ると か、 私 有 財 産 制 度 を否 認 す ると か云 ふ 具体 的 の文 字 を用

賀 の高 等 学 校 で は書 物 を焼 い てし ま は した 、 鹿 児 島 の高 等 学 校 では

き や、 而 し て第 三 条 に ﹁ 煽 動 ﹂ と 云 ふ文 字 が あ る為 に言 論機 関 、 殊

挙 を実 行 し 、貴 族院 の改 善 を図 ると 云 ふ位 な 、 此 内 閣 が斯 様 な法 律

或 る学 生 を 放 校 にし た、 熱 心 に純真 な 心を 持 ち ま し て研究 せ んと す

に新聞 紙 の非 常 な 脅 威 な ら ざ る や、 私 は以 上 の四項 に渉 り ま し て本

を出 す と 云 ふ こと は何 等 か矛 盾 があ る やう に御 考 にな つて、 何等 か

ゐ て、 決 し て曖 昧 な解 釈 を許 さ ぬ と 云 ふ こと に致 し ま した こと は、

案提 出 の根 本 の政 府 の思 想、 思 索 、 而 し て そ れ に起 る所 の字 句 の 一

他 の勢 力︱

即 ち言 論 文 章 の自 由 を尊 重 す る事 で あ つて、若 し余 り に概括 的、 余

二 に付 き まし て明 快 な 説 明 を聴 き た いと思 ふ のであ りま す ( 拍手)

出 し た ので は な いかと 云 ふ御 疑念 が あ るや う であ り ます 、 治 安維 持

る是 等 が、 若 し 之 を 圧迫 し ます れば、 却 て秘 密 の結 社 を作 り、 さう

○ 議長 (粕 谷 義 三 君 ) 若槻内 務 大 臣

法 を制 定 し な け れ ばな ら ぬと し た のは、 現 内 閣 が成 立 した 初 から決

し て純 真 に研 究 す る者 は之 に触 れる 心 配 は無 い か、 是 に於 て 日本 の

○ 国務 大 臣 (若 槻 礼 次 郎 君) 星 島 君 の御 質 問 の第 一点 で あ り ま す

り に抽 象 的 の文 字 を用 ゐ て居 ると、 議 論 を す る人、 文 章 を書 く 人 が

所 の人 類 の向 上 を 図 る に付 て は、 思 索 の自 由 を許 し て置 か な け れば

心 し て居 つた こと で あ り ます 、 昨年 十 二月 の二 十 二 三 日 であ つた と

非 常 な 不 安 を感 ず る ので あ りま す か ら、 具 体 的 の文 字 を使 つて、 斯

な ら ぬ と云 ふ御 議 論 に対 し て は、 私 も全 然 同 感 であ りま す、 而 し て

存 じま す が、 予算 の内 示 会 を 開 い て各 派 の諸 君 を招 待 した こと が あ

二条 は殊 にさ う 云 ふ所 謂学 問 の自 由 、 研究 の自 由 を 障 碍 す る虞 はな

現内 閣 は 思 想 の研 究 に 付 て、 圧 迫 的 方針 を採 つて居 るや否 や と云 ふ

る のであ り ま す、 其 席 上 松 田 源 治君 か ら、 治 安 維持 法 の やう な法 律

大 学 の教 授 は 、 新 聞紙 上其 他 に於 て相 当 犠 牲 を払 つて居 る、 私 は 第

御 問 に対 し ては 、 決 し て左様 な 考 は あ りま せ ん、 言 論 文章 の自 由 は

案 を提 出 す る や否 や と 云 ふ御 質問 のあ つた 時 に、 私 は現 内 閣 は其 法

威 力 を受 け て其 擁 す る所 とな つて、斯 様 な法 律 案 を提

何所 ま でも 害 せ な いや う に せ ぬけ れ ば な ら ぬ と云 ふ のは 現内 閣 の心

律 案 を提 出 す る考 で あ りま す と 云 ふ こと を答 へて居 る ので あ り ます 、

す け れ ど も、 貴 族 院 を 廃 止す ると 云 ふ議論 を唱 へた からと 云 う て、

れで あ り ま す から 、 私 は貴 族 院 の廃 止 には全 然 反 対 す る者 であ り ま

憲 政 体 た る こと は、 ち つとも 妨 げ は 致 さ ぬ のであ り ます (拍手 ) そ

りま す、 枢 密 院 は 依 然 と し て存 し て置 く方 が宜 いと思 ひま す、 併 な

普 通 選挙 の法 案 を 方 々で審 査 せ ら れ た のは其 以後 の事 であ り ま す、

がら 世間 で枢 密 院 を廃 止 し やう と 云 ふ 議論 を唱 へた か らと 云 う て そ

其 以前 に於 て、既 に政府 の決 心 を語 つて居 る ので あ りま す か ら、 此

の御質 問 の国 体 と 云 ふ事 の意 味 が 明瞭 でな いと 云 ふ仰 せ であ り ます

れは 決 し て政 体 の変 革 を唱 へた も ので な い こと は殊 に明 瞭 で あ りま

ので あ り ます 、 殊 に枢 密院 を廃 め や う と 云 ふ こと にも私 は反 対 で あ

が国 体 と 云 ふ のは前 に申 し た通 り 、 帝国 の国 体 は 万世 一系 の天 皇 を

す (拍 手 ) そ れ から 私 有財 産 制 度 の否認 と申 上 げ る のは、是 は詰 り

決 し てそ れ が政 体 の変 革 を唱 へた も ので あ ると 云 ふ こと は言 へな い

奉 戴 し た る帝 国 と 云 ふ、 是 が日 本 帝 国 の国 体 で あ りま す 、 此金甌 無

財 産 制 度 の根 本 組 織 を 破壊 し やう と 、斯 う 云 ふ こと であ り ま す、 即

法案 が決 し て他 の勢 力 の圧 迫 を受 け て立 案 せ ら れ たも の でな いと 云

欠 の国 体 を変 革 せ ん と企 つる者 が あ るな ら ば、 此 法 律 に依 つ て取 締

ち 共 産 主義 を行 ふ こと であ りま す、 鉄 道 を国 有 に し やう、 鉱 山 を 国

ふ事 柄 は、 此 事 実 に依 つて明 瞭 で あ らう と 存 じ ま す 、 ( 拍 手) 第 三

を し な け れば な ら ぬ、 斯 う 云 ふ ので あ りま す、 ( 拍手)政 体 と申 す

法 律案 に於 て は、 決 し て左 様 な る事 が籠 つて居 な い のであ り ます 、

のは 世間 学 者 の間 にも、 普 通 常 識 を持 つて居 る者 の間 にも 、自 らち

私 有 財産 制 度 の根 本 を破 壊 し て、共 産 主 義 を 行 は ん と云 ふ者 が、 即

は私 は決 し て私 有 財 産制 度 を否 認 す る も の では な い と思 ひ ます 、 此

て世 間 の受 取 つて居 る意 味 の政 体 と 云 ふ意 味 で あ りま す 、 即 ち我 が

ち 私有 財 産 制 度 の否 認 と云 ふ こと に相 成 る ので あ り ます、 本 法案 の

有 にし や う、 水 力 電 気 を国 有 にし や う、 農 耕 地 を 国有 にし や う、 是

日 本 に於 て今 日 日本 の政 体 が如 何 な るも ので あ る かと 申 せ ば、 即 ち

や ん と決 つた意 味 があ る のであ りま す、 立 憲 政 体 で あ ると か、 独 裁

立 憲 政 体 で あ りま す 、代 議 政 体 で あ り ます 、 之 を破 壊 せ ん とす る者

かと 云 ふ御 疑 念 であ り ます 、本 法 案 は只 今申 上 げ る俗 の言 葉 で申 上

第 二 条 は、 学 者 が研 究 の自 由 を 持 つ こと が出 来 ぬ こと にな り はせ ぬ

政 治 で あ る と か云 ふや う に ちや ん と決 つた 意味 が あ る、常 識 に依 つ

があ るな ら ば、 此 法 律 に依 つて取 締 る と 云 ふ ので あ りま す 、 日本 に

げ れ ば 此法 律 は無 政 府主 義 、 共 産主 義 を取締 る法 律 であ ると言 つ て

於 ては 今 日 は 二院 制 度 で あ りま す、 私 は此 二院制 度 は何 所 ま で も守

も 宜 い のであ りま す、 唯 々無 政府 主 義 と申 し まし ては 共和 政 治 を主

体 の変 革 と云 ふ言葉 が使 つ てあ り ます け れ ど も、 大 体 の見 方 は無 政

つて行 か な け れば な ら ぬと 思 う て居 る の であ り ます 、 貴 族 院 を廃 止

府 主義 、 共 産 主 義 を取 締 ると 云 ふ精 神 から出 で て居 る のであ ります

張 し ても矢 張 政 府 が あ る訳 で あ つて、 それ で は いけ ま せ ぬ から、 国

云 ふ議 論 は、 決 し て政 体 を変 革 す ると 云 ふ こと には相 成 ら ぬ ので あ

に向 つて全 く反 対 す る者 で あり ま す、 併 な がら貴 族 院 を廃 止 す る と

り ます 、 世 界 に は同 じ 立憲 政 治 の国 と雖 も 一院制 度 の国 も あ り ます 、

が、其 事 を目 的 と し て是 が実行 を協 議 し た 者 が、 本 法 案 の第 二条 に

す るな ど と 云 ふ考 は私 は全 然 無 い のみ な らず 、 左様 な 考 を 懐 く こと

二院 制 度 の国 も あ り ます 、 一院 制 度 で あ る から と 云う て、其 国 が立

る のでな い限 り は決 し て本 法 案 に依 つて妨 げ ら れ るも のでな い ので

実 行 を目的 とし て世 の中 に さう 云 ふ事 を 実 現 せ しめ ん と し て相 談 す

依 つて制裁 を受 け る ので あ りま す、 学 者 が研究 をし た 所 が、其 事 の

す遏 ると 云 ふ其 精 神 から出 た と 云 ふ今 の内 務 大臣 の御 答弁 であ り ま

政府 が提出 せ ら れた と 云 ふ こと は、 共 産 主義 、竝 に無 政府 主義 を防

思 ふ点 を 簡単 に御 尋 を 致し た いと思 ふ ので あ り ます、 治 安 維持 法 を

ま す、 世 間 には 此法 律 案 が労働 運 動 を禁 止 す るが為 に出 来 る やう に

聯 し て、 私 は茲 に終 り に 一言 を加 へて置 く こと が必 要 で あ ると 存 じ

案 が議 会 に提 出 せ ら れま し た時 に、是 は時 代 錯 誤 の法 律案 とし て非

究 す べき 問 題 で はな い かと思 ふ ので あ りま す 、先 年 過 激運 動 取締 法

云 ふ こと が果 し て有 利 であ る か有 利 でな い かと 云 ふ こと は、 大 に攻

之 を防遏 す る と 云 ふ こと に対 し ま し て、 斯 の如 き法 律 を厳 行 す る と

の前 途 を思 ふ其 精 神 に至 つて は勿論 私 も同 感 で あ り ます、 併 な が ら

誤 解 し て居 る者 が あ る やう で あ りま す、 此 法 律 が制 定 され ます と 、

す、 此 国 家 の為 に害 毒 を流 す所 の此 両 主義 を防遏 す るが為 に、国 家

労 働 者 が労 働 運 動 をす る に付 て、 何 等 か拘 束 を 受 け ると 云 ふ や う に

が、 此 治安 維 持 法 も思 想 の系 統 から 言 ひ ます ると、 矢 張 此思 想 の系

常 に 不評 判 で あ つた 、 遂 に会 期 が参 り まし て審議 未 了 に終 り まし た

あ りま す か ら、 此 点 も 明瞭 に申 上 げ て置 き ます 、 尚 ほ星 島 君 の質 問

信 じ て居 る者 が あ る やう であ り ます、 斯 の如 き は甚 し き 誤解 で あ り

の事 項 には あ り ま せ ぬけ れ ども 、 星島 君 の持 つて居 ら る ゝ疑 念 に関

ま す 、労 働 者 が 自 己 の 地位 を 向 上 せし め る が為 に労働 運動 を す る こ

致 し まし た時 に、 若槻 内務 大 臣 は新 聞 紙 法 も今 日 の如 き では 自由 を

に此 議 会 に於 き ま し て予 算総 会 に於 て、新 聞 紙 法 の問 題 を 私 が御 尋

て居 りま す る が、思 想 の系 統 は同 じ であ る と思 ふ のであ ります 、 殊

ふ考 を持 た ぬ ので あ り ます 、唯 々此 問 題 は前 に申 上 げ る如 く 無 政府

束縛 し 過 ぎ て居 るか ら、 此 点 に向 つて改 正 す る の意 あ る、 内 務省 も

統 を 辿 るも の であ らう と 思 ふ、 尤 も前 の法 案 より は余 程緩 和 せら れ

主 義 、 共産 主 義 を 実 行 せ んと し ては いけ ぬ と 云 ふ取締 法 であ り ま す、

と は何等 差 支 な い のみな ら ず、 私 共 今 日局 に当 つて殊 に内 務省 は其

労 働 者 に し て無 政 府主 義 を唱 ふ る に非ず 、 共 産 主 義 を唱 ふ る に非 ざ

目下 之 を調 べ て居 る、 但し 此 議 会 に提 出 す る こと が間 に合 う か どう

所 管 の省 で あ りま す が、 左 様 な事 に向 つ ては何 等 拘 束 を加 へると 云

れば 、彼 等 が労 働 運動 を す る上 に於 て此 法律 案 に何 の拘 束 も 与 へる

も つと 自由 にし や う と 云 ふ意 思 が あ る に拘 らず 、 一面 に此 治 安維 持

かと 云 ふ こと は問 題 で あ る が政府 も改 正 には意 があ ると 云 ふ こと を

法 の如 き を 急 いで御 制 定 にな ると 云 ふ、 其 思 想 の系 統 が私 には 分 ら

言 明 せら れ て居 りま す、 さう し て見 れば 一方 に新 聞 紙 法 の如 き も、

を述 べ て本 案 の趣 旨 を 明瞭 に致 し て置 き た いと思 ひま す (拍 手 )

あ りま す か ら、 星 島 君 の御質 問 中 に はあ り ま せ ぬけ れど も、 此 際之

○ 議長 (粕 谷義 三君 ) 安 藤 正純 君

も ので な い の であ りま す (拍 手 )此 事 は 世 の中 に誤 解 が あ るや う で

○ 安 藤 正 純君  私 が此 法 案 に付 き ま し て質 問 を 致し た いと思 ひ ます

ふ点 に付 て、 今 一度 御 尋 を致 し た い ので あ りま す、 第 二 に我国 の歴

史 に徴 し ます る と、 我 国 位 昔 から 多 く の思 想 を融 和 し来 つた国 はあ

な い のであ り ます 、 要 す る に思 想 の上 に矛 盾 が あ り はし な いかと 云

て解 す る こと を得 まし た から、 其 点 は略 し ま し て、 尚 ほ私 の不 明 に

る 、其 一斑 は、 星 島 君 の質問 に依 り まし て、 内 務大 臣 の御答 に依 つ

が 輸 入 し来 つた時 も、 仏 教 が這 入 つて参 りま した 時 も、 将 た 近 く基

れ て居 る のであ り ます 、 只 今星 島 君 も 言 は れ て居 りま し た が、 儒 教

り ま せ ぬ、 多 く の外 来 思 想 が皆 我国 の中 に這 入 りま し て、 同 化 せ ら

は本 当 の国 体 観 念 の確 立 は出 来 な い寧 ろ 此国 体 観念 を確 立 せ し む る

ら それ は 止 め て居 る のでは な い のであ り ます から 、 さ う云 ふ遣方 で

役 にな つた りし ては 堪 らな いか ら、 一時 止 め ると 云 ふ の で腹 の底 か

ので あ り ます 、 そ れ は其 為 には斯 う 云 ふ法 律 は 唯 々目 先 だ け を 一寸

いけ な い、 止 め させ る やう に導 くと 云 ふ こと が必要 であ ら う と思 ふ

止 め る と 云 ふだ け で、 本 当 の腹 の中 は却 て そ れが反 感 を 助長 す るや

為 には腹 の底 から そ んな 無 政府 主 義 や 共産 主 義 を 止 め さ せな く て は

と な つて居 りま す、 元 来 思 想 と 云 ふも の に境 はな い ので あ りま す か

う な結 果 にな りは し ま いか、 斯 う 云 ふ ことを 憂 へる の であ り まし て、

色 々の問 題 が起 つた ので

ら 、唯 々之 を喰 止 め やう と す る の は是 は無 理 であ る、 私 は唯 々此 外

要 す る に私 は 国 家 を憂 へる、 其 精 神 は︱

督 教 が這 入 つて参 り ま し た時 も、 そ れ〓

来 思 想 と か危 険思 想 と か云 ふも のは、 無 理 に止 め や う と思 つても 止

府 主義 と 云 ふ も のを止 め た いと 云 ふ其 精 神 は 政府 と少 し も違 はな い、

あ る、併 な がら皆 是 が渾 然 融和 さ れ て、 我 国 の国 民 思想 の涵養 助長

ま るも ので はな い のであ ります か ら、 そ れ よ り は幾 ら さう 云 ふ思 想

唯 々そ れを や る のに斯 う 云 ふ法 律 を茲 に作 る方 が宜 い か、 作 らな い

方 が宜 い か、斯 う 云 ふ こと が見 る所 の岐 れ る所 であ りま す、 私 は 余

而 し て此 共 産 主義 、 無 政

の思 想 を、 国 民 の間 に強 く涵 養 す ると 云 ふ こと が 一番 であ ら う と思

が這 入 つて参 り ま し ても 、所 謂 此 万 世 一系 の国 体 観念 を明 徴 す る所

ふ 、其 国 体 観 念 を確 立 す ると 云 ふ こと に は、 ど う し た ら宜 いか と 云

に依 ると 反感 を助 長 し 、斯 の如 き悪 運 動 を 助長 す る結 果 に な りは し

な いかと 云 ふ こと を憂 へる の であ り ます から、 此 点 を 一応 御 尋 致 し

り に目 の先 を 抑 圧す る、斯 う 云 ふ法 律 を作 ると 云 ふ こと は、 寧 ろ事

た いの であ り ま す、 最後 にも う 一つ御 尋 し て置 きた い事 は、 政 体 の

ふ と、 そ こが政府 と聊 か所 見 を異 にし て居 る ので あ り ます 、政 府 は

で あ り ます が、 私 は寧 ろ さう 云 ふ こと をす るよ り は、 思 想 を大 胆 に

其 国 体観 念 を崩 す か ら斯 う 云 ふ法 律 を拵 へて厳 罰 に処 す ると 云 ふ の

解 放 し て です 、而 し て腹 の底 か ら自 由 研究 を させ て、 其 結 果 我 が国

変革 と 云 ふ こと で あ る、 どう し ても此 法 律 を作 らな け れば な らぬ と、

従事 し て居 り ます る︱

民 を し て国 体 を自 覚 せし む る と 云 ふ、斯 うな つて来 た時 に本当 に此

く の言 論 に従事 をし て居 る者 、新 聞 に従 事 を し て居 る者 の如 き は、

には非 常 な疑 義 があ り ます 、 随 分広 く解 釈 が出 来 る、 而 し て言 論 に

を拵 へて置 く こと は、 事 に依 ると 寧 ろ乱 暴 な 危 険 思想 を懐 いで居 る

斯 う云 ふ こと に政 府 が 御認 にな つた時 には、 政 体 の変 革 と 云 ふ こと

者 を助 長 す るや う な結 果 を来 す 憂 はな いか と云 ふ こと を深 く憂 ふ る

是 が為 に却 て累 を及 ぼす者 が多 く起 つて来 は しな いか と 云 ふ こと も

な か ら う かと 思 ふ のであ り ます 、 であ り ます から却 て斯 う 云 ふ法 律

ので あ る、 併 し さ う 云 ふ者 も あ る かも知 れな いけ れ ども 、 大抵 の者

け れば な ら ぬ とす れば、 此 政 体 の変 革 と か或 は私 有財 産 の否 定 をす

考 へて置 かな け れば な ら な い、 そ こで どう し て も此 法律 を制 定 しな

義 勇 奉公 の精 神 と 云 ふも のが腹 の中 か ら流 露 と し て湧 出 でる のでは

は厳 罰 に処 せら れ る から 止 め てし ま ふだ らう と斯 う 云 ふ ので あ るけ

単 り労働 運 動 者 ば か り では あ り ま せ ぬ、多

れ ど も、 其 止 め る と 云 ふ のは罪 が怖 い、 七年 にな つた り、十 年 の懲

りま す 、併 し事 柄 に依 る ので あ りま す 、無 政府 主 義 、共 産 主 義 と 云

らう と 云 ふ御 意 見 のや う であ つて、 第 二段 の御 質 問 が出 た やう で あ

せ て置 いた な らば 各 人 が心 の中 から 覚 つ て来 る から、 そ れが 宜 し か

で あ り ます か、 此 三点 に付 て御 尋 を致 し て置 きた いと思 ふ ので ご ざ

ふ やう な も のを融 合 同 化 し やう と言 う た所 が 、私 は 到底 是 は 日本 の

而 も 余 り そ れ を抑 へん とす れ ば却 て反撥 し て効 果 が少 い、 自然 に委

い ます ( 拍手)

社会 の根 本 の組織 に於 て、 融 合 が出 来 る事 でな いと 信ず る のであ り

一つ何 、 一つ何

○議長 ( 粕 谷義 三 君) 若 槻 内 務 大臣

ます (拍 手) 斯 の如 く極 端 な る者 は矢 張 之 を防 ぐ の が相当 であ る と

ると か 云 ふ こと を、 も つと 明確 に 一々具 体的 に︱

○ 国 務 大臣 (若 槻 礼 次郎 君 ) 過 日安 藤君 が 予算 総 会 に於 て 新 聞 紙

思 ふ、 又大 体 に於 ては 余 り圧 迫 し て思 想 を抑 へ付 け やう とす る のは

と 列 挙主 義 に 一々具 体的 に列挙 す ると 云 ふ 御考 は あ り ま せ ぬか 如 何

は新 聞紙 法 に付 ては 若干 改 正 を要 す る所 があ ら う と思 ひます け れど

寛容 な 態 度 を執 る方 が宜 し い、 是 は御 同 感 であ り ます 、併 し無 政 府

宜 くな いと 云 ふ 御論 は 、私 も同 感 で あ り ます 、成 べ く思 想 に向 つては

法 改 正 の意 思 あ るや否 や と云 ふ こと を御 尋 にな り まし た 、其 時 に私

も 、 ま だ調 査 が出来 て居 りま せ ぬ か ら、 此 議 会 に提 出 出来 る や否 や

主義 、 共 産 主 義 に対 し て寛 大 な る態 度 を執 ると 云 ふ こと に し て、 其

は断 言 が出 来 ま せ ぬと申 上げ ま し た、 私 の申 上 げ た趣 旨 は其 意 味 で あ りま し た が、 只 今 此処 で御 述 にな つた所 には稍 々敷衍 し て あ りま

に考 へて居 る ので あ りま す (拍 手 ) 第 三 の御 質 問 は 洵 に申 訳 あ り ま

せ ぬ が、 も う 一遍 御繰 返 しを 願 ひ ます 、 ど う 云 ふ事 で あ りま し た か

害 毒 を 国内 に流 さ し む ると 云 ふ こと は 、私 は是 は宜 しく な いと斯 様

○議長 ( 粕 谷義 三 君) 安 藤 正純 君

し た ので、 そ れ故 に繰 返 し て、 私 は予 算 総 会 に於 て御 答 を申 上げ た

の であ り ます 其 答 弁 を致 し て居 り ます 事 と、 此治 安 維 持 法案 の如 き

○ 安藤 正純 君  第 三 の質 問 は 此法 律 が無 く と も斯 の如 き 罪 は刑法 な

意 味 を此 処 で申 上 げ る のであ り ま す が、 右 の如 き答 弁 を 致 し て居 る

が、 如 何 で あ る かと 云 ふ ことで あ り ま し た が、 先 程 も大 体 の説 明 を

法 案 を提 出 す る事 と は、 考 の上 に於 て大 な る矛 盾 が あ る やう に思 ふ

無 政 府 主義 防遏 の為 に此法 律 制 定 の必要 あ りと す れば 、此 政体 の変

り、或 は治 安 警 察 法 な り で罰 す れば 宜 いと 思 ふ の であ る、 若 し 治 安

革 と 云 ふ所 、 或 は私 有 財産 の変 革 で あ り ます が 、此 点 を も つと具 体

申 上 げ る と き に申 上 げ て置 き 、竝 に星島 君 に御 答 す る時 にも申 上げ

ま す 其事 柄 と新 聞 紙 法 の若 干 改 正 を行 ふ こと は 、思 想 の上 に於 て何

的 一々条 項 を挙 げ て列 挙 な さ る御 考 は あ り ませ ぬ か と云 ふ こと を御

しな いか と思 ふ ので あ る が、 併 な が ら譲 つてど う し ても共 産 主 義 や

等牴 触 す る こと の無 い事 柄 と私 は 信 じ て居 りま す 、 又同 じ 御考 のや

尋 し た ので あ り ます

警 察 法 な ど は軽 いと す れば 、 之 を 重 く改 正 す れば そ れで用 は足 りは

う で あ り ます が、 日 本 は外 来 の思 想 を 咀嚼 し て之 を融 合 同 化 す る歴

て置 き ま し た通 り、 此 法案 は最 も 極端 な る者 を 取締 らう と 云 ふ ので

史 を持 つて居 る、 それ で あ る から 如 何 な る考 が外 国 から 来 ても抛 つ

○ 国 務 大臣 ( 若 槻 礼 次 郎君 ) ( 続 ) 私 は此 法 案 に起草 し てあ り ます

あ りま す、 最 も 国 家 社会 に害 毒 のあ る者 を取 締 ら う と云 ふ ので あ り

て置 いた な らば 、 自 然 に善 い所 に是 が同 化 せら れ て行 く ので あ る、

や う な政 体 と云 ふ文 字 は、 洵 に明 瞭 で あ ると思 ひ ます 、 日 本 帝 国 に

挙 法 を実 施 すべ し と 云 ふ御 議論 であ った と記 憶 致 し て居 る の であ り

断 行 を 御 議 論 せ ら る ゝな ら ば、 其 前 提 と し て人 心 動 揺 せざ る と 云 ふ

ま す、 即 ち普 通 選挙 法 と 云 ふも のは人 心動 揺 せ ざ る とき に提 出 すべ

事 実 が、確 定 せ ら れ て居 る も のと考へ て居 る の であ り ま す が、 若 し

し と 云 ふ御 議 論 であ った、 本 日 普 通選 挙 法 の提 出 せら れ、 即時 断 行

私 有 財 産 制 度 を根 本 から 破 壊 す ると 云 ふ な らば 、 私 有 財 産制 度 の否

果 し て然 らば 、 何 を苦 ん で治 安 維 持 法 を御 出 し にな る のか、 其 理 由

於 け る現 在 の政 体 と 言 ふ な らば 立 憲 君 主 政体 で あ り ます 、 そ れ故 に

認 と 云 ふ文 言 程明 瞭 な る文 言 は 無 いと私 は思 う て居 りま す、 併 し若

を 最初 に御 尋 を致 し ま す (拍 手 ) 第 二 の理由 は若 槻内 務 大 臣 は 、 選

立 憲 政 体 であ り ま す、 そ れ故 に立 憲 政 体 を変 革 す る者 のみ が之 に適

し 安 藤 君 にし て、 も つと 私 の申 上 げ る よ り意 味 が明瞭 に現 は れ るや

挙権 附 与 の 理由 は政 治能 力 の有 無 に依 つて決 すべ し と 云 は れた、 之

を御 議 論 せ ら る ゝな らば 、 其前 提 とし て人 心動 揺 せざ ると き に提 出

う な 文 字 を御 提 供 下 す つた な ら ば、 そ れ は考 慮 致 し て見 ます が、 私

に 対 し て義 務 教 育機 関 の延 長 を 此 理由 に依 つて主張 せ ら れた こと も

すべ し と 云 ふ御議 論 であ つた、 本 日普 通 選 挙法 の提 出 せら れ、 即 時

は 此 原案 に在 りま す 政 体 の変革 、 私 有 財 産 制 度 の否 認 と 云 ふ言 葉 が

あ りま す 、 義 務教 育 を延 長 せず し て既 に政 治能 力 あり と し て、 而 も

り明 瞭 な る文 字 は無 い と思 ふ ので あ り ま す、 又 私 有 財 産 制度 の否 認 、

一番 明瞭 で あ つて、 是 よ り 明瞭 な る文 字 は 只今 の所 で は考へ 及 ば な

用 せ ら れ て、其 以 外 の者 は そ れは 関 係 な い のであ りま す か ら、 是 よ

い ので あ り ます

を実 施 す ると 云 ふ こと は極 め て危 険 で あ る、 此 人 心動 揺 の治 ま る所

た こと があ る、其 反 対 の理 由 は 、今 や人 心 動 揺 のと き、 普 通 選 挙 法

円 の納 税 資 格 を 以 て適 当 な りと し て、 普 通 選 挙 法案 に反 対 を せ ら れ

通選 挙 法 の議 論 が当 議 会 に現 は れま し た と き に、憲 政 会 の諸 君 が二

係 に付 て持 つ て居 る ので あ りま す 、 第 一の疑 問 は 曾 て大 正八 年 、 普

第 三 の疑 問 は曾 て提 出 せ ら れま し た 所 の過 激 社 会 運 動 取締 法 、 此 関

と第 二 の疑 問 は普 通 選挙 法 と の関 係 に於 て、 抱 い て居 る ので あ る、

○ 鳩 山 一郎 君  私 も本 法 に付 て三 つの疑 問 ヲ持 って居 り ま す、 第 一

御答 弁 を煩 し た い ので あり ま す 、第 三 に過 激 社会 運 動 取 締 法 案 、之

得 な い ので あ りま す、 此点 に付 き ま し て も若 槻 内務 大 臣 の明 快 な る

国 家 に不 利 益 を来 す こと がな い であ ら う と 云 ふ結 論 に到 達 せざ るを

と 云 ふ時 代 に於 き ま し て は、 思 想 を自 由 に委 す と 言 つて も、 決 し て

論 を 立 てら れ た の であ る、 斯 様 に普 通 選挙 法 が無制 限 に実 施 すべ し

が、之 が多 数 で あ ると し て普 通 選 挙 法 を実 施 し ても宜 いと 云 ふ御 議

ます が、甲 と 乙 と御 互 に議 論 を聞 い て其 是 非 を 判 断 す る能 力 あ る者

子 総 て政治 能 力 あ りと し て普 通選 挙 を実施 せら れん と す る ので あ り

此 普 通 選 挙 と 云 ふ も のは 全 く無 制 限 であ つ て二十 五歳 以 上 の青 年 男

を見 て、 然 る後 に普 通 選 挙 法 を実 施 す るも 遅 く は な い で はな いか、

つた、 今 回 は国 体政 体 の変革 、私 有 財 産 制 度 の否 認 と 云 ふ やう な具

に付 き まし ても 先刻 来 若 槻 内 務 大 臣 は、 以 前 の法 案 は茫 漠 と し て居

体的 の事 実 を 列 記 し居 るか ら し て、 今 回 の法 案 は洵 に字 義 明 瞭 で あ

私 の丁 度 前 面 に坐 って居 ら る ゝ所 の斎 藤 隆 夫 君 の口調 を 以 て之 を言 ひま す れ ば、 風 の吹 き 模 様 を 見、 治 ま る所 を見 て、 然 る後 に普 通選

そ れ で此 法 律 案 の必要 が あ る の であ りま す 、 又第 二点 は 普 通選 挙 を

者 にし て不 健 全 な る思 想 を 持 つ て居 る者 があ る ので あり ま す か ら、

も の で あ る、 斯 様 な取 締 の案 は要 ら な い の であ ら う と云 う 御質 問 の

実 行 す る やう にな つたな ら ば 思想 は自 由 にし て置 いて宜 かり さ う な

る と申 され た の であ りま す 、 以前 の提 案 に就 て見 れば 、 朝 憲紊 乱 と

て議論 を致 し まし たな らば 、 或 は疑 を挾 む かも知 れな い の であ る、

か、 社 会根 本 組 織 の破 壊 と か 云へ ば 、 是 等 の文 字 だけ を 切離 し ま し

併 な が ら朝 憲 を紊 乱 す る、 社会 の根 本 組 織 を破 壊 す ると 云 ふ のに は、

やう で あり ま す 、是 は第 一に御答 を致 し まし た と 同様 であ り ま し て、

案 の必要 が あ る の であ り ま す、 第 三 の御 尋 の過 激 社 会運動 取 締 法 案

制 限 が附 いて居 た の であ る、 即 ち外 国 人 と 通謀 を し て朝 憲 を紊 乱 す

と本 法 案 と は同 様 であ る と 云 ふ御 見 解 、是 は大 変 に違 つて居 りま す 、

が、茲 に 一部 に危 険 な る思 想 を懐 い て居 る者 があ り ます 以 上 は 本 法

大 臣 が茲 に御 述べ にな つた議 論 の全 部 と 云 ふも のは丁 度 外 国 人 と 通

其違 つ て居 りま す こと は、 先程 比 較 し て申 上げ た の で明 瞭 で あ る と

普 通選 挙 を 行 ひま す る時 代 に於 ても 、洵 に遺 憾 な る こと であ り ま す

謀 し て朝憲 を紊 乱 す る、 外 国 人 と 通謀 し て社 会 の根 本 組 織 を 破 壊 す

存 じ ま す る が、 尚 ほ委 員会 に於 て詳 し く其 差異 を申 上 げ て、 両 案 の

る、 外 国 人 と 通謀 し て社 会 の根 本 組 織 を破 壊 す る と 云 ふ文 字 であ り

ると 云 ふ こと に結 局 な る の であ る、 即 ち 若 槻 内務 大臣 の説 明 の全 体、

まし た な らば 、 丁度 今 日此 立法 の主 旨 説 明 に依 り まし て、 若 槻 内務

説 明 の精神 を 酌 ん で取 り ま し た な らば 、 此 治 安 維 持法 と、 前 回 提 出

違 つ て居 る所 を明 か に致 し ます (拍 手起 る )

○ 田 崎 信蔵 君  私 の御 尋 せ ん とす る こと は 、既 に 二三 の方 に依 つて

議○ 長 (粕谷 義 三君 ) 次 に田崎 信 蔵 君

せら れ ま し た 過激 社 会 運 動 取締 法 案 と は、 全 く 同 一な も ので あ ると

憲 政 会 の諸 君 は之 に反 対 を せら れ た ので あ る、 今 日掌 を翻 す が如 く、

て御 尋 し た い ので あ りま す 、 若槻 内務 大 臣 は大 正 十 一年 の過 激 思 想

尽 さ れ て居 つた ので あり ま す 、併 な がら 私 は一二 それ に付 て補 足 し

言 つて差 支 な い ので あ る、 其 の過 激 社会 運 動 取 締 法案 が出 たと き に、

で あ りま す 、 其変 説 の理 由 を も伺 ひ た い のであ り ま す (拍手 起 る)

其 説 を変 ぜ ら れ た のは理 由 何 処 に存 す る やと 云 ふ こと に疑 を懐 く の

る と思 ひま す 、 是 は教 育 が普 及 し て居 る、 国 民 の智 能 が開発 せ ら れ

る や う であ り ま す 、普 通選 挙 を 実 行 し て宜 い時 期 に今 日 は な つて居

る で あ らう から 本案 は 必要 な い の では な いか と云 ふ の が第 一問 で あ

普 通 選 挙 を 行 ふや う にな つた 今 日 であ れば 、 思 想 は健 全 にな つて居

ら れま し ても 、事 実 に於 て国 民 の不平 を誘 発 す る如 き こと が あ つた

断 じ て許 さ ぬ の であ り ます 、 幾 ら 口先ば か り国 体 の至 善 主 義 を 称へ

ば 、 今 日 の 日本 に於 て政 治 家 た る 正確 な る良 心 の所 有 者 と し ては 、

に革 新 倶 楽 部 の諸 君 が此 壇 上 に於 て論 ぜ ら れ た速 記録 を 御 覧 にな れ

す る者 であ り ま す 、何 故 かと 申 し ま す れば 、 其 当時 の憲 政 会 諸 君竝

ます 、 是 れ 私 が立 憲政 治 家 とし て斯 様 な る言 辞 は 私 は詭 言 な り と 断

の治 安 維 持 法 案 は具 体 的 に之 を 示 さ れ て居 る の であ る、 斯 様 であ り

社 会 運 動 の取 締法 律 案 に は、 具 体的 な る文 字 がな か つた 故 に、今 回

て居 る、 文 化 が進 ん で居 ると 云 ふ 点 か ら見 て、 其 時代 は来 つて居 る

国○ 務 大 臣 (若槻 礼 次 郎君 ) 鳩 山君 の御 質 問 に御 答へ 申 上 げま す 、

○ 議 長 (粕 谷 義 三 君) 若槻 内務 大臣

と思 ひま す 、 併 な が ら其 間 に洵 に困 つた こと には 、意 思 の薄 弱 な る

な らば 、 何 等 の効 果 が な い の であ り ます 、 私 の尋 ね ん とす る こと は、

も せけ ば 溢 る る谷 川 の流 れ や民 の心 な る ら ん﹂ と 云 ふ御 製 が あ る、

と 宣 は せ給 う た か (此 時 発 言 す る者 多 し ) お黙 り な さ い、 ﹁ 浅 くと

まし て も、 思想 は決 し て善 導 出来 る も ので はな い ので あ る、如 何 に

此 御 製 の御思 召 は那 辺 に在 る 、今 申 上 げ ま す 如 く如 何 に其 罪 を罰 し

即 ち我 国 は法 治 国 と し て法 律 の制 定 は敢 て欧 米 の先進 国 に劣 ら ぬ の であ り ます さ り な が ら最 初 の出 発 は是 れ欧 米 の模 倣 であ る の であ り

の善 導 に付 て如 何 な る力 を 以 てし ても、 恰 も 空 気 を斧 に て打 つが如

内 務 大 臣 、 司法 大 臣 が お偉 い方 で あ りま し ても、 諸 君 が施 政 上思 想

ま す、 断 じ て創 作的 法 律 は独 立 し て無 か つた の で ある、 外 国 の模 倣 のみ で あ つた と 私 は断 言 し て憚 ら ぬ者 で あ りま す 、 若 し あ るな ら ば

き結 果 を見 る のであ る、 之 を 以 て私 は内 務 大 臣 に質 問 す る ので あ る、

示 し て御 覧 な さ い、 此治 安 維 持法 案 が制 定 さ れ て、 必ず 内務 大 臣 の 言 は れ た共 産 主 義、 無 政 府 主 義 が 取締 り得 ると 信 じ て出 さ れ た の で

どう か、 私 は唯々 諸 君 の冷 静 な る御 考 慮 を乞 ふ者 で あり ま す、 昨 是

今 非 は現 代 の政 治家 の常 に執 る方法 か は知 れま せぬ、 併 な がら危 険

治 安 維 持 法 の結 果 に付 て、 今 御尋 し た事 は御 考 慮 にな つて居 る のか

思 想 取 締 法案 に於 て罪 が軽 か つた も のが、 治 安 維持 法 に依 つて其 罪

あ り ま せう け れ ど も 、 私 は今 申 す 如 く そ れ は反 対 な る結 果 を見 ると

十 一年 の過 激 思 想 社会 運動 す ら︱

が十 年 にな つた 理由 、 之 を 内 務 大 臣 に問 ふ の であ り ます

云 ふ ことを 私 は 惜 む者 であ り ま す、 何 が故 で あ る かと申 し ます れ ば 、

た ので あり ま す 、然 る に今 日 は其 刑 罰 は十 年 にな つた の であ りま す

○ 議 長 (粕 谷 義 三君 ) 若 槻 内 務 大臣

貴族 院 に於 て 三年 の刑 罰 で あ つ

の事 実 に徴 し て明 か であ る ことは 、 内務 当 局 が御 調べ にな れば 明 か

な つ て居 り ま す 所 の治 安 維 持 法 と の違 ひ ます こと は 、先 程 申 上 げ て

○国務大臣 ( 若 槻 礼 次 郎 君 ) 過激 社 会 運 動 取 締法 と、 今 日 問 題 に

罪 の罰 が殖 え る程、 反 対 に犯 罪 者 が 殖 え る と 云 ふ こと は 過去 の我 国

にな る と思 ひま す 、 其 証拠 は私 が申 す ま で もな く、 我 が 内務 省 が危

し ても用 の無 い事 と存 じま す から 、 是 は委 員 会 で十 分申 上 げ ま す、

置 い た通 り であ り ます 、 又 其 違 つ て居 る こと は 此処 で何 回 繰 返し ま

険 な る思 想 と し て調べ て居 る其 事 実 は幾 ら ほ ど あ る か、 内務 省 の調

るか 、 恐 ら く内 務 当 局 の思 想 に対 し て の調 査 は現 在 我 国 に於 て第 二

査 と陸 軍省 の調 査 と を 比較 し たな ら ば、 何 れ が大 であ るか、 小 で あ

○ 議 長 (粕 谷義 三君 ) 此 場 合 田崎 君 に御 相 談 致 し ま す が、 あ な た

ひ ます (拍 手 )

の御 演 説 中 頑 迷︱

其 他 は 田崎君 の御 意 見 であ り ま し て、 私答 弁 す る ことを 要 せ ぬ と思

明治 先帝 陛 下 の吾 々帝 国臣 民 に与へ 給 う た所 の権 利 であ る、 吾 々常

な い と考へ ま す が、 御 取 消 にな り ま す か

流 第 三流 に私 は低 下 し て居 る も のと 信 じ て居 る の であ り ま す、 此 意

に此 立 憲政 体 に謳 歌 し て感 激 し て居 る の であ り ます 、 併 な が ら内 務

味 に於 て私 は内 務 当 局 に御 尋 す る の であ る、 先 程 より 政 体 の変 革 は、

大 臣 の言葉 を 以 てす る な らば 、 明 治 先 帝 の御 思 召 に背 く も のは即 ち

( ﹁無 用 々 々﹂ と呼 ぶ者 あり )

○ 田崎 信 蔵 君  只 今議 長 か ら御 注 意 のあ り まし た こと は、 私 は 之 を

固陋 の貴 族 院 云 々と言 はれ ま し た こと は穏 当 で

此 治 安 維持 法 案 であ ると 云 ふ こと を断 じ て申 す 者 であ り ま す (此 時 発 言 す る者 多 し) 諸 君 静 に御 聴き な さ い、 明 治 先 帝 陛 下 の御製 に何

体 ﹂ と ﹁政 体 ﹂ 及 ﹁私有 財 産 制 度 ﹂ と 云 ふ も の が同 じ 条文 の中 に入

点 御尋 を致 し た いと 思 ふ ので あ りま す、 治 安 維 持 法 の中 に は、 ﹁国

細 か い事 は委 員 会 で質 問 す る機 会 が あ らう と存 じ ま す か ら、 唯々一

○有 馬 頼 寧 君  私 は 只今 提 案 され ま し た治 安 維持 法 に付 き ま し て、

○ 議 長 (粕 谷 義 三君 ) 有 馬 頼 寧 君

取消します

少 く と も政 府 と し て の 一つの失 態 で あ ると 思 ふ の であ り ます 、 此 誤

論 そ れ は誤 解 で あり ま せ う、 併 し 誤 解 を 生 ぜ し め ると 云 ふ こと は、

る と感 じ て居 る の であ り ます ( ﹁そ れ は 誤解 だ﹂ と呼 ぶ者 あ り )勿

人 々は、 確 に此 治 安維 持法 な るも のが、 無 産 階 級 に対 す る 圧 迫 で あ

る と断 定 す る の では あ りま せ ぬ け れ ど も、 現 在 の無 産 階 級 の青 年 の

を圧 迫 す る も の であ る かど う かと 云 ふ こと は、 そ れ を私 は さ う で あ

りま す、 若 し 此法 律 案 が無産 階 級 に対 す る所 の圧迫 では なく て、 そ

解 を 無 く す る と 云 ふ こと が勿 論 必要 で あ る に違 ひな いと思 ふ の であ

れ が誤 解 であ る と 云 ふな ら ば 、 尚更 私 は之 を 遺 憾 とす る ので あ りま

つて居 る ので あ りま す が、是 は決 し て其軽 量 に於 て同 じ も ので あ る

司 法 大 臣 の御 話 に も あり ま し た やう に絶 対 のも の で あ る、併 な が ら

う誤 解 し た 場合 に、 所 謂 其 反撥 と し て行 く所 のも のは何 で あ る か、

す 、 無 産 階 級 の人 々が之 を所 謂 無産 階 級 に対 す る圧 迫 な り と感 じ さ

と 云 ふ考 の下 に され た も ので はな いと 信ず る の で あり ま す、 国体 は

い と 云 ふ御 話 が あ つた の であ り ます 、 其 絶 対 のも ので あ る所 の国 体

政 体 と か或 は私 有 財 産 制度 と か 云 ふも のは、 是 は 絶 対 のも の ではな

ます 、 虎 の門事 件 以来皇 窒 の行幸 啓 の場 合 に於 ては、 其 取締 警 護 に

き まし て、 私 は 内 務大 臣 に皇 室 の警 護 に付 て御 尋 を し た こと が あ り

な ら ぬ の であ り ま す、 虎 の門 事 件 に 付 き まし て、 予算 の分 科 会 に於

は国 体 に関 す る問 題 で あり ま す が、 国 体 の変革 国 体 の維 持 と 云 ふ こ

何 処 に其 反 動 が行 く も の であ る か と 云 ふ ことを 私達 は考へ な け れば

と は、 言 換へ て見 れば 皇 室 の擁 護 と 云 ふ こと であ る と思 ひ ます 、 然

付 て、 何 等 か考 慮 さ れ る所 は な いか と 云 ふ こと を御 尋 し た時 に、 別

は れ る理 由 は 無 いと私 は信 ず る ので あ りま す、 私 が御 尋 致 し た い の

る に 此治 安 維 持 法 を制 定 す る こと に依 つて、 吾 々が 日本 の皇 室 を擁

そ々 れ は厳 重 にさ れ る、 勿 論 厳 重 にさ れ る こと は 必要 であ り ま せう

に考 慮 はし て居 な いと 云 ふ やう な 御答 弁 が あ つた ので あり ま す、 唯

と 、 絶 対 でな い所 の政 体 及 私有 財 産 制 度 と 云 ふ も のを、 同 一に取扱

か と 云 ふ こと を 私 は憂 う る者 であ り ます 、 労 働階 級 の青 年 の人 々 の

護 し や う とす る こと に、 何 等 か の支 障 を来 す 虞 が な いも ので あら う

のは唯々 濫 に斯 の如 き取 締 の法 律 を拵へ て、 濫 に取 締 の みを厳 重 に

の本 旨 で はな いと 私 は思 ふ の であ り ま す、 随 て日本 の政 治 と 云 ふ も

の数 を 増 し 、憲 兵 の数 を 増 し て、之 を警 護 す ると 云 ふ こと が 、警 護

安 逸 な る所 の生 活 を送 る こと の出来 る階 級 が沢 山 にあ る で はな い か、

す ると 云 ふ こと が政治 の妙 諦 では な いと思 ふ の であ りま す 、 勿論 無

け れど も、 之 を 擁 護 し、 之 を警護 す る と 云 ふ こと は、 唯々 徒 に 巡査

そ れ は果 し て何 に原 因 す る の であ る か と 云 ふな ら ば 、其 青 年 の人 々

産 階級 に対 す る所 の圧迫 を目 的 と す る 法律 で はな い のであ り ま せ う

る得 こと が出 来 な い のに、 一方 には何 等 労 働 も す る こと な くし て、

の曰 く、 そ れ は現 代 の政 治 に於 て大 な る欠 陥 があ る か ら で あ ると 云

曰 く、 吾 々が 日夜殆 ん ど身 体 を 粉 にし て働 い て見 ても 生活 の安 定 を

ふ こと を 言 つて居 る の であ り ます 、 此 治安 維 持 法 が果 し て無 産 階 級

こと を、 私 は憂 ふ る者 であ り ます 、其 点 に付 き ま し て内 務 大臣 の御

果 し て如 何 な る結果 を持 来 す か と云 ふ こと を考 へて見 ると き、 治 安

け れ ども 、斯 の如 く 感 じ、 斯 の如 く誤 解 す ると 云 ふ こと の結果 が、

りま す (拍 手起 る)

彼 等 は 悠 然 とし てち つと も心 配 せ ぬ やう に相 成 る こと ゝ思 ふ のであ

し て拘 束 を加へ るも の であ りま せ ぬ、 故 に誤 解 が解 け さへ す れば 、

あり ま せ ぬ、 無 産階 級 の人 が適 法 な る運 動 をす る こと に向 つ て、 決

(速記)第 一回

義 、 此 二 つ のも のを取 締 ると 云 ふだ け で出 て居 る のであ り ます 、 そ

杉浦

山桝

武雄  中村 啓次郎  松浦五兵衛 祷

儀重  山田

又司 

降旗元太郎  横山金太郎 

手代木隆吉 

清水留 三郎 

比佐 昌 平

河波 荒次郎

友造

興  理事 吉 田 真策

第五十回帝国議会 政府提出)委員会議録 衆 議 院治  安維持法案 (

維 持 法制 定 の目 的 と却 て反 対 す る所 の結 果 を生 じ は しな いか と 云 ふ

所 見 を承 り た いと思 ひま す ○ 議 長 (粕 谷 義 三君 ) 若槻 内 務 大臣 ○ 国務 大 臣 (若槻 礼 次郎 君) 有 馬 君 は無 産 階級 の人 達 が 本 法 案 の

委員氏名

規 定 を誤 解 し て居 る こと に付 て、 御 心 配 にな つた やう であ りま す、 私 も亦 無 産 階級 の人 達 が本 法 案 を誤 解 し て居 る こと を深 く憂へ て居

理事 土屋

る者 であ り ます 、 此法 律 案 は切 に申 上 げ ま し た通 り、 国 体 の変 革 、

理事 板野

委員長 前田 米蔵 理事 中谷

れ を無 産階 級 の人 が、 何 か自 分 等 が主張 す る こと を 此法律 で妨 げ ら

谷原

貞頼  理事 本田 義成 

れ は せぬ かと 云 ふ誤 解 を し て居 ら る ゝの であ り ます 、 そ れ は大 な る

青木 精 一  熊谷

少 し 俗語 で申 上げ て精 密 な こと であ り ま せぬ け れど

も、 無 政府 主 義 に当 る やう な事 と 、 私有 財 産 制 度 の否 認 即 ち共 産 主

政 体 の変革︱

誤 解 であ る、 若 し彼 等 が無 政 府 主義 、 共 産 主義 を主 張 す る者 であ る

嶽  高木

音蔵  山崎達之輔

夫次郎  内田 信也

大正十 四年二月 二十三日 (月曜 日)午前十時 三十分開議

二郎

苗代

な ら ば、 それ は取 締 ら る ゝの であ り ます 、苟 も国 体 を変 革 し 、政 体

星島

公  森 田 政義  原

を 変革 す ると 云 ふ こと なし に、私 有 財 産 制度 を根 本 から破 壊 す ると 云 ふ考 がな け れば 、 決 し て無 産 階級 の人 の運動 を 拘 束 す るも ので は な い のであ り ます (拍 手) 此 所 は洵 に明 瞭 な点 であ る、 若 し 誤解 を し て居 る者 が あ るな ら ば、 此 議場 の応 答 に依 つて、 どう ぞ 誤解 を解

に付て発言 の通告者 があります から、其方から許します

○前田委員 長 唯今 から治安維持法 の委員会 を開きます、議事進行

のあ る こと は洵 に宜 くな いと思 ひま す、 そ れ故 に努 め て誤解 を 解 く

法に於きまして曾 て類例 を見ざる峻厳なる法律 であります、其沿革

○中谷委員 議事進行に関し て 一言致します、本案 は我国 の立法司

いて貰 ひた いと思 う て居 る の であり ま す、 私 も 有 馬 君と 同様 に誤 解

やう にし て居 りま す、 本 法案 は決 し て左 様 な 事 に ま で及 ぶ も の では

と し ては大 正十 一年 に先 づ貴 族 院 に法 案 が提出 せ ら れ同 院 に於 て非

し た が出 席 にな りま せ ぬ、 私 が 理事 と し て交 渉 に参 り ま す ると 、本

席 がな い のは遺 憾 であ りま す が、 内 務 政務 次 官 は当 然出 席 と 思 ひ ま

案 は 司法 省 の所 管 であ る から、 司 法 大 臣 が往 つて居 たな らば 宜 い で

常 に議 論 が闘 はさ れ て再 再審 査 に附 せ ら れ、 而 し て其 法案 が貴 族 院 を 通過 し て衆議 院 に廻付 せら れ た る時 分 に は、会 期 切迫 の為 に法案

に、 又内 務 省 の所 管 であ り まし て殊 に警 察 関係 に於 て は重 要 な る意

味 を持 つて居 り ま す、 而 し て 三派 交渉 会 は午前 は治安 警 察 法 を審 議

は な い かと 云 ふ答 弁 であ りま し た 、本 案 は司法 省 の所 管 な る と同 時

す ると き に は政府 委 員 が出 て来 る、午 後 は普選 案 の委 員 会 に出 る と

は 握潰 し にな つた 沿革 があ る ので あり ま す、 政 府 の御 説 明 と し て当

す け れ ども、 其 内 容 は内 務 大 臣 の説 明 の如 く、 無 政 府主 義 者 、共 産

承 つて居 つた の であ りま す、 そ れ にも拘 らず 内務 当 局 の斯 る態度 は

時 の過 激 取 締法 案 と今 回 の法案 と は異 つ て居 ると 云 ふ こと であ りま

ぬ の であ りま す、 而 も 輿論 の上 に於 ても 殆 ど全 部 の新聞 紙 は、其 論

の間 に論 議 せ ら れ て帰 結 は分 て居 りま す、 之 に反 し て本案 は国 民 の

遺 憾 と す る ので あり ます、 普 選 は重要 で あり ま す けれ ど も多 年 国 民

主 義者 を取 締 る精 神 から言へ ば、 矢 張 同様 の案 と 申 さな けれ ば な ら

説 に於 て悪 法 な り と非 難 し て居 り ま す、 又 社会 運 動 者 、労 働 運動 者

重 に審議 す る方法 と致 し まし て、 先 づ初 め の質 問 は 此法 案 が果 し て

帰 結 が分 ら な い のであ り ます か ら、 政 府 は慎 重 な る態 度 を 以 て此 委

も或 は会合 を催 し、 或 は 示 威運 動 を為 し或 は文書 等 を以 て盛 に反 対

此 時勢 、 此国 情 に於 て必 要 な り や否 や、 又此 法律 の条文 等 の上 に於

し て居 る次第 であ り ます 、然 る に此 院内 の形 勢 を見 ます る と、 多 数

に は強 て反 対 でな いと 云 ふ こと を伺 つ て居 りま す 、 さう 致 し ます る

き ま し て、 果 し て至当 な る も の であ る や否 や と 云 ふ所 の総 論 的 の質

願 す る次 第 であ り ます 、 又委 員 各 位 に於 かれ まし ては、 此法 案 を慎

と 院内 の形勢 は殆 ど 全部 が本案 に対 し て或 は敬 意 を 表 し、 或 は反 対

問 を 致 し て、 それ が稍 々終 了致 しま し た場 合 に於 き ま し て、 各 論 の

員 会 に臨 ま れ ん こと を 切望 す る 訳 で、 此 点 を特 に政府 委 員諸君 に御

を し な いと 云 ふ やう な立 場 に在 る の であ り ます 、 而 も院 外 の形 勢 は

を有 す る与党 三派 の支 持 し て居 る政 府 の提案 であ り ます 、而 し て又

院 内 の考 と 同 じ でな い ので、 吾 々は議 員 の職 責 上 三 派 が政 府 を文 持

あ りま す が、 議 事 の進 行 の上 に於 きま し て、 其 方 が便 利 で あら う と

質 問 に移 る方 が至 当 で あら う と思 ふ の であ りま す、 是 は私 の希 望 で

吾 々に情 報 の伝 ふ る所 に依 れ ば、 唯 一の反 対 党 た る 政友 本 党 も此 案

致 し て居 りま し て も、 此問 題 に付 て は十 分 に貿 問 を 致 す積 り であ り

な い、 何 処 迄 も本 案 に就 て疑義 を質 し、 国 民 の自 由 に付 て重 大な る

ざ いま す か ら、 一応説 明 を 致 し ま す、 近頃 社 会 の状 態 の変 遷 に連 れ

務 大 臣 よ り説 明 を致 し てあ る 通 り でご ざ い ます が、 尚 ほ御 要 求 でご

小○ 川 ︹ 平 吉 ︺ 国務 大 臣 ︹ 司 法 大 臣︺ 大 体 此前 本 会 議 に 於 て、 内

云 ふ意 味 に於 き まし て、 此事 を 切望 す る の であ りま す

ま す 、 又其 同 志 も多 数 あ る の であ り ます 、其 点 に付 て政 府当 局 に 一

関 係 を有 す る此案 に付 ては、 吾 々の納 得 す る迄 は何 回 でも質問 を 重

で あ りま す けれ ど も、 吾 々 の質 問 は決 し て悪意 を 以 て質 問 す る の で

言 致 し た い のであ り ます、 吾 々は政 府 を援 助 し 支持 す る与 党 の 一人

ね て応答 を求 め た いの であ り ます 、而 も内 務大 臣 は病 気 の為 め御出

は余程 我 が国 内 の人 心 に刺戟 を与へ た やう であ りま す 、欧 羅 巴、 亜

う にな つて参 り ま し た、 殊 に露 西亜 帝 国 の崩 壊、 独 逸 帝国 の崩 壊 等

主 義 を唱へ 、 更 に進 ん で、実 行 に着 手 せ んと す る者 も亦 少 く な いや

秩 序 を壊 乱 せ ん と す るも のが少 く な い、 又 無 政府 主義 を唱へ 、 共産

ま し て、 段 々左 傾 、 危 険 な る思 想 が発 生 し て参 りま し て、国 法 上 の

国 等 に於 ても 此共 産 主義 、 無 政府 主 義 の為 に は非常 な る苦痛 を感 じ

し て、 而 し て斯 る こと の絶 滅 を期 さな け れ ば なら ぬ次 第 であ る、 外

さ な け れば な らぬ 、既 に生 じ た も の に対 し て は、 厳 重 な る処 罰 を 致

れ ば なら ぬ、 又之 を 予防 し て、 将 来 斯 る 危険 の発 生 のな いやう に致

を発 生 し て参 つた、 此 危 険 は国 家 の為 め、 社 会 の為 めに防 衛 し な け

る の であり ま す、 殊 に世界 に於 て自 由 を 以 て高 唱 さ れ て居 る所 の亜

米 利加 合 衆 国 の如 き 、 二十 一年 と 云 ふ が如 き、 懲役 の重 刑 を課 し て、

ま し て、 何 れ の国 に於 て も、 相当 峻 厳 な る法 律 を 以 て之 に臨 ん で居

是 が防遏 を 図 つて居 ると 云 ふ次第 であ りま す、 勿 論 共産 主 義、 無 政

米 利加 等 に於 け る 左傾 思 想、 無 政 府主 義 、 共産 主 義 等 の思 想 も 亦 我

般 社会 事 情 の変 遷 に伴 ひまし て、斯 る際 に免 るべ から ざ る こと であ

府 主義 と云 ふも の は私 の考 で は、 露 西 亜 の如 き国 に於 ては 或 は発 生

国 に少 か らざ る影響 を与へ 、 殊 に国内 に於 け る経 済 事情 、 其 の他 一

りま せ う が、 一般 思想 も大分 動 揺 し て参 つて居 りま す 、 加 ふ る に露

し 、 或 は 又発 達 し、 培 養 せ ら るべ き も のであ る かも 知 れ ま せぬ が、

我 国 に於 ては 国家 の歴 史、 国 民 の歴史 、 又国 民相 互 の関 係 、 人種 の

ル﹂ の名 を 以 て世 界 に向 つ て、 非 常 な熱 心、 非常 な 力 を尽 し、 又少 か らざ る金 を使 つて組 織 的 に共 産 主 義 の運 動 を 致 し て居 り ます 、 我

に存 す る所 の熱烈 な る愛情 の関 係、 社 会 組 織 、経 済 組織 等 から見 ま

関 係 、欧 米 の如 く階 級 戦争 の激 し く な か つた関 係 、 又国 民相 互 の間

西 亜 の今 日 の労 農 政府 は、御 承 知 の通 り第 三 ﹁イ ンタ ーナ シ ヨナ ル

国 内 に於 ても不 幸 にし て、 此露西 亜 ﹁ボル セービ キ﹂ の輩 と相 通 じ 、

し ても 、斯 の如 き も のが露 西 亜 の如 き、 彼 の貴 族 富 豪等 が非常 な る

或 は金 品 を受 取 り、彼 等 と共 に彼 等 の計 画 に参 与 を致 し て、 我 が帝

り法 律 を以 て、之 に臨 む のみ では 無論 足 れり と は致 さぬ の であ りま

圧 制 を極 め、 国 民 は蒙 昧野 蛮 な る国 に於 て発 達 し まし ても、 我会 に

す、 或 は経 済 上 よ り致 し て、 国 民 一般 の生 活 を 向上 せし む る、或 は

国 内 に向 つて此 主 義 思想 を 宣伝 す る のみ なら ず 、更 に進 ん で之 を実

著 手 し て居 る と 云ふ話 で ある、 翌 大 正 十年 には洵 に遺 憾 極 ま る こと

道 徳 上 の精 神 的方 面 より し て 一般 国 民 の道 義 心 を高 め る、 又 知識 の

行 し やう と 云 ふ こと に な つて居 る の であ り ます 而 し て大 正 九年 あ た

で あり ま す が、 我 国 に於 ても、 共 産 党 な る も の が組 織 せら れ た と 云

上 より し て斯 る浅 薄 な る人類 の共同 作 用 を妨 げ る所 の実 行 の出来 な

と は私 共考へ て居 り ませ ぬ 又斯 る思 想 の発 生 並 に発 達 に付 ては、 独

ふ次第 であ る、 只 今中 谷 君 か ら今 日 ま で我 国 に於 て類 例 な き峻 厳 な

い人 類 に不 幸 を 与へ る様 な事 柄 は 宜 し くな いと 云 ふ こと を、 知識 の

於 ては斯 る浅 薄 な る、 乱暴 な る反 動 思想 が我 国 に於 て発 生 す る も の

る立 法 であ る と、 本 案 の御 批評 が あ つた ので あり ま す、 如 何 に も其

上 から 之を 啓 発 し て、 彼 等 の蒙 を 啓 き、 而 し て彼 等 をし て反 省 せ し

り に は既 に近藤 栄 蔵等 と 云 ふ人 々は、 上海 に於 て露 西 亜 の ﹁ボ ル セ

通 り であ り ます 、 何故 に其 通 り であ る か と言へ ば、 今 日ま で我 が帝

ービ キ﹂ の人 々と相 談 を致 し て、 金 を受 取 つて来 て、 主 義 の実 行 に

国 に於 て、 類 例 な き、 想 像 だ も出 来 な か つた 所 の最 も 危 険 な る状 態

共 産 主義 の実行 に著 手 を 致 し て、 之 を 宣 伝 す るば かり で はな い、 進

勿 論 で あり ます 、 現 に今 日 ま で発 生 致 し た事 件 を 見 まし ても、 明 に

め て、 さう し て根 本 よ り し て是 が絶 滅 を図 らな け れば な ら ぬ こと は

て条 文 を能 く 読 み、 其 精 神 の在 る所 を考へ ら れ まし た なら ば 、 少し

等 に於 て反 対 を す る模 様 が あ る様 で あ ります 、 是 は能 く此 法律 を見

谷 君 の仰 せ にな りま し た如 く、 最近 労 働 者 の 一部或 は新 聞 社 の 一部

こと は どう し て も出来 な い事 であ りま す、 又 此法 律 に ついて只 今中

実行 をす る だ け の者 を罰 す る と 云 ふ の であ りま す か ら、世 間 に能 く

も心 配 す る必 要 は な いと 思 ふ、 無 政 府主 義 者、 共 産主 義 者 の外 は、

ん で 一般 の人 々に煽 動 し て是 が実 行 を図 つて居 る者 も沢 山 あ る ので

分 り ま し たな らば 、 殊 更 に反 対 せ む が為 に反 対 す る者 は是 は 致方 が

学 者 は研究 を す る為 に無 政 府 主 義 の如 何な るも のであ る か と 云 ふ こ

考へ る又吾 々国 民 と し て も全 力 を尽 し て、 我 日本 に於 てだ け はど う

な い、 又無 政 府主 義 者、 共産 主 義者 は是 は困 る であ り ま せう 、是 は

あ り ます 、 其中 に は随 分 気 の毒 な やう な 者 も あ る、 何 と か之 に向 つ

か斯 様 な恐 るべ き も のは、 余 り成 長 し な い やう に致し た いと考へ て

反 対 す る に相 違 な い、 是 も致 方 がな い、 此 二 つの外 の人 々は軈 て疑

て手 を尽 し て行 つたな ら ば、 彼 等 の蒙 を 啓 く こと が出来 やせ ぬ か と

居 る、 是 は総 て 一般 国 民 の希 塑 で あら う と考へ る ので あ ります 、 併

は私 は能 く解 け て、 さう し て此法 案 に付 て国 家 の為 に社会 の為 に賛

ふ意 見 もあ り ま せう、 そ れも 此 法律 に於 て は罰 しな い、進 ん で是 が

な がら 今 日 は既 に遺 憾 な がら 事 が発 生 し て参 つた 、而 し て其 勢 も中

成 を表 す る こと に な る であ ら う と私 は考へ て居 る次 第 で あ りま す、

と の意 見 を公 表 を 致 し、 或 は 又是 と比較 し て此 方 が優 つて居 ると 云

々容 易 な ら ざ る勢 を以 て蔓 延 を 致 し て行 く ので あり ま す、 而 し て共

大 体 提 案 の理由 は右 のやう であ りま す る が、 尚 ほ御質 問 に応 じ て御

考へ ら る ゝ者 も 随 分多 い ので あ りま す、 それ であ りま す から 他 の方

産 主義 の結果 は彼 の実 に諸君 と 共 に遺 憾 に堪へ な い大 逆事 件 の如 き、

答 を致 す積 り であ り ます、

面 に向 つて国 家 と し て も出 来得 るだ け の力 を 尽 さ なけ れ ばな ら ぬ と

の為 に斯 様 な こと を や つた と 云 つて居 る、是 でも我 国 に於 て法 律 を

矢張 共 産 主義 の影 響 と し て、 共 産 主義 の前衛 と し て、彼 は共 産 主義

以 て之 を 取締 る 必要 がな いと 云 ふ こと は、私 共 に は想 像 が出 来 ぬ と

准 に な る であ らう と 考へ て居 る ので あり ま す是 れ は御 承 知 の通 り何

御承 知 の通 り 日露 の条 約 と云 ふも のは相談 が出来 ま し て、 近 日御 批

て置 き た いと思 ひま す、 先 刻 申 上 げ る のを 一つ落 し まし た こと は、

と し ては 之 に相 当 な る所 の法 律 を設 け て、 而 し て犯罪 と 云 ふも のを

れ の国 に於 ても露 西 亜 と条 約 を す る際 に於 て は ﹁ボ ル セー ビ キ﹂ の

○ 小川 国務 大 臣  只今 の御 答 の前 に、 私 の申 上 た ことを 少 し補 足 し

取締 ら な け れば な ら ぬ の であ りま す既 に我 国 に於 て も刑 法 も あり、

宣伝 に付 て非 常 な 心 配 を致 し て居 り ます 、う に対 す る安 全 の保 証 が

思 ふ が故 に、 道 徳 精 神 的 の方 而 、 或 は国民 の生 活 を豊 富 にす ると 云

相 当刑 罰 法 が あ つて、 或 人 が人 を 殺 し て も其 人 を死 刑 に処 す ると 云

付 か な い以 上 は条 約 を 締結 せ ぬと 云 ふ やう な希 望 が、 亜 米 利 加 合衆

ふ 点 より し て、 力 を尽 す べき こと は勿 論 であ り ます け れ ど も、 国 家

の実 行 に著手 せむ とす る者 が出 来 て居 る の に、 之 を取 締 ら ぬ と云 ふ

ふ、 今 国家 の根 本 を破 壊 し社会 を根柢 より し て打 壊 さう と 云 ふ こと

条 約 の内 容 を申 上 げ る こと は出 来 ま せ ぬ け れ ど も、 併 な がら ﹁ボ ル

内 に条 約 が公 布 にな る であ らう と 思 ひま す が、 今 日 では 此席 に於 て

心配 し な け れば な ら ぬ こと で あら う と思 ふ 、 我国 に於 ても何 れ近 い

の運動 が盛 に な ると 云 ふ こと は、 是 は ど う し ても何 れ の国 と し ても

に も 此 方 か ら人 が行 き、往 復 は頻 繁 にな る、随 て ﹁ボ ルセ ービ キ﹂

亜 か ら有 力 な る ﹁ボ ル セ ービ キ﹂ の人 も 此 方 に来 て居 り ま す、 彼 方

事 であ ら う と思 ひま す 、 国交 が恢 復 致 し ま し た 以 上 は、 沢 山 の露 西

も少 く な い、 独 逸 の如 き其 他 あ る の であ り ま す、 是 は固 よ り当 然 の

た上 で ﹁ボ ル セー ビ キ﹂ の運 動 に対 し て非常 に困 難 を 感 じ て居 る国

きし た い、 そ れ から 治 警 の十 七条 の煽 動 と 云 ふ こと は既 に社会 の問

が之 を 同 一に見 て提 案 を し た の はど う 云 ふ訳 で あ る か、 そ れ を御 聴

そ れ から 私有 財 産 の否 認 と 云 ふ こと は、 共 産 主義 のこと ゝ思 ひ ます

る と か、 国 家 を無 政 府 主 義 にす ると 云 ふ こと に な る の であ り ま せう 、

私 は此 国 体 と か或 は政 体 を 変革 す ると か云 ふ こと は、 政 府 を顛 覆 す

否 認 す ると 云 ふ こと を、 同 一に見 て居 る かと 云 ふ こと を伺 ひ た い、

り ます が、 国 体 を変 革 す ると か、 政 体 を変 革 す る と か、 私 有財 産 を

に依 れば 七 十 七条 か ら八 十条 ま で の中 に、 色 々な罪 が掲 げ ら れ て あ

ど う 云 ふ訳 で此事 を第 一条 の中 に列 挙 さ れ た の であ り ます か、 刑 法

体若 く は政 体 を変 革 し 又 は私 有財 産 制 度 を否 認 ﹂ 云 々と あり ま す が、

本○ 田委 員  私 は 此際 形 容 を 抜 き に し て、 的 確 に伺 ひ ます が、 ﹁国

国 の如 き は御 承 知 の通 り で あ る、 現 に露 西亜へ 国 交 を 恢復 致 し まし

セ ービ キ﹂ の宣 伝 運 動 に付 て は 日露 条 約 の際 に於 ても 、 日本 政 府 と

題 とな つ て、 之 を 取 消 さ な け れば な ら ぬ こと にな つて居 る に も拘 ら

﹁前 五 条 の罪 を犯 し た る者 自 首 し た ると き は其 の刑 を減 軽 し又 は 免

し て は十 分 に意 を 用 ひ て相 当 な る規 定 を 設 け て あ る の であ り ま す、

除 す ﹂ と あ り ます が、 刑罰 は内 容 も 形式 も 明瞭 にな つ て居 なけ れ ば

又設 け な け れば 此 様 に国交 を恢 復 を し ても、 往 来 す る こと が出 来 な

す、 是 等 の事 情 の為 に本 案 を拵へ た と 云 ふ 訳 で は あり ま せ ぬ が、 今

なら ぬ、 且統 一され て居 な け れば な ら ぬ の に、 本 法 は︱

ます が、斯 う 云 ふ文 字 を使 用 し た理 由 を 御 聴 き申 し た い、 そ れ から

日 と し て は余 程 重 要 な る 理由 と し て申 上 げ て も宜 から う と思 ふ ので

法 は漠 然 と し て居 つ て、大 切な 点 が明確 を 欠 い て居 ると思 ひま す が、

す 此 第 三条 に も ﹁煽 動 ﹂第 四条 にも ﹁ 煽 動 ﹂ と 云 ふ字 を用 ゐ て居 り

あ り ま す、 そ れ から 松浦 君 の御 話 であ り ま す が、 本 会 議 の際 申 上げ

是 で政 府 は満 足 し て居 る か、 是 も 伺 ひた い、 そ れ から 是 は重 大 な問

セ ービ キ﹂ に対 し て之 を防 ぐ 準 備 を す る所 の必 要 もあ る 訳 で あ り ま

た が如 く此 法 案 に関 聯 し て我 日本 国 内 に起 つて居 りま す所 の、 無 政

題 であ り ま す が、 今 の五条 の場 合 の自首 減 軽 で あり ま す、 多 数 の人

い ので あ り ます 、 之 を設 け る こと 程 そ れ程 国内 に於 ては 一層 ﹁ボ ル

府 主 義 共 産 主 義 の運 動等 に付 ては 、 公表 す ると 面 白 く な いと思 ふ事

間 が団 体 を組 ん で罪 を 犯 し て、 一人 の者 が自 首 し て出 れば 之 を減 免

別段 本 法 を制 定 す る に付 て特 に申 上 げ る こと は今 一寸気 が付 き ま せ

の誣 告罪 で あ るな ら ば、 一人 の者 が 自首 し て出 たら 減免 し ても宜 い

す る、 さ うし て多 数 の人間 が処 分 され る、 斯 う 云 ふ事 柄 は是 は刑 法

治 安 維持

げ る こと に致 し た いと申 上 げた の であ り ま す、 其 他 国 内 の事 に付 て

件 が 沢 山 あ り ます から 、其 事 件 の事 柄 は 秘密 会 に於 て十 分御 話 申 上

ぬ が、 何 か あ りま す れ ば秘 密 会 に於 ては無 論 隠 さず申 上 げま す

が、 多 数 で や つて 一人 が自 首 し た から、 そ れ を減 免 す る と 云 ふ こと て居 り ます

あ り ます が是 は自 首 し て出 て来 た者 だ け を減 軽 免 除 す る こと にな つ

○本 田委 員  私 の伺 つた のは治 警 第 十 七条 の煽 動 と 云 ふ字 が や かま

は、 法 律 の根 本 に於 て矛 盾 し て居 りは せ ぬ か と 云 ふ点 を 御聴 き し た いと 思 ひます

其 目 的 を 以 て運 動 に著 手 す る と 云 ふ事 柄 を罰 し よう と 云 ふ ので あ り

も同 じ であ る と云 ふ意 味 では あ りま せぬ、 斯 う 云 ふ事 を 実行 す る者 、

ま す が、 ど う 云 ふ訳 で斯 う 云 ふ字 を使 ひま す か、 そ れを 伺 ひた い、

れ る こと にな る 、色 々の方 法 で此煽 動 と 云 ふ字 が悪 用 され る と思 ひ

と 云 ふ こと であ り ます け れ ど も、 煽 動 と 云 ふ字 を使 ふと 是 が悪 用 さ

る の はど う 云 ふ訳 であ るか、 今 実 行 と云 ふ こと に付 て煽 動 が 必要 だ

と言 う て騒 いで居 り ま す、 然 る に此 法 律 に煽 動 と 云 ふ字 を使 つて居

ます 、 此 三 つ共 何 れ も 国 家 の為 め、 社会 の為 め に恐 るべ き 事 で あ る

そ れ か ら今 の減 軽 で あ りま す が、 一人 の自 首 し た者 は減 軽免 除 が あ

し く社 会 の問 題 とな つ て、 此煽 動 と 云 ふ事 を取 消 さな け れ ば な ら ぬ

と 云 ふ こと は同 じ であ り ま す、 程 度 には違 ひ は あ りま す け れ ど も、

つ て大 勢 で 一緒 に や つて自 首 し な い者 を縛 す る と 云 ふ のは ど う 云 ふ

小○ 川 国務 大 臣  此 国 体 政 体 の変 革 と、 私 有 財 産 制 度 の否 認 とを 同

之 を 防 止 しな けれ ば な ら ぬ と 云 ふ点 は同 じ であ つて それ には実 行 の

訳 であ りま す か、 そ れ を伺 ひ た い の であ りま す

じ に取 扱 つた のはど う 云 ふ訳 かと 云 ふ こと で あ りま す が 、是 は必 し

あり ま す、 更 に進 ん で行 き ま す る と、 国 体 に関 す る事 に付 て は刑 法

目 的 で協 議 をし た り し ても罰 しな け れ ば な ら ぬ か ら、 其 点 は同 じ で

目 的 を続 け る こと を 罰 す る と 云 ふ点 だ け は同 一で ある と 云 ふ こと に

と 云 ふ こと は絶 対 に同 一と 云 ふ こと では な い が、 、斯 う 云 ふ危 険 な る

の別 を 立 て ゝあ り ま す、 国 体若 は政 体 の変 革 、 私 有 財 産制 度 の否 認

ふ こと に此 前 の過激 社 会 運 動 取締 法 と 云 ふも のは な つて居 る、 是 が

り ま す、 社 会 主義 を宣 伝 し 、 又 は 宣伝 せ んと し た る者 を罰 す る と 云

は宣 伝 と云 ふ こと を罰 し て居 り ま す、 即 ち 斯 う 云 ふ こと にな つ て居

過激 思 想 取 締 法案 の こと を 御 引 き に な りま し た が、 彼 の時 の法 律 案

小○ 川国 務 大 臣  本 田君 は大 正 十年 であ つた か、 十 一年 であ つた か、

御 承知 を願 ひた い、 次 は煽 動 の こと であ り ます 、 煽 動 者 を罰 す る必

君 か ら は何 故 に宣 伝 ま でも 罰 せ ぬ か と云 ふ質 問 が あ つた位 であ り ま

評 判 が悪 か つた のであ り ま す 、是 は先 達 て本 会議 に於 ても 青木 精 一

等 に十 分規 定 され て あり ま す刑 法 に於 ては そ れ そ れ事 柄 に依 て軽 重

と 云 ふ て、 斯 う

要 が あ りま す 、 是 は実 行 す る目 的 を 以 て、 第 三 条 に規 定 し てあ る通

高 ま つて、 全 国 に広 が る やう にな つた ら、 ど ん な 法 律 に 持へ ても 取

云 ふ事 が段 々流 行 し掛 け て困 つ て居 る、 之 を赦 し て置 いて、 気 勢 が

な る か も知 れ ぬ、 斯 う 云 ふ やう な関 係 から 今 度 は之 を除 き ま し て、

た か無 か つた か 分ら な い者 ま でも罰 しな け れ ば な ら ぬと 云 ふ こと に

が、 そ れま で罰す ると 云 ふ こと に な ると 、果 し て実 行 の意 思 が あ つ

す、 宣 伝 を 罰 す ると 云 ふ こと は確 に 一つの方 法 であ らう と 思 ひ ま す

り、 共産 主義 を 実行 す る目 的 で煽 動 す る、 やれ〓

云 ふ のであ り ま す、 其 代 り厳 重 に制 限 をし て、 実 行 の目的 を以 て煽

実 行 を煽 動 し た者 を罰 す ると 云 ふ こと に狭 く拵へ て来 た の であ りま

締 が出 来 な い こと に な る と思 ひま す か ら、 斯 う 云 ふ場 合 に罰 す ると

動 し た者 を罰 す る と 云 ふ ので あり ま す、 そ れ から 終 り の減 軽 免 除 で

ら 見 ても、 常 識 から 見 ても 此煽 動 と 云 ふ こと は 当嵌 つて居 る の であ

ふ事 は 世 間常 識 でも 是 は解 釈 が付 く話 であ り ま す、 さ れば 立法 令 か

す 、 そ れ で煽 動其 も の は今 日其事 実 が在 る の であ る か ら、 煽 動 と 云

す 、 是 は前 の過激 社 会 運 動 取 締法 と は大 変 な相 違 があ る ので あ りま

に な りま す と 、 学者 の間 に於 ても其 根 本 は決 つ て居 り ます け れ ど も、

と申 し ます ると 云 ふ と︱

文 字 を出 し て研 究 を 致 しま し た の であ り ます 、無 政 府主 義 共 産 主 義

ま す、 勿 論 政 府 に於 き まし ても 、 立 案 す る ま で には 色 々と各 方 面 の

義 と 云 ふ風 に書 く方 が疑 義 が無 い かと 云 ふ比較 問 題 にな る ので あり

書 く が適 用 上疑 義 が無 いか、 或 は又 御 説 の如 く無 政 府 主義 、 共 産 主

其 範 囲 に至 り ま し ては人 に依 つ て説 明 を異 に致 し て居 る の であ り ま

無 政 府 主義 と は何 ん であ る か と 云 ふ こと

い てあ る積 り で あり ま す、 そ れ か ら もう 一つは 此自 首 をし た者 を減

り ま す か ら、 之 を取 締 る、 併 し是 は厳 重 に拡 張 の出 来 な い やう に書

す 、 大 体 申 上 げ ま す れば 国 家 の存 続 を否 定 し 、法 律 を否 定 す る と 云

云 ふ こと を 一面 に於 ては 唱へ る、 又他 の 一面 か ら極 く進 ん で申 し ま

軽 、若 く は免 除 す ると 云 ふ のは、 是 は大 勢 で 一緒 に や りま し ても、

す と 云 ふと所 有 の方 面 、 即 ち消 費 財 の方 も 絶 対 に平 等 にし て、茲 に

自 首 し て来 た者 に付 てだ け減 免 す る の であ り ます が、 其 の理由 は御

り、 実 行 をす ると 云 ふ協 議 をし た者 を 罰 す る と 云 ふ の であ り ます か

所 有権 の自由 と 云 ふ観念 が 入 ら な い やう にし てし ま ふ、斯 う 云 ふ所

ふ こと が無 政 府 主義 の大 体 の範 囲 で あ りま す、 併 し其 枝 葉 の方 面 に

ら、 事 実 其 のも の に深 く立 入 ら ぬ中 に罰 す る と 云 ふ の であ りま す 、

ま でも来 る ので あり ま す、 随 て共 産 主 義 と 云 ふも の に付 き ま し て も、

承 知 の通 り此 犯 罪 は 外 の犯 罪 のやう に でな く、 ず つと 以 前 に罰 す る

そ れ で自 首 す る と 云 ふ者 は 深 く 悔 悟 を 致し た の であ り ま し て、 余 り

ます と 云 ふと 一層説 が岐 れ る ので あ り ます 、 生産 財 を公 有 にす る と

社 会 に害 毒 を流 さ な い者 であ つて、 此 者 に対 し て減 軽 又 は免 除 す る

広 い意 味 と 狭 い意 味 と が あ り まし て 一定 し た る観 念 でな い ので あり

至 つて は説 が岐 れ て来 る の であ つて、 そ れと 同様 に共 産 主 義 に至 り

為 に他 の者 ま でも許 すと 云 ふ こと は 少 し も 理由 が無 いや う に思 ひま

ま す、 其 根 本 に於 き ま し て は無 政 府 主義 、 共産 主 義 と 申 し ま し て も

ので あ る、 実 際 実 行 せ ぬ前 で も国 家 を 転 覆 す る為 に や ると 云 ふ やう

す

に、 恐 るべ き危 険 が あ り ます から 、 単 に や ら う と実 行 の宣 伝 を し た

○ 本 田 委 員  此治 安 維持 法 の第 一条 に於 て社 会 主義 者 と か、 無 政 府

だ 不明 瞭 で あり ま す、 そ れ で あ りま す から御 説 の やう に書 き ます と

決 つて居 りま せう け れ ど も、 其 文 字 が代 表 す る範 囲 と 云 ふ も のは甚

云 ふ と、 之 をど う し ても法 律 に依 つて定義 でも与へ な け れ ば、 裁 判

主 義 共 産 主義 と 云 ふ こと に為 さ ら ぬ ので あ る か、 恐 ら く社 会 主義 、 共 産 主 義 を御 処 分 にな る のは誰 も何 と も言 は な いと思 ふ、 然 る に斯

や う にな り は せ ぬ か、 即 ち 裁判 官 は 一人 でな い の であ り ま す か ら、

官 の適 用 と 云 ふも のは洵 に困 難 で あ る、 否、 殆 ど 其 適 用 が出 来 な い

さ う 云 ふ やう にな り は せ ぬ かと 思 ふ の であ り ます 、 所 が原 案 の如 く

う 云 ふ 風 に茫 漠 た る法 律 を設 け て、 さう し て色 々之 を悪 用 さ れ る と

にす れ ば 国 体 の何 た る こと は大 体 に決 つ て居 りま す る し、 政 体 は即

云 ふ こと は殆 んど 明 瞭 な る事 実 で あり ま す、 そ れ故 に之 を 共 産主 義 、

○ 山岡 ︹ 万 之 助 ︺ 政府 委 員 ︹ 司 法 省 刑 事 局長 ︺ 其 点 は原 案 の如 く

無 政府 主 義 と 云 ふ風 にせ ら れ な か つた 理由 を 伺 ひ た い の であ り ます

此 明文 から 見 ま し た な らば 将 来 に於 きま し て私 共 の如 き 政 治家 と 云

是 が無 政 府 主義 、共 産 主 義 に応 用 さ れ る やう に出 来 て居 り ま す る が、

ひ、 或 は社 会 の大 新 聞 社 と 云 ひ此 政 体 と 云 ふ文 字 な ど に付 ては 重大

ち 立憲 政 体 の意 味 で あり ま す、 今 日 我国 は憲 法 国 で あ る、 憲 法 を 基

な る関 係 が及 ぼし て来 る と思 ふ の であ り ます 、 私 は茲 に申 上 げ て置

礎 と し た る政 体 で あ りま す る が、 之 をし て強 て分 ら ぬ と言へ ば そ れ は分 ら ぬ の であ り ます 、 そ れ で是 が 分 ら ぬ と云 ふ者 は法 律 が分 ら ぬ

然 る に偶 々斯 の如 き 不 明確 な る文 字 を使 つて居 る、 現内 閣 が峻 厳 な

き た い のは 、 山 岡 さ ん な ど は御 承 知 であ らう と 思 ひます が、政 府 が

る法 律 を設 け て置 いた な らば 、 将 来 此法 律 を応 用 し て如 何 な る こと

と 云 ふ こと に な る ので あり ま す、 法 律 に は随 分 色 々な文 字 が使 はれ

そ れ故 に此

ます れ ば 民法 、 商法 、 と 云 ふ こと に な り ま す る から し て、 甚 だ 広 い

て居 り ま し て、 分 ら ぬ文 字 も 沢山 あ り ま す け れど も 、兎 に角 憲 法 を

意 味 にな つ て、 其 何 た る か漠 然 と致 し ます け れど も︱

でも出 来 る こと に な る の で あ る、 さ う 云 ふ やう な 風 に此 法 律 を制 定

で調べ てま でも 之 を 犯 罪 に す ると 云 ふやう な行 動 に出 で る の であ る、

所 に制 度 と 云 ふ字 が加 は つてあ る の であ り ます 、 制 度 と 云 ふ こと に

さ れ て居 つ て、 此文 字 な ど に対 し て後 にな つて大 変 であ る な ど と言

反対 者 に対 し て大 に圧 迫 を加へ ると き に は、 故 ら に其 人 間 の人格 ま

な り ま す る と、 一つ の纏 つた観 念 に な る のであ り ま す、 秩 序 が総 括

つて も いか ぬ ので あ る、 選 挙 法 な ど で あり ま し た な らば 、 此次 に も

のであ り ま す そ れ か ら私 有 財 産 と 云 ふ こと、 単 純 に私有 財 産 と 申 し

され て、茲 に制 度 を生 ず る の であ り ます 、 其 私 有 財 産 の制 度 を 否 認

に対 し ては 、 直 に改 正 す ると 云 ふ こと は中 々出来 る も のぢ や な い、

直 に改 正 す る と 云 ふ こと が出 来 ま す け れど も 、斯 う 云 ふ治 安 維持 法

基 礎 と し た る、 即 ち立 憲 政 体 と 云 ふ意 味 が分 ら ぬと 云 ふ こと はな い

す ると 云 ふ こと に な り ます ると 云 ふ と、 其 根 本 を 否 定 す る と 云 ふ意

不明 確 な る 文字 を使 つて斯 う 云 ふ 重大 な 法 律 を 設 け ると 云 ふ こと は、

味 にな る の であ り ま す、 私 有 財 産 な る文 字 は成 程 広 い意 味 で あ り ま

吾 々は到 底 賛 成 す る こと が出 来 な い、 そ れ で、 政府 が此 社 会 を善 処

ふ こと に、 私 が 先程 か ら承 つた や う に御 考 を 願 は な けれ ば な ら ぬ、

本的 に私 有 財 産 制度 を否 定 す ると 云 ふ意 味 にな る のであ り ま す か ら、

無 政 府 主 義 、 共 産 主義 と 云 ふ やう にす ると其 適 用 が困 難 であ る、 故

厳格 の法 律 を 以 て取 締 ると 云 ふ こと は却 つて国 家 を危 く す る のみな

す け れ ど も 、制 度 と 云 ふ こと と否 認 と 云 ふ こと を結 付 け て、茲 に根

に斯 の如 く す る こと が適 当 と 信 じ て居 る 次第 で あ りま す

らず 、 此 法律 を悪 用 さ れ て将 来由 々敷 き こと にな る と思 ふ 此法 律 を

す る途 を考へ な い で、 唯 々罰 則 を厳 重 にし て社会 を取 締 ら う と 云 ふ

○本 田委 員  只 今 の御 説 明 で適 法 の やう であ り ます るが、 私 は此 法

使 ふ者 は 、裁 判 官 に少 く し て、是 は警 視 庁 と か警 察 が多 く使 ふ法 律

方 針 は余 程 私 は 危険 で あ ると 思 ふ、 社 会 の問 題 は是 非 善 処 す ると 云

に律は徹 頭 徹 尾 反 対 す る者 であ り ま す、 斯 う 云 ふ やう な文 字 を使 用

にな る ので あ る、 裁 判 官 の頭 の出 来 た所 の官 吏 に使 はれ る な らば 宜

が可 能 であ ると 云 ふ こと を政 府 に 於 ては信 じ て居 る の であ り まし て、

し て居 る こと が将 来 に禍 根 を貽 す 一大病 根 であ ると 思 ふ、 是 は諸 君

し いけ れ ど も、 之 を瞥 察 で使 つ て悪 用 され た と き に は将 来其 悪 例 を

斯 の如 く茲 に書 現 は し ます ると 云 ふと 、 之 に依 つて裁 判官 は其 適 用

も御 承 知 で あ り ま せう が、 現 内 閣 が此 法 律 を制 定 さ れ る に当 ては 、

す貽 こと にな る、 斯 の如 き事 に も政 府 は 十分 に留意 さ れ て居 る か否

れ 教 唆 だ と 云 ふ訳 で直 に挙 げ る と 云 ふ こと が出 来 る、 僕 は憲 政 会 の

諸 君 にも能 く御 承 知 を 願 つ て置 き た い が、是 は 一番 多 く引 掛 か つ て

が、 山 岡 さ ん のや うな 法 律 家 は考へ て も宜 いが、 政 治 家 と し ては斯

来 る、斯 う 云 ふ や うな 危 険 な法 律 は、 此 処 に山 岡 さ ん も居 ら れ ま す

や と 云 ふ ことを 聴 い て置 き た い 熊谷 ○ ︹ 直 太 ︺ 政 府委 員 ︹ 司 法 政 務 次官 ︺ 本 田 さん の只 今 の 御 尋

う 云 ふ法 律 には賛 成 す る こと が出 来 る も の でな い、 徹 頭 徹 尾 反 対 し

が大 体此 所 に出 てあ る や う で あ りま す 、 政府 の見 ると ころ に依 り ま す と 、先 づ此 条 文 は 余程 練 り に練 つて他 の文 字 と 差 換へ た場 合 も あ

と を伺 つて置 き た い、 此 法 律 を 出 さず し て、 何 故 に前 の法 律 を 改 正

す る こと を し な か つた か、 時 代 に副 ふ と言 はれ る け れ ども 、 私 共 は

な け れば な ら ぬ、 ま あ是 は意 見 であ り ま す、 そ れ で私 は斯 う 云ふ こ

時 代 に副 は ぬと 思 ふ、 斯 う 云 ふ時 代 に副 は ぬ所 の峻 厳 な法 律 を出 さ

り ま し た が、 此 文 字 な ら ば説 明 が付 かう 、了 解 が付 かう と 云 ふ の で

て、 よ り 以 上明 確 に意 思 を発 表 す る こと の出 来 るも の があ れば 、 そ

此条 文 に な つた の であ り ます 、 併 し な がら他 に適 当 な る文 字 が あ つ

れ に改 め る と 云 ふ こと は 決 し て吝 でな い の であ り ます が、 実 際中 々

こと であ るな ら ば、 前 の法 律 を 何 故 に改 正し な か つた か其 方 が穏 で

れ る の は、 前 の法律 が、 先 程 の説 明 のや う に非 当 に軽 か つたと 云 ふ

はな から う か、 其 点 は どう であ り ま す か

困 難 であ ら う と考へ る の であ り ます 、 それ か ら 此法 律 が施 行 せ ら れ

に悪 影 響 が あ る と 云 ふ御 説 を承 り まし た、 此 点 に対 し まし ては飽 迄

す る 目的 を達 す る こと が出 来 な いと は申 しま し た、 と申 し ま す のは、

○ 山 岡 政 府 委 員  現在 の法 律 を 改 正致 し まし ても本 案 の取 締 ら ん と

た 暁 には、 法 を執 る者 の上 か ら し て種 々な る 国 民 の上 に、 社会 の上

も法 の精 神 の在 る所 を酌 みま し て、 其 施 行 と 云 ふ こと を十 分 に期 す

し まへ 、 宜 し いと 云 ふ ので、 色 々悪 用 す る の であ り ま す、 是 は事 実

間 は反 対 を す る から、 あ の人 間 の 一つ身 分 を調べ て彼 奴 ふ ん縛 つ て

が居 ら れま す が、警 視 庁 な ど は 時 の政府 に依 つては、 ど う もあ の人

いと思 ひま す 政 務 次官 は御 承 知 な いか知 れま せぬ が、 此所 に熊 谷 君

な ら ぬ の で此 大 切 な法 律 でも あ り ます から 私 は意 見 を加へ て伺 ひ た

理 由 が あ る ので あり ま す、 只 今 本 田 代 議 士 よ り政 治演 説 と の関 係 政

付 き ま す、 然 れど も其 所 を特 に此 案 を 纏 め て制 定 し た所 以 は一二 の

相 当 に、 只 今 申 上 げ た行 為 に付 て適 用 致 し ます れ ば そ れ で も取 締 は

併 な が ら新 聞 紙 法 、出 版 法 、 治 安 警察 法 に は あり ま す、 之 に刑 罰 を

次 に安 寧 秩 序 の問 題 で あ りま す るが、 そ れ は刑 法 に は ござ い ませ ぬ、

之 を処 罰 す る、 斯 様 に附 加へ れ ば 出来 る こと ゝ思 ひ ま す そ れ から 又

し ま し て、 結 社 、協 議 、 煽 動 、 其 目的 を 以 て為 し た る場 合 に於 ては

は国 憲 を紊 乱 す る と 云 ふ こと を 取 締 つて居 る の であ り ます 、 之 に対

新 聞 紙 法 、 出 版 法 、治 安 警 察 法 、 刑法 、 何 れ にも朝 憲 を紊 乱 す る或

る考へ であ り ま す、 内 務 当 局 も居 る こと であ り ます か ら、 警 察官 に 対 す る取 締 に関 し て は内 務 当 局 よ り御 答 があ る こと ゝ思 ひま す

であ り ま す、 そ れが為 に何 時 も非 常 に政治 家 は困 難 を し て居 る、 然

治 運 動 と の関 係 を御 憂 慮 にな つて の御質 問 で あ りま し た、 此 点 は政

意 見 も加へ な け れば

る に此法 律 は、 斯 う 云 ふ明文 であ ると 云 ふ と、 何 も そん な事 をす る

○ 本 田委 員  ど う も 一向 満 足 致 し ま せ ぬ が︱

必 要 は無 い演 説 会 に行 つて速 記 者 を付 け て置 けば 、 そ れ煽 動 だ、 そ

い規定 を置 く と 云 ふ こと は、 政 治 上 に於 ては、 是 は考 慮 し な け れば

も 引掛 か ら ぬと は限 ら ぬ ので あ りま す 、 さ う 云 ふ こと で斯 の如 き 重

演 説 の少 し く勢 が熟 し て演説 の歩 が進 みま し た な らば 、 そ れ は どう

字 であ り ます 、 此 文 字 を 以 て重 い刑 罰 を結 付 け まし たな ら ば、 政 治

ふ こと は最 も吾 国 に於 て秩序 の問 題 と し ては 、広 く使 はれ て居 る文

府 当 局 に於 て も深 く 考 慮 致 し た点 で あ りま す 、安 寧 秩 序 の紊乱 と 云

度 の否 認 と 云 ふ こと にな りま す と、 私 有 財 産 制 も尚 且根 本 的 に否 定

味 から 之 を根 本 的 に覆へ す 、 そ れ か ら 又先 刻 申 上 げ まし た やう に制

居 りま す が、茲 に政体 と 云 ふ字 句 が広 く あり ま し ても変へ と 云 ふ意

的 と申 上 げ ても宜 し いが変 革 と 云 ふ のは さう 云 ふ強 い意 味 を持 つ て

ま し て根 本 的 に革 新 す る の であ り ます 、 強 い言 葉 を 以 て言へ ば革 命

し ては 此案 を出 し て由 て以 て今 日最 も危 険 な り と考へ る 一部 分 に 向

前 の法 律 を 以 てし な い の は、 政府 の考へ る目 的 と し て は︱

毫 も阻 止 す る考 が 無 い か ら否 、 阻 止 せ ざ ら ん が為 に、 斯 の如 く特 に

つて の取締 をす る考へ で あり ま し て、 政 治 的 運 動其 他 の社 会 運動 を

政府 と

な ら ぬ問 題 であ り ま す、 そ れ であ り ま す か ら し て、 第 一条 に於 ては

す ると 云 ふ こと に な り ます から 、段 々御 説 のあ り ま し た やう に、 従

実 に狭 く致 し ま し た の であり ま す、 朝 憲紊 乱 の中 、 国 体 と政 体 を 根

で云 ひ ます と一二 分 の歩 合 の外 あ り ま せ ぬ、 七 八分 は除 外 し て新 聞

本 か ら改 革 す る、 是 だ け を朝 憲紊 乱 の中 か ら 抜 きま し た か ら、 歩 合

そ れ から 尚 ほ是 だ け に纏 めま し た所 以 は︱

十九世紀

斯 う 謂 つた こと は全 く

の であ り ます 、 次 に安寧 秩序 の問 題 であ り ま す、 安 寧 秩 序 と申 し ま

に茲 挙 げ 来 つ て歩 合 か ら申 し ま し た説 明 を も致 す 次 第 であ り ます 、

す れば 、 申 上 げ るま でも な く現 今 の法 律関 係 、 明 文 にあ り ま す る総

の末 から 段 々起 き て来 て今 日 に及 ん だ十 九 世 紀 の法律 即 ち 仏 蘭 西 の

新 立 法 であ り ま し て、 十 九世 紀 に考へ ら れ た其 現 象 が︱

紙 法、 出 版 法 以 下 の法 律 に依 つて取 締 ら な け れば な ら ぬ こと にな る

て の法 律 関 係 其 以 上 に法 律 の解 釈 か ら来 た所 の秩 序 問 題 に も這 入 る、

な取 締 を し な け れ ば な ら ぬ問 題 が あ る ので あ りま す、 そ れ等 を避 け

け れば な ら ぬ の であ り ま す、 全 く新 し い事 柄 であ り ま す、 故 に知 ら

をば す る かと 云 ふ こと が分 る、 是 は 矢張 国 民 に是 非 共 周知 せし め な

法 治 国 から 来 た 所 の法 制 を以 てし て は取 締 る こと は出 来 な い が、 十

て唯 々偏 に私 有 財産 の根 本 を破 壊す る と 云 ふ だけ を持 つて来 ま し た

ぬ人 が沢 山 あ る、 斯 う 云 ふ事 が新 し い現 象 であ る と思 ふ、 そ れ故 に

洵 に広 い も の です 、 そ れ であ り ま す か ら其 儘 之 を移 し 来 つたな ら ば

か ら、 安 寧 秩 序 は本 当 の 一部 です、 単 に 一部 です 、 一部 持 つて来 た

頻 に宣 伝 を し て居 る の で あり ま す、 是 が宣 伝 を 仕 切 つてし ま つた な

九世 紀 法 律 観念 に於 て取 締 る こと の出 来 な い新 現象 を 此所へ 纏 め て

けゞ です 、 而 も其 目的 物 と し て斯 様 な朝 憲紊 乱 の 一部 、 二部 、 而 し

らば 、 誰 も 知 つ て居 る ので あ る から、 国 民 に向 つ て此法 律 を 纏 め た

取 締 を致 し 、 此 法 律 を見 さへ す れば、 国 民 は由 つ て以 て如 何 な る事

て安 寧 秩 序 の 一部 を持 つて来 て居 る ことを 御 承 知 願 ひた い、 尚 又 変

も のにし て、 此意 義 を 理解 せし め て、 斯 る法 律 に罹 ら な い やう に し

な ら ぬ重 大 の問 題 で あ る の であ り ま す、 此一二 事 項 は ま だ今 日特 別

革 と否 認 と 云 ふ こと で あ りま す、 朝 憲紊 乱 、 安 寧 秩 序、紊 乱 と 云 ふ

な けれ ば な ら ぬ ので あ り ます 、 只今 御 述 にな り ま し た やう に、善 導、

実 に危 険 であ る 、 そ れ等 は立 法 上 ま だ今 日 に於 て注意 を し な けれ ば

こと にな り ま す ると 云 ふ と、 是 は頗 る広 い の です 、是 は変 革 と致 し

指 導 と 云 ふ こと は、是 は 何所 ま でも努 め な け れば な ら ぬ、 単 り法 律

と が出 来 ぬ かと 云 ふ御 問 であ り ま す が、 是 は他 の政 府 委 員 よ り 只今

の の文 字 の中 に織 込 まな け れ ば な ら ぬ、 一方 に於 て は安 寧 秩 序 と 云

ふ と大 変 範 囲 が広 いも の にな つ て、 一方 に於 ては朝 憲紊 乱 と 云 ふ も

ふ も の を織 込 ん で行 か んな ら ぬ から 、非常 に範 囲 が広 くな つ て、 そ

申 し まし た やう に、 他 の現 行 法 に此意 思 を混 ぜ て立 法 し て行 く と 云

此 法 律 を実 行 す る に付 ては、 何 処 ま でも善 導 と 云 ふ こと に付 て責 任

れ こそ政 府 が罰 せ んと 欲 す る 所 のも の ゝ外 ま でも罰 せ んな ら ぬ と 云

を 以 てす る のみな らず 社 会事 業 若 くは 社会 教 育 、 精 神 教 育 と 云 ふ や

を 持 た ん け れば な ら ぬ と 考へ ます 、 而 し て此 法 律 を適 用 す る と 云 ふ

ふ や うな 結 果 を 生ず る やう にな り ま す か ら、 已 む を得 ず 新 し い法律

う な こと に依 つて之 を善 導し な け れ ば な ら ぬ のであ り ま す、 政 府 は

こと は、 勿 論 慎 ま な け れ ばな ら ぬ、 先刻 大 臣 よ り申 上 げ ま し た やう

を持へ た も の であ ると 、 斯 う 御諒 解 を願 う て置 き ます

に も関 し ま す か ら、 唯 一言 申 し ます 、 今 日ま で警 察 が さう 濫用 し た

に彼 の緊 急 勅 令 を適 用 す る こと、 震 災 後既 に 一年 半 以 上 に及 ん で居

と は信 じ て居 らな い、 又 今 後 に付 き まし ては 一層 さう 云 ふ こと があ

り ま す、 其 間 に数件 ほ か あ りま せぬ、 そ れ は司 法 省 と 致 し まし て此

ゝ申 上げ て宜 し い次第 で あり ま す

れ ば 監督 も致 し ま す 、唯 執 行 をす る方 が執行 を受 け ら れ る方 と の間

ら答 弁 せ ぬ でも宜 し い やう な も の であ り ます る が、 詰 り警察 の信 用

○本 田委 員  只 今 の御 説 明 でし た が、 私 は本 法 は只 今 の御 説 明 に依

に多 少 さ う 云 ふ感 情 を持 つ こと が有 る かも知 れま せ ぬ、 併 し な がら

○ 川 崎 警 保 局長  本 田代 議 士 の御質 問 の中 に御意 見 と あり ま し た か

つて も政 府 の意 思 でな い と云 ふ こと を説 き た い、斯 う 云 ふ法 律 は 只

私 共 は今 日 ま でと雖 も 法 規 を 濫用 し て処 分 を し た︱

適 用 を何 処 ま でも 慎 ま な け れば な ら ぬ と 云 ふ訓 令 を 出 し てあ る の で

今 山 岡 さ ん の御説 の通 り前 法 を 改 正 し て も足 るも の であ る、 併 し法

云 ふ こと は信 じな い の であ り ま す、 殊 に此 治安 維 持 法 に付 き まし て

あ り ま す、 此 法 律 の実 施 に付 ても 必ず 慎重 な る態 度 を 執 るべ き こと

律 と 云 ふ も のは 、是 は政 府 は或 る枢密 院 の人 に依 つ て、此 法 律 を 提

は、 出 来 るだ け立 法 の趣 旨 を能 く 徹底 さ せま し て、 さう 云 う間 違 の

○ 熊 谷政 府 委 員  本 田君 の御 問 は本法 は政 府 の意 思 にあ らず 、︱

伺 ひたい

の法 律 を 改 正 し て取 締 る こと が出 来 る か出 来 ぬ かと 云 ふ こと を 私 は

根 拠 がな け り や手 に著 け る こと は出 来 な い、 さう 云 ふ趣 旨 に付 きま

て居 る以 上 は其 間 手 を 著 け る に致 し まし ても、 相 当 目 的 あ り と 云 ふ

云 ふ風 にな つ て居 な い条 文 も 随 分 あ り まし た、 警 察 は目 的罪 に な つ

総 て目 的 罪 にな つて居 る の であ り まし て、 元 の過 激 法 案 の方 は さう

無 い こと を 期し て居 り ま す、 又御 覧 の通 りに此 治 安 維 持法 の犯罪 は

取締 を し たと

のと考へ て居 る、 そ れ でご ざ いま す か ら、 本 法 を 一つ撤 回し て、前

案 し なけ れ ば普 選 が い か ぬと 云 ふ やう な こと で、 私 は 此案 が出 た も

か の如 き御 意 見 であ り ま し た が、 さ う 云 ふ事 実 は全 く 無 い の であ る、

ふ こと は絶 対 に無 い やう に考 へて居 る の であ り ます、 一言申 上 げ て

し ては 十分 警 察 官 に諒 解 さ し て居 る積 り であ り ます 、 濫 用 な どゝ 云

真 の意 思 に あらず 、何 か求 む る所 が あ つて此 案 を出 し た も の であ る

古 い法律 を改 正 し て此 目的 を 達 す る こ

そ れ は明 に此所 に声 明 し て置 き ま す、 次 に此 新 し い法 律 を 立 てな い で、 古 い法 律へ 織 込 ん で︱

れ に関 聯 し て居 る ので あ り、 其 方 面 から は取 締 る方面 も考 へな け れ

で、 両 省 の所 管 の法 案 と し て吾 々は見 て居 る のであ り ます 、 法 律 論

ば なら ぬ、 故 に内 務省 も併 せ て之 に関 係 せ ん けれ ば な ら ぬと 云 ふ の

置 きま す

只 今 熊 谷 君 の御 話 でし た が此 枢 密 院 がど う も約 束 を し てや る

本○ 田委 員  今 川 崎 君 の御説 明 で成 べく将 来 無 い こと を私 は望 み ま

つ考 へて戴 かな け れば な ら ぬ、 是 は与 党 の諸 君 も将 来 取 締 を受 け る

が私 は却 つ て好 いと思 ふ、是 は実 際 に此 法律 と 云 ふも のは 何 と か 一

に斯 う 云 ふも のを出 せと 言 は れ たと 云 ふ から出 し た も のた と 云 ふ方

と 云 ふ こと は天 下公 知 の事実 であ る、 寧 ろ 私 は政 府 は枢密 院 が無 理

が あ り ます が、 枢 密 院 の注 文 で な いと 云 ふ こと の 一番 確 か な る証 拠

申 述 べ ま す が、 他 の委 員 会 に於 ても さう 云 ふ やう な 事 を申 さ れた 人

て居 る と 云 ふ やう な 御疑 念 が あ るら し い ので あり ま す から 、 其 点 は

ら 十分 御 答 弁 を 致 し ま す、 唯 此 法 案 が枢密 院 の何 か注文 に依 つて出

の詳 し い こと は茲 に法律 の専 門 の政 府 委員 が居 りま す か ら、 其 方 か

す︱

こと であ る から 一つ研 究 し てど う か考 へて見 る こと を私 は 希 望 し て

の頃 であ つた か も つと 早 か つた か も知 れま せ ぬ が、 予 算 内 示会 と 云

は 、 過 日本 議 場 でも 私 申 し ま し た が、 昨年 十 二月 の二 十 一日、 二 日

ふも のを開 い て、 其 予算 の内 示 会 のと きに、 政 友 本 党 の松 田源 治 君

質 問 は続 く の です

が治 安 維 持 法 を 議 会 に提 出 す るや否 や と質 問 せら れ た其 時 に於 て、

打 切 つて置 き ま す︱

公 知 の事 実 だ が︱

○ 小川 国 務 大 臣  一寸 一言 し て置 き ま す が、 枢密 院 と の約 束 が天 下

実 は全 く あ りま せぬ、 私茲 に断 言 し て置 き ま す

を し て居 る の であ り ます 、 其 時 は ま だ衆 議 院 議 員 選挙 法 の審 査 と 云

私 は治 安 維 持 法 は第 五十 議 会 に必 ず 提 出 す る積 り であ ると 云ふ答 弁

何 所 で天 下 公 知 で あ る か知 ら ぬ が、 さう 云 ふ事

○本 田委 員  新 聞 に書 いて あ つた

で あり ま す、 只今 枢 密 院 が 上 奏 し た こと があ る ので あ つて、其 中 に

出 たも の でな いと 云 ふ こと を 証 明 し て居 る と申 さ ん け れば な ら ぬ の

ると 云 ふ決 心 を 語 つ て居 る、 其 事 実 は 明 に枢 密 院 の注 文 な ど で是 が

法 の審 査 を始 め る前 に、 既 に政 府 が此 法案 を議 会 に提 出 す る考 であ

ふ も の は枢 密 院 に於 ては始 め て居 な い時 で あり ま す、 枢密 院 が選 挙

○ 小川 国 務 大 臣  新 聞 に書 い てあ つ ても嘘 です 第五十 回帝国議会 政府提出)委員会議録 衆 議 院治  安維持法案 ( (速 記) 第 三 回

大 正 十 四年 二月 二十 六 日 (木 曜 日 )午 前 十 時 開 議

な つ て居 る ので あ りま す か 、 ど う で あ りま す か、 私 は能 く 承 知致 し

ま せぬ 、 そ れ故 に枢 密 院 が如 何 な る ことを 上奏 し た かと 云 ふ こと を

斯 う 云 ふ こと が あ ると 云 ふ こと が あ り ます が、枢 密 院 の上 奏 が公 に

此 所 で説 明 す る こと は出 来 ま せ ぬ が、 仮 に枢 密院 の上奏 の中 に普 通

○ 若槻 国務 大 臣  治 安 維持 法 は司法 大 臣、 内 務 大 臣 の両 大 臣 で署 名

ので あ り ます 、 固 よ り刑 罰 法 であ り ま す か ら、 何 と 云 ふ ても司 法 省

り ます 、 内 務 省 だ け のも の でな い と同 じ く司 法 省 た け のも のでな い

選 挙 と 云 ふも のを実 行 す ると 共 に、 何 等 か の取 締 規 定 を設 く る必 要

し て提 出 し て居 る の であ り ます から、 両省 所 管 に関係 が あ る ので あ

が所 管 し な け れば な り ま せ ぬ が、結 社 の こと、 出 版 の こと、 総 て そ

日本 は今 日 の現 状 が迫 ら れ て居 ると 云 ふ こと に付 て、 疑 惑 を懐 かれ

○ 小 川国 務 大 臣  段 々此 治安 維 持 法 を出 さな け れ ば なら な い必要 に

ます、 是 だけ 御答 弁 致 し ま す

と 云 ふ こと は常 識 を 以 て御判 断 にな つた ら大 抵 分 り そう な事 で あり

密 院 から強 要 せら れ て、 治安 維持 法 を提 出 す るな ん と 云 ふ事 のな い

事 柄 と は 何等 関 聯 のな い事 であ りま す、 其 関 聯 のな い問 題 の為 に枢

は治 安 維 持す る必要 の為 に提 出 し た の であ つて、 選挙 法 を 改 正 す る

も のは、 普 通 選 挙 の実 行 と は何 等 関係 は な い の であ る、 治安 維 持法

あ りま す、 政 府 の関 す る限 では な い、 政 府 は治 安 維 持法 の制 定 な る

が あ ると 云 ふ やう な意 味 があ つたと し ても、 そ れは 枢密 院 の意 見 で

て我 国 よ りも 数名 の共 産主 義 者 が当時 露 西 亜 に参 つた、 而 し て同年

代 表 を派 遣 せん こと を促 し ま し て、 金 二千 円 を交 付 致 し、 之 によ つ

蔵 等 と会 合 致 し まし て ﹁ 第 三 イ ンタ ーナ シ ヨナ ル﹂ の大会 に 日本 の

三 ﹁イ ン ター ナ ショ ナ ル﹂ の密 使 と し て 日本 に参 りま し て、 近 藤 栄

達 し や う とし て居 つた、 大 正十 年 十 月 に支 那 人、 張 太 羅 な る者 が第

那竝 に朝 鮮 に於 け る共 産 党 と提 携 を致 し まし て、 さう し て其 目 的 を

ま し て、 其 目 的 とす る所 は 即 ち共 産 主義 の実 行 で あ りま す、 是 は支

而 し て宣 伝部 、出 版 部 、調 査部 、会 計 部 な ど と云 ふ部 署 を 定 め て居 り

近 藤 栄蔵 、 高 津 正道 、 外 数 名 に依 つて組 織 せら れ た秘密 結 社 であ る、

暁 民 共 産党 と 云ふ も のがあ る 、大 正 十年 の八 月頃 東 京 の四 谷 に於 て

実 行 し や うと す る者 が段 々と出 て参 つた と云 ふ此事 実 を十分 に申 上

て も申 上 げま し た如 く、 我国 に於 ても近 来 無 政 府主 義 、 共産 主 義 を

て も度 々起 つて居 り ます 、是 は 一面 に於 て先 般 会議竝 に委員 会 に於

日 に関 東 の陸 軍大 演 習 の際 に ﹁軍 人諸 君 ﹂ と題 し 又 は ﹁軍 人 諸 君、

で、 退 去 命 令 を発 せら れ て帰 つてし ま ひま し た、 次 いで同 月 二 十 一

費 七 千 円を持 つて参 つた、 幸 に是 は官 憲 の為 に探 知 せ ら れま し た の

し た、 其 結果 同 月 下 旬 に露 国 共 産 党員 の ﹁ピー、 グ レ ート﹂ が宣 伝

者 を上 海 に遣 しま し て、同 地 の共産 党 員 に対 し て宣 伝費 を要 求 し ま

﹁ポ スタ ー﹂ を貼 付 け まし て、 同 月中 、 又 近藤 栄 蔵 は 重 田要 一な る

げ て置 か な い が故 に、 其 必要 が認 め ら れ な い の では な いか と考 へて

兄 弟 よ﹂ と 題 し て共 産 党主 義 を記 載 し た る所 の宣 伝 を致 し まし て、

十 一月十 二 日 の夜 に全 国主 要 の都 市 に 一斉 に共産 主 義宣 伝 の沢 山 な

居 る の であ りま す、 是 は先般 来 申 上 げ ま し た通 り、 秘 密 会 で も開 か

る人 々が あ ると 見 え る の で、 只 今 の原 君 の御 問 の如 く、 枢密 院 から

れ まし た な らば 、其 席 に於 ても今 日ま で我国 に於 て起 つた所 の出 来

であ り ます 、 此事 件 は幸 にし て検挙 せ ら れま し て大 正十 年 十 二 月 二

是 は軍 備 の制度 を破 壌 せ ん とす る所 の趣 意 を書 いた も のを配 つた の

強 要 せ ら れ て出 し た の では な い かと 云 ふ風 の質 問 が他 の委員 会 に於

事 の中 、 検察 官 の手 に検 挙 せ ら れた 分 だ け の事 を 御話 を申 上 げ た い

し た、 然 る に只 今 又其 事 の御質 問 があ り まし た から、茲 に其 事 例 の

し ては治 安 警察 法 に依 つ て罰 す る よ り外 致 方 がな い ので あり ま す、

た の であ りま す、 之 が斯 う 云 ふ罪 あ りま す け れど も、 今 日 の法律 と

日 に治安 警 察 法違 反 と し て起 訴 され まし て、禁錮 八 箇 月 に処 せ ら れ

︹マ マ︺

考 へで居 つた の であ り ます、 併 な がら 今 日 ま で其機 会 を得 ま せ ぬ で

と思 ふ、 先般 委 員会 の当 初 に於 て私 も 一寸申 上 げ て置 いた ので あり

随 つ て禁錮 八 箇月 と 云 ふ位 の刑 にな つて居 る の であ り ます 、 此事 件

中 、 二 三 を申 上 げ る方 が宜 から うと 思 ひ ます 、 之 を茲 に申 上 げ やう

ます が、 是 は大 体 世間 に於 ても既 に分 つて居 る の であ りま す、 即 ち

師 佐野 学 、 山 川 均、 堺 利 彦等 、 七 名 に依 つて初 め て組織 せ ら れた、

ま す 、是 は大 正 十 一年 の十 二月 中 、 共産 主 義者 の元 早 稲 田大 学 の講

於 ては最 も恐 るべ き立 派 な 日本 共 産党 と 云 ふも のが出 来 た のであ り

が斯 の如 く に検 挙 さ れ て裁 判 に附 せ ら れ て居 り ます る間 に、 一方 に

は早 稲 田大 学 の講師 であ り ます 、 此 地位 を 利 用 し て雑誌 又 は講演 等

面 に手 を出 す 、 更 に既 に世 間 にも 知 れ て居 り ます 、 猪俣 津 南 雄、 是

を致 す、 斯 う 云 ふ風 に其 他渡 辺 満 三 と 云 ふ者 は時 計 の職 工 の組合 方

は関 東 鉄 工組 合 と 云 ふも のに関 係 があ りま す から、 此組 合 方 面 に働

又煽 動 し て居 る、 そ れ から党 員 の山 本懸 蔵 、野 坂 参 弐 など と 云 ふ者

に於 て頻 に主 義 の宣 伝 を致 し て居 り ま した 、 さう し て同 年 三 月中 旬

而 し て大 正 十 二年 三月 頃 ま で の間 に、 我 国 に於 け る実 行的 共 産 主義 者 の主 な る人 物 三十 余 名 を網 羅 致 し まし て、而 し て之 を組 織 致 し た、

に至 り まし ては 、時 計 工、 印 刷 工、 出 版 従 業員 等 の各種 の労働 者 の

の が出 来 る やう にな つた、 一方 に於 ては又 此党 員 徳 田球 一、 高 瀬 清 、

組 合竝 に学 生 の間 に細 胞 が十 四あ つ て、 細 胞 委員 五 十 八名 と 云 ふ も

山 本懸 蔵 、 川 内唯 彦 等 は、 相 次 で露 西亜 に参 りま し て、 共 産党 と連

つ て出 来 て居 り ます 、露 西 亜 の共産 党 と連絡 を保 つ て共産 党 主 義 を 実 行 し やう と 云 ふ の であ る、其 や り方 は先般 青 木 君 よ り も 一寸 御質

絡 を 取 りま し て、 同 年 三月 十 五 日 に 堺利 彦 外 二十 二名 は東 京 府北 豊

此 日本 共 産 党 の組 織 、 主義 、 政 策 は全 く露 西亜 の共 産 党 のそ れ に則

こち ら では細 胞 と 云 ふ言葉 を使 つて居 る やう で あ りま す、 各

て︱

さう し て茲 に党 規党 則 の起 草 を 致 し まし て、 又莫 斯 科 に派 遣 致す べ

島 石神 井 の料 理店 豊 島 館内 で、 他 人 の出 入 を厳 禁 し て密議 を 凝し 、

問 の際 に述べ ら れ たや う に、 党員 十名 を 以 て細 胞 と 云 ふ も のを 設 け

総 て の部 門 を定 め て政治 、

細 胞 に は 一つ の代 表 者 を置 い て、 代 表 委 員 会 と云 ふ も のは又 十 名 の 執 行委 員 と 云 ふ も のを選 任 し てそ れ〓

き 代表 者 の選 定 を致 し、 政 党 組 織 の事等 を相 談 し、 又露 西 亜 の第 一

す る こと に努 め ま し た、其 結 果︱

労 働 、 教 育、 雑 誌 、農 民、 婦 人、 救 済 な ど と 云 ふ各種 の部 門 を定 め、

げ る こと も あ るか も知 れま せ ぬ が、 群 馬県 方 面 と か名 古屋 の方面 、

て、 爾 来著 々党 の発 展 を 図 る と共 に、 各 地方 に向 つて此主 義 を宣 伝

千葉 県 の某 所 に於 て党 の幹 部 と只 今 申 上 げ た細 胞 の代 表 委 員 と 云 ふ

来 て、 さ う し て共 産主 義 の実行 に著 手 し て居 る、 大正 十 二年 十 二月

或 は長 野 の方 面 等 に秘 密結 社 が出 来 ま し て、 当時 新 聞 紙上 で詳 し く

革 命 及 び第 二革命 を我 国 に実 現すべ き方法 時 期等 に付 て密 議 を 凝 し

係

運 動 者 を拵 へまし て、 さう し て此主 義 の実行 をし や う とし て居 る、

者 の第 一回 総会 が開 か れ まし た、 而 し て絶 対秘 密 の間 に それ〓

て京 防 地方 にも 秘密 結 社 が出 来 ま し て、 さう し て此 の中央 の指 揮 に

報 道 さ れ まし た か ら大 抵 は御 承 知 の こと であ り ます が、 其 一例 と し

細 か い事 は 余 り に申 上げ ませ ぬ が、 大 体其 様 な やり方 で以 て党 が出

を定 め ま し て政 治 係、 農 民 係 、或 は雑 誌 係、 労 働 係、 そ れ から 教育

な る者 が其 任 に当 つ て居 りま す 佐野 学 は早 稲 田大 学講 師竝 に日 本鉱

是 等 は又 秘密 会 等 の場 合 に申 上

係 と 云 ふ者 も あ る、教 育 係 と 云 ふ のに は早 稲 田 の元 の講 師 の佐野 学

又大 正 十 二年 五 月下 旬 、偶 々東 京 の巣鴨 に住 ん で居 る部 下 の坑夫 渋

依 つ て共 産 党 の実 行 に著手 す る こと にな つて居 つた ので あり ます 、

谷 杢次 郎 方 に於 て、 偶 々日本 共 産 党 に関 す る秘密 書 類 が発 見 せ られ

夫 総 聯 合 会 の顧 問 と 云 ふ こと を し て居 る、 さう し て其 位 地 を 利 用し て青 年 の学 生 又 は鉱 山 の労 働 者 の方 面 に此共 産 主義 を非 常 に宣伝 し 、

つ て居 る、是 は禁錮 二箇 月 、 新 聞紙 法 の秩序紊 乱 と 云 ふ こと で罰 せ

て団 結 せよ ﹂斯 様 に書 い てあ る、 是 は大正 十 一年 の 一月 に判 決 にな

﹁ブ ルジ ヨア﹂ の財 産 に反 抗 し、 一切 の社 会 的 国家 的 圧制 に反 抗 し

あ り ます 、 それ が斯 様 に恐 るべ き 働 き を致 し て居 る の であ り ます 、

て団 結 せよ、 王 権 に反 抗 し 特 権 に反 抗 し ﹁ブ ル ジ ヨ ア﹂ の国 家 と

是 は幸 に検 挙 にな つて居 り ます 、 又 そ れ から 地 方 に拡 つた分 も段 々

々が真 に幸福 な生活 を得 やう と す るな らば 、 唯 々現在 の資 本主 義 の

ら れ た、 そ れ か ら又 ﹁借 家 人 新 聞﹂ と 云 ふ も のが あ る、 是 に は ﹁吾

まし て、 其 結果 大 正十 三年 一月 十 九 日 に至 るま での間 に、 前 申 上 げ

検 挙 さ れ て居 り ま す け れど も、 併 な が ら絶 対 秘 密 に行 動 し て居 りま

た 通 り の被 告 人 三 十名 と 云 ふ も のを検 挙 し て、 之 を拘 禁 致 し た の で

す るか ら、 未 だ 検挙 せ ら れざ る者 が何 の位 あ る かと云 ふ こと は茲 に

罰 を科 す る外 な い の で、 新 聞紙 法 であ る と か、 出 版法 で あ ると か云

に政 府 の手 で検 挙 を し て処 分 を致 し た も のが、 是 も矢 張 洵 に軽 い刑

之 が中 々恐 る べ きも の であり ま し て、 是 は随 分 沢 山 あ りま す、 然 る

を以 て此 共産 主 義 或 は無 政 府 主義 を実 行 す る こと を煽 動 し て居 る者、

に著 手 し た ので あり ます 、 更 に申 上 げ て置 き た いと思 ふ のは、 文 書

て他 は省 略 を致 し て置 き ます 、 そ れ から 之 が即 ち 結 社 を致 し て実 行

外 にも多 々あり ま す が、 余 り諄 くな り ま す から 簡単 なも のを申 上 げ

も恐 る べ き分 の 一二 を申 上 げ ます と 、斯 様 な こと に な つて居 る、 其

居 り ま す るし 、 捜 索 も十 分 に致 し て居 り ます 、 既 に検 挙 せ ら れ た最

と看做 す、 今直 ぐ革命 戦 に参 加 し て身 命 を抛 つ者 のみ が味 方 だ﹂ 云

戦争 に於 て灰色 の態 度 は断 じ て許 さ れ ぬ、 灰色 中 腰連 を 一括 し て敵

今 は唯 々戦 あ る の み君 は敵 か味 方 か答 が無 い、 そ れ な らば 敵 だ階 級

を捨 てよ ﹁ハン マー﹂ を擲 て筆 硯 を折 れ未来 の事 は後 に て考 ふ べし、

戦 闘 を開 始 す る の時機 到 来 せり 、勝 利 の地 に て 一投 足 の労 のみ、 鍬

応 す る こと の遅 きを笑 ふ、 一挙 に資 本 主義 の社 会制 度 を倒 壊 す べく

オド ﹂所 載 ﹁隣国 に ては既 に勝閧 を揚 げ た り、 而 し て我等 が之 に呼

の であ りま す、 もう 一つ二 つ申 上 げ て置 き ます 、是 は新 聞 紙 ﹁ナ ロ

組織 せ ざ るべ か らず ﹂是 は共 産 主義 と無 政府 主 義 と 両方 書 い てあ る

命 に依 り実 物 を直 接 に占有 し、 社会 を共 産制 、 且 無 政府 主 義 に依 り

数 者 の私 有 を許 さず 、 之 を共 有 財産 と せざ る べ からず 、 之 が為 め革

社会 を○○ し て社 会 主義 の社 会 と為 す と 云 ふ社 会○ ○ に依 つて の み

ふ も の に依 つ て罰 す る外 な い の であり ま し て、 此 恐 る べき 犯罪 を相

云是 は罰 金 五十 円 に な つて居 る、 又斯 う 云 ふ人 が あ る、 是 は少 し 立

想 像 す る こと は出 来 な い の であ りま す、 或 はま だ 外 にも あ る のでは

当 な る刑 罰 に科 す る こと が出 来 な い の であ り ます 、其 二三 の例 を申

派 な文 であ る、 信 濃時 事 ﹁諸 君 は吾 々と同 様 政 治 及経 済 の自由 を得

て居 り ます 、 又 ﹁麺麭 の略 取 ﹂ と 云 ふ出 版物 が あ る ﹁現時 の如 く少

上 げま す と 、雑 誌 ﹁社会 主 義 ﹂ と 云 ふも のに斯 ふ云 ふ こと が書 い て

んが為 、 国 家主 義 の全廃 さ れん こと を希望 す る の であ らう 、国 家 主

目的 を達 し 得 る こと が出 来 る﹂ 是等 は罰 金 八十 円 と 云 ふ こと にな つ

あ る、 ﹁吾 々は労 働 に服 す る全世 界 の男 女 が、 共 産党 の旗 幟 の下 に

義 の改 廃 は権 力 の改廃 を意 味 し、 資 本 主義 の改 廃 は私 有財 産制 度 の

な いか と 云 ふ こと は 凡想 像 が付 き ま す る が、 政 府 とし ては厳 重 に此

団結 す べく 既 に劈頭 の大勝 を収 め た、 此 徽 章 の下 に 団結 す べ く慫慂

共 産 党主 義 者 等 が段 々と手 を拡 げ て行 く こと に付 ては 予防 も致 し て

し て止 まな い、 世 界 各 国 の無 産 階 級 よ帝 国主 義 の暴 逆 の下 に反 抗し

改廃 を意味 す る の であ る、 吾 々は権 力 なき 社 会 、私 有 財 産 な き社 会 に於 き ま し て︱

り ま す れば 内務 大 臣 に 伺 ひ た いと思 ふ の であり ま す が、 説 明 の範 囲

要 す る に無 政 府 主義 に致 し まし ても、 共 産 主義 に

を 実現 す る為 闘 はん と す るも ので あ る、或 も のは 之 を空 想 であ る、

し 得 る共 産 社 会 の実 現 を希 望 す る で あら う ﹂ 云 々と 云 ふ こと が あ る、

有 財産 な く 富 は各 人 の要 求 に因 つて分 配 し、 以 て幸 福 な る生活 を為

財 産制 度 であ る、 之 を立 派 な 制度 だと 誰 が言 ふ であ らう 、 諸君 は私

に属 す べき 此富 を 少数 者 に壟 断す る こと を許 され て居 る の が、 私 有

拘 らず 、吾 々は之 に対 し 最 も 小 さ い要求 す ら許 さ れ て居 な い、 万 人

富 な れば、 此 富 は総 て の人間 に属 す る のが正 当 だ と 云 ふ理由 あ る に

人 及 現 在 の人 々 の労 働 の成果 であ る、 此 富 は吾 々及 祖 先 の為 し た る

行 や破 壊 を認 め ぬ訳 には行 か ぬ﹂中 略 ﹁文 化 国 の大 な る富 は過去 の

た い、 是 は宗 教 団 体或 は学 究 者 の間 には度 々起 る所 の議 論 であ りま

云 ふ も のと、 ず つと駈 け離 れ て何万 年後 の時 代 に理想 の世界 を造 り

則 を少 く し て行 き た いと 云 ふや うな 、今 日直 接 にそ れ を実 行 す ると

ら離 れた い、 さう し て も つと 互 に共存 共 栄 にな る やう にし た い、規

政 治 生 活、 総 て の支配 と 云ふ も のから離 れた い、 強 制 と 云 ふ も のか

理 想 と か相 互 扶 助 の やう な精 神 を 高調 し ま し て、 御 互 の社会 生 活 や

り た い、 政 治 を も つと 発達 さ せた い、 斯 う 云 ふ やう な極 く高 い社会

が強 制 か ら離 れ て支 配 を受 け た く な い、詰 り理 想 の政 治 でも つと あ

て、 是 は吾 々 の先 輩 の所 謂 自 由 民権 と か色 々唱 へて居 り ます 、御 互

ふ言 葉 は 是 は言 ひ悪 い か も知 れ ま せぬ が、 一種 の社 会 理 想 と し まし

で ある と解 釈し て宜 し いと 思 ひま す、 然 ら ば例 へば 無 政 府 主義 と云

是 は禁錮 三箇 月罰 金 五十 円 にな つ て居 る、 斯 う 云 ふ のが 沢山 あ る の

す る が、 さう 云 ふ やう な も のを 極 く学 術的 に之 を分解 しま す れば 、

致 し ま し て も、 学説 は色 々解 釈 す る が、 実 行 方法 の みを 取締 るも の

で あり ま す、 既 に罰 せら れ た分 でも ま だ外 にも沢 山 あ り ま す るが、

無 政 府主 義 と 云 はれ る かも知 れま せ ぬ、 さ う 云 ふ程度 の結 り極 く遠

破 壊 であ る、暴 力 其 も ので あ ると 云 ふが、 之 を 口 にす る人 は 人間 社

ま あ 一例 を申 し ま す ると 斯 う 云 ふ風 な こと を盛 に や つて居 る、 所 が

き 将来 の何 万年 の未 来 の理想 の世界 を目 標 とし て、 何 と言 ひま す か

会 の幸 福 を知 り能 は ぬ者 で あ る、 吾 々は 理想 社会 の実現 の為 に は暴

現 在 の儘 では如 何 と も此 危 険な る行 為 を罰 す る方法 が無 いと云 ふ状

極 楽 浄 土 と云 ふ やう な 遠 い〓

所 謂 細 胞 と 云 ふ やう な風 のも のも段 々と 殖 え て行 く の では な い かと

て、 単 に今 日直接 に暴 動 か革 命 の手段 に依 つ てや らう と 云 ふ者 のみ

ま し ては、 別 段 政府 とし ま し て も法文 で取締 る と 云 ふ意味 でな く し

ふと 云 ふ こと を考 へな い で、 研 究 し て行 く と 云 ふ やう な も のに付 き

何 万年 後 の世 界 を望 み、今 日直 ぐ行

云 ふ こと の運 動 も 殖 え て行 く か と思 ふ、 又 は恐 る べき 共 産 党 の結 社、

態 で あり ま す、 で今 日此 儘 で行 き ま す と 云 ふと 、 益 々此 今 の煽 動 と

る こと が出 来 な いと 云 ふ状 態 にな つて居 る の であ り ます 、茲 に取 敢

若○ 槻 国務 大 臣  只今 の御質 問 は法 文 に付 てゞ あ らう と 思 ひ ます、

を取 締 る方 針 であ る、 斯 う 云 ふ やう に解 釈 し て宜 し いと思 ひま す が

思 ふ、 併 し如 何 に研究 致 し ま し ても 、之 に対 し て相当 な 刑 罰 を加 へ

ず 二、三 の実 例 を申 上 げ た次第 であり ま す

○ 星島 委 員  は つき り致 さ ぬ ので あり ま す が、 さう し ます と事 に依

時 に之 を 実 現 し やう と致 しま し て、 今 日 の法 規 を廃 し 、 さ う し て今

○ 星島 委 員  私 は余 り 言 葉 を抽 象 的 に申 し ま し た が、 例 へば 今 日即

あ り ます

そ れ は国 体 の変 革 若 く は 政 体 の変 革 と 云 ふ こと に な ら ぬと 思 ふ の で

な ら ぬ と 云 ふ や うな 趣 旨 を 以 て研究 し 主 張 し て行 つた所 が、 決 し て

活 に関 聯 し て居 る の であ る か ら、 相 互 に相 援 け合 つ て行 か なけ れば

す が、 国 体 若 く は政 体 の変更 に関 係 な く 社 会 連帯 で御 互 に吾 々の生

行 く 、 或 は ﹁ク ロポ ト キ ン﹂ でも決 し て直接 に行 動 す る の ではな い、

中 心 に家 庭 が平 和 にな つて行 く と 云 ふ やう な 心持 に於 て総 てや つて

か り でな く し て、 さう し て支 配 から離 れ て丁 度家 庭 に於 け る父 母 を

と し て、 皇 室 は道 徳 の主 源 であ る、 其 中 心 の下 に総 ての者 が規則 ば

ふ意 味 は、 も う 一つ短 く言 ひま す れ ば、 日本 の国 体殊 に皇 室 を中 心

○ 星島 委 員  其 御 答 弁 に私 は満 足 す る ので あ りま す 、例 へば 私 の言

な い の であ り ます

で互 に援 助 し合 つて行 かう と 云 ふ やう な も のな らば 一向 そ れ は差 支

が万 世 一系 の皇 室 を 奉 戴 し、 国 体 を認 め て置 いて、 而 し て社会 連 帯

し ま せ ぬ から 、 さう 云 ふ場 合 であ ら う と思 ひ ます 、 さ う 云 ふ場 合 で

日 の統 治 組 織 を 破 壊 し て行 かう と思 つても 、 当 然 そ れ は暴 力 以 外 に

数 万 年 後 の理想 の社 会 を 描 い て、 それ を 実 現化 し て居 る、 日本 の皇

無 政 府 主 義 と か共産 主義 と か云 ふも のが今 の中 に入 るか否 やと 云 ふ

は行 はれ な い、 又行 ふ筈 はな い ので あ りま す が、併 な がら 今 の学 者

室 は道徳 の中 心 であ る、 御 互 に之 を 尊 敬 し、 総 て が円 満 に纏 まる と

あ つて、 其 言葉 は支 配 下 か ら自 由 にな り た い と云 ふや う な哲 理 か ら

な り或 は真 面 目 な る 研 究者 が、 或 は高 い理想 を以 つてそ れ を目 標 と

云 ふ、 洵 に穏 健 な 日本 の国 体、 国 民 と し ても相 応 はし い、思 想 の中

出 て居 る かも知 れま せ ぬ が、 万 世 一系 の皇 室 を否 認 す る やう な意 味

し て さう し て研 究 し て行 く 、 政 治 の絶 対 自 由 を 目 標 と し て行 かう と

心 と し た る意 味 に於 て も、 さう 云 ふ や う な意 味 の社 会 を描 い て色 々

御 質問 では な い かと 思 ふ の であ り ます が、 第 一条 に書 い てあ る国 体

云 ふ やう な 人 が、 今 日 の学 者 の間 に存 在 し て居 つて も、 法 規 で取締

な 研 究 団体 を造 ると 云 ふ こと は是 は可 能 な こと であ る と思 ふ、 唯 々

若 く は 政 体 を変 革 す る と云 ふ こと は、 今 御 述 にな つた やう な 社 会 連

る こと は な い、 唯 々現 実 に直 接 に直 ぐ 此 処 でさ う 云 ふ も のを 実 現 し

内 務 大臣 の御 説 明 の如 く んば 例 へば、 私 はも つと説 明 の仕 方 が ま づ

で あり ま す れば 、 そ れ は此法 律 に あ る結 社 、実 行 の協 議 或 は実行 の

やう と 云 ふ革 命 手 段 以 外 には、 此法 律 で取締 る 方針 で はな い、斯 う

い のです が、御 互 に無 病 息 災 で何処 ま で も長 寿 し た い、 何 千 年 ま で

煽 動 をす ると 云 ふ こと であ り ま す と、 此 法 律 に触 れ る の であ り ます 、

解 釈 し て宜 し う ご ざ いま す か と 云 ふ意 味 な ん です

も生 き て居 た いと思 ふ が、 是 は到 底 達 せら れ な いが、 斯 う 云 ふ無 病

ふ御尋 であ ら う と思 ひ ます か ら、 其 意 味 に於 て御 答 す る の であ り ま

○ 若 槻国 務 大臣  甚 だ 微 妙 な御 質 問 であ り ま し て答 弁 す る こと に困

息 災 で百 年 以上 も生 き た いと 云 ふ意 味 で研 究会 を開 く、 言 葉 が ま づ

帯 な ど ゝ云 ふ観 念 で研 究 し て行 くと 云 ふ こと には関 係 がな い かと 云

の場 合 でな けれ ば 、問 題 であ り ませ ぬ か ら、 結 社 をす る か実 行 の協

い が、 例 へば病 院 は人 の病 気 を 癒 す け れ ども 、病 院 の目 的 は何 で あ

難 を感 じ ま す が、 其 実 行 な り或 は結 社 の場合 でなけ れ ば、 或 は煽 動

議 を す る か或 は煽 動 を す る と 云 ふ場合 でな け れば 、 此 法律 に は関 係

る か、 病 気 を癒 す の であ る から 突 詰 め て終 局 は 現 は れ る所 は病院 を

こと が あ る、 さう 云 ふ場 合 に は今 日 ま で新 聞 社 がそ れ に触 れ て居 る

廃 止 す る のが御 互 の希 望 であ る と云 ふ や うな 言 葉 を吾 々は得 て使 ふ

例 があ る が、 本 法 の取 締 ら んと す る範 囲 はど う であ る か、 実 に日本

第五十回帝国議会治安維持法案 ( 政府提出)委員会議録 衆 議 院  ( 速 記 ) 第 四回

議 し たと き 、実 行 を煽 動 し た と き、 実 行 す る為 に其 犯 罪 を煽 動 し た

組 織 し 、 或 は其 事 情 を 知 つ て之 に加 入 し た と き、 若 く は其 実 行 を 協

○ 若 槻 国 務 大臣  先 刻 申 上 げ た 通 り、 此 法律 は何 何 の目的 で結 社 を

めな い、 斯 様 に解 釈し て宜 し い のです か

へて居 る宗 教 団 体 や思 想 団体 が あ つ ても、 是 は別 段 秘 密結 社 と は 認

権 てふ 勢 力 が なく て、 理 想 の社 会 に住 みた い と 云 ふ こと を熱 心 に考

其 点 を御 伺 し た積 であ りま す が、 徹底 し ま せ ぬ から 重 ね て御 伺し た

そ れ で は文 部 当 局 に御 伺 致 し ま す、 先 日私 は本 会 議 に於 て ち ら つと

御 伺 し た いと思 ふ の であ り ま す が、 丁 度 両大 臣 見 え ま せ ぬ から ︱

ので、 私 共 は益 々疑 問 を 懐 く ので あり ま す、 小 川 司法 大 臣 に同 時 に

り ます 、 け れ ど も、 其意 思 と条 文 に在 る文 字 と は 合 し な い所 があ る

て政 府 の提案 の意 思 の那 辺 に あ る かと 云 ふ こと は略 々察 し た の であ

から 大 臣 の御 出 席 を願 つて置 きま す、 先 般 来 の質 疑応 答 に依 り まし

○ 星 島 委 員  後 段 に行 き ま し て結 社 の点 に付 て内務 当 局 に質 し た い

大 正 十 四年 二月 二 十 七 日 (金 曜 日) 午 後 一時 二十 分

と きと 云 ふや う に書 い て あり ま す から 、 今仰 せ に な る こと が 、結 社

の皇 室 を中 心 にし て、 さ うし て御 互 に 煩 は し い所 の社 会 の 一大 支 配

を結 ん で其 目 的 を達 し やう と す る所 に当 る こと で あ る や否 や、或 は

いと 思 ふ のであ り ます が、 御 互 が 経済 的 自由 、 法 律 的 政 治的 自 由 を

文 部 当 局 は大 学 の教授 に命 じま し て色 々な 社 会科 学 の研 究 を命 ぜ ら

如 何 に し て得 る かと 云 ふ為 に種 々な る学 問 の研究 を や りま す、 殊 に

れ て居 る 、学 者 は研究 の熱 心 の余 り種 々な る新 し い制 度 組 織 を 研究

で、問 題 が定 ま り ま す ので、 御 質問 に な つた やう な のは、 ど う も其 為 に結 社 を組 織 し た と か、 或 は其実 行 を協 議 し た と か、 或 は其実 行

し つゝあ る の であ り ま す が、 其 結 果 研究 と云 ふも のは発 表 せな け れ

其 実行 を今 協 議 す る と 云 ふ こと に当 る こと であ る や否 やと 云 ふ こと

ぬと 私 は御 答 し た の であ り ます 、併 し今 仰 せ にな る こと が総 て現 行

を煽 動 し た と云 ふ こと に なら ぬ やう に思 ひま す か ら、 此法 律 に当 ら

に寄 集 り ま し て協 議 す る こと が 必要 であ り ます 、而 し て自 己 の信ず

る、 斯 う でな け れば な ら ぬと 云 ふ結 論 は そ こに自 ら起 つて来 る、 斯

ば 本 当 の研究 ぢ やな い、 或 は研 究 の 一つ の手 段 と し ま し て は相 互的

う 云 ふ場 合 に於 き まし て自 然 強 て説 け ば 、或 は斯 う 云 ふ法 案 に触 れ

の法 規 の下 に於 ては制 裁 な し に、 さ う 云 ふ こと が出来 得 る や否 や と

せ ぬと 他 の法 律 に触 れ るか も知 れま せ ぬ、唯 々此 提 出 し てあ る法 律

云 ふ こと は、 私 は答 へた ので は あり ま せ ぬ、 法 律 の専 門家 で あり ま

案 に は、 伺 つた だ け で は触 れ な い やう であ る と 云 ふ こと を 申 上げ た

る でも あ らう と 云 ふ場 合 が多 々あら う と 思 ふ のであ り ま す、 殊 に最

近 に於 き まし て全 国 の各 高 等 学 校 の学 生 が今 日 此急 変 す る 社会 現象

ので あり ま す

如 何 、 或 は之 を指 導 す る所 の教 授 講 師 に対 し て圧迫 し た、斯 う 云 ふ

心 な る純 真 な る学 生 の此 研 究 団 体 を文 部 当 局 は 解散 せし め た其 理由

な事 が行 はれ て居 つた やう に聞 い て居 る の であ り ます 、 然 る に此熱

に借 合 せ、 或 は 互 に謄 写版 で研 究 をし 合 ふ、 報告 し合 ふと 云 ふ や う

を真 剣 に研 究 し た い為 に色 々な 団 体 を造 り、 或 は書 物 がな い為 に互

或 は福 岡 にも 二名 か の学 生 が社会 学 の研 究 を し た と か で、 直 に 放校

は如 何 かと 思 ふ、 佐賀 高 等 学 校 で あ りま した か 、本 を焼 かれ た り、

度 を失 す る虞 もあ る が、 それ が為 に 極端 に之 を拘 束す ると 云 ふ こと

し て居 る、 学 問 も時 に過 激 に渉 る こと も あ り、熱 心 の余 り其 程度 の

配 し ま し て、 他 の問 に対 しま し ても 一向 に答 へな いと 云 ふ現象 が 現

意味 に於 て非 常 な 威 圧 を感 じ て居 る 、為 に学 者 其 他 の人 が非常 に心

云 ふ こと で其 為 に放 校 さ れた 学 生 は 何 れ も前 途 を誤 る こと に な る、

処分 に なり 、 或 は鹿 児 島 で は 一人 の雑 誌 の編 輯 人 が追 放 され た と か

斯 う 云 ふ点 に付 き ま し て文 部 当 局 は︱

あ り ます が、其 辺 の経 過 はど う であ り ます か私 は思 想 は勿論 自由 で な け れば な らず 、 研 究 も 勿論 自 由 でな け れば な ら ぬ、 而 し て国 家 は

学 の研 究 を せし めず 、 殊 に集 団的 、相 互 的 にす る こと は絶 対 に いか

事 実 を私 共 は或 は新 聞 に依 り、 或 は噂 に依 つ て耳 に致 し て居 る ので

命 令 を以 つ て学 者 に研 究 を命 じ て居 る、 而 し て其 研 究 の結果 結 論 に

ぬ と 云 ふ の で、高 等 学 校 の校 長 を 通 じ ま し て、之 を圧 迫 威 圧 し て居

死 刑 囚 を獄 吏 が刑 の執 行 をす る、 之 を 殺 す ので あ る、 死 刑 を執 行 す

な り は せ ぬ か と思 ふ、 人 を殺 す こと は刑 法 に問 は れ て死刑 に な る、

果 にな ら な いか、 是 は極 く 拙 い例 か知 り ま せ ぬ が、 斯 う 云 ふ結 論 に

と を耳 にし て居 り ます が、斯 の如 き こと は学問 の自 由 を阻害 す る結

校 の教 授講 師 に対 し て岡 田文 相 ハ非 常 な 圧 迫 政策 ヲ執 つた と 云 ふ こ

かと 云 ふ こと を探 つて見 る と、 余 程 恐 れ て居 る、 即 ち 最 近各 高 等 学

とし て の意 見 を聴 く こと が少 い ので あ りま す 、 ど う 云 ふ現象 であ る

た時 は学 者 は非常 な議 論 を 致 し た、 今 回 の法案 に対し て は 一向学 者

に却 て其 研 究 を 阻害 す る虞 は な いか、 現 に此 前 の過激 法 案 の出 ま し

必要 の学 科 を 学則 に依 つて之 を与 へる の であ り まし て、 不 必要 な る、

も のでな い斯 う考 へて居 り ま す、 学 生 は必 ず其 能 力 程 度 に依 つて、

が文 部 当 局 の考 と致 し ま し ては、 元 来 学 生 は研究 の自 由 を 有す べき

は研 究 の自 由 を圧 迫 す るも の でな いか と 云 ふ如 き御 尋 であ り ま し た

く多 数 の高 等 学校 ニ於 て組 織 さ れ た る会 に向 つ て解 散 を 命 じ た、 是

若 く は社 会 科 学 研究 会 、 其 他 種 々 のも のに向 つ て、 文 部 省 の従 来 斯

ま す、 文 部 大 臣 は高 等 学 校 の学 生 の組 織 す る所 の社 会 思 想 研究 会 、

○ 鈴置 ︹ 倉 次 郎︺ 政府 委 員 ︹文部 政 務次 官 ︺  星島 君 に御 答 弁 致 し

う な事 実 も あ る、 此点 に付 て御 意 見 を承 り た い

な 威 圧 を感 じ て、 研 究 の自 由︱

る ので あ る、 殊 に今 回此 法 案 が出 る こと に付 き ま し て、 学 者 は非 常

殊 に最 近 の実 例 では 社会 科

ら れ て居 る、 そ れ が進 ん で本法 に触 れ る虞 が な いか、 本 法制 定 の為

達 し まし て、之 を発 表 し た 場合 に、 今 迄 に於 ては新 聞 紙 法 で度 々や

る こと を命 じ て あ る から之 を殺 し た の であ る、 そ れを 殺 し た か らと

あ りま す、 教 育 と申 し ま し ても、 教 育 は必 ず し も詰 込 む ば か り で は

其 発表 さ へも 控 へて居 ると 云 ふ や

てや れ ば や れ るだ け 斯 う 云 ふ刑 に触 れ し む る と 云 ふ こと にな る の で

云 つて獄吏 を再 び殺 す と同 様 の結 果 にな る ので、 学 者 が 熱 心 に な つ

若 く は危 険 な る研 究 は之 を 停 止 す る が当 然 であ る と考 へて居 る ので

あ り ま す、 此 治 安 維 持法 案 は前 回 の過激 法 案 が出 た時 よ り も、 或 る

ては断 然 解 散 を命 じ た次 第 であ り ま し て、 格別 是 は自 由 を 圧迫 し た

る、 此危 険 を 予 防 す る目 的 を以 て学 校長 を 通 じ て斯 の如 き会 に対 し

研究 であ り ます が、 其結 果 必ず 方 向 を誤 る、 必ず 誤 る べき危 険 があ

く は 濫 り に教 師 を 傭聘致 し まし て、 講話 を 聴 くと 云 ふが 如 き、 名 は

ま し て、 此 程 度 の学 生 が斯 の如 き 研 究 を為 す、 特 に研 究 を為 し 、若

と 云 ふ如 き も の は高 等学 校 程 度 の学 生 の能 力、 若 くは判 断力 に考 へ

す る消 極 、 積 極 、 共 に是 れ教 育 であ り ま す か ら、 斯 の如 き社 会 科 学

な い、 詰 込 ま せ な いと 云 ふ こと も 一種 の教 育 で あ る、 進 め る、 停 止

く致 し ま す れば 、 高 等 学 校 の学 生 の学 科 の中 に は、 哲 学 も あ り、 心

き りし た こと を喜 ぶ次 第 で あり ま す、 併 し 今政 府 委 員 の御答 弁 の如

と 云 ふ こと を、 今 御 答 弁 中 に承 り ま し た こと は、 其 点 の事情 が は つ

が、 是 は総 括 的 に文 部 当 局 が上 よ り の命 令 に依 つて是 等 を禁 止 し た

的 に教 育 方針 とし て止 め さ せた と 云 ふ風 に聞 いて居 る の であ りま す

○ 星 島 委員  或 る噂 に依 り ま す と 云 ふと 、 各高 等 学 校 の校長 が自 発

を御 答 致 し ます

停 止 す ると 云 ふ こと が当 然 の措置 と考 へて居 りま す 、是 だ け の こと

れば な らぬ 、斯 う 云 ふ点 も本 当 を 言 へば 大 学 に行 き ます れば、 実 際

け れば な り ま せ ぬ、 さ うし てど う し て も民 衆問 題 にま で這 入 ら な け

で の社 会 現象 も研 究 致 し ま すし 、 又 心 理学 でも 少 し深 み に這 入 ら な

の教授 若 く は講 師 が、 之 を 研究 す る の が いか ぬ か と 云 ふ こと であ り

理 も あ りま す、 是 等 を徹 底 的 に研 究致 しま す れ ば どう し ても今 日 ま

ま す が、 研 究 其 も の が不都 合 で あ ると 申 上 げ るに非 ず し て、其 結 果

に 入 り まし て専 門 的 に な る、 で若 い学 生 とし て︱

の措 置 で あ る と考 へて居 り ます 、 而 し て更 に星島 君 の御 言葉 に大 学

危 険 と 認 む べ き場 合 に於 き まし て は、 其 研 究 す る 人 の能 力 に応 じ ま

研究 が出 来 る ので、 又多 く の学 者 、 大先 生 等 の本 当 の研 究 発 見 と 云

高 等 学 校 の学 生時 代 、 あ の年 配 に︱

と 云 ふ意 味 で はな く し て、 学 校 長 と 共 に、 又文 部 大 臣 と し ても当 然

し て、 之 を停 止 致 す の であ り ます から 、 さう 云 ふ教 授 等 が之 を研 究

りま す 、是 は事 実 問 題 と 致 し まし て も必 し も 一概 に申 上げ 兼 ね ま す、

ふ も の は大 学 程度 の人 が研 究 す る と 云 ふ こと は別 に差 支 な い の であ

合 は、 他 の方 法 に依 つて制 裁 を受 け る ので あ りま す が、 此研 究 と 云

は文 部 当 局 の図 り 知 る所 でな い、 縦令 是 が煽 動 等 の秩 序 の紊乱 の場

果 を社 会 に発 表 し た なら ば 、 其結 果 が ど う な る かと 云 ふ こと は 、 是

な い場 合 に は無 論 差 支 な い のであ り ま す、 而 し て其 教 師 が研 究 の結

ら れ てし ま つて、 其 到著 点 を誤 ると 云 ふ や う な こと があ る、 危 険 の

り ま す が、若 い者 が研究 の名 の下 に講 話 を 聴 い て、 遂 に其 方 に引 張

程 度 に皆 定 め て居 る の であ り ま す、 此 程度 の学 生 が特 に之 を研 究 し 、

中 等卒 業 以前 の者 が這 入 つ て居 り ます から、 此 程 度 は 之 を 中学 卒 業

ま せ ぬ、御 承 知 の通 り、 高 等 学 校 で廃 し ま し た のは補 習 学 校若 く は

○ 鈴 置 政府 委 員  研 究 其 も のが絶 対 に宜 し く な いと 云 ふ の では あ り

れ て居 る の であ る か、 どう 云 ふ御 趣意 で あ るか承 り た い

ば全 然 さう 云 ふ自 由 を与 へて居 な い、 そ れと も 一定 の範 囲 に止 め ら

さ れ る の であ る、 只今 の学問 の自 由 を停 止 し た と 云 ふ御 説 明 に依 れ

る研 究 を危 険 であ る とし て禁 止 し た な らば 、 一般 学 界 の将 来 が憂 慮

ふ も のも、 此 純真 な る熱 の あ る時 代 に出 来 る の であ る、 若 し自 由 な

純 真 の熱 のあ る時 に こそ 、其

本 当 を言 へば 、

す る と 云 ふ こと に付 き ま し ては、 無 論 是 は 批判 的 に研 究 す る ので あ

若 し 研 究 の結 果 是 が危 険 な り と認 む べき 場 合 に 於 き まし ては 、之 を

視 さ れ て居 る者 も半 分 此中 に あ ると 云 ふ事 実 で あ りま す る から 、 純

実 を認 め て居 る、 又警 視 庁 の ﹁ブラ ツ クリ スト﹂ に載 つ て注 意 人 物

り ま す、 或 者 は単 り 研 究 に止 らず し て外 国 と の連 絡 も取 つて居 る事

り ます る が、 現 に其 結 果 甚 だ 容 易 な ら ざ る事 実 を 認 め て居 る の であ

又如 何 はし き 教 師 に就 て此 講 話 を 聴 く と 云 ふ こと は、 名 は研 究 であ

く或 る教 授 の如 き は、 是 は 名 は申 し ま せぬ け れ ど も、 斯 う 云 ふ こと

○ 星 島 委 員  随 分文 部 省 よ り の上 か ら の達 示 に依 り まし て、 已 む な

左様 御 承 知 を 願 ひま す

益 少 く し て甚 だ害 が多 から う と 云 ふ考 から 禁 止 し た次 第 であ り ます 、

校 程 度 の研 究 と 云 ふ も のは 、其 能 力若 く は判 断力 に鑑 みま し て、 利

くな い事 と存 じ ます から 、 十分 取 締 を致 し ま す が、 要 す る に高 等 学

す が、多 数 の学 校 で あ りま す るか ら 、若 し あり ま す れば そ れは 宜 し

て居 り ま す が、 此点 を 十 分 に御 調 査 の上 、決 し て学 問 研 究 を 阻害 さ

真 な る学 生 が批 判 的 に之 を研 究 す ると 云 ふ事 柄 自 身 は兎 も角 、 其 結

れ ぬ程 度 にな さ れ ん こと を希 望 致 し まし て、 私 は文 部 当 局 に対 す る

をし な か つた ら首 が危 いと云 ふ事 ま で学 生 に漏 し て取 締 を厳 に致 し

人 物 に も之 を禁 止 す る と 云 ふ こと も 、 其 研究 だけ な ら ば差 支 あ り ま

質 疑 は打 切 り ま す

べき組 織 をし て居 る も のが既 に出 来 て居 る と 云 ふ以 上 は、 善 良 な る

せ ぬ が、 研 究 の結果 、 多 々危 険 な結 果 を持 来 す と 云 ふ実 例 があ り ま

果 か ら致 し まし て既 に 批判 的 研 究 にあ らず し て、 斯 う 云 ふ風 な 恐 る

す が為 に、 校 長 を 通 じ まし て断 然 之 を 禁 止致 しま し た次 第 であ り ま

︹ 前 略 ︺  小 川 さ ん の御 説 明 に依 れば 少 数 の者 は 厳罰 に

○ 星島 委 員

す、 其 点 御 誤 解 のな いやう に、 研 究其 も のが悪 いと 云 ふ の では な く 、 其 結 果 恐 る べき こと に相 成 る と云 ふ こと を憂 へま し て止 め まし た 次

し ても宜 い、 却 て其 方 が宜 いと 云 は れ る やう であ りま す が、 私 の問

憤 激 し て其 方 針 を誤 り は せ ぬ か、 斯 う 云 ふ 点 に付 て私 は 内務 当 局 に

く知 ら な い労 働 階 級 、 現 在 生活 の不 安 に襲 は れ て居 る無産 の人達 が

は んと す る意 味 は、 此 提 案 の為 にま だ 熟 さ な い青 年 、 殊 に言 葉 を多

第 で あ り ます 、 左様 御 承 知 を 願 ひま す

ま せ ぬ、 併 し 其 故 を 以 ちま し て総 括的 に全 高 等 学 校 々長 に命 じ て、

少 し 伺 つ て見 た いと 思 ふ のです が、 御 欠席 であ り ます が、 今 少 し附

星○ 島 委 員  勿 論多 く の学 生 の中 には 随分 有 害 な のが あ る かも 知 れ

そ れ等 の研 究 を止 め し め る やう な禁 圧的 手 段 を執 ら れ ると 云ふ こと

し て圧 迫 す る意 味 でな いと 云 ふ御 説 明 であ り まし た、 度 々 の質 疑 応

は、 洵 に遺 憾 と 思 ふ の であ りま す 、 さ う し ま すと 社 会主 義 の本 を読

答 で私 も さ う 云 ふも の が入 つて居 な い こと は能 く察 し ま す け れ ど も、

の議場 に於 き まし て、殊 更 に質 問 以 外 に触 れ まし て労 働 者 団体 を決

居 る次 第 で あり ま す か

今 日労 働 団 体 は之 を恐 れ て居 る、 而 し て此 通 過 の希 望 し て居 な い、

加 へて私 は御 聞 きし た い、 今 回 の法 案 に付 き まし て内 務大 臣 は本 会

○ 鈴置 政 府 委 員  さ う 云 ふ事 実 も ご ざ い ま し た か存 じ ま せ ぬ が、 是

実 際 から 言 ひま す と仮 に本 当 の無政 府 主 義 者 、共 産 主 義 者 があ る と

ん だ り、 或 は福 岡高 等 学 校 の如 く 二 人 以 上寄 つて社会 科 学 の話 を し

は能 く調 べ て見 ね ば な りま せ ぬが 、 恐 ら く本 を 読 ん だ り、 若 く は 二

ては な らな いと 云 ふ ことを 、 文 部 当 局 は至 当 と し て御 認 め にな つ て

名 以 上 の談 話 を禁 じ た と 云 ふ やう な 事 実 は ご ざ いま す ま いと 思 ひま

る 、 さ う 云 ふ場 合 には資 本 主 義、 或 は 独 占事 業 に対 し ま し て屡 々突

業 状 態 で不 安 を 感 じ て居 る、 或 は賃 銀 が 少な い為 に不満 を懐 い て居

無 政 府主 義 で あ る から恐 れ て居 る の でな い、 多 く の労 働者 は今 日失

の労 働 団体 が非 常 に恐 れ て居 る のは 、 何 も彼 等 が共 産 主義 であ る、

し ま す れ ば、 私 は此 法律 に触 れ な い やう にや る だ らう と 思 ふ、 今 日

こと で あら う と私 は考へ て居 る、 併 な が ら星 島君 の御 心 配 の如 く、

る 、 此法 律 の制 裁 を受 け な い人 々で あ りま す か ら、 余 程 鎮 ま ら れ た

働 者 は今 日 の労 働 運動 を為 す 人 々 の如 き は全 然 此法 律 に無 関係 で あ

於 ては最 早 凡 そ 法案 の正体 も分 つた も のであ り ま す か ら、固 よ り労

た いと 云 ふ こと から出 た ので あら う と考 へる の であ り ます 、 今 日 に

つた やう に考へ る の であ り ます 、 御 言 葉 の中 に も あり ま し た 通 り、

如 く 、 此法律 案 の議 会 に出 ます 前 は却 て世 の中 に余 程 の疑 惑 が深 か

に依 つ てあ つた やう に記憶 致す の であ り ま す、 丁度 御 尋 の中 に あ る

○ 小 川 国務 大 臣  先 般 内務 大 臣 から 労 働 者 云 々 の こと が成 程今 御 尋

果 にな り は しな い か、 斯 う 云 ふ こと に付 て伺 つ て見 た いと思 ひ ます

ま う 、其 結 果 は言 葉 を 知 ら な い労 働 団 体 の者 が触 れ て来 る や う な結

当 の無 政府 主 義 、 共 産 主 義 の者 は中 々悧巧 であ り ます から 逃 げ て し

ら 労 働 団 体等 に於 て心 配 し て居 る の で あ りま す、 実 際 触 れ る者 は本

な る の であ り ま す、 さう 云 ふ者 が触 れ て来 る の で怖 い と云 ふ こと か

瞬 間 の苦 み から発 し た言 葉 が遂 に資 本 主 義 に反 抗 す る と云 ふ こと に

う で あり ま す が、 初 に は何 も 共産 主義 の思 想 が無 く て も、 其 一時 の

撃 す る こと があ る と 云 ふ こと を 先般 も 小川 司 法 大 臣 が例 示 され た や

る 人達 が集 つ て極端 な資 本 主義 、 独 占事 業 の弊 害 に鑑 み まし て、 突

者 ま で引 つ掛 つ ては宜 し く な い、 又今 日 の実情 と し ても さう 云 ふ者

民、 研究 す る人 、 一時 の感 情 に激 し て過 激 論 を 唱 へた 人、 さう 云 ふ

つ て来 はし な いか 、 そ れ で は甚 だ 宜 し くな い、 さ う 云 ふ風 に無辜 の

て来 る、 或 は新 聞 紙 等 に於 て少 し 過 激 な論 をす ると 、 そ い つが引掛

にな ると、 事 に依 ると 只 今 星島君 の御 心 配 の如 き人 ま でが引 つ掛 つ

現 に先年 法 律 にも 出 来 て居 つた け れど も 、宣 伝 ま で行 く と 云 ふ こと

文 字 を削 つた、 宣 伝 と 云 ふ こと も 入れ て罰 し た いと 云 ふ議論 も あり、

入 ら ぬ ので あり ま す そ れ が為 に数 年 前 から問 題 であ つた 宣伝 と 云 ふ

け れば な ら ぬ、 共 産 主 義 を 唯 面白 半 分 に唱 へた者 、 そ ん な者 は無 論

行 を 煽 動 す る と 云 ふ の であ り ま す から 、其 目的 が実 行 す る目 的 でな

実 に は つき りし た こと であ り ま す、 犯 罪 をす る実 行 の目的 を以 て実

り まし て、 今 の御 説 の やう な こと だけ では ﹁実 行 を 煽 動 す る﹂ 是 は

の無 い人 ま でも引 張 込 む こと は 致 さな いと、 斯 う申 上 げ た次 第 であ

し て私 が呉 々も申 上 げ て、 政府 は責 任 を以 て此法 律 を拡 張 し て、 罪

掛 つて反 抗 し て行 く、 そ れ が つ い激越 に な つて意 思 に も な い妙 な 言

労 働 運動 等 に従 事 致 し て居 る者 は 自 分 共 が取 締 られ る ので はな い か

ま で引 張 つて来 て罰 しな け れば な ら ぬ と 云 ふ必 要 は な い、 故 に今 回

ぶ と 云 ふ やう な こと が あ つては 相済 みま せぬ か ら、 先 刻 も 此点 に対

と 云 ふ風 に感 ぜ ら れ た らし く 、 新 聞紙 等 に依 つて見 え て居 り まし た 、

は さ う 云 ふ やう な も のは省 い てし ま ひ まし た が、 又之 を罰 し て居 る

若 し 又之 を適 用 す る に当 つて何 でも な い、罪 も な い者 にま で是 が及

そ れ で内 務 大 臣 も 其 処 に ま で言 及 され た こと で あら う と察 し て居 る、

国 も随 分 あり ま す、 御 手 許 に廻 し た かと思 ひ ます が、亜 米 利 加 な ぞ

葉 を発 しま す が 、 本当 に言 葉 を 知 ら な い、 而 も 生 活難 に追 は れ て居

決 し てさう 云 ふも の でな い、 一日 も早 く 明 にし て彼等 に安 心 を与 へ

も な い、 自 分 が実 行 す る目的 を 以 て、 決 心 を 以 て実 行 し ろ と 云 ふ こ

す る、 共 産 主義 は面 白 いぞ、 共産 主 義 は宜 いぞ と 云 ふ だけ では 何 で

は そ れ を避 け た い、 さう し て実 行 をす る其 目 的 を 以 て実 行 の宣 伝 を

で は随 分 宣 伝 のやう な こと を 沢山 罰 し て居 る、 併 な がら 日本 に於 て

ても、 兎 も角 も 平 和 と信 じ て居 りま す 、 此平 和 の時 にさ う 云 ふ恐 怖

穏︱

す 、集 会 の自 由 の抑 圧、 行 動 の抑 圧 と も な り ます 、 さ う 云 ふ事 を 平

認定 的 に、 而 も 極 刑 を科 し て或 は或場 合 に は言 論 の抑 圧 と もな り ま

が、 併 し 有 ゆ る複 雑 な る社 会 現 象 に対 し て之 を適 用 す る場 合 に於 て

者 は決 し て之 に引 つ掛 る こと は 私 はな いと 考 へて居 りま す 、 是 と反

であ つて、 外 国 と 通謀 し て内 乱 を起 す か分 ら ぬ、非 常 な 混乱 時 期 で

む 、是 が今 何 か戒 厳令 でも布 か れ て居 る と か、 或 は敵 国 と交 戦 状 態

的 の手 段 を 以 て厳罰 に処 す ると 云 ふ こと が、 私 と し て、 諒 解 に苦 し

私 は平 穏 と 今信 じ て居 りま す 、 如何 に思 想 界 が 混乱 し て居 つ

と を煽 動 す る、 是 れ 以外 は 罰 せ ぬ の で あり ま す か ら、 御 心 配 の如 き

対 に其 処 ま で行 つて居 る者 は放 つて置 く こと は、 今 日 の国 家 と し て

今 日 さ う云 ふ時 代 で な い と 云 ふ こと を私 は思 ふ の であ り ます け れ ど

で遣 付 け られ ると 云 ふ や うな こと は 、戦 時 非 常 の場 合 は卒 知 ら ず 、

兎 も角 而 も社 会 の司直 の認 定 で さう し て十 年 以 下 と 云 ふ やう な 極 刑

あ る と 云 ふな ら ば 兎 も角 も、 大 体 に於 て思 想 界 は 安 定 し つゝ あ る、

は出 来 な い、斯 う 云 ふ次 第 で あ り ます 第五十回帝国議会 治安維持法案 (政府提出)委員会議録 衆 議 院  (速 記) 第 六回

も、 政 府 は さう 云 ふ 必要 が あ ると 見 て出 す と 云 ふ の であ りま す か ら、

民全 般 が納 得 す る や う な御 説 明 を し て戴 き た いと思 ひ ます

私 とし て は其 点 は諒 解 に苦 し む の であ り ます 、 ど う か 此事 を し て国

し い方 法 で以 て、 而 も暴 動 以 上 の結 果 が起 る、 而 も さう 云 ふ其文 化

○ 山岡 政 府 委 員  決 し て似 て非 な る や うな 者 を罰 す る と云 ふ趣旨 で

山○ 口政 二君  さう 致 し ま す と 御説 の如 く ん ば文 化 的 に色 々と や さ

的 の方 法 は現 行法 で は取締 れ な い から 、 此 法律 を出 す のだ と 云 ふ や

は あ りま せぬ、 此故 に此 前 提出 致 し ま し た る過激 社 会 運 動 取 締 法 よ

大 正 十 四年 三 月 四 日 (水 曜 日 )午 前 十 時 四 十 五分 開 議

う に承 つた の であ りま す 、 そ れ で さう 云 ふ 其 暴動 以外 の方 法 で潜在

に対 し ま し て未 だ字 句 が練 れ て居 ら な いと 云 ふ御批 評 もあ る の であ

り は研 究 に研 究 を 重 ね て非常 に狭 く致 しま し た 、字 句 に付 ても 十分

り ます から 、 政府 と致 し ま し ては 此法 律 を運 用 す る と 云 ふ こと に付

に研 究 を 致 し ま し た の です 、斯 の如 く であ り ま す る け れど も 勿論 之

ば、 一つ疑 問 が 生 じま す 、 さ う 云 ふ も の ゝ取締 の為 に此 治 安 維 持法

て は、 些 の違算 が あ つて はな ら ぬ ので あり ま す、 そ れ であ り ます る

生 じ た場 合 に之 を取 締 ると 云 ふ の が此 法律 の目的 で あ ると す る な ら

に依 り まし て是 は非 常 に危険 だ と、 暴 動 以 上 に危 険 であ ると 言 ふ認

か らし て、 此行 為 に付 ても 色 々に研 究 を 致 し ま し た結 果 、煽 動、 宣

的 の方 法 であ り ます か若 し く は其 新 し い色 々 の方 法 で此 等 の危険 が

で も適 用 し や う と言 ふ こと にな つて参 り ま す、 素 よ り御 説 の如 く本

伝 若 く は流 布 と 云 ふ、 現 に治安 警 察 法 にご ざ います る ﹁ 流 布﹂と云

定 の下 に、 此 十年 以 下 と 云 ふ極 刑 を場 合 に依 る と似 て非 な る者 に ま

当 に恐 し いも のは是 は 如何 に も、 最極 刑 の厳 罰 に処 し て宜 し い です

の平 和 状 態 を 脅 威す る様 な こと は毛 頭 な い次 第 で あ りま す 、 之 を 運

あ りま す 、斯 う 云 ふ次 第 であ り ます る から し て此法 律 に依 つて今 日

等 の用 意 は可 な り に周 到 で あ つたと 云 ふ こと を申 上 げ て宜 し い 訳 で

まし ても 繰 返 し て申 上 げ ます る が、 非常 に之 を狭 め てし ま つて、 此

行 為 を 現 は し た のであ り ます 、 それ から尚 ほ保 護 と 云 ふ 方面 に於 き

ふ やう な字 句 は廃 め ま し て、 ﹁ 煽 動 ﹂ と 云 ふ 一歩 進 ん だ強 い意 味 の

て法 を適 用 し ま す る者 が、 此 ﹁政体 ﹂ と 云 ふ文字 を必 ず し も内 務 大

省 の当 局 者 の御答 にな る所 は答 弁 が異 つて居 り ます し 、 又実 際 に於

出 来 ぬ の であ る、 殊 に御 説 明 に依 りま し ても 司法 省 の当 局者 と内 務

ら る ゝが 如 く、 立 憲 代 議 政体 と 云 ふ こと を当 然 の結 論 と し て解 釈 は

あ りま す 、 ﹁ 政 体 ﹂ と 云 ふ文 字 は それ 自 体 か ら致 し て政府 の説 明 せ

ます るが、 此中 一条 中 で ﹁若 は政 体 ﹂ と 云 ふ 四文字 を削 除 す る の で

であ る と 理解 す る余 地 が無 いと 思 ひます 、 此 誤 解 か ら生 ず る悪影 響

は極 め て甚 し き も のが あ ると 思 ひま す、 此 意 味 に於 き まし て私 は削

臣 御 理解 の如 く 、若 く は司 法 大 臣御 理 解 の如 く 、当 然 立 憲 代 議政 体

る の であ る、 而 し て之 を削 りま し た結 果 、 さす れ ば立 憲 代 議 政 体 の

用 す る結 果 を 御 覧下 さ れば 宜 し い ので あり ま す、 将 来 の こと であ り

治 安 維持 令 に は此法 律 の第 三 条 に あ る 通 り のこと が あ りま す 、 そ れ

ま す、 過 去 に於 き まし ては 治 安 維持 令 と 云 ふも のが あ り まし て、 其

に依 つ て司法 警 察 官 、検 察 官 が如 何 な る こと をな し た か と言 へば 、

いま せ ぬ、 亦 是 政 府 委 員 御声 明 の如 く 、現 在 の法 規 に於 て之 を取締

変 革 を 企 っる者 を看 過 す る ので あ るか と申 し ます と、 さう で はご ざ

り得 る余 地 が あ る の でご ざ い ます 、 此意 味 に於 き ま し て此 四文 字 を

毫 も 社 会 に脅 威 を与 へて居 らぬ 、 何 等 の影 響 を 国 民 は感 じ て居 ら ぬ、

削 ると 云 ふ修 正 の動 議 を 提出 致 す の で ござ います 、 其 他 は総 て原 案

それ と 大 体 に於 て変 ら ぬと 云 ふ こと は 大体 に於 て申 上 げ て宜 し い の であ り ま す、 決 し て此法 律 を以 て今 日 の状 態 ヲ脅 威 し変 更 す る やう

ら ぬと 云 ふ理由 は 日星 の如 く炳 とし て明 であ る と考 へま す、 此以 上

交 換 を せら れ ま し て、 其 間 に於 て自 ら本 案 は之 を支 持 し な け れば な

す 理由 に至 り て は、 過 日来 屡 々委 員 と 政府 委 員 と の間 に質問 応 答 が

を肯 定 致 す ので あり ま す 、即 ち之 に賛 成 を致 しま す 、賛 成 を致 し ま

な こと はな い のであ り ま す、 何 卒 左 様 に御 承知 を 願 ひま す 第五十回帝国議会 政府提出)委員会議録 衆 議 院治  安維持法案 ( (速記 ) 第 七 回

は述 べま せぬ 、議 場 に於 き ま し て は、 委 員 長 の明 敏 な る頭 に ﹁コ ン

デ ン ス﹂ せら れ ま し て、 然 る べ く御 報 告 あ ら ん こと を希望 致 し ます

大 正 十 四年 三 月六 日 ( 金 曜 日) 午 前 九時 二 十分 開 議

○ 前 田委 員  長

ます

○ 中 村 (啓 )委 員  私 共 は第 一条 を左 の如 く改 め た い の であ り ます、

出 て居 りま す 、是 の御 説 明 を願 ひ ます

次 で修 正 案 と し て中 村 啓 次 郎 君外 数 名 よ り修 正案 が

○ 前 田委 員 長

○ 横 山 委 員  簡 単 に修 正 の理由 を申 述 べ ま す 、併 せ て本案 に付 て意

第 一条 を 二項 に分 ち、 国 体 に関 す る規 定 を第 一項 、 私 有財 産制 度 に

治 安 維 持法 案 に対 す る修 正案 と致 し ま し て、 横 山 金

太 郎 君 外 九 名 よ り修 正 案 が提 出 され て居 り ま す、 先 づ其 趣 旨 を承 り

見 を附 加 へま す、 本 法 の ﹁第 一条 国 体 若 は 政 体を 変 革 し ﹂ とご ざ い

関 す る規 定 を第 二項 と致 し ま し て、 ﹁ 第 一条国 体 を変 革 す る こ と を

を別 項 に致 し、 其 刑 罰 にも軽 重等 差 を加 へた る点 と、 政 体 の二字 を

し た 、 以 下此 刑 の量 定 に依 つ て変 つて居 り ま す、 国 体 と私 有財 産 と

﹁協 議 ﹂ と 云 ふ文 字 を ﹁ 勧 誘 ﹂ と改 めま す 、是 は政 府委 員 の御 説 明

削 除 致 し ま し た点 が本案 修 正 の眼 目 であ り ま す、 そ れ か ら第 二条 の

目的 とし て結 社 を組 織 し 又 は情 を知 り て之 に加 入 し た る者 は十 年 以

目的 とし て結 社 を組 織 し又 は情 を知 り て之 に加 入 し た る者 は七 年 以

に依 り ま し て も協 議 を申 出 で た る者 は、其 協 議 に応 ず る者 の有 ると

下 の懲 役 又 は禁 錮 に処 す 、 私 有財 産 制 度 を根 本 よ り否 認 す る こと を

否 と に拘 らず 之 を罰 す る と 云 ふ の で あり ま す が、 協 議 と 云 ふ文 字 は

を も罰 す る やう に ﹁勧 誘 ﹂ と し 、 而 し て勧 誘 に応 じ た る者 があ れ ば

下 の懲 役 又 は禁 錮 に処 す 本条 第 一項 第 二項 の未 遂 罪 は之 を 罰 す ﹂斯

此 応 じ た る者 も 罰 す る と 云 ふ こと に致 し た方 が明確 で あ るま いか と

様 に此 第 一条 を修 正 致 す の であ り ま す、 それ か ら第 二条 の原 案 の次

ら第 三 条 は原 案 の第 一項 の次 に ﹁第 一条 第 二項 の目 的 を 以 て其 の目

信 ず る のであ り ます 、 茲 に ﹁協 議 ﹂ の文 字 を ﹁勧 誘 ﹂ と 致 し た次 第

を罰 し な い やう な嫌 が あ り ます 、 寧 ろ そ れ よ りも申 出 で た る者 の側

的 た る事 項 の実 行 を煽 動 し た る者 は五 年 以 下 の懲 役 又 は 禁 錮 に 処

であ り ます 、 先 づ右 様 の点 が修 正 の箇 条 及 修 正 の理由 であ り ま す

如 何 に も其 協 議 に応 ぜ ざ りし 者 あ り し 場合 に は、協 議 を申 出 でた 者

す ﹂ そ れ か ら第 四条 の原案 の第 一項 の次 に ﹁第 一条 第 二 項 の目 的 を

○前 田委 員  長

に ﹁前 条 第 二項 の目 的 を 以 て其 の目 的 た る事 項 の実 行 に関 し勧 誘 を

以 て騒 擾 暴 行其 の他 生 命身 体 又 は財 産 に害 を加 ふべ き犯 罪 を煽 動 し

る賛成 と し て山崎 君 よ り通 告 があ り ま す、 山 崎君

為 し又 は之 に応 じ た る者 は 五年 以下 の懲 役 又 は禁 錮 に処 す ﹂ そ れ か

た る者 は 七年 以下 の懲 役 又 は禁 錮 に処 す ﹂第 五条 は ﹁第 一条 第 一項

○ 山崎 委 員  私 は横 山 金 太 郎 君 よ り御 提 出 になり ま し た る修 正案 に

討 論 は原 案竝 に横山 金 太 郎 君 外数 名 の修 正案 に対 す

あり ま す 、是 が私 共 の修 正 の点 であ り ま す、 而 し て修 正 の理由 を極

第 二項 及 前 三条 ﹂ と 云 ふや う に ﹁第 二項 ﹂ と 云 ふ文 字 を 入 れ る ので

て居 る こと であ りま す 、 又 此意 味 に於 ても随 分 混 入 し た質 問 応 答 も

あ りま し た こと であり ま し て、 法 文 の簡 単 な る割 合 には、 其 内 容 に

賛 成 を致 し ま す 、此 法 案 に依 り ま す れば 色 々 の議 論 も 世 上 に行 は れ

理由 は 、 大体 は、 横 山 金 太郎 君 の御 説 明 と略 々同 じ であ り ます 、 そ

の理由 と し て御 説 明 にな り ま し た通 に、 此法 律 は無 政 府主 義 、 共 産

於 ても 甚 だ複 雑 な る問 題 であ り ます 、 併 な が ら先 般 内 務大 臣 も提案

く簡 単 に申 し ます れば 、第 一条 に於 て ﹁国体 若 は政 体 ﹂ と あ り ま す

れ から ﹁私有 財 産 制度 を根 本 より否 認 す る﹂ と ﹁根 本 よ り ﹂ の文 字

のを ﹁若 は政 体 ﹂ を 此 法案 から 除 いた ので あ りま す 、其 除 き ま した

を此 処 に入 れ ま した 、 私有 財 産 制 度 を否 認 す る場 合 にも 一部 の私 有

は国 家 組織 、 又 は社 会組 織 の根 本 を破 壊 す る運 動 であ り ま す、 之 に

対 し ま し て適 当 な る 取締 の実 行 を要 す る こと は固 よ り の こと であ り

主 義 の実 行 を取 締 ると 云 ふ点 で あ りま す、 無 政 府 主義竝 に共 産 主 義

ま す 、 此意 味 に於 て私 は 本案 は当 然 承 認 せ なけ れ ば な らな いも の で

財 産制 度 を否 認 す るが如 き は此 法 の制 裁 を受 け ず 、全 然 根 本 より 否

云 ふ文字 を入 れた の であ りま す 、 そ れ か ら刑 の軽 重 に於 て、 国 体 に

認 す る場 合 に此 法 の制 裁 を受 け るや う に致 し まし て ﹁ 根 本 よ り﹂ と

関 す る点 を 重 く見 て十年 と致 し 、私 有 財 産 制 度 の点 を 七年 に致 し ま

ま す所 の無 政 府 主義 の取 締 と 云 ふ ことは 、 必 し も茲 に政 体 な る 文字

私 も司 法 大 臣 に御伺 を申 上 げ ま し た やう に、 政府 の目 指 し て居 ら れ

如 何 にも横 山 君 御説 明 の通 り、 其 意 味 極 め て曖昧 で あ りま す、 先 般

あ ら う と思 ふ の であ り ます、 唯 々本 案 の文 句 の中 政 体 と 云 ふ文 字 は

では あ る ま いか と存 じ ます 、 そ れ で大 体 の趣 旨 に於 て差 支 な い と致

ひ 方 の問 題 であ り ま す、 文 字 の用 ひ方 に依 り ます と 是 は 十 人十 色 、

る べ きも のだ と考 へる の であ り ます 、 従 つて是 は要 す る に文 字 の用

箇 条 で罰 せ ら れ る か と申 し ま す る と、 そ れ は 当然 其 規 定 か ら除 外 さ

な りま し た、 仮 に勧 誘 を 受 け て其 勧 誘 に応 ぜ な い者 は此協 議 と云 ふ

し ま す れば 、 私 は遺 憾 な がら 中村 君 の修 正 に賛 成 しな い で横 山金 太

此 文字 が宜 から う、 あ の文 字 が宜 か らう と 云 つて、 際 限 のな い こと

郎 君 の修 正 案 に同意 致 す次 第 であ り ま す

を 必 要 とし な い、 即 ち政 体 の変 革 のみ を目 的 と し て居 る運 動 は、 其

は当 然 国 体変 革 の運動 と し て之 を 取締 り得 ると 思 ふ ので あ りま す 、

○ 原 委員  私 は先 程中 村 啓 次 郎 君 の提 案 に係 る修 正 に賛 成 の意 見 を

奥 に国 体 の変 革 を 目指 し て居 るが為 であ りま す か ら、 そ れ等 の運動

ます が 為 に、 此文 字 は削 除 す る のが適 当 と存 じ ま す 、尚 ほ中 村 啓 次

れた 所 であ りま し て、是 は申 す ま でも な い の であ り ます 、 吾 々は政

持 つ者 で あ りま す、 政 府 提 案 の本案 は本 会 に於 て遺 憾 なく論 難 せ ら

従 つ て政府 の趣 旨 は政体 な る文字 が な く て も私 は達 成 し得 ると 考 へ

けれ ど も 、 私 は私 有 財 産制 度 の関 係 と国 体 の変 革 と 云 ふ関 係 を必 し

郎 君 よ り御 提 出 にな り ま し た修 正案 も、 一応 御 尤 にも拝 承 致 し ま す

も分 ら な い文 字 を 法 に現 し て置 く と 云 ふ こと は出 来 な い、 是 が吾 々

府 の原案 を成 べく 尊 重致 す考 であ つた の で あ りま す、 所 でど う し て

の修 正 の第 一根 本義 であ る のであ り ま す、 而 し て本案 提 案 の第 一眼

も刑 の量定 に於 て差 別 を設 く る必 要 は あ る ま いと 考 へる のであ りま

云 ふ こと が 日 本 の国 体 の動 揺 を来 さず し て行 は れ得 る も のであ る か

のが根 本義 で あ る、 吾 々も其 趣 意 に賛成 で あ る、 無 政府 主 義 と 云 へ

目 にな つて居 る所 の無 政府 主 義 と 共 産 主義 の取締 り、 之 を処 罰 す る

す 、 仮 に今 日共産 主 義 に付 て考 へて見 ま し ても 、 共 産主 義 の実 行 と

どう か、 即 ち 共産 主 義 の実 行 は或 る意 味 に於 て は国 体 の変革 と もな

ます 、 又 共産 主 義 に於 ては 私有 財 産 制 度 の根 本 を破 壊 す る と云 ふこ

ば 我 国 に於 て は国 体 政 体 は殆 ど同 一で、共 通点 が沢 山 あ る の であ り

り得 るも の であ り ます 殊 に 又国 体 の変革 の問 題 に付 て は刑 法 中 内 乱罪 其 他 厳 重 な る規 定 も

と が根 幹 に な つて居 る の であ りま す 、 そ こで政 体 を変 革 す ると 云 ふ

存 し ま す け れ ど も、 共 産 主義 の問 題 に至 り ま し て は、 此法 律 案 のみ であ り ます 、 固 よ り其 他 治 安警 察 法 、 新 聞 紙法 等 もあ り ま す け れ ど

の如 き明 な る 点 に付 て之 を 抹 殺 し、 而 し て是 は本 法 の体 裁 で あ りま

に本 法 案 の文 字 を抹 殺 せら れ た も の であ る と思 ふ の であ り ます 、 斯

す け れ ども 、 国 体 と私 有 財 産 と 云 ふ点 に付 ては我 が国 民 の伝 統 的 精

注 文 の意 味 が極 め て不 明瞭 で、 是 迄 の政府 者自 身 の御説 明 自 体 で既

の刑 量 で、 差 支 な か らう かと存 ず る の であ り ま す、 又 第 二条 の協 議

も、 刑 法 の内 乱罪 の規 定 は 固 よ り之 に関 係 は な い の であ り ま す か ら、

と 云 ふ文 字 は成 程 少 し く明 瞭 を欠 く嫌 も あ り ます 、 此 点 に付 ても 私

神 に照 し、 吾 々日本 臣民 の血 液 に流 れ て居 る観 念 か ら申 し ま し ても 、

此結 社 其 他 の点 に 付 て は矢 張 此法 律 の原 案 に規 定 し てあ り ま す 通 り

は 先般 来 御 伺 申 上 げ た の でご ざ いま す、 併 な が ら中 村 君 の御述 べ に

す る規 定 を 為 し 、而 し て斯 の如 く分 離 致 す 主 義 を執 つた 以上 は、 刑

であ ら う と思 ふか ら で あ る、 吾 々の真 意 を能 く諒解 下 さ るな ら ば、

であ り ま す、 唯 々更 に私 は抛 棄 し ま せ ぬ のは私 共 尽力 の足 ら な い為

る に至 らず 、 吾 々は意 を達 す る こと を出 来 な か つた こと を悲 し む の

一致 の態 度 を採 り た いと 、 私 一個 と し て は労 力 を惜 まな か つた の で

罰 の点 に於 ても 自 か ら異 らざ る を得 な い、 そ こで第 一項 に於 て原案

恐 く は 三 百人 の三 派竝 に本 党 の方 々 の中 に は御 同情 下 さ る方 も あ ら

斯 の如 き こと を規 定 す る と云 ふ こと は不 当 であ ると 思 ふ の であ り ま

の通 り十 年 、 第 二項 に於 て は之 を七年 とす る洵 に是 は 至当 の修 正 案

う と 思 ふ、 又政府 の方 々も膝 を 突 合 せ て数 時 間 の懇 談 をす れ ば 、内

一致 を以 て削 除 さ れ ま し た が、 私 有財 産 の 一点 に於 て遂 に協 定 を見

と考 へる の であ り ま す、 そ れ か ら第 二条 の協 議 を為 し た る者 と云 ふ

務 大 臣 も御 諒 解 下 さ る こと で あ ると思 ひ ます 、 そ れ故 に委 員会 等 に

あ り ます 、 唯 々政 体 の 一項 に付 ては 既 に此 委 員 会 に於 て、 各 派殆 ど

此 文 字 自 体 か ら 見 て も、 是 は多 く申 す ま でも な く、 法 律 を作 る場 合

於 ては慣 例 上 長 き議 論 は避 け て居 る の であ りま す が、 此 機 会 に於 き

す、 斯 の如 き 次 第 で あ り ます から第 一条 を 分 離 致 し て、 第 一項 に は

に於 て は、 人 類 の生活 利 益 を保 護 す る こと を目 的 と し な け れば な ら

ま し て私 共 の考 へて居 る事 を御 諒 解 し て戴 きた いが為 に、 数時 間 の

国 体 其 も の に関 す る規 定 を為 し 、第 二項 に於 ては私 有 財産 制 度 に関

ぬ、 そ れ には 一定 の明 な る限 界 を付 け なけ れば な ら ぬ 、其 限 界 に付

御 猶 予 を願 つて私 の考 へて居 る所 を披瀝 致 し た いと思 ひま す

治安維持法案 (政府提出)

て疑 が あ るな ら ば 、是 は修 正 し な け れば な ら ぬ、 此協 議 と云 ふ文字

第 一読会 の続

第五十回 衆議院議事速記録 帝国議会 

は是 ま で の質 問 応 答 の結 果 甚 だ不 当 な る文 字 であ る と 云 ふ こと が 発

と 明確 を期 す る為 に斯 の如 く改 めた ので あ りま す 、第 二条 以 下 総 て

見 せら れ て居 る、 そ こ で新 に吾 々は勧 誘 を為 し 又 は之 に応 じ た る者

刑 罰 は第 一条 の主義 に則 り、 第 一項 に牽 連 し たも のは 之 を重 く し 、

大正十四年 三月七日開議

第 二項 に牽 連 し た も のは軽 くす る、斯 う 云 ふ趣 意 であ り ます から 横 山 君 の修 正 に依 る修 正案竝 に政 府 の原案 に は反 対 を 致 す次 第 であ り

治安維持法案 (政府提出)

第 一読会 の続 (委員 長報告)

第 一 治安 維持法案 ( 政府提出)

右 は本院 に於 て別紙 の通修正す へきも のと議決致候此段及報告候

報告書

ます ○清 瀬 委 員  私 は本案竝 に修 正 案 に対 し て反 対 であ り ま す、 斯 様 な

も 何 れ も第 一条 より し て政体 の二字 を御 削 除 に相 成 つた こと に は敬

也

意 見 を持 つて居 る者 であ り ます 、 唯 々三派 側 の修 正 、 本党 側 の修 正

の変更 を 図 る、 之 を 処 罰 す る が如 き は 如何 に も遺 憾 と 思 ひ まし て、

大正十四年 三月六日

意 を表 し ま す、 私 共 合 法 的 に政 体 の変更 を図 り、 合 法 的 に私 有 財 産

此 点 に付 て吾 々の意 思 の在 る所 を各 派幹 部 の御 諒 解 を 得 て、 成 べく

衆 議院 議 長  粕

谷

義

治 安 維持 法 案 中 左 の通修 正 す

前

田

米

治 安 維 持法 案 委 員 長 蔵

て国 体 と謂 ふと 云 ふ や うな 御 答 弁 で あ りま し た、 そ れ に対 し ま し て

は、 国 体 と 云 ふ字 は克 く 孝 に 、真 に森 厳 な る意 味 の言 葉 であ る か ら、

無 味 乾 燥 な る法 律 語 と し て之 を使 ふ の はど う であ ら う か と 云 ふ やう

な 御 意 見 も あ り まし た 、 又 国 体 と 云 ふ事柄 は万 世 一系 の天 子 が統 治

云 ふ が如 き こと は有 り 得 べ か ら ざ る こと であ る が故 に、斯 う 云 ふ法

三  殿

○ 前 田米 蔵君  諸君 、 私 は只 今 日程 に上 り まし た る治安 維 持 法 案 の

律 を要 せ な い ので はな いか と 云 ふ質 問 も あ つた の であ り ま す 、之 に

をす ると 云 ふ こと其 事 を 言 ふ のな らば 左様 な、 即 ち 変革 を 企 て ると

委員 会 に於 け る経過竝 に結果 を 御報 告 申 上 げ ま す、 本案 は諸君 も 御

対 し て政 府 は、 吾 々も万 有 るべ か らざ るを信 ず る の であ る け れ ど も、

第 一条 中 ﹁若 ハ政 体 ﹂ を削 る

承 知 の如 く に政 府 は無 政 府 主 義 、 共産 主 義 を 取締 ら ん が為 に其 危 険

事 頗 る重 大 であ る が故 に、 尚 ほ 一層 規 定 を要 す ると 云 ふ の であ りま

あ りま す 、之 に対 し て政 府 は 、刑 法 の規定 す る所 のも のは 即 ち危 害

防 止 の為 に今 回 立案 提 案 せら れ た法 案 であ り ます 、 其条 項 よ り申 し

委 員 会 に於 き ま し て は、 委 員 の諸 君 は熱 心 に、真 面 目 に、 研 究 的 に、

を 加 へ、或 は危 害 を 加 へん と す、 或 は不 敬罪 と云 ふや う な 方 面 か ら

あ るが 故 に、 其 規 定 に依 つ て十分 で はな いかと 云 ふ質 問 も出 た ので

質 問 応 答 を尽 され た の であ り ます 、 其 中 に於 きま し て、 或 は高 遠 の

規 定 せ ら れ、 即 ち直 接 に皇 族 に対す る危害 の法律 であ る 、今 回 の立

す 、 又 既 に刑 法 に於 て、 天 皇竝 に皇 族 に関 す る所 の規 定 が あ る ので

理 想 郷 に付 て の質問 も あ り、 又深 遠 な る法 律 論 の質 問 も あ り まし た、

案 は さう でな くし て、 天 皇 が即 ち国 を 統 治 す ると 云 ふ、統 治 の聯 絡

ま す れば 、僅 に七箇 条 に過 ぎ な い の であ り ます 、 け れ ど も 、 其内容 に

又色 々 の場 合 を 仮定 し まし て、 而 し て其仮 定 に基 い て本 法 と の適 用

至 り まし ては頗 る重 大 な る事 項 を 包 合致 し て居 る の であ り ます 故 に

如 何 と 云 ふや う な質 問 も色 々あ つた ので あ り ます、 斯様 な る点 に於

の であ る か ら、 刑 法 と は違 ふ と 云 ふ こと を言 はれ て居 る の であ りま

す、 又斯 の如 き 法律 は単 行 法 とし て出 さ ぬ でも 、刑 法 其 他 の法 律 を

を 遮 断 す る が如 き こと が 即 ち変 革 であ ると 云 ふ方 面 か ら論 じ て居 る

御 報 告 を申 上 げ ると 云 ふ こと は如何 であら う かと思 ひま す 故 に、 私

り ます が、 政 府 は成 程 新 聞 紙 法 、出 版 法 、 或 は 治安 警 察 法 、 其 他 刑

改 正 し て、 其 目 的 を達 す る ので はな いかと 云 ふ質 問 も あ つた の であ

て百 般 の場 合 を 予想 し て の質 問 応 答 に対 し ま し て、 一々私 が此 処 で

つ て御 覧 を願 ひた い と思 ふ の であ り ま す、 先 づ本案 に於 きま し て劈

は 大 体 の所 を御 報 告申 上 げ ま し て、 詳 細 な る事 は委員 会 の速 記 に依

す けれ ど も 、今 日 ま で の十 九 世 紀的 観 念 よ り 成 つた所 の法 律 を以 て

法 を改 正 し て此 目 的 を達 す る こと必 し も不 可 能 では な い の で あり ま

る ので あり ま す、 国体 と は何 ぞ やと 云 ふ こと に対 し ま し て、 政 府 は

産 制 度 の否 認 と 云 ふ こと はど う 云 ふ こと で あ る かと 云 ふ こと に相 成

に は不 充 分 で あ る、 之 れを 取 締 るに は矢 張 新 立法 を要 す ると 云 ふや

し ては 、 今 日 の社 会 現 象 た る所 の此無 政 府 主義 、 共 産 主 義 を 取締 る

頭 問 題 に相 成 り ま す も のは、 即 ち 国 体 の変 革 、 政 体 の変革 、 私 有 財

国 体 と は 万 世 一系 の天 皇 が統 治 を す る と云 ふ、 此 我国 の国 柄 を指 し

府 は我 国 の主 権 の所 在 は 天皇 であ ると 云 ふ風 に答 へら れま し た、 次

人 であ る か と 云 ふ討 論 が本 党 の中村 君 より 出 た の であ り ます が、 政

う な 意味 の こと で あ りま し た 、 次 で主 権 者 、 日本 帝 国 の主 権 者 は何

弁 せ ら れ て居 る ので あ り ます 、 随 て此私 有 財 産 制度 と 云 ふ こと は、

度 、 此 制 度 の綜 合観 念 が即 ち 一の財 産 制 度 であ る と 云 ふ が如 く に答

関 係 を規 定 せ ら れ た所 の、 百 般 の法 令 に依 つて保護 せ ら れ る所 の制

申 しま す な ら ば 、 我国 に於 き ま し て所 有 権 を 中 心 と し て多 く の財 産

権 であ ると か 、其 他 司 法 行 政 に関 す る事 柄 は本 法 に 入 る のであ る か、

ま し た 、 之 に 対 し ま し て、 然 ら ば 此立 法 部 と 相 対 す る所 の天 皇 の大

を中 心 と し て政 体と 云 ふ言 葉 を使 つた の であ ると 云 ふ御 答 弁 であ り

問 が繰 返 さ れ た の であ り ます 、 然 ら ば ど の程 度 にま で否 認 し たな ら

条 は本法 案 の最 も 大 切 な る部 分 に属 す る ので あり ま し て、 色 々 の質

へす と 云 ふ こと に政府 は述 べ ら れ て居 る ので あり ま す 是 に於 て此 法

意 味 す る と 云 ふ やう な言 葉 で あ りま し て、 私 有 財 産制 度 の根 本 を 覆

云 ふ こと はど う 云 ふ こと で あ る か、 否 認 と は即 ち 廃 止 若 く は破 壊 を

私 有財 産 制 度 の根 本 と 云 ふ こと に相成 ると 云 ふ こと を答 弁 せら れ て

で政 体 の変 革 と は何 ぞ やと 云 ふ こと に相 成 り ま し た、 政 体 の変革 と

入 ら な い の であ る か と 云 ふ こと に 対 し まし て、 政 府 は 此問 題 は 即 ち

ば 制度 の否 認 に相 成 る ので あ る か、 例 へば 現 今 の露 西 亜 の如 く、多

云 ふ こと に付 き まし て は、 先 月 十九 日本 会 議 の時 に於 き まし て、 内

議 会 否 認 と 云 ふ声 が あ る が為 に、 此危 険 を防 止 す る為 に、 主 と し て

く の有 力 な る財 産 は 全部 国有 に相 成 つ て、 手 廻 り の物 、若 く は果 実

つ ても宜 いと 云 ふ風 に言 は れ て居 る の であ りま す 、而 し て此 否 認 と

立 法 し た の であ る、 他 の司 法 、 行 政天 皇 の大 権 、 固 よ り容 易 な ら ざ

の やう な物 が、 所 謂 私 有所 有 権 の目 的 と な る と 云 ふ やう な制 度 は ど

居 る ので あ りま す、 私 有 財 産 制 度 の基 礎と 言 つても宜 い、 根 本 と言

る事 で あり ま す け れ ど も、 本 法 の目的 は議 会 政 治 否 認 を防 止 せん と

う であ る か と 云 ふ問 に対 し ま し て、 政 府 は そ れ は私 有 財産 制 度 の否

務 大 臣 よ り既 に答 へら れた 如 く に、 政 体 と 云 ふ言 葉 立憲 政 体 と 云 ふ

す る のが主 た る目的 で あ ると 云 ふ風 に答 へら れ て居 る ので あり ま す 、

認 であ る、 斯 う 云 ふ風 に答 弁 せ られ て居 る ので あり ま す、 又然 ら ば

言 葉 であ る、 代議 政 体 と云 ふ言 葉 であ る、 其 代 議 政 体即 ち民 選 議 院

之 に対 し まし て委員 会 に於 て多 く の委 員 諸 君 より は、 政府 立 法 の主

の国 有 は ど う で あ る かと 云 ふ色 々の質 問 に対 し まし て、 左様 な る個

土 地 国 有 は如 何 であ る か、 又鉱 山 の国 有 は ど う であ るか、 或 は水 面

個 の場 合 に於 ては、 それ は財 産 制 度 の否 認 には なら ぬと 答 へられ て

の変 革 と 云 ふ文 字 を 以 てし て は、 政 府提 案 の主 旨 と 一致 す るも の で な い、 文 字 の方 が広 い解 釈 を持 つが為 に、 頗 る危 険 な る法 律 で あ る

旨 は之 を諒 と せら れ た や う で あり ま す け れ ど も、 果 し て然 らば 政 体

と 云 ふ や う に論 難的 質 問 も繰 返 され た ので あ り ます 、 次 で私 有 財 産

地 の全 部 、 地 下埋 蔵 物 の全 部 或 は汽 船 の全部 、 飛 行 機 の全 部 、 鉱 山

の金 部 と 云ふ や うな 主 な る も の五 つ位 のも の、 然 らば 之 を 国有 にす

居 る の であ り ま す、 之 に対 し ま し て星 島委 員 だ と思 ひま し た が、 土

る と云 ふ こと であ るな ら ば 、 そ れ は否 認 に相 成 る のであ るか、 な ら

あ り ま す、 私 有 財 産 制 度 と は どう 云 ふ事 柄 を謂 ふ の であ る か と 云 ふ こと に 付 き まし ては 、 定義 的 に簡 単 な る言 葉 を以 て言 現 は さ れ て は

制 度 の否 認 、 私 有 財 産 制度 と は何 ぞ やと 云 ふ議 論 が直 ぐ に起 る の で

居 な い ので あ り ます 、 故 に多 く の質問 応答 の中 よ り之 を 綜 合致 し て、

つて何 等 の代価 を払 はず に之 を取 上 げ ると 云 ふ や う な こと は、 即 ち

ぬ の で ある か と 云 ふ問 に対 し て、 政 府 は それ は即 ち 没収 を し てし ま

委 員 会 の速 記 録 に載 せ る こと に致 し て居 り ま す か ら、 さう 云 う詳 細

説 と 云 ふ やう な も ので あ つて頗 る 大部 のも ので あ りま す るが故 に、

た る簡 単 な 文章 を 以 てし て は、 本法 に引 掛 かる と は思 は ぬ 、併 な が

の事 柄 に付 ては、 ど う か委 員 会 の速 記 録 で御覧 を 願 ふ こと に致 し ま

や ると 云 ふ こと、 即 ち 所有 権 の存 在 を 認 め る と 云 ふ前 提 の下 に賠 償

ら百 般 の事 必 し も現 はれ て居 る文 字 の み では な い、 其 文字 の現 は る

し て、 政 府 は斯 う 云 ふ風 に答 弁 致 し て居 る ので あ りま す、 其 現 は れ

す る の であ る から 宜 し い、 論 が此 所 に及 びま す ると 云ふ と、 量 の問

ゝに至 つた 理由 、 其 他 内 容 と な る べ き重 要 な部 分 を拝 見 せ ね ば 、 此条

のそ れ は否認 に相 成 る、 併 な が ら政 府 は そ れ に相 当 の賠償 を与 へて

題 より は質 の問 題 であ る か の如 く に、 答 へら れ て居 る の であ りま す 、

文 がど う 解 釈出 来 る かと 云 ふ こと は、 必 し も今 断 言 す る こと は出 来

所 有 権 の観 念 を否 認 し てか ら 起 る現 象 であ るが故 に、 私 有財 産 制 度

又生 産 財 を国 有 にし て、 消 費 財 を民 有 にす る と 云 ふ こと は、 此 法 律

な い、 併 し表 面 に現 はれ た る 文字 を以 てす る なら ば︱

指 す やう な意 味 に於 て使 は れ て居 るな ら ば、 そ れを 没 収 す ると 云 ふ

産 財 と 云 ふ も の は即 ち其 殆 ど財 産 の全 部︱

的 の言 葉 を 以 てし た の み では 、 必し も本法 の適 用 を 受 く る も のでは

る と か、 或 は私 有 財 産 制 度 の漸 次 の変 革 であ ると か云 ふ や う な抽 象

ら言 ふな ら ば本 法 に引 掛 ら ぬ も ので あ る、 即 ち所 有 権 の民衆 化 であ

そ れ だけ か

に当嵌 る か と 云 ふや う な質 問 も あり ま し た、 之 に対 し て政 府 は、 生

こと、 そ れ を国 有 に す ると 云 ふ こと は 即 ち私 有 財 産 制度 の否 認 であ

な いと 云 ふ風 に答 弁 せら れ て居 る の であ り ます 、 次 で起 り ま す問 題

有 力 な る財 産 の全 部 を

る と 云 ふ風 に答 へら れ て居 る のであ り ま す、 此 問 題 に付 き まし て は、

を要 す る かど う か、 合 法 的 でも 尚 ほ犯 罪 に相 成 る かと 云 ふ 点 が 又頗

は国 体 の変革 、 政 体 の変 革、 私有 財 産 制度 の否 認 を 為 す の不法 手 段

を 予想 し て行 き ます れば 、 政 府 の説 明 も 必 し も 一目 瞭然 と は参 り兼

る重 要 な る点 で あ りま す 、 此 点 に付 き ま し て は政 府 は 不法 を要 せす 、

随 分極 端 から 極端 ま で質 問 が繰 返 され ま し て、 非 常 に極 端 な る場 合

ね て居 りま す 、即 ち此 所 よ り右 は 有 罪 であ り、 此 所 よ り左 は無 罪 で

今 回 の条 文 と 云 ふも のは 他 の法 律 と 其 撰 を異 にし 、 此 法律 に 依 つて

云 ふ の であ り ます 、 即 ち 姑 く国 体 は譲 り ま し て、 私 有 財産 制 度 と云

あ る と 云 ふ こと に致 し まし ても 、 右 と 左 の中 間 に這 入 る所 は紙 一枚

る法 律 的 常識 を 以 て裁 判 官 の認 定 に任 す よ り仕様 が な い と 云 ふ意 味

ふも のは 今 日吾 吾 国 民 が秩 序 を 維 持す る上 に於 て、 此 社 会 組織 を完

を挾 ま ぬ の であ る、 此 所 ま で立 至 つ て見 ると 中 々徹 底的 に は参 ら ぬ

を漏 さ れ て居 る ので あり ま す 、 然 ら ば労 働 党 の政 綱 に於 て英 吉 利 辺

全 に維 持 す る上 に於 て必要 欠 く べ から ざ る制 度 であ る、憲 法 も此 意

る、 頗 る狭少 で あ る が故 に、 此法 益 を害 せ んと す る者 即 不 法 な りと

り の労 働 党 の政 綱 、 若 く は 其 決 議 を示 され ま し て、 清 瀬 委 員 よ り斯

保 護 す ると 云 ふ所 の利 益 、 目的 、 即 ち法 益 の範 囲 は頗 る 狭 い ので あ

の如 き 事 柄 が私 有 財 産 制 度 の否 認 と 云 ふ こと にな つ て本 法 に引掛 か

り 覆 す と 云 ふ こと は、 即 ち其 事 が不 法 を為 す の であ る、 丁度 人を 殺

味 に於 て出 来 て居 る の であ る、 然 る が故 に此 私 有 財 産 制度 を根 本 よ

ので あ りま す 、其 所 に至 り ま す れ ば 即 ち政 府 も、 そ れ は其 時 に於 け

る か、 ど う か と 云 ふ質 問 を 為 さ れ ま し た、 そ れ は其 綱 領 、 決 議、 学

業 務 行為 は 即 ち免 責 行 為 に相 成 つて居 る の であ り ま す、 是 に於 て か

り ま す れ ば 、 正当 の義 務 に在 る所 の者 は認 めら れ て居 る ので あ る、

す るが故 に、 刑 法 の適 用 を受 け る ので あ る、 刑 法 三十 五条 以 下 に依

認 め ぬ と 云 ふ こと に相 成 るな ら ば、 此法 律 は矢 張刑 罰 法 律 で あり ま

答 弁 せら れ て居 る ので あ りま す 、 是 に於 て か此 合 法 性 と 云 ふ も の を

於 て始 終 一貫 致 し て、 即 ち不 法 其 も の自 体 が不 法 であ る と 云 ふ風 に

非 常 な る論 難 的 質問 が あ つた の であ り ます が、 政 府 の説 明 は 此点 に

な け れば い かぬ 、或 は不 法 を 是 非 加 へな け れば な ら ぬと 云 ふ や う な、

て居 る の であ り ま す、 之 に対 し ま し ては、 或 は暴 力 を以 てす る ので

云 々と 云 ふ こと は意 味 を な さ ぬ言 葉 であ る と 云 ふ風 に政府 は答 弁 し

否 認 す ると 云 ふ こと即 不法 と 政 府 は 思 ふ の であ る、 之 を 不法 の手 段

本 の今 日 の状 態 に於 て は、 即 ち 国 体 を 変革 す る と か私 有 財産 制 度 を

云 ふ条 文 は無 い ので あ る、 人 を 殺 す と 云 ふ こと が即 不 法 であ る、 日

す 、 刑 法 に於 て人 を殺 し た者 は 無 期徒 刑 ﹁不 法 に人 を 殺 し た る﹂ と

がら 院 内 は 職務 を 行 ふ に即 ち 必 然的 であ る、 且 つ不分 離 的 の部分 に

内 に於 ては 宜 し い、 院 外 に於 ては職 務 行 為 にな ら ぬ ので あ る、併 な

す る最 も 重 大 な る事 柄 であ りま す故 に、 ま あ 一度言 返 し ます 即 ち院

いと 云 ふ こと に 相 成 つ て来 た の であ り ます 、 此 事 は議 員 の機 能 に 関

ふ に必 然 且 つ不 分 離 の程度 に於 て の み、院 外 に於 て認 め ざ る を得 な

政 府 に於 き ま し ては 此院 内 に於 て業 務 を執 行 す る議 員 が、 職 責 を 行

為 でな いと 言 は る ゝ の であ りま す 、併 な が ら色 々質 問 応 答 の結 果 は、

内 に限 られ る の であ る 、 院 外 に於 ては其 職 務 と認 め ら れ な い、職 務 行

然 る かと 云 ふ質問 が起 つて来 る、 之 に対 し て政 府 は 議員 の職 務 は 院

を持 つの であ ると 云 ふ、 然 らば 次 で起 る疑 問 は、 院 の内外 を通 じ て

法 変 更 の上 奏 も 為 し得 る 、随 て上 奏 権 を行 ふ範 囲 に於 て のみ合 法 性

て職 務 行 為 であ ると 云 ふ風 に答 弁 せら れ た ので あり ま す、 議 院 は憲

も 、政 府 の見 る所 に依 れ ば、 上 奏 権 は議院 に於 て重 要 な る問 題 と し

と 云 ふ点 に対 し ま し て は、 上奏 と 云 ふ事 に付 ては議 論 も あ る けれ ど

ま す、 然 らば 議 院 の有 す る最 も 重要 な る所 の上奏 権 はど う であ る か

の であ る から 、 それ は 議 員 の職 務 でな いと答 へら れ て居 る ので あり

限 つては免 責 行 為 と相 成 ると 云 ふ風 に答 弁 せら れ て居 る の であ り ま

かと 云 ふ質 問 に対 し ま し て、 政 府 は議 会 の職 務 であ る なら ば それ は

す 、 先 づ 左様 な風 に此 第 一条 に付 て の質 問 応 答 が あ つた の であ り ま

議 員 が議 会 を 通 じ て為 す 所 の事 柄 は、 然 ら ば 合 法行 為 で あ る かど う

財有 産制 度 否 認 の建 議 は如 何 か と言 へば 、 そ れ は いか な い、 憲 法 を

即 ち 合法 行 為 と申 され ると 云 ふ風 に答 弁 し た ので あ る、 即 ち 先 づ 私

れ る処 のあ る こと も 亦 已 む を得 ざ る こと ゝ思 ふ の であ り ま す、 次 で

一方 に於 て弾 力 性 に富 む と同時 に、 一方 に於 ては広 汎 の解 釈 をば さ

第 二条 の協 議 と 云 ふ こと に付 て は、協 議 と 云 ふ こと は ど う 云 ふ こと

す 、 要 す る に第 一条 に於 け る文 字 が頗 る抽 象 的 の言 葉 で あり ま し て、

いが故 に、 建 議 は出来 ぬ と斯 う 云 ふ風 に答 へら れ た のであ り ま す、

ば 則 ち政 府 に建 議 を す る事 で あ つて、 陛 下 に建 議 を す る意 味 では な

は 即 ち勅 令 に依 つて の み為 し得 る の であ る 、故 に議 員 の建 議 と申 せ

然 ら ば法 案 は如 何 と 云 ふ こと で あり ま す、 法 律 案 に致 し ま し ても矢

一点 御留 意 を願 ひ た い点 は、 政 体 を変 革 し やう と 云 ふ こと を実 行 す

を言 ふ か、 常 識 的 には 御 互 の協 議 が即 ち協 議 で あり ま す る が、 唯 々

変 更 し な け れば 私 有財 産制 度 の否 認 は出 来 な い ので あ る、 憲 法変 更

張 同 様 、 憲 法 を 変 更 す る に非 ざ れ ば 私 有財 産 制 度 の否 認 は出 来 な い

ざ る 乙 は無 論実 行 の意 思 も 何 も無 い の であ り ま す か ら、 即協 議 は成

乙 が応 じ な い時 は どう であ る か と 云 へば 、政 府 の説 明 に依 れ ば応 ぜ

は協 議 に疑 が な い の で応 ず る 、 相 手 が応 じ な い、甲 が申 込 みま し た が、

や な い かと 云 ふ こと を協 議 を申 込 む 、 相 手 が 之 に応 ず ると 云 ふ場 合

る こと を 目的 と 致 し ま し て、 甲 な る者 が乙 に 対 し て実 行 を し やう ぢ

に危 険 を 防 ぐ意 味 より拵 へた の で ﹁スパイ﹂ を眼 中 に置 く制 度 でな

為 の取締 法 であ り ま す る が故 に、 一人 にて も半 人 に ても少 く、 未 然

る規 定 で はな いか と 云 ふ質 問 に対 し て、 政 府 は 此法 律 は危 険 防 止 の

此 自 白 す るな ら ば 減刑 免 除 の規 定 があ る、 是 は ﹁スパ イ﹂ を奨 励 す

し め る こと 、 そ れ が即 ち煽 動 で あ ると申 さ る ゝ ので あ りま す 、 次 で

に、 多 く の人 々 の感 情 を刺 戟 し て、実 行 の力 を与 へる やう な 事 を せ

いと 言 ふ ので あ る、 次 で此 法律 の附 則 に付 き まし て、 此法 律 が出 来

立 た な い、協 議 でな い の であ る、 唯 々申 込 ん だ る者 は どう であ る、 是 は相 手 の同意 不同 意 に拘 らず 、 左 様 な 事 の申 込 を す る こと そ れ が

が、 此 緊 急 勅令 の治 安 維 持 令 と ど う 云 ふ所 が違 ふ の であ る か と云 ふ

質 問 が起 つ て来 ま し た が、 之 に就 て治 安 維持 令 は其 目 的 と す る所 が

た な ら ば治 安 維持 令 な る震 災 後 に出 さ れ た緊 急 勅令 が廃 止 せ ら る ゝ

頗 る広 い の であ る、 又其 犯 罪 の手段 とす る所 は流 布 宣 伝 にも 及 び、

せ ら れ て居 る の であ り ます 、 之 に就 き まし て は本 党 側 の諸 君 より、 此 字 よ り は勧 誘 と 云 ふ字 が宜 い の では な い かと 云 ふ御質 問 も あり ま

協 議 で あ る、 之 を 取締 る と云 ふ こと が矢 張 本 法 の目 的 で あ ると 疏 明

て、煽 動 と は何 ぞ やと云 ふ こと は皆 様 御 承 知 の通 り であ り ます が 、

し た、次 で矢 張 問 題 に相 成 り ます所 の第 三条 の煽 動 と 云 ふ こと に付

であ り ます け れ ど も、 其 目 的 、 其手 段 の頗 る広 汎 な る も の で あ る

流 言 浮 説 にも 及 ん で居 り、 頗 る広 い のであ る、 懲 役 は同 じ 十年 以下

違 つて居 る、朝 憲 の紊乱 と 云 ふ のは信 教 の自 由 を害 す る、 蹂 躙 す る

︱

と説 明 せ られ て居 る の であ り ます 、然 らば 過激 思 想 取 締 法 案 と どう

ふ言 葉 は、言 葉 自 身 が悪 い の ではな く て、 ﹁ス ト ラ イ キ﹂ 即 ち同盟

こと も 入 るけ れ ど も、 今 回 は さう 云 ふ こと は 入 れ て居 な い斯 う 云 ふ

く、 何 と か明 な方 法 がな いか と 云 ふや う な質 問 に対 し て、 政府 は煽

煽 動 と 云 ふ字 は如 何 にも 紛 れ易 い字 であ る か ら、 煽 動 と 云 ふ字 でな

罷 工と 関 聯 し て法 律 問 題 に相 成 つて居 る の であ る、 煽 動 と 云 ふ字 は

の であ り ます 、 又其 他 の点 に付 きま し ても違 ふ と 云 ふ と云 ふ点 が あ

云 ふ所 が違 つて居 る か と申 し ます れ ば、 過 激思 想 取 締 法 よ り は 余程

其 他 治 安 警察 法 第 九 条 にも あ れば 、 新 聞紙 法 の第 二十 一条 にも あ れ

今 回 の方 が狭 く な つて居 る、 即 ち朝 憲紊 乱 と申 す こと に対 し て国 憲

ば 、 今 回 の選 挙 法 に も使 つ て居 る言 葉 であ る、 疑 のな い言 葉 で あ る

り ま し た が、 是 亦 同様 速 記録 を御 覧 を願 ふ こと に致 し ます 、 次 で刑

と云 ふ輿 論 が や か まし いけ れ ど も、 治 安警 察 法 第 十 七条 の煽 動 と 云

と 云 ふ風 に言 は れ て居 る の であ る、 然 ら ば煽 動 と宣 伝 と はど う違 ふ

と 言 は れ る の であ り ま す、 是 に於 て起 る問 題 は、 国 体 変 革 と 私有 財

罰 は 重過 ぎ やせ ぬ か と 云 ふ こと に対 し て、 此刑 罰 を 以 て相 当 と す る

動 と云 ふ字 は明 であ る、 治安 警 察 法 第 十 七条 を廃 止 す る、廃 止 せ ぬ

か と 云 ふ こと に対 し て、 宣伝 と申 せば 或事 を流 布 す る、 或 事 を伝 播

産 制 度 の否 認 を、 同 じ刑 量 に依 つ て規 定 せら れ て居 る の は何 故 であ

所 謂 国 憲 であ り ま せ ぬ、国 体 の変革 、政 体 の変 革 と 云 ふ こと ゝは

す ると 云 ふ こと が宣 伝 であ り ま す、 此 流布 宣 伝 以上 に、 或 事 を斯 う 云 ふ事 柄 が宜 い ので あ るか ら斯 う云 ふ こと を行 ふ のが宜 いと 云 ふ風

のも の で あ る、 政体 及 私 有財 産制 度 の否 認 と 云 ふ こと は相 対 的 の こ

る か と言 はれ る ので あ りま す、 之 に対 し て政 府 は 成 程国 体 は絶 対 的

関 係 は無 い の であ る、 私 有 財 産制 度 の否 認 、 私有 財 産 制 度 の根本 的

の変 更 の程 度 は 、所 有権 の制 限 の程度 で あ るな ら ば、 吾 々は法律 に

此 法律 の関 す る所 で無 い ので あ る労 働 党 の新 綱 領 、 労 働党 の発 生 を

か、或 る 程度 ま で私 有 財 産制 度 に変 更 を加 へる と 云 ふ が如 き事 柄 は、

妨 害 す る為 に決 し て法律 を出 し た の では な いと云 ふ風 に答 へら れ て

否 認 と 云 ふが如 き事 柄 が問題 と な る の であ る、所 有 権 を 制 限 す ると

所 の危 険 を防 ぐ、 予 備 の予備 を罰 す ると 云 ふ所 の規 定 で あ つて、 此

居 る ので あ り ます 、 又 労農 政 府 の宣 伝 禁 止条 約 に付 て の質 問 もあ り

と で あ る、 其法 益 の価 値 固 よ り 同 一と論 ず る訳 では な い、 併 な が ら

手 段 方 法 の程 度 に於 て同 じ事 と見 る、 終 局 の法益 の価 値 は違 つ て居

ま し た、 又無 政 府 主義 、 共産 主 義 と 何故 為 さな か つた か と 云 ふ質 問

此 法 案 の目 的 と す る所 は国 体直 接 でな く、 即 ち 国体 を害 せ んと す る

る け れ ど も、 此 法 益 を害 せ んと す る所 の其 手段 方 法 が予 備 の予備 を

も あ り まし た が、 是等 の点 も同 じ く速 記 録 に譲 り ま す、 又 一般投 票

は 此 日本 の立 憲 政 治、 議 会 政 治 と ど ん な関 係 を持 つ のであ る かと 云

ふ答 弁 であ り まし た、 次 で清 瀬 君 よ り陪 審 法 と の関 係 は ど う で あ る

ふ点 に対 し ま し ては、 過 日 の本 会 議 に於 て若 槻 内務 大 臣 よ り答 弁 せ

罰 す る程 度 のと き には、 同 じ刑 量 を 以 て取 締 る のが至 当 であ る と 云

か と 云 ふ質 問 に対 し ま し て、 陪 審 法 の法 定 陪審 に は這 入 ら ぬ が、 任

ら れた る と 同 じ や うな 答 弁 であ り まし た、故 に是 亦 省 き ま す、 次 で

では な い、 思 想 は全 然自 由 であ る、 此 思想 が外 形 に現 は れ て結 社 を

請 求陪 審 に這 入 ると 云 ふ答 弁 であ り まし た、 次 で此

作 り、 煽 動 とな り 、協 議 とな つて始 め て之 を 罰 す る ので あ る、 思想

意 陪 審 申 立︱

者 の地 位 を 向 上 し、 労 働条 件 の改 善 を図 ると 云 ふ や う な る純 真 な る

は自 由 であ る、 其 思想 は自 由 であ る が故 に、 学 者 が仮 に研 究的 に之

思 想 は思 想 を 以 て律 す べき も ので あ つて、法 律 を以 て律 す る こと は

労 働 運 動 に対 し て、 固 よ り取 締 る意 思 が毫 も 無 い ので あ る、 斯様 に

を 研究 す る、 学 生 が之 を研 究 す る 、研 究 の結 果 を発 表 す ると 云 ふ こ

法 律 が出 来 た な ら ば労 働 問 題 は ど う な る ので ある か、 労 働 運 動 はど

答 へて居 る ので あ る、 併 な がら 更 に論 歩 は 進 み まし て、 此労 働者 終

と は自 由 で あ る、 社会 主 義 と は ど う 云 ふ も の であ る、 無 政 府主 義 と

宜 く な いと 云 ふ質 問 に対 し まし ては 、 政 府 は思 想 は決 し て罰 す る の

局 の目的 は、 今 日 の私有 財 産 制 度 に指 を 染 む る と云 ふ こと に 依 つて、

は ど う云 ふも の であ る、 或 は 共産 主 義 と はど う 云 ふ も の であ つて、

ふ質 問 に対 し て、 政 府 は決 し てさ る ことな し 、 労働 運 動 の所 謂 労働

労 働 者 の地位 は改善 せ ら る ゝと 見 な け れ ば な ら ぬ、 然 ら ば 此普 通選

う な る か、 労働 者 の運 動 を 圧 迫 す る こと に相 成 る の ではな い かと 云

挙 実 施 の後 に於 て労 働 党 が起 り 、 新 に労 働 党 が起 つて新 綱領 とし て

ゝ の は宜 し い、 研 究 の結 果 を発 表 せら る ゝ のも宜 し い ので あ る、 此

私 有 財 産制 度 の否 認 はど う 云 ふ も の であ ると云 ふ こと を 研究 せ ら る

法 律 の目的 とす る所 は 、斯 の如 き 事 柄 を実 行 す ると 云 ふ意 思 を以 て

か、 それ を 防 ぐ と 云 ふ こと が 此 法律 の目 的 で あ るか と 云 ふ風 に言 は れ た の であ り ま す、 政 府 は普 通選 挙 の実 施 と 同時 に労 働 党 は起 る で

或 る 行為 を為 す と 云 ふ こと に依 つて犯 罪 は成 立 つの であ る、 実 行 す

私 有 財 産 制 度 に変更 を加 へると 云ふ や う な こと があ つた ら どう す る

あ ら う 、新 政党 の樹 立 も亦 起 る で あ らう 、 併 な が ら此 私 有財 産制 度

尽 く る の であ る、 仮 に多 少 の脱 漏 が其 所 に生ず ると し ても、 それ は

す る為 に は国 体 の変 革 、 私 有 財産 制 度 の否 認 と 云 ふ言 葉 を以 て大 体

葉 であ るし 、 政 府 の説 明 を 聴 く な らば 、 無 政 府 主 義、 共産 主 義 を律

ま し ては、 其 説 明 と 致し ま し て、 政 体 と 云 ふ言 葉 は疑 義 の生 ず る言

ち ﹁若 は政 体 ﹂ と 云 ふ 四字 を削 ると 云 ふ案 であ り ま し た、 之 に対 し

修 正案 は治 安 維持 法 の第 一条 に在 る所 の政 体 の変 革 と 云 ふ こと 、即

次 で討 論 に移 り ま し て、 横 山 金 太郎 君 外 数 名 よ り 修 正案 が出 ま し た、

つた と 云 ふ こと を説 明し たと 御諒 承下 さ つて宜 し い の であ りま す、

一言 にし て之 を 尽 く せば 、 政 府 は 本案 提 出 の為 にさ う 云 う こと も あ

如 何 と 云 ふ やう な質 問 応 答 もあ り まし たけ れ ど も 、是 は大 体 に於 て

政 府 主義 、 共 産 主義 が果 し て何事 を為 し た か、 露 西 亜 方面 と の関係

相 成 る ので あり ま す、 秘 密 会 も 開 き まし た、 秘 密 会 に於 て今 日其無

の関 せ ざ る所 であ る と言 は れた の であ り ます 、 先 づ 大体 斯 様 な 事 に

る意 思 な くし て研 究 を し、 之 を 発 表 す る と云 ふ こと は、 決 し て法規

る、 其 指 を 染 め ると 云 ふ こと を今 回 禁 止 せ ら る ゝ のに 至 つて は、 大

階 級 、 労働 者 階 級 の進 む べ き途 は私 有財 産 制 度 に指 を 染 め る の であ

と し て実 に慨 歎 に堪 へぬ と 云 ふ やう な論 で あり ま し て、 将 来 此 無産

も 尚 ほ罰 す る と云 ふ が如 き こと は、 世界 各 国 と 比 し て、 我国 の立法

法 手 段 と 云 ふ やう な こと を 入 れず に、合 法 的 に斯 う 云 ふ事 を や つて

案 の如 き事 柄 が、 即 ち 私有 財産 制 度 の否 認 と 云 ふ やう な事 柄 が、 不

蓄 を 傾 倒 せ ら れ て、 非常 に論 ぜ ら れた ので あり ま し た、 其 要 旨 は本

案 に絶 対反 対 の意 見 が出 ま し た、 同 氏多 年 御 研 究 に相 成 つた 所 の蘊

で御 紹 介申 上 げ て置 き ま す、 次 で清瀬 一郎 君 よ り本 案 廃 案 の︱

あ りま す か ら、 私 は其 点 は省 略 し て、其 御 趣 意 の在 る所 だけ を 此所

此 本 会 議 に於 て本 党 の諸 君 よ り修 正 案 の御 説 明 があ る と 云 ふ こと で

あ ら う と 云 ふ御意 見 で修 正意 見 が出 た ので あり ま す、 承 りま す れば

の意 味 であ つて、 之 を勧 誘 し、 又 は之 に応 じ た者 と書 く方 が適 切 で

て来 た ので あ りま す、 又 ﹁協 議 ﹂ と 云 ふ字 は先程 申 上 げ ま し た如 く

四 条 の手段 も、 一方 が 七年 で あ るな らば 一方 は 五年 と 云 ふ風 に下 げ

であ り まし た、其 結 果 と致 しま し て、 其 次 にあ り まし た 二条、 三条 、

であ つて、 私 有 財 産制 度 の変 革 十年 も是 は お かし い、 国 体 は十 年 其

り ま す が、 骨 子 を 為 す のは刑 罰 の点 で あ りま す 、 国 体 の変革 が十年

ま す 、次 で異 な る 点 は、 非 常 に条 文 に於 て沢 山 変 更 があ る やう であ

此 修 正案 に依 り ま す と、 此 ﹁政 体 ﹂ を削 ると 云 ふ こと は 同 じ で あり

ま し た、 次 で本 党 の中 村 啓 次 郎 君 外数 名 より 修 正 案 が出 さ れま し た、

は 所謂 政 体 の文字 を省 く と 云 ふ方 が相 当 であ ると 云 ふ御趣 意 で あり

警 察法 、 出 版 法、 其 他 新 聞 紙 法 に関 係 が あ る の であ る、 自 分 とし て

村 君 の修 正意 見 は少 数 否 決 、清 瀬 君 の意 見 も同 じ く 少数 否 決 、 次 で

三派 より 提案 せら れ た る修 正意 見 が多 数 を 以 て成 立 致 し ま し た、 中

次 で採 決 に移 りま し た 、 採 決 の結 果 横 山 金 太郎 君 の修 正意 見 、 即 ち

れ る こと であ りま せ う か ら 、私 は此 程 度 に於 て此 報 告 は 止 めま す 、

あ りま す、 け れど も 、是 亦 清瀬 君 同 志 の諸 君 より 何 れ御 演 述 をせ ら

当 で あ ると 云 ふ こと に対 し ま し て も、詳 細 な る御 演説 が あ つた ので

立 法 の技 術 の点 に付 てど う 云 ふ言 葉 が いか ぬ、 ど う 云 ふ言 葉 は不 穏

な る時 代 を解 せざ る所 の立 法 であ ると 云 ふ意 味 であ り ま し た、 又 此

本

つ て、 或 は朝 憲 の紊乱 と か安 寧 秩 序 の害 と な る、 此 点 に 付 て は治 安

決 し て無 罪 と な る のでな く て、 此法 律 に関 係 は 無 いと 云 ふ だけ であ

儘 で宜 し い が、 私有 財 産 制 度 の変革 は之 を 七 年 に改 め る と 云 ふ こと

宜 し く御 審 議 を進 め ら れん こと を希 望 致 しま す ( 拍手)

本 案 全 体 を是 認 す ると 云 ふ こと に相 成 つた次 第 であ り ます 、 諸 君 は

通 過 致 し ま し て、 委 員 会 に於 ては 此 四字 を修 正 致 し ま し て全 部 ︱

た部 分 を除 い て本 案 全 体 を 議 題 と 致 し ま した 所 が、 是 亦 多 数 を以 て

此 横 山金 太 郎 君 の修 正 意 見 が 成 立 致 し ま し た故 に、 此修 正致 し ま し

う し て、 葉 を枯 ら し た い の でご ざ い ま す、 生 活 の安 定 を 得 ま し た な

に進 みま し た施 設 を致 し ま し て、其 不 健 全 な 思 想 の根 を絶 つて、 さ

分 に考究 し、 精 神 的 方 面 から も、 亦 経 済 的 方 面 か ら も、 現 在 よ り遙

主 義 、 無 政 府主 義 等 の不 健 全 な思 想 の起 りま す 原因 を 我我 は 先 づ 十

はし な いだ ら う か と 云 ふ こと を、 私 は惧 れ る の でご ざ いま す 、 共産

な いと 云 ふ論 を私 は聴 く のでご ざ い ま す が、併 な が ら 、 人 は ﹁パ

ら ば 、 即 ち 裕 か な生 活 を す る こと が出 来 る やう に な りま し た な らば 、 第五十回 貴 族院議事速記録 治安維持法案 (政府提出) 帝国議会  第 一読 会 の続

れ ば なら ぬ のでご ざ いま す、 社 会 には 感情 生活 と云 ふも のゝ あ る こ

○ 議 長 (公 爵徳 川 家 達 君 )是 に て質 疑 の通告 者 は終 りま し た 、是

のに当 つて少 し も疑 のあ る筈 が な いと仰 つし や いま し た けれ ど も、

本 案 は極 め て明 瞭 な る も の であ つ て、 曖 昧な 点 がな い、 之 を用 ゐる

と を忘 れ て の議 論 ではな い かと 思 ふ の でご ざ いま す 、 司法 大 臣 は、

ン﹂ のみ に依 つて生 く る も の に は あら ず と 云 ふ こと を 深 く考 へなけ

斯 か る不健 全 な る思 想 は起 らず 、 又国 に革 命 な どと 云 ふも のも起 ら

大 正 十 四 年 三月 十 九 日開 会

よ り通 告 順 に依 りま し て討論 を許 し ま す 、侯 爵徳 川 義 親 君

果 し て さう であ る か どう かと 云 ふ こと は私 は信ず る こと が出 来 な い

を 持 つて居 る者 で はな い のでご ざ いま す 、 実際 此 法 を 用 ゐま す者 は

○ 侯 爵 徳 川 義親 君  茲 に 上程 せ ら れま し た る治 安 維 持 法 は衆 議院 を

裁 判 官 でも至 つて少 い の であ りま し て、 多 く は警 察 官 でご ざ い ます、

通 過 いた し ま し て、 今 や 正 に本 院 を 通 過 し や う と致 し て居 り ます 、

無 政 府 主義 者 の み であ る と仰 せ られ ま す け れ ど も、 私 は 決 し て共 産

必 ず し も之 を誤 つて用 ゐ る こと な し と せ な い の でご ざ います 、 外 の

のでご ざ いま す、 之 を立 案 いた し まし た方 、 立 法者 に於 き ま し ては

主 義 でも な く、 決 し て無 政 府 主 義 でも ご ざ いま せぬ が 、 尚 ほ此 法 案

法律 と違 ひ まし て、 峻厳 極 まり な いも の でご ざ いま す る が故 に、 一

此 法 案 に対 し まし て私 は遽 に賛 成 いた す こと が出 来 な い の でご ざ い

を惧 れ る のでご ざ います 、 特 権 階 級中 の特 権 階 級 であ る 我 々が、 本

度 誤 つて用 ゐ まし た 其結 果 は誠 に恐 ろ し いも の でご ざ います 、 我 々

ゐま す のは 立法 者 で はご ざ いま せ ぬ で、 又 必ず し も立 法 者 と同 じ心

案 に遽 か に賛 成 いた さな い意 思 を 表 明 いたし ま す る のは、 余 程 勇 気

は 社会 に感 情 生 活 のあ ると 云 ふ こと を 忘 れ て は いけ な い のでご ざ い

成 程 明 瞭 で以 て何 等 の疑 を挿 む所 はご ざ いま す ま い が之 を実 際 に用

を要 す る次 第 でご ざ いま す 、併 し敢 て茲 に私 がそ れ を致 し ます る の

ま す 、 私 は茲 に極 め て簡 単 に其 理 由 を 申 上 げ て見 た いと 存 じ ます 、

は、 或 は此 事 が杞 憂 かも 知 れ ぬ 、 又杞 憂 であ れ ば 誠 に幸 と存 じ ま す

ま す、 此 法 案 が⋮ ⋮ 此法 律 がご ざ いま せ ぬ でも、 新 聞 紙 法 、出 版法 、

小 川 司 法 大 臣 は、 本案 の実 施 せら れ る のを恐 れ ます のは 共産 主 義 、

本 法 実 施 の暁 に於 きま し て、治 安 維 持 の目 的 却 て反 対 の結 果 に陥 り

持 と 云 ふ大 切 で あ つて、 さ う し て必 要 な る為 に設 けら れ た 此法 律 に

思 はれ る の で私 は茲 に俄 に賛 成 出 来 兼 ね る のでご ざ いま す、 治 安 維

し て十 分 な用 意 が あ りや否 や、 細 密 な 用 意 が欠 け る所 が あ る やう に

に依 れ ば峻 厳 極 ま りな い此法 律 の実 施 に当 り ま し て、 政 府 当 局 に果

が出 来 る も ので はな いか と 私 は思 ふ の でご ざ いま す、 私 の見 ます 所

治 安 警察 法 等 があ りま し て、 朝 憲 及 国 憲 の紊乱 は十 分 に取 締 る こと

ご ざ います

に虎 の門事 件 の こと を 忘 れ ては いけ な いと 云 ふ、 それ だ け の こと で

所 は唯 一言 で尽 き る の でご ざ いま す 、我 々日本 人 と 致 し まし て永 久

い、 さ うし て述 べ た く な い のでご ざ いま す、 唯 私 の意 でござ いま す

私 は 十分 に論 旨 を 尽 さ な い かと 申 し ます る と、 実 は述 べ る勇 気 が な

と では誠 に論 拠 が 薄弱 で あ つて不 徹底 でご ざ いま す、 併 な がら な ぜ

対 し て賛 成 いた さ な い理 由 と致 し まし ては 、唯 今 申 上 げ た だ け の こ

暴 民 の政治 参 加 を虞 るが如 き枢 密 院 の愚 論 に対 し て、 此 の治 安 維 持

し て議 会 に提 出 せ んと す る のみ な らず 、 納 税資 格 制 限 撤 廃 に よ つて

点 に於 ては何人も 賛 成 し、 直 接 反 対 す る の理由 を見 出 す こと を得 な

乱 社 会組 織 を破 壊 す るが如 き過 激 運 動 を 取締 る に あ る であ らう 。 此

治 安 維 持法 案 の目 的 と す る所 は、 恐 ら く国 体 を 変改 し所 謂 朝 憲紊

る多 数 国民 を訴 へ、 三派 諸 君 の反 省 に資 せ ん とす る の であ る。

所 の法案 要 項 を基 礎 と し て、 之 を批 評 し 、輿 論 を喚 起 し、 取 締 ら る

如 き 官 僚思 想 を是 認 す る の傾 向 は否 定 す る を得 な い が故 に、 伝 ふる

と 司 法 の力 に よ つて、其 の方 向 を指導 し 、進 歩 を制 禦 せ ん とす るが

を 無 視 し、 民衆 の政 治参 加 に は危 険 あ り 、其 の活 動 は制 限 し、 警察

本 家 の希 望 を容 れ て、普 通 選挙 に よ る新 有 権 者 階 級 の権 利 と利 益 と

治 は依 然 と し て旧 態 を 維 持 し、 社 会 政策 に於 て は保 守 的 に、 金 権 資

七  治 安 維 持 法 制 定 に 関 す る 朝 日 新 聞 社 説 (一 九二五)

治 安 維 持 法 は許 す べ か らず

a  護 憲 内 閣 の 自 殺

(大 正 十 四年 一月 十 七 日)

普 通 選 挙 を唱 へ来 り、 国 民 を基 礎 と し た 政 党 の内 閣 が、嘗 ては輿

法 を以 て普 選 の弊 害 除 去 の策 とし た る か の風評 は実 以 て奇 怪 であ り、

い の であ る が、 之 が取締 り の実 際 は、全 く人 権 蹂 躙 言論 抑 圧 の結 果

論 の反 対 によ り握 り潰 し にさ れ た過 激 思 想 取締 法案 を 、 新粧 し改 名

吾 人 の信 ぜ ざ ら んと す る所 であ る が、 所 謂 護憲 内 閣 が、為 す所 の政

制 度 の破 壊 であ る と 云 つて ゐ る ので あ る から 、 若 し 此 の如 き解 釈 を

は無 き に至 る ので あ る。 例 へば公 正会 の如 き貴 族 院 改 革 は我 が議 会

と な り、 国 民 の思 想 生 活 は警 察 取 締 の対 象 と な り、 集 会 結 社 の自 由

の目的 に非 ざ る事 を挙 証 す るは 困難 であ らう 。 又 証拠 不十 分 を以 て

目 的 と し た り や 否 や は司 法 官 の認 定 にあ る のであ つ て、 嫌 疑 者 は 其

法 律 の効 用 を 発 揮 す る事 が出 来 る の であ る。 此 の場 合 列 記 の事 項 を

唱 、 税 制 の徹 底的 整 理 は納 税 制 度 の破 壊 な り と し て、 此 の目的 の為

育 反 対 在 営 年 限短 縮 は現 行 徴兵 制 度 の破 壊 な り 、国 民負 担 軽 減 の提

其 の事 項 を流 布 し たも のとし て五年 以下 の体 刑 を加 へら れ、 軍 事 教

議 員 が司 法 官 は 化石 な りと 批 評 し た のは、 司 法 官否 認 の目 的 を以 て

な る ﹁目的 ﹂ の有 無 によ り罪 否 が決 定 す る場 合 に於 て、 職 務 に忠 実

き 者 は 人権 を蹂 躙 さ れな け れ ば な ら ぬ 。夫 が若 し此 の如 き 一見 不 明

三万 人位 な ので あ る から 、之 を全 部 有 罪 とし ても、 そ の六 倍 の罪 な

て 二十 六 万 、刑 事 事 件 第 一審 事 件 受 理件 数 十 万 前後 、 被 告 人 数 は 十

を数 へて ゐる の であ る が、検 事 の手 に か ゝ るも の起 訴 不 起 訴 を 合 し

の取 扱 ひた る犯 罪 者及 犯 罪 嫌 疑 者 の数 は毎 年 七 十 六 万 乃至 八十 万 人

る べき は想像 に難 くな い の であ る。 犯罪 統 計 を見 て も、 司 法 警 察 官

め に多 数 集 会 し其 事 項 の実 行 を協 議 し た る者 は七年 以下 刑 務 所 の厄

な る司 法警 察 官 と した な ら ば嫌 疑 者 とし て、多 少 な りと も 左 傾的 思

無 罪 放 免 と な つた と し ても 、検 挙拘 留 未 決 監 に悩 む者 の頗 る多 数 な

介 にな ら ね ば な ら ぬと 云 ふ様 な事 に な つては 、 政治 的 論 議 は全 く 不

想 傾 嚮 者 を羅 致 す るを 賢 と す る に至 る であ ら う。 然 ら ば集 会結 社 言

と れば 、 貴 族院 改 革 期 成 同 盟 会 な る結 社 を組 織 し 又 は其 情 を知 つて

可 能 で あり 、政 治 論 評 も や ゝと もす れば 宣 伝煽 動 を 以 て罰 せ ら れね

論 は常 に恐 怖 時 代 の如 く脅 か さ れ ねば な ら ぬ 。吾 人 は我国 の政治 史

加 入 し た者 は十年 以下 の懲 役 又 は禁 錮 に処 せら れ る 。或 は 一貴 族 院

ば な ら ぬ の であ る。 以 上 の仮 例 の如 き は 一見非 常 識 に し て有 り得 べ

に、 護憲 三派 の内 閣 が 普 通選 挙 法 と並 べ て、 此 の如 き 治安 維 持法 を

(大 正十 四年 二 月 十 四 日)

過激 b法  案 反 対 当時 を顧 み よ

出 し た る矛 盾 撞 着 の愚 を 貽 さ ざ ら ん事 を勧告 す る の であ る 。

から ざ る の観 が あ る が、 此 の法 案 は解 釈 の当 不当 は別 とし て、 此 の

殊 に此 の法案 が 目的 と し てゐ る で あ ろう 処 の社会 主 義 的 運 動 の取

如 き 適 用 を 不 可能 にし て ゐる も ので は無 い の であ る。

締 に関 し ては 、労 働 組 合 法 も制 定 さ れず 、 同 盟罷 業 権 も認 め られ ざ ら んと す る今 日 に於 て は、労 働 組 合 の結 社 そ のも のが、 資 本 主 義 経 済 組 織 に挑 戦 す る 不法 手 段 に依 る財 産 制 の破 壊 を目 的 とす る も のと し て組 合 員 を処 罰 し、 其 の予備 行 為 を為 し た る者 と し て労 働 運 動 に

護 憲内 閣 が治 安 維持 法 を出 し 、 在 野 当 時過 激 法 案 に絶 対的 反 対 を

て従来 の主 張 を 棄 て去 ら んと す る こと は、 何 とし ても 許 し難 い こと

唱 へて之 を葬 りし 憲 政 会 が、 此 の悪 法 を支持 し、 絶 対 的御 用党 と し

従 事 す る凡 て の者 を五 年 以 下 の懲 役 又 は禁錮 に も処 し得 る の であ る 。 或 は 又例 へば或 る労 働 団 体 が、 震 災 に依 る失 業 労 働 者 救 済 の為 に委

であ る。 治 安 維 持 法 が過 激 社 会 運 動 取 締 法 と、 全 く 異 るが如 く宣 伝

託 さ れ た る金 品 を授 受 し 又 は其 の申 込 若 く は約 束 を為 し た る時 に、 救 済 金 を送 る相 手方 が労 農 ロシ アに在 つた 場 合 の如 き は、 直 に此 の

先年 過激 法 案 に対 す る反 対 は、 立 法技 術 の点 、 言 句 の

何 等 異 ら ざ るを 知 る べく 、 却 て用 語 に お い て不 明確 にし て、 刑罰 に

す るも の があ るも、 之 は両 法案 を比 較 すれ ば 、直 に其 の本 質 的 に は

な 欠 陥 のあ る法 律 案 の議 定 を見 た こと は な い こと を確 信 す る ので あ

り既 に三十 年 、 議 会 の開 く こと 四十 五、 未 だ曾 て斯 の如 き 孟浪 杜 撰

は な いと 云 ふ の が本員 の全 体 の所 見 で あ りま す ﹂ と て ﹁ 憲法発布よ

き 頑固 な考 へを 以 て斯 の如 き種 類 の行 為 に対 し て は臨 む べ き も の で

が、 そも〓

お い て重 き を 発 見す る の であ る 。其 の詳 細 の比較 検 討 は他 日 に譲 る

末 で はな く て、寧 ろ其 の根 本精 神 に あ つた の であ る。 当 時 貴 族 院 に

所 が其 のま ゝ吾 人 の言 はん と す る所 であ ら う 。野 に あ つ て此 の如 く

以 上 は引 用 長 き に失 す るに拘 らず 敢 て之 を為 し た所 以 は 、論 ず る

りま す ﹂ と罵 倒 し て ゐ る の であ る。 (同 八 五三 頁 )

法 律 の発 布 に依 つ て却 つて此 の強 き信 念 を有 つて居 る者 の思 想 を危

の責 任 当 局者 とし て恥 ざ るを奇 とす るが為 め で あ る。 湯 浅 氏 は事 務

論 じ た 人 が、 一旦朝 に立 てば 、 三年 を経 ざ る に、 治 安 維持 法案 提 出

お け る反 対 の先 鋒 であ つた 現 内 務次 官 湯 浅 倉 平 氏 は、 ﹁斯 く の如 き

た か否 か﹂ ﹁非 常 に重 い刑 を以 て臨 む と 云 ふ こと が真 に 当 局 が 御 期

激 な ら しむ る、 激 成 す る と 云 ふや う な反 動 的 結 果 に想到 せ ら れま し

待 な さ る効 果 を挙 げ 得 るも のと御 考 へにな る の で あ り ま せ う か﹂

二十 日 日比谷 松 本 楼 の議 員 各 新 聞通 信 記 者 聯合 会 席 上 に お い て ﹁ 此

官 に過 ぎず と いふ なら ば 、 国務 大臣 た る犬 養 氏 が、 大 正 十 一年 三月

し た自 由 党 の後 身 では な い か、﹂ ﹁ 斯 る法 案 は吾 々は 何処 ま でも之 を

度 提 出 され た 過激 社 会 運 動 取 締 法案 は其 賛 否 を論 ず る さ へ無 用 な馬

﹁当局 の御 考 へは刑 を深 刻 にし て臨 め ば斯 様 な る運 動 の撲 滅 が期 し

阻 止 せ ねば な ら ぬ ﹂ と叫 ん だ事 実 を挙 げ る。 吾 人 は犬 養 氏 の言 を借

得 ら る ゝ と 云 ふ御考 へであ りま し た な ら ば、 私 は全 然違 つた見 解 の

て、 政 友 会 内閣 な ら いざ 知 らず 氏 が閣 班 に列 す る護 憲 内 閣 にお い て

だ、﹂ ﹁藩 閥 政 治 な ら いざ知 ら ず 政友 会 は自 由 主義 を思 ひ き つて主張

﹁思想 の伝 ぱ に対 し て之 を防 ぐ には 自 か ら途 が あ る思想 は 思想 に依

思 想 の断 圧 手 段 ぼく滅 方 法 を ﹁島 原 征 伐 の思 想 ﹂ な り と し て排 斥 し 、

此 の如 きば か げ た法 案 を出 さう と は夢 に も思 はぬ 事 だ と 云 はな け れ

鹿 げ た事 であ る、 今 頃 斯 様 な物 が飛 び出 さう と は 夢 に も 思 は ぬ 事

つ てし な け れば な ら ぬ、 即 ち 誤 れ る 者 の思 想 を匡 し 正 し き思 想 に導

ば な ら ぬ。 吾 人 が今 更論 ず る ま でも無 き位 、 理 事 は明白 にし て、憲

下 に之 を遺 憾 と す ると 云 ふ だけ で質 問 は終 り ます ﹂ ( 第 四十 五議 会

く と 云 ふ手 段 が即 ち 是 であ り ます 、﹂﹁過激 な る思 想 に対 し ま し て過

政 会 革 新 ク ラブ の諸 君 を初 め結 局握 り つぶし た 政 友会 の諸 君 、貴 族

貴 族 院 議 事 速 記 録 七 一五頁 ) と 云 ひ 、更 に第 三読 会 にお い て は過 激

激 な る断 圧 方 法 を取 る と 云 ふ こと の結 果 は必 ず や恐 るべ き結 果 を激

院 の演 壇 に痛 烈 な る質 問 攻 撃 を加 へた湯 浅 内 務 次官 、 伊 沢 台 湾総 督 、

現内 閣 と は因縁 深 き 上 山満 之 進 氏等 の言 論 を其 のま ま記 憶 に呼 び返

であ り ま す、 即 ち 余 り に過 激 な る 方法 を取 つた所 にお い ては、 其 結

せ ば十 分 であ る。吾 人 は警 察 官 の手 心 と、 司 法 官 への信 頼 に、 国 民

成 す る ので あ りま す、 其 い ん鑑 は 他 の先進 諸 国 に お いて多 々あ る の

寛 大 な る取 締 を致 し た所 に お い ては 、 何等 健 全 な る国 民 が 之 に依 つ

の自由 を放 任 す る こと が出 来 ぬと 同 じ く、 提 出 者 が護 憲 内 閣 な る が

果 は却 つて過 激 な る思想 普 及 を ひき起 す と 云 ふ こと にな つ て居 る、

て動 か さ れな いと 云 ふ事 実 を示 し て ゐ る の であ り ます 、 ﹂ ﹁斯 く の如

に広 汎 に更 に厳 酷 にし て、 之 を 臆面 もな く 国 民 の前 に出 す こと は、

た法 案 、 貴 族院 では再 修 正 ま でし た位 に、異 論 のあ つた法 案 を 、更

案 も決 せざ る内 に、 嘗 て政 友 会 内閣 も通 過 を いさぎ よし と し な か つ

る が故 に、護 憲 内 閣 が普 選 を 議 会 に提 出 せ ざ る前 に、 貴 族 院 改革 の

故 に安 心 し て之 を許 容 す る こと は出 来 な い の であ る。 否 護 憲 内閣 な

に在 る者 と連 絡 し て朝 憲 を ぶ ん乱 す る事 項 を実 行 又 は 宣伝 す る目 的

激 社会 運 動 取 締 法 案 が貴 族 院 に お い て ﹁外 国 人 又 は 本 法施 行 区域 外

な る法 案 を撤 回 せ し む る を賢 な りと す る の で ある が 、 少 く も嘗 て過

修 正 を意 味 す る。 与党 二派 は寧 ろ 政府 に勧 め てか く の如 き未 熟 危 険

な け れば なら ぬ所 であ る 。本 法 案 にお いて辞 句 の修 正 は直 に内 容 の

と し て国 民 に重 き 刑罰 を課 す る こと は 、立 憲 国 と し て殊 に い まし め

るが 、政 府 が確 信 無 く し て、 此 の如 き 法案 を提 出 し 、 修 正 し、 法 律

を 以 て結 社 集 会 又 は多 衆 運 動 を 為 し た る者 は三年 以 下 の懲 役 又 は禁

逆 に護 憲 内閣 そ のも のゝ本質 を 、国 民 に疑 はし む る も のと し て反 対

今 日 か ら見 れば 時 勢 遅 れ のビ ス マー ク でさ へも、 社 会 主 義 鎮 圧法

べ き護 憲 三派 が、 三年 前 の貴 族 院 よ り も頑 迷 にし て、 国 民 の自 由 を

錮 に処 す﹂ と再 修 正 さ れ た事 実 を顧 み て、 自 由 と進 歩 の味 方 であ る

す る の であ る 。

た ので あ つて、 現 内 閣 が 在野 当 時 の労 働 立法 の主 張 を忘 れ た る が如

( 大 正 十 四年 三月 十 二 日)

重 き に失 す るを 理由 と し て、 原 形 を存 せざ るま で に、 政 府 案 を再修

過激 社 会 運 動 取締 法 案 に対 し ては適 用 の範 囲広 き に過 ぎ 、 刑罰 の

d  治 安 法 と 貴 族 院

護 るに力 を か さ ゞり し と のそ し り を後 世 に残 さゞ ら ん事 を勧 告 す る。

を 出 し た時 に、 一方 に は社会 政策 立 法 を以 て民心 を緩 和 せん と試 み

く 放擲 し去 つて改 正 工場 法 も健 康 保 険 法 あ れ ど も之 をも 実 行 せ ざ る と は 大 に異 る の であ る。 若 し夫 れ 日露 通商 条 約 が、 莫 大 な る利 権 を 一部資 本 家 階 級 に与 へ、 一方 無 産 階 級 には治 安 維 持 の悪 法 を 以 て報 いた と し たな ら ば 、 そ れ は余 り に皮 肉 であ る と云 はな け れ ば な ら ぬ。 吾 人 は護 憲 の名 にお い て、 国 家 と国 民 の為 め に、 此 の悪 法 を政 府 が 提 出 せ ざ ら ん こと を望 み、提 出 すれ ば 議会 が之 を否 決 せ ん こと を要 求 す る。

正 し た貴 族 院 が 、其 の組 織 構 成 議員 に変 化 無 き 三年 後 の今 日 にお い

て如 何 な る態度 を、 治 安 維 持 法案 に付 て採 るか は、 興 味 あ る観物 で

務 次 官 の反 対意 見 に は、 二月 十 四 日 の本 欄 にお いて論 及 し た が、伊

如 何 にし て維持 す べ き か を目 を 見張 つて待 た ざ る を得 な い。 湯浅 内

c  治 安 法 の 修 正

治 安 維 持 法 の内容 形 式 が、 如 何 に乱 暴粗 雑 な も の であ る か は、 委

て目覚 し き 奮闘 を し た事 を回 想 す る時 に、貴 族院 の名 誉 と 信 用 を、

あ る。 殊 に憲 政会 系 議 員 が、極 力思 想 圧 抑 と刑 罰 過 重 に対 し 反 対 し

員 会 に お け る政 府 側 の答 弁 が、 シド ロモド ロであ つた 事 に よ つて、

沢 台 湾 総 督 は、 政 府 が実 行 取 締 と い ふ も思 想 取 締 と な る点 を力説 し

( 大 正 十 四年 三 月 五 日)

天 下 に明 か に され 、政 府 も修 正 に応 ず る を言 明 す る に至 つた の で あ

て反 対 し 、 ﹁政 府 の所 期 す る所 の取 締 の目 的 は達 せず し て 例 へば 学

等 に与 へてあ る ので あ りま す ﹂ (大 正 十 一年 三月 二十 四 日貴 族 院 議

委 員 を回 避 し、 且反 対 者 の顔 触 を包 含 し な い の であ るが、 刑 を 三年

に臨 む ﹂ を否 と し て ゐ る ので あ る。 今 回 の特 別 委 員 に は巧 に前 回 の

じ、 ﹁ 所 期 の目 的 以外 のも の が沢 山 引掛 つて実 に危険 千 万 ﹂ で あ る

以 下 にす る修 正 を 、過 半 数 を 以 て決 し た貴族 院 が、 同 一主 旨 の悪 法

事 速 記 録 ) と其 の ﹁法 律 のし ゆ ん厳 な るも のを設 け て刑 罰 を 以 て之

と し ﹁漏 らさ ざ ら んと 欲 し て引掛 つて はな ら な いも のま でも 引掛 る

を十 年 の極 刑 を 以 て、 其 のま ゝ通 過 せ し む るな ら ば、 国 民 に諒 解 の

う と 云 ふ国 家 の為 に最 も 必 要 な る行 動 を そ害 す る結 果 に終 る﹂ と談

と 云 ふ やう な法 律 を作 る こと は 何 人 と い へど も 危惧 の念 に襲 はる ゝ

ゆ く理由 を 明 か に公 表 し な け れば な ら ぬ事 を予 め 一言 し て置 く。

者 と か操 こ者 と か の自 由 討 議若 く は自 由 に自 己 の意 思 を発 表 をし よ

のは当 然 ﹂ な り と て、 ﹁法律 万能 主 義 と申 し ま す るか、 あ る ひ は 警

治 安 維 持 法 を 論 ず

、 個 人 の自 由 と 国 権 の干 渉 と の衝 突 は、 随 分 古

クイ ジ シ ヨ ンに会 し、 支 那 でも儒 生 は坑 せ ら れ、 日本 でも島 原 の邪

りと し て刑 せ ら れ、 新 教 徒 は羅 馬 教 会 の旧習 を無 視 し た るた め イ ン

十 字 架 の露 と消 え た。 ガリ レオ は コペ ル ニカ スの天動 説 に反 対 し た

︹マ マ ︺

に触 れ て毒 盃 を与 へら れ た 。基 督 は猶 太 の国 教 を否 認 す る も のと し 、

古 来 の宗 教 を否 認 し、 青 年 を茶 毒 す るも のな り とし て、国 権 の忌諱

い歴 史 を 有 つて居 る の であ る。 彼 の希臘 の哲 人 ソ ク ラ テ スは、 希 臘

め であ る。 そ も 〓

が問 題 と な る のは、 これ が結 社、 集 会 、 言論 の自 由 と 交 渉 す る が為

当 時 の論争 は 今 な ほ世 人 の耳底 に残 ると ころ で あ る。 元来 、 此法 律

法 を成 立 せ し め た こと で忘 るゝ こと の出 来 ぬ議 会 であ つた の であ る。

( 清瀬一郎・一九二六)

察 官 検 察 官 及 び司 法 官 万 能 主義 と で も申 し ま せ う か誠 に偉 い力 を是

八 

治 安 維 持 法 を論 ず

治 安 維 持 法案 に対 し ては 著 者 は 院 内 に於 て相 当 の努 力 を為 し た に か ゝは らず 、 其 効 な く 、 此 悪 法 は極 め て僅 な る修 正 を以 て両 院 を 通 過 し た。 既 に法 律 と な つた 以 上其 の解 釈 を 必要 とす る。 本 篇 は同 法 の解説 を主 と し 、 之 に論評 を加 へた も ので あ る。 第 一、 本 法 の人 文 史 上 の地 位 第 五 十 帝国 議 会 は、 一方 に於 て普 選 法 を 通 過 せし め た理 由 によ つ て記 念 す べ き議 会 であ つた が、 他 方 に於 ては、 ま た、 彼 の治 安維 持

教 徒 は火 刑 に処 せ ら れ た。 然 る に、 人類 後 年 の知識 に依 れば 、 此等

ら れ て来 る。思 想 の自 由 、 従 つて言論 の自 由 、 集会 の自由 は、 も と

迫 害 せら れ 、処 刑 せ ら れ た者 が 却 つて正 理 であ つた事 が漸 次 立 証 せ

第 二十 八条  日 本臣 民 ハ安 寧 秩 序 ヲ妨 ケ ス及 臣 民 タ ルノ義 務 ニ背

カ サ ル限 ニ於 テ信 教 ノ自 由 ヲ有 ス

第 二十 九 条  日 本臣 民 ハ法律 ノ範囲 内 ニ於 テ言論 、 著作 、 印 行、

制 の上 に於 ては 、 我国 と英 、 米 、 独 、仏 の諸 国 と は 明治 二十 二年 以

これ で我 国 は所 謂 自 由 主 義 国 家 と な つた の であ る。 少 く と も、 法

集 会 及 結 社 ノ自 由 ヲ有 ス

此 道 理 に目 醒 め か け た のが、 彼 の ル ネサ ン ス の運 動 であ る。 英 国 で

是 れ、 人 類 進歩 の原 動 力 で あ つた の であ る。 自 由 な き所 に進 歩 な し 。

は ロツ ク、 ホ ツブ ス の哲 学 と な り、 仏 国 では、 ル ー ソ ー、 モ ンテ ス

来 国 民自 由 の点 に於 て は少 し も軒輊 な い こと ゝな つた 。

十 九世 紀 中 葉 よ り、 個 人 自 由 の発展 に対 す る国 家 の態度 に 一変 調

キ ユー の政 論 と な り、 中世 紀 の歴 史 は、暗 黒 よ り光 明 へ、 束 縛 よ り 自由 への歴 史 であ つた ので あ る。 此 自由 思想 を成 文 と し た も のは、

の経 済的 極 端 論 者 の出 現 で あ る。 十 九世 紀 初 頭 よ り の産業 革 命 の現

を 来 さ ざ る べ から ざ る事 情 が 一つ突 発 し た。 そ れ は外 でも な い。 彼

象 は遂 に 人類 を労 資 の二階 級 に分 割 す る のや む なき 運 命 と な つた。

彼 の 一七 八九 年 の人 権宣 言 で あ る。其 第 十条 、 第 十 一条 を摘 記 す れ

労 働 階 級 は無 産 階 級 に陥 つた。 此 社 会 的 不 正義 を打 破 す るた め に起

ば 次 の如 く であ る。

ル公 ノ秩 序 ヲ害 セ サ ル範 囲 ニ於 テ、 其意 見 ノ為 メ妨 害 セ ラ ル ル

第 十条  何 人 ト 雖 モ、 其意 思 ノ発 表 カ、法 律 ニ依 リ テ定 メラ レタ

つた 哲学 が彼 の社 会 主義 、 共 産 主 義 、 無 政府 主 義 、 之 を 総 称 し て エ

し て、 世界 の政 治 家 は狼 狽 せざ る を得 な か つた。 この問 題 に対 す る

コノ ミ ツク ・ラ ヂ カリ ズ ムと称 せら る ゝも ので あ る。 此 思想 に当 面

コト ナ シ、 宗 教 上 ノ意 見 ニ就 テ モ亦 同 シ 第 十 一条  思 想 及 ヒ意 見 ノ自由 ノ交 換 ハ、 人 ノ最 モ貴 重 ナ ル権 利 ノ 一ナリ、 故 ニ各 公 民 ハ法 律 ニ定 メ タ ル場合 ニ於 ケ ル此 自由 ノ

す る こと が出 来 る の であ る。(1 露) 国 の政 治 家 は絶 対 的 鎮 圧 の主義 を

十 九 世 紀 以 来 の各 国 政 治 家 の態 度 を概 観 す る に 、凡 そ、 三 段 に区別

厳 守 し た 。 一切 の書 物 及 び定 期 刊 行 物 は尽 く検 閲 し、 少 し に ても、

濫 用 ニ対 シ責 ヲ負 フ外 、自 由 ニ言 論 シ、 著 作 シ、 出 版 ス ル コト

怪 し きも のは 発売 を禁 止 し 、著 作者 の家 宅 を捜 索 し、 之 を逮 捕 し、

ヲ得 右 は実 に ルネ サ ン ス以来 、 長 き年 月 を経 過 し た る自 由 思 想 の結 晶

書 類 を押 収 し た 。 然 し て此種 主義 者 は西 比 利 亜 に 放 逐 し、 選 ば れ て

ス マルク は鎮 圧 及 び社 会 政 策 の両 政策 を併 用 し た のは 有名 な話 であ

物 で あ る。 こ の思 想 が、 仏 国 革 命後 、 十九 世 紀 を 通 し て、 世 界 各 国

る。 ビ ス マル クは 一方 に於 て 一八 七 八年 に社 会 党 鎮 圧 法 な る も のを

議 院 に列 す る者 は 之 を議 会 よ り排 斥 し た。(2 独) 逸 の政 治 家 、 殊 にビ

明 治初 年 以来 、 仏 国 流 の自 由 民権 の論 は 我国 に も輸 入 せ ら れ た。

発 布 し て ラ ヂ カ リ スト を弾 圧 す ると 共 に、 他 方 一八 八 一年 以来 災害

に輸 入伝 播 せら れ た。 十 九 世 紀 中 に出来 た各 国 の憲 法 で、 此 人 権 宣

そし て二 十 二年 の憲 法 には 、 同 じ く人 権宣 言 十 条 、 十 一条 よ り系 統

言 を承 継 採 用 せ ぬも のは な い。

を引 く 条 文 を設 け た の であ る。

つた 。 さ す が は自由 の母国 であ る。 同 国 の立 法 並 に行 政、 司法 の主

つた の であ る。(3 英) 国 の政 治 家 は此 間 、終 始 寛 容 の主義 を捨 て な か

保 険 法 、 疾病 保 険 法 等 を提 案 し、 盛 ん に無 産者 、 労 働 者 の懐柔 を図

官 僚 政 治 家 の態 度 であ る。 自由 主義 を信 条 と し て居 る政 憲 政 治家 が

り立 て た。 森戸 事件 、 佐 野 学事 件 は其 一例 であ る。 これは し か し、

き) と な るも のと は、 我 、 人 共 に期 待 した所 であ つた 。測 ら ざ りき 。

政 柄 を執 る時 代 とな れば 此 政策 は 一変 し て、寛 容 主 義 ( 英 国 に近

案 し て、 我 国策 を プ レ ウ エ時 代 の露 国 に逆 転 せ し め んと は 。

清 浦 特 権 内閣 を 征伐 し て成 立 し た護 憲 内 閣 が、 ﹁ 治安 維 持法 ﹂を提

義は ﹁ 危 険 な る思 想 が、 行 為 とな つて顕 は れ た ると き 、 又 は行 為 と

思 ふに(1 の) 露国主

な る 明白 近 接 な る危 険 が伴 ふ場 合 のみ之 を取 締 る ことゝ し、 其 他 の 場 合 は之 を個 人 の自 由 と す﹂ と い ふ に在 る。︱

も のでな い こと は歴 史 が証 明 し た 。 立 憲 主義 の根 本 は国 民的 能 力 に

手 に禁 圧 し、 左 手 に懐 柔 す るな ど い ふ小 刀細 工 をな し て効 を奏 す る

由 主義 の政 治 哲 学 は大 き い。 区 々た る政治 家 が 口を善 政 に藉 り、 右

勝 れ る か は、 是 亦今 日 と な つて は試 験 済 であ る。 何 と い つ ても、 自

至 つた 。 これ こそ人 類 の 一進 歩 で あ つて、 今 日 の科 学 の進 歩 は 此法

も の が承 認 せ ら れ、 思 想 、 言論 の自 由 を承 認 す る の原 則 を認 め る に

た。 然 る に欧 洲 中世 紀 に起 つた ルネ サ ンス運 動 以来 、 自 由 主義 な る

人類 は古 来 よ り 宗教 ・哲 学 上 の新 思 想 を圧 迫 す る習 慣 を 有 つて居 つ

つて居 るも の であ る か と いふ こと は略 ぼ了 解 せ ら れ た こと ゝ信 ず る。

前 回 述 べた所 で有 名 な治 安維 持 法 が、 人 文 史上 如 何 な る 地 位 を有

第 二 、本 法 の正 文 並 に註 解

信 頼 す る こと であ つて見 れば 、 人 民 の終 極 的 合 理 性 を信 用 す る英 国

王 朝 の最 後 は何 を教 へた か。 問 はず し て明 か であ る。(2)の ( 何3れ )が

義 が 不可 な る こと は 理論 で な くし て実 際 が之 を証 明 し た 。 ロ マノ フ

主 義 を以 て、道 理上 に も、 実 際 上 にも 最 も望 まし いも のと見 ねば な

来 の宗 教 や哲 学 のやう な 言 語 上、 信 仰 上 の域 を脱 出 し経 済 に即 し た

律 の承 認 か ら出 発 し て居 る。 と ころ が、 十 九 世紀 の中 葉 に至 り、 従

此 問 題 に対 す る我 国 の地 位 如 何 。 二十 二年 の憲 法 以来 、 我 国 も 亦

る 一の理論 を説 く者 を 生 じ た。 社 会 主 義 、 共産 主 義 、 無 政 府 主義 と

ら ぬ。

自 由 主 義 の国家 とな つて居 る。 エ コノミ ツ ク ・ラ ヂカ リズ ム に対 す

少 く と も 、附 け焼 刃 的 の自由 主 義 国 に於 ては、 周 章 狼 狽 の状 を 呈 し

い ふも のが是 で あ る。 そ こ で、 自 由 主 義論 者 の信 念 に動 揺 を 生 じ た。

我 国 に於 て は明 治 二 十 二年 以来 、 法 制 と し ては 此問 題 に対 し 何 等

から う と いふ事 とな つた 。 治安 維 持 法 の様 な法 律 は、 人 文 史 上、 此

た 。 そ こで、 中 世 紀 の昔 に還 り、 法 律 と権 力 と で此 思 想 の撲滅 を は

る 我政 治 家 の態 度 果 し て如 何 。

確 立 し た る方 針 はな い。彼 の有 名 な る治 安 警 察法 第 十 七 条 も、 同 盟

を 起 さ れ る で あ らう 。 法 律 の内 容 を知 るは 其 正文 を熟 読 す るが 一番

読 者 は 、 そ こ で、 此 法 律自 体 の内 容 を正 確 に呑 み込 ま ん と の希 望

反 動 時 代 を特 徴 とす る立 法 の 一であ る。

罷 業 の誘 惑、 煽 動 を禁 止 し た のみ で あ つて、 思想 問 題 に は触 れ て居 ら ぬ。 し か し乍 ら 、官 僚 政治 家 の思 想 がビ ス マ ルク流 の善 政 主義 で あ つた事 は争 はれ な い。 一方 、 慈 善 施 設 (例 へば 済 生 会 、 労 資協 調 会 、 孤 児院 、 少 年 法、 矯 正法 等 ) を為 す と同 時 に、 社 会 主義 者 を狩

で あ る。 此 法 律 は全 文 七 箇 条 よ り成 る も ので あ る から 、 今其 全 文 を 掲 げ る。仍 て先 づ之 を反 復 精 読 せら れ た い。 法 文 中 必 要 な る文 字 に

(三)

は註 解 を 施 し て置 く か ら 、全 体 を 精 読 せら れ た後 、 此 註 解 を 対 照 せ ( 一)

ら れ た い。 (二)

治安維持法

附 則 ( 十三) 大 正十 二年 勅 令 第 三 百 四号 ハ之 ヲ廃 止 ス ︹ 註解︺

(一) 先 づ本 法 の名 称 に つい て 一言 し よ う。 此 種 の法 律 の元 祖 は 、

一八 七 八年 ビ ス マル ク の提 案 し た、 社 会 党鎮 圧 法 で あ る。同 法 の本

名 は ﹁社 会 民 主 党 の危 険 な る運 動 に対 す る法 律 ﹂ と い ふ の であ る。

米 国 では ﹁犯 罪 的 サ ン ヂ カリズ ム法 ﹂ と い つた様 な 名 称 を用 ゐ て居

(六 )

と呼 んだ 。 此名 称 で は、 法 律自 身 が過 激 な法 律 の様 に響 い て評 判 が

る。 大 正十 一年 に原 内 閣 が 床次 内 務 大 臣 を し て提 案 せし め た法 律 に

第 一条  国 体 ヲ変 革 シ又 ハ私 有 財 産制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ 目的 ト シ ( 四) ( 五) テ結 社 ヲ組 織 シ又 ハ情 ヲ知 リ テ之 ニ加 入 シタ ル者 ハ十 年 以下 ノ懲

は ﹁過激 社 会 運 動 取 締 法 ﹂ な る 名称 を附 し た 。 通俗 に は之 を 過激 法

役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス ( 七)

前 項 ノ未 遂罪 ハ之 ヲ罰 ス

︱

悪 か つた 。 そ こで加 藤 内 閣 では ﹁治 安 維 持 法 ﹂ と改 名 した の であ る。

事 訴 訟 法 は 以前 は治 罪 法 と謂 つた 。安 寧 を保 つ裁 判 所 と いふ意 味 で

第 二条  前 条 第 一項 ノ目 的 ヲ 以 テ其 目 的 タ ル事項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シ タ ル者 ハ七年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス ( 八) 第 三 条  第 一条 第 一項 ノ目 的 ヲ 以 テ其 目 的 タ ル事項 ノ実 行 ヲ煽 動 シ

治 安 裁 判所 と いふ裁 判 所 も あ り、 安 寧 維 持 のた め の警 察 法 規 を治 安

警 察 法 と い ふ。 治 と安 と を つづ け た と き は治 は ヲサ メ、 タ モ ツの意

称 で あ る。 ﹁ 治 ﹂ は ヲ サ メ ルと 訓 す。 犯罪 を ヲサ メ ル法 律 、即 ち 刑

し か し、 ﹁ 治 安 維 持 法 ﹂ と いふ名 称 も 考 へて 見 れ ば 、 奇 妙 な 名

又 ハ財 産 ニ害 ヲ加 フ ヘキ犯 罪 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ十年 以下 ノ懲 役 又

タ ル者 ハ七年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス ( 九) 第 四条  第 一条 第 一項 ノ目 的 ヲ以 テ騒 擾 、暴 行 、 其 他、 生 命 、 身 体

ハ禁 錮 ニ処 ス

﹁治 安 ﹂、 ﹁維持 ﹂ と 二 つ重 ね た のは 一寸 珍 妙 だ 。

味 で、 治 安法 と い へば それ で安寧 維 持 の意 味 にな つて を る。 そ れ に

(二) 国 体 と いふ言 葉 は全 く異 つた 三様 の意 味 を有 つて居 る。第

第 五条  第 一条 第 一項 及 前 三 条 ノ罪 ヲ犯 サ シム ル コト ヲ目 的 ト シ テ 金 品 其 他 財 産 上 ノ利 益 ヲ供 与 シ又 ハ其申 込 、 若 ハ約束 ヲ為 シ タ ル ( 十) 者 ハ五年 以下 ノ懲役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス情 ヲ知 リ テ供 与 ヲ受 ケ又 ハ其

い つて居 る。教 育 勅 語 に ﹁是 我 国 体 ノ精 華 ニシ テ﹂ 云 々と 宣 せ ら れ

学 者 は ﹁国 ノ聯 合 ﹂ と ﹁聯 合 セ ル国 ﹂ と の区 別 を 立 てる。 此 区別 は

﹁スタ ー ツ ・フオ ルム﹂ の訳 語 と し て用 ゐ るも の であ る。 独 逸 の法

て居 る のは 此 用法 に従 は れた も ので あ る。 第 二 の用 法 は 独 逸 語 の

一は国 学 者 の用 語 で あ つて、 我 国 民性 た る義 勇 奉公 の精 神 を 国 体 と

要 求 若 ハ約 束 ヲ為 シタ ル者 亦 同 シ ( 十 一) 第 六条  前 五条 ノ罪 ヲ 犯 シタ ル者 自 首 シタ ルト キ ハ其刑 ヲ軽 減 又 ハ

ニモ亦 之 ヲ適 用 ス

免除 ス ( 十二) 第 七条  本 法 ハ何 人 ヲ問 ハス本 法 施 行 区 域外 ニ於 テ罪 ヲ犯 シタ ル者

国 家 の形 態 上 の区別 で あ るか ら 、之 を ﹁ス タ ー ツ ・フオ ル ム﹂ と い

カ如 キ財 産 ノ私有 ヲ否 認 スル場 合 ヲ モ包 含 ス、然 レト モ鉄道 国

以 テ本 条 ニ所 謂 、 私 有財 産 制 度 ノ否 認 ニ ハ非 ス、然 レト モ共産

有 論 又 ハ土 地 国有 論 ト謂 フ カ如 キ個 々 ニ指 摘 セラ レタ ル 一部財

の主権 の存在 す る所 を指 し て国 体 と いふ。 君 主 国 、 共和 国 と い ふ の

ト解 ス、 何ト ナ レ ハ、其 主張 ノ背 後 ニ直 ニ財 産 全 体若 ハ私 有 財

主 義 的思 想 実 行 ノ 一階梯 ト シテ之 ヲ論 ス ル モノ ナ ルト キ ハ然 リ

産 ノ公有 論 ハ私 有財 産 制 度 ノ根 本 的否 認 ト見 ル コト能 ハサ ル ヲ

以 上 三用 法 は何

の体裁 と い ふ意 味 で あ る。 第 三は 一般 法 学 者 の用 語 であ つて、 一国

が 国体 の区 別 であ る と いふ の は此 用法 で あ る。︱

ふ の であ るが、 我国 一部 の国法 学 者 は之 を 、 ﹁国 体 ﹂ と 訳 し た 。 国

れ も誤 で はな い。 た ゞ本 法 で は其 第 三 の用 法 に従 つた も ので あ る。

切 ノ生産 手 段 ノ私 有 ヲ否 認 ス ルノ希 望 ヲ蔵 ス ル モノ ナ レ ハナリ 、

産 制 度 ヲ危殆 ナ ラ シ ム ル コト ヲ目 的 ト スト認 定 シ得 ラ ル ヘキ 一

が議 員 と し て本 法 審 議 に参 与 し、 極 力 抗争 し た のも 此点 であ る 。 し

其 否 認 と いふ事 は暴 力 其他 不 正 の行 為 を 以 て私 有 財 産制 を覆 へす 場

知 る こと が出 来 よう 。 し か し て、 茲 に逸 すべ か らざ る 一事 があ る。

以 上 を 以 て私 有財 産 制 度 の否 認 と い ふ事 に関 す る当局 の考へ 方 を

ナ リ﹂

産 制 度 ヲ否 認 ス ルト認 ム ヘキ質 ノ問 題 ニシ テ量 ノ問 題 ニ非 サ ル

之 ヲ要 ス ル ニ、 私 有 財 産 制 度否 認 ト ハ不 可 分 ノ観 念 タ ル私有 財

我 国 は言 ふま でも な く、 万世 一系 の君 主国 体 で あ る。 主 権 の存 す る

む づ か し い。而 し て こ

所 は憲 法 に明 か であ る 。 これ が変 革 を 図 る こと は重 刑 を 以 て処 罰 せ ら る べき は何 人 も異 存 のな い所 で あ る。 (三 ) 私 有 財 産 制 度 と いふ文 字 はな か 〓

か し本 講 に於 ては政 府 や官 憲 の解 釈 を紹 介 す る方 が良 か らう 。 如 何

合 の みを 指 す に 止ま ら ず 、 帝 国議 会 に此種 の立法 を提 案 し て、 法 律

れ が本 法 の眼 目 で あ る。 本 講 の筆 者 も大 に議論 を蔵 し て居 る。筆 者

て置 き た いと いふ のが、 読 者 諸 君 の希 望 で あら う と 思 は れ る から 、

な る こと を為 し たな ら ば 、 官 憲 の忌 諱 に触 れ る のか と いふ事 を 心 得

ム ル制 度 ヲ謂 ヒ、 所 有 権 ヲ中 心 ト為 ス観 念 ナ リ、 自由 ニ支 配 ス

﹁私 有 財 産 制 ト ハ私 人カ 財 産 ニ対 シテ自 由 ニ支 配 ス ル コト ヲ認

依 る社 会 改 造論 も亦 、 時 に は処罰 せ ら れ ると いふ奇 抜 な 法 律 であ る

法 ﹂ は各 国 の類 似 の立 法 よ りは 一足 前 き へ進 ん で居 て、 合 法手 段 に

あ る。 此 事 の当否 は、 後 に論 ず る か ら、 こゝ に は 我国 の ﹁治安 維 持

の力 に依 り私 有 財 産 を否 認 せ ん とす る事 も 亦 均 し く罰 せ ら れ る の で

ル コト ハ各 人カ 其 欲 ス ル所 ニ従 ヒ、 他 人 ヲ斥 ケ テ財 貨 ヲ処 分 ス

茲 に司 法 、 内 務 両省 の協 議 にな つた 釈 明文 を引 用 す る 。 曰 く

ル コト ヲ得 ルノ謂 ナ リ、 而 シ テ斯 ノ制 度 ハ国 民 共 有 ノ律 則 ト シ

(四) 結 社 と いふ のは、 共 同 の目的 のた め に、 二 人以 上 の者 が継

こと だけ を 注意 し て置 く こと にす る。

テ其 ノ存 在 ノ 必要 ヲ前 提 ト為 スモノ ニ シテ、 従 テ吾 人 社会 生 活 ノ根 基 ヲ為 ス モノ ト謂 ヒ得 ル ナ リ、

に 一定 の拘 束 を受 け る こと が結 社 の本質 で あ る。結 社 を組 織 す ると

続 的 に結 合 す る こと を謂 ふ の であ る。各 構 成 員 が 共同 の目 的 のた め

いふ のは、 実 際 より謂 へば 、 例 へば 目的 、 社 則 を定 め、 事 実 上、 共

本条 ニ所 謂 私 有財 産 制 度 ノ否 認 ト ハ総 ユ ル財 産 ノ私 有 ヲ根 本的 ニ認 メ サ ル場 合 ハ勿 論 、 私 有 財 産 制度 ノ存 在 ヲ危 殆 ナラ シ ムル

同 動 作 を 採 り得 る状 態 に至 ら し め る を謂 ふ の であ る。 未 だ 実 際 の活

を 為 さ ゞ る場 合 は協 議 ではな い。

が意 見 を述 べた る に対 し 、相 手 が之 に対 し 明 示又 は黙 示 の意 思 表 示

煽 と いふ字 は本来 扇 を 以 て火 を あ ふぐ こと を謂 ふ の であ る。 人 の感

し て解 釈 問 題 が 起 つた 。 同条 は同 盟 罷 業 の誘 惑 煽 動 を処罰 し て居 る。

(八) 煽 動 と いふ 文字 は、 過 去 に於 ては治 安 警 察 法 第 十 七条 に関

動 に至 ら ぬ前 でも結 社 組 織 が成 立 す れば 本 条 の罪 と な る。 治 安警 察

此禁 止 命令 に従 は ぬ と き に始 め て罰 せ ら れ る の であ る が、 本 条 に該

法 第 八 条 に依 れ ば、 安 寧 秩 序 を紊 る結 社 は内 務 大 臣之 を禁 止 す る。

当 す る結 社 であ る と見 れば 、 禁 止命 令 を待 たず、 即 座 に起 訴 、 処 罰

会 に於 て撤 廃 せ られ た。 し か し、 同 一の文字 は ﹁労 働 争議 調停 法 ﹂

是 れ恐 ら く は不 当 の解 釈 であ つた で あら う 。治 警 十 七条 は五 十 一議

﹁誘惑 、 煽 動 ﹂ は ﹁勧 誘 、説 得 ﹂ と同 義 であ る と の判 例 を作 つた。

情 に訴 へて行 動 を催 起 す る こと でな けれ ば な ら ぬ。 然 る に大審 院 は

禁 錮 は監 獄 に拘 置 す る だけ で定 役 には服 さ し めな い。懲 役 、 禁 錮 共

第 十 九条 に移 つた。 此 法 文 の煽 動 も治 安 維持 法 の煽 動 も 、今 後 は新

(五) 懲 役 と 云 ふ のは監 獄 に拘置 し 且定 役 に服 さし め る の で あ る。

せ ら れ ると いふ事 にな る。

に最 短 期 は 一月 であ る。 故 に法 律 に十年 以下 と あ る のは 一月 以 上 、

あ る場 合 の み之 を処 罰 す る。 本 条 は其 一場 合 であ る。本 条 の未 遂 は

ヲ謂 フ、 故 ニ単 ニ流 布 又 ハ宣 伝 卜謂 フ カ如 ク或 ル事 項 ヲ公 衆 ニ伝

﹁ 煽 動 ト ハ感 情 ニ訴 ヘテ自 由 ナ ル意 思 ト特 殊 ノ刺 戟 ヲ与 フル コト

の協 議 に依 る解 釈 にも 次 の如 く な つて居 る。

た な る解 釈 を以 て臨 む べ き で あ らう 。 果 せ る かな 、 司 法、 内 務 両 者

十年 以 下 と い ふ事 に な る (刑 法 一二 、 一三条 ) (六) 未 遂 罪 と い ふ のは犯 罪 の実 行 に着 手 し未 だ之 を遂 げ ざ るも

以 上 の如 く処 罰 せ ら れ る が予 備 行為 は罰 せ ら れな い。別 に第 二条 の

( 九 ) 騒擾 、 暴 行 等 の文字 は刑 法 中 にも あ る。 し かし こ ゝに い ふ

播 ス ル ニ過 キ サ ル程 度 ノ モノ ハ之 ヲ包 含 セ ス、﹂

ので あ る (刑 法 四 三)。 一般 には未 遂 は処 罰 せざ るを原 則 と し 明 文

協 議 を為 し た るも のと し て罰 せら れ る のは格 別 であ るが (此協 議 は

騒 擾 は刑 法 百 六 条 騒 擾 罪 の騒擾 と同 一意味 ではな い。 刑法 では ﹁多

後 に説 く如 く結 社 の協 議 で はな く 、 国 体変 更 、 私 有 財産 否 認 の協 議

衆 聚合 シテ暴 行 又 ハ脅 迫 ヲ為 シタ ル者 ハ騒擾 ノ罪 ト為 シ左 ノ 区別 ニ

従 テ処 断 ス﹂ と規 定 し 暴 行、 脅 迫 を其 成 立要 件 と し て居 る け れど も 、

であ る) 本 条 の行為 の予備 な りと し て罰 せ ら れ る事 は な い。 し かし 、

六 ケ敷 い事 実 問 題 と な る で あ らう 。

ど れ迄 が 予備 行 為 であ つて、 ど れ か ら が著 手 行 為 (即 ち未 遂 を構 成 す る程 度 ) で あ るか は 、 な か〓

喧 擾 を継 続 す る如 き 場 合 ( 治 安 警 察 法 、 一二、 二六 ) に も本 条 の適

に殊 更 に喧 擾 し警 察 官 から 退去 を命 ぜ ら る ゝも これ を 肯 ぜず し て、

用 があ ら う。 暴 行 も 刑 法 第 二 百 八条 で は人 に対 す る暴 行 のみ を見 て

本 条 の場 合 は敢 て暴 行 脅 迫 を要 件 と せず、 集 会 又 は多 衆 運動 の場 合

実 行 す る こと の協 議 であ る。 法 文 に ﹁ 其 目的 た る事 項 の実 行 に関 し

(七 ) 第 二条 は協 議 を処 罰 し て居 る。 此協 議 は第 一条 の如 き 結 社

協 議 を 為 し た る者 ﹂ と 特 記 す る の は此 意 味 であ る。 協 議 と は 二人 以

居 るが、 本 条 は物 に対 す る暴 行 を も包 含 せ し め て居 る ので あ る。

を組織 す る こと の協 議 ではな くし て、 国体 変 革 、 私 有財 産 制 否 認 を

上 の者 が 特定 の題 材 の下 に意 見 を交 換 す る こと を謂 ふ の であ る。 人

的 を蔵 す る の情 を知 り て で あ る。 此情 を知 り て受 け る以上 は受 け る

てと は言 ふま でも な く供 与 者 に於 て国 体 変 革 、 私 有財 産 制 否 認 の目

(十) ﹁ 情 ヲ知 リ テ供 与 ヲ受 ケ﹂ た る者 は罰 せら れ る。情 を 知 り

から 。

如 き 取扱 方 法 は益 々本 法 の意 義 を明 白 にす る こと 、な る も のであ る

判 断 を 外 にし て、 法 律 と し て の欠 陥 を指 摘 し て みよ う と思 ふ。 斯 の

方 に於 て変 革 、 否認 の真 意 な き 場 合 に於 ても 亦 処罰 せ ら れ る。

条 文 も亦 論 議 の目的 と な つた 。 本条 は スパイ を使 用 す る場 合 に運 用

進 ん で其 犯 罪 を告白 す る こと を いふ (刑 法 四 二)。 本 法審 議 の 際 此

手 段 に依 り﹂ の 一句 を 冠 し、 合 法 的 否 認 の場 合 は罰 条 よ り 除 外 せ ん

本 法審 議中 、 第 一条 の ﹁私有 財 産 制 度 の否 認 ﹂ の文 字 の上 に ﹁暴 力

ち 議 会 の立法 手 段 に依 る場合 と雖 も処 罰 せ ら れ る の であ る 。此 事 は

本 法 に依 れば 、 私有 財 産制 度 の否 認 は、 合 法 手 段 に依 る場 合 、 即

(甲 ) 憲 法上 よ り観 た る本 法 の欠 陥

せ ら る ゝ弊 害 が あ る と い ふ の であ る。政 府 は本条 は 治安 紊 乱 を 未 然

と の運 動 が敗 れ た る沿革 よ り見 るも 明 白 であ る。 し かし 乍 ら、 立 憲

(十 一) 自 首 と は罪 を犯 し た る者 が、 未 だ官 に発覚 せ ざ る以 前 に

に防 止 し 且自 己 の行 為 の罪 を悟 る者 に対 し 十 分 寛 恕 の途 を開 き 得 る

も議 院 の理智 に信 頼 す る政治 であ る。 ﹁議 会 は男 を女 と 為 す 外 は 何

国 に於 ては之 は矛 盾 の立 法 と いは ねば な ら ぬ 。立 憲 政 治 は あ く ま で

せ ら れ た る議 院 の特 権 は院 内 の言論 に つき ては責 を負 は ぬ (憲 法 五

事 もな し 得 る﹂ と い ふ のは 一の譬 喩 に過 ぎ な いが、 憲 法 に依 り保 障

(十 二) 本 法 は内 地及 び其 他 の帝国 領 土 及 び附 属 地 (租借 地 、 委

こと と し た の であ る と弁 解 し て居 る。

任 統 治 地) は勿 論、 外 国 に於 て本 法 の罪 を犯 した る者 を も処 罰 す る。

罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ之 ヲ適 用 ス﹂ と 書 く べ き で あ る が、 斯 く ては内 地

財 産 制 定 に改 造 を施 す の法 律 案 を提 出 し 、 決議 、 建 議 を為 す こと は

二)。 如 何 に議員 の任 務 の広 大 な る か ゞ判 る。立 法 手 段 に依 り 私 有

︹マ マ︺

刑 法 第 二条 の用 語例 よ り言 へば ﹁本法 ハ何 人 ヲ問 ハス帝 国 外 ニ於 テ

と 法 域 を異 にす る朝 鮮 、台 湾 等 に於 け る 犯罪 者 を漏 す の恐 あ る を以

堂 々討 論 を重 ね た事 は人 の知 る所 であ る。)議 員 が此 権 能 を 有 す る

議 員 の権 能 であ る (現 に英 国 労 働党 は 此種 の決議 案 を提 出 し 、 正 々

(十 三) 十 二年勅 令 第 三百 五号 は大震 火 災 のと き に発 布 せ ら れ た

以 上、 之 を政 綱 と す る結 社 (政 党 ) が成 立 す べき は 当然 で あ る。然

て用 語 を改 め たも の であ る。

流 言蜚 語 を処 罰 す る の緊急 勅 令 で あ る。治 安 維 持 法 と引 き か へに此

る に合 法 手 段 を 前提 と す る社 会 改 造 を禁 止 す る こと は何 と いふ訳 で

あ ら う 。是 れ 錯 誤 の立 法 に あ らず し て何 で あら う か (雑 誌 ﹁改造 ﹂

緊 急 勅 令 は廃 止 せら れ た 。 第 三、 本 法 の三 大欠 陥

我 国 の国体 は実 に万 世 不 易、 人 界 に於 て、 尊 厳 之 に比 す べき も の

(乙) 刑 法 上 より観 た る本 法 の欠 陥

大 正十 四年 四月 号拙 稿 参 照 )

其 批 評 を 為 す こと を避 け る。 本講 第 一に於 て本法 の人文 史 上 の地位

がな い。国 体 の変革 (即 ち天 皇陛 下 の統 治権 を破 壊 し奉 る こと ) を

本 法 の賛 否 は各 自 の社 会観 、 国 家 観 、法 律 観 に関 係 す る。 今茲 に

を略 説 した事 に依 り了 解 せ ら れ た い。 こ ゝ には、 本 法 の実 体 的 価 値

此等 の犯罪 は刑 法 第 七 十 三条 の罪 と 結 合 す る も ので あ る。 国 体 の変

き の みな らず 吾 々はな ほ 一層 特 別 の取 扱 を 必要 と考 へる の であ る。

目的 と す る結 社 を厳 罰 す る こと に は何 人 も異 存 がな い。 独 り異 存 な

な ら ぬ。 だ ん だ ん、 設 例 を以 て数 へ挙 げ れば 、 本 法 を帝 国 議 会 の議

には、 案 の内 容 に つき意 見 を交 換 す る こと も不 可 分 的 に含 まれ ね ば

為 め協 議 す る場 合 には之 を処 罰 す る こと は出 来 ま い。而 し て此協 議

構 成 法 五〇 )。 然 る に之 を 私有 財 産 制 の否 認 と い ふ通 常 犯 罪 と 同 列

我国 の法 制 で は大 審 院 の特 別 管 轄 に属 せ し め る成 例 であ る (裁 判 所

法 第 七 十 三条 以下 と 同 一罪 質 の犯 罪 と な る ので あ る。 此 種 犯 罪 は、

て之 を承 認 し て居 る の は勿論 であ る。 ﹁一切 ノ適 法 ナ ル目 的 ノ為 メ

結 社 スル ノ権 利 ﹂ を承 認 し て居 る 。 我国 も亦 固 よ り締 約 国 の 一と し

条 )。 其 第 二項 に ﹁使 用 者 又 ハ被 使 用 者 カ 一切 ノ適 法 ナ ル目的 ノ為 、

働 ﹂ の部 に、 彼 の労 働 憲 章 と し て知 ら れ た る規 定 が あ る (第 四 二 七

一九 一八年 、 巴 里 に於 て成 立 し た る平 和 条 約 第 十 三編 、 即 ち ﹁労

( 丙 ) 条 約 上 よ り観 た る本 法 の欠 陥

員 に適 用 す る事 は 困難 と な る。誠 に跛 の法 律 であ る。

に置 き、 区 裁 判 所 に於 て審 議 せし め ると いふ事 は錯 誤 の立 法 と いは

あ る 。 国体 の変 革 は常 に違 法 手 段 を予 定 す る。 然 らば 其 質 に於 て刑

革 を 目的 と す る立 法 は出来 な い。 これ こそ 議院 の立 法 権 の範 囲 外 で

ねば な る ま い。 本 法 は 刑法 上 よ り見 て、 な ほ 一の難 点 を 有 つ て居 る。

者 は必 ず 此 定 数 賛成 者 の同 意 を 求 む る為 め に此等 の者 と応 接 協 議 を

案 の提 出 にも 、 議院 法 上 一定 数 の賛 成 者 の連 署 を条 件 と す る。 提 案

と を罪 とな す わけ には ゆ くま い。 然 る に、 法 律 案 の提 出 に も、 決 議

産 制 度 否 認 の主 旨 を含 蓄 す る法 律案 を提 出 し、 決 議 等 を説 明す る こ

て無 責 任 と し て居 る ( 憲 五 二)。 それ故 、 帝 国 議 会 の議 員 が 私 有 財

憲 法 に於 て は議 員 の院内 に於 け る発 言 及 び表 決 に つい ては院 外 に於

せる 国内 法 でな け れ ば な らな い。 其 後 に結 社制 限 の国内 法 を作 つ て

し か し、 此意 味 と す るも、 其 国 内 法 と いふ のは条 約 成 立 の時 に成 立

て認 む る適 法 性 あ る結 社 の義 であ ると 。 よ し、 仮 り に然 り と し よう 。

者 に告 げ て 曰 く、 此 適 法 な る 目的 の結 社 と は、 各 国 が其国 内 法 に於

日本 も亦 之 に追 随 し て来 た も のでな く ては な ら ぬ。︱

る社 会 改 造 を目 的 とす る結 社 の権 利 は各 国 の承認 し た る所 、而 し て

為 す結 社 を違 法 と認 め た国 は 一国 もな い。 し て見 れば 合 法 手段 に依

しな け れ ば な ら ぬ。 当 時 、合 法 手 段 即 ち 議 会 立法 に依 り 社会 改 造 を

のは、 条 約締 結 当 時 各 国 の適 法 と認 め て居 るも のを標 準 と し て判 断

遂 げ な けれ ば な ら ぬ。 此応 接 や協 議 は、 たと ひ議院 の建 築 物 内 で や

置 いて、 之 を 以 て其 以前 に成 立 し た る条 約 の解 釈 を補 ふ用 に供 す る

ノ結 社 ﹂ と いふ文 字 に注意 を 払 は な け れば な ら ぬ。 茲 に適 法 と い ふ

つた と ころ で それ は憲 法 に言 ふ院 内 の行 動 では な い。 さう すれ ば 此

ても、 憲 法 上 に於 け る議 員 の特 権 を 奈何 と もす る こと は出 来 ま い。

事 を為 す と き は 、治 安 維 持 法 に触 れ る の であ るか 。刑 法 第 三十 五 条

こと は出 来 ま い。 さ や うな 事 を 許 す な らば 、 条 約 は空 文 と な る であ

そ れ は外 でも な い。 た と ひ本 法 に於 て私 有 財 産 制 度 の否 認 を罪 と し

に は ﹁法 令 又 ハ正当 ノ業 務 ニ因 リ為 シタ ル行 為 ハ之 ヲ罰 セ ス﹂ と 在

ら う。

要 す る に本 法 は条 約 関 係 から 見 ても 重大 な る欠 陥 を包 蔵 し て居 る

近頃 或 人 筆

る。 議 員 が法 律 案 や、 決 議案 を準 備 す る。 これ位 正当 の業 務 は あ る ま い。 結 局 、 私 有財 産 制 の否 認 を含 蓄 す る法 律案 、 決 議 案 に署 名 の

( 附言) 治安維持法が最初 に実際問題とな つたのは彼 の京都 に於ける学

罪にも問 はれたのであ る。(了)

法違反 を以 て京都地方裁判所 の公判に附 せられた。なほ 一名は不敬

結し、三十七名の学生と 一名 の労働運動者と が治安維持法 並に出版

挙 は大正十四年十二月 に始まり、予審 は大 正十五年八月十六日に終

生検挙事件 であらう。同事件 の内容は、要 するに、社会科学研究会

事 は 明白 で あ る。

は ﹁マルキシズ ム﹂を指導精神とし、現在 の経済組織 を変革すべき 文書を作成し並に之 が実行 を協議したといはれて居 るのである。検

撲 滅 セ ント欲 スル モ到 底 其 ノ目 的 ヲ達 ス ル能 ハザ ル事 ハ古 今内 外 事

九  思 想 的 国 難 ニ 関 ス ル 決 議 (一 九二八)

思 想 的 国難 ニ関 スル決 議案 (尾 崎 行 雄 君提 出 )

此 ノ如 キ思 想的 運 動 ノ発育 蔓 延 ニ対 シテ ハ歴 代 ノ内 閣 均 シク其 ノ責

ケ テ爆 発 ノ危険 ヲ予防 ス ルト同 様 ノ効 果 ナ シト セズ

立法 的 手 段ニ 由 テ之 ヲ実 行 セ ント ス ル気 習 ヲ養 成 スレ バ安 全 弁 ヲ設

跡 ノ証 明 ス ル所徴 証歴 々彼 ノ露 独 ニ在 リ且 ツ如 何 ナ ル悪 思 想 ト雖 モ

ク匡 救 ノ策 ヲ講 セズ ンバ 、明 治 大 帝 ノ遺 業 或 ハ失 墜 セ ン コト ヲ虞 ル

今 ヤ帝 国 ノ国 難 ハ思 想、 政治 、 経 済 ノ諸方 面 ヨリ襲来 シ今 ニ シテ早

ヲ免 ル ル能 ハズ独 リ現 内 閣 ノ ミ ヲ責 ムベ キ ニ非 ザ ル モ本院 ハ茲 ニ左

思 想 的 国 難 ニ関 ス ル決 議

此 秋 ニ当 リ端 ナ ク共 産党 事 件 ノ勃 発 ヲ見 タ ル ハ真 ニ国家 ノ最 大 不 祥

ノ 三事 ヲ決議 シ相 共 ニ謹 慎恐懼 ノ情 ヲ表 セ ント ス

右決議 ス

利 用 シ紛 擾 ノ端 ヲ滋 ク スベ カ ラズ

一議 会 モ亦 謹 慎 恐 懼 ノ情 ヲ表 スベ シ断 ジ テ本 事 件 ヲ以 テ党 略的 ニ

ハ須 ラク謹 慎 シ テ罪 ヲ聖 明 ニ謝 シ国 民 ニ謝 セザ ルベ カ ラズ

一本 事件 ノ検 挙 ヲ以 テ政 府 ガ手 柄顔 セ ント スル モ不可 ナ リ当事 者

シ ク其 ノ環 境 ヲ改 善 ス ルノ途 ヲ講 ゼザ ルベ カ ラズ

一共 産 党事 件 ニ対 シ政 府 ガ刑 罰 ノ ミ ヲ以 テ之 ニ臨 ム ハ不 可 ナリ宜

事 ナリ之 ヲ燮 理 ス ルノ道 ハ殊 ニ細 心 ノ注意 ヲ要 ス 国 法 ニ背 テ共 産 主 義 ヲ実 行 セ ント ス ル者 ノ罪 科 ハ素 ヨリ責 罰 セザ ル ベ カ ラズ ト雖 モ此 ノ如 キ思 想 ヲ〓醸 発育 セ シム ル所 ノ環 境 モ亦 之 ヲ 改 善 セザ ル可 ラズ 凡 ソ朝 野 両 党 共 ニ政 権争奪 ニ没頭 シテ国 家 内 外 ノ 政 務 ヲ懈 怠 シタ ルガ如 キ租 税 ノ徴 課 分 配其 ノ道 ヲ誤 テ不合 理 的 ニ貧 富 ノ隔 絶 ヲ招 ケ ルガ如 キ救恤 恩 給 独 リ官 吏 ニ厚 ク シ テ人 民 ニ薄 キ ガ

ナ為 政家 怠 慢 ノ致 ス所 ニシ テ而 モ悪 思 想 発 育 蔓 延 ノ素 因 ナ ラザ ル ハ

如 キ労 資 関 係 其 ノ宜 シキ ヲ失 シテ産 業 界 ノ秩 序 ヲ壊 乱 セ ル ガ如 キ皆

ナ シ素 因 ヲ排 除 シ環境 ヲ改 善 セズ シ テ単 ニ刑 罰 ノ ミ ニ由 テ悪 思想 ヲ

一〇  治 安 維 持 法 中 改 正 緊 急 勅 令 (一 九二八)

者 又 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行為 ヲ為 シ タ ル者 ハ二年 以 上 ノ

私 有 財 産制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的 ト シテ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者

有 期 ノ懲役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

本 勅 令 ハ昭和 三年 四月 二 十 七 日第 五 十 五 議 会 ニ政 府 ヨリ提

ル者 ハ十 年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為 ヲ為 シタ

﹁治 安 維持 法 中改 正緊 急 勅令 ﹂

昭 和 三年 六月 勅 令 第 百 二十九 号

出 セ ラ レ審議 未 了 ト ナ リタ ル治安 維 持 法 中 改 正 法律 案 ト略

則 本 令 ハ公 布 ノ 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

附

第 五条 中 ﹁第 一条 第 一項 及 ﹂ ヲ ﹁ 第 一条 第 一項 第 二項 又 ハ﹂ ニ改 ム

ニ改 ム

第 三条 及 第 四 条 中 ﹁ 第 一条 第 一項 ﹂ ヲ ﹁第 一条 第 一項 又 ハ第 二項 ﹂

第 二条 中 ﹁前条 第 一項 ﹂ ヲ ﹁前条 第 一項 又 ハ第 二項 ﹂ ニ改 ム

前 二項 ノ未 遂 罪 ハ之 ヲ罰 ス

同 一内 容 ニシテ 唯両 者 相 違 ス ルト コ ロ ハ改 正 法律 案 第 一条 中 ﹁結 社 ノ役 員 其 ノ 他指 導 者 タ ル任 務 ヲ担 当 シタ ル者 ﹂ ト

ル者 ﹂ ト修 正 シタ ル点 ニ在 リ本勅 令 ハ同 年 第 五 十 六 議会 ニ

ア リ タ ル ヲ ﹁結 社 ノ 役員 其 ノ他 指 導者 タ ル任 務 ニ従 事 シタ

於 テ承 諾 ヲ与 ヘラ レ タ 第 一条  国 体 ヲ変 革 ス ル コト ヲ目的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者 又 ハ 結 社 ノ役員 其 ノ他 指 導 者 タ ル任務 ニ従 事 シ タ ル者 ハ死 刑 又 ハ無 期 若 ハ五 年 以 上 ノ懲 役 若 ハ禁錮 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シ タ ル

初日

一 一  枢 密 院 会 議 筆 記 (一九二八)

枢密院会議筆記  一 治安維 持法中改正 ノ件︱ 昭和三年 六月二十七 日 (水曜 日)午前十時 三十 五分開議 聖上臨御

勝田 文 部 大 臣 十四番

金子 顧 問

官 二十番

官 十九番

官 十八番

顧問官

問

久保田 顧 問

珍田 顧 問

官 廿七番

官 廿六番

官 廿四番

富井 顧

山川 顧 問

官 廿九番

問 官  廿 一番

黒 田 顧 問

官 三十番

富 議 長

大 臣 内閣総理大臣  田中  兼 外 務 大 臣 四 番 小川 鉄 道 大 臣 五 番

問

松室 顧 問

出席員 倉

岡 田 海 軍 大 臣 六 番

江木 顧

問 官 卅 一番

問 官 廿二番

白川 陸 軍 大 臣 七 番

問 官 卅 四番

井上 顧

中橋 商 工 大 臣 八 番

内田 顧

問 官 廿三番

番

田  顧

問 官 卅五番

平山 顧

番

問 官 卅六番

石黒 顧

山本 農 林 大 臣 十

荒井 顧

沼 副議長

望 月 内 務 大 臣 十 一番

河合 顧

平

司 法 大 臣 十二番

三土 大 蔵 大 臣 九

原 

鎌田 顧 問

官 卅九番

久原 逓 信 大 臣 十三番

闕 席員 皇

報告員

平沼 審 査 委 員 長

記 官

官

官

長

書記官長

記

官

王  一 番

記

仁  親

族

村上 書

記

雍

書

堀江 書

二上 書

武藤

官

秋田 内 務 政 務 次 官

成毛 内 閣 拓 殖 局 長

黒崎 法 制 局 参 事 官

前 田 法 制 局 長 官

ニ兇 悪 戦 慄 ニ堪 ヘサ ル モノ ア リ是 レ 一ニ ハ前 記 ノ罰 則 カ此 ノ極 悪

政 治 ヲ行 ハム ト スル ノ非 謀 ヲ企 ツ ル者 ア ル コト 発覚 シ其 ノ所為 洵

ノ国 際 共産 党 ノ指 揮 ヲ承 ケ畏 ク モ我 カ国 体 ヲ変 革 シテ労 農 ノ独 裁

然 ル ニ近 ク不 逞 ノ徒 秘密 結 社 ヲ組 織 シ世 界 革命 ヲ目的 ト ス ル露 国

之 ニ加 入 シタ ル者 ハ十年 以下 ノ懲役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス ル コト ト セリ

産制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ又 ハ情 ヲ知 リ テ

現行 ノ治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 ニ依 レ ハ国 体 ヲ変革 シ又 ハ私有 財

臣及 関 係 諸 官 ノ弁 明 ヲ聴 キ以 テ慎 重審 議 ヲ遂 ケ タリ

査委 員 タ ルノ命 ヲ承 ケ本 月 二十 四 日 以来 数 次 委 員会 ヲ開 キ国務 大

報告 員 (平 沼 ) 今 回御 諮 詢 ノ治 安 維持 法 中 改 正 ノ件 ニ付 本 官 等 審

長 ノ報 告 ヲ求 ム

ヲ議 題 ニ供 ス第 一読 会 ヲ開 キ議案 ノ朗 読 ヲ省略 シテ直 ニ審 査 委 員

書記官

問 官  十六番

王  二 番

問 官  十七番

王  三 番

伊東 顧 問 官  廿五番

仁  親

九鬼 顧 問 官  廿八番

仁  親

中村 顧

官 卅三番

問 官  卅二番

宣

古市 顧 問

載

八代 顧

顧問官

桜井 顧

官 卅七番

議 長 (倉 富 ) 之 ヨリ会 議 ヲ開 ク

石原 顧 問

官 卅八番

治 安 維 持 法中 改 正 ノ件

斎藤 顧 問

横山 内務省警保局長

ナ ル犯罪 ニ対 シ不 適 当 不充 分 ナ ル ノ致 ス所 ナ ル ニ由 リ将 来 ニ向 テ

委 員

長岡 社 会 局 長 官

潮 

官

次

次

小原 司 法

内 務

泉 二 司法省刑事局長

ツ ル モノト 私有 財 産 制 度否 認 ノ目的 ニ出 ツ ル モノ ヲ区 別 シ国体 ヲ

ニ相 当 ノ改 正 ヲ加 ヘムト ス ル モノ ニ シテ即 チ国体 変 革 ノ目的 ニ出

国憲 法 第 七 十条 ニ依 ル財 政 上 ノ緊 急処 分 ノ場合 ト異 リ帝 国議 会 ヲ

令 ノ形 式 ヲ採 ル コト洵 ニ已 ムヲ得 サ ル モノト認 ム而 シ テ本案 ハ帝

帝 国議 会 閉 会中 ノ今 日 ニ於 テ帝 国憲 法 第 八 条第 一項 ニ依 ル緊 急 勅

不可 ナ ル所 ナ ク又現 下 ノ事態 極 メ テ急 迫 ヲ告 ク ル モノ ア ル ニ鑑 ミ

ス ル有 効 適 切 ナ ル罰 則 ヲ設 ケ ムト ス ル モノ ニシ テ其 ノ趣 旨 ニ於 テ

変 革 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者 又 ハ結 社 ノ役 員 其

招 集 スル能 ハサ ル コト ヲ以 テ其 ノ制定 ノ要 件 ト セ ス又 其 ノ内 容 ニ

念 ヒ此 ノ 目的 ノ為 現行 治 安 維 持法 ニ相 当 ノ改 正 ヲ加 ヘ以 テ之 ニ対

ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従事 シタ ル者 ハ死 刑 又 ハ無 期 若 ハ五年 以上

切 ナ ル罰 則 タ ラ シ ム ル コト ヲ必 要 ト シ本 案 ヲ以 テ前 掲 ノ現行 規 定

ノ懲 役 若 ハ禁 錮 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ

モノ ト ス但 タ茲 ニ本 官等 ノ特 ニ提 言 シ テ政府 当 局 ノ留 意 ヲ求 メサ

於 テ モ特 ニ非 議 ス ヘキ廉 ヲ認 メ サ ル ニ由 リ 之 ヲ是 認 ス ルノ外 ナキ

更 ニ処 罰 ス ヘキ罪 ヲ追 加 シ適 用 ス ヘキ刑 ヲ加 重 シ以 テ最 モ有効 適

目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年 以上 ノ有 期 ノ懲 役 又

ル ヘカ ラ サ ル事 項 アリ

ハ禁 錮 ニ処 ス ル コト ト シ私 有 財産 制 度 ヲ否認 スル コト ヲ目的 ト シ

カ審議 ヲ尽 サ シ ム ル為 会 期 延長 ノ如 キ適 宜 ノ処 置 ヲ講 ス ル コト

テ結 社 ヲ組織 シタ ル者結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ目的 遂 行 ノ

ナ ク徒 ニ之 ヲ未 議 了 ニ終 ラ シメ タ ルノ ミ ナラ ス爾 後 荏苒 月余 ノ

十 五回帝 国 議 会 ニ提 出 シ緊急 ノ必 要 ア ル ニ拘 ラ ス議 会 ヲ シテ之

結 果 タ ル条 項 ノ整 理 ニ外 ナ ラ ス

日子 ヲ隔 テ タ ル今 日 ニ至 リ テ漸 ク本案 ヲ以 テ斯 ノ改 正 ヲ行 ハム

一、 政 府 ハ曩 ニ本 案 ト同 趣 旨 ナ ル治 安 維持 法 中 改 正法 律 案 ヲ第 五

本 案 ノ内容 ハ憲 法 上 ノ立 法 事項 ニ属 ス ル モノ ニシ テ元来 法 律 ノ形

ト ス ル ハ其 ノ挙 措 甚 タ当 ヲ得 サ ル モノ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス本官

トト セ ムト ス其 ノ他数 条 項 ニ亙 ル改 正 ハ総 テ右 ニ示 シタ ル改 正 ノ

式 ニ依 ル ヘキ コト固 ヨリ当 然 ナ ルヲ以 テ内 閣 ニ於 テ ハ曩 ニ本 案 ト

等 ハ此 ノ点 ニ関 シ真 ニ遺 憾 ノ念 禁 ス ル能 ハサ ル所 ナリ ト ス

為 ニス ル行為 ヲ為 シタ ル者 ハ十年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 スル コ

テ審 査未 了 ト 為 リ議 会 ノ協賛 ヲ得 ル ニ至 ラ サ リ シ モノ ナ リ然 ル ニ

同 趣旨 ノ法 律 案 ヲ第 五十 五 回帝 国 議 会 ニ提 出 シ タ ル モ衆 議院 ニ於

前 記 犯罪 事 件 ノ検 挙 ニ因 リ漸 ク判 明 セ ル所 ニ徴 ス ル ニ爾 後 不逞 ノ

ル対策 ト認 ム ヘカ ラ サ ル コト言 ヲ俟 タ ス故 ニ此 ノ外 政府 当 局 ニ

於 テ今 後 採 ル ヘキ措 置固 ヨリ二 三 ニシ テ止 ラ サ ル ヘシト雖 大 凡

二 、 過激 思 想 及之 ニ基 ク非 謀 ヲ防 遏 ス ル為 本案 ノ ミ ヲ以 テ充 分 ナ

左 ノ数 点 ニ付 テ ハ特 ニ此 ノ際 当 局 ノ考 慮 ヲ求 ム ル ノ必要 ア ル モ

徒 益 々其 ノ非 謀 ヲ逞 ウ セムト スル ノ形 勢 ナ ル ヲ以 テ本 案 ノ法 律 改 正 ハ刻 下 緊 急 ノ必要 ア リ到底 時 日 ヲ空 過 ス ヘカラ サ ルヲ以 テ茲 ニ

ノ ト認 ム

ハ ス教育 ノ改 善 ニ最 モ力 ヲ致 ス ヘキ ハ勿 論 学 校 内 ニ於 ケ ル悪

思 想 ノ善 導 ニ付 当 局 ハ学 校教 育 タ ルト社 会 教 育 タ ルト ヲ問

ル モノ ナ リト謂 フ

( イ )

帝 国憲 法 第 八条 第 一項 ノ規定 ニ従 ヒ緊 急 勅 令 ノ形 式 ニ依 ラ ムト ス

按 ス ル ニ本 案 ハ国 体 ノ変革 又 ハ私有 財 産 制度 ノ否 認 ヲ目的 ト スル 犯 行 ノ最 モ悪逆 ニシ テ極 力之 カ掃 蕩防 遏 ニ力 メサ ル ヘカラ サ ルヲ

(ロ)

思 想 ノ伝播 ニ対 シテ ハ極 力之 ヲ防遏 ス ル為 充 分 ノ措 置 ヲ講 セ

十 九番 (久保 田) 本員 ハ本案 審 査委 員 ノ 一人 ナ リ シ ヲ以 テ 委 員 長

ノ報 告 ヲ補 充 シ且卑 見 ヲ述 ヘテ政 府 ニ対 シ質 ス所 ア ラムト ス

リ テ非 常 立 法 ヲ為 サ ムト ス ルモノ ナ リト 云 フ モ之 ヲ精 査 ス レ ハ幾

本案 ハ公 共 ノ安全 ヲ保持 ス ル為緊 急 ノ必要 ニ由 リ憲 法第 八 条 ニ依

ム コト ヲ希 望 ス 国 民 生活 ノ安定 ヲ図 ル ハ思想 問 題 ノ解 決 策 ト シテ又 最 モ緊

ニ対 シテ重 刑 ヲ処 ス ル ハ格 別 異議 ナ カ ル ヘシト雖 唯 政府 ノ認 ム ル

多 ノ疑 問 ヲ生 シ容 易 ニ決 シ難 キ モノ アリ極 悪 非 道 ナ ル共 産 主義 者

要 事 ニ属 ス ルカ故 ニ当 局 ハ貧富 ノ階 級的 反 目 ヲ助 長 スルカ如 キ官 民 ノ行 動 ヲ深 ク戒 メ且 諸般 ノ社 会政 策 的施 設 ノ実 行徹 底

社 ト露国 ト ノ関係 ニ付 更 ニ充分 ナ ル調査 ヲ遂 ケ 且速 ニ適 当 ナ

ノ指 揮 ノ下 ニ組織 セ ラ レタ ル モノ ナリ ト聞 ク当 局 ハ該 秘密結

之 カ議 了 ニ努 メサ リ シ ハ失 態 タ ルヲ免 レ ス元 ヨリ当時 ノ事 情 ニ付

政府 ハ本 案 ト 略同 一ナ ル法 律 案 ヲ臨 時 議 会 ニ提 出 シタ ル ニ拘 ラ ス

応策 ニシ テ他 ニ手 段 ナキ ヤ否 ヤカ問 題 ナリ

如 ク緊 急 ノ必 要 ア リ ヤ否 ヤ又刑罰 ヲ加 重 ス ル コト ノ ミカ唯 一ノ対

ニ努 力 セ ム コト ヲ希望 ス

ル対 策 ヲ施 サ ム コト ヲ希 望 ス

テ ハ寛 恕 ス ヘキ モノ無 カ ラ スト雖 閉 会 後 茲 ニ数 十 日 ヲ経 過 シタ ル

) (ハ 今 回 我 カ国 ニ於 テ発 覚 シ タ ル秘 密 結社 ハ露 国 ノ国 際 共産 党

今 回 ノ共 産 党事 件 ノ検 挙 ニ鑑 ミ我 カ国 在 来 ノ警 察 及検 察 制 度 ノ組織 機 能 ニ付 遺 憾 ノ点 少 カ ラ サ ル モノ ア ルヲ 以 テ当 局 ニ

内 ニ於 テ異 論 沸騰 シ外 部 ニ於 テ ハ反 対 党 ハ勿 論 学 者 弁護 士 殊 ニ大

ト ノ主 張 ヲ為 セリ本 員 ハ最 初 本案 審 査 委員 ノ任 ヲ受 ケ タ ル際 ハ格

ノ多 ク ハ非 常 立法 ノ手段 ニ依 ラ ス正 統 ノ手 続 ヲ踏 ム ヘキ モ ノナ リ

コト ハ看 過 ス ヘカ ラ サ ル所 ナ リト ス本 案 ニ付 テ ハ政 府部 内 及 与党

於 テ ハ 一層 之 カ改 善 ニ努 力 シ犯 罪 ノ捜 査 ヲ最 モ敏 活 有 効 ナ ラ

学教 授 国 体 尊 重者 等 ニシテ反 対 スル モノ少 カ ラ ス而 シテ此 等 ノ者

審 査委 員会 ニ於 テ ハ本 件 ハ原 案 ノ通 リ可決 セ ラ レ然 ル ヘキ旨 前 記

別 ノ疑 ヲ抱 カ サ リ シ モ後 ニ至 リ政 府 ノ説 明 ヲ聴 ク ニ及 ヒテ漸 次疑

(ニ)

シ メ ム コト ヲ希 望 ス

ノ意 見 ト 共 ニ多 数 ヲ 以 テ議 決 シタ リ

惑 ヲ生 セリ審 査 委 員中 ニ ハ法学 者 アリ永 ク司 法官 タリ シ者 アリ 又

右 審 査 ノ結 果 ヲ報告 ス 議 長 (倉 富) 議 事 ニ関 シ テ 一言 ス先 ツ本案 ニ対 シ テ質 問 ヲ許 シ質

等 ノ人 々 ノ反 対意 見 ヲ聞 キ テ弥 々疑 団 ヲ深 ク セリ本 案 ハ上述 ノ如

教 育 行 政 ニ深 キ経 験 ヲ有 シ教育 勅 語 ノ起 草 ニ与 カリ タ ル人 アリ此

十 九 番 (久 保 田) 本 員 ハ所 労 ノ為 起 立 シテ演 述 ス ル コト 困 難 ナ ル

ク是 非 ノ世 論 喧 シク政府 部 内 及与 党 中 ニ反 対 ア ルノ ミ ナ ラ ス本 院

問 ニ対 ス ル答 弁 ノ終 了 シ タ ル後 討 論 ニ入 ル コト ト ス ヘシ

ヲ 以 テ御 前 ニ於 テ甚 タ恐 懼 ノ至 ナ レト モ著 席 ノ儘 発 言 スル コト ヲ

ノ委 員 中 ニモ強 硬 ナ ル反 対 ア ル ニ拘 ラ ス急 遽 之 ヲ議 決 シ去 ル ハ如

ノ説 ヲ為 ス モ ノア リ其 ノ愛 国 ノ熱 情 ニ於 テ ハ全 ク同感 ナリ ト雖 斯

何 カ ア ラ ム或 ハ事 国 体 ニ関 スルヲ以 テ 一日 モ速 カ ニ決 行 ス ヘシト

許 サレタシ 議 長 (倉 富) 起 立 シテ発 言 ス ル コト困 難 ナ レ ハ已 ムヲ得 サ ル ニ付 今 回 ニ限 リ之 ヲ認 ム ヘシ

委 員長 ノ採 用 ス ル所 ト ナ ラ ス遂 ニ多数 決 ヲ以 テ原案 ヲ成 立 セ シ ム

更 ニ政府 ノ熟考 ヲ促 サ ム コト ヲ提 議 シ委 員 半 数 ノ賛成 ヲ得 タ ル モ

本 員 ハ其 ノ結果 ノ恐 ル ヘキ モノ ア ルヲ慮 リ委 員 会 ニ於 テ モ此 ノ際

ル重 大 ナ ル国務 ヲ処 理 ス ル ニ付 テ ハ聊カ軽 挙 ニ失 ス ルノ議 ナ キ ヤ

真 ニ畏 ル ヘキ モノ ア ルヲ発 見 シ遽 ニ之 カ防 遏 ノ手 段 ヲ講 ス ル ニ至

斉 ノ大検 挙 ヲ決 行 シ取 調 ノ結 果 彼 等 ノ計劃 規 模 ノ広 大 深遠 ニシ テ

始 メ テ支 部 設 立 ノ情 報 ヲ握 リ 本年 三 月 十 五 日 ニ至 リ テ稍 ク全 国 一

ハ何 レ モ此 等 ノ事 実 ヲ偵 察検 知 スル コト ヲ得 ス昨 年 ノ二 月 ニ至 リ

内 閣 ハ山 本 、清 浦 、 加 藤 、若 槻 及 田 中 ノ数 代 ヲ経 タ ルモ警 察 当 局

リ露 国 ノ第 三 ﹁イ ンタ ー ナ ショ ナ ル﹂ ノ計 劃 ニ関 シ政 府 ニ警 告 シ

此 ヨリ先 キ大 正 十 三年 七月 第 四十 九 議 会 ニ於 テ貴 族 院 ノ 一議 員 ヨ

レ ル モノ ナ リ

ル コト ニ決 セリ今 茲 ニ其 ノ本員 提 議 ノ要 旨 ヲ述 フ レ ハ次 ノ如 シ

長 シ テ之 ヲ成 立 セ シム ル ノ手段 ヲ講 セ ス シテ其 ノ儘経 過 シ タリ爾

タ ルモ政府 ハ更 ニ反 省 ノ誠 意 ナク大 正 十 四年 四月加 藤 内 閣 ニ於 テ

此 ノ法案 ハ臨 時議 会 ニ提 出 シタ ルモ議 了 ニ至 ラ ス政府 ハ会 期 ヲ延

ス ル ハ穏 当 ノ処 置 ニア ヲ ス又其 ノ理由 明晰 ヲ欠 キ異議 物 議 頗 ル多

来 数 十 日 ヲ経 過 シ タ ル今 日 ニ至 リ緊 急 勅 令 ニ依 リ之 ヲ制 定 セ ムト

由 来 本 院 ノ審 査 委 員会 ニ於 テ賛 否 相 半 ス ルカ如 キ案件 ハ従来 多 ク

ヲ為 ス コト可 ナ ラ ム政 府 ノ熟 考 ヲ望 ム

行 ニ勉 メ他 日議 会 開会 ノ機 会 ニ於 テ正 当 ノ手 続 ニ依 リ本 法 ノ制 定

ツ他 ニ応 急 適 切 ノ手段 方 法 ヲ講 シ之 ニ依 テ各 方 面 ニ渉 リ防遏 ノ実

如 キ思想 ノ侵 入 ヲ見 タ ル ハ幾 分世 界 ノ大勢 ニ依 ル人 心 ノ動 揺 ノ然

激 思 想 ノ遽 カ ニ侵 入 ス ヘキ余 地 ナ キ筈 ナ ル ニ拘 ラ ス意 外 ニ モ此 ノ

偵 知 シ得 サ ル有様 ナ リ我 邦 ハ建 国 以来 国民 ノ伝統 的 精 神 ニ鑑 ミ過

タ ルモ数名 ノ巨 魁 ハ未 タ縛 ニ就 カ ス宣 伝文 書 竝 ニ運動 資金 モ未 タ

ノ設 立 ヲ見 ル ニ到 レリ 政府 ハ本年 三月 ニ到 リ テ始 メテ之 ヲ検 挙 シ

ハ益 々拡 大 シテ遂 ニ前述 ノ如 ク大 正 十 五年 十 二月 共産 党 日本 支 部

其 ノ例 ヲ見 サ ル所 ニ シテ之 ヲ以 テ観 ル モ如 何 ニ本 問題 カ錯 綜 セ ル

ラ シム ル所 ナ ル ヘシト雖 畢 竟 政府 カ目 前 ノ政 争 ニ没頭 シ永遠 ノ国

現行 治 安維 持 法 ヲ制 定 シタ ル モ捜 査 検 挙 ノ実 挙 ラ ス共 産 主義 運 動

カ ヲ知 ル ニ足 ル ヘシ之 ヲ以 テ本員 ハ枢密 院 ノ職 責 ニ顧 ミ伊藤 公 ノ

ニ対 シテ ハ須 ク 一時 ノ熱 情 ヲ抑 ヘ慎 重 審議 而 モ速 カ ニ刻 下 ノ緊 急

策 ヲ等閑 ニ付 シタ ル怠 慢 ノ責 ニアラ サ ル ヤ斯 カ ル国 家 ノ重 大案 件

シ本 案 ノ制 定 ハ共 産党 防 遏 ノ為 ニ ハ必 要 ノ 一手 段 ナ ル ヘシト 雖他

憲 法義 解 ヲ熟 読 シ再 三再 四熟 考 ヲ重 ネ タ ル モ今 猶 初 志 ヲ翻 ヘス コ

ニ モ緊 切 ノ方 法 ナ キ ニア ラサ ル ヘシ政府 ハ目 下 ノ政情 ニ顧 ミ テ先

御前 ニ於 テ甚 タ恐 多 ケ レト モ更 ニ茲

ニ卑 見 ノ概要 ヲ述 ヘテ各位 ノ参考 ニ供 シ更 ニ政 府 ノ再 考 熟 慮 ヲ促

ニ応 スル対 策 ハ勿論 根本 的 対 策 ヲ樹 立 シ官 民 一途 倶 ニ之 ニ当 ルノ

ト能 ハサ ルヲ遺 憾 ト ス依 テ

ヲ防 遏 ス ル ニ ハ刑 罰 ヲ以 テ スル コト モ必要 ナ ル ヘシト雖 尚幾 多 他

ニ緊 切有効 ノ手 段 方 法 ヲ講 スルノ道 ア ル ヘシ若 シ政府 ニシテ再 考

覚 悟 ナ カ ル ヘカ ラ ス国体 ノ変 革 ヲ夢 ミ ルカ如 キ極 悪 非 道 ナ ル行 動

ノ余 地 アラ ハ本 日 ノ会議 ハ之 ヲ延長 セ ラ ル ヘク若 シ其 ノ余 地 ナ シ

サ ムト スル モノ ナ リ共 産党 ハ大 正 十 二年 六 月 ノ第 一次 ノ検 挙 後 早

ノ中 心 人 物 十 七名 山 形県 下 ノ某 温泉 場 ニ集合 シテ宣 言 規約 等 ヲ決

ク モ翌 十 三年 ニ ハ新 党 組織 ノ準 備 ニ着 手 シ同 十 五年 十 二月 ニ ハ其

シ共産 党 日本支 部 ヲ設 立 シ党 員 四 百余 名 ヲ有 ス ル ニ至 レリ此 ノ間

ス

更 ニ再 考 ノ余 地 ナ キ旨 ヲ言 明 セラ レタ ルカ今 久 保 田顧問 官 ヨリ政

二十 番 (富井 ) 曩 ニ緊 急 勅 令 ニ依 ル治 安維持 法 ノ改 正 ニ就 イ テ ハ

ト セ ハ遺 憾 ナ カラ本 員 ハ之 ニ反 対 ス ルノ外 ナ シ目 下 ノ政局 ノ実情 ハ政府 党 反 対 党其 ノ数 殆 ト相 半 シ事毎 ニ相 争 ヘリ本件 ノ如 キ ハ更

シ

議 長 (倉 富) 今 ハ質 問 ノ時 ナ リ御 意 見 ノ陳 述 ナ レ ハ後 ニ セ ラ レ タ

府 ノ再 考 ヲ要 ム ル旨 提 案 ア リタ ル ニ付 一言 申 述 ヘタ シ

ニ時 局 ニ紛 擾 ヲ増 シ将 来 ニ危 険 ノ種 ヲ蒔 キ遂 ニ累 ヲ国 家 ニ及 スノ 虞 アリ依 テ本 員 ハ憲 法 論 法律 論 ニ拘泥 セ ス専 ラ現在 ノ政 局 ニ立脚 シ テ本 案 ハ決 シ テ得 策 ニアラ スト信 シ敢 テ微 衷 ヲ吐露 スル モノ ナ リ

状 態 ナ レ ハサ マテ恐 ル ルノ必 要 ナ シ卜信 ス但 懸 念 ス ル ハ動 員 ノ際

リ ヲ付 ケ ル カ又 ハ之 ヲ破壊 スル ヲ例 ト ス ル モノ ナ ルカ現 在 ノ軍 隊

ニ於 ケ ル妨害 行 為 ナ リ然 ル ニ先般 第 三師 団 ノ動 員施 行 ニ際 シ之 ヲ

卅六 番 (河 合) 陸 軍 大臣 ニ問 フ凡 ソ革 命 ノ起 ル際 ハ先 ツ 軍 隊 ニ渉

意 ヲ表 ス時 局 安 定 ノ要 ニ付 御説 尤 ナリ 然 レト モ政 府 ニ於 テ ハ共 産

妨 害 シタ ル モノ アリ ト ノ新 聞 記事 ア リ果 シ テ事 実 ナリ ヤ妨 害者 ノ

四番 (田中) 只 今久 保 田顧 問官 ヨリ委 曲 ヲ尽 シ テ政 府 ノ 決 意 ヲ問

党 事 件 ノ調査 ノ進捗 ス ル ニ従 ヒ本 案 ノ 一日 モ之 ヲ空 ウ ス ル コト ヲ

系 統 ハ如 何多 少 ニテ モ軍 隊 ニ其 ノ影 響 ヲ及 シタ ルヤ又之 ニ対 ス ル

ハルル所 アリ其 ノ愛 国 ノ熱 情 ヨリ出 テ種 々配 慮 セ ラ ル ル段 深 ク敬

ス ル モノ ナリ蓋 シ今 日 ニ於 テ ハ支那 ノ共 産党 ト 日本 ノ ソ レト ハ相

得 サ ルヲ痛 感 シ尚 隣邦 支 那 ノ現 状 ヲ観 テ益 々本 案 立 法 ノ必要 ヲ感

政 府 ノ御 考 ハ如 何

ヲ電 信 柱 ニ貼 布 シ タ ル モノ及 撒 布 シタ ル者 ヲ憲 兵 及警 察 官 ニテ発

カ第 三師 団 ニ動 員 令 下 リ シト キ ハ名 古屋 静 岡 地方 ニ於 テ不穏 文 書

七番 ( 白 川 ) 共 産 党 カ軍 隊 ニ著 目 セ ル コト ハ兼 テ注 意 セ ル所 ナ ル

連 絡 シテ行動 スル ヲ以 テナ リ従 テ共 産 党 弾圧 ノ問 題 ハ単 ナ ル国 内

テ モ大 ニ考 慮 セサ ル ヘカラ スト考 フ

見 シタ ル モ深 キ根 拠 ア ル モノ ニア ラサ ルカ如 シ然 シ尚 明確 ナ ラ サ

問 題 ニ非 ス シテ実 ニ渉 外的 国 際 的問 題 ニシ テ支 那事 件 ノ処 理 ニ付

ル モノ ア リ最 近 ノ調 査 ニ依 レ ハ彼 等 凶 徒 ハ我 軍用 火薬 庫 ノ内 部 ニ

共産 党 事件 ハ検 挙後 ニ於 ケ ル調 査 ノ進 行 ニ従 ヒ益 々懸 念 ニ堪 ヘサ

ル点 ア ル ヲ以 テ地 方 長官 会 議 ニ於 テ モ十 分 ノ注 意 ヲ与 ヘ置 キ タ リ

ヲ以 テ主張 ス ル所 アリ タ ル モ遂 ニ少 数 ニテ葬 リ去 ラ レ タリ其 ノ後

如 何 ナ ル モノ ノ存 ス ル ヤ迄 モ内 偵 セ ル事実 ア リ テ事 態 甚 タ容 易 ナ

更 ニ研 究 ノ結 果 茲 ニ一箇 ノ動 議 ヲ提 出 セ ムト ス

ニ付 陳 述 セ ラ レタ ル カ本 員 モ委 員 会 ニ於 テ之 レト全 ク同 一ナ ル考

コト必要 ナ リト 考 ヘ居 レリ尤 モ之 カ対策 ニ就 テ ハ本 案 ノ ミカ唯 一

二十 九 番 (松 室) 只 今 久保 田顧 問 官 ヨリ政 府 ノ再 考 ヲ求 ム ル コ ト

ノ方 法 ナラ サ ル ハ勿論 教 育 ノ改 善 国 民 生 活 ノ安 定 等 種 々方策 ノ講

二十 一番 (井 上) 四五 日前 ノ ﹁ジ ャパ ン、 アド バ ー タ イ ザ ー﹂ 紙

議長 (倉 富 ) 只今 ハ質 問 中 ニ付 後 程 ニセラ レタ シ

ラサ ル モノ アリ斯 ルカ故 ニ仮 令 新聞 紙 等 ニ於 テ反 対 ノ論 議 ヲ為 ス

ス ヘキ モノ ア ル ハ謂 フ迄 モナ シ之 ヲ要 ス ル ニ政 府 ニ於 テ ハ上 叙 ノ

モノ ア ル モ政 府 ニ於 テ ハ断 乎 ト シテ之 カ弾圧 ヲ為 スノ決 心 ヲ示 ス

実 情 ニ鑑 ミ此 ノ際 本案 ノ提 出 ニ関 シ再 考 ス ヘキ余 地 ナ キ ヲ遺 憾 ト

ニ於 テ捕 縛 ヲ逃 レタ ル主 領株 ト気 脈 ヲ通 シ テ陰 謀 ヲ廻 ラ シ着 々共

上 ニ長 春 ノ露 国 領 事 官 ト密接 ノ関 係 ア ル有 力者 三名 ハ先 般 ノ検 挙

ル者 ノ中 ﹁入党 ス ル モ殺 サ レ ハシナ イ カ ラ ヨイ デ ハナイ カ﹂ ト 口

屏 熄 ス ル ニ至 ル ヘシト思 料 ス此 ノ事 ハ先 般 ノ検 挙 ニテ捕 ヘラ レタ

ラ ス政 府 カ今 次特 ニ非 常 立 法 ニ依 リ テ治 安 維 持 法 ノ改 正 ヲ企 テ タ

説 カ レテ入 党連 座 セ ル モノ ア ル事 例 ニ見 ル モ之 ヲ察 知 スル ニ難 カ

ル モ之 ヲ以 テ彼 等 ノ謬 想 妄 動 ヲ掃蕩 屏 熄 セシ ム ル ニ有 効 ナ ル手段

産 主 義 運 動 ノ準 備 ヲ為 セリ依 テ政 府 ハ彼 等 ヲ日本 ニ近 寄 ラ シ メサ

ノ 一ナリ ト信 シ タ ル カ為 ニ外 ナ ラ サ ルナ リ

ル為 福 井 、 山 口、 福 岡 ノ各 県 知事 ニ訓 令 セ リ云 々ノ記 事 ア リ此 ノ 如 キ事 実 アリ ヤ若 シ有 リト セ ハ政府 ハ日露 基 本条 約 第 五条 ニ基 キ

タリ ト聞 込 ミ タ ル故 取 調 ヲ命 シ タ ル処 外 交 方 面 ヨリ其 ノ事 実判 明

四 番 (田 中) 本 官 ニ於 テ モ露 国 ヨリ 三名 ノ有 力 者 ヲ日本 ヘ派 遣 シ

露 国 政 府 ニ対 シ テ相 当 ノ手 段 ヲ執 ラ レタ ル コトト考 フ其 ノ折 衝 ノ 結 果 如 何 仮令 本 案 ニ シテ裁 可 公 布 セラ ルル モ多 ク ハ陰 密 ノ間 ニ行

コト ハ将 来 日露 ノ国 交 上 ニ モ重 要 ナ ル影 響 ヲ及 ホ ス モノ ニ付注 意

ハ財 産 制 度 ノ変革 ヲ教唆 煽 動 シ 日本 国 民 ノ大 ナ ル悪 感 ヲ挑 発 ス ル

セ リ、 依 テ露 国 政 府 ニ対 ス ル処 置 ト シ テ露 国 大使 ヲ呼 ヒ我 国 ニ於

ハル ル主 義 運動 ヲ根 底 ヨリ撲 滅 ス ル ハ容 易 ノ業 ニアラ スト 考 ヘラ

十 一番 (望 月) 御 質 問 ノ如 キ情 報 ハ政府 ニ於 テ モ之 ヲ入 手 セ ル ヲ

セ ム コト ヲ求 メ タリ 同 大使 ハ其 ノ由 ハ本 国 ヘ伝 達 ス ヘキ旨 ヲ述 ヘ

ケ ル共産 党 支 部 ノ現在 ヲ述 ヘ少 クト モ第 三 ﹁イ ン タ ー ナ シ ョナ

以 テ有 ラ ユル手 段 ヲ尽 シテ其 ノ捜 査 及防 遏 ニ力 メ ツ ツア ル次 第 ナ

タリ

ル而 シテ此 ノ病 毒 ハ主 ト シ テ露 国方 面 ヨリ輸 入 セ ラ ル ルヲ以 テ相

リ其 ノ詳 細 ハ係 ノ者 ヲ シテ答ヘ シ ム ヘシ余 ハ無 政 府 主義 共 産 主 義

最 近 ﹁モ ス コー﹂ ニテ発 行 ス ル 一新 聞 ハ共 産 主 義 ノ実 行 ニ関 シテ

ル﹂ ハ露 国 政 府 ト 一種 ノ因 縁 ア ル モノ ト思 フ ヲ以 テ日本 ノ国 体 又

等 ノ運 動 ハ我 日本 ニ於 テ ハ到 底 大 ナ ル効果 ヲ収 メ得 ル モノ ニア ラ

論 説 ヲ掲 ケ支 那 ノ共 産 党 ノ状 況 ヨリ日 本 ノ共 産 党 ニ論 及 シ我 国体

当 ノ方 法 ニ依 リ根 本 的 ニ露 国 政 府 ト話 ヲ付 ケ ム コト ヲ希 望 セ サ ル

ス斯 カ ル思想 ハ必 ス芟 除 ス ル コト ヲ得ヘ シト確 信 セ リ而 シ テ之 ヲ

ヲ得 ス政 府 ノ所 見如 何

芟 除 ス ル ハ独 リ法 律 ノ力 ノ ミ ニ依 ル ヘカ ラ サ ル ハ勿 論 教育 、教 化

﹁イ ンタ ーナ シ ョナ ル﹂ ノ行 動 ハ即 チ政府 ノ行 動 ト謂 ヒ得 サ ル ヲ

ノ変 革 ヲ計 ラ ムト ス ルカ如 キ不 穏 ノ文 字 ヲ列 ネ タ リ然 レト モ第 三

以 テ露 都 駐在 ノ帝 国 大 使 ヲ シ テ之 ニ抗 議 ヲ申 込 マ シメ注意 ヲ喚 起

事 業 、 社 会 政 策等 ニ付 テ官 民 一致 ノ努 力 ヲ尽 シ殊 ニ全 国 民 ヲ シテ

ス ルノ手 段 ヲ執 レリ但 シ之 レカ為 国 交 上 ニ重 大 ナ ル影 響 ヲ及 ホ ス

能 ク我 建 国 ノ精 神 ト国 体 ノ精 華 ト ヲ了 解 セ シ ム ルト キ ハ必 ス斯 ノ 如 キ外 来 思 想 ハ之 ヲ屏 熄 セ シ ム ル コト ヲ得 ヘシト 信 ス蓋 シ今 日妄

モノ ニア ラ スト信 セリ

露 国相 手 ノ仕 事故 単 ニ大 使 ト ノ 一片 ノ対 話 ニ依 リ テ果 シ テ我意 ヲ

二 十 一番 (井 上) 政 府 ト露 国 大使 ト ノ話 合 ハ之 ヲ諒 ト ス然 レ ト モ

動 ス ル所 謂 主 義 者 ノ実 情 ヲ凝 視 ス ル ニ必 ス シ モ真 ニ主義 ノ信仰 ニ

新 カ ツ テ見 タ キ許 ニ此 ノ群 ニ投 ス ル モノ少 カ ラ ス而 シテ此 ノ種 ノ

出 ツ ル モノ ニア ラ ス或 ハ売 名 ノ為 或 ハ生 活 ノ方 便 ト シテ或 ハ単 ニ

輩 ハ刑 軽 ケ レ ハ屡 々妄 動 ス ルモ死 刑 ヲ以 テ之 ニ臨 マ ハ悚 然 ト シ テ

通 シ得 ル ヤ否 ヤ甚 タ疑念 ナ キ能 ハス斯 カ ル時 ノ為 日露 基 本条 約 モ

サ ルト キ ハ如 何 ナ ル処 置 ヲ執 ラ ム ト ス ル ヤ

本案 ノ裁 可 公 布 セラ レタ ル後 若 シ次 ノ帝 国 議 会 ニ於 テ之 ヲ承 認 セ

(五 ︶ 本 案 ハ 一定

フ コト ヲ確 認 スル ニ到 ラ ス若 シ露 国 カ外 交 機 関 ヲ通 シ テ之 ヲ行 ハ

フ ル ヤ ︵六 ) 過激 思 想 ノ取 締 ニ付 テ ハ将 来 細 目 ノ注 意 ヲ加 フ ル ニ怠 リ ナ カ ル ヘキ ハ勿 論 ナ ル カ之 レ迄 ノ取 締 状態 ハ如 何例 ヘハ輸 入出

ノ意 思 ニ問 フ コト ナ ク専 制 的 ニ議 定 シ去 ルヲ相 当 ノ処 置 ナリ ト考

ノ行 為 者 ニ対 シ極 刑 ヲ課 セ ムト ス ル法 案 ナ ルカ政 府敢 テ之 ヲ国 民

認 セ サ ル場 合 ニ於 ケ ル現 行 治 安 維 持 法 ノ効 力 如 何

︵四︶ 若 シ議 会 カ之 ヲ承

存 ス ル コト ナ レ ハ此 ノ際 一層 有 効 ナ ル具 体 的 方 法 ヲ採 ル コト ヲ得 サ ル ヤ伺 ヒタ シ

ハ直 ニ臨 機 ノ処 置 ヲ執 ル ヘシ露 国 政 府 ト 第 三 ﹁イ ンタ ー ナ シ ョナ

四番 (田中) 未 タ其 ノ時 機 ニア ラ ス ト考 フ未 タ政 府 カ為 セ リ ト 云

ル﹂ ト ハ実 質 的 聯 繋 ヲ有 ス ヘキ ハ疑 十 分 ナ レト モ未 タ確 認 ス ヘキ

版 物 、 活動 映画 、 芸 術、 工場 等 ニ付 一二 ノ事例 ヲ掲 ケ テ説 示 サ レ

密 文 書 ニ記 述 ス ル所 ヲ申 述 フ ヘシ

世 界 ノ政 治 革 命 ヲ目的 ト ス ル モノ ナリ今 其 ノ証 拠 ト シテ彼等 ノ秘

﹁イ ンタ ー ナ シ ョナ ル﹂ ノ 日本 支 部 ト シテ成 立 シタ ル モノ ニ シ テ

共 産 党 ハ名 ハ日本 共 産 党 ナ レト モ露 国 ニ於 ケ ル 国 際 共 産 党 第 三

先 ツ日本 共 産 党 カ如 何 ナ ルモ ノ ナ ルカ ヲ説 ク ヲ順 序 ト ス ヘシ日本

答 弁 ス ヘシ

十 二番 (原 ) 今 回 ノ検 挙 ニ由 リ テ本 案 ノ必要 ヲ認 メ タ ル 理 由 ニ付

タシ

材 料 ヲ発 見 セ ス

考 フ 蓋 シ委 員 会 ハ傍 聴 ヲ許 サ ス又筆 記 ヲ モ見 ル コト能 ハサ レ ハナ

二十 三番 (石 黒) 本 案 ハ極 メ テ重 大 ナ ルヲ以 テ種 々質 問 シ タ シ ト

リ 議 長 (倉 富) 御 発 言 中 ナ ル モ最 早 正午 ト為 ル ニ付 一先 休 憩 シ テ 午 後 一時 ヨ リ再 開 ス ヘシ 聖上入御

○

( 午 前 十 一時 五 十 五分 休 憩)

日 本 共産 党 ハ国 際 共産 党 ノ 日本 ニ於 ケ ル 一支 部 ナ ルヲ 以 テ其 ノ当

ヘカ ラ ス而 シテ彼 等 ハ曰 ヘリ 日本 ノ支 那 出兵 ハ支 那 ノ革 命 即 チ世

然 ノ義 務 ト シテ国 際 共産 党 ノ指 揮 ニ従 ヒ世界 革 命 ノ実 ヲ挙 ケ サ ル

( 午 後 一時 再 開 、出 席員 午 前 ニ同 ジ) 聖上臨御

(三 )

二 、議 会 ノ解 散

一、 君 主制 ノ廃 止 、 民 主 共和 制 ノ樹 立

日本 共産 党 ノ主 要 ナ ル政 綱 ヲ述 フ レ ハ次 ノ如 シ

ト

界 ノ革 命 ヲ妨 害 ス ル モノ ナ ルヲ以 テ我 等 ハ之 ニ反 対 ス ル モノ ナリ

議 長 (倉 富) 之 ヨリ午 前 ニ引 続 キ開 会 ス 二十 三番 (石 黒) 本 案 ハ重 要 案 件 ナ リ ト考 ル ニ付 御 前 ニ於 テ 恐 レ 多 ケ レト モ質 問 ス ヘシ ) ︵審 一 査 報 告 ニ依 レ ハ ﹁前記 ノ犯罪 事 実 ニ 徴 スル ニ﹂ ト ア リ検 挙 ニ依 テ如何 ナ ル事 実 カ 明 カ ニナ リ タ ル ヤ

程委 員 会 ヲ開 キ タ ル ニ拘 ラ ス之 ヲ握潰 シト為 シ タ ル理由 如 何

) (本 二 案 ト同 趣旨 ノ法 律 案 ヲ第 五十 五 回帝 国 議 会 ニ提 出 シ既 ニ二回

七 、殖 民 地 ノ完 全 ノ独 立

六 、 支 那 革命 ノ不 干 渉

五 、 ﹁ソヴ ィ エト ・ロシア﹂ 国 ノ防 衛

四 、 天 皇 、 地主 等 ノ土 地 ノ無 償 没 収

三 、 一切 ノ反 労 働 者 農 民法 ノ撤 廃

リ﹂ ト、 其 ノ第 二号 ハ選 挙 終 了 後 ノ発 行 ナ ル ヲ以 テ此 次 ノ議 会 ヲ

図 ラ ムト スル ノ目 的 ニア ラ ス之 ヲ其 ノ内 部 ヨ リ 破 壊 セ ム カ 為 ナ

モ近 キ者 ヲ助 ケ テ議会 ニ送 ル ヘシ但 シ議 会 ニ依 リ テ立 法 ノ改 善 ヲ

問題 タ ル総 選 挙 ニ関 ス ル記 事 ヲ掲 ケ 曰 ク ﹁我等 ハ我 等 ノ主 張 ニ最

モ衆 議 院 議 員 ノ総 選 挙前 ノ本 年 二月 ノ発 行 ニ係 リ主 ト シテ当 面 ノ

ク為 ニ七百 万円 ヲ消費 ス ル金 ア ラ ハ寧 ロ之 ヲ労 働 者 ニ与 フ ヘク労

カ帝 国 議 会 ニ入 リ タ ル以 上 ハ御 大 典 ノ予 算 ニ反 対 ス ヘシ天 皇 ヲ戴

働 者 ハ之 ヲ要 求 シ居 レリ 我等 ハ斯 カ ル予 算 ニ ハ絶 対 ニ反 対 ナ リ我

解散 ニ導 キ由 テ全 国的 騒 擾 ヲ起 サ ム コト ヲ提 唱 シ又無 産 党 ノ議 員

括 シ更 ニ天 皇 ハ兵 馬 ノ大 権 ヲ握 リ参 謀 本 部 軍 令 部 ヲ設 ケ テ之 ニ従

ニ依 レ ハ君 主 制 ハ日本 ニテ ハ天 皇首 長 ト為 リ テ枢密 院 貴 族 院 ヲ統

事 セ シメ司 法 権 ハ天皇 ノ名 ニ於 テ裁 判 所 之 ヲ行 ヒ行政 権 ハ各 省 長

ヲ反 対 セ ム コト ヲ強 要 セ サ ル ヘカ ラ スト論 セリ其 ノ第 三号 ニ於 テ

等 ハ我等 ノ階 級 ノ利 益 ヲ保護 ス ル為 ニ選 出 シ タ ル議 員 ニ対 シテ之

君 主 制 ノ廃 止 ノ説 明 ハ実 ニ恐懼 ニ堪 ヘサ ル所 ナ ル モ彼 等 ノ謂 フ所

ヲ行 フ モノ ナ ルカ天 皇 ハ畢 竟 地 主 カ小作 人 ヲ抑 圧 ス ル必要 ノ為 ニ

官 天 皇 ノ下 ニ隷 属 シ テ之 ヲ行 ヒ立法 権 ハ議 会 ノ協 賛 ニ依 リ天 皇 之

大 衆 闘争 ヲ宣伝 セリ共 産 党 ノ大 検 挙 ハ此 ノ第 四号 ノ発 刊後 ニ断 行

﹁労 農露 国 ヲ守 レ﹂ ﹁共産 党 万歳 ﹂ ト記 セリ其 ノ第 四号 ニ於 テ ハ

ハ頻 ニ議 会 ノ解 散 ヲ主 張 シ且御 大 典 ニ反 対 シ社会 民 衆 党 カ果 シテ

ノ機 関 ナ リ故 ニ先 ツ天 皇 ヲ廃 シ枢密 院 、 貴 族 院 ヲ廃 止 シ議 会 ヲ解

セラ レタ ル モノ ナ ル カ其 ノ 八 日後 ノ三 月 二十 三 日 ニ ハ其 ノ第 五号

設 ケ ラ レ タ ル モノ ニシ テ天 皇 ア ル コト、 枢 密 院 、 貴 族院 ア ル コト 、

散 シ民衆 ノ手 ニ兵 馬 ノ権 ヲ モ握 ル ニ非 サ レ ハ到 底 ﹁プ ロ レ タ リ

ヲ発 行 シ共 産 党 検 挙 ノ非 ヲ鳴 シ斯 カ ル暴行 行 為 ニ対 シ テ ハ暴 行 行

ヘシト説 ケ リ 又朝 鮮 共 産党 ノ検 挙 ヲ非 難 シ テ其 ノ 解 放 ヲ 要 求 シ

ヤ﹂ ノ政 治 ハ行 ハレ難 シ即 チ君 主 制 ヲ廃 シ民衆 ノ手 ニ政治 ノ全 権

為 ヲ以 テ対抗 セサ ル ヘカ ラ スト煽 動 セ リ又大 検 挙 後 発 行 セ ル共 産

之 ニ反対 ス ルヤ否 ヤ ニ依 リ テ同 党 カ民 衆 ノ敵 ナ リ ヤ否 ヤ ヲ判 明 ス

ヲ収 ム ル コト カ民 主 政 治 ノ第 一歩 ナリ ト ノ 凶悪 非 道 ナ ル言 説 ヲ唱

党 ノ地方 機 関紙 タ ル ﹁赤 色信 越 ﹂ ニ於 テ モ大 不 敬 ノ言辞 ヲ 弄 シテ

ノ機 関 ニ ハ皆 資 本 家 ノ勢 力 多 分 ニ入 リ居 リ所 謂 ﹁ブ ルジ ョワ ー﹂

ヘ更 ニ彼 等 ハ戦 争 反 対 対 支不 干 渉 ヲ叫 ヒ来 ル ヘキ戦 争 ハ当 然 階 級

御 大 典 ニ反 対 セ リ其 ノ言 辞 ノ悪 逆 無 道 ナ ル到 底 之 ヲ爰 ニ述 フ ル ニ

兵 馬 ノ権 等 ハ孰 レモ君主 制 ノ立 派 ナ ル表 現 ニ外 ナ ラ ス而 シテ此 等

ニ打 克 タ サ ル ヘカ ラ ス ﹁ソヴ ィ エト ﹂露 西 亜 ヲ守 レ、 支那 革 命 ヲ

ナ リト ス

忍 ヒ ス以 上 ハ何 レ モ第 五十 五議 会 開 会 前 ノ発 行 ニ係 ル雑 誌 ノ記 事

戦争 ナ ラ サ ル ヘカ ラ ス吾 人 ハ世 界 ノ労 働 者 ヲ総 動 員 シテ 此 ノ戦 争

シ全然 帝 国 臣 民 タ ル ノ観 念 ナ キ者 ナリ

議 会 開会 ノ当時 ニ於 テ ハ三 月 ノ大 検 挙 ニ依 リ 共産 主 義 運動 ハ屏 熄

守 レ、 帝 国主 義 大 反 対 ト 云 フカ如 キ其 ノ思 想 ノ暴 逆 真 ニ言 語 ニ絶

又彼 等 ハ秘 密 ニ中 央機 関 紙 ﹁赤 旗 ﹂ ヲ発 行 セ リ其 ノ 第 一号 ハ時 恰

ハ勿論 秘 密 結 社 ニシ テ社員 名 簿 ノ存 ス ルナ ク只 右 ノ被 検 挙 者 ヲ以

局 ノ甚 タ遺 憾 ト ス ル所 ナリ 六月 二 十 五 日迄 ニ検 挙 セ ラ レ シ者 ハ累

人 ハ現 ニ東 京 ニ潜伏 ス ル形 跡 ア ル ニ拘 ラ ス之 ヲ検 挙 シ得 サ ル ハ当

ル者 四名 ア リ テ今尚 活 動 ヲ継 続 セ ル モノ ノ如 シ而 モ其 ノ内 ノ二 三

ス ヘシト思惟 シ タ ル モ該 党 ノ中 心人 物 七 名 ノ内未 タ逮 捕 セラ レサ

当 ノ脅 威 ナ ル コト ヲ認 メ得 ヘシ彼等 ハ又海 員 争 議 ヲ発展 セ シ メ日

出 兵 反 対 ノ記 事 ヲ掲載 セリ之 ニ依 レ ハ同 法 ノ改 正 ハ彼 等 ニト リ相

ヒ去 レト煽 動 セリ同 第 十 二号 ニ於 テ ハ主 ト シ テ治安 維 持 法 反 対及

ヲ守 レ、 出 兵 反 対 、反 対 同 盟 ヲ守 レ、 大 衆 行 動 ニ依 テ収 監 者 ヲ奪

ラ ス天 皇 ノ軍 隊 ナリ ト胡 魔 化 シ居 ル モノ ナ リ ト農 民 ニ宣 伝 シ露 国

同 第 十号ニ ハ支 那 出兵 ニ反 対 シ軍隊 ハ ﹁ブ ルジ ョア﹂ ノ モノ ニア

日 ノ発 行 ニ係 ル同 第 十 三 号 ニ於 テ ハ暴 力 革 命 ヲ力 説 シ之 ヲ農村 ニ

本 国 民 ヲ煽 動 シテ漸 次 国 体変 革 ノ運動 ニ導 カ ムト 図 レリ五 月 二十

計 四 百 五十 名 ニシ テ尚 捜 査 中 ノ者 百 二十 六 名 ナリ然 レト モ共 産党

ニ日本 国 民 タ ルノ考 ナ ク而 モ現 ニ日本 ノ領 土 内 ニ於 テ悪 逆 行 為 ヲ 継 続 シ ツツ ア ル以 上 ハ之 ヲ威 嚇 シ将 来 斯 カ ル妄 動 ヲ中 止 セ シム ル

ヲ為 シ大衆 行 動 ニ依 テ収 監者 ヲ取戻 セト煽 動 セ リ五 月 二十 日発行

宣 伝 セ ムト シ名 古 屋 ニ支 那出 兵 反対 ノ大 運 動 起 レリ ト虚 偽 ノ報 導

テ党 員 ノ大部 分 タ ル ヘキ ヲ推 定 スル ノ ミ彼 等 ハ前 ニ述 ヘシ如 ク已

為 重 刑 ヲ以 テ臨 ム ノ必 要 アリ ト考ヘ 本 案 ト同 趣 旨 ノ法律 案 ヲ議 会

終 ニ我 目 的 ヲ達 セ サ ル ヘカ ラ スト諭 シ解 散 ノ災 厄 ニ遇 ヘ ル我労 働

ノ同 第 十 四号 ニ ハ府 県会 議員 ノ選挙 ニ関 ス ル記 事 ヲ掲 ケ我 同 人 ハ

農 民 党 ヲ如 何 ニシ テ再 起 セ シム ヘキ カ ト謂 ヘリ同第 十 六号 (六月

ニ提出 シタ ル次 第 ナ リ然 ル ニ不 幸 ニシ テ第 五十 五 議 会 ハ之 ヲ議 了

然 ト シ テ妄 動 ヲ継 続 シ ツ ツ ア ル コト 判 明 セリ即 チ 四月 三 十 日 (議

四 日発 行 ) ニ於 テ ハ今 将 ニ出 兵 セ ムト スル者 ニ対 シ ﹁御 前 達 ハア

(五月 三 十 日発 行 ) ニ ハ合法 的 政党 ノ内 部 ニ侵 入 シ テ之 ヲ指 導 シ

会 開 会 中) ニ発 行 セ ル ﹁ 赤 旗 ﹂第 八 号 ニ ハ議 会 ニ関 ス ル論 説 ヲ掲

ノ支 那 ニ殺 サ レ ニ行 ク ノ タ、 家 族 ヲ見 舞 ツ テ ヤ レ、 忠 義 タ勇 士 タ

須 ク地 方 議会 ノ内 部 ニ入 テ之 ヲ破壊 セ ヨト煽 動 セ リ 同 第 十 五 号

ケ議 会 ヲ破 壊 ス ヘキ使 命 ヲ 有 スル無 産 党議 員 カ恭 シ ク天 皇 ニ拝 謁

ナト イ ツテ支 那 ニ殺 サ レ ニ行 クノ タ、 御 前 達 ノ命 ハ 一銭 五 厘 タ﹂

スル ニ至 ラ ス シテ閉 会 シタ ル ニ因 リ緊急 勅 令 ヲ以 テ之 ヲ立 法 ス ヘ

シテ云 々ト大 不 敬 ノ言 ヲ弄 シ御 大 典 ノ予算 案 ヲ協 賛 セ ル コト ヲ難

ト 暴言 ヲ吐 ケ リ

キ ヤ ヲ考慮 中 ノ所 共 産 党 ノ機 関 紙 ﹁赤 旗﹂ ノ 発見 ニ依 リ彼 等 ハ依

詰 シ何 カ故 ニ生 命 ヲ賭 シ テ議 会 大衆 ニ対 シテ ﹁アジ テ ー シ ョン﹂

彼 等 ノ主 義 宣 伝 其 ノ他 ノ運 動 ハ機 関 紙 ノ外種 々ノ 名称 ヲ有 ス ル文

書 ヲ以 テ セ リ此 等 ノ文 書 ノ探 査未 タ徹 底 セ サ ル モ其 ノ発 行 ハ相 当

ニ学 ヘ彼 等 ハ日 本軍 隊 マテ闖 入 シ テ打 倒 帝 国 主 義 ヲ宣伝 セリト テ 之 ヲ賞 揚 シ テ党 員 ヲ激 励 セ リ又 主義 ヲ同 ウ ス ル者 ハ総 テ我 等 ノ党

多 数 ニ上 リ且 広 汎 ニ流 布 セ ル モノ ト認 メサ ル ヘカ ラ ス実 ニ上来 叙

ヲ為 サ サ リ シカト無 産党 議 員 ニ対 ス ル攻 撃 ヲ為 セ リ又中 国 共 産 党

ヲ変 革 スル ニア ルヲ 以 テ力 ノ行使 ヲ必要 ト ス ト 謂 ヒ 且 ﹁エジ プ

員 ナ リ党 員 名 簿 ナト ア ル コト ナ シト豪 語 シ労 働 運動 ノ究 極 ハ国体

伝 シ其 ノ国 民 的 信 念 ヲ破 壊 シ国 体変 革 ヲ図 ラ ムト シ ツツ ア レ ハ是

述 ス ル所 ノ如 キ売 国奴 カ絶 エス悪 逆 無 道 ノ思 想 ヲ忠 良 ノ国 民 ニ宣

ト ﹂ ノ共 産 党 ニ対 ス ル同情 ノ記 事 ヲ掲 ケ タ リ次 ニ五 月 三 日発 行 ノ

ス ルナ リ

此 ノ如 キ刑 罰法 ノ改 正 ハ畢 竟 我同 胞 ヲ シテ犯 罪 処罰 セ ラ ル ル モノ

等 ニ対 シテ ハ厳 然 重刑 ヲ以 テ臨 ミ之 ヲ威 嚇 ス ルノ 必要 ア リ而 シ テ

ノ論 ア ル モ其 ノ必要 ニ付 テ ハ殆 ト 異論 ナ キ ヲ以 テ緊 急勅 令 ニシ テ

ト為 ル然 シ議 会 ニ於 テ ハ本 案 ヲ緊 急勅 令 ヲ以 テ ス ル ニ付 テ ハ可 否

爾 後 其 ノ効 力 ヲ失 フ コトト為 リ現 行 ノ治 安 維持 法 カ復 活 ス ル コト

得 ル考 ナリ 若 シ不 幸 ニシ テ之 ヲ得 ル コト能 ハサ ルト キ ハ本 勅 令 ハ

スル コト ニ付議 会 カ之 ヲ等 閑 ニ付 スヘ シト ハ考 ヘラ レ ス必 スヤ普

其 ノ承 認 ヲ得 サ ル コト ア ルモ国 体 ヲ危 ク ス ル行 為 ニ対 シ厳 罰 ヲ課

ナ カ ラ シム ル ニ在 ルヲ以 テ速 カ ニ緊 急 勅 令 ノ発布 ノ必 要 アリ ト信

細 ナ ル説 明 ヲ承 レ ルカ其 ノ行動 ハ第 十 六 号 迄 ノ新 聞 雑 誌 カ主 要 ナ

其 ノ原 因 遠 ク且 広 キヲ 以 テ各 方 面 ニ亙 リ官 民 一致 ノ戮 力 ヲ必 要 ト

次 ニ不 逞 ナ ル徒 輩 ノ撲 滅 ニ付 テ ハ如何 ナ ル方 法 ヲ執 ルヤト謂 フ ニ

通 ノ手 続 ニ依 テ現 行法 ハ改 正 セ ラ ル ル モノ ト信 ス

二十 三番 (石 黒 ) 共産 党 主 義 者 ノ妄 動 ニ関 シテ ハ司 法 大 臣 ヨ リ詳

ル モノ ナ リ ヤ雑 誌 ノ外 此 ノ如 キ事 ヲ為 セリト 云 フ事 実 ナ キ ヤ

リ

十 二番 (原 ) 大 衆煽 動 ノ為 諸 種 ノ名 ニ於 テ発 行 セ ル文 書 ハ多 数 ア

ス ヘク政 府 ニ対 ス ル枢 府 ノ御 注意 事項 ノ如 キ ハ洵 ニ適 切 且 必要 ナ

リ ト考 フ斯 カ ル不 逞思 想 ノ蔓 延 ハ 一般 国 民 ノ道義 ノ観 念 動揺 シ軽

ニ議 会 ニ於 テ治 安維 持 法 改 正案 カ審 議 未 了 ト 為 リ

シ コト ニ付 一言 申 上 ク ヘシ先 般 ノ議 会 ニ於 テ審 議 未 了 ニ終 リ シ ハ

先般 ノ検 挙 ニ依 リ テ弥 々明 白 ト 為 レ ルヲ 以 テ国 本 ヲ固 ク ス ル コト

佻 浮 薄 ト為 レ ル ニ乗 シ共 産 主義 運動 ヲ煽 動 ス ル者 ア ル ニ因 ル コト

五番 (小 川 )曩

甚 タ遺 憾 ト ス ル所 ナ リ之 ニ対 シ テ政 府 ハ何等 努 力 セ サ リ シ ヤ ニ申

最 モ必 要 ナ リ之 カ為 ニ ハ行 政 司法 立法 ノ各 方 面 ニ亙 リ テ官 民 一致

サ レタ ル モ政府 ハ之 ヲ重 要 ナ ル法 案 ナ リト認 メ開 会 ノ劈頭 ニ之 ヲ 提 出 シ テ其 ノ通 過 ニ努 力 シ タ ル モ不 信 任 案 ノ為 再 度 停 会 ト為 リ政

大学 又 ハ高 等学 校 ノ社 会 科 学 研究 会 新 人 会 等 ハ先般 之 ヲ解散 シ又

テ危 険 思 想 ニ感 染 シ動 モス レ ハ其 ノ実 行 運 動 ニ移 ルノ虞 アリ タ ル

教 授 ニシ テ多年 共産 主 義 ヲ宣伝 シ其 ノ実 行 ニ移 レ ル モノア リ シヲ

ノ協 力 ヲ必 要 ト ス ヘシ就 中 教育 ノ改 革 ハ肝 要 ナリ ト信 ス学 生 ニ シ

リ モ審議 未 了 ニ為 シタ シトノ申 出 ア リ依 テ反 対 党 ノ安 達氏 ト モ会

反 対 党 ノ幹 部 ハ之 ヲ握 潰 ス コト ニ決 シタ ル旨 ヲ告 ケ 又中 立 議 員 ヨ

以 テ之 ヲ辞 職 セ シメ タ リ教 育 ノ内 容 ニ付 テ モ鋭 意 調 査 ス ル所 ア リ

シテ本案 ノ必要 ナ ル所 以 ヲ説 明 シ了 解 セ ラ レタ ル如 ク見 エタ ル モ

見 シテ其 ノ議了 方 ヲ懇 談 セ シ モ握 潰 ニ スルト ノ コト ナ リキ而 モ委

シテ大 ニ社 会教 育 行 政 ニ尽 力 ス ル考 ナ リ青年 訓 練 ノ事 ニ付 テ モ 一

又学 校 ノ教 育 ヨリ モ社 会 教 育 ノ大 切 ナ ル コト ヲ感 得 シ 一局 ヲ新 設

府 ト シ テ出 来 ルタ ケ努 力 ヲ為 シ司 法 大 臣 ハ法 案 ノ委 員 長 ト モ会 見

員 会 ニ於 テ実際 上 勝敗 ノ鍵 ヲ握 ル モノ ハ中 立委 員 ナ ル カ其 ノ内 ニ

付 テ モ政 府 ハ貧 困者 救 護 法 ヲ設 ケ 又陸 海 軍 ノ下 士 兵 ノ給 与 モ尚 一

層 力 ヲ入 レ青年 ノ思 想 ヲ正 ス コト ニ努 力 ス ヘシ国 民 生 活 ノ安 定 ニ

モ審 議 未 了 ノ希 望 者 ア リ シ ヲ以 テ仮 令 会 期 ノ延 長 ヲ奏 請 ス ル モ審 議 未 了 ニ終 ル ハ必定 ナ リ ト認 メタ ル カ故 ニ敢 テ会 期 延 長 ノ奏 請 ヲ

層 ノ厚 遇 ヲ与 ヘムト ス 一般 人 ノ階 級 的 反 目 ヲ助 長 ス ルカ如 キ行 動

為 サ サ リ キ次 ノ帝 国 議 会 ニ於 テ若 シ本 令 カ承 認 セ ラ レ サ ルト キ ハ 如 何 ニ ス ルヤト ノ御 質 問 ナ ルカ政 府 ハ何 処 マテ モ努 力 シ テ承 認 ヲ

際 関 係 ハ今 回 ノ事件 発 覚 以来 深 キ注 意 ヲ払 ヒ ツツ ア ル モ今 後 ハ尚

アリ シ ヤト 考 フ ルヲ 以 テ之 ニ対 シテ モ十 分 ニ取 締 ル方 針 ナ リ 又国

サ ムト ス ル小作 争 議 、 学 校 騒動 、 労 働 運動 ノ取 締 上 ニモ遺 憾 ノ点

ヲ戒 ム ル コト モ全 ク同 感 ナリ 又近 来 団 体 ノ暴 力 ニ依 リ テ我意 ヲ通

大 ナ ル関 係 アリ余 ハ斯 カ ル区別 ヲ為 ス コト ニ反 対 ス

レ ハ此 ノ両 者 ニ対 シテ ハ別異 ノ刑 罰 ヲ課 スル ヲ以 テ 此 ノ区 別 ハ重

モ現 行 法 通 リ ナ レ ハ之 ヲ区別 ス ル モ何 等 実 害 ナ キ モ本 改 正案 ニ依

認 スル ニ到 ル モノ ナリ之 ヲ 区別 シ タ ル ハ何 カ ノ間違 ニ非 サ ル ヤ尤

ア リ ヤ余 ノ見 解 ニ ヨレ ハ私有 財 産制 度 ヲ否 認 ス ル結 果 ハ国体 ヲ否

ハ衆 議 院 ニ付 テ ノ事 ナ リ若 シ顧 問官 ニ付 テ謂 ヒシト セ ハ之 ヲ取消

五番 (小川) 本 案 ノ内 容 ニ付 テ ハ殆 ト反 対 者 ナ シト認 ム ト 謂 ヘ ル

一層 ノ注意 ヲ払 フ ヘシ近 年 ノ我警 察 制 度 及其 ノ働 ニ付 テ ハ甚 タ遺

必要 ト ス ル処幸 ニ シ テ曩 ノ議会 ノ協 賛 ニ依 リ相 当 ノ予 算 ヲ得 タ ル

アリ タ ルト キ ハ其 ノ事 実 ニ基 イ テ之 ヲ取 消 スノ外 ナ シ余 ハ嘗 テ社

モ後 者 ノ掲 ク ル政 綱 カ適 法 ナ ル以 上之 ヲ許 スノ外 ナ ク違 法 ノ事実

労 農 党 ヲ禁 シ テ社 会 民 衆 党等 ヲ禁 セサ ル ハ如 何 トノ御 質 問 ナ レト

十 二番 (原 ) 煎 シ詰 ム レ ハ無産 党 ノ目 的 ハ同 一ナ リ然 ル ニ唯 独 リ

ス ヘシ

憾 ノ点 ア リ已 ニ思想 的 犯 罪 ヲ発 生 シタ ル今 日 ニ於 テ ハ特 ニ改 革 ヲ

ヲ以 テ此 ノ際制 度 ヲ改 善 シ テ其 ノ機 能 ヲ十 二分 ニ発 揮 セ シメ ム コ ト ヲ期 セ リ図書 検 閲 モ亦 将来 ハ十 分 ナ ル効果 ヲ上 ケ得 ヘシト思 料 セリ

議 長 (倉 富) 意 見 ノ陳 述 ハ後 ニセ ラ レタ シ

会 民衆 党 ノ党首 カ 明治 大 帝 ノ御 製 ヲ引 用 シテ感 泣 セ シ コト ヲ共産

三十 番 (江 木 ) 意 見 ヲ陳 述 シ テ宜 シキ ヤ

ハ間 違 ナリ 自 分 ハ十分 ノ反 対意 見 ヲ有 セリ 現行 治安 維 持 法 ニ ﹁国

二十 九 番 (松 室) 本 案 ノ内 容 ニ付 テ ハ顧 問 官 中 一人 ノ反 対 ナ シ ト

ニ止 ラ ス今 日 ノ所 謂 社 会 主義 ヲ モ含 ム コト ト為 ル ヘシ当 局 ノ所 見

政 府 ハ之 ヲ如 何 ニ解 セ ルヤ此 ノ 用語 ハ意 味頗 ル広 ク独 リ共産 主義

土 地 ハ総 テ国有 ト為 シ タ ル制度 ア ル ノ ミナ ラ ス同 一ノ行為 ニシ テ

従 テ之 ヲ区 別 ス ル モ必 スシ モ不 可 ナ ラ スト信 ス我 国 ニ於 テ モ古 来

事 実 上 ノ行 動 ハ兎 モ角 主 義 ト シテ両 者 ハ独 立 スル モ ノト考 フ ヘク

ノ変 革 ト私 有財 産 ノ否 認 ト ヲ区別 ス ル ハ解 シ難 シト ノ コト ナ ル モ

党 カ攻 撃 セ シ コト ヲ聞 キ テ矢張 日本 国 民 ナ リ ト考 ヘタリ次 ニ国 体

如 何 余 ノ見 ル所 ヲ以 テ スレ ハ今 日許 サ レ居 ル社会 民 衆 党其 ノ他 ノ

体 ヲ変 革 シ又 ハ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ目的 ト シ﹂ ト ア リ

諸 党 ハ孰 レ モ曩 ニ解 散 セ シ メ ラ レタ ル 労働農 民党 等 ト択 フ所 ナ ク

ル コト ナ シ

二 十九 番 (松 室) 司 法 大 臣 ノ言 ハ ルル私有 財 産 制 度 ノ否 認 ト 余 ノ

両個 ノ罪 名 ニ触 ル ルト キ ハ重 キ ニ依 テ処 断 ス ルヲ以 テ何等 妨 ケ ア

読 セ ハ自 ラ明瞭 ト為 ル ヘシ其 ノ謂 フ所 ハ合法 的 手 段 ニ依 ル社 会 ノ

テノ財 産 ノ私有 ヲ否 認 スルノ義 ナ ラ サ ル ヘカ ラ ス

夫 ト ハ意味 異 ルト考 フ私 有 財産 制 度 ノ否 認 ト ハ土 地 ノ ミナ ラ ス総

皆 均 シ ク共産 党 ヲ以 テ目 ス ヘキ モノ ナ リ此 ノ事 ハ彼 等 ノ政綱 ヲ 一

改 革 ニシ テ 一見 温 和 ナ ルカ如 ク ナ ル モ帰 ス ル所 ハ共 産 主義 ニ同 シ

十 二番 (原 ) 余 ハ総 テ ノ土 地 ヲ国 有 ト シタ ル大 化 ノ法 制 ハ財 産 即

然 ルニ 一 方 ハ之 ヲ禁 止 シ他 方 ハ之 ヲ許 ス理由 如 何 而 シテ本 改 正案 ニ於 テ国 体 ノ変 革 ト私 有 財産 制 度 ノ否 認 ト ヲ 区別 ス ル理由 奈 辺 ニ

チ土 地 ナ リ シ時 代 ニ行 ハレ タ ルヲ 以 テ私 有 財 産制 度 ノ否 認 ト 同様

当 然 ナ リ ト解 ス政 府 ノ所 見 如 何

ナ ル法 案 ハ勅 令 ニ依 ラ ス臨 時 議 会 ニ提 出 シ テ其 ノ協 賛 ヲ求 ム ルカ

十 二番 (原 ) 憲 法 第 八条 ニ ハ ﹁公 共 ノ 安全 ヲ保持 シ又 ハ其 ノ災 厄

ナ リト 考 フ共産 主 義 共 和 国 タ ル露 国 ニ於 テ モ総 テ ノ財 産 ニ対 ス ル 私 有 権 ノ否 認 ハ為 サ サ ル ナリ

ル ヘキ勅 令 ヲ発 ス﹂ ト ア リ テ緊 急勅 令 ヲ出 ス ニハ帝 国 議 会 ノ閉 会

ヲ避 ク ル為 緊 急 ノ必要 ニ由 リ帝 国議 会 閉 会 ノ場 合 ニ於 テ法律 ニ代

ノ場 合 ナ ル コト ヲ要 ス ル モ帝 国議 会 ヲ召 集 ス ルヲ要 セ サ ル ヲ以 テ

十 九 番 (久 保 田) 鉄 道 大 臣 ノ御説 明 ハ各 省 ノ行政 ニ関 シ 而 モ其 ノ

之 ヲ召 集 セ サ ル モノ ナ リ

既 往 将 来 ニ亙 レ ルカ右 ハ大 臣単 独 ノ所 見 ナリ ヤ又 ハ内 閣 ノ所 見 ナ リ ヤ承 知 シ タ シ本 官 ハ極 刑 ヲ盛 レ ル本 案 ノ如 キ重大 法 案 ヲ今 急 イ

ハ任 ヲ枢 密 院 ニ受 ケ シ以 来 這 次 ノ如 キ奇 妙 ナ ル報 告 ニ接 シタ ル コ

三十 番 (江木 ) 本員 ハ先 ツ委 員 長 ノ報 告 ニ付 テ意 見 ヲ述 ヘ ム本 員

テ制 定 スルノ 必要 ナ シト 考 フ ル者 ナ リ仮 問 ス現 行治 安 維 持法 ノ制

ル ニア ラ ス ヤ刑 法 素 ヨリ其 ノ要 ナ シト言 ハサ ル モ尚 他 ニ幾 多 ノ大

ル治 安 維 持 法 中改 正法 律 案 ヲ第 五十 五回 帝国 議 会 ニ提 出 シ緊 急 ノ

ト ナ シ其 ノ所謂 警 告 ノ 一項 ヲ見 ル ニ ﹁政 府 ハ曩 ニ本 案 ト 同趣 旨 ナ

定 ニ依 リ テ何等 ノ効 果 ア リ シ ヤヲ暴 戻 不 逞 ノ徒 ハ反 テ益 々増 加 セ

切 ナ ル施 設 ア ル ヘク各自 一致 之 ニ当 ルト キ ハ必 スヤ本案 ノ制 定 以

必 要 ア ル ニ拘 ラ ス議 会 ヲ シ テ之 カ審 議 ヲ尽 サ シム ル為 会 期 延長 ノ

上 ノ効果 アラ ム強 イ テ天 下 ノ物 議 ヲ排 シ テ急 遽 斯 カ ル重要 法 令 ヲ 制 定 ス ル ノ必要 ナ キ ニア ラ ス ヤ

刑 罰 ノ威 力 ノ足 ラ サ ル モ ノト認 メ ラ ル ル ヲ以 テ此 等 ノ徒 輩 ニ対 シ

ル者 ニシ テ再 ヒ不 逞 ノ所 為 ニ出 テタ ル者 少 カ ラ ス思 フ ニ之 レ畢竟

ナ リト 思 惟 ス今 次 ノ被 検 挙者 ノ中 ニ ハ曩 ニ 一旦検 束 放 免 セラ レタ

ノ 一端 ト シ テ厳 刑 ヲ有 ス ル治 罪法 ノ厳 存 ス ル コト モ亦 極 メ テ必要

九 番 (久 保 田) ノ御 所 見 ハ全 ク同 感 ナ リ然 レト モ事 犯 防遏 ノ対 策

五番 (小 川 ) 危 険 ナ ル思 想 及 行為 ニ対 スル根 本的 対策 ニ関 ス ル十

法 第 八条 ハ此 ノ如 キ場 合 ニ之 ヲ適 用 ス ヘカラ ス現 ニ議院 ニ於 テ未

ハ委 員 ノ多 数 ト同 シク余 リ ニ第 八条 ノ文字 ニ拘 泥 シタ ル考 ナ リ憲

ト ヲ予 期 セ ル モノ ニア ラ ス司法 大 臣 ノ御 答弁 ニ議 会 閉 会 中 ト ア ル

ト セ ハ帝 国 議会 ハ全 ク無 用 タ ル ヘシ然 レト モ我 憲 法 ハ此 ノ如 キ コ

条 ニ基 キ僅 ニ十幾 名 ノ顧 問 官 ニ依 テ之 ヲ可決 スル コト ヲ得 ル モノ

サ ルヤ若 シ夫 レ議 会 ノ会 期 ヲ延 長 シ テ其 ノ議 決 ヲ求 メ ス憲 法 第 八

謂 ハサ ル ヘカ ラ ス﹂ ト果 シ テ然 ラ ハ何 ソ其 ノ当 ヲ得 ル モノ ト為 サ

ヲ以 テ斯 ノ改 正 ヲ行 ハムト ス ル ハ其 ノ挙 措甚 タ当 ヲ得 サ ル モノ ト

ノ ミ ナ ラ ス爾後 荏 苒 月 余 ノ曰 子 ヲ隔 テ タ ル今 日 ニ至 リ テ漸 ク本 案

如 キ適 宜 ノ処 置 ヲ講 ス ル コト ナ ク徒 ニ之 ヲ未 議 了 ニ終 ラ シメ タ ル

テ ハ死 刑 ノ存 在 ノ非 常 ナ ル効 果 ア ル ヘキ ハ争 フ ヘカ ラ ス又他 面 ニ

議 了 ニ終 ラ シメ タ ル法 案 ヲ枢密 顧 問 ノ議 ニ付 シ立 法 ス ルカ如 キ ハ

意 思 ヲ述 ヘタ ル モノト 考 ヘラ レタ シ

四番 (田中 ) 鉄 道 大 臣 ヨリ 只今 陳 述 シタ ル コト ハ総 テ総 理 大 臣 ノ

ル ノ効 ア ル モノト 信 ス ルナ リ

議 会 ノ否 認 ナリ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス此 ノ法案 ノ成 立 カ仮 令 十 日廿

於 テ ハ共産 党 ノ恐 ル ヘキ モノ ナ ル コト ヲ現 示 シ思想 批 判 ノ標 準 タ

二 十 一番 (井 上) 本案 ハ緊 急 ヲ要 スト ノ コト ナ ル モ此 ノ 如 キ 重 大

条 ニ基 キ立 案 シ タ ル緊急 勅 令 案 ヲ本 院 ニ於 テ審議 ス ル際 議 会 召集

尤 ナ レト モ要 ス ル ニ事 情 ニ過 キ ス先 年 若 槻 内 閣 ニ於 テ憲 法 第 七 十

テ之 ヲ議 決 セ シ ム ヘキ ナ リ鉄 道 大臣 ノ述 ヘラ レタ ル事 情 ハ洵 ニ御

日 遅延 ス ルモ何 ノ支障 カ之 ア ラ ム宜 シク国 民 ノ代表 タ ル議 会 ニ於

年 ニ於 テ ハ鎖 国 ノ夢 俄 カ ニ破 レテ急激 ナ ル改 革 甚 タ少 カ ラ ス明 治

観 念 ノ涵 養 ニ御 心 労 ア ラ セラ レ シ コト ハ実 ニ深 甚 ナ リ キ明治 ノ初

ノ改 正 ヲ待 ツ コト 能 ハサ ル程 脆 弱 ナ ル国 体 ニ非 ス明治 大 帝 ノ国 体

ム ル コト宏 遠 ニ徳 ヲ樹 ツ ル コト深 厚 ニ シテ次 ノ議会 迄 治 安 維持 法

スル罪及 内 乱 ノ罪 ニ関 シ テ ハ夫 々刑法 ノ規 定 ア リ又皇 国 ハ国 ヲ肇

ル共 和 主義 基 督 教 主 義 ノ モ ノ ヲ用 ヰ又 地 方 ニ於 テ ハ仏 国 民法 ヲ以

ヲ不能 ナ ラ スト為 シ其 ノ召 集 ヲ行 フ ヘキ旨 ヲ論 及 シタ ル際 政府 ハ

テ修 身 書 ト 為 セ ル モノ ア リ キ加 之 上 流 社 会 ニ ハ ﹁ルソ ー﹂ ノ民 約

﹁バイ ブ ル﹂ ノ教 義 ヲ容 レ中 学ニ 於 テ ハ ﹁ア メリ カ﹂ ニテ出 来 タ

情 ニ依 テ左右 ス ヘキ モ ノ ニア ラ ス抑 モ我憲 法 第 八 条 ハ敢 テ臨 時 議

説 流 行 シ殆 ト自 由 ノ乱 用 ヲ是 レ競 フ ノ有 様 ニシテ大 帝 ノ叡 慮 ヲ悩

五 年 学制 発 布 ノ際 ハ仏 国 ニテ出来 タ ル小学 教 科 書 ヲ 用 ヰ テ 全 ク

会 ノ召 集 ヲ禁 止 ス ルモ ノ ニア ラ ス今 日 ノ如 キ 必要 ニ臨 ミ テ コソ臨

シ給 ヒシ コト 一通 ナ ラ サ リ キ其 ノ後 文 部 大 臣 ハ教 員 心 得 ナ ル モノ

若 シ今 議 会 ヲ召 集 セ ムカ 我財 界 ハ非 常 ニ混 乱 ニ陥 ル ヘシト陳 弁 力

時 議 会 ハ之 ヲ 召集 ス ヘキ ナ レ之 カ憲 法 ノ真精 神 ナ リト 信 ス之 レ本

ヲ発 布 シテ ﹁人 ヲ導 キ テ善 人 タ ラ シム ル ハ多 識 ナ ラ シム ル ヨリ更

メ タ ル コト ア ル モ是 モ事情 ニ過 キ ス憲 法 ノ解 釈 ハ元 ョリ斯 カ ル事

ム ニ本 官 ハ本 案 ノ勅 令 ヲ憲 法 第 八条 ニ依 リ テ発 布 ス ル コト ニ ハ不

官 カ委 員 会 ニ於 テ本 案 ニ同意 セサ リ シ所 以 ナリ之 ヨリ本論 ヲ述 ヘ

ニモ拘 ラ ス御 政 所 ニ出 御 ア リ侍 従 長 ヨリ起 案 者 タ ル本員 ヲ呼 出 シ

則 ノ改 正 ヲ為 シタ ル カ其 ノ改 正 案 ノ御手 許 ニ達 ス ル ヤ日曜 日 ナ ル

ニ緊要 ナ リ教 員 タ ル モノ ハ道徳 教育 ニ力 ヲ用 ヰ君 ニ忠 ニ国 ヲ愛 シ

リ タ ル ニ見 テ明 白 ナリ然 ラ ハ特 別議 会後 ニ緊 急 ノ事 情 発 生 シタ ル

其 ノ第 一項 ヨリ逐 条 侍 従 長 ヲ以 テ御 下問 ア リ シカ歴史 ノ所 ニ到 リ

云 々﹂ ト 云 ヘリ大 帝 モ之 ヲ御 覧 シイ ト御 満 足 ニ思 召 サ レ シト ノ コ

ヤト 云 フ ニ政 府 ノ説 明 ニ依 ル モ唯単 ニ出 所 不 明 ノ雑 誌 カ引 続 キ発

テ ﹁日本 ノ歴 史 ニ ハ戦 争多 キ カ斯 ル コト ニ テ尊 王 愛 国 ノ観 念 ヲ養

同意 ナ リ緊 急 ノ必要 ナ シト 認 ム ル モノ ナ レ ハナリ蓋 シ政 府 ノ考 モ

行 セ ラ レタ ル外 何 等変 リ タ ル コト ヲ認 メ ス而 シ テ此等 ノ事 実 タ ル

成 ス ル コト ヲ得 ヘキ ヤ戦 争 ヲ好 ム ニ至 ル コト ナ キ ヤ建 国 ノ事 実勤

亦 茲 ニ在 リ シ コト ハ衆 議 院 ノ速 記 ニ依 ル モ司 法大 臣 カ 一言 モ緊急

ヤ司法 大臣 モ議 会 ニ於 テ今 後 モ斯 ノ如 キ事 件 ハ出 来 ス ル モノト 考

倹 ノ事例 其 ノ他 適 当 ノ事 例 ナ キ ニ非 ル ヘシ再 考 シテ ハ如何 ﹂ ト ノ

ニ達 シ無 上 ノ面 目 ヲ施 シタ ル コト アリ 次 テ明 治 十 四年 ニ到 リ テ教

フ ル カ故 ニ本 改 正法案 ノ必要 ア リト述 ヘタ ルカ如 ク当時 ヨリ予 想

御 上 意 アリ恐 懼 直 ニ退 下 シ小中 村 清 矩 等 ト相 談 ノ上建 国 ノ大 業 ニ

ト ナリ此 ハ当 時 一等属 ナリ シ本 官 ノ執 肇 ス ル所 ナ ルカ其 ノ事 天聴

サ レ タ ル事 柄 ニシ テ何等 緊 急 ノ新 事 情 ト 云 フ ヘカ ラ サ ル ハ勿 論 ナ

ノ法案 ナ ル コト ヲ述 ヘサ リ シ コト及 法 案 自 体 ニ於 テ特 ニ施 行 期 日

リ又 之 ヲ治 安 維 持 法 ノ性質 ヨリ考 フ ル モ冬 ノ議 会 ヲ待 ツ コト能 ハ

筆 ヲ起 シ夫 々適 当 ニ内 容 ヲ修 正 シテ天 覧 ニ供 シタ ル ニ是 レ亦 非 常

ヲ掲 ケ ス即 チ公 布後 二 十 日 ニシ テ施 行 ス ヘキ普 通 ノ法 律 ノ例 ニ依

サ ル程 ニ急 ヲ要 ス ル モノト ハ思 惟 シ難 シ畏 レ多 ケ レト モ皇室 ニ関

ニ御 満 足 遊 ハサ レタ リ当 時 ハ国 内頗 ル不 穏 ナ ル モ ノ アリ シカ大 帝

府 ノ考 慮 ヲ切望 ス ル所 以 ナリ

言 ス ヘ シ本案 ノ 重要 ナ ル コト ハ言 フ迄 モ無 ケ レト モ問 題 ハ至 テ簡

二十 二番 (平 山) 本 官 モ本 案 ノ審 査委 員 ノ 一人 ナリ シ故 ヲ 以 テ 一

ス本 官 ハ国 家 ノ大 局 ヨリ見 テ緊 急 勅 令 ニ依 ル コト ヲ可 ト ス ヘシト

単 ナ リ議 会 ノ会 期 延 期 ノ有無 ハ本案 ノ可 否 ヲ決 ス ル ニ ハ重 要 ナラ

ハ地 方 御 巡幸 ヨリ還 御 ノ即 日即 チ同 年 十 月 十 三 日 ノ暮 夜 御 前 会 議

軍 人 勅 諭 ヲ又 同 二十 三年 教 育 勅 語 ヲ下 賜 セ ラ レ殊 ニ憲 法 ノ発 布 ニ

ヲ召 集 セ ラ レ翌 十 四 日国 会 開 設 ノ詔 勅 ヲ発 セ ラ レ翌年 幼 学 綱 要 竝

由 リ愈 々民 心 ノ帰 向 定 マリ国 体 ノ観 念 明徴 ト 為 レリ 然 ル ニ世 界 大 戦 後 露 国 ニ革命 アリ共 産 主 義 ヲ実行 セル モ何等 見 ル ヘキ結 果 ナ ク

ナ リ本 官 ハ既 ニ公 共 ノ安 全 ノ為 緊 急 ノ必 要 ア ル以上 憲 法 第 八条 ニ

ヒ 一日 ニテ モ早 ク之 カ防 遏 ノ方 法 ヲ講 スル ノ要 ア リ ト考 フ ルカ故

少 ノ動 揺 ヲ来 ス モ彼 ノ ﹁ル ソ ー﹂ ノ 民約 説 ト同 シ ク雲 散 霧 消 ス ヘ

モ早 ク本 案 ヲ実 施 スル ニ到 ラ ム コト ヲ望 ム者 ナ リ敢 テ多 言 ヲ用 ヰ

依 リ テ此 ノ勅 令 ヲ発 布 ス ル ハ固 ヨリ当 然 ナリ ト信 ス ル ヲ以 テ 一日

考 フ ル者 ナリ蓋 シ政 府 当 局 ヨリ 共産 党 発 展 状 況 ノ報 告 ヲ聴 ク ニ及

キ ヲ信 シ テ疑 ハサ ルナ リ斯 ノ如 キ悪 逆 非 道 ノ思 想 及 行動 ハ元 ヨリ

各 国 ハ何 レ モ之 ヲ蛇 蝎 視 セル ノ現状 ナ リ仮 令 一時 国 民 ノ思 想 ニ多

之 ヲ撲 滅 セ サ ルヘ カ ラ ス之 ニ対 ス ル ニ極 刑 ヲ以 テ ス ル元 ヨリ不 可

案 ヲ決 定 ス ル ニ考 慮 ス ヘキ点 ニア リ 一 ハ緊 急 ノ必要 ア リ ヤ否 ヤ ノ

二 十 九番 (松室 ) 本 官 モ本 案 ニ対 スル反 対意 見 ヲ述 ヘタ シ抑 モ本

ル ノ要 ナ シ

スル ノ必 要 ナク 又其 レ程 ノ緊 急 ナ ル必 要 ナ シト思 惟 スル モ ノ ナリ

ナ シ唯 極 刑 ヲ認 ム ル立 法 ヲ枢 密院 ニ於 テ多 数 決 ニ依 リ テ マテ強行

時 恰 モ大 赦減 刑 ヲ見 ル ヘキ大 礼 前 ニ於 テ強 テ斯 カ ル極 刑 法 ヲ発 布

ニ ハ調 査 ノ手 足 ナ キノ故 ヲ以 テ政 府 カ緊 急 ノ必 要 ア リ ト認 メ テ証

点 ニ シ テ他 ハ案 自 体 カ適 当 ナ リ ヤ否 ヤノ点 ナ リ動 モ ス レ ハ枢 密 院

拠 物件 ヲ示 ス以 上 之 ニ従 フ ノ外 ナ シト ノ意 見 ヲ有 ス ル者 ア レト モ

スル モ其 ノ効 果 ニ付 テ ハ大 ニ考 慮 ヲ要 ス ル モノ ア リ之 ヲ例 ヘ ハ彼

是 レ誤 ナ リ本 官 ハ枢密 院 ニ ハ其 ノ有 無 ヲ認 定 ス ヘキ独 立 ノ権 限 ア

ノ大 逆 犯 人 タ ル幸 徳 ノ遺 族 ヲ教育 シタ ル知 人 ノ談 ニ聞 ク モ如 何 ナ ル努 力 モ彼等 ヲ教 化 遷 善 セ シ ム ル コト能 ハス僅 ニ姉 妹 ノ 一人 ノ外

チ足 リ其 ノ調 査 ノ結果 カ人 ニ依 リ本官 ハ政 府 提 出 ノ材 料 ニ ヨリ反

何 レ モ共 産思 想 ニ陶 酔 セリ ト ノ コト ナ リ兎角 主 義 者 ヲ極 刑 ニ処 シ

テ反 対 ノ 心証 ヲ得 タ ル者 ナ リ憲 法 第 八条 ハ議 会 ノ開 会 中 ニ起 ラ サ

キ証憑 ヲ提 出 スル ノ義 務 ア ル ヲ以 テ枢密 院 ハ唯 之 ヲ調 査 スレ ハ則

ノ感念 ヲ持 タ シ ム ル コトカ 必要 ナ リ従 テ宜 シク之 ヲ国 民 ノ代 表 タ

リ シ事 件 ニ シテ閉 会後 ニ突 発 シ緊急 ノ必要 ア ル場 合 ハ緊 急 勅 令 ヲ

リ ト考 フ而 シテ政 府 ハ其 ノ認 定 ノ材 料 即 チ政 府 ノ主 張 ヲ立 証 ス ヘ

ル帝 国 議 会 ニ付議 ス ヘキ ナリ加 之 我 国 体 ハ今 日急 ニ緊 急 勅 令 ヲ 以

タ ル後 ハ宜 シカ ラ サ ル ヤノ感 ア ルヲ以 テ此 ノ如 キ法 ノ制 定 ニ際 シ

テ治 安 維 持法 ヲ改 正 セ サ レ ハ之 ヲ維 持 ス ル コト ヲ得 サ ル カ如 キ脆

ル事情 ノ発 生 カ議 会開 会 中 ナ ルト キ ハ固 ヨリ当 然 ノ コト ナ リ然 ル

発 ス ル コト ヲ 得 ル旨 ヲ規 定 セ ル モノ ナ ルヲ以 テ本案 提 出 ノ事 由 タ

テ ハ最 モ慎 重 ノ態 度 ヲ持 シ先 ツ国 民 一般 ヲ シ テ極 刑 已 ム ヲ得 スト

ノ聖 代 ニ 一 ノ汚 点 ヲ残 ス コト アリ テ ハ甚 タ遺 憾 ナ リ是 レ本 官 カ政

弱 ノ モ ノ ニ非 サ ル ニ拘 ラ ス今 強 イ テ急 遽 緊 急勅 令 ヲ発 布 シ テ昭和

ヲ本 院ニ 提 出 セ ル モノ ナ ルカ其 ノ提 出 ノ事 由 タ ル事情 ハ議 会 開 会

会 後 数 十 日 ヲ経 過 シ タ ル今 日 ニ到 リ緊急 ノ必 要 ア リト 称 シテ本案

然 ル ニ拘 ラ ス政 府 ハ之カ 議 了 ヲ図 ル為 会 期 延 長 ノ手 続 ヲ執 ラ ス閉

本 案 ト同 様 ノ法 律 案 ヲ議 会ニ 提 出 シ タ ル モ遂 ニ未 議 了 ニ終 リ タリ

本ニ 案 提 出 ノ事 由 タ ル共 産 党事 件 ノ発 生 ハ議 会 ノ開 会 前 ナリ シ為

人 ハ将来 謹 慎 ス ヘキ コト ヲ誓 約 スルト キ ハ禁 錮 ヲ許 スト判 決 セ ル

罪 ヲ犯 シタ ル事 件 アリ シ カ裁 判 所 ハ内 五人 ヲ 一年 ノ禁 錮ニ 処 シ七

又 英 国 ニ於 テ モ大 正 十 四年 十 一月 頃 共産 党 員 十二 人結 合 シ テ或 犯

ナリ

酷ニ 過 ク ル ハ害 ア ル モ益 ナ シト ノ見解 ヲ以 テ之 ヲ加 重 セ サ ル モノ

年 以 来無 政 府 主 義 共産 主 義 ノ為 苦 シメ ラ レ来 レリ然 レト モ課刑 ノ

ス ル モ五年 以 上 ノ懲役ニ 処 ス ル コト ナ シ但 シ同 国 ニ於 テ モ過 去 百

破ニ 壊 セ ラ ル ルカ如 キ脆 弱 ノ モノ ニ非 ス社会 主義 ハ只 青年 等 ニ ハ

以前 ヨリ継続 セ ル モノ ニシ テ議 会 ノ閉 会後ニ 至 リ何 等 新 規ニ 緊 急

危 険 ナ ル モ事 理 ヲ解 スル者 ニ ハ決 シテ恐 ル ル ニ足 ラ サ ルナ リ然 シ

有 様 ニシ テ決 シテ我 国 ノ如 ク周章 セ ス我 国体 ハ外 来 思 想 ノ為 容 易

当 局者 ハ本勅 令 ノ発 布 ハ将来 共 産 党ニ 加 入 ス ル者 ヲ阻 止 ス ルノ効

ノ 必要 ヲ生 シタ ル モノ ニ非 ス之 レ本 官カ 本案 ヲ以 テ違 憲 ナリ ト為

力 ア リ ト 云 フ モ法 ハ元 来 死 物 ニ シ テ之 ヲ働 カ ス モノ ハ捜 査 ナリ捜

ク セサ ル モ憂 フ ル コト ナ シト思 フ

油 断 ハ不 可 ナ ル ヲ以 テ十 分 捜 査 ノ方 ニ力 ヲ尽 サ ハ必 スシ モ刑 ヲ重

ス所 以 ナ リ

ノナ リ今 日 ノ如 ク捜 査 微 力 ナ ルト キ ハ死 刑 ヲ以 テ臨 ム モ犯 人 ハ免

査徹 底 シテ犯 罪 必罰 ノ実 ア ルト キ始 メ テ法 ハ真 ノ威 力 ヲ生 ス ル モ

レ テ罪 ナ カ ラ ム コト ヲ恃 ミ敢 テ新法 ヲ恐 レサ ル ヘシ之 ニ反 シ テ捜

ハ十分ニ 施 行 セ ラ レ居 ラ ス所 謂 社会 主 義 無 政 府 主義 モ共産 主義 モ

次ニ 本 案 ノ内 容カ 完全 ナ リ ヤ否 ヤ ニ付 テ考 フル ニ現 行 治 安 維 持法

共ニ 其 ノ第 一条 ノ規定ニ 該 当 スル モノ ナ レト モ此 等ニ 対 シ同 条 ヲ

査 ニシ テ徹 底 セ ム カ現 行法 ヲ以 テ ス ル モ法 威 大 ニ振 ヒ次 ノ議 会 ヲ

適 用 セ ス日本 労 農 党 社 会 民衆 党 等 ハ現在 ニ於 テ ハ甚 シキ不 逞 ノ行

ス従 テ能 ク此 等 ノ結 社 ノ目的 ヲ調 査 シ其 ノ文 書 ヲ検 閲 シ何 レ モ犯

待 テ スト 云 フカ如 キ コト ア ル ヘカ ラ ス又司 法 大 臣 ノ述 ヘラ レタ ル

罪 ヲ構 成 ス ヘキ結 社 ナ ル コト ヲ認 メ サ ル ヘカ ラ ス曩ニ 労働 農 民党

動 ヲ認 メサ ル モ其 ノ目的 ノ為 ニ ハ何時 暴 行ニ 出 ル ヤ ヲ測 ル ヘカ ラ

ルヤ其 ノ意 ヲ解 ス ル ニ苦 ム或 ハ共 産 党 事 件 ノ如 キ モノ ヲ内乱 罪 又

コト ヲ得 ヘキ ニ何カ 故ニ 強 イ テ治 安 維 持 法 ヲ改 正 セ サ ル ヘカ ラ サ

ハ皇 室 ニ関 ス ル罪 ト シ テ罰 ス ル ハ国 民 ノ甚 タ嫌 フ所 ナ ルノ ミ ナ ラ

対ニシテ解散 ヲ命 シタ ル ハ共産 主 義 ヲ奉 ス ル モノト 認 メ タ ル モノ

事 実 ナ ラ ハ刑 法 第 七 十 三条 及 内 乱 罪 ノ規定 ニ依 リ テ之 ヲ処 罰 ス ル

ス犯 人 ニ於 テ ハ反 テ之 ヲ以 テ名 誉 ト スル ナ キ ヲ保 セス ト ノ考ニ 因

ス只其 ノ目 的 ノ現 実 ヲ稍 々遠 キ将 来ニ 期 ス ルノ点 ニ於 テ相 違 ア ル

ノ ミ行 懸 リ上 今 遽 カ ニ之ニ 解 散 ヲ命 シ難 シト スル モ之 ヲ其 ノ儘 放

ト解 セ サ ル ヘカ ラサ ルカ前 述 ノ結 社 モ亦 実 質 上 何等 ノ差 異 ヲ存 セ

任 シ置 ク コト ハ不可 ニシ テ英 米仏 国 ト同様 ノ道 ヲ踏 ム コト ヲ得 サ

ル モノ ナ ラ ム モ其 ノ考 ハ不可 ナ リ何 ト ナ レ ハ刑法 ノ系 統 ハ為ニ 全

委 員会 ニ於 テ モ述 ヘシ如 ク仏 国 ニ於 テ ハ共 産 党 ノ結 社 ヲ許 シ其 ノ

ク破 壊 セ ラ ル ルノ虞 ア レ ハナ リ

行 動 ニ シテ 一定 ノ範 囲 ヲ超 ユルト キ ハ普 通 刑 法 ニ依 リ テ之 ヲ処 罰

二十 九番 (松 室) 延期 ス ル コト ニ願 ヒタ シ

三土 大 蔵 大 臣 九

中橋

商 工 大 臣 八

白川 陸 軍 大 臣 七

番

番

番

番

大

臣 内 閣総理大臣  田中兼   外 務 大 臣 四 番 小川 鉄 道 大 臣 五 番

ル モノ ナ リト 考 フ

ノ還 御 ニ付 テ ハ如 何 考 ヘラ ルル ヤ本 日 ノ会 議 ハ之 ニテ延 期 セラ レ

四 番 (田中 ) 日中 ニ還 御 ア ル様 ニ致 シタ シ

山 本 農 林 大 臣 十

十九番 ( 久 保 田) 本 案 ハ 一日 ヲ争 ハス総 理 大 臣 ハ 陛 下 ノ 日 没 後

テ ハ如 何

岡田 海 軍 大 臣 六 番

( 起 立者 多 数 ) (平 沼 副 議長 及 金 子 顧 問官 起 立 セ ス)

出席 員

治

久原

原

逓 信 大 臣 十三番

司法 大 臣 十二番

勝 田 文 部 大 臣 十四番

顧問官

官 十 八番

兵

官 十九番

上

問

官 二十番

問

官 廿 一番

金子 顧

問

久保田顧

問

官 廿二番

雄

問

季

問 官 廿 三番

江

問 官 廿 四番

堀

二

望 月 内 務 大 臣 十 一番

議 長( 倉 富 ) 本会 議 ヲ明 日 ニ延 ス コト ニ付 賛 成 ノ各位 ノ起 立 ヲ請 フ

書 記官  長

議 長男 爵  倉 富 勇 三 郎

議 長 (倉 富 ) 多 数 ト認 ム就 テ ハ本 会 議 ヲ明 日 ニ延 シ本 日 ハ之 ニ テ 閉会 ス 聖上入御 (午後 六時 閉 会 ) 

書記官

井上 顧

問 官 廿六番

雄

平山 顧

問 官 廿七番

盛

石黒 顧

官 廿九番

藤

珍田 顧

官 三十番

武

山川 顧

問

富井 顧

黒田 顧

問

二日

議

江木 顧

松室 顧

枢 密院 会 議 筆 記  一 治 安 維持 法中 改 正 ノ件︱

副議長

長

昭 和 三年 六 月 二十 八 日 (木 曜 日 )午 前 十 時 十 分 開議 聖 上臨 御

倉富 平沼

皇

闕席員

官 卅四番

問 官 卅 一番

長 岡  社 会 局 長 官

横山

潮 

内  務省 警保 局長

内

官

官 卅五番

次

問

務

問

内田 顧 田

小原  司

王  一 番

武 藤  書

堀 江  書

記

記

官

官

顧

荒井 顧

泉 二  司 法 省刑 事 局 長

官

官 卅六番

王 二 番

長

親

官

親

記

次

問 官 卅八番

二上

法

河合 顧 問 官 卅九番

書紀官長

斎藤 顧 問

仁

書

鎌田 顧

仁

王 三 番

書 記官

雍 親

族 宣 仁

第 一読 会 ヲ継続 ス

治 安 維持 法 中 改 正 ノ件 ノ

議 長 (倉 富 ) 之 ヨリ会 議 ヲ開 ク昨 日 ニ続 キ

載

官 十六番

顧問官 問

顧

二十 九 番 (松 室) 昨 日 モ申 述 ヘタ ル通 リ現 行 治 安維 持 法 ハ其 ノ 適

伊東

モ究 極 ス ル所 共 産 党 ト択 フ所 ナ キ ヲ以 テ此 等 ノ モノ モ現行 法 ヲ 以

用 ヲ誤 マラ レ居 レリ今 日認 メ ラ レタ ル社 会 民 衆党 其 ノ他 ノ 社会 党

官 十七番 官 廿八番

官 廿五番 官 卅二番

問 問

問

中村

問

顧

古市 顧

九鬼 顧

八代 顧

テ取 締 リ得 ル モノ ナ リ然 ル ニ事 茲 ニ出 テ ス是 レ法 ノ適 用其 ノ当 ヲ

顧

問 官  卅三番

桜井

黒崎

内 閣拓 殖局長

法制 局参事官

前田 法 制 局 長 官

ハ法 文広 漠 ト為 リ適 用 上 不都 合 ヲ生 ス即 チ刑 法第 七十 三条 国 事 犯

除 セ ムト ス ル モノ ナリ 然 ル ニ之 ニ死 刑 無 期 懲役 等 ノ重 刑 ヲ定 ム ル

カ元来 同 法 ハ犯 罪 ノ遂 行 ヲ鎮 圧 ス ル趣 旨 ニ非 ス シテ其 ノ萌 芽 ヲ芟

者 ナ リ然 ラ ハ何 故 ニ治 安 維 持法 ヲ 以 テ重 刑 ヲ課 ス ルヲ不 可 ト ス ル

サ ラ ム ガ為 ニ死刑 等 ノ重 刑 ヲ課 セ ムト ス ル本 案 ノ修 正 ニ反 対 ス ル

得 サ ル モ ノナ リ余 ハ治 安 維持 法 ノ必 要 ヲ認 メ従 テ之 ヲ毀 損 セ シメ

顧 問

官 卅七番

石原

成毛

委 員

秋田 内務 政 務次官

帰 ス ヘシ是 レ刑 法 ノ体 系 ヲ紊 ル モ ノ ニ非 ス シテ何 ソ ヤ加之 結 社 組

其 ノ他 種 々ノ犯 罪 此 ノ内ニ 包 含 セラ ル ル ニ至 リ他 ノ法 律 ハ不 用ニ

刑 ヲ課 セ ス シテ共 産 党 ヲ尽 ス コト 必要 ナ リ又 法律 ノ運 用 上 刑 重 ケ

段 ヲ減 ス ヘキ コト確 実 ナ リ即 チ其 ノ利 害 ヲ考 較 ス ルト キ ハ寧 ロ極

正 ハ 一方 ニ於 テ威 嚇 ノ目 的 ヲ達 ス ルト同 時ニ 他方ニ 於 テ ハ捜 査手

伝 ト為 ル コト ヲ言 ヘリ悪 事 ト ハ云ヘ 主 義 ノ為 ニ殉 セ シ者 ト シ テ世

ルカ仏 国 ノ或 ル刑 法 学 者 ハ此 ノ死 刑 ハ無 政 府 主義 ノ有 力 ナ ル 一宣

タ ル為 大 統領 ヲ暗 殺 シタ ル者 ア リ此 ノ者 モ勿 論 死刑 ニ処 セ ラ レタ

用 ヲ失 フ コト ア ル ヘシ曾 テ仏 国 ニ於 テ無 政府 主義 者 ヲ死 刑ニ 処 シ

本 案 反 対 者 ハ少 数 ナ ル ヘキ ヲ以 テ本 案 ハ結 局 通 過 ス ヘシ余 ハ勝敗

能 ハサ ル ナリ

持 法 ニ加 ヘムト スル改 正 ハ法 文 ノ体 ヲ得 サ ル カ故 ニ之 ニ賛 同 ス ル

テ決 シテ同 列 ノ各 位 ニ劣 ル者ニ 非 サ ル モ本 案 ノ如 キ重 刑 ヲ治 安維

ラ ル ルモ ノ ヲ モ内 務 当 局 ハ認 可 セ ル ニ非 ス ヤ余 ハ憂 国 ノ念 慮 ニ於

会 民衆 党 、 日本 労 働 党 ノ如 キ治 安維 持 法 ノ適 用範 囲ニ 入 ルト 認 メ

レ ハ渋 滞 遅疑 ヲ見 其 ノ低 キ方 ヲ適 用 ス ルノ傾 向 ヲ生 ス ヘシ現ニ 社

織 ノ発起 人 ノ如 キ者 ヲ モ死刑 ニ処 ス ル コト ア ラ ハ其 ノ犯 罪 ノ程 度

間 ノ同 情 ヲ惹 ク コト ア ル ヲ否 ム ヘカ ラ ス而 シ テ此 ノ類 ノ事 ハ他 ニ

ヲ眼 中 ニ置 カ ス只

未 タ進 マサ ル者 ナ ル ニ因 リ 世間 ノ同 情 却 テ受 刑者 ニ集 マリ法 ノ信

モ其 ノ例 乏 カ ラ ス大ニ 戒 心 ス ヘキ コト ナ リ又 昨 日 余 ハ内 閣 諸 公ニ

聞 ニ達 シ置 カ ハ夫 ニテ可 ナリ 枢 密院 之 ヲ可決 セ ハ枢 密 院一 体 ノ責

之 ヲ覚 悟 セリ但 タ本 案 通 過 ノ結 果ニ 付 更 ニ当 局 ノ御 一考 ヲ煩 ハシ

任 ニ シテ飽 迄 反 対 セ ル本 官 モ亦 其 ノ責 任 ヲ分 ツ ヘキ コト ハ固 ヨリ

天 皇 陛 下 ノ御前 ニ於 テ本案 ノ非 ナ ル コト ヲ叡

シ殊ニ 別 異 ノ刑 ヲ定 ム ル ハ立 法 其 ノ体 ヲ得 サ ルニ非 スヤト質 問 シ

対 シ本 案カ 本 来 不 可 分 ナ ル ヘキ国 体 変革 ト私 有 財 産 否 認 ト ヲ二分

ルカ余 ノ質問 ノ趣 旨 ハ 一方 適 用 セ ラ ル ル ニ因 リ他 方 不用 ト為 ルカ

タ ル ニ司 法 大臣 ハ 一方 ノ重 キ刑 ヲ課 スレ ハ差 支 ナ シト答 ヘラ レタ

害 ヲ来 ス ヘシ余 ハ威 圧 ノ為ニ 死刑 ヲ加 フ ル ヲ可 ト スト ノ論ニ 対 シ

刑 法 ト ノ此 ノ重複 関 係 ハ如 何 ニス ル ヤ此 ノ問題 ニ付 テ ハ新 法 ト旧

員 会 ニ於 テ司法 大 臣始 メ当 局 ノ認 ム ル所 ナリ然 ラ ハ治 安 維持 法 ト

十 三条 ノ罪 モ内 乱 罪 モ国 事 犯 モ之ニ 食 込 ム コト ト為 ル此 ノ点 ハ委

シ テ済 ム モ改 正案 ノ如 ク死 刑 ヲ加ヘ 刑 ノ範 囲広 ク ナ レ ハ刑 法 第 七

テ全然 反 対 ス ル者ニ 非 ス其 ノ幾 分 ノ効 果 ア ル コト ハ之 ヲ認 ムト雖

タ キ コト アリ 現行 法 ニ於 テ ハ刑軽 キ カ故ニ 刑 法 ノ範 囲ニ 食 込 マス

又 他ニ 少 カ ラ サ ル弊 害 ヲ伴 フ コト ヲ知 ル余 ノ多 年 ノ経験ニ 徴 ス ル

法 ト 重複 スルト キ ハ新 法 ヲ以 テ旧法 ヲ改 正 シタ ル モノ ト見 ル コト

故ニ 立 法 其 ノ体 ヲ得 スト謂 フナ リ

ニ今 回 ノ共 産 党 事 件 ハ言 フ ニ及 ハス先年 ノ早 稲 田 ノ共産 主 義 事 件 、

ス ル ニ拘 ラ ス其 ノ響 少 キ コト ト為 ルヘ シ例 ヘ ハ刑 法 第 七十 三 条 ノ

是 レ法 律 解 釈 ノ通義 ナ リ然 ラ ハ刑 法 第 七十 三条 モ国 事 犯 モ法 文存

又治 安 維 持 法 ヲ以 テ死 刑 等 ノ重刑 ヲ課 ス ルト キ ハ捜 査上 大 ナ ル障

幸徳 一派 ノ無 政 府 主義 事 件 ノ如 キ犯 人 ノ数 多 キ犯 罪ニ 在 リ テ ハ被

政 府 主義 等 ニ加 ハレ ル者 ハ相 当 ノ智 識 ヲ有 シ刑 罰 ノ如 何 ヲ モ知 ル

政 府 主義 者 ハ 一時ニ 多 数 死刑ニ 処 セ ラ レ威 圧 ノ点 ヨリ見 レ ハ大ニ

大 逆罪 ヲ犯 シ タ ル者 ハ当 然 死 刑ニ 処 セラ ル現 ニ先年 幸 徳 一派 ノ無

︹マ マ ︺

告 人 ノ 口述カ 最 有力 ナ ル捜 査 手 段 ト 為 ル モノ ナ リ然 ル ニ共産 党 無

者 ナ ルカ故 ニ刑 重 キト キ ハ容 易ニ 自 白 セサ ル ヘキ ヲ以 テ本 案 ノ改

ハ須 ラ ク同 時 ニス ヘキ コト ナリ 本案 ノ緊 急 勅令 ヲ先 ツ発 布 シ後 日

シ皇 室ニ 対 ス ル罪 ノ刑 ノ軽 ク為 ルヲ是 正 ス ル コト ヲ後 ニス ルカ 此

於 テ更 ニ疑 ヲ生 ス何 故ニ 一般ニ 対 ス ル威 圧 ヲ重 ク ス ル コト ヲ先 ニ

当 局 ハ後 日適 当 ナ ル修 正 ヲ加 フ ルノ意 向 ヲ有 ス ルヤ ニ聞 ケリ是ニ

カ ハ余 ノ解 スル能 ハサ ル所 ナリ 此 ノ点ニ 関 シ委員 会 ニ於 テ ハ政府

ルノ必 要 奈 辺ニ 存 ス ルカ殊ニ 皇 室ニ 対 ス ル罪 ノ刑 ヲ何 故 低 下 ス ル

効 果 ア リ タ リ然 ル ニ此 ノ如 キ刑 法 ノ法 条 ヲ消 シ テ刑 ノ範 囲 ヲ広 ム

アリ此 等 ノ事 ハ何 レ モ重大 ナ ル問 題 ナ リ如 何ニ 急 ヲ要 スト ハ云 ヘ

改 正 ス ル ハ妥 当 ナラ サ ル ニ依 リ 之 ニ触 レサ ル コト ト セリト ノ答 弁

付 カ サ ル ニ非 サ ル モ今 陪 審 法 、裁 判 所 構 成 法 ヲ モ緊 急 勅 令 ヲ以 テ

曩 ニ委 員会 ニ於 テ二上 書 記官 長 ヨリ質 問 ア リ タ ル ニ対 シ当 局 ハ気

続 ニ依 ラ サ ル ヘカラ サ ル コト ト為 ル此 ノ如 キ不都 合 ナ ル点ニ 関 シ

安 維 持 法ニ 依 リ テ裁 判 スレ ハ大審 院 ノ権 限 ヲ離 レ普 通 ノ三 審 ノ手

ノ特 別 権 限 ニ属 シ第 一審 ニシ テ終 審 ト為 ル ヘキ モノ ナ ル モ之 ヲ治

テ緊急 勅 令 ヲ以 テ治安 維 持 法 ヲ改 正 セ ムト ス ル ハ余 ノ甚 タ不 服 ト

刑法 第 七十 三 条 其 ノ他 前 述 ノ諸 法規 ト ノ関 係 ヲ顧 慮 セ ス此 ノ際強

ス ル所 ナ リ余 ハ諸 君 ト共ニ 責 任 ヲ負 フ コト ヲ厭 フ者ニ 非 サ ル モ希

更 ニ右 ノ点ニ 関 ス ル緊 急 勅 令 ヲ発布 スル コト ヲ得 サ ル ヘシ然 ラ ハ

ト 言 フ ニ現ニ 目 下起 リ ツ ツ ア ルナ リ而 シ テ刑 法 ノ原 則 ト シ テ ハ新

ク ハ御 一考 ヲ煩 ハシタ ク茲ニ 内 閣ニ 再 考 ヲ求 ム ルノ動 議 ヲ提 出 ス

議 会 ノ開 会 ヲ俟 タサ ル ヘカ ラ ス其 ノ半 歳 ノ間ニ 事 件 ハ起 ラ サ ルカ

ニハ矢 張 新 法 ノ効 力 及 フ コト ト 為 ル ヘシ何 ト ナ レ ハ刑 法 第 六 条ニ

法 ハ旧犯 罪 ニ及 ハサ ル モノ ナ ル モ現 在 裁 判 所ニ 繋属 中 ノ此 ノ事件

賛ニ 成 シタ ル理由 ヲ簡単 ニ申 述 フ ヘシ余 ハ委員 会 ニ於 テ本 案ニ 付

二 十 番 (富井 ) 余 ハ松 室 顧 問 官 ノ動 議ニ 賛 成 ス其 ノ前ニ 余カ 原 案

当 局ニ 対 シ種 々質 問 ヲ試 ミ自 己 ノ意 見 ヲ定 ム ル ニ迷 ヒタ ル モ結 局

犯罪 後 刑 ノ変 更 アリ タ ルト キ ハ其 ノ軽 キ モ ノ ヲ適 用 ス ル旨 ノ規 定 ア リ更ニ 同 第 八条ニ 刑 法 ノ総 則 ハ他 ノ法 律 ニ於 テ刑 ヲ定 メ タ ル モ

ハ憲法 関 係 ニシ テ即 チ憲 法 第 八 条ニ 適 合 ス ルヤ否 ヤノ問 題 ナリ約

原 案ニ 賛 成 ス ルヲ穏 当 ト考 ヘタ リ本 案ニ 対 ス ル議 論 ノ主要 ナ ル点

言 ス レ ハ緊 急 ノ 必要 ア リ ヤ否 ヤノ 一点ニ 帰着 ス ヘシ而 シテ是 レ畢

ノ ニ モ亦 之 ヲ適 用 ス ル旨 ノ規 定 ア レ ハナ リ然 ラ ハ目 下裁 判 所ニ 係

ム ハ刑 法 第 七 十 三条 ノ罪 ニ該 ル ヘキ者カ 無 期 又 ハ五年 以上 ノ懲 役

竟 現 下 ノ時 局 ヲ如 何ニ 見 ルカ何 程 ノ危 害状 態 アリ ト 見 ルカ之カ 対

属 中 ノ事 件 ハ予 審終 結 シ公 判ニ 付 セ ラ ルルト キ ハ余 ノ意 見 ノ如 ク

キヘ モノ ナ ル モ少 ク モ此 ノ如 キ疑 義 ヲ生 セ シ ム ヘキ法 律 ノ改 正 ヲ

若 ハ禁 錮ニ 処 セ ラ ル ル結 果 ト為 ル ヘシ結 局 ハ裁 判所 ノ解 釈ニ 俟 ツ

ナ リ従 テ人各 々見 ル所 ヲ異 ニ ス ヘク緊 急 ノ必要 ア リト 認 ム ル ニ於

策 ト シ テ斯 カ ル刑 罰 法 ヲ急速 ニ設 ク ル ヲ要 ス ルカ ノ事実 認 定 問 題

又 近 ク実 施 セ ラ ル ヘキ陪 審 法 ノ規 定 ニ依 レ ハ刑 法 第 七 十 三条 ノ皇

何 故ニ 爾 ク急 ク ヤ其 ノ趣 意 不 明 ナ リ

シト認 ム ル ニ於 テ ハ本 令 ノ制 定 ハ憲 法 違 反 ト為 ル ヘシ而 シテ其 ノ

テ ハ斯 カ ル勅 令 ヲ設 ク ト モ憲 法 違 反ニ 非 ス之 ニ反 シ緊 急 ノ必 要 ナ

ハ陪 審ニ 付 セ ラ ル ル コトト為 ル是 レ皇 室ニ 対 ス ル犯 罪 ヲ陪 審 ヨリ

ノ所 見ニ 従 ハサ ル ヘカ ラサ ルノ 理 ナ シ然 ラ ハ緊 急 ノ必要 ア リ ヤ否

必 要 ノ有 無 ヲ判 断 スル ハ枢密 院 独 自 ノ見 解 ニ依 ル ヘク決 シテ政 府

室ニ 対 スル罪 ハ陪 審 ヨリ除 外 セラ ル ルモ ノ ナ ル モ治 安 維 持法 ノ罪

除 外 セ ル主 義ニ 反 ス又皇 室ニ 対 ス ル犯 罪 ハ裁 判 所 構 成法 上 大審 院

ヤ ニ付余 ハ実 ハ其 ノ判 断 ニ迷 ヒタ リ事 態 ハ半 年 又 ハ 一年 後 ノ次 ノ

ニシ テ モ猶 予 シ難 シト ノ確 信 ヲ得 ハ已 ム ヲ得 サ ルモ今 日 ニ至 ル迄

レト モ余 ハ飽 迄 今 一応政 府 ノ再 考 ア ラ ム コト ヲ切 ニ希 望 ス斯 カ ル

ノ政府 ノ議 会 以来 ノ行 動 ニ徴 スルト キ ハ夫 程 ニ モ考 ヘラ レ ス尚 暫

案 ハ慎 重 ノ上 ニモ慎 重 ヲ加 ヘ国 家 ノ安寧 ヲ保 持 スル上 ニ於 テ如 何

ル ヘキカ ハ到 底 断 言 出 来 サ ル コト ナ リ此 ノ 犯罪 ハ其 ノ目 的 ヨリ 云

レ今 一応 考 慮 ヲ尽 サ レム コト ヲ望 ム本 案 ハ法 理 論 ト シテ ハ憲 法違

時 後 ル ルト モ差 支 ナ カ ル ヘキ ヲ以 テ松 室顧 問 官 ノ説 ヲ モ考 ヘ合 サ

ハ差 支 ナ カ ラ ム併 シ果 シ テ夫 ヲ以 テ安 心 シ得 ヘキ カ憂 慮 ヲ要 セサ

ヘ ハ最 モ恐 ル ヘク最 モ悪 ム ヘキ空 前 ノ大逆 行 為 ニ シテ其 ノ性 質 ハ

議 会 ノ開 会 ヲ待 チ得 サ ル程 緊急 ノ モ ノ ナ ルカ現 行 法 ノ儘 ニテ モ或

一種 ノ危 険 性 ヲ帯 フ結社 其 ノ モノ ハ或 ハ目的 ヲ果 サ ムト ス ル準備

罪 ト認 メ其 ノ刑 ヲ重 ク セリ本 案 ハ此 ノ如 ク重 大 ナ ル モノ ナ ルカ故

案 モ結 社 ヲ 以 テ単 ナ ル手 段 又 ハ予 備行 為 ト見 ス シテ之 ヲ独立 ノ 犯

タ ル モノ ヲ撤 回 ス ル ハ面 白 カ ラ スト謂 フカ如 キ体 面論 ハ之 ヲ棄 テ

ラ ル ヘキ ヤ否 ヤ ニ付 テ モ憂 慮 ニ値 ス ル モノ ア リ政 府 ハ 一旦提 案 シ

ル ヤ モ測 リ難 シ大 ニ考 慮 ヲ要 ス又議 会 ニ於 テ後 日事後 承 諾 ヲ与 ヘ

サ ス今 強 テ之 ヲ制 定 セ ハ益 々反 感 ヲ惹起 シ却 テ 一層 ノ害 ヲ激 発 ス

ノ権 威 ナ ク十 分 ニ行 ハレ サ ルノ虞 ア リ諸 方面 ヨリ ノ反 対 ニ耳 ヲ貸

ニ半 年 又 ハ 一年 ノ後 議 会 開 会 ヲ待 テ之 ヲ提 案 スル ヲ穏 当 ト ス ヘキ

宜 シク再 考 セ ラ ル ヘキ ナ リ再 考 ノ上尚 必要 ト ア ラ ハ適 当 ノ修 正 ヲ

反 ト為 ラ スト ス ル モ成 ヘク議 会 ノ議 ヲ経 ルヲ可 ト ス然 ラ サ レ ハ法

モ 一方 ニ於 テ危 険 状 態 日 々深 刻 ニ進 ムノ 現況 ナ ル ニ照 シ此 ノ危 険

ニ過 キ サ ル ヘキ モ結 局其 ノ目的 ニ進 マムト ス ル危 険 性 ヲ有 ス ルカ

タ ニ防遏 シ得 ル ニ於 テ ハ形 式 上 之 ヲ議会 ニ付 議 セ サ ル欠 点 ハア ル

ラ消滅 シ国 法 ト シ テ権 威 ア ル モ ノ ヲ生 ス ヘキ ナ リ

加 ヘテ之 ヲ再出 セ ハ可 ナ リ然 ラ ハ今 日 ノ如 キ各 方 面 ノ反 対 論 モ自

故 ニ之 ニ対 シ百 方 防 遏 ノ 手段 ヲ講 ス ヘキ ハ当 然 ノ コト ナリ故 ニ本

ス ル者 ニ非 サ ル モ政 府 カ其 ノ重 要 政 策 ト シテ責 任 ヲ以 テ立案 シタ

ト モ実質 上安 心 シ得 ル コト ヲ以 テ勝 レリ ト ス余 ハ敢 テ政 府 ヲ盲 信

条 ト ノ関 係 ニ因 リ再 考 ノ動 議 ヲ提 出 セリ 二十 番 ハ之 ニ賛 成 ナリ ヤ

議長 (倉 富 ) 二 十番 ニ確 メ タ シ 二十九 番 ハ本 案 ニ付刑 法 第 七 十 三

二十番 (富 井 ) 広 キ意 味 ニテ之 ニ同 意 セリ

ル モノ ニシ テ而 モ憲 法 違 反 ニ非 スト セ ハ枢 密 院 ハ之 ニ反 対 セ サ ル

議 長 (倉 富 ) 兎 ニ角 政 府 ニ再 考 ヲ求 メ其 ノ返 答 ヲ聞 カ ム ト 謂 フ ニ

カ穏 当 ナ リ ト考 ヘタリ唯 遺 憾 ナ ル ハ世 間 ノ誤 解 ニシ テ世 間 ニ ハ我 々カ緊 急 ノ必 要 ナキ コト ヲ確 信 シナ カ ラ何 等 カ ノ目的 即 チ政 変 ヲ

二 十九 番 (松 室) 余 ハ此 ノ改 正 案 ニ対 シ全 部 反 対 ナリ刑 法 第 七 十

議長 (倉 富 ) 二十 九 番 提 出 ノ動 議 ノ趣 意 ヲ問 フ

真 実 ノ再 考 スルノ ミ ニテ モ尚 数 日 ヲ要 ス ヘシ

二 十番 (富 井 ) 本 案 ノ撤 回 ヲ求 メ再 考 セシ ム ル ハ困難 ナ ル ヘ キ モ

在リヤ

防 ク為 賛 成 シタ リト ノ言 ヲ為 ス者 アリ余 ハ緊 急 ノ必 要 ナ シト ノ確 信 ヲ得 ハ之 ニ反 対 ス ヘキ モ其 ノ確 信 ヲ得 サ ル カ故 ニ之 ニ賛成 ス ル ナ リ政 界 ノ動 揺 ヲ防 ク等 ノ考 ハ毛頭 之 ナ シ

ア リ之 ニ対 シ田中 内 閣 総 理大 臣 ヨリ本 案 ハ十 分 考 ヘタ ル上 ニテ立

次 ニ政 府 ニ再 考 ヲ求 メ ムト ノ説 ア リ昨 日 モ久 保 田顧 問 官 ヨリ同 説

案 シタ ル モ ノ ナ ル ヲ以 テ再 考 ノ余 地 ナ シト 謂 フ カ如 キ弁 明 ア リ タ

三 条 ト ノ関 係 ハ特 ニ重 ヲ置 キ テ論 シタ ル ニ過 キ ス結 局 本 案全 体 ニ

ラ ハ申 訳 ナ キ コト ト考 フ尤 モ刑 重 カ ラ サ レ ハ民 服 セ スト謂 フ カ如

第 八条 ノ緊 急 勅 令 ヲ立案 シタ ル ニ対 シ枢 密 院 カ反 対 シ万 一ノ事 ア

ル建 議案 ヲ発 議 シ親 シ ク其 ノ提 案 ノ説 明 ノ任 ニ当 リ物 質 的 文 明 ノ

三 月貴 族 院 ニ於 テ江木 、久 保 田両 氏等 ト共 ニ国 民 道徳 振 興 ニ関 ス

キ ハ是 レ上乗 ノ策 ニ非 ス余 ハ今 ヲ距 ル十 七年 前 即 チ明治 四十 四 年

付再 考 ヲ求 メ ムト ス ルナ リ 議 長 (倉 富) 反 対 ナ ラ ハ否決 ト解 ス ル コト当 然 ナ ル ヘキ モ再 考 ノ 語 ヲ用 ヰ ラ レタ ル ニ由 リ解 釈 ニ惑 ヲ生 セリ

ル所 以 ヲ力 説 シ タ ル ニ桂 内 閣 総 理 大臣 ハ全 ク同意 ニ シテ将 来 益 々

漸 ク進歩 シタ ル我 国 ハ精 神 的 方 面 ノ振 興 ニ大 ニ努 力 ス ルノ必 要 ナ

十八番 ( 金 子) 本 案 ニ付 テ ハ既 ニ審 査 委員 会 ニ於 テ慎 重 丁 寧 ニ審

ル モ ノナ リ今 日 ニ於 テ ハ之 ヲ可 ト ス ルカ否 ト ス ルカ ノ二途 ア ルノ

議 ヲ重 ネ政 府 ニ質 問 ヲ為 シ五 対 三 ノ多 数 決 ヲ以 テ意 見 ヲ決 定 シタ

努 力 ス ヘキ旨 ヲ以 テ之 ニ答 ヘ貴 族 院 ハ同案 ヲ委 員 付 託 ト セ ス即 決

スル ノ必要 ハ今 日 ニ於 テ 一層 痛 切 ニ感 セ ラ ル ル所 ニシ テ審 査 報 告

可 決 シ タ ル コト ア リ此 ノ如 ク主 ト シテ教 育 ノ力 ニ由 リ思 想 ヲ善 導

ミ然 ル ニ政 府 ノ再 考 ヲ求 ムト ハ何 事 ナ ルカ

奉 答 ス ヘキ ハ可 否 ノ意 見 ナ ル ヲ以 テ其 ノ中 間 ノ意 見 ハ之 ヲ採 用 ス

議 長 (倉 富) 本 案 ニ付 御 諮詢 ヲ蒙 リ タ ル ニ対 シ本 会 議 ニ於 テ 決 定

二十 七 番 (黒 田) 本 案 ハ憲 法 第 八条 ニ依 ル緊 急勅 令 案 ナ ル カ 審 査

無 欠 ノ我 カ国 体 ヲ擁 護 ス ル為 必要 ナ ル以 上 已 ム ヲ得 サ ル コト ナリ

ニ苛 酷 ノ刑 ヲ加 フ ル コト ハ理 論 上面 白 カ ラサ ルカ如 キ モ事実 金 甌

問 題 ナリ今 日 ノ緊 急 ノ事 態 ニ照 シ之 ノ ミ ヲ以 テ処 スル コト難 シ新

中 ニモ此 ノ意 味 の陳 述 アリ固 ヨリ至 当 ノ コト ナ ル カ此 ハ 一般 的 ノ

報 告 書 ニ記載 セ ル カ如 ク憲 法第 七十 条 ニ依 ル緊急 処 分 ト異 リ第 七

ル ニ由 ナ シ故 ニ此 ノ再 考 ノ動 機 ニ付 テ ハ決 ヲ採 ラサ ル ヘシ

ト規 定 セ ル モ第 八条 ニ於 テ ハ議 会 召 集 ノ可 能 不 可能 ハ之 ヲ問 題 ト

十 条 ニ於 テ ハ緊 急 ノ場 合 ﹁帝 国 議会 ヲ召 集 ス ル コト能 ハサ ルト キ﹂

必要 ナ リト 思惟 ス如 何 ニ新 法 ノ規 定峻 厳 ナ ル モ捜 査 不充 分 ナ ル ニ

足 ル モノ ア リ只 犯罪 ノ捜 査 ヲ厳 密 ナ ラ シム ル コト ハ此 ノ場 合 一層

関 シ外 交 関 係 ノ事 ニ付 テ ハ政 府 ノ説 明 ニ対 シ聊 カ意 ヲ安 ム ス ル ニ

政 府 ノ責 任 ト シ テ万遺 憾 ナ キ ヲ期 セサ ル ヘカ ラ ス悪 思 想 ノ伝播 ニ

キ法 律 ニ代 ル ヘキ勅 令 ヲ発 シ得 ヘク特 ニ議会 ヲ召 集 シ テ立 法 措 置

於 テ ハ其 ノ効果 ナ カ ル ヘケ レ ハナリ故 ニ余 ハ当 局 ニ於 テ 一層 此 ノ

セ ス故 ニ苟 モ事 柄 ニ シテ緊 急 ヲ要 スル ニ於 テ ハ議 会 閉 会中 此 ノ如

ナ リ 此 ノ如 キ不逞 ノ徒

ヤヲ決 ス ル ヲ以 テ足 ル ヘシ然 ル ニ事 ハ明

治 安 維持 法 中 改 正法 律 案 カ第 五十 五 回帝 国 議 会 ニ於 テ審 議 未 了 ト

点 ニ努 力 セ ム コト ヲ切 ニ希 望 ス

ヲ執 ラ サ ル モ毫 モ差 支 ナ シ従 テ本 案 ニ付 テ ハ緊 急 ノ必 要 アリ ヤ否

モ異 論 ナ カ ル ヘク 此 ノ如 キ事 態 ニ応 シ此 ノ緊 急 勅令 ヲ出 ス ハ適 当

ル モ当 局 ノ説 明 ニ依 レ ハ亦 已 ム ヲ得 サ ル モノト 認 ム ヘキ カ如 シ何

為 リ タ ル ニ政府 ト シテ会 期 延 長 ノ措置 ヲ執 ラ サリ シ コト ハ遺 憾 ナ

ノ出 現 ニ対 シ十分 ナ ル威 嚇 ノ方法 ヲ設 ク ル ノ必 要 ア ル コト ハ何 人

ノ措 置 ト 謂 ハサ ル ヘカ ラ ス只其 ノ危 険 徐 々 ニ来 ル カ急 激 ニ来 ルカ

レ ニセ ヨ既 往 ノ事 ノ善 悪 ヲ 以 テ本 案 ノ可否 ヲ決 セ ムト ス ル ハ誤 レ

ハ不 明 ナ ル モ今 日 既 ニ其 ノ端 緒 ヲ認 メ タ ル以 上 ハ予 メ之 ニ備 フ ル 所 ナカ ル ヘカ ラ ス故 ニ此 ノ対 策 ト シテ政 府 カ其 ノ責 任 ヲ以 テ憲 法

リ今 本案 カ憲 法 上 適 法 ノ モノ タ ル以 上之 カ成 立 ヲ是 認 ス ヘキ ナ リ

尤 ト ハ思 ヘト モ其 ノ事 態 カ果 シ テ緊急 已 ム ヲ得 サ ル程度 ノ モ ノ即

モ知 レ スト憂 慮 セラ レタリ ト テ其 ノ点 ニ付 縷 々御 説 明 ア リ 一応 御

テ急迫 ナ ル新 事 態発 生 セ リ ト認 メ得 ル ヤ モ大 ニ疑 問 ナ リ御 大 典 モ

ス ル本 案 ノ コト ナ レ ハ俄 ニ之 ヲ是 認 シ難 シ又特 別 議 会閉 会 後 ニ於

ノ問 題 ニ付 テ ハ輿論 ノ強 硬 ナ ル反 対 ア ル ニ拘 ラ ス之 ヲ強 行 セ ムト

ラ今 日迄 延 引 セ ラ レタ ル事 実 ヨリ 見 ル モ大 ニ疑 ナ キ ヲ得 ス殊 ニ此

ハ其 ノ緊 急 ナ リト称 ス ル理 由 薄弱 ナ ルカ如 シ又 之 ヲ緊急 ト称 シ乍

チ憲 法 第 八 条 ニ適 合 セ ル モ ノ ナ ル ヤ否 ヤ本 官 ノ見 ル所 ヲ以 テ ス レ

本官 ハ以上 ノ意 見 ヲ以 テ本 案 ニ賛 意 ヲ表 ス ル者 ナ リ 議 長 (倉 富) 之 ヨリ暫時 休 憩 ス ヘシ 聖上入御 ( 午 前 十 一時 五十 分 休憩 ニ入 ル) ○ ( 午 後 一時 再 開 出 席 員午 前 ト同 シ) 聖上臨御

主義 ノ本 勅 令 発 布 セ ラ レタ ル暁其 ノ民 心 ニ及 ホ ス影 響 如 何却 テ之

ノ国 家 ノ慶 事 ニ際 シ テ ハ大 赦 サヘ 行 ハル ルナ リ然 ル ニ此 ノ際 厳 刑

カ為 反動 思 想 ヲ誘 発 セサ ル ヤヲ恐 ル共産 党 ノ活 動 ハ現行 ノ治 安 維

近 ク行 ハレム ト ス凡 ソ各 国 ノ慣 例 ニ見 ル モ此 ノ如 キ 一国 ヲ挙 ケ テ

ノ努 力 セ ラ レタ ル コト ニ対 シ本官 ハ深 ク感 謝 ノ意 ヲ表 ス然 シ乍 ラ

持 法 及刑 法 ニ依 リ 取締 ノ道 ア ル カ故 ニ今 俄 ニ本 案 ヲ制定 ス ルノ必

議 長 (倉 富) 之 ヨリ引 続 キ開会 ス ヘシ

其 ノ結 果 即 チ本 案 可 決 ノ意 見 ニ対 シテ ハ賛 成 ノ意 ヲ表 スル コト 能

二十 一番 (井 上) 本 案 ノ審 査 ニ関 シ過 日来 委 員 会 ニ於 テ 各 顧 問 官

ハサ ル ヲ遺 憾 ト ス既 ニ委 員 会 ニ於 テ論 議 セ ラ レタ ルカ如 ク政府 ニ

サ レ ハ之 ヲ緊 急 勅 令 ト為 ス理 由 十 分 ナラ スト認 ム即 チ本 案 ハ憲 法

第 八条 ノ要 件 ヲ具 備 セ ス政 府 ニ聊 カ無 理 アリ ト思 フ ニ付之 ヲ緊 急

要 ナ シ況 ヤ前 陳 ノ如 ク 一刻 ヲ争 フ程 ノ急 迫 ナ ル事 態 アリ ト モ覚 エ

勅 令 ノ形 式 ニ依 ラ シ ム ル ハ妥 当 ナ ラ スト考ヘ 本 官 ハ遺憾 乍 ラ之 ニ

於 テ先 般 特 別議 会 ヲ延 長 シ テ治安 維 持 法 中 改 正 法律 案 ノ通 過 ヲ図

点 ニ付 テ ハ本官 ノ了 解 ニ苦 ム所 ナ リ殊 ニ本 件 ノ如 キ場 合 ニ ハ緊 急

反 対 ノ意 ヲ表 セサ ル ヲ得 サ ルナ リ

ラ サ リ シ点 及 緊急 ト称 シ乍 ラ本案 ノ御 諮 詢 手続 ヲ遅延 セラ レ タ ル

法 ニ相 当 ノ改 正 ヲ加 ヘム ト スル趣 旨 ニ対 シテ ハ本 官敢 テ反 対 ヲ表

ヲ賭 シテ宣 伝 奔 走 シ タ ル者 カ往 時 ノ民 情 ヲ回顧 シ更 ニ六 十年 後 ノ

二十 三 番 (石黒 ) 本 官 ノ如 キ青 年 時 代 ニ於 テ王 政 復 古 ノ 為 ニ身 命

勅 令 濫 用 ノ虞 アリ テ将 来 ニ悪 例 ヲ貽 スノ懸 念 ア リ現行 ノ治 安 維 持

セサ ル モ本 案 ノ如 キ厳 刑 主 義 ニ依 リ テ治 安 ヲ維 持 セ ムト スル モ果 ︹マ マ ︺

シ テ能 ク危 険 思 想 ヲ防遏 シ得 ル ヤ否 ヤ大 ナ ル疑 問 ニ属 シ本 官 ノ見

サ ル モノ アリ況 ヤ本 案 ヲ議 ス ヘキ此 ノ会 議 ノ 一員 タ ルヲ ヤ加之

今 日此 ノ如 キ法 案 ヲ必 要 ト ス ル コト ニ想 到 ス レ ハ実 ニ感 慨 ニ堪 ヘ

ニ臨 御 ア ラ セラ レタ ル コト ハ洵 ニ恐 懼 ノ至 ナリ本 官 ハ茲 ニ満腔 ノ

聖 上 陛 下 ニ ハ昨 日 ハ午 前 十時 ヨリ午 后 六 時 ニ至 ル長 時 間 此 ノ会 議

ル所 ヲ以 テ スレ ハ遺 憾乍 ラ肯 首 シ難 シ次 ニ本 案 ハ憲法 第 八条 ニ ヨ

睫 ノ間 ニ迫 レ ルカ是 レ亦 大 ニ疑 問 ナリ政 府 ニ於 テ ハ此 ノ際 危 険 思

リ 立案 セラ レタ ル モ ノナ ル モ同 条 ノ要件 即 チ緊 急 ノ必要 果 シテ目

想 ノ取 締 ニ関 シ緊 急 措置 ヲ執 ラ サ レ ハ如 何 ナ ル事 態 ヲ発 生 ス ルヤ

ノ精 神 ニ反 ス況 ヤ緊 急 ノ必 要 ア ラサ ルに於 テ ヲ ヤ故 ニ何 レノ点 ヨ

既 往 ノ事 ハ之 ヲ問 ハス シテ緊 急 ノ事 ハ憲 法 第 八条 ニ依 ルト セ ハ憲

リ ス ル モ本 案 ハ憲 法 第 八条 ニ依 ルヲ得 サ ル コト ハ昨 日縷 述 シタ ル

テ発 布 セ ムト ス ル コト ニ ハ賛 成 ス ルヲ得 サ ル コト ヲ言 明 セ ムト ス

ニ終 ラ シ メ タ ル後 数 箇 月 ヲ経 タ ル今 日俄 ニ本案 ノ緊 急 勅 令 ヲ以 テ

法律 案 ヲ帝 国 議 会 ニ提 出 シ乍 ラ其 ノ会 期 ヲ延 長 セ ス シテ審議 未 了

所 ナ ルヲ 以 テ茲 ニ之 ヲ繰 返 サ ス只 今 日

誠情 ヲ披 瀝 シ本 案 ノ内 容 ニ ハ敢 テ反 対 セ サ ル モ之 ヲ緊 急勅 令 ト シ

ス ル ニ非 サ レ ハ不 逞 ノ徒 ヲ取締 リ得 スト 言 フト雖 刑 法 及 治安 維 持

陳 述 セ ムト欲 ス ル コト ア リ

ヲ以 テ本案 ヲ制 定 セ ムト スル ハ仮 令 憲 法 違 反 ニ非 スト ス ル モ憲 法

法 ノ規 定 ア ル ニ拘 ラ ス尚 公 共 ノ安 全 ヲ保 持 シ得 スト ハ如 何 ニ シテ

現 内 閣 ハ従 来 ノ内 閣 ト異 リ閣 僚中 ニ思 想 問 題 ニ付 余 ト交 際 親密 ナ

法 ニ大 欠陥 ヲ生 ス ヘシ政 府 カ議 会 ノ会 議 ヲ回 避 シ緊 急 勅 令 ノ形 式

考 ヘラ ル ルカ本 官 等 ハ二 千 六 百年 ニ近 キ尊 キ歴 史 ヲ有 スル我 カ国

ル人 々多 数 ヲ占 ム然 ル ニ此 ノ内閣 ト シ テ此 ノ如 キ急 激 ナ ル案 ヲ提

昨 日 モ種 々論 議 セラ レタ ル所 ナ ル カ政 府 ハ曩 ニ治 安維 持 法 中 改 正

体 カ今 ヤ僅 々数 箇 月 ノ内 ニ危殆 ニ陥 ル ヘシト ハ信 セ ス仍 テ本 官 ハ

出セ ラ レタ ル ハ本 官 ノ頗 ル遺 憾 ト スル所 ナ リ大 勢 既 ニ決 セ ル上 ハ

ハ世 上 ニ思 想 ヲ以 テ思 想 ヲ導 ク ヘシト ノ論 アリ是 レ 一応 尤 モナ ル

余 ハ之 ニ対 シ 一言 卑 見 ヲ開 陳 セサ ルヲ得 サ ルナ リ思 想 問 題 ニ付 テ

如 何 ト モ ス ヘカラ サ ル ヘキ モ案 ノ成 否 ニ拘 ラ ス現 内 閣 ナ ルカ故 ニ

御 前 ニ於 テ尚 少 シ ク補 足

議 会 ヲ重 ム シ本 案 ヲ重要 視 ス ルカ故 ニ本案 ハ緊 急 勅 令 ノ形式 ニ依 ラ ス議会 ノ協 賛 ヲ経 テ制 定 セラ ル ヘキ モノ ナ ル コト ヲ確 信 ス加 之 本 官 ノ痛 心 ニ堪 ヘサ ル コト ハ若 シ本 案 カ 此 ニ可 決 セ ラ レ其 ノ結 果

陛下

ニ於 テ議 会 カ之 ニ事 後承 諾 ヲ与 ヘサ ル場 合 ハ如 何 ニ為 ル ヤ

内 閣 総 理大 臣 ヨリ ノ奏請 ニ依 リ御 裁 可 ア ラ セラ レ公 布 ア リタ ル後

レタ ル ﹁ル ー ソー﹂ ノ民 約 説 ノ如 キ モ今 日 ニ於 テ ハ之 ヲ口 ニ ス ル

意 見 ニシ テ夫 ノ 一時 我 カ国 体 ニ危 険 ヲ及 ホ ス ヤノ懸 念 アリ ト セラ

ル ノ嫌 アリ所 謂 物質 的 方面 ト ハ例 ヘ ハ日本 人 ハ米 食 ヲ以 テ育 ツ カ

サ ル モ ノト為 レル モ精 神的 方 面 ニ至 テ ハ動 モス レ ハ動 揺 ヲ免 レサ

精 神 的 方 面 ト ア リ テ今 ヤ物 質 的 方 面 ハ日本 人 ノ特 性 ト 離 ル可 カ ラ

特 性 ノ発達 ヲ図 ル ヨ リ急要 ナ ル ハナ シ此 ノ特 性 ニ ハ物質 的 方 面 ト

概 ニ其 ノ通 リ行 ハレ難 シ故 ニ思想 問 題 ノ対策 ト シテ ハ日 本国 民 ノ

ト謂 ヘト モ日本 人 ト欧 米 人 ト ハ各 々異 ナ ル特 性 ヲ有 ス ルカ故 ニ 一

ヲ尽 スノ必要 ア ル コト 勿論 ナリ就 テ ハ思想 ハ思 想 ヲ以 テ之 ヲ征 ス

ヘキ ヲ信 ス乍併 決 シテ楽観 ヲ許 サ サ ル カ故 ニ十 分 之 カ防遏 ノ手 段

者 ナ キ ニ至 リ タ ルト同 様 今 日ノ共 産 主 義 モ将 来 必 ス廃 ル時 期 ア ル

ノ御 裁 可 ニ成 レ ル勅令 ニ依 リ死 刑 ト為 ル者 カ議 会 ノ為 ニ命 救 ハル ルカ如 キ結 果 ヲ生 ス ル コト ト為 リ其 ノ不 都 合 ナ ル ハ言 フ迄 モナ ク 又 此 ノ如 キ ハ不逞 ノ徒 ノ宣 伝 ニ好 資 料 ヲ供 ス ル所 以 ニシ テ事 態 寒 心 ニ堪 ヘサ ル モノ アリ政 府 ハ如 何 ニ考 ヘ居 ラ ル ル ヤ本官 ハ本 案 ノ 制定 ハ最 モ慎 重 ヲ要 ス ル モノ ナ ル コト及 議 会 ノ権能 ノ 重 ス ヘキ コ

天聴 ヲ

ト ヲ考 フ ルカ故 ニ此 ノ種 ノ法 案 ハ宜 シク之 ヲ帝 国議 会 ニ付 議 ス ヘ キ モノト シ茲 ニ本 案 ニ反 対 ノ意 ヲ表 ス ル モノ ナリ 三十 番 (江木 ) 本 案 ニ付 テ ハ両 日 ニ亘 リ会 議続 行 セ ラ レ

煩 ハシ奉 リ恐 懼 ニ堪 ヘス然 ル ニ本 官 ノ本 案 ニ対 ス ル意 見 ハ昨 日 モ 述 ヘタ ル通 リ之 ヲ緊 急 ナリ ト ス ル モ憲法 第 八条 ニ依 ル ヲ得 ス若 シ

故 ニ美味 ナ ル西 洋 料 理 支 那 料 理 ヨリ モ却 テ茶 漬 ヲ欲 ス ルカ如 キ是

国 ハ天 祖 ノ詔勅 ニ肇 マリ王 道 ヲ以 テ国 ヲ治 メ決 シテ覇 道 ヲ行 ハス

カ其 ノ他或 ハ侵 略 平 定 ノ結 果国 ヲ成 シ タ ル モノ ア リ之 ニ反 シ我 カ

ル実 ニ美 シ キ制 度 ニ シテ国 家 ノ好 模 範 ト モ謂 フ ヘキ モノ ナ ル ニ此

ナ シ而 モ万 世 一系 君 民 一家 族 ノ如 キ有 様 ハ理想 ヲ考 ヘテ モ及 ハサ

天 皇 ハ欧 羅 巴 ノ帝 王 ノ如 ク未 タ曾 テ国 土 ヲ私 有 セラ レ タ ル コト

レ日本 人 ノ特性 ニ外 ナ ラ ス而 シ テ精 神 的 方 面 ニ於 テ ハ例 ヘハ欧 米 人 ハ個 人 主 義 ナ ルカ故 ニ女 嫁 ス レ ハ 一家 ノ財 産 ヲ異 ニシ其 ノ母 親

ノ事 ヲ欧 米 ノ学者 ノ論 ス ル者 ナ キ ハ畢 竟我 カ学 者 ノ力 足 ラ サ ル カ

貧 ナ レ ハ之 ヲ下 女同 様 ニ使 ヒテ怪 マ ス又米 国 ニ於 テ曾 テ 一女 子 毛

ト約 束 シ父 ニ其 ノ外套 ノ調 製 ヲ請 ヒ タ ル ニ外 套 出 来 サ リ シ為 其 ノ

皮 ノ外 套 ヲ着 用 シ テ ﹁ク リ ス マス﹂ ノ宴 会 ニ同 行 ス ル コト ヲ或 男

教 ハ日本 ニ伝 ハリ 日本 ハ鎖 国 千 有 余 年 ノ間 ニ之 ヲ練 リ 上 ケ テ 日本

抑 々又国 民 ノ努 力 足 ラサ ルノ致 ス所 カ 又之 ヲ支 那 ニ見 ル ニ支 那 儒

化 セリ支 那 人 之 ヲ知 ラサ ルカ故 ニ日 本 ノ万世 一系 ノ国体 ニ付 疑 問

男 他 ノ女 ト結 婚 シ タリ彼 ノ女 ハ父 ノ違 約 ニ依 リ 一生 ノ幸福 ヲ失 ヒ

ヲ抱 ク者 ア リ却 テ造 詣 深 キ学 者 ニシ テ然 リ故 ニ例 ヘ ハ聖 人 ノ道 ハ

タリ ト為 シ母 ヲ証 人 ト シ テ父 ニ対 シ損害 賠 償 ノ訴 訟 ヲ提起 シ勝 訴 ト ナリ タ ル コト ア リ此 ノ如 キ ハ日本 人 ヨリ見 レ ハ実 ニ驚 ク ヘキ事

ニ於 テ之 ヲ同 化 スル ノ力 ナカ ル ヘカ ラ ス之 カ為 ニ ハ国 ヲ挙 ケ テ ノ

義 言論 来 襲 ス ルヤ モ知 レ ス此 ノ如 キ我 カ国 風 ニ合 ハサ ル主義 ハ我

ニカ消 滅 ス ヘキ モ我 カ国 民 ノ特 性 維 持 ニ力 メサ レ ハ復 如 何 ナ ル主

治 上 ニ於 テ十 分 此 ノ点 ヲ考 慮 セ ラ レタ シ共 産 主 義 ノ如 キ何 レノ 日

テ モ同 様 ナ リ幸 ヒ思想 問 題 ニ付 同志 ノ方 々ア ル此 ノ内 閣 ナ レ ハ政

ノ方 面 ニ最 モ努 力 ス ルヲ要 ス独 リ学 校 教 育 ニ限 ラ ス家 庭 社 会 ニ於

持 発 達 ニ力 ム ル コト甚 タ疎 キ ヲ遺 憾 ト ス故 ニ今 後官 民協 力 シ テ此

ア ラ ム コト ヲ切 望 ス ル次第 ナ リ

於 テ ハ国 家 ノ将 来 ニ考ヘ 此 ノ点 ニ付 深 ク考 慮 セ ラ レ何 等 カ ノ施 設

到 底 十 分 ニ其 ノ目 的 ヲ達 シ得 ヘシト ハ考 ヘラ レ ス故 ニ内 閣 諸 公 ニ

ノ大 ニ努 力 ヲ要 ス ヘキ所 ニシ テ之 ヲ民 間 ノ学界 協 会 等 ニ委 ヌ ル モ

考 フル モ我 カ 国体 ヲ世 界 ニ知 ラ シム ル ハ容 易 ノ業 ニ非 ス須 ク吾 人

年 半 ニシ テ漸 ク我 カ国 体 ヲ了 解 セ シ メタ ル コト ア リ此 等 ノ点 ヨリ

解 ス ル ノ有 様 ニ シテ余 ハ曾 テ支 那 ノ某 大学 者 ト論 議ス ル コト約 一

ノ実 ヲ 具 フ ル 一大 国 家 ナ ル コト ノ説 明 ヲ聞 キ始 メ テ我 カ国 体 ヲ了

テ彼 等 ハ驚 キ 又彼 等 ハ日本 ハ支 那 ノ家 族 制度 ヨリ論 ス レ ハ 一家 族

支 那 ニ於 テ ハ賢 者 ノ道 ナ ル ニ日本 ニ於 テ ハ之 ヲ 日本 化 セリ ト聞 キ

ナ ル モ彼 国 ノ風 習 ト シ テ ハ之 ヲ怪 マス是 レ欧米 人 ノ特 性 ノ日 本 人

事 業 ト シ テ我 カ根 本 精 神 ノ養 成 ニ力 メ ム コト希 望 ニ堪 ヘサ ル所 ナ

ノ夫 ト異 ルカ故 ナ リ然 ル ニ近 年 一般 ニ此 ノ精 神 的 方 面 ノ特 性 ノ維

リ然 ル ニ日本 人 ハ皆 口 ヲ揃 ヘテ我 カ国 体 ノ世界 無 比天 下 ニ冠 タ ル

ニモ アリ是 レ当 然 ノ コト ナ ルカ之 カ為 失業 者 ニ業 ヲ与 フ ル コト固

ヨリ必要 ナ ル モ夫 ノ ミ ニテ ハ尚 未 タ思 想 ノ悪 化 ヲ防 ク ニ十 分 ナ ラ

尚 生活 ノ安 定 ヲ図 ル ハ思 想 ノ悪 化 ヲ防 ク道 ナ ル コト委 員 長 ノ報 告

ス今 日相 当 ノ知 識 階 級 ノ者 ニ シテ思 想 穏健 ナ ラ サ ル モノ ア リ 一例

コト ヲ言 フト 雖 外国 ノ国 法学 ノ書 物 中 日本 ノ国体 ヲ論 スル者 ア ル

カ即 チ彼 ノ大憲 章 ト シテ国 ノ根 本法 ヲ成 セ リ又米 国 ノ如 キ本 国 ニ

ヲ見 ス英 国 ノ如 キ貴 族 カ武 装 シテ国 王 ニ迫 リ捺 印 セ シメ タ ル モノ

叛 シテ国 ヲ成 シ タ ル モノ ヲ以 テ果 シテ芽 出 度 キ国柄 ト謂 ヒ得 ヘキ

研究 室 ニ在 リ テ孜 々研 究 ヲ続 ク ル ニ収 入 ハ辛 ウ シ テ車 賃 ヲ得 ル ニ

ヲ挙 ク レ ハ大 学 卒業 ノ 医学 士 ノ如 キ成 績 優 秀 ナ ル者 ト雖 三 四年 間

示 シ兵 卒 ヲ教 化 ス ルノ実 ヲ挙 ケ シ ム ル ニ至 ラ ム コト ヲ希 望 ス

ル ニ非 サ ルカ ヲ恐 ル故 ニ将 来 一層 ノ注 意 ヲ加 ヘ将 校 ハ自 ラ模 範 ヲ

セス只 政 府 ニ於 テ ハ委 員 長報 告中 ニ述 ヘラ レタ ル数 項 ノ決議 ニ無

ニ付 テ ハ富 井 、 黒 田、 平 山 各顧 問 官 ト同 一ナ ルカ故 ニ茲 ニ之 ヲ贅

論 賛 同 セラ ル ル コト ト信 ス ル モ本 官 ハ孰 レ モ之 ヲ必 要 ト 考ヘ 就 中

三十 九 番 (鎌 田) 本 官 ハ委 員 長 報告 ニ同 意 ヲ表 ス而 シ テ 其 ノ 理 由

ノ巡 査 十 人 ヲ算 スト聞 ク此等 ノ智 識 階 級 ノ者 ヲ シ テ満足 セシ ム ル

教 育ニ 関 シ テ ハ根 本 的 施 設 ニ最 モ重 ヲ置 ク ヘキ コト ヲ力 説 セ ムト

過 キ サ ル程 ナ ル ニ 一方 富 豪貴 族 ノ子弟 ニ シテ半 途 退 学 シタ ル者 カ

為 ニ ハ単 ニ糊 口 ニ差 支 ナ キ程 度 ノ給 与 ヲ 以 テ スル ノ ミ ニテ ハ不 十

平 素 遊 楽 ヲ恣 ニス ルノ有 様 ニ シテ 又現 ニ警 視 庁 ニ ハ高 等 試 験 合 格

分 ナ リ貴 族 富 豪 顕官 ノ行 動 ヲ慎 マサ ル ヘカ ラ ス例 ヘ ハ花 ヲ観 ル ニ

シテ ハ適 当 ニ シテ既 ニ支 那 ニ於 テ ハ其 ノ成 果燎 原 ノ火 ノ如 ク今 ヤ

スル者 ナリ悪 思 想 ノ伝 播 ニ付 世界 大 戦 後 今 日 ニ至 ル迄 ノ経 過 ヲ見

我 カ国 モ亦 之 ニ脅 カ サ レ ムト ス ルノ有 様 ナ リ之 ニ由 テ見 ル モ悪 思

ル ニ最 初 露 国 ハ西 欧 諸 国 ニ向 テ宣 伝 ヲ試 ミ タ ル モ結 局 独 、仏 、 英

其 ノ例 ヲ見 タリ而 シテ余 ハ此 ノ如 キ人 思 想 問 題 ヲ 口 ニ セサ レ ハ則

想 ニ対抗 ス ル ニ ハ教 育 ノ力 ニ依 ル ヲ以 テ最 モ有 効 ナ リト ス即 チ我

モ衆 ト共 ニ楽 ム ニ於 テ楽 ア ル ニ自 動車 ヲ駆 リ テ却 テ多 衆 ノ愉 快 ヲ

チ可 ナ ル モ苟 モ之 ヲ 口 ニス ル以上 却 テ思 想 ノ悪 化 ヲ招 ク ヘシト 感

カ日 本 モ他 ノ文 明 諸 国 ト 同等 ニ教 育 ノ進歩 ヲ図 ルノ必要 アリ此 ノ

妨 ク ルカ如 キ ハ世間 ヲ顧 ミ サ ル不 心 得 ナ ル行 為 ナ リ又 内閣 大 臣 カ

シタ リ故 ニ富 豪 貴族 ノ奢 侈 ニ流 レ世 間 ヲ憚 ラ サ ル行 動 ハ厳 ニ之 ヲ

点 ニ関 シ余 ハ先 年 来 江 木氏 等 ト共 ニ努 力 シタ ル モ内 閣更 迭 等 ノ為

等 ヲ侵 蝕 ス ル ヲ得 サ リ シ モ ノト認 メ サ ル ヘカ ラ ス其 ノ然 ル所 以 ハ

慎 ミ資 産 家 ノ存 在 モ国 ノ為 ニ必要 ナ リ ト ノ観 念 ヲ 一般 ニ抱 カ シ ム

実 現 ヲ 見 ス常 ニ遺 憾 ニ感 ス ル所 ナ ル カ結 局 我 カ国 ニ於 テ モ 一層 人

政 治 ヲ議 ス ル ニ待 合 ニ於 テ シ而 モ隠 秘 ノ間 ナ ラ ハ兎 モ角 之 ヲ写 真

ル迄 ノ努 力 ナ カ ル ヘカ ラ ス此 ノ点 モ思 想 ノ悪 化 ヲ憂 フ ル現 内 閣 ニ

智 ヲ進 メ道 徳 ヲ涵 養 シ常 識 ヲ養 成 シ国 体 ノ尊 キ ヲ知 ラ シメ産 業 ノ

要 ス ル ニ此等 ノ国 ニ於 テ ハ国 民 ノ個 人 的 生活 進 歩 シ常 識 ヲ具 フ ル

対 シ相 当 ノ考 慮 ヲ求 メテ已 マサ ル次 第 ナ リ

合 理 化等 科 学 的 文 化 ヲ進 メサ レ ハ到底 他 国 ト競 争 ヲ全 ウ ス ルヲ得

ニ撮 リ全 国 津 々浦 々 ニ示 ス ニ至 リ テ ハ国 民愚 ナ リト 雖 此 ノ如 キ人

尚 昨 日 モ軍 隊 ノ規 律 ニ関 ス ル質 問出 タ ルカ兵 営 ニ宣 伝 ﹁ビ ラ﹂ ヲ

ノ指 導ニ 由 リ テ国 民思 想 ヲ矯 正 シ得 ヘ シト ハ思 ハサ ル ヘシ現 内 閣

撒 布 シタ ル事 実 ノ如 キ ハ軍 人勅 諭 ノ精 神 徹 底 ヲ欠 キ又将 校 人 ヲ訓

ス然 ル ニ在 来 ノ義 務 教育 ハ六年 ニ止 リ年 齢 十 二歳 以 上 ニ及 ハス此

シ先 ツ支 那 ヲ従 ヘ次 テ他 ノ諸 国 ニ及 ホ サ ムト セリ此 ノ考 ハ露 国 ト

化 スル ノ資 格 ナキ ニ因 ル モノ ニ非 スヤ元 来 軍 人 ニ賜 ハリ タ ル勅 諭

ノ年 数年 齢 ヲ以 テ シ テ ハ十 分 ノ教 育 ヲ施 シ得 サ ル モ ノナ ルカ故 ニ

者 国 ヲ成 セ ルカ故 ナ リ仍 テ露 国 ハ宣 伝 ノ方 針 ヲ変 シテ東 洋 ヲ目指

ハ 一般 国 民 ニ対 ス ル道 徳 ノ規 準 ニ シテ 五箇 条 ノ精 神 ハ 一ノ真 心 ニ

他 ノ諸国 ニ於 ケ ル カ如 ク義 務 教 育 年 限 ヲ延 長 スル ノ必要 ア ル コト

ニ至 リ テ此 ノ種 ノ 写真 ノ新 聞 ニ掲 載 セラ ル ルヲ見 サ ル モ従 来 屡 々

在 リ軍 隊 ニ宣 伝 ﹁ビ ラ﹂ ヲ撒 クカ如 キ ハ此 ノ御 趣 旨 ニ弛 ヲ生 シ タ

勿 論 ナリ内 閣 ニ於 テ ハ此 ノ点ニ 付 特ニ 十分 ノ御 配 慮 ア ヲ ム コト ヲ

案 ヲ第 五十 五 議 会ニ 提 出 シ タ ル ニ拘 ラ ス其 ノ通 過 ヲ図 ラ サ リ シ ハ

二十 七番 (黒 田) 先 刻 陳 述 シタ ル通 リ政 府 カ曩ニ 本 案 同 様 ノ 法 律

ノ必要 ア ル場 合 ニ於 テ勅 令 ヲ発 布 ス ル ハ差 支 ナ シ只茲ニ一 言 附 加

遺 憾 ナ ル モ其 ハ最早 過 去 ノ事 ナ レ ハ已 ム ヲ得 ス今 日此 ノ如 キ緊 急

切望 ス 又思 想問 題 ノ取 締 ハ容 易 ナ ラ ス如 何 ナ ル施 設便 法 ヲ設 ク ルト モ絶

各 国 共 其 ノ必要 ヲ感 スル所 ニシ テ露 国 カ共 産 党 ヲ以 テ国 ヲ成 シ テ

レ少 数 ノ悪 化 ヲ防遏 スル所 以 ナリ悪 思 想 ノ防遏 ハ今 日英 米 ヲ始 メ

賛 成 ス ルナ リ本 官 ハ冷 静沈 着ニ 判 断 シ タ ル結 果 此 ノ意 見 ニ到 達 シ

相 当 ノ手 続 ヲ執 リ憲 法 ノ趣 旨ニ 叶 ヘリト認 ムル カ故ニ 本 官 ハ之 ニ

アリ テ将 来ニ 悪 例 ヲ貽 ス モノ ナ ル モ本案 ノ場 合 ハ全 ク濫 用 ニ非 ス

ト ノ不 可 ナ ル ハ論 ヲ俟 タサ ル所 ニシ テ徒ニ 緊 急 勅令ニ 由 ル ハ弊害

シタ キ コト ア リ憲 法義 解ニ 記 述 セ ルカ如 ク緊 急勅 令 ヲ濫 発 ス ル コ

滅 ハ困 難 ナ リ国 民 ノ大 多数 カ健 全 ナ ラ ハ少数 ノ不 逞 ノ徒 ア ル モ如

以来 各 国 ノ方 針 異 リ従 前 ハ言 論 ノ自 由 ヲ絶 対 ニ許 シテ弊 害 ナ カリ

タ ル モ ノ ナリ

何 ト モシ難 カ ル ヘキ ニ由 リ多 数 ヲ健 全 ナ ラ シ ム ル コト必 要 ナリ是

シ モノ カ今 日 ニ於 テ ハ然 ラ ス露 国 ノ如 キ大 国 カ発 源 地 ト為 リ軍費

ニス ル ニ至 リ タ ル ハ尤 ナ ル コト ナ リ乍併 此等 ノ取 締 ハ合法 的 ナ ル

ア ル ニ拘 ラ ス本官 カ本 案ニ 賛 成 セサ ルヲ得 サ ル所 以 ハ事 態 ノ頗 ル

措 置 甚 タ緩 漫 ナリ シ コト是 レ其 ノ 二 ナ リ如 上 ノ遺 憾 否寧 ロ痛 恨 事

ナリ報 告 書 中ニ 記 述 セ ルカ如 ク此 ノ問 題 発 生 以来 当 局 ノ執 リ タ ル

三十 四 番 (田) 本 官 ハ本 案ニ 賛 成 ス然 シ賛 成 シ乍 ラ尚 深 ク 遺 憾 ヲ

以 上 ノ資 金 ヲ投 シ テ共 産 主 義 ヲ世界 ニ宣 伝 スルヲ 以 テ他 国 ハ又 之

ヘキ コト勿 論 ナ リ思 想 取締 ノ重要 ナ ル今 日ニ 方 リ本 官 ハ政府 ノ弁

急迫 ナ ル モノ ア レ ハナ リ赤 化 ノ火 ハ露 国 ニ燃 エ始 メ テ忽 チ東 洋 ニ

対ニ 抗 シ宣 伝 戦 ト モ謂 フ ヘキ有 様 ヲ現出 セ リ米 国 ノ如 キ極 端 ナ ル

明 ヲ聴 キ又他 ノ顧 問 官 ノ賛 成 説 ヲ聞 キ此 ノ儘 ニ放 任 シ難 シト考 フ

及 ヒ今 ヤ早 我 カ軒 先 ニ移 ラ ムト ス ルノ有 様 ナ ル ニ此 ノ際 一日 ノ偸

ヲ破 壊 セ ムト企 ツ ル者 ノ我 カ同 胞 中 ヨリ出 テタ ル コト是 レ其 ノ 一

思 想 言 論 ハ自 由 ナ リ ト謂 フ モ国家 ア リ テ ノ後 ノ コト ニテ国 家 ヲ 呪

安 ヲ許 ス ヘキ ニ非 ス数 年 前 本官 カ台 湾 総 督 タリ シ時 露 国 カ東 洋 ニ

感 ス ル点 アリ 我 カ金甌 無欠 ノ国 体 ハ国 民 挙 テ誇 ト セ ル所 ナ ル ニ之

ヒ其 ノ滅 亡 ヲ図 ルカ如 キ殊ニ 我 カ尊 キ国 体 ヲ毀 ケ ムト スルカ如 キ

於 テ最 先ニ 赤 化 ノ 手 ヲ染 メ タ ル ハ広 東 ナ リ キ即 チ同 地 ニ於 テ ハ孫

取締 ヲ行 ヒ外 国 人 ノ悪 思想 宣 伝 者 ヲ船ニ 乗 セテ送 リ付 ク ルト ノ コ

者ニ 対 シ テ ハ十分 ノ威 力 ヲ以 テ之 ニ臨 マサ ル ヘカ ラ ス故 ニ此 ノ際

ト ナ ルカ以 前 最 モ自由 ヲ標 榜 シ居 タ ル国 ニ シテ此 ノ如 ク態 度 ヲ異

先 ツ緊 急 勅 令ニ 由 リ 此 ノ恐 ル ヘキ暴 逆 ヲ抑 圧 シ将 来 ヲ戒 ム ル コト

ヲ送 リ 且 一年 二百 万元 程 ノ資 金 ヲ投 シタ リト ノ コト ナリ而 シテ台

文 一派 カ共 和 国 ノ旗 揚 ヲ為 ス以前 ヨリ露 国 ハ ﹁ボ ロヂ ン﹂ 外数 名

湾 ハ支 那 民 族 ノ三 分 ノ 一ハ広 東 ヨリ 移住 シタ ル者 ナ レ ハ赤 化 ノ伝

必要 ナ リ今 日 ノ社会 状 態 ハ変 化 セ ルナ リ元 来 此 ノ種 ノ立 法 ヲ為 ス

播 ヲ受 ケ ム コト ヲ恐 レ百方 警 戒 シ タ ル ニ幸 ニシ テ同 地 ニ ハ悪影 響

ニ ハ国 民 ノ輿 論 ヲ重 ム シ議 会 ノ議ニ 付 ス ヘキ コト ハ当 然 ナ ル モ帝

タ ル モノ ト考 フ依 テ本官 ハ本 案ニ 賛意 ヲ表 ス ル次第 ナ リ

国憲 法 ハ尚 斯 カ ル場 合ニ 政 府 ノ責 任 ヲ以 テ立 法 シ得 ル コト ヲ定 メ

ル期 間 内ニ 動 揺 ヲ来 ス カ如 キ コト ハ夢寐 ニ モ想 像 シ能 ハ スト ハ何

明ニ 治 天皇 ノ御 精 神 ニ依 リ 益 々基 礎 固 マリ タ レ ハ 一年ニ 足 ラ サ

人 モ同感 ニ シテ吾 々政 府 当 局者 亦 然 リト考 フ只 茲ニ 勅 令 ヲ以 テ之

ラ ス昨 日来 ノ顧 問 官 ノ御意 見 ノ如 ク我 カ 国 体 ハ数 千年 来 揺 ナ ク殊

ハ広 東 、 上海 等 ノ支 那 人 ハ露 国 人 ト 協 力 シ テ盛ニ 東 洋ニ 赤 化 ノ宣

ナ カ リ キ其 ノ後 広 東 モ赤 化ニ 懲 リ ﹁ボ ロヂ ン﹂等 ヲ追還 シ タリ ト

伝 ヲ行 ヘル モノ ノ如 シ其 ノ当 時 ヨリ確ニ 露 国 人 ハ日本 ニモ手 ヲ著

臨ニマムト ス ル所 以 ハ他ニ 在 ラ ス日本 共産 党 ノ行動 ハ露 国 共 産 党

ノ コト ナ ルカ 一旦播 キ タ ル種 ハ容 易ニ 消 滅 ス ヘカ ラ ス今 日 ニ於 テ

ク ル筈 ナ リ シ モノ ト思 ハル日本 ハ国 体異 ルカ故ニ 安 心 ナ リ ト楽 観

ノ指 揮 ヲ承 ケ世 界 革 命 ヲ目的 ト ス ル モノ ニ シテ我 カ国 ニ取 リ テ ハ

三 条 ヲ以 テ処 罰 シ得 スト セ ハ果 シ テ今後 尚 数 箇 月 ヲ俟 ツ モ可 ナ リ

シ難 シ既ニ 広 東 ノ例 モ アリ 又共 産 党ニ 対 シ露 国 カ物 質的 援 助 ヲ為

意 ナカ ルヘ カ ラ ス之 カ為 ニ ハ現 行 ノ治安 維 持 法 ヲ以 テ シ テ ハ到 底

ト 謂 ヒ得 ヘキ カ現ニ 国 体変 革 ヲ企 ツ ル不逞 ノ徒 アリ テ日 々多 少 ノ

セ ル疑 ア ルノ ミ ナ ラ ス現ニ 本 年 検 挙 セラ レタ ル党 員 数 百 名 ヲ算 ス

防 止 シ得ヘ カ ラ ス故ニ 後 レタ リト 雖 為 サ サ ル ニ勝 ル ヲ以 テ此 ノ際

活 動 ヲ持 続 セ ル ニ非 ス ヤ松 室 顧 問 官 ノ捜 査 十 分 ナ ラサ レ ハ効 ナ シ

ヘシト謂 ハ レタ ル程 ノ重大 事 犯 ナ リ若 シ此 ノ事 犯 カ右 刑 法 第 七 十

能 フ限 リ ノ方 法 ヲ講 シ以 テ極 力 共産 主義 ノ宣 伝 ヲ防 止 セサ ルヘ カ

トノ御 説 御 尤 ナ ル モ 今春 来既ニ 四 百 余 名 ヲ検 挙 セリ検 挙 ハ敢 テ難

非 常 ナ ル重大 事 犯 ナリ松 室 顧 問 官 カ刑法 第 七 十 三条 ニ依 リ処 罰 ス

ラ ス之 カ為 ニ ハ官 民 一致 ノ努 力 ヲ要 ス此 ノ見 地 ヨリ シテ本 官 ハ大

事ニ 非 ス乍 併 彼 等ニ 対 シテ ハ十 年 位 ノ処刑 ニテ ハ出獄 後 必 スヤ再

ト謂 フ ニ至 テ ハ赤 化 ノ火 ハ既ニ 付 キ タ ルナ リ即 チ ﹁ポ ンプ ﹂ ノ用

体 本案ニ 賛 意 ヲ表 スルト共ニ 政 府 ハ責 任 ヲ以 テ赤 化 ノ防 止ニ 十 分

ヒ活動 ヲ為 ス ヘキカ故ニ 威 嚇 足 ラ サ ルナ リ将 来 事 犯生 ス ルヤ否 ヤ

如 キ事 態 コソ憲 法 第 八条ニ 該 当 ス ル モノ ト信 ス是 レ本 案 ノ勅 令 ヲ

ル者 ア ル ニ方 リ現 行 法 ノ規 定 ヲ以 テ シテ不 充 分 ナ ル ニ於 テ ハ此 ノ

不 明 ノ モノ ナ ラ ハ次 ノ議 会 ヲ俟 ツ モ可 ナ ラ ム モ現ニ 犯行 ヲ継 続 セ

ノ力 ヲ尽 サ レム コト ヲ切望 スル者 ナリ

タ ル意 見 ノ内 二三 ノ点ニ 付 意 見 ヲ述 フ ヘシ

十 二番 (原) 本 官 ハ直接 本 案ニ 関 シ昨 日来 各 顧 問 官 ノ陳 述 セ ラ レ

此 ノ治 安 維 持 法 中 改 正案 ノ内 容ニ 付 テ ハ松 室 顧 問 官 以外 ノ各 顧 問

付ニ 治安 維 持 法 ノ規 定却 テ軽 キ ヲ非 難 セラ レタ レ ハ国体 変 革 ヲ企

見 ヲ異 ニ ス共 産 党 ハ固 ヨリ御 大 典ニ 反 対 スル者 ニシテ此 ノ如 キ不

ス ハ恩 赦 ノ例ニ 照 シ権 衡 ヲ失 スト ノ説 ア ル モ本 宮等 ハ遺 憾 乍 ラ所

発令 セ ムト スル所 以 ナリ或 ハ御 大 典 ヲ前ニ 控 ヘ此 ノ如 キ立 法 ヲ為

ツ ル者ニ 極 刑 ヲ以 テ臨 ム ヲ不 可 ト為 ス説 ニ ハ非 サ ルカ如 シ故ニ 現

逞 ノ徒 ヲ取 締 ル ハ恩赦 ト何 等 関係 ナ シ不逞 ノ企 ヲ為 ス者ニ 対 ス ル

官 ハ敢 テ異 存 ナ キ カ如 シ尤 モ松室 顧 問官 モ大 逆 罪ニ 及 フ刑 ノ適 用

行法 ノ十 年 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ノ刑 ヲ 以 テ シテ ハ此 ノ如 キ犯 罪 ヲ威 嚇

処 罰 ヲ差 控 ヘ恩 赦 ノ精 神 ト合 一セ シ メ ムト考 フ ルカ如 キ ハ誤 レリ

御 盛 徳 ヲ汚

スカ ノ如 キ説 ア ル モ是 レ亦 我 カ憲 法 政治 ノ下 ニ於 テ有 リ得 ヘカ ラ

或 ハ又 此 ノ改 正 ヲ勅 令 ノ形 式 ヲ以 テ発布 ス ル コト カ

ス ル ニ足 ラ サ ル モノ ナ ル コト ハ何 人 モ疑 ナ キ所 ナ ル ヘシ然 ラ ハ問 題 ハ今 日緊 急 勅 令 ヲ以 テ此 ノ改 正 ヲ行 フ コト カ適 当 ナ リ ヤ 又 ハ次 ノ議 会 ヲ俟 テ其 ノ手 続 ヲ為 スカ適 当 ナ リ ヤ ニ在 リ ト謂 ハサ ル ヘカ

聖 旨ニ 出 ツ ル モノ ニシ テ其 ノ間 甲 乙 ナク何 レ モ国 務 大 臣 之 カ輔 弼

サ ル コト ナ リ何ト 為 レ ハ勅 令 ノ御 裁 可 モ法 律 ノ御 裁 可 モ均 シ ク

ナラ ム況 ヤ今 回 ノ事 件 ノ如 キ全 国 的 組織 的ニ 国家 破 壊 ヲ企 ツ ル者

当 時彼 ノ如 キ措 置 ヲ執 ラサ リ セ ハ恐 ラ ク ハ兇 徒 益 々跋扈 シタ リ シ

刑ニ 処 シタ ル為 屏 息 シ タ ル コト ハ松 室 顧問 官 往 年 ノ功績ニ 非 スヤ

弊 害 アリ タ ル コト モ ア リ タ レト モ彼 ノ幸徳 事 件 ハ犯 罪者 多 数 ヲ死

ア ル ニ対 シ之 ニ臨 ム ニ十 年 以 下 ノ懲 役 等 ノ威 力 ヲ以 テ シテ ハ到 底

ノ責任 ヲ負 ヒ只 勅 令 ト法 律 ト ハ其 ノ成 立ニ 与 ル機 関 ヲ異 ニス ル ニ

不 充分 ナ ルヘ キ ハ 一層 明 ナ リ然 レ ハ現 行法 ノ規 定 ア ルカ故ニ 本 案

過 キ サ ル モノ ナ レ ハナ リ 次ニ 松 室 顧 問 官 ヨ リ本案 ノ事 犯 ニ ハ刑 法第 七 十三 条 ノ刑 ヲ適 用 ス

ノ改 正 ハ其 ノ必 要 ナ シト ノ意 見 ニ ハ同意 シ能 ハサ ルナ リ

クヘ 此 ノ際 本案 ノ可 否 ヲ決 ス ヘキ時 期ニ 到 達 シタ ルカ如 シ本 官 ハ

十 九番 (久 保 田) 昨 日来 慎 重 審 議 ヲ遂 ケ最 早 賛 否 ノ論 モ尽 キ タ ル

ヘキ モノ ナ ル ニ治 安維 持 法 ハ却 テ之 ヲ軽 減 セ ムト ス ル カト ノ質 問

第 七十 三条 ノ効 力 ヲ減 殺 スト仮 定 セ ムカ 現行 法 ノ ミ ニテ モ既ニ 其

アリ タ ル ハ甚 タ遺 憾ニ 感 ス ル所 ナ リ若 シ御 意 見 ノ如 ク本案 カ刑 法

ノ効 力 減 殺 セ リト謂 ハサ ルヘ カ ラ ス此 ノ関 係 ハ新 旧 規 定 ニ於 テ同

ス ハ本 案ニ 同 意 シ難 キ旨 ヲ述 ヘ置 キ タ リ本 官 ハ此 ノ問 題 ハ頗 ル重

大 ナ リト 認 メ此 ノ重 要 問 題ニ 付 政府 枢 密 院 互 ニ所 見 ヲ異 ニシ又 ハ

昨 日所 見 ヲ述 ヘテ政 府 ノ再 考 ヲ求 メ若 シ其 ノ意 見 政 府 ニ容 レラ レ

死 刑ニ 上 ル ハ寧 ロ重 ク ス ル結 果 ト為 ル ヘク之ニ 対 シ本 案 ヲ非 ナ リ

フ抑 々枢 密院 ハ我 カ憲 法 ヲ以 テ特 ニ至 高 顧 問 府 ト シテ設 ケ ラ レ内

本 会 議 ニ於 テ決 議 ノ 一致 ヲ見 サ ル カ如 キ コト ハ甚 タ残 念 ナリ ト思

一ナ リ若 シ松 室 顧問 官 ノ御 説 ヲ維持 セム ト スレ ハ刑 法 第 七 十 三条

ト ス ル ハ了 解ニ 苦 ム所 ナリ而 モ此 ハ効 力ニ 変 更 ア ル コト ヲ仮 定 シ

ノ極 刑 カ現 行法 ニ依 リ 一旦 十 年 以下ニ 減 セラ レ更 ニ本改 正ニ 由 リ

テ ノ論 ナ ルカ本 官 ハ二 者 各 々其 ノ適 用 範 囲 ヲ異 ニ ス ル モノ ト見 ル

リ テ御 諮詢ニ 答フ 国 務ニ 関 シ テ ハ内 閣 ト枢 密 院 ト ハ均 シ ク  陛下

ノ左 右ニ 在 リ テ輔 弼 シ奉 ル ノ責 任 ヲ有 スル コト言 フ迄 モ ナ シ是 レ

閣 ハ 陛 下 ノ側 近ニ 在 リ テ国 務 ヲ執 リ枢 密 顧 問 ハ同 ジ ク側 近ニ 在

用 ナ キ ニ至 ル ヘシ併 シ国 体変 革 ヲ企 ツ ル モ暴 行脅 迫 ヲ伴 ハサ ル モ

付ニ 意 見 ヲ異 ニ スル ハ已 ムヲ得 スト スル モ本件 ノ如 キ未曾 有 ノ重

憲 法 義 解 ノ教 フ ル所 ナ リ畢竟 両 者 ハ他 人 同 士ニ 非 ス故ニ 些 細 ノ事

ナ リ尤 モ国体 変 革 ヲ企 ツ ル者 ノ行 為 刑 法 第 七 十 三条 ニ迄 進 マ ハ刑

ノ ハ刑 法 第 七 十 三条ニ 所 謂危 害 ヲ加ヘ 又 ハ加 ヘムト シタ ル ニ当 ラ

法 第 五 十 四条ニ 依 リ重ニ 従 テ処 断 セ ラ ル ル カ故ニ 治 安維 持 法 ノ適

スト ハ学 者 ノ意 見 ノ 一致 セ ル所 ナ リ従 テ刑 法第 七十 三 条ニ 依 リ当

ヲ求 メ ムト シテ得 ラ レ ス次ニ 委 員 会 ノ議 ヲ以 テ政 府 ノ意 ヲ動 カ サ

スル所 ナリ故ニ 本 官 ハ曩ニ委 員 会 ニ於 テ 一委員 ト シテ政 府 ノ同 意

ム コト ヲ欲 シタ ル モ是 レ亦多 数 ノ賛 同 ヲ得 ル ニ至 ラ ス今 又本 会 議

大 事 件ニ 付意 見 ヲ異 ニシ帰 一ス ル所 ヲ得 サ ル ハ本 官 ノ深 ク遺 憾 ト

ヘキ ナリ

然 死 刑 ト為 ルカ故ニ 治 安 維持 法 ニ依 リ死 刑 ト ス ル ニ及 ハ スト ノ御

尚 松 室 顧 問官 ヨリ此 ノ種 ノ 重 キ刑 ハ適 当 ナ ラサ ル ヤノ御 説 アリ タ

ニ於 テ同 一ノ卑 見 ヲ吐露 シテ政 府 ノ再 考 ヲ求 メ之 ヲ得 ラ レサ リ シ

説 ニ ハ同 意 シ難 シ刑 法 ト治 安 維 持 法 ト相俟 テ取締 ノ完璧 ヲ期 シ得

ル ハ御 意 見 ト シ テ之 ヲ拝 聴 セリ 成程 或 時 代 ニ ハ科 刑 ノ重 キ ハ却 テ

報 告 中 ニ モ賛 成 シ難 キ点 ア ル コト ヲ併 セ テ言 明 ス尚 委 員 会 ノ事ニ

ヲ得 ス本 案ニ 反 対 セ サ ルヲ得 サ ル コト ニ決 心 セリ同時ニ 委 員 長 ノ

コト ハ誠ニ 遺 憾 千 万 ナリ然 シ最 早繰 返 ス モ詮 ナ キ ニ由 リ 茲 ニ已 ム

タ ルカ実ニ一 朝 一タ に非 ス仮令 政府ニ 変 動 ア ル モ将 タ 又帝 政 復 興

命 ノ遂 行 ヲ目 撃 シ タ ルカ彼 等 カ其 ノ主 義 ノ為ニ 如 何ニ 奮 闘 努 力 シ

ノ目 的ニ 至 テ ハ秋毫 モ変 化 ナ シ本 官 ハ先 年 久 シ ク露 国ニ 在 リ テ革

ハ到底 挫 折 セサ ル ヘシ故ニ 司 法 大 臣 モ言 ハレ シ如 ク今 日 ノ 日本 ノ

スト モ全 力 ヲ尽 シ テ世 界 革命 ノ 目的 ヲ遂 行 セ ムト ス ル彼 等 ノ企 画

陛 下 ノ御 前 ニテ之 ヲ述 フ ルノ 必要 ナ キ カ故ニ

共 産 党 ハ指 導監 督 者 附 ノ モノ ナ レ ハ之ニ 対 シ飽 迄 峻 厳 ナ ル取 締 ヲ

付 所 見 アリ但 シ今

議 長 (倉 富 ) 此 ノ議件 議 了 セ ハ本会 議 ハ閉 会 ス ヘシ議 長 ト シ テ ハ

コト ヲ希 望 ス又外 務 大 臣 カ 共産 党 事 件ニ 関 連 シ曩ニ 露 国 大使ニ 対

為 ス ヘキ ハ当然 ノ コト ナ リ何 卒 本 案 ノ施 行ニ 付 些 ノ遺 漏 ナカ ラ ム

還 御 ノ後 当 席 ニテ述 フル コト ヲ議 長 ニ於 テ許 サ レタ シ

其 ノ後 ニ於 テ モ御意 見 を聞 ク ヘキ モ顧 問 官 列 席 ノ上 ト ノ コト ナ ラ

シ日本 ノ反 感 ヲ買 ハサ ル様 ト ノ 注意 ヲ与 ヘラ レ タ ル コト ハ妥 当 ナ

ハ計 ヒ難 シ

ヲ述 フ ヘシ本 官 ハ已 ム ヲ得 ス本 案ニ 賛 成 ス ル ニ非 ス報 告 書ニ 在 ル

三 十 一番 (内 田) 最 早 時刻 モ移 リ タ レ ハ極 テ簡 単ニ 本 案 賛 成 ノ趣 意

サ ル ヘカ ラ サ ルナ リ尚 又 此 ノ勅 令 案 成 立 発 布 ノ 上 ハ永 久ニ 其 ノ効

ル様ニ 努 ムト言 フ ト モ其 ノ裏 面 ニ ハ恐 ル ヘキ企 画 ア ル コト ヲ知 ラ

ノ機 関ニ 過 キ サ ルカ故ニ 如 何ニ 同 政 府 ニ於 テ 日本 ノ反感 ヲ買 ハサ

ル通 リ今 日 ノ ﹁ソヴ ィ エト﹂ 政 府 ハ第 三 ﹁イ ンタ ーナ ショ ナ ル﹂

ルカ尚 此 ノ点ニ 付将 来 充 分 御 老 慮 アラ ム コト ヲ望 ム先 般 申 述 ヘタ

如 ク本案 カ曩 ノ議 会 ノ会 期 延長ニ 因 ル カ又 ハ臨 時 議 会 ノ開 会ニ 因

力 ヲ保 有 セ シ ム ル為 議 会 ニ於 テ不 承 諾 ト為 ラ サ ル様 政 府 ハ十 分 努

陳 述 ス ヘシ

十九 番 ( 久 保 田) 御 許 ナケ レ ハ巳 ム ヲ得 ス他 日相 当 ノ機 会ニ 於 テ

リ法 律 ノ形 式 ヲ 以 テ制 定 セラ レ シナ ラ ム ニ ハ其 ノ法 ト シテ ノ権 威

力 セ ラ レ ム コト ヲ望 ム

二十 九 番 (松 室) 最 早 討 論 ヲ終 結 シ採 決 セ ラ レ ム コト ヲ望 ム

ニ於 テ モ将 タ又結 果 ニ於 テ モ誠ニ 望 マ シキ次 第 ナ ル モ今 日ニ 至 リ

討 論 ア リ タ ル モ尚 此 ノ点ニ 付 茲 ニ蛇 足 ヲ加 ヘム ニ本官 ハ昨 年 ノ財

重大 問 題 ニシ テ殊ニ 憲 法 第 八条 ノ解 釈ニ 関 スル モノ ナ リ然 ラ ハ往

十 八番 (金 子 ) 本 官 ハ昨 日来 各 位 ノ御 議 論 ヲ拝 聴 シタ ル カ 本 案 ハ

テ ハ已 ム ヲ得 サ ル コト ナ リ就 テ ハ憲 法 第 八条 ノ解 釈ニ 付既ニ 十 分

政 処 分 ノ如 キ明ニ 憲 法 違 反 ノ場 合 ニ ハ枢 密 院 カ断 然 之ニ 反 対 ス ヘ

年 伊 藤 公 ノ命 ヲ承 ケ テ憲 法 起 草ニ 従事 シタ ル者 ノ 一人 ト シテ今 尚

キ コト勿 論 ナ ル モ本案 ノ如 キ果 シテ憲 法 第 八 条 ノ精 神ニ 背 弛 ス ル ヤ否 ヤ所 見 ヲ異 ニス ル場 合 内 閣 ニ於 テ責 任 ヲ 以 テ之 ヲ制 定 セ ムト

レタ シ

吾 々憲 法 起 草 ノ際 最 モ苦 心 シタ ル ハ第 八条 ノ緊 急 命令 権 ナ リ キ同

生存 シ当 席 ヲ汚 セ ル本 官 ヨリ茲ニ 簡 単ニ一 言 陳 述 ス ル コト ヲ許 サ

条 ハ政府 ノ高 等 政 策 ヲ行 フ時 ノ論 拠 ト為 ル モ ノ ニシ テ其 ノ事 実ニ

ス ル ニ於 テ ハ本 院 ハ強 テ之 ニ反 対 ス ヘキ ニ非 スト信 ス本官 ハ此 ノ

尚 近 頃 露 国 ノ状 態 ニ ハ変 化 ヲ来 シ私有 財 産 権 ヲ認 メ漸 次 旧態ニ 復

見 地 ヨリ暫 ク政 府 ノ所 見ニ 委 ネ テ茲ニ 本 案 ノ成 立ニ 賛 成 ス ルナ リ

ス ルノ観 ア ル モ第 三 ﹁イ ンタ ーナ ショ ナ ル﹂ ノ計 画 セ ル世 界 革 命

テ公 共 ノ安全 ヲ保 チ其 ノ災 厄 ヲ予 防 救 済 ス ル為ニ 力 ノ及 フ所 ヲ極

旦急 迫 ノ事 ア ル ニ臨 ミ又 ハ国 民 凶荒癘 疫 及其 ノ他 ノ災 害 ア ル ニ当

リ モ憲 法 義解 ヲ見 レ ハ忽 チ明 瞭 ナ リ即 チ憲 法 義 解 ハ曰 ク ﹁国 家 一

現 ハル ル時 ハ政 治 家 ノ責 任 論 ト 為 ル此 ノ事 ハ余 カ茲ニ 論 議 スル ヨ

滅 セ シ ム ル コト必要 ナ リ即 チ本案 ノ制 定 ハ之 カ為 緊急 已 ム ヲ得 サ

通 シテ彼 ノ悪 結 社 ノ組 織 ヲ為 セ ル者 ア ル以 上 ハ 一刻 モ速 ニ之 ヲ絶

我 カ同 胞 中 ヨリ出 テ タ ル コト ハ甚 タ遺 憾 ナ ル モ既ニ 露 国 ト気 脈 ヲ

ヴ ィズ ム﹂ ノ危 険 ナ ル コト ヲ熟 知 セリ今 日此 ノ如 キ共産 主 義 者 ノ

議 長 (倉 富) 本件 ハ誠ニ 重 要 ナ ル案 件ニ 付 二 日間ニ 亙 リ 十 分 審 議

ル措 置 ニ シテ政 府 カ責 任 ヲ以 テ之 ヲ遂 行 セ ムト ス ル ニ因 リ憲 法 上

ヲ尽 シタ ルカ最 早討 論 モ尽 キ タ リ ト認 ム ルヲ以 テ第 二読会 以 下 ヲ

毫 モ支 障 ナ シト認 ム是 レ本 官 カ本 案ニ 賛成 スル所 以 ナリ

ニ代ヘ 遺 計 無 ラ シ ムル ハ国家 自 衛 及保 護 ノ道 ニ於 テ固 ヨリ已 ムヲ

省 略 シ直ニ 採 決ニ 付 ス ヘシ本 案 賛 成 ノ各位 ノ起立 ヲ請 フ

メ テ必要 ノ処 分 ヲ施 サ サ ル コト ヲ得 ス此 ノ時 ニ於 テ議 会 偶開 会 ノ

得 サ ル ニ出 ル者 ナ リ﹂ ト今 日 ノ場 合 ハ正ニ 之ニ 当 ル其 ノ政府 カ責

期ニ 在 ラサ ル ニ当 テ ハ政 府 ハ進 テ其 ノ責 ヲ執 リ勅 令 ヲ発 シ テ法 律

任 ヲ執 ラ ムト ス ルノ事態ニ 付 テ ハ政 府 当 局 及他 ノ顧 問官 ヨリ陳 述

)

書記官長 二

上 兵 治

雄

江 秀 雄

書記官

武 藤 盛

堀

︹ 白 筆︺ 議長男爵 倉 富 勇 三 郎

久保 田、 石 黒、 井 上 、 松 室、 多数可決(江 木 各 顧 問官 起 立 セ ス

本 日 ハ之 ニテ閉会 ス

アリ タ ル通 リ些 ノ逡 巡 ヲ許 サ ス輿論 又恐 ルル ニ足 ラ ス此 ノ際 吾 人 ハ本 案 ノ制 定 ヲ從 慂 シタ キ 程 ナリ是 レ憲 法 ノ是 認 セ ル政策 ナ レ ハ

聖上入御 ( 午後三時

四十分閉会) 

ナ リ然 ル ニ世 間ニ 誤 解 ア リ 曰 ク枢 密 院 ハ昨年 前 内 閣 ノ立 案 セ ル財 政 処 分 案 ヲ否 決 シ今 日現 内 閣 ノ提 案 ヲ可決 セ ム ト ス ル ハ不 可 解 ナ リ ト是 レ誤 レリ本院 カ憲 法 第 八条 ニ依 ル緊急 勅令 案 ヲ可 決 シ タ ル 先 例 ハ幾 十 ヲ算 ス ル モ第 七 十条 ニ依 ル財 政処 分 案ニ 至 テ ハ容 易ニ 之 ヲ承認 セ ス例 ヘ ハ去 ル大 正 四年 若 槻 氏 大蔵 大 臣 タリ シ大 隈 内閣 ニ於 テ蚕 糸 業 救済 ノ為 ニス ル緊 急 処 分 ヲ立 案 本 院 ノ詢議ニ 付 セラ

朕 茲ニ緊急ノ必要 アリト認 メ枢密顧問 ノ諮詢 ヲ経テ帝国憲法第八条

レ タ ル時 委 員 会 ニ於 テ約 一箇 月 間 研 究 シタ ル モ同意 ス ル能 ハス終 ニ大 隈内 閣 総 理大 臣 ハ奏 請 シテ案 ヲ撤 回 シタ ル コト ア リ然 ル ニ昨

日

第 一項ニ依 リ治安維持法中改正ノ件 ヲ裁可 シ之 ヲ公布 セシム 月

内閣総 理大臣

年

御名御璽

年 若 槻氏 内 閣 ノ首 斑 ト シ テ夫 ト同 様 ノ案 ヲ提 議 シ吾 々ノ同意 ヲ求 メ ラ レタ ル モ吾 々 ハ 御 前 ニ於 テ先例 ニ依 リ之 ヲ否 決 シ タ ル コト

テ之 ヲ可 決 シタ ル先 例 ア ルノ ミ ナラ ス其 ノ緊急 ヲ要 ス ル事 態ニ 付

各 省 大 臣

各位 御 承 知 ノ通 リ ナ リ然 レト モ本案 ハ憲 法 第 八条 ニ依 ル モノ ニシ

テ ハ責 任 ヲ執 レル政 府 ノ痛 言 セ ル通 リ ニシ テ本 官 等 亦 ﹁ボ リ シェ

勅令第

号

国 体 ヲ変 革 ス ル コト ヲ目的 ト シ テ結 社 ヲ組織 シタ ル者 又 ハ

治 安 維 持 法 中 左 ノ通 改 正 ス 第 一条 結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導者 タ ル任務ニ 従 事 シ タ ル者 ハ死刑 又 ハ無期 若 ハ五年 以 上 ノ懲 役 若 ハ禁 錮 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社ニ 加 入 シ タ ル 者 又 ハ結 社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年 以 上 ノ 有 期 ノ懲 役 又 ハ禁 錮ニ 処 ス 私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組織 シタ ル者、

)

ル者 ハ十年 以 下 ノ懲役 又 ハ禁錮ニ 処 ス

結 社ニ 加 入 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シ タ

前二 項 ノ未 遂 罪 ハ之 ヲ罰 ス

第二 条 中 ﹁ 前 条 第 一項﹂ ヲ ﹁前条 第 一項 又 ハ第二 項 ﹂ニ 改 ム

改ニ ム

第 三条 及 第 四条 中 ﹁第 一条 第 一項 ﹂ ヲ ﹁ 第 一条 第 一項 又 ハ第二 項 ﹂

則

第 五条 中 ﹁第 一条 第 一項 及 ﹂ ヲ ﹁第 一条 第 一項 第二 項 又 ハ﹂ニ 改 ム 附

本令 ハ公 布 ノ日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

大 日本帝 国 は万世 一系 の

天 皇 之 を統 治 せら れま す る を以 て、 万代

述 べた 通 り であ り ます る が、 今 茲 に其 要 旨 を申 上 げ ます れば 、抑 々

会 に於 き まし て政 府 が 治安 維 持 法 中改 正法 律案 を提出 す る に当 つて

( 第 五 十 六 回帝 国 議会 ・ 一九二 九 )

一二  緊 急 勅 令 承 認 に 関 す る 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録 ︹ 抄︺

)

第 五十六回 議衆 安維持法 院議事速記録 昭和三年勅令第百廿九号(中治 帝 国 議 会  改正ノ件 承 諾 ヲ求 ムル件

(

の変革 を企 てま す る のは、 即 ち 我 が国 家 を滅 亡 せし め んと す る に外

な ら な いも ので あ りま す (拍 手 )是 れ帝 国 とし て最 も恐 るべ き所 の

不 易 の国 体 であ る こと は申 す 迄 も な い所 であ りま す (拍 手 ) 此国 体

も ので あり ま し て、 現行 刑 法 が 大逆 罪 叛 逆 罪 に対 し、 殊 に極 刑 を科

昭和 四年二 月二 日開 議

六号 治 安 維 持 法 第 一条 が、 国 体 の変 革 を自 的 とす る秘 密結 社 を組 織

し て居 りま す る のも 亦之 が為 であ りま す 、併 な がら国 体 変 革 の計 画

○ 国務 大 臣 (原 嘉道 君 ) ︹司法 大 臣 ︺ 諸 君 、 大 正十 四年 法 律 第 四十

が帝 国 の治 安 を 維持 す るに足 ら な い と 云 ふ こと は、 曩 に第 五十 五 議

す る者 に対 し ま し て、 科刑 の宜 し き を得 な いも のがあ り ま し て、 我

外 患 罪 と謂 ふ ても宜 し い の であ り ます、 然 る に刑 法 が大 逆 罪、 内 乱

は刑 法 所定 の外 患罪 に譲 る所 は あ りま せ ぬ (拍 手 )是 は即 ち思 想 的

き 、 又 最 も悪 む べ き売 国 奴的 のも の であ りま し て、 其 危 険 な る こと

壊 を策 画 す るも ので あり ま す (拍 手) 斯 る団 体 の行 動 は 実 に恐 るべ

体 と気 脈 を通 じ まし て、其頤 使 に甘 んじ 、 金甌 無 欠 の我 が国 体 の崩

手 )而 し て此種 の結 社 団体 は国 際的 革 命 を目的 と致 し ま す る国 外 団

ま し て、 其 恐 る べき こと は決 し て前 者 に譲 ら な い の であ り ます (拍

のも あ る の であ りま す、 是 は思 想的 内 乱 罪 と も謂 ふ べき も のであ り

化 し、 一兵 に衂 らざ るも尚 ほ国 体 の瓦 解 を 惹 起 す べき手 段 に依 るも

な い の であ り まし て、 秘密 結 社 の組 織 に依 り、 国 民 の思 想 を腐蝕 悪

は、 単 り 此種 直 接 の暴 力的 行 為 を手 段 と す る も の の みに て は止 ま ら

く国 民 を し て事 態 の重大 な る を知 ら し め、苟 も 彼等 不 逞 の徒 の煽 動

如 き場 合 に於 き ま し て は、 一日 も速 に適 当 な る刑罰 法 規 を 定 め、 汎

す る企 画 を実 現 せ ん とす る者 が存 在 し て、 著 々其歩 を進 め て居 るが

き情 報 が あ つた ので あ りま す、 斯 の如 く現 に我 が国 家 の基礎 を破 壊

生 を続 々帰 朝 せ し め党 の組織 、 整 備 、拡 大 に努 め しむ ると の信 ず べ

見 ま す る や、 ﹁モ ス コー﹂ に於 け る東 洋 勤 労 者 共産 大 学 の 日 本 留 学

に第 三 ﹁イ ンタ ーナ シ ヨ ナ ル﹂ は 日本 共 産 党 員 の大 検 挙 あ りた るを

画 を実 行 せ んと す る の状 況顕 然 た る も のあ るを認 めま し た、 加 ふる

者 と相 呼 応 し て、 益 々我 が国 民 中 に危 激 の思 想 を普 及 し 、 且 つ其企

依 然 と し て不逞 の計 画 を 遂行 せん と致 し ま し て、 党 員 以 外 の同 主義

し て居 りま し た所 、 彼 等 は多 数 党 員 の検 挙後 な る にも 拘 り ま せず 、

れ ば、 国 家 の治 安 は 維 持出 来 な い ので あり ます 、 特 に昨 年 の下半 期

し まし ても亦 一大 警 戒 を与 へ、 反省 自 覚 す る所 あら し む る にあ らざ

は、 我 が帝 国 が最 も厳 粛 にし て且 つ最 も 静謐 な る秩 序 を要 す る時 機

誘 惑 に陥 るが如 き こと な から し め ます ると共 に、彼 等 不逞 の徒 に対

期 刑 を以 て致 し て居 り ま し た のは、 権 衡 を 失す る の甚 し きも ので あ

であ つたと 云 ふ こと は、 諸 君 の御 承 知 の通 り で あり ま し て、有 ゆ る

罪 及 外 患 罪 に対 し て極刑 を科 し て居 りま す る にも拘 は りま せず 、 治

り まし て、 斯 の如 く し ま し ては到 底 我 が帝 国 の治 安 維持 の目 的 を達

手 段 に依 りま し て国 家 の治 安 を維 持 す るを相 当 とし た のであ り ます 、

安 維 持 法 が 国 体変 革 を 目的 と す る結 社 に対 し て、 僅 に十 年 以 下 の有

でも、 結 社 の目的 を知 つて之 が遂 行 の行 為 を為 し ます る者 も、亦 加

に依 り、 公 共 の安 全 を保 持 す る為 め、 緊 急 の必要 あ る場合 な り と認

而 し て当 時 帝国 議 会 は 閉会 中 であ り ま した か ら、 政 府 は憲 法 第 八条

す る こと は 出来 な い の であ りま す 、殊 に未 だ結 社 に加 入致 しま せ ぬ

入者 と等 し く 処罰 致 し ま せ ぬけ れ ば、 到 底 斯 る不 逞 の企 画 を防 止 す

めま し て、 法律 に代 るべ き勅 令 の御 裁可 を 得 て、 昭和 三年 六月 二十

る こと は出 来 な い の であり ます 、是 れ政 府 が治 安 維 持法 第 一条 の改 正 を 必要 とし た 理由 であ り ます 、 然 る に第 五十 五議 会 に於 きま し て

の承 認 を求 む る勅令 で あり ます から 、何 卒 御 審 議 の上 承 諾 を与 へら れ ん こと を希 望 致 し ます 、 ( 拍手)

武 富済 君

九 日其 公 布 を 見 た の であ りま す 、是 が即 ち 茲 に議 題 と し て帝 国 議会

○ 副 議長 ( 清 瀬 一郎 君 ) 質 問 を許 し ま す︱

は 、 政府 が該 法律 案 の通 過 を切 望 致 し ま した る に も拘 は り ませず 、

を目 的 とす る秘 密結 社 にし て、 第 三 ﹁イ ンタ ーナ シ ヨナ ル﹂ の 日本

遂 に本院 に於 て審 議 未 了 に終 りま し た 、爾 来 政府 は我 が 国体 の変 革

支 部 であ る 日本共 産 党 員 中、 未 だ縛 に付 か ぬ者等 の行 動 如 何 を注 視

○ 武富 済 君  諸君 、 緊 急勅 令 を 以 て死刑 を 科 す ると の我国 空 前 の立

上 十年 以 下 、最 長 十年 で あ りま す 、併 なが ら言 論 な り、文 書 な り 、或

七 十 八条 と の均 衡 如 何 を考 へま す る のは、 即 ち ﹁ 内 乱 の予 備 又 は陰

は 対談 なり、 秘 密 の往 復 な り 、意 見 の交換 な りと 云 ふ こと に依 つて、

謀 を為 し たる者 は 一年 以上 十 年 以下 の懲 役 に処 す ﹂ と あ る、 一年 以

せ ら れ て、 本 日其 承 諾 を求 む べく捉 案 を せ ら れ た に付 き ま し ては、

国 体 を破 壊 せ ん とす る結 社 を組 織 す る と云 ふ と、 直 にそ れ が死 刑 と

法 が吾 々を 驚 かし た ので あ りま す、 世 論囂 々とし て此問 題 に付 て論

只 今 原法 相 の長 々し き御 説 明 を伺 ひまし た が、 吾 々未 だ承 服 し難 い

てす る のは死刑 であ ると 云 ふ、 其 区別 が余 り に懸 け離 れ て居 り まし

云 ふ こと は、内 乱 の予備 陰 謀 は十年 であり、 こちら の言 論 文 書 を 以

議 を繰 返 され た のであ り ま した が、 結 局 緊 急勅 令 と 相成 つて発布 を

から 、何 卒 御 親 切 な る御答 弁 を煩 し た い の であ り ます 、 若 し事 が 総

点 が 多多 あ る ので あ りま す、 諒 解 を 得 べき 程度 に質 問 を 致 しま す る

を以 て手段 と す るも の の謀議 に与 つた 方 は十年 で あ る が、 言 論 、文

る、 治 安維 持 法 に於 ては 言論 文 書 が普 通 の手段 で あり ま せ う、 暴動

の御 説 明 を煩 し た い の であ り ます 、 内乱 罪 に於 て は暴動 が手 段 であ

り観 察 し た る質疑 を試 む る の であ りま す る が、 此 治安 維 持 法 と刑 法

書 、 集 会、 相 談 で決定 し た者 は死 刑 であ ると 云 ふ こと の根 本 の理 由

て、吾 吾 に は成程 御 尤 と納得 が出来 ぬ のであ り ます か ら、 此 点 十分

第 七 十 七条竝 に七 十 八条 の関係 が どう な る の であ り ます か、刑法 七

は、 甚 だ 私 に は不明 瞭 であ り ま す、 而 し て治 安 維持 法 の国 体変 革 の

理 大 臣 に関 係 す る問 題 であ り まし た な らば 、願 く ば首 相 に於 ても 御

十 七条 の第 一項 は御 承 知 の通 り に ﹁政府 を顛 覆 し 又 は邦 土 を僣竊 し

目 的 を以 てす る結社 と云 ふ こと は、 国 体 の変 革 其 れ自 身 でな いこと

答 弁 を願 ひ た いと存 じま す る、 第 一点 と致 しま し て、 実 質的 方 面 よ

と為 し﹂ 云 々而 し て其 第 二号 には ﹁謀 議 に参 与 し 又 は群 衆 の指 揮 を

其 他 朝 憲 を紊 乱 す る こと を目的 とし て暴動 を為 し た る者 は内乱 の罪

のも のであ る が、 相 違点 が あ るか、 先 づ伺 ひ た い の であ りま す、 若

り見 て全 然性 質 が同 一であ ると 断定 す る こと は差文 が な から う と考

る に過 ぎ ま せ ぬ、 そ こで内 乱 の予備 と陰謀 と 云ふ も のは、 法律 上 よ

は申 す ま でも な い、 国 体 の変 革 を目 的 と し た結 社 を造 ると 云ふ こと

刑罰

へる、 即 ち内 乱 罪 の謀 議 以 上︱

為 し た る者 は無 期 又 は 三年 以 上 の禁 錮 ﹂ 云 々と規 定 さ れ てあ り ます 、

し其 内 容 が同 じ も ので あ りま す る なら ば 、刑 法 の上 に於 て︱

の謀 議 以 上 に出 る所 の犯罪 行 為 で はな いと申 さな け れば な ら ぬ、 之

で あ りま し て、 国体 の変 革 其 も ので な い こと は申 す ま でも な い、即

の上 に於 て甚 だ 不 均衡 な る結果 と なり は せ ぬ かと 御尋 をし た ので あ

に極 刑 を 科す ると 云 ふ こと は、 私 共 甚 だ理 解 に苦 みま す 、 只 今思 想

ち国 体 変革 の既 遂 ではな い、 国 体変 革 の手 段 であ つて、 其 階 梯 で あ

り ます 、 即 ち内 乱 罪 の謀 議 参 与若 く は群衆 指 揮 の如 き も のは、 最 も

へる こと 、是 は即 ち 治安 維 持法 に謂 ふ国 体 の変 革 と全 く同 一の性 質

重 くし て、無 期 であ り ます 、治 安 維 持 法 は死 刑 であ る、 此 処 に此 区

れ た る巧 な る言 葉 を 以 て其 辺 を 説 明な さら んと 御試 み にな り ま し た

的 外 患 罪 で あ ると か、 或 は 思 想的 内 乱 罪 であ ると か、 新 し き 形容 さ

此内 乱 罪 に於 け る所 の邦 土 の僣竊と 云 へる こと、 又朝 憲 の紊乱 と 云

別 を設 け た る こと が私 共 了 解 に苦 し む 点 で あ りま す る か ら、此 点 に

無 期 懲役 に当 つて居 る所 の内乱 罪

付 て御 説 明 を煩 し た い、 次 に刑 法 第 七 十 八条 と の関係 で あり ます 、

け れ ど も、 言 葉 が 巧 であ つても 、形 容 が上 手 であ つて も、 それ は 言

然 陪 審 に付 せ な け れば な ら ぬ こと に な る、 然 らば 治 安 維 持 法 の目的

の方 は、 普 通 の手 続 に依 つて 三年 以上 の罪 であ り ます から 、是 は当

す る罪 、国 交 に関 す る罪 よ り軽 い と思 召 さ れ て居 る の であ る か、 陪

葉 の上 の技 術 であ り ま し て、 法律 根本 を解 釈 し て居 る所 の説 明 と し

審 に付 す る こと を許 し て居 る所 を見 ると 、軽 く取 扱 はれ て居 る やう

り軽 い の であ りま す か、内 乱 罪 よ り軽 い の であ り ます か、 外患 に対

或 は 火薬 を集 め る、 弾丸 を集 め る、 斯 の如 き用 意 をし て、 準 備 をし

で あ る、 然 る に死 刑 を 以 て臨 ま れ る所 を 見 れば 、 同 等 に取 扱 は れ て

と せ ら れ た所 の団 体 を 変革 す る目 的 を 以 てす る結 社 行 為 は 大逆 罪 よ

て、 予 備 を し たと 云 ふ場合 は、 即 ち 内乱 罪 に拠 りま す の であ り ます

て、 吾 等 は之 を受 取 る訳 に参 ら ぬ の であ り ます (拍 手) 若 し 国 体 を

か ら 、 懲役 十年 で あ りま せ う、 此 兵 器 弾薬 を集 め た所 の大 そ れ た行

か、 御 説 明 を煩 し た い、 第 二 点 に於 きま し ては、 形 式 的 の方 面 よ り

居 る やう であ る、 此 の区別 が甚 だ不 明 瞭 であ る、 其 区 別 は 何 であ る

変革 致 す者 が それ を 目的 と す る者 が 兵粮 を集 め る、鉄 砲 を集 め る、

為 、 そ れ は 予備 で あ るが故 に、 是 は 懲役 十年 で あ る、併 な が ら兵粮

な い かと 存ず る疑 が あ りま す 、憲 法 違 反 な り と断 定 は致 しま せ ぬ が、

質 疑 を 試 み た い、 厳 格 に考 へま す ると 、 此 緊急 勅 令 は憲 法 違 反 では

も 集 めず 、 兵 器 弾 薬 も 集 めず に、 言 論 、 文書 、 集 会 の秘密 の会 合 に 依 つて之 を や る と 云 ふと、 直 に是 が死刑 と は、 学 識 上 吾 々は どう し

のみ発 し得 る所 の、 非 常 例 外 の立 法 で あ ると 云 ふ こと は、 申 す 迄 も

緊急 勅 令 は議 会閉 会 中 に臨 時 緊 急 の必要 が突 発 し た る特 殊 の場 合 に

憲 法 違 反 な り と疑 ふ余 地 が十 二 分 にあ る、 そ こ で伺 ひ た い第 一点 は、

ても 受 取 る こと が出 来 ぬ議論 で あ りま す (拍手 ) 此 釈 明 を求 め た い の であ り ま す (此 時 発言 す る者 あり ) ○ 副 議 長 (清 瀬 一郎 君) 静粛 に願 ます

こと が目 前 焦 眉 の急 に迫 つて居 り ま し て、 議会 の開 会 を待 つ余 裕 が

な い場 合 であ る、 第 二 は、 前 議会 の閉 会 後 に予 期 せ ざ りし 所 の突 発

な い、 然 る に臨時 緊 急 の必 要 と は 何 で あ る か、是 は即 ち其 必 要 な る 治安維持 法 と 他 の

事件 が発 生 し た る場 合 であ る、所 が本 件 の場 合 に於 き ま し ては 、 此

○ 武 富 済 君 (続 ) 次 に陪 審 法 に於 け る本 件︱

四章竝 に第 八 章是 の大逆 罪 、 内乱 罪 、外 患 に関 す る罪 、 国 交 に関 す

二 つ の要 件 が全然 備 つて居 ら な い、 政府 は故 ら に誇大 に之 を 吹聴 致

法 律 と の関 係 如何 と 云 ふ点 であ り ます 、 刑 法 の第 二編 第 一章 乃 至第

る罪 、 是 は申 す 迄 も な く大 審 院 の特 別 権 限 に属 し て居 る所 の犯 罪 で

仰 せ にな り まし た 、 然 らば 何 が故 に刑 事 訴 訟 法 を 改 正 し て、 大 審院

の罪 を 比較 し て、 決 し て軽 く はな い、 同 等 の罪質 であ る から 云 々と

い、 竹 槍蓆 旗 の暴 徒 が 各所 に徘 徊 し て居 つたと 云 ふ事態 もな い。 予

が 起 り さ う に もな い、 国 体 変 革 の烽 火 が揚 つて居 ると 云 ふ訳 でも な

件 と は何 で あり ま せ う、 ど う 云 ふ こと が あ りま し た か、 一向 に革 命

き 大宣 伝 を試 み て居 つた の であ り ま す、 然 ら ば其 目前 焦 眉 の突 発事

し ま し て、 新 聞 な ど に盛 に宣 伝 を し て、 国 家 が今 にも滅 亡 す るが 如

あ る、 随 て是 は陪 審 に付す る こと が出 来 ぬ こと に定 め ら れ てあ り ま

の時 別管 轄 に付 せし め な い のか、 其 理由 が不 明 瞭 であ り ます 、 大 審

す 、 司法 大 臣 は此 国 体変 革 を目 的 と す る結 社 を組 織 す る こと と 是等

院 の特 別管 轄 の事 件 は陪審 に付 せ られ ま せ ぬ、 併 な が ら 治安 維 持 法

期 し て居 ら ぬ突 発 事 件 と 云 ふも の ゝ認 む べき も のは 一も無 い では あ

○ 武富 済 君 ( 続 ) 社 会 主 義 者等 が⋮ ⋮

○ 副 議 長 (清 瀬 一郎 君 ) 静 にな さ い

言 葉 に付 て、 各 方 面 よ り異 議 が 起 つて居 る やう で あり ま す 、 言葉 は

○ 副 議長 (清 瀬 一郎 君) 此 際 一言致 しま す、 今 質 疑 者 の 演 説 中 の

( 発 言 す る者多 く議 場 騒 然 )

りま せぬ か、 昨年 六 月中 に於 け る内 務省 の声 明書 に依 ると斯 様 にな

員 は議 会 開会 中 より 今 日 に至 る迄 、全 国 革 命 な る不 逞 の企 図 を 遂行

前 後 を通 じ て見 な け れ ば分 りま せぬ か ら、 議長 は速 記 を 調 べ た 上然

つて居 る ﹁議 会 閉 会 後 各 地 で発 見 せら れ た る証 拠 に依 れば 、 共産 党

三師団 の出 兵 に際 し ても、 直 接 に帝 国 の軍 隊 を撹 乱 せ ん とす る不逞

る べく 処 理致 しま す 、 又演 説 者 は続 い て其 言葉 の意 味 に付 て釈 明 し

す る為 め 、 各種 の恐 る べき 行動 を続 け 居 る こと は確 実 であ る為 に第

の行 為 を 敢 てす る者 を 出 す に至 つた の であ る﹂ 初 め の言出 し が甚 だ

(此時 発 言 す る者 多 く議 場 騒 然)

つ ゝあ る際 であ りま す、 冷 静 に御 聴 き を願 ひま す

諸 君著 席 を 願 ひ ま

(﹁退場 を命 じ ろ ﹂ と呼 ぶ者 其 他発 言 す る者 多 く議 場 騒 然 )

○副議長 ( 清 瀬 一郎 君) 尚 ほ 一言 致 し ます︱

尚 ほ 一言 致 し ま す

大 袈 裟 であ り まし て、具 体的 の例 証 は 貧弱 極 ま る では あ り ま せぬ か、 全 国 革 命 な る不逞 の企 図 を 遂行 す る為 め 、各 種 の恐 る べき行 動 を続

ス ター﹂ を配 つた者 が あ る、 宣伝 ﹁ビ ラ﹂ を配 つた者 があ る と 云 ふ

け て居 ると 呼号 し な がら 、 他面 第 三師 団 の出兵 に際 し 、 軍人 に ﹁ポ

す︱

○副議長 ( 清 瀬 一郎君 ) も う 一言 致 し ます︱

尚 ほ 一言 致 し ま す議 長 の宣告 を御 聴 き な さ い

に至 つて は、何 ぞ初 め に人 を驚 かす の甚 し く し て、 結 論 の証拠 が余

諸 君︱

り に貧弱 で あ ると 言 は ざ るを得 ぬ、 実 に滑 稽 千 万 の こと であ り ます 、

と

は何 だ﹂ ﹁ 退 場 を命 じ ろ﹂ と 呼 ぶ者 あ り議場 騒 然 )

( ﹁帝 国議 会 を 何 と 心得 る﹂ ﹁宣 伝 ビ ラ を撒 いた こと が︱

○武富 済 君 (続 ) 釈 明 をす る か ら御 静 に願 ひ ま す 釈 明 を し ま す

軍隊 に社 会 主義 者 等 が、 不 逞 の輩 が、 宣 伝 ﹁ビ ラ﹂ を撒 く な ど と 云 ふ事 柄 は、 二十年 も前 か ら盛 に行 は れ て居 る こと であ りま し て、 何

○ 副議 長 (清 瀬 一郎 君 ) 尚 ほ私 よ り 一言致 し ます (此時 発 言 す る

(発言 す る者多 く議 場 騒 然)

も 原君 が 司法 大 臣 と な ら れた 後 、特 別 議 会 が終 つた後 、 通 常議 会 が

で、 普 通 巡 査 が ⋮⋮

来 な い中 に、 天 から降 つて湧 いた と 云 ふ やう な 問題 でも何 でも な い、

為 に実 に重 要 な る案 件 で あ りま す 、故 に冷 静 に御審 議 を願 は な け れ

︱

ば な ら ぬ と老 へま す 、而 し て演 説 者 又 は答 弁者 の言 葉 と 云 ふ も のは、

者多 し) 本 案 は 国 家 の為 に⋮ ⋮ (発言 者 多 く議 場 騒 然 ) 本案 は国 の

発 言 す る者 あり 議 場騒 然 )

前 後 を 通 じ て吟 味 し な け れば な ら ぬも のであ り ます

(﹁︱ と は何 だ ﹂ ﹁ 怪 し から ぬ ことを 言 ふな ﹂ と呼 ぶ 者 其 他

○ 副 議長 (清 瀬 一郎 君 ) 静 に

○副議長 ( 清 瀬 一郎 君 ) 故 に議 長 は速記 録 を 調査 し た上 で 然 る べ

(此時 発言 す る者 多 く議 場 騒 然 )

○武富済君 ( 続 ) ま あ御 聴 きな さ い、 そ れ は あな た 方 が 誤 解 し て 聴 いて居 る、誤 解 し ては いけ ま せぬ (﹁ 馬 鹿 を 言 へ﹂ と呼 ぶ者 あ り、 其他 発言 す る者 多 く 議場 騒 然 )

て人 の生 命 を 奪 ふ死刑 を行 ふと 云 ふ が如 き こと を決 定 され る のは、

(拍手 ) 特 別 の重 大事 変 が突 発 致 し て居 ら ぬ のに、 緊 急勅 令 に依 つ

寧 ろ皇 室 の尊 厳 と 云 ふ も のを 冒 涜 し て、 我 が 日本国 家 の国体 の光 輝

く 措置 致 しま す (﹁ 演 説 の全体 を聴 かな く て も其 文 句 自 体 が悪 い んだ 、︱

と

は 何 だ﹂ ﹁ 取消せ﹂﹁ 取 消 せ ﹂ と 呼 び其 他 発 言 す る者 多 く議 場 騒 然)

と 去 ふ も のを無 にし て日本 の国 威 を諸 外 国 の間 に失 墜 す る の愚 な る

の治 安 を根 本 的 に破 壊 せん と す る こと を努 め る こと の虞 があ る こと

国 の治 安 を根 本 的 に破 壊 せ ん こと を努 む る虞 あ る こと明 な り ﹂ 我国

は益 々国 体 の変革 を目 標 と し て大胆 不 敵 の売 国的 運 動 を継 続 し、 我

消 し ま す (拍 手 ) 又其 当 時 の原 法相 の声 明 書 には斯 様 に あ る ﹁ 彼等

であ る か ら取 消 し て然 る べし と 云 ふ注 意 が あり ま し た、 異 議 な く 取

○ 武富 済 君 (続 ) 議 長 の注 意 が あ り ま し て、 誤 解 を招 く 如 き 言 葉

し容 易 に議 会 の公議 を 回避 す る の方 便 とし て又 以 て容 易 に既 定 の法

て厳 重 な る解 釈 と注 意 を貽 し て居 り ます ﹁政府 にし て此 の特 権 に託

読 に な つた こと が あ らう と 存 じ ま す が、 憲 法義 解 に は明 に此 点 に付

す る所 の立 法 であ る と存 ず る の であ り ます 、諸 君 は憲 法義 解 を御 一

の違 反 で あ つ て︱

形 式 上 は兎 に角 と 致 し まし て、実 質 的 に之 を 見 るな ら ば、 明 に憲 法

別 の突 発 事 変 が な き に拘 らず 、 緊急 勅 令 を 発 布 し たと 云 ふ こと は、

結 果 に な ると 存ず る の であ りま す、 斯 の如 く 考 へます と云 ふ と、 特

が 明 だ と 云 ふ、甚 だ最 後 が微 温 的 では あ りま せ ぬ か、 一体 僅 な無 政

の為 に保 障 を 為 す こと能 はざ ら む とす ﹂ と あ る では あ り ま せ ぬ か、

律 を破 壊 す る に至 る こと あら ば憲 法 の条 規 は亦 空 文 に帰 し 一も臣 民

( 議場騒然)

○ 武富 済 君 (続 ) 諸君 の誤 解 を 招 い た やう であ り ます が⋮ ⋮

府 、 共 産 主 義 者 が蠧 動 し て居 る と か、 宣 伝 ビ ラを撒 き散 ら す と か、

に努 力 す る のは 当然 の こと であ り ま す け れど も、 左 様 に神 経 過敏 に

ふ も のは、 国 民多 数 の代 表 者 が国 民多 数 の意 見 に依 つ て決 定 した る

法 律 の威 厳 と 云 ふ も のは、法 律 の光 と云 ふも のは、 法 律 の値 打 と 云

憲 法 の精 神 に違 反 であ つ て、 国 家 の大 典 を蹂 躪

各 所 に秘 密 な る行 動 をす ると か 云 ふ こと は、 固 よ り之 を根 絶 す る の

な つて、 今 にも 国家 の治 安 が 根 本的 に破 壊 され る と か、 容 易 な ち ざ る国 難 来 であ ると か御 考 にな る と 云 ふ こと は 、政 府 自 身 が 我 が尊 厳

信 頼 は致 さな い ので あり ま す、 で あ る から 私 が聞 いた のは、 何 故 に

へて作 つた や う な も ので あり ま し た なら ば 、 日本 国 民 は断 じ て之 を

日本 の国 体 は 左様 に貧 弱 な も ので はな い (拍 手) 一体 斯 様 な声 明 書

り為 さら な か つた かと 云 ふ点 であ り ます 、特 別 議 会 に於 て法 相 は斯

臨 時 議 会 の召集 も為 さ らず 、特 別 議 会 の延会 の奏 請 を も総 理 大 臣 よ

所 に存 在 し て居 る の で あ つて、 特 別 の少 数者 が自 分 の得手 勝 手 に考

を新 聞 に発 表 し て仰 々し く天 下 に呼 号 致 し ま す のは、 我 が 国 家 の威

の宇 内 に冠 絶 し て居 る我 が国 体 を侮 辱 す るも ので あ りま す (拍手 )

厳 を外 国 に失墜 す る こと に御 気 が付 か ぬ の であ りま す (拍 手) 昨 秋

く の であ ら う、 又宣 伝 ビ ラな ど も撤 く であ ら う、 で あ るか ら之 を取

様 に申 し て居 ら れ る、 共 産党 の活 動 は今 熾 に や つて居 る が将 来 も続

尊 皇愛 国 の

の御 盛 儀 た る御 大 典 を御覧 な さ い、 極 度 に日 本国 民 は

締 る為 に此 治安 維 持 法 な るも のを制 定 せん と し て提 案 し た のだと 言

熱 誠 を 傾 け 尽 し て居 る、彼 の有 様 を見 ま し ては、 到 底 斯様 な る弾 圧 的 の悪 法 を行 ふ が如 き 必要 と、 理由 は何 処 に あ る かと 吾 々は考 へる

は れ る、将 来 も彼 等 の行動 は続 く であ らう 、 宣 伝 ﹁ビ ラ﹂ を撒 く で

故 に召集 を せら れ な か つたと 云 ふ こと を承 ら ざ るを 得 な い ので あ る、

た のだ、 そ れが 大問 題 で あ る と御 認 に な つた な らば 、臨 時 議 会 を 何

出 来 る ので あり ま す、 いと易 い こと であ る、 此手 段 を執 ら な か つた

事 件 が継 続 し て居 る と見 れば 議 会 は延 会 す べし、 突 発 し急 変 事 が発

と 云 ふ こと が甚 だ異 様 に感 ず る、御 説 明を 承 り た い の であ り ます 、

あ らう 、 であ る か ら之 を取 締 らな け れ ば な ら ぬ、 即 ち事 実 が将 来 に

何 が故 に議会 延 会 の奏 請 を す る こと が出来 な か つた の であ る か、 甚

次 には そ れ程 の重 大事 と 見 て緊 急 勅令 でな け れ ばな ら ぬ程 の事 件 で

継 続 す る こと あ る べき を 予見 し て お ゐで に な る、 共産 党 の事 件 と 云

だ異 様 に存ず る、 之 を奏請 を為 さらず に 二 週間 の議 会 を 六 日間 停 会

あ ると す るな ら ば 、何 が故 に議 会 閉会 後 数 十 日 の間 、 時 間 を経 過 せ

か、 第 一前 例 も あ る こと で あ る、僅 か十 日間 も す れば 議会 の召集 が

の奏 請 を為 さ つて置 い て、 其 議 会 が 閉 ぢ た後 に急 に緊 急 勅令 を 発 布

ら れた の であ る か、 も つと急 遽 迅速 に取 計 ら るべ き筈 であ る、 五十

生 し た と した な ら ば臨 時 議 会 を召集 す べし 、頗 る明 瞭 であ り ま せ ぬ

す ると 云 ふ や う に奏 請 を為 さ つた と 云 ふ こと に付 て は、非 常 特 別 な

日 も六 十 日 も打 ち や ら か し て置 い て、後 にな つ て緊 急 突 発 の事 件 が

ふ も のが起 つたば かり でな く、 将来 に斯様 な る共 産 党事 件 の行 為 が

る原 因 の存在 す る こと を 必要 とし ま す 、 ど う 云 ふ原 因 が 生 じま し た 、

あ る のだ と 云 ふ号 令 を掛 け て居 るば か り であ つて は、 吾 々は承服 が

継 続 す る こと であ らう と 云 ふ 予見 を 致 し て お ゐ で にな つた なら ば 、

で あり ま す か ら と仰 せ にな りま し た が、 是 は寧 ろ 、 聖徳 を傷 け るも

に依 れ ば、 原 氏 は頻 り に 早 く出 した いと言 つた ので あ るが 、折 悪 く

出 来 な い ので あり ま す、 真 偽 は固 よ り存 じま せ ぬ が、 世 間 伝 ふ る所

先 刻 、 原 法相 は声 を 高 く し て昨 秋 一代 の御 盛 儀 た る問 題 も あ つた の

ので あ つて、 天 皇 陛 下 の御 大 典 御 即 位 の大 体 が行 は せら るゝ 為 に、

る のは 、 上御 一人 の聖徳 を傷 け る所 以 で あ る と謂 はな け れば な ら ぬ 、

国 民 を威 嚇 し て秘 密 結 社 を す れば 死 刑 に さ れ る と云 ふ こと を発 布 す

日 であ る から 、 そ れ の済 ん だ後 にし て貰 ひた いと言 う て諸 君 が要 求

県 会 議 員 の選 挙 があ つ て、 六月 十 日が選 挙 であ つて、 十 一日が開 票

友 会 の治 安 の方 を 重 じ て居 る も のと言 はな け れ ば な ら ぬ、 さう 云 ふ

し た為 に、 已 む を得 ず 原 君 が延 した と 云 ふ こと で あ り ます 、果 し て

緊 急 勅 令 を 以 て警 察 取 締 の具 に供 し ては相 済 ま ぬ の であ り ます 、 ど

事 実 が あ る のか な い のか承 り た い の であ りま す、 そ こで議 会 を 召集

う 云 ふ事 実 が あ る、議 会 の延 会 の奏 請 も出 来 な い、 す る 必要 がな い、

議 会 が済 ん で から急 に緊 急 勅 令 と 云 ふ特 別 の非 常 立 法手 段 に依 つ て、

を重 し と し て居 るも のと言 は な けれ ば な ら ぬ、 天下 の治 安 よ り は政

甚 だ狡 猾 な る手 段 を執 ら れた と 云 ふ ことを 疑 はざ るを得 な い の であ

せ ず、 緊 急 勅 令 を 数十 日 の後 に発 布 の奏 請 をす る位 の暇 が あ るな ら

是 が事実 なら ば 奇怪 千 万 で あ り ます 、政 友 会 内 閣 は国 家 よ り政友 会

り ま す 、原 法 相 の声 明書 の記 載事 実 と 云 ふも のを 見 ま し て、 突 発的

ば 、 五十 日、 六 十 日 の暇 を潰 し て宜 い程 緩 慢 な る状 態 であ つた な ら

而 し て行為 は将 来 に継続 す る であ ら う と知 りな がら 、 一向 延 会 の奏

の急変 事 とあ る を見 ら れた の であ る、 第 三 師 団 の兵 士 に 宣 伝 ﹁ビ

ば 、何 故 六 ケ月 先 き の僅 か半 年 先 き の通常 議 会 迄待 たな か つた ので

請 が な か つた 、 而 し て臨 時 議 会 を 召集 す る程 の必 要 も な い、 そ こ で

ラ﹂ を配 つた、 普 通 あ り勝 ち の こと で あ る、 あ れ を突 発 事 変 と認 め

る迂濶 な る立 法 であ る と申 さな け れ ば な ら ぬ、 一体原 嘉 道 氏 は多 年

す る程 反撥 し て来 る と 云 ふ、 此 人間 の感 情 と云 ふも の ゝ働 を解 せ ざ

のを急 に死 刑 にす る と 云 ふ こと に な りま す ると、 圧迫 す れば、 圧 迫

話 で あ りま す 、併 な が ら唯 結 社 を し たと 云 ふだ け で、 懲 役 十年 のも

の心 事 な り 態 度 な り が怪 か ら ぬ と 云 ふ こと は私 も認 め る のは勿 論 の

義 を以 て、 七 千 万民 衆 に臨 ま ん とし て居 る、 彼等 無 政 府 共 産主 義 者

ま せ ぬ か、然 る に何 ぞ や為 政者 は聖 恩 と 背 馳 す る行 動 に出 て厳 罰 主

既 決 の犯 罪 人 に 対し て さ へ減 刑 の恩 典 が あ つた と 云 ふ年 柄 では あ り

ま す 、殊 に昨 秋 御 大 典 の時 に畏 くも 恩 赦 の恩 命 さ へ下 され ま し て、

と 人間 の感 情 は反撥 す るも ので あ りま す、 堰 けば 溢 る るも ので あり

ら れ る か ど う かと 云 ふ こと を 伺 つて見 た い、 一体 余 り に圧迫 をす る

奪 ふ と 云 ふ が如 き 立 法 の手 段 に依 つ て のみ、 治 安 維 持 の目的 が達 せ

す、 次 に斯 る厳 罰主 義 を以 て︱

斯 る厳罰 主義 を以 て、 人 の生 命 を

現 は れ が治 安 維持 法 の緊 急 勅 令 の発 布 にな つた に相違 な い と思 ひま

成 べ く触 れ ぬ神 に崇 りな し と 卑 怯 にも 逃去 つて居 る に相 違 な い、 其

弱 点 が あ る から、 素 破 抜 か れ るか ら完 膚 な き迄 の攻 撃 を恐 れ るか ら、

のあ る も の は天 下 の正義 公 論 の府 を 恐 れ る と言 はな け れば な ら ぬ 、

夜 を走 るも のは、 暗 闇 を走 る事 の上手 な も の は光 を 恐 れま す 、弱 点

を斯 様 に回 避 さ れ る の であ り ま す か、 怪 獣 は 日光 を恐 れ る、 能 く暗

議 会 の奏 請 を し て、 其 間 六 日間 停会 を命 じ て居 ら れ る、 何故 に議 会

た時 代 錯 誤 の大 臣 を持 つて居 る、 僅 に 二週 間 の会 期 を定 め ら れ た る

こと虎 の如 し と言 はな け れば な ら ぬ、曩 に は議会 否 認 の声 明 を為 し

であ り ま す、 一体 政 府 は議 会 を甚 だ恐 れら れ る ので、 議 会 を 恐 れ る

あ るか、 待 てな い理 由 は な い で あ りま せぬ か、 甚 し く其 点 が 不明 瞭

か らざ る反 対 の気勢 が濃 厚 であ つた の が事 実 であ りま す 、 そ れ を無

に於 ても 、 最 も 険悪 な る空 気 で、此 案 の運命 と 云 ふも のを 予測 す べ

の意 見 を掲 げ て居 る、 代 表的 学 者 も悉 く反 対 の意 見 、 初 め は枢 密 院

あ る、貴 族院 は大 部 分 反 対 を し て居 る、天 下 の新 聞雑 誌 は悉 く反 対

田中 首 相 は自 ら枢 密 院 諸 公 に向 つて諒 解 を求 めら れ た と 云 ふ事 実 も

め方 の鎮 撫 役 と な つて、 大童 に な つて働 か れ たと 云 ふ事実 が あ る、

は政 友 会 の諸 君 は弁 解 が出来 ます ま い、 そ こで小 川 鉄 相 が与 党 取 鎮

つたら と 申 込 ん で居 ら れる事 実 が あ るぢ や あ りま せ ぬ か (拍 手 ) 是

往 訪 し て、迚 も あ の治 安 維持 法 は通 過 致 し ま せ ぬか ら、 御 撤 回 にな

居 られ る前 田法 制 局 長 官 は、 法 制 局審 議 の結 果 を齎 し て、 原 法 相 を

た 、 政友 会 も大 反 対 であ つたぢ やあ り ま せ ぬ か (拍手 ) 現 に彼 処 に

か 、各 政 党 は皆 反 対 し て居 る、 各 政党 は皆 其 当 時 は反 対 を し て居 つ

の であ る が、 原 氏 は 一体之 を何 と 御 解 釈 にな つて居 る の であ り ま す

而 し て此 緊 急 勅 令 案 に対 す る世 間 の非 難 と 云 ふも のは、囂 々た るも

あ ら う か と御 察 し を申 上 げた いと 、斯 う考 へる ので あ り ます ( 拍 手)

頭 か ら出 で た に非 ず し て、 言 ふ に言 は れ ぬ他 の圧迫 が加 は つた の で

変 化 で あ る か、 甚 だ諒 解 に苦 みま す (拍 手 ) 惟 ふ に原 法 相 御 自身 の

て弾 圧 政 策 を 執 つ て国 民 に向 は ん と す る の は、 一体 どう 云 ふ心 理的

な ら れ ると 云 ふと 、長 年 の民 権 擁護 論 、 所 謂 其 一枚 看 板 を直 に擲 つ

に努 力 せら れ た 人 で あ る、 然 る に地位 が変 つて司法 当 局 の首 班者 と

入 れ ら れ て民 権 擁護 、 官 権 の圧 迫排 撃 と 云 ふ こと に向 つては 十 二分

ふ べ く大 阪 に走 り、 朴 烈 問 題 に就 て は、 唯 写 真 の問 題 位 に余 程力 を

検 事 局 に向 つ て其 権 力 に反撥 し 、例 の豚 箱 事 件 に就 て は、友 人 を救

民間 に居 ら れ た る弁 護 士 であ つて、 人 権 擁 護 の急 先 鋒 の 一人 と し て

り ま せ ぬか ( 拍 手 ) 枢 密 院 か ら猛 烈 に詰責 を喰 つて居 る では あり ま

意 を示 さず、 遂 に審 議 未 了 に終 ら し め、議 会 終 了 の今 日 に於 て緊 急

せ ぬ か、 余程 好 意 を 寄 せ て居 る と思 つて居 る其 枢 密 院 か ら、 斯 る御

理矢 理 に押 分 け て、 無 理無 性 に何 で も彼 でも 力 を 入 れ て之 を 通過 せ

ら れ て、 漸 く枢 密 院 を通 過 致 しま し た け れ ど も、 是 は御前 会 議 が前

小言 を受 け て居 る のは 、 一体 ど う云 ふ訳 で あ りま す か、 元 来︱

べ き も の にし て、 頗 る遺 憾 と す る所 であ る﹂ と言 はれ て居 る ぢや あ

後 七時 間 以 上 に亙 り 、 一日 を 以 て決 定 さ れず 、翌 日 に渉 り まし ても 、

ほ平 沼 委員 長 の報 告 であ り ま す が ﹁元来 過 激 思 想 の撲 滅 防遏 の事 た

勅 令 案 と し て御 諮詢 の手 続 を執 つた こと は、 明 に政 府 の失態 と認 む

数時 間 を 要 し た と云 ふ程 の大 論 戦 を試 み ま し て、 え んや ら や つと 通

る、 単 に刑 罰 法 規 の みを 以 て能 く其 目 的 を達 成 す べき も のに あらず

し む べ く努 力 し な け れば な ら ぬ と 云 ふ理 由 と 原因 が甚 だ 不 明 で あ り

過 し たと 云 ふ やう な 事情 で あ る (拍 手 )而 し て枢 密 院 の空 気 は、 由

し て、 必ず や其 根 本 対 策 と し て各 般 の施 設 、 即 ち 教育 制 度 の改善 、

ま す (拍 手) 如 何 にも 分 り兼 る、 そ こ で頗 る厳 し い所 の警 告 を附 け

来 政 友 会 に良 い と云 ふ次第 で もあ り ま す ま い が、 例 の平沼 氏 と 鈴 木

検 察 制 度 の充 実 、国 民 生活 の安 定 、貴 族 富豪 階 級 の自 省 等 と相 待 つて、

尚

て、 或 る政治 的 陰 謀 を 企 ら ん だと か、 企 ら ま ん と し たと 云 ふ 以来 、

喜 三郎 氏 と の関 係 と 云 ふ も のがあ つ て、伊 東 巳代 治 な る 人 が参 加 し

を期 せ ら れ た いと の意 見 を附 す る こと ゝし た﹂ と 云 ふ こと の報告 を

受 け て居 るぢ やあ り ま せ ぬ か、 殆 ど 此 瀕死 の状 態 であ つて、 僅 に 此

其 成 果 を期 す べき であ る か ら、 政 府 は此点 に十 分留 意 し て遺 憾 な き

へた 、所 が反 対 の気勢 が頗 る濃 厚 であ り ま し た為 に、 平沼 枢密 院 副

警 告附 で助 け ら れ た と 云 ふ やう な 結 果 を見 た 程 に 、枢 密 院 に於 て も

何 とな く 政 友会 と親 善 関 係 のあ る の は争 は れ な い、 そ こ で此政 友 会

議 長 は 妥協 案 を立 てま し て、 妥 協 案 を 立 て ゝ僅 に枢 密 院 の反 対 的 の

内 閣 は、 枢密 院 与 し 易 し と初 めは 考 へた に相 違 な い、 与 し 易 いと 考

気 勢 と 云 ふも のを緩 和 し て、雙 方 の顔 を立 て る べく 努 力 せ られ た 、

され て居 る、 其 決 議 と致 しま し ては ﹁検 察 制 度 を完 備 し て犯 罪 の発

反 対 が あ つた 、 そ こで あ り ます から 、結 論 は枢 密院 に於 て決 議 を附

生 を未 然 に防 止 す る方 策 を講 ず べし 、国 際 警 察 の施 設 を改 善 し て思

平 沼 君 の好 意 に依 つて、 平 沼 さん と 云 ふ人 が産 婆 役 と な つて、 此 治 安 維 持法 と 云 ふ 、 ひ よ は い所 の⋮⋮

深 甚 の注 意 を 払 ふべ し、 各 般 の社 会施 設 を 完 備 し て国 民生 活 の安 定

想 取締 上 に遺 憾 な き を期 す べし 、 教育 施 設 の改 善 を 計 り思 想 善導 上

○副 議 長 ( 清 瀬 一郎 君 ) 静粛 に願 ひま す

(此 時 発言 す る者 多 し )

○ 武富 済 君 ( 続 ) 子 供 が え ん や ら や つと 生 れ た と 云 ふ事 実 に 相 違

で伺 ひ た い、 総 理 大臣 に伺 ひ た い、 同時 に司 法 大 臣 に伺 ひ た い、 此

を 計 る べし ﹂ と 云 ふ 四箇 条 の警 告 を附 した では あ り ま せ ぬ か、 そ こ

で報 告 をし て居 られ ま す け れ ども ﹁政 府 は 治 安維 持 法 案 を 特 別議 会

な い (拍 手) 此平 沼 氏 の案 と 云 ふも の は、精 査委 員 長 と し て委員 会

つた か、 将 来 又 何 と す る考 か、 詳 細 に承 りた い、検 察 制 度 を完備 す

四箇 条 の決 議 に付 て、 如 何 な る施 設 を為 され 、 ど う 云 ふ御 取 計 が あ

ると 云 ふ こと は 、 ど う 云 ふ完 備 に近 い事 が出 来 ま し た か、 思 想検 事

に提 出 し な が ら法 案 の説 明 に当 り緊 急 な る こと を言 明 せず 、 会期 が 終 了 せ んと し て も会 期 延 長 を奏 請 し て、 右 法案 通過 を期 図 す る の誠

く 出 し て、 向 ふ の思 想 取 締 等 に 付 て研 究 させ る と 云 ふ意 思 が有 る の

実 があ り ま す か、 将 来 の計 画 が あ りま す か、 或 は西 洋 に留 学 生 を多

を 全 国 に置 いたと 云 ふ位 の事 で あり ま す か、 そ れ以 上 に具 体 的 の事

に行 は れ て居 る、 一道 三府 三十 県 、検 挙 者 が千 余 名 、 四月 十 日 に起

さ つた か と 云 ふ点 であ る、 此 秘 密 結 社 の大 検 挙 は昨 年 の三 月 十 五 日

ふ も のを、 何 が故 に昨 年 の四 月 十 日 に全 国 の新 聞 に同 時 に発表 を為

の処 分 であ り ま せう 、 毫 末 も私 は異 議 は唱 へな い、 併 な が ら此 四月

日本 無 産青 年同 盟 の結 社禁 止処 分 が あ つた 、是 は政府 と し て は当 然

十 日 に卒 然 と し て天 下 に此事 実 を発 表 せら れ た と云 ふ こと の意 味 が

訴 され た者 が百 六 名 、 此時 に労 働 農 民 党 、 日本 労働 組合 評 議 会 、 全

で あ る か、 将 来 何 とす る の であ るか承 り た い、 教育 施 設 の改 善 を 図

私 に は了 解 が出 来 ぬ、 丁 度 そ れ は議 会 の開 会前 であ る、議 会 直 前 の

か無 い の か此 点 を承 り た い、国 際警 察 の施 設 を 改善 し て 云 々、 さ う

る、 如 何 な る教 育施 設 の改 善 が出来 て居 りま す か 、 思 想善 導 上深 甚

云 ふ施 設 の改 善 が出 来 ま した か 、出来 ま せ ぬか 、出 か さ ん とす る の

の注 意 を払 ふ べし 、如 何 な る思 想善 導 の注 意 が払 は れ て居 り ます か、

て、 声 を大 にし て鈴 木 内 相 竝 に原法 相 が吾 々 に報 告 さ れた、 ど う 云

ふ 理由 で斯 様 な事 を為 さ れた か 、其 発 表 の動 機 が甚 だ不純 であ る や

四 月十 日 であ り ま す、 議 会 が開 か る ゝや四 月 二十 五 日 の秘 密 会 に於

う に考 へる、是 は 総 理大 臣 に於 ても御 答 を煩 し た い の であ り ま す、

各 般 の社会 施 設 を完 備 し て、 国 民生 活 の安 定 を図 る べし、 之 に酬 ゆ

か 、 伺 ひた いと存 ず る、 若 し吾 々が満 足出 来 るだ け の御 答 弁 がな か

る に如 何 な る政 策 が 立 つて ど う 云 ふ実 行 が出 来 て居 る の であ り ます

つた な ら ば 、即 ち そ れ は枢密 院 をし て満足 せ し め る だけ の施 設 と 云

であ る、 総 選 挙 の結 果 が 一二 名 の差 を 以 て頗 る政府 に利害 が 分 る ゝ

何 が故 に斯 う 云 ふ時 に発 表 を し た か、 惟 ふ に是 は丁 度 総 選挙 の結 果

所 であ りま し た ので、 一名 と雖 も、 二 名 と雖 も 、味 方 に馳 参 ず る者

ふも の が行 は れ て居 ら ぬ の であ る、 諸 公 は枢 密 院 を欺 い て僅 に 此法

が あ れば 政 府 の寿命 は保 つ、 敵 に趨 る者 が あ れば政 府 は倒 れ な け れ

案 の通 過 を図 つた と 云 ふ責 任 を 負 は な けれ ば な ら ぬ (拍 手 ) 次 に私 が熱 心 に聞 かん と す る第 三 点 であ り まし て、之 を 以 て私 の質 問 を終

ば な ら ぬ と云 ふ死 活 の分 る ゝ境 目 であ り ま した 為 に、 即 ち 此 問題 を

る の で あ りま す け れ ども 、 是 は 司法 大 臣 に於 て十 分 に御 聴 取 の程 を 願 ふ点 で あ りま す、 若 し私 の質問 が疑 に終 始 し て居 るな らば 甚 だ喜

此 両 君 は︱

農 民党 の支 持 を受 け て当選 せ ら れた る水 谷長 三郎 君、 山 本 宣 治 君、

う と存 ず る (拍 手 ) 此共 産 党 と 最 も密 接 な関 係 のあ つたと 云 ふ労 働

責 任 のあ る御 親 切 な る御 答 弁 を煩 し た い、 抑 々此本 法 の緊 急 勅 令 の

民 党 か ら出 ら れた も の であ る と、 鈴 木 内相 が両 君 の方 に指 を指 示 し

利 用 し て政 局 の展 開策 に供 せ んと の、 悪 意 を蔵 し て の御 発 表 であ ら

発 布 と 云 ふ も のは、動 機 が甚 だ不純 であ つて、 政略 的 の立 法 では な

て、声 を大 にし て絶 叫 し た のは あれ は 何 です か、何 の必 要 があ り ま

ば し い、 十 分 な る御 明答 がな け れば 、 其 疑 は疑 と し て残 ると 断 定 し

いか と 云 ふ こと を私 は疑 ふ、 其 疑 の理由 を申 述 べ な け れば なら ぬ 、

す か、 そ れ は政 友 会 の幹部 諸 君 に於 て、 此問 題 を 利用 し て山 本、 水

て憚 ら ざ る を得 ぬ、 我 れ人 共 に迷惑 を す る問 題 であ りま す る から、

理 由 が あ る か ら疑 はざ るを得 ぬ、 そ こで其 理 由 を 茲 に竝 べ て釈 明 を

殊 に此 両 君 は共 産 党 に最 も密 接 な る関 係 があ る労 働 農

求 め た い ので あ りま す け れ ど も、 一体彼 の恐 る べき 共産 党事 件 と云

をし て置 い て大勢 を左 右 せ ん と の策 謀 に出 でた も の に相違 な い だ ら

感 情 を引 摺 つて来 た、 其 民 政党 が無 産 党 と 握手 の出 来 た や う に離 間

も のであ る、 左様 な も のだ と 云 ふ風 に国 民 の思 想 を引 摺 つて来 た、

共 産 党 事 件 は容 易 な ら ぬも ので あ る、 無 産 党 と 云 ふも のは 恐 る べ き

あ つた から 、 共産 党 の事 件 を声 を大 にし ても天 下 に呼 号 し て、 実 に

な り を、 政 府 が魔 の手 を延 し て買 収 をし やう と し て居 る真 つ最 中 で

云 ふ事 実 が あ る、 であ りま す か ら 丁度 無 産 党 の人 なり 或 は其 外 の人

民衆 党 の鈴 木 君 、亀 井 君 、 西 尾 君等 に向 つても其 魔 の手 が 延 び た と

延 び た と 云 ふ事 実 が あ る、 水 谷君 に御 聞 き な さ い、 事 実 が あ る、 又

当 時 に於 て は水 谷 君 に向 つても、 或 人 の手 を通 し て買 収 の魔 の手 が

邪 推 な らば 邪 推 と 云 ふ こと の釈 明 を煩 し た い ので あ りま す 、 丁度 其

ら来 た に相 違 な い、 之 を私 は疑 ふ (﹁そ れ は邪 推 だ ﹂と 呼 ぶ者 あ り)

ふ も のが無 くな る、 即 ち野 党 が 少 く な る、 政 友会 は万 歳 と 云 ふ所 か

谷 両 君 と 云 ふ者 に引責 処 決 を 為 さ し め て除 名 を決 議 す れば 二名 と 云

り報 告 し た りす ると 云 ふ こと は どう 云 ふ訳 であ るか 、其 理由 がど う

も のを 、 司法 大 臣 自 ら が法 律 違 反 の行 為 を や つて、 天下 に発 表 し た

す、 其 捜 査中 で あり 、 予審 中 で あ る所 の、 あ の共 産 党 の事 件 と 云 ふ

る、 又予 審 も之 を密 行 し な け れば な ら ぬ と 云 ふ こと が原 則 であ り ま

に於 ては 、捜 査 は之 を秘密 に し なけ れ ば な ら ぬと 明 に規 定 され て居

せ ぬ か、甚 だ 以 て怪 し から ぬ こと であ る と考 へる、殊 に刑事 訴 訟 法

は あり ま せ ぬ か、 証 拠 を湮滅 せ よ と言 は んば かり の遣方 で は あり ま

十 名 も 居 な く な つた と 云 ふ事 実 は、 逃 げ よ と言 はん ば か り の遣 方 で

る、 法 相 の言 は れ る通 り、 総 理大 臣 の認 め ら れ る通 り、 首 領 株 が 二

そ れ を早 く発 表 せら れ た為 に 、彼 等 は証拠 を湮 滅 し 逃走 し た の であ

と 云 ふも のが 六 百名 、 七 百 名、 八百 名 と な つた であ ら う と思 ひま す、

日 に報 告 を せず に置 い たな ら ば 一網 打 尽 に捕 へら れ て五 百 二十 三 名

り た い の であ り ます 、 之 を 此 四月 十 日 に発 表 せず に置 いて、 二十 五

ま だ捕 へら れず に居 る首 領 株 の者 が居 る の であ りま す か、 其 数 を承

て居 る、 頭株 の者 が大 分 逃 げ て居 る と言 う て居 る、 一体幾 人逃 げ て、

の大 逆 事件 の如 き 、 あ れ は検 挙 に従 事 す る こと 六箇 月間 、 丁 度満 六

し ても 分 り ま せ ぬか ら 、結 局先 程 申 し ま し た る私 の疑 の方 面 に落 ち

箇 月間 検 挙 に従 事 し ま し た が、 一言半 句 も之 を天 下 に之 を発 表 し て

う、 さう 云 ふ疑 を私 は持 つ て居 る、 であ り ま す か ら御 釈 明 を煩 し た

府 が 発 表 し た る時 の起 訴 人員 は百 六 名、 即 ち あ の当 時 よ り今 日ま で

い の であ り ま す、 一体 只 今法 相 も申 され た 通 り に、 今 日 に於 て は共

四 百 十 七名 と 云 ふも のが殖 え て居 るぢ や あ りま せ ぬ か、 此 五倍 の数

居 ら ぬ、 予 審 も 二、 三箇 月 掛 りま し た が、 一言半 句 も発 表 はし て居

て来 な け れば な ら ぬ の であ り ます か ら 、此 点 も 釈 明 を求 め た い の で

に殖 え た と 云 ふ程 に彼 等 不 逞 の輩 は、 連 絡 を取 つて大規 模 の行 為 を

ら ぬ、 予審 が終 結決 定 し て大審 院 の公 判 に移 され て後 に、 只 今検 事

あり ま す (拍 手 ) 私 共 は嘗 て在 職 中自 ら取 扱 ひま し た る幸 徳 伝 二郎

行 つ て居 つたと 云 ふ事 実 が明 瞭 であ る、 而 し て先 日首 相 は当 議 場 に

総 長 を し て居 ら れ る 小山 松 吉 氏 が自 ら筆 を執 つて 、其 梗 概 を始 め て

日現 在 に於 て五百 二十 三名 で あり ま す、 而 し て昨 年 の四 月十 日 に政

於 て申 さ れ る のには 、 首領 株 であ つ て、 ま だ捕 へら れ ざ る所 の者 が

天 下 に 公表 し た の であ り ます 、 是 が刑 事 事 件 を取 扱 ふ上 に於 て最 も

産 党 事 件 の被 告 人 は 五百 名 以上 、 私 の取 調 べ た る所 に依 れ ば 一月 十

多 数 あ る と申 さ れ て居 る、 法 相 も 昨 年 の委 員会 に於 て其 事 実 を言 う

重視 す べき 忠 実 な る遣 方 であ り ま す け れど も 、原 法 相 に至 り ては僅

のやう な 重 大法 案 が両 院 を 通 過 し さう にも な い と云 ふ こと を予 見 し

維 持法 を原 法 相 が提 案 せ ら れ た のは 、 一体 真 面 目 に 通過 を図 る べ き

な がら 、提 案 せ ら れた も の では な い か、 そ こ であ る から初 め か らど

誠 意 が有 つた か無 か つた か を疑 ふ、 僅 に二 週間 の会 期 であ つて、 あ

う せ帝 国 議 会 は 通過 を せ ぬ 、 握潰 し にな る、 さ うす れば 枢密 院 に緊

に検 挙 し て から 二十 五 日目 の四 月 十 日 に、 大 袈裟 に天 下 に呼 号 し て、

るか ら 教 へて や る の であ ると 云 ふ こと を、 天 下 に呼 号 し て発 表 し て

急 勅 令 で行 く か ら と 云 ふ の で、議 会 を愚 弄 し て初 め から 枢 密院 に担

共産 党 事 件 は斯 様 な も ので あ る、 国 民 が不 安 に打 た れ て居 る の であ

ふ態 度 を執 ら れた から 、僅 か 五百 二十 三 名 し か捕 へら れ て居 ら ぬ、

は何 と な れば 私 が初 め に疑 つた や う に︱

ぎ出 す下 腹 を決 め て の仕 事 であ り ま せ ぬ か と私 は疑 ふ (拍 手) そ れ

居 る、 即 ち 逃 げ る者 は 逃 げ ろ、 証 拠 を湮 滅 し た い者 は湮 滅 せ よ と云

首 領 と 云 ふ 者 は逃 げ た と 云 ふ結 果 にな つ て居 る で はあ り ま せ ぬ か、

寧 ろ 観察 し た やう に、 政

即 ち 検 挙 能 率 を犠 牲 にし 、 国 家 の利 益 を犠 牲 に し て、 我 党 の利 益 を

ず る こと は、 総 理大 臣 の声 明 書 であ る、 総 理 大臣 の其 四月 十 一日 の

から や つた仕 事 では な い かと 思 ふ (拍手 ) 偽 を言 ふ者 は、 一度 偽 を

ば な ら ぬ程 の大 事件 であ ると 云 ふ こと を思 つて貰 ひた いと 云 ふ邪念

ら 、真 面目 に取 扱 つ て居 る の であ る、即 ち治 安 維 持法 を出 さな け れ

いた と言 は れ ては 困 る から 、 さう 云 ふ疑 を国 民 か ら受 け て は困 る か

声 明 書 と云 ふも のは、 最 高 級 の形 容 詞 が使 つ てあ る ﹁今 回 の大 不祥

言 ひま す と其 偽 を 糊 塗 せ ん が為 に十 も 百 も嘘 を言 ふ 、初 め が嘘 であ

局打 開 の為 に我 党内 閣 の万 歳 を 図 ら ん が為 に、 共産 党 事 件 を素 破 抜

事 を出 した こと は痛 恨 骨 に徹 し熱 涙 の滂 沱 た るを禁 じ得 ぬ の であ る

りま す か ら第 二が 嘘 に な り、 第 三 が嘘 に な る、 共産 党 の発 表 が 不純

図 つて居 た のだ と 云 ふ こと を申 し ま し ても 弁解 の余 地 はな いと存 じ

(中 略 ) 事 件 の顛 末 を奏 上 し 奉 る に臨 み宸 襟 を悩 ま せ給 ふ こと の畏

の動 機 を蔵 し て居 る、随 て特 別 議 会 に提 案 し た時 が 不純 で ある、 枢

ます (拍 手 ) 殊 に私 が滑 稽 に感ず る こと が 一つあ る、 甚 だ 滑 稽 に感

れ多 き に身 も 心 も打 戦 き て九 腸 寸 断 の思 ひ に堪 へな か つた﹂ 一種 の

密 院 に廻 し た時 が不 純 で あ る、 不 純 を 以 て 一貫 し て居 る のであ り ま

ふ手 段 であ つた も のと し か私 は考 へられ な い のであ り ます 、 此 点 に

美 文 と し て は価 値 が あ り ま せう 、 一種 の美 文 的 の響 は あ りま す け れ

付 て御 意 見 を伺 ひ た い、若 し誠 意 が あ つた な らば 、 前 に申 し ま し た

ど も、 是 だ け大袈 裟 に熱 涙 が滂沱 だ 、九 腸 が寸 断 だ、 痛 恨 骨 に徹し

任 では あ り ま せ ぬか 、斯 様 な声 明 書 を 発 し た真 意 は 一体 どう で あ る、

る通 り に議 会 延会 の奏 請 を す れば 宜 し い、 必死 に努 力 す れ ば宜 し い、

は表 向 であ つて、 矢 張 自分 の非 を蔽 う て悪 腹 を探 ら れ て は困 ると 云

真 面 目 に 恐懼 し て居 ら れ る ので あ る か、天 下 の人 心 を 共産 党 事 件 に

枢 密 院 に於 て警 告 を附 け ら れ る やう な 不 様 な、 誠 意 のな い、 努 力 を

す 、 国 家 を思 ひ、 皇 室 を思 ひ、 国 家 の治安 を考 へる な どと 去ふ こと

引 張 つて来 て、 私 の疑 の如 く我 党 の便 利 を図 ら んと す る悪 意 に出 で

た と 云 ひ な が ら辞 表 を出 さ ぬ (拍 手 )平 然 とし て今 日 ま で総 理 大 臣、

た 声 明 書 では な か つたか と 私 は考 へる の であ り ます (拍 手) そ れ で

せ ぬ遣 方 は何 であ り ます 、 何 で特 別 議 会 に於 て、 是 が 通 過 を図 ら な

頗 る滑 稽 ぢ や あり ま せ ぬ か、 言 行 が不 一致 で はあ り ま せ ぬ か、 無 責

あ りま す るな らば 、 更 に問 はん と す る点 は 、 此前 の特 別 議会 に治 安

開 し て、 其 形 勢 を 政府 に有 利 に進 展 せ し めん が為 め の緊 急 已 む を得

む を得 ざ る非 常 立 法 に はあ らず し て、 選 挙後 に於 け る所 の政 局 を打

深 き疑 は国 体 の変 革 を目 的 と す る所 の不 逞 の徒 を取 締 る為 の緊 急 已

か つた か と 云 ふ点 に付 て御答 弁 を煩 し た い ので あり ま す、 私 の最 も

又陪 審 法 の適 用 から 何故 除 外 せな か つた と 云 ふ御問 、 是 は洵 に御 尤

成 法 の大審 院 の特 別権 限 に属 す る事 項 にな り は し な い かと 云 ふ こと 、

乱 罪 と 違 ふ点 であ り ま す、 第 二 に他 の法 律 と の関係 、 即 ち裁 判 所 構

変 革 を 取締 る上 に於 て最 も 大 切 な こと であ る ( 拍 手 )是 が刑 法 の内

す (拍 手 )

共 の安 全 を保 持 す ると 云 ふ こと は、 議 会閉 会 後 に突発 し た事 件 に限

て の御 問 であ り ます 、 而 し て其 前 提 と し て武 富 君 は憲 法 第 八 条 の公

あ り ます 、 左様 御 承 知 を願 ひま す 、 第 三 に は憲 法 第 八条 の適 用 に 付

正案 も立案 し、 陪 審 法 の改 正案 も 立 案 し て本 議 会 に提 出 の準 備中 で

○ 国務 大 臣 (原 嘉 道 君 ) 武 富 君 は 死刑 に処 す る や うな 緊 急 勅令 は 、

る、斯 う 云 ふ前提 を置 かれ た、 此前 提 が既 に間 違 つて居 る、 議 会 開

な 御 問 であ る、 故 に政府 は此 点 に付 き まし て只 今裁 判 所構 成法 の改

是 が初 め て だと 云 ふ前 提 の下 に、 大変 長 い御 演 説 があ りま し た が、

会 中 から 事 態 は存 在 し て居 つて も、 其 事 態 が議 会 閉会 後 に重 大 にな

ざ る非 常 手 段 であ つた と 考 へる ので あり ま す (拍 手 ) 以 上 の点 に付

是 は武富 君 の御 調 違 ひ であ つて、 明 治 三十 七 年 に既 に死 刑 を 緊 急 勅

て首相 竝 に法 相 の、納 得 の行 き ま す やう な 御親 切な る答 弁 を 煩 し ま

令 で公 布 し た例 があ る の であり ま す か ら、 是 は能 く御 調 べ にな つた

し て本件 に付 て は既 に屡 々言 う てあ る 通 り、特 別議 会 に於 て治 安 維

であ り ます 、 是 が 即 ち緊 急 勅令 を 発布 す る理由 な の であ り ます 、 而

持 法 改 正案 の理 由 を説 明す る時 に申 し て置 いた 通 り、 其 当時 は まだ

り ま す れば 、 茲 に国 家 の治 安 の維持 の必 要 と 云 ふ も のが出 て来 る の

重 大 な 事 態 が あ れ ば こそ、 緊 急勅 令 の必 要 が あ る の であ り ます (拍

首 領 株 が縛 に就 かな い者 が あ る から し て、 依 然 不 逞 の企 画 を遂 行 せ

ら宜 か ら う と存 じ ます (拍手 ) 国 家 に重 大 な る事 件 が あ り ま す る時

手 ) 質 問 に這 入 つて か ら の第 一の御 問 は、 刑法 の七 十 七条 の 一項 、

に は、 即 ち 緊急 勅 令 の公 布 が必 要 な の であ つて、 死 刑 を科 す る如 き

刑 法 七十 八 条 と 治 安維 持 法 と の関 係 であり ま す が、 是 は実 は 刑法 理

ん とし つ ゝあ る の であ ら う と 云 ふ推 測 を述 べた ので あ りま す、 然 る

れ て来 て、茲 に事 態 の重大 にし て 一日 も捨 置 く べか ら ざ る こと を認

に議 会 閉 会後 に於 き ま し て、 続 々真 に行 動 し て居 る と 云 ふ事実 が現

め た から 、 茲 に緊 急 勅令 の発布 をす る に至 つた の であ りま す、 そ れ

ら 、 一言 だけ 申 上 げ て置 きま す 、 旧来 の刑 法 では内 乱 と云 ふも のは、 必ず 暴 動 行 為 を 伴 ふ も のと思 つて規 定 し てあ る ので あ りま す 、所 が

論 に関 す る こと で、委 員 会 で詳 細御 説 明 し た 方 が宜 いと存 じ ま す か

社 会状 態 が変 遷 す る に従 つて、 暴動 行 為 に代 るに団 体 行 為 を内 乱 罪

るな らば 、 何故 に臨 時 議 会 を 召集 せざ る やと 云 ふ御 問 であ つた、是

か ら第 一には若 し議 会 閉 会 後 に緊 急 勅 令 を発 布 す る や うな 必 要 が あ

は貴 方 の先 程御 読 にな り ま し た憲 法 義 解 を能 く御 覧 にな れば 分 る、

の手段 と す るも のが出 て来 た の であ り ます 、 そ こで新 刑 法 理 論 に於

れ るや う な文 書 や言 論 を 処罰 す る の では な い の であ り ます 、 団 体 行

即 ち 憲法 の八条 と憲 法 の七 十条 と は、 全 く 明文 も精 神 も異 にし て居

き まし ては、 此 団 体 行 為 を処 罰 す る の であ りま す 、併 し貴 方 が言 は

為 に依 つて国 体 を破 壊 せん と す る者 を 処罰 す る、是 が 近代 の此 国 体

て と云 ふ の であ つて、 議 会 が閉 会 し て居 つて さう し て通常 議 会 迄 は

る ので あ る。而 し て憲 法 八条 の場 合 に於 ては、 議 会 閉 会 の場 合 に於

とす る者 を 見遁 し て置 か う な ど と 云 ふ こと は、 出 来 べ き性 質 のも の

規 とし て

基 く恩 赦 と 云 ふ こと は 陛 下 の御 仁 慈 の結 果 で あ つて、 国 家 の刑罰 法

合 に於 ては 、刑 法 的 規 定 を設 け る の は当然 の こと であ る、 現 に我 国

由 であ るか 少 し も分 ら ぬ 、苟 も 一国 の治 安 を維 持 す る 必要 があ る場

ふ も の であ る と か 云 ふ こと を申 さ れま し た が、 是 は 私 は如 何 な る理

は 我 が国 体 の尊 厳 を汚 す も ので あ ると か 或 は 我国 の威 厳 を外 国 に失

る、 而 し て之 に牽 聯 致 し ま し て、 斯 の如 き緊 急 勅 令 を 発布 す る こと

の進 行 を速 かな ら し め ん こと を も 御頼 みし た の であ る、 然 る に拘 ら

長 に交 渉 し て、 或 は委員 会 の開 会 を請 求 し、 又殊 に御 懇 談 し て議 事

法 律 が成 べ く速 に成 立 す る こと を 必要 と感 じ ま し た から 、 屡 々委 員

是 は先 程 申 し まし た通 り、 特 別 議 会 の開 会 中 に於 き ま し て、私 は此

るな ら ば、 臨 時 議 会 を 召集 し な か つた か と云 ふ御 話 が あ りま し た が、

るな ら ば 、何 故 に特 別 議 会 を延 長 し な か つた か、 又若 し其 必 要 が あ

で はな い の であ りま す (拍 手) 又緊 急勅 令 を発 布 す る程 の事 態 が あ

陛 下 の恩 赦 が あ る から と 云 つて、 不 逞 の企 画 を遂 行 せ ん

待 てぬと 云 ふ時 に は、 憲 法 八条 に依 つて緊急 勅 令 を発 布 す る のであ

の刑 法 に於 て も、 其 当時 特 別 に大 逆 行為 を企 て ゝ居 る者 もな か つた

け ると 云 ふ こと は、何 も国 の威 厳 にも、信 用 にも関 し はし な い ので

ぬ (拍手 ) 故 に国 家治 安 の必 要 ある場 合 に於 て相当 の刑 罰法 規 を設

こと な ら ば、 刑 法 の中 か ら大 逆 罪 の規 定 を除 い て置 かな け れ ば な ら

つた ので あ る、故 に其 時 に於 き ま し て是 非 共議 会 を延 長 し て、 此 法

推 測 だ け で あ つ て、 其 具 体 的事 実 と云 ふも のは未 だ挙 つ ては居 な か

党員 中未 だ縛 に就 か ざ る者 が依 然 不逞 行 動 を続 け る で あら う と 云ふ

○ 国 務大 臣 (原 嘉 道 君) (続 ) 而 し て其 当 時 は 先程 申 す 通 り、 共 産

○ 副 議長 (清 瀬 一郎 君) 静 粛 に願 ひ ます

(此時 発 言 す る者 多 し )

ず 是 が 遂 に審 議 未 了 に終 つた の であ る ⋮⋮

に拘 らず 、 御 承 知 の通 り 大逆 罪 に関 す る規 定 を設 け て居 る の であ る (拍 手 )若 し大 逆 罪 の規 定 を設 け るな らば 、 其 国 は既 に大 逆 罪 を 犯

ある ( 拍 手 ) 却 て斯 の如 き大 逆 罪 に等 し い やう な事 を企 てる者 に対

す 者 が あ る だ らう と思 は れ る こと が国 の威 厳 を失 す る と云 ふや う な

し て、何 か遠 慮 を し て刑 罰 規 定 も 設 けず に置 く と 云 ふ やう な弱 い国

に な りま し た か ら、 茲 に緊急 勅 令 の公 布 を奏 請 す るに 至 つた の であ

れ て参 りま し て、 到 底 一日 も之 を看 過 す る こと が出来 な いと云 ふ事

の であ る、 然 る に其 後 に至 つて、 先 程 か ら申 す 通 り各種 の証 拠 が 現

る (拍 手 ) 而 し て臨 時 議会 を召 集 し な か つた理 由 に付 ては、 先 程述

律 を 通過 せし め な け れば な ら ぬ か どう か と 云 ふ事 は、 決 つて居 ら ぬ

に臨 む が如 き は 甚 だ不 都 合 であ ると 云 ふ やう な ことを 言 は れ ま した

る や うな 機 会 に於 て、 恩 赦 も 行 は れ ると 云 ふ際 に、 厳 罰 を 以 て国 民

べ た 通り 憲 法 の解 釈 上 之 を 必要 と せざ る が為 で あ る (拍手 ) それ か

﹂拍 手 ) 威

が、 善 良 な る国民 に は刑 罰 と 云 ふ も の は必要 な いの であ る ( 拍手)

家 であ り ま した な らば 、 国 の信 用 を失 墜 し (﹁ヒ ヤ〓

国 家 の基 礎 を破 壊 せん と す る やう な不 逞 の徒 は、 如 何 な る場 合 に於

ら次 に治 安 維持 法 制 定 の目的 は達 せら れ た り やと 云ふ御 問 であ り ま

厳 を 失 ふ こと甚 し い も の であ る と思 ふ、 又 武 富 君 は御 大 礼 の行 は る

て も、 之 を 処罰 せな け れ ば な ら ぬ の であ る (拍 手 ) 陛 下 の大 典 に

対 し ま し て は、 此法 律 制 定 の効 果 は至 大 な も の であ つた ら う と考 へ

主義 にか ぶ れた程 度 が少 い者 、 或 は か ぶ れさ う な傾 向 のあ る者 等 に

ま し ても、 之 を自 覚 反 省 せし む る こと は出 来 な い、 併 な がら ま だ其

膏 盲 に入 つて到底 遷 善 改 過 の望 な き者 は、 如 何 な る法 律 を制 定 致 し

す が、私 は勿 論 之 を達 し て居 るも のと思 つて居 り ます 、 勿 論 既 に病

全国 に亙 つて︱

上之 を禁 じ た 、併 な がら 之 が 為 に先 程武 富 君 が言 は れた 通 り、 是 が

斯 の如 き事 件 が発 生 致 し ま し て、 而 し て新 聞紙 の掲 載 は 捜 査 の必 要

指揮 の下 に置 かう と す る やう な 不逞 の企 画 を有 す る者 であ り ま す、

日本 の万代 不 易 の国 体 を破 壊 し て、 第 三 ﹁イ ンタ ー ナ シ ヨナ ル﹂ の

と す る、 莫 斯 科 に本 部 を 有 し て居 る国 際 革 命党 の日本 支 部 であ つて、

( 拍 手 ) 日本 共産 党 事 件 は 既 に屡 々申 しま し た 通 り国 際 革命 を目 的

規 では あ りま せ ぬ (拍 手 ) 善 良 な る国 民 は此法 律 の施 行 に依 つ て、

手 ) 治安 維 持 法 は 犯罪 を取 締 る の法規 で あ つて、 民権 を圧 迫 す る法

間 に於 き ま し て 犯罪 擁 護 の手段 を執 つた 事 は 一度 も あり ま せ ぬ (拍

にな る と直 に弾 圧政 策 を 執 ると か 云 ふ御 話 が あ り まし た が、 私 は民

は 日本 国 に如 何 な る事 態 が発 生 し た か と 云 ふ こと に付 て は、非 常 に

不安 の念 に襲 は れ た、 故 に政 治 家 も或 は実 業 家 も、 其 他 の者 も、 是

な が ら其 内 容 の如何 な る も のであ るか と 云 ふ こと に付 て は、非 常 な

出 し た、 其 事 態 の重大 な る こと は 国 民悉 く之 を感 ず る の であ る 、併

々 の罪 跡 は分 り ま せ ぬ から 、全 国 に亙 つて殆 ど千 名 以 上 の検束 者 を

、其 当 時 は無 論 ま だ犯 罪 者 が誰 で あ る かと 云 ふ個

の事 にま で言 及 さ れ て民 間 に在 つ て民権 を擁護 し な がら 、 国務 大 臣

る の であ る (拍手 ) 余 計 な 事 であ り ます るが、 先 程 何 か私 の個 人 的

初 め て我 が国 家 が泰 山 の安 き に在 る も のと し て枕 を高 う し て眠 る こ

るも のは如 何 な る輪 廓 を有 す るも の であ る かと 云 ふ こと を知 ら し め

心 配 を せ ら れ まし て、 一日 も速 に其 公表 を求 め ら れ たと 云 ふ こと は、

て、 国 民 の不 安 の為 を除 か しめ ると 云 ふ こと を、 政府 の義 務 と信 じ

実際 の事 実 で あり ま す、 故 に政府 は我 が国 民 に、 日本 共産 党事 件 な

れ ま し て 云 々せ ら れ まし た が、 私 は法 律 家 た る 武富君 の言 論 と し て

た の であ る、 即 ち 此考 の下 に此事 件 の梗 概 を 発表 し た の であ る、 而

い の であ りま す (﹁ヒヤ ヒ ヤ﹂ 拍手 ) 次 に枢 密 院 の議 事 に 論 及 せ ら

は甚 だ惜 む べき事 で あ ると 思 ふ、 枢密 院 の議事 は申 す 迄 も な く絶 対

し て其 時 に於 ては 、検 事 局 の捜 査 の進 行 を妨 げ な い意 味 に於 て、検

と が出 来 る の であ る (拍 手 ) 何等 之 に依 つて威嚇 を感 ず る者 では な

秘密 であ る、 之 を斯 う云 ふ議事 が あ つた など と 云 ふ事 を、 民 政党 の

事 局 の意 見 を徴 し 、被 告 人 の氏 名 、住 所 等 の外 又 予審 の内 容 に触 る

梗概 を 発表 し た の であ る、 何 も 法律 に違 反 す る ことも 何 もな い ので

るも の ゝ外 は、 記 事 の禁 止 を解 いた ので あ る、其 範 囲 に於 て事 件 の

︹マ マ ︺

ては 枢密 院 以外 に於 て論 議 す ると 云 ふ事 は絶 対 に許す べ から ざ るも

諸 君 が言 はれ る の は私 は 奇怪 千 万 に思 ふ (拍手 ) 枢 密 院 の議 事 に付

( 拍 手) 故 に斯 の如 き枢 密 院 の議 事 に対 し て の質 問 の如 き は、 全然

つた と御 思 ひ にな つた か知 れ ぬ が、 私 は全 国 民 は 此発 表 を見 て非 常

あ る 、 諸君 は 又此 事件 を発 表 し た 梗 概 を見 て、 之 を見 な い方 が宜 か

の であ る、 斯 の如 き事 は即 ち 我 国 の法 制 を破 壊 す る も の で あ る、

御 答 す べ き限 では あ り ま せ ぬ (拍 手) 最 後 に四 月 十 日 に 日本 共 産党

に喜 ん だ も のであ ると信 じ て居 る の であ り ます (拍手 ) 其 他 の事 柄

事 件 の梗 概 を発表 し た動 機 は不 純 では な いかと 云 ふ や うな 御 尋 が あ り ま し た、 凡 そ 色眼 鏡 を以 て物 を観 ま す れば 悉 く 色 が著 い て見 え る

た か、 或 は 緊 急勅 令 を出 し た こと も前 の発 表 の結 果 とし て真意 に出

ら れ て、 或 は 治安 維 持 法 が特 別議 会 を通 過 す る こと を予 期 し て居 つ

は先 程 も 申 し ま し た通 り、 武 富 君 が何 れも 自 分 の色 眼鏡 の上 か ら 見

足 し た で あら う と仰 せ にな りま し た が、 私 は最 も満 足 せ ざ る 一人 で

し た ので あ ると 云 ふ御 答 で あ りま す 、 そ れを 発表 し た ので国 民 は満

か し て欲 し いと 云 ふ 切望 が あ つた か ら 、其 不 安 を 除 か ん が為 に発表

く 為 で あ る、 国 民 の各 方面 に於 て如 何 な る事 件 が 突 発 し て居 る か聴

党 事件 を発 表 し た こと は 一向 差 支 な い ではな いか、 国 民 の不 安 を除

あ りま し ても 、 国家 に不 利 益 と あ れば 御 発 表 に な つ て 居 ら ぬ (拍

ず し て之 を 為 し た ので はな いか と 云 ふ やう な こと を申 さ れま し た が、

手 ) 如 何 な る大事 件 で も、 大 事 件 にな れば な る程 人 は聴 き た が る も

あ りま す 、 と 云 ふ のは、 あ の やう な事 件 を発 表 す る と 云 ふ こと は国

げ ま し た 通 り特 別 議 会 に議 了 せ ら れな か つた為 に、 其 後 に新 な る事

ので あ る、是 は国 民 の好 奇 心 であ り ます 、 国 民 が聴 き た いと 云 ふ度

私 は特 別 議 会 に於 て忠 良 な る国 民 の代 表 者 た る諸 君 は、 必 ず之 を 通

実 証憑 が 出 て参 りま し て事態 重大 にし て捨 置 く べ か らざ るも のが あ

毎 に司 法 省 が 発表 し て居 つた な らば 、 検 挙 の能 率 は全 然 駄 目 に な る

民 の不 安 を 除 く と仰 せ にな りま す け れ ど も、 国 民 の不 安 のあ つた場

る から し て茲 に緊 急 勅 令 の公布 を奏 請 す る に至 つた の であ り ます 、

ぢ や あ りま せ ぬ か、 証 拠 は湮 滅 す る ぢ やあ り ま せ ぬ か、被 告 人 は逃

過 さ せ る であ ら う と 云 ふ こと を確 信 し て居 つた ので あ る、 然 る に議

此 間 何等 武富 君 の申 され る や うな 政 略 的 な意 味 な ど は無 い ので あ り

走 す るぢ やあ り ま せ ぬ か、 首 領 が 三人 か五 人捕 ま らな い のは、 あ の

合 に は何 時 でも御 発 表 にな りま す か、 近 頃 問 題 に な つて居 る事柄 で

ます 、是 だ け御 答 致 し ま す

時 に原 君 が発表 し た為 に風 を 食 つて逐 電 し た も ので あ ると 認 め ら れ

た の であ つ て、 甚 だ 遺 憾 に存 ず る次 第 であ り ま す、 而 し て先程 申 上

○国務大臣 ( 男 爵 田中 義 一君 ) 只今 武 富 君 の御 尋 に依 つ て 私 が 御

る のであ る、漁 夫 が魚 を獲 る には足 音 を盗 ま な け れば な ら ぬ、而 し

事 の進 行 遅 々と し て進 まざ り し が為 に、 此 議 決 を見 る に至 ら な か つ

答 す べき 事柄 は、 議 会 を 何故 会 期 の延 長 を せ な か つた か、何 故 緊 急

て 一網 打 尽 に行 く ので あり ま す け れ ど も、 先 づ発 表 し て置 いて、 逃

げ る者 は逃 げ ろ、 追 払 つて置 い て網 を打 つた所 で魚 の捕 ま ら ぬ のは

三点 が 私 への御 尋 であ るが、 私 に代 つて今 司法 大 臣 が御答 弁 を致 し た の であ り ま す から 、 私 が 重 ね て再 び之 を繰 返 す ことは な いの で あ

と 云 ふ こと であ るな ら ば 将 来 に於 て も左 様 な問 題 が あ つて、吾 々が

当 然 で あ る。 国 民 が聴 き た が るか ら、 不 安 が あ る か ら教 へてや つた

勅 令 にし た か、 而 し て最後 に何 故 に臨 時議 会 を召 集 せな か つた か此

り ま す (拍 手 )

多数 の国民 が請求すれば何時 でも御発表 になります

題 でも 、 国 民 は頗 る不 安 であ つて、 そ れを 聴 か せ ろと 云 ふ こと で、

対 に不 可 能 であ つて、 何 等 目 的 を得 る も の ではな い、 日糖 事 件 の問

か (拍 手 )其 様 な こと であ つ ては、 刑 事 事 件 の捜 査 と云 ふも のは絶

請求す れば︱

○ 武 富 済 君  只 今 原 法 相 よ り御 答 を得 ま し た が、 大 体 に於 て⋮ ⋮ (此時 発言 す る者 多 し)

○ 武 富済 君 ( 続 ) 諒 解 の出 来 ぬ こと が多 い の で あ り ま す ︺ 一々議

○副議長 ( 清 瀬 一郎 君 ) 静粛 に願 ひま す

論 を 繰 返 し ま せ ぬが 唯 々 一点 のみ論 じ ま す る のは、 四月 十 日 に共 産

新 聞 記 者 、実 業 家 、其 他 の人 々が小 林 検事 正 の所 へ駆 込 ん で来 て、

だ 捕 ま ら な い のが何 人 あ る かと 云 ふ御 尋 でご ざ いま す が、是 は首 領

誰 を首領 と 見 て宜 いか と 云 ふ こと は、 是 は各 自 の罪 跡 を 調 べ て見な

株 と 云 ふ解 釈 が中 々む づ か し い の であ る、 故 に武富 君 の言 は れ る意

け れば 分 ら ぬ ので あり ま す、 故 に私 は今 日 の程 度 に於 きま し ては、

味 と 私 の言 ふ意 味 と が 必ず し も 一致 し て居 ら ぬ のでご ざ いま す、 又

あ る に拘 らず 、 自 ら 進 ん で之 を新 聞 に発表 し、 議 会 に於 て発表 し 、

ま だ相 当 重 要 な る位 置 に在 つた者 が、 尚 ほ 七八 名 は縛 に就 かな い者

つた、 原 君 に至 つては 国 民 が余 り欲 し な い の であ らう と 思 ふ方 面 が

あ のやう な 重 大事 件 の犯 人 を逃 走 せし め た責 任 は、 正 に司法 大 臣 に

吾 々も 応 接 に、遑 がな か つた け れ ど も、吾 人 は 口 を緘 し て語 らな か

在 る と申 さな け れば な ら ぬ、 国 民 の不 安 を 去 る のが利 益 か、 重大 犯

光

吉

ムル件

五六

) (

鈴木

侃市

田 永

)

が あ ると 云 ふ こと が、 言 ひ得 る であ ら う と 云 ふだ け を御 答 し て置 き

豊

小野寺 章 

男  貞頼 

承諾ヲ求

ます

坂 宮古啓三郎  中谷

晋也  名川

原 夫次郎  内 ケ崎作三郎

数平  矢野

昌平  斯 波 貞吉  水谷長三郎

夫  横山勝太郎

治安維持法 ( 中改正ノ件

あ のやう な軽 率 放 漫 な る策 と 云 ふ も のは絶 対 に執 る べ から ざ る も の

委員長 井

須之内品吉 

理事 勝

国議会衆議院 昭和三年勅令第 百二十九号 速 第二回 委 員会議録( 記)

第五十六回帝

人 を逃 走 せ し め る のが 不 利 益 か、 国 家 の利 益 を御 考 にな つた な らば 、

で あ る (拍手 ) 日本 の司法 省 に於 て未 だ捜 査中 、 予審 中 の事 件 の梗 概 を発 表 し た る こと は未 だ曾 て其 例 を聞 か ぬ、 原 法 相 が嚆 矢 で あ り ま す、 而 し て私 の質 問 に御答 に な ら ぬ点 は 、 逃走 し た る人 間 は幾 人 あ る か、 其首 領 は幾 人 程 あ る か、 其 人 数 を御 尋 し た の であ り ます が、 御 示し がな い、 であ り ま す か ら 此点 に付 ては 原法 相 が如 何 に仰 せ に

○国務大臣 ( 原 嘉 道 君 ) 武 富 君 の再 度 の御質 問 で あ り ま す が、 先

斎藤隆

理事 牧 野賤

程 私 が申 し ま し た通 り 、検 事 局 に於 て捜 査 の進 行 を妨 げ な い程 度 に、

な り ま し ても、 私 は 満 足 す る こと が出 来 ぬ と 云 ふ ことを 申 上 げま す

新 聞 紙 にも 記載 を許 し た 範 囲 に 於 て私 は発 表 し た ので あ る、被 告 人

比佐

三浦

の各 自 の罪 跡 等 に付 て は何等 発 表 を し て居 り ま せ ぬ、 随 て私 の発 表 し た結 果 、首 領 連 が捕 へら れ な く な つたと 云 ふや う な事 実 は、今 日

ま す か､ 潜 伏 し て其 検 挙 に漏 れ た ので あ つて、 四 月十 日 の発 表 を見

何 な る理 由 であ りま す るか、 或 は之 を予 感 し た と でも言 ふ の であ り

ても、私 は 一言論及して置 いたと思ひますが院 外、即 ち 一般 の社会 、

し て、是 は随分 やかましい議論 が出 ました、過日本会議 に於きまし

此治安維持法 を大正十四年 の第 五十議会 に於 て審議 する際 に当りま

○斎藤委員 少しく内容 に入 つて大体質問し て置きたいと思 ひます、

昭和 四年二月十九日 (火曜 日)

て、 初 め て自 分等 に関 し た 事 件 が起 つて居 る のだ と 云 ふ こと を知 る

ま で あ つた こと はあ り ま せ ぬ (拍 手 ) 彼 等 は 三 月十 五 日 の検 挙 に如

や う な頓 馬 な 人間 達 で はな い の であ り ます ︵拍手 ) 次 に首 領 達 が ま

つてし ま つ て治 安 維 持法 を制 定 し た こと は御 承 知 の通 り で あ る、 其

於 き ま し て は政 体 の変 更 と 云 ふ文 字 が あ り ま し たけ れ ど も、 之 を削

し て、非 常 に辛 辣 な る質 問応 答 を 重 ね て漸 く成 立 し た、 殊 に原 案 に

委 員 会 には 内務 大 臣 、 司 法 大臣 、 其 他 多 数 の政府 委 員 も 列席 さ れ ま

又院 内 に於 ても猛 烈 な る反 対 が あ りま し た、 そ こで此 治 安維 持 法 の

に於 ては 治 安維 持 法 の制 定 に付 き ま し て猛 烈 な る反 対 があ り ま し た、

政 府 は更 に刑 法 と の権 衡 を維持 す る が為 に十年 以下 を 一躍 死刑 に改

の権 衡 を得 せ し む る為 に十 年 以 下 と定 めた の であ ると 云 ふ、 今 度 の

前 の十 年 以 下 の者 を死 刑 に処 さ な け れば な ら ぬ、 前 の政 府 は刑 法 と

年 後 の今 日 に於 き ま し て は、 更 に刑 法 と の権 衡 を維 持 せし む る為 に

者 な くし て治 安維 持 法 の刑 罰 規 定 に賛 成 し た の であ りま す 、所 が三

会 に出 席 さ れ て、 是 が説 明 の労 を 取 ら れ、 政 友会 は無 論 一人 の異 議

政府 委 員 山 岡 君 は答 へて 曰 く、 十 年 以下 は刑 法 と の権 衡 上 已 む を得

的 と し て暴 動 を為 し た る者 は内 乱 の罪 と為 し﹂ と あ り、 朝 憲 を紊 乱

即 ち ﹁政 府 を 顛 覆 し 又 は邦 土 を僣竊 し其 他 朝 憲 を紊 乱 す る こと を 目

御 説 明 の便 を図 つて見 た いと思 ふ、 刑法 第 二章 の七十 七条 の内 乱 罪

め な け れば な ら ぬと 云 ふ こと は、 私 は三年 の間 に於 き ま し て、 前 の

な い、 十 年 以 下 の刑 罰 に付 て刑 法 と の権 衡 はど う か と 云 ふと 、 刑法

す る と 云 ふ中 に於 ては、 無 論 国 体 の変 革 を含 ん で居 る に相 違 な い、

当 時 に於 き ま し て刑 法 と の権 衡 に付 き ま し て色 々質問 応答 を重 ねら

第 七十 八 条 ﹁内 乱 の予備 又 は陰 謀 を為 し た る者 は 一年 以上 十年 以下

国 体変 革 の全 部 では な い が、 朝憲紊 乱 の中 には国 体 変 革 と 云 ふ こと

政 府 と 今 の政 府 に於 て是 だ け意 見 の相 違 を来 す と云 ふ こと が、 甚 だ

の禁錮 に処 す ﹂ 此条 文 と の権 衡 を保 た せ るだ け の値打 は ある と 思 ふ、

も含 ん で居 る に相 違 な い、 即 ち国 体 変 革 の目的 を 以 て暴 動 を為 し 、

れ ま し た が、 其 時 の政府 委 員 山 岡 君 は ど う 云 ふ答 弁 を し て居 る かと

無 論 国 体 変 革 の目的 を 以 て結 社 し た と 云 ふだ け の事 実 で は、国 体変

数 千 人 、 数 万 人、 十 数 万 人 の暴動 を使嗾 し て、 軍 器 弾 薬 を使 用 し て

云 ふと、 十 年 以 下 の刑罰 は別 に重 く な い、 所 が委 員 側 に於 き ま し て

革 の実 行 に著 手 し た も の で はな い、 の みな ら ず 予備 にも な らず 、 陰

戦 闘 行 為 を 開始 す る、 其 主 謀 者 は死 刑 と云 ふ こと にな つ て居 り ま す、

て はな ら ぬ の であ り ま す が、 私 は極 め て簡 単 な 問 題 を茲 に提供 し て

謀 にも な ら ぬ、 予備 にも 陰 謀 に も程 度 は達 せ ぬ け れ ども 、斯 う 云 ふ

所 が此 緊急 勅 令 に依 りま す と 、 目的 は同 じ であ りま す け れ ども 、 国

不 思 議 に思 は れ る、 そ こ で刑 の権 衡 と 云 ふ こと に付 て御 尋 をし な く

目 的 を 以 て結 社 し たと 云 ふ こと が国 家 の公 益 を害 す るも ので あ る か

体 変 革 の実 行 と 云 ふ こと に は少 し も関 係 は な い、 実 行 の予 備 にも陰

は 十年 以 下 の刑 罰 は実 に 重 い では な い か と 云 ふ意嚮 であ りま し た が 、

治安維

の説 明 を 切 々とし て や つ て居 ら れ る、是 は 当時 の速 記 録︱

ら 、 之 に内 乱 と同 様 の刑 罰 を科 す る こと は 已 む を得 な いと 云 ふ意 味

持 法 第 四 回 の委 員 会 の速 記録 の十 五頁 を 御覧 下 さ ると 大 体載 つて居

を同 一に見 て、 内 乱 罪 の既 遂者 と同 一程 度 の刑 罰 を科 す る と云 ふ こ

とは、 私 は別 に法 律 の観 念 あ る を要 せず 、 刑 法 の学 理 に長 ず るを 要

謀 にも な ら ぬ、 其 処 に至 るま で の径 路 であ る、 是 だけ距 離 のあ る罪

衡 を得 せし む る目 的 を 以 て十 年 以 下 の体 刑 を定 め た 、其 時 は政 友 会

せず、 今 日 の社 会 通念 に愬 へて、 常 識判 断 に依 て随 分刑 の権 衡 を得

る、所 が其 当 時 の政府 若 く は議 会 は其趣 旨 を以 て、 即 ち刑 法 と の権

の小川 平 吉 君 が司法 大臣 に な つ て居 つて、 小 川 司 法 大臣 は毎 回 委 員

やう に御 説 明 を煩 し た いと 思 ふ

し き を得 た るも の でな いと思 ひま す が、 之 に付 て吾 々が了 解 出 来 る

の実 行者 と同 一に準 ず ると 云 ふ こと は、 ど う し ても私 は刑 の権 衡宜

想 上 の内 乱 罪 であ る、 外 患 罪 であ ると 云 ふ此 文 句 を 以 て、 国 体変 革

す 、 大 逆 罪 、 内乱 罪 、 外 患 罪 と同 一に見 るべ き も の であ る、所 謂 思

の で あ るか ら甚 だ宜 し く な い、 宜 し く な い こと は誰 も 分 つて居 りま

せう か、唯 原 司法 大 臣 の御 説 明 の やう に、 国 体 変 革 を目 的 と す るも

て居 らぬ も ので あ ると 思 ひます が、是 は ど う 云 ふ やう な 訳 で あ りま

常 に危険 な も の であ る と 云 ふ こと が感 じら れ た ので あり ま し て、 大

た る実 際 の事 実 か ら申 し ます ると 云 ふ と、非 常 に拡 充 性 を帯 び、 非

か ら見 て考 ふべ き も ので あ りま し て、 殊 に共産 党 事 件 に現 は れま し

目的 を以 て致 しま す る所 の結 社 は、 非常 に重 いも のと我 が国 体 の上

解釈 は、 既 に判 例 に も決 つて ゐる のであ り ます 、 而 し て国 体 変 革 の

らず 、 ま だ 予備 陰 謀 と も 云 へな い程 度 のも の迄 も 含 ん で居 ると 云 ふ

た るも のと 云 ふ中 には 、 独 り 予備 陰 謀 の程 度 に達 し た る も の ゝ みな

とし た る者 と全 く 同 一に扱 つて居 ります 、 而 し て危 害 を加 へんと し

つ て居 た と 云 ふ こと が出 来 ると 思 ふ ので あり ま す、 此 危 険 の程 度 か

正 十 四年 に此 治 安維 持 法 を制 定 す る当 時 の状況 と、 事 態 が 著 し く違

ら 考 へ、 又国 体変 革 と 云 ふ事 態 の大 き な点 から考 へます ると 云 ふ と、

○ 泉 二政府 委 員  只 今 の御 質 問 は 洵 に御 尤 に考 へら れ ま す が、 此 緊

る結 社 は 当 然刑 法 に規 定 す る内 乱 の実 行 で な い こと は言 ふ を要 し ま

から う か、 即 ち 現 行 の刑 法 に於 て既 に予備 陰謀 の程 度 にす ら も 達 せ

寧 ろ 刑 法第 七十 三 条 の点 か ら 比較 し て考 へても然 る べ きも の では な

急 勅 令 に於 て考 へま し た こと を申 上 げ ま す と、 国 体変 革 を目 的 と す

せ ぬ、 そ れ か ら 又場 合 に依 て は内 乱 の予備 陰 謀 にも な ら ぬ と 云 ふ こ

り ます か ら 、 此勅 令 に於 き ま し てはそ れ等 の点 から考 へて内 乱 の予

ざ る行 為 迄 も死 刑 にす ると 云 ふ や うな著 し い場 合 も例 が あ る の であ

と も あ る の であ り ます 、 何 と な れば内 乱 は暴 動 と云 ふ こと を実 体 と す る、 それ の予 備 陰 謀 と 云 ふ こと を必要 と す る のであ り ま し て、 此

ふ が宜 から う と 云 ふ見 地 から 致 し まし て、 死刑 ま で科 す ると 云 ふ こ

備 陰 謀 と 云 ふ も のよ りも 、 も つと著 し き 危険 のあ るも のと し て取 扱

結 社 の場 合 が当 然 そ れ に当 る と は認 め ら れ な い こと があ る の であ り ま す 、却 て刑 の権 衡 から 申 し ま す ると 云 ふと、 危 険 の程 度 が内 乱 の

と にな つた 訳 で あ り ます

予備 陰 謀 と 同 じ や うな 程 度 のも のであ ると 云 ふ こと を前 提 に致 しま す れ ば、 矢 張 十年 以下 と 云 ふ位 で宜 し い の であ り ま せう 、併 な が ら

う と考 へま す 、即 ち国 体 を変 革 す る と 云 ふ こと ゝ、 皇 室 に向 つて畏

云 ふ も のを 引 いて居 ら れ ます るが 、是 は全 く性 質 の違 ふ事件 で あら

多 く も危 害 を加 へる と 云 ふ こと は︱

○ 斎 藤 委 員  司法 大 臣 の御 説 明 の中 に於 ても、 七十 三 条 の大 逆 罪 と

ま る行 為 であ る と 云 ふ の であ り まし ても 、危 険 が著 し いも の であ る

が是 は国 体 を 変革 す るも の では な い、 国 体 変革 と皇 室 に対 す る危 害

と か著 手 と か云 ふ やう な 風 に行 かな い で、未 だ 予備 陰 謀 の程 度 に止

と見 まし た な らば 、 其 刑 は 既遂 と同 じ や う に 重 い刑 を科 す る必要 も

と は全 く別 のも ので あ る と考 へる、之 を治 安維 持 法 の説 明 に引例 せ

法 律 上 の要 件 の如 何 に拘 ら ず、 即 ち 言 葉 を換へ て申 し ま す れ ば実 行

あ る だ らう と思 ふ のであ り ま す、 御 承 知 のや う に刑 法 第 七 十 三条 に

皇 室 に向 つて危 害 を加 へた所

規定 し まし た 危害 罪 の如 き は、 危 害 を加 へた る者 と、 危害 を加 へん

と が 危険 の実 際 の程度 の上 から 云 う て、 一寸 正 当 で な い の であ らう

あ り ます 、 内 乱 罪 の予 備 陰 謀 と 、 此結 社 と云 ふ も のと を比 較 す る こ

う 云 ふ大 罪 を犯 す 者 と、 其 処 には至 ら ぬ のみ ならず 、 予備 にも 陰 謀

し て居 りま し た 者 の数 の正確 な も のは実 は分 り ま せ ぬ、 是 は 此前 に

○横 山 ︹ 助 成 ︺ 政府 委 員 ︹ 内 務省 警 保 局 長 ︺ 此 共産 党 大 学 に 入 学

○ 水 谷委 員  其 点 を横 山 警 保 局 長 に御 願 致 し ま す

昭 和 四年 二月 二 十 三 日 (土 曜 日 )

速) 委員会 議録(記 第 四回

第五十六回帝 昭和三年勅令第百二十九号 (治安維持 法) 承 (諾を求 中改正の件 むる件 ) 国議会衆議院 

と 考 へる の であ り ま す

ら れ る と 云 ふ こと は、 間 違 つて居 る と思 ひま す 、 対照 す べき も のが

目的

此内 乱 罪 に関 す る ので あ りま す 、即 ち内 乱 罪 の中 に は色 々あ り ま す る が、 先 程 申 し ま し た やう に、 国体 を変 革 す る目的 を 以 て︱ は同 じ こと であ り ます が、 治 安維 持 法 と内 乱 罪 と は 此内 乱 罪 の方 が 広 い ので あ る が、 治安 維 持法 の中 に は同 一の目 的 も内 乱 罪 の中 に含 ん で居 る ので あり ます 、 内 乱 罪 と 比較 す べき 性 質 のも の であ る、 即 ち 同 じ 目的 を 以 て大暴 動 、 大 革 命 を起 し、 若 し 此 暴動 が成 就 し た な

にも な ら ぬも のと 同 一に扱 ふ こと が間 違 つて居 り は し な い かと 云 ふ

ら ば、 革 命 は完 成 し て国体 が変 革 せ ら れ て し ま ふ の であ りま す 、 さ

私 の質 問 で あ りま す、 今 の皇 室 に関 す る罪 を御 引用 にな つて緊 急 勅

の莫 斯 科 に於 け る官憲 の調 査竝 に此方 に帰 つて来 ま し た者 を 取調 べ

て居 りま す 、 約 四 十人 、 或 は 四 十 数名 の日本 人 、是 位 の見 当 は向 ふ

た結 果 に依 て推 定 を し た の であ り ます 、 朝 鮮 人 に付 て はま だ は つき

も 、 どな た か に御 話 を申 し ま し た が、 正 確 な 数 が分 ら ぬ事情 に な つ

○ 泉 二政 府 委 員  内乱 罪 の要 件 と、 治 安 維 持 法 の犯罪 の要 件 と を較

令 の内 容 を説 明 さ れ た と 云 ふ こと は、 全 く方 角 違 ひ であら う と 思 ふ、

べ ます と大 分 違 ふ所 が あ りま す 、内 乱 罪 の方 は常 に暴 動 と 云 ふ事 を

であ りま す

り し たも のが 分 り ま せ ぬ、 此内 地 人 よ りも数 が多 から う と 云 ふ予 想

内 乱罪 と 比較 し て更 に 一層 の御 説 明 を願 つて見 た いと思 ふ

実 体 とし て居 り、 治 安 維 持 法 の方 は そ れ を要 件 と し て居 ら な いと 云

○ 水谷 委 員  次 に法 律 の技 術 に関 し ます るが、 是 か ら御 尋 に対 す る

ふ事 が違 つて居 る ので あ りま す、 さう し て予 備陰 謀 と 云 ふ方 は、 内

は結 社 の役 員 其 他指 導 者 た る任 務 に従 事 し た る者 は死 刑 又 は無 期 若

乱 罪 の予 備 陰 謀 は実 行 より も軽 くな る こと は当 然 で あ りま せ う が、

は 五年 以 上 の懲 役 若 は禁錮 に処 し 、情 を知 り て結 社 に加 入 し た る者

第 一条 に ﹁国 体 を 変革 す る こと を 目的 と し て結 社 を 組 織 し た る者 又

又 は﹂ 其 次 です 、 ﹁ 結 社 の目 的 遂行 の為 にす る行 為 を為 し た る 者 ﹂

答 弁 は泉 二政 府委 員 に願 ひま す、 此度 改 正 さ れ むと す る治安 維 持法

う に考 へま し た な らば 、 矢 張 内 乱罪 の実 行 に対 し て死 刑 が科 せ ら れ

実 行 し た場 合 と 比較 し て考 へて、 危 険 が著 し いも ので ある と 云 ふ や

是 は 一体 具 体的 にどう 云 ふ者 を指 す か

此結 社 の性 質 から申 し まし ても非 常 に危 険 な も の であ る、是 は内 乱

て居 る のと 同 じ や う に、 結 社其 物 に対 し て死 刑 を科 す ると 云 ふ こと

罪 の予 備 陰 謀 よ り も危 険 が著 し いも の であ る、寧 ろ内 乱 罪 の暴 動 を

も権 衡 上 に於 てさ う間 違 つ て居 る も の では な か ら う と思 は れ る の で

であ りま す

○ 水谷 委 員  結 社 の目 的 遂行 の為 にす る行為 を為 し た る者 と 云 ふ の

ね

○泉 二 ︹新 熊︺ 政 府 委 員 ︹司法 省 刑 事 局 長 ︺ 最 後 の部 分 だ け で す

規 定 と解 釈 し て宜 し い の であ り ます か、 如 何 で あり ま す か

○ 水 谷 委 員  それ では所 謂 俗 に謂 はれ て居 る所 の外廓 を取 締 る所 の

居 る の であ り ます

を や る者 、所 謂 ｢エーゼ ント﹂ の大 部 分 が之 に入 つ て居 る斯 う 見 て

と か、 斯 う 云 ふ や うな 者 であ つて、 さう し て此 結 社 の指導 者 の指 導

○水 谷 委 員  要 す る に党 員 から 党 員 に手 紙 を持 つて行 つた り、 又演

り得 るも のだ と思 ふ の であ り ま す

げ る こと は む つかし いと 思 ひま す、 さう 云 ふ も のも 矢張 此中 に這 入

あ り まし て、 は つき り 其 も の ゝ全 部 が之 に這 入 ると 云 ふ こと を申 上

の下 に於 て結 社其 も の ゝ為 に今 の協 議 、 宣伝 、 煽 動 等 の行 動 を為 す

○ 泉 二政 府 委員  外 廓 と 云 ふ言 葉 はど う も色 々使 ひ方 が あ る やう で

者 は、 主 とし て只今 の文 句 の中 に入 るも のと 考 へて居 り ま す 、 二条

も ので あ りま す か

説 会 場 で 日本 共産 党 の ﹁ビ ラ﹂ を 撒 く、 斯 う 云 ふ やう な こと を含 む

○ 泉 二政 府 委員  そ れは 現行 法 の第 二条 に書 いて あ る、 即 ち 目的 た

三条 は ま だ結 社組 織 のな い場 合 の協 議 をす る と か、 宣 伝 を す ると か、

る こと の実 行 に関 し協 議 を為 す者 と か 、 そ れ か ら実 行 を煽 動 す る者

又結 社 が あ つて も結 社 の為 に す る の では な い、 そ れ か ら離 れ て居 る

目的 遂 行 の為 に行 為 を 為 し た る者 、 其 人 自身 は 共産 党 員 で はな い の

居 ら な いが、 陰 に隠 れ て居 る、 陰 に隠 れ て居 る が、 而 も共 産 党 の大

処 に居 る か知 ら な いが人 を操 る、 共産 党 と 云 ふも のは公 認 せ ら れ て

場 合 に於 て、 共 産 党 が 丁度 眼に 見 え な い所 の 一条 の糸 のやう に、何

○泉 二政 府 委 員  さう 云 ふも のも 此中 に這 入 り得 る と思 つ て居 りま

で すね 、 具 体的 に どう 云 ふ仕 事 をす る か、例 へば煽 動 と か協 議 と か

衆 行 動 の基 礎 と し て大 衆 的 の団 体 を作 る者 が出 て来 る、 外 国 の社会

す

云 ふ こと でな く、 具 体 的 に今 日 日本 共 産 党 の記 録 に現 れた 言 葉 を藉

運 動 の歴史 を見 ま す と 大体 さう 云 ふ工合 にな つて居 る、 共 産 党 が 公

を執 る者 は、 一条 の目 的 遂行 の為 にす る者 と 云 ふ項 に入 るも の であ

つて言 へば 、或 は外 廓 であ る と か、 或 は ﹁レポ ﹂ であ ると か、 色 々

認 され る ま で は所謂 共産 党 と 云 ふも のは陰 に隠 れ て居 る陰 に隠 れ て

所 の行 為 を す る者 が矢張 此 の二条 三 条 に入 る 、結 社 の為 にす る行 動

の言 葉 が現 れ て居 りま す が、 さう 云 ふ今 度 の日本 共 産 党 事 件 の記録

居 つ て、外 部 に於 て所 謂 大衆 団 体 と し て現 れ て、 共産 党 か ら ﹁ベ ル

る と 云 ふ やう に考 へて居 る ので あ りま す

に現 れ た熟 語 を 以 て具 体 的 に御 説 明 を願 ひた いと思 ひ ます

る こと で あ りま す る が、 若 し も 共 産党 と 云 ふも のが、 公 認 され な い

○ 泉 二政 府 委員  是 はま だ党 員 と 云 ふ こと には な つて居 な い の であ

ト ﹂ を掛 け られ て、指 令 を受 け て働 ら く と 云 ふ やう な 場合 に、 其 大

○ 水 谷委 員  更 に聴 き た い の で あり ま す が、是 は もう 各 国 に例 の あ

り ます 、 入 社 と 云 ふ こと には ま だな つて居 な い者 であ つて、 さう し

衆 団 体 は 此所 謂 結 社 遂 行 の為 に行 為 を為 し た る者 と 云 ふ こと に当嵌

○ 水 谷 委 員  一寸 今 の説 明 が分 り難 い の です が 、 さ う す る と結 社 の

て文 書 の取 次 を す ると 詰 り ﹁レポ﹂ 見 た やう な 者、 其 他 煽 動 、 宣 伝

の合致 と し て現 はれ る場 合 があ る、 言 葉 を換 へて言 へば 、 単 に影 響

体 の所 謂 幹 部 が三 つな ら三 つ、 四 つな ら 四 つ、 五 つな ら 五 つ、 暗 黙

つて居 つて、 重 な り合 つて居 つて、 共 産 党 の指 導 の十 の中 、 大 衆 団

指 導 と言 は れ ても仕 方 はな い、 共産 党 員 と大 衆 団 体 と の党 員 が だ ぶ

り ま す、 直 接 に共産 党 か ら指 令 を貰 つて や る場 合 には、 そ れ はも う

○ 水 谷 委 員  其 指導 と 云 ふ言 葉 が実 際 運 動 と し て は非 常 に曖 昧 であ

這 入り 得 るも のと考 へて居 り ま す

も此 共 産 党 の指 導 の下 に於 てさ う 云 ふ行 動 を す る者 は総 て此 一条 に

○ 泉 二政 府 委 員  大 体 先 刻御 答 し た通 り であ り まし て、 さう 云 ふ者

ま る かど う か 、之 を 伺 ひま す

○ 水 谷委 員  さう す れ ば 有 ゆ る左 翼 団 体 が 之 に引 掛 か る こと にな る

は該 当 す る、 此 趣 旨 を 先 刻申 上 げ て置 いた ので あり ま す

ば 、 直接 に其 結 社 の指 導 の下 に置 か れ て居 な く ても 、 矢張 第 一条 に

社 の為 に其 目 的 遂 行 の為 に す る行 為 をな す と 云 ふも のが あ り ます れ

○ 泉 二政 府 委 員  茲 に 一つ の結 社 が あ つ て、 そし て其 情 を知 つて結

と思ふ

と を言 は れま し た が、 其 点 をも う 一度 確 め て、 私 の質 問 に 入 りた い

府 委員 は、 此 結 社 の目的 遂 行 の為 にす る も の云 々 に引掛 る と 云ふ こ

れ て居 る左 翼 団 体 が出 現 し て来 た、 さう 云 ふ場 合 に於 て矢 張 泉 二 政

於 ては共 産 党 の指 令 で動 く の で はな く し て、 漠 然 と其 影 響 下 に置 か

下 に置 か れ て居 ると 云 ふ言 葉 で言 ひ表 し て宜 い か も 分 り ま せ ぬ が⋮⋮ と 思 ふ、 今 日 の所 謂 経済 組織 に 於 き ま し て、 左翼 と名 け て居 る者 は、

○ 泉 二 政府 委 員  そ れ でも宜 し いと思 ふ ので あり ま す、 指 導 者 と云

な者 を認 定 の上 で や つて来 た場 合 に は、 左 翼 団体 は 一日も 存 在 す る

も のを 必 ず受 け て居 る、 暗 黙 の裡 に 必ず 受 け て居 る、 さう 云 ふ やう

それ

〓 の程 度 に於 け る所 の共産 主 義 の理 論 、共 産 党 の影 響 と 云 ふ

ふ言葉 は 法律 に は書 い てな い のは 御 承 知 の通 り であ り ま す、 情 を知

こと が出 来 ま せ ぬ、 全 部 引掛 か る、 私 が本 会 議 に於 て治 安 維持 法 と

そ れが労 働 組 合 運 動 であ ら う と、 政 党 運 動 であ ら う と、 必ず 若 干 の

つてさ う 云 ふ行 動 を 取 れば そ れ で宜 し い ので あり ま し て、 即 ち 第 一

云 ふも のは、 名 を共 産 党 征 伐 に藉 り て、 実 は左翼 運 動 を征 伐 す る も

ので あ ると言 つた の は此 処 であ り ま し て、 そ れ が今 泉 二政 府 委 員 の

どう 云 ふも のを言 ふ かと 云 ふ こと を御 話 を し て居 つた の であ り ます 、

答 弁 に依 て明 にさ れ た、 若 し 其 答弁 通 り で あ ると す れば 、 左 翼 運動

条 に当 る ので あ りま す 、私 が先 刻 か ら 話 し て居 る こと は 、主 とし て

只 今 御質 問 のや うな 場 合 が あ れば 、 そ れ も第 一条 に這 入 る ので あ り

か つた のであ り ま す が、 私 が 泉 二政 府 委 員 に質 し ま し た点 に於 き ま

○ 水 谷 委 員  午 前中 最 後 の時 、時 間 の都 合 上 う つか り駄 目 を 押 さな

産 党 と 同 じ様 に、 国 体 を変 革 す る目 的 を 以 て結 社 し て居 るも ので あ

○ 泉 二政 府 委 員  私 は貴 方 の やう に総 て の左 翼 運 動 と 云 ふ も のが共

うか

ふも のは、 一日も存 在 す る こと は出 来 ま せ ぬ、 そ れ でも宜 い の でせ

合 法 的 に存 在 し て居 る左 翼 運動 の存 在 と 云

し て、 共 産 党 を 公認 し な い場 合 に於 ては、 是 迄 の各 国 の歴 史 に於 て

の存在 と 云 ふも のは︱

ます

も所 謂 共 産 党 にあ ら ざ る所 の左 翼 団 体 が表 面 に出 て来 る、 其 場 合 に

的 と す る結 社 に当 る、私 有 財 産 制 度 の否 認 を 目的 とす る結 社 に当 る、

と 、 何 であ ら うと 、 運 動 団体 が どう であ ら う と、 丁 度 国 体変 革 を目

な ら な け れ ば な ら ぬ こと であら う と 私 は 思 ふ、 そ れは組 合 で あ らう

云 ふ こと を言 明 な さ るな ら ば、 そ れ は貴 方 が非 常 な 責 任 を御 持 ち に

せ ぬが 、若 し貴 方 が総 て の左翼 運 動 が あ れ に引 掛 か るも ので あ る と

安 維 持 法 の第 一条 に当 る 行動 を執 つて居 る も のと は信 じ た く あ りま

る、 私 有財 産 制 度 を否認 す る目 的 を以 て結 社 し て居 る、 き ち つと治

あ り ま せぬ 、 併 し仰 し や つた趣 旨 が さう でな いと 云 ふ こと であ り ま

ば 、 所 謂 弾 圧 さ れ る こと にな り は し な い かと 思 ふ ので あ りま す

居 る所 の左翼 運動 が、 若 し 今 の泉 二 さ ん の やう な 御解 釈 であ る な ら

う云 ふ やう な趣 旨 で あり ま す 、 さう 云 ふ や う な趣 旨 に今 日置 か れ て

の下 に推論 さ れ た と思 ふ の であ りま す が 、 私 が申 しま し た のは、 さ

の で あ りま す、 故 意 か或 は悪 意 か知 れま せ ぬ が、 兎 に角 大 き な誤 解

云 ふ訳 では全 然 な い、 其 点 は 只今 泉 二さ ん が非 常 に誤 解 され て居 る

明確 に国体 変 革 或 は私 有 財 産 制否 認 の為 に左翼 運動 を や つて居 る と

す れば 、 そ れ が宜 い ので あ りま す が、 改 め て只 今 の左 翼 運 動 の総 て

○ 泉 二政府 委 員  私 は水 谷 さん の先刻 の御 説 明 を誤解 し た積 り では

を弾 圧 す る こと にな り は せ ぬ かと 仰 し や る け れ ども 、 さ う はな ら な

に、 明 白 に さ う だと 云 ふ証拠 は上 りま し た な らば 、 法 は処 罰 し な け れば な ら ぬ ので あ りま す 、 一日 も さう 云 ふ団 体 の存 在 を 此 法律 は認

斯 う 云 ふ こと が、 唯 推 定 では無 論 いけ ま せぬ、 貴 方 の仰 し や るや う

め る こと は 出来 ぬ のであ り ま す

い と申 上 げ て宜 し いと思 ふ のであ り ま す

運動 と の関 係 と 云 ふも のは、 二通 りあ ら う と思 ふ の であ り ます 、茲

水○ 谷 委 員  大体 共産 党 が公 認 され な い場 合 に於 て、 共産 党 と 左 翼

○ 水 谷 委 員  そ れ は無 茶 です 、私 が尋 ね まし た のは、 只 今 泉 二 さん

に例 へば 一方 に 一つの此 位 の円 の共 産 党 が あ る と致 し ま す、 他 方 に

が仰 し や る やう に、 国 体 変 革､ 又 私有 財 産 制 否 認 云 云 と 云 ふ目 的 の 下 に左 翼 運 動 を や つて居 ると 云 ふ ので は全 然 な く、 午 前 から 私 と 原

斯 う 云 ふ大 き な 左 翼団 体 が あ る、所 で此共 産 党 から 左翼団 体 へ 一つ

の ﹁ベ ル ト﹂ を引 張 つ てあ つて、漠 然 と影 響 が あ る場 合 、 一つの此

云 ふ やう な も のが既 に思 想 的 に起 つて居 る、 随 て共産 党 と 云 ふも の

処 に共 産 党 な ら 共 産 党 と 云 ふも のが あ る場 合 に、 其 の共産 党 と 独 立

司 法 大 臣 と の問答 で明 であ り ま す や う に、 今 日 の経 済 組 織 の欠 陥 と

さう 云ふ や う なも のと 一脈 の関 係 が起 るや う に な る かも 知 れ

ず〓

の存 在 でな し に、 共 産 党 と 云 ふ円 を中 心 と し た 一つの大 き な 二重 の

が 必然 的 に起 つ て来 る か も知 れ ぬ、 随 て左 翼 と名 の付 く も の は知 ら

ぬ、 そ れ を弾 圧 す る こと にな り は せ ぬ か と云 ふ こと を言 つて居 る の

題 の結 社 の目 的 遂 行 の為 に或 る行 動 を 為 し た る者 と云 ふ のは、 其 何

ふ二 つ のも の が今 日あ る の であ りま す、 さ う 云 ふ場 合 に於 て、 此 問

れ に該 当 す る の で あり ま す か、 其 点 を 伺 ひ た い

円 の左 翼 団 体 とし ま す 所 謂 共産 党 の活 動 の大衆 的 基 礎 を 与 へると 云

経 済 組 織 の欠 陥 よ り、 其 一端 た る 日本 の経 済 組織 の現 状 に付 て、斯

で あ りま し て、 只今 泉 二 さん の御 答 弁 は、 可 な り的 を外 れた 土 台 の

う 云 ふ やう な思 想 が当 然 起 つて来 て、 斯 う 云 ふや うな 運 動 が 当 然起

○ 泉 二政 府 委 員  それ は各 場合 に付 き ま し て、 其 ｢ク ロツ ス﹂ し て

上 に立 つて居 ら れ る の であ り ま す、 私 の午 前 中 か ら申 し ま し た 世 界

つて来 ると 云 ふ、 経 済 組 織 の点 に関 し て申 述べ た ので あ りま し て、

動 に止 ま る ので あ るか と 云 ふ こと を 、具 体 的 の事 実 に付 て判 断 し て、

であ る か、 何 れが さう 云 ふも の に入 ら な い で、 単純 な る所 謂 左 翼 運

あ る と 云 ふ情 を知 り な が ら、 其 目 的 遂 行 の為 にす る 行動 を為 す も の

居 る ﹁サ ー ク ル﹂ の何 れ が国 体 変革 の目 的 を 以 て組 織 さ れ た結 社 で

が存 在 す る、勿 論 共 産 党 の場 合 に於 ては、 単 に左翼 団体 ば か り でな

翼 団体 と 云 ふも のが全 然 独 立 し て、 一つ の輪 を持 つて居 り 、 又 共産

れな い場 合、 左 翼 団 体 と の関係 と 云 ふ も のは 、 先 に言 つた や う に左

ふ ことは 可笑 し いかも 知 れま せ ぬ が、 少 くと も 今 日共 産 党 が 公認 さ

を願 ひた いと思 ひま す 、博 学 な る泉 二政 府 委 員 に再 び説 明 す る と云

く 、中 間 団 体 或 は 右翼 団 体 に そ れが ﹁ベ ルト﹂ を掛 け てか ら に自 分

党 と 云 ふ小 さ い円 が あ る、 其 円 と全 然 独 立 し て左翼 団 体 と 云 ふも の

○ 水 谷 委 員  私 は各 々の場 合 のさう 云 ふや う な具 体 的 の事 実 を言 つ

｢ベ ルト﹂ が掛 け易 い、 随 て左 翼 団 体 の方 か ら自 分 は何 も意 識 し て

の行動 をば 大衆 的 に す る やう に努 め て 居 る、 就 中 左翼 に対 し ては其

そ れ に依 て治安 維 持 法 の適用 が あ る か否 か を決 す ると 云 ふ こと を申

て居 る の では あ り ま せ ぬ、私 は原 則 と し て 一つの問 題 を提 出 し た の

上 げ るよ り 外 に は説 明 のし や う がな いと 思 ふ ので あ りま す

であ り ま す 、従 て それ に対 す る答 弁 は矢 張原 則 的 の答 弁 でな け れば

掛 け て さう 云 ふ関 係 を附 け て居 る左 翼 団 体 と今 一つは 左翼 団体 の方

を 意 識 し て居 な い、 実 際 は何 時 でも さう であ る、所 謂 ｢ベ ル(﹂ を

て共産 党 が絶 えず ﹁ベ ルト﹂ を掛 け や う と す る が、 左翼 団 体 は それ

す 、 各 場 合 を想 像 す れば 、例 へば右 翼 団 体 に於 ても 私 有 財 産 制度 を

で既 に意 識 し て共 産党 な ら共 産 党 と云 ふ 一つ の円 が或 る 一つ の別 個

居 な い、 所 謂 大 衆 に働 き掛 け ると 云 ふ 主 体 は共 産 党 そ れ自 身 にあ つ

根 本 的 に否 認 す る やう な ｢ス ローガ ン﹂ 或 は 我 が国 体 に関 し て共産

の円 を造 る の では な く し て、 共 産 党 と 云 ふ 一つの円 を 中 心 にし て、

な ら な い、 各場 合 を予 想 す れば 左 翼 団 体 ば か り で はな い、 右翼 団 体

党 の やう な ｢ス ロー ガ ン﹂ を掲 げ たと 云 ふや う な、 各 場 合 の事実 を

更 に漠然 と 円 を造 つ てか ら に、 共 産 党 の大衆 的 基 礎 を 与 へる と 云 ふ

でも 治 安 維 持法 に引 掛 かり、 中 間 団 体 でも 治安 維 持 法 に引 掛 かり ま

て も治 安 維 持 法 に引掛 か る場 合 が発 生 し て来 ると思 ふ ので あり ま す 、

引 張 つて来 れ ば、 独 り左 翼 団 体 のみ か右 翼 、 中間 、 何 れ の場 合 に於

先 に言 ひ ま し た説 明 が或 は不 完 全 で、泉 二政 府 委 員 が さ う 云 ふ やう

つ の定 義 を当 局 から取 ら なけ れば な ら ぬ と思 ふ の であ り ます 、 私 が

理由 を私 は求 む る ので あ りま す

も のであ るか、 そ れ等 の関 係 に 対し て原 則 的 な る答 弁 と 原 則 的 な る

或 は其 の両方 に適 用 さ れ な い も ので あ るか 或 は 又 一方 に適 用 さ れ る

る者 は ﹂ と 云 ふ の は其 左翼 団 体 の両 方 に適 用 さ る べき も の であ る か、

あ る、 さ う 云 ふ場 合 に此 ﹁結 社 の目 的 遂 行 の為 にす る行 為 を 為 し た

な 法律 技 術 家 とし て 一歩 も出 な い やう な答 弁 を され た こと は、 無 理

○ 泉 二政 府 委員  此 質 問 の趣 旨 が分 り まし た 、結 局 左 翼 団 体 中 の共

二 つの左 翼 団 体 が あ る、 そ れ は外 国 の社 会 運 動 の歴 史 に徴 し て明 で

も な い こと で あ りま す が、 更 に私 は も う 一度 説 明 致 し ま す か ら、 そ

産 党 な ら 共産 党 を意 識 し て、 さ う し て同 じ其 ｢ベ ルト ﹂ を掛 け て行

私 が尋 ね た の は さう 云 ふ各 場 合 の こと を言 う て居 る のでな く し て、

れ に関 す る原 則 的 の答 弁 を願 ひ た い の であ りま す 、 私 は別 に法 律 技

此場 合 左 翼 運 動 をや つて居 る者 の立 場 か ら見 れば、 矢 張 原 則 的 の 一

術 家 と し て の答 弁 を 此 際 要求 す る の でな くし て、 一個 の原 則 的 答 弁

体 は治 安維持 法 の適用 には掛 つて居 な いと、 斯 う云 ふ こと に申 上 げ

動 す る団体 は治 安 維 持法 の適 用 をも 受 け る 、 さう 云 ふ意 識 のな い団

而 し て搾 り出 さ れ た所 の窮 策 とし て十月 一日前 に期 日 を指 定 せ いと

御 相 談 為 さ れ たと 云 ふ こと は、 も う各 地 の新 聞 に明 ら か で あり ま す、

件 を陪 審 に かけ る か、 か けな いか と 云 ふ こと で、 司法 当 局 が非 常 に

云 ふ こと で陪 審 を除 外 さ れ た こと にな つた、 私 は新 聞紙 を今 日持 つ

て宜 から う と思 ふ

合 に治 安 維持 法 が陪 審 に掛 け や う と思 へば 掛 け ら れ ると 云 ふ規 定 を

点 で あり ま す が、 此 度 の日本 共 産 党 事 件 に於 き まし て、 斯 う 云 ふ 工

共産 党 事 件 を 陪 審 にか け ぬ と云 ふ こと は、 言葉 を換 へて申 し ます れ

が皆 知 つ て居 る、 現 に其 こと で ﹁改 造 ﹂ が 発売 禁 止 にな つた、 日本

問 ふ ので、 形 式的 に整 つた答 弁 は聞 き た く な い、 其 こと は天 下 の人

し た の は失 態 で はな いか 、或 は 又何 か の考 が あ つた か と 云 ふ こと を

て来 な か つた から 、 さう 云 ふ こと は言 は れ たな らば 、 さ う です かと

置 き な がら 、今 度 の日本 共産 党 事 件 に関 し ま し て は 一様 に慌 てて か

ば、 当 局 に取 つて は そ れ程 痛 い、 布 施 さ ん が ﹁ 改 造 ﹂ に 日本 共産 党

○ 水 谷 委 員  其 点 は分 り ま し た、 それ か ら 次 に陪 審法 の関 係 で あ り

ら に、 十 月 一日 以前 に期 日 の指 定 をし て から に、 故 意 に陪審 裁 判 を

を陪 審 に かけ ぬ こと に付 て書 い てそ れ が為 に発 売 禁 止 を喰 つて居 る、

ら に、 何故 初 め に さう 云 ふ こと を気 が付 かず に、 さう 云 ふ こと を 致

受 け る所 の権 利 を剥 奪 し た と 云 ふ傾 向 は、是 は当 時 の新 聞紙竝 に司

泉 二 さ ん は、 それ で さう 云 ふ やう な こと は形 式 的 の答 弁 を せら れ た

承 つて居 り ま す が、 事 実 は さ うな つ て居 る、 其 こと は私 は知 つ て か

法 当 局 の執 つた態 度 で明 か であ り ます 、 司 法省 が陪審 に掛 け やう と

が、 当時 の新 聞 を 見 れ ば能 く分 つて居 る、 其 為 に司法 省 が相 談 し た

ま す が 、是 は特 別 議 会 に於 ても 、 私 は原 司法 大 臣 に質 問 し た点 であ

思 へば掛 け ら れ る と 云 ふ こと を規 定 し て置 き な が ら、 何 等 の除 外例

と 云 ふ こと も分 つて居 る、其 点 を は つき り伺 ひた い

りま す 、 又 此本 会 議 に於 き まし ても 、 民 政党 の武 富氏 が質 問 さ れ た

てか ら に、 故 意 に陪 審 の権利 を 除 外 し た、 此 関 係 を は つきり 御 伺 ひ

○ 泉 二 政府 委 員  新 聞 の記 事 で其 こと を仰 し や る のな らば 、 新 聞 の

を認 めず 、 今 度 の日本 共 産 党事 件 に於 て十 月 一日前 に期 日を指 摘 し

致 し ます

こと は吾 々 の知 る所 でな い、 裁 判 長 が其 職権 を以 て期 日 を指 定 し た

は参 り ま せ ぬ、 私 と し て御 答 弁申 上 げ る こと は、 新 聞 に書 い てあ る

も の であ る と斯 う 申 上 げ る よ り外 はな い ので あ りま す

記 事 を信用 な さ るな ら ば 、信 用 な さる のは御 随 意 で之 を 止 め る訳 に

な い ので あ りま す 、 裁判 所 で決 め てや つた こと は職権 上為 し得 る こ

○泉 二政 府 委 員  裁 判所 が公 判 期 日 を指 定す る こと は、 裁 判 長 の職

と を し た の であ り ま す か ら、 之 に付 て彼 此 れ 申 す 理由 はな いだ ら う

は 日本 共 産 党 の実 際 とし て感 じ た こと であ り ま す が、 非 常 に今 度 の

○ 水 谷 委 員  成 べ く簡 単 に やり ま す る が、 そ れ か ら其 次 に、 私 は是

権 で定 む る こと であ りま し て、 司法 省 か ら之 を 干 渉す べ きも の では

と思 ふ のであ り ま す

事 件 も 、所 謂 ｢スパ イ﹂ の為 に発 覚 し た 事件 にな つて居 る の であ り

○ 水 谷委 員  成 程 其 御答 弁 は形 式 的 には整 つて居 り ま す が、 実 質 的 には整 つて居 ら な い、当 時 の新 聞 紙 を御 覧 にな れ ば、 日本 共 産 党 事

或 は社会 運動 、 水 平 運 動 等 に入 れ て居 り ま し て色 々探 つて居 る ので

警 視 庁 辺 り が大 き な 機密 費 を使 つてか ら に ﹁スパイ ﹂ を 労働 運 動 、

ま す が、 社 会 運 動 と ﹁スパ イ﹂ と 云 ふも のは殆 ど附 き も のにな つて、

ひま す、 又関 係 を 致 し ま した 総 て の者 が同 一の原 因 に依 て関 係 し た

○ 山崎 政 府 委 員  原 因 は必 し も 簡 単 に片 付 け る訳 に は行 くま いと思

動 に従事 す る原 因 が 何処 に あ ると 御考 で あり ま す か

○ 水 谷 委 員  学 生 の多 く が、 少 く も頭 の良 い所 の多 く の学 生 が、 運

事 であ る と思 ひま す

こと は な い と思 ひま す、 色 々の事情 が其 処 に伏 在 し て居 ると 去 ふこ

あ りま す、 さう 云 ふや う な こと は非 常 に事 件 を ば悪 化 さし、 事 件 を

と を考 へて居 り ま す が、 今 回 あ の不祥 な る事件 に関 係 を致 し ま し た

ば 大 き く さ す こと にな る、是 は も う事 件 の上 か ら申 し ま し ても、 社

ま す、 治 安 維持 法 に於 ても 、 矢張 自 首 云 々と 云 ふ言 葉 を以 て ｢スパ

会 思 想 の上 か ら申 し ま し ても 、非 常 に考 へな く てはな ら ぬ の であ り

も 、 最 も多 く の数 を 占 め て居 り ま す、 此 帝 国 大 学 に於 て果 し て如 何

者 の中 で、 多 く は東 京帝 国 大 学 及 京都 帝 国 大 学 が 数 か ら言 ひま し て

な る現象 を呈 し ま し た か は、 水 谷 君 な ぞ も多 少其 間 の事 情 は 御承 知

イ﹂ 制 度 を 奨励 し て居 る やう な文 字 が あ る の であ り ます が 、 此 点 に

の事 であ ら うと 思 ひます が、 従 来 文部 省 と 致 し ま し て は、 学 問 の研

関 し まし て泉 二 氏 の御 説 明 を願 ひた い と思 ふ の であ り ます ○ 泉 二政 府 委員  今 度 の事 件 が ﹁スパ イ﹂ か ら 発覚 し たと 云 ふ やう

究 と 云 ふ こと に は相 当尊 重 を致 し て参 つて居 つた ので あ りま す、 是

は 学 問 の発 達 と 云 ふ こと を冀 ふ上 か ら言 へば 当 然 の事 で あり ま す、

のを減 刑 又 は免 除 す る と 云 ふ こと も、 矢 張 り 既 定 の法 律 に依 て出 来 て居 る の で あり ま し て、 少 し も 此 点 に変 改 を加 へて な い の であ り ま

し ま し て、 終 には 国 法 に触 れ るが 如 き者 を生出 す と 云 ふ こと に相 成

併 な が ら其 結 果 が 学 校 に於 け る学 問 の自 由 と 云 ふ範 囲 を稍 超 越 を致

な こと は私 は存 じ な い の であ り ま す、 そ れ から 此法 律 に自 首 し た も

す か ら、 既 定 の法 律 の精 神 に基 いた趣 旨 を御 諒 解下 さ る やう希 望 致

つた か、 或 は大 学 を最 近 に出 た 者 が ど れ だけ あ つた か知 れま せ ぬ が、

し ては 三十 名 厳 密 に言 へば 二十 八 名 か知 れま せ ぬ が中 途 退 学 者 が あ

○ 水 谷委 員  も う 少 し言 葉 を 足 し ま す、 日本 共 産党 事 件 に在 学 生 と

事 件 が起 つたも のと は考 へませ ぬが、 是 は各 人 に依 て も事 情 、環 境

云 ふ こと に相 成 つた ので あ りま す 、併 し是 の み に依 て あ ゝ云 ふ不祥

事 件 以後 大 学 の教 授 等 に対 しま し ても、 若 干 は辞 職 の結 果 を見 る と

へて居 り ま す態 度 と は少 し態 度 を 変 へまし て、御 承知 の通り にあ の

し ては深 く之 を遺 憾 と考 へて居 る の であ りま す 、 そ れ が為 に従来 考

つた ので あ りま す 、其 関 係 は誠 に微妙 な も のが あ り ま す が、 当 局 と

します

い て居 る ので あり ま す が 、 さう 云 ふ学生 群 の中 から、 多 く の日 本 共

る であ ら う と思 ひま す、 要 す る にさ う 云 ふ やう な風 に当 局 と し ては

或 は外部 と の接 触 連 絡 と 云 ふ こと の為 に引 込 ま れ た者 も少 からず あ

少 く も指 導 的 の地 位、 数 か ら言 つても或 は労 働 者 よ り多 いと 私 は聴

ふ こと に関 し て、 責任 あ る文 部 当 局 の御 意嚮 はど う であ りま す か

考 へて居 る のであ り ま す

産 党 事件 の被 告 を出 し、 其 学 生 が多 く は 日本共 産 党 運動 を や ると 云

○山崎 ︹ 達之輔)政府委員 ︹ 文 部 政 務 次官 ︺ 是 は誠 に痛 歎 す べ き

○ 山崎 政 府委 員  大 抵 水 谷君 も御 承 知 だ ら う と思 ひま す が、 京 都 大

すか

に 承 り まし た が 、 それ 以 外 に 何 か手 段 方 法 を講 ぜら れ た の であり ま

のみ で は救済 が出 来 な いけ れ ど も、 若 干 の教 授 を馘 つた と 云 ふ こと

産 党事 件 の多 く の者 を学 生群 か ら出 し た、 そ れ の応 急 策 と し て それ

○ 水 谷委 員  さうし ま す と唯 今 承 つた所 の御答 弁 に依 れ ば 、 日本 共

うし て今 の世 の中 は結 構 なも のだ、 結 構 な も のだ と 云 つ て、 反 動 教

先 づ大 学 で教 へな け れば な ら ぬ 、然 る に左 傾 教 授 だけ を馘 つて、 さ

やう な 場 合 に は、 何 故 斯 う 云 ふ やう な 事 情 であ る かと 云 ふ こと を、

ると 云 ふ や う な時 代 と 違 つて、 直 ぐ 生 活 難 が襲 つて来 る、 斯 う 云 ふ

に帝 大 さ へ出 れば もう 就 職 口は 心配 はな い、 或 は立 派 な結 婚 も出 来

もな ら な い、大 学 を卒 業 し て直 ぐ 羽 が生 え て飛 ん で行 く、 昔 の やう

学 者 が あ つ ても宜 い、 或 は其 他反 動 的 の学 者 が あ つても宜 い、 そ れ

於 き まし て、 私 等 は寧 ろ 大学 に於 て は ﹁マルク ス﹂ 主 義 を信 奉 す る

と 云 ふ も のを除 外 し て今 日 の経 済 学 は成 立 た な い、 斯 う 云 ふ場 合 に

悪 い か、 さう 云 ふ こと は 別問 題 と致 し まし ても、 ﹁マル ク ス﹂ 主 義

寧 ろ斯 う 云 ふ現象 を除 く に宜 いと思 ふ が、 之 に関 し て山崎 さ ん の御

宜 い、 反 動 教 授 も 宜 か ら う、 さう 云 ふ者 にど ん〓

る かと 云 ふ こと を研 究 さ れ る為 には、 左 傾 教 授 も宜 い、右 傾 教 授 も

会 状 態 に於 ては 、 能 く其 事 情 に応 じ色 々研 究 し 、其 原 因 が奈 辺 に あ

置 か れ て居 り 、 大 学卒 業 生 の特権 が殆 ど剥 奪 され た やう な 現在 の社

思 ふ、 随 て吾 々の考 か ら言 へば 、少 くと も 現在 のやう な社 会 状 態 に

教 へるな ら

等 を全 部 大 学 に集 め て、 さ う し て自 由 に学 生 に講 義 せし め 学 生 をし

説 明を 願 ひた い

授 だけ が 現 在 の世 の中 を 謳 歌 し た所 の経 済 学 を どし〓

て自 由 に選 択 せ し め る方 が寧 ろ学 生 を し てか ら に正 し き道 を歩 ます

○ 山 崎 政 府 委 員  水 谷 君 の御 意 見 は、 水 谷君 の御 意 見 であ り ます が、

ば 、 今 の世 の中 が結 構 で ある か らと 云 つて、 大 学 を出 れば 失 職 す る、

所 以 であら う と思 ひま す 、今 日学 生 と申 し ま し て も、 大 学 校 を出 て

此 点 に付 ては露 骨 に申 上 げ れば 貴 方 の御 考 と私 共 の考 と の間 には 、

も のに対 し ては解 散 を命 じ た ので あ りま す

昔 のやう に学 士 にな れ ば 、直 ぐ 金 が 入 つて来 ると 云 ふ時 代 でな くし

相 当 の距 離 が あ る の であ り ま す、 遺 憾 な が ら距 離 があ る ので あり ま

学 で申 し ま す れば 、 社 会 科学 研 究 会 、 東 京 大学 では新 人会 、 斯 様 な

て、今 日大学 を終 へて学 士 に 一番 打 付 か る のは生 活 難 であ つて、 自

○ 水 谷 委 員  私 の考 に依 り ま す れば 、 少 く も大 学 では色 々な学 問 が

分 が親 から貰 つて居 る学 資 さ へも 、 会 社 や役 所 に勤 め なけ れば 貰 へ

す 、 随 て貴 方 に御 満 足 の行 く や うな 御 答 は出 来 ま せぬ と思 ひま す 、

つて来 ると 云 ふ こと は、 常 識 か ら考 へても 可 な り あ るべ き こと だと

な いと 云 ふ現 状 に置 か れ て あ る、 さう 云 ふ やう な社 会 状 態 、 学 生 と

貴 方 は さう 云 ふ風 に御 考 にな つて居 るか 知 れま せ ぬが 、私 等 当 局 側

却 て それ では今 の是等 の大 学 生 が パ ンを求 め て斯 う 云 ふ運 動 に這 入

云 つても 社会 か ら懸 離 れ て居 る者 でな く し て、 矢 張 社 会 の 一員 と し

から 考 へま す る と苟 も 前 途 あ る学 生 を過 ら し め、 法 に触 れ しめ 或 は

教 へら れ る、例 へば 今 日 の経 済 学 の分 野 に於 ても、 そ れ が 正し い か

て、 社 会 の環 境 の中 に 学 校生 活 を続 け て居 る、 而 も さ う 云 ふ社 会 状

社 会 の秩序 を破 壊 し、 進 ん では国 体 関 係 に関 聯 し た る問 題 ま でも 惹

や らせ る のが、

態 に置 かれ て居 る場合 に於 て、 縦 令 左 傾 教授 を馘 にな さ つて も何 に

こと が、 矢 張 社 会 の事 情 を見 或 は社会 運動 を 能 く 眺 め る と 云 ふ位 に

を や る、 所 が社 会 科 学 に於 て は、 自分 の説 が正 し いか ど う か と云 ふ

れ て振 つて見 る、 或 は ﹁ア ル コー ル ラ ンプ﹂ の上 に掛 け て色 々の事

し いか と 云 ふ こと を 証明 す る に顕 微鏡 も あり ﹁フラ ス コ﹂ に水 を 入

と 思 ふ、 大 学 に於 て の学問 の自 由 、 学 問 の独 立 と か、 学 者 の研究 の

問 はず 、之 を取 除 く と 云 ふ こと に努 力 を 致 す こと は当 然 の事 であ る

し て所 謂 ｢マル キ シズ ム﹂ の言 葉 で云 へば 、 理 論 と実 際 と の弁 証 法

科 学 と は本 質 を異 にし て居 つて、例 へば 自 然 科 学 は自 分 の学 問 が正

自由 には、 私 は何 も 異論 は な い、 併 な が ら 既往 の例 に徴 し ま す る と、

的 の統 一と 云 ふ過 程 に於 て、社 会 科 学 は為 され ると 思 ひます 、 随 て

起 す と 云 ふ が如 き 、 不幸 な る結 果 に導 く と 云 ふ こと は 、 出来 得 る限

真 の学問 の研 究 、 或 は神 聖 な る学 問 の研 究 と 云 ふ範 囲 を超 越 し た が

り 私 共 は矯 正し な け れ ば な ら ぬ、 其 原 因 あ り と認 む れば 事 の如 何 を

るも ので あ る、 故 に危険 のあ る も のは 之 を抑 制 す る こと は 已 む を得

ぬ と思 ひま す 、 然 る に当 局 は動 々も す ると 、 さ う 云 ふ範 囲 を出 でな

普 通 の自 然 科 学 と 社 会科 学 と は、其 処 に大 き な隔 り が な け れば な ら

へば、 直 ぐ 実 際 行動 に這 入 つて行 つて、 之 を弾 圧 す る か ら、 寧 ろ そ

い社会 科 学 を 研究 し て居 る者 が多 少 さ う 云ふ 実際 運動 を し やう と思

て、 御承 知 の通 り の処置 を執 つた 訳 であ り まし て、 決 し て学 生 を徒 に圧 迫す る と か、 学 生 を唯 縛 付 け ると 云 ふ意 味 で は あ りま せ ぬ 、学

な い、其 意 味 に於 て当 局 と致 し ま し ては、 共 産 党 事 件 勃 発 以後 に於

生 を し て過 らし めざ るが 為 に最 善 の手 段 を執 る の であ りま す 、 社会

会 の事 情 を知 ると 云 ふ こと は、 私 共 異 存 は な い、 唯 誤 りた る方 に向

の展 開 を図 ると 云 ふ 気分 が起 ら な け れば なら ぬ、 そ れ であ る か ら社

力 に依 て、 自 分 の奮 闘 に依 て、 自 分 の生活 を維 持 し て、自 分 の運 命

位 を 得 る やう な 昔 の夢 は、 之 を変 へな け れば な ら ぬ、 矢 張自 分 の努

会 と 云 ふ、 色 々 の名 義 に依 て、而 も表 面 は社会 科 学 の研 究 を 目的 と

科 学 研 究 会 であ る と か、 或 は自然 科 学 研 究 会 で あ ると か、或 は読 書

異 存 を持 つて居 る訳 で はな い の であ りま す 、唯 従 来 あ りま し た 社会

あ り ます が、 左様 な ことを 大 学 の教 授 が研 究 す る と 云 ふ こと は何 も

其 辺 は私 学 者 であ り ま せ ぬ から 、御 議 論 は御遠 慮 申 上 げ て置 く ので

○ 山 崎 政 府 委 員  社 会 科 学 と 云 ふ学問 が学 問 と し て成 立 つ て居 る か、

れ か ら社 会 科 学 其 も の ゝ存 在 を 否 定 す ると 云 ふ態 度 に出 る、 さう 云

つ て走 る と 云 ふ こと に依 て、 危 険 を起 す と 云 ふ こと に 付 て は、 改 善

状態 を知 ら しめ ると 云 ふ こと は、 何 等 差 支 あ り ま せ ぬ、 社 会 の状 態

の方法 を講 じ て之 を抑 制 す ると 云 ふ こと は、 政 府 の当 然 の事 で あら

し て居 る看 板 の下 に団 結 し て居 る団 体 の行 動 が、 単 な る学問 の研 究 ︹ママ︺ と 云 ふ範 囲 に止 ま つて居 な い の であ りま す 、大 正十 三 年 の所 謂 京 都

に付 きま し ても う 一度 答 弁 を願 ひま す

う と思 ひ ま す、 此 問 題 に付 ては 、 或 は貴 方 の御 考 と 私 の考 に於 て、

に於 け る学 生 事件 の起 りま し た 以後 に於 て、其 当 時 は御 承 知 の通り

ふ者 が反 動 的 に、却 て斯 う 云 ふ結 果 を起 す も のだ と私 は思 ふ、其 点

根 本 に距 離 があ るか も知 れ ま せ ぬ が、是 は致 し方 があ り ま せ ぬ

文 部 省 と し ては、 私 共 は在 野 党 であり ま し た が、 大 学 だ け に は 此社

に付 て理解 を持 つと 云 ふ ことも 必 要 であ りま せう し、 或 は 又学 生時

○水 谷委 員  成 程 只 今山 崎 氏 の御 答弁 は御 尤 で あり ま す が、 唯 吾 々

代 の考 が、 唯 学 校 を 出 れ ば当 然 の特 権 と し て、 優 越 な る社 会 上 の地

と し て此 際 考 へな け れば な ら ぬ のは、 同 じ 学問 でも自 然 科 学 と 社 会

こと に相 成 つた やう な訳 で あ りま し て、是 は啻 に抽 象 的 議論 では行

団 体 が存 在 し て居 ると 云 ふ こと は、 寧 ろ 学 生 を誤 る結 果 にな る ので

早 其 事 た る や、 学 問 の研 究 た る範 囲 を 立 派 に超 越 し て居 る、 左 様 な

多 い、 多 い のみな らず 、 現実 に転 化 し て居 つた ので、 し て見 れば 最

あ らず し て 一種 の穏 かな ら ざ る運 動 に之 が転 化 す る の危 険 が非 常 に

た が るも の であ り、 又現 に超 越 致 し て居 る、即 ち真 面 目 な る研 究 に

来 、 能 く 調 査致 し ま す る と、 是 は学 問 の研究 と 云 ふ範 囲 を超 越 致 し

科 学 研 究 を 存 置 し てあ つた ので あ りま す 、所 が最 近彼 の事 件 勃 発 以

学 生 は学 問 的 研究 をす る こと は差 支 あ るま い、 斯 う 云 ふ意 味 で社 会

あ つた の であ り ます 、 そ れ は丁 度 水 谷 君 の御考 の やう な考 か ら、 大

会 科 学 研 究会 の存在 を認 め て置 いた、 但 し高 等 学 校 は之 を禁 止 し て

に御 願 ひし た いと思 ひ ます

は毛 頭 持 ち ま せ ぬ のであ り ま す か ら、其 処 は ど う ぞ誤 解 のな い やう

暴 狼藉 を や つ ても之 を看 過 す る と か、 或 は之 を奨 励 す る、 左様 な 考

於 て厳 重 に取締 る べ きも の であ り まし て、 思想 が右 な る が故 に、 乱

暴 をす ると 云 ふや う な者 が若 し あ りと す れ ば、 そ れは 、 学 校当 局 に

す が、 左 様 な こと は あ りま せ ぬ 、貴 方 の御宅 に学 生 が 暴 れ 込 ん で乱

も之 を奨 励 す ると 云 ふ やう な 風 に御 取 り にな つて居 るや う であ りま

る節 が あ る、 文部 省 は右 傾 でさ へあ れば 、 社会 の秩 序 を 害 す る者 で

し にな つて居 り ま す か、 之 を 審 に致 しま せ ぬ か ら御 答 に困難 を感 ず

○山 崎 政 府 委 員  貴 方 の御 指 し に な る事 実 が、 どう 云 ふ こと を御 指

現状 に対 し て、 文部 当局 は眼 を閉 つて居 ら れ る のであ り ま す か

込む と 云 ふ こと を や つて、 実際 運 動 を可 な り や つて居 る、 さ う 云 ふ

人 が 相 当 あ ると 思 ふ、 同 じ私 有 財 産 制 度 を否 認 す る にし ても、 共 産

第 四条第 四号 ヲ第 五号 トシ第三号 ヲ第四号ト シ同条第二号ノ次 ニ左

陪審法中左 ノ通改 正 ス

陪審法中改 正法律案

昭和四年 三月 二日開議

陪審法中改正法律案 (政府提出)第 一読会

第 一読会

第五十六回 衆議院議事速記録 陪審法中改正法律案 ( 政府提出) 帝 国 議 会 

あり ま す か ら、 先 般 大学 当 局 に於 て之 に解 散 を命 じた と 、斯 う 云 ふ

き ま せぬ 、実 際 に何所 の大 学 の何 々会 はど う し て居 つた か、 其 行 動 がど う であ つたか と 云 ふ、 具 体 的 の事 実 に依 て御 判 断 を願 ふ よ り外 な から う と思 ふ のであ り ま す

にも 少 し尋 ね た の であ りま す が、 大 学 の教 授 の中 には、 共産 主 義 以

○ 水 谷 委 員  それ か ら も う 一点 御 尋 し た い ので あり ま す が、 午 前 中

外 に ﹁フ アツ シズ ム﹂と 申 しま す か、 一種 の反 動 思 想 が あ つて、 其

主義 者 な らば いか ぬ が ﹁フア シ スト﹂ な ら ば宜 いと 云 ふや う な現 状

説 く 所 は、 私 有 財 産制 度 を否 認 す ると 云 ふや う な学 説 を 説 いて居 る

に置 か れ て居 る、 寧 ろ 暗 黙 にそ れ等 の反 動 教 授 を 奨励 し て居 る、 学

附

則

三 治安維持法 ノ罪

ノ 一号 ヲ加 フ

生 も さ う 云ふ やう な 教 授 に操 ら れ て所 謂 一種 の団 体 を 作 り、 ﹁カ フ エー﹂ へ行 つ て酒 を飲 ん で来 る、 さ うし て時 に は僕 等 の家 へも暴 れ

本 法 ハ本法 施 行 前 ニ生 ジ タ ル事 件 ニ付亦 之 ヲ適 用 ス

本 法 ハ公 布 ノ 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

陪 審 制 度 よ り除 外 す べ き所 のも の であ る が、 治 安維 持 法 違 反 の罪 は

英吉 利 或 は 仏 蘭西墺 太利 の陪 審 制 度 の例 を引 かれ ま し て、 内 乱 罪 は

あ ると 云 ふ立 場 か ら見 ま す れば 、 可 な り 重要 な る案 であ ら う と思 ふ

判 の本旨 で あ る所 の国 民 は、 其 同 等 者 の裁判 を受 け ると 云 ふ権 利 が

を 請 求 す る の権 を奪 は ん と す る所 の案 であ り ます る が故 に、 陪 審 裁

や と 云 ふ点 を 、 先 づ法 相 か ら御 答 弁 を煩 した いと 思 ふ のであ り ます 、

す る所 の犯 罪 をば 、 陪 審 制 度 より 除外 さ れ る所 の理由 が何 れ に在 り

問 題 に関 し ま し て、突 如 と し て本案 を改 正し、 治安 維 持 法 違 反 に関

於 き まし て、 既 に第 五十 議 会 に於 て予 見 し、 又 論 議 さ れ て居 る所 の

の政府 委 員 は言 明 され て居 る のであ り ま す、 然 るに第 五十 六議 会 に

陪 審 法 より 除 外 す べ き所 の何 等 の理由 がな いと 云 ふ こと を、其 当 時

が 故 に、 次 に述 ぶ る であ ら う所 の数 点 に付 て、 司 法 大 臣 の御 答 弁 を

ら除 外 さ れ る の は、 主 とし て大審 院 の特 別 権限 にな つて居 る 理由 か

第 二 に是 は さ う大 し た問 題 で はあ り ま せ ぬが、 内 乱 罪 が陪審 制 度 か

○ 水 谷長 三郎 君  本 案 は治 安 維 持 法 違 反 の被 告 人 をし て、陪 審 裁 判

煩 し た いと思 ふ の であ り ま す、 治 安維 持 法 違 反 事 件 と 陪審 法 と の関

ら、 陪 審 裁 判 か ら除 外 さ れ て居 る ので あ る、然 る に治 安 維持 法 は さ

係 は 、第 五十 六 議 会 に於 て、 初 め て問 題 にな つた所 のも の では なく し て、治 安 維 持 法 が制定 さ れ んと し た所 の第 五十 議 会 に於 て も、 既

所 の理由 が、 何 れ に在 り や と 云 ふ のが是 れ 第 二点 であ り ま す、 更 に

云 ふも のをば 内 乱 罪 に準 じ て、今 更 事 新 し く陪 審 制 度 から 除外 す る

第 三 点 に於 きま し て は、 此 改 正法 案 と 、 此度 我国 に勃 発 し た所 の日

う 云 ふ大審 院 の特 別 管 轄 に属 し て居 ら な い所 の犯 罪 であ るが、 さう

れ て居 る に拘 らず 、 治 安 維 持法 違 反事 件 が、 何 故 に陪 審 裁 判 を求 む

本 共産 党 事 件 と の関 係 であ り ます 、 日本 共産 党 に関 す る被 告 事 件 は、

に問 題 に な つて居 つた の であり ま す、 此時 に問 題 と な つた所 の最 も

る の権 あ り や否 やと 云 ふ点 が問 題 にな つて居 つた の であ りま す 、 本

東 京 の事 件 を除 い て は、各 地 に於 て既 に予審 も終 結 し 、或 は 一審 、

大 き な点 は何 であ る か と言 へば 、内 乱 罪 が既 に陪 審裁 判 か ら除 外 さ

案 の提 出 理 由 を 考 へます ると、 治 安 維 持 法 の罪 は 、其 性 質 上 陪 審 手

の各 地 の裁 判 所 を見 ま す ると、 公 判 を 十 一月 一日以 前 に開 く所 の準

又 時 には 二審 の判 決 が終 つた所 が あ る の であ りま す、 処 が東 京 以 外

備 も何 等 な い に拘 らず 、 各 地 の裁 判 所 は 一様 に十 月 一日前 に公 判 の

は是 は内 乱 罪 、 其 他 そ れ と同様 の罪 に関 聯 し て の制 定 理由 であ ら う と思 ふ の で あり ま す、 処 が第 五 十議 会 に於 き ま し て、 貴 族 院 の治安

指 定 を し て、 折角 陪 審 裁 判 を請 求 し得 る の権 利 を ば 、 日本 共 産 党 事

続 に依 る こと を 不適 当 と す る云 々と 云 ふ意 味 であ り ま せ う、 恐 ら く

維 持 法 委 員 会 に於 き ま し て、渡 辺 暢な る人 が、 内 乱 罪 が陪 審 から除

件 の被 告 か ら剥 奪 し た事 実 を、 吾 々は は つきり 見 せ 付 け ら れ て居 る

へも、 此 法 を 改 正 せず に、 治 安 維 持 法被 告 事 件 を ば、 陪 審 裁 判 から

の であ る。 然 ら ば 吾 々 の尋 ね ん とす る点 は、 現 行 法 に於 きま し てさ

の権 あ り や否 や と 云 ふ問 に対 し て、 其 当 時 の政府 委 員 は、 治安 維 持 法 違 反 の罪 と 、内 乱 罪 と は其罪 跡 上本 質 的 に異 つて居 り 又其 公 益関

外 さ れ て居 る に拘 らず 、 何 故 治安 維 持 法 の みが 、陪 審 裁 判 を 求 む る

係 に於 て、 根 本的 に異 つて居 る と 云 ふ理 由 を御 述 べ にな り ま し て、

が 一様 に言 つて居 る の は、 吾 々は決 し て自 分 の利 益 の為 に働 いた の

て居 る か、 中 つて居 な いか は各 人 の見 る所 に委 せ ます が、彼 等 被告

件 の被 告 が、 各 地 の裁 判 所 で 一様 に言 つて居 る点 は、 其 理由 の中 つ

果 し て何 処 に在 る か、 更 に最後 に御 尋 致 し た い のは、 日本 共産 党事

根 本的 に治 安 維持 法 被 告 事 件 を陪 審 制 度 から 除 外 す る所 の理由 が、

除 外 さ れ て居 る に拘 らず 、 何故 又 更 に此 法 案 を 改 め て、 は つき り と

であ り ます が、 治 安維 持 法 制 定 当 時 には、 ま だ此 犯 罪 が 如何 な る状

維持 法 の罪 は陪審 法 よ り除 外す べ きも の でな い と言 つた と 云 ふ こと

○国 務 大 臣 (原 嘉 道 君) 治 安 維 持 法 制 定当 時 の政 府 委 員 が、 治 安

司法 大 臣 の御 答 弁 を 煩 し た いと 思 ふ の であ りま す

果 し て是 認 す る こと が出 来 る かど う か、 さう 云 ふ点 に付 き まし て原

進 行 中 に奪 ふと 云 ふ やう な こと は 、道 理 の上 から 政 治道 徳 の上 から

て さう 云 ふ事 が出 来 る か どう か、折 角獲 得 し た権 利 を ば 、其 事 件 の

ま せ ぬ け れど も 、 政 治道 徳 の上 か ら、或 は道 理 の上 から 見 て、 果 し

態 に行 は れ る かと 云 ふ こと は、 余 り知 ら れ て居 らな か つた ので あり

では な く、 吾 々は無 産 大 衆 の為 に働 い た の であ る、或 は無 産 大 衆 の

ま す、 然 る に御 承 知 の通 り の日本 共 産 党 事件 な る も のが 発覚 し て以

為 に身命 を賭 し て働 い た のであ る、随 て吾 々 が や つた所 の行 為 が正 し い か、 或 は間違 つて居 る かと 云 ふ こと の唯 一の裁判 官 は、 我 国 の

来 、 此 治安 維 持 法 に規 定 し てあ る 犯罪 が 如 何 な る状 態 に行 は れ る か

と 云 ふ こと が明 確 にな つ て参 つた の であ り ます か ら、 現 行陪 審 法 の

で、 又飽 迄 も陪 審制 度 の下 に裁 か れ な け れば な ら ぬ と 云 ふ こと は、

第 四 条 が除 外 し て居 る犯 罪 と、 其 性 質 相 類 似 す る も のと 見 て、 之 を

無 産 大衆 でな く ては な らな い、随 て吾 々の裁 判 は飽 迄 も 公開 の席 上

であ る、 所 が此 度 の改 正 は、 斯 う 云 ふ 民衆 に関 係 のあ る所 の犯罪 が、

日 本共 産 党 事 件 に関 係 の人 々 が皆 一様 に法 廷 に於 て絶 叫 し た所 の点

除 外 例 中 に加 へる の は当 然 の こと ゝ考 へま す、 第 二 に、 大審 院 の特

ふ御 話 であ り ま し たと 考 へま す が、 御 承 知 の通 り陪 審 法 から除 外 さ

別 権 限 に属 し て居 る内 乱 罪 と同 じ に見 る のは不 都 合 で あ る云 々と 云

れ て居 る のに、 単 り内 乱 罪 のみ ではな い の であ り ます 、 況 や 治安 維

の下 に裁 か れな け れ ばな ら ぬと 叫 ん で居 る所 の被 告 に対 し て、 陪 審 制 度 を求 む る の権 を剥 奪 し、 民 衆 の目 か ら、 民 衆 の耳 から、 是 等 の

持 法 に依 る国 体 変 革 を目 的 と す る 犯罪 は、 既 に屡 々当 議 場 でも説 明

彼 等 被告 の言 葉 を借 り て言 へば 、 裁 判官 は、 公 開 の席 上 で陪 審 制 度

が果 し て何 処 にあ ら う か、 更 に吾 々は形 式 上 の点 か ら尋 ね る ので は

事 件 を蔽 う て、 暗 黒 裁判 の下 に移 し て裁 かな け れば な ら ぬ所 の理由

に、 東 京 地 方裁 判 所 以外 の各 裁 判 所 に於 きま し て、 日本 共 産 党事 件

致 し ま し た 通 り 一種 の内 乱 罪 と 見 て も宜 い性 質 のも ので あり ま す か

の公 判 期 日 を 十月 一日以 前 に於 て既 に指 定 し た と 云 ふ こと は 、是 は

ら 、 之 を陪 審 法 か ら除 外 す る のは是 亦 当 然 であ る と考 へま す 、 第 三

る所 の権 利 を持 つて居 る、 所 が さう 云 ふ事 件 の進 行 中 に、 此法 案 を

各 事 件 に於 け る裁 判 長 の職 権 であ り まし て、之 に対 し て は何 人 も異

の 日本 共産 党 事 件 の被 告 は、 既 に 一応は陪 審 制 度 の下 に審判 を受 け

改 正 し て、 偶 々彼等 が獲 得 し て居 る所 の権 利 をば 剥 奪 し 、而 し て彼

議 を言 ふ べき性 質 のも の で はな い ので あ りま す 、随 て他 の裁 判 所 に

な いが、 政 治 道 徳 或 は道 理 の点 から尋 ね な く て はな ら ぬ点 は、 此 度

は其 他 の形 式 の上 か ら申 し ます れ ば、 是 認 す べき 点 であ る か も知 れ

等 を し て暗 黒 裁 判 の下 に審 理 せし む る と 云 ふ こと は 、刑 事 訴 訟 法 或

御 説 明申 上 げ ま す 、 本 案 は 本会 議 に於 き ま し て司 法 大 臣 よ り大 体 の

○浜田 ︹ 国 松 ︺ 政府 委 員 ︹司法 政 務 次 官 ︺ 一応 本 案 提 出 の理 由 を

記 し あ りま す る各種 犯 罪 の中 、 内 乱 罪 外患 罪 及 び騒 擾罪 な どと等 し

於 け る被 告 人等 が陪 審 裁 判 に附 せ ら れな か つた と 云 ふ理由 に依 て、

く 、其 性 質 が大 体 に於 て陪 審 手 続 に依 て審 理す る こと が不 適 当 な り

説 明 を致 しま し た る が 如 く に、 治 安 維 持法 の罪 は陪 審法 第 四条 に列

を 求 め た と 云 ふ やう に言 は れ ます が、 或 る被 告 人 は求 め た のも あ り

ま で開 け た各 裁 判 所 に於 て、 日本 共 産 党 の被 告 人 等 が悉 く陪 審 裁 判

ま す が、 或 る被 告 は 求 め て居 ら ぬ の であ り ま し て、 総 て の被 告 人 が

の如 く に、 絶 対 的 に公 平 な る判 断 を基 調 と致 す の必要 が あ る の であ

と 信ず る者 であ り ま す 、其 理由 の大要 は、 陪 審 の票決 は各 自 御承 知

陪審 法 を 改 正 す る理 由 が な い と は言 へな い ので あ りま す 、次 に は是

の性 質

陪 審裁 判 を請 求 した と 云 ふ こと は誤 り であ り ます 、 のみ な らず 陪 審 法 と 云 ふ も の が既 に制 定 さ れ て、 現 行法 の陪 審 法 で是 れ〓

一般 的 の事 情 が あ り ま す る事 件 は、 之 を陪 審 の手 続 よ り除 外 す る こ

と が適 当 であ ら うと 信 ず る の であ り ます 、陪 審法 第 四条 は 刑法 第 二

り ま す、 随 て苟 も此 判 断 に付 き ま し て、 世 上 の疑 惑 を惹 起 す が如 き

編 第 一章 乃 至第 四章 の罪 、 即 ち 皇室 に対 す る罪、 内 乱 罪 、 外患 罪 及

の事件 は陪 審 に附 せ ざ る も のと定 め てあ り ま す る以 上 は、 被 告 人 等

陪 審法 か ら除 外 す る と 云 ふ こと は 、当 然 立 法 上 為 す べき事 柄 で あ る

国 交 に関 す る罪 、 竝 に法 令 に依 り行 ふ公 選 に関 し 犯 し た る罪 を、 陪

が如 何 に希 望 し た か ら と 云 つて、 法律 の精 神 通 り 或 種 の犯罪 事 程 を

と存 ず る の であ り ま す、 第 五 に、 現 に被 告 人 と な つ て居 る共 産 党 の

に対 す る罪 、 内 乱 罪 、 外 患 罪 は罪 質 の重 大 な る こと は 申す 迄 もな い

人 々が陪 審 裁 判 を受 く る こと を 期待 し て居 つた のは 、之 を禁 止 す る

こと で あ りま し て、 国民 の精 神 に異 常 な る衝 動 を 惹起 す性 質 のも の

た る理由 は、 前 段 申 述 べた 趣意 に存 す る の であ りま す 、思 ふ に皇 室

ま し ても 、 必要 上手 続 を変更 す る と云 ふ こと は常 に あ る こと であ り

であ り ま す、 国 交 に関 す る罪 は、 対 外 的関 係 上 国 民 の敵愾 心 を刺 戟

審 の票 決 に付 せず と 規 定 し てあ る の で あり ま し て、 其 除 外致 しま し

ま し て、 是 が為 に政 治 道 徳 上 如 何 と 云 ふ やう な問 題 を生 ず る 余 地 は

す る こと の大 な る性 質 のも のであ り ま す る が故 に、 陪 審 員 を し て公

力 を作 る のは 、 政 治道 徳 上如 何 であ るか と 云 ふ御 問 であ り ます が 、

な い の であ り ま す、 国 家 の必要 上、 斯 う 云 ふ手 続 が相 当 であ る と考

平 な る判 断 を 失 は し む る危 険 が存 す る ので あり ま す、 治 安 維 持法 の

実 体 法 でな き 手続 法 に於 き ま し て は、 既 に起 つて居 つた 事 件 に 付 き

へま す れ ば、 之 を制 定 す る に何 等 道 徳 上 の不都 合 は生 じ て来 な い と

人 も亦 多 数 を 包容 す る と 云 ふ こと は、 事 件 の性 質 上 常 態 に属 し て居

る と同 時 に、其 犯罪 地 域 が広 き範 囲 に亘 り ま し て、 且 つ関係 共 同 犯

条 よ り除 外 さ れ て居 る、 此 罪 は公 安 を害 す る性 質 のも の であ り ます

あ り ます 、 第 二 の理由 は、 刑 法 の第 八章 の騒 擾 罪 が矢 張 陪審 法 第 四

罪 も、 亦 同 様 の理由 に依 て之 を除 外 す る が適 当 であ る と信 ず る ので

考 へる の であ り ます 第五十 六回 治安維持法 )承諾を求委員  会 帝 国 議 会 昭和三年勅令第百 二十九号 (中改正 の件 む る件 (

速 附託議案 (審査終了のも のを除く) 議録 記 )第七回 陪 審法中改正法律案 (政府提出)

昭和四年 三月七日 ( 木 曜日)午前十 一時十分開議

る ので あり ま す、 随 て陪審 員 が多 数 の被 告 人 と直 接 間 接 何 等 か の関

し た る関 係 報 告 文 書等 に依 り ます れ ば、 是 等 被 告 人 の 一味 の人 々は、

以 て、之 を非 難 致 し た 次第 で あ りま す が、 当 時 司法 当 局 が受 入 れ ま

と す る や う な状 態 があ つた ので あり ま す、 又不 法 に も大 衆 の威 力 を

係 を有 す ると 云 ふ虞 が あ りま す る のと 、 斯 る事 件 は其 審 理 に多 数 の

以 ち ま し て、 裁 判 所 を威 圧 せ ん こと を 企図 致 し た の であ りま す 、 思

つ裁 判 の公 開 を求 め まし て、 法 廷 を 共産 主 義 宣 伝 の巷 に化 し去 ら ん

公 正 明確 に判 断 を 為 し得 ざ る の遺 憾 が ある の であ り ま す、 治 安 維 持

裁 判所 の外 部 に於 ても亦 同 様 の非 難 を試 み まし て、 之 を宣 伝 し 、 且

法 の事 件 も亦 其 犯 罪地 域 の広 き と、 関 係 被 疑 者 の員 数 の大 な る関係

ふ に是等 の人 々は、陪 審 員 に対 し て斯 の如 く大 衆 の威 力 を振 ふ の機

日 子 を要 す る の であ りま す 、 且 つ審 理 す べ き事 項 も 複 雑 多 岐 に亘 り

に於 て、 寧 ろ 騒 擾 罪 を凌 駕 す る の実 状 にあ ると 存ず る の で あ りま す、

に以 上 述 べ ま し た数 個 の事 由 に依 り ま し て、 斯 の種 治安 維 持 法 の事

会 を捕 へん と努 め た こと は、 疑 のな い事 実 で あ りま す 、之 を要 す る

ま す る から 、 平素 法律 的 の鍛 錬 を余 り多 く 経 な い所 の陪 審 員 に於 て、

第 三 には、 過 般 公 判 に 付 せら れ ま し た京 大 学 生被 告 事 件竝 に過 般 各

の下 に、 除 外 す る こと が 適当 と存 じ ま し て、 本 案 を提 出 致 し ま し た

件 は、 之 を陪 審 の公 正 な る判 断 を得 る に適 せざ ると 云 ふ大 体 の事由

地 に於 け る共 産 党 被告 事 件 の公 判 手 続 に於 て、 裁 判 長 及検 事 は法 律 の規 定 に依 て正 当 に其 職 務 を行 つた ので あり ま す る が、 被 告 人 等 は

次 第 であ り ま す、 何 卒 慎 重 に御審 議 を 請 ひ ます る次 第 であ りま す

是 に対 し て侮 蔑 、 罵詈 、 喧擾 を極 め ま し て、 法 廷 の秩 序 を撹 乱 し 、 今 日 の裁 判制 度 に対 し て、或 は階 級裁 判 又 は暗 黒 裁 判 な ど の激 語 を

(1)

論 調 (一 九二八)

き科 刑 を も つて し ては到 底 か ゝ る重 大 な る事 態 に対 し 一般警 戒 の

軽 き に失 し 刑事 法 制 定 の目的 に副 は ぬも のた る を免 れ ぬか く の如

若 く は禁錮 を科 す る に止 め た のは事 態 の重 大 な る に照 し 科刑 甚 だ

然 る に も拘 らず 、 治 安 維 持 法 が これ に対 し 僅 か に十 年 以 下 の懲 役

○

事 態 の重 き も のな る こと は極 め て明瞭 で あ る

ち ろ ん 現行 刑 事 法 規 にお いて極 刑 を科 す る他 の事 犯 に比 べ て更 に

あ つて大逆 罪 と の間 に何 等 軽 重 の差 を 立 つる こと の出 来 ぬ の はも

事 件 の如 き は 我 が国 情 に照 ら し事 態 の重 大 な る こと前 述 の如 く で

を定 め て居 る のは結 局 これ が た め に外 な ら ぬ 、然 る に 日本 共 産 党

一三  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 お よ び 緊 急 勅 令 に 対 す る

政 府声 明 制 定 の主 旨 原法 相 の声 明

︹六 月︺ 十 二日 の閣 議 に て治安 維 持 法 を緊 急勅 令 で改 正 す る に決 し

凡 そ 一国 の刑 事 法 はそ の国情 に基 き 事態 の軽 重 を考 量 し これ に適

た に付 政 府 は原法 相 談 と し て左 の如 く 改 正 理由 を発 表 し た

応 す る刑 罰 を定 め も つ て国 民 に 一般 的警 戒 を与 へて犯罪 の発 生 を

でな い こと は疑 ひ を容 れ ぬ、 故 に政 府 は わ が国 刻 下 の情 勢 に鑑 み

効 を奏 し 犯罪 の発 生 を 予防 し若 く は懲 罰 の目的 を達 し 得 べ きも の

速 か に治 安 維 持 法 を改 正 す る の要 あ り と し そ の改 正案 を第 五 十 五

防 止 す る と とも にも し尚 事 犯 を 生 じ た る とき は これ に適 当 の懲 罰 を 加 へて治 安 を 維 持 す る を目 的 と し て制 定 せら る べ き も の であ る、

絶 つに至 ら な い のみ なら ず 事件 の中 心 人 物 いま だ縛 に つかぬ も の

然 る に我 が国 にお け る共 産 党 の 一味 は過 般 の検 挙 に よ り そ の跡 を

○

帝 国 議会 に提 出 し た が不 幸 にし て審 議 未 了 とな つた

のが あ れば それ は刑 事 法 制 度 の目 的 に かな は ぬ も のと いは ねば な

に適 応 す る こと を要 す る も の であ つて、 も し これ に適 応 し な いも

故 に刑 事 法 に定 む る刑 罰 は必ず 国情 に基 き 事 態 の軽 重 を量 り これ

ら ぬ、 刑 法 そ の他 現 行 の刑事 法 規 が犯 罪 の種 類 に よ り刑 罰 の軽 重

ころ であ つた が、 議 会 閉 会 後 各 地 に発 見 せ ら れ た る証 拠 によ れ ば

革 な る売 国 的 大罪 の遂 行 を継 続 す る こと は容 易 に推 知 し 得 べき と

す ら あ る、 これ等 は依 然露 国 国際 共産 党 の指揮 を奉 じ我 が国 体 変

思 想 の ほう芽 を 一掃 し 得 べ し と考 へる ので あ らう か。

も つ て、 な ほ不 て い の跡 を絶 たし む る に足 らず 、 ﹃死 刑﹄ は も つ て

と し て これ が改 正案 を提 出 す る に至 つた のは、 現 行 法 の ﹃十 年 ﹄ を

た め に第 三 師 団 の出発 に際 し ても直 接 に帝 国 の軍 隊 を かう 乱 せ ん

を 遂 行す るた め各 種 の怖 る べき 行 動 を続 け居 る こと は確 実 で あ る、

る か で あ る。厳 罰 も つて今 日 以後 一切 の危 激 な る も のを絶 滅 し得 ば 、

万民 みな 望 む ので あ る。 た ゞ問 題 は、 如 何 にし て これ が目 的 を達 す

き を憂 へる か ら で あ る。 天 下 一人 の不 て い者 な か ら しむ る こと は、

す れば 、 厳罰 も つて 一切 を 解決 救 治 し 得 べ し と す る の短 見 に陥 り易

かく いふ ゆ ゑ ん のも のは 、 こ の種 反 動 政治 家 の常 とし て、 や ゝも

と す る不 敵 の行動 を 敢 へてす る者 を出 す に至 つた ので あ る、 今 に

彼 等 は議 会 開 会 中 よ り今 日 に至 る ま で全 国 革 命 な る不 て い の企 図

お い て彼 等 に対 し厳 重 な る警 戒 を加 ふ る に あら ざ れ ば彼 等 は益 々

し か し なが ら 、 厳罰 主 義 の結 果 の何 も のた るか は 、 ビ ス マー ク の社

事 は き はめ て容 易 で、 識 者 は かう も苦 慮 を費 す を 用 ゐ ぬ の であ る。

会 主義 者 暴 圧 法 に見 る こと が出来 る。 彼 れ の社 会 主義 者 暴 圧 法 は、

の治安 を根 本 的 に破 壊 せ ん こと を 努 む る の恐 れ あ る こと は明 か で

あ ら ゆ る厳 罰 と ほ と ん ど無 警 察 に等 し い乱 暴 と を も つて し た に拘 ら

国 体変 革 を目 標 と し て そ の大 胆 不 敵 の売 国 的 運 動 を継 続 し我 が国

あ る、 よ つて政 府 は これ に 対応 す るた め緊 急 処 置 を取 る の必 要 を

ず 、 し かし そ の十 二年 間 、 一千 五 百 人 の社 会 民 主 党 員 に対 し延 一千

吾 人 は、 政 府 にし て真 に ﹃抜 本 さ い源 ﹄ の途 を講 ぜ んと な らば 、

往 々 にし て これ に類 す る も のがあ る の であ る。

を も つてし て は、首 相 のい はゆ る ﹃抜 本 さ い源 ﹄ はお ろ か、 結 果 は

と いは れ て ゐ るで は な い か。 厳罰 主 義 も よ いと し て、単 に厳 罰 のみ

十 三 万 七千 な り し同 党 員 を百 四十 二 万 七千 に増 加 せし め た に過 ぎ ぬ

年 の処 刑 をな し た る に拘 ら ず 、結 果 に お い て は、 法 の制 定 当 時 、 四

認 め こ ゝに治 安 維 持 法改 正 の緊 急 勅令 の御 裁 可 を奏請 す る に至 つ

新 聞 論 説

た の であ る

(2 )

︹ 東京朝日新聞 ・昭和三年四月二八日︺

厳 罰 は 問 題 を 救 治 せず

尽﹄ さね ば な ら ぬ を信 ず る の であ る。 五 十年 前 のビ ス マー クす ら、

所 の原 因 を究 め、 各 方 面 にわ た つて出来 る だ け の施 設 と 用 意 と を

何 は お いて も、 首 相 の いは ゆ る ﹃かく のご と き事 件 の由 つて 生ず る 政 府 は今 回 の共産 党 事 件 に か んが み、 治 安 維 持 法 を厳 重 にす る に

会 保 険 法 を作 つた。 然 る に こ の前 代 未 聞 の陰 謀 事 件 に 会 し、 ﹃皇 室

﹃親 切 を も つ て社 会 主 義 を 殺 す﹄ べ く、 厳 罰 のか た は ら、 種 々 の社

決 し、 昨 日 そ の法 律 案 を衆 議 院 に提 出 し た。 国 体 の変 革 を企 つ るも の ゝ許 す べか ら ざ る は、 論 ず るま でも な い。 し か し な が ら、 政 府 が 、 特 に共 産 党 事 件 の検 挙 に よ り、 挙 国 興奮 の情 態 にあ る に際 し 、 突 如

た か。 吾 人 は会 期短 き特 別 議 会 を前 に し て、 あ へて難 き を政 府 に責

治 安 維 持 法 の改 正 以外 、 果 し て 何事 を ﹃抜 本 さ い源 ﹄ のた め に考 へ

並 に皇 祖 皇 宗 在天 の威 霊 に対 し 恐 く に堪 へず ﹄ と いふ 田中 内 閣 は、

て、 枢 密院 と共 に これを 攻 め、 数 億 円 の国 民 の負 担 をも 犠 牲 と す る

る こと が、 議 会 の権 能 を 無視 し、 緊 急 勅 令 を 濫用 す るも のな り とし

議 会 閉会 を ま ち て、 緊 急勅 令 を も つて、 財 界 の混乱 を 救 済 せ ん とす

そ れ が 一た ん政 府 に立 つと、 議 会 を 邪 魔 も のに し、 枢 密院 と だけ

を顧 みず し て、 若 槻 内 閣 を 倒壊 し、 臨 時 議 会 を 召集 し て、憲 法 の本

相 談 し て、 事 を行 はん と す る は、 そ の事 の善 悪 を問 題 にす る前 に、

道 を進 ん だ も ので は な いか 。

意 ﹄ は おろ か、 二度 の対 支 出兵 を除 け ば 、 ほ と ん ど無 為 無 能 にし て

ま づ そ の ﹃常 に国 憲 を 重 ん じ国 法 にし た が ひ﹄ と の教 育 勅語 の御 主

め る ので はな い。 し かも 、 在職 す で に 一年 、 政 府 は 一に も選 挙 、 二

過 し て来 た の であ る。 かく し て刻 下 の思 想 問 題 を解 決 し得 ざ るは も

旨 にた が ふ も のと し て、 国 憲 国 法 を みだ り、 思 想 を悪 化 す る原 因 と

にも 選 挙 、 た ゞ党 勢 の拡 張 を計 る のみ で、 ﹃出 来 る だ け の施 設 と 用

ちろ ん、 かく のご と き政 府 の下 に、 法 を の み厳 に せば 、 いた づ ら に

し て、 これ を責 め な け れ ば な ら ぬ の であ る。す な はち 議 会否 認 は、

左傾 思 想 の結 果 によ るも のが朝 憲 ぶ ん乱 であ る と共 に、 た と ひ政 府

る者 を厳 罰 す るは何 人 も 異 存 な き と ころ とし て、 こ の政 府 の下 に治

自 ら これ をな す も 、 立憲 政 治 への反 逆 であ り、 少 くも 国憲 を重 んぜ

秘 密 結 社 を し げ か ら しむ る の結 果 を招 来 し は せ ぬ か。 国 体 を 傷 つく

安 維 持 法 の改 正 を のみ急 がん とす る は、 少 く も後 先 を考 へざ るも の

法 上 の形 式 論 に止 ま ら ぬ。 議 会 の討 議 を のが れ、 輿 論 の批判 から 隠

し か しな がら 吾 人 が こ の改 正 緊 急 勅令 に反 対 す る のは 、 た ん に憲

ざ る も の で あり 、 国法 にし たが は ざ る も ので あ る から であ る。

な る こと を 一言 す る の であ る。

治 安 維 持 法改 正 の遂 行

閉 会 後 の今 日 にな つて、 急 に緊 急 勅 令 をも つて、 これ を遂 行 す べ し

め る こと に、 少 し の努 力 も払 は な か つた 治 安維 持 法 改 正 案 を、 議 会

この間 の議 会 に提 出 し てお き な がら 、 党 争 に没 頭 し て、審 議 を進

む し ろ進 ん で こ の際 私有 財 産 制 度 の否認 と い ふ が如 き、 不 明 確 な 観

て、 これ が禁 圧 を は か つた こと が 、 不都 合 で あ つた の であ る か ら、

は、 も とも と こ の両 者 を同 一法 律 に包含 し、 同 一程 度 の刑罰 を も つ

国体 の変 革 と 、 私有 財 産 制 の否 認 と を、 項 を分 ち 刑 を 異 にす る こと

如 く、 そ の内 容 に お いて非 常 に直 す る も のが大 であ る か ら で あ る。

れ て、 これを 遂 行 せ ん とす る必 要 が あ る こと が、 自 ら語 つて ゐ るが

と なす は 、 そ の重大 問 題 と 称 す る と ころ のも のを、 党 争 の犠 牲 に供

︹ 東京朝 日新聞 ・昭和三年五月 一八日︺

し た る か、 憲 法 の命 ず る議 会 の協 賛 を故 意 に忌避 せ んと す るか 、 い

や め た方 がよ い の であ つて、 改 正 の機会 を つかむ 以 上 は 、 ま づ治 安

念 を も つて刑 罰 の対 象 と し、 団 体 観 念 に混 入 せし む るが如 き ことは

維持 法 改 正 案 から、 こ の第 二項 を全 部削 除 す る が当 然 な のであ る。

づ れ にし ても 現内 閣 とし ては、 そ の誠 意 に つ いて、 疑 惑 を懐 か し む

し かも 現 内 閣 は、 一年 前 そ の成 立 の歴 史 を顧 み れば 、 前 内 閣 が、

る に十 分 な るも のが あ る。

ぬ が、 無 理 を通 し て、反 対 者 の反 対 の口実 を 強 く す る は賢 明 でな い。

を厳 に取締 らな け れば な ら ぬ こと には 、 何人 も異 議 が あ る べ き はず

せ ら る ゝ こと 、司 法 当 局 のよ く知 る所 の如 く であ る。 こと にか く の

国 法 は国 民 の心 か ら の納 得 によ つて の み、 真 に そ の制 定 の目的 が達

し かし て いや し くも 国 体 変革 を 目的 とす る結 社組 織 の如 き、 これ

がな い の であ る が、 刑 法 に皇 室 に対 す る罪 と、 内 乱 に関 す る罪 と、 外 患 に関 す る罪 と が、 死刑 を も つて これ が違 犯 に臨 ん でゐ る以 上 、

と く に政府 が こゝ に意 を留 め ん ことを 切望 す る。

治 安 維持 法 の改正 問 題

美 濃 部 達 吉 意 見

如 き重 大 問 題 であ り、 思 想 的内 容 に関 す る法 に お い て然 り で あ る。

( 3)

改 め て単 に危 険 な る結 社 組 織 に対 し て、 十 年 の懲 役禁錮 に て は不 十 分 な り、 こ れを 死 刑 又 は無 期 にま でせ ざ れば 、 治 安 の維 持完 た から

ち が たし と な す が如 き、 国 民 を 納 得 せ し む る が如 き 理由 が、 果 し て

ず 、 し か の みな らず 、 そ の必 要 緊 急 に し て、 半 歳 後 の通常 議 会 も ま

ど こに存 在 す る であ らう か。 も し さ う い ふ理 由 が あ る な らば 、 よ ろ し く まづ 天 下 の公 議 に訴 へて、堂 堂 と そ の批 判 に訴 へ、 批 評 に答 ふ べ き では な いか。

動 取 締 法案 が 、第 一次 共 産 党 事 件 に よ る興 奮 を 利 用 し て、 変 形 し て

律 案 は、 政府 側 か ら は ほと ん ど 一と し て提 出 せ ら れな か つた に拘 は

らず 、 二 回 ま で も停 会 を命 ぜ ら れた 為 に、 や ゝ重要 と 見 ら る べき 法

今 年 の議 会 は はじ め か ら会 期 が僅 に二 週間 に限 ら れ て居 た のみな

作 ら れた も ので あ る。 そ れを 今度 第 二次 共 産 党事 件 の検 挙 によ る興

ら ず 、 ひ と り治 安 維 持 法 の改 正法 案 だ け は、 特 に緊 急 を 要 す る も の

治 安維 持 法 は、 か つ て挙 国 の反 対 で暗 に葬 ら れた 過 激 運

奮 を機 会 と し て、 更 に罪 を重 く せ ん と す るも の であ る。 し かし な が

とし て提出 せ ら れ た が、 それ は衆 議 院 だ け を も通 過 す る に至 らず 、

そも〓

ら厳 罰 主義 に よ る危 険 思 想 鎮 圧 が成 功 せざ る こと は、 治 安 維 持 法 の

未 議 了 のま ゝ会 期 を 終 り 、法 律 案 は消滅 に帰 し て しま つた。 然 るに

政 府 は議会 の閉 会 後 に至 り 、緊 急 命 令 を も つて そ の改 正 を行 は ん こ

制 定 が、 第 一次共 産 党 事 件 の後 に、 社 会 科 学 の学 生事 件 を産 み、第 二次 共 産党 事 件 の発 生 を 予 防 す る こと が 出 来 な か つた こと に よ つて、

と を 企 て、 世 論 は 一般 に強 く これ に反対 せ る の みな らず 、政 府 部 内

並 に政府 与 党 内 にお いて す らも 強 硬 な る反 対 が起 つ て居 る に も拘 ら

よ く 証 明 し て ゐ る。 し か し てな ほ警 察 の弾 圧政 策 が、 か へつて危 険 な る犯罪 を育 て る こと は、 赤 旗 事 件 が幸 徳一 派 を生 じ た こと を、 裁 判 の記 録 が よく 語 つ て ゐる のに、 耳 を 傾 け な け れば な ら ぬ。 厳 罰 は

へら れ て居 る。

ず 、総 て の反 対 を 退 け て、 遮 二無 二 これ を断 行 せ んと し て居 ると伝

更 に 一の悪 政 を加 ふ る も の で、 そ れ は憲 法 のじ う り ん で あり 、 甚 だ

も し それ が事実 であ る とす れ ば、 現 内 閣 の他 の多 く の悪 政 の上 に

治 安維 持 の唯 一の途 では な く て、 反 逆児 の反 逆 心 に油 を そ ゝぎ 、 か へつて彼 等 に殉 教者 た る が如 き 自 己 陶酔 を与 へる危険 が あ る。 現 内 閣 に対 し て、 刑 に か ゆ る に徳 を も つて せ よ と い つ ても無 理 かも 知 れ

如 何 やう に かし て斯 の如 き 悪 政 の防 止 せ られ ん こと を希 望 す る の外

し き権 力 の濫 用 で あ る。 我 々は国 家 の安 全 の為 に、 憲 法 擁 護 の為 に、

が緊 急 の必 要 であ る場 合 も想 像 し 得 ら れ る のであ る が 、単 に刑 罰 を

す る に止 ま る。新 た な る禁 止 又 は制 限 を定 め んと す る な らば 、 それ

に禁 止 せ ら れ て居 る行 為 に つ いて、 唯 そ の刑罰 を苛 重 な らし め ん と

案 に お い て予 想 し て居 る国 体 の変 革 を 目的 と し て結社 を なす 行 為 は、

は、 健 全 な る常 識 を も つて は想 像 し得 ら れな いと ころ であ る。 改 正

重 く す る こと が 一日を緩 う す べ から ざ るほ ど の緊 急 の必要 が有 ると

は無 い。 ◇ 今 日 の状 態 にお いて、 緊 急 命 令 をも つ て治 安 維 持 法 を 改 正 す る こ

全 ヲ保 持 シ又 ハ其 ノ災 厄 ヲ避 ク ル為 緊 急 ノ必 要 ニ由 リ﹄ て の み発 し

立 法 の権 道 であ つて、 憲 法 第 八条 に明 言 し て居 る如 く、 ﹃公 共 ノ安

緊 急 命 令 は唯 非 常 の変 に処 す る応 急 手 段 と し て のみ許 され て居 る

が、 緊急 命令 を も つて刑 罰 を苛 重 な らし め た とし て も、 そ れ は 過去

に、 一面 にお いて将 来 の行為 に対 す る予 防 の目 的 を 有 つも の であ る

ら れ よ う か 。刑 罰 は 一面 にお い て過 去 の行為 に対 す る応 報 た る と共

刑 罰 を苛 重 にす る こと が 緊 急 の必 要 であ ると は如 何 にし て想 像 し得

厳 重 な る刑 罰 をも つて既 に禁歇 せ られ て居 る に も拘 ら ず 、 更 にそ の

今 日 に お い ても 既 に厳刑 を も つて禁歇 せ ら れ て居 る 行 為 であ る。 十

と が、 緊 急命 令 発 布 の憲 法 上 の要 件 を具 備 し な いも の であ る こと は

得 る も の で あ る。 緊 急 の必 要 と は 一面 に は次 の議会 の開 会 ま で待 つ

の行 為 に溯 つて適 用 せ ら れ得 べ き も の では な いから 、 それ が 緊 急 の

年 の懲 役 は威 嚇 の目 的 の為 に は決 し て不 充分 な 刑 罰 では な い。 この

こと の出 来 な い必要 で あ る こと を意 味 す ると 共 に、 一面 には 前 議会

必 要 であ る所 以 は、 唯 予 防 の目 的 の為 に のみ想 像 し 得 べき と ころ で

論 ぜ られ た と ころ で、 世 論 が 一般 に これ に反 対 し て居

の閉 会 後 急 に突発 した 必 要 であ る こと を意味 す る。 もし 前 の議 会 の

既 にし ば〓

開 会 中 に既 に これ を必 要 とす る事情 が存 在 し てを つたな らば 、 前 の

れば 、 仮 令 死刑 の重き を も つて す る も如 何 にし てそ れ が予 防 の目的

あ る。 然 し も し十 年 の懲 役 を も つて も予 防 の目的 を達 し得 な いと す

る のも主 と し て こ の理 由 に基 い て居 る。

議 会 に お い てそ の協 賛 を得 な け れ ば な ら ぬ の であ つて、 事 情 の変更

す る こと は、仮 に応 報 と し ては当 を得 て居 ると し て も、 予 防 の目的

ば 、 十 年 の懲 役 と 死刑 と は要 す る に 五十 歩 百歩 であ る。 これ を 改 正

を達 し得 る こと を確 保 し 得 ら れ よ う。 単 に予 防 の目 的 だけ か ら い へ

の無 いに も拘 らず 、議 会 閉 会 後 に至 つて緊 急 命 令 を も つて これを処

今 、治 安 維 持 法 の改 正 に つい て見 る と、 それ が右 の如 き意 義 に お

の為 に は大 な る効 果 を期 待 し 得 な いも ので、 そ れ が緊 急 の必 要 であ

理 せ ん と す る は、 明 か に憲 法 違 反 であ る。

い て の ﹃緊 急 ノ必 要﹄ あ る も のと 見 る こと の出 来 な い こと は、 甚 だ

第 二 に、 治 安 維持 法 の改 正 案 は既 に前 議 会 に提出 せ ら れ てし かも

◇

る と は、 到 底 思考 し得 べく も な い。

明 瞭 であ る 。 ◇ 第 一に、 そ れ は そ の内容 か ら い つても 、 従来 自 由 に放 任 せ ら れ て 居 た行 為 を 新 た に禁 止 し 又 は制 限 せ んと す る も の で はな く、 従 来 既

会後 に お い て突 発 し た必 要 に基 く も ので はな く 、前 議 会 開 会 の当時

そ の協 賛 を得 る こと の出 来 な か つた も のであ る。即 ち そ れ は議会 閉

で、 況 ん や そ の改 正 に お い てを や 。

意 味 に お い て治 安 維持 法 そ のも のす ら も悪 法 の非難 を免 れな いも の

何 な る厳 刑 をも つてす る も、 寧 ろ革 命 を誘 発 す るも の であ る。 こ の

緊 急 勅 令 に対 す る枢 密 院 の態 度

か ら既 に存 し てを つたと 同 じ事 情 の下 に お い て制定 せ られ ん とす る も の であ る こと は 明瞭 で あ る。前 議 会 に お い て協賛 を得 ら れ な か つ た に拘 らず 、 そ の閉 会 後 に緊 急 命令 を も つ て同 じ事 を定 め んと す る のは、 そ れだ け でも議 会 の権 限 を蹂 躪 す るも の で、 緊 急 命 令 発布 の

要 す る に緊 急命 令 をも つ て治安 維 持 法 の改 正 を断 行 す る こと が、

対 のかく も 明 白 であ つた にも 拘 らず 、 遂 に これ を阻 止 す る こと の出

は、 遂 に枢 密 院 を 通 過 し て正 式 に公布 せ ら る る に至 つた。 輿 論 の反

国 民 の輿 論 が 挙 つて反 対 す と も 見 え た治 安 維 持法 改 正 の緊 急勅 令

憲 法 違 反 の処置 であ る こと は疑 ふ べ き余 地 も 無 い 。従 来 緊 急命 令 の

来 な か つた こと は 、頑 強 な る為 政 当局 者 の態 度 に対 し ては 、 輿論 の

憲 法 上 の要 件 を備 へな いも の であ る こと は明 瞭 で あ る。

濫 用と 認 め う べ き事 件 は 必ず し も ま れ で はな いが、 今 回 の例 の如 き

力 の如 何 に薄弱 であ る かを 天 下 に宣 示 し た も の で、 国 家 の前 途 の為

◇

◇ 緊 急 勅 令 案 の いよ〓

枢 密 院 に諮詢 せ ら れ て から後 は、 天 下 の耳

に甚 だ憂 慮 す べき 至 り であ る。

は そ の濫 用 のも つとも甚 だ し いも のと い ふべ き で あら う 。

し かし 自 分 が治 安 維持 法 の改 正 に反 対 す る のは、 単 に緊 急 命令 を も つてす る こと のみ に つ い て ではな い。そ れ よ り 一層 重 大 な 点 は、

は学 士 の これ に熱 中 せ るも の の少 な か らざ る こと は、 蔽 ふ べか ら ざ

この数年 来 危 険 な る革 命思 想 が社 会 に潜 行 し 、青 年 有 為 の学 生 又

明 治 三十 八 年 の日露 講 和 条 約 の批 准 に つい て御 諮詢 の有 つた と き と

を望 む声 の かく 高 く な つた のは 、自 分 の記 憶 によ れば 、 今 日 ま で に

き ことを 期 待 し た 。枢密 院 に諮詢 せら れ た 議 案 に つい て、 そ の否 決

目 は 一に枢 密院 に集 ま り、 世論囂 々、 枢 密 院 が必ず これを 否 決 す べ

る事 実 であ つて、 遂 に共産 党 事 件 の如 き 疑 獄 を ひき 起 す に至 つた の

そ の改 正 の実 質 に あ る。

で あり 、 我 々 の深 憂 に堪 へな い所 であ るが、 し かし これ が 対策 とし

し かも 両 回 と も枢 密 院 は原案 を可 決 し 、反 対 者 の議 論 に聴 従 す る

今 回 の緊 急 勅 令案 と の 二回 あ つた の み であ る。

こと を な さ な か つた。 唯 、 日露 講 和条 約 の場 合 に は、 枢 密院 の内 部

て国 家 の取 る べき 途 は、 決 し て単 純 な る刑罰 と弾 圧 と であ つて はな ら ぬ。革 命 の起 る原因 は常 に政 治 上 およ び社 会 上 の不満 が国 民 の間

に は別段 大 な る反 対 も 起 ら な か つた のに 反 し て、 今 回 の場合 に は内

討 議 を重 ね た の みな らず 、 本 会 議 す ら も 、畏 く も陛 下 の御 前 に お い

部 にお い て も盛 ん に反 対論 が起 り、精 査委 員 会 は週 余 に 亘 り て連 日

に瀰 蔓 す る こと にあ る。 この不 満 を除 き お よ び合 法的 に そ の不 満 を 訴 ふ る途 を開 く こと は、 革 命 を防 止 す べ き唯 一の安 全 弁 で あ る。 こ の途 を講 ぜ ず し て徒 ら に権 力 を濫 用 し て弾 圧 迫 害 を加 ふ る の は、如

た ので あ つて、 此 の如 き は枢 密 院 の議 事 と し て は恐 ら く は空 前 で あ

て二 日間 に亘 る激 烈 な る論 戦 を交 へた 末 に、 始 め て これ を可 決 し 得

時 議 会 を も 召集 す る こと の出 来 ぬ場 合 であ る こと を要 件 と し て居 る

議 論 で はな い。 憲法 第 七十 条 によ る勅 令 に つい ては、 憲 法 は特 に臨

満 足 し 得 ざ る のみ な らず 、 憲 法 の理論 か ら い つて も取 る に足 るべ き

す る こと は、 しば〓

ルト キ﹂ と は これ を召 集 す る だ け の時 間 的 余裕 の無 い揚 合 を も包 含

こと は疑 を 容 れ ぬ が、 し か し そ の い は ゆ る ﹁議会 ヲ召 集 スル能 ハサ

ら う と思 は れる 。 ◇

し かし て当時 政 府 は自 家 の責 任 をも つて到底 臨 時 議 会 を 召集 す る だ

枢密 院 が遂 に これ を可 決 す る に至 つた こと に対 し ては 、世 論 は頻 に そ の態 度 を憤 慨 し罵 倒 し 、 枢 密 院 は内 閣 と共 に憲 法蹂 躪 の責 を わ

先 例 も有 り又 学 説 の 一般 に承認 す る所 で あ る。

か た ねば な ら ぬ も ので、 か く の如 き は枢 密 院 自 ら そ の墓 穴 を掘 るも

よ つて証 明 せ ら れた の であ つた 。 も し 今 回 の緊 急勅 令 案 に つい て、

け の余 裕 の無 い こと を 言 明 し た の であ つ て、 し かも そ れ直 に事 実 に

こ の非 難 は 、 同 じ枢 密 院 が僅 に 一年 前 に は内 閣 が 緊急 の必 要 あ り

ので あ ると いふ声 す ら も 高 か つた。

これを 弁 明 す る者 は、 若 槻 内 閣 の場 合 は憲 法第 七十 条 に よ る財 政

と す る も の であ る。国 庫 の負 担 を増 加 す る こと は固 よ り重 大 では あ

第 八条 に よ る も の であ る と は い へ、 そ の内 容 に於 ては 死刑 を課 せん

ば な ら な か つた の であ る。 し か のみ な らず 、 今 回 の緊 急 勅 令 は憲 法

緊 急 の必要 あ り と い ふ政 府 の言 明 を 信 頼 し て、 そ の以 上 に追 究 す べ

上 の緊 急 勅令 で、 そ れ は同 条 に明 言 し て居 る如 く ﹁内 外 ノ情 形 ニヨ

る が、 人 の生 命 を 奪 ふ ことは一 層 重大 でな け れ ば な ら ぬ。 国 庫 の負

き も の でな いと す れ ば、 前 の場 合 にも時 間 的 余 裕 な し と い ふ政 府 の

リ議 会 ヲ召 集 ス ル コト能 ハザ ル場合 ﹂ に限 つてな し得 る所 で、 当時

担 を増 加 す る に は臨時 議 会 を 召 集 し な け れば な ら ぬ が、 人 の生命 を

と し て提 出 し た財 政 勅 令 案 を 憲 法 違反 な りと し て否 決 し去 り、 それ

議 会 を召 集 す る こと の出 来 な い事 情 は存 し な か つた のであ るか ら、

奪 ふ に は そ の必要 が無 いと な す が如 き は、 徒 ら に文 字 の末 に拘泥 し

が為 に内 閣 の倒 壊 を来 し た こと と 比較 し て、 一応 は無 理 な ら ぬ非 難

これ を否 決 し た のは当 然 であ るが、 今 回 のは 第 八条 に よ る立 法的 緊

言 明 に信 頼 し て、 責 任 な き枢 密 院 が これ を否 決 す る が如 き は避 け ね

急勅 令 で、 そ れ は憲 法 も敢 て特 に臨 時 議 会 を 召集 す る こと を 要 せず 、

そ れ で あ る から 一年 前 に は内 閣 の倒 壊 を も 顧 みず 、 緊 急 勅 令 を否

て合 理的 の考察 を度 外 視 し た も つと も幼 稚 な る形 式 的 法律 論 であ る 。

と い は ねば な ら ぬ。

議 会 の閉 会中 であ れば 政 府 が 緊急 の必 要 あ り と認 め た場 合 に これ を

決 し、 一年 の後 には内 閣 倒 壊 の結 果 を避 く る為 に、 これを 可 決 す る

な し得 る の であ る から 、 これ を否 決 すべ ぎ 理 由 は無 いと い ふ こと に よ つて、 枢密 院 の態 度 の決 し て前 後 矛 盾 に非 ざ る ことを 弁 明 し得 た

ではな い。

であ つて、 世論 が往 々枢 密 院 の政党 化 を非 難 す る のは必ず し も無 理

のは、 そ の態 度 にお いて、 前 後 矛 盾 を免 れな い こと は余 り にも 明白 ◇

り とし て居 る。

しか し そ れ は要 す る に詭弁 であ つて、到 底 健 全 な る社 会 的常 識 を

◇ し か しそ れ にも拘 らず 自 分 は枢 密 院 が 今 回 の緊 急 勅 令 を可 決 し た

す る権 限 を 有 す る のみ で あ つて、政 府 を監 督 し 、政 府 に対 し希 望 を

述 べ、 又 は政 府 の責 任 を問 ふ が如 き決 議 をな し 得 べ き も の では な い。

か。甚 だ怪訝 に堪 へぬ 。枢 密 院 の委 員 会 お よ び本会 議 に おけ る各 員

枢 密院 は如 何 な る根拠 に基 い て かく の如 き 決 議 を な し た の であ らう

の言論 が、 詳 密 に新 聞紙 に公 表 せら れ て､ ほと ん ど公 開 の議 会 の如

こと は、 枢 密 院 と し て は当 然 の態 度 で あ ると 信ず る も の で、前 年 の

枢密 院 の本 分 を 誤 つた も の であ る と信 ず る。 自 分 は今 回 の如 き緊 急

る。 政府 が該 緊 急 勅令 を 立案 せ んと す る に当 り 、 ま づ枢 密 院 の諒 解

き 体裁 を なし た こと も、 枢 密 院 の本分 とし て は、甚 だ奇 怪 至 極 で あ

若槻 内 閣 の時 に緊急 勅 令 案 を否 決 し た方 が却 て甚 だ し い悪 例 で あ り

勅 令 の遂 に発 布 せ ら る る に至 つた こと を甚 だ 悲 し む も の であ る が、

を得 た と 伝 へら れた が 如 き も、 もし 一二 の枢 密 院 の有 力 者 が 自 ら枢

し か し枢 密 院 の反 対 に よ つて内閣 の倒 壊 を生 ず るが如 き 悪 例 が、 二 回 ま で も繰 り返 さ る る こと は、 そ れ に も増 し て忍 ぶ べ か らざ る こと

密 院 を 代表 す る か の如 く に 予 め そ の諒解 を与 へて政府 の立 案 を援 助

牧 野 英 一意 見

□  思 想 国 難 が叫 ば れ て緊 急 勅 令 が公 布 さ れ る に至 つた。 何 事 にも

(4)

思想国難令評 釈

国難 を呼 ば は る大袈 裟 な のに は理 解 のし兼 ね るも のがな いで はな い

一

唯 今 回 の緊 急 勅 令 に 対し て枢 密 院 の執 つた態 度 には甚 だ諒 解 し 難

が 、思 想 の動 揺 し、 民 心 の必 し も安 定 を得 て ゐな い こと は 、深 く考

一

い点 が 一に し て足 ら ぬ 。も つとも 不思 議 に思 は る る のは政 府 に対 す

牧 野 英

し たと い ふ こと が真 実 であ る と す れば 、 一層 奇 怪 と いは ねば な ら ぬ。

と思 ふ。 枢 密 院 は憲 法 擁護 の機 関 と 称 せ ら れ て居 る。 内閣 が憲 法 違 反 を敢 てせ ん とす る場 合 に そ れを抑 制 す る こと は枢 密院 のも つと も 重要 な る任務 で あ る。 し か し なが ら、 枢 密 院 が憲 法 擁 議 の任 に当 る のは 主 と し ては憲 法 の正 し い解 釈 を 維 持 す る こと を意味 す る。 今 回 の緊急 勅令 が憲 法 違 反 と し て非 難 せ ら る る のは、 敢 て憲法 の解 釈 を誤 つた

それ は事 実 の認 定 であ つて解 釈 の疑 義 で は な い。 解 釈 の疑 義 に つ い

為 では な く、 緊 急 の必要 あり や否 や の認 定 を誤 つ て居 る こと にあ る。

ては 枢密 院 は自 家 の独立 の意 見 を 主 張 す る のが当 然 で あ る が、 事 実 の認 定 に つい ては責 任 あ る当 局 者 の言 に従 ふ のが 、責 任 を負 は ざ る 枢 密 院 と し て は、 当 然 の態 度 でな け れ ば な ら ぬ。

る警 告 的決 議 と称 す るも ので あ る。 これ は ま さし く 枢密 院 とし て は

へねば な ら ぬ。 わた く し は、 当 局 が これ を何 と か せ ねば な ら ぬ と あ

◇

越 権 のさ た で、 枢 密院 は唯 御 諮詢 を受 け た議 案 に つ いて可 否 を奏 上

せ つて ゐ る こと を 、 も と よ り無 理 な ら ぬ こと と おも はね ば な ら ぬ。

の ち、 日露 協定 の こと あ り、 両 国 の交 通が 旧 に か へら む と し て、 世

緊 急 な る も のあ り やを 論 ぜ ねば な ら ぬ。 不幸 にし て、 政 府 は 、之 に

の前提 と し て は、 如 何 な る不 祥 事 が 如 何 に突 発 し て、 事 態 のま さ に

方 法 に依 り、 斯 く の如 く改 正 せね ば な ら ぬ か に存 し た の であ る。 そ

も、 治 安 維 持法 案 が、 また 、 大 正十 四年 の二 月 な かば 過 ぎ に提 出 さ

ば 過 ぎ に議 会 に提 出 せ ら れた こと を想 起 せ ざ る を得 な い。不 思 議 に

□  わた く し は、 さき に過 激 法 案 が、 会 期 の終 り近 く、 二 月 のな か

な つた の であ る 。

安 維 持法 が でき た。 そ れ が こ の緊 急勅 令 に依 つて改 正 され る こと に

は ロシ ヤ の過激 思 想 を お それ た 。斯 くし て、 治安 維 持 令 に代 つて治

関 し て適 当 に公 表 を し て ゐな い。新 聞 紙 も亦 明 か に これを 伝 へる と

れ た の であ つた。 過 激 法 案 は 葬 ら れ た が、 維 持法 案 は兎 にか く通 過

□  問 題 は、 大 正 十 四年 法 律 第 四十 六号 治 安 維 持 法 を、斯 く の如 き

ころ が な い。 斯 くし て、世 上是 非 の議 論 に も 必ず し も明 か でな い も

き た。 戒 厳 下 に於 け る非 常 法 であ る の故 を 以 つて、 世 は之 を 理解 し

衆 議 院 で審議 未 了 に終 つた 。 翌十 二年 、震 災 の結 果 治 安 維 持令 が で

結 局 、 葬 ら れ た のであ つた 。 ま づ貴 族 院 で修 正 に付 せら れ 、続 いて

一年 に過 激社 会 運 動 取 締 法案 が議 会 に提出 せ ら れ た とき 、 そ れ は、

□  さ き に、 震 災 に あた つ て治 安維 持令 が でき た。 そ の前 、 大 正十

つた ので あ る。

ざ るを得 ざ る も のが あ る。世 は、 ま さ に、 思 想 戒 厳 と い ふ こと にな

は、 わ れ等 、 ま こと に、恐 怖 時 代 と いふ も のを聯 想 し て慄 然 たら

刑 を 以 つ てし、 し か も事 を議 会 に問 ふ に いと ま あ らず と い ふに至 つ

も のあ る こと を この緊 急 勅令 に依 つて示 す こと にな つた 。 臨 む に死

や うな 矛 盾 性 を考 へる こと に因 つ て、 斯 やう な 法規 に対 す るわ れ わ

ば な ら ぬ理 由 も あ る の で あ る。 さ う し て、 斯 やう な法 規 に存 す る斯

き 十分 の理 由 が あ る ので あ るし 、 ま た、 同 時 に、 あ わ て ふた め か ね

る ので あ る。斯 や う な法 規 の制 定 に付 い ては 、 一方 、 緩 慢 であ る べ

三度 も く りか へさ れ た と ころ に、 不思 議 でな い或 も の があ ると考 へ

□  わ たく し は、 そ の緩 慢 と 周 章 と の不 思 議 な結 び付 きが 、 す で に

種 の結 び付 き に よ つて行 動 し つつあ る やう に見 え る。

と にな つた の であ る。 政 府 は 、 曾 ても、 いま も 、緩 慢 と周章 と の 一

か に、 と り 急 ぎ緊 急 勅 令 を以 つて、 事 を果 た さねば な ら ぬ と す る こ

が ま ま に任 せ た ので あ つたが、 さ て、 さう か と 見 て ゐ ると 、今 、 俄

か つた。 停 会 に停 会 を重 ね つつ、短 か い会 期 のお のづ から終 了す る

し も敏 速 に事 を運 ん だ のでも な いし、 熱 烈 に之 を固 持 し た の でも な

し た。 最 近 の議 会 に於 て も、 政 府 は維 持 法 改 正 案 を提 出 す るや、 必

の があ つた か に考 へら れ る ので あ る。 し か し、 それ は、 わ た くし の

た の であ つた が、 同 時 に、 ま た 一種 の火 事 泥 が そ の機 会 に急 が れ た

れ の理 解 を全 う す る こと が でき る ので あ る。

ここ に論 じ よう とす ると ころ でな い。 政府 は、 事 態 の俄 か に迫 れ る

と も疑 つた者 が あ つた 。

止 せ ら る べき であ ると も考 へら れ た。し か し 、議 会 は、 そ の緊急 勅

□  そ の維 持令 は、 行 政 上 の モラ ト リ ウ ムに 従 つて、 お のづ か ら廃

令 に承 諾 を 与 へた。 そ の臨時 の制 度 が永久 のも のに な つた ので あ る。

へむ と す る﹄ と いふ のに該 当 す べき 行動 な く し て か れ等 が そ の目 的

□  要 す る に、 治 安 維 持法 は悪 思 想 を鎮 圧 せむ と す る も ので あ る。

こと を希 望 せね ば な ら ぬ。 若 し 、 か れ等 が、謂 は ゆ る不 確 定 的 に、

行 動 が、 十 分 具 体的 徹 底 的 に検 挙 せ ら れ、 厳 正 に周 密 に審 理 さ れむ

を 達 す べ き方 法 が考 へら れ得 る であ ら う か。 わ れ わ れ は、 かれ等 の

し かし 、思 想 は単 にそ れ自 体 とし ては国 家 に対 し 無 力 な も の であ る。

謂 は ゆ る未 必 的 に、 即 ち或 は危 害 を加 ふ る こと あ る べし と し て事 を

二

には、 必ず や、 暴 行脅 迫其 の他 何 等 か の実 力 を 以 つて せ ねば な ら ぬ 。

国 家 は 権力 の主 体 であ つて見 れば 、之 に対 し て紛淆 を試 み むと す る

今 日 に至 るま で、 緊 急 事 項 と され つ つも 、常 に緩 慢 に事 を運 び つ つ

れ を意 味 し て ゐる。 さ れば 、 治 安維 持 法 が、 過激 法 案 の当 時 から 、

であ る。 思 想 には思 想 を以 つ てせ よ と いふ のが、 陳 套 な が らま た そ

う か。 実 に、 そ こに、 罪 刑 法 定 主義 の政 治 的 社会 的 意 義 が存 す る の

自 己 の刑 罰 の為 め に み づ から く た び れる こと にな り はし な い であ ら

思想 を追 ひ かけ 、人 の内 心 に立 ち 入 らむ と す る と き、 国 家 は却 つ て

至 つ て、 国 家 はま た之 に自 己 の実 力 を示 す べし 。国 家 が徒 ら に人 の

と す る 必要 がな い の であ る。 不 逞 の徒 がそ の実力 を弄 せ む とす る に

自 体、 加 入 自 体 と し て取 扱 ひ、 そ こに、 検 挙 審 理 の最 後 のも のに茫

し て、 結 社 を 組織 す る こと と 、 そ れ に加 入 す る こと を、単 に、 結 社

情 重 し と い へど も 、要 す る に思 想 的 な も のに過 ぎ な いと し た 。 さ う

わ た く し の考 へるが如 く考 へな か つた 。否 、 共 産 党的 行 動 は、 そ の

□  し か し、 治 安維 持 法 制 定 の当時 、 当局 は、 刑 法第 七 十 三 条 を、

治 安維 持 法 の制 定 を批 評 し た こと であ つた。

維持 法 を待 た む や。 わ たく し は、 実 に、 こ の意味 を 以 つて、 か つて

第 七十 三条 が 直 ち に適 用 せ ら れ て し か る べき であ る。 何 ぞ特 に治 安

が斯 く の如 き も の であ る こと の明 か に せら れ る も のあら む か、 刑 法

論 のな い と ころ であ る。 若 し 検 挙審 理 が徹 底 さ れ て、 か れ等 の行 動

に対 し てす で に刑法 の適 用 のあ る べ き こと 、 わ れ等 学 徒 の間 に は異

た く ら ん だと す るな らば 、 そ の不確 定的 な も の、 そ の未 必 的 な も の

あ る の は、 お のづ か ら故 あ り と謂 ふ べき であ る。

故 に、 思 想 が単 に思 想 で あ る限 り に於 て は、 国 家 は 必ず し も之 を 意

にく り 返 し て お かね ば な ら ぬ 。 わ が刑 法第 七十 三 条 は、 刑 法 の 一般

□  な ほ、 わ た くし は、由 来 、 次 のやう に考 へて ゐ る こと を、 こ こ

之 に臨 む に死 刑 を以 つ てし て ゐ る。 抑 も、 か の共 産 党 な る も の、 何

せ ら れ た お のづ か らな 次 第 が ある 。

以 つて足 れり と し たと ころ に、 わ た く し から 見 れば 、 事 の緩 慢 に付

の行 動 を 斯 く思 想 的 のも のと し て のみ考 へ、 従 つて、 斯 く其 の刑 を

漠 た る或 も のを 残 し得 る やう にし た ので あ る。 お そ らく は 、 共産 党

を考 へ、 何 を た くら ん で ゐる ので あ らう か。 か れ等 は国 体 変革 を目

理 論 を 遠 く は な れ て ﹃危害 を加 へむ と す る﹄ 一切 の行 為 に及 ん で、

的 と し て行 動 し たと謂 は れ てゐ る。 抽象 的 な 国 体 変 革 の語 の意 義 は

り、 全 然 危害 と いふ こと を 離 れ て其 の企 を 重 ね て ゐ ると せ む か、 危

□  若 し 、謂 は ゆ る共 産 党 的 行 動 が、 単 に思 想的 な も のた るに止 ま

害 の点 から 見 れ ば そ れ は罪 と な る べ き も の でな い。 若 し 危 害 と い ふ

そ れ と し て、 新 聞 紙 に 伝 へら れ て ゐ るか れ等 の行 動 は、 果 し て、 具 体 的 に如何 な る目 的 を 以 つた も の であ ら う か。 謂 はゆ る ﹃危害 を加

点 から 見 て全 然 た わ いも な い方 法 を考 へて ゐる ので あ る なら ば、 そ

と に注 意 す べし ﹄ と し、 第 二百 九 十 六条 に ﹃予 審 に於 て は取 調 の秘

ね ば な ら な か つた 。 さ れば 、 事 態 を明 白 に公 表 し得 な か つた のは 勿

と さ れ て ゐ る趣 旨 を お も ふと き は 、 当局 は法 のか か る規 定 を尊 重 せ

論 であ る。 況 や、 公判 開 廷 に至 ら ざ る今 日 に於 て、 わ れ わ れ が、軽

密 を保 ち 被 告 人 其 の他 の者 の名 誉 を毀 損 せざ る こと に注 意 す べ し﹄

十 四条 は、 五年 以下 の懲 役 を之 に規 定 し て ゐる。 こ の意 味 から す れ

々し く風 評 を 基 礎 と し て事 を論 ず る のは、 固 より 深 く慎 ま ねば な ら

れ は、 ま た 、謂 はゆ る不能 犯 に属 す るも の であ る。 し かし 、 そ の場

ば 、 治 安 維 持 法 は、 結 社 又 は加 入 の方 法 を 以 つ てす る 不敬 罪 を 特 に

ぬ こと で あ る。 わ た く し は、 ただ 、 当 局 が緊 急 の必要 あ り と説 く と

合 に は、 別 に不敬 罪 の成 立 が あ る こと を 考 へねば な ら ぬ。 刑 法 第 七

を特 に加 重 す る の趣 旨 な り やと し て維 持 法 の制 定 を 批評 し た の であ

加 重 す るも のと考 へて ゆ かね ば な ら ぬ。 わ た く し は 、 し か く不 敬 罪

ころ を しば ら く 信 じ て考 へを進 め た い。 さう し て、 そ れ を信 じ て見

る も のと され た こと に な る の であ る 。斯 くし て、 周章 幾 旬 、 こ の新

る と、 事 態 がし かく 切迫 し た のは 、 十年 の刑 が軽 か つた のに起 因 す

つた。 三

であ る 。し かし 、議 会 開 会 の直前 に、 当 局 は、 共産 党事 件 な るも の

き深 く知 ると ころ が な い。 当 局 も亦 別 に こ れを 発表 し てゐ な い やう

□  わ たく し は 、議 会 閉 会 後 、特 に如 何 な る事 件 が 突発 し た か に付

た で あ らう 。

共産 党 事 件 な るも のが起 つた 。当 局 とし て は周章 せ ざ る を得 な か つ

ねば な ら ぬ。 さう し て、 更 に、世 のそ の刑 を 熟 知 す る に拘 はらず 、

規 定 し た の であ つた。 十 年 の刑 は、 す で に相 当 に厳 で あ つたと謂 は

法第 七十 三 条 と 第 七十 四条 と の間 に、 十 年 以 下 の刑 を特 別 法 と し て

程 度 に在 るも の に対 し 、徒 ら に刑 を 以 つて洞 喝 す る こと に因 り、 社

ふべ き で あら う 。 し か し、 事 が予 備 の程度 にも 達 せず 、 単 に思想 の

る こと に依 つて世 に 向 つて の警 告 を 新 た にす る こと は 一の方 法 と謂

き か を世 に示 す も の であ る。 この意 味 か ら謂 へば 、刑 を重 く 規 定 す

□  抑 も、 刑 法 に於 け る刑 の規 定 は、 そ の犯 罪 の如 何 な る程 度 に重

に明 か に され た も のと見 る こと が でき よう か。

こ の点 か ら考 へて見 る と、 十 年 の刑 の軽 き に過 ぎ た こと は、 実 証的

の諸 公 も 、 亦 、 わ れ わ れと 疑 を おな じ くし て ゐら れ る か に見 え る 。

経 済 上 の施 設 が ど れ ほ ど進 捗 せ し め ら れ た こと であ ら う か。 枢 密院

得 る も のと 考 へた ので あ らう か。 十年 の刑 と共 に、 教 育 上 、 社 会 上、

□  治 安 維 持 法制 定 の当 時 、 当 局 は 、十 年 の刑 だ け で不 逞 を鎮 圧 し

を 発表 し た。 それ は む しろ 漠 然 た る も の で あ る。 惟 ふ に、 刑 事 訴 訟

会 の起 ら な い で済 む べき反 抗 を無 用 にそ そ る おそ れ あ る こと も相 当

法 規 が で きた の であ る 。

法 第 五 十 五条 に ﹃ 訴 訟 に関 す る書 類 は公 判 開 廷 前 に於 ては之 を公 に

□  さ あれ 、 事苟 く も国 体 変革 に関 す る以 上 、 思 想 上 の取 締 に関 し

す る こと を得 ず ﹄ と あ る精 神 を考 へ、 ま た、 そ の第 二 百 五十 三 条 に

に考 へ合 は せ ねば な ら ぬ 。謂 はゆ る不 逞 の思 想 が官 憲 の不 当 な る 圧

て新 た に世 を いま し め る の必要 が あ つた 。 斯 く て治安 維 持 法 は、 刑

﹃捜 査 に付 て は秘 密 を保 ち被 疑 者 其 の他 の者 の名 誉 を毀 損 せざ る こ

迫 の下 に〓醸 さ れた 事 例 は決 し て少 くな い。 惟 ふ に、 一般 の国 民 は、

い。 わた く し は、 新 法 規 の運用 が、 こ の点 に於 て適 当 に按 配 さ れ む

時 代 に於 け る政 治 と し ては 、 必 し も賢 明 な るも のと謂 ふ こと を得 な

の為 め に重 ね られ る に至 ら む こと も おそ れ ら る べき で、 文 化今 日 の

者 に対 し て脅 や かす に死刑 を 以 つてす る ので は、 不 祥 事 が却 つて そ

の有 無 に拘 は らず 、 事 を慎 む ので あ る。 思想 の軌 道 を離 れむ と す る

と を 知 つてゐ る の であ る し、 また 、 現 に 、 し かく 党 外 に在 りな が ら、

のであ ると か。 し か し 、党 外 に在 つてそ の為 め に行 動す る者 あ る こ

きも の にや 。聞 くと ころ に依 れば 、 共 産 党 は容 易 に加 入 を許 さな い

目的 の為 め に行 動 す る者 が あ る か ら であ る。 か の院 外団 と い ふが如

つも の であ る ら し い。 そ れ は、 共 産 党 に加 入 す る こと な く し てそ の

□  ﹃目 的 遂 行 の為 にす る 行為 ﹄ と い ふ語 は、 更 に特 別 の意 味 を 持

四

こと を 特 に希 望 せね ば な ら ぬ 。

事 が国 体変 革 に属 す ると いふ だ け で、 刑 の如 何 に拘 はら ず 、否 、 刑

□  治 安維 持 法 は結 社 と加 入 と を犯 罪 と し て ゐ る。 結 社 後 加 入後 の

は、 維 持法 の ﹃加 入 ﹄ と あ る のに該 当 し な いと い ふ の で、 これ を網

党 の為 め に行 動 す る者 が少 く な い の であ る と い ふ こと であ る。 これ

干 の者 が結 合 し て ゐる のに対 し、 これ に加 入す る こと は、 そ の結 合

羅 す べく、 こ の語 が新 た に案 出 され た も のと考 へら れ る。

行 動 は 罪 とな らざ るも のな り や に付 いて は疑 が あ つた 。 わ た くし は、

と 同 一体 を為 し て行 動 す る も のであ る。 か れ等 が、自 己 の党 内 と し

に、結 社 又 は加 入 し てゐ る と の継 続 的事 実 そ のも のが 犯 罪 であ る の

条 に規 定 せ ら る る秘密 結 社 の罪 の加 重 さ れ たも のと 考 へら れ る ので

て ゐる者 と党 外 と し てゐ る者 と を区 別 し てゐ る のは 、 か れ等 の勝手

維持 法 を 以 つて、 そ の 一種 の結 合 を処罰 す るも のと 考 へてゐ る。 故

あ り 、 わ たく し は、 維 持 法 制 定 の際 治安 警 察 法 の規 定 を 以 つて足 れ

に過 ぎ な い。 維 持 法 の趣 旨 は、 そ の団 体的 集 合 的 現象 を犯 罪 と し て

はり其 の ﹃加 入 ﹄ に該当 す る のであ る。 そ の 一定 の目的 の為 め に若

り と す べ き で はな いか と批 評 し て見 た こと であ る。 し か し、 当 局 は、

ゐる ので あ る から、 そ の党 外 者 も 亦 ﹃加 入﹄ の語 に当然 包 含 され る

□  し か し、 わ たく し を し て謂 はし む れ ば、 斯 く の如 き行 動 は 、 や

之 を疑 はし と し て、 ﹃目 的 遂 行 の為 にす る行 為 ﹄ と い ふ語 を 今 次 の

だ と 考 へる。 この故 を 以 つて、 維 持 法 の罪 は、 治 安 警 察 法 第 二十 八

るに 、 そ の継 続 的 な状 態 を 犯 罪 と す る為 め に用 ゐら れ た も の であ ら

新令 に附 加 す る こと に し た。 目的 遂 行 の為 め にす る行為 と は、 要 す

て理 解 す る以 上 、 謂 は ゆ る エジ エ ント の徒 を維 持 法 の外 に在 るも の

も のと解 す べき であ る。 わ たく し は 、法 律 の用 語 を そ の精 神 に従 つ

の改 正 は無 用 な こと であ つた の であ る。

う 。 し かし 、 若 し従 来 の治 安 維 持法 が適 当 に運 用 され る な らば 、 こ

るに於 て は、 こ の改 正 を以 つて世 の人 心 を無 用 に動 揺 さ せ る必 要 は

と は 解 し た くな い。 こ の点 に於 ても 、 維持 法 の適 当 な る運 用 を 考 へ

若 し 、治 安 維 持法 を 従来 のま ま にし 、 必要 の存 す る場 合 に断 乎

な か つた の であ る。 □

にも 、 ま た お そ ら く は、 年 少斯 く の如 く 、環 境相 似 た るも のが あ ら

思 は れ てな ら ぬ 。曾 て、 朴 な に が し に恩 赦 の命 が あ つた と き、 そ の

世 人 とを いま し め る こと にし ても、 必ず し も お そし とす べ からず と

と は さ もあ れ 、 更 に そ の十 年 の刑 を実 際 に宣 告 し 且執 行 し て犯 人 と

が規 定 さ れ て ゐ る に拘 は らず 、 な ほ共産 党 事 件 が お こ つた と いふ こ

過遷 善 の実 を挙 げ し め る こと が でき はし な いか と考 へる。 十年 の刑

般 を し て適 当 に自 ら い まし め し む る と同 時 に、 そ の犯 人 に対 し て改

育 方 法 とし て の刑 を執 行 す ると ころ あら む か 、 わ た くし は、世 の 一

と し て十 年 の刑 を言 渡 す こと と し、 そ の十年 を利 用 し て かれ等 に教

を 定 め得 るも のと考 へる。

を 妥当 に理 解 す る こと に因 つ て、 新 法 規 の運 用 に付 き 、今 後 の覚 悟

ので あ つた。 わ た く し は、 こ の錯 綜 せ る も のを 分析 し、 そ の各 要 素

□  当 局 は、緩 慢 と周 章 と の微 妙 な る錯 綜 の間 に こ の改 正 を 遂げ た

か ら度 を失 ひ、 狼 狽 を事 と せむ と す る の で あ る。

者 が、 ま づ周 章 し、 ま づ震駭 す る に つれ て、 大衆 も、 ま た 、 お の づ

せ ねば な ら ぬも のと ほ ど には お も は な い。 世 を指 導 し、 世 を率 ゐ る

そ の固 よ り甚 だ 不愉 快 な るを 否 む ので はな いが、 上 下 を 挙 げ て動 揺

た く し は、 共 産 党事 件 の内 容 と し て当 局 の公 表 にか か るも のを読 み、

態 も、 亦 実 は、 さま で戦慄 す べき も ので な い の では あ るま いか。 わ

五

年 少 にし て環 境 の不 幸 であ つた こと が挙 げ ら れ た。 共 産 党 事件 の輩

く期 待 を 持 た ね ばな ら ぬ。

う 。 わた く し は、 維 持 法 の運 用 に関 し 、 司法 権 の聡 明 と 自 重 と に深

べき こと であ る。

全 く区 別 さ れ る に至 つた こと は、 こ の新 法規 の特 色 と し て考 へら る

□  緊 急 勅令 は、 国 体 変 革 の目的 を以 つ てす る も のと 私有 財 産 制 否

を疑 は む と し て ゐ る の であ る が、 し かし、 法 規 の内 容 は、 実 は、 さ

□  国 体 の問 題 は絶 対 的 な も のであ る。之 に対 し て、 私 有 財 産制 の

□  さ れ ば、 わ たく し は、当 局 が、 治 安維 持 法 の改 正 に方 つて、 世

ま でお ど ろ か ねば な ら ぬ こと でも な い。死 刑 の語 は さ る ことな がら 、

そ れは相 対 的 な も の であ る。 国 体 の問 題 は、 憲 法 に規 定 さ れ て ゐる

認 の目 的 を 以 つてす るも のと を 区別 す る こと にし た。 従前 の維 持 法

刑 罰個 別 主 義 に関 す る 現 代 の思 想 がよ く 理解 せら れ 、行 刑 の進 歩 に

と は謂 へ、 其 の憲 法 を超 越 し て ゐ るも ので あ る。 況 や、 法 令 の改 正

を震駭 せ し め た るも の の無 用 に大 な るも の のあ つた こと を遺 憾 と こ

関 す る最 近 の施 設 が 更 に 一層 な る に於 て は、 法 の運 用 に於 て裁 判 所

そす れ、 法 規 改 正 の内 容 に付 いて は、 必ず し も意 外 と は し な い の で

が 、裁 判 の執 行 に於 て行刑 の当 局 が、 国家 の単 に権 力 を振 りま は す

に依 つて どう に かな る と い ふも の では な い。 之 に対 し て、 私有 財 産

の制 定 の当時 に於 て批 評 し て お いた と ころ であ る が、 今 や、 両 者 が

も ので な く、 た だ洞 喝 を のみ事 と す る も の でな い こと を世 に知 ら し

制 は、 現 代 の わ が邦 に於 て社 会 組織 の基 本 と され てゐ るも の であ る。

が両 者 を 合 一し て規 定 し てゐ る こと の不 当 な る は、 わ た く し も亦 そ

め る で あら う 。

わ た くし は、 固 よ り、 謂 はゆ る共産 制 に賛 成 す る ので はな く 、従 つ

あ る。 人 は、 と もす れば 、 思想 戒 厳 を叫 び、 身 の恐 怖時 代 に在 る か

□  法 規 の内容 は、 さ ま でし か く意 外 とす べ き でな いと 同時 に、 世

の如 き、皆 、私 有 財 産 制 が合 理 的 に 一種 の発展 を 重 ね つ つある こと

て ゐ る。 現 に、 工場 法 の如 き 、借 地 法 借家 法 の如 き 、各 種 の調 停 法

す る公 益 上 の処 分 が法 律 に依 つて適 当 に規 定 せ ら る べき こと を認 め

か ねば な ら ぬ と ころ と信 ず る。憲 法 第 二 十 七条 も 、 亦 、所 有権 に関

らし い社会 的 公 益 的 な も の に発展 し つつあ る こと は、深 く考 へて お

はな いが 、 し かし 、 私 有財 産制 が、 従来 の個 人 的 な も のか らし て新

て私 有 財産 制 が根 本 的 に廃 絶 せし めら る べ き も の と考 へてゐ る の で

てそ の挙 げ たと ころ を拡 充 す ると き は、 思 想 上 の論 議 の公 正 が ま た

ては言 及 し て ゐ ると ころ が見 え な い。 し かし 、教 育 上 の施 設 に関 し

□  枢 密 院 の警 告 に は、 思 想 上 の議 論 の公 正 を保 護 す る こと に関 し

あ る。 これも 亦 、 いま更 、 く り 返 し て論ず るま でも な い こと で あ る。

相 待 つ こと に依 つて のみ、 国 家 は そ の国 家 た る所 以 を発 揚 す る の で

を 以 つて世 の仰 ぐ と ころ と な るも ので はな い。社 会 各 般 の宜 し きと

と す る は、 政 治 と し て妥 当 と は謂 ひ兼 ねる。 ま た、 刑 は 厳 な る の故

ふ こと 、 語 と し て はま こと に陳 套 な が ら、 や はり 、 こ こに く り返 さ

当 然 に保 護 せ ら れね ば な る ま い。 思想 に は思 想 を 以 つてす べし と い

れね ば な ら ぬ。 枢 密 院 に於 て 諸公 がし か く よ く論 議 を尽 く さ れた や

を示 す も のと謂 は ねば な ら ぬ。 近 く問 題 と な る べ き 小作 法 の如 き や

水力 の将 来 も 考 へら れ ねば な らぬ 。 お よ そ、 枢密 院 の警 告 に かか る

よ つて、 は じ め て、 国 民 が思 想的 に健 全 な る こと を得 る の であ る。

う に、 社 会 に於 け る思 想 上 の競 争 も 亦 フ エー ヤ で あり た い。 これ に

自 作 農 創 定法 の如 き や も亦 し かり 。鉄 道 国 有 の事 実 を考 へて見 る と、

な も の であ る こと を考 へね ば な ら ぬ。 され ば 、 わ れ わ れ は、 わ が国

事 項 を実 現 せ ん と に は、 私 有 財 産制 の按 配 と いふ こと が国 策 の重要

らな い。

□  惟 ふ に、思 想 は、 従来 、 甚 だ しく 軽 ん ぜ ら れ た。 一方 に於 て は

思 想 戒 厳 の下 に、 思 想 的 甘 粕事 件 と いふ が如 き の発 生 が あ つて はな

之 に厳 罰 の科 せ ら れ るも のが な か つたと も謂 ひ得 る の であ るが、 他

体 の下 に私有 財 産 制 の社 会 的 効 果 を最 大 限 度 に発 揮 せ し めむ こと を

妥当 に発 揮 さ れ得 べ き で あ る の であ れ、 と 考 へて ゐる ので あ る。 新

方 に於 ては 、 思想 の公 正 な る活躍 が実 は 十 分 に評 価 さ れな か つた。

考 へて ゐ る の であ る し、 ま た、 わ が国 体 の下 に於 て こそ そ れ が最 も

こと を目 的 と す る も のと を 区別 し、 そ の間 に軽 重 の差 を認 めた のは、

て、 思 想 の大 に尊 重 され、 大 に保 護 せら るべ き時 代 が来 る べき であ

今 や、 思 想 が お そ る べき も の であ る と され て見 る と、 そ れと 相応 じ

法 規 が、 国 体変 革 を目 的 とす るも のと私 有 財 産制 を 不法 に否認 す る

当局 が、 こ の点 を如 何 に意 識 し て ゐた か は別 問 ︹題 ︺ と し て、 理 論

ので あ る。

る。 国 民 的精 神 の作 興 は、 思 想 の活 躍 の公 正 な る と ころ に成 立 す る

上思 想 上 注意 す べ き こと で あ ると考 へる。 □  枢 密 院 は警 告 を附 加 し て緊 急勅 令 案 を可 決 し た 。 そ の警 告 な る

せら る べき も のと は信 じな い。 さき に過 激 法案 に反 対 し た人 人 が、

□  わた く し は、 この緊 急 勅令 が、 来 る べき議 会 に於 て承 諾 を拒 絶

も のは、 要 す るに、 刑 の重 き が政 治 の要 諦 でな い こと を明 か にし た も ので ある 。抑 も、 刑 は重 き が故 に 威 あ る の でな く、 検 挙 の周 到 厳

のち に維 持法 を 通過 せし め た の であ る こと を 考 へ合 は せ ねば な ら ぬ。

正 が第 一であ る べ き こと は、 さき に、 維持 法 制 定 の際 、 わ たく し も 亦 論 じ てお いた 。検 挙 の足 らざ る と ころ を 補 ふ に厳 刑 を以 つ てせ む

徹 底 し た 条 件 を 付 し て こ の緊 急 勅 令 は承 諾 を 与 へら る べき であ る。

せ ら れ た のが 維持 法 で あ る。来 議 会 に於 ては 、枢 密 院 の警 告 以上 の

の制 定 せら る べき こと を条件 と し た の であ つた。 そ の約 の下 に制 定

治 安 維 持 令 に対 し て承 諾 の与 へら れ たと き 、議 会 は、 適 当 な る法 律

し た る人 は生 き か へら ぬ、 仮 り に 人 を死 刑 にし て置 く と い ふ こと が、

間 、仮 り に人 を 死 刑 に す ると いふ の で あ る。 法律 は復 活 し て も、 死

い ゝで はな い かと 説 明 し て居 る 。果 し て然 ら ば 、議 会 開 会 ま で半 年

も 次 の機 会 に お い て不承 諾 にな つて も、 治 安 維 持法 は復 活 す るか ら、

仮 り のも のと は思 はぬ ので あ るが 、政 府 は、 こ の緊急 勅 令 が、 も し

居 る、余 は憲 法 上 緊急 勅 令 も 形 式 上完 全 な る国 法 であ つて、 一時 の、

緊 急 勅 令 の発 布 は、 憲 法 も つと も こ れを慎 重 にす べき も のとし 、

憲法 違 反

恐 る べき 政 府 の下 に ゐ る ので あ る。

負 ふ者 と し てそ れ で済 む べき こと で あ る か、 日本 国 民 はか く の如 き

こと を示 す の みな らず 、 大 政 せ う理 の任 に当 り、 国 民 保 護 の重 責 を

的 であ ると 言 明 す る が如 き は、 実 に不 誠 意 不謹 慎 、 何 等 の確 信 な き

も 、国 民 を死 刑 にす る法 令 を制 定 せ ん とす る に当 つて、 これ は暫 定

い つて ゐ る の は、 如何 な る動機 に出 づ る かは 知 ら ぬ が、 今 いや しく

政府 が この緊 急 勅令 が不 承 諾 にな つて も、 前 の法 律 が復 活 す る と

のが 許 さ る べ き も の では な い。

と く危 険 に暴 露 せ ら る る、 事 の実 質 は兎 に角 、仮 り の死 刑法 な る も

る 、 国法 の統 一は全 然 覆 が へさ る ゝ、 憲 法 の認 む る自 由 権 は ことご

法 治 国 に お い て出 来 べ き こと か、 実 に乱 暴 な こと を い つた も ので あ

さう し て、 そ の条 件 は、 ま た、 実 に、 徹 底的 に実 現 せ ら る べ き で あ

上杉 慎吉 意 見

上 杉 慎 吉

る。

( 5) 憂 ふべき緊急勅令

上)( 仮 り の死 刑法 今 問 題 に な つて居 る治安 維 持 の緊 急 勅令 な る も のは 、幾 多 の点 に お い て驚 が く す べき 、 異 常 の法 令 であ る が、 緊 急 勅 令 を も つて、 人

厳 に そ の要 件 を 限定 し て居 る、 緊 急 の必 要 な け れば 素 よ り これ を発

を死 刑 に処 す る と い ふ こと は、 前 代 未 聞 の、 然 し て必ず 絶 後 な る べ き こと であ る。 我 が国 民 中 に、 国 体 を変 革 せ ん こと を 試 む る が如 き

布 す る こと を 許 さ ぬ のであ る、 緊 急 の必 要 と は事 態 切 迫 、 一日 を緩

く せば 、 公 共 の安 全 危 た いに陥 り、 国 民 の災 厄 避 く る こと を得 ざ る

よ らず し て、 これ に死 刑 を課 せ んと す る も、 ま た尋 常 な ら ざ る事 で

場 合 を い ふ の であ る。 然 るに、 これ が去 る四 月議 会 に提出 せ ら れ、

者 を出 だ し た のは、 固 よ り古 今 の 一大 変 た る も、普 通 の立 法 手 段 に

あ る。今 や 刑法 学 者 は、 死刑 を廃 止 す べ し と い つ て居 る、 そ れ を緊

政 府 は それ ほど そ の通 過 に努 力 せず 、 審 議未 了 のま ゝ閉 会 し、 そ の

急 勅 令 を も つて定 めん と す る ので あ る。 政 府 は 緊 急勅 令 を暫 定 的 な も の、 仮 り のも のと見 て居 る と い つ て

も 恥 づ べき こと で はな い か、 万 国 無比 と誇 る日 本 で あ る。 こ の緊 急

今 日英 に お い ても仏 に お い ても、 世 界 に例 な き こと であ る、 日本 ひ

後 内部 に反 対 が あ つた り、 そ の他種 種 の政府 の都 合 で、勝 手 に延 び

次 の議会 は六 ケ月 の後 には開 会 せ ら るゝ の で あ る。 余 の如 き は、

と り国 危 き か。 わ が千 古 不 易 の国 体 を ば、 真 つ先 に立 つ て侮 べ つす

勅 令 を 見 て外 国 人 は 何 と思 ふ であ らう か、 露 国革 命 直 前 の危 急 な り

共 産 党 の活 動 の実 状 も 聞 知 し て居 り、 そ の掃 滅 の徹底 的 でな け れば

る者 は政 府 であ る、 かく の如 く んば 、内 国民 も 、 我 々は恐 怖 時 代 に

し 場 合 に も似 て居 る、 日本 の国 体 も かく 危 き か と感 ず る であ らう 、

な ら ぬ こと を深 く 感 じ て居 る者 であ る、 然 れ ど も、 こ の半 年 の間 に

居 る かと い ふが如 き不 安 の感 覚 を起 す であ らう 。 こ の緊 急 勅 令 が出

延 びにし て置 き、 そ れ から 二 ケ月 に も近 き今 日 にな つ て、 これを た

国 体 変革 のほう 火 揚 が り、 今 にも 我 が国 体 の危 か る べ き事 変 起 ら ん

れ が事 態 切迫 と了 解 す る者 があ らう か。

と す る兆 候 迫 り来 り つ ゝあり と は何 人 と い へど も考 へ得 ぬ であ らう

ゝに至 つた こと は事 実 であ る。 然 し て、 そ の唯 一の責 任 者 が政府 自

る と い ふ話 だ け で も、 わ が 国体 は内 外 に対 し て極 め て軽 く感 ぜ ら る

であ る 、国 体 を変革 す と 称 す るが如 き は、 一人 あ つて も、 国史 上 無

現在 日本 に お い て、 共 産 党 運動 の相 当 に広 が つて居 る こと は事 実

恐 怖 の宣 伝

(下)

身 で あ る に至 つ て は、 これ を何 と か い ふ べき 。

と思 ふ。 我 が国 の現 状 は、 決 し て か ゝ る恐怖 状 態 に居 るも ので はな い、 もう国 体 に火 が つ いた 、 こ の緊 急 勅令 を出 だし 、 死 刑 を も つ て 脅 か さな け れば 国 体 危 し と いふ な らば、 余 は断 じ て政 府 の観 測 を誤 れ りと す る、 半 年 の間 に迫 つて居 る、 一時 も待 つこと が 出来 ぬ状態 であ ると は、 ど う し ても考 へる こと は出 来 ぬ。 国 体 の侮 べ つ 国 民 を死 刑 に処 す る の法 を、 切 迫緊 急 の間 に制 定 しな け れ ば な ら

前 の大変 で あ る、 恐 し よう 戦 り つせ ねば な ら ぬ 。然 れど も 、政 府 自

ら これ を宣 伝 吹聴 す る のは 為 政者 とし て当 を得 た る こと であ らう か、

ぬ と いふ ほど 、 我 が 国体 が危 急 に陥 つて居 ると いふ こと を、帝 国 の 政 府自 ら承 認 す る のは、 内 外 に対 し て大 日本 帝 国 の信 用 を傷 つけ る

ど う か、 余 は深 く これを疑 ふ 。然 も、政 府 はす こぶ る輪 を かけ て宣

欠 け て居 る と思 ふ 。外 国 人 の侮 べ つを受 く る の みな らず 、 政 府 が自

るが 、 余 は これ を極 め て不 謹 慎 にし て、 ステ ー ツ マンた る の態 度 に

に破 裂 し 、暴 徒 や りを そ ろ へて、 国 体 を脅 かし つゝあ る が如 く 聞 ゆ

誇 ら んと す る か に も見 ゆ る 。政 府 の話 を聞 けば 、 今 に も爆 弾 は全 国

居 る、 悪意 あ つて かく す る のでな い こと は い ふま でも な いが、功 を

伝 し て居 る、少 く とも 、内 輪 にし よう と は せず 、 大 げ さ に声 言 し て

処 為 であ る 。 余 は 七千 万 国 民と 共 に、 我 が国 体 は如 何 な る事 あ りと も微 動 だ も せ ぬ、 千 古 不 易 と確信 す る。 国 民中 一人 前 の働 き も出 来 ぬ不 平 者流 不 健 康 者 流 が、 耳学 問 の 一知 半解 の徒 輩 に せん動 せ られ 、 将 に衰滅 せ ん とす る ロシ ア共産 党 の残 し を す ゝ り、 国 体顛 覆 な どと 虫 け ら の如 き 騒 ぎ を し て見 た と ころ で、 何 の恐 る ゝ所 か これ あら ん 。 余 は 政府 の人 々 の血 眼 に な る の が、 不思 議 でた ま ら ぬ 。国 粋 論 者 の 口 ぐ せと す る所 、 余 は常 に これ を 一笑 に付 し て居 る。 外 国 に対 し て

動 揺 の状 態 に陥 る こと が、 も つと も恐 るべ き こと であ る、 不測 の変

徒 の策謀 よ り も、 一般 人 民 が今 に も事 変起 ら ん かと 、 日夜 安 ん ぜず 、

時 代 に あ る こと を証 明 し た も ので あ る。 これ を歴 史 に徴 し ても 、兇

を 造 り出 だ す こと を 恐 る ゝ、 こ の緊 急 勅 令 は政 府 自 ら、 日 本 の恐怖

ら か く恐 怖 の宣 伝 を 試 み ては、 国 内 人 心 を震盪 し、 不 安 の社 会 状態

こで印 刷 し て居 る か 、突 き とめ ら れ ぬ と い つ て居 る。 この無 能 にし

が あ る、 政 府 は 血 眼 にな つ て、 これ を人 に示 し て居 る が、 そ れ が ど

政 府 の宣 伝 だ け は 八釜 し い が、 今 だ に共産 党 の巨 か いを捕 へる こ ︹ママ︺ と は出 来 ぬと い ふ では な い か。各 国 の出 版 物 には 実 に驚 く べき も の

る か。

卑屈 怯 だ な る こ の如 く に し て、 政 府 は そ の職 責 を尽 し て居 ると い へ

刑 に処 す る と は何 事 か 、 小弱 の国 民 に対 し て は猛 勇、 露 国 に対 し て

思 想 は必 ず 絶 滅 す る と は考 え て居 るま い、 然 ら ば 、 こ の緊 急 勅 令 を

こと ゝす る に非 ず んば 、 そ の威 力 を 発 揮 す る こと は出 来 ぬ。 法 さ へ

あ ら ん 。殊 に事 の人 心 思 想 に関 す る、 国 民全 体 が これ を無 理 も無 き

かく の如 く に しぞ 、 如 何 な る厳 法 を 制 定 す る も、 何 の権威 か これ

法 の無 権 威

時 の不 し や う 事件 の続 出 を 政府 は何 と見 る か。

刑 に処 す ると 威張 る か、 威 張 つ ても、 か く ては何 の権 威 も 無 く 、近

て、 日常 な す べ き こと もな し得 ず し て、 何 の顔 あ つて か、 国 民 を死

如 何 のと ころ に起 り く る か も知 れ ぬ。 こ の緊 急 勅 令 が か ゝる因 を成

非 経 国 的態 度

す な か ら ん こと を 、 余 は も つ と も これ を憂 ぐす る。

一事 変 を大 こし 、 周章 ら うば いし て、 直 に強 圧 手段 に出 づ る が如 き は、 も つとも低 級 な る や り方 であ つて、 余 は切 に政 府 に経 国 の見

出 だ し て、 自 ら甘 ん じ自 ら欺 き 、 これ で い いと い つ て居 る の は、 政

あ れ ば行 は る ゝと い ふが如 き は、 東 洋 の思 想 に お い て、 特 に これを

識 を懐 く 人 な き を 惜 む。 政 府 者 と い へど も死 刑 法 を制 定 す れば 危 険

て﹂ など い ふ如 き寝 言 の如 き こと は い は ぬ が、 政府 は果 し て そ の用

治 家 とし ても つと も自 信 な き 態 度 であ る。 余 は ﹁思想 は思 想 を も つ

排 斥 し て を る、 古 の名 臣 のな さざ る所 であ る。

き 策 動 を 力 説 し て居 る。実 にそ のい ふ が如 く露 国 が本 源 であ る。然

計 らな か つた かと いふ質問 に対 し て通過 の見 込 が な か つ た から と い

ば な ら ぬ こと であ る。政 府 は何 故 に議会 を延 長 し て、 法 律 の通 過 を

は ぬ が、 国 民 を し て諒 解 会 得 せ し む る こと は、 政 治家 の力 め な け れ

輿 論 は明 か に緊 急 勅令 に反 対 し てを る、 何 も 俗論 に こび よと は い

意 と手 段 と にお いて、 尽 く す べ き こと を尽 く し て居 る か。

ら ば 、 政 府 は そ の本 源 に対 し て何 をな し つゝあ る か、 露 国 は 始 め か

つ て ゐ る。 又次 の議会 に お い て不 承諾 と な る こと も確 実 に見 ゆ る、

司 法 大 臣 は緊急 勅 令 の理 由 を説 明 し て、 露 国 国 際共 産 党 の恐 るべ

ら 世 界 革命 を 国是 と し て居 る も ので あ る、 これ と国 交 を 結 ん だ のが

に宣 伝 し て居 る。 か く、 政 府 自 ら緊 急 勅 令 の価値 なき こと を 認 め て

政 府 も これ を 見 込 ん で、 不 承 諾 の場合 に は、 前 法 は復 活 す ると 盛 ん

居 て、 法 に何 の権 威 あ る べき 、 政府 の言 動 は事 理 の弁 別 さ へも 欠 い

てを ら ぬ では な い か。今 回 の共 産 党 事 件 と い へど も、 皆 露 国 の策 動 であ る こと は、 政 府 者 の口 を極 め て声 言 す る所 で あ る。 それ な らば 、

頭 から 間違 ひで あ つた 、赤 化宣 伝 はせ ぬ と いふ約 束 は、 一も守 ら れ

何 故 に露国 と国 交 を 断絶 せ ぬ か、 それ も 、出 来 得 な い で、 国 民 を死

す る、 日本 国 民 は仮 令 一時 の間違 ひ は あ つ ても、 結 局 国 体 に反 逆 す

国 山 川 に あま ね き を期 し、 化 育 か ん養 、 断 じ て 一人 も不 て い の徒 な

こと は断 じ てな い。 余 は政 府 が何 故 に こ の際 熱 誠 をも つ て恩 徳 の全

る が如 き 者 は を ら ぬ、二 三 の例外 は あ つ ても 、 そ れ が大 勢 力 を成 す

議 会 を無 視 す れ ば、 法 の威 力 を減 ず る こと 、 深 く 考 へな け れば な

議 会 無視

ら ぬ。 政府 近 来 の出 処 行動 、 総 て皆 、議 会 の閉 会 中 にな ん でも や つ

から し め ん と いは ざ る や を怪 し む者 で あ る。 余 は緊 急 勅 令 の発 布 が

て居 る。

つけ ると い ふ が如 く に見 ゆ る のを惜 む 。緊 急 勅 令 が議 会 を 通過 す る

反 対 の結 果 を 生 ぜ ん こと を恐 れ、 特 に こ の点 を憂 ぐす る。

な い、議 会 の協 賛 によ り法 律 を制 定 し、 大 臣 の責 任 を 議 会 にた だ さ

抑 も 、 我憲 法 の大権 中 心と い ふ のは 、議 会 を無 視 せよ と いふ事 では

非 常 に心 配 は し て居 る、 し かしな が ら、 二 十前 後 の学 生 が か ゝ る過

件 に は、 学 生 の連累 す る者 少 から ぬ と聞 き 、 ま た大 学 内 の暴 状 にも

れ を余 の取 扱 ひを る青 年 学 生 に つい て い ふな らば 、 今 回 の共産 党 事

か く いは ゞ、 人 あ る ひ は楽 観 に過 ぐ と いは ん 。然 れど も 、余 は こ

見 込 な しと し 、 そ の通 過 に努 力 せず 、 議 会 の召 集 も せ ん と せず 、 不

し む る、 これ き ん定 の思 召 であ る。 議 会 を無 視 し 、 政 権 を政 府 に私

失 に陥 る のは 、 血気 のいま だ 定 ま らざ る、多 く は真 に 一時 的 の事 で

承諾 と知 り つ つ緊 急勅 令 を だ す と いふ のは、 極 度 の議 会無 視 であ る。

し て、 大 権 にし や 口す る が如 き は、 飛 ん で もな き はき違 ひ であ つ て、

あ る、 これ を悪 む よ り も、 これ を憐 れ み、 これ を罰 す る よ りも 、 こ

れを 教 へな け れば な ら ぬと考 へて居 る 。青 年 一時 の挙 そ を見 て、 そ

これ を こそ 寧 ろ 国体 の本 義 に反 す る も のと 断 定 し な け れ ば なら ぬ。 皇恩至仁

何等 の施 設 を も し て を らぬ こと を奇 怪 な り と す る、徳 沢 の行 き わ た

く 民 に お よ ぶ こと を期 せな け れ ば な ら ぬ。 余 は政 府 が これ がた め に

そ 止 し な けれ ば な ら ぬ と信 ず る。

ら る ゝが如 き は、 絶 大 の恨 事 。 余等 は涙 を も つ ても 、 か か る法令 は

出 来 ぬ と思 ふ。 青 年学 生中 も し却 つ て共産 党 に雷 同 し、 死 刑 に処 せ

指 導 の任 に あ る者 の能 事了 れ り、 職責 尽 せ りと 安 んじ て居 る こと は

の額 上 に 反逆 人 の焼 き 印 を を し、 一生 社会 の退 け 者 と し て しま つ て、

る こと に努 力 す る な く、 直 に死刑 を も つてき ん首 に臨 ま んと す る は、

いや しく も 聖 明 を輔 ひ つす る の大 任 に を る者 は 、 至 仁 の皇 恩 、普

果 し て献 替 の責 を尽 す と な し得 る で あら う か 。 余 は同 胞 と共 に確 信

一四  各 庁 府 県 当 局 の 治 安 維 持 法 改 正 意 見 (一 九三三)

各 庁府 県 当 局 の治安 維 持法 改 正意 見

を網 罷 し 之 に対 す る処 罰 規 定 を 設 く る こと

思 想 犯 罪 専 管 の特 別 裁 判 所 を 設 く る こと(

今3 回)の治 安 維持 法 改 正 法律 案 に於 て採 択 せら る ゝに至 ら ざ り し 意見

(ニ)

和 三年 に 一部 改 正 さ れ て今 日 に及 ん で ゐる が、 同 法 実 施 の経験 及 現

に限 る旨 を 明 定 す る こと

(イ )

前 述 の如 く 現 行 治安 維 持法 は大 正 十 四年 の制 定 に係 り、 其 の後 昭

下 の実 際 運 動 の情 勢 に鑑 み、 仍 ほ不 備 の点無 しと せず 、 之 が再 改 正

思 想 犯 取 締 専 従事 務 官 及警 視 に対 し検 事 に準 じ て捜 査 上 の検

司 法 警 察 官 吏 の捜 索 、 押 収 に関 す る権 能 を拡 大 す る こと

私 有 財 産 制 度否 認 に関 す る犯 罪 は不 法 手 段 に依 る否 認 の場 合

の必要 を 痛 感 す るに至 つた。 由 つて内 務省 当局 は、 昭 和 八年 四月 一 日 付内 務 省 発 警 第 三十 二号 通 牒 ﹃警 察 部長 会 議 諮 問 事 項 ニ関 ス ル

( ) ロ

( ホ)

( ニ)

審 級 制 度 を 改 め 一審 又 は 二審 制 と す る こと

起 訴 手 続 を 簡易 化 す る こと

能 を拡 大 す る こと

(ハ)

の答申 要 旨 を摘 記 す れ ば 次 の如 く で あ つた 。

件﹄ を以 て、 先 づ 各 庁府 県 当 局 の改 正 意 見 を徴 し た の であ る が、 其

今 回 の治 安 維 持 法改 正法 律 案 に於 て採 択 せ ら る ゝ に至 り た る意

宣告 猶 予制 度 を採 用 す る こと

司 法 警 察 官 の意 見書 を裁 判 上 有 権的 な らし む る こと

見

( 1)

( ヘ)

不 定 期 刑制 度 を採 用 す る こと

(ト)

刑 の執 行 猶 予制 度 を拡 張 す る こと

所 謂 外 廓 団 体 に対 す る処 罰規 定 を設 く る こと

刑 の種 類 とし て資 格 喪 失 、 資 格 停 止 及流 刑 を加 ふ る こと

(ロ)

イ) ( 国 体 変 革 に関 す る 罪 の刑 を重 化 す る こと

(リ)

(チ)

(ヌ)

被 疑者 の勾引 及 勾 留 等 に関 し特 別 規 定 を設 く る こと 起 訴 猶 予 、留 保 処 分 、 執 行 猶 予等 を受 けた る者及 刑 余 者 に対 し て再 犯 防 止 の制 度 を 確 立 す る こと

刑 の最 上限 の みを 規定 す る こと

得 め、 昭 和 八年 九 月 十 四日 左案 を決 議 し、 翌 十 五 日 の閣 議 に 報告 の

進 を て、 該委 員 会 に提 出 し た が、 委 員 会 では之 を 基 礎 と し て審 議 を

前 示各 庁 府県 当 局 の意 見等 を参 酌 し、 思 想 取締 方 策 を 協 議 の上成 案

其 の後 思 想 対策 委 員 会 の開 設 を見 る に及 び、内 務 司 法両 省 で は、

思 想 対 策委 員 会 決 議 ﹃思 想取 締 方 策 具 体案 ﹄

( ル)

(ハ) ( ニ)

共 産 主 義 運 動 取締 関 係 諸 法 規 (治安 維 持 法 、 治 安警 察 法 、 出

(2 ) 今 回 の治 安 維 持法 改 正 法 律 案 に於 て其 の趣 旨 の 一部 を採 択 せ ら る ゝに至 り た る意 見 (イ)

版 法 、 新 聞 紙法 、 刑 事 訴 訟 法 等 ) を統 一し て特 別法 規 を制 定 す る こと ( ロ) 国 体 変 革 に関 す る罪 と私 有 財 産制 度 否 認 に関 す る罪 と を分 離 し て別 条 若 は別 法 に規 定 し、 又は 後者 を全 廃 す る こと ( ) ハ 共 産 主 義 の宣 伝 其 の他 共 産 主 義 実 現 の為 め にす る 一切 の運 動

上 其 の承 諾 を得 た 。 ( ○ 印 を附 し た る項 目 は何 れ も治 安 維 持 法 の 改

︹ 民政党教育思想対策委員会 ・昭和八年七月︺

(

﹃現 代史 資 料 ﹄ 四 二 巻 を み よ。

正 に関 す る事 項 であ る。) ︹以 下省 略 、思 想 対 策 委 員 会 決議 は︺

こと

格 試 験 制 度 の改 善 を計 る こと (D) 人 物 採 用 の公 正 を 期 す る

弊 を矯 む る こと (B) 教 育 の機 会 を均等 に す る こと (C) 資

(A) 社 会 的特 権 に基 く各 般 の選 挙 制 度 を改 正し 階 級的 選 挙 の

(イ) 各 種 特 権 の是 正

一五  民 政 党 ﹁思 想 対 策 要 綱 ﹂(一九三三)

思 想 対策 要綱

今 日我 国 の社 会思 想 は中 庸 公 正 の道 を逸 脱 し て左 右 い づ れか の極 端 に走 ら ん と す る傾 向 を 有 す、 おも ふ に国 体 及 び国 家 を 無視 す る左

(ロ) 選 挙 界 の廓 清

選 挙 法 の改 正、 取 締 の励 行 、 政 治教 育 の普 及等 によ り 公 正な る

翼思 想 が国 民 一般 の根 本概 念 に全 然 背 馳 す る も のな る こと は素 よ り 説 明 す るを 要 せず と い へど も いはゆ る 日本 主義 に仮 託 し て現在 機 構

選 挙 を行 は し む る こと (ハ) 賞 罰 の公 正

の変 革 を企 図 す る極 右 の思 想 及 び行 動 も 又 吾 人 の許 容 し 得 ざ る も の

こと (B) 刑 罰 の適 用 に関 し て は徒 ら に法 文 の形式 末 節 に 拘

(A) 国 家 恩賞 の官 吏 偏 重 を避 け、 あ ま ね く他 に及 ぼ さ しむ る

な る こと は論 を ま たず 、 これ等 国 法 を 無視 す る矯 激 の言 動 に対 し取 締 の方 法 を講 ず べ き はも ち ろ んな るも 更 にさ か のぼ つ て こ の社 会 不

(イ) 失業 の防 止及 び救 済

(一) 国 民 の経 済 生活 の安 定 を期 す る こと

二、 社会 政策 の徹 底

者 に対 し て抑 制 の方 法 を 講 ず る こと

(ニ) 権 利 及 び権 力 の行使 又 は不 行 使 によ り社 会 正義 に背 反 す る

泥 せず 法 の本旨 た る社 会 正 義 の徹 底 を 期 す る こと

安 の拠 つ て来 る所 以 の素 地 を仔 細 に点 検 し 、 これ等 言 動 に対 し防遏 と匡 治 の徹 底 的 方策 を樹 つると共 に、 国 体 及 び 国家 に対 す る国 民 の

せ る理 解 を 増進 せ し む る こと は焦 眉 の急 務 な り と す、 然 し て これ が

認 議 と 自 負 を 一層 深 化 せ し め、 我 国 特 有 の精 神 文 化 に つ い て の透 徹

対策 とし ては 種 々あ る も左 記 の諸 項 目 は そ の中 に お い ても つと も重 要 な りと 認 む 。 一、 社会 正義 の強 調

人 口問 題 の解 決 と産 業 の振 興 によ り失 業 防 止 の恒 久的 対 策 を講

め 、 失業 者 の共 済 制 度及 び授 職 事 業 を盛 んな ら し む る こと

ず ると共 に、 救済 制 度 の改 善 によ り知 識 的 求 職 者 過 剰 の弊 を矯

(ロ) 医 療制 度 の社 会 化 健 康 保険 制 度 の改 正 、組 合 又 は公営 の医療 機 関 の整 備 等 に よ り 一般 大衆 の医療 並 に保 健 に資 せし む る こと (ハ) 人 口問 題 対 策 主 と し て A海 外 移 民 と B内 地開 墾 と を奨 励 す る こと (ニ) 産 業 の統 制 産 業 統 制 の目的 と し て生 産 費 の低 減 不 当 競 争 の防 止 等 ある も特 に生 産 者 と消 費 者 の利 害 調 節 を重 点 と し て統 制 を なす こと

電 気 、水 道 、 瓦 斯 そ の他 公 益的 施 設 の国営 又 は公 営 によ り 独占

(ホ) 独 占的 公 益 事 業 の国 営 又 は公 営

資 本 の弊 を防 止 し国 民 の福祉 増 進 に寄 与 す る こと (二) 社 会 的協 調融 和 に関 す る こと (イ) 分 配 の公 正 (A) 税 制 を改 革 し て負 担 の公 正 と過 当 利得 の抑 制 を 計 る こと (B) 会 社法 、 利 息 制 限 法 の改 正 に給 与 及 び利 潤 分 配 の公 正 を 期 す る こと

の合 理 化 を計 る こと

会議 並 に指 導 階 級 の言 動 の社会 風 致 に及 ぼ す影 響 の甚 大な る に

(ハ) 議 会 並 に指 導 階 級 の言 行振 粛

省 みそ の言 行 に対 す る責 任 感 を喚 起 す ると 共 に 一般 言論 機 関 の 自 重 を 促 が す こと (ニ) 貴 族 並 に富 豪 の社 会 奉 仕

が し、 文 化 事業 及 び社 会 事 業 に対 す る熱 意 と関 心 を喚 起 す る こ

上 層 階 級 のそ の地 位 、富 及 び企 業 等 の公 共性 に関 す る自 覚 を促

と 三、 国 民思 想 の調 整 (イ) 国 史 研 究 の奨 励

を深 化 せ し む べ き国 史 の知 識 を 一層 普 及 せ し む る こと

君 民 一致 に基 く無 比 の我 が国 体 に つい て の国 民 の認 識 及 び衿 持

(ロ) 教 育 の改 善

く こと

智 育 偏 重 の教 育 を改 革 し 、 人格 の陶 冶 と情 操 の涵 養 に重点 を 置

矯 激 な る左 右 両翼 の思 想 に対 抗 す る がた め に国 民 の批判 力 を養

(ハ) 矯 激 思 想 の批 判

成 し、 思 想 を 以 て思 想 を 克 服 す る こと

健 全 な る宗 教 、教 化 並 に青 年 運動 を奨 励 振 作 し、 以 て国 民精 神

(ニ) 精 神 生 活 の向 上

(A) 労 働 団体 を法 認 し 、 労資 代 表 会 議 又は産 業 委 員 会 等 の設

(ロ) 労 資 並 に小 作 関 係 の統 制

の作 興 、 社 会 民風 の醇 化 に努 力 せ し む る こと

(一) 社 会 省 の設 置 に よ り錯 雑 せ る社会 事 象 の推移 に順 応 し て国 家

四、 機 関 の整 備

置 に より 労資 間 の調 和 を 計 り産 業 平 和 を 期 す る こ と (B) 農

ら し め、 小 作 人 団 体 の法 認 、 農業 委 員 会 の設 置 によ り 小作条 件

村 に あり ては 小作 法 を制 定 し て地主 及 び小作 人 の権 義 を明確 な

す べき 数 個 の対 案 を掲 げ た り

の目標 に就 き 、 調 査検 討 を 重 ね 、其 内 茲 に は当 面 の急 務 と し て実 行

家 に奉 仕 し 得 る や

(三) 如 何 にし て国 民 の不 安 を 除去 し、 楽 ん で生業 に安 ん じ、 国

(二) 如 何 にし て国 民 の思 想 自 体 を指導 し 得 る や

(一) 如 何 にし て社 会 秩 序 を 維持 し得 る や

当 ては

策 を立 つる こと は至 難 寧 ろ 不 可能 と言 ふ可 し 、故 に本 問題 の立 案 に

﹁思 想 対 策 要 綱 ﹂(一 九三三)

の統 一的 立脚 点 よ り社 会問 題 の徹 底 的 解決 を期 す る こと

一六  政 友 会

思 想 対策 要 綱 ︹政友会思想研究特別調査会 ・昭和八年十 二月十六日付︺

第一 、 思 想 問 題 の目 標 思 想 対 策 に於 て従 来其 の対象 とな れる も のは左 傾 思 想 な り、 然 る

思 想 を対 象 と せ ざ る可 らず 、而 し て現 時 各 階 級 を通 じ て国 民 を蔽 ふ

に最 近 本 問 題 を究 明 し て其 の対 策 を検 討 す る に当 て は、 左 右 両翼 の

社 会 的 不 安 は実 に思 想 問 題 な り と す 、如 何 な る努 力 を以 てし ても 先

第 二、 思 想 問 題 の原 因

(ろ) 中産 階 級 没落 の傾 向

(い) 社 会 に於 け る貧 富 懸 隔 の増 大

(一) 社 会的 原 因

を避 け 、概 括 的 に抽 象 的文 字 を以 て之 を記 述 す

種 類 は各 方面 に当 り て多面 多 岐 な り 、 茲 に は 一々之 を掲 ぐ る の煩瑣

す 、 而 し て其 の原 因 には積 極 的 原 因 あ り、 消 極 的 原因 あ り、 又其 の

即 ち 思 想 対策 な り、故 に対 策 を立 つ るに 当 て 一応 原因 を究 む るを 要

思 想 問 題発 生 の原因 を探 究 し、 之 を 補 正 し、 之 を改 善 す る こと が

づ此 の問 題 を 解 決 し、 国 民 思 想 の根柢 を陰 惨 よ り 光明 に導 かざ る べ から ず 、 然 れ ど も思 想 問 題 は (一) 本 来 絶 体自 由 の境 地 に在 て 、形 式 的 に統 制 す る の不 可 能 な る こと (二) 社 会 の各 方面 、 各 階 級 と 密接 不 離 の関 係 に在 て、 複 雑 多岐 、 単 一に処 理 す る の不 可 能 な る こと (三) 世界 の変遷 、 国 内 の推 移 に対 応 し て、新 陳 代 謝 の急 激 な る こと 等 の事 情 あ り、 故 に他 の諸 般国 策 の如 く 、 一部 に限 定 し て統 一的 対

( は) 資 本主義発展 に伴ふ労働問題、 小作問題 の激化

(り) 行 政 官 吏 の民衆 に対す る諒 解 の不足 (四) 教 育 的原 因

(い) 国 情 に適 せ ざ る現 行 教 育制 度 の欠 陥

(ろ) 学 校、 家 庭 及 び社 会 に於 け る功 利 主義 教育 観 の弊竇

(い) 外来 思 想 の盲 目的 摸 倣

(へ) 教 育 の大量 生 産 に依 る個 性教 育 の不 能 、竝 に訓 育 の不足

(ほ) 創 造 力 及 び批 判 力 を 誘 導 す べ き教 育 方法 の欠 如

(に) 知 識 に偏 重 し、 情 操 、 意 志 の陶 冶 訓 練 の不 十 分

(は) 人 生 観 、 社会 観竝 に人 格 教育 の欠 如

( ろ) 自 然科 学 的 見 地 の誤 用

(と) 教 師 の、教 育 者 と し て の識見 及 び修 養 の不十 分

精 神 問 題 の閑 却

(に) 就職 の不安︱ 失業者 の激増 (ほ) 物質 偏 重 の傾 向︱ (へ) 綱紀 の弛 廃

( は ) 偏 狭固陋 の誤 れ る国 家 主 義 の濫 用

( 二) 思 想的 原 因

(に) 社 会相 関 の指 導 原 理 の閑 却

(ち) 家 庭 及 び社会 に於 け る宗 教 の閑 却 、竝 に道 徳 の形 式 化

思想 的 原 因

社会 的 原 因

第 二 に掲 げ た る思 想問 題 の原 因 、 即 ち

第 三、 思 想問 題 の対 策

(ほ) 立身 出 世 主 義 の誤謬 (へ) 新 聞、 雑 誌 記事 の傾 向 ( と ) 東 洋文 化 、 殊 に我国 固 有 文 化 の研究 の不 振

政 治的 原 因

(三) 政 治 的原 因 (い) 国 民 の、 憲 法 を 至 上命 令 とす る意 識 の不足

教育 的 原 因

(ろ) 民衆 の、 議会 政 治 に対 す る諒 解 の不 足 多 数 の同 意 の下 に決 定

を仔 細 に検 討 し、 そ れよ り来 る弊 害 、竝 に在来 の欠 陥 を補 正 改 善 す

(は) 立 憲 自 治 の生 活 は、 議 会主 義 ︱

る を 以 て、 思 想対 策 の要 諦 とす 、 而 し て此 等多 方 面 に渉 る各 種 の立

に依 り 運 用 さ る ゝと 言 ふ、家 庭 、 学

す べき も のを言 ふ︱

当 面 直 接 の思 想 対策

即 ち 左 の如 し

を声 明 し、 只 範 囲 を 限定 し て、 最 も直 接 的 当 面的 の対 策 要 綱 を掲 ぐ 、

完 全 な る帰 結 と な らざ る こと

思 想 対 策 は此等 諸 般 の改 善 行 は るゝ に非 ず んば 、 思 想 問題 対 策 の

案 は、 夫 々他 の調 査 部 門 に属 す る を以 て之 を譲 り、茲 には

校 及 び社 会 に於 け る思 想涵 養 の不足 (に) 革命 主義 、 独 裁 主義 の誤 れ る政 治 思 想 の伝 播 (ほ) 言論 自 由 主 義 思 想 の不足

言 論 を抑 圧 し、 国 家 と 国 民と の間 を 離 隔 す る傾 向

(へ) 単 純 な る、 国 民 の国 家 主義 思 想 を 巧 に利 用 し て、 濫 り に

(と) 政 治 に対 す る不 満 (ち) 政 界 浄 化 の不徹 底

留 意 スベ キ モノト ス

の明文 に基 き 、其 紀 綱 を明 にす る は当 然 な り、須 らく 厳 に国 家 の

第 一、 社 会 の指 導 的 地位 に在 る学 界竝 に言 論 界 の各 機 関 に諮 り、常 に密 接 な る連 絡 を保 ち 、之 に依 て我 国 独自 性 の自 覚 と、 民族 的 精

統 制力 を之 に及 ぼし て、 大 学 存 立 の本 義 に副 は しむ べき こと

る明 瞭 な る認 識な り、 各 社 会 の指 導 階 級 は 、此 の政 体 の表徴 し た

第 二、 国 民 生活 に於 て最 も 重要 な る は、 国体 観 念 に次 で政 体 に対 す

を施 し 、 国体 観 念 を中 心 と す る批 判 力 と創 造 力 と を涵 養 し 、 且 つ

し 、 知 識 偏 重 の弊 を去 り て、 人 格 教 育 及 び人 生観 、 社 会 観 の教育

者竝 に 一般 国 民 に対 し て、 教 育 に対 す る従 来 の功 利 的 見 解 を是 正

第 六 、教 育 の内 容 と制 度 と に、 英 断 を 以 て 一大 革新 を速 行 し 、教 育

る議 会 政 治 の現 状 に対 し 、 忌憚 な き 批 評 を加 ふ ると 共 に、 一部 の

準 備 教育 、 画 一教育 の痛 弊 を 改 め 、 社 会 の実 生 活 に適 合 す る教育

て国 民 を し て其 の嚮 ふ所 を知 らし む る こと

神 の把持 と を高 調 し 、常 識 的 に国 民 生 活 の指 導 原 理 を 示唆 し、 以

国 民 が其 の本 体 と其 の本 体 よ り派 生 す る弊害 と を混 同 す る傾 向 あ

を実 現 し て、 勤 労実 践 の気 風 を訓 練 し 、之 と共 に大衆 青 年 教育 の

︹マ マ ︺

(教 育 改革 に関 し ては 別 に ﹃教 育 改 革 要 綱﹄ の成 案 あ り)

体 系 を 整 へて、 之 を普 及す る こと

る を指 摘 し 、 国 民 を し て適 正 の判 断 力 を養 は しむ る様 進 努 む る こ と

権 威 を 失 墜 す る こと 甚 し、 又童 話 、 神 話 、偉 人 貞 婦 談竝 に節 句 、

第 七、 我 国 民 の現 状 は 、 家庭 教 育 即 ち 我 国 伝統 の美 風 た る ﹃躾 ﹄ の

第 三、 各 社 会 上 層階 級 の根 本 的 反省 を促 進 し て、 現 在 の社 会 に於 け る欠 陥 を其 部 分其 部 分 に於 て自 発的 に改 善 し、 社 会 相 関 の指導 原

誕 生 、 敬 老 の習慣 等 、 通俗 的 国 民 精 神 文 化 の各 命 題 が家 庭 より離

理 を忠 実 に体 得 し、 共 存 共 栄 の精 神 に立 脚 し て、 各 方 面 の施 設 に 社会 政 策 的 実 現 を期 す る こと

主 義 の国 情 に鑑 み て大 に省 察 す べき 要 件 な り、 須 ら く此 際 全 国婦

却 し 、 今 や 家庭 は情 操 な き競 争 場 と な り つ ゝあ る の観 あ り、 家 族

(一) 国 体観 念 の理 論 的闡 明 、東 洋 文 化 の研究 、 (二)全 国 師範 学

しむ べし 、 此 れ が為 に特 に徳 行 あ り輿 望 あ る教 育 家 、宗 教 家 と 連

人 に 国 民 的総 動 員 を 行 ひ、 家 庭 教 育 ﹃躾 ﹄ の復 興 の全責 任 を負 は

第 四、 国 民精 神 文 化 研 究 ︹所 ︺ ( 文 部 省 所 管 昭和 七年 十 月 開 設 ) は、

く内 容 の充 実 と、 規 模 の拡 張 と を 計 る べき こと

設 く る こと

絡す る の要 あ るべし 、 而 し て国 家 或 は自 治 体 は此 れ が統 制 機 関 を

校 教 諭 の指 導 訓 練 、 ( 三 ) 赤 化学 生 の陶 冶 鍛錬 を目 的 と す 、 須 ら

を藉 り て国 家 存立 の基 礎 、竝 に社 会 組 織 に対 し 、放 縦 奇 矯 の言 説

第 五、 近 時各 帝 国大 学 を始 め 官 公 私 立大 学 に於 て、 学問 の自 由 に名

を唱 ふ るも の頻 々と し て輩 出 す、 抑 々各 自 研究 の自 由 と、 意 志 の

養 す べし 、 併 せ て唯 物 万能 の余弊 た る宗 教 排 除 の社 会 の現 状 に 一

下 に 一般 国 民 の智 能 を啓 発 す る と共 に、 国 民 の信 念 と情 操 とを涵

第 八、 社 会 教 育 を普 及 し 、学 校教 育 と連 絡 し て、 一貫 の指 導 原 理 の

大 学 ハ国 家 ニ須 要 ナ ル学 術 ノ理論 及 応 用 ヲ教 授 シ竝ニ 其 ノ蘊 奥

転 向 を施 し 、 宗 教的 精 神 を鼓 吹 し て、 人 格 の陶冶 と国 民精 神 の発

発表 と は自 ら 別 な り、 大 学 は大 学令 第 一条

ヲ攻 究 スル ヲ以 テ目 的 ト シ兼 テ人格 ノ陶 冶 及 国 家思 想 ノ涵 養 ニ

に 郷 土観 念 を強 張 し 、各 自 の町 村 を真 に各 自 の物 た ら しむ る思 想

第 九、 今 日 の市 町村 は単 に行 政 区 画 の観 な き に非 ず 、須 ら く各 町 村

第 十 一、社 会 局 を分 離 し て独 立 の機 関 とし 、 各種 の社 会 立 法 、労 働

る こと (現 在 の職業 紹介 所 の如 き に て は甚 だ 不満 足 不 徹 底 な り)

神 労働 共) を計 るべ し、 或 は之 れ に国 家 の統 制力 を加 ふ る の要 あ

計 り 、常 に失 業 問 題 の専門 的 研 究、竝 に労 働 調節 (筋 肉 労 働、 精

業 者 と を分 類 し、産 業 の調 査 及 び産 業 各 機 関 と の密 接 な る連絡 を

を養 成 す べ し、 此 が 為 に各 市 町 村 に ( 或 は数 町 村 聯合 の下 に) 科

揮 と に資 せし む る こと

学 館 を設 置 し、 之 を 以 て博 物 館 、 図 書館 、 武 道 館 、体 育 館 、 農 工

る各 般 の調 査 、 研究竝 に対 策 に任 じ、 又率 先 外国 新 刊 の思想 文 献

政策 、 失 業 調 節 を担 当 し 、 其 内 に思 想 部 を 設 け、 思 想問 題 に関 す

︹マ マ︺

商業 研 究 所 、 精 神 問 題研 究 所 、竝 に演 芸 場 、 映 画館 、 倶 楽 部 、 会

を飜 訳 し、 其 内容 を検 討 す る こと

合 場等 に充 て、 凡 て の社 会 教 育 施 設 の統 制 的 機 関 た ら しめ 、 各 専

右傾 た ると を問 はず 、 危 矯 過激 の行 動 あ るも の は、 速 に適 法 の処

第 十 二、 思 想 運 動 の徹 底 的 取締 は喫 緊 の要 務 な り、 其 の左 傾 た ると

門 の指 導 員 を置 き 、其 中 に は必 ず 学問 徳 望 あ る地 方教 育 家 、宗 教 家 、 竝 に長 老 先 輩 を加 へ、 以 て地 方 の精 神 物質 文 明 の中 心 機 関 た

を期 す べし 、即 ち思 想 運動 取締 は思 想 指導 対 策 と 相 待 て其 の効果

置 を施 す 可 し、 只 其 の取締 に当 て寛 厳 共 に正 鵠 の措 置 を誤 ら ざ る

ら し む べし 、 而 し て其 の設 備 は 華美 壮大 を 避 け 、素 野 簡 撲 の 一小 館 に て足 れ りと す 、 此 の施 設 は自 治 機 関 と す る も、 国 庫 は 之 に相

を挙 ぐ べき こと

当 の補 助 を与 ふべ き こと 第 十、 失 業 問 題 に関 す る機 関 を設 け、 知 識 階 級失 業 者 と 労 働 階級 失

(第 六 十 五 回帝 国 議会 ・ 一九 三 四)

ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ 一年 以 上 十年 以 下 ノ懲役 ニ処 ス

第 六条  第 三 条 ノ目 的 ヲ以 テ騒擾 暴 行 其 ノ他 生命 身 体 又 ハ財 産 ニ害

五年 以下 ノ懲役 ニ処 ス

第 三条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ヲ宣伝 シタ ル者 ハ六 月以 上

以下 ノ懲 役 ニ処 ス

為 シ又 ハ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実行 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ 一年 以 上七 年

第 五条  第 三条 ノ目的 ヲ以 テ其 ノ目的 タ ル事項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ

処ス

一七  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議 録

則

治 安 維 持法 改 正 法 律案 治安維持法 第 一章  通

第 一条  本法 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ付 テ ハ刑事 手 続 其 ノ他 ニ関 シ本 法 ニ別 段 ノ規 定 ア ル場 合 ヲ除 クノ外 一般 ノ例 ニ依 ル

ニ亦 之 ヲ適 用 ス

第 二条  本法 ハ何 人 ヲ問 ハズ 本法 施 行 区 域 外 ニ於 テ罪 ヲ犯 シタ ル者

第 二章  罪 第 三 条  国 体 ヲ変革 ス ル コト ヲ目 的 ト シテ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者 又 ハ

ハ其 ノ他 ノ方法 ヲ以 テ便宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ之 ヲ受 ケ

第 七条  前 四条 ノ罪 を犯 サ シ ム ル コト ヲ目的 ト シ テ金 品 ヲ供 与 シ若

ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者若 ハ結 社 ノ目的 遂行 ノ為

第 八条  私 有 財産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的 ト シテ結 社 ヲ組 織 シタ

タ ル者 ハ五年 以下 ノ懲 役 ニ処 ス

結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導者 タ ル任 務 ニ従事 シタ ル者 ハ死刑 又 ハ無 期 若 ハ七年 以上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 又 ハ結

ニ処 ス

社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ三 年 以 上 ノ有 期 懲 役

者 又 ハ結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従事 シ タ ル者 ハ無期 又

又 ハ禁錮 ニ処 ス

シ又 ハ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ五 年 以 下 ノ懲 役

第 九 条  前 条 ノ目的 ヲ以 テ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為

ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ十年 以下 ノ懲役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

ハ五年 以 上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 又 ハ結 社

第 四条  前 条 ノ結 社 ヲ支援 ス ル コト ヲ目的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ タ ル

ノ目 的 遂行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年 以 上 ノ有 期 懲役 ニ

第 十 条  第 八条 ノ目 的 ヲ以 テ騒擾 暴 行其 ノ他 生命 、身 体 又 ハ財 産 ニ

ス

害 ヲ加 フベ キ犯罪 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ七年 以 下 ノ 懲役 又 ハ禁錮 ニ処

第 十 一条  前 三条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル コト ヲ目 的 ト シテ金 品 ヲ供 与 シ 若 ハ其 ノ他 ノ方法 ヲ以 テ便 宜 ヲ 与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ之 ヲ受 ケ タ ル者 ハ三年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス 第 十 二条  第 三 条、 第 四条 及 第 八条 ノ未 遂 罪 ハ之 ヲ罰 ス 第 十 三条  本 章 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者自 首 シタ ル ト キ ハ其 ノ刑 ヲ減軽 又

ズ

ト思 料 ス ル場 合 ニ限 リ之 ヲ訊 問 スル コト ヲ得

第 十 七 条  前 条 ノ規 定 ニ依 リ勾 留 シ タ ル被 疑 者 ハ検 事特 ニ必 要 アリ

一回 限 之 ヲ更 新 ス ル コト ヲ得

第 十 八条  勾 留 ノ期 間 ハ二月 ト ス特 ニ継続 ノ必 要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ

第 十 九条  勾 留 ノ原 由 消滅 シ其 ノ他 勾留 ヲ継 続 スル ノ必要 ナ シト思

料 スルト キ ハ速 ニ被疑者 ヲ釈 放 スベ シ

第 二十条  刑 事 訴 訟 法 中被 告 人 ノ勾 引 及勾 留 ニ関 ス ル規 定 ハ別段 ノ

規 定 ア ル場 合 ヲ除 ク ノ外本 法 ノ勾 引 及 勾留 ニ付 之 ヲ準 用 ス但 シ保

釈 、責 付及 執 行 停 止 ニ関 ス ル規 定 ハ此 ノ限 ニ在 ラズ

レ タ ル場 合 ニ於 テ検 事 必要 ア リト 認 ム ルト キ ハ事件 ノ繋 属 ス ル裁

第 二十 一条  本 法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ対 ス ル被 告 事 件 公判 ニ付 セラ

第 三章  刑 事 手続

ハ免 除 ス

左 ノ各 号 ノ 一ニ該 当 ス ル場 合 ニ於 テ捜 査 上 必要 アリ ト思 料 ス ルト

ヲ為 ス コト ヲ得 但 シ第 一回公 判 期 日 ノ指 定 ア リ タ ル後 ハ此 ノ限 ニ

判 所 及 移転 先裁 判 所 ニ共通 スル直 近 上級 裁 判 所 ニ管 轄 移 転 ノ請 求

第 十 四条  第 三条 、 第 四条 及 第 八条 ノ罪 ニ該 ル被 疑事 件 ニ付 被 疑 者

キ ハ地 方 裁 判 所 ノ検 事 ハ直 ニ被 疑者 ヲ 勾引 ス ル コト ヲ得

在 ラズ

一 被 疑 者 定 リ タ ル住 居 ヲ有 セザ ルト キ 二  被 疑 者 罪 証 ヲ湮 滅 ス ル虞 ア ルト キ

前 項 ノ請求 ア リ タ ル ト キ ハ決 定 ア ル迄 訴 訟手 続 ヲ停 止 スベ シ 第 四章  保 護 観察

三  被 疑 者 逃 亡 シ タ ルト キ 又 ハ逃 亡 ス ル虞 ア ルト キ

タ ル場 合 又 ハ刑 事 訴 訟 法 第 二 百 七十 九条 ノ規 定 ニ依 リ公 訴 ヲ提 起

第 二十 二条  本 法 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ対 シ刑 ノ執 行 猶 予 ノ言 渡 アリ

四  被 疑 者 変 名 又 ハ偽 名 ヲ使 用 スル疑 ア ルト キ

八 時 間 内 ニ之 ヲ訊 問 スベ シ其 ノ時 間 内 ニ勾 留状 ヲ発 セザ ルト キ ハ

若 ハ送 致 シテ之 ヲ為 ス

ニ引 渡 シ又 ハ寺 院 、 教 会 、 保 護団 体 、 病 院 若 ハ適 当 ナ ル者 ニ委 託

第 二十 三条  保 護 観 察 ハ本 人 ヲ司法 保 護 委 員 ノ観 察 ニ付 シ、 保 護 者

付 ス ル コト ヲ得

セザ ル場 合 ニ於 テ検 事 必要 アリ ト認 ム ルト キ ハ本 人 ヲ保 護 観 察 ニ

第 十 五 条  勾 引 シタ ル被 疑者 ハ指 定 ノ場所 ニ引致 シタ ル時 ヨリ 四十

被 疑 者 ヲ釈 放 スベ シ 第十 六条  第 十 四条 ノ規 定 ニ依 リ被 疑 者 ヲ勾 引 ス ル コト ヲ得 ベ キ原

被 疑 者 ノ勾 留 ハ前条 ノ規 定 ニ依 リ被 疑 者 ヲ訊 問 シタ ル後 ニ非 ザ レ

由 ア ルト キ ハ之 ヲ勾留 スル コト ヲ得

バ之 ヲ為 ス コト ヲ得 ズ但 シ被疑 者 逃亡 シタ ル場 合 ハ此 ノ限 ニ在 ラ

第 二 十 四条  保 護 観 察 ヲ行 フ ニ ハ本人 ノ更 ニ罪 ヲ犯 スノ危 険 ヲ防 止 シ且本 人 ヲ シ テ正業 ニ従 事 セ シ ム ル コト ニ留意 スベ シ 第 二十 五条  司法 保 護 委 員 及 保 護観 察 ニ関 シ必要 ナ ル事 項 ハ勅 令 ヲ

第 五章  予 防 拘 禁

以 テ之 ヲ定 ム

第 二十 六 条  第 三条 又 ハ第 四条 ノ罪 ヲ犯 シ刑 ニ処 セラ レタ ル者 其 ノ

ハ第 四条 ノ罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ルト キ ハ裁 判 所 ハ検 事 ノ

執 行 ヲ終 リ釈 放 セラ ルベ キ場合 ニ於 テ釈 放後 ニ於 テ更 ニ第 三条 又

請 求 ニ因 リ本 人 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 ス 第 二十 七条  前 条 ノ規 定 ニ依 ル予 防拘禁 ノ請 求 ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ管 轄 ス ル地 方裁 判所 ノ検 事 刑 務 委員 会 ノ議 ヲ経書 面 ヲ 以 テ其 ノ裁 判 所 ニ之 ヲ為 スベ シ 前 項 ノ請 求 アリ タ ルト キ ハ裁 判所 ハ本 人 ノ陳述 ヲ聴 キ決 定 ヲ為 ス ベシ 第 二十 八 条  予防 拘 禁 ニ付 ス ル旨 ノ決 定 ニ対 シテ ハ本 人 ヨリ即 時 抗 告 ヲ為 ス コト ヲ得 此 ノ抗 告 ハ裁 判 ノ執 行 ヲ停 止 ス ル効 力 ヲ有 セズ 第 二十 九 条  刑 事 訴 訟 法 中 決 定 及 即時 抗 告 ニ関 ス ル規 定 ハ第 二十 七 条 第 二項 ノ決 定 及 前 条 ノ即 時抗 告 ニ付 之 ヲ準用 ス

タ ル場 所 ニ之 ヲ収 容 シ改悛 セ シ ム ル為 必 要 ナ ル処 置 ヲ為 スベ シ

第 三 十 条  予防 拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者 ハ監 獄内 ノ特 ニ分 界 ヲ設 ケ

第 三十 一条  予 防拘 禁 ノ期 間 ハ二年 ト ス特 ニ必 要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ 裁 判所 ハ之 ヲ更新 ス ル コト ヲ得 第 二十 七条 乃 至第 二十 九 条 ノ規定 ハ前 項 ノ更新 ノ場 合 ニ之 ヲ準 用 ス

刑事 訴 訟 法 中 裁判 ノ執 行 指 揮 ニ関 スル規 定 ハ前 項 ノ執 行 ニ付之 ヲ

第 三 十 二条  予 防拘 禁 ハ刑 ノ執 行終 了 後 引続 キ之 ヲ執 行 ス

準用 ス

ヲ害 スル虞 ア ルト キ其 ノ他 重 大 ナ ル事由 ア ルト キ ハ予防 拘 禁 ノ決

第 三十 三条  予防 拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者其 ノ執 行 ニ因 リ著 シク健 康

定 ヲ為 シ タ ル裁 判 所 ノ検事 又 ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ管 轄 ス ル地方 裁 判

所 ノ検 事 ノ指 揮 ニ依 リ予防 拘 禁 ノ執 行 ヲ停 止 ス ル コト ヲ得

第 三十 四条  予 防拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者 逃 亡 シタ ルト キ ハ検 事 ハ直

ニ逮 捕 状 ヲ発 シ又 ハ司 法警 察官 ヲ シテ之 ヲ発 セ シ ム ル コト ヲ得

刑 事 訴 訟 中 逮 捕状 ニ関 ス ル規 定 ハ前 項 ノ逮 捕 状 ニ付 之 ヲ凖用 ス

タ ルト キ ハ行 政官 聴 ノ処 分 ヲ以 テ退 所 セ シ ムベ シ

第 三十 五条  予 防拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者 収容 後 其 ノ必 要 ナ キ ニ至 リ

前 項 ノ処 分 ヲ為 ス ニ ハ刑 務 委 員 会 ノ議 ヲ経 ベ シ

テ之 ヲ定 ム 則

第 三十 六 条  刑 務委 員 会 及 予 防拘 禁 ニ関 シ必要 ナ ル事 項 ハ勅 令 ヲ以

附

第 三十 七条  本 法施 行 ノ期 日 ハ勅令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム

第 三十 八条  本 法 ハ本 法 施 行 前 従 前 ノ規 定 ニ定 メタ ル罪 ヲ犯 シタ ル

ル刑 ヨリ重 キト キ ハ従 前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル刑 ニ依 リ処断 ス

者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス但 シ改 正 規 定 ニ定 ム ル刑 ガ従 前 ノ規 定 ニ定 メ タ

予防 拘 禁 ニ関 ス ル規 定 ハ従 前 ノ第 一条 第 一項 ノ罪 ニ付本 法 施 行 前

刑 ニ処 セ ラ レ タ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス

第 三十 九 条  本 法 ニ於 テ地 方 裁 判所 ノ検 事 ト ア ル ハ朝 鮮 ニ於 テ ハ地 方 法 院 ノ検 事 ト ス

第 二回

第六十五回帝国議会 治安維持法改 正法律案委員会議録 (速記) 衆 議 院 

第 二 は、 改 正 案 第 四条 の所 謂 外廓 団 体 に対 す る規 定 を 設 け た こと

であ りま す 、 申 上 げ る ま でも な く各 種 の外 廓団 体 に依 る共産 主 義 者

の組織 的 行 動 は、 現 行 治安 維持 法 実施 以後 に現 は れま し た る思 想 犯

の貯 水 池 た る の任 務 に 従事 し つゝあ る の状 況 であ りま し て、是 が為

罪 の新 たな る形 態 であ り ます が、 是 等 の外 廓 団体 は専 ら 日本 共 産 党

に同 党 に対 し て如 何 に 致命 的 検 挙 を加 へま し ても、 其 後 か ら外 廓 団

昭和九年二月七日 (水曜 日)午前十時三十五分開議

体 に依 て勢 力 が補 給 せ ら れ まし て、共 産 党 の更 生 が実 現 され て行 き

目 的 を達 す る が為 には、 独 り同 党 のみ を取 締 の対象 と す る ので は到

ま す こと は、 顕 著 な る事 実 であ り ます 、 即 ち 共産 党 に対 す る防 遏 の

委員氏名 理事 立 川  平

委員長 宮古啓三郎 理事 益谷 秀次  高見 之 通  板野 友造 

理事 藤田 若水 篠原 義政  添田敬 一郎 

安孝 

鈴木  正吾

理事 鈴木

三上 英雄 

理事 松 田竹千代  立川 太郎  松谷与 二郎 

行 の為 にす る行 為 を為 し た る者 ﹂ と規 定 致 し ま し て、結 社 の外 部 に

此 点 に関 しま し て現行 治 安 維 持 法 は其 第 一条 中 に ﹁結 社 の目 的 遂

世耕 弘 一  底 不十 分 で あ る こと が 明 か とな つた のであ り ま す

一松 定吉 

平島 敏夫 

在 る も のに し て結 社 の活 動 を支援 す る も のを も結 社 加 入 者 と同 様 に

処 罰 し得 る途 を 設 け て居 りま す か ら、 外 廓 団体 の行 動 に対 し まし て

それでは是 より治安維持 法改 正法律案 の委員会 を開

○宮古委員 長

も亦 結 社 の目 的 遂 行 の為 にす る行 為 を為 し た る者 とし て、或 る程 度

指 導 者 た る任 務 に従事 し た る者 に対 す る刑 罰 と し て は軽 き に 過ぎ る

ま で の処 罰 が出 来 る ので あり ま す け れど も 、其 組 織 者 又 は役 員 其 他

ば か り では な く 、規 定自 体 から申 しま し ても、 外 廓 団 体 を直 接 の対

が、更 に詳細に亙 つて御説明下 さるならば、 此機会 に於 て御説 明を 願 ひます

象 と し て規 定 し て居 り ま せ ぬ為 に、 思 想 犯 罪 を防 止 す る に付 て遺 憾

きます、本会議 に於 て司法大臣 より提案 の理由 の説明 がありました

の理由は、 本会議 に於 て大体御説明申上げましたが、尚ほ少しく規

○小山 ︹ 松吉︺国務大臣 ︹司法大臣︺ 治安維持法改正法律 案 提 出

と、 私有財産制度を否認 すること を目的 とする犯罪と の規定 を全く

第 一、本案 に於 きまし ては国体 を変革する ことを目的とする犯罪

す る結 社 の例 に傚 ひまし て、支 援 結 社 の組 織 者 及 び之 に匹 敵 す べき

本 案 に於 き ま し ては其 特 別 規定 を設 く ると 共 に、 国 体変 革 を 目 的 と

明 文 の上 に明 か な ら しむ る こと も亦 絶 対 に必要 であり ま す る か ら、

の点 が頗 る多 く あ り ます のみ な らず 、 外 廓 団体 に関 す る処 罰 規 定 を

別条 と致し まし て、又前者 の刑 より禁錮 を削除致した のであります、

主 動 者 に対 し て は、 無 期 刑 を 以 て処 断 し得 る の途 を開 いた の であ り

定 に付 て御説明 を申上げます

即ち懲役刑 になる訳 であります

第 三 は、 改 正 案 第 五条 第 二項 の宣伝 に対 す る規 定 であ りま す、 宣

を決 す る こと は、 極 め て困 難 な る実情 に あ る の であ りま す 、 斯 の如

名 す ら 之 を供 述 しな い者 も あ りま し て、 短 時 日 の間 に其 起 訴 不起 訴

な い の であ りま す 、 甚 し き は検 挙 後 数 十 日 を経 ま し ても 、尚 ほ其 氏

に当 る者 に対 し ては 先 づ偽 名 、 又 は変 名 を用 ひて、 容 易 に実 を告 げ

伝 は煽 動と 共 に結 社 行動 に於 け る欠 く べ か らざ る方 法 と し て重要 な

ます

る意 義 を有 す るも の であ り ます る が、 運 用 の点 を 考 慮致 しま し て、

益 々其 犯 罪 的活 動 を継 続 す るを常 と す る の であ りま す、 随 て 一旦 検

査中 に被 疑 者 の身 柄 を拘 束 致 し ま せ ぬ時 は 、忽 ち 其 所在 を晦 ま し て、

る幾 多 の事由 を具 備 す る に止 らず 、 一般 犯 罪者 と 異 り ま し て、其 捜

く治 安 維 持法 の定 む る結 社 の犯罪 は、 捜 査 を困 難 且 つ長 期 な ら し む

理解 と 共鳴 と を求 め んと す る行 為 であ り ま す る が故 に、斯 る思 想 が

元 来 宣伝 は 一定 の事 項 を 不特 定 又 は多 数 人 に説 明 し 、 且訴 へて其

国 体 変革 の思 想 宣 伝 に限定 致 した の であ り ます

国 民 の脳裡 に浸 潤 致 し ま し て、 遂 に国 体 観 念 を腐 蝕 せ し む る に至 る

こと が絶 対 に必 要 で あ りま す 、 然 るに現 行 刑 事訴 訟 法 の下 に於 き ま

し ては、 検 事 が捜 査 を為 す に付 て、強 制 の処 分 を 必要 と 致 し ます る

挙 致 し まし た 以 上 は、 其 終 局 処 分 を為 す ま で其 身 柄 を拘 束 し て置 く

時 は 、 公訴 の提 起 前 に於 て予 審 判 事 又 は 区裁 判 所 の判事 に請求 致 し

の危 険 な る ことは 、 煽動 と殆 ど軒輊 がな い の であ りま す 、 故 に宣 伝

る も のであ り ま す るな らば 、結 社 の目 的 遂 行 の為 に為 さ れた る場 合

ま し て、僅 に十 日 の期間 を限 つて被 疑者 を勾 留 す る こと を得 る に過

にし て苟 も 国 体変 革 の目 的 を 以 て、 其 目 的 た る事 項 に関 し 為 さ れ た

は勿 論 、個 々 の人 の行 為 と雖 も之 を処 罰 す る の規 定 を設 け ま し た次

る捜 査 上 の必 要 に応ず る こと を得 な い ので あり ま す る か ら、 本案 に

ぎ な い ので あ りま し て、到 底 治 安 維 持法 の定 む る結 社 の犯 罪 に対 す

第 で あ りま す 第 四 は、第 三章 の刑 事 手 続 に関 す る規 定 であ りま す る が、 二箇 の

於 き ま し ては国 体 の変 革 を 目 的 と す る結 社 、及 び其 支援 結 社 、 竝 に

事 項 を包 含 致 し て居 る ので あり ま す、 捜 査 上 検 事 に強制 処 分 権 を 認 め ま し た点 と 、管 轄 移 転 に関 す る規 定 と が そ れ で あり ま す、 御 承知

りま す る被 疑 事 件 に付 て、 捜 査上 必 要 あ る場 合 に於 ては、 地 方裁 判

所 の検 事 に対 し 、 一定 の条 件 の下 に被 疑者 の勾 引 勾 留及 び訊 問 を 為

私 有 財 産制 度 の否 認 を目 的 と す る結 社 に関 す る規 定 の定 む る罪 に当

す こと を得 しむ る こと ゝし た ので あり ま し て、 事 情 洵 に 已 むを 得 ざ

の通 り治 安 維持 法 の被 疑 事 件 に於 き まし て は、 検挙 の度 毎 に被 疑 者

の組 織 的 関 係 を有 し て居 る ので あ りま す から 、 其 関係 を取 調 べ ま し

は相 当 の数 に上 る のが常 であ り ます 、 而 も 其 多 く は相 互 に上 下 左右

た後 でな け れば 、 特 定 の被 疑 者 が如 何 な る組 織 系統 に属 し 、如 何 な

る に出 でた る特 別 な る捜 査 手 続 であ り ま す

為 さし め、 審 理 の迅 速 、 且 つ適 切 を期 す る こと が最 も緊 要 であ り ま

て は、其 罪 質 に顧 み て、 特 に専 門 の部 の設 け あ る裁 判所 を し て之 を

次 は 管轄 移 転 の点 であ り ま す、 本 法 の違 反事 件 の審 理 に付 き ま し

る地 位 、任 務 を有 し 、 更 に如 何 な る経路 に依 つ て、 又如 何 な る目 的

事 情 にあ る の であ りま す 、 殊 に 犯人 の中 には 其 一味 の秘 密 を 厳守 致

の下 に其 犯罪 的 活 動 を為 し た も ので あ るか と 云 ふ こと を、 知 り難 き

し ま し て、 累 を他 に及 ぼ さ ゞら ん こと に専念 致 し まし て、捜 査 の衝

す 、 改 正案 の第 二十 一条 は、 此 主 旨 を規 定 し た る管 轄 移 転 に関 す る

重 要 な る事 案 に付 き ま し ては、 屡 々其 必 要 を痛 感 致 し た の であ り ま

す 、勿 論 簡単 な る事 案 に付 て は其 必 要 を見 な いの で あり ま す る が、

合 に於 て検 事 必 要 あ り と 認 めま し た る時 は、 本人 を 保 護観 察 に付 し 、

法 第 二 百 七十 九 条 の規 定 に依 り まし て、検 事 が公 訴 を提 起 せざ る場

し た る者 に対 し 、 刑 の執 行猶 予 の言 渡 あ り た る場合 、 又 は刑 事 訴 訟

が 必要 で あ りま す か ら 、 本案 に於 き ま し ては、 治 安 維 持法 の罪 を 犯

の目 的 を 達 す る方法 で はあ り ま せ ぬ、 一時 の過誤 よ り思 想 犯 罪 に陥

は起 訴 し た る 犯 人 の悉 く に 重刑 を科 す る こと のみ が、 思 想 犯 罪防 遏

れ て居 る のであ り ま す か ら、 其 主義 を 抛棄 せざ る限 り 、更 に同 質 の

其 主義 は同 時 に手 段 と組 織 と を伴 ひま し て、 是 等 のも のが結 合 化 さ

申 上ぐ る迄 もな く 、矯 激 な る主 義 を 信 奉 し て居 る の であ りま す が 、

第 六 は、 第 五章 の予 防拘 禁 に関 す る規定 で あ りま す、 思 想 犯 人 は

し た ので あ りま す

其 再 犯防 止 に付 て適 当 な る 処置 を執 ら しむ る こと を得 し む る こと ゝ

規 定 であ り ま す 第 五 は 、第 四章 に規 定 し て あ りま す る保護 観察 制 度 に関 す る規 定

つた者 であ り、 且真 に改 過遷 善 の見 込 あ る者 に対 し まし ては 、暫 く

罪 を犯 す の虞 があ る も のと言 はねば な り ま せ ぬ、随 て之 を治 安 維 持

で あり ま す、 思 想犯 罪 に於 き ま し て は、 其 犯 人 の悉 く を起 訴 し、 又

の立 場 から 見 ても、 亦 犯 人 の将 来 に対 す る方 面 か ら見 ま し ても、 適

其 処 分 を 猶 予致 し まし て、更 生 の余 地 を与 へま す ことが 、 刑 事政 策

適 切な る保 護 を 与 へま せぬ け れば 、 改 悛 状 態 を持 続 す る こと が困 難

思 想 犯人 に対 し ま し ては、 刑 罰 制度 の外 に、 之 を補 足 す る制 度 と し

す 、斯 の如 く 思 想 犯 人 の特 殊 性 を考 慮 に置 い て考 へて見 ま す ると、

し て見 ま し ても 、 改悛 を期 待 す る こと を得 な い者 が あ る の であ り ま

法 実施 以来 の行 刑 の実 績 に徴 し て見 ま し ても 、 同法 違 反 の犯 罪者 に

と なり ま し て、 遂 に再 び罪 を 犯 す に至 る の事 例 に乏 しく な い の であ

て、保 安 処 分 を認 む る こと が極 め て必要 で あ りま し て、 現 在 の如 く

し て、 往 々其 抱 懐 せ る矯 激 な る思想 を 抛棄 致 し ま せず し て、 刑 の執

り まし て、 本 人 を し て其 改悛 状 態 を持 続 せし む る が為 には 、如 何 に

何 等改 悛 の情 な き 者 を刑 期満 了 と 同時 に其 儘 釈 放 せ し めま す こと は、

切 な る処 置 であ りま し て、起 訴 猶 予 も、 刑 の執行 猶 予 も 、常 に斯 る

し て も検 事 の補 佐機 関 とし て活動 す る職 員 を必要 とす る の であ り ま

治 安 維持 の為 め甚 だ 危 険 で あ るば か り でな く、 本 人 に於 き ま し ても、

見 地 から 行 は れ て居 る処 分 に外 な ら ぬ の であ り ま す、 併 な が ら従 来

す、 然 る に現 在 是等 の補 佐 機 関 が 現在 制 度 とし て全 く欠 如 し て居 り

却 て改 悛 の機 会 を失 ふ こと にな りま す る か ら、 思 想 犯 人 の矯 正 と 、

し て起 訴 せら れ ま し た事 例 があ り ま す、 現 在 受 刑中 の者 に付 て調 査

ま す る が為 に、 繁劇 な る職 務 に従 事 す る検 事 は、其 方 面 にも 忙殺 さ

行 を受 け終 り其 儘 釈放 せ られ ま し た者 が、 釈放 後 直 ち に再 び罪 を 犯

れ て居 る実 情 であ り ま す、 現 行 制度 と致 し ま し ても、 少 年 法 に於 て

る こと を 必要 と致 し ま す、 即 ち 本案 に於 き まし ては、 治 安 維 持法 の

犯 罪 の予防 の目 的 を 以 て保 安 処 分 と し て、 新 に予 防拘 禁 制 度 を設 く

の実 績 に徴 し ま す る と、 一旦起 訴 猶 予 又 は刑 の執 行 猶 予 の処 分 に付

は 犯罪 少 年 に対 し て保 護 司 制 度 が認 め ら れ て居 り ま す るが 、 思想 犯

し まし ても 、 其 猶 予期 間 中 は 随時 そ れ等 の者 の身 上 の状 況 を 調査 し、

人 に付 て は 一層 強 き 理由 を以 て、速 に保 護 観 察制 度 を確 立 す る こと

期 し ま す る が為 に、 刑 務委 員 会 の制 度 を設 く る こと にし た の であ り

本 人 に対 し て予 防拘 禁 を命 ず る こと を為 す と 共 に、 其 処 分 の適 正 を

す の虞 あ る こと 顕 著 であ りま す る時 は、 裁 判 所 は検 事 の請 求 に因 り、

釈 放 せ ら る べき 場合 に於 き ま し て、 釈 放 後 に於 て更 に是 等 の罪 を 犯

に関 与 し た る に因 り、 刑 に処 せ ら れま し た 者 が 、其 刑 の執 行 を終 り、

罪 を 犯 し た る者 の中 、 国 体 の変 革 を目 的 と す る結 社 又 は其 支 援結 社

云 ふも のは、 憲 法 に基 く 裁判 で あり ま せう 、 此 拘禁 の裁 判 を為 す場

つ て居 る のです 、 此 場 合裁 判 所 が検 事 の請 求 に依 て為 す 所 の決 定 と

と は、私 は是 は如 何 な る性 質 の処分 であら う か と 云 ふ こと の疑 を持

ざ る者 で あり ま す 、之 に対 し て引続 いて二 年間 拘 禁 をす る と 云 ふ こ

ま す 、是 はま だ 罪 を犯 し た者 で はな い、 単 に罪 を犯 す 虞 あ る に過 ぎ

判 所 は検 事 の請 求 に依 つて予 防 拘禁 に付 す る こと が出 来 る のであ り

条 又 は第 四条 の罪 を犯 す の虞 あ る こと が顕著 な る場 合 に於 て は、 裁

へら れ て居 ら な い やう に見 ら れ る の であ り ま す、 又 罪 を犯 す 虞 あ る

る場 合 に於 て被 告 の利 益 を 代表 す る為 に弁 護 人 を附 す る の余 地 が与

以 上述 べ ま し た所 が 改 正 の主 要 な る 点 で あ りま す るが、 大 体 の趣

ます

対 し 、特 に其 取 締 を 徹 底 せ しむ る こと に重 点 を置 き ま し て、 私 有 財

こと を以 て犯罪 で あ ると 云 ふ風 に認 定 せら れ て居 る ので あ りま せ う 、

ま すと 見 え ま せ ぬ、 さう し て此 二年 間 の予防 拘 禁 が 引続 い て為 さ れ

産 制 度 否 認 に関 す る処 罰規 定 に付 ては 、現 行 法 を踏 襲致 し まし た 次

合 に於 て、 刑 事 訴 訟 法 を 準用 せ られ るや う に は、 此規 定 の上 か ら見

第 であ り ま す、 其 他 の諸規 定 は現在 の実 情 に即 し 、 思 想 犯罪 の予 防

又 犯罪 でな いと し たな ら ば 、 何故 に人 権 に 至大 の影 響 あ る 此拘 禁 を

旨 よ り 致 し ま す ると 、 現行 法 治 安維 持 法 中 、 国 体 変 革 に関 す る罪 に

及 び鎮 圧 の作 用 を 一層 効果 的 なら し む る が為 に外 な らぬ の であ りま

さ れ る の であ り ま せう 、 私 は 茲 に憲 法 上 違 反等 の重 大 な る問 題 を 生

れ ば、 国 家 と 致 し ま し て は既 に其刑 の目 的 を 達 し た と云 は な け れば

斯 の如 く国 家 が 犯罪 者 に必 要 な り と し て科 し た る処 の刑 の執 行 を終

ず る憂 はな い ので あ る かと 云 ふ こと を実 は 疑 つて居 る の であ りま す 、

す 、 何卒 慎 重御 詮 議 の上御 協 賛 あ ら ん こと を希 望 致 し ま す 第六十五回帝国議会 治安維持法改正法律案委員会議録 (速記) 衆 議 院  第 四回

革 行 為 者 に対 す る、 予 防拘 禁 の規 定 があ る ので あ り ます が、此 点 に

あり ま す ので、 御 尋 致 し た い のであ り ま す が、 第 五章 に於 て国 体 変

○ 三 上 委員  私 は此 予 防拘 禁 の規 定 と 憲法 の関係 に付 て聊 か疑 問 が

疑 ふ ので あり ま す、 当 局 は果 し て是 等 の点 に付 て如 何様 に御 解 釈 に

し ま し て威 信 を失 は し め る こと にな り は しな いか と 云 ふ こと を 私 は

な い、 延 ては 国 家 の裁 判 に私 は或 る意 味 に於 け る矛盾 、 国 民 よ り 致

ら が初 め言 渡 し て科 し た る所 の刑 罰 の刑 を軽 んじ て、 裁 判 に確 信 が

い期 間 に亙 つ て自 由 を拘 束 す ると 云 ふ こと は、如 何 にも 私 は国家 自

る、而 も僅 の間 な らば 宜 し う ご ざ いま す け れど も 、 二箇 年 と 云 ふ長

な ら ぬ、 然 る に他 面 に於 て尚 ほ引続 き之 を解 放 し な い で拘 禁 を続 け

付 て 一二 の疑 問 を持 つて居 る のです 、 即 ち第 五章 に於 き ま し て は、

昭 和 九年 二月 十 六 日 (金曜 日)

刑 の執 行 を終 り釈 放 せら る べ き場 合 に於 て、 釈 放 後 に於 て更 に第 三

○ 小 山国 務 大 臣  (前略 ) そ れ から 最 後 に 予防 拘 禁 の こと に 付 て の

あります

御 意 見 のや う であ り ます が 、 従来 規 定 のな いも のを設 け る場 合 に、

は注 意 を致 し て居 り ます 、 以 上 の規 定 は憲 法違 反 ぢ やな いか と 云 ふ

を講 じ まし て、不 当 な る結 果 を 生ず る こと のな いやう に、 法 の規 定

条 文 に於 て此 予防 拘 禁 を停 止 し、 又 解除 せし む る と 云 ふ やう な方 法

な つ て居 る か、 又 此 予防 拘 禁 規 定 を 如 何 に 円滑 に運 用 され ん と す る

御 尋 であ り ます が 、 予防 拘 禁 は第 三 条 、 又 は第 四条 の罪 の み に限 つ

何 時 も さう 云 ふ疑 、 又研究 を要 す べ き事 項 を発 生 す る の であ り ます 、

のあ る場 合 に、 取締 上 已 む を 得ず 置 い た規 定 であ りま す から、 後 の

て あ り ま す ので、 政 府 も 此点 は 余 程 注意 致 し まし た、 無 論 外国 の立

為 す、 而 し 是 も出 獄 の間 際 に当 つ て、 さう 云 ふ こと を言 つて居 る者

法例 に倣 つた の であ り ます が、 判 決 を致 し ます 場 合 に、 御言 葉 に あ

併 し 是 が法 律 を 以 て やる の ではな く て、 他 の方 法 でや る ので あ りま

御所 信 が御 有 り であ るか と 云 ふ こと を 、合 せ て私 は御 伺 し た い の で

り ま し た やう に、 四年 な ら 四年 と 云 ふ刑 の言 渡 をし て、 其刑 の執 行

る年 限 間 罪 を 犯す 虞 あ る こと顕 著 な 者 に対 し て、 而 も そ れ が国 体 変

す と 、 是 は憲 法 違 反 と 云 ふ こと にな りま す か ら、 此 規 定 に依 つて或

のな ら ば、 実 質 上 私 は憲法 違 反 にな ら ぬ と思 ふ、 行 政処 分 或 は勅 令

革 を 目 的 と す る不 逞 危 激 な者 に対 し て の み、 予 防 拘 禁 を す ると 云 ふ

を終 つた者 を、 更 に留 め て置 く と 云 ふ こと は、 余 程 重 大 な る 理由 が

裁 判 官 は、 五年 な ら 五年 の刑 を 言 渡 し た な らば 、 此 男 は必ず 共産 主

な け れば 、 国 家 は為 す べき も の では な い ので あ りま す 、 神様 でな い

義 な り、 社 会 主義 な り を止 め るだ ら う と思 つた所 が、出 獄間 際 迄 も 、

を以 て やる と 云 ふ こと であ り ます な ら ば議 論 にな り ま す、 法 律 な ら

を申 上 げ た こと に付 て、 御 不 審 が あ つた やう であ り ます から、 此 機

出 た な らば 大 にや る、 何 処 迄 も 国 体変 革 を企 図 す る運 動 を、 盛 に や

会 に簡 単 に敷衍 し て申 上 げ て置 き ま す、 其 意 味 は 先 日 も申 上 げ まし

ば 憲 法 違反 と 云 ふ議論 は起 ら な いと 思 つ て居 る の であ り ます

と を言 つて居 り まし ても 取締 る方 法 があ る、思 想 運動 者 が さう 云 ふ

た や う に、 今 日 の実 情 から 観 ま し ても、 治 安 維持 法 に規 定 され て居

る と 云 ふ やう な こと を豪 語 す る場 合 に、 其 者 を 如 何 と も す る こと が

こと を豪 語 す る場 合 に於 ては 、 何 と か考 へな け れ ば な ら ぬと 云 ふ見

出 来 な いと 云 ふ のは、 取締 上甚 だ差 支 へる訳 であ り ます 、 是 が竊 盗

地 に立 ち ま し て、 其 罪 を 犯 す の虞 あ る こと顕 著 な る と き はと 、斯 う

り ま す国 体 変 革 と か、 私 有 財 産制 度 の否 認 と 云 ふ やう な 項 目事 項 等

の取締 に付 て、 治 安維 持法 に規定 を為 す べき も の でな いと 云 ふ こと

云 ふ規 定 を置 いた のであ り ま す、 虞 あ る こと顕 著 な る とき は と 云 ふ

を列 べ て、 同 じ 重 さ で只 今 右翼 運 動 のや つて居 り ま す事 柄 を、 此 法

○松本 ︹ 学 ︺ 政 府 委員 ︹ 内 務 省警 保 局長 ︺ 先 日私 が所 謂 右 翼 団 体

の で あ りま す か ら、 御 言葉 のやう に是 は 刑 では な い、 保 安 処 分 と し

犯 と か、 詐 欺 犯 と か 云 ふ やう な者 であ りま し た な ら ば、 さう 云 ふ こ

て の予 防 拘 禁 であ りま す 、保 安 処 分 の性 質 上、 法 廷 を開 い て弁 論 を

ので あ りま し て、所 謂 右 翼 団 体 の実 際 運 動 が 、治 安 維 持 法 に触 れ る

律 に規 定 す ると 云 ふ こと は 、其 必 要 がな い、 斯 う 云 ふ こと を申 し た

やう な 場 合 に於 きま し ては 無論 治 安 維 持 法 の適用 を受 け る こと は当

す ると 云 ふ手 続 を取 ら な い ので あ りま す 、本 人 の意 見 は 聴 く こと に な つて居 り ま す、 本 人 の陳 述 を聴 き ま し た、 而 し て決 定 を 以 て之 を

な場 合 に於 て は、 此 法律 を適 用 され る こと にな る の であ り ます 、 一

と に付 き ま し ては 、査 察 内 偵 を十分 に致 し まし て、之 に触 れ る やう

ます 、 其 右翼 団 体 の行 動 が 、 治安 維 持 法 に触 れ る か どう か と云 ふ こ

然 だ と思 つて居 りま す、 只今 司法 大 臣 か ら御 話 の通 りと 思 つて 居 り

今 現 に合 法 関 係 と し て認 め ら れ て居 る所 の消 費組 合 に理事 か何 か で

赤 色 救 援 新 聞 を 三部 買 つた と 云 ふ のが、 検 挙 の動 機 であ つた、 其 他

の嫌 疑 で引張 ら れ た、 それ は何 が最 大 原 因 であ つた かと言 ひま す と 、

起 つた 事 件 で あ りま す け れ ど も、 早 稲 田 大学 の教 授 舟木 重 信 君 が赤

の責 任 に立 た る ゝ司 法 大臣 の御 考 を 特 に御 尋 した い、是 は昨 年末 に

の であ り ま す、 さう し て其 取 扱振 り の如 き も実 に酷 いも ので、 面 会

寸 申 添 へて置 き ま す

す ら も 殆 ど許 され な か つた、 甚 し き に至 つて は ﹁ 手 記 を書 け﹂ と言

で、中 野 署 に検 挙 せ ら れた 、 さ う し て九 日間 も 勾留 せら れ て居 つた

あ り や に考 へて居 りま し た 点 が、 只 今 の御 釈 明、 敷 衍 的 な 御答 弁 に

は れた 、 此手 記 と 云 ふ のは普 通 転 向声 明書 と言 つ て居 るも の であ る、

名前 を連 ね て居 つた、 さう 云 ふ や う に 二三 の事項 があ つた と云 ふ の

依 つて、諒 解 す る こと が出来 た ので あ りま す、 司法 大 臣 の御 答 弁 に

そ こで初 に自 分 は全 然 関係 がな いと 云 ふ こと を、 二 十枚 ば かり の罫

○ 三上 委 員  只 今 当 局 の御 答 弁 を承 り ま し て、 諒 承 致 し ま し た、 殊

付 き ま し ては 、尚 ほ私 は理 解 し難 い点 が あ りま す が、 他 の委 員 よ り

紙 に書 い て出 し た所 が、斯 ん な馬 鹿 なも のを書 い ても駄 目 だ、皆 々

に私 が内 務 当 局 と 、 司 法 当 局 と の御 答 弁 の中 に、稍々 一致 せ ざ る 点

御 質 問 せら れ、其 御答 弁 を承 り 、 又更 に調 査 を し た上 で、 私 は諒 解

私 共 が行 き ま し て、 全 然 赤 に関係 のな い人 だと 云 ふ こと が 分 り、 初

す る やう にし た いと 思 ふ ので あり ま す が、 予防 拘 禁 の規 定 は、 法 律

め て釈 放 せら れ た、 そ れ が為 に学 校 か ら は、 赤 に関係 し て居 つた と

いけ な いと 言 う て書 かし た 、 私 共 と親 戚 関 係 が あ りま す ので、 漸 く

間 と 云 ふ長 い間 、 判 決 の刑 を終 つた後 に、 引続 いて大 体 に於 て同 じ

か 、尠 く と も赤 で検 挙 せ ら れた と 云 ふ ので、 教 授 を辞 職 す る こと を

三百 枚 から 五 百枚 のも のを書 い て居 る、 さう 云 ふ不 誠意 な こと では

やう な 状態 で、 其 身 体 を拘 束 す る と云 ふ こと の実 際 の取 計 ひ に付 て

迫 ら れ た、 又 一方 、 新聞 に 三段 抜 か何 か で発 表 せ ら れ た為 に、 一身

に依 つて規 定 す る から、 憲 法 違 反 には な ら ぬ、 形 式 法 理論 と し ては

は、 十 分 に人 権 の尊 重上 御留 意 を願 は な いと 、 一種 の立 法 手 続 に依

上 に関 す る非 難 攻 撃 が非 常 な も の であ つた、 そ こ で余 り新 聞 にも書

さ う 云 ふ こと にな る でせ う が、 兎 に角 保安 処 分 な りと は 云 へ、 二年

へて居 り ま す 、 此点 を申 上 げ て私 は大 臣 に対 す る質 問 を打 切 り ま す

る弾 圧 的 な 、 司法 権 の運 用 と 云 ふ こと にな る虞 が あ り は せ ぬ かと 考

い﹂ と 云 ふ話 で あ りま し た、 何 で もな いも のを九 日も 勾留 し て置 い

る のだ ﹂ と色 色 話 し た所 が ﹁そ れ は起 訴 す る程 のも の でも何 でも な

の毛 利 と 云 ふ人 に、 起訴 不 起 訴 を 聞 き に行 つた時 に ﹁実 は困 つ て居

か れ 、自 分 の将 来 の こと も あ る から と 云 ふ の で、 警視 庁 の特高 課長

臣 な り、 国 務 大臣 と し て の御 答 弁 を御 聴 きし た い のは、 共 産 党 に対

○ 松 谷 委 員  そ れ では次 に 一つ全 然 違 つた方 面 で、大 体 の、 司 法 大

す る検 挙 の遣 り 方 であ りま す 、是 は主 に内 務 大 臣 な り内 務 関 係 の御

て、 さう し て新 聞 に でか〓

と書 か れ て は、 迷 惑千 万 に私 に は考 へ

方 に聴 く の が当 然 であ りま す が、 併 な が ら犯 罪 捜 査 に対 し て、 監 督

の であ る か 、 昭和 三 年 から 昭和 七年 迄 に共産 党 、 或 は外 廓 運動 者 と

ら れ る が 、現 在 斯 う 云 ふ点 に 対 し て、 司法 大 臣 は如 何 に御 考 に な る

あ る かも 知 れ ま せ ぬ

思 ひま す、 御 関 係 が あ る ことな ら、 又 更 に別 な 処 で御 話 す る機会 が

云 ふ のは 、 三 ・ 一五 事 件の時からさうであります、三・

余 人 出 た と 云 ふ なら ば 、如 何 に検 挙 が出 鱈 目 で あ る か、 検 挙 せ ら れ

猶 予 にも な らず 、 起 訴 にも な らず 、何等 関 係 のな い者 が、 二万 三千

八 千 七 百余 人、 約 二万 九 千 人 ば か り検 挙 し て、 さう し て何 等 の起 訴

云 ふ も のに拠 つて調 べた ので あり ま す、 斯 の如 く 五 箇年 の間 に 二万

弁 を願 ひ た い、 是 は 共 産党 事 件 人 員表 昭和 八年 十 二 月 二十 七 日調 と

ら戴 いた材 料 に基 い て申 上 げ る の であ り ます から 、其 御 積 り で御 答

か、 さう し て其 人達 は如 何 に酷 い目 に遭 つて居 るか 、是 は司 法 省 か

ば 、 如 何 に検 挙 が 不徹 底 であ るか、 如何 に出 鱈 目 の検 挙 を し て居 る

し て、 何 等 赤 の嫌疑 のな か つた 者 が、 二万 三 千 余 人 居 る と す るな ら

法 違 反 の被 疑 者 と 云 ふ者 に は、 青 年 が多 い のであ り ます 、或 点 か ら

け れば な らず 、 又 本 人 の将 来 も考 へな け れば な ら ぬ、 殊 に治安 維 持

ば 、極 め て簡 単 であ り ま す が、 さう 云 ふ こと は国 家 の為 にも 考 へな

帳 面 を宜 くす る為 に 、 ど ん〓

是 は 司法 当局 も、警 察 当局 も 非 常 に苦 心 をし て居 る のであ り ま す、

が多 く、 刑 務 所 に入 つ て居 る者 が 、其 割合 に少 な い の であ り ま す、

針 を執 つて居 りま す、 さう 云 ふ の で数 字 の上 では如 何 にも検 挙 人 員

な い方 が宜 し い ので あ りま す 、 適 当 な 方法 を 講 じ て、 処罰 し な い方

警 察官 限 り で済 ま す人 も あり ま す 、殊 に若 い人な ど は余 り処 罰 をし

必 要 のな い程 度 の者 で あり ま す と、 其 者 は所 謂 検 事 局 に送 らな い で、

応 は警 察 官 が検挙 す る のであ り ま す が、 調 べ て見 て其 程度 が罰 す る

一五事 件 の

せら れた のは 二 千 二百 八 十 五 人 であ りま す 、 さう し て起 訴 猶 予 にな

誰 も党 員 であ る、是 も斯 う 云 ふ こと を した と 云 ふ こと に依 つて、 一

時 に、 例 へば 帳面 を見 ま し て、 或 は被 告 人 関係 者 の陳述 に依 つ て、

そ れ から検 挙 の人 員 の割合 に起 訴 、 不起 訴 の処 分 し た処 が少 いと

った 者 が、 二 千 八百 三十 四 人 であ りま す 、 さ う す る と何 等 嫌 疑 のな

し て起 訴 せ ら れ た数 は、 検挙 総数 が 二万 八 千 七百 四十 件 、 其中 起 訴

二 万八 千 余 人検 挙

た者 の 一身 一家 か ら考 へて、舟 木 重信 以 上 の社会 か ら残 酷 な 取扱 を

言 へば 、非 常 に憎 む べき者 で あ りま す が、 一面 か ら見 る と又 憐 む べ

い、 関 係 のな い者 が、 二万 三 千 六百 二十 一人︱

受 け て居 る やう に考 へるが 、 此点 に関 し て司法 大 臣 は、 今 少 し く此

き事 情 が あ る のであ り ま す、 先 輩 よ り教 へら れ、 先輩 よ り指 導 さ れ

刑 務 所 に入 れ る のが宜 いと 云 ふ な ら

か と 云 ふ こと を、 御 尋 致 し て置 き ます

検 挙 に留 意 せら れ て、 間 違 のな い ことを 期 され る御 考 がな いか ど う

であ りま す 、表 のみ に依 つ て処 分 が どう であ る、検 挙 が出 たら 目 だ

と 云 ふ こと は、 実 は甚 だ吾 々と し て は承 服 し難 い御意 見 だと 思 ふ の

て、 知 らず 識 らず 国 家 の変 革 を目 的 とす る思 想 を持 つやう にな る の

で あ りま す、 併 し十 分 に研究 致 し て居 り ま す、 唯 往 々に し て警 察 に

○ 小 山 国務 大 臣  初 に御 尋 にな り ま し た舟 木某 の こと を、 一寸御 答

てそ れ に依 つて検 事 、検 束 と 云 ふ こと にな つた の であ り ます、 検 事

留 め て居 り ま す間 に、 何 か長 い間 検 束 し た と か、 或 は 不当 な こと を

致 し ま す、 此 舟 木 と 云 ふ人 は矢張 犯罪 の嫌 疑 が あ り まし て、 さう し

て置 き ま せ う、 詳 し い こと は余 り 此処 で申 上 げ る 必要 はな か ら う と

局 に於 て は不 起 訴 の処分 をし て居 る ので あ りま す 、 そ れ だけ申 上 げ

し た と 云 ふ こと を聞 く の であ りま す が、 其 度 毎 に注意 し て居 りま す 、 併 し 警察 官 の方 に対 し ても、 松 谷 君 は御 承 知 で あり ま せ う が、 同情 し てお貰 ひ し た い のは 、逮 捕 に向 ふと ﹁ピ スト ル﹂ を持 つて居 る者

二 千 八 百 三十 四人 であ りま す 、 さ う し て只 今 大臣 の御話 では、 嫌 疑

が あ つても 、 犯 罪 を 犯 し ても 内 緒 にし て置 く ん だ、 其 人 間 が 二千 八

百 三 十 四人 で、後 の二万 三 千 六 百 二十 一人 と 云 ふ も のは 、赤 い色 も

訴 し た、 後 の二 万 六千 人 は 、是 は起 訴 猶 予 にし た の であ る、 赤 いけ

白 い色 も何 も な い赤 色 も 、 白 色 も、 色 の無 い者 を引 張 つ て来 た か ら、

云 ふ こと も 亦 一つ考 へて や りま せ ぬと 、 本 当 に命 を捨 て ゝま で検挙

れ ど も検 挙 し な か つた のだ と 云 ふ御 計 ひな らば 、 私 は満 腔 の敬 意 を

が多 い、 田中 清 玄 一派 を検 挙 す る時 に は、 始 終 怪 我人 が出 来 て、命

に向 ふ と 云 ふ人 が無 く な る訳 であ り ま す、 是 は 色 々な、 一寸 申 上 げ

表 し ます け れ ど も、 此 表 に依 る と起 訴 猶 予 に非 ず し て全 然 色 も何 も

私 は 此処 で問 題 に す る、 多 少 でも赤 い色 がく つ著 い て居 る、 そ れ を

難 い種 々な 事 情 のあ る と 云 ふ こと は松 谷 君 も 御 承 知 だ と思 って居 り

著 い て居 ら ぬ 奴 を検 挙 し て、 さ う し て釈 放 にな つた、 そ れ を申 上 げ

起訴 猶 予 にす る、 二 万八 千 人検 挙 し た が 二千 二百 八 十 五 人 だ け は起

ま す、 併 し 検 挙 に付 き まし ては、 将 来 も十 分 注意 致 し ま し て、 人権

る、 色 も 何 も 著 か ぬ の が二 万 三 千六 百 二十 一人 、 是 は あ な た の方 が

つ て行 か な け れば 検 挙 が出 来 な いと 云 ふ事 情 であ り ます から 、 さう

蹂 躙 等 の事 のな いや う に致 し た いと思 つて居 り ま す、 其 一つ の片割

げ る の です、 ち つと でも疑 が あ り、 少 し でも色 が著 い て居 るな ら ば

御 作 り にな つた表 だ から 間違 ひな から う と思 ひま す が 、其 点 を申 上

を失 つた者 が あ る の であ りま す 、防 弾 ﹁チ ヨツ キ﹂ を著 て、 兜 を被

れ が、 今 度 の検事 の勾留 と 云 ふ こと を認 む る理由 にな つた 訳 であ り

○ 松 谷 委 員  只今 の御 趣 旨 に は満 幅 の私 は 敬意 を表 し て居 る ので あ

し め て御釈 放 にな るな らば 、 私 は喜 ん で御 受 け す る が、 何 等 色 の著

宜 し う ご ざ います 、 私 は 釈放 せ ら れ る のは、 慈 悲 を 含 め て、 改 心 せ

ます

り ま す 、成 べ く起 訴 し な いで、 起 訴 猶 予 な り、 起 訴留 保 の御 手 続 に

○ 小 山 国務 大 臣  只 今 の点 に付 て御 答 致 し ます 、 此表 の中 で、 起 訴

かな い者 を、 二万 八 千 の中 に 二万 三 千出 し たと 云 ふ こと が問 題 であ

猶 予 と 云 ふ処 分 を し ま し た のは、 御 承知 の通 り起 訴 す べき 程 度 の犯

依 つて、 さ う し て警 察 限 り、 検 事 局 限 り で防 い で戴 い て、御 釈 放 に

居 る、 と同 時 に私 の申 上 げ た のは 、検 挙 総 数 が 二万 八 千︱

る から 、其 点 を茲 に申 上 げ て置 く の です、 其 点 を 十 分御 考 へを願 ひ

九 千 あ り ます が、 其 中起 訴 せら れ た者 が 二千 二百 八十 五 人、 此 数 は

罪 のあ り ま し た者 を 、 或 る期 間 猶 予 し て起 訴 を 見 合 せ たも の で、留

な つて戴 き、 十 分 本 人 に戒飭 を加 へて戴 く と 云 ふ こと は 、 私 共 は衷

私 は適 当 だ と思 ふ、 是 は約 一割 にな り ま せ ぬ、 此 御 計 ひ は洵 に御 同

保 処 分 と 云 ふ のは、 そ れ よ り も暫 く の間 、 一年 間 或 は六 箇 月 間 位 、

たい

情 あ る御 計 ひ であ り ま し て、 検察 当 局、 検 事 局 の御 同情 あ る御 取 計

始終 行状 を見 て居 り ま す、 其 後 にな つ て本 当 に起 訴猶 予 と 云 ふ処 分

心 から喜 ん で居 る、 又 さ う し て戴 かな け れば な ら ぬと 本 当 に考 へて

ひ に対 し て、 私 は満 腔 の敬 意 を表 す るも の であ り ま す、 私 の言 ふ の

を す る のであ り ま す、 此表 の上 で、起 訴 猶 予 と も留 保 処 分 と も な い、

約 二万

は、 御 聴 き 違 ひに な つた かも知 れま せ ぬが 、起 訴 猶予 にな つた 者 が

り ま す が、 無 関 係 な 者 を 引張 つて来 て、検 挙 した と 云 ふ や うな こ と

検 挙 人 員 と云 ふ のが あ る、 其 点 に付 て の御 疑 のやう であ り ます が、

て調 べ て見 れ ば 予想 通 り、 全 部 が検 挙 す べ き程 度 でな いと 云 ふ こと

司法 処 分 のや う な、 行 政 処 分 の やう な も のにな り ま す が、 大 体 に於

へば 、 そ れは 手 を附 け ら れま す け れ ど も、 或 る意味 に於 て の処 分 が、

の も のは 除名 処 分 を し な い、 父 兄 も 非 常 に喜 ん で、 其 処置 を や つた

が 明確 に な つた こと が あ る、 そ れ は調 べま し て、学 校 で も或 る程 度

是 は色 々な場 合 の事実 を、 私 は 以前 の、 前 職 務 の時 代 か ら知 つて居

はな いと思 つて居 り ま す 、検 挙 をす る場合 に当 つて は、各 々根 拠 の

結 果 が、 非 常 に宜 か つた こと が あ る の であ りま す 、 是 は時 々や つ て

あ る こと で、 斯 う 云 ふ人間 が何 処 に今 会合 し て居 る から ど う、 どう 云 ふ場 合 に何 処 に行 け ば検 挙 が出 来 る から と 云 ふ模 様 で、 大概 検 挙

る、全 体 が犯 罪 者 で あ る如 く 思 はれ な い場 合 に於 ても 、此 学 校 内 に

於 け る赤 化 学 生 の組 織 を破 壊 し よ う 、将 来 を 戒 め よ う、 斯 う 云 ふ こ

居 り ま す、 是 は法律 論 を さ れ る と甚 だ 困 る、 或 者 は 犯 罪 にな つ て居

と を し ま すと 、 松 谷 君 の指 摘 せ ら れ た や うな 検 挙 人員 に入 りま す、

をし て居 る ので あ りま す 、余 り詳 し い こと を申 上 げ る必要 は あ りま

の学 生 が赤 化 し て居 りま し た、 赤 化 し て ﹁グ ループ ﹂ を作 つて居 つ

せ ぬが、 一つ御 諒 解 を 得 る為 に 一言 御 話 し て置 き ます が 、或 る学 校

た の であ り ます 、 其 報 告 が あ り まし て、 調査 を し た の であ り ます 、

の であ り ます 、 要 す る に 此 日本 共 産 党関 係 の学 生 事 件其 他 に付 き ま

し ては、 其 局 に当 つて取 調 をし て居 る 人 に対 し て、 御 信用 を 願 は な

入 り ま す が、 是 は 一方 の司 法 処 分 の方 に入 らな い で済 む場 合 も あ る

いと 云 ふ と、 非常 な色 々な こと が出 て来 る の であ り ま す、 例 へば 一

調 査 を し て見 ま すと 、 其 数 は可 な り多 いが 、其 程 度 に於 ては検 事 は

の では な い ので あり ま す、 ど うす れ ば宜 いか、 之 を 検 事 が 一二箇 月

例 を申 し ます と 或 る相 当 な身 分 のあ る 人 の家 庭 で育 つた学 生 が警 察

起 訴 す る こと が出 来 な い、所 謂 治 安 維 持法 のど の条 項 にも 当嵌 る も

り ま す か ら、 さ うす れば 治安 維 持法 違 反 の被 疑 者 と な る の であ り ま

に暫 く居 る、 数 日居 る、 それ は法律 上 か ら申 し ま す と 、数 日警察 に

待 つ て居 る、 待 つて居 ると 犯罪 は成 立 す る、 進 行 し つゝあ る の で あ

居 り ます こと は 、甚 だ困 る の で あり ま す、 寧 ろ 吾 々 の方 から 言 へば、

犯 罪 の嫌 疑 あり と す れば 令 状 を出 し て、 さう し て市 ケ谷 刑 務 所 に送

て は犯 罪 にな ら な いけ れど も、 国家 の為 め、 前 途 望 の有 る所 の青 年

ら な け れば な ら ぬ 、所 が父 兄 も 本 人 の市 ケ谷 刑 務 所 に行 く こと を 、

す け れ ど も、 是 は考 へね ば な ら ぬ の であ る、 今 知 つて居 る程 度 に於

学 生 が、 斯 う 云 ふ こと を し て居 る と 云 ふ こと が分 つた場 合 に、 此 程

れ ば な ら ぬと 云 ふ こと もな い の であ り ます から 、 さ う 云 ふ場 合 に於

度 に於 ては 犯罪 にな ら な いも う少 し 待 つ て居 る と犯 罪 成 立 の状 態 に

ても、 前 途 の あ る学 生 に対 し て は、或 る場 合 に は令 状 を出 さ ぬ で、

な る、 犯 罪成 立 の構 成 要 件 の備 は つた時 に検 挙 す れば 有 罪 に出 来 る、

当 時 犯 罪 にな ら な く ても 、是 は手 を附 け べ き だ と、 色 々研究 し ま し

或 る警 察 署 に止 ま つて、 検 束 せ られ て居 る と 云 ふ こと も あ りま す 、

状 を出 し て、 市 ケ 谷刑 務 所 に送 ら な け れば な らぬ 、 予審 を求 めな け

此 研究 は文 部 当 局 、内 務 当局 、 司 法 当 局 が集 りま し て、之 に

非 常 に嫌 ふ の であ り ます 、 さう 云 ふ場 合 も あ る、之 も 別 に是 非 共令

て︱

さう 云 ふ こと を 一体 す る のが宜 い のかど う か 、色 々考 へま し て、 其

は手 を附 け る こと に し た の であ り ます 、 さう す れば どう な る か と 云

居 ら れ、 警 保 局 長 が 椅 子 に座 つて居 ら れ て、 実際 の情 勢 を御 存 じ な

警 察 の御 取調 が、 如 何 にも残 酷 な の です、 是 は大 臣 が椅 子 に座 つ て

が、 是 は現在 の状 態 では 、検 挙 せら れ て来 る共 産 党員 に対 す る所 の

も う 一つ私 は 此警 察 の検 挙 の こと に付 て申 し て見 た い ので あ りま す

ら 、 今 後 十分 に御 考 慮 を願 ひ た い の であ り ます 、 序 であ り ます から 、

り ま し た で せう が、 そ れ に し まし ても、 余 り に其 数 が多 過 ぎ ま す か

○ 松 谷 委員  只 今 の学 生 に対 す る実 例 の如 き も、 さ う 云 ふ場 合 も あ

る考 で居 り ます から 、是 で 一つ御諒 承願 ひ た い の であ り ます

す 、 併 な が ら若 し間 違 つた ことを し た 時分 に は、 是 は適 当 に処 分 す

吾 々当 局 者 を御 信 頼 下 さる と 云 ふ こと を、 一つ御 願 す る の であ りま

是 は 松 谷 君 よ く御 承 知 でせ う が、 要 す る に此 検 挙 に付 き ま し て は、

残 虐 な行 為 を や られ ぬ と 云 ふな らば 、宜 しく 警 察 は堂 々と 、 そ れ を

頭 死因 は 不 明 と 云ふ や う な こと にな つた、 さう 云 ふ暴 行 な り 、或 は

し た ら 、拒 絶 を せら れ た、 其 後 は何 処 へ行 つても拒 絶 せら れ て、 到

小 林多 喜 二 の解 剖 を、 初 め て帝 国 大 学 だと 心 得 て居 りま す が 頼 み ま

特 に御 断 り致 し ます 、併 しな が ら斯 う 云 ふ虐 待 を せ ら れ、 さ う し て

に感 じ て居 る のであ り ま す、 大 変 誤 解 せら れた や う で あり ま す か ら、

るど な た よ りも 痛 切 に感 じ て居 る者 であ りま す ︱

し て共産 党 は撲 滅 し な け れば な ら ぬと 云 ふ こと は、 恐 らく 此 処 に居

せ ぬよ、 其 点 は 一つ誤解 のな い やう に願 つて置 き ます 、 私 は ど う か

の上 に於 て共 産 党 員 に 対 し て仮 借 せ よ と は決 し て申 す の では あ り ま

顔 を 上 げ て二 た目 と 見 ら れな か つた と 云 ふ状 態 であ つた、 私 は法 律

を言 つた、 さう し てど う し た も の か非常 に虐 待 を せ ら れた 、 母親 は

め て行 つ て初 め て本 人 の名 前 を言 ひ、 小林 多 喜 二 と云 ふ人 間 の名 前

目 と見 られ な い状 態 で あ つた 、新 聞 の報ず る所 の築 地 署 の報 告 に依

春 で あ りま し た が、 其 母 親 の言 ふ所 を聴 く と、 如 何 にも 残酷 で 二 た

云 ふ、 小 林多 喜 二も 同 様 であ りま す が、 小林 多 喜 二 の如 き は、 昨 年

岩 田義道、小林多喜二︱ 岩 田義道 は警察 で暴行 の結果殺 されたと

実 際 さう 去 ふ ことは 言 へぬ ので あ りま す、 是 は 一例 であ り ます が、

るが 、是 は実 際 の警 察 の情 勢 を少 し でも知 つて居 る者 であ るな ら ば 、

あ る の であ り ます 、 是 は 私 は法 律 に照 し て死 刑 に処 せ られ る のは結

と も 申 し ま せ う か、其 意 思 が燃 え て、 更 に地 下 に潜 る者 は随 分 沢 山

称 し て地 下 に潜 つて先 に や ら れ まし た 人達 の、虐 待 に対 す る復讐 心

察 の取 扱 が苛 酷 に過 ぎ る か ら、 其 反撥 の結 果 共 産党 に入 る、 潜 行 と

ら ぬ のは、 ど の共 産 党員 の被 告 の調 書 を見 まし ても、 大 体 に於 て警

らず 、 此手 続 を せら れず に到 頭 虐 殺 せ ら れ た、 こゝ で私 は心 配 で堪

警 察 か ら進 ん で検 証 し て、 事 実 を明 にし たら 宜 か ら う と思 ふ にも拘

どな た と も同 様

は内 務 大 臣 に質 問 し た 場合 に、 さう 云 ふ事 実 は絶 対 にな いと言 はれ

く 、 唯報 告 のみ を聴 い て、 さ う云 ふ事 実 な し と言 は れ る、 先 達 も 私

ると 、 逮 捕 す る時 に抵 抗 し た か ら其 時 怪 我 さ せた のだ 、 斯 う云 ふ風

の罪 跡 の如 き は、 私 は本 当 に ﹁シ ンパ ﹂ で あ つて、 さう 重 要 な も の

構 だと 思 ふ が、 それ を法 律 に拠 らず し て虐 殺 せら れ る、 小 林 多喜 二

ぢ やな いや う に思 は れ る、 さ う 云 ふ こと も私 は調 べ た のぢ やな いか

に言 つて居 る、 内 部 では決 し てやら ぬ、斯 う言 ふ の であ り ます が、

人 間 に対 し て、 取 調 が 進行 せ ら れ て居 る事 実 が あ る、初 め氏 名 を 嘘

ら 、 は つき り分 りま せ ぬ が、 ほ ん の軽 微 にし て、私 共 の想 像 で見積

事 実 は 全 然 そ れ に反 し て居 り まし て、其 後 そ れ程 重 傷 を負 つて居 る

を言 つて居 つた が、 段 々聴 いた所 が本 当 の氏 名 を言 つた 、段 々に責

つても 、 重 く て 一年 か、 二年 であ る、 都合 に依 つて は執 行 猶 予位 に な る刑 のや う に考 へら れま す が、 そ れ が警 察 の手 に渡 つ て、私 の刑 を科 せ ら れ て殺 さ れな け れば な ら ぬと 云 ふ情 勢 に立 至 り ま し た時 に、

昭和 九 年 三 月 六 日 (火 曜 日)

第十 二回

第六十五回帝国議会 治安維持法改 正法律案委員会議録 ( 速記) 衆 議 院 

た い、 恐 ら く は復 讐 心 で燃 え る のぢ やな か ら う か、 其 結 果 共産 党 が

他 の共 産 党員 は どう 云 ふ考 を起 す かと 云 ふ こと を、 先 づ 考 へて貰 ひ

○ 一松 委 員

第 五章 の予 防拘 禁 に付 て先 づ政 府 に承 り た い のは、 此

根 強 いも のに な り、 一層 地 下 に潜 つて危 険 な る行 動 を取 る のぢ やな

あ る、 さう し て 予防 拘 禁 の決 定 をす る者 は裁 判 所 であ る、 そ こ で予

制 度 に依 り ま す る と予 防 拘禁 を 必要 あ り と し て請 求 す る者 は検 事 で

防 拘 禁 は 即 ち 監禁 で あ る、憲 法 の規 定 に依 り ます ると ﹁日本 臣 民 ハ

誤 解 のな いや う に願 ひ

法 律 ニ依 ル ニ非 スシ テ逮 捕 監 禁 審 問 処罰 ヲ受 ク ル コト ナ シ﹂ と第 二

か らう か 、之 を春 秋 の筆 法 を 以 てす れ ば︱

作 つた と 言 は れ て も、 弁 解 の辞 はな い のぢ や な い か と考 へて居 る、

た い の であ り ま す が、 春 秋 の筆 法 を以 て言 ふ な らば 、 警察 共 産 党 を

丁 度 警 保 局長 も お出 で にな り ま す から 、 斯 う 云 ふ点 は少 し御 留 意 に

律 に依 つて 、其 第 二十 七条 で所 謂 裁判 所 が決 定 をし て之 を為 す 、 少

る の には法 律 に依 ら な け れば な らな い、 そ こで治 安 維 持法 と 云 ふ法

し も憲 法違 反 でな いや う な形 を備 へて居 る、 所 が苟 も 人 の自 由 を拘

十 三条 に規 定 さ れ て居 る、 です から 予 防拘 禁 と云 ふ 一つ の監 禁 を や

は あ りま せ ぬ が 、法 の許 す範 囲 に於 て、或 は死 刑 も私 は結 構 な こと

束 す ると 云 ふ が如 き 重 大 な る制 度 に関 し まし て は、 今 我国 に行 は れ

や つ て戴 い て宜 し い、 さう

だ と思 ふ、 牢 屋 に入 れ て置 い ても差 支 あり ま せ ぬ け れど も 、法 律 に

て居 りま す る是 等 関 係 法 規 を調 べま す れ ば、 刑 事 訴 訟 法 の現 行 犯、

し て転 向 し な い者 に向 つては十 年 の刑 、 百年 の刑 (笑 声 )百年 の刑

拠 らず し て、 私 の刑 を警 察 でや ら れ る、警 察 が ﹁ギ ヤ ング ﹂化 す る

現 行 犯 あ り と思 料 し た時 には直 に通常 人 で も之 を捕 へて官 庁 に引渡

な つて戴 い て、 さう し て検挙 は どし〓

へる の で あ りま す が、 其 点 に対 す る司 法 大 臣 の御 答 弁 を願 ひた いと

こと に依 つ て、 反動 思 想 が 益 々現 は れ て来 る のぢ や な から う か と考

る、 又 犯 罪 の嫌 疑 あ る者 に対 し て、 検 事 は判 事 に請 求 を し て強 制 処

す こと が出 来 る、 又司 法警 察 官 や検 事 な ど は之 を逮 捕 し て四十 八 時

分 に依 る強制 留 置 を求 め る こと が出 来 る、十 日間 経 てば釈 放 若 は起

間 内 に取 調 を終 つて、 釈 放若 は検 察 官 に身 柄 を送 致 す る こと が出来

話 のやう な 、 殺 し た と か、 虐待 し てど う し た と 云 ふ やう な こと は な

訴 の手 続 を し な け れば な ら な い、 違 警 罪 即決 例 に依 れば 、其 即 決 を

○ 小山 国 務 大 臣  只今 御 話 の岩 田、 小林 の こと に付 きま し ては、 御

いと 云 ふ こと を承 つて居 りま す が、 今 の警 察官 が時 に失 当 な行 為 を

受 け た者 は三 日内 に正 式 裁判 の申 立 を 為 す こと が出 来 る、 行 政 執 行

思 ひます

す る こと に付 き ま し ては、 常 に監督 注 意 は怠 らず に居 る の であ り ま

法 の第 一条 に依 れ ば、 保 護観 察 、予 防 観 察 の場 合 に於 ては、 其 翌 日

す 、是 で御 諒 承 願 ひ ま す

没 前 に之 を釈 放 し な け れ ば な ら な い、 斯 う 云 ふ やう な 規 定 が逮 捕 監

人 を 付 け て自 分 の権 利 を擁 護 し て貰 ふと云 ふ権 利 擁 護 の方 法 を講 ず

と に 対 し て、 十 分 な る攻 撃 防 禦 の方法 を尽 す こと は出 来 な い、 弁 護

き が あ る と私 は考 へる の であ りま す、 此 点 に対 し ま す る 政府 当 局 の

禁 に関 す る現 行 法 に認 め ら れ て居 る制度 で あ ると 私 は考 へま す 、 現

所 見 を 先 づ承 つて見 た い ので あり ま す

る こと は、 出 来 な いと 云 ふ こ とは 先刻 述 べま し た や うな 逮 捕 監 禁 に

裁 判 に廻 せ ば其 被 告 人 は弁 護 人 を 付 け て裁 判官 に審 理 を 受 け、 自 分

○ 木村 ︹ 尚 達 ︺ 政府 委員 ︹ 司 法 省 刑 事局 長 ︺  御答 致 しま す 、 只今

対 し て現行 法 を採 つ て居 る制 度 と較 べ て、 著 し く 人 権 を軽 視 し た 傾

の意 見 を 述 べ て攻 撃 防 禦 の方法 を講 ず る こと が出 来 る、 強制 留 置 の

は其 身 柄 を引 受 け ると、 直 ち に之 を起 訴 す る か、 裁 判 に廻 す かす る、

場 合 には 法律 は十 日間 の留 置 期 間 を認 め て居 る、 十 日間 が経 過 す れ

一応 御 答 は 致 し て置 き ま し た が、 仰 し やる 通 り此 予 防拘 禁 の制 度 は

の御 質 問 に対 し まし ては、 同 趣 旨 の質 問 が嘗 つてあ り ま し た から 、

行 法 の場合 に は、 四 十 八時 間 経 てば 釈 放 す る か、 検 事 に送 る、 検 事

こと に依 つて弁護 人 を付 し て自 己 の地 位 を防禦 し、 若 く は検 事 の主

ば 之 を釈 放 す る か、 公判 に廻 さな け れば な ら な い、 公 判 に廻 さ れ る

る ゝ こと な し で、 正 式裁 判 の申 出 をし て、自 己 の立 場 を 防禦 し、 若

虞 あ る少 年 に対 し て矯 正 院 、 或 は 感 化院 に之 を収 容 し て、 可 な り の

も御 答 致 し ま し た やう に、 既 に少 年 審 判 所 に於 き ま し ても 、 犯罪 の

やう な 御 疑 も あ つた やう に拝 聴致 し ま した、 是 は大 臣 か ら も私 か ら

の を拘 束 す ると 云 ふ こと は、 憲 法 違 反 に でもな り や し な いか と云 ふ

く は原 告 官 に対 し て攻 撃 の態度 を執 る こと が出 来 、 弁 護 を す る こと

非 常 に異 例 では あ りま す、 併 し今 仰 せら れ まし た や う に 犯罪 な き も

が出 来 る、 是 が所 謂 現 行制 度 に於 て認 めら れ て居 る逮 捕 監 禁 に対 す

少年 審 判 所 も 裁 判所 であり ま す 、 苟 も公 安 を維 持 す る為 に 一つ の予

長 年 月 に亙 つ て其 自 由 を 拘 束 し て居 る の であ り ま す、 御 承 知 の如 く

は、 其 即 決 が 不服 で あれ ば 、所 謂 裁 判 官 の裁判 を受 け る権利 を奪 は

る適 当 の処 置 であ る、 然 る に此 予防 拘 禁 制 度 を見 ます ると 、尚 ほ此

張 に対 し て攻撃 の方 法 を講 ず る ことが 出 来 る、 違 警 罪 即 決 に対 し て

犯 人 は第 三 条 又 は第 四条 の罪 を 犯 す虞 あ る こと が顕 著 で あ ると 云 ふ

ま す 、 併 し そ れ に対 し ては保 護 の方 法 が足 ら ぬ では な い かと 云 ふ又

拘 束 す る と云 ふ こと は已 む を得 ざ る所 ではな いか と考 へる の であ り

御意 見 であ り ます 、 是 は御 尤 な 御 質 問 と拝 聴 致 し ま し た、 其 点 は 私

防 施 設 を講 ず ると 云 ふこ と にな り ま す れば 法律 を 以 て其 人 の身 分 を

の当否 を為 す ︱

共 も 深 く苦 慮 致し ま し た為 に、 如 何 に公 安 を保 つ為 の予防 処 分 と は

理由 だけ を 以 て、 刑 務 委 員 会 の議 を経 て裁 判所 に予 防 拘 禁 を請 求 す

ハ本 人 ノ陳 述 ヲ聴 キ決 定 ヲ為 スベ シ﹂ 其 決 定 に対 し まし ては 、勿 論

る 、裁 判 所 は本 人 の陳 述 の みを聴 いて、 さう し て決 定 を以 て此請 求

検 事 の諸 求 が不 当 であ れば 、 予 防 拘禁 は しな いと 云 ふ決 定 をす る、

であ り ま す 、 さう 云 ふ関 係 で、 先 づ検 事 が裁 判 所 に予防 拘 禁 を請 求

言 ひな が ら、 出 来 るだ け条 件 を厳 重 に致 し て置 かな け れば な ら ぬ の

当 否 で はな い ﹁前項 ノ請 求 ア リタ ルト キ ハ裁判 所

であ り ま せう 、 さ う し て予 防 拘禁 を継 続 す る、被 告人 は自 分 は唯意

し ま す に付 ては、 必 ず刑 務 委員 会 の議 を 経 る こと にし て居 り ます 、

検 事 の請 求 が正 当 であ るな らば 、 予防 拘 禁 を す ると 云 ふ決 定 を 為 す

見 を聴 か れ たゞ け であ り まし て其 検 事 の請 求 が不 当 で あ る と 云 ふ こ

刑 務 委 員 会 と 云 ふも のは部 内 の者 のみ なら ず 、 部 外 の者 も集 めま し 点 御諒 承 を願 ひま す

から併 せ考 へま し て本 案 のやう に致 し た 次第 で あ りま す、 ど う ぞ其

ふ のは 、 所謂 通常 の刑 事 手続 で あ りま せ ぬ から 、随 て此 決 定 に 対 し

も略 々、 今 日 で終 了 に な る ので、 総 理 大臣 の御 出 席 を 乞 ふ て、 一応

○安 藤 委 員

昭 和九 年 三 月 七 日 (水 曜 日)

議

て は唯 黙 つ て置 けば 拘 禁 も 何 も出 来 な い の であ り ます から 、 そ れ で

衆

第六十五回帝国議会 治安維持法改正法律案委員会議録 ( 速記) 院  第十三回

て、 そ こ に保 障 の方 法 を見 出 し た い、 例 へば 保 護 者 と か或 は教 育 家 と か、 要 す る に思 想 問 題 に可 な り に造 詣 の深 い やう な人 も 刑 務 委 員 会 に矢 張 加 へた いと 云 ふ腹案 にな つて居 り ま す 、 そ こで検 事 が 刑 務 委 員 会 の議 を 経ず し て裁 判所 に予防 拘 禁 の決 定 を 求 む る が如 き は 、

は宜 し く な いと 云 ふ こと で、 被 告 の方 面 に対 し て のみ特 に抗 告 の権

過激 思 想 運 動 の取 締 を 一層厳 重 にし な け れば な ら ぬと 云 ふ こと に な

私 か ら承 つて置 き た い ので あ り ます 、 此際 治 安 維 持 法 を改 正 し て、

無 論 是 は 却 下 さ れ る のであ り ま す、 さ うし て此 予防 拘 禁 の決 定 と 云

能 を認 め て、 検 事 の方 には其 権 能 を認 め て居 ら な いと 云 ふ やう な 状

治 安維 持 法 の改 正 案 の審 議中 で あ りま す が、 も う質 疑

態 で、 そ れ等 の点 が矢 張 御 趣 旨 と同 様 の考 で苦慮 し た結 果 出 来 た条

多 の機 会 に於 き ま し て、殊 に 又議 会 の施 政方 針 の演 説 に於 か れ ま し

し て伺 つて置 き た い の であ り ます 、 而 し て総 理大 臣 は 御就 任 以来 幾

つた に付 き ま し ては、 茲 に自 ら思 想 に関 す る対 策 と 云 ふ こと が最 も

ても、 思 想 善 導 を 強 調 し、 随 て思 想 対 策 の重要 な る こと を力 説 せ ら

文 であ り ま す、 そ れ で若 し之 に弁 護 士 を付 け ると 云 ふ方 法 を 採 り ま

のが行 は れ ま し た、 将 来 に於 てさ う 云 ふ こと があ る かな いか は 予想

な けれ ば な ら ぬ と思 ひ ます 、 従来 共 産 党 事 件 に付 て公 判 闘 争 と 云 ふ

れ て居 る の であ り ま す、 之 は頗 る御 同感 で、 要 す る に思想 対 策 が完

此委 員 会 で余 り質 問 が出 な か つた の であ り ます か ら、 此際 之 を明 に

が付 き ま せ ぬ が、 若 し さう 云 ふ こと が繰 返 さ れる や うな こと にな り

深 い関 聯 を有 す る こと にな つて居 る の であ り ます 、 此 点 に関 し て は

ます れ ば 、是 は非 常 に困 つた結 果 に な り はし な いか、 さう 云 ふ 点 も

全 に行 は れ て、 思 想 の醇 化 が国 民 一般 に徹 底 致 し ま す れ ば、 治 安 維

す れば 、 現在 の情 勢 から 見 ま し て、 此 予 防 拘 禁 で目的 を達 せん と す

併 せ考 へま し て、 今 申 上 げ ま し た や う な出 来 るだ け鄭 重 な 方 法 を採

も な く な る訳 であ り ま す が、 今 日は そ れ が反 対 であ つ て、 従 来 有 る

持 法 と 云 ふも の ゝ存 在 も要 し な くな れば改 め て之 を 厳 重 に す る必 要

る所 の こと が、 非 常 に紊 さ れ て来 はし な い かと 云 ふ こと を 考 へて見

つて、 今 仰 せ に な つた やう な無 茶 な こと の出来 な い やう に や つ て行

ら ぬと 云 ふ必 要 を 生 じ つゝ あ る こと は 、即 ち 思 想 善 導 の対 策 思 想 陶

所 の治 安 維 持 法 を 更 に其 不備 を補 つて、 も つと厳 重 にし な け れば な

き た いと 云 ふ考 で あ りま す、 又第 二 には、 予 防拘 禁 と云 ふ のは全 く

は出 来 ま せ ぬ け れ ども 、検 事 及 び刑 務 所 等 の方面 に対 し ては 司法 省

冶 の方 策 がそ れ だ け行 渡 つて居 らぬ と 云 ふ こと にな る ので あ り ます 、

保 安 処 分 であ り ます から 、此 方 面 に対 し ては 裁判 所 に対 し ては 干渉

と し ても 十 二分 の監 督 権 の行 使 が出 来 ると 考 へま す から 、是 等 の点

治 安維 持 法 を改 正 し て、之 を厳 重 にす る こと は取 締 方 策 上 、吾 々は

見 る所 を 以 てす れば 、 其 中 の教 育宗 教 に関 す る具 体 的 方 策︱

あ りま す が、 斯 の如 く各 種 の方 策 を審 議 報告 を せ ら れた 中 で、 私 の

等 の各 方 面 に亙 る思 想 対 策 と 相 関聯 す る こと は言 ふ迄 も な い こと で

た のであ りま す 、而 し て其 結 果 と し て、 昨 年 の議 会 終 了 以後 、 政 府

て此議 会 の決 議 を容 れ て、 大 に之 に 対 し て努 力 す る旨 を 御答 にな つ

を出 し まし て、 政府 に之 を要 求 し た ので あ り ます 、 政 府 は之 に対 し

あ り ます 、 即 ち 教育 の根 本 的 改 革 の問 題 と相 共 に思 想 対策 の建 議 案

て、 政 友 会 、 民 政党 両 党 の共 同 提案 を 以 て之 を議 会 に提 出 し た の で

と ゝ存 じ ま す 、 而 し て此 思 想 対策 に 付 て は、 昨 年 の議会 の終 り に於

此 点 に付 い て深 い関 心 を有 つて御出 でに な る こと は 言 ふ 迄 も な い こ

あ る やう な訳 で あ り ます 、 其 他 教 育 の問 題 に付 き ま し て は、 思想 委

に付 き ま し て も、 既 に そ れ〓

は国 民 の大衆 教 育 の問 題 、 即 ち 青年 訓 練 所 と 実業 補 習 学 校 の問題 等

新 改 正 に向 つて、 現 に著 手 せ ら れ つ ゝあり ま す、 さう し て又 一面 に

る多 少 の改善 方 策 も講 ぜら れ、 更 に 又師 範 学校 の制 度 及 び内容 の刷

府 は著 手 し て居 りま す 、 そ れ は 既 に文 部 省 に於 て、 小 学 教 育 に対 す

指 導 、 人 心啓 発 の根 幹 た る教 育 に関 す る具 体的 方 策 だけ は 幾 分 か政

教 だけ は是 は取 除 き て、 之 には 私 は別 に意 見 が あ る の です が、 思 想

此宗

ふ法 律 は無 く な つ てし ま ふ方 が宜 し い、 で あ る か ら総 理 大 臣 は勿 論

最 も 必要 と存 ず る の であ りま す が、 同時 に 理想 か ら云 へば、 斯 う 云

に於 て は思 想 対 策委 員 会 を設 立 さ れ、 数次 会 議 を開 い て之 を練 ら れ、

し て是 は 昨年 の議 会 に於 て、 両 党 の共同 提 案 の教 育 改 革 建 議 案 の上

員 会 で決 議 さ れ た中 で、 多 少 著 手 を せ ら れ て居 る の であ り ます、 而

のゝ決 議 を さ れ 、更 に 又社 会 政策 に関 す る具 体 的 方 策案 な る も のを

策 具 体 案 な るも の ゝ決 議 を され 、更 に 又思 想 取 締 法 案 具 体案 な る も

育 、 宗 教 に関 す る具 体 的 方 策 な る も のを決 議 さ れ、 更 に思 想 善 導 方

て其 後 数 回 に亙 り ま し て、 或 は思 想 指 導 、 人 心啓 発 の根 幹 であ る教

対策 の根 本 方 針 であ る と云 ふ決 議 を さ れ て居 る の であ り ま す、 而 し

の諸原 因 に対 応 し て匡救 を加 ふべ き 社 会的 改 善 方 策 、 此 三 ツが思 想

す る防 衛 及 鎮 圧 を 全 く す べき 思 想 取締 方策 、 第 三 に は不 穏 思想 醸 成

第 一に は国 民 精 神 の作 興、 思 想 善 導 の方策 、 第 二 に は不 穏 思想 に対

月 発 表 し た思 想 善 導 方 策 具 体 案 、 翌 九 月 に決 定 し た思 想 取 締 方策 具

而 し て政 府 の思 想 対 策 委 員 会 に於 て決定 を せ ら れ た、 即 ち 昨 年 の八

此 私 共 の方 の調 査研 究 の立 案 の其 の 一部 を や つ て居 る に過 ぎ ま せ ぬ、

で研究 審 議 を し て参 り まし た、 今 文部 省 が著 手 し つ ゝあ る こと は、

想 教 育 特 別 調 査委 員 会 を設 け て、 不 肖 私 が特 別委 員 長 と し て旧臘 ま

あ る の であ り ま す、 尚 ほ我 政 友 会 に於 て は、 昨 年 の議 会 閉 会 後 に思

員 会 で居 られ る 山枡 君 が賛 成 の演 説 を さ れた 其 趣旨 の中 の幾 部 分 で

程 さ れ た時 に、 私 が其 代 表 説 明 の任 に当 りま し て之 を主 張 し、 此委

其議 を進 め ら れ、 又当 に著 手 し つ ゝ

な つて居 りま す 、 即 ち昨 年 の七 月 に於 て は、 思 想 対 策 と し て、 先 づ

其 研究 審 議 の結 果 各 種 の具 体 方 策 な る も のを数 次 に亙 つ て御発 表 に

決 議 さ れ て、 此委 員 会 か ら 一々閣議 に報 告 を致 し て居 り ま す、 是 等

に至 り ては、 全 く何 等 の施 設 がな いと言 て宜 し い、 但 し 此 中 で思 想

体 案 、 翌 十 月 に発 表 し た社 会 政 策 に関 す る具 体的 方策 案 と 云ふ も の

取 締 方 策 具体 案 な る も の を、 多 少 具体 化 し て見 た のが今 度 の治 安 維

は本 委 員 会 の開 会 に際 し て政 府 か ら参 考 資 料 とし て、態 々御 提 出 に な つて居 る の であ り ます 、 即 ち 此治 安 維 持 法 の今 度 の改 正案 と、 是

持 法 改 正 案 にな つて居 ると 思 ふ の であ り ま す、 そ こ で取締 の方 は本

を受 け て居 る ので あ りま す から、 そ れ〓

接 し て居 り ま せ ぬ、 併 し 内 務 省 と致 しま し ては、 分 担 致 す べ き箇 条

ら れ て居 る の であ る が、 其 中 で、 実 際 や つ て居 ら れ るも のは、 国 民

答 は出 来 兼 ね ます

れま せ ぬ が、 私 は報 告 に接 し て居 り ま せ ぬ の で、 具 体 的 に私 か ら御

の であ り ま す、 尚 ほ社 会 局 方 面 に於 きま し て、 現 情 を申 上 げ る か知

是 は方 法 を講 じ つ ゝあ る

法 に譲 りま し て、思 想 善 導 方 策 具 体 案 、 之 に は色 々な 事 を報 告 を せ

精 神 文 化 研 究 所 の拡 張 と充 実 位 し かな いと 思 ふ のであ り ま す、 而 も

報告書

昭和九年三月十 六日開議

第 一読会 ノ続 ( 委員長報告)

第六十五回帝国議会治安維持法改正法律案 ( 政府提出) 衆 議 院 

此 国 民 精 神 文 化 研 究 所 の拡 張 充 実 は 、是 は 文部 省 の管 掌 であ つて、

ま せ ぬ が、 何 等 具 体 的実 現 方 策 は講 じ て居 ら な いと存 じ ま す、 更 に

其 他 の事 は 漠 と し て多 少 さう 云 ふ空 気 を 起 し た位 の事 は あ る か知 れ

社会 政 策 に関 す る 具 体的 方 策 案 に至 つ ては 、殆 ど何 も 手 を著 け て居 ら な い、 一例 を 挙 げ れば 政 府 が委 員 会 で決 議 を し た失 業 の防 止 及救 済 施 設 の拡 充 を 図 る が如 き に至 つては、 何 も し て居 な い では あ り ま

一治安維持 法改正法律案 (政府提出)

せ ぬ か、 要 す る に思 想善 導 方 策 の具 体 案 と 云 ひ、 社 会 政 策 に 対 す る 具体 案 と云 ひ、斯 う 云 ふ経 過 と 斯 う 云 ふ沿 革 を有 ち、 又 総 理大 臣 の

昭和九年 三月十 五日

清 殿

委員長  宮 古 啓 三 郎

右 ハ本院 ニ於 テ別紙 ノ通修正 スヘキ モノト議決致候此段及報告候也

衆議院議長 秋

田

御熱 意 を以 て出 来 た 思想 対 策 委 員 会 に於 て、慎 重研 究 の末 斯 の如 く 決定 し た こと が、 何 等未 著 手 で居 ると 云 ふ こと は、 甚 だ遺 憾 に存 ず る ので あ りま す 、 我 党 立案 の思 想 対 策 には 各 方 面 の対 策 を 立 て ゝあ り ます 、 ど う し ても 思 切 て之 を 断 行 せ ね ば 、国 民 の思 想 は指 導 出 来

治安維持法 改正法律案中左 ノ通修正 ス

ハ委員会修正)

付 て、 既 に教 育 改 善 以外 に斯 う 云 ふ事 を や つ て居 る、 又 既 に斯 う 云

第十四条 第 三条、第四条及第八条 ノ罪 ニ該 ル被疑事件ニ付被疑者

(小字及︱

ふ計 画 も あ ると 云 ふや う な事 がご ざ いま す な らば 、 此 案 の審 議 上最

左 ノ各 号 ノ 一ニ該 当 スル場 合 ニ於 テ捜 査 上 必要 ア リト思 料 ス ルト

ま せ ぬ、 併 し それ よ り も 先 づ政 府 の委 員 会 に於 て決 定 し た る こと に

も 必要 な こと であ る から、 総 理 大 臣 よ り 御 答 弁願 ひた いと思 ふ ので

一 被疑 者 定 リ タ ル住 居 ヲ有 セサ ルト キ

キ ハ地 方裁 判 所 ノ検 事 ハ直ニ 被 疑 者 ヲ勾 引 ス ル コト ヲ得

三  被疑 者 逃亡 シタ ルト キ又 ハ逃 亡 ス ル虞 ア ルト キ

二  被疑 者 罪 証 ヲ湮 滅 スル虞 ア ルト キ

急 速 ヲ 要 シ判 事 ノ勾 引 状 ヲ求 ム ル コト

あります

り ま す、 社 会 関 係 の方 の こと に付 き ま し ては、 内 務 省 に於 き ま し て

能 ハザ ルト キ ハ

○斎 藤 ︹ 隆 夫 ︺ 政 府 委員 ︹ 内 務 政 務 次 官 ︺ 只 今 の仰 せ の 通 り で あ

担 当 し て是 は著 手 致 し て居 る の で あり ま す 、 ま だ具 体 的 の報 告 に は

場 合 ニ於 テ急速 ヲ要 シ判事 ノ

四  被 疑 者 変 名 又 ハ偽 名 ヲ使 用 スル疑 ア ルト キ 勾留 状 ヲ求 ム ル コ

取ニ 締 リ 且之 ニ関 ス ル適 当 ノ制裁 法 規 ヲ立 案 シテ速 ニ帝 国 議会 ニ提

委 員 会 の経 過 竝 に結 果 を 簡 単 に御報 告 致 し ま す、 此 法 案 は御 承知 の

○ 宮 古 啓 三郎 君  只 今 上 程 致 さ れ ま した 治 安維 持 法 改 正法 律 案 の、

出 ス ヘシ

由 ア ルト キ ハ之 ヲ勾引 ス ル コト ヲ得

ト能 ハザ ルト キ ハ地方 裁 判 所 ノ検 事 ハ

第 十六 条  第 十 四 条 ノ規 定ニ 依 リ被 疑者 ヲ勾引 スル コト ヲ得 ベ キ原

被 疑 者 ノ勾 留 ハ前 条 ノ規 定 ニ依 リ被疑 者 ヲ訊 問 シタ ル後 ニ非 ザ レ

あ りま す 、其 主 な る も の は、 今 ま で無 か つた所 の外廓 団 体 に対 し ま

し て、 重 い刑 罰 を科 す ると 云 ふ こと、 そ れ から 又 今 ま であ り ま せ ぬ

通 り、 現在 の治 安 維 持 法 に対 し ま し て、 大 な る改 正 を加 へた も ので

手続 の改 正 を 致 し ま し て、 殊 に予 防 拘禁 と 云 ふ が如 き、 最 も人 権 に

バ之 ヲ為 ス コト ヲ得 ズ但 シ被 疑 者 逃 亡 シタ ル場 合 ハ此 ノ限 ニ在 ラ

轄 ス ル地 方 裁判 所 ノ検 事 刑 務 委 員 会 ノ議 ヲ経 書 面 ヲ以 テ其 ノ裁 判

第 二十 七条  前条 ノ規 定 ニ依 ル予防 拘 禁 ノ請 求 ハ本 人 ノ現在 地 ヲ管

通 り思 想 の混 乱 を 致 し て居 りま す る際 であ りま す るか ら、 此 思 想 に

関 係 のある所 の規 定 が這 入 つて居 る の であ りま す 、今 日 は御 承 知 の

ズ

所 ニ之 ヲ為 スベ シ

ベ シ

関 す る法 律 案 は、 最 も重 大 な る関 係 のあ る も のと 存 じ まし て、 委 員

本 人 ハ弁護 人 ヲ選 任 ス ル コ ト ヲ得

前 項 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ裁 判所 ハ本 人 ノ陳 述 ヲ聴 キ決 定 ヲ為 ス

会 に於 きま し ては、 最 も慎 重審 議 を致 し た の であ りま す、 回 を重 ぬ

間 に於 き まし ては総 理大 臣 、陸 軍 大 臣 、 海軍 大 臣 、 司法 大臣 、 外 務

る こと十 五 回 、各 委 員 は最 も熱 心 に研 究 を致 さ れま し た、 而 し て其

適当 ナル施設

裁判所 ハ本人及弁護 人ノ意見 ヲ聴 キ決定 ヲ為 スベ シ 第 三十条  予防 拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 ハ監獄 内 ノ特 ニ分 界 ヲ設 ケ タ

大臣 、 是 等 の出席 を求 め ま し て、 さう し て綿 密 な る質 問 応 答 を致 し

以内

ル場 所 ニ之 ヲ収 容 シ改 悛 セ シム ル為 必 要 ナ ル処 置 ヲ為 スベ シ

と 痛 感 を致 し て居 る、 且 又 そ れ に対 す る適 切 な る法 律 を 作 り た いと

今 日 の過激 な る右 傾 に対 ま し ては、 固 よ り取締 を せな け れ ば な ら ぬ

こと を問 う た も の であ り ま す、 そ れ に対 し ま し て斎 藤 総 理 大 臣 は、

是 は今 日 の矯 激 な る右 傾 に対 し て如 何 な る考 を有 つて居 る か と 云 ふ

ひま す が、 其 一つは 斎藤 総 理 大臣 の委 員 会 に於 け る答 弁 であ り ます 、

但 し 二 三注 意 す べ き事 を 御紹 介 致 し て置 く方 が便 宜 であ ら う と思

致しませぬ

録 で御 覧 を願 ふ こと に致 し ま し て、 此 処 には改 め て申 上 げ る こと は

た ので あ りま す 、 其質 問 応 答 の詳 細 な る こと に付 きま し ては、 速 記

第 三十 一条  予防 拘 禁 ノ期 間 ハ二 年 ト ス特ニ 必要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ裁 判 所 ハ之 ヲ更 新 ス ル コト ヲ得

ス

第 二十七条乃至第二十九条 ノ規定 ハ前 項ノ更新 ノ場合 ニ之 ヲ準用

第 三十 九 条  予 防拘 禁 ニ付 セラ レ タ ル者 ハ当分 ノ間 監 獄 内 ノ特 ニ分 四十

界ヲ 設 ケ タ ル場 所 ニ之 ヲ収 容 ス ル コト ヲ得 ニ テ 地方 裁 判 所 ノ検 事 ト ア ル ハ朝 鮮 ニニ テ ハ地

方 法 院 ノ検 事 ト ス

第三十 九 条  本法

希望条項 現 時 ノ世 相 ニ鑑 ミ政府 ハ宜 シク朝 憲 紊 乱 セ ムト ス ル暴 力 行 為 ヲ厳 重

申 し て居 る の であ る、 師 団 長 会議 に於 て も之 を 申 す 積 り であ る、 此

であ つ て、 此事 は有 ら ゆ る機 会 に於 て、 部 下 に徹 底 す る や う に之 を

し て の本 分 を 何 処 ま で も守 ら な け れ ば な ら ぬ、 斯 様 に 考 へて居 る の

す が如 き こと は、 決 し て許 す こと では な い のであ る、 軍 人 は 軍 人 と

と 云 ふ こと は 、 決 し て是 は許 さぬ こと であ る、 軍 人 が政 治 運動 を為

責 上 政 治 を 論 議 し な け れば な ら ぬ事 柄 以 外 に於 て、 政 治 に干 与 す る

是 は 政 治 に干 与 せず と 云 ふ意 味 に解 釈 を 致 し て居 る、 随 て軍 人 が職

ニ拘 ラ ス﹂ と 云 ふ文 字 の解 釈 ﹁政 治 ニ拘 ラ ス﹂ と 云 ふ文 字 の解 釈 は、

彼の

明 治 大 帝 の下 し 給 へる軍 人 勅 諭 の中 にあ り ます る所 の ﹁政 治

致 し て居 る のであ りま す、 之 に対 し まし て の林 陸 軍大 臣 の答 弁 は、

て は、 今 日 の軍 人 の政 治 干 与 の問 題 に付 き ま し て、 詳 細 な る質 問 を

て居 り ます 、 そ れ から 林 陸 軍 大臣 の答 弁 、 此 林 陸 軍 大 臣 に対 し まし

こと は、 当 局 と協 議 をせ な け れ ば確 答 は出 来 な い、斯 様 に答 へら れ

云 ふ こと も考 へて居 る、 但 し其 如 何 な る立 法 を す るか と 云 ふ や う な

りま す から し て、 今 日海 軍 部 内 に於 ては何 等 憂 ふ る点 は な い の であ

こと はし な い意 味 の申 合 ま で もし て居 る の であ る、 斯 様 な 次第 であ

青 年 将 校 は 、 自 発 的 に自 ら の本 分 を守 つ て、 政 治 に干 与 す る やう な

い、 何 時 か予 算 委員 会 に於 て話 を 致 し た や う な こと で、 第 二 艦隊 の

に今 日維 持 さ れ て居 る 、 不穏 の思 想 を有 つ て居 る やう な 者 は今 日 な

と に付 き ま し ては 、海 軍部 内 は最 も平 静 であ る、 軍 紀 、 風 紀 は完 全

斯様 に答 へら れ て居 り ま す、 又現 下 の海 軍 部内 の情 勢 如 何 と 云 ふ こ

力 を 致 し て居 る、 将 来 も 亦 大 に此 点 に付 ては努 力 す る積 り であ る、

る機 会 に於 て、 此 事 が部 下 に徹底 を致 す やう に之 を話 し て居 る、努

司 令 長 官 会 議 と か、 司 令 官 の会 議 と か、 或 は参 謀 長会 議 、 其 他 有 ゆ

る者 は 是 は 別 段 であ る、 斯 様 な 答 弁 であ り ます 、 尚 ほ 此事 に付 ては

動 を す ると 云 ふ やう な こと は決 し て許 さ な い、 職 責 上政 治 を論 議 す

陸 軍 大 臣 と 何 も変 つた こと はな い、 そ れ であ る か ら、 軍 人 の政 治 運

先 づ 御 紹介 致 し ます る事 は 此位 に 止め まし て、 此案 に付 き ま し て

る、 斯 様 な 趣 旨 に答 へら れ て居 る の であ り ます

部 内 に於 て、 此 同 様 の問 題 に 対 し ま し て、 ど う 云 ふ 形勢 であ る か、

居 る、 斯 様 な趣 旨 の答 弁 であ り ます 、 そ れ から海 軍 大臣 、 是 も海 軍

ま し て、 過激 な る思 想 を 有 し て居 る と 云 ふ やう な者 は無 いと認 め て

者 を勝 手 に縛 ると 云 ふ やう な こと は 、 穏 か でな い こと であ ると 云 ふ

ので あ る、 検 事 は原告 官 であ る のだ から、 原 告 官 が被 告 と な る べき

居 つた のであ りま す る が、 是 は洵 に検 事 の権 力 を余 り に強 く す る も

に捜 査 上 必要 が あ れば 勾 引す る こと が出 来 ると 云 ふ規 定 に相成 つて

るか と申 しま す ると 、 此第 十 四条 と 云 ふ の に、検 事 が被 疑 者 を 勝手

て居 る ので あ り ます 、 それ か ら 又現 下 の陸 軍 部 内 の情勢 は如 何 と 云

点 に対 し ま し て は、 何 処 ま でも努 力 す る考 であ る 、斯 様 に答 へら れ

又如 何 な る考 を有 つて居 ら れ る か と 云ふ や う な こと に付 き まし て、

の益 谷 君 が修 正案 を 提 出 致 し ま し た、 其 修 正 案 は如 何 な るも の であ

詳 細 な る質 問 を致 し て居 る の であ りま す、 大角 海 軍 大 臣 も亦 林 陸 軍

所 か ら、 之 を 改 め ま し て、 急 速 を 要 し 判事 の勾 引 状 を 求 め る こと の

色 々な 修 正 を致 した の であ り ま す、 討 論 に移 り ま し て か ら、 政 友会

大 臣 同 様 、 所 謂 軍 人勅 諭 の中 の ﹁政 治ニ 拘 ラ ス﹂ と 云 ふ解 釈 は、 矢

出 来 な い時 に限 つ てだ け、 検 事 の勾 引 の権 利 を与 へる、 斯 様 な こと

ふ こと に 付 き ま し ては 、 今 日 の所 では陸 軍 部 内 は 極 め て平 静 で あ り

張 り政 治 に干 与 せず と 云 ふ意 味 に解 釈 致 し て居 る の であ る、 此 点 は

を拘 禁 さ れ る、 斯 う 云 ふ こと であ り ま す か ら、 是 は容 易 な ら ぬ こと

人権 上容 易 な ら ぬ こと であ る ので あ り ます 、 判 決 あ る に非 ず し て身

か ら出 て来 た者 が、 更 に又拘 禁 さ れ ると 云 ふ制 度 であ り ます 、 是 は

て、 予防 拘 禁 と云 ふ のは 、 御承 知 の通 り 一旦刑 を著 て居 つて、 監 獄

の二十 七条 と 云 ふ の は、是 は 予防 拘 禁 と 云 ふ新 な る制 度 であ り ま し

や ら せ る、 斯 う 云 ふ風 に改 め よう と 云 ふ の であ り ます 、 そ れか ら 次

矢張 同様 に検 事 に勝 手 にや ら せ な いで、 急 速 を要 す る場 合 に限 つ て

矢 張 同 様 で、 是 は勾 留 の場 合 で ござ いま す が、 勾留 の場 合 に於 ても 、

に直 し た いと 云 ふ の であ り ます 、 そ れ から 十 六条 に至 りま し ても 、

云 ふ こと にす る が相 当 で あ ると 云 ふ ので、 是 は 二年 以内 と云 ふ こと

置 く必 要 が な いと見 たな らば 、半 年 で も 一年 でも 構 は な い、 出 す と

法 律 に定 め てし ま つて居 る が、左 様 な必 要 は な い、裁 判 所 が二 年 迄

成 つて居 り ま し た、 此 二 年 と 云 ふ の は、 裁 判 所 が定 め る訳 では な く、

す 、 も う 一つは、 三 十 一条 に予防 拘 禁 の期 間 は 二年 と 云 ふ こと に相

設 け て其 処 に置 く こと が出 来 る、 斯 う 云 ふ こと に致 した の であ り ま

云 ふ こと か らし て更 に附則 を設 け て、 当 分 だ け は 監獄 の中 に 分界 を

な 適 当 な場 所 に改 め て、 さ う し て其 中 に置 かな け れば い かぬ、 斯 う

らば 当 分 の間 だ け監 獄 の中 に置 いて宜 し い、 予算 が出 来 次 第之 を別

りま す 、予 算 が な いと 云 ふ こと で あ れば 今 日 已 む を得 な いか ら、 然

斯 様 な 事 から 、 之 を適 当 な る施 設 と 云 ふ こと に改 め ん と す る ので あ

あ る 、 予防 拘 禁 所 と 云 ふ も のを 設 け て、 其 処 に置 く のが相 当 であ る、

くな い こと であ る、 だ か らし て監 獄 でな い別 の所 に置 く のが 至 当 で

を終 つた 者 を其 処 に置 くと 云ふ こと は 、其 人 の名誉 の上 に於 て宜 し

所 は罪 人 の居 る所 であ る、 其 罪 人 の居 る所 に、 罪 人 でな い、 既 に刑

に相 成 つて居 つた の であ り ます 、 是 も 甚 だ 宜 し く な い、 監 獄 と 云 ふ

の場 所 が、 此 案 では 監獄 内 に分 界 を 設 け た 所 へ収 容 す ると 云 ふ こと

た の であ り ま す 、 そ れ か ら其 次 の三 十 条 と 云 ふ のは、是 は 予 防拘 禁

擁 護 の上 か ら 、之 に対 し て弁 護 人 を 附 け 得 る と 云 ふ こと に修 正 致 し

ま し て、 弁 護 人 も附 け る こと が出 来 な か つた ので あり ま す が、 人権

し ま し ては 、 民 政 党 の藤 田君 が之 に賛 成 を 致 さ れ まし た 、 さう し て

斯 う 云 ふ趣 旨 の希 望 条項 であ りま す 、 そ れ か ら益 谷 君 の修 正案 に対

な る 研究 を 遂 げ て、 さ う し て之 を 議 会 に提 出 す る のが 相 当 で あ る、

が相 当 であ る、 斯 様 な 理窟 か ら、 そ れ を政 府 に促 し て、 政府 が十 分

れ ば いか ぬ、 そ れ か ら 又 そ れ に対 す る適 切 な る制 裁 法 規 を設 け る の

あ り ま す か ら、 さ う 云 ふ も のは政 府 と し ては厳 重 な る取 締 をし なけ

さ う し て直 接 行 動 を や る、 斯 う 云 ふも のが今 日往 々にし てあ る ので

傾 が居 つて、 政 治 機 構 の変 革 を企 て、朝 憲 を紊 乱 せ ん こと を謀 り、

様 な条 項 であ りま す 、是 は 御承 知 の今 日 極端 な る右 傾 が居 る、 此 右

に関 す る適 当 の制 裁 法規 を立 案 し て速 に帝 国 議 会 に提出 す べし ﹂ 斯

み 政府 は宜 し く朝 憲 を紊 乱 せむ と す る暴 力行 為 を厳 重 に取締 り且 之

其 希 望 条 項 と 云 ふ のは斯 様 な も の であ り ます 即 ち ﹁現時 の世 相 に鑑

そ れ から 更 に又 益谷 君 か ら希望 条 項 の提 出 があ つた の であ りま す、

に改 め た い、 斯 う 云 ふ こと の修 正 案 が出 た の で あ りま す

であ り ま す、 其 容 易 な らざ る拘 禁 と 云 ふ も のを 、 此案 に於 き ま し て は、 検 事 が刑 務 委 員 会 の意 見 を聴 いて裁 判 所 に請 求 し、 裁 判 所 が本

りま す 、併 な が ら政 府 の言 ふ所 に依 り ま す と、 今 日は 予算 が な い、

人 の意 見 の みを聴 いて決 定 す る と 云 ふ こと にな つて居 つた の であ り

予 算 が な いか ら、 仕 方 が な いか ら 監 獄 に 置 か う と、斯 う 云 ふ の であ

藤 田 君 か ら し て、 更 に 一つ の修 正案 が出 ま し た の であ り ます 、 其 修

即 ち原 案 に付 て決 を 採 り ま し た所 が、 多 数 を 以 て可 決 に相 成 つた の

報告 の通 り に、 諸 君 の御賛 成 を仰 ぎ た いと 存 じ ます (拍 手 )

であ り ま す、 斯 様 な 次 第 で、 委 員 長 報 告 書 と 云 ふ御 手 許 に差出 し て

○議長 ( 秋 田清 君 )  本 案 に対 し ては 、頼 母木 桂 吉 君 外 三 名 よ り、

あ り ま す る案 の通 り に、委 員 会 の決 定 が出来 まし た の であ り ます 、

セ ント シタ ル者 ハ十 五 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス、 前 項 ノ目 的 ヲ

又 松谷 与 二郎 君 よ り、 各 々成 規 に依 る修 正案 が提 出 せ ら れ てあ りま

正 案 と 云 ふ のは、 第 十 条 の次 に十 一条 と 云 ふ も のを設 け ま し て、 さ

以 テ騒 擾 暴 行 其 ノ他 生 命身 体 又 ハ財 産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ煽 動 シ

す、 仍 て討 論 は 、便 宜 上第 二読 会 に於 て修 正案 の趣 旨弁 明 を聴 き ま

報 告書 は斯 様 にし て出 来 ま し た の で あ りま す か ら、 ど う ぞ委 員 長 の

タ ル者 ハ五年 以 下 ノ懲役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス﹂ 斯 う 云 ふ 一つの条文 を 入

し た る上 、 之 を為 す こと ゝ致 し ま す 、 本案 の第 二読 会 を開 く に御 異

テ多 数 共 同 シテ人 ノ生 命、 身 体 又 ハ財 産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ実 行

れ て、 さう し て第 十 二条 の中 の ﹁前 三 条 ﹂ と あ る の を ﹁前 四 条 ﹂ と

議 ありませぬか

う し て斯 様 に書 かう と 云 ふ の です 、 即 ち ﹁朝 憲 ヲ紊 乱 ス ル目 的 ヲ以

云 ふ こと に改 め た い、 斯 う 云 ふや う な案 であ りま す 、 此 案 に付 き ま

、

し て は、 民 政 党 の諸 君 か らし て修 正案 が本 議 場 に出 て居 り ま す か ら、

(﹁異議 な し ﹂ と呼 ぶ者 あ り )

く に決 し ま し た

○ 議 長 (秋 田清 君) 御 異 議 な し と 認 め ます 、 本案 の第 二 読 会 を 開

後 に是 は 修 正 案 提案 者 よ りし て理由 を説 明 さ れ る こと ゝ存 じ ま す か ら、 私 か らは 茲 に申 上 げ る こと は 致 し ま せ ぬ、 そ こ で尚 ほ 民政 党 の

提出)

治安維持法改正法律案 に対す る修正案 ( 頼母木桂吉君外三名

昭和九年三月十 六日開議

第六十五回帝国議会 治安維持法改正法律案 第二読会 衆 議 院 

藤 田君 が希望 条 項 と し て述 べら れ た こと が あ りま す から 御紹 介 致 し ま す 、 そ れは斯 様 な こと であ り ま す、 希 望 条 項 の 一 つ の 案、 ﹁ 政府 は 時 局 に鑑 み矯 激 な る思 想 醸 成 の真 因 を探 究 し速 に之 が根 本対 策 を 樹 立 断 行 す べ し ﹂斯 う 云 ふ案 であ り ます 、 併 な がら 之 に 対 し ま し て は 、 敢 て決 議 を求 む る趣 意 では な いと 云 ふ こと を 附 加 へら れ た ので あ りま す そ こ で採 決 に 入 りま し て、 先 づ益 谷 君 の提 出 せ ち れ ま し た修 正 案

に付 き ま し て決 を採 りま し た所 が、 多 数 を 以 て可 決 に相 成 りま し た 、 治安維持法改 正法律案中左ノ通修 正 ス

に 付 き ま し て決 を採 り ま し た所 が、 不 幸 に し て是 は否 決 と 相 成 り ま

是 亦多 数 を 以 て可 決 に相 成 り ま した 、 其 次 に藤 田君 の提 出 の修 正 案

前項 ノ目的 ヲ以 テ騒擾、暴行其 ノ他生命、身体又 ハ財産 ニ害 ヲ加

懲役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

又 ハ財産 ニ害 ヲ加 フベキ犯罪 ヲ実行 セント シタル者 ハ十年 以下 ノ

次 に益 谷 君 の提 出 され た 希望 条 項 に付 き ま し て決 を採 り まし た 所 が、 第十 一条 朝憲 ヲ紊乱 スル目的 ヲ以 テ多数共同 シテ人ノ生命、身体

し た、 其 次 に益 谷 君 の提 出 さ れた 修 正 案 を除 きま し た 其 以 外 に 付 て、

フベ キ 犯罪 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ五年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 十 一条 ヲ第 十 二条 ニ改 メ以下 順 次 繰 下 げ 同 条 中 ﹁前 三 条 ﹂ ヲ ﹁前

過 日来 委 員 会 に於 き ま し て、 色 々 の議論 が質 疑 応 答 と な つて現 れ

た の であ りま す るが、 其 中 で も第 八 条 の私有 財 産 制 度 否 認 に関 す る

答 の中 心 を為 し て居 つた と言 う ても 差 支 な いと思 ふ の であ り ます 、

規 定 と、 右 翼 団 体 の行為 に対 す る取締 に関 す る質 問 が、殆 ど質 問 応

政 府 は今 回 の改 正 案 に付 て、 何 故 に右 翼団 体 の取 締 規 定 を 設 けざ り

四 条 ﹂ ニ改 ム 第 十 六 条 第 一項中 ﹁第 十 四条 ﹂ ヲ ﹁第 十 五 条 ﹂ ニ改 ム

し かと 云 ふ の質 問 に対 し て の答 弁 は 、 第 一に、 右 翼 団 体 の思 想 竝 に

行 動 は、 現 在 の社 会 状態 に於 け る 一時 的 の発 作 であ る、斯 う 云 ふ こ

第 二 十 九 条 中 ﹁第 二十 七 条第 二項 ﹂ ヲ ﹁第 二十 八条 第 二 項 ﹂ ニ改 ム

乃 至 第 三十 条 ﹂ ニ改 ム

第 三 十 一条第 二 項中 ﹁第 二十 七条 乃至 第 二 十 九条 ﹂ ヲ ﹁第 二十 八 条

と が 一つ の原 因 であ り ま す、 第 二は、 刑法 其 他 の現 行 法 に於 て、 大

治 安 維 持法 改 正法 律 案 中 左 ノ通修 正 ス

政 府 の答 弁 で あ りま す 、 併 な が ら吾 々は 今 日 の世 相 より 見 ま し て、

化 す る 上 に於 て、 立 法 技 術 上頗 る困 難 を感 ず る のであ る、 此 三点 が

体 に於 ては之 を 処 罰 し 得 る の であ る、 第 三 に於 て は、 其 条文 を法 文

第 十 四 条中 ﹁直 ニ被 疑 者 ヲ勾 引 ス ル コト ヲ得 ﹂ ヲ ﹁其 ノ地 方 裁 判

左 翼 の思 想 に対 し て厳 重 な る 取締 を 為 し て行 く こと の必 要 な る こと

治 安維 持 法 改 正 法 律案 に対 す る修 正 案 (松 谷 与 二郎 君 提 出 )

所 ノ 予 審判 事 ニ被 疑 者 ノ勾 引 ヲ請 求 ス ル コト ヲ得 ﹂ ニ改 ム

は 、固 よ り申 す 迄 も あ り ま せ ぬ け れど も 、右 翼 の団 体 中 に、 表面 愛

し 、或 は議 会 の否 認 等 を企 てる、 而 も直 接 行 動 に依 つて、 其 目的 を

国 主義 、 或 は 日本 主 義 を 唱 へな が ら、 誤 れ る 認識 の下 に朝 憲 を紊 乱

達 成 せ ん とす る も の が輩 出 せ ん とす る現 状 に鑑 みま し て、 吾 々は之

予防 拘 禁 ﹂ ヲ削 ル

第 二十 六条 乃 至第 三 十 六条 ヲ削 ル

﹁第 五 章

第 二 十 条 但書 ヲ削 ル

第 三十 七条 ヲ第 二十 六 条 ニ改 メ 以下 順 次 繰 上 グ

五 ・ 一五事 件 の勃 発 を初 め 、其 前 後 に起 りま し た る状 態 を、 今 茲 に

を黙 過 す る こと は、 ど う し ても出 来 な いと 思 ふ の であ りま す 、曩 に

○ 議長 (秋 田清 君 )  此 際修 正案 の趣 旨 弁 明 を 許 す のであ りま す る

想 起 す だ に実 に寒 心 に堪 へな い次第 で あ りま し て、国 家 と 致 し、 此

第 三十 八条 第 二項 ヲ削 ル

が 、何 れ も提 出 者 よ り趣 旨 弁 明省 略 の申 出 があ り ま す、 仍 て直 ち に

であ ると 考 へる ので あ りま す (拍手 ) 政 府 亦 之 を 以 て 一時 的 の現 象

な りと 見 て居 ら れ る やう であ り ます が、 一時 的 の現象 に終 るな ら ば 、

治 安 維持 法 を改 正す る場 合 に於 て は、 決 し て看 過 す べ か らざ る問 題

吾 々も 非 常 に悦 ばし い、 又 一時 的 の現 象 に終 る こと を吾 々は希望 し

添 田敬 一郎 君

持 法 の改 正法 律 案 に付 き ま し て、我 党 よ り提 出 を 致 し て居 り ます る

○ 添 田敬 一郎 君  私 は 只 今委 員 長 よ り御 報 告 にな り まし た る治 安 維

修 正案 の趣旨 を説 明 す ると 共 に、 本 案 に対 し て の意 見 を陳 述 し た い

ます 、 併 な が ら今 日 の此 錯 綜 せ る思 想 界 に於 き ま し て、 又社 会 状 態

討 論 に 入 り ます 、 通 告 順 に依 つて発 言 を許 し ま す︱

と思ひます

の欠 陥 が相 当 に論 ぜ ら れ て居 る今 日 に於 き ま し て、 中 々容 易 に 此問

つた ので あ りま す 、 治安 維 持 法 は唯 一つ国 体変 革 と 云 ふ こと を 目標

認 な る も の は、 殆 ど 同 一の犯罪 であ ると 看做 し て、 之 を規 定 し て居

し て人 の生命 身 体 を 害 せ ん とす る やう な 者 に対 し て は、 其 範 囲 は及

動 行為 を罰 し て居 る の であ り ます 、 暴 動 に至 ら ざ る、 所 謂 多 数 共 同

れ 規 定 を さ れ て居 る の であ り ま す る け れど も 、 併 し刑 法 に於 て は暴

て、 之 を 大 体 に於 て罰 し 得 ると 云 ふ御 話 であ り ま す が、 成 程 そ れぞ

国 心 であ り まし ても 、其 行動 に於 て、 其 目 的 に於 て、 朝 憲 を紊 乱 し、

認 を 目 標 と す る以 上 は、 更 に右 翼 の団 体 であ つ て、 精 神 に於 ては愛

であ りま す、 既 に此 法 が国 体変 革 以外 に、 左 傾 の、 私 有 財 産 制 度否

が ら此 二 つ の目標 に依 つて改 正 を さ れ る と云 ふ こと は、 明 な る事 実

る者 に対 し て、 之 を取 締 り得 る こと に な る の であ り ま す る が、 併 な

ます 、 此 等 八 条 の規 定 に依 つて、 近 頃 の共 産 主 義 よ り転 向 を し て来

と し て制 定 をせ ら れ て居 つた の で あり ま す、 然 る に今 回 の改 正案 を

題 が解 消 す ると は考 へら れ ませ ん 、殊 に 欧羅 巴 諸 国 に於 け る実 例 、

ば な い ので あ りま す 、尚 ほ刑 法 に於 て は、 予謀 陰 謀 を罰 し て居 りま

直接 行 動 に依 つて此 目的 を 達成 せ んと す るが如 き、 所 謂 社 会 の秩 序

或 は伊 太 利 の ﹁フア ツ シズ ム﹂ と 云 ひ、 独 逸 の ﹁ナ チ ス﹂ と 云 ひ、

す け れ ど も、 煽 動 行 為 にま では及 ん で居 ら な い ので あ り ます 、其 他

ん とす る思 想 と を全 然 切離 しま し て、 二 つの目 標 と 致 し た の であ り

新 聞 紙 法 又 は出 版 法 に於 き まし て も、 各 々其 目的 に依 つて処 罰 は致

を 破 ら んと す る者 に 対し て、 是 が取 締 規 定 を設 く る こと は、 治 安 を

見 ます れば 、 私有 財 産 制 度 を否 認 す ると 云 ふ思 想 と 、 国 体 を変 革 せ

し て居 りま す け れ ど も、 是 等 は予 謀 陰 謀 に付 て ま で、 其 範 囲 を拡 げ

維 持 す ると 云 ふ法 の建 前 か ら言 う て当 然 でな け れば な ら ぬ と思 ふ の

る こと は出 来 な い のであ り ま す ( 拍 手 ) 又刑 法 其 他 の現 行法 に依 つ

て居 らな い の であ り ます 、 吾 々は 今 日 の情 勢 に鑑 みま し て、 是 等 の

で あ り ます ( 拍 手 ) 政 友 会 に於 き ま し ては、 是 等 の点 に 付き ま し て

是 等 の状態 から鑑 み ます れば 、 吾 々は之 を 一時 の現 象 と し て黙 過す

現 行 規 定 の範 囲 外 に 属す る行 動 であ つて、 国 家 の治 安 を 害す る と云

は十 分 の御 認 識 が あ り、 又 何 と か し て是 が規 定 を 設 け た いと 云 ふ こ

依 つても 明 であ る の であ り ま し て、 吾 々は政 友会 諸君 と感 を 同 じ う

と の御 希 望 のあ つた こと は 、 只 今 御 朗読 にな り ま し た る希 望 条 件 に

す る、 唯 政友 会 が 一つの条 文 を挿 入 す る こと を御 避 け に な つ て、 希

ふ も のを 目 標 と し て、 之 を 規 定 せ な け れば なら ぬと信 ず る の であ り

更 に法 の体 面 の上 か ら申 し ても、 今 日之 を規 定 す る こと は当 然 で

ます (拍 手 )

あ ると 考 へます 、 即 ち 従来 治 安維 持 法 は 、 御 承 知 の通 り国 体 変 革 を

ぞ出 来 得 る こと な ら ば 、本 会 議 に於 て御 賛成 を願 ひた いと 思 ふ ので

望 条 件 に止 め ら れた と 云 ふ こと は、 如 何 にも 私 は遺 憾 残 念 に思 ふ次

あ り ま す (拍 手 )其 他 の修 正条 項 、 即 ち第 十 四条 以 下 の修 正条 項 に

第 であ り ます 、 併 な がら既 に御趣 意 を同 一にし て居 る以 上 は、 どう

有財 産 制 度 を否 認 す る共産 主義 者 は、其 主 義 を行 ふ上 に於 ては 必ず

一に視 て、 之 を第 一条 中 に規 定 をし て居 つた の であ り ます 、 即 ち 私

国 体 を否 認 をす る、 国 体変 革 を離 れ て共 産 主義 は存 在 し な いと ま で

付 き ま し ては 、 只今 委 員 長 の御 報 告 の通 り、 政 友 会 の諸 君 と吾 々と

目 的 と す る も のと 、 私 有 財 産 制度 の否 認 を 目的 と す る も のと 殆 ど 同

言 は れ て居 つた の であ り ます か ら、 此 国 体変 革 と私 有 財 産 制度 の否

ふ こと を以 て、 現 内 閣 の重大 な る使命 と致 し、 之 を匡 救 せ ん が為 に

閣 が成 立 を 致 し ま し た る初 め に当 つて、 斎 藤 総 理 は思 想 の善 導 と 云

生 れ た か の如 き声 明 を な さ れ まし た 、然 る に爾 来 茲 に至 る二 箇 年 の

は 、其 趣意 を同 じ く 致 し て居 り ます る か ら、 全然 之 に賛 成 の意 を表

間、 私 共 は不 幸 にし て之 に対 す る政 府 の徹 底 せ る政策 を見 る こと の

す る者 であ り ます 私 は此機 会 に於 き ま し て、 特 に政 府 に考 慮 を求 め た いと 思 ふ こと

全 般 に亙 つ て研究 をし な けれ ば な ら ぬ こと で あ りま す るけ れ ど も、

が あ り ま す 、御 承 知 の通 り 、吾 々は昨 年 の議 会 に於 き ま し て、 政 友

第 一に国 民思 想 を調 整 をし て行 く こと 、 第 二 に社 会 政 策 を徹 底 す る

出 来 な い こと は、 甚 だ遺 憾 であ り まし て、 現 政 府 存在 の意 義 を失 つ

救 を期 す る こと は到 底 不 可 能 であ り ま す、 宜 し く 其 思 想 を醸 成 す る

こと 、 第 三 に社会 正義 を強 調 を し て行 くと 云 ふ が如 き 三 項 は、 本問

会 の諸 君 と 共 に思 想 対策 に関す る決 議 案 を提出 を し て、 之 を可 決 致

所 の真 の原 因 を探 究致 し まし て、 之 に対 し て の根 本 対 策 を樹 立 をし

題 に関 し て最 も 重 要 な る観 点 であ る と思 ふ の であ りま す (拍 手 )国

の であ り ます ( 拍 手 ) 而 し て是 が対 策 と 致 し ま し ては 、固 よ り政 治

て、 而 も之 を断 行 せ な け れば な ら ぬ の であ り ます 、 左 傾 思 想 は何 に

民 思 想 の調 整 は 、 即 ち我 が国 体 観 念 を深 化 せ し め、 国 民 の責 任 観念 、

た と 申 し て も宜 いか の如 く感 じ ます る こと は、 洵 に遺 憾 千 万 に思 ふ

因 つ て起 つて来 るか、 彼 等 は現 在 の資 本 主義 、 経 済 組 織 に対 し、 此

殊 に支 配 階 級 に属 す る 人 々の責 任 観念 を喚 起 を 致 し、 更 に教 育 を 刷

し ま し た 通 り 、今 日 の思 想 に対 す る対 策 と 致 し ま し て は、 独 り治 安

資 本 主義 経 済 が段 々発達 を し て来 る に伴 う て起 る所 の弊 害 を 芟 除 す

新 し て、 従 来 の知 識 偏 重 の弊 を 改 め て、 人 格 の陶 冶 を図 ると 云 ふが

維 持 法 、 出 版 法、 新 聞 紙 法 等 の取 締 規 定 のみ に 一任 を し て、 是 が匡

る が為 に は、 此 経 済 的原 理 を全 然 認 め る こと が出 来 な い、 之 を 根 本

の間 を協 調 をし て、 調 和 せ し め て行 く と 云 ふ が如 き こと に関 す る政

的 に覆 さ な け れば な ら ぬ と 云 ふ、 所 謂 ﹁マル ク ス﹂ 思 想 よ り起 つ て

策 を樹 立 す る こと ゝ云 ふ が如 き こと も、 極 め て重 要 であ らう と 思 ひ

す 迄 も な く、 公 正 な る 分 配 の制 度 を樹 て、 或 は労 資其 他社 会 各 階 級

は 此 左 翼 の団体 に対 立 を し て生 れ て来 た も の であ り ます 、 愛 国 主 義

ま す、 第 三 に社 会 正 義 を強 調 を致 し ま し て、 特 権 制度 を是 正 をし て

如 き こと 、 又社 会 政 策 の徹 底 と致 し ま し ては、 失 業 の防 止救 済 は 申

を 唱 へ、 日 本主 義 を唱 へる こと は 、 日本 国 民 と し て固 よ り当 然 であ

行 く 、或 は賞 罰 を公 正 にし て行 く と云 ふが如 き こと も、 此思 想 対 策

参 つた の であ り ます 、 而 し て我国 に於 け る各 方 面 の社 会 の欠 陥 に附

りま す るけ れ ど も、 併 な がら其 狙 ひ所 を何 れ に置 い て居 る かと 言 へ

込 ん で、其 目的 を達 成 せ ん と 致 し て居 る の であ り ます 、 右 翼 の団 体

ば 、 矢 張 彼 等 は現 在 の経 済 組 織 よ り 生ず る所 の欠陥 に狙 ひ所 を定 め

と し て最 も 重要 な る点 であ る と存 ず る の であ りま す、 其 他産 業 にし

は 殆 ど な い ので あ りま す け れ ど も、 私 共 は 以 上 の三 点 を 以 て、 先 づ

ても 、経 済 にし て も、 金 融 に し ても、 此 思想 問 題 に関係 せ ざ る も の

て居 る こと は、 左 傾 の思 想 と 殆 ど 類 を等 しう し て居 る の であ りま す

共 産 主 義 者 、 又 は 社会 主 義 者 が、 今 日 の経 済 組 織 に反 対 を し て居 る

直 接 の必 要 な る事 項 と認 め て居 る の であ りま す

( 拍 手 ) 彼 等 が極 端 な る国 家 の統 制 論 を説 い て居 る と 云 ふ此 思 想 は、

思 想 と等 し いも のと謂 は な け れば な ら ぬ ので あ りま す ( 拍 手) 現 内

而 し て是 等 の政 策 を樹 立 をし て、 之 を実 行 し て行 かう と 云 ふ が為

致 し ま し て、 政 府 に根 本 対策 の樹 立 を要求 す る所 以 であ り ま す、 政

霧 消 し去 る も のと 思 ふ ので あ り ます (拍手 ) 是 れ吾 々が希 望 条 件 と

に適 当 な る施 設 を設 け ると 共 に、 勇 猛 な る決 心 を以 て思 想 対 策全 体

府 に於 き ま し ては 吾 々 の誠意 のあ る所 を 十分 諒 と せ ら れま し て、 速

に は、 非 常 な る努 力 と、 非 常 な る勇 猛 心 が伴 は な け れば な ら ぬ ので あ り ます 、 政 府 は 斎 藤 総 理 を始 め閣 僚 諸 君 に於 き ま し て は、是 等 の

貴

族

院 

第六十五回帝国議会治安維持法改正法律案 第 一読会

の上 に御 努 力 あ ら ん こと を 切 に希 望 す る次第 であ り ます (拍 手)

点 に付 て留 意 せ られ て居 る と 云 ふ こと は 、 必 し も認 め な い では あ り ま せ ぬけ れ ど も、 併 し 政 府 の為 さ れ る所 は総 て不徹 底 であ りま す 、 総 て微 温 的 であ り ます 、 今 日 の時 局 に 対し て国 民 を し て真 に隔 世 の 感 を為 さし め る やう な こと は 、 一つも な い の であ り ま す、 是 に於 て

昭 和九 年 三月 十 七 日 開議

私 は 一つの提 唱 を致 し た い、 若 し 政府 にし て現 内 閣 を維 持 し て、 今 日 の時 局 を負 担 し て、 之 を 匡 救 し て行 く と 云 ふだ け の決 心 があ ると

な る非 常 立 法 であ り まし て、其 意 味 に於 て極 め て重要 で あ る のみ な

○ 岩 田宙 造 君  只今 議 題 と な り ま し た法 案 は 、御 承 知 の通 り に変則

らず 、 所 謂 此 共産 主 義 運 動 に対 す る国 家 権 力 の之 を取 扱 ひま す る根

ら れ て は如 何 かと存 ず る のであ りま す 、強 力 な る、 権 威 のあ る審 議

本 の主 義 方 針 に関す る法 律 でご ざ います る から、 其 点 に於 き ま し て、

す る な らば 、是 等 の政 策 を実 行 せ ん が為 に、 一つの審 議機 関 を設 け

一面 に於 ては 所 謂 険 悪 な る思 想 醸 成 の真因 を探 究 し、 他 の 一面 に於

機 関 を設 けら れ 、之 に適 当 な る権 限 を 附与 し て、 此 審 議機 関 をし て、

事 項 と、 私 有 財 産制 度 の否 認 に関 す る事 項 と の此 関係 に付 て でご ざ

て置 き た いと 考 へる の であ りま す 、其 点は 即 ち 此国 体 変 革 に関 す る

います 、 此 両 者 の関 係 に付 き ま し ては御 承 知 の通 り に、 治 安 維 持 法

私 は政 府 に於 て持 つて居 られ ま す る根 本 の考 へ方 に付 て、 一二 伺 つ

と 云 ふ こと に な れば 、 此思 想 対策 上 非 常 に有 効 な る効 果 を 収 め る の

が初 め て制 定 を され ま し た大 正 十 四 年 の法 律 では、 之 を全 然 区 別 せ

て、是 が根 本 対 策 を 樹 てる の であ りま す 、而 し て其 審 議 会 に於 て樹

では な か ら う か と思 ふ の であ り ます 、 或 は 左 翼 と 云 ひ、 或 は右 翼 と

てた る政 策 、 決 定 し た る事 項 は、 政 府 は 勇 猛 に之 を断 行 を し て行 く

云 ひ、彼 等 が極 端 な る手 段 に訴 へて、 其 目 的 を達 成 せ んと 致 し て居

々と 、斯 う 云 ふ こと に な つて居 りま し て、 国 体 の変 革 と 私有 財 産 制

又 ハ私 有財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト シテ結 社 ヲ組 織 ス ル﹂ 云

度 の否 認 と 云 ふも のを 全然 同 じ やう に扱 は れ て居 る の でご ざ いま す 、

ず に同 じ やう に規 定 さ れ て居 る の であ り ます 、 即 ち ﹁国 体 ヲ変 革 シ

所 が昭 和 三年 に改 正 を さ れ ま した 時 に、初 め て国 体 変革 と 私有 財 産

りま す る所 以 は、 畢 竟 各 種 の政策 を思 切 つて断 行 を す ると 云 ふ こと

局 に当 つて、 時 局 を 匡救 せ ん とす る の勇 あ りと す るな らば 、 総 て に

固 よ り各 方 面 に反 対 が あ りま せう、 併 し な がら 苟 も 身 を挺 し て此 時

制 度 否 認 と の間 に区 別 を設 け ら れ まし て⋮ ⋮ ⋮ 区別 を 設 け ら れ まし

が な い が為 であ り ます 、 若 し 是 等 の政 策 を実 行 を し て行 く上 に於 て、

む と 云 ふ こと にな る な らば 、 矯 激 な る思 想 は、 私 は忽 ち に し て雲 散

如 何 な る反 対 があ つ ても、 其 反 対 の中 に勇 猛 な る態 度 を 以 て之 に臨

た如 く、 此 新 法案 の主 な る点 は 、 共産 主 義 者 の所 謂 外廓 団 体 を、 之

に 区別 さ れた の であ りま す 、 即 ち 只今 司 法 大 臣 の御説 明 に な りま し

文 に持 つて行 き ま し た の みな らず 、其 実 質 に於 ても、 扱 ひ方 を 非常

革 に関 す る事 項 と私 有 財 産 制度 否 認 に関 す る事 項 と を、 全 く別 の条

ぎ な いの であ り ます 、 然 る に今 回 は更 に 一歩 を 進 め ま し て、 国 体 変

少 の相 違 は あ り ます が、 主 と し てそ れ だ け の区 別 を設 け ら れた に過

は、 其 方 の罪 を少 し重 く せ ら れ た に 止 ま る の であ り まし て、 他 に多

た が、 其 時 の区別 は、 唯 国 体変 革 を 目的 と す る方 の結 社 運 動 に付 て

れば 、 家族 制度 は勿 論 立 行 く こと は出 来 な い のであ り ま す、 同 時 に

ま し て、露 西亜 の やう に皆 財 産 を共 有 にす る と云 ふ制 度 に な り ます

れ な いと思 ふ の であ り ま し て、 従 て私 有財 産 制 度 を否 認 し て、 廃 し

産 制 度 と 云 ふ も のを 離 れ て は、 家 族 制度 の存 在 と 云 ふ も のは考 へら

し て家 族 を養 つて行 く制 度 であ りま し て、 是 はど う し ても此 私 有 財

な い の であ り ます る が、 其 所 謂 家 族 制度 な るも のは、 戸 主 を中 心 と

と 日 本 の国 体 が不 可 分 の関 係 に在 ると 云 ふ こと は 、是 は何 人 も 疑 は

と 云 ふ考 へを持 つて居 る のであ り ま す、 御 承 知 の通 り に、 家 族 制 度

ふ も のは、 実 は私 有 財産 制 度 と不 可 分 の関 係 があ るも の ではな いか

であ り ます 、 と 申 し ます る のは、 私 共 の考 へでは 、 日本 の国 体 と 云

日本 の国 体 と 云 ふ も のも 、 維持 出 来 な い こと に な る のぢ や な いかと

を 取扱 ふ、 取 締 る点 、 御 承 知 の通 り に、 是 ま では 国 体変 革 な り或 は

体 は取 締 る の であ り ます る けれ ど も、 更 に それ を 援助 す る所 謂 外 廓

思 ふ の であ り ます 、 それ であ り ます る から 、 日本 の実 情 から申 しま

私 有 財 産 制 度 否 認 を 目的 と す る結 社 を作 り まし た 場合 に、 其 結 社 自

団 体 は、 是 は取締 る規 定 に な つ て居 な か つた の であ り ま す が、 それ

と 云 ふ も の が建 設 さ れ て居 ると 云 ふ風 に見 るべ き も の で はな いか、

す ると 云 ふと、 私 有 財 産 制 度 即 ち家 族 制 度 即 ち 日本 の国 体 を成 し て

と 云 ふ こと にな つて、 此 点 に於 て重 大 な る 区別 を設 け ら れ た の であ

と 云 ふ考 へを持 つ て居 る の であ り ます 、 元 来 此国 体 変 革 に関 す る事

を 取締 る規 定 を 設 け たと 云 ふ こと が重 大 な る点 であ り ま す る に拘 ら

り ます 、 今 一つは 予防 拘 禁 で、 此 法律 に違 反 し て刑 に服 し まし た が、

項 と 、 私 有 財 産制 度 否 認 に関 す る事 項 と を 区 別 し て扱 ふと 云 ふ こと

ず 、 是 は国 体 変革 に付 て の外 廓 団 体 だ け を取 締 る こと に な つて居 り

満 期 の際 に更 に釈 放 さ れ る時 に、 ど う も 又再 び さう 云 ふ 犯罪 を犯 す

は 、 是 は 独 立 し て存 在 す る場 合 に のみ之 を 独 立 の犯 罪 と し て区別 し

日本 の国 体 を 維持 し て居 る土 台 を成 し て居 つ て、其 上 に 日本 の国 体

運 動 をす る虞 が あ る と云 ふ場 合 に、 予 防 の為 に又 拘 禁 を す る の であ

て考 へる こと が出 来 る の であ つ て、 国 体 変 革 と 云 ふも の は私有 財 産

居 ると 云 つ て宜 い のでは な いか、 私 有 財 産 制度 は其 関 係 から 云 へば 、

り ます る が、是 も国 体 変 革 に限 つ て のみ そ れを 認 め て、 私有 財 産 制

な らば 、 此 両 者 を 区別 し て取扱 ふ と 云 ふ こと は、 間 違 つて居 る ので

制 度 否 認 に当 然伴 つて、 不 可 分 の関 係 を持 つ て居 る も のと 致 し ます

ま し て、 私 有 財 産制 度 否 認 の外 廓 団 体 は、 是 は打 ち や つて顧 み な い

度 否 認 に付 ては認 め な いと 云 ふ区 別 に な つて居 る の であ り まし て、

此 共 産 主 義 者 が 目的 とし て居 る実際 と 云 ふも のは、 所 謂 共 産 主 義 に

は な いか と 思 は れ る の であ りま す、 又 一方 か ら見 ます ると 云 ふ と、

此 両 者 の間 に非常 な る区 別 を 設 け ら れ た のであ りま す、 是 が どう 云 ふ考 へから出 て居 り ます る か、果 し て正当 であ るか ど う か、 疑 問 が ご ざ いま す る の で、 此 点 に関 す る政府 の御 所 見 を伺 ひ た いと 思 ふ の

あ る の であ り ま し て、 国 体 問 題 と 云 ふ も の は、 日本 に来 て初 め て 日

が出 来 て、 是 は実 際 は 其 右 翼 転 向者 が や つて居 る と 云 ふ こと を報 道

さう し て私 有 財産 制 度 否 認 と 云 ふ こと で や れば 、 只 今 のや う に外 廓

で あり ま す る か ら、 国 体 変革 と 云 ふ看 板 だ け は暫 く 外 し て置 い て、

て国 体 変 革 と 云 ふ こと を初 か ら看 板 に出 す 必 要 はな い ので あ りま す 、

た り、 外 廓 運動 も出 来 な い、 斯 う 云 ふ こと にな るな ら ば、 何 も 更 め

云 ふ こと を表 面 に掲 げ てや れば 、 非 常 に是 は 色 々予防 拘 禁 をや ら れ

と し て居 る本 当 の内 容 では な い、 で あ りま す るか ら、 若 し此 国 体 と

主 義 者 は言 ふ の であ り ま す け れ ども 、 実 は 国 体其 も のは彼 等 の目 的

ら の指 令 に は、 日本 の天 皇制 を廃 止 す ると 云 ふ や う な こと も 、 共産

は う とす る に は、 日 本 の国 体 が邪 魔 にな る か ら、 そ れ で本 部 の方 か

に問 題 と し て居 る所 では な いの であ り ます 、 唯 日本 で共 産 主 義 を行

義 其 も のは、 国 体 と 云 ふ も の がど う であ る と 云 ふ こと は 、 実 は直 接

て、 さう し て私 有財 産 制 度 一点 張 り でや る やう にな り は し な い か、

云 ふ こと にな れば 、 皆 な此 国 体 に関 す る文 字 だ け を暫 く隠 し て置 い

云 ふ こと が書 いてあ る の であ り ま す る が、 若 し新 法 が実 行 され る と

国 有 と し て其 営 利 性 を剥 奪 し 之 を国 法 の下 に統制 し て﹂ 云 々、斯 う

織の 上 に真 に国 民 大 衆 の福祉 を確 保 し ﹂ 云 々、或 は ﹁土 地 及 資 本 を

々、或 は、 ﹁ 何 等 の階 級 特 権 介在 を許 さざ る新 政治 形 態 と 新 経 済 組

の陣営 を徹 底 的 に打 倒 し 彼等 の支 配 力 を 完全 に掃 蕩 す ると 共 に﹂ 云

し て民衆 の膏 血 を搾 る財 閥 と其 軍 門 に番 犬 化 せ る 日本 主 義 及其 亜 流

立 を期 す ﹂、 或 は其 宣 言 の中 に は ﹁政 権 の利 に盲 ひた る政 党 と 結 託

ち世 界 資 本 主 義 に向 つ て其 解 放 を要 求 し巨 大 な る社 会 主義 国 家 の成

て、 其 主 張 等 を 見 ます る と、 ﹁ 我 等 は亜 細 亜 勤 労 諸 民 族 の先 頭 に 立

に基 き 皇 室 中 心 の社会 主 義 日本 の建 設 を期 す ﹂ と 云 ふ ので あ りま し

と だと 私 は 考 へる の で あ りま す 、 即 ち其 綱 領 は ﹁我 々は 日本 の皇 典

し て居 るも のが あ り ます 、 真 偽 は分 り ま せ ぬ けれ ど も、 有 り得 る こ

運 動 も 自 由 に出 来 る し、 宣 伝 を し て も是 は差 支 な い、 国 体 変革 は今

本 の国 体 と 云 ふも のと衝 突 を す るも の であ り まし て、 本来 は 共産 主

度 は宣 伝 も罰 せ ら れ る こと にな り ま し た が、 私 有 財 産 制 度 否認 と 云

当 に国 体 の こと は や ら な い の で、 私有 財 産 制 度 だ け でや つて行 く の

る の であ り ま せ う け れ ども 、 表 面 、 外 し て し ま ひま す と 云 ふと 、 本

であ る かど う か、 不 明 であ る のみな らず 、 仮 に実 際 運 動 と し て は私

勿 論 そ れ は隠 し て居 る のだ と 云 ふ こと が分 れば 、 無 論是 で罰 せ ら れ

厳 重 に扱 は れ るも のを表 面 に出 す 必要 は無 いの で あ りま す る か ら、

有 財 産 制 度 に関 す る 点 のみ の実 際 運 動 を や つて居 りま し ても、 其 実

ふ な らば 、 ど ん な宣 伝 をし ても 罰 せ ら れ な い、 さう 云 ふ こと で あ り

是 迄 は大 し て其 取締 が 区別 され て居 ら ぬ か ら、 本 国 の指 令 通 り に 両

は 此国 体 の基 礎 を 危 く す る と 云 ふ こと であ り ま す る な らば 、国 体 変

ま す る な らば 、何 を苦 し ん で国 体変 革 と 云 ふ、 さう 云 ふ厳 罰 に処 し、

方 を掲 げ て や つて居 り まし た も のが 、斯 う 云 ふ立 法 が出 来 れば 、 続

革 を 目的 とす るや う な 実際 の結 果 を生ず る 行為 を や つて居 るに拘 ら

ま し て、 此 点 に於 て私 は 重 大 な疑 問 を持 つ て居 る者 であ り ます 、 で

ず 、是 は厳 重 な 取 締 が出 来 な いと云 ふ こと にな る虞 があ る の であ り

る手 段 を講 ず ると 云 ふ こと が、 十 分 に考 へら れ る のであ り ます 、 で 現 に是 は真 偽 は 能 く 承知 し ま せぬ が、 或 る新 聞 の報 道 に依 り ま す と

続 と其 一方 の看板 を卸 し て、 さう し て 一方 だ け で実 際 の目 的 を達 す

云 ふと 、 北 陸 の或 る県 内 では 、 尊 皇 共 産 主義 団 体 と 云 ふ やう な も の

の は、 非 常 な 軽 重 のあ る こと は当 然 であ りま す るか ら、 さう 云 ふ表

見 解 を以 て見 ます れば 、国 体 の問 題 と私 有 財 産 制 度 の問 題 と 云 ふ も

是 は将 来 国家 とし て斯 様 な 見方 を さ れま し て、 唯 だ形 式 上 の普 通 の

て出 て来 る、 或 は 先刻 述 べ まし た や う に、 現 在 の運 動 す る者 が、 此

り ま す る か ら、 そ れ だ け は捨 てた と 云 ふ やう な こと を 言 つて、 瞞 し

に付 て転 向 す れば 、 予 防 拘 禁 と 云 ふ やう な こと も 行 は れ な い の であ

此 方 こそ却 て重 く罰 す る 必要 が あ ると も 言 へる ので あ り ます 、斯 様

が 付 いて行 く、多 数 の人 が付 い て行 く 危 険 が あ る の であ り ます か ら、

ば 、 寧 ろ 此 私有 財 産 制度 の方 こそ、 是 は 誤 り易 い ので あ つ て、 国 民

の であ り まし て、刑 罰を 以 て之 を 阻 止 す る と 云 ふ方 の見 方 か ら言 へ

を 以 て 臨 ま な く ても、 国 民 の大 多 数 と 云 ふ も のは之 に共 鳴 は し な い

大 な問 題 に相 違 あ り ま せ ぬ が、 重 大 な問 題 で あ るだ け 、 必 し も厳 罰

政策 の上 か ら申 し ま す れば 、 日 本 に於 て は国 体 問 題 と 云 ふ も の は重

関 係 であ る の みな らず 、 今 一つ申 上 げ て置 きた い のは、 実 は 此 刑 事

う 云 ふ 理由 であ り ま す る か、 又其 取締 に付 ては 、 早 晩 何等 か の規 定

す る が、 一体 此取 締 の規 定 を本 条 の中 に入 れら れ な か つた のは 、 ど

も十 分 な取 締 を す る考 へだ と云 ふ風 に述 べ て居 られ る や う であ り ま

衆 議 院 の印 刷 物等 を見 ま す ると 云 ふ と、 政 府 に於 ては此 方 面 に付 て

る ので、 此 方 に付 て は多 く の言 葉 を 用 ゐま せ ぬ が、 唯 新 聞 紙 や其 他

た の で、是 は大 体 政 府 の御 考 へも明 か にな つ て居 る やう であ り ます

知 し て居 り ます る か ら、 尚 ほ先刻 も大 河 内 子爵 か ら も述 べら れ ま し

謂 極 端 な右 翼 の取 締 問 題 、是 は衆 議 院 でも 大分 論 議 され た や う に承

ご ざ いま す る が尚 ほ附 加 へて伺 つて置 き た いと 考 へま す る のは、 所

其 点 を伺 ひ た い の であ り ま す、 是 が私 が伺 ひた いと 思 ふ 主 な 二点 で

国 体変 革 に関 す る看 板 だ け を卸 し て、 さう し て此 法律 の私 有 財 産 制

な 点 から考 へて見 ま し て、 私 が茲 に伺 ひた いと考 へます のは 、 一体

を設 け ら る ゝ考 であ り ます る か、 取 締法 を どう 云 ふ形 で制 定 され る

面 の見 方 だ け を し て区 別 し て扱 つ て行 か れ ると 云 ふ こと にな ると 、

此 私 有財 産制 度 と云 ふも のを根柢 か ら廃 止 し ても 、 一体 我 国 の家族

御 考 であ り ます か、 之 を併 せ て伺 つて置 き た い の であ り ま す、 衆 議

はな いも のと考 へて居 ら れ る で あ りま せ う か、 ど う であ り ます か、

制 度 や国 体 と 云 ふも のは維 持 出 来 る の であ る か 、 即 ち私 有 財 産 制度

院 に於 け る応 答 等 を拝 見 いたし ま す る と 云 ふと 、 其 点 は 欠点 があ る

度 の方 の看 板 の下 に隠 れ る、 斯 う 云 ふ 一体 、 法 を 遁 れ る や うな 危 険

を 廃 止 す る と 云 ふ こと ゝ我 が国 体 を変 革 す る こと は、 必 しも 同 じ意

を 坐ず る の で はな いかと 云 ふ憂 を 懐 いて居 る の であ り ま す、 斯 様 な

味 を 持 つ て居 る の では な い、 是 は両 々独 立 し て存 在 し得 るも の であ

け れ ど も、 出 版 法 の改 正 に依 つて之 を 多 少補 ふ積 りだ と 云 ふ ことを

色 々 の点 でさ う 云 ふ方 針 で進 む と 云 ふ こと にな れ ば、 恐 る べき 結 果

ると 云 ふ、 一体 政 府 は 御 考 へを持 つて居 られ る の であ る かど う か、

で居 る の であ りま す るが 、 一体 此 治 安維 持 法 の欠 点 を 出 版法 で補 ふ

言 つ て居 ら れ るや う であ り ます 、 私 は 此 点 に付 て甚 だ 了 解 に苦 しん

い の であ り ま す、 御 承 知 の通 り此 治 安 維 持 法 と 云 ふも のは 、非 常 に

と 云 ふ こと は、 ど う 云 ふ意 味 であ りま す る か、 私 には 了 解 が出 来 な

そ れを 第 一に伺 ひた い、 其 次 に は斯 う 云 ふ法 律 が出 来 ます る と 云 ふ

は 実 際 何答 痛 痒 を感 じ な い ので あ りま す る か ら、 例 へば 此 問 題 で監

と 、 国 体 変革 に関 す る点 だ け を抛 棄 す ると 云 ふ こと は、 共 産 主 義者

獄 に入 つて、 さう し て満 期 に な つて出 て来 た や う な時 に、 国 体問 題

厳 格 な特 別 の法 律 であ り まし て、 普 通 の法 律 の規 定 で は追 つ付 か な

の であ り ます 、 元 来 私 有 財 産制 度 の否 認 と 云 ふ 言葉 は、 少 し く了 解

両 々相存 在 す るも の では な いで あ らう と 云 ふ や う な御 趣意 と伺 つた

制 度 を廃 止 す ると 云 ふ こと ゝ、 国 体 の変 革 を 目的 と す る場 合 と が、、

財 産 制 度 の制度 を破 壊 し やう と 云 ふ単 一不 可 分 の観 念 で あ りま す、

やう な 個 々 のも のを指 す の では な い の であ りま し て、 根 本 的 に私有

ると 申 し ま す る のは、 単 に或 る所有 権 又は 財 産 権 を否 認 す ると 云 ふ

し て御 了解 を得 た いと 思 ふ の であ り ます が、 私 有財 産 制 度 を否 認 す

し にく い文 字 に 近頃 な つて居 る ので あ りま す 、 此点 を少 し 申 上 げ ま

い ので、 特 に厳 重 な 規 定 が設 け ら れた の であ り ます 、 例 へて言 へば

ら腕 つ節 の強 い特 別 な 腕 力 の強 い刑 事 な り 巡 査 を 以 て之 を 逮 捕 し や

非 常 に兇 悪 な犯 罪 人 が居 つて、 普 通 の巡 査 や 刑事 で は迚 も い かぬ か

う と 、斯 う 云 ふ のに当 つて居 る ので あ りま す 、 所 が出 版 法 は 全 く さ

る やう な も の であ りま し て、唯 さ う 云 ふ強 い犯 罪 人 が あ つた なら ば

う では な い の であ りま し て、 出 版 法 は是 は 唯 子 供 が見 張 りを し て居

外 に通 知 を す る位 な役 目 を持 つ て居 る ので あ りま す、 であ り ます か

私 有 財 産 制 度 は、 現 在 の社 会 組 織 、経 済 生活 の根 幹 を 成す も の であ

さ な け れば な ら ぬ ので あ りま す 、 沿革 上、 私 有 財 産 制 度 を否 認 す る

信 念 の存 す る 国 民 共存 共 栄 の律 則 を 包含 す る観 念 であ る と、 斯 う 申

り まし て、 思想 的 に申 し ます れば、 歴 史 的 国 民 的 に抜 く べ か らざ る

ら是 は成 程 、 さ う 云 ふ特 別 の強 い巡 査 な り刑 事 が居 つて初 め て、 子

す け れ ど も、 強 い巡査 も刑 事 も 居 ら な く て、 子 供 だ け が見 張 り をし

供 が見 張 りを し て居 つて其 処 に告 げ て行 けば 、 役 に立 つ ので あ りま

て居 つた と云 ふ こと では、 何 等 其 役 には 立 た ぬ の であ り ます 、 然 る

包 含 し て居 る の であ り ま す、 も つと 痛 切 に申 し ます れば、 私 有 財 産

る、従 て土 地 其 他 資本 等 も公 有 と す ると 云 ふ、 此 社 会 主義 の思 想 を

こと の思 想 を包 含 し て居 る の であ りま す、 所 謂 生 産 手 段 を公 有 と す

れ て居 る の であ りま す るが、 さう 云 ふ説 明 も 、 そ れ か ら若 し さ う 云

制 度 を否 認 す ると 云 ふ こと は、 是 は社 会 主義 の思 想 であ る と申 し て

と 云 ふ こと は 、 御 承知 の通 り所 謂 広 き意 味 に於 て の社 会主 義 と云 ふ

ふ説 明 で満 足 し た人 があ り と す れば 、 其 二 つと も私 に は甚 だ 了 解 が

宜 し いと思 ふ のであ り ま す、 社 会 主 義 と 申 し ます れば 、 此中 に共 産

に其 点 に付 て は、 強 い巡 査 や見 張 は 置 かな いけ れ ども 、 子供 を見 張

出 来 な い の であ り ます 、 であ り ます る か ら、 さう 云 ふ意 味 のも の で

主 義 を 包含 さ れ て居 りま す、 又無 政 府 主 義 も 社会 主 義 の中 に包 含 せ

さし て居 る と 云 ふ こと を 以 て其 欠 点 を 補 は う と 云 ふ意 味 の説 明 を さ

な くし て、 本 当 に此 治 安 維 持 法 の規 定 に代 る べき何 等 か の取 締 法 を

右 の やう に申 上 げま す ると 、 私 有財 産 制 度 を 否認 す る思 想 は、 我 が

し め て之 を解 釈 し て居 る者 も あ る のは、 御 承 知 の通 り であ り ます 、

制 定 さ れ る意 思 が あ り ます る の であ り ます かど う か、 此 点 等 併 せ て

○ 副議 長 (伯 爵 松 平頼 寿君 ) 小 山 司 法 大 臣

で あ りま す 、 そ れ が第 一の御 質 疑 の出 た原 因 だ と思 ふ のであ り ま す

国 体 の変 革 を 目 的 とす る思 想 と は違 は な い こと に な る場 合 が多 い の

伺 つて置 き た い の であ り ます 、 そ れ だ け で あ りま す

一の御 質 疑 は、 国 体 変 革 と私 有 財 産 制 度 の否 認 と は元 々不可 分 のも

が、 理論 上 は 誠 に御 尤 であ りま す 、 併 な が ら茲 で御 考 へを願 は な け

○ 国務 大 臣 (小 山松 吉 君) 岩 田 君 の御質 疑 に御 答 へ致 し ま す 、 第

の であ る か らし て、 此 改 正案 の如 く 二 つに分 け たな ら ば、 私 有 財 産

家 は之 を 取締 つて処 罰 す る と 云 ふ こと は出 来 な い の であ り ま す、 其

あ り ます 、如 何 な る思 想 を持 つて居 りま し ても、 其 思 想 に対 し て国

れば な りま せ ぬ のは、 人 の思 想 は是 は取 締 る こと の出 来 な いも の で

の経 過 を 見 ます ると 云 ふ と、 先刻 岩 田君 の御 話 の やう に、 元 は大 正

にも さう で な いの であ り ま し て、 不 思 議 と 云 ふと を かし う ござ いま

ふ やう な 御考 の生ず る のは 御 尤 で あ りま す る が、 併 し 実際 は 不思 議

とす る思 想 に対 し ては 、 之 を隠 す であら う、 瞞 ます であ ら う、 と云

十 四 年 の治 安 維 持法 第 一条 に、 ﹁国 体 ヲ変 革 シ又 ハ私有 財 産 制 度 ヲ

す が、 実際 は さう でご ざ いま せ ぬ、 現 に我国 の治 安 維持 法 制 定 以 来

も 、仏 教 の思 想 、 支 那 の老 荘 の思 想 、之 を研 究 いた し ま す る と随 分

否 認 ス ル コト ヲ目的 ト シテ﹂ 、 斯 う 規 定 し て居 りま し て、 是 は 同 列

て国 家 は之 を取 締 るべ き で あ りま す 、従 来 の思 想 の歴 史 を 見 ま し て

過 激 な る思 想 があ る のであ りま す 、 併 な が ら老 荘 の思想 を直 ち に治

に置 いて居 る、是 は思 想 上 に於 ても 是 は同 列 に置 い ても宜 し いも の

思 想 が運動 と し て、 行 動 に 現 は れま し て、 初 め て其 現 は れ た形 に於

安維 持 法 違 反 だ と 云 つて、 今 日取締 る こと はま あ 出 来 な い こと であ

であ り ます 、 併 な が ら 大 正十 四年 以 来施 行 いたし て見 ます ると 、 我

共産 党 は頻 り に 此 方 に向 つて新 し い ﹁テー ゼ﹂ を 発 し て居 る の であ

す る共 産 主 義 の方 に のみ 向 つて来 た の であ り ます 、 加 之露 国 の国 際

に な つて、 寧 ろ 影 を潜 め て し ま つて、 専 ら 我 が国 体 の変 革 を 目的 と

否 認す ると 云 ふ 所 謂 社会 主義 、 無 政 府 主義 の方 の思 想 運 動 は段 々静

々此国 体 変 革 の方 に 向 つて来 て居 る の であ り ます 、 私 有 財 産制 度 を

激 思 想 運動 を為 す 者 は ど う 云 ふ こと をし て居 る かと 申 し ま す と、 益

く死 刑 ま で科 せ られ ると 云 ふ 重 き法 規 が出 来 た に も拘 らず 、 我 が過

り、 十 年 以下 の懲 役 と 云ふ其 儘 に し て置 いた 訳 であ りま す 、斯 の如

さう し て私有 財 産 制 度 を 否 認 す る こと を目 的 とす る方 は 、 従 来 の通

と を目 的 と す る結 社 は 死 刑 ま で科 す る こと に致 し た のであ り ます 、

其 当 時 第 一条 を 二 つに分 け ま し て、 第 一条 には、 国 体 を 変 革 す る こ

は、 特 別 の重 き刑 を科 さな け れば な ら ぬと 云 ふ 必要 を認 め ま し て、

体 を変 革 す る こと を目 的 と す ると 云 ふ、 此 危 険 な思 想 運 動 に対 し て

盛 に な つた の であ り ます 、 そ こで昭和 三年 、 緊 急勅 令 に依 つて、 国

国 に於 ては 外 国 に例 の無 い国 体 変 革 を 目的 とす る思 想運 動 が非常 に

り ます 、 又 取 締 を致 す 必 要 もな いと同 じ であ り ま し て、 思 想 運 動 と し て の行 動 に現 は れ た場 合 に於 て、 国 家 は 之 を 危 険 な り とし て取 締 る の であ り ま す か ら、 仮 令 私 有財 産 制 度 の否 認 と国 体 を変 革 す る こ と を目 的 と す る思 想 と が、 同 一に帰 著 す る場 合 が あ り まし ても 、 立 法 を 致 し ます 趣 旨 から 申 し ま すと 、 其 現 は れ た形 に於 て之 を処 罰 す るよ り 外 に は、 方 法 は な い のであ り ま す、 詰 り運 動 的 行 動 に危 険性 あ り と見 る の であ り ます 、 頭 の中 に考 へて居 る の は、是 は 如何 と も し や う が無 い の であ り ます 、 又考 へて居 る思 想 は、 往 々 にし て色 々 変 化す る やう であ り ます が、 外 部 に現 は れ、 文 書 に現 は れ、 演 説 に 現 は れ、 或 は行 動 に現 は れ ま し た時 に、 其 現 は れ た 形 に於 て、 是 は 私 有 財 産 制 度 を否 認 す る思 想 な り、 是 は進 ん で我 が国 体 の尊 厳 を破 壊 す る思 想 な り と云 ふ こと を 見 て行 か なけ れ ば な ら ぬ のであ り ま す 、 ま あ 詳 細 は委 員 会 に於 て尚 ほ申 上げ る方 が 宜 し いと思 ひ ます が 、 大 体 さう 云 ふ風 に取 締 の根 本観 念 を認 め て居 る次 第 であ り ます 、 左 様 な 次 第 であ りま す か ら、 第 二 の御 尋 の やう に さう 云 ふ風 に現 は れ た 形 に依 つて の み取 締 る と 去 つた な らば 、国 体 を変 革 す る こと を 目 的

対 し て は、 どう し ても重 き刑 を 以 て臨 み、 重 き処 分 を し な け れば な

使 つて、 盛 に思 想 運動 を致 し ます 以 上 は 、此 国 体 変 革 と 云 ふ も のに

す 、 さう 云 ふ形 を 以 て、 我 々が 申 す こと も畏 いと思 ふ やう な 言葉 を

りま す 、 是 はど う も理 論 と 全 く 反 対 な方 向 に向 つ て来 た 訳 であ り ま

前 も 付 いて居 る の が多 々あ る やう であ りま す、 唯 是 が御 話 の如 く、

或 は忠君 愛 国 と 云 ひ、或 は尊 王 と 云 ふ、 或 は勤 王党 と 云 ふ や う な名

し ま す る も の は、 団 体其 のも の は不 法 の団 体 では な いの であ り ます 、

ま す 、考 慮 を致 し ま し た が、 御 承 知 の通 り、 此 所 謂 右 翼 の団 体 と申

安 維 持法 を改 正 いたし ま す る に当 つて、 考 慮 を 致 し まし た の であ り

ま つて、 一種 の暴 力 行為 をす る団 体 の名 前 が出 来 た 事 件 が あ る位 で

取 締 を要 す ると 云 ふ こと に な り ます のは 、其 団 体 と し て の行動 で な

あ り ます 、 団 体 其 も のを法 律 が 不都 合 だ と 云 つて取 締 る こと は出 来

ら ぬ と、 斯 う考 へて居 る訳 であ りま す 、 そ れ か ら次 に御 話 のあ り ま

な いの であ りま す 、 さ う 云 ふ点 から 致 し ま し て色 々研 究 を致 しま し

し た、 斯 う 云 ふ風 に国 体 の変 革 と 云 ふ こと に重 き を 置 い て、 私有 財

の彼 等思 想 犯罪 者 の状態 を見 ます ると 、 さ う 云 ふ こと は無 い の であ

が あ り ま し た、 是 は御 尤 な御 質 疑 であ ると思 ひ ます る が、是 も実 際

た が、 一つは治 安 維持 法 と云 ふ も のが 、 専 ら所 謂 左 翼 と か左 傾 と か

る ので あ り ます 、 現 に或 る事 件 の如 き は 、各 団 体 から 二 三 人 づ つ集

り ま す、 彼 等 は 自 分 の信 念 を飽 くま でも 主張 す る、 人 に向 つ ては そ

云 ふ も の ゝ取 締 そ す る為 に、 大 正 十 四年 に立 法 いた し ま し た沿 革 に

く し て、 其 団 体 の中 の或 者 が不 穏 の行 動 を す る こと が往 々に し てあ

れ を宣 伝 し 、 同 志 の者 を求 め ると 云 ふ こと であ りま し て、 或 る意 味

も鑑 み まし て、 さ う し て其 規 定 を 置 か な か つた の であ り ます 、 是 は

産 制 度 否 認 と云 ふ 方 に対 し ては 軽 い取扱 をし た なら ば 、所 謂 瞞 ます

に於 て は信 仰 的 態 度 を執 つて居 りま す か ら、 自 分 の考 を隠 し て、 胡

出 版 法 等 に依 つ て取締 る から 宜 いと 云 ふ こと であ つた と 云 ふ御 言 葉

者 が あ る だ らう 、 或 は自 分 の思 想 を隠 す 者 が あ るだ らう と 云 ふ御 話

さ う 云 ふ関 係 があ り ます から 、 今 日 では実 際 上 の必 要 よ り し て、 国

麻 化 し て、 瞞 ま し てど うす ると 云 ふ や う な こと は無 い の であ り ます 、

の刑 罰 法 規 に於 て取締 をす る こと が出 来 る と考 へて居 る次 第 であ り

の行 動 に出 でた場 合 は、 現 行 の刑 法其 他暴 力 行 為 取締 法 、 又 は其 他

ま す、 そ れ から 尚 ほ、 然 らば 今 後 に於 て所 謂 右 翼 に対 す る取 締 を す

も ご ざ いま し た が、 出 版 法 は唯 文 書 に依 る場 合 であ り まし て、 不 穏

方 の結 社 に対 し ては、 そ れな ら も う 少 し何 故 重 い処 分 を し な いかと

る か と云 ふ こと であ り ます が 、是 は衆 議 院 の委 員 会 に於 て屡 々質 問

体 の変 革 を 目的 と す る思 想 に対 し ま し ては、 厳 罰 を 以 て臨 ま な け れ

云 ふ 御言 葉 もあ つた やう であ りま す が、 国 体 の変 革 の方 に 重 きを 置

ば な ら ぬ のであ り ます 、 そ れ から 私 有財 産 制 度 の否 認 を 目的 とす る

いて、 色 々規 定 いた し て居 り ま す れば 、 私 有 財 産制 度 の否 認 の方 は 、

も其 規 定 が必要 が無 い こと に衆 議 院 の意 見 もな つ て居 る の であ り ま

す 、 希 望 条 項 が附 い て居 りま す から、 此 点 に付 き ま し ては政 府 は 十

応 答 があ りま し て、 研 究 に研 究 を 致 し ま した 結 果 、 此度 は改 正 案 に

分 に考 慮 を 致 す考 で居 りま す

従 来 大 正十 四年 以来 の規 定 に於 て十分 な りと 認 め て居 る ので あ りま

第 で あ り ます 、 そ れ か ら次 に 第 三 の御 質 疑 と し て、 所 謂 右 翼 の取 締

す 、 是 は今 日ま で の取 締 の実 際 が 是 で宜 し いと 政府 は考 へて居 る次

の こと に付 て の御話 があ り ま し た が、 是 は政 府 と致 し まし ても 、 治

ます る から、 私 の質 問 は是 で止 め た いと思 ひ ます

ぬ、 今 御 話 のや う な所 も、 国家 を挙 げ て社 会 主義 にす る か、 共産 主

も、 同 じ く此 私 有 財 産 制 度 と 云 ふ こと を 解釈 す る基 礎 を 認 め て居 ら

祐

護 邦  子爵 高 木

立  伯爵 松 木

正 得

子爵 伊 東 二 郎 丸

であ り ます け れ ど も、 其 否 定 の手段 と し て は、 従 来 此私 法 の立 場 に

会 主義 者 が私 権 の観 念 を持 つて居 る のでは な い、 そ れ は否 定 す る の

義 の運 動 な り が 行 は れ て居 るも ので は な い か、 と 云 ふ やう に推 測 す

法 学 者 の私権 の観 念 を 以 て、 そ れ で今 の社 会 主義 の運 動 な り共産 主

度 と云 ふ も のが書 いてあ る も のでご ざ いま す か ら、 何 か此 従来 の民

は 国 体 の変革 に な る の であ り ます 、 然 る に此 法 律 の上 に私 有財 産 制

ると 云 ふと、 言 葉 は私 有 財 産制 度 の否 認 と申 し ま し ても 、 期 す る所

問 題 が、 此運 動 の要 点 であ ら う と思 ふ の であ り ま す、 さう な り ます

義 にす る か、 其 手 段 と し て私有 財 産 制 度 を否 認 す る かと 云 ふや う な

○ 岩 田宙 造君  何 れ委 員 会 に於 て詳 細 な論 議 が行 は れ る こと ゝ考 へ

速記録第四号

第六十五回帝 国議会治安維持 法改正法律案特別委員会議事 貴 族 院 

委員氏名 実 孝

川 康 春 

山 岡 万 之助

委 員 長 公爵  一 条 副委員長  我

楠 

治 

男爵 千

濃

男爵 松 平 外 与 麿

季 隆

小 野 塚喜 平 次

う な 政 治 運動 が根 本 原 理 に な つて居 る ので あ り ます 、其 為 に さう 云

を挙 げ て、 共 産 主 義 な り 社会 主 義 な り に し やう と 云 ふ、 斯 う 云 ふ や

権 であ る と か云 ふや う な考 へでな く し て、 国 家 或 は 此 人類 の全 組 織

立 つて居 る法 律 家 が 考 へて居 るや う な、 さう 云 ふ物 権 であ ると か私

る やう な 趣 旨 が 、 此判 例 の中 に見 え て居 る、 無 論 此 共産 主 義 者 、 社

侯爵 細 平

隆

子爵 曾

宗

子爵 松

翰  吉 

次 田 大 三 郎 

鵜

大

松

赤

沢 総

塚 惟

村 義

池

明

精

一

和 四年 の (れ) の第 一 一 一号 と あ り ま す、 大 審 院 刑 事第 一部 の判 決 、

来 す も のであ らう 、斯 う私 共 は考 へて居 る ので あ りま す、 然 る に昭

其 事 柄 が既 に我 国 の国 体 と 云 ふも の に対 し ま し て は大 いな る変 革 を

ふや う な趣 旨 か ら起 つ て来 る私 有 財 産制 度 否 認 と 云 ふ こと であ れば 、

秋

喜

田 磐

康 

松 沢清 次 郎

竹

川

隈

造 

川 村 男爵 井

水 上 長 次 郎 

男爵 徳

田 宙

尊 由

鶴

山

谷

産 主義 的 社 会 ヲ建 設 ス ル為 ト云 ヒ、 又 ハ目 的 ハ産 業 機 関 ヲ社会 公 有

丸 山 岩

此 判決 に挙 げ てあ る此 判旨 で あり ま す が、 之 に依 りま す る と云 ふと 、

大

昭和九年三月二十三日 ( 金曜 日)

ニ移 シ、 共 産 制 度 ヲ実 現 ス ル ニ在 リト 云 フガ如 キ ハ要 ス ル ニ私 有 財

﹁我国 ニ於 ケ ル私 有財 産制 度 ヲ否 認 シ産 業 機 関 ヲ公 有 ニ帰 セ シメ共

○鵜沢総明君 判例 の此参考資料 に御配付になりましたも のに付 て

も のを 、 大 審院 は其 方 から 避 け て、 私 有 財 産 制度 の否 認 の法 条 に当

は 一体 ど う 云 ふ趣 旨 で斯 の如 く、 殆 ど国 体 の変革 に ま で達 し て居 る

る と思 ふ の であ りま す が 、其 点 は此 部 分 に於 ては認 め てな い、 で是

ニ外 ナ ラズ﹂、 斯 う な つ て居 り まし て、 是 は 国体 の変 革 に も 私 共 当

持 法 第 一条 第 一項 ノ私 有財 産制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ

産 制 度 ヲ根 本 的 ニ破 壊 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ ニシ テ即 チ治安 維

の で はな いか と 云 ふ こと を伺 ひ た い の です

認 と 去 ふ こと を、 二 つ に分 け る と 云 ふ こと が、 甚 だ 其 理 由 に 乏 し い

そ れ から私 の伺 ひた い のは、 今 日更 め て国 体変 革 と 私 有財 産 制 度 否

の理 論 が徹 底 し な い こと に な り は しな い か、 さ う云 ふ訳 であ り ます 、

及 ぶ も の であ ると 云 ふ、 さ う云 ふ風 に論 じ ま せ ぬけ れ ば 、帰 す る所

は 、 之 を広 く推 し 広 め て参 り ます ると 云 ふと、 当 然 国 家 の領 土権 に

御 覧 を願 へれば 、 私 は 此 欧米 か ら起 つた 社 会主 義 、 共 産 主義 の中 に

限 が あ りま せ ぬか ら 、 我国 の国 体 と 欧 米 の国 体 と の違 ひを対 照 し て

に付 き ま し ては、 先 刻 井 田 男爵 に御 答 へし た や う に、 一と 三 と の判

○ 政 府委 員 ( 木 村 尚 達 君 )  只今 御 読 上 げ にな り まし た 大審 院判 例

てた も の であ る か と云 ふ こと に 付 て は、 私 共 是 は疑 問 を持 つて居 る、

の であ りま す、 そ れ か ら次 に御 配 付 の材 料 の、 昭和 六年 七 月 九 日 の

此 判 例 に依 つ て治 安 維 持 法 の 一条 の解 釈 が決 ま つた と は考 へ得 な い

同 じ 大 審 院 刑事 第 一部 であ り ま す る が、 此 方 にな り ます ると 云 ふ と 、

て結 社 を組 織 し ま し た事 案 に対 す る判 決 で あ りま す、 そ こ で是 は大

例 は其 被告 が、 総 て国 体 変革 及 び私 有 財 産 制 度否 認 の二 つ の目的 を

臣 か らも 屡 々申 上 げ ま した 所 であ り ます が、 矢 張 り御 説 の通 り、 私

持 つて居 り ます る所 は、 共 産党 の目的 遂 行 の為 にし た事 案 であ りま

面 ノ所論 綱 領 ニ於 ケ ル主 張 ハ同 法 第 一条 ニ所 謂 国 体 ヲ変革 シ私有 財

有 財 産制 度 否 認 即 ち共 産 主 義 社 会 の実 現 と 云 ふ こと を企 図 す る以 上

﹁私 有 財 産 制度 ノ全 廃 ヲ共 産 主 義 社会 ノ最 高 度 ノ理念 ト シ、 其 ノ当

産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的 ト ス ル モノ ニ該当 ス﹂ と 云 ふ の で、 是

は 、 そ れ は推 し 進 め て行 きま す れ ば、 矢張 り国 体 の変 革 にな る、即

す 、 それ を其 処 に挙 げ て居 り ま す やう な解 釈 を 与 へて居 る の であ り

は 国 体 否 認 の点 も併 せ て認 め て居 る の であ り ます 、 そ れ で此材 料 が

ち其 思想 の経 路 から申 し まし ても 、 実際 そ れ を行 ふ上 か ら見 ま し て

面 ノ過 程 ト シ テ日本 共 産 党 ガ論 旨 第十 一点 ニ於 テ詳 述 ス ル如 ク○ ○

略 され て居 つ て、 甚 だ簡 単 であ り ます から 、 十 分 に は分 り ま せ ぬ け

も 、 さう な る の であ る と 云ふ こと は 、 大臣 か らも 此席 上 で御 返 事 を

ます 、 唯 第 二 の点 だ け が、 事 件 は 旭川 に起 りま し た事 件 で、 全 く国

れど も 、 是 は其 前 の昭 和 四 年 の分 と、 昭和 六年 の分 と に於 て、 我 々

申 上 げ て居 る やう な次 第 であ りま す 、唯 此結 局 の所 、 推 理 の上 で同

社 寺 大 地主 ノ土 地 没収 ヲ主 張 ス ル コト ハ﹂ 云 々是 は初 め の方 には 私

の見 る所 に於 て大 し て差 がな いと思 ふ、 それ で私有 財 産 制 度 の否 認

じ も の であ る なら ば、 二 つ引 離 し て別 物 のやう な 規 定 をし な い方 が

際 共 産 党 と は 関係 な く、 あ の地 方 で共 産 主 義 社 会 の実 現 を 目 的 と し

と 云 ふも のが強 く主 張 さ れ ると 云 ふ場 合 には 、 当然 国 体 の変 革 と 云

宜 いぢ や な い かと 云 ふ御議 論 であ り ま す 、是 は既 に此前 の緊 急 勅令

を 加 へま し て、 其 終 り の方 に な りま す る と、 ﹁日本 共 産党 ノ 現 実 当

ふ こと に当 るも ので は な い か、 斯 う私 は思 ふ の であ り ます 、 それ で

有 財 産制 度 を否 認 す る こと を目 的 と す る も のに該 当 す る と 云 ふ説 明

其 半 面 に私 有 財 産 制度 と 云 ふ言 葉 の争 ひ を致 し て居 つた の では 、 際

け まし た のは 、 是 は緊 急 勅 令 よ り始 ま つた の であ り ます 、 で其 緊 急

結 社、 行 動 を 処 罰 す る こと に な つた のです 、 従 て此 観念 を 二 つに分

社、 行 動 を 処 分 し、 第 二項 に於 ては 私有 財 産 制 度 否 認 を目 的 と す る

第 二項 に分 け ま し て、 第 一項 に於 ては国 体 変 革 を 目 的と す る所 の結

は 私有 財 産 制 度 否 認 の目的 を以 て云 々と あ り まし た 条文 を第 一項 と

に依 つて、 治 安 維持 法 を改 正 いた し ま す際 に、 第 一条 に国 体 変 革 又

よ つと申 しま し た や う な 事実 、 矢 張 り現 在 の光 輝 あ る国 体 を 此儘 に

容 れな いも の であ る と 云 ふ こと は明瞭 であ りま す が、 唯 先 き にも ち

ち 共 産 主義 社 会 の実 現 と 云 ふ も のは、 我 が国 体 、 特殊 の国 体 と は相

す やう に、 正 当 な 理 論 の推 理 に従 ひ ま す れば 、 私 有財 産 制 度 否 認 即

る の であ りま す 、 そ れ と 尚 ほ実 益 の点 か ら申 し ま す れ ば、 今 申 し ま

治 安 維持 法 制定 の当時 よ り今 日 に到 る ま で変 る所 は な いと信 じ て居

勅 令 の当 時 の考 へ方 も、 恐 ら く は現 在 総 て の人 が持 つて居 る感 じ と

らず居 る のであ り ま す 、 そ れ で さう 云 ふ こと を考 へて居 つても、 結

し て、其 下 で共 産 主義 の社会 が実 現 が出 来 ると 信 じ て居 る人 も少 か

ば、 兎 に角 同 一に帰 著 す るも の であ る とし まし ても、 其 当 時 の状 況

同 じ で、 此 両 者 のも のが、 内 容 に於 て正当 な る推 理 の力 を以 て行 け

とし て二 つに分 けた 次 第 であ り ます 、 今 回 条 文 を更 に離 し て規 定 し

分 しな け れ ば な ら ぬ、 さう 云 ふ 考 で緊 急 勅 令 当時 に、 之 を 立 法技 術

いたし ま し て、 斯 か る こと の言 動 に対 し て は、是 非 と も是 は重 く 処

般 国 民 に重 大 な る警 戒 を与 ふ る のと、 そ れと 我 国特 殊 の国 柄 に著 目

る、 そ れ から 又 若 し之 を第 三 条 と第 八条 を 一緒 にし てし ま つた ら ど

ふも のが無 け れ ば 、矢 張 り第 三 条 で処 分 す る訳 に は行 かな い ので あ

之 を認 定 す る所 の資料 が無 け れば いけ ませ ぬ結 果、 若 も第 八 条 と 云

処 分 す る場 合 に於 て、 兎 に角 御 承知 の如 く、 裁 判事 項 とし ま し て は

た こと は更 に考 へて居 な い人 が有 る の であ りま す、 さ う云 ふ人 々を

へて居 る確 信 の程 度 か ら 申 し ます る と、 国 体 変 革 な ど と 云 ふ大 そ れ

局 の所 は国 体 変 革 に 行 く のぢ やな いか と云 ひま す が、 現 在 其 人 が考

まし た が、 其 観 念、 及 び取 扱 の方法 と致 し ま し ては、 緊 急 勅 令当 時

う 云 ふ結 果 が起 る か と申 しま す と 云 ふと 、 今 申 し ま し たや う に、 国

か らし ま し て、 此国 体変 革 と 云 ふ 方 面 に重 き 刑 罰 を 科 しま し て、 一

と 少 し も変 ら な いの であ り ま す、 唯 余 り に引 離 し やう が拡 が つた為

云 ふ こと は少 し も考 へず し て、 唯共 産 主 義 社 会 の実 現 が可能 であ る

体変 革 と 云 ふ や う な大 そ れた 所 の確 信 の下 に行動 す る人 間 と、 さう

確 かに さ う 云 ふ こと も 言 ひ得 る かと 思 ひま す る が、 之 を分 け ま し た

か のやう に考 へて居 る人 間 を 、 同 じ程 度 の刑 罰 で以 て処 分 し て行 く

に、 何分 か別 のやう な 感 じ を 与 ふ る、 感 じ の上 か ら申 し ま す れば 、

のは、 実 は緊 急 勅 令 の当時 か ら の こと であ り まし て、 今 回 も矢 張 り

と 云 ふ こと は、 相 当 で あ るま いと 云 ふ、 要 す る に さう 云 ふ ことも 、

は無 か らう と考 へて居 る の であ り ます

の御 心 配 にな り ま した やう な 観念 の混 乱 が 生ず ると 云 ふや う な こと

であ りま す 、 さ う 云 ふ事 情 で是 は分 けま し た の で、 此 為 に鵜 沢 さん

立法 事 項 と し て見 ます れば 、 考 慮 し て宜 い点 では な いかと考 ふ る の

改 正 の趣 旨 を実 は踏 襲 し た に 過 ぎ な い の であ りま す 、 さ う し て唯 国 体 変革 の点 に付 て、 ど う し て も此 方 面 だ け は尚 ほ 一層 厳格 に之 を取 締 つ て行 かね ば いか な いと 云 ふ所 で、 色 々な新 な る条 項 を設 け る関 係 が あ り まし て、 立法 技 術 上、 遂 に第 一項 第 二項 に分 れ て居 つた の を、 条 文 を別 にし た と 云 ふ こと に過 ぎ ま せ ぬ、 観念 と 致 し ま し て は、

の処 遇 法 に付 て必 し も総 て目的 を達 す る やう な訳 には 行 かぬ 、或 は

適 正 な 方法 には な つて居 ら ぬ と 云 ふ やう な 所 か ら色 々の制度 が考 へ

ら れ ま し て、 其 進 展 の中 に起 つて参 りま し た の が此 予 防拘 禁 の制 度

○鵜 沢総 明 君  予防 拘 禁 に付 て午 前 中 に引 続 き まし て、 尚 ほ御 尋 を

昭 和 九年 三 月 二十 四 日 (土 曜 日)

単 な も の で は な い、 斯 う私 は考 へて居 る のであ り ま す、 従 て斯 の如

又 監獄 の制 度 と の点 も十 分 に考 へな け れ ば な らず 、是 は な か〓

は 、 先 づ現 在 の裁 判 制度 と 云 ふ も のと の対照 もし な け れ ば な らず 、

れ で我国 に於 て此 予 防拘 禁 の制 度 を立 つる と 云 ふ場 合 に於 き ま し て

第六十五回帝国議会 安維持法改 正法律案特別委員会議事 治 貴 族 院  速 記 録 第 五号

致 し た いの であ り ま す、 予防 拘 禁 の制度 は、 ま だ犯 罪 の危険 が あ る

き制 度 は是 は仮 に専 門家 及 び国 論 が是 認 す べき も のな り と 云 ふ こと

の考 へ方 の 一つであ らう と、 斯 う 私 は 思 つて居 る の であ り ま す、 そ

か ら、 予 め之 を拘 禁 をす る、 斯 う 云 ふ こと が本 質 にな つて居 る の で

に な る に致 し まし ても極 め て限 定 的 に、 又 一般 の刑法 に於 て此 制 度

の で予防 拘 禁 を し や う斯 う 云 ふ こと であ り ます る が、 此 本質 を拡 張

な か らう かと 思 ふ の であ りま す 、特 別法 に直 ち に持 つて参 りま し て、

を 先 づ立 て ると 云 ふ こと が順 序 でも あ り、 それ が 又 正 し い こと では

簡

の上 では刑 罰 犯 罪 が 清算 さ れ て も、 尚 ほ将 来 危 険 があ るか ら と 云 ふ

あ り ます 、 此 規 定 に依 り ます と 刑 の執 行 を終 つた 者 で、 詰 り此 裁 判

いた し ます ると 今 日 の刑 法 及 び裁 判制 度 の根 本 を 変 改 す る やう な結

予 防 拘 禁 を す ると 云 ふ やう な こと が広 く適 用 さ れ る と 云 ふ こと にな

論 に到 達 す る こと にな る のであ りま す、 そ こで若 し 此 原則 の通 りな

り ます と 、 他 の弊 害 と云 ふも のが午 前 に も御尋 ね致 し まし た や う に

た も の であ ると 云 ふ も の にな つた も のを、 尚 ほ将 来 の危 険 の為 め に

安 に危 険 であ るか ら 予 め之 を拘 禁 す る と、 斯 う 云 ふ 制度 に し て、 そ

非 常 に大 き く な る、 而 し て此裁 判 と 云 ふも のが結 局 分 ら ぬ、 裁 判 と

而 し て刑 期 満 了 の後 に、 即 ち 其 人 の刑罰 は裁 判 上 既 に綺 麗 に償 は れ

れ で刑 務 所 の観察 其 他 の方 法 に依 つ て、 此 人 は 果 し て社会 に出 し て

らば 今 日 のや う な裁 判 所 構 成 法 に依 る裁 判 制 度 を 廃 止 し て国 家 の保

危 険 があ る かな いか と云 ふ こと を 見 れば 宜 し い、斯 う 云 ふ やう な結

処 遇 法 を定 め る も のであ ると 云 ふ こと にな り ます れば 、 予 防拘 禁制

な り犯 罪 事 実 な り を審 査 を し て、 而 し て犯 罪 人 と認 め て是 に対 す る

度 と 云 ふも のを広 く認 め ても 差支 へな いと 思 ふ、 併 し 今 のや う に 又

云 ふ も のは ど う 云 ふ性 質 のも ので あ る か、 唯 だ或 る種 類 の思 想 傾 向

も牴 触 す る虞 れ が あ り はし な いか 、斯 う 云ふ 疑 問 が起 つて来 ま す、

論 に到 達 す ると思 ふ の であ りま す 、 そ れ故 に此 現 代 の憲 法 か ら見 て

そ れ は御 承 知 の通 り此 刑 罰 法 規 が種 々な る今 変革 の時 代 であ りま し

も 、 立 てや う に依 り ます ると、 此 予防 拘 禁 制 度 は 憲法 と精 神 上 少 く

て、 一方 に於 て は此 監 獄 制 度 の改 革 よ り、 又 一方 に於 て は此 刑法 理

から 犯 罪事 実 に対 し て の刑 罰 と 云 ふ やう な も の も含 め て来 な け れば

裁 判 には或 程度 に は正 義 の見 方 を含 め て置 か な け れば な ら ぬ 、 そ れ

な ら ぬ、 そ れ か ら犯 人 の性 格 も見 な けれ ば な ら ぬと 云 ふ や う な色 々

論 の研 究等 よ り現 代 の今 迄 行 は れ て居 る刑 法 の立 前 と 裁 判 では其 刑 罰 の取 扱方 、 或 は刑 罰 と 言 はず に犯 人 の処 遇法 と申 し ま す か、 犯人

と 去 ふ訳 には参 ら ぬと 思 ふ ので あ り ます 、 従 て非 常 な危 険 な場 合 、

の立 前 も 含 ん で居 ると 云 ふ場 合 に は、 どう し ても只 の犯 人 の処遇 法

意 は違 つ て居 な い のであ りま す、 政 府 に於 き ま し ても 、刑 罰 制 度 の

段 の御意 見 を承 つて居 りま す と、 我 々 の考 へまし た のと少 し も御 趣

と は認 め て居 る の であ り ます 、 そ れ であ り ま す か ら御 言 葉 に依 り ま

し て、 御 言葉 のや う に予 防 拘 禁 を も広 く 適 用 す る こと の弊害 あ る こ

す と、 刑 の執 行 を し て其 効 果 がな い時 分 に、 又其 者 が社 会 に危 険 の

変 革 にな る や う な こと をし やう と考 へて居 る ので はな い の であ りま

十 五年 案 でも、 又 千九 百 二 十 七年 案 に此 案 と し て立 て た所 に依 り ま

あ る時 に又 それ を其 儘 予防 拘 禁 し て置 くと 云 ふ こと は不 都 合 であ る

な け れば 予 防拘 禁 をす べ か ら ざ る も ので あ る、 現 に独 逸 の千 九 百 二

し ても、 累 犯 者 であ つて、 さ う し て現 在 出 す こと に於 て の危 険 が あ

と 云 ふ御 趣 意 があ りま し た が、 それ は其 通 り であ り ま し て、 政 府 の

今 刑 務 所 から 外 に出 せ ば 直 ち に危 険 が あ る、 斯 う 云 ふ やう な も の で

る と 云 ふ やう な場 合 に初 め て適 用 し や う、 斯 う 云 ふ や う な案 の立 て

考 へて居 り ます の は御 言葉 で は物 理 上 のも の でな け れば な ら ぬと 云

ふ御 言葉 が あ り まし た け れ ど も、 此案 では国 体 を変革 す る こと を 目

から、﹁ 罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ル﹂ と 云 ふ こと でな く 非 常 に、

的 と し た 犯罪 を犯 し まし た 者 が裁 判 所 の言 ひ渡 した 刑 の執 行 を受 け

方 にな つて居 る の であ りま す 、 さう 云 ふやう な次 第 でござ います る

り ま す る と概 括 的 に解 釈 でもし な け れば 分 ら ぬ やう な 規定 の立 て方

物 理 上 の危 険 と 云 ふも のをど う し ても 思 は な け れば な ら ぬ、 さう な

か ら、 唯 出 せ ば 直 に危 険 があ る ので あ りま す が、 外 の犯 罪 を 考 へて

に第 三条 又 第 四 条 の罪 を 犯す の虞 あ る時 に限 つ て居 る の であ り ます

ても 、 尚 又其 国 体 を変 革 す る所 の犯 罪 を 犯 す虞 あ る所 の顕 著 な る場

信 用 を 疑 ふや う な裁 判 を し て、 裁 判 は言 渡 す の であ る が、 そ れは午

居 る のち やな い の であ り ます 、 裁判 所 が言 ひ渡 し た所 の刑 に基 く 犯

では 、著 し く危 険 を 生ず る、 そ れ で 一面 に於 て裁 判 の効果 を挙 げ る、

前 中 の御 説 明 のやう に、唯 一時 ち よ つと犯 人 の状 況 を見 て裁 判 を す

罪 、 但 し 所 謂 国 体 を 変革 す る こと を 目的 とす る結 社 及 び支 援 又 は結

ら れ て居 る の であ り ます 、 第 三条 又 は第 四条 の罪 を犯 し た 者 が、 更

る の であ る、 犯 人 の将来 に付 て は分 ら な い、 斯 う 云 ふ こと にな る と

社 の目的 遂 行 の犯 罪 、 そ れ に限 られ て居 る の であ り ま す か ら、 此 狭

合 に の み、 此 予防 拘 禁 を適 用 し や うと 云 ふ の であ りま す 、 犯罪 は限

云 ふと 、 即 ち現 在 の裁 判 に対 す る非 常 な不 信 用 と 云 ふ こと にな り ま

き範 囲 に於 て予 防 拘 禁 の制度 を設 け ま し ても 、 御 言葉 のやう な、 現

即 ち 裁 判 の有 効 に執 行 さ れ る と 云 ふ こと に於 て、 私 は 裁 判 の信 用 が

す から 、其 不信 用 を救 済 す る や う な手 段 に見 え る や う な法 律 の作 り

存 す る の であ る と思 ふ の であ り ます 、 予 め 法律 で裁 判 と 云 ふ も の の

方 では 甚 だ 不満 足 であ る、 のみ な らず 、 色 々の今 日 迄 の法 令 上 の立

て居 る次 第 で あ り ます

行 の裁 判 制 度 の変 革 にな ると 云 ふや う な影 響 は な いと 云 ふ風 に考 へ

○ 鵜 沢総 明 君  議 論 に多 少 な る やう であ り ます る が、 国体 変 革 の場

前 に矛 盾 す る こと に私 はな つ て来 る と思 ふ の であ り ます 、 其 点 に付

一つ十 分 御 説 明 を願 ひた い

合 は此 治安 維 持 法 に於 て今 日 三条 、 四 条 に設 け ら れ て居 る の であ り

て は当 局 の御考 へがま だ 足 り な か つた ので は な いか と思 ふ の です が、

○ 国 務 大 臣 (小 山 松吉 君 )  御 答 いた し ます 、 只 今 御質 疑 の際 に前

の問 題 に、 予 防拘 禁 を入 れ る かど う か と 云 ふ こと は、 是 が詰 り狭 い

あ ると 思 ふ の であ り ます 、 そ れ で此国 体 変 革 のや う な 一つ の思 想 犯

是 は 当 然 考 へら れ な けれ ば な ら ぬ 、此 方 の規 定 も 改 正 さ れ る場 合 が

ま す 、 同時 に刑 法 の改 正 の方 に於 ても国 体 変 革 の問題 と 云 ふも のは

ふ やう な こと に な つて反 対 派 を 一つ抑 へて刑 罰 に付 し てや らう ⋮⋮

政 治 的 の争 ひが激 し く な り、 或 は 階級 の争 ひ が激 し く な る、 さ う云

す ると 、 な か〓

あ る の であ り ま す け れど も政 治 的 の犯罪 な り思 想 的 の犯 罪 に な りま

は 眼 の前 に危 険 が見 え る か ら斯 う 云 ふ の で、 非 常 に理 論 的 の根 拠 も

其 反 対 派 の人 は 不幸 に し て刑 を 言 ひ渡 さ れ る、 其 者 が 刑 を受 け る、

さ う 云 ふ やう な 事情 が 見 え な い、若 し之 に反 し て

こと では な く て非 常 に広 い普 通 認 め ら る べき 予 防 拘禁 の、 其 本 質 を

裁 判 所 は五 年 な り 七年 な り の刑 を 言 ひ渡 す、 そし て五 年 な り 七年 の

さう 云 ふや う な場 合 を予 想 され る拘 禁 の制 度 であ る、 是 は実 に恐 る

拡 げ て行 く こと に な る、 国 体 変 革 にも 入 れ る、 内 乱 にも 入 れ る、 或

べき 結 果 を 持 ち来 す やう な こと に な り は しま い か、斯 う 云 ふ点 を私

は 外 患 罪 にも 入 れ る と 云 ふ やう に拡 張 さ れ る 一つの問 題 を此 治 安 維

而 も 其 危 険 の現在 し て居 る者 に之 を適 用 す ると 云 ふ こと に な り ます

共 は懸 念 いた し ます 、 そ こ で此 私 が唯 だ物 理 的 の危害 と 云 ふ の は、

ら予 防 拘 禁 を す る と 云 ふ やう な こと が あ つては な り ま せ ぬ け れ ども 、

ると 其 犯 人 と 云 ふ も のは どう し ても直 ら な い習 癖 を持 つて居 る犯 人

自 分 の勝 手 な 意 見 を申 し 上 げ る の では な く、 此 制 度 を 立 て る為 には

刑 を終 つ て出 て来 る と非 常 なる 勢 力 が あ る か ら、 或 は危 険 で あ る か

で、 而 し て非 常 な危 険 があ る、 即 ち 眼 の前 に危 険 が あ る と 云 ふ やう

色 々刑 法 の学 者 が考 へて、 それ で 一面 に於 て此 刑 罰 の考 へ方 の変 遷

持 法 に於 て提 供 し て居 る こと にな る の であ る、 所 が 此 独 逸 な ど の草

な者 に の み限 る と 云 ふ やう な こと にな り ます ると 、之 を 拡張 す ると

案 の採 つ て居 る やう に、 予 防 拘 禁 は物 理的 の危 険 のあ る者 に限 つて、

云 ふ こと は 殆 ど 不可 能 な状 態 にな る、然 る に此 思 想 的 な 問題 と し て

た も の であ る、斯 う 云 ふ やう に私 は解 釈 す る の であ る、 そ れ で此 制

度 の立 方 が悪 け れば 、 今 午 前 中 に御話 のやう な 唯 だ刑 務 所 の刑 務 委

と 共 に、 一時 の手 段 とし て斯 う 云 ふ も のを設 く る の已 む なき に至 つ

員 会 と 云 ふ様 な も のゝ意 見 であ つては、 そ れ が幾 ら事 門 家 が や つて

其 思 想 自 体 と し て結 社 をす る、 其 結 社 をす る迄 には 、 色 々な外 部 に

潜 行 運動 も あ りま せ う け れ ど も、 併 な が ら さう 云ふ 者 に対 し ては、

居 る と致 し まし ても、 其 視 察 だ け に依 つ て、 決 定 す る と 云 ふ やう な

現 れ て来 る手 続 が あ る の で あり ま し て、 是 は当 局 の御 説 明 のや う に

る か ら、 さう 云 ふ者 の犯罪 者 の出 て来 る場 合 に、 そ れを 唯 不問 に付

絶 えず 国 家 は観 察 を 致 し て居 り、 又監察 を致 し て居 る の であ り ます

一種 の手 続 で予 防 拘 禁 に付 す る な んか と 云 ふ事 にな り ま す と、 是 は

あ り ます 、 それ に簡 単 に、 たゞ 裁 判所 が裁 判 をし て の言渡 でな く て、

一方 に於 て殆 ど 憲 法 の規 定 に依 らず に人 を拘 禁 す る と 云 ふ やう な こ

事 に な りま す と 、殆 ん ど是 は行 政 官 の決定 と 云 ふ様 な 事 に な る の で

家 の治安 は維 持 は出 来 な い の であ りま す 、 そ れ で現 在 出 て直 ぐ 危険

し て置 いて、 ど う 云 ふ所 へ行 つて潜 行 運動 を す る か分 らぬ と 云 ふ や

が あ る と 云 ふ やう な 虞 のあ る者 に、 之 を 予防 拘 禁 と 云 ふ こと にす る

と に な り ます の であ り ます 、 詰 り警察 が 危険 な る者 と し て拘 禁 す る

う な こと は、 是 は な い筈 であ る、 さう 云 ふ や う な怠 慢 な こと では国

と 、是 も刑 法 から 申 す と非 常 に例 外 の例 外 であ りま す けれ ど も 、是

斯 う 云 ふ様 に考 へて居 る次第 であ り ます 、 此 点 に付 て、 此 三 条 、 四

に、 さう し て又無 理 のな いや う に致 す こと が甚 だ 必要 な こと であ る、

のそ れ ら の犯罪 者 に対 す る処 分 法 に於 ては 、 不 公平 の疑 のな いや う

に危 険 な 犯 罪 者 を取 締 ると 云 ふ事 を厳 密 にす ると同 時 に です 、 国 家

日然 る べき も の であら う 、 そ れ で 一面 に危 険 の犯罪 を、 所 謂 思 想的

欠 陥 、 不 信 を来 す も の でな いか と云 ふ、 斯 う 云 ふ様 な疑 は 、 私 は今

な 不信 を 来 す も のでな いか、 即 ち此 刑 事 裁 判 の制度 の上 に、 非常 な

のと少 し も違 は ぬ と云 ふ結果 を 生ず る、 是 は 我 国 の制 度 の上 に非 常

さう し てそ れ で視 察 し て居 つ て、 最 早 や 危険 が な い から出 し て も宜

し て裁 判 は 極 め て簡 単 にす る、 さ うし てそ れ も、 裁 判官 の代 り に刑

て 一条 で宜 し い、 総 て再 犯 の危 険 な る者 は、 予 防 拘 禁 に付 す 、 さう

理論 が発 生 し て来 る の であ り ま す、 さう な り ます と、 刑 法 を改 正 し

う 云 ふ場 合 に当 る も の に悉 く を 予防 拘 禁 にし な けれ ば な ら ぬ やう な

く訳 にな り ます 、 其 端 を 一つ開 き ます と、 他 の普 通 犯罪 に於 て、 さ

我 々 から考 へれば 、 原 則 が越 え て物 理 的 か ら精 神 的 の方 に及 ん で行

○ 鵜 沢総 明君  只 今 の御意 見 は、 非 常 に是 は重 大 な の であ りま し て、

申 上 げ る程 考 へは決 め て居 ら な いの であ り ます

し い、 ま だ 危 険 が あ る か ら出 さ な い、 斯 う云 ふ やう な論 理 上 の結 論

務 所 の吏員 を非 常 に殖 やし 、裁 判所 の代 り に、 刑 務 所 を 沢山拵 へて、

に至 る の であ り ま す、 そ れ で共産 党 の如 き、 又無 政 府 主義 者 の如 き 、

条 だ け で設 け る のだ か ら さう 広 いも の ではな い、斯 う 云 ふ御 意 見 は

法 に此 規 定 を す る 以上 は 、 更 に普 通刑 法 に於 ても、 此 予防 拘 禁 の制

私 共 は、 是 は 同意 が出 来 な いと思 ふ、 そ こ で斯 う 云 ふ様 な治 安 維持

を、 一つ伺 つて置 き ます

度 を今 迄 見 て居 る よ りも 、 広 く な さ る考 へであ る か ど う かと 云 ふ事

ら見 ても 攻 撃 す る所 の余 裕 のな いやう に出来 て居 りま せ ぬ け れば 、

ふ も の が、相 当 の合 理的 の基 礎 の上 に立 つ て居 り、 而 し てど の点 か

元 来 理論 闘争 を 以 て事 とし て居 る 此団 体 に於 ては、 国 家 の制 度 と去

予防 拘 禁 は、 只 今申 上げ まし た や う に、 三条 、 四 条 の犯罪 に限 り 、

○ 国 務 大 臣 (小 山松 吉 君 )  此 治安 維 持 法 の改 正案 に於 き ま し て、

ます 、是 は 非常 に 恐 る べき こと にな る、 斯 う な ると 云 ふと、 殆 ど常

の刑 罰 権 を否 定 す べ し、 斯 う 云 ふ やう な こと に な つて来 る の であ り

に階 級 闘 争 と な り、 或 は内 乱 を起 し て居 ると 云 ふ やう な 状態 に相 成

此 次 に来 るも のは、 裁 判 廃 止 す べ し、 裁 判官 信 用す べ からず 、 国 家

て、 何 も 彼 も総 て の場 合 に於 て此 予防 拘 禁 を広 く採 用 しな け れば な

つて来 る の であ り ます 、 折 角 治安 の維 持 と 云 ふ こと を 考 へま し て も、

又更 に罪 を犯 す場 合 の犯 罪 も 三 条 又 は 四条 に限 つ て極 く狭 くし て居

ら ぬと 云 ふ迄 に は考 へて居 り ま せ ぬ、 他 の種 の犯罪 で、 ど の程 度 に

其 治 安 を 維持 せ ら れ な いと 云 ふ や う な こと にな る、 即 ち 此刑 名 を正

る のであ りま し て、 此 種 の予 防拘 禁 を、是 を 設 け ま し た か らと 言 つ

予 防 拘 禁 の必 要 が あ る か、或 は 御述 べ にな りま し た様 に、 物 理 上 の、

す と 云 ふ こと は、 名 正し から ざ れば 言 順 な らず 、 言 順 な ら ざ れば 事

にす と 云 ふ 、此 位 に刑 事 政 策 上 大 切 なも のは な いと 思 ふ の であ り ま

挙 らず 、 此 刑 名 を 正す 、 或 は 憲法 の理 論 を 正 す、 刑 罰 の理論 を 明白

云 ふ制 度 を 設 け て、 今 の刑 罰 制 度 の不完 全 な る所 を補 ふと 云 ふ 一つ の手 段 を 取 り ま す こと に付 て、 ど の程 度 のも の、 ど の種 の犯 罪 に予

物 理的 犯 罪 と 称 す るも の ゝ中 に、 不定 期 刑 と か、或 は予 防 拘 禁 と か

防 拘 禁 を付 す る制度 を採 るべ き か と 云 ふ こと は 、 ま だ茲 で は つき り

ち よ つと具 合 の悪 い点 も あ る の であ り ます 、 大 概 不定 期 刑 の最 長期

は 此治 安 維 持 法 のや う な非 常 に重 い刑 を 科し て居 り ます 場 合 には、

関係 のあ る刑 法 改 正 予備 草 案 な ど の規 定 に依 りま し ても、 不 定 期刑

の際 に研 究 いた し まし た 、 不定 期 刑論 を主 張 し た人 も あ つた のであ

と 云 ふ こと な らば 、 或 は 不定 期 刑 の制 度 を執 つた 方 が 宜 くは な いか

す 、 そ れ で仮 に予防 拘 禁 にす る 代 り に、 例 へば 此 三条 、 四条 の犯 罪

が 二十 年 と な つ て居 り まし て、 予備 草 案 のは さ う で あ りま す、 元 来

す 、所 が此 予防 拘 禁 の為 に、 折 角 の刑 名 を立 つる根 拠 を揺 が さ れ る

と 云 ふ やう な こと も、 大 いに考 へら れ る の であ り ま す、 予 防 拘 禁 で

が累 犯者 にし て、 常 習 で あ るや う な者 の 一年 以 上 の懲 役 又は禁錮 の

りま す、 実 は司 法 省 に於 て此案 を 研究 いた し ます 際 に数 回 研究 を致

簡 単 に片 付 け る こと に依 つて、 多 く の弊 害 が生ず る と 云 ふ虞 れが あ

刑 に処 せ ら れ た者 と 云 ふ の が普 通 であ りま す が、 治 安 維 持法 のやう

や う に な る の であ り ます から 、 之 に付 て は十 分 に之 を 御考 へに な り

れば 、 他 の方法 も考 へな け れば な ら ぬと 思 ふ の であ り ます 、 それ か

つた の であ りま す 、 そ れ は 色 々の理 由 があ り ます が 、 御 承知 の、御

ら治 安 維持 法 とし て特 別 の規 定 を設 け る の であ り ます から 、 此場 合

に、 死 刑 又 は無 期 又 は七 年 以 上 の刑 に処 す と 云 ふ やう な 具合 に書 い

し ま し て、 其 結 果 大 多 数 の説 が予 防 拘 禁 が適 当 なり と 云 ふ こと にな

に於 ては、 今 の原 則 的 の立前 と 致 し ては 、既 に 先例 のあ る不 定 期刑

て あ る罰 条 へ持 つて行 つて不定 期 刑 を嵌 め る と 云 ふ こと が、 立 法 の

ま せ ぬと 、 是 は 軽 々し く御 制 定 にな ら れ る こと にな ると、 御 精 神 は

のや う な制 度 を 以 て臨 み、 さう し て裁 判 に重 み を置 い て、裁 判 の結

上 に於 ても考 究 を要 す る点 が あ り ます のと、 そ れ から 制 度自 体 から

非 常 に宜 いと 思 ふ が、 其 結 果 が実 に恐 る べき こと にな る ので あ りま

果 と し て の運 用 と 云 ふ こと に や つて行 く こと も考 へら れる の であ り

考 へて、 予 防拘 禁 の方 が適 当 と見 た訳 であ り ます

麿 殿

一 条

実 孝

第六十五回帝国議会 治安維持法改 正法律案 第 一読会 ノ続 貴 族 院 

ま す、 さう 云ふ や う な点 に付 ては 如何 であ り ます か、 そ れ を承 つて 置 き た いの であ り ま す ○ 国 務 大 臣 (小 山 松吉 君 ) 度 々申 上 げ ます やう に、 予 防 拘 禁 の 制 度 を執 り まし た のは、 要 す る に思 想 犯 では あ りま す け れ ど も、 我 国

治安維持法改正法律 案

体 を擁 護 す る為 に是 は必 要 であ ると 云 ふ こと を認 め た ので あ り ます 、 昭和九年三月二十五 日開議 今 の予 防 拘 禁 を設 け まし た 理 由 は、 社 会 防 衛 と か、 社 会保 護 と 云ふ

公爵  近 衛 文

昭和九年 三月二十五日 貴族院議長 

委員長 公爵

立 場 の方 を 主 要 とし て居 り ま す が、 実 は此 案 は 国 体 を擁 護 す る為 に、 右別冊 の通修正議決せり依 て及報告候也 国 体 変 革 を 目的 とす るも のと し て は、 何 等 不 逞 の行動 を逞 う す る こ と を得 ざ ら し む る為 に、 此 制度 を執 つた の であ り ま す、 そ れ から 御 言 葉 にあ り ま した 不 定 期 刑 の問 題 であ りま す が 、 不定 期刑 を 執 つた 方 が宜 い のぢ やな い かと 云 ふ御 説 があ り ま し た が、 是 は十 分 此 立案

第 三 十 条  予 防 拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 ハ適 当 ナ ル施 設 ニ之 ヲ収 容

刑 事 訴 訟法 中 裁 判 ノ執 行 指 揮 ニ関 ス ル規 定 ハ前 項 ノ執 行 ニ付 之 ヲ

第 三 十 二 条  予 防 拘 禁 ハ刑 ノ執 行 終 了後 引 続 キ之 ヲ執 行 ス

隊

第 二 十 七条 乃至 第 二 十九 条 ノ規 定 ハ前 項 ノ更 新 ノ場 合 ニ之 ヲ準 用

テ ハ裁判 所 ハ之 ヲ更 新 ス ル コト ヲ得

シ改 悛 セ シ ム ル為 必 要 ナ ル処 置 ヲ為 スベ シ

(特別 委 員 の修 正 に係 る部 分 の みを 印刷 し其 の他 は 之 を略 す 小 は 修 正 な り)

第 三 十 一条  予 防 拘 禁 ノ 期間 ハ二年 以内 ト ス特 ニ必 要 ア ル場 合 ニ於

字 及︱ シ又 ハ憲法ノ定ムル統治組織ノ機能ヲ不法 ニ変壊 スル コト ヲ目的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ

タ ル者 又 ハ情 ヲ知 リテ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 若 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ

第 八 条  私 有 財 産 制 度 ヲ否 認

為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ十 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 九 条  前 条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為

準用 ス

シ又 ハ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ五年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

ニ逮 捕 状 ヲ発 シ又 ハ司 法 警 察 官 ヲ シテ之 ヲ発 セ シム ル コト ヲ得

第 三十 四条  予 防拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 逃 亡 シタ ル ト キ ハ検 事 ハ直

判 所 ノ検 事 ノ指 揮 ニ依 リ予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ停 止 スル コト ヲ得

決 定 ヲ為 シ タ ル裁 判 所 ノ検 事 又 ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ管 轄 ス ル地 方 裁

ヲ害 ス ル 虞ア ルト キ ハ其 ノ他 重 大 ナ ル事 由 ア ルト キ ハ予防 拘 禁 ノ

第 三十 三 条  予防 拘 禁 ニ付 セ ラ レ タ ル者 其 ノ 執行 ニ因 リ著 シク健 康

前 条 ノ 目的 ヲ以 テ其 ノ 目的 タ ル事 項 ヲ宣 伝 シタ ル者 ハ三年 以下 ノ 懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 五章  予防 拘 禁 第 二 十 六条  第 三 条 又 ハ第 四条 ノ罪 ヲ犯 シ刑 ニ処 セ ラ レタ ル者其 ノ 執 行 ヲ終 リ釈 放 セ ラ ルベ キ場 合 ニ於 テ釈 放後 ニ於 テ更 ニ第 三 条 又 ハ第 四条 ノ罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ルト キ ハ裁 判 所 ハ検 事 ノ

刑 事 訴 訟 法 中 逮 捕 状 ニ関 ス ル規 定 ハ前 項 ノ逮 捕 状 ニ付 之 ヲ準 用 ス

請 求 ニ因 リ本 人 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 ス 第 二 十 七 条  前 条 ノ規 定 ニ依 ル予防 拘 禁 ノ請 求 ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ管

第 三十 五条  予 防拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者収 容後 其 ノ必 要 ナ キ ニ至 リ

テ之 ヲ定 ム 附

第 三 十 八条  本 法 ハ本 法 施 行 前 従 前 ノ規定 ニ定 メ タ ル罪 ヲ犯 シタ ル

第三十 七条 本法施行ノ期 日 ハ勅令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム

則

第 三十 六条  刑 務委 員 会 及 予防 拘 禁 ニ関 シ必要 ナ ル事 項 ハ勅 令 ヲ以

ス ニ ハ刑 務 委 員 会 ノ議 ヲ 経ベ シ

タ ルト キ ハ行 政官 庁 ノ処 分 ヲ 以 テ退 所 セ シ ムベ キ前 項 ノ処 分 ヲ為

轄 スル地方 裁 判 所 ノ検 事 刑務 委 員 会 ノ議 ヲ経 書 面 ヲ以 テ其 ノ裁 判 所 ニ之 ヲ為 スベ シ 前 項 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ本 人 ハ弁 護 人 ヲ選 任 ス ル コト ヲ得 裁 判 所 ハ本 人及 弁 護 人 ノ意 見 ヲ聴 キ決 定 ヲ為 スベ シ 第 二 十 八条  予 防 拘 禁 ニ付 ス ル旨 ノ決 定 ニ対 シテ ハ本 人 ヨリ即 時抗 告 ヲ為 ス コト ヲ得 此 ノ抗 告 ハ裁 判 ノ執 行 ヲ停 止 ス ル効 力 ヲ有 セズ

条 第 二 項 ノ決 定 及 前条 ノ即時 抗 告 ニ付 之 ヲ準 用 ス

第 二 十 九条  刑 事 訴 訟法 中 決 定 及 即 時 抗告 ニ関 ス ル規 定 ハ第 二 十 七

予 防拘 禁 ニ関 ス ル規 定 ハ従前 ノ 第 一条 第 一項 ノ罪 ニ付本 法 施 行 前

ル刑 ヨリ 重 キ ト キ ハ従 前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル刑 ニ依 リ処断 ス

者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス但 シ改 正規 定 ニ定 ム ル刑 カ従 前 ノ規定 ニ定 メ タ

で あ りま す 、第 五 は保 護 観 察 の規 定 を 設 け ら れ た る こと であ りま す 、

勾 留 状 を発 し得 る規 定 、 其 他 の刑 事 手 続 を定 め られ た る こと が其 四

あ り ます 、 第 四 に、 特 別 の場 合 、 地 方 裁 判所 検 事 が被 疑者 に 対す る

り ます 、 第 三 に、 宣 伝 行 為 を処 罰 す る規 定 を設 けた る こと が其 三 で

果 を 御 報告 を致 し ます 、 本 委員 会 は去 る十 九 日正 副 委 員 長 の互撰 を

○ 公 爵 一条 実孝 君  治 安 維 持 法 改 正法 律 案 特 別 委 員 会 の経 過竝 に結

治 安 維 持 法 の改 正 に当 つて、 現 時 の世相 で最 も 忌 む べ き、 暴 力 に依

が あ つた の であ り ます 、 其 重 も な るも のを申 上 げ ま す れば 、 何 故 に

ます 、 本 案 に対 し ま し ては、 数 多 の委 員 よ り数 次 に亙 り幾 多 の質 疑

⋮間 違 ひま し た、 只今 の ﹁本 案 は其 沿革 か ら﹂ と 云 ふ所 か ら取 消 し

と を 目標 と し た規 定 であ り ます 、 暴 力 を 以 てす る社 会 の機 構 を ⋮⋮

及 び私 有 財 産 制度 を否 認 す る思 想 、 斯 う 云 ふ も の に対 し て取締 る こ

り ます 、 本 案 は其 沿革 か ら申 し まし ても 、我 が国 体 を 変革 す る思 想 、

第 六 に、 保 安 処 分 と し て 予防 拘 禁 の制 度 を設 け ら れた 等 の こと であ

刑 ニ処 セ ラ レタ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス 第 三 十 九 条  予 防 拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者 ハ当 分 ノ間 監 獄内 ノ特 ニ分 界 ヲ設 ケ タ ル場 所 ニ之 ヲ収 容 スル コト ヲ得 第 四 十 条  本 法 ニ於 テ地 方裁 判 所 ノ検 事 ト ア ル ハ朝 鮮 ニ於 テ ハ地

行 ひま し て、引続 き審 議 に入 り政府 の説 明 を承 り、或 は秘 密 会 を開 き、

方 法 院 ノ検 事 ト ス

或 は 懇 談 会 を開 き まし て、 本 日 に至 る ま で六 日間 に亙 り、 各 種 の質

ま す、 本 案 は其 沿革 よ り致 し まし ても、 我 が国 体 を 変 革す る思 想 、

つて現 代 の社会 機 構 を破 壊 し 、 社 会機 構 の革 新 を企 てむ と す る思 想

私 有 財 産 制 度 を 否 認 す る思 想 、 斯 様 な も のを取 締 る こと を 目標 と し

運 動 に対 し 、適 当 の条 項 を入 れな か つた のであ るか 、斯 様 な る御 質

の期 間 で議 了 せ ね ば な ら な い関 係 上、 或 は十 分 に ⋮ ⋮ ⋮委 員 諸君 の

た規 定 であ る、 暴 力 を 以 てす る社 会機 構 を破 壊 す る思 想 運動 は、 極

疑 応 答 を 重 ね ま し て、 次 に申 述 ぶ る や う な結 果 と相 成 つた の であ り

質 疑 を尽 さ れた 点 も遺 憾 の点 があ つた ので は な いだ らう か と存 ず る

め て危 険 な も の で、 是 は十 分 に取 締 ら な け れば な ら ぬ と 云 ふ こと は 、

疑 に対 し ま し て、 政府 よ り は反 復 次 の如 き御 答 弁 が あ つた のであ り

の であ り ま す が、 何 分 会 期 中 に此 本案 を議 了 し た いと 云 ふ 各委 員 の

当 局 も十 分 に認 め て居 る、 併 し 此 法案 に織 込 む べき 規 定 では な い、

に亙 り審 議 され て居 る の であ り ま し て、 本 委 員 会 に於 て僅 に六 日間

熱 誠 な る御 尽 力 の結 果 、 漸 く其 結 果 を得 た と 云 ふ こと を、特 に申 添

寧 ろ前 者 は不穏 な る思 想 の伝 播 其 も のを取 締 る こと に重 き を置 き 後

ま す 、 本 案 は審 議 は御 承 知 の通 り 、衆 議 院 に於 き まし ては、 十 五 回

へて置 き た いと存 じ ます 、 本 案 の改 正 の内 容 は、 既 に本 会 議 に於 て

後 者 の取 締 り は治 安 維 持 法 に て為 さ な く て も、 刑 法 其 他 の規 定 で取

者 は直 接 行 動 そ れ自 体 を 取締 る点 に重 点 が あ る の であ る、是 等 は 、

締 ら れ るも の であ る、 又刑 事 政 策 の上 か ら見 ても 、前 者 と同 様 後 者

を 目的 と す る犯罪 、 私 有 財 産 制 度 を否 認 す る こと を 目 的 と す る犯 罪 と の規 定 を 、全 く別 の条 文 に規 定 し た こと が其 一つであ り ま す、 第

司 法 大 臣 よ り御説 明 が あ りま し た 通 り、 第 一、 国 体 を変革 す る こと

二、 所 謂 外 廓 団 体 に対 す る処 罰 規 定 を設 け ら れた る こと が其 二 であ

の で、 十 分 に委 員 諸君 に政 府 の答弁 は御 満 足 を 与 へ得 な か つたや う

数 次 各 委 員 から 此 点 に対 し ては 色 々 の御 意 見 と 共 に御質 疑 が あ つた

を 取扱 は ぬ方 が 宜 い、 斯 う 云 ふや う な御 答 があ つた ので あ り ます が、

度 を維 持 し て孝 道 を護 る に付 て の認 識 が 乏 し い憾 み があ る か どう か、

国 体 を変 革 せむ と す る者 を処 断 し て忠 道 を擁 護 し て居 るが、 家 族 制

値 を 発揮 す る の であ る、 本 法 案 は国 体 擁 護 の為 に実 際 立案 せ ら れ、

し て私有 財 産 制 度 は家 族 主 義 の確 立 し あ る こと に依 つて初 め て其 価

であ り ます 、 本 問 題 に対 しま し ては 、 一委 員 よ りは 予 防拘 禁 の性 質

に見 えま す 、次 に何 故 に国 体 を 変革 す る こと を 目的 と す る犯 罪 と 、

と国 務大 臣 輔 弼 の責任 如 何 、 一生 涯 監 獄 に置 いて置 く こと の出 来 る

し た のは本 案 の内 容 と し て先 程 第 六 に申 上 げ ま した 予 防拘 禁 の問 題

之 を全 然 区 別 せず 、 同 じ やう に規定 せ られ て居 る ので あ る、 即 ち 国

や う な斯 か る重 大 な る処 分 を裁 判 所 が其 権 限 内 でや つた と 云 ふ時 に、

斯 様 な御 質 疑 も あ つた の であ り ます 、 次 に最 も大 き な 問 題 と な りま

体 を変 革 し 、 又 は私 有 財 産 制 度 を否 認 す る こと を 目的 と し て結 社 を

国 務 大臣 が輔 弼 の責 を帯 ぶ る者 がな い のは不 都 合 では な いか、 又 一

の条 文 に分 け た か、 元 来 大 正 十 四年 に治 安 維 持 法 が制 定 さ れた 時 は 、

組 織 云 々と云 ふ風 に な つて、 全 然同 じ やう に取 扱 は れ て居 つた 所 が 、

委 員 よ り は予 防拘 禁 の如 き制 度 を思 想 犯 に適 用 す る のは ど う か、 予

私 有 財 産 制 度 を否 認 す る こと を 目 的 とす る犯 罪 と の規 定 を、 全 く 別

の であ る、其 時 の区別 は 唯 国 体 変革 を目 的 と す る方 の罪 を重 くせ ら

昭和 三 年 に国体 変 革 と 私 有 財 産制 度 否 認 と の間 に 区 別 を設 け られ た

れ た の に過 ぎ ぬ のに、 今 回 は 更 に 一歩 を進 め て此 二 つを全 く別 の条

一般 刑法 に採 用 せ ら れ ざ る制 度 を此 特 定 の法 に採 用 す る のは どう で

防 拘 禁 の如 き制 度 は物 理的 危 険 あ るも のに限 る べき で はな いか、 又

あ る か、 予 防 拘 禁 制度 自 体 が裁 判 の公 正 を疑 は れ る やう にな り はし

文 に、 実 質 的 に於 ても 取 扱 方 を 区別 せ られ た抑 々我国 の国 体 と云 ふ も のは、 家 族制 度 と不 可 分 の関 係 に あ る こと は 何 人 も疑 は な い所 で

な いか、 予 防 拘 禁 制度 に て裁 判 の欠 点 を補 ふ と 云 ふや う な こと にな

は 極 め て 丁寧 に御 答 へが あ つた のであ り ます が、 遂 に委員 諸 君 の満

る や う で は どう か、是 は裁 判 の信 用 を 疑 は れ る と云 ふ やう な こと に

足 を せ ら れ る やう な答弁 を得 な か つた の であ り ます 、 以 上 のやう な

あ る、 家 族 制度 は私 有 財 産 制 度 と離 れ ては 考 へら れ な い、 以上 の関

る御 問 に対 し ま し て、 政 府 は思 想 上此 両 者 は 同 列 に置 いて宜 し い の

質 疑 応答 を 重ね ま し て、 遂 に 二十 四 日午後 に至 りま し て、 懇 談 会 を

係 にあ る から国 体変 革 は 私 有 財 産制 度 否 認 と 不 可分 な も の であ る、

であ る が、実 際 の必要 から し て昭和 三年 の国 体 変革 を 目的 と す る危

開 き 、各 委 員 よ り忌 憚 な き意 見 の開 陳 を さ れ た る結 果 、 小委 員 を 設

に重 大 と思 ふ がど う か等 の質 問 があ り ま し て、 之 に対 し ては、 政 府

険 な る思 想 運動 に対 し て、 特 別 に重 き刑 を 科 す る や う に な つた 、 斯

け ま し て、 意 見 のあ り ま し た 通 り諸 点 に付 て の修 正 の成 案 を作 る こ

な り は し な い か、 之 を 此 制度 を軽 々 に制 定 せ ら れ ると 、其 結 果 は誠

様 な御 答 が あ つた の であ り ま す、 尚 ほ 一委員 よ り は家 族 主 義 は社 会

政 府 は私 有 財産 制 度 を 廃 止 す る ことゝ 、 我 が国 体 を変 革 す る こと ゝ、

主 義 実 現 の為 に は、 其 根 源 に横 は る障 碍 物 であ る、 然 る に家 族 主 義

と にな り ま し て、 委員 長 外 七 名 の小 委 員 は昨 日小 委 員 会 を開 き まし

両 々独 立 し て存 在 す るも のな り と の考 を 有 た るゝ か ど う か、 斯 様 な

は 我 が国 体 の根 基 を為 し 、国 民道 徳 、 孝 道 の依 存 す る所 で あ る、而

案 を骨 子 と 致 し ま し て、 第 八 条 の、 ﹁ 私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ﹂ の下 に

に於 け る成 案 を申 上 げ ます ると 斯様 に相 成 り ま す 、衆 議 院 の 修 正

委 員 会 を 開 き ま し て、 其 成 案 を 得 た のであ りま す、 只今 其 小委 員 会

能 を不 法 に変 革 す る、 即 ち 不法 の手 段 に依 つて変 壊 す ると 云 ふ意 味

べき が 当然 だ と 云 ふ趣 旨 を 以 ち ま し て、 憲 法 の定 む る統 治 組 織 の機

な も の に対 し て之 を 破 壊 す る や う な不 法 な 運 動 に対 し ては 、 取締 る

りま す る議 会 、 政 府 、 枢 密院 、 会 計 検 査 院 、 裁判 所 、 斯 う 云 ふ や う

協 議 を 重 ね ま し た結 果 、憲 法 に於 け る統 治 の 機関 と し て現 は れ て居

取 締 る こと が必 要 であ ら う、 斯 う 去ふ やう な意 見 が現 は れ て、 色 々

﹁シ又 ハ憲 法 ノ定 ム ル統 治 組 織 ノ機 能 ヲ不 法 ニ変 壊 ﹂是 だ け の字 を

を 以 て、斯 様 な修 正 が出 来 た の であ り ます 、 又第 九 条 の第 二 項 は、

て、 午 後 九時 ま で色 々案 を練 りま し た、 尚 ほ更 に今 朝 も九 時 よ り小

ル統 治 組 織 ノ機 能 ヲ不法 ニ変 壊 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ

加 へま し た、 即 ち第 八条 は ﹁私 有財 産制 度 ヲ否 認 シ又 ハ憲 法 ノ定 ム

是 は第 八 条 の犯 罪 に於 き ま し て も、 国 体 変 革 の犯罪 の如 く 宣 伝 を罰

懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス﹂、 次 に第 五章 の予防 拘 禁 、 此 予防 拘 禁 の項 を

﹁前 条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ヲ宣 伝 シ タ ル者 ハ三年 以下 ノ

第 八条 を改 め た の であ り ます 、 更 に第 九条 に付 き ま し ては第 二項 に

ま し て即 ち憲 法 の条章 なり、 裁 判 の信 用 な り、 政治 及 道 義 上 の本 義

併 な がら 此制 度 が如 何 にも新 た な る試 み であ り、 又他 の関係 に於 き

所 は各 委員 に於 きま し て極 め て能 く了 解 を 致 し て居 る の であ り ます 、

し て は政 府 の御 説 明 を 十 分 に承 り まし ても 、 政府 の御 苦 心 の存 す る

斯 う 宏 ふ趣 意 を 以 て出 来 た の であ り ます 、 予 防拘 禁 の制 度 に付 き ま

し得 るや う に置 いて、 其 刑 を原 案 の第 十 一条 と同 一にし て差 支 な い、

タ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 若 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為

全 部削 除 いた し ま し た、 即 ち 第 二 十 六条 以下 第 三 十 六条 ま でを削 除

に照 し ま し て、 斯 の如 き 制度 を 立 つる場 合 には各 般 の影 響 を 十分 に

ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ十 年 以 下 ノ 懲役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス﹂斯 様 に

いた し た の であ り ま す、 従 ひ まし て附 則 の三 十 七 条 が第 二十 六 条 に

云 ふ やう な 御考 のあ る所 を 十 分 に諒 察 は いた し て居 る の であ り ま す

調 査 いた し ま し て、 万 遺 算 な き を期 す る こと が必要 であ ら う 、 そ れ

が、 そ れ が為 め と て此 短 期 日 の間 に多 く の問 題 を 有 つて居 る此案 を

な り、 第 三十 八 条 は第 二十 七 条 に相 成 り ま し て、 更 に此 旧第 三十 八

尚 ほ茲 に少 し く修 正 の理由 を申 上 げ て置 き た いと 思 ひま す 、第 八条

審 議 いたし ま し て、 不十 分 の点 のあ る こと を虞 れ ま し て、 尚 ほ 又 此

条 の第 二項 を削 りま し て、 三 十 九 条 を削 り まし て、 第 四十 条 を第 二

の修 正 の意 味 は ﹁又 ハ憲法 ノ定 ム ル統 治組 織 ノ機 能 ヲ不 法 ニ変 壊 ﹂

案 に付 て疑 義 の点 が 沢山 にあ る の であ り ます 、 此 短 期間 に於 け る審

の中 に、 直 に斯 の如 き 制 度 が若 し出 来 て居 れば、 之 を適 用 し た いと

と 云 ふ字 を加 へま し た意 味 は、 特 別 委 員会 に於 て多 く の方 の質 疑 応

議 は到 底 不 可 能 の こと であ る から、 政府 の意 のあ る所 、 予 防 拘 禁 と

で政 府 の御説 明 に依 り ます と、 最 近 に於 て刑 期 が満 ち て出 獄 す る者

答 の中 に 沢山 の意 見 があ り ま し て、 其 意 見 を綜 合 いたし ま し た し 私

云 ふ事 柄 を政 府 が原 案 の第 三 条 の凶 悪 な る犯 罪 者 に対 し て之 を 設 く

十 八条 に改 めた 、斯 様 に な り まし た の であ り ます 、 此 小委 員 会 の総

有 財産 制 度 の否 認 の外 に是 と 同等 に憲 法 上 の組織 破 壊 の行 為 が、 不

て の委 員 の 一致 し た る 修 正 を 以 て、 之 を委 員 会 に報 告 いた し ま し た、

法 の手 段 に依 つて行 は る ゝと 云 ふ やう な場 合 に は、 どう し ても之 を

ると 云 ふ精 神 は 、委 員 が深 く賛 成 を 表す る のであ りま す る け れど も、 直 に本 案 に依 つて、 其 目的 を 達 す る こと を急 ぎ ま す為 に、 却 て他 の

す 、 尚 ほ其 他 の各 条 に付 き ま し て は、 修 正 を 除 いた外 は原 案 に全 会

可 否 を 諮 り ま し た所 、 多 数 を 以 て此 修 正 に同 意 せ ら れ た の であ り ま

ふ こと に致 し た の であ りま す、 委 員 会 に於 き ま し て小委 員 会 の修 正

も つと適 切 な 案 を議 会 に提 出 され た い、 斯 様 な 趣 旨 で之 を削 除 と 云

○議 長 (秋 田清 君)  工藤 鉄 男 君

を 致 し ます ( 拍手)

議 の精 神 と全 く異 な る も の であ り ます 、仍 て吾 々に於 ては 之 に反 対

貴 族 院 回付 案 は修 正 で あり ま す が、 其 修 正 の箇 所 は我 が衆 議 院 の院

○砂 田重 政 君  簡 単 であ り ま す か ら、 議席 よ り御 許 し を 願 ひます 、

第六十 五回 政府提出、貴族院回付) 帝 国 議 会 治安維持法改正法律案 (

一致 を 以 て賛 成 され た の であ りま す 、 此時 に 一委 員 よ り治 安維 持 法

方 面 に色 々 の疑 惑 を生 ず る、 尚 ほ政 府 に於 て十 分 に審 議 を尽 さ れ て、

の改 正法 律 案 の希 望 決 議 を附 けた いと 云 ふ 発 議 が あ りま し て、 さ う

ま し ては 、遺 憾 な が ら賛 成 は出 来 ま せ ぬ、 随 て本 院 は更 に相 当 な る

方 法 に依 つて、 当 院 の在 る所 を明 にし て戴 き た い の であ り ま す、 即

○ 工藤 鉄 男 君  本 席 よ り御 許 し を願 ひま す、 私 共 も 本 回 付案 に対 し

るや う な希 望 決 議 が委 員会 に於 て付 せ ら れ た のであ りま す 、 只今 読

ち 私 共 同志 は曩 に 一つ の意 見 を本 議場 に提 出 致 し ま し た、 併 な がら

し て賛成 者 が あ り、其 動 議 が、 成 立 いた し ま し て、茲 に次 に申 上 げ

み上 げ ます

院 議 既 に決 つて貴 族 院 へ廻 し ま した 以 上 は、 私 共 は 之 に同 意 す る こ

と が出来 な い の であ り ま す、 茲 に反 対 の意 を表 明 致 し ま す ( 拍手)

治 安 維 持 法 改 正法 律 案 特 別 委 員会 希 望 決 議 予防 拘 禁 制 度 の精 神 に関 し ては 深 く賛 成 す る所 な るも 本案 の規

案 は院 議 に反 す る のみ な らず 、 現在 の憲 法 に於 き ま し て は、 其 七十

○ 議 長 (秋 田清 君 ) 松 谷 与 二郎 君

三 条 に於 て、 憲 法 の条 章 の改 正 を許 し てあ る の であ り ます 、 即 ち其

定 は幾 多審 議 す べ き も のあ り と 認 む る を 以 て政 府 は 速 に適 切 な

斯 様 な希 望 決 議 を発 議 さ れ た のに 対 し て、 委 員 会 は多 数 を 以 て賛 成

手続 を鄭 重 にし た に過 ぎ な い の であ りま し て、 此改 正 の出 来 ると 云

○ 松 谷与 二郎 君  議席 よ り発 言 の御許 しを 願 ひま す、 貴 族 院 の修 正

いたし 、 遂 に今 申 上 げ る やう な修 正可 決 と 相 成 つた次 第 であ り ま す 、

ふ こと は、 極 め て明確 で あ りま す、 然 るに拘 らず 、 貴 族 院 に於 き ま

る立 案 を 為 し 更 め て提 案 せら れ む こと を望 む

いた し ま せ ぬ こと は御 詑 を 申 上 げ ます の であ り ま す が、 何 分 に も 先

甚 だ用意 が 不十 分 であ りま し て、 私 の申 上 げ る こと が十 二分 に徹 底

程 ま で審 議 を致 し て居 りま し た の で、 十 分 の用意 を致 す 暇 がな か つ

の進 運 、 社 会 の情 勢 に反 す る も のと し て、私 は断 然 反 対 せ ざ る を得

し ては 其 改 正 を も阻 止 す る如 き条 文 であ り ま し て、 斯 の如 き は時 勢

な い次 第 であ り ます (拍 手 )

た の で、 何 卒 此 点 は特 に御諒 承 を願 ひた いと存 じ ます 、 之 を 以 て報 告 を終 り ます

○ 議 長 (秋 田清 君 ) 討 論 は 終 局致 し ま し た採 決 致 し ま す、 本 案 の

砂田

桜内

今井

幸雄

健彦

直太

添 田敬 一郎

加 藤 久 米 四郎 

副 議 長  熊 谷

貞夫 

貴 族 院 修 正 に同 意 の諸 君 の起 立 を 求 め ます

鉄 男 

重 政 

工藤

若宮

宮 古 啓 三 郎 

○議 長 (秋 田清 君) 起 立 者 な し ( 拍 手 ) 貴 族 院 の修 正 に 同 意 せ ざ

(起 立 者 な し)

る こと に決 し ま し た ( 拍 手 ) 只 今 の議 決 の結 果 と し て、 貴 族 院 の修

昭 和九 年 三 月 二 十 五 日 (日曜 日)

正案 に対 し 、 議 院法 第 五十 五 条 に依 り、 両 院 協 議会 を開 く こと を 求 め な け れば な りま せ ぬ、 就 て は協 議委 員 の数 を 定 め、 其 選 挙 を 行 ふ

つて居 る の です か ら、 委 員会 の方 か ら其 事 を 正式 に聞 かな く と も、

政 府 の方 か ら進 ん でや るべ き ことだ と 思 ふ、 政府 に誠 意 が な い の で

○ 砂 田重 政 君  本 当 に政 府 に誠 意 があ れば 、時 間 が もう 此時 間 に な

す から 、委 員 会 の方 から 寧 ろ進 ん で行 つ て交 渉 をす ると 云 ふ迄 も な

必要 が あ りま す、仍 て両 院 協 議委 員 の数 、 及 び其 選挙 方 法 を 議 題 と

○宮 古 投 票 管 理 者  砂 田君 の意 見 に異 議 な き を認 め前 田米 蔵 君 は議

致します

長 に熊 谷 直 太 君 は副 議 長 に当 選 し た る旨 を宣 告 す

く 、 政府 自 ら進 ん で是 非 通し た いと 云 ふ考 が あ るな ら 、是 は延 長 を

(﹁ 採 決 ﹂ と呼 ぶ者 あ り)

十 六 分 であ ると 云 ふ こと を記 録 に残 し て置 いて戴 き た い

○ 大 塚惟 精 君  只 今 の砂 田君 の御発 言 は、 二十 五 日 の午 後 十 一時 三

へて居 り ます

ら 、 も う此 以上 此 委員 会 か ら正 式 に交 渉 の必要 は な か らう と 私 は考

す べき筈 だ と思 ふ、 そ れ を此 時 間 にな つ ても、 ま だ し な いの です か

○ 宮 古 投 票 管 理者  散 会 を 宣告 す 午 後 九時 七分 散 会

実孝

○議長 ( 前 田米 蔵 君) どう です か 、何 か御 意 見 があ れば 此 際 御 発

松村 義 一

一つ の動 議 と し て御提 出 にな り 、 そ れ に対 す る砂 田 君 の御 意 見 です

○ 工藤 鉄 男 君  先 刻 の大 塚 さん の動 議 は、 政 府 に交 渉 す る や否 や を

言 を願 ひ ます

大塚 惟精

男爵 井 田 磐楠

第六十五回 治安維持法改正法律案両院協議会議事速記録 第 一号 帝 国 議 会 

議 長 公爵  一条

貴族院協議委員 信光 山岡 万之助 

岩田 宙造

三次  鶴吉 

伯爵 黒木

副議長 子爵 青木

丸山

御 出 し に な つた の であ り ます か

○ 議長 (前 田米 蔵 君) 大 塚 さ ん は 正式 に交 渉 す べ し と 云 ふ動 議 を

か、唯 懇 談 的 の御 話 です か、 正 式 です か

鵜 沢 総明  議 長 前 田 米蔵

衆議院協議委員

○ 大塚 惟 精 君  動 議 では あ りま せ ぬ、 意 見 です

○議長 ( 前 田米 蔵 君) 採 決 案 は 、貴 族 院 で議 決 せ ら れ ま し た 此 案

( 起立者多数)

が議 題 にな る訳 であ り ま す、 此 案 に賛成 の諸 君 の起 立 を求 めま す

○議長 ( 前 田米 蔵 君 )  起 立 多 数 であ り ます 、 貴 族 院議 決 の通 り決

( 速記中止)

○議長 ( 前 田米 蔵 君 ) 速記 を止 め て⋮ ⋮⋮

○議長 ( 前 田米 蔵 君 ) 速記 を始 め て下 さ い⋮ ⋮ ⋮ 先程 宣 言 い た し

し まし た 、是 で散 会 いた し ま す 午 後 十 一時 四十 一分 散会

ま し た 如 く採 決 いた し て宜 し うご ざ いま す か ⋮⋮ ⋮ (﹁ 異 議 な し ﹂ と 呼 ぶ者 あ り)

一八  治 安 維 持 法 改 正 ・不 法 団 結 等 処 罰 に 関 す る 法 律 案

者 又 ハ結 社 ノ役 員其 ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従事 シタ ル者 ハ無 期 又

第 四条  前 条 ノ結 社 ヲ支 援 スル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シタ ル

ニ処 ス

社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ三年 以 上 ノ有期 懲 役

議 事 速 記録 並委 員 会議 録 ( 第六十七回帝国議会・一九三五)

則

治 安 維 持 法 改 正法 律 案 治安 維 持 法 第 一章  通

第 一章  本 法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ付 テ ハ刑事 手 続 其 ノ他 ニ関 シ本 法

ハ五 年 以上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結 社

ノ目 的 遂行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年 以上 ノ有 期懲 役 ニ

ニ別段 ノ規 定 ア ル場合 ヲ除 ク ノ外 一般 ノ例 ニ依 ル 第 二条  本 法 ハ何 人 ヲ問 ハズ 本 法施 行 地 域 外 ニ於 テ罪 ヲ犯 シタ ル者

処ス

第 三 条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ 目的 タ ル事 項 ヲ宣 伝 シ タ ル者 ハ六 月 以 上

以 下 ノ懲 役 ニ処 ス

為 シ又 ハ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ 一年 以 上 七年

第 五条  第 三条 ノ目的 ヲ 以 テ其 ノ目的 タ ル事項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ

ニ亦 之 ヲ適 用 ス 第 二章  罪

結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導者 タ ル任 務 ニ従事 シタ ル者 ハ死 刑 又 ハ無 期

第 三条  国 体 ヲ変 革 ス ル コト ヲ目的 ト シテ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者 又 ハ

若 ハ七 年 以 上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結

五年 以 下 ノ懲 役 ニ処 ス

ト ヲ得

ム ル コト能 ハザ ルト キ ハ地方 裁 判 所 ノ検事 ハ被 疑 者 ヲ勾引 スル コ

左 ノ各 号 ノ 一ニ該 当 ス ル場 合 ニ於 テ急 速 ヲ要 シ判 事 ノ勾引 状 ヲ求

一 被 疑 者 定 リ タ ル住 居 ヲ有 セザ ルト キ

第 六条  第 三条 ノ 目的 ヲ以 テ騒擾 、暴 行 、其 ノ他生 命 、 身 体 又 ハ財 産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ煽動 シタ ル者 ハ 一年 以 上十 年 以 下 ノ懲役

三  被 疑 者 逃 亡 シタ ルト キ 又 ハ逃 亡 ス ル虞 ア ルト キ

二  被 疑 者 罪 証 ヲ湮滅 ス ル虞 ア ルト キ

ニ処 ス

四  被 疑 者 変 名 又 ハ偽 名 ヲ使 用 スル疑 ア ルト キ

第 七条  前 四条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル コト ヲ目的 ト シテ金 品 ヲ供 与 シ若 ハ其 ノ他 ノ方法 ヲ以 テ便 宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ供 与 若 ハ

シ タ ル時 ヨリ 四十 八時 間 内 ニ之 ヲ訊 問 スベ シ其 ノ時 間 内 ニ勾 留状

第 十 五条  前 条 ノ規 定 ニ依 リ勾 引 シ タ ル被疑 者 ハ指 定 ノ場 所 ニ引致

便 宜 ヲ受 ケ タ ル者 ハ五 年 以 下 ノ懲役 ニ処 ス 第 八条  私 有財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シタ

ヲ発 セザ ルト キ ハ被 疑者 ヲ釈 放 スベ シ

ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 若 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為

由 ア ル場 合 ニ於 テ急速 ヲ要 シ判 事 ノ勾留 状 ヲ求 ム ル コト能 ハザ ル

第 十 六条  第 十 四条 ノ規定 ニ依 リ被 疑 者 ヲ勾引 スル コト ヲ得 ベ キ原

ニ スル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ十年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 九 条  前 条 ノ目 的 ヲ 以 テ其 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為

バ之 ヲ為 ス コト ヲ得 ズ但 シ被 疑 者 逃 亡 シタ ル場 合 ハ此 ノ限 ニ在 ラ

被 疑 者 ノ勾 留 ハ前 条 ノ規 定 ニ依 リ被 疑 者 ヲ訊 問 シタ ル後 ニ非 ザ レ

ト キ ハ地方 裁 判 所 ノ検 事 ハ之 ヲ勾留 ス ル コト ヲ得

シ又 ハ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ五年 以 下 ノ懲役

第 十条  第 八条 ノ目的 ヲ以 テ騒 擾 、暴 行 、其 ノ他 生命 、 身 体 又 ハ財

ズ

又 ハ禁 錮 ニ処 ス

ニ処 ス

規 定 ア ル場 合 ヲ除 ク ノ外 本 法 ノ勾 引 及 勾留 ニ付 之 ヲ準 用 ス但 シ保

第 二 十条  刑 事 訴 訟 法中 被 告 人 ノ勾 引 及 勾留 ニ関 ス ル規 定 ハ別 段 ノ

料 ス ルト キ ハ速 ニ被 疑 者 ヲ釈 放 スベ シ

第 十 九条  勾 留 ノ原 由消 滅 シ其 ノ他 勾留 ヲ継 続 ス ルノ必 要 ナ シト思

一回限 之 ヲ更 新 ス ル コト ヲ得

第 十 八条  勾 留 ノ期 間 ハ二月 ト ス特 ニ継 続 ノ必 要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ

ト思 料 ス ル場 合 ニ限 リ之 ヲ訊 問 ス ル コト ヲ得

第 十 七条  前 条 ノ規 定 ニ依 リ勾 留 シタ ル被 疑 者 ハ検 事 特 ニ必 要 アリ

産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ七 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁錮

第 十 一条  前 三 条 ノ罪 ヲ 犯 サ シム ル コト ヲ目 的 ト シ テ金 品 ヲ供 与 シ 若 ハ其 ノ他 ノ方法 ヲ以 テ便 宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ供 与若 ハ便宜 ヲ受 ケ タ ル者 ハ三年 以 下 ノ懲役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 十 二条  第 三条 、第 四条 及 第 八 条 ノ未 遂罪 ハ之 ヲ罰 ス 第 十 三 条  本章 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 自 首 シタ ルト キ ハ其 ノ刑 ヲ減 軽 又

第 三章  刑 事 手続

ハ免除 ス

第 十 四条  第 三条 、 第 四 条及 第 八条 ノ罪 ニ該 ル被 疑 事 件 ニ付 被 疑 者

釈、 責 付及 執 行停 止 ニ関 スル規定 ハ此 ノ限 ニ在 ラ ズ

レ タ ル場 合 ニ於 テ検 事 必 要 アリ ト認 ム ルト キ ハ事 件 ノ繋 属 ス ル裁

第 二 十 一条  本 法 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ対 スル被 告 事 件 公 判 ニ付 セラ

判所 及移 転 先 裁判 所 ニ共 通 ス ル直 近 上 級 裁 判所 ニ管 轄 移 転 ノ請 求 ヲ為 ス コト ヲ得 但 シ第 一回 公 判 期 日 ノ指 定 アリ タ ル後 ハ此 ノ 限 ニ 在ラズ

第 四章  保護 観 察

前 項 ノ請 求 ア リタ ルト キ ハ決 定 ア ル迄 訴 訟 手続 ヲ停 止 スベ シ

用 ス但 シ改 正 規定 ニ定 ムル刑 ガ従前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル刑 ヨリ重 キ ト

キ ハ従 前 ノ規定 ニ定 メ タ ル刑 ニ依 リ処 断 ス

本法 中 地 方 裁判 所 ト ア ル ハ朝 鮮 ニ於 テ ハ地方 法 院 ト ス

不 法 団結 等 処 罰 ニ関 ス ル法 律 案

第 一条  人 ノ 生命 ヲ害 シ又 ハ人 ノ身 体 ニ傷害 ヲ加 ヘンガ為 相 団結 シ

テ其 ノ実 行 ノ予備 ヲ為 シタ ル者 ハ五年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

治 安 ヲ紊 ス目的 ヲ 以 テ前項 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ハ七年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁錮 ニ処 ス

害 ヲ加 フ ル犯罪 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ三 年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

第 二条  前 条第 二項 ノ目 的 ヲ以 テ人 ノ生 命 ヲ害 シ又 ハ人 ノ身 体 ニ傷

第 二 十 二条  本 法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ対 シ刑 ノ執 行 猶 予 ノ言 渡 アリ タ ル場合 又 ハ其 ノ性格 、 年 齢 及 境遇竝 ニ犯 罪 ノ情 状 及 犯 罪 後 ノ情

ハ其 ノ他 ノ方法 ヲ 以 テ便宜 ヲ与 ヘタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ供 与 若 ハ

第 三条  前 二条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル コト ヲ目的 ト シ テ金 品 ヲ供 与 シ若

況 ニ因 リ訴 追 ヲ必 要 ト セザ ルガ為 公 訴 ヲ提 起 セザ ル場 合 ニ於 テ検

ノ罪 ヲ犯 シ刑 ニ処 セ ラ レタ ル者其 ノ執 行 ヲ終 リ 又 ハ仮 出 獄 ヲ許 サ

委員氏名

記)第九 回

第六十七回帝国心 議会 維持法改正法律案 外 一件 委員 会 議 録 ( 速 衆 議 院  安治

適用 ス

傷 害 ヲ加 ヘンガ為 本 法 施 行 地域 外 ニ於 テ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ニ亦 之 ヲ

第 五条  本 法 ハ何 人 ヲ問 ハズ帝 国臣 民 ノ生命 ヲ害 シ又 ハ其 ノ身 体 ニ

免除 ス

第 四条  本 法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 自首 シタ ルト キ ハ其 ノ刑 ヲ減 軽 又 ハ

便 宜 ヲ受 ケ タ ル者 ハ三年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

事 必要 ア リ ト認 ム ルト キ ハ本 人 ヲ保 護 観 察 ニ付 ス ル コト ヲ得 本 法

レ タ ル場 合 ニ於 テ検 事 必 要 アリ ト認 ム ルト キ亦 同 ジ 第 二十 三条  保 護 観察 ハ本 人 ヲ司法 保護 委 員 ノ観 察 ニ付 シ、 保 護者 ニ引渡 シ又 ハ寺 院、 教 会 、 保 護 団 体、 病 院 若 ハ適 当 ナ ル者 ニ委 託 若 ハ送 致 シテ之 ヲ為 ス 第 二 十 四条  保 護観 察 ヲ行 フ ニ ハ本 人 ノ更 ニ罪 ヲ犯 スノ危 険 ヲ防 止 シ且本 人 ヲ シ テ正業 ニ従 事 セ シ ム ル コト ニ留意 スベ シ 司 法保 護 委 員 及 保 護観 察 ニ関 シ必要 ナ ル事 項 ハ勅 令 ヲ

則

以 テ之 ヲ定 ム

第 二 十 五条

附

本法 施 行 ノ期 日 ハ勅 令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム 本 法 ハ本 法施 行前 従 前 ノ規定 ニ定 メ タ ル罪 ヲ 犯 シタ ル者 ニ亦 之 ヲ適

為 に憲 法 の解 釈 を 誤 つ て居 る も の が尠 く な い、 著者 の見 解 に依 れ ば、

国 体 の観 念 は、 わ が帝 国 が開闢 以来 万世 一系 の皇統 を 上 に戴 い て居

委 員 長  宮古 啓 三郎

る こと の歴 史 的 事 実 と 、 わ が国 民 が皇室 に対 し て世界 に比 類 なき 崇

敬 忠 順 の感 情 を有 す る こと の倫 理的 事 実 と を示 す観 念 であ つて、 現

事  比 佐  昌 平

在 の憲 法的 制 度 を示 す も の では な い、 国 体 を理 由 と し て、 現 在 の憲

理

小 林錡

文 陸 

清 瀬 規矩 雄

事  竹下

宮沢

理

米 田 規矩 馬 

法 的 制度 に於 け る君 権 の万能 を主 張 す るが如 き は、全 然憲 法 の精 神

事  福 田 虎 亀

男 

尚

云 ふも のは含 ん で居 な い、併 し是 はま だ 是 だ け では 分 り ま せ ぬが 、

を 誤 るも の であ る﹂ 即 ち 之 に依 ると 云 ふと、 現 在 の憲 法 に は国 体 と

理

政義  磯 部 良三

与 一 

牧野賤

益谷 牧野 智善

事  佐藤

森田 之 通  渡 辺 幸 太郎  小島

理

高見

貞 頼 

清 作 

竹 内 友 治郎  中谷 済 

藤田 良 一

若水

て は、 決 し て単 純 な法 律 的観 念 で はな い、 そ れ は歴史 的 に発 達 し 形

﹁第 一に、 国体 と い ふ語 はそ の従来 普 通 に用 ひ られ て居 る意 義 に於

秀 次 

則 井 万 寿雄  武 富 菊池

定 吉 

一松 武 治 

る の であ つて、 就 中 国 初 以来 日本 が万 世 一系 の皇統 を 上 に戴 き 、 君

成 せら れ た 日本 の国 家 の最 も 重要 な 特質 を指 す 意 味 に用 ひ ら れ て居

八並

一巳

末 松偕 一郎  岡本

根 柢 を 為 し て居 る歴 史 的 の国家 の特 質 を 意味 す る の であ る、 明 治 九

為 す も の であ る、 そ れ は現 に国 法 とし て行 は れ て居 る法律 的 制 度 の

民 一致 、嘗 て動 揺 し た こと のな い こと は 、国 体 の観 念 の中 心要 素 を

○牧 野 (賤) 委 員  御 検 討 な さ る な ら、序 で にも つと御 検 討 の資 料

年 に元 老院 に賜 は つた 国 憲起 草 の詔 に ﹃朕茲 に我 建 国 の体 に基 き 以

昭和 十 年 三 月 二十 日 (水 曜 日)

でな く て も、 御 即答 が出 来 れば 御 即答 願 ひた い、 先 程 両 大 臣 は憲 法

を差 上 げ て置 き ま す、 尚 ほ御 検 討 を願 ひた い、是 は併 し 御 検 討 の上

意 見 が 一致 致 し て居 る 、然 る に茲 に ﹁わ が国 体 の尊 重す べき こと は

が国 体 の本義 であ る、 国 体 を宣 明 せ ら れた の であ る と 云 ふ こと は、

くし て、 主 と し ては歴 史 的観 念 であ り 又倫 理的 観 念 であ る、 明 治 二

て の国 家 の倫 理的 特 質 を意味 す る の であ り、 即 ち法 律 的 観 念 では な

し て現 在 の国 法 を意 味 す る の ではな く 、 国 の歴 史 及 歴史 的 成 果 と し

国 の体 ﹄ と あ る のが、 即 ち普 通 の意 義 に於 て国 体 であ る、 それ は決

﹃立 国 の体 国各 宜 き を殊 にす﹄ と あ る、其 所 謂 ﹃建 国 の体 ﹄又 は ﹃立

争 を 容 れ ぬ け れ ども 、 若 し わ が国 体 を 以 て、 絶 大 無 限 の権 力 が 君 主

十 三年 の教育 勅 語 の中 に ﹃我 が臣 民 克 く忠 に克 く孝 に億兆 心 を 一に

て国 憲 を 定 め ん とす ﹄ と あ り、 明 治 十 四年 の国 会 開 設 の勅 諭 に は

に存 す る こと を主義 と す る も のと 解 す るな ら ば、 誤 之 よ り甚 し き は

し て世 々厥 の美 を済 せ る は此 れ 我 が国 体 の精 華 にし て﹄ と あ る のも 、

第 一条 は肇 国 以 来 の我統 治 の有 様 其儘 を条 文 に現 し た の で あ つて、

な い、而 も従 来 わが憲 法 を解 す る者 は、 往 々わ が国 体 を理 由 と し て、

是 が即 ち国 体 の本義 で あ る、 万 世 一系 の天 皇 之 を統 治 せ られ る 、是

神 授 君権 説 の如 き 思想 を 以 て わ が憲 法 の主 義 と す る所 と為 し 、 之 が

国 体 の語 が倫 理 的観 念 とし て用 ひら れ て居 る 一例 証 であ る、然 る に

○後藤 ︹ 文夫︺国務大臣 ︹ 内 務 大臣 ︺ 只 今 大分 沢山 の個 所 に 亙 つ

を申 上 げ る こと は困 難 であ り ます

が、 長 い文章 で あ つて、 其 一々を今 此 処 に私 が検討 し て、私 の意 見

て御述 べ が あ り まし て、 私 も此 処 で伺 ひま し た だ け で、之 を直 ち に

の純 然 た る法 律 的観 念 であ り 、専 ら現 在 の法 律的 制 度 を指 す語 で あ る、 そ れ に は過 去 の歴 史 を示 す意 味 は少 し も 含 ま れ な いし 、 又国 民

判 断 し て御 答 を す る こと は、 困 難 と思 ひま す 。

君 主 政 と 云 ひ共 和政 と 云 ふ は、現 に行 はれ て居 る国 法 に付 て言 ふ所

の倫 理的 感 情 を 示 す意 味 を も含 ん で居 ら ぬ、或 る国 が君 主 政 の国 で

あ りま す か、 之 を御 伺 致 し ます

あ ると 云 つても 、其 の国 の過去 の歴 史 が何 う であ つたか 、 国 民 の君

個 の問 題 で あ つて、 其 国 の国 体即 ち建 国 の体 は 、 そ れだ け では少 し

○ 後藤 国 務 大 臣  検 討 致 し まし て結 論 を得 ま す れば 、 御答 が出 来 る

にな つ て、 御 答 下 さ る意 思 が おあ り な さ る であ り ま せう か、 如 何 で

も知 ら れな い の であ る、 普 通 に我 国 は万 国 無 比 の国 体 を 有 す と称 せ

と 思 ひます

○ 牧野 (賤) 委 員  両 大臣 に御 尋 ね しま す が 、是 も此 著書 を御 検 討

ら れ る、 そ れ は国体 と い ふ語 を右 に述 べた 意義 に解 す る に依 つて の

○ 小 原国 務 大 臣  私 も 同様 であ り ま す

主 に 対す る感 情 が どう であ るか は、 全 く示 され な い、 それ は全 く別

み理解 し得 ら れ る、 若 し 之 に反 し て単 に君 主 政体 と云 ふ意 味 に其 語

の中 に、 斯 う 云 ふ こと が あ りま す ﹁第 一に、 君 主主 権 主義 と い ひ、

国 民主 権 主 義 と いふ は、 唯 国 の憲 法 上 の主義 の問 題 であ つて、 即 ち

○ 牧野 (賤) 委 員  尚 ほ序 で に伺 つて置 き ま す、 美 濃 部博 士 の著 書

き で はな い、 我 国 が他 の諸 国 と国 体 を 異 に す る所 以 は、 決 し て其 君

国 の政 体 の差 異 に外 な ら ぬ、 そ の何 れ の主義 を取 るか を問 はず 、統

を解 す るな ら ば 、現 在 に於 て我国 の如 き 君 主 政体 を為 し て居 る国 は、

主 政 な る こと に在 る の では な くし て、 君 主 政 た る こと の歴 史 的 基 礎 、

治権 は常 に国 家 に 属 す る権 利 であ つて、 国家 のみ が統 治権 の主 体 で

世界 に甚 だ 多 い ので あ つて、決 し て万 国 無 比 であ るな ど と言 ひ得 べ

倫 理 的 基 礎 の異 な る こと に在 る、 国 体 の観 念 は即 ち 此 歴史 的基 礎 、

あ る、 国民 主権 主義 を取 ると し ても 、 国 民 は国 家 の機 関 と し て統治

は、 言 ひ換 ふ れば 、君 主 又 は国 民 の何 れ が国 家 の最 高機 関 であ る か

倫 理 的 基 礎 を指 すも の でなけ れば な ら ぬ﹂ 斯 う 言 つ て、 詰 り憲 法 一

を伺 ひた い

を言 ひ表 は す も のに外 な ら ぬ ので、 即 ち 此 の意 義 に於 て の ﹃主 権﹄

条 に は国 体 は含 ん で居 ら ぬ と仰 せ ら れ て居 る の です が、 是 はあ な た

○小原 ︹ 直 ︺ 国 務 大臣 ︹ 司 法 大 臣︺ 牧 野 君 の御読 み にな つた のは、

と は正 確 に言 へば最 高 機 関 と いふと 同意 義 で あ る﹂ ﹁わ が 憲 法 に 於

て統 治 の最 高 の源 た る の であ る、 君 主 主権 と い ひ、 国 民主 権 と い ふ

誰 の著 書 で あ りま す か

を行 ふ の であ り 、 君主 主 権 主義 に於 い ても亦 君 主 は 国 家 の機 関 と し

○ 牧野 (賤) 委 員  逐 条 憲 法精 義 美 濃 部 達 吉 著

て居 り ま す が、 是 は あな た方 の説 と 同 じ で あり ま す か、 違 つて居 り

け る君 主 主権 主 義 も右 の意義 に解 せ ら るべき も の で云 々﹂ 斯 う な つ

方 の観 念 と同 一であ り ま せう か、違 つて居 る の であ り ま せう か、 之

○ 小原 国務 大 臣  只 今 御 読 聴 け にな つた所 を拝 聴 致 し て居 り ま し た

と は困 難 であ り ま す、 篤 と検 討 の上 に結 論 を 得 れば 、 申 上 げ た いと

○ 牧 野 (賤)委 員  是 れ亦 御覧 にな つ て御答 を賜 る こと が出 来 ま す

ます か、 之 を御 即 答 願 ひた い、 若 し 御即 答 が出 来 な け れ ば、 此 著 書

○ 後 藤 国 務大 臣  私 も 只今 司 法 大 臣 の御 答 と同 様 の御答 を申 上 げ ま

か、 如 何 であ り ます か、 是 も確 め て置 きま す

思 ひま す

す

○ 小原 国 務 大臣  今 申 上 げ た通 り結 論 を得 れば 申 上 げ ると 申 し て居

を御 覧 にな つて御 答 下 さ る御 考 があ り ま す か、 之 を 伺 ひた い

○ 牧野 (賤) 委 員  是 は宮 沢 俊 義 、帝 国 大 学 の教 授 であ り ます 、 昭

り ます

○ 後 藤 国 務 大 臣  私 も 只 今 の ﹁プ リ ント﹂ の内 容 の こと は、 初 て承

和 十年 度 の ﹁プ リ ント ﹂ に は第 三節 国 家 形 態 と云 ふ所 に括 弧 し て政

○ 後 藤 国 務 大臣  私 も 同 様 の御 答 を申 上 げ ます

○ 小 原 国 務大 臣  前 同様 著 書 に就 て研究 を致 さな け れ ば、 吾 々の決

体 と 云 ふ のが あ りま す 、 そ こに ﹁吾 が国 の通 説 は 国体 と政 体 と の概

○ 牧 野 (賤) 委 員  然 ら ば両 大 臣 に御尋 致 し ま す が、 一人 は 法制 局

意 は出 来 な い のであ り ま す、 決 意 が出 来 た上 でな いと御 答 が出 来 な

念 を 区別 し、 国 体 の別 は主 権 の所在 に よ る別 であ り、 政 体 の別 は 主

長 官 であ り、 一人 は 現帝 国 大 学 の教 授 であ る、 あ な た方 が電話 を掛

ど う か と云 ふ こと は、 直 に御答 す る ことは 困難 でご ざ います

権 の行 動 の形 式 によ る 区別 であ る とな し 、 主 権 が 一人 の手 にあ る か、

け れ ば直 ぐ あな た 方 の目前 に現 はれ 得 る人 であ り ます 、 著 書 を御 検

知 しま す 、 今御 読 上 のこと を承 つた だ け で、 私 の考 と 違 つて居 るか

国 民 の手 にあ るか に よ つて君 主 国体 と共 和 国 体 を分 ち、 主 権 が権 力

討 にな ら う と、 本 人 に直 接 聴 かう と自 由 に出来 る、 故 に簡単 明瞭 に

い の であ り ま す

兼 併 主 義 によ つ て行 は れ る か、権 力 分 立 主 義 によ つて行 はれ る か に

筧 、 佐 々木 の諸博 士 で あゐ 、之 に反 対 す る のは美 濃 部 博 士 であ る、

○ 小原 国 務 大 臣  適 当 の方 法 に依 つて検 討 致 す考 であ り ます

之 を 承 り ます

本 人 共 に就 て聴 い て御 答 を為 さ る親 切 が あり ま す か、 ど う です か、

私 も同 博 士 に賛 し、 両 者 の区別 は認 め な い﹂即 ち 政 体 と 国体 の区 別

○後 藤 国 務 大 臣  然 る べき 方法 で能 く検 討 致 す考 であ り ま す

よ つて専 制 政 体 と立 憲 政 体 を 分 つ、 これを 唱 道 す る のは市村 、清 水 、

を認 め な い、 憲 法 第 一条 に は国 体 は入 つて居 ら ぬと 云 ふ説 と同 じ で

す る が、検 討 し て何 時 ま で検 討 が続 く か分 ら ぬ が、分 る時 があ つた

が、 さう す ると そ れ は検 討 の上、 御 答 を賜 は る と云 ふ こと であ り ま

す

ら 御 答 す る と 云 ふ御 意味 であ り ま せう か、 之 を伺 つて置 きま す

○ 牧 野 (賤)委 員  適 当 の方法 と言 ひ、 然 る べき 方 法 と言 ふ の です

○ 小 原国 務 大 臣  只今 御 読 上 げ にな り まし た 宮 沢氏 憲 法 に関 す る著

○ 小 原 国務 大 臣  先 程来 結 論 を 得 れば申 上げ ると申 し て居 る の であ

あ る、 此 説 は あ なた 方 の説 と同 様 であ る と解 せら れ る の であ りま す

述 は 、初 て承 る の であ り ます 、 随 て只 今 御 述 にな り ま した 部 分 だ け

り ま す、 結 論 を何 時 得 る か を、 此 処 に御 答 は出 来 兼 ね ます

か、 違 ふ の であ ると 解 せ ら れ る の であ りま す か、 そ れ を御 伺 致 し ま

を捉 へて、 直 に吾 々 の説 と 同 一な り や否 や と 云 ふ こと を判 断 す る こ

此 処 で、 御 答 致 す 訳 に は参 り兼 ね ま す

司 法大 臣 と同 様 に私 は申 上 げ て置 き ます 、其 こと に付 て結 論 を直 ぐ

○ 後藤 国 務 大 臣  結 論 を得 ま す れば 、 御答 を申 上 げ ると 云 ふ こと は、

み にな ら ぬと仰 し や るな ら、 之 を読 ん で、此 説 は善 い か、 悪 いか、

す る、 此 矛 眉 な言 論 と 行動 を如 何 様 にせ ら れ る か、 此 本 は ま だ御読

此 処 では 何 を す る かと 云 ふ と、 治 安 維 持 法 を改 正 し て、 国 体 を擁護

て学 生 に教 へら れ、 刊行 物 と し て街 頭 に鬻 が れ て居 る、 さう し て今

持 法 は悪 法 であ つて、 憲 法 に違 反 す る、 さう 云 ふ こと が教 壇 に立 つ

如 何 様 に処 す る か と云 ふ こと は、 御 答 あ つ て然 る べき も ので あら う

○ 牧野 (賤) 委 員  更 に両 大 臣 に御 伺 ひし ま す、 是 は ﹁現 代 憲 政評

と思 ふ の です が 、 之 に付 ては 如 何 でご ざ いま せ う か、 御 明答 を願 ひ

論 ﹂美 濃 部 達 吉 著 、 昭和 九 年 版 、是 に は ﹁治安 維 持法 は要 す る に現 在 に政 治 上 の勢力 を有 つて居 る階級 の人 々 の信念 を絶 対 の真 理 と看

○ 後 藤 国 務 大臣  私 も 左様 に考 へま す

たい

○ 牧野 (賤) 委 員  ど う も私 は司 法 大 臣 と、 内 務 大 臣 の、 敢 て御 誠

做 し これ に反 対 す る思 想 を異 端視 し て、 刑 罰 を も つて そ の思 想 を抑

る、 信 念と信 念 と の戦 ひ、 主 義 と 主義 と の争 ひ にお いて 、言 論 と教

意 を疑 ふ訳 では あ りま せ ぬ が、 併 し 此 問題 に関 す る限 り、 何 か知 ら

圧 せ ん と す る も の であ る、 そ れは 一の信 念 の他 の信 念 に対 す る戦 ひ

化 と の力 に よ らず 、 法 律 と刑 罰 と の力 を も つて、 反 対 の主義 信 念 を

ぬ定 石 を設 け ら れ てあ るや う な 口吻 な り、 態 度 な りを 遺憾 と致 し ま

であ る な らば 、 長 い時 を要 せず し て御 答 が出 来 よ う と思 ひま す

殲 滅 し よう と す る も のな る こと に お い て、 あ た かも 往 年 の切 支丹 禁

す、 吾 々が先 程 も申 上 げ た 通 り、 斎 戒 沐 浴 し て誠 心 誠 意 国体 の尊 厳

○ 小原 国 務 大 臣  御読 聴 け の点 に付 て は著 書 を 見 た上 で、 事 が簡 単

制 と そ の軌 を 一にし て居 る、治 安 維 持 法 の悪 法 な る所 以 は実 に こ の

な る こと に付 て国 民 に之 を知 ら し め て、而 し て異 端 者 に向 つて は厳

であ つ て、 そ の 一方 の信 念 を有 す る者 が、 偶 々現 在 の権 力 者 であ る

点 に あ る﹂ ﹁治安 維 持 法 の如 き法 律 を設 け て、 刑罰 を以 て 此 の思 想

罰 に処 す ると 云 ふ法 律 を 議 す るに当 つて、其 国体 の観 念 に付 て の御

た め に、 そ の権 力 を施 用 し て反 対 の信 念 を圧 迫 せ ん と す る も ので あ

の到底 賛 成 し得 な いと ころ で あ る﹂ 此 著

そ れ自 身 を禁遏 せ ん とす る に至 つて は、 憲 法 の精 神 に戻 る こと の最 も甚 し いも の で、 わ れ〓

考 を伺 ひ、 又 茲 には直 接 に此法 律 が悪 法 であ る、 憲 法 に違 反 す ると 、

れ ば御 答 す る が、分 らな け れば 中 々答 へる こと が出 来 な いと 云 ふ や

書 は御 読 み にな つた こと があ り ま す か、 あ り ま せ ぬ か そ れ を両 大 臣

う な こと に解 せら る ゝ御 答 弁 と云 ふも のは甚 だ其意 を得 ぬ と考 へて

居 る こと に付 て の御 考 を伺 ふと 云 ふ のに、 著 書 を調 べ て、 簡 単 に分

○後 藤 国 務 大 臣  私 も其 本 は読 ん だ こと がご ざ いま せ ぬ

憲 法 学 者 で あり 憲法 の権 威 であ る と 云 ふ人 から言 は れ て、 罵 ら れ て

○ 牧 野 (賤) 委 員  両 大 臣 に御願 し ます 、 是 は御 読 み にな つて結 論

こと に努 め ら る ゝや う に、 御 願 をし た い の であり ま す、 そ れ故 に私

居 り ま す、 何 卒 も う 少 し胸 襟 を披 い て、共 に国 体 観念 を明 徴 にす る

に御 尋 しま す

を得 た らば 、 御 答 を す ると 云 ふや う な緩 慢 な こと は許 し ま せ ぬ、 帝

○ 小原 国 務 大 臣  私 は其 本 は読 ん だ こと があ り ま せ ぬ

国大 学 の教 授 であ つて、 憲 法 行政 の権 威 であ る と 云 ふ人 が、 治 安 維

に 付 て 又重 ね て御質 問 をす る こと に し て、 今 日 の私 の質 問 は 一時 留

で私 が申 上 げ た こと に付 て検 討 の上 で、 御 答 があ るか な いか、 そ れ

は 次 の質 問 ま で御待 ち 致 し て居 り ま す る が、 次 の質 問 に於 て、 今 ま

の だと 云 ふや う な こと を、 其 到 る処 に言 う て居 る のです 、 又之 を言

物 の中 に、機 関 とし て の天 皇 は 固有 の来 歴 に依 つて統 治 者 に在 はす

美 濃 部 君 はあ の書 物 の中 の到 る 処 に憲 法 第一 条 を認 め て居 る、 其 書

関 説 に は反 対 で あ ると 云 ふ こと は即 ち それ な ん だ と私 は 思 ふ 、勿 論

け れど も、 理 論 の結 果 はそ こに は行 か ぬ の です 、 何 故 か な れば 、 先

ます 、 そ こは美 濃 部 君 も 心得 て居 るも のか言 う て居 る、言 う て居 る

はな か つた ら私 は大 変 だ と思 ふ、 是 は直 ち に朝 憲紊 乱 にな る と思 ひ

保 致 し て置 き ま す 第六十七回帝国議会 治 安維持法改正法律案外 一件委員会議録 衆 議 院  ( 速記)第十回

刻 牧 野 君 が申 述 べら れま し た る 通 り、 歴史 的 事 実 と云 ふ も のは此 憲

す、 一体 斯 う 云 ふ言 葉 の末 を 捉 へる訳 で は あ りま せ ぬ が、 吾 々が美

と を仰 せ にな ると 、是 で は反 対 だ と前 に言 明 され た所 を裏 切 る の で

は美 濃 部 は天 皇 の固 有 統 治 権 者 た る ことを 認 め て居 る、 斯 う 云 ふ こ

る言 説 を為 し て居 る も のでは な いと 去 ふ風 の御 言葉 が あ つた 、 そ れ

牧 野 君 と の応 答 を伺 つて居 り ま す と、 美 濃 部 必 し も 我 が国 体 に反 す

機 関 説 に は反 対 であ る と云 ふ こと を仰 せ にな つて居 り ます 、 然 る所

○ 竹 内 委 員  文 部大 臣 に御 尋 致 し ます が、 文 部 大 臣 は先 日 から 既 に

の付 か ぬ こと だ と 思 ふ、 そ れ をも 政府 が御 覚 悟 であ る と云 ふな ら致

り ま せ ぬ、 徒 に此質 疑 応 答 を 紛淆 致 し まし て、 何時 にな つ ても決 著

ど う し ても政 府 がさ う云 ふ御 説 明 を 為 さ ると 云 ふ な ら それ も 致方 あ

さう 云 ふ微 妙 な 言葉 で強 て之 に反 す る やう な 御 説 明 を為 さ る こと は

関 説 に反 対 で あ ると 云 ふ御 言 葉 の主 た る意 義 であ る、 そ れを ど う も

国 体観 念 と違 つた観 念 で進 ん で居 る の です から 、是 が即 ち 文 相 の機

理 論 に出 来 て居 る、 即 ち 観念 全 体 が三 千年 来国 民 が 信 じ て居 る所 謂

已 む を得 ず 先 生 は認 め るけ れ ど も、 理論 とし ては そ こに到 着 し得 ぬ

︱

万世 一系 の皇統之を統治 すと云 ふ歴史的事実を、憲法解釈から

濃 部 氏 の学 説 に甚 だ遺 憾 に思 ふ所 は、 少 く と も吾 々 の考 に於 ては、

方 な い、 又此 処 に司法 大臣 は居 ら つし や いま せ ぬ が、 折 角 司法 大 臣

法 解 釈 の上 に邪 魔 だ と 言 つて撥 除 け て居 る のです から し て、 天 皇 が

其 観 念 全 体 が いけな い の であ る、 其 事 は恐 ら く文 相 に於 かれ て も十

昭和 十 年 三 月 二十 二 日 (金 曜 日)

分 御 諒 知 と 思 ふ のです 、 然 るを 此御 答 弁 と し ては、 極 め て微 妙 な 言

は れ て、 国 体 観 念 に関 す る質 疑 応答 が何 時 にな つて も要 領 を得 ぬと

が 本治 安 維 持 法 は是非 通 し た いと 云 ふ御 熱 心 で、 吾 々も其 御趣 意 に

云 ふ こと は、 恐 ら く政 府 の御 趣 意 では な から う と思 ふ の です から 、

副 は う と努 め て居 る の であ るけ れ ど も、 態 々さ う 云 ふ 小さ い所 に囚

瑣 末 の点 を彼 此 れ言 はず し て、 斯 う 云 ふも のは大 体 論 で行 く べ き も

余 り細 か い言 廻 し 方 を為 さら ず に、端 的 に 一つ機 関 説 反 対 と 云 ふ こ

め る が如 き 御言 葉 が あ ると 云 ふ こと は、 私 は非 常 に遺 憾 に思 ひま す、

のであ る、唯 が 見 ても 美 濃 部 君 の機 関 説 な るも のは、 観 念 と し て国

葉 の言 廻 し 方 に依 つて、 動 も す れば 美 濃 部 氏 の学 説 を文 相 と し て認

体 に反 す る意 を有 つて居 ると 云 ふ こと は疑 な い、 又文 相 が初 め に機

し た御 答 を賜 ら ん こと を 切 に希 望 致 し ま す

私 は生 れ ぬと思 ふ、 斯 う 云 ふ意 味 に於 て今 一度 文 相 から は つき りと

と の、 初 め の前 提 から 考 へる な ら、 今 のや う な御 説 明 は ど う し て も

反 す る も のだ と 云 ふ こと に結 論 せ ざ る を得 ぬ では ござ いま す ま い か、

○ 竹 内 委 員  さう な りま す れ ば、 どう し ても美 濃 部 君 の説 は国 体 に

○ 松 田国 務 大 臣  矢 張 私 の説 は変 更 し て居 ら な いと 御 諒承 願 ひた い

い

何 故 かな れば 文 相 と し て機 関 説 に反 対 であ る、斯 う 云 ふ御言 葉 が あ

○ 松 田 ︹源治 ︺ 国 務 大 臣 ︹ 文 部 大 臣 ︺ 私 の説 は 一つも 変 更 し て 居 美濃

な い の です、 私 は天 皇 は統 治 の主 体 と 認 め て居 る の です が︱

るを得 ぬ と思 ひま す が、 さう 云 ふ前 提 が あ る の です か ら⋮ ⋮

る 以上 は、 当 然 美 濃部 君 の説 は 国体 に反 す るも のな り、 斯 う 言 はざ

○松 田国 務 大 臣  私 の説 は今 申 し た 通 り であ り ます が、 美 濃 部 君 が

部 君 のを 全部 能 く読 ん で居 ま せ ぬ け れ ども、 ﹁大 日本 帝 国 は 万世 一

ち に国 体 を冒涜 す る論 な り と論 断 す る こと は 困難 で あ る、 斯 う申 し

の説 が 国 体 に反 す るか ど う かと 云 ふ こと を、 判 断 す る こと に頗 る困

憲 法 の第 一条 を認 め て居 る以 上 は 、直 ち に︱

系 の天 皇 之 を統 治 す ﹂ と 云 ふ こと を認 め て居 る以 上 は、 之 を 以 て直

た ので あ つ て、 私 の説 は 一つも動 い て居 な い のです 、 私 は天 皇 は統

ん で居 ま せぬ け れ ども 、 憲 法 第 一条 を認 め て居 る 以 上 は、 之 を 以 て

○ 竹 内 委 員  そ れな ら ば あな た が機 関 説 に反 対 だと 云 ふ こと は無意

難 であ る

直 ち に是 が美 濃部 君

治 権 の主 体 であ ると 云 ふ こと を 認 め る が、美 濃 部 君 のを 私 は全 部読

直 ち に国 体 を 冒 涜 す る も のな り と論 断 す る こと は、 困難 で あ ると 云

とし て の感 想 です から 、機 関 説 に反 対 だ と 云 ふ こと を仰 し や る以 上

は、 即 ち 美 濃 部 君 の説 は 国体 に反 す るも のだ、 斯 う 云 ふ のは私 は当

味 な こと にな る、 それ は あ な た個 人 の感想 では あり ま せ ぬ よ、 文 相

然 の帰 結 だと 思 ひます 、 論 理的 に⋮ ⋮

ふ こと を申 上 げ た だ け に過 ぎ な い の であ りま す

か 、 せ ぬ か は第 二 の問 題 で、 兎 に角 そ れ が国 体 に反 す る結 論 に到 達

○ 竹内 委 員  冒 涜 と 云 ふ御 言 葉 を態 々御 使 ひ にな つた が、 冒 涜 す る

す る と 云 ふ こと は、 文 部 大 臣 も御 認 め にな る の であ ら う と思 ふ

○ 松 田国 務 大 臣  矢 張 先 程 答 へた 通 り であ り ま す

う だ と、 決 し て此 審議 は進 みま せ ぬ よ、 ま あ何 れ 総 理大 臣 にも伺 ひ

○ 松 田 国 務大 臣  私 と し て は さう 考 へて居 る の です 、 そ れ が美 濃 部

ま す が、 是 で は迚 も いけな い、 そ れ だ け の こと を委 員 長 御 含 み置 き

ぬ と 云 ふ と、 殆 ど 当然 の論 理 を 政府 の御 当 局 の御 一人 が否 定 す る や

皇 は統 治 権 の主 体 な り と認 め て居 る ので あ つて、 決 し て私 が変 つた

にな つ て、此 議 事 の進 行 を図 ら れた い

○ 竹 内 委 員  此 上繰 返 し ても いけ ま せ ぬが 、 委員 長 、 是 が 一つ決 ら

訳 でも 何 でも な い

○ 宮古 委 員 長

君 の説 が 国体 に直 ち に反 す る と云 ふ こと を此 処 で断 言 す る と 云 ふ こ

○ 竹 内 委 員  今 一度 御 尋 し ま す、 私 は何時 で も個 人 た る松 田 君 の御

と に付 て躊 躇 す ると 云 ふ こと を言 つて居 る に過 ぎ な い の で、私 は天

感 じ は 決 し て伺 はな い の です、 文 部 大 臣 と し て、 即 ち 政 府 当 局者 の

○ 中 谷委 員  どう も 法 理観 念 の頗 る明 か であ ると 思 は れ る松 田 文相

中谷君

一員 と し て の御 考 へを 伺 ふ のです から 、其 意 味 に於 て御 答 を願 ひ た

持 法 の審 議 を為 す に当 つて、 国 体 の観 念 を明 にす るに非 ず ん ば、 此

さ う 云 ふ制 度 を設 く る こと を目的 と し て実 行 行 為 を為 し 、 又 は為 さ

の御 答 弁 とし て は、 洵 に不思 議 に思 ふ の であ りま す 、 殊 に今 の御 話

ん と す る者 が あ つた場 合 に、 此法 を如 何 に適 用 す る か と云 ふ こと が

審 議 を進 む る能 はず と主 張 す る点 が茲 に存 す ると 思 ふ のであ り ま す、

ら れ る で せ う が、 或 は文相 た る の地 位 に恋 々と し て、 さ う し て あな

憲 法第 一条 の条文 さ へ変 へな け れば 、 天 皇 の大 権 を拘 束 す る が如 き、

た の人格 を疑 はれ る やう な御 議 論 を 為 さ つて は、 将来 の為 に な ら ぬ

で は、 ど う し ても此 国 体 擁 護法 と 云 ふも の ゝ審 議 は進 め ら れ ぬ と思

私 は根 本 問 題 だ ら う と思 ふ、唯 憲 法 の第 一条 が あ る から と云 ふ だ け

いか と思 ひ ま す、 あ な た も もう 少 し 政治 上 の大 き な 理 想 を持 つて居

と思 ひ ます 、 実 は も つと他 のこと を御尋 す る の です が 、今 偶 々竹 内

を聴 き ま し て、 どう も 是 は松 田文 相 御 自身 の人 格 問 題 にな り は し な

氏 と文 相 と の問 答 の中 に出 た言 葉 であ り ます から 、 先 づ其 点 に付 て

し て居 ら ぬ から 、美 濃 部 氏 の統 治権 の主 体 が君 主 に無 い と云 ふ学 説

の天 皇 之 を統 治 す ﹂ と 云 ふ こと に反 対 し て居 ら ぬ か ら︱

変 らず 、厳 と し て存 在 し て居 る国 家 と 思 ひ ます

○ 松 田国務 大 臣  私 は今 申 す 通 り で、 日 本 の国 体 は三 千年 来 少 し も

と思 ひま す

ふ ので あり ま す が、 尚 ほ改 め て もう 一度 其 御解 釈 に付 て御 願 し た い

に反 対 す る こと を躊 躇 す る と去 ふ 御意 見 が明 にあ り ま し て、 洵 にど

質 疑 致 しま す が、美 濃 部 氏 が憲 法 第 一条 の ﹁大 日 本帝 国 は万 世 一系

うも 是 は容 易 な ら ざ る御 失 言 であ らう と 思 ふ ので あ り ます 、 此 憲 法

と云 ふだ け の こと であ つて は意 味 を な さ ぬ のであ り ま し て、 此 統 治

○ 中 谷 委員  実 にど う も御 答 が余 り無 責 任 で、 三千年 来 存 し て居 る

い限 は是 は 反 対 を許 しま せぬ 、左 様 な こと は学 説 でも 何 でも あ り ま

ま す、 それ が 三 千年 来 の国 体 の考 と違 つて居 るか ど う かゞ問 題 にな

があ り、 統 治 権 は

権 其 も のに関 し て の内 容 に付 て、統 治 権 は国 家 にあ る と主 張 す る者

之を否定

此憲 法 の変更 の無

せぬ 、 又吾 々 の美 濃 部 説 に反 対 す る所 以 は 、統 治 権 の主 体 が天 皇 に

第 一条 と 云 ふ も のは、 是 は反 対 を許 し ま せ ぬ︱

無 いと云 ふ か ら、 国 体 に反 す る と 云 ふ訳 であ る のであ り ま し て 、是

つ て居 り ます が、 そ れ が如 何 です か

天 皇 の手 に在 らず と主 張 す る者 が あ る の であ り

は重 大 な る点 であ る の であ り ます 、 であ り ます から 、 例 を挙 げ て御

○松 田国 務 大臣  私 の説 は 先程 申 し た通 り で、天 皇 に統 治権 が あ る

と 云 ふ点 であ り ます 、 其 点 で御 諒 承 を願 ひま す

ので あ りま す、 統 治 権 の主体 は天 皇 であ る、 然 る に美 濃 部 氏 は 之 に

が時 々変 へる や うな こと を 御話 にな るか ら、 問 題 が又 逆転 し て参 る

○ 中 谷 委 員  そ れ で宜 し い、 今 の御 言 葉 で宜 い のです 、 そ れを 文 相

反 対 を し て居 る、 反 対 を し て居 るな ら ば、 文 相 の所 見 は之 に反 す る

国体 の

大 日本 帝 国 は 万 世 一系 の天 皇 之 を統 治 せら れ て

尋 を致 しま す 、 征 夷 大 将軍 、 幕 府 と 云 ふ も のが あ りま す が、 此 幕 府 が あ る時 と雖 も︱

居 る のであ り ま す が、 斯 様 な 制 度 と雖 も差 支 な いと 云 ふ︱

○ 松 田国 務 大 臣  日本 の国 は三 千年 来 万 世 一系 の

変 革 な し と 云 ふ御意 見 です が、文 相 の御 意 見 を 伺 ま す

居 る ので、 国 体 に於 ては少 し も変 更 はな いと 私 は考 へて居 りま す

のぢ やあ り ま せ ぬか

天 皇 が統 治 し て

○ 中 谷 委 員  是 が吾 々が特 に重要 と考 へる点 であ り まし て、 治 安 維

は統 治 権 が

天 皇 の手 にな いと 云 ふ学 説 に は反 対 であ ると 云 ふ こと

ぬ、 第 一条 の用 語 に付 い ては 当然 のこと であ りま す 、 詰 り文 部 大 臣

で あ りま す、 憲 法 第 一条 に付 ては誰 も質 疑 の問 題 に供 し て居 りま せ

○ 中 谷 委 員  此 場 合 憲 法 第 一条 の用 語 を 以 て の御 答 は 洵 に迷 惑 千 万

て は躊 躇 す る と言 つた の であ りま す

直 ち に美濃 部 君 の説 が国 体 に反 す ると 云 ふ こと を 論断 す る こと に付

○ 松 田国務 大 臣  それ は美 濃 部 君 が 憲法 の 一条 を 認 め て居 る から 、

と 云 ふ こと を言 は れま す か、躊 躇 す る こと はな いぢ や あ りま せ ぬ か

○ 中 谷 委員  反 対 し て居 る のなら ば 、何 故 此問 題 の反 対 に躊躇 す る

○ 松 田 国務 大 臣  私 は美 濃 部 君 の説 に は反 対 し て居 る のです

こと にな り ま す る と、 大 変 な問 題 にな る訳 で あ りま す 、文 相 の言 は

とし て は、 そ れ で宜 い訳 であ り ます が、 是 が唯 言 遁 れ であ ると 云 ふ

○ 中 谷 委 員  そ れ は調 査 を し て善 処 す る と 云 ふ こと は御 答 弁 の形式

て は今 吾 々は慎 重 に考 慮 し て善 処 し た い と考 へて居 り ま す

処 で以 て何 と か答 へると 云 ふ こと も 一寸 困 難 に感 じ ま す、 其 点 に付

へて居 り ま す が、 其 宮 沢 と 云 ふ者 の説 を能 く通読 し て見 な け れば 此

学 では 今美 濃 部 君 は教授 で な い の であ りま し て、 宮 沢 と 云 ふ のが教

○松 田 国務 大 臣  高 等 学 校 以 下 の教科 書 には使 つて居 りま せ ぬ、 大

し て監督 上 如 何 な る御 考 へを 御 有 ち にな り ま す か

の官 学 に於 て講 義 す る者 あ る場合 に於 き ま し て、 文 部 大 臣 は上 官 と

の、 統 治 権 の主 体 は天 皇 でな いと 云 ふ所 の学 説 を、 帝 国 大学 、 其 他

ざ る 国 民教 育 上 に悪 影 響 を与 へる大 問 題 であ り ます から 、 是 は御 調

れ る こと は、 形式 的 に は それ で宜 いとし ても、 既 に此委 員 会 に於 て

は、 今 日只 今 御明 言 が出 来 る かと思 ひま す が、 如 何 でご ざ いま す か、

査 が出 来 て居 らぬ筈 はな いと 思 ふ ので あり ま す、 先 程 牧 野 同僚 か ら

美 濃 部氏 の説 が ど う で あ る と か、斯 う であ る と か言 ふ必 要 は あ りま

○ 中 谷委 員  即 ち文 部 大 臣 の御 明 言 は美濃 部 氏 の学 説 に反 対 であ る

の根 本 に関 す る大 切な 問 題 であ り ます から 、 一歩 を誤 れ ば 容易 なら

と 云 ふ ことを は つき り言 は れた も のと私 は諒 承 致 す ので あり ま す、

質 問 を致 しま し た が、 其 著 者 が即 ち宮 沢 と 申 し ます か、東 京帝 国 大

論 議 を始 め て から、 随 分 長 い日 を経 過 し て居 り ます し 、問 題 は国 体

反 対 は し て居 り ま す け れ ど も、 第 一条 を否 定 し て居 ら ぬ から 云 々と

の であ り ます から、 帝 大 内 に於 て是 と同 様 の講 義 をし て居 る こと は、

学 の憲 法 講 座 を担 任 し て居 る人 であ りま す 、其 人 が著 述 を し て居 る

せぬ

云 ふ や うな こと は、 ま る で是 は理窟 にな らぬ 、 乱 暴極 ま る御議 論 で、

○ 松 田国 務 大 臣  私 は天 皇 に統 治 権 が あ ると 考 へて居 り ます

徒 に大 切な 此 治安 維 持 法 の委 員 会 の審 議 を遅 延 せ し む る御 答 であ ら

に反 す る議 論 を講 座 に於 てす ると 云 ふ こと は有 り得 ざ る こと で あ り

ま す か ら 、是 はも う疑 ふ の余 地 が な い のであ り ま し て、若 し文 部 大

是 は当 然 の こと であ る の で あり ま す、 学 者 が著 書 を公 にし て、 そ れ

臣 に誠 意 が あ れば 、文 部 省 関 係 の最高 の監 督 者 と し て、 又文教 の責

う と思 ふ のであ り ま す、 此 治 安 維 持法 の審 議 の為 に文 相 自 ら之 を 遅

と 云 ふ ことを 言 は れ る以 上 は、 此 文部 大 臣 の考 へに違 反 し て居 る所

権 が天 皇 に無 く し て国 家 に在 ると 云 ふ説 は、 文 部 大臣 は反 対 であ る

任 者 と し て、 之 に対 し て適 当 に善 処 す ると 云ふ御 考 へが あ るな らば 、

延 す る が如 き 態度 を執 ら れ る こと を洵 に遺 憾 と 致 し ま す、 所 で統治

の、 背反 し て居 る所 の機 関 説 、 即 ち統 治 権 は天 皇 に在 らず と す る所

れど も 、 そ ん な も の で はあ り ま せ ぬ、 憲 法 の大権 に関 す る事 、 天 皇

は時 々全 部 を読 まな け れば 分 ら ぬ と か云 ふ こと を御 話 にな り ます け

も う 御 調 査 は済 ん で居 な け れば な ら ぬ筈 であ り ます 、 然 る に あ な た

り ます から、 是 も亦 慎 重 に考 慮 し善 処 し た い と考 へて居 り ます

○ 松 田国 務大 臣  是 は先 達答 へた通 り 、影 響 す る所 も 頗 る重 大 であ

は、 国 民 教育 上是 は宜 し く な い害 が あ ると御 考 へにな り ま す か

に関 す る こと を御 覧 にな れ ば 直 ぐ是 は分 る訳 であ り ます 、恐 ら く是

第六十七回帝国議会 治安維持法改正法律案 外 一件委員会議録 貴 族 院  ( 速 記 )第 十 二回

すか、どうですか

○ 中 谷 委員  其 御 返 事 は此委 員 会 が終 了 す る迄 に伺 ふ こと が出 来 ま

が あり ま す か

は統 治権 の主 体 にし て天 皇 は統 治権 の総攬 者 な り ﹂ と言 は れた こと

曾 て憲 法 の講 義 をせ ら れ 、其 著 述 を せ ら れ る に当 り ま し て、 ﹁国家

○ 中 谷 委員  金 森 法 制 局 長官 に御 尋 を 致 し ま す、 金 森 法制 局 長 官 は

誠 意 を以 て善 処 致 しま

は御 調 査 に な つて居 る と思 ひます 、 直 ち に是 は処 分 す べき が当 然 と 思 ひ ま す が、 如 何 であ り ま す か ○ 松 田 国 務 大臣  そ れ は慎 重 に考 慮 し た後

○松 田国 務 大 臣  其 事 は 一寸 出 来 兼 ね ま す、 十 分 慎 重 に調 査 し て か

昭和 十年 三 月 二十 四 日 (日曜 日)

ら 処分 致 し ま す

に書 いて あり ま す

○ 金森 ︹ 徳 次 郎 ︺ 政府 委 員 ︹内 閣法 制 局 長 官 ︺ 私 の書 物 に は 左 様

す

○ 中 谷委 員  処 分 し てし ま は なく ても宜 いん です が、是 だ け の処 置

一は之 を肯 定 す 、 他 は之 を否定 し て統 治 権 の主 体 にし て、国 家 機 関

○ 中 谷委 員  尚 ほ ﹁天 皇 は国 家 機関 な り や否 や に付 て は二説 あ り、

を 執 る と 云 ふ こと は御 分 り でせう 、 御 調 査 に な つて是 は 不穏 当 で あ るか ら、 斯 う 云 ふ処 置 を執 る と 云 ふ御意 思 を述 べら る ゝ こと は、 そ

に非ず と為 す 、 按 ず る に天 皇 は 国家 意 思 を 最 高 最終 に決 定 す る自 然

んな に暇 が掛 ら ぬと思 ひます 、 問題 が問 題 だ け に、 是 は委 員 会 の終 了 す る迄 に御 考 へを 承 り た いと思 ひま す が、 如 何 です か

る所 なし 、 而 し て統 治権 の主体 は国 家 其 のも のに し て、 天皇 は之 を

人 にし て既 述 の国 家機 関 た る性 質 に合 す 、 之 を国 家 機 関 と 云 ひ て誤

総攬 す る自 然 人 な る を 以 て、 第 二 の説 ﹂ 即 ち第 二 の説 とは天 皇 は統

○ 松 田国 務 大 臣  十 分 考慮 す る こと に致 し ます

治権 の主 体 に し て国 家 機 関 に非 ず と 為 す 説 であ りま す 、 此第 二 の説

○ 中谷 委 員  そ こ でや は り 又 あな た は考 慮 す る、考 慮 す ると 云 ふ こ と を繰 返 さ れ て居 るや う で あ りま す が、 美 濃 部 と か宮 沢 と か 云 ふ名

か

が 不完 全 な る こと は明 か であ る、 斯 様 な こと を 御述 べ にな り まし た

○ 金森 政 府 委 員  左様 に書物 に書 い て居 り ま す

ある と 云 ふ こと を断 言 せ ら れ て居 り、 是 が 日本 の国 体 で あ ると断 言 せら れ て居 る以 上 は、 之 に反 対 す る所 の学 説 が学 校 に於 て講義 せ ら

前 を用 ひず に、 文部 大 臣自 ら統 治 の権 そ れ自 体 は、 天 皇 に在 る の で

れた り、 或 は著 述 と し て是 が民 間 に販 売 配 布 され て居 ると 云 ふ こと

関 は国 家意 思 の構 成 と決 定発 動 に参 与 を為 す 場 合 に於 て は之 を 国家

○ 中 谷委 員  左様 致 し ま す れば 、 天皇 を国 家機 関 と断 定 せら れ、 機

解 釈 致 し ます

○ 金森 政府 委 員  国 家 機 関 全 体 の説 明 を致 し ま す場 合 には 、左 様 に

居ります

参 与 を為 す 場 合 に於 て之 を 国 家機 関 と称 す ﹂ と 云 ふ こと を言 は れ て

之 を 国家機 関 と称 す ﹂、 ﹁ 斯 の如 く国 家 意 思 を構 成 し 其 の決 定 発 動 に

定 に参 与 す 、斯 の如 く国 家 意 思 の決 定 発 動 に参 与 を為 す場 合 に於 て

は 自然 人 の集 合 よ り成 る団 体 を種 々な る方 法 に依 り て国 家意 思 の決

動 に参 与 す る も のは多 数 に存 在 す る を常 と し、 即 ち 各個 の自 然 人 又

思 は終極 自 然 人 の意 思 に外 な らず 、 斯 の如 く し て国家 意 思 の決 定 発

居 り ます る が、 ﹁ 国 家 は自 ら 統 一せ る意 思 の主 体 な り と雖 も 此 の意

○ 中 谷委 員 偖 て天 皇 は国 家 の機 関 であ ると 云 ふ こと を断 定 され て

と 云 ふ 二 つ の説 明 を掲 げ て、而 し て国 家機 関 な りと 云 ふ こと を正 し

機関 ﹂ と 云 ふ標 題 を 付 せ ら れ て居 り 、﹁天 皇 は国 家機 関 な り や否 や﹂

え る の であ り ます け れ ども 、 此 百 七 十九 頁 に於 ては明 瞭 に ﹁天 皇 と

我 が 国 体 に相 容 れ ざ る思 想 であ る と 云 ふ こと を ぼ かし て居 る形 が見

○中 谷委 員

を願 ひ た いと 思 ひま す

と機 関 と の本 当 の説 明 は第 八 十 二頁 に書 いて居 る所 に依 つて御承 知

合 に は、 それ に 対応 す る や う に説 明 を し て居 る の であ りま す、 天 皇

場 合 も あ る訳 であり ま す、 随 て機 関 と 云 ふ言 葉 を広 く用 ひま す る場

判 の み をす る機 関、 或 は議 会 が立 法等 に の み参 与 せ ら る、 斯 う 云 ふ

ら、 其 中 には局 部 的 な る言 葉 で制度 の結果 に基 き まし て、例 へば 裁

し た訳 であ り ま す、 併 し機 関 と云 ふ言 葉 は、 広 く用 ひら れ ま す る か

国 家 の意 思 を現 す と 云 ふ意 味 に於 て機 関 と 云 ふ概 念 に当 る と説 明 を

関 と 申 上 げ る と云 ふ こと は、 国 家 の働 き に合 一し て、 天皇 の意 思 が

ふ こと を は つき り言 つて居 りま す、 で あり ま す か らし て、天 皇 を機

○ 金 森 政 府委 員  国 家 機 関 の説 明 を致 し ま す る時 に、広 く国 家 の諸

く 避 く るは便 宜 の問題 たり ﹂ と称 せ られ て居 る のであ り ま し て、便

いと され て居 る の であ りま す 、 ﹁天皇 を機 関 と称 す る こと を 成 る べ

其 後段 の御 説 明 が あ る為 に、 何 とな く 天皇 機 関 説 が 、

る のであ り ます るが 、 左様 に承 知 し て宜 しう ご ざ いま す か

機 関 と 云 ふ と あり ま す と、 天 皇 を 以 て参 与 の機 関 と 云 ふ結 果 に相 成

般 の発 動 に参 与 す るも のと 云 ふ定 義 を 致 し まし た、是 は機 関 の全 部

ふ こと をは つき り言 は れ て居 る の であ り ます 、最 も大 切 な る問 題 で

あり ま す か ら、 此 問題 が議 会 に於 て論 議 せら れ ます 所 以 のも の は、

宜 上 成 るべ く避 け るが宜 い け れど も 、天 皇 は国家 の機 関 であ ると 云

全 く 此 重 大性 に原 因 す る ので あり ま す、 如 何 に美 濃 部 氏 の学説 が其

に 亙 つて の説 明 で あ りま し て、 此 言 葉 は或 る意 味 に取 り ます れば 、

に与 ると 云 ふ意味 に於 き ま し て は、 其広 い意 味 に於 て 当嵌 りま す 、

宣 伝力 、今 の言 葉 を 以 て申 し ま す れ ば、 其 浸 透 力、 其 宣 伝 力 と其 感

固 よ り天皇 に も当 嵌 ると思 ひ ま す、 其意 味 は国 家 の意 思 の決 定 発動

り ま せ ぬ、 そ こで天 皇 に関 し ま し て の主 た る説 明 は、 別 の所 に は つ

ち金 森 君 と私 と は穂 積 八 束教 授 の講 義 を机 を竝 べ て聴 い た の であ り

染 力 と を有 す るか と云 ふ こと は、 驚 く の外 はな い ので あ りま す、 即

併 しな がら 他 の極 く局 部 的 に与 る も のと 一様 に取 扱 ひま す れば 当 嵌

﹁我国 に於 ては国 家 意 思 は 一に天 皇 の意 思 に依 り て決 せ ら る﹂ と云

き り書 い てあ りま し て、新 し き私 の書 物 の第 八十 一頁 に於 き まし て

た こと にな つ て居 る か も知 れ ま せ ぬ が、 私自 身 の考 と 致 し まし ては 、

ぬ が、 穂 積 八束 先 生 が 吾 々に講 義 を せ ら れ た後 に於 きま し て、更 に

穂 積 先 生 が言 は んと 欲 し て、而 も十 分 に言 葉 を 尽 さ れ て居 な い点 を

此 ﹁ 憲 法提 要 ﹂ に現 れ て居 りま す る所 の穂 積 先 生 の御 考 は、 国家 は

ま す が、 穂 積 教授 が全 生 命 を 打 込 ん で、 全 く 至誠 溢 る ゝ の態 度 を 以

す る が 、其 老 博 士 の風貌 は、 私 の眼 中 に彷 彿 た るも のが今 尚 ほ存 す

主 権 を 有 つて居 ると 云 ふ こと を明 に言 は れ て居 り ま す、 さう し て国

て天 皇 機 関 説 と 云 ふ も のが、 如 何 に誤 れ る も の であ る か と 云 ふ こと

る の であ り ま す、 そ れ 程熱 心 に講 義 され た に拘 らず 、而 し て其 門 弟 ︹ママ︺ 中 の秀 な 一人 で あ つた に拘 らず 、 金 森 君 が遂 に此 天 皇 を 以 て国 家 統

家 の意 思 は謂 は ゞ法 律 意 思 と 云 ふ べき も ので あ る、 其 意 思 の実 体 が

ま す る と、 私 が故 ら に弁 明を す るや う に御 取 りに な る かも知 れ ま せ

治 の主 体 と す る説 を変 へら れ て、 天 皇 機関 の説 を執 ら る ゝやう にな

補 つた と 云 ふ こと に根 本 を有 つて居 る訳 であ り ます 、 今 更斯 く申 し

も慨 嘆 の至 り に堪 へざ る所 であ る ので あ

に付 き ま し て は、殆 ど毎 時 間 と言 つ ても宜 い位 ま でも熱 心 に講 義 せ

りま し た こと は、 返 す〓

で あ る、 外 か ら見 れば 国 家 の意 思 であ る け れ ども、 内 から 見 れ ば天

何 処 から 生ず る か と言 へば、 そ れ は天 皇 の自 然 意 思 に外 な らな い の

ら れ て居 つた のであ り ま し て、 博 士 去 つ て既 に二 十 有 余年 にな りま

りま す 、 尚 ほ念 を押 し て御 尋 致 し た い こと は 、此 本 の何頁 であ り ま

帰 属 す る主 体 は国 家 であ る と 云 ふ前 提 の下 に ﹁吾 人 手 を 以 て打 つ、

居 りま す 、 更 に是 も私 弁 護 の為 に言 ふ訳 であ りま せ ぬ、 私 の思 想 は

皇 の御 意 思 に 外 な ら な い の であ る、 斯 う 云 ふ やう に御 説 明 にな つ て

書 物 を御 著 し にな り ま し た、 所 謂 ﹁ 憲 法 提 要 ﹂ を作 ら れ て居 り ます 、

した か、 斯 う 云 ふ こと が書 い てあ りま す、 詰 り統 治 権 は 、統 治 権 が

打 つも のは 手 か吾 人 か、 何 れ の語 を 以 ても 答 ふ る ことを 得 、然 れ ど

の仰 せ ら れ ま し た所 と は、 一言 一句 悉 く 方 向 を異 に致 し て居 る こと

私 は正 直 な所 美 濃 部 先 生 には教 を受 け て居 り ま せぬ 、 又美 濃 部 先 生

は 私 の書 物 を 本 当 に御 読 み下 さ い ま す れば 、極 め て明 瞭 で あら う と

も意 味 に於 て小差 あ ると 同 じ き な り ﹂と 云 ふ こと が あ りま す る が、

のであ り ま す か

る か、 是 と す る か、 斯 う 云 ふ主 張 は有 つ て居 りま せ ぬ 、 ︹ 後略︺

思 ひま す 、固 よ り根 本 の観念 に於 き まし て美 濃 部 博 士 の説 を非 と す

此 場 合 に於 け る あな た の御 考 は天 皇 を以 て手 と御 考 に相 成 つて居 る

○ 金 森 政 府委 員  私 の書物 が謂 はゞ爼 上 の魚 と 云 ふ やう な形 に な つ

二月十八 日開議

国体 に関す る

○男爵菊池武夫君 我国政界 の有様 が堕落 いたしまして、綱紀 の頽

第六十七回帝国議会国務大臣 の演説 に対する質疑︱ 貴 族 院  男爵菊池武夫君 問題︱ (外 二 名 質 疑 )

て居 りま す る時 に、 其 書 物 の内容 に付 き ま し て、 中 谷 君 から発 言 の

に衷 心 より 喜 びを感 じ て居 る次第 で あ りま す 、実 に感 謝 の至 り に堪

機 会 を与 へら れ まし た こと は 、其 武 士 道 的 態 度 に対 しま し て、 本 当

へま せ ぬ、 私 と 中谷 君 は今仰 せ に な りま し た 通 り、 等 し く 穂積 八 束

く は穂 積 八 束 先 生 の論 ぜら れ た範 囲 を 一歩 も 出 でな いと 、 自分 は信

先生 の教 を受 け ま し た、 私 の憲法 に対 し ま す る根 本 の思 想 は、 恐 ら

じ て居 りま す から、 言 葉 の上 に於 き まし て、 或 は先 生 の御 考 と違 つ

問 題 を打 変 へて、 此 日本精 神 に適 ふ や う な も の に為 さら ぬ かと 云 ふ

等 学 府 を創 設 さ る ゝ の意 思 はな いか 、 又高 等 文 官 試 験委 員 竝 に試 験

之 が緊 急 の手 段 とし て帝国 大 学 を 廃 し て、 新 に聖 旨 に適 ふ所 の新 高

法 律 化 、 教育 化 と云 ふ やう な こと にな る の でござ いま し て、 進 ん で

な ら ぬ こと を述 べま し て、 言 葉 を換 へます れば 、 伝 統 倫 理 の行 政 化 、

密 な る捜 査 を致 しま し て、犯 罪 であ る場 合 に於 き ま し て は之 を罰 す

報 告 等 に依 り ま し て、 之 を思 量 いた し ま し た場 合 に、検事 に於 て綿

す る場 合 に於 きま し ては、 或 は告 発 が あ り、 其 他 適 当 の官 庁 から の

る が、若 し も著作 物 が其 記 載 事 項 にし て犯 罪 であ ると思 量 いた し ま

あ りま す 、其 他 の取 締 は 主務 省 た る内 務省 が関 係 す る所 で あり ま す

と致 し ま し て は、 そ れ が 犯罪 にな る時 に於 て初 め て問題 とす る の で

に付 て御答 申 上げ ま す 、 司法 省 の関 係 に於 き まし て、著 作 物 の取 締

○ 国務 大 臣 (小原 直 君 )  菊 池 男 爵 の御質 問 に御 答 いた しま す 、御

やう な こと を申 し ま し た のも、 全 く綱 紀粛 正 を期 す る の重大 な る手

る手 続 を執 る の であ り ま す、 其 犯 罪 は 主 と し て出 版 法 に拠 る のが普

廃 せ る こと実 に 久 し い も の でござ いま す、 常 に 我 々共 同志 相 寄 ると

段 であ る から でご ざ いま す、 そ こ で以 下総 て綱 紀 粛 正 に帰 納 し得 ま

通 であ り ま す る が、 此出 版法 の中 でも 色 々条 項 が あ り まし て、例 へ

質 問 の中 で私 に関 係 いた し ま す るも のは第 一は著 作 物 の取 締 に付 て、

す る重 大 な る過 去 、 現在 の問 題 を 捉 へま し て質問 を 申 上 げ やう と 思

ば 国憲 を紊 乱 す る記 事 を記 載 い たし ま し た る場 合 、若 く は風 俗 を壊

第 二は所 謂 怪 文 書 の取締 に付 て の御 尋 であ つたと 存 じ ます 、 此 二点

ひま す 、関 係 の各 大 臣 か ら率 直 簡 明 な る御 回 答 を下 さ い ま す るな ら

乱 す る事 項 を記 載 いた し まし た る場 合等 に於 きま し ては、 是 は直 に

に本 壇 に於 き ま し て、 我 が皇 国 の伝 統竝 に倫 理 を政 治 化 せ ら れね ば

ば 満足 之 に過 ぎ ま せ ぬ、 第 一が著 作 に 付き ま し て の御 尋 でご ざ いま

犯罪 にな り ます るか ら 、 犯罪 あ りと 思量 い た しま す れ ば適 当 な る処

触 る と、 談 此点 に及 ば な い時 はな か つた ので ござ いま す、 そ こ で曩

いま す、 我 が 皇 国 の憲 法 を 解 釈 い た し ます る著作 の中 で、 金甌 無闕

す 、主 と し て内 務 大臣 、 司 法 大 臣、 文 部 大 臣 に関 係 あ る事 柄 でご ざ

置 を執 る ので あ りま す、 唯 出 版 法 に於 き ま し て は御 承知 の通 り、 其

記 載事 項 が安 寧 秩 序 を害 しま す る場合 に於 て は、 旧出 版 法 に於 て は

な る皇 国 の国 体 を破 壊 す る やう な も のがご ざ いま す、 又勝 てば官 軍 であ る、 負 け れ ば賊 であ ると 云 ふ や う な気 分 を鼓 吹 し て、 闘 争 を煽

な り、 社会 の木 鐸 を以 て任ず べき 帝 国 大学 の教 授 、 学 者 と 云 ふ やう

す ので あり ま す、 昨 年 の八 月 一日実 施 にな り ま し た改 正出 版 法 に於

省 の関 す る限 り に於 て は、 同 一の手 段 を執 つて犯 罪 あ れば 起 訴 い た

た場 合 に、茲 に犯 罪 が成 立 いた し ま す る から 、 其 犯罪 に付 ては司 法

動 す る と 云 ふ やう な も のがご ざ い ます 、 是 は輦轂 の下 は固 より台 湾

な方 の是 が著 述 で あ る に於 て、 私 は 痛 恨 に堪 へざ る者 でご ざ いま す 、

其 発売 頒 布 を 禁 止 し た る に拘 ら ず同 一出 版 物 を発 売頒 布 いた し ま し

是 等 の著 作 が あ る こと を 政府 は御 認 め に な つて居 る かど う か、 又 御

き まし ては 、安 寧 秩 序 を害 す る記 事 を記 載 いた し まし た時 に は、 直

単 に主 務 省 に於 て其発 売 頒 布 を禁 止 す る処 置 を 執 る訳 であ り ます 、

認 め に な つて居 るな ら ば、 此 著 作 を挙 げ て、 此 著 作 者 と 共 に如 何 な

に犯 罪 を 構 成 す る こと に な る の であ り ます る から、 今 後 は 此 点 に付

に於 ても 斯様 な る事 が あ る の でござ いま す るが、 誠 に学 徒 の師 表 と

る処置 を此 後 に於 て御 執 り にな ら む と す る の でご ざ いま す ︹ 後略︺

て も司 法 省 の関 す る限 り に於 き ま し て は、 犯 罪 を構 成 す れ ば適 当 の

ご ざ います る から申 上 げ ます 、其 外 には、 是 は美濃 部 博 士 の御 著 述 、

て戴 けば も う 再 び壇 に登 る必 要 は な い のでご ざ いま す、 更 に又 本 が

対す る考 、 斯 う 云 ふ こと を先 き に御 尋 いた した 、簡 明 に仰 つし や つ

べ て、 又別 に議 事課 を通 じ て差 上 げ まし て宜 しう ご ざ います 、 さう

処置 を執 る考 であ り ます ︹後 略 ︺

云 ふ記 事 が ご ざ い ます の で、 更 に調 べま す と 、 一木 喜徳 郎 博 士 国 法

憲 法 撮 要 、 憲 法精 義 と 云 ふ やう な 本 でご ざ いま す、 それ から美 濃 部

○ 副 議 長 (伯爵 松 平 頼 寿 君) 菊 池 男 爵 に申 上 げま す が、 只 今 文 部

学 ⋮ ⋮ 明 治 三 十 二年 版 、是 の抜 萃 がご ざ いま す、 之 を あ なた 御覧 に

○国 務 大 臣 (松 田源 治 君 ) 菊 池男 爵 に議 長 を 通 じ て、 如 何 な る 教

大 臣 よ り議 長 を通 じ てと 云 ふ御 話 であ り ま す が、 別 段議 長 が 一々申

な り ます れ ば偉 大な る も の で、 是 は要 す るに憲 法 上 、統 治 の主 体 が

さん で改 造 ⋮ ⋮ でご ざ い ます か、雑 誌 に、 大 変 一木喜 徳 郎博 士 に私

上 げ な く と も、 文 部 大 臣 の言 は れた こと が 通じ た と 存 じ ま す から 、

天 皇 にあ らず し て国 家 にあ り と か民 にあ り と か云 ふ 、独 逸 にそ ん な

授 が如 何 な る書物 に、 ど う 云 ふ こと を書 いた と 云 ふ こと を指摘 し て

別 段 に私 は申 上げ ま せぬ か ら ⋮⋮

のが起 つて か ら の こと でご ざ いま す が 、其 真 似 の本 に過 ぎ な い の で

淑 せ ら れ て、 自 分 が公 法 学 の研究 を始 め た のも全 く是 で、終 生 之 に

○ 男 爵 菊池 武 夫 君  只 今文 部 大 臣 から 、私 か ら さう 云 ふ も の を指 摘

ご ざ いま す、 我 国 が憲 法 上、 統 治 の主 体 が

貰 はな け れ ば答 弁 す る訳 に参 り ま せ ぬ、 甚 だ 恐縮 で あり ま す が、 如

せね ば分 ら ぬと 云 ふ や うな こ と でご ざ いま す から 、 そ れぢ やも う 天

を断 然 公言 す る やう な る学 者 著 者 と 云 ふ も の が、 一体 司 法 上 か ら許

何 な る教授 が如 何 な る書 物 に如何 な る こと を論 じ て居 る かと 云 ふ こ

下 の⋮ ⋮、 斯 様 な 事柄 に は予 て御 注意 が無 いも のと 申 上 げ る より 外

さる べ き も のでご ざ いま せう か、是 は緩 慢 な る謀 叛 にな り 、 明 かな

と材 料 が遠 く な り ま す、何 月号 でござ いま す か、 それ も何 時 で も調

に致 方 が ご ざ いま せ ぬ、 け れ ども 具 体的 に申 上 げ ま す か ら、 之 に対

る反 逆 に な る のです 、 之 を断 定 し 切 ら ぬ、 之 に触 る ゝと 面倒 に な る、

委 ね た こと は 之 に因 す ると 云 ふや うな 意 味 の⋮⋮ 改 造 に⋮ ⋮ ち よ つ

す る御 感 想 と 御 処置 と の極 明 剴 切 な る こと を要 す る のでご ざ いま す、

と を、 議長 を 通 じ て菊 池男 爵 に指 摘 し て貰 は な け れば ち よ つと答 弁

私 は多 くを 御 尋 申 さ う と思 つて居 る のぢ やご ざ いま せ ぬ、 第 一に 申

い の でご ざ いま す、 何 でご ざ いま す か、 嘗 て ﹁ジ ヨフ レ ー﹂ の如 き

多 少 迷惑 が行 く と 云 ふ やう な 卑 屈 な る根 性 であ る か ら綱 紀 が張 らな

に困 り ま す が 、如 何 でご ざ い ま せう

上 げ ま す、 法 窓 閑話 ⋮ ⋮大 正 十 四年 九 月 十 日発行 、 末 弘 厳 太 郎氏 の

天 皇 にあ ると 云 ふ こと

著書 でござ いま す、 法 窓 雑 話 ⋮ ⋮ 昭和 の五 年 十月 五 日初 版 、 昭和 の

ソ ニ﹂ 以下 二 百 余 名 の将 軍 を 一遍 に馘 つた、 此位 の勇 気 が政 治 家 に

は 国境 会 戦 から 退却 中 、最 も 当 時軍 学 の学 者 とし て名 高 い ﹁ラ ング

な く て どう な さ る、 斯 う 云 ふ風 に私 は段 々不 快 に感 じ て参 り まし て、

九年 六月 二十 三 日再 版 の本 でご ざ います 、 同 じ く同 人 の著 でご ざ い

言 語 が少 し 粗 暴 に亙 る かも知 れ ま せ ぬ が御 許 し を願 ひます 、 之 に対

ます、 法 窓 漫 筆 ⋮ ⋮ 昭和 八年 一月 二十 日発 行 、一部 是 は削 除 を命 ぜ ら

でも買 ひ得 ま す 最近 で も⋮ ⋮ 、茲 に於 て明 に此本 を指 摘 し 、此 人 に

れ て居 る部 分 も あ る のです が、非 削 除 の儘 売 ら れ て居 りま す、 何 時

本 精 神 の行 政 化 と 云 ふ こと は此 こと を 申 し て居 る、 是 ば かり で はご

に処 分 が出 来 な い、 然 るに内 務 大 臣 の、 是 は少 く と も 行政 的 に、 日

の改 正 の発 布 が八 月 であ り ます 、 そ れ よ り 二箇 月 前 の出 版 な る が故

て居 る の です、 唯 一つは時 効 に係 つて居 る、 一つは 今 の治安 維 持法

に は やれ ぬ、 実 際 此 本 の二 つは 既 に有 罪 で あ る こと は御 認 め にな つ

す る司 法大 臣 の御 答 は、是 は自 分 の方 で は、 有 罪 と認 め ら れ ぬ限 り

いた し て居 り まし て、 是 は今 日迄 其 点 は論 議 され て居 りま す か ら、

天 皇 は国 家 の主 体 な り や、 天 皇 は 国 家 の機 関 な り や と云 ふ論 が対 立

向 つて は無 論 反 対 であ りま す け れ ど も、 是 は も うず つと 以前 か ら、

居 る、 是 は甚 だ不都 合 で はな いか と、 私 は天 皇機 関 説 と 云 ふ も のに

濃部 博 士 の点 は、天 皇 は国 家 の機 関 なり と 云 ふ やう な こと を言 つて

あ り ます 、 此 点 私 は極 く率 直 に御 答 申 上 げ て置 き ま す 、 そ れ から 美

ね ま し た所 が、 全然 犯罪 にな ら ぬ と 云 ふ こと で不 起 訴 に な つた の で

斯 かる 点 は学 者 の議論 に委 し て置 く こと が相 当 でな い かと 考 へて居

ざ い ませ ぬ、 実 に分 り の悪 い政 府 ぢ や と思 ふ、 内 務 大 臣 は後 刻 と云 ふ こと です か らど う か後 日御 答 を願 ひ ま す ︹ 後略︺

りま す 、御 答 申 上 げ ま す 午 後 零 時 二十 二 分休 憩

○ 国 務 大 臣 (松 田源 治 君) 末 弘 教授 の こと か ら御答 い た し ま す 、 今 菊 池 男 爵 が指 摘 さ れた 書 物 の中 には 不穏 当 な る点 も あ り ま す、 而

午 後 一時 五十 三 分再 開

ま した やう な 次第 で、 著 者 に於 て も相 当 考 へる と 云ふ こと にな つて

ます 、 其 他 の書 物 に付 き ま し て は、 先 程文 部大 臣 から も御話 のあ り

○ 国 務 大臣 (後 藤 文 夫 君) 菊 池 男 爵 の御 質 問 に御 答 を 致 し ま す、

し て是 は法 窓閑 話 は大 正 十 四年 で、 十年前 の書 物 であ り ま す、 而 し

は能 く取 調 べま し た所 が、 あ ゝ云 ふ書 物 に書 い てあ る やう な 思想 は

居 り ます、 適 当 な解 決 が出 来 る こと であ ら う と思 つて居 り ます 、 そ

て私 が文部 大臣 に就 任 し て以来 、 大 学総 長 に も此 問 題 に付 て会 見 い

今持 つて居 ら な い、 而 し て末弘 教 授 は 学 生 の訓 育 に付 ても自 ら接 触

れ か ら美濃 部博 士 の著 書 の こと に付 きま し て、 学 問 上 の論 議 の こと

た し まし て、 さ う し て末 弘 教授 の思 想 は ど うな つて居 る かと 云 ふ こ

し て、 さう し て学 生 の人 格 を陶 冶 し て居 る、 そ れ か ら学 生 から は非

は、 先 程 文部 大臣 か ら御 答 のあ り ま した やう な次 第 であ り ます 、 尚

で法 窓 漫 筆 と 云 ふ書 物 は、 一昨年 発 売 頒 布 禁 止 の処 分 を致 し て居 り

常 に尊 敬 され て居 る、 十 年 前 と は違 つて思 想 に於 ても 余 程改 善 さ れ

ほ斯 か る種 類 の著 書 は それ〓

御 話 のあ り ま し た書 物 の こと で ご ざ いま す が、 末 弘 博士 の書 物 の中

て居 る の であ ると 云 ふ こと であ り まし た 、 而 し て本 人 は学 生 を扱 つ

体 の趣 旨 を も併 せ て考 へて、 行 政 上 の処 置 の こと を判 断 を致 す の で

と を調 べ て呉 れ と 云 ふ こと を頼 み まし た 所 が 、其 当 時 の小野 塚 総長

て居 る の であ り ま す か ら、 世 の中 か ら非 難 され るやう な こと が 起 つ

あ り ます 、 此 書物 は既 に多 年 行 は れ て居 り ま し て、 版 を 重 ね て居 り

削 除 いたし て居 る ので あ りま す、 而 し て菊 池 男 爵 は時 効 で犯 罪 にな

用語 措 辞 等 に付 き ま し て、 当 局 の見 る所 に依 つ て適 切 な 処 置 を致 す

ま す や うな 訳 であ り まし て、 当 局 に於 て は慎 重 に考 究 を 致 し て、 其

の用 語 等 をも 見 ま す ると 同時 に、 全

に絶 版 と 致 し 、 そ れ か ら問 題 に な つて指 摘 され た も のは其 書 物 か ら

た 以 上 は、 さ う 云 ふ書 物 、 即 ち法 窓閑 話 の如 き 書物 は、 是 は自 発的

ら な か つた と 云 ふ や う な点 もあ り まし た が、是 は 司法 大 臣 に私 は尋

各 種 の著 書 に付 て、 当 局 が執 り ま す る適 切 な 処 置 を 、其 場 合 、 其 書

参 つて は居 ら な い の で あり ま す、 矢 張 り 一般 の出 版 物竝 に学 問 上 の

只今 迄 の所 、直 に行 政 上 の処 分 を す ると 云 ふ やう な考 を 以 て処 し て

考 慮 い たし ま し て当 局 では 考究 を致 し て居 るや う な 訳 であ りま す 、

と 云 ふ やう な場 合 も あり ま す る 訳 で あ りま す、 折 角 そ れ等 の大 体 を

発 売 頒 布 の禁 止 を し た のであ り ま す、 然 る に此 事項 を削 除 せず し て、

項 に付 き ま し ては 、内 務 大 臣 に於 て安 寧 秩 序 を害 す るも のと し て、

に掲 げ て あり ま す る ﹁法 治 と 暴 力﹂、 及 び ﹁暴 力問 答 ﹂ と 題 す る 事

そ れ〓

罪 等 を構 成 す る には 至 ら な いと 云 ふ こと で、 昨 年 の十 一月 二十 八 日、

れ た る如 く治 安 維 持法 の罪 又 は不 敬 罪 、国 憲 紊 乱 に関 す る出 版法 の

是 等 の記 述 は用 語 措辞 甚 だ妥 当 を欠 く も のは あ るけ れ ど も、 指摘 さ

○ 国務 大 臣 (小 原直 君) 菊 池 男 爵 か ら更 に御 尋 があ り ま し た か ら

点 に付 き まし ても末 弘 氏 を 取 調 べ ま し た所 、 其爾 後 の出版 に付 ては 、

其 後 に再 び同 一の著 述 が出 版 され た こと が あ る ので あ りま す が、 此

不 起 訴 に決定 とな つた も の であ り ます 、 尤 も此 中 法 窓漫 筆

り ます

物 の性 質 に応 じ て考 へると 云 ふや う に致 し た いと思 つて居 る の であ

御答 を申 上げ ま す、 末 弘厳 太 郎 氏 の著述 の中 、 法 窓 閑話 、 法 窓 漫 筆 、

決 定 に相 成 つた のであ り ま す、 尚 ほ美 濃 部 博士 の著 述 に付 て御 尋 が

し た ので、 此 点 も亦 出 版 法違 反 と し て は、 犯 罪 を構 成 せざ る も のと

あ り まし た が 、是 は先 程 文部 大 臣 、 内 務 大 臣等 より も答 弁 が あり ま

末 弘氏 は全 く関 係 しな か つた も ので あ ると 云 ふ こと が明 か に な りま

等 が あ るか ら 調 べ る やう に と 云 ふ こと で、 昭和 九 年 の六 月 六 日 に簑

し た如 く 、 篤 と 研究 を致 し ま せ ぬと 云 ふと 、是 が犯 罪 にな る かど う

法 窓雑 話 、尚 ほ御 指 摘 にな り ま せ ぬ が法学 入門 、 此 諸 種 の著 述 の中

田氏 から 東京 地方 裁 判 所検 事 局 に対 し て告 発 が あ つた の で、 東 京 地

の論文 の記述 の中 に、 治 安 維持 法 違 反 の罪 、不 敬 罪 、 国 憲紊 乱 の罪

方 裁 判所 検 事 局 に於 き ま し て は主 任検 事 を定 め て、 末 弘厳 太 郎 氏 を

か と 云 ふ こと に 付 て は、 直 に断 定 い たし 兼 ね る のであ り ます 稟 議 を 致 し ま した 末 、

も 召 喚 の上、 篤 と取 調 を致 し た の であ りま す 、 取 調 の結 果 、 東 京 控 訴 院 の検 事長 、検 事 総 長 よ り本 省 に それ〓

第 十 二条  少 年 ニシ テ治 安 維 持 法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ ハ少 年 法 ノ保

ズ

通常 裁 判 所ニ 出訴 ス ル コト ヲ得 此 ノ出訴 ハ執 行 停 止 ノ効 力 ヲ有 セ

前項 ノ命 令 ニ不服 ア ル者 ハ命 令 ノ告 知 ヲ受 ケ タ ル日 ヨリ 一月内 ニ

命 令 ニ付 テ ハ非 訟事 件 手 続 法 第 二 百 八条 ノ規 定 ヲ準 用 ス

養 ス ル義 務 ア ル者 ヨリ其 ノ全 部 又 ハ 一部 ヲ徴収 ス ル コト ヲ得 此 ノ

第 十 一条  前 条 ノ費 用 ハ保 護 観 察所 ノ命 令 ニ依 リ本 人 又 ハ本 人 ヲ扶

全部 又 ハ 一部 ヲ給 付 スル コト ヲ得

シタ ルト キ ハ委 託 ヲ受 ケ タ ル者 ニ対 シ之 ニ因 リ テ生 ジ タ ル費 用 ノ

第 十条  本 人 ヲ保 護 団 体 、寺 院 、 教 会 、病 院 又 ハ適 当 ナ ル者 ニ委 託

員 ニ対 シ嘱 託 ヲ為 シ其 ノ他 必要 ナ ル補 助 ヲ求 ム ル コト ヲ得

第 九 条  保護 観 察 所 及保 護 司 ハ其 ノ職 務 ヲ行 フ ニ付 公務 所 又 ハ公 務

ム ル コト ヲ得

第 八 条  保 護 観 察 所 ハ必要 ア ルト キ ハ保 護 司 ヲシ テ本 人 ヲ同 行 セ シ

シ又 ハ変更 ス ル コト ヲ得 前 条 ノ処 分 ニ付 又同 ジ

第 七条  第 三条 又 ハ第 四条 ノ処 分 ハ其 ノ執 行 中 何時 ニテ モ之 ヲ取 消

ヲ得

本 人 ニ対 シ保 護 観察 審 査会 ノ決 議 前 仮 ニ第 三条 ノ処 分 ヲ為 ス コト

一九  思 想 犯 保 護 観 察 法 関 係 資 料 (一九三六)

a  思 想 犯 保 護 観 察 法

思 想 犯 保 護観 察 法

リ タ ル場 合 又 ハ訴 追 ヲ必要 ト セザ ル為公 訴 ヲ提起 セザ ル場 合 ニ於

第 一条  治 安 維 持法 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 ニ対 シ刑 ノ執 行 猶 予 ノ言 渡 ア

テ ハ保 護 観 察審 査 会 ノ決 議 ニ依 リ本 人 ヲ保 護 観 察 ニ付 ス ル コト ヲ 得 本 人刑 ノ執 行 ヲ終 リ又 ハ仮 出 獄 ヲ許 サ レタ ル場 合亦 同 ジ 第 二条  保 護 観 察 ニ於 テ ハ本 人 ヲ保 護 シ テ更 ニ罪 ヲ犯 ス ノ危険 ヲ防 止 スル為其 ノ思 想 及 行 動 ヲ観 察 ス ルモノ ト ス 第 三 条  保 護 観 察 ハ本 人 ヲ保 護 観 察 所 ノ保 護 司 ノ観 察 ニ付 シ又 ハ保

ニ委 託 シ テ之 ヲ為 ス

護 者 ニ引渡 シ若 ハ保 護 団 体 、寺 院 、 教 会 、病 院 其 ノ他 適 当 ナ ル者

ノ制 限 其 ノ他 適 当 ナ ル条 件 ノ遵守 ヲ命 ズ ル コト ヲ得

第 四条  保護 観 察 ニ付 セ ラ レ タ ル者 ニ対 シ テ ハ居 住 、 交 友 又 ハ通信

ハ保 護 観 察 審 査会 ノ決 議 ニ依 リ之 ヲ更 新 スル コト ヲ得

第 五条  保 護 観 察 ノ期 間 ハ二年 ト ス特 ニ継続 ノ 必要 ア ル場 合 ニ於 テ

第 六条  第 一条 ニ定 ム ル事 由 ノ生 ジ タ ル場 合 ニ於 テ必 要 ア ルト キ ハ

護処分 ニ関 スル規定ヲ適用 セズ 第十三条 本法 ハ陸軍刑法第八条 、第九条及海軍刑法第 八条、第九 条 ニ掲 グ ル者 ニハ之 ヲ適用 セズ 第十四条 保護観察所及保護観察審査会 ノ組織及権限竝 ニ保護観察 則

ノ実行 ニ関 シ必要 ナル事項 ハ勅令 ヲ以テ之 ヲ定 ム 附 本法施行ノ期 日 ハ勅令 ヲ以テ之 ヲ定 ム

)

本法 ハ本法施行前 ニ第 一条 ニ定 ムル事由 ノ生 ジタル場合 ニモ亦之 ヲ 適用 ス b  保 護観 察 所 官 制 昭 和 十 一年 保護観察所官制(勅 令第 四百三号

第 一条 保護観察所 ハ司法大臣ノ管理 ニ属 シ思想犯保護観察法 ニ依 ル保護観 察 ニ関 スル事務 ヲ掌 ル 二十二人 人  奏

任 内 八 人 ヲ奏 任 ト 為 ス コト ヲ得

第 二条 保護観察所 ニ通ジ テ左 ノ職員ヲ置 ク 所 長  輔導官  専任八

記  専任二十三人  判 任

保護司  専任三十三人  判 任 書

所 ノ事 務 ヲ掌 ル

第 五条  保護 司 ハ所 長 ノ命 ヲ承 ケ調 査 及 観 察事 務 ヲ掌 ル

ル者 ニ対 シ司 法大 臣 之 ヲ嘱 託 ス ル コト ヲ得

保 護 司 ノ職 務 ハ思 想 犯 ノ保護 観 察 ニ経 験 ヲ有 スル者 其 ノ他 適 当 ナ

保 護 司 ノ職 務 ヲ嘱 託 セ ラ レタ ル者 ハ奏 任 官 ノ待 遇 ト為 ス コト ヲ得

第 七条  保 護観 察 所 ノ名 称、 位 置 及 管 轄 区 域 ハ司 法 大 臣 之 ヲ定 ム

第 六条  書 記 ハ上司 ノ指 揮 ヲ承 ケ庶 務 ニ従事 ス

)

附 則 本令 ハ昭和十 一年十 一月二十日 ヨリ之 ヲ施行 ス c 保 護 観 察審 査 会官 制

昭 和 十 一年 保護観察審査会官制(勅 令第 四百 五号

第 一条 保護観察審査会 ハ司法 大臣 ノ監督 ニ属 シ保護観察所 ノ請求

ニ依 リ思想犯保護観察法第 一条及第 五条 ノ規定 ニ依リ其 ノ権限 ニ 属 セシメタル事項 ヲ審議 ス

第二条 保護観察審査会 ハ各保護観察所 ニ之 ヲ置 ク

保護観察審査会 ニ予備委員四人ヲ置 ク

第三条 保護観察審査会 ハ会長 一人及委員六人ヲ以 テ之 ヲ組織 ス

第五条 会長、委員及予備委員ノ任期 ハ二年ト ス

ノ中 ヨリ司法大臣之 ヲ命ズ

第四条 会長、委員及予備委員 ハ司法部内高等官及学識経験 アル者

第六条 会長 ハ会務 ヲ総理 ス

第 三条 所長 ハ輔導官 ヲ以 テ之 ニ充ツ司法大臣 ノ指揮監督ヲ承 ケ保 護観察所 ノ事務 ヲ掌理 シ所部 ノ職員 ヲ指揮監督 ス

会長事故 アルトキ ハ其 ノ指名 スル委員其 ノ職務 ヲ代理 ス

所長事故 アルトキ ハ上席 ノ輔導官其 ノ職務ヲ代 理 ス 第 四条 輔導官 ニ所長 タルモノヲ除 クノ外所長 ノ命 ヲ承 ケ保護観察

第 七条  委 員 中 事 故 ア ルト キ又 ハ欠員 ア ルト キ ハ会 長 ハ予 備 委 員 ノ 中 ヨリ代 理 ヲ命 ズ

静岡保護観察所 静岡県静岡市 静岡県

長野保護観察所 長野県長野市 長野県

大阪保護観察所 大阪府大阪市 大阪府、奈良県、和歌山県

新潟保護観察 所 新潟県新潟市 新潟県

ザ レバ会 議 ヲ開 ク コト ヲ得 ズ

京都保護観察所 京都府京都市 京都府、滋賀県

第 八条  保 護 観 察 審 査会 ハ会 長 及 委員 ヲ併 セ五 人 以上 出 席 ス ル ニ非

保 護 観 察 審 査会 ノ議 事 ハ過 半数 ニ依 リ之 ヲ決 ス可 否 同 数 ナ ルト キ

神戸保護観察所 兵庫県神戸市 兵庫県

轄

区 域

郡、亀 田郡、茅部郡、山越郡、大

函館保護観察所 北海道函館市 北海道 の内函館市、松前郡、上磯

域 を除 く全部

札幌保護観察所 北海道札幌市 北海道 の内函館保護観察所管轄 区

青森保護観察所 青森県青森市 青森 県、岩手県

秋田保護観察所 秋田県秋 田市 秋田県、山形県

仙台保護観察所 宮城県仙台市 宮城県、福島県

熊本保護観察所 熊本県熊本市 熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖繩県

福岡保護観察所 福岡県福岡市 福岡県、大分県、佐賀県、長崎県

岡山保護観察所 岡山県岡山市 岡山県、鳥取県

広島保護観察所 広島県広島市 広島県、島根県、山口県

金沢保護観察所 石川県金沢市 石川県、富山県、福井県

名古屋保護観察所 愛知県愛知郡天白村 愛知県、岐阜県、三重県

高松保護観察所 香川県高松市 香川県、徳島県、高知県、愛媛県

ハ会 長 之 ヲ決 ス

書 記 ハ会 長 ノ指 揮 ヲ承 ケ庶 務 ニ従 事 ス

第 九 条  保 護 観察 審 査 会 ニ書 記 ヲ置 ク司 法 大臣 之 ヲ命 ズ

第 十 条  本 令 ニ規 定 スル モ ノヲ除 ク ノ外 保護 観 察 審査 会 ニ関 シ必要 ナ ル事項 ハ司法 大 臣 之 ヲ定 ム

)

附 則 本令 ハ昭和十 一年十 一月二十 日 ヨリ之ヲ施行 ス d  保護 観 察 所 ノ名 称 位置 及管 轄 区域 司法省告示 保護観察所 ノ名称位置及管轄区域(第 八十三号

管

臣

保護観察所 ノ名称、位置及管轄区域左ノ通定 ム

置 

法 大

昭和十 一年十 一月二十 日 司

櫓郡、瀬棚郡、爾志郡、檜 山郡、

位

東京保護観察所 東京府東京市 東京府、千葉県、埼玉県、山梨県

久遠郡、奥尻郡、寿都郡、磯谷郡、

称 

横浜保護観察所 神奈 川県横浜市 神奈川県

歌棄郡、島牧郡

名

水戸保護観察所 茨城県水戸市 茨城県 前橋保護観察所 群馬県前橋市 群馬県、栃木県

e 仮出獄思想犯処遇規程

旅 券 ヲ交 付 スベ シ

第 七条  保 護観 察 所 本 人 ニ対 シ其 ノ管 轄 区 域外 ニ住 居 ヲ変更 ス ル コ

ト ヲ許 可 シタ ルト キ ハ関 係書 類 ヲ新 ニ本 人 ヲ監 督 スベ キ保 護 観 察 所 ニ送 致 スベ シ

第 八条  本 人 外国 ニ旅 行 ヲ為 サ ムト スルト キ ハ其 ノ事 由 、行 先 地 及

)

第 一条  治 安 維 持 法 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 仮 出 獄 ヲ許 サ レ且思 想 犯 保 護

シ

旅 行 日数 ヲ記 載 シ保 護 観察 所 ヲ経 由 シ テ司法 大 臣 ノ許 可 ヲ受 クベ

昭和十 一年司法 仮出獄思想犯処遇規程(省 令第三五号

モノ ヲ除 ク ノ外 一般 ノ例 ニ依 ル

申 報 スベ シ 附

則 本令 ハ公 布 ノ日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

f  保 護 観 察 所 保 護 司 執 務 規 範

第 一章  総

則

昭 和 十 一年 保護観察所保護司執務規範 (司 法省訓令第 一号

第 一条  保 護 司 調 査 及 観察 事 務 ヲ行 フ ニ ハ法 令 ノ定 ム ルト コ ロヲ恪

.)

第 十 二条  本 人 死 亡 シタ ル ト キ ハ保 護 観 察 所 ハ其 ノ旨 ヲ司 法大 臣 ニ

ノ長 ハ其 ノ旨 ヲ保 護 観 察 所 ニ通知 スベ シ

第 十 一条  仮 出 獄 ノ取消 ア リ タ ルト キ ハ其 ノ執 行 ヲ為 シタ ル刑 務 所

ルト キ ハ意 見 ヲ具 シ司 法 大 臣 ニ申報 スベ シ

第 十 条  保護 観 察 所 本 人刑 法 第 二十 九条 第 一項 ニ該 ル コト ヲ知 リ タ

ハ速 ニ其 ノ旨 ヲ保 護 司 ニ届出 ヅ ベ シ

第 九 条  本 人旅 行 ヲ為 シタ ル場 合 ニ於 テ住 居 ノ地 ニ帰 着 シタ ルト キ

前 項 ノ場 合 ニ於 テ ハ保 護 観 察 所 ハ事実 ヲ調 査 シ意 見 ヲ附 スベ シ

観 察 法 ニ依 ル保 護 観察 ニ付 セ ラ レタ ル場 合 ニ於 テ ハ本 令 ニ定 ム ル

於 テ ハ速 ニ其 ノ旨 ヲ本 人 ノ帰住 地 ヲ管 轄 スル保 護観 察 所 ニ通 知 ス

第 二条  刑 務 所 ノ長 司法 大臣 ニ対 シ仮 出 獄 ノ具 申 ヲ為 シタ ル場 合 ニ

ベ シ仮 出 獄 ノ許 可 ア リ タ ル場 合 亦 同 ジ

受 ケ タ ル者 ニ之 ヲ引 渡 スベ シ

第 三条  本 人 ヲ釈 放 スル場 合 ニ於 テ ハ成 ルベ ク保 護 司 又 ハ保 護 ヲ引

票 ヲ保 護 司 ニ呈 示 シテ認 印 ヲ受 ク ベ シ

第 四条  本 人 ハ証票 ニ記 載 セ ラ レタ ル住 居 ノ地 ニ到 着 ノ 日 ニ於 テ証

キ ハ其 ノ事 由 ヲ開 示 スベ シ

天 災 疾 病 其 ノ他 ノ事故 ニ因 リ前 項 ノ規 定 ニ従 フ コト能 ハザ リ シト

テ認 印 ヲ為 スベ シ

保 護 司 前項 ノ開 示 ヲ正 当 ナリ ト認 メ タ ルト キ ハ之 ヲ証 票ニ 記 載 シ

第 五条  本 人 三 日 以上 十 日未 満 ノ旅 行 ヲ為 サ ムト スルト キ ハ保 護 司 ニ其 ノ事 由 、行 先 地及 旅 行 日数 ヲ届 出 ヅ ベ シ 第 六 条  本 人 住居 ヲ変 更 シ又 ハ十 日以 上 ノ旅行 ヲ為 サ ムト スル ト キ ハ其 ノ事 由 、 行 先 地 及旅 行 日数 ヲ明 ニ シ保 護 観 察所 ノ許 可 ヲ受 ク ベシ 住 居 ノ変 更 又 ハ十 日以 上 ノ旅 行 ヲ許可 シタ ルト キ ハ保 護 観 察 所 ハ

第 三章  観

察

ノ社 会 復 帰 ヲ速 カ ナ ラ シ ム ル コト ヲ旨 ト シ熱 意 ヲ以 テ之 ニ当 ルベ

第 十 二条  観 察 ヲ為 ス ニ ハ本 人 ノ思 想 ヲ善 導 シ生 活 ノ安 定 ヲ図 リ其

守 ス ルノ外 本 規範 ニ遵 由 スベ シ

常 ニ社 会 状 勢 ノ推 移 、 人 心 ノ趨 向 ニ留 意 シ之 ニ関 ス ル適 正 ナ ル認

思 料 ス ルト キ ハ保 護 者 其 ノ他 必要 ナ ル機 関 ト協 議 シ テ適 当 ナ ル措

住 居 、 交 友 、保 護 者 ト ノ関 係其 ノ他 ノ事 情 本 人 ノ為 不適 当 ナ リト

ノ状 況 ヲ視 察 スベ シ

及 準 転 向 者 ニ対 シテ ハ特 ニ其 ノ交 友 関 係 、 通信 ノ状 況及 条 件 遵 守

第 十 七条  常 ニ本 人 ノ言 動 及思 想 ノ推 移 ニ留 意 スルト 共 ニ非 転 向 者

怠 及 成 績 ニ留意 シ適 当 ナ ル諭 示、 策 励 ヲ為 ス コト ニ努 ムベ シ

第 十 六条  本 人被 傭 又 ハ在 学中 ノ モノ ナ ルト キ ハ常 ニ其 ノ動 向 、 勤

ニ努 ム ベ シ

ヲ形 成 セ シ メ世帯 ヲ訓 練 シ テ家 族 制 度 ノ美 風 ヲ体得 セ シム ル コト

第 十 五条  本 人家 庭 ヲ為 ス ニ適 ス ルモ ノト認 ム ルト キ ハ援 護 シテ之

シ

慮 シ常 ニ本 人 ノ性 能 ニ適応 ス ル職 業 ト 地位 ヲ与 フ ル コト ニ努 ムベ

第 十 四条  生 活 ノ安 定 ハ転 向 ノ確 保 ト密 接 ノ関 係 ヲ有 ス ル コト ヲ考

尊 重 シ特 ニ其 ノ出 生 地 及性 別 ニ因 ル特殊 事 情 ヲ考慮 スベ シ

第 十 三条  思 想 ノ善 導 ニ当 リ テ ハ本 人 ノ社 会 的 良 心 ト 正義 的 観 念 ヲ

シ

第 二条  保 護 司 ハ我 ガ 国体 ニ関 ス ル明徴 ナ ル観念 ヲ把 持 スルト 共 ニ

識 ヲ有 スル コト ニ努 ム ベ シ

本 人 ヲ シテ全 幅 ノ信 頼 ヲ寄 セ シ ム ル コト ニ努 ムベ シ

第 三 条  保 護 司 ハ厳 正 ニ シテ寛 容 且 明朗 ナ ル態 度 ヲ以 テ職 務 ニ当 リ

人 其 ノ他 ノ者 ノ名誉 ヲ毀 損 セザ ル コト ニ留 意 スベ シ

第 四 条  保 護 司 ハ常 ニ公 明 正 大 懇 切 丁寧 ヲ旨 ト シ克 ク秘 密 ヲ守 リ本

第 五 条  保 護 司 ハ常 ニ保 護 司 相 互 間 ノ連 絡 協 調 ヲ保 ツ ベ シ

本 人 ノ保 護 観 察 ニ関 係 ア ル各 機 関 ト密 接 ナ ル連繋 ヲ保 ツベ シ

第 六 条  保 護 司 ハ保護 団体 、 寺 院 、教 会 、 学 校 、職 業 紹 介 所其 ノ他

査

為 シ其 ノ状 況 ヲ保護 観 察 所 ニ報 告 スベ シ

第 七 条  保 護 司 ハ常 ニ本 人 ノ委 託 ヲ為 スベ キ各 機関 ニ関 スル調 査 ヲ

第 二章  調

第 八 条  調 査 ヲ為 ス ニ ハ敏 活 ニシ テ機 宜 ヲ失 ハズ 周密 ニ シテ遺 漏 ナ キ コト ヲ期 スベ シ

ルト キ ハ其 ノ動機 、 程 度 及 社 会 運動 ニ従 フ ノ意 思 ノ存 否 ニ付留 意

置 ヲ為 スベ シ

第 九 条  調 査 ニ際 シテ ハ特 ニ本 人 ノ心境 変 化 ノ有 無 、若 心 境 変 化 ア

ス ルト 共 ニ保 護者 ノ性 格 、 資 産 、家 庭 ノ良 否 、家 庭 ト本 人 ト ノ感

ヲ申 出 デ シ ムベ シ

第 十 九 条  本 人旅 行 ヲ了 リ タ ルト キ ハ旅 行 ノ経 過 、旅 行 中 ノ出 来 事

ヲ与 フ ベ シ

第 十 八条  本 人旅 行 ヲ為 サ ムト ス ルト キ ハ其 ノ出 発前 必要 ナ ル注 意

情 関 係 及 本 人 ノ将 来 ニ於 ケ ル生 計 ノ見 込等 ノ事 項 ヲ モ明 ニスベ シ

ベシ

第 十条  調 査 ヲ終 リ タ ルト キ ハ意 見 ヲ附 シ之 ヲ保 護 観 察 所 ニ提出 ス

第 十 一条  保 護観 察 審 査 会 ノ審 議 ニ在 席 セ シ ム ル ヲ相 当 ト思料 スル 者 ア ルト キ ハ予 メ保 護 観 察所 ニ其 ノ旨 ヲ申 出 ヅ ベ シ

第 四章  報

告

転 向 の意 思 の存 否 が判 明 し な い者 も あ りま す し、 或 は転 向 の意 思 を

表 明 し ま し ても、 其 の志 操 の堅 固 な らざ る者 が あ る の であ り ます 。

が少 く な い ので あ りま す 。然 る に近 時 に至 り ま し て、 此 の治 安 維持

境 又は 社会 情 勢 に左 右 せ ら れま し て、 再 び罪 を累 ぬ る の虞 のあ る者

す が、 爾 余 の者 にし ま し ても此 の儘 之 を 放置 す る に於 ては、 其 の環

思 ふ に転 向 せ ざ る者 が再 び罪 を 犯す の危 険 あ る こと は明 白 であり ま

ヒ之 ヲ報告 スべ シ但 シ本人 ニ付 住 居 ノ変 更 、 所 在 不 明、 死 亡 其 ノ

第 二十 一条  観 察 ノ成 績 ハ保 護 観 察所 ヨリ指 示 セ ラ レタ ル条 件 ニ従

法 の違 反 者 に し て、 刑 期 の満 了 に依 つ て出獄 す る者 が漸 次 其 の数 を

載 スベ シ

第 二十 条  観 察 ニ際 シ認 知 シタ ル必 要 事項 ハ漏 ナ ク之 ヲ観 察 書 ニ記

ニ報 告 スベ シ

他 重要 ナ ル事 項 生 ジ タ ルト キ ハ其 ノ都 度 遅滞 ナ ク之 ヲ保 護 観 察 所

加 ふる こと に相 成 り、其 の中 に は危 険性 の強 い者 があ り ます の で、

是 等 の者 の出 獄 が他 の危 険性 の弱 い釈 放 者及 一般 社 会 に及 ぼす 影響

第 二十 二条  観 察 ヲ了 リタ ルト キ ハ遅 滞 ナ ク観 察 簿 其 ノ他 関 係 書 類 ヲ保 護 観 察 所 ニ提 出 スベ シ

が あ る の であ り ます 。是 と同 時 に最 近 に至 り執 行 猶 予 期間 の満 了 す

る者 の数 も著 し く 増加 し て参 つて居 り ま す か ら、是 等 の者 をし て其

に付 き ま し て は、 思 想 犯 の特 性 に鑑 みま し て、 深 く 考 慮す る の必要 g  思 想 犯 保 護 観 察 法 提 案 理 由 説 明

諸 情 勢 と綜 合 し て考 察 致 しま す ると、 今 に於 て是等 の思 想 犯 人 に対

にす る の要 が あ るも のと思 料 致 す の であ り ます 。而 し て之 を内 外 の

の期 間 の満 了 後 に於 け る行 動 を誤 ら し め ざ る やう に、 特 に警 戒 を厳

只今 上程 に相 成 り ま し た思 想 犯保 護 観 察 法 案 に付 き まし て、提 案

す る万全 の方 策 を 樹立 し、 以 て再 犯防 止 の挙 に出 づ る こと は、 我 が

)

の理由 を説 明 致 し ま す 。治 安 維持 法 違 反 事 件 に付 き ま し て は、政 府

国 に於 て此 種 不 逞 兇悪 の思 想 運 動 を根 絶 致 し ま す る 上 に、 喫 緊 の要

衆議院 五月十 六日 提案理由説明( 司法大臣 ︹ 林頼三郎︺貴 族院 五月廿 二日

は 昭和 三年 以 来 鋭 意之 が検 挙 を 続行 致 し、 流 石 執 拗 を極 め ま し た 共

を 犯 す ことな き の途 を講 ず ると 共 に、 転 向 者 に対 し て は転 向 を確 保

産 主義 者 の運 動 も 漸次 落 潮 の傾 向 を 辿 る に至 りま し た こと は 、既 に

す る の方 法 を執 り ま す る為 に、 茲 に思 想 犯保 護 観察 法 を制 定 す る の

務 であ る と確 信 す る ので あり ま す 。 従 つて政 府 は是 等 の者 の思想 及

猶 予 の処 分 若 し く は執 行 猶 予 の言渡 を受 け 、 又は刑 の執 行 を終 り、

必要 を認 め た次第 であ り ます 。 何卒 慎 重 御 審 議 の上御協 賛 を 与へ ら

行 動 を観 察 し、非 転 向 者 に対 し ては其 の転 向 を 促進 し、 併 せ て非 違

若 し く は仮 出 獄 を許 さ れ た る者 が相 当 多 数 に達 し て居 る の であ り ま

れ む こと を切望 致 し ます 。

に依 つて検 挙 し ま し た者 に付 て考察 し ます る の に、其 の中 には起 訴

す が、 是 等 の者 の心情 は極 め て区 々で あり ま し て、 其 の中 には真 に

御 承知 の通 り であ り ま す。 飜 つて昭和 三年 以 来 治 安 維持 法違 反 の罪

転 向 し た者 も あ り ま す が、 依 然 と し て不 逞 思 想 を抱 懐 し て熾 烈 な る 闘 争 意 識 を表 示 す る者 も あり 、 又其 の熊 度 極 め て曖 昧 であ り ま し て、

h  思 想 犯 保 護 観 察 法 衆 議 院 委 員 会 経 過 報 告

衆 議 院委 員 会 経 過 報 告 (五月二十 一日衆議院本会議) ○ 岩崎 幸 治 郎 君  只今 議 題 と 相 成 り まし た委 員 会 の経 過 及 び結果 を

し て賛 成 を せら れ まし た所 の名川 君 の動 機 が あ る の であ りま す 。其

一、 政 府 は保護 観 察 審 査 会 が本 法 第 一条及 第 五条 の決 議 をな す に

の附 帯 決 議 は

き や う努 力 す べし 。

当 り て は慎 重 な る態 度 を執 り荷 も 怨嗟 の声 を聞 く が如 き こと な

是 が第 一の附 帯 決議 で あり ま す。 第 二 の附帯 決 議 は

の資 産 状態 を考 慮 し 苛 酷 の取 扱 を 為 さ ざ る やう 注意 す べし

二、 政 府 は第 一条 の費 用 徴収 に当 り ては十 分 本 人 又 は扶 養 義 務者

御 報 告 申 上 げ ま す。 ( 中 略 ) 次 に思 想 犯 保護 観察 法 案 でご ざ い ま す る が、 此 の思想 犯保 護 観 察 法 案 の質 問 を 見 ま す る のに、 先 づ 本案 其

と云 ふ 二箇 の附 帯 決 議 を附 し て本 案 に賛 同す る と いふ申 出 を名 川委

れ自 体 に対 す る質 問 と、 而 し て此 の思 想 犯 な るも のは、 大 体 に於 て 其 の原 因 は種 々あ るけ れど も、 併 し な がら官 憲 の圧 迫 と 云 ふ こと が、

全 部 一致 し て之 を賛 成 され た の であ りま す 。 さう し て加 藤 勘 十 君 は

に本 案 を賛 成 す る と 云 ふ のが、 第 一控 室 の加 藤 勘 十 君 を除 き ま し て

本 案 に反 対 の意 見 を述 べら れ た が、 其 の理由 と せら れ る所 の重 要 な

員 よ り致 さ れた の であ りま し た。 決 を 採 り ま し て、 此 の附 帯 決 議附

る制 限 が 、年 々非 常 に数 多 く な つて居 る こと等 が問 題 と な り まし た 。

る も の は、 本案 を施 行 す ると 云 ふ こと にな れ ば被 保 護 者 を監 視 す る

固 よ り大 な る原 因 を成 す と 云 ふ所 に因 みま し て、 人 権 の蹂 躙 、拷 問 、

此 の点 に付 き ま し て、 私 は少 し く委 員 会 の経 過 を御 紹 介 申 上 げ た い

や う な結 果 にな る 。第 二 は 国 民 の自 由 を制 限 す る こと の憂 があ る。

或 は裁 判 に於 け る所 の勾 留 の重 き こと信 書 、 接 見等 に付 て の種 々な

を願 ひた いの で あ りま す 。本 案 は警 察 の干渉 が多 く な つ て、却 て被

べ き も のでな い。斯 う 云 ふ事 の理由 に依 り ま し て反 対 を せ られ ま し

第 三 は信 書 の自 由 を制 限 す る憂 が あ る。 第 四 は本 案 は 爾 く急 を 要 す

と 存 じ ま す 。固 よ り詳 細 に亘 り まし て はど う か速 記 録 に就 て御 高 覧

保 護 者 が迷 惑 す る こと にな り は しな い かと 云 ふ こと が、 此 の法 案 に

私 は只 今 の委 員 長 の報 告 に反 対 す る者 であ り ます 。 私 の反 対 の要

加 藤 勘 十議 員 の反 対 発 言 (五月 二十 一日衆議院本会議)

i  加 藤 勘 十 議 員 の反 対 発 言

た。 此 の段 御 報告 申 上 げ ま す 。

対 す る所 の中 心 の問 題 でご ざ いまし た。 之 に対 す る政 府 の答 弁 は、 本 案 は 思想 犯人 若 くは 思 想 犯 の嫌 疑 あ り と し て起 訴 す べき も のであ る に拘 らず 、 起 訴 猶 予 を し た者 、 或 は執 行猶 予 にな つた所 の者 、 若 く は免 囚 の者 に対 し て保 護 を与 へる考 へで あ つて、 其 の保 護 の厳 父 慈 母 の考 へで温 い感情 を 以 て之 に当 る ので あ る から 、 断 じ て左 様 な

ど う か速 記 録 に依 つ て御 覧 を願 ひ た い の であ り ます 。 大 体 斯様 な 質

旨 は、 委 員 長 報告 の中 に述 べ ら れ た る通 り であ りま す 。 政府 は本案

心 配 は な いと 云 ふ こと を 申 し て居 る の であ り ま す。 (中略 )詳 細 は

問 の応答 がご ざ いま し て、 採 決 に入 り ま し て、 本案 に附 帯 決 議 を附

居 る治 安 維 持 法 違 反 の被 告 が、 今 後 順 次 に出 獄 し て、 中 には 政府 の

の理由 とし て は、 社会 的 情 勢 の変 化 、 竝 に現 在 刑務 所 に拘 禁 され て

が非 常 に急 を 要 す る も のであ る と の趣 旨 を述 べ て居 ら れま し て、其

所 の実 体 で あり ま す。 之 を 一方 にお き まし て、 そ れな らば 社会 の秩

十 名、 七名 、 十 六 名、 百 一名 、 そ れ が政 府 の以 て恐 る べき 者 と す る

転 向者 昭和 九 年 度 千 二 百 七十 一名 の中 、 起 訴 され た者 二十 名︱

年 度 の治 安 維 持 法 起訴 猶 予処 分 者 の中 で、 起 訴 され た者 の数 が七 名 、

に出 て来 る者 が、 非転 向 者 な るも のが 、 百 一名 、 さ う し て 又昭 和 九

にな つ て居 る やう であ り ます るけ れ ど も、 客 観 的 な社 会 相 の現 実 の

観 的 な観 念 の中 に は、急 を要 す るも ので あ る か の如 き錯 覚 を御 懐 き

が明 瞭 にな つた のであ り ます 。 本 法案 を立 法 せら れ ま し た当 局 の主

答 弁 の言葉 が 重 な れば 重 な る程 急 を要 せ ざ る も の であ ると 云 ふ こと

府 当 局 に質 問 を繰 返 し ま し た。 政 府 当 局 の此 の点 に対 す る答 弁 は、

とを 述 べ て居 ら れ る の であ り ます 。 此 の点 に対 しま し て私 は反 復 政

有 罪 総 人 員 が 一万 九 千百 八十 五 名、 此 の中 再 犯 以上 の累 犯 を 重 ね た

パ ー セ ンテ ージ にし て二 七 ％、殺 人、 傷 害、脅 迫、 さう し た 犯 罪 の

万 八 千 百 八十 名 、 此 の中再 犯以 上 の累 犯者 が 一万 八千 二百 八 十 名、

ま す れ ば、涜 職 其 他 の事 犯 を合 し た も のが有 罪 総 人員 男 女 合 せ て六

万 二千 六 百 八十 四名 、 之 を刑 事 統 計年 鑑 分 類 に従 つ て小分 類 し て見

十 二万 二 千 三 百 三十 名 、 此 の中 再 犯 以 上 の累 犯 を重 ね ま し た者 が四

九 年 度 版 に依 つ て見 ま す れ ば、 刑 法 一般 の有 罪 総 人 員 は 男女 合 せ て

刑 法 犯 一般 の状 態 は どう であ る か と云 ふ こと を、 刑 事 統 計年 鑑 昭和

二

以 て不 逞 兇 逆 の思 想 を懐 くと 称 す る人 々が 社 会 に出 て来 ると 、勢 ひ

序 を紊 し 、 公 安 を害 ひ、 人 々 の生活 の上 に実 害 を齎 らす べ き所 の、

現 象 は政 府 提 出 の資料 に依 つ て数字 的 に明 瞭 にな つ て居 りま す る 通

者 が 四千 六 百 六 十 二名 、 パ ー セ ン テー ジ にし て二 四％ 、 強盗 、 窃 盗 、

︹マ マ ︺

そ れを 防 止 し、 是 が監 視 を厳 か にし な け れ ば な らな い。 斯 う 云 ふ こ

其 の宣 伝 に依 つて恐 る べき事 態 を惹 起 す る に 至 る の で ある か らし て、

り、 少 し も急 を 要 し な い の であ り ます 。 政 府 は頻 り に出 獄 者 の恐 る

犯 一般 の犯 罪者 の再 犯 を 防 止す る こと の為 に、 適 切 な る社会施 設 を

べ き こと を大 声呼 号 し て、 委員 諸 君 を寧 ろ 威 す やう な 態 度 を執 つて

要 す ると 云 ふ こと に異 議 を持 つ者 はあ り ま すま い。是 等 の点 に対 す

詐 欺 、 横 領 、 斯 う し た有 罪 総 人員 は男 女 合 せ て三万 四 千 百 二十 五名 、

今 後 五箇 年 の間 に出 獄 し て参 りま す る者 の数 約 九 割 、 四 百 六十 八 名 、

る質 疑 に対 し て は目 下 調 査 中 で あ る。 そ れ は経 費 が余 計 要 ると 云 ふ

居 ら れま す るが 、 現在 刑 務所 に拘 禁 中 の被 告 は総 計 五百 九 名、 此 の

此 の中 非 転 向者 を 比率 に依 つて見 ま す れ ば百 一名 、 恐 る べき 者 に、

こと に依 つて、 曖 昧 模 糊 た る答 弁 であ り ま す。 さう し て僅 か に先 程

ンテ ー ジ にし て五 五％ 、 此 の数 字 を見 ま す る時 に、 誰 も是 等 の刑 法

若 し あり と す る な らば 今 後 五箇 年 間 に 百 一名 で あ る。 そ れ か ら今 ま

読 み上 げ た や う な思 想 犯関 係 者 に対 し て のみ、 今 取立 て て、 其 の急

此 の中 再 犯 以 上 の累 犯 を重 ね た者 が 一万 五 千 三百 二十 一名、 パ ー セ

で に出 獄 し た者 の状 態 を や は り政 府 の統 計 に依 つて見 ま す れば 、 昭

中 政 府 が非 転 向 者 と称 し て居 り ます るも のは 百 二十 名 、 二割 一分 六

和 二年 から 昭和 十 年 に至 り ます る八 箇年 の間 に、 再 犯起 訴 せら れた

を 要 す る と し て提案 さ れ ま した と 云 ふ こと に至 つ ては、 政 府 が ど の

厘 の数 字 で あり ま す。 是 が昭和 十 一年 か ら 昭和 十 五 年 に至 り ま す る

者 の数 は 僅 か二十 六名 であ りま す 。 八年 間 二十 六 名 、今 後 五箇 年 間

は強 盗 に脅 か さ れ る こと を以 て満 足 す る か、 さう 云 ふ事 実 を 見 ます

に思 想 犯 のみ が特 殊 な取 締 の対象 に な らな け れ ば な ら な いか 、諸 君

た 者 が法 の制 裁 を受 け る こと に異 議 は な い、 が併 しな がら、 何 が故

であ り ます 。 私 は 斯 うし た事実 を見 ま す る場 合 に、 同 じ く法 に触 れ

な も のと し て特 別 扱 ひし よう と 云 ふ こと は、 此 の事 実 に依 つて明 瞭

や う に弁 明 是 れ努 め よう と も、 思 想 犯 を 一種 独 特 な も のとし 、 特殊

た有 ゆ る地 方 に於 て甚 し く 人権 の蹂 躙 され てゐ る事 実 を見 ま し て、

般 の選 挙 に関 す る人 権 蹂 躙 を有 ゆ る機 会 に述 べ ら れた、 私 も さう し

実 際 の運 用 を多 く は勅令 に委 し て居 る。 先 日来 諸 君 の代 表 者 は、 先

け れば な ら な い にも 拘 らず 、 其 の法 律 の審 議 に当 つて、 其 の法 律 の

す る立法 に対 し ては 、国民 の代 表 と し て厳 粛 に是 が審 議 は取扱 は な

が議 会 を侮 辱 し て居 る。 何 とな ら ば 、私 は苟 も 国 民 の権 利 自由 に関

じ く 百 四十 九 条 、 法 律 の条 章 と 勅 令 の条 章 が略 々同数 であ る。 斯 う

挙 法 の本 章 は全条 文 百 五十 条 、之 に対 し 施 行令 、取 締 規 則、 是 が同

一体 あ の選 挙 に関 す る人 権 蹂 躙 は何 処 から 産 れ た のであ ら う か。 選

第 二 に は、保 護 の名 を 冠 す ると雖 も、 事 実 は大 臣 の提 案 理 由 の説

実 に恐 る べき こと で あ ると 云 ふ こと を痛感 し た のであ り ま す る が、

明 の中 にも あ り ま し た る通 り、 監 視 を厳 に す る と 云 ふ点 か ら見 て、

云 ふ こと は法 律 の規 定 を実 際 に運 用す る所 の勅 令 に対 し 、議 会 が審

る場 合 に、 私 は どう し ても斯 の如 き誤 つた る刑 事 政策 概 念 に対 し て

此 の法 律 が具 体 的 に運 用 され る場 合 には、 勢 ひ監 視 取 締 に 重点 が置

を御 考 へ願 はな け れば な ら な い の であ り ま す。 本 法 に対 し ても、 本

議 の権 能 を持 つて居 な いと 云 ふ所 から 発 し た も の であ ると 云 ふ こと

は反 対 せざ る を得 な い。

か れる や う にな ると 云 ふ処 は多 分 に実 在 し て居 る のであ り ます 。 斯

法 は さう し た国 民 の権 利 、自 由 の実 体 を 傷 け る も の でな いが 故 に、

う 云 ふ点 から 見 ま し て、 私 は皆 さ ん に御 一考 を願 ひ た いと思 ふ。 吾

勅 令 に委 し ても多 く の間 違 は な いと云 は れ る方 があ るか も知 れ ま せ

る。斯 う 云 ふ点 か ら見 まし て、私 は先 づ第 一に此 の法律 が余 り に其

々が子 供 の時 か ら頭 の中 に染 み込 ん で居 る有 名 な る ﹁ユーゴ ー﹂ の

の運 用 を勅 令 に委 し過 ぎ て居 ると 云 ふ所 に異 議 を持 つ者 で あ りま す 。

小 説 ﹁レ ・ミ ゼ ラブ ル﹂ あ の小説 の主 人 公 ﹁ジ ャンバ ル ジ ヤ ン﹂、

彼 は軈 て自 ら の罪 を悔 悟 し、 産 を作 り、 社 会 的 地 位 を築 き 、 社会 に

更 に個人 の自 由 を制 限 し、 信 書 の自 由 を制 限 す ると 云 ふ こと にな つ

の弊害 が生 ず ると 云 ふ こと に就 ては、 総 て の法 律 を通 じ て共 通 であ

復 活 し よ う と し た場 合 に、冷 や かな る法 の監 視 は彼 を し て再 び大 き

て ゐる ので あり ま す る が、 今 日国 民 の憲 法 に依 つて規 定 せ ら れ た正

ぬ が、 同 じ く法 律 の精 神 の運 用 を勅 令 に委 せ る と云 ふ点 に於 て多 く

な 罪 を 犯 す に至 らし め た の であ り ま す 。本 法 の適 用 が 、却 て斯 う し

当 な 権利 は、 色 々な る法 律 の名 目 に依 つて有 るか無 き か の状 態 に奪

彼 は 一体 どう し て恐 るべ き重 罪 を 犯 す に至 つた の であ らう か。彼 は

た保 護 観察 の名 に依 つ て、 多 く の将 来 社会 に復 活 し よ う とす る者 を

食 へざ るが故 に麺麭 を 盗 ん だ、 それ が強 盗 犯 に問 は れ た、 さう し て

却 て絶 望 のど ん底 に追 ひ落 す危 険 が な いと誰 が断 じ 得 ら れ る であ ら

る権 利 の実 体 を 、 更 に此 の法律 に依 つ て、 縦 へば思 想 犯 に関聯 した

ひ去 ら れ て居 る。 ( 拍 手) 此 の僅 に有 る か無 きか に奪 ひ去 ら れ て 居

第 三 に、私 は考 へて貰 は な け れば な ら な いと思 ふ。 一体議 員 自 ら

う か。 (拍 手 )

て、 本 法律 に依 つては 何等 規 定 が設 け てあ り ま せ ぬ。 斯 う 云 ふ点 か

為 には 戒 心 を用 ひな け れば な らな いと思 ふ。 だ が斯 う 云 ふ点 に対 し

るな ら ば 、国 民 の権 利 を確 保 し、 自 由 を保 障 す る所 の人 々は、 是 が

一部 の者 であ る にし ろ 、国 民 が奪 ひ去 ら れ る と 云 ふ こと にな り ます

く者 で あ りま す 。 (拍手 )

と し て反 対 す る者 であ ると 云 ふ こと を 明白 に此 の席 に於 て述 べ て置

む る の危 険 あ る法律 であ る が故 に、 斯 の如 き 法 律 に対 し て は、断 乎

取締 に転 化 せら れ る虞 れ多 分 にあ り 、 現実 に は権 利 の実 体 を失 はし

ら見 ま す る な らば 、 私 は名 は保 護 観 察 であ る と雖 も 実質 的 には監 視

期懲 役 ニ処 ス

二 〇  治 安 維 持 法 改 正 法 律 案 に 関 す る 議 事 速 記 録 並 委 員 会 議録 ( 第七十六回帝国議会・一九四一 )

治安 維 持 法 改 正法 律 案

シ タ ル者 又 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年

ハ死 刑 又 ハ無 期若 ハ五年 以 上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入

織 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従 事 シ タ ル者

第 三条  第 一条 ノ結 社 ノ組 織 ヲ準備 ス ル コト ヲ目 的 ト シテ結 社 ヲ組

第 一条  国 体 ヲ変 革 スル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 シ タ ル者 又 ハ

以 上 ノ有 期 懲 役 ニ処 ス

第 一章  罪

治 安維 持法

結 社 ノ役 員 其 ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従 事 シタ ル者 ハ死 刑 又 ハ無 期

タ ル者 ハ無 期 又 ハ三年 以 上 ノ懲役 ニ処 シ前 三条 ノ 目的 ヲ以 テ集 団

第 四条  前 三条 ノ目的 ヲ以 テ集 団 ヲ結 成 シタ ル者 又 ハ集 団 ヲ指導 シ

若 ハ七 年 以 上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結

ニ処 ス

社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行為 ヲ為 シタ ル者 ハ三年 以上 ノ有 期 懲役

ニ参 加 シタ ル者 又 ハ集 団ニ 関 シ前 三条 ノ目 的遂 行 ノ為 ニ スル行 為

関 シ協 議 若 ハ煽 動 ヲ為 シ又 ハ其 ノ 目的 タ ル事項 ヲ宣 伝 シ其 ノ他 其

第 五条  第 一条 乃 至第 三条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実行 ニ

ヲ為 シタ ル者 ハ 一年 以上 ノ有 期 懲役 ニ処 ス

ハ無 期 若 ハ五年 以 上 ノ懲 役 ニ処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者

者 又 ハ結 社 ノ役員 其 ノ他 指 導者 タ ル任 務 ニ従事 シタ ル者 ハ死刑 又

第 二条  前 条 ノ結 社 ヲ支 援 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組織 シタ ル

又 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行為 ヲ為 シタ ル者 ハ二年 以 上 ノ有

ノ目 的 遂行 ノ為 ニ スル行為 ヲ為 シタ ル者 ハ 一年 以上 十年 以下 ノ懲 役 ニ処 ス 第 六 条  第 一条 乃 至 第 三条 ノ 目的 ヲ以 テ騒 擾 、 暴 行 其 ノ他 生 命 、 身 体 又 ハ財 産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯罪 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ二年 以 上 ノ有 期 懲 役 ニ処 ス

流 布 ス ル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組織 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ役 員 其

第 七条  国 体 ヲ否 定 シ又 ハ神 宮 若 ハ皇 室 ノ尊厳 ヲ冒 涜 スベ キ事 項 ヲ

ノ他 指 導 者 タ ル任 務 ニ従 事 シタ ル者 ハ無 期 又 ハ四年 以 上 ノ懲 役 ニ

ル行 為 ヲ為 シ タ ル者 ハ 一年 以 上 ノ有 期 懲 役 ニ処 ス

処 シ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 又 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス

ル者 ハ無 期 又 ハ三年 以上 ノ懲 役 ニ処 シ前 条 ノ目 的 ヲ以 テ集 団 ニ参

第 八条  前 条 ノ目 的 ヲ以 テ集 団 ヲ結 成 シタ ル者 又 ハ集 団 ヲ指導 シタ

タ ル者 ハ 一年 以 上 ノ有 期 懲 役 ニ処 ス

加 シタ ル者 又 ハ集 団 ニ関 シ前 条 ノ目的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シ

第 九条  前 八 条 ノ罪 ヲ犯 サ シム ル コト ヲ目 的 ト シ テ金 品 其 ノ他 ノ財

下 ノ懲 役 ニ処 ス情 ヲ知 リ テ供 与 ヲ受 ケ 又 ハ其 ノ要 求若 ハ約 束 ヲ為

産 上 ノ利 益 ヲ供 与 シ又 ハ其 ノ申 込若 ハ約 束 ヲ為 シタ ル者 ハ十年 以

シ タ ル者 亦 同 ジ

産 ニ害 ヲ加 フベ キ犯 罪 ヲ煽 動 シ タ ル者 ハ十 年 以下 ノ懲役 又 ハ禁 錮

第 十 二条  第 十 条 ノ目 的 ヲ以 テ騒擾 、 暴 行 其 ノ他 生命 、身 体 又 ハ財

ニ処 ス

財産 上 ノ利 益 ヲ供 与 シ又 ハ其 ノ申 込若 ハ約 束 ヲ為 シタ ル者 ハ五年

第 十 三条  前 三条 ノ罪 ヲ犯 サ シ ム ル コト ヲ目 的 ト シテ金 品其 ノ他 ノ

ハ約 束 ヲ為 シ タ ル者 亦 同 ジ

以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス情 ヲ知 リテ供 与 ヲ受 ケ 又 ハ其 ノ要 求 若

之 ヲ罰 ス

第 十 四 条  第 一条 乃 至 第 四条 、 第 七 条 、第 八条 及 第 十条 ノ未 遂罪 ハ

第 十 五条  本 章 ノ罪 ヲ犯 シタ ル者 自 首 シタ ルト キ ハ其 ノ刑 ヲ減 軽 又 ハ免 除 ス

第十 六 条  本 章 ノ規 定 ハ何 人 ヲ問 ハズ 本 法施 行 地 外 ニ於 テ罪 ヲ 犯 シ

第 二章  刑 事 手続

タ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス

用 ス

第 十 七 条  本 章 ノ規 定 ハ第 一章 ニ掲 グ ル罪 ニ関 スル事件 ニ付 之 ヲ適

第 十 八条  検 事 ハ被 疑 者 ヲ召 喚 シ又 ハ其 ノ召 喚 ヲ司 法 警察 官 ニ命 令 ス ル コト ヲ得

検 事 ノ命令 ニ因 リ司 法 警 察 官 ノ発 ス ル召 喚 状 ニ ハ命令 ヲ為 シタ ル

ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ結 社 ニ加 入 シタ ル者 若 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為

第 十 条  私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ 目的 ト シテ結 社 ヲ組 織 シ タ

召 喚状 ノ送 達 ニ関 ス ル裁 判 所 書 記 及執 達 吏 ニ属 ス ル職 務 ハ司 法 警

検 事 ノ職 、 氏 名 及其 ノ命 令 ニ因 リ之 ヲ発 スル旨 ヲモ記 載 スベ シ

ズ 又 ハ刑 事 訴 訟法 第 八十 七条 第 一項各 号 ニ規 定 ス ル事 由 ア ルト キ

第 十 九 条  被 疑 者 正 当 ノ事 由 ナ ク シテ前 条 ノ規 定 ニ依 ル召 喚 ニ応 ゼ

察 官 吏之 ヲ行 フ コト ヲ得

ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ハ十 年 以 下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス 第 十 一条  前 条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル事項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ 為 シ又 ハ其 ノ目 的 タ ル事項 ノ実 行 ヲ煽 動 シタ ル者 ハ七年 以下 ノ懲 役 又 ハ禁 錮 ニ処 ス

ハ検 事 ハ被 疑者 ヲ勾 引 シ又 ハ其 ノ勾 引 ヲ他 ノ検 事 ニ嘱 託 シ若 ハ司

リ司 法 警 察 官 ノ発 ス ル勾 引 状 ニ付之 ヲ準 用 ス

法 警 察 官 ニ命令 ス ル コト ヲ得 前条 第 二項 ノ規 定 ハ検 事 ノ命令 ニ因

令 ス ル コト ヲ得

第 二 十 六条  検 事 ハ被 疑 者 ヲ訊問 シ又 ハ其 ノ訊問 ヲ司 法警 察 官 ニ命

検 事 ハ公 訴 提 起前 ニ限 リ証 人 ヲ訊 問 シ又 ハ其 ノ訊 問 ヲ他 ノ検 事 ニ

命 令 ヲ為 シ タ ル検 事 ノ職 、 氏 名及 其 ノ命 令 ニ因 リ訊問 シタ ル旨 ヲ

司 法 警 察 官検 事 ノ命 令 ニ因 リ被 疑 者 又 ハ証 人 ヲ訊 問 シタ ルト キ ハ

嘱 託 シ若 ハ司 法警 察 官 ニ命 令 ス ル コト ヲ得

ヨリ 四十 八 時間 内 ニ検 事 又 ハ司 法 警 察 官 之 ヲ訊 問 スベ シ其 ノ時 間

訊 問 調 書 ニ記載 スベ シ

第 二十 条  勾 引 シタ ル被 疑 者 ハ指 定 セ ラ レ タ ル場 所 ニ引 致 シ タ ル時

内 ニ勾留 状 ヲ発 セザ ルト キ ハ検 事 ハ被 疑 者 ヲ釈 放 シ又 ハ司法 警 察

第 十 八条 第 二項 及 第 三項 ノ規定 ハ証 人 訊 問 ニ付 之 ヲ準 用 ス

官 ヲ シテ之 ヲ釈 放 セ シム ベ シ 第 二十 一条  刑事 訴 訟法 第 八 十 七条 第 一項 各号 ニ規 定 スル事由 ア ル

得

ハ其 ノ処 分 ヲ他 ノ検 事 ニ嘱 託 シ若 ハ司 法 警察 官 ニ命令 ス ル コト ヲ

第 二十 七条  検 事 ハ公 訴 提 起 前 ニ限 リ押 収 、捜 索 若 ハ検 証 ヲ為 シ又

検 事 ハ公訴 提 起 前 ニ限 リ鑑 定 、 通 訳 若 ハ翻 訳 ヲ命 ジ 又 ハ其 ノ処 分

ル コト ヲ得

ト キ ハ検 事 ハ被 疑 者 ヲ勾留 シ又 ハ其 ノ勾留 ヲ司 法 警 察 官 ニ命 令 ス

第 十 八 条  第 二項 ノ規 定 ハ検 事 ノ命 令 ニ因 リ司 法 警 察 官 ノ発 ス ル勾

前 条 第 三項 ノ規 定 ハ押収 、 捜 索 又 ハ検 証 ノ調 書 及 鑑 定 人、 通 事 又

ヲ他 ノ検 事 ニ嘱 託 シ若 ハ司法 警 察 官 ニ命 令 スル コト ヲ得

留 状 ニ付 之 ヲ準 用 ス

ニ代 用 ス ル コト ヲ得

第 二十 二条  勾留 ニ付 テ ハ警 察 官 署 又 ハ憲 兵 隊 ノ留 置 場 ヲ以 テ監 獄

第 十 八条 第 二項 及 第 三項 ノ規 定 ハ鑑 定 、 通訳 及 翻 訳 ニ付 之 ヲ準 用

ハ翻 訳 人 ノ訊 問 調 書 ニ付之 ヲ準 用 ス

裁 判 所検 事 又 ハ区 裁 判所 検 事 ハ検 事長 ノ許 可 ヲ受 ケ 一月毎 ニ勾 留

第 二十 三条  勾留 ノ期 間 ハ二 月 ト ス特 ニ継 続 ノ必 要 ア ルト キ ハ地 方

ス

人 ノ訊 問 、押 収 、 捜 索、 検 証、 鑑 定 、 通 訳 竝 ニ翻 訳 ニ関 スル規 定

第 二十 八 条  刑 事 訴 訟 法中 被 告 人 ノ召 喚 、 勾引 及 勾留 、 被 告 人 及 証

ノ期 間 ヲ更 新 スル コト ヲ得 但 シ通 ジ テ 一年 ヲ超 ュル コト ヲ得 ズ

思 料 ス ルト キ ハ検 事 ハ速 ニ被 疑 者 ヲ釈 放 シ又 ハ司 法 警察 官 ヲ シ テ

ズ

ヲ選 任 スベ シ但 シ刑 事訴 訟 法 第 四十 条第 二項 ノ規 定 ノ適 用 ヲ妨 ゲ

第 二十 九 条  弁 護 人 ハ司法 大 臣 ノ予 メ指 定 シタ ル弁 護士 ノ中 ヨリ之

釈 及 責 付 ニ関 スル規 定 ハ此 ノ限 ニ在 ラズ

ハ別 段 ノ規 定 ア ル場 合 ヲ除 クノ外 被 疑 事件 ニ付 之 ヲ準 用 ス但 シ保

第 二 十 四条  勾留 ノ事 由消 滅 シ其 ノ他 勾留 ヲ継 続 スル ノ必要 ナ シト

之 ヲ釈 放 セ シム ベ シ 第 二 十 五条  検 事 ハ被 疑者 ノ住 居 ヲ制 限 シテ勾 留 ノ執 行 ヲ停 止 スル コト ヲ得 刑 事 訴訟 法 第 百 十 九 条第 一項 ニ規 定 ス ル事 由 ア ル場 合 ニ於 テ ハ検 事 ハ勾留 ノ執 行 停 止 ヲ取 消 ス コト ヲ得

第 三十条  弁 護 人 ノ数 ハ被 告 人 一人 ニ付 二 人 ヲ超 ユル コト ヲ得 ズ

ケ タ ル日 ヨリ十 日 ヲ経 過 シタ ル ト キ ハ之 ヲ為 ス コト ヲ得 ズ但 シ已

弁 護 人 ノ選 任 ハ最 初 ニ定 メタ ル公 判 期 日 ニ係 ル召 喚 状 ノ送 達 ヲ受

ム コト ヲ得 ザ ル事 由 ア ル場 合 ニ於 テ裁 判所 ノ許 可 ヲ受 ケ タ ルト キ ハ此 ノ限 ニ在 ラズ 第 三 十 一条  弁 護 人 ハ訴 訟 ニ関 ス ル書 類 ノ謄 写 ヲ為 サ ンス ル ト キ ハ

ス ル書 類 ノ閲覧 ハ裁 判 長 又 ハ予審 判 事 ノ指 定 シタ ル場 所 ニ於 テ之

裁 判 長 又 ハ予審 判 事 ノ許可 ヲ受 ク ル コト ヲ要 ス弁 護 人 ノ訴 訟 ニ関

ノト認 ム ルト キ ハ判 決 ヲ以 テ原判 決 ヲ破毀 シ事 件 ヲ管 轄 控 訴 裁判

犯 シタ ル モノ ニ非 ザ ル コト ヲ疑 フ ニ足 ルベ キ顕 著 ナ ル事 由 ア ル モ

所 ニ移 送 スベ シ

百 二十 二条 第 一項 ノ期 間 ニ依 ラザ ル コト ヲ得

第 三 十 五条  上 告 裁判 所 ハ公判 期 日 ノ通 知 ニ付 テ ハ刑 事 訴 訟 法 第 四

ノ規定 ノ適 用 ア ル モノ ト ス

第 三 十 六条  刑 事 手 続ニ 付 テ ハ別 段 ノ規 定 ア ル場 合 ヲ除 ク ノ外 一般

第 三十 七条  本 章 ノ規 定 ハ第 二十 二条 、 第 二 十 三条 、 第 二十 九条 、

第 三 十条 第 一項 、 第 三 十 二条 、 第 三 十 三条 及 第 三十 四条 ノ規 定 ヲ

除 ク ノ外軍 法 会 議 ノ刑 事 手続 ニ付之 ヲ準 用 ス此 ノ場 合 ニ於 テ刑 事

ヲ為 ス ベ シ 第 三十 二 条  被 告 事 件 公 判 ニ付 セラ レタ ル場 合 ニ於 テ検 事 必 要 アリ

ハ海 軍軍 法会 議 法 第 百 四 十三 条 、 刑 事 訴 訟 法 第 四百 二十 二条 第 一

訴 訟 法 第 八十 七条 第 一項 ト ア ル ハ陸 軍 軍 法 会議 法 第 百 四 十 三条 又

項 ト ア ル ハ陸 軍 軍 法 会 議 法第 四百 四十 四条 第 一項 又 ハ海 軍軍 法 会

ト認 ム ルト キ ハ管 轄 移 転 ノ請 求 ヲ為 ス コト ヲ得但 シ第 一回 公 判 期

前 項 ノ請 求 ハ事件 ノ繋 属 ス ル裁 判所 及 移 転 先 裁判 所 ニ共 通 スル直

議 法 第 四 百 四 十 六条 第 一項 ト シ第 二 十 五条 第 二項 中 刑 事 訴 訟 法第

日 ノ指 定 アリ タ ル後 ハ此 ノ限 ニ在 ラズ

第 一項 ノ請 求 ア リタ ルト キ ハ決 定 ア ル迄 訴 訟 手続 ヲ停 止 スベ シ

近 上級 裁 判 所 ニ之 ヲ為 スベ シ

テ モト ス

百十 九 条 第 一項 ニ規 定 スル事 由 ア ル場 合 ニ於 テ ハト ア ル ハ何 時 ニ

事 長 ト ア ル ハ覆審 法 院 検 事 長 、 地 方裁 判 所 検 事 又 ハ区裁 判 所 検 事

第 三十 八 条  朝 鮮 ニ在 リ テ ハ本 章 中 司法 大臣 ト ア ル ハ朝 鮮 総 督 、検

前 項 ニ規 定 ス ル第 一審 ノ判 決 ニ対 シ テ ハ直 接 上 告 ヲ為 ス コト ヲ得

ル コト ヲ定 メ タ ル刑 事 訴 訟 法 ト ス但 シ刑 事 訴 訟 法 第 四百 二十 二 条

ト ア ル ハ地 方法 院 検 事 、 刑 事 訴 訟法 ト ア ル ハ朝 鮮刑 事 令 ニ於 テ依

判 決 ニ対 シ テ ハ控訴 ヲ為 ス コト ヲ得 ズ

第 三 十 三条  第 一章 ニ掲 グ ル罪 ヲ犯 シ タ ル モノ ト認 メ タ ル第 一審 ノ

ル理由 ア ル場 合 ニ於 テ之 ヲ為 ス コト ヲ得

第 一項 ト ア ル ハ朝鮮 刑 事 令 第 三 十 一条 ト ス

上告 ハ刑 事 訴 訟 法 ニ於 テ第 二審 ノ判 決 ニ対 シ上告 ヲ為 ス コト ヲ得

上告 裁 判 所 ハ第 二審 ノ判 決 ニ対 ス ル上告 事 件 ニ関 ス ル手 続 ニ依 リ

第 三十 九 条  第 一章 ニ掲 グ ル罪 ヲ犯 シ刑 ニ処 セラ レ タ ル者 其 ノ執 行

第 三章  予防 拘 禁

第 三 十 四条  第 一章 ニ掲 グ ル罪 ヲ犯 シ タ ル モノ ト認 メ タ ル第 一審 ノ

ヲ終 リ釈 放 セ ラ ルベ キ場 合 ニ於 テ釈 放 後 ニ於 テ更 ニ同章 ニ掲 グ ル

裁 判 ヲ為 スベ シ

判 決 ニ対 シ上 告 ア リ タ ル場 合 ニ於 テ上 告裁 判 所 同章 ニ掲 グ ル罪 ヲ

本 人 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 ス ル旨 ヲ命 ズ ル コト ヲ得

ズ

ヲ得 ズ但 シ本 人陳 述 ヲ肯 ゼズ 又 ハ逃亡 シタ ル場合 ハ此 ノ限 ニ在 ラ

察 ニ付 セラ レ居 ル場 合 ニ於 テ保 護観 察 ニ依 ル モ同 章 ニ掲 グ ル罪 ヲ

ル コト ヲ得

聴 キ決 定 ヲ為 スベ シ此 ノ場 合 ニ於 テ ハ裁 判 所 ハ本 人 ニ出頭 ヲ命 ズ

第 四十 四条  予 防拘 禁 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ裁判 所 ハ本 人 ノ陳 述 ヲ

ノ請 求 ヲ為 サザ ルト キ ハ速 ニ本 人 ヲ釈 放 スベ シ

第 四十 三条  前条 ノ仮 収 容 ノ期間 ハ十 日 ト ス其 ノ期 間 内 ニ予防 拘 禁

罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ルト キ ハ裁 判 所 ハ検 事 ノ請 求 ニ因 リ

第 一章 ニ掲 グ ル罪 ヲ犯 シ刑 ニ処 セ ラ レ其 ノ執 行 ヲ終 リ タ ル者 又 ハ

犯 スノ危 険 ヲ防 止 ス ル コト困 難 ニシテ更 ニ之 ヲ犯 ス ノ虞 ア ル コト

刑 ノ執 行 猶 予 ノ言 渡 ヲ受 ケ タ ル者 思想 犯 保 護 観 察 法 ニ依 リ保 護 観

顕 著 ナ ルト キ亦 前項 ニ同 ジ

刑 ノ執 行終 了前 予 防 拘 禁 ノ請 求 アリ タ ル ト キ ハ裁 判 所 ハ刑 ノ執 行

為 ス コト ヲ得

本 人 陳 述 ヲ肯 ゼズ 又 ハ逃 亡 シタ ルト キ ハ陳 述 ヲ聴 カズ シ テ決 定 ヲ

検 事 其 ノ裁 判 所 ニ之 ヲ為 スベ シ

終 了 後 ト雖 モ予防 拘 禁 ニ付 ス ル旨 ノ決 定 ヲ為 ス コト ヲ得

第 四 十条  予 防 拘 禁 ノ請 求 ハ本 人 ノ現在 地 ヲ管 轄 ス ル地方 裁 判 所 ノ

前 項 ノ請 求 ハ保 護 観 察 ニ付 セラ レ居 ル者 ニ係 ルト キ ハ其ノ保 護 観

参 考 人 ニ出 頭 ヲ命 ジ 事実 ノ陳 述 又 ハ鑑 定 ヲ為 サ シ ム ル コト ヲ得

第 四十 五 条  裁 判 所 ハ事 実 ノ取調 ヲ為 ス ニ付 必要 ア ル場合 ニ於 テ ハ

察 ヲ為 ス保 護 観 察 所 ノ所 在 地 ヲ管 轄 ス ル地方 裁 判 所 ノ検 事 其 ノ裁

裁 判 所 ハ公 務 所 ニ照 会 シテ必 要 ナ ル事 項 ノ報 告 ヲ求 ム ル コト ヲ得

判 所 ニ之 ヲ為 ス コト ヲ得 予防 拘 禁 ノ請 求 ヲ為 ス ニ ハ予 メ予防 拘 禁 委 員 会 ノ意 見 ヲ求 ム ル コ

第 四 十 七条  本 人 ノ属 ス ル家 ノ戸 主 、 配偶 者 又 ハ四親 等 内 ノ血族 若

ス ル コト ヲ得

ヲ シ テ事 実 ノ陳述 若 ハ鑑 定 ヲ為 サ シ ム ル場 合 ニ立会 ヒ意 見 ヲ開 陳

第 四十 六条  検 事 ハ裁 判所 ガ本 人 ヲ シテ陳述 ヲ為 サ シ メ又 ハ参 考 人

ト ヲ要 ス 予 防 拘禁 委 員 会 ニ関 ス ル規 定 ハ勅 令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム 第 四 十 一条  検 事 ハ予防 拘 禁 ノ請 求 ヲ為 ス ニ付 テ ハ必要 ナ ル取 調 ヲ 為 シ又 ハ公 務 所 ニ照 会 シ テ必 要 ナ ル事 項 ノ報 告 ヲ求 ム ル コト ヲ得 前 項 ノ取 調 ヲ為 ス ニ付必 要 ア ル場合 ニ於 テ ハ司法 警 察 官 吏 ヲ シ テ

輔 佐 人 ハ裁 判 所 ガ 本 人 ヲ シテ陳 述 ヲ為 サ シメ若 ハ参 考 人 ヲ シ テ事

ハ三親 等 内 ノ姻 族 ハ裁 判 所 ノ許 可 ヲ受 ケ輔 佐 人 ト為 ル コト ヲ得

実 ノ陳述 若 ハ鑑定 ヲ為 サ シム ル場 合 ニ立 会 ヒ意 見 ヲ開 陳 シ又 ハ参

本 人 ヲ同 行 セ シ ム ル コト ヲ得

ハ逃 亡 ス ル虞 ア ル場 合 ニ於 テ予 防 拘禁 ノ請 求 ヲ為 ス ニ付 必 要 ア ル

第 四 十 二条  検 事 ハ本 人定 リ タ ル住居 ヲ有 セザ ル場 合 又 ハ逃 亡 シ若

考 ト為 ルベ キ資 料 ヲ提 出 ス ル コト ヲ得

一 本 人定 リ タ ル住 居 ヲ有 セザ ルト キ

第 四 十 八条  左 ノ場 合 ニ於 テ ハ裁 判 所 ハ本 人 ヲ勾引 スル コト ヲ得

ト キ ハ本 人 ヲ予 防 拘 禁所 ニ仮 ニ収容 ス ル コト ヲ得 但 シ已 ム コト ヲ 得 ザ ル事 由 ア ル場 合 ニ於 テ ハ監 獄 ニ仮 ニ収容 ス ル コト ヲ妨 ゲ ズ 前 項 ノ仮 収 容 ハ本 人 ノ陳 述 ヲ聴 キタ ル後 ニ非 ザ レバ之 ヲ為 ス コト

三  本 人 正 当 ノ 理由 ナ ク シテ第 四十 四 条第 一項 ノ出頭 命 令 ニ応 ゼ

二  本 人 逃 亡 シ タ ルト キ 又 ハ逃 亡 ス ル虞 ア ルト キ

押 若 ハ没 収 ヲ為 シ又 ハ保 安 若 ハ懲 戒 ノ為 必要 ナ ル処 置 ヲ為 ス コト

予防 拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 ニ対 シテ ハ信 書 其 ノ他 ノ物 ノ検 閲、 差

ト接 見 シ又 ハ信書 其 ノ他 ノ物 ノ授 受 ヲ為 ス コト ヲ得

於 テ ハ裁 判 所 ハ決 定 ヲ以 テ之 ヲ更 新 ス ル コト ヲ得

第 五十 五条  予防 拘 禁 ノ期 間 ハ二年 ト ス特 ニ継 続 ノ必要 ア ル場 合 ニ

ケ留 置 セラ レタ ル者 ニ付亦 同 ジ

ヲ得 仮 ニ収 容 セ ラ レタ ル者 及 本 章 ノ規 定 ニ依 リ勾引 状 ノ執 行 ヲ受

ザ ルト キ

所 ハ本 人 ヲ予 防 拘 禁所 ニ仮 ニ収 容 ス ル コト ヲ得 但 シ已 ム コト ヲ得

第 四 十 九条  前 条 第 一号 又 ハ第 二号 ニ規 定 ス ル事 由 ア ル ト キ ハ裁 判

ザ ル事由 ア ル場 合 ニ於 テ ハ監 獄 ニ仮 ニ収 容 スル コト ヲ妨 ゲズ

予 防 拘 禁 ノ期間 満 了 前 更 新 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ裁判 所 ハ期 間 満

本 人 監獄 ニ在 ル ト キ ハ前 項 ノ事 由 ナ シト雖 モ之 ヲ仮 ニ収 容 ス ル コ ト ヲ得

了 後 ト雖 モ更 新 ノ決 定 ヲ為 ス コト ヲ得

第 四十 条 、 第 四十 一条 及 第 四 十 四条 乃 至 第 五 十 二条 ノ規 定 ハ更 新

間 満 了 ノ時 確定 シタ ル モノト 看做 す

更 新 ノ決 定 ハ予防 拘 禁 ノ期間 満 了 後 確 定 シタ ルト キ ト雖 モ之 ヲ期

第 四 十 二条 第 二項 ノ規定 ハ第 一項 ノ場 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

ル規 定 ハ第 四 十 八条 ノ勾 引 ニ、 勾 留 ニ関 ス ル規 定 ハ第 四 十 二条 及

第 五十 条  別 段 ノ規 定 ア ル場 合 ヲ除 ク ノ外刑 事 訴 訟 法中 勾引 ニ関 ス

前 条 ノ仮 収 容 ニ付之 ヲ準 用 ス但 シ保 釈 及 責 付 ニ関 スル規 定 ハ此 ノ

ノ場 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス此 ノ場 合 ニ於 テ第 四十 九 条第 二項 中監 獄 ト

拘 禁 セラ レザ ル日数 又 ハ刑 ノ執 行 ノ為 拘 禁 セ ラ レタ ル日数 ハ決 定

第 五 十 六条  予 防 拘禁 ノ期 間 ハ決 定 確定 ノ 日 ヨリ起算 ス

ア ル ハ予 防 拘 禁 所 ト ス

限 ニ在 ラズ 第 五十 一条  予 防拘 禁 ニ付 セザ ル旨 ノ決 定 ニ対 シテ ハ検 事 ハ即時 抗

確 定 後 ト雖 モ前 項 ノ期 間 ニ算 入 セズ

告 ヲ為 ス コト ヲ得 予防 拘 禁 ニ付 スル旨 ノ決 定 ニ対 シテ ハ本 人 及 輔 佐人 ハ即 時 抗 告 ヲ

ノ準 備 其 ノ他 ノ事 由 ノ為 特 ニ必要 ア ル ト キ ハ 一時 拘 禁 ヲ継 続 ス ル

監 獄 ニ在 ル本 人 ニ対 シ予 防拘 禁 ヲ執 行 セ ント スル場 合 ニ於 テ移 送

行 終 了後 之 ヲ執 行 ス

第 五十 七条  決 定 確 定 ノ際 本人 受 刑 者 ナ ルト キ ハ予 防 拘 禁 ハ刑 ノ執

為 ス コト ヲ得

ス ル規 定 ハ第 四十 四 条 ノ決 定 ニ、 即 時 抗告 ニ関 ス ル規 定 ハ前 条 ノ

第 五 十 二条  別 段 ノ規定 ア ル場 合 ヲ除 クノ外 刑 事 訴 訟法 中 決 定 ニ関

即 時 抗 告 ニ付 之 ヲ準用 ス

コト ヲ得

第 五十 三 条  予防 拘 禁 ニ付 セ ラ レタ ル者 ハ予 防 拘禁 所 ニ之 ヲ収 容 シ 改悛 セ シ ム ル為 必 要 ナ ル処 置 ヲ為 スベ シ

予防 拘 禁 ノ執 行 ハ本 人 ニ対 ス ル犯罪 ノ捜 査其 ノ他 ノ事 由 ノ為 特 ニ

必要 ア ルト キ ハ決 定 ヲ為 シ タ ル裁判 所 ノ検 事 又 ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ

予 防 拘 禁 所 ニ関 ス ル規 程 ハ勅令 ヲ 以 テ之 ヲ定 ム 第 五十 四条  予 防拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 ハ法 令 ノ範 囲 内 ニ於 テ他 人

管轄 ス ル地 方 裁判 所 ノ検 事 ノ指 揮 ニ因 リ之 ヲ停 止 ス ル コト ヲ得

第 六 十 四条  本 法 ニ規 定 ス ル モノ ノ外 予 防 拘 禁 ニ関 シ必 要 ナ ル事 項

第 六 十 三条  前 二条 ノ未 遂 罪 ハ之 ヲ罰 ス

朝 鮮 ニ在 リ テ ハ本 章中 地 方裁 判 所 ノ検 事 ト ア ル ハ地方 法 院 ノ検 事 、

決 定 ハ地 方法 院 ノ合 議 部 ニ於 テ之 ヲ為 ス

第 六十 五 条  朝 鮮 ニ在 リ テ ハ予防 拘 禁 ニ関 シ地 方裁 判 所 ノ為 スベ キ

ハ命 令 ヲ以 テ定 ム

刑 事訴 訟 法 第 五 百 三 十 四条 乃 至 第 五 百 三十 六条 及 第 五 百 四十 四条 乃 至第 五 百 五十 二条 ノ規 定 ハ予 防 拘 禁 ノ執 行 ニ付 之 ヲ準 用 ス

タ ルト キ ハ第 五十 五 条 ニ規 定 ス ル期 間 満了 前 ト雖 モ行 政官 庁 ノ処

第 五 十 八条  予 防 拘 禁 ニ付 セラ レタ ル者 収容 後 其 ノ必 要 ナキ ニ至 リ

分 ヲ以 テ之 ヲ退 所 セ シ ムベ シ

思 想犯 保 護 観察 法 ト ア ル ハ朝 鮮 思想 犯保 護 観 察令 、 刑 事 訴 訟法 ト

ア ル ハ朝 鮮刑 事 令 ニ於 テ依 ル コト ヲ定 メ タ ル刑事 訴 訟 法 ト ス

第 四 十条 第 三項 ノ規 定 ハ前 項 ノ場 合 ニ付 之 ヲ準用 ス 第 五十 九条  予防 拘 禁 ノ執 行 ヲ為 サ ザ ル コト 二年 ニ及 ビ タ ルト キ ハ

則

本 法施 行 ノ期 日 ハ勅 令 ヲ以 テ之 ヲ定 ム

附

第 一章 ノ改 正 規 定 ハ本 法 施 行 前 従前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル罪 ヲ犯 シタ ル

決 定 ヲ為 シタ ル裁 判 所 ノ検 事 又 ハ本 人 ノ現在 地 ヲ管 轄 ス ル地方 裁 判 所 ノ検 事 ハ事 情 ニ因 リ其 ノ執 行 ヲ免 除 ス ル コト ヲ得

刑 ヨリ 重 キ ト キ ハ従前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル刑 ニ依 リ処断 ス

者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス但 シ改 正 規 定 ニ定 ム ル刑 ガ従 前 ノ規 定 ニ定 メタ ル

第 四十 条 第 三項 ノ規 定 ハ前 項 ノ場 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

ム ルト キ ハ収 容 セラ レタ ル者 ヲ他所 ニ護 送 スベ シ若 シ護 送 ス ルノ

適 用 セズ

第 二章 ノ改 正 規 定 ハ本 法 施 行 前 公 訴 ヲ提 起 シ タ ル事 件 ニ付 テ ハ之 ヲ

第 六十 条  天災 事 変 ニ際 シ予 防 拘禁 所 内 ニ於 テ避難 ノ手 段 ナ シト 認

暇 ナ キ ト キ ハ 一時之 ヲ解 放 スル コト ヲ得

ル者 又 ハ勾 引 状 若 ハ逮 捕状 ヲ執 行 セ ラ レタ ル者 逃 走 シタ ルト キ ハ

前 項 ノ捜 査 手続 ニシ テ本 法 ニ之 ニ相 当 ス ル規 定 ア ル モ ノ ハ之 ヲ本法

捜 査 手続 ハ本 法 施 行後 ト雖 モ仍其 ノ効 力 ヲ有 ス

本 法 施 行前 朝 鮮 刑 事 令第 十 二条 乃 至 第 十 五条 ノ規 定 ニ依 リ為 シタ ル

セ ラ レタ ル者 ニ亦 之 ヲ適 用 ス

第 三 章 ノ改 正規 定 ハ従 前 ノ規 定 ニ定 メ タ ル罪 ニ付 本 法施 行 前 刑 ニ処

解放 セラ レ タ ル者 ハ解 放 後 二十 四時 間 内 ニ予 防 拘 禁所 又 ハ警 察 官 署 ニ出 頭 スベ シ

一年 以下 ノ懲 役 ニ処 ス

ニ依 リ為 シタ ル モノ ト看 做 ス

第 六十 一条  本 章 ノ規 定 ニ依 リ予 防 拘 禁所 若 ハ監 獄 ニ収容 セ ラ レ タ

前条 第 一項 ノ規 定 ニ依 リ解 放 セ ラ レタ ル者 同 条 第 二項 ノ規 定 ニ違

前 項 ノ予 防 拘禁 ニ関 ス ル手続 ニシテ本 法 ニ之 ニ相 当 スル規定 ア ル モ

手 続 ハ本 法 施行 後 ト雖 モ仍其 ノ効 力 ヲ有 ス

本 法 施 行 前 朝鮮 思 想 犯 予 防拘 禁 令 ニ依 リ為 シタ ル予 防 拘禁 ニ関 スル

反 シタ ルト キ亦 前項 ニ同 ジ

二人 以 上通 謀 シテ前 条 第 一項 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 ハ三 月 以 上 五年 以

第 六 十 二条  収 容 設 備若 ハ械 具 ヲ損 壊 シ、 暴 行 若 ハ脅 迫 ヲ為 シ又 ハ

下 ノ懲 役 ニ処 ス

ノ ハ之 ヲ 本 法 ニ依 リ 為 シ タ ル モ ノ ト 看 做 ス

英明

第七十六回帝国議会 治 安維持 法改正法律案委員会議録 ( 速記) 衆 議 院  第 二回

委 員 長  服部

委員氏名

ノ如 ク現 行 治安 維 持 法 ハ大 正 末 期 ヨリ 昭和 初年 ニ掛 ケ テ ノ思 想運 動

改 正 強 化 ヲ必要 ト ス ル理由 ニ付 キ少 シク詳 シ ク申 上 ゲ マスト御 承 知

情 勢 ヲ背景 ト シテ立案 セラ レ マ シタ関 係 上 、 共産 主 義 運動 、殊 ニ日

本 共産 党 ノ活 動 ヲ主 タ ル対象 ト シ テ規 定 セ ラ レテ居 ルノデ アリ マ ス、

然 ル ニ同法 施 行 後 ノ実蹟ニ 徴 シ マス ル ニ、 共 産主 義 運 動 ニ於 キ マ シ

テ、 日本 共産 党 ノ外 ニ日本 共 産 青年 同 盟 又 ハ日本 労 働 組 合全 国協 議

会 ヲ モ第 一条 所 定 ノ結 社 ト 認 定 処 罰致 シ マシ タノ ミ ナ ラズ 、是 等 ノ

永田

田村 良吉

秀吉

ル ヲ得 ナ カ ツ タ次 第 デ ア リ マシ テ、 其 ノ取 締 対 象 ガ立 法 当 時 予想 セ

動 ニ対 シ マ シテ モ亦 本法 ノ罰 則 ヲ適 用 シ テ、 是 ガ検 挙 処 罰 ヲ行 ハザ

運 動 ニ対 シ、 更 ニ皇 道 大本 、 天 理本 道 、燈 台 社 等 ノ所 謂 類 似 宗 教 運

シ、 或 ハ日本 無 政 府 共 産党 等 ノ無 政 府 主義 運 動 ニ対 シ又 ハ民 族 独 立

所 謂 正 統 派 共 産 主義 運 動 ト 対 立 的 ナ ル所 謂 労 農派 ﹁グ ル ープ ﹂ ニ対

小畑 虎 之 助 

浜 野 徹 太郎

勝

寅吉 

事  真 鍋

茂 生 

理

中野

弘

国 三郎 

三郎 

西村 藤田

事  泉

之 通 

定吉 

事  松 木 江原

高 一  一松

理

高見

三 田村 武 夫

理

中村 捨 助 

外 面 上其 ノ存 在 ヲ疑 ハル ル ニ至 リ マシ タ結 果 、 運動 形 態 ハ従 来 ノ統

結 社 ハ屡 次 ノ検 挙 ト情 勢 ノ変 化 ニ依 リ、 殆 ド 全 ク其 ノ活 動 ヲ休 止 シ、

スト共 ニ、 共 産 主義 運動 ニ関 シ マシ テ モ、 日本 共産 党 ノ ヤ ウ ナ有 力

ラ レタ ル所 ニ比 シ著 シク拡 大 セ ラ レ、 且複 雑 化 ス ル ニ至 ツ テ居 リ マ

藤本

若水

猪 野 毛利 栄 

昭 和十 六年二 月 十 二 日 (水 曜 日)

ス、 昭和 十 年 七 月 ノ ﹁コミ ンテ ル ン﹂第 七 回 世界 大 会 ニ於 ケ ル人 民

又 ハ党 的 機 運 ノ醸 成 ノ為 ノ活 動 ヲ終 始 ス ル ニ至 ツ テ居 ルノデ アリ マ

ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル活動 ヨリ 一転 シ テ、党 ノ組織 再建 ノ準 備 活動 、

一的 組 織 的 運動 形 態 ヨリ、 分 散 的 個 別的 運 動 形 態 ニ移 行 シ、 且 ツ党

々詳 細 ニ亙 リ御説 明申 上 ゲ タイ ト思 ヒ マ ス、 本 改 正 案 ハ第 一章 罪 、

維 持法 改 正法 律 案提 出 ノ 理由 ヲ大 体 御 説 明申 上 ゲ マシ タガ、 尚 ホ稍

戦 線方 策 ノ採 用 、 及 ビ 一昨 年 秋 ノ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ戦 術 転 換 ハ、

三○ 宅 ︹正 太 郎︺ 政 府 委 員 ︹司 法次 官 ︺ 本 会 議 ニ於 キ マ シ テ 治 安

ス、第 一章 ハ現 行 法 ノ 罰 則 ノ全 般 ニ亙 ル改 正 ヲ加 ヘ、 之 ヲ整 備強 化

ハ現行 法 ノ予 想 シナ カ ツ タ所 デ アリ マ シテ、 法 ノ運 用 上 相 当 困難 ガ

更 ニ運 動 形 態 ノ複雑 化 ヲ増 大 致 シ テ居 ルノデ アリ マ ス、 斯 カ ル事 態

第 二章 刑 事 手 続 、 第 三章 予防 拘 禁 ノ三 章 ヨ リ成 ツテ居 ル ノデ アリ マ

ト ス ル モノデ ア リ マス、 以下 章 ノ順 ヲ逐 ヒ改 正 ノ要 領 ヲ申 上 ゲ マ ス

ア ルノ デ ア リ マ スカ ラ、 現 行 法 第 一条 乃至 第 三条 ヲ適 当 ニ改 正 シテ、

致 シタ ノ デ ゴザ イ マシ テ、 第 二章 及 ビ第 三章ハ 新 タ ニ規 定 ヲ設 ケ ン

第 一章 ハ現 行 法 ノ罰 則 ヲ整 備 強 化 致 シ タノ デ ア リ マス ガ、罰 則 ノ

シ メ、 以 テ取 締 ノ完 壁 ヲ期 ス ルト 共 ニ、 早 期 検挙 ノ実 ヲ挙 グ ル為 メ

新情 勢 ニ対 応 セ シ メ ルト共 ニ、刑 罰 ニ付 テ モ之 ヲ加 重 シ テ、 我 ガ国

社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ト シテ、 或 ル程度 マデ ノ

イ テ居 リ マ スノデ 、外 廓 団 体 構 成 員 ノ行 動 ニ対 シ マシ テ モ、 亦 、 結

ノ活動 ヲ支 援 スル者 ヲ モ亦 、 結社 加 入者 ト同様 ニ処 罰 シ得 ル途 ヲ開

ニ対 ス ル刑 罰 ト シテ ハ軽 キ ニ過 グ ルバ カ リデ ハナ ク、 規定 自 体 カ ラ

処 罰 ガ出 来 ルノデ アリ マ スガ、 其 ノ組 織 者 又 ハ之 ニ匹 敵 ス ル主動 者

体 ノ尊 厳 ニ シテ冒 スベ カ ラ ザ ル モノ ナ ル コト ヲ規 定 ノ上 ニ明徴 ナ ラ

改 正 ノ必 要 ガ ア ルノ デ ア リ マス、 其 ノ趣 旨 ニ於 キ マシテ罰 則 ヲ整 備

罪 ト、 私 有 財 産 制度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル犯罪 ニ関 ス ル規 定

於 テ モ支 援 結 社 ノ処 罰 規 定 ヲ設 ク ル必 要 ハ十分 ニア ル ノデ ア リ マス、

二 ノ典 型 的 ナ外 廓団 体 ヲ検 挙 致 シ マ シタ事 例 モア リ マシテ、 現在 ニ

止 セ ル状 態 ニアリ マ ス最 近 ニ於 キ マ シテ モ、 唯 物 論 研 究会 其 ノ他 一、

ニ、遺 憾 ノ点 ガ頗 ル多 イ ノデ アリ マ ス、 共 産党 自 体 ノ活動 ガ 殆 ド休

申 シ マ シテ モ、 外廓 団 体 ヲ直 接 ノ対象 ト シ テ規 定 シテ居 リ マセ ヌ為

強 化 セ ント スル モノ デ ア リ マスガ、 其 ノ主 要 ナ ル モノ ハ次 ノ六 点 デ アリ マ ス

ヲ各 別 個 ノ条 文 ト致 シ、 又 国 体変 革 ニ関 ス ル犯罪 ニ付 キ マシテ ハ、

其 ノ 一ハ本 案 ニ於 キ マ シテ ハ国 体 ヲ変 革 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル犯

刑 種 ヲ懲 役 ニ限 リ禁錮 刑 ヲ削 除 致 シ マスト 共 ニ、 刑 ノ短 期 ヲ高 メ ル

ニ、団 体 変 革 ヲ目的 ト ス ル結 社 ノ例 ニ傚 ヒ マシテ、 支 援結 社 ノ組織

随 テ本 案 ニ於 テ ハ、 外 廓 団 体 ニ関 ス ル特 別規 定 ヲ新 設 致 シ マ スト共

者 及 ビ之 ニ匹敵 スベ キ主 動者 ニ対 シテ ハ最高 ヲ死 刑 ト 致 スト共 ニ、

其 ノ 二 ハ本案 ノ第 二条 ニ於 テ支 援 結 社、 所 謂 外 廓 団 体 ニ関 スル処

コト ニ依 ツ テ刑 罰 ヲ重 化 致 シ タ点 デ アリ マス

罰 規 定 ヲ新 タ ニ設 ケ タ コト デ ア リ マ ス、御 承 知 ノ如 ク、各 種 ノ外廓

其 ノ三 ハ本案 第 三条 ニ於 テ準 備 結 社 ニ関 ス ル規 定 ヲ新設 致 シタ コ

ニ対 シテ モ之 ヲ処 断 シ得 ルノ途 ヲ開 イ タノ デ ア リ マス

ト デ ア リ マス、 最 近 ノ共 産 主義 運動 ノ特 色 ハ、 前 述 ノ如 ク、 分 散 的

最 低 ハ五年 ノ懲役 ト規 定 致 シ、 尚 ホ其 ノ加 入者 又 ハ目 的遂 行 行 為 者

ラ日本 共 産 党 ノ貯 水 池 タ ル ノ役 割 ヲ果 シ、 三 ・ 一五事 件 以来 数 次 ニ

シタ ル思 想 犯罪 ノ新 タ ナ ル態 様 デ ア リ マスガ、 是 等 ノ外廓 団 体 ハ専

亙 リ党 中 央 部 ニ対 シ致 命 的検 挙 ヲ加 ヘ マシ タ ニ拘 ラズ 、其 ノ力 ニ依

ノ目標 ト シテ待 望 シツ ツ、 当 面 、集 会 、 宣 伝 、啓 蒙 其 ノ他 ノ 方法 ニ

個 別的 ナ ル形 態 ヲ採 ツ テ居 ル点 デ ア リ マシ テ、 殊 ニ国 体変 革 ヲ究 極

団 体 ニ依 ル共産 主義 者 ノ組織 的 行 動 ハ、 現行 法 実 施 以後 ニ現 ハレ マ

ツテ党 ノ勢 力 ヲ順 次 補 給 シ、党 ノ再 建 ニ寄 与致 シ マシ タ 一面 、 広 ク

依 リ マ シテ共 産 主義 者 ヲ養 成結 集 シテ、 党 再建 ノ機 運 ヲ醸 成 ス ル コ

大 衆 ニ共 産 主義 思 想 ヲ滲 透 伝 播 セ シム ル ニ与 ツテ力 ガ ア ツタ コト ハ 顕 著 ナ ル事 実 デ ア リ マ ス、 即 チ共 産 主 義運 動 ニ対 スル防遏 ノ目 的 ヲ

ス、斯 カ ル結 社 ヲ現行 法 第 一条 ノ結 社 ト認 メ得 ナ イ コト ハ勿 論 デ ア

リ マシテ、 而 モ斯 カ ル結 社 ニ対 シ マシテ ハ、支 援 結 社 ニ対 ス ルト同

ト ヲ主 タ ル目 的 ト シテ結 社 ヲ組 織 ス ル者 ガ相 当 ニ多 イ現 状 デ アリ マ

様 、相 当 ノ重 刑 ヲ以 テ臨 ミ、 且 ツ結 社 其 ノ モノ ヲ捉 ヘテ之 ヲ処 理 ス

不十 分 デ ア ル コト ガ明 カト 相 成 ツタ ノデ アリ マ ス、 此 ノ点 ニ関 シ マ シテ ハ、 現 行 法 ハ第 一条 中 ニ於 テ ﹁結 社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニスル行 為

達 シ マ スタ メ ニハ、 独 リ共産 党 ノ ミ ヲ取締 ノ対象 ト ス ルノ デ ハ到 底

ヲ為 シタ ル者 ﹂ ト 云 フ規 定 ヲ設 ケ、 結 社 ノ外 部 ニア ル者 ニシテ結 社

ア リ マ ス、前 述 ノ如 ク、最 近 ノ共 産 主 義運 動 ノ形 態 ガ分 散 的 個別 的

其 ノ 四 ハ結 社 ノ程 度 ニ至 ラザ ル集 団 ニ関 スル規 定 ヲ設 ケ タ コト デ

ト関係 ナク不 逞 目 的 ノ実 行 ヲ宣 伝致 シタ場 合 ニ於 キ マシ テ ハ、 全 然

テ ハ、結 社 関 係 ノ行為 ト シ テ検 挙 処罰 シ得 ルノ デ ア リ マスガ、 結 社

デ アリ マス、 宣 伝 ガ結 社 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ為 サ レタ場 合 ニ於 キ マシ

動 ニ於 テ欠 クベ カ ラザ ル運 動 方 法 ト シテ重 要 ナ ル意 義 ヲ有 ス ル モノ

最 近 ニ於 ケ ル運 動 情勢 ヲ見 マス ル ニ、 宣 伝 啓蒙 其 ノ他 危 険 ナ ル行 動

ト ナ リ マシタ結 果 、所 謂 準 備 結 社 ノ出 現 ト共 ニ、所 謂 ﹁グ ル ープ ﹂

ルノ必 要 ガ アリ マス ノデ、 新 タ ニ準 備 結社 ニ関 ス ル規 定 ヲ設 ク ル コ

的 形 態 ニ依 ル運 動 ガ漸 次其 ノ数 ヲ加ヘ テ居 ルノデ アリ マ ス、 現 行法

之 ヲ罰 スベ キ規 定 ヲ欠 イ テ居 ル ノデ ア リ マス、 元来 宣 伝 ハ 一定 ノ事

ヲ取締 ル必要 ガ多 分 ニア ル ノデ アリ マス、 宣 伝 ハ煽 動 ト共 ニ結 社 活

ノ解 釈 ト シ テ、 結 社 ハ共同 ノ目 的 ノ為 ニ ス ル特 定 多 数人 ノ任 意 ノ継

ント ス ル行 為 デ アリ マスル ガ故 ニ、 不 逞 ノ思 想 ガ国 民 ノ脳 裡 ニ浸 潤

項 ヲ不特 定 又 ハ多 数 人 ニ説 明 シ且 ツ愬ヘ テ其 ノ理解 ト共 鳴 ト ヲ求 メ

ト ト致 シ タノ デ ア リ マス

マ ス為 、 其 ノ結 社 ノ要件 ノ 一ヲ欠 ク場 合 ニ於 キ マシ テ ハ、 之 ヲ結 社

続 的 結 合 ニ シテ相 当 結合 力 ノ鞏 固 ナ ル モノ デ ア ルト解 セラ レ テ居 リ

テ、其 ノ危 険 性 ハ煽 動 ト殆 ド 軒 軽 ガ ナイ ノデ アリ マ ス、 殊 ニ人 民戦

致 シ、 遂 ニ国 体 観 念 ヲ腐 蝕 セ シ ム ル ニ至 ル危 険 ガ ア ルノデ アリ マ シ

線 方 策 ニ則 リ、 巧 妙 且 ツ陰 秘 ノ間 ニ主義 ノ宣 伝 ヲ為 ス行 為 ハ実 ニ危

ト ハ認 メ得 ナ イ ノデ ア リ マ ス、 而 モ、 前述 ノ所 謂 ﹁グ ループ ﹂的 存

険 デ ア リ マスガ故 ニ、結 社 ニ関 係 ナ ク不逞 思 想 ヲ宣 伝 致 ス行 為 ヲ処

在 ノ中 ニ ハ、 或 ハ共 同 目的 ノ点 ニ於 キ マシテ、 或 ハ構 成 員 ノ特 定性 ノ点 ニ於 キ マシテ、 結 社 ト認 定 シ得 ナイ モノ ガ相 当 ニ多 ク、 現 行法

方 策 ノ採 用 以来 ソノ運 動 態様 モ多岐 多様 ニ亙 ル ニ至 リ マシ タ ノデ、

ノ規 定 ヲ以 テ シ マシ テ ハ、 之 ヲ結 合 体 ソ レ自 体 ト シ テ処 理 シ得 マセ

取 締 ノ完璧 ヲ期 スル ガ為 ニ ハ苟 モ国 体 変革 ノ思 想 ニ基 キ其 ノ目的 ノ

ケ ル運 動 情勢 ガ分 散 的 個別 的 デ アリ マスノ ミ ナラズ 、 所 謂 人 民戦 線

運 動形 態 ニ現 ハレテ居 リ マスノ ミ ナ ラズ、 無 政府 主 義 運動 又 ハ民 族

遂 行 ニ資 スベ キ 一切 ノ個 別的 活 動 ヲ モ亦、 総 テ之 ヲ罰 スベ キ モノ ト

罰 ス ル規 定 ヲ新 タ ニ設 ケ タ次 第 デ アリ マ ス、 ソ レト同 時 ニ最 近 ニ於

独 立 運 動 ニ於 テ ハ常 ニ現 ハレ ル運 動 形 態 デ ア リ マ スノデ、 斯 カ ル現

ヌ為 、 結 社 ニ関 スル規 定 ノ ミ ヲ以 テ シ マシ テ ハ取 締 ノ完璧 ヲ期 シ得

行 法 ノ不 備 ヲ補 正 スル必要 ア ル ニ鑑 ミ、茲 ニ第 一条 乃至 第 三条 ノ目

ナ ス必 要 ヲ認 メ マシ タ ノデ、 個 人 的 行 為 ニ関 シ マシテ モ、 茲 ニ ﹁其

ナ イ ノデ アリ マ ス、 而 モ此 ノ種 集 団 ハ単 ニ最 近 ノ共 産 主義 ニ於 ケ ル

的 ヲ以 テ結成 セラ レ タ集 団 ニ関 ス ル処 罰規 定 ヲ設 ク ル コト ニ致 シ タ

ノ他 目 的 遂行 ノ為 ニス ル行為 ﹂ ナ ル包 括的 規 定 ヲ設 ク ル コトト 致 シ

其 ノ五 ハ本 案 第 五 条 ニ於 テ宣 伝 其 ノ他国 体変 革 ノ目的 遂 行 ニ資 ス

ノデ ア リ マス

ア リ マ ス、 現行 法 第 一条 ガ皇 道 大 本 、 天理 本 道 、 燈台 社 ノ如 キ類 似

其 ノ六 ハ類 似宗 教 団 体等 ニ関 スル処 罰規 定 ヲ新 タ ニ設 ケ タ コト デ

タ次 第 デ ア リ マス

ニ関 スル取締 規 定 ト シ テ実 行 ノ協 議 、 煽動 及 ビ犯 罪 煽 動 ニ関 スル処

宗 教 団 体 ニ対 シ テ モ亦 適 用 セ ラ ル ル ニ至 リ マ シタ コト ハ前 述 ノ通 リ

ル行 為 ヲ取締 ル規 定 ヲ設 ケ タ コト デ アリ マス、 現 行 法 ハ個 人的 行 為

罰 規 定 ノ ミ ヲ設 ケ、 其 ノ余 ノ行 為 ニ及 ンデ居 ナ イ ノデ ア リ マスガ 、

一般 大 衆 ヲ対象 ト シテ、神 宮 又 ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ冒涜 シ、其 ノ他 国 民

デ ア リ マスガ 、是等 ノ外 過去ニ 於 テ人 心 ノ不 安ニ乗 ジ無 智蒙 昧 ナ ル

致 シ マス ル ノ ミナ ラ ズ、 其 ノ多 ク ハ相 互 ニ上下 左 右 ノ組 織 的 関 係 ヲ

質 ト致 ス ノデ アリ マ ス、 随 テ被 疑 者 ノ数 ハ相当 多 数 ニ上 ルノ ヲ常 ト

後 ニア ラザ レバ、 特 定 ノ被 疑 者 ガ如 何 ナ ル組織 系 統 ニ属 シ、如 何 ナ

テ其 ノ複 雑 ナ ル関 係 ニア ル秘 密組 織 ヲ捜 査 シ、 或 ル程 度 明確 ニ シタ

ル地位 、 任 務 ヲ有 シ、 更 ニ如 何 ナ ル径 路 ニ依 ツテ、 又 如 何 ナ ル目 的

有 シ テ居 リ、 而 モ其 ノ組 織 ハ多 クノ場 合 秘 密組 織 デ ア リ マス、 而 シ

為 メ、之 ヲ結 合 体 ソ レ自 体 ト シ テ処罰 シ得 ズ 、 単 ニ其 ノ個 々 ノ行為

ノ下 ニ其 ノ犯 罪 的活 動 ヲ遂 行 シタ カ ヲ知 リ難 イ事 情 ニア リ マス為 メ、

ノ 国体 観 念 ヲ惑 乱 ス ルガ如 キ不 穏 不逞 ノ教 義 ヲ宣 布 ス ル コト ヲ目 的

ヲ捉 ヘテ之 ヲ処 断 シタニ 過 ギ ナ イ事 例 ガ 二、 三 ニ止 マラ ナイ ノデ ア

ト ス ル類 似 宗 教 団 体 ニ対 シテ、 治 安維 持 法 ヲ適 用 ス ル コト困 難 ナ ル

リ マス、 類 似宗 教 団 体 ノ思 想 犯 罪 ト シテ ノ特 異 性 ハ、是 等 団 体 ガ個

フ ノデ ア リ マス、加 之 思 想 犯 人 ハ確 信 犯 人 タ ル特 性 ヲ備ヘ 、極 メ テ

執 拗 ナ ル行 動 ニ出 デ マス ル関 係 上 、或 ハ地 下 ニ潜 入 シ、 或 ハ偽 名 ヲ

随 テ捜 査 ニ相 当 長 キ日時 ヲ必 要 ト シ、 且取 調 ニ際 シ種 々ノ困難 ガ伴

使 用 シ、 或 ハ 一味 ノ秘密 ヲ厳 守 シ テ累 ヲ他 ニ及 ボ サザ ヲ ン コト ニ専

人 ノ精神 的 救 済 ヲ其 ノ主 タ ル使 命 ト ス ル 一般 ノ宗 教 団 体 ト異 ナ リ、

至 社会 運 動 団 体 タ ルノ性 格 ヲ帯 ビ テ居 リ マ スト共 ニ其 ノ反面 ニ於 テ

念 致 シ、捜 査 ノ衝 ニ当 ル者 ニ対 シ テ容 易 ニ実 ヲ告 ゲズ 、 甚 ダ シキ ハ

現 実 ノ国 家 社 会 ノ改 革 ニ活 動 ノ重 点 ヲ置 イ テ居 リ マス結 果 、 政 治 乃

政 治 乃 至社 会 運 動 ヲ取締 対 象 ト シ テ居 リ マ ス ル現 行法 ヲ 以 テ之 ヲ処

ナイ者 モア リ マシ テ、 捜 査 ハ実 ニ困難 ヲ極 メ ルノ デ ア リ マス、 又犯

検 挙 後 数十 日 ヲ経 過 致 シ マ シテ モ、尚 ホ其 ノ氏 名 スラ モ之 ヲ供 述 シ

宗 教的 色 彩 ヲ多 分 ニ帯 ビ テ居 ル点 ニア ル ノデ アリ マ シテ、 主 ト シテ

必 要 ニ鑑 ミ 、新 タ ニ国体 ヲ否 定 シ、 又 ハ神 宮 若 シク ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ

人 中稍々 重要 ナ ル地 位 ニ在 ル者 ハ、広 範 囲 ニ亙 ツ テ活 動 致 スヲ常 ト

断 セ ント致 シ マ スト、勢 ヒ法 ノ不 備 ヲ免 レナ イ ノデ アリ マ ス、 其 ノ

冒涜 スル コト ヲ目 的 ト スル結社 、 及 ビ集 団 ニ関 ス ル処 罰 規定 ヲ設 ケ

シ、 各 地 ニ多 数 ノ関 係者 ガ散 在 致 スノデ ア リ マスカ ラ、 短 日 月 ノ間

ニ捜 査 ヲ終 了 致 シ マス コト ハ、 殆 ド望 ミ難 イ ノデ ア リ マス、殊 ニ人

タ次 第 デ アリ マ ス

ノ ニ立 至リ マシ タ結 果 、 其 ノ現 ハレタ行 動 カ ラ直 チ ニ不 逞 思想 ヲ看

民 戦 線 方策 ノ採 用 以 来 、其 ノ活 動 ガ合法 場 面 ヲ利 用 ス ル偽 装 的 ノ モ

次 ニ第 二 章 ハ刑 事 手 続 ニ関 ス ル規 定 ヲ新設 致 シタ ノデ アリ マスガ、

ノ 一ハ捜 査 機 関 ニ対 シ相 当広 汎 ナ ル強 制 捜 査権 ヲ認 メ タ コト デ ア リ

キ ハ、 実 ニ山 積 ス ル証拠 品 ヲ検 討 シ、 極 メ テ稀薄ニ 表 現 サ レ テ居 ル

破 致 シ得 ル場 合 ハ、 殆 ド稀 デ ア リ マシテ、 合 法利 用 ノ文 化 運動 ノ如

大 体 ニ於 テ四 ツノ事 項 ヲ其 ノ主 要 ナ ル モノト 致 スノデ ア リ マス、 其

マス、 其 ノ 二 ハ公判 手 続 ニ於 テ控 訴 審 ヲ省 略 ス ル コト ニ致 シタ コト

思 想 ヲ捕捉 シ、 之 ニ依 ツ テ罪 ヲ断 ズ ルノ デ ア リ マス、 其 ノ困難 ニシ

デ ア リ マ ス、 其 ノ三 ハ弁 護 士 ノ指 定 及 ビ其 ノ数 ノ制 限 等 ニ関 スル規 定 ヲ設 ケ タ コト デ アリ、 其 ノ四 ハ管 轄 移 転 ヲ ナ シ得 ル場 合 ヲ拡 張 致

斯 クノ如 ク治 安 維 持法 ノ事 犯 ハ、捜 査 ヲ困 難 且 ツ長 期 ナ ラ シ ムル

テ且 ツ時間 ヲ要 スル コト、 申 ス マデ モア リ マセ ヌ

御 承 知 ノ通 リ思想 犯 罪 ハ、組 織 的 且 ツ集団 的 デ ア ル コト ヲ 一ノ特

シ タ コトデ ア リ マス

ニ際 シ被 疑 者 ノ身 柄 ヲ拘 束 致 シ マセ ヌ時 ハ、 忽 チ其 ノ所 在 ヲ晦 マ シ、

幾 多 ノ事 由 ヲ具 備 ス ル反 面 ニ於 テ、 一般 犯罪 者 ト異 ナリ、 其 ノ捜 査

控訴 審 ヲ省 略 ス ルヲ適 当 ト 認 メ、 第 一審 ノ判 決 ニ対 シ控 訴 ヲ許 サザ

モ ナイ所 デ アリ マ ス、仍 テ本案 ニ於 テ ハ審判 手 続 ヲ敏速 化 スル為 メ

本 案 ニ於 テ ハ、 前 述 ノ如 ク弁護 ニ関 シ種 々ノ制 限 ヲ設 ケ マ シタ、

ル旨 ヲ規 定 致 シタ次 第 デ アリ マ ス

旦検 挙 致 シタ 以 上 ハ、其 ノ終 局 処 分 ヲナ ス マデ 其 ノ身 柄 ヲ拘 束 シ、

直 チ ニ其 ノ 犯罪 的 活動 ヲ継 続 ス ルヲ常 ト スル ノデ ア リ マス、随 テ 一

ハ、 極 メ テ狭 イ範 囲 ニ限 ラ レテ居 リ マシテ、 捜 査 上 ノ 必要 ヲ殆 ド充

事 例 ニ鑑 ミ其 ノ弊 害 ヲ防 止 ス ル為 メ、弁 護 士指 定 ニ関 スル規定 ヲ設

知 ノ事 柄 ト存 ジ マスノデ 詳 ク ハ申 上 ゲ マセ ヌ、 本 案 ニ於 テ ハ斯 カ ル

審 理 ニ際 シ マシテ、 屡々 法 廷 闘争 ガ行 ハレ マ シタ コト ハ、既 ニ御 承

ヲ防 止 セ ント ス ル所 ニア ル ノデ アリ マ ス、 治安 維 持 法 ノ違反 事 件 ノ

シ得 ナイ ノデ ア リ マス、仍 テ本 案 ニ於 テ ハ現 行 法制 上捜 査 機 関 ノ中

ク ル ト共 ニ、 訴 訟 ノ敏速 化 ヲ図 ル為 メ弁 護 人 ノ 数 ノ制 限 ニ関 ス ル規

其 ノ立 法 趣 旨 ハ、 要 ス ル ニ被 告 人 ノ弁 護 ニ名 ヲ藉 リ タ所 謂 法 廷 闘争

枢 タ ル地 位 ヲ認 メラ レテ居 リ マ スル検 事 ニ対 シ、 相 当広 範 囲 ノ強制

定 ヲ設 ケ 、 且 ツ訴 訟 ニ関 ス ル書 類 ノ閲覧 、 謄 写 ヲ制 限 シ得 ル モノト

逃 亡 ヲ防 止致 シ マス コト ハ絶 対 ニ必要 デ ア リ マス、然 ル ニ現 行刑 事

捜 査 権 ヲ附 与 シ、 敏 速 適 正 ナ ル捜 査 ヲ実施 セ シメ、 以 テ治 安 維 持 ノ

訴 訟 法 ニ於 テ ハ、 御 承知 ノ如 ク捜 査 機関 ニ附 与 セ ラ レタ強 制 捜 査権

為 ノ 必要 ヲ充 足 ス ルト共 ニ、 其 ノ濫 用 ヲ防 止 ス ル為 メ、強 制 捜 査 ヲ

致 シ タ次第 デ アリ マス

効 果 ヲ期 待 シ難 キ憾 ミ ヲ蔵 シ テ居 ツ タ ノデ アリ マ ス、 殊 ニ治 安 維 持

過 シ テ尚 ホ判 決 ノ確定 ヲ見 ザ ル事 例 モアリ マシテ、 斯 ク テ ハ刑 罰 ノ

ス ルト刑 事 裁 判 ガ敏速 ヲ欠 キ、 甚 ダ シ キ ニ至 ツテ ハ検 挙後 数 年 ヲ経

次 ニ審 判 乎 続 ニ於 テ控 訴 審 ヲ省 略 致 シタ点 デ アリ マス、 従来 兎 モ

事 訴 訟 法 ノ管 轄 移 転ニ 関 ス ル規 定 ハ極 メ テ狭 イ 範 囲 ニ限 ラ レ テ居 リ、

期 スル上 ニ極 メ テ効 果的 デ ア ル場 合 ガ多 イ ノデ アリ マ スガ、 現行 刑

ハ数 箇 所 ノ裁 判 所 ニ集 中 シテ審 理 ヲ致 ス コト ガ、審 理 ノ敏 速滴 正 ヲ

ノデ ア リ マス、 事 件 ニ依 リ マ シテ ハ各 地 ニ散 在 ス ル事 件 ヲ 一箇所 又

ノデ 、 全 国各 地 ニ亙 リ多 数 ノ関 係 者 ヲ検 挙 シ、 起 訴致 ス場 合 ガ多 イ

述 ノ如 ク思 想犯 罪 ハ組織 的 、 集 団 的 犯 罪 タ ル特 質ヲ 有 シテ居 リ マ ス

次 ニ管 轄移 転 ヲ ナ シ得 ベ キ場 合 ヲ拡 張 致 シ タ点 デ ア リ マスガ、 前

致 シタ揚 合 ニ於 テ ハ、 其 ノ責 任 ノ所 在 ヲ明確 ニ致 スベ ク十 分 ノ配 慮

法 違反 事 件 ノ如 キ ハ、 急 速 ナ ル裁 判 ニ依 リ犯 罪 ノ鎮 圧 ト予防 ト ノ効

ヲ加ヘ テ規 定 致 シタ次 第 デ アリ マ ス

果 ヲ挙 ゲ ル コト ヲ最 モ必 要 ト ス ル事 案 デ ア リ マシ テ、 裁 判 確 定 セ ザ

ケ、 審 理 ノ迅速 適 正 ヲ期 シタ ノ デ アリ マス

最 後 ニ第 三章 ハ予 防拘 禁 ニ関 スル規 定 ヲ新 タ ニ設 ケ タ ノデ アリ マ

斯 カ ル必 要 ヲ充 シ得 マセ ヌノデ 、 新 タ ニ管 轄移 転 ニ関 スル規 定 ヲ設

ス、 思 想 犯 人 ハ所 謂 確 信 犯 人 デ ア リ マシ テ、 之 ヲ実情 ニ徴 シ マスル

レバ之 ニ伴 フ社 会 不安 ヲ解消 セ シム ル コト 困難 ナ ル事 例 ニ乏 シク ナ

ニ属 セ シメ、 一審制 ヲ採 用 致 シタ立 法 趣 旨 ニ鑑 ミ マ スルナ ラ バ、 此

ノデ ア リ マス、 現行 刑 事 訴訟 法 ガ内 乱 予 備事 件 ヲ大 審 院 ノ特 別 権 限

ニ、 一旦感 染 シタ ル思 想 ハ容 易 ニ払 拭 シ難 ク、 刑 ノ執 行 ニ依 ル モ全

イ ノデ アリ マ ス、 元来 此 ノ種 事件 ハ其 ノ実 体 的 内乱 予備 ニ該 当致 ス

ノ種 事案 ハ極 メ テ敏速 ニ処 理 致 ス コト ガ必 要 デ ア ル コト ハ申 ス マデ

ア リ マス、 而 モ最 近 ノ共産 主義 運 動 ニ於 テ ハ、 活 動 ノ中 心 ヲ成 ス者

テ寛 大 ナ ル処 置 ヲ受 ケ タ ル者 等 、 其 ノ数 相 当多 数 ニ上 ツ テ居 ル ノデ

非 転 向 ノ儘 刑 ノ執 行 ヲ終 了 シ釈 放 セラ レ タ ル者 、 或 ハ転 向 ヲ偽 装 シ

然 悔 悟 セズ 、 在 監久 シキ ニ亙 リ ナ ガ ラ転 向 ヲ肯 ゼザ ル者 、若 シク ハ

ノ意 見 ヲ求 ム ル コト ヲ要 スト ナ シ タ コト、 及 ビ決 定 確 定 前 ニ於 ケ ル

予 防 拘禁 委 員 会 ヲ設 ケ予 防 拘 禁 ノ請 求 、 更 新 及 ビ退 所 ニ付 キ委 員 会

行 政 官 庁 ノ処 分 ヲ以 テ何 時 ニテ モ退所 セ シメ得 ル コトト 致 シタ コト、

此 ノ予 防拘 禁 ノ期 間 ヲ二年 ト ス ル相 対的 定 期 制度 ヲ採 用 シ タ ル コト、

ノデ ア リ マス

以 上 ガ改 正 ノ主 要 ナ ル点 デ アリ マスガ、 大 体 ニ於 キ マシ テ、 国 体

検 事 及 ビ裁 判 所 ノ強 制 権 ヲ或 ル程 度 認 メ タ コト等 ヲ其 ノ骨 子 ト致 ス

変 革 ニ関 ス ル行 為 ニ付 キ特 ニ其 ノ罰 則 ヲ強 化徹 底 セシ ム ル コト ニ重

ノ多 ク ハ斯 カ ル非 転 向 分 子 、 又 ハ偽 装 転 向 分 子 ニシテ、 刑 ノ執 行 ヲ

テ、 中 ニ ハ出 獄後 半 歳 足 ラズ シテ多 数 ノ同 志 ヲ結 合 シ、 無 垢 ノ者 ニ

点 ヲ置 キ、 現在 ノ実 情 ニ即 シ、思 想 犯罪 ノ処 理 ノ敏 速 適 正 ヲ図 リ、

終 了 シ タ ル者 、 若 シク ハ執 行 猶予 ノ処 分 ニ付 セ ラ レタ者 デ アリ マシ

ニ ハ所謂 三 ・ 一五事 件 及 ビ 四 ・ 一六 事 件 関 係 ノ非 転 向 巨 頭 分 子 ニシ

ル ノデ アリ マ ス、 何 卒 慎 重 御審 議 ノ程 ヲ御 願 ヒ申 上 ゲ マス

其 ノ予防 及 ビ鎮 圧 ノ作 用 ヲ、 一層 効 果 的 ナ ラ シ ム ル趣 旨 ニ出 デ テ居

悪 思 想 ヲ感 染 セ シメ タ ル事例 モ少 ク ナイ ノデ アリ マ ス、 加 之 本 年 中

テ、 出 獄 スベ キ者 ガ相 当 数 ニ上 ルノデ アリ マシ テ、彼 等 ヲ現 下 ノ社

第四回

第七十六回帝国議会治安維持法改 正法律案委員会議録 ( 速 記) 衆 議 院 

会 ニ放出 致 シ マ ス コト ハ危 険極 マリ ナイ ノデ アリ マ ス、 而 シ テ斯 カ ル詭 激 分 子 ハ思 想 犯 保 護 観察 法 実 施 ノ結 果 ニ徴 シ マ ス ル ニ、保 護 観 察 ニ付 ス ル モ到 底 改 俊 ヲ期待 シ得 ザ ル者 デ ア ル コト明 白 デ アリ マス ノデ 、 茲 ニ予防 拘 禁 ノ制度 ヲ新 設 シ タ ノデ アリ マス、 即 チ詭激 思 想 ヲ抛 棄 セズ、 再 犯 ノ虞 顕 著 ナ ル者 ニ対 シ、 国 家治 安 ニ関 ス ル危 険 ヲ 予 防 ス ルト共 ニ、 危 険 ナ ル犯罪 ヲ防遏 ス ル ノ効 果 ヲ完璧 ナ ラ シ ム ル

三○ 田村 委 員  サ ウ シ マスト、 斯 ウ 云 フ言 葉 ヲ使 ツ テ、 語弊 ガ ア ル

昭和 十 六 年 二 月 十 四 日 ( 金 曜 日)

カ ド ウ カ分 リ マセ ヌ ガ、何 々文 芸 協 会 ト カ、 何 々劇 団 、 何 々倶 楽 部

ガ為 メ、 一定 ノ条 件 ト手続 ノ下 ニ之 ヲ社 会 ヨリ隔 離 シ、 悪 思想 ノ 伝

ノ性 質 ハ非 常 ニ左 翼 的 デ ア リ、 イ ケ ナ イ モ ノデ ア ルト 云 フ ヤウ ナ モ

播 ヲ防 止 シ、 併 セ テ強 制 ノ方 法 ニ依 リ思 想 ノ改 善 ヲ図 リ、 忠 良 ノ日

ノガ ア リ得 ル訳 デ ス カ、 サ ウ 云 フ劇 団 ヤ協 会 ハ此 ノ第 四条 ノ対 象 ニ

ト 云 フヤ ウ ナ モノ モ、其 ノ対 象 ト ナ ル訳 デ スカ、 是 ハ第 二条 ノ所 謂

ヲ治安 維持 法 ノ罪 ヲ犯 シ、 刑 ノ執 行 ヲ終 リ テ出 獄 セ ント スル者 、 及

支 援 結 社 ニ モ当 ラ ナ イ、 又第 三条 ニア ル準 備結 社 デ モ ナイ 、併 シ其

ビ刑 ノ執 行 終 了 若 シ ク ハ刑 ノ執 行 猶 予 ノ言 渡 ヲ原 因 ト シテ、 思 想 犯

ナ ルノ デ スカ

リ マス、 而 シテ本 案 ニ於 テ規 定 致 シ タ予 防 拘 禁制 度 ハ、 其 ノ対象 者

保 護観 察 法 ニ依 ル保 護 観察 中 ノ非 転 向 分 子 ト 致 シタ コト、 検 事 ノ請

○太 田 ︹ 耐 造 ︺ 政 府 委 員 ︹司法 書 記 官 ︺  御話 ノ ヤ ウ ナ団 体 ガ、 此

本 人 ニ立返 ラ シム ル コト ヲ以 テ、 予 防 拘 禁制 度 ノ主 眼 ト致 ス ノデ ア

求 ニ依 リ、 裁 判 所 ノ決 定 ヲ以 テ予 防 拘 禁 ニ付 ス ル コト ト致 シ タ コト、

ノ 第 一条 乃至 第 三 条 ノ目的 ヲ以 テ結 成 セ ラ レ タ場 合 ニ於 テ ハ、 該 当

ト存 ジ マ ス、 ソ レ ハ左 翼 ニ於 キ マシ テ ハ、 理 論 ト 実践 ト ノ弁 証 法 的

三○ 田村 委 員  是 非 必要 ナ規 定 ダ ト私 共考 ヘ マス ガ、是 ハ運 用 ノ如

ト 思 ヒ マス

ル場 合 デ ア リ マス、 随 テ左 翼 ニ付 テ ハ、 御 話 ノ ヤウ ナ コト ハ言ヘ ル

統 一ト申 シ マスカ、 サ ウ 云 フ 理論 ト 実 践 ト ガ全 ク不可 分 ノ関 係 ニア

三○ 田村 委 員  此 ノ目的 ノ認 識 ノ問 題 デ ス、 私 ハ第 七条 ニ付 テ モ御

ス ル場 合 ガ ア ルト思 ヒ マス

国 体 変革 乃 至 ハ其 ノ支援 ト 云 フ コト ヲ目 的 ニシテ ナク テ モ、 其 ノ 目

伺 ヒ シヨ ウ ト思 ツ テ居 リ マ スガ、 其 ノ結 社 目的 ノ全 部 ガ、 茲 ニ所 謂

的 ノ要素 ノ中 ニ何 ﹁パ ー セ ント﹂ カ、 或 ハ五 分 ノ 一カ、 三 分 ノ 一カ、

ヘバ学 生 ノ集 団 デ モ、 何 々倶 楽 部 ト カ、或 ハ何 々協 会 ト 云 フ モノ ヲ

学 生 ノ中 デ作 ル、 サウ 云 フ モノ デ モ社 会 科学 ノ研 究 ト カ何 ト カ云 フ

何 ニ依 ツテ ハ、 非常 ニ範 囲 ガ広 ク ナ ルノ デ ハナ イ カト思 ヒ マ ス、 例

ノ集 団 結 成 ノ 目的 ガ、 必 ズ シ モ全 部 的 ニ茲 ニ所 謂 目 的 ニ合 致 シ ナイ

七 分 ノ 一カ分 リ マセ ヌ ケ レド モ、 其 ノ目 的 ト シテ ア ツタ場 合 ハ、 其

結 成 サ レ ル コト ノ必要 ハナ イノ デ ア リ マ ス、 ソ レ ガ従 タ ル目的 デ ア

条 ニ記 職ジ テ ア リ マ ス前 三条 ノ目的 ハ、 何 モ是 ガ主 タ ル目的 ヲ以 テ

○ 太 田 政 府 委員  勿 論 左 様 ニ私 共 モ解 釈 致 シ テ居 リ マス、 此 ノ第 四

必 要 ナ規定 ダ ト思 ヒ マ スガ、 運 用 ノ如 何 ニ依 ツテ範 囲 ガ非 常 ニ広 ク

条 ノ構 成 要件 ヲ ピ ツ タ リ具 ヘル コト ニナ ルノ デ ナ イ カ ト思 ヒ マ ス、

把 握 出来 ナイ モノデ ス、 サウ ス ルト結 局 其 ノ方 ヘ進 ンデ 行 ク、 第 四

ム﹂ ト 云 フ モノ ハ、 理 論 ト 実 践 ガ 一ツ ニナラ ナケ レバ 、其 ノ性 格 ヲ

ノ其 動 向 ニ注 意 スベ キ モ ノガ ア レバ 、 御 話 ノ 通 リ今 ノ ﹁マルキ シズ

モ ノ ヲ随 分 ヤ ル モ ノデ ス、 サ ウ 云 フ モ ノガ非 常 ニ頻 繁 ニナ ツテ来 、

ル場 合 ニ於 テ モ、 勿論 此 ノ第 四 条 ニ触 レ ルト思 ヒ マ ス、例ヘ テ見 マ

ナ ルノデ ナイ カ ト云 フ コト ヲ、 実 ハ惧 レルノ デ ス、 其 ノ点 大 体ド ノ

イ カ ト思 ヒ マス ガ、 是 ハド ウデ セウ カ

デ モ、 其 ノ目的 ノ要 素 ノ中 ニ含 マ レ ル場 合 ハ、 之 ニ該 当 ス ルノデ ナ

ス ルナ ラバ 、 或 ル芸術 的 ナ コト ヲ目指 シ マ シテ、 文 化 団 体 ヲ作 ル、

リ マス

○ 太 田政 府 委員  此 ノ第 四条 ノ集 団 ノ場 合 ニ於 キ マシテ ハ、結 社 ト

辺 ノ所 マデ 狙 ツテ居 ラ レ ル カ、 其 ノ狙 ヒ所 ヲ伺 ツテ置 キ タ イ ノデ ア

違 ヒ マシ テ、集 団 自 体 ガ共 同 ノ目 的 ヲ有 スル コト ヲ必要 ト シ ナイ場

其 ノ文 化 団 体 ヲ作 ツテ芸 術 上 ノ精進 ヲ ス ルト 云 フ コト ガ、主 タ ル目

ノ 団 体 ハ第 四条 ニ触 レ ル場合 ガ勿 論 ア ルト 思 ヒ マス

載 シテ居 リ マ スヤウ ナ目的 ヲ、 副 次 的 ニ持 ツテ居 リ マ スナ ラバ、 其

的 デ ア ルト致 シ マシテ モ、 其 ノ反 面 ニ於 キ マシテ、 此 ノ第 四条 ニ記

○ 三 田 村委 員  サ ウ シ マスト、 モツト 端 的 ナ言 ヒ方 ヲ ス ルト 、 日本

ノ デ ア リ マシテ、 集 団 自 体 ガ前 三条 ノ目的 ヲ以 テ、 ソ レガ共 同 目的

合 デ ア リ マス、 前 三条 ノ目 的 ヲ以 テ結 成 シ、 或 ハ指 導 ヲ ス レバ宜 イ

デ ア ルト 云 フ コト ヲ 必要 ト シナ イ場 合 デ ア リ マ ス、随 ヒ マ シテ、 此

共 産 党 ト カ、 其 ノ支 援 結 社 ト カ 云 フ モノ ノ認 識 ハナ クテ モ、 左翼 的 デ アリ 、 社会 主 義 デ ア リ、 ﹁マルキ シズ ム﹂ ノ認 識 ヲ持 ツ テ 集 団 ヲ

モノ デ ア ルカド ウ カ ト 云 フ コト ヲ認 識 シ ナイ場 合 ガ、往 々 ニシ テ ア

ノ集 団 ノ参 加 者 ガ、 直 チ ニ此 ノ集 団 ガ前 三条 ノ目 的 ノ下 ニ作 ラ レ タ 左 翼 ノ場合 ニ於 テ ハ、 大 体 サウ 云 フ コト ガ言ヘ ル

結 成 ス レバ、 此 ノ第 四条 ニ該 当 ス ル訳 デ ス カ ○ 太 田 政 府委 員

例ヘ バ 早 稲 田 ノ中 ニ倶 楽 部 ガ ア ル、 其 ノ倶 楽 部 ノ組 織 者 ノ 一、 二 ノ

分 学 校 当 局 ニ徹 底 セ シメ テ置 イ テ戴 キ タ イ ノデ ス。今 ノ御 話 ノ通 リ、

定 ハ必 要 デ ア リ マ スガ、 今 御 話 ノ通 リデ ア ル ナ ラバ、 其 ノ趣 旨 ヲ十

カ 云 フ モ ノ ハ、往 々 ニ シテ斯 ウ云 フ危 険 ヲ持 ツノ デ ス、 第 四条 ノ規

○ 三 田村 委 員  能 ク分 リ マシ タ、学 生 ナド ノ倶楽 部 ト カ、 協 議 会 ト

特 ニ注 意 シ テ規 定 致 シタ積 リデ ア リ マス

要 ト ス ルト云 フ ヤウ ニ規 定 致 シ マシテ、 御 心 配 ノ コト ノ ナ イ ヤ ウ ニ、

ル、 即 チ参 加 ス ル動 機 ガ、 第 一条 乃至 第 三 条 ノ目的 ニ出 ル コト ヲ必

テ、 ヤ ハリ ﹁前 三条 ノ目 的 ヲ以 テ集 団 ニ参 加 ﹂ ス ル コト ヲ必 要 ト ス

ヤ ウ ナ、 参 加 ニ際 シテ認 識 ガ ア レバ ト 云 フ ヤ ウ ナ点 ヲ特 ニ避 ケ マシ

乃 至 第 三 条 ノ場 合 ト違 ヒ マシ テ、情 ヲ知 リ テ集 団 ニ参 加 シタ ト云 フ

工合 ガ悪 イト 存 ジ マ ス、 随 ヒ マシテ第 四条 ニ於 キ マシテ ハ、 第 一条

ヤ ウ ナ者 ヲ、 無辜 ニ処 罰 致 シ マス ヤウ ナ コト ガ ア リ マ スト、 非 常 ニ

ル カト 存 ジ マス、 随 テ其 ノ 認 識 ヲ欠 キ マシ テ、 此 ノ集 団 ニ参 加 シ タ

シ テ ハ、 先 ヅ 第 一ニ本 条 前 段 ノ場 合 ト 同様 ニ、 第 一条 乃至 第 三 条 ノ

○ 太 田 政府 委 員  此 ノ第 五条 ニ於 キ マス宣伝 罪 ノ構 成要 件 ト致 シ マ

大 体 ノ御 考ヘ ヲ御 説 明 ヲ願 ヒタ イ

ド ウ云 フ モノ ヲ目 標 ニシテ居 ラ レ マス カ、 此 処 ニ御書 キ ニナ ル時 ノ

構 成 要素 ト言 ヒ マス カ、 宣 伝 罪 ヲ構 成 ス ル其 ノ行 為 ノ体様 ハ、 大 体

︱

事 項 ヲ宣 伝 シ其 ノ他其 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シ タ ル者 ﹂

○ 三 田村 委 員  第 五条 ノ後 半 ノ ﹁若 ハ煽 動 ヲ為 シ又 ハ其 ノ目 的 タ ル

釈 ニナ ル モノ ト存 ギ テ居 リ マ ス

五 条 ノ此 ノ協 議 罪 モ 一条 乃至 三 条 ノ関 係 ニ於 キ マシテ ハ、 左 様 ナ解

匹 敵 スベ キ陰 謀 罪 デ ア ルト云 フ ヤ ウ ニ説 明 サ レテ居 リ マ ス、 勿論 第

罪 ハ、 第 一条 ト ノ関係 ニ於 キ マシ テ ハ第 一条 ノ陰謀 罪 、 即 チ予 備 ニ

テ モ規 定 サ レテ居 ルノ デ ア リ マシ テ、 現行 法 ノ第 二条 ニ於 ケ ル協 議

○ 太 田政 府 委 員  此 ノ協 議 罪 ニ付 キ マシテ ハ、 現 行法 ノ第 二 条 ニ於

カト思 フノデ スガ

目 的 ヲ以 テ宣 伝 ヲ ナ ス コト ヲ必 要 ト スルノ デ ア リ マス、 宣 伝 ヲ ナ ス

宣 伝罪 ト云 フノ ハ、 新 シク出 テ来 タ モノ デ スガ、 此 ノ宣 伝 罪 ノ

モノ ハ、三 条 ノ目的 ヲ持 ツ テ居 ルガ、 大 多 数 ノ者 ハ其 ノ倶 楽 部 ノ名 称 ニ依 ツ テ入 ツ テ居 ルノデ 、 目 的 ヲ認 識 シ テ居 ナイ 、其 ノ中 デ 目 的

リ マス、 第 二 ノ点 ト 致 シ マ シテ、 目 的 タ ル事 項 ヲ宣 伝 ス ル コト ヲ必

動 機 ガ 一条 乃 至 三 条 ノ目的 ノ為 ニア ル ト云 フ点 ガ、 第 一ノ事 柄 デ ア

要 ト ス ルノデ ア リ マス、 即 チ国 体 変 革 事 項或 ハ之 ニ関 聯 ス ル事 項 ノ

ノ認 識 ヲ持 ツ テ居 ル者 ハ、 第 四 条 ニ該 当 スル ガ、 其 ノ他 ノ者 ハ該 当

宣 伝 デ ア リ マ スカ ラ、其 ノ宣 伝 行 為 自 体 ノ中 ニ、其 ノ事 項 ガ指 示 セ

シ ナ イ ト云 フ場 合 ガ多 イ ト思 フノ デ ス、 斯 ウ云 フ場 合 ガ非 常 ニ危 険 ナ ノデ 、 質 サ ナケ レバ イ カ ヌト思 ヒ マ スガ、 能 ク其 ノ点 徹 底 シ テ置

ガ指 示 セ ラ レ ル コト ヲ必要 ト スルト 申 シ マシテ モ、 変革 ノ手 段 方 法

カ ヌト 、 非常 ニ大 キ ナ誤 リ ヲ犯 スノ デ ス、 是 非其 ノ 点 ハ御 注 意 ヲ願

ソ レ カ ラ第 五条 ノ ﹁第 一条 乃 至第 三条 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目 的 タ ル

等 ハ、 必 ズ シ モ宣 伝 行為 自 体 ニ於 テ指 示 サ レ ル コト ハ必要 ハナ イト

ラ レ テ居 ル コト ヲ必 要 ト ス ル モノ ト存 ジ マス、 併 シ ナガ ラ此 ノ事 項

事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ﹂ ヲ ナ シタ ルト言 フ ノ ハ、 是 ハ独 立 罪 デ スガ、

思 ヒ マス、 尚 ホ其 ノ宣 伝 ス ル文 字 、 言 葉 ガ、 必 ズ シ モ表 面 的 ニ国 体

ヒタ イ

協 議 罪 ト 云 フ モノ ハ、 其 ノ場 合 ハ第 三条 ノ予 備行 為 ニナ リ ハシ ナ イ

コト モ必 要 ハナ イト 存 ズ ルノデ ア リ マス、 併 シナ ガ ラ其 ノ 趣旨 ニ於

変 革 、 支 援 又 ハ準 備 ト云 フヤ ウ ナ コト ヲ、 其 ノ儘 直 接 ニ使 ツテ居 ル

ハ、 共 産 党 ノ目 的遂 行 ノ為 ニス ルト 云 フ意 思 ハ必要 ゴ ザ イ マセ ヌ、

○ 太 田政 府委 員  御 話 ノ ヤウ ニ、 第 五 条 ノ宣伝 ノ場 合 ニ於 キ マシテ

ハ結 果 ニ於 テ面 白 ク ナイ ト 云 フ程 度 ノ認 識 ヲ以 チ マシ テ、 宣伝 行 為

識 ヲ持 ツテ、 言 ヒ換ヘ マスナ ラバ 、 左様 ナ事 項 ガ人 ニ知 ラ レ ル コト

シテ処 罰 セ ラ レ ルノ デ ア リ マ ス、 併 シ ナガ ラ御 話 ノ ヤウ ニ単 ナ ル認

且 ツ愬ヘ マシ テ、 其 ノ理解 ト共 鳴 ト ヲ求 ム ル行 為 デ ア ルト 云 フ風 ニ、

ヲ致 シ タ場 合 ニ於 キ マシテ ハ、 第 五条 ニ ハ触 レナ イ ノデ アリ マス、

若 シ左 様 ナ意 思 ガ ゴ ザ イ マ スナ ラバ、 是 ハ第 一条 ノ目的 遂 行 行 為 ト

定義 出 来 ル モノ ト存 ズ ルノデ ア リ マスガ、 此 ノ行 為 ハ煽 動 ト 共 ニ、

キ マ シテ ハ、 斯 カ ル事 項 ヲ包 含 シ テ居 ラ ナケ レバ ナ ラ ナ イ モ ノト存

本案 ニ於 テ取 締 ラ ウ ト ス ル ヤウ ナ活 動 ニ於 キ マシ テ ハ、 有 力 ナ ル彼

ウ ニ、 他 人 ノ 理解 ト共 鳴 ト ヲ求 メ ル為 ニ之 ニ愬ヘ テ、 サ ウ シ テ其 ノ

第 五 条 ノ場 合 ニ於 キ マシ テ ハ、 宣 伝 行 為 自 体 ガ先 程 申 上 ゲ マシ タヤ

ジ マ ス、 要 ス ル ニ宣 伝 ハ 一定 ノ事 項 ヲ不 特定 、 又 ハ多 数 人 ニ説 明 シ、

ル モ ノト 承 知 シテ、 規 定 致 シ タ次 第 デ ゴ ザ イ マ ス

等 ノ 活動 上 ノ武 器 デ ゴザ イ マスノデ 、 是 ハ是 非 ト モ取 締 ル必 要 ガ ア

ノデ ハナ イ カト思 フノデ ス、 例 ヘバ斯 ウ 云 フ コト ヲ言 フ コト ガ 共 産

会 主 義 ノ何 モ ノ ナ ルカ ヲ認 識 シ テ居 ル場 合 ハ、 直 チ ニ之 ニ該 当 ス ル

リ マ スガ、 更 ニ進 ンデ社 会 主 義的 ナ思 想 ヲ流 布 ス ル コト ハ、 其 ノ社

ス コト ハ、 国 体変 革 ニナ ル カ モ知 レナ イ ト 云 フ認 識 ハ勿 論 必要 デ ア

認 識 モ要 ラ ナイ、 詰 リ斯 ウ云 フ コト ヲ言 フ コト 、 斯 ウ云 フ主 張 ヲナ

目 的 遂 行行 為 ト違 ツテ、 共 産 党 ノ認 識 モ要 リ マセ ヌ シ、 支 援 結 社 ノ

動 モ宣 伝 モ、 実 ハ是 ハ独 立罪 ナ ノデ ス、 一条、二 条 、 三 条 ノ ヤウ ナ

ノ御 説 明 モ、 実 ハ私 ノ聴 キ方 ガ 悪 カ ツ タト見 エテ 二段 ニナ ツ タ ヤウ

○ 三 田村 委 員  其 ノ点 ハ此 ノ解 釈 ト シ テ非常 ニ難 カ シ イ ノデ ス、 今

ノデ アリ マス

チ マシテ、 其 ノ宣 伝 行為 ヲ致 シタ場 合 ガ、 本 案 ニ触 レ ル コト ニ ナ ル

言 ヒ換 ヘ マ スナ ラバ 、国 体変 革 ヲ実 現 シ タイ ト 云 フ ヤ ウ ナ希 望 ヲ以

マス、 第 一条 乃 至 第 三条 ノ 目的 ヲ以 テ、 其 ノ動 機 カ ラ出 発 シ テ︱

単 ナ ル認 識 ヲ以 テ致 シタ場 合 ニ於 テ ハ、 第 五条 ニ触 レ ナ イノ デ ア リ

マ シテ其 ノ行 為 ノ結 果 ガ第 一条 乃 至 第 三条 ニ触 レ ルト 云 フヤ ウ ナ、

乃至 第 三条 ノ目的 ヲ以 テ ナ サ レ ル コト ガ必 要 ナ ノデ ア リ マ ス、 随 ヒ

コト ヲ必 要 ト 致 スノ デ ア リ マ スルガ、 更 ニソ レ ニ止 ラズ シテ第 一条

党 ノ思 想 ナ ノダ、 是 ハ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ指 今 デ ア ツ テ、 人 民 戦線

ナ気 ガ ス ルノデ ス、 初 メ ハ目的 ノ認 識 ガ ナク テ ハナ ラ ヌ ト云 フ御 話

人 ヲ説 得 シテ 行 ク ト 云 フ ヤ ウ ナ、 積 極 的 ナ意 図 ヲ持 ツタ行 為 デ ア ル

ノ標 語 デ ア ルト 云 フ ヤウ ナ コト ヲ知 リ ナガ ラ、 更 ニ又 斯 ウ云 フ言論

○ 三 田村 委 員  御説 ノ通 リ最 モ重要 ナ ル規 定 ダ ト思 フノ デ ス、 此 処

ヲ ナ ス コト ハ、 反 戦 主義 的 ナ思 想 ヲ大 イ ニ盛 ン ナラ シ メ ル ノダ ト 云

ヤウ ナ御 言 葉 ガ出 テ来 タ ノ デ ス、 ソ レデ 私 ハ勿 論 斯 ウ云 フ行 為 ハ徹

デ シタ ガ、 後 ノ御 話 ハ、 御 言葉 ノ中 ニ国 体変 革 ノ希 望 ヲ以 テ ト云 フ

デ私 ガ 一ツ ハツ キ リ御尋 ネ シ テ置 キ タ イ ト思 フノ ハ、 五条 ニ所 謂 煽

フ ヤ ウ ナ認 識 ヲ以 テ ヤ ル場 合 ハ、 共 産党 ノ 認識 ハナ ク ト モ、 自 分 ハ

底的 ニ押ヘ ナケ レバ ナ ラ ヌト思 ヒ マ スガ、 ド ウ カ スルト 片 言 隻句 ヲ

共 産 主 義 者 デ ア ラウ ト思 ハナ クト モ、 其 ノ 人 ノ性格 如 何 ニ拘 ラズ直 チ ニ第 五条 ノ罪 ヲ構 成 スル ヤウ ニ思 フノデ スガ、如 何 デ ア リ マ スカ

非 常 ニ多 ク ノ モ ノガ此 ノ第 五 条 ニ引 掛 ツテ来 ルト 思 フノ デ ス、 是 ハ

居 ル所 ハ抜 ケ テ シ マヒ マ スシ、 厳 密 ニ非常 ニ強 ク 解釈 シテ行 ク ト、

新 シイ規 定 デ 、 適 用 ノ範 囲 ガ非 常 ニ明 確 ニナ ツ テ居 ナイ モノ デ スカ

捉ヘ テ押ヘ ラ レル コト ガ ア ルノデ ス、 オ前 ハ国 体 変 革 ノ宣 伝 ヲ ヤ ル ノ ヂ ヤナ イ カ、 社 会 主義 ノ宣 伝 ヂ ヤ ナイ カ ト︱

ラ、 一ツ明確 ニ御 説 明願 ツテ置 キ タ イト思 ヒ マ ス

宣 伝 ト云 フ用語 モ、

今 ノ御 説 明 デ ハ非 常 ニ厳 密 ナ御 解 釈 ノ ヤウ デ ア リ マ スガ、 実 際 法律

流 布 ト云 フ言葉 デ 現 ハサ レ ル コト ニ ナ ルト存 ズ ル ノデ ア リ マシ テ、

○ 太 田政 府 委 員  此 ノ宣 伝 ノ場 合 ニ於 キ マシテ ハ、其 ノ事 項 ヲ他 人

此 処 ニ於 キ マス ル宣伝 ハ、 流 布 ト ハ違 ヒ マ シテ、 ヤ ハリ積 極 的 ナ意

用 語 ト シテ宣 伝 ト云 フ言 葉 ヲ使 ツ タ場 合 ハ、 ソ ンナ ニ厳 密 ナ要素 ヲ

共 鳴 セ シメ ルト云 フ、 強 イ意 思 ガ ソ コニ作 用 シテ ナ ク テ モ、 其 ノ多

図 ヲ以 テ ナサ レ ル コト ガ必 要 デ ア ラウ カ ト存 ジ マス、 尚 ホ ﹁第 一条

ニ愬ヘ テ共 鳴 ヲ求 メ ルト 云 フ、 積 極 的 ナ意 図 ヲ必 要 ト ス ル場 合 デ ア

数 人 ノ前 ニ行 ツ テ、多 数 人 ニ対 シ テ ソ レ ヲヤ ル コト 自 体 が 宣 伝行 為

乃至 第 三 条 ノ目的 ヲ以 テ﹂ ト 云 フ風 ニ記 載 致 シテ居 リ マ スノ ハ、 是

必要 ト ス ルノ ヂ ヤ ナイ ヤウ ナ気 ガ ス ル ノデ ス、 例ヘ バ不 特 定 多数 人

ニ ナ ルノ ヂ ヤ ナ イデ セウ カ、 仮 ニ全 ク反 対 ノ陣 営 デ ア ツ テ モ、全 然

ハ ﹁第 一条 乃 至第 三条 ノ目 的 ヲ以 テ﹂ ト云 フ風 ニ、 ﹁ 第 一条 乃 至 第

リ マ ス、 単 ニサ ウ 云 フ事 項 ヲ、 所 謂 通 俗 ニ言 フ宣 伝 致 シ マス コト ハ、

望 ミ ノ ナ イ所 ニデ モ行 ツテ、 大 イ ニ主義 主 張 ヲ高 調 スル コト ハ、 此

三条 ﹂ ト 云 フ言 葉 ヲ出 シ マシ タ モノ デ ス カ ラ、 此 処 ニ ﹁目的 ヲ 以

テ其 ノ相 手 方 ヲ説 得 シ、 納 得 セ シ メ テ、自 分 ノ意 思 ニ合 流 セ シメ、

処 ニ所 謂 宣 伝 行 為 ニナ ルト思 フ ノデ ス、 又 サ ウデ ナ ケ レバ法 ノ 目的

テ﹂ ト云 フ風 ニ、 ﹁以 テ﹂ ト 云 フ言葉 ニナ ツ テ居 ルノデ ア リ マ ス ル

ノ場 合 、 大 勢 ノ前 ニ出 テ来 テ言 フト 云 フ コト ハ、 自 分 ノ言 論 ニ依 ツ

ハ逮 セラ レ ヌト思 フ、 其 ノ両 面 ヲ私 ハ持 ツ ト思 フ ノデ ス、意 識 シナ

シテ モ、 ﹁目的 ト シテ﹂ ト 云 フ コト ニ読 ンデ 行 キ タ イト 存 ジ テ居 ル

クテ モ之 ヲ自 分 ガ説伏 セテ自 己 陣 営 ニ獲 得 シ、 乃 至 ハ共鳴 セ シメ ル

ノデ ゴ ザ イ マ ス、 ﹁ 目 的 ヲ以 テ﹂ ト書 キ マシテ モ︱

ガ、 一条 乃 至 二条 三条 ヲ見 マス レバ、 ﹁ 目 的 ト シテ﹂ ト 云 フ 言 葉 デ

勿 論 認 識 ガ ナケ レバ イ ケ マセ ヌガ、 其 ノ認 識

総 テ現 ハシテ居 ルノデ ア リ マシテ、 随 テ此 ノ第 五条 ノ場 合 ニ於 キ マ

翼 ノ思 想 ノ認 識 ハ︱

目 的 ヲ現 ハシテ居 ル ノデ アリ マスガ、 併 シ是 ニ ハ多 少 判 例等 ニ於 テ

フ目的 ハナ ク テ モ、唯 自 分 ハ左 翼 ノ思 想 ヲ大 イ ニ主 張 ス ルノ ダ、 左

ノ下 デ ヤ ツタ場 合 、 主 張 ス ル コト ニ依 ツテ多 ク ノ同 志 ヲ得 ルト カ、

モ、 認 識 ヲ以 テ足 ルト 云 フ ヤウ ナ曖 昧 ナ判例 モア ル ヤ ウデ ゴ ザ イ マ

ト 云 フ目 的 ヲ以 テ ヤ ツテ モ、 サ ウデ ナイ場 合 モア リ マス、 又 サ ウ 云

自 分 ノ主 義 ニ共 鳴 セ シメ ルト カ云 フ意 思 ハナ ク テ モ、 ソ レ ハ宣 伝 ニ

スガ、 此 ノ第 五条 ノ場 合 ニ於 キ マ シテ モ、 ﹁目的 ト シ テ﹂ ト 云 フ風

キ マシ テ ハ、 現 行 法 ノ解釈 ノ下 ニ於 キ マシテ ハ、 是 ハ単 ナ ル認 識 デ

ニ是 ハ読 ムベ キ モノデ アリ マ シテ、 ﹁ 目 的 ト シテ﹂ ト云 フ場 合 ニ於

是 ハ勿 論 動 機

ニ論文 ヲ書 ク場 合 モ、之 ニ当 嵌 マルト 思 フ、 書 物 ニ書 ク場 合 モ之 ニ

ナ ル、 是 ハ言 葉 デ ヤ ル場 合 モ文 章 デ ヤ ル場 合 モ同 ジ コト デ ス、 雑 誌

ガ、 部 分 的 ニ捉ヘ テ 行 クト、 非 常 ニ多 クノ行 為 ガ此 ノ適 用 ヲ受 ケ ル

ハナイ 、相 当 ナ ル動 機 ガ ソ コカ ラ出 発 シ テ来 ル コト ヲ必 要 ト ス ルト

当 嵌 マルト思 フ、 書 物 ノ全 体 ヲ流 レテ居 ル思 潮 ヲ見 レバ 分 ルノ デ ス

ヤウ ニ考ヘ ラ レルノ デ ス、 此 ノ解釈 ヲ ﹁ルーズ ﹂ ニ スレバ、 狙 ツ テ

○ 三 田村委 員  能 ク分 リ マシタ、 国 体 変 革 罪 ニ関 ス ル御 尋 ネ ハ大 体

非 常 ニ除 カ レ ルノ デ ハナ カ ラウ カ ト存 ジ マ ス

云 フ ヤ ウ ニ、 大体 解 釈 サ レ テ居 リ マ スノデ 、 御 心配 ノ ヤ ウ ナ点 ハ、

ナイ コトデ ア ルト思 ヒ マ ス、 併 シ其 ノ後 ノ運 用 ヲ見 マ ス ル ニ、 更 ニ

法 サ レ マシ タ モノ デ ア リ マ ス コト ハ、 是 ハ沿 革 ニ徴 シ マシ テ疑 ヒノ

主義 及 ビ共 産 主 義、 更 ニ民 族 主義 、 此 ノ ヤ ウ ナ モノ ヲ取 締 ル為 ニ立

○ 太 田政 府 委 員  申 上 ゲ ル マデ モ ナク治 安 維 持法 ハ、 最 初 ニ無 政 府

ニ記 憶 シテ居 リ マスガ、 モウ 一度其 ノ点 ヲ確 認 致 シタ イ ト思 ヒ マス

左様 ナ無 政 府 主 義、 或 ハ共 産 主義 ト 云 フヤ ウ ナ、 所 謂社 会 主 義 ニ関

以上 デ 終 ツ タ ノデ ア リ マスガ、 此 ノ機 会 ニ此 ノ国 体変 革 罪 其 ノ モノ

革 ニ帰 ラ ナケ レバ イ カ ヌト 思 ヒ マ スガ、 最 初 ニ申 シ マシ タ如 ク、 本

ナ団 体 ニ対 シ マシテ モ、 適 用 サ レ テ参 ツ タ ノデ ア リ マ ス、 所謂 類 似

係 ノ ナイ思 想 カ ラ出 発 致 シ マシテ、 ヤ ハリ国 体変 革 ヲ企 図 スル ヤウ

ニ付 テ ノ御 見 解 ヲ少 シ伺 ツ テ置 キ タ イ ノデ ア リ マス、 是 ハ立 法 ノ沿

法 ハ社 会 主義 、 所 謂 共 産 主 義 、 ソ レヲ対 象 ニシテ 生 レタ モノ デ ア リ、

ラ、 今 日 ニ於 キ マシテ ハ、 単 ニ社 会 主義 ヲ取 締 ルト 云 フヤ ウ ナ法 律

宗教 団 体 ニ対 スル適 用 ガ ソ レデ ゴ ザ イ マシ テ、 左 様 デ ゴ ザ イ マスカ

国 体 変 革 ノ用 語 モ ソ コカ ラ来 テ居 ルト思 ヒ マス、併 シ今 日此 処 ニ国

ニ モア ツ タト 思 ヒ マスガ、 唯 独 リ 共産 主 義 ト カ、 社会 主 義 ト カ、 或

ヨウ ト ス ル者 一切 ニ対 シテ、 十 分 ニ之 ヲ適 用 シ、 之 ヲ検 挙 シ テ行 ク

デ ハナイ ノデ アリ マシテ、苟 ク モ国 体 ニ対 シテ不 逞 ナ ル変 更 ヲ加 ヘ

体 変 革 ト云 フ文 字 ヲ使 ツ タ場 合 ハ、 先 般 此 ノ提 案 理由 ノ御 説 明 ノ中

ハ無 政 府 主 義 ト 云 フ モノ ヲ対象 ニ ス ルノ デ ハナ クテ、 立 法 ノ沿 革 ハ

マシ タ、此 ノ ﹁国 体 ヲ否 定 シ又 ハ神 宮若 ハ皇 室 ノ導 厳 ヲ冒涜 スベ キ

ベキ 任 務 ヲ持 ツ タ法律 デ ア ルト云 フ風 ニ考 ヘテ居 リ マス

事 項 ヲ流布 ス ル コト ヲ目的 ト シ テ﹂ ハ、 是 モ 一ツ ノ目的 罪 デ ス、 目

ルト ヲ問 ハズ 、苟 ク モ日本 ノ国体 ニ変 革 ヲ加 ヘル モノ、 領 土 ノ僣竊

変 更 サ レ テ、 此処 ニ謂 フ国 体 変革 罪 ト 云 フモ ノ ハ、其 ノ思 想 ノ何 タ

ア ツテ、 従 来 此 ノ立法 ノ沿 革 ト シテ持 ツテ居 リ マシタ社 会 主 義 ト カ、

的 罪 デ アリ マスガ、 是 ハ所 謂 類 似 宗 教 ト カ何 カ ニ適 用 サ レ ルモ ノト

ガ、 ﹁ 国 体 ヲ否 定 シ﹂ 云 々ノ趣 旨 ハ、 先般 中 村 君 ガ御 尋 ネ シ テ 分 リ

共産 主 義 ト カ、 所 謂 ﹁マ ルキ シズ ム﹂無 政府 主 義 ト 云 フ モノ ヲ対 象

思 ヒ マスガ、 此 ノ目 的 モ最 初 ニ国 体 変 革結 社 ニ付 テ前 ニ御尋 ネ シ タ

○ 三 田 村委 員  分 リ マシタ、 第 七 条 、第 八条 ニ付 テ御尋 ネ致 シ マス

ニ ス ルダ ケデ ナ クテ、 広 ク国 体変 革 ニ関 ス ル 一切 ノ思 想 行 動 ヲ、 之

通 リ、其 ノ宗 教 ノ全 部 ガ斯 クノ如 キ目 的 ヲ持 ツ テ居 ナ クテ モ、 即 チ

ヲ希望 スルト カ、天 皇 大 権 ヲ否定 ス ルト カ、 主 権 ノ存 在 ヲ否 認 スル

ニ依 ツ テ取 締 ル ノダ ト 云 フ解 釈 ガ必要 デ ナ イ カ ト思 ヒ マス、 サ ウ云

ト カ 云 フ目 的 ヲ以 テ ヤツ タ場 合 ハ、 全 部 此 ノ国 体 変革 罪 ニ入 ル ノデ

フ解 釈 ヲ シ テ置 ク コト ガ、 一面 ニ ハ治安 維 持 法 ト云 フ モノ ガ、 社 会

ノ或 ル部 分 ガ之 ニ該 当 スレバ、 此 ノ第 七 条 ノ適 用 ヲ受 ケ ルト思 ヒ マ

主 タ ル目的 ガ此 処 ニナ ク テ モ、 従 タ ル目 的 ガ之 ニ該 当 シ、其 ノ目 的

スガ、 如 何 デ ア リ マ スカ

マ ス如 ク、 名 目 ハ宗 教 デ ア ツ テ モ何 デ ア ツテ モ、 其 ノ行 為 ノ内 容 ガ

○太 田政 府委 員  御 説 ノ通 リデ ゴ ザ イ マ ス、殊 ニ類 似 宗 教 団体 ニア

主義 取 締 法 ダ ト云 フ認識 カ ラ離 レ テ、 後 段 七条 、 八条 ノ規 定 ニア リ

ツテ宜 イ ノ デ ハナ イ カト思 ヒ マ ス、其 ノ ヤウ ナ御 説 明 ヲ聴 イ タ ヤ ウ

国 体 変 革 ニナ レバ、 之 ニ依 ツ テ処 罰 サ レ ルト云 フ コト ガ、 明 カ ニナ

ハ、 ヤ ハリ宗教 的 ナ モノ ヲ持 ツ テ居 ル コト ガ多 イ ノ デ ア リ マ スカ ラ、

イ ノデ ゴザ イ マス、 随 テ不 逞 ナ ル思想 ヲ流 布 スル反 面 ニ於 キ マシ テ

リ マシ テ ハ、反 面 ヤ ハリ ソ レガ 宗 教的 ナ色 彩 ヲ帯 ビ テ居 ル コト ガ多

ヒ マ ス

ニ シテ戴 キ タイ ト思 ヒ マ ス、其 ノ 点 ノ御 所 見 ヲ伺 ツ テ置 キ タ イ ト思

斯 ウ云 フ モノ ニ ハ須 ク斯 ウ 云 フ規 定 ヲ活 用 サ レテ、 大 イ ニ取 締 ヲ厳

族 運 動 ノ役 割 ヲナ シテ居 ル コト ハ、 当 局 御 承知 ノ通 リダ ト思 ヒ マス、

スト、 朝 鮮 ニ ハ又 特 有 ノ宗 教 ガ ア リ マス、是 ナド ガ 非 常 ニ大 キ ナ民

○ 太 田政 府 委 員  宗 教 団 体 法 ニ依 リ マ シテ、或 ハ宗 教 団 体 ト シ︱

御 説 ノ ヤウ ナ場 合 ニ ハ寧 ロ多 カ ラ ウト 存 ジ マス

デ アリ マ スガ、 戦 争 ガ 長 期化 シ、 又 ハ社 会情 勢 ガ非 常 ニ難 カ シク ナ

テ居 ル モノ ニ付 キ マ シテ ハ、 大 体 認可 致 シ マス際 ニ、 文 部 省 ノ方面

宗 教 結 社 ハ マア届出 ダ ケデ ア リ マスガ、 宗 教 団 体 ト シテ認 可 ヲ受 ケ

○ 三 田村 委 員  先般 来 国 防 保 安 法 ノ委 員 会 デ モ、屡々 論 議 サ レタ ノ

ツ テ参 リ マスト、 宗 教 的 ナ魅 力 ト云 フ モノ ガ非 常 ニ強 イ ノデ ス、 此

思 想 戦 ノ点 カ ラ言ヘ バ 、 立 派 ニ宗 教 団 体 法 ニ依 ツテ確 認 サ レ タ宗 教

似 宗 教 ト 称 セラ レル モ ノ ニ対 シテ御 注 意 サ レ ルダ ケ デ ナ シ ニ、所 謂

ハ、 非常 ニ結 構 ダ ト思 ヒ マスガ、 唯 新 シ ク出 来 テ来 ル宗教 、 所謂 類

○ 三 田村 委 員  此 ノ第 七条 ノ犯 罪 態 様 デ ア リ マスガ、 結 社 行 為 ハ今

於 キ マ シテ ハ、 適 当 ニ処 置 シ テ行 キ タイ ト存 ジ マス

ウ 云 フ モノ ガゴ ザ イ マ シタ ナ ラバ 、勿 論 本 案 ノ成 立致 シ マシ タ後 ニ

八条 ニ触 レル ヤウ ナ場 合 ハナ カ ラウ カト存 ジ マス、 併 シ万 一ニモサ

テ後 ニ認 可 サ レ ル ヤウ デ ア リ マ スカ ラ、 大 体 ニ於 キ マ シテ此 ノ七条 、

ニ於 キ マシ テ、非 常 ニ厳 重 ニ其 ノ教義 ノ内 容 等 ニ モ立 至 ツ テ、 調ベ

ノ宗 教的 ナ魅 力 ヲ利 用 シタ思 想 運 動 ガ、 益々 盛 ン ニナ ツ テ来 ルト考

デ モ、 私 ハ非常 ニ注 意 シ ナケ レバ ナ ラ ヌ点 ガ ア ルノデ ハナ イ カト思

御話 デ能 ク分 リ マシタ ガ、 私 ハ其 ノ結 社 行為 自 体 デ ナク テ、 結 社 ノ

ナヘ ケ レバ ナ ラ ヌト思 フ ノデ ス、 ソ レデ 斯 ウ 云 フ規 定 ガ出 来 タ コト

フ、 例ヘ バ ﹁キ リ スト﹂ 教 ノ如 キ、 モウ既 ニ手 入 ヲサ レタ ノデ ア リ

構 成員 、 乃至 構 成 員 デ ナ ク テ モ、 今 言 ツタ ヤ ウ ニ、 ﹁キ リ ス ト﹂ 教

フ ヤウ ナ コト ヲ、 ド ンド ント宣 伝 スル者 ガ居 ルノデ ア リ マス、 サ ウ

マ スガ、 是 ハ思 想 戦 上 非 常 ニ大 キ ナ役 割 ヲ果 スト思 フ、 斯 ウ云 フ モ

云 ウ者 ハ私 ハ之 ニ依 ツ テ押ヘ テ行 カ ナ ケ レバ ナ ラ ヌ場 合 ガ多 イ ノデ

ノ ハ国 ヲ毒 ス ル コト ガ非 常 ニ大 キイ ノデ ア リ マシテ、 国 体 ヲ否 定 ス

ト言 ハザ ル ヲ得 ナ イ ト思 フ、 今 日 ノ状 態 ニ於 テ、 サ ウ 云 フ場 合 ニ ハ、

ハナイ カト思 ヒ マ ス、宗 教団 体 法 ニ依 ツ テ認 可 サ レ タ其 ノ宗 教 自 体

﹁キリ スト﹂ ア ル ノミ、 世 界 ノ支 配 者 ハ ﹁キ リ スト ﹂ ア ルノ ミ ト云

唯 類 似 宗 教 ヲ取締 ル コト ヲ対 象 ニス ルダ ケデ ナ ク、 既 成 ノ宗 教 、 現

ハ、 ソ レガ合 法 性 ヲ持 ツト シテ モ、 其 ノ結 社 ノ名 ニ於 テナ シタ行 為

ナド ガ宣 伝 カ何 カ ヤ ル場 合 ニ、 非 常 ニ徹 底 シ タ コト ヲ 言 フ、 神 ハ

ニ相 当 ナ力 ヲ持 ツテ ヤツ テ居 ル モノ デ モ、 思 想 戦 ノ 上 ニ於 テ、 思 想

ハ、 ヤ ハリ本 法 ノ適 用 ヲ受 ケ テ宜 イ ノデ ハナイ カ ト思 ヒ マス、 其 ノ

ル目 的 ヲ確 認 シナ ク テ モ、 神 宮 又 ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ冒涜 ス ルト云 フ コ

国 防 ノ上 ニ於 テ、 此 ノ治 安 維 持 法 ノ持 ツ任 務 ノ役 割 ノ 点 ニ於 テ、 第

教 団 自 身 ガ宗 教 団 体 法 ノ認可 ヲ受 ケ テ居 ルカ ラ、 其 ノ教 団 ノ ナ ス行

ト ヲ確 認 シ ナク テ モ、 結 果 ニ於 テ斯 ウ 云 フ ヤウ ナ モノ ガ非 常 ニ多 イ

ヒ マ ス、 殊 ニ ﹁キ リ スト﹂ 教 ナド ハサ ウデ ア リ マス、 朝 鮮 ニ参 リ マ

七条 、 第 八条 ノ規 定 ガ出 来 タ以 上 、 私 ハ厳 重 ナ ル取締 ガ必 要 ダト 思

自由 ヲ保 障 セ ラ レテ居 ル所 デ アリ マス、随 テ憲 法 ノ御精 神 ニ従 ヒ マ

テ マシタ私 共 ノ考ヘ ヲ申 シ マ スト 、 大 体宗 教 ハ憲 法 ニ依 ツ テ信 教 ノ

本 案 ノ関 知 セザ ル所 ニナ ルノダ ト 存 ジ マスガ、 左 様 ニ其 ノ制度 ヲ立

ダ ケ デ ア リ マ ス、 随 テ其 ノ個 々 ニ致 シ マシ タ場 合 ニ於 キ マシテ ハ、

ノ ハ、 七条 、 八条 ノ場 合 デ ア リ マシ テ、何 レ モ団 体 ニ関 係 シタ場 合

○ 太 田 政 府委 員  本 法 ニ於 キ マシ テ、 類 似 宗 教 ヲ取 扱 ツ テ居 リ マス

用 ヲ受 ケ ル場合 ガ ア ル ヤウ ニ考ヘ マ スガ、如 何 デ ア リ マセ ウ

為 ハ 一切 ガ合 法 化 サ レ ルノ デ ナ ク テ、 ヤ ハリ個 々ノ行 為 ハ本法 ノ適

尋 ネ ヲ シ タノ デ スガ、 サ ウ ス ルト抜 ケ ル モ ノガ ア ルト思 フ、 私 ハ今

○ 三 田村 委 員  私 モサ ウ云 フ風 ニ読 ンダ ノデ ス、 読 ミ マ シタ カ ラ御

次 第 デ ゴザ イ マス

体 法 ノ運 用 ニ依 ツテ、 然 ルベ ク処置 出 来 ルダ ラウ ト 云 フ風 ニ考ヘ ル

マデ行 政 処 分 ヲ以 テ命 ゼ ラ レ ル コト ニナ ツ テ居 リ マス、 大 体 宗 教 団

思 ヒ マ スガ、 左 様 ナ教 師 ノ行 動 ニ依 リ マシ テ、結 局 宗 教 団 体 ノ解散

ヤウ ナ場 合 ノ処置 デ ア リ マ スガ、 是 ハ宗教団 体法 ノ慥 カ十 六 条 ダ ト

ニ該 当 スル コト ハ、 中 々容 易 ニア リ得 ナ イ コト ダ ト思 フ ノデ ス、問

ニ該 当 ス ル モノ ハナ イ ト思 フ、 直 接 宗 教 団 体其 ノ モノ ガ七 条 、 八 条

題 ハ宗 教 ノ名 ニ依 ル個 々ノ行 為 デ ア リ マシテ、 ソ レ ハ第 四 条 、第 五

日合 法 的 ナ宗 教 団体 ト シテ表 面 出 テ居 ル モ ノ ハ、 恐 ラ ク七 条 、 八条

マス コト ハ、 面 白 ク ナ イ ヤ ウ ニ存 ジ タノデ ア リ マ ス、併 シ ナガ ラ臣

条 デ抑ヘ テ居 ルト同 様 ニ、抑ヘ ナ ケ レバ ナ ラ ヌ行 為 ダ ト 思 フ ノデ ス、

シテ、 之 ニ対 シ テ余 リ ニ処 罰 ヲ加ヘ テ行 ク ト云 フ ヤウ ナ結 果 ニナ リ

ハ、 是 ハ勿論 憲法 ノ上 ニ於 キ マシテ モ信 教 ノ自 由 ノ ナイ所 デ ア リ マ

民 タ ル義 務 ニ背 キ、 或 ハ安 寧 秩 序 ヲ害 ス ルヤ ウ ナ宗 教 ニ付 キ マ シテ

ス、 併 シ其 ノ範 囲 ニ於 キ マシ テ モ、 国 体 ニ直接 ニ関係 シ、 或 ハ国 体

ツ テ居 ル場 合 モア ル、 例ヘ バ 三 田村 武 夫 ト 云 フ者 ガ 一ツ ノ新 シイ宗

ノ ハ、 一ツノ集 団 ヲ形 成 ス ル コト ヲ必要 ト シテ ナ イ ノデ 、 個 人 ガ持

本 案 ヲ以 テ取締 ルヤ ウ ニ致 シ、 其 ノ余 ノ モ ノ ニ付 キ マシテ ハ、 大 体

教 ヲ作 リ得 ル、 誰 ニモ之 ニ加 入 ヲ求 メ マセ ヌガ、 其 ノ思 想 ハ大 イ ニ

又 宗教 其 ノ モノ ノ存 在 ノ性格 カ ラ言 ツ テ モ、 必ズ シ モ宗 教 ト 云 フ モ

宗 教 団 体 法 ノ 運用 ニ依 ツテ、 行 政 的 ニ処 理 セ ラ レテ行 ク ベ キ モ ノデ

宣 伝 シ、 大 イ ニ其 ノ教 義 ヲ説 クト云 フ場 合 ハ、 是 ハ七 条 、 八 条 ノ結

ノ基 礎 ニ直接 関係 致 シ マス ヤウ ナ、 非 常 ニ不 逞 ナ モノ ニ限 リ マ シテ、

ア ラウ ト 云 フ風 ニ考ヘ タノ デ ア リ マ ス、 随 ヒ マシテ 只今 御 話 ノ ア リ

ツテ来 ルノデ ア リ マス、是 ガ抜 ケ ル コト ハ私 ハ四 条 、 五条 ノ場 合 ト

同様 ニ困 ルト思 ヒ マス、 殊 ニ此 ノ思 想 戦 ヲ強 化 シ ナ ケ レバ ナ ラナ イ

社罪 ニ ハナ リ マセ ヌ ガ、 正 ニ其 ノ行 為 ハ抑ヘ ナ ケ レバ ナ ラ ヌ訳 ニナ

敬 ヲ ナ シタ其 ノ面 白 カ ラザ ル コト ノ内 容 ガ 、其 ノ団 体 ノ教 義 カ ラ直

今 日、 寧 ロ私 ハ個 々 ノ行為 ヲ抑ヘ ル コト ガ必 要 デ ア ツテ、 御 話 ノ ヤ

マシ タ ヤウ ナ其 ノ或 ル 一ツノ宗 教 団 体 ノ、 教 師 ガ、 非 常 ニ不 敬 ナ面

接 出 テ参 ル、 随 テ其 ノ団 体 自 体 ガ左 様 ナ不敬 ナ面 白 カ ラザ ル教 義 ヲ

ウ ニ宗 教 団 体 法 ニ依 ツテ認 メ ラ レタ現 在 ノ宗 教 団 体 ト シテ ハ、 恐 ラ

白 カ ラザ ル コト ヲ ナ シタ ト 云 フヤ ウ ナ場 合 ニ於 キ マ シテ ハ、 其 ノ不

持 ツテ居 リ マス場 合 ニ於 キ マシ テ ハ、 或 ハ七条 、 八 条 ニ触 レ ル場 合

ク ハ七 条 、 八 条 ニ該 当 ス ル モノ デ ハナイ デ ア ラウ ト思 フ、 寧 ロ其 ノ

宗 教 ノ名 ニ依 ツ テナ サ ルヽ個 々ノ行 為 ヲ、 今 日問 題 ニシナ ケ レバ ナ

モア ラ ウ カト 存 ジ マ スガ、然 ラズ シテ団 体 自 体 ガ 左 様 ナ教 義 ヲ持 ツ テ居 ル ノデ ハナ イ、 併 シ之 ニ関 聯 シテ教 師 ガ左 様 ナ教 義 ヲ宣 伝 シタ

○ 太 田政 府委 員  此 ノ第 七 条或 ハ第 八条 ニ於 テ問 題 ニ致 シ マ ス思 想

ケデ ア ル カ ラ駄 目 ダ ト思 ヒ マスガ、 其 ノ点 ヲ 一ツ承 ツテ置 キ タ イ

ル、 ド ノ点 デ サ ウ云 フ モ ノ ヲ抑ヘ ルカ、 宗 教 団 体法 デ ハ行 政 処 分 ダ

行 為 ヲ此 処 デ抑ヘ テ居 ナイ コト ハ、 非 常 ニ大 キナ 穴 ノ ヤウ ナ気 ガ ス

ラ ヌト 云 フ コト ヲ考ヘ マシ タ時 、 私 ハ結 社 罪 ダ ケ ヲ抑ヘ テ、 個 々ノ

クベ 急 イ デ ヤリ マ スケ レド モ、 サ ウ 云 フ意 味 ニ於 テ十 分 一ツ此 ノ重

処 ハ吾 々ノ納 得行 ク マデ ヤ ラナ ケ レバ ナ ラ ヌト思 ヒ マ ス、 但 シ成 ル

日 審 議 ガ遅 レ ヤウ ガ、 ソ ン ナ コト ヲ躊躇 スル コト ハナ イ、 兎 モ角此

始 マラ ヌ、 ソ レデ ア ル カ ラ時 間 ナド ハ慌 テ ル コト ハナ イ、 一日 ヤ二

ア リ マス、 種 子 ヲ蒔 イ テ後 カラ刈 取 ツ テ追 駈 ケ テ歩 イ タ所 デ 、是 ハ

此 処 ヲ文 部 大 臣 ガ 一大 決 心 ヲ持 ツテ始 メ ニヤラ ナ ク テ ハ駄 目 ナ ンデ

ル思 想 デ ア リ マ スガ、 国 体 ヲ否 定 ス ル思 想 ハ、 斯 ウ 云 フ宗 教 団 体 ノ

取 締 ガ緩慢 ト 言 ヒ マセ ウ カ、余 リ ニ モ講 義 ヲ ヤ リ放題 ニシ テ投 ゲ過

尊 重 スルト 云 フ ヤウ ナ意 味 カ ラ、 学 校 ノ講 義 ニ付 テ ハ文 部 省 ハ多少

大 性 ヲ考ヘ テ戴 キ タ イ ノデ アリ マス︱

ド ウ モ私 ノ考ヘ デ ハ学 問 ヲ

或 ハ神宮 若 シク ハ皇 室 ノ尊 厳 ヲ冒涜 ス

中 ニ ハ非 常 ニア ルト存 ズ ルノデ ゴザ イ マスガ、 個 人 的 ノ場 合 ニ於 キ

ハ、 国 体 ヲ否定 ス ル思 想︱

マ シテ ハ、 余 リ ナ カ ラ ウ ト存 ズ ル ノデ ア リ マ ス、 寧 ロサ ウ 云 フ風 ナ

ト云 フ モ ノ ガア ツタ、 今 度 ハ勅 令 カ何 カ デ ヤ ツ タ ヤウ デ ア リ マスケ

レド モ、 ア レガ 一ツノ独 立 国 ヲ成 シテ居 ルヤ ウ ナ モノ デ、 文 部 大 臣

ギ テ置 イ タ ノデ ハナ イ カト 云 フ心 配 ガ ア ル、 現 ニ従来 大 学 ニ教 授 会

ノ権 限 モ何 モ及 ビ ハシ ナ イ、 大学 ノ教 授 会 デ 勝 手 ニ教 員 ヲ決 メ テ、

神宮 若 シク ハ皇 室 ノ尊厳 ヲ冒涜 ス

ノ デ ア リ マ スガ、 此 ノ場合 ニ於 キ マシテ ハ、 勿 論 刑法 ノ不敬 罪 ノ規

個 人 的 ナ場 合 ニ於 キ マ シテ ハ︱

定 ノ適 用 モゴザ イ マス シ、 或 ハ新 聞 紙 法、 出 版 法 等 ニ依 リ マス ル尊

デ モ︱

此 処 デ 決 メ タ所 ノ教 員 ヲ文 部 省 ハド ウ ス ル コト モ出来 ナイ、馘 ル ノ

ベ キ事 項 ヲ流 布 ス ルヤ ウ ナ場 合 ガ、往 々 ニシ テ ア リ得 ルカ ト存 ズ ル

厳 冒涜 ニ関 スル処 罰 規則 モゴザ イ マス ノデ、 ソ レヲ以 テ十分 取 締 リ

ニシ テ シ マ ツテ居 ル点 ガ ア ル、 サ ウ シ テ政府 ノ方 デ ハ其 処ヘ 伴 食 大

斯 ウ 云 ツタ ヤ ウ ナ学 問 至 上 主義 ノ頭 デ居 ルノ デ、 行 政 官 ナド ヲ馬 鹿

ハ学 術 ノ根 源 ヲ ヤ ル所 デ 一番 偉 イ者 ノ集 マリ ダ ト思 ツ テ居 ル ラ シイ、

先 生 ニ聴 ク ト、 文 部 省 ナ ド ハ最 モ頭 ノ悪 イ官 吏 ガ行 ツ タノ デ、 此 処

イ権 力 ヲ持 ツ テ威 張 ツテ居 ルヤ ウ ナ状 態 ニナ ツ テ来 テ居 ル、 大 学 ノ

詰 リ任免黜陟 ヲ自 由 ニ教 授 会 ガ ヤ ル、 是 ガ文 部 省 ヨリ モ強

得 ルト 云 フ風 ニ考ヘ ル次 第 デ ゴ ザ イ マス 第七十六回帝国議会治安維持法改 正法律案委員 会議録 ( 速記) 衆 議 院  第六回

昭 和 十 六年 二月 十 七 日 (月 曜 日)

ツ タ ノデ ス、 是 ハ マア大 分 今 日 ハ勅 令 ノ改 正 ナド ヲ ヤ ツテ改 マツタ

臣 ヲ据 ヱ ル、 社 会 モ文 教 ノ 府 ヲ軽 ンズ ル、斯 ウ 云 フ ヤウ ナ状 態 デ ア

ヤ ウデ ア リ マス ルケ レド モ、是 モ マダ〓

○ 猪 野 毛 委 員  一寸 申 上 ゲ テ置 キ タ イ ト思 ヒ マス、 何 ト シテ モ文 教

際 ニ ハ長 鞭 馬腹 ニ及 バ ズ ノ感 ガ ア リ マ ス、 今 迄 ニ間 違 ヒガ出 来 ナ カ

形 式 的 ニ流 レテ居 テ、 実

正 シテ、 此 処 デ シツ カ リ シ タ コト ニ シナ ケ レバ 、 内 務、 司 法 等 、 如

ノ府 ノ関係 カラ赤 ガ出 テ来 ル所 ニ根源 ガ ア リ マス ルカ ラ、 此 ノ本 ヲ

何 ニ法律 デ 取締 ツ タ所 デ 、 是 ハ後 ヲ追 駈 ケ テ走 ル ヤウ ナ モノデ ア ル、

ツ タ時 ナ ラバ、 大 体 大学 ノ自治 ニ 一任 シテ置 イ テ モ宜 イ ケ レド モ、

ニモ憚 リ マ スカ ラ、 成 ルベ ク 名前 ハ申 サ ヌ ヤウ ニシ タイ ト思 ヒ マ ス

モ未 ダ実 ニ危 険 ナ モノ デ ス、 ド ウ モ名前 ヲ言 フ コト ハ私 ハ本 人 ノ為

ノ方 ガ 重 イ ト云 フ頭 ニナ ツ テ シ マツ テ居 ル、 ソ レダ カ ラ国 内 法 ガ国

ニナ ルノ ハ、 多 少 諒 ト セネ バ ナ ラ ヌケ レド モ、 国 内 法 ヨリ ハ国 際 法

ガ、 名 ヲ言 ハナ ケ レバ具 体的 ニナ ラ ヌ ノデ、 一寸 困 ツタ モノ デ ス、

丁 度 過 チ ヲ シタ後 デ ア リ マス ルカ ラ、 余 程 教 授 ノ人格 、 性 格 、 講 義

料 ハ私 共多 分 ニ此 処 ニモ此 ノ 通 リ持 ツテ居 ル ノデ ア リ マ ス、 各 大 学 、

際 法 ノ下 ヲ行 ク モノ、 国 際 法 ノ前 ニ国 内 法 ガ頭 ヲ下 ゲ ル、斯 ウ 云 フ

ノ内 容 ニ マデ 一ツ 一ツ深 ク立 入 ラ ナ ク テ ハナ ラ ヌト思 ハ レ マ ス、吾

専 門 学 校 ナド デド ウ モ寒 心 スベ キ思 想 ヲ持 ツ テ居 ル先 生 ガ多 イ、 斯

観 念 ヲ持 ツ テ居 ル ヤウデ ア リ マス、之 ヲ学 生 ニ講 義 ス ルト 、 学 生 ノ

コト ヲ書 イ テ ア ル、 国際 法 ヲ ヤ ツ テ居 ル人 ハ、 国 際 法 至 上主 義 観 念

ウ云 フ講 義 ヲ聞 イ テ居 タ日 ニ ハド ウ セ碌 ナ人 間 ニ ハナ レ ヌ、 ソ レデ

頭 ハ国際 法 至上 主 義 ニナ リ、 国際 関係ニ 段 々重 キ ヲ置 イ テ来 ル、 日

国際 法 ナ ド ヲ講 ジ テ居 ル或 ル先生 ノ著 書 ナド ヲ見 マシ テ モ、 ヒド イ

ア ルカ ラ外 ノ方 ノ罪 、 社 会 ノ罪 ハサ テ措 イ テ、 教 員 カ ラ 一ツ改 メ テ

本 ノ尊 厳 ヲ思 フ ヨリ ハ外 国 人 ト ノ提携 ニ重 キ ヲ置 イ テ、 サ ウ シ テ日

々 ハ痛 切 ニ此 ノ点 ヲ案 ジ テ 、全 国 ノ文 教 ノ府 ノ管 轄 ノ下 ニア ル教 授

参 ラ ナ ケ レバ ナ ラ ヌト 思 フ、 一番 酷 イ ノ ハ東 京 ノ帝 国 大学 デ、 是 ハ

ガ、 一体 ド ウ云 フ コト ヲ言 フカ ト 云 フ コト ヲ密 カ ニ調 査 ヲ シ テ、材

シテ、 断 乎 タ ル処置 ヲ執 ル コト ヲ強 ヒ マシタ、 ア ノ時 ハ文 部 省 ノ局

荒 木 文 部 大 臣 ノ時 ニ モ私 ハ委 員 会 ニ於 テ喧 シク文 部 大 臣 ニ申 上 ゲ マ

カ ラ出 テ居 ル、 内 務 省 ノ警 保 局 ノ方 ガ来 テ居 ラ レ マスカ ラ能 ク聴 イ

日 デ モ マダ 居 ツ テ、 サ ウ シテ著 書 モ出 シテ居 ル、此 ノ著 書 ハ有 斐 閣

ニア ツ タ ヤウ ナ観 念 論 者 ノ ヤ ウ ニナ ツテ シ マフ、 斯 ウ 云 フ教 授 ガ今

本 ヨリ ハ外 国 ガ 有 難 イ ト云 フ コト ニナ ツテ シ マフ、 従 来 ノ外 国 崇 拝

ア リ マ スケ レド モ、 其 ノ後 段 々箍 ガ緩 ンデ シ マツ タ ヤ ウデ ア リ マ ス、

テ置 イ テ貰 ヒ タ イ、斯 ウ 云 フ本 ヲ内 務 省 ノ警 保 局 デ 一遍再 検 討 シテ

長 ナド モ其 ノ為 ニ大 分 迭 ラ レタ ヤウ デ、 又先 生 モ迭ヘ ラ レタ ヤウデ

シテ、 此 ノ間 モ文 部大 臣 ガ科 学 スル心 ト 云 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ウ テ講

頂 キ タ イ、 随 分 ヒド イ コト ヲ書 イ テ ア ル、 又今 ハ名誉 教 授 デ 或 ル思

何 分 今 日 ハ事変 ノ為 ニ、 精 神 主義 ヨリ ハ物 質 観 念 ガ強 ク ナ ツテ来 マ

義 ヲサ レタ、 ド ウ云 フ内 容 カ知 リ マセ ヌガ、 ア ア云 フ見 出 シダ ケ ヲ

ド ウ 云 フ モノ カ文 部 省 ハ大 学 ノ方 デ名 誉 教 授 ニ シテ居 リ マ スガ、 此

ノ教 授 ナド モヤ ハリ雑 誌 ヤ著書 ニ変 ナコ ト ヲ言 ツ テ居 ル、 現 ニ東 大

想 事 件 デ検 挙 ニナ ツタ 人、 裁 判 ニ掛 ツ テ無罪 ニナ リ マシ タケ レド モ、

ノ経 済 学 部 ノ助 教 授 デ ア リ マス カ、 此 ノ人 ナド ハ全 然 右 カ ラ見 テ モ

一寸 見 テ モ、若 イ者 ハ科 学 スル心 ト 云 フ コト ハ、 是 ハ文 部 大 臣 ハ科

デ考ヘ ル、 是 等 ノ唯物 論 ニ付 テ ハ、 彼 等 ハ自 己 ノ方ヘ 都 合 ノ好 イ解

左 カ ラ見 テ モ、 ﹁マルク ス﹂ 論 者 ト 云 フ コト ハ否 定出 来 ナ イ、 又 東

学 物 質至 上 主 義 ノ人 デ ハナ イ カ、 唯 物 論 者 デ ナイ カ ト、直 グ 鋭 イ頭

デ モナ ケ レバ 、 科 学 万能 デ モナ イ、 物 心 両 方 兼 ネ ラ レタ所 ノ思 想 ノ 持 主 デ ア ラ レ ル コト ハ、 吾 々 モ能 ク聞 イ テ居 リ マスケ レド モ、 社 会

ルト、 随 分 ヒド イ コト ヲ書 イ テ ア ル、 天照 大 神 ノ コト ヲ論 ジ テ ア リ

大 ノ経 済 学 部 ニ居 ル或 ル助 教 授 ノ政 治 ノ 日本 的 原型 ト 云 フ論 文 ヲ見

釈 ヲシ ヨウ ト云 フ危倹 ナ時 代 デ ア リ マ ス、 ア ナタ ハ決 シ テ唯 物 万 能

ハサ ウ 云 フ風 ニ見 テ居 ル、 サ テ東 京 ノ帝 国 大 学 ナド ノ方 ヲ見 マシ テ

ド モ随 分 変 ナ コト ヲ言 ウ テ居 ル、 マダ 外 ニ モ京 都 大 学 ノ教 授 ニア ル、

ル ヤウ ナ コト ヲ言 ウ テ居 ル、 又京 都 大学 ノ経 済 学 部 ノ某 教 授、 是 ナ

マ スガ、 是 等 ハ 一寸 此 処 ノ席 デ ハ、 秘 密 会 デデ モナケ レバ申 シ兼 ネ

ヤ ツ テ居 ル、 成 程 数 学 ノ時 ハ具 体的 ナ コト ヲ言 ハナケ レバ ナ ラ ヌカ

主 任 ト言 ヘバ 分 ル、 是 ガ ヤ ハリ全 然 唯 物 史 観 ノ講 義 ヲ数 学 ノ時 間 ニ

大 イ ニ モテ ルト云 フ コト ニナ ツテ居 ル、 又 此 ノ学 校 ノ主 任 ノ先 生、

兎 モ角 生徒 ノ 口 ニ合 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ヒ タガ ル、 此 ノ教 授 ガ 生 徒 ニ

ト 云 フ状 態 デ ス、 教 授 ガ強 チ之 ニ迎 合 スル訳 デ モナ カ ラ ウケ レド モ、

ラ、 多 少其 ノ傾 向 ハア ツ テ モ仕 方 ガ ナ イ カ モ知 レ ヌガ、 斯 ウ云 フ ヤ

又新 潟 ノ高 等 学校 ニ モア ル、 是 ハ生 徒 主事 デ スカ ラ直 グ御 分 リ ニナ

ウ ナ言 ヒ方 ヲ ス レバ 、 是 ハ危 険 ナ モノ デ ス、 又 動 物 学 ヲ教 ヘテ居 ル先

ルダ ラ ウト 思 ヒ マス、 数 学 ノ先 生 デ ス カ ラ、 数 学 ノ哲 理 カ ラ ヤ ツ テ 行 ク ノデ セ ウ、其 ノ中 ニ日本 ノ志 士 ナド ヲ罵 倒 シタ ヤウ ナ コト ヲ言

ヌト 云 フ ヤ ウ ナ コト ヲ言 フ、 日本 精 神 ト 云 フ モノ ハサ ウ 云 フ融 通 ノ

居 ル、 斯 ウ 云 フ偏 狭 ナ コト ヲ言 フ、 日 本精 神 デ 動 物 学 ノ教育 ハ出来

生 ナド デ モ、 日本 精 神 デ動 物 学 ハヤ レ ヌト 云 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ウテ

ウ テ居 ル、 数 学 ノ時 間 ニ、 幕 末 ノ志 士 ナド ハ馬 鹿 野郎 ダ ト云 フ ヤ ウ

ガ サ ウ デ ア ルト 云 フ ヤ ウ ナ コト ヲ、 公 然 ト学 生 ニ聴 カ セテ居 ル、 是

ナ コト ヲ言 ウ テ居 ルノ デ ス、 例 ヘテ見 レバ 山 鹿 素 行、 吉 田松 陰 ナド

ハド ウ 云 フ影 響 ガ学 生 ニ与 ヘラ レ ルカ ト 云 フ コト ヲ、 一ツ考 ヘテ貰

人 ノ信 念 ト 非 常 ニ違 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ウ テ居 ル、 又助 教 授 デ 修 身 ヲ

先 生 ノ如 キ ハ、 人 生 観 ナド ヲ ﹁ド イ ツ﹂語 デ説 ク ノデ ア ルガ、 日本

盛 ン ニヤ ツ テ居 ルノデ ス、 又 同 ジ学 校 ニ於 ケ ル ﹁ド イ ツ﹂ 語 ノ或 ル

ダ ヤ﹂ 人 ガ ﹁ヨー ロ ッパ﹂ カ ラ追 放 サ レテ行 ク カ ラ、 今 後 ハ ﹁ア メ

ノ学 問、 ﹁ユダ ヤ﹂ 人 ヲ褒 メタ結 果 、 ド ン〓

教 授 ノ如 キ、 是 ハ非 常 ナ ﹁ユダ ヤ﹂ 信 者 ト見 エテ、 極 力 ﹁ユダ ヤ﹂

デ ハヤ レ ヌト云 フ ヤウ ナ前 提 デ 以 テ講 義 ヲ シ テ居 ル、 心 理 学 ノ或 ル

実 ニ八通 性 ノ ア ル所 ノ尊 イ モノ デ ス、 ソ レ ヲ動 物 学 ナド ハ日本 精 神

バ、 応 用 モ出 来 ル、 ド チ ラデ モ使 ヘル所 ノ円満 無礙 、 自 由自 在 性 ノ

教 ヘテ居 ル先 生、 是 モ道 徳 的 ニ見 逃 ス コト ノ出 来 ヌ ヤウ ナ コト ヲ言

リ カ﹂ ハ世 界 学 術 ノ中 心 地 ニナ ルダ ラウ ト云 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ウ テ

利 カ ヌモ ノデ ハナイ デ ス、 日本 精 神 デ ハ凡 ユ ル コト ヲ講 義 モ出 来 レ

ウ テ居 ル、 又 東 京 府 立高 等 学 校 デ モ ヤ ハリサ ウ デ ス、 或 ル化 学 ノ先

居 ル、 サ ウ シテ ﹁ユダ ヤ﹂ 人 ヲ師匠 ニセ ナ ク テ ハ、 学 術 ト云 フ モノ

ヒタ イ、 又其 ノ学 校 ニ於 ケ ル英 語 ノ或 ル教 授 ノ如 キ ハ、 反戦 的 ナ言

生 デ スガ、 是 ハ マルキ リ ﹁マ ルキ スト ﹂ デ ス、 又修 身 ト国 語 ヲ教 ヘ

ハ習 ヘヌ ヤウ ナ コト ヲ生 徒 ニ思 ハセテ居 ル、 即 チ ﹁ユダ ヤ﹂ 人 至 上

葉 ヲ以 テ英 語 ヲ教 ヘテ居 リ、軍 人 ニ対 シテ ハ嘲 ケ リ ノ ヤウ ナ言 葉 ヲ

テ居 ル或 ル教 授 ノ如 キ、 ヤ ハリ国 体 ヲ否 定 スル ヤウ ナ コト ヲ盛 ン ニ

忠 孝 ハ滅 ビ タ所 ノ道徳 デ ア ルト カ、 斯 ウ 云 フヤ ウ ナ コト ヲ生 徒 ニ言

学 校 ノ或 ル心 理 学 ノ先 生 ナド ハ、 忠 孝 ハ 一本 デ ハア リ マセ ヌト カ、

主 義 デ ス、斯 ウ 云 フ コト ヲ心 理 学 ノ 先 生 ガ言 ウ テ居 ル、 又松 江 高 等

﹁ア メ リ カ﹂ ヘ ﹁ユ

言 ウ テ居 ル、 学 生 ハド ウ 云 フ モノデ ア ル カ、 斯 ウ云 フ国体 ヲ否 定 ス

ヲ持 ツテ聴 ク、 教 室 カ ラ出 テ来 ルト、 今 日 ノ時 間 ハ面 白 カ ツタ ヨト

ルト カ、 ﹁マ ルク ス﹂ ノ ヤウ ナ コト ヲ言 フ方 ガ、 耳 ヲ 澄 シ テ、 興 味

言 フ、国 体 ヲ否 定 スルト カ、 ﹁マル ク ス﹂ ノ ヤ ウ ナ赤 イ議 論 ヲ ヤ ル

ウ テ居 ル、 是 ハ頗 ル重大 ナ コト デ ス、 又漢 文 ノ或 ル先 生 ハ、

天皇

ト 、 生 徒 ハア ア今 日 ノ議 義 ハ百 点 ダ ツタ ト言 ウ テ、喜 ンデ出 テ来 ル

陛 下 万歳 デ ハ死 ネ マセ ヌト云 フ ヤウ ナ コト ヲ 生徒 ニ講 義 ヲ シテ居 ル、

期 日本 ノ政 治経 済 ト云 フ ヤ ウ ナ題 デ佐 々木書 房 カ ラ発 行 サ レ テ居 ル、

院 ニ居 リ マシタ、 奥 村 サ ン此 ノ人 ハ官 僚 ノ チ ヤ キ〓

ナ ラ ヌト 云 フ コト ヲ言 ウ テ居 ル ノデ ス、 頗 ル是 ハ危 険 ナ モ ノデ ス、

ド ウ シ テ モ ﹁ロ シヤ﹂、 ﹁ド イ ツ﹂ ノ経 済 体 制 ヲ学 ンデ ヤラ ナ クチ ヤ

ダ、 是 ハ変革

デ ア ラ ウト思 フ、 ソ レカ ラ福 島 高 等 商業 学 校 ノ 日本 文 化史 ヲ教ヘ テ

ド ウ デ ス、 陸 軍当 局 モオ イデ ニナ リ マス ルガ、 是 ニ余 程 重 大 ナ コト

十 五年 十 二 月 二十 日 ニ出 サ レ テ居 リ マスガ、 是 ナド ノ内 容 ヲ見 ルト、

ド ウ シテ モ日本 ノ古事 記 ノ抹 殺 論 者 デ ス、 コ ンナ コト ヲ 一々読 上 ゲ

ド ウ シ テ モ ﹁ロシ ヤ﹂ 化 サ セ ヌ訳 ニ行 カ ヌ、 ﹁ド イ ツ﹂ 化 サ セ ナ ク

居 ル先 生 、是 ハ ﹁プ ロ レタ リ ア﹂ 文 学 ヲ盛 ン ニ鼓 吹 スル、 是 ナド ハ

ルト際 限 ガ ナイ程 例 ガ ア ル、 又 歴 史 ノ 先生 ニ モ注意 スベキ人 ガ ア リ

ラ取 締 ル者 モ都 合 悪 イ ト 云 フ ヤウ ナ情 実 モア リ マセ ウ ケ レド モ、 役

テ ハ日本 ノ経済 ハ保 テ ヌ ヤウ ナ コト ヲ言 ウ テ居 ル、 国 家 ノ官 吏 デ之

行 カ ヌ ケ レド モ、 日本 ハ之 ニ付 テ ハ御 勅語 モア ツタ ヤウ デ ア リ マ ス

人 ノ ヤ ル コト ハ皆 ガ余 程 神 経 ヲ鋭 ク シテ見 テ居 リ マ スカ ラ、 一ツ是

マス、 又 外 国 人 ナ ドデ モ此 処 デ ﹁ゲー デ ンリ ー﹂ ト 云 フ先 生 ナド デ

ガ、 御 勅 語 ニア ツ タ ヤ ウ ナ コト ニ付 テ外 国 人 ガ彼 此 レ言 フヤ ウ ナ コ

ハ徹 底 的 ニ見 テ戴 キ タ イト 思 フ、 尚 ホ京 都 帝 国 大学 ノ教 授 、是 ハヤ

コト ニ付 テ全然 取 締 ヲ疎 カ ニシ テ居 ルト思 フ、尤 モ自 分 ノ同 僚 ダ カ

ト ヲ サ セ テ ハイ カ ヌ、 外 国 人 ハ直 グ ニ三 国 同 盟 ハ日 本 ニ損 デ ア ルト

ハリ京 都 ノ新 体 制 研 究 会 ノ指 導 者 ニナ ツテ居 リ マス ルガ、 是 モヤ ハ

ヲ ヤ ツ テ居 ル、 一種 ノ ﹁フ ア ッショ﹂ デ ス、 内務 省 ナド ハ斯 ウ云 フ

カ得 デ ア ルト カ言 フガ、 日 本 ハ損 得 バ カ リデ 同 盟 ヲ結 ブ ノ ヂ ヤ ナ イ、

リ有 斐 閣 カ ラ出 シテ居 ル、 是 ハ日 本経 済 革 新 大 綱 ト 云 フヤ ウ ナ名前

モ、 是 ハ日独伊 ノ 三国 同 盟 ノ コト ナド ニ付 テ、 日本 ハ馬鹿 ナ コト ヲ

道 ト カ国是 ト カ 云 フ ヤウ ナ尊 イ 理由 ニ依 ツ テ日 本 ハ行 動 ス ルト云 フ

ノ ハ、 少 シ激 シク言 フト ﹁ソ﹂ 聯 主義 随 従 、 ﹁ソ﹂ 聯 ノ経 済 組織 デ

デ 出 シ テ居 ル、 此 ノ内 容 ナ ン カ見 ルト、 マル キ リ経 済 体 制 ト 云 フ モ

ヤ ツ タト 云 フ ヤウ ナ コト ヲ ヤ ハリ 言 ウ テ居 ル、 是 ハ誹謗 程 度 ニ マデ

コト ヲ彼 等 ハ分 ラ ヌ、 分 ラ ヌケ レド モ、 先 生 ガ斯 ウ 云 フ コト ヲ言 フ

ナ ク テ ハ到 底 今 日 ノ日 本 ノ経 済 界 ヲ救 フ コト ハ出 来 ヌ、 発 展 サ ス コ

ト 学 生 ニ非 常 ナ悪 影 響 ガ来 ル、 斯 ウ 云 フ コト ニ付 テ文 部 省 ハ怠 慢 ト 云 フ カ取締 ニ欠 陥 ガ ア ルト思 フ、 又是 ハ著 書 ニナリ マスケ レド モ、

ト ガ出来 ヌト 云 フ ヤウ ナ コト ヲ言 ツ テ居 ル、 是 ハ全 然 徹 底 的 ナ ﹁マ

ド ノ 先生 、 前 慶 大 ノ経 済 部 ノ部 長 ナド シ タ人 デ スガ、迚 モ危 険 ナ経

文 部 省 バ カ リ ヂ ヤ ナク内 務 省 ノ管 轄 ニナ リ マスガ、 翼 賛 会 ノ参 与 ナ

ハ講 談社 カ ラ出 テ居 ル戦 時 経 済 ト新 経 済 体制 、 是 ナド モ随分 過激 ナ

ル ク ス﹂ 論 者 デ ス、 ソ レ カラ 又 大政 翼 賛 会 ノ参 与 デ 或 ル評論 家 、 是

モノ デ ス、 自 由 経 済 ト 云 フ モノ ヲ全 然 ナ ク シテ シ マツ テ、統 制 経済

済 論 ヲヤ ツ テ居 ル、 又現 ニ京 都 大 学 ノ経済 部 ノ教 授 ヲ シテ居 ル或 ル 経 済 学博 士 ノ如 キ モ、 有 斐 閣 カ ラ出 テ居 ル新 体制 ノ指 導 原 理 、 十 六

ニ行 カナ ケ レバ ナ ラ ヌ、 之 ヲ言 フ マデ ハ宜 イ ケ レド モ、商 人 ヲ ナ ク

︹マ マ︺

年 ノ 一月 十 日 、十 五 日版 ヲ発 行 シ タ モノ ヲ見 マ スルト 、迚 モ変 ナ コ

ス ルト 云 フ議 論 ニナ ツテ居 ル、 斯 ウ云 フ コト ヲ 一挙 ニヤツ テ シ マツ

テ ハ、迚 モ世 ノ中 ハ危 険 デ ス、 日本 ノ経 済 ノ状 態 ト 云 フ モノ ガ外国

ト ヲ書 イ テ居 ル、 又政 府 ノ官 吏 ノ中 ニ於 テ モ吾 々 ニ腑 ニ落 チ ヌ コト ヲ言 ウ テ居 ル、名 前 ヲ挙 ゲ テ置 ク方 ガ却 ツ テ宜 イデ セ ウガ、 元 企 画

等 学 校 、 山 口 ノ高 等 商 業 学 校 、 斯 ウ云 フ ヤウ ニ皆 平 然 ト ヤ ツテ居 ル

ヌ程 全 国 ノ学 校 ニ沢 山 危 険 ナ者 ガ ア ル、水 戸 ノ高 等 学校 、 佐 賀 ノ高

観 念 モナ イ白 紙 ノ所 ヘ入 レ ル モノデ アリ マスカ ラ、 白紙 ニ字 ヲ書 ク

フ モ ノ ガ ア ル カ ラ 一寸 調 査 ガ付 カ ヌ、 向 フノ ヤ ウ ニ労働 者 ト大 キ ナ

ヤウ ニ刻 印 ヲ押 サ レテ シ マフ、 アト カ ラド ウ シ ヨト 斯 ウ シ ヨウト 、

人 ニ分 ラ ヌ所 以 ハ何 処 ニア ル カト 云 フト、 中 小商 工 業 ト カ商 店 ト云

ツ テ税 務 署 ノ税 ヲ取 ルノ ニ ハ都 合 ガ悪 イ カ モ分 ラ ヌ ケ レド モ、 外 国

ソ レヲ直 ス コト ハ到 底 出 来 ナ イ、 是 ガ社会 ニ出 テ 一寸 シタ ハズ ミ ニ

シテ有 難 ガ ツ テ シ マ フノ デ ア リ マシ テ、之 ヲ何 等 ノ予備 知 識 モ基 礎

人 ガ 日本 ノ経済 状態 ヲ探 ル ノ ニ対 シテ ハ、 斯 ウ云 フ組 織 ガ 一番 複 雑

危 険 ナ ル人間 ニナ ルト、 私 ハ考 ヘラ レ マ スガ、 是 等 ノ教 授 ニ対 シ テ、

ノデ ア リ マスガ 、純真 ナ学 生 ハ、 教 授 ノ仰 シヤ ル コト ハ金 科 玉 条 ト

デ 分 ラ ヌ、是 等 ハ余 程 日本 ノ 一ツノ良 イ特 徴 デ何 千 年 何 百年 来 来 タ

文 部 大 臣 ハ今後 一体 ド ウ シ ヨウ ト御 考 ヘ ニナ ル ノデ スカ、 其 ノ御 考

会 社 ニナ ルト 調 査 ガ直 グ付 ク ケ レド モ、 中 小商 工業 ノ ヤウ ニ夜 モ昼

モノデ ア ルカ ラ、 之 ヲ 一挙 ニ統 制経 済 ノ為 ニ商 人 ガ ヤ ツ テ居 ル従 来

モ小 僧 働 キデ ヤ ツテ居 ル モノ ノ経 済 ト 云 フ モノ ハ、 非 常 ニ複 雑 ニナ

ノ経 済 組 織 ヲ破 壊 シテ シ マ ヘト 言 ツ テ居 ルノ デ ス、 商 人 ガ怖 ガ ツ テ

ルノデ アリ マ シテ、 不適 当 ト 思 フ者 ハド シ〓適

ヘヲ承 リ タイ ト 思 ヒ マス

与 、 政 府 ノ寵 児 デ ス、 政 府 ト 表 裏 一体 ニナ ツテ居 ル︱

ニ、 方法 ノ ナイ コト ハ申 ス マデ モ ナイ コトデ アリ マ ス、 固 ク決 心 シ

シテ居 ル、 何 時 カ吾 々商 人 ト 云 フ モノ ハ乞 食 ニナ ツテ シ マ

ニ重 要 ナ ル役 割 ヲ シ テ居 ル方 々デ ス、 又是 モ翼 賛 会 ノ ヤ ハリ経 済 ノ

テ国 体 ノ 本義 ニ徹 ス ル教 育 ヲ スル ヤウ ニ是 非 ヤ ル決 心デ ア リ マス

ビ ク〓

方 ニ関 係 ヲ シテ居 ル有 力 ナ人 デ スガ、 是 ナド デ モ非 常 ニ唯 物 ﹁マ ル

○ 猪 野 毛委 員  暑 中 休 暇 カ何 カ利 用 シテ、 二 箇 月程 教 授 ノ再 教育 ヲ

○ 橋 田 ︹邦彦 ︺ 国 務 大 臣 ︹ 文 部 大 臣 ︺ 先 刻 申 シ マシ タ 通 リ、文 部

ク ス﹂ 論 バ カ リ ヤツ テ居 ル、 一元 的 ノ経 済 計 画 論 ナド ヲ書 イ テ、 新

省 デ モ取 調中 ノ モノ モア リ、 進 行 シタ モノ ハ既 ニ処 理 シ タ モノ モア

体 制 ノ経 済 ト 云 フヤ ウ ナ本 ヲ出 シテ居 ル、 斯 ウ云 フ コト ヲ考 ヘテ見

ヤ ラ ス ヤウ ナ御 考 ヘ ハア リ マセ ヌカ

政 府 ノ非 常

ルト、 皆 盗 人 ヲ捕 ヘテ見 レバ 我 ガ 子 ナリ デ政 府 ノ粟 ヲ食 ンデ居 ルト

テ居 リ マス国 民 修 練 道 場 ノ建 設 ノ如 キ ハ、専 ラ教 員 再 教 育 ヲ目指 シ

○ 橋 田国 務 大 臣  ソ レ ニ付 キ マシテ ハ、 既 ニ追加 予 算 ニ御 請 求申 シ

ハナケ レバ ナ ラ ヌト云 フ ヤ ウ ナ不安 ヲ与 ヘテ居 ル、 是 ガ翼 賛 会 ノ参

カ、 国 家 カ ラ月給 ヲ貰 ツテ居 ルト カ、 国 家 ト表 裏 一体 ヲ ナ スヤ ウ ナ

ア リ マス、 私 立学 校 ニ至 ツ テ ハ山程 ア ル、 又米 沢 ノ高 等 工業 ニ モア

ナド モ危 険 ナ コト ヲ言 ツテ居 ル、 此 ノ 外 マダ他 ノ学 校 ナド ニ モ沢 山

私 ハ思 ツ テ居 ル、 マダ〓

機 会 ヲ捉 ヘテ教 員 ノ再 教 育 ノ出 来 ル者 ハ、 十 分教 育 シ ヨウト 云 フ ヤ

ニ拡 大 致 シ マ シテ、 別 ニ夏 休 ミト モ限 リ マセ ヌガ、 出 来 ルダ ケ度 々

ノデ ゴ ザ イ マ シテ、 今 回 其 ノ規 模 ヲ十 分 ト ハ申 サ レ マセ ヌ ガ、相 当

テ居 ルノ デ ゴ ザ イ マ ス、 従来 ヤ ツテ居 ル程 度 デ ハ甚 ダ規 模 ガ小 サ イ

当 ニ処 理 スル以 外

団 体 ノ幹 部 デ ア ル、 余 程 政 府 ハ責 任 ヲ考 ヘテ貰 ハナ ケ レバ ナラ ヌト

リ マス、 福島 ノ高 等 商 業 、 徳 島 ノ高 等 工業 、 和 歌 山 ノ高 等 商業 、 随

ウ ニ計 画 モ進 メ テ居 リ マス

ア ルノ デ ス、或 ル哲 学 ヲ教 ヘテ居 ル先 生

分 ア ル、 ソ レカ ラ松 江 ノ高 等 学 校、 斯 ウ 云 フヤ ウ ニ見 ルト数 ヘ切 レ

ヤ ウ ニ聞 イ テ居 リ マスガ、 文 部 省 デ ハ此 ノ調 ベ ガ出 来 テ居 リ マ スカ、

○ 猪 野 毛 委員  今 尚 ホ大 学 デ ハ憲 法 講 座 ノ 全 部 ヲ ヤ ラ ヌ教 授 ガ居 ル

コトダ ケ ニ依 ツテ、 果 シテ教 授 ト シテ尚 ホ採 用 スベ キ カ、 スベ カ ラ

リ等 ヲ考 ヘテ免 職 シタ者 モア リ マス、 ソ コデ 唯転 向 シタト 云 フ其 ノ

ル場 合 ニ於 テ ハ、 司法 省 デ無 罪 ト判 決 サ レ マシタ者 モ、其 ノ責任 ナ

ザ ルカ ハ、 其 ノ個 人 ノ 心情 ヲ能 ク探 究 シタ上 デ ナ ケ レバ、 唯 転向 シ

例 ヘバ 憲 法第 一条 ト 第 四 条 ノ如 キ モ ノデ ス ○ 橋 田 国 務大 臣  私 ノ今 聞 キ及 ンデ 居 ル所 デ ハ、 其 ノ ヤ ウ ナ教授 ハ

サ ヘ ス レバ 誰 デ モ宜 シイ ト云 フ訳 ニ ハ参 ラ ナイ ノ デ ゴ ザ イ マス

ダ カ ラ、 教 育 ノ 科 目 モ日本 ト シ テ足 ラ ナ イ モノ ガ ア ル、 私 共 ノ最 モ

○ 猪野 毛 委 員  日本 ノ教 育 組 織 ガ ﹁ヨー ロ ッパ ﹂ ニ範 ヲ採 ツ タ モノ

遺 憾 ニ感 ズ ルノ ハ、 国 体 講 座 ノ如 キ モノデ ア ル、 文 部 大 臣 ハ此 ノ国

キ及 ンデ居 リ マ スガ、 警 告 サ レ マシ タ カ、 解 職 サ レ マシ タ カ、 総 長 ノ意 見 ニ依 リ マ スカ、 本 人 ノ意 見 ニ依 リ マスカ ハ詳 シク存 ジ マセ ヌ

今 ハ居 ナ イ筈 デ ア リ マス、 以前 サ ウ云 フ コト ノ ア リ マシ タ コト ハ聞

ガ、講 義 ヲ シナ イト 云 フ教 授 ハ今 ハナイ筈 デ ア リ マ ス、 併 シナ ガ ラ

体講 座 ヲ大 学 ナド ニ御拵 ヘ ニナ ル御考 ヘ ハア リ マセ ヌカ

モノ ガ設 ケ ラ レ マシテ、 日本 思 想 ニ付 テ ノ教 育指 導 ヲ ヤ ツ テ居 ル筈

○橋 田国 務 大 臣  既 ニ文 学 部 ニ於 キ マシ テ モ日本 思 想 史 講 座 ト 云 フ

兎 ニ角 是 正 サ レテ居 ル筈 デ ア リ マ ス

デ ア リ マ ス、 無 論 ソ レガ徹 底 シテ居 ルカド ウ カ ハ問 題 デ ア リ マスガ、

ヌ ガ、 今 マデ私 ノ聞 イ テ居 ル所 デ ハ、 以前 ニア ツタ サ ウ云 フ事態 ハ、

○ 猪 野 毛 委員  私 ノ聞 イ テ居 ルノ ハ、其 ノ条 ニ行 ク ト有 耶 無 耶 ノ コ

是 ハ今 取 調中 デ ア リ マスカ ラ、 ド ウ云 フ コト ニナ リ マ スカ分 リ マセ

ト ヲ言 ツ テ、 胡 麻 化 シ テ行 ク ト 云 フ ノデ ス、 デ ハ講 義 ヲ セ ヌノ カト

ト、 入 ラ ヌト、 何 故 其 ノ条章 ニ入 ラ ヌカト 叱 ラ レ ルカ ラ、 第 一条 ト

リ言 ツ テ居 ツテ、 其 ノ条 章 ニ入 ラ ヌカ ト云 フト、 入 ラ ヌノデ ハナイ

デ ハナ イ カト 思 フ、 思 切 ツ テ国 体 講 座 ト云 フ風 ニ出 来 ナ イ モ ノデ ア

刀直 入 ニ出 ラ レ ヌ所 ニ、 マダ昔 ノ思想 ガ文 部 省 ノ官 吏 ノ中 ニア ルノ

○ 猪野 毛 委 員  名前 ハ ヤ ハリ心 ヲ表 ハスモ ノデ 、之 ヲ国 体 講 座 ト単

マス

既 ニ其 ノ ヤ ウ ナ意 味 ニ於 テ着 手 シ実 行 シテ居 ル コト ハ申 上 ゲ テ置 キ

言 ツ テ講 義 ニ入 ルケ レド モ、 日本 ノ憲 法 ノ第 一条 ヲ論 ジ ナ イノ デ ス、

云 フト 、 講義 ヲ セヌ訳 デ ハナイ、 余 所 ノ国 ノ憲 法 ノ ヤウ ナ コト バ カ

余 所 ノ国 ノ コトバ カ リ論 ジ テ居 ツ テ、 胡麻 化 シテ行 ク人 ガ居 ル、 是

ハイケ ナイ、 モ ツト ピ ント来 ル コト ヲ ヤ レ マセ ヌカ、 ソ コノ信念 ヲ

ツ テ、 其 ノ内 容 ニ於 テ国 体 ノ研 究 、 啓発 ヲ ヤ ルト 云 フヤ ウ ナ コト デ

伺 ヒタ イ

リ マセウ カ、 斯 ウ シ ナク テ ハピ ント響 カ ナ イ ノデ ス、 他 ノ言 葉 ヲ使

イ コト ハヤ ハリ言 ヘナイ 、是 ハ正直 ト言 ヘバ 正直 、 転 向 セ ヌト 言 ヘ

○ 橋 田国 務 大 臣  其 ノ 名 称或 ハ内 容 ノ充実 等 ニ付 テ ハ十 分 考 慮 致 シ

ハド ウ云 フ訳 カト 云 フト 、 自 己 ガ信 念 ニ燃 ヱテ居 ナイ カ ラ、 心 ニナ

バ転 向 シ ナイ ノ デ ス、 モウ 一ツ伺 ツテ置 キ タ イノ ハ、 文 部 省 ハ教 授

○ 猪 野 毛委 員  段 々此 ノ戦 争 ガ長 引 ク ヤウ ニナ ツテ来 ルト、 精 神的

マス

ノ転 向 者 ヲド ウ 御扱 ヒ ニナ リ マス カ

デ ゴ ザ イ マシテ、 其 ノ人 々 ニ依 ツテ ノ問 題 デ ゴザ イ マ ス、 例 ヘバ或

○ 橋 田 国 務大 臣  教 授 ノ転 向 ノ問 題 ハ非常 ニ ﹁デ リ ケ ー ト﹂ ナ問 題

悪 化 シテ、 赤 ノ学 生 、 不逞 分 子 ガ沢 山出 来 テ、 サ ウ シテ治 安 維 持法

吾 々 モ繩暖 簾 ニ腕 押 シ ノ ヤウ ナ気 ガ スル、 所 ガ 一方 思想 ハド ン〓

ヲ実 行 ノ上 ニ表 ハシ テ戴 キ タ イ、 今 マデ 議 会 デ色 々聴 キ マシテ、 ト

○橋 田国 務 大 臣  教 育 ト云 フ面 カ ラ考 ヘ マ スト、 精 神 教 育 、 物 質 教

ノ ヤウ ナ法 ガ益々 適 用 セラ レネバ ナ ラ ヌ ヤウ ナ コト ニナ ル、 全 ク日

ニ非 常 ニ荒 ム者 モ アリ マ セウ ガ、 物 質 ノ欠 乏 ハ当 然 来 ル モノ ト思 フ

育 ト 云 フ コト ハナイ筈 デ ア リ マス、 教 育 ハ 一点 デ ア リ マ シテ、 物 心

本 ヲ シテ法 デ 網 ヲ張 ラナ ク チ ヤ居 ラ レナ イ ヤウ ナ国 ニ シテ シ マフ、

テ モ上 手 ナ旨 イ コト ヲ仰 シ ヤツ テ モ、 議 会 ガ済 ンデ シ マフト、 更 ニ

一如 ト 云 フ コト ヲ会 得 サ セ ル ノガ 日本 ノ教 育 ノ本 体 デ ア リ マス カ ラ、

斯 ウ 云 フ国 柄 ニナ ツタ 日 ニ ハ、 日 本 ノ国 サ ヘ厭 ニナ ル者 ガ出 来 テ来

ノ デ ス、 ソ コデ 文部 省 ニ於 テ ハ精 神 教育 ト物 質 教 育 ノ 調和 ヲ、 ド ウ

是 ハ物 質 教 育 、是 ハ精 神 教 育 ト 云 フ コト ノ ア ラウ筈 ハナ イ ノデ ア リ

ル ヤウ ニナ ツ テ ハ大 変 ダ ト思 フ、法 律 バ カ リデ ハ飽 イ テ シ マフ ヤウ

ウト思 フ頃 ニ ハ、 内 閣 ハ迭 ツテ シ マフト 云 フ コトデ アリ マスカ ラ、

マ ス、 仮 リ ニ外国 カ ラ入 ツ テ来 タ ヤウ ナ意 味 カ ラ、 科 学 ト云 フ モ ノ

ナ人間 ガ出来 ルト大 変 デ ス、 モ ツト 道徳 ニ生 キ ル、 モウ法 ナド ニ殆

是 ガ実 行 ニ現 ハレ テ来 ナイ ノ デ、 其 ノ次 ノ議 会 ニソ レ ヲ又申 上 ゲ ヨ

ハ物 質 的 ノ面 デ ア リ、 其 ノ他 ニ国 体 ト云 フ コト ヲ言 フ ノ ハ精 神 面 デ

云 フ方 針 ヲ 以 テ図 ツテ行 カ レル カ、 一ツ其 ノ御 信念 ヲ承 リ タ イ ノデ

ア ルト 云 フ ヤウ ニ 一応 ハ考 ヘラ レ マスケ レド モ、 科 学 ヲ学 ブ時 ニ国

ヌ、 斯 ウ云 フ国 ニ ス レバ 南 洋 カラ デ モ、 他 ノ東洋 カ ラデ モ喜 ンデ 日

ド適 用 ノ必 要 ガ ナイ ト 云 フ ヤウ ナ道 徳 ノ国 ニ日本 ヲ シナ ケ レバ ナラ

ア リ マス

マス、 国 体 ニ生 キ ル科 学 ヲ教 ヘ ル コトガ、 日本 ニ於 テ科 学 ヲ教 ヘル

体 ヲ忘 レ ル ヤウ ナ科 学 デ ア ツタ ナ ラバ 、 教 ヘナ イ方 ガ宜 イ ノデ ア リ

ト 云 フ、 右 モ左 モ法 律 デ 網 ヲ張 ツ テ シ マウ テ杖 突 ク場 所 モ ナイ ト云

フ ヤ ウ ナ、 法 律 デ 繋 ゲ タ ヤウ ナ堅 苦 シイ社 会 デ ハ、迚 モ世界 人 ヲ旨

本 ニ親 シ ンデ来 ル、 今 ノ ヤウ ニ、 イ ヤ統 制 経 済 ダ、 イ ヤ何 々法 律 ダ

云 フ方針 ニ於 テ、 教 学 ヲ進 メ テ行 カ ナケ レバ ナ ラ ヌト考 ヘテ居 ルノ

モ文 教 ノ任 ニ立 タ レル所 ノ長 官 ハ此 ノ考 ヘヲ以 テ、 一ツ今度 ハ大 英

ク私 ハ説 キ伏 セ ル コト ハ骨 ガ折 レ ルト思 フ、 ソ レダ カ ラ、 ド ウ シ テ

コト ナノ デ ア リ マ ス、是 ハ物 質 ト精 神 ト ヲド ウ取 扱 フ カト 云 フ ヤウ

デ ア リ マス

ニ、別 々 ニ考 ヘズ ニ、 寧 ロ 一如 ニ シテ、 一ツノ モノト シ テ取扱 フト

○ 猪 野 毛委 員  実 ハ文 部 大臣 カ ラ其 ノ言 明 ヲ聴 キ タ カ ツ タ カラ、 私

ハ堪 ツ タ モノ ヂ ヤ ナ イ、ナケ レバ ナ イデ 休 マシテ置 ケバ 宜 イ 、サ ウ ス

ル先 生 ガ ナイ カ ラト 言 ウ テ、 ア ヤ フ ヤ ナ不 健全 ナ講 義 ヲサ レタ 日 ニ

一年 ヤ二 年憲 法 ノ講 義 ハナサ ラ ナ イデ モ結 構 デ ス、 憲 法 ノ講 義 ヲ ス

タ時、 科 学 ス ル心 ハ何 処 カ ラ発 スル カト 云 フト、是 ハ霊 智霊 能 デ ナ

レバ其 ノ中 ニ立 派 ナ憲 法 ノ講 義 ヲ ス ル良 イ 先 生 ガ出 来 テ来 ルト私 ハ

断 ヲ ヤ ラ レ ルヤ ウ ニ、 憲 法 ノ講 座 ナド ヲ持 タ レ ル先 生 ガ ナカ ツ タ ラ、

クテ ハナラ ヌト云 フ コト ヲ、 私 ハ即 座 ニ考 ヘタ ノデ ス、 今 ノ御 言 明

思 フ、 ド ウ カ 一ツ只 今 ノ 御信 念 御 覚 悟 ヲ実 行 ノ上 ニ今 度 ハ現 ハシ テ

ノ方 デ謎 ト言 ウ テ ハ語 弊 ガ ア リ マ スガ、故 ラ事 ヲ挙 ゲ テ申 シタ ノデ

ガ 本当 ニ皆 ニ徹 底 ス レバ、 大 変 結 構 デ ア ラウ ト思 ヒ マス、 大 体 文 部

ス、 先達 ツテ文 部 大 臣 ノ著 書 ノ ﹁科 学 ス ル心﹂ ト云 フ表 題 ダ ケ ヲ見

大 臣 ノ御 信 念 ダ ケ ハ分 リ マシタ カ ラ、 ド ウ カ只 今 ノ 御信 念 ナ リ気 持

戴 キ タイ、 是 ダ ケ申 上 ゲ テ文 部 大 臣 ニ対 ス ル質 問 ヲ終 リ ニ致 シ マ ス 第七十六回帝国議会 治安維持法改正法律案特別委員会議事 貴 族 院  速記 録 第 五 号

ガ発 動 スル ノ ハ当 然 デ ア リ マ ス、 サウ 云 フ目 的 ヲ以 テ ⋮ ⋮、 併 シサ

ウ云 フ目 的 ガ認定 セラ レナ イ部 分 、即 チ唯 サ ウ云 フ目的 デ ナ ク、 不

逞 ナ学 説 ヲ宣 伝 シタ ト 云 フ場 合 ニ付 テ ハ、 此 ノ第 五条 デ ハ参 リ マセ

ヌカ ラ、 恐 ラク サ ウ 云 フ場 合 ニ ハ参 リ マセ ヌガ、 併 シサ ウ云 フ場 合

ニ ハ大 学 教育 当局 ニ於 テ、 此 ノ点 ニ付 テ ノ処置 ヲ為 サ ルノ ハ当 然 ナ

○ 政 府 委員 ( 藤 野 恵君 ) ︹ 教 学 局長 官 ︺ 只 今第 五 条 ヲ適 用 シ ナイ教

コト ダト 私 ハ考ヘ テ居 リ マス

育 上 ノ立場 カラ、 学 説 等 ニ付 テ疑 ハシキ モノ デ ア ル場 合 ニ ハ、 宜 シ

委員氏名 委 員 長  伯 爵  児 玉  秀 雄

(速 記中 止 )

○ 委 員 長 (伯爵 児 玉秀 雄 君 ) 速記 ヲ止 メ テ⋮ ⋮

ノ点 ハ誠 ニ私 北ハモ御 同 感 ヲ申 上 ゲ テ居 リ マス

ク相 当 ノ処置 ヲ講 ズ ベ キデ ナ イ カト ノ御 意 見 デ ゴ ザ イ マ スルガ 、其

副 委 員 長  男 爵  渡 辺  修 二

子爵  舟 橋

侯 爵  井 上  三郎 清賢

公爵  二条

弼 基 

子爵  岡 部  長 景 

田 口  弼 一

○ 男 爵 非 田磐 楠 君  只今 私 ハ第 一章 ノ コト ニ付 キ マシテ、 全 般 的 ノ

村 上  恭 一

男 爵  伊 江  朝 助

御 尋 ネ ヲ シ タイ ノ デ ア リ マ スガ、今 学 問 ト 宣 伝 ト 云 フ コト ノ質 疑 ガ、

万 

次 田 大 三郎

織 田

堀 切 善 次 郎 

竹 下  豊 次

男 爵  井 田  磐 楠 

山 岡 万之 助 

○ 委 員 長 (伯爵 児 玉秀 雄 君 ) 速 記 ヲ始 メ テ⋮ ⋮

長 岡 隆 一郎 

シ テ見 タ イ、 学 説 ガ宣 伝 ニナ ルノ デ ア リ マスカ、 其 ノ点 ヲ伺 ヒ タイ、

岡 部 委 員 ト 当 局 ト交 ハサ レ マシ タカ ラ、 其 ノ コト カ ラ先 ヅ 御 尋 ネ ヲ

康 

上 野 喜 左衛 門

山 隈

付 テ極 ク区別 シテ御 質 問 ニナリ マシタ、 デ 先 程 申 上 ゲ マシ タ ヤ ウ ニ、

ゴ ザ イ マセ ヌデ 、 学 説 ノ宣 伝 ト ナ リ マス ノ ハ、 宣 伝 ト申 シ マスノ ハ、

○ 政 府 委員 (三宅 正 太 郎 君 ) 唯、学 説 ガ茲 ニア ルト 云 フ コト デ ハ

昭和 十 六年 二 月 二十 二 日 (土 曜 日 )

大 学 教 授 ガ不 逞 ナ学 説 ヲ宣 伝 ス ルト 云 フ コト ハ、 ソ レ ハ第 五 条 ニゴ

一定 ノ事 項 ヲ不 特 定 又 ハ多 数 人 ニ説 明 シ、 且之 ニ愬 ヘテ、其 ノ 理解

ヤ ウ ナ コト デ御 取 締 リ ニナ レ ル モノデ ア ル カド ウ カ

ザ イ マスノ ハ、 先 程 申 上 ゲ マシタ ヤウ ニ、 国 体 ノ変 革 ノ目 的 ヲ以 テ

フ内容 ガ其 処 ニゴザ イ マス レバ、 ソ レガ宣 伝 ニナ リ マ ス、 唯学 説 ガ

ト 共鳴 ト ヲ求 ム ルノ行為 ナ ンデ ア リ マス、 理解 ト 共鳴 ヲ求 ム ルト云

私 ハ余 リ簡単 デ シタ ガ、学 問 上 ノ コト ガデ ス ナ、 ソ レ ハ宣 伝 ト 云 フ

直 接 若 シク ハ間 接 ニ、 国 体変 革 ノ 目的 ヲ以 テ シ タ場 合 ニ処 罰 サ レ ル

○ 政 府 委員 (三宅 正太 郎 君 ) マア法 律 ノ点 ト 、 法律 以外 ノ 点 ト ニ

ノ デ ア リ マ スカ ラ、 サウ 云 フ程 度 ニナ リ マシタ場 合 ニ於 テ ハ、法 律

人 ニ共鳴 ヲ求 メ ル訳 デ 、 共鳴 ヲ求 メ テ ナ イ ヤウ ナ学 説 ナ ラ ヤ ラ ヌ方

○ 男 爵 井 田 磐 楠 君  サ ウ シ マス ルト、 此 ノ学 校 ノ講 義 ハ、 所 謂 多 数

云 フ コト デ ハ、 是 ハ宣 伝 ニ ハナ ラ ヌ コト ハ勿 論 ノ コト デ ア リ マ ス

ア ツ テ、 唯 自 分 ノ書 斎 ニ唯 其 ノ学 説 ヲ書 イ テ置 イテ、 蔵 ツ テ置 クト

マシ タ関 係 上、 ソ レ ニ応 ジ テ法 律 ガ適 用 サ レ テ参 リ マシタ、其 ノ適

ト思 フノ デ ア リ マ ス、 ソ レガ段 々対 象 物 ト云 フ モノ ニ変 化 ヲ来 タ シ

云 フ ヤウ ナ言葉 モ恐 ラ ク立法 者 ハ今 ト ハ違 ツ タ考 ヘデ制 定 シ タ モノ

ノデ ア リ マシテ、 国 体 変 革 ト カ云 フヤ ウ ナ言 葉 モ、 私 有 財 産 制 度 ト

用 ノ範囲 ガ段 々拡 マツ テ参 リ マ スノ ハ、 只今 御 言 葉 ニア リ マス通 リ、

フ ヤウ ニ御 評 議 ヲ願 ヒ マ スヤウ ニ、色 々 ニ例 ヘバ 支援 結 社 ガ出 来 マ

ガ宜 イノ デ 、ド ウ モ其 ノ教 授 ノ学 説 ト云 フ モ ノ ハ、 此 ノ点 ニ於 テ私

シタ リ、 外 廓 団 体 ガ出 マ シタ リ、或 ハ共 産 党 ノ再 建 運動 ガ起 ツ タリ

云 フ コト ニ重 点 ヲ置 ク カ ラデ ア ル ノデ ア リ マ ス、 今 日 ハ是 ハ斯 ウ云

ハゴ ザ イ マセ ウト思 ヒ マ ス、 併 シ ナガ ラ先程 申 上 ゲ マシタ ヤウ ニ、

○ 政府 委 員 (三宅 正 太 郎 君) 多 ク ノ場合 ニ宣 伝 ト認 メ ラ レ ル コ ト

致 シ マス ルノ デ、 其 ノ目 的 ニ応 ジ テ改 正 ヲ致 シ テ御審 議 ヲ願 ツタ ノ

其 ノ国体 ト 云 フ モ ノ ヲ擁 護 シ、 国 家 ノ基 本 タ ル秩 序 ヲ維 持 シ ヨウト

此 ノ 五条ニ 当 リ マスノ ハ、 即 チ国 体変 革 ノ目 的 ガ ナ ケ レバ イ ケ マセ

デ ア リ マスガ、 今 後 国 体或 ハ之 ヲ繞 ル所 ノ国家 ノ基 本 ヲ揺 ガ スヤ ウ

ハ矢 張 リ 宣 伝 ト 云 ツ タ ヤウ ナ コト ニ大 体 入 レ ルノデ ハナ イ カト思 フ

ヌ

ナ、 サウ 云 フ不逞 ノ思 想 運動 等 ニ対 シテ ノ新 シキ形 式 ガ又出 来 マス

ノ デ アリ マスガ、 如 何 デ ア リ マ スカ

○ 男 爵 非 田磐 楠 君  ソ コデ 私 ハ 一般 論 ニ入 リ マシテ、 又 モウ少 シ其

レバ 、 之 ニ応 ジ テ治 安維 持 法 ガ改 正 サ レ テ行 ク ノ ハ当 然 ダ ト思 ヒ マ

ヲ主 ト シ テ ナサ レ ル意味 ノ法 案 デ ゴ ザ イ マセウ カ

ノ問 題 ニ付 テ伺 ツ テ見 タ イト思 ヒ マ ス、 本 来 此 ノ治 安 維 持 法 ノ出来

○ 政 府 委員 (三宅 正 太 郎 君) 治 安 維 持 法 ハ其 ノ主 タ ル所 ハ、 矢 張

ス、 又 サ ウ致 シ タ イト思 ツテ居 リ マス

フ ヤウ ナ情 勢 カ ラ見 ルト ⋮⋮ 治 安 維 持法 ト 云 フ モ ノ ハ、 本体 ハ国 体

タノ ハ、 過激 法 ト云 フ モ ノカ ラ段 々発 展 シ テ斯 ウ ナ ツ タ、 今日 改 正

ト 云 ツタ ヤ ウ ナ モノ ヲ基 準 ニシ テ作 ラ レタ法 律 ト思 ヒ マス、 以 前 ハ

リ国 体 変革 ヲ先ヅ 真 向 ニ振翳 シ マ シテ、 サウ シテ ソ レ ニ準 ジ テ取 締

○男 爵 井 田磐 楠 君  サ ウ致 シ マス ルト、 治 安 維 持 法 ハ常 ニ矢 張 リ国

社会 主 義 ト カ、 共産 主 義 ト カ云 フ ヤウ ナ モノ ヲ対象 ニ シテ出 テ来 タ

ル モ ノ ヲ漸 次 加 ヘテ行 ク、 斯 ウ云 フ ヤウ ナ コト ニ御 考 ヘヲ願 ヒタ イ

体変 革 ト云 フ コト ヲ主 体 ニシテ、 今 後 モ変 改 ヲ ナサ レ ル時 ニ ハソ レ

法 律 デ ア ツ タ ノガ、 今 日 ハサウ デ ナク ナ ツ テ来 テ居 ル、 ソレデ 今 後

ト思 ヒ マ ス

シテ、 本 質 ガ余 程 変 革 サ レテ参 ツ テ来 テ居 ル、 ソ レデ 今 後 モ斯 ウ 云

社 会 情 勢 ノ変 化 ニ応 ジ テ治 安 維持 法 モ、 余 程 サウ 云 ツ タ ヤ ウ ナ意 味

ヲ別 個 ニオ分 ケ ニナ ツテ居 リ マス、 此 ノ私 有 財 産 ノ問題 ニ付 キ マシ

○男 爵 井 田磐 楠 君  今 回 ノ第 一章 ノ変革 ノ中 ニ ハ、 国 体 ト私 有 財 産

サ レ タ治安 維 持 法 ヲ拝 見 致 シ マ ス ルト 、 当初 ノ治 安 維 持 法 ト違 ヒ マ

合 ニ変 化 サ レル御 見 込 ガ ア ル ノデ アリ マ スカ

テ ハ先 般 来 色 々御議 論 モア リ マシタ 通 リ、 国 体 変 革 デ ナ イ立場 ノ私

○ 政 府 委 員 (三宅 正 太 郎 君) 御 言 葉 ノ通 リ治安 維 持 法 ノ初 メ テ出 来 マシ タ時 ニ ハ、 無 政 府 主義 、 共 産 主 義 、 此 ノ 二 ツ ヲ目 的 ト致 シタ

ト 、 此 ノ私 有 財 産 ニ関 スル限 リ ニ於 キ マシ テ ハ、 此 ノ条 項 ハ治 安維

カ ラ、斯 ウ 云 フ問 題 ガ論 ジ ラ レ ルト思 フ ノデ ア リ マ スガ、 サ ウ ス ル

有 財産変 革 モア ルノデ ア リ マス、 今 後 之 ニ対 ス ル運 動 ハ色 々 ナ角度

ラ レ ルノデ アリ マシテ、 又 一方 ニ ハ生活 問 題 、 社 会問 題 等 モ、相 当

居 リ マ スシ、 又思 想 的 ニ ハ是 亦 、 内外 非 常 ニ危 険 ナ ル情 勢 モ観 取 セ

賛成 ヲ ス ル者 デ アリ マ ス、 今 日内 外 ノ情 勢 ハ非常 ニ緊 迫 シ テ参 ツテ

○ 子爵 岡 部 長 景 君  私 ハ治 安 維 持 法改 正法 律 案 ノ政府 提 出 ノ原 案 ニ

ス ル ニ至 ツ タト 云 フ コト ハ、 誠 ニ遺 憾 ナ コト デ アリ マスル ケ レド モ、

種 々複 雑 ナ ル モノ ガ ア ルノデ ア リ マ ス、 治 安 維持 法 ノ改 正 ヲ必要 ト

持 法 カ ラ離 レテ行 ク ヤ ウ ナ傾 向 ガ段 々多 イ ヤウ ニ思 ハレル ノデ ア リ マ スガ、 サ ウ云 フ コト ニ対 ス ル御 見透 シ ハ如 何 デ ア リ マス カ

ラ、 一概 ニ申 セ ナ イ コト ハ勿論 デ ゴ ザ イ マスガ、 御 承 知 ノ通 リ最初

○ 政 府委 員 (三宅 正太 郎君 )  将 来 ノ見 透 シ ノ コトデ ゴザ イ マス カ

ルト 考 ヘ ルノデ アリ マ ス、 此 ノ賛 成 ニ付 キ マシ テ ハ、 色 々意 見 ヲ述

是 ハ已 ム ヲ得 ザ ル モノデ ア ツ テ、 亦今 日 ニ於 テ ハ必要 ナ ル問 題 デ ア

ベ タ イ コト モ、多 々ア ルノ デ ア リ マス ルガ、時 間 モ大 分 経 過 致 シ マ

ニ此 ノ治 安維 持 法 ノ出 来 マシ タ時 ニ於 テ立 法 者 ノ考 ヘマシ タ コト ハ、 私 有 財産 制 度 ヲ否 認 ス ルト 云 フ、 サ ウ 云 フ結 社 ガ実際 ニ於 テ多 クテ、

ニ盛 リ込 マ レテ居 ツタ ノ デ ア リ マスカ ラ、 此 ノ際 私 ハ更 ニ重複 シテ、

是 等 ノ意 見 ヲ繰 リ返 ス コト ヲ避 ケ マシテ、 簡 潔 ニ述 ベ タ イ ト存 ズ ル

シ タ シ、 又 過 日来 ノ質 問 ノ際 ニ於 テ各 委 員 カ ラ御 意 見 モ、相 当 多分

次 第 デ ア リ マス、 此 ノ法 律 改 正 案 ハ従来 ノ罪 ヲ加 重 シタ ト云 フ コト

国 体 変 革 ヲ目的 ト ス ル結 社 ハ少 イ デ ア ラ ウ ト云 フ ヤウ ナ見 込 ノ下 ニ

ラ見 マスト実 ニ驚 クベ キ コト デ ア リ マ シテ、 国 体変 革 ト云 フ方 面 ニ、

ガ 、各 条 項 ニ亙 ツ テア ルノ デ ア リ マシテ 、是 ハ此 ノ種 ノ犯 罪 ヲ取 締

拵 ヘタ モノ デ ア リ マ ス、 処 ガ 日本 共産 党 ノ目 的 ト ス ル所 ガ、 私 共 カ

ツ テ其 ノ共 産 党 ヲ防遏 致 シ マス法律 ハ即 チ国 体 ヲ護 ルト云 フ コト ニ

所 謂君 主制 ノ廃 止 ト 云 フ ヤウ ナ不逞 ノ方 面 ニ向 ツテ参 リ マシ テ、従

ツ テ行 ク 必要 上 カ ラ シテ 、適 当 ナ ル コト ト考 ヘ ルノデ ア リ マ スル シ、

リ、 或 ハ結 社 組 織 ヲ準 備 ス ル行 動 ヲ取締 ラ ムト ス ル条 項 ヲ新 タ ニ設

又 新 シク第 二条 、 第 三 条 等 ニ於 テ、 或 ハ結 社 ヲ支 援 スル目的 ヲ取 締

ケ ラ レ、 又集 団 ニ付 キ マシテ モ、 条 項 ヲ加 ヘラ レ マシ テ、 一層 此 ノ

ト其 ノ点 ハ謂 ハバ、 第 二 義 ノ問 題 ニ ナ ツテ シ マツタ ノ デ ア リ マス、 併 シナガ ラ当 初 ニ考 ヘ マシ タ私 有財 産 制 度 ノ否 認 ト 云 フ コト ハ、 矢

集 中 サ レテ シ マ ヒ マシ テ、 実 ハ私 有 財 産 制 度 ノ方 ハド チ ラ カト 云 フ

シテ ﹁スロ ーガ ン﹂ ト致 シ マシ タ関 係 モ之 ニア ルト存 ジ マ スガ、 何

張 リ是 ハ国 体変 革 ト云 フ問 題 ト ⋮ ⋮現 ニ日本 共 産 党 ガ之 ノ方 ニ発 展

マスカ、 ソ レ ニ準 ジ テ矢 張 リ国 家 ノ基 本 的 ノ秩 序 ヲ紊 ス 一ツ ノ主 張

モ、 取 締 ノ実 ヲ挙 ゲ ヨウ ト云 フ趣 旨デ ア リ マシ テ、 是 ハ従来 ノ、 此

為 ニ スル行為 ト 云 フ風 ナ、 相 当広 範 囲 ニ亙 ツ テノ個 人 行 動 等 ニ付 テ

煽 動 ヲ ナ シ、 及 此 ノ種 ノ目 的 タ ル事項 ヲ宣 伝 シ、 其 ノ他 目的 遂 行 ノ

マ スル シ、更 ニ又単 ニ結 社 ノ ミ ナ ラズ 、 此 ノ種 ノ事 項 ノ実行 ニ付 テ

種 ノ不逞 ナ ル行 動 ヲ モ取締 リ、 処 罰 ヲ決定 シ ヨウ ト云 フ コト デ ア リ

ニナ ルト思 フ ノデ アリ マシテ、 此 ノ私 有 財 産制 度 ヲ治 安維 持 法 カ ラ

処 迄 モ矢 張 り私 有 財産 制 度 否 認 ト国 体 変革 ト ハ相 竝 ンデ ⋮ ⋮ ト申 シ

外 ニ出 スト 云 フ ヤ ウ ナ考 ヘ ハ只今 デ ハナイ ノ デ ア リ マス

ノ治 安 維 持 法関 係 ノ犯 罪 等 ニ鑑 ミ マシテ、 又其 ノ他 ノ法 律 ノ適 用 セ

、 根 本 ヲ十 分 ニ衝 イ テ、 斯 カ ル私有 財 産 否 認 ト云

ハ其 ノ取 締 、 此 ノ法 ノ適 用 ニ於 テ モ、 十 分 是 等 ノ言動 ニ対 ス ル精 神

ウ ナ言 論 サ ヘ、世 間 ニ ハ往 々散 見 ス ルノ デ ア リ マシ テ、是 等 ノ モノ

種 々ノ方 面 ニ於 テ、 相 当 私 有 財 産 ヲ否 認 ス ルト 云 フ懸 念 ヲ与 ヘルヤ

リ マス、 尚 此 ノ法 律 ノ改 正条 項 ノ中 ニ、 私有 財 産 制 度 ノ コト ハ最 近

種 ノ 犯罪 ノ実 体 ニ鑑 ミ マシテ、 熟 レ モ適 当 デ ア ルト考 ヘル次第 デ ア

ト ハ申 ス迄 モナ イ ノデ ア リ マ ス、 其 ノ他 各 改 正 ノ条 項 ハ、 従来 此 ノ

テ モ、十 分 国 法 ニ依 ツ テ取締 ツテ行 ク ト云 フ コト ガ、 必 要 デ ア ル コ

体 ヲ変革 セ ムト スル運動 等 ニ対 シ マシ テ ハ、是 等 ノ個 人 ノ行 動 ニ付

ラ レ タ ル事 項等 ニ関 シ マシテ モ、 此 ノ治 安 維持 法 ⋮ ⋮、 主 ト シ テ国

等 ノ条 項 モ新 タ ニ追 加 セ ラ レタ ノ デ ア リ マシテ、 是 等 ハ運 用其 ノ宜

デ ア リ マス、 尚 此 ノ法 文 ノ修 正条 項 中 ニ ハ刑事 手 続 、 或 ハ予 防 拘禁

ノデ アリ マス ルガ、 之 ニ付 キ マシテ モ同 様 ノ希 望 ヲ述 ベ テ置 ク次第

リ マ ス、 尚 私 有 財 産制 度 ニ付 キ マシテ モ同 様 ノ御 言 明 ガ ア リ マシタ

ヲ、 少 ク モ次 期 議 会 ニ御 提 出 セ ラ ル ヽコト ヲ切 ニ希 望 ス ル次 第 デ ア

此 ノ法 ノ適 用 ヲ適 当 ニ実 行 セ ラ レ マス ル コト ノ出 来 ル ヤウ ナ修 正 案

シテ モ、 政 府 ニ於 テ十分 検 討 ノ上 、 我 々 モ憂 慮 シ テ居 ル点 ニ付 テ、

旨 ニ於 テ ハ全 然 同 感 ナノ デ ア リ マ ス、 従 ツテド ウ カ此 ノ点 ニ付 キ マ

応 、 此 ノ修 正意 見 ニ ハ賛 成 ヲ シナ カ ツ タ訳 デ ア リ マ ス ルガ 、併 シ趣

ス ルケ レド モ、 然 ル ニモ拘 ラズ 、今 日迄 其 ノ適 当 ナ ル成案 ヲ得 ナ カ

モウ既 ニ八 年 前 ニ、 其 ノ希 望 ハ貴 族 院 ニ於 テ述 ベ テ居 ルノ デ ア リ マ

云 フ、 只 今 ノ御 言 明 モ御 尤 モト 考 ヘ マス ルノ デ、 之 ニ付 キ マ シテ ハ

ハア リ マ ス ルケ レド モ、 此 ノ法 文 ノ作 成 上 、 又更 ニ考 究 ヲ要 ス ルト

シ マシテ、 我 々 ハ、 貴 族 院 ト シテ ハ既 ニ 一遍 可決 シ タ ル修 正条 項 デ

革 ヲ目的 ト スル行動 ノ取 締 ニ付 テ ノ条 項 ハ、 只今 政 府 ノ言 明 ニ信頼

ア ルト考 ヘ ルノデ アリ マス、 又只 今 提 案 ニナリ マシ タ、 此 ノ政 体変

対 シ テ ハ、 十 分 ナ ル態 度 ヲ以 テ峻 厳 ニ之 ヲ取 締 ラ レ ル コト ガ必 要 デ

国 ト ノ関 係 等 モア ル ノデ ア リ マシ テ、 誠 ニ戦慄 スベ キ モ ノガ ア ル コ

ナ ツ テ居 ル モノ モ少 ク ナイ ノ デ ア リ マ ス、 又相 当 計 画 的 デ アリ、 外

ル ノデ アリ マス ルシ、 又 罪質 モ悪 辣 ト ナ リ、 又潜 行 的 ト ナ リ巧 妙 ニ

種 ノ思 想 犯 罪 ハ近年 色 々ノ情 勢 カ ラ シテ、 相 当 数 モ加 ツテ参 ツ テ居

ザ ルヤ ウ ニ要 請 セ ラ ル ヽ コト ガ 必 要 ト考 ヘルノ デ ア リ マス、 尚 此 ノ

関 係 宮 ニ対 シ テ ハ十 分 指 導 教 育 ト 言 ヒ マスカ、 能 ク此 ノ 運用 ヲ誤 ラ

事 項 モ多 イ ノデ ア リ マ ス ルカ ラ シ テ、従 ツテ之 ガ執 行 ノ 任 ニ当 ル各

希 望 ス ル次 第 デ ア リ マス、 殊 ニ是 等 ニ付 キ マシ テ ハ、 従来 例 ノ ナイ

ナ コト ノ ナ イ ヤウ ニ、十 分 慎 重 ナ ル用意 ヲ以 テ処 置 セ ラ レ ル コト ヲ

ス ルガ、 徒 ニ其 ノ運 用宜 シキ ヲ得 ナ イ為 ニ社会 ニ不 安 ヲ与 ヘルヤ ウ

ノ ア ル所⋮⋮⋮

ツ タト 云 フ、 過去 ノ事 実 ハア ルノ デ ア リ マ スルケ レド モ、 只 今 政 府

コト デ ア リ マ シテ、 政 府 ニ於 テ ハ固 ヨ リ申 ス迄 モナ イ コト デ ア リ マ

シキ ヲ得 ナカ ツ タ ナ ラバ、 非 常 ナ ル社 会 不 安 ヲ招 ク コト ハ疑 ヒ ナイ

ノ御 言 明 ハ、唯 徒 ラ ニ時 日 ヲ遷 延 ス ル コトデ ナ ク、 慎 重 ニ、 而 モ速

テ モ各 部 局 ニ亙 リ、 各省 ニ亙 ツ テ種 々施 設 セラ ル ヽ所 ガ間接 ニ、 此

ト ハ申 ス迄 モナ イ ノデ ア リ マ ス、 是 等 ノ 運動 ニ対 シ マシ テ政府 ニ於

フ ヤ ウ ナ、軈 テ ハ国 体 ニモ影響 ス ル虞 ノ ア ル ヤウ ナ行 動 ヲナ ス者 ニ

カ ニ此 ノ立法 手 続 ヲ執 ルト 云 フ司 法 大 臣 閣 下 カ ラノ御 言 明 ハ、 決 シ

ノ種 思 想 ヲ激 発 ス ル ヤウ ナ情 勢 ヲ作 ルト 云 フ コト モ ナイ デ ハナ イ ノ

テ従来 ノ ヤ ウ ナ唯漫 然 時 ヲ看 過 ス ルト云 フ コト デ ナク、 必 ズ其 ノ言 明 ヲ実 行 セ ラ ル ヽコト ト信 ジ マシ テ、其 ノ言 明 ヲ信 頼 シ テ我 々 ハ 一

例 モ少 ク ナイ ノデ ア リ マス ルガ、 之 ニ付 テ ハ余 程 周密 ナ ル注 意 ヲ加

勢 カ ラ シテ 已 ム ヲ得 ズ、 サ ウ云 フヤ ウ ナ運 動 ノ温 床 ヲ成 ス ヤ ウ ナ事

デ アリ マ シテ、 是 ハ固 ヨリ サ ウ 云 フ意 思 的 デ ナ ク、 又 今 日 ノ社 会 情

ゼ ラ レル必 要 ヲ感 ズ ル次 第 デ アリ マ ス、 而 シ テ私 ハ是 等 ノ意 味 カ ラ

我 ガ国 ニ於 テ ハ根 絶 ス ルト 云 フ意 気込 ヲ以 テ、 徹 底的 ナ ル処置 ヲ講

先 程 井 田男 爵 ヨリ申 述 ベ ラ レタ 通 リ所 謂 臣 道 実 践 デ、 此 ノ種 犯 罪 ヲ

デ ア リ マスガ、 併 シ是 ハ単 ニ唯 口頭 ノ御 答 弁 ニ止 ル コト ナ ク、 真 ニ

致 シ マシ テ、 単 ニ此 ノ法 律 ノ改 正 ニ依 ツ テ之 ヲ根 絶 シ、 此 ノ目 的 ヲ

ヘテ、 又 政 府各 省 、 各 部 局間 ニ於 テ モ是 等 ノ間 ニ十 分 ナ ル連 絡 ヲ執 ツ テ、 出 来 得 レバ適 当 ナ ル機関 ヲ設 ケ テ、 之 ガ徹 底的 究 明 ヲ セ ラ レ

シテ モ是 ダ ケノ 法律 改 正 ヲ必要 ト ス ル コト ヲ確 信 ス ル モノデ ア リ マ

ノ 犯罪 ヲ取 締 ツ テ行 ク為 ニ ハ、 此 ノ種 ノ犯 罪 ニ対 シ マシテ ハ、 ド ウ

ス、 此 ノ意 味 ニ於 テ、此 ノ法 律 改 正案 ニ ハ原 案 ヲ賛 成 ス ル次 第 デ ア

達 成 ス ルト 云 フ コト ハ期 待 出 来 ナ イト考 ヘマスルケレ ド モ、 併 シ此

リ マ ス、 尚 此 ノ機 会 ニ於 キ マシ テ、是 等 ノ コト ハ唯希 望 ト シ テ私 個

テ、 過 ナ キ コト ヲ期 セ ラ ル ヽ コト ガ最 モ必要 デ ア ルト考 ヘ ルノ デ ア

テ、 国 民思 想 ノ上 ニモ及 ス影響 モ非常 ニ従来 ト異 ツ タ意 味 ノ ア ル、

所 ハ実 ニ深 刻 ナ ル モノ ガ ア リ、 又 頗 ル広 汎 ナ ノデ ア リ マス ルカ ラ シ

人 ノ意 見 ト シ テ申 述 ベ ル ニ止 ル コト ナク、 之 ヲ希 望 決議 ト シ テ此 ノ

リ マ ス、殊 ニ最 近 ノ此 ノ統 制 経 済 等 ニ至 リ マシ テ ハ、 其 ノ影 響 スル

ル ヽコト ガ 特 ニ必要 デ ア ルト 云 フ コト ヲ考 ヘ ル次 第 デ ア リ マ ス、 尚

モ 一層 此 ノ考 ヘ方 ニ付 テ、 今 後 善 処 セ ラ ル ヽコトト信 ズ ルノ デ ア リ

委 員 会 ニ於 テ、 御 決 定 願 ヘレバ 更 ニ有 力 ナ モノ ト ナ リ、 政 府 ニ於 テ

危 険 ナ ル モ ノ モア リ得 ル ノデ ア リ マス ルカ ラ、 格 段 ノ注 意 ヲ加 ヘラ

是 等 ノ犯 罪 ハ如 何 ニ治 安 維 持 法 ヲ改 正 セ ラ レ、 治 安維 持 法 ヲ厳 重 ニ

マ スカ ラ、 私 ハ茲 ニ先程 二、 三 ノ委員 ノ方 々ト 御 協議 シテ得 マシ タ、

セ ラ レテ モ、 其 ノ根 本 ヲ清 メ ル ニア ラザ レバ 、 到 底 此 ノ思想 犯罪 ヲ 撲 滅 ス ルト 云 フ コト ハ考 ヘラ レ ナ イノ デ ア リ マ ス、 寧 ロ今 日 ノ情 勢

ガ ナ イ為 ニ刷 ツ テ皆 様 ニ御 覧 ニ入 レ ル遑 ガ ア リ マセ ヌデ シタ カ ラ、

希 望 決 議 案 ヲ朗 読 サ セテ戴 キ タ イ ト存 ズ ル次 第 デ ア リ マス、 又時 間

フ次 第 デ ア リ マ ス

朗 読 致 シ マシ テ、 ド ウ カ ソ レ ニ対 シテ全 会 一致 御 賛 成 ヲ得 タ イト 思

ハ却 テ是 等 ノ思想 犯罪 ヲ激 発 スル ヤウ ナ、傾 向 サ ヘア ルノ デ ア リ マ

育 、 学 術 ト 云 フ方 面 ニ亙 ツ テ ソ レ ノ根 本 カラ シ テ從来 ノ 誤 ツタ ル方

スカ ラ シ テ、其 ノ根 本 ヲ清 メ ル意 味 ニ於 キ マ シテ ハ、 ド ウ シテ モ教

向 ヲ是 正 シ テ、真 ニ所 謂 我 ガ国 体 ノ精 神 ヲ明 徴 ニ把 握 シ、 又所 謂 日

シテ十 分 ナ受 著 ヲ持 チ、是 等 ニ対 シテ穏 健 ナ ル人 物、 賢 実 ナ ル人 間

府 ハ速 カ ニ各 省 ニ亙 ル思 想 問 題 ニ関 シ、徹 底 的 統合 ヲ図 リ、斯 ノ種

動 計 画 的 ニシ テ往 々戦慄 スベ キ モノ ア リ、 洵 ニ深憂 ニ堪 ヘズ 、 政

思 想 犯 罪 ハ近年 其 ノ数 激 増 シ、 罪質 悪 辣 ナ ルノ ミ ナ ラズ、 其 ノ行

希望決議

ヲ養 成 セ ラ レ ルヤ ウ ニ、 教 学 ヲ根 本 カ ラ シテ刷 新 セ ラ レ ル コト ガ必

思 想 ノ因 ツテ 生 ズ ル所 ヲ究 メ、 未 然 ニ之 ヲ防 止 ス ルノ途 ヲ講 ズ ル

本 主 義 ノ美 点 ヲ益 々 ハツ キ リ握 ツ テ其 ノ 上 ニ立 チ、 又 我 ガ国 情 ニ対

モ委 員 各 位 ノ意 見 ヲ徴 セ ラ レ、 又政 府 ノ之 ニ対 ス ル答 弁 等 ニ依 ツ テ、

ト 同時 ニ、 教 学 ヲ根 本 ヨリ刷 新 シ以 テ思 想 犯 罪 ノ絶 滅 ヲ期 スベ シ

要 デ ア ルト考 ヘ ルノデ ア リ マ ス、 政 府 ノ質 問 ノ際 ニ種 々是 等 ニ付 テ

益 々ソ レ等 ニ付 テ最 善 ノ努 力 ヲ払 ハ レ ルト云 フ コト ハ承 知 致 シ タ ノ

第 二 部

二

一  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録

昭和十 二年六月 思想実務家会同議事録 諮問事項竝協議事項 諮 問 事 項 第 一、最近 に於ける思想運動情勢 に鑑 み裁判竝 に検察上考慮す べき 点如何 ( 同趣旨) 事項如何 ( 東 京刑事地検)

一、近時 の情勢 に鑑 み思想事 犯 の処理 に関し検察 上考慮すべき 二、最近 に於 ける共産主義運動 の情勢 に徴し検察 上考慮すべき 点如何 (福岡 地検) グ ループ の取扱如何 (神戸地検)

三、日本共産党 の弱勢 に鑑み同党を支持せざる共産主義的秘 密

︹ 抄 ︺) ( 一(一九三七)

四、 日 本 共 産党 に入 党 の事実 乃至 直接 の組織 関 係 な き者 が将来

党 の確 立 を待 つて之 に発展 的 解 消 せ し む る意 図 の下 に同 党 の

綱 領 政策 を其 の綱 領 政策 と為 し同 党 の機 能 を暫 定的 地方 的 に

代 行 す る事 を目 的 と す る共 産 主 義 者 の集 団 を結 成 せ しめ た る

時 は 此 の集 団 は治 安 維持 法 第 一条 の結 社と し て取扱 ふ事 を可 と す る や否 (名 古 屋 地 )

に依 る共 産 主 義 運動 に 付 て の取 調 の方 法 及 程 度 如 何 ( 神戸

五 、 コミ ンテ ル ン第 七 回世 界 大 会 決議 後 に於 け る該 決 議 の趣旨

地)

六、 新 方 針 に基 く 共産 党 及 同 外 郭 団体 の結 成 加 入或 は同 運動 の

あ りた る時 国 体 変革 の目的 あ る事 を何 によ り て証 明 す べ き か

実例 を説 明 あ り た し (高 知 地 )

七 、 共産 主 義 運 動 者 の合 法 擬 装 行為 な り や単 な る合 法 運 動行 為

な り やを 判 別 す る に付 取 調 上 如何 な る点 に留 意 考 慮 す べ き や

( 岡山地) 八、 思 想 転 向 の擬 装 に関 す る 対策 如 何 (大分 地検 ) 九 、 朝 鮮 人 の思 想 犯 罪 に付特 に考 慮 す べき 点如 何 ( 長野地検) 一〇 、 鮮 人集 合 の場 所 等 に於 て独 立 運 動 の宣 伝 と な る べき虞 あ る言動 を為 す も のあ り其 の取 締 上 留意 す べ き 点如 何 (富 山 地 検)

京刑地検)

一 一、 労働 運動 の現 状 に鑑 み検 事 とし て考 慮 す べ き 点如 何 (東

す べき 良 策如 何 (札 幌 地 検 )

一二、 思 想 犯 人 の動 静 殊 に潜 行 的活 動 状 況 等 内偵 に 付特 に改 善

第 二、 司 法 警 察 官吏 の教 養 訓 練 の実 績 に鑑 み て考 慮 す べき 点如 何

一、 司 法 警 察官 吏 教 養 訓 練 の為 専 任 検 事 を 設 く る の可 否 如 何

(同 趣旨 )

( 甲府地検)

料 す る が其 の具 体 的 方 策 如何 ( 静岡地検)

二、 特 高 係 警察 官 に対 し 思 想 犯 に関 す る実務 修 習 の要 あ りと 思

る要 な き か ( 釧路地検)

三、 特 高 係 司法 警 察 官 吏 に訓練 規 程 に依 る実 務 修 習 を為 さし む

協議事項

(一) 制 度竝 に事務 の刷 新 改 善 に関 す る も の

確 立 に関 す る具 体 的 方 策 如何 ( 横浜地検)

一、 司 法 宮 試補 、 少 壮 司 法 官等 に対 す る指導 方 針竝 に教 養制 度

二、 司 法 官 試補 修 習 の方 法 を統 制 す る の要 な き や (千 葉 地検 )

路地検)

一三、 思 想 運動 の情 勢 査 察 に 付其 の最 効 果的 な る方 策 如 何 (釧

一四、 思 想係 検 事 の配 置 な き 地方 裁判 所 管 内 に於 け る思 想 事 件

三、 時 勢 に鑑 み公 判 判 事 、 予審 判 事 及 検 事間 の連 絡 協 調 を 一層

進 を図 る具体 的 方 策 如 何 (山 口 地検 )

五、 逐 年 繁劇 を加 ふ る第 一線検 事 々務 の現状 に鑑 み之 が能 率 増

講 ず る の要 な き や (千 葉 地検 )

四、 弁 護 士 の人格 識 見 の陶 冶 に関 し司 法 部 と し て適 当 の方策 を

緊 密 にす る の方 策 如 何 (千葉 地検 )

の捜 査 、 求刑 量 刑 等 に付 今 一層統 制 を 計 る の要 な き や (千 葉 地検 )

地)

一五、 左翼 現下 の状 勢 に照 し 科刑 上 考 慮 す べ き 点 如 何 ( 前 橋

一六、 最 近思 想 運 動 の情 勢 に照 し科 刑 上 注意 す べき 点 如 何 ( 福 島地) 一七、 思想 事件 に関 し 起 訴猶 予、 執 行 猶 予、 保 釈 、 責 付 及刑 の

一八、 刑 事 被告 人 殊 に思 想 犯 人 の予審 及 公判 に於 け る審 判 上竝

之 を統 一す る要 な き や (大阪 地)

他 の制 限 を為 し 得 る や に 付 て は各 裁 判所 に於 て取 扱 区 々た り

二、 強 制 処 分 に依 り勾 留 せ ら れ た る被 疑 者 に対 し 接 見 禁 止其 の

一、 強 制 処 分 に因 る勾 留 に付考 慮 すべ き 点如 何 (仙 台 地 )

(二) 強 制 処 分 に関 す る も の

に処 遇 上 国体 明 徴 の趣 旨 に鑑 み考 慮 せ ら れ た る事 項 あら ば承

量 定 に付 尚 一層 考 慮 の要 な き や ( 高知地)

りた し (熊本 地)

三 、 検 事 の強制 処 分 の請 求 に於 て判 事 (予 審 判 事 も含 む) は 被 疑 者 に対 し接 見禁 止 を 為 し得 る や各 地 の 取 扱 振 を 承 り 度 し (岐 阜 地 ) 四、 強 制 処 分 に依 る接 見 禁 止 の決 定 を存 続 し て公判 に付 せ ら れ た る場 合 之 に対 す る公 判 裁判 所 の取 扱 方 法 如 何 ( 神戸地) (三) 予 審 、 公 判 に関 す るも の 一、 公 判 中 心主 義 制 度 の下 に於 け る予 審 に付 考 慮す べき 点 如 何 (高 松 地 ) 二、 刑 の量 定 を適 正な ら し む る方 策 如 何

(イ) 刑 の量 定 に付各 地方 各 事件 によ り 生ず る こと あ る べ

例 へば

き不 当 な る差違 を防 止 し 或 る 程度 の統 一を期 す る と 共 に各 地 方 各 事件 の特 殊 事 情 を 上級 審 に反 映 せ し む る適 当 の方 策 な き や

(福 井 地 )

(ロ) 従 来 の刑 の量 定 方 法 に更 に 検討 を 要 す る 点 な き や

(大阪 地)

三、 嘱 託 証 拠 調 の促 進 と正 確 と を 期 す る為 の適 切な る方法 如 何

生死 も不 明 な る場 合 に於 け る取 扱振 如 何 (福 岡 地 )

四、 逃 亡 せ る被告 人 に対 し 予 審請 求 あ り、 逮 捕 の見 込 な く其 の

五、 未 成 年 者 心 神 喪失 又 は心 神耗 弱 と認 め ら る る者 が法 定 陪 審 事 件 に付 陪 審 の評議 に付 す る を 辞退 す るを 得 るや ( 岐阜地) 六、 少 年 法 第 六十 四条 第 一項 第 三十 一条 に依 る心 神 の状 況 調 査 に 付各 庁 の取 扱 を 承 りた し (神戸 地 )

一、選挙事犯 の科刑 の均衡 を得る実際的方法如何 ( 神戸地)

(四) 選挙事犯 に関す るも の

被告とし て訴訟を提起す べき場合 に其 の事件 予審 に繋属する

二、衆議院議員 選挙法第八十四条第二項 に依り検事 が当選人を

の免責事 項に付訊問す ることとしては如何 ( 岐阜地)

ときは予審判事 は当選人を証人とし て同法第百三十六条但書

何 (仙台地)

三、選挙事 犯に関 し懲役刑、禁錮刑 の選択に付考 慮す べき点如 (五) 保護観察 に関するもの き点如 何 (仙台 地)

一、保護観察法施行 の実績 に鑑 み思想事件 の取扱 に付考慮す べ

に考 慮すべき点如何 (山形地)

二、思 想犯保護観察法実施 の成績 に鑑み て思想事件 の審判上特

き点無きや (長野地検)

三、思想犯保護観察所 の設置 に鑑 み思想犯の取扱 に付考慮すべ

四、皇道大本関係治安維持法違反事件は目下予審繋属中 にし て

其 の内容 の公表を許さず、此 の場 合同事件 に依り起訴猶予処

分 に付 せられ釈放せられたるも のに対す る思想犯保護観察法

施 行令第 三条 に依 る通知 は如何 にすべきや (京都地検)

五、思想犯保護観察所と検事又は特高警察と の連絡協調上注意 す べき点如何 (浦和地検)

察 に関す る良法如何 ( 岐阜地検)

六、保護観察機関と検察竝 に警察機関と の連絡協調殊 に二重観 協議出題事項中局長説明分

きや ( 金沢地検)

一、類似宗教及宗教団体 に対す る統 一的取締法令制定 の必要 な 二、政体変革を目的とする運動 の取締方策如何 (熊本地検)

加 せし め る こと にし ては 如何 (金 沢 地 )

一三 、 思 想問 題 に関 す る検 事 、 司 法 警察 官 の会 同 には 判事 を参

如 何 (鳥 取 地)

一四 、 予審 判 事 を し て管 内 の思 想 運 動情 勢 に通 暁 せ し む る方 策

一五 、右 傾 、 左 傾 、中 間 等 各 種 思 想 の現 勢 一覧 表竝 に頒 布 図

三、小作紛争議防止 の具体的対策如何 (秋 田地検) 四、思想犯人に対 する国営授産所設置 の要なきや (秋田地検)

二三 、 司法 警 察 官 吏 訓 練 の 一助 とし て其 の捜 査 に係 る刑 事 々件

る具 体 的 取 調要 項 を編 纂 配 付 す る の必 要 な き や (金 沢 地 検 )

二 二、 特高 、 司法 警 察 官 訓 練 の教 材 と為 る べき各 種 事 犯 に関 す

地)

理方 に付 特 に司 法 警 察 官 を 教養 訓 練 す る の要 な き や (福 井

二 一、 特 殊 の知識 と繁 雑 な る計算 を要 す る背任 横 領 事 件 等 の処

検 事 正 よ り 表彰 の方 法 を 講 ず る の可 否 (千葉 地検 )

二〇 、 司 法 警 察官 吏 訓 練 の結 果 優秀 の成 績 を挙 げ た る者 に対 し

揮 を受 け公 訴 を提 起 せし む る の可 否 (山 形 地 検 )

一九 、 検 事 局 書 記 の捜 査 権 を 一般 的捜 査 権 に拡 大 し 且検 事 の指

ら れ たし (高 知 地 )

一八、 実 際 に現 は れ た る新 方 針 に依 る共 産 党 運 動 方法 を説 明 せ

外 ) を承 知 し た し (名古 屋 地 )

一七 、最 近 の各 地 に於 け る思 想 運 動 の情 勢 (思 想 月 報 所 載 以

(熊 本 地検 )

一六 、 右翼 要 視 察 人 名簿 を全 国 的 に統制 整 備 す る の 要 な き や

変 遷 を了 知 せし め 執務 上 の便 に供 せ ら れ たし (盛 岡 地検 )

こと ) を時 々捜 査 第 一線 を司 る全 検事 に配 付 し 現勢 の動 向 及

(世 界各 国 、 日本 及其 の領 土 、 控 訴管 内 を色 彩 別 に し て表 す

屋 地検)

五、治安維持法第 一条 に所謂結社と認定す べき標準如何 (名古 六、思想犯保護観察法実施 に付同法精神 を社会全般 に了得 せし め同法実施 機関 と相俟ち思想犯人の完全転向を期する要なき や ( 宮崎地検) 遷善 の方法に付裁判所 の考慮すべき点如何 (札幌地)

七、有罪判決確定後被告人 ( 殊 に思想犯被告人)に対する改過

こと ( 金沢地)

八、地方裁判所以上 の各裁判所 に思想係 の判事 一名以上を置く

定 の裁判所 に於 ては思 想判事 を専任し平素より思想犯 の審理

九、最近 の思想運動情勢 に鑑 み現行 の思想検事 の制度 に傚ひ特 裁判に必要 なる諸般 の問 題を研鑽せしむる時間 と設備 を与 ふ る要なきや (神戸 地) 一〇、思想係検事 の配置 なき検事局に専任思想係書記 の配置緊 要 ならざ るや ( 釧路 地検) 一一、思想係書記 を保護司 に嘱託するを可 とせざ るか (釧路地 検) 一二、思想犯罪検挙 に就 て検事、特高警察官及憲兵隊と の間 の 連絡協調 の良策 如何 ( 札幌地検)

に付判決 ありた る場合特 に参考 と為 るべきも のに付 ては該判

事 訴訟法第 二百五十五条 の強制処分 を利用するを可とせず

現行制度 の下 に於 ては承諾留置等 によらず し て成 るべく刑

其 の間朝鮮独立 運動 に対する治安維持法 の適用に関し特に池 田大審

五分散会。第二日は前 日に引続き諮問事項第 一の審議 をなしたるが、

諮問事項 に対す る意見 の開陳あり、当 日審議未 了 の儘午後四時三十

事項第 一より審議 され局長 の説明 に次 で各庁より思想情勢報告並 に

思想係検事 の任務 に関す る件等 に付夫 々 ﹁ 指 示﹂ありたる後、諮問

者 の 一斉検挙 に関す る件、治安維持法違反事件 の禀請 に関す る件、

施行 の衆議院議員総選挙 に関す る件、昨年十二月五日の共産党関係

に協議会 に移 り松阪刑事局長議長 となり別記 の如 く本年四月三十日

臣官舎階上訓示室 に於 て劈頭塩野司法大臣より別記訓示あり、直ち

迄 三日間刑務協会階上大講堂に於 て開催 せられたるが、第 一日は大

第十回思想実務家会同は、昭和十 二年六月二十 四日より二十六日

会議経過

云ふが如 き索引 を付す るを便とせざるや (山口地)

三六、調書 には欄外 に公訴事 実 の 一或は二又は情状乃至動機と

(福井地)

三五、刑事記録編綴 の方法等はなるべく 一定するを可とせず や

指揮統制上不便尠 しとせず 之が対策如何 ( 鳥 取地検)

事局所在 地 の憲兵分隊 の管 区に分属しをり て司法警察事務 の

三四、 一地方裁判所検事局管轄 区域 の 一部が隣接 地方裁判所検

や( 福井 地検)

決 の謄本を当該警察署 に送付す るを可 とせざ るや (山 口地) 二四、司法警察官吏中教養訓練を受けたる者 の転勤竝 に教養訓 練 を受 けざ る者を特高、司法主任又は其 の補助者と為 す こと に就 き考慮すべき必要 なきや (金沢地検) 二五、司法主任及特高主任 の実務修習制度 の効果を確保 する方 策如 何 ( 山形地検) 二六、司法警察官 の転任頻繁 なる為老練 家を久し く止む る能 は に就 ては相当 の考慮を払 ふ必要あり ( 高知地)

ず 折角 の教養 も良果を結ぶ遑 なき状態に付司法警察官 の転 任 二七、 司法警察官教養訓練費用増額を希望 す (金沢地検) 継続 実施 せられたし ( 高知 地)

二八、 司法警察官吏 の教養訓練 の実績は極 めて良好 に付将来 も

徹底 せしむるの要なきや (千葉地検)

二九、刑事裁判 に関し確 乎たる指導原理を樹立し 一般判検事 に 三〇、判事判決 の明白 なる誤謬 に付更正決定を為し得 るや ( 札 幌 地) 三 一、当選人 が選挙事務長 に対す る監督 上の責任は選挙期 日後 何時 迄存続す るも のなりや (岐阜地) 三二、官選弁護人 に日当 を支給す ること とし ては如 何 (岐 阜 地) 警察官 の取調 に付人権蹂躪等 の批難を避くる良方法如 何

三三、事件複雑 にし て捜 査上多数 の日子を要す る場合 に於 ける 例 へば

機 会 に譲 る べき 事 を告 げ 議 事 を終 了 し、 議 長 閉 会 の辞 を述 べ大臣 の

議 を了 し た る外 審 議 未 了 と な り、 局 長 よ り未 了 分 に関 し ては 他 日 の

案 趣 旨 の説 明 あ り た ると 且 議 題多 か りし 為 結 局協 議 事 項 (一) の審

会 。 第 三 日 は協 議 事 項 の審 議 を な し た る が提 案各 庁 よ り詳 細 な る提

庁 よ り意 見 の開 陳 あ り諮 問 事 項 全部 の審議 を 了 し、 午 後 六 時 五分 散

院 検 事 よ り詳 細 な る説 明 あ り 、続 いて諮 問 事 項 第 二 の審 議 に入 り各

る ので あ り ます 、 又文 芸 雑 誌 の同 人組 織 を作 り 、合 法 出 版 物 を利 用

す 、 更 に甚 しき に至 り ま し て は右 翼団 体 をす ら 利用 せ むと 致 し て居

体 内 に潜 入致 し ま し て、 其 の運 動 を展 開 せむ と し て居 る の であ り ま

を 利 用 し て 日本 無 産党 の如 き も のは固 よ り社 大 党 の如 き既 存 合 法団

大 衆 の吸引 に効 果 的 且合 法 的 な るも のを採 り 、 活動 の場 面 は 合 法性

求 を 捉 へて 地方 的 な 特殊 事 情 に即 し て大 衆 の意識 水準 に応 じ て専 ら

革 命 的 な高 度 のも のを 避 け まし て、極 め て卑 近 な経 済 的 政 治 的 な要

版 物 に依 つて見 ま し て も従 来 赤 旗 其 の他 の左翼 文書 に充 満 し て居 り

致 し ま し て啓 蒙 に努 め る と云 ふ形 態 を取 るも のも あ り、 其 の結 果 出

挨 拶 に次 で会 同 員 代 表 の答 辞 あ り て午 前 十 一時 五分 散 会 せ り。諮 問 事 項 並 に協 議 事 項 審 議 の状 況 次 の如 し。

に、 先 づ第 一に従来 は党 を中 心 とす る中央 集 権 主 義 であ つた も のが、

之 に基 き まし た 運 動 が従来 の共 産 主 義 運 動 と異 な る所 を見 ま す る の

帰 す る こと は今 更 改 め て申 す 迄 も な い こと であ ると 存 じま す る が、

戦 略 を採 用 す る こと 並 に合 法的 場 合 を極 度 に利 用す ると 云 ふ こと に

略 、 戦 術 と し て は従 来 の劃一 主義 を廃 し て各 国 の国 情 に適 応 し た る

樹 立 し、 反 帝 国 主 義 戦 争 を反 ﹁フア ツ シ ヨ﹂ 闘 争 に結 合 し 、其 の戦

し て、 社会 民主 主 義 其 の他 の大衆 団 体 の統 一戦 線、 所 謂 人 民 戦線 を

を 要 約 し ま す れば 反 ﹁フ ア ツ シ ヨ﹂ 闘 争 を 当 面 の主 要 活 動 と 致 し ま

﹁コミ ンテ ル ン﹂ の第 七 回 大会 に於 て確定 致 し ま し た新 方 針 は之

検 挙 取 調 に当 り ま し て極 め て有 効 な る捜 査 の端 緒 と も な り、 又治 安

と も全 く 蔭 を潜 め た の であ り ま す、 之 を 要 す る に従 来 此 の種 事 案 の

議 す ると か或 は闘 争 経 歴書 を 徴 し て党 員 に採 用 す ると 云 ふ や う な こ

或 は ﹁ア ヂト ﹂ を転 々し て協 議 を 重 ぬ ると か、 或 は見 張 を置 いて協

す 、 又実 際 の運動 に於 き まし ても 街頭 に於 て秘 密 に連 絡 を し た り、

造 等 の内 容 と其 の揆 を 一にす る が如 き程 度 にな つて来 た の であ り ま

な得 いやう なも のも加 つて来 た ので あ りま す、 謂 はゞ 中 央 公 論、 改

職 手 当法 改 正 と 云 つた やう な極 め て卑 近 にし て全 く非 合 法 と は認 め

の であ り ます 、 之 に代 ふ る に大 衆 課税 反 対 、労 働 組 合 法 の制 定、 退

し て嫌 悪 す ら催 す や う な高 度 な文 句 は全 く其 の姿 を消 し てし ま つた

ま し た天 皇 制 打 倒 ﹁プ ロ レタ リ アー ト﹂ の独 裁 樹立 と か其 の外 一見

新 方 針 に於 き ま し ては 之 を排 し て自 主 独 立 の非 合 法 ﹁グ ル ープ﹂ の

○ 栗 谷 ︹四郎 ︺ 検 事 (東 京 )

結 成 並 に個 人 的 な 活動 へと転 換 し 、 非合 法 組 織 第 一主 義 か ら合 法 場

ま し て、其 の半 面 に於 ては 裏 面 に蔵 し て居 る所 の不 逞 な る意 思 を否

認 す る の に極 め て有 利 な る運動 形態 を取 るに至 つた の であ り ます 、

維 持 法 の適 切 な る証 拠 と も な る や うな 事 実 は其 の悉 く が清算 せ ら れ

再建 の素 地 を 培 養 す る と 云 ふ所 に力 点 を置 く こと ゝな つた の であ り

そ れ でも 尚 ほ党 と か全 協 と か 云 ふ 旧来 の組織 の再建 と 云 ふ や う な其

面 の利 用 主 義 に転 じ ま し て、 一般 大 衆 の左翼 的 啓 蒙 に努 め、 以 て党

ます 、 従 つ て ﹁ス ロ ーガ ン﹂ の やう な も の も従 前 のや う な戦 闘 的 、

の意 図 の判 然 し た 運動 のも のは 比較 的 検 挙 取 調 に容 易 な ので あ りま す。

る が、 実 務 の処 理 に付 き まし て二 、 三 所 見 を述 べ て見 た いと 存 じ ま

其 の第 一と 致 し ま し ては既 に先 輩 諸 氏 に依 り まし て度 々言 ひ古 さ

す るが 、 目 下 当検 事 局 に繋 属 し て居 る事 案 の大 部 分 は直 接 には 是 等 の組 織 の再 建 を 目的 と せず し て、僅 か に啓 蒙 の活動 に依 つて将 来 是

へま す の で第 一に取 上 げ た いと 存 じ ま す る が、 特高 警察 官 其 の他 と

れ て居 る こと では あ り ま す る が、 更 に新 し き重 大性 を 有 つも のと考

の連 絡 を 一層 緊 密 にし て平 素 の査 察内 偵 を厳 に せし む る こと が最 も

等 の組 織 の再建 の素 地 を作 る と 云 ふ程 度 のも のが大 部 分 であ りま す、

肝要 な こと であ る と存 じ ます 、之 に依 り ま し て真 に合 法 な るも のと、

而 かも 警 察 力 の充実 し て居 る為 に当 管 内 に於 ては党 、 全 協 の如 き 所

みな らず 、 早 期 の検 挙 徹 底 によ り ま し て被 疑 者 中 に は党 は 最 早 日 本

謂 従 来 の非 合 法 組織 が全 く潰 滅 し、 そ れと の連 絡関 係 は全 く な い の

第 二と 致 し ま し ては治 安 維 持法 第 一条 の結 社 の認 定 に付 き ま し て

な き を期 す る必 要 が あ る と思 料 致 し ま す。

従 来 と稍 々異 つた観 念 を持 つ必 要 が あ る の で はな いか と思 ひま す、

所 謂 合 法 を 擬 装 し て居 る も のと の区別 を明 確 にし て検 挙 取 締 に遺漏

る検 察 上 の困難 に反 し ま し て此 の種 の運 動 の危 険性 に至 りま し ては

には 存 在 せ ず と 云 ふ やう な 主張 す ら為 す 者 も あ り ます の で、 実 に其

従 来 の如 き高 踏 的 な るも のと異 り、 直 接 大 衆 を 吸引 し 易 き 為 に誠 に

の検 察 上 の苦 心 は容 易 な らぬ も のが あ ると 思 ふ ので あ りま す 、斯 か

恐 るべ き も のが あ るを感 ず る の であ りま す 、 殊 に先 程 御 訓 示 にも あ

居 り ませず 、尚 且 現 に代 表 を ﹁コミ ンテ ルン﹂ に派遣 し て居 る事 実

﹁コミ ン テ ル ン﹂ 日本 支 部 と し て の日本 共 産 党 は之 が取 消 も受 け て

に鑑 みま し ても 現在 組 織 が存 続 し て居 る も のと 見 る こと に於 ては勿

現 在 日本 共 産党 の組 織 は検 挙 に依 り ま し て破 壊 され ては居 りま す が、

会 し て居 る ので あ りま す るが、 国 民 の間 に隠 然 と し て存 在 す る所 の

論 異 論 は な いも のと考 へる の であ り ます 、 従 つて之 が拡 大 強 化 の意

りま し た 通 り最 近 の国 内 情勢 に鑑 みま し て、 極 め て重 大 な 危 機 に際

にあ る の であ り ます 、 一時全 く其 の跡 を断 つた も のと思 料 せ ら れ ま

反 ﹁フア ツ シ ヨ﹂ 的 機 運 に乗 じ まし て、 急 速 に発展 拡 大 の虞 が十 分

原 則 とし て此 の方 針 で進 む べ き も の と検 事 局 に於 き ま し ては 考 へて

思 を有 つ限 り如 何 な る合 法 活動 を 致 し ま し ても 其 の意 思 の下 に致 し

居 る の であ り ま す る が、 前 述 の通 り党 の組 織 が全 く潰 滅 し て居 る結

し た 大学 専 門学 校 内 に於 ても最 近読 書 会 の如 き も のが再 び持 た れ つ

会 と 云 ふ や う な 名称 の下 に民族 主義 的 に、 共 産 主義 的 に新 た な る 運

果 、 之 と は 全然 無 関 係 に秘 密 ﹁グ ルー プ﹂ 的 な 結集 化 を組 織 し て活

の結 社 の目 的 遂 行行 為 とし て処断 し得 る こと は 勿論 であ りま す、 又

動 を 展 開 せ む とす る傾 向 を認 め得 ら る ゝ の であ り ます 、 斯 様 な傾 向

動 す る程 度 のも のが続 出 す る現 状 で あ り ます 、 然 る に 我 々自身 の頭

ま し た活 動 は合 法 を擬 装 し た る も のと認 めま し て治 安 維 持 法第 一条

は 我 が 現 下 の情 勢 に照 し ま し て誠 に寒 心 に堪 へざ る所 であ り ま し て、

ゝあ る や の情勢 に あ る の であ り ます 、 殊 に朝 鮮 人学 生 の如 き は或 は

吾 人 検察 の職 に在 るも のは固 よ り、 御 訓 示 の中 に もご ざ いま し た る

が従 来 の観念 に捉 は れ まし て結 社 と さ へ言 へば 直 に党 、 共 青、 全 協

学 友 会、 同 窓会 、 同 郷 会 と 云 ふ やう な名 目 の下 に或 は座 談 会 、 研学

通 り上 下 一致協 力 し て滅 私奉 公 す べき であ ると 考 へる の であ り ま す

む る こと が躊 躇 せ ら れ て居 り まし て、 斯 様 な こと では 到底 今 日 の如

る も の であ ると言 ひ まし ても 過 言 では な い状 況 であ りま す か ら、 此

第 四と 致 し ま し ては 最 近 の運動 は其 の大部 分 が再 犯 者 を中 心と す

あ り ます 。

き 情 勢 に適 応 す る こと は 困難 で あ ると 考 へて居 りま す 、 現在 第 一線

の際 行 刑 当 局 と の連 絡 を 一層強 化 し て此 の種 の行 刑 成 績 等 の報 告 を

と 云 ふ やう なも のを 想起 し ま し て、 そ れ以 外 に は独 立 し て結 社 を認

に立 つて居 る内務 省、 警 視 庁 方 面 から 盛 に其 の要 望 があ る のであ り

を定 め て置 く の必要 があ ると 考 へて居 る の であ り ます 。

出 来 得 る限 り広 く 且頻 繁 に求 め て、 受 刑 中 か ら之 に善 処 す る の方 針

第 五と 致 し ま し ては 思 想 犯保 護 観 察 所 と の連 絡 協 調 の必要 であ り

ま し て、 勿 論 そ れ に迎 合 す る こと は 必 要 と し な い の であ り ます る が、

ます が、曩 に述 べ まし た やう な 運動 の態 様 上起 訴 の程 度 に達 せざ る

我 々自身 に於 き ま し ても斯 の如 き 旧 来 の観念 を克 服 し て其 の条 件 を

は其 の加 入 者 と し て取 締 を致 した いと 存ず る次 第 であ り ま す、 固 よ

備 ふ る限 りは 組 織 の大 小 に捉 は る ゝ こと な く第 一条 結 社 の組 織 者 又

る の傾 向 にあ る と思 料 せ ら れ ま す ので、 此 の種 の事 案 は成 るべ く広

く犯 罪 の認 定 を得 まし て、 保 護 観察 所 の有効 適 切 な る活 動 を保 し、

事 案 が比 較 的多 く、 而 も 其 の心境 釈 然 た ら ざ る も の益 々多 き を加 ふ

も彼 も多 少 ﹁イ デ オ ロギ ー﹂ を有 つた 結 社 であ れば 第 一条 の結 社 と

其 の保 護 観 察 処分 に依 り転 向 を促 進確 保 し、 以 て再 犯 を防 止 す る こ

々具 体 的 な る事 案 に即 し て判 断 す る の外 は な いと思 ひま す る が、 何

し て認 む べし と 云 ふ や う な暴 論 を吐 く も ので は な い の であ り まし て、

り ど の程 度 のも のを結 社 と見 る かと 云 ふやう な点 に付 き ま し ては 一

茲 に 切 に申 上 げ た い のは 我 々自 身 が頭 を 転換 せ ねば な ら ぬ 必要 があ

若 し御 考 慮 願 へ得 ます るも の であ り ます るな ら ば治 安 維 持 法 の改正

第 六と 致 し ま し て是 は強 く提 唱 す る件 では な い ので あ りま す が、

と も誠 に肝 要 であ る と考 へま す 。

第 三 に犯 罪 の認 定 を為 し得 る事 案 に付 き ま し ては 其 の起 訴、 不 起

る の ではな いか と 云 ふ 点 であ り ます 。

こと は勿 論 承 知致 し て居 りま す るが、 最 近 の運 動 が 只今 述 べた やう

に付 て希 望 致 し た いの であ り ま す 。法 律 の改 正 が容 易 な も の でな い

に単 に党 組 織 の潰 滅 し て居 る現 状 に あ り まし ては単 純 な る共 産 主義

が あ る の では な いか と 云 ふ点 であ りま す 、是 は非 常 に難 か し い点 で あ り ます るが、 程 度 を引 下 げ ると 云 ふや う な言 葉 を 使 ひま し て は語

の宣 伝 と 云 ふや う な形 を呈 す るも のが非 常 に多 い ので あ りま し て、

訴 の裁 定 に当 り ま し て従 来 に比 しま し て多 少 程 度 を 緩 和 す る の必 要

旧来 の組 織 活動 か ら致 し ます れば 相 当 重 要 な る部 署 を 占 め、 犯 情 も

弊 も あり ま す る し、聊 か表 現 に困 難 を感 ず る次 第 であ りま す る が、

云 ふ やう な 程 度 に も達 し て居 な いや う な事 案 が相当 あ る の であ り ま

し私 有 財 産 制度 の否 認 を目 的 と し た る事 項 の実 行 の協 議 又は 煽 動 と

第 一条 の結 社 の目的 遂 行 罪 であ ると も認 め ら れ ま せず 又国 体 を 変革

所 謂 新 方 針 に基 く 運動 に於 き ま し ては 表 面誠 に軽 微 な るか の感 を 懐

し て居 らな いと 云 ふ やう なも のも あ る のであ り ま し て、 将 来 に於 て

す 、 而 も尚 取 調 に当 り まし て の心 境 に於 き ま し ては何 等 の変 化 を来

亦 重 きも のあ り と認 め ら れ る程 度 の熱 意 と活 動 とを 為 し ま し て も、

ン﹂ と同 様 に急 角 度 の転 換 を必 要 と す る ので は な い かと感 ず る の で

か し め る の であ り まし て、 此 の点 に於 ても 我 々 自 身 ﹁コミ ン テ ル

の傾 向 が 各 団体 内 の青 年 分 子 を 駆 立 て ま し て横断 的 な結 成 を 促 進 す

る青 年 層 の上層 即 ち老 壮 年 層 に対 す る 不信 の傾 向 で あ りま し て、此

る に至 り ま し て、 本 年 初 頭 純 正 維 新共 同 青 年 隊 の結 成 を見 た の であ

微 妙 な る動 き を見 せ来 つた の であ りま す 、其 の 一は 各 団 体 内 に於 け

次 に左 翼 の情 勢 は其 の程 度 に致 し ま し て極 め て簡 単 に右 翼 の現 状

りま す、 其 の二 と 致 し ま し ては 運 動大 衆 化 の方 針 の再 検 討 であ り ま

も 此 の種 のも のが続 出 す る の では な いか と考 へら れ ま す ので 一応 の

に付 きま し て聊 か申 述 べ た いと 存 じ ま す、 我 が国 に於 き ます る右 翼

し て、右 翼 団 体 の内 部 に於 き ま し ては従 来 から 議会 進 出 を 目 標 と し

御 考 慮 を 願 ひた いと存 じ て申 上 げ る 次第 で あ り ます。

団 体 の総 数 は 約 七 百 と称 せ ら れ て居 り ま す、 其 の約 半 数 が当 管 内 に

て大 衆 を 獲 得 し、 議 会 の浄 化 を 図 ら む と す る謂 は ゞ漸 進 的 革 新 派 と

も言 ふ べき 一派 と飽 く迄 純 正 日本 主義 の立場 に依 つ て 一挙 に昭 和 維

み ま し て極 め て重 大 な る影 響 を有 つも のと考 へる次 第 であ り ます 、 試 み に そ れ等 の団 体中 の注 目 す べき も のを列 挙 しま す れ ば、 橋 本 欣

の政 情 に刺 激 せ ら れ ま し て議 会 進 出 を 目標 とす る 一派 は俄 然 積 極 的

新 を断 行 せ む と す る 一派 と が存 在 し て居 つた の であ り ます が、 最 近

存 在 し て居 る の であ り ま し て、 其 の動 向如 何 と 云 ふ こと は時 局 に鑑

五 郎 等 を中 心 とす る大 日 本青 年 党 、 小 林 順 一郎 等 を中 心 と す る時 局

な る活 動 を 開 始 し 、其 の結 果 が 二月 三 日成 立 し た る 政治 革 新 協 議 会

協 議 会、 佐 々井 一晁等 の新 日本 国 民 同 盟 、 御 承知 の神 兵 隊 、 赤 尾 敏

と な つて現 は れた の であ り ます 、 之 に 対 し て議 会 進出 を邪 道 なり と

多 数 を算 へる こと が出

等 の建 国 会 、 其 の他鶴 鳴 荘 、 大 化 会 、 皇 道維 新 聯盟 、 大 日 本 生 産党 、 三 六 倶楽 部 、 皇 道 義 会、 神 劔 党 等 々まだ〓

と す る傾 向 を示 し て来 た のであ りま す、 更 に最 近 に至 り まし て政 治

す る純 正 維 新 共 同 青年 隊 の 一派 は 既 成 政党 の結 社 禁 止 に迄 発 展 せ む

し て新 党 樹 立 に邁 進 す る の態 度 を 示 し 、 一方 純 正 維 新 共同 青 年 隊 に

革 新 協 議 会 は数 名 の代議 士 を擁 し て新 党 結 成 への発 展 的解 消 を決 議

戦 線 の統 一の 必要 を認 め て居 り な が ら徒 ら に 離合 集 散 を繰 返 し来 つ た の であ り ま し て、其 の大同 団 結 は殆 ど 見 込 な いも の と信 ぜ ら れ て

来 る の であ り ます 、是 等 右翼 陳 営 の動 向 は其 の発生 以来 何 れも其 の

居 つた の であ り ます 、 所 が昨 年 の事 変 を 契 機 と 致し まし て、其 の後

先 程 御 訓 示 に も あ りま し た 通 り、 其 の裏 面 に於 き ま し ては 色 々な 不

し て合法 の分野 を確 守 し て居 る や に見 受 け ら れ る の で あ りま す る が、

す る も のと認 む る の であ り ま す、 殊 に最 近 の政 変 に付 き ま し て林 内

子 の分 散 と 云 ふ こと は勢 ひ個 別 的 な 急 進 的行 動 に陥 り 易 き危 険 を蔵

を決 議 さ れ た の であ り ま す、 斯 様 な 状 態 であ り ます の で此 の急 進 分

に収 拾 困 難 とな り 、 六 月十 三 日 の中央 常 任委 員 会 に於 き ま し て解 散

く 又前 述 の政 革 系 の団 体 の新 党 結 成 への入党 勧 誘 等 に依 り ま し て遂

穏 行 動 に出 でむ と す る急 進 分 子 の策 動 が窺 は れ、時 に 不穏 な る行 動

閣 に対 し て或 る種 の期 待 を持 つて居 つた のに拘 らず 是 が突 如挂 冠 す

於 ては幹 部 間 の内 部抗 争 は最 近 の政 変 の影 響 に依 りま し て益 々甚 し

に出 づ る者 も あ る状 態 であ り ま し て、 遽 に楽 観 を許 さ な いも の があ

は 一意 戦線 統 一、 陣 容 の拡 大 を 目標 とし て兎 にも角 に も大 同 団 結 の

る のであ り ま す、 殊 に最 近 の政変 に続 く解 散 、 又、 政 変 と 云 ふや う

る の已 む なき に至 つた のは元 老 重 臣 の策 動 に依 るも のと断 じ まし て

気 運 が大勢 を支 配 し て来 た の であ り ます 、其 の運動 も大 体 に於 き ま

な 目 ま ぐ るし い政 局 の推 移 に影 響 せ ら れ て、右 翼団 体 内 部 の情 勢 は

不 安 を 助 長 す る も の も無 き に非 ざ る情 勢 に鑑 みま し て此 の方 面 の動

を見 な い関係 上是 等 を繞 る不穏 な る文 書 が時 に配布 せ ら れ、 人 心 の

針 を決 定 し て其 の具 体 化 に邁進 し つ ゝあ る状 況 であ り ま し て、 現 に

状態 で あ り ます 、 而 も 各 労働 組 合 に於 き ま し て は何 れ も賃 上 闘 争 方

に増 加 致 し まし て、其 の件 数 に於 ても昨 年 度 の約 二 倍 に達 し て居 る

賃 銀 値 上 、 待 遇 改 善 の如 き積 極 的 な る要 求 を 掲 ぐ る労 働 争 議 が急激

之 に甚 し き 不満 を有 す る者 も あ る の で極 め て警 戒 を要 す るも のあ る

向 は極 め て注意 を要 す るも のと考 へて居 る次 第 であ り ます 、 斯 様 な

本 年 行 は れ まし た東 京 市 電 従業 員 の争 議 も其 の現 は れ の 一つであ り

て、 極 め て簡単 に申 述 べ た いと 思 ひ ます が、 本 年 に入 り まし て所謂

情 勢 に直 面 致 し ま し て 二、 三 考 慮す べ き事 項 に付 て申 述 べた いと思

ま す 、而 し て斯 様 な現 象 は今 日 の物 価 昂 騰 の情 勢 よ り致 し ま し て、

加 へまし て記 載 を 致 し てあ りま す ので、 詳 細 な 点 は そ れ に譲 り ま し

ひ ます が、 其 の基 調 と な るも のは矢 張 り曩 に述 べ ま し た特 高 警 察 官 、

と同 時 に、 一面 に於 き ま し ては咋 年 の事 変 関 係 が未 だ全 部 的 に結 末

憲 兵隊 其 の他 関 係 官庁 と の連 絡 を 一層緊 密 にす る こと であ り まし て、

て、 誠 に憂 ふ べ き も のと言 は な け れば な り ま せ ぬ、 斯 様 な情 勢 に乗

じ まし て其 の争 議 の背 後 に不逞 な る思 想 に基 く暗 躍 が行 は れ な いと

益 々悪 化 す る の虞 なき にあ らず と考 へら る る節 も あ る の であ りま し

も限 ら な い の であ り ま し て、 現 に当 管 内 に於 き ま し ては曩 に述 べ ま

以 て非 常 事 犯 の予 防 に努 む ると 同時 に事 件 勃 発 の際 に備 ふ る こと が 最 も肝 要 であ ると 感ず る のであ りま す 、 同時 に此 の種 の要注 意 受 刑

し た東 京 市 電争 議 解決 後 東 京 交 通労 働 組 合 の指 導 に 依 る 郊 外 電 鉄

其 の結 果 此 の種 団 体 並 に個 人 の動 静 に 付 て の情 勢 を 洩 ら さず 詳 知 し 、

者 の状 況、 仮 出 獄 、 仮 釈 放等 に付 き ま し て曩 に述 べ まし た と 同様 一

し まし て、 断 乎 東 交 の幹 部 二十 数 名 を検 束 取 調 べ た次 第 であ り ます

﹁バ ス﹂ 等 の争 議 が ﹁ゼ ネ スト ﹂ の傾 向 を帯 び て居 る こと に留 意 致

以 上 を 以 ち ま し て大 体 左右 両 翼 の思 想 情 勢 に鑑 み まし て考 慮 す べ

て居 る こと が 判 明 し 現 に警 視 庁 の特 高 一課 並 に労働 課 に於 て協 力 し

る が、 其 の結 果 同 組 合内 に は相 当強 度 の人 民 戦 線 運動 の指 導 が伸 び

層 行 刑 当 局 と の連 絡 を 緊 密 にす る必 要 があ る の では な い かと 考 へて

き 事 項 と し て の答 申 を終 り ま す が、 次 に当 局 から提 出 致 し てあ り ま

居 る次 第 であ り ます 。

す る協 議 事項 第 十 一の ﹁労働 運動 の現 状 に鑑 み検 事 とし て考 慮 す べ

の新 方 針 に基 く 共 産 主義 者 の合 法 団 体内 への潜 入 が為 さ れ つゝあ る

こと を思 ひま す れば 、如 何 な る争 議 の背 後 にも 此 の種 の指 導 の手 が

て厳 正 取 調 中 の実 例 さ へもあ る の であ り ます 、殊 に ﹁コミ ン テ ル ン﹂

伸 さ れ て居 る の では な いか と 云 ふ こと も考 へられ る のであ りま す、

と同 趣 旨 に帰 し ます る の で、 此 の際 併 せ て申 述 べ よ と 云 ふ御 下命 が あ りま し た の で、 簡 単 に申 述 べ た いと思 ひま す 、最 近 に於 き ま す る

き 点 如 何 ﹂ と 云 ふ点 に付 て申 上 げ ます 、 此 の協 議事 項 の結 論 は 第 一

て雑 駁 な も の ではあ りま す る が、 本 年 五月 十 四 日附 を以 て当 庁検 事

物 価 騰 貴 の原 因 は或 は 労 働争 議 の頻 発 す る傾 向 に付 き ま し ては 極 め

の であ り ます が、 能 く其 の事 態 に留意 致し まし て単 に争 議 の解決 の

従 つて争 議其 のも の ゝ解決 に付 き ま し ては検 事 の職 務 と関 係 は な い

み に奔 命 し て背 後 の不逞 な る運 動 を 見 逃す こと のな いやう に警察 官

全 国 の各 長官 に宛 て ゝ申 達 並 に 送 付 に 及 び ま し た

﹁最 近 の労働 争 議 概 況 に関 す る件 ﹂ と 云 ふ中 に多少 統 計 的 な根拠 を

正 から そ れ〓

き こと のな い やう に監 視 す る の必 要 があ る と考 へる の であ り ま す、

針 に基 く 不法 運 動 の取 調 に藉 口致 し まし て不 法 な る弾 圧 を 為 す が如

を 連絡 指 導 す る の必要 が あ る と同 時 に 一面 に於 き まし ては 此 の新 方

諸 般 の点 に於 て便 宜 では な いかと 考へ る の であ りま し て、 此 の点 を

す な らば 裁 判 所 に於 かれ ま し て専 門 の思 想 部 を設 置 せら れ た な らば

於 て出 題 さ れ た こと では あ り ます る が、 若 し出 来 得 る こと であ り ま

勿 論非 常 に重 要 な る こと に な る の であ り ま す か ら、 度 々斯 様 な席 に

裁 判所 に事 件 が繋 属 す る ので あ り まし て、 裁 判所 と の連 絡協 調 等 も

横 浜 の佐 野 検 事 であ り ます 、 横 浜 の検事 局 か ら提 案致 し まし た 議

○ 佐野 ︹ 茂 樹 ︺ 検 事 (横浜 )

此 の程 度 で打 切 つて置 き ます 。

も附 加 致 し た いと 存 じ ます 、 まだ 色 々申 上 げ た い こと が あ り ます が、

斯 様 な当 局 管 内 に於 き ます る実 情 を申 上 げ て御 参 考 に供 し た いと考

以 上 の全 体 を 通 じ ま し て最 後 に 一点 御考 慮 を願 ひた いと 思 ひ ます

へま し て、 協 議 事 項 と し て提 出 に及 んだ次 第 であ りま す 。

点 が あ る の であ りま す、 所 謂 思 想 事 犯 は 他 の普 通 事 件 と 異 り ま し て、 平 素 の査 察 内 偵 と 云 ふ こと が根 本 を 成 す も のであ ると信 じ ます 。 従 つ て我 々思 想 事 案 処 理 を担 当 す るも のは常 に社 会 各 般 の情 勢 に留 意 し て、 各 種 の思 想 団体 其 の他 の動 向 に付 て の情 報 を 得 て非 常 時 に備

か る協 議 会 に於 き ま し て論 議 し 尽 さ れ て居 ると 思 つ て居 り まし た所 、

題 は、 甚 だ 茫 漠 と し て居 り ます るが 、 既 に此 の趣 旨 の議 題 は毎 回斯

其 の

ふ る の必 要 があ る こと は勿 論 な の であ り ます 、 然 る にそ れ〓

未 だ其 の議 が な か つた と云 ふ こと を仄 か に聞 き ま し た も の です か ら

管 轄 内 に於 ては 特高 警 察 官 其 の他 関 係 方面 と の連 絡 協 調 に 付 き ま し て は そ れ〓

を得 ると は考 へて居 り ませ ぬ 、 即 ち宿 題 と 致 し ま し て十 分 御 協議 の

提 案 致 し ま し た 次第 で あり ま し て、 勿 論 当 席 に於 て、 終 局 的 の目的

其 の庁 の力 に依 り ま し て遺 漏 なき を 期 し得 る と致 し ま

し て も横 の連 絡 と 云 ふ こと が誠 に欠 け て居 る の では な いか と考 へら

り ます れば 大 し た費 用 も手 数 も な く出 来 る こと では な いかと 思 ひま

こと が誠 に望 ま し く感 ぜ ら れ る の であ りま す 、此 の程 度 の こと であ

の取 調 に付 て の協 議 をす ると か或 は情 報 の交 換 を為 す と 云 ふ やう な

を中 心 と し て の小 さ な会 同 を 頻 繁 に開催 し て戴 き ま し て、 或 は 事 案

控 訴 院 管 内 位 を各 ﹁ブ ロツ ク﹂ に別 け まし て、 各控 訴院 の思 想 検 事

な い の であ り ます が、 客 観的 の反 省 と なり ま す ると聊 か 欠 け て居 る

も な く、 確 信 の下 に司 法 事務 を執 つて居 る こと は今 更 申 上 げ る迄 も

少 し も変 り あ り ませ ぬ、 全国 の司 法 官 は何 れ も内 に省 み て疚 し い所

反 省 は 即 ち内 省 であ りま し て、 是 は普 通 常 識 的 に用 ゐら れ る 反省 と

し ま し ても主 観 的 と 客 観 的 と 区別 し な けれ ば な りま せぬ、 主観 的 の

あ りま す 、 私 は 先 づ此 の反 省 論 か ら 入 り た いと思 ひ ます 、 反 省 と申

を挙 げ ま し て反 省 をし なけ れ ば な ら ぬ と云 ふ時期 に な つて居 る ので

昨 日 甲 府 の岸 本 検 事 が最後 に申 さ れ まし た 通 り、 司 法 部 は 今 上下

上 、 本 省 へ国策 と し て御 提 議 あ り た いと思 ふ の であ りま す 。

れ ます 、 其 の欠 点 を補 はむ が為 には 今 回 のやう な全 国的 な会 同 を 度 々催 さ れ ると 云 ふ こと は費 用 の点 か ら 致 し まし ても 亦手 数 の点 か ら

す の で、 然 るべ く御 考 慮 を 御 願 す る次 第 であ りま す、 又最 後 に 一言

致 し まし ても 殆 ど不 可 能 では な いか と思 は れ ます の で、 切 め て は各

申 上 げ た い のは 我 々検 察 当 局 が事 案 の処 理 を 致 し ま した 結 果 は 結 局

では な い ので あ り ます 、 二、 三 の者 が幾 ら 自覚 致 しま し ても金 国 に

一人 と し て其 の中 に之 に矛 盾 す る者 が居 り ます れば 決 し て司 法 精 神

跨 りま す る所 の司 法 官 各 位 全 部 が自 覚 し な け れ ば本 当 の司 法 精 神 と

民 の悉 く が懐 い て居 る所 のも の、 そ れが即 ち 日本 精 神 であ りま す、

て基 と す る所 の法 律 制 度機 構 、 是 等 のも のを徐 ろ に反 省 致 し ま す る

付 き ま し て反 省 をす る こと が先 づ 第 一であ り ます 、 我 々が由 つて以

云 ふ も のは出 て来 な いと 云 ふ こと を私 は 申 上 げ た いの であ り ます 、

と思 ふ の であ りま す、 即 ち客 観 的 の反省 と申 し ま す る のは我 々が事

と 、 頗 る司 法 権 の運 用 に差 支 を生 ず るや う な規 定 が多 い の であ り ま

と 云 ふ こと に御留 意 を願 ひ た い の であ りま す 、 即 ち此 の中 に は昨 日

此 の ﹁司法 官 試補 、 少 壮 司 法 官等 ﹂と云 ふ風 に書 き まし た 此 の ﹁等 ﹂

務 を 執 る のに其 の根拠 と な る べき 法律 制 度 、 機 構 、斯 う 云 ふ も のに

し て、 最初 の日 に当 りま し て大 臣 閣 下 の御 訓 示 の中 に もあ りま し た

と な つて働 い て下 さ る所 の警 察 官 諸 君 で あ ると か、 さう 云 ふ人 々 の

来 論 議 さ れま し た 書 記 であ ると か雇員 で あ ると か或 は又 私 共 の手 足

る通 り、 自由 主義 、 或 は 個 人主 義 、 或 は唯 物 主義 に基 いた 所 の法律

り ま す、 も つと露 骨 に申 上 げ ま す る な らば ﹁バ ラ ツ ク﹂ 式 な も の が

制 度 、 機 構 が其 の儘 取入 れら れ て今 日 に至 つ て居 る のが多 いの であ

一つ等 の中 に含 ま れ て居 る こと は司 法官 全 体 であ り ます から し て上

教養 制 度 を含 め る意 味 で等 とな つて居 る のであ り ます 、 それ にも う

は大 臣 閣 下 よ り我 々を通 じ ま し て書 紀 、 雇員 に至 る迄 を意 味 す る の

非 常 に多 い の であ り ます 、 之 を 悉 く客 観 的 に反 省 致 し ま し て、 根 柢

と思 ふ ので あり ま す 、客 観 的 反 省 の其 の二 は法 律 の みな らず 総 て の

﹁思 想 検事 の教 養 訓 練 又 は思 想判 事 の指 導 養成 を時 局 に鑑 み て如 何

であ りま す、 当 初 私 は思 想 家、 実 務 家 の会 同 であ りま す る が故 に、

的 か ら立 替 をし な け れば な ら ぬと 云 ふ や う な時 期 に今到 達 し て居 る

社 会 制度 或 は経 済 制 度其 の他 の根 本 的 組 織機 構 を反 省 す る こと であ

す な らば 到 底 数 日論 じ ま し ても 論 じ 尽す こと が出来 な い程 広 大 無 辺

の で あ りま す、 司 法 精 神 と は何 ぞ や と 云 ふや う な こと を論 議 致 し ま

ら其 処 に司法 精 神 或 は 日本 精神 と 云 ふ も の が ハツキ リ浮 び出 て来 る

ると 私 共 が主 観 的 、 客 観 的 の反 省 を致 し ま す る こと に依 つて、 自 か

つて反 省 し な け れば な ら ぬと思 ふ の であ りま す、 斯 の如 く 考 へま す

ふも のを加 へた の であ り ま す、 従 つて思 想 検 事 の養成 訓 練 、 思 想判

我 々は ま だ未 教 育 兵 であ る と 云 ふ自 覚 の下 に其 処 に少 壮 司 法 官 と 云

勿論 若 輩 であ りま す る の で、 此 の少 壮 の中 に入 る の でご ざ いま す が、

ふ こと に考 が及 びま し て司 法 官 試 補 と な つた の であ り ます、 私 共 も

のだ、 此 の後 に来 る若 い者 を仕 立 てな け れば な ら ぬぢ やな いか と云

よ れ を段 々考 へま す る と結 局 す る所 我 々は も う ど う にも 仕方 が な い

にす べき か﹂ と 云 ふ提 案 をす る積 り であ つた の であ りま す、 然 る に

︹マ マ ︺

り ま す、 も つと露 骨 に申 上 げ ます なら ば 国 体 の明徴 と 云 ふ 点 に迄至

な も の であ りま す るが、 私 は 要 す る に司 法 精 神 と は 何 ぞ や と言 は れ

る ので あ り ます 、 即 ち全 体 の司 法 官 が反 省致 し まし て、其 処 に浮 び

が懐 いて居 る所 の人格 の総 和 であ る と 云 ふ こと を言 へば は つき りす

か ら、何 処 で御 切 り下 さ つても差 支 ご ざ いま せ ぬ から 、 そ れ を申 上

時 間 に制 限 がご ざ いま す る ので草 案 通 り 申 上 げ る こと が出 来 ま せぬ

事 の指導 養 成 と 云 ふ点 に付 て少 し申 上 げ た いと思 ふ の であ りま す、

︹マ マ︺

ま し た な らば 即 下 に答 へる こと が出 来 ま す、 即 ち 全 国 日本 の司 法 官

上 つて来 る所 のも のが 即 ち全 日本 の司法 精 神 で あり ま す、 全 日本 国

げ て置 き ま す。 司 法部 が 先 づ主 観 的 の内 省 を要 す る こと は申 上げ る迄 も あ り ま せ

実 行 あ る の みと 云 ふ こと に な る の であ り ます る が、其 の実 行 にな り

こと に な りま し て、 結 局 時 代 は ド ン〓

進 ん で行 く、 制 度 の上 か ら

ま す る と只 今 申 上 げ まし た通 り無 い袖 は振 れな いぢ や な い かと 云 ふ

を 生ず る の であ り ま す、 是 では 到 底国 防 の 一端 を 負担 す る所 の司法

行 き まし ても 機構 の上 か ら行 き ま し ても逆 行 を 呈 す る や う な珍 現象

ぬ 、 客観 的 の反 省 を 致 し ま す ると 先 づ 第 一に私 共 思 想 係 と 致 し まし て非 常 に遺 憾 に思 つた こと が あ る の であ り ま す、 そ れは 昨年 の二 ・

た も の です か ら司 法 部 が 矢張 り今 度 は 事 務 の都 合 上 転 向 し な け れば

の方 に加 は り まし た の であ り ます 、 然 る に二 ・二六 事 件 が起 り ま し

ま す、 も つと 露骨 に申 上 げ ます る な らば 我 々現 場 に居 り ます も のに

と 云 ふ点 に付 き てど う ぞ もう 一段 の御 努 力 をお 願 ひ し た い の であ り

下 の御 訓 示 の中 に も あ りま す る 通 り、 帝 国 議 会 に反映 し て予算 編 成

り ま し て非 常 に御苦 心 の程 は 御 察 し 致 す のであ り ま す る が、 大 臣閣

官 と致 し まし て、 或 は 又法 律 を 天 下 に行 ふ所 の裁 判所 と致 し ま し て

二 六 事件 が起 りま す る 少 し前 に、 東 京 に於 き ま し ては 右 翼思 想 係 、

な ら ぬと 云 ふ結 果 にな つた ので あ りま す 、所 が驚 く べき こと は警 視

対 し まし て予 算 編成 上何 等 か諮 問 す る所 がご ざ いま す る なら ば御 遠

右 翼 思想 部 と 云 ふも のが な く な つた の であ り ます 、 是 は人員 の都 合

庁 に於 き ま し て は当 時段 々右 翼 係 を殖 し ま し て 一課 か ら二 課 と 云 ふ

慮 な く此 の点 を 調 べ て来 い、 あ の点 を調 べ て来 い上下 挙 つて或 は裁

そ こ で本 省 の方 々に申 上 げ た い の であ り ます る が、 御 忙 し い所 であ

風 に別 ち ま し て大 き な 課 が出 来 まし て、僅 か十 数 名 のも のが 二十 名

判 所 と 云は ず 、検 事 局 と 云 はず 、本 省 と 云はず 、 孤立 分 担 せず に協

到 底 其 の抱 負 経綸 な り主 張 を実 施 す る こと が出 来 な い のであ り ます 、

にな り、 二 ・二六 事 件直 後 に於 き まし ては 一躍 百 名 近 く の部 員 を擁

上 巡 廻制 度 が始 ま りま し て、 到 底 さう 云 ふ部 を構 成 す る こと が出 来

す る所 の右 翼 係 の部 が出 来 た ので あり ま す、 然 る に司 法 部 は ど う か

切腹 し ても 宜 し いと 云 ふ やう な意 気込 を 以 て御 や り下 さ つた な らば

力 一致 し ま し て閣 議 に持 つて行 く 、若 し此 の予算 が通 ら なか つた ら

な く な り ま し た も の です か ら 已 む を得ず 解散 致 し まし て、 巡 廻制 度

と 申 し ま す ると それ 迄 あ り まし た も のが解 散 さ れ て、 右翼 係 と 云 ふ

恐 ら く今 日 の司法 権 の発 揚 、 昂揚 と 云 ふ こと が出来 る のでな いかと

も のが無 く な りま し て僅 に 一、 二 の方 が右 翼 事 件 が起 れば担 当 す る と 云 ふや う な程 度 にな つ て居 つた の であ り ます 、 是 な ど は能 く司 法

し た け れど も 、現 在 に於 き ま し ては通 用 致 し ま せ ぬ、 殊 に悉 く国 家

の機 関 であ り ま す か ら、 個 人 と し ては出 来 る かも 知 れ ま せぬ が、 国

思 ふ のであ りま す、 昔 は武 士 は食 は ね ど高 楊 子 と 云 ふ こと を 言 ひま

家 と し て 一つ の こと を行 ふと 致 し ます な らば 矢 張 り予 算 と 云 ふ点 に

部 は 時 代 に後 れ て居 る と申 し ます るが、 明 か に時 代 に逆 行 し て居 る

の点 は非 常 に遺 憾 に思 ひま す の で、 如 何 に名 論 卓 説 を 用 ひ ま し ても

後は 無 い袖 は振 れな いと 云 ふ 一点 に了 つ てし ま ふ の であ り ま す、 此

あ り ます 、 二 、 三 日前 に観 察 所 長 の会 同 がご ざ いま し て、其 の見 学

付 て最 も 戒 心 を し、 最 も 茲 に力 点 を置 か なけ れ ば な ら ぬと 思 ふ ので

の であ り ま す、 結 局 す る所 数 日 以来 の会 同 の経 験 に於 き ま し ては最

と 云 ふ こと で了 る の であ り ます 、 即 ち結 局議 論 畢竟 世 に効 な し、 唯

最 後 は無 い袖 は振 れな い ので は な いか 、 ま あ研 究 し やう では な い か

何 か で そ れだ け の こと をす る の かと思 つて拝 観 致 し ま し た所 、驚 き

法 律 家 では あ り ま せ ぬ、 法 律 屋 の方 でござ いま す か ら、 一体 規 則 か

れ、 之 を 待遇 す ると し な いと は国 家 の方 で考 へる こと であ つて、 我

は常 に言 つて居 り ます る が、 検 事 で 一生 畢 れ、 勅 任 官 にな る迄 頑 張

其 の人 の地位 や位 や階 級 が物 を言 ふ の では な いの であ り ます 、 私 共

依 りま し て其 の人 の人 格 な り、 其 の人 の仕事 な り が判 断 さ れま し て、

の であ り ます 、 さう 云 ふ気 持 を 以 て各 位 が仕 事 を為 さ いま し て、自

ま し た、 法 則 も 何 も な いの であ りま す、 訓 示 規 定 も何 も な いの であ

々は 一挙 手 一投 足 が悉 く 司法 権 の運 用 であ るか ら、 其 の場 で以 て相

に参 りま し た が、 東 京 府 の機 械 工 養 成訓 練 所 であ り ま す、 六 ケ月 間

り ます 、 然 ら ば何 を ﹁モツ ト ー﹂ と し て居 る かと 云 ふ こと を校 長 さ

果 て る覚悟 でや れ、 勅 任 官 に な つて 一生 それ で頑 張 れと 云 ふ こと を

で行 つ て後 に残 す 絹 の如 き も の でな け れ ば な ら ぬ、其 の繭 の効 果 に

ん に伺 ひま し た所 、 ﹁ 恥 を知 れ﹂ 唯 此 の 一言 、是 が 私 共 の ﹁モ ツ ト

常 に言 つて居 る のであ り ます、 是 は我 々と し て最 も大 事 な こと で あ

分 は そ れ で何 時斃 れ ても 宜 いのだ 、 自 分 の下 す 所 の裁断 は繭 が死 ん

ー﹂ だ、 さう云 ふ こと を言 ひ まし た 、 実 に頂門 の 一針 であ り ます 、

に中 学 を 卒 業 し た者 に対 し て機 械 工 と し て の訓練 を施 し まし て、 直

司 法 精 神 と か或 は 日本 精 神 と か喧 し い こと を色 々申 し ま す が、 た つ

つき り申 上 げ ま す れば 之 を指 揮 監督 す る人 の責 任 であ り、長 官 の責

り ます 、 之 を酬 ゆ ると 酬 ひな いと は国 家 の方 の責任 であ り ま す、 は

ち に実 社 会 に活動 せ し む るや う に出 来 る のであ り ま す、 そ こで私 共

を知 れ﹂ と云 ふ こと を 先程 の反 省 論 に加 へて解 釈 致 し ま す な らば 主

そ こで時 間 が あ り ま せ ぬ から 如何 に考 へる か、如 何 に心 得 る か、

任 であ り ます 、 我々 は さう 云 ふ も のを問 ふ必 要 は な いの であ り ます 。

た 一言 の恥 を知 れ、 端 的 にし て実 に要 領 を得 て居 り ま す、 此 の ﹁恥

る、 其 の捜 査 に於 て常 に恥 を知 る、 裁 判 を下 す 、 其 の裁 判 を 下す 時

一例 と致 し ま し て法 律 を 二、 三 引用 致 しま す が、 先 づ卑 近 な 方 か ら

如 何 に 心構 へを 為 す べき かと 云 ふ こと の御 参 考 の為 に客 観 的 反省 の

観 的 並 に客 観 的 に観察 し て恥 を知 らう ぢ や な いか、 我 々が 捜 査 に当

に当 つて常 に恥 を 知 る、 実 に簡 単 明 瞭 であ り ます 。

て居 る の であ り ま す、 度 々改 正 さ れ て居 る法 律 も ござ いま す が、 旧

参 り ます 、 先 程 日 本 の法 制機 構 は ﹁バ ラツ ク﹂ 式 のも の であ つて、

思 想 検 事 並 に思 想判 事 の養 成 指 導 と 云 ふ こと に於 て申 上 げ た い こ

態 依 然 た るも のも あ りま す、 太 政官 布 告 云 々と 云 ふ のが依 然 と し て

と は、 結 局 昨 日も 誰方 か申 さ れ たや う であ り ます が、 泥繩 式 の こと

あ り ます 、 是 等 に対し ま し て色 々研 究 す ると 云 ふ こと は 一朝 一夕 で

活 き て居 る のが あ りま す 、所 が最 近出 来 ま し た思 想 犯 保 護観 察 法 と

へら れた のが第 一であ り まし て、 そ れ を色 々繕 ひ致 し て今 日 に至 つ

は 出 来 な い の であ り ます 、 然 ら ば 如 何 にし た ら宜 いか、 各 自 之 に当

云 ふ のが ご ざ います が、 此 の規 定 を茲 で 一、 二 引用 致 し ま す、 保 護

条 約 を改 正 し て裁 判 権 を 回復 す る と 云 ふ やう な こと をし て急 速 に拵

る者 が繭 の如 き気 持 を 持 つ てや れば宜 い、 繭 と は 何 だ、 要 す る に我

で は いか ぬ、 大 臣 閣下 の御 訓 示 にも ご ざ いまし た 通 り 社会 相 が最 も

々は 蛹 であ る、 結 局 作 ら れ た所 のも のは繭 に価 値 が あ る のであ り ま

観 察 所保 護 司執 務 規 範 の第 二条 に ﹁保 護 司 は 我国 体 に関 す る 明徴 な

複 雑 し て居 り ま し て、 最 も深 刻 な 社 会相 は思 想 犯 人 を 出 す 社会 相 で

す 、 立派 な繭 を作 りま し た な らば 蛹 は其 の儘、 煮 ら れ て死 ん で行 く

の社 会的 良 心 と正 義 的 観念 を尊 重 し 特 に其 の出 生地 及 性 別 に因 る特

ひま す 、其 の又第 十 三 条 を御 覧 下 さ い、﹁思想 の善 導 に当 り ては本 人

と 云 ふ こと を法 制 化 し た も のは恐 ら く 此 の法 規 が最 初 であ ら う と思

あ り ます が、漸 く に し て化 石 時 代 を脱 却 致 し ま し て、 少 し く 仕事 を

き て居 る か死 ん で居 る か分 から ぬ と 云 ふ の で化 石時 代 であ つた ので

り化 石 時 代 と 云 ふ も のが司 法 部 にあ つた の であ り ます 、 其 の時 は 生

せ ぬ、 嘗 ては 化 石時 代 と 云 ふ時 代 が あ り まし て、明 治 に な つ て矢張

れ た如 く非 常時 に な つて居 る の であ り ます 、 併 し私 は さう は考 へま

に於 て叩 かれ、 誠 に司 法 権 と 云 ふ も のは昨 日 甲州 の岸 本 検 事 の言 は

殊 事 情 を 考 慮す べし ﹂ と 云 ふ こと が書 い てあ り ます 、 是 は 今 回 の近

謂 人 権 蹂 躙 の声 が非 常 に喧 し く な り ま し て議 会 に於 て叩 か れ、法 廷

衛 内 閣 が唱 へら れ まし た 社会 正義 と か国 際 正義 と か 云 ふ こと の魁 け

始 め ます ると 人権 蹂 躙 と 云 ふ こと に な つた の であ り ます 、 即 ち 司法

る観 念 を把 持 す ると 共 に常 に社 会 状勢 の推 移 、 人 心 の趨 向 に留 意 し

にな つ て居 り ます 、 其 の正義 と 云 ふ こと を法 制 化 し た最初 であ ら う

の見 地 か ら致 し ま す な らば 甚 だ 結 構 な こと であ り ま す、 問 題 は 先程

部 が幾 ら か動 き出 し て来 たと 云 ふ こと の証 拠 であ り ま し て、 大乗 的

之 に関 す る認 識 を 有 す る こと に努 む べ し ﹂斯 う あ りま す、 国 体明 徴

と 思 ふ の であ り ます 、 此 の法 規 が生 れま し た こと も矢 張 り 思 想係 の

か ど う か、 各 自恥 を知 つて居 る かど う か と云 ふ 簡単 明 瞭 な こと が、

申 上 げま し た や う に各 自 が主 観 的 、客 観 的 の反 省 の下 に や つて居 る

方 々の長 い間 の御 経 験 から是 でな く ては な ら ぬ と 云 ふ の で斯 う 云 ふ 法 規 が生 れ た こと は申 す 迄 も あ り ませ ぬ、斯 の如 く凡 ゆ る法 律 体系

更 にも う 少 し法 律 に付 て申 し ま す と、 憲 法 第 五十 七条 ﹁司 法 権 は

其 処 に何 と な く曇 つて居 りま す ると さ う 云 ふ声 が起 る のであ り ま す。

が所 謂 日 本 の国 体 に即 す るや う に、 日本 民 族 の生活 に即 す るや う に、 日本 民 族 の形 成す る社 会 に即 す る やう に之 を 悉 く 一歩 々々変 へる や う に我 々は 努 力 し なけ れば な ら ぬ と思 ふ の であ り ま す。

又裁 判 所 に属 し 若 く は之 に関 す る司 法 及 行 政 事 件 に付 公益 の代 表 者

ても必 要 な りと 認 む る とき は 通 知 を求 め其 の意 見 を述 ぶ る こと を 得

適 用 を請 求 し 及判 決 の適 当 に執 行 せ ら る るや を 監 視 し、 又 民 事 に於

刑 事 に付 公 訴 を起 し其 の取 扱 上 必要 な る手 続 を為 し法 律 の正 当 な る

と 云 ふ風 にあ る か の如 く見 え るや う な疑 ひな き にし も非 ず であ り ま

り ま せう が、憲 法第 五十 七 条 を 司法 権 は法律 に依 り裁 判 所 之 を 行 ふ

は 明 か に な る の であ り ます 、 今 日 の裁 判 は さう 云 ふ ことは な いで あ

所 謂 客観 的 の反省 と主 観 的 の反 省 を為 さ いま す な らば 、 自 から結 論

さ う であ りま す る が、 此 の憲 法 第 五十 七条 を 能 く反 省 致 し ま し て、

る こと が出 来 る か どう か、 適 格 あ り や否 やと 云 ふ や う な こと があ る

以 て之 を定 む ﹂ と云 ふ こと にな つて居 り ます 、判 事 が判 事 を 訊 問す

と し て法 律 上 其 の職権 に属 す る監督 事 務 を行 ふ﹂ 云 々、 斯 う 云 ふ の

す、 外 国 の例 が ど う で あ ると か、 ﹁ド イ ツ﹂ の裁 判 令 が ど う で あ る

天 皇 の名 に於 て法 律 に依 り裁 判 所 之 を行 ふ、 裁 判所 の構 成 は 法 律 を

であ り ま す、 果 し て我 々は捜 査 権 を 運用 す る に当 り ま し て、 公 益 の

更 に検 事 と 云 ふ こと に付 て考 へます ると 、 裁判 所 構 成 法 を 御覧 下

代 表者 と し て先 程 申 上 げ ます る やう に恥 を知 つてや つて居 る の であ

と か、 ﹁フ ラ ン ス﹂ の判 例 がど う であ ると か、 さ う 云 ふ や う な こ と

さ いま す ると、 其 の第 六 条 に ﹁各 裁 判 所 に検 事 局 を附 置 す 、 検事 は

り ま せ う か、 恥 かし か ら ぬ こと をや つ て居 る のであ り ま せう か、所

か ら 生 れ て来 る、 之 に依 つて裁 判 事務 を執 ると 云 ふ こと が即 ち 司法

十 七 条 の規 定 を 主 観的 に反 省 し 、 客観 的 に内 省 し、 其 処 に結 論 が自

は ﹁天皇 の名 に於 て法 律 に依 り裁 判所 之 を行 ふ﹂斯 う 云 ふ憲 法 第 五

は もう 今 日 は必 要 無 い のみ な らず 、 寧 ろ時 代 後 れ であ り ます 、 我 々

等 其 の制度 が な い、 又逓 信 省其 の他 の官庁 に は相 当 専 門的 のも のが

海 軍 大 学 、 陸軍 大 学 の制 度 があ る の であ り ます る が、 司 法部 に は何

兵 学 校 等 が あ り、 此 処 に於 て所 謂 日本精 神 を吹 込 み、 又其 の上 には

ぬ、 国 体 明 徴 と申 し ます る が、是 れ 以上 明 徴 な る規 定 はな い の であ

し て、 結 局 は現 在 に於 て専 任 の指 導官 が全 国 的 の事務 を 一ケ所 に集

と を提 案 す る の であ り ます 、 後 は 色 々予算 の関 係 が ご ざ いま す から

に付 て考 へて見 た 上 に、 是 非 共 実 施 を要 す る の では な いかと 云 ふ こ

あ りま す が、 司 法 部 内 に はな い、 此 の際 司 法 国 策 と し て さう 云 ふ 点

り ま す、 予 審 の決 定 も裁 判 であ り ます 、 即 ち 天 皇 の名 に依 つて裁判

め ま し て、 さう し て指 導 訓 練 す る、 其 の期 間 を も う少 し長 く す る と

精 神 であ る の であ り ます 、 即 ち 国 民的 の恥 を 知 ら な く ち や いけ ま せ

所 が行 つた 所 のも のであ りま す 、 又公 判 の裁 判 も さう であ り ま せう 、

云 ふ やう な こと に止 め まし て、 尚 ほ もう 一言 理 想 論 を申 上 げ ま す。

ん が や ら れ る方 が宜 いと 思 ひま す、 も つと は つき り申 上 げ ま す な ら

そ れ は我 々の後 継 ぎ を養 成 す る ので あ りま す か ら、 一番 のお 父 さ

結 論 は申 上 げ る迄 も な いと 思 ひま す。

佐 野 君 に御諮 り致 し ま す が 要 す る に具 体的 方 策 如 何 と 云 ふ ので、

ば 大審 院 長 検 事 総長 並 に司 法 大 臣、 此 の三 大 長 官 が御 骨 折 下 さ いま

○議長

た 以外 に項 目 だ け でも 掲 げ て御 話 を終 つて戴 き た いと 思 ひま す。

何 か具 体 的 の方 策 に付 て御 考 が あ り ます るな ら ば今 迄 御 述 べ に な つ

る し、 司 法 官 が 相 一致 致 し ま し て所 謂 天 皇 の名 に於 け る裁 判 と 云 ふ

いと思 ふ の であ り ま す、 そ こ で始 め て司 法 精 神 と 云 ふ も の が確 立す

し て指 導 方 針 を 確 立 さ れ、 又 司法 精 神 を御 作 り 下 さ る こと が 一番宜

実 は 具 体的 方 策 に付 き ま し て は千 葉 地検 の佐 藤 さん が御述 べ に な

も のが行 は れ る の であ らう 、斯 う思 ひ ます の で、 私 の意 見 を述 べ て

○ 佐 野 検事 ( 横浜)

る の で、其 の方 に御 譲 り 致 まし て も宜 し いが、 唯 理 想 論 と 致 し まし

終 り ます 。

(一 二 九三 )八 ( )

て は陸海 軍 に於 き ま し て特 殊 の機 関 と 致 し まし て或 は 士 官学 校 或 は

二 二  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺

昭和十三年六月 思想実務家会同議事録

議

長

最 近 に於 け る思 想 運動 情 勢 の変 化 に鑑 み裁 判 竝 に検察 上考 慮

諮 問事 項

ミ ンテ ル ン第 七 回世 界 大 会 は、 我 が国 の左翼 思 想 運 動 に実 に多 大 の

す 迄 も な い のであ りま す が、 昭和 十 年 夏 モ ス コウ に於 て開 か れた コ

訴 院 検事 か ら詳 細 且 つ正確 な る御 説 明 が あ り まし た の で、 改 め て申

爾 来 我 が国 に於 け る共 産 主 義 運動 と 云 ふも のは 、新 し い運 動 方針 の

は、 我 が国 共産 主義 運 動 の方 向転 換 の 一契 機 と な つた の であ り ます 。

争 反 対 及 フア ツ シ ヨ反 対 の統 一戦 線 即 ち 所 謂 人 民戦 線 の新 運動 方 針

影 響 を 与 へた ので あ りま す 。右 大 会 に於 て採 用 せ ら れた帝 国主 義 戦

す べき 点如 何 。

是 よ り諮 問 事 項 の ﹁最 近 に於 け る思 想 運 動 情勢 の変 化 に鑑 み裁 判

線 に沿 つて活 溌 に展 開 せ ら れ て居 つた のであ ります 。 其 の態 様 を見

竝 に検 察 上 考 慮 す べ き 点如 何 ﹂ 之 に関 し て意 見 を伺 ふ の であ り ま す が、 固 よ り此 の諮問 事 項 に付 き ま し て は、 会 同 員各 位 の 一致 し た る

ま す る と云 ふ と 、或 は既 に存 在 し て居 り ます る合法 労 働 組 合 、或 は

ん で、 内 部 か ら是 等 の組 合 を人 民 戦線 の母胎 たら し め やう と す る動

決 議的 の答 申 は 、 之 を 必要 とし な い ので あ りま す 。之 に関 す る御意

き があ り、 或 は 又 合法 文 化運 動 の仮 面 の下 に啓 蒙出 版 物 の発 行 を 通

農 民組 合 、 さ う 云 ふ や う なも のゝ内 部 に此 の新 し い運動 方 針 を持 込

ま す る ので、 そ れを 此 処 で第 一よ り第 十 四 ま で並 べ て置 いた の であ

し て、此 の新 し い運動 を展 開 し て居 つた 一つの動 き が あ り、更 に又 先

であ り ます 。 殊 に此 の諮問 事 項 に大 体 同趣 旨 の協 議 事項 が出 て居 り

り ま す る が、 便 宜 此 の同趣 旨 の提 案 の方 か ら其 の理 由 の説 明 を伺 ひ

見 のあ る方 は 、 随 時其 の意 見 を御 述 べ に な つて答 申 を せ ら れた い の

ま し て、 且 つそ れ に関 聯 し て、 此 の諮 問事 項 に付 て の答 申 を茲 に お

の推 進力 た らむ こと を標 榜 し て居 つた動 き が あ つた と 云 ふ様 な工 合

に、 日本 に於 け る此 の運動 の現 は れ と 云 ふ も のは 、頗 る複 雑 多岐 を

般 検挙 致 しま し た 日 本無 産 党 の如 く 、 政党 自 体 公 然 と 人民 戦 線 運動

極 め て居 る の で あり ま す る が、 飽く 迄 合法 の場 合 を 固 守 し て大 衆 の

願 ひ 致 し た いと思 ふ の であ り ます 。 相 当沢 山 あ りま す か ら要 点 をな

一 日本 無 産 党 関係 事 件 処 理 に関 し検 察 上 考 慮 す べ き事 項 如

るべ く簡 略 に お述 べを 願 ひた いと存ず る の であ り ます 。

何 ( 東 京 地検 )

る の であ り ます 。 扨 て其 の 一面 コミ ンテ ル ンが我 が国 に対 し てど の

獲 得 に力 を注 いだと 云 ふ 点 に於 きま し ては、 孰 れも 一致 いた し て居

程 度 働 き掛 け て居 る かと 云 ふ 点 を見 ま す と 、 先程 戸 沢 検事 のお話 に

只 今 、議 長 の仰 つし や いま し た通 り、諮 問事 項 に対 し ま す る私 共

長 谷 川 ︹明︺ 検 事 (東 京 地検 )

の方 の答 申 と、 私 共 の方 か ら提 出 致 し ま し た協 議 事 項 に関 し ます る

な りま し た通 り、 ア メ リカ共 産 党 日本 人 部 を 通 し まし て、 我 が国 内

て、 我 が国内 に於 て官 憲 が発 見 す る も のだ け を見 ま し ても 、 一年 に

報 と言 つた や う な左 翼 出 版 物 は、 最 近頓 に其 の数 が殖 え て参 り ま し

に流 入 り ま す る所 の、 国 際 通信 、 太 平 洋 労 働 者、 海 上 通 信 及 太洋 新

所 見 と を 併 せ て申 述 べた いと思 ひ ます 。

議 事 項 に関 し ま す る私 共 の所 見 を簡 単 に申 述 べ た いと思 ひま す。 最

先 づ 諮 問事 項 に対 す る答 申 を申 上 げ ま し て、次 いで当 庁提 出 の協

近 に於 き ま す る思 想 運 動 情 勢 の変 化 に付 き ま し て は、 午 前 中戸 沢控

鼓 吹 致 し ま し て、 我 が国 内 の攪乱 を策 し て居 る と 云 ふ状 況 であ り ま

此 の種出 版 物 の内 容 が、 殆 ど事 変 に集 注 せ ら れ て、 鋭 意 敗 戦 主義 を

約 千 部 に達 す る状 況 であ り ま す。 殊 に昨 年 七 月支 那事 変 勃 発 以後 は、

関聯 致 し まし て、 最 近世 界 に相 当 大 き な衝 動 を 与 へま し た所 の、 ス

が国 に 対す る働 き掛 け を為 さむ と し て居 る の であ り ます 。 更 に之 に

ユー ヨー ク国 際 通 信 社 のリ ー フ レツ ト に ﹁仕 事 場 を固 め よ︱

新し

な るも のがあ る の であ り ま す。 そ れは 本年 一月発 行 せ ら れま し た ニ

て発 行 せ ら れた る此 の種 出 版物 の内 容 中 、 我 々 の執 務 上相 当 参考 に

従 つて対 資 本 主義 諸国 、 就 中 イ ギ リ ス、 フ ラ ン スと 云 ふ やう な 民主

せ ぬ が、 現 実 の政 策 と致 し ま し ては、 国 際 的 に は平 和 主 義 を 執 り、

た為 に、 世 界 革命 と 云 ふ こと を 決 し て無 視 し て居 つた の では あ り ま

御 承 知 の通 り ス タ ーリ ンは 、 一国 社会 主 義 の建 設 に急 であ り ま し

タ ー リ ンの声 明 に付 き ま し て 一言 致 し た い の であ り ます 。

き 困難 に対 し て﹂ と 題 し て、 発 行 し て居 るも の であ り ます 。 此 の内

点 に関 しま し ては、 ソヴ イ エト聯 邦 内 外 の共産 主 義 者 の間 に、 共 産

主 義 諸 国 と の間 に は協 調 主 義 を 執 つて参 つた の であ り ます が、 此 の

す 。 就 中昨 年 十 二 月 の日 本 無産 党 関 係 者 等 に 対 し ます る検 挙 後 に於

容 に付 き まし ては 、 先程 矢張 り戸 沢 控 訴 院 検事 が お触 れ にな り まし

イ エト の若 い共産 青 年 同 盟 員 イ ワノ フ に対 す る 回答 の形 式 を 以 ち ま

た 通 り であ りま す か ら し て、 詳 細 の内 容 を朗 読 致 し ます る こと は避

し て、 プ ラウ ダ其 の他 有 力 新 聞紙 上 に 一つ の声 明 を発 表 し た のであ

があ つた の であ り ます 。 然 る所 スタ ー リ ンは本 年 二月 十 二 日、 ソヴ

考 へら れ て居 つた や う な、 平 和 、 自 由 、 生 活安 定 を目 標 と す る広 汎

りま す 。其 の声 明 の趣 旨 と 致 し ます 所 は、 要 す る に ソヴ イ エト聯 邦

主 義 が結 局 資 本主 義 に屈 服 し た のだ と云 ふや う な こと で多 く の不満

な る 人 民戦 線 運動 す ら、 其 儘 で は到 底 日本 の内 部 に於 き ま し て、 之

け ま す る が、 此 の内 容 の趣 旨 と致 し ま す る所 は、 要 す る に事変 前 に

を問 題 にす る こと が出 来 な く な つた のだ か ら、 現 在 日本 国 内 に於 き

会 主 義 建 設 の勝 利 を 守 つ て行 く為 には、 ソヴ イ エト聯 邦 の労 働 者 は 、

ま し て、 人 民 戦線 に付 て為 さな く ち や な ら ぬ事 柄 は人 民 戦線 の内 容

ブ ルジ ヨア国 家 の労 働 者階 級 と国 際 的 に聯 繋 を 結 ん で、 此 の聯 繋 を

一国 社 会主 義 の建 設 は既 に完 全 な る勝 利 を遂 げ た 。 併 な が ら此 の社

第 一に人 民戦 線 の組 織 者 で あ り且 つ推進 力 で あ る所 の 労働者 の闘 争

強 化 し て行 き、 相 互 に援 助 し合 つて、 レー ニ ンの所 謂 ﹁世界 的 規 模

に於 け る社 会主 義 は既 に基 礎的 の建 設 を了 し た、 正 確 に言 ふ な らば

を強 め て統 一戦 線 を作 ると 共 に農 民 と の結 合 を 固 め な く ち やな ら ぬ 。

を作 つて基 礎 を築 き そ の第 一歩 を 踏 み出 す こと であ る。 そ の為 には

更 に第 二 と し ては 労働 者 、 農 民、 知 識 階 級 、 中 小 商 工業 者 、 又 は 軍

に於 て のみ 万国 の労 働 者 の協 力 に依 つて のみ最 後 的 に勝利 し得 る﹂

て、 従来 の人 民 戦 線 運動 の煽 動 の みを 以 てし ては 手 緩 いと 云 ふ趣 旨

と 云 ふ途 に進 まな く ち や な ら ぬと 云 ふ趣 旨 に帰 著 す る の であ りま し

れ て居 る のであ り ま す 。 即 ち 現在 の非 常 時 局 の下 に於 き まし ては 、

を窺 ひ得 る の であ り ま す。 殊 に現 在 支那 事 変 の進 行 と相 俟 ちま し て、

の要 求貫 徹 の運 動 を 起 さ な く ち や な ら ぬと 云 ふ 趣 旨 の こと が記 載 さ

彼等 は結 局 人 民 戦 線 の内容 を作 り、 其 の基 礎 を築 く第 一歩 から踏 出

ソヴ イ エト の極 東 政策 と 云 ふ も のが 益 々独 化 さ れ る も のと見 な く ち

部 に反 対す るブ ルジ ヨア ジ ー、 斯 様 な国 民 各 層 が 、各 々自 分 の当 面

さ な くち や な ら ぬ と 云 ふ こと を主 張 致 し ま し て、 其 の主 張 の下 に我

プ ロ レタ リ ア ート と の緊 密 な る連 絡 と 云 ふ方 向 にも 進 ん で来 るも の

於 き ま し て人 民 戦線 運動 の煽 動 と 云 ふ形 を執 ると 共 に、 他 面 我 が国

コミ ンテ ル ン の我 が国 に対 し ます る働 き掛 けと 云 ふも のは、 一面 に

や な ら な い の であ り ま す。 之 に依 て之 を見 ます ると 云 ふ と、 将 来 の

な補 助 検 事 を得 ま し て、 非 常 に好 都 合 に事 柄 を 運 ん で居 る状 況 であ

まし ては 、 上 司 の理解 あ る取 計 ひ に依 り まし て、 現 在 数 名 の臨時 的

絶 対 に宜 し く な いと考 へる次 第 で あ りま す 。 幸 ひ に私 共 の方 に於 き

追 は れま し て、調 査 事 務 の上 に多 く力 を注 ぎ 得 な いと云 ふ状態 は、

反 軍 的 行 為 の取締 等 に付 き まし て厳 密 な る査 察 内偵 を為 し 、進 ん で

特 高 課 な り憲 兵 隊 な り と緊 密 な る連 絡 の下 に、 防 共、 防 諜 、 反 戦 、

何 をし なく ち や な ら ぬ か、 固 よ り屡 々言 古 され て居 り ます るや う に、

ら ぬ次 第 であ り ま す。 斯 様 な 最 近 の情 勢 に対 応 致 し ま し て、 私 共 は

き掛 け を容 易 に受容 れ ます る所 の温 床 と な つて居 ると見 な けれ ば な

蝕 ま れ て居 るも のが多 い の であ り ま し て、 斯 様 な コミ ンテ ル ン の働

生層 と 云 ふや う な も のは不 知 不識 の間 に多 かれ 少 か れ共 産 主 義 的 に

係 に思 想専 門 の判 事 が居 ら れ まし て、 頗 る好 都 合 に事 柄 が 運 ん で居

出 来 る と思 ふ のであ り ま す。 現 在 東 京 に於 き まし ては 、幸 ひ に予 審

置 し て こそ、 初 め て そ こに事 案 の処 理 が首 尾 一貫 す ると 云 ふ こと が

事 に対 応 し て思 想 係 の予審 判 事 及 思 想 専 門 の公判 部 と云 ふも のを常

尚 或 る程 度 の専 門 的 な 智 識 を 必要 と す る の であ り まし て、思 想 係 検

き ま し て相当 常 識 化 さ れ て居 ると 云 ふ こと は 謂 へる の であ り ま す が

必要 であ る と考 へます 。 思 想事 務 は往 時 に比 し ます れば 、 現在 に於

専 門 の予 審判 事 を常 置 し又 公 判部 に思 想 専 門 の部 を常 設 す る こと が

第 二 と 致 し ま し て、 大 都 市 裁判 所 に於 き まし ては、 予 審 係 に思 想

り ます 。 斯 様 な 次第 で あ りま し て、 十 分 に調 査事 務 を為 し 得 る程度

検 挙 の徹 底 を 期 さ な く ち やな らな いと云 ふ こと は 当然 のこと であ り

る の であ り ます る が、 尚 公判 部 に於 ては 専門 の部 がな い のは甚 だ 遺

に思 想 検 察陣 を強 化 す ると 云 ふ こと は、 大 都 市 の検事 局 に於 き ま し

ます が、 思 想 検 察 の第 一線 に居 り ま す私 共 と 致 し ま し て、 此 の際 最

憾 に考 へら る ゝ次 第 であ り ます 。 殊 に今後 の事 件 は其 の取 調 に相 当

と思 は れ る の であ り ま す。 殊 に我 が国 に は コミ ン テ ル ン の働 き 掛 け

も痛 切 に感 じ ま す る のは、 調 査 事務 を怠 つては な ら ぬ と 云 ふ こと で

手 数 を 要 す る も の が頗 る多 く な ると 云 ふ 見 込 で あ りま す る か らし て、

て、 特 に喫 緊 の こと で あ ると 思料 す る次 第 であ り ま す。

あ り ます 。 極 端 に申 し ます な らば 、 現在 に於 き ま し ては 一人 、 二 人

此 の際 此 の席 上 を借 りま し て特 に私 共 の方 の希 望 を申 述 べ て置 く次

を容 易 に受 容 れま す る所 の温 床 が豊富 に あ る の であ り ます 。 申 す 迄

の被 疑 者 の起 訴 、 不起 訴 と 云 ふや う な こと は、 寧 ろ多 く問 題 と す る

も な く長 い間 の共産 主義 運 動 に依 り まし て、 我 が国 のイ ンテ リ、 学

に足 り な い のであ り ま す。 要 す る に視点 を将 来 に置 き ま し て、 支 那

第 であ りま す。

係 りま し て、 其 の間 昭 和 三年 六月 一部 の改 正 を為 さ れた に過ぎ な い

あ りま す 。申 す迄 もな く 現 行治 安 維 持 法 は 大 正十 四年 四 月 の公 布 に

第 三 に此 の際 申 し て置 き た いこと は 、 治 安維 持 法 の改 正 の問 題 で

事 変 の終 局 と睨 み合 し つゝ来 る べき 新 た な思 想 情 勢 に対す る対 策 を 、

ま す る各 種 の資 料 を 蒐 集 し、 之 に基 いて十 分 の調 査 研究 を遂 げ て置

此 の際 確 立 し て置 かな け れば な らな い。 其 の為 には 思想 情 勢 に関 し

く 必要 が あ る のであ り ま す 。従 来 のや う に思 想 検 事 が事 件 の捜 査 に

庁 提 出 の協 議 事 項 に関 し ま す る所 見 を 申述 べ た いと 考 へます 。 日本

以 上 を 以 ち まし て、諮 問 事 項 に対 す る答 申 を終 り ま し て、 次 に当

従来 の日本 共 産 党事 件 に対 し ま す る 取調 と は 大 いに趣 を異 にし、 検

の であ り ます 。 公 布 以 来年 を閲 す る こと満 十 三 年 、 一部 改 正 の時 よ

察 上考 慮 し な くち や な ら ぬ点 が多 々あ る の であ り ま す。 先 づ今 回 の

り起 算 致し ま し ても 、満 十 年 に垂 々と す る状 況 であ り ま す。 然 る に

段 の差 異 があ る の であ り ます 。 大 正末 期 乃 至 昭 和初 期 の思 想 情 勢 に

事 件 は所 謂 労 農 派 理論 を中 心 と し て居 るも の であ る こと に留 意 し な

々に 対 す る大 量 検 挙 であ り ます るが 故 に、 是 が取 調 に関 し ま し ても、

対応 し て作 ら れ た現 行 治 安 維 持法 を 以 て現 在 の思 想 運動 を取 締 ら う

く ち や な ら ぬと 思 ひ ます 。 即 ち 日本 無 産 党 にせ よ、 日本 労 働 組合 全

無 産 党 関係 の事 件 は 、申 す 迄 もな く 合法 場 面 に於 て活動 し 来 つた 人

と致 し ます る のは、 恰 も真 直 なる物 尺 を以 て曲 り く ね つた 材木 を計

国 評議 会 に せよ 、多 か れ少 な かれ所 謂 労 農 派 理論 の影 響 を 受 け て居

言 ふ迄 もな く 思 想情 勢 は 日 と共 に新 し く月 と共 に変 つ て参 りま し た。

ら う とす る に等 し く、 其 の不 便 な こと は誠 に想像 に余 り があ る の で

る の で あ りま す 。而 し て労 農 派 は 日本 共 産 党 の所 謂 正統 派 に対立 致

現 行治 安 維 持 法 公布 当時 の大 正 末 期 乃至 昭和 初 期 と は、 既 に業 に格

あ り ます 。現 に最 近相 当多 数 を算 へ、 而 も 最 も危 険 性 が多 いと 見 ら

し ま し て、 此 の派独 特 の戦 略 論 を持 つて居 る の であ りま す る か らし

階 にあ る のだ、 従 つて帝 国 主義 ブ ルジ ヨ アジ ーの覇 権 の下 に 一切 の

れ る単 純 な る共 産 主 義 的 啓 蒙 の事 案 の如 き は 、 コミ ンテ ルン、 日 本

政 治 支 配 が行 は れ て居 る。所 謂 絶 対 主 義 的勢 力 又 は封 建 的遺 制 は右

共産 党 其 の他 の結 社 の目 的 遂 行行 為 と見 ま す る 以外 には 、 取締 の方

第 四 に申述 べ て置 き た い こと は、 出 版 物 の取締 を強 化 し な く ち や

て、 今 回 の事 件 の取 調 に当 り ま し て は、 此 の点 に付 きま し て先 づ十

な らぬ と 云 ふ こと であ り ま す。 固 よ り私 共 は徒 に時 流 に迎 合 す る必

帝 国 主 義 ブ ルジ ヨア ジ ーに抱 合 せ ら れ、 同 化 せ ら れ て、其 の政 治 支

法 が な いや う な次 第 であ り ま す。 左 様 な 次 第 であ り ます る から し て、

要 は な い のであ りま す るが、 現在 の非 常時 対策 に於 き ま し ては、 或

配 の面 被 であ り手 段 であ る のに 止ま る のだ、 故 にプ ロレ タリ ア ート

す る と、 日本 の資本 主 義 は 高 度 の発 展 を遂 げ て、 所 謂 帝 国 主義 の段

る程 度出 版 物 に対 す る取締 を強 化 す るに非 ず んば 、 治 安 の維持 を確

の勢 力 と 尖 鋭 的 に相 対 立 す る も のは非 常 にブ ルジ ヨアジ ー の勢 力 で

分 の理解 を必 要 と す る も のと 考 へます 。 即 ち 労農 派 の見 解 に依 りま

保 す る こと が出 来 な い ので あ りま す 。 最 近 に於 け る 一つの事 例 を見

あ り、 プ ロ レタ リ ア ート の闘 争 の目 的 は、 帝 国 主 義 ブ ルジ ヨア ジ ー

治 安 維 持 法 の改 正と 云 ふ こと に付 き まし ては 、本 省 に於 か れま し て、

ま し ても、 或 る大 き な雑 誌 に掲 載 さ れま し た所 の軍 の誹 謗 の小説 が、

篤 と 十 分 の御 考 慮 あ らむ こと を希 望 す る次 第 であ り ます 。

或 は ソヴ イ エト 語 に或 は支 那 語 に飜 訳 せ ら れ まし て、非 常 なデ マの

ロレ タ リ ア ート革 命 の 一段階 を 以 て足 る のだ。 固 よ り此 のプ ロ レタ

リ ア ー ト革命 は、 其 の副 次的 任 務 とし て、 帝 国 主 義 ブ ルジ ヨアジ ー

の打 倒 に集中 せ ら れな く て は な ら ぬ。 即 ち来 る べき 革 命 は、 所 謂 プ

考 へま し ても出 版 物 に対 す る取 締 の強 化 と 云 ふ こと は、 此 の際 に於

に同 化 せ ら れ て居 る封 建 的遺 制 の覆 滅 を も含 む から し て、 所 謂 ブ ル

材 料 と な つた と 云 ふ や う な事 例 も 見 受 け ら れ まし て、斯 様 な点 か ら

き まし て最 も 必 要 な事 柄 の 一つであ ると考 へる次 第 であ り ます 。

ジ ヨア ジー 民 主 主義 的 革 命 の任 務 を も包 含 す る も の であ る、 と 云 ふ

す る以 上 、 治 安維 持 法 を 適 用 す る為 の法 律 判 断 に於 き ま し ては 、毫

あ り ま す。 而 し て仮 令 副 次 的 な り と は言 へ、国 体 変 革 の目的 を 包蔵

いも の があ り、其 の間色 々差 があ る こと は考 へられ る のであ り ます

風 に説 く のであ り ま す。 而 し て日 本 共産 党 所 謂 正 統 派 系 統 の戦 略 論

か ら、 右 申 述 べ た 理論 一点 張 り で所 謂 理 詰 め で被 疑者 を追 詰 め ると

の処 理 に当 りま し ては、 被 疑 者 の認 識 或 は高 き も のが あ り、 或 は低

り ま し て、 中 途 昭和 六年 四 月 (一九 三 一年 ) 日本 共 産 党 中 央委 員 会

言 ふ こと は 、 誠 に危 険 であ り ます るが 、斯 の如 き 根 本的 理論 を取 調

も躊 躇 す る必 要 が な いも のと 考 へる ので あ りま す 。尤 も具 体 的 事 案

発 表 の政治 テ ー ゼ草 案 に於 き ま し ては 、 革命 一段 階 論 を採 つた の で

は、 昭和 二年 七 月 コミ ンテ ル ン日本 問 題 特別 委 員 会 に於 て採 択 せ ら

あ りま す が、 更 に昭 和 七年 五月 コミ ンテ ル ン執 行委 員 会 西 欧書 記 局

あ り ます 。 尚 其 の他 事件 の処 理 に関 し 検 察 上考 慮 し な け れば な ら ぬ

官 が頭 に置 くと 云 ふ こと は絶 対 に必 要 な こと であ る と 考 へる次 第 で

れ た 所謂 二十 七 年 テ ーゼ が、 革 命 二段 階 論 を採 用 せ ら れた る に始 ま

名 義 を 以 て発表 せ ら れた 、所 謂 三十 二 年 テ ーゼ は 又復 革 命 二 段 階論

る筈 であ り ます か ら私 の陳 述 は此 の程 度 に致 し ます 。

点 が多 々あ る の であ り ま す が、 私 の後 に井 本 検 事 から も 御陳 述 があ

に復 帰 し て今 日 に至 つて居 る の であ り ます 。 即 ち 日本 共 産 党 に在 つ ては 中 途 に於 て 一時 一段 階 論 を執 り た る以 外 は 、大 体 二段 階 論 を採

長 谷川 検 事 に続 き ま し て、 三点 程 考 慮 を要 す べき 点 を 開陳 致 し た

井本 ︹ 台 吉︺ 検 事 (東 京 地 検)

用 致 しま し て、 現在 に於 ても 正 統 派分 子 の見 解 は 矢張 り三 十 二年 テ ー ぜ に依 り革命 二段 階 論 を採 つ て居 る のであ り ま す。 彼 等 の革 命 二

無 産 党 、全 評 に治 安 維 持 法 第 一条 を適 用 す る ことは 誠 に相 当 であ る

いと 存 じ ま す。 第 一に先 程 治安 維 持 法 改 正 の提 議 がご ざ いま し た の

段 階 論 は現 在 の日本 の資 本 主 義 を 以 て矢 張 り帝 国 主義 の段 階 なり と

と 云 ふ こと であ り ます 。 私 共思 想 取締 関 係 の事 務 に従 事 致 し て居 り

であ り ま す が、 此 の治 安 維 持法 を現 行 法 規 と 致 しま し て、私 共 は社

考 へて居 る の であ り ます 。 以 上 申 述 べ ま した 両 者 の戦 略 の相 違 す る

ま す 者 は 、 自分 の狭 い知 識 に依 る独 断 に随 せず 広 く社 会 の情 勢 に目

と を 重要 視 致 し ま し て、 当 面 の革 命 の目標 を是 等 封建 的 要 素 の 一掃

所 以 は、 要 す る に我 が国 の客 観 的 情 勢 に対 し ます る観 察 の相 違 、 殊

を通 し て、 適確 な る判 断 を誤 ら な いと 云 ふ こと が最 も必 要 であ り ま

規 定 す る の であ り ます る が、其 の中 に所 謂 封 建 的 要素 の残 存 す る こ

に所 謂絶 対主 義 勢 力 に対 し ます る評 価 の相違 に帰 著 す る の であ りま

す 。 治 安 維 持法 第 一条 の如 き も解 釈 の許 す 範 囲 に於 て、 社 会 の情 勢

の であ り ま す。 即 ち先 程 情 勢報 告 に於 ても 申述 べ まし た 通 り、 日本

す 。 言葉 を換 へて申 し ま す れば 、 正 統 派 系統 に於 ては 国 体変 革 を直

に十 分 適 合 し て活 用 す べき も の であ り ます 。 治安 維 持 法 第 一条 は 従

会 の事情 に適 応 し て此 の治 安維 持 法 を活 用 し な け れば な ら ぬ と思 ふ

接 且 つ当 面 の目 標 と な す に反 し、 労 農 派 に於 き まし ては、 直 接 且 つ

来 の例 に依 りま す れば 、 真 向 か ら 天皇 制 打 倒 と 云 ふ が如 き 兇 悪 不逞

に畳 きブ ルジ ヨ ア民主 主 義 革 命 に依 て、 是 等 封 建 的 要素 を 一掃 し た

当 面 の目標 は帝 国 主 義 ブ ルジ ヨア ジ ー の打倒 に置 き 国 体 変 革 の問 題

る後 、 始 め てプ ロレタ リ ア革 命 の段階 に 入 る のだ と 云 ふ風 に彼 等 は

は副 次 的 に之 を認 む る のだ と 云 ふ こと に注意 し な け れば な ら ぬ の で

日本 共 産 主義 青 年 同 盟 と 云 ふ やう な団 体 の処 理 に適 用 し て居 る ので

な ﹁ス ロ ーガ ン﹂ を掲 げ た 日本 共 産 党、 日本 労 働 組 合 全 国 協 議 会、

あ りま す 。併 な が ら全 評 も 日無 も プ ロレ タ リア 独裁 を目 指 し 、 当面

此 の点 に付 き ま し て考 慮 を 要 し ます のは、

り ます 。

(一) 正 統 派 の共 産 党 に於 き ま し ては 、 共同 戦 線 党 の如 き労 働 者 、

し ては 明 か に之 を認 め て居 り ます 。 所 が 翌年 の 一九 二 八年 コミ ンタ

谷 川 検 事 御話 の、 一九 二 七年 七月 の ﹁ブ ハー リ ンテ ー ゼ﹂ に於 き ま

云 ふ こと であ り ます 。 結 論 を要 約 し て簡単 に申 上 げま す と、 先 程 長

と 云 ふ こと は、 申 す 迄 も な く明 瞭 な の であ り ま し て、 斯 様 な団 体 に

ー ン第 六 回世 界 大 会 の植 民 地革 命 運 動 に関 し て規 定 され た テ ー ゼ以

農 民 、 小 市 民 と 云 ふ やう な 合法 大 衆 政 党 を 認 め て居 る かど う か、 と

対 し て当 面 の運 動 方 針 が 社会 の情 勢 に応 じ た る が故 に微 温的 で あ る

降 、 斯 様 な労 農 大 衆 政 党 は 正統 派 に於 ては 認 め て居 な い所 で あ りま

の情 勢 に応 じ た種 々の運 動 を し て居 る の であ り ます 。 プ ロレタ リ ア

と 云 ふ こと の みを 以 て、 若 し治 安 維持 法 第 一条 を適 用 し な いと 云 ふ

独 裁 と 云 ふ こと にな れ ば 、 我国 体 変 革 及 私有 財 産 制 度 の否認 に至 る

や う な こと があ つては な ら ぬと 考 へる の であ り ます 。

フ ア ツ シ ヨ人 民 戦 線 戦 術 を採 用 した 立前 よ り見 ると 、労 農大 衆 政 党

と 云 ふ も のに対 し て漠 然 と し て居 りま す が之 を認 めた の では な いか

す 。 是 が 昭和 十 年 夏 の第 七 回 コミ ンタ ー ン世 界 大 会 の時 に到 つて反

と 考 へら れ る次 第 であ り ま す。 尤 も 日本 に於 け る実際 的 な問 題 と 致

次 に第 二と 致 し ま し て、 正統 派 共産 党 関 係 の活 動 と 、労 農 派 、 日

注意 を払 ふ必 要 があ る と存 じま す 。今 次 の日本 無 産 党 及 日本 労 働 組

し ま し て、 ア メ リ カ から参 り ます 共 産党 関 係 の文 書 であ る国 際 通 信

本無 産党 関 係 の活 動 と如 何 な る関 係 が あ る かと 云 ふ こと に付 て 一応

詳細 指 摘 せ られ て居 る 通 り、 大 体 に於 て労 農 派 のイデ オ ロギ ー に基

合 全国 評 議 会 の運 動 の特 質 は、 池 田大 審 院 検 事 の パ ン フ レツ ト にも

フア ツシ ヨ人 民戦 線 戦 術 を採 用 致 し ます る や、 其 の内容 が従 来 の労

心 に人 民戦 線 運 動 を 為 す べ き であ ると 云 ふ やう に指 示 し て居 りま す。

﹃新 党樹 立 を排 せ ﹄ と 云 ふ標 題 の下 に、 正統 派 は 何 れ も社 大 党 を 中

第 三 巻 第 三 号 (昭 和 十 一年 四月 号 ) には ﹃社 大 党 フ ア ツ シ ヨ的 指 導

農 派 の戦 術 に頗 る似 た も のであ り、 且 つ フラ ン ス及 スペ イ ンに於 け

労 農 派 は労 農 無 産 協 議 会 な る新 党 を結成 し た のであ り ま す から 、 結

者 と の闘 争 を正 し い方向 へ﹄ と 云 ふ論 文 が あ り ま す 。尚 同 四 号 に

る成 功 的 な 人 民戦 線 の実 例 があ り まし た為 に、 労 農 派 も之 に刺 戟 せ

局其 の点 に於 て正 統 派 と の間 には それ だ け の相 違 があ る も のゝ や う

コミ ンタ ー ンに於 て、 昭和 十 一年 の夏 第 七回 世 界 大会 を開 催 し 、 反

ら れ て、 自 分 等 の戦 術 にも 反 フア ツ シ ヨ人 民 戦 線 の ﹁ス ロー ガ ン﹂

く も のであ りま す 。 併 な が ら 一面 正統 派 共 産 党 本 部 であ り ます 所 の

を掲 げた も のと考 へら れ る の であ り ます 。

ま す。 是 は労 農 派 の云 ふ や うな 、 ブ ルジ ヨァ民 主 主義 的 諸 要 求 獲 得

(二) 正 統 派 共 産 党 に於 け る反 フア ツ シ ヨ人 民 戦線 の内 容 であ り

に考 へら れ る の であ り ま す。

は 日本 共産 党 の本 部 であ ります コミ ン タ ー ンを 支持 し て、 日 本 無産

の運動 では な く て、 ブ ルジ ヨア民 主 主義 革 命 運 動 であ り ます 。 労 農

然 らば 此 の正統 派 の 日本 共産 党 、 日本 労 働 組 合 全国 協 議 会 、 若 く

党 若 くは全 評 の運 動 を為 し た る者 の処 置 を ど う す る か と 云ふ 点 であ

三 あ りま す が、 是 は当 東 京 地 方 検 事 局 に於 き ま し て、 先般 御 頒 ち 致

輯 に載 つて居 り ま す。 同 論 文 は 伏 字 が多 く文 意 明 かな ら ざ る点 が二 、

に参 考 にな ると考 へら れ ます 。 是 は 思 想資 料 ﹁パ ン フ レ ツト﹂ 第 一

﹁労 農 ﹂ 創 刊 号所 載 山 川 均 の ﹁政 治的 統 一戦 線 へ﹂ な る 論文 が非 常

派 の反 フ ア ツ シ ヨ人民 戦 線 運 動 の具 体的 な目 標 と し ま し て は 雑 誌

に於 ては、 金 融 ブ ルジ ヨ ワ ヂ ーに内 包 さ れた封 建 的 残 滓 と、 反 動 的

配 政 権 の推 移 即 ち革 命 を 考 へて居 る も の ゝや う であ りま す 。労 農 派

称 し 、 正統 派 に於 て は政 治 支 配 の中 心 勢 力 と し て之 を打 倒 し て、支

態 であ る所 の軍部 、 枢 密 院 、貴 族 院 、 君 主 制 と 云 ふ やう なも のを指

申 述 べま す と 、労 農 派 、 正 統派 共 に、 ﹁フ ア ツ シ ヨ﹂ 的 独 裁 政 治 形

(三 )反 フア ツ シ ヨ人 民 戦線 の ﹁フア ツ シ ヨ﹂ の内 容 に付 て更 に

以 上 の如 き 諸点 を考 慮 に入 れ て考 察 致 し ま す と、 特 別 の事 情 のあ

金 融 ブ ルジ ヨ ワヂ ー と闘 争 す る と 云 ふ意 味 に於 て闘 ふ の であ り ます

し ま した ﹁共 同戦 線 党 の検 討 ﹂ と 云 ふ同 論 文 の解 釈 的 な書 物 に其 の

り ま す も のは、 勿 論 此 の中 に入 ら ぬ の であ り ます が、 概 し て正統 派

か ら、 当 面制 度 の廃 止 若 く は改 革 と云 ふ こと に 止 つて、 そ こに支 配

度 であ ると 云 ふ や う に説 明 し て居 り ま す。 正 統 派 に於 ては先 程 も 一

支 持 の運動 を為 し た るも のは、 コミ ン タ ー ン若 く は日 本 共産 党 、 全

内 容 が詳 し く 説 明 さ れ て居 りま す から、 御 参 照 願 ひ度 い のであ りま

言 致 しま し た が、 現 コミ ンタ ー ン執 行委 員 ゲ オ ルギ ー ・デ イ ミ ト ロ

協 関 係 と し て、 労 農 派 の支 持 者 は 日本 無 産 党、 全 評 関係 と し て処 分

政 権 の推移 と 云 ふ ことは 認 め な いも の ゝや う に考 へら れ ます 。

フは コミ ン タ ー ン第 七回 世 界 大 会 に於 て ﹁統 一戦 線 政府 に就 て﹂ と

す 。 そ れ に依 り ま す と、 労 働 者 、 農 民、 小ブ ルジ ヨア 下層 の利 害 を

言 ふ項 目 の下 に ﹁本 演 説 は ソヴ イ エト革 命 の前 夜 、其 の勝 利 迄 の間 、

す べ き も の であ り まし て、 同 一行 為 に付 き 両 派 の目 的 遂 行行 為 を 認

代 表 す る政 府 の実 現 が協 同 戦 線 党 を 主 体 とす る政 治 闘争 の最 大 の限

統 一戦 線 政 府 の可 能 な る形 式 に付 て語 つて居 る の であ り ます 。 是 は

む べ き でな いと思 料 す る 次第 で あ りま す 。

次 は第 三 であ りま す 。是 は甚 だ 抽 象 的 であ り ます が、 今 回 の如 き

何 よ りも フ ア ツ シズ ムと 反 動 に反 対す る政 府 であ る 。是 は統 一戦 線 運 動 の結 果 と し て生 れ、 且 つ如 何 な る場 合 にも 共 産党 と労 働 階 級 大

な ら な い。﹂ と 云 ふ やう な説 明 を し て居 る の であ り ま す。 労 農 派 も

高 度 の思 想 内 容 を以 て被 疑 者 を 検 討 し 、自 己 と同 じ程 度 の高 度 の思

翼理 論 を取 調 官 が研 究 し遺 憾 な か らし む る と同 時 に、 一面又 自 分 の

を 尽 く す 必要 があ ると考 へる の であ り ま す。 其 の為 に は徹 底 的 に左

に当 り まし て は、 司 法部 の職 員 は 自 ら陣 頭 に立 つて事 案 の処 理 に力

正統 派 も 同 じ 様 な 政府 の実 現 を 一応 企 図 し て居 る様 に考 へら れま す。

想 を 持 た ざ れば 犯 罪 を構 成 しな いと 云 ふや う な誤 謬 に陥 らざ る必 要

日 本 無産 党 、 全 評 の如 き 取調 に手 数 を 要 す る難 し い事 件 を処 理 す る

併 な が ら先 程 長 谷 川検 事 が指 摘 致 し ま し た通 り、 労農 派 の、 日本 の

があ る と考 へる の であ り ま す。 多 少 余談 に 亙 りま す が、 世 の非 難 攻

の フア ツ シ スト手 先 に反 対 す る 決 定的 な手 段 を執 る 政府 で なけ れ ば

来 る べき 革命 に 対す る展望 は飽 く 迄 も 一段 革 命 論 であ り、 正 統 派 に

撃 に対 し ま し て は固 よ り十 分 反 省 し て、 改 む べき は 改 め避 く べ きは

衆 組 織 と の活 動 を制 限 せず し て、 却 つて反 革 命 的 金融 資 本 閥 と 、其

か ね ば な ら ぬと 思 ひま す。

於 き まし ては 、 二段 革 命 論 を 執 つて居 る と 云 ふ こと は特 に考 へて置

避 け な け れば な ら ぬ のであ りま す が、 之 を 大 所高 所 よ り見 ま す時 に

題 を提 出 致 し ま し た理 由 は 、 私 は思 想 係 検事 を 致し て居 り ます る 一

回 の新 方 針 に基 き ま し た運 動 は 、極 め て検 察 が 困難 であ り、 又其 の

面、 保 護 観 察所 長 を や つて居 り ます る の で、 此 の両 方 の立場 に於 て

取 調 が困 難 であ り、 証 拠 の蒐 集 が困 難 であ り 、 公訴 の維持 が亦 困 難

は、 警 察 の攻撃 が検 事 の攻 撃 に移 り、 検 事 の攻撃 が予 審 判 事 の攻繋

居 る所 に依 り ま す と、 徳 川 時 代 の如 き取 調 制 度 に於 きま し ては、 お

であ る と云 ふ や う な関 係 に な つ て居 る やう に考 へら れ る の であり ま

あ り ます 。 午前 中 か ら し て縷 々御話 が あ つた の であ りま す る が、 今

奉 行 様 の実権 は 与力 に移 り、 与 力 の実 権 は 同 心 に、 同 心 の実 権 は岡

す。 さう 云 ふ こと に な つて参 り ま す る と、 私 共 は 此 の起訴 、 不 起 訴

今 回 日本 無 産 党関 係 治 安 維 持 法違 反 事 件 を 考 へて見 た いと思 ふ の で

つ引 に帰 し た と 云 ふ事 であ りま す。 此 の下 剋 上 の傾 向 が聖 代 に 現 は

こと を窺 ひ得 る判 断 の資 料 にな る と思 ふ の であ り ま す。 私 が聞 いて

れ、 取 調 の実 権 が、 警 察 官 巡 査 に移 る が如 き こと が あ つては 、 私 共

に移 ると 云 ふ や う な こと は、 何 処 が 一番 実 務 を や つて居 るか と 云 ふ

司法 職 員 と し て誠 に申 訳 な い次 第 であ ると 考 へて居 り ます 。

偽 装 し合 法 場 合 を 利 用 し て居 ると 云 ふ やう な 所 から し て、 色 々其 の

であ り ます 。是 は 結 局 は此 の運 動 方針 が以 前 と 変 り まし て、 合 法 を

な 状態 であ る の であ り ま し て、 是 は全 国 的 に さう であ らう と思 ふ の

るし、 又其 の後 検 挙 致 し まし た 事件 も、 中 々片 付 か な い で居 る やう

し た事 件 も、 今 日 ま だ相 当 片 付 かな い で居 る やう な事 情 であ り ます

云 ふ やう に考 へて居 る のであ りま す。 一昨 年 十 二 月 に検 挙 に な りま

以 上 に今 回 の事 件 に付 き まし ては、 慎 重 に取 締 ら ねば なら な い斯 う

不起 訴 の慎 重 を 期 し て居 る こと は勿 論 であ りま す る け れど も、 よ り

いと斯 う 云ふ や う に考 へて居 る の であ りま す 。 勿論 従 来 と雖 も起 訴 、

と 云 ふ こと に対 し ま し て、 従 来 以 上 に余 程 慎 重 に考 慮 せね ば な らな

以上 三 点 を 申 述 べ ま し て、 私 の検 察 上考 慮 す べ き事 項 と 致 し た い

長

と思 ひ ます 。 御 叱 正 を お願 ひす る次 第 で あ り ます。 議 そ れ では (二 ) に移 り ます 。 二 時 局 に鑑 み 日本 無 産 党関 係 治 安 維 持法 違 反 事 件 の起 訴 、 不 起 訴 に付 特 に考 慮 す べ き 点如 何 (宮 城 控 検)

御言 葉 もあ り ま し た ので、 極 め て簡 単 に申 上 げ た いと思 ひま す 。

関川 ︹ 寛 平︺ 検 事 (宮 城控 検 )

只今 は東 京 の両 検事 か ら極 て適 切 妥 当 な る御 答 申 があ り ま した の で、

此 の起 訴、 不 起 訴 は 是 は 余程 考 へね ば な ら ぬ と思 ふ のであ り ま す。

私是 以上 申 上 げ る程 の こと もな い の でござ います が、協 議 事項 と 致

す る と 云 ふ やう な 関係 か らし て、聊 か考 へて居 る所 を申 上 げ て見 た

起 訴 の厳 選と 云 ふ こと が 今 回 の事 件 に於 ては、 我 々大 い に反 省 し て

か斯 う 云 ふ やう に考 へら れ る の であ り ます 。 であ り ます るが故 に、

いと思 ふ の であ りま す 。結 局 私 の提 出 し ま し た問 題 は、 極 め て抽 象

取 調 に 困難 を 来 し 、 又 証拠 の蒐 集 にも 困難 を感 じ て居 る の では な い

的 であ り まし て、 従 ひ ま し て之 に対 す る私 の見 解 も 極 め て抽 象 的 に

を起 訴 致 しま し ても 、是 が 予審 に行 つて免 訴 にな るや う であ り ま し

見 ねば な ら ぬ のぢ やな いか斯 う 思 ふ の であ り ます 。 仮 り に検事 が之

し ま し て、 提 出 し て置 き まし た 此 の問 題 が 又諮 問事 項 の 一部 にも 属

な る の ではな い か斯 う 云 ふ やう に考 へる ので あり ま す。 私 が此 の問

て居 り ま す る が、 それ は 上 層部 ではな い の であ りま す る為 に、 極 め

て意 識 が軽 いと 云 ふや う な者 も あ る の であ り ます るか ら し て、 さう

私 共 の管 内 にあ り ます 者 は 、 日本 無 産 党 の支 部 と云 ふ こと に は な つ

云 ふも のに 対し ま し ては、 又相 当 に考 慮 し て見 る必要 も あ らう と思

ては 、何 に も な らな い こと であ りま す し、 又公 判 に行 つ て無 罪 にな

て、 ど う し ても 起 訴 は ウ ンと引 締 め る と 云 ふ こと が非 常 に 必要 ぢ や

ふ の であ り ます 。 さ う 云 ふ やう な 事 情 であ りま し て、 私 は今 回 の此

る や う では困 る の であ り まし て、 さ う 云 ふ やう な関 係 から致 し まし

のは是 は当 然 の こと で あ りま し て、今 回 の やう な事 件 であ り ます れ

な いか、 斯 う云 ふや う に考 へる の であ り まし て、 検 挙 の多 いと云 ふ

ま し て、 大 局 的 見 地 か ら見 れば 、起 訴 、 不 起 訴 と 云 ふ こと は結 局 同

て は、 目 的 は何 れ も、 起 訴 の場 合 でも 不起 訴 の場 合 で も同 じ であ り

の事 件 に対 しま し ては、 起 訴 を 厳 選 にす る、 其 の反面 不起 訴 の者 に

て、 大 い に考 へな け れば なら ぬ と思 ふ の であ り ま す 。 さう 致 し ま す

じ目 的 に達 す る の であ りま す る の で、 起 訴 の厳 選 と云 ふ こと が最 も

対 し まし て は、保 護観 察 を利 用 し てや る。 さう し て結 局 に於 き ま し

る と、 勢 ひ不起 訴 の範 囲 が拡 大 せ ら る ゝ こと にな り ま す るけ れ ど も、

要 ぢ やな い か、斯 う 云 ふ やう に実 は考 へて居 る のであ りま す。

つて、 唯 是 の起 訴、 不 起 訴 を 決 す る検 事 は、 検 事 独 自 の立 場 に立 つ

是 は保 護 観 察制 度 を運 用 す る、 之 を活 かす と 云 ふ こと が必 要 ぢ や な

議

ば 、 検 挙 の多 き は寧 ろ当 然 であ つ て、 検 挙 こそ 多 く し て宜 い の であ

い かと 、斯 う 云 ふ やう に私 は保 護 観 察 所 長 の立場 と し て実 は 考 へて

長

居 る の であ り まし て、 何 故 さう 申 しま す る か と 云 ふ と、 勿論 是 は此

大 審 院 の方 は何 かあ り ま す か

起 訴 、 不起 訴 の点 に付 て、 他 の検 事 局 のど なた か御意 見 のあ る方 があ り ま す か︱

の時 局 に対 す る色 々 の考 へ方 にも 依 り ま せう が、 斯 う 云 ふ や う な時 局 であ る か らし て、出 来 る だけ 人 的資 源 、 物 的 資 源 を 無 く さ な いや

池 田 ︹克︺ 大 審 院 検 事

ど う と言 つて片 方 に決 め てし ま ふ訳 に参 りま せ ぬ け れ ど も、 保 護観

是 は絶 対 的 な も の でな い のであ り ま し て、 其 の何 れ にも、 ど つち に

を或 る程 度 迄 拡張 し まし て、 保 護 観 察制 度 に付 せ よ と 云 ふや う な御

選 す る、 言 葉 を換 へて申 し ま す れば 、起 訴 す ると 同時 に 不起 訴 処分

起 訴 の問 題 に付 き ま し て、 其 の事 件 の特 質 に鑑 み て起 訴 す る者 を厳

只今 宮 城 控 訴 院 の関川 検 事 か ら、 日 本無 産 党 関 係事 件 の起 訴 、 不

う に、 う ま く使 つ て行 く と 云ふ こと が 必要 だ と 云 ふ こと も 一つの観

察 制 度 が出 来 ま し た る今 日 に於 き まし ては 、之 を利 用 し て行 く 必要

を簡 単 に申 述 べて置 きた いと 思 ひま す。 一体 日本 無 産 党 と 言 ひ、 日

意 見 のやう に承 つた のであ りま す が、 其 の点 に 付 きま し て私 の考 へ

方 だ らう と 思 ふ の であ り ます 。 従 つて此 の孰 れを 採 るべ き か、 勿論

が あ らう と 思 ふ ので あ りま す。 既 に御 承 知 でも あ り ま せ う が、 保護

に於 て活動 し て来 た も の であ り ま す る のみな らず 、 帝 国 議 会 に其 の

本 労 働 組 合 全 国評 議 会 と 言 ひ、何 れ も所 謂 合法 左 翼 と し て合法 場 面

観 察 制 度 は 順 調 に進 展 致 し て居 り まし て、 相 当 な る効 果 を発 生 致 し て居 る の であ り ます 。 であ り ま す る から し て、 今 回 の此 の事 件 の如

代 表 者 を も 出 し て思 り、 これ ま で検 挙 取 締 の線 外 に置 か れ てあ り ま

き 、 中 に は極 め て曖 昧 模 糊 のも のも多 から う と思 ふ のであ り ま す が、 又 認 識 の程度 の極 め て軽 い者 も あ らう と思 ふ ので あ りま す が、 現 に

る態 度 を 明 示 し た こと であ り ま す。 即 ち 共 産 主義 運動 に対 し ま し て

合 法 場 面 に於 け る と を問 はず 、 共産 主 義 行 動 に対 す る国 家 の断 乎 た

於 て最 も 重大 な る事 柄 は 何 か 申 し ます ると 、非 合 法 場 面 に於 け る と

へま し た こと は検 事 各 位 も 御 承知 の通 り であ り ま す が、 此 の検 挙 に

し た のを 先般 一斉 検 挙 し た ので あ り まし て、大 き な社 会 的 影響 を 与

いま せ う、 情 状 あ るも のに 付 て不 起 訴 処 分 をす る こと は妨 げな いと

訴 の処 分 を躊 躇 す べき でな いと思 ひま す。 固 よ り色 々な情 状 もご ざ

動等 を考 慮 し て、 起 訴 を相 当 とす ると 云 ふ も のに付 き ま し ては 、起

され而 も 日本 無 産 党 或 は 日本 労 働 組合 全 国 評 議 会 に於 け る地 位 、活

ば な ら な いと思 ふ の であ り ます る け れ ど も、 併 し苟 く も罪 責 が認 定

へな い こと であ り ま す るし 、 又 検事 と し て、 さう 云 ふ風 にし な け れ

らと 言 つた や う な所 から、 漫 然 と不 起 訴 処 分 を す る こと は、 今 日 の

思 ひま す け れ ども 、 唯 日本 共産 党 と 違 つ て純 粋 な階 級 政 党 で な い か

は 、 非 合法 場 面 に於 け る活動 を 重視 す る 日本 共 産党 及 日本 労 働 組 合

日本 労 働 組合 全国 評 議 会 た ると を問 はず 、 何 れ も 之 を治 安 維 持 法 違

全 国 協 議 会 た ると、 合 法 場 面 に於 け る活 動 を重 視 す る 日本 無 産 党 及

日本 労 働 組 合全 国 評 議 会 と 言 ひ、 何 れも 組 織 的 犯罪 であ りま す る か

とを 考 へて居 る の で あり ま す。 尚 申 す 迄 も な く 日本 無 産 党 と言 ひ、

ら、 其 の地 方 に於 け る共 犯 者 と の権 衡 上 、 事 実 の認 定 し 得 る 限 り起

楊 合 避 く べ き であ り、 又 必ず し も妥 当適 切 な る措 置 でな いと 云 ふ こ

は 、 斯 か る重 大 な る意 義 の存 す る こと を常 に念 頭 に置 く こと が要 請

訴 す る こと も 已 む を得 な い、或 は起 訴 猶 予 と 云 ふ こと が相 当 であ る

反 結 社 と し て処断 す る の態 度 を 明 か にし た る点 に、 事 件 検 挙 の根 本

さ れ るも のと 存 じ ま す。 従 ひま し て、 日無 、 全 評 関係 の事 件 に関 す

的 な 重 大 な意 義 が あ る の であ り ま す か ら、 事 件 の処 理 に当 りま し て

る限 り起 訴 は 厳 選 し な け れば な ら ぬ と 云 ふ が如 き こと は、 一概 に言

な いと 云 ふ場 合 の ことは 、 勿論 で あ りま し て、 そ れ等 の点 に付 き ま

し ては 、 検 事 と し ては、 起 訴 、 不起 訴 の処 分 を 為 す に付 き ま し て、

場 合 でも 、 尚 且 つ共 犯 者 と の権 衡 を考 へて起 訴 す る こと は 已 む を得

注意 す べき 点 であ ると考 へて居 る ので あ り ます 。

得 な い の では な いか。 固 よ り、 日 無 に し ろ全 評 にし ろ、 其 の本 質 に

あ り乍 ら、 日 本 共産 党 の如 く純 粋 の階級 党 の組 織 形 態 を採 らず 、 表

議

於 て は、 何 れも 一定 の階 級 目 標 を 追 求 す る こと を 目的 と す る結 社 で

面 的 に は包 容 な 綱領 を掲 ぐ る大 衆 党 であ り ます か ら、 日無 或 は全 評

す べき 点 如 何 ( 札幌地検)

三  人 民戦 線 運動 に関 す る合 法 文 書 其 他 の証拠 方 法 に付考 慮

そ れ で は次 に移 り ます 。

長

に加 入 し て ゐ るか ら と い ふ の で、其 の者 が直 ち に 日無 又 は全 評 の本 質 を認 識 し て ゐ ると いふ こと には な ら な い。 斯 か る認 識 の有 無 の甄 別 に付 ては 、 取 調 上相 当 の苦 心 を 要 す る と ころ で あ ると 存 じ ま す。

諮 問 事 項 に対 す る答申 及 協 議 事 項 に 対 す る説 明 を 簡単 に申 述 べ ま

南出 ︹一雄 ︺ 検 事 (札幌 地検 )

す 。無 産 党 運 動 の大 衆 化 を 目的 と し 、 又 極 力検 挙 弾 圧 を 回避 す る為

て、 事 件 は決 し て曖 昧模 糊 ではな いの であ り ま す。 さう 云 ふ風 な認

然 し 、 之 は 事 件 の取 調 が困 難 であ ると い ふに過 ぎ な い の であ り まし

て、 罪 責 の認 定 に付 て正確 適 切 を期 す ると 云 ふ ことは 、 少 し も 差支

識 の無 い者 、 或 は 認 識 し ま し て も甚 だ 薄 弱 だ と 云 ふ やう な も の に付

で、 左様 に致 し た いと存 じ ます 。 神 戸 地 方裁 判 所 予 審 に於 ては 昭和

そ れ に付 き ま し ては 神 戸 地 方裁 判 所 予 審 に於 ては既 に 一件 日 本無 産

十 三年 三月 三十 一日 、 日本 無 産 党 関 係 被 告 人 とし て神 戸 市履 物 商 組

め コミ ンテ ルンは 、 御承 知 の如 く人 民戦 線 運 動 な る新 戦 術 に依 て、

合 事 務 員 阪 本 福 蔵 な る者 の起 訴 を見 た の であ り ます 。 所 が同 人 は昭

に根 拠 を置 いて提 案 理由 を 申 上 げ た方 が便 宜 であら う と 存 じ ま す の

従 つ て之 に関 聯 す る文書 等 も表 面 合 法 のも の であ りま す 。 此 の戦 術

運 動 が其 の活 動 形 式 に於 て、 表 面 合法 的 のも のであ り ます る が故 に、

和 十 二年 三 月 二 十 一日 日本 無 産 党 神 戸 支 部 が加 藤 勘 十 臨 席 の下 に結

党 関係 事 件 が予 審 終 結 致 し て居 り ます の で、 其 の取 調 べま し た経 過

が 巧妙 の度 を進 め る に従 つて、 そ れに は 一定 の限 度 と 云 ふも のは あ

努 め て合 法 舞 台 を 利 用 し、 又 は合 法 団体 への潜 入 と 云 ふ形 式 に於 て

り ま す け れ ども 、 愈 々之 に関 す る文書 其 の他 の表 現 方 法 が、 左翼 臭

を致 しま し た 為 め、 治 安 維 持 法 第 一条 所 定 の結 社 に該当 す る結 社 に

成 せ ら れ ると 同時 に、 同 党 に加 入 し て同 党 を中 心 と し て具体 的 活 動

活 動 を続 け つゝあ る こと は既 に御 承知 の通 り であ り ま す 。 人 民 戦線

に難 くな い、 斯 う 思 ふ の であ りま す 。

す 。 此 の点 に付 て は取 調 の途中 に於 て 日本 共 産 党 と 日本 無 産 党 と 云

も の では な いか、 斯 う 云 ふ風 な観 方 をす る人 が出 て来 た の であ り ま

の 一形 態 と 認 め ら れ る から 、 日本 共産 党 の目 的 遂 行 の罪 と認 む べ き

に考 へ、 日 本 無産 党 に加 入 し て活動 し た事 は 日 本共 産 党 の目 的 遂行

其 の訳 は 第 一に 日本 無 産 党 は 日 本共 産 党 の 一種 の外 廓 団 体 のや う

議 事 項 第 七 と し て提 案 致 し まし た 問題 に当 面 し た の であ りま す 。

安 維 持 法 第 一条 の結 社加 入 罪 にな り得 る や否 やと 云 ふ問 題 、 即 ち協

の は初 め て であ り ます か ら、 第 一に日本 無 産 党 への加 入 が果 し て治

に関 係 し 、 治 安維 持 法 第 一条 に該 当 す る者 と し て予審 請 求 を 受 け た

加 入 した 者 と し て起 訴 せ ら れた の であ り ます 。 所 が 日本 無 産 党 だ け

味 を隠 蔽 し た 外 見 頗 る穏 健 なも の にな る であ らう と 云 ふ こと は想 像

長 次 に (六 ) (七 ) に移 りま す 。

議

りと し て起 訴 せ ら れた る被告 人 に対 す る 訊 問 の 方 策 如 何

六  日本無 産 党 に加 入 し 治 安維 持 法 第 一条 に該 当 す る犯 罪 な

(神 戸 地 ) 七  日 本無 産 党 への加 入 は 治安 維 持 法 第 七 条 の結 社加 入 罪 と 認 む べ き も のな り や否 や ( 神戸地)

神 戸 地 方 裁 判所 か ら提 出 致 し ま し た (六 )、 (七 ) の問 題 は、 或 は

ふ者 は全 然 別 個 のも の であ ると 云 ふ こと は判 明 致 し まし た の で、是

中川 ︹ 種 次 郎 ︺ 判事 ( 神 戸 地)

は解 消 し た の であ り ます 。 第 二 に天皇 制打 倒 と 云 ふ ス ロー ガ ンが綱

領 迄 発 展 し な け れば 、 日本 無 産 党 と 云 ふ も のは 第 一条 の結 社 と 認 め

の長 谷 川 竝 に井本 検 事 、 又只 今 池 田検 事 閣 下 か ら 縷 々御 説 明 に な り

難 い のでは な いか、 斯 う 云 ふ考 へ方 も出 た の であ り ます 。 第 三 と し

関 聯 す る問 題 であ り ます し 、殊 に午前 中 よ り東 京 地 方 裁 判所 検 事 局

の でご ざ いま す が、 何 れ も皆 検察 庁 の御 意 見 でご ざ いま す の で、 私

ま し て、 共 産 主義 思 想 を抱 懐 し て居 る と いふ唯 一点 か ら考 へて見 て、

ま し た の で、其 の本 質 に付 ては 更 に私 の方 から 申 上 げ る こと は な い

は 裁 判 所 と し て の之 に対 す る提 案 理由 を申 上 げ る こと に致 し ま す。

若 し 天 皇制 打倒 に対 す る認識 が な か つた 場合 に は、 資 本 主義 制度 の

も の では な いか、 斯 う 云 ふ法 律 的 な 考 へ方 が出 来 て来 た の であ り ま

打 倒 と 云 ふ 点 か ら考 へて、 治 安 維 持 法 第 一条 第 二項 だ け に該当 す る

す 。 此 の事 件 に当 つた のは私 であ りま し て、 此 の問 題 に付 て は色 々 研 究 を し た ので あ りま す。 併 し 思 想 事 件 に付 て は、 検 事 局 と裁 判 所

第 一に高 度 資 本 主 義 の時 代 に於 て 日本 の資 本 主 義 は世 界資 本 主 義

第 二 に我 々は斯 うし た期 待 に背 か ぬ而 も之 を 究極 の目 標 に結 び付

の波 に洗 は れ て残 存 せ る封 建的 遺 制 を内 包 し な が ら 云 々と 言 ひ、

第 三 に我 が労 農 無 産 協 議 会 は自 ら人 民 戦 線 の推 進 力 た ら む と し て

け て 云 々と 言 ひ、

は 自 ら其 の立場と 権 限 を 異 に し て居 りま す け れ ども 、 窮 局 に於 け る

池 田検 事 閣 下 の講 述 し て居 り ま す る パ ンフ レ ツト に書 い て居 ら れ る

を持 つて云 々、 斯 う云 ふ言 葉 を使 つて居 りま す。 之 を 見 ま し た結 果 、

れ ば な ら ぬ と 云 ふ、 斯 う 云 ふ私 は自 分 自 身 の考 を起 し た の であ り ま

て宜 い の では な いか と斯 う 考 へた の で あ りま す 。

事 柄 は、 ど う も 日本 無 産 党 に対 す る事 柄 に於 ては、 頭 から鵜 呑 にし

先 に解 体 さ れ た カ ンパ ニヤ の闘 争 の中 から新 な る決 意 と 新 な る形 態

す 。 是 は 私 は検 事 局 に迎 合 し た のでは あ り ま せ ぬ。 又 予審 な り裁 判

国 家 的 と 云 ふ最 高 の目 的 の下 に は、 或 る程度 迄観 点 を 同 一にし な け

所 と 云 ふ も のは固 有 の立場 を保 持 す る やう に す る のが宜 い左 様 に考

た のであ りま す 。 そ れ は どう 云 ふ 訳 であ る かと 申 し ま すと 、 思 想其

共産 主義 思 想 を 抱 懐 し て居 るか ど う か と 云 ふ こと を前 提 と し て訊 い

そ こで被 告 人 の訊 問 に当 り ま し て、 先 づ第 一に被 告 人 が根 本的 に

右 のや う な観 点 か ら調 べ ま し た所 が、 日 本 無 産党 の本 質 に関 し て

へて居 る の であ り ます 。

は 、 裁判 所 な り 又予 審 側 と し て之 に対 す る参 考書 が少 し もな か つた

のも のか ら追 求 し て行 くと か活動 の究 極 目的 を明 か に す る こと が出

す る調 査 の記 載 が あ り まし た の で、 是 等 を 調 査 し た結 果 、 日本 無 産

に関 す る調 査 や 運 動方 針 等 の概 況、 日本 無 産 党 結 成前 後 の情 勢 に関

想 月 報 の第 三 十 五 号 に、 日本 無 産党 の前 身 であ る労農 無産 党 協 議 会

第 二十 六 号 、 同 年 十 二月 の思 想 月報 の第 三 十 号 、 同十 二年 五月 の思

取 調 に当 つて の参考 書 類 と し ま し て、 昭和 十 一年 八 月 の思 想 月 報 の

レツト の交 付 を受 け た の であ り ま し て、 そ れと 同時 に其 の前 後 から

池 田検 事 閣 下 の講 述 に係 る ﹁ 労 農 派 と 日本 無 産 党 ﹂ と 題 す る パ ン フ

ひ被 告 人 は其 の闘 争 経 歴 古 く、 且 つ尖 鋭 的分 子 であ り、 山 川 均 と も

根拠 、 竝 に 日本 無 産 党結 成 に至 る迄 の経 過関 係 を訊 き ま し た所 、幸

党 の本質 に対 す る認識 、 即 ち 指 導 精神 に対 す る認 識 を得 る に至 つた

であ り ます 。 次 に五 と し て闘 争 の経 歴 を訊 き ま した 。次 に 日本 無産

あ り ます 。 第 四 と し て人民 戦 線 運 動 に 対 す る認 識 の関係 を訊 いた の

義 運 動 に於 け る指 導 精 神 とし て山 川 イ ズ ム信 奉 の関係 を訊 いた の で

ム に対 す る認 識 の関係 を 訊 いた の であ り ます 。 次 に被告 人 の共 産 主

であ り ます 。 次 に 日本 の共 産 党 運 動 に於 け る福 本 イ ズ ムと 山 川 イ ズ

るか ど う か と云 ふ こと を引 出 す のに 必要 だと 思 つ て左様 に訊 いた の

の であ り ま す 。所 が幸 ひ に神戸 地方 裁 判 所 検 事 局思 想 主 任 検 事 から 、 来 、 日本 無 産 党 が第 一条 の結 社 に該当 す る結 社 性 を 有 す るも の であ

が 為 に、其 の理論 的 予 備 知 識 を 得 る のに非 常 に困難 を感 じ て居 つた

い て居 り ます 。

党 の前 身 であ る労 農無 産 協 議 会 の運動 方針 大 綱 に斯 う 云 ふ こと を書

阪本 福 蔵 に付 ては 池 田検 事 閣 下 の講 述 せ ら れ て居 る通 り のも の であ

き も のた る本 質 を 有 す る も のであ る こと を認 識 し て居 り ま し た の で、

又 は包 蔵 し て居 る 治 安維 持 法 第 一条 の結 社 に該 当 す る結 社 と認 む べ

う し ても究 極 に於 て天 皇 制 否 認 と 私 有財 産 制 度 否 認 の目 的 を内 包 、

し た か ら、 日本 無 産 党 は其 の指 導 精 神 か ら推 論 し て行 き ます と、 ど

結 成 に付 て は そ の結 成 に努 力致 し て居 り ま し た やう な関 係 が あ り ま

く 理 解 し、 階 級 闘 争 も 活 溌 に展 開 致 し て居 り、 日本 無 産 党 神戸 支 部

古 く か ら交 友 があ り、 共 産 主 義 思 想 の意 識 も強 く、 山 川 イズ ムを深

て置 き ま せ ぬ と、 福 岡 地 方 検事 局 か ら御 出 し に な りま し た (四) の

思 ふ の であ り ます 。 第 四 に 人 民戦 線 運 動 関係 の認 識 を 詳 細 に訊 問 し

合 法 と 云 ふ こと に藉 口し て弁 解す る余 地 も 十分 に与 へら れ て居 ると

て置 く必 要 のあ る こと は 勿 論 で、 単 に合 法 に仮 装 し て居 り ます 為 に、

る と思 ふ の であ り ます 。被 告 人 の行 為 の真 相 を内 面 的 に鋭 く追 求 し

重要 意 義 を 持 つやう に思 は れま す か ら相 当 詳 細 に訊 く の が便利 であ

は、 従 来 の共 産党 関 係 被 告 人 の際 よ りも 一層 日本 無 産 党 に付 て は、

の過 程 、 山 川 イズ ム信 奉 の点 、殊 に闘 争 経 歴 及 山川 イズ ム信奉 関 係

討 す る必 要 のあ る こと は 勿 論 であ り ます 。 次 に被 告 人 の思 想 の推 移

やう な問 題 に引 つ掛 つて、 訊 問 の上 に非 常 に困 難 を来 す と思 ふ の で

る と考 へま し た結 果 、 本 人 に対 し ては本 年 五月 五 日予 審 終結 決 定 を 致 し た やう な 次 第 であ り ます 。 之 に依 て見 ます と 要 す る に被 告 人 の

神 戸 地 方裁 判 所 予 審 に於 き まし ては 、 此 の以外 に予審 の繋 属 し て

あ りま す。 私 は斯 様 に思 つ て調 べ まし た が、 唯 頭 に浮 ん だ程 度 を申

居 りま す事 件 がご ざ いま す。 そ れ で予 審 訊 問 と し ては 、多 分 に技 術

上げ た に過 ぎ な いの であ り ま す。

りま し た 日 本無 産 党 の本 質 に付 ては、 天 皇 制 否 認 、 私 有財 産 制 度 否

に突 進 ん で参 り ます る と、 午 前 中 か ら検 察 当 局 に於 て色 々御 話 にな

認 と 言 つた や う な関 係 を内 包 致 し て居 りま す 為 め 、 日 本無 産 党 が右

を仰 がな く て は分 ら な いと思 ひま し て、 茲 に (六 )、 (七) の問 題 を

的 の問 題 は含 ま れ て居 る と思 ひ ます が、 尚 理論 的 にも 色 々と御 指 導

認 識 関 係 と 云 ふ こと が非 常 に問 題 にな つ て来 る の であ り ます が、 更

様 な目 的 を持 つ て居 る か どう かと 云 ふ やう な点 に付 て、 被 告 人 の認

事 閣 下 か ら色 々御説 明 下 さ いまし た か ら、 大 体 分 りま し た か ら此 の

提 出 致 し ま し て、 先 づ 第 一に山 川 イズ ム竝 に労 農 派 理論 が どう 云 ふ

識 を明 か にし て被 告 人 の行 為 を 其 の真 相 を究 明 す る のに非 常 な困 難

点 は然 る べ く致 す と し て、 国 体 変 革 及 私有 財 産 制 度 の否 認 に対 す る

を 感ず る と思 ふ の であ りま す 。 又仮 令 同 党 が左 様 な 目的 を包 蔵 若 く

認 識 関係 を、 先 程申 し ま し た より も 、更 に他 の文 献 か ら之 を引 出 す

に関 聯 を持 つやう にな つた の か、 其 の経 過 の関 係 、是 は 只今 池 田検

なら ぬと思 ふ のであ りま す 。 そ れ に付 ては 所持 品即 ち証 拠 品 と な る

性 の問 題 が起 つた りし て 一件 の終 結 迄 に は余 程 の難関 に遭 遇 せ ね ば

方法 は な い かど う か。 次 にど う 云 ふ根 拠 に依 り 日 本無 産 党 の結 社性

訳 で、 日本 無 産 党 で指 導精 神 と し て居 る反 フア ツ シ ヨ人民 戦 線 運 動

べき 文書 内 容 の検 討 は 勿 論 で あ り ます が 、 私 と し まし て は、 そ れ に

は内 包 し て居 る こと を認 め ま し ても、 日 本 無 産 党 が果 し て、 治 安 維

付 て労農 無 産 協 議 会 の運 動 方 針大 綱 の内容 を玩 味 し、 其 の指導 精 神

を 認 む べ き か、 斯 う 云 ふ点 に付 て理 論的 に御 説 明 を願 へれば 誠 に結

治 法 第 一条 に定 む る結 社 に該 当 す る も の であ る か ど う か、 即 ち結 社

を 詳 細 分析 研 究 し 、 又 日 本 無 産党 の結 成 に至 る ま での沿 革 関係 を検

まし ては是 は 先程 申 しま し た や う に、 日本 無産 党 への加 入 罪 を 認定

構 だ と 思 つて、 二 つ の問 題 を提 出 し た やう な訳 であ り ます 。 私 と し

誠 に幸 ひと思 ひ まし て、 本 問 題 を提 案 し まし た や う な訳 であ り ま す。

す べ き も のであ ると思 ひ ます が、 更 に皆 様 の御教 示 を仰 ぎ ま し た ら

二 三  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺(三) (一九三九)

つ て弊 害 は あ りま せ う が、 一体 現 行 刑事 訴 訟 法 は集 団的 団 体 に対 す

問 案 の全 般 に付 いて手 続 法 上 或 は 実 体法 上 十 二 分 に御 述 べ に なり ま

○長尾 ︹ 操︺ 判 事 (東 京 刑 地 ) 午前 中 に東 京 控 訴 の平 野 検 事 が諮

て、 そ れが為 に被 告 人 の乗 ず る所 と な つて裁 判 の威信 を失 墜 す るや

彩 の濃 厚 な手 続 法 で運 用 し ます ると 色 々実 際 上 不 便 な点 が生 じ ま し

例 へば 第 一次 第 二 次共 産党 の如 き 大 き な事 件 、 斯 う 云 ふ自 由 主 義 色

る手 段 を施 し て も不 適 当 では な いかと 云 ふ感 があ る ので あ りま す。

し た 。 其 の趣 旨 に於 て大 体 賛 成 であ り ます け れ ど も司 法 省 刑 事 局 に

う な 結 果 を招 来 す る虞 が あ る やう であ り ま す か ら、 此 の単 に左 翼 事

昭 和 十 四年 六月  思 想 実 務 家 会 同議 事 録

関 す る点 を除 いて は余 り に抽 象 論 に流 れた 様 であ り ます か ら、 私 は

の途 があ る の では な いか と思 ひ ます 。

件 に限 らず 集 団的 団 体 を審 理 す る手 続 法 と し ては 今 少 し適 当 な改 正

そ こ で今 直 ち に内 外 の情 勢 に応 じ て刑事 訴 訟 法 の自由 主 義 色 彩 を

判 事 と し て平 野 検 事 の述 べた こと を今 少 し 具 体 的 に述 べ て見 た いと

て述 べ られ ま した が、 現 行 刑 事 訴訟 法 は自 由 主 義 全盛 の時 代 に造 ら

を取 扱 ふ上 に便 宜 のや う な規 定 を設 く る ことは 出来 る ので はな い か

全 部 除 く と 云 ふ こと は出来 な いか も知 れま せ ぬ が、 此 の集 団 的 団 体

思 ひま す 。 先 づ第 一に立 法 上 の問 題 とし て刑 事 訴 訟法 の改 正 に付 い

れた 法 律 であ り ます から 非 常 に自 由 主義 が濃 厚 な る上 に余 り に此 の

判 所 に対す る言 動 、 是 れ な ど は何 と か裁 判 の威 信 を損 じ な い範 囲 に

独 立 の犯罪 と し て罰 す る や う な規 定 を 設 け て貰 ひ度 いと 云 ふ こと は

申 さ れ た共 産 主 義 思 想 を抱 懐 し之 が実 現 を希望 し て為 し た る行 為 は

そ れ か ら も う 一つは 実体 法 上 の問 題 と し て今 仙 台 の二階 堂 判 事 が

と 思 ひま す。

個 人 を 保護 す る傾 き のあ る点 は之 は内 外 の情 勢 に鑑 み て私 は此 の改 正 の必 要 を痛 切 に感 ず る の であ り ます 。 例 へば帝 人事 件 と か或 は 現

於 い て弁論 を制 限 す る為 に 必 要 な条 文 を 設 け ら れ度 い、 さう 云 ふ制

現 に これ か ら将 来 の左翼 思 想 事 件 を取 捌 く 上 に於 て甚 だ 必 要 で はな

在 の神 兵隊 事 件 など の被 告 人 の公 判 廷 に於 け る検 事 局 の みな らず 裁

限 は 甚 だ同 感 であ りま す。 そ れ と もう 一つは さ う 云 ふ自 由 主 義 は却

従来 の事 件 は 正統 派 が先 づ 共産 党 と いふ中 心 な る 組織 を作 つて之 を

いか と思 ひま す。 其 の理 由 を簡 単 に申 し ます と所 謂 正 統 派 に属 す る

ーズ な組 織 でも 社大 党 に這 入 つて、 社大 党 の中 で尚 従来 の前 衛 組織

其 の運 動 方 針 に基 い て非常 な ルーズ な組 織 が出 来 て居 る、 而 かも ル

農派 の 理論 と 正統 派 の理論 と折 衷 し た やう な 運動 方 針 が出 来 ま し て、

を持 つと云 ふ や うな場 合 に は、 さ う 云 ふ結 社 を背 景 と し て 今 の法 規

指 導的 中 心 と し て其 の下 に全協 と か共産 青 年 同 盟 と か其 の他文 化 団

な い で、 あ つち こ つち 自分 勝 手 に共産 党 を 利 用 し て居 る も の は手 が

体 等 を所 属 させ た、 其 の左 翼縦 断 組 織結 成 の組 織 形態 を以 て臨 ん で

著 け ら れな い。 今 の実 体法 では手 が 著 け られ な いと 云 ふ やう な こと

らう か、 今 日大 阪地 方 の検 事 の言 は れ た やう に自 分 では実 際 転 向 し

の意 識的 連 絡 関 係 が非 常 に明瞭 であ つて捜 査上 或 は審 理上其 の点 が

迄 申 し 上げ る こと が出 来 て来 る の では な いかと思 ひ ます。 故 に今 の

を適 用 し て之 を起 訴 し 或 は公 判 で処 分 す る こと も出 来 る ので はな か

余 り骨 が折 れな い で旨 く認 識 が付 くや う な調 書 が取 れ た の であ り ま

居 りま し た から 従来 は必 らず 共産 党 が其 の他 外 廓 組織 をな す結 社 の

す が、是 か ら後 は 今 の労 農 派 の主 張 す る やう な左 翼横 断 組織 と 云 ふ

治 安維 持 法 で始末 の付 かな いやう な も の、 而 か も意 識 的 に さう 云 ふ

背 景 が あ つて而 かも 共産 主 義 華 や かな り し頃 其 の結 社 に対 し て個 人

も のに し て、 共 産 党 と 云 ふ如 き前 衛 舞 台 の組 織 の必要 を認 め る け れ

るも のが是 れ等 の情 勢 に即 応 し て段 々出 来 て、 斯 う 云 ふ事 件 が頻 発

す る の では な いか と思 は れ る の であ り ます 。 目下 焦 眉 の急 務 とし て

法 網 を潜 って始末 の付 かな いやう な 運動 を す る、 共 産 主義 活 動 を す

治 安 維持 法 の中 へさう 云 ふ 共産 主 義思 想 を抱 懐 す る者 が其 の主 義 を

ども 現情 勢 は さう 云 ふ組 織 を 造 ら な い で大衆 制 度 を 造 る、其 の他 制

に現 は れ た事 件 と し て左 翼 無産 党 とな る ので はな いか と 云ふ感 じ が

動 上 の方針 と が段 々 一致 し て来 る の で はな いか、 そ れ は現 に具 体的

宣 伝 せ ん とす ると 云 ふ 一項 を挿 入 し て此 の必 要 に応 じ ては どう か と

度 の中 に左 翼 的 の横断 組 織 を 造 ると 云 ふや う な考 へ方 と正 統 派 の運

致 す ので あ りま す 。尚 日本 無産 党 は党 の文 書 、 例 へば運 動 方針 書 と

考 へま す。

全 評 の如 き全 協 の如 き労 農 派 の全 協 に近 いや う なも のが あり ま し て

国 家 的 政党 と云 つた連 中 が此 の右 翼 の方面 で全 体的 ナ チ ス的 の国 家

み戦 術 に依 つて単 に社 大 党 のやう な 無 産政 党 の名 で なく て右 翼 政 党

を持 つ て居 るも ので も或 は労 農 派 的 の考 を持 つ て居 るも ので も流 込

そ れ か ら此 の今 の人 民戦 線 結 成 の運動 が起 り ま し て正統 派 的 の考

か結 社宣 言 其 の他労 働 規 約 に関 す る文書 か ら見 ると 、成 程 労 農 派 の

も此 の外 に コミ ン テ ル ンの人 民戦 線 結 社 方針 を取 つた時 に労 農 派 の

観 に基 き其 の思 想 を背 景 と す る政 党 が起つ て居 る ことは 栗 谷検 事 が

理 論 を現 は し て居 り ます が、之 を組 織 し た る方 から 見 ます と例 へば

分 子 中 の 一部 は 日本無 産 党 に流 れ た やう な 形跡 が認 め ら れ る。例 へ

何 処 でも さう だ ら う と思 ひ ま す が、 最初 は右 翼 運動 には 一定 の系 統

申 され た 通 り であ り ます 。 そ れ で之 は右 翼 運 動 の発 生 過 程 に於 ては

的 のイ デ オ ロギ ーが な か つた ので、 従 つて具 体的 に或 る行 為 に現 は

の潜 行 運動 に這 入 る こと を肯 じ な い ので、 地下 の者 が日本 無 産 党結 成 に対 し ては流 込 ん だ や うな 形跡 が十 分 認 め ら れる 。斯 う 云 ふ 日本

ば 全 会 の如 きも のは 此 の社大 党 な ど に流 れる ことを 肯 じ な い、 地下

無 産 党 の状 態 から 見 る と、 将 来 を推 測 し て見 ます ると将 来 は 此 の労

れ た事 実 例 へば 殺 人 予 備罪 と か或 は放 火 の予備 罪 と云 ふやう な個 々

の緊 迫 し た情 勢 に於 いては 此 の思 想 犯 が普 通 の犯罪 と違 つ て特 別 の

事 政 策 とし て執 るべ き事 であ ら う と考 へま す が、 現在 のや う に内 外

論 此 の時 勢 の変 遷 に依 つて寛 厳 宜 し き を得 る と云 ふ ことは 国家 の刑

考 慮 をす る所 が あら ねば な らな いと考 へる のであ り ます 。 そ れ で思

の行為 を 以 て十 分 形 は 取 つた のであ り ま せう 。 そ れ で此 の全 体 主 義

ふ或 る 一定 の系 統 的 イ デ オ ロギ ー に基 いて其 の運 動 を展 開す るや う

想 犯 の量 刑 に当 つて単 に表 面 上 組織 の役員 を し て居 つたと か、 共 産

指 導 の如 き も独 逸 の ナ チ スと か伊 太利 のフア ツ シ ヨと か 云 ふ さう 云

党 の役 員 を し て居 つた と か或 は 何時 党 に這 入 つた と か、 党 に這 入 つ

て其 の目的 を 遂行 す る こと に勢 め た と か、 さ う云 ふ こと に量 刑 の基

の運動 でも 共産 党 と 同 じ く 特 に過 激 な運 動 を す る やう な場 合 に は矢

礎 を置 かな い で、 本 人 の意 識 の高低 、 本 人 の社 会 的 地位 そ れか ら本

な こと が必 然 と起 つて来 る だ らう と思 ひま す か ら、 矢張 り此 の右翼

張 り そ れを 罰す る適 当 な 法 条 を治 安維 持 法 の中 へ挿 入 す る か或 は 別

はな ら ぬ の では な い かと思 ひま す 。大 体 裁 判所 の寸 法 とし て唯役 員

人 の外部 に対 す る影響 力 など を 能 く考 へた 上 で刑 の量 定 を し な く て

であ る と か、 な いと か云 ふ こと は、 ず つと 以前 の第 一次 第 二次 の共

に特 別 法 を 設 け るな り し て、 さう 云 ふ場 合 に応 ず る やう に適 当 に立

次 に現 行法 が さう し た や う な立 法 上 の改 正 が現 在 直 ぐ出 来 な いと

産 党 の四 ・ 一六事 件 迄 は大 体 量 刑 の参 考 にす る やう 考 へら れ て居 つ

法 上考 慮 致 す こと が宜 い では な い かと考 へる ので あり ま す。

対 し て効 果 的 の方 法 が 執 ら れ る の では な いか と考 へら れ る所 があ り

仮 定 し ても 現行 法 上 の運 用 に依 つて現在 のよ り 以 上 の思 想 犯鎮 圧 に

考 へて居 りま す が、 私 が特 に不 平 と言 つては変 です け れ ども 特 に余

や う な傾 向 があ りま す が、 さう 云 ふ傾 向 は 私共 甚 だ喜 ばし き 傾向 と

に依 ら な い、 も う少 し 犯人 の主 観、 認 識 意 識 の程 度 に重き を置 いた

り ま した、 が丸 七 年 思 想事 犯ば か りや つて居 り ま した の で、 実 際 此

り 重 き を置 かれ て居 な いやう に考 へる点 と し て斯 う 云 ふ こと があ り

た の であ りま す が、 此 の 一々の犯 人 に当 つ てさう 云 ふ形 式 的 の判 断

の東 京 の量 刑 の問 題 を 取扱 う の であ り ます が、 予審 判 事 と し て甲 な

ま す。 即 ち 文 化 運動 者、 概 し て文 化 運動 者 の活 動 に対 し て少 し刑 が

私 は殆 ん ど予 審 判 事 と し て其 の間 に 一年 、保 護 観 察 所 へ行 つて居

ら甲 の被 告 人 に就 い て之 は例 へば懲役 五年 を 以 て臨 むべ き であ ると

軽 く な る やう な傾 き がな い ではな いか と思 ひ ます 。 例 へば コツプ と

ま す の で、其 の点 を 量 刑 の問 題 と 関聯 し て申 し て見 た いと思 ひま す。

又他 の場 合 に は そ れと反 対 に私 達 の考 へて居 た よ り重 い判決 を受 け

云 ひ ま し ても 之 は共 産 党 の外 廓 組 織 であ る。 要す る に組織 者 は 共産

思 つた のが、 一審 に於 て非 常 に軽 い判 決 を 受 け る様 な場 合 が あ る。

る やう な場 合 もあ り ま し て、 東 京 で実 際 行 は れ て居 る判 決 が必 らず

のは非 常 に社 会 の広 汎 な範 囲 に及 ぶ も の であ り まし て、唯 此 の コツ

プ に於 け る地 位 が低 いと か或 は コツプ が大 体 従属 関 係 に あ る やう な

党 の下 に附 くも のであ り ます が、 此 の文 化 運動 者 の影 響力 と 云ふ も

形 式的 の事 情 が刑 の量 定 の問 題 を 定 む べき も のでな くし て、 本 人 の

し も何 時 も軽 き に失 す る と 云 ふ やう な感 じ は起 ら な い の であ り ます

く な つた と 云 ふ こと も此 の思 想 事 犯 の処 罰 上 に影 響 があ る と思 ひま

が、 大 体 の趨 勢 から申 し ます と 、 一般 普 通 の犯罪 に対 す る処 罰 が軽

す が、 大 体 に於 て軽 く な る と云 つた傾 向 があ る やう であ り ます 。 勿

る のでは な いかと 考 へる のであ り ます 。 尤 も 私 が斯 う 云 ふ こと を申

的 地位 と 云 ふ も のを 量刑 の基 準 と す る こと に依 つて適 当 の刑 が盛 れ

意 識 の強 靱 な る や否 や、 其 の文 筆 に依 る影 響 を 考 へ其 の本 人 の社 会

りま す が、 之 は ど う か と思 ふ のであ り ま す、 其 の理由 を具 体 的 に申

分 に付 いては も う之 れ から絶 対 に運 動 は や ら ぬと 言 ふ場 合 には寛 大

に低 か つた の では な いかと思 ひ ます 、 即 ち裁 判 所 では共 産 主 義 の処

であ り ます が、 今 迄 は此 の転 向 は裁 判 所 で転 向 と 考 へた基 準 は非 常

し ま す ると 現 在 の正統 派 と 云 はず 、 労 農 派 と云 はず 、 運 動 の中 心 人

な 裁判 をす る。 軽 い事 案 にな ると 執 行 猶 予 が出来 るやう な 傾 き が あ

物 は何 れも 前 科 者 であ りま し て例 へば 労農 派 の猪俣 、山 川 そ れ か ら

し ます ると 、例 へば 共 産党 の壊 滅 に瀕 し て所 謂 リ ンチ事 件 が 昭和 八

主 脳部 を 横 奪 し た場 合 であ りま し て、 此 の時 の主 脳部 は大部 分 産 労

津 田 な どと 云 ふ中 心人 物 は皆 前 科 のあ る連 中 ば かり であ りま し て、

年 末 に起 つた場 合 は共 産 党主 脳 部 を 見 ま す ると 所謂 宮 本 顕治 一派 が

と か或 は コツプ、 さう 云 ふ方 面 から挙 つたも の であ りま し て、 而 か

而 か も之 は皆 主 と し て文 筆 を 以 て特 長 と し て運 動 に参 加 す るや う な

た が、 高 江 洲 と 云 ふ者 は労 働 者 出 身 であ り まし た が、 非 常 に運動 を

も 共産 党 史 上嘗 て な いや う な惨 虐 な事 件 、 リ ン チ事 件 を惹起 し た の

為 し意 識 の高 いも ので、暗 黙 の裡 に 一応転 向 と 認 め ら れた 程度 で出

連中 ば か り であ り ます 、 正統 派 に於 ても 現在 の日 本 共産 主 義 者団 に

所 の保 護 団 体 に な つて居 り ます 日 比 谷公 園 の市 政 会館 に事務 所 を持

た の ではな いか と思 ひま す が、 斯 う 云 ふ相 当 な 運動 経 歴 を持 つて而

であ り まし て、 さう 云 ふ 点 から 考 へても、 此 の文 化運 動 に従 う やう

つ て居 る 日本文 化 協 会 に於 て現 在 の作 家 、 特 に流 行作 家 の統 計 を取

し て理論 に付 ても 理解 のあ る やう な 連 中 が左 翼 運動 内 でも其 の左 翼

な イ ンテ リ分子 は表 面 は直 ぐ転 向 す る様 に仮 装 す る の であ り ます が 、

つた も の があ り まし て、其 の流 行 作 家 と言 はれ て居 るも のは、 而 か

運動 を指 導 す るや う な こと に な りま す か ら、 之 は執 行 猶 予 を付 け る

ひま す、 昨 日 でし た が高 江 洲 の事 に付 いて九 州 の御方 が言 は れ まし

も 現在 の大 衆 に持 て るや う な連 中 は殆 ん ど思 想 犯 の前 科 のあ る も の

為 め に転 向 の基準 を現 在 の情 勢 に即 し て少 し 高 く引 上げ な け れば な

属 す る中 心 人 物 も全 部 之 は再 犯或 は三 犯位 に な る者 では な いか と思

か或 は起 訴 猶 予 に準 ずべ き者 が多 い の であ りま し て表 面 は合 法 的 の

らぬ ではな いか、 簡 単 な事 件 では 一回 か 二回 位 で果 し て真 に転 向 し

実際 内 心 は却 々転 向 がむづ かし い。内 心 は転 向 は絶 対 し な いと見 て

目 的 で文 筆 運動 に従 事 し て居 る様 であ り ます が、之 は其 の実 、 検 察

た る や否 やと 云 ふ こと は内 心的 に考 慮 をし ても判 ら ぬ では な い かと

も差 支 へな いやう なも のが多 い の であ り まし て、 現 に今 日保 護 観 察

て、 自分 達 の文 筆 運動 の情 勢 が有 利 にな れば 、 ど う 云 ふ事 に な るか

思 ひます 、 唯 予 審 で 一応転 向 し た と 云 ふ文 句 が調書 に挿 ん で あ るか

当 局 の目 を掠 め つ ゝ其 の許 す範 囲 に於 て活 動 し て居 る の であ り まし

分 らな いやう な危 険 分 子 であ り ます 。 宣 伝、 伝 道 力 の偉 大 な る文 化

かと思 ひま す 、 大体 予 審 は転 向 を 誓つ た者 でも 現 に起 訴 さ れ て居 る

ら と い つて、 そ れ で以 て転 向 であ る と思 ふ のは間 違 ひ の本 ではな い

事 件或 は送 致 中 の事 件 に転 向者 は 幾 ら も あ る の であ りま す か ら、 唯

運 動 に従事 す るも のの処 罰 に付 い ては 特 に此 の際 留意 し て慎 重考 慮

それ と もう 一つは此 の転 向 さ へす れ ば執 行 猶 予 に な ると 云 ふ問 題

の上 、刑 の量 定 を為 さ れん こと を願 つて置き ま す 。

と もあ る か知 れま せ ぬ が、 之 は 矢張 り裁 判 所 と し ても 考 へな く ては

を保 護 観察 所 の処 置 に任 せ るや う な安 心 な気 持 で やら れると 云 ふ こ

や うな こと も 一つは保 護 観 察 所 が出 来 た か ら其 の執 行 猶予 後 の処置

に執 行 猶 予 の恩 典 に出 る やう な態 度 に近 頃出 る やう な 傾向 にな つた

う 云 ふ事 情 が判 り悪 い のでは な いかと 思 ひ ます 、 そ れ で裁 判所 が特

判 所 で形 を現 は し た、 公 判 で形 を現 は し た と い つた の では 本 当 に さ

個 人 的 に接 触 し て居 り ます が、 一応 それ が保 釈 で出 る と かし て、 裁

乃 至 二 月 の歳 月 を要 し て居 る、 果 し て転 向 し たと い つても 、 そ れ は

予 審 では現 在 は 労 農派 の被告 人 を取 調 べ る に し ても大 体 一人 に 一月

云 ふ こと は、 現 在 の情 勢 上適 当 とは 言 へな いと思 ふ のであ り ま す。

た 丈 け では 、 そ れ が公 判 に廻 つて転 向者 と見 ら れ寛 大 の刑 に出 ると

単 に調 書 の片端 に転 向 し た と か運 動 を や ら な いと か 云 ふ こと を書 い

し て世 界 に誇 つ て宜 い こと では な いかと思 ひ ます が、 どう も此 の保

に仁 愛 の精 神 を基 調 とし た 立 法 であ ると 云 ふ こと は 我国 体 の誇 りと

は甚 だ時 機 を得 た も のと 思 ふ の であ りま し て、保 護 観 察 法 の建 前 殊

て居 ります 、 此 の保 護 観 察 所 の設 立 組 織 と 云 ふ根 本 の問 題 に付 い て

之 は私 は 一年 ば か り居 り ま し た ので、幾 ら か保 護観 察 の職務 は判 つ

が な い ので具 体的 に之 は 申 さ れ ま せ ぬ。保 護 観 察所 であ り ます が、

少 し 改善 を要 す る所 があ るや う に思 ひます が、 私 は行 刑 の方 は 経 験

宜 いと思 ひま す、 そ れ で今 の行 刑 方 面 に於 ても思 想 犯 の戒護 教誨 に

行 刑 、裁 判 、 観察 と 云ふ 三 つ の機 能 の力 を能 く考 へて刑 を決 す るが

は 軽 いと云 ふやう な 一面 のみ を見 て決定 し な い で、 相 互 に連 絡 し て

を 考 へて刑 を決 し なく ては いか ぬ の であ り まし て、 唯 重 いから 今度

付 い ては行 刑 の方 面 と 保 護観 察 の方 両 と両 方 の機 能 の実際 的 の効果

な活 動 が出 来 な いやう な 状 況 にあ る の では な い かと 云 ふ こと が問 題

と、 それ と此 の組織 の拡 充 が出来 て居 な いで、 此 の組織 がま だ相 当

と思 ひます 。 之 は行 刑 と 相 俟 つて もう少 し保 護 観 察所 の組 織 の整 備

護 に任 ず る保 護 司 の職 に当 るも のに適 当 な 人材 を 得 な い の で困 る の

は出 来 な い のであ り ま す が、 現在 の刑 務 所 の戒護 状 態 或 は観 察 所 の

私 は唯其 の刑 は宜 し く厳 な るべ し と 云 ふ こと には直 に全面 的 に賛 成

拡 充 を図 る必 要 があ る の では な いかと思 ひ ます、 私 は此 の保 護 観察

な ら ぬ こと で、 そ れ丈 け で安 心 し て保 護 観 察所 に任 す と 云 ふ やう に

職 能等 が十分 に整 備 さ れ まし て機 能 を現 は す こと が出来 る やう に な

ン〓

所 の機 能 が拡 充 せ ら れ る様 にな れば 裁 判 所 は転 向 し た者 に対 し てド

転 向問 題 を軽 々に取扱 う こと は いか ぬ では な いかと 思 ひます 、 併 し

れ ば、 それ は刑 務 所 な り或 は 観 察所 に依 拠 し て刑を減 ず る と云 ふ態

題 に事 件 に於 て非 転 向者 或 は 転 向 を仮 装 し た 者 が中 心 にな つて居 る

的 では な いやう に考 へら れま す、 そ れは 現 に進 行 中 或 は捜 査 中 の問

侶 の人 の思 想 犯 に対 す る教 誨 状態 は全 体 と し て考 へま す と余 り効 果

教 家 の人、 そ れ には適 当 な人 が あ り ます が、 大体 其 の本願 寺 系 の僧

云 ふ こと は非 常 に必要 の度 を 増 し て来 る の では な いか と思 ひます 、

向 が あり ます 、是 れ か ら考 へま す ると 此 の思 想 専 門 の判 事 の特 設 と

か し くな り まし て、 而 か も将 来 運動 が益々 不穏 にな り複 雑 にな る傾

が、 正統 派 の様 に組 織 的 に行 動 が行 つて居 り ませ ぬ ので、 甚 だむづ

そ れ から此 の是 れ か ら起 る事 件 は、 今 の労 農 派 でも さう であ り ます

刑 の執 行猶 予其 の他 の恩典 に出 ても差 支 へな いと思 ひます 。

度 に出 ても宜 し いと 思 ひ ます が、 私 は行 刑 の分野 の上 で大 体 今 の宗

と 云 ふ事 実 に依 つても 判 ると 思 ひ ます 、 そ こ で此 の刑 の量 定 問 題 に

実 上 十 一人 の判 事 を 以 て思 想部 を 造 つて、 此 の十 一人 を 以 て労 農 派

そ れ で私 も 此 の思 想 専 任 の判事 の特 設 を望 みま す 、現 在 東 京 では 事

に置 く こと が今 の状 態 では意 味 を な さ ぬ では な いかと 思 ひます 、 そ

く 上 にも効 果 的 で はな い かと思 ひ ます 、 唯 全 部各 地方 裁 判所 に劃 一

処 理 に当 る と 云 ふ方 が其 の判事 の養成 に も効 果 的 で あ り 又事 件 を裁

が切 瑳 琢磨 し合 つて 理論 を 研 究 し 運動 方 針 に付 いて研 究 し て実 際 の

れ か ら他 に 一人 の予 審判 事 を置 く と 云ふ よ り も東 京 と か大阪 と か福

其 の他 の事 件 の処 理 に当 つて居 り ます が、 却 々斯 う 云 ふ新 し い型 の

々取 調 が進 ま な いの であ り ます 、 現 に此 の二年 以 上 の思 想 事 件 に経

かり でな く思 想 事 件 を 専 門 に処 理す る公 判 部 を置 くと 云 ふ こと が事

岡 と か 云 ふ さ う事 件 の中 心 地 と な り さう な場 所 に は、 又 予審 判 事 ば

事 件 に馴 れな い為 と中 等 分 子 と急 進 分 子 を 取 扱 つて居 る せ い か、仲

験 のあ る者 と申 し ま す と 僅 に十 一人 の中 で三人 し か居 な い の であ り

各 地 に予審 判 事 を置 くと な つた 所 で、 唯 メ ンバ ー 一人 置 いた所 で、

ふ こと は今 の状 態 では 反 対 であ りま す 、 そ れ は何 ぜ かと 申 し ます と

分 であ つ ても各 地 方 裁 判所 に 一人 専 門 の思 想専 任 の判 事 を置 く と云

末 な問 題 も あ り ま せう が、 私 は仮 り に其 の他 の条 件 が適 つ ても、 十

御 意 向 であ つた様 で あり ま し た が、 之 は 財 政 と か其 の他 の色 々な些

な いかと 思 ひま す 、殊 に私 達 が今 現 在 や つて居 る事 件 の処 理 に当つ

の他 種 々な 無 駄 な 手 数 を省 き ま す の で財 政 上 の軽 減 が出 来 る の では

案 の処 理を 迅 速 的 確 に出 来 る の では な いか と思 ひま し て、 又 出 張 其

刑 の処 分 を 終 へる と 云 ふ こと が短 期 刑 の統 一を 図 る ば か り でな く 事

即 ち そ れ で予 審 の審 理 を統 一し 、 公判 の審 理を 統 一す る、 そ れ から

公判 部 を特 設 し 、 そ れ に事 件 を 集 中 的 に起 訴 し て其 の統 一を す る、

ら、 之 を統 一す る為 には矢 張 り事 件 の中 心 地 に なり さ う な所 に思 想

件 処 理 上適 切 では な いか と思 ひ ます 、 之 に依 つて此 の刑 の統 一を図

まし て、 東 京検 事 局 の思 想 部 が整 備 さ れた 時 に比 す る と非 常 な る違

実 際 事 件 の処 理 に当 ると 同時 に 一方 理 論 的 の研究 、 運 動 方 針 の研究 、

て特 に痛感 し ま す る のは牽 連 事 件 を 集中 的 に起 訴 し て貰 ひま す 、今

る こと が出 来 る の であ り ま し て、 従 来 の例 を見 ると 東 京 と大 阪 とは

調 査 、 其 の予備 知 識 が なけ れば 唯 置 いた 丈 け では実 際 案 山 子 の様 な

東 京 の刑事 裁 判 所 の予審 判 事 に対 し ては山 形 であ りま す と か新 潟 と

ひ であ り ま し て丸 つ切 り泥繩 と 云 ふ やう な 状態 で、 而 かも意 識 の程

も の では な いかと 思 ひま す、 之 は事 件 の中 心 地 で沢 山 思 想部 員 の配

か、 斯 う 云 ふ方 面 か ら証 拠 調 の嘱 託 が沢 山 来 て居 り まし て、其 の証

度 の高 い 一流 の理 論 家 の運動 に対 し て当 つて居 る の で あ りま す か ら、

置 の出 来 る や う な重 要 な 裁判 所 に置 く の が今 の所 は宜 い では な いか

拠 調 を やり ま す る と結 局 事 件全 体 を 調 べ ると 同 じ様 な手 間 が掛 る 状

の運 用 の形 は同 じ でも 地 方 に依 つて刑 が違 つて来 る の であ り ます か

と 思 ひま す 、例 へば盛 岡 地 方 に一 人 の予 審 判事 を置 き まし ても 大体

既 に違 ひま す し 、 東 京 と例 へば福 岡 其 の他 の地 方 と は非 常 に実 際 上

あ の地 方 な ど で は 一年 に 一つか 二 つと 云 ふ事 件 し か な いだ ら う と思

い、 斯 う 云 ふ や う に牽 連 事 件 と し て本 人 が山形 に あり ま し て も、 東

態 であ りま し て、 証拠 調 の為 に特 別 に 一人 掛 つ て居 る訳 には いか な

此 の事 件 の調 の進 捗 し な いも のも止 む を 得 な いと考 へる の であ り ま

ひま す が、 さ う云 ふ所 に夫 れ丈 け の余 裕 が あ れば 之 は 全 国 地方 に 一

す 、 今 裁判 所側 か ら各 地 に此 の専 任 の思 想 判事 を置 くと 云 ふ や う な

人 置 く 所 へ固 め て三 人或 は 四人 と 云ふ 思 想 判事 を置 い て、 四 人 の者

京 に 廻 つて来 れば其 の間 手 数 が省 か れ、 結 局 公 判 に於 て統 一し て審

の目 的 は転 向 をす ると 云 ふ こと には 関 係 が な い。 そ れは 予審 です べ

従 来 色 々な意 見 も出 て居 る や う でご ざ います る が、 第 一の説 は予 審

し い の であ る。 斯 う 云 ふ説 が あ る やう であ り ます 。 仮 り に第 一説 と

予 審 は 、 予審 本 来 の公 判 に附 す べ き であ る か どう かを 取調べ れば 宜

き では な い。 そ れは 要 す る に行 刑 な り保護 な り の受 持部 分 であ つて、

そ れ で以 上 のやう に立法 問 題 に付 い ても或 は法 律 の運 用 の問 題 に

い に上 司 の方 に於 て御 考 へに な つ て頂 き た いと 思 ひま す。

理 が出来 る結 果 、 刑 の権衡 を取 れ る と思 ひ ます 、 斯 う 云 ふ こと は 大

付 い ても斯 う 云 ふ こと を協 議 す る には成 る可 く相 当 斯 う 云 ふ方 面 に

る が、 是 は非 常 に必 要 な こと であ る。 必 要 な こと で あ る から 理論 は

名 付 け ます 。第 二説 と でも 申 す べ き も のは 理論 的 に は其 の通 り で あ

第 一説 の通 り であ る が事 実 上 必 要 な こと であ る か ら、 や つても宜 か

経 験 のあ る専 門 家 を中 心 と し て委 員 会 な り 或 は協 議 会 な りを 造 つて

正 と か法 律 の運用 と 云 ふも のが出 来 る の では な いか と思 ひま し て、

早 く適 当 な 方法 を決 定 す るや うな 運 びに し て貰 へば 実 際 に即 し た改

ら う で はな いか と 云 ふ やう な説 であ り ます 。 第 三説 は理 論 上 に も 予

る。 思 想犯 罪 者 の転 向 と 云 ふ問 題 は相 当重 要 な 、 否 実 は最 も重 要 な

る。 法 律 の大 目 的大 精 神 が動 く に従 つて、 法 律 の解釈 も違 ふ の であ

審 も や る べき も の であ る。 法 律 の解 釈 は時 勢 の推 移 に依 て解 釈 が異

之 を最 後 に 一言 致 し まし て私 の答 申 と致 し ます 。

五、 予 審 に繋 属 せ る思 想 犯罪 者 の取 調 に際 し其 の勾 留 を或 程

味 は 只 今読 上 げ ら れた 通 り であ り ま す が、 是 は大 体 の心構 へを何 処

○岡 田 ︹又兵 衛) 判 事 ( 横 浜 地) 簡 単 に申 し 上げ ま す 。問 題 の 意

と云 ふ こと を極 く軽 い意 味 で宜 し うご ざ います か ら御 意 見 を伺 ひ た

三 つの説 の中 ど れを 大 体 の心構 へとし て持 つて居 つた ら 宜 か らう か

であ り ます 。 極 く 大 ざ つぱ に三 つ位 の説 があ る の であ り ま す。 此 の

る程 度 転向 の境 地 に導 く と 云 ふ こと も、 予審 の意 義 であ る と云 ふ説

点 と も 云 ひ得 る位 の こと で あ る から 、大 所 、 高 所 よ り見 て予 審 で或

度 長 期 に亘 ら し む るも之 を転 向 の境 地 に導 く こと の可 否

に置 く か と 云 ふ こと に付 て御 意 見 を伺 ひ た い と思 つて提 出 し た も の

い と思 ひま す。 尚 提 案 者 は 只 今申 上 げた 第 二説 、 第 三 説 が宜 し いと

(横 浜 地 )

でご ざ います 。 大 体 と 云 ふ のは 厳 密 に 云 ふ と犯 罪 者 の地 位 な り、 思

思 ひ ます が 、

○ 議長  ど な た か御 意 見 が あ りま す か。 大 阪 控 訴 の小原 さん如 何 で

ひ ます 。 又之 を取 扱 ひま す る地 方 の事情 に依 り ま し て、 矢張 り個 々

す か。

想 、 其 の他 特 殊 の事 情 に依 り まし て、茲 に別 々 の結 論 が出 る か と思

別 々の結 論 が出 る か と思 ひます が、 唯 大体 の心構 へと し て御協 議 を

○ 小原 ︹ 仲 ) 判 事 (大 阪 控) 別 に予 審 の こと に付 て具 体 的 な 経 験

も あ り ま せ ん です が、 私 と し ても是 と 申 し 上げ る程 の確 た る意 見 も

従来 色 々相 反 す る意 見 が散 見 し て居 る やう であ りま す か ら、 此 の際

持 つて居 り ま せ ぬ が、 或 る程 度 迄 は其 の勾留 中 に転 向 に導 く と云 ふ

願 ひ た いと 思 つて提 出 し た も のでご ざ いま す 。 此 の点 に付 き ま し て、

す か ら、 御 遠 慮 のな い御 意 見 を伺 つて、 参 考 に致 し た いと存 じ ます 。

忌 憚 のな い御意 見 を伺 ひ まし て、 極 め て軽 い意 味 で結 構 でご ざ いま

し て も、 転 向 の機 会 を 与 へまし て、 さ う し て之 を し て本然 に戻 す と

り議 論 を生 ず る こと で、 之 を 除 き ま す れば 、 予 審 の取 調中 に於 き ま

一つであ ら う と思 ひ ます が、 唯 問 題 は長 期 に亙 ると 云 ふ こと が矢 張

妥 協 に非 ざ る協 調 と 云 ふ所 から出 ま し た。 そ れ の具 体的 の現 はれ の

○佐野検事 ( 横 浜 地検 ) 本 問 題 の論 議 せ ら れ た のは連 絡 協 調 で、

ひま す 。

が 目 的 では な いかと 思 ひま す か ら、 第 一説 で宜 いの で はな い かと思

○宮崎 ︹ 隆 蔵︺ 判 事 (福 岡 地) 労 力 を少 く し て実 効 を 挙 げ る こ と

宜 い の では な いかと 思 ひ ま す。

第 二義 的 のも の であ り ま す か ら、 予 審 と し て は、 第 一説 で行 つた が

行 刑 方 面 と混 同 す る形 も あ りま す から、 現 今 は 予 審 方 面 と し て は、

説 が宜 いと 思 ひま す 。第 二説、 第 三説 は議 論 も あ り ま せ う け れ ども 、

○高橋 ︹ 敏 雄︺ 検 事 ( 長 崎 控 検) 私 は予 審 の本質 か ら 見 て、 第 一

作 用 審 理 の目 的 以外 で あ ると 云 ふ論 に は なら な い です か。

○ 議 長  検 事 側 か ら御 意 見 あ り ま せ ぬ か。 提案 者 の意 見 は、 予 審 の

し て居 り ま せ ぬ。

かと も 思 ひ ま す。 何 れと も は つき りし た意 見 を述べ る程 の程 度 に達

対 す る 非難 の喧 し い時 であ り ます から 、 之 も考 慮 し な け れば な ら ぬ

こと も、 一つの方 法 でな いかと 思 ひま す け れ ど も、 近 頃 公法 機 関 に

持 つて居 る所 の我 々実 務 家 と 云 ふ も のは、 此 の空 前 の時 局 に当 面致

信 じ て居 る の であ りま す 。 申 す 迄 も な く私 は 先 程思 想 事 犯 に関 聯 を

観 念 を以 て臨 み ます から、 犯 人 は更 生 し て転 向 せね ば な ら ぬ と私 は

云 ふ も のも、 其 の予 審審 理中 に於 き ま し て、 取 調 官 が 明 徴 な る国 体

は 申 す迄 も な い の であ り ます 。 斯 様 に考 へて参 りま す る と、 裁 判 と

て置 いて、 完 全 な も のを 構 成 せ し む る と 云 ふ こと が、 不 可 能 な こと

う 云 ふ問 題 は 考 へら れ る の であ り ま す。 独 り行 刑、 保 護 だけ に委 し

と が出 来 る の であ り まし て、或 は 公判 の審 理 中 に於 き まし ても 、 さ

互 譲 連 環 の価 値 が あ りま し て、 一般 を し て法 の全 目的 を達 成 す る こ

更 に保 護 と 云 ふ やう な四 つ の場 面 が あ る の であ り ます が、何 れ も が

査 審 理 、或 は 又検 挙 、捜 査、 審 理、 公 判 、 更 に進 ん で刑 の執 行 、 又

す るも の であ らう と 思 ひ ます 。 さう な つて参 り ます る の で、 所 謂 捜

そ こ に目標 を置 か れ て為 さ れ て、 初 め て法 の威 信 と 云 ふ も の が確 定

ま す ので、 どう し ても審 理 に当 りま し ても、 検 挙 だ け与 へら れ ても、

国 体 の明徴 、 国 家 の防 衛 と 云 ふ こと に重 点 を置 か るべ き も のと 考 へ

転 向 せ しむ べき こと が国 策 と し て当 然 な こと であ り、 又法 の目 的 が

ま し て、 思 想 の普遍 性 と云 ふや う な 根 本問 題 に触 れ て参 りま す と、

る と個 々の犯 人 を 一人 々 々切 取 つ て考 へる こと は出 来 な い の であ り

結 局 国 体其 のも のを守 ると 云 ふ こと に帰 す る の であ りま す 。 さ う な

の基 礎 を為 す思 想 を破 壊 せ ん とす る も の で、之 を守 ると 云 ふ こと は

ま す 。斯 く考 へて参 り ます る時 、 燦 と し て輝 く御紋 章 を拝 し て居 る

れば い か ぬと 云 ふ こと を 申 し 上 げ た のは、 実 は そ こに あ る の であ り

し まし ては 、 一人 々々 が思 想戦 と 云 ふ やう な 心構 へを以 て臨 ま な け

云 ふ こと は、 一向 差 支 へな い こと でご ざ いま せう 。 寧 ろ さ う し て戴

更 に国 家 を防 衛 す ると 云 ふ こと が立 法 の大精 神 でな け れば な ら ぬ と

私 共 、裁 判 所 或 は 検事 局 と云 ふ やう な 重 要 な職 責 を使 命 とす るも の

き た い の であ りま す 、是 は私 の私 見 であ り ます が、 国 体 を 明 徴 に し、

こと にも な る ので あり ま す 。思 想 事 件 に於 き ま し て は、 問 題 は 国 体

思 ひま す 。其 の為 に社 会 を構 成 す る所 の個 人個 人 を保 護 す ると 云 ふ

に対 し まし て、 一刻 も 早 く大 御 心 を 徹 底 せ し め、 御 稜 威 の下 に之 を

は 、須 ら く明 徴 な る国 体 の観 念 を把 握 致 し ま し て、 一人 々 々 の犯 人

転 向 の途 を歩 む べき であ ると、 斯 う述 べ て居 り ます 。 思 想 犯 は寧 ろ

に死 の苦 し み を体 験 させ 、 熟 慮 の末 、 思 索 の途 を高 め る こと に依 て

げ て置 き ま す。

塩 漬 にし て死 の苦 し みを嘗 め さ せ て転 向 さ せ る こと が、真 の転 向 で

○ 議 長  大 体 皆 様 の御意 見 は今 出 ま し た数 種 のも の で尽 き て居 るか

あ ると 云 ふ こと を言 つ て居 る の で あり ま す。 之 を御 参 考 迄 に申 し上

の ト ー チ カ であ る 。之 に立 籠 つ て居 る司 法 官 は其 の戦 士 であ ら ね ば

あ り ます 。 斯 の如 く考 へて参 り ま す と、 裁 判 所 検事 局 は悉 く思 想 戦

な ら ぬと 考 へる の であ り ます 。少 し激 越 な言 葉 であ る かも 知 れ ま せ

徹 底 せし め ると 云 ふ こと が、 使命 であ ら ねば な らぬ と信 ず る も の で

ぬ が、 さ う 云 ふ 風 な私 は心 持 を持 つて居 りま す る の で御 参 考 迄 に申

に留 意 すべ き点 如 何 (山 形 地)

六 、 文 化 運動 を利 用 し て の共産 主 義 運 動 者 に対 す る取 調 上特

と思 ひ ます 。 此 の程度 で次 の問 題 に移 り ます 。

し上 げ ま す 。 ○ 議 長  今 の御 意 見 は期 間 が長 期 に亙 ると 云 ふ こと を、 一先 づ 別 に

○勝山 ︹ 内 匠 ︺ 検 事 (大 阪 控検 ) こ れは 思 付 き です が、 長 期 に 亙

詳 細 に報 告 す べ き で あ ると 云 ふ風 に言 は れ て居 る ので あ りま す が、

面 的 に の み眺 めず し て、 其 の真 相 を把 握 すべ き であ る。 又 経 歴 等 も

○ 猪 瀬 ︹一郎︺ 判 事 ( 山 形 地 ) 文 化運 動 、 共 産 主義 運動 に関 す る、

ら し め な いで、 転 向 さ せ る こと が出 来 れ ば そ れ で宜 い が、唯 転 向 さ

現 在 私 共 の文 化 の 一分 野 であ る所 の英 語 に関 す る運動 を通 じ て其 の

し て の御考 です ね。

せ る と 云 ふ こと を無 理 に言 ふと 、 近 頃 の被 告 人 は昔 と 違 つ て言 は ぬ

目的 の達 成 の為 に出 て居 りま す の で、 既 に御 経験 の方 か ら御意 見 を

○ 佐 野 検事 ( 横 浜 地検 ) 左 様 です 。

先 か ら、 転 向 す る者 が多 い。 偽 装 転 向 が多 い。 強 い て転 向 を 御 や り

承 つて、 今後 の参考 に供 し た いと思 つて提 出 し た 次第 であ り ま す が、

に あ る か、拠 り所 が何 処 にあ る か と 云 ふ こと を 突 止 め て、 事 案 を表

に な ると 、 益 々偽 装 転向 が出 、 其 の結 果 は先 の量 刑 の問 題 でも御 話

既 に先 輩 の方 か ら被 告 人 本 人 の訊 問 に のみ重 点 を 置 かず 、 中 心 が何

が あ りま し た が 、 刑 が軽 く な ると 云 ふ や うな こと も 影 響 致 し ます の

に参 考 に な るべ き 御 意 見 も 承 つた ので、 実 は協 議 を し て行 か な く て

先 程 直 接 には刑 の量 定 では あ り ま せ ぬ が、 先 程 此 の点 に付 て の非 常

○ 議 長  大 体皆 さ ん の御 考 は ⋮ ⋮

で、 そ こ に手 加 減 があ る のぢや な いか、 斯 様 に考 へま す ので 一言 申

向 者 が述 べ た 言葉 を御 参 考 迄 に申 し上 げ ます 。 思 想 犯関 係 者 は 長 く

○野呂 ︹ 清 一) 検 事 ( 京 都 地検 ) 其 の問 題 に関 し て、 優 秀 な る 転

○ 議 長  何 か御 意 見 があ り ま す か。

思 ひま す。

も 宜 し い の であ り ます が、 尚御 意 見 の点 があ つた な らば 承 り た いと

塩漬 に し て置 く が宜 し い。 傍 ら親 の愛 情 、 先輩 の忠 言 等 で転 向 さ せ

の如 く 誠 に取 調 上 困 難 な問 題 を伴 つて居 る の であ りま し て、 例 へば

○清 原 ︹ 邦 一︺ 第 五 課 長  本 問 題 に付 き ま し て は、 提 案 者 の御 説 明

し 上 げ て置 き ま す 。

る こと も 一方 法 で は あ る が、左 様 な こと では本 当 で な い。結 局 本 人

は、 現在 天 理 本 道、 或 は 之 に関 聯 し た 類似宗 教事 件 に付 き まし て、

全 国的 に 一斉 検 挙 を致 し て居 り ます 。 尚曩 に大本 教 あ り、人 の道 あ

○隈元 ︹ 孝道)検事 ( 名 古 屋 地検 ) 私 が此 の問題 を出 し ま し た の

れば 、其 の事 自 体 を 以 て被 告 人 に対 す る犯 罪事 実 を推 定 す る有 力 な

の際 検挙 竝 に処 断 に付 て考慮 す べき 点 は な いか、 是 が私 が此 の問 題

り、 又将 来 も類 似 宗教 の犯罪 続 出 の懸 念 が あ る のであ り まし て、此

申 す 迄 も な いこと であ りま す が、 共 産党 の華 や か な りし 頃 の党 に入

資 料 にな る のであ り ます が、今 此 の文化 運 動 の形態 を執 る こと に な

党 す る、 或 は党 の機関 紙 ﹁赤旗 ﹂ を配布 し た と 云 ふ時 代 であ り ます

り ます る と、 其 の活動 す る場 面 は多 く は合 法 舞 台 であ りま す る か ら、

の種 事案 の取 調 の衝 に当 ら れ た方 に委嘱 し て、 来 る七 月 一日 よ り研

る研 究 竝 に取 調 に付 ては 自 己 を 一つのテ ー マと 致 しま し て、 直 接 此

度 本 年度 の思 想特 別 研究 に於 きま し て も、 特 に 此 の文 化 運動 に関 す

拠 上 認定 す る こと は非 常 な る困 難 を伴 ふ問 題 であ りま す から、 此 の

云 ふ意 思 の連 絡 と 云 ふ も のが、 極 め て重要 であ り ます 。 併 も之 を証

を 指 示 し、 且 つ其 の目 的 に副 ふ為 に、是 々の具体 的 事 実 を 行 つた と

人 民 戦線 方 策 と 云 ふ も のを 認識 す れば、 勿 論 之 を認 識 し た 上 で、 之

連 絡 、例 へば人 民戦 線 運 動 の 一翼 と し て文 化 運動 を致 し ま す れば 、

つ危 険 を伴 ふ の であ りま す 。従 つて之 に付 き ま し ては 、 所謂 意 思 の

想 戦 線 運動 の 一翼 と し て文 化 運動 を致 し ます れば 、 極 め て困難 で且

であ りま す。 従 つ て之 に付 き ま し ては、 所 謂 意思 の聯 絡 、 例 へば思

締 上時 期 を失 す る虞 があ る と思 ふ の であ りま す。 最 近宗 教 団 体 法 が

意 識 の程 度 迄 立 入 つて銓 議す る こと は、 徒 らに時 期 を遷 延し て、 取

類 似 宗教 の 一々 の教 養 迄 我 々が立 入 つて銓 議 し而 も各 個 人 に付 て、

に も或 は取 締 官 憲 の手 の足 らざ る際 に於 きま し て、 極 め て怪 妙 な る

り、 一刻 も愉 安 を 許 さざ る時 期 にあ り ま し て、 一面 左右 両翼 の取締

行 動 が、 非 常 時 局下 人 心 の不 安 を 背 景 と し、尖 鋭 化 せ ん とし つゝあ

の不 便 を感 ず る のであ り ます 。 又 類 似宗 教 が続 出 し 、其 の反 国 体的

罪 が、続 出 し そ れ を治 安 維 持法 で取締 を為 す に は、法 律 技 術 上多 大

な い かと 愚考 す る のであ り ます 。 従 つ て今 日 類似 宗教 の反 国 体 的犯

であ り ま し て、 類似 宗 教結 社 の如 き は、 予 想 し て居 な か つた の では

産 党其 の他 の左 翼結 社 を 目標 とし て立 法 せら れ た るや の感 があ る の

持 法 に依 て取 締 を し て居 つた の であ り ま す が、治 安 維 持法 は元 来共

の必 要 は な い かと 云 ふ こと を言 ふ の であ りま す。 従 来 は之 を治 安維

第 一は私 は 此 の類似 宗 教 の反 国 体 的 犯罪 の取締 に付 て、 特 に立法

を出 し た所 以 であ り ます 。

究 に従事 し て戴 く こと に内 定 し て居 り ます るか ら、 そ こ で其 の報 告

な りと 云 ふ こと を 断 定す る こと は、 極 め て困 難 で且 つ危 険 を伴 ふ の

単 な る其 の被 告 人 の外形 事 実 のみ を捉 え て、 治 安維 持 法 違 反 の犯 罪

書 が出来 上 がり ま し た際 は 御手 許 に御配 布 申 し 上 げた いと思 ひま す。

制 定 さ れ まし た ので、 之 を研 究 し て見 ま した が、 甚 だ微 温 的 な も の

ば 簡 単 な る取 締 法規 を 制 定 さ れま し て、 結 社 を壊 滅 せ し め若 し之 に

を達 せ ぬ やう であ りま す 。是 は将 来 の問 題 では あり ま す る が、 願 く

で あり ま し て、 類 似宗 教 の反 国 体 的 の犯罪 の取締 と し て、 直 に目的

御 参 考 迄 に申 し 上 げ て置 き ま す。 (三 ) 類 似宗 教 に関 す る も の 一、 類 似宗 教 の反 国 体的 犯 罪 の検 事 竝 に処 断 に付 考慮 す べき 点如何 ( 名 古 屋 地検 )

で、 現在 治 安 維持 法 で取 締 ると す れば 、 検 察 裁判 上ど う 云 ふ点 に注

し な が ら他 面 立法 と 云 ふ こと のみ を言 つて居 る訳 にも 参 り ま せ ぬ の

が出来 る やう な 工合 にな れば甚 だ 結構 だ と考 へる の であ り ます 。 併

反 す る も のは、其 の禁 止 に違反 した と 云 ふ点 でど し〓

にし ても、 再 びよ り高 き 意識 を以 て社会 の治 安 を紊 す に至 る の であ

主 義 的 な観 念 に捉 は れま し て、 徒 ら に起 訴 猶 予 にし た り、 執 行 猶予

又元来 が、 国 体 観念 の欠 除者 が多 い のであ り ま す。斯 か る者 を 自由

は検 挙 位 で は教 祖 の法 難 であ ると し て中 々改 心 せ ぬ のであ りま す。

し て、再 び今 回 の犯罪 を 繰 返 す に至 つた の であ りま す。 而 し て彼等

簡単 な取 締

意 を す べき であ る か、 先 づ其 の類 似宗 教 では極 め て結 社性 は脆 弱 で

りま す。 そ れ等 を肇 国 の理想 に依 て、 益々 国 体観 念 を強 化 す る こと

そ れ か ら類 似宗 教 と精 神鑑 定 の問題 であ り ま す。 類似 宗 教 の反国

が先 決問 題 では な いかと 思料 す る の であ りま す。

之 を 取締 る こと は どう かと思 ふ の であ り ます 。其 の犯罪 の実 質 は 各

又或 る場 合 は 荒 唐無 稽 な こと を言 つて居 るや う に聞 え る の であ り ま

体 的思 想 保 持 者 の考 へ方 は、 従 来 の法 律 な ら ば著 しく 奇矯 に聞 え、

あ り ます 。 共 産 党 のやう な 確固 た る結 社 では な いの であ りま す 。 取

個 人 の心 境 の程度 、 それ が中 心 を 為す も の では な いか、 即 ち 現 況 に

締 上斯 様 な 類 似宗 教団 体 に対し て、取 締 上 結 社 のみに 重点 を 置 いて

依 て結 社 を 潰 せ ば足 ると か、 結 社 の組 織 者 、指 導 者 のみ を主 た る 目

向 致 さな い のであ りま す。 従 つて反 国 体 的意 識 のは つき りし て居 る

至 る迄 想 像 以 上 の狂 言 ぶ り を発揮 し て居 る のであ り ます 。 滅多 に転

特 徴 とし て結 社 の組 織 者 た ると指 導者 た ると を問 はず 、 信 徒 の末 に

屋 であ り、国 体 の盲信 者 と 云 ふ かも知 れま せ ぬ。 結 局 お互 ひ の相対

思 ふ の であり ま す。 彼 等 か ら考 へれば 逆 に我 々普 通 人 の方 が分 らず

直 に精 神 鑑 定 に附 した りす る のは 、真 相 に徹 し な い考 へ方 であ る と

特 徴 であ りま す 。之 を宗 教外 の者 が直 に心 神 異常 者 であ ると 見 た り、

標 と し てす る こと は、 起 訴猶 予 にす ると か、 又 は起 訴 に し ても執 行

限 り、 な る べ く起 訴 の範 囲 を広 く し、 又 起 訴 せら れ た も のは成 る べ

的 の問 題 であ り ます 。 今 日 の精 神病 学 者 は、 斯 か る宗 教 盲 信 者 を精

はな いか と思 は れ る の であ り ます が、 是 は宗 教 犯罪其 のも の の持 つ

く執 行 猶 予等 の生 温 い方 法 に依 らず 、 厳 罰 す る必 要 が あ る の では な

神 異常 者 と し て取扱 易 い のであ ります 。 成 る 程純 学 問的 の見 地 か ら

す 。 又其 の盲 信 振 り を見 る時 は頭 が狂 つては居 な い か、 精 神 に異常

い かと思 ひ ます 。 左 様 でなけ れば 再 び昭 和 三年 事 件 の轍 を 繰 返す こ

申 し ます と 、 又普 通 人 の考 を標 準 と した な らば 、 精 神病 学 上 の名称

猶 予 にす ると 云 ふ考 へ方 は どう かと思 ふ の であ りま す。 宗 教 犯 罪 の

と にな る の であ りま し て、 天 理本 道 は 、 昭和 三 年之 を検 挙 し た ので

を 附 せ ら れる か も知 れま せ ぬ が、 そ れ は精 神病 学 者 の勝 手 であ り ま

者 の判 断 に拘 束 せ ら る ゝ必要 はな い のであ り ます 。 心 神喪 失 な り や

す 。裁 判 官 が被告 人 の精 神状 態 を検 定 す る のに、 必ず し も精 神 病学

検 挙 処 理 は極 力 厳 選 す ると か或 は裁 判 は殆 ど中 心 人物 以 外 は執 行 猶

否 や は法 律 上 の判断 で、 裁判 官 が独自 の考 を 以 てす る権 限 があ り 又

であ り ます 。 即 ち 昭 和三 年 の検 挙 の事情 或 は裁 判 の実 情 を 見 ます と、

予 にす る と か、 而 も 一番 中 心 の大 西 愛 次郎 は、 無罪 にな つて居 る の

斯 く す る こと が 任務 であ り ます 。精 神病 学 者 の観 点 は、 裁 判 官 が法

あ りま す が、 再 び今 回検 挙 し な け れば な ら ぬ やう な事 情 にな つた の

であ り ます 。 斯 か る事 情 は、結 局 彼 等 を し て此 の事 情 を利 用致 し ま

の宗 勢 を拡 張 し つゝあ る ことは 、 各方 面 から説 明 され て居 る通 り で

罪 の危険 な こと、 殊 に非常 時 局 下 、民 心 の動 揺 を巧 み に利 用 し て其

あ り ます 。 此 の窮 迫 し た情 勢 下 に於 て国 家 の治 安 確保 の意 味 か ら従

的 判 断 をす る、 単 な る資 料 であ りま す。 精 神 状態 の鑑 定 は 必ず 鑑 定

の実 情 は、 裁 判 官 の機 能 を 自 ら抛 棄 し たも のと も言 へると思 ひま す 。

つて、 御 協 力願 ひ た い こと を特 に裁判 所 側 に御 願 ひす る次 第 であ り

来 の裁 判 の やり方 に拘 泥 せず 、 よ く此 の切 迫 し た事態 を御 諒 解 に な

を要 す と か、 又 必ず 鑑 定 の結果 に拠 ら な け れば な ら ぬと か、 今 日迄

私 が斯 か る分 り切 つた こと を何 故 強 調 す る かと 云 ふ と、 我 々は現 に

ます。

天 理 本 道 の検 挙 に当 つて当 面 し て居 る の であ り ます 。 即 ち裁 判 所 の

の評 価 で決 定 す る関 係 があ る のであ り ます 。 類似 宗 教 の反 国 体 的 犯

斯 か る問題 に対 す る考 へ方 が、 我 々取締 の任 に当 る者 の、 取 締 方 針

治安 維 持 法 を改 正 致 し まし て、此 の変 化 し た思想 情 勢 乃 至思 想 運動

でな く、 却 つて其 の度 を増 し て居 る や に考 へら れ る の であ り まし て、

通 り であ り ま す が、 一方詭 激 思想 防 遏 の必要 は 毫 も減 じ な いば かり

亦 之 に応 じ て甚 だし き変 化 を致 し て居 りま す こと は各 位 の御承 知 の

其 の間 に於 け る 我 が国 社会 情 勢 の変 化は 極 め て著 し く、 思 想情 勢 も

現 行治 安 維 持法 が施 行 さ れま し て以来 既 に数 年 を経 過 致 し まし て、

旨 を 簡単 に説 明 を致 し ま す。

○議長 ( 秋 山 ︹要︺ 刑 事 局長 )  協 議 に先 だ ち まし て此 の諮問 の趣

4  其 ノ他

予 防拘 禁 制 度 ヲ設 ク ルノ要 否

3 刑 ノ執 行 ヲ終 了 シ タ ル モノ ニシテ仍 再 犯 ノ虞 ア ル者 ニ対 シ

二 四  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺(四) (一九四〇)

諮 問 事 項

昭 和十 五 年 五 月  思 想実 務 家 会 同議 事 録

何

一、 実 務 上 ノ経 験ニ 徴 シ治 安 維持 法 ノ改 正 ニ付 考 慮 スベ キ事 項如

例 ヘバ

セバ其 ノ内 容 如 何

1  第 一条 乃至 第 三条 ノ規 定 ヲ拡 張 ス ルノ要 ア リ ヤ若 シア リト

ルト セバ其 ノ要 綱 (強 制捜 査 ノ主体 、 範 囲、 拘 束 期間 、 行 政

2  治安 維 持 法 違 反事 件 ニ付特 ニ強制 捜 査 ニ関 スル規定 ヲ設 ク

検 束 ト ノ関 係 等) 如 何

し て本問 が諮 問 致 さ れた次 第 であ り ます 。

す る必要 を認 め ま し て、其 の為 には 先 づ実 務 家 た る各 位 か ら実務 の

り唱 へら れ て居 り まし た が、 本 省 に於 き まし ても改 正 の準 備 に着 手

に対 応 し て之 が取締 の完璧 を期 す る 必要 があ る と い ふ論議 が予 てよ

捜 査 権 の範 囲 、 程度 、 又 は強 制 捜 査権 を検 事 に の み許すべ き か司 法

安 維持 法 違 反 事 件 に付 特 別 の捜 査 手 続 を定 む る と致 し ます れば強 制

又 事 犯 の性 質 上其 の必要 も あ る やう に考 へら れま す る の で、 若 し治

関 す る限 り特 別 に考 慮 す べ き も の であ ると いふ議 論 が相 当 強 い のと、

が、 行 政検 束 の利 用 に代 るべ き 制 度 に付 き ま し ては、 治 安 維持 法 に

て意 見 を伺 ひた いと思 ふ の であ り ます。

警 察 官 に も独 立 し て許 容 せ し む べき か と い ふやう な こと に関 し ま し

経 験 に基 く具 体 的 な意 見 を徴 し ま し て之 が参 考 に供 し た いと思 ひ ま

特 に伺 ひた い要点 は ﹁例 ヘバ ﹂ と し て列 挙 し てあ ります が、其 の 他 改 正 を要 す ると思 はれ る事 項 は 之 に捉 はれず 発 言 せら れ た い の で

産 党 のやう な 有 力結 社 が存 在 し ま し て コミ ン テ ル ンの直接 指 令 下 に

政 府 主義 の鎮 圧 を目 的 と し た立 法 であ り まし て、 且主 と し て日本共

治 安 維持 法 は 成 立当 時 の議 会 の応 答 に依 りま す と、 共 産主 義 又は無

﹁例 ヘバ﹂ と し て茲 に列 挙 した 理由 を 一言 附加 致 し ま す が、 元来

の があ る ば か り でな く、 法 の威信 と いふ 点 より 見 まし ても 不都 合 で

日庄 次 郎 の如 く直 ち に結 社 を組 織 し、 治安 上 誠 に寒 心 に 堪 へざ るも

れ て居 る のであ りま す。 之 を 放任 致 し ま す時 は、 共 産 主義 者 団 の春

所 致 す の であ りま し て、 其 の中 に は転 向 の疑 は しき 者 も可 成 り含 ま

当 数 満 期出 所 致 す ば か り でな く、 今 後 引続 いて多 数 の思 想 犯人 が出

第 三 に は、 来 年度 に於 き ま し て有 力 な る共産 党 員 が非 転 向 の儘相

活 動 し て居 た 運 動情 勢 を対象 とし て規定 せ ら れた も の のや う であ り

こで対 策 と し て予 防拘 禁 制 度 の要否 に付 ての意 見 の開 陳 を求 めた の

あ りま す の で、 之 に対し 対 策 を講 ず る必要 があ る のであ り ます 。 そ

あ りま す。

ます 。然 る に現 時 に於 き ま し ては 当時 と甚 し く事情 が 変 り まし て、

発 表 せら れ た い の であ り ます 。

以 上 の三 点 を主 眼 点 とし ま し て、 其 の他 に付 て も隔意 な き意 見 を

であ りま す。

共 産 主義 又 は無 政府 主 義 に限 らず 大 本教 、 天 理本 道 等 の不逞 宗 教思 想 に対 し まし ても適 用 せら れ て居 り ま す ると 共 に、 他 方 日本 共 産党 の やう な中 央 結 社 は存 在 す る やう な或 は存 在 し な いやう な甚 だ其 の

以 上 が諮 問 第 一事 項 の理 由 であ りま す が、 尚 協 議 事 項 の第 五、

存 立 が曖 昧 と 相 成 つて居 り ます 。其 の為 に法 の運 用 上 相当 困難 が あ るや う であ り ま す の で、第 一条 乃 至第 三条 を 適当 に改 正 し て、 新情

以 上 が説 明 であ り ます 。

せら れ た い のであ り ます 。

此 の諮問 事 項 に関 聯 し て提案 者 か ら説明 せ られ ま し て、 併 せ て協 議

挙 げ てあ り ます 協 議事 項 は 此 の諮 問 事 項 と同趣 旨 であ り ます から、

﹁法 規 ノ整 備 ニ関 ス ル モノ﹂ と いふ のが あ ります が、 此 の項 目 中 に

であ り ます 。

勢 に応 ぜし め る の必 要 が あ る やう に思 惟 致 し ま した のが第 一の理由

第 二 の理 由 と致 し ま し ては 、 御 承知 の如 く 行政 検 束 を捜 査 に利 用 致 し ます こと が 人権 蹂 躙 であ ると いふ世 評 が か まび す し いの で、 予 て司法 制 度 調 査会 に於 て刑 事 訴 訟法 の改 正 が論 議 せ ら れ て居 りま す

﹁例 ヘバ﹂ の1、 2、 3 と あり ま す が、 先 づ其 の1 か ら御 願 ひし た

そ れ では 御 意 見 を伺 ひ ます 。 尚 ち よ つと御 注 意 申 上 げ ま す が、

な く な つて居 り ます 。 さう し て党 の外 に在 りま し て党 を支 持 す る 活

運動 の戦 術 に変 化 を 生じ ま し て、 最 近 の実 情 は 党 員 の活動 が殆 ん ど

のと、 そ れ から コミ ンテ ル ン第 七 回 大 会 以後 に於 き ま し て共 産 主 義

﹁例 ヘバ ﹂ の1 に 付 き ま し ては 二 つ の拡 張 を必 要 と 認 め る の であ

上、 多 少 何 等 か の御 参考 に な ると 存 じ ま し て意 見 を 開 陳 致 し ます 。

し ま す。 東 京 に於 き ま し て 比較 的 事 件 を 沢山 扱 つて居 り ます る関 係

○平 野 ︹ 利 ︺ 検事 (東京 刑 地検 )

や現 行 法 の第 二 条及 第 三 条 が実行 に関 す る協 議、 実 行 の煽 動 と いふ

釈 上 或 は証 拠 上極 め て困 難 と な る ので あ り ます 。 而 も其 の活動 た る

ま す か ら、 現 行 の治 安 維 持 法 第 一条 を 以 て処 罰 す る こと が、 或 は 解

も党 と直 接 関 係 を避 け まし て合 法場 面 を利 用 す る 者 が多 い の であ り

動 形 態 を採 つて居 る のが其 の全 部 と 云 つ て宜 し い の であ りま す 。 而

諮 問 事 項 に付 き ま し て答 申 を致

いと思 ひま す 。

り ま す。 ﹁例ヘ バ ﹂ の1 の中 に ﹁第 一条 乃至 第 三 条 ノ規定 ヲ拡 張 ス

る のであ り ま す。 之 が為 に非常 に取 調 に手 数 を 要 し まし て、 取 調 の

風 に限 られ て居 り ます 為 に、 第 二条 及第 三条 に該 当 し な い場 合 が あ

日数 も長 期 間 に亙 る の であ り ま す か ら、 之 を拡 張 し まし て、 先程 申

ルノ要 ア リ ヤ云 々﹂ と いふ こと にな つて居 りま す が、 現行 法 の第 一

上げ まし た や う に ﹁国 体 変 革 ノ 目的 ヲ以 テ其 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル

条 は極 め て良 く出 来 て居 り ます 規 定 と考 へます 。 即 ち ﹁其 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行為 ﹂ と い ふ言 葉 は 非常 に含 蓄 の多 い言 葉 であ りま し

行 為 ﹂ と し ま す れば 、 無 理 に有 ら ゆ る方 面 から 証 拠 を蒐 集 し て、 第

そ れ から 今 一つの理 由 は、 昨 日 も御 報 告 申 上 げ まし た 通 り、 最 近

て、 兎 に角 最 初 は 日本 共 産 党 を 主 た る 目的 と し て考 へて来 た のを 、

の学 生 運 動事 件 の取 調 の結 果 に徴 し まし て、学 内 活 動 の中 心分 子 は

其 の後 有 ら ゆ る方 面 に変 化 を生 じ ま し て も尚 之 を 活用 し て、 ど う や

其 の外 に第 二 条 及 び第 三条 の規 定 に於 き まし て ﹁国 体変 革 ノ目 的

コミ ンテ ル ン及 び 日本 共 産党 の認 識 を有 し て居 る と い ふ点 を認 め る

一条 に問 擬 し て見 な い でも、 骨 を折 らな い でも容 易 に事 件 が処 理 し

ヲ以 テ其 ノ実 行 ヲ協 議 シ﹂ 又は ﹁煽動 ス ル所 為 ﹂ を 処 罰 す る こと に

の であ りま す が、 之 等 の者 に勧 誘 さ れま し て読 書 会 等 に加 入 し て理

得 る かと 考 へる ので あ りま す 。

な つて居 りま す が、 是 は実 際 上 殆 ど 運 用 さ れ て居 り ま せ ぬ。 そ れを

論 研 究 し て居 る所 謂 下 部 組織 に属 す る者 は コミ ンテ ル ン及 び党 の認

い で其 の儘 置 く 方 が宜 いと存 ず る の であ り ます 。

寧 ろ更 に拡 張 致 し ま し て、 字 句 の点 は本 省 の方 で十 分 御検 討 願 ひた

ら今 迄 賄 つて居 る ので あ り ます か ら、 此 の第 一条 の規 定 は改 正 し な

い のであ りま す が、 其 の拡 張 を 斯 様 に し た ら宜 いと考 へる の であ り

はな く し て、 単 に自 分 等 の研究 し ます る マルク ス、 レ ニンズ ム を実

践 に移 し て共産 主 義 社 会 を 実 現す る こと を 目的 とし て此 の読 書 会 を

識 を欠 い て居 り まし て、而 し て之 等 の目 的 の為 にす ると いふ企 図 で

開 い て マルク スの研 究 を し、 自 己 の共 産 主義 の意 識 の昂揚 に努 め 、

ま す。 ﹁国 体 変 革 ノ 目的 ヲ以 テ其 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ﹂ と し

そ れ に付 き ま し て理由 を簡 単 に説 明致 し ま す 。 先程 局 長 の御指 示

て、 之 を 処 罰 し得 る やう な規 定 を 設 け て戴 き た い の であ りま す 。

にご ざ いま し た や う に、 最 近 日本 共産 党 は極 度 に衰 微 し て居 り ま す

く の如 き 行 為 す ら も処 罰 す るや う に是 非 第 二条 、 第 三 条 を拡 張 す る

斯 様 に考 へて居 る者 が多 い の であ

例 へば 革 命 が来 た時 に備 へる︱

必 要 があ るも のと考 へる の であ り ます 。

り ま せ ぬ で、現 行 治 安 維 持 法 の下 に於 て は処 罰 し得 な い実 情 にあ る

此 の実 行 の協 議 と か或 は 実 行 の煽 動 と い ふや う な行 為 にも 至 つて居

﹁皇 室 ノ尊 厳 ヲ冒涜 シ其 ノ他 人 心 ヲ惑 乱 スル事 項 ヲ宣 伝 流 布 スル目

て居 りま せ ぬか ら十 分 の御 検 討 を 願 ひ た いと思 ふ の であ りま す が、

定 を設 け る必 要 が あ ると 考 へる の であ り ます 。是 もま だ 字 句 は練つ

強 化 す る為 に、国 体変 革 の目 的 に出 でな い場 合 と雖 も 新 た に 処 罰規

そ れ から 今 一つ の点 であ りま す が、 そ れは類 似 宗 教 運 動 の処 罰 を

りま し て、 従 つて是 は 治 安 維持 法 第 一条 の結 社 の目 的 遂 行 と し て処

の で あり ま す。 と申 し ま し ても斯 様 な行 動 に学 生 が出 ます る こと は

罰 す る こと が出 来 な い場 合 が多 い のであ りま す 。而 も まだ 具 体 的 に

国 家 の治 安 上 そ れ を放 つて置 け な いと考 へる の であ り ます から 、 先

五 つの態 様 の 一と し まし て、 現 下 の情 勢 に鑑 みま し て巧 妙 な る方法

り まし て、 昨 日 も ちよ つと 御 報告 申 上 げ まし た が、 共 産 主 義 運 動 の

て は出 て居 り ま せ ぬ が、 我 々が内 偵 線其 の他 を 通 じ て知 つた 所 であ

そ れ から 今 一つ の理 由 と 致 し ま し て、 是 は ま だ具 体 的 の事 件 と し

が、其 の程 度 に達 せ ざ る も の も結 社 活動 とし て処 罰すべ き 必 要 を感

有 す る こと が明 白 な る も のは勿 論 之 を 以 て処罰 すべ き で あ りま す る

如 き事 件 を種 々取 調 べ ま し た結 果 に徴 し まし て、国 体 変革 の目 的 を

大 本 、 天 津 教 、 神 政 竜神 会 、 ひと のみ ち、 天 理 本道 、 燈 台 社 事 件 の

規 定 を設 け て戴 き た い の で あり ま す 。其 の理 由 とす る所 は既 に皇 道

数 結 合 者 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ﹂、 之 を 処 罰 す る

的 ニテ大 衆 ヲ結合 シタ ル者 又 ハ情 ヲ知 リ テ其 ノ結 合 ヲ勧 誘 シ或 ハ多

に依 つて自 己保 身 を為 す と 共 に其 の周 囲 の大 衆 を勧 誘 し て、 さう し

程 申 し ま し た や う に是 非 拡 張 す る 必要 を 認 め る の であ りま す 。

て勢 力 を結 集 し ま し て、 将 来情 勢 の変 化 があ つた場 合 には 、 之 に応

社 会 の情 勢 に変 化 があ り、 不平 不満 の勃 発 し て暴 動 が起 つた 時 、之

攬 し て命 令 一下 意 の儘 に行 動 す る が如 く訓練 を す る、 さう し て此 の

あ る青年 を結 集 し て置 く、 而 し て之 等 を薫 陶 し ま し て、 其 の心 を収

す る が如 き ス ロー ガ ンを掲 げ ま し て、 さう し て純真 に し て実 行 力 の

如 き宗 教 関 係 の結 社 は 通常 の政 治 結 社 と異 りま し て、 結 社 の目 的 は

動 を処 罰 す る やう にし て戴 き た い の であ り ます 。 さう し て又 斯 く の

以 外 に更 に先 程 申 上 げ ま し た やう な程 度 の宗 教 団 体 を も其 の結 社 活

す る か ら、 現 行 法 の国体 変 革 の目 的 を 有 す る宗 教 団体 だ けを 罰 す る

敬 其 の他 の罪 名 で起 訴 し た に過 ぎ なか つた の であ り ます 。 であ りま

じ まし て之 等 の集 めた 大 衆 を 革命 運動 に導 かう と し て準 備 し て居 る

等 の青年 を率 ゐ て共 産 主 義 の運動 に移 行 せ し め よ う とす る意 図 のあ

必ず し も信 者 の結 集 を 目的 とす ると は 言 ひ難 い ので あ り ます 。 又結

は之 等 の結 社 と し て の活 動 を処 罰 す べ き条 文 がご ざ いま せ ぬ為 に不

る やう な場 合 が あ る の であ り ます 。 之 等 の如 き こと が将 来 出 ま し た

社 加 入 の態 様 も 極 め て ル ーズ であ りま し て、 現 行 治安 維 持 法 第 一条

ず る ので あ りま す 。例 へば天 津 教 、 ひと のみち 、神 政 竜 神 会 の如 き

場 合 に於 き ま し て は現 行 法 では処 罰 し 得 な いか と思 ふ の であ り ま す。

の結 社加 入 と いふ のは適 当 でな い場 合 も あ る やう に考 へら れま す か

者 があ る の であ り まし て、 具 体的 に申 し ま す ると、 表 面 国 策 に協力

斯 く の如 き も のは早 期 に殲 滅 す る 必要 を認 め る ので あ りま し て、斯

ら 、 之 等特 殊 の事 情 を 考 慮 し ま し て、 之 等 不 逞 な宗 教 結 社 を罰 す る 規 定 を 一つ設 け て戴 きた いと 考 へる の であ り ます 。

一、 国 体 変革 に関 す る処 罰 規 定 と 私有 財 産 制 度 否 認 に関 す る処 罰

其 の理由 の内 容 を 各項 目 に付 て申 上 げ て見 ます れば 、

先 づ此 の項 目 を提 出 致 し ま し た 理由 を要 約 し て申 上 げ ます 。 元来 、

規 定 と を分 離 し て規 定 す る こと

○ 議 長 (秋 山 刑事 局 長 ) 先 づ 第 一だ け に願 ひま す 。

の要 求 に基 く統 制 経 済 等 の必要 に応 じ て段 々と 制限 さ れ て行 く も の

私 有 財産 制 度 の基 本 観 念 であ る所 有 権 の内 容 と か行 使 と かは 、時 勢

次 は第 二 の点 であ り ます 。

に付 き ま し ては次 の四 点 に付 て拡 張 乃 至 規 定 の整備 を す る必 要 があ

○ 下 山 ︹四 郎︺ 判 事 (東 京 刑 地) 現 行 法 第 一条 、第 二 条 、 第 三 条

い範 囲 では私 有 財 産 的 観 念 も 必ず や批 判 の対象 と もな る運命 に在 る

であ り ま し て、 斯 う し た 関係 に於 て、 私 有 財 産 制度 の根 幹 に触 れ な

一、国 体 変革 に関 す る 処 罰規 定 と私 有 財 産 制 度否 認 に関 す る処 罰

ら う かと思 は れ る の であ り ます 。 其 の 四 つの点 と申 し ます のは

規 定 と を分 離 し て規 定 す る こと の必要 があ ると いふ こと が第 一点 、

文 に竝 べ て規 定 し て置 き ま す こと は 、 両 者 が所 謂 類 概 念 であ る やう

のあ る私 有 財 産 制 度 の問 題 を、 絶 対性 を 有す る国 体 の問 題 と同 一条

に 見 え て、 国 体 の尊 厳 を 明徴 にす る所 以 では あ りま せず 、 又国 民 の

も のと 云 は ねば な ら な い ので あ り ます 。 斯様 な謂 はば 量 的 に相 当 性

一、 国 体 変 革 を 目 的 と す る結 社 に関 す る現 行法 第 一条 第 一項 に 付

国 体 に関 す る道徳 観念 の純 粋 性 を 保持 す る所 以 では な いと考 へられ

次 には

遂行 行 為 者 を 処 罰 す る別 規 定 を 設 く る こと

該 結 社 を支 援 す る結 社 の組 織 者 、役 員 、指 導 者 、 加 入 者 及 目的

革 し 又は 国 体 の変 革 を惹 起 せし め む とす る危 険 行 為 は、 そ れ が如 何

る のであ りま す 。 又 立法 技 術 の点 か ら見 まし ても 、 苟 く も国 体 を 変

一、 国 体 変 革 を 直接 目的 とせ ざ るも其 の実 現 を窮 極 目 的 と す る結

な る態 様 に於 て現 れ ると 致 し ま し ても、 之 を 漏 す こと な く処 罰 し得

が 必 要 で あ らう と思 は れ ます 。 そ れが 第 二 点、 第 三 点 は

社 の組 織 者 、役 員 、 指 導 者 、 加 入者 及 目的 遂 行 行 為 者 を処 罰 す

る こと に規 定 を整 備 し且 其 の罪質 に応 じ て刑 を 一般 に 重化 す る為 に

は、 国 体 の変 革 に関 す る処 罰 規定 を、 私 有 財 産 制 度 の否 認 に関 す る

る別 規 定 を 設 く る こと の必要 があ らう か と思 は れま す 。 そ れ か ら第 四点 は

あ り ます 。是 が提 案 の要 旨 であ り ます 。

処 罰 規 定 から 分離 し て規 定 す る こと が 必要 であ ると考 へら れる の で

一、 国 体変 革 を目 的 と す る結 社 に関 す る現 行 法第 一条 第 一項 に付

第 二 の項 目 で あ り ます が、

煽 動 に関 す る 現行 法 第 二条 及 第 三条 に付 更 に

一、 国 体 変 革 の目的 を以 てす る其 の目的 事 項 の実 行 協 議 又 は実 行

(イ) 国 体 の変 革 を目 的 と す る宣 伝

遂 行 行為 者 を処 罰 す る別規 定 を設 く る こと 。

該 結 社 を支 援 す る結 社 の組 織 者 、 役 員 、指 導者 、 加 入 者 及 目的

(ロ) 国 体 の変 革 を目 的 と す る啓 蒙 を も 処 罰 す べき も のと す る こと 斯 様 に規 定 を 整備 す る必 要 があ ら う かと 思 は れ る の であ りま す 。

此 の項 目 を提 出 致 し まし た 理 由 の要 点 を申 上 げ ま す 。 茲 に支 援 結 社

る別規 定 を設 く る こと 。

社 の組 織 者 、役 員 、 指 導 者 、 加 入 者 及目 的 遂 行行 為 者 を処 罰 す

外廓 団体 であ り ます 。 尚 此 の外 、 国 体変 革 の実 現 を随 伴 す る結 社 も

的 任 務 とす る結 社 であ り、 第 三 は 之等 結 社 の支 援 を目 的 任 務 と す る

此 の項 目 を提 出 致 し ま し た 理由 を要 約 し て申 上 げ ま す。 国体 の変 革

と いふ のは 、国 体変 革 の実 現 を直 接 目的 と す る結 社 即 ち前 衛 組 織 の

力 が補給 さ れ る こと に大 き な原 因 があ る の であ り ます 。 従 つ て前 衛

あ る のであ りま す が、 そ れ が直接 目的 に随 伴 す る も の であ れ ば 、第

外 廓 団 体 の こと であ り ます 。 共 産 主義 者 の此 の外 廓 団 体 に拠 る活 動

組 織 を根 絶 す る為 には 、単 に前 衛 組 織 のみ を 対象 とす る の では 不十

一の結 社 に属 し、 又 そ れ が窮 極 目 標 に随 伴 す るも ので あ れば 第 二 の

に関 す る結 社 は、其 の目 的 任務 の態 様 か ら見 ま し て、 三 つに分 類 さ

分 であ り ま し て、 必ず や其 の外 廓 団 体 を も 対象 と し な く ては な ら な

結 社 に属 す るも のと考 へら れ る のであ り ます 。 茲 に提 案 致 し ま し た

れ る と思 ひます 。 第 一は 国 体変 革 の実 現 を直 接 の目 的 任 務 と す る結

い の であ り ます 。 元 来 此 の種 の外 廓 団 体 の活動 は、 前 衛 組 織 の目的

結 社 は 此 の第 二 に属 す る結 社 で あり ま す 。此 の結 社 は国 体 変 革 の実

は、 現 行 法 実施 以後 に現 れた 新 し い運動 形 態 で あり ま し て、 前 衛 組

遂 行 行 為 に該 当 す るも の であ り まし て、 現 行 法 第 一条 第 一項 中 の

現 を 直接 目的 と し な い こと に於 て前 衛 組織 で は あり ま せず 、 又前 衛

織 に対す る貯 水 池 た る任 務 を果 す も の であ り ます 。 顧 みま す れば 、

﹁結 社 ノ目 的遂 行 ノ為 ニス ル行為 ヲ為 シタ ル者 ﹂ と し て、 或 程 度 迄

組 織 を 寧 ろ其 の時 期 に非 ず と し て排 撃 す る や う なも のも あ る こと に

せ ざ るも 、其 の実 現 を 窮 極 目 標 と し て当 面 局 限 さ れた 目 的 を其 の目

之 を処 罰 し 得 る のであ りま す が、 其 の刑 は 、 此 の種 の外廓 団 体 の組

於 て、 現 存 の前 衛 組織 の外廓 団 体 でな い の であ りま す 。此 の結 社 は

社 即 ち前 衛 組織 であ り 、 第 二 は 国 体変 革 の実 現 を直 接 の目的 任 務 と

織者 、 役 員 、指 導 者 に対 す る処 罰 と し ては 、其 の危 険 行為 の性 質 に

其 の行 動 目的 を合 法 の限度 に局 限 はし て居 り ます が 、其 の内 部 にあ

日 本 共産 党 に対 す る数 度 の致 命 的 の検 挙 が あ り まし た に拘 らず 、 又

照 し て軽 き に失 す る も のがあ り、 又同 条 項 の規 定 自 体 が外 廓 団 体 を

し ても党 の再 建 又 は更 生 が実 現 され ま す のは、 此 の外 廓 団 体 か ら勢

直 接 の対 象 と し て規 定 さ れた も の でな い為 、 外 廓 団 体 の加 入行 為 及

る先 進 分 子 の精 神 的影 響 を 通 じ て前 衛 組 織 の出 現 す べ き情 勢 を醸 し

の実 現 と いふ 目標 に向 つ て居 る ので あ りま す。 換 言 し ま す れ ば、 此

出 す こと に於 て、 其 の結 社 に拠 る運 動 の方 向 は窮 極 に於 て国 体変 革

の結 社 は 国 体変 革 の実 現 を直 接 目的 と はし て居 な い が、其 の実践 思

な り ま し て、思 想 犯罪 を防 遏 す る上 に遺 憾 の点 があ る の であ り ます 。 斯 様 な実 情 か ら 此 の種 の外 廓 団 体 に関 す る処 罰 規 定 を 別 に定 め て、

支 持 行 為 を 処 罰 す る こと が、 或場 合 に は除 外 され ると いふ結 果 にも

其 の処 罰 の趣 旨 と 刑罰 を明 か にす る 必要 があ ると考 へら れ る の であ

謂 戦 術 上 の結 社 であ り ま す 。 共 産主 義 者 の此 の戦 術 上 の結 社 に拠 る

想 に於 て国 体変 革 の実 現 と いふ こと を窮 極 目標 とし て居 る 当 面 の所

次 に第 三 の点 であ り ま す が、

活 動 は、 現 行法 実 施 以 後 に現 れ た新 し い運 動 形態 であ り、 合 法 の形

り ます 。 是 が提 案 の理由 で あ りま す 。

一、 国 体 変 革 を 直接 目的 と せざ る も其 の実 現 を 窮 極 目標 と す る結

一、国 体 変 革 の目 的 を 以 てす る其 の目 的事 項 の実 行 協議 又 は実 行

次 に第 四、 即 ち

かと思 は れ る の であ り ま す。 以 上 が提 案 の要旨 であ りま す。

から、 大 衆 は知 らず 識 らず の間 に左 翼 化 さ れ ると いふ こと にな る の

式 に於 て合 法 の場 面 を利 用 す る こと に其 の特 色 が あ る の であ り ま す

であ り ま す。 従 つて此 の結 社 に拠 る活 動 は危 険性 に於 て、 前 衛 組 織

(イ) 国 体 の変 革 を 目 的 と す る宣 伝

(ロ) 国 体 の変 革 を 目的 と す る啓 蒙

煽 動 に関 す る現 行 法 第 二条 及第 三条 に付 更 に

を も処 罰 す べき も のと す る こと。

つて現 行法 を 見 ます る に、其 の第 一条 第 一項 中 に は ﹁国 体 ヲ変 革 ス ル コト ヲ目的 ト シテ結 社 ヲ組織 シタ ル者 云 々﹂ と あ り ます 。 是 は 国

に拠 る活動 に次 ぐ も の があ ると 言 は ねば な らな い の であ り ます 。 飜

体 変 革 の実 現 を直 接 の目 的 と す る結 社 即 ち 前 衛組 織 に関 す る行 為 を 処 罰 の対 象 と し て規 定 され た も の であ る こと は 当時 の社 会 情 勢 と 立

ひ啓 蒙 と 言 ふ の は何 れも 国 体 の変 革 を目 的 と す るも のに 局限 した も

此 の項 目 を提 出 致 し ま し た 理由 の要 旨 を申 上 げ ます 。 茲 に宣 伝 と 云

第 三 条 の煽 動 と大 差 のな い危 険 行 為 であ り ま す。 次 に啓蒙 であ りま

の であ り ます 。 先 づ 宣 伝 であ り ます が、 宣 伝 は そ れ に依 つて国 体 否

法 の経 緯 に徴 し て明 白 であ り ま す。 そ し て此 の条 文 中 の目 的 と い ふ

す が、 啓蒙 は そ れ に依 つて特 定 の人 又は特 定 の人 々に国 体否 認 の思

字 句 を如 何 に解 釈 す る か、 目標 も 目的 の中 に含 ま る と解 釈 す る こと

字 句 の解 釈如 何 に依 つては 、或 は此 の戦 術 上 の結 社 に関 す る行 為 は

認 の思想 又 は事 項 を 不 定 又 は多 数 の人 々 の頭 に浸 み込 ま せ、 遂 に国

処 罰 外 に置 か れ ると いふ虞 も な い では な い の であ り ま し て、 思 想 犯

想 又は事 項 を植 付 け て左翼 化 を促 す 行 為 であ り、 其 の行為 は煽 動 又

体 観 念 の腐 蝕 に至 ら し め よ う とす る行 為 であ り、 其 の行為 は現 行 法

罪 を防 遏 す る上 に於 て遺 憾 の点 が あ る ので あ りま す 。 又此 の戦 術 上

まし ては、 日本 共 産 党 は 数次 の検 挙 に依 つ て致命 的 な 打撃 を受 け て

は 宣 伝 と 大差 のな い危 険 行為 であ りま す 。 飜 つて最 近 の情 勢 と 致 し

一項 に依 つ て処 罰 し 得 る の であ り ます が、 其 の条文 中 の目 的 と い ふ

の結 社 を 処 罰 の対象 と し ます る時 、国 体変 革 の実 現 を直 接 目的 と す

に於 て、 只今 申 上げ た 戦 術 上 の結 社 に関 す る行為 も 現行 法 第 一条 第

る結 社 に較 べま し て、 其 の罪 質 上刑 の権 衡 も考 慮 す る必要 があ る の

産 主 義 者 の動 向 を見 ま す に、 啓 蒙 問 題 を以 て共産 主 義 者 と し て の当

表 面 に於 て旧 の如 く では な い のであ りま す 。此 の間 に於 け る 一般 共

居 ま す し、 又其 の他 の左 翼的 組 織 は時 局 の重 圧 に依 つて其 の活 動 も

斯 様 な実 情 から、 国 体 変 革 の実 現 を直 接 目的 と せ ざ る も、 其 の実

面 の主 要 任務 と致 し て居 る や う な実 情 であ り ます 。 而 も そ れ等 共 産

で あ り ます 。

の趣旨 と刑 罰 と を明白 にす る必 要 があ る と考 へら れ る の であ り ます 。

な い者 も あ る し、 又 日本 共 産 党 は数 次 の検 挙 に依 って潰 滅 し て最 早

主 義 者 の中 に は、 今 日 の客 観情 勢 に於 て前 衛 組織 に関 心 を有 し て居

現 を窮 極 目標 と す る結 社 に関 す る処 罰規 定 を別 に定 め て、 其 の処 罰

尚 此 の戦 術 上 の結 社 を 支援 す る外 廓 団 体 も考 へられ る の であ り ます

其 の組 織 が な いも のと 信 じ て居 る者 も あ る の であ りま す 。 そ し て啓

が 、其 の外 廓 団 体自 体 に関 す る行 為 を 処 罰 の対象 と す る こと は、 其 の危険 性 な り其 の他 を 考慮 し て、 現 在 に於 ては其 の必 要 が な か らう

の煽動 と か い ふ行 為 の域 に も達 し て居 な い行 為 であ り ま す。 啓 蒙 行

蒙 は 不定 又は 多 数 に対 す る観 念 でな い為 、 不 定 又 は多 数 を観 念 上 の

は其 の要 項自 体 に依 つ て明瞭 と思 ひ ます か ら省 略 さ せ て戴 き ます 。

項 と し て五 乃至 十 に至 る 迄 の項 目 を提 案 し て居 りま す が、其 の理 由

尚 以 上 四項 に附 随 し て茲 に提 案 致 し ま す る意 見書 中 罰 則 規 定 の要

し まし て御 手許 へ出 し てあ り ま す の で、 実 は沈 黙 を守 つ て居 らう と

○ 正木 ︹ 亮 ︺検 事 (広 島 控 検 ) 私 は此 の答申 案 を細 か い 理 由 迄 附

す べき 要 点 であ らう と 思 は れ る の であ ります 。

以上 が現 行法 第 一条 乃 至 第 三条 に亙 りま し て規 定 を整 備 又 は拡 張

要 素 と す る宣 伝 の概念 に入 ら な い の であ り、 又実 行 の協 議 と か実 行

為 は固 よ り国 体 変 革 に関 す る結 社 の目的 遂 行 行 為 にも な る行 為 では あ りま す が、 例 へば日 本 共産 党 の存 在 を信 じ て居 な い者 に付 て は、

行 為 と は 直 ち に断 じ得 な い の であ り、 勢 ひ コミ ンテ ルン の目 的遂 行

其 の者 の為 した 啓 蒙 行 為 を 以 て 日本 共 産党 の目的 遂 行 の為 に為 し た

行 為 と し て斯 様 な場 合 の啓蒙 行為 を も 処断 し て居 る やう な 実 情 で あ

であ る ことは認 め る の であ りま す け れ ども、 幾 ら か私 達 の考 と違 つ

て居 る所 もあ り ま す。 此 の問 題 が治安 維 持 法 改 正 の重 点 であ る と思

思 つた の であ り ます が、 只 今 のお 二人 の御話 も大 体 私 達 と 同 じ意 見

ひま す ので、 敢 へて私 の方 で協 議 致 し まし た 二 三 の点 を簡 単 に説 明

り ます 。 併 し な が ら斯 様 な場 合 の啓 蒙 行為 を コミ ンテ ル ン の目的 遂

が、 そ れは 兎 も角 と致 しま し ても、 事 案 に依 つ ては、 斯 様 な場 合 の

行 行 為 と し て処罰 す る こと には尚 批 判 の余 地 も あ る のであ り ま せう

啓 蒙行 為 を コミ ン テ ル ンの目 的 遂行 行 為 と し ても 処 罰 し得 な い場 合

を 加 へて見 よ う と 思 ひ ま す。

実 は 諮問 事 項 二 つに対 し ま し て両 方 関聯 し て居 り ま し て広 島 控 訴

が あ る のであ り ま す。 尚 宣 伝 行為 も固 より 国 体 変 革 に関 す る結 社 の 目 的 遂行 行 為 にも な る行 為 であ り ます が、 宣 伝 行 為 と目 的 遂 行 行為

の中 第 一問 の中 の四 と 六、 そ れ か ら終 ひの方 の司法 警 察 官 の問 題 に

な りま し て十 と 十 一、 そ れ か ら第 二問 の 一か ら四、 丁度 八 つ此 の問

院 検 事 局 か ら合 せ て十 九 改 正意 見 を 出 し て居 る ので あ りま す が、其

す べ き 明文 を 掲 げ て居 な い のは 法 の不備 であ り、 殊 に之 等 の行 為 を

よ つと 御 披露 致 し ま し て、 主 な る所 だ け説 明 し て見 よ う と思 ひま す 。

題 に触 れ て提 案 し て居 る の でご ざ い ます が、 其 の中 の要綱 だ けを ち

こと が言 へる の であ り ます 。 現 行法 が宣 伝 行 為 及 び啓蒙 行 為 を処 罰

コミ ンテ ル ンの目 的 遂 行行 為 と し て処 罰 の対 象 と す るや う な こと は

と の関 係 に付 ても、 啓蒙 行 為 と 目的 遂 行 行 為 と の以 上 の関 係 と 同 じ

全 く 現 行法 の予 想 し な か つた こと と思 は れ る の であ りま す 。斯 様 な

第 一は 、治 安 維 持 法 の刑 事 手 続 に関 す る規 定 を 設 け 右 の諸 点を 明 か に規 定 す る こと。

実 情 から 現行 法 第 二 条 及 び第 三条 を 整 理 し て、 実 行 協 議 及 び実 行 煽 動 の外 、 更 に宣 伝 行 為 を処 罰 す る趣 旨 を 明確 にす ると 共 に、啓 蒙 行

斯 う いふ の であ り ます 。 其 の

であ り ます 。

(一) は 、急 速 を要 す る場 合 に於 け る地 方裁 判 所 検 事 の勾 引権

為 が宣 伝 行為 と行 為 の概念 を異 にす る こと に於 て、 啓 蒙 行 為 を処 罰 す る趣 旨 を も 明確 にす る必 要 が あ ると 考 へら れ る のであ りま す。 是 が提 案 の理 由 であ り ま す。

(二) は、 急 速 を 要 す る場 合 に於 け る地方 裁 判 所 検事 の勾留 権

(三 ) は、 勾 留 被 疑 者 に対 す る検 事 の訊 問 権

であ り ま す。 そ れ から

(四 ) は、 勾 留 期 間 を 二月 と し て、 特 に 必要 あ る場 合 には更 新 す

であ り ま す。

に対 し ま し て、 法律 の解 釈 上 に拘つ て事 が論 ぜ られ ま す る な らば、

りま す が、 そ れ が矢張 り今 日 の裁 判 官 に依 り まし ても非 常 に法律 の

今 日 の法 律 解 釈 に付 ては非 合 法 な 点 が 随 分 あ るだ ら う と思 ふ の であ

て戴 く所 に ド イ ツ刑法 の第 二条 の如 く 罪 刑法 定 主 義 を棄 てな い でも

解 釈 を拡 張 せ ら れま し て、 今 日 の非 常 時 局 に対 応 す るだ け役 立 た し

ます 。 そ こでド イ ツ刑法 第 二条 の やう な 規定 を拵 へな いで も、 日 本

日本 を 護 り得 る法 律 解 釈 方法 が あ る であ ら う と私 は 考 へる の であ り

の裁 判 官 は拡 張 し て物 事 を解 釈 し て呉 れ ると いふ所 に、私 は個 人 法

る権 利 即 ち更 新 権 を認 め よ と いふ こと であ りま し て、 更 に先 程 来 御 話 にな りま し た 調書︱

検

事 の聴 取書 の証 拠 力 に付 き ま し ては 勿 論 之 は与 へな けれ ば な ら ぬ と

理 な り に拘つ て参 りま す と、 一人 の利 益 は 保 護 す る こと は出 来 ます

る と思 ふ の であ り ます 。其 の国 民 性 を 棄 てま し て、 法律 解 釈 な り文

益 より も 国 家法 益 と い ふも のを非 常 に大 事 にす ると いふ国 民性 があ

斯 う いふ提 案 を し て居 る ので あ りま す 。 そ れ等 に関 し ま し ては、 大

のであ り ま す。 であ り ま す る か ら、 若 し先 程来 の御 話 のや う に検 事

が、 国 家 の利益 を保 護 す る こと が出 来 なく な る んぢ やな いか と思 ふ

(五 ) は、 検 事 に物 的強 制 権 をも 与 へる 規定 を設 け て戴 き た い

い ふ こと にな る訳 であ り ます 。 そ れ から

体 前 の御 説 明 に あ りま し た通 り に、 裁 判 所側 でも 皆 さん 御 同意 の こ

らう と思 ふ の であ りま す 。成 程 見方 に依 りま し て は行 政 検 束 と いふ

な いと な り ます と いふ と、 事 件 の取 調 は絶 対 に私 は進 行 し な い であ

ま す時 は実 務 の運 行 は出 来 ま せ ぬ の であ りま す 。 そ こで裁 判所 側 の

が、 そ れは 法律 上 で は正 し く参 り ます が、 実 際 の実 務 の経験 に徴 し

と いふ御 意 見 が あ り ます れば、 是 は 万 已む を得 ぬ こと では あ り ます

す所 の司 法 警察 官 の行 政 検 束 は非 合 法 だ から 絶 対 に許 し ては いか ぬ

検 事 の手足 であ りま

も のは 非 合法 行為 であ るや う に も見 え る の であ り ます が、 理 窟 を附

御 要求 に即 応 す る為 に私 の方 か ら 二 つ の提 案 を し て居 る の であ り ま

に総 て の権 利 を認 め るな らば 、 司 法 警 察 官︱

と であ ら う と思 ひま す から敢 へて説 明 は 致 し ま せ ぬ。

け るな ら ば 、是 は合 法 行 為 の反 覆 連 続 と見 る こと が出 来 る の であ り

処 が そ れ だ け を認 め る こと に依 りま し て、 今 日 の行 政 検 束 を許 さ

ま し て、 若 し之 に理 窟 を 附 け る こと が出 来 得 ま せ ぬ な らば 、 今 日 や

す 。其 の 一つは

物 的 強 制 権 を 認 め ざ る 以上 は 、 行 政検 束 は絶 対 に保 存 し て戴 かな け

こと が 一であ りま す。 併 し以 上 の検 事 及司 法 警 察官 に関 す る人的 及

は適 宜 其 の権 限 を司 法警 察 官 に委 任 し得 る規定 を設 け ら れ た い。

一、 物 的 及 人 的強 制 権 に関 し 検事 に於 て特 に必要 を認 め た る と き

つて居 りま す る所 の燈 台 社事 件 に致 し まし ても天 理本 道 事 件 に致 し ま し ても 、 我 々は皆 非 合 法 行為 を やつ て居 ると いふ こと に な る の で

国 家 の緊 急 必要 な行 為 、 或 は合 法 行 為 の反覆 連 続 行 為 と いふ こと が

あ りま す け れ ど も、 是 は 皆 さ ん が御 認 め になつ て下 さ る所 の、或 は

認 め ら れ て宜 い のであ ら う と思 ふ のであ り ま す。 私 はさ う いふ問 題

き に従っ て戴 き た いと思 ふ のであ り ま す。 ど なた が考 へて見 て も、

に掛 け て︱

其 の為 に秤 が あ る の であ り ま す か ら其 の秤 に掛 け て重

の犯罪 、 被 疑 者 の利 益 を護 る か国 家 の 利益 を護 る かと いふ こと を秤

此 の場 合 裁 判 所 側 に於 か れ まし ても 検事 の方 に於 き ま し て も、 個 人

のが、 私 達 の国 家 を防 衛 す る上 に於 て の衷 心 の叫 び であ り ます の で、

め に な る か、 然 らず んば 行 政 検束 を今 迄 通 り許 し て貰 ひ た いと い ふ

れ ば今 日 の捜 査 事 件 を扱 ふ ことは絶 対 に出 来 な い。 そ こで前 を 御 認

と いふ も のを御 認 め にな り ま し て、 それ を十 分 に運 用 し て戴 き た い、

司 法 警 察官 制 度 を御 認 め に な る 以前 に、 ど う か此 の思想 警 察 官 制 度

らう と思 ひ ます から 、 今 迄 極力 主 張 され て居 り まし た所 の全 般 的 に

法 警 察官 に強 制 権 を 委 任 致 し まし ても 恐 るべ き結 果 は起 ら な い であ

警 察 官 制度 を御 設 け下 さ いま し た な らば、 前 私 が要 求 致 し まし た 司

し 、其 の検 事 指 導 の下 に其 の手 足 と なつ て直 接 にや り ます 所 の司 法

律 を 破壊 す る やう な こと のな いこと は既 に御 承 知 の通 り で あり ま す

ま した や う に、 単 に強 制 権 を 与 へる こと だ け に依つ て絶 対 に行 政 検

束 を 止 め て貰 ひ た いと い ふ御 意 見 は 、今 日 の時勢 と致 し ま し ては ど

斯 様 に考 へる のであ りま し て、 遺 憾 な がら 裁判 所 側 の御説 明 に な り

う も捜 査 が出 来 に く いんぢ やな いか と い ふ こと だ け申 上 げ ま し て、

個 人 の法益 よ りも 国 家 の法 益 が重 いと いふ こと は何 人 も 認 め る の で

と いふ こと は、 法 律 解 釈 を拡 め る怖 し さ よ り も宜 い のぢ や な いか と

察 の事 務 を完 全 に運 用 す る こと が出 来 ると いふ方 法 を御 認 め に な る

私 共 のそ れ に対 す る意 見 の説 明 と 致 し た い のであ り ます 。

あ り ま す か ら、 国 に逆つ て来 る所 の思想 犯 人 に関 し ま す る検 察 、 警

い ふや う に考 へまし て、特 に今 の二 つを 御 考 慮 願 ひた いと いふ の で

す。 是 は特 に本省 に御 願 ひ致 し た いの であ りま す が、 第 一、 二問 の

そ れ から 実際 運 用 と致 し ま し て も う 一つ御願 ひし た いの であ り ま

禁制 度 ヲ設 ク ルノ要否 ﹂此 の点 に付 て御意 見 を伺 ひま す。

の ﹁刑 ノ執 行 ヲ終 了 シタ ル者 ニシ テ仍再 犯 ノ虞 ア ル者 ニ対 シ予 防 拘

○ 議 長 (秋 山 刑 事 局 長) そ れ で は諮 問事 項 第 一の ﹁例ヘ バ﹂ の3

十 と 十 一を出 し て居 る の であ り ます 。

問 題 と し て、 是 は後 にも 申 上 げ る こと に致 しま す が、 関 聯 し て居 り

控 訴 院検 事 局 に於 て慎重 協 議 を致 し ま し た こと と 、 そ れ か ら併 せ て

○ 正木 検 事 (広 島 控 検 ) 此 の第 一の三 の問 題 に付 き ま し て は 広 島

思 想 検事 直 属 の司 法 警 察 官 制度 を設 け て其 の組 織 を秘 密 機 関 と し

ます か ら此 の際 説 明 さ せ て戴 き た い ので あ りま す 。

て戴 き た い

利 の予 防拘 禁 制 度 を私 が 実 地 見 て参 りま し た こと もあ りま す の で、

りま す し、 そ れ から 予 て 予防 拘 禁 制 度 の本 当 の発 祥 であ り ます 英吉

色 々 の点 か ら僣 越 であ り ま す が、 少 しく 時 間 を戴 きま し て予防 拘 禁

僣 越 であ り ます が、 私 予 防拘 禁 制 度 に付 て少 し 研 究 し て居 る所 も あ

へます ると 、 そ れ は純 粋 な る行 政官 の下 に在 りま す る司 法 警 察 官 が

制 度 に付 て意 見 を述べ て見 た いと 思 ひ ます 。

と い ふ の であ り ます 。 是 は 今 日 の行 政 検 束 に関 す る方 法 の淵 源 を 考

行政 検 束 を蒸 返 す ので あ りま す か ら世 の中 の信 任 と いふ も の が比 較

広 島 控 訴 院検 事 局 か ら提 出 致 し ま し た此 の予防 拘 禁 を為 す や否 や

的 な いだ らう と 思 ふ 。是 は検 事直属 の司 法 警 察 官 制度 を御 認 め にな り ま し たな ら ば、 検 事 が積 極 的 に無 暗 に人 権 を 蹂 躙 致 し まし た り法

を し た ら ど う かと 云 ふ や う な御 意 見 も 見 え て居 る やう であ り ま す。

云 ふ答 申 を 致 し た いと思 ふ の であ り ま す。 前 の議 会 に提 出 せ ら れ ま

年 ノ範 囲 内 ニ於 テ相 対 不定 期ニ 言 渡 サ ルヽ規 定 ヲ設 ク ル コト ﹂ 斯 う

る 必要 があ る と考 へまし た の であ り ます 。 ﹁予 防拘 禁 ハ二 年 乃 至 十

云 ふ問 題 に対 しま し て、 独 逸 にあ りま し た 所 の国 際 刑事 学 協 会 が決

そ れ に関 し ま し て前 の議 会 に治 安 維 持 法 改 正法 律 案 が提 出 さ れ ま し

し た所 の予 防 拘禁 は定 期 予 防 拘 禁 であ つた の であ り ます 。 小 林 代 議

に関 しま す る意 見 は全 部 で 四 つにな つ て居 りま す 。要 す る に予 防 拘

た 時 に、 政 府案 と致 し ま し て は 予防 拘 禁 制 度 を採 つて居 り ま す 。 そ

士 は定 期 予 防 拘 禁 では、 例 へば 一年或 は 二年 の予 防拘 禁 と云 ふ こと

し て通 説 であ る と認 めら れま す所 の不定 期 予 防 拘禁 と 云 ふも のを採

れ に対 し て議会 に於 き ま し て は 小林 代 議 士 が 予防 拘 禁 制 度 では 物 足

では、 そ れ で矯 ら な い場 合 に更 に如 何 な る処 置 をす る か と云 ふ質 問

議 致 し ま し て、 一九 三 一年 の エツ セ ンの会 議 に於 て論 議 さ れ、 さう

りな い から 不定 期刑 の方 にし た ら どう かと 云 ふ質 問 が あ りま し て、

が あ つた の であ り ま す。 そ こ でそ れ に応 へる為 には どう し ても 予防

は 先刻 来 か ら の お話 も あ り まし て、 此 の制 度 に対 し ま し て不定 期刑

政 府 と 色 々応酬 致 し まし て、結 局 そ れ が 一つの原 因 に な つてあ の治

禁 制 度 は採 用 す べ し と 云 ふ意 見 に な つ て居 る の でご ざ いま す が、 実

安 維 持 法 改 正 法律 案 と 云 ふも のが流 産 に な つた こと を知 つて居 る の

予 防 拘禁 を言 つて居 る の であ り ます 。 私 は そ れ を借 り ま し て ﹁予 防

そ れ に対 し まし て 一九 三 一年 の I ・K ・V の会 議 に於 ては不 定 期 の

拘 禁 の不 定 期 と 云 ふも のを考 へな け れ ば な ら な い の であ りま す が、

拘 禁 ハ二年 乃至 十 年 ノ範 囲内 ニ於 テ相 対 不定 期 ニ言渡 サ ルヽ規 定 ヲ

そ こ で 一体 予 防拘 禁 制 度 を 採 るや否 や、 或 は 不定 期刑 を採 用 す べ

であ り ます 。

き や否 や と 云 ふ問 題 は 治安 維 持 法 所 謂思 想 犯 に対 す る 問題 の み でな

設 ク ル コト﹂ と 云 ふ答 申 を 致 し た いと 思 ふ ので あ りま す。

そ れか ら第 三 には ﹁予 防拘 禁 所 ハ特 設 ト シ、 已 ム ヲ得 ザ ル場 合 ニ

く し て、 累 犯者 殊 に常 習 犯 に対 す る問 題 と致 しま し て欧羅 巴 に於 て

於 テ之 ヲ監 獄 ノ分 界 場 所 ニ拘 禁 ス ル コト 卜致 シタ シ﹂斯 う 云 ふ結 論

非 常 に論 議 を尽 さ れた 問題 で あ る の であ り ます 。 そ こ で こち ら に参 り ま す前 に欧羅 巴或 は 亜 米利 加 に於 て論 議 を 尽 さ れた 研 究 の結 果 を

を出 し て居 り ます 。 是 は 前 の議 会 に於 ても 論 議 せ ら れま し た 通 り、

ま す か ら、 予防 拘 禁 は監 獄 内 の分 界場 所 に拘 禁 す る こと にな つて居

綜 合 致 し ま し て、 最 も妥 当 と思 ふ所 を見 究 め ま し て本 提 案 を 致 し ま

る のであ りま す が、 予 防 拘 禁 の性 質 と 致 し まし ては、 原 則 と し て特

前 の議 会 の治安 維 持 法 改 正 法律 案 に於 き まし ては当 座 の規 定 であ り

﹁治 安 維 持 法 違 反 ノ罪 ヲ犯 シ タ ル者 釈 放 セ ラ ルベ キ場 合 ニ於 テ釈

設 と す る のが本則 であ り ます の で此 の答 申 を提 出 し た いと 思 つて居

し た 訳 であ り ま し て、 答 申案 に挙 げ てあ り ま す の を概 略 読 ん で見 ま

放 後 更ニ 同 一ノ罪 ヲ犯 ス虞 ア ル場 合 ニ於 テ ハ裁 判所 ハ検 事 ノ請 求ニ

す と斯 う 云 ふ結 論 が出 て居 る の であ り ます 。

依 リ本 人 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 ス ル コト ヲ得 ル規 定 ヲ設 ケ ラ ルヽ コト﹂ 是

りま す。

そ れ か ら第 四 には、 予 防 拘 禁 に関 し ま し て は定 期 予防 拘 禁 であ り

が 一つで あ りま す 。 然 ら ば 予防 拘 禁 に対 し て は どう 云 ふ 予防 拘 禁 を採 つた ら宜 いかと

と思 ひま す 。是 か ら暫 く其 の説 明 を お許 し 願 ひた いと思 ふ の であ り

員 会 ヲ設 置 ス ル規 定 ヲ設 ケ ラ ルヽ コト﹂ 此 の四 つ の答 申 を 致 し た い

あ り ます の で、 其 の点 を緩 和 す る為 に ﹁予 防 拘 禁 ニ関 ス ル仮 釈 放委

時 迄 も拘 禁 を 継 続 す る と 云 ふと ころ の人 権 尊 重 の思 想 に反 す る所 が

い のです が、 法 律 上 は清 白 人 であ る罪 跡 のな い人 間 に対 し ま し て何

委 し て置 くと 、 刑 事訴 訟 法 に依 り ます る清 白 人 、清 白 で も何 でも な

少 く と も相 対 不 定 期 の予 防 拘 禁 にな れ ば、 予 防 拘 禁所 の職 員 だ け に

ま す る な らば 左 程 でも な い の であ り ま す る け れど も、 是 が不 定 期 、

場 合 に外 国 では驚 いた のであ り ま す。 一体 確信 の犯罪 に対 す る保護

る と思 ひま す。 そ れ です か ら 日本 に思 想 犯 保 護 観察 法 が出 来 まし た

り ます 。 本 当 に誠 心誠 意 を以 て当 り ま す れば 、是 は改 善 は 可 能 であ

て、 日本 人 た る琴 線 に触 れ る こと が な い から 矯 ら な いだけ の話 であ

の出 来 な い のは是 は法 律 が悪 い ので な く、 又 取 扱 が悪 いの でな く し

な く し て本 当 の思 想 犯人 であ ると 思 ふ のであ り ます 。 之 を 矯 す こと

か ら 日本 の思 想 犯 人 は概 し て申 し ます れば 確 信 犯人 と 云 ふも の では

本 人 に還 つて来 る場 合 が総 て であ る と思 ふ の であ り ます 。 そ れ です

思 想 犯保 護 観 察 法 に付 て独 逸 の雑 誌 に之 を紹 介 せ ら れ まし た時 に、

に非 常 に驚 く の であ り ます し 、 曾 て現 大 審 院 長 の泉 二博 士 が 日本 の

観 察 制 度 と 云 ふ も のを拵 へると 云 ふ こと が可 能 であ る かと 云 ふ こと

予防 拘 禁 を す る 必 要 が あ る かど う かと 云 ふ問 題 に付 て お答 を し た い

独 逸 の雑 誌 では 逸 早 く之 を紹 介 致 し ま し て、 日本 の確 信 犯 人 に対 す

先 づ第 一に、 治 安維 持 法 違 反 の罪 を犯 し た 者 に対 し まし て、 一体

ます 。

と思 ひま す 。是 は 日本 の思 想 犯 人と 云 ふも のと 外国 の思 想 犯 人 と 云

此 のブ ルード が 一度 濁 つた と し ても 一旦事 があ る場 合 に は之 を清 浄

る保 護観 察 制 度 を 作 つた こと に付 て驚 異 の眼 を〓 つた こと が あ りま

持 つて犯 罪 を犯 す も の であ る か ら是 は絶 対 に改 善 は不 能 であ る。 之

にす る こと の出 来 るブ ル ード で あ ると 云 ふ点 か ら日 本 の思 想 犯 罪 人

ふ も の の間 に は相 当 の開 き が あ ると 思 ひま す 。 前 に も思 想 犯 の概 念

を前 提 と し て思 想 犯 の概 念 を 立 て ら れ て居 る の であ り ます 。 之 に対

の特 殊性 を述 べ て居 ら れ ま し て、 当時 思 想犯 保 護 観 察 法 に付 て非 常

す け れ ど も、其 の時 に泉 二博 士 は言 は れ た の であ り ま す。 日本 人 は

し て私 は 少 く と も 日本 に於 け る思 想 犯 と 云 ふも のと外 国 に於 け る思

に驚 異 の眼 を〓 り ま し た所 の外 国 人 を 啓蒙 さ れた こと が あ る の であ

に付 き ま し て相 当論 議 が尽 さ れ て居 り ます が、 ま だ皆 様 の御 記 憶 の

想 犯 と は非 常 に違 ふと 思 ふ の であ りま す 。 即 ち 日本 の思 想 犯 人 と 云

りま す。 其 の意 味 から申 し ます と、 我 々は予 防 拘 禁 或 は 不定 期 刑 と

中 にあ る と思 ふ が、 曾 て滝 川幸 辰 氏 が、 思 想 犯 と云 ふ も のは 外 国 に

ふも のは 少 く と も数 千 年 来 の皇 国 の精 神 と 云 ふも のが血 液 の中 に流

云 ふも のを殊 更 に思想 犯 人 に考 へる余 地 は な いと 考 へる の であり ま

る外 国 の思 想 犯 人 が来 ても之 を どう す る こと の出来 な い血 で あ る。

れ て居 る の であ り ます 。 そ こ で如 何 に 理論 の上 には強 硬 に見 え ま し

す け れ ど も、 今 日 の刑 罰制 度 を見 ると、 日本 の刑 罰 制度 は定 期 刑 の

三 千 年来 の血 液 が伝 は つ て居 る。 此 のブ ルード と 云 ふ も のは如 何 な

ても 、 又 実 践 の上 に闘 ひま し ても、 一旦 事 があ り ま し て、 日 本 が滅

上 に立 つて居 る の であ り ます 。 例 へば或 思 想 犯 罪 人 が出 ま し て、 そ

於 け る所 謂 確信 犯 であ る。確 信 犯と 云 ふ も のは 鉄 の如 き固 き 意 思 を

亡 す る と 云 ふ や う な場 合 に於 き まし ては 、其 の血 は湧 い て矢 張 り 日

て東 京 地 方裁 判 所 の公 判 に於 て太 田検 事 が 之 に対 し て懲 役 五年 を求

ま す が、 彼 の瀬 口貢 であ る鹿 地 亘 であ りま す。 あ の人 間 に対 し まし

と 云 ふ こと が必 要 であ る と云 ふ こと を痛 感 し て居 る の であ りま す 。

いか も知 れ な いが、 矯 つた かも 知 れ な い。 そ こ に私 は刑 に不 定 期性

倍 の刑 を言 渡 さ れ て居 つた なら ば 或 は矯 つた かも知 れ な い。 矯 ら な

関 す る前 科 を持 つ て居 る の であ り ま す。 此 の点 か ら若 し其 の時 に二

口約 し な が ら出 て行 く所 の思 想 犯 人 が 間 々あ る の であ り ます 。 現 に

刑 し た のに 対し まし て 、 裁判 長 は懲 役 二年 に 五年 間 の執 行 猶 予 を や

是 は 日本 共 産 主 義 者団 を御 覧 にな る と相 当 な前 科者 が 入 つて居 る。

れ に対 し て裁 判官 が刑 の量 定 に対 す る自由 裁 量 の下 に刑 を言 渡 し ま

つた の であ り ます 。 若 し 裁判 官 の言 渡 し ま す判 決 と 云 ふも のが本 当

現 に広 島 地 方 裁 判 所 で検 挙 し て居 り ま す る所 の朝鮮 の共興 組 合 の問

る と 、 あ の中 の春 日庄 次 郎 と か安 賀 君 子 を見 ると 、是 は共 産 主 義 に

に妥 当 であ り ます るな ら ば、 此 の瀬 口貢 と 云 ふ者 は改 悛 し て居 つた

題 に 致 し まし ても、 或 は目 下 査 察 し つ ゝあ りま す る所 の文 化 運 動 に

大 阪方 面 に於 て捉 へら れ まし た る所 の日本 共 産 主義 者 団 を御 覧 にな

か も知 れ ぬと思 ふ の であ りま す 。処 が其 の瀬 口貢 は 五年 間 の執 行猶

し ても、 其 の中 に刑 の執 行 終 了 後 に於 て働 き かけ て居 る人 間 が相 当

し ても、 其 の言 渡 し 必ず し も妥 当 と 云 ふ こと は言 へな いと思 ふ の で

予 期 間 に支 那 に逃 げ て行 つ て今 日御 承 知 の通 り に極 め て大 き な国 事

に あ る の であ り ま す。 斯 様 な 者 を 単 に定 期 刑 が満 了 し た故 を以 て単

あ り ま す。 一例 を 取 つ て申 し ます ると 、 私 が能 く申 上 げ る の であ り

あ の瀬 口貢 と云 ふ者 は 何 に依 つ て斯 様 な国 事 犯罪 を続 け て我 々 の敵

純 な る保 護 観 察 に委 し て置 き ま す る と 云 ふ こと は 我 々 の日常 生 活 に

犯 をや つて居 る のであ り ます 。 対 日抗 戦 の真 先 に立 つて居 り ま す る

に廻 つて居 る か と申 し ます と 云 ふ と、 あ の場 合 に若 し裁 判 官 が懲役

であ り ます 。 思 想 犯保 護 観 察 と 云 ふ も のは非 常 に功 績 を挙 げ て居 り

於 て妥当 であ るか どう か と云 ふ こと を考 へなけ れば な ら ぬと 思 ふ の

ま す 。挙 げ て居 り ます け れど も 、 是 は 人間 のや る制 度 であ るか ら、

五年 を 言 渡 し て居 つた な らば あ の鹿 地亘 な る国事 犯 人 は出 な か つた

十 の中 に 一つは 間違 つて どう にも 出来 な い人 間 が間 々あ る こと は、

で あ らう と 思 ふ のであ り ます 。 そ こに裁 判 官 の自由 刑 の裁 量 或 は 人

ふ のであ りま す。 其 の意 味 に於 き ま し て私 は 定 期刑 は危 な い。定 期

云 ふ と、 矢 張 り治安 維 持 法 違 反 の事件 に付 き ま し ては、 単 純 な る定

間 の裁 判 と 云 ふ も のに非 常 な 不 安 を 我 々は 感 じ な け れば な ら ぬと思

期 刑 のみ を以 て是 で満 足 しよ う と 云 ふ ことは 大 変 な間 違 であ る。若

私 が広 島 の保 護 観察 審 査 会 の会 長 を し て居 りま す 私 の経 験 に依 つ て

ゝり まし て、 ど う し て も定 期 刑 から絶 対不 定 期 刑 に参 り ます る こと

し満 期釈 放 致 し ま し た場 合 に危 な い者 が あ つた な らば 、 之 を 何 と か

之 を認 め る こと が出 来 ます 。 さう 云 ふ所 か ら検 討 し て参 りま す る と

は 人権 問 題 と か其 の他 の点 に於 て暗 礁 に乗 上 げ る の であ り ます 。斯

主張 で あ りま す。 併 し な が ら御 承 知 の通 り刑 事 責任 の問 題 に引 つか

様 な情 勢 は決 し て 一二 では な い。是 は執 行 猶 予 の場 合 で あ る けれ ど

の急 務 で あ ると 云 ふ こと を私 は 断 言 し て憚 らな い の であ りま す 。然

し て処分 す ると 云 ふ こと を考 へな け れ ば な らな いと 云 ふ こと は 目 下

刑 を止 め て不 定 期刑 に し な け れば な ら ぬと 云 ふ こと は私 二 十 年 来 の

て、監 獄 を出 る場 合 に、 自 分 は 出 た ら直 ぐ地 下 に潜 る と 云 ふ こと を

も、 言 渡 し まし た 実刑 に付 て見 ま し ても、 五 年 の刑 を 言渡 さ れま し

に な ると 、 是 は相 当 意 見 が分 れ ま し て、 不 定 期 刑 か或 は予 防 拘 禁 と

○ 議長 ( 秋 山 刑 事 局 長) 本 日は 協 議 事項 の御 協 議 を願 ふ こ と に な

昭 和 十 五年 五月 二十 二 日 ( 水 曜 日) 午 前 九時 五 分 開会

らば 其 の意 味 に於 て どう 云 ふ 制 度 を採 つた な らば宜 いか と 云 ふ こと

云 ふ こと にな つて来 る のであ り ま す 。 私 は従 来 予 防拘 禁 を排 し て不

れ御 説 明 を願 ふ の です け れ ど も、 成 る べく簡 潔 にお願 を し た いと 思

ひま す。 先 づ十 分 以内 位 の程 度 で御 説 明 を願 ひ た いと思 ひ ま す。 尚

り ま す。 協 議 事 項 は非常 に沢 山 あり ま す ので、 御提 案 者 か ら それ ぞ

其 の御提 案 に対 し まし て御意 見 のあ る方 は 御意 見 の御 述 べ を願 ひ ま

期刑 の方 が徹 底 的 であ る と云 ふ こと を確 信 し て居 り ま す 。併 しな が

て、 私 が 一人 こゝ で威 張 つて居 りま し て不定 期 刑 でな く ち や な ら ぬ

ら幾 ら確 信 致 し ても立 法 は妥 協 であ り ま す。 立 法 は 妥 協 であ り まし

に対 す る希 望 或 は本 省 の意 見 を 求 め ら れ るや う な際 には こち ら か ら

す 。 御意 見 が ご ざ い ま せ ぬけ れ ば順 次 先 に進 ん で参 り ま す。 尚 本 省

定 期 刑 を極 力 主 張 し た の であ り ま す 。今 日 で も予防 拘 禁 よ り か不 定

と 申 し ま し て も、 多 く の方 が予 防 拘 禁 の方 が宜 し いと 仰 し や る場 合

一、 時 局 下 ニ於 ケ ル思 想 事 犯 処 理 ノ経 験 ニ鑑 ミ裁 判 竝 検 察 上 改

1  一般 的 ノ モノ

ノ﹂の

そ れ では 協 議事 項 の第一 ﹁思 想事 件 ノ裁 判 竝 ニ検 察 ニ関 ス ル モ

意 見 を申 述 べ ま す 。

に、 私 は 私 の学 説 を固 持 し て国 家 の急 務 を救 ふ こと に躊 躇 す る と 云 ふ それ 程馬 鹿 で あ るか と 云 ふ と さう では な いと思 ふ。 私 の説 を捨 て ゝ矢 張 り 国家 の危 急 存 亡 を救 は な け れば な ら ぬ と思 ふ。 是 だ け の襟 度 を 私 は 持 つて居 る積 り であ り ます 。 今 迄 私 が学 問 的 に扱 ひま し た 点 に於 ては絶 対 不定 期 刑 を固 持 す る不 定 期 刑 制度 を主 張 し て居 る が、 私 は私 の信念 を 一歩 譲 りま し て、 茲 に 予防 拘 禁 と 云 ふ こと を採 る こ

○ 平野 検 事 ( 東 京 刑 地 検 )  提 出 致 し ま し た協 議 事 項 に付 き まし て

を 議題 に供 し ま す 。 東 京 刑事 地方 検 事 の御 説 明 を 願 ひ ます 。

善 ヲ要 ス ル事 項 如何 ( 東 京 刑 地 検)

日 の制 度 より 一歩進 ん で国 家 を救 ふ所 以 であ ると考 へま し て、 私 は

と の方 が皆 さ ん に妥 協 を 申 込 む こと が出 来 ると 同時 に、 其 の方 が今

従来 の私 の確 信 を 一歩 譲 歩 致 し ま す 。其 の当 時 小 林 代議 士 が池 田書

簡 単 に説 明致 し ます 。

拘 禁 に賛 成 を し よ う と考 へて居 る の であ り ます から 、私 の学 説 は 一

近 の問 題 を 二 三取 挙 げ ま し て各 位 の御 意 見 を 承 りた いと思 ひ ま し て

際 それ は容 易 に実 現 出 来 な い こと で あ りま す か ら、 寧 ろ 日常 の 且卑

であ り ます が、 余 り に高 踏 的 、 理想 的 の こと を申 上 げ ま し て も、 実

思想 事 犯処 理 上 色 々裁 判 上 竝 に検 察 上 改善 を要 す る こと が多 い の

記官 に対 し て喰 つて か ゝり ま し た 。 私 は 小林 君 の説 に共 鳴 し て居 り

歩 退嬰 致 しま し た が、 私 は 国 家 社 会 を 救 ふ為 に私 の説 を敢 て曲 げ て

此 の問 題 を出 し た の であ り ま す 。私 共 とし ま し て感 じ て居 り ます 問

ま し た。 処 が其 の当 時 反 対 し た 池 田書 記官 の為 に双 手 を挙 げ て予 防

いま し て、 どう か私 の提 案 を お容 れ下 さ ら む こと を 切 にお 願 ひ す る

題 を先 づ簡 単 に申 上 げ た いと 思 ひ ま す。

此 の予防 拘 禁 制 度 を採 用 し よう と 云 ふ私 の熱 意 だ け を御 汲 取 り下 さ

次 第 であ り ま す。

此 の思 想 事件 の処 理 に付 き ま し て何 が大 事 かと申 し ます れば 、 矢

こと が出 来 な い の であ り ます 。 間 々裁 判 長 か予 審判 事 自体 が思 想 事

経 験 のな い裁 判 長 は、 其 の審 理 に於 き ま し て、 率 直 に申 し ます と 、

務 を 専任 に や つて居 ら れ る方 がご ざ いま す が、 斯様 な 裁判 長 と然 ら

固 く な ら れ る気 味 があ る ので あ りま す 。非 常 に思 想事 件 の被 告 人 に

張 り処 理 の適 正 と 敏速 、 此 の二 つが根 本 に な る の でな いかと 考 へる

ま し て思 想 公 判部 の設 置 のな い こと であ り ます 。 尤 も 私 の申 す こと

対 し ま し て固 くな る為 に、 或 は時 に鄭 重 に失 す る こと も あ り ます。

に大 き な開 き があ る こと を感 ず る の であ り ます 。 余 り思 想 実 務 に御

は大 体 東 京 其 の他 の大 都 会 を中 心 にし て申 上 げ ま す か ら、 或 地 方 に

又場 合 に依 りま し ては 、非 常 に思 想 の専 門的 の知識 あ る者 か ら見 ま

ざ る裁判 長 と の間 には、 思 想 検 事 が立 会 つて見 て居 り ま し て も非 常

は適 用 し な いか も知 れ ま せ ぬ が、検 事 竝 に予 審 判事 に付 き まし ては

の であ りま す 。此 の処 理 の適 正 と 敏速 と に付 き ま し て現在 行 は れ て

専 任 の思 想 係 があ り ま し て、 大 体 に於 て適 正 な る処 理 を し て居 るも

す ると突 飛 な非 常 識 な質 問 を出 し て被 告 人 を面 くら は せ る と 云 ふや

居 り ます る運 用 に遺 憾 の点 があ る の であ りま し て、其 の第 一と 致 し

のと信 ず る の であ り ます 。 併 し な が ら事 件 が直 接 公 判 に移 り ます る

し 兼 ね る場 合 が相 当 あ る のであ りま す 。十 分 裁 判所 の方 に於 かれ ま

ても 遺憾 の点 もあ りま す るし 、 又 言 渡 さ れ る刑 に付 き ま し て も心 服

し て主観 的 事 情 、 客観 的事 情 を本 当 に判 断 し て の判 決 な らば 、 仮令

う な こと も時 々あ る の であ り ます 。 斯 様 に審 理 其 のも のに付 き ま し

此 の刑 の量 定 に付 き ま し て、 被 告 人 の主観 的 事 情 と 、 社会 情 勢 の客

に是 が撒 か れ て処 理

観 的 事 情 と を綜合 判 断 致 し ます こと は、 是 は総 て の刑事 事 件 の共 通

ま す が、 然 る に社 会情 勢 の認 識 が足 り な い為 に検事 の求 刑 と 開 き が

検 事 の求 刑 と の間 に相 違 があ つても 検事 の方 は 不服 は な い の であ り

と、 東 京 の如 く十 余 り の公 判 部 に於 てば ら〓

な る問 題 でご ざ いま す る が、 思 想 事 件 に於 き まし ては、 特 に事 犯 の

さ れ ます る関 係 上検 事 か ら見 ま し て遺 憾 の点 が多 い の であ り ます 。

性 質 上社 会 情 勢 の推 移 竝 に将 来 の展 望 と 云 ふ こと に付 き ま し て、 正

す。

そ れ か ら此 の思 想 公判 部 設 置 の今 一つ の理 由 と 致 し まし ては 、 科

出 ると 云 ふ場 合 には遺 憾 な が ら承 服出 来 な い場 合 が多 いの であ り ま

刑 の統 一を欠 く こと で あ りま す 。 或事 件 、 例 へば学 生 グ ループ な ら

し い認 識 を以 て刑 の量 定 をす ると 云 ふ こと が必 要 の こと は縷 々説 明

き ま し て平 素 研 究 準備 を す る必 要 が あ る のです 。之 が為 に は矢 張 り

を要 し な い所 でご ざ いま す。 此 の正 し き認 識 を得 る為 に は 一面 に於

専 門 の方 を置 き ま し て、 各 種 の文 献 を 読 ん だ り致 し ま し て、 社 会 情

す る幾多 の被 告 人 が同 じ部 に於 て審 理 を受 けま す れば 、 其 の審 理 が

併 合 審 理 であ りま せ ぬ でも、 同 じ裁 判所 で大 体 其 の被 告 人 等 の地位

学 生 グ ループ 、 そ れ か ら唯 研 な らば唯 研 と い ふ関聯 を持 つて居 り ま

に応 じ、 活 動 に応 じ て適 正な る判 断 を し て戴 け る の であ り ます が、

勢 の推 移 を 正し く 知 つ て置 く と云 ふ こと が 必要 な の であ り ます 。 と

て其 の事 件 の処 理 を 通 じ ま し て思 想 情 勢 の動 きを 知 る こと も亦 他 の

是 が各部 ば ら〓

共 に他 面実 際 多 く の思 想事 件 を処 理 す る こと に依 り ま し て、 さう し

方 法 で あ り ます 。 現在 の如 く普 通 事 件 の間 に散 発 的 に思 想 事 件 を 受

に行 き ます と、 他 の関係 者 の事件 が ど う な つて居

け て処 理 し て居 りま す ので は、 右 申 上 げ ま し たや う な要 求 を充 た す

の現 は れ て来 た 一つ〓

の事 件 だ け を 考 へて判 断 な さ る か ら、 地 位

る と 云 ふ所 迄 お調 べ 下 さ る こと が実 際 の例 とし てご ざ いま せ ぬ。 其

や る が、 公 判 は 中枢 の地 の思 想 公判 部 に移 す や う に裁 判 所構 成 法 の

附 近 の地 方 裁 判 所 の中 にブ ロツ クを作 り ま し て、 予審 だ け は そ こ で

件 の多 い所 に特 別 に思 想 部 を新 た に作 つて戴 き た い。 さ う し て其 の

尚 理 想 を申 し ます れば 、 思 想裁 判 所 と 云 ふ特別 裁 判 所 を作 つて戴

の高 く活 動 の多 い者 が軽 くな つた り 、或 は下 の者 が重 か つたり す る

き ま し て、 さ う し て事 実 審 理 は 一審 き り にす る、 後 は 上告 審 だ け に

改 正 をし て戴 け れ ば尚 結 構 だ と 思 ひます 。

は総 て の事 件 に付 て避 くべ き こと であ る が、 思 想事 件 に付 ても 、 今

す ると 云 ふ こと にし て戴 け れ ば尚 結 構 と 思 ひ ます 。 其 の理由 と申 し

や う な科 刑 の不統 一があ る の であ り ま す。 科 刑 の不統 一と 云 ふ こと

あ り ます から 、其 の点 に付 ては特 に 科刑 を統 一す る必 要 があ るも の

申 上 げ まし た や う な他 の被 告 人 と の広 い意 味 の共 犯関 係 が伴 ふ の で

ます ると結 局思 想 事 件 に付 き ま し て は、 凡 ゆ る角 度 から普 通事 件 と

別 個 の取 扱 にす る方 が国 家 の治安 保 持 上 宜 し い の であ り ます 。 殊 に

と思 ふ の であ り ます 。 以 上 のや う な 理由 で是非 大都 会 に於 き まし ては思 想 公 判 部 を設 置

今 申 し ま し た やう に思 想事 件 は社 会 の推 移 と 云 ふ こと と非 常 に重 要

な 関係 が あ る のであ り ま す か ら、 之 を 二年 、 三年 、 或 は長 きは 七 年 、

し て戴 き た い ので あ りま す 。是 は従 来 此 の会同 で も度 々其 の要求 が

の であ りま す。 何 故 実 現 し な い かと 云ふ 点 に付 きま し て、 私寡 聞 に

或 は 裁 判所 或 は検 事 局側 か ら出 て居 る にも拘 らず 実 現 し て戴 け な い

い の であ り ます 。唯 積 極 的 に お やり にな る気 分 が な い為 に や らな い

す が、 思 想 事 件 に付 き ま し て は、 矢 張 り 一審 の裁 判所 が 一番 実 情 が

そ れ か ら今 一つの点 は、 甚 だ言 葉 は 露骨 で失 礼 に当 る の であ り ま

い こと であ り ます 。

八 年 に亙 つて事 実 審 理 を続 け て行 くと 云 ふ ことは 殆 ど意 味 を為 さ な

だ け であ りま す 。若 し も思 想 公 判 部 を 設 け る こと に付 き ま し て何 か

分 つ て居 る、 控 訴 へ行 く と大 分 実 情 が分 ら な い の であ り ます 。 更 に

し て思 想公 判 部 を 設 置 す る こと が悪 いと云 ふ意 見 を 聞 いた こと が な

ので あ りま す 。 此 の こと は 別 に予算 を伴 ふ訳 では な く、 又立 法 を 要

弊 害 が あ ると 云ふ こと な らば 一つ此 の席 で御 意 見 を 承 り た いと 思 ふ

の方 が多 く居 ら れ ま し て、 殊 に法 律 解釈 な ん か に付 きま し ては、 大

大審 院 に行 くと 益 々事 情 が分 らな い。 一般 の事 件 は 上 へ行 く 程練 達

若 し くは 数 部 を裁 判 所 長 が事 務分 配 す る だ け で足 り る ので あり ま す

ま し ては 、 逆 に下 の裁 判 所 に対 し て私 は敬 意を 払 ふ も の であ り ま す。

審 院 に付 き ま し ては最 高 の敬 意 を 私 共払 ひ ます が、 思 想 事 件 に 付 き

す る問 題 でも な く、 大 都 会 に於 き ま す る現 在 の沢 山 の部 の中 の 一部

から 、 若 し 良 い こと と お考 へ下 さ る な らば 、 或 は も う少 し レベ ルを 下 げ れ ば 少 く と も弊 害 がな いと 云 ふ見 究 め が付 き ます れば 一日 も 早

で はな い かと 思 ふ の であ りま す 。後 の点 は予 算 を要 し、特 別 の立 法

斯 か る意 味 に於 て事 実 審 理 を 一審 にす ると 云 ふ こと が 一番 良 い こと

今 申 し ま し た こと は非 常 に具 体 的 の卑 近 の こと で あり ま す が、 更

いかと 思 ふ の であ り ます 。

を要 す る から、 今 直 ぐと は 言 ひま せ ぬ が、 将 来 や る べき も ので は な

く 実 現 し て戴 き た い の であ り ます 。

に慾 を 申 し ます れば、 予算 を請 求 し て戴 き ま し て、 大 都 会 の思 想 事

昭和十五年九月 思想実務家会同議事録

学 部 一年 生 青森 文 と 二人 が共 謀 劃 策 し て本 年 四 月 以来 松高 文 科 二

年 生 川 原真 澄 に同 人 を松 高 支 部 責 任者 と し て文 書或 は 口頭 に て指

令 を発 し支 部 を結 成 さ せ て居 る嫌疑 濃 厚 とな り ま し て、 前 申 上 げ

議長  それでは次 は長野 の後藤検事 に松本高等学校 の事件 に関しま

る に至 つた のであ り ます 。

た る如 く東 大学 生 二名 即 ち 井 出 、青 森 と 松 高 川 原外 九 名 を 検挙 す

後藤 ︹ 英橘︺ 検事 ( 長野地) 松本高等学校事件 に関 して報告致し

取 調 の経 過 よ り申 上 げ ま す れ ば事 件 は 大 体内 偵 の結 果 通 り の事 実 が 現 は れ て居 り ま し て、彼 等 の抱 持 す る国 体 変 革 の手 段 は 二段

して報告をし て頂 く事 に致します。 (三)

と 云 ふ の であ り ま す 。

革 命 に よ る こと に し て現今 の我 国 の社 会 情勢 は革 命 前 夜 の情 況 だ

只違 ひま し た 点 は駐 在 巡 査 の拾 ひま し た紙 片 の文 字 は井 出 の書 い

同校生徒 に対す る治安維持法違反事件 の検挙 は今回を加 へて昭和

ます。 五年四月以来 五回でありまして今 回は本月 一日及四日の二回に同校

組 織 は 本 来 四 月十 二 日頃 松 本 市 の川 原 の宿 等 で同 人外 三 名 が

組織 運動 方 法 と し ては

容 も 現 は れ て来 るも のと 思 は れ ま す。

を 再 三訪 問 し て居 る事 実 及 従来 の交 友 関 係 よ り推 し て早 晩其 の内

然 し な が ら之 と て も本 年 四 月中 に青 森 が井 出 の東 京 本 郷 の下 宿 先

あ りま す が井 出 と の関 係 が不 鮮 明 であ り ます 。

森 が川 原 に指 令 を発 し て居 る事 実 は領 置 の手 紙 に依 り証 拠 明白 で

生徒十 名及東大学生二名を検挙しまし て目下松本警察署 に於 て鋭意

其 の違反内容は右 生徒等 が東大学生指令 の下 に校内に東大学内 の日本共産党再建準備会支部を組織致 しまし て生徒に対 し共産主

た も のでな く て川 原 の書 いたも の であ り まし た のと今 の と ころ青

(四)

取調中 であります。 (一)

義 の宣伝並 に啓蒙運動を為し て居 る嫌疑事実 であります。 ( 二︶ 其 の検挙 は本年七月 一日頃松本警察署管内松本市外浅間温泉近 在 の駐在巡査が森林竊盗事件取調 の為其 の附近 の山に実地見分に 参りました際、偶 々鼻をかんで捨 てたらし い ﹁ノート﹂ の紙片 を 見出 し不審 を抱 いて拾ひ上げて見た結果 それに左翼的指令文言 の

外 二名 の合 議 制 に依 つて指 導 を行 ふ事 を決 議 し其 の通 りに 運動

松 高 社会 科 学研 究 会 仮 称 の下 に共 産主 義 グ ル ープ を組 織 し 川原

(イ)

前 回即 ち昨年三月検挙 の際転向を誓 つて起訴猶予処分 を受 けた現

の支部 た る事 実 は 未 だ 鮮 明 を欠 き ます け れ共 取 調 の進 行 に つれ

を 実 行 し て居 りま す 。 而 し て此 のグ ル ープ が前 述 の再 建 準備 会

ある のを発見した のが端緒 でありまして、内偵 の結果其 の筆蹟 は に東大経済学部二年 生井出武三郎 の筆蹟 に酷似し て居 ると言 ふ事

( ) ロ 運 動 方 法 は 前 回 の運動 の際 は 余 りに 外 面的 に活溌 過 ぎ たと 云

て判 明 し来 るも のと 思 は れ ま す。

になり、更 に内偵 を進めた結果同人は東大学内日本共産党再建準 備会 のメンバ ーで同準備会 に於 ける松高指導 の責任者 であ るらし いのと、尚同人同様同時 に起 訴猶予処分 に処せられ現 に東大経済

ふ の で今 回 は潜 行的 の方 法 を 採 る こと とし 成 る可 く 同 校内 発 行

長 野 県 は御 承 知 の通 り思 想 県 と し て有 名 な県 で以 前 は随 分

状 勢 も 手 伝 ひ 一応 平 穏 にな つて居 りま し て只松 高 丈 が左翼 運

左 翼 運動 は烈 し か つた の であ り ます が、現 在 では 現 下 の社会

(1)

動 の温床 地帯 にな つ て居 り ま す。 此 事情 か らし て今 回 は相 当

の雑誌 に依 る文書 運動 並 に直 接 に生徒 各 個 人 個 人 に働 き掛 け る こと に致 し 居 り ま す。 そし て其 の働 き掛 け る相 手 は 校 内 の文 化

厳 重 な 処 分 を要 す る の では な いかと 思 ひ ます 。

の関係 等 を考 慮 し て相 当寛 大 な処 分 を 受 け て居 る様 であ り ま

尚 従来 の検 挙 の結 果 を見 ま す ると 生徒 な る が故 に其 の将 来

団 体即 ち文 芸 部、 講 演 部 、 映 画 研究 会 、 自 然 科 学 研 究 会 の各 部

(2)

員 を 目標 とし 同部 員 各 個 の抱 け るイ デ オ ロギ ー に付 ては 正面 よ り 論争 す る こと な く し て交 友 の間 不知 不識 の間 に左 翼 思想 に変 換 せ し む る戦 術 を 取 つて居 りま す 。而 し て実 際 に於 ては読 書 会 を 五月 に 二回 開 き ﹁テ キ スト ﹂ と し て野 呂 栄 太 郎 著 の ﹁日本 資

り今 回指 令 を発 し て居 る非 出 、 青 森 は前 回検 挙 の時 代 に恰 度

卵 であ つた のが 一躍 し て親 鶏 と な つて居 り ます 。

す が、 実際 の経 過 か ら 見 ま す れば 俗 に卵 が雛 に為 ると申 す 通

暗 に左翼 思 想 を謳 歌す る が如 き 論 文 を掲 げ た り映 画 研 究会 雑 誌

る処 分 に出 づ る事 が罰 せ ら る ゝ本 人 にも 又社 会 に対 し ても よ

斯 様 に逓 次的 運 動 が続 き ま す 以上 は 今 回 の事 件 に対 し断 乎 た

本 主義 発 達 史 ﹂ を 用 ひ て居 り文 書 運動 とし て は各 部 の機関 紙 に

には ﹁リ ア リズ ム﹂ の著 作 方 法 に依 る長 塚 節 著 ﹁土 ﹂ と か火 野

り良 き 効果 を齎 す の で はな いか と思 はれ ま す。

葦 平著 ﹁土 と 兵隊 ﹂ と か を左 翼 的 に批 判 し て啓 蒙 運 動 を 致 し て 居 りま す。

次 に今 回 の事 件 の関 係者 を見 ます と 殆 ん ど中 流 以 上 の家庭

ま す るに少 くと も 全 生徒 に左 翼 思 想 を よ り高 く意 識 せ し め て軈 て

ト ﹂ た ら し む る こと に在 り ませ う けれ 共、 然 し 指 令 等 よ り推 察 し

も 此 の点 に鑑 み今 回 の検挙 に 対し ては 進 ん で厳 罰 を 欲 し て居

件 の如 き事 件 を惹 起 す る の では な いか と思 ひ ます 。 松高 当 局

校 内 の生徒 の自 治 問 題 であ り まし て余 り寛 に失 し ま す る と本

校 にも其 の責 任 があ る の では な いかと 思 は れ ます 。 それ は学

の子 弟 であ りま す 。 勿 論家 庭 上 の環 境 も あ り ませ う が 一面学

東 大 に其 の生徒 を 送 る と 云 ふ戦 略 に重 点 を置 い て居 る様 であ り ま

(3)

す 。 前述 の通 り本年 四月 以来 の運 動 で途 中 夏 期 休 暇 等 があ り ま し

地方 的 に見 ま す と、

今 回 の検 挙 に依 る 考察

文 科内 に社 会 学 と し て マルキ シズ ムを 研究 し ま す 以 上 は高 校

にか に 付大 学 の影響 を受 け る のであ り ま し て大 学 内殊 に東 大

(1 ) 高 等 学 校 と 大 学 と の関 係 で あ りま す。 制 度 上 よ り高 校 は何

(ロ 一般 的 に見 ます と 、 )

る様 であ り まし て将 来 は同 校 も大 分 見 直す も のと 思 は れ ます 。

(イ)

る外 部 運動 は現 は れ て居 り ま せ ぬ。

二 十 三 名位 に及 ん で居 り ます 。 而 し て今 迄 の処 松 高 生 以 外 に対 す

た が検挙 致 し て見 ま す ると 前 記 十 名 の外 に其 の影 響 を 受 け た者 が

以 上 の運 動 に依 り ます 最 終 の目 的 は勿 論 生 徒 をし て ﹁マルキ ス

(五 今 回 の左翼 運 動 の影響 は )

(六)

(2)

の では な い かと 思 は れ ます 。

の社会 学 の研 究 に付 て此 の方 面 よ り 一段 の取締 を必 要 と す る

内 の左翼 運 動 は 絶 へな い ので はな い かと 思 は れ ます 。 故 に此

位 の起 訴 を 避 け主 と し て被 告 人別 に分 離起 訴す る方 針 を採 用 し て来

呈 し てゐま し た 。 而 も其 の事 件 の取 扱 に於 ても従 前 の様 な各 事 件 単

活動 の範 囲 等 、 之 が 高 低 広狭 の差 、 一見 甚 し く な か つた 様 な 外観 を

囲等 に関 し 他 の被告 人 の夫 れ と比 較 考 量 す べ き充 分 な る資料 を欠 く

た為 め各 被 告 人 の記 録 中 に は当 該 被 告 人 の組 織 内 の地 位 、 活動 の範

場 合 が尠 く な い の であ り ま す 。之 等 の理 由 よ り往 々にし て裁 判 、 検

次 に文 芸 的 出 版物 に就 て ゞあ り ま す が 昭和 十 年 頃 盛 に我 国 の文 芸 雑 誌 に公 々然 と ゴ リ キ ーが 一九 三 四年 八 月 頃 モ ス コー

察 上 此 の差 等 を看 過 し て 一律 の刑 を量 定 せ ん とす る の過 誤 に陥 る虞

が な いとは 云 へな い ので あ り ます 。 因 て各 被 告 人 の組 織 内 の地 位 、

の ﹁ロ マン チズ ム﹂ を捨 てた ﹁リ ア リズ ム﹂ の著 作 方法 が論

活動 の範 囲 等 其 の真 相 を明 に し て剴 切 妥 当 な る刑 の量 定 を為 し得 べ

に於 け る ソヴ エー ト聯 邦 作 家 大 会 に於 て唱 導致 し まし た 従来

議 せ ら れ、 今 日 では此 の著 作 方 法 が流 行 す る様 にな り ま し て

き適 当 な る方 法 を案 出 す る 必要 があ る の であ りま す 。 此 の要 請 に応

先 づ東 京 の藤 嶋 判事 に本 問 に対 す る答申 を願 ひま す 。

ず る為 め茲 に本 問 を提 出 し た次 第 であ り ま す。

の創 作 とし ては 最高 のも のと 称 せ ら れ て居 る の であ り ま す。 明治 時 代 よ り 大 正時 代 を通 じ 自由 思 想 に育 まれ て来 た今 日 の

長 塚 節 の ﹁土 ﹂ の如 き は左 翼 文 士 間 には 我国 に於 け る其 の種

社 会 では ﹁土 ﹂ と か ﹁土 と 兵 隊 ﹂ と か の著 作 が相 当 左翼 思 想

が妥 当 でな いと 云 ふ声 を耳 にす る こと が屡 々あ り ま す。 私 は必 らず

藤嶋 ︹ 利 郎︺ 判 事 ( 東 京 刑 地 ) 最 近思 想 事 件 の被告 人 に 対 し 量 刑

し も適 切 妥 当 を 欠 いて ゐ ると は考 へま せ ぬ が、 苟 く も左 様 な声 が あ

啓 蒙 の資 に使 は れ居 る の では な いか と思 は れ る節 が あ り ます 。

る以 上 私 共 は謙 虚 な気 持 を 以 て反 省 し改 む べき も のあ らば 之 を 改 め

故 に此 の著 作 方 法 に依 る著 書 に対 し ては 一段 の注意 を 以 て取 締 る要 があ る ので は な い かと 思 は れ ます 。

の実 績 を 挙 げ得 ると 思 ひま す の で今 回 の御 諮 問 事 項 に対 し私 は次 の

す 。 之 に つ い ては検 事 予 審 判 事 公判 判 事 の三 者 相 協 力 し て始 め てそ

真 に国 民 を し て納 得 せし む る様 な裁 判 をし なけ れ ば な ら ぬと 思 ひ ま

以 上 が今 回 の松高 生 検挙 に対 す る報告 であ り ます 。 九 月二十 五 日 第 一日午後三時二十五分開議 議 長 (霜 山 ︹精 一︺ ︹ 東 京 控 訴 ︺ 院 長) そ れ で は諮 問事 項 の討 議 に

先 づ第 一は同 一組 織 系 統 に属 す る思 想 事 件 は 必 らず 同 一裁 判所 に

六点 を挙 げ て答申 致 し た いと 存 じ ま す。

くと も そ の系 統 に つい ては 刑 の均衡 を得 る こと が出 来 ます 。然 る に

起 訴 せ られ た いと云 ふ こと であ り ま す。 同 一裁 判 所 に起 訴 す れば 少

諮 問 事 項 は ﹃最 近 の思 想 事 犯 の実 情 に鑑 み被 告 人 に 対 す る量 刑 を

入 り ます 。 就 ては諮 問事 項 の提 案 理 由 の趣 旨 を説 明 致 し ま す。

最 近 の思 想 事 犯 は書 の共 産 党 運動 が活溌 であ りま し た時 代 に比 較

二箇 以 上 の裁 判 所 に分 岐 的 に起 訴 さ れた と き には自 ら量 刑 に差 が出

適 当 妥 当 な らし む る に付 考 慮 す べ き事 項 如 何 ﹄ と 云 ふ の であ りま す 。

致 し ます と 関 係 事件 に於 け る各被 告 人 の有 し て居 た 組織 内 の地 位 、

項 と し て今 回再 び提 出 致 し ま し た処 図 らず も御 諮 問 事 項 に対 す る答

現 在 必 らず し も実 行 され て居 る と は存 ぜ ら れ ませ ん。 そ こ で協 議 事

居 り ます の で昨 年 の会 同 の際 に も同 様 の問 題 を出 しま し た が、 之 が

て来 る こと は 自明 の理 であ り ま す。 此 の点 に つ いて は私 共 は 痛感 し

之 等 の点 を 記 録 上 に ハツ キ リさ せ て置 けば 量 刑 の上 に於 て良 い資 料

特 に量 刑 の標 準 の 一と な る べき も のと考 へられ る か ら であ り ま す。

此 点 は従 来 と ても或 程 度 取 調 べ ら れ て ゐた であ り ま せう が、今 後 は

更 を 生 じ ど う し ても其 量 刑 に於 て多 少差 が 生ず る の であ り ま せう 。

起 訴 と 最後 の起 訴 と の間 に多 く の距 り が あ れば 公 判 部 の構成 員 に変

内 に致 さ れ た いと い ふ こと であ り ます 。斯 様 な事 件 に つい て最 初 の

第 二 は同 一組 織 系 統 に属 す る事 件 の起 訴 は成 る べく 遅 延 せ ぬ期 間

主 張 す る場 合 には 転 向 の程 度 に付 十 分 注意 を払 つて置 く べ き で あ り

む る戦 術 を と つた こと が現 在 で は明 白 にな つて居 りま す故 に転 向 を

様 で被 告 人側 も転 向 せ ざ る に拘 は らず 転 向 せ りと 称 し執 行 猶予 を求

ます 。 嘗 ては単 に転 向 し た と声 明 す れ ば 直 ち に執 行 猶 予 にな つた模

ゐ る際 そ の転 向理 論 を 出来 る だ け精 密 に追 及す る こと が必 要 であ り

第 四 は予審 判 事 に対 す る第 二点 です が、被 告 人 が転 向 を 主張 し て

にな ると 思 ひます 。

そ れ で斯様 な事 件 に つ いて私 共 は 一には同 一構 成 の公 判 に於 て審 理

ます 。単 に今 後 は共 産 主義 運 動 を や ら ぬと いふ丈 では未 だ転 向 が十

申 の 一項 目 と な つた 次第 であ り ます 。

し て頂 く た め 一には 証拠 材 料 を豊 富 に得 て真 相 を 突 き 止 め得 る やう

例 へば 自分 に は性 格 的 に政 治 運 動 は不 適 当 な こと に気 が ついた から

分 では な いと思 ひま す 。将 来 再 び此 の種 の運動 を やら ぬ と い ふ際 に

と 云 ふ が如 き は周 囲 の人 々に啓 蒙 行 動 を為 す こと があ る か も知 れま

な る べ く同 じ 日 に予審 を終 結 す る方 針 で審 理し て居 り ま す が、 将 に

の素 志 を貫 か んと す る であ りま せ う 。故 に斯 様 な こと のな い様 出 来

せ ぬ か ら此 の程 度 では未 だ真 の転 向 と も申 さ れな いと思 ひ ます 。 尚

終結 せ ん とす る間際 に更 に新 し き 起 訴 が あ り而 も 之 が 先 の事 件 と 離

得 る 限 り短 期 間 内 に起 訴 せ ら れ る やう に し て頂 き た い の であ りま す 。

家庭 の愛 に目 醒 め た いと 云 ふ時 も真 の転 向 と は云 へな いと 思 ひま す。

が如 き は情 勢 の推 移如 何 で は再 び運 動 を す る に至 るや も知 れず 、 又

そ れ に つい ては思 想 係 検 事 を 多 数 配 置 し て斯 か る事 件 が、 余 り距 ら

尚 又刑 罰 に対 す る 恐怖 心 か ら出 た 転 向 も本 当 の転 向 と は 云 は れな い

例 へば 左翼 運動 が我 が国 の現情 勢 下 に於 ては不 適 当 だ か ら だと 云 ふ

ぬ時 期 に起 訴 され る様 にし て頂 き た い次 第 であ り ま す。 此 の点 は 前

と存 じ ます 。 要 之 従来 転 向 し たも のと認 め られ た場 合 も現 今 に於 て

す べ か らざ る主 要 な 人物 で あ る以 上 は 先 の事 件 の終結 を 延し ても 右

項 が 地域 的 集 中起 訴 とす れば 之 は時 間的 集 中 起 訴 と も申 す べき であ

審 判 事 とし て は転 向 を声 明 し た 場 合 こそ尚一 層 注意 し て追 及 す る必

り ま せう 。 尤 も同 一の 日 に全 部 を起 訴 せ ら れた いと いふ意 味 では あ

第 三は 予 審判 事 と し て為 す べ き こと であ りま す が、 各 被 告 人 の当

要 が あ る の であ り ま す。 私 見 を 申 上 げ ます と 共 産 主義 理論 に対 す る

は再 検 討 し なけ れ ば な らな い点 が多 々あ らう と 思 ひ ます 。 此 故 に予

該詭 激 思 想 に対す る信 奉 の程 度素 養 の程 度 他 への影 響 力 等 換 言 す れ

批判 同 運 動 に対 す る見 解 天 皇 制 私 有 財産 制 度 、 国 内情 勢 国 際 情 勢等

り ま せ ん から 誤解 な き様 願 ひま す 。

ば 該 思 想 の深 さ と幅 と を遺 憾 な く十 分 に追 及 す べ き こと であ り ま す。

に対 す る認 識 等 に就 き種 々訊 問 追 及す れば 所 謂 転 向 の程 度 も知 り得 、

が低 いと き は之 を軽 く 扱 つて居 た やう であ り ます が、 非 合法 活 動 が

目 し 党 、 共青 、 全 協 等 二 三 の団 体 に関 係 し な が ら も何 れも そ の地位

険 が多 い の では な い かと 思 ひ ます 。 又 従 来 は 活動 上 の地 位 のみ を注

極 度 に衰 微 し て ゐ る現 状 に於 て はむ し ろ 二 三 の団 体 に関係 し て ゐる

りま す 。 思 想 抱 懐 の程 度 を 追 及 す る こと は従 来 余 り 重 き を置 か れ て

方 がそ の連 絡 提 携 を 図 り得 ると い ふ点 に於 て重 要 視 す べ き も の であ

又 場 合 によ つては ボ ロを出 さ し む る場 合 が多 々あ ら う と思 ふ の であ

居 な か つた の では な いかと 思 ひ ま す が之 こ そ量 刑 の適 正妥 当 を 得 る

ら う と思 ひま す 。 又 従来 は政 治 運 動 のみ を重 視 し 所 謂 文 化運 動 を軽

重 要 な 資 料 と な る も のと 存 じ ま す。

視 し 勝 であ りま し た が 現在 に於 ては文 化 運動 こそ彼 等 の同志 又 は 同

準 ず べき 者 の多 い こと は過 去 に於 け る裁 判 所 其 他 の取 調官 庁 の態度

第 五 は 公 判 に就 て であ り ま す が公 判 部 に思 想 専門 の部 を 設 置 さ れ

が寛 大 に失 し た こと や転 向 と 見得 ざ る も のを転 向 せ り と誤 信 し た こ

た い の であ り ます 。 思 想 犯 罪 に対 す る認 識 が不徹 底 な るが為 刑 の均

し た事 と牽 連 関 係 があ る こと で あ りま す が思 想 事 件 は其 の思 想 部 の

と等 の過 失 によ る も のと 考 へら れ ます か ら此 の点 に つき 再 検 討 す べ

も のと考 へら れ ま す。 又最 近 の共 産主 義 運動 に左 翼前 歴者 又 は之 に

み に送 付 し其 の部 に於 て専 門 的 知 識 を有 す る裁 判 官 によ つて審 判 せ

き必 要 が あ る と考 へられ ま す。 そ の他 思 想 事件 に つい て は認 識 を新

伴 者 を獲 得 し 得 る も のと し て危 険 最 も大 で絶 対 に軽 視 す べ か らざ る

し め る こと が量 刑 の適 正妥 当 を 得 る最 大 の要 訣 であ る と思 ひ ます 。

にす べき 点 が幾 多 も あ り 、 又平 素 より 国 内 国際 両方 面 に於 け る政 治

衡 を 失 す る こと があ り 得 る か ら で あ りま す 。 此 点 は先 に述 べ ま し た

尤 も思 想 部 を設 置 す ると し ても 一律 に各 地裁 々々に置 く必 要 はな く

同 一組織 系 統 の事 件 は 同 一裁 判 所 に起 訴 す る や う に致 され た いと申

全 国 を 二 、 三 のブ ロツ ク に分 け各 ブ ロツ ク の中 心 地 に置 けば 足 ると

め て肝 要 な こと であ り ま す か ら之 を 徹 底 的 な らし め る為 には、 結 局

経 済 思 想 社会 等 に つい ても普 通 以 上 の知 識 を涵 養 し て居 る こと が極

第 六 と 致 し ま し て申 上 げ て置 き た い事 は 検事 、公 判 、 予 審 等 を問

思 ひま す 。

し た が右 翼 事 件宗 教 犯罪 出 版 犯 罪 不 敬罪 等 に付 ても結 論 は同 様 であ

公 判 も 予審 も思 想 事 件 に関 す る限 り専門 的 な ら し め日 頃 之 が研 究 を

り ます 。 諮 問 事 項 に対す る答 申 は 之 を 以 て終 りと 致 し ます 。

はず 思 想知 識 を今 一段 と 徹底 せし め る必 要 が あ ら うと 思 ひま す。 検

す。 止 む を得 な い事 と存 じ ます 。 二 、 三 の例 を申 し ま す と従 来 所 謂

議長 (同 上 ) 次 は東 京 の登 石 検事 か ら御 説 明 を願 ひ ます 。

な さ し め 又各 人 も 任命 せ ら れた 以 上 研究 に余 念 なき を 期 せ ら る べき

合 法 場 面 を利 用 す る 運動 に対 し ては 余 り注 意 が払 は れ て居 り ま せ ぬ

登石 ︹ 登︺( 東 京 刑 地 ) 本 諮 問事 項 に対 す る答申 と致 し ま し ては之

だ と思 ふ の であ り ま す。 以 上 は 大 体 左翼 事 件 を 中 心 と し て申 上 げ ま

でし た 関 係 上 未 だ に斯 様 な 活 動 に対 し て は軽 視 す る傾 が あ る やう で

が、 公 判 に至 る に従 つて次 第 に浅 薄 にな つて居 る様 に見受 け ら れ ま

あ り ま す が 、 我 が国 にと つては世 人 の同 情 を 得 な い非 合 法 運 動 よ り

を具 体 的 、抽 象 的 の二 つに分 け て申 上 げ た いと思 ひ ます 。 具 体的 事

事 は第 一線 に立 つて居 る為 之 に対 す る知 識 が 比較 的 豊 富 であ り ます

は寧 ろ 容 易 に国民 を左 翼 陣 営 に引 込 み得 る合 法場 面利 用 の活 動 が危

第 一 取 締 検 挙 及 起訴

協 議 事 項

項 と し ては唯 今 藤 嶋 予 審 判 事 の申 さ れ た事 に殆 ん ど同 意 見 であ り ま す 。 特 に同 一系 統 の事 件 を 一つ の裁 判 所 に集 中 し て審 理す る事 に就

キ シ モノ ヲ証 人 ト シテ召 喚 スルノ可 否 及 程 度 ( 前 橋 地方 提 出 )

四、 思 想事 件 ノ裁 判 ニ於 テ転 向 シテ 不起 訴 処 分 ト為 リ 正業 ニ就

争 ヲ為 シツ ツ ア リ ヤ ( 前 橋 地 方提 出 )

三、 思 想事 件 ニ付現 在 一般 的 ニ被 告 人 ハ如 何 ナ ル程度 ニ理 論 闘

宮地方提出)

二、 思 想事 件 ノ再 犯者 ノ審 理 裁判 ニ付 考 慮 ス ヘキ点如 何 (宇 都

如何 ( 宇 都 宮 地方 提 出 )

一、 現 下 ノ時 局 ニ鑑 ミ思 想 事 件 ノ処 理 ニ付 裁 判 上 考慮 スヘキ 点

第 二、 裁 判 及 科 刑

ノ要 ナキ ヤ ( 長 野 地検 提 出 )

六、 中 華 民国 其 ノ他 外 国 ノ文 芸 出 版 物 ニ対 ス ル検 閲 ヲ強 化 ス ル

締 方 策如 何 ( 甲 府 地 検 提出 )

五、長 期戦 ニ伴 フ帰 還 将 兵 及応 召 遺 家族 ノ言 動 ニ対 ス ル検 挙 取

地 検提 出 )

四、 治安 維 持 法 違 反 事 件 一斉 検 挙 ニ付考 慮 スヘ キ点 如何 (静 岡

事 項如 何 (浦 和 地 方 提出 )

三 、 現時 下 ニ於 ケ ル思 想 犯 ノ取 締 検学 ニ関 シ検 察 上 考慮 スヘ キ

察 裁判 等 ニ付 承 リ タ シ (千葉 地 方提 出 )

二、 帰 還 将 兵 竝 大 陸 帰 還者 ノ言動 及 之 ニ対 ス ル取 締 及其 ノ他 検

中 ス ルヲ可 ト セ ス ヤ ( 東 京 刑 事 地 方提 出 )

一、 同 一組織 系 統 ニ属 ス ル思 想 犯事 件 ハ同 一裁判 所 ニ起 訴 ヲ集

て は其 の必 要 を強 調 し た い の であ り ます 。 尚 之 と関 聯 し て思 想 事件 の審 理を 二審 制 度 とす る事 を提 唱 致 し ます 。 社 会 に対 す る影 響 よ り 緊 急 処 理 を 建前 とす べき 思 想事 犯 に於 て三 審 制 度 を踏 襲 す る が如 き は徒 ら に判 決 の確 定 に時 日を 遷 延 せ し め結 局 量 刑 の妥 当 を得 る所 以 で は あ りま せ ん。 次 に抽 象 的 、 或 は精 神 的 な事 項 であ り ます が量 刑 の妥 当 を 得 な い事 の 一つの原 因 と し て判 事 、 検 事 の心構 に足 らざ る も のが あ る の では な いか と考 へま す。 例 へば 検 事 の求 刑 と判 事 の言 渡 と に余 り に隔 た り が あ る様 な場 合 は量 刑 の妥 当 を 欠 く 一つの例 と

見越 し て掛 値 的 求 刑 を す る、 判 事 は 又 当然 検 事 の求 刑 よ り軽 くす る

言 ひ得 ると 思 ひ ま す が、 検 事 は判 事 が ど う せ軽 くす るだ ら う から と

のが 裁判 であ ると 心 得 て之 を減 らす と いふ様 な事 例 を 往 々見 聞 した の であ り ます 。 然 し これ は判 事 と いふ も のと検 事 と い ふも のは対 立 的 な も ので あ る、被 告 人 と加 へて三 者 互 に対 立 牽 制 し 合 ふ べ き も の であ る と いふ謬 つた 見 解 か ら 生 じた 弊 害 であ り まし て司 法翼 賛 の見 地 よ り し て洵 に遺 憾 と 言 は ねば な りま せ ぬ。 私 は我 司 法 の精 神 と し て判 事、 検 事 は斯 く 対 立 、牽 制 し合 ふも の では な く夫 々 の立場 、 職 能 、 責 任 を通 じ て司法 翼 賛 と いふ 一つの方 向 に 向 ふ べき も のと考 へ る の であ り ます 。 此 の心構 を 以 てす れば 検事 も判 事 も夫 々 の部 門 を 通 じ て量 刑 妥 当 の実 を 挙 げ る事 が出 来 る の では な いかと 考 へます 。 思 想 犯罪 に対 す る知 識 の涵養 、 之 は 勿 論 大 切 で忽 に出 来 ま せ ん が右 の心 構 は尚 以上 に我 々 に取 つ て大 事 な事 では な いか と考 へる の であ り ます 。

五 、 思 想 犯 人中 利 敵 行為 ヲ為 シタ ル者 ニ対 ス ル裁 判 ニ付 特 ニ考 慮 ス ヘキ 点如 何 (甲 府 地 方提 出 ) 六 、 反戦 反軍 思 想 ニ関 ス ル事 案 取 扱 上 考 慮 スヘ キ点 如 何 (長 野 地方提出) 七 、 治 安 維持 法 違 反 ニ対 ス ル科 刑 ヲ重 加 ス ルノ要 ナ キ ヤ (長野 地 検 提出 ) 第 三  保 護 及 思想 対 策 一、 国 家 新 体制 ヲ繞 リ テ起 リ得ヘ キ思 想 問題 中 特 ニ考 究 スヘ キ モノアリヤ ( 横 浜 地 方 提出 ) 二 、 現 下経 済 状 態 ノ悪影 響 ニ因 ル思 想 犯 防 止 ニ付 其 ノ具 体 的 方 策 ヲ承 リ タ シ ︵千 葉 地 方提 出 ) 三 、 治 安維 持 法 違 反 ノ受 刑 者中 非 転 向 者 ノ出 所 後 ニ対 スル対策 如 何 (千 葉 地検 提 出 ) 四、 新 政 治 体制 下 思 想 運動 前 歴 者 ノ動 向 ニ対 シ留 意 スヘ キ点如 何 (静 岡 地検 提 出 ) 第 四  研 究 教 養及 施 設 一、 思 想 ニ於 ケ ル指 導 理 念 ヲ確 立 シ独 リ思 想 掛判 検 事 ニ止 マラ ス 一般 司 法官 ヲ シテ之 ヲ知 ラ シメ置 ク ノ必 要 ナキ ヤ (千 葉 地 方 提出 )

(千葉 地方 提 出 )

二、 支 那 事 変 ニ因 ル思 想 犯 対 策 研 究機 関 ヲ設 置 セ ラ レテ ハ如 何

ル方 策如 何 ( 水 戸 地 方提 出 )

三、 裁 判 所 又 ハ予 備判 事 ヲ シ テ管 内思 想 運動 情 勢 ニ通暁 セ シム

四 、 現時 局下 ニ於 ケ ル思 想 係 判 事 ノ教 養 ニ付 考 慮 スヘ キ点 如 何

(宇 都 宮 地 方提 出 )

方提出)

五、 地 方 裁 判 所 ニ思 想 部 ノ設置 竝 ニ思 想 係 判事 ノ教 養 (静岡 地

時 思 想 還 動 情勢 ノ概 況 ヲ知 ラ シ ム ル為 ノ 有 効 ナ ル方 策 如 何

六 、 一般 判 検 事 ヲ シテ 一層 思想 問 題 ノ研 究 ニ関 心 ヲ持 タ シ メ常

(甲 府 地 方 提出 )

七 、 思 想 犯 罪 ニ対 ス ル審 理 判決 ヲ ヨリ 一層 適 切 妥当 ナ ラ シ ム ル

カ為 速 カ ニ各 地方 裁 判 所 毎 ニ制 度 上 一名 乃 至 数 名 ノ思 想判 事

ヲ配 置 シ常 ニ思 想 問 題 ヲ攻究 セ シム ルト 共 ニ司 法 研 究 所 ニ入

所 セ シ ム ル等 ノ方 法 ニ依 リ指 導 訓 練 シ又 満 洲支 那 欧 米 等各 方

テ思 想 犯事 件 ノ審 判 ノ任 ニ当 ラ シム ル コト ト ナ スノ要 ナキ ヤ

面 ニ出 張 視 察 セ シメ以 テ内外 ノ思 想 情 勢 ニ通暁 セ シメ主 ト シ

(長 野 地 方 提出 )

八、 現 下 ノ非常 時 局 ニ鑑 ミ判 事 ヲ シテ特 ニ最 近 ノ思 想 動 向及 社

会 情 勢 ニ通 暁 セ シム ル ニ付 一層 適 切 ナ ル方策 如何 (新 潟 地方 提出)

九 、 新 政 治 体制 下 思 想 検察 機 構 改 善 ノ要 ナキ ヤ( 静 岡 地 検 提出 ) 絡

一、 思 想 事 件 ノ捜 査 ニ関 シ憲兵 隊 ト警 察 部 ト 検事 局 ト ノ協 力 ヲ

第 五  連

一層 緊 密 ナ ラ シ ム ル具 体 的方 策 如 何 (横 浜 地検 提 出 )

二、 特 高 竝 憲 兵隊 ト ノ連 絡 協 調 ヲ 一層 緊 密 ナ ラ シ ム ル具 体 的 方

諜

策 如 何 (前 橋 地 検 提出 ) 第 六  防

一、 支 那 事 変 ニ於 ケ ル防 諜 ニ関 シ裁判 検 察 上 考 慮 スヘ キ点 如 何

(東京 刑 事 地 検 提 出 ) 二 、防 諜 上特 高 警 察 官 ト憲兵 隊 ト ノ連 絡 協調 ノ方 策 如 何 ( 千葉 地 検提 出 )

ア ルモ ノ ヲ起 訴 ス ル場 合 ニ ハ成 ル ヘク之 ヲ併 合 シ テ 一ノ裁 判

所 ニ起 訴 ス ル コト、 而 シ テ既 ニ起 訴 セ ラ レ数 個 ノ裁 判所 ノ予

シ直 近 上 級裁 判 所 ニ管 轄 移転 ノ請 求 ヲ為 スヘ キ旨 治 安維 持 法

審 又 ハ公判 ニ繋 属 スルト キ ハ検 事 ハ其 ノ内 一ノ裁 判 所 ヲ指 定

ニ本 問 研 究 ノ 必要 ヲ認 メ タリ) ( 長 野 地 方提 出 )

中 ニ特 別 規定 ヲ設 ク ル ノ要 ナ キ ヤ (最 近 思想 事 件 ヲ取扱 ヒ特

三 、 防諜 ノ 必要 上 軍 需 工業 関 係 者 ノ住 所、 居 所 等 ニ臨 ミ所 持 品 ノ捜 査 、 押 収 ヲ為 シ得 ル規 程 ヲ設 ク ル要 ナ キ ヤ ︵ 宇 都 宮 地検

第 八  其

他

ヤ (甲 府 地 検提 出 )

大 ナ ル ニ鑑 ミ厳 重取 締 ノ必要 上新 ニ法 規 ヲ制 定 スル ノ要 ナ キ

三、 経 済 統 制 閲題 ニ関 シ造 言飛 語 ア リ タ ル場 合 思 想 上 ノ影 響 甚

提出)

(前橋 地検 提 出 )

四、 現下 ノ時 局 ニ鑑 ミ 此 ノ際 特 ニ防 諜 上 考 慮 スヘ キ事 項 如 何

第 七  法 令 改 正

思 想 犯 ニ対 ス ル刑 罰 ノ種 類 竝審 判 手 続 ヲ変 更 ス ルノ要 ナキ ヤ

一、 現 下内 外 ノ思 想 犯推 移 ノ情 勢 ニ鑑 ミ治安 維 持 法 ヲ改 正 シテ

二 、邪 教 信 徒 ヲ転 向 セ シム ルノ 方策 如 何 (静 岡 地 方提 出 )

思 料 ス ル書 籍 ヲ熟 読 セ シム ルノ可 否 (前 橋 地 方 提出 )

一、 思 想 事 件 ノ未 決被 告 人 ニ対 シ思 想 傾 向 ヲ誘 導 ス ル ニ適当 ト

定 メテ長 期 ヲ定 メ サ ル モノ ヲ言 渡 スカ如 ク又訴 訟 手 続 ニ付 テ

場 ヨリ其 ノ立 法 上 運用 上 考 慮 ス ヘキ点 如 何 (東 京刑 事 地 検提

三、 最 近 ノ政 治 、経 済 、 思 想情 勢 ニ鑑 ミ裁 判 竝 検察 ノ実 践 的 立

例ヘ ハ思 想 犯 ニ対 シ テ ハ特 種 ノ不 定 期刑 ト シテ短 期 ノ ミ ヲ

セ シ ム ル目的 ヲ以 テ被 告 人故 ナ ク出 頭 セサ ルカ如 キ場 合 ニ於

特 ニ留 意 ス ヘキ具 体的 事 項 如 何 (長 野 地 検 提 出)

四 、新 体 制 組 織 工作 ノ進 展 ニ伴 ヒ左右 両 翼 運 動 者 ノ動 向 ニツキ

出)

三 審制 度 ヲ改 メ 二審 制 度 ト ス ルカ如 ク或 ハ又徒 ニ審 判 ヲ遅 延

テ ハ其 ノ陳 述 ヲ聴 カ ス シテ裁 判 シ得 ル カ如 ク或 ハ又 弁 護 人 ノ 数 ヲ制 限 ス ルカ如 キ之 ナリ ( 長 野 地 方 提出 ) 二、 思想 事 件 殊 ニ治 安 維持 法違 反 事 件 ニ関 シテ ハ其 ノ牽 連関 係

二 五  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺ (五) (一 九四一 )

は せ る か、 拘 禁 所 の現 在 出 来 て居 る 部分 で間 に合 は せ る か其 の時 に

と 云 ふ こと に付 て行 刑 局 長 から 先 づ簡 単 に御 説 明 を願 へれば 大 変好

求 の基 準 如 何 ﹂ と 云 ふ問 題 の御 協議 を願 ひま す。 予防 拘 禁 所 の運営

は行 刑 局 長 が見 え て居 られ ま す か ら順 序 を変 へて五 の ﹁予 防 拘 禁請

○ 議 長 (秋 山 刑事 局 長 ) 外 に御意 見 が な け れば 次 へ移 り ま す 。次

が当 り前 では な いか と思 ひま す 。其 処 で行 刑 局 と し ま し て は未 だ 刑

し て は考 へは持 つて居 り ます が、 之 は刑 事 局 の方 で御 考 へ下 さ る の

寧 ろ之 は刑 事 局 が 御考 へ下 さ る のが本 体 であ りま す 。 行刑 局 とし ま

る か と云 ふ こと に付 いて は実 は私 の方 でも色 々考 へて居 り ます が、

は 只今 の問 題 にあ り ま し た やう にど う 云 ふ者 を 予 防拘 禁 に付 し ます

応 じ て考 へて見 度 いと考 へます 。 尚 此 の運 営 方 針 に付 き ま し て は之

都 合 と 思 ひま す 。

事 局 と 打 合 せ が出 来 て居 りま せ ぬ が、 要 す る に転 向 と 云 ふ場 合 の解

昭和 十 六年 七 月  思 想 実 務 家 会同 議 事 録

○金沢 ︹ 次 郎︺ 行 刑 局 長  唯 今 刑事 局 長 から 御話 が あ りま し た 予防

の中 へ入 れ る か、 ど ち ら へ向 け る か に依 つて収容 の能 力 に関 係 があ

る の で、 さ う 云 ふ 点 に付 ても 考 へな け れば な ら ぬ と思 ひま す 。 以 上

釈 をど う 云 ふ様 に 見 る か、結 局 準転 向 は転 向 と 見 る か、 又 は非 転 向

簡 単 に申 上 げ ま す 。

ては 今 年 の長 官 会 同 に於 き ま し て御 説 明 申 上 げ て置 きま し た ので之 は此 の際 省略 致 しま す 。 現在 の予算 の関 係 に於 き ま し て全 国 で 一ケ

拘 禁 所 の模 様 を極 め て簡 単 に申 上 げ ます 。 此 の運営 方 針 に付 き ま し

所 、 東 京 に設 置 す ると 云 ふ こと にな つて居 り ます 。 其 処 で差 当豊 多

○ 議 長 (秋 山刑 事 局長 ) そ れ では東 京 地 方 か ら之 に付 て 簡 単 に 御

○ 井 本 ︹台 吉︺ 検 事 (東 京 地検 ) 唯 今 行 刑 局長 か ら御 話 が 御 座 い

説 明 を 願 ひま す。

ま し た や う に予 防 拘 禁 請 求 の基 準 と云 ふ点 は結 局 転 向 問 題 に重要 な

こと に な り まし た が 此 処 は約 二百 名 位 収容 の出 来 る 区劃 が出 来 て居 り ま す 。之 を改 造 致 し ま し て 一房 が三 畳敷 、 之 を 二房 打 抜 き まし て

摩 刑務 所 の 一角 に当 て同 所 の未 決 拘 置 所 と な つて ゐ た所 を利 用す る

結 局 六畳 敷 にし 、 之 を 一室 とす る。 そ し て現 在 の 二階 建 のも の をも

が あ る。 此 の文 字 を イ、 ロと 二 つにし ま し て、 最 も 厳 重 に之 を解 釈

一項 第 二 項 に、 ﹁ 罪 ヲ犯 ス ノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ルト キ﹂ と 云 ふ 文 字

し て非 転 向 を固 く堅 持 し 理論 的 にも 実 質 的 に も転 向 し な い者 を予 防

関 係 が あ る と思 ふ の で御 座 います が、 改 正 治安 維 持 法 第 三十 九条 第

も 充分 に行 かな い。 そ れ で工 事 も段 々後 れ て参 り ま し た が、 最 近 私

拘 禁 の対 象 とす る場 合 と、 も つと 広 く 漠 然 と解 釈 し ま し て準 転 向 の

改 造 し て更 に八 十 の房 を 造 ると 云 ふ こと で設 計 に掛 り 現在 や つて居

が 見 て参 りま し た所 で は、 今 の調 子 で行 けば 大 体 今年 の十 二月 頃 迄

り ま す。 所 が御 承 知 の通 り非 常 に物 資 が不 足 で、 セ メ ント の配 給 等

に は、 即 ち 今 年 一杯 に は どう やら収 容 が出 来 る様 にな る の では な い

程 度 迄含 む と解 す る場 合 と 二様 に考 へら れ る のであ り ます 。

者 は其 の対 象 と な るも のと考 へら れ ま す の で、 一度 此 の建 前 に於 て

イ の如 く解 釈 す る場 合 に於 き ま し ては、 大 体 に於 て現 に拘 禁 中 の

か と考 へて居 り ます 。 併 し 夫 れ 迄結 局 どう す るか と 云 ふ問 題 を考 へ な け れば な ら ぬ と思 ひま す が 、愈 々夫 れ迄 に是 非収 容 し な け れば な ら ぬ こと が起 り ます れば 、或 は 一時 仮 収 容 な り其 他 の方 法 で間 に合

のであ りま す。

新 の連 続 で解 除 す る こと は出 来 な い のでは な いか と 云 ふ様 に考 へる

予 防 拘 禁 に付 せ ら れた る者 は 生涯 殆 ん ど予 防 拘禁 に付 す る、 即 ち更

し て、結 局 イ 及 ロ の中 間 的 立 場 に於 て此 の調 和 点 を求 め て運 用す る

ことを 観 念 的 に 決 め る こと は不 適当 で あら う と思 は れ る の であ り ま

し て居 る 客 観情 勢 に拠 る も の であ り ます から 今直 に イ か ロか と 云 ふ

○ 太 田 ︹耐 造︺ 第 六 課 長  唯 今 の予防 拘 禁 請 求 の基 準 と云 ふ こと に

拝 聴 し 度 いと思 ひま し て、 斯 様 な問 題 を提 出 し た訳 であ りま す。

が適 当 では な いか と考 へる の であ り ます 。 御 列席 の各位 の御意 見 を

保 護 観 察 中 の者 も相 当 の対象 と な る のであ りま し て、 又 予 防 拘 禁 に

ロの如 く解釈 す る場 合 に於 き ま し て は現 に拘 禁中 の者 の みな らず

付 した る後 に於 きま し ては相 当之 は 退所 す るも のも多 くな る の では

の であ り ませ う が、 結 局 の運 用 に於 ては、 具 体 的 に、 即ち 、 本 人 の

存 じ ます 。 予 防 拘 禁 請 求 の基 準 は 一応 客観 的 に抽 象 的 に定 む 可 き も

関 し まし て、 私 共 立 案 の際 に考 へた こと を御 説 明 申 上 げ て見 度 いと

現 在 の思 想 状 態 を 一般 的 治安 状 況 な る客観 的 情 勢 に関 聯 せし め て考

結 局 此 の予防 拘 禁 請 求 の基 準 を最 も 厳格 に解 す る か或 は ロの如 く

な いか と斯 様 に考 へる の であ り ま す。

が、 結 局 予 防 拘 禁制 度 と云 ふも のも 我 国 の治 安 維 持 方策 の 一翼 で あ

解 す る かと 云 ふ こと を どう し て決 め れ ば宜 いかと 云 ふ点 であ りま す

慮 せ ら る べき で あ る やう に考 へて居 つた の であ りま す 。

今 回 の予防 拘 禁 制 度 に関 し ま し ては 数年 前 に考 へられ た制 度 と 異

る や う に解 釈 す る のが相 当 では な いか と 云 ふ やう に考 へる ので あ り

りま し て、 単 に在 監 中 の受刑 者 に限 らず 保 護 観 察 中 の者 も亦 之 を 予

ま す。 如 何 な る程度 に予 防 拘 禁 を す れ ば 治安 維 持 が為 し得 る か、 如

中 で此 の基 準 如 何 に関 聯 す る 問題 と し て考 へまし た 点 は、 予 防 拘 禁

何 な る程 度 にす れば 治 安 維 持 の目標 に合致 す る かと 云 ふ点 が予 防 拘

制 度 と 保 護観 察 制 度 と相 互 間 に融 通 性 を持 た な け れば 不可 ぬ と 云 ふ

を採 つた の であ り ます 。 其 の理由 は色 々あ る のであ りま す が、 其 の

付 す る も の は何 等論 議 を容 る ゝ余 地 は な いと思 ひま す が、 ロ の如 く

こと であ り ます 。即 ち、 予 防 拘禁 に付 せら れ た者 が退 所 し た後 に於

防 拘 禁 に 付す こと が出 来 る や う に、 其 の対象 者 に関 し 二元 的 の建 前

解 さ な け れば 到 底 治安 維 持 が不 十 分 と 思料 せ ら れ る場 合 は 先程 申 し

て何 等 の観察 を為 し得 な いと し た な らば 、 予 防拘 禁 所 の係 官 其 の他

禁 の基 準 を定 め る のに 重要 であ ると 思 ふ の であ りま す。 イ のやう に

ま す様 に 予防 拘 禁 に付 す る範 囲 が非 常 に広 く 、保 護 観 察 中 の者 も予

関 係 の方 々に於 て退 所 後 の こと を懸 念 せら れ其 のた め徹 底的 に本 人

解 す る丈 け で治 安維 持 が十 分 だ と 云 ふ様 に 解す る場 合 は 予防 拘 禁 に

て居 り ます が、 結 局 予防 拘 禁 の基 準 と 云 ふ も のは客 観情 勢 に依 つて

の思 想 及 心情 が改 善 さ れな い限 り、 一沫 の懸 念 で も あ る限 り、 予 防

防 拘禁 に付 せ ら れる や う に考 へら れ る の であ り ます 。 甚 だ漠 然 と し

拘 禁所 を 退所 せ し め な いと 云 ふ結 果 と なり 、制 度 の運 用 上 或 種 のぎ

一方 では 一旦保 護 観 察 に付 せ ら れ た者 は決 し て予 防 拘 禁 に付 し得 な

こち な さ が生 ず る虞 が あ ると 云 ふ こと を 一方 で考 へら れま す し、 又

其 の時 と場 所 に依 つて決 ま る の で 一定 の基 準 は立 てら れ な い こと に

そ れ では東 京 地方 検 事 局 では 現 在 ど う 云 ふ基 準 を 考 へて居 る か と

帰 著 す る の では な いか と云 ふ やう に考 へて居 り ます 。

云 ふ こと であ り ま す が、 今 申 し ま す や う に此 の変 転 極 ま り な く移 動

ふ結 果 を招 来 致 し 不都 合 であ り ます の で、 此 の二 の制 度 、即 ち、 予

犯 であ つて如 何 に治 安 上 有害 でも其 の儘 放 置 し な け れば な ら ぬ と云

いと致 し ます と、 保 護 観 察 に因 ては 改善 の目 的 を到 達 出 来 な い思 想

云 ふ やう な も のでな く し て、 唯 部 内 の者 と し て耳 に致 し た事 柄 を 御

思 つて左様 致 し て居 る のであ りま す が、 之 は所 謂 指揮 と か命 令 と か

適当 の処 置 を 御願 す ると 云 ふ こと に連 絡 を 取 らな け れば な らな いと

察 官 から内 務 省 に斯 う 云 ふ報 告 が あ つた と 云 ふ場 合 に私 共 が夫 れ を

り ます 。唯 其 の場 合 に 一番 困 りま す こと は実 は内 務省 関 係 の特高 警

左様 な こと に私 共 のや り ます こと は御 諒 承 を願 ひた いと思 ふ の であ

の思想 を改 善 し た場 合 は 一応 之 を保 護観 察 に移 し て社 会 に出 し て其

思 想 検 事 の方 に御 伝 へす ると 、思 想 検 事 の方 が特高 警 察 官 に対 し て

伝 へし て適 当 に善 処 を願 はう と 云 ふ軽 い意 味 のも の であ り ます か ら

の状態 を 査察 す る。 而 し て保 護 観 察 に付 し て見 た が矢 張 り どう し て

防 拘禁 及保 護 観察 、 相 互 間 の連 絡 を 計 る 必要 あ り と考 へま し て、其

も 保護 観 察 では 改善 の目 的 に達 し得 な いと云 ふ場 合 は再 び之 を予 防

あ りま す。 併 し左 様 な こと が御座 います る と特高 警 察 官 は之 は内 務

何 で こち ら へ斯 う 云 ふ報 告 を せ ぬ のだと言 つて御 叱 り に な る場合 が

処 で予防 拘 禁 に付 せ られ た る者 が予 防拘 禁 所 の観察 に依 れ ば既 に其

てあ る のであ り ます 。 其 処 で予 防 拘 禁制 度 を 二 本立 の建 前 に し た の

いと 云 ふ やう な こと に相 成 つ てし ま つて結 局 司法 関 係 当 局 には さう

省 へ報告 し ます が、 司 法 省 関係 の方 へは判 らな いや う にし て貰 ひ た

拘 禁 に付 し て其 の改 善 を 促す と云 ふ こと も出 来 得 る心 算 で立案 致 し

であ り ま す。 或 は基 準 如 何 と 云 ふ こと に関 聯 し て 一つの御参 考 にな

云 ふ こと が判 ら な いやう にな り ます ので、 非常 に結 果 は 面白 く な い

る かと思 つて申 上 げた 次 第 であ りま す。

方 面 に於 て の事 で承 知 し た こと が御 座 いま し た。 さう し て夫 れを其

と思 ふ ので あ りま す。 実 は 以前 にも 、 之 は鳥 取 ではあ りま せ ぬ が、或

こと にな り ます 。 そ こでさ う 云 ふ御 伝 へは致 し ます が、其 の場 合 に

う 云 ふ所 へ出席 致 す こと が あ る の で御 座 いま す が、 其 の際 思 想 係検

の方 面 の思 想 係 検事 に御 伝 へした こと があ り ます 。 す る と其 の検 事

○ 太 田第 六課 長  唯 今 の烏 取 から の御 話 で御座 いま す が、 誠 に御尤

事 各位 か ら何 等御 報 告 に接 し て居 ら な いやう な 犯罪 事 件 に付 て始 め

の方 は直 に特 高 課長 へ電話 を掛 け て斯 う云 ふ こと を知 ら せ な いと 云

云 ふ調 子 で、 警 察 の方 へ適 当 の処 置 を為 さ れ るやう に御 願 ひ した い

て耳 に致 した り或 は それ を文 書 で見 た り致 す こと があ る ので御 座 い

ふは怪 し か らん と言 つて御 叱 り にな つた。其 の結 果 特 高 課長 から 内

何 処 から聞 いた と 云 ふ こと が な くし て唯 斯 云 ふ こと を耳 にし た がと

ま す。 能 く調 べ て見 ま す ると 特 高 警察 官 が内務 省 に報 告 し て来 た も

と 私共 常 に考 へて居 る所 であ りま す。 私 共 実 は内 務 省 に御座 いま す

のが そ れ に現 は れ たり 或 は其 の他 の方 法 で現 は れ る の であ りま す。

は れま し て少 し ゴ タ〓

務 省 へ対す る抗 議 と な り、内 務 省 から 我 々に対す る抗 議 と な つて現

る例 の中 央 防諜 委 員 会 或 は其 の他 各種 の会 合 が御 座 いま す ので、 さ

唯 今鳥 取 から 御話 のあ り まし た不 敬事 件 等 も 矢張 り さう 云 ふ所 から

致 し ま す が、 其 の出 所 は何処 であ ると 云 ふ ことは 言 は れ な いで、 唯

し た こと が御座 いま し た。 我 々は御 伝 へは

我 々は耳 に致 し た の であ り ます 。 左様 な場 合 に於 き ま し て私 共 は 私 のや つて居 り ます る こと は其 の事 実 を直 に思想 係 検 事 に御 伝 へし て

が、 さう 云 ふ報 告 が怠 た り勝 ち であ り ます のは、 之 は思 想 事 務 に付

あ る。 唯 見 て非 常 に其 の分 量 が違 ふ ので驚 い て居 る次第 であ ります

省 に三 通宛 報告 が参 り ま す か ら、 其 の 一通 を 我 々の方 へ貰 ふ こと が

省 には し て居 る やう な有 様 であ り ま し て、 それ も或 る場 合 に は内務

ま す 。私 共 の方 で報告 を受 けま し た分 量 の十倍 二十 倍 の報 告 を 内務

察 官 は実 は思 想検 事 の方 に情 報 は余 り出 し て居 ら れな いやう に思 ひ

ふ の であ りま す。 併 し斯 様 な 事 例 が な く ても判 りま す や う に仲 々警

斯 ふ云 ふ こと を聞 き 及 ん だ がと 云 ふ や う にし て善 処 を 願 ひ た いと思

ては大 体 二 つ の考 へ方 があ り ます 。 一つは広 く思 想 問 題 を取 扱 ふ、

牒 を出 し てあ る筈 であ りま す が、此 の思 想 犯 対策 協 議 会 に付 き ま し

凡 て機 密 費 の形 に於 け る費 用 であ り ます 。 そ れ に付 て各長 宮 宛 に 通

即 ち思 想 犯 対策 協 議 会 の費 用 は之 は 正式 の費 用 で は御 座 いませ ぬ。

り依 命 通 牒 が発 せ ら れ て居 り ます 。 そ れは 之 に要 し ま す る費 用 が、

あり ます 。 之 と 同 じ趣 旨 の こと を 一両 日前 に各 長 官 宛 に刑 事 局 長 よ

犯 対策 協 議 会 を 運営 し て戴 き た いと 云 ふ こと の結 論 に到達 し た の で

に於 き まし て前 に プ リ ント を差 上 げ ま した や う な方 法 に依 つて思 想

一つ の案 だ と思 ふ のであ り ます 。所 が其 の前 者 の広 い意 味 に於 け る

であ らう と 思 ひます 。 も う 一つは本 当 の思 想会 議 にす ると 云 ふ のも

思 想 係 検 事 の方 とし て非 常 な 御 苦 心 が存 在 し て居 るや う に考 へます 。

対策 協 議 会 に付 き まし ては文 部 省関 係 の思 想 対策 協 議 会、 思 想 対策

即 ち全 般 を 含 め た広 い意味 に於 け る会 合 によ ると 云 ふ のが 一つの案

そ こで今 度 新 し い法律 に於 て強制 捜 査 権 を規 定 した に付 きま し ても、

委員 会 と 申 し ま す か、 さう 云 ふも のがあ り ま し て、 之 を各 府 県 に設

いて警 察 官 の認 識 不 十分 であ ると 云 ふ こと が 一番 の理由 であ る。 そ

如 何 にし て指 揮 権 を確 立 す る か と 云 ふ こと は、 其 の前 提 とし て警 察

な い地方 の方 も あ ると 思 ひ ます が、 此 の思 想 対策 協 議 会 は相 当広 い

置 し てあ り ま す が、 どう も余 りそ れ が活動 致 しま せ ぬ ので、 御 承知

れ に は非 常 に複 雑 なる色 々な 理 由 も あ ると思 ひ ます 。随 つて そ こに

の方 面 から、 之 は 憲兵 も さう であ り ます が、 円 満 に情 報 蒐 集 が完全

範 囲 のも のを 入 れ て置 きま し て、 此 の思 想 犯 対策 協 議 会 と同 一の会

に用 意 が出 来 る こと にな ら な け れ ば指 揮 権確 立 は全 き を期 し 得 な い と 云 ふや う に考 へまし て、其 の点 に我 々は 重点 を 置 いて色 々の処置

対策 協 議 会 と し て適 当 な 機構 を考 慮 し た の であ り ます 。従 つて此 の

く であ りま し て即 ち思 想 対策 協 議 会 では御 座 いま せ ぬ。其 の思 想 犯

会 それ か ら思 想 検察 会 同 も 左様 な意 味 合 に於 き ま し て特 高警 察官 或

要 領 を御 覧 願 へば判 ると 思 ふ のであ り ます が、 此 の要 点 は検 察 上 の

議 に取 られ る嫌 が あ り ます。 思 想 犯対 策 協 議 会 は其 の名 の示 す が如

は憲 兵 を完 全 に掌握 され る 方法 とし て御 利用 を 願 へれば 夫 れ に越 し

首脳 部 の集 ま る 秘密 会 議 であ ると 云 ふ点 には要 点 があ る の であ り ま

を施 し 且 つ思 想 係 検事 各 位 に 対 し て色 々御願 をし な け れば な ら ぬ こ

た こと は な いと思 ふ の であ り ます 。 思想 犯対 策 協 議会 に付 き ま し て

の警 察 部 長、 特 高 課 長 或 又憲 兵 隊長 と 云 ふや う な極 く数 人 の秘 密 の

す 。従 つて検 事 正 を中 心 と致 しま し て検 事 局 の思 想 検事 或 は警察 部

と にな つた の であ り ます 。 又御 手 許 に差 上 げ まし た思 想 犯 対 策協 議

は此 の前 の臨 時 思想 実 務 家会 同 に於 き ま し て刑事 局長 から 御指 摘 に

委員 会 にし て戴 きた い の であ りま す。 其 処 に於 ては あ ら ゆ る極 秘 の

な つた問 題 があ り ます か ら、 其 の後 各 思 想係 検 事 の方 か ら色 々御 問 合 せ が あ りま し た が、其 の後 の状 況 を 考察 致 し ま し た結 果 、 刑事 局

情 報 が議 せ られ 又 具体 的 事 件 に付 ては指 揮 も行 は れ る と云 ふ や う に

一つ御 手許 へ差 上 げ ま した 思 想 検察 会 同 に関 す る件 であ りま す が、

ば 併 せ てそ れを 御開 催 にな つて 一向 差 支 へな い の であ りま す 。 もう

之 も 一両 日前 に各位 の長 官 宛 に刑事 局 長 の依 命 通牒 と し て発 送 し て

運 用 を し て戴 き度 いの であ ります が、更 に其 の委 員会 に於 て若 し 必 要 な り とす るな ら ば 外部 の者 を其 の委員 会 に招 致 す る。 或 は 又年 に

きま し ては之 は正式 の予算 を 取 つて あ りま す。 尚 地方 裁 判 所 別 の検

置 き ま し た。 此 の方 の費 用 も 検 察会 同 の召集 費 所 謂 旅費 日当 等 に付

察 会 同 、 従来 の特高 主 任会 議 に比す べき も のに付 き ま し ては 或 る程

二三 回 は さう 云 ふ広 い意 味 の委 員 会 を開 催 さ れ る こと に依 つ て広 い

つて居 り ます 。 又 た憲 兵 の方 も さう であ り ます が、警 察 関 係 に於 て

いと 思 つて居 りま す。 併 し 控 訴 院管 内 別 の思 想 検 事 会同 に於 け る接

度 の接 待費 も予 算 上取 つて御 座 います 。 従 つて最 近 に之 も 配 布 した

意 味 の 一の連 絡 と 申 し ます か、 脈 絡 を御 付 け にな つた ら どう か と思

は殊 更 に大 した 秘 密 でな い やう な情 勢 でも之 を 極 秘扱 に致 し た り 又

待 費 其 他 の雑 費 及 此 の控 訴 院 地 方裁 判 所 管内 別 に於 け る検 察 会同 の

具 体 的捜 査内 容 にな り ます ると之 を外 部 に出 し た がら な い傾 向 が あ り ます 。従 つて多 少検 察 に関係 な いや う な人 も 這 入 つて居 る協 議会

れ て居 ら な い の であ り ます 。 従 つて夫 れ を補填 致 す意 味 に於 き まし

て矢 張 り機 密 費 の形 に於 き ま し て其 の費用 を、 只今 会 計 に於 て小 切

接 待 費 の中 に弁 当 代或 は夜 食 代 、斯 う 云 ふ も のは 正式 の予 算 に含 ま

手 を切 つて居 ると思 ひ ます が、 御送 り致 し ます か ら、 夫 れ に依 つて

であ るか ら、 左 様 な極 秘 な 情勢 、 極 秘 の捜 査 の経 過 と 云 ふも のを蒐

の出 来 る 丈 け の捜 査 、本 当 の意 味 の捜 査或 は検 察 の協 議会 と 云 ふや

あ りま す。 そ こ で此 の協 議 会 に於 きま し ては唯 今 述 べ た やう な 極 秘

宜 し く 計 ら れた いと思 ふ の であ り ます 。 大体 検 察会 同 とし ては控 訴

集 し て適 当 に指 揮 を 下 すと 云 ふ ことは非 常 な困 難 を伴 う と思 ふ ので

う に願 ひ た いと 思 つて居 り ます。

に な る。 地方 裁 判所 別 のも の に付 き まし ては従 来 の特 高 主 任 会議 と

院 管 内 別 のも の に付 き まし ては 従来 のブ ロツ ク会議 と形 の似 た も の

形 の似 た も のと な る訳 であ りま す が、 併 し此 の二 つ共 従 来 の夫 等 の

尚 唯今 機密 費 の形 に於 て其 の費 用 を 御 送 り し たと 言 ふ と、 如 何 に

も のし か 御 送 りす る こと は出来 な い。 従 つて厖 大 なも のにな り ま す

此 の検 事 が警 察 官 か ら各 種 の報 告 を受 け て且 つ適 正 な る指 揮 を下 す

会 合 と 比 較致 し ま し て其 の問 題 の重点 が多 少 異 な り ま し て、何 れも

も沢 山 御送 りし た や う で あ りま す が、 実 は余 り あ りま せ ぬ、 少 額 の

る と費 用 の点 か らも 色 々支 障 が出 る の では な いかと 思 ふ のであ り ま

ロツ ク会 議 の場 合 と も異 な りま せ うし 、 従来 特 高 主任 会 議 は 教養 訓

と 云 ふや う な矢 張 り検 察 中 心 の会議 で御 座 います か ら従 つて其 のブ

し て、 斯様 な本 当 の中核 組 織 と し て の協 議 会 を考 慮 し た のであ り ま す 。 伴 し 之 は従 来 あ る地方 に於 き まし てお や り にな つ て居 る広 い意

会議 では な くし て矢張 り検 察 指 揮権 の確 立、 之 が警 察 官 に対 す る徹

練 の会 議 であ りま す が、 今 度 の会議 は教 養訓 練 に於 け る其 の意 味 の

味 の思 想 対策 協 議 会 を 止 め て戴 き た いと云 ふ趣 旨 では な いの であ り ま し て、 左 様 な も のを其 の庁 の費 用 に於 てお や り にな る 向き に於 て

底化 と 云 ふ点 に眼 目 が あ る の であ り ます 。尚 此 の外 に検 察 指揮 権 の

は之 も又 色 々な情 報 の蒐 集 或 は 一般 思 想 情 勢 に付 い て認識 を持 た れ る意 味 に於 てや る の であ り ます か ら、 費 用 の関 係 さ へ許 しま す な ら

御 報告 を願 つて、 中 には之 を是 非 載 せ ると 云 ふ やう

現在 問 題 にな つて居 りま す のは此 の前 の会 同 の時 以 来 刑事 局長 の

に附 記 し て頂 けば 成 る べく 載 せ る やう に 致し た いと思 つて居 り ます。

考 慮 す る と言 つて居 ら れた 例 の機 密 費 の問 題 であ り ます 。之 も早 晩

し ては どし〓

地 か ら参 り ま す る極 秘情 報 を私 共 の方 で編纂 し て之 を配 布 致 し ます

何 と か 解決 しな け れ ば な らぬ と思 ひま し て非 常 に刑 事 局 長 に御 骨 折

し た し又 現在 も考 慮 し て居 る の であ りま す。 例 へて申 し ます る と各

る こと も矢張 り此 の検察 指 揮 権 の確 立 と 云 ふ こと に関聯 し て考慮 実

を願 つて居 り ます が、其 の程 度 申上 げ て置 き た いと思 ひま す 。

徹 底 化及 び警 察 官 と連 絡 協 調 に付 き まし ては色 々従来 も考 慮 致 し ま

読 み にな つて居 る か分 ら な い、 そ れ は載 せ て然 る べき も のに付 き ま

施 し た の であ りま す が、 そ れ に付 き まし ても其 の内 容 を ど の程度 御

せ ると ど う も治 安 維持 法 の求刑 がぴ ん と来 な いと云 ふや うな こと を

の量 定 には適 正な る求 刑 を 考 へなけ れ ば なら ぬ、 判 事 の方 から 言 は

う な努 力 と協 力 が望 ま し い の であ りま し て、換 言 す れば 適 正な る刑

な く、 検 事側 に於 ても判 事 を し て適 正 な る刑 の量 定 を為 さ し め るや

二 六  思 想 実 務 家 会 同 議 事 録 ︹ 抄︺(六) (一 九四三)

昭和十 八年 七 月  思 想実 務 家 会 同会 議 録

識長 ( 秋 山 検事 長 ) そ れ で は 一の問 題 を 終 つて、 二 の問 題 に 移 り ます 、 ﹁二、 適 正な る刑 の量 定 に関 す る事 項 ﹂

ふ こと で、判 検 事 両方 から考 へて見 た な らば ど うか と 云 ふ意 味 で出

聞 きま す 。是 は適 正 な る求 刑及 適 正 な る刑 の量 定 に関 す る事 項 と 云

し た の であ り ます 。左 様 御諒 承 を願 ひます 。 両方 か ら 忌憚 な き 御意

堀 ︹真道 ︺ 判事 (東 京 控) 合 同 係 と しま し て此 の協 議 事 項 に 付

見 を御述 べ願 ひた いと思 ひます 。

き まし て御 説 明 申 上 げま す 。 此 二 の事項 だけ を見 ます と 判検 事 合 同 の協 議 事項 とし て不適 当 のや う に見 え ます 。之 を出 し ま し た趣 旨 は

草 鹿 ︹浅之介︺ 部長 (東 京刑 地) 此 の問 題 は実 に協議 事 項 を 見

。

議 長 (秋山 検 事 長) そ れ では御 意 見 を伺 ひます 。 先 づ 東 京 か ら⋮⋮

治 安 維 持法 に於 き ま し ては 他 の事 件 も同 様 であ りま す が、 殊 に判決 の結 果 刑 の量 定 と 云 ふ こと が大 切 であ りま し て、 兎 角 従来 治 安 維 持

検 事 側 の方 から 不満 があ り ま し て、 屡 々此 問題 が論 議 さ れ た の であ

ま した時 は毎 回 出 て居 りま す問 題 と 同 じ形 式 にな つて居 りま す ので、

法 事 件 に付 きま し て は刑 の量 定 に関 し て検 事 の求 刑 と開 き があ る、

り ます 。 そ れ で是 は結 局 一斉 な る刑 の量 定 を す る には判 事 ば か り で

為 に は や はり裁 判 に携 は る者 が斯 う云 ふ事件 が あ つた から俄 に思 想

依 つて刑 を量 定 し て行 く、 是 は私 が言 ふま でも な い こと です が、 其

や は り具 体 的 な問 題 に当 つて、 其 の個 々の事 件 に就 て色 々な事 情 に

猶 予 を付 け ろ と か、 斯 う 云ふ 風 に此 の問 題 を 取扱 ふ こと は出 来 な い。

一般 的 に例 へば 治 安維 持 法 違 反 は全 部 重 刑 にし ろと か、 或 は皆 執 行

ど う も裁 判 所 の方 の刑 の量 定 と 云 ふ こと か ら 言 ひま すと 抽 象的 に、

あ り ま せ ぬ、 従 来 通 り の考 であ り ま す。 唯 斯 う 言 つた やう な 問 題 は

何 時 も の通 り な問 題 だ と考 へま し た ので、 改 め てど う と 云 ふ意 見 も

れた の では な い かと察 せ ら れ る やう な 場合 がな い でも な いの であ り

往 々にし て求 刑 の根 拠 が専 ら捜 査 機 関 の取 調 の結 果 のみ を重 視 せ ら

こと は茲 に改 め て申 上 げ るま で もな く 当 然 の こと では あ り ます が、

特 に求 刑 に 付 て斯 様 な 御 留意 を御 願 す る 訳 で あり ま す 。尤 も 斯 様 な

機 関 た る検 事 の求 刑 を 重 要 な る参 考 と す る こと は 当然 であり ま す 。

す。 勿 論 刑 の量 定 は裁 判 所 独自 の裁 定 に係 る のであ り ま す が、 捜 査

み な らず 、 予 審並 に公 判 の結果 を も十 分 参 酌 し て戴 き た いと 思 ひま

た が、 求 刑 の点 であ りま す 。 求 刑 に付 て は捜査 機 関 の取 調 の結 果 の

関 係 の本 を 朝 か ら読 出 す と 云 ふ こと では いけ な い、 や はり平 素 の教

に比 し て被 告 人 の情 状 が極 め て有 刑 にな り ま し て、 而 も そ れ が事 の

ま し て、例 へば 予 審 並 に 公判 に於 け る取調 に依 ると そ れ ま で の取調

唯 具 体 的 な 事件 に 付き ま し ては其 の具 体的 な事 件 を 出 来 る だ け自 分

り ま し て、 結局 そ れ以 外 に何 も適 正 な刑 の量 定 の仕 方 は な いと 思 ふ、

持 つて居 れ ば是 も適 正 な 刑 の量 定 が個 々 の問 題 に就 て出 来 る の であ

かな け れ ば いけ な い、 其 の裁 判 を や る人 が さう 云 ふ教 養 と識 見 とを

俄 に新 聞 を 読 み出 す と 云 ふ こと でな く 、 や は り平 素 か ら 心掛 け て行

な るべ き も の は判決 時 の客 観 情 勢 、 そ れ から被 告 の意 識 水 準、 活 動

御 参 考 迄 に申 上 げ る ので あ りま す が 、思 想 事 犯 に於 て量 刑 の事 由 と

考 へま す ので、 此 点 も申 上 げ て置 き ま す。 それ か ら次 の点 は ほ ん の

求 刑 と 宣告 と の間 に著 し い相 違 の原 因 が存 し て居 る ので はな いか と

応 す るが如 く思 料 さ れ るや うな 場 合 が あ る の であ り ま す。 此 辺 にも

筈 と 思 つ て居 りま す と、 求刑 は依 然 捜 査機 関 の取 調 の結 果 の み に相

真 相 に触 れ る も のと 信 ぜ ら れ る、 其 点 に付 ては検 事 に於 ても 諒 承 の

︹マ マ︺

養 と時 局 の要請 が何 であ るか と 云 ふ こと に付 き まし て今 日 明 日 から

が知 る、 斯 う 云 ふ こと は勿 論 必要 であ り ます か ら、 従来 共検 事 局 の

場 合 に は転 向 の真 偽並 に程 度 等 が其 の主 な る も のと 思 は れ ます が、

形 態 、 現在 の心 境、 被 告 は転 向 を表 明し て居 り ます の で、 さう 云 ふ

就 中転 向 の真 偽 並 に程 度 と 云 ふ点 は 思想 犯 の特殊 性 に鑑 みま し て量

て は今 後 共 やは り色 々な資 料 の提 出、 其 他 の こと に付 て御 願 し た い と思 ひま す か ら、 此 方 から御 願 し た時 ば か り でな し に検 事 局 の方 か

刑 上最 も重 要 な 点 でも あ り ます 。他 の点 は概 ね客 観 的 事 実 と し て判

方 に御 協 力 を願 つて居 る の です が、 裁判 所 の方 でも 必 要 な事 項 に付

ら も進 ん で参考 にな る資料 と 云 ふ やう な も のが あり ま し た ら積 極的

定 し 易 い の に反 し ま し て転 向 の真 偽程 度 は純 然 た る主 観 的 事実 であ

る為 に其 の識 別 に相 当 困 難 を 伴 ふ場 合 があ り ま す から 、 予 審 と致 し

に出 す 、是 も従 来 屡 々協 議 さ れた こと で、 新 し い こと であ りま せぬ、

坂 間 ︹孝 司︺ 判 事 (東 京刑 地) 刑 の量 定 と云 ふ立 場 か ら 事 案 の

ま し ては此 点 の取 調 に特 段 の留意 を致 し て、 単 に現 在 の心 境等 に関

大 体 裁 判 所 の考 へとし ては 是 だ け です 。

審 理 と 云 ふ 方面 から 見 ま す と、 先 程会 同 係 の方 から御 話 があ り ま し

す る手 記 又 は上 申書 と云 ふも のを援 用 する だ け でな く 、更 に其 点 の

落 ち るま で訊 問 し て、 殊 に曩 に思 想転 向 に依 つて不 起 訴 又 は執行 猶

は得 難 い の ではな い か、斯 様 に考 へるも ので あ りま す 。 従 つて私 共 ︹ 不明︺ と致 しま し て洵 に □ らな いな が ら も此 問 題 に付 きま し て月 々如 何 な

い問 題 であ り ま し て、抽 象 的 に論 議 す る と致 し ま し ても容 易 に結論

偖 て刑 の量 定 の問 題 であ りま す が 、是 は司 法 実 務 上最 もむ づ か し

と は是 は 当然 の こと ではな い かと 考 へる ので あ りま す。

予 と な つた前 歴 者 が再 び今 度 の事件 で転 向 を 表 明 し た と云 ふ やう な

要 旨 を 調 書 に摘 記 し ま し て、 且 転 向 の動 機 理由 に付 き ま し ては腑 に

場 合 に は以前 の転 向 の動 機 理由 等 の相 違、 其 の程 度等 に付 て飽 ま で

す 。 さ う し て又 日頃東 京 地 検 の思 想部 に於 き ま し て私 共 が考 へ、 論

る こと を考 へ、 又 如何 な る こと を論 じ 合 つて居 る のか と 言 ふ こと を

じ 合 つ て居 る事 柄 を申 上げ る こと は 又 一面 最 近 に於 け る私 共 の求 刑 、

率 直 に披 瀝 致 し ま し て御 教 授 を仰 き た い、斯 様 に考 へる の であ りま

る の であ りま す 。此 点 はあ り触 れ た こと であ りま す が 、御 参 考 迄 に

其 他 に付 て現 は れま し た所 の行 き 方 を理 解 し て戴 く所 以 では な い か、

鑑 別 し得 る如 く や る べき では な い かと 考 へま し て、 左 様 に努 め て居

申 上 げ て置 き ま す。 尚 ほ其 の意 味 に於 て捜 査機 関 の側 に於 か れ まし

追 窮 し て、之 に対 す る応 答 を通 じ て自 ら転 向 の真 偽、 程 度 を調 書 上

ても 此 点御 留 意 を戴 けば 所 謂 連 絡協 力 の立 場 か ら言 つて 一層 結構 と

た戦 時 下 に於 け る治 安 維持 法 の再 検 討 、 あ の問 題 に懸 つて来 る の で

斯 様 に考 へる ので あり ま す、 問 題 は結 局開 会劈 頭院 長 の申 され ま し

議 長 (秋山 検 事長 ) 只 今 東 京 の予審 から 御意 見 が あ り ま し た、

存 ず る の であ りま す。

し た いと 考 へる のであ り ま す 。唯 予 審 と公 判 の結 果 を参 酌 し て求 刑

何 れ も結 構 であ りま し て検 事 と致 し ま し て は御 期待 に副 ふ やう に致

山 口 ︹弘 三︺ 検 事 ( 東 京 刑 地 ) 只 今 の東 京 の裁判 所 側 の 御 意 見

の量定 に関 聯 す る職責 を持 つの であ り ます 。 従 つ て刑 の量 定 の問 題

し ても法 律 の適 用 に付 て意 見 の陳 述 をす る 、斯 う した こと に於 て刑

り ます 。 此 事 は敢 て申 す ま でも な い のであ り ま す が、 検 事 と 致 しま

さ れ な い自 由 な判 断 に依 つ て決 定 さ る べき こと であ る のは勿 論 であ

又会 同 係 の御説 明 にも あり ま し た通 り 要 す る に判 事 の何物 に も拘 束

あ りま す 。 刑 の量 定 は只 今坂 間 判 事 の御 言葉 に もあ り ま し た通 り、

を す る と云 ふ問 題 で あり ま す が、 予審 に付 き まし ては抗 告 を せず に

は検 事 に 取 つて も極 め て重要 な 問 題 であ る を失 は な い訳 で あり ま し

。

そ れ が 公判 に廻 つた以 上 予 審 の取 調 と云 ふ も のを検 事 が 一応 認 容 し

東 京 の検 事側 の御 意 見⋮⋮

た と 云 ふ こと にな る訳 であ り ま し て、 そ の結 果 を斟 酌 す る こと は当

て、 判 事 検事 合 同協 議 会 に於 て此 問 題 が取 上 げ ら れ た のも茲 に所 以

様 な立 場 より 本問 題 に付 き 考慮 を致 し て居 る訳 であ り 、 又 本 日 の発

が あ ると 理解 し て居 る ので あ りま す 。検 事 と致 し ま し ては や はり 斯

言 も斯 る立 場 に於 て なす も の であ る と云 ふ こと を予 め 申 上 げ て置 き

に検 事 が之 を斟 酌 す べ き かと 云 ふ こと に相 成 り ま す と、 多 少 問 題 が あ る の では な い かと思 ふ ので あり ま す 。公 判 の結 果 は大 体 右 の方 に

た い ので あり ま す、偖 て本 論 に入 り まし て当 初 に先 づ所 謂 執 務常 識

然 であ ら うと 思 ふ ので あり ま す、 併 な がら 公判 の取 調 の結 果 を 如何

こと にな り まし た 場 合 に は、 や はり検 事 の心 証 に基 い て求 刑 す る こ

傾 い て居 る のであ るが、 検 事 の心 証 は飽 ま で左 であ る と 云 ふ やう な

そ れが決 ま り 切 つた 事 件 で あ れば 一議 に及 ば ず 懲役 二年 或 は三年 と

り ま す。例 を求 刑 に採 つて見 ます な ら ば 日常 求 刑 を決 めま す 場 合 に

と 申 し ま す か、 此 の執 務常 識 な るも のを検 討 致 し た い と思 ふ の であ

り ま す。 と もす れ ば無 反 省 に陥 り思 はざ る誤 り を犯 す 原 因 も茲 にあ

云 ふや うな も のと は少 し く趣 き を異 にす るも のが あ ると 思 ふ のであ

来 ると思 ふ の であ り ま す。 従 つ てそ れ は単 な る惰 性 、 過 去 の経 験 と

のな が ら 一つの力 でゴ リ ートし て私 共 に至 つ て居 ると 云 ふ こと が出

︹カ テ ゴ リー と ︺

決 め てし ま ふ のであ り ま す。 是 は 一体如 何 な る根拠 に基 くも の であ

ると 思 は れ る の であ り まし て、変 転 極 ま りな い現 時 の やう な時 局 に

民 の 一人 々々が重 大 責 務 を 感 じ、 非 常 に緊張 を し て此時 局 に対 処致

りま せ う、 此 場 合 若 し 之 に反 対 す る者 が あ れば 非常 識 だと 言 つ て 一

し て居 る の であ り ま す。 支 那事 変 勃 発 以 来情 勢 の激 変 実 に驚 く べき

於 てに殊 に此 の危 険 が あ ると 思 ふ の であ り ま す。 申 す ま で もな く 目

つて居 る ので あ りま す 、吾 々の 日 々 の執 務 上 此 の執 務 常 識 な る も の

下 我 国 は挙 国 以 来真 に未 曾 有 の重大 時 局 に当 面 し て居 り ま し て、国

ゝ根柢 を成 し て居 る と す ら言 ひ得 る のでは な いか と思 ふ の であ り ま

で あり ま す。 所 謂 執 務 上 の常 識 な る も のが 日 々の執 務 上 相 当 物 を有

す 、然 らば 此 の執 務 上 の常 識 は 如何 にし て形 成 せら れ るか と申 し ま

つ て来 て居 る こと は申 す ま で も あ りま せ ぬ。 斯 る時 に於 て は特 に過

も のが あり ま し て、 国 家 の情 勢 も亦 之 に対応 す る国 民 の頭 も日 々変

蹴 せら れ る ので あり ま す 。言 ひ換 へれ ば執 務 常 識 に反 す ると 云 ふ の

す と、 一言 にし て之 を言 へば 長 い間 の経 験 の蓄積 に依 つ て形 成 せら れ る、 斯 様 に申 す こと が出来 る のでな いか と思 ふ の で あり ま す。 そ

し て再 検 討 を加 へる要 があ る、 寧 ろ是 よ り脱 却 し て其 時 々の国家 の

去 に於 け る経験 の蓄 積 に依 つて形 成 せ ら れ る所 謂 執務 上 の常識 に対

件 と雖 も各 事 件 に依 つて 重軽高 低 が あり ま す 。其 の活 動 に於 て も亦

維 持 法違 反 事 件 に於 け る刑 の量 定 の問 題 であ り ま す。 治 安維 持 法 事

要 請 に間 然 す る所 な から し め る やう に最 善 の努 力 を払 は なけ れば な

れ が極 め て貴 重 な も のを 含 む こと は申 す ま でも あり ま せ ぬ、 従 つて

省 な 惰 性 のみ に左 右 せら れ て思 はざ る誤 り を 犯 す こと な きを 保 し 難

極 め て活溌 にし て而 も積 極 的 な も のがあ りま す 。 又極 め て微 温 的 で

此 の執 務 上 の常 識 に基 い て求刑 をす る場 合、 先 づ大 体 間違 はな い、

いと 思 ふ ので あ りま す 。 故 に私 共 と 致 し ま し て は執 務 上 の常 識 を 尊

あ つ て且 受 身 のも のが あ りま す。 決 し て 一概 に言 へな い ので あり ま

ら ぬ の でな いか、 斯 様 に 考 へて居 る次 第 であ り ま す。 以上 を前 提 と

重 す る と 共 に事 に臨 みま し て其 の再検 討 を怠 ら ぬや う に心 掛 け や う

す が、 特 に共 産 主義 思 想 に基 く も のは 是 は 国家 に対 す る叛 逆 思 想 の

致 しま し て個 々の問 題 に 入 らう と 思 ふ のであ り ま す が、 第 一は治 安

でな いか、 斯 様 に話 し合 つて居 る の であ りま す 。尤 も何 が執 務 上 の

ふ所 に落 着 く と思 は れ る の であ りま す 。併 な が ら或 る場 合 に は無 反

常 識 か と 云 ふ こと にな り ます と 相 当 む づ かし い問題 に な ると思 ふ の

一人 でも あ ると 云 ふ こと は 万邦 無 比 の国 体 を有 す る我国 とし ま し て

実 践 であ ると 云 ふ こと が言 へる と思 ふ の であ り ます 。 斯 る犯 罪 者 が

少 なく と も 最 も悪 い場 合 を考 慮 し まし ても 可 も なし 不 可 も な しと 云

であ り ます 。 従 つて此 処 で は極 め て大 雑 把 な 意味 で執 務 上 の常 識 と

洵 に遺 憾 千 万 であ る と言 は なけ れば な ら ぬ ので あり ま す 。 一億 国 民

云 ふ こと を使 つ て居 る こと にな る 訳 で あり ま す 。 そ れ は結局 長 い間 の経験 の蓄 積 では あ り ます が 、経 験 の蓄 積 と し て極 め て漠然 た る も

く事 犯 を 惹起 し た者 に負 はし む べき 刑 訴 上 の責 任 と云 ふ点 に於 て従

発 後 に於 て治安 維 持 法 違 反事 件 を犯 し た者 、 特 に共 産 主義 思 想 に基

任 を痛 感 せ ざ る を得 な い の であ りま す 。是 に於 て私 共 は支 那 事 変 勃

容 易 な ら ぬ こと で あり ま す 。職 を司 法 に 奉ず る者 と し ま し て其 の責

執 行 猶 予等 の前 歴 を有 す る者 の犯 罪 が 断 然多 い の であ りま す 。 是 は

きま し ても 此種 の事 犯 が後 を絶 たな い ので あ りま す 。 而 も起 訴 猶 予、

然 る に支那 事 変 勃 発後 に於 き ま し ても 、更 に大 東 亜戦 争 勃 発 後 に於

の此 上 な い恥 辱 であ る と 言 は な けれ ば な ら ぬと 思 ふ ので あり ま す。

ら れ る のであ り ま す。 之 を要 す る に時 局下 に於 て は治 安 維持 法 に違

語 を漏 ら す のを常 とす る ので あ りま し て、 其 の度 毎 に深 く反 省 さ せ

ま す が、 斯 る場 合 に於 き ま し て是 等 の局外 者 は非 常 な驚 愕 と忿 懣 の

尚 且 共 産 主義 運 動 の絶 無 な ら ざ る こと を告 げ る こと が あ る の であ り

で あ りま す。 私 共 は或 る機 会 に於 て全 く の局 外 者 に戦 時 下 に於 ても

は せ ぬ か と思 ふ の であ り ます 。 又 以 て深 く心 す べ き で あ ると思 ふ の

る と 考 へら れ る の であ り まし て、 此事 が事 件 を軽 視 す る こと に なり

共 は 日 々此 種 事 犯 に触 れ て居 りま す為 に或 る程 度 感 覚 が麻 痺 し て居

り ま す が、 深 く 心 す べ き こと であ ると 思 ふ ので あ りま す 。更 に 又私

め て切実 な 問 題 と し て採 上 げ ざ る を得 な い の であ り ま す。 少 し く大

の切 実 な る要 請 であ る と 云 ふ こと を痛 感 致 し て居 る次 第 であ りま す 。

反 し た者 に負 は し む べ き刑 責 の絶 対 価 を 厳 に再 検 討 す る こと が国家

︹マ マ︺

来 の考 へ方 、所 謂 執 務 常 識 な るも の を再 検 討 す る の所 以 あ こと を極

袈 裟 に申 しま す な らば 思 想 事 件 に携 は る者 の頭 の切替 への問題 で あ

う か、 思 想事 犯 は普 通 事 犯 の多 く の も のと異 な り被 害 を蒙 る主 体 が

る私 共 の従来 の考 へ方 に反省 す べき も のな し と言 ひ得 る であ りま せ

得 ざ る こと は勿 論 であ り ま す。 而 も 尚 且治 安 維 持 法 違 反事 件 に対 す

我 国 と 独逸 と は国 柄 が違 ひ ま す、 斯 様 な行 き方 を 直 ち に 我国 に採 り

済 事 件 で死 刑 に処 せ ら れ る者 が あ ると の こと であ り ま す。 併 な がら

於 ては 之 を如 何 に考 ふ べ き で あ りま せ う か、 独 逸 に於 き ま し ては 経

懲 役 二年 の実 刑 に処 せ ら れ た のであ り ま す。 治 安 維持 法 違 反 事件 に

来 た者 が つい ほん の 一瞬 婦 人 に手 を触 れま し て戦時猥 褻罪 に問 は れ

相 当 の地位 にあ り 、勿 論 何 の前 科 も持 たな い、 至極 実 直 に生 活 し て

し 重 刑 が規 定 せ ら れ ま し た、 具 体的 事 案 の 一例 と し ま し て社 会的 に

は刑 訴 上 の責 任 の絶 体 価 の問 題 は此 の転 向 の問 題 に付 結論 を得 ま す

題 であ ると 云 ふ こと は申 す ま でも あ りま せ ぬ 。思 想 事 犯 と し まし て

に於 て は被 疑者 又 は被 告 人 の転 向 如 何 が刑 の量 定 上 極 め て重要 な問

が 国家 の要 請 よ り遠 か る べき ことを 憂 ふる の で あり ま す。 思 想 事 犯

て居 ると 云 ふ こと を篤 と 考慮 す る必 要 が あ る、 然 ら ざ れば 検 察 裁判

を直 接 利 害 法益 の主 体 と す る 犯罪 に対 す る国 民 感情 が随 分 変 つて来

感 情 は無 視 し得 な い の では な いかと 思 ふ ので あ りま す 。吾 々は国 家

更 に又 法令 が刑 罰 の本質 の 一要 素 と し て規 定 せ ら れ て居 る限 り 国民

る限 り 此 の国民 の感 情 は 無視 し ては いけ な いと 思 ふ のであ り ま す。

併 な が ら検 察 裁 判 が 一般警 戒 と云 ふ ことを 重 要 な る使 命 の 一つとす

り す る こと の厳 に戒 む べ き こと であ る のは申 す ま でも あり ま せ ぬ、

検 察 も裁 判 も 一時 の感 情 に支 配 さ れた り 、世 間 の思 惑 を考 慮 し た

り ま す。 近 時 戦時 刑 事 特 別 法 が実施 せ ら れま し て数 多 く の犯罪 に対

と から と も す れば 之 を軽 視 す る嫌 ひ があ り は しな い かと思 ふ の で あ

直 接 国 家 であ りま し て、 而 も其 の被 害 が多 く無 形 的 であ る と 云 ふ こ

本質 的 に非 常 に困難 を 伴 ふ こと は 勿論 で あ りま す 。問 題 は主 と し て

被疑 者 又 は被 告 人 の精 神 に関 す る問 題 で あ りま す か ら、 是 が認 定 は

あり ま す。 先 づ第 一に転向 非 転 向 の認定 問 題 であ り ま す。 是 は 尤 も

な らば 刑 の量 定 問 題 は解決 す る に近 いと こう考 へら れ る と思 ふ の で

は極 め て特 殊 な 場合 に あら ざ れ ば真 の転 向 と し て取 上 げ得 な い の で

支 那 事変 以後 の犯 行 に係 り 而 も思 想 犯 の前 歴 を有 す る者 の転 向 表 明

な いか、 只今 私 共 と し ま し て は苟 も 国 民精 神 の昂 揚 著 し き も のあ る

片 の表 明 のみ に依 つて は到 底 其 の真 な る こと を認 定 し得 な いの では

の認 定 は極 め て慎 重 を要 す る こと は 勿 論 であ りま し て、 被 告 人 の 一

に於 て如 何 な る刑 を受 け る であ ら う かと 云 ふ こと に集 中 せ ら れ る の

な事 実 で あ りま す。 殊 に未 決 の期間 に於 て は被 告 人 の全 精 神 が 公判

投 じ た者 も 少 な く な い と思 ふ ので あ り ます 、 支那 事 変 勃 発 以後 に於

義 運動 に従 事 し た者 の中 に当 時 の国 内 情 勢 に押 さ れ て青 年 客気 之 に

採 る べ き かと 云 ふ問 題 であ り ま す 。支 那 事 変 勃 発 以前 に於 て共産 主

次 に真 に転 向 し た と 認 め られ る場 合 刑 の量 定 上 之 を如 何 な る程 度

は な いか とす ら 考 へて居 る の であ り ま す。

共 産 主義 思 想 に基 く事 犯 に付 て言 ふ ので あ りま す が、 元 来 多年 共産

は人 情 であ る、自 然 で あり ま す。 従 つて焦 躁、 不 安 、 心 の平 衡 は容

主義 運 動 に従 事 し て来 た者 の転 向 が著 し く 困 難 な こと は極 め て顕 著

易 に 得ら れ な いの で あり ま す。 斯 る時 機 に於 ても 自 ら内 省 し、 深 く

ては国 内 情勢 が 一変 し ま し て国 民精 神 が著 し く昂 揚 せら れ、 挙 国 一

欲 の強 烈 にし て且 執拗 な る真 に驚 く べ き外 な いと思 ふ ので あ りま す。

致 戦 争 完 遂 に邁 進 せ んと す る機 運 が澎 湃 と し て起 つて参 り ま した 、

故 に其 の刑 責 の重 大 な る こと 支 那事 変 勃 発 以 前 に於 け る犯 行 と同 一

皇 国 の尊 厳 を思 ひ、 多 年命 懸 け で信 奉 し来 た思 想 を 払拭 す ると 云 ふ

査 に前 回検 挙 され た時 は偽 装 転 向 を表 明 し て執行 猶 予を 獲 得 し た、

視 す る ことは 得 な い ので ある、 私共 と し ま し ては斯 る 犯人 に対 し て

嘗 つて凶 悪 な思 想 を 抱 懐 し た者 も多 く 其 の非 を悟 りま し て、 職 域 奉

斯 う 云 ふ被 告 人 の供 述 が録 取 せ ら れ て居 る のを見 ま し て 一驚 を喫 し

刑 の量 定 上 転 向 の事 実 を 考慮 に 入 れ る余 地 が極 め て少 な い の でな い

こと は 極 め て困 難 であ ると言 はざ るを得 な い の であ り ま す。 の みな

た ので あ りま す 。偽 装 転 向 を 真 の転 向 な り と 信 じ執 行 猶 予 にし た結

か、 少 な く と も斯 る 犯人 に対 す る転 向 の過 大 評 価 は国 民 の感 情 を破

らず 人 民戦 線 戦 術 が採 用 せ ら れ て以来 所 謂 偽 装 転 向 の事 例 を見 る に

果 本 人 を し て逸 速 く再 度 の運動 に走 らし む るや う な こと に 相成 つて

壊 し 一般 の感情 に悪 影響 なき を 保 し難 い、 検 察 裁判 が国 家 の要 請 に

公 に精 進 し つ ゝあ る実情 で あ りま し て、斯 る情 勢 の下 に あ りな が ら

は 一大 事 であ り ます 。 此 の転 向 の真 偽 を判 定 す る こと は 爾 く 困難 で

依 る被 害 の危 険 を 包蔵 す る こと な き を保 し 難 い、斯 様 に考 へる の で

依 然 共産 主義 思 想 を 抱懐 し是 が実 践 運 動 に移 るが如 き は其 の実 践意

あ る。 一歩 誤 れ ば重 大 な 結果 を招 来 す る の であ りま す 。更 に公 判 当

あ り ます 。 思 想 運動 の特 質 と し まし て組 織 的 運動 た る を常 と す る こ

て某被 告 の記 録 が私 の下 に廻 つて来 た ので あり ま す が、 予 審 訊 問 調

時 被 告 人 の精 神 が転 向 に向 ひ つゝ あ つた こと は事 実 であ る が未 だ安

と は申 す ま でも あ り ま せ ぬ。 従 つて思 想 事 犯 は多 衆 犯罪 た る こと を

至 つた ので あ りま す 。 現 に 二、 三 日前 に予 審 終結 決 定 の旧 事 件 に付

る に至 つた事 例 も少 な く な いと思 ふ の であ り ます 。 故 に転 向非 転 向

全 転 向 の域 に達 せな い内 に釈 放 さ れた 為 に再 び元 に戻 り 犯 罪 を 重 ね

りま す が、 それ は東 京 の或 る部 に於 き ま し て 一聯 の思 想事 件 で各 被

ら う と想 像 致 し て居 る ので あ りま す 。茲 に 一つの事 例 が あ る の であ

様 な 訳 に は行 かな い の であ り ます か ら、 種 々困 難 な こと が伴 ふ であ

容 易 に解 決 せ ら れ る の で あ りま す が、 裁 判 所 と 致 し まし て は勿論 左

し ま し て全 国 的 に求 刑 の標 準 を決 す る の で あり ま し て、 此 点 極 め て

が 相当 数 に上 る事 件 に於 き ま し ては殆 ど例 外 な く吾 々に於 て合議 致

人 が相 当 数 に上 る ので あ りま す 。検 事 局 に於 き ま し て は被 疑 者 の数

特 質 とす る ので あ りま す 。 茲 に或 る 一事 件 が 起 る、 被 疑 者 又 は被 告

つて居 りま す が、 是 も全 部 さ う 云 ふ事 件 が来 る ま で受 付 け て溜 め て

ま す。 裁 判所 の方 で も大 抵 一緒 の事 件 は 一つ の部 で や る建 前 に はな

一覧 表 の やう な も のを 付 け て戴 く、 さう す る と非 常 に便利 だと 思 ひ

戴 くと 、或 は他 の裁 判 所 でそ れ に付 て既 に刑 の言渡 が あ つた も の ゝ

る のは ま だ斯 う 云 ふ風 に あ ると 云 ふや うな 表 のや う な も のを付 け て

求 され る場 合 、 或 は直 接 公判 を請 求 さ れ る場 合 に そ れ の関 聯 し て居

あ つ てさ う云 ふ風 に違 つて来 ると思 ひ ます が、 何 か そ こ に予 審 を請

想 事件 な ど の団 体 的 な も の で之 を実 際 調 べ て行 か れ る順 序 に前 後 が

のであ り ます 、 さう し て全 部 の審 理 を済 ま せ た後 に 一斉 に言渡 を さ

る こと が あ る、 さう 云 ふ関 係 から つ い部 が方 々に 飛 ん でし ま ふ、 是

思 想 通報 と云 ふ のを戴 き ます が、 あ れ はど う か す る と 日 が遅 れ て来

一見 し て分 る何 か適 当 な方 法 を 考 へて戴 け ば非 常 に結 構 と 思 ひま す 。

さ う し て此 の関 聯事 件 はま だ 斯 う 云 ふも のが あ る のだ と 云 ふ こと が

れ る の であ りま す。 此 のや り 方 は刑 の権 衡 と 云 ふ ことを 考 へた上 で

も分 れば 事件 の遣 取 を し て 一つの部 で固 め ると 云 ふ こと が出 来 る だ

置 く と 云 ふ訳 にも行 き ま せぬ か ら、 一つ其 の部 へ来 た ら や つて行 く 、

のや り方 であ る、 斯 様 に考 へまし て洵 に意 義 深 い こと で あ ると深 く

け や れ る、既 に片 方 の部 で判 決 を や つて し ま つた 後 で他 の部 へ来 て

告 人 に付 て個 別 的 に次 々と 審 理を せ ら れ る ので あ りま す が、 審 理 を

敬服 致 し て居 る ので あ りま す 。 以上 東 京 地 検 思 想部 とし ま し て刑 の

や る、 さう 云 ふ こと も あ る の ではな いか と思 ひ ま す が、是 は何 か御

終 了 せら れ た後 刑 の言 渡 を 差 控 へら れま し てず つと待 つ て居 ら れ る

量 定 に付 て只今 考 へて居 る こと、 論 じ合 つて居 る こと を申 上 げ た 訳

山 口検 事 (東 京刑 地) 大 体検 挙 から 予審 と 云 ふ こと に な り ま す

考 へを願 ひた い。

が、 予審 に御 送 り す る ま で の実情 を是 は内 輪 話 に な りま す が申 上 げ

であ りま す が、 斯様 な 気 持 を 吾 々銘 々が有 つて居 る ので あ りま し て、

に念 願 す るも ので あ り ま す。 又以 上 申 上 げ た こと が必ず し も妥 当 と

其 点 を御 考慮 下 さ い ま し て私 共 の日常 の執 務 を 見 て戴 き た い、 斯 様

は言 へな い、 正 し いと は言 ひ得 な いと思 ふ ので あ りま す が、 左 様 な

の時 であ りま す れ ば 一斉 に検 挙 致 し まし て、 検 事 の指 揮 を受 け つゝ

ま す と、 最 初 に検 挙 す べ き者 の氏 名 が決 ま り ま す、 そ れを 一斉 検 挙

は早 く送 って来 る、 或 る も のは随 分長 く か ゝ ると 云 ふ やう な こと に

ま し て、 又被 告 人 の出 方 等 に も色 々 の差 異 があ り ま し て、 或 るも の

警 察官 が取 調 べを開 始 致 し ます 。所 が警 察 官 には 能 力 の差 異 が あ り

点 が ご ざ いま し た な ら ば御 遠 慮 な く 御指 摘御 叱 正 を仰 ぎ た い、 斯 様

議長 ( 秋 山 検 事 長 ) 只 今東 京 の山 口検事 か ら段 々の御 意 見 が あ

に考 へる も の であ り ま す 。

草 鹿 部長 (東 京 刑 地 ) 只今 の御 意 見 非常 に結 構 な ん で す が、 思

りま し た、 之 に関 聯 し て判 事 側 の御 意 見 を 伺 ひ た い。

行 も 相 当 進 ん で居 る だ らう と思 ひ ま す から 、 御申 出 のや う な点 に付

が多 いだ ら う と思 ひ ます 。 公判 に廻 る頃 には 大体 検 挙 し た事 件 の進

上 田 ︹次 郎︺ 検 事 (東 京 刑 地) 大 体 予 審 を 通 し て公 判 に 廻 る の

きま し ては 至極 御 尤 で あり ま す から 、 出 来 る だ け何 か適 当 な方 法 を

にな つて参 り ま す。 そ こ で例 へば 最 近

つ て貰 ふと 云 ふ こと で部 長 が指 名 致 し ま す 。 さう す ると 其 の送 致 さ

起 き ま し た き よめ教 会 の事 件 の やう な も の であ れば 是 は 誰 検事 に や

執 つて御 協 力 致 し た い。

な り ま し て、 送 致 が ば ら〓

れ て来 た事 件 の内 容 、被 疑 者 の地 位 と そ れ か ら検 事 の年 功 、経 験 、

今野 ︹ 義 礼 ︺ 判 事 (静 岡 地) 今 丁 度 静 岡裁 判 所 の事 件 が 出 ま し

今 考 へ中 だ さ う で あ りま す 。

草 鹿 部長 ( 東 京 刑 地 ) 裁 判 所 の方 でも 何 か出 来 るだ け の こと を

さう し た も のを睨 合 せ ま し て、 此 の事件 は誰 検 事 、 比 の事件 は誰 検 事 と 云 ふ工合 に事件 を割 当 る の で あり ま す 。 そ こ で検 事 が 調 べ を開

た の でそ れ に付 て 一寸 申 上 げ た い、 実 は私 思想 会 同 に さう度 々出 て

始 す る、 さう し て次 々に調 査 が終 る訳 であ りま す が 、 借 て調 査 が終 つた 後 でど れ を起 訴 し て、 ど れ を起 訴 し な いと 云 ふ こと の検 討 にな

居 り ま せ ぬ、 二、 三 回 出 ま し た が、 ど の会 同 でも 刑 の量 定 が問 題 に

の傾 向 を纏 め て求 刑 す る こと が出 来 るや う に聞 い て居 り ま す。 所 が

る訳 であ りま す 。 そ こで先 づ最 初 に来 た事 件 毎 に起 訴 す る と 云 ふ こ

裁 判所 の方 は判 決 が判 事 の自 由 に成 され て居 りま す から各 地 方 、 各

と にな る訳 で あり ま す が、 其 の次 々に来 る事 件 が果 し て検 事 の調 べ

と を 前 に御 知 らせ す る こと が困 難 であ る と思 ふ の であ り ま す が、 検

部 で全 く自 由 に判 決 し て居 り ます 。 判 決 は自 由 であ ると は申 し ま す

で検事 の方 は何 か重 要 事件 が あれ ば 上 の方 に相 談 を し て大 体 全 国 的

挙 し た 場合 是 々を検 挙 し て調 査 中 だ 、是 だ け は極 め て明瞭 で あ る か

け れ ど も、 殊 に戦 時 下 に於 き まし て裁 判 の結 果 と 云 ふ こと は司 法 の

な つ て居 る こと は先 程皆 さ ん の仰 し や つた通 り であ り ま す が、 此 点

ら 最初 に起 訴 す る時 に現 に調 べ つゝあ る者 の氏 名 、 さ う し たも のを

の結 果 起訴 せ られ る か ど う か と云 ふ こと は、 是 は厳 密 に言 へば 分 ら

御 知 ら せす る やう に でも す る か、 そ んな こと以 外 には な い の でな い

威 信 に実 に重 大 な る影響 を及 ぼす 、 所 が先 程 東 京 の山 口検 事 さ ん が

な い訳 であ り まし て、 さ う 云 ふ意 味 で是 々が後 に起 訴 す る と云 ふ こ

か 、 斯 様 に考 へま す 。

是 は や は り裁 判 所 の威 信 に関 は ると 思 ひ ま す。 併 し な が ら各 地 方 、

仰 し や つた やう に国 民 の感 情 に後 れ た る判 決 をす ると 云 ふ こと は 、

三 人東 京 の方 へ、所 が静 岡 の方 へ後 にな つ てもう 少 し 下 の連 中 です

に付 て 一寸 考 へられ る点 が あ ると 存 じ ま す。 それ で昨 日上 田検 事 さ

各 部 で自 由 心 証 で判 決 を す ると 云 ふ こと は全 く刑 の妥当 と 云 ふ こと

草 鹿 部 長 (東 京刑 地 ) 例 へば キリ スト教 のあ れ は頭 株 と あと 二 、

で言 渡 し てし ま ふ、 是 な ども 出来 れ ば静 岡 で此 の 一派 の者 にど う 云

検 事 さ ん方 よ りも寧 ろ 私達 判 事 側 に あ る と存 じ ま す。 判 事 の方 では

さう し て具 体 的 にど う 云 ふ情 勢 にあ る か と 云 ふ こと を知 りた い のは

ん か ら でご ざ いま し た か、 や はり 斯 う 云 ふ や うな 会 同 を度 々開 い て、

け れ ど も、 是 は偶然 の機 会 から 静 岡 で同 じ のを や つ て判 決 は二 三 日

山 口検 事 (東 京刑 地) それ 位 な こと は出 来 る ので な い か と 思 ひ

ふ判 決 が あ つた 、斯 う 云 ふ こと が 分 れば 非 常 に参 考 に な る と思 ふ。

ま す。 努 め て やる や う に致 し ま す 。

中 々集 つて色 々統 一的 の論 議 を す る機 会 も少 な いと存 じ ます 。 殊 に

やう な機 会 を与 へて戴 く 、其 の方 が会 同 の結 果 が非 常 に宜 い ので は

な く、 場 合 に依 つ ては速 記 を抜 き ま し て座 談 的 に思 ふ存 分 に言 へる

な いか と私 個 人 は 考 へて居 り ます 。 此点 どう ぞ 御考 へ戴 い て、 適 当

今 日山 口 さ ん から 大 分総 論 的 な 問 題 で色 々教 へら れる所 が あ つた と 思 ひま す が、 単 に抽象 的 な 問 題 でな く、 具 体 的 な 問題 、 例 へば 今 静

に処 置 し て戴 き た いと 存 じ ま す。

ます 。 所 が此 の判 決 の謄 本 と 云 ふも のは各 裁判 所 にも 廻 つ て居 りま

て居 りま す。 求 刑 が二年 に対 し 判 決 も 二年 で執 行 猶 予 に な つて居 り

す 。 そ れ に付 て は検 事 の方 でも 異 議 は な か つた と 見 え て確 定 を致 し

御 参 考 にし て戴 き た い、 そ れは現 決 戦 段 階 に於 て司 法 部 の使 命 と云

ほ あ れと 同趣 旨 に於 き ま し て私 も裁 判 所 へ率 直 に色 々申 上 げ ます 。

付 きま し て先程 山 口検 事 が 色 々裁 判 所 へ申 上げ た の であ り ます 。 尚

花輪 ︹ 長 治 ︺ 検 事 (長 野 地) 適 正 な る刑 の量 定 に関 す る 問 題 に

議長 ( 秋 山 検 事 長 ) 他 に御 意 見 ご ざ いま せ ぬ か。

岡 の キリ スト教 事 件 と 云 ふ も のが出 て参 り まし た が、 あ れ は つい二 、

す が、 あ れ を 見 た だ け では ど うし て執 行 猶 予 を 付 け た かと 云 ふ こと

の であ りま す か ら、 極 め て簡 単 な る気 持 を 以 て御 聴取 を願 ひた いと

ふ こと を考 へて申 す も ので あり ま す 。決 し て其 他 に何 の心 持 もな い

三週 間、 或 は 一月 位 にな り ます か 、執 行 猶 予 の判 決 を致 し て居 り ま

が恐 らく 皆 さ ん方 に ぴ んと 来 な い と存 じ ま す 。 私等 も さう 云 ふ点 は

や はり判 事 の方 でも出 来 ます れ ば全 国 的 に集 つて吾 々 の部 に は斯 う

な る刑 の量 定 と云 ふも の が出来 る も の であ る と私 は考 へる の であ り

事 情 及時 勢 の要 望 と い ふ やう な も のを 綜合 し て、 そ こに始 め て適 正

適 正 な る刑 の量 定 は被 告 人 の人 格 及 当該 事 件 に現 は れ まし た特 殊

考 へる のでご ざ いま す 。

参 考 に読 ん で居 り ま す が、 他 の裁 判 所 がど う し て執 行 猶 予 にし た か

云 ふ事件 が来 て居 る、斯 う 云 ふ内容 を有 つて居 る。若 し そ れ が求 刑

ま す 。 然 る に近 時 思 想 事 犯 に対 する 量刑 が時 局 に鑑 み ま し て軽 き に

と云 ふ こと は 一寸判 決 謄 本 を見 た だ け で は分 ら ぬと存 じま す 。 此 点

で執 行 猶 予 にし た と云 ふ や うな こと ま で語 り合 つた な らば 、 そ れ は

判 決 ま で行 つて居 りま す れ ば其 点 を お 互 に話 し合 つて、 ど う 云 ふ点

日本 の情 勢 が今 後 時 々刻 々に変 化 し て行 く と存 じ ま す が 、殊 に思 想

も其 の判 決 が客 観 的 に見 て妥当 だ と 言 へな い場 合 も あ る と存 じま す 。

も の は此際 遠 慮 な く改 め な け れば な ら ぬ と考 へる、 国 家 が活 き る か

は れ た通 り時 々刻 々に変 る社 会情 勢 に対応 し ま し て吾 々は改 む べき

は裁 判 所検 事 局 共 大 に此 際 反省 し なけ れ ば な ら ぬ、 さ う し て先 程 言

程 其 点 に付 き まし て は山 口検事 か らも述 べ た やう であ り ます が、 是

す。 是 は 司法 部 に於 き ま し ても甚 だ遺 憾 に考 へる の であ りま す 。 先

事 件 は益 々悪 質 化 し、 場 合 に依 つては 増 加 す る のでな いか と私 等 は

死 ぬ る かと 云 ふ こと を常 々吾 々は職 責 の上 に反 映 しま し て、 吾 々 の

過 ぎ ると 云 ふ やう な 声 を 屡 々巷間 に於 て私 共 は耳 にす る のであ り ま

考 へて居 り ま す が、 左 様 な 場合 に裁 判 所 が 従来 の傾 向 を重ず る 余 り

今 日 の時 局 に鑑 み て軽 過 ぎ る で はな いか と 云 ふ論 も 出 る余 地 が あ る

時 局 に後 れ や し な い かと 云 ふ虞 も あ ると 考 へま す から 、 是非 共今 後

一挙 手 一投 足 が戦 争 の為 にな る と 云 ふ考 か ら私 共 は職 域 に於 て御 奉

と存 じま す 。 さう 云 ふ場 合 に執 行 猶 予 に し た か らと 言 つて も必 ず し

は斯 う云 ふ会同 を開 い て、 今色 々出 て居 るや う な抽 象 的 な問 題 で は

察 側 で あ る、斯 様 に私 は 思 ひ ます 、検 察 側 と 致 し ま し ては当 該 事 件

従 ひまし て此 の批 評 に付 て第 一に責任 を負 は な け れば な ら ぬ のは検

れ な い、 そ れ で求 刑 と科 刑 と の違 ひが出 来 る と私 は考 へて居 りま す。

当 該事 件 の真 の在 の姿 が捜 査 の段 階 よ り判 決 の裁 判 所 迄 の間 に現 は

判 の結 果 が著 し く異 な る と云 ふ やうな こと を静 か に考 へて見 ます と、

而 し て此 の巷 間 の批 評 を考 へて見 ます の に検察 側 の求 刑 し た所 と 裁

公 し なけ れ ばな ら ぬ時 に際 会 し て居 ると 云 ふ風 に考 へて居 りま す 。

見 地 よ りし て 一般 的 に科刑 の水 準 を引 上 げ て相 当 の重罰 を科 す べ き

し て、 国 家 自存 上 の見 地 より 国 家 が活 き るか死 ぬ るか、 国 家 自存 の

る所 の思 想事 犯 の処 理 と し て自 か ら其 の量 刑 に於 き ま し て区 別 し ま

と は異 な る こと は当 然 であ ると 私 は考 へま す 。決 戦 段階 に於 き ま す

ござ いま す 。 し て見 ま す と自 由 主義 時 代 の裁 判と 現 在 に於 け る裁 判

な が ら裁 判 も国 政 の 一翼 で あ りま す 。戦 力 増強 の 一環 を成 す も の で

判 官 の感 ず る所 に従 つ て為 さ るべ き ことた る は勿 論 であ りま す 。併

な こと の み に囚 れ た所 の見 方 は是 は自 己 独 尊 に陥 つた も の であ る と

ので あ りま す 。裁 判 所 は何 物 にも制 圧 を受 け てはな ら ぬ と 云 ふや う

云 ふ謗 りを受 け なけ れ ばな ら ぬ と考 へる の であり ま す。 此 の戦時 下

も ので あ ると 云 ふ こと は是 亦 言 ふ ま でもな い所 であ ると私 は考 へる

は あ りま せぬ、 或 は司 法警 察 官 の中 に は左 様 な考 へ ︹の︺者 もな い

に於 きま し ては科 刑 に於 ても、 求刑 に於 ても今 は 決戦 段 階 であ る と

に付 きま し て把 握 し ま し た 凡 ゆ る証憑 を記 録 の上 に能 く 表現 す る こ

と も 限 りま せ ぬ け れど も 、左 様 な 場合 に於 き ま し て は検 事 は能 く其

と が 必要 であ ると 思 ひま す 。昔 の所謂 捕 方 的 な考 は現 在 の検 察 側 に

の事件 を検 討致 しま し て、 そ れ に現 は れ た所 の被 告 の利 益 な る も の、

う な こと があ つた やう に思 ひま す が、 是 は本 当 に国 家 を思 ふ発露 で

いか と云 ふ こと を考 へる のであ り ま す 。或 は裁 判 所 の御 気 に障 る や

あ り ま し て、其 点 は十 分御 諒 承 下 さ いまし て、 昨 日も御 話 があ つた

云 ふ こと の考慮 を加 へまし て、相 当 の求 刑 を考 慮 し て宜 い の では な

やう に此 の決戦 段 階 を 切抜 け る為 に吾 々は其 の 一翼 を担 つて居 る の

或 は 不利 益 な る も の、 凡 ゆ る も のを記 録 上 に表 現 す る やう に努 めな

の責 任 を問 はれ る のは裁 判 所 で な から う かと 考 へます 。 是 は或 は私

ま す 。次 に左様 な在 り 姿 を 現 はし ても求 刑 科 刑 に開 き が出来 る、 其

だと 云 ふ気 魄 を 以 て御 進 み願 ひた いと考 へる のであ り ます 。

け れ ばな ら ぬ、 是 が即 ち事 件 の在 り姿 を現 はす所 以 であ ら う と思 ひ

一個 の見 方 にな る か も知 れ ま せ ぬ が、少 な くと も専 ら被 告 人 中心 、

置 きま し て、客 観 的事 情 が兎 角 顧 み ら れな い と云 ふ場 合 があ るやう

それ か ら私 の希 望 と 云 ふやう な こと を 一寸 申 上げ た いと思 ひま す。

あ りま す が、 御命 令 に依 り ま し て観 察所 の今 や つて居 り ます 仕事 と、

長谷川 ︹ 瀏 ︺ 所長 (東 京保 護 観察 所) 私東 京 の保 護観 察 所 長 で

す。

吉江 ︹ 知 養 ︺検 事 (会同 係 ) それ で は引続 き まし て開 会 致 し ま

即 ち被 告 人 の主観 的 事 情 に重 き を置 き ま し て、 客観 的 情 勢 は兎 角 見 ら れな いと 云 ふ場合 が多 い の ではな か ら う か、 是 は私 一個 の考 であ り まし て、 或 は間違 つた考 かも 知 れま せ ぬ、 併 な が ら被 告 人 を 先 づ

に考 へら れ る、 因 よ り裁 判 は何 物 にも 制 圧 を受 け ては な りま せ ぬ、

御 調 べ にな りま し て、其 の被 告 人 を中 心 にし た主 観的 事 情 に重 き を

何 者 にも 与 し て はな り ま せ ぬ、 自由 に独 自 の心 境 に於 き まし て、 裁

さ う し て皆 さん か ら何 か御 希望 な り、 御質 問 が あり ま し たら御 願 し

マル サ ス運 動 を而 も実 践 行動 に出 る者 と云 ふ ことを 以 て大 体 の標準

転 向、 完 全 転 向 の標 準 は皆 さ ん百 も御 承 知 と思 ひま す が、 非 転 向 は

ことが非 常 にむ づ かし い こと であ りま す。 今 申 し ま した や う に是 は

のは非常 に発 見 困難 で あり ま す と同時 に、是 から脱 却 させ ると 云 ふ

にし て居 りま す 。準 転 向 は 過去 の思 想 の残 滓 の残 つて居 る者 と 云 ふ

と か、 或 は宗教 関 係 であ り ます 。他 の九 割 ば か り が共 産 主 義 者 であ

何処 迄 も革 命 運 動 であ りま し て、 而 も其 の世 界 観 は唯 物 史観 であ り

東 京 の観察 所 だ け で申 し ます と 只今 私 の方 で対 象者 とし て居 り ま

︹マ マ︺

た いと思 ひま す。

りま す。 全 体 で言 へば 七 百 二十 人 の中 完 全 転 向 と見 て居 りま す のが

ます から、 形 の上 だ け で以 て国家 的 な こと を 言 つた り、 又皇 室 尊崇、

つて居 ると云 ふ風 に分 け て居 り ます が、 過 去 の残滓 のあ る者 と 云 ふ

四百 四十 四人 に な つて居 り ます 。 そ れ から 準転 向 が二 百 七十 二 人、

或 は 日本 民族 の優 秀性 と 云 ふ やうな こと を言 つても ま だ其 の根 拠 に

意 味 に於 て其 基 準 とし て居 り ます 。完 全 転 向 は完 全 な 日本 臣 氏 にな

非 転 向 が 四人 で ござ いま す。 此 の非 転 向 の中 の 一人 が宗 教 関 係 、他

唯 物 史 観 の世 界 観 を有 つて居 る のであ るな ら ば 是 は完 全転 向 と は な

す 者 は約 七 百 二十 人 ご ざ い ます、 全 国 的 に見 ます な らば 二千何 百人

は共 産主 義 者 であ りま す 。全 国 に於 て準 転 向、 非 転 向、 完 全 転 向 の

で あり ます 。 此 の七百 二 十人 の対象 者 の約 一割 は無 政府 共 産 主義 者

割 合 は同 じ やう な 比率 にな つて居 る と御 考 へ下 さ れば宜 いと 思 つて

コミ ンテ ル ンの解 体 に付 て各 方 面 の見 解 を御 発 表 に な りま し た が、

是 は色 々に見 ら れ るだ ら う と思 ひま す が、其 の主 流的 な 考 へ方 と し

り ま せ ぬ、是 は皆 さん も御 同 意 下 さ る こと だ らう と思 ひま す。 昨 日

てや は り コミ ンテ ル ンの従来 の画 一的 な 、 国際 的 な指 導 を暫 く棄 て

居 りま す。 そ こ で殆 ど全 部 が共 産 主義 者 と言 つ て宜 い位 であ りま す

さう し て是 等 を如 何 に脱 却 さ し て完全 な皇 国 民 に移 さ れ るか と 云 ふ

ゝ、 さ うし て各 国 各 民 族 の独 自 な自 主 的 な、 独 創 的 な運 命 に委 せ る

の で、私 の方 と し まし ては や はり 共産 主 義 運 動 を どう 云 ふ風 に見 て、

ことを考 へざ るを得 な い ので あり ま す。 中 々思 ふやう に 一足 飛 に皇

であ る と言 つた 言葉 が 又は つきり と思 出 す ので あ りま す。 要 す る に

国 臣 民 にさ せ ると 云 ふ こと が む づ かし い ので あ ります 。 私 は共 産 主

各 国各 民 族 が其 の階 級 的 な支 配 力 を倒 す と 云 ふ こと が結 局 ソ聯 の擁

の各 国 が自 国内 のブ ルジ ョアジー を倒 す こと が即 ち 真 の ソ聯 の擁 護

言 葉 を 換 へて言 ふな らば 権 力階 級 の交 代 と 云 ふ こと を申 し て居 る、

護 であ つて、 そ れ が結 局 コミ ンテ ル ン の目 的 と す る所 であ る、 即 ち

と 云 ふ意 味 に取 れ る と思 ふ のであ り ます 。斯 様 に見 て参 りま す と昔

そ れが 一つの革 命 運動 であ り ます 。 と申 しま し ても暴 力 革命 、 流 血

義 運動 を思 想 運 動 と は申 し な がら 、是 は や は り唯 物史 観 を世 界 観 と

革 命 の みを指 さし た意 味 では あ りま せ ぬ け れ ども 、 一つの革命 運 動

て、 一つ の大 き な 聯 邦的 な 世 界革 命 を 結合 し て行 ︹ く ︺ のだ と云 ふ

各 国 が各 々 一国 的 な社 会 主 義 運動 を展開 し て行 け ば それ が綜 合 さ れ

し て居 る所 の支 配権 力 の獲 得 の運 動 であ ると 云 ふ風 に見 て居 りま す 。

と私 は見 て居 る の であ り ます 。従 つ て之 に対 し て唯 口先 だけ で以 て

風 に私 は見 る のが 正 し い と思 ふ ので あり ます 。 左様 に考 へて見 ま す

斯 う 云 ふ人達 が皇 室 中 心 と か、或 は愛 国 思想 と かと 云 ふ ことを 言 つ た だ け では や は り信 頼 は出 来 な いと思 ふ の であ りま す。 非 転 向 、準

あ りま す 、 詰 り 一民族 間 の結 合 を堅 く す る 、一国 内 の国 家 権 力 を強 く

態 と云 ふ や うな も のが何 と な く私 達 の前 に は つき り分 つて来 る ので

〓

感 じ ます 。 此 の意 味 に於 て今 後 の思 想 運 動 、 共産 主 義 運動 の形

ル ン解消 の以 前 か ら其 の方 向 に向 つて居 ると 云 ふ こ と を 私 は つく

と最 近 の準 転 向 な ど の連 中 の言 つて居 りま す所 が もう 既 に コミ ンテ

影 響 力 を有 つて居 ると 思 ふ ので あり ま す。 従 つて此 の中 心 人物 に私

斯 う 云 ふ連 中 の動向 と 云 ふ こと が全 体 の共 産 主義 運 動 に非 常 に強 い

も党 の所 謂 主 宰 的 な分 子 が あ つて始 め て共 産 主 義運 動 は活溌 にな る、

来 た の であ りま す。 や はり是 は何 処 の国 の共 産 主義 運 動 を見 まし て

入 つ て来 まし た者 に は嘗 つて党 の運 動 の中 心 的 な人 物 が大 分 入 つて

す が 、非 常 に困難 な 仕 事 であ りま す 。殊 に最 近 私共 の対象 者 の中 に

ま す。 中 々そ こま で手 が 届き ま せぬ と言 つては申 訳 な い ので あり ま

保 護 と 云 ふ より も観 察 の必要 が強 く あ り ます 。 同時 に他 の沢山 の対

す る、併 な がら其 の内 部 に於 て階 級 の交 代 をし て行 かう 、 斯 う 云 ふ

象 者 及 嘗 つて は対象 者 であ つて 一時 は 抜 け た者 、前 歴 者 の思 想 等 も

方 向 が私 は今 後 の共産 主 義 運動 の取 る 一つの戦 術 ではな から う か と

て来 る所 の国 体 の観 念 と云 ふや う な こと は吾 々以 上 に立 派 な こと を

見 て行 か な けれ ば なら ぬ、中 々僅 かな 人数 で手 が 廻 り兼 ね て居 る の

りま す 。 従 つて此 の連 中 を 監 視 す ると 言 つて は語弊 があ り ます が、

申 す らし い のであ り ます が、 裁判 所 は固 よ り そ れだ け を 以 て御裁 判

で あり ま す。 観察 所 が非常 に完 全 に やれ る と思 は れ て は困 る のであ

共 は掛 ら なけ れ ばな ら ぬ ので、 其 点 に付 て輔 導 力 が殺 が れ る のであ

を為 さ る こと は毛 頭 あ りま せ ぬ、 十分 其 の世 界観 の根 底 を衝 い て先

りま す 。観 察 所 のや つて居 る仕 事 を時 々は 一つ御覧 下 さ いま し て、

思 ふ の であ りま す 。斯 様 にな つ て来 ま す と能 く 口頭 な ど で非常 に愛

程 私 が申 し まし た やう な唯 物 史 観 の部 面 に立脚 し て、 そ こから出 て

成 程 此 位 し か出 来 な い のか と 云 ふ所 も 見 て戴 き た いと思 ふ、 先 々月

国 的 な こと を言 ひま し ても 、或 は 日本 民族 の特 殊性 、 そ れ から 生 れ

か と 云 ふ こと を十 分 御検 討 下 す つ て居 ると思 ふ の であ り ます 。十 分

来 る所 の 一国社 会 主 義的 な社 会 主義 運 動 を 棄 て る意 思 で あ る かど う

又此 処 に御集 まり下 さ いま し て予防 拘 禁所 長 や其 他 の職 員 を御 呼 び

東 京 の裁 判所 の思想 関 係 の判 事 さ ん方 が私 の方 へ来 て下 さ いまし た、 そ こが は つき り煮 切 れ て居

御検 討 下 す つて居 ると思 ふ の であ りま す が 、尚 且私 共 の方 で受 取 り ま し た執 行 猶 予 の人 達 の中 に はま だ〓

来 た と言 つて宜 い場 合 も多 い と思 ひます 。 左様 な唯 物 史観 が残 つて

に付 て御 配慮 が願 ひた いと 思 つて居 りま す。 最 近私 の方 に山本 、 田

てそ れ だけ の ことし か出 来 ぬ か、 転 向 は出 来 ぬか と 云 ふや う な こと

の連 絡 を緊密 に され ると 同時 に私 達 の仕事 にも 関 心 を御持 ち下 さ つ

宜 い御 催 し だ と私 共 は感 謝 し て居 る の であ り ます。 ど うぞ検 事 局 と

居 る、或 は新 し く出 た と 云 ふ場 合 私 共 の方 と し て之 を 棄 てさ せ ると

中、 橋 本 等 が居 りま す。 或 は将 来 は佐 野、 鍋 山 あ た り も来 る のでは

下 す つて色 々話 を聞 い て下 さ る こと にな つた のであ りま す 。非 常 に

云 ふ こと は やさし い やう でむ づ かし い のであ り ます 。 そ れ が観 察所

な い かと 思 ひ ます 。 さう 云 ふ 方 面 の執 務 の上 に於 て非 常 に重課 され

ら ぬ 者 が出 て来 る、 或 は公 判 当 時 に唯 物 史観 は棄 て ゝ居 つた か も知

の仕 事 でな いか と仰 し やら れ る か知 れ ま せぬ け れ ども 、 観察 所 は機

れ ま せ ぬ、 判決 が執 行 猶 予 にな つてか ら さう 云 ふ気 持 が新 し く 出 て

構 と し ま し て非 常 に小 さ いも の であ り ます 。職 員 の数 も僅 か であ り

て居 る の であ りま す。 どう ぞ其 点 を 十 分御 諒 解下 さ つて御同 情 を以

ても 宜 か らう と 云 ふ こと で退所 致 し て居 りま す。 是 は昨 年 の十 二 月

す が、 六名 は地 元 の検 事 局 の御 審 査 を戴 き ま し て是 な らば まあ出 し

定 せら れ た の は 一昨 年 九 月 であ りま し た。 本年 の九 月 に更新 期 にな

な りま し てか ら 二年 二 ケ月経 過 致 し た訳 であ り ます 。 実際 拘 禁 が決

昨 日院 長 閣 下 か ら御 話 があ り まし た やう に 予防 拘 禁 制 度 が施 行 に

行態 度 と云 ふも の が興味 あ る研究 の材 料 と な ると 思 ふ ので あり ます 。

り ま す。 是 は 頑強 に非 転向 を強 調 し て居 る、斯 う 云 ふ者 の 日頃 の言

つ て の主義 主 張 を堅持 す る者 、所 謂 非 転 向 を主 張 す る者 が二 名 で あ

安 維持 法 であ り まし ても事 実 審 理未 了 、 結 局残 り 四 十 一名 、 此中 嘗

は新 入 とし てま だ何 と も申 上 げ ら れ な い、 其 外 に三 名、 是 は同 じ治

此 の四十 七 名 の中 三 名 は つい最 近 に入 つた ば かり であ りま す。 是

申 上 げ た いと 思 ふ のであ り ます 。

す 。 此 の残 つた 者 をじ つと私 が眺 め て居 りま し て見 た感 じ を御報 告

六 名 退所 致 し ま し た、 従 つて現 在残 つて居 る のは四 十 七名 であ り ま

二十 五 日、 今 年 の二月 二 十 二 日、 そ れ か ら 五月 六 日、 二名 宛 三 回 で

て御 指 導 を得 た いと思 ひ ます 。 一寸 最 近 の実情 を申 上 げ て置 き ます 。

最 近 の行刑 概 況 説明 (司法省行刑局長部総務課長)

中村 ︹ 義 郎 ︺ 所長 (東 京 予防 拘 禁 所) 御 指 名 に依 りま し て 予 防

る、本 年 度 内 に更新 期 に入 る者 は約 五名 であ りま す 。来 年 の 二月 に

ル ン解 消問 題 に付 ても 丁度 露 西亜 に於 て言 は れ る やう な こと を彼 等

例 へば 一例 を 取 りま す と昨 日井本 課 長 さ ん の御 話 のやう な コミ ンテ

拘 禁所 の概 略 を 御報 告 申 上 げ ます 。

つ て来 る だら う、 此 の機 会 に斯 う 云 ふ会 同 を御 催 し下 さ いま し て 一

は言 ふ の であ る、 そ れ は何 等 材料 な くし て彼 等 の考 と し て言 ふ ので

な り ま す と更 新 期 に入 る者 が続 出 致 し まし て、 其 時 は相 当問 題 が起

あ り ます が、 其 の こと が符 節 を合 す るや う に合 ふ の でも あ り ます 。

同 じ 考 への者 が 一つ問 題 に触 れ る時 は同 じ結 論 が出 ると 云 ふ こと が

年 有半 の事情 を報 告 さ し て戴 く と 云 ふ こと は何 等 か皆 さ ん の執 務上

丁度 一昨年 五月 十 五 日 に開 設 にな り、拘 禁 所 が 自分 の所 で収 容 を

ら現 在 の戦 争 に対 し て は枢 軸軍 の不 利 益 に な ると 云 ふ こと を彼 等 は

分 る の であ り ます 。戦 争 に対 し て は帝 国 主義 戦 争 絶 対反 対 、 そ れ か

参 考 にな る の でな いか と考 へて居 る のであ りま す 。

て戴 いた 、其 後 段 々と帰 つて参 り まし て、 現 在 迄 に収 容 し た総 数 が

開 始 し た のは十 二月 十 二 日、 そ れ ま では各 地 の刑務 所 で預 つ て置 い

二名 程 頑強 に確 信 のな い こと、 非 転 向 を 標榜 し て居 る、 併 し 前 の二

考 へて居 る、 其 の次 は非 転 向 は標 榜 致 し て居 りま す けれ ど も 、前 の

日 が経 つに従 つて自 ら類 似 の点 を見 出 し て、 そ こに自 分 の意 思 を持

る と云 ふ や うな 印象 を 一番 強 く受 けた のであ り ま す。 そ れか ら段 々

で比較 的 反 省 に努力 し て居 る者 と努 力 せ ざ る者 と が あ る の であ りま

者 は 所謂 転 向 を 標榜 し て居 る者 であ り ま す。 転 向 を標 榜 す る者 の中

名 程 は積 極 的 頑 強 と確 信 を有 つて居 らぬ者 が六 名 居 りま す 。其 他 の

︹マ マ︺

一人 と し て同 じ やうな も のは な い、 五 十 三名 が 五十 三 名 皆十 人 であ

五十 三 名 であ りま す。 此の 五 十 三名 入 つ て来 る のを見 ま す と、 先 づ

つて来 る者 が現 は れ て来 る、此 の入 つ て来 た者 の中 で六 名 であ りま

し て無 努 力 の者 であ り ます 。 最初 の非 転 向 を標 榜 す る者 と 反 省 に無

向 を頑 強 に主 張 す る者 並 に非 転 向 を標 榜 し て居 る者、 更 に反 省 に対

で あ りま す。 拘 禁 所 の処 遇 の上 に於 て最 も困 難 な も のは第 一の非転

二 名、 乙 が十 五名 、 丙 の部 類 に属す る者 が 七名 と言 つた やう な 状 況

す 。之 を 甲 乙丙 と 仮 り に分 け て見 ます と 、甲 の部 類 に属 す る者 が十

か れ る、斯 う 云 ふ も のは 予防 拘 禁 に附 せ ら れる こと は当然 であ る と

自 分 達 の考 へ方 が間 違 つ て居 つた と 云 ふ ことが取 調 の過程 に於 て肯

位 居 る ので あ りま す。 併 し検 挙 さ れ て段 々調 べら れ て来 る と、 成程

方 は最初 は何 故自 分 が検挙 さ れた か分 ら な か つた と云 ふ も のが 半 分

挙 以来 今 日迄 或 は刑 務 所 か ら来 た者 もあ り ます が、 是 等 の者 の考 へ

其 次 は転 向 を標榜 し て居 る者 の中 の甲 の部 であ り ます 。此 者 は検

常 に熱 心 で あ ります 。 見 る も気 の毒 な位 彼等 は熱 心 であ る、 此 の反

云 ふ風 に考 へて積 極 的 に 過去 の思 想 に対 し て反省 努 力 す る、 是 が非

むづ かし さを感 ず る ので あり ま す。 是 等 の種 類 に依 つ てそ れ〓

省 努 力 を集 積 す る に あらず んば 到 底 此 の拘 禁所 は出 ら れ な い、拘 禁

態

度 が違 つて来 る、 非転 向 を堅 持 し、 非 転 向 を標 榜 す る者 の態 度 は既

所 を 卒 業す るも のは自 分 の努 力 以 外 に何 物 も な い と云 ふ やう な考 に

努 力 の者 と を比 較 し て見 ます と 、反 省 に無努 力 の者 程 処遇 上 取 扱 上

いて出 て来 る の であ りま す か ら 、自 分 の立場 擁 護 以 外 に何 物 も 出 て

に 一挙 手 一投 足 、其 の言 行 に於 て、 態 度 に於 て常 に彼 等 の観 念 に基

も のは食 糧 問題 で あり ま す、 斯 う云 ふ やう な も のは総 て自 分 の立 場

な いか と言 つたや う な考 へ方 、殊 に戦 争 の犠 牲 にな つて自 分達 は や

され る のも 仕 方 がな い、併 な がら ど う も斯 う ま でせ ぬ でも 宜 いで は

其 次 は乙 に該 当 す る者 であ り ま す が、是 は審 理 の過 程 に於 て拘 禁

いや う であ り ます 。

擁 護 、所 謂 生 活改善 、 待 遇 改善 と云 ふ ことを 瞬 時 と雖 も怠 る ことな

ら れ て居 る のだと 云 ふ やう な 考 へ方 で や つ て来 た者 が非 常 に多 い や

到達 し て行 き まし て、是 等 の者 は 殆 ど何 等 処 遇上 のむづ かし さ はな

く常 に主 張 し て参 る の であ り ます 。従 つて拘 禁 所 の職 員 と し て は常

う であ りま す。 さう 云 ふ者 は 反省 努 力 致 し て居 り ます が 、 ま だ〓

な こと を や つても是 が宜 いと 云 ふ こと は な い、 一番彼 等 の主 張 す る

に之 に対 し て防 衛 に任ず る訳 で あり ま す。 茲 に拘 禁 所 の処 遇 の言 ふ

来 な い、 一例 を申 上げ ま す と 、 予防 拘 禁絶 対 反 対 、待 遇 改 善 、 ど ん

べ か ざ る困 難 が あ る の であ りま す 。之 を権 力 を 以 て防 遏 す る な らば

腹 の底 に 一抹 の不 平 と不 満 が残 つて居 るや う であ り ます 。 そ れ が時

そ れ から 丙 の段 階 の者 は何 故 予防 拘 禁 に し た のか、 予 防拘 禁 に附

必 ず彼 等 は叛 逆的 な企 図 に出 る のであ り ます 。 そ れ を じ つと 権力 を

せ ら れ る理由 は自 分 にはな い、 そ れ にも 拘 らず 予防 拘 禁 に附 せら れ

の甲 の部 類 にな りま す と如 何 な る場 合 でも殆 ど さう 云 ふ気振 がな い。

た と 云 ふ考 へ方 を 根底 に有 つて居 る、 斯 う 云 ふ者 が 一番 処遇 の上 に

に触 れ折 に触 れ勃 発 す る、 さ う 云 ふ気 持 が出 て来 る場 合 が あ る、 前

か、非 転 向 を 堅持 す る者 も今 日 で は左様 な こと は申 さな いや う な段

う 云ふ ことを主 張 した 所 でど う にも な ら な いと 云 ふ こと を諦 め た の

於 て非 常 に困難 であ り ます 。 是 は非 常 に小利 口な者 か狡 さを有 つた

用 ひず し て怺 へる、 聞 流 し て居 る のが現 在 の姿 であ る、 さう 云 ふ や

階 にな つた訳 で あ りま す 。自 分 の与 へら れた る 生活 の範 囲内 に於 て

う な処 遇 が約 一年 以上 続 き ま し て、今 日 に於 ては彼 等 と雖 も最 早 さ

生 活 し て居 る、 斯 う云 ふ状 態 であ りま す。

を感 ず る の であ りま す 。其 他 の者 に対 し ま し て は殆 ど処 遇 上 は 何 等

であ りま し て、 最 初 に申 上 げま し た数 名 と 後 の数 名 が処 遇 上 の困 難

者 が多 い やう で あ りま す 。大 体 現在 の状 態 を申 しま す と斯 様 な 状態

つて貰 つて も、 沢 山 スト ツ クが あ る から左 程 嬉 し か ら ぬと同 じ や う

長 々と書 い て来 る、 併 しそ れ が 一度 、 二度 、 三度 と 繰 返 し て、 段 々

類 を買 つて貰 つた時 の嬉 し さ と同 じ や う な気 持 を以 て転 向上 申 書 を

な 感 じ に な つて来 る やう に見 え る、最 初 に さう 云 ふ やう な 上申 書 を

進 ん で参 り ます と お金 持 の家 に育 つた お子 さ んが赤 い衣類 を幾 ら買

そ こ で非 転 向 を 標榜 す る者 は暫 く措 き ま し て、 転向 を標 榜 し て居

困難 を感 ず る こと はな いやう な 状態 であ り ます 。

る者 、是 が 入 つて来 た当 時 の者 と、 そ れ か ら段 々月 日 の過 ぎ た時 の

あ る の でな い かと思 ふ、 さ う 云 ふ やう な心 理 的 な過 程 を じ つと見 て

頻 繁 と出 す時 の彼等 の気 持 に対 す る取 扱方 は中 々デ リ ケ ートな 点 が

居 り ま す と、 吾 々が嘗 つて考 へて居 つた転 向 と 云 ふ問 題 も更 に 一歩

て転向 をす ると 云 ふ こと は非 常 に困難 な問 題 であ る、 並 々な らぬ 困

の量 定、 転 向 非 転 向 の問 題 にも余 程 御 参考 にな る ので はな いか と思

考 へ方 の変 化 であ り ます 。 此点 が先 程来 問 題 にな つて居 り ま し た刑

難 、努 力 を 以 てす る にあ らず んば 本 当 の転 向 と 云 ふも のは獲 得 し得

であ り ま す。 転 向 と 云 ふ問題 は 口 にし易 いけ れ ど も、 実際 問 題 と し

が 経 つに従 つてど う 云 ふ風 に考 が変 つて来 るか と申 し ま す と、 成 程

な い のでな いか と云 ふ こと を私 は痛感 し て居 るの で あり ま す。 彼等

進 め て思 想 犯 の本質 其 のも の自 体 に多 少 疑 惑 の感 じを 有 つて居 る の

自 分 は非 転 向 であ つた 、是 では予 防 拘禁 に附 せ ら れる のも 当 り前 だ

ふ の であ り ます 。最 初 に自 分 は転 向 し て居 る に拘 らず 予 防 拘禁 に附

と 云 ふ こと を 月 日 が経 つに 従 つて本 人 が は つき りと 自 覚 し て来 る こ

の努力 と言 ふも のに依 つて痛 切 に其 感 を深 く す る の であ り ます 。 先

せ ら れ た、 怪 し か ら ぬ、 斯 う 云 ふ考 を有 つて居 つたも のが、 段 々日

と であり ま す 。此 の自覚 が段 々深 ま つて参 りま す と拘禁 所 を卒 業 す

程 申上 げ ま し た甲 の部 類 に属 す る者 の態 度 は 死 ぬ か活 き る かと云 ふ

て彼等 は最 早 拘 禁所 に於 て死 ぬ か、拘 禁 所 を も う 一度 卒業 し て本当

る と 云 ふ こと は非 常 に困難 な こと だ と 云 ふ こと を自 分 自 身 考 へて来

の日本 人 と な る か、 二 つに 一つ所謂 巌 頭 の段 階 に彼 等 は置 か れて居

やう な深 刻 な 悩 みを 経 ぬ後 に さう 云 ふ段 階 に到達 す る、 是 は制 度其

段 々進 ん で行 く と さう 云 ふも の は 一切書 い て出 さな く な る、 口 に言

る訳 であ る、 此 の制 度 の本 当 の姿 を知 り得 た も のは始 め て深 刻 な悩

る、 さう 云 ふ経路 を辿 るや う で あり ま す。 さう 云 ふ やう な 段階 に到

は な くな る、 此処 ら が多 少 御 参 考 にな る の ではな いか と 思 ふ のであ

みに 入 る の であ る、 従 つて吾 々の処遇 とし て飽 ま でも制 度 の本 当 の

のも のが御 承 知 の通 の予 防拘 禁 制度 と 云 ふも のが死 か 活 か、 此 処 を

り ま す。 丁度 転 向 と 云 ふ も のを自 覚 し始 め た時 に於 ては非 常 に長 い

姿 の精 神 を彼 等 に呑 込 ま せ ると 云 ふ こと が第 一に必 要 であ ると 云 ふ

出 る か、 一生 此処 で終 るか、 二 つ に 一つし か な い制 度 であ る、 従 つ

上 申書 を書 い て出 し て来 る、 如何 にも 嬉 し さう に転 向上 申 書 を 理 路

な つ て来 る、 最初 の間 は 転 向声 明 、転 向 上 申書 を頻 り に書 い て出 す、

井 然 と 書 いて出 し て来 る、 其 の気持 を見 て居 りま す と 丁度 長 い間 不

こと を感 ず る、 そ こか ら考 へて見 て非 常 に深刻 な悩 みを数 ケ月 に亙

達 し て参 りま す と転 向 と か、 転 向 理論 と 云 ふ こと を段 々口 にし な く

自 由 に不自 由 し て居 つた者 が、例 へば 女 の子 が お母 さ ん か ら赤 い衣

さう で な いも のは 予防 拘 禁制 度 と言 つて もま だ二 ケ年 、 期限 が来 れ

つて悩 み抜 い て、 そ れ を脱 却 し得 た者 が先 程 の甲 部 類 に入 つて来 る、

こと なし では転 向 と し て非 常 に危 険 が あ る のでな いか と云 ふ感 じ を

通 り越 し て始 め て可 能 な問 題 にな る、 非 常 な努 力 と 困難 を克 服 す る

し た 以上 に困難 な問 題 であ る、 併 し不 能 な 問題 でな い、 其 の困難 を

申 上 げ た の であ りま す 。甚 だ断 片的 な こと を申 上 げ ま し て恐縮 で あ

ば 釈放 し て呉 れ る のでな いか と云 ふ や うな 甘 い考 を多 少 でも有 つて 居 る者 は まだ そ こま で行 かな い やう に思 ひま す、 そ れ から更 に丙 の

り ま す が、 之 を 以 て終 り と致 し ま す 。

と プ ロ レタ リ ア ートと 云 ふけ れど も、 是 等 は自 分 の生 活 の向 上 、先

て居 つた、 所 が よ く〓

自分 達 の本当 の気持 を自 身 で掘 下げ て見 る

ロレタ リ ア ート の為 に闘 つ て来 た のだ と言 ふ風 に過 去 に於 て は考 へ

を経 過 し た今 日 にな つて述懐 す る所 に依 りま す と、 自 分等 は所 謂 プ

を 経過 し た今 日 にな つて、 甲 の部 類 に属 す るや う な者 が非 常 な 悩 み

ら う か、 更 に思 想 犯 の問 題 であ ります が、彼 等 の入 所 以来 約 一年 半

や つて居 る、 残 り 五千 人 は何 を や つて居 る の か、 是 は思想 犯 であ る、

残 り の二 万人 は塀 の中 に居 る、 一万 五千 人位 は中 で以 て軍需 作 業 を

先程 一寸申 上 げ る のを忘 れま し た が、 四 万人 の中 で 二万 人外 へ出 て、

て居 る、外 に は出 て居 ま せ ぬ、 外 に出 す ま で に行 つて居 り ま せぬ 、

六人 と思 ひます 、 そ れ は累 進 処遇 の中 に入 り まし て そ れは 工場 に出

で工場 に出 て居 る のは転 向 者 だ け です 。 二 百十 何人 の中 現在 六十 五、

監房 から出 し ませ ぬ 、塀 の中 に於 て の工場 に も出 ら れな い、塀 の中

長 部 総 務 課長 (司 法省 行 刑 局) 思 想 犯 の場 合 は転 向 し な け れ ば

と であ りま し た が、 普 通 犯 と思 想 犯 とど う 区別 を 付 け て⋮ ⋮ 。

山 口検 事 ( 東 京 刑 地) 先程 刑 務所 外 に出 し て働 か せ る と 云 ふ こ

部 類 に属 す る者 は結 局 刑 期 さ へ満 了 す れば 自 分 等 は出 ら れ ると 云 ふ やう な甘 い考 を 有 つて居 る者 の態 度 であ りま す 。斯 う 云 ふ点 か ら見

程長 谷 川 所 長 さ ん の仰 し や ら れた やう にプ ロレタ リ ア ート の獲 得 と

病 人 であ る、 老 人 であ ると 云 ふ やう な 連中 、 是 が出 来 るだ け身 体 が

ます と私 は転 向 と 云 ふ問 題 も相 当 考 へ直 し て宜 い点 があ り は せ ぬだ

云 ふ こと を目指 し て闘争 し て来 た も の ゝ是 は到 底 出来 な いと 云 ふ こ

丈 夫 にな り、 思 想 が転 向 し 、老 人 は若 返 ると 云 ふ こと にな れば所 内

の工場 の軍 需 作業 に従 事出 来 る、 其 の中 の人 間 が外 へ出 て行 け る、

て来 る、 さう 云 ふ点 を 考 へると 表 面吾 々が 見 て居 つた、 又彼等 が考

労 働 力 が移 行 出来 る、 さう 云 ふ努 力 を し て居 り ます 。

と を申 し て居 り ま す。 さう 云 ふ こと が強 ま れば 強 ま る程 は つき り出

へて居 つた 考 へ方 と、 其 の内 面 的 に掘 下 げ て来 て彼等 自 身 が自 覚 し

山根 検 事 (浦和 地 ) 理論 と し て転向 者 も外 へ出 し て や つ て、 更

る作 業 が沢 山 あ りま す から 。

長部 総 務 課 長 (司 法 省 行刑 局 ) 考 へて居 り ま せぬ 、塀 の 中 で や

す か。

山根 ︹ 隆 二︺ 検事 (浦 和 地) 転 向者 は外 へ出 す 御 考 でご ざ い ま

な か つた 色 々 の本 当 の本質 と 云 ふ こと にな る と多 少 そ こに錯覚 が あ つた の で はな か つたら う か と云 ふやう な感 を私 は最近 深 く致 し て居 る ので あ りま す け れど も、 まだ 其 点を は つき りと 確信 を以 て申 上げ る程 度 迄 には行 つて居 り ま せ ぬ ので、唯 私 が さう 云 ふ疑 問 を有 つて

り ます 。 唯私 自 身 の結 論 的 な 考 と し て転 向と 云 ふも のは吾 々が想 像

居 ると 云 ふ こと を申 上 げ て諸賢 の御 研究 を煩 はし た い と思 ふ のであ

に其 の転 向 に努 力 さ せ ては ⋮⋮ 。

常 に自 由 だ 、併 な がら 拘禁 所 の生活 と 云ふ も のは刑務 所 の生 活 に比

の苦 痛 な 点 は 何 かと 云 ふと さう し た自 分達 の考 へて居 る考 へ方、 個

較 し て何 十 倍 か苦 痛 な所 で あ ると 云 ふ こと を彼 等 は言 つて居 る。 其

て来 た者 で も同 じ やう な こと を言 つて居 つた 者 が 、班 組 織 に な つて

し ても自 分 は肯 け な いと 云ふ、 そ れ に対 し まし てそ れ よ り前 に 入 つ

ら 入 つて来 て三 月 にな る、 三 月間 考 へに考 へて見 た け れ ども、 どう

に従 来考 へて居 つた転 向 問 題 と現 段 階 に於 け る真 の意 味 に於 け る転

て来 る ので はな か らう かと 云 ふ やう な感 じ がす る のであ り ま す。 茲

間 の 一挙 手 一投足 に於 て更 に其 の現 実 の行 動 を見 る方 が は つきり し

を 以 て判 断 が可能 で あ るか ど うか、 寧 ろ さう 云 ふも のよ り も其 の人

と 、転 向と 云 ふも のは単 に彼 等 が 口に於 て説 明し 、 紙 に書 い たも の

人主 義 的 な 考 へ方 を 清算 す る に努力 す る、 其 の考 へ方 を清 算 し て行

中村 所 長 ( 東 京 予防 拘 禁 所) 先 程 転向 非 転 向 の問 題 に 付 て 御 話

居 りま す か ら、 一緒 に班 の中 に居 る訳 であ りま す 。 そ れ が其 の悩 ん

向 問 題 と の開 き が あ る の でな か らう か、 さう 云 ふ点 ま でが検 察 裁 判

く に は非 常 な努 力 が要 る、 こんな苦 痛 な所 は な い斯 う 云 ふ こと を彼

で居 る者 の其 の態 度 を非 常 に気 の毒 に思 ひ、 同 時 に又其 者 に対 し て

の上 に十 分 に反 映 し考 慮 せら れ る やう な こと にな る には ど う すれ ば

を伺 つた、 私 の所 に入 つて来 た時 分 には絶 対 に転 向 し て居 る に拘 ら

さ う云 ふ のが非 転 向 な ん だと 云 ふ こと を 説明 し て聞 かす 訳 であ り ま

宜 い かと 云 ふ やう な問 題 が将来 の裁 判 の上 に於 て問 題 にな る のでは

等 は始 終 口 にし て居 る、斯 う 云 ふや うな 現 実 の変 化 を 見 て居 りま す

す 。聞 か し て も本 人 に は肯 け な い。 さう 云 ふ こと が順 繰 り に繰 返 さ

いと 言 つて煩 悶 を し て居 る のが あ る の であ りま す 。是 は最 近大 阪 か

れ て来 て居 る、相 当 に悟 つた やう な者 でも相 手 に悟 ら せる こと は出

な い かと 云 ふ やう な感 じ を有 つて居 る ので あり ま す。 先 刻 転 向 の問

ず 予 防拘 禁 にな つた、 ど う し て も予 防拘 禁 に附 され た 理由 が肯 けな

来 な いと 云 ふ やう な こと を言 つて居 る の であ り ます 。 段 々そ れが深

題 に付 て御 話 を伺 つた ので私 の感 じた 所 を申 上 げ て置 き ま す 。

足 の上 に於 て 日本 人 的行 動 にな つ て来 るも の であ る、 少 な くと も ど

へて、頭 の中 から 出 た 理窟 で転 向 を考 へて居 る者 が更 に 一挙 手 一投

の差 異 が あ る ので はな いかと 云 ふ こと で あり ま す。 此 の頭 の中 で考

彼 等 が過 去 の考 へ方 を続 け る やう な こと は断 乎 と し て絶 対 に是 は許

せ よと 云 ふ こと は申 し ま せ ぬ で、 唯 じ つと見 て居 る、 見 て居 る内 に

又求 め やう と もし な いと 云 ふ のが私 の気持 であ り ます 。 従 つて転 向

れ るな ら ば転 向 し て行 く のを 見 て居 る、彼 等 に対 し て転 向 を強 要 し

と は唯 彼等 が 過去 を反 省 し て努力 す る、所 謂 転 向 と 云 ふ言 葉 を使 は

中 村 所 長 (東 京 予 防拘 禁 所 ) 刑務 所 と大 同 小異 で す 。 違 つた こ

す か。

今野 ︹ 義 礼 ︺ 判事 (静岡 地 ) 拘 禁所 の待 遇 は ど んな 風 で あ り ま

く な つて来 れば 来 る程 過去 を振 返 つて見 て、 自 分 が如 何 に左 翼 的 で あ つた か と 云 ふ こと を は つき り認 識 さ せ る、 振 返 さ せ ると 云 ふ こと を能 く 言 ふ ので あり ま す。 茲 に本 人 の主 観 的 な転 向 と 云 ふ も のと所

ん な人 でも半 年 か 一年 非 常 な精 進 と努 力 を 重 ねな け れ ば そ こま で行

謂 客観 的 に見 て是 が果 し て転 向 者 と認 めら れ る か どう かと 云 ふ問題

か ぬ やう であ りま す 。彼 等 が能 く 言 ふ こと は拘 禁 所 は 一見す ると 非

さ な い、 さう でな い観 点 か ら出 て来 る やう な こと は段 々之 を助 長 し

る やう に思 ふ、半 島 人 の こと は是 は問題 でな いが、 徳 田自 身 の思 想

義 では な い、 其 の背 後 に民族 的 な 意 識 が非 常 に強 く根 拠 をな し て居

今野判事 ( 静 岡 地 ) 労役 さ せる のです か 。

い て居 る の であ りま す 。 も つと研 究 し て見 な け れば ま だ は つき り申

そ こに彼 等 の案 外 が つち りし た所 が あ る の でな い かと 云 ふ感 じ を懐

も段 々解 剖 し て行 き ます と 民族 的 の意 識 が非常 に根 拠 をな し て居 る、

て行 く、 斯 う言 つた気持 で処 遇 に当 つて居 り ま す、 日常 の生 活 は刑

中 村 所長 (東 京 予 防拘 禁 所 ) 刑 務 所 と殆 ど同 じ であ りま す 。

務 所 と大 体 同 じ で あり ま す。

川本判事 ( 浦 和 地 ) 非 転 向 は⋮ ⋮

合同 の協 議会 は是 を 以 て終 る こと にな る のでご ざ いま す 。

霜 山 東 京控 訴 院長  午 後 から は判 事検 事 各 別 の協 議 会 にな り ま す。

す、 院 長 の御 挨 拶 が ご ざ いま す 。

吉 江検 事 ( 東 京 控 ) 時 間 が参 り まし た ので懇 談 は是 で打 切 り ま

上 げ る こと は出 来 な い ので あ りま す。

中 村所 長 (東 京 予 防拘 禁 所) 今 御 質問 の出 ま し た 点 で す が 、 私 の所 に志 賀 徳 田と 云 ふ や うな 大物 が居 る、私 の考 では徳 田と 志賀 は 一寸違 ふ と思 ふ の であ りま す 、私 が申 上 げ まし た のは徳 田 と金 と 云 ふ半島 人 、 是 は ど つちも 本 人 の気 持 を聞 いて見 ま す と単 な る 共産 主

を感ず る が、 それ は この調 査研 究 は昭 和 三年 以 降 の再 犯 現象 に限 つ

(徳 岡 一男 ・一九 三八)

二 七  治 安 維 持 法 違 反 事 件 の 再 犯 に 関 す る 研 究 ︹ 抄︺

徳岡 一男 ﹁治安維持法違反事件 の再犯に関する研究﹂

た の であ る。 大 正十 四年 五 月本 法 施 行 以来 昭 和 三年 に至 る ま で再犯

先 づ再犯 の現状 に於 て現在 に於ける再犯数、再犯者に対す る後 犯

二 再犯現象 の現状竝趨勢

私 が規 定 し た る意 味 の如 き再 犯 は 発生 し な か つた の では な いか と い

た 。 た ゞ、 私 は か やう な推 定 を 下 せ ると 思料 す る。 そ れ は其 の間 に

思 ふが、 遺 憾 乍 ら此 の点 に関 す る資料 を発 見 す る こと が出 来 な か つ

者 があ つた の では な い かと いふ疑 問 は誰 しも が懐 く こと であ ら う と

処分、年度別 に依 る再犯数竝本法違反事件処理人員と の比率等を調

ふ こと であ る。 何 と な れば 右 期間 に於 て検挙 が行 は れ た事件 とし て

第三章 第 一 再犯現象 の観察

査し、進んで再犯 の趨勢 を観察しようと思 ふ。この際 一言する必要

は大 正十 四年 十 二 月 の京 大 事 件 と 昭和 二年 十 二月 の旭 川 共産 党 ( 集

行終 了 者 、 百 五十 一人 は執 行 猶 予者 、) 起 訴猶 予 処分 を受 け た る 者

之 を刑執 行 終 了、 執 行 猶 予 、起 訴 猶 予 並留 保 処分 の四 種 に区別 し 、

三百 七 十 一人、 留保 処分 を 受 け た る者 二 百 四十 七 人 であ る。

であ る。 即 ち

産 党 )事 件 を数 ふ るに過 ぎ な い。而 し て其 の関 係 者 は 何 れも 比 較的 前 者 の関 係者 は 三十 八 名 、後 者 は十 九 名 ︱

夫 々同 一処 分 を受 け て釈 放 せら れ た る人員 数 と対 比す ると 次 の如 く

少数︱ 学 聯 の 一部 学 生 の実践 運動 や地 方 に於 け る少 数 の共 産 主義 者 が結 社

に於 け る共 産 主義 運動 は表 面 上終熄 し た る か の如 き 状態 を示 し居 り

分 を受 けた る者 は 二九％ と な り、 起 訴猶 予 処分 を受 け た る者 第 一位

執行 猶 予 者 は 一八％ 、起 訴 猶 予 処 分 を受 け た る者 は 四三％ 、 留保 処

々其 の全再 犯者 数 と の比率 を 算出 す る に刑 執 行 終 了者 は其 の 一〇％ 、

次 に全再 犯者 数 八 百 五十 四 人 を前 同 様前 処 分 によ つて区 別 し、 夫

段 で あ る 。︹上 の表︺

た るた め検 挙 人員 も極 め て少 数 であ つて、 従 つて其 の間 に所 謂 再犯

之 を要 す るに大 正十 四年 本 法制 定 以来 三 ・ 一五 事 件 検挙 迄 は 我国

を 組 織 し たと いふ所 謂 地 方 的 事件 に過 ぎ な い か ら であ る。

現 象 の発 生 はな か り し も のと推 定 し得 るやう に思 ふ の であ る。 が、

を占 め、 留 保 処分 を受 け た る者 之 に次 ぎ 最 低 は刑 執 行終 了 者 と な る

(二) 再 犯 者 に対 す る後 犯処 分

の であ る。

これは 私 の臆 測 に止 め て置 く 。 (一) 現 在 に於 け る再 犯 数 昭和 三年 以降 の再 犯 数 を調 査 す る に、 昭和 十 三年 四 月 現在 に於 て

後 犯処 分 と し て起 訴 処分 あ りた る事 件 は 、無 論 現 在 も裁 判 所 に繋

十 四 人 は留 保 処 分 を受 け て ゐる の であ る。

起 訴処 分 を 受 け、 二 一％ 百 八十 八 人 は起 訴 猶 予処 分 、残 一九 ％ 百 六

昭和 十 三 年 四月 現 在 に於 け る再 犯 者総 数 八 百五 十 四 人 に対 し為 さ

釈 放 者 総 数ニ 対 ス ル再 犯 者 数 ノ比 率

れ た る後 犯 処 分 は次 の如 く で あ る。全 再 犯 者 数 の六 〇％ 五百 十 人 は

再犯者総数

再 犯 者総 数 八百 五 十 四人 にし て、 之 等 の者 を前 処 分 に依 り分 類 す れ

釈放者総数

ば 前 処分 に於 て起 訴 せ ら れた る者 二百 三 十 六人 (内 八 十 五人 に刑執

前処分釈放別

属 し て ゐ るも のもあ るが、 大 部 分 は裁 判 を 終 了 し て ゐる。 現 に曩 に

も 引用 した る昭和 十 三 年 六 月十 四 日 附行 刑 局 発表 の調 査 に依 れば、

昭和 四年 一月 以降 昭 和 十 三年 四月末 日迄 本 法違 反 罪 にし て前 後 二 回

に亙 り受 刑 し た る者 四 十 一名 を数 へる のであ る。 た ゞ、 後 犯処 分 と

し て の起 訴 処分 の結 果 た る裁 判 に ついて は こ の調 査 研 究 では行 はな

刑執 行 終 了 刑執 行猶 予 起 訴 猶 予 留 保 処 分 計 分 率 百

次 に前 処 分 と後 犯 処 分 と の内 容 を 調査 す ると左 の如 く であ る。

い。 ( 以下同様)

備考 刑執行終了中には仮釈放も含む

前処分釈放別

分

予

人

再犯者総数

分 別

猶

犯 処

刑執行終了 執 行 猶 予 起 訴 猶 予 留 保 処 分 計 分 率 百

後

処

訴 訴

起 保 率)

起 計

留 (比

起

後

員

昭 同

訴

数

和

犯

留

処

起訴猶予

三 七

年 年

分

前

分

計

茲 に 一覧 の便 宜 を慮 つて前 処 分 竝 後 犯処 分 に関 す る部 分 の みを摘

処 執 行 猶 予

刑 執 行 終了

録 し た る表 を 作成 し た。 次 に掲 ぐ るも のであ る 。

起 訴 猶 予

留保処分

保

再犯数

昭 和 八 年

処 理 人 員

処 人

理 員

再犯数

処 理 人 員

再犯数

処 理 人 員

再犯数

一年

処理 入員

再犯 数

昭和 十 二年

あ る。

自 至

再犯数

昭 和 十

数 及 び これと 同 年 度 の処 理人員 と の比 率 を観 ると 次表 に示 す如 く で

数

処 理 人 員

昭 和 十 年

いま昭和十三年度以降 の分 を捨 て、 昭和三年 以降昭和十二年十二

総

再犯数

昭 和 九 年

(三) 年度別に依 る再犯数竝処理人員 との比率

年度別 処理人員 並再犯数

訴

処 理 人 員

月迄 の本法違反事件処理人員 を年度別に別け、各年度 に於ける再犯

起

処理別

保

起 訴 猶 予 留

一年 度 に於 け る再 犯率 は二 一％ を示 し前 年度 を超 過す る こと遙 に七

率)

％ と な る のであ る。 私 は こ の最後 の比率 が同 年 度 に於 け る本 法違 反

計

再 犯 数 に つい て は右 の表 以 外 に 別段 説 明 す べ き点 はな い。 た ゞ昭

(比

和 八年 以 来 逐次 減 少 し て来 たと ころ 昭和 十 二 年 に於 て 一躍増 加 し た

事 件 の再 犯 数 の本 質 的 比 率 だ と考 へる ので ある 。 昭和 十 二年 度 の処

処理人員 に対する再犯比率図表

参 考 と し て処 理 人員 に対 す る再 犯 比率 図 表 を掲 げ る。

も 比 率 は 二九 ％ であ る。

理 人 員 中 に も少 数 の党 外 関 係 者 を含 ん でゐ るが 之 を除 き て計算 す る

こと を知 る こと を 以 て足 る のであ る。 然 し乍 ら 処 理 人員 と の比率 に ついて は右 表 に つ いて少 し く観 察 を 試 みな け れば な ら な い。 即 ち同 表 の示す と ころ に依 れば 其 の比率 は 、 昭 和 三年 より同 七年 迄 の処 理人 員 総数 四千 六 百 二十 五人 に対 し百 五 十 四 人、 即 ち約 三 ％ の比 率 を最 低 と し て漸 次 向 上 を 示し 昭 和十 年 に 於 ては 一四％ に達 し て ゐ る。 と ころ が 翌十 一年 に至 つて前年 度 の半 数 た る 七 ％に激 減 し た る に拘 は らず 昭和 十 二 年 に於 て は二 九 ％ に飛 躍 し た こと にな る の であ る。 こ の表 の数 字 に誤 謬 はな い のであ るが、 仔 細 に検 討 した る結 果 本 法 違 反事 件 の再 犯 現象 を調 査 研究 す る に は同 表 の表 面的 結 果 を容 認 す る こと が出来 な いと考 へら れ る。其 の故 は 昭 和十 一年 に於 ては処 理 人員 中 に大 本 教 関係 者 二百 三十 八 名 が計 上 さ れ てゐ る。 ま た同 年 度 の処 理人 員 中 に は 日本 共 産党 と 其 の本 質 を異 にす る無 政 府 主義 運 動 関係 者 が多 数 包含 さ れ て ゐる から であ る (本 章 第 一の 一(二)﹁ 司 法 処分 の状 況 ﹂参 照)。 従 つ て前 者 即 ち大 本 教 関 係 者 を控 除 し て 日 本 共産 党 、 日 本 無 政府 共 産 党、 農 村 青年 社関 係 の み に つい て再 犯率

の処 理 人員 百 六 十 七 人 を基 礎 と し て再 犯率 を算 定 す れ ば実 に昭 和十

を 採計 す れば 一 一％ と な り、 更 に無 政 府主 義 運 動 関係 を除 き 党 関係

ろ 昭和 十 二 年 に至 つて突 如 激 増 を 示 し て ゐ る の であ る が、 最 も注 目

明 白 であ ら う と思 ふ。 即 ち 再 犯 数 は 昭和 八年 以 来 漸減 し て来 た と こ

の比率 に関 す る統 計 表 竝 処 理 人員 に対 す る再 犯 比 率 図 表等 か ら既 に

再 犯 現 象 の趨勢 に つい ては前 掲 年 度 別 に依 る再 犯 数 竝処 理人 員 と

(四) 再 犯 現 象 の趨 勢

の再 犯率 を観 れば 文 字 通 り 上昇 の 一途 を進 ん で ゐる の であ つて、 而

私 の疑 問 は氷 解 し た の であ る。 つま り私 の見解 の下 に本法 違 反 事 件

た か ら であ る。 其 の後 処 理 人員 の種 別 に つ い て仔 細 に検 討 し た結 果

年初 にか け て我 国 に流 入 し 相当 広 範 囲 の共 産 主義 者 に知 れ 亙 つて ゐ

の であ る 。 私 の知 識 を 以 てし ても 同決 議 は昭 和 十年 秋 より 昭 和 十 一

に関 す る 限 り却 て減 少 を来 た し た る か に つい て多 く の疑 問 を 抱 いた

持 続 せら れ ん か、 既 に序 論 に於 て指 摘 し た る如 く再 犯者 が実 践 運動

こ の点 に関 す る私 の見解 が正 当 にし て而 も こ の傾 向 にし て今 後 も

ある。

し て其 の増 加 率 が著 し く 跳 躍的 で あ る こと は前 掲 図 表 に示す 如 く で

す ベき こと は処 理人 員 に対 す る再 犯率 の飛 躍 的 向 上 であ る。 再 犯 率 は 昭和 七年 以来 逐 次 上昇 の 一線 を辿 つてゐ る のであ る。 こ

普 通 本法 違 反事 件 の再 犯 を論 ず る者 或 は 昭 和十 一年 度 に於 け る再 犯

の点 に つ い ては前 に 一言 し た ので あ る が更 に若 干 の説 明 を 附 加 す る。

率 の採計 に つき 大 本 教 関係 者 の み を控 除 し た る処 理人 員 を 基 準 と し

次 に最 近 の再 犯者 の傾 向 に つ い て附 言 す る。 そ れ は前 処 分 に於 け

の中 心 と 為 ると いふ こと及 び再 犯 行為 の危 険 性 から 云 つて、 思 想 犯

る執 行 猶 予 者 が著 し く増 加 の趨 勢 を 示 し て ゐ ると いふ こと であ る。

処 理上 軽 々 に看 過 す る こと を許 さ ざ る現 象 と確 信 す る。

は党 関 係 処 理人 員 の約半 数 に近 き 無 政 府 主義 運動 関 係 者 を含 ん でゐ

即 ち昭 和 十 二 年末 に於 け る再 犯 者総 数 を前 処 分 別 にす ると次 の如 き

て再 犯率 一 一％ な り と し 昭和 十 年 度 よ り稍 減 少 した る が如 き説 明 を

る の であ つて、 本 法違 反 事 件 の再 犯 を 調 査 す る に は之 等 無 政府 主義

加 へる が、 前 述 の如 く大 本 教 関 係 者 を 控 除 し た る残 余 処 理 人員 中 に

運 動 関 係 者 をも控 除 し て党 関 係 者 処 理 人員 のみ を基 準 と し て再 犯率

割 合 と な る。 再 犯 者総 数  八 二九

を採 計 し な けれ ば な ら ぬ と信ず る。其 の趣 旨 は第 二 章 中 ﹁無 政 府 主

一般 に昭 和 十 二年 度 に於 け る再 犯率 の奔 放 的 向 上 は コミ ンテ ルン

義 運 動 と 再 犯 ﹂ な る項 目 の下 に説 明 し た こと で理 解 し得 ると 思 ふ。

起

留

行

訴

保

猶

猶

処

予 

予 

分 

一三 九 (同 上 一七 ％)

三 六 五 (同 上 四 四 ％)

二 四〇 (再 犯者 総 数 の二 九 ％)

前 処分 に因 る内 訳

私 も無 論 同 決 議 が 一因 を為 し て居 る こと を否 定 し な い。 後 に其 の実

執

第 七 回世 界 大 会決 議 の影 響 と し て理解 さ れ て居 るら し い のであ る。

例 を紹 介 す る機 会 も あ ると 思 ふ が、 この調 査 研 究 の著 手 に際 し 昭 和

刑 執 行 終 了 

を 一覧 し、 何 故 共 産 主 義 運動 上 に至 大 な る影 響 を 及 ぼ し た る劃 期的

章 第 一の二 (二) ﹁再 犯者 に対 す る後 犯 処分 ﹂ 参 照 ) と対 比 す る に、

これ を前 掲 ﹁再 犯 者 の前 処 分 別 竝 後 犯 処分 別 に因 る 一覧 表 ﹂ (本

八 一 (同 上 一〇 ％)

十 一年 度 の再 犯率 を 或 は 七 ％ と し或 は 一一％ と す る図 表 若 く は 説 明

と も 言 ふ ベ き右 の決 議 あ り た る に拘 はら ず 、 同年 度 に於 け る再 犯率

留 保 処 分 、 執 行猶 予 、 列 執 行終 了 の順 序 であ る が、 昭和 十 三 年 四 月

各 年 度 を 通 じ て の再 犯 者 の順列 は現 在 も 同 様 にし て即 ち 起 訴 猶 予、

た が、 私 は二 回 以 上 処分 を受 け た る者 に つい ても其 の 一回 だ け の犯

し て計 算 さ れ てゐ る。 この種 の者 数 名 を採 れば いま少 し 多 数 と な つ

尤 も前 記 二 百三 十 六 名 の中 には 二 回以 上 犯罪 を 犯し た る 者 が重 複

( 第 二章第 一 ﹁調査研究 の対象と為したる再犯﹂参照)。従 つて今

を調査研究 で取 扱 ふ こと に し た

現 在 、 換 言 す れば 僅 に 四箇 月間 に執 行 猶 予 者 の再 犯 が 人員 数 に於 て

罪︱

原則 とし て最 近 の犯罪︱

十 二 名比 率 に於 て 一％ を増 加 し て居 り、 之 に反 し て起 訴 猶 予 処 分 を 受 け た る者 は人員 数 に於 て六 名 を増 加 す るも 比 率 に於 ては 一％ を減

(一) 再犯者 に対する前裁判

後 の調査研究は凡 て右 二百十三名を基礎 とす るのである。 甲 刑執行終了者 に対する前裁判

こ の項 を終 は る に際 し て私 は 本法 違 反 事 件 の再 犯現 象 と普 通 犯 罪

少 し てゐ る の であ る 。

(刑 法犯 ) のそ れ と を 比較 し て置 かう と思 ふ。 昭 利 七年 よ り昭 和十

一年 六月 

一年 二月 

懲役  一年 

一九

人 員 同 

二年 

一五

期 

刑執行終了者八十名 に対する前裁判 の刑 期は次 の如く であ る。

同 

二年 六月 

二五

刑

一年 に至 る五 箇 年間 の統 計 に依 れば普 通犯 罪 の 一箇 年 平 均有 罪 被 告

の百 分 比例 は初 犯 者 六 四 ・七 ％前 科 者 三 五 ・三％ であ る (司法 省 昭和

人前科者︱

同 

三年 

人 は 十 一万 三 千 七 十 三 人 にし て、其 の中 初 犯 者 は七 万 三 千百 四十 四

十 一年第 六十 二 刑 事 統 計年 表 参 照 )。 即 ち こ の数 字 には嘗 て起 訴 猶

同 

三年 六月 

三  刑 執 行終 了 者 竝 執 行 猶 予者 に関 す る調 査

同 

同 

六年 

五年 

四年 

一

二

三

五

二

四

一

予 処 分 を受 けた る こと あ る者 を含 まな い の であ る が、 昭 和十 二年 度

同 

三

に於 ける本 法 違 反 事 件 の再 犯率 と比 較 す る も遙 か に高 率 な の であ る。

同 

本 項 に於 て再 犯者 のう ち 刑 執行 終 了 者 竝 執 行 猶 予者 に つい て各 種

同 

事実上前科 あるもの︱ は三万九千九百二十九人、其

る迄 も な い こと で あら う 。

然 し 乍 ら 再 犯行 為 の危 険 性 に つ いて何 れ が大 であ る か は敢 て比 較す

の統 計 的 観 察 を試 み よ う と思 ふ。 前 述 の如 く昭 和 十 三年 四月 末 現 在

八〇

懲役二年以上四年以下 

最 も多数な るは懲役三年 の二十五名で之 に次ぎ同二年十九名、同二

刑執行終了者 の前裁判 の刑期は最高懲役六年 最低同 一年 であるが、

計 

に於 て再 犯 者中 刑 執 行 終 了 者 は 八十 五名 、 執 行 猶 予 者 は百 五 十 一名 合 計 二百 三 十 六 名 であ る。 然 し 乍 ら、 私 が多 少 な り と も蒐 集 し得 た

であ る 。

資料 は刑 執 行 終 了 者 八十 名、 執 行 猶 予者 百 三 十 三名 合 計 二百 十 三 名

一名 を算 入 す) 一割 強 であ る が、 残 余 六十 九 名 九 割 弱 は懲 役 三 年 以

年 六 月十 五 名 であ る。而 し て懲 役 三年 を越 ゆ る者 十 一名 (不 定 期刑

五

四

三

年 

年 

年 

四六

四六

四〇

一三三

第 一審 の裁 判 が確 定 した る者 

三十 二 名

百 一名

いづ れ にせ よ 再 犯者 に対 す る 刑 の執 行 猶 予 の裁 判 中第 一審 の裁 判 が

に繋 属 し上 告 棄 却 の裁 判 に依 て第 二 審 の裁 判 が確 定 し た も のも あ る。

被告 人 の控 訴 に依 り 第 二審 の裁 判 が あ つた も のも あ る。 また 上 告審

後 者 の中 に は第 一審 に於 て刑 の執 行猶 予 の裁 判 を受 け、 検 事 若 は

第 二審 の裁 判 が確 定 した る者 

た と ころ 次 の如 き結 果 を 見 た ので あ る。

次 に執 行 猶 予者 に対 し如 何 な る審 級 の裁判 が確 定 し た か を調 査 し

以 て全 員 の三 分 の二以 上 の割 合 と な つて ゐる 。

即 ち 刑 期 は 懲役 二年 が 大多 数 を占 め 執 行 猶 予期 間 は 四 年竝 五年 を

計 

下 の者 が占 め て ゐ る。尤 も之 等 の多 数 の者 は未 決 勾 留 の通 算 があ り ま た受 刑 中 減 刑 を 受 け或 は仮 出 獄 と 為 つ てゐ る者 も あ る の で全 部 が 其 の刑期 を受 刑 し た 訳 では な い。 更 に保 釈 中 ま たは 疾 病 の為 刑 の執

る者 は 二名 、 刑 の執 行停 止 処 分 中 の者 は 一名 を数 ふ。 仮 出獄 処 分 を

行 停 止中 再 犯 を 犯 し て ゐ る者 も あ る の であ る。 保 釈 中 再 犯 を 犯 し た

受 け た者 の数 に つ いて は確 定 数 は 調 査未 了 であ るが 、判 明 し て居 る

乙  執 行 猶 予 者 に対 す る前 裁 判

分 のみ挙 げ れば 十 七 名 で あ る。

二

員

刑 執 行 終 了 者 に あ つては これ等 の者 が前 刑 を 終 了し ま た は仮 出 獄

人

執 行 猶 予 者 百 三十 三名 に対 す る前 裁 判 の刑 期 竝執 行 猶 予期 間 を掲 ぐ る。

期 

其 の刑 期 は 次 の如 く であ る。 刑

一

処 分 に依 つ て釈放 せ ら れた る後 再 犯行 為 に着 手 す る迄 の期 間 を、 執

禁錮  一年 

五

行 猶 予 者 にあ つ ては前 裁 判後 再 犯 行 為 に着 手 す る迄 の期 間 を調 査 し

(二) 再 犯 に至 る期 間

一

過半 数 を占 む る こと を注 意 す べ き であ る。

九

年 

懲役  一年 

同 二

一年 二 月 

同  一年 六 月 

同 

た。 両 者 と も 大体 釈 放 よ り再 犯 に到 る期 間 の算 定 を目 的 と し た ので

甲  刑執 行 終 了 者 の再 犯 に至 る期 間

れも 前 であ る こと は 説 明 す る迄 も な く明 白 な こと であ る 。

た 。 尚 こ の期 間 の終 期 は再 犯 に対 す る司法 処分 の為 さ れ た時 よ り何

あ る が、執 行 猶 予 者 は計算 の便 宜 上 特 に前 裁判 の言 渡時 を始 期 と し

一

員

一 一五

年 

人

一三三

二 年 

計 

同 

其 の執 行 猶 予 期間 は次 の如 く であ る。

一

刑 の執 行猶 予期 間 

上 

上 

二

六

三

年

一 年

月

月

明 は前 同 様 であ る。 執 行 猶 予 者 の場 合 も 一年 以 内 に再 犯 を 犯 し た る

其 の他 十 二 名 は前 裁 判 言渡 前 に再 犯 に着 手 し た る者 であ つ て、 不

一三 三

三

者甚 だ多 数 な る現象 を呈 し て ゐる。 即 ち この調 査 の取 扱 ひた る 一年

再 犯 に至 る期 間 

四

一二

上 

未

二九

以

以

上 

年

満 

以

三

満 

月

一 月

以

上 

未

三 月

以

上 

未

一 年

六

年

以

刑 執 行 終 了 者 八十 名 に付 釈 放 せ ら れた る時 を起 算 点 と し て其 の再

三

年

二〇

五

員

三

犯 に至 る期 間 を 調 査 し た る に次 の如 く で あ る。

八

其

三二

満  一四

満 

未 満 

満 

満  月 未 二三

不

未

未 三 月 満  一九

未

月 上  六 未 満  三

二

以 内 の再 犯 着 手 者 だ け で も七 十 一名 に し て執 行 猶 予者 全 員 百 五 十 一

人

一 以

一 年 未 満 

一三

月 上 

年 未

満 

一 以 上  二 年

一二

以 上  三

他 

月

以 上 

他 

三

の

三 月

以 上 

一

一 年

六

年 以

明 

二 年 の 明 

名 の約 半 数 に近 く 、 更 に 二年 以 内 の着 手 者 を計 上 す れば 百 三 名 にし

八〇

計 

三 其 不 計 

其 の他 二 名 は保 釈 中 の者 であ つて、 不 明 三 名 は調 査 未 了 若 は 調 査

次 に猶 予期 間 と 再 犯着 手 の時 期 と の関 係 に つ いて観 察 す る に、 猶

て其 の六割 強 に該 当 す る のであ る。

予 期 間 を経 過 し た る後 に於 て再 犯 を為 し た る者 僅 か二 名 に し て他 は

にあ つては 一年 以内 に再 犯 を 犯 し た る者 五 十 名 に し て絶 対 多 数 を 数

し た るも判 明 せ ざ り し者 であ る。 この表 で明瞭 の如 く刑 執 行 終 了者

ふ る の であ る 。更 に 二年 以 内 と し て之 を計 算 す れ ば保 釈 中 の者 竝 に

全 部 同 期間 内 に犯 行 を開始 し て ゐ る の であ る 。

人

員

に青 年 性 に浸 透 す る性 質 を有 す る為、 生 活環 境 に因 る 行動 上 の制 約

し て は共 産 党 の指 導 精 神 が理 論 的 、戦 闘 的 、 非 伝 統的 で あ つて容易

の結 果 瞭 然 た る こと であ る。而 し て青 年 が多 数 を 占 む る主 要 原 因 と

壮 年 者 、 高 年 者 が極 め て少 数 であ ると 云 ふ こと は 従来 の統 計 的 調査

日本 共 産 党事 件 関 係 者 の大部 分 は青 年 者 であ り 、三 十 歳 を超 ゆ る

( 三 ) 再 犯 者 の年 齢

不 明 の分 を 度 外視 す る も刑 執 行終 了者 全 員 八 十 五 名 の約 八割強 六 十 九 名 に達 す る こと にな る。 乙  執 行 猶 予 者 の再 犯 に至 る期 間

満 

一〇

執 行 猶 予 者 百 三 十 三名 の再 犯 に至 る期 間 は 前 裁 判 言渡 時 を起 算 点

未

再 犯 に至 る期間 

とす れば 次 の如 く であ る。

一 月

る行動 上 の制 約 が主 た る原 因 と さ れ て ゐ る の であ る。 即 ち 共 産 党 の

等 が挙 げ ら れ てゐ る。 ま た 、 壮、 高 年 者 が少 数 な る は 生活 環 境 に因

因 るも のな る こと の外 、 非 合 法 運動 で あ る こと や 現時 の社 会 的 条 件

を受 く る こと 少 なき 青 年 者 を し て其 の運 動 に傾 動 し易 か ら し む る に

高

同 

壮

同 

青

少

年

年

前

後

年 

期 

期 

期 

一

六

二七

四二

八〇

後

前

期 

期 

期 

期 

六

二 一

六七

三 一

一

員

前

年 

後

人

後

乙  執行 猶 予者 の年 齢

計 

ひ社会 の客 観 情 勢 、其 の運動 の現 実 的 効 果 の如 何 に拘 は らず 闘 争 に

執 行猶 予 者 百 三 十 三 名 に つき年 齢 階 梯 別 に し て見 る。

有 す る顕 著 な る特 徴 は其 の革 命 主 義 であ つ て、 共 産 主 義 の公 式 に従

偏 向 せ るも のな る が故 に、 現 実 的 批 判 力 を 欠 乏す る青 年 期 にあ つて

れば 情 熱 も 次 第 に減 退 し て来 る 一方 妻帯 其 の他 の原 因 で生 活 責 任 も

同 

年 齢 階 梯 

重加 し 現 実 的 傾 向 を帯 び て来 る の で、仮 り に最 初 は共 産 党 に 共鳴 し

は情 勢 の赴 く儘 之 に 共鳴 し容 易 に身 を投 ず る に至 る が、 壮 年 期 に入

て ゐ ても 次 第 に実践 運動 に追 随 す る こと が出 来 な くな る に至 る のだ

年

五

壮

二

同 

年 

と説 明 され て ゐる ので あ る。 更 に少 年者 の少 な き は 共 産 主義 運動 は

高

理 論 と 実 践 と が不可 分 離 的 関 係 にあ るか ら だと 云 は れ て ゐる。 然 らば 再 犯 者 の年 齢 はど う であ ら う か 。 刑執行終了者、 執 行猶 予者

明 

右 表 に依 り 明白 であ る が、 刑 執 行 終 了 者 、 執行 猶 予 者 の雙方 と も

一三三

不

青 年前 後 期 竝壮 年 前 期 を 以 て殆 んど 其 の全 部 を占 め て ゐる のであ る

計 

二百 十 三 名 に つ いて観 察 を 試 みよ う 。何 れ も再 犯 に対 す る 司法 処 分

に従 つた の であ る。 即 ち 少年 は 二十 歳 以 下 、 青年 の前 期 は 二十 一歳

時 を 標 準 と し た の であ つて、 ま た年 齢 階 梯 の分 類 は 普 通 一般 の方 法

乃 至 二 十 五歳 後 期 は 二十 六 歳 乃至 三十 歳 、 壮 年 の前 期 は 三十 一歳 以

から、 共産 主 義 運 動 に 及 ぼす 年 齢 の作 用 に つ いて の従来 の見 解 は再

ナシ

員

し て高 齢 であ る こと は固 よ り 当 然 では あ る が、 両 者 に亙 つて 相 当 多

あ らう 。 先 づ第 一は刑 執 行 終 了 者 の年 齢 が執 行 猶 予者 の そ れと 比 較

犯 と いふ特 異 現 象 に関 す る限 り に於 ても例 外 とは な ら な いの であ る。

人

甲  刑 執 行終 了 者 の年 齢

上 三 十 五 歳後 期 は三 十 六 歳 以 上 四十 歳 、 高 年 は 四十 一歳 以 上 であ る。

年  期 

く の壮 年 者 の数 を見 る こと であ る。 この こと は特殊 の者 に対 し ては

た ゞ、 我 々が之 等 の表 か ら看 取 し な け れば な らな い のは次 の こと で

前

年 齢 階 梯 

年

四

刑 執 行 終 了 者 八十 名 に つき年 齢 階 梯 別 にし て見 る。

少 青

する可能性 が相当顕著 であるといふ事実を実証 してゐるのである。

共産主義理論 が壮年期に入 るも更 に具体的 に云 へば四十歳迄は幻惑

不

高

同 

壮 後

前

明 

年 

期 

期 

二名

四名

六名

一八 名

年

の大 なるは何 れも前処分と再 犯行為と の近接 を示し てゐるのである。

六二名

第 二に刑執行終了者 の青年後期及 び執行猶 予者 の青年 前後 期 の数字 計 

二六歳弱

二六歳弱

再 犯 者 が知 識 階 級 、非 知 識 階 級 の何 れ に多 数 であ る か を知 る為 に

(五 ) 再 犯者 の教 育 程度

で あ つて、 最 低 は 二十 三 歳 最 高 は 五十 歳 であ る。其 の不 明 二 名 を

三 年  二四歳強

教 育 程度 を調 査 す る。 これ は また 同 時 に再 犯者 の従 前若 く は再 犯 当

次 に本法違反 に依 り起訴処分を受けたる者 の平均年齢が近時逐次

即ち前掲再 犯に至 る期間 の調査の結果を裏書 してゐることになる。

四 年 

二四歳強

の起 訴 処 分 を受 け し 者 の平 均 年 齢 上 昇 の原 因 は再 犯 者 に基 ︹く︺ も

五 年 

二五歳強

除 き残 余 の者 の平 均年 齢 を 算 出 す る と 三十 二歳 強 と な り、 大 体最 近

年 

上昇 の傾向 を有す ると云はれてゐる。昭和三年度以降起訴せられた

年 

る事件関係者 の各年度別平均年齢 は次 の如くである。 同  六

九

八 年 

年 

年 

二七歳強

二六歳強

二五歳強

時 の家 庭的 環 境 の幾 分 か を知 る資 料 にも な る で あ らう。

の であ る こと が推 測 さ れ る のであ る。

同  七

同  十

昭 和

同 

同 

同 

甲  刑執 行 終 了 者 の教育 程度

同 

度 

度 

一

二八

二四

員 程

度 

五

二二 程

育 

人

程

明 

校 

刑 執 行終 了者 八十 名 の教育 程度 は次 の如 く であ る。 学 等

二九歳強

三六歳強( 党関係 二七歳弱) 高

十 一年 

等

十 二年 

学

同 

中

同 

小

教

八〇

無 教 育 及 不 明 六名 を除 き た る七 十 四名 を学 校 種 別 に依 て分 類 す る

計 

そ こで私 の蒐集し得た昭和十 二年度以降昭和十三年四月迄に於 て

四名

司法処分 を受 けし刑執行終 了者 四十名執行猶予者 五十 四名合計九十

二八名

無

期 

不

期 

四名 の中起訴 処分 を受 けた六十二名のみの年齢 について調査し て見 前

る。先づ之を年齢 階梯別 にす ると 後

年

同 

青

学 校種別 

と次 の通 である。 学  内訳 官公立 

大

人 員 七

一〇

私

立 

中等学校 一一

一

七

七

二八

三二

内訳 高等科 

小 学 校 

三

乙 執行猶予者 の教育程度

ナシ

一二

執 行猶 予者百三十三名 の教育程度は次 の如 くであ る。

尋常科 

九

程 度 

計 

三

程 度 

立 

高 等 ・専門学校 

私

立 

等

私

内訳 官公立 

等

員 高

四

四八

五三

二四 中

明 

程 度 

人

中等学校  一七

二八

小 学

校 

小 学 校 

不

学

内訳 高等科 

一一

一三三

不明 四名 を除きたる百 二十九名を学校種別 に依 て分類す ると次 の

計 

七四

尋常科  計 

更に厳格 に言 へば之等 の者全部 が夫 々の学校 を卒業した訳 ではな い。中途退学者 が相当多 い。中途退学者 の数 は確定数 は調査未了 で

通 である。

二八

人 員

九

一九

学 

学校種 別 

立 

大

私

内訳 官公立 

あるが判明し て居るだけを掲げ る。尚高 等 ・専門学校以上 の中途退 中途退学者数

学者 の大部分は初犯処分を受 けた結果 である。 員

一七

二五

六

内 訳 官公立 

高 等 ・専門学校 

人

三

私

学 

学校種別 

三

中 等学校 

大

私 立 

内訳 官公立 

八

二八

八 七

立  内訳 官公立 

高等 ・専門学校 

計 

尋 常 科 

三

五二

普 通 に行 は れ て ゐ る様 に高 等 程 度 の教 育 を受 けた 者 を知 識 階 級 と

四八 一八

三〇

小 学 校  尋常科 

内訳 高等科 

し 然 らざ る者 を非 知 識 階 級 と す れば 、 刑 執 行終 了 者 竝 執 行 猶 予者 は 次 の割 合 と な る 。

七五名

一二 九

計  更 に執行猶 予者 も中途退学者が相当多 い︱ 在 学中 の者 は私立大

級 

九名

一 二九 名

階

知

明 

非 知 識 階 級 

識

学 に二名。私立高専 に 一名外 一名である。︱

不

こと が出 来 な か つた 刑 執 行終 了者 五名 執 行 猶 予者 十 数 名 を 容 れ る と

強 で あ る。 こ の比率 は不 明 の分 を調 査し 或 は こ の調 査 研 究 で取扱 ふ

中途退学者 の判 明し

てゐる分だけを掲げ ると左 の如 く である。之等 の者 も高等 ・専門学

二 一三 名

一五

人 員

判 明 せ るだ け で比 率 を採 れ ば知 議 階 級 三 七 ％弱 非 知 議 階 級 六 三 ％

計 

校以上 の大部分 は刑執行終了者 の場合と同様初犯処分 の結果中途退 中途退学者数

学したと観 てよいのであ る。 学校種別 

私 立 

内訳 官公立 

一八

六

九

れな い。 或 は 偶 然 の こと かも 知 れ ぬ が、 こ の比率 は 昭和 三 年 以降 今

処 分 を受 け た る者 を含 め て の再 犯者 全 部 に通 ず る現 象 でな いか も知

結 果 が違 つて来 る か も知 れ な い。 ま た起 訴 猶 予処 分 若 く は起 訴 留 保

大 学 

高等 ・専門学校 

(非 知 識 階 級 ) が 六 五 ％と な つ て居 る。 参 考 と し て起 訴 処 分 を受 け

即 ち 昭和 三 年 以 降 昭和 十 三 年 四 月現 在 ま で の平均 率 は高 等 教育 を受

比

た 者 の教 育 程 度 一覧 表 を掲 げ て置 く。

計

計

けた る者 (知 識階 級 ) が三 五 ％、 中 等 及 び初 等 教 育 を 受 け た る 者

四

初 等 程 度

一 覧 表 中 等 程 度

総

七

日迄 本 法 違 反 で起訴 さ れた 者 の教 育 程 度 別 の平 均率 に近 い の であ る。

三

度

一五

育 程

私 立 

教

内訳 官公立 

訴 者 高 等 程 度

率

一二

別 年

率

中等学校 

三

自昭 和 三 年 至 同十三年四月 起

内訳 高等科 

度 和

比

小 学 校 

年 昭

昭

昭

昭

昭

昭

昭

和

和

和

和

和

和

和

十

九

八

七

六

五

四

年

年

年

年

年

年

年

昭 昭 和 十 一年 ( 大本教関係ヲ含マズ) 昭 和 十 二 年 昭 和 十 三 年 自 一月至四月 計

其 の他 と分 類 す るも のも あ り、 また 、 転 向原 因 を (一)、 個 人 的 原

長 き 隔離 生活 を通 じ て家 族愛 の目覚 め (ロ)、国 家 機 関 を 通 じ て の

因 (二)、 社 会 的 原 因 の両者 に 区別 し、 其 の個 人的 原 因 中 には (イ)、

同 胞 愛 への感 謝 (ハ)、刑 務所 教誨 師 を 通 じ 大 乗 的 宗 教 へ の接 触

第 四章  第 三  所謂 転 向 に関 す る 考察 二  転 向 の端 緒

社 会 的 原因 と し て は (イ )、 国際 情 勢 と コミ ンテ ル ンの誤 謬 (ロ)、

(ニ)、 国家 機 関 を通 じ て皇 室 の御 仁愛 に対 す る新 な る感 激 を 挙 げ、

所 謂転 向 の端 緒 即 ち 思 想 犯人 が如 何 な る動 機 原 因 に依 り方 向転 換

右 翼 国 家 主義 運動 の展 開 (ハ)、 満 洲 事 変 、 上海 事 変 、 国 際 聯 盟 の

を 為 し た る か の探 究 は、 これ のみ に ても 一箇 の肝 要 にし て至 難 な る 研 究 題 目 であ つて、 多 少 の経 験 、 若 干 の資 料 で之 を断 定 す る こと は

人 的 原 因 、 社会 的 原 因 の両 者 と も転 向 に至 る 重要 な る要 素 であ る が、

脱 退 (ニ)、 内 部 的 全 面的 覚 醒 (ホ)、 外 交、 軍 事 、 産 業 、 貿 易 の世

思 想 犯 は思 想 に基 く犯 罪 であ り、 思 想 は個 人的 条 件 を社 会 的 条件 以

不 可 能 であ る し、 また 危 険 だ と信 ず る。 た ゞ、 こ の問 題 に つい ては

従 来 の調 査 研 究 に依 れば 、 転 向 の原 因 に つい ては其 の観 点 の相違

上 に其 の要 素 に持 つも のな るが 故 に、 両 者 の何 れ が主 動 的 立場 に あ

界 的 進 出 (へ)、 世 界 に於 け る日本 研 究 熱 の高 潮 を数 へ、 而 し て 個

か ら種 々 の分類 が 行 は れ て ゐ る。 一、二 の例 を 採 る な らば 之 を (一)、

従 来 各 方 面 で調 査若 く は研 究 が為 さ れ て居 る の で、 之 等 調 査 研 究 の

近親 愛其 他 家庭 関係 (二)、 国 民 的 自覚 (三)、 性格 健 康等 身 上 関 係

る かと 言 へば、 其 の個 人 的 要 素 こそ主 動 的 な も の であ ると 為 す も の

結 果 に従 ひ考察 し て行 き た い。

(四)、 拘 禁 に因 る後 悔 ( 五 )、 共 産 主義 理論 の清 算 (六)、 信 仰 (七)、

そ のも のと 為 す も の もあ る。 之 等 の分 類 は夫 々其 の観 察 の立 場 か ら

庭 愛 の復 活 (六)、 階 級 的 自 制 (七)、 国 民 的 自 覚 (八)、 拘 禁 生 活

(二)、 健 康 の消極 性 ( 三 )、 性 格 の反 省 (四)、 生 活 責 任 (五)、 家

も あ る。 更 にま た 異 な つた 観 点 よ り分 類 し て (一)、 年 齢 の作 用

る。 従 つて マル ク ス主 義 が誤 つて ゐる と い ふ確 固 た る 証拠 な どは な

見 主 義 に 犯 さ れ て さう いふ気 持 にな る ので はな いか と いふ感 じ であ

立 で あ る。 共 産 主 義 に対 す る疑 惑 は単 な る妄 想 であ り、 敗 北 的 日和

持 ち乍 ら、 一方 には 共産 主義 が真 理 であ つて欲 し いと いふ気 持 の対

先 づ 苦悩 か ら始 ま る。其 の苦 悩 と は 何 か。 そ れ は共産 主 義 に疑 ひを

も拘 禁 生 活 の長 短 に比 例 し 、拘 禁 生活 の長 期 に亙 る者 ほ ど其 の転 向

基 礎 的 条 件 と 迄 評価 さ れ んと し て ゐる のであ る。 ま た 、転 向 の程度

活 や故 郷 のこと が思 ひ出 さ れた り、 父 母 兄弟 の こと な ど もし き り に

読 書 や思 索 にあ い てぼ ん や りす ると 、 い つと はな し に幼 少 の頃 の生

な る自 己 の思 想 生 活 に対 す る焦 躁 を感 ず る に至 る の であ る。 而 かも

の状 態 に置 か れ る 一方 に於 て は、 又 一種 名状 し 難 き 心細 さ と不 安 定

抜 け切 れな いわ け であ る。 乍 併 か ゝ る迷 ひ

の内 容 が高 度 であ ると さ れ て ゐ る。 具 体 的 に言 へば、 警 察 拘 留 のみ

念 頭 を去 来 す る。 し か し斯 う し た 気持 に捉 へられ る こと を極 度 に恐

の考 へ方 か らも な か〓

か〓 握 り得な いし、階級闘争 を是認し革命運動を必要 とす る従来

何 れ も根 拠 を 有 す る様 に思 考 され る 。 而 し て従 来 の研 究 に従 へば 、 転 向 の端 緒 の第 一と し て拘 禁 が挙 げ

に て釈 放 され た起 訴 猶 予 者 よ り も未 決 勾 留 を 受 け し執 行猶 予者 、執

ら れ て ゐ る。否 、 拘 禁 生 活 こそ は思 想 犯人 が転 向 を為 す に つい て の

行 猶 予 者 よ り刑 の執 行 を 終 了 し た る者 が更 に高 度 の転 向状 態 に達 す

家 庭 の こと が思 ひ出 さ れ る のを ど う す る こと も 出来 な く な ると 云 つ

れ な が ら これを意 識 的 に打 ち 消 す と 、今 度 は倍 の反撥 力 を 以 て親 や

私 も 拘 禁 生活 が転 向 に つ い て の重要 な る原 因 であ る こと を肯 定す

る と説 明 され て ゐる の であ る。

るも の であ る。 蓋 し 思 想 犯 人 は 運動 中 或 は 革 命 思想 に 駆使 さ れる儘

に検 討 す ると いふ機 会 も な く 且 左様 な機 会 を作 ら う と さ へし な い。

索 を別 個 の立場 か ら再 批 判 す る余 裕 も なけ れ ば 、自 己 の行 動 を冷静

於 て自 己 の行 動 を 検討 し思 想 を 再 吟味 す る心 境 に到 達 す る様 であ る。

少 数 の例 外 を除 き其 の好 む と 好 ま ざ る と に拘 は らず 冷 静 な る状 態 に

増 減 が あ る こと にな る のであ ら う 。然 し斯 か る時期 を経 過 す ると 、

若 し然 り とす れ ば、 其 の苦 悩 は共産 主 義 理 論 把握 の深 浅 に依 つて

た や う な苦 悩 で あ る﹂ と 。

然 る に拘 禁 生活 は思 想 犯 人 を 社会 か ら完 全 に隔 離 し、 冷 静 な る状 態

ふ か、 或 は思 想 犯 人 に ﹁物 事 を 一元的 に の み考 察 せず 、 よ り広 き 立

即 ち 拘 禁 生 活 が思想 犯人 を 一定 の観念 の拘 束 から脱却 せし む ると い

に或 は 環 境 の命 ず る儘 に只 唯盲 動 的 、 無 批 判 的 に 活 動 し、 自 己 の思

の下 に自 己 反省 の機 会 を 与 へま た思 索 を 再 吟味 す る余 裕 を与 へる か

解 し て見 よう と す る心持 ﹂ が起 ると 言 ふ こと が出 来 る のであ る。

を素 直 に批 判 的 に見 る 心持 、 他 の人 の言 ふと ころ を あ り の ま ゝ に理

場 か ら考 察 す る に至 ら し む る こと 、言 葉 を換 へて云 へば 、 物 事 一切

ら であ る 。勿 論 か ゝる 境 地 に達 す る に は相 当 の時 日 を要 し、其 の間 多 く の内 心的 苦 闘 、 懊 悩 を 重 ね る も の であ る ら し い。 こ の点 に つい ては 池 田 氏 が精 緻 な る心 理的 解剖 を試 み て居 ら れ る の で、 そ の箇 所 を引 用 し て置 く。 曰 く ﹁転 向 の第 一歩 は多 く の場 合

重 大 な る要 素 であ る こと を 看 過 し難 い。 拘 禁 生 活 が苦 痛 の生 活 であ

然 し 乍 ら 拘 禁 生活 の思 想 犯 人 に与 へる肉 体 的 苦 痛 も自 己 反 省 への

は痛感 し て居 る の です 。

生 活 と比 較 し て如 何 に自 由 な た のし い楽園 で あ るか と 云 ふ事 を 今

社 会 の矛 盾 を痛感 し た自 分 は其 の矛盾 の充 ちた 社 会 の方 が檻 房 の

も 何物 か に お びえ つ ゝ生 きね ば な ら な い。 私 はも う さ う いふ 事 は

運動 に関 係 し て居 る と い つも不 安 な気 持 で、 いた ち の様 に い つ

る ことは 勿 論 であ る。 殊 に知 識 階級 出 身 者 は其 の苦痛 を感 ず る程 度

思 ふ丈 け でも ぞ つと し ます 。 私 は 所謂 階 級 的 見 地 か らす れ ば 、 没

が甚 だし か らう。 この こと は 転 向 者 の幾 つか の手 記 を読 むと き は容 易 に発 見 出 来 る。 次 に掲 げ る のは 行刑 参 考 資 料 か ら抜萃 した も の で

う マルク ス主義 者 た る事 を止 め ま し た。 私 は そ のた め却 つ て心 の

落 者 であ りま す 。裏 切者 です 。 し か し 私 は 一切 の清 算 によ つ ても

平 和 を取 戻 し た様 な気 がし ま す 。 主義 の為 に身 を投 ず る。 これ は

﹁約 一ケ月 に わ た る檻 房 の生 活 は私 の考 を す っか り変 へてし ま ひ まし た 。 一切 の精 神 的 肉 体的 自 由 を奪 は れ た檻 房 の生 活 は ど ん

あ る が、 前 者 は大 学 学 生 、 後 者 は高 等 専 門 学 校 生 徒 の手 記 であ る。

な に辛 く 苦 し か つた事 でせ う 。 日夜 慣 れな い生活 で眠 れず う とう

へて見 た場 合 運動 と い ふも のはぢ り〓

或 一面 から 見 れ ば いゝ かも 知 れ な い。 し かし 自 分 の 一身 上 か ら考

プ ロレ タ リア文 学 家 と な る に は さう い ふ生活 を し な け れば 又 し て

な い の です 。 そ れ がど う し てプ ロ レタ リア文 学 が書 け る でせ う。

私 は過 去 に於 て いさ ゝ か のプ ロ レタ リ ア の生 活 も実 際 には し て居

一切 の運動 の束 縛 か ら解 放 さ れ て静 か に散 歩 し た い。 又 今後 は さ

へて見 るベ き では あ りま す ま いか。 私 は秋 晴 れ の空 が好 き です 。

叫 ぶ のも い ゝだ らう 。 し かし自 由 を求 め て自由 を殺 す 愚 か さ を考

も のであ る事 が分 りま す 。 例 へば 私 が これ から も運 動 を 続 け る と ︹ 放︺ 仮 定 し た場 合、 す ぐ檻 房 の生 活 を想 像 しま す。 自 由 を 叫 び解 散 を

と 自 分 を殺 し て居 る様 な

の空 がな つか し く、 平 和 な 幼 な か りし 頃 の生活 が ど ん な に私 の胸

と睡 つ ては 、亡 き母 の夢 に眼覚 め、 も ず の啼 く声 を聞 い ては故 郷

来 た も の でな け れば 出来 な い。 単 に二 三冊 の本 を読 ん で マルク ス

う いふ生 活 に 生き た いと 思 ひ ま す。﹂ (某 大 学 生 の手 記 ︱

を かき 乱 し た事 で せう 。 私 は プ ロ レタ リ ア では あ り ま せん でし た。

主 義 を 正 し いと信 じ 、英 雄的 な気 持 から 足 を踏 外 し た 自分 の愚 か

考 資 料 よ り 転載 )

て貰 つた と も 云 ふ ベき でせう 。 私 は 運 動 し て居 る時 は自 分 の社 会

り まし た 。肉 体 的 の苦 し みと精 神 的 の苦 し み殊 に H子 と の関 係 を

そし て闘争 と 云 ふも の ゝ如 何 に困 難 な も の であ る かを は つき り知

﹁私 は捕 ま つて はじ め て留置 場 生活 の苦 し み を経 験 し ま し た。

行刑参

さを 今更 乍 ら反 省 せざ る を得 な いの です 。檻 房 の生 活 は辛 か つた 。

的 な つな が りを 考 へま せ ん でし た 。 即 ち 自分 一個 の身 体 で な く親

さ れ るか当 のな い留 置場 生 活 の前 途 に対 す る恐 怖 感 絶 望感 と 又 日

云 ふ事 は 私 に は最 も人 間 的 な苦 痛 であ りま し た。 何 時 にな れば 出

し かし 一度 一歩 社 会 から 身 を却 け て静 かに自 己 反 省 の機会 を与 へ

みん な教 育 界 に関 係 のあ る人 間 です 。 私 が こん な人 間 だ と、 かう

本 の特殊 性 と、 極 度 の弾 圧 か ら プロ レタ リ ア革 命 が遠 い先 か も知

兄 弟 、親 類 、 又 学 校 の事 等 を忘 れ て居 た のです 。 殊 に私 の兄 弟 は

い ふ兄弟 を出 した と いふ事 が ど んな に家 に取 つて心 痛 の種 でせう 。

れ ぬと 云 ふ 理論 的 不 安 と は打 ち勝 ち 難 い強敵 と な つて私 に襲 ひか

ま し た。 家 の後 継 者 を 亡 く し て幼 な い孫達 丈 け で寂 し く生 活 し て

の道徳 観 を否 定 し て迄 や つて行 く任 務 が自 分 にあ る だ らう か。 私

僕 の卒業 を楽 し ん で居 た 老 父 の事 、 義 姉 の事 、 現 存 す る家 族 制 度

外 に出 た い併 し同 志 の事 を 云 はね ば な ら ぬ 。 こ の苦 し み の中 に

か る の でし た。

そ し て生活 に苦 し み抜 い て居 て や つと 見 付 け た 職 を失 ふ K子 、 そ

な 頭 に な つて行 く のを 感 じ ま した 。 あ ん な に 迄 尊敬 し て居 た H 子、

ま し た。 斯 うし た苦 し み が昂 じ て何 日 も 続 く 中 に私 は失 神 し た様

次 に拘禁 生活 の長 期 に亙 る者 が転 向 の内容 も高 度 であ ると いふ こ

せう 。﹂ ( 某 高 等 学 校 生 徒 の手 記 ︱

し た 。此 の長 い留 置場 生 活 は私 の人 生 の感 銘 深 い 一頁 と な る事 で

と 希 望 か ら現 実 線 迄 喰 ひ下 つて来 た 自 分 であ ら う。総 ては運 命 で

た 。 そ れ が功 利 的 にな つた自 分 であ ら う か。 否 、 青 年 ら し い理 想

リ ゲ ンチ ヤと 云 ふ特 質 を持 つた者 の消 極的 な弱 さ に逃 避 し て行 つ

れ から 私 と同 じ様 な道 を 歩 ま ねば な ら ぬ 学 生達 の事 、 此 の苦 し み

と も 容 認 し得 ると ころ であ る。 部 分 的 の例 に な る か知 れぬ が、 これ

は 闘 争 し な く ても済 む 、自 分 の小 ブ ルジ ヨアと 云 ふ階 級 と イ ンテ

の中 道 に私 は自 分 を 慰 め る異 な つた 立場 を見 出 し ま し た。 将来 の

を 再 犯 者 だ け に限 つ ても、 起 訴 猶 予者 及 び留 保 処 分 者 が最 も多 く、

恥 を 忍 ん で面 会 に来 た 故 郷 の老 父 や、 去 年 の秋 亡 く な つて逝 つた

為 め に 一時 的 の犠 牲 を 惜 し む な、 そし て又 学 生達 への慎 重 な 決意

執 行 猶 予者 これ に次 ぎ、 刑 執 行 終 了 者 最 低 な る は、 こ の事 実 を実 証

母 の事、 兄 義 姉 の事 を 回 想 し て薄 暗 い留 置場 で涙 ぐ ん だ事 も あ り

を要 求 す る警 告 と な るだ らう。 私 は総 てを 清算 し ま し た。 そ し て

に⋮ ⋮ 私 の空 に な つた 頭 には学 課 の勉 強 以 外 に何 も な か つた 、 そ

辺 的 事 情 の反 省 若 く は家 庭 愛 の復 活 等 も、 これ等 のも のを基 礎 づけ

と し て高 く評 価 さ るべ き も ので あ り、 年 齢 の作 用 、 性 格其 の他 の身

斯 く て曩 に述 べ る如 く拘 禁 生 活 は実 に転 向 に つい て の基礎 的 条 件

行 刑 参考 資 料 よ り転載 )

私 の心 は次 第 に氷 の解 け る様 に平 穏 な 諦 め に 転 向 し て行 き ま し た 。

的 に証 拠 立 て るも の であ る 。

し てそ れ で満 足 で幸 福 であ つた中 学 時 代 の自 分 ⋮ ⋮夜 の更 け る の

た。 私 は此 の逃 避 的 な卑怯 な気 持 を転 じ て、 真 面 目 な向 上 と 研究

今 では 私 の指 導者 も私 の左翼 背 景 もす べ てな く な つて しま ひま し

を 知 ら な いで数 学 をや つて居 た学 校 時 代 の姿 が浮 き 上 つて来 ま し

呉 れ な く ても 建 築 家 を数 人知 つて居 る か ら十 分 研 究 出 来 る のだ。

メ カ ニ ツク の世 界 、 私 は 矢張 り それ に進 ま う。 若 し 学 校 に入 れ て

エンヂ ニー アと し て、 建 築 家 と し て自 分 の生活 を建 直 す のだ。

け る思 想 犯 の 一つ の特 色 と も数 へられ る様 に考 へられ る か ら でも あ

転 向 の出 発 点 と 認 め ら れ る か ら で あ る。 ま た か ゝ る現象 が 我国 に於

な いか と思 は れ る。 そ れ は家 庭 愛 、 近 親 愛 への覚 醒 こそ 多 く の場 合

価 す る こと が出来 る の であ ら う し、 ま た 評 価 す る 必要 が あ る のでは

る が、拘 禁 生 活 を 除 いた 以 外 の原 因 で は家 庭愛 の復 活 も 相当 高 く評

こ の点 に つい ても 私 は 概 ね同 感 であ る。 た ゞ私 の浅 い経験 ではあ

る のは 拘禁 生活 そ のも の であ る と 云 ふ見 解 も成 立 つ訳 であ る。

矢張 り建 築 に精 進 す べ き自 分 だ つた のだ。 学 校 を出 れば 立 派 な設

た。

計 を す るよ と 父 や義 姉 の前 で約 束 し た当 時 の自 分 を 思 ひ出 し て見

る。

ゝか ひ てあ る妹 を いと し む ｣ と、 父 の手 紙 に涕 涙 し自 分 に 代 つて職

な か らう か 、 妻 子、 兄 弟 の無 事 息 災 では な から う か。 勿論 近親 に対

ほ さず 思想 犯 人も 日本 国 民 だ か ら で あ る。 ﹁刑務 所 の夜 間〓 と し て

然 ら ば何 故 に か やう な感 情 が起 る の であ ら う か。 そ れは と り も な

業 に就 く妹 を思 つて ゐ る の であ る。

す る愛 着 は 主 義 の前 に忽 ち 粉 砕 さ れ 瞬間 に消 滅 す るも ので あ る かも

げ て過 去 の行動 に対 す る自己 批判 を迫 り、 今 後 如 何 な る方 針 を 以 て

静 かな る時 、 思 想 犯 人 の耳 に別 な る彼 が囁 き 、彼 の心 の中 に声 を揚

思 想 犯 人 が其 の運動 中 も 絶 えず 胸裡 に往 来 す る のは親 の安 危 では

何 人居 る で あ ろう か。或 思 想 犯 人 は 言 ふ、 ﹁私 は マ ルキ シ ズ ム に 斯

知 れ ぬ。 然 し斯 様 な感 情 に捉 へら れ ぬ と いふ こと を 断 言 し得 る者 は

と 。私 達 は現 実 に多 く のイ ンテ リゲ ン チ ヤが骨 肉 の為 に、運 動 を投

義 の如 く個 人 を国 家 の構 成 単 位 と見 る の では な い。 従 つて家 を離 れ

あ る。 家族 制 度 は家 を国 家 形 成 の単 位 と なす も のだ。 西 洋 の個 人主

の彼 であ ら う 。謂 ふ ま でも な く 我国 は家 族 制 度 を根 幹 とす る国 家 で

の筆 にな る流 麗 な る叙 述 であ る が、 そ の別 な る彼 も 日本 国 民 と し て

げ打 つて顧 み ざ りし 事実 を知 つて居 り ま す 。或 は 又 ロシ ア の 一労 働

た個 人 は独 立 的存 在 ではな く 、 一家 の成 員 と し て のみ個 人 は 独 立者

進 む べき か の問 題 へ彼 を引 き 入 れ て行 く こと も あ らう ﹂ と は 池 田 氏

者 が 骨肉 を狂 死 せ し め て も撓 ゆ ま ざ り し 手 記 を読 んだ 事 があ り ます 。

た り得 る の であ る。 また 家 は 家 長 を中 心 に組 織 さ れ祖 先 崇 拝 を根 拠

く教 へら れ て居 ま す 。私 達 は決 し て骨肉 を愛 さ な い の では な い。 然

私 は 過去 に於 て幾 遍 も か ゝる場 合 に於 け る マルキ スト の態度 を語 り

と し て成 立 し てゐ る。 即 ち 共 同 の始 祖 の下 に於 け る団 体 であ り 、 祖

し 骨肉 よ り も つと 大 き な任 務 が歴 史 的使 命 が運 命 づ けら れ居 る のだ

合 ひま し た。 私 は決 し て肉 体 の為 に組 織 を 守 ら ざ る事 があ つ てはな

先 の意 志 を意 志 と し其 の祭 祀 の継 続 を任 務 とす る団 体 だ か ら であ る。

最 後 に家 は 親 子、 夫婦 の自 然 的 愛 情 を中 心 とす る血族 団 体 であ る。

ら な いと﹂ ( 行 刑 参 考資 料 よ り転 載 )。 だ が、 こ の言 葉 の裏 に彼 等 の

更 に検挙 さ れ て か ら の隔 離 生 活 に於 ては 一時 に この感 情 が爆 発 す

ころ が な いか も知 れ ぬ。 然 し 西 洋 の個 人 制 度 の家 は夫 婦 愛 の み尊 重

勿論 西 洋 の家 も自 然 的 愛 情 を中 心 と す る点 に於 ては 我国 と異 な ると

懊 悩 が歴 々と し て現 はれ てゐ る の では な から う か。

る の であ る。 前 に引 用 し た転 向 者 の手 記 で十分 彼 等 の心 境 を知 悉 す

す る に対 し 我 国 は親 子愛 が主 体 と な る ので あ る。 従 つて思 想 犯 人 が

る こと が出 来 る と思 ふが 、更 に い ま 一つこ の感 情 の動 き を 端的 に現

私 は茲 で共 産 主義 に対 す る批 判 を す る つも り で はな いが、 独 逸 の

骨肉 の愛 に目 覚 め る こと は当 然 の こと な のであ らう と思 ふ。

修 正 派 社会 主 義 者 ベ ル ン スタ イ ン ( E.Be rns t ei n) に依 つて エ ンゲ

は し て居 る実 例 を掲 げ る 。私 は嘗 て徒 然 な る儘 に学 聯 事 件竝 三、一

は ﹁一人 の犠 牲 こそ は万 人 の胚 種 な らず やと 言 ひ て 来 し 友 ﹂ ﹁あ ゝ

五 事 件 の関係 者 太 田遼一 郎 の歌 集 を繙 いた の であ つた 。 そ の中 で彼

未 来 そを ば おも へこそし かす が に暗 き 日本 の獄 に呼 吸 し つ﹂ と詠 ん

こ の書 は ベ ル ン スタ イ ン の 説 明 に

ル ス の死 後 同 人 の遺 稿 と し て発 刊 され た ﹁共産 主 義 原 理 (Gr undsatze des K om munismu s) ︱

で虚 勢 を 張 つてゐ る の であ るが、 ﹁ 孝 経 の首 句 のみ書 き て 叱 ら ざ る 父 の手 紙 よ 泣 かま ほ し け れ﹂ ﹁家 を い で吾 ら囚 は れ の兄 に か は り た

宣 言 ﹂ の最初 の草 案 だ と い ふ。 而 し て同 書 は 第一問 ﹁プ ロレ タリ ア

依 れば マルク ス、 エンゲ ル スが一 八四 八 年 倫 敦 で発表 し た ﹁共 産党

で明 瞭 と は思 ふ が、 家庭 愛 の復 活 それ自 体 が真 の転 向 と は認 め られ

合 吾 々が注 意 をし な け れ ば な ら ぬ こと が あ る。 そ れは これ迄 の論 述

た る 以 上 必ず 拘 禁 中斯 か る 心境︱

数 ふ べき は当 然 至 極 であ る 。 ま た客 観 的 情 勢殊 に我 国 に課 せ ら れた

転 向 の原因 とし て皇 室 の御仁 愛 に対 す る感 激 、 若 く は 国民 自 覚 を

に到 達 す る ので あ る。 家 庭 愛 の復 活 は多 く の場 合 運 動 よ り

外部 に表 現 す る か否 か を別 論 と

し て︱

な いと いふ こと であ る。 私 の見 解 を以 てす れば 思 想 犯 人 が 日本 国 民

てゐる︱

ー ト とは 何 か ﹂ か ら始 ま つて、 都 合 二十 五問 に亙 り問 答 体 で書 か れ

す か﹂ の解 答 と し て次 の如 き 記載 が あ る。 短 文 であ る か ら全 文 を訳

る こと は危 険 千万 であ る こと を知 らね ば な ら ぬ。

脱 退 の表白 と な る であ ら う。 然 し 之 を 遇 す る に真 の転 向者 を以 てす

は そ の中 に混 同 せ ら れな い。 共 産 主義 社 会 制 度 は これ を果 し得 る。

の中 に ﹁共産主義社会制度 は如何な る影響 を家族 に及ぼ

と な す であ ら う。 其 の関 係 は其 の当 事 者 の み の関 係 であ って、 社会

出 し て掲 げ る。 ﹁共産 主 義 社 会 制度 は男 女 両 性 を 純 粋 な る 個 人 関 係

何故 な らば 、 同 制度 は私 有 財 産 を 認 めず 、 ま た 子 供 を 共 同的 に教 育

三  転 向 の本質 竝其 の基 準

る大 使 命 の発 現 た る満 洲事 変 乃至 は今 次 事 変 が共 産 主 義 信奉 の迷 夢

転 向 と は既 に述 べ た る如 く日 本 国 民 た る こと を 自覚 す る こと であ

し、 以 て従 来 の婚 姻 関係 に於 け る二 つ の根柢 即 ち私 有 財 産 に依 る、

諤 々の反 対 論 に対 し て の答 弁 にも な る 。婦 人 共有 は 一般 人 の社会 に

る 。或 は之 を 日 本精 神 を把 握 す る こと ま た は体 得 す る ことと 称 す る

を 一蹴 す る偉 大 な る資 料 た るべ き こと は何 人 が之 を否 定 し得 よう か。

属 す る関 係 であ つて今 日 も 売淫 に於 て完 全 に存 在 す る。 だ が、 売 淫

も同一 で あ らう 。而 し そ れ は曩 に 一言 せ る如 く何 人 に も妥 協 迎 合す

な ほ 以上 の転 向 の原 因 は 同 時 に数 個競 合 す るを常 例 とす る。

は 私 有 財産 を基 礎 と し か つ これ と共 に消 滅 す る。 従 つて共 産 主義 的

これ が ま た道 徳 堅 固 な る俗 物 達 の共 産 主義 的 婦 人共 有 に対 す る侃 々

組 織 は婦 人 共有 を招 来 せず 、寧 ろ これを 止 揚 す る の であ る﹂。果 し

る こと な く、 ま た 何 人 に対 し ても 追 従 阿諛 し た る結果 のも の でな き、

夫 に対 す る妻 の隷 属 竝親 に対 す る子供 の隷 属 を否 定 す るか ら で あ る。

て斯 く の如 き も の とす れば 、 共産 主 義 は既 に家 族制 度 の点 に於 て も

合 に於 ては決 し て完 全 な る転 向 を期 待 し難 い。 従 つて真 の転 向 は思

と 言 へな い こと は 勿論 であ るし 、 また苟 く も何 等 か の意 図 を含 む場

の結 果為 す ベき も の であ る。 他 よ り強 ひら れ た る転 向 が真 実 の転 向

と し て為 さ れた るも のな る こと を要 す る。 従 つて転 向 は各 自 が内省

更 に何等 の打 算 的感 情 を混 えざ る、 日 本国 民 た る真情 の自 然 の流露

の で あ る から、 家 庭 愛 の復 活 こそ真 の転 向 の出 発 点 と も解 す ベく、

自 覚 にま で進 み、 家 族 制 度 の自 覚 は国 民 意 識 の把握 に ま で進 展 す る

想 犯 人 が個 々的 に転 向 を為 し た る場 合 に於 て のみ発 見 し得 る。

以上 述 べ た如 く家 庭 愛 の復 活、 近親 愛 の目 覚 め は軈 て家 族 制 度 の

我 国 家 の基 本 組 織 を破 壊 す るも のと云 はね ば な ら ぬ 。

決 し て こ れを 過 小評 価 す る過 誤 に陥 つて はな ら な い。 洵 に家 庭 愛 を

転 向 は、 従 来 の実 例 に於 ては思 想 犯 人 が個 々的 に転 向 す る場 合 の

復 活 した る思想 犯 人 を指 導 監 督 し国 民 意 識 の把 握 に向 つて出 発 到達 せ し む る こと は 司法 事 務 関 係 者 の任務 であ ると 信ず る。 た ゞ こ の場

四 年春 の解党 派 竝 昭和 八年 六 月 の佐 野 学 、 鍋 山貞 親 の転 向 の如 き で

外 、 二 名 以 上 共同 若 く は集 団 的 に為 した る こと が あ つた 。 即 ち 昭 和

国 社会 主 義 ︱

来 は日本朝鮮台湾 のみならず満洲支那 の民族 を包容する大国的な一

代表階級 だといふ労働 階級 が開拓者とな つて、 一国社会主義︱

ンよ り の分 離 を主 張 し 、而 し て 日本 民 族 の優 秀 性 を 説 き、 新 時 代 の

将

あ る。 前 述 の如 く こ の両者 が転 向 な る現象 の発生 に寄 与 し た功 績 は

立 場 から 見 て真 の転 向 と いふ には 不十 分 であ る こと であ ら う 。否 、

こ の声 明 書 を 通読 し て誰 し も 気 付 く こと は彼 等 の転 向 が 日本的 な

の建 設 を主 張 す る の であ る。

無 視 す る こと が出 来 な い。 が、 こ れら の者 は 何 れ も自 己 の意 思 に他 を合 流 せ し め新 な る政 治的 行 動 を 為 さむ が為 に所 謂 転 向 の表 明 を為 し た る も のと 認 め ら れ る形 跡 があ り 、 何 れ も斯 か る政策 的 企図 を含

ろ に依 れ ば同 人 等 は現 在 は殆 ん ど完 全 に日 本 人意 識 を取 戻 し てゐ る

ぐ る書 ﹂ と題 す る証 明 書 に関 す る限 り の こと であ る。 仄 聞 す る と こ

佐野、鍋山 の転向声明︱ 同 人等執 筆 に係 る ﹁共同被告同志 に告

は排 外 主 義 的 に昂奮 し て ゐ る の では な い。 彼 等 は 不可 避 に迫 る戦 争

資 本 主 義 機構 の変 革 を本 能 的 に欲 求 す る﹂、 曰 く ﹁労働 階 級 の 大 衆

を否 定 す るも の では な い﹂、 曰く ﹁労働 階級 は そ の階級 的 生 活 か ら

る﹂、 曰 く ﹁我 々は 世 界 プ ロ レタ リ ア ート の間 の国 際 主義 そ の も の

却 つて共 産 主義 の当 否 に関 す る反 省 が為 され て居 らざ る のみ な らず 、

の趣 旨 は 次 の如 く であ る。 即 ち 日本 共 産 党 が変 質堕 落 し

に勝 た ざ るベ か らず と 決 意 し 、之 を 必然 に国 内 改革 に結 合 せ ん と決

完全 なる

と 云 ふ︱

意 し て ゐ る﹂、 曰 く ﹁民 族 自 決 の原 則 は母 国 のプ ロ レタ リ ア ー ト と

むも のなる故︱ 其 の後 の彼等 の心境は別問題とし て︱

宛 ら急 進 小ブ ルジ ヨア の政 治 機 関 化 し てゐ て客 観 的 に見 て労 働 者 の

植 民 地 の労働 者 大 衆 と の結合 に よ つて築 かれ る 大国 的 な 一国 社会 主

未 だ共 産 主義 か ら完 全 に脱 却 し て ゐ な い こと は声 明 書 中 の左 の言 葉

党 と言 ふ こと が出 来 ぬ、 而 し て其 の根 本原 因 は コミ ンテ ル ンの政 治

義 の可 能 を無 視 し て居 る﹂、 ま た 曰 く ﹁我 々は尚 資 本 の搾 取 に 対 す

転 向 と は考 へら れぬ 。 この こと は 解 党 派 の多 数 者 が其 の後 再 び実 践

及 組 織 原 則 にあ ると為 し、 (イ) コミ ンテ ル ンが蘇 聯 邦 一国 の機 関

が示 し てゐ る のでは な から う か。 曰 く ﹁我 々は元 よ り 蘇聯 邦 及 支 那

化 した こと (ロ)、 日本 の特 殊性 を根 底 的 に 研 究 し て ゐ な い こ と

る労 働者 の利 益 擁 護 (七 時間 労 働 其 他 ) や 農業 革 命 の諸問 題 (寄 生

行 動 を為 し た る こと か らも 証 明 出来 る し、 一般 に熟 知 さ れ て ゐ る佐

(ハ)、 民 族 と 階級 と を反撥 させ る 政治 的 原 則 は 民 族的 統 一の 強 固

的 土 地所 有 の廃 除 其 他 ) に つき 多 く 語 るベ き も のを 持 つて居 る が、

ソヴ エート政 府 と の結 合 を 我 が労 働 階 級 の重要 任 務 の 一と 主 張 す

であ る 日 本 に当 嵌 ま ら ぬ こと (ニ)、 コミ ン テ ル ンの指 示 に 依 る 君

野 、 鍋 山 の所 謂 転向 声 明 に依 つても 明白 であ る。

主 制 廃 止 の ス ロー ガ ンが根 本 的 に誤 謬 であ る こ と (ホ)、 日 本 共 産

い﹂。更 に彼 等 の主 張 す る 一国 社 会 主 義 も所 謂 デ モク ラ シ イ の 思 想

そ れ に関 し て は根 本 にお いて従 来 の態 度 を変 更 す る 必 要 を 認 め な

働 階 級 に と つて有 害 であ る こと (ヘ)、 そ の公式 的 な植 民 地 民 族 の

こと は遍 く識 者 の指 摘 す ると ころ であ る 。

で あ り、 我 が国 体 に対 す る徹 底 的 自覚 が為 さ れ て ゐな い証 左 であ る

党 に課 し てゐ る敗 戦 主 義 は蘇 聯 邦 の利 害 の見 地 か ら で あ り、 日 本労

国家 的 分 離 政 策 は 日本 では妥 当 でな い こと等 の原 由 か ら コミ ンテ ル

次 に朝 鮮 人 思 想 犯 人 の転向 は相 当 厄 介 な問 題 であ る。 元来 朝 鮮 人 の思 想 問 題 は内 地人 の場 合 と 区別 し て考 ふべ き で あ る。 一般 に内 地

斯 様 な事 情 であ る か ら朝 鮮 人 に真 の転 向 を 期 待 す るこ と は多 く の

し 得 る こと であ る。

で あ り、 マル キ シズ ムに対 す る理論 研究 よ り運 動 に這 入 つた も のが

国 際 情 勢 に於 け る朝 鮮 民 族 の地位 境 遇 の正 し き姿 を知 り 、 日本 に信

可 能 であ ら う。 而 し て真 に日本 国 民 と し て の意識 を持 つた場 合 に は、

の であ る か ら、 国 民 た る自覚 、 日本 国 民 た る意識 に覚 醒 す る こと は

せ る こと は出 来 な い。然 し乍 ら彼 等 が 日本 国 民 た る こと は相 違 な い

其 の主 流 を為 し て ゐる のに対 し て、 朝 鮮 人 の場 合 は其 の目標 は 民 族

場 合 は相 当 難 し いや う に思 ふ。 勿論 彼 等 に 日本 精 神 を把 握 、 体 得 さ

独 立 乃至 個 人 的 経 済 生 活 の不 平 にあ つて、 マルキ シズ ム の理 論 研 究

且 日本 民 族 の偉 大 な る 理想 ま た は 日本 精 神 が 各同 胞 をし て其 の処 を

頼 す る こと が彼 等 民族 の為 最 大 な る幸 福 であ る こと を認識 自覚 し、

の欠 陥 に憤 起 し て社 会 改 善 を 目標 と し て共 産 主義 運動 を起 し た も の

の過程 を経ず し て実 践 運動 に這 入 る と 言 は れ て ゐ る。具 体 的 に言 へ

人 の場 合 は 正義 感 か ら出 発 し て個 人 主 義 的 自 由 主義 に基 く 資 本主 義

ば 朝 鮮 人 の多 数 は朝 鮮 本 土 の失 業 者 の増 加 、 就 職 難 ま た は内 地 の賃

かと考 へる。

得 、志 を遂 げ し む る も のであ る こと を も理 解 す る に至 る の では な い

次 に転 向、 非 転 向 の別 は 日本 国 民 た る意 識 に覚 醒 し た る か否 か の

銀 が 比較 的 良 好 な る為 移住 し て来 る の であ る が、 内 地 に於 ても失 業

点 よ り為 す べき であ る 。所 謂 理 論 的 転 向 は前 述 の如 く共 産 主 義 に対

者 多 き 為 内 地 就 職 者 よ り一 歩 下 の地 位 に し か就 き 得ず し て生 活 難 に

に参加 す る に至 る の であ る。即 ち 朝 鮮 人 の場 合 は常 に民 族 問題 が中

す る こと は 不可 能 であ る。 ま た、 思 想 犯 人 の共産 主 義 理論 把握 の程

陥 り、 茲 に差 別 撤 廃、 独立 解 放 運 動 の原因 を 生 じ軈 て共 産 主義 運動

度 も非 常 な る相 違 があ る故 、 凡 て に明 確 な る理論 的 批 判 を 求 め て も

られ る が、 ど の程 度 の批 判 を 以 て転 向 と看做 す かと いふ標 準 を決 定

いと 考 へら れ る の で あ る。 これ は再 犯 の場 合 も 同様 で あ る。例 へば

満 足 な結 果 を得 ら れ な い の は当然 で あ る。 勿 論 、 共産 主 義 全般 に つ

す る理 論 的批 判 の態 度 を 以 て転 向 の標 準 を決 定 す るも の の様 に解 せ

朝 鮮 人 再 犯者 の 一人 が其 の再 犯活 動 に つい て ﹁朝 鮮新 聞 社 関係 の活

心 であ り、 其 の目的 貫 徹 の手 段 とし て共 産 主 義 運動 が取 入 れら れ、

動 及 豊 島 親睦 会 関係 の活 動 ︹再 犯事 実 ︺ は、 何 れ も 内 地在 留 の朝 鮮

いて理 論 的 批 判 を為 し得 る能 力 を有 す る者 には 之 を為 さし む べ き で

ま た 一方 個 人 的 経 済 生 活 の不平 を霽 らす 為 に運動 に参 加 す る者 が多

人 大 衆 を 民族 的 階級 的 に啓 蒙 せ ん と す る目 的 に出 づ る も のであ り ま

に立 戻 つた か否 か即 ち無産 階 級独 裁 が根 本 的 に我 国 体 に背 反 す る も

のな る こと を認 識 し た る か否 かを 要求 す る こと は 可 能 であ らう 。 而

あ らう 。 が 、斯 か る批 判 は兎 に角 何 人 に対 し ても 真 に国 民 た る自 覚

し て斯 か る自 覚 が 最 も 必要 な る こと であ り、 斯 く自覚 す れば 当 然 日

す 。 民 族 的 と 云 ふ のは朝 鮮 民 族 の不平 不 満 を激 発 し て朝 鮮 民 族 の独

る プ ロ レタ リ ア独 裁 を 遂 げ やう と す る事 を申 す の であ り ま す。﹂ (執

者 階 級 の不 平 不 満 を激 発 せし め て共産 主 義 の主 張 す る革 命 手 段 に依

本 国 民 とし て は共 産 主 義 を全 般 的 に而 し て徹 底 的 に排 斥 す ベき も の

立 に追 及 ぼ さん と す る事 を 云 ふ の で、 階 級 的 と 云 ふ のは朝 鮮 人 労 働

行 猶 予者 張 基 俊 の検 事 に 対す る陳 述 ) と 述 べ て ゐ る こと から も推 知

( 2)

(1)

国 民的 自 覚 

共産 主 義 理 論 の清算 

近親 愛 其 の他 家 族関 係 

信

略 号 6．

略 号 5．

略 号 4．

略 号 3 ．

略 号 2 ．

略 号 1．

な る こと を も悟 る に至 る の であ る。

(3)

性 格 的 健 康 等 身 分関 係 

上 

こ の調 査 研 究 で従 来 為 さ れた幾 つか の転 向 分 類 を見 た。 そ れは 発 ( 4)

拘 禁 に因 る後 悔 

仰

表 、 未 発 表 の両者 を含 ん で ゐる の であ る が、其 の代表 的 のも の を掲 ( 5)

四  各 種 の転 向 分 類 に つ い て

げ る。

( 6)

略 号 7．

第 一例  昭 和 八年 十 二月 行 刑 局 長 通牒 、 行 甲 第 一七 三 一号 ﹁治 安 維

他 

其

て 共 通 の分 類 を 設 け る こと を 相 当 と す る か と いふ こと であ る。 これ

茲 で考 慮 さ るべ き問 題 は検 察 、 裁 判、 行 刑 、 保 護 の各 部 門 を 通 じ

日本 精 神 を体 得 し て実 践 躬 行 の域 に到 達 せ るも の

第 五段 階 (終 期 )

完 全 に 日本精 神 を 理解 せり と 認 め ら る ゝ に至 り た る も の

第 四段 階

マルク ス主 義 を 批判 す る程 度 に至 り た る も の

第 三 段階

主義 的 個 人 主 義 態度 を否 定 し 得 ざ るも の

マルク ス主 義 に対 し ては全 く又 は 一応 無批 判 的 にし て今 猶 自由

第 二 段階

マルク ス主 義 の正当 性 を主 張 又は 是 認 す る も の

第 一段 階 (初 期 )

には 夫 々説 明 が つい て ゐる が之 は省 略 す る。

度 ) に つき執 務 上 の便宜 参 考 の為 協 議 決 定 し た も の であ る。 各 段 階

が ﹁転 向問 題 に就 て﹂ 研 究座 談 会 を開 催 し 、思想 犯 転 向 の段 階 (程

第 二 例  これ は昭 和 十 一年 十 二月 六 日東 京 保護 観 察 所 に於 て同 所 員

の

( 7)

持 法 違 反 受 刑 者 に関 す る調 査 方 の件 ﹂ に於 ては 改悛 状 態 分 類 及 略 号 と し て次 の如 く規 定 さ れ て ゐる。 (一) 転 向者 転 向 者 と は 国体 変 革 は素 よ り 現在 社 会 制 度 を非 合 法 手 段 を 以 て変

(い) 革 命 思 想 を抛 棄 し 一切 の社 会 運 動 よ り離 脱 せ ん事 を誓

革 せん と す る革命 思 想 を抛 棄 し た る も のを謂 ふ

ひ た る も の (略 号 い)

る も の (略 号 ろ )

(ろ ) 革 命 思 想 を抛 棄 し将 来 合 法 的 社会 運動 に進 出 せん と す

未 定 のも の (略 号 は)

(は ) 革 命 思 想 を抛 棄 し た るも 合 法 的 社会 運動 に対 す る態度

(に) 懐 抱 す る革命 思想 に動 揺 を 来 し 将来 之 を抛 棄 す る見 込

(二) 準 転向 者

あ る も の (略 号 に)

せ ん事 を誓 ふも の ( 略 号 ほ)

(ほ) 革 命 思 想 は抛 棄 せ ざ る も将 来 一切 の社会 運 動 よ り離脱

三  非 転 向 ( 略 号 へ) 転 向 (準転 向 を含 む ) の動機 分 類 及 其 の略 号 は

から 、 さ し て障 害 にな ら ぬ ので はあ る ま いか。 却 つて分 類 を設 け る

然 し、 これ らは其 の犯罪 の情 状 と し て斟酌 さ れ る こと は勿 論 であ る

場 合 に伴 ふ弊 害 を 私 は惧 れ る の であ る。

ら 部 門 は 夫 々取 扱 ふ対象 を異 に し て ゐ る。 殊 に行刑 に於 ては 多 く の

は其 の職責 を異 に す る。 従 つ て強 ひ て全 部 に通ず る分 類 を 設 け れ ば

場 合 収容 当 初 は非 転 向 な るも の であ らう と 思 ふ 。更 に これら の機関

序 な が ら前 掲 分 類 中第 一例 は今 日に於 て は再 検 討 の余 地 があ る や

仮 令 平素 は ﹁平 凡 な る 日 本 人﹂ と し て生活 し て ゐ ても 一旦緩 急 あ れ

が、 第 四段 階 の ﹁完 全 に 日本 精 神 を 理解 ﹂ せ る心 境 に達 せ るも のは、

う に思 ふ。 第 二 例 は 概 ね同 感 であ る。 た ゞ文 字 の末 の問 題 では あ る

れ は行 刑 、 保護 の執務 上 不 便 であ る か も知 れな い。夫 々執 務 上 便宜

ば 其 の日本 精 神 に基 い て行動 す る に相 違 な いと 思 ふ。 現 に左 様 な多

私 は 前 述 の如 く 転向 、 非 転 向 の二分 類 で十 分 だ と思 料 す る が、 こ

転 向 、 非 転 向 の両者 で あ らう と考 へる。

な る分 類 を 設 け る 必要 も理 由 も あ る と思 ふ。 然 し如 何 な る部 門 に於

く の事 例 を 今次 事 変 で我 々は見 て ゐ る筈 であ る。 そ れ が真 の 日本精

神 では な いかと 私 は考へ てゐ る。 従 つ て第 四段 階 は当 然 第 五 段 階 に

ても 国 民 意 識 の把 握若 く は日 本精 神 に 目覚 め た る点 を 以 て転 向 の基 検 察 も同 様︱

に於 て は転

準 と為 す べ き であ ると信 ず る。裁 判︱

し来 たり た る者 が対 象 であ る か ら目 標 を 高 く掲 げ る こと も必 要 な る

移 行 す べ き性 質 の も の であ らう 。 但 し 従来 反 国家 的 主張 の下 に行動

向 、 非 転 向 の分 類 が最 も 妥当 であ る よ う に考 へられ る 。 斯 か る分 類 は 峻 厳 に失 す ると いふ意 見 が あ る かも 知 れ な い。 何 故

方 法 であ る かも知 れな い。

な らば 国 民 意 識 に覚 醒 す る ま で には 達 し て ゐ な い が、既 に共 産 主 義 の誤 謬 を認 め て之 を抛 棄 し た るも のま た は 近 き将 来 に真 に 日本 国 民 た る自 覚 を取 戻 す べき 確実 な る見 込 があ る も のも ゐ る から であ る。

刑 事 局 思 想部

次

秘第 二三八号)

刑 事 局思 想 部

○ 特殊 事 犯 ノ不起 訴 処 分ニ 付 スベ キ場 合 ノ 稟 請 ノ 件 (昭和七年

○ 同 上 ノ件 ニ関 ス ル質 疑 回答 ( 昭和二年内 翰)

号)

○ 請 訓稟 議 又 ハ打 合 ヲ要 ス ル事 項 廃 止 ノ 件 ( 昭和二年秘第 一六四

三号)

○ 請 訓 又 ハ打 合 ヲ要 スル事 件 及其 ノ処 理 手 続 (昭和二年秘第 一六

掲 載ニ 対 ス ル処 分 ノ件 ( 大正六年秘第三二号)

○ 予 審 ノ内容 其 ノ他 非 公 開 事 項 及 犯罪 曲 庇 、 犯人 賞恤 救 護 記事

一、 稟 請 事 項

第 一 請 訓 、 稟 議 又 ハ打 合 ニ関 スル モ ノ

目

昭 和 十年 五月

個 所 には傍 線 を施 し たり。

二 八  思 想 事 務ニ 関 ス ル 訓 令 通 牒 集 ︹ 抄︺(一 九三四年まで)

昭和 十 年 五 月 思 想事 務ニ 関 スル訓 令 通牒 集

はし がき 一、 本 輯 は、 昭 和 七年 九 月及 同 八年 一月 に発 行 した る思 想 研究資 料 特 輯 第 一号 及 同追 録 ﹁思 想 事 務ニ 関 ス ル訓 令 通 牒 集 ﹂ を増 訂 改 版 し た るも のな り。 一、 本 輯 に於 ては、 昭和 十 年 四 月 末 日迄 に当 局 に於 て発 し た る前 記

る此 種 通牒 等 も同 月 末 現在 を 以 て本 輯 第 六 ﹁ 思 想 犯被 疑 者 被告

訓 令 通 牒 及注 意 を要 す べ き も のを収 録 し 、 行 刑 局 に於 て発 し た

人 及受 刑 者ニ 関 スル モノ﹂ の中 に之 を 収 め た り。 一、 編輯 の順 序 は、 事 項 別 に、 同 一事 項 内 に於 ては年 度 順 に依 れ り。 一、 標 題 は 必ず し も 原 文 に依 らず 専 ら其 の内 容 を抽 出 摘 記 す る に努 め た り。 一、 改 正、 追 加 、 廃 止 と な り た る も の には其 の旨 の註 を 加 へ廃 止 の

○ 不 敬 犯 罪報 告 及 処 分 ニ関 スル件 (昭和七年秘第一、一九五号) ○ 治 安 維 持 法違 反 事 件 不 起 訴 処 分請 訓 廃 止 ノ件 (昭和 七年秘第二、 〇八九号)

四五号)

○ 特 殊 事 犯 ノ稟 請 処 理 報 告 方 ノ件 依命 通 牒 ( 昭和八年 秘第二 、 五

○刑 事 事 件 処 分前 ノ 上奏禀 請 手 続 留 意 方 ノ 件 ( 大正四年刑甲第 二

二、 稟 請 手 続

三五号)

三号)

○請 訓 又 ハ打 合 ヲ要 ス ル事 件 及 其 ノ処 理 手 続 (昭和二年秘第 一六

○ 思想 事 件 稟 議 書 添 付 書類 ノ範 囲 ノ件 ( 昭和六年秘第五九二号) 第 二  思 想 犯罪 事 件 ノ報 告 、 通報 及処 理方 ニ関 ス ル モノ

○ 重 大 犯罪 事 件 及 内 外 交 渉 事 件 竝 ニ司法 政 務 関 係 事件 報 告 方 ノ

一、 報 告 、 通報 事 項

年秘第 一二七号)

三、〇〇五号)

○ 継 続 捜 査 ヲ為 ス重 要 犯 罪 等事 実 報 告 方 ノ 件 ( 大正十四年刑事第

○ 同 上 ノ件 (同上)

○ 風 俗 壊 乱出 版 物 ノ取 締 及 処 分 方 ノ件 ( 大正十四年覚書)

五二七号、同年秘第 一、六三七号 、昭和四年秘第六五一号)

○ 日本 共 産 党 関 係事 件 被 告 人 身 上 調 査 方 ノ 件 (昭和三年秘第 一、

号)

○ 日本 共 産 党 関 係事 件 予審 調 書 写送 付方 ノ 件 ( 昭和 四年秘六九六

○特 殊 身 分 ヲ有 ス ル者ニ 波 及 セ ント ス ル事 件 処 理 方 ノ 件 ( 昭和 五年秘第 五九七号)

○ 暴 力 行為 等 処 罰ニ 関 ス ル法 律 違 反 事 件 計 数表 提 出 方 ノ 件 (昭 和六年刑事第二、四九七号)

○ 同 上 計 数 表 提出 方 ノ件 改 正 (昭和九年刑事第九、九七五号)

○ 思 想 犯 罪 事 件表 進 達 方 ノ件 (昭和 七年刑事第四、八四 一号)

○不 敬 犯 罪 報 告 及処 分 ニ関 スル件 (昭和七年秘第一、一九五号)

○ 同 上 ノ件 (昭和九年刑事第 一八、 五七四号)

件 (明治二十五年参刑甲第三三五号) ○ 要 報 告 各 種 犯罪 事 件 ノ件 (明治四十五年刑事甲第一〇号)

○ 治 安 維持 法 違 反 事 件 検 挙 人員 表 進 達 方 ノ件 (昭和九年刑事第 六

年 刑事第 一、四〇〇号)

○ 治 安維 持 法 違 反 事 件 不拘 束 者 ノ再 犯 調 査 ニ関 ス ル 件 (昭和 八

○検 挙 ノ意 義 ニ関 スル件 (昭和八年刑事第 一、一五六号)

刑事第 一四、一八一号)

○治 安 維 持 法 違 反 事 件釈 放 者 成 績 調 査表 進 達 方 ノ 件 ( 昭和七年

○思 想 犯人ニ 対 ス ル留 保 処 分 取 扱 規 程 (昭和七年秘第 二、〇〇六号)

○ 内 地 朝 鮮 両 地ニ 交 渉 ヲ有 スル事 件 ノ通 報 報 告 方 ノ 件 ( 大正九 年刑乙第 一、 九九七号) ○ 新 聞 雑 誌 ノ発売 頒 布 禁 止 処 分 ヲ地 方庁 ヨリ検 事 ヘノ通 報 及新

乙第八、一三七号)

聞 紙 法 出 版 法違 反 事 件 ヲ地 方 庁 ヘ通 報 ス ル ノ 件 (大正七年刑

合 報 告 方 ノ件 ( 大正九年刑乙第一、三七三号)

○ 新 聞 紙 其 ノ他 ノ出 版 物 ニ掲 載 セ ラ ル ル同 一記 事 発 見 シ タ ル場

○左 傾 思 想ニ 基 ク犯罪 事 件 ノ科 刑 及 其 ノ 報 告 方 ノ 件 ( 大正十三

四五号) ○ 出 版 法 、新 聞 紙法 中 犯罪 煽 動 等 ノ犯 罪 報 告 方 ノ 件 (昭和九年 刑事第 一六、一九五号) 二、 報 告 、 通報 ノ 手続 及形 式

事 摘 要 或 ハ全 文 ヲ添 付 ス ル ノ 件 (明治三十九年民刑丙第 一、 〇四

○ 新 聞 紙 、出 版 物記 事 ノ処 分 ニ関 スル報告 書 ニ其 ノ現 品 又 ハ記

九号) ○ 犯罪 事 件 報 告 書 ニ添 付 スベ キ判 決 書 ノ記 載 方 ノ件 (明治四十 五年秘第五六号 )

件 ( 大正九年刑甲第 六 一三号)

○ 安 寧 秩 序紊 乱 及 風 俗 壊 乱 事 件 ノ起 訴報 告 ニ其 ノ現 品添 付方 ノ

知 先 記 載方 ノ件 ( 大正九年刑乙第 一〇、一六〇号)

○ 犯 罪 事 件其 ノ他報 告 ヲ要 ス ル事 項 ニ関 ス ル文 書 ノ報告 又 ハ通

○ 犯 罪 事 件 一般 報 告 手 続 ( 大正十四年刑事第四、四四六号) ○ 重 大 犯 罪事 件 等 ノ報 告 ニ参 考 事 情 ヲ詳記 ノ件 ( 大正十四年刑事 第六、五七六号) ○ 重 大 犯 罪事 件 等電 話 又 ハ電 信 ニテ迅 速 報 告 方 ノ 件 (昭和四年 刑事第五〇二号) ○ 重要 事 件 等 迅 速報 告 方 ノ件 ( 昭和五年 秘第 五九九号) ○ 報 告 書 ノ宛 名 記 載 方 ノ件 (昭和六年刑事第 四、 八三二号)

(昭和六 年秘 第五九二号)

○思 想 事 件 ニ関 ス ル通報 内 容 ノ記 載 方 及其 ノ 場 所 的 範 囲 ノ 件

二六八号)

○ 治 安 維 持 法 違 反事 件 判 決 結 果 報 告 方 ノ 件 (昭和九年刑事 一七、

○ 安 寧 秩 序紊 乱 罪等 ヲ地 方 裁 判 所 検 事 ニ告 発 ス ル ノ 件 ( 大正八

三 、 犯罪 事 件 処 理 手続

年刑甲第 一〇五号)

○ 出 版 法 違 反事 件送 致 ニ当 リ送 付 スベ キ出 版 物 ノ部 数 一定 ノ件

( 大正十四年刑事第 三、三三七号)

○ 風 俗 壊 乱 ノ出 版 法 及 新 聞 紙 法 違 反事 件 ヲ直 ニ検事 ニ送 致 方 ノ

件 ( 大正十五年刑事第八 一五号)

秘第二七〇号)

○ 日本 共 産党 関 係 治 安 維 持 法 違 反 事件 処 分 方 針 ノ件 ( 昭和六年

年刑事第三、 三二七号)

○ 司 法 警 察職 務 規 範 第 三十 一条 ノ思想 犯罪 報 告 方 ノ 件 (昭和六

ル件 (昭和六年秘第四 一五号)

○ 違 警 罪 即決 例 中 改 正 法 律 案 実 施後 ニ於 ケ ル思 想 犯 取 調 ニ関 ス

九 二号)

○ 思 想 事 件迅 速 処 理 方 竝 ニ未 決 勾留 短 縮 方 ノ件 (昭和六年秘第五

○ 思 想 犯 人 ニ対 ス ル留 保 処 分 取扱 規 程 (昭和 七年秘第二、〇 〇六号)

○ 行 政 執 行法 ノ 運用 ニ関 ス ル件 (昭和八年刑事第 一五、七三五号)

○ 同 上 ノ件 (昭和八年刑事第 一五、 九二六号)

○ 同 上 ノ件 (昭和九年 一、三五〇号)

第 三  思 想 運 動状 況其 ノ他 ノ報 告 、 通報 ニ関 ス ル モノ

○ 要 視 察 人団 体 及 労 働 団 体等 ノ 不穏 ノ行動 、 宣 伝 文 書 ノ取締 竝

一、 報 告 、 通報 事 項

其 ノ情 報 ヲ司 法 大 臣 、検 事 正 ヘ通 報 方 ノ件 (大正九年刑 乙第九、 六八六号)

○ 同 上情 報 ヲ検 事長 及其 ノ関 係 地 検 事 長、 検 事 正 ヘ通 報 方 ノ件 ( 大正十年刑事第三、一三九号)

号)

○ 労働 争 議 及 小 作争 議情 況 報 告 方 ノ件 ( 大正十年刑事第七、二七五

○ 共産 主義 者 ト各 種 団 体 ト ノ関 係 報 告 方 ノ 件 ( 大正十四年覚書) ○ 同 上 ノ件 ( 大正十四年刑事第 七、 五六四号)

件 (大正十五年刑事第三、 九〇〇号)

○ 殖 民 地其 ノ他 ニ於 ケ ル要 注意 人及 団 体 状 況 等 ノ情 報 送 付 方 ノ

○ 社 会 主 義思 想 懐 抱 者 氏 名 表 及 各 種 団 体表 作 成 方 廃 止 ニ関 ス ル 件 ( 昭和五年刑事第 一一、九三六号) ○ 思 想 運 動 情 勢 調 査 報 告 通報 方 ノ件 (昭和五年刑事第 一一、九三八 号) ○思 想 運 動 ニ関 ス ル通報 ヲ甲 号 支 部 検 事 ニモ為 ス ノ 件 ( 昭和七 年 刑事 第二、一八〇号) ○ 国 家主 義 乃 至 国 家 社 会 主義 団体 及 各 種 ノ小 団 体 ノ情 況 報 告 方 ノ件 (昭和七年秘第 一、一 二 八号) ○ 社会 思 想 運 動 情勢 調 査報 告 方 ノ件 ( 昭和七年秘第 一、一九六号) 三 、新 聞 、出 版 物 ノ送 付

事 摘 要或 ハ全 文 ヲ添 付 ス ル ノ 件 (明治 三十九年民刑丙第 一、 〇四

○ 新 聞紙 、 出 版 物 記 事 ノ処 分 ニ関 ス ル報 告 書 ニ其 ノ現 品 又 ハ記

九号) ○ 安 寧 秩序紊 乱 及 風 俗 壊 乱 事 件 ノ起 訴 報 告 ニ其 ノ現品 添 付 方 ノ 件 (大正九年刑甲第六 一三号) ○ 発 売 頒 布禁 止竝 差 押 処 分 出 版 物 送 致 ノ 件 ( 大正十年刑事第 一、

七〇三号)

正十三年刑事第三、 八 一〇号)

○ 新 聞 雑 誌 掲載 広 告 ニシ テ取 締 ヲ要 ス ル モノ ノ回送 方 ノ 件 (大

○ 発売 頒 布 禁 止 新 聞雑 誌 送 付 方 ノ 件 ( 大正十三年刑事第 一一、一八 号〇 ) 第 四  思 想 事 務 ニ関 スル モノ

○ 思 想 問 題 ニ関 ス ル件 (大正十五年秘第 一八号)

一、 一般 事 項

○ 思 想 係 検 事 事務 分 掌 規 準 (昭和三年秘第九五 一号)

○新 聞 記 事 掲 載 差 止 手 続 (明治四十二年民刑秘第 六六号及民刑秘第

二 、新 聞 記 事 及 無 線 電 話 放送 差 止手 続

一六四号)

○新 聞 記事 差 止 ノ時 期 ノ件 ( 明治四十二年民刑秘第六八号)

( 大正八年秘第四〇号)

○ 新 聞 紙掲 載 記 事 差 止 又 ハ其 ノ嘱 託 ヲ検 事 正 ニ於 テ 為 ス ノ 件

○ 新 聞 記事 差 止 事 項 減 少方 ノ件 ( 大正十年秘第 一六号)

事第 一、 八二二号)

○ 放 送無 線 電 話 ノ放 送事 項 差 止方 及 其 ノ通 報 ノ件 ( 大正 (四年刑

年手交)

○新 聞 記事 差 止 ニ関 シ内務 、 司 法 両 省間 ノ連 絡 方 ノ 件 (昭和六

(昭和 六年秘第四三六号)

○ 新 聞 記事 差 止解 除 ヲ各紙 同 時 刻 ニ為 シ其 ノ解 禁 前 報告 方 ノ件

○ 新 聞 記事 差 止通 告 ノ範 囲 ニ関 ス ル件 (昭和九年秘第 一、 三八四号)

○ 捜 査 又 ハ予審 中 ノ事 件 ニ関 ス ル新 聞 記 事並 ニ放 送 用 私 設 無線

電 話 ノ放 送 差 止 方 ノ件 ( 昭和九年秘第二、 〇七六号)

用 方 ニ関 ス ル件 (昭和九年刑事第 一八、 三六 一号、同第 一八、三六二

○ 新 聞 記 事 並 放 送 用私 設 無 線 電 話 放 送 ノ差 止事 項 及 其 ノ符 号使

号) 第 五  思 想 犯 罪 及 思 想 運動 取 締 ニ関 ス ル モノ 一、 社 会 主 義 者 及其 ノ団 体 等 ノ取 締

其 ノ情 報 ヲ司 法 大臣 、検 事 正 ヘ通報 方 ノ件 ( 大正九年刑乙第九 、

○ 要 視 察 人 団 体 及 労働 団 体 等 ノ不 穏 ノ行動 、 宣 伝 文書 ノ取 締 竝

六八六号)

( 大正十年刑事第三、一三九号)

○ 同 上 情 報 ヲ検 事 長 及 其 ノ関 係 地検 事 長 、 検 事 正 ヘ通報 方 ノ件

○ 社 会 主 義 宣 伝 取締 ニ関 ス ル件 ( 大正十 一年刑事第九六号) ○ 社 会 主 義 宣 伝 不 正香 具 師 取締 ニ関 ス ル件 ( 大正十 一年刑事第 四、 五六三号) ○ 社 会 運 動 ヲ標 榜 ス ル不 良 人物 ノ取 締 ニ関 ス ル件 ( 大正十四年刑 事第二、 九 二 一号) ○ 露 西 亜 関係 邦 人主 義 者 ノ取締 方 ニ関 ス ル件 (大正(四年刑事第 七、一八〇号及刑事第七、 六九四号) ○ 日本 共 産 党解 党 派 被 告 人 ニ対 ス ル量 刑 竝 ニ同 派 ノ結 社 組織 ト 検 察 方 針 ノ件 (昭和六年秘第 五九 二号)

ルト キ ノ処 置 ノ件 ( 同上)

○ 日本 共 産 党組 織 者 又 ハ加 入者 其 ノ刑 ノ執 行 終 了後 尚 脱 退 セザ

○ 小 作争 議 取 締 ニ関 ス ル件 ( 大正十五年刑事第 八、 二七〇号)

二 、 小 作争 議 ノ取 締

三、 水 平 運 動 ノ取 締

取 締 ニ関 ス ル件 ( 昭和二年刑事第九、二八二号)

○ 前 三 重 刑務 所 長 ニ対 スル水 平 社 一派 ノ糺弾 運 動 ト水 平 運動 ノ

和八年秘第 二、八九八号)

○ 国 民融 和 ノ実 ヲ挙 グ ル為検 察 裁 判 上 支 障 ナ カ ラ シム ル件 (昭

○ 風 俗壊 乱 出 版 物 取 締 ニ関 ス ル件 ( 明治四十 一年刑秘第 一八七号)

四、 新 聞出 版 ノ取 締

○捜 査 又 ハ予審 中 ノ事 件 ニ関 ス ル新 聞 雑 誌記 事 取 締 ニ関 ス ル件

(明治四十 一年民刑秘第二三 一号及民刑秘第二四〇号)

○ 新 聞紙 法 違 反 事 件 訴 追 方 ノ件 ( 明治四十 二年民刑秘第六七号)

八号)

○捜 査 又 ハ予 審 中 ノ犯 罪事 件 漏 洩 取締 方 ノ 件 ( 大正四年秘第三六

○ 風 俗壊 乱 出 版 物 ノ捜 査 及科 刑 方 ノ件 ( 大正六年刑乙第二八〇号)

掲 載 ニ対 ス ル処 分 ノ件 ( 大正六年秘第三二号)

○ 予審 ノ内 容 其 ノ他非 公 開事 項 及 犯 罪曲 庇 、 犯 人 賞恤 救 護 記 事

二四六号及刑甲第二九二号)

○新 聞 紙 雑 誌 掲 載 ノ風 俗壊 乱 広 告 文 取締 方 ノ件 ( 大正六年刑甲第

刑 乙第五、四六八号)

○出 版 法 ニ依 リ届 出 タ ル新 聞 雑 誌 ノ記事 処 分 方 ノ 件 ( 大正七年

○風 俗 壊 乱 ノ広 告 取締 ノ件 ( 大正八年刑 乙第七、〇六 四号)

○風 俗 壊 乱 出 版 物 ノ取締 及 処 分 方 ノ件 ( 大正十四年覚書) 五 、其 ノ他

○ 御 陵 墓 ニ対 スル犯 罪処 分 ノ件 ( 大正四年秘第三八二号)

○ 御 真 影 紛 失毀 損 事件 ト警 察 官 ノ秘 密 厳守 方 ノ件 (大正七年秘第

二 一号) ○ 集団 的 犯罪 ノ取 締 ニ関 ス ル件 ( 大正十二年秘第 三三号) ○ 不穏 文 書 ノ取 締 ニ関 ス ル件 ( 昭和七年 秘第 二、〇 〇四号) 第 六  思想 犯被 疑 者 被 告 人 及 受 刑 者 ニ関 スル モノ

十五年刑事第七、六 三六号)

○ 詭激 思 想 懐 抱 者 拘 禁 ニ際 シ刑 務 所 ニ其 ノ旨 通 知 方 ノ 件 ( 大正

八号)

○ 思想 犯 人拘 禁 ニ際 シ刑 務 所 ニ通報 方 ノ 件 ( 昭和三年行甲第二五

○ 特 種 収 容者 拘 禁 ニ関 スル件 (昭和三年行甲第六四〇号) ○ 詭 激 思 想懐 抱者 拘 禁 ニ際 シ刑 務所 ニ通報 励 行 方 ノ 件 (昭和三 年行甲第 一、 〇 二九号) ○ 詭 激 思 想 懐 抱 者 ニ関 ス ル報 告 方 ノ件 (昭和三年行 甲等 一六七 三 号)

秘第 一〇六号)

○ 共産 党 被告 人 ニ対 ス ル保 釈 責 付 ニ関 シ配 慮 方 ノ 件 (昭和四年

年行甲第 一、 五七八号)

○ 治 安 維 持 法違 反受 刑 者 ノ行 刑 上 参 考 資料 通 知 方 ノ 件 (昭和 六

第五九二号)

○ 刑 務 所 ヲ異 ニス ル被 告 人 間 ノ文書 接 受 禁 止 ノ 件 ( 昭和六年秘

○ 公 判 闘 争 防 止 ノ方策 ノ件 ( 昭和六年秘第 五九 二号)

二号)

○ 思 想 犯 罪 ノ 予防 竝 思 想 犯 人 ノ改善 方 法 ノ 件 ( 昭和六年秘第五九

○ 治 安 維 持法 違 反 受 刑 者 ノ入 出 所其 他異 動 ニ関 シ報 告 方 ノ 件 ( 昭和七年行甲第 三、〇三五号 ノ 一)

○ 詭 激 思想 懐 抱 者 ノ報告 ニ関 ス ル件 (昭和八年行甲第 一一〇号)

号同第 一、 七四九号)

○ 治 安 維持 法 違 反 受 刑 者 移 送 申請 方 ノ 件 (昭和八年行甲第三七六

○ 思 想 犯 収容 者 ノ感 想 録 等 送 付方 ノ件 ( 昭和八年行甲第五四三号)

○ 詭 激 思 想懐 抱 者 ノ報 告 ニ関 ス ル件 ( 昭和八年行甲第七三七号)

○ 思想 関 係 配 付 図書 利 用方 ノ件 ( 昭和四年刑事第 一〇、 六〇 三号)

雑

三二六号)

○ 詭激 思 想 懐 抱 収 容 者 入出 所 表 様 式 改 正 ノ 件 ( 昭和九年行甲第 一

行秘甲第 二五〇号)

○ 治安 維 持 法 違 反受 刑 者 ノ行 刑 成 績 通 知 ニ関 ス ル件 (昭和九年

号)

○ 詭激 思 想 懐 抱 者報 告 方ニ 付 注 意 ノ 件 (昭和九年行秘甲第 一四六

七五 一号)

○ 思想 犯 収 容 者 ノ思 想 転 向 ニ関 シ報告 方 ノ 件 ( 昭和八年行甲第 一

七三 一号)

○ 治安 維 持 法違 反受 刑 者 ニ関 スル調 査方 ノ 件 (昭和 八年行甲第 一

甲第九四四号同第 一七四三号)

○ 治安 維 持法 違 反未 決 拘 禁 者 ニ関 ス ル調 査 方 ノ件 (昭和八年行

( 昭和八年行甲第 七五 二号)

○ 治 安 維 持法 違 反受 刑 者 ノ入 出 所其 他 異 動 ニ関 シ報 告 方 ノ件

第七

秘第 五九 二号)

○ 控 訴 院 及地 方 裁 判 所 ニ思 想 部 ヲ設 置 ス ル希 望 ノ 件 (昭和六年

○ 思 想係 検 事 氏 名 報 告 方 ノ件 (昭和五年刑事第九、四九九号)

大正六年二月八日秘第 三二 ) (号 検事正宛法務局長 通牒

○予審 ノ内容其 ノ他非公開事項及犯罪曲庇、犯人賞恤救護 記事掲載 ニ対 スル処 分 ノ件

臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

明治三十五年 四月十一日

)

一 勅 任官 、 有 爵 者 、 従 三位 勲 二等 又 ハ功 三級 以上 ノ者 ノ禁錮 以

上 ノ刑 ニ該 ルベ キ罪 (内閣総理大臣通達参照

ルベキ罪

二  奏 任官 ノ現 職 ニ在 ル者 及 帝 国 議 会 ノ議 員 ノ禁錮 以上 ノ刑 ニ該

三  治 安 維 持 法 ノ罪

新 聞 紙 取 締 ニ関 ス ル件 ニ付 内 務省 警 保 局 長 ヨリ別 紙 ノ通 地 方長 官 ニ致 通 牒 候 趣 右 ハ極 メテ 必要 ノ義 ト 致 思考 候 条 行 政 官 庁 ノ警 告 ア ル

四  出 版 物 ニ皇 室 ノ尊 厳 冒涜 、 朝 憲紊 乱 又 ハ秩 序紊 乱 ノ記 事 ヲ掲

ニ該当 スル記事 ヲ掲載 スル コトナキ様厳重御警告相成度 且警告後尚

ザ ル事項 ニ限 リ内 密 捜 査 ニ着 手 ス ルト共 ニ検事 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告

ガ為 其 ノ捜 査 着 手 ニ付指 揮 ヲ受 ク ルノ遑 ナキ ト キ ハ猶 予 スベ カ ラ

第 二 項ニ掲 グ ル罪 ア ル コト ヲ認 知 シタ ル場 合 ニ シテ 急 速 ヲ要 ス ル

ケ且直 ニ検 事 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

第 三  緊 急 事 件 ニ付 テ ハ前 二項 ニ拘 ハラズ直 ニ検 事 総 長 ノ指 揮 ヲ受

トキ 亦同 ジ

(

註、昭和七年八月二日秘第 一、)捜 査 ノ結 果 ニ因 リ起 訴 ヲ為 サ ム ト ス ル 一九五号刑事局長通牒 ニテ改正

ト キ ハ捜 査 着 手前 事 情 ヲ具 シ検 事 長 ニ報 告 シ其 ノ指 揮 ヲ受 ク ベ シ

第 二  刑 法 第 七 十 四条 又 ハ第 七十 六 条 ノ罪 ア ル コト ヲ認 知 シ タ ル

載 シ タ ル罪

ニ モ不 拘 仍 禁 止 事 項 ノ掲 載 ヲ為 スモノ ア ルト キ ハ厳 重 ニ処 分 ス ル様 致 度 尤 モ公 ニセザ ル官 公文 書 又 ハ議 事 ヲ掲 載 シタ ル モノ ニ付 テ ハ処 分 前 一応 当 省 ヘ稟 議 相 成 侯様 致 度 此 段 及 通 牒 候也 大正 六年二月五日秘第 一八七号 (別紙 ) (地 方長官宛内務省警 保局長通牒)

近時新聞紙雑誌 ニシテ新聞紙法 ノ規定 ニ違反 シ予審 ノ内容公 ニセ ザ ル官公文書若 ク ハ議事又 ハ犯罪曲庇若 ク ハ犯人賞恤救護等 ノ記事 ヲ掲載 スルモノ不尠様被存甚ダ遺憾 ニ付将来厳重 ナル取締 ヲ励行致

ホ右 ノ記事 ヲ掲載 スルトキ ハ法律 上ノ処分 ヲ為 スベ キ旨御諭示相成

度候条此際管下新聞紙雑誌 ニ対 シ今後右 ノ如 キ法定ノ掲載禁止事項

度

註 、 スベ シ( 同上

ヲ為 サ ムト スルト キ ハ予 メ司 法 大 臣 ニ具 申 シ テ指 揮 ヲ受 ク ベ シ第

シ又 ハ本 訓 令 第 一項 第 一号 、 第 二 号 及第 二項 ノ罪 ニ付 起 訴 ノ指揮

第 六  検 事 総 長刑 法 第 七十 三 条 ノ罪 及 第 七十 五条 ノ罪 ニ付 起 訴 ヲ為

公 訴 取 消 ノ指揮 ヲ為 サ ム ト スルト キ ハ検 事 総 長 ノ指 揮 ヲ受 クベ シ

第 五  検 事長 本訓 令 第 一項 、 第 二 項 又 ハ前 項 ニ依 リ捜 査、 起 訴 又 ハ

第 四  公 訴 ノ取 消 ヲ為 サ ムト スルト キ ハ検 事 長 ノ指揮 ヲ受 クベ シ

)

○請訓又 ハ打合 ヲ要 スル事件及其 ノ処 理手続 昭和 二年八月二十三日秘第 一六三号検 ) 事総長、検事長、検事正宛大臣訓令 (

従来 当 省 訓 令 又 ハ通 牒 ニ依 リ直接 請 訓 又 ハ打 合 ヲ要 シ タ ル事 件 ニ 付 テ ハ爾 今 本 訓 令 ニ従 ヒ処 理 スベ シ 第 一 左 ニ掲 グ ル事 犯 アリ タ ル場 合 ニ於 テ起 訴 ヲ要 ス ル モノト思 料 ス ルト キ ハ検 事 長 ノ指揮 ヲ受 クベ シ 前 項 ニ依 リ検 事 長 ノ指 揮 ヲ請 ヒタ ルト キ ハ直 ニ検 事 総 長 及 司法 大

一項 第 三号 及 第 四 号 ノ罪 ニ関 スル重大 ナ ル事 案 ニ付 亦 同 ジ

)

第 七  検 事 総 長 本訓 令 ニ依 リ指 揮 ヲ為 シタ ルト キ ハ速 ニ司法 大 臣 ニ

右訓令 ス

其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

○ 特 殊 事 犯 ノ 不起 訴 処 分 ニ付 スベ キ場 合 ノ稟 請 ノ件 昭和七年 二月 二十 六日秘第二 三八号検事 ( 総 長、検 事長、検事正宛刑事局長通牒

昭和 二 年 八 月 二十 三日 刑事 局 秘 第 一六 三 号 訓令 ニ依 リ特 殊 事 犯 ニ 付 公 訴 ヲ提 起 セト ムト ス ルト キ ハ上司 ノ指揮 ヲ受 クベ キ コト ニ相 成居

項第三号及第 四号 ノ罪 ノ事件 ニ付重大 ナラサ ル事案ト認 メ処分 ノ指

揮 ヲ為 シタルトキ ハ前同様司法大臣 ニ報告相成候様致度侯

○日本共産党関係 事件被告 人身 上調査方 ノ件

昭和三年 十 一月十 二日秘第 一、五二七号 )( 昭 和 四 年 六 月 六日 秘 第 六五 一 号、各検事正宛刑事局長照会 ) 同 年 十 二 月 十 一日 秘 第 一、六 三七号 、 (

調 査 上必 要 有之 候 条標 記 事 件 (日本青 年共 産 同 盟事 件 ヲ含 ム) 関

係 者 中起 訴 セ ラ レ タ ル者 及 起 訴 セラ ルベ キ者 ニ対 シ別紙 様 式 ニ拠 リ

追 而 既 ニ起 訴 セ ラ レ タ ル者 ニ対 ス ル分 ハ来 ル七月 十 五 日迄 ニ取 纒

御 調 査 ノ上 御 回答 相 成 度 及 照 会侯

メ御 回 報 相煩 度 起 訴 セ ラ ルベ キ者 ニ付 テ ハ起訴 後 便 宜 ノ方 法 ニ依 リ

候 処 爾 今 右 訓 令所 掲 ノ事 犯 ニ付 テ ハ起 訴 猶 予其 ノ他 ノ不起 訴 処 分 ニ

御 回報 相 煩 度候

付 テ ハ起訴 ノ場合 ノ事件処 理方 ニ準ジ取扱 フベキ コト ニ相成居候処

家 庭 状 況 、 健康 状 態 及 思 想 ノ推 移 過程 ハ曩キ ニ送付 シタ ル ｢思 想 研

四 、 資 産 及 生活 状 態 ハ本 人 ノ資 産 生活 状 態 ヲ記 入 ノ コト

三 、 学 歴 及経 歴 ハ簡 単 ニ記 載 ノ コト

二、 年齢 ハ ﹁明 治 何 年 何 月 生何 歳 ﹂ ト記 入 ノ コト

一、 本 表 ハ 一名 一葉 ノ コト

記載例

付 セム ト ス ルト キ モ起 訴 ノ場 合 ノ事 件 処 理 方 ニ準 ジ テ御 取扱 相 成 度

)

、治安維持法違反事件 ニ付テ ハ昭和七年十二月 此段依命及通牒候(註 二十 六日秘第二〇八九号刑事局長通牒 ニ依 リ廃止)

○治安維持法違反事件不起訴処分請訓 廃止ノ件 昭和七年十二月二十六日秘 第二、〇八九 ( 号 検事総長、検事長、検事正宛依命通牒

爾 今治安維持法違反事件 ニ付留保処分及不起 訴処分 ヲ為 ストキ ハ其

究 資 料 第 七輯 ﹂ 掲 載 ﹁学 生 治 安 維 持法 違 反 事 件 身 上調 査 ﹂ ノ例 ヲ参

本年 二月 二十六日付秘第 二三八号 ヲ以 テ特殊事犯 ノ不起訴処分 ニ

ノ取扱 ヲ為 スヲ要 セサル コト ニ相成候

家 庭 状 況 ノ項 ニ ハ家庭 ノ生活 状 態 ヲ モ記 載 ス ル コト

ニ関 与 ス ル ニ至 リ タ ル事 情 ヲ モ記 載 スル コト

考 ト ス ル コト尚 ホ思 想 ノ推 移 過 程 ノ項 ニ ハ共 産 党 又 ハ青 年 共 産 同 盟

請 アリタル治安維持法違反事件 ニ付爾今留保 処分又 ハ起訴猶予其 ノ

健 康 状態 ノ項 ニ ハ収 容時 及現 在 ノ状 態 ヲ区別 シテ記 載 ス ル コト

)

○特殊事 犯ノ稟請処理報告 方ノ件依命通牒 昭和 八年九月 四日秘第二五四五号 ( 検 事総長、検事長宛刑事局長通牒

他 ノ不起訴処分 ノ指揮 ヲ検事長 ニ於 テ検事正 ニ対 シ為 シタルトキ ハ

項 ニ ハ各 種 組 合 団 体 ノ組 織 運 動労 働 小 作 等 ノ各争 議 ニ於 ケ ル参 加

六、 労 働 運 動 、 農 民運 動 、 水 平 運動 、 学 生 社会 科 学 運 動 等 ノ経 歴 ノ

昭和二年八月 二十三日附秘第 一六三号訓令 ニ基 キ起訴指揮方 ノ稟

ハ司法大臣 ニ速 ニ報告相成候様致度又同訓令第六項後段 ニ依 リ第 一

検事総長及司法大臣 ニ、検事総 長 ニ於 テ検事長 ニ対 シ為 シタ ルトキ

本 籍 名

地

第 一様式

氏 業 歴

職 一、 学

子

二、 家 庭 状 況

三、 妻

歴

本人 ノ業 家 業

四、 資 産 及生 活 状 態 五、経

六、健康状態

七 、 思 想 ノ推 移 過 程

年齢

所 属 団 体 及 地 位

八 、 労 働 運 動 、農 民 運動 、 水 平 運 動 、学 生社 会 科 学 等 ノ経 歴

日 本 共産 党 ニ於 ケ ル地 位

日 盟

本 青 ニ 於

年 ケ

共 産 ル 地

同 位

其 ノ裁 判 所 、 罪 名竝 ニ刑 名 刑 期 金 額 ヲ記 シ其 ノ犯 罪 ノ原 因 ヲ簡単

九 、 前 科 又 ハ起 訴 猶 予 又 ハ指 導 、 社会 科 学 運 動 其 ノ 他 ノ思 想 運 動 ニ関 与 シ タ ル行動 ノ経

ニ記 入 ノ コト

例 ﹁昭 和年 月 日何 裁 判 所 言渡 何 罪懲 役 何月 (労 働 争 議 ) ( 小 作争

歴 ヲ摘 録 ス ル コト 七 、 前 科 又 ハ起 訴 猶 予 ノ項 ニ ハ思 想 犯 罪 ノ ミ ヲ掲 ケ判 決 ノ年 月 日 及

議)( 水 平 運 動 ) 又 ハ (日 本 共産 党 事 件 ) 等 ﹂

備

成

学

備

成

学

備

成

学

績

科

績

科

績

科

名 目

目

目

考

点

別

考

点

別

考

点

別

尚 思想 犯 罪 ニ シテ他 ニ繋 属 セ ル事 件 ( 例 ヘ ハ京 大 学 生 事 件 ノ如 シ)

第二様 式 氏 尋 常 小 学 校 高 等 小 学 校 官立 又 ハ私 立 々 学

何

校

記載例 一、 本表 ハ中 等 学 校 程 度 以下 ノ学 歴 ア ル者 ノミ ノ学 力 調 査 ナ ル ヲ以 テ高 等 学 校 程 度 以 上 ノ学歴 ヲ有 ス ル知 識 階級 出 身 者 ヲ除 外 ス ル コ ト

採 ル コト

一、 本 表 ハ小 学 校 又 ハ中 等程 度 ノ学 校 在 学 中 ノ最 終 ノ学 年 ノ成績 ヲ

績 表 ハ略 ス コト

一、 高 等 小 学 校 又 ハ中 等 学校 卒 業 者 ニ付 テ ハ尋常 小学 校 ニ於 ケ ル成

ア ルト キ ハ其 旨 記 入 ノ コト

起 訴猶 予処 分 モ前 科 ノ例 ニ準 ジ記 入 ノ コト

総

評 点

評

点

総

評

点

総

一、 高等 小学 校 又 ハ中 等 学 校 半 途 退 学 者 ニ付 テ ハ尋常 小学 校 卒 業時 ニ於 ケ ル成 績 ヲ モ採 ル コト

採 ル コト

一、 高等 小学 校 及 中等 学校 共 半 途 退 学 者 ニ付 テ ハ関 係 各校 ノ成 績 ヲ

ル コト例 ヘ ハ官 立 何 々中学 校 私 立 何 々商業 学 校 等

一、 ﹁何 々学 校 ﹂ ノ欄 ニ ハ官 私立 別 ヲ記 シ中 等 程 度 ノ校 名 ヲ 記 載 ス

目 中 ニ特 ニ得 意 ト シ タ ル科 目 ア ルト キ ハ其 旨 ヲ簡 単 ニ記 入 ス ル コ

一、 備考 欄 ニ ハ半 途 退 学 シタ ル学 年 学 期 竝 ニ其 ノ主 タ ル原 因 及学 科

ト 注意  本 表 ハ関 係 各 学 校 ニ就 キ調 査 セ ラ レタ シ 註。 本 文 照 会 ハ其 ノ後 各 検事 正宛 ニ各 別 ニ発 シ タ ル モ基 本 ハ前 掲 ノ モノ ニ シテ内 容 亦 同 一ノ モノ ナリ

○ 日 本 共 産 党 関係 治安 維 持 法 違 反事 件処 分 方 針 ノ件 昭和六年 三月二十七日秘第 二七〇号検 ( 事総長、検事長、検事正宛 次官通牒

ト存 候

虞 ア ル次第 ニ候 ヘ ハ同 法 運 用 ニ付 テ ハ特 ニ慎重 ノ考 慮 ヲ要 ス ル コト

最 近 検挙 セ ラ ル ル同 法 違 反被 疑 者 ニ付 テ審案 ス ル ニ其 ノ多 ク ハ共

産 党 又 ハ共 産 青 年 同 盟 ノ準 機 関紙 ｢第 二 無 産者 新 聞 ﹂ 又 ハ ﹁無 産 青

ニ触 ル ル ニ至 リ タ ル者 ニ有 之候 処 就 中 其 ノ大多 数 ハ現 時 ノ経済 組織

年 ﹂ 等 等 ヲ頒 布 シ由 ツ テ所 謂 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 スノ罪 名

シ得 ベ シト盲 信 シ漠 然 公 式 的 ニ其 ノ理論 ヲ暗誦 シ其 ノ儘 之 ヲ機 械 的

ノ矛 盾 欠陥 ヲ打 破 セ ント スルノ余 漫 然 共 産 主義 ニ依 リ之 カ実 現 ヲ期

ニ吐 露 スル ニ過 ギ ズ シテ未 ダ 其 ノ病 膏盲 ニ入 リ タ ル モノ ニ非 ズ 従 テ

)

力 殆 ト屏 息 スル に至 リタ ル ハ国 家 ノ為 メ欣 ブ ヘキ義 ニ有 之候 得 共 同

ヲ破 壊 スル為 暴 力革 命 ヲ遂 行 セ ン コト ヲ期 シ之 ガ実 現 ノ為 ニ献 身的

確 乎 不 動 ノ理論 的 信 条 ニ依 リ或 ハ我 国 体 ヲ変 革 シ或 ハ私 有 財 産 制 度

客 年 七 月 日本 共 産 党首 脳 部 ノ検 挙 以来 同 党 直 接 ノ指 導 ニ基 ク活 動

党 関 係 ノ治 安 維 持 法違 反 者 依 然 全 国 各 地 ニ簇出 スル ハ甚 憂 慮 ニ堪 ヘ

ラ レ候 左 レバ 此 等 ノ者 カ其 ノ配 布 文 書 ノ内 容 ヲ認 識 シ ツツ 一時 的 ノ

ノ努 力 ヲ為 スガ如 キ鞏 固 ナ ル決 心 ヲ有 ス ル モノ ニ非 ザ ル ヤ ニ思 考 セ

ザ ル処 ニ有 之 候 而 シ テ此 等 違 反 者 ニシテ起 訴 セラ レタ ル モノ ノ数 ハ 別 表 (略 ) ニ示 スガ如 ク所 謂 三 ・一五事 件 総検 挙 以来 本 年 二 月末 日

ヲ要 ス ル モノ ニシ テ殊 ニ前 途 ア ル青 少 年 就 中学 生 生 徒 等 ニ対 シ必 罰

シ テ起 訴 ス ル コト ハ現時 ノ 社会 情 勢 ニ鑑 ミ刑 事 政 策 上深 甚 ナ ル考 慮

軽挙 ヲ為 シタ ル ノ故 ヲ以 テ直 ニ治 安 維 持法 第 一条 第 一項 ノ罪 名 ニ照

ニ至 ル間 ニ於 テ 一千 三 百 数十 名 ニ達 シ就 中 高等 教 育 ヲ受 ケ タ ル者 四 百 人 以 上 ヲ包 容 セ ル ハ深 ク憂 フベ キ現 象 ニ有 之候 而 シテ此 等 ノ被 収

主 義 ヲ以 テ臨 ム ガ如 キ ハ必 ズ シ モ策 ノ得 タ ル モノ ニ非 ザ ルヤ ニ思 料

容 者 ハ其 ノ未 決 タ ルト既 決 タ ルト ヲ問 ハズ 刑 務 所 ノ秩 序 ヲ紊 ル コト 甚 シ ク従 テ他 ノ 一般 被 収 容 者 ニ悪 感 化 ヲ及 ボ シ ツ ツア ルノ ミ ナ ラズ

是 ヲ以 テ同 法 ノ運 用 ニ関 シ更 ニ関 係 官 庁 ト協 議 ヲ遂 ゲ万全 ヲ期 ス

致候

ルノ必 要 ア リ ト思 料 致 居 候 折 柄会 々本 年 一月 衆 議院 ニ於 テ別紙 ( 略)

此等 ノ既 決 者 ニ対 ス ル教 化 ノ如 キ モ亦 到 底 不 可 能 ノ状 況 ニ有 之 而 モ

伍 スル コト 能 ハザ ルガ為 絶 望 的 ノ暴挙 ヲ敢 テ ス ルノ虞 ア ル コト疑 ヲ

国 体 変 革 行動 ノ罪 名 ニ因 リ テ検 挙 セラ レタ ル者 ハ釈 放後 ト雖 良 民 ニ

容 レザ ル次 第 ニ有 之 候是 ヲ以 テ苟 ク モ彼 等 ノ行 動 ニシ テ同法 違 反 ノ

シタ ルモ同 法 ノ 運用 ノ実 際 ニ付 テ ハ傾 聴 スベ キ点 モ少 カ ラザ ル ヤ ニ

ノ如 キ質 問 主意 書 ノ提 出 ア リ同 法 ノ廃 止改 正 ニ ハ同意 セ ザ ル旨 答弁

ノ各 関 係 当 局 会 合協 議 ヲ遂 ゲ タ ル処今 後 所 謂 目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行

被 存 候 ニ付 之 ヲ好 機 ト シ先 日当 省 ニ於 テ大 審 院 検 事 局、 内 務 、 文部

要 素 ヲ概 念 的 ニ具 備 ス ル モノ ア ラバ 本 人 ノ思 想 的 惑 溺 ノ程度 其 ノ智

ク之 ヲ起 訴 シテ被 告 人 及受 刑 者 ノ数 ヲ更 ニ著 シク増 加 スル ハ策 ノ得

識 経 験 ノ深 浅 其 ノ活 動 力 ノ大 小 、 事後 ノ心状 等 ノ如 何 ヲ甄 別 セズ悉

タ ル モノ ニ非 ザ ルノミ ナ ラズ将 来寔 ニ寒 心 スベ キ結 果 ヲ誘 起 ス ルノ

ル所 ニ有 之 候 就 テ ハ将 来 叙 上 ノ事 情 篤 ト御 考 慮 ノ上 関係 官 庁 ト モ協

為 ノ被 疑 者 ニ付 テ ハ従 来 ヨリ モ起 訴 ヲ緩 和 スベ キ コト意 見 ノ 一致 ス

シ得 ル所 ナ ル モ検 察 当 局 モ亦 適 宜 ノ協 力 ヲ以 テ予 防 策 ノ遂 行 ヲ助成

策 ト存候 此 ノ処 置 タ ル ヤ固 ヨリ警 察 及 学 校両 当 局 ノ協 調 ニ依 リ遂 行

依 命為 御参 考 右 申 進 候

スベ キ義 ト存 候

昭和六年四月十八日保発甲第二 一号 照 (庁 府県長官宛内務省警保局長通牒

這般司法省 ニ於テ ハ各検事局 ニ対 シ現時 ノ状勢 ニ鑑 ミ日本共産党関係治

コトヲ要 スベク固 ヨリ起訴 ノ標準 ニ付テ ハ各具体的事案 ニ依 ルベキ モノ ニ

ノ大小、事後 ノ心状、学生生徒 タル身分関係等各般 ノ事情 ヲ綜合考覈 スル

付テ ハ刑事政策上、其 ノ者ノ思想的惑溺ノ程度、経験 ノ深浅、其 ノ活動力

安維持法違反中所謂目的遂行ノ為 ニスル行為ノ被疑者 ニ対 スル起訴処分 ニ

参

)

調 ヲ保 チ法 ノ運 用 上遺 憾 ナ キ ヲ期 セ ラ ル ル様 致 度 候 固 ヨリ起 訴 ノ標 準 ニ付 テ ハ各具 体 的事 案 ニ依 ルベ キ モノ ニ シテ必 ズ シ モ 一率 ニ之 ヲ 決 シ難 キ モノ可 有 之 ト存 候 得 共 大体 ニ於 テ国 体 変 革 又 ハ暴 力 革 命 ニ 依 ル私 有 財 産 制 度 ノ破 壊 ニ関 シ理論 上 ノ深 キ信 念 ト 之 カ実 現 ニ対 ス ル確 乎 タ ル決 心 ト ヲ有 シ其 ノ行動 自 体亦 此 ノ点 ニ関 ス ル危 険 性 ヲ顕 現 シ居 ル ノミ ナ ラズ将 来 此 ノ目 的 ニ出 ヅ ル非 合 法 運 動 ヨリ離 脱 ノ見 込 ナ キ者 ナ リ ヤ否 ニ因 リ同 法 違 反 ト シ テ起 訴 スベ キ ヤ否 ヲ判 断 スベ

之カ実現 ニ対 スル確乎 タル決 心トヲ有 シ其 ノ行動自体亦此 ノ点 ニ関 スル危

変革、又 ハ暴力革命 ニ依 ル私有財産制度 ノ破壊 ニ関 シ理論上 ノ深キ信念 ト

シテ必ズシ モ一率 ニ之 ヲ決 シ難 キ モノ可有之存ゼラルルモ大体 ニ於 テ国体

格 ト為 ス モ之 カ為 捜 査 ノ遂 行 上 ニ於 テ 従来 ノ方 針 ヲ変 更 シ違 反 行 為

険性ヲ顕現 シ居 ルノミナラズ将来此 ノ目的 ニ出ヅ ル非合法運動ヨリ離脱 ノ

キ方 針 ヲ採 ラ ル ル コト妥 当 ニ非 ザ ル カト被 存 候 尤 モ起 訴 ノ標 準 ヲ厳

ヲ全 ク放 任 ス ルガ 如 キ趣 旨 ニ非 ザ ル ハ勿論 ニ シテ治 安 維持 法 違 反 ト

次第 モ有之此 ノ点 ハ検事局 ヨリ モ貴官 ニ対 シ協議可有之 ニ付詳細御打合 セ

針ヲ採 ルコトヲ妥当ト スベキ旨 通達 シタ ル趣、司法省刑事局長 ヨリ通報 ノ

見込ナキ者 ナリヤ否 ニ依リ同法違反 トシテ起訴 スベキヤ否 ヲ判断 スベキ方

シテ起 訴 セザ ル モ新聞 紙 法 出 版 法其 ノ他 ノ違 反 行 為 ト シテ処 分 ス ル ノ 必要 ア ル者 モア ルベ ク 又厳 重 ナ ル訓 戒 ノ下ニ一 時 釈 放 シ相 当 ノ期

ア ルベ ク各 般 ノ事 情 ヲ綜 合 考覈 シ テ臨 時適 当 ノ処 置 ヲ採 ルノ 必要 有

間 視 察 ノ結 果 ニ因 リ テ起 訴 猶 予 ノ処 置 ヲ為 ス コト ヲ適 当 ト ス ル者 モ

年同盟員 及其 ノ外廓 タル極左諸団体関係者 ノ党同盟拡大強化 ノ為 ニスル運

尚検事局 ニ於 ケル起訴 ノ方針 ハ右 ノ如 クナ ルモ日本共産党竝日本共産青

ノ上本件 ノ検挙 ニ当 ラルル様致度

右 ノ方 針 ヲ採 用 セ ラ ル ル場 合 ニ ハ予 メ警 察 当 局 ト協 議 ヲ遂 ゲ司 法

之 義 ト存 候

層厳密ナ ル査察警戒 ヲ加 ヘ些 ノ蠢動 ノ余地無 カラシ ムル様取締 ノ万全 ヲ期

動 ハ益 々地下潜行的 ニ巧緻、執拗 ナルモノアル折柄之等 ニ対 シテ ハ日常 一

セラルル ハ固 ヨリノ儀 ニ有之為念申添候

○ 司 法 警 察 職務 規 範 第 三十 一条 ノ思 想 犯報 告 方 ノ件

昭和六年四月十五日刑事第三、三二七号検 ( 事 局裁判所刑務所各長官宛刑事局長通牒

標記 ノ件 ニ関 シ別紙 ノ通 リ通牒致置候条為御参考 差進候

)

警 察 官 吏 ニ於 テ克 ク此 ノ精 神 ヲ体 シ 一致協 力 ノ実 ヲ挙 ゲ シ ム ル為 相 当 ノ措 置 ヲ考 慮 セ ラ ルベ キ義 ト存 候 尚 各 種 ノ非 合 法 運動 殊 ニ学 生 ノ極 左進 出 運動 ニ付 テ ハ非 合 法 団 体 ノ組 織 已 ニ成 リ活 動 ノ開 始 セ ラ ル ル ヲ待 テ始 メ テ之 ヲ検挙 シ法 ノ制

シ其 ノ拡 大 活 動 ヲ予 防 ス ル コト ヲ得 バ 国家 ノ為 又本 人 ノ為 上乗 ノ得

裁 ヲ加 フ ル ハ既 ニ遅 キ ニ失 ス ルノ憾 ア リ若 シ其 ノ組 織 ヲ未 然 ニ阻 止

昭和 六年四月十五日刑事第 三、三二五 号 内 ) (別紙 ) (務 省警保局長、憲兵司令 官宛刑事局長通牒

メ テ捜 査 ノ実 行 ヲ為 ス コト固 ヨリ差 支 ナ キ次第 ト思 考 致 候

ト 認 メ ラ ル ル特 別 ノ事 情 存 ス ル場 合 ニ於 テ ハ起 訴 前 ノ強 制 処分 ヲ求

昭和 六年七月思想係検事事務打合会協議事項同年八月 ( 二 十 六日秘第五九二号検 事長、検事正宛刑事局長通牒

○ 思 想 事件 迅 速 処 理 方 竝 ニ未 決 勾留 短 縮 方 ノ件

為 念 右申 進 候

治安維持法違反 ノ罪 ニ付 テ ハ大 正十二年十二月司法省刑事局刑事 第 一〇、 〇九 二号訓令司法 警察職務規範第三十 一条第 一項 第 十 五 号 ニ規定 スル ﹁無政府主義、共産主義其 ノ他社会主義者 ノ其 ノ主義 ニ 関 スル罪﹂ノ条項 ニ依 リ報 告相成 ルベキ処従来其 ノ犯罪報告遅延 ス (前 略) 第 一、第 二、 ( 略)

ル向有之哉 ニ思考被致候 ニ付テ ハ爾今同号 ノ犯罪 アリト思料 スルト キ ハ一層速 ニ検事 ニ報告 スベキ様貴管下司法警察官吏及其 ノ職務 ヲ

第 三 、思 想 事 件 ノ処 理 ヲ迅 速 ニ ス ル方 法 殊 ニ未 決 勾 留 ヲ短縮 スル方

ハ比較 的少 数 ニ止 マリ居候 処 先般 議 会 ヲ通 過 シタ ル同 例 中 改 正法 律

従来 違 警 罪 即 決 例 ニ依 ル既 決 ノ言 渡 ニ対 ス ル正式 裁 判 ノ申 立 件 数

ノ取 調 ヲ詳 細 ニ為 シ タ ル ニ起 因 スト思 料 スル モ既 ニ今 日 ニ於 テ ハ其

ヲ併 合 シテ起 訴 シ且 共産 党 其 ノ他 極 左 団 体 ノ本 質 ヲ明 ニス ル為 メ其

亙 ル モノ多 シ右 ハ事 件 ノ 一斉 検 挙 竝 ニ取 調 ノ便 宜 ノ為多 数 ノ被 告 人

従来 思 想 犯 事 件 ノ審 理 ニ付 テ ハ多 ク ノ日 数 ヲ要 シ未 決 勾留 長 期 ニ

)

案 ガ 実施 セラ ルル ニ於 テ ハ思 想 犯 ノ取 調 上 従来 ノ如 ク被 疑 者 ニ対 シ

ノ必 要 ナキ ニア ラズ ヤ

提案 理由

法 如何 ( 東京)

行 フ者 ニ対 シテ通達方可然御取計有之度此段依命 及通牒候 ○違警 罪即決例中改正法律 案実施後 ニ於 ケル思想 犯取調 ニ関 スル件

即決 例 ニ依 リ拘 留 ヲ言渡 シ其 ノ執 行 ノ期 間 内 ニ証拠 ヲ蒐 集 ス ル ノ便

協

昭和六年五月十九日秘第 四 一 ) ( 五号検事正宛刑事局長通牒

宜 ヲ失 ヒ捜 査 上甚 ダ シ キ困難 ヲ招 致 ス ル虞 ア リト ノ理 由 ニ 示ア思 想 犯

議

被疑 者 ニ対 シテ ハ起 訴 前 ノ強 制処 分 ヲ利 用 シ テ拘 留 ニ代 用 シ タ シト

原則 ト シテ之 ヲ個 々 ニ分離 シテ予 審 ヲ請 求 シ其 ノ聴 取書 又 ハ訊

(一) 思 想 犯 事 件 ハ将来 多 数 ノ被 告 人 ヲ併 合 起 訴 ス ル コト ヲ避 ケ

問 調書 ハ可 成 之 ヲ簡 ニ シ特 種 斬 新 ノ事 項 以外 既 ニ判 明 セ ル客 観

ノ希 望 ヲ有 ス ル向 モ有 之侯 得 共本 省 ニ於 テ ハ従来 右 強 制 処 分 ノ 運 用

的情 勢 ノ記 載 等 ハ被告 人 ノ犯 意 ヲ明 確 ニ ス ル ニ止 メ之 ヲ省 略 ス

ヲ成 ルベ ク制 限 ス ルノ必 要 ヲ認 メ居 ルノ ミ ナ ラズ大 体 ニ於 テ強 制 処

ニシ テ目的 ヲ達 シ得 ザ ル モ ノト思 料 候 ニ付 右 ノ希 望 ニ応 ズ ル コト 能

分 ノ期間 十 日間 ニテ ハ思 想 犯 被疑 者 ヨリ適 確 ノ 証拠 ヲ得 ル コト 困 難

ルヲ可 ト ス

強 制処 分 ノ勾 留 モ従来 ノ 方針 ニ従 フ可 ク刑 事 訴 訟法 第 百 二十 三

(二) 改 正違 警 罪 即 決例 実施 後 ニ於 テ モ行政 検 束 ハ可 成之 ヲ避 ケ

ハザ ル義 ト 存候 然 シ乍 ラ本 改 正案 実 施 後 ニ於 テ思 想 犯 捜 査 ノ遂行 上 被 疑 者 ノ身 柄

条 第 一号 ノ運 用 ニ伴 フ検 事 勾 留 モ長 期 ニ亙 ラザ ル様 注 意 ス可 キ

ヲ留 置 ス ルノ真 ニ已 ム ヲ得 ザ ル場 合 ニ於 テ即 決 処分 ニ依 リ難 キ事 情 ア リ且 強 制 処 分 ノ期 間 内 ニテ捜 査 ノ目的 ヲ十 分 ニ達 シ得 ラ ル ル モノ

検 挙 着 手 ノ時 期 ニ付 充 分 ナ ル考 慮 ヲ払 ヒ被 疑 者拘 束 ノ期 間 ヲ短

ハ勿 論 ナ ル ヲ以 テ将 来 ハ 一層 極 左社 会 運動 ノ情 況 ヲ査察 内 偵 シ

モ ノ ヲ差 出 サ シ ム ル コト

ル事 情 及 将来 ノ生活 ニ対 スル方 針等 ニ関 ス ル事 項 ヲ手記 シ タ ル

一、 本 人 ヨ リ誓 約 書 又 ハ之 ニ代 ヘテ本 人 ガ思 想 転 向 ス ル ニ至 リ タ

人 ニ定 メ其 ノ 引受 書 ヲ徴 スル コト

二、 保 護 者 、親 族 、 故 旧 、 学 校 教 職員 又 ハ適 当 ナ ル者 ヲ身 元 引受

縮 ス ル ニ努 ム可 キ モノ ト ス

保 釈 ヲ許 可 スル モ可 ナリ

三、 本 人 ノ住居 ヲ定 メ シ ム ル コト

第 五条  留 保 処 分 ヲ為 シ タ ルト キ ハ身 元 引 受人 ニ対 シ留 保 処 分 者 ノ

前 項 ノ場 合 ニ於 テ ハ成 ルベ ク身 元引 受 人 ヲ シテ立会 ハシム ベ シ

説 示 シ且将 来 ヲ戒 ム ル為 適 当 ナ ル訓 諭 ヲ為 スベ シ

第 四条  留 保 処 分 ノ申渡 ヲ為 ス ニ ハ被 疑 者 ニ対 シ其 ノ処 分 ノ意 義 ヲ

捜 査 ヲ遂 ゲ犯 罪 ノ嫌疑 ア ル コト明 ナ ル モ被疑 者 ノ主 観 及 客 観 ノ事

)

昭和 七年十 一月三十六日秘第 二、 (〇 〇六号検事正宛司法大臣訓令

(三) 勾 留 被 告 人中 既 ニ改悛 ノ情 顕著 ニ シテ逃 亡 ノ虞 ナキ者 ニ ハ

第 四 乃 至第 九 (略 )

○思想 犯人 ニ対 スル留保処分取扱規程

情 ニ照 シ尚 一定 ノ期間 其 ノ者 ノ行 状 ヲ視 察 シ其 ノ結 果 ニ因 リ公 訴

スベ シ此 ノ場 合 ニ於 テ ハ速 ニ留 保処 分 ヲ為 シタ ル旨 ヲ送致 警 察 署

監督 ニ付 必 要 又 ハ参 考 ト 為 ルベ キ事 項 ヲ指 示 シ留 保 処分 者 ヲ引 渡

第 一条  本 規 程 ニ於 テ留 保 処 分 ト ハ治 安 維 持法 違 反 ノ被 疑事 件 ニ付

ノ 起 否 ヲ決 ス ルヲ適 当 ナ リト認 ム ル場 合 ニ被 疑者 ニ対 シ テ為 ス処

五、 犯 罪 ノ決 意 ノ強 弱

四、 意 識 ノ深 浅

二、 交 友 関 係 及 通信 状 況

一、 思 想 及 行動

之 ヲ求 ム ル コト ヲ得

シ ムベ シ必要 ア リ ト認 ム ルト キ ハ身 元引 受 人 及警 察 官 ノ雙 方 ヨリ

シ少 クト モ月 一回留 保 処 分 者 ニ関 ス ル左 ノ事 項 ノ視 察 報告 ヲ為 サ

第 七 条  留 保 処 分 ノ期 間 内 ハ身 元 引受 人 又 ハ警 察官 ニ委 嘱 又 ハ命 令

至 ル迄 延長 ス ル コト ヲ得

第 六 条  留 保 処 分 ノ期 間 ハ六 月 ト ス特 ニ必 要 ア ルト キ ハ之 ヲ 一年 ニ

ニ通 知 スベ シ

分 ノ留 保 ヲ謂 フ 第 二 条  留 保 処分 ヲ為 ス ニ付 テ ハ被 疑 者 ニ付 特 ニ左 ノ事 項 ヲ参 酌 ス

一、 性 格 及 年齢

ベシ

二、 犯 罪 ノ前 歴 ノ有 無

六、 活 動 力 ノ大 小

三、 運 動 経 歴

七、 思 想 転 向 シ将来 適 法 ナ ル生 活 ヲ営 ムノ見 込 ノ有 無

三 、 家 庭 関 係 及 生 活状 態

五、 身 元 引 受 人 ノ監督 ノ実 況

四、 健 康 状 態

八、 適 当 ナ ル身 元 引受 人 ノ有 無 第 三条  被 疑 者 ニ対 シ留 保 処 分 ヲ為 スベ キ モノ ト認 メ タ ルト キ ハ成 ルベ ク 左 ノ処 置 ヲ為 スベ シ

六、 改悛 状 況

日及 不 起 訴 ノ 理由 ノ ミ ヲ報 告 ス ルヲ以 テ足 ル

シ前 項 ニ依 リ報 告 ヲ為 シタ ル事 件 ニ付 テ ハ氏 名、 留 保 処 分 ノ年 月

準 用 ス ル コト ヲ得

第 十 三 条  本規 程 ハ治 安 維持 法 違 反 事 件 ノ起 訴 猶 予 処分 ニ付 亦 之 ヲ

七 、 其 ノ他参 考 ト為 ルベ キ事 項 前 項 ノ場 合 ニ於 テ警 察官 ガ視 察 ヲ行 フ ニ当 リ テ ハ克 ク留 保 処 分 ノ 精 神 ニ適合 セ ン コト ヲ期 シ厳 ニ間 接 視察 ノ方 法 ヲ執 ラ シ ムベ シ

第 十 四 条  左 ノ犯 罪 ニ付特 ニ必要 ア リト 認 ム ルト キ 亦本 規 程 ニ準 ジ

一、 刑法 第 七十 四条 及第 七十 六条 ノ罪

留 保 処 分 又 ハ起 訴 猶 予 処 分 ヲ為 ス コト ヲ得

第 八 条  左 ノ場 合 ニ於 テ ハ身 元 引 受 人 又 ハ警 察 官 ヲ シ テ速 ニ其 ノ旨 ノ報 告 ヲ為 サ シムベ シ

罪 但 シ風 俗 壊 乱 ノ罪 ヲ除 ク

二 、出 版法 第 二十 六条 ノ罪 、 新 聞 紙法 第 四十 一条 及第 四十 二 条 ノ

一、留 保 処分 者 ノ氏 名、 職 業 、 本 籍 及 住居 等 ニ変 更 ア リ タ ルト キ

ルト キ

二、 身 元引 受 人 ガ留 保 処 分 者 ノ監 督 ヲ為 ス コト 能 ハザ ル ニ至 リ タ

細 則 ヲ以 テ之 ヲ定 ム ル コト ヲ得 此 ノ場 合 ニ於 テ ハ全 文 ヲ添 ヘテ報

第 十 五 条  本 規 程 ニ定 ム ル モノ ノ外留 保 処分 ニ関 シ必要 ナ ル規 程 ハ

三 、治 安 警 察 法 第 二十 八条 ノ罪

第 九 条  留保 処 分 者 他管 内 ニ住 居 ヲ変 更 シタ ルト キ ハ新 ナ ル住 居 ヲ

告 スベ シ其 ノ改 廃 ヲ為 シタ ルト キ亦 同 ジ

三 、 身 元引 受 人 ノ氏 名、 職 業 及 住 所 等 ニ変 更 ア リ タ ルト キ

スベ シ

則

ノ限 ニ在 ラズ

)

歴 及 犯罪 事 実 ノ各概 要 竝留 保 処 分 ヲ為 シタ ル理 由 及其 ノ年 月 日 ヲ

年 齢 、 本籍 竝 学 歴、 職 業 、 家 庭 状 況、 犯 罪 ノ前 歴、 社会 運 動 ノ経

シ 一旦 検 束 ヲ加 ヘタ ル後 犯罪 ア ル コト ヲ発 見 シ司法 警 察 官 ノ手 ニ於

ト ヲ論議 ス ル者 ナ キ ニ非 ズ惟 フ ニ是 レ行政 警 察官 ガ同 法 該 当 者 ニ対

法 ニ依 ル検 束 ヲ利 用 シ数 日 ニ亘 リ被疑 者 ヲ留 置 ス ル モノ ア リト ノ コ

ザ ル ハ言 ヲ俟 タザ ル所 ナリ然 ル ニ近時 捜 査官 吏 往 々 ニ シテ行 政 執行

捜 査 ニ付 テ ハ法 律 ニ定 メ タ ル場 合 ノ 外強 制 ノ処分 ヲ為 ス コト ヲ得

○行政執行法 ノ運用 ニ関 スル件

昭和 八年十 一月十日刑事第 一五、七三 (五 号検事司法警察官宛司法大臣訓令

シ本 規 程 施行 前 従前 ノ取 扱 例 ニ依 リ既 ニ処 分 ヲ為 シタ ル モ ノ ハ此

第 十 七 条  本規 程 ハ本規 程施 行 前 ニ生 ジ タ ル事件 ニ亦 之 ヲ適 用 ス但

第 十 六 条  本 規 程 ハ昭 和 八年 一月 一日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

附

管 轄 スル裁 判 所 ノ検 事 ニ其 ノ者 ノ犯 罪事 実 ノ概 要 ト 共 ニ之 ヲ通 知

前 項 ノ通知 ヲ受 ケ タ ル検 事 ハ第 七 条 ノ規 定 ニ準 ジ テ必要 ナ ル手 続 ヲ為 シ其 ノ結 果 ヲ原 裁 判所 ノ検 事 ニ通知 スベ シ 第 十 条  留 保 処 分 ノ 期間 中 ハ随 時 留 保 処分 者 ノ身 上 ノ情 況 ヲ調 査 シ 本 人 ノ更 ニ罪 ヲ犯 ス危 険 ヲ防 止 スル コト ニ努 ムベ シ 第 十 一条  本 規 定 ニ依 ル留 保 処 分 ハ統 計 上 ノ取 扱 ニ於 テ ハ其 ノ処 分 ノ時 ヲ以 テ起 訴 猶 予処 分 ア リ タ ル モ ノト看做 ス

報 告 スベ シ

第 十 二 条  留 保 処 分 ヲ為 シタ ルト キ ハ其 ノ都 度 速 ニ被 疑 者 ノ氏 名、

起 訴 猶 予其 ノ他 ノ不 起 訴処 分 ヲ為 シタ ル事 件 ニ付 亦 前 項 ニ同 ジ但

テ捜 査 ニ著 手 ス ル コト ア ルヲ見 テ右 ノ如 キ非 難 ヲ生ズ ル ニ至 リ タ ル モノ ナ ルベ シト雖 凡 ソ捜 査 ヲ為 ス ニ当 リ テ ハ固 ヨリ人 権 ヲ尊 重 スベ ク若 シ被 疑 者 ヲ拘 束 スル必 要 ア リ ト認 メ刑 事 訴 訟法 ノ認 容 セ ル強 制 ノ手 続 ニ依 ル コト ヲ相 当 ト ス ルト キ ハ其 ノ方 法 ニ依 拠 スベ ク濫 リ ニ 行 政 法 上 ノ処 分 ヲ利 用 ス ル カ如 キ コト ア ルベ カ ラザ ル ハ茲 ニ絮説 ヲ

五二〇号 ニテ廃止)

)

一、 第 六 項 ( 暴 威 取 締 ニ関 ス ル件 ) ( 大正十五年五月十九日刑事第三、

報 告 有 之度

二、第七項 ( 思 想 問 題 ニ関 ス ル件 ) ニ付 テ ハ充 分御留 意 相 成随 時

○ 殖 民 地其 ノ 他 ニ於 ケ ル要 注意 人 及 団 体 状 況等 ノ情報 送 付 方 ノ件

追而前者団体 名簿 ニ関 シテ ハ本年三月十 八日及六月二十 日付 ヲ以

大正十五年五月二十 八日刑事第 三、 九〇 ( 〇 号拓殖局長憲兵司令官宛刑事局長照会

レバ捜 査 ノ 局 ニ当 ル者 モ亦 更 ニ其 ノ手 続 ニ用意 ノ周 到 ナ ル コト ヲ必

要 セザ ル所 ナ レド モ右 ノ 如 キ論 議 ノ行 ハ ルル ニ至 リ タ ル ニ由 リ テ観

要 ト ス故 ニ被 疑 者 ヲ拘 束 ス ル場 合 ニ於 テ ハ法規 ヲ恪 守 シ苟 モ非 難 ノ

ニ付右当局作成 ノ名簿 ニ依 リ其 ノ後 ノ情況増補訂正ノ上御送付相成 候 モ差支無之候

○社会思想運動情勢調査報告 方ノ件

五 ニ依 リ報 告 スベ キ コト ニ相 成 居 候 処 貴管 下 ノ社会 思 想 運 動 ノ 一般

思 想 ニ関 ス ル調 査 ノ結 果 ニ付 テ ハ思 想係 検 事 事務 分 掌 規 準 第 三 ノ

七年七月二十八日 秘第 一、 (昭一和 九 六号検事長宛刑事局長通牒 )

テ内務省 ヨリ庁府県 ニ対 シ別紙様式 ノ通リノ名簿調製方通牒致候趣

)

生 ズ ル ガ如 キ コト ナ キ様 一層 注 意 セ ラ ルベ シ 右訓令 ス

○ 共 産 主義 者 ト各 種 団 体 ト ノ関 係 報 告 方 ノ件 大正十四年十 一月二十 六日刑事局送附同年控訴院 ( 長 検事長協議会 ニテ刑事局長ヨリ配付シタル覚書

思 想 問題 ニ付 テ ハ常 ニ深 甚 ノ注 意 ヲ払 ヒ殊 ニ

的 情 勢 ニ付 テ ハ爾 今 大 要 左記 項 目 ニ依 リ更 ニ任意 細 別 シ テ 自 一月 及 至 六月  ニ分 チ各翌月末 日迄 ニ御報告相 成候 様 致度 尚 本 年

(イ) 無 産 政 党 ト 共産 主 義 者 ト ノ関係

自 一月 至 六月

自 七 月 二期間 至十二月ノ  

記 第 一、概

二、 日本共産主義 青年同盟 ノ情況

一、 日本共産党 ノ情 況

第二、共産主義運動

説

追 テ右 調査書 ハ当局 ニ於 テ取纒 メノ上印刷 ニ付 スル予定 ニ有之候

分 ハ来 八月末 日迄 ニ御進達相成度候

(ロ) 日本 無 産青 年 同 盟 ト共 産 主義 者 ト ノ関 係 (ハ) 社 会 科 学 研究 会 ト共 産 主 義 者 ト ノ関 係 ニ ハ特 ニ留 意 シ治 安 維 持 法 違 反 ノ事実 ナキ ャ否 ャ ヲ調 査 シ随 時 報 告 ス ル コト

○同上 ノ件

大正十四年十二月十二日刑事第七、) (五 六四号検事正宛刑事局長通牒

三、 日本共産党及日本共産主義青年同盟 ノ外廓運動

控訴院長検事長協議会席 上ニ於 ケ ル協議事項 ハ之 ヲ覚書 トシテ去 ヨリ示達無之場合 ト雖モ報告相成度為念申進候也

イ、 日本労働組合全国協議会

月二十六日及送付置候処右覚書記載 ノ左記事項 ニ付テ ハ特 ニ検事長 記

ロ、 プ ロ レタ リ ア文 化団 体

寧 ヲ損 傷 スル ニ至 ラ ム コト ヲ恐 ル職 ニ裁 判 検 察 ノ任 ニ在 ル者 ハ克 ク

○思想係検事事務分掌規準

昭和三年 五月 二十六日秘第九五 一 (号 検事長、検事正宛刑事局長通牒)

失 ハズ適 正 ノ処 置 ヲ執 リ テ万 遺 漏 ナキ ヲ期 スベ シ

現 代思 想 ノ攻 究 ニ黽 メ常 ニ其 ノ傾 向帰 趨 ニ留 意 シ事 ニ当 リ テ機宜 ヲ

等

ハ、 日 本反 帝 同 盟 二、 救 援会  第 三 、国 家 主義 乃 至 国 家 社会 主 義 運動

依 リ執 務 為 致候 様 御 取 計 相 成 度 尚特 ニ其 ノ配 置 ヲ為 サザ ル検 事 局 ニ

来 ル六 月 一日 ヨリ思 想 係 検 事 ヲ配置 致 候 ニ付 テ ハ概 ネ別紙 規 準 ニ

第 五 、労 働 運動

サ ルル様 御 配慮 相 成 度 侯

於 テ モ適 当 ノ検 事 ヲ シ テ本 規 準 ノ趣 旨 ニ従 ヒ平 素 執 務 上 ノ注 意 ヲ促

第 四 、無 産 政 党 運 動

第 六 、農 民運 動

則

左傾 思 想 運 動 ニ基 ク犯罪 殊 ニ治 安 維持 法 及 治 安警 察 法 爆 発物

(2︶

出版犯罪 ( 朝 憲紊 乱 、 秩 序 壊 乱 、 尊厳 冒涜 、思 想 ニ基 ク風俗

刑 法 第 二 編 第 一章 第 二章 ノ犯 罪

反 動 運 動 ニ基 ク犯罪 及反 動 団 体員 ノ犯 罪 ( 殊 に暴 力 行 為 等処

(8)

( 7)

( 6)

( 5)

騒擾罪

水 平 運 動 ニ基 ク犯 罪 及 水 平 社員 ノ犯 罪

農 民 運 動竝 小作 争 議 ニ基 ク犯罪

労 働 運 動 竝 労 働争 議 ニ基 ク犯 罪

罰 ニ関 スル法 律 ノ違 反 ノ罪 )

(4 )

壊乱 )

(3)

取締 罰則 等 ノ犯 罪

(1)

シタ ル普 通犯 罪 事 件 ヲ担 任 ス

一、 思 想係 検 事 ハ主 ト シ テ左 ノ思 想 犯 事 件竝 ニ詭激 思 想 懐 抱者 ノ犯

第 一 通

思 想 係 検事 ノ事 務 分 掌 規準

( 別紙)

第 七、 其 ノ他 ノ思 想 運動 一、 水 平 運 動 二、 学 生 関 係 ノ運動 三、 婦 人 運 動 四、 青 年 運 動 五、 民 族 運 動 六 、 無 政 府 主義 運動 七 、 其 ノ他 各種 小団 体 ノ運動 八、 新 聞 紙其 ノ他 ノ出 版 状 況

○思想問題 ニ関 スル件

大正十五年二月十三日秘第 一 ) (八 号裁判所検事局宛大臣訓令

輓 近世 運 ノ変 遷 ニ伴 ヒ各 種詭 激 ノ思 想 横 溢 シ テ社 会 ノ不 安 ヲ醸 成 シ延 キ テ国 家 ノ福 祉 ヲ阻 害 シ為 ニ司 法 官 憲 ノ措 置 ヲ必要 ト ス ル事 案 ノ続 出 ス ル ハ深 憂 ニ堪 ヘザ ル所 ナ リ今 ニシ テ之 カ対 策 ヲ講 ズ ル ニ非 ザ レ ハ竟 ニ国 家 百 年 ノ禍 根 ヲ遺 ス ニ至 ルベ シ殊 ニ司 法 上 ノ措 置 ニ シ テ此 ノ種思 想 ノ来 由 ヲ省察 セズ其 ノ趨勢 ヲ審 慮 セズ シテ若 シ其 ノ方 途 ヲ誤 ルガ如 キ ア ラバ却 テ思 想 ノ反撥 悪 化 ヲ誘 致 シ益 国 家 社 会 ノ康

動 機 及 程 度 竝 ニ思 想 上 ノ諸般 環 境 ヲ明 カ ニ シ事 件 ノ適 切 ナ ル処 理 ニ

読 精 査 スル ハ勿論 平 素 ノ 一般 研 究 ノ結 果 ニ基 キ犯 人 ノ思 想 的 悪化 ノ

(ハ) 、思 想悪 化 ノ経 路 及直 接 動 機

( ) ロ、 教 育職 業 等 ノ経 歴

(イ) 、 精 神状 態

甲  個 人方 面

付 違 算 ナ キ ヲ期 スベ キ モノ ト ス

思 想 犯 事 件 ヲ処 理 スル ニ ハ特 ニ其 ノ事件 ニ関 ス ル押 収 書 類 等 ヲ熟

二 、 思 想 係検 事 ハ常 ニ思想 問 題 ノ基 本観念 特 ニ本 邦 ノ国 体 及固 有 ノ

以上 ノ調 査 ヲ為 ス ニ ハ主 ト シ テ刑 務 所 収容 中 ノ思 想 犯 人 ニ直 接 シ

(ホ) 、其 ノ他個 性 調 査 上 参 考 ト為 ルベ キ事 項

(ニ) 、 家 庭 ノ資 産 、 職 業 、 犯罪 経 歴 等

又 ハ裁 判 記 録 ﹁思 想 研 究 資 料 ﹂等 ニ依 リ個 別的 研 究 ヲ為 ス コト ヲ

道 義 観 念 ヲ明 カ ニシ社 会科 学 プ ロ レタリ ア芸 術 等 ヲ攻 究 シ併 セテ 精 神 病 理 、 刑事 政 策 学 等 ヲ研究 シテ思 想 犯 ノ原 因 ヲ詳 カ ニシ根 本

告

控 訴 院思 想 係 検 事 ハ第 一項 ノ事 務 ヲ担任 ス ル外 尚 左 ノ事 項 ノ処 理

第 三  控 訴 院 思 想 係 検事

ニ報 告 シ猶 関 係 庁 ニ配 布 ス ル コト

調 査 ノ結 果 ニ付 統 計 及 摘要 ヲ作 成 シ之 ヲ印 刷 ニ付 シテ所 属 検事 長

四、 報

(ヘ) 、其 ノ他 思 想 犯 ニ関係 ア ル諸 般 施 設 ノ実 況 視察

(ホ) 、 社会 事 業 機 関

(ニ) 、 教育 及 宗 教 機 関

(ハ) 、 警 察 検 察 裁判 行 刑感 化 機 関

(ロ) 、 出 版 機 関 及娯 楽 機 関

(イ) 、 工業 、 鉱 業其 他 産 業 機 関

管 内 ニ於 ケ ル

乙  社 会 方 面

要 ス

的 ニ予 防 ノ対策 ヲ立 ツ ル コト ニ努 力 スル ヲ要 ス 三 、思 想 係 検 事 ハ思 想 犯 罪 ノ 一般 予防 ノ為 学 校、 青 年 訓 練 所 、 軍 人 会処 女会 教 化 団 (以上 教 育 方 面 )刑 務 所 、 矯 正 院、 感 化院 、 司法 保護 団 体 (以 上 改善 方 面 ) ト ノ 連絡 協 調 ヲ計 ル コト ニ注 意 スベ キ モ ノト ス 四 、 思 想係 検 事 ハ参 考 ノ書 籍 雑 誌 、 新 聞紙 ノ備 付 及 整 理 ヲ為 スベ キ モ ノト ス 第 二  地方 裁 判所 思 想 係 検 事 地 方 裁 判 所検 事 局 ニ於 ケ ル思 想 係 検 事 ハ第 一項 ニ依 リ事 件 ヲ担 任

一、 左 傾 的 及 反動 的詭 激思 想 ヲ懐 抱 スル個 人 竝団 体 ノ分 布 及 活動 状

シ且 基 本 観念 ノ 研究 ヲ為 ス外 左 ノ事 項 ノ処 理 ニ当 ル

況 ノ調 査 二、 管 内 ニ於 ケ ル各 種 ノ争 議 団 結 及 解 放 運動 等 ニ シテ将 来 事 犯 ノ惹 起 ス ルノ虞 ア ル モノ ノ 調査

一、 特 ニ思想 係 検 事 ヲ置 カザ ル地方 裁 判所 検 事 局 ニ於 ケ ル思 想 犯事

ニ当 ル

以 上 一及 二 ノ調 査 ヲ為 ス ニ ハ庁 府 県 特別 高 等 課 、 憲 兵 隊 ト ノ連 絡

三、 思 想 犯 ノ原 因 ノ調 査

協調 ヲ保 チ諸 種 ノ情 報 ヲ蒐 集 ス ル コト ヲ要 ス

件 ノ処 理 上 必要 ア ルト キ ハ検 事 長 ノ命 ニ依 リ其 ノ事 務 ヲ担 任 スル

新 聞 記事 掲 載 差 止 ハ主 ト シ テ当該 事 項 ノ新 聞紙 掲 載 ヲ事 前 ニ防 止

ナ ク通達 シタ ル カ為 却 テ軍事 外 交 上 ノ機 密事 項 ヲ漏 洩 シ捜 査 上 ノ支

スル趣旨 ニ有 之 侯 処 従 来 差 止事 項 ヲ各 新 聞 通 信 社 ニ対 シ 一律 ニ漏 レ

二 、 管内 思 想関 係 事 務 ノ連 絡統 一

コト

三 、管 内 思 想 係 検 事 ノ指 導 ( 時 々管 内 思 想係 検 事 ヲ検 事 長 ノ許 ニ召

(一)

無保 証新 聞 紙

治安 維 持 法 違 反 被 疑 事件 ニ関 ス ル記 事 差 止 ニ付 テ ハ直 接 間 接 当 該事 件 ニ関 係 ア リト 認 メ ラ ル ル新 聞 紙

物価 表 又 ハ相 場 表 ノ如 キ モノ ノ ミ ヲ掲 載 ス ル新 聞 紙 (三)

軍事 、 外 交 上 ノ記事 差 止 ニ付 テ ハ外 字新 聞 紙 又 ハ外国 系 新 聞

( 五) 其 ノ他 管 轄 地 方官 庁 ニ於 テ差 止 通 牒 ノ 必要 ナ シト 認 メ タ ル新 聞 紙 (例 ヘ ハ発 行部 数 僅 少 ナ ル新 聞 紙 又 ハ芸 術 、娯 楽 等 ノ趣 味

紙 但 シ差 止 通 牒 ノ際 当 局 ヨリ指 示 スル場 合 ニ限 ル

(四)

(二 )

記

相成度

ニ依 リ各 項 別 ニ御 報 告 相 煩 度 尚 異 動 ア リタ ル際 ハ其 ノ都 度 御 申報

追 而 第 二 項 以 下 ニ該当 ス ル通 達 省 略 ノ新 聞紙 決 定 ノ上 ハ別 記 様 式

ノ 通達 ヲ省 略 ス ル様 御取 計 相 成 度 依 命 此 段 及 通牒 候

ハ将 来 新 聞 記 事掲 載 差 止 ハ概 ネ 左記 各 項 該 当 ノ新 聞 紙 ニ対 シテ ハ其

障 ヲ生 シ又 ハ之 ヲ逆 用 シ テ記事 材料 ニ供 スル等 ノ弊 ア リ タ ル ニ付 テ

集 シ協 議 打 合 ヲ為 サ シ ム ル等 ) 四、 管 内 報 告書 類 ノ摘 要 編 纂 告

調 査 ノ結 果 ニ付 統 計 及 摘 要 ヲ作 成 シ之 ヲ印 刷 ニ付 シテ司 法 大 臣 及

五、 報

検 事 総 長 ニ報告 シ管 内 検 事 局 及 関係 各 庁 ニ配 布 ス ル コト

○ 新 聞 記事 差 止通 告 ノ範 囲 ニ関 ス ル件 通 牒 昭和九年 六月 二十八日秘第 一三 ( 八四号検事正宛刑事局長通牒 )

捜 査 又 ハ予 審 中 ノ事 件 ニ関 ス ル新 聞 記 事差 止 手続 ハ従 来 明 治 四十 二年 六 月 二十 五 日 民 刑秘 第 一六 四号 司 法 大 臣訓 令 ニ基 キ新 聞 紙 法 ニ 依 ル新 聞 通 信 雑 誌 ニ対 シ 一律 ニ差 止 手続 ヲ為 シ居 ラ ル ル コト ト 被存 候 得 共 無 保 証 新 聞 竝 ニ有 保 証新 聞 紙 中其 ノ新 聞 紙 ノ種 類 、性 質 等 ニ 徴 シ差 止 事 項 ヲ掲 載 ス ル虞 ナキ コト明確 ナリ ト認 メ ラ ル ル モ ノ ニ付 テ ハ差 止 手 続 ヲ為 ス コト ニ因 リ却 テ其 ノ事 件 ヲ知 ラ シ ム ル結 果 ト モ

明治四十二年 六月 二十五日民刑秘第 一 ) ( 参 照 ) (六 四号検事司法警察官宛司法大臣訓令

( 様 式 省 略)

的 新 聞 紙 等 ノ如 シ)

ノ種 ノ モ ノ ニ対 シテ ハ差 止 事 項 ノ内 容 ヲ斟 酌 シ テ適 宜御 処 置 相 成 候

本年五月六日民刑秘第六六号訓令新聞紙掲載方差止手続左 ノ通 リ之

相 成 且差 止 手 続 ノ敏 活 ヲ期 スル上 ニ モ支 障 有 之 様 被 思料 候 条 爾 今 此

様 致 度 尚 他 庁 ノ嘱 託 ニ依 リ差 止 ヲ為 ス場 合 ニ於 テ モ嘱託 庁 ヨリ特 ニ

第 一乃至第四省略

ヲ補追 ス

申 出 ナ キ限 リ右 ニ準 シテ御 処 置相 成 候 様 致 度 候 )

新聞記事差止通達ノ範 囲制限 ニ関 スル件

昭和九年 六月十二日警保局図発甲第 三号警 (参 考) (視 総監各庁府県長官宛内務省警保局長通牒

第 五、 同 一地 方 ニ於 テ発 行 ス ル数 種 ノ 新 聞紙 ア ルト キ ハ特 別 ノ事 情 ア ル場 合 ノ外 各 新 聞 紙 ニ対 シ同 一ノ取扱 ヲ為 ス ヘシ 右訓令 ス

(大正十 四年十 一月廿四日刑事第七、一八○号 検事総長、検事長、検 事正宛刑事局 長 通 牒)

○ 露 西 亜 関 係 邦人 主 義 者 ノ取締 方 ニ関 スル件 ( 一)

)

首題 ノ件 ニ付内務省警保局長 ヨリ別紙甲号 ノ通照会有之乙号 ノ通 致 回答候条御了知相成度 十四年十 一月七日保発乙第 四三 号 (大一正 号刑事局長宛内務省警保局長照会

(別紙) 甲

本 邦 共 産 党 関係 一派 ト露 西 亜 共産 党 ト ノ聯 絡 関 係 ハ次 第 ニ濃 密 ト ナ リ彼 等 ノ来 柱協 議 亦 漸 ク頻 繁 ナ ラ ムト スル ノ状 有 之彼 等 一派 ノ計

テ本 邦 ニ対 ス ル主 義 ノ宣 伝 乃 至 実行 ニ関 ス ル協 議 ア リ タ ル事 実

判 明 シ タ ルト キ ハ被 疑 者 カ直接 当該 協 議 ニ参 与 シタ ルト否 ト ニ

拘 ハラズ第 二条 該 当 者 ト認 メ事 件 ヲ検 事 ニ送 致 ス ル コト

ケ タ ル事 実判 明 シタ ルト キ ハ其 ノ金 品 ノ多 寡 及授 受 ニ関 ス ル名

(二) 被 疑者 カ露 国 共 産 党 関 係 者 ヨリ金 銭 其 他財 産 上 ノ供 与 ヲ受

義 ノ如 何 ヲ問 ハズ 之 ヲ供 与 シ タ ル機 関 又 ハ個 人 ノ平 素 ノ行動 及

目的 ヲ推 測 シ得 ル場 合 ハ第 五 条 該当 者 ト認 メ前 号同 様 ノ手 続 ヲ

之 ヲ受 ケ タ ル者 ノ入 露 ノ目 的其 ノ他 平 素 ノ行動 等 ニ依 リ授受 ノ

執 ル コト

(三) 前 二号 記 載 ノ事 実判 明 セザ ルト キ ト雖 モ露 国 ニ於 ケ ル各 種

ヲ為 ス コト

会 議 ノ議 事 録 其 ノ他 ノ物 的 証拠 ノ蒐 集 ニ努 メ然 ル後 事 件 ノ結 果

)

三、 検 事 ニ於 テ ハ本 件 ニ関 ス ル事 件 ハ多 少 物的 証拠 ニ欠 ク ルト コ ロ

ア ルモ可 成起 訴 ノ手 続 ヲ執 ル コト

画策 動 ニ対 シ テ ハ 一段 ノ注 意 警 戒 ヲ要 ス ル義 ト被 存候 ニ付 テ ハ将 来 露 西 亜 関 係 本 邦 人主 義 者 ニ対 シ テ ハ大要 左 記 ノ方 針 ニ依 リ之 カ取 締

大正十 四年十 一月十八日刑事第 七、 〇七 乙 号 (五 号内務省警保局長宛刑事局 長 同答

左 ノ通 ニ有 之 候

本 月 七 日 付 保発 第 四三 一号 御 照 会 首題 ノ件 ニ対 ス ル当 省 ノ意 見 ハ

ヲ励 行 致度 存 候

記

右 ニ関 シ貴 省 ノ御意 見 至 急 拝 承 致 度 此 段 及御 照 会 候 也

ハ其 ノ他 ノ者 ニシテ露 国 ニ滞 在 久 シキ ニ渉 リ帰来 シ タ ル場 合 ニ

邦 人 ノ共 産 主義 者 又 ハ共 産 主 義 系 労働 組合 員 等 ニシテ入 露 シ若

( ) 一、 第 一項 ニ付 テ ハ

於 テ其 ノ事 実 以 外他 ニ何 等 犯 罪 ア リト思 料 スル ニ足 ル状 況 ナ キ

ノ 他 ノ者 ニシ テ露 国滞 在 久 シキ ニ渉 リ帰来 シタ ル者 ニ対 シ テ ハ 一

一、 邦 人共 産 主 義 者 竝共 産 主 義 系 労 働 組 合員 等 ニ シテ入 露 シ又 ハ其

ハ検 事 ニ於 テ厳 密 ナ ル取 調 ヲ行 フ コト

応 治安 維 持 法 第 二 条 又 ハ第 五 条 該 当 ノ嫌 疑者 ト シ テ司 法 警 察 官 又

ズ 苟 モ治 安 維 持 法 ニ該 当 ス ル犯罪 ノ嫌 疑 ア リ ト認 メ得 ベ キ証 左

ヲ開始 ス ル コト ハ穏 当 ナ ラザ ル モ常 ニ其 ノ言 動 等 ニ注視 ヲ怠 ラ

ニ不拘 検 事 等 ニ於 テ之 ヲ召喚 シ又 ハ関係 人 ヲ取 調 ブ ル等 ノ手 続

ト

二 、 司 法警 察 官 ニ於 テ取 調 ヲ為 シタ ル事 件 ハ左記 ニ依 リ処 理 スル コ

(一) 被 疑 者 カ露 国 ニ於 ケ ル何 等 カ ノ会 議 ニ出 席 シ且其 会 議 ニ於

ア ル場 合 ニ於 テ ハ厳 密 ナ ル捜 査 ニ著 手 ス ルヲ相 当 ト ス (二) 、 第 二 項 ノ 一及 二 ニ付 テ ハ 本 項 ノ場 合 ニ於 テ治 安 維 持法 第 二条 及 第 五 条 ノ犯罪 ノ嫌 疑 ア ル モ ノト 認 メ得 ベ キ ヲ以 テ捜 査 ニ著 手 シ得 ベ キ モノ ト認 ム 第 二 項 ノ三 ニ付 テ ハ異 議 無 之 ( 三) 、 第 三 項 ニ付 テ ハ 物 的 証拠 ヲ欠 如 スル場 合 ト雖 モ他 ノ証憑 (人的 証 拠 等 ) ニ拠 リ 犯 罪 ノ成 立 セ リ ト認 メ得 ベ キ ト キ ハ可 成 検事 ヲ シテ起 訴 ノ手 続 ヲ執 ラ シ ム ル コト ニ異議 ナキ モ犯 罪 成 立 ノ 心 証 ヲ得 ル能 ハザ ル 場 合 ニ於 テ濫 リ ニ起 訴 ノ 手続 ヲ執 ル ガ如 キ ハ不当 ナ ルヲ以 テ不 起 訴処 分 に付 スルノ外 ナ シ

記

層御留意相成取締上万遺算 ナキヲ期 セラ レ候様致度

有 シ入露 セント スル者 アルトキ ハ大正十四年六月二日附秘第 二六〇号内

一、邦人主義者労働組合員其 ノ他 ノ者 ニシテ露国共産党 ニ何等 カノ関係 ヲ

務次官通牒 ﹁ 過激宣伝取締内規﹂第 七条 ニ依 リ適正妥当 ナル方法 ヲ以テ

其 ノ渡航ヲ阻 止 スルノ途 アル場合 ハ之 ヲ阻止 スルコト

滞在久シキ ニ渉 リ帰来 シタ ル者 ニ対シテ ハ特 ニ其ノ言動 ヲ注視 シ苟 モ治

二、渡航阻止 ノ途 ナク入露 シタ ル者 アルトキ ハ其 ノ帰来 ヲ待 チ其 ノ他露国

安維持法 ニ該当 スル犯罪 ノ嫌疑 アリト認 メ得ベキ証左アル場合 ニ於テ ハ

遅滞ナク厳密 ナル捜査 ニ着手 スルコト

本邦 ニ対 スル主義 ノ宣伝乃至実行 ニ関 スル協議 アリタル事実判明 シタル

三、邦人主義者 ニシテ露国 ニ於 ケ ル何等 カノ会議 ニ出席 シ且其会議 ニ於テ

トキ ハ本人 ガ直接当該協議 ニ参 与シタルト否ト ニ拘 ハラズ治安維持法第

四、露 国共産党関係者 ヨリ金銭其 他財産上 ノ供与 ヲ受 ケタル事実 アル者 ニ

二条 ノ犯罪 ノ嫌疑者 ト認メ捜査 ノ上事件 ヲ検事 ニ送致 ノ手続 ヲ為 スコト

首題 ノ件曩 ニ内務省警保 局長 ヨリノ照会竝 ニ之 ニ対 スル回答写供

ル機関又 ハ個人 ノ平素ノ行動及之 ヲ受ケタ ル者ノ入露 ノ目的其ノ他平素

対 シテ ハ其金品 ノ多寡及授受 ニ関 スル名義 ノ如何 ヲ問 ハズ之 ヲ供与 シタ

大正十四年十二月十二日刑事第七、六九四号 ) (二) (検 事総長、検事長、検事 正宛刑事局 長 通 牒

貴覧置候処今 回警保局長 ヨリ更 ニ庁府県長官 ヘ通牒 セ シ旨別紙写ノ

(前略 )

方針ノ件

和六年 七月思想係検事事務打合会協議事項同年八月 (昭 二十六日秘第 五九 二号検事長、検事正宛 刑事局長通牒

)

○ 日 本 共産 党 解 党 派 被 告 人 ニ対 ス ル量 刑 竝 ニ同 派 ノ結 社 組 織 ト検 察

コト

ナク継続被疑者 ノ言動等 ニ注意 ヲ払 ヒツツ物 的人的証拠 ノ蒐 集 ニ努 ムル

ニ捜査 ノ際犯罪成立 ノ証拠得 ザリシ事件ト雖 モ之 ヲ其 ノ儘放抛 スルコト

容 中本邦竝 ニ本邦人 ニ関 スル記事 ヲ精査 シ置 キ捜査上 ノ用 ニ供 スルト共

五、本件 ニ関 シテ ハ平素努メテ露国 ニ於ケ ル各種 ノ記録類 ヲ蒐集 シ其 ノ内

ノ嫌疑者 ト認 メ前項同様ノ手続 ヲ為 ス コト

ノ行動等 ニヨリ授受 ノ目的 ヲ推測 シ得 ル場合 ハ治安維持法第五条 ノ犯罪

通回答有之候条御了知相成度候 大正十四年十二月五日警秘第 一、〇五 (別紙 ) (○ 号刑事局長宛内務省警保局 長 申 進︶

首題 ノ件 ニ関 シ本年十 一月十 八日附刑事第七、〇七五号 ヲ以 テ貴 省 ノ御意見御 回報有之候 ニ付今般別紙 ノ通 リ庁府 県長官 ニ通牒致候 条此段申進候 大正十四年十二月五日警 秘 第 一、〇五 ) (別紙 ) (○ 号庁府県長官宛内務省警保局長通牒

近時本邦共産党関係者竝共産主義系労働組合ト露 国共産党 トノ聯絡関係 候是等露西亜関係邦人主義者 ノ視察取締方 ニ関 シテ ハ屡次通牒 ノ次第 モ有

次第 ニ濃密 ノ度 ヲ加 ヘ彼 我ノ来往漸 ク繁 カラ ムト スルノ傾向有之哉 ニ被 認 之細心周到 ナル警戒ト機宜ノ措置 ヲ講 ゼラ レ居候将来 ハ左記 ノ点 ニ関 シ 一

セザ ル儘 出 獄 ス ル者 漸 次 続出 シ党 員 ト シテ尚 ホ公 然 社 会 ニ存在 ス

目 下受 刑 中 ノ 日本 共産 党 員 ニ シテ近 ク刑 ノ執 行 ヲ終 ヘ同 党 ヲ脱 退

ル ニ於 テ ハ甚 シク公 安 ヲ害 ス ル虞 ア ル ヲ以 テ之 カ対 策 ヲ如 何 ニ ス

第 一乃 至 第 七 ノ (一) ( 略)

解 党派 ノ被 告 人 ニ対 ス ル量 刑 竝将 来 同 派 カ結 社 ヲ組 織 シ

同 党 ノ為 活 動 ヲ為 サ ザ ルト キ ハ之 ニ治 安 維 持 法 ヲ適 用 シテ処 罰 ス

刑 ノ執 行 終 了後 依 然 日本 共 産 党 ヲ脱 退 セザ ル者 ニ シテ釈 放 後 何等

議

可 キヤ

治 安 維 持 法 違 反 被 告 人 ニ シテ 日本 共 産 党員 中 所 謂 解 党 派 と称 シ同

ル コト ヲ得 ザ ル可 ク若 シ同 党 ノ為活 動 ヲ為 シ タ ルト キ ハ同 法 第 一

協

第七 (二) タ ル場 合 ニ於 テ之 ニ対 ス ル検 察 ノ方針 如 何 (東 京 )

党 ノ主 義 綱 領 ヲ批 判 シ我 君主 制 ヲ是 認 シ社会 民主 主 義 ニ方 向 ヲ転

条 所定 ノ目 的 遂 行 罪 ニ問 擬 スベ キ モノ ト思 料 スル モ本 問 ニ付 テ ハ

提 案 理由

ラズ将 来 同 派 カ結 社 ヲ組 織 シタ ル場 合 ニ於 テ其 ノ検 察 方 針 ヲ如 何

第九 ( 略)

更 ニ慎 重 ナ ル研 究 ヲ要 ス

議

ニス可 キ ヤ

所 謂 解党 派 ニ属 スル被 告 人中 真 ニ方 向 ヲ転 換 シ改悛 ノ情 顕 著 ナ ル

○ 詭 激思 想 懐 抱 者 拘 禁 ニ際 シ刑 務 所 ニ其 ノ旨 通 知方 ノ件

大正十五年九月三十日刑事第七、六三六号検事総 ( 長 、検事長、検事正宛刑那局長、行刑局長 通 牒

)

換 シタ ル者 ア リ之 ニ対 ス ル量 刑 ハ相 当 考 慮 スベ キ モノ ナ ルノ ミ ナ

協

者 ニ対 シ テ ハ科 刑 ヲ軽 減 シ或 ハ刑 執 行 猶 予 ノ寛 典 ヲ与 フ ルモ可 ナ リ而 シ テ其 ノ結 社 ヲ組 織 シ タ ル場 合 ニ於 ケ ル検察 方 針 ハ更 ニ其 ノ

今 回 行刑 局長 ヨリ刑 務 所 長 少 年刑務 所 長 ニ対 シ注 意 ヲ要 スベ キ詭

激 思 想 懐抱 者 ヲ収 容 ノ都 度 報 告 スベ キ旨 通牒 致候 就 テ ハ従 来右 ノ如

主 義 綱 領 ヲ探 究 シタ ル上之 ヲ決 定 ス可 キ モノ ト ス 第 八、 第 九 (略)

キ者 ヲ拘 禁 ス ル ニ際 シ貴 官 ヨ リ其 都 度 適 当 ノ 方法 ニ ヨリ刑 務 所長 ニ

層 遺 漏無 キ様 御 留 意 相 成 度 此 段 及依 命 通 牒 候 也

其 趣 ヲ了 知 セ シム ル様 御 取 計相 成 居 候 事 ト思 料 被 致 候 モ爾 今 尚 ホ 一

○ 日本 共 産 党 組織 者 又 ハ加 入 者 其 ノ刑 ノ執 行 終 了後 尚 脱 退 セ ザ ルト 昭和 六年七月思想係検事事務打合会協議事項同年 八月 キ ノ処 置 ノ件  ( 二十 六日秘第五九二号検事長、検事正宛刑事局長通牒︶

)

( 前略)

○ 思 想 犯 人拘 禁 ニ際 シ刑 務 所 ニ通報 方 ノ件

昭和 三年 二月十七日行甲第 二五八 ( 号 検事正宛行刑局長刑事局長通牒

第 一乃至 第 七 ( 略) 第 八、 日本 共 産 党 ヲ組 織 シ又 ハ之 ニ加 入 シタ ル為 処 罰 ヲ受 ケ タ ル者

ニ於 テ ハ思 想 犯 人 ナ ル コト ヲ知 ルノ機 会 至 ツ テ少 ナ ク之 ヲ知 ラズ シ

浸 染 ノ程 度 ニ ヨリ離 隔 或 ハ其 他 適 当 ナ ル措 置 ヲ講 ジ居 リ候 処 刑務 所

思 想 犯 人 ニ関 ス ル刑 務 所 ノ処 遇 ニ付 テ ハ厳 密 ナ ル注 意 ヲ加 ヘ思 想

如何 ( 東京)

其 ノ刑 ノ執 行 ヲ終 リ タ ル後 依 然 脱 退 セザ ルト キ ハ之 ニ対 ス ル処 罰

提 案 理由

テ雑 居 拘 禁 ニ附 シ中 途 ニ シテ言 動 不穏 ノ節 ヨリ始 メ テ思 想 犯人 ナ ル コト ヲ知 リ得 ル場 合 モ往 々有 之 斯 ク テ ハ思 想 犯人 ニ関 ス ル処遇 上遺 憾 少 ナ カ ラズ ト 被思 料 候就 テ ハ右 思 想 犯 人 ニ関 ス ル行 刑 資 料 及刑 事 被 告 人 ト シ テ ノ処遇 上 参考ト ナ ルベ キ資料 ノ通報 方 ニ付 テ ハ大 正 十

出 、 密 書 伝達 等 ノ事 故 発 生 ノ防 止 ニ努 ム ル コト

一、 新 入 所 、出 廷、 居 房 配 置 等 ニ付 テ ハ検 事 局 ト協 議 ヲ遂 ケ事 件審 理 ニ支 障 ナ キ ヲ期 ス ル コト

○詭 激 思 想 懐 抱 者拘 禁 ニ際 シ刑 務 所 ニ通報 励 行 方 ノ件

処 今般 別紙 刑 務 所 長 宛 行刑 局長 ノ通 牒 ノ如 キ事 実 発 見 致候 右 ハ刑 務

標記 収 容 者 ニ対 ス ル刑 務 所 ノ処 遇 ニ付 テ ハ夫 々注 意 ヲ為 シ来 リ候

昭和三年 六月十四日行甲第 一、〇二九 号 検 事 ( 総長、検事長、検事正宛行刑刑事両局長通牒

司 法官 会 同 席 上 ニ於 ケ ル司 法 次 官 ノ注 意 ノ次 第 モ有 之 拘 禁 ノ都 度 貴

五年 九 月 刑 事 第 七 、六 三 六 号刑 事 行 刑 両 局 長 ノ依 命 通 牒 及 昭 和 二 年

官 ヨリ 通報 方 御 励 行 相 成居 ル コトト 被 思 料 候ヘ ド モ尚 往 々遺 憾 ノ点

ナ ル モ検 事 局 ヨリ此 種 犯 人 ナ ル コト ノ通 知 ナカ リ シ為 メ刑 務 所 ニ於

所 ニ於 ケ ル戒 護 ノ用意 周到 ナ ラザ リ シ ニ因 ルベ キ モノ ナ ル コト勿 論

)

テ ハ之 ヲ覚 知 セズ 入 所 中 ノ行 状 善 良 ナリ シ故 ヲ 以 テ工場 ニ出 業 セ シ

)

モ有之 ヤ ニ聞 及 候 ニ付 将来 ハ 一層 遺 漏 ナ キ様 御留 意 相 成 度

メ遂 ニ如 斯 失 態 ヲ生 ズ ル ニ至 リ シ モ ノ ニ シ テ甚 ダ 遺 憾 ノ次 第 ニ有 之

昭和 三年四月行甲第 六 (四 〇号 行刑局長通牒

特種 収 容者 ノ処 遇 ニ関 シ テ ル屡 々通 牒 致 置 候 処 目 下治 安 維 持 法 違

○特種収容者拘禁 ニ関 スル件

反 事件 ノ検挙 続 々行 ハレ収 容 サ ル ル モノ 日 ニ多 キ ヲ加 ル ニ至 リ之カ

ト ナ ルベ キ資 料 ノ通 報 方 ニ付 テ ハ将 来 一層 御 励行 相 成 刑務 所 ト ノ聯

候 就 テ ハ此種 犯 人 ニ対 ス ル行 刑 資 料 及 刑 事 被 告人 ト シ テ所 遇 上 参 考

絡 ヲ保 チ再 ビ斯 ル失 態 ノ原 因 ヲ醸 スガ コト ナ キ様 特 ニ御 留意 相 成 度

拘 禁 ニ関 シ テ ハ周到 ナ ル注 意 ヲ払 ヒ万違 算 ナ キ ヲ期 シ居 ラ レ侯 コト

レ ハ之 ニ乗 セ ラ ル ルノ虞 ナ シ ト セ ス故 ニ職 員 一同 特 ニ之 カ戒 護 ノ衝

ト ハ存 候ヘ ト モ此 ノ種 収 容 者 ノ行動 ハ時 ニ隠 約 ノ間 ニ行 ハレ動 モ ス

重 ネ テ依 命 及 通牒 候 也

想 犯人 拘 禁 ニ関 ス ル件 )

一、 昭和 三 年 二 月十 七 日行 甲 第 二 五 八号 行 刑 、刑 事 両 局 長 通牒 (思

牒 (詭激 思 想 懐抱 者 収 容 ニ関 ス ル件 )

一、 大 正 十 五年 九 月 三 十 日 刑 事第 七 、 六 三 六 号 行刑 、 刑 事 両 局 長 通

記

ニ当 ル モノ ハ細 密 ナ ル注 意 ヲ為 スヲ要 ス ヘク ト存 候 条 左 記事 項 特 ニ 御留意相成度候 追 テ新 入 所 ア リ タ ルト キ ハ直 ニ報 告 相成 度 候 但 シ個 人 別 ノ報 告 書 ハ遅滞 セサ ル限 リ後 送 シ差 支 無之 候 記

ハ被思料候ヘド モ今般某刑務所 ニ於 テ印刷 工場 ︵第 一工場) ニ就業

モ有之各所共周到 ナル注意 ヲ加 ヘ夫 々万全 ノ策 ヲ講 ゼラ レ居候儀ト

)

(別紙 )

昭和三年 六月十四日行甲第 一、 〇 九 一号 ( 刑務所長、少年刑務所長宛行刑局長通牒

標 記収容者 ノ戒護取締 ニ関 シテ ハ屡 々反覆注意 ヲ喚起 シタル次第

一、担 当、 護 送等 ニ従 事 ス ル モノ ハ成 ルヘ ク相 当 年 齢 に達 シ思 想 堅

コト

実 ニシ テ思 想 問 題 ニ理 解 ア ル優 秀 ナ ル モノ ヲ以 テ之 ニ当 ラ シ ム ル

検 、 運 動 、 入浴 、 接 見 、信 書 、差 入等 ニ ハ特ニ 注意 ヲ為 シ物 品 携

一、 隔 離 ヲ厳 ニ シ ︵事 情 ノ許 ス限 リ居 房 ヲ隣接 セ シメ ス) 衣 体 ノ捜

セ シ メ居 リ タ ル受 刑 者 ニ シテ無 政 府 主義 ノ思 想 ヲ抱 懐 ス ル モノ三 名

セ ル思想 ヲ宣 伝 シ之 ヲ シテ詭 激 思 想 化 セ シメ ント 企 ツ ル モノ モ可 有

遺 漏 ナキ様 努 メ ラ レ度 尚之 等 収 容 者 中刑 務 所 職 員 ニ対 シ自 己 ノ懐 抱

レ度 又作 業 担 当 者 看 守 竝交 替 看 守 ニ付 テ ハ成 可 作 業 時 間 中 ハ固 定 配

之 ト被 思料 候 ニ付 部 下 職員 ノ監 督 教 養 ニ付 テ モ充 分 ノ注意 ヲ加 ヘラ

思 想 ノ点 ニ関 スル刑 務所 ノ不 知 ニ乗 ジ何 レ モ行 状 善 良 ヲ装 ヒ戒護 担 当 者 ノ信 用 ヲ獲 得 シ テ交 談 ノ機 会 ヲ作 為 ス ルト共 ニ其 ノ交 替 時 間 ヲ

ント 企 テ客 月 下 旬 ヨリ本 月上 旬 ニ渉 リ印 刷 工場 ニ於 テ別 紙 添 附 (略 )

利 用 シ茲 ニ共 謀 ノ上 不隠 文 書 ヲ印 刷頒 布 シテ刑 務 所 ノ威 信 ヲ失 墜 セ

ハ予 メ教 務 職 員 ノ意 見 ヲ モ徴 シ苟 モ収容 者 ニ乗 ゼ ラ ル ル コト ナ キ様

置 ト シ交 替 セ シ メザ ル方針 ヲ執 リ殊 ニ作 業 ノ種 類 ヲ定 ムルニ 当 リ テ

特 ニ御 留意 相 成 度 候

ノ ﹁兄弟 諸 君 ﹂ ﹁六 月 二 日 ﹂ ト題 ス ル各 不穏 文 書 及 ﹁ 黒 旗 ノ歌 ﹂ (大 正十 二年 七 月 三 十 日禁 止)ト題 ス ル革 命 歌 ヲ夫 々印 刷 シ ﹁ 兄弟諸君﹂

追 テ左記 通 牒 ハ特 ニ参 照相 成 度 尚 警 察官 ニ対 シ テ ハ別 紙 ( 略) ノ 通 リ通 牒 致置 候

ハ其 ノ 工場 ニ於 テ印 刷 セ ル某 雑 誌 六 月 号 ニ挿 入 シ外 部 ニ頒 シ ﹁黒 旗

一、 大 正 十 三年 十 一月 十 八 日行 秘 甲 第 二 二 六号 行 刑 局 長 通 牒

ノ歌 ﹂及 ﹁六 月 二 日 ﹂ ハ同 工場 及 第 二第 三 工場 ノ受 刑者 ニ頒 布 宣 伝

ニ出 ヅ ル コト 多 ク従 テ行 刑 職 員 ノ平 素格 段 ノ注 意 ヲ以 テ之 ニ臨 ム モ

記

其 ノ 万全 ヲ期 シ得 ザ ル モノ ア リ今 回 ノ事 故 ノ如 キ ハ 一面 ニ於 テ ハ寔

一、 昭 和 二年 二月 三 日 行 甲第 九 五号 行 刑 局長 通牒

一、 大 正 十 五年 十 一月 十 二 日 行甲 第 一、八 〇 二号 行 刑 局 長 通牒

シ タ ル事 実 発 見 致 候固 ヨリ此 等詭 激 思想 懐 抱者 ノ行 動 ハ常 ニ意 表 外

ニ不可 避 的 ノ モノ ト モ見 ラ レザ ル ニ非 ザ ル モ他 面 ニ於 テ ハ戒 護 取 締 ノ弛 緩 ト処 遇 上 ニ於 ケ ル用 意 周 到 ヲ欠 ケ ル ニ基 因 スル モ ノナ ル コト

○ 共 産 党 被告 人 ニ対 スル保 釈 責 付 ニ関 シ配 慮 方 ノ件

昭和四年三月五日秘第 一〇 六号検事長宛刑事局長通牒

厳 重 ニ シ他 衆 ト ノ接 触 交 通 ヲ絶 対 ニ避 ケ シメ ラ レ タ シ検 事 局 ヨリ詭

ス ル者 又 ハ其 ノ趣 ア ル者 ト認 ム ルト キ ハ厳 正 独 居 拘 禁 ニ附 シ戒 護 ヲ

甚 ダ遺 憾 ノ次 第 ニ有 之 候 ニ付 将来 一層 ノ注 意 ヲ加ヘ詭 激 思 想 ヲ抱 懐

刑 規 律 ノ奈 辺 ニ在 リ ヤヲ疑 ハシ ム ルガ如 キ世 評 ヲ受 ク ル ニ至 ルベ ク

此 種 ノ被 告 人 ヲ保釈 又 ハ責 付 ス ルガ如 キ ハ其 ノ犯 罪 ノ性 質 上再 ビ同

於 テ事 実 ヲ否 認 シ タ ル者 モア リ テ釈 放 中 証憑湮 滅 ノ虞 ナ シト セズ 又

相 成候 処 此 等 ノ被 告 人 中 ニ ハ予 審 ニ於 テ自 白 シ タ ルモ第 一審 公 判 ニ

罪 証湮 滅 逃 亡 ノ虞 無 シト ノ 理由 ヲ以 テ被告 人 全 部 ニ対 シ責 付 ノ決 定

ハ検事 ノ反 対 意 見 ニ不拘 被 告 人等 ハ勾 留久 シキ に亙 リ シ ノ ミナ ラズ

日 本 共産 党 関 係 治 安 維持 法 違 反 事 件 ニ付今 回名 古 屋 控 訴 院 ニ於 テ

)

激 思 想 懐 抱 者 ナ ル旨 ノ通 知 ナ キト キ ト雖 刑 務 所 ニ於 テ身 上調 査 ノ際

(

細 密 ナ ル注意 ヲ為 シ職 業 経 歴 等 ニ依 リ主 義 者 ナ ル コト ノ疑 ア ル モノ

ニ拘 禁 セラ レ相 当 改悛 ノ望 ア ル者 モ亦 外部 社 会 主 義 運 動 者 ノ誘 惑 ニ

種 ノ 犯罪 行 動 ニ出 テ シ ム ル機 会 ヲ与 フ ルノ虞 ア ルノ ミ ナ ラズ刑 務 所

ヲ認 メ ザ ル コト ヲ得 ザ ルノ ミ ナ ラズ如 斯 事 故 ノ続 出 ス ル ニ於 テ ハ行

ハ直 チ ニ検 事 局其 他 ニ付 キ調 査 シ適 当 ナ ル措 置 ヲ講 ゼ ラ ルベ ク検 事

因 リ其 ノ改 善 ノ機 会 ヲ失 フ コト ト ナ リ被告 本 人 等 ノ不 利 益 ト為 ル ハ

局 ヨリ通 知 ナキ ノ故 ヲ以 テ漫 然 放任 ス ルガ如 キ コト ア リ テ ハ計 ラザ ル失 態 ヲ惹 起 ス ルノ虞 モ有 之 候 ニ付常 ニ検 事 局 ト ノ協 調連 絡 ヲ保 チ

人 等 ノ言動 ニ付裁 判 長 ヨ リ予 メ訓 諭 ヲ加 ヘ被 告 人 等 ヲ シ テ公 判

(一) 刑 事 訴訟 法 ニ基 キ公判 準備 手 続 ヲ行 ヒ公判 廷 ニ於 ケ ル被 告

廷 ニ於 テ互 ニ久濶 ヲ叙 シ テ握 手 シ又 ハ拍 手 セ シム ルガ激 越 ナ ル

謂 フ ニ及 ハズ 更 ニ進 ンテ其 等 ノ者 ト 相 提携 シテ大 衆 運 動 に従事 ス ル

感 情 ヲ発露 セ シメザ ル様 之 ヲ緩 和 シ置 ク コト ヲ要 ス

者 ノ活 動 ヲ激 発 スルノ虞 ア リ如 上 ノ危 険 ハ既 ニ京 大 学 生 被告 事 件 第 一審 判 決 後 ニ保 釈 セ ラ レタ ル多 数 被 告 人 ガ更 ニ共 産 党 事件 ニ加 担 シ

入 廷 セ シ ム ルヲ要 ス

)

ル後 第 一ニ判 検 事 入 廷 シ第 二 ニ被 告 人第 三 ニ傍 聴 人 ノ順 序 ニテ

(三 ) 入 廷順 序 ハ先ヅ 裁 判 所 書 記 入 廷 シテ諸 般 ノ準 備 ヲ完 了 シ タ

ヲ要 ス

( 二 ) 法 廷 ノ内 外 ハ制 服警 官 ヲ シテ可 成厳 重 ニ之 ヲ警 戒 セ シム ル

タ ル事 実 ニ徴 ス ル モ容 易 ニ推 知 シ得 ベ キ所 ニ有 之 若 シ他 ノ裁 判 所 ガ 此 ノ際 右 名 古 屋控 訴 院 ノ処 置 ニ傚 フ如 キ コト ニモ相 成 候 ハバ由 々敷

)

問 題 ヲ惹 記 ス ル ヤ モ難 計 ト存 候 間貴 官 ニ於 テ ハ克 ク裁 判所 ノ諒 解 ヲ 求 メ ラ レ善 処 ノ途 ヲ誤 ラ ザ ル様 御 配 慮 相成 度 此 段 得 貴意 候 ○ 公 判 闘 争 防 止 ノ方 策 ノ件

(四) 裁 判 長 ハ法 廷内 ノ秩 序 ヲ維 持 シ法 廷警 察 権 ヲ完 全 ニ行 フ為

ニ於 テ行 ヒ被 告 人及 傍 聴 人 ヲ シ テ私 議喧 騒 ス ルノ機 会 ヲ与 ヘザ

被 告 人 ヨリ先 ニ入 廷 シ且被 告 人 ヨ リ後 レテ退 廷 シ合 議 ハ其 ノ席

昭和六年 七月思想係検事事務打合会協議事項同年八月 ( 二 十六日秘第 五九二号検事長、検 事正宛刑事局長通牒

第 一乃 至 第 四 ( 略)

( 前略)

第 五 、 公 判 闘争 防 止 ニ付 テ ノ方策 如 何 (大 阪 )

尚 多 数 被 告 人 ノ審 理 ノ併 合 、 分 離 又 ハ公開 禁 止 ノ問 題 ハ時 ノ状 況

ル コト ニ努 ム ル ヲ要 ス

近 来 共 産 党事 件 ノ公 判 廷内 ニ於 テ被 告 人 等 ハ往 々所 謂 公 判 闘争 ノ

第 六 乃至 第 九 (略 )

ニ応 シ臨 機 ニ善 処 ス可 キ モノ ト ス

告 人 ノ戦 術 ヲ未 然 ニ防 止 シ公判 廷 ヲ シテ闘 争場 裡 化 セ シ メザ ル方

昭和六年 七月思想係検事事務打合会協議事項同年 八月 ( 二 十六日秘第 五九二号検事長、検事正宛刑事局長通牒

○ 思 想 犯 罪 ノ予 防 竝思 想 犯 人 ノ改 善 方法 ノ件

議

策 ナキヤ

戦 術 ヲ弄 シテ審 理 ヲ妨 害 シ或 ハ主 義 ノ宣 伝 ヲ為 ス コト ア リ是 等被

提案理由

協

第 一乃至第五 ( 略)

( 前略) 第六

本 項 ハ主 ト シテ裁 判 所 ノ職 権 ニ関 ス ル事 項 ナ ル モ検 事 モ亦 公訴 遂 行 ノ職 責 上之 ガ研 究 ヲ為 ス ヲ要 ス

思想係検事事務分掌規準第 一項ノ三ノ趣旨 ニ基 キ思想係検事 ハ思

提案理由

(一) 思想係検事事務分掌規準第 一項 ノ三 ノ励行方法如何( 東京)

先 ヅ法 廷 内 ノ秩 序 ヲ維 持 シ円満 ナ ル審 理 ヲ遂 グ ル方 法 ト シ テ個 々 ノ事件 ニ付被 告 人等 ノ所 謂 公 判 闘 争 方 針 ヲ予 メ察 知 シ之 ニ従 テ其 ノ対策 ヲ臨 機 ニ講 ズ可 キ コト勿 論 ナ ルモ大体 ニ於 テ左 記 ノ方法 ハ 常 ニ之 ヲ励 行 スル ヲ可 ト ス

想 犯 罪 ノ 一般 予防 ノ為 同 犯 罪 ノ被 疑 者 被告 人、 受 刑 者 、刑 執 行 終 了 者 ノ教 育 改善 ニ付 各 関 係 官 署 又 ハ団 体 ト連 絡 協 調 スベ キ モノ ナ ル ニ付 テ ハ其 ノ具 体 的 方 策 ヲ如 何 ニ ス可 キ ヤ ( 二 ) 学 生 ニ シテ思想 事 犯 ニ触 ル ル者 殊 ニ其 ノ起 訴猶 予 者善 処 ノ 方 策 如何 ( 大阪)

事 者等 ト情 報 ノ交 換 ヲ為 ス ハ時 宜 ニ適 シタ ル方 法 ナリ ト思 料 ス

( 二 ) 思 想犯 人 ノ改 善 方 法 ト シテ

訴 ノ決 定 ヲ留保 シ タ ル者 ヲ含 ム) ニ対 シテ ハ厳 重訓 諭 ノ上誓

(イ) 起 訴 猶 予 者 (改悛 ノ有 無 ヲ視 察 ス ル為 一定 期 間起 訴 不起

約 書 ヲ徴 シ相 当 ノ視 察期 間 ヲ定 メテ父 兄 親 族 教 師其 ノ他 ノ保

近 時 学 生 ニ シテ思 想 事 犯 ニ触 ル ル者 愈 々多 ク昭 和 六年 三 月 司 法 省

其 ノ観 察善 導 ニ努 ム可 キ モノト ス但 シ事 情 ニ依 リ司 法 警 察官

者 ヨリ報 告 セ シ メ又 随時 主 任 検 事 自 ラ本 人 ト 面接 シテ親 シ ク

友 、 通 信 、 家 庭 生 活 ノ状 況其 ノ他 参考ト ナ ル可 キ事 項 ヲ保護

護 者 ニ身 柄 ヲ委 託 シテ観 察 セ シ メ其 ノ間 毎 月 思 想 、行 動 、交

刑 事 局秘 第 二 七〇号 次 官 通牒 ニ則 リ其 ノ起 訴 ヲ猶 予 セラ ル ル者 漸

提案理由

次 増 加 ノ傾 向 ア リ是 等 起 訴猶 予者 ノ改 善 指 導 ニ付検 事 ハ如 何 ナ ル

ヲ シテ之 ヲ代 行 セ シ ム ル ヲ適 当 ナリ ト思 料 スルト キ ハ之 ニ委

ル参 考 資 料 ト ナ ル可 キ ヲ以 テ少 クト モ六 ケ月 毎ニ一 回 取 纒 メ

予 ノ成 績 ハ将 来 ニ於 テ同 種 事 件 ノ起 訴 不 起 訴 ノ裁 決 ニ重 要 ナ

任 シテ単 ニ其 ノ結 果 ヲ報 告 セ シ ム ル モ可 ナ リ而 シテ右 起 訴猶

方 策 ヲ採 ルベ キ ヤ

(一) 仮 釈 放 者 満 期 ニ依 リ出 所 シタ ル者 ニ対 ス ル将 来 ノ取 締 方策

第七

如 何 (大阪 )

上司 ニ之 ヲ報 告 スル ヲ要 ス

被 告 人 ニ面 接 シ其 ノ教 化 ヲ為 スガ如 キ ハ特 種 ノ場 合 ノ外 可成

(ロ) 被 告 人 ハ裁 判 所 ニ於 テ審 理 中 ノ者 ナ ルヲ以 テ検 事 単 独 ニ

提案理由

ル者 或 ハ刑 期 満 了 ニ依 リ釈 放 セラ ル ル者 漸 次 増 加 ス可 ク其 ノ視察

面 接 シテ其 ノ教 化 ニ努 ム可 ク仮 出 獄 ニ付 テ モ進 テ意 見 ヲ開陳

務 所 職 員 ト 協 力 シ テ其 ノ改 善 ノ 方策 ヲ講 ジ検 事 自 ラ受 刑 者 ニ

(ハ) 受 刑 者 ニ対 シ テ昭和 六年 五 月 六 日司 法 大 臣 訓 示 ニ遵 ヒ刑

之 ヲ避 ク ルヲ可 ト ス

思 想 事 犯 ノ受 刑 者 ニシ テ改悛 ノ情 顕 著 ナ ル為 仮出 獄 ノ恩 典 ニ浴 ス

指 導 及 改善 ノ方 法 ヲ如 何 ニ ス可 キ ヤ 以 上 三問 ハ要 スル ニ思 想 犯罪 ノ予 防 竝 思 想 犯 人 ノ改 善 方 法 如 何 ト

議

謂 フ ニ帰 ス ルヲ以 テ之 ヲ 一括 議 題 ト セ リ 協

(ニ) 仮 出 獄 者 及満 期釈 放 者 ニ対 シテ モ釈 放 当時 ノ情 況 ニ応 ジ

ス ルヲ可 ト ス

テ広 汎 ナ ル活動 ヲ為 ス コト ヲ得 ザ ル モ学校 其 ノ他 教 育 ニ関 ス ル

(一) 思 想 犯 罪 ノ予防 ニ付 テ ハ思 想 係 検 事 ハ其 ノ職 務 ノ性 質 上進

諸団 体 ノ職 員 等 社会 上指 導 者 ノ地 位 ニア ル者 ニ対 シ其 ノ求 メ ニ

ス

保 護 者 及警 察 官 ト連 絡 協 調 シテ其 ノ視 察 及 教 化 ニ努 ム ルヲ要

応 ジ テ適 当 ナ ル思想 問 題 ニ関 スル講 演 、 講 習 ヲ為 シ或 ハ学 校 理

希

望 尚 刑務 所 ト連 絡 ヲ図 ル為 行 刑 局 ニ於 テ左 記 事 項 ノ励 行 ヲ取 計 ハレ ン コト ヲ希 望 ス

該事 件 ノ主 任 検 事 ︵第 一審 、 第 二審 共 ) 及 所在 地 ノ検 事 ニ通知

一、行 刑 局 ハ刑 執 行 ノ為思 想 犯 人 ヲ収 容 シ タ ル刑 務 所 ノ名 称 ヲ当

ス ル コト 二 、受 刑 中 ニ於 ケ ル思 想 犯 人 ノ思 想 情 況 ノ経 過竝 釈 放 時 ニ於 ケ ル

第 一乃 至 第 八 ( 略)

第 九 、控 訴 院 及控 訴 院 所 在 地其 ノ他 特 ニ必 要 アリ ト認 ムヘ キ都市 ノ

地 方裁 判 所 ニ ハ思 想 部 ヲ設 ク ル ヲ可 ト セズ ヤ ( 東京)

思 想係 検 事 ノ設 置 ヲ必 要 ト シタ ルト同 趣 旨 ニ依 リ裁 判 所 ニモ専 ラ

提 案 理由

ミ ナ ラズ最 近同 事 件 ノ訴訟 ノ指 揮 運 行 益 困難 ト ナ ル ニ従 ヒ判 事 一

思 想事 件 ヲ審 理 スル部 ヲ設 ク ル必 要 ア ル コト勿 論 ナ リト信 ズ ルノ

般 同事 件 ノ受 理 審 判 ヲ嫌 忌 ス ル傾 向 顕 著 ナ ルモ ノア リ之 レ本 問 ヲ

実 現 ヲ為 ス様 取 計 ハレ ン コト ヲ希望 ス

事 ヲ予 メ定 メ置 ク コト ハ検 察 事 務 上 ニモ便 宜 少 カ ラ ザ ル ニ付 之 カ

裁 判 所 刑 事 部 竝 予審 判 事 中 特 ニ思 想 犯事 件 ヲ専 ラ審 理 ス ル部 竝 判

望

提 出 シタ ル所 以 ナ リ 希

思想 情 況 ヲ刑 務 所 ヨ リ当 該 事 件 ノ主 件 ノ主任 検 事 及 所 在 地 ノ検

)

事 ニ通報 ス ル コト 第 七 ノ (二) 乃 至 第 九 ( 略)

(

昭和 六年七月思想係検事事務打合会協議事項同年八月 二十 六日秘第五九二号検事長検事正宛刑事局長通牒

○ 控 訴 院 及 地方 裁 判 所 ニ思想 部 ヲ設 置 スル希 望 ノ件

( 前略)

警保局保安課

ル虞 アリテ特高警察上特 ニ視察 ヲ要 スト認定 シタル者 ヲ謂 フ 特

第 一条 特別要視察人ト ハ其 ノ思想行動不穏過激ニ亘 リ治安 ヲ害 ス

特別要視察人視察内規

二 九  特 高 警 察 例 規 集 ︹ 抄︺(一九三五年まで)

特高警察例規集

第 一編 特別要視察人視察 内規

別 要 視察 人 ハ左 ノ如 ク之 ヲ種 別 ス

庁 府県 ハ甲 号 ニ付 テ ハ第 一号 様式 (本 名簿 ) (一五 頁 )竝 第 二 号

本 ヲ、 乙号 ノ場 合 ニ ハ略 名 簿 謄本 ヲ内 牒 スベ シ

前 項 ノ場 合 ニ於 テ ハ所 轄 憲 兵隊 長 ニモ、 甲 号 ノ場 合 ニ ハ本 名 簿 謄

シベ

総督府 ( 台 湾 総 督 府 )、 警 視 庁 及山 口県 ニ モ本 名 簿 謄 本 ヲ送 付 ス

ヲ各 庁 府 県 ニ送 付 スベ シ  但 シ特 要 鮮 ( 特 要 台 ) 甲 ノ場 合 ハ朝 鮮

部 ヲ添 附 シテ本 省 ニ申 報 シ、 尚何 レノ場 合 ニ モ略 名 簿 ノ謄 本 一部

ハ本 名 簿 竝略 名簿 ノ謄 本 各 一部 ヲ、 乙 号 ノ場 合 ハ略 名 簿 ノ謄本 一

第 三条  新 ニ特 別要 視 察 人 ニ編 入シ タ ル者 ア ルト キ ハ、 甲 号 ノ場 合

第 二 号 様式 ニ依 ル略 名 簿 ヲ調 製 シテ備 附 スベ シ

様 式 (略 名簿 ) ( 二一頁 ) ニ依 リ二種 類 ノ名簿 ヲ、 乙 号 ニ付 テ ハ

(共 産 主義 思 想 ヲ抱 持 シ治 安 維持 法 ニ違 反 ス ル行為 ヲ為 ス

一、 共産 主 義 特 別 要視 察 人 (略 称  特 要 共 又 ハ共 )

虞 ア ル者 )

(社 会 主義 、 社 会 民 主 主 義 思 想 ヲ抱 持 シ労 働争 議 、 小 作 争

一、 社 会 主 義 特 別要 視 察 人 (略 称  特要 社 又 ハ社 )

議 其 ノ他 ニ関 シ治 安 ヲ紊 ス行 為 ヲ為 ス虞 ア ル者 ) 一、 無 政 府 主 義特 別 要 視 察 人 (略 称  特 要 無 又 ハ無 ) (無 政 府主 義 思 想 ヲ抱 持 シ治 安 ヲ紊 ス行 為 ヲ為 ス虞 ア ル 者) 一、 他 種 特 別 要視 察 人 (略 称  特 要 他 又 ハ他 )

ト キ ハ其 ノ判 明 セ ル部 分 ニ付 名簿 ヲ調製 シ爾 余 ノ事 項 ハ追 報 スベ

前 二 項 ノ場 合 名 簿 各 欄 ノ事 項 ニ シテ調 査 上時日 ヲ要 ス ル モノ ア ル

朝鮮 人 又 ハ台 湾 人 ニシ テ前 項 ノ各 種 主 義 若 ハ民 族 主義 ヲ奉 ズ ル モ

シ

(以 上何 レノ種 別 ニモ属 セザ ル者 )

ノ ハ勿論 、 仮 令 一定 ノ主義 ヲ抱 懐 セズト雖 政 事 若 ハ時 事 ニ関 シ言 動 不 穏 過激 ニ シテ治 安 ヲ害 ス ル虞 ア ル者 其 ノ他警 察 上 注 意 ヲ要 ス

之 ヲ編 入庁別 ニ整理 シ、第五条 ニ依 リ当該略名簿 ノ送付 アル迄保

第四条 前条第 一項 ニ依 リ略 名簿謄本 ノ送付 ヲ受 ケタル各庁府県 ハ 存 スベ シ

ル者 ニシテ特 ニ視 察 ヲ要 スト認 メ タ ル モノ ハ之 ヲ特 別 要 視 察 人ト

一、 朝 鮮 人 特 別 要 視 察 人 ( 略 称  特 要 鮮 又 ハ鮮 )

為 シ左 ノ如 ク種 別 ス

受 ケタ ルト キ ハ略名簿 ヲ調製 シ各庁府県竝左記官庁 ニ之 ヲ送付 ス 一、在上海内務書記官

第五条 本省 ハ第三条第 一項 ニ依 リ各庁府県ヨ リ名簿謄本 ノ送付 ヲ

特 別 要 視 察 人 ハ凡 テ甲 号 及 乙号 ニ分 チ、 治安 ヲ害 スル虞 特 ニ著 シ

二、朝鮮総督府警務局長、京畿道、平安北道、慶 尚南道各知事

一、 台 湾 人 特 別 要 視察 人 (略 称  特 要 台 又 ハ台 )

キ モノ ヲ甲 号 (略称  例ヘ バ 特 要 共 甲 又 ハ共甲 ) ト為 シ、 其 ノ他

三、台湾総督府警務局長

五、関東局警務部長、関東州長官

四、樺太庁長官

ノ モノ ヲ乙 号 (略 称  例ヘ バ特 要 社 乙 又 ハ社 乙︶ ト ス 第 二条  特 別 要 視 察 人 ニ対 シ テ ハ居 住 地 (入営 者 ハ衛戍 地 、 入監 者 ハ刑 務 所 所 在 地 、外 地 又 ハ外 国 ニ居 住 ス ル者 ハ其 ノ本 籍 地 )所 轄

七、 東 京 刑 事 地 方裁 判 所 検 事 正、 大 阪 控訴 院検 事 長

六 、憲 兵 司 令 官 続 ヲ執 ルベ シ

別 要視 察 人 ニ編 入 ス ル ヲ適 当 ト認 メ タ ルト キ ハ遅 滞 ナ ク編 入 ノ手

ハ特 ニ注 意 視 察 スベ シ

第 十 三条  特 別 要 視 察 人 ノ各 種 団体 ニ対 スル交 渉脈 絡 関 係 ニ関 シテ

特 ニ其 ノ来 往 、 通信 、 会 合 、 著 訳 、 出 版、 宣 伝 煽 動 、資 金 ノ授 受 、

第 十 四条  特 別 要 視察 人 其 ノ 他 注意 ヲ要 ス ル人物 ノ視 察 ニ当 リ テ ハ、

併 セ テ各 庁 府 県 竝関 係 庁 ニ通 報 スベ シ

第 六条  名 簿 記 載 事 項 ニ異 物 ヲ生 ジ タ ルト キ ハ其 ノ旨 速 ニ申報 シ、

場 合 ニ於 テ ハ本 名簿 ニ写真 、 筆 蹟 ヲ添 附 シテ、 乙 号 ノ場 合 ニ於 テ

第 十 五条  特 別 要 視察 人 ニ シテ所 在 不 明 ト ナ リ タ ル者 ア ルト キ ハ、

兇 器 ノ所 持 等 ニ注意 シ、 裏 面 ノ動 静 探 知 ニ努 ムベ シ

第 七条  第 二 条 ノ所 轄 ニ異 動 ヲ生 ジ タ ルト キ ハ、 旧 所 轄 庁 ハ甲号 ノ

ハ写真、 筆蹟 ノ ミ ヲ新 所 轄 庁 に送 付 スベ シ 前 項 ノ場 合 新 所 轄 庁 ハ名 簿 編 入 ノ手 続 ヲ為 スト 共 ニ直 ニ其 ノ旨 ヲ 申報 シ、 各 庁 府 県 竝 関 係 庁 ニ通 報 スベ シ

況 其 ノ他 参考 ト ナ ルベ キ事 項 ヲ具 シテ之 ヲ申 報 シ、 併 セ テ各 庁府

日、 職 業 、 人相 、 特 徴 、 立 廻 リ先 及所 在 不 明 ト ナリ タ ル当 時 ノ状

其 ノ発 見 ニ努 ム ルト共 ニ本 籍 、 氏 名 ( 別 名 ヲ モ)、種 別 、 生 年 月

ヲ為 スベ シ 外 地 又 ハ外 国 ニ転 居 ス ル場合 ハ目的 地 ニ向 ケ内 地 港

第 八条  前 条 ノ手 続 ハ特 別 要 視 察 人 ノ転 居 先 判 明 シタ ル後 ニ於 テ之

湾 ヲ出 発 セ シ コト判 明 シタ ル後 之 ヲ為 スベ シ

ニモ) 通 報 スベ シ

県 ニ ( 特 要鮮 、 特 要 台 ニア リ テ ハ外 地 関 係 庁 及在 上海 内 務書 記官

鮮 、 特 要 台 ニ限 ル 墓 参 、 帰 省 等 一時 ノ退 去 ハ之 ヲ含 マズ) 等 ニ

第 九 条  特 別 要視 察 人 ノ思 想 行 動 ノ変 化、 死 亡 又 ハ内 地 退 去 ( 特要

通報 スベ シ

所 在 不 明 者 ヲ発 見 シタ ルト キ ハ手 配 シ タ ル庁 府 県 ニ於 テ其 ノ旨 申

ナ ク名簿 ヨリ削 除 ス ルト 共 ニ其 ノ事 由 ヲ具 シ テ之 ヲ申 報 シ、 併 セ

依 リ特別 要 視 察 人 ト ス ル ヲ必要 ト セ ザ ル ニ至 リ タ ルト キ ハ、遅 滞

之 ヲ本 省 竝 関係 庁 ニ申 通 報 スベ シ 特 ニ犯 罪 ニ関係 ア リ其 ノ他 必

第 十 六条  特 別要 視 察 人 ノ言 動 ニシ テ注 意 ヲ要 スル モノ ア ルト キ ハ

ヲ離 レ ムト ス ル場 合 ニ於 テ ハ乗 船 地所 轄 庁 ニ対 シ本 人 到着 以前 適

第 十 八条  特 別要 視 察 人 又 ハ特 ニ注 意 ヲ要 ス ル人物 ニシ テ 一時 内 地

テ過 誤 ナ キ ヲ期 シ本 省ヘ ノ申 報 ハ之 ヲ省 略 ス ル コト ヲ得

ヲ要 ス ル事 情 ノ存 セザ ル場 合 ニ於 テ ハ関 係庁 府 県間 ノ互報 ニ依 リ

第 十 七 条  特 別 要 視 察 人 ノ内 地 ニ於 ケ ル 一時 ノ旅 行ニ シ テ何 等 注 意

轄 検 事長 及 司法 大 臣 ニモ報告 スベ シ

要 ト認 ム ルト キ ハ所 轄 検 事 正 ニ報 告 シ、 重 要 ナ ル モノ ニ付 テ ハ所

テ各 庁府 県 竝関 係 庁 ニ通 報 スベ シ 尚 削 除 シ タ ル名簿 ハ各 庁 府 県 ニ於 テ別 ニ保 存 スベ シ

当 該 管 轄 内 ニ属 ス ル編 入者 ニ限 リ極 秘 ヲ以 テ内 示 スベ シ

第十 条  名 簿 ノ提 示 ニ付 地 方裁 判 所 検 事 正 ヨリ交 渉 ア リ タ ルト キ ハ

第 十 一条  徴 兵適 齢 者 ニ シテ特 別 要 視察 人 ア ルト キ ハ、 所轄 庁 ハ其 ノ住 所 、 氏 名 ヲ毎 年 三 月 末 日 迄 ニ本人 本 籍 地 所 属 聯 隊 区司 令 官 ニ 内 牒 スベ シ 第 十 二 条  常 ニ管 内 要 注意 人 物 ノ 発 見及 其 ノ言動 ノ内 査 ニ努 メ、 特

宜 電 話 電報 若 ハ書 画 ヲ以 テ 通報 シ置 クベ シ

静 ニ対 シテ ハ特 ニ注意 シ、 特 別 要 視 察 人 ニ該 当 ス ル疑 ア ル者 ニ対

第 十 九条  新 ニ外 地 又 ハ外 国 ヨリ渡 来 シ タ ル朝 鮮 人 (台 湾 人 ) ノ動

シ テ ハ名簿 編 入 前 ト 難其 ノ住 所 、 氏 名 、年 齢 、 人 相 、 特 徴 等 ヲ本 省 竝 各 庁府 県 ニ申 通 報 スベ シ 第 二 十 条  特 別 要 視 察 人 又 ハ特 ニ注 意 ヲ要 ス ル人物 ニ対 シ取 締 上 特

三 、被 尾行 者 ノ行先 地 、 出発 ノ場 所 、 日時 、 旅 行 ノ方 法 ( 例ヘ バ

徒歩 、 電 車 、 汽 車 、 船 舶等 ) 及其 ノ経 路 四、 尾 行 ヲ要 ス ル理 由

為 スベ キ モノ ト ス

第 二十 四 条  尾 行 ノ引 継 ハ予報 シタ ル引 継場 所ニ 於 テ受 継 者 ニ之 ヲ

汽 車電 車 等 ニ乗 込 ノト キ ハ、 尾 行 者 ハ人 目 ヲ惹 カザ ル程度 ニ於 テ

ニ特 ニ留 意 シ、 隠 密 巧 妙 ナ ル方 法 ニ依 リ其 ノ効 果 ヲ挙 グ ル ニ努 ム

第 二 十 一条  前 条 ノ場 合 ニ於 テ ハ係 員 ノ人選 、 視 察 上 ノ注 意 事 項 等

略 スル コト ヲ得

間 長 ク シ テ其 ノ間 ニ完 全 ニ引 継 ヲ了 シ得 ル場 合 ニ於 テ ハ同 乗 ヲ省

ト同 乗 シ完全 ニ引 継 ヲ了 シ タ ル上交 代 スル モ ノト ス 但 シ停 車時

手 ノ方法 ヲ以 テ受 継 者 ニ其 ノ所 在 ヲ示 シ、 一駅若 ハ二 駅 間受 継 者

停 車前 ヨリ ﹁ハ ンカ チー フ﹂ ノ類 ヲ窓 外 ニ打 振 ルカ又 ハ車 窓 外挙

ベシ

水 路 ニ依 リタ ル時 ハ最 初 ノ着 船 地 ニ於 テ引 継 ギ、 若 シ停 船時間 短

ニ必 要 ト認 ム ル場 合 ハ張 込、 監視 又 ハ尾 行 ヲ為 スベ シ

ニ於 テ之 ガ 監督 ヲ為 スベ シ

尾 行 ノ要 否 ノ判 断 ニ付 テ ハ警 察 署 ニノ ミ委 ヌ ル コト ナ ク、 警 察 部

ク シ テ完 全 ニ引 継 ヲ了 シ難 キト キ ハ次 ノ着 船 地迄 同 乗 スル モノ ト

第 二十 五 条  被 尾 行者 出 発 後 予 定 ノ行 先 地、 経 路若 ハ旅 行 ノ方 法 等

ス

尾 行 係 員 ノ員 数 ハ被 尾 行 者 ノ員 数 又 ハ性 状 ニ依 リ適 当 ニ之 ヲ定 ム シベ 第 二 十 二 条  尾 行 引 継 ハ隣 接 庁 府 県 ニ逓 次 之 ヲ為 ス モノ ト ス 但 シ

各 号 ノ事 項 ヲ予 報 シ引 継 ヲ為 シ得 ル時 間 ノ余 裕 ヲ存 セ シ ム ル コト

ザ ルト キ ハ警 察署 ) ニ対 シ電 話 電報 其 ノ他 便 宜 ノ方 法 ヲ 以 テ左 記

第 二 十 三 条  尾 行 引 継 ヲ為 ス ニ ハ引継 ヲ受 クベ キ庁 府 県 (已 ムヲ得

要 項 ヲ通 知 スベ シ

ギ タ ル場 合 ハ引 継者 ハ受 継 者 ノ所属 警 察 署 ニ対 シ遅 滞 ナ ク引 継 ノ

ジ最 寄 ノ警察 署 又 ハ其 ノ署 員 ニ引継 グ モノ ト ス  但 シ署 員 ニ引 継

引 継 ヲ了 ス ル迄其 ノ儘 尾 行 ヲ継 続 シ、 機 会 ヲ見 テ適 宜 ノ方 法 ヲ講

ヲ変 更 シ予 定 ノ 引継 ヲ為 ス コト 能 ハザ ルト キ ハ、 尾 行 者 ハ完 全 ニ

ヲ要 ス 電報 ヲ以 テ通 報 スル場 合 ハ各 号 ノ事 項 中 適 宜省 略 ス ル コ

前 項 ノ場 合 ニ於 テ ハ受 継 警 察 署 ハ引継 ヲ受 ク ベ カ リ シ警 察 署 ニ其

時 宜 ニ依 リ直 接 行 先 地 又 ハ其 ノ他 ノ庁 府 県 ニ為 ス コト ヲ得

ト ヲ得

ノ旨 ヲ通 知 スベ シ

継 不能 ト成 リ タ ル場 合 ノ措 置 ニ付 テ モ亦前 条 ニ同 ジ

第 二十 六 条  何 等 カノ事 故 ニ因 リ予 定 ノ場 所 ニ受 継 者来 ラ ザ ル為 引

一、 被 尾 行者 ノ種 別 (特 別 要 視察 人 ナ ル ト キ)、本 籍 、 住 所 、 氏 名 (別 名 ヲ モ)、 年 齢 、 職 業 、 人 相、 特 徴 、 服 装 及携 帯 品 二、 尾 行 係員 ノ員 数 竝 引 継 予 定 ノ場 所 及 日時

第 二十 七条  被 尾 行者 万 一尾 行 ヲ脱 シ タ ル場 合 ニ於 テ ハ即 時 手 配 ヲ 講ジ所 在 発 見 ニ努 ムベ シ

若 ハ警 察 手帳 ヲ互 ニ提 示 シ、 引 継 者 ハ受 継 者 ニ対 シ尾 行 引 継書 ヲ

第 二十 八条  尾 行 引継 ノ際 ハ引 継 者 及受 継 者 ハ相 互 ニ名 刺 ヲ交換 シ

交 付 ス ルモ ノト ス 第 二十 九 条  前 条 ノ尾 行 引 継 書 ハ被 尾 行者 一人 毎 ニ第 三 号 様 式 (二 三頁 ) ︹ 略 ︺ニ依 リ之 ヲ調 製 シ、 逓 次 引 継 グ モノ ト ス 第 三十 条  特 別 要視 察 人 又 ハ特 ニ注意 ヲ要 ス ル人 物 ニ対 シ テ ハ機 会

管 内 編 入 者 、 又 ハ他 庁 編 入者 ニ シテ管 内 ニ関 係 ア ル者 ノ 写

三 、 配 布 方法 (イ)

ルベ ク所 要 部 数 ヲ見 込 ミ送 付 ス ル コト

手 配 其 ノ他 ノ関 係 上 必 要ト 認 メ タ ル場 合 ニ ハ、 関 係 庁 ニ成

メ置 ク コト

真 ハ凡 テ警 察 署ニ一 部 以 上 配布 シ平 素 ヨリ係 員 ニ之 ヲ知 ラ シ

( ロ)

四 、整 理方 法

写真 ハ之 ヲ分 類 整 理 シ、 名 簿 若 ハ写 真 帖 ニ貼 付 シ テ保存 シ

原 板 ハ整 理 ノ上保 存 シ置 ク コト

置 ク コト

(イ)

( ロ)

写真 及 原板 ニ ハ必ズ 撮 影 若 ハ入 手年 月 日 ヲ記 入 ス ル コト

ア ル毎 ニ其 ノ写真 竝筆 蹟 ︵ペン、 鉄筆 ヲ モ含 ム︶ ヲ成 ルベ ク各 種 ノ モノ ニ亘 リ蒐 集 スベ シ

( ハ)

者 指 紋 ト朱 書 シ テ之 ヲ他 ノ原 紙 保 管 庁 ニ送 付 ス ル コト

原 紙 採 取 庁 ハ不発 見 ノ 回答 ニ接 シタ ル場 合 ニ ハ他 ノ原 紙 ニ容 疑

コト

シ、 不 発 見 ノ場 合 ハ原 紙 ニ容 疑 者 指 紋 ト朱 書 シ テ之 ヲ保 管 スル

原 紙 保 管 庁 ハ右 ノ 照会 ア リ タ ルト キ ハ速 ニ必要 ナ ル事 項 ヲ回 答

取 シ、 内 一枚 ヲ速 ニ最 寄 原 紙 保 管 庁 ニ送 付 シ照 会 ス ル コト

二、 容 疑 ノ者 ヲ検 束 又 ハ拘 留 シタ ルト キ ハ其 ノ指 紋 原紙 三枚 ヲ採

保 管 庁 ト称 ス) ニ各 一枚 ヲ送 付 スル コト

一人 ニ付 指 紋 原紙 三枚 ヲ作 成 シ指 紋 原紙 保 管 庁 (以 下単 ニ原 紙

一、 検 束 又 ハ拘 留 シタ ルト キ ハ第 四 号様 式 (二 五頁 ) ︹略︺ニ依 リ

第 三十 三 条  指 紋 ノ採 取 ニ関 シ テ ハ左 記 標準 ニ依 リ措 置 ヲ為 スベシ

会 ア ル毎 ニ指 紋 ヲ採 取 スベ シ

第 三十 二 条  特 別 要視 察 人 又 ハ特 ニ注 意 ヲ要 ス ル人 物 ニ対 シテ ハ機

特 別 要 視 察 人 ノ 写真 ハ複 製 ノ上 一部 ヲ本 省 ニ、 筆 蹟 ハ編 入庁 府 県 ニ送 付 スベ シ 第 三十 一条  前 条 ノ 写真 ニ関 シ テ ハ左記 ノ標 準 ニ依 リ措置 ヲ為 スベ シ

検 束 又 ハ拘 留 シタ ルト キ ハ撮 影 ス ル コト

一、 撮 影 スベ キ場 合 (イ)

同 一人ト雖 服 装 、 頭 髪 、鬚髯 ノ 長 短 等 ニ依 リ容貌 其 ノ他 ニ 著 シ キ変 化 ア リ タ ル場 合 ハ撮影 ス ル コト

( ロ)

(ハ) 凡 ユル機 会 ニ諸 種 ノ手 段 ヲ講 ジ テ、 撮 影 シ タ ル モノ ヲ入 手 シ複 製 シ置 ク コト

姓 名 (成 ルベ ク自 署 ) ヲ写 真 面 ニ複 写 ス ル コト

ル者 ニ付 テ ハ横 面 ノ モノ ヲ モ撮 影 ス ル コト

原 則 ト シ テ正面 脱 帽 ノ モノ ( 半 身 ) ト シ、 特 ニ必要 ト認 ム

二、 撮 影 方 法 ) (イ

) ( ロ

容 疑 者 指 紋 被 採 取者 ニ シテ特 別 要 視察 人 タ ル コト ヲ発 見 シ又 ハ ( ハ)

キ ハ此 ノ 限 ニ在 ラズ

原 紙 記 載 事項 ノ異 動 報 告 ア リ タ ルト キ ハ直 ニ之 ヲ整 理 シ、 ト

死 亡 若 ハ保 存不 必要 ノ通 報 ア リ タ ルト キ ハ原 紙 ヲ廃 棄 ス ル コ

之 ニ編 入 シタ ルト キ ハ速 ニ原 紙 保 管 庁 ニ通報 ス ル コト、 其 ノ偽 名 タ ル コト ヲ発 見 シタ ルト キ亦 同 ジ

為 シ、 特 ニ其 ノ出 所 、 目 的 等 ヲ明 ニスベ シ

ア ル物 件 ノ 輸 移 入、 所 持 、 授 受、 隠 匿 ニ対 シ テ ハ厳 重 ナ ル取締 ヲ

第 三十 四 条  爆 発物 、 変 装 戎 器 、拳 銃 、短 銃 、 薬 品其 ノ他 危 険 ノ虞

十 一、 警 視庁 、 大 阪 府 、 福 岡 県 ヲ原 紙 保 管 庁 ト ス

指 紋 原紙 写 ハ第 四号 様 式 (二五 頁 ) ︹ 略︺ ニ依 ル コト

原 紙 作成 迄之 ヲ用 フ ル コト

十、 既 ニ刑 事 指 紋 ヲ採 取 シア ル者 ニ付 テ ハ指紋 原 紙 写 ヲ作 成 シ、

紙 保 管庁 ニ通報 ス ル コト

ノ前 月分 ノ指 紋 採 取 状 況 ヲ本 省 ニ申報 シ同 時 ニ其 ノ副 本 ヲ各 原

九 、 各 庁 府 県 ハ第 九号 様式 (三〇 頁 ) ︹ 略︺ニ依 リ毎 月十 日迄 ニ其

紋 被 採 取 者 調 ヲ翌 月十 日迄 ニ各 庁 府県 ニ通 報 スル コト

八、 警 視 庁 ハ毎 月第 八号 様 式 (二九 頁 ) ︹ 略︺ ニ依 リ各 庁 府 県 ノ指

七、 前 号 ハ指 紋 小票 ニ モ之 ヲ準 用 ス ル コト

原 紙 保 管 庁 ハ右 ノ 通報 ヲ受 ケ タ ルト キ ハ直 ニ容 疑 者 指 紋 ノ表 示 ヲ抹 消 ス ル コト 三、 原 紙 採 取 庁 ハ原 紙 ヲ原 紙 保 管 庁 ニ送 付 ス ル場 合 ニ ハ第 五 号様 式 (二 七頁 ) ︹ 略︺ ニ依 リ指 紋 小票 ヲ作 成 シ之 ヲ其 ノ庁 ニ保 存 ス ルコ ト 四 、 原 紙保 管 庁 ハ指 紋 原 紙 ニ基 キ第 六号 様 式 (二 八頁 ) ︹ 略︺ニ依 ル氏 名索 引票 及 異 名 ア ル モノ ニ対 シテ ハ第 七 号様 式 (二八 頁 ) ︹ 略 ︺ニ依 ル異名 索 引 票 ヲ作 成 ス ル コト

ニ依 リ前 ニ採 取 シタ ル指 紋 ニ差 異 ヲ生 ジ タ リト 認 メ ラ ル ル者 ア

五 、 指 紋採 取後 相 当 ノ年 月 ヲ経 過 シタ ル者 又 ハ創 傷 其 ノ他 ノ事 由

ル ト キ ハ更 ニ指 紋 ヲ採 取 シテ其 ノ事 由 ヲ附 シ各 原紙 保 管 庁 ニ送 付 スル コト

前 項 ノ危 険 物 ノ授 受 、 携帯 ノ拒否 其 ノ他 ノ取 締 ニ関 シテ ハ特 ニ関

原 紙 記 載 事 項 ニ異 動 ヲ生 ジ 又 ハ指 紋被 採 取 者 死 亡 シ若 ハ原 紙 保

ニ於 テ其 ノ旨 速 ニ各 原 紙 保 管 庁 ニ通報 ス ル コト

存 ノ必 要 ナ シト認 メ ラ ル ルト キ ハ名簿 編 入 庁 若 ハ居 住 地所 轄 庁

係 各 課 竝 各 官 庁 ト ノ 連絡 ヲ緊 密 ニシ取締 上 遺 漏 ナ キ ヲ期 スベ シ

第 三十 五条  ﹁ダ イ ナ マイ ト﹂ 其 ノ他 ノ爆 弾 薬 類 ヲ使 用 ス ル鉱 山 、

六、 原 紙 保 管 庁 ハ左 ノ方 法 ニ依 リ原 紙 ヲ整 理 ス ル コト

工事 場 等 ニ対 シ テ ハ特 ニ視 察 ヲ厳 ニシ、 此 種 危 険 物 ノ紛 失 、 盗 難

等 ア リ テ特 高 警 察 上 注意 ヲ要 スト認 ム ル場 合 ハ直 ニ各 庁 府 県 ニ手

原 紙 ハ左 手分 類 ノ方 法 ニ依 ル コト

配 シテ之 ガ発 見 ニ努 メ、 併 セテ其 ノ旨 申報 スベ シ

(イ)

紙 ニ前 ノ原 紙 ノ所 要 事 項 ヲ転 記 シタ ル上前 ノ原 紙 ヲ廃 棄 シ、

前 項 ノ危 険 物 ヲ入 手 シ易 キ労 働 ニ従 事 ス ル者 ニ対 シ テ ハ平素 ヨリ

原 紙 重 複 ノ場 合 ニ於 テ前 後 ノ指紋 ニ差 異 ア ル ト キ ハ後 ノ原

前 後 ノ指 紋 ニ差 異 ナ キ ト キ ハ前 ノ原紙 ニ新 ナ ル記 載 事 項 ヲ転

( ロ)

記 シタ ル上 後 ノ原紙 ヲ廃 棄 ス ル コト、 但 シ指 紋 不 鮮 明 ナ ルト

其 ノ行 動 ニ厳 密 注意 シ取 締 上遺 漏 ナキ ヲ期 スベ シ

第 二編  特 別高 等警 察 執 務 心 得

則

特 別 高 等 警 察 執 務 心得 第 一章  総

視 察 ハ成 ルベ ク内 偵 ノ方法 ニ依 リ表裏 両 面 ニ亙 リ其 ノ徹 底 ヲ期 ス ベシ

第 五 条  視 察 ヲ行 フ ガ為 業 務 ヲ妨 ゲ或 ハ無 用 ニ反感 ヲ挑 発 シ却 テ思

想 ヲ悪 化 セ シム ルガ如 キ コト ナキ ヤ ウ注 意 スベ シ

第 六 条  特高 警 察 ニ従 事 ス ル者 ハ常 ニ国 体 ノ本義 ニ関 シ確 固 不抜 ノ

ヲ防 止鎮 圧 スル ヲ以 テ主 タ ル任 務 ト ス 社 会 運動 ニ シテ合法 穏 健

破壊 シ若 ハ社 会 ノ安 寧 秩序 ヲ 撹乱 セ ムト ス ルガ如 キ各 種 社会 運動

特 高 専 務員 ハ勿論 一般 警 察 官 ニ対 シテ モ講 習 会 ノ開催 其 ノ他 ノ方

置 ヲ為 スニ 誤 ナ キ ヲ期 スベ シ

係 法 令 ニ通 暁 ス ル ニ努 メ、 事 ニ当 リ テ正 確 ナ ル判 断 ト適 切 ナ ル措

第 七 条  特高 警 察 ニ従 事 ス ル者 ハ平 素 ヨリ社 会 運 動 全般 ノ情 勢 及関

テ公 ニ奉 ズ ルノ覚 悟 ア ルヲ要 ス

信 念 ヲ抱持 シテ其 ノ任 ニ当 ルト共 ニ、 事 ニ臨 ミ テ ハ率 先 躬 ヲ挺 シ

ナ ル モノ ハ固 ヨリ之 ヲ抑 圧 スベ キ ニ非 ズ ト雖 、苟 モ其 ノ目的 若 ハ

法 ニ依 リ常 ニ必要 ナ ル 教養 訓練 ヲ為 スベ シ

第 一条  特 別 高 等 警 察 (以下 特 高 警 察 ト 称 ス) ハ国 家 存 立 ノ根 本 ヲ

ヲ加 フベ キ モノ ト ス

視 察 内 偵 ニ当 リ テ ハ其 ノ意 図 ヲ相 手 方 ニ察 知 セ ラ レ又 ハ不 用意 ノ

ベシ

第 八 条  特高 警 察 ニ従 事 ス ル者 ハ機 密 ノ保 持 ニ付 格 別 ノ注 意 ヲ為 ス

手 段 ニシテ国 法 ヲ干 犯 シ又 ハ奇 矯 過激 ニ亙 ル モノ ニ対 シテ ハ取 締

第 二 条  各 種 社 会 運 動 ニ対 シ テ ハ、 非 合 法 ノ モノ ハ勿 論 合 法 ノ モ ノ

間 ニ警 察 上 ノ機 密 ヲ口外 スルガ如 キ コト ナ キ ヤウ 注意 スベ シ

ト雖 常 ニ周 匝 綿 密 ナ ル視 察 ヲ加ヘ 、 運 動 ノ因 ツテ来 ル所 以 ト其 ノ 実 情 ト ヲ明 ニシ且 絶 エズ其 ノ動 向 ニ注 意 シ、苟 モ不法 不 軌 ノ挙 措

ナ キ ヲ期 シ、 取 締 ヲ要 スベ キ モノ ヲ警 察 視 線 外 ニ逸 セザ ル ニ努 ム

検 察 当 局 其 ノ他関 係 官 署 ト ノ間 ニモ緊 密 ナ ル連 絡 ヲ保 持 スル ニ努

テ緊 密 ナ ル連 絡 共助 ヲ為 ス ニ努 ムベ シ

府 県 (北 海 道 庁、 警 視 庁 、 各 府 県 ヲ指 ス 以 下 同 ジ) 相 互 間 ニ於

ヲ必 要 ト ス ル ヲ以 テ、 常 ニ本省 ト ノ連 絡 ニ留 意 スル ハ勿 論 、各 庁

第 十 条  特 高 警 察 ハ其 ノ性 質 上 全国 一体 ト成 リ統 制 ア ル活 動 ヲ為 ス

合 特 ニ留 意 スベ シ

第 九 条  前 条 第 二項ニ 関 シ テ ハ他 庁 府 県 其 ノ他 ヨ リ手配 ア リタ ル場

ニ出 ヅ ルノ余 地 ナ カ ラ シ ムベ シ 第 三 条  各種 事 件 ノ取 締 ニ当 リテ ハ事 ノ真 相 ヲ究 明 シ、 寛 ニ流 レズ

ノ執 行 ニ当 リ テ ハ苟 モ遅 疑 逡 巡 ス ルガ如 キ コト ナク毅 然 ト シ テ之

厳 ニ失 セズ適 切妥 当 ノ方 法 ヲ講 ズ ル ニ細 心 ノ注意 ヲ払 ヒ、 一旦 其

ヲ断 行 ス ル処 ア ル ヲ要 ス

ルト 共 ニ其 ノ 必要 ナ キ モ ノ ニ無 用 ノ視 察 ヲ加 フ ルガ如 キ コト ナ キ

ムベ シ

第 四 条  視察 ニ当 リ テ ハ取 締 ヲ要 スベ キ人 物 又 ハ団 体 ノ認 定 ニ過 誤

ヤ ウ留 意 スベ シ

第 十 一条  各 種 事 件ノ 検 挙 取 締 等 ニシ テ他 庁 府 県 ニ相 当 影 響 ア リ ト 思 料 スルト キ ハ、 緊 急其 ノ他 已 ム ヲ得 ザ ル場合 ノ外 事前 ニ本省 並 関 係 各 庁 府 県 ト 打 合 ヲ為 スベ シ

該 庁府 県 ト連 絡 ヲ執 リ其 ノ共助 ヲ求 ムベ シ 其 ノ際 当 該 庁 府 県 ハ

第 十 二条  他 庁 府 県 内 ニ於 テ捜 査等 ヲ為 ス必要 ア ル場 合 ニ ハ予 メ当

必 要 ナ ル共 助 ヲ為 スベ シ 第 十 三 条  他 庁 府 県 ニ関 係 ア ル事 項 ハ勿 論 、特 異 ノ事 項 ニ シテ取 締

別 厳 重 ニ取扱 フ ベ シ

潔 ニシ、成 ルベ ク本 文 ノ前 ニ其 ノ要 旨 ヲ摘 記 スベ シ

第 十 八 条  申 通報 文 書 ハ美 濃 判 ノ用 紙 ヲ用 ヒ、 文 字 及 文 章 ヲ明瞭 簡

シ

第 十 九 条  申 通報 文 書 ニ ハ其 ノ冒頭 ニ申 通 報 先各 官 庁 名 ヲ列 記 スベ

同 一事 件 ノ申 通報 ニシ テ数 回 ニ亙 ル モノ ア ルト キ ハ、 各 報 毎 ニ前

報 ノ 日附、 番 号 ノ 外第 何 報 ナ ルカ ヲ記 入 シ前 後 ノ関係 ヲ明 瞭 ニス

ラ ル ル モノ ハ五 通 ヲ送 付 スベ シ前 項 ノ書 類 ハ凡 テ封皮 宛 名 ヲ保 安

第 二 十 条  本 省 宛 ノ申 報書 類 ハ正副 併 セテ 三通 ヲ、 特 ニ重要 ト認 メ

ベシ

注 意 ヲ要 スベ キ人 物 他 庁 府 県 ニ立 廻 リ タ ルト キ又 ハ他 庁府 県 ニテ

課 長 ト スベ シ

ノ参 考 ト ナ ルベ キ モノ ハ相 互 通 報 スベ シ

捜 査中 ト 目 スベ キ 人物 ヲ検 挙 シタ ルト キ ハ速 ニ当 該 庁 府 県 ニ通報

第 二十 二条  社会 運動 ニ関 スル印 刷物 ニ シテ特 高 警察 上注 意 ヲ要 ス

ニ依 リ申 報 スベ シ

第 二 十 一条  特 ニ極 秘 ヲ要 スル事 項 ニ付 テ ハ本 省 ト打 合 セ タ ル方 法

スベ シ

第 十 四条  申 通報 ハ内容 ノ要 点 ヲ逸 セザ ル ニ留 意 スベ シ 申 通報 ハ正 確 ヲ要 ス ル ハ勿論 ナ ル モ、時 宜 ヲ失 ス ルト キ ハ其 ノ価

ハ成 ルベ ク 写) ヲ正副 各 本 ニ添 附 スベ シ 別 ニ行 政処 分禀 議 ノ為

ベ キ モノ ヲ発 見 シタ ルト キ ハ本 省 ニ申 報 シ、 現 品 (現品 ナ キト キ

値 ヲ喪失 スル ヲ以 テ特 ニ之 ガ 送達 ノ迅 速 ヲ期 スベ シ 第 十 五 条  申 通 報 ハ本 執務 心 得若 ハ他 ノ訓 令 、 通 牒 ニ依 リ定 メ タ ル

附 シタ ル モノ ハ別 ニ進 達書 ヲ添 附 スル ニ及 バズ

第 二十 三条  特 ニ定 メタ ル様 式 ニ依 ル申 通報 文 書 ニシテ庁 府 県 名 ヲ

進 達 シタ ル モノト雖 亦 同 ジ

場 合 ノ外 、 本 省 並 各 庁 府 県 以 外 ノ官 庁 ニ対 シ テ之 ヲ為 サ ザ ルヤウ 留 意 スベ シ

シベ

特 ニ機 密 ヲ要 ス ル事 項 ニ付 テ ハ本省 以外 ニ通 報 セザ ル ヤウ留 意 ス

シ、 又略 符 号 ノ定 ア ル モ ノ ハ之 ヲ使 用 スベ シ

第 二 十 四条  電 信 ニ依 リ申 通報 ヲ為 スト キ ハ必 要 ニ応 ジ暗 号 ヲ使 用

ハ相 当 責任 者 ニ対 シ テ之 ヲ為 シ、 用 語 ヲ明瞭 簡 潔 ニシ其 ノ要 点 ヲ

第 二 十 五条  電 話 ニ依 ル申 通報 ハ必ズ 相 手 官署 ノ当 該 事 務責 任 者 若

ニ属 ス ル用 語 ︵ 例ヘ バ 特 別 要 視 察 人) ヲ用 ヒ ザ ル ヤウ留 意 スベ シ

第 十 六条  警 察 関 係 当 局 以 外 ニ申 通報 ヲ為 ス場 合 ニ於 テ ハ警 察 機 密

密 ニ属 ス ル モノ ハ更 ニ封 皮 ニ ﹁警秘 親 展 ﹂ ト明 記 スベ シ 受 理 シ

失 セザ ル ヤウ留 意 スベ シ

第 十 七条  申 通報 文 書 ニ ハ総 テ其 ノ封 皮 ニ別 ノ記 号 ヲ付 シ、 内 容 機

タル ﹁ 警 秘 親 展 ﹂ ノ文 書 ハ課 長 又 ハ係 主 任 自 ラ之 ヲ開 封 ス ル等 格

第 二章  視 察 取 締 第 一節  各種 社会 運 動

体 ノ中 央部 ノ状 況 ヲ知 悉 シ置 ク ニ努 メ、 管 内 ニ於 ケ ル各 種 ノ事 情

第 三十 条  過激 ナ ル社 会 運 動 ニ付 テ ハ常 ニ其 ノ全 国 的 情 勢 殊 ニ各 団

常 ニ管 内 ニ於 ケ ル尖 鋭 分 子 、殊 ニ中 央 方 面 ト ノ連 絡 ニ従 事 シ易 キ

ヲ加 フベ シ

ヲ照 合 シ此 種 運 動 ノ潜 入 ス ル虞 ア ル方 面 ニ対 シ特 ニ厳 密 ナ ル警 戒

キ ハ之 ガ組 織 ノ動 機 、 経 過 、 主 ナ ル構 成 人 物 、 団 体 ノ 目的 、 主 義 、

人 物 ノ動 静 ニ注 意 シ、 管 内 ノ此種 運 動 ノ動 向 竝 中央 方 面 ノ運動 ト

第 二 十 六条  各 種ノ 社 会 運動 ニ関 シ団 体 ヲ組 織 ス ル モノ ア リ タ ルト

綱 領 、実 勢 力 、 他 団 体 ト ノ 関係 其 ノ他 各 種 ノ所 要事 項 ヲ調 査 シ充

ノ関 係 ヲ知 悉 シ置 ク ニ努 ムベ シ

分其 ノ実体 ヲ審 ニ ス ルト 共 ニ、 爾 後 ノ推 移 ニ付 不 断 ノ注 意 ヲ為 ス シベ

其 ノ他 ノ印 刷 物 ニ対 シテ ハ速 ニ之 ヲ押 収 シ、其 ノ出 所 ヲ探 査 ス ル

等 適 当 ノ措 置 ヲ講 ズ ルト共 ニ、本 省 竝 関 係 庁府 県 ニ申 通 報 シ、 同

第 三十 一条  過激 ナ ル主 義 ノ宣 伝煽 動 ノ為 ニ発 行、 配 布 ス ル機 関紙

時 ニ司 法 大 臣、 所 轄 検 事 長 竝 検事 正 ニ モ申 通 報 スベ シ

団 体 ノ日常 行 動 、 指 導 精 神 ノ推 移 、 指 導 者 ノ動 静 等 ニ付 テ ハ特 ニ

重 ナ ル取締 ヲ加 フ ベ シ

周 密 ナ ル注 意 ヲ払 ヒ、 矯 激 ナ ル主 張 行 動 ニ趨 ル ガ如 キ場 合 ニ ハ厳

思 想 問 題、 社会 問 題 其 ノ他 ノ研究 等 ニ関 シ団 体 ヲ組織 ス ル モノ ア

平 素 ヨリ管 内 印刷 所 、 活 版 所 ニ対 ス ル視 察 ヲ厳 ニシ此 種 印 刷物 ノ

此 種 印 刷物 ノ 記事 ニ対 シ テ ハ常ニ 充 分 ノ注 意 ヲ払 ヒ、 運 動 ノ情 勢

発 見 ニ努 ムベ シ

リ タ ルト キ ハ前 二項 ニ準 ジ 之 ガ視 察 取 締 ヲ為 スベ シ

其 ノ他 取締 上参 考 ト ナ ルベ キ事項 ヲ知 ル ニ努 ムベ シ

第 二十 七 条  団 体 ニ対 スル視察 ニ関 シテ ハ特 ニ裏 面 ノ主 張 行 動 、 背 後 ノ人 物 、資 金 ノ出 所 、 団 体 内部 ニ於 テ潜 在 的 勢 力 ア ル者 等 ノ内

等 各 種 ノ利便 ヲ提 供 シ間 接 ニ之 ヲ援 助 セ ム ト スル者 ニ対 シテ ハ厳

第 三十 二 条  過激 団 体 ニ加 盟 セザ ル モ此 種 運 動 ニ資 金、 物 資 、宿 所

査 ニ意 ヲ用 フベ シ 第 二十 八条  各 種 団 体 ノ機 関 紙 、指 令 其 ノ他 ノ重 要 文書 等 ハ努 メ テ

密 視 察 取 締 ヲ加 フベ シ

之 ヲ入 手 シ、 取 締 ノ参 考 ニ資 ス ルト共 ニ本 省 並 関 係庁 府 県 ニ モ送

法 巧 緻 ト ナ リ、 絶 エズ 新 シ キ戦略 戦 術 ヲ案 出 シ テ執 拗 ナ ル宣 伝煽

第 三十 三 条  過激 ナ ル社 会 運 動 ハ検 挙 取 締 ヲ受 ク ル度 毎 ニ益 其 ノ方

付 スベ シ 集 会 、多 衆 運動 等 ニ シテ重 要 ナ ル モノ又 ハ会 館 、 集会 場 其 ノ他 ノ

一、 検 挙 ノ時 期、 方 法 竝 範 囲 ニ付慎 重考 慮 ヲ廻 ラ ス コト

シ、 検 挙 ヲ シ テ最 モ効 果 的 ナ ラ シ ム ル ニ努 ムベ シ

第 三十 四条  全 国的 関 聯 ア ル事 件 ノ検 挙 ニ当 リ テ ハ左記 諸 点 ニ留 意

動 ヲ為 ス ヲ以 テ、 平 素 ヨリ之 ガ 対策 ヲ講 究 シ置 クベ シ

施 設 ニシ テ特 異 ナ ル モノ等 取 締 上参 考 ト ナ ルベ キ モノ ハ成 ルベ ク 之 ヲ撮 影 シ テ本省 並関 係 庁 府 県 ニ送 付 シ、 特 別 要 視 察 人視 察 内 規 第 三十 一条 (第 一編 一〇頁 ) ニ準 ジ 整 理保 存 スベ シ

ノ 連 絡 ヲ緊 密 ニ スベ シ

第 二十 九 条  学 生 ノ思 想運 動 ノ視 察 取締 ニ当 リ テ ハ特 ニ学 校 当 局ト

二、 本 省、 検 事 局 竝関 係 庁 府 県 ト 成 ルベ ク事 前 ニ打合 ヲ為 ス コト

ク ハ勿 論、 其 ノ所 謂 影 響 下 分 子 ノ動 静 ニ付 テ モ周密 ナ ル視 察警 戒

第 三 十 八 条  外廓 団 体 ノ所 属 分 子 ハ常 ニ之 ヲ厳 重 ナ ル視 察 圏 内 ニ置

サ ン ト ス ル モノ ニ対 シ テ ハ左記 通 牒 ノ趣旨 ニ依 リ視 察 取 締 ヲ為 ス

第 三 十 九 条  共 産 主 義 運 動 ニ関 シ露 国 其 ノ他海 外方 面 ト ノ連 絡 ヲ為

ヲ加 フベ シ

三 、 新 聞紙 ノ記 事 差 止 ︵内 務省若 ハ検 事 局 ) ノ要 否 ニ付 充分 考 慮 ス ル コト

ベシ

四、 組 織 ノ全 貌 竝 其 ノ中 央 部 ト ノ関 係 ヲ明 ニシ置 ク コト 五、 検 挙 予定 者 ノ所 在 ヲ予 メ確 知 シ置 ク コト

コト

第 四 十 条  所 謂 国 家 主 義 運 動 者中 ニ ハ動 モ ス レバ社 会 組 織 ノ急 激 ナ

月 五 日内 務 省 秘 第 一、〇五〇 号) ( 第 三編 六 四頁 )

一、 露 西亜 関 係 邦 人 主 義 者 等 ノ取 締 ニ関 ス ル件 (大 正 十 四年 十 二

秘 第 二 六〇 号) ( 第 三 編 五 九 頁 及六 二頁 )

一、 過 激思 想 宣 伝 取 締 ニ関 ス ル件 (大 正十 四年 六月 二 日内務 省 警

三 月 十 三 日警 保 発 第 一三 号 ノ内 ) (第 三編 五 八頁 )

一、 露 国 過激 派 ノ檄 文 発 送 取締 ニ付 税 関 ト連 絡 方 ノ件 (大 正 八年

六 、 検 挙 竝 取調 従 事 員 ノ人 選 、分 担 竝 其 ノ統 制 ニ付充 分 考 慮 スル

検 挙 ニ着手 シタ ルト キ ハ即 時其 ノ概 要 ヲ申 報 シ、 爾後 其 ノ進 展 ノ 状 況 ニ付 随時 申 報 スベ シ

ル者 ニ付 テ ハ聴 取 書 写 ヲ本 省 ニ送 付 スベ シ  尚 特 ニ重 要 ナ ル モ ノ

第 三十 五 条  特 高 警 察 関 係 ノ犯 人 ヲ検 挙 シタ ルト キ ハ、 其 ノ重 要 ナ

ナ ル トキ ハ成 ルベ ク検 事 聴 取 書 写 ヲ モ送 付 スベ シ 国 家 主 義関 係 ノ不 穏 事 件 ニ付 テ ハ前 項 ノ聴 取 書 写ノ 外起 訴 状 、 予

ル ヲ以 テ、 此 種 運 動 ニ対 シテ ハ常 ニ周密 ナ ル視 察 ヲ遂 ゲ 、此 ノ如

ル変 革 ヲ企 図 シ テ直 接 行動 ニ訴ヘ 若 ハ之 ヲ煽 動 セ ム ト スル モノ ア

キ挙 措 ニ出 ヅ ルノ 余地 ナ カ ラ シム ルヤウ厳 重 ナ ル取 締 ヲ加 フベ

審 終 結 決定 書 、 論 告 書 、 判 決書 等 ノ 写 ヲ モ送 付 スベ シ

本 共 産 党 ハ勿 論 所 謂 外 廓 団 体等ノ組 織 ノ早 期 発見 ニ努 メ、 取 締 及

第 三十 六 条  共産 主 義 運 動 ニ対 シテ ハ特 ニ視 察 内 偵 ヲ周密 ニシ、 日

シ

第 四 十 一条  国 家 主 義 団 体 ニ対 シテ ハ特 ニ其 ノ急 進 的 人 物 、潜 行 的

第 三十 七 条  外廓 団 体 中 ニ ハ表 面合 法 的 団 体 ヲ仮 装 ス ル モノ ア ル ヲ

ニ付 テ ハ常 ニ周 密 ナ ル視 察 ヲ遂 ゲ、其 ノ旅 行 及 転 住 等 ニモ細 心 ノ

活 動 ヲ為 ス者 、 背 後 ノ人物 等 ヲ平 素 ヨリ審 ニ シ、 之 等 ノ者 ノ動 静

シベ

検 挙 ノ時 機 、 方 法 ヲ誤 ル コト ナ ク極 力 此 種 運 動 ノ予防 鎮 圧 ヲ期 ス

以 テ、 単 ニ表 面 ニ現 レ タ ル綱領 、 規 約 ニノ ミ依 ル コト ナ ク、 組 織

ト ノ関 係殊 ニ極 左 団 体 ト ノ関係 、 国 際 的 連 絡 ノ有 無其 ノ他 発 行 文

ニ付 テ ハ、仮 令団 体 所 属 員 ニ非 ズ ト雖 其 ノ動 静 ニ不断 ノ注意 ヲ払

第 四 十 二 条  国 家 主 義 団 体 ノ指 導者 等 ノ側 近 人物 或 ハ 一時 寄 寓者 等

注 意 ヲ払 フベ シ

書 ノ内 容等 ニ亙 リ厳 密 注 意 シ、 其 ノ本 来 ノ指 導 精 神 並実 体 ヲ明 ニ

フベシ

ノ動 機 、中 心分 子 ノ思 想 傾 向、 ﹁フラ ク シ ヨン﹂ ノ 有 無 、 他 団 体

ス ル ニ努 ムベ シ

第 四十 三 条  国 家 主義 運動 ノ活 動 分 子 ノ交 際 関 係 、 通 信 、 連 絡等 ニ ハ特 ニ充 分 ナ ル内偵 ヲ遂 グ ベ シ

注 意 シ之 ガ取 締 ヲ為 スベ シ

第 四十 四条  直接 行動 ノ動 機 ト ナ ル虞 ア ル過激 ノ言 論 並 流 言蜚 語 ニ

テ結 合 ス ル モノト雖 、 過激 ナ ル社 会 変革 ノ 目的 ヲ蔵 ス ル モノ ト認

メ ラ ル ルモ ノ ニ付 テ ハ充 分 其 ノ真 相 ヲ内 偵 シ置 クベ シ

第 二節  各 種 争 議

第 五 十 二 条  労 働 争 議 、 小 作 争 議、 借 家 争 議 、 電 燈争 議 等 各 種争 議

手 段方 法 ニ シテ過 激 ニ亙 リ治 安 ヲ紊 ルガ如 キ コト ナ カ ラ シ ム ル ヤ

キベニ非 ズ ト雖 、 之 ガ推 移 ニ付 テ ハ不 断 ノ注 意 ヲ払 ヒ、苟 モ其 ノ

ウ適 切 ナ ル取締 ヲ加 フベ シ

ニシ テ純 然 タ ル経 済 的 紛 議 ニ過 ギ ザ ル モノ ニ対 シテ ハ濫 ニ干 渉 ス

努 ムベ シ

争 議 ノ性 質 経 済 的 紛 議 ノ範 囲 ヲ逸 脱 シ過 激 思 想 ノ宣 伝 、革 命 運動

第 四十 五 条  国家 主 義 運 動 ニ関 スル所 謂 不穏 文 書 ニ対 シテ ハ極 力 之

前 項 ノ不穏文 書 ニ対 シテ ハ第三 十 一条ニ準ジ 措 置 スベ シ 但 シ其

ガ入 手 ニ努 ム ルト同 時 ニ、其 ノ出 所 、 執 筆 者 、 頒 布 先等 ノ探 知 ニ

ノ申 通 報 先 ニ付 テ ハ必 要 ノ範 囲 ニ止 ムベ シ

ニ対 シ厳 重 ナ ル警 戒 取 締 ヲ加 フベ シ

ノ訓練 其 ノ他 不純 不 穏 ノ目的 達 成 ノ為 ニ スル モノ ナ ルニ於 テ ハ之

農 村 工場 鉱 山 等 ノ状 況 、 地主 工場 主 鉱 山 主 等 ト 小作 人 労働 者 ト ノ

第 五 十 三条  争 議 発 生 ニ際 シ取 締 上 過 誤 ナ キ ヲ期 ス ル為 、平 素 ヨリ

払 ヒ、 之 ガ計 画 ノ早 期 探 知 ニ努 ムベ シ

第 四十 六 条  直 接 行 動 等 ニ関 シ テ ハ流 言蜚 語 ノ類 ト雖 細 心 ノ注 意 ヲ

第 四十 七 条  時 事 問 題 ニシテ 国 家主 義 運動 者 ノ策動 ス ル虞 ア リト 認

注意 人物 ノ出 入 又 ハ動 静等 ニ付充 分 知 悉 シ置 ク ニ努 ムベ シ

関係 、 小作 人 労 働 者 ノ意嚮 並動 静 、 農 民 組 合労 働 組 合 ノ状 況、 要

メ ラ ル ル モノ ニ付 テ ハ予 メ之 ニ留 意 シ、 申 通 報其 ノ 他取 締 上 機 宜

第 五十 四条  争 議 ノ取 締 ニ付 テ ハ特 ニ左 記 事 項 ニ注 意 スベ シ

ヲ失 セザ ル ニ努 ム ベ シ

行 動等 ハ事 大 小 ト ナ ク速報 ス ルト共 ニ、 機 密 ノ保 持 ニ付 格 別 ノ注

ヲ指 導 ス ル者 ナ キ ヤ ニ注 意 シ、 殊 ニ極 左 分 子 ノ介 入 ニ対 シ最 モ

三 、殊 更 ニ争 議 ヲ誘 発 、煽 動 、 激 化 シ若 ハ竊 ニ外 部 ニア リ テ争 議

カ ラ シ ム ル ニ努 ム ル コト

秘密 移 動 本 部 等 ノ有 無 ニ注 意 シ、 諸 種 ノ 不穏 計 画 実 行 ノ余 地 ナ

二、 争 議 団 本 部 ノ組 織 竝活 動 状 況 等 ノ視察 内 偵 ヲ厳 密 ニ シ、 殊 ニ

加 ヘ却 テ争 議 ヲ激 化 セ シ ム ルガ如 キ コト ナキ ヤ ウ注意 ス ル コト

ニ捲 キ込 マ レザ ル ヤウ注 意 ス ル ハ勿 論 、殊 更 ニ厳 重 ナ ル取 締 ヲ

一、 当 事 者 双 方 ニ対 シ常 ニ公 正 ナ ル態 度 ヲ保 持 シ濫 ニ争 議 ノ渦 中

第 四十 八 条  国 家 主 義 運 動 ニ関 ス ル不 穏 策 動 ノ聞 込 並要 注 意 人 物 ノ

意 ヲ払 フベ シ 第 四 十九 条  国 家 主義 運動 者 ニ シテ貴 顕 高 官 ヲ訪問 シ或 ハ身 辺 ニ追 随 ス ル モノ ア ルト キ ハ其 ノ身 元 、 目 的 等 ヲ内偵 シ、 不 穏 ノ行動 ニ 出 ヅ ル虞 ア ル モノ ニ対 シテ ハ厳 重取 締 ヲ為 スベ シ 第 五 十 条  国家 主 義 運 動 ノ美 名 ニ匿 レテ暴 行 、脅 迫 、 詐 欺 、 恐 喝 等 ニ依 リ不 正 ノ利 益 ヲ得 若 ハ売 名 ヲ図 ラ ント スル者 又 ハ之 等 ノ団 体 ニ対 シ テ ハ厳 重 ナ ル取 締 ヲ為 スベ シ 第 五 十 一条  私 塾 、 教 化 団体 、 修 養 団 体 若 ハ宗 教 団 体等 ノ形 態 ニ於

厳重 ナ ル警 戒 取 締 ヲ加 フ ル コト 四 、 所謂 暴 力 団 等 ヲ雇 入 レ若 ハ自 警 団 等 ヲ組 織 シ テ暴 力行 為 ニ訴 ヘムト ス ルガ如 キ場 合 ニア リ テ ハ特 ニ厳 重 ナ ル取締 ヲ加 フ ル コ ト

府 県 ト ノ連 絡 ヲ緊 密 ニ スル コト

五 、 他 庁府 県 ニ関 係 ア リ若 ハ波 及 スル虞 ア ル争 議 ニ付 テ ハ関 係 庁

上 特 ニ慎 重 ナ ル考 慮 ヲ加 フ ル コト

六 、 公 益事業 ニ関 スル争 議 ニ対 シテ ハ其 ノ事 業 ノ性 質 ニ鑑 ミ取 締

等 トノ連 絡 ヲ密 ニス ル コト

七 、争 議 ニ関 シ仮 処 分 等 ノ強制 執 行 ア ルト キ ハ裁 判所 又 ハ執 達 吏

第 五十 五 条  争 議 ニ関 シ テ所 謂 ﹁ゼ ネ スト﹂ ヲ計 画 シ若 ハ之 ニ導 カ

シ

ムト スル虞 ア ル モノ ニ対 シ テ ハ厳 密 警 戒 シ之 ガ事 前 防 止 ニ努 ムベ

第 三 節  集 会 及 多 衆 運動

ル戦 術 ヲ用 フ ル モノ ア リ タ ル場 合 ハ其ノ状 況 ヲ成 ルベ ク詳細 ニ申

第 五十 六条  各種 争 議 ニ関 シ新 奇 ナ ル戦 術 又 ハ社 会 的 影響尠 カ ラザ

通報 スベ シ

公 安 ヲ害 スル虞 ア リ ト認 ムルト キ ハ事 前 ニ阻 止 スベ シ

第 五十 七条  集 会 又 ハ多 衆 運 動 ノ計 画 ハ成 ルベ ク早 期 ニ之 ヲ探 知 シ、

第 五十 八 条  屋 外 ニ於 ケ ル国 民 大 会 、民 衆 大会 、 市 民 大 会 、労 働 者

第 五十 九 条  集 会 又 ハ多 衆 運 動 ニ対 スル取 締 ニ付 テ ハ特 ニ左 記 事 項 ニ注意 スベ シ

ト

一、 標 語 等 ハ事前 ニ内 閲 シ、 不 穏 当 ノ モノ ハ諭 旨 撤 回 セ シム ル コ

二、 責 任 者 ヲ定 メ シ メ、 統 制 ヲ失 ハシメ ザ ルヤ ウ ニ ス ル コト

三 、所 謂 警 備 員 等 ニシ テ警 察官 ニ対 抗 セ ムト ス ルガ如 キ意 図 ア ル モ ノ ハ之 ヲ設 ケ シ メザ ル コト

四 、 必要 ト認 ム ル場 合 ハ入場 者 又 ハ参 加者 ノ身 体 検 査 ヲ為 ス コト

五、 場 内 又 ハ途 中 ニ於 テ宣 伝ビ ラ等 ノ撒 布 ヲ為 サ シ メザ ル コト

六 、 検 束等 ヲ為 ス場 合 ニ於 テ ハ混 乱 セ シ メザ ルヤ ウ注意 ス ル コト

ト スル計 画 ナ キ ヤ ニ留 意 ス ル コト

七 、 主催 者 又 ハ参 加 者 ニ於 テ殊 更 ニ混 乱 ヲ生 ゼ シメ解 散 ニ導 カ ン

八 、 解散 ヲ命 ジ又 ハ散 会 スル場 合 ニ ハ予 メ警 察 官 ノ配 置 等 ニ注 意

コト

シ、 示 威 運動 等 ノ不 穏 ノ行動 ニ移 ラ シ メザ ル ヤウ厳 重 警 戒 ス ル

約 、 議 案、 ﹁メ ツセー ジ﹂ 等 ハ事 前 ニ提 出 セ シメ テ 内 閲 シ、 不 穏

第 六 十 条  集 会 ニ於 テ附 議 、朗読 、配 布 セ ラ ルベ キ宣 言 、 綱領 、規

当 ノ モノ ハ諭 旨 ノ 上 訂正 又 ハ撤 回 セ シムベ シ

第 六 十 一条  集 会 ノ臨 監 ハ成 ルベ ク社会 運 動 ニ通 暁 シ特 高 事 務 ニ経

験 ア ル者 ヲ シテ之 ニ当 ラ シムベ シ 講 談 論 議 ニ対 シ テ ハ成 ルベ ク

第 六十 二条  屋 外 集 会 又 ハ多 衆 運 動 ニ対 シテ ハ其 ノ場 所 、 時 間 、 順

速 記 ヲ付 スベ シ

ラ レ居 ルモ ノ ヲ除 キ原 則 ト シ テ阻 止 スベ キ モノ ト ス 特 ニ公安 ヲ

付 必要 ニ依 リ制 限 、 禁 止 又 ハ変 更 ヲ加 フベ シ

路 、 参 加 者 ノ服装 、 携 帯 品 、 隊 伍 ノ編 成 、 楽 隊 、 旗幟 、 手 旗 等 ニ

大 会 、 農 民 大 会等 ノ集 会 並 ニ多 衆 運動 ハ、 従 来 慣 行 ト シ テ許 容 セ

為 スベ シ

害 ス ル虞 ナ シト認 メ之 ヲ許 容 セ ムト ス ルト キ ハ予 メ本 省 ト打 合 ヲ

日、 性 別 、 職 業 、性 行 、 人 相 、 特徴 、 渡 来 年 月 日、 家 族 関 係 、 交

ルベ ク名 簿 ヲ作 成 シ、 本 籍 、出 生 地、 住 所 、 氏 名、 別 名 、 生 年 月

外 特 ニ左 記事 項 ニ注意 スベ シ

理 シ、 他 庁 府 県 ニ移 転 ノ際 ハ移 転 先所 轄 庁 府 県 ニ成 ルベ ク通 報 ス

友 関 係 、 団 体 関係 等 警 察 取 締 上 必要 事 項 ヲ記 入 シ、 異 動 ノ都 度 整

第 六 十 三 条  所 謂 ﹁メ ーデ ー﹂ ノ取 締 ニ関 シテ ハ前 数 条 ニ掲 ゲ タ ル

一、労 働 組合 、 農 民 組 合 以外 ノ各 種 団 体 ハ参 加 セ シメザ ル コト

ナ ル モノ ハ時 々申 報 スベ シ

内 地在 留 朝 鮮 人 、 台 湾 人 ニ シテ此 種 議 員 タ ル者 ノ言 動 ニ シテ重 要

シ立候 補 シタ ル者 ア ルト キ ハ其 ノ状 況 ニ付 必要 事 項 ヲ申 報 スベ シ

第 七 十条  内 地 在 留 朝 鮮 人、 台 湾 人 ニシテ各 種 公 ノ議 員 ノ選 挙 ニ際

正 八年 八月 第一 三三号) ( 第 三 編 八 六頁 )

一、 労 働 者 募 集 取締 規 則 (大 正 七年 一月総 督 府 令 第 六号  改 正 大

日朝 保 秘 第 一、一七 〇 号) ( 第 三 編 三 二頁)

一、 朝 鮮 人 労 働 者募 集 願 取 扱 ニ関 ス ル件 (大 正 十 五年 九 月 二 十 三

号) ( 第 三編 三 二 頁 )

一、 朝 鮮 人 労 働 者 募集 ニ関 ス ル件 ︵昭 和 四年 五月 七 日発 社 第 三 〇

警 閣 第 三号 ) ( 第 三編 三 一頁 )

一、 朝 鮮 人 労 働 者募 集 ニ関 スル件 (大 正十 二年 五 月十 四 日内 務省

第 四 二〇 号 ) (第 三編 三 〇 頁)

一、 朝 鮮 人 労 働 者 ノ募 集 ニ関 スル件 (大正 七年 十 二 月十 二 日警 閣

ムト ス ルモ ノ ニ対 シテ ハ左 ノ通 牒 等 ニ依 リ措置 スベ シ

第 六十 九 条  内 地 企業 家 ニ シテ鮮 内 ニ於 テ朝 鮮 労 働 者 ノ募 集 ヲ為 サ

絶 エズ 厳 密 ナ ル視察 ヲ遂 ゲ容 疑 人 物 ノ発見 ニ努 ムベ シ

第 六十 八 条  在 留 朝鮮 人 ノ密 集 地 帯、 稼 働 場 所 、 飯場 等 ニ対 シ テ ハ

講 ズベ シ

ル (名 簿 ア ラバ 送 付 ス ル コト ) 等常 ニ所 在 ヲ明 ニシ置 ク ノ方 法 ヲ

二 、旗 幟 ノ数 、 種 類 、 大 サ、 色 彩 、 旗 竿 ノ先 端、 標 語 ノ数 等 ニ付 必 要 ナ ル制 限 ヲ加 フ ル コト 三 、 主催 者 ヲ シテ成 ルベ ク参 加 証 ヲ定 メ シ メ、 之 ヲ所 持 セザ ル者 ハ参 加 セ シメ ザ ル コト 四、集 合 地 点 ト解 散 地 点 ト ノ中 途 ニ於 テ ハ参 加 セ シメザ ル コト 五 、 各 団 体 ノ思 想 系 統 、平 素 ノ親 疎 反 目 ノ状 況等 ヲ考 慮 シ行進 ノ 順 序 ヲ定 ム ル コト 六 、 極 左 団体 並 所 謂 反動 団 体 等 ノ行 動 ニ付 テ ハ事 前 内 偵 ヲ厳 密 ニ シ テ ﹁メ ーデ ー﹂ ニ対 ス ル策 動 ヲ阻 止 スル コト 第 六十 四 条  遠 足 会 、 慰 安会 、 海 水 浴 、 神 社 参 拝、 共 同 植 付 、共 同 刈 取 、 抗 議、 陳 情 其 ノ他 名義 ノ如 何 ヲ問 ハズ事 実 上屋 外 集 会 又 ハ 多 衆 運 動 ト 認 メ ラ ル ルモノ ニ対 シテ ハ前 数 条 ニ依 リ取 締 ヲ為 スベ シ

第 六十 五 条  非 政事 集 会 ニ於 テ政事 ニ渉 ルベ キ事項 ヲ論 議 スル虞 ア ル モノ ニ対 シ テ ハ、 正 規 ノ届 出 ヲ為 サ シメ、 政事 集 会 ト シテ取締 ヲ為 スベ シ 第 六十 六条  思 想 団体 、 労 働 団 体 、農 民団 体 、 各 種 学校 ノ学 生 生 徒 等 ニ シテ社 会 問 題 ニ関 スル研 究 ヲ標 榜 シテ開 催 ス ル講 習 会 又 ハ講 演会 ニ対 シテ ハ、 必要 ニ依 リ前 数 条 ニ準 ジ取 締 ヲ為 スベ シ 第 四節  朝 鮮 人 及 台 湾 人 第 六十 七条  在 留 朝鮮 人 ニ付 テ ハ其 ノ居住 地所 轄 ノ庁 府 県 ニ於 テ成

第 七 十 一条  朝 鮮 人 、 台湾 人 タ ル留 学 生 及 宗 教家 ノ動 静 ニ付 テ ハ充 分 注意 スベ シ

湾 人 )中 要 視 察 人 若 ハ特 ニ注 意 ヲ要 スト 認 メ ラ ルル人物 ニ対 シ テ

第 七 十 五 条  外 地 並 海 外 ヨリ渡 来 (再 渡 来 ヲ含 ム) スル朝 鮮 人 (台

第 七 十 六条  外 地 若 ハ海 外 ヨリ渡 来 ス ル朝 鮮 人 (台 湾 人) ニ対 シテ

ハ、第 一号 様 式 (三 七 頁) ︹ 略︺ニ依 リ各事 項 ヲ調 査 シ本 省 並 行 先

第 七十 二条  朝 鮮 人 (台湾 人 ) ノ ミ ヲ以 テ、 若 ハ主 ト シ テ 朝 鮮 人

ハ爆 発物 、 変 装 戎 器 、拳 銃 、 短 銃 、 薬 品其 ノ他 危 険 ノ虞 ア ル物 件

要 注意 朝 鮮 人 、 台 湾 人留 学 生 ノ帰 鮮 、帰 台 ニ付 テ ハ特 ニ注意 シ、

( 台 湾 人 ) ヲ以 テ組 織 ス ル団 体 又 ハ朝 鮮 人 (台 湾 人) ノ保 護 、 誘

ノ所 持 、 隠 匿 ニ対 シ特 ニ厳 重 ナ ル検 索 ヲ行 ヒ之 ガ発 見 ニ努 ムベ シ

地 庁 府県 ニ申 通 報 スベ シ

掖其 ノ他 朝 鮮 ︵ 台 湾 ︶ 問 題 ニ関 ス ル団体 ニ対 シ テ ハ、 第 二十 六 条

乗船 地所 轄 庁 ニ於 テ其 ノ氏 名 、 行 先 地 ヲ関 係 庁 ニ通報 スベ シ

及第 二十 七 条 ニ準 ジ視 察 取 締 ヲ為 スベ シ

ノ ナリ ヤ否 ヤ ヲ調 査 ス ルト共 ニ、仮 令朝 鮮 (台 湾 )内 ニ於 テ正規

前 項 ノ危 険 物 ヲ発 見 シタ ルト キ ハ、 正規 ノ手 続 ヲ経 テ移 入 セ ル モ

ノ許 可 ヲ受 ケ居 ル モノ ナ リ ト雖 、内 地 ニ於 ケ ル之 ガ携 帯 ニ付 テ ハ

内 鮮 融 和 ノ趣 旨 ニ悖 ルガ如 キ団体 ノ組 織 ハ、 成 ルベ ク事 前 ニ之 ヲ 成 立 セ シメ ザ ルヤ ウ適 宜 ノ措 置 ヲ講 ズ ルト共 ニ、其 ノ都 度 申報 ス

厳 重身 元 等 ヲ調 査 シタ ル上 、 事情 止 ムヲ得 ザ ル場 合 ノ外 之 ヲ許 可 セザ ルノ方 針 ヲ執 ルベ シ

ベシ

ア ル場 合 ニ ハ、 其 ノ加 盟員 数、 主 ナ ル加 盟 人物 、 団体 内 ニ於 ケ ル

第 七十 三 条  内 地人 関 係 ノ各 種 団体 内 ニ朝 鮮 人 (台湾 人 ) ノ加 盟 者

ノ上 帰 鮮 セ シ ム ルヤ ウ適 宜 ノ措置 ヲ講 ジ、 本 省、 関 係 庁 府 県並 朝

第 七十 七 条  不 正渡 航 ノ朝 鮮 人 発 見 ノ際 ハ必 要 事 項 ヲ調 査 シ、 懇 諭

ノ点 ナ キ限 リ単 ニ不 正 渡 航 者 ナ ルノ故 ヲ以 テ濫 ニ不 当 苛 酷 ノ取 扱

ザ ルヤ ニ付特 ニ厳 密 ナ ル取 調 ヲ為 スヲ要 スル ハ勿論 ナ ルモ、 容 疑

鮮 関 係 庁 ニ申 通報 スベ シ  右 取扱 ニ際 シテ ハ容疑 不逞 ノ人物 ニ非

加 盟 員 ノ地位 並 動 静 、 其 ノ団 体自 身 ノ朝 鮮 (台 湾) 問 題 ニ関 ス ル 策 動 ノ状 況其 ノ他 所 要 事 項 ヲ調 査 シ、 必 要 ニ応 ジ適 宜 ノ取 締 ヲ為 スベ シ

第 七 十 四条  外 地 若 ハ海 外 ト内 地 ト ノ間 ヲ来 往 ス ル朝 鮮 人 (台湾 人 )

ニ モ電 話 等 ニ依 リ逓 次 通報 シ、尚 必要 ア ル場 合 ハ本籍 地 又 ハ住 所

シテ ハ行 先 地 庁 府県 ニ通 報 スルト共 ニ、 成 ルベ ク沿 道関 係 庁 府 県

ア ル モ留 置 取 調 ヲ要 ス ル程 度 ニ非 ズ ト認 メ通 過 セ シメ タ ル者 ニ対

テ厳 密 ナ ル検 索 ヲ励 行 シ要 注 意 人物 ノ発 見 ニ努 ムベ シ 容 疑 ノ点

察 警 戒 ヲ行 フ ノ外 、 平 素管 内 在 留 並 来 往朝 鮮 人 ノ動 静 ニ充 分 留意

者 等 ニ対 ス ル臨 検 ノ執 行 等 有 効適 切 ナ ル手 段 ヲ講 ジ テ厳 重 ナ ル査

実 施 、 主 要 ナ ル船 車 発 着場 ノ見 張 、 検 索 ノ励 行其 ノ他時 々接 客 業

入 スル不逞 人 物 ニ対 シ テ ハ、 必要 ニ応 ジ 船 舶 、列 車 内 移動 警 察 ノ

第 七十 八 条  海 外 其 ノ他 ヨ リ不 穏 不軌 ノ行 動 ヲ目的 ト シ テ内 地 ニ潜

ヲ為 スガ如 キ コト ナキ ヤ ウ注意 スベ シ

地所轄 庁 ( 海 外派 遣 内 務 書 記 官、 同 事 務 官 ヲ含 ム) ニ直 接 照 会 ス

スル等 之 ガ発 見 逮 捕 ニ付 最善 ノ努 力 ヲ払 フベ シ

ニ対 シテ ハ特 ニ注意 ヲ払 ヒ、 着 船 地 又 ハ乗 船 地 ノ所 轄 庁 府 県 ニ於

ル等 迅 速 適宜 ノ措 置 ヲ講 ズ ベ シ

七、 警 察 官 ノ言 動 ニ関 ス ル件 ( 昭和七年特高外事課長会議注意事項)

六、 特 高 月 報 ノ取 扱 方 ニ関 ス ル件 ( 昭和六年特高外事課長会議注意事項)

関 係 税関 、 鉄 道 当 局 等 ト常 ニ緊 密 ナ ル連 絡協 調 ヲ保 持 ス ル ニ努 ム

第 七十 九条  前 数 条 ノ検 索 実施 ニ付 テ ハ当 該業 務 者 、 従 業 員 ハ勿論

八、 不穏 文 書 等 取 締 方 ニ関 ス ル件

牒 ( 附参考)

事課長会議注意事項)

(

九、 政 事 結 社 其 他 諸 団体 ノ綱 領 政 策 等 ニ関 ス ル件

十 、 結 社 ノ取 締 ニ関 ス ル件 ( 昭和九年特高外事課長会議注意事項)

昭 和七年 八月十九日警保局保発甲第五七号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

十 一、 請 願 運 動 ニ関 シ金 銭 等 ヲ徴 収 スル モノ ヽ取 締 ニ関 ス ル件

第 二 、共 産 主 義 運 動

一、 日本 共 産 党 関係 者 ノ検 挙 取 締 ニ関 ス ル件

(

昭和六年 四月十八日警保局保発甲第 一一号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

二、 日本 労 働 組合 全 国協 議 会 ノ取 締 ニ関 ス ル件

)

)

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)

( 昭和八年十月十六日保

昭和八年五月三日警保局保発甲第 一七号 ( 警 保 局 長 ヨリ各庁府県長官宛

三、 所 謂 外 廓 運動 ニ関 シ治 安 維 持 法 適 用 ノ 件 安課長ヨリ各庁府県宛)

四、所謂外廓運動 ニ関

)

十 二、 請 願 運 動 取締 ノ件 ( 昭和七年六月十日警保局長ヨリ各庁府県長官宛電報)

)

( 昭和七年特高外

昭和七年十二月二十 一日警保局保発甲第 八 一号 警 保 局 長 ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

ベシ 第 八 十 条  外 地並 海 外 ニ在 ル朝 鮮 人 (台 湾 人) 主 義 者 ト内 地 在 住 ノ 同志 ト ノ連 絡 提 携 ニ対 シ テ ハ常 ニ周 密 ナ ル注 意 ヲ払 ヒ、 特 ニ其 ノ 通 信 、来 往 ニ付 厳 重 視 察 内 偵 ヲ為 スベ シ 第 八 十 一条  外 地 編 入 ノ要 視察 人 ノ来 往 、居 住 ニ対 シテ ハ其 ノ動 静 ヲ監 視 シ、 内 地 及 外 地 関係 庁 ニ通 報 スル ノ外 、 重要 事 項 ニ関 シテ ハ本 省 ニ申 報 スベ シ

次

外出 先官 憲 ト緊 密 ナ ル連 絡 協調 ヲ保 持 スル ニ努 ムベ シ

第 八 十 二 条  朝 鮮 人 、 台 湾 人 ノ取 締 ニ関 シ テ ハ特 ニ外 地関 係 庁 並海

(以 下略 )

第 三編  通

目 則

一、 警察 通報 内 規 ( 大正元年十二月六日内務省訓令第二二六号)

第 一、 通

昭和八年 十 二月 二 十 日 五、所謂外廓運動 ニ関 シ治安維持法適 用ノ件(保 安課長 ヨリ各庁府県宛

昭和八年 十 月 二 十 五 日 シ治安維持法適 用ノ件(保 安課長 ヨリ各庁府県宛

六、司法警察職務規範第 三十 一条 ノ犯罪報告方 ニ関 スル件

昭 和六年七月二十 二日警保局保発甲第 二十三号 ( 警 保 局 長 ヨ リ各 庁 府 県 長 官 宛

七 、 ﹁ピ オ ニ ー ル﹂ ナ ル 名 称 ニ関 ス ル 件

昭和六年 五月十三日警保局保発甲第十四号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

二 、 警察 通報 ノ整 理改 善 ニ関 ス ル件 ( 昭和四年特高外事課長会議注意事項)

)

)

三 、 各 種 申報 ニ関 スル件 ( 昭和九年特高外事課長会議注意事項) 四、 逓 信 部 内従 事 員 ノ行 動 ニ関 ス ル件 昭 和三年九月二十二日警保局保発甲第五九号 ( 内 務 省 警保 局長 ヨリ各庁 府県 長官宛

五、特別高等警察関係思想団体等 ノ内容調査 ニ関 スル件 昭和四年八月二十 六日警保局保発甲第三 一号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

一、農 本 主 義 ヲ標 榜 ス ル団 体等 ノ視察 取締 ニ関 スル件

第 三 、 国家 (農 本 ) 主 義 運動

(

昭和七年六月 二十 一日警保局保発甲第 三七号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官宛

二、 五 ・ 一五事 件 被 告減 刑 運動 ノ取 締 ニ関 ス ル件 昭 和八年八月 二十四日警保局保発甲第三九号 ( 内 務 省 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

三、 改 造断 行 請 願 運 動 取締 ニ関 ス ル件 昭和九年十二月 二十八日警保局保発甲第 三九号 ( 警 保局保安課 長、図 書 課 長ヨ リ各 庁 府 県 宛

(

昭和十年 一月十日警保局保発甲第 一号 内務省警保局長 ヨリ各 庁府 県 長 官 宛

四 、各 種 不穏 計 劃 等 ノ視 察 取締 ニ関 スル件

第 四、 労 働 運 動 ﹁メ ー デ ー ﹂ノ 取 締 ニ関 ス ル件 (昭和三年四月二十 六日警保局保発甲第 三九号 内 務 省 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

第 五、 農 民 運 動 其 ノ他 一、 小作 争 議 取 締 ニ関 ス ル件 ( 昭和九年特高外事課長会議指示事項) 二、 農 村 救 済 運 動 ノ視察 警 戒 ニ関 スル件 昭和七年 六月六日警保局保発甲第 三〇号 ( 警 保 局 長 ヨ リ 各 庁 府 県 長官 宛

)

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三、農山漁村及中小商工業者等 ノ救済 運動 ニ関 スル査察警戒方 ノ 昭和七年八月三日警保局保発甲第五 一号 件 (警 保 局 長 ヨ リ各 庁 府県 長 官 宛

大正十 一年十 二月十三日内務 省秘第 一、二〇 二号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

水平社 ノ取締方 ニ関 スル件依命通牒

第 六、水平運動

第 七、 朝 鮮 人

)

一、 朝 鮮 人 視察 取 締 上朝 鮮 、 台 湾 、樺 太 及 関東 州 ト ノ連 絡 ニ関 ス 大正五年八月十日内務省秘第 一、六四〇 号 ル件依命通牒(警 保 局 長ヨ リ 庁 府県 長 官 宛

二、朝鮮人内地渡航外四項 ニ対 スル事務取扱方連 絡 ニ関 スル件依

大正七年七月十二日内務省秘第 一、五二八号 命通牒(警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

(

(

(

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三 、 在 留 鮮 人 ノ視察 取 締 ニ関 ス ル件 ( 昭和八年特高外事課長会議指示事項)

項)

四、 在 留 鮮 人 ノ 取締 竝 保 護 ニ関 ス ル件 ( 昭和九年特高外事裸長会議指示事

五、 朝 鮮 人 労 働者 ノ募 集 ニ関 ス ル件

大正七年十二月十二日警閣第四二〇号 ( 警 保 局 長ヨ リ 庁 府 県 長 官 宛

大正十二年五月十四日内務省警閣第 三号 ( 警 保 局 長 ヨリ庁 府 県 長 官 宛

六、朝鮮人労働者募集 ニ関 スル件依命通牒

七、 朝 鮮 人 労 働 者募 集 ニ関 ス ル件

昭 和 四 年 五 月 七日 発 社第 三 〇 号 ( 社 会局社会部長及警保局長 ヨリ各庁府 県長官宛

八、朝鮮人労働者募集願取扱 ニ関 スル件 (

大正十五年九月二十 三日朝保秘第 一、一七〇号 朝 鮮 総 督 府警務 局 長 ヨ リ 警 保 局 長 宛

九 、 朝 鮮 人 ニ対 ス ル旅 行 証 明書 ノ件

大正十三年二月四日付警保局保発第六七号 ( 内 務 省 警 保 局 長ヨ リ各 庁 府 県長 官 宛

十 、 朝 鮮 人 労働 者 ノ証 明 ニ関 ス ル件 依 命 通 牒

昭和四年八月三日警保局保発甲第二五号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

十 一、 内 地 在留 朝 鮮 人 ノ 一時 帰 鮮 証 明 書 ニ関 ス ル件 依 命 通牒

昭和五年七月十七日警保局保発甲第三七号 警 保 局 長 ヨリ各 庁 府 県 長官 宛

十 二、 朝 鮮 人 留学 生 ノ在 学 証明 書 ニ関 スル件

昭和九年八月十六日警保局保発甲第 二〇号 ( 警 保 局 長 ヨリ各 庁 府 県長 官 宛

十三、内地近海漁撈出稼鮮人ノ身分証明方 ニ関 スル件

昭和七年九月二十九日警保局保発甲第 六八号 ( 警 保 局 長 ヨ リ 各 庁府 県長 官 宛

十四、米国密航ノ朝鮮人取締 ニ関 スル件依命通牒

大正七年 七月 六日内務省第 九二〇号 内 務 次 官ヨ リ 庁 府 県 長 官 宛

十 五、朝鮮独立運動 ニ関 シ外国船舶 ニ対 シ注意方 ノ件依命通牒 (

大正八年 四月内務省警秘第 六六〇号 警保 局長 ヨリ各庁府 県長 官宛

(

大正十五年 六月十 九日内務省警保局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

十六、朝鮮人生活状況調査方 ニ関 スル件 第八、海港警備 及移動警察 一、不逞不穏計劃取締 ニ関 スル件 (

(

昭和七年 一月三十日警保局保発甲第七号 警 保 局 長 ヨリ各庁府県長官宛

昭和七年 一月二十三日警保局保発甲第八号 警 保 局 長 ヨリ各 庁 府 県 長 官 宛

二、 不 逞 不 穏 計劃 取 締 ニ関 ス ル件

考

昭和七年三月 三十 一日警保局保発甲第十九号 愛知、福井、石川、富山 、福岡各府県知事宛

)

)

)

)

)

)

)

(警保局長ヨリ京都、大阪、兵庫、長崎、三重、)

五、 海 港 警 備 ニ関 ス ル実 施 要 綱 ノ件

(

昭 和 七 年 三 月 五 日 警 保 局 保 発 甲 第 一 三 号 警保局長 ヨリ京都、三重、愛知、富山、石川、福井、各府県知事宛

四、 海 港 警 備 ニ関 ス ル件

(

昭 和 七 年 二 月 二 十 九 日 警 保 局 保 発 第 一 一号 警保局長ヨリ大阪、兵庫、山口、福岡、長崎各府県知事宛

三、海港警備 ニ関 スル警察施設竝移動警察実施 ニ関 スル件

参

一、在外本邦公館長 ト地方長官トノ直接通信 ニ関 スル件 (

昭和 二年 三月 七 日 警 保 局 発 甲 号 内務省警 保局長 ヨリ各庁府県長官宛

)

二、 団 体 、集 会、 多 衆 運 動 、 争 議 ニ対 ス ル取 締 ( 昭和三年特高外事課長 会議協議事項)

(

三 、露 国 過 激 派 ノ檄 文発 送 取 締 ニ付 税関 ト連 絡 方 ノ件 大正 八年三月十三日警保発第 一三号 ノ内 警 保 局 長 ヨリ各庁府県長官宛

四、極左共産主義者 ノ運動警戒方 ニ関 スル件

五、 過 激 思 想 宣伝 取 締 ニ関 スル件

昭和四年三月四日警保局保発甲第 七号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

大 正十四年六月二日内務省警秘第二六〇号 ( 内 務 次 官 ヨリ各 庁 府 県 長官 宛

六、 過 激 思 想 宣 伝取 締 ニ関 スル件 (

大正十 四年 六月二日内務省警秘第二六〇号ノ内 警 保 局 長ヨ リ 庁 府 県 長 官 宛

七、 露 西 亜関 係 邦 人 主 義 者 ノ取 締方 ニ関 ス ル件

大 正十四年十二月五日内務省秘第 一、〇五〇号 ( 警 保 局 長 ヨ リ 庁 府 県 長 官 宛

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)

体 ノ集会 ニ対 シ露 国 公館 員 等 ノ出 席 ス ル場 合 ノ 取締 方 ニ関 ス

八 、 社 会 主義 者 其 他 ノ主 催 ニ係 ル左 傾 的 集 会 及学 生労 働 者 等 ノ団

大正十四年五月十四日内務省秘第 四〇 六号 ル件 ( 警 保 局 長 ヨリ各 庁 府 県 長 官 宛

昭 和八年四月二十八日警保局保発 甲第一三号 ( 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

九 、 五 ・ 一五事 件 記 念 策 動 取締 ニ関 ス ル件

項)

(

(

)

)

十 、農村 等救 済 運 動 取 締 ニ関 ス ル意 見 ( 昭和七年特高外事課長会議協議事

十 一、旱 害 調 査 竝 ニ之 ニ伴 フ各 種 策 動 視 察 方 ニ関 ス ル件

昭和八年七月三十 一日警保局保発甲第三 二号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

十二、米穀自治管理法案 反対運動 ノ取締 ニ関 スル件

昭和十年 一月三十 一日 保安課長 ヨリ各庁府県宛

十 三、 朝 鮮 人 ニ対 スル領 事 証 明書 発 給 方 ニ関 ス ル件

大正十二年 六月廿五日付警保発甲第三三号 ( 内 務 省 警 保局 長 ヨリ 各 庁 府 県 長 官 宛

十 四、上海 不逞鮮人潜入警戒 ニ関 スル件

昭和七年八月二十日警 保局保発甲第五八号 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛 上 海 駐 在 内 務 事 務宮 宛

(警

十 五、海 港警備従事警察官ノ教養訓練 ニ関 スル件

昭和七年 四月 二十日警保局保発甲第 二二号 ( 警 保 局 長ヨ リ 京 都 外 十 府 県 宛

十 六 、 移動 警 察 従 事 警 察 官 ノ教 養 訓 練 ニ関 ス ル件 (

昭和七年四月二十二日警保局保発甲第 二二号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛

十 七 、 朝 鮮 人 識別 資 料 ニ関 スル件 (

)

大正二年 二月廿八日内務省秘第 一、五四二号 警 保 局 長ヨ リ 各 庁 府 県 長 官 宛 大正七年 一月二十九日総督府令第 六号 十 八、労働者募集取締規則(改 正 大 正 八 年 八 月 第 一三 三 号

第 二、 共産 主 義 運 動 一、 日本 共 産 党関 係 者 ノ検 挙 取締 ニ関 スル件 (

昭和六年四 月十八日警保局 保発甲第 一一号 警保 局 長 ヨリ 各庁 府 県 長 官 宛

這般 司 法 省 ニ於 テ ハ各検事 局 ニ対 シ、現 時 ノ状勢 ニ鑑 ミ日本 共産

)

本 共産 青 年 同 盟 員 及其 ノ外 廓 タ ル極 左 諸団 体 関 係 者 ノ党 竝 同 盟 拡 大

可 有之 ニ付 詳 細 御 打合 セノ上 本 件 ノ検 挙 ニ当 ラ ル ヽ様 致度

カ ラ シ ム ル様 取 締 ノ万全 ヲ期 セ ラ ル ヽ ハ固 ヨリ ノ儀 ニ有之 為 念 申 添

之 等 ニ対 シテ ハ日常 一層 厳 密 ナ ル査 察 警戒 ヲ加ヘ 些 ノ蠢動 ノ余 地 無

等 各 般 ノ事情 ヲ綜 合 考覈 ス ル コト ヲ要 スベ ク、固 ヨリ起 訴 ノ標 準 ニ

験 ノ深 浅 、其 ノ活 動 力 ノ大 小、 事 後 ノ心 状 、 学 生 生徒 タ ル身 分 関係

目 的 ト ス ル結 社 ニシテ、 最 近 (昭和 七年 九 月 )其 行動 綱 領 中 ニ ﹁君

全協 ハ創 立 ノ当初 (昭和 三 年 十 二 月 二十 五 日) ヨリ国 体 ノ変革 ヲ

件処 理方 針 ニ関 ス ル件

日本 労 働 組 合 全国 協 議 会 (略 称 ﹁全 協 ﹂) 関 係 治安 維 持 法 違 反 事

)

強 化 ノ為 ニ スル運 動 ハ益 々地 下 潜 行的 ニ巧 緻 執 拗 ナ ル モノ ア ル折 柄 、

尚 検 事 局 ニ於 ケ ル起 訴 ノ方 針 ハ右 ノ如 ク ナ ルモ、 日本 共 産 党 竝 日 )

)

候

二 、 日本 労 働 組 合 全国 協 議 会 ノ取締 ニ関 ス ル件

昭 和八年 五月三日警保局保 発甲第 一七号 ( 警 保 局 長 ヨ リ 各庁 府 県 長 官 宛

今 般 日 本労 働 組 合 全 国 協議 会 ノ取 締 ニ関 シ司法 当 局 ト打 合 セノ上

別 記 ノ如 キ方 針 ヲ採 ル コト ニ決 定 致 シ候 条、 将 来 一層 部下 吏 僚 ヲ督

付 テ ハ各 具 体的 事 案 ニ依 ルベ キ モノ ニシ テ必 ズ シ モ 一率 ニ之 ヲ決 シ

)

シ地方 検 察当 局 ト ノ連 絡 ヲ緊 密 ニ シ取 締 上 万 遺憾 無 キ ヲ期 セラ レ度

難 キ モ ノ可有 之 ト存 ゼ ラ ル ヽモ、 大 体 ニ於 テ国体 変 革 又 ハ暴 力 革命

主 制 ノ廃 止﹂ ヲ加 ヘ本 来 ノ目 的 ヲ表面 ニ掲 ゲ其 運動 一層 矯 激ト ナ リ

記

此 段 依 命 及 通 牒 候也

ニ依 ル私 有財 産 制度 ノ破 壊 ニ関 シ理諭 上 ノ深 キ信 念 ト之 ガ実 現 ニ対

一項 所 定 ノ結 社 ト シ テ取扱 フ コト、 但 シ当分 左 ノ要 項 ニ遵 ヒテ処 理

タ ル ヲ以 テ、 従 来 ノ処 理方 針 ヲ改 メ全協 自 体 ヲ治 安 維持 法 第 一条 第

スル起 訴 処分 ニ付 テ ハ、刑 事 政策 上其 ノ者 ノ思 想 的 惑 溺 ノ程度 、経

党 関係 治安 維 持 法 違 反 中所 謂目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ノ被 疑者 ニ対

スル確 乎 タ ル決 心 ト ヲ有 シ、其 ノ行 動 自 体 亦 此 ノ 点 ニ関 ス ル危 険 性

スル コト

ヲ顕 現 シ居 ル ノミ ナ ラズ将 来 此 ノ目 的 ニ出 ヅ ル非合 法 運動 ヨリ離 脱

(一) 起 訴 ノ範 囲 ハ

成 ル可 ク 昭和 七 年九 月 ノ全 協 第 一回中 央 委 員 会 以後 ノ行 動 ニ

ノ見 込 ナ キ者 ナリ ヤ否 ニ依 リ、 同 法 違反 ト シテ起 訴 スベ キ ヤ否 ヲ判

(イ)

断 スベ キ方 針 ヲ採 ル コト ヲ妥 当 ト スベキ旨 通 達 シ タ ル趣 司法 省 刑 事 局長 ヨリ通 報 ノ次第 モ有 之 、 此 ノ点 ハ検事 局 ヨリ モ貴官 ニ対 シ協 議

全 協 ノ役 員其 他指 導 者 タ ル任 務 ニ従 事 シ タ ル者 (産業 別 組 合

参 加 シタ ル者 ノ ミ ニ限 定 スル コト ( ロ) ノ者 ヲ含 ム︶ ノ ミ ニ限 定 スル コト ( 二)起 訴 状 ニ摘 示 スベ キ事 実 ハ前 記第 一回中 央 委 員 会 以後 ノ行 動 ニ 重 点 ヲ置 ク コト (三 右 各 項 ニ該 当 セザ ル モ日本 共 産党 又 ハ日本 共 産 主義 青 年 同 盟 ノ ) 目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル罪 ノ処 理 ニ付 キ テ ハ仍 ホ従前 ノ例 ニ依 ル コト

也 ( 別 紙 起 訴 状略 )

( 昭和八年十月二十五日保安課長ヨリ各庁府県宛)

四、 所 謂 外 廓 運 動 ニ関 シ治 安 維 持 法適 用 ノ件

金 沢 地方 裁 判 所 検 事 局 ニ於 テ、 日本 プ ロ レタ リ ア作 家同 盟 石 川 支

部 準備 会 ノ組 織 運動 、 文学 サ ー ク ル運 動 竝 ニ同 同 盟 ノ機 関 紙 配 布 活

所 検事 局 ニ於 テ別 紙起 訴状 写 ノ通 リ、 日本 プ ロレ タ リア文 化 聯 盟 竝

シタ ル事 実 ニ関 シ本 月十 六 日通 知 致 置候 処 、 今 般 更 ニ東 京 地方 裁 判

動 ヲ以 テ、 治 安 維 持 法 ノ所 謂 目 的 遂 行 罪 ニ該 当 スル犯罪 ト認 メ起 訴

ニ日本 プ ロ レタ リア演 劇 同 盟 ノ活動 ヲ以 テ同 犯 罪 ニ該当 ス ルモ ノト

考

﹃日本 労働 組 合全 国 協 議 会 ( 略 称 ﹁全 協 ﹂) ハ ﹁プ ロ フ イ ン テ ル

認 メ十 月 二 日起 訴 シタ ル事 例 有 之 、 御参 考 迄 及 通 知 候也

参

ン﹂ ノ日本 支 部 ニ シテ労働 者階 級 ノ経 済闘 争 ト 政 治闘 争 ト ヲ組 織

ノ運動 ニ対 ス ル治 安 維 持法 第 一条 第 一項及 第 二項 各 後 段 ノ規 定 (所

日 本 共産 青 年 同 盟 及 日本 蛍 働 組 合 全 国協 議 会 ヲ除 ク 一般 外廓 団 体

共 産 青 年 同盟 ノ機 関 紙 配 布 ノ犯罪 ヲ モ犯 シ タ ル者 ナ リ シモ、 今 回 日

号 ヲ以 テ通知 シ置 キ タ ル所 ナ ルガ、 右 犯 罪 者 ハ救 援 活動 ノ外 ニ日本

旨 ノ大 審 院判 例 ニ関 シテ ハ、 本年 八月 三十 日付警 保 局保 発 甲 第 四 二

日本 赤 色救 援 会 ノ救 援 活 動 ハ治安 維 持 法 ノ目 的 遂行 罪 ニ該 当 ス ル

( 昭和八年十二月二十日保安課長ヨリ各庁府県宛)

五、 所 謂 外廓 運動 ニ関 シ治 安維 持 法 適 用 ノ件

(別紙 起 訴 状 略 )

指 導 シ、革 命 的 手 段 ニ依 リ テ我 ガ国 体 ヲ変 革 シ私 有財 産 制 度 ヲ否 認 シ ﹁プ ロ レタ リ ア ート ﹂ ノ独 裁 ヲ樹 立 セ ンガ為 ニ日本 共産 党ト 協 同 シテ闘 争 ス ル結 社 ナリ﹄ 三 、所 謂 外 廓 運 動 ニ関 シ治 安 維 持法 適 用 ノ件

謂 目的 遂 行 罪 ニ関 ス ル規 定 ) ノ関 係 ニ就 テ ハ、 本 年 八 月 三十 日警 保

ト シ テ起 訴 シタ ル事 例 有 之 、 取締 上 ノ参 考 迄 ニ別 紙 起 訴 状 写 及送 付

本 赤 色 救 援会 ニ加 盟 シ其 ノ救援 活動 ヲ ナ シ タ ルノ ミ ニテ目 的 遂行 罪

( 昭和八年十月十六日保安課長ヨリ各庁府県宛)

局 保発 甲 第 四 十 二 号 ヲ以 テ通 知致 シ置 キ タ ル通 リ昨 年十 二月 二 十 三

候也

六、 司 法 警 察 職 務 規範 第 三十 一条 ノ 犯罪 報 告 方 ニ関 ス ル件

( 別 紙 起 訴 状略 )

昭和 六年 五 月 十 三 日警 保 局 保 発 甲 ( 第 十四号警保局長 ヨリ各庁府県長官宛

)

日、 日本 赤 色 救 援会 ノ活 動 ヲ以 テ目的 遂 行 罪 ニ問 擬 処断 シタ ル大 審 院 ノ判 例 ア リ タ ル処 、 這 般 金 沢 地 方裁 判 所 検 事 局 ニ於 テ上局 ニ稟 伺 ノ結 果 、 日本 プ ロ レタ リ ア作 家 同 盟石 川 支 部 準 備会 ノ組 織 活 動 、文 学 サ ー ク ル活動 竝 ニ同 同 盟 ノ機 関紙 配布 等 ノ活動 ヲ以 テ目 的 遂 行罪 ト認 メ起 訴 シタ ル事 例 有 之 、 取締 ノ参 考 迄 ニ別紙 起 訴 状 写及 送附 候

標記ノ件 ニ関 シ別紙 写ノ通 リ司法省刑事 局長ヨ リ申出 ノ儀 モ有之 候条御了知相成度候 司法警察職務規範第三十 一条 ノ犯罪報告方 ニ関 スル件 昭 和六年四月十五日刑事第 三、三二五号 ( 刑 事 局 長 ヨ リ 警 保局 長 宛

司法省 治安維持法違反ノ罪 ニ付 テ ハ大正十二年十 二月刑事局刑事第 一〇 、〇九 二号 訓今 司法 警 察 職 務 規 範第 三 十 一条 第 一項 第 十 五 号ニ 規 定 スル ﹁無 政府 主義 者 、共 産 主 義者其 ノ他 社 会 主義 者 ノ

)

七 、 ﹁ピ オ ニー ル﹂ ナ ル 名 称 ニ関 ス ル件 (

昭和六年七月二十二日警保局保発 甲 第 二十 三 号 ) 警保局長 ヨリ各庁府県長官宛(東京府 ハ警 視総監)

最 近各 地 ニ於 テ所 謂 無 産 少 年 団 ノ設 立 セ ラ ル ヽト 共 ニ、 其 ノ 団体

ノ固 有 名 詞 ト シテ ﹃ピオ ニー ル﹄ ( 例 バ ﹁青 戸 ピオ ニ ー ル﹂ト 云 フ

︾( 同 志 レー ニン ノ名 ニ依 ル若 キ ピオ ニー ルノ児

ガ如 シ) ノ名 称 ヲ用 フ ル モノ ア リ、 然 ル ニ ﹃ピ オ ニ ー ル﹄ ハ露 語 ︽〓

ラザ ル モノ ト雖 モ其 ノ団 体 ノ固 有 名 詞 ト シ テ ﹃ピ オ ニー ル﹄ ノ名 称

ガ故 ニ、所 謂 無 産 少 年 団 ニ シテ ﹃ピ オ ニー ル﹄ 本 来 ノ主義 綱 領 ニ依

ヲ用 フ ル コト ハ警 察 取 締 上 面白 カ ラ ザ ル儀 ト被 存 候 ニ付 テ ハ、 之 ヲ

童 共産 主義 団 体 ) ノ略 称 ニ シテ共 産 主 義 少年 団 ヲ意 味 ス ル モノ ナ ル

ノ犯罪 ア リト 思 料 ス ルト キ ハ 一層 速 ニ検事 ニ報 告 スベ キ様貴 管

其 主義 ニ関 ス ル罪 ﹂ ノ 条 項 ニ依 リ報告 相成 ルベ キ ノ処 、従 来其

下 司法 警 察 官 吏 及 其 ノ職 務 ヲ行 フ者 ニ対 シ テ通達 方 可 然 御 取 計

用 ヒ シ メザ ル様適 宜 御 取 締 相 成様 致度

ノ犯罪 報 告 遅 延 スル向 有 之哉 ニ思考 被 致候 ニ付 テ ハ、 爾 今同 号

有 之 度 此段 依 命 及 通 牒 候

昭和十 七年十月

第 三 条  思 想 係 検事 ハ常 ニ内 外 ノ動 向 ヲ洞 察 シ国 家 ノ要 請 ニ対 応 シ

ベシ

作 シ思 想 検 察 ヲ以 テ皇謨 ヲ翼 賛 シ奉 ルノ信念 ニ徹 セム コト ニ黽 ム

第 二条  思 想 係 検事 ハ国 体 ノ本義 ヲ体 シテ真摯 ナ ル検 察 ノ気 風 ヲ振

ニ本 規 範 ノ定 ム ルト コ ロ ニ遵 由 スベ シ

第 一条  凡 ソ思 想事 務 ヲ鞅 掌 ス ル思 想 係 検 事其 ノ職 務 ヲ行 フ ニ ハ特

三 〇  思 想 検 察 提 要 ︹ 抄︺(一九四二)

司法省刑事局 思想検察提要

則

昭和十七年 一月二十四日附 刑事局秘第三二 一号 思想検察規範(検 事総 長、検 事 長、検 事 正宛 司 法 大 臣 訓令)

第 一章 通

思 想 国 防 ノ責 務 ヲ完 遂 セ ム コト ヲ期 スベ シ 第 四条  思 想 係検 事 ハ平 素 共産 主 義 其 ノ他 ノ詭 激 思 想 ニ関 ス ル各 般 ノ事 項 ヲ攻 究 調 査 シ思 想 犯 ノ絶 滅 ヲ期 ス ルト共 ニ進 ンデ詭 激思 想 ノ芟 除 ニ努 ムベ シ 第 五条  思 想 係 検 事 ハ思 想 事 犯 ノ処 理 ガ国 政 ノ運 行 又 ハ国 防 上 ノ要 請 ト深 キ関 聯 ヲ有 ス ル コト ア ルベキ ニ留意 シ特 ニ処 理 ノ迅速 ヲ期

第十四条 思想係検事 ハ思想関係文書及図書 ヲ整 理保管 シ転任其 ノ

ヲ後任者 ニ引継ギ特 ニ秘密文書及図書 ノ散逸防止 ニ留意 スベ シ

他ノ事由 ニ因 リ其 ノ地位 ヲ去 ルニ際 シテ ハ他 ノ事務 ト共 ニ必ズ之

絡統 一ヲ図 リ管内思想係検事 ノ指導 ニ任 ジ以テ思想検察 ノ有機的

第十 五条 大審院及控訴院ノ思想係検事 ハ特 ニ管内思想係事務 ノ連 運用 ニ違算 ナキヲ期 スベ シ

スルニ止 マラズ管 内区裁判所及支部 ニ繋 ル事犯 ト雖モ其 ノ重要 ナ

第十 六条 地方裁判所 ノ思想係検事 ハ其ノ庁 ニ繋 ル思想事犯 ヲ処理

ルモノ ニ付 テ ハ自 ラ其 ノ処理 ニ当 ルト共 ニ管内思想関係事務 ノ統

スベ シ

ヲ観 察 スル ハ勿論 犯人 ノ思 想 推 移 ノ 過程 就 中詭 激 思 想 感染 ノ動 機

第 六条  思 想 係検 事 ハ国 家 ノ要 請 及 内外 ノ情 勢 ト ノ関 聯 ニ於 テ事 犯

制 ヲ図 ルベシ

二 思想情勢ノ調査及報告

一 思想事犯及予防拘禁事件 ノ処理

思想事務 ハ概ネ思想係検事之 ヲ鞅掌 スベシ

第十 七条 左 ニ掲 グ ル事務 ハ之 ヲ思想事務 ト ス

第二章 思想事務

及 程 度 竝 ニ思 想 上 ノ環 境 ヲ検 討 シ以 テ処 理 ノ適 正 ヲ期 スベ シ 第 七条  思 想 係検 事 ハ特 ニ秘 密 ノ保 持 ニ努 ムベ シ 第 八条  思 想係 検 事 ハ治 安 維 持 法 及 国防 保 安 法 ニ定 ム ル捜 査手 続 ノ 法 意 ニ思 ヲ効 シ其 ノ運 用 ノ万 全 ヲ期 スベ シ

三 思想検察事務 ノ遂行 ニ資 スベキ諸施設 ノ運営

第 九 条  思 想係 検 事 ハ思 想 事 犯 ノ検 挙及 爾 後 ノ捜 査 ニ付 テ ハ勿 論 之 ガ内 密捜 査 ニ付 テ モ亦 積 極 的 ニ司法 警 察 官 ヲ指 導 誘掖 シ以 テ検察

共産主義、無政府主義及社会民主 々義思想抱懐者 ノ犯 シタル普

社会民主 々義 ニ基 ク犯罪

無政府主義ニ基 ク犯罪

共産主義 ニ基 ク犯罪

二 左翼思想 ニ関 スル事犯

一 刑法第二編第 一章 ノ犯罪 (皇室 ニ対 スル罪)

第十 八条 思想事 犯ト ハ概 ネ左 ニ掲 グ ルモノヲ謂 フ

四 其 ノ他思想検察事務 ニ属 セシメラ レタル事項

指 揮 ヲ全 ウ セ ム コト ヲ期 スベ シ 第 十 条  思 想係 検 事 ハ思 想 事 犯 ニ関 シテ ハ司 法 措 置 ト 行 政措 置 ト ノ 関 聯 特 ニ密 接 ナ ル ニ留 意 シ相 互 ニ扞挌齟齬 ナ キ ヲ期 スベ シ 第 十 一条  思 想係 検 事 ハ相 互 ニ緊 密 ナ ル連 絡 ヲ保 持 スベ キ ハ勿 論 思 想 係 以外 ノ検事 ト ノ 協調 ニ努 ム ベ シ 第 十 二条  思 想係 検 事 ハ勤 メ テ諸 般 ノ情 報 ヲ蒐 集 シ迅 速 ニ其 ノ報 告 ヲ為 ス コト ニ留 意 スベ シ 第 十 三条  思 想係 検 事 ハ常 時詭 激 思 想 ノ防遏 、 防 諜 其 ノ他思 想 国 防 ニ資 スベ キ公 私 ノ諸施 設 ト ノ連 絡 協調 ヲ図 ル コト ニ留 意 スベ シ

通犯罪

其 ノ他宗教 ニ基 キ又 ハ宗教 ヲ利用 スル犯罪

犯罪

国家主義 乃至国家社会主義 ニ基 ク犯罪

不穏文書臨時取締法違反 ノ罪

出版法違反 ノ罪

新聞紙法違反 ノ罪

七 出版物及言論 ニ関 スル事犯

共産主義、無政府主義及社会民主 々義団体 ヲ背景 ト スル犯罪

国家主義 乃至国家社会主義思想抱懐者 ノ犯 シタ ル普通犯罪

三 右翼思想 ニ関 スル事犯

国家主義 乃至国家主義団体 ヲ背景 トスル犯罪

国家総動員法第三十九条及第 四十条違反 (新聞紙等掲載制限令

著作権法違反 ノ罪

違反) ノ罪

其 ノ他出版関係法令違反 ノ罪

労働争議其 ノ他労働運動 ニ基 ク犯罪

四 労働、農民及水平運動 ニ関 スル事犯

労働、農民及水平団体 ヲ背景 ト シ又 ハ其 ノ団体員 ノ犯 シタル普

刑法第 二編第七章ノ二ノ犯罪 ( 安寧秩序 ニ対 スル罪)但 シ第百

小作争議其 ノ他農民運動 ニ基 ク犯罪

通犯罪

五条 ノ四ノ罪 ヲ除ク

映画法違反 ノ罪

労務関係法令違反ノ罪 ( 労働争議調停法、労働者災害扶助法、

陸軍刑法第九十九条違反 ノ罪

国家総動員法第十六条 ノ三 ニ基 ク新聞事業令違反 ノ罪

労働者災害扶助責任保 険法、 工場法、工業労働者最低年齢法、

水平運動 ニ基 ク犯罪

労働者年金保険法、国 民労務手帳法、船員法第六十条等)

取引所法第三十二条 ノ四違反 ノ罪

海軍刑法第百条違反 ノ罪

其 ノ他言論取締 ニ関 スル法令違反 ノ罪

五 民族主義 ニ関 スル事犯 民族主義 ニ基 ク事犯

刑法第二編第三章 ノ犯罪 (外患 ニ関 スル罪)

八 防諜 ニ関 スル事 犯

民族独立思想抱懐者 ノ犯 シタ ル普通犯罪 民族融和 ヲ阻害 スル意 図 ニ基 ク犯罪 民族融和 ヲ目的ト スル団体 ニ関聯 スル犯罪 類似宗教思想 ニ基 ク犯罪

軍機保護法違反ノ罪

国家総動員法第 四十 四条違反 ノ罪

国防保安法違反ノ罪

宗教団体法違 反ノ罪

軍用資源秘密保護法違反 ノ罪

六 宗教 ニ関 スル事 犯

宗教団体及宗 教結社 ヲ背景 トシ又 ハ其 ノ関係者 ノ犯 シタル普通

要塞地帯法違反ノ罪 陸軍輸送港域軍事取締法違反ノ罪

思想関係司法警察官 ノ職務 上ノ犯罪

郵便 法、臨時 郵便取締令等)

通信関係法令違反 ノ罪 (軍用電気通信法、電信法、無線電信法、

四 思想関係司法警察官吏 ノ教養訓練

三 思想犯対策 協議会

二 思想検察会同

一 控訴院管内別思想実務家会同

ルモノ ヲ謂 フ

第十九条 思想検察事 務ノ遂行 ニ資 スベキ諸施設ト ハ概 ネ左 ニ掲グ

船舶法違反 ノ罪

五 其 ノ他思想検察事務 ノ遂行 ニ資 スル為特 ニ設 ケタル施設

国境取締法 違反 ノ罪

航空法違反 ノ罪

刑法第 二編第四章 ノ犯罪 (国交 ニ関 スル罪)

刑法第 二編第二章 ノ犯罪 (内乱 ニ関 スル罪)

五 通信検閲 ニ関 スル事項

四 防諜委員会 トノ連絡等 ニ関 スル事項

三 総動員警備 ニ関 スル事項

二 新 聞記事掲載 ノ差止及放送 ノ禁止 ニ関 スル事項

一 納本 ニ係 ル新聞紙 ノ司法検 閲 ニ関 スル事項

第 二十条 左 ニ掲 グ ル事項 ハ之 ヲ思想検察事務 ニ属 セシム

外国 ト通謀 シ又 ハ外国 ニ利益 ヲ与 フル目的 ヲ以 テ犯 シタル犯罪 其 ノ他防諜上注意 ヲ要 スル法令違反 ノ罪

刑法第二編第五章 ノ犯罪 (騒擾ノ罪)

六 其 ノ他思想検察事務 ニ随伴 スル事 項

九 其 ノ他思想事犯

陸軍刑法違 反ノ罪

第 二十 一条 思想係検事 ハ思想事犯 ニ関 シ特 ニ訓令 又 ハ通牒 ヲ以テ

第三章 調査及報告

海軍刑法違反 ノ罪 兵役関係法令違反 ノ罪 ( 兵役法、兵役法施行規則、陸軍召集規 則、海 軍召集規則等)

集会及結社 ノ取締 ニ関 スル法令違反 ノ罪

三 捜査経 過報告

二 検挙報告

一 内密捜査報告

徴発令違反 ノ罪

爆発物取締罰則違反 ノ罪

四 検事 処分報告

ニ努 ムベ シ

銃砲火薬類取締法及之 ニ基 ク法令違反ノ罪

五 裁判 ノ進行状況 ニ関 スル報告

其 ノ報告 ヲ徴 スルモノノ外機 宜 ニ応 ジ左 ニ掲 グ ル報告 ヲ為 スコト

暴力行為等処罰 ニ関 スル法律違反 ノ罪

治安警察法違反 ノ罪

反戦反軍其ノ他誘 激思想 ニ基ク犯罪

六  裁 判結 果報告

国家主義乃至国家社会主義団体員 ノ動静

国家主義乃至国家社会主義 団体 ノ分布及活動状況

三 右翼思想 ニ関 スル事項

右翼不穏行動 ヲ窺知 セシムベキ特異言動其 ノ他 ノ要注意事項

七  調書 写其 ノ他 ノ資 料 ノ送 付 八  各種 思 想事 犯 ノ発 生 及 検挙 状 況 ニ関 ス ル報 告

工場及鉱山従業員 ノ思想動 向

四 労働問題 ニ関 スル事項

其 ノ他注意 ヲ要 スル事項

九  其 ノ他 犯 罪 事 件ニ 関 ス ル事 項 ニシ テ参 考 ト為 ルベ キ モノ ノ報 告 予 防 拘禁 事 件 ニ関 ス ル報告 ニ付 テ モ亦前 項 ニ準 ズ ベ シ 第 二十 二条  思 想 係 検 事 ハ思 想 情 勢 ニ関 シ概 ネ左 ニ掲 グ ル事 項 ヲ調

産業報国運動 ニ関 スル事 項

労務紛争 ニ関 スル事項

労務統制 ノ工場及鉱山従業員 又 ハ生産 ニ及セ ル影響

労働運動 ニ関 スル事項

国 体 及皇 室 ニ対 スル国 民思 想 ノ動 向

一 国 民思 想 ニ関 ス ル事 項

政 治 ニ関 ス ル民 心 ノ帰趨

其 ノ他注意 ヲ要 スル事項

査 報告 ス ル コト ニ努 ムベ シ

司 法 ノ運 用 ニ関 ス ル国民 各 層 ノ言動

国 民生 活 ノ革 新 ヲ目的 ト スル各 種 社 会 運 動 ノ状 況

国 際 紛 争 ノ民 心 ニ対 ス ル反 響

農業報国運動 ニ関 スル事項

農民運動 ニ関 スル事項

小作紛争 ニ関 スル事項

農民 ノ思想動向

五 農村問題 ニ関 スル事項

不 健 全 ナ ル国 民思 想 ヲ窺 知 セ シ ムベ キ不 穏 言動其 ノ他 ノ要 注意

人的及物的統制 ノ農民又 ハ農業 ニ及 セル影響

人的 及 物 的 統 制 ノ 国 民思 想 ニ及 セ ル影 響

戦 争 及 軍 事 ニ関 ス ル民 心 ノ動 向

事項

差別問題 ニ関 スル事項

部落 民ヲ中心 トスル各種団体 ノ分布及活動状況

其 ノ他注意 ヲ要 スル事項

左 翼 思想 抱 懐 者 特 ニ左 翼 前 歴者 ノ分 布 状 況 及其 ノ動 静

部落 民ノ思想動向

ノ其 他 注意 ヲ要 ス ル事 項

左 翼 的傾 向 ヲ有 ス ル各種 団 体 ノ分 布 及 活動 状 況

六 水平 運動 ニ関 スル事項

左翼 運動 ノ潜 在 ヲ窺 知 セ シ ムベ キ特 異言 動 其 ノ他 ノ要 注 意事 項

其 ノ他注意 ヲ要 スル事項

二  左 翼思想 ニ関 ス ル事 項

其 ノ 他注 意 ヲ要 スル事 項

七 民族主義 ニ関 スル事項

外国人 ノ分布状況及要注意動静

外国公館 又 ハ外国人 ニ接 近 セル本邦人ノ要注意動静

外国公館及公館員 ノ動静

外国宣伝文書 ノ頒布状況及其 ノ反響

要注意外国人及外国系商社 ノ動静

朝鮮人又 ハ台湾人 ヲ中心ト スル内外各種団体ノ分布及活動状況

容疑 通信 ニ関 スル事項

朝鮮人及台湾人 ノ思想動向

朝鮮又 ハ台湾統治状況 ノ朝鮮 人又 ハ台湾人 ニ及 セル影響

軍 事上 ノ秘密其 ノ他国家的秘密 ノ漏洩 ヲ窺知 セシムベキ事項

要注意 朝鮮人及台湾人 ノ動 静

民族独立運動 ヲ窺知 セシムベキ特異言動其 ノ他ノ要注意事項

予防拘禁対象者 ノ動 静特 ニ其 ノ思想状態

予防拘禁対象者 ノ分布状況

十 一 予防拘禁 ニ関 スル事項

其 ノ他注意 ヲ要 スル事 項

其 ノ他注意 ヲ要 スル事項 八 宗教 ニ関 スル事項 類似宗教 団体 ノ分布及活動状 況 静

ノ動静

予防拘禁 ニ付 セラレタル者 ノ動静特 ニ其 ノ思想状態 及其 ノ家族

類似宗教 団体特 ニ結社禁止処分 ニ付 セラレタル団 体関与者 ノ動 宗 教団体及宗教団体員 ノ要注意活動及動静

則

昭和 三年五月 二十六日附秘第九五 一号思 想係検事事務分掌規準 ハ之

本令 ハ昭和十七年二月 一日 ヨリ之 ヲ施行 ス

附

ノ其 他注意 ヲ要 スル事項

思想犯 ニ対 スル行刑及保護 ニ関 スル批判

宗教結 社及結社員 ノ要注意 活動及動静 類似宗教 ニ基 ク詭激運動 ヲ窺知 セ シムベ キ特異言動其ノ他 ノ要 注意事項 其 ノ他注意 ヲ要 ス ル事項

ヲ廃 止 ス

九 出版 ニ関 スル事項 新聞紙 及要注意出版物 ノ発行及分布状況

)

検事 ノ執務上遵由 スベキ事項及思想事務 ノ範囲 ヲ闡明 シ以テ思想検

今般思想検察規範 ヲ相定 メ訓令相成候 処右 ハ思想事務 ヲ鞅掌 スル

昭和十七年三月二十八日秘第 一〇九四号 思想検察規範 ノ運用 ニ関 スル件(検 事総長、検事長、検事正宛刑事局長通牒

新聞紙其 ノ他 ノ出版物 ニ現 レタ ル要注意人物ノ論文其 ノ他要注 意記事 要注意 新聞紙 ノ論調及読者層 新聞記者其 ノ他出版関係者 ノ特異言動 其 ノ他注意 ヲ要 スル事項 十 防諜 ニ関 スル事項

全 ヲ期 スル様 致 度 依命 及 通 牒 候

之 ニ恪 遵 シ テ執 務 セ シ ム ルト共 ニ左 記事 項 ニ留 意 ノ上 之 ガ運 用 ノ万

察 ノ完璧 ヲ期 セ ムト ス ル儀 ニ有 之 候 ニ就 テ ハ部 下 思 想係 検事 ヲ シ テ

件 ﹂ ニ依 ラシ ム ル コト 但 シ司 法 大 臣 ニ対 ス ル報 告書 ハ刑 事 局 長 ニ

十 七 日刑 事 第 四八 三 二 号 刑事 局 長 通牒 ﹁報 告 書 ノ 宛 名 記 載 方 ノ

此 ノ場 合 ニ於 ケ ル報 告書 ノ宛 名 記 載 方ニ 関 シテ ハ昭 和 六年 四月 二

ハ例ヘ バ ﹁検 思 秘 第 何 号﹂ ト記 載 シ以 テ思 想 事 務 ニ関 ス ル文 書 タ

五、 思 想 事 務 ニ関 ス ル犯罪 報 告 書 、 情勢 報 告 書 其 ノ他 ノ発信 文 書 ニ

宛 送 附 セ シム ル コト

一、 思 想 事務 ハ概 ネ思 想 係 検事 ヲ シテ之 ヲ鞅 掌 セ シ ムベ キ モノ ナ ル

ル コト ヲ明 確 ナ ラ シ ム ル コト

記

ハ勿 論 ナ ル モ思 想 係 検 事 其 ノ事 務 ニ忙 殺 セ ラ レ事実 上思 想 事 務 ノ

一項 ニ基 キ其 ノ管 轄 区域 内 ニ於 ケ ル司 法 警 察 官 ニ対 シ速 ニ訓 令 ヲ

六、 検 事 正 ハ規範 運用 ノ徹 底 ヲ期 ス ル為 裁 判 所 構 成法 第 八十 四 条 第

一部 ヲ取 扱 フ コト困 難 ナ ル場 合 等 相 当 ノ理 由 ア ル場 合 ニ於 テ ハ検 事 正 ニ於 テ適 宜 他 ノ検事 ヲ シテ思 想 事 務 ノ処 理 ヲ補 助 セ シメ 以 テ

検 事 正訓 令 ヲ発 シタ ルト キ ハ司 法 大 臣 ニ対 シ速 ニ之 ガ報 告 ヲ為 ス

発 シ司 法 警 察官 ヲ シテ規 範 ノ趣旨 ニ則 リ執 務 セ シ ム ル コト

之 ガ円滑 ナ ル運 用 ヲ図 ル コト但 シ重 要 ナ ル事 犯 ハ思 想 係 検事 ヲシ テ自 ラ其 ノ処 理 ニ当 ラ シ ム ル コト 二 、司 法 警 察 官 ニ対 ス ル思 想事 犯 ノ指揮 及 思想 事 務 ニ関 ス ル命 令 ハ

コト

1. 思 想 事 犯 ノ範 囲 ヲ明 確 ナ ラ シム ル コト

訓 令 ニ ハ尠 クト モ左 記 事 項 ヲ包含 ス ル コト

概 ネ思 想 係 検事 ヲ シテ之 ニ当 ラ シ ム ル コト

想 係 検 事 ニ命 ジ規 範 ニ依 リ訓 令 セ ラ レ居 ルト コ ロ ニ従 ヒテ速 ニ之

此 ノ場 合 ニ於 テ ハ概 ネ思 想係 検 事 ノ指 揮 ヲ受 クベ キ コト

2. 思 想事 犯 ニ付 テ ハ凡 テ検事 ノ指 揮 ヲ受 クベ キ コト 勿 論 ナ ル モ

三、 司 法 警 察 官 ヨリ徴 シタ ル文 書 ニ依 ル犯罪 報 告 又 ハ情 勢報 告 ハ思

ニ於 テ ハ司法 警 察 官 ノ作 成 ニ係 ル報 告 書 ニ送 付 書 ヲ添 付 シテ報 告

ヲ上 司 ニ報 告 ス ルノ処 置 ヲ執 ラ シ ムベ キ コト勿 論 ナ ル モ此 ノ場 合

ス ルヲ以 テ足 リ特 ニ必 要 ナキ限 リ別 ニ書 改 ム ル ヲ要 セザ ル コト 但

﹁国 防 ﹂治 安 維 持 法 所 定 ノ手 続 ニ依 ルベ キ事 件 ノ記 録 ニ ハ ﹁治

安 ﹂及 其 ノ他 ノ思 想事 犯 ノ記 録 ニ ハ ﹁思 ﹂ ノ記 号 ヲ附 シ以 テ思

3. 思想 事 犯中 国 防 保 安 法 所定 ノ手 続 ニ依 ルベ キ 事 件 記 録 ニ ハ

ノ意 見若 ハ執 リ タ ル処 置 ヲ明示 シ置 ク ノ要 ア リト認 ム ルト キ ハ之

想事 犯 ノ記 録 タ ル コト ヲ明確 ナ ラ シ ムベ キ コト

シ司 法警 察 官 ニ何 分 ノ指 揮 ヲ為 シタ ルト キ又 ハ該報 告 ニ関 シ検事

ヲ送 付書 ニ附 記 ス ル コト 四、 司法 警 察 官 ノ作 成 ニ係 ル犯罪 報 告書 、情 勢 報 告 書其 ノ他 ノ報 告

キベ ハ勿 論 報 告 ニ関 シ文 書 ヲ作 成 シタ ルト キ就 中思 想事 犯 ニ関

4. 検 事 ニ対 シ常 ニ規 範 ニ依 リ訓 令 セラ レ居 ル犯 罪報 告 ヲ励 行 ス

ト キ ハ検 事 ノ必 要 ト ス ル部 数 ヲ送 付 スベ キ コト

ス ル内 密 捜 査報 告 書 、 手 記 、 調 書等 ヲ謄 写又 ハ印 刷 ニ付 シ タ ル

書 ニ シテ特 ニ迅 速 ヲ要 シ又 ハ重 要 ナ ル モ ノ ニ付 テ ハ司 法 警察 官 ヲ シテ直 接 司 法 大 臣 、 検事 総 長 、 所轄 検 事 長 竝 ニ関係 地 検 事長 及検 事 正 ニ対 シ テ モ亦 之 ヲ報 告 セ シ ム ル コト

5. 検 事 ニ対 シ極 力 規範 第 二十 二条 ニ掲 グ ル事 項 ノ調 査 報告 ヲ励 行 スベ キ コト 犯罪 報 告 又 ハ情 勢報 告 ニ シテ特 ニ迅 速 ヲ要 シ又 ハ重 要 ナ ル事 項 ニ関 ス ルモ ノ ニ付 テ ハ直 接 司 法 大 臣検 事 総 長 、 所 轄 検 事 長 竝

6.

ニ関 係 地検 事 長 及 検事 正 ニ対 シテ モ報 告 ヲ為 スベ キ コト ︵本 通 牒 第 四項 参 照 ) 七、 思 想 関 係 図 書 ノ散 逸 防 止 ノ徹 底 ヲ期 ス ル為 思 想 係 検 事 ヲ シ テ

犯罪 事 件 ニ就 テ モ其 ノ捜 査 ハ総 テ思 想 係検 事 ヲ シテ之 ヲ担 当

イ 、治 安 維 持 法 違 反事 件 ノ ミ ナラズ 国 防 保安 法 第 十六 条所 定 ノ

セ シ ム ル コト

ロ、 国 防 保 安 法 所 定 ノ 犯罪 ハ総 テ 地方 裁 判所 ニ公 訴 提 起 ス ル コ ト

留 意 ス ル コト ニ付 テ ハ管 下 司 法 警 察 官 ノ士気 ニ及 ボ ス影 響 等

ハ、裁 判 所 ノ管 轄 移転 ニ関 ス ル治 安 維 持 法 第 三十 二条 ノ運 用 ニ

ニ、国 防 保 安 法 、 及治 安 維 持 法 改 正 法 律 所定 ノ特 別 刑 事手 続 ニ

ヲ考 慮 ノ上 之 ガ活 用 ヲ期 ス ル コト

想 研 究資 料 等 ノ思 想 関 係 図書 ヲ洩 レナ ク之 ニ登 載 セ シメ思 想 係 検

ニ依 ツタ事 件 デ ア ル コト ヲ明白 ニ スル コト

依 ツタ事 件 ニ付 テ ハ該 記 録 ニ特 別 ナ ル標 記 ヲ付 シ、特 別 手 続

﹁ 思 想 関 係 図 書 目 録 ﹂ ヲ整 備 セ シメ其 ノ保 管 ニ係 ル思 想 月 報 、 思

事 転 任其 ノ他 ノ事 由 ニ因 リ其 ノ 地位 ヲ去 ル ニ際 シテ ハ之 ヲ シ テ現

反事 件 ノ稟 議 及 報 告 ニ関 ス ル事 項

4. 国防 保 安 法 第 十 六条 ニ掲 グ ル罪 ニ関 スル事 件 及 治 安 維持 法 違

3. 訴訟 記 録 ノ謄 写閲覧 ニ関 ス ル注 意 事 項

2. 裁判 書 作 成 上 ノ注意 事 項

品 ト 照合 ノ上 直 接 後 任 者 又 ハ所 属 検 事 局 ノ長 ノ指 定 ス ル検 事 ニ対 シ其 ノ引 継 ヲ為 サ シ ム ルト共 ニ速 ニ其 ノ結 果 ヲ報 告 ス ル コト 八、 思 想 事 犯 ニ付 公 訴 ヲ提 起 ス ルト キ ハ国 防保 安 法 所 定 ノ手 続 ニ依 ルベ キ事 件 ノ記 録 ニ ハ ﹁国防 ﹂ 治 安 維 持 法所 定 ノ手 続 ニ依 ルベ キ 事 件 ノ記 録 ニ ハ ﹁治 安 ﹂ 及其 ノ他 ノ思 想 事 犯 ノ記 録 ニ ハ ﹁思﹂ ノ

5. 控 訴 院 管 内 別 思 想 検察 会同 及 地方 裁 判 所管 内 別 検 察 会同 ノ開 催 ニ関 ス ル事 項

記 号 ヲ附 シ以 テ思 想 事 犯 ノ記録 タ ル コト ヲ明確 ナラ シ ムル コト

6. 検 事 又 ハ其 ノ命 ヲ受 ケ タ ル司 法 警 察 官 ガ 召喚 シタ ル証 人等 ニ

司法 警 察 官 ノ指 揮 及 令 状 発 付 ニ関 ス ル事 項

支 給 ス ル旅 費 、 日当 等 ニ関 ス ル事 項

10. 予 防 拘 禁 ノ請 求 ニ関 ス ル事 項

第 一、 予 防 拘 禁 ニ関 ス ル注 意 事 項

9. 身 柄 ノ拘束 ト検 事 ノ責 任 ニ関 ス ル事 項

8. 監獄 ニ代 用 ス ル留 置場 ニ関 ス ル注 意 事 項

7.

昭 和 十 六年 三月 二十 四 日 所 長、 検 事 正 合 同会 議

次

ニ於 ケ ル刑 事 局 長 指 示

目

第 一、 特 別 刑事 手 続 ニ関 ス ル注意 事 項 1. 国 防 保 安法 第 十 六 条 所 定 ノ 犯罪 事 件 及 治 安 維持 法 違 反 事 件 ノ 具体的処理方針

十 六 条掲 記 ノ犯 罪 ニ適 用 ス ル コト ト致 シ マシタ ノ ハ、 之 ニ依

国 防 保安 法 ニ於 テ特 別 刑 事 手 続 ヲ規 定 シ、 之 ヲ広 ク同 法 第

之 ヲ担 当 セ シメ ラ レ度 イ コトデ ア リ マス。

先 刻 司 法 大 臣 ヨリ訓 示 セ ラ レタ ルト コ ロガ ア リ、 只今 又司 法 次 官

査捜 機 関 ガ 一元 的 ナ活動 ヲ実 施 シ、 専 門 的ナ観 点 カ ラ事件 ヲ

テ 外諜 活 動 ヲ 一挙 ニ粉砕 セ ント ス ル ニ在 ルノデ ア リ マシテ、

刑事 局 長指 示 (合 同 会議 )

ヨリ国 防 保 安法 及治 安 維 持 法 等 ノ 運用 方 針 ノ大 綱 ニ付 注 意 セラ ル ル

ロ ハ

其 ノ捜 査 ニ当 ツ テ ハ、思 想係 検 事 ト経 済 係 検事 ト ノ連 絡 ヲ緊

条 第 二 項中 ニ ハ経 済 関 係 ノ事件 モ包 含 サ レ テ居 リ マス ノデ、

ラ シ ム ル必要 ガ ア ルノデ ア リ マ ス。而 シテ 国防 保 安法 第 十 六

聯 シ テ此ノ種 事 件 ハ能 フ限 リ思 想 係 検 事 ヲ シテ其 ノ処 理 ニ当

課 ニ於 テ所 管 セ シメ ル コトト 致 ス方 針 デ ア リ マ スカ ラ之 ト関

従 ツテ此 ノ種 事 件 ハ本 省 ニ於 テ モ之 ヲ統 一的 ニ刑事 局思 想

処 理 ス ル ニ非 ザ レバ 、所 期 ノ効 果 ヲ挙 ゲ得 ナイ ノデ アリ マ ス。

ト コ ロガア リ マシタ ノ デ、 私 ヨリ ハ両 法 律 ノ運 用 特ニ 特別 刑 事 手 続

イ ト存 ジ マ ス。

及 予 防 拘 禁 手 続 ノ 運用 ニ付 注意 スベ キ事 項 ヲ若 干 具体 的 ニ申 上 ゲ度

(第 一、 特 別 刑事 手 続 ニ関 ス ル注 意 事 項 )

一、 検事 ニ対 シ相 当 広 汎 ナ ル強 制捜 査権 ヲ規 定 致 シ タ コト

密 ナ ラ シ ム ル様 特 段 ノ御 配 慮 ヲ望 ミ マ ス。

申 ス迄 モナ ク両法 律 ニ於 ケ ル特 別刑 事 手 続 ノ特 徴 ト 致 シ マ スト コ

二 、控 訴 審 ヲ省 略 ス ル コトト 致 シタ コト

国 防 保 安法 所 定 ノ犯 罪 ハ特 別 ノ事 情 ナキ 限 リ、 総テ 地 方裁

第 一ニ、 国 防 保 安 法 第十 六 条 所 定 ノ犯罪 事 件 及 治 安維 持 法違 反事 件

安 法 所 定 ノ 犯罪 ニ付 キ マシテ モ能 フ限 リ此 ノ部 ニ於 テ 専門的

思 想 公 判部 ヲ設 置 シ、 治安維持 法 違 反事 件 ノ ミ ナ ラズ 国 防保

為 メ第 一審 ノ手 続 ヲ 一層 適 正 ナラ シム ル必 要 ガ ア リ マスノ デ、

今 回 ノ特 別 刑 事 手 続 ニ於 キ マシテ控 訴 審 ヲ省 略 致 シ マシタ

判 所 ニ公 訴 ヲ提 起 セラ レ度 キ コト デ ア リ マス。

(2)

其 ノ二 ハ、

三 、 弁 護 権 ノ行 使 ニ関 シ各種 ノ制 限 ヲ設 ケ タ コト ノ三 点 ニ帰着 致 ス ノデ ア リ マ スガ、其 ノ 主眼 点ト 致 シ マスト コ ロ ハ 捜 査 ノ合 法 化 、 訴 訟 ノ 敏速 化 及 機 密 ノ漏洩 防 止 ニ在 ル ノデ ア リ マ ス。 各 位 ハ此 ノ立 法 ノ精 神 ニ則 ラ レ、 具体 的 ノ運 用 ニ当 リ 万遺 漏 ナ キ ヲ 期 セラ レ度 イ ノデ アリ マス。

ノ具 体 的 処 理 方 針 ニ関 スル事 項 デ ア リ マ スガ、 更 ニ項 ヲ別 ツ テ申

ニ処 理 セ シ ム ル方 針 デ ア リ マ ス事 ハ、 先 程次官 カラ 述 ベ ラ レ

私 ヨリ申 上 ゲ度 イ コト ハ、

上 ゲ ル事 ニ致 シ マス。

方 裁 判 所 ニ公訴 ヲ提 起 セ ラ ル ル様 運 用 セ ラ レ度 イ ノデ ア リ マ

罪 ハ特 別 ノ事 情 ナ キ限 リ (区裁 判 所 事 件 デ ア リ マシ テ モ) 地

タト コロデ ア リ マ スガ、 此 ノ趣 旨 ニ鑑 ミ国 防保 安 法所 定 ノ犯

ノ犯 罪 事 件 ニ就 テ モ、其 ノ捜 査 ハ能 フ限 リ思 想係 検 事 ヲ シテ

治 安 維持 法違 反事 件 ノ ミ ナ ラズ、 国 防 保 安 法第 十六 条 所 定

其 ノ 一ハ (1)

ス。

裁 判︵ 所3 ノ︶ 管 轄 移転 ニ関 ス ル治 安維 持 法 第 三 十 二 条 ノ運 用 ニ

ノ其三 ハ、

付 テ ハ、 管 下司 法 警 察 官 ノ士 気 ニ及 ボ ス影 響 等 ヲ考 慮 ノ 上、

法 違 反 ト シ、 其 ノ他 ハ軍 機 保 護 法違 反 等 固 有 ノ罪 名 ヲ表 示 セ ラ レ度 イト存 ジ マ ス。

第 二 ハ裁 判 書 作 成 上 ノ注 意 事 項 デ ア リ マス。

現 行 刑 事 訴 訟法 ニ於 キ マ シテ、 予 審 ノ終結 シタ ト キ ハ、 其 ノ決

判 決言 渡 ノ ア ツ タト キ ハ、 被 告 人 其 ノ他 訴 訟関 係 人 ハ、 ソノ費 用

定書 ノ謄 本 ヲ被 告 人 ニ送 達 ス ル コト ニナ ツテ居 リ、 公 判 ニ於 テ モ

ヲ以 テ判 決 書 ノ謄 本 ノ交 付 ヲ請 求 スル コト ヲ得 ル コト ト ナツ テ居

之 ガ活 用 ヲ期 セ ラ レ度 キ コトデ ア リ マス。 本 条 ガ設 ケ ラ レ マシ タノ ハ集 団 的 思 想 犯罪 ノ審 判 ヲ シ テ迅

而 シテ国 防 保安 法 ニ定 ム ル刑 事 手 続 ニ於 テ モ此 ノ原 則 ニ ハ何 等

リ マス コト ハ各 位 御 承 知 ノ 通 リ デ ア リ マス。

変 更 ヲ加 ヘテ居 ラ ヌ ノデ ア リ マ スガ、 予 審 終結 決 定 書 又 ハ判 決 謄

速 且適 正 ナ ラ シ メ ント ス ル ニ在 ル ノデ ア リ マシテ、 本 条 ノ活

一面 ニ於 テ管 轄 ノ移 転 ガ捜 査 ニ従 事 シ タ司 法 警 察 官 ノ士 気 ヲ

用 ニ依 リ所 期 ノ効 果 ヲ挙 グ ル様 努 ム ベ キ ハ勿論 デ ア リ マ スガ、

沮 喪 セ シ ム ルガ如 キ結 果 ヲ招 来 ス ルノ虞 ガ ア リ マ スカ ラ運 用

本 ニ国 家機 密 、 軍 事 上 ノ秘 密 等 ガ詳 細 ニ記 載 セ ラ レ夫 レガ私 人 ノ

払 ハ レ、 秘 密 保持 上 遺 憾 ナ キ ヤウ特 ニ御 考 慮 ヲ煩 ハシタ イト存 ズ

ハ判 決 書 ノ作 成 ニ当 ツ テ ハ機 密 事 項 ノ表 示 ニ付 キ、 格 別 ノ工 夫 ヲ

コト ハ、寔 ニ遺 憾 ト存 ズ ル ノデ ア リ マ ス。仍 テ予審 終 結 決 定書 又

手 ヲ通 ジ テ、 公 ニセ ラ レ又 ハ外 国 ニ漏 泄 セ ラ ル ル危 険 ヲ残 シ マス

上 此 ノ点 ニ考 慮 ヲ用 ヒ過誤 ナ キ ヲ期 セ ラ レ度 イ ト存 ジ マ ス。 其 ノ 四 ハ、

ニ付 テ ハ、該 記 録 ニ特 別 ナ ル標 記 ヲ付 シ、 特 別 手続 ニ依 ツ タ

ルノデ ア リ マス。

(4) 国 防 保安 法 及 治 安 維 持 法所 定 ノ特 別 刑 事 手 続 ニ依 ツタ事 件

事 件 デ ア ル コト ヲ明 白 ナ ラ シ ム ル様 セラ レ度 イ コト デ ア リ マ

ノ見易 キ箇 所 、 例ヘ バ右 肩 ノ辺 ニ朱 書 セ シメ テ ハ如 何 ト 存 ジ

於 テ ハ国 防 治 安維 持 法 ニ付 キ マシ テ ハ治 安 ト記 録 ノ表 紙

取 計 ハ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。其 ノ標 示 ハ国 防 保 安 法 ノ場 合 ニ

リ予 審 又 ハ公判 ニ記 録 ヲ送 付 ス ル場 合 ニ於 キ マシ テ モ左 様 ニ

依 リ タ ル事件 ナ ル旨 ヲ明 カ ニサ セ ル様 致 サ レ度 ク、 検事 局 ヨ

謄 写 閲覧 ニ関 スル制 限規 定 ガ設 ケ ラ レ タノ デ ア リ マス。此 ノ立 法

マス。 斯 様 ナ点 ニ鑑 ミ今 回 ノ刑 事 手 続 ニ於 キ マシ テ ハ訴 訟 記 録 ノ

論 一般 社 会 ニ対 シテ モ悪 影 響 ヲ及 ボ シ タ事 例 スラ存 ス ルノデ ア リ

如 キ ハ謄 写書 類 ヲ利 用 シテ之 ヲ相 互間 ノ連 絡 ニ供 シ、 訴 訟 上 ハ勿

念 ヲ抱 ク者 ガ尠 ク ナ カ ツ タバ カリ デ ナク、 例ヘ バ 共産 党 ノ被 告 ノ

タ ノデ ア リ マスガ、 軍 事 上 ノ秘 密 等 ガ其 ノ点 ヨリ漏洩 スル ヤ ノ疑

従 来 訴 訟 関係 人 ハ極 メ テ自由 ニ訴訟 記 録 ノ謄 写 及閲 覧 ヲ為 シ得

第 三 ハ訴 訟 記 録 ノ謄 写閲 覧 ニ関 ス ル注 意 事 項 デ ア リ マ ス。

ス。 両 法 律所 定 ノ手 続 ニ依 ツ タ事 件 ニ付 キ マシ テ ハ、 警 察 ヨ

マス。 尚 国 防 保 安 法 第 十 六条 所 定 ノ事 件 名 ノ表 示方 ニ付 キ マ

リ事 件 ヲ送 致 セ シ ム ル場 合 ニ於 テ既 ニ記 録 ノ表 紙 ニ該手 続 ニ

シ テ ハ、 国 防 保 安 法 ニ於 テ新 ニ設 ケ ラ レ タ犯罪 ハ、 国 防 保 安

第 四 ハ国 防保 安法 第 十 六 条 ニ掲 グ ル罪 ニ関 ス ル事 件 及 治 安維 持 法 違

ニ付 キ マシテ ハ従 来 検挙 報 告 処 分禀 請 其 ノ他 ヲ通牒 ヲ以 テ指 示致

反事 件 ノ禀議 報 告 ニ関 スル事 項 デ ア リ マス。 治安 維持 法違 反 事 件

趣 旨 ヲ貫 徹 致 シ マス為 ニ ハ各 裁 判 所 ニ記 録 ノ閲 覧 謄 写 室 ヲ特 設 シ、 専 任 ノ係 官 ヲ置 クト 共 ニ謄 写請 負 業 者 ノ取締 ニ関 スル規 程 ヲ設 ケ、

リ マスガ、 尚 検 挙報告 ニ際 シ マ シテ ハ

シ テ ア ルノ デ ア リ マシテ、 此 ノ点 ハ引 続 キ励 行 セラ レ度 イ ノ デ ア

更 ニ極 メ テ重 要 ナ ル機密 ニ関 スル事 件 ノ記 録 ニ付 テ ハ、 裁 判 所 ニ 於 テ謄 写 ノ上之 ヲ訴 訟 関 係 人 ニ貸 与 シ、 事 後 ニ於 テ之 ヲ回収 致 ス 等 ノ処 置 ヲ講 ズ ル事 ガ必 要 デ ア ルト考ヘ マ ス。 然 シ ナガ ラ是 等 ノ

ロ、 発付 シタ リト セバ、 発 付 ノ日時 及令 状 ノ種 類 ( 例ヘ バ 検 事 名

イ、令 状 ヲ発 付 シ タリ ヤ否 ヤ

施 シ難 イ モ ノ モア リ マ スカ ラ、 此 ノ 点 ニ付 テ ハ本省 ニ於 テ モ極力

処 置 ヲ講 ズ ル ニ付 テ ハ特 別 ノ予算 ヲ伴 フ等 ノ タ メ、 今 直 ニ之 ヲ実

其 ノ実 現 ニ努 力 ス ル考 ヘデ ア リ マスガ取 敢 ズ左 ノ諸 点 ニ付 テ御 留

報 告 セ ラ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。

ハ、 当 該 事 件 ニ付捜 査 上行 政 検 束 ヲ用 ヒ タリ ヤ否 ヤ等 ヲ モ合 セ テ

リ ヤ)

義 ノ令 状 ナ リ ヤ、検 事 ノ命 ニ依 ル令 状 ナ リ ヤ、其 ノ他 ノ令 状 ナ

意 願 ヒ度 イト思 フノデ ア リ マス。 其 ノ 一 ハ現在 ノ裁 判 所 庁 舎 ノ設 備 ガ許 ス範 囲 内 ニ於 テ記 録 ノ謄 写、 閲 覧 ニ供 ス ル特 別 ノ場 所 ヲ設 ク ル様 取 計 ハレ度 イ ノデ ア リ マ

国 防 保 安 法 第 十 六条 ニ掲 グ ル罪 ニ関 ス ル事 件 ニ付 キ マシ テ モ、

其 ノ二 ハ検 事 局 ヨリ記 録 ヲ裁 判 所 ニ送 付 致 スニ当 ツ テ記 録 ノ全

ス。

レタ イ ノデ アリ マスガ、 更 ニ同法 ニ規 定 ス ル国 家機 密 ニ関 ス ル犯

治 安 維 持 法 違 反事 件 ト同 様 ニ、 検 挙 報 告 及 処 分禀 請 ノ手 続 ヲ執 ラ

罪 ニ付 キ マシテ ハ、 特 ニ急 速 ヲ要 シ捜 査 上 支 障 ヲ来 ス虞 ノ ア ル場

部 又 ハ 一部 ノ謄 写 ヲ禁 ズ ベ キ モノ ト認 メ タ場 合 ハ、 検 事 ニ於 テ其 ノ旨 ヲ記 載 シタ ル附 箋 ヲ記 録 ニ添 付 シ テ裁判 所 ガ謄 写 ノ許否 ヲ決

合 ヲ除 キ原 則 ト シテ被 疑 者 ノ検 挙 着 手 前 ニ事 情 ヲ具 シ検 事 長、 検

事 総 長 ヲ経 テ司法 大 臣 ニ検 挙禀 請 ノ手 続 ヲ執 ラ レ度 イ ノデ ア リ マ

ス ル際 ノ参 考 ニ供 スル様 取 計 ハ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。 其 ノ 三 ハ裁 判 長 又 ハ予審 判 事 ハ謄 写 ヲ決 ス ル ニ就 テ ハ自 ラ記 録

ス。 此 ノ場 合 ニ於 テ ハ成 ル可 ク主 任 検 事 ヲ本 省 及 大審 院 検事 局 ニ

治 安 維持 法 及 国 防 保安 法 ノ規 定 ニ依 リ マシテ、 検 事ニ一 元 化 セ

ノ開 催 ニ関 ス ル事 項 デ ア リ マス。

第 五 ハ控 訴院 管 内 別 思 想検 察 会 同 及 地 方 裁 判 所管 内 別 思 想 検察 会 同

通 牒 ヲ以 テ具体 的 ニ指 示 致 シ度 イ ト存 ジ マス。

斯 様 ナ 両法 所 定 ノ犯罪 ニ関 ス ル各 種 ノ手 続 ニ付 キ マシテ ハ別 ニ

出 頭 セ シ メテ、 指 揮 ヲ受 ク ル様 ニセ ラ レ度 イ ト思 フノデ アリ マス。

ノ内 容 ヲ査 閲 スベ キ コト ハ当 然 ノ事 柄 ト存 ジ マ スガ、其 ノ 査 閲 ヲ 裁 判 所 書 記 ニ 一任 ス ルガ如 キ ハ絶 対 之無 キ様 セ ラ レ度 イ ノ デ ア リ マ ス。 而 シ テ 一部 ノ謄 写 ヲ禁 止 シ タ場 合 ニ於 テ ハ、 禁 止 シタ部 分

ス。

ガ絶 対 ニ謄 写 セ ラ レザ ル様 適 当 ノ措 置 ヲ講 ゼ ラ レ度 イ ノ デ ア リ マ

以 上 ノ三 点 ハ鑑 定 人、 私 訴 当 事 者 及其 ノ訴 訟 代 理 人 ニ対 ス ル書 類 ノ閲 覧 又 ハ謄 写 ノ許 否 ニ付 テ モ同様 ニ考 慮 セ ラ レ度 ク

法 改正 法 律 ニ於 テ認 メ ラ レタ強 制捜 査権 ニ依 リ検事 又 ハ其 ノ命 ヲ

当 及宿 料 ヲ給 与 シ得 ル旨 規 定 致 シ テ居 リ、 国 防 保 安 法 及治 安 維 持

シタ場 合 ニ ハ、 同令 ノ定 ム ル所 ニ依 リ、 之 等 ノ者 ニ対 シ旅 費 、 日

旅 費 、 日当 、 止宿 料 給 与 ノ件 ニ於 キ マシテ ハ、 刑事 訴 訟法 上 認 メ

ニ於 キ マシテ ハ新 規 ニ控 訴 院 管 内 別 思想 検 察 会 同 及 地方 裁 判 所管

ヲ要 スル コト ハ申 ス迄 モア リ マセ ヌ。 此 ノ 目的 ニ資 スル為 、 本省

受 ケ タ ル司 法 警 察官 ガ、 之 等 ノ者 ヲ召喚 シタ ル場 合 ニ於 テ モ亦 同

ラ レタ強 制 捜 査権 ヲ適 正 且 円滑 ニ運 行 致 シ マス為 ニ ハ、検 事 特 ニ

内 別 思 想 検 察会 同 ノ 予算 ヲ計 上 致 シ マシタ処 、 幸 ニ シテ其 ノ成 立

様 旅 費 、 日当 等 ヲ給 与 ス ルヲ至 当 ト考ヘ ルノデ ア リ マスガ、 之 ニ

ハ其 ノ職 務 ヲ行 フ者 ガ 証人 、 鑑 定 人、 通事 又 ハ飜訳 人 ヲ召 喚 シ マ

ヲ見 マシ タノ デ、 昭和 十 六年 度 ヨリ之 ヲ実 施 致 シタ ク存 ジ テ居 リ

就 テ ハ省 令 ノ 一部 ヲ改 正 スル ノ必 要 ガ ア リ マ スノ デ、 近 ク其 ノ改

ラ レタ強 制 捜 査 権 ニ ヨリ検 事 又 ハ其 ノ命 ヲ受 ケ タ ル司法 警 察 官 若

マ ス。 両 会 同 ノ具 体 的 実 施 内 容 ニ付 キ マ シテ ハ別 ニ通 牒 ヲ以 テ指

正 ヲ行 ヒ彼 是 ノ間 ニ不 均 衡 ヲ生 ジ ナイ様 致 ス予 定 デ ア リ マ ス。

思 想 係 検 事 ニ対 シ司法 警 察 官 ガ遅 滞 ナ ク情 勢 報 告 ヲ行 ヒ、検 事 ノ

示 致 シ度 イト存 ジ マ スガ、 控 訴 院別 思 想 検 察 会 同 ハ検 事 長之 ヲ召

指 導 方 針 ガ司法 警 察 官 ニ徹 底 シ、 両者 ノ間 ニ完 全 ナ ル意 思 ノ合 致

集 シ、管 内 ノ思 想 係 検 事 ヲ始 ト シ、 特 高 課 長 、 外 事 課 長、 検 閲 課

第 七 ハ司 法 警 察官 ノ指 揮 及 令 状 ノ発 布 ニ関 スル事 項 デ ア リ マ ス。

会 同 ハ何 レ モ年 一回 ノ予 定 デ アリ マスガ、 此 等 ノ会 同 ハ勿 論 従

支 ナキ 限 リ会 同 開 地 ノ判 事 ヲ モ参列 セ シメ ラ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。

検 察 ニ関 シテ協 議 セ ラ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。 尚 此 ノ両 会 同 ニ ハ差

外 事 主任 、 検 閲 主 任 及 憲 兵 隊 関 係者 等 ヲ会 同 セ シ メ、孰 レ モ思 想

身 柄 ノ拘 束 ニ付 直 接 ノ責 任 ガ ナイ ト コ ロ ヨリ、往 々 ニ シテ司 法警

重 要 ナ ル犯 罪 ニ付 テ ハ検 事 ノ指揮 ヲ為 シテ来 タノ デ ア リ マ スガ、

ル判 断 ト指 揮 ト ヲ要 請 セ ラ レ ル ノデ ア リ マ ス。 従来ト テ モ検 事 ハ

デ ア リ マスカ ラ、 検 事 ハ犯 罪 検 挙 ニ付 従 来 以 上 敏速 ニ シテ慎 重 ナ

ハ司 法 警 察官 ノ令 状 無 ク シ テ身 柄 ノ拘 束 ヲ為 ス コト ハ出 来 ナ イ訳

今 回 ノ刑 事手 続 ニ依 リ マシ テ、検 事 ノ令 状 又 ハ検 事 ノ命 令 ニ依

長 、 内鮮 課 長及 憲 兵 隊 特 高 課 長 、 又 ハ分 隊 長 等 ヲ会 同 セ シメ ラ レ

来 行 ツテ参 ツタ控 訴 院 管 内 別 思 想会 同 又 ハ 一般 的 教 養 訓練 ノ為 ノ

ニ止 マリ、 積極 的 ニ之 ヲ指 導 ス ル事 ニ付 欠 ク ル憾 ガ ア リ、 或 ハ又

察 官 ニ対 シ受 身 ノ立 場 ニ立 チ、 或 ハ司 法 警 察官 ノ報 告 ヲ批 判 ス ル

度 ク、 地 方裁 判 所 別 検 察 会 同 ハ検事 正之 ヲ召 集 シ管 内 ノ特 高 主 任 、

特 高 主 任会 同 ト ハ自 ラ会 同 ノ趣 旨 ヲ異 ニ致 シテ居 リ、 之 ガ為 ニ従

マ ス。斯 クテ ハ真 ノ指 揮 権 ノ行使 ト ハ謂 ヒ得 ナイ ノ デ ア リ マシテ、

司 法 警 察官 ノ報 告 ヲ無 批 判 ニ鵜呑 ミ ニ スル弊 スラ ア ツタ ノデ アリ

来 ノ会 同 ニ ハ何 等 影 響 ハナ イ ノデ ア リ マ ス。 併 シ乍 ラ開催 ノ時 期

支 障 ヲ来 サ ザ ル様 特 ニ御 配 慮 願 ヒタ イ ノデ ア リ マス。

事 件 ヲ如 何 ナ ル時 期 ニ於 テ検 挙 スベ キ ヤ ニ付検 事 ガ積 極 的 ニ指揮

セ シム ル様 司 法 警 察 官 ヲ指導 訓 練 シ、 此 ノ報告 ニ基 キ、 如 何 ナ ル

本 手 続 ノ運 用 ニ付 キ マシ テ ハ、 検 事 ハ常 ニ査 察 内偵 ノ経 過 ヲ報告

其 ノ他 ニ付 キ マ シテ ハ従 来 ノ会 同 ト睨 ミ合 セ、 其 ノ間 ニ事 務 上 ノ

第 六 ハ検事 又 ハ其 ノ命 ヲ受 ケ タ ル司法 警 察 官 ガ召 喚 シタ 証人 等 ニ支 給 スル旅 費 、 日当 等 ニ関 スル事 項 デ ア リ マ ス。 大 正 十 三 年司 法 省 令 第 十 一号 証 人、 鑑 定 人 、 通 事 又 ハ飜訳 人 ニ

ニ就 キ マシテ ハ形 式 的 証拠 ノ有 無 ニ重点 ヲ置 ク コト ナ ク克 ク事 件

ス ル如 キ証拠 ヲ求 メ ル事 ハ頗 ル難 事 デ ア リ マシ テ、 本手 続 ノ運 用

ニ際 シ刑 事 訴訟 法 第 二 百 五 十 五 条 ノ強 制 処 分 ノ請求 ノ為 ニ必 要 ト

ノ責 任 ニ依 ル令 状 ノ発 布 ガ伴 フ訳 デ ア リ マ スガ、検 事 ガ令 状 発 布

ス ル様 ニ致 シ度 イ ノデ ア リ マ ス。 而 シテ犯 罪 ノ検 挙 ニ ハ当 然 検 事

置場 ニ ﹁ 拘 禁 ス ル コト ヲ得 ﹂ ト規 定 シナ カ ツタ点 ヨリ致 シ テ モ明

デ ア リ マス。 此 ノ事 ハ監 獄 ニ ﹁代 用 ス ル コト ヲ得 ﹂ ト規 定 シ、留

テ ハ、性 質 ノ許 ス範 囲 内 ニ於 テ、 監獄 法 ノ規 定 ガ適 用 セ ラ ル ルノ

ト 云 フ意 味 デ ア リ マ ス。 従 ツテ被 勾留 者 ノ処 遇其 ノ他 ニ付 キ マシ

獄 ニ代 用 ト ハ留 置 場 ノ人 的 物的 設 備 ヲ利 用 シ之 ヲ監 獄 ニ代 用 スル

リ マス。

監獄 ト ス ル此 ノ規 定 ニ関 聯 シテ次 ノ諸 点 ニ留 意 セラ レ度 ヒノ デ ア

正 ス ル必要 ガ ア ルカト存 ジ テ居 ルノデ ア リ マスガ、 留置 場 ヲ代 用

イ ノデ ア リ マ ス。 司 法警 察 官 ハ往 々 ニシ テ職務 熱 心 ノ余 リ、 犯 罪

白 ダ ト思 フノ デ ア リ マス。之 ニ関 聯 シ テ監獄 法 施 行 規 則 ヲ 一部 改

検 挙 ノ多 カ ラ ン コト ヲ望 ムノ弊 ニ陥 リ易 イ コト ハ御 承 知 ノ通 リデ

(一) 先ヅ 第 一ニ収 容 ニ就 キ マ シテ ハ医 師 ノ健 康 診 断 、 入 浴、 独居

ノ見 透 シ ヲ付 ケ敏 速 果 敢 ナ ル処 置 ニ出 デ ラ レ度 イ ノ デ ア リ マ ス。

ア リ マシテ、 之 ヲ適 当 ニ引締 メ検 事 ノ全 責 任 ニ於 テ国 家 ノ治 安 ヲ

テ 監獄 法 規 ノ適 用 ア ル モノ ト シテ取 扱 ハシ ム ル コト 、 但 シ右 除

拘 禁等 留 置 場 ニ於 テ ハ到 底 実 施 不 可 能 ナ ル規 定 ヲ除 キ原則 ト シ

然 シ乍 ラ此 ノ事 ハ必 ズ シ モ今状 ヲ濫 発 セ ヨト ノ趣旨 デ ハ決 シ テ無

維 持 シテ行 クト云 フ コト ガ 本手 続 ノ精 神 デア リ マスカ ラ、 一面 ニ

第 二 ニ戒護 、 給 養、 衛 生、 医療 及 領 置 ニ就 キ マシ テ ハ大 部 分 保 持 ニ留意 セ シム ル コト。

監 獄法 規 ノ適 用 ア ル モノ ト シテ取 扱 ハシメ特 ニ被 拘 禁 者 ノ健 康

) ( 二

外 条 項 ニ付 テ モ成 ル可 ク其 ノ趣 旨 ニ則 リ取 扱 ハシ ム ル コト。

於 テ前 述 ノ如 キ敏 速 果 敢 ナ ル処 置 ヲ必 要 ト ス ルト共 ニ他 面 ニ於 テ 適 正慎 重 ナ ル態 度 ガ要請 セラ レ ルノ デ ア リ マス。此 ノ一 見矛 盾 ス ル如 キ要 求 ヲ充 足 シテ行 ク処 ニ検事 ノ使 命 ガ存 ス ルノデ ア リ マシ テ、 其 ノ責 任 ハ頗 ル重大 デ ア リ マ ス。 要 ハ検 事 ガ実 力 ヲ持 ツ コト デ ア リ マ ス。 検事 正各 位 ニ於 カ レ マシ テ ハ本 手 続 ノ運 用 ノ如 何 ガ 司 法 部 殊 ニ検 察 部 ノ浮 沈 ニ関 ス ル モノ ナ ル事 ニ鑑 ミ、 部 下 検事 ヲ

モノ ト シ テ取 扱 ハシメ ラ レ タ キ コト、 尚 刑 事 訴 訟 法 第 百十 二条

( 三) 第 三 ニ接 見 及 信書 ニ就 キ マ シテ ハ大 部分 監 獄 法 規 ノ準用 ア ル

ヲ適 用 ス ル場 合 ニ於 テ、 特 ニ接 見 ニ関 シテ ハ、 必 ズ シ モ独 居 拘

指 導 セ ラ レ ルト 共 ニ自 ラ陣 頭 ニ立 ツ テ管 内 治 安 ノ維 持 ニ任 ゼ ラ レ 司 法警察 官 ヲ シテ真 ニ検 事 ノ指 揮 ニ心服 セ シム ル様 努 メ ラ レ度 ヒ

禁 ニ付 ス ルヲ得 ザ ル留 置 場 ノ実 情 ニ鑑 ミ ﹁特 ニ外来 者 ト ノ接 見

額 モ認 メ ラ レ テ居 リ マ スル カ ラ、能 フ限 リ之 ヲ有意 義 ニ励 行 セ

当 然 其 ノ適 用 ア ル モノ ト解 セ ラ レ マス ル シ、 之 ニ伴 フ費 用 ノ増

(四) 第 四 ニ監 獄法 第 四条 ノ官 吏 巡 閲竝 判 検 事 ノ監 獄 巡視 ノ規 定 ハ

ヲ禁 ズ ﹂ 等 ノ制 限命 令 ヲ発 シ テ実 効 ヲ収 メ得 ル様 ニス ル コト。

ノデ ア リ マス。 第 八 ハ留置場 ノ監獄 代 用 ニ関 ス ル注意 事 項 デ ア リ マス。 御 承 知 ノ如 ク両 法 律 ニ於 キ マシ テ ハ、 警 察 官 署 及憲 兵 隊 ノ留 置 場 ヲ以 テ 監 獄 ニ代 用 シ得 ル旨 ヲ規 定 シテ居 ルノデ アリ マス。茲 ニ謂 フ監

(五)

ラ レ タキ コト。

官 ノ教 養 訓練 ノ 一部 ト シテ特 高 警 察 官 ニ対 スル教 養訓 練 ヲ行 ヒ、

ト ヲ痛 感 ス ル次第 デ ア リ マ ス。 教 養 訓練 ノ強 化 ニ付 テ ハ別 途 ニ私

マ スガ、 両 法 律 ノ施 行 ニ伴 ヒ マシ テ更 ニ之 ヲ強 化 ス ルノ要 ア ル コ

各 位 ノ御 努 力 ニ依 リ マ シテ看 々其 ノ成果 ヲ収 メ ツ ツア ルノデ ア リ

ラ、留 置 場 ノ看 守 巡 査 又 ハ憲兵 ニ対 シ教 養 訓 練 ヲ施 ス コト ガ 必

ヨリ依 命 通 牒 致 シテ置 キ マ シタ ガ、 尚、 斯 カ ル 一般的 ノ方 法 ニ依

第 五 ニ代 用 監 獄 ヲ利 用 スル場 合 ガ多 ク ナ ル見 込 デ ア リ マス カ 要 ト 認 メ ラ レ マ ス。仍 テ此 ノ 点 ニ付 テ モ適 当 ナ ル方 法 ヲ実 施 セ

察 シテ適 当 ナ ル指 示 ヲ与 フ ル コト 等 モ不祥 事 ノ発 生 ヲ防 止 ス ル ニ

ス ル等 ノ方 法 ニ依 リ 監督 ヲ怠 ル コト ナ ク又常 ニ留 置場 ノ状 況 ヲ視

ル教 養 訓 練 以 外 ニ現 実 ニ身 柄 ヲ拘 束 シ タ ル場 合 ニ於 テ ハ之 ヲ巡 視

ラ レ タキ コト。 (六) 第 六 ニ此 ノ際 監 獄 法 規 ニ準 ジ留 置 場 ニ諸 帳 簿 ヲ整 備 シ必 要 ナ ル事 項 ヲ遺 漏 ナ ク記 載 セ シメ ラ レタ キ コト。

付極 メ テ有 益 デ ア リ マ ス。 従 ツ テ本 省 ニ於 キ マシ テ ハ監獄 法 第 四

第 七 ニ留 置 人 費 ハ補 充 費 ノ性 質 ヲ有 ス ルト コロ ヨリ之 ガ償 還 ニ付 キ マシテ ハ、 従 前 ノ例 ニ則 リ之 ヲ履 行 ス ルニ些 カ ノ支 障 モ

ル留 置 場 ヲ巡 視 セ シメ、 叙 上 ノ目 的 ヲ遂 ゲ シ メ タ イト存 ジ マシ テ、

条 第 二項 ニ規 定 ス ル判 検 事 ノ監 獄 巡 視制 度 ヲ活 用 シ、 代 用監 獄 タ

(七)

来 タサ ナ イ コト ニナ ツ テ居 リ マスカ ラ御 含 ミ置 キ ヲ願 ヒ マ ス。

シタ ト コ ロ、幸 ヒ ニ シテ相 当 額 ガ認 メラ レタ ノデ アリ マス。 因 テ

新規 予算 ト シ テ判 検 事 ノ代 用 監 獄 巡 視 ニ要 スル費 用 ヲ要 求 致 シ マ

尚 従 来警 察 署 ノ留 置 場 ニ於 ケ ル被 勾留 者 ノ処 遇 其 ノ他 取扱 ニ付 テ ハ各 庁府 県 ニ於 テ 区 々ノ規 定 ヲ設 ケ テ居 ル様 ナ実情 デ ア リ マ ス

従 ツ テ警 察 署 又 ハ憲 兵 隊 ノ留 置 場 ニ於 テ 万 一所 謂 人 権蹂躙 等 ノ

司法 警 察 官 ノ執 務 状 況 ニ対 シ注 意 ヲ与ヘ 、 又 ハ連 絡 ヲ緊 密 ナ ラ シ

ニ於 テ ハ単 ナ ル視 察 ニ止 ム ル コト ナ ク、 其 ノ機 会 ヲ利 用 シ、 或 ハ

而 シテ、 留 置場 巡視 ノ為 警 察 署 又 ハ憲 兵隊 等 ニ臨 ミ マシタ場 合

置 ヲ講 ズ ルト 共 ニ遅 滞 ナ ク報 告 セ ラ レ タイ ノ デ ア リ マス。

疑 者 等 ニ対 シ不当 ノ処 置 ア ルヲ発 見 シタ揚 合 ニ於 テ ハ適 当 ナ ル処

此 ノ費 用 ヲ配 布 致 ス予定 デ ア リ マス。巡 視 ニ際 シ万 一勾留 中 ノ被

カ ラ此 ノ点 ニ関 シテ モ適 当 ニ善 処 シ度 ヒト考ヘ テ居 ル次 第 デ ア リ マ ス。

第 九 、 身 柄 ノ拘 束 ト検 事 ノ責 任 ニ関 ス ル事 項 本 手 続 ノ運 用 ニ関 シ マシテ ハ、 被 疑者 ノ身 柄 ノ勾留 ハ検 事 ノ全

不祥 事 ガ発 生 シタ場 合 ニ於 キ マシ テ ハ仮 令 検 事 ガ事 実 上関 知 セ ザ

メ、 更 ニ進 ンデ管 内 思 想 状 況 ヲ聴 取 シ以 テ裁 判 又 ハ検察 ノ執 務 上

責 任 ニ於 テ行 ハレ ル コト ハ謂 フ マデ モナ イ ト コ ロデ ア リ マ ス。

ル事 柄 ニ付 キ マシテ モ、 従 来 ノ如 ク司法 警 察 官 ノ貴 任 ヲ追 求 ス ル

ノ 参 考 ニ供 セ ラ レ タイ ノデ ア リ マ ス。

ス 。

( 第 二 、 予防 拘 禁 ニ関 ス ル注 意 事項 )

尚 此 ノ点 ニ付 テ ハ別 ニ通牒 ヲ以 テ具 体的 ニ指 示 シ度 イ ト存 ジ マ

ヲ以 テ足 ル モ ノデ ハナイ ノ デ ア リ マス。 令 状 ニ其 ノ氏 名 ヲ記 載 シ ア ル検 事 及 其 ノ監督 官 ノ責 任 モ亦 必 ズ問 題 ト ナ ル ニ相 違 ナイ ノデ ア リ マ スカ ラ、特 ニ平素 ヨリ特 高 警 察官 及 憲兵 ニ対 シ 一層 ノ戒 心 ト自 粛 ト ヲ促 ガ ス必 要 ガ ア ルノ デ ア リ マス。従 来 ト テ モ司法 警 察

犯行 ト ヲ防遏 ス ル コト ニ依 リ国 民 思 想 ノ醇 化 ヲ図 リ皇 基 ヲ永 久 ニ存

コ ロデ ア リ マ ス。 思 想検 察 コソ ハ凡 ユル反 国 家的 思想 ト ソ レ ニ基 ク

思 想 検 察 ノ重 要 性 ニ付 テ ハ今茲 ニ事 新 シク力 説 ス ル必要 ハナ イト

言 致 シ マ ス。

義 務 デ ア リ マシ テ、之 ガ請 求 ニ付 キ万 全 ヲ期 セ ンガ為 ニ ハ、 刑務

続 維 持 セ ント ス ルモ ノデ ア リ マ シテ、 個 人 ノ行 動 ハ勿 論 国 家 ノ動 向

検 事 ガ 予防 拘 禁 ノ請 求 ヲ為 ス コト ハ 一ノ権 限 デ ア ルト共ニ一 ノ

最 後 ハ予 防拘 禁 ノ請 求 ニ関 ス ル事 項 デ ア リ マス。

ニ進 ンデ刑 務 所 ノ巡視 ヲ励 行 シ、 又保 護 観 察 中 ノ者 ニ対 ス ル査 察

所 長 又 ハ保 護 観 察 所 長 ト 緊密 ナ ル連 絡 ヲ図 ル必要 ア ル ハ勿 論 、更

レタ国 家 的 任 務 ノ重 大 ニ シテ無 限 ナ ル ヲ想 ハズ ニ ハ居 ラ レナ イ ノデ

モ亦 一定 ノ思 想 ノ所 産 ニ過 ギ ザ ルヲ考 フ ルト キ、 思想 検 察 ニ課 セ ラ

予 防拘 禁 委 員 会 ハ全 国 ノ各 地方 裁 判 所 検事 局 ニ設 置 セ ラ ルルノ

ア リ マス。茲 ニ、 思 想検 察 ノ重 要 性 ガ ア ルノ デ ア リ マスガ、 思 想 検

ヲ怠 ラザ ル コト ガ肝要 ト 考 ヘルノ デ ア リ マス。

察規 範 制 定 ノ趣 旨 ハ此 ノ重要 性 ニ鑑 ミ、 思 想検 察 ヲ鞅掌 スベ キ思 想

係検 事 ニ於 テ執 務 上恪 遵 スベ キ事 項 ヲ闡 明 ス ルト共 ニ、 思想 検 察 ノ

セ ヌカ ラ、其 ノ設 ケア ル検事 局 ノ検 事 ト其 ノ設 ケ ナ キ検 事 局 ノ検

分野 ヲ明確 ナ ラ シム ル ニア ルノ デ ア リ マ ス。諸君 ハ真 ニ国 体 ノ本 義

デ ハナ ク、 二十 二 ケ所 ノ保 護 観 察 所 所 在 地 ニ設 ケ ラ ル ル ニ過 ギ マ

更 ニ、 予防 拘 禁 請 求 ノ時 期 ニ付 テデ ア リ マスガ 、受 刑 中 ノ対 象 者

ニ徹 ス ルト共 ニ、 躬 ヲ以 テ職 責 ヲ全 フ ス ルノ 心構ヘ ヲ以 テ此 ノ訓 令

事 ト ノ連 繋 ヲ緊 密 ナ ラ シ ム ル様 、留 意 セラ レ度 イ ノ デ ア リ マ ス。

ニ付 テ ハ、 刑 期 満 了 後 引 続 キ、 予防 拘 禁 ノ執 行 ヲ行 フノ ヲ本 則 ト

ノ趣 旨 ニ遵 由 セラ レタ イ ノデ ア リ マ ス。

ム ヲ得 ナ イ事 由 ニ依 リ本 規 範 ノ定 ム ル処 ヲ実 践 シ得 ナ イ場 合 ニ付 テ

第 一 ハ、 本 規範 ノ運 用 ニ当 リ疑 義 ヲ生 ジ或 ハ各 庁 ノ特 殊事 情 等已

シ テ オキ マス。

ス筈 デ ア リ マスガ、茲 ニ運 用 上留 意 ヲ要 スル事 項 数 点 ニ付 テ 一言 致

規 範 ノ 運 用 ニ関 シテ ハ近 ク諸 君 ノ長 官 ニ対 シテ通 牒 ヲ以 テ指示 致

ス ルノ デ ア リ マ スカ ラ、 請 求 ノ時 期 ガ遅 キ ニ失 セズ、 又早 キ ニ過 グ ル コト ナ キ ヲ期 セ ラ レ度 イ ノ デ ア リ マス。 尚 、 予防 拘 禁 ノ請 求 ヲ為 ス ニ就 キ、 必 要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ司 法

スベ キ ハ当 然 デ ア リ マスガ単 ニ本 人 ノ取 調 ノ ミ ニ依 拠 ス ル コト ナ

本 人 ノ取 調 ニ重 点 ヲ置 キ、其 ノ 取調 ノ結 果 ニ依 リ請 求 ノ要 否 ヲ決

警 察 官 吏 ヲ シテ本 人 ヲ強 制 的 ニ同 行 セ シメ得 ルノデ ア リ マ シテ、

ク、 事 前 ニ於 テ モ各 般 ノ事項 ニ亘 ツ テ慎 重 ナ ル調 査 取 調 ヲ徹 底 セ

ラ レ ル様 致 シ度 イ ノ デ ア リ マス。

ル思 想 関係 司法 警 察 官 ヲ モ執 務 上 本規 範 ノ趣 旨 ニ添 ハシム ルノ要 ガ

ノ円 滑 徹底 ヲ期 ス ル為 ニ ハ単 リ思 想係 検 事 ノ ミ ナラ ズ其 ノ輔 佐 官 タ

範 ハ勿 論思 想係 検 事 ヲ直 接 ノ対象 ト致 シ居 ル ノデ ア リ マ スガ、 運 用

第 二 ハ、 本 規 範 ト思 想 関 係 司 法 警察 官 ト ノ関 係 デ ア リ マ ス。 本 規

デ ア リ マス。 斯 ル場 合 ニ於 テ ハ、 検 事 正 ノ裁 量 ニ依 リ適 当 ニ処 置 セ

)

シ ム ル様 努 メ ラ レ度 イ ノデ ア リ マス。

昭和十七年二月十七日臨時思想実 思想検察規範 ノ運用方針(務 家会 同 ニ於 ケル刑事局長指示

最 後 ニ、 過 般 、 訓 令 セ ラ レタ思 想 検 察 規 範 ノ運 用 方 針 ニ就 イ テ 一

セ シメ ル様 取 計 ハル ル ヤウ致 シタ イト存 ジ テ居 ルノ デ ア リ マス。此

条 第 一項 ニ基 キ管 轄 区域 内 ノ司 法 警 察 官 ニ対 シ訓 令 ヲ発 シ之 ヲ徹底

ア ルノ デ ア リ マ ス。 故 ニ、 近 ク各 検 事 正 ヨリ裁 判 所 構 成 法 第 八 十 四

ツタ関 係 上 、 特 ニ本 問 題 ニ言 及 ス ルノ必 要 ガ認 メラ レ ルノデ ア リ マ

通 信 関係 法 令 違 反 ノ罪 モ亦 、思 想 事 犯 ト シテ取扱 ハレ ル コト ニ相 成

第 六 ハ、 臨 時 郵 便 取 締 令 ノ施 行 ニ付 テデ ア リ マス。 本 規 範 ニ依 リ

第 三 ハ、 本 規 範 ニ定 メ ラ レタ犯 罪 報告 及思 想 情 勢 報 告 ノ形 式 ニ付

ニ懸 ル コト鮮 ク ハナ イ ト予 測 セ ラ レ ルノ デ ア リ マス。此 ノ検 閲 ハ、

ルノ デ ア リ マシテ、 将 来 外 諜 其 ノ他 ノ事 犯 ノ発 覚 ノ端 緒 ガ此 ノ検 閲

ヲ適 法 ニ検 閲 シテ防 諜 ノ完璧 ヲ期 スル ヲ以 テ主 タ ル任 務 ト致 シテ居

ス。臨 時 郵 便 取 締 令 ハ昨年 十月 四 日施 行 セ ラ レ、 同 施 行 規則 ハ同 月

テ デ ア リ マ ス。 司 法警 察 官 ヨリ文 書 ヲ以 テ報 告 ノ ア ツ タ モノ ニ付 テ

現 在 札 幌 、 函 館、 新 潟 、 敦 賀 、 東 京 、横 浜 、 大 阪 、神 戸 、 下 関 、門

二十 一日施 行 セ ラ レ タ ノデ ア リ マ ス。 本 令 ハ外国 人 ニ発 着 ス ル郵 便

ハ此 ノ報 告 書 ニ送 付書 ヲ添 付 スル ヲ以 テ足 リ、 特 ニ必 要 ノナ イ限 リ

司 、 博 多 及長 崎 ノ各 交 換 局 即 チ外 国 郵便 取 扱 局竝 仙台 、 名 古 屋 、広

セ シメ ル様 努 メ ラ レ度 イ ノ デ ア リ マス。

之 ヲ書 キ改 ム ル ヲ要 シナ イ ノデ ア リ マ ス。 但 シ此 ノ報 告 ニ基 キ司 法

ノ訓 令 ガ発 セラ レタ ナ ラバ、 諸 君 ハ司法 警 察官 ヲ シテ極 力 之 ヲ励 行

警 察 官 ニ指 揮 シ タ場 合 及 此 ノ報告 ニ関 シ検 事 ノ意 見 ヲ明 示 シ置 ク必

タ ル検 閲官 補 ニ依 リ実 施 セ ラ レテ居 ルノデ アリ マス。 尤 モ、現 在 検

島 及 熊 本 ニ設 ケ ラ レ タ検 閲 司 掌 局 ニ於 テ高 等 官 タ ル検 閲 官 及判 任 官

第 四 ハ、 司法 警 察 官 ヨリ直 接司 法 大 臣 ニ報 告 スル報 告 書 ニ付 テデ

要 ア ル場 合 等 ハ之 ヲ送 付 書 ニ附 記 セラ レ度 イ ノデ ア リ マス。

第 五 ハ、 思 想 係 検 事 ノ事 務 引 継 ニ付 テデ ア リ マス。 思 想 事 犯 ハ多

嘱 託 シ検 閲事 務 ヲ輔 佐 セ シ メ テ居 ルノデ ア リ マスガ、軈 テ之等 嘱託

リ マセ ンノ デ、 暫 定 的 ニ各 局 ニ於 テ警 察 官 及 憲 兵 各 一名 乃至 二 名 ヲ

サ レタ者 許 リデ ア リ マ シテ、 外 諜 其 ノ他 ノ事 犯 ヲ取 扱 ツタ経 験 ガア

閲官 ノ 配置 セ ラ レ テ居 リ マスノ ハ東 京 、 横 浜、 大 阪 、 神 戸、 下 関 、

衆 犯罪 タ ル ヲ常 ト シ事 案極 メ テ複 雑 ナ場 合 ガ多 イ ノデ ア リ マ ス。 故

ハ多 ク逓 信 宮 吏 ニ転 官 シ テ検 閲官 補 ニ任 命 セ ラ レ ル筈 デ ア リ マス。

ア リ マス。内 容 ハ司 法 大 臣 宛 ト シテ差 支 ヘナ イ ノデ ア リ マスガ 、受

ニ捜 査 ノ中 途 ニシ テ転 任 ヲ命 ゼ ラ レ タ如 キ場 合 、 後 任 者 ニ対 シ懇 切

検 閲 ノ結 果 犯 罪 ガ発 覚 シ タ場 合 ハ、 逓 信 省 ニ於 テ ハ其 ノ郵便 ヲ管 轄

門司 ダ ケデ ア リ マシ テ、 他 ハ検 閲 官 補 ガ 配 置 セ ラ レ テ ヰ ルノ ミデ ア

ニ事 務 引 継 ヲ為 シ、聊 カ モ支 障 ヲ来 ス様 ナ コト ノ ナ イ様 取計 ハ レ度

逓 信 局 ニ送 リ逓 信 局 ニ於 テ告 発其 ノ他 ノ処 置 ヲ執 ル コト ニ運用 致 シ

付 ノ関係 上 封筒 ハ当 職 宛 ト ス ルヤ ウ諸 君 ヨ リ司法 警 察 官 ニ対 シ注 意

イ ノ デ ア リ マ ス。 又 、 諸君 ノ保管 セ ラ レ ル思 想 研 究 資料 其 ノ他 ノ思

リ マス。 尚 、 之 等 ノ検 閲官 及 検 閲 官 補 ハ孰 レ モ逓 信 官 吏 中 ヨリ任 命

想関 係 資 料 ハ洩 レ ナ ク之 ヲ帳 簿 ニ登 載 シテ置 キ、 現 品 ト 照合 ノ上 直

ヲ与ヘ ラ レ励 行 セ シメ ラ レ度 イ ノデ ア リ マス。

接 後 任 者 ニ引 継 ギ若 シ直 接 引 継 ギ得 ナ イ事 情 ノ ア ル場 合 ハ検 事 正 ヲ

ニ関 シ無 関 心 タ ル ヲ得 ナイ コト ハ勿 論 デ ア リ マスノ デ、其 ノ連 絡 及

タイ ヤウ デ ア リ マス ガ、 司法 部ト 致 シテ ハ此 ノ検 閲 及 其 ノ後 ノ処 置

処 理 ニ関 シ目 下 種 々接 衝中 デ ア リ マ スガ、 諸君 ニ於 カ レテ モ検 閲 機

通 ジ テ之 ヲ為 シ、 秘密 文 書 及 図書 ノ散 逸 ヲ防 止 スル コト ニ努 メ ラ レ 度 イ ノデ ア リ マス。

ニ関 スル手続 ハ明 治 四 十 二年 ノ司 法 大 臣 訓令 ヲ以 テ定 メ ラ レ、 ソノ

之 ヲ鞅 掌 ス ル コト ト相定 メ ラ レタ ノデ ア リ マ ス。 元 来 、 掲載 ノ差 止

範 ニ依 リ新 聞 記 事 掲 載 ノ差 止及 其 ノ解 除 ニ関 ス ル事 務 ハ思想 係 検 事

第 七 ハ、 新 聞 記事 掲 載 ノ差 止 及 之 ガ解 除 ニ付 テデ ア リ マ ス。 本 規

支 障 ヲ生 ズ ル虞 ナ シト シナ イ ノデ ア リ マス。 従 来 、例 ヘバ 一地 方

差 止 、 広 範 囲 ニ渉 ルト キ ハ其 ノ為 ニ却 テ捜 査 上 又 ハ治 安 上 不 測 ノ

令 ヲ執 行 ス ル警 察 官 ノ手 数 ヲ考 慮 ス ル必要 ガ ア リ マスノ ミ ナ ラズ、

人 的 ニモ必要 ノ限 度 ニ止 ムベ キ ハ当 然 デ ア リ マシテ、 特 ニ差 止命

存 ゼ ラ レ マ ス。 事 、 人権 ニ関 シ マスノデ 差 止範 囲 ハ地 域 的 ニ モ、

ロ、掲 載差 止 ノ範 囲 ニ関 シテ モ相 当 考 慮 セ ラ ルベ キ モノ ガア ルカ ト

解 除 ノ範 囲 及 解 除 後 ノ処置 等 ニ付 テ ハ充 分治 安 ニ及 ボ ス影 響 ヲ考

後 二 回 ニ亘 ツテ其 ノ改 正 ヲ見 テ居 ルノデ ア リ マスガ、 時 勢 ニ沿 ハナ

慮 シ善処 セ ラ レ度 イ ノデ ア リ マ ス。

イ点 ガア リ マスノ デ目 下其 ノ改 正 ニ就 テ考 究中 デ ア リ マ ス。最 近 ニ

マスガ、 斯 ノ如 キ ハ広 範 ニ過 グ ルモ ノト謂 フベ キデ ア リ マス。 差

ニ於 ケ ル殺 人事 件 ノ差 止 ヲ全 国 的 ニ行 ツタ事 例 モ ア ツ タノ デ アリ

関 ト ノ連 絡 協 調 及 不穏 通 信 物 ニ依 ル捜 査 開 始 ノ方 法 等 ニ付特 ニ留 意

改 正 訓 令 ガ 発 セ ラ ル ルト 存 ジ マスガ、 差 当 リ差 止 及解 除 ニ関 シ二、

セ ラ レ度 イ ノデ ア リ マス。

三 注 意 事 項 ヲ申述 ベ マ ス。

ル コト ア ルモ已 ム ヲ得 ナイ ト存 ゼ ラ ル ルノ デ ア リ マ ス。而 シテ、

ス。戦 時 下 ニ於 テ ハ諸 般 ノ事 情 ヨリ シテ勢 ヒ其 ノ発 動 ガ広 汎 ニ渉

之 ヲ承 知 致 シ テ置 ク 必要 ガ ア ルノデ アリ マ ス。 故 ニ、 差 止 又 ハ解

報 局 其 ノ他 ト ノ連 絡 上差 止 及 解 除 ニ関 ス ル処 置 ハ能 フ限 リ迅 速 ニ

密 接 ナ関 係 ガ ア ルノ デ ア リ マ ス。 従 ツテ本 省 ニ於 キ マシテ モ、情

ハ、 記 事 掲 載 ノ差 止及 解 除 ハ出 版 物 ノ記 事 掲 載 ニ関 ス ル行 政 処 分 ト

止命 令 ノ相 手 方 タ ル通信 社等 ノ範 囲 ニ付 テ モ事 案 ニ依 ツテ ハ之 ヲ

之 ガ発 動 ニ当 ツ テ ハ勿論 捜 査 上 ノ必 要 ヲ第 一ニ考 慮 スベ キ デ ア リ

除 ヲ為 ス場 合 ニ於 テ ハ、 差 止 又 ハ解 除 ヲ命 ズ ルト同 時 ニ必ズ 電 話

総 テノ 通信 者 等 ニ伝 達 ス ル必要 ナ キ場 合 モ往 々 ニ シテ アリ得 ルノ

マスガ、 戦 時 下 ニ於 テ ハ刑 事事 件 ノ 一般 社 会 ニ及 ボ ス治安 上 ノ影

又 ハ電 報 ヲ以 テ差 止 又 ハ解 除 ノ 日時 及其 ノ事 項 ヲ 一応 当職 宛 報 告

イ、 記 事 掲 載 ノ差 止 ハ憲 法 ノ保 証 ス ル出 版 ノ自 由 ニ対 ス ル制 限 タ ル

響 ハ相 当深 刻 ナ ルモ ノア ル ヲ通 例ト 致 シ マスノデ 、 此 ノ権 限 ノ運

シ、後 刻 文 書 ヲ以 テ詳 細 報告 セラ レ度 イノ デ ア リ マ スガ、 重要 ナ

デ アリ マス。 諸 君 ハ事 案 ノ性 質 ニ鑑 ミ、 叙 上 ノ趣旨 ヲ体 シ テ然 ル

用 ニ依 リ 一面 治 安 確 保 ノ要請 ヲ モ亦 充 足 ス ル ヲ適 当 ト スル カト存

ル事 項 ニ関 ス ル差 止 又 ハ解除 ニ付 イ テ極 メテ急 速 ヲ要 ス ル場 合 ヲ

性 質 ヲ帯 ビ テ居 リ マ スノデ 、 人権 ニ関 スル事 至 大 デ ア リ、 従 ツ テ

ゼ ラ ル ルノデ ア リ マ ス。 従 ツテ諸君 ハ此 ノ権 限 ノ発 動 ニ際 シテ ハ

除 キ事 前 ニ報 告 相 成 ル様 セ ラ レ度 イ ノ デ アリ マス。 尚 、 差 止及 解

ベ ク処 理 致 サ レ ン コト ヲ希 望 致 シ マス。

捜 査 上 ノ必要 性 ト共 ニ治 安 上 ノ 必要 性 ヲ充 分 ニ考 慮 セラ レ度 イ ノ

除 ニ関 シ テ ハ叙 上 ノ昭 和 十 五 年 五 月 二十 日 ノ実務 家 会 同 ニ於 ケ ル

必要 以上 ニ此 ノ権 限 ヲ発 動 スベ キデ ナ イ コト固 ヨリ デ ア リ マスガ、

デ ア リ マス。 而 シテ叙 上 ノ考 慮 ハ単 ニ差 止 ノ場 合 ニ限 ラズ 、 之 ガ

必 要 ナ ル ニ於 テ ハ断 ジ テ其 ノ発動 ヲ躊 躇 スベ キデ ナイ ノ デ ア リ マ

解 除 ノ場 合 ニ付 テ モ勿 論 必 要 ナ事 柄 デ ア リ マシ テ、 解 除 ノ時 期 、

刑 事局 長 ノ指 示 ヲ遵 守 スベ キ事 勿論 デ ア リ マス。

国 防保 安 法及 治 安 維 持 法 所定 ノ刑 事 手 続 ノ適 用 ヲ 受 クベ キ 犯罪 事 件 ニ関 ス ル禀請 及 報 告 方 ノ件 (昭和十六年五月二十六日秘第 八九九号大審院長、 検 事総 長、 控訴院長、検事長、地方裁 判所長、検事正宛司法大臣訓令)

其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

捜 査 ニ着 手 シ タ ルト キ ハ検事 正 ハ速 ニ司 法 大臣 、 検 事 総長 及 検 事

第 四 条  前 条 第 一項 第 一号 、第 二号 及 第 四号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 内 密

モノ ニ付 キ同 ジ

長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ同項 第 三号 ニ掲 グ ル事 件 ニシ テ重大 ナ ル

同 条第 二項 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 内 密 捜 査 ニ着 手 シタ ルトキ ハ検 事 総

長 ハ速 ニ司 法 大 臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

ント ス ルト キ ハ検 事 正 ハ予 メ検 事 長 ニ事情 ヲ具 申 シ テ其 ノ指 揮 ヲ

第 五 条  第 三 条 第 一項 第 一号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付被 疑 者 ノ検挙 ヲ為 サ

受 クベ シ但 シ緊 急 事件 ニ付急 速 ヲ要 シ予 メ指 揮 ヲ受 ク ルノ遑 ナキ

犯罪 事 件 ニ関 ス ル禀請 及報 告 ニ付 テ ハ本訓 令 ニ従 ヒ処 理 スベ シ

第 一条  国 防 保 安 法 及 治安 維 持 法 所 定 ノ刑 事 手続 ノ適 用 ヲ受 クベ キ

ノ ハ口頭 、 電 話 又 ハ電信 ヲ以 テ之 ヲ為 シタ ル後 速 ニ成 規 ノ手 続 ヲ

第 二条 禀 請 及 報 告 ハ書 面 ヲ以 テ之 ヲ為 スベ シ但 シ急 速 ヲ要 ス ル モ

第 六条  第 三 条第 一項第 一号 乃 至 第 三 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付捜 査 ノ結

ト キ ハ此 ノ限 ニみ 在ラズ

第 三 条  左 ニ掲 グ ル事件 ニ付被 疑 者 ノ検 挙 (勾 引 又 ハ勾 留 ) ヲ為 シ

メ検 事 長 ニ事情 ヲ具申 シテ其 ノ指 揮 ヲ受 クベ シ但 シ被 疑 者 ノ死 亡、

果 ニ因 リ起 訴 又 ハ不起 訴 ノ処 分 ヲ為 サ ント ス ルト キ ハ検 事 正 ハ予

為 スベ シ

タ ルト キ ハ検 事 正 ハ速 ニ司 法 大 臣 、 検 事総 長 及検 事 長 ニ其 ノ旨 ヲ

項 ニ同 ジ

同 項 第 四号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 起 訴 ノ処 分 ヲ為 サ ント ス ルト キ亦前

分 ヲ為 サ ント ス ルト キ ハ此 ノ限 ニ非 ラズ

責 任 能 力 ノ欠缺 、 大赦 及公 訴 時 効 ノ完 成 ノ理 由 ニ因 リ 不起 訴 ノ処

報 告 スベ シ 一、国 防 保 安 法 第 三 条 乃 至第 七 条 ノ罪 及 此 等 ニ関 ス ル第十 一条 乃 至第 十 三条 ノ罪 ニ関 スル事 件

同 条 第 二 項 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 捜 査 ノ結 果 ニ因 リ起 訴 又 ハ不 起 訴 ノ

二 、同 法 第 八 条 乃 至 第 十 条 ノ罪 及 此 等 ニ関 ス ル第 十 一条 乃 至第 十 三条 ノ罪 竝 ニ同 法 第 十 六条 第 一項 第 二 号 ニ掲 グ ル罪 ニ関 ス ル事

シ テ其 ノ指 揮 ヲ受 クベ シ

処 分 ヲ為 サ ント ス ルト キ ハ検 事 総 長 ハ予 メ司 法 大 臣 ニ事 情 ヲ具申

件

十 五条 、 及 第 七 十 七 条 乃 至第 七十 九 条 ノ罪 ニ関 スル事 件 ヲ除 ク)

三 、同 法 第 十 六 条 第 二 項 ニ規 定 スル事 件 (刑法 第 七 十 三条 、 第 七

シ

タ ルト キ ハ検事 正 ハ直 ニ司 法 大 臣 及検 事 総 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ

第 七条  第 五 条 竝 ニ前 条 第 一項 及 第 二 項 ニ依 リ検 事長 ノ指 揮 ヲ請 ヒ

刑法 第 七十 三 条 、 第 七 十 五条 及 第 七 十 七条 乃 至第 七 十 九条 ノ罪 ニ

四 、治 安 維 持 法 ノ罪 ニ関 ス ル事 件

関 ス ル事 件 ニ付 検 挙 ヲ為 シタ ルト キ ハ検事 総 長 ハ速 ニ司法 大臣 ニ

同 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付控 訴 院 ノ公 判 ノ裁判 ア リ タ ルト キ ハ検 事 長

事 正 ハ速 ニ司 法 大臣 、 検 事 総 長 及 検 事 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

ント ス ルト キ ハ予 メ検 事 総 長 ニ事 情 ヲ具 申 シ テ其 ノ指 揮 ヲ受 クベ

第 八 条  検 事長 第 五条 竝 ニ第 六 条第 一項 及 第 二 項 ニ依 リ指 揮 ヲ為 サ

ハ速 ニ司 法 大 臣 及 検事 総 長 ニ其 ノ旨 ヲ報告 スベ シ

スベ シ

スル決定 ア リ タ ルト キ ハ検 事 総 長 ハ速 ニ司 法 大 臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告

掲 グ ル事 件 ニ付 公 判 ノ裁 判 若 ハ刑 事 訴 訟 法第 四百 八 十 三 条 ニ規 定

同 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 上告 ノ裁 判 ア リ タ ルト キ又 ハ同条 第 二項 ニ

シ 第 九条  検 事 総 長 前 条 ニ依 リ指 揮 ヲ為 サ ント スルト キ ハ予 メ司 法 大 臣 ニ事 情 ヲ具 申 シ テ其 ノ指揮 ヲ受 クベ シ

司法 大臣 ニ報 告 スベ シ

第 十条  検 事 総 長 第 八 条 ニ依 リ指揮 ヲ為 シタ ルト キ ハ速 ニ其 ノ旨 ヲ

式 裁 判 ノ請求 ア リ タ ルト キ又 ハ同条 第 二項 ノ裁 判 ニ対 シ上 訴 ノ申

第 十 五 条  前 条 第 一項 ノ裁 判 若 ハ略 式 命 令 ニ対 シ上 訴 ノ申 立 若 ハ正

立 ア リ タ ルト キ ハ検 事 正 又 ハ検事 長 ハ前 条 ニ準 ジ速 ニ其 ノ旨 ヲ報

分 ヲ為 シタ ルト キ ハ検 事 正 ハ速 ニ司 法大 臣 、 検 事 総 長 及検 事 長 ニ

告 スベ シ

第 十 一条  第 三 条 第 一項 各 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 起 訴 又 ハ不起 訴 ノ処

其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

ハ第 五条 ニ依 リ予 メ指 揮 ヲ受 ケ タ ル トキ ハ之 ト 重 複 ス ル部 分 ノ記

ベ シ但 シ第 三 条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ第 四条 ニ依 リ予 メ報 告 ヲ為 シ又

第 十 八条  第 三 条 及第 四条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ概 ネ左 ノ事 項 ヲ記 載 ス

裁 判 書 ノ謄 本 二 通 ヲ添附 シテ司 法 大 臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

定 、 略 式 命 令 又 ハ公 判 ノ裁 判 ア リ タ ルト キ ハ該 裁 判所 ノ長 ハ速 ニ

第 十 七条  第 三 条 第 一項 各 号 及 第 二項 ニ掲 グ ル事 件 ニ付予 審 終結 決

ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

タ ルト キ ハ検事 正、 検 事 長 又 ハ検 事 総 長 ハ第 十 四条 ニ準 ジ速 ニ其

第 十 六条  第 三条 第 一項 各 号 及 第 二項 ニ掲 グ ル事件 ニ付 裁 判 確定 シ

同 条 第 二項 ニ掲 グ ル事 件 ニ付起 訴 又 ハ不起 訴 ノ処 分 ヲ為 シタ ルト キ ハ検 事総 長 ハ速 ニ司 法 大臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ 第 十 二 条  第 三条 第 一項 第 一号 乃至 第 三 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 勾留 ノ 期 間 ヲ更新 シタ ルト キ ハ検事 正 ハ速 ニ司法 大臣 、 検 事 総 長 及検 事 長 ニ更 新 ノ年 月 日及 事 由 ヲ報 告 スベ シ同 項 第 四号 ニ掲 グ ル事 件 ニ 付 四 月 ヲ超 エテ勾 留 ノ期 間 ヲ更新 シタ ルト キ モ亦 同 ジ 勾 留 シタ ル被 疑 者 ヲ釈 放 シ又 ハ勾 留 ノ執 行 ヲ停 止 シタ ルト キ ハ検 事 正 ハ速 ニ司 法 大 臣 、 検 事 総 長及 検 事 長 ニ釈 放 又 ハ執 行 停 止 ノ年 月 日及 事由 ヲ報 告 スベ シ

載 ヲ省 略 ス ル コト ヲ妨 ゲ ズ

第 十 三 条  国 防 保 安 法 第 二十 八 条 ノ強 制 処 分 ヲ為 シ又 ハ之 ヲ解 キ タ ルト キ ハ検 事 正 ハ速 ニ司 法 大 臣、 検 事 総 長 及検 事 長 ニ其 ノ旨 ヲ報

一、 被 疑 者 ノ氏 名、 年 齢 、 職 業 、 本 籍 (外国 人 ナ ルト キ ハ国 籍 )

二、 捜 査 ノ端 緒

及 住居

告 スベ シ

命 令 又 ハ地 方 裁 判 所 若 ハ区裁 判 所 ノ公判 ノ裁 判 ア リ タ ルト キ ハ検

第 十 四条  第 三 条第 一項 各 号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 予 審 終結 決 定 、 略 式

六 、 検 挙 年 月 日 又 ハ検 挙 予 定 年 月 日

五 、 他 ノ検 事 局 又 ハ他 ノ官 署 ト ノ連 絡 ノ要 否

四、 事 件 ノ見 透

三、 被 疑 事 実 ノ概 要

禀 請 書 ニ添 附 スベ シ

特 ニ必 要 ア ルト キ ハ重 要 ナ ル調 書 其 ノ他 ノ書 類 ノ謄 本 又 ハ抄 本 ヲ

十 四、 其 ノ他参 考 ト為 ルベ キ事 項

十 三、 主 任 検 事 ノ氏 名

十 二、 起 訴 ノ方 法 別

四 、 処分 ノ事 由 殊 ニ犯罪 ト ノ関 係

三 、 処分 ノ概 要

ラ レ タ ル者 ノ氏 名 及 国籍

二 、 処分 ヲ受 ケ タ ル船 舶若 ハ航 空 機 ノ名 称及 国 籍 又 ハ滞 留 ヲ命 ゼ

一、 処 分 ヲ為 シ又 ハ之 ヲ解 キ タ ル年 月 日

第 二 十 二条  第 十 三 条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ概 ネ左 ノ事 項 ヲ記載 スベ シ

号 ニ掲 グ ル事 件 ニ付 不 起 訴処 分 ノ報 告 ヲ為 ス揚 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

第 二十 一条  前 項 ノ規 定 ハ第十 一条 第 一項 ニ依 リ第 三 条 第 一項第 四

七 、 令 状 発 付 名 義 ノ別 八 、 其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項 第 十 九 条  第 五条 ニ依 ル検 挙禀 請 書 ニ ハ概 ネ左 ノ事 項 ヲ記 載 スベ シ 一、 前 条 第 一号 乃 至第 五号 ニ掲 グ ル事 項 二、検挙予定年月日 三 、 検 挙 ヲ必要 ト ス ル事 由 四 、 其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項 第 二 十 条  第 六条 ニ依 ル処 分禀 請 書 ニ ハ左 ノ事 項 ヲ記 載 スベ シ

被 疑 者 ノ検 挙 ニ附 随 シテ第 十 三 条 ノ処 分 ヲ為 シタ ルト キ ハ第 三 条

五 、其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項

第 一項 ニ依 ル報 告 書 ニ併 セテ前 項 ニ掲 グ ル事 項 ヲ記 載 スベ シ

及住居

一、 被 疑 者 ノ氏 名、 年 齢 、職 業 、 本 籍 (外 国 人 ナ ルト キ ハ国 籍 )

二、罪名

報 告 書 ニ裁 判 書 (裁判 ヲ記 載 シ タ ル調書 ヲ含 ム) ノ謄 本 又 ハ証 拠

第 二十 三条  第 十 四 条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ左 ノ事 項 ヲ記 載 スベ シ但 シ

三、被疑事実 四 、 証拠 関係 ノ概 要 五、適条

二、 罪 名

一、 被 告 人 ノ氏 名

六 、 被 疑 者 ノ経 歴

八 、 改悛 ノ有無

三、 犯 罪 事 実 ノ要 旨

コト ヲ妨 ゲズ

九 、 処分 理由 ノ要 旨

説 明 ヲ省 略 シ タ ル抄 本 ヲ添 附 シ テ重複 ス ル部 分 ノ記載 ヲ省 略 スル

十 、 身 柄拘 束不 拘 束 ノ別

四、 裁 判 ノ主 文

七 、 犯 罪 ノ動 機

十 一、 令 状 発付 及 執 行 ノ年 月 日

五、 裁 判 年 月 日

(昭和十六年 五月十九日秘第 八四六号 課 長 ノ通 牒 ニ関 ス ル件 検 事正宛 (除東 京)刑 事局 長 通知)

改 正治安維持法施行 ニ関 スル内務省警保局保安

間 ハ四 ケ月乃至 六ケ月 ヲ相当 ト スル本省 ノ方針 ニ ハ変更無之、

追而令状 ハ原則 トシテ検事之 ヲ発 スルヲ妥当ト シ且捜査勾留期

解無キ ヲ期 セラレ度候

容遺憾 ノ点不尠旨別紙(二 ノ報 )告有之侯 ニ付 テ ハ為参考及通知候条誤

ヲ発 シタル趣ナ ル処之 ニ対 シ東京刑事地方裁判所 検事 正 ヨリ其 ノ内

過般内務省警保局保安課長 ヨリ各庁府県警察部長宛別紙(ノ 一通 )牒

六、主任検事ノ氏名 七 、 検 事 ノ求 刑 八、 裁判 ニ対 ス ル意 見 九 、 其 ノ他 参考 ト為 ルベ キ事 項 第 二十 四 条  第十 五条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ左 ノ事 項 ヲ記 載 スベ シ 一、 上 訴 ノ申 立 又 ハ正 式 裁 判 ノ請 求 ヲ為 シ タ ル者

東 京刑事地方裁判所検事局 ニ於 テ ハ事件輻輳 セル特殊事情 ニ基

二 、 上 訴 ノ申 立 又 ハ正 式 裁判 請 求 ノ年 月 日

四、 其 ノ他 参考 ト為 ルベ キ事 項

候

キ右方針 ヲ若 干緩和 シタル ニ過ギザ ルモノ ニ有之侯条為念申 添

三 、 検事 ノ上 訴 ニ係 ルト キ ハ上訴 ノ 理由

一、 裁 判 確 定 ノ年 月 日

第 二十 五 条  第 十 六条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ左 ノ事 項 ヲ紀 載 スベ シ

(一)

別

紙

二、 執 行 指 揮 又 ハ嘱託 ヲ為 シ タ ル年 月 日

内務省警保局保安課長

曩 ニ公布 セラレタル改正治安維持法 ハ近ク実施 セラルル予定 ナル

改正治安維持法実施 ニ関 スル件

各庁府県警察部長殿

昭和十六年 四月三十 日

保発第二八号

四、 其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項

三 、 直 ニ刑 ヲ執 行 ス ル コト 能 ハザ ルト キ ハ其 ノ理由

一、 上 訴 ノ 申立 又 ハ正 式 裁判 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ申 立 又 ハ請 求

第 二十 六 条  第十 七条 ニ依 ル報 告 書 ニ ハ左 ノ事 項 ヲ附 記 スベ シ

ヲ為 シ タ ル者 及申 立 又 ハ請 求 ノ年 月 日 二、 確 定 シタ ルト キ ハ其 ノ年 月 日

ガ之ガ実施 ニ関 シテ ハ各庁府県 ニ於 テ夫 々関係当局ト緊密 ナル連絡

ノ下 ニ善処相成リ ツツア ルコトト信 ズ ルモ尚充分 ナル事前 ノ準備 ヲ

則

本 訓 令 ハ昭 和 十 六年 六月 一日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

附

従 前 ノ訓 令 及 通牒 ニシ テ其 ノ内 容 本 訓 令 ト抵 触 又 ハ重 複 ス ル モノ ハ

尚 別紙 ハ警視庁 ニ於 ケ ル所轄検事局トノ申合事項 ニ有之御参考

考慮 セラ レ実施上万遺憾 ナキヲ期 スル様相成度

之 ヲ廃 止 ス

ニ資 セラレ度

昭和十六年四月 改 正治 安 維 持 法 実施 ニ伴 フ各 種 取 極 事 項 警 視 庁特 高 部 改 正 治 安 維持 法 実 施 ニ伴 フ各 種 取 極 事 項 一、 召 喚 状 、 勾 引 状、 勾 留 状 ノ発出 ハ 一般 原 則 ト シ テ ハ検 事 ノ命 ニ

ハ事件 送 致 ノ際 一件 書 類 ニ 一括 編 綴 スベ キ モノ ト ス

キ指 揮 命 令 ノ責 任 者 ソノ受 命 者 ソ ノ経過 等 ヲ明 ラ カナ ラ シメ置 ク

九 、 検 事 ノ事件 ニ対 ス ル指揮 命 令 ハ特 高 課 ニ於 テ受 命 簿 ヲ作 成 シ置

事

十 、 勾 留 期 間 ノ 更 新 ハ書 面 ヲ以 テ禀請 スベ キ事 、 但 シ最 初 ノ六 ケ月

二、 右 三 種 ノ令 状 ニ記 載 スベ キ検事 及司 法 警 察 官 ノ氏 名 ハ個 々ノ被

又 ハ規 程 ハ原 則 ト シテ適 用 ナ ク監 獄法 及 同 法 施 行細 則 ノ適 用 ヲ ミ

テ治 安 維持法 違 反 被 疑 者 ニ就 テ ハ留 置場 ニ関 ス ル警 察 ノ各 種 訓 令

十 一、 勾 留 場 タ ル警 察 署 ノ留 置場 ハ代 用監 獄 ト シ テ取扱 ハルル ヲ以

間 ニ於 ケ ル禀 請 ハ例 文 ニ ヨリ極 力 簡 易 ニナ ス事

疑 者 ニ就 キ テ具 体的 ニ指 揮 ヲ担 当 ス ル検 事 及 取 調 ヲ担 任 ス ル司 法

ル事 ト ナ ル ヲ以 テ被 疑 者 ノ取 扱 上 注意 ス ル コト

ヨリ司 法 警 察 官 之 ヲ為 ス事

警 察 官 ノ氏 名 ヲ記載 シ抽 象 的 ニ思 想 部 長 検 事 乃 至 特 高 課 長 ノ 名 ヲ

故 ニ移 監 指揮 書 、 釈 放 命 令 書 等 モ検 事 ノ ミガ 之 ヲ発 出 シ得ベ ク且

之 ヲ為 ス事

百 十 二 条 ) ノ如 キ モ又 ハソ ノ移 監 ノ如 キ モ担 当検 事 ノ指 揮 ニヨリ

従 ツ テ例 ヘバ被 疑 者 ト部 外 者 ト ノ接 見禁 止 ノ処 分 ( 刑 事 訴 訟法 第

使 用 セ ザ ル事 三 、 右 令 状 ハ何 レ モ 一定 ノ法 律 上 ノ効 力 ヲ有 スル訴 訟 手続 上 ノ要 式 行 為 ナ ルヲ以 テ ソノ形 式 書 式 ハ慎 重 ヲ期 ス ル事

ツ之 モ被 疑 者 ニ示 シテ ナ ス事 ヲ要 ス ル

四、 被 疑 者 ノ検 挙 ニ当 リ テ ハ事前 ニ十 分 検 事 ト打 合 セ テ其 ノ指 揮 ヲ 求 ムベ キ モ令 状 発出 ノ内 部 手 続 ハ敏 速 ヲ尊 ブ 此 ノ種 検 挙 ノ性 質 上

ナ ルヲ以 テ代 用 監獄 ト シ テ取 扱 ヒ得 ル事 ハ明 瞭 ナ ル モソ ノ他 ノ各

十 四、 警 視 庁 ノ留 置 場 ハ改 正 法 律 ニ謂 フ処 ノ ﹁警察 官 署 ノ留 置場 ﹂

四十 条 以 下 ノ準 用 ア ル事 (何 レ モ要 式 行 為 )

十 三 、 被 疑 者 ノ捜 索 ソノ所 有 物 件 ノ押 収 等 ニ就 テ ハ刑 事 訴 訟 法 第 百

十 二、 勾 留 後 ハ大 体 一月 毎 ニソノ取 調 ノ経 過 ヲ検 事 ニ報 告 スル事

極 力 簡 易 化 スベ キ事 五、 被 疑 者 ノ検 挙 ニ当 リ テ ハ原 則 ト シテ勾 引 状 ヲ先 ヅ 作 成 シ之 ヲ当 人 ニ示 シテ勾 引 シ直 チ ニ訊 問 調書 ヲ作 成 シテ後 勾 留 状 ヲ発 出 之 モ 本 人 ニ示 シ テ執 行 ス ル事

ノ他 ノ事 ニ就 テ ハ事 件 ヲ全 体 ト シ テ包括 的 ニ取 扱 フ事

六、 右 三 種 ノ令 状 ノ取 扱 ニ就 テ ハ被 疑 者 ニ就 キ個 別 的 ニ取 扱 フ、 其

府 県 庁 ノ留 置場 ヲ代 用 監 獄 ト シ テ取扱 ヒ得 ルモ ノ ナ ルヤ ハ目 下検 事 局 ニテ研 究 中

等 各 般 ノ事 項 ハ殆 ド全 部 検 事 ノ指 揮 ヲ要 ス ル要 式 行為 ト ナ リ タ ル

十 五、 之 ヲ要 ス ル ニ新 法 律 ニヨ リ被 疑 者 ノ検 挙 、留 置 、 接 見 、 移 監

連 絡 ヲ密 ニ ス ル事

七、 検 挙 前 ノ査 察 内偵 ノ経 過 ハ緊 密 ニ検事 ニ報 告 シ置 キ テ検 事 ト ノ

ノ書 類 ト ナ ルヲ以 テ留 置取 調 ノ経 過 ヲ明 ラ カ ニ ス ル右 三 種 ノ令 状

八、 改 正法 律 ニ ヨリ司 法 警察 官 ノ訊 問 調書 ハ自今 証 拠 力 ア ル訴 訟 上

カ ラ ザ ル モ ノ ア ル ヲ以 テ要 式 行為 ト シテ之 ヲ尊 重 スベ キ モ検 事 ト

内部 手 続 ヲ設 定 スル ハ敏 速 隠 密 ヲ尊 ブ 此 ノ種事 件 ノ検 挙 上不 便 尠

モ カ カ ル要 式 行 為 ニ拘泥 シテ司 法 警 察 官 ト 検事 ト ノ間 ニ複 雑 ナ ル

ニ依 ル取極 ナ リ ト誤 解 シ之 ニ前 記 標 題 ヲ附 シテ参 考資 料 ト シテ配 付

安 課 ニ於 テ ハ右 原 稿 ノ内 容 ヲ当 検 事 局 ト警 視 庁特 高 部 ト ノ間 ノ文 書

保 局 保 安 課当 局 ノ求 メ ニ ヨリ参 考 ノ為 交 付 シ タ ル モノ ナ ルト コ ロ保

指 示 要 旨

一、召 喚 状 、 勾 引 状、 勾 留 状 ハ検事 自 ラ之 ヲ発 スル カ司法 警 察 官 ニ

之候

追 テ当 局 ニ於 テ指 示 シタ ル主 要 ナ ル事 項 ノ要 旨 ハ別 紙 ノ通 リ ニ有

ル必要 ア リ ト思 料 被 致候 ニ付 テ ハ何 分 ノ御 配 慮 方 相 煩 度候

セ シメ タ ルモ ノ ナ ル モ猶 警保 局 保 安 課 長 ニ対 シテ モ善 処方 ヲ要 望 ス

ル モノ ア ルヲ以 テ特高 部 長等 ニ対 シ テ重 ネ テ当 検 事 局 ノ方針 ヲ了 解

当 検事 局 ノ真 意 ヲ誤 解 セ シ ム ル虞 ア ル内 容 ニ シテ甚 ダ 迷 惑 ニ堪 ヘザ

其 ノ措 置 ノ軽 卒 ナ ル ヲ謝 罪 シタ リ然 ル ニ右 文 書 ノ内 容 ヲ検討 ス ル ニ

所 轄 検事 局 ト ノ折 衝 ニ利 用 ス ル コト ナ キ様 希 望 シオ キ タ ル旨 弁 明 シ

シタ ル モノ ニ シテ警 視 庁 ニ於 テ モ其 ノ後内 務 省 ニ於 ケ ル特高 課 長 会

殿

克

警 察 官 ト ノ緊 密 ナ ル連 絡 ヲ通 シ テ事 案 ノ 取扱 ヲ極 力 敏速 且簡 易 化

号

助

田

議 ノ席 上中 村 特 高 第 一課 長 ヨリ右 ノ事 情 ヲ説 明 シ各 庁 ガ此 ノ文 書 ヲ

(二)

平

池

ス ル様 努 ム ベ キ モノ ト ス

紙

日記 秘 第

別

昭 和 十 六年 五月 十 二 日

川

東 京 刑 事 地 方裁 判 所 検 事 正  司法 大 臣  柳

警 視 庁 特高 部 名 義 ﹁改 正 治 安 維持 法 実 施 ニ伴 フ各 種 取 極 事 項 ﹂ ト題 ス ル文 書 ニ関 ス ル件 本年 四 月三 十 日附 ヲ以 テ内 務 省 警 保 局 保 安 課 長 ヨリ各 庁 府 県警 察 部 長宛 ニ当 検 事 局 ト 警 視 庁特 高 部 ト ノ間 ニ取 極 メ ラ レタ リト 称 ス ル 標 記文 書 ヲ送 附 シタ ル事 実有 之 候 為 当 検事 局 ト右 特 高 部 ト ノ間 ニ斯

リ之 ヲ決 ス。 当 管 下 ニ於 テ ハ事件 頻 発 スル事 情 ニ鑑 ミ司 法 警察 官

ク各 具 体 的場 合 ニ依 リ決 スル方針 ニ シテ予 メ之 ガ取扱 ノ 一般 原 則

ニ命 ジ テ発 セ シ ム ル場 合 相 当 多 カ ルベ キ ヲ考 慮 シ居 ル モ前 記 ノ 如

命 令 シテ之 ヲ発 セ シ ム ルカ其 ノ何 レ ニ依 ル カ ハ各 具 体的 場 合 ニ依

記

カ ル取 極 ヲ為 シ タ ル事 実無 之 ニ依 リ之 ニ関 ス ル事 情 取 調 ノ上 左記 ノ 通 及報 告 候 也 左

二、 被 疑 者 ノ 召 喚、 勾 引 、 勾 留 、捜 索 等 主 要 事 項 ニ関 ス ル検 事 ノ命

ヲ定 ム ルノ要 ア ルヲ認 メズ

事 情 ヲ聴 取 シ タ ル ニ過 日警 察 部 長 会 議 開催 ノ際 内 務 省 側 ノ要 請 ニ依

令 ハ必 ラズ之 ヲ個 別 ニ発 スベ ク其 ノ余 ノ強 制 処分 ニ関 ス ル命令 ニ

警 視 庁 永 野 特 高 部長 及中 村 特 高第 一課長 ヲ招 致 シ テ右文 書 発 送 ノ

リ永 野 特 高 部 長 ニ於 テ東 京 ニ於 ケ ル新 法 特 別 刑 事 手 続 運 用 ノ実 施 要

就 テ ノ ミ事 宜 ニ依 リ事 件 毎 ニ包括 的 ニ之 ヲ発 スル モノ ト ス

三、 司 法 警 察官 ハ常 ニ検 事 ト緊 密 ニ連 絡 シ査 察 内 偵 開始 ノ当 初 ヨ リ

領 ニ関 スル説 明 ヲ為 ス ニ当 リ当 検事 局 ヨリ指 示 ヲ受 ケタ ル事 項 ヲ取 纏 メ演 述 シ タ ルガ 右演 述 ノ際 使 用 シタ ル要 領 摘 記 ノ原 稿 ヲ内 務 省 警

其 ノ経 過 ヲ逐 次 検 事 ニ報告 シ其 ノ指 揮 ヲ受 ケ真 ニ有 機 的 ニシテ連 絡 統 一ア ル捜 査 ヲ遂 行 スベ キ モノ ト ス

リ之 ヲ為 スベ キ モノ ト ス

受 領 シ タ ルト キ ハ速 ニ之 ヲ被 疑 者 ニ示 シ各 其 ノ処 置 ヲ為 スベ キ モ

スベ キ ニ依 リ検 事 ヨ リ接 見 禁 止書 、 移 監指 揮 書 、 釈 放指 揮 書 等 ヲ

移 監 ハ検 事 之 ヲ為 スベ ク又被 疑 者 ノ釈 放 モ原 則 ト シ テ検 事 之 ヲ為

九 、 勾留 被 疑 者 ト他 人 ト ノ接 見 及物 件 授 受 ノ禁 止 竝 ニ勾留 被 疑 者 ノ

反 事件 ニ関 シテ ハ全 然 検事 ノ指 揮 ヲ受 ク ル ノ遑 ナ キ急 速 ヲ要 ス ル

四 、捜 査 ニ行政 検 束 ヲ利 用 ス ルノ慣 行 ハ治 安 維持 法 及国 防 保 安法 違

極 メ テ例 外 ノ場 合 ヲ除 キ之 ヲ行 ハザ ル コト ト ス、 而 シテ急 速 ヲ要

ノト ス

五、 検 事 ノ命 令 ニ因 リ 勾引 、 勾 留 、 訊 問其 ノ他 ノ強 制 処分 ヲ為 シ タ

ルノ方 途 ヲ研鑚 実行 スベ キ モノト ス

持 シ且 其 ノ実 践 ヲ通 ジ テ手 続 ノ複 雑 性 ヲ克 服 シテ捜 査 ノ敏 活 ヲ計

ヲ得 ザ ルト コ ロナ ル モ検 事 及 司法 警 察 官 ハ常 ニ緊 密 ナ ル連 繋 ヲ保

ヲ厳 ニ履 践 ス ルノ要 ア リ テ其 ノ間 ノ手 続 ニ複 雑 ヲ来 ス ハ蓋 シ已 ム

十 、 検 事 ノ発 ス ル強 制 処 分命 令 ニ関 シテ ハ前 数 項 ニ準 拠 シ其 ノ法 式

シ検 事 ノ指揮 ヲ受 ク ルノ遑 ナ ク真 ニ已 ム コト ヲ得 ザ ル例 外 ノ場 合 ニ於 テ モ其 ノ処 分 後 遅 滞 ナ ク検 事 ニ報 告 シ其 ノ指揮 ヲ請 フベ キ モ

ル場 合 、 勾 引 状、 勾 留 状 、 訊 問 調書 等 ノ書 類 ニ記 載 スベ キ命 令 検

以上 ノ指 示 ハ其 ノ各 項 ニ亘 リ本省 ヨリ指 示 ヲ受 ケ タ ル手 続 ノ厳 格

ノト ス

モノ ト ス

緊 迫 セ ル内 外 ノ情勢 ニ鑑 ミ詭 激 思 想 運動 ニ対 ス ル検 察 ヲ強 化 シ国

(昭和十六年七月十七日刑事第 一 四四七号検事正宛刑事局長通牒)

思 想 犯 対 策 協 議 会設 置 方 ニ関 ス ル件依 命 通 牒

下 ニ於 ケ ル特殊 事 情 ヲ考 慮 シ タ ル結 果 ニ外 ナ ラザ ル モノト ス。

性 ヲ稍 緩 和 シ タ ルト コ ロ存 スル モ之 レ全 ク多 数 ノ事 件簇 出 スル当 管

事 ノ氏 名 ハ必 ラズ実 際 ニ命 令 ヲ発 シタ ル検 事 ノ氏 名 ヲ記 載 スベ キ

書 面 、 口頭 、 電 話其 ノ他適 宜 ノ方 法 ニ依 ルベ キ モ責 任 ノ所在 ヲ明

六、 強 制 処 分 命 令 発動 ノ 形式 ハ必ズ シ モ書 面 ニ一定 セズ事 宜 ニ依 リ

瞭 ナ ラ シム ル要 ア ル ヲ以 テ受 命 ニ関 ス ル帳 簿 ヲ作 成 シ置 キ之 ニ命 令 ヲ為 シタ ル検 事 及 之 ヲ受 ケ タ ル司 法警 察 官 ノ氏 名 竝 ニ命 令事 項 ノ要 旨 等 ヲ記 載 シ置 ク モノ ト ス

理由 ヲ疏明 シタ ル書 面 ヲ添ヘ テ其 ノ旨 検事 ニ禀請 スベ シ、 但 シ治

ナ ク特 ニ最 近 施 行 ヲ見 タ ル国 防 保 安法 及治 安 維 持法 改 正法 律 ニ於 テ

民思 想 ノ安 固 ヲ図 ル ハ現 下 司 法 ニ課 セ ラ レタ ル最 大 ノ責 務 タ ル ヤ論

七 、 勾留 更 新 ノ必 要 ヲ認 メ タ ルト キ ハ遅 ク ト モ期 間 満 了 ノ七 日前 ニ

安 維 持 法違 反 事 件 ニ限 リ最 初 ノ 六月 間 ニ於 テ ハ右 理由 ハ簡 略 ニ記

ノ万全 ヲ期 スル為 今般 各 地方 裁 判 所 検 事局 ニ標 記協 議会 ヲ設 置 シ思

ハ絮説 ヲ要 セザ ルト コ ロナ ルガ叙 上 ノ責 務 ニ応ヘ 且強 制 捜 査 権 運 用

検 事 ニ対 シ強 制 捜 査権 ヲ附 与 シタ ル所 以亦 茲 ニ存 ス ル モノ ナ ル コト

載 ス ル モ差支 ナ キ モノト ス (但 シ例 文 ヲ設 ク ル コト ヲ許 容 ス ル モ ノ ニ非 ズ ) 八 、 代 用 監 獄 タ ル警 察 官 署 ノ留 置場 ニ ハ性 質 ノ許 ス範 囲 ニ於 テ原 則 ト シ テ監 獄法 規 ノ適 用 ア ル ヲ以 テ勾 留 被 疑 者 ノ取 扱 ハ同 法 規 ニ則

会 ヲ運 営 相成 様 致度 依 命 及 通牒 候

絡 ノ緊 密 ヲ図 ル コト ト相 成候 ニ付 テ ハ概 ネ左 記要 領 ニ依 リ標 記協 議

想 検 察 指 揮権 確 立 ノ 一助 タ ラ シム ルト共 ニ思 想検 察 機 関 相 互間 ノ連

限定 シタ ル ハ費 用 ノ関係 等 ヲ モ考 慮 シ タ ル結 果 ニシテ従 来 例ヘ バ

ニ有 之 、 尚 協 議 会 ヲ専 ラ検 察 関 係 者 ノ連 絡会 議 ト為 シ其 ノ範 囲 ヲ

貴 庁 ニ対 シ送 付 スベ キ協 議 会 費 用 ( 機 密費 ) ハ別 途 送 付 ノ予 定

学校 長 、 予 防 拘 禁 所 長等 ヲ加ヘ 思 想 対策 連 絡 会 議 等 ノ名 称 ノ下 ニ

之 ガ会 議 ヲ開 催 セ ラ レ居 ル向 ニ対 シ之 ヲ禁 遏 スル趣旨 ニ ハ無 之 為

記

念申 添 候

ハ至 急 本 協 議 会 ヲ設 置 ス ルト共 ニ内規 中 ニ此 ノ趣 旨 ヲ明 示 ス ル

此 ノ趣 旨 ヲ内 規 中 ニ追加 規 定 ス ル コト未 ダ設 置 セザ ル庁 ニ於 テ

従 テ既 ニ標 記 協 議 会 設置 セラ レ内 規 ノ制 定 ヲ見 タ ル庁 ニ於 テ ハ

包含 ス ル モノ ナ ル コト ヲ内 規 上 明 カ ナ ラ シ ム ル コト

一、本 協 議 会 ニ於 テ ハ ﹁言 論 取 締 対策 ノ樹 立 ﹂ ヲ モ其 ノ目 的 ト シテ

記

議 会 ヲ左 記 要領 ニ依 リ運 営 相 成 候 様 致度 及 通 牒 候

ヲ考 究 樹 立 ス ルノ機 関 タ ラ シ ム ル ヲ相 当 ト思 料 セ ラ レ候 条 爾 今 本協

テ ハ各 地 方 ニ於 テ モ此 ノ趣 旨 ニ則 リ標記 協 議 会 ヲ以 テ之 ガ取 締 対 策

務 省 及 憲 兵隊 関 係官 ヲ 以 テ構 成 ス ル協 議 会 設 置 ノ運 ビ ト相 成 候 ニ付

ロ今 般 之 ガ対 策 樹 立 ノ為 中 央 ニ於 テ ハ情 報 局 ヲ中 心 ト シ司 法 省 、 内

ハ之 ガ取 締 ニ関 シ敏速 ナ ル処 置 ヲ講 ズ ルノ要 ア ル コト勿 論 ナ ルト コ

ヲ招 来 スル ノ虞 ア ル言 動 ヲ未 然 ニ防 止 シ万 一其 ノ発 生 ヲ見 ル ニ於 テ

以 テ依 命 通 牒 致 候 処内 外 ノ情 勢 頓 ニ緊 迫 セ ル現 状 ニ鑑 ミ人 心 ノ動 揺

標 記 協 議 会 設 置 方 ニ関 シテ ハ本 年 七 月 十 七 日附 秘第一 四 四七 号 ヲ

(昭和十六年九月六日秘第 二〇 二六号検事正宛刑事局長通牒)

一、協 議 会 ハ官 制 ニ依 ラザ ル事 実 上 ノ協 議 会 ト ス

上

思想 犯対策協議会運営 ニ関 スル件

一、協 議 会 ハ思 想 事 犯 検察 (捜 査 ) 機 関 相 互 間 ノ緊 密 化 ヲ増 進 シ、 指揮 ノ徹底 、 連 絡 ノ強化 、 情 報 ノ蒐 集 及 交 換其 ノ他 思 想 検察 ノ適 正 ナ ル運用 ヲ図 ルヲ以 テ其 ノ目 的 ト ス 一、協 議 会 ハ各 地方 裁 判所 検 事 局 ニ之 ヲ設 置 ス

ニ従事 ス ル機 関 ノ首 脳者 ヲ以 テ之 ヲ組 織 ス

一、協 議 会 ハ検 事 正 之 ヲ主 宰 シ検 事 ノ外 警 察 及憲 兵 等 直接 思 想検 察

警 察 及憲 兵 等 直 接 思想 検 察 ニ従 事 スル機 関 ノ首 脳 者 ノ範 囲 ハ適 宜 検 事 正 ノ定 ム ルト コ ロ ニ依 ル

他協 議 会 ノ目 的 達 成 ニ必要 ナ ル事 項 ヲ聴 取 ス ルヲ妨 ゲ ズ

一、 協 議 会 必 要 ア リト 認 ム ルト キ ハ第 三 者 ヲ招 致 シ情 報 ノ交 換 其 ノ

一、 協 議 会 ハ関 係 者 以 外 ノ者 ニ対 シ テ ハ其 ノ存 在 自 体 ヲ秘 匿 シ密 行 ス ル ヲ相 当 ト ス 一、 協 議 会 開 催 ニ要 ス ル経 費 ハ別 途 送 付 ノ機 密 費 ヲ以 テ之 ニ充 ツ

要 ナ ル事 項 ハ検事 正之 ヲ定 ム

一、 協 議 会 開 催 ノ日時 、 回 数 、 (定 期 又 ハ不定 期 )内 規 、 其 ノ 他 必

以

一、 協 議 会 ノ設 置、 開 催 ノ状 況其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項 ハ検 事 正

考

ニ於 テ速 ニ刑 事 局 長 宛 之 ヲ報 告 ス ル モノト ス

備

コト 二、 本 協 議 会 ハ本来 ノ 目的 達 成 ノ為 事 情 ノ許 ス限 リ頻 繁 ニ開 催 ス ル

コト

又 ハ是 等 若 ク ハ謄 抄 本 ノ書 損 シノ反 古 ハ速 ニ之 ヲ焼 却 ス ヘシ

同 席 ノ場 所 ニ於 テ之 ヲ為 ス コト ヲ得 ス判 決書 、 決 定 書 調書 ノ原 稿

決 書 、 決 定書 、 調 書 又 ハ謄 抄 本 ノ作 成 ハ特 設部 関 係 者 以 外 ノ者 ノ

第 七条  特 別事 件 ニ関 スル記 録 及証 拠 物 件 ノ調 査 又 ハ整 理若 ク ハ判

者 差 支 ヲ生 シタ ル場 合 ニ於 ケ ル代 理者 亦 同 シ

第 六 条  特 設部 ニ附 属 スヘキ書 記及 廷 丁 ハ特 別 ニ之 ヲ詮考 ス是 等 ノ

ヲ以 テ之 ヲ填 補 ス

民 事 裁 判長 ノ地 位 ハ区 次席 判 事 、 思 想係 判 事 ノ地位 ハ経 済 係 判事

第 五条  構 成 員 ニ差 支 ヲ生 シタ ルト キ ハ刑 事 部 長 ノ地 位 ハ民 事 部長 、

成 ス

第 四条  特 設 部 ハ刑事 部長 、 民 事 裁 判 長、 思 想 係 判事 ヲ 以 テ之 ヲ構

第 三 条  特 別 事 件 ノ公判 ハ特 設 部 ニ於 テ之 ヲ行 フ

ト キ亦 同 シ

予 審 終結 決 定 公 判 期 日 ノ指 定 、 公 判 ノ終 結 、 判 決 ノ言渡 ア リ タ ル

長 ニ報 告 ス ヘ シ

第 二条  裁判 所 特 別 事 件 ノ公 訴 ヲ受 理 シ タ ルト キ ハ遅滞 ナ ク之 ヲ所

三 一  刑 事 特 別 事 件 処 理 規 程 (一 九四一)

熊本地方裁判所報告︱

刑事特別事件処理規程 ︱

思想公判部 の構成を如何 にす べき かは相当重要且困難な問題 であるが、熊本地方裁判所 に於 ては夙に左記の如き規程を定 め 特殊思想事件 に付 ては刑事部長民事裁判 長及び思想係判事を以 て特別部を構成する事 としてゐる極めて注目す べき先例と思 は

地 方 裁 判 所

れるので参考 の為右規程を掲載する次第である。 日 記庶 第 四、三 七 八号

熊 本 地 方 裁 判所 長  吉 田 茂 久 郎

昭 和 十 六年 五 月 十 七 日

刑事 特 別 事 件 処 理 規 程 別 冊 ノ 通相 定 ム右 訓 令 ス

特 別事 件 処 理 規 程 第 一条  国 防保 安 法 違 反事 件 ハ特 別 事 件 ト シ其 ノ取 扱 ニ付 テ ハ本 法 其 ノ他 ニ特 別 ノ規 定 ア ル モ ノヲ除 ク外 本則 ノ規 定 ニ依 ル

第 八 条  特 別 事 件 ニ関 ス ル記 録 及 証 拠 物件 ハ授 受 ヲ明確 ニ シ送 付 ノ 場 合 ハ厳 重 包装 シ開 封 ハ責任 者 ニ於 テ之 ヲ為 ス ヘシ

ヲ保 管 シ、 日 々倉 庫 ニ格納 ス ヘ シ

第 九 条  特 別 事 件 ニ関 ス ル記 録 及 証 拠物 件 ハ鎖 鑰 ア ル 一定 ノ箱 ニ之

判 事 公判 中 ハ裁 判 長 ニ於 テ保 管 ノ責 ニ任 ス ヘシ

第 十 条  特 別 事 件 ニ関 ス ル記 録 及 証 拠 物件 ニ関 シテ ハ予審 中 ハ予 審

当 リ テ ハ努 メテ抽 象 的 ノ文 字 ヲ使 用 シ具 体的 ノ表 示 ヲ避 ク ヘシ

第 十 一条  特 別 事 件 ニ関 ス ル判 決 又 ハ決 定 ニ秘 密 事 項 ヲ表 示 ス ル ニ

ノ記 録 ニ ハ 一定 ノ標 識 ヲ付 ス ヘシ

第 十 二条  訴 訟記 録 ノ作 成 ニ当 リ テ ハ之 ヲ通常 ノ記 録 ト 区 別 シ尚 其

第 十 三 条  記 録 ノ謄 写又 ハ閲覧 ハ特 別 ノ室 ニ於 テ之 ヲ為 サ シメ別 ニ

徳 田 球 一関 係

定 メ タ ル監視 人 ヲ付 ス

一任 スヘ カ ラ ス

第 十 四条  謄 写 ノ許 否 ハ裁 判 長 又 ハ予審 判 事 自 ラ之 ヲ決 シ書 記 等 ニ

シ若 一部 ノ謄 写 ヲ許 可 セ サ ル モノ ア ルト キ ハ其 ノ部 分 ニ封 印 ス ル

前 項 ノ場 合 裁 判長 又 ハ予 審 判 事 ハ 一応 先 ツ記 録 ノ内 容 ヲ査閲 ス ヘ

等 適 当 ノ処 置 ヲ講 スヘ シ

則

第十 六条  本 規 程 ハ治 安 維 持 法 違 反 事件 ニ付 之 ヲ準 用 ス

第 十 五条  係 員 ハ秘 密 ノ確 保 ニ付常 ニ周 到 ノ注意 ヲ取 ルヘ シ

附

本規 程 ハ昭和 十 六年 五 月十 七 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

田 球

一

右者左記ノ理由 ニ因 リ予防拘禁 ニ付 スルヲ相当 ト思料候条参考 ト為

徳

当所収容 治安維持法違反懲役八年 一月十九日(通算 四百日)

三 二  予 防 拘 禁 請 求 事 件 記 録 (一 九四一 )

(1 )

徳 田球 一に対する予防拘禁請求事件記録 予防拘禁申立書

ルベキ 資料 ヲ添 附 シ及 申 立候 也 昭 和 十 六年 十 月 三 十 日

金

沢

次

郎

東 京 刑事 地方 裁 判 所 検事 局 検事 正 

殿

小菅 刑 務所 長

一九 三 四年 十 二 月初 旬 既 決 ニナ ツ テ カ ラ ハ 一層 強 烈 ナ ル社会 カ ラ

ノ隔 離 ガ強 行 セ ラ レ タ、網 走 ニ於 テ ハ、 従妹 カ ラ来 ル書 信 ニ於 テ

サザ ル モノ ヲ入 手 ス ル コト屡 々デ ア ツ タ、 然 ル ニソ ノ書 信 タ ルヤ

サヘ 社 会 生活 ニ関 ス ル記事 ハ 一切 合 財 切 取 リ全 ク書 信 ノ形態 ヲ ナ

ツケ ナイ性 格 ナ モ ノデ ア ツタ、 斯 ル情 態 ニ前 後 十 三 年 半 ヲ暗 室 的

何 等特 徴 ノ ア ルモ ノデ ナキ ノ ミ ナ ラズ 、 ﹁人 ﹂新 聞 ヨリ モ 一層 ア

テ最 近 ノ 諸動 向 ニ触 レ テ述ベ ルト云 フ コト ハ無 意 味 デ ア ルト信 ズ

思 想 生活 ニ過 サザ ル ヲ得 ナ カ ツタ為 メ ニ、 標 題 ノ 一乃 至 五 ニ付 イ

申立理由 本 名 ハ入所 以来 八 年 ニ及 ブ年 月 ヲ経 過 シ沈 思 反 省 ノ好 機 会 ヲ与 ヘ

ル。

ラ レ タ ル ニ拘 ラズ其 間 何 等 ノ思 想 的 進 展 ノ跡 ヲ認 ム ル コト能 ハズ 僅

ナイ コト ヲ意 味 スル モ ノデ ハナ イ、 コレ等 ノ諸 問 題 ニ付 イ テ ノ確

二 、 然 シ ナガ ラ、 ソ レ ハ コレ等 ノ諸 問 題 ニ付 イ テ何 等 ノ確 信 ヲ有 シ

カ ニ将 来 ノ生活 態 度 ニ付 テ共産 主義 運 動 ニ適 セザ ル社会 状 勢 ノ出 現 長 期 ニ亙 ル受 刑 生活 ニ依 ル肉 体 ノ衰 弱 ト気 力 ノ消 耗 及 ビ運 動 実 践 ニ

テ、 現 在 モ何 等 変 化 シテ ハヰ ナ イ、 ダ カ ラ、 今 更 、 茲 ニ再 述 スル

信 ハ既 ニ第 一審 、第 二審 、 公 判 ニ於 テ縷 々陳 述 シテ ヰ ルノ デ ア ツ

対 スル熱意 ノ冷 却 等 ヲ理 由 ト シテ 一切 ノ政 治 社会 運動 ヨリ離 脱 セ ン コト ヲ表 明 セ ル モ其 ノ思 想 内容 ( 国 体 観 、 社 会 観、 経 済 観 、 戦争 観、

コト ハ何 等 興 味 ナキ ノ ミナ ラズ 、 又 必 要 モ ナイ ト信 ズ ル。

宗 教 観 等 ) ニ於 テ ハ第 一審 第 二審 当 時 公判 廷 ニ於 ケ ル陳 述 ト 聊 カ モ 変 ルト コロナ ク依 然 ト シ テ共 産主 義 思 想 ノ正 当性 ヲ確 信 シ且 最 近 治

一

フ カ ヲ学 バ ネ バ ナ ラ ヌ、 ダ カ ラ社 会 運 動 ダ ト カ、 政 治 運動 ダ ト カ

ヲ所持 シテ ヰ ナ イ、 出 獄後 、 先ヅ 第 一 ニ如 何 ニ シテ ﹁め し ﹂ ヲ食

シ タ、 ダ カ ラ今 私 ハ将来 ノ 生活 態 度 ニ付 イ テ何 等 ノ述 ブ ベ キ モノ

事 相 カ ラ隔 離 スル コト ニ懸命 デ ア ツ タ政 府 ノ政 策 ハ徹 底 的 ニ結 実

一切 ノ社 会 事 相 殊 ニ実際 生活 ニ付 イ テノ知 見 ノ獲 得 ニ必要 ナ ル

現 シ テ ヰ ル。

ハソ レガ公 ニ言 ハレ テ ヰ ルト ハ正 反 対 ニ極 メ テ強 烈 ニ徹 底的 ニ顕

ト ニ付 イ テ何 等 知 ル所 ガ ナイ、 コノ コト ニ付 イ テ ハ刑 執 行 ノ目 的

際 ノ所 私 ハ今 、 社 会 ニ出 テ如 何 ニ シテ ﹁め し ﹂ ヲ食 フ カト 云 フ コ

球

三 、 ソ コデ残 ル所 ノ問 題 ハ ﹁将 来 ノ生 活 態度 ﹂ ニ付 イ テデ ア ル。 実

田

安 維 持 法 改 正 ニ伴 フ予 防 拘 禁制 度 ノ実 施 ニ対 シ却 ツテ対 立 反 感 ヲ増

徳

長 シ今 日 ニ及 ベ ル モノ ニシ テ釈 放 後 ニ於 テ 更 ニ治 安 維 持 法 ニ掲 グ ル 罪 ヲ犯 スノ虞 ナ シト セザ ル ニヨ ル 昭和 十 六年 十 月十 七 日 六 〇 一 

一、 国 体 観  二、 社 会 観  三、 経 済 観  四 、戦 争 観  五 、 宗 教観 六、 将 来 ノ生 活態 度

ソ レ ハ出 来 得 ル限 リ吾 々ヲ社 会 ノ事 相 カ ラ隔 離 シ ヤウ ト云 フ方 針

一、 一九 二八年 二月 末 警 視 庁 ニ拘 留 サ レテ カ ラ六年 半 ノ未 決 生 活、

ノ下 ニ拘 束 サ レタ生 活 デ ア ツタ。

ニ何 等 ノ関 心 ヲ有 ス ル筈 ガ ナイ有 シタ ク モ有 スベ キ 一分 ノ余裕 サ

ニモ心的 ニモ百 ％ 遂行 サ レタ、 勿 論 政府 ノ狙 フ所 ノ金 的 ハ全 ク逸

政府 ハ是 ニ満 足 シナ ケ レバ ナ ヲ ヌ、 シカ モ又 ソ ノ刑 ノ執 行 ハ物 的

生 活 資 料 ヲ獲 得 スベ キ カ ヲ学 ブ コト ニ 一切 ノ注 意 ガ集 中 サ レ テ居

労 様 ダ ツタ !!﹂ ト 云 ツテ、 然 ル ニ事 モア ラウ ニ釈 放 モア ト幾 何 モ

人 民 ニ対 シテ約束 シタ所 ノ釈 放 ヲ歓喜 シテ ナ サネ バ ナ ラ ヌ ﹁御 苦

キ所 ニ於 テ ハ物 心 ト モ徹 底 的 ニ結 実 シ タ、 ダ カ ラ今 ヤ政府 ハソ ノ

シ タト スル モ、 ソ レ ハ狙 フ所 ガ無 理 ナ結 果 デ ア ツ テ通 常 ニア ルベ

ヘ モ有 シ ナ イ、 人 間 ハ食 ハネ バ 生 キ ル訳 ニ行 カズ、 而 シテ私 ハ働

ル。 所 デ ソ レサ ヘ モ現 在 ノ所 何等 ノ手 掛 リガ ナ ク、 総 テ ハ出 獄 後

イ テ食 フ以 外ニ一 文 ノ財 産 ト テ モ有 シナ イ、 ダ カラ如 何 ニ働 イ テ

デ ナ ケ レバ 不可 能 ノ情 態 ニア ル。

ナイ ト 云 フ時 ニナ ツテ カ ラ、 治 安 維 持法 ヲ改 悪 シ テ、 予防 拘 禁 条

政 府 ニ対 ス ル癒 シ難 キ不信 ヲ 一般 大 衆 ニ激 発 ス ル モノダ 、即 チ現

項 ヲ創 出 ス ルト ハ全 ク自 己 ノ人 民ヘ ノ約 束 ヲ裏 切 ルモ ノダ、 コノ

政 府 ト云 フ モノ ハ自 分 ノ勝 手 ノ ヨイ時 ニ ハド ンナ厳 重 ナ約 束 デ モ

網 走 ニ於 ケ ル強 烈 ナ寒 気 ハ私 ノ身 体 ヲ 一変 サ セタ、 全 体 的 ニ ハ

シテ ヰ ル ノデ働 ク コト ニ ハ非常 ニ不利 益 デ ア ル。 左手 モ親 指 ト人

反 古 ニス ル コト ヲ何 ト モ思 ハナ イ ト云 フ重 大 ナ不信 ヲ自 己暴 露 シ

神 経 痛 デ 極 メ テ不 自 由 デ ア ル、 特 殊 的 ニ ハ 一番 大事 ナ右 ノ手 ガ 掌

指 シ指 ノ付 ケ根 ガ リ ユウ マチ スデ腫 レ上 リ疼 痛 ヲ感 ズ ル、 勿 論 右

タ時 ニ ハ何 等 関 知 スル所 ナキ、 カ カ ル無 法 ナ仕 打 ヲ スル ト ハ全 ク

手 程 デ ハナイ ガ労 働 ス レバ 非常 ニ早 ク疲 労 ス ル、 カ カ ル保 健 上 ノ

タ モノデ ア ル。 実 際 ノ所 吾 々 ハ今 出 獄 シ テ モ 一言 半 句 モ自 分 ノ思

法 律 施 行後 ノ事 件 ニ関 シテ ナ ライ ザ知 ラズ、 私 達 ノ行 為 ノ存 在 シ

欠 陥 ヲ生 ぜ シメ タ コト ハ政 府 ガ吾 々ヲ シテ再 ビ 社 会 デ活 動 ス ル コ

フ コト ヲ言 フ コト ガ出 来 ナイ ダ ラ ウ コト ハ疑 ヒナ イ、 獄 中 ニア レ

ノ付 ケ根 デ 、 リ ユウ マチ スノ為 メ ニ固 著 シ、 且 ツ腫 レテ、 常 住 疼

ト ヲ不 可 能 ナ ラ シメ ヤ ウ ト ス ル意 図 ガ充 分 効 果 的 ニ物 的 ニ何 人 ガ

痛 ヲ感 ズ ルノ デ全 ク不 自 由 デ ア ル、 ノ ミ ナ ラズ 右手 全 体 ガ畸 型 化

見 聞 シテ モ疑 フ コト ノ出 来 ナイ情 態 ニ於 テ結 実 シ タ。 ダ カ ラ実 際

モア ル程度 言ヘ ル ノデ ア ツ テ、 到 底 社 会 デ ハ働 ク以外 ニ即 チ ﹁め

バ コソ、何 等 影 響 スル所 ナイ ト思 エバ コソ、吾 々ノ思 フ儘 ノ コト

し ﹂ ヲ食 フ以外 ニ ハ口 モ開 ケ ラ レ ナイ コト ハ疑 ヒナ イ、 ソ レ ニ モ

ノ所 、 社 会 運動 ヤ政 治 運 動 ニ関 心 ヲ有 ス ル ヨリ モ、指 シ詰 、 保 健 上 ノ欠 陥 ヲ幾 分 ナ リ ト モ取 リ返 シテ ﹁め し﹂ ヲ食 フ方 法 ヲ発 見 シ

ノ自 家 広告 以外 ノ何 物 デ モ ナイ。 ド ウ見 テ モ戦 争 ニ没 頭 シ タ結果

拘 ラズ 、 予防 拘 禁 ヲ シ ヤウ ト 云 フノ デ ハ全 ク現政 府 ノ自 己 弱 体化

右 ノ如 キ ガ 私 ノ何 等 ノ掩 フ コト ナキ、 生 活 ニ対 ス ル実 情 デ ア ル、

ナ ケ レバ ナ ラ ヌ。

ヤ ウガ ナイ、 論 ヨリ証拠 ﹁朝 鮮 征伐 ﹂ ヲ想 起 セ ヨ、 コ コ ニ ハ秀 吉

ニ対 スル ﹁危 険 思 想 ﹂ ハ少 シ モ存 在 シナ イ、然 ル ニ拘 ラズ 、 アノ

極 度 ノ神 経 過 敏症 又昂 奮 症 ニ侵 サ レタ モノト断 ズ ル以 外 ニ ハ言 ヒ

長 期 ニ渉 ル外国ヘ ノ侵 略 戦 争 ハ経 済的 ニ、 社 会 的 ニ実 際 政 治 的 ニ

シ詰 ノ食 フ食 ハ ヌノ瀬 戸 際 ニ臨 ンデ ヰ ルカ ラデ ア ル。 サ テ政府 ハ吾 々 ニ対 シ テ有 期 懲 役 ヲ宣 告 シ タ、 法 律 ノ許 ス範 囲

敢 テ態 度 ト 云 ハナ イ、 何 故 ナ ラバ態 度 ヲ サ ヘ発 見 ス ル ニ苦 ム、指

ニ於 ケ ル最 大 限 度 ノ刑 ガ 私 ニ ハ課 サ レタ、 憲 法 ノ示 ス所 ニ従 ツ テ

ダ カラ要 ハ ﹁思 想 ﹂ ガ ﹁敵 ﹂ デ ハナイ 、 ﹁ 思 想 ﹂ ガ実 践 ニ移 サ レ

支 持 シ能 ハザ ル結 果 ヲ来 タ シ、 秀 吉 政 府 ノ根 柢 ヲ根 コソギ シタ。

規 シテ ナ イ、驚 クベ キ乱 暴 ナ不 法 不 当 ナ モ ンダ。

ル所 以 ヲ明 確 ニ シナ ケ レバ ナ ラ ヌ、 ソ レダ ノ ニ、 上訴 規 定 サヘ 明

モノ カ ラ公権 ヲ剥 奪 シ拘 禁 ス ル以 上 ハ充 分 ニソノ然 ラ ザ ル ヲ得 ザ

己 ノ侵 スベ カ ラザ ル人 民ヘ ノ約 束 ヲ裏 切 ツテ暴 圧 ヲ敢 行 ス ル コト

切 ノ労 働 力 ヲ戦 争 効 果 ニ集 中 シテ ヰ ルデ ハナイ カ、 カ カ ル時 ニ自

番 ダ、 更 ニ考 エテ見 ヨ、 現 政 府 ハ ﹁ 国 家総 力 ﹂ ノ発 揮 ト 称 シテ 一

レ ハ死 刑 執行 ト同 一ダ ) ノ如 キ全 ク常 規 ヲ逸 シテ ヰ ル、斯 クノ如

ノ乱 暴 ヲ規定 (二十 日以 内 五 日 毎 ニ更 新 、 即 チ永 久 暗 室拘 禁 、 コ

ケ ル六 ケ月 ニ渉 ル文 書 閲 読 禁 止 ノ如 キ重 屏 禁 ト同 一ノ鎮 静 室 監禁

イ、 却 ツ テ犯罪 者 以 上 ニ劣 悪 ナ処遇 規 定 ヲ見 ル。 例 ヘバ 懲 罰 ニ於

ナ キ モノデ ア ル コト ノ趣 旨 カ ラ来 ル当 然 ノ結 果 タ ル処 置 ガ全 クナ

次 ニ拘 禁令 ニ於 テ ハ第 一、 予 防拘 禁 デ ア ル コト、 何 等 犯 罪 行為

ル諸条 件 ノ存 在 ガ ﹁ 敵 ﹂ ナ ノダ 、 ソ ノ ﹁敵 ﹂ ヲ防 グ ニ熱 中 ス ルガ

ハ、 ソ ノ総 力 ノ発揮 ノ基 本 条 件 ヲ崩 壊 セ シ ム ル モノデ ナ ク シテ何

良 イ、 ﹁ 思 想 ﹂ ヲ追 カケ 廻 シテ足 ヲサ ラ ハレナ イ ヤ ウ ニ ス ル ガ 一

ダ。 ダ カ ラ無 理 ヲ ス ル コト ナ ク シテ、 満 期 終 了 後 ハ無条 件 ニ釈 放

シ テ ヰ ナイ、 ソ レ ハ反 面 ニ於 テ暴 虐 ノ行 ハル ル コト ヲ黙 視 シタ コ

第 二、 ニ拘 禁 所 内 ノ違 法 処遇 ニ対 スル何等 正当 ナ救 済 手続 ヲ明 記

ンデ シ マツタ ノダ ド ウ シテ モ モツ ト冷 静 ニナ ラ ヌト 極 メ テ危 険 ダ

キ ハ実質 上 ニ於 テ明 ニ違 法 ダ戦 争 ニ没 頭 シ テ ヰ ル結 果 、 眼 ガ ク ラ

タ。 然 シ ナガ ラ前 者 即 チ手 続 令 ハ刑 事 訴 訟 法 ニ相 当 シ、 後 者 即 チ

予防 拘 禁 手続 令、 及 ビ予 防 拘 禁令 ガ何 レ モ司 法 省 令 デ発 布 サ レ

ス ルガ ヨイ。

拘 禁 令 ハ監 獄 法 ニ相 当 ス、 如 何 ナ ル見 地 カ ラ ス ル モ現行 、 政 治 形

ハ矛盾 ス ル、 教 誨 、 凡 ユル手 段 ヲ以 テ ﹁改 悛 ﹂ セ シ ムベ ク努 力 シ

ト ト同 様 ダ、 カ カ ル規 定 ハ予 防 拘 禁 ノ本質 ヲ無 視 シ、 戦 時 昂 奮 ニ

タ ニ モ拘 ラズ 如 何 ト モ ス ル能 ハザ ル結 果 、 全 ク古今 未 曾 有 ノ不法

態 ニ於 テ ハカカ ル人 民 ノ公 権 ヲ剥 奪 シ、 ソ ノ生 死 ニ直 接 間 接 重 大

ニ変 改 シ得ベ キ省 令 ニ ヨツ テ、 カ カ ル重 大 ナ ル規 定 ヲ制 定 スルト

不 当 ノ処 置 ヲ敢 テ ス ルノ デ ア ルカ ラ、 ソノ事 ノ性質 ヲ充 分 考ヘ テ、

シイ コト ガ出来 ル ヤウ ニナ ツ テ ヰ ル。 予防 拘 禁 ノ本 質 上、 教 導 ト

ハ何 事 ゾ コレ ハ全 ク憲 法 上 重 大 ナ ル違 反 ト 認 メ ル、 更 ニ尚 ホ、内

処置 スベ キデ ア ル。唯 ダ机 上 ノ意 慾 デ規 定 ヲ作 リ 上 ゲ ル コト ハ百

侵 サ レテ ヰ ル コト ノ証 拠 ダ、 第 三 、 ニ教導 ト称 シ テ押 シ付 ケ ガ マ

容 ニ於 テ ハ手 続 令 ハ裁 判 ノ公 正 ナ ルベ キ諸 条 件 ヲ破 壊 シテ ヰ ル、

ナ ル関 係 ヲ有 ス ル諸 行 為 ニ付 イ テ ハ法 律 ニ規 定 サ ルベ キ ハ憲 法 上

第 一、 公 開 ヲ規 定 シテ ヰ ナイ、 公 開 ナ キ裁 判 ハ現 日本 ノ情 勢 ニ於

害 ア ツ テ 一利 ナキ モノ デ ア ル コト ヲ熟 知 セ ネバ ナ ル マイ。 (了)

ノ保 障 デ ア ル、 然 ル ニ大 臣 ノ 一己 ノ行 為 ニヨ ツ テ何 時 ニテ モ勝 手

テ ハ不 公 正 モ著 シイ モノダ、 且 ツ現 行 刑事 訴 訟法 ノ本 質 ニ違 反 ス、 第 二、 ニ弁護 士 ヲ認 メズ 補 佐 人 タ ル何 等 法律 執行 ノ公 正 ヲ保 障 シ

チ控 訴、 上告 ヲ明 確 ニ規 定 セザ ル ハ不 当 ダ、 犯罪 者 ニ モア ラザ ル

得 ザ ル モノ ヲ設 ケ タ ル ハ不当 ダ、 第 三 、判 決 ニ対 ス ル攻 撃 方 法即

予 防 拘 禁 反 対意 見書 (徳 田球 一)

千九百四十 一年六月十五日千葉刑務所 ニ於 テ作成

田

球

治 安 維 持 法 中 予防 拘 禁 条 項 施 行 ニ対 ス ル反 対意 見

徳

治 安維 持 法 違 反 、 千葉 刑 務 所 服 役 中 一

第 一、 今 度 ノ治安 維 持 法 ノ改 悪 ハ正 ニ日本 帝 国 主義 ノ収 拾 スベ カ ラ

ツ極 メ テ大規 模 ニ急速 ニ進 展 ス ルノデ 、其 ノ浪 費 性 ト破 壊性 ハ、

今 ヤ全 ク 一切 ノ経 済 的基 本 構 成 ヲ急 速 ニ破滅 化 シ ツ ツ ア ル。 日本

﹁猿 マネ ﹂ シタ ガ、 ソ レ ハ却 ツテ 一切 ヲ 一層 混 乱 ト破 壊 ト ニ導 ク

帝 国 主 義 ハコ レヲ防 止 セ ント シテ、 独 逸 フア シ ヨ、 ﹁ナ チ ス﹂ ヲ

カ ラザ ル破綻ヘ 押 シ詰 メラ レテ来 タ。 ソ レ故 ニ帝 国 主義 者 ノ見 ル

以 外 ニ何 物 ヲ モ収 メ得 ナカ ツタ。 斯 ク テ政 治 的 ニ モ愈 々収 拾 スベ

モ ノ聞 ク モノ ハ 一切合 財 、 彼 等 自 身ヘ ノ被 抑 圧 人 民 層 ノ襲 撃 ノ種

己 ノ刑 法 ニ於 テ犯 罪 ヲ構成 ス ル手 段 、 而 カ モ、 ソ レ ハ殺 人 ト 云 フ

最 悪 法 ヲ以 テ威 嚇 、 痛 責 シ タノ ミ ナ ラズ、 自 ラ人 民 ニ示 シタ、 自

日本 帝 国 主義 ガ是 迄 、 凡 ユル手 段 ヲ弄 シ テ、 タ ダ ニ死 刑 ヲ含 ム

知 シテ ヰ ル所 ダ カ ラダ。 斯 ク シテ周 章 狼狽 シタ結 果 ハ前 後 左 右 ヲ

所 デ ア リ、 且 ツ、 ソノ報 酬 ノ如 何 ニ高 価 デ ア ルベ キ カ モ彼 等 ノ熟

ダ 。何 故 ナ ラ、 彼等 ノ暴 圧 ト残 虐 ノ所為 ハ彼 等 自 身 最 モ能 ク知 ル

発 セ ンカ、 身 ノ置 キ所 ナキ ニ至 ル ベ キ ハ彼 等 自 身 最 モ ヨ ク知 ル所

ト ナ ラザ ル モノ ナキ ニ至 ツタ。 一度 労 働者 、 農 民 ノ不平 不満 ガ勃

最 悪 ノ酷 烈 ナ手 段 ヲ モ動員 シテ、 労 働 者 、 農 民、 勤 務 者 、 兵士 、

顧 慮 ス ル能 力 ヲ喪失 シ、 自 己 ノ破 綻 ヲ内外 ニ大 声 疾 呼 ス ル コ ノ

ザ ル破 綻 ノ自 己暴 露 デ ア ル

其 他 被抑 圧人 民 層 ノ解 放 ニ献 身 ス ル共 産 主義 者 ヲ暴 圧 シ テ来 タ コ

法 律 ヲ国 防 法 ト 同格 ニ取 扱 ヒ、 一切 ノ刑 事 法 施 行 ノ枠 外 ニ逸 脱 シ

﹁治安 維 持 法 改 悪 ﹂ ト ナ ツ タ ノダ 。論 ヨリ証 拠 、彼 等 自身 、 コノ

其 ノ暴 政 政府 ノ弱 体 化 ヲ如 実 ニ雄 弁 ニ物 語 ル モノ デ ア ル コト ハ事

ト ハ今 更 云 フ マデ モ ナイ、 然 ル ニ、 斯 ル狂暴 ナ弾 圧 ハ、 ソ レ自 身 、

実 ガ立 証 シテ ヰ ル、 而 シテ、 之 ヲ最 モ正確 ニ感 得 スル モ ノ ハ外 ナ

モナ ク、 自 国 内 被抑 圧 人民 層 ヲ敵 国 人 ト同 一ニ、 階 級 闘争 ヲ帝 国

テ、 極 メ テ酷 烈 ナ戦 争 的 暴虐 手 段 ニ訴 ヘテ ヰ ル。 コレ ハ云 フ マデ

主義 戦 争 同 様 ニ取扱 ツテ ヰ ル コト ヲ意 味 ス ル。 我 ガ 共産 党 ヘノ攻

ラ ヌ、 労 働 者 、 農 民、 即 チ弾 圧 サ レ テ ヰ ル者 デ ア ル、 ダ カ ラ愈 々

ヘノ、 情 熱 ハ昂揚 シテ行 ク、 ダ カ ラ既 ニ革 命 陣営 ヲ放 棄 シ タ者 ニ

狂 暴 ナ振 舞 ガ増 大 ス レバ、 ス ル程 、 益 々労 働 者 、 農 民 ノ解 放闘 争

ア マツ サヘ 、彼 等自 身 、 ﹁転 向 者 ﹂ ト シテ、 ﹁犬 ﹂ ト シテ烙 印 シ タ

所 ノ者 サ ヘモ、 ﹁ 保 護 観 察 ﹂ シテ サ ヘモア キ足 ラ ズ 、 更 ニ ﹁予 防

撃 ノ ミ デ ハ安 心 ガ出 来 ズ 、 ﹁ 個 人 ﹂ ニ マデ襲 撃 シ ナケ レ バ ナ ラ ズ、

ニ至 ツ テ ヰ ル、 ソ レガ即 チ ﹁保 護 観察 法 ﹂ ナ ル モノ ノ本 質 デ ア ル。

拘 禁 ﹂ シナ ケ レバ ナ ラナ ク ナ ツ テ ヰ ル。茲 ニ如 何 ニ深 刻 ニ労 働 者、

サヘ 、 政 府 ハ繩 ヲ付 ケ テ一刻 ノ油断 モナ ク監 視 セ ザ ル ノ ヤ ムナ キ

然 ル ニ現 下 ノ帝 国 主 義 侵 略 強 盗 戦争 ハ、 中 国 革 命 ヘノ反革 命 的

農 民 ノ憤 激 ガ ソ シテ階 級 意 識 ガ昂 揚 スベ キ基 本 条 件 ガ備 リ、 且 ツ

彼 等 ノ頭 上 ニソ レガ ノ シカ カ リ ツ ツア ルカ ヲ彼 等 自 身告 白 シテ ヰ

暴 圧干 渉 戦 デ ア ルバ カ リデ ナ ク、世 界 帝 国 主 義 ノ断 末 魔 ノ足 掻 ト シテ ノ世 界 再 分割 戦 デ ア ル為 メ ニ、 終 結 スベ キ目 当 モ付 カズ、 且

ア ラ ント 思考 ス ルナ ラ バ、 コレ程馬 鹿 気 タ コト ハ見 付 ケ ル ニ至 難

ソ レ故 ニ、 コノ法 律 ノ設 定 ニヨ ツテ 我 々ヲ威 嚇 シ何 等 カ得 ル所

サ レ テ ヰ ルカ ラダ。 帝 国 主義 者 自 身 、 中 国 侵 略戦 争 開 始 以 来 ノ所

コ十年 、 即 チ満 洲戦 争 開 始 以 来 日 一日 ト血 ノ出 ル事 実 ヲ以 テ暴露

ハ、 コノ事 実 ノ発 展 ガ立 証 シ テ ヰ ル。帝 国 主 義 者 ノ ﹁デ マ﹂ ハ コ

﹁将 来 ﹂ ヲ夢 見 ル コト ヲ説 キ立 テ ラ レテ モ、 何 等 ノ効 ノ ナ イ コト

カ ハ必 然 且 ツ、 不可 避 デ ア ル、如 何 ニ三 味 線 入 リ、 太 鼓 囃 シ デ

デ ア ラウ 、全 ク情 勢 ノ急 迫 ニ狂 人 ト ナ リ ハテ テ ヰ ルノ ダ若 シ サ ウ

謂 ﹁ 統 制 ﹂ ノ大 失 敗 ヲ認 メ テ ヰ ル。

ル コト ヲ見 ル。

デ ナイ ト 云 フナ ラバ 、 即時 コ ンナ馬 鹿 気 タ法律 ヲ撤 廃 ス ルカ少 ク

所 ガ ソノ合 理 化 ノ ﹁ラ ツパ﹂ ガ鳴 リ ツ ツア ル間 ニ、 事 実 ハ 一層 ノ

酷 ニ シテ却 ツ テ無 効 果 的 デ ア ル) ヲ合 理 化 シ ヤウト 焦 慮 シテ ヰ ル。

ソ シテ、 コノ フ ア シ ヨ化 ( 実 ハ猿 マネ的 ニセ物 ソ レ故 ニ一層 残

ト モ、 ソ ノ実 際 運 用 ヲ廃 絶 スベ キ デ ア ル。

ノ奴 隷 化政 策 ノ最 後 ノ保 障 ダ。

第 二、 コノ法 律 ハ労 働者 、 農 民 、 勤 務 者 、兵 士 、 其 他 被 抑 圧 人 民 層

﹁国 家 総 動 員 法 ﹂ 及 ビ之 ニ附 随 シ タ、 所 謂 諸 ﹁統 制 法 ﹂ ハ明 ニ

自 己 破滅 ヘノ 一大 動 力 ノ勃発 ヲ結 果 セ ザ ル ヲ得 ザ ル素 因 ヲ形成 シ

大 失 敗 ヲ宣 告 シ テ ヰ ルデ ハナ イ カ。物 資 ハ益 々窮 乏 化 シ、 人 民 ハ

ツ ツア ルノ ダ。 其 自 業 自 得 ヲ暴 力 ヲ以 テ無 理矢 理圧 殺 シ ヤウ ト ス

労 働 者 、 農 民、 勤 務 者 、 兵 士 、 其他 被 抑 圧 人 民 層 ヲ奴隷 化 シ牛 馬

力 ヲ極 点 迄 拡張 シ、 官 権 ヲア ラ ン限 リ振 リ廻 シテ、 其 ノ利 益 ノ集

ル其 ノ最 後 ノ努 力 コソ コノ法 律 デ ア ル ノダ、 然 シ圧 力 ヲ加 フ レバ

化 スル モ ノデ ア ル コト ハ贅 言 ヲ要 セ ヌ。 然 ル ニ他 方 天皇 専 制 、 其

積 ニ熱 中 シテ ヰ ル。 独 占資 本 家 ハ軍 閥 、 官僚 、 貴 族 、 其 他 走 狗、

ルデ ハナ イ カ。斯 ク テ奴 隷 化 政策 ノ強 行 ハ百 八十 度 ニ転 廻 シ テ、

番 犬、 猟 狗 ニ超 過 利 潤 ノ余滴 ヲ与 ヘツ ツ、超 大 スピ ード ヲ以 テ其

加 ヘル程 、 ソ ノ爆 発力 ノ強 化 スル コト ハ必然 デ ア ツ テ、 カ カ ル狂

裸 ニサ レ、 雨 露 ニ晒 サ レ、 餓 死 ノ 一歩 手 前 ニ押 シ詰 メ ラ レツ ツア

独 占 ヲ拡 大 強 化 シ、莫 大 ノ利 益 ヲ収 得 シ、今 ヤ却 ツ テ、余 リ ニ急

的 行 為 ハ結 局 自 殺 的 ナ モノ ナ ル コト ハ論 証 スル マデ モナ イ。

宮 廷 、 軍 事 、行 政 官 僚 、 大 地 主 ( 貴 族 ) 及 ビ独 占資 本 家 等 ハ其 権

速 ニ厖 大 化 シ タ タ メ ニ身 動 キ モ不 自由 ト ナ ツタバ カ リデ ナク、 其 支 持 物 ヲ急 速 ニ収 奪 シタ為 メ ニ、 足 下 ガ極 度 ニ弱 化 シ、 ヒ ヨ ロツ

ノ事 実 デ ア ル、 進 ム ニ進 マレズ、 退 ク ニ退 カ レズ 、 日 ニ日 ニ弱 体

中 国 侵略 戦争 ノ失 敗 、其 ノ戦 略 的 敗 所 ハ今 ヤ全 ク全 世 界 ノ周知

第 三 、 国際 的 ニ ハ徹 底 的 ニ内 兜 ヲ見 透 サ ル ルデ ア ラウ。

化 シ ツ ツア ル醜 体 ハ正 ニ掩 フベ カ ラザ ル厳然 タ ル事 実 ダ、 更 ニ噴

ク ニ至 ツ タ。斯 ク テ愈 々益 々労 働 者、 農 民等 被 抑 圧 人 民層 ノ奴 隷 化 政 策 ヲ暴 力的 ニ強 行 セ ザ ル ヲ得 ズ、 労 働 者 、 勤務 者 ハ工場 、 職

飯 モノ ハ所 謂 ﹁日満 支ブ ロツ ク経 済 ﹂ ナ ル モノ ガ日 本帝 国 主 義 ノ

ハ、 日 ニ日 ニ近 ヅ キ ツ ツ ア ル対英 米戦 争 ノ脅 威 ニ縮 ミ上 ラザ ル ヲ

土台 ヲ根 コソギ 洗 ヒ去 ツテ シ マウ 一大 動 力 デ ア ル コト ダ。 斯 ク テ

メ ント シ テイ ル、 中 小 商 工業 者 ハ収 奪 サ レ テ、 労 働 者 化 シ、 貧 農 化 シ奴隷 ト ナ ラザ ルヲ得 ナク ナ ツタ。 ソ レ故 ニ猛 然 ト シテ全 人 民

場 ニ縛 リ付 ケ、 農 民 ハ土 地 ニ、 其 指 定 シタ耕 種 ノ耕 作 ニ固 着 セ シ

大 衆 ガ其 暴 圧吸 血 に反 抗 シ、 自 己 解 放 ニ躍 進 セザ ルヲ得 ザ ルベ キ

得 ナイ、 斯 ク テ人 民 大衆 ノ抑 エ難 キ反 戦 気 運 ノ高 揚 ハ帝 国 主 義 者

﹁犯 罪 ﹂ ト 称 ス ル我 々ノ行 為 ノ行 ハレ タ ル当時 ニ於 テ、 コノ 予防

予 防 拘 禁 ニ附 セ ント スル ニ於 テ ヲヤ、 言 語 道 断 ダ。 ソ レ モ抑 モ

ノ刑 期 満 了間 近 ニナ ツ テ カ ラ ﹁不 定 期刑 ﹂ タ ル性 質 ヲ有 ︹ス︺ ル

拘 禁 条 項 ガ存在 シタ リ シト云 フ ナ ラバ 兎 ニ角 、 釈 放 間 近 ニ ナ ツテ

ヲ混 迷 サ セ ツツ ア ル。 ソ レ故 ニ事 実、 対 英米 戦 争 ニ尻 込 ミ シツ ツ

ト ナ ル、 敵 勢 力 ノ超 過 小 評 価 ヲ以 テ、 大衆 ヘノ気 休 メ ヲ敢 テ為 サ

ント ス ル ニ於 テ 正 ニ悪 鬼 モ三 舎 ヲ避 ケ ル仕打 デ ハナイ カ、 社会 的

カ ラ、 我 々 ヲ目標 ト シ テ、 カカ ル残 酷 極 マル新 設 追 加 刑 ヲ執 行 セ

ア ルニ拘 ラズ見 エ透 イ タ大 ボ ラ ノ ﹁軍備 充実 ﹂ 特 ニ敵 ノ嘲 笑 ノ的

ザ ルヲ得 ナ ク ナ ツ タ ノデ ア ルガ ソ レ以 上 ニ其 内 兜 ヲ サ ラケ出 シ、

然 ラバ斯 ル暴虐 ヲ敢 テ シテ、 我 々ノ所 謂 ﹁犯罪 ﹂ ト称 セ ラ レテ

ニ モ、 政 治 的 ニモ法律 ノ基 本 的 精神 ニ モ反 ス ル コト夥 シイ。

自 ラ腰 ノ 抜 ケ タ コト ヲ広 告 シテ ヰ ル ノ ニ外 ナ ラ ヌ、 コノ法律 デ ハ ナ イ カ。 憐 レト 云 フ モ愚 ダ 。 第 四、 労働 者、 農 民、 勤 務 者 、兵 士 、 其 他 被 抑 圧 人民 大 衆 ハ益 々自

如 ク益 々天 皇 、 地 主資 本 家 ノ為 メノ治 安 ヲ紊 乱 スベ キ基 本 条 件 コ

既述ノ

ソ増 大 シツ ツア ルデ ハナ イ カ。 斯 ル犯 罪 防 止 ノ基 本的 条 件 ヲ堅持

否 !!

日本 帝 国 主義 ノ飽 ク コト ヲ知 ラザ ル残 忍 吸 血施 政 ハ今 ヤ人 民 大

ス ル能力 ナ キ者 ガ 何 デ ﹁予防 拘 禁 ﹂ ヲ ナ ス権 利 ヲ有 ス ル者 ダ 少 シ

ヰ ル治安 維 持 法違 反 ガ防 止 セ ラ ル ル ヤ否 ヤ、否 !!

衆 ヲ シテ自 己解 放 ノ為 メ ノ、自 己 ノ掠 奪 セ ラ レ タ ル 一切 ノ財 産 ノ

己解 放 ニ勇 躍 ス ルデ ア ラ ウ。

奪 還 ノ為 メ ノ自 己犠 牲 ニ身 ヲ投 ズ ル以外 ニ道 ナ キ ヲ明 ニシ テ ヰ ル、

ハ自 己 ヲ顧 ミ テ事 ヲ行 フガ ヨイ。

例 ハナ イ。 外 カ ラ カ、 内 カ ラ カ ノ別 ハア ル ニ シテ モ、 今 ヤ日 本 帝

治 的 行 為 ニ対 シテ労 役 ヲ強 制 ス ルト ハ全 クノ不 当 、 不 法 ダ。 而 カ

犯 罪 デ サヘ 政治 犯 ハ禁錮 デ アリ、 労 役 非 課 デ ア ルノ ニ、真 実 ノ政

ス ル点 ニ於 テ ハ到 底 黙 止 シ能 ハザ ル所 ダ 犯罪 ニ モア ラザ ル モノ ニ

拘 禁 中 ノ処遇 ヲ見 ル ニ懲 役的 デ ハナイ カ、 殊 ニソ ノ労役 ヲ強 制

而 シテ、 コノ法 律 ハ 一層 之 ヲ激 成 ス ル ニ充 分 役 立 ツデ ア ラ ウ。 自

国 主義 ハ内 外 カ ラ挾撃 セ ラ ルベ キ莫 大 ノ素 因 ヲ コノ法 律 ニ ヨツ テ

己 ノ支 配 シ テ ヰ ル人 民 ヲ ﹁ナ メ タ﹂支 配 者 ガ打 チ倒 サ レナ カ ツ タ

作 リ出 シテ ヰ ル。 鹿 ヲ追 フ者 ハ山 ヲ見 ズ ダ。

シイ ト云 フベ キ ダ。 労 働 ハ人間 ノ 必要 欠 クベ カ ラザ ル任 務 ダ ト 云

モ ソノ点 ハ法 律 ニナ ク勅 令 ヲ以 テ規 定 スルト ハ恥 ヲ知 ラザ ル モ夥

公判 廷 ニ於 テ明 ニシタ如 ク、 元来 我 々 ハ罪 ガ ナイ所 カ、 反 対 ニ

フナ ラバ 先 頭 ニ現 支 配 階 級 自 体 ガ破 滅 サ ルベ キ ダ何 故 ト云 ツテ現

第 五、 予 防 拘 禁 絶 対 反 対＝ 刑 期 満 了 ト共 ニ無 条 件 釈 放 ヲ要 求 ス。

社 会 ニ有 害 ナ ノ ハ現支 配階 級 ナ ノダ。 今 ヤ天 皇 専 制、 其 諸 官 僚 、

シテ ヰ ルカ ラダ、 カ カ ル者 共 ヲ永久 化 シ安泰 化 ス ル為 メ ニ、 労 働

支 配 階 級 コソ不 労 所 得 ニ座 食 シ遊 堕 シ社 会 ヲ汚 辱 シ、 犯 罪 ヲ誘 発

ト ナ ツ タ人 々 ニ対 シテ、 予 防 拘 禁 ニ於 テ労役 ヲ強 制 ス ルト ハ全 然

者 農 民 ノ為 メノ、 ソ シテ之 ヲ通 ジ テ ノ全 人類 ノ解 放 ノ為 メ ニ犠 牲

大 地 主貴 族 及 ビ 独 占資 本 家 ハソ ノ存在 ヲ否 定 サ レネ バ ナラ ヌ、 必

コノ上 モナ イ罪 ガ存在 ス ルノダ 。 ダ カ ラ既 ニ我 々 ガ犯罪 者 ト シ テ

然 不可 避 ノ最 後 ノ段階 ニ マデ 押 シ詰 メ ラ レテ ヰ ル。 ソノ所 ニ コソ

懲 役 ヲ課 セ ラ レ テ ヰ ル コト、 ソ レ自 体 ガ 不当 デ ア ルノ ダ。 更 ニソ

球

一

遺 憾 前 記 ノ次 第 ニテ最 近 ノ心 境 手記 御 送 付 難 致候 ニ就 テ ハ別 紙成 績

田

表 二葉 ノ ミ御 送 付申 上候 間 可然 御取 計 候 様 致度 及 回答 候

徳

ノ恥 知 ラズ ノ仕 打 ダ、 ソ レダ カ ラ、 大衆 ノ眼 ニ触 レ ル議 会 ニ於 ケ

予防 拘 禁 求意 見 書

ル討 議 ニ附 ス ル コト ヲ憚 リ、 暗 打 的 ニ勅 令 ヲ以 テ合法 化 シ ヤ ウト 云 フ ノダ、 斯 ク ノ如 キ ハ全 ク不 法 、 不当 ダ。 聞 ク所 ニヨ レバ 豊 多 摩 刑務 所 ノ旧 独居 ヲ拘 禁 所 ニ仮 用 ス ルト ノ コトデ ア ルガ、 ソ コ ハ極 メテ旧 式 ノ非 衛 生的 檻 房 デ ア ツテ懲 役 ニ

右 者左 記 ノ理 由 ニ因 リ予 防拘 禁 ニ付 スベ キ モノト思 料 候 ニ付 テ ハ其

シテ モ最 悪 ノ場 所 デ ア ル、然 ル ニ、 コレ ヲ使 用 スルト ハ全 ク言 語 道 断 ダ、 政 府 ノ仕 打 ガ如 何 ニ暴 虐 極 マル モノデ ア ルカ ハ斯 ク テ論

田

一

常

由

検

事 

山

東 京 刑 事 地方 裁 判 所 検事 局

昭和 十 六年 十 一月 二 十 四 日

理

東 京 予防 拘 禁 委 員 会  御 中

繁

ガ夙 ニ共産 主 義 ヲ信 奉 シ大 正 十 一年 七 月 ﹁コミ ン テ ル ン﹂ ノ指 令 ヲ

本 人 ハ大正 九 年 判検 事 登 用 試験 ニ合 格 シ 一時 弁 護 士 ヲ開 業 シタ ル

内

追 テ回 答 ノ節本 書 竝 ニ添附 ノ書 類 及資 料 還 付相 成 度 候

ノ請求 ニ関 シ意 見 ヲ求 メ候也

徳

部

テ活 動 シタ ル為 大 正十 二年 六 月検 挙 セ ラ レ大 正 十 五年 七月 八 日東 京

受 ケ荒 畑 勝 三等 ト相謀 リ テ日 本 共産 党 ヲ組織 シ其 ノ中 央 委 員 ト ナリ

控 訴 院 ニ於 テ治 安 警察 法 違 反 ニ依 リ禁 錮 十 月 ニ処 セ ラ レ其 ノ頃 右 刑

ノ執 行 ヲ終 ヘタ ルガ右 検 挙 後間 モナ ク保 釈 セラ ル ル ヤ更 ニ其 ノ 運動

岡

雄

証 ヲ俟 タ ザ ル所 ダ。

右

小菅 刑 務所 長 

殿

ヲ継 続 シ佐 野 学 等 ト共 ニ大 正十 三年 三 月 右 共産 党 ヲ解 散 シ テ ﹁ビ ユ

球

予 防 拘 禁 絶 対反 対 !! 刑 期満 了 ト共 ニ無 条 件 釈 放 ヲ要 求 ス!!

次

郎

千 九 百 四 十 一年 六月 十 五 日千 葉 刑 務 所 ニ於 テ作成

小刑 発 第 一六 〇 一号 昭和 十 六 年 十 月十 五日

沢

東京 刑 事 地 方 裁判 所 検 事 局 金

客 月 二十 九 日付 日記 思 第 一、 五 四 八 号 ヲ以 テ当所 収 容 者 徳 田 球 一

行 刑 成 績 表及 心 境 手 記 ニ関 スル件

検 事 正 

レ モ曩 ニ網 走 刑務 所 及 千葉 刑務 所 ニ順 次移 送 セ ラ レタ ルモ ノ ナ ル モ

及志 賀 義 雄 両 名 ニ対 シ首 題 ノ件 送 付 方御 照 会 有 之候 処 是 等 ノ者 ハ何

﹁コンミ ユ ニ スト ・グ ループ﹂ ヲ結 成 更 ニ大 正 十 五年 十 二 月之 ヲ 日

ー ロー﹂ ヲ組 織 シ次 デ大 正 十 四年 八月 ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ指 導下 ニ

本 共 産党 ニ改 組 シ爾来 其 ノ中央 委 員 長 其 ノ他 ノ要職 ニ就 キ テ党 ノ枢

右 刑 務 所 ニ収 容中 ニ於 テ心境 ニ関 スル手 記 等 無 之今 回 ノ御 申越 ニ依 リ当 所 ニ於 テ心境 手 記 ニ関 シ種 々慫 慂 シタ ルモ何 レ モ之 ニ応 ぜ ズ乍

九年 七月 九 日東 京 控 訴 院 ニ於 テ治安 維持 法 違 反 ニ依 リ懲役 十 年 ノ判

機ニ 参 与 シ諸 般 ノ活 動 ニ従事 シ タ ル為 昭和 三 年 三月 検 挙 セ ラ レ昭 和

決 ヲ受 ケ同年 十 二月 六 日 上告 棄 却 ニ依 リ該 判 決確 定 シ目下 小 菅 刑 務

ノ ナ ルト コロ現 在 ニ於 テ モ尚 共 産 主義 ヲ正 当 ナリ ト確信 シ毫 モ反省

所 ニ於 テ右 刑 ノ執 行 ヲ受 ケ居 リ本年 十 二月 二 十 日刑 期 満 了 スベ キ モ

田

球

一

ノ色 ナ ク激 烈 ナ ル反 国 家的 感 情 ヲ露 骨 ニ表 明 シ居 リ今後 更 ニ同 種 ノ 罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト 顕著 ナル モノ ナ リ

予防 拘 禁 意 見 通 知書 徳

右 者 ニ対 ス ル予 防拘 禁 ノ請 求 ニ関 シ意 見 ノ求 メ ア リ タ ル ニ因 リ審 議 ノ結 果 別紙 意 見 書 ノ通決 定 候 条此 段 及 通 知候 也

繁

田

球

一

昭 和十 六年十 一月二 十 五 日

予 防拘 禁 請 求 書

昭和 十 六年 十 二 月 四 日

左 記 ノ者 ニ付予 防 拘禁 請 求 候 也

検

東 京 予 防 拘 禁委 員 会

事 

徳

山

田

内

球

繁

一

雄

東 京 刑 事 地方 裁 判所 検 事 局

在  小菅 刑 務所

東 京 刑事 地 方 裁判 所  御 中

請 求 理 由

本 人 ハ大 正 九年 判 検 事 登 用 試験 ニ合格 シ 一時 弁 護士 ヲ開業 シタ ル

機 ニ参 与 シ諸般 ノ活 動 ニ従事 シタ ル為 昭和 三年 三 月検 挙 セ ラ レ昭和

本 共 産 党 ニ改 組 シ爾 来其 ノ中 央 委 員長 其 ノ他 ノ要 職 ニ就 キテ党 ノ枢

﹁コ ンミ ユニ スト ・グ ルー プ﹂ ヲ結 成更 ニ大正 十 五 年 十 二月 之 ヲ日

ー ロー﹂ ヲ組 織 シ次 デ 大 正十 四年 八月 ﹁コミ ンテ ルン﹂ ノ指 導 下 ニ

ヲ継 続 シ佐 野学 等 ト共 ニ大 正十 三 年 三月 右 共産 党 ヲ解 散 シテ ﹁ビ ユ

ノ執 行 ヲ終 ヘタ ルガ右 検 挙後 間 モナ ク保 釈 セ ラ ル ルヤ更 ニ其 ノ運 動

控 訴 院 ニ於 テ治安 警 察 法 違 反 ニ依 リ禁 錮 十 月 ニ処 セラ レ其 ノ頃 右 刑

テ活動 シタ ル為 大 正 十 二年 六月 検 挙 セ ラ レ大 正 十 五年 七 月 八 日東 京

ガ夙 ニ共産 主義 ヲ信 奉 シ大 正十 一年 七 月 ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ指 令 ヲ

追 テ本 通 知 書 ニ添ヘ 予 防 拘禁 求 意 見書 竝 ニ添 附書 類及 資 料 及還 付

内

徳

東 京 予防 拘 禁委 員 会

昭和 十 六 年 十 一月 二十 五 日

山

殿

候

事 

雄

受 ケ荒畑 勝 三等 ト相 謀 リ テ日本 共 産 党 ヲ組 織 シ其 ノ中 央 委員 ト ナ リ

検

東 京 刑 事 地 方裁 判 所 検事 局

予防 拘 禁 意 見 書

右 者 ニ対 ス ル予 防拘 禁 ノ請 求 ハ之 ヲ為 スベ キ モノト認 ム

ニ依 リ懲役 十 年 ノ判 決 ヲ受 ケ同年 十 二 月 六 日上告 棄 却 ニ依

二、 問  徳 田 ハ昭和 九 年 七 月 九 日東 京 控訴 院 ニ於 テ治 安 維持 法 違 反

出 生 地 ハ右 同 所

決 ヲ受 ケ同 年十 二月 六 日 上告 棄 却 ニ依 リ該 判 決確 定 シ目 下 小菅 刑 務

リ該 判 決確 定 シ目下 小菅 刑 務所 ニ於 テ服 役 中 カ

九 年 七月 九 日東 京 控 訴院 ニ於 テ治 安維 持 法 違 反 ニ依 リ懲 役 十年 ノ判

所 ニ於 テ右 刑 ノ執 行 ヲ受 ケ居 リ本 年十 二月 二 十 日刑 期 満 了 スベ キ モ

球

一

当 ナリ ト確 信 シ毫 モ反 省 ノ色 ナ ク激 烈 ナ ル反国 家 的 感情 ヲ

四、 問  処 ガ本 月 四日 検事 カ ラ徳 田 ハ現 在 ニ於 テ モ尚 共産 主 義 ヲ正

答  然 ウデ ス

十 日 ガ満 期 カ

三 、 問  昨 年 恩赦 デ懲 役 八年 一月 十 九 日 ニ減 刑 セ ラ レ本年 十 二月 二

答  然 ウデ ス

ノ ナ ルト コロ現 在 ニ於 テ モ尚 共 産 主義 ヲ正当 ナ リト確 信 シ毫 モ反 省

田

ノ色 ナ ク激 烈 ナ ル反 国 家的 感 情 ヲ露骨 ニ表 明 シ居 リ今 後 更 ニ同 種 ノ 罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト顕 著 ナ ル モノ ナリ

徳

フ理由 デ予防 拘 禁 ノ請 求 ガ ア ツ タガ夫 レ ニ付 テ何 カ陳述 ス

露 骨 ニ表 明 シ居 リ今 後 更 ニ同 種 ノ罪 ヲ犯 スノ虞 ガ ア ルト イ

本 人 取調 書

右 者 ニ対 ス ル予 防 拘 禁請 求 事 件 ニ付 昭和 十 六年 十 二月 十九 日東 京 刑

判

事 

事 

裁 判 長 判 事 

塚

大

飯

田

本

沢

塚

耕

重

竜

敏

作

頼

夫

夫

安 維 持 法 改 正 ノ理 由 ハ今 ノ政 府 ガ  天 皇制 ヲ世 界 無 比 ナ リ

答  第一ニ 此 ノ治 安 維持 法 ノ改 正 ハ非 常 ニ反 対 デ ス抑 々此 ノ治

ル コト ガア ルカ

事 地方 裁判 所 第 三 部 ニ於 テ

判

金

デ之 ニ対 ス ル反 対 ヲ究 滅 シ ヨウト スルノ デ ア ルガ甚 ダ シイ

ト シ如 何 ナ ル コト ガ ア ツ テ モ夫 レガ崩 レナ イ ト シテ飽 ク マ

裁 判 所 書 記 

矛 盾 ナ リト思 フ、即 チ 天 皇 制 ガ本 当 ニ正 シイ モノ ナラバ

列 席 ノ上裁 判 長 ハ右 者 ヲ シ テ陳 述 ヲ為 サ シム ル コト左 ノ如 シ 右 取 調 ニ ハ検 事 上 田次 郎 立 会 ヒタ リ

一方 之 ニ反 対 スル モノ ヲ究 滅 シナ ク テ モ崩 壊 スル コト ハナ イ ダ ラウ

ノ ハ小 サ イ コト デ モ ビ ク 〓

然 ル ニ 天 皇 制 ヲ至 上 ナ リト シテ 一方 ニ夫 レ ニ反 対 スル モ

答  氏 名 ハ徳 田球 一

一、問  氏 名 、年 齢 、 職業 、住 居 、 本籍 及出 生 地 ハ如 何

年 齢 ハ四十 八年

住 居 ハ小菅 刑務 所 在 所

民 、全 大 衆 、 全 人類 ノ幸福 ヲ阻 害 スル モノデ ア ル、 治 安 維

ハ甚 ダ シク矛 盾 ス ル モノデ 治安 維 持法 夫 レ自 身労 働 者 、 農

シテ之 ヲ究滅 シ ヨウ ト スルノ

職 業 ハ無 シ

本 籍 ハ沖繩 県 国頭 郡 名 護 町 字名 護 七 百 四十 五 番 地

持 法 ヲ出 スコト夫 レ自体 ガ反 社 会 的デ ア ル然 カ モ吾 々ガ判

ラ吾 々 ニ対 シテ何 ダ ノ カ ンダ ノト云 フ ノ ハ恥 知 ラズ デ ア ル、

臣 ノ命 令 デ遣 ル者 ガ ア ルカ、然 ウ イ フ無法 ナ コト ヲ シナガ

デ ナ ケ レバ保 安 処 分 ニ付 ス ル必 要 ハナ イ、 保安 処 分 云 々ノ

ニ名 誉 ヲ重 ンズ ルナ ラ斯 ノ如 キ嘘 ハ行 ハレ ナイ筈 デ ア ル、

カ、 是 レ ハ司 法 省 当 局 ガ発 表 セズ シテ誰 ガ公表 スル カ、 真

ノ名 誉 ヲ毀 損 ス ル記 事 ガ新 聞 ニ出 テ居 ル ノ ハ怎ウ シ タ コト

本 人 ノ名誉 ヲ保 存 ス ル為 メ秘 密 ニ シ ロナド ト手 続法 ナド ニ

決 ヲ受 ケ ルト キ十 年 以 上 ハ監 獄 ニ置カ ナ イト声 明 シ ナ ガ ラ

故 ヲ 以 テ吾 々 ヲ拘 禁 ス ルト イ フ ノ ハ抑 々ノ間違 ヒデ ア ル、

吾 々 ハ監 獄 ニ入 ツ テ居 テ モ何 ダ ツテ知 ツ テ居 ルノダ 、監 獄

今 マサ ニ出 ヨウト ス ルト キ斯 ウ イ フ法 律 ヲ出 シテ更 ニ拘 禁

訓練 ヲ ス ルト カ

ニ名 誉 ヲ保 持 ス ルト イ フノ ナ ラ吾 々ガ収 容 サ レ テ カ ラ吾 々

吾 々ヲ改 善 サ セ ル為 メ ニ拘 禁 所 デ イ ロ〓

ニ居 ル間 ハミ ナ吾 々ヲ支持 シ同情 シテ居 ル、 大 衆 ハミ ナ吾

ア ルガ吾 々 ハ秘 密 ニサ レ ル コト ハ断 ジ テ承 服 出来 ナ イ、 真

何 ト カ云 フガ夫 レ ハ懲役 ト同 ジデ 然 カ モ二年 々 々デ更 新 シ

々ヲ支 持 シ テ居 ルノダ 、名 誉 ヲ保存 ス ルナド ト云 ツ テ吾 々

ス ルト ハ何事 デ ア ルカ抑 々之 レ ハ保安 処 分 デ ハナイ、 反 社

テ行 クト ハ夫 レ ハ無 期懲 役 ト同 ジ コト ニナ ル

ノ正 シイ コト ヲ隠 蔽 シ ヨウ ト スル ノダ、 予 防拘 禁 処 遇令 モ

会 性 デ ナイ者 ヲ拘 禁 ス ルノ デ ア ル、反 社 会 的、 罪 悪 的 ナ者

リ裁 判 ヲ受 ケ ル権 利 ヲ有 シテ居 ル、然 ル ニ此 ノ予防 拘 禁 決

ラ セラ レル様 ナ コト ハシテ居 ナイ 懲 罰デ モ重 屏禁 ハ監 獄法

監獄 法 ニ比 シ テ著 シク酷烈 ニシ テ ア ル吾 々 ハ強 制 労 働 ヲ遣

裁 判 ナ ラ憲 法 デ保 障 シ テ居 ル、 吾 々 ハ憲 法 ニ依 リ法 律 ニ依

定 ハ正式 ノ裁判 デ ナイ単 ナ ル手 続 デ ア ル、 夫 レ ニ依 ツテ無

デ ハ七 日以 内 ニナ ツテ居 ルガ予 防 拘 禁 デ ハ二 十 日 ニナ ツ テ

リ方 ハ死 頸 ヲ絞 メ ルノト 同 ジ コト ヲ遣 ツテ居 ル、 夫 レ以 上

デ 行 ケ ル決 定 ニ対 シテ ハ単 ニ即 時 抗告 ヲ許 スノ ミデ ア ル、

期 懲 役 ト同 ジ拘 禁 ヲ ス ルト ハ何 事 カ正式 ノ裁 判 ナ ラ上告 マ

ノ コト ヲ予 防 拘禁 デ遣 ラウ ト スル、 然 カ モ夫 レガ司 法 大 臣

ルガ夫 レ ハ事 実 上死 刑 ニス ルト同 ジ コト ダ、 実際 監 獄 ノ遣

モナ イ、 憲法 ニ ハ裁 判 ハ大 衆 ノ前 デ 遣 ル コト ヲ要 求 シテ居

ノ勝 手 ニ出来 ル省 令 デ決 メ ルト イ フ ノダ、 私 ハ予 防 拘 禁 ニ

居 ル、 夫 レモ其 後 更 ニ五 日毎 ニ其 期間 ヲ更 新 ガ出 来 ルト ア

ル、 裁 判 所構 成 法 ノ第 百 五条 ハ明 カ ニ公 開 ヲ規 定 シテ居 ル、

円 二 円 ノ科料 サヘ 裁 判 デ遣 ツテ居 ル、然 カ モ是 レ ハ公 開 デ

公 開 ヲ停 ム ル ニ ハ法 律 上 ノ 理由 ガ無 ケ レバ ナ ラ ナイ、 何 処

ル、 一切 ノ力 ヲ用 ヒ 一切 ノ智 慧 ヲ動 員 シテ之 ニ反 抗 ス ル

対 シア ナ タ方 ノ遣 ル コト ニ対 シ絶 対 反対 デ何 処迄 モ反 抗 ス

斯 ル コト ハ世界 何 処 ノ国 ニ行 ツ テ モア ル モノデ ハナイ、 一

ノ世 界 ニ法治 国 ダ ト カ憲 法 ガ施 カ レテ居 ルト カ云 ヒナ ガ ラ

五、 問  徳 田 ハ現 在 ニ於 テ モ共 産 主義 ヲ信 ジ其 意 味 デ 共産 主 義 者 カ

私 ノ云 フ コト ハ是 丈 ケデ ア ル

カ カ ル惨酷 ナ横 暴 極 マル コト ヲ スル国 ガ ア ル カ、吾 々 ハ断 ジ テ之 ニ屈服 スル コト ハ出 来 ナ イ 然 カ モ監 獄 ニ入 レ ルト等 シイ コト ヲ法 律 デ ナ ︹ク︺ シテ大

答  当 リ前 デ ス 六、 問  従 ツ テ労 働 者 農 民 一般 勤 労 大衆 ノ解 放 ヲ主 張 スルノ カ 答  当 リ前 ノ コトダ 七、 問  其 解 放 ニ ハ日本共 産 党 ノ指 導 ニ依 ル外 ハナ イト 云 フノ カ 答  然 ウダ、 外 ニ ハ有 リ得 ナ イ 八、 問  其 日本 共 産 党 ニ依 ル勤 労 大 衆 ノ解 放 運動 ハ矢 張 リ ﹁コミ ン テ ル ン﹂ ノ指 導 ニ依 ル ノ カ 答  夫 レ ハ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ支 部 ダ カ ラ当 リ 前 ダ、 ﹁コ ミ ン テ ル ン﹂ ヲ離 レテ私 達 ハナイ 九、 問  其 処 デ ﹁コミ ンテ ルン﹂ ト 日本 共 産 党 ノ関 係 デ ア ルガ是 レ ハオ互 同 情 ヲ持 チ最 大 ノ好 意 ヲ モツテ援 助 シ合 フト イ フノ デ ハナイ、 日本共 産 党 ハ ﹁コミ ン テ ル ン﹂ ノ日本 支 部 ト シ テ組 織的 ノ連 絡 ヲ持 チ ﹁コミ ンテ ルン﹂ ノ指 令 ハ日本 共産 党 ハ無条 件 デ 従 ハネ バ ナ ラ ヌノ カ 答  夫 レ ハ当 リ前 ダ、 何 処 ノ共産 党 ダ ツテ 総 ユ ル 共 産 党 員 ハ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ構 成 分 子夫 レ自 体 デ ア ル 一〇 、 問  従 ツテ 日本 ノ プ ロレ タ リア解 放 運 動 ノ原 則 モ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ決 定 ニ基 キ其 指 令 ニ従 ツ テ遣 ルノ カ 答  然 ウデ ス 一 一、 問  而 シテ 日本 ノ勤 労 大 衆 ノ解放 ヲ ス ル為 メ ニ ハ徳 田 ハ 君

天 皇 制 ヲ打 倒 シ ナイ限 リ勤労 大 衆 ノ解 放 ガ出来 ナ

主 制 ノ打 倒 ハ絶 対 必要 デ ア ルト思 フノ カ 答  君 主 制

イ コト ハ無 論 デ ア ル 一二、 問  本件 ノ参 考資料 ノ中 ニ徳 田 ノ民 族論 ト イ フノ ガ アリ 夫 レ

ニ自分 ハ琉 球出 身 デ ア ルガ琉 球 民族 モ独 立 シ ナケ レバ ナ ラ

ナイ夫 レ ニ ハ日 本帝 国 ヨリ分 離 ス ル ニ至 ル迄 ノ独 立 運 動 ガ

必 要 デ ア ルト 思 ツテ居 ルト イ フ様 ナ コトガ書 イ テ ア ルガ如 何

ハ話 シテ呉 レト 云 ツテ熊 谷検 事 ガ書 イ タ モノ デ其 文 書 ニ自

答  夫 レ ハ自 分 ハ書 ケト云 ハレタ ガ書 カナ イト 云 ツタ ラ夫 レデ

分 ハ責 任 ハ持 タ ナイ、 然 シ琉 球 民族 ガ独 立 シ ナケ レバ ナ ラ

ナイ ト イ フノ ハ無 論 ダ 、帝 国 ヲ木端 微 塵 ニ引 倒 スノデ ア ル、

夫 レ ハ労 働 者 農 民 ノ精 神 デ ア ル、帝 国 ヲ打 倒 スレバ 琉 球 ノ

自 治制 ガ恐 ラ ク出 来 ルト思 フ

ヌト イ フ ノダ ラウガ夫 レ ニハ流 血革 命 ヲ必要 ト スルノ カ

一三、 問  労 働 者 農 民 ノ解 放 ノ為 メ ニ ハ就中 資 本 家 ヲ倒 サネバ ナラ

モ流 血 ヲ必要 ト シナイ、 最 近 デ ハイ ロ〓

出 版 、集 会 、 結

答  然 ウ ダ、 尤 モ治 安 維持 法 ヲ撤 廃 シテ ア ナタ方 ガ退 ク ナ ラ何

社等 ニ総 ユ ル弾 圧 ヲ加 ヘテ居 ルガ夫 レ ヲ顛 覆 シ ナイ限 リ怎

ウ シテ流 血 ナ シ ニ革命 ガ出 来 ヨウ カ

一四、問  徳 田 ハ若 シ今 月 二十 日 ニ釈 放 サ レ テ世 ノ中 ニ出 レバ先 ヅ

矢張 共 産 主義 運 動 ニ従事 スル積 リ カ

食 フ コト ヲ考 ヘナク テ ハナ ラ ヌトイ フガ生 活 ガ落 著 イ タ ラ

答  夫 レ ハ出 テミ ナ ケ レバ分 ラ ナイ、 十 四年 モ監 獄 ニブ チ込 マ

レヒド イ 目 ニ遭 ツテ手 ナド モ コ ンナ ニ ナツ テ居 ル、 今 ハ怎

ウ シ テ世 ノ中 ニ出 テ飯 ヲ食 ハウ カト思 ツテ居 ルノダ 、 其 先

ハ出 テミ ナ ケ レバ 分 ラ ナ イ、 物 事 ハ希 望 丈 ケ デ出 来 ル モノ

デ ハナイ客 観 的 状勢 ト主 観的 状 勢 ノ結 合 デ出 来 ルノダ

一五 、 問  処 デ 共産 主 義 者 ハ自 分 ノ抱 ク理論 ト実際 ト ノ弁 証法 的 ナ 統 一ト イ フ コト ヲ シキ リ ニ云 フガ自 分 ノ思 想 ガ共産 主 義 デ ア リ、 ﹁マルク ス﹂ ﹁レー ニン﹂ ノ革 命 思想 ヲ抱 ケ バ夫 レヲ 実 践 スルノ ハ義 務 ダ ト イ フ ノ カ 答  其 通 リデ ア ル 一六 、 問  然 シ徳 田 ト シ テ ハ実 践 ハ出 テミ ナ ケ レバ分 ラ ヌト イ フノ カ

ガ 夫 レヲ納 得 シ ナイ ノ カ

マスカ

答  一体裁 判 ノ手続 ヲ大 臣 ガ 勝手 ニ定 メ テ夫 レデ公 正 ダ ト云 ヘ

二〇 、 問  徳 田 ハ本 年 六月 十 五 日附 デ 予防 拘 禁 反 対意 見 書 、十 月 十

七 日附 デ所 感 ヲ書 イ テ出 シテ居 ルネ

後 ノ ハ教 誨 師 ガ書 イ テ呉 レト イ フ カ ラ書 イ タ モノデ ス

モ詳 シ ク書 イ テ ア リ マ ス

答  前 ノ ハ私 ガ自 発 的 ニ書 イ タ モノデ 夫 レ ニ ハ今 日述 ベ ル ヨリ

検事 ハ

ハ 天 皇 制 ノ打 倒 ヲ叫 ンデ居 ルガ斯 ウ イ フ徳 田 ヲ社 会 ニ出 シ テ ハ

徳 田 ハ今 日 ニ至 ル迄 共 産 主義 ヲ堅 持 シプ ロレタ リ ア解放 ノ為 メ ニ

フ コト サ ヘ出 来 ナイ カ モ知 レナイ

答  然 ウダ 、吾 々ノ周 囲 ニ ハ弾 圧 ノ組織 ガ出来 テ居 ル、 飯 ヲ食

一七 、 問  憲 法 法律 等 ハブ ルジ ヨア ノ作 ツタ モノデ無 産 者 解 放 ニ努

絶 対反 対 デ ア ル、 少 ク モ人間 ラ シイ感 情 ガ ア ル ナラバ 徳 田 ハ十 四

徳田ハ

拘 禁 ニ付 スベ キ モノ 卜思 料 ス ル旨 意 見 ヲ開 陳 シ タリ

治 安維 持 法 第 一章 ノ罪 ヲ犯 スノ虞 ア ル コト極 メテ顕 著 ナリ、 予 防

力 ス ル徳 田 ナ リ共 産 主義 者 ニ卜 ツテ ハ意味 ナイト イ フノ カ 答  夫 レ ハ弾 圧 ノ道 具 ニ過 ギ ナ イ 云 フガ法

年 モブ チ込 マ レテ居 タ ノ ダ カ ラ此 ノ際出 シテ ミ ヨウ ト イ フノ ガ本

律 ダ ラ ウガ勅 令 ダ ラウ ガ省 令 ダ ラウ ガ然 ウイ フ細 カイ コト

一八 、 問  夫 レナ ラバ省 令 ダ ト カ公 開 シ ナイ ト カイ ロ〓

ハ徳 田等 カ ラ云 ヘバ総 テ弾 圧 ノ手 段 デ彼 是 レ云 フ コト ハア

金

田

耕

作

当 ダ ラウ、 改 悛 ノ訓練 ノ ト云 フガ実 際 ニ於 テ ハ監獄 ニブ チ込 マレ

ル マイ

タ者 ハ累 犯 ニ累 犯 ヲ重 ネ テ居 ルデ ハナ イカ

答  夫 レダ カ ラア ナ タ方 ハ詐 欺 師 ダ トイ フノデ ア ル、 ア ナ タ方

ト述ベ タ リ

約束 シ テ居 ル、 夫 レ ハ吾 々人

ハ憲 法 卜 カ法律 等 デ イ ロ〓

裁 判 所書 記 

東 京 刑事 地方 裁判 所 第 三 部

昭和 十 六年 十 二月 十 九 日

本 人 ノ陳 述 ヲ聴 ク コト ヲ終 ル旨 ヲ告 ゲ タ リ

判事 ハ

民 ノ権 利 デ ア ル、 然 ウ イ フ妥 協 ノ下 ニ此 ノ支 配政 治 ガ成 立 シテ居 ル、其 最 大 限 度 ノ保 障 ヲ吾 々 ハ要 求 シテ居 ル、 ア ナ タ方 ハ吾 々 ニ人 民 ノ権 利 ヲ認 メ約 束 シテ居 ル以 上夫 レヲ履 行 ス ル義 務 ガ ア ル

議会 デ協 賛 シ細 カ イ コト ハ命 令 デ定 メ ル コト ニナ ツテ居 ル

一九 、 問  然 ウ ナ ルト 予防 拘 禁 手続 令 ニシ テ モ治安 維 持法 ノ改 正 ヲ

本 現

定

裁 判 長 判事 

飯

塚

敏

夫

沖 繩 県国 頭 郡 名護 町 字 名護 七百 四 十 五番 地

一

四十 八 歳

球

籍 

決

田

東 京 予防 拘 禁 所在 所 徳

在  職 

ル ヽヤ当 時 偶 々第 一次 日本 共 産党 事 件 ニ因 リ受 刑 中 ナ リ シ本 人亦 其

ノ中 央委 員 ニ挙 ゲ ラ レ昭 和 二年 一月出 獄 以来 右 党 最高 幹 部 ノ 一人 ト

シ テ終始 其 ノ中枢 ニ在 リ或 ハ渡 辺政 之 輔、 福 本 和 夫等 ト共 ニ党 ヲ代

ノ対 立 抗争 ニ対 ス ル其 ノ批 判 ヲ仰 ギ或 ハ革 命 運 動 犠 牲者 救援 会 (モ

表 シ テ露 都 ノ コミ ンテ ル ン ニ使 シ以 テ共 産 主義 陣 営 内 ニ於 ケ ル意 見

シタ ル為 昭和 三年 三 月再ビ 検 挙 セ ラレ昭 和九 年 七 月 九 日東 京控 訴 院

ツプ ル) ヲ組 織 シテ之 ヲ主 宰 シ其 ノ他 諸般 ノ共 産 主義 的 活 動 ヲ遂 行

ニ於 テ治安 維 持 法違 反 ノ罪 ニ因 リ懲 役 十 年 ( 未 決 勾留 日数 四 百 日通

算 ) ノ刑 ニ処 セ ラ レ (同 年 十 二 月 六 日上告 棄 却 ニ依 リ確 定 )昨 昭和

無

十 五年 勅令 第 四十 五 号 ヲ以 テ其 ノ刑 ヲ懲 役 八年 一月十 九 日 ニ減 刑 セ

検 事 ニ対 ス ル本 人 ノ陳 述 (第 一五 丁 以下 ) 竝 ニ当 裁 判所 ニ対 ス ル其

シテ更 ニ本 件 記 録 殊 ニ本 人 ノ手 記 二篇 (第 二 丁以 下 及第 七 丁 以下 )

ヲ レタ ル結 果 本 年 十 二月 二十 日右 刑 ノ執 行 ヲ終 了 シタ ル コト 明白 ニ

右 者 ニ対 シ検事 ヨリ予 防拘 禁 ノ請求 ア リ タ ル ヲ以 テ当 裁判 所 ハ検事

文

上 田次 郎 関 与 本 人 ノ陳 述 ヲ聴 キ決 定 ス ル コト 左 ノ如 シ 主 徳 田 球 一ヲ予 防拘 禁 ニ付 ス 由

ク而 カ モ本 人 ハ現 在 猶 ホ克 ク無 産 階級 ノ解 放 ヲ実 現 シ得 ベ キ モノ ハ

ノ陳 述 ニ拠 レバ 本 人 ノ共 産 主 義 信 奉 ノ念 ハ受 刑 以 来毫 モ渝 ル コト ナ

理

本 件 記 録 竝 ニ志 賀義 雄 ニ対 ス ル予防 拘禁 請 求 事 件 ノ参 考 資料 第 一号

統 治 ノ現 体 制 ヲ覆 滅 スル コト而 シ テ之 ガ為 ニ ハ暴 力 乃至 流 血 革命 ヲ

ヨリ当 然 ナリ ト シ更 ニ我 ガ国 ニ於 ケ ル無 産 階級 解 放 ノ為 ニ ハ 天 皇

コミ ンテ ル ン乃至 日本共 産 党 以 外 ニ存 在 セズ而 シ テ後者 ハ其 ノ組 織

ノ 二 (志 賀義 雄 、徳 田球 一外 二 名 ニ対 ス ル治 安 維持 法 違 反被 告 事 件

佐野 学 等 ト結 ンデ大 正十 三 年 三 月 ビ ユー ロー ヲ組織 シ次 デ 翌 十 四年

以 テ其 ノ所 謂 支配 階 級 ノ抵 抗 ヲ撃 摧 ス ル コト亦 必要 已 ム ヲ得 ズ ト為

ノ第 二審 公判 記 録 ) ニ徴 スレバ本 人 徳 田球 一ハ夙 ニ共 産 主義 ヲ信 奉

八 月 コミ ンテ ル ンノ指 導下 ニ コンミ ユー ニ スト・ グ ループ ヲ結 成 シ

シ居 ル コト竝 ニ以上 ノ如 ク ニ シテ無 産階 級 ヲ解 放 スル ハ共 産 主 義者

コミ ンテ ル ンノ指 揮命 令 ニ服 従 シ テ其 ノ所 謂闘 争 ヲ遂行 スベ キ ハ固

自 ラ コミ ンテ ル ンノ諸 会合 ニ参 列 シテ 日本 ニ於 ケ ル政 治、 経 済、 無

最 高 ノ義 務 ナ ル ヲ以 テ之 ヲ抛棄 スルガ如 キ ハ論 外 ニシ テ唯 此 ノ義務

上前 者 ノ 一構 成 分 子 ニ外 ナ ラザ ル ヲ以 テ日本 共 産 党 ガ絶 対 無 条件 ニ

産 階級 運動 等 ノ情 勢 ヲ報告 ス ルト 共 ニ其 ノ指 令 ヲ授 ケ ラ レテ帰朝 シ

ヲ如 何 ナ ル程 度 ニ果 シ得 ベ キ カ ハ主 ト シテ出獄 後 ノ心身 ノ状 況 竝 ニ

シ大 正 十 一年 七月 荒 畑 勝三 等 ト 謀 リ テ第 一次 日本 共 産党 ヲ組 織 シ其

市 川 正 一等 ト協 リ テ党 ノ再 建 ヲ策 シ仍 テ大 正十 五 年 十 二月 四 日佐野

ノ中 央 委 員 ニ列 シ タ ルカ翌 十 二 年六 月 検挙 ニ遭 ヒ テ共 ノ潰 滅 ス ルヤ

文 夫 、福 本 和 夫 、渡 辺 政 之輔 等 ニ依 リ第 二 次 日本 共 産 党 ノ結 成 セ ラ

客 観 的 諸事 情 ニ依 存 スル所 ナ ル ヲ以 テ今 日 ヨリ予 メ之 ヲ憶 測 セ ント

見 書

徳 田 球 一 右者 ニ対 スル予防拘禁請求事件 ニ付当裁判所 ノ為 シタ ル予防拘禁 ニ

意

境 ノ下 ニ在 ル本人 ヲ今直 ニ釈 放 セ ンカ再 ビ共 産 主義 運動 ニ身 ヲ投 ジ

付 スル旨 ノ決定 ニ対 シ本 人 ヨリ即時抗告 ノ申立 アリタ ルモ該抗告 ハ

ス ル ハ無 意 義 ナリ 卜思 惟 シ居 ル コト極 メ テ明確 ナ リ従 テ此 ノ如 キ 心

重 ネ テ治 安 維 持法 第 一章 所 定 ノ罪 ヲ犯 スニ至 ルノ虞 顕 著 ナ ル コト固

其 ノ理由 ナキモノト思料 ス 昭和十七年 一月九日

ヨリ論 勿 キ ヲ以 テ即 チ当 裁 判 所 ハ治 安 維持 法 附 則第 四項 同 法 第 三十

昭和 十 六年 十 二月 二十 七 日

事  横

事  島

川 敏

方 武

雄

夫

敏 夫 判

塚

夫

判

裁判所判事  飯

東京刑事 地方裁判所第三部

夫

東 京刑 事 地 方 裁 判所 第 三部

頼

敏

重

竜

飯 沢

裁 判 所判 事 

本

一

昭和十七年 一月十二日

田 耕

ノ決定 ニ対 シ即時抗告申立候条意見書相添書類及送付候也

裁判所書 記  金

東京刑事 地方裁判所第三部 東京控訴院 御中

東京予防拘禁所在所

作

右者予防拘禁請求事件 ニ付当裁判所ノ為 シタ ル予防拘禁 ニ付 スル旨

一

大

田

秀

田 球

塚

徳

松 健

抗告申立人  徳

事 

付 書

事 

送

判

儀

判

塚

九条 第 一項 第 四十 四条 ノ規 定 ニ循 ヒ決 定 ス ル コト主 文 ノ如 ク爾 リ

即時 抗 告 申立 書 私

昭和 十 六 年十 二月 二十 七日 東 京刑 事 地 方裁 判 所 第 三部 ニ於 テ予防 拘

小

球

禁 ニ付 スル旨 ノ決 定 ノ言 渡 ヲ受 ケ タ ル処該 決 定 ハ全 部 不 服 ニ付即 時 抗 告 及 申 立候 也 昭 和 十 六年 十 二月 二十 九 日 右 右 本 人 ノ拇 印 ナ ル コト ヲ証 ス教導 

東 京 控 訴 院 御中 即時抗告趣意書

強化 シツツアル

存 在 スル コト ニア ルカ ラダ 、故 ニ事 態 ハ 一面 ニ於 テ暴 風 雨 的 ニ拡 大

体 ノ 重 ミ ニ堪 エザ ラ ント ス ル貪 婪 極 リ ナキ資 本 ノ集 中 ト累 積 ト ノ為

一

右 者 ニ対 シ昭 和 十 六年 十 二年 二 十 七 日東 京 刑 事 地 方 裁 判所 第 三部 ニ

メ ニ ス ル自 己粉 飾 ノ欺 瞞 卜 シ テ ノ述 上 ノ 公言 ト他 面 労 働者 、 農 民 、

球

於 テ ナ シ タ ル予防 拘 禁 ニ付 ス ル旨 ノ決 定 ニ対 スル即 時 抗告 ノ趣 意 ハ

田

左 ノ如 シ。

悪 スベ キ戦 争 狂 、 侵略 狂 即 チ帝 国 主 義 ノ白 昼 夢遊 病 者 ノ反動 的 、 反

勤 務 者、 兵 士 其 他 被抑 圧 人民 層 ノ搾 取 吸 血 ヲ敢 行 シツ ツ ア ル最 モ憎

徳

第 一点、 本 決 定 ノ要 旨 ハ ﹁本 人 ヲ今 直 ニ釈 放 セ ンカ再 ビ共 産 主義 運

天 皇 、 其 官 僚 、 貴 族、 独 占 資 本 家 ノ権力 ト ソ レ自

動 ニ身 ヲ投 ジ重 ネ テ治 安 維 持 法 第一 章 所 定 ノ罪 ヲ犯 ス ニ至 ルノ虞 顕

フ マデ モ ナイ。

カ カ ル治 安 維 持 法 ヲ根 拠 ト ス ル本 決 定 ノ到 底 支持 スベ カ ラザ ル ハ言

第 三 点、 予防 拘 禁 ノ根 本 趣 旨 ハ保安 処 分 ト云 フ点 ニア ル。 然 ラバ其

社 会 的狂 乱 行 為 ト シテ ノ治 安 維 持 法 ガ存 在 ス ル コト ニア ル ノダ。

理 ノ顕 現 タ ル国 体 ﹂ ニ依拠 ス ル モノデ ア ツテ、 ﹁ 世界 無 比、絶 対 不

著 ナ ル コト ﹂ ト云 フ ニア ル。

壊 ﹂ ノ存 在 タ ルノ ミ ナ ラズ ﹁八紘 一宇 ﹂ 世 界 支 配 ヘノ途 上 ニ文 字 通

モノデ ナ クテ ハナ ラ ヌ。 然 ル ニ治 安 維 持 法 ノ対 象 ト シテ ヰ ル共産 主

ノ対 象 ガ 本質 的 ニ反 社 会 的 デ ア リ、 基 本 的 ニ社 会適 応 性 ノ欠 如 セ ル

然 ル ニ日本 帝 国 主 義 政府 ハ口 ヲ開 ケバ 現 政府 ハ ﹁無 上絶 対 普 遍的 真

リ ﹁挙 国 一体 ﹂ ト ナ ツ テ邁 進 シ ツ ツア リ ト公 言 シ テ ヰ ル。

義 者 ハ其 進 歩的 デ ア リ、 社 会適 応性 ノ最 モ旺 盛 デ ア ルガ故 ニ コソ自

然 ラバ 一共 産主 義 者 ノ存 在 ガ 本 決定 ノ予 想 シ テ ヰ ル前 記 ノ事 態 ヲ発 顕 セシ ム ル コト ハ全 然 不 可能 ニ帰 ス ルデ ハナ イ カ。 ニモ拘 ラズ 前 記

ラ ント スル モノ デ ア ル コト ハ公 知 ノ事 実 デ ア ル。 而 シテ現 日本 政府

コソ正 ニ反 動的 存 在 デ ア リ、 社 会 進 歩 ヲ阻 害 スル毒 素 的存 在 デ ア ル

ラ率 先 シ テ凡 ユ ル非 運 ト 困窮 ト ヲ モノ ト モ セズ 敢 闘 シテ尚 ホ足 ラザ

コト ハ治 安 維持 法 自 体 ガ 又之 ヲ緊 急 措 ク能 ハザ ラ シメ タ侵 略 的 強 盗

ノ如 キ決 定 ヲ以 テ敢 テ本 人 ヲ予 防 拘禁 ニ付 ス ルノ ハ日 本帝 国 主 義 政

己 暴露 デ ナ ク テ何 ダ 。

府 ガ 正 ニ徹 頭 徹 尾欺 瞞 政 策 ヲ弄 スル ﹁デ マゴ ーギ ー﹂ タ ル コト ノ自

第 二 点、 更 ニ追 求 セネ バ ナ ラ ヌ 一点 ハ治安 維 持 法 ソ ノ モノ ガ、 日本

根 拠 ハ理論 的 ニ又 実 践的 ニ覆 滅 セ ラ レテ ヰ ル。 ソ レ故 ニ本決 定 ハ根

ル モノ ガ之 ヲ立 証 シテ ヰ ル。 斯 ク テ本 人 ニ課 セラ レタ ル予防 拘 禁 ノ

本 的 ニ破 毀 セラ レネ バ ナ ラ ヌ。

的 世界 戦 争 ノ完 遂 ヲ目標 ト ス ル所 謂 ﹁高度 国 防 国 家 体 制 ノ実 現 ﹂ ナ

定 ノ罪 ハ存 在 スベ キ根 拠 ガ ナイ カ ラデ ア ル。 共産 主 義 者 ノ依 存 ス ル

第 四点 、憲 法 第 二十 三 条 ハ ﹁日 本臣 民 ハ法律 ニ依 ル ニ非 ズ シテ逮 捕

帝 国 主義 政 府 ノ述 上 ノ公言 ト全 ク矛 盾 ス ル コトダ 、 何 故 ナ ラバ 日本

所 ノ モ ノ ハ労 働 者 、 農 民 、勤 務 者、 兵 士 、 其 他被 抑 圧人 民 層 ノ支 配

監 禁 審 問 処罰 ヲ受 ク ル コト ナ シ﹂ ト規 定 シ テ ヰ ル。 其 ノ趣 旨 ハ人民

帝 国 主義 政府 ノ公 言 ノ如 ク バ治 安 維 持 法 ノ主 体 ヲナ ス所 謂 第 一章 所

ニ ヨ ル痛 烈 ナ ル弾 圧 卜搾 取 ト 、 コレ ニ反 抗 シ自 ラ ヲ解放 ス ル為 メ ニ

ノ権 利 ガ官 憲 ノ専 横 ニ ヨツテ侵 害 セラ レザ ル コト ノ保 障 デ ア ル。 ソ

階 級 (天 皇 、其 宮 廷 、 軍 事 、 行 政官 僚 、 地 主 (貴 族 )独 占 資 本 家 )

現 支 配 機 構 ヲ倒 壊 セ ント ス ル抑 フベ カ ラザ ル客 観的 、 主 観 的 条 件 ノ

ノ 勝手 ニ左 右 スベ カ ラ ザ ル安 定 性 ノ ア ル モノデ ナケ レバ ナ ラ ヌ。 然

レ故 ニ逮 捕 監 禁 審問 処 罰 ニ関 スル規 定 ハ厳 格 ニ法 律 ニ依 ルベ ク官 僚

止 スベ キ場 合 ノ手 続 ヲ規 定 シテ ヰ ル。 コレ裁 判 ノ公 正 ヲ保 チ人民 ノ

ル モ ノト シ裁 判 所 構 成 法 第 百 五条 ハ之 ヲ受 ケ テ特 ニ対 審 ノ 公 開 ヲ停

ヲ青 天 白 日 ノ下 ニ曝 シ テヰ ル。 更 ニ銘 記 スベ キ コト ハ日 本 帝 国主 義

官 憲 専 横 ヲ監 視 スル権 利 ヲ明 ニ シタ ノ ダ。 即 チ裁 判 ガ人 民 大衆 ノ眼

政 府 ガプ ロ レタ リ ア解 放 運動 全 般 ニ対 シ テ ソノ残 忍 暴虐 ナ ル自己 刑

前 ニ於 テ行 ハ ル ヽト 云 フ コト ニ立 憲 ノ意 義 ガ存 在 ス ルノ デ ア ル。 然

ル本 決 定 ガ無 効 デ ア ルベ キ ハ論 ヲ俟 タ ヌ。

法 ノ明 記 シテ ヰ ル涜 職 罪 、強 盗 罪、 殺 人 罪 ヲ共産 主 義 者ニ 対 シテ官

ル ニ予 防 拘 禁 ニ関 ス ル規 定 ハ其 ノ刑 事 訴訟 法 ニ該当 ス ル部 分 及ビ 監

第 五点 、 刑 事 訴 訟法 ノ明 規 スル如 ク如 何 ニ軽 微 ナ ル科料 、 罰 金 、 拘

憲 ガ頬 冠 リ的 横 著 ヲ以 テ犯 シタ ル コト ノ数 十年 来 歴 々タ ル モノ ガ ア

獄 法 ニ該 当 スル部分 ヲ命 令 ニ委 任 シ、 司 法 省 令 ト シテ、 予 防 拘 禁 手

留 ニ シ ロ、 事 イ ヤ シ ク モ処 罰 ニ関 ス ル モノ ハ端初 ニ ハ略 式 命 令 又 ハ

ル コト ダ 。 カ ヽル官 憲 ガ白 々 シク モ共 産 主 義 者 ノ名 誉 ヲ尊 重 ス ルト

ル ニ予 防 拘禁 手 続 令 ハ ﹁本 人其 他 ノ者 ノ名 誉 ﹂ ヲ保 ツ コト ヲ目的 ト

略 式裁 判 ニ ヨ ル ニシ ロ、 不 服 ノ時 ハ公 判控 訴 上告共 総 テ刑 事 訴 訟 法

云 フ処 ニ特 別 ノ深 慮 ガ存 在 ス ルノ デ ア ル。

続 令 及 ビ予 防 拘 禁処 遇 令 ヲ発 布 シ施 行 シテ ヰ ル。斯 ク テ ハ司 法 大 臣

ノ 規定 ス ル正 式 裁判 ニ依 ラ ネバ ナ ラ ヌ、 コ レガ憲 法 ニ ヨ ツ テ保 障 セ

斯 ク ノ如 キ ハ却 ツテ本 人 ノ利 益 ヲ侵 害 シ裁 判 ノ不公 正 ヲ強 行 シ以 テ

シ テ予 防 拘禁 ニ関 スル 一切 ノ手 続 ハ ﹁秘 密 ヲ保 ツ﹂ コト ヲ特 記 シテ

ラ レタ ル人 民 ノ権利 ノ発 現 デ ア ル。然 ル ニ コノ予 防 拘禁 ハ如 何 、 実

暗 黒 裡 ニ弾 圧 ヲ事 ト ス ルモ ノデ ア ツテ人 民 ノ裁 判 監 視 権 ヲ蹂 躙 シ憲

ヰ ル。 然 ル ニ事 実 共 産 党 事件 開 始 以来 司 法 及ビ 警 察官 憲 ガ如 何 ニ共

質 上無 期拘 禁 ト云 フ驚 クベ キ至 大 ナ負 担 ニ処 スル ニ拘 ラズ 正式 裁 判

法 ノ定 メ タ ル裁 判 公 正 ノ意 義 ヲ破壊 ス ル顕 著 ナ ル モノデ ア ル。 カ カ

ノ意 ノ儘 ニ監 禁 審問 処 罰 ガ左 右 サ レ憲 法 ニ ヨツ テ保 障 セ ラ レア ル人

ヲナ サ ズ刑 事 訴 訟法 上 ノ決 定 ヲ以 テ命 令 ス ルト ハ憲 法違 反 即 チ人 民

ル憲 法 違 反 ノ顕 著 ナ ル法 令 ニ依拠 シテ ナ シ タ ル本 決 定 ノ無 効 タ ル コ

民 ノ権 利 ヲ台 ナ シ ニ蹂 躙 セ ラ ル、 ソ シテ 又現 ニ蹂 躙 シテ ヰ ル。 コ レ

ノ権 利 ヲ蹂 躙 スルノ顕 著 ナ ル モノデ ナ ク シテ何 ダ 。斯 ク テ弁護 権 ヲ

ト論 ヲ俟 タ ヌ。

テ歴 史 ノ展 開 ハコノ 日本 帝国 主義 政 府 ノ欺 瞞 政策 ﹁デ マゴ ーグ﹂ 性

剥 奪 シ、 愚 ニモ付 カ ヌ実 質 上 何 等 効 果 ナキ補 佐 人 制 ト 云 フ唾棄 スベ

右 ニ列 挙 シ タ ル如 ク本 決 定 ノ基 本 ハ反 動 政 策 ニヨ ル モノデ ア ツテ ソ

産 主 義 者 ノ名誉 ヲ毀 損 シタ カ ハ正 ニ言 語 ニ絶 ス ル モノ ガ ア ル。而 シ

キ欺 瞞 ヲ敢 テ シ テ ヰ ル シ、 更 ニ憎 悪 スベ キ ハ奴 隷 化 確認 委 員 会 ノ性

レ自 身 反 社 会 的 犯罪 的 性 格 ヲ有 ス ルノ ミ ナ ラズ特 ニ日本 帝 国 主義 政

近来 ノ反 動 専 制 傾 向 ヘノ逆 行 デ ア ツ テ断 ジ テ肯 定 スベ カ ラザ ル モノ

質 ヲ有 ス ル予 防 拘禁 委 員 会 ヲ設 置 シ テ外面 慎 重 ヲ装 ヒ内 実 暗黒 裡 ノ

府 ノ特 別 大書 ス ル ﹁不 磨 ノ大 典 ﹂ タ ル所 ノ憲 法 ニ歴 々違 反 シ テ ヰ ル

デ ア ル。 カ ヽル憲 法 違 反 ノ治 安 維持 法 及 ビ予 防拘 禁 手続 令 ニ依 拠 ス

ル コト ハ言 ヲ俟 タズ。

コト ニア ル。 ソ ノ憲 法 ノ欺 瞞 的 存 在 デ ア ル コト ヲ立証 セ ザ ラ ント 欲

暴 圧 ノ手 ヲ行 使 シ テヰ ル。 カ ヽル手 続 ヲ以 テ ナ シ タ ル決 定 ノ無 効 タ

第 六点 、 憲 法 第 五十 九 条 ハ裁 判 ノ対 審 判決 ハ之 ヲ原則 卜 シ テ公 開 ス

ス ルナ ラバ 断 々乎 ト シテ本 決 定 及 ビ其 ノ依 拠 スル法 令 ヲ無 効 ナ ラ シ

府 ハ口 ヲ開 ケバ現 政府 ハ ﹁無 上 絶 対普 遍 的 真 理 ノ顕 現 タ ル国 体 ﹂ ニ

一

定 ノ予 想 シ テ ヰ ル前 記 ノ事 態 ヲ発顕 セ シム ル コト ハ全 然 不 可 能 ニ帰

邁 進 シツ ツ ア リト 公言 シテ ヰ ル。然 ラバ 一共 産 主義 者 ノ存 在 ガ原決

ズ ﹁八紘 一宇 ﹂ 世界 支 配 ヘノ途 上 ニ文 字 通 リ ﹁挙 国 一体﹂ ト ナ ツテ

依 拠 ス ル モノデ ア ツテ ﹁世 界 無 比 、絶 対 不壊 ﹂ ノ存 在 タ ルノ ミ ナ ラ

田

一

昭和 十 七年 一月 四 日

メ本 人 ヲ即 時 無 条 件釈 放 スベ キデ ア ル コト ヲ敢 言 ス。

徳

岡 善

球

右 

吉

ス ルデ ナイ カ。 ニ モ拘 ラズ 前 記 ノ如 キ決 定 ヲ以 テ敢 テ抗 告 人 ヲ予防

右 本 人 ノ拇 印 タ東京予防拘禁所教導  ル コト ヲ証 明 ス

ル ﹁デ マゴ ーギ ー﹂ タ ル コト ノ自 己暴 露デ ナ ク テ何 ダ。 ( 二)更 ニ

拘 禁 ニ付 ス ルノ ハ日本 帝 国 主義 政 府 ガ正 ニ徹 頭 徹 尾欺 瞞 政 策 ヲ弄 ス

追 求 セ ネバ ナ ラ ヌ 一点 ハ治 安維 持 法 ソノ モ ノ ガ日 本帝 国 主 義 政 府 ノ

述 上 ノ公 言 ト全 ク矛 盾 ス ル コト ダ 。何 故 ナ ラバ 日本 帝 国 主 義 政 府 ノ

定 沖 繩 県 国頭 郡 名 護 町 字 名護 七百 四十 五番 地

者 、 農 民 、勤 務 者 、 兵 士 、 其 ノ他 被 抑 圧 人 民 層 ノ支 配 階 級 (天 皇、

ベ キ根 拠 ガ ナイ カ ラデ ア ル。 共産 主 義 者 ノ依 存 ス ル所 ノ モノ ハ労働

籍 

一

田

球

公 言 ノ如 クバ治 安 維 持 法 ノ主 体 ヲナ ス所 謂 第 一章所 定 ノ罪 ハ存 在 ス

徳

東 京 予防 拘 禁 所 在 所 職

在 

決

東京控訴院 御中

本 現 無 抗 告 人 

其 ノ宮 廷 、軍 事 、 行 政 官 僚 、 地 主 ( 貴 族 ) 独 占 資 本家 ) ニ ヨル痛 烈

ナ ル弾 圧 ト 搾 取 ト コ レ ニ反 抗 シ自 ラ ヲ解 放 スル為 メ ニ現 支 配 機構 ヲ

当 四十 九 年

ア ルカ ラダ 。故 ニ事 態 ハ 一面 ニ於 テ暴 風 雨 的 ニ拡 大強 化 シ ツ ツア ル

倒 壊 セ ント ス ル抑 フベ カ ラザ ル客観 的 主 観 的 条 件 ノ存 在 ス ル コト ニ

右 者 ニ対 ス ル予 防 拘 禁 請求 事 件 ニ付 昭 和 十 六年 十 二月 二十 七 日東 京 刑 事 地方 裁 判 所 ノ為 シ タ ル抗 告 人 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 スト ノ決 定 ニ対 シ

ノ他 被 抑 圧 人 民層 ノ搾 取 吸 血 ヲ敢 行 シツ ツ ア ル最 モ憎 悪 スベ キ戦争

飾 ノ欺 瞞 ト シ テノ述 上 ノ公 言 ト 他 面労 働 者 、 農 民、 勤 務 者 、 兵 士其

ヘザ ラ ント ス ル貪 婪 極 リ ナ キ資 本 ノ集 中 ト累 積 ト ノ為 ニ スル自 己粉

天 皇 、 其 ノ官僚 、 貴 族 、 独 占 資 本家 ノ権 力 ト 、 ソ レ自 体 ノ重 ミ ニ堪

抗告 人 ヨリ適 法 ナ ル即 時 抗告 ノ申 立 ヲ為 シ タ ル ヲ以 テ当院 ハ検 事 松

文

本 重 夫 ノ意 見 ヲ聴 キ決 定 ス ル コト左 ノ如 シ 主

本 件 抗告 ハ之 ヲ棄 却 ス

狂、 侵 略 狂 即 チ帝 国 主 義 ノ白 昼 夢遊 病 者 ノ反 動 的、 反 社会 的 狂 乱行

由

本 件 抗告 理 由 ハ (一) 原 審決 定 ノ要 旨 ハ ﹁本 人 ヲ今 直 ニ釈 放 セ ンカ

法 ヲ根 拠 卜 スル原 決定 ノ到 底 支持 スベ カ ラザ ル ハ保 安 処 分 ト云 フ点

為 ト シテ ノ治 安維 持法 ガ存 在 スル コト ニア ル ノダ 。 カ カ ル治 安 維持

理

ス ニ至 ル ノ虞顕 著 ナ ル コト ﹂ ト 云 フ ニア ル。 然 ル ニ日本 帝 国 主義 政

再 ビ 共産 主 義 運動 ニ身 ヲ投 ジ 重 ネ テ治 安 維 持法 第 一章 所 定 ノ罪 ヲ犯

タ ル予 防 拘 禁 ノ根 拠 ハ理論 的 ニ又 実 践的 ニ覆 滅 シ テ ヰ ル、 ソレ故 ニ

制 ノ実 現 ﹂ ナ ル モノ ガ之 ヲ立 証 シテ ヰ ル。 斯 ク テ抗告 人 ニ課 セ ラ レ

タ侵 略 的 強 盗的 世 界 戦 争 ノ完 遂 ヲ目 標 ト ス ル所 謂 ﹁ 高度国防国家体

的 存 在 デ ア ル コト ハ治 安 維 持 法 自体 ガ 又之 ヲ緊 急 措 ク能 ハザ ラ シ メ

シテ現 日本 政府 コ ソ正 ニ反 動 的 存 在 デ ア リ社 会 進 歩 ヲ阻 害 スル毒素

シテ尚 ホ足 ラザ ラ ント ス ル モノデ ア ル コト ハ公 知 ノ事 実 デ ア ル。而

ルガ故 ニ コソ自 ラ率 先 シ テ凡 ユル非 運 ト困 窮 ト ヲ モノ ト モセズ 敢闘

シテヰル 共 産主 義 者ハ其ノ 進 歩 的デ ア リ社 会 適 応性ノ 最モ 旺 盛デア

応 性ノ 欠 如 セ ル モノデ ナ クテ ハナラヌ 。然ルニ 治安 維 持 法ノ 対象 ト

デアル 。然 ラバ其ノ 対 象ガ 本 質 的ニ 反 社 会 的デ ア リ基 本 的ニ 社会 適

置 シテ外 面慎重 ヲ装 ヒ内 実暗 黒 裡 ノ暴 圧 ノ手 ヲ行 使 シテ ヰ ル。 カ カ

憎 悪 スベ キ ハ奴 隷 化 確 認 委員 会 ノ性 質 ヲ有 ス ル予 防 拘 禁委 員 会 ヲ設

何 等 効果 ナキ補 佐 人制 ト 云 フ唾棄 スベ キ欺 瞞 ヲ敢 テ シ テ ヰ ル シ更 ニ

モ ノデ ナク シテ何 ダ 。斯 クテ弁 護 権 ヲ剥奪 シ愚 ニモ付 カ ヌ又実 質 上

ヲ以 テ命 令 スル卜 ハ憲 法 違 反 即 チ人 民 ノ権 利 ヲ蹂 躙 ス ルノ顕 著 ナ ル

大 ナ ル負 担 ニ処 スル ニ拘 ラズ 正 式 裁判 ヲナ サズ 刑事 訴 訟法 上 ノ決定

ア ル。 然 ル ニ コノ予防 拘 禁 ハ如 何 実質 上無 期 拘 禁 ト 云 フ驚 ク ベ キ至

ネ バ ナ ラ ヌ コレ ガ憲法 ニ ヨ ツテ保 証 セ ラ レタ ル人 民 ノ権 利 ノ発 現 デ

服 ノ時 ハ公 判 控 訴 上告 共 総 テ刑 事 訴 訟法 ノ規 定 スル正式 裁 判 ニ依 ラ

処 罰 ニ関 スル モ ノ ハ端 初 ニ ハ略 式 命令 又 ハ略 式 裁 判 ニヨ ル ニ シ ロ不

合ノ手続ヲ 規定 シテヰル 。コレ 裁 判ノ 公 正ヲ 保チ 人 民ノ 官 憲 専横ヲ

ル手 続 ヲ以 テ ナ シタ ル決 定 ノ無 効 タ ル コト ハ言 ヲ俟タヌ 。 (六) 憲

監視スル 権 利ヲ 明 ニシタノダ 。 即チ 裁 判ガ 人 民 大衆ノ 眼前ニ於テ 行

法 第 五 十 九 条ハ 裁 判ノ 対 審判 決ハ之ヲ 原 則 ト シ公開ヲ 停 止スベキ 場

ナ シ﹂ ト規 定 シ テヰ ル。 其 ノ趣 旨 ハ人 民 ノ権 利 ガ官 憲 ノ専 横 ニョ ツ

﹁日本 臣 民 ハ法 律 ニ依 ル ニ非 ズ シ テ逮 捕監 禁 審 問 処 罰 ヲ受 ク ル コト

テ侵 害 セラ レザ ル コト ノ保 障 デ ア ル。 ソ レ故 ニ逮捕 監禁 審 問 処 罰 ニ

ハルルト云フ コトニ 立 憲ノ 意 義ガ 存 在スルノデアル 。然ルニ 予防 拘

原 決 定 ハ根 本的 ニ破 毀 セラ レネ バ ナ ラ ヌ。 (四) 憲 法 第二 十 三 条 ハ

関 ス ル規 定 ハ厳格 ニ法 律 ニ依 ルベ ク官 僚 ノ勝手 ニ左 右 スベ カラ ザ ル

ル ニ事 実 共 産党 事 件 開 始 以来 司 法 及警 察 官 憲 ガ如何 ニ共 産 主 義 者 ノ

禁 手 続 令ハ ﹁ 本 人其 ノ他 ノ者 ノ名 誉﹂ ヲ保 ツ コト ヲ目的 ト シ テ予防

名 誉 ヲ毀 損 シ タカハ 正 ニ言 語 ニ絶 ス ル モノ ガ ア ル。 而 シ テ歴 史 ノ展

拘 禁 ニ関 スル 一切 ノ手 続 ハ ﹁秘 密 ヲ保 ツ﹂ コト ヲ特 記 シ テ ヰ ル。然

ニ委 任 シ司法 省 令 ト シ テ予 防 拘 禁 手 続令 及 ビ予 防 拘 禁 処遇 令 ヲ発 布

ハ其 ノ刑 事 訴訟 法 ニ該 当 ス ル部 分 及 ビ 監獄 法 ニ該 当 スル部 分 ヲ命 令

シ施 行 シ テヰ ル。 斯 ク テ ハ司 法 大 臣 ノ意 ノ儘 ニ監 禁 審 問処 罰 ガ左 右

ノ下 ニ曝 シ テ ヰ ル。 更 ニ銘 記 スベ キ コト ハ日本 帝国 政 府 ガ プ ロレタ

開 ハ コノ日 本帝 国 主 義 政 府 ノ欺 瞞政 策 ﹁デ マゴ ーグ ﹂性 ヲ青 天白 日

安 定 性 ノ ア ル モノ デ ナ ケ レバ ナ ラ ヌ。然 ル ニ予 防 拘 禁 ニ関 ス ル規 定

ル。 コ レ近来 ノ反 動 専 制 傾 向 ヘノ逆 行 デ ア ツ テ断 ジ テ肯定 スベ カ ラ

サ レ憲 法 ニョツテ 保 障セラ レ アル 人 民ノ 権 利ヲ 台 ナ シニ蹂 躙 シ テヰ

ザ ル モノデ ア ル。 カ カ ル憲 法 違 反 ノ治 安 維 持 法 及 ビ 予 防拘 禁 手 続 令

ル涜 職 罪 、 強盗 罪、 殺 人 罪 ヲ共 産 主義 者 ニ対 シ テ官 憲 ガ頬 冠 リ的横

リ ア解 放 運 動全 般 ニ対 シテ ソ ノ残 忍暴 虐 ナ ル自 己刑 法 ノ明 記 シ テ ヰ

着 ヲ以 テ犯 シ タ ル コト ノ数 十 年来 歴 々タ ル モノガ ア ル コト ダ。 カ カ

ニ依 拠 スル原 決 定 ガ無 効 デ ア ルベキハ 論ヲ俟タヌ 。 (五 )刑 事 訴 訟 法 ノ明 記 ス ル如 ク如 何 ニ軽 微 ナ ル科料 罰金 拘 留 ニシ ロ事 イ ヤシ ク モ

深 慮 ガ存 在 スルノ デ ア ル。 斯 ノ如 キ ハ却 テ本 人 ノ利 益 ヲ侵 害 シ裁 判

ル官 憲 ガ白 々シ ク モ共産 主 義 者 ノ名 誉 ヲ尊 重 ス ルト 云 フ処 ニ特 別 ノ

ニ於 ケ ル政 治 、経 済 、 無 産 階 級 運 動等 ノ情 勢 ヲ報 告 ス ルト共 ニ其 ノ

小委 員 会 ﹁プ ロ フイ ンテ ル ン﹂ 及 ﹁キ ム﹂ ノ諸 会 合 ニ参 列 シ テ日 本

同 地 ニ於 テ開 催 セ ラ レタ ル ﹁コム ミ ンテ ルン﹂ 日本 委 員 会 、 極 東部

リ大 正 十 五年 一月下旬 頃 ﹁モ ス コー﹂ ニ赴 キ同年 三月 中 旬 頃 迄 ノ間

指 令 ヲ授 ケ ラ レテ帰 国 シ市 川 正 一等 ト協 リ テ党 ノ再建 ヲ策 シ仍 テ大

ノ不 公 正 ヲ強 行 シ以 テ暗 黒 裡 ニ強 圧 ヲ事 ト ス ル モノデ ア ツテ 人 民 ノ

正十 五年 二 月 五 日 佐野 文 夫 、 福 本 和夫 、 渡 辺 政 之輔 等 ニ依 リ所 謂第

裁 判 監 視 権 ヲ蹂 躙 シ憲 法 ノ定 メ タ ル裁 判 公 正 ノ意 義 ヲ破 壊 ス ル顕 著 ナ ル モノデ ア ル。 カ カ ル憲 法 違 反 ノ顕 著 ナ ル法 令 ニ依 拠 シ テ ナ シタ

二次 日本 共 産 党事 件 ニ因 リ受 刑 中 ナリ シ抗 告 人 モ亦其 ノ中 央 委員 ニ

於 ケ ル意 見 ノ対 立抗 争 ニ対 スル其 ノ批 判 ヲ仰 ギ 或 ハ革 命 運 動 犠 牲者

ル原 決 定 ノ無 効 タ ル コト 論 ヲ俟 タ ヌ。 右 ニ列 挙 シタ ル如 ク原 決 定 ノ

救 援 会 (モ ツプ ル) ヲ組 織 シ テ之 ヲ主 宰 シ其 ノ他 諸般 ノ共 産 主 義的

基 本 ハ反 動 政 策 ニ ヨル モノ デ ア ツ テ ソ レ自身 反 社 会 的 犯 罪的 性 格 ヲ

存 在 デ ア ル コト ヲ立 証 セザ ラ ント欲 スル ナ ラバ断 々乎 ト シ テ原 決 定

活 動 ヲ遂 行 シタ ル為 昭和 三 年 三 月 再 ビ検 挙 セ ラ レ昭和 九 年 七 月 九 日

ニ在 リ或 ハ露 都 ノ ﹁コム ミ ンテ ル ン﹂ ニ使 シ以 テ共産 主義 陣 営 内 ニ

及 ビ其 ノ依 拠 スル法 令 ヲ無 効 ナ ラ シ メ抗 告 人 ヲ即 時 無 条 件釈 放 スベ

東 京 控 訴 院 ニ於 テ治 安 維 持 法 違 反 ノ罪 ニ依 リ懲 役 十年 (未 決 勾 留 日

挙 ゲ ラ レ昭 和 二年 一月出 獄 以来 右 党最 高 幹 部 ノ 一人 ト シテ其 ノ中枢

キ デ ア ル コト ヲ敢 言 スト謂 フ ニ在 リ。

数 四 百 日通 算 ) ノ刑 ニ処 セ ラ レ (同年 十 二月 六 日上告 棄 却 ニ依 リ確

有 ス ルノ ミ ナ ラズ 特 ニ日本 帝 国 主 義 政 府 ノ特 別 大 書 ス ル ﹁不磨 ノ大

仍 テ案 ズ ル ニ本 件 記 録竝 ニ志 賀 義 雄 ニ対 ス ル予 防 拘 禁 請 求事 件 ノ参

典 ﹂ タ ル所 ノ憲 法 ニ歴 々違 反 シテ ヰ ル コト ニア ルソ ノ憲 法 ノ欺 瞞 的

考 資 料 第 一号 ノ 一、 二 ( 志 賀 義 雄 、 徳 田 球 一外 二名 ニ対 ス ル治安 維

ニ減 刑 セ ラ レ タ ル結 果 昭和 十 六 年 十 二 月二 十 日右 刑 ノ執 行 ヲ終 了 シ

タ ル コト明 白 ナ リ而 シテ当 院 ニ於 ケ ル抗 告 人 ノ陳 述 ニ依 レバ 抗 告 人

定 ) 昭和 十 五 年勅 令 第 四十 五号 ヲ以 テ其 ノ刑 ヲ懲 役 八年 一月 十 九 日

実 際 運動 ニ従 事 シ大 正 十 一年 一、 二月 頃 同 会 代表 ト シテ ﹁コム ミ ン

ハ現在 尚 ホ自 ラ共 産 主義 者 ナ ル コト ヲ自 認 シ居 リ我 国 ニ於 ケ ル革命

持 法 違 反 被 告 事 件 ノ第 二 審 公判 記 録 ) ニ依 レバ抗 告 人 徳 田球 一 ハ夙

テ ル ン﹂ 極 東 民 族 大 会 ニ出 席 シ日本 共 産 党組 織 ノ命 ヲ受 ケ テ帰 国 シ

ンカ再 ビ共 産 主 義 運 動 ニ身 ヲ投 ジ重 ネ テ治安 維 持 法 第 一章所 定 ノ罪

ノ当来 ヲ信 ジ居 ル モノ ニ シテ斯 ル状 況 ニ在 ル抗 告 人 ヲ今直 ニ釈 放 セ

ニ共 産 主 義 思 想 ヲ懐 キ社会 主 義 研 究 ノ目 的 ヲ以 テ水 曜 会 ヲ組 織 シテ

大 正十 一年 七月 荒 畑 勝 三 等 ト相 謀 リ所 謂 第 一次 日本 共 産 党 ヲ組 織 シ

ル ヤ佐野 学 等 ト結 ンデ大 正 十 三年 三月 ﹁ビ ユー ロ ー﹂ ヲ設ケ 次 デ 翌

ヒ次 デ同 年 九月 ノ関 東 地 方 大 震 災 ノ為 党 員 離 散 シ殆 ド潰 滅 状 態 ニ陥

告 ハ其 ノ 理由 ナ シ

予 防 拘禁 ニ付 スル旨 ノ決 定 ヲ為 シタ ル ハ正当 ニ シテ抗 告 人 ノ本 件 抗

附 則 第 四項 同 法 第 三 十 九条 第 一項 第 四 十 四条 ノ規 定 ニ則 リ抗 告 人 ヲ

ヲ犯 ス ニ至 ル虞 ア ル コト 洵 ニ顕 著 ナリ 即 チ原 審 裁 判 所 ガ治安 維 持 法

︹マ マ ︺

其 ノ中 央 委 員 タ リ シガ翌 十 二年 六 月検 挙 ニ遭 ヒ テ党 幹 部 ノ大 半 ヲ失

ル ープ ﹂ ヲ結 成 シ ﹁コム ミ ン テ ル ン ・プ レシジ ユー ム﹂ ノ要 求 ニ依

十 四年 八 月 ﹁コ ムミ ンテ ルン﹂ ノ指 導 ノ下 ニ ﹁コムミ ユ ニ スト 、 グ

仍 テ治安維持法第五十二条刑事訴訟法第四百六十六条第 一項 ニ則 リ 主文 ノ如 ク決定 ス

福 本 和夫 関 係

昭和十七年 一月二十九日

(2) 福本和夫に対す る予防拘禁請求事件記録 予防拘禁申立書

小菅 刑 務所長

判

事 

事 

裁 判長 判 事 

小

内

佐

玉

水

藤

治

主

竜

行

一

馬

東 京 控 訴院 第 二刑 事 部

判

専 念 シ現在ニ 及 ベ リ尚 思 想 内容 ニ付 テ ハ特 ニ手 記 感 想録 等 ノ執 筆 ヲ

好 マズ 面接 時 ニ於 ケ ル断 片 的陳 述 或 ハ日本 歴 史 研 究 ノ態 度 内 容 等 ニ

依 リ之 ヲ推 定 ス ルノ外 ナ シ即 チ 一見 過去 ノ共 産 主 義思 想 ヲ抛 棄 清 算

言 ヒ難 ク出 所後 再 犯 ノ虞 ナ シト セサ ル ニ依 ル

参 考 資 料

(一) 出 所後 ノ 生活 態 度 ニ就 キ テ

福

本

和

夫

来 思 想推 移 極 メ テ順 調 ナ ルモ未 ダ完 全 転 向 ノ域 ニ到 達 セ ル モノ ト ハ

セ ル ニア ラズ ヤト ノ印象 ヲ与 フ ルモ尚 之 ニ代 フ ル新 シキ思 想 内 容 ニ

和

付 テ明確 ニ之 ヲ表 明 セズ 之 ガ判 定 ニ困難 ナ リ之 ニ依 テ見 ル ニ入 所 以

本

治安維持法違反、懲役八年 一月十九日 (通算 四百日) 福

夫

殿

右者左記 ノ理由 ニ因 リ予防拘 禁 ニ付 スルヲ相当ト思料候条参考ト為 昭和十六年十月 三十 日

ルベキ資料 ヲ添附 シ及申立候也

次 郎

東京刑事 地方裁判所検事局 沢

申 立 理 由

検事 正  金

本名 ハ十数年 ニ及 フ拘禁生活 ニ於 テ静思反省 ノ機会 ヲ与 ヘラ レ且 ツ

ヲ含 ム) ト ハ絶 縁 シテ郷 里 ニ帰 リ家 庭 人 ト シテ家 政 ノ整 理 父 ト シ

テ 二子 ノ幸 福 ノ タ メ尽 力 シ更 ニ自己 ノ著述 ヲ通 ジ テ社 会 ニ貢 献 シ

現 在 政 治 運動 社会 運 動 ニ対 スル関 心 ハ全然 ナ シ亦 旧 同 志 ( 転 向者

化 ヲ来 シヰルモノノ如 ク受刑期間後半 ニ於 テ ハ入所 当時 ノ対立反感

タ シト 述ブ

家庭事情ノ急激 ナ ル変国内状勢 ノ推移等 ニ依 リ其 ノ心境 ニ多大ノ変 ヲ捨 テ面目 ヲ 一新 シ受刑態度極 メテ温順ニ シテ日本歴史等 ノ研究 ニ

(二) 共 産 主義 思 想 ニ就 テ ハ ﹁自分 ハ過去 ノ思 想 ニ全然 関 心 ナ シ自 分 ノ頭 ハ入所 後 漸 次 空 虚 ト ナ リ新 シ キ思 想 ガ之 ニ代 リ ツ ヽア ル﹂

ル

(一) 家 庭 ノ状 況

其他参考事項

昭 和 十 六年 六月 二十 二 日死 亡

母 

モ ン 

長 女  逸 子 (十 九 歳 ) 初 期 肺 結 核療 養 中

父 福 本 信 蔵 (七 十 五歳 ) 老 衰 甚 シ ク本 人 ノ帰宅 ヲ待 望 ス

予 防 拘 禁 制 度 実施 以 前 ニ遡 リ テ) ニ於 ケ ル自 己 ノ言 動 、 家 庭 ノ事

﹁自 己 ノ思想 内 容 ニ就 テ ハ入所 以来 八年 余 ニ亙 ル受 刑 期 間 (特 ニ

情 、 学 術 的 研究 ノ態 度 及其 ノ内容 等 ノ具 体 的 事 実 ノ中 ニ資 料 ヲ求

長 男  邦 男 (十 五 歳 ) 東 京 市 内 ニ於 テ苦 学 、中 学 ニ通 学 中 ナ リ

メ テ判 定 セ ラ レタ シ﹂ (三)転 向 問 題 ニ就 テ

家 屋 敷 等 若 干 ヲ残 スノ ミ ニシ テ家 計豊 カ ナ ラズ

資産状態

其 ノ理 由 ハ所 謂転 向 者 グ ル ープ ハ全然 立 場 ガ違 フ カ ラデ ア ル、 司

本 人 ハ三 男 ナ ル モ推 定家 督 相 続 人 ニ シテ老 父 扶 養 ノ義 務 ア リ之

﹁私 ハ従 来 ノ 相対 的 転 向 ノ範 疇 ヲ以 テ律 セラ ルヽ コト ヲ好 マナ イ、

法 当 局 ノ見 解 ガ 右転 向 者 以 外 ノ モ ノ ヲ凡 テ非 転 向 者 卜言 フノデ ア

ニ付 キ テ次 ノ如 ク言 明 ス

癒 シテ ヤ ラ ネバ ナ リ マ セ ン且 ツ長 女 ハ婚 期 モ 迫 ツ テ ヰ ル ノ デ

ン其 ノ上 長 女 ハ初 期軽 症 デ ハア リ マ スガ肺 結 核 ニツ キ治 療 シテ

﹁自 分 ガ帰 リ テ老 父 ヲ養 ヒ子 供 二 人 ヲ学 校 ニ上 ゲ ネバ ナ リ マセ

レバ私 モ亦 非 転 向者 ノ中 ニ這 入 ル カ モ知 レナ イ﹂ ト 言 明 シ

﹁自 分 ハ今 近 世 日本 学 芸 復 興 期 ノ綜 合 、 比 較 研 究 ト 云 フ標 題 ノ下

ス﹂ ト

(四) 自 己 ノ研 究 ニ就 テ ハ

ニ研 究 ヲ続 ケテ居 ル、 自 分 ハ日 本 ニ於 ケ ル文 芸 復 興 ノ 存在 ヲ確 認

従 来 ノ転 向 者 ナ ル モノ ト如 何 ニ立場 ガ違 フカ ニ付 テ ハ ﹁佐野 、

( 二) 転 向 者 グ ループ ニ就 テ

シ西 欧 諸 国 ノ夫 レト比 較 シ テ遙 カ ニ優秀 ナ ル コト ヲ認 メ ザ ルヲ得

鍋 山転 向 声 明 当 時 之 等 ニ対 シ テ自 分 ガ如 何 ニ痛 烈 ニ批 判 シ タカ

ナイ。 此 ノ研 究 ハ受 刑 期 間 中 自 己 ノ心血 ヲ注 イデ ヤ ツ タ モノデ ア ル斯 ル研 究 ハ マルキ スト ノ立 場 ニ於 テ果 シテ出 来 得 ルデ セウ カ﹂

( 三) 参 考 ノ為 出 所 後 著述 予定 目 次

ヲ調 ベ テ貰 ヒタ イ﹂ ト述 ベ テ ヰ ル

ト述 ベ更 ニ研 究、 随 筆 俳 句 集 合 セ テ二十 冊許 リ纏 メア ゲ テヰ マ ス ガイ ハバ何 ヨリ ノ声 明 デ ア リ マセ ウ否 声 明 ニ優 ル コ

ト確 実 ト確 信 シ マス殊 ニ ﹁近 世 日本 学芸 復 興期 ノ綜 合 比較 研究 ﹂

其 ノ 一ツ〓

ハ活 字 ニナ リ マシタ ラ著 者 自 身 外 国 ノ大 学 ヘ モ寄 贈 イ タ ス積 リ デ スカ ラ是 程 大 キ ナ声 明 ハ ナイ ト思 ヒ マス之 ハ自 分 ノ思 想 ガ今 ド ウ デ ア ルカ ヲ判 定 シテ貰 フ ニ 一番 良 イ資料 ダ ト思 フ﹂ ト附 加 シテ ヰ

2  随

筆 集 

筆 集 

筆

筆 集 

集 

蟹 、 ザ リ蟹

霧

寒明風 (北海道特有 ノ二月初 メ暴風)著者 ノ造語

喇 叭草  北 海 道 ノ栞 附 薬 草 ノ コト

釧 路 ト黒 潮

集  壺菫専 ラ植物随筆

3  随

集 

集 

1 随 筆

4 随

第

北

5 随 筆

道

集  花 虻 ノ体 操

シホ マネ キ ノ眼

笛

6  随

筆

海

7  随

筆 集 

集 

随筆8 ︷ 随 9  随 筆

国語研究

(動 物随 筆 ヲ主 題 ト ス ル ガ、動 物 ノ ミ ニ限ラ ズ)

比較文化史研究三部作

歴史的研究

キ ツ ツ キ ト迷 彩 色 半バ動物随 筆 動物 ノ飛行型 ト人間 ノ飛行思想(半 バ技術史随筆)

10  随

集  動 物兵法記 孫 子 ノ兵 法 、 文 章 法

兵法雑 記  日支比較文 化史 ノ諸断面

集 

近世日本学芸復興期 ノ綜合比較研究

筆

11 随 筆 12 随 長編 14 

長 編 13 

長編 15 

語 源、 方 言、 略 語 ノ研 究 

此 ノ三 巻 随筆 集 ハ大 半 マト マツテ尚 ホ少 シヅ ツ補 修 ノ予 定 ニテ書 名 未 ダ 定 マラズ

長 編 16  1 7 1 1 8 9︸

20  俳 句  短 歌集 一巻 (内 容 ハ完 結 ス レド書 名 未 ダ定 マラズ )

21 研究報告 壺菫 ノ無花結実現象 ニ就 イテ 植物学小論文 23  随

筆

集 

印 度 ヲ食 フ牛 (半 バ動 物随 筆  半 バ 文 化史 研 究 ユ ー モア文 学 )

22 近世 日本学芸復興期年表 (二十八表)

沢

次

昭和 十 六年 十 月 二 十九 日

金

東 京 刑 事 地 方 裁 判所 検 事 正 

殿

小 菅 刑務 所 長 

郎

岡

︹ 度化︺ ルヤ根 本 的 ニ ハ所 謂 産 業 合 理 化 運動 ガ搾 取 ノ強 廃 地 ヲ強 行 シ テ労

働 者 農 民 ノ購 買 力 ヲ激 減 枯 渇 シ タ ル コト ニ基 ク然 ル ニ此 ノ搾 取強

本 月 二十 日付 日 記思 第 一、七 一九 号 ヲ以 テ当 所 収 容 者 福 本 和 夫 ニ対

化 ト 国際 的 孤 立 化即 チ謂 フ処 ノ非 常 時 ヨリ大規 模 ナ ル戦 争 危 機 ヲ

ハ満 洲 ニ上 海 ニ帝 国 主 義 的 戦 争 ヲ敢 テ シタ ル結 果 ガ前 記時 弊 ノ激

検 挙 投 獄 スル コト ニ ヨリ テ恣 ニ内 ニ ハ搾 取 ノ強 度 化 ヲ施 行 シ外 ニ

常

ス ル首 題 ノ件 送 付方 御 照 会 相 成候 処本 名 ハ曩 ニ網 走 刑 務所 及 千 葉 刑

自 ラ招 イ テ拡大 化 シ ツ ヽア ル処 ノ現 情 ニ外 ナ ラ ヌ コ レ マ コト ニ恐

部

レタ ル処 ナ ル ヲ以 テ之 ヲ換 言 ス レバ要 スル ニ資 本家 地主 ノ独 占的

度 化 ノ強 行 コソ ハ我 々共 産 主 義 者 ノ検 挙 投 獄 ニヨリ暴 力 的 ニ行 ハ

務 所 等 ニ順 次 移送 セラ レタ ル モノ ニ シテ何 レノ刑 務所 ニ於 テ モ心 境

慌 資 本 家的 地主 的 克 服 手 段 竝 ニ其 ノ タ メ暴 圧 政策 ノ必 然 的 ナ ル矛

利 益 ニ於 テ此 ノ大 恐 慌 ヲ克 服 セ ンガ タ メ ニ共産 主義 者 ヲ暴 圧 シテ

ニ関 ス ル手 記 等 記載 シタ ル コト 無 之今 回 ノ御 申 越 ニ依 リ手記 方 ニ付

盾 ノ発展 ガ 遂 ニ其 ノ反 対 ニ迄転 化 シツ ツア ル モノ ニシ テ又前 記時

行 刑成 績 表 及 心 境 手 記 ニ関 ス ル件 回 答

キ種 々慫 慂 シタ ル モ之 ニ応 ゼザ ル モノ ニ有 之 候 就 テ ハ行刑 成 績 表 ノ

弊 ノ匡救 ガ 何 ヨリ モ先 ヅ 我 々共産 主 義 者 ヲ釈 放 ス ル コト ニ存 ス ル

ミ別 紙 御 送 付 申 上候 間 可 然 御 取 計 相成 候 様 致 度 候

︹ママ︺

所 以 ガ コ ヽニ在 ル我 々 ハ所謂 犯 罪 者 ニ非 ラズ共 産 主 義 者無 罪 釈 放

ノ階 級的 政 治的 歴 史 的 法 律的 市 内 論 拠 ニ就 テ ハ既 ニ法 廷 ニ於 テ詳

口語 体 ニ ヨリ右様 ニ諒 承 ノ上 御 読 取 リ願 ヒ マ ス

(叙 述 ) ヲ出 来 ルダ ケ簡 単 且 ツ明瞭 ナ ラ シメ ン タメ 一般 日常 ノ通 俗

ブ ル ニ止 メ我 々ノ要 求 全 個条 ノ要 求 ア リ コノ根 本 的 全 般詳 述 等 ハ

デ ア リ而 シテ 又最 近 ノ手 段 ナ ルカ ヲ前 文 卜 シテ極 メ テ簡単 ニ申 述

時 弊 ノ根 本 的匡 救 竝 ニ行 刑 ノ面 目 一新 ノタ メ ニ最 モ根 本的 ナ問 題

面 カ ラ見 ラ レ マ シテ モ亦 我 々ノ釈 放 乃 至 処遇 ノ改 善 要 求 ガ如 何 ニ

細 ニ論 弁 シ来 ツタ所 デ モ アリ マ スカ ラ茲 ニ ハ主 ト シ テ行刑 上 ノ局

(一) 数 年 来 全国 都 市 ニ横 溢 氾 濫 セ ル空 前 ノ失 業 大洪 水 、 農 村 ニ於

之 ヲ他 ノ 同 志 ヨリ ノ上 申 ニ俟 タ ント欲 スル次第 デ ア リ マス ( 結文

既 決 在 獄 共産 主 義 ︹者 ︺ ノ処遇 ニ関 スル要 求書

ケ ル慢 性 的 ナ ル飢 饉 而 シ テ今 日 各 地 ノ刑 務 所 ニ殺到 ス ル 一般 収 容

批 判 ト ヨリ全 ク カ タ ク自 ラ ヲ隔 離 シ来 ツ タ処 封 建 的 乃 至 専制 的 ノ

(二) 由来 刑 務所 ハ高 壁 ヲ繞 ラ シ日月 ノ明 ヲサ ヘギ リ社 会 ノ進 運 ト

(二) 御 参 照)

者 大 入 満 員 ノ盛 況 ニシ テ 一般 ノ悲痛 残 虐 ナ ル社 会事 象 ハ相 率 テ頽

ネバ ナ ラ ヌ コト ヲ直 截 端 的 ニ証 明 ス ル処 ノ事 実 ト考 ヘ マス蓋 シ カ

旧 キ報 復 主 義 ト報 復 主 義 中心 ニ組 織 サ レタ諸 般 ノ因 隔 ナ ル因 襲 ト

廃 シツ ヽア ル現 存 ノ経 済 的 政 治 的制 度 ガ全 ク根 底 ヨリ変 革 セ ラ レ

ヽル時 弊 ノ由 ツテ来 ル処 直接 ニ ハ今 次 ノ世 界 大恐 慌 ト其 資 本 家 的

︹マ マ︺

地 主 的 克 服 ノ手 段 ノ失 敗 ト ニ在 ルベ ク ソレデ 此 ノ大 恐 慌 ノ起 因 タ

時 代 錯 誤 的 ナ設 備 ト ハ今 日 ナ ヲ 一掃 サ ル ヽニ至 リ テ ヰ ナイ否 一々

(五) 熟 々行刑 諸般 ノ実 際 ヲ見 ル ニ従 来 竝 ニ現 在 ノ刑 務 所 タ ル ヤ ヒ

協 力 的 努 力 ト自 発的 労 作 ト ハ始 メ テ期 待 シ得 ベ キ モノ ト信 ジ マ ス

リ所 謂 社 会適 応 性 ヲ奪 ヒ去 リ ツ ヽア ル ハ畢 竟 刑務 所 自 ラ受 刑者 ノ

タ スラ社 会 ノ進 運 ヨリ隔 離 遮 閉 ス ル 一切 ノ手 段 ヲ講 ジ テ受 刑者ヨ

余 リ ニ モ前 時 代 的 ナ ル ニ驚 カザ ル ヲ得 マセ ン外 国 人 ニ見 セ ル小菅

(三) 今 回共 産 主 義 者 ヲ特 ニ旧 刑 法 時 代 ノ徒 刑 流 刑 地 ニ流 シタ ルガ

キ方 向 ガ寧 ロ縮 少再 生産 ニア ルベ キ モノ ト セバ却 テ何 ヨリ モ努 メ

拡 大 再 生 産 ヲ ハカ ル モノ ニア ラザ ルカ之 ニ反 シテ若 シ行 刑 ノ正 シ

卜其 他 ト ノ間 ニ ハ格 段 ノ相 違 ガ ア リ マス

ヲ封 建 的 乃 至 専 制的 遺 習 ノ時 代 錯 誤 的行 刑 ト 云 ハズ シ テ何 ト カ イ

ソ緊 切 ノ任務 ナ レ従 ツテ新 聞 雑誌 ノ閲 読 ノ如 キ宜 シク進 ンデ コレ

テ社 会 ノ進 運 ニ取残 サ レザ ル様常ニ 社会 ノ動 静 ニ着 目 セ シ ム ル コ

如 キ 正 ニ コ レ旧 時 代 ノ所 謂 僻 遠 島 地 主義 ヲ採 レ ル モノ ニシテ コレ

ハン、 シカ モ僻 遠島 地 主義 ノ旧 刑 法 ス ラ モ国事 犯 ニ ハ断ジ テ定 役

ガ奨 励 ニ努 メ テ コ ソ至 当 ナ ル可 キ若 シ夫 レ現 在 ノ如 キ政 治 記事 中

ヲ付 課 シ ハ シナイ デ シタ 一昨 年 来 実 施 ノ累 進処 遇 令 ヲ熟 察 ス ル ニ コ レ実 ハ所 謂 産 業合

ム ルガ如 キ ハ普 選実 施 ノ今 日最 モ火急 ニ改 メ ラ ル ヽヲ要 スベキ事

ノ閲 読 ヲ極 度 ニ恐怖 シ禁 遏 シテ政 治情 勢 ノ実 情 ニ至 リ盲 目 ナ ラ シ

( 四)

理 化 運動 ノ追 随 ニシ テ或 ハ其 ノ獄 内 ヘノ延 長 ト モ見 ル可 ク獄 内 搾

ツテ ユ ルメ ラ レ又時 々外出 制 モ実施 サ レネバ ナ リ マセ ン

項 ニ属 スル モ ノト考 ヘ マス同 様 ニシテ通 信 及 面会 ノ制 限 モ思 ヒキ

取 ノ ヨリ強 度 化 ヲ主 要 目的 ト シ コ レヲ行 フ ニ恰 モ小 児 ヲ ア ヤ スガ

ル奴 隷 ニ シテ ゴ マカ シ的 ナ習 性 ト ヲ助 成 シ ツ ヽア ルヲ見 ル累 進 処

如 キ幼 稚 ノ方 法 ヲ以 テ シテ努 メ テ低 俗 ナ ル功 利 的 利 己 心 ト 卑 屈 ナ

教誨 制 ガ マタ今 日 如 何 ニ受 刑 者 ノ向 上 ニト ツ テ無 用 有害 ナ ル寄食

(六) 宗 教 ニ ヨツ テ受 刑 者 ヲ教 ヘ晦 マス コト ニ従 事 シ ツ ヽア ル現 行

的 搾 取 者 デ ア リ且 ツ兎 角保 護 等 ノ上 ヨリ モ如 何 ニ無 能 ナ ル存 在 物

遇 令 ノ実施 適 用 セ ラ ル ル範 囲 ニ関 スル限 リ ソ レ ハ旧 キ野 蛮 ノ報 復

スル モ ノト イ ヘ マセ ウ シカ シナ ガ ラ累 進 処 遇 令 ノ結 果 ハ寧 ロ普 通

ル モ元来 仏 教 ガ犯 罪 起 因 責 任等 ニ関 シ ロ ンブ ルゾ ー以来 ノ 近代 犯

デ ア ル事 カ宗 教 ノ阿 片 性 一般 ヲ論 ズ ル コト ハ茲 ニ ハ暫 ク措 クト ス

主 義 ヨ リ新 シキ資 本 主 義的 形 態 ニ ヨリ搾 取 強 度 化 ヘノ移 行 ヲ意 味

イ遠 カ ラズ 諸 般 ノ統 計 的 数 字 ガ若 シ正直 ニ事 実 ヲ歪曲 ス ル所 ナ ク

ヲ シテ暗鬱 ナ ラ シ メ コレガ現 代 化 ヲ抑 制 シ ツ ヽア ル寄 生 虫的 存 在

罪刑 事 学 ノ趨 向 ト 根 本 的 ニ相 背 馳 スル コト疑 ナ ク実 ニ今 日刑 務 所

受 刑 者 ノ資 本 主 義 的 ナ ヨリ 大規 模 ナ拡 大 再 生 産 ニ役 立 ツ ニ相 違 ナ

集 メ ラ レ且 ツ其 ノ示 サ ル ヽナ ラバ 必 ズ ヤ上 ノ如 キ我 々ノ断 案 ヲ裏

コソ ハ宗 教 ニ ヨル現 行 教 誨制 ナ リ ト断 ズ ル ニ我 々 ハ躊 躇 セザ ルモ

書 スル ノデ ア リ マセ ウ ソ レガ資 本 主 義 的 搾 取 ノ強 度 化 ニ立 脚 ス ル

ノデ ア リ マ ス

ノ敢 テ全 部 ト イ ハズ 一部 ノ教誨 師 竝 ニ刑 務官 ノ 一団 ガ其 ノ氏名 ヲ

( 七 ) 去 年 フア ツ シ ヨ的 悪 傾 向 ノ 一時 的擡 頭 ヲ見 ルヤ幼 稚 ナ ル 一部

ハ コノ累進 処遇 令 ニ代 フ ル ニ先ヅ (一)懲 役 刑 ニ於 ケ ル七時 労 務 制 ト (二)在 獄 共産 主 義 者 ヲ包 含 シ テ受 刑 者 委 員 会 制 ノ創 設 ト ヲ主

現 行 累 進 処 遇 令 ノ 必然 的 ナ矛 盾 ノ曝 露 デ ア リ マ ス コ ヽニ於 テ我 々

張 シ要 求 スル モノ デ ア リ マス コレ ニ ヨリ テ受 刑 者 ノ自 治的 統 制 ト

ニ踊 リ ナ ガ ラ不 法 ニモ彼 ノ佐 野 、 鍋 山 、 三 田村 、 高 橋 等 ノ当 年極

党 ハ 一々指 摘 シ得 ルノ デ ア ルガ笑 止千 万 ニ モ忽 チ フ ア ツ シ ヨノ笛

リ闡明 致 シ タ如 ク階 級 対 階 級 党 対党 ノ真 ニ堂 々正 正 ノ階 級 闘 争 デ

(八) 我 々 ハ犯罪 者 ニ非 ズ 我 々共 産 党 ノ行 動 ハ法 廷 ニ於 テ全 同 志 ヨ

ノ予 期 ニ反 ス ル此 ノ逆 効 果 ヲ見 ル ニ及 ンデ 周 章 狼 狽 ノ極 唯 々呆 然

ス彼 ノ使 嗾 者 獄中 フア ツシ ヨノ産婆 役 ノ 一団 ガ ヤ ガ テ局 面 一転 其

本 主 義 ノ独 逸 ヤ伊 太利 ト ハ大 イ ニ其 事 情 ヲ異 ニ スル モノ デ ア リ マ

我 々ノ反 対 シ洞 察 シ指 摘 シ タ ル所 デ ハナ カ ツ タ乎 、 蓋 シ日本 ノ資

動 必然 ノ矛 盾 ヲ発 展 転 化 セ ザ ルヲ得 ヌ当然 ノ帰 趨 ト シ テ最初 ヨリ

在 ル) ニ外 ナ ラザ リ シ事 ハ コ レ我 ガ党 ニ対 ス ル卑 劣 ナ ル切崩 シ運

反 宗 教 デ ハナ イ ガ日 本 ノ フア ツシ ヨ ハ仏 教 ト ハ相 容 レザ ル運 命 ニ

ノ ガ マタ議 会 ヲ否 認 ニ排 仏 毀 釈 ノ フ ア ツ シ ヨ (フア ツ シ ヨ ハ敢 テ

ノ タメ政 派 運 動 ニ狂奔 シタ ルガ皮 肉 ナ ル哉 斯 ク シテ結 成 サ レタ モ

乱 打 懲 罰 等 ア ラ ユル暴 力 ヲ加 ヘツ ヽ彼 ノ判 党 解 党 派 ノ勧 誘 ト結 成

ノ 切崩 シ ヲ ハカ リ多 クノ健 全 ナ ル共 産 主義 者 ニ対 シテ ハ挑 発 暴 行、

化 シ テ驚 ク可 キ禍 害悪 弊 ヲ及 シタ ル軽 躁饒 舌 ノ分 子 ヲ使 嗾 シ テ党

ケ ツ ヽア ルノ事 実 ヲ着 手 セ ラ ル ヽナ ラ蓋 シ思 ヒ半 バ ニ過 グ ル モノ

ハラズ 我 々到 ル処 一般 受 刑 者 ヨリ暗 黙 ニ絶 大 ノ信 倚 ト 尊敬 卜 ヲ受

離 遮 閉 サ レ獄 中 更 ニ獄 ア ルノ観 ヲ至 セ ル現情 ニオ カ レ居 ル ニ モ拘

所 ト信 ジ マス今 日在 獄 共 産主 義 者 ハ其 ノ 一切 ノ行 動 ニ於 テ全 然 隔

政 策 ト 大衆 政 党 的 節制 ア ル全 行 動 ト ガ既 ニ十 分 立証 シ テ余 リ ア ル

史 的 ニ見 テ正 ニ然 ルノミ ナ ラズ 我 々プ ロレ タリ ア ト ノ階級 的 綱 領

モ我 々ノ事 件 ガ所 謂 国 事 的事 件 タ ル コト ハ コレヲ条 理 的 ニ ハタ歴

見 ザ ル所 ノ立法 的 デ ア リ マス何 人 モ如 何 ニ掩 ヒカブ サ ント 欲 ス ル

重 刑悉 ク実 際 上 懲役 刑 ヲ 以 テ ス ル モノ ニ至 リ テ ハ絶 ヘテ其 ノ類 ヲ

法 ノ如 ク専 ラ共産 主義 者 ニ臨 ム ニ極 度 ノ苛 酷 ナ ル死 刑 重刑 シ カ モ

年 以下 ノ禁 錮 刑 ヲ以 テ スル コト ト セ リ日本 帝 国 主義 者 ノ治 安 維持

デ シタ ル行 動 ヲ目 標 ト スル モノ ニ シ テ而 カ モソ レ ス ラ精 々二 、 三

ノ実 例 ニ徴 ス ル モノ ニ非 ラズ 専 ラ彼 ノ無 政 府 的 虚無 主義 等 ノ狂策

シ ヨ的 独 裁 ニ逆 転 セ ル モノ ハ除 キ英 米仏 等 ニ凡 ソ先進 資 本 主 義 国

マス マイ、 ム ツ ソリ ー ニノ伊 太 利 ヒ ツト ラ ー ノ独逸 ノ如 ク フ ア ツ

自 失 ノ外 ナ カリ シ何 ト モ滑 稽 至 極辛 辣 ナ ル皮 肉 ノ 悲喜 劇 ハ世 ノ耳

ガ アリ マセ ウ三 、 一五 ノ検 挙 以 来 我 々在 獄実 ニ七 ケ年 を越 エ上 告

ア リ 一般 犯 罪事 件 ト断 然其 ノ本質 ヲ異 ニ スル コト 茲 ニ多 言 ヲ要 シ

目 ニ今 尚 新 ナ ル所 ナ ルガ若 シ凡 ソ正 シ キ行 刑 ノ運 用 モ亦古 兵 家 ノ

裁 判 後 已決 ト シ テ旧刑 法 ノ徒 刑 流 刑 地 タリ シ此 ノ窮 北 ノ北 海 道 ニ

左 的 小 児 病 者 ト シテ所 謂 二 ツ ノ可 能性 ト イ フ志 賀 戦 略 ト 共 ニ其 ノ

所 謂 功 ナ キノ 一新 ヲ見 ト スベ キ ナラ バ僧 侶 ノ獄 中 フア ツ シ ヨ党 運

流 サ レ来 ツテ カ ラ モ今 ヤ九 ケ月 ヲ経 過 シテ居 リ マス茲 ニ已 決 在 獄

抱 懐 ス ル ニ至 リ シ誤 レ ル突 飛 ナ革 命 論 ノ鼓 吹 ニ ヨリ 一時 党 ヲ極 左

動 等 ニ ヨリ テ功 名 ヲ ア ゲ喝 采 ヲ博 セ ント スル ガ如 キ ハ策 ノ最 モ下

共 産 主義 ノ所 遇 ニ関 シ我 々党 ノ協 議 ニ係 ル要 求 凡 ソ十 八条 ヲ上 申

遇 ニ関 ス ル我 々共 産主 義 者 ノ要 求 書 ガ 提出 サ レテ居 リ マ スガ ソ レ

セ ント ス ル所 以 デ アリ マス。 ナ ホ因 ニ曾 テ第 一審 公判 当 時 獄 中 所

︹ママ︺

マ ス マイ 宜 シク彼 ノ獄 中 一団 ノ 不法 使 嗾 者 暴 力者 ヲ処 断 シ厳 ニ相

ナ ル モノ ニシテ此 ノ点 ヨリ ス ル モ決 シ テ賞讃 サ ル可 キ業 デ ハア リ

ヲ望 ミ マス

戒 メ テ再 ビ斯 カ ル軽 卒 不法 ノ失 態 醜 態 ヲ繰 返 シ演 出 サ レザ ラ ン事

ソ レト聯 絡 相 関連 ス ル ハ言 フ迄 モア リ マセ ンガ本 上申 書 ハ主 ト シ

ハ主 ト シテ当 然 未決 中 ノ所 遇 ニ関 ス ル モノデ アリ マスカ ラ固 ヨリ

九 、 少 クト モ 一週 間 一回 ノ 通信 竝 ニ面会 ノ自 由 且 ツ コレラ ノ範 囲 ヲ

八 、 ラジ オ ト ー キ ー其他 慰 労 娯 楽 施 設 ノ設 置

七 、 保 健衛 生 医療 施 設 ノ改善

十 一、受 刑 者 委 員 会 ノ設 置 ( 前 文 四)

十 、 少 ナ ク モ年 数 回 外出 制 ( 前 文 五)

親 族 ノ ミ ニ限 ラザ ル コト ニ改 メ ラ レ度 キ コト (前文 五)

テ我 々ノ既 決 所遇 ニ関 スル事 項 ナ ル事 ヲ御 承 知願 ヒ マ ス (結 文 一、 二 御参 照 ) 二、十 八 ケ条

所 謂 政 治 的 国事 的事 件 ト シ テ待 遇 セ ラ ルベ キ コト

一、 我 々事 件 ハ階 級 対 階 級 党 対 党 ノ階 級 闘 争 ヤ階級 闘 争 事 件 ト シ テ

シ キ行 刑 ノ良 好 ナ ル運 用 ト ハ蓋 シ コレ ニ ヨリ テ始 メ テ完 全 ナ ル効

ノ自治 的 統 制 ト協 力的 努 力 ト自 発 的労 作 ハ即 チ受刑 者 ノ向 上 ト正

在 獄 共産 主義 者 ヲ モ含 メ テ全 般 的 受 刑 者委 員 会 (按 ズ ル ニ受 刑 者

遠島地主義反対 ( 前 文 (三 ) コレ ハ特 ニ第 一審 裁 判 終 了 ヨリ第 二

二、 受 刑 者 ハ行為 地 ヲ基 準 ト ス可 ク封 建 乃至 専制 時 代 ノ遺 習 タ ル僻

十 二 、宗 教 ニ ヨ ル現 行教 誨 師 ノ完 全 ナ ル撤 廃 (前 文 六、 七)

果 ヲ期待 シ得 ル可 シト信 ズ ル)

ニ関 シ市 谷刑 務 所 大 橋 教 誨 師 ヨリ取 調 ベ ニ対 シ テ我 々ガ主 張 シ要

審 裁 判 ノ間 ニ控 訴 院 赤 羽 裁 判 長 宛 上申 書 ニ於 テ又 上告 裁 判 後 下 獄

ナ カ ル可 ク此 ノ点 ニ於 テ最 モ明 白 ニ我 々ノ要 求 ト ハ本 質 的 相 違 ア

等 ハ主 張 シ得 ザ ル可 ク シテ却 テ現 行累 進 処 遇 令 ニ ハ当 然 賛 成 ノ外

ハ何 ノ カ ヽハリ モ無 キ ノ ミ ナ ラズ 恐 ラ ク彼 等 ハ到底 七時 間 労 務 制

テ形式 上 一見 党 ト大 同 小異 ノ コト ヲ申 スカ知 リ マセ ンガ ソ レ ハ党

(佐野 鍋 山 等 ノ判 党解 党 者 ノ社 会 フア ツ シ ヨノ徒 モ処 遇 上 ニ関 シ

十 三 、現 行 累 進 処 遇 令 反 対 ( 前 文 四) (前 文 四 )

求 シ来 ツ テ入所 ノ方 針 ト ス)

四、 新 聞 雑 誌 閲読 ノ自 由 竝 ニ書 籍 ノ閲 読 ニ関 スル煩 雑 ナ ル法 制 限 ノ

三 、 懲 役 刑 ニ於 テ ハ各 日 曜 休業 制 竝 ニ 一日七時 間 労 働制

撤 廃 (前 文 五)

ル可 キ モノ ト信 ジ マス)

五 、 運 動 時 間 ノ最 底 時 間 ヲ示 サ レ少 ク モ三 十 分 以上 ト規 定 サ レタ キ コト

( 従 来 共 産 主義 者 ニ対 スル懲 罰 ナ ル モノ ハ実際 ヲ見 ル ニフ ア ツ シ

反 対 (前 文 七 )

十 五、 暴 行 殴 打其 他 一切 ノ処 罪 竝 一切 ノ フア ツ シ ヨ的 抑 圧 乃 至 干渉

重方 針 ノ廃 棄 (前 文 六)

十 四、 官 本 ノ宗 教 偏 重竝 ニ雑 誌 ﹁人 ﹂ ノ編 輯 及 記 事 ニ於 ケ ル宗 教 偏

現 在 ハ ﹁三十 分 以内 ﹂ ト ア ルト イ フ テ実 際 ハ十 分 乃至 十 五 分 位 デ 済 マシ テ ヰ ルノ ガ滔 々 タ ル現 実 ノ情 勢 デ ア リ マ ス 六 、 ス チ ー ム ニ ヨル暖 房設 備 ノ設 置 就 中 東 北 地方 以 北 ノ寒 国 ニ於 テ ハ最 大 火急 ニ設 備 ア リ タ キ事 (前 文 (二))

ラ浪費 ス ルダ ケデ受 刑 者 ノ側 ニ ハ実際 上殆 ド 何 等 ノ実 益 モア リ マ

ヨ党 タ ラ シ ム ル目的 ヲ以 テ コト サ ラ ニ挑 発 シ テ暴 行 乱 打 ヲ加 ヘ流

当 北海 道 ニ ハ現 在 スト ーブ 設 備 ア レ卜 コ レ ハ貴 重 ナ ル石 炭 ヲア タ

セ ン スト ーブ デ ハ室 内 ハ毫 モ暖 マラ ナイ カ ラデ ス

血 ノ負 傷 ヲ与 ヘ繃 帯 ノ マ ヽデ 面会 サ レタ リ運 動 ニ出 ラ レ タリ シテ ハ暴 行 ガバ ク ロ ス ルカ ラ ソ コデ負 傷 ノ治 癒 ス ル迄 負傷 ノ軽 重 ニ応 ジ テ虚 偽 的捏 造 ノ名 目 ノ下 ニ処罰 監禁 ス ルト イ フ ノガ 一切 ノ懲 罰

致 シタ ル次 第 ニテ 以 上 ハ唯 共 通 的 原則 的 要 求事 項 ノ 一般 的 要綱 ヲ

挙 ゲ タ ル ニ過 ギ マセ ン (前 文 九 御 参 照)

(二) 尚 本 要 求書 ノ述 ブ ル所 ハ凡 テ全 国各 地 刑 務 所 ニ分 散 セ ラ レヰ

ラズ 旁 々我 々救 援 会 ﹁モ ツプ ル﹂ ノ暴 圧 方 針 ヲ ヤ メ テ コレガ事 実

十 六 、 我 々労 働 者 農 民 ニ ハ事 実 上家 族 関 係 等 ノ存 在 セザ ル モノ尠 カ

他 要 求 事由 ノ根 本 的 全 般 的 詳 述等 ノ 諸点 ハ重複 ヲ避 ケ テ ナ ルベ ク

従 テ他 ノ諸 同志 日リ特 ニ詳 シ ク申出 ア ラ ウト考 ヘル若 干 ノ個条 其

全 内 容 ニ於 ケ ル単 ニ一部 分 ト シテ御 了解 ア ラ ン コト ヲ希 望 シ マス

渾 然 タ ル全 体 ヲ成 ス コト ヲ前 提 ト 致 シ居 ルヲ以 テ夫等 ノ要 求事 項

ル全 同 志 ヨ リ提 出 ノ 口頭 又 ハ文書 ニ ヨ ル要 求 内容 ト相 補 ヒ相俟 テ

上 ノ存 在 ヲ承 認 セ ラ レナバ 未 決中 ノ差 入 其 他 ハモト ヨリ既 決 中 ニ

省 略 ニ又 ハ簡 単 ヲ期 スル コト ニ致 シタ次 第 デ ア リ マ ス (前 文 一御

ノ真 相 デ ス)

就 テ モ身 元引 受 其 他 一般 ノ事 ニ刑 務 所 ト吾 々双 方 ノ利 便 尠 カ ラザ

ルガ謂 フ所 ノ非 常 時 解 消 ノ最 良手 段 コソ ハ断 然 戦 ト暴 圧 デ ハ無 事

逸 タ ラ シメ専 制 的 暴 圧 政策 ニ於 テ帝 政 ロシ ヤヲ彷 彿 セ シ メ ツ ヽア

義 者 ノ 口 ヨリ頻 リ ニ叫 バ レ日本 ヲ侵 略 的 世界 政 策 ニ於 テ戦 前 ノ独

(三) 終 リ ニ 一 言 致 シタキ ハ近時 非 常 時 非常 時 ト イ フ コト ガ 帝国 主

参照)

ル可 キ事 十 七 、 全 国 ノ刑 務 所 ヨリ在 獄 共 産 主義 者 ヲ速 カ ニ釈 放 セ ラ ルベ キ事

コレ ニ加 フ ル ニ女 性 共 産 主義 者 ニ ハ女 性 特 有 ノ事 情 ニ基 ク特

三

コ レガ我 々中 心的 ナ要 求 デ アリ マス

(一)

帝 政 露 独 ノ運 命 ト ソヴ エート同 盟 ノ発 展 フア ツ シ ヨ独 逸 ノ惨状 ヲ

殊 ノ要 求 ア ル コト ト思 ヒ マスガ ソ レラ ハ女 性 在 獄 同志 ヨリ要 求 上 申 ニ俟 ツ コト ニ シ マ シテ右 十 八 ケ条 ノ要 目 ハ我 々 ガ未 ダ東 京 ニ在

見 レバ 何 人 モ思 ヒ半 バ ニ過 グ ル モノ ア ル可 ク コ レト反 対 ニ戦 争 ヲ

トデ ア リソ シテ全 国 ノ刑務 所 カ ラ革 命 ノ戦 士共 産 主 義 者 ヲ速 カ ニ

渉 政策 ヲ廃 棄 ス ル コ卜 デ ア リ共 産 主 義 者 検挙 投 獄 カ ラ手 ヲ引 ク コ

キ ツパ リ ヤメ ル コトデ ア リ支 那 ( 中 国 ) 蘇 ヴ エー ト ヘノ 一切 ノ干

リ テ未 決在 獄 当 時 党 ノ協 議 ニ係 ル所 ノ主 ト シ テ未 決所 遇 ニ対 ス ル 要 求 事 項 中其 ノ主 要 ナ ル モ ノ ヲ列 挙 シタ ノデ スガ我 々ガ其 ノ北 海 ノ旧 徒 刑流 刑 地 ニ送 ラ レ来 ツテ 以来 コ ヽ ニ数 カ月 間自 ラノ具 サ ニ

フ全 国 労働 階 級 及 農 民 層 ノ明朗 ニ シテ確 信 ア ル解 答 以 テ本 上申 書

釈 放 ス ル コト コ レゾ 暗 惨 タ ル非 常 時 解 消 ノ最 良 ノ手 段 デ ア ルト イ

遭 遇 経 験 シ耳聞 目睹 スル所 ノ実情 ニ照 ラ シ見 テ正 ニ緊 急 ニシ テ適 切 ナ ル要 求 項 目 タ ルヲ確 認 シ痛感 セザ ルヲ得 ザ ル ノ所 デ ア リ マ ス

認 ム乱筆 止 ムヲ得 ズ 請 フ コレ ヲ諒 セ ラ レ ン コト ヲ望 ム

一九 三 五年 八月 二 十 八 日北 海 ノ濃 霧 朦 ニ霧 笛 モー モー ノ日之 ヲ

ヲ結 ブ コト ニ致 シ度 イト 考 ヘ マス

否 若 シ旧 刑法 ノ特 殊 地 タ ル僻 遠島 地 ノ当 刑 務 所 等 ヲ中 心 ト シテ申 スナ ラバ 更 ニ特 ニ追 加 ス可 キ個条 或 ハ今 少 シ強 ク表 現 ス ルヲ適 当 スベ キ個 条 等 二、 三 ニト ド マリ マセ ンガ夫 レ ラ ハ場 合 ニ ヨリ マシ テ改 メ テ上申 致 ス他 ヨリ ノ機 会 ヲ留 保 スル コト ニ致 シ茲 ニ ハ省 略

決

定

福

本

和

釧路刑務所在獄 日本共産党事件受刑者

文

夫

ナ ル所 現 在 ニ於 テ ハ全 ク共 産 主義 竝 ニ其 ノ運 動 ニ付 キ関 心 ヲ有 セズ

出 所 後 ハ本 籍 地 鳥 取県 ニ帰 省 シ老 父 及 ヒ子 女 ノ扶 養 ニ努 ム ルト 共 ニ

既 ニ着 手 セ ル近 代 日本 文 化 史 及ビ 植 物 学 ノ研 究 ヲ続 行 スベ キ旨 表 明

シ居 リ其 ノ学 術 的 研究 ノ態 度 竝 ニ内容 等 ニ依 リ心 境 ニ多 少 ノ変 化 ヲ

観 取 セ ラ ル ル モ未 ダ尚 共 産 主義 ニ対 シ批 判 検 討 ス ルヲ肯 ゼズ然 モ嘗

書 記 載 ノ如 ク十年 ノ懲 役 ニ処 セ ラ レ昭和 十 六 年十 二 月 二十 日其 ノ執

謄 本 ) ニ拠 レバ本 人 ガ曩 ニ治 安維 持 法 所 定 ノ罪 ヲ犯 シ因 テ本件 請 求

按 ズ ル ニ本 件 記 録 竝 ニ参 考 資 料第 七 (第 二審 公判 調書 及 第 二審 判 決

在リ

照 考 スルト キ ハ再ビ 同 種ノ 罪 ヲ犯 ス ノ虞 顕 著 ナ ル モノ ナリ ト謂 フ ニ

モノト ハ認 メ難 ク今 後 一層 緊 迫 化 ヲ予想 セ ラ ル ル現下 内 外 ノ情 勢 ニ

亙 リ関 係 当 局 ニ対 シ抗 争 シ来 レ ル経 歴 ニ徴 シ其 ノ思 想 ヲ抛 棄 シ タ ル

ル ニ至 リ タ ル モノ ニ シテ且 検 挙 以来 一貫 シ テ非転 向 ヲ堅 持 シ多 年 ニ

和 夫

テ其 ノ主 張 セ ル理論 (所 謂 ﹁福本 イ ズ ム﹂) ハ 一時党 ノ指 導 精 神 タ

本

本籍 鳥取県東伯郡下北条村大字田井 三十番屋敷 職  福

現在 東京予防拘禁所 無 四十 九歳 右者 ニ対 スル予防拘禁請求事件 ニ付当裁判所 ハ検事上田次郎関 与ノ 主

上本 人ノ陳述 ヲ聴キ決定 スルコト左 ノ如 シ 福 本和夫 ヲ予防拘禁 ニ付 セズ 由

究 ニ没頭 シ遂 ニ共産主義 ヲ信奉 スルニ至 リ雑誌﹁マルクス主義﹂ニ寄

ル同 ジ カ ラザ ルモ ノデ ア ルヲ認 メザ ル可 ラズ、 蓋 シ曾 テ第 二次 日 本

所 ニ対 スル陳 述 等 ヲ綜 合 ス レバ 本 人 最 近 ノ心 境 ハ其 ノ下 獄 当 時 ト 頗

第 十 二竝 ニ参 考 人安 達 本 識 、 篠 崎 保 伯、 楠 下 芳 輝 及 福井 徹 ノ当 裁 判

行 ヲ終 了 シ タ ル コト明 確 ナ ル ヲ以 テ進 ンデ釈 放 ノ後 再ビ 同 種 ノ罪 ヲ

理

稿 シ専 ラ共産 主義思想 ノ鼓吹 ニ努 メ大正十 五年六月日本共産党 ( 当

共 産 党 (大 正 十 五年 十 二月 四 日結 成 ) ノ指 導 理 論 タリ シ所 謂 ﹁福 本

本件 予防拘禁請求ノ理由 ハ

時 ﹁コンミ ユニスト ・グ ループ﹂ト称 ス) ニ加入 シ爾来 政治部員、

ニ対 ス ル陳 述 及 上申 書 、 本 件 参考 資 料 第 一乃 至 第 六、 第 八、 第 九 及

中央委員等 ノ要 職 ニ就 キ主 トシテ党活動 ノ理論的指導 ニ従事 シタル

イズ ム﹂ ヲ本 人 ノ 旧著 殊 ニ ﹁唯物 史 観 のた め に﹂ (昭和 二 年 改 造 社

犯 ス虞 果 シ テ顕 著 ナリ ヤ否 ヤ ヲ審 究 ス ル ニ本 人 ノ当 裁判 所 竝 ニ検 事

為昭和三年三月検挙 セラ レ昭和九年五月二十五日東京控訴 院 ニ於 テ

ガ専 ラ自 然 必 然 的 ニ人類 ノ意 識 ヲ規 定 ス ル モノ ト為 サ ズ 不十 分 ニモ

発 行 ) ニ拠 リ テ検 ス ル ニ本 人 ハ当時 夫 ノ生 産 関 係 乃 至物 質 条 件 ノ ミ

本人 ハ大正九年東京帝国大学法学部卒業後 二ケ年余欧米 ニ留学 シ帰

懲役十年ノ判決 ヲ受 ケ同年十二月六日上告棄却 ニ依リ該判決確 定 シ

朝後高等学校 及高等商業学校教授 タリシガ其ノ間 マルクス主義 ノ研

昭和十六年十二月二十 日小菅刑務所 ニ於 テ其 ノ執行 ヲ終了 シタル者

〓 落莫 、 旧同 志 ノ不 信 翻 覆 ニ泣 キ紛 々タ ル軽 薄 ヲ憤 リ テ幽 囚 傷 心 幾

ル所 ト ナ ルヤ本 人 ノ日 本 共産 党 内 ニ於 ケ ル声 望 一時 ニ失 墜 シ爾 来 坎

プ レ シデ ユー ム ニ於 テ所 謂 ﹁福 本 イズ ム﹂ ガブ ハー リ ン等 ノ排撃 ス

料 特輯 第 五十 六号 等 ニ徴 ス レバ 昭和二 年 夏 露 都 ﹁コミ ンテ ルン﹂ ノ

得 ベ キ ヤ ハ甚 ダ覚 束 ナ キ ノミ ナ ラズ 、 他 方 本 人 ノ陳 述 、 思 想 研究 資

ザ ル コト疑 無 ク、 従 テ斯 ル異 質 的 萌 芽 ノ久 シ ク唯 物 論 圏 内 ニ安住 シ

奈 何 ニ係 ラズ 其 ノ根 本 的特 質 ニ於 テ マル ク ス主 義 思 想 ノ正 系 ニ属 セ

主 張 シ居 リ タ ル コト 分 明 ニ シテ、 如 此 キ ハ ﹁コミ ンテ ル ン﹂ ノ批 判

セ ヨ後 者 ノ前 者 ヲ規定 ス ル場 合 ア ル ヲ認 メ斯 テ両 者 ノ交 互 規定 性 ヲ

ダ進 マズ ト為 ス乎 、其 ノ言 固 ヨリ採 ル可 ラズ

可 ク、 更 ニ後 者 ノ如 キ ハ自 ラ揣 リ テ以 テ至 レリ ト為 ス ニ非 ザ レバ 未

併 セ稽 ヘ其 ノ前 者 ハ果 シテ克 ク本 人 ノ真 意 ヲ正解 シ タ リ ヤ甚 ダ疑 フ

卜 セ ント スルガ如 キ ハ (参 考 人 楠 下 芳輝 ノ陳 述 ) 之 ヲ本 人 ノ陳 述 ト

対 ス ル忠 誠 ノ念 未 ダ充 分 ナ ラズ ト 称 シタ リ ト シ以 テ其 ノ再 犯 ノ虞 ヲ

ノ著 書 ノ売 行 ヲ虞 リ テ転 向 ノ声 明 ヲ拒 否 シタ リト シ或 ハ自 ラ皇 室 ニ

リ ト スル ハ ( 資 料 第 十 参 照 ) 必 シ モ其 ノ当 ヲ得 ズ 、 又 本 人 ガ或 ハ其

メ得 ベ シ、 果 シテ然 ラ バ巷 間 妄 ニ本 人 ノ心 境 ヲ忖 度 シテ偽 装 転 向 ナ

ノ奉 養 撫 育 ト攷 放学 述 作 ノ事 ニ従 ハン卜誓 フ ニ到 ラ シ メタ ル モノト 認

ト共 ニ他 面其 ノ 郷思 ハ転 タ禁 ゼズ シテ釈 放 ノ後 郷 邑 ニ径還 シテ肉 親

戦 争 ノ必 勝 ヲ期 セム !!﹂ (一月 六 日附 上申 書 ) ト叫 ブ ニ到 ラ シ ム ル

シハ資 料 第 三 、 第 四 及第 六等 ニ依 リ テ明 カ ナ ルガ如 ク本 人 ガ年 来 佐

要 之 、 本 人 ガ其 ノ心 境 ニ変 化 ヲ来 シ タ ル後 久 シク転 向 ヲ表 明 セザ リ

星 霜 ノ後 終 ニ事 ヲ共 ニ スベ カ ラザ ルヲ悟 リ テ斯 ノ徒 輩 ト袂 ヲ別 ツ ニ

合 ス レバ 本 人 ハ少 ク ト モ昭 和 十 五年 四 月千 葉 移 監 当時 ヨリ 一切 ノ旧

至 レリ ト ノ コト信 ズ 可 キ ニ庶 幾 ク、 更 ニ前 掲 参 考 人 四名 ノ陳 述 ヲ綜

知 共 産 主 義者 ト交 ヲ絶 チ同 時 ニ自 ラ其 ノ旧 共 産 主義 思想 ヲ抛 擲 シ テ

天資 ト互 ニ相 俟 テ彼 等 ノ後 塵 ヲ拝 スル ヲ潔 シト セズ 、 且 世 人 ガ視 テ

以 テ同 臭 ノ徒 ト 為 ス ヲ甚 シク恐 レ タ ル為 ナリ ト解 ス可 キ ヲ以 テ畢 竟

野 鍋山 等 ニ対 シ テ快 カ ラザ リ シト其 ノ孤 高狷 介 、 好 ンデ 異 ヲ樹 ツ ル

其 ノ心 境 ニ関 スル限 リ本 人 ニ再 犯 ノ虞顕 著 ナ リ ト謂 フ コト ヲ得 ズ

専 ラ近 世 日本 学 芸 復 興 期 ノ史 的 研鑚 ニ没 頭 シ傍 ラ植 物等 ノ攷 究 ニ従

治 的 転 向 ト同 ジ カ ラ ザ ル由 ヲ力 説 シ居 リ タ ル コト 竝 ニ本 人 ハ夙 ニ家

然 レド モ人 ノ将来 ヲ卜 セ ント セ バ須 ラ ク其 ノ 心境 ト共 ニ寰 境 ノ変 ヲ

フ ト共 ニ時 々其 ノ心 境 ヲ語 リ テ佐野 学 、 鍋 山 貞 親 等 所謂 転 向 派 ノ政

郷 ヲ懐 フ コト 切 ニ シテ屡 々頽 齢 衰残 ノ老 親 ニ思 ヲ馳 セ孤 愁 病 羸 ノ児

日 ヨリ シテ遽 ニ之 ヲ予断 スベ カ ラザ ル コト亦 固 ヨリ論 莫 シ、 然 リ ト

女 ト傾 覆 ニ垂 ント ス ル家 産 ヲ憂 ヒ テ已 マザ リ シ コト ヲ認 メ得 ベ ク今

雖 モ斯 ル事 態 ハ其 ノ到来 ス ルヲ必 ス可 ラズ、 況 ンヤ心 境 ノ随 テ再 転

キ ヲ保 セズ 、 厥 ノ期 ニ莅 ンデ本 人 果 シ テ如 何 ノ状 ヲ為 スベ キ ヤ ハ今

ニ沈 潜 シ明 治 維 新 乃 至 王政 復 古 ノ由 テ生 ジ タ ル所 以 ノ思 潮 ト我 国 体

ス ル ヲヤ、 若 シ万 一ヲ慮 ルト謂 ハバ 宜 シク思 想 犯 保 護 観 察 ノ制 ニ遵

考 勘 スベ キ ハ寔 ニ爾 リ、 征戦 久 ニ弥 レバ軍 後 ノ人 心 時 ニ弛廃 ス ル無

ト ヲ深 切 ニ玩 味 ス ル ニ〓 ンデ愈 々夫 ノ唯物 的 ナ ル共 産 主義 思 想 ヲ離

ヒ テ予 メ査 察 ヲ厳 ニシ、 他 日 心境 再 転 シテ為 ニ再 犯 ノ虞 顕 著 ナ ルヲ

備 ニ叙 上 ノ経 過 ヲ通覧 ス レバ 本 人 ハ 一朝 失 意 ノ境 ニ陥 ル ニ及 ンデ 先

脱 シ斯 テ曩 ノ ﹁福 本 イ ズ ム﹂ ニ現 レ タ ル異 質 的 萌 芽 ハ竟 ニ発展 シテ

ヅ 旧同 志 共 産 主 義者 ノ恃 ム ニ足 ラザ ル ヲ悟 リ次 デ 近 世 日本 史 ノ研 究

﹁此 ノ猶 太 人 的 性格 ノ陰 謀 団 (共 産 党 ) ニ亡滅 ア レ、 吾 等 ハ大 東 亜

致 サバ 始 メ テ用 フ ル ニ予防 拘 禁 ノ事 ヲ以 テ スベ シ、 境 変 未 ダ到 ラ ズ、 死 灰 再 燃 ノ危 険 切 迫 ス ル ニ〓 バ ズ シテ夙 ク已 ニ再 犯 ノ虞 顕 著 ナリ ト 理

由

本 件 抗 告 ハ之 ヲ棄 却 ス

称 シ濫 ニ予 防 拘 禁 ノ事 ヲ行 ハント スル ハ権 変 竟 ニ其 ノ可 ナ ル所 以 ヲ

ヨリ其 ノ抱 懐 セ ル理 論 ハ所 謂 マルク ス主義 ノ正系 ニ属 セザ ル モノ ト

為 シ又 日 本共 産 党 内 ニ於 テ本 人 ノ声 望 失墜 シテ其 ノ地 位 ノ変動 ア リ

本 件 抗告 理由 ハ (一) 原 決定 ハ本 人 ガ共 産 主義 運 動 ニ没 頭 セ ル当 時

後 ニ於 ケ ル再 犯 ノ虞 顕 著 ナ ルヲ認 ム ル ニ由 無 シ

シ事 実 等 ヲ挙 ゲ タ ル上 、本 人 ガ本 件 審 理 ニ際 シ将 来 共産 主義 運動 其

見 ズ 、 即 チ本 件 ニ於 テ寰 境 ト本 人 ノ心境 ト併 セ究 尽 スル モ竟 ニ釈 放

仍 テ当裁 判 所 ハ本件 請 求 ヲ 理由 ナ シト認 メ治 安 維 持 法 附則 第 四項 第

ノ他 政治 運動 ニ関 与 セザ ル旨 陳 述 シ タ ル ヲ綜 合 シ、 先 ヅ本 人 ノ 心境

事 

事 

裁 判 長 判 事 

横

島

飯

川

方

塚

敏

武

敏

雄

夫

夫

本 人 ハ有 数 ノ日 本 共産 党 員 卜 シ テ又同 党 内 ニ於 ケ ル理論 家 ト シ テ活

ヲ 以 テ直 チ ニ該 運動 ニ従 事 シ得 ル ヤ否 ヤ ヲ断 定 ス ル ハ当 ラ ズ、 現 ニ

ノ ミ ニ止 マラズ 、屡 々行 ハ レタ ルト コ ロ ニシ テ、 多 少 ノ理 論 ノ差 異

主義 運動 陣 営 内 ニ於 ケ ル理 論 的 争 ヒノ如 キ ハ単 リ本 人 ニ関 ス ル モノ

判

運 動 ヨリ離脱 スベ キ旨 表 明 シ而 モ同 主 義 ニ対 ス ル深 キ批 判 ヲ為 サ ズ

ト シ テ共 産 主義 ヲ信 奉 シ来 リ、 本件 審 理 開始 ニ際 シ始 メ テ共 産 主義

動 シ来 リ、而 モ受 刑 後 何 等 反 省 悔悟 スル コト ナ ク長 期間 ニ亙 リ依然

判

東 京 刑 事 地方 裁 判 所 第 三 部

ニ関 ス ル限 リ再 犯 ノ虞 顕 著 ナ リト ハ謂 ヒ難 シト判 定 シタ ル モ、 共 産

四 十 四条 ノ規 定 ニ循 ヒ決 定 スル コト 主文 ノ如 ク爾 リ

定

昭 和 十七 年 二 月 六 日

決

夫

本

情 ヲ観 ル ニ、 銃 後 一般 人 心緊 張 ノ反 面 ニ於 テ時 局 ノ推 移 ニ因 ル生 活

主 ト シ テ外部 的 理由 ヲ以 テ シタ ル ニ過 ギ ズ、 結 局 本 人 ハ未 ダ 共産 主

和

当 四 十 九年

本籍  鳥 取 県東 伯 郡 下 北 条 村 大 字 田井 三十 番 屋敷

福

義 思想 ヲ抛 棄 ス ル ニ至 ラザ ル モノ ト認 ム、 (二) 我 国 現 在 ノ 社 会 事 職 

現在  東 京 予 防拘 禁 所 無

ノ ア リ ト認 ムベ キ モノ ナ ル ニ拘 ラズ之 ヲ予 防 拘 禁 ニ付 セザ リ シ原 決

リ、 以 上 (一) 及 (二) ノ事 由 ヲ綜合 シ本 人 ニ再 犯 ノ虞 顕 著 ナ ル モ

環 境 ノ複 雑 ナ ル変 化 ニ乗 ジ不 逞 分 子 ノ躍 動 其 ノ後 ヲ絶 タザ ル状 況 ナ

右 ノ者 ニ対 ス ル予 防 拘 禁 請 求事 件 ニ付 昭和 十 七年 二 月六 日東 京刑 事 地 方 裁 判所 ノ為 シ タ ル本 人 ヲ予防 拘 禁 ニ付 セズ ト ノ決 定 ニ対 シ同 庁 検 事 正金 沢次 郎 ヨリ適 法 ナ ル即 時 抗 告 ノ申 立 ヲ為 シ タ ル ヲ以 テ当 院

ノ決 定 ヲ求 ム ル為 本件 抗 告 ニ及 ブ ト謂 フ ニ在 リ

案 ズ ル ニ本 件 記 録 竝 ニ参 考 資料 第 七 (本 人 ニ対 ス ル治 安 維 持 法違 反

定 ハ失 当 ナ ル ヲ以 テ茲 ニ原 決 定 ヲ取消 シ本 人 ヲ予防 拘 禁 ニ付 スル旨

文

ハ検事 ノ意 見 ヲ聴 キ決 定 ス ル コト左 ノ如 シ 主

ズ ト ノ思 想 ヲ有 シ居 リ タ ル本 人 ハ本 人 ガ 一卒 伍 ト シ テ党 ニ留 マリ具

入党 当 時 ヨリ 社会 ノ革 新 ハ ヨリ以 上 ノ精 神 生 活 ヲ随 伴 セザ ルベ カ ラ

サ ニ体 験 シ タ ル党 人 ノ 生活 ト 彼 此思 ヒ合 ハセ密 ニ共 産 主義 者 竝 ニ日

道 徳 的 ニ低 劣 ナ ル同 人 ノ 日常 行 動 ヲ目撃 ス ル ニ及 ビ 予 テ 日本 共 産 党

校 教 授 タ リ シガ、 其 ノ間 マル ク ス主 義 ノ研 究 ニ没 頭 シ遂 ニ共 産 主 義

本 共産 党 ニ対 シ不信 反 感 ノ念 ヲ抱 ク ニ到 レ ルガ昭 和 十 三年 頃 ヨリ近

被 告 事件 第 二審 記 録 ) ニ依 レバ 、本 人 ハ大 正 九 年 東 京 帝国 大 学 法 学

ヲ信 奉 ス ル ニ至 リ、 雑 誌 ﹁マル ク ス主 義 ﹂ ニ寄 稿 シ専 ラ共産 主 義 思

部 卒 業後 二 箇年 有 余 欧 米 ニ留 学 シ帰 朝 後 高 等 学 校 教 授 及高 等 商 業 学

想 ノ鼓 吹 ニ努 メ大 正十 五年 六 月 日本 共 産 党 ( 当 時 ﹁コ ン ミ ユ ニ ス

ル所 以 ノ史 的考 察 ニ没 頭 シ来 リ タ ル結 果 漸 ク我 国 ハ悠 久 二 千 六百 余

年 一大 家 族 的 国 家 ト シテ  天 皇 御 親 政 ノ下 ニ発 展 シ来 リ且 ツ将 来 モ

世 日本 史 ノ研 究 ニ志 シ爾 来 数 年 間 事 ラ明治 維新 ノ大 業 ノ由 テ生 ジ タ

無 窮 ニ存 続 発 展 スル万 邦 無 比 ノ国 体 ヲ成 シ、 彼 ノ氏 族 共 産 制崩 壊 後

ト ・グ ル ープ ﹂ ト称 ス) ニ加 入 シ爾来 政治 部 員 、 中 央 委員 等 ノ要 職

検 挙 セ ラ レ昭 和 九 年 五 月 二十 五 日東 京 控 訴院 ニ於 テ治 安 維持 法違 反

ノ歴史 ヲ目 シ テ階 級 闘争 ノ歴 史 ト做 シ階級 闘 争 ヲ以 テ社 会 発展 ノ動

ニ就 キ主 ト シ テ党 活動 ノ 理論 的 指 導 ニ従事 シタ ル為 、 昭 和 三 年 三 月

ノ罪 ニ依 リ懲 役 十 年 (未 決 勾留 日数 四 百 日 通算 ) ニ処 セ ラ レ、 同年

ノ 一ニ シテ我 国 ノ如 キ歴 史 的 発 展 ノ国 家 ニ ハ到 底 適 合 セザ ル謬 見 ナ

力 ト為 ス唯 物 史 観 ヲ基 礎 ト ス ル共 産 主 義 ノ如 キ ハ全 ク欧 羅 巴 的公 式

其 ノ後 網走 刑 務 所 釧 路 刑 務 支 所、 千 葉 刑 務 所 、 小菅 刑 務 所 等 ニ於 テ

ヨリ共産 主 義 ヲ抛 棄 シ随 テ又 日本 共 産 党 ヨ リ離脱 ス ル コト ヲ決意 シ

ル コト ヲ深 ク悟 ル ニ至 リ、即 チ 日本 歴 史 ヲ日 本的 ニ把 握 スル コト ニ

四 十 五 号減 刑 令 ニ依 リ其 ノ刑 ヲ懲 役 八 年 一月 十九 日 ニ変 更 セ ラ ル)、

該 刑 ノ執 行 ヲ受 ケ昭 和 十 六 年 十 二月 二十 日 ヲ以 テ其 ノ刑 ノ執 行 ヲ終

十 二月 六 日上 告 棄 却 ニ依 リ該 判 決 確 定 シ ( 其 ノ後 昭和 十 五 年 勅令 第

了 シ タ ル コト明 カ ナ リ、仍 テ本 件抗 告 ノ当 否 ニ付審 究 ス ル ニ、 原 裁

リ タ ルガ、 所 謂﹁二 七年 テ ー ゼ﹂ ノ作 成 ニ当 リ該 主 張 ガ ﹁コミ ンテ

摘 シ 日本 共 産 党 ノ ﹁コミ ンテ ルン﹂ ニ対 ス ル自 主 的 態 度 ヲ主張 シ来

党 当 時 ヨ リ ﹁コミ ンテ ルン﹂ ノ日 本資 本 主 義 分 析 ニ関 ス ル誤 謬 ヲ指

等 ノ所 謂 政 治 的 転 向 ト ハ頗 ル其 ノ趣 ヲ異 ニ シ共 産 主 義思 想 ヲ抛 棄 シ

自 己 ノ転 向 ガ曩 ニ転 向 声 明 書 ヲ発 表 シタ ル旧 同 志 佐 野 学、 鍋 山 貞 親

特 ニ所 謂 転 向声 明 ノ形 式 ヲ以 テ之 ヲ世 ニ表 明 セザ リ シ所 以 ノ モ ノ ハ、

其 ノ運 動 ニ関 与 ス ルノ意 思 ナ キ旨申 述 ブ ル所 ア リ タ ルガ、 其 ノ従来

リ千 葉 刑 務所 ニ移 監 当 初 係 官 ニ対 シ既 ニ共 産 主 義思 想 ヲ抛 棄 シ将 来

ニ精 励 シ来 リ タ ル モノ ニシテ、 昭和 十 五年 四 月前 記 釧路 刑 務 支所 ヨ

ル ン﹂ ヨリ痛 ク排撃 セ ラ レ而 モ日本 共 産党 ニ於 テ其 ノ責 任 ヲ専 ラ本

共 産主 義 的 政 治 運動 ニ携 ハラ ザ ル ハ勿 論、 其 ノ他 一切 ノ 政治 運 動 ニ

爾 後 旧 知 一切 ノ共 産 主 義 者 ト袂 別 シ、 専 ラ 日本歴 史 及 植 物 等 ノ研 究

人 ノ ミ ニ負 ハ シメ其 ノ党中 央 委 員 タ ル コト ヲ罷 免 シタ ル ヨ リ同 党 幹

関 与 セズ ト為 ス モノ ニ シテ、 若 シ彼 等 ニ倣 ヒ不 十 分 ナ ル形 式 ニ於 テ

判 所 竝 ニ当院 ニ於 ケ ル本 人 ノ取 調及 其 ノ提 出 ニ係 ル各 上 申 書 ニ於 テ

部 ノ功 利 的 措 置 ニ対 シ釈 然 タ ラザ ル モノア リ シガ、 前 記 釧 路刑 務 支

転 向 ヲ表 明 セ ン カ彼 等所 謂 転 向 派 ト 同 視 セ ラ レ之 ニ呼掛 ケ ラ ル ル虞

本 人 ノ陳 述 ス ル所 ノ要 旨 ハ、 本 人 ハ大 正十 五 年 六 月 日本 共 産 党 ニ入

スル革 命 論及 戦 争 観 ヲ聞 知 シ テ其 ノ理 論 ノ貧 困 ナ ル ニ唖 然 ト シ更 ニ

所 在 監当 時 偶 々同 支 所 在 監中 ノ党 首 脳 部 ノ 一人 タ リ シ旧 同 志 ノ主張

キ ヲ懸 念 シ タ ルト所 謂 ﹁二 七 年 テー ゼ﹂ ヲ繞 リ テ前 示佐 野 学 ニ対 シ

ア リ、 斯 ク テ ハ将 来 継 続 セ ン コト ヲ欲 ス ル前 記 研 究 ニ支 障 ヲ来 スベ

一件 記 録 及参 考 資 料 ヲ以 テ ス ル モ到 底 右 認定 ヲ覆 ヘ シ本 人 ノ上叙 陳

ケ ル真 実 ノ 心境 ヲ吐 露 シタ ル モノ ト認 ム ル ヲ相 当 ト スベ ク、其 ノ他

五 ﹂ ノ各 記載 ニ対 比 シテ考覈 ス ルト キ ハ、 右 本 人 ノ陳 述 ハ現 在 ニ於

述 ガ故 ラ予防 拘 禁 ヲ 免 レンガ為 ニ出 デ タ ル虚 偽 ノ モノト ハ断 ジ難 シ、

個 人的 反 感 ヲ抱 キ居 リ 且 ツ彼 等 転向 者 ノ転 向声 明後 ニ於 ケ ル得 々 タ ル態 度 ヲ嫌 忌 シ其 ノ後 塵 ヲ拝 ス ル ヲ潔 シト セザ リ シ為 、 寧 ロ新 ナ ル

果 シ テ然 ラバ現 時 ノ如 キ客 観的 情 勢 ノ下 ニ於 ケ ル我 国 社 会 ニ本 人 ヲ

ノ思想 及行 動 ヲ観 察 シ、 他 日若 シ心 境 再転 シテ再 犯 ノ虞 顕 著 ナ ル ニ

声 明方 法 ヲ選 バ ント欲 シ テ慎 重 ヲ期 シタ ルト 又本 人 ハ釈 放 後 ハ直 ニ

至 ラバ機 ヲ移 サズ シ テ之 ヲ予防 拘 禁 ニ付 ス ルヲ以 テ足 ル モノ ト謂 ハ

釈 放 ス ル モ直 ニ以 テ再 犯 ノ虞 ア ル コト顕著 ナ リ ト謂 フ ヲ得 ザ ルベ ク

固 タ ル決 意 ア リ、 而 シ テ此 ノ修 史 ノ業 タ ル偏 ニ日本 精 神 ヲ中 外 ニ宣

ザ ルベ カ ラズ 、仍 テ本 件 予防 拘 禁 ノ請 求 ヲ理由 ナ シト シ テ本 人 ヲ予

郷 里 ニ隠 棲 シ老 父 ニ奉 養 シ子 女 ヲ撫 育 スル ノ傍 ラ、 在 監 中 ニ殆 ド其

揚 セ ン コト ヲ企 図 スル モノ ニシテ凡 ソ共 産 主義 ト ハ異 質 相 容 レザ ル

防 拘 禁 ニ付 セ ザ リ シ原 決 定 ハ洵 ニ相 当 ニ シテ本 件 抗 告 ハ結 局 理由 ナ

若 シ又 万 一ヲ慮 ル ニ於 テ ハ須 ク思 想 犯保 護 観 察 法 ニ則 リ 釈 放 後直 ニ、

モノ ナ レバ、 之 ガ完 成 公 表 ハ自 己 ノ共 産 主義 ノ清 算 克 服 ヲ実 証 シ延

キ ニ帰 ス ルヲ以 テ之 ヲ棄 却 スベ キ モノト ス

本 人 ヲ保 護 観 察 ニ付 シ以 テ 更 ニ罪 ヲ犯 スノ危 険 ヲ防 止 スル為 厳 ニ其

テ共 産 主 義 ノ打 倒 ニ自 信 ア ル攻撃 ヲ寄 与 シ得 ル所 以 ナ レバ 敢 テ進 ン

仍 テ治 安 維 持 法 第 五 十 二 条刑 事 訴 訟 法 第 四百 六十 六 条 第 一項 ニ則 リ

ス ル近 世 日本 文 化 史 ノ完 成 ニ精 進 努 力 シ軈 テ之 ヲ公 ニセ ント ス ル牢

デ所 謂 転 向表 明 ノ如 キ形 式 ニ捉 ハレザ リ シ モ ノ ナリ ト謂 フ ニ在 リ テ、

主 文 ノ如 ク決 定 ス

ノ年 表 ノ完結 ヲ見 タ ル ﹁近 世 日 本学 芸 復 興 期 ノ綜 合 比較 研 究 ﹂ ト題

ノ陳 述 記 載、 原 裁 判 所 ニ於 ケ ル参 考 人 安達 本識 、 篠 崎 保 伯 、 楠 下芳

判

事 

事 

裁 判 長 判事 

下

内

佐

山

水

藤

四

主

竜

一

馬

郎

判

東 京控 訴 院 第 二 刑事 部

昭 和 十 七年 四月 二 十 三 日

右 本 人 ノ主張 ス ル所 ヲ参 考 人安 達 本 識 ニ対 ス ル検 事 聴 取 書 中 ノ同 人

輝 、 福 井 徹 ニ対 スル各 取 調書 中 ノ同 人 等 ノ陳 述 記 載 、 千 葉 刑 務所 保 健 技 師 本 間賢 吉 名 義 ノ回 答書 卜題 ス ル書 面 ノ記 載 、 参 考 安料 第 一第 二 第 七 乃至 第 九 第 十 一第 十 二 ノ各 記 載 、 昭和 十 七 年 二月 二 十 四 日附 本 人 提出 ノ ﹁近 世 日 本 学 芸復 興 期 年 表 追補 第 四﹂ 及 ﹁醜 ノ御 楯﹂ 竝 ニ同 年 三 月十 六 日附 本 人提 出 ノ ﹁近 世 日本 学 芸 復 興 期 年 表 追 補 第

昭和十 六年五月九日 ( 司法省令第四十七号 )

指 定 弁 護 士 名 簿 ニ ハ弁 護 士 ノ氏 名 、 住所 、 生 年 月 日、 登 録 年 月 日、

第 七条  司 法 大 臣 ハ指 定 弁 護 士 名簿 ヲ調製 シ之 ヲ司法 省 ニ備 フ

ヲ公 告 ス指 定 ノ取 消 ヲ為 シ タ ルト キ 亦同 ジ

第 六条  指 定 ヲ為 シ タ ルト キ ハ本 人 ニ其 ノ旨 ヲ通知 シ官 報 ヲ以 テ之

ノ確 定 ノ時 迄 指 定 ノ効力 ヲ有 ス

第 五条  指 定 ノ効 力 ハ 一年 ト ス但 シ選 任 セラ レタ ル事 件 ニ付 テ ハ其

三 三  予 防 拘 禁 関 係 資 料 (一 九四一)

a 弁護士指定規程

第 一条  国 防 保 安 法第 二十 九 条 及 治 安 維 持 法第 二十 九 条 ノ規 定 ニ依 ル弁 護 士 ノ指 定 ハ本 規 程 ノ定 ム ル所 ニ依 ル

ス

登録 番 号 、 所 属 弁護 士 会 及事 務所 其 ノ他 必 要 ト認 ム ル事 項 ヲ記載

第 二条  司 法 大 臣 ハ十 年 以上 弁 護 士 タ ル者 ノ中 ヨリ毎 年 予 メ相 当 数

ニ於 テ其 ノ理 由 ア リ ト認 ム ルト キ ハ之 ヲ指 定 セズ

則

ノ弁 護 士 ヲ指 定 ス但 シ予 メ指 定 ヲ欲 セザ ル旨 ノ申 出 ア リ タ ル場 合

附

関 スル部 分 ハ治 安 維 持 法 改 正法 律 施 行 ノ 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

本 令 中 国 防 保 安法 ニ関 スル部 分 ハ同 法 施 行 ノ日 ヨリ、 治 安 維持 法 ニ

本 令 ニ依 ル指 定 ハ昭和 十 六年 ニ限 リ施 行 後 之 ヲ行 フ コト ア ルベ シ

一 国 防 保 安法 第 十 六条 ニ規 定 ス ル事 件 又 ハ治 安 維持 法 違 反 事 件

第 三条  左 ノ各 号 ノ 一ニ該 当 スル者 ハ之 ヲ指 定 セズ

ニ付 罰 金 刑 ニ処 セ ラ レ、 刑 ノ執 行 猶予 ノ言 渡 ヲ受 ケ若 ハ起 訴 猶

本 令 ニ依 リ 昭和 十 六年 ニ於 テ為 ス指 定 ハ昭 和 十 七年 十 二月 三十 一日

)

セザ ル者

迄 其 ノ効 力 ヲ有 ス

b 予防拘禁手続令

第 一条  検 事 予 防 拘 禁 ニ付 スベ キ者 ア リト思 料 ス ルト キ ハ速 ニ本 人

昭和十六年 五月十 四日 ( 司 法省令 第 四十 九 号

予 処 分 ニ付 セラ レタ ル者 又 ハ公 訴 ノ提 起 ヲ受 ケ テ其 ノ裁 判 確 定

ル者 ニシテ指 定 ヲ適 当 ナ ラズ ト認 ムル モノ

二  前 号 ニ規 定 スル事 件 以 外 ノ刑 事 事 件 ニ付 前 号 ノ処 分 ヲ受 ケ タ

三  思想 、経 歴 其 ノ他 ノ事 由 ニ因 リ指 定 ヲ適 当 ナ ラズ ト認 ム ル者 第 四条  指 定 セ ラ レ タ ル弁護 士 ニ シテ前 条 各 号 ノ 一ニ該 当 スル ニ至 リ タ ルト キ ハ其 ノ指 定 ハ之 ヲ取消 ス

検事 ハ前 項 ノ事 項 ノ 取 調 ヲ他 ノ検 事 ニ嘱託 シ又 ハ司 法 警 察官 ヲ シ

項 ノ取 調 ヲ 為 スベ シ

ノ経 歴 、 境 遇 、性 行、 心身 ノ状 況 、思 想 ノ推 移 其 ノ他 必 要 ナ ル事

ベシ

同 行 状 ノ執 行 ニ関 ス ル書 類 ハ執 行 ヲ指 揮 シタ ル検 事 ニ之 ヲ差出 ス

印 スベ シ

載 シ之 ヲ執 行 ス ル コト能 ハザ ルト キ ハ其 ノ事 由 ヲ記載 シテ記 名捺

第 十 条  検 事 取 調 ノ結 果 ニ依 リ予 防 拘 禁 ニ付 スベ キ モノ卜思 料 ス ル

其 ノ取 調 ヲ為 スベ シ

第 九条  検 事 同 行 状 ノ執 行 ヲ受 ケ タ ル本 人 ヲ受 取 リ タ ルト キ ハ速 ニ

テ其 ノ 取調 ヲ為 サ シ ム ル コト ヲ得 第 二 条  監 獄 ノ長 又 ハ保 護観 察 所 長 其 ノ職 務 ヲ行 フ ニ因 リ予 防拘 禁 ニ付 スベ キ者 ア ル コト ヲ認 知 シタ ルト キ ハ検 事 ニ対 シ書 画 ヲ以 テ

ト キ ハ書 面 ヲ以 テ予 防 拘禁 委 員 会 ノ意 見 ヲ求 ムベ シ

予 防拘 禁 ノ申 立 ヲ為 スベ シ 前 項 ノ書 面 ニ ハ申 立 ノ理由 ヲ記 載 シ且 参 考 ト 為 ルベ キ資 料 ヲ添附

前 項 ノ書 面 ニ ハ予 防 拘 禁 ニ付 スベ キ モノ ト思 料 ス ル理由 ヲ記 載 シ

前 項 ノ書 而 ニ ハ請 求 ノ理 由 ヲ記 載 シ且予 防 拘 禁 委 員 会 ノ意 見書 其

第 十 四条  予 防 拘 禁 ノ請 求 ハ書 面 ヲ以 テ之 ヲ為 スベ シ

ヲ得

第 十 三 条  検事 ハ予防 拘 禁 委 員 会 ノ審 議 ニ列 席 シ意 見 ヲ述 ブ ル コト

ル コト ヲ得

第 十 二条  予防 拘 禁 委 員 会 ハ検 事 ニ対 シ必 要 ナ ル事 項 ノ取 調 ヲ求 ム

条 ノ書 面 、書 類 及 資 料 ヲ還 付 スベ シ

意 見 決 シタ ルト キ ハ直 ニ書 面 ヲ以 テ検 事 ニ其 ノ意 見 ヲ通 知 シ且前

第 十 一条  予防 拘 禁 委 員 会 ハ速 ニ審 議 ヲ為 シ意 見 ヲ決 スベ シ

且 取 調 ニ関 スル書 類 及 参考 ト為 ルベ キ資料 ヲ添 附 スベ シ

スベ シ

第 三条  治安 維 持 法 第 四十 一条 第 二項 ニ規 定 スル本 人 ノ同 行 ハ同 行 状 ヲ発 シテ之 ヲ為 スベ シ 同 行 状 ニ ハ本人 ヲ同 行 セ シ ムベ キ 理由 、 本 人 ノ氏 名 及住 居 ヲ記 載 シ検 事 之 ニ記 名捺 印 スベ シ但 シ本 人 ノ住 居 分 明 ナ ラザ ルト キ ハ之 ヲ記 載 スル コト ヲ要 セズ 第 四条  同 行状 ハ数 通 ヲ作 リ之 ヲ司 法 警 察 官 吏 数 人 ニ交 付 ス ル コト ヲ得 第 五条  司 法警 察 官 吏 ハ必要 ア ルト キ ハ管 轄 区域 外 ニ於 テ同 行状 ノ 執 行 ヲ為 シ又 ハ其 ノ他 ノ司 法 警察 官 ニ其 ノ執 行 ヲ求 ム ル コト ヲ得 第 六条  同 行状 ヲ執 行 ス ル ニ ハ之 ヲ本 人 ニ示 シテ同 行 ヲ命 ジ タ ル検

者 ハ請 求 ヲ受 ケ タ ル裁 判 所 ニ書 面 ヲ以 テ許 可 ノ申 請 ヲ為 スベ シ

第 十 五 条  治安 維 持 法 第 四十 七 条 ノ規 定 ニ依 リ輔 佐 人 タ ラ ント ス ル

ノ他 ノ書 類 及参 考 ト為 ルベ キ資料 ヲ添附 スベ シ

第 七条  軍事 用 ノ庁 舎 又 ハ艦 船 ノ内 ニ在 ル者 ニ対 シ同 行 状 ヲ執 行 ス

申 謗 書 ニ ハ本 人 ヲ シテ連 署 セシ メ且 本 人 ト ノ身 分 関 係 ヲ証 スル書

事 ニ引 致 スベ シ

ヲ示 シ テ引渡 ヲ求 ムベ シ

面 ヲ添 附 スベ シ

ベ キ場 合 ニ於 テ ハ庁 舎 若 ハ艦 船 ノ長 又 ハ之 ニ代 ルベ キ者 ニ同 行 状

第 八条  同 行状 ヲ執 行 シタ ルト キ ハ之 ニ執 行 ノ場 所 及 年 月 日時 ヲ記

第 十 六条

前 条 ノ申 請 ア リ タ ル ト キ ハ裁 判所 ハ検 事 ノ意 見 ヲ聴 キ輔

裁 判 所 本 人 ヲ シ テ陳 述 ヲ為 サ シ メ又参 考 人 ヲ シ テ事 実

ノ陳 述 若 ハ鑑定 ヲ為 サ シム ル場 合 ニ於 テ ハ裁 判所 書 記 ヲ列 席 セ シ

第 二 十 一条

ムベシ

佐 人 タ ラ ント ス ル者 ノ思 想 、 経 歴其 ノ他 ノ事 情 ヲ斟 酌 シ テ許 否 ヲ 決 スベ シ

前 条 ノ 調書 ニ ハ左 ノ事 項 其 ノ他 必 要 ト認 ム ル事 項 ヲ記

出 頭 命 令 状 ニ ハ出 頭 スベ キ事 由 、 本 人 ノ氏 名 及住 居 ヲ記 載 シ裁判

命 令 状 ヲ発 シテ之 ヲ為 スベ シ

調 書 ニ ハ裁 判 長裁 判 所 書 記 ト 共 ニ署 名捺 印 スベ シ

五  検事 及 輔 佐 人 ノ意 見 ノ要 旨

四  本 人 ノ陳述 及参 考 人 ノ事 実 ノ陳 述若 ハ鑑 定 ノ要 旨

三  本 人 陳 述 ヲ肯 ゼ ズ 又 ハ逃 亡 シ タ ルト キ ハ其 ノ旨

氏名

二  判 事 、 検事 及裁 判 所 書 記 ノ官 氏 名 竝 ニ本 人 、輔 佐 人及 通 事 ノ

一 陳 述 ヲ聴 キ又 ハ取 調 ヲ為 シ タ ル裁 判所 及 年 月 日

載 スベ シ

第 二十 二 条

裁 判 所書 記 ハ調書 ヲ作 成 スベ シ

ベシ

許 否 ヲ決 シタ ルト キ ハ輔 佐 人 タ ラ ント ス ル者 及 本 人 ニ之 ヲ通 知 ス

予 防 拘 禁 ノ請 求 ア リ タ ルト キ ハ裁 判 所 ハ本 人 ノ陳 述 ヲ聴

ク為 速ニ 期 日 ヲ定 ムベ シ

第 十 七条

期 日 ヲ定 メ タ ルト キ ハ之 ヲ検 事 及 輔 佐 人 ニ通知 スベ シ

長 之 ニ記 名 捺 印 スベ シ

裁 判 長 差 支 ア ルト キ ハ上 席 ノ判 事 其 ノ事 由 ヲ附 記 シテ署 名 捺 印 ス

第 十 八条  裁 判 所 書 面 ヲ以 テ本 人 ニ出 頭 ヲ命 ズ ル場 合 ニ於 テ ハ出頭

ルト キ ハ勾 引 状 ヲ発 ス ル コト ア ルベ キ旨 ヲ モ記 載 スベ シ

出 頭 命 令 状 ニ ハ本 人 ノ出 頭 スベ キ年 月 日時 、 場 所 及 命 令 ニ応 ゼ ザ

ベシ

為 サ シ ム ル コト ヲ得

本 人 又 ハ参 考 人聾 者 又 ハ唖 者 ナ ル場 合 ニ於 テ ハ通事 ヲ シテ通 訳 ヲ

サ シムベ シ参 考 人 国語 ニ通 ぜザ ル場 合 ニ付 亦 同 ジ

第 二十 三 条  本 人 国 語 ニ通 ゼザ ル場 合 ニ於 テ ハ通 事 ヲ シテ通 訳 ヲ為

ベシ

裁 判 所 書 記 差 支 ア ルト キ ハ裁 判 長其 ノ事 由 ヲ附 記 シ テ署 名 捺 印 ス

出 頭 命 令 状 ハ書 留 郵便 其 ノ他 相 当 ノ方 法 ニ依 リ之 ヲ送 達 スベ シ 第 十 九条  裁 判 所 書 面 ニ依 ラズ シテ本 人 ニ出頭 ヲ命 ジ タ ル場 合 ニ於 テ ハ出 頭 ヲ命 ジ タ ル コト及 命 令 ノ内 容 ヲ帳 簿 ニ記 載 シ又 ハ其 ノ 他 適 当 ノ方 法 ニ依 リ之 ヲ明確 ナ ラ シ ム ル処 置 ヲ講 ズ ベ シ

合 ニ於 テ ハ速 ニ取 調 期 日 ヲ定 ムベ シ

国 語 ニ非 ザ ル文 字 又 ハ符 号 ハ之 ヲ飜 訳 セ シム ル コト ヲ得

第 二 十条  裁 判 所 参 考 人 ヲ シテ事 実 ノ陳 述 又 ハ鑑定 ヲ為 サ シ ム ル場

裁 判 所 必 要 ア リ ト認 ム ルト キ ハ取 調 ノ席 ニ本 人 ヲ在 席 セ シ ム ル コ

ナ ルト キ ハ監 獄 ノ長 ニ、 本 人 保 護 観察 ニ付 セ ラ レ居 ル者 ナ ルト キ

第 二十 四 条  検事 予 防拘 禁 ノ請 求 ヲ為 シ タ ル場 合 ニ於 テ本 人 在 監 者

ト ヲ得 裁 判 所 取 調期 日 ヲ定 メ タ ルト キ ハ之 ヲ検 事 及輔 佐 人 ニ通 知 スベ シ 但 シ急 速 ヲ要 ス ルト キ ハ此 ノ 限 ニ在 ラズ

ハ保 護 観察 所 長 ニ其 ノ旨 ヲ通 知 スベ シ予 防 拘 禁 ノ決 定 確 定 シタ ル

又 ハ第 五 百 四 十 六条 ニ掲 グ ル事 由 ア リ 卜思 料 スルト キ亦 前 項 ニ同

同 条 第 四項 ノ規 定 ニ依 リ準 用 セ ラ ル ル刑 事 訴 訟 法第 五百 四 十 四条

ヲ退所 セシ ムベ キ モノ ト思 料 スルト キ ハ本 人 ノ現 在 地 ヲ管 轄 ス ル

第 二十 九 条  予 防 拘禁 所 長 治 安 維 持法 第 五十 八 条 ノ規 定 ニ依 リ本 人

ジ

場合亦同ジ

ヲ為 サザ ルト キ ハ申 立 ヲ為 シタ ル監 獄 ノ長 又 ハ保 護 観 察 所 長 ニ其

第 二 条 ノ規 定 ニ依 ル申 立 ア リ タ ル場 合 ニ於 テ検 事 予 防 拘 禁 ノ請 求

ノ旨 ヲ通知 スベ シ

ヲ求 ムベ シ

地方 裁 判 所 ノ検 事 ノ意 見 ヲ聴 キ書 面 ヲ以 テ予 防 拘 禁 委員 会 ノ意 見

人 ノ思 想 ノ推 移 、 行 状其 ノ他 参 考 ト為 ルベ キ事 項 ニ関 ス ル調 査書

前 項 ノ書 面 ニ ハ退所 セ シム ベ キ モノ 卜思 料 ス ル理 由 ヲ記 載 シ且本

合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

第 二十 五 条  第 一条 乃 至 前条 ノ規 定 ハ予 防 拘 禁 ノ期 間 ヲ更 新 ス ル場

キ ハ検事 ハ刑 ノ執 行 終 了後 引続 キ予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ為 スベ キ旨 ヲ

予 防拘 禁 所 長 及 検事 ハ予防 拘 禁 委 員 会 ノ審 議 ニ列 席 シ意 見 ヲ述 ブ

類 及資 料 ヲ添 附 スベ シ

第 二十 六 条  受 刑 者 ニ対 シ予防 拘 禁 ニ付 スル旨 ノ決定 確 定 シ タ ルト

指 揮 スベ シ

ル コト ヲ得

第 二十 七 条  本 人 刑 ノ執 行 又 ハ仮 収 容 ノ為 監 獄 ニ在 ルト キ ハ予防 拘 禁 ノ執 行指 揮 ニ関 ス ル書 類 ハ本 人 ノ在 監 ス ル監 獄 ノ長 ヲ経 由 シ テ

第 十 一条 及 第 十 二条 ノ規 定 ハ第 一項 ノ場 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

前 項 ノ書 面 ニ ハ予 防 拘 禁委 員 会 ノ意 見 書其 ノ 他 ノ書 類 及参 考 ト 為

テ司法 大 臣 ノ許 可 ヲ受 クベ シ

第 三 十条  予 防 拘 禁 所 長 本 人 ヲ退 所 セ シメ ント ス ルト キ ハ書 面 ヲ以

予 防 拘 禁 所長 ニ送 付 スベ シ此 ノ場 合 ニ於 テ ハ検事 ハ予防 拘 禁 ノ執

監 獄 ノ長執 行 指 揮 ニ関 スル書 類 ヲ受 取 リ タ ルト キ ハ速 ニ本 人 ヲ予

行 ヲ指 揮 シタ ル旨 ヲ予 防拘 禁所 長 ニ通 知 スベ シ

防 拘 禁 所 ニ移 送 スベ シ但 シ本 人受 刑 者 ナ ルト キ ハ刑 ノ執 行 終 了 後

ルベ キ資 料 ヲ添 附 スベ シ

則

本 令 ハ昭 和 十 六年 五月 十 五日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

附

ヲ保 チ本 人其 ノ他 ノ者 ノ名 誉 ヲ殿 損 セザ ル コト ニ注 意 スベ シ

第 三 十 二条  予 防 拘 禁 委 員会 ノ審 議 其 ノ他 予防 拘 禁 ニ関 シ テ ハ秘 密

防 拘 禁 ノ執 行 ヲ免 除 スル場 合 ニ付 之 ヲ準 用 ス

第 三 十 一条  前 二条 ノ規 定 ハ治 安 維 持 法 第 五 十 九条 ノ規 定 ニ依 リ予

速 ニ之 ヲ為 スベ シ 監 獄 ノ長 ハ看 守 長 、 副 看 守 長 又 ハ看 守 ヲ シテ本 人 ヲ押送 セシ ム ル コト ヲ得

リ予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ停 止 スベ キ事 由 ア リ ト思 料 スルト キ ハ速 ニ其

第 二十 八 条  予 防 拘 禁 所 長 治 安 維持 法 第 五十 七 条 第 三 項 ノ規 定 ニ依

ニ必 要 ア リ ト認 ム ルト キ ハ決 定 ヲ為 シタ ル裁 判 所 ノ検事 ニ モ通 知

ノ旨 ヲ本 人 ノ現 在 地 ヲ管 轄 ス ル地 方 裁 判 所 ノ検 事 ニ通知 スベ シ特

スベ ジ

c 予防拘禁手続 ニ関 スル稟請 及報告方 ノ件 昭和十六年 八月二十 六日秘第 一八九二号検事総長、控訴 ( 院長、検 事長、地方裁判所長、検事 正宛司法大臣訓令

第 一条  予 防拘 禁 手 続 ニ関 スル稟 請 及報 告 ニ付 テ ハ本 訓令 ニ従 ヒ処 理 スベ シ

)

第 二条  稟 請 及報 告 ハ書 面 ヲ以 テ之 ヲ為 スベ シ但 シ急 速 ヲ要 ス ル モ ノ ハ口頭 、電 話 又 ハ電 信 ヲ以 テ之 ヲ為 シ タ ル後速 ニ成規 ノ手 続 ヲ 為 スベ シ

其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ第 四条 但書 ニ依 リ指 揮 ヲ為 シタ ルト キ ハ司 法 大 臣 ニモ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

検 事総 長 本訓 令 ニ依 リ指 揮 ヲ為 シタ ルト キ ハ速 ニ司 法 大 臣 ニ其 ノ 旨 ヲ報告 スベ シ

及 検 事 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ

第 七 条  左 ニ掲 グ ル場 合 ニ於 テ ハ検事 正 ハ速 ニ司法 大 臣 、 検事 総 長

又 ハ予 防拘 禁 ニ付 スベ キ者 ニ付 取 調 ニ着 手 シ タ ルト キ

一 監 獄 ノ長 若 ハ保 護 観 察 所 長 ヨリ 予 防拘 禁 ノ申 立 ア リ タ ルト キ

三  予 防 拘 禁委 員 会 ノ意 見 ヲ求 メ タ ルト キ

二  本 法 第 四十 二条 ニ依 リ仮 収 容 ヲ為 シタ ルト キ

シテ其 ノ指揮 ヲ受 ク ベ シ

第 三 条  左 ニ掲 グ ル場 合 ニ於 テ ハ検事 正 ハ予 メ検事 長 ニ事 情 ヲ具 申

四  予 防拘 禁 ノ請 求 ヲ為 シ又 ハ請求 ヲ為 サザ ル旨 ノ処 分 ヲ為 シタ

六  予 防 拘禁 ニ関 ス ル裁 判 所 ノ決定 ニ対 シ即 時抗 告 ヲ為 シ又 ハ其

分 ヲ為 シ タ ルト キ

五  予 防 拘禁 期 間 ノ更 新 ノ請 求 ヲ為 シ又 ハ請 求 ヲ為 サ ザ ル旨 ノ処

ルト キ

一 予 防 拘禁 ノ請 求 ヲ為 シ又 ハ請 求 ヲ為 サザ ルト キ ( 本 人 ノ死 亡 又 ハ責 任能 力 ノ欠 缺 ノ理 由 ニ因 リ請 求 ヲ為 サザ ル場 合 ヲ除 ク) 二  予 防 拘 禁 期間 ノ更 新 ノ請 求 ヲ為 シ又 ハ請 求 ヲ 為 サ ザ ル ト キ (本 人 ノ死 亡 又 ハ責 任 能 力 ノ欠缺 ノ 理由 ニ因 リ請 求 ヲ為 サザ ル 場 合 ヲ除 ク)

ノ申 立 アリ タ ルト キ

七  予 防 拘 禁 ノ執 行 指 揮 ヲ為 シ タ ルト キ

三  予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ免 除 ス ルト キ 前 項 ニ依 リ検事 長 ノ指 揮 ヲ請 ヒタ ルト キ ハ検 事 正 ハ直 ニ司 法 大 臣

八  予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ免 除 シ タ ルト キ

ルト キ亦 同 ジ

司 法 大 臣 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ決定 ニ対 シ即 時抗 告 ノ申 立 アリ タ

等 ニ関 ス ル抗 告 事 件 ニ付 決 定 アリ タ ルト キ ハ該裁 判 所 ノ長 ハ速 ニ

第 八 条  予防 拘 禁 請 求 事 件 若 ハ予 防拘 禁 期 間 ノ更新 請 求 事 件 又 ハ之

十  退 所 処 分 ニ因 リ本 人 釈 放 セ ラ レタ ルト キ

九  予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ停 止 シ タ ルト キ

及 検 事 総 長 ニ其 ノ旨 ヲ報 告 スベ シ 第 四条  検 事 長前 条 ニ依 リ指 担 ヲ為 サ ント スルト キ ハ予 メ検 事 総 長 ニ事 情 ヲ具 申 シ テ其 ノ指 揮 ヲ受 クベ シ但 シ急 速 ヲ要 シ予 メ指 揮 ヲ 受 ク ルノ遑 ナ キト キ ハ此 ノ限 ニ在 ラズ

臣 ニ事 情 ヲ具 申 シテ其 ノ指 揮 ヲ受 クベ シ

第 五条  検 事 総 長前 条 ニ依 リ指 揮 ヲ為 サ ント スルト キ ハ予 メ司 法 大

第 六条  検 事 長 本訓 令 ニ依 リ指 揮 ヲ為 シタ ルト キ ハ速 ニ検 事 総 長 ニ

前項前段 ノ報告書 ニ ハ決定書 ノ謄本二通 ヲ添附 スベ シ 一 本人 ノ氏名、年齢、職業、本籍及住居

第九条 第三条 ニ依 ル禀請書 ニハ概 ネ左ノ事項 ヲ記載 スベ シ 二 本 人受刑者 ナルトキ ハ其 ノ在監 スル監獄名、罪名竝 ニ刑 ノ始 期及終期 三 本 人保護観察 ニ付 セラレ居 ルモノナルトキ ハ其 ノ保護観察所 名竝 ニ保護観 察処分 ノ始期及終期 四 本人予防拘禁 ノ執行 ヲ受 ケ居 ルモノナルトキ ハ其 ノ在所 スル

d 予防拘禁委員会官制

昭和十六年五月十四日 公布 ( 勅 令 第 五 百 五 十 八号

)

第 一条  予防 拘 禁委 員 会 ハ司 法 大臣 ノ監 督 ニ属 シ治 安 維 持 法 第 四十

ニ属 セ シメ タ ル事 項 ヲ審 議 ス

条 、 第 五十 五条 、 第 五十 八条 及第 五十 九 条 ノ規 定 ニ依 リ其 ノ権 限

各 委 員 会 ニ予 備 委 員 四 人 ヲ置 ク

第 二条  各委 員 会 ハ会 長 一人 及 委員 六 人 ヲ 以 テ之 ヲ組織 ス

第 四 条  会 長 、 委 員 及 予 備委 員 ノ任 期 ハ二 年 ト ス

ノ中 ヨリ司 法 大 臣 之 ヲ命 ズ

第 三条  会 長 、 委 員 及 予備 委 員 ハ司 法 部内高 等 官 及 学識 経 験 ア ル者

第 五 条  会 長 ハ会 務 ヲ総 理 ス

予防拘禁所 名竝 ニ予防拘禁ノ始 期及終期 六 処分理由

議ヲ開 ク コト ヲ得 ズ

第 七条  委 員 会 ハ会 長 及委 員 ヲ併 セ五 人 以 上出 席 スル ニ非 ザ レバ 会

中 ヨリ代 理 ヲ命 ズ

第 六 条  委 員 中事 故 ア ルト キ又 ハ欠 員 ア ルト キ ハ会長 ハ予 備委 員 ノ

会 長 事 故 ア ルト キ ハ其 ノ指 名 ス ル委 員 其 ノ職 務 ヲ代 理 ス

五 取調 ノ端緒 七 本人 ノ経歴、境遇及心身 ノ状況 八 思想 ノ推移 九 身柄拘束不拘束ノ別 十  予防拘禁委員会 ノ意 見

ヲ決 ス

委 員 会 ノ議 事 ハ過 半 数 ニ依 リ之 ヲ決 ス可 否 同 数 ナ ルト キ ハ会 長 之

十 一 主任検事 ノ氏名 十二 原決定 ヲ為 シタル裁判所名

大 臣 之 ヲ定 ム 附

本 令 ハ昭和 十 六年 五 月十 五 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

則

第 九 条  本 令 ニ規 定 スル モ ノノ外 委 員 会 ニ関 シ必要 ナ ル事 項 ハ司 法

書 記 ハ会 長 ノ指 揮 ヲ承 ケ庶 務 ニ従事 ス

第 八 条  各 委 員 会 ニ書 記 ヲ置 ク司 法 大 臣 之 ヲ命 ズ

十三 其 ノ他参考 卜為 ルベキ事項 特 ニ必要 ア ルトキ ハ予防拘禁委員会 ノ答申書、重要 ナ ル調査其 ノ他 ノ書 類ノ謄本 又 ハ抄本 ヲ稟請書 ニ添附 スベ シ 五号 ノ処分 ヲ為 シタ ル場合 ニ於 ケ ル報告書 ノ記載 ハ前 条ノ例 ニ依

第十条 第 四条但書 ニ依 ル検事長 ノ指揮 ヲ受 ケ第七条第 四号 又 ハ第 ル

e 予防拘禁処遇令

昭和十六年 五月十四日 ( 司 法 省令 第五 十号 )

第 一条  予 防 拘 禁 ノ執 行 ヲ受 ク ル者 (以下 被 拘 禁 者 ト称 ス) ニ ハ収 容 ノ際 其 ノ衣 類 及身 体 ノ検 査 竝 ニ其 ノ健 康 ノ診 査 ヲ為 スベ シ収 容 後 必 要 ア リ 卜認 ム ルト キ亦 同 ジ 第 二条  被 拘 禁 者 ニ ハ身 上 ノ調 査 ヲ為 スベ シ 前 項 ノ調 査 ヲ為 ス ニ付 必 要 ア リト 認 ム ルト キ ハ公 務 所 又 ハ縁 故 者 ニ照 会 ヲ為 スベ シ

性 識 別 ニ必 要 ナ ル処 置 ヲ為 スベ シ

第 三 条  被 拘 禁 者 ニ ハ必 要 ア リト認 ム ルト キ ハ指 紋 ノ採 取其 ノ他 個

シ

第 四条  被 拘 禁 者 ニ ハ改 悛 セ シ ム ル為 必要 ナ ル訓 育 及訓 練 ヲ施 スベ

訓 育 及 訓 練 ノ種類 及 時 間 ハ司法 大 臣 ノ認 可 ヲ受 クベ シ 第 五 条  被 拘 禁 者 ニ ハ改 悛 セ シ ム ル為 必要 ナ ル労 作 ヲ課 スベ シ 労 作 ノ種 類 及時 間 ハ司 法 大 臣 ノ認 可 ヲ受 ク ベ シ 蛍 作 ニ就 ク者 ニ ハ賞 与 金 ヲ給 ス ル コト ヲ得 第 六 条  被 拘 禁者 労 作 ニ因 リ創傷 ヲ受 ケ又 ハ疾 病 ニ罹 リ之 ガ為 ニ死 亡 シ又 ハ業 務 ヲ営 ミ難 キ ニ至 リ タ ルト キ ハ手 当金 ヲ給 ス ル コト ヲ 得

要 ナ ル糧 食 及 飲 料 ヲ給 スベ シ

第 九条  被 拘 禁 者 ニ ハ其 ノ 体質 、 健 康 、 年 齢 、労 作 等 ヲ斟 酌 シ テ必

糧食 及飲 料 ノ種 類 及 分 量 ハ司 法 大 臣 ノ認 可 ヲ受 クベ シ

第 十条  被 拘 禁 者 前 二 条 ニ掲 グ ル物 ノ自 弁 ヲ請 フト キ ハ情 状 ニ因 リ 之 ヲ許 ス コト ヲ得

第 十 一条  被 拘 禁 者 ニ ハ健 康 ヲ保 ツ ニ必 要 ナ ル運 動 及 入 浴 ヲ為 サ シ ムベ シ

第 十 二条  被 拘 禁 者 ニ ハ種 痘 其 ノ他 健 康 ヲ保 ツ ニ必 要 ナ ル医術 ヲ行 フ コト ヲ得

ムベ シ

第 十 三 条  被 拘 禁 者疾 病 ニ罹 リ タ ル トキ ハ医師 ヲ シ テ治療 ヲ為 サ シ

ハ情 状 ニ因 リ之 ヲ許 ス コト ヲ得

病 者 医 師 ヲ指 定 シ自 費 ヲ以 テ治 療 ヲ補助 セシ メ ン コト ヲ請 フト キ

情 状 ニ因 リ仮 ニ之 ヲ病 院 其 ノ他 ノ施 設 ニ移 送 スル コト ヲ得

第 十 四 条  被 拘 禁 者 ニ適 当 ノ治 療 ヲ施 ス コト能 ハズ ト認 ム ルト キ ハ

前 項 ノ規定 ニ依 リ移 送 シ タ ル者 ハ之 ヲ被 拘 禁 者 ト看 做 ス

ス紊 行 為 ヲ為 ス虞 ア ルト キ ハ戒 具 ヲ使 用 スル コト ヲ得

第 十 五 条  被 拘禁 者 自 殺 ノ虞 ア ルト キ 又 ハ逃 走、 暴 行 其 ノ他 紀律 ヲ

被 拘 禁 者 予防 拘 禁 所 外 ニ在 ルト キ 亦前 項 ニ同 ジ 第 十 六 条  戒 具 ハ左 ノ三 種 ト ス 一 捕繩

三  防 声 具

二  手 錠

戒 具 ノ製式 及 使 用 方 法 ハ司 法 大 臣 別 ニ之 ヲ定 ム

第 七 条  被拘 禁 者 ニ ハ紀 律 ニ害 ナキ限 リ図 書 ノ閲読 ヲ許 ス

ベシ

第 八 条  被拘 禁 者 ニ ハ 一定 ノ衣 類、 寝 具 、 食 器 及雑 具 ヲ使 用 セ シ ム

前 項 ニ掲 グ ル物 ノ品 目 及 製式 ハ司 法 大 臣 ノ認 可 ヲ受 ク ベ シ

静 室 ニ拘禁 ス ル コト ヲ得

第 十 七 条  第 十 五条 第 一項 ノ場 合ニ 於 テ必 要 ア リ ト認 ム ル卜 キ ハ鎮

鎮 静 室 ノ設備 ハ司 法 大 臣 別 ニ之 ヲ定 ム

得

差 押 物 ニシ テ還 付 ヲ不 適 当 ト 認 ム ル モノ ハ之 ヲ没 取 スベ シ

置 ノ手 続 ヲ為 サズ シ テ之 ヲ本 人 ニ交 付 ス ル コト ヲ妨 ゲ ズ

ハ点 検 シテ之 ヲ領 置 スベ シ担 シ信書 、飲 食 物 又 ハ日常 必 需品 ハ領

第 二十 四条  被 拘 禁 者 ノ携 帯 スル物 又 ハ受 ク ル コト ヲ許 サ レタ ル物

保存 ノ価 値 ナク又 ハ保 存 ニ不 適 当 ト 認 ム ル物 ハ其 ノ領置 ヲ為 サズ

鎮 静 室 ノ拘 禁 期間 ハ二十 日 ヲ超 ユ ル コト ヲ得 ズ但 シ特 ニ継続 ノ必 要 ア ル場 合 ニ於 テ ハ爾 後 五 日毎 ニ其 ノ期 間 ヲ更 新 ス ル コト ヲ妨 ゲ

又 ハ之 ヲ解 クベ シ

ズ 第 十 八条  被 拘 禁 者 紀律 ニ違 ヒ タ ルト キ ハ懲 戒 ヲ行 フ

領 置 ヲ為 サ ズ 又 ハ之 ヲ解 キ タ ル物 ニ付 本 人 相 当 ノ処分 ヲ為 サ ザ ル

ト キ ハ之 ヲ許 ス コト ヲ得

第 二十 五条  被 拘 禁 者領 置 物 ヲ以 テ正当 ノ用 途 ニ充 テ ン コト ヲ請 フ

ト キ ハ之 ヲ没 取 ス ル コト ヲ得

第 十 九 条  懲 戒 ハ左 ノ如 シ 一 譴責 二  図 書 閲読 ノ 六月 以 内 ノ禁 止

第 二 十 六条  領 置 物 ハ釈 放ノ際 之 ヲ交 付 ス

三  賞 与 金 計算 高 ノ 一部 又 ハ全 部 減 削 四  二月 以 内 ノ謹 慎

第 二 十 七条  被 拘 禁 者 ノ 私 ニ所 持 スル物 又 ハ逃 走 者 ノ遺 留 物 ハ之 ヲ

検 視 スベ シ

第 三十 一条  被拘 禁者 死 亡 シ タ ルト キ ハ予 防 拘 禁 所長 ハ其 ノ死 体 ヲ

中 ナ ルト キ ハ其 ノ請 求 ニ因 リ仍 ホ在 所 セ シ ム ル コト ヲ得

第 三 十 条  釈 放 セラ ルベ キ者 重 キ疾 病 ニ罹 リ 予防 拘禁 所 ニ於 テ 医療

因 リ期間 満 了 ノ翌 日午後 六時 マデ之 ヲ在 所 セ シ ム ル コト ヲ得

第 二十 九 条  予 防 拘 禁 ノ期 間 満 了 シ釈 放 セ ラ ルベ キ者 ハ其 ノ請 求 ニ

ト キ ハ出 頭 スベ キ場 所 其 ノ他 必 要 ナ ル事 項 ヲ告 知 スベ シ

第 二十 八 条  治 安 維持 法 第 六 十条 ノ規 定 ニ依 リ被 拘禁 者 ヲ解 放 スル

明 ナ ルト キ又 ハ本 人 ニ於 テ受 領 ヲ拒 ミ タ ル ト キ亦前 項 ニ同 ジ

被 拘 禁 者 ニ宛 テ送 致 シ来 リタ ル物 ニ シテ差 出 人 ノ氏 名 若 ハ住所 不

没 取 ス ル コト ヲ得

護 慎 ハ居 房 ニ屏居 セ シ ム 第 一項 各 号 ノ懲 戒 ハ之 ヲ併 科 スル コト ヲ得

ル コト ヲ得

第 二 十条  懲 戒 ハ情 状 ニ因 リ其 ノ執 行 ヲ猶 予 シ、 停 止 シ又 ハ免 除 ス

面 談 ノ要 旨 、其 ノ他 必 要 ナ ル事 項 ヲ調 査 スベ シ

第 二 十 一条  被 拘 禁 者 ニ接 見 ヲ請 フ者 ア ルト キ ハ被 拘 禁 者 ト ノ続 柄、

接 見 ハ不 適 当 ト認 ム ルト キ ハ之 ヲ許 サズ 接 見 ニ ハ予 防 拘 禁 所 ノ官 吏 之 ニ立 会 フベ シ 第 二十 二条  信書 其 ノ他 ノ物 ハ授受 ノ際 予防 拘 禁 所 ノ官 吏 之 ヲ検 閲 シ又 ハ検 査 スベ シ 信 書 其 ノ他 ノ物 ニシテ 不適 当 ト認 ム ル モノ ハ其 ノ授 受 ヲ許 サ ズ 第 二 十 三条  授 受 ヲ許 サ ザ ル信 書 其 ノ他 ノ物 ハ之 ヲ差 押 フ ル コト ヲ

変 死 又 ハ変 死 ノ疑 ア ル場合 ニ於 テ ハ速 ニ予防 拘 禁 所 ノ所在 地 ヲ管 轄 ス ル地 方裁 判 所 又 ハ区裁 判 所 ノ検事 ニ通報 シテ其 ノ死 体 ノ検 視 ヲ受 ク ベ シ 第 三十 二条  死 亡 者 ノ 病 名、 死 因 及 死 亡 ノ 日時 ハ速 ニ之 ヲ戸 主、 親 族其 ノ他 ノ縁 故 者 ニ通 知 シ死 体 ヲ引 取 ラ シ ムベ シ 第 三十 三 条  死 体 ノ引 取 人 ナ キ ト キ ハ成 規 ノ手 続 ニ依 リ之 ヲ埋 葬 ス ベシ 第 三十 四 条  司 法 大 臣 ハ少 ク ト モ毎 年 一回 官 吏 ヲ シ テ予防 拘 禁 所 ヲ 巡閲 セシム 判 事 及検 事 ハ予 防 拘 禁 所 ヲ巡 視 ス ル コト ヲ得 第 三 十 五 条  被 拘 禁 者 予 防 拘 禁 所 ノ処 置 ニ対 シ不 服 ア ルト キ ハ司 法 大 臣 又 ハ巡閲 官 吏 ニ情 願 ヲ為 ス コト ヲ得 第 三 十 六条  予 防 拘 禁 所 ノ参 観 ヲ請 フ者 ア ルト キ ハ学 術 ノ研 究 其 ノ

第 四十条 予防拘 禁所長 ハ司法大臣 ノ認可 ヲ受ケ被 拘禁者及第三十

附

則

八条第 一項 ニ掲 グ ル者 ノ処遇 ニ関 スル細則 ヲ定 ムベ シ

本 令 ハ昭 和 十 六 年 五 月十 五 日 ヨリ之 ヲ施 行 ス

f  予 防 拘 禁制 度 活 用 ニ関 スル件 依 命 通 牒

昭和十六年九月十六日刑事第 一八、) ( 八 五五号検事正宛刑事局長通牒

過 般 実施 ヲ見 タ ル予 防 拘 禁 制 度 ニ付 テ ハ之 ガ制 定 ノ趣 旨 ニ鑑 ミ 且

ベ キ コト勿 論 ナ ル モ国 際 情勢 ノ頓 ニ緊 迫 シ何 時 非 常 緊 急事 態 ノ発 生

常 ニ治安 状 況 ト ノ関 係 ヲ考慮 シ ツツ法 律 ノ許 ス限 リ其 ノ活 用 ヲ図 ル

激詭 思想 ニ基 ク反 法 行為 ヲ防 遏 ス ルノ要 愈 々緊 切 ナ ル モノ ア ルノ秋

ヲ見 ル ヤ予測 ヲ許 サザ ル現 時 臨 戦 的 国 情 下 ニ於 テ治 安 ヲ確 保 ス ル為

ル者 ノ更 ニ罪 ヲ犯 スノ危 険 ヲ防 止 ス ル コト ヲ以 テ最 モ緊急 ノ要 務 ト

ニ際 リ テ ハ同 制 度 ヲ最 大限 ニ活 用 スル コト ニ依 リ法律 ニ定 メ ラレ タ

第 三 十 七条  予 防 拘 禁 所 ニ男 区 及女 区 ヲ設 ケ之 ヲ分 隔 ス

他 正当 ノ 理由 ア リ卜 認 ム ル場 合 ニ限 リ之 ヲ許 ス コト ヲ得

第 三 十 八条  予 防 拘禁 所 ニ ハ特 ニ区 劃 シ タ ル場 所 ヲ設 ケ仮 ニ収容 ス

記

被 存候 条 概 ネ左 記 事 項 ニ留 意 ノ上 万 遺 憾 ナ キ ヲ期 セ ラ レ候 様 致 度 候

一、 予防 拘 禁 制度 ハ所 謂 保 安 処 分 タ ル ノ性 質 上 常 ニ治 安 ト ノ関 聯 ニ

於 テ運 用 セ ラ ルベ キ モノ ニシ テ具 体的 ナ ル客 観情 勢 ニ対 応 シテ其

スベ キ者 ヲ拘 禁 ス

ベ キ者 及 治安 維 持 法 第 三章 ノ規 定 ニ依 リ 勾 引状 ノ執 行 ヲ受 ケ留 置

監 獄 ニ仮 ニ収 容 スベ キ者 及 治 安 維持 法 第 三章 ノ規 定 ニ依 リ勾引 状

ノ活 用 ヲ図 ルノ要 ア ルヲ以 テ予 防拘 禁 ニ付 セ ラ ルベ キ者 モ独 リ所

人 心 ノ動 揺著 ル シキ事 態 ヲ生 ぜ シカ転 向 ノ過 程 ニ在 ル者 ト難 モ所

ノ執 行 ヲ受 ケ監 獄 ニ留 置 スベ キ者 ハ之 ヲ拘 置 監 ニ拘 禁 ス治 安 維 持

第 三十 九条  前 条 ニ掲 グ ル者 ニ ハ本令 中 第 一条 乃至 第 三条 、 第 七 条

謂 逆 転 向 ヲ為 ス虞 ア ル ノ ミ ナ ラズ所 謂 準 転 向 者中 ニ ハ潜 在 スル詭

謂 非 転 向 者 ニ限 局 セ ラ ルベ キ モノ ニ非 ズ 殊 ニ非常 緊 急 事 態 切 迫 シ

乃 至第 二十 八 条 、 第 三 十 条 乃 至 第 三十 三条 、 第 三 十 五条 ノ規 定 ヲ

激 思想 ニ基 キ反 戦 反 軍 的 行動 其 ノ他 治 安 ニ有害 ナ ル行 動 ニ出 ヅ ル

法 第 五 十 七条 第 二項 ノ規 定 ニ依 リ拘 禁 スベ キ者 ニ付 亦同 ジ

準用 ス

虞 顕 著 ナ ル モノ尠 カ ラザ ルベ キ ヲ 以 テ現 時 局下 ニ於 テ ハ単 ニ非 転 ラズ

ル コト多 ク理論 ニ対 スル批 判 モ亦 部 分 的 ニ止 マ ル コト尠 カ

意 識 低 キ ト キ ハ理 論 ニ対 ス ル批 判 幼 稚 ナ ル為 左 翼 的 啓 蒙

向者 ニ限 ラズ 所 謂 準 転 向者 モ亦 予 防 拘 禁 ノ対象 ト ナリ得 ベ キ コト 二 、思 想 状 態 ノ検 討 ニ関 シテ ハ従 来動 モス レバ対 象 者 ノ皮 相 的 主 張

4. 国 民 的 自 覚 ニ因 ル モノ ハ単 ニ観 念 的 自 覚 ノ域 ニ止 マリ国 体

ニ因 リ直 ニ逆 転 向 ス ル虞 ア リ

観 念 ヲ体 得 ス ル コト比 較 的 乏 シ ク且擬 装 転 向 ノ大 部 分 ハ之 ニ

(二 )

ア ル モ思 想 犯 罪 ノ特質 ニ鑑 ミ就 中 思 想 ト 行動 ト ヲ統 一シタ ル見 地

属 スル ノ ミ ナ ラズ私 有 財 産制 度 ニ対 ス ル見解 ノ清 算 不 完 全 ナ

ニ捉 ハレ其 ノ自 供 ス ル思想 ノ ミ ヲ判 断 ノ主 タ ル対 象 ト為 シタ ル嫌

ヨリ其 ノ思 想 状 熊 ノ判 断 ヲ為 スベ キ モノ ニシテ左 記 事 項 ニ留意 シ

ル虞 ア リ

実 践 ヨリ離 脱 セ ント ス ル ニ止 マリ基 本 的 ニ ハ過去 ノ思 想 ヲ是

5. 性 格 、 健 康等 身 上関 係 ニ因 ル モノ ハ之 等 ノ事 由 ニ因 リ単 ニ

対 象 者 ノ行動 自 体 ヲ深 ク吟 味 シ政 治 乃至 社 会 運 動 ニ進 出 セ ン

擬装 転 向 又 ハ日和 見 転 向 ヲ真 ノ転 向 ト峻 別 ス ル コト (イ)

ハ其 ノ行 動 ヨリ推 シテ更 ニ厳重 其 ノ思 想 状態 ヲ検 討 ス ル コト

乙 号  非常 緊 急 事 態 切 迫 シ タ ル場 合 予防 拘 禁 ヲ必要 ト スベ キ者

含 ム)

ノ、 但 シ情 状 ニ因 リ右 分 類 ︵一)ノ 4・竝 ニ(二) ノ1・ニ該 当 ス ルモ ノ ヲ

(原 則 ト シ テ別 紙 一ノ転 向 分 類 ) (一 ノ 1・ 乃 至 3・及 5・ニ該 当 ス ル モ

甲 号  現 時 ニ於 テ 予防 拘 禁 ヲ必 要 ト ス ル者

従 ヒ表 ヲ作 成 シ速 ニ本 省 ニ報 告 ス ル コト

三 、 予 防 拘 禁 ノ対象 ト ナ ルベ キ者 ヲ左 ノ如 ク分 類 シ別 紙 二 ノ様 式 ニ

向 ヲ表 明 スル ニ至 リ タ ル過程 ヲ モ検 討 スル コト

( )ホ 転 向 ガ突 発的 ナ リ ヤ如 何 ナ ル程 度 ノ苦 悩 ヲ伴 ヒタ リ ヤ等 転

ノ行 動 而 ヲ検討 ス ル コト

(ニ 交 友 関 係 、社 会 生活 ノ内容 、 読 書 関 係 、文 筆 活動 、 言 動 等 )

ニ 一時 的 ナ ル虞 ア リ

6. 拘 禁 ニ因 ル後 悔 ニ因 ル モ ノ亦同 様 ニシ テ5 . ノ モノ ニ比 シ更

認 シ之 ヲ抛 棄 セザ ル モノ多 カ ルベ シ

ト ス ル者 又 ハ国家 的 要 請 ニ対 シ冷 淡 ナ ル態 度 ヲ採 ル者 等 ニ付 テ

其 ノ抱 懐 シ タ ル階 級 的 世 界 観 等 ニ対 シ如 何 ナ ル解 決 ヲ為 シ居 ル

(ロ 国 体 ノ本 義 ヲ認 識 シテ転 向 ヲ遂 ゲ タ リト自 供 ス ル者 ニ付 テ モ )

カ ヲ検 討 スル コト

1. 信 仰 ニ因 ル モノ ハ其 ノ抱 懐 シ タ ル階 級観 等 ニ対 ス ル理論 的

(ハ 特 ニ転 向 ノ動 機 ヲ検 討 ス ル コト )

批 判 ヲ完 了 シタ ル モノ尠 キ ヲ以 テ現 実 生活 ニ於 テ社 会 ノ 諸矛 盾 ニ直 面 シタ ル場 合 唯 物 史 観 的 見 地 ヨリ之 ヲ解 決 セ ン卜 ス ル 虞 アリ 2. 近 親 愛 ニ因 ル モノ ハ理 論 的 ニ過去 ノ思 想 ヲ是 ト シ ナガ ラ感 情 的 ニ実践 ヲ躊 躇 スル ニ止 マル ヲ通例 ト ス ルヲ以 テ其 ノ世 界 観 ハ依然 ト シテ階 級 的 世界 観 ヲ脱却 シ居 ラザ ル虞 ア リ 3. 共 産 主義 理論 ノ清 算 ニ因 ル モ ノ ハ

極 メ テ困 難 ニシ テ根 抵 ニ於 テ唯 物 史 観 ニ近 キ見 地 ヲ保 持 ス

) ( 一 意 識 高 度 ナ ルト キ ハ新 ニ健 全 ナ ル世 界 観 ヲ樹 立 ス ル コト

( 原 則 ト シテ右 転向 分 類 (一) ノ4 ・竝 ニ(二) ノ 1・ 及 2. ニ該 当 ス ル モノ) 四、 甲 号 該当 ノ者 ニ対 シ テ ハ急 速 ニ予防 拘 禁 ノ処 置 ヲ執 ル コト 五、 至 急 刑務 所 長 及 保 護 観 察 所 長 卜連 絡 ス ルト共 ニ司法 警 察 官 ヲ督 励 シ鋭 意 予 防拘 禁 対象 者 ノ発 見 ニ努 ム ル コト 尚 他 管内 ニ現 在 ス ル思 想 犯保 護観 察 対 象 者 ノ視 察 ニ付 テ ハ其 ノ 庁 ノ検 事 正 ヲ通 ジ テ其 ノ管 下 ノ 司法 警 察 官 ヲ督 励 シ又 ハ検 事 正 自

ハ思 想 係 検事 ト連 絡 ス ル等 適 宜 ノ処 置 ヲ講 ズ ル コト

ラ若 ハ部 下思 想 係 検 事 ヲ シ テ他 管 内 ニ出 張 ノ上 其 ノ庁 ノ検 事 正 若

六、 思 想 犯 前 科者 ニ シテ予 防 拘 禁 ノ必要 ア リ ト認 メ ラ ル ル モノ ニ付 ( イ ) 思 想 犯 保 護観 察 対象 者 ナ ルト キ ハ至 急 刑 事 記 録、 保 護 観 察 記 録 、 行 刑 成 績表 及司 法 警 察 官 ノ視察 報 告 書 等 ヲ準備 シ之 ガ検 討 ヲ為 ス コト (ロ 思 想 犯 保 護観 察 対象 者 ニ非 ザ ルト キ ハ至 急 保 護 観察 ニ付 スベ ) キ手 続 ヲ促 ス コト 七、 未 ダ予 防 拘 禁委 員 会 ヲ召 集 セザ ル庁 ニ於 テ ハ速 ニ之 ヲ召 集 シ テ 各 委 員 ニ該 制 度 ノ運 用方 針 殊 ニ改 正治 安 維 持 法 第 三 十九 条 ノ立 法 精 神 ヲ指 示 シ併 セ テ其 ノ意 見 ヲ徴 シ其 ノ 他諸 般 ノ協 議 ヲ為 シ何 時 ニテ モ予 防 拘 禁 委 員 会 ノ手続 ヲ開 始 シ得 ル様 準 備 スル コト 別紙 一 転向分類 思 想 犯前 歴者 ヲ左 ノ如 ク分 類 ス

客 観情 勢 ニ対 シ日和 見 的 態 度 ヲ持 シ実 践 行 動 ニ出 デ ザ ル モ過

転

居 ル モノ 転

向

過 去 ノ思想 ヲ清 算 シ日常 生活 裡 ニ臣 民道 ヲ躬 行 シ居 ル モノ

向

3. 過 去 ノ思 想 ノ残 滓 ヲ留 ム ルモ之 ガ清 算 ヘノ積 極的 努 力 ヲ為 シ

態 度 ノ 上 ニ過 去 ノ思想 ノ残 滓 ヲ留 ム ル モノ

2. 過 去 ノ思 想 ヲ抛 棄 シタ リ ト表 明 ス ル モ其 ノ日常 ノ言 動 、 思考 、

ル モノ

1. 過去 ノ思 想 ニ懐疑 的 又 ハ無 関 心 ト ナ リ思 想 的 低徊 ノ状 態 ニ在

準

持 ス ル モノ

表 明 ス ル モ根柢 ニ於 テ ハ依 然 ト シテ階 級 意 識 ( 唯 物 史 観 ) ヲ堅

5. 過去 ノ思 想 ニ動 揺 ヲ来 シ又 ハ自 ラ過 去 ノ思 想 ヲ抛 棄 シタリ ト

棄 セザ ル モノ

4. 病気 其 ノ他 ノ事由 ニ因 リ実 践 行動 困 難 ナ ル モ過去 ノ思 想 ヲ抛

過 去 ノ思 想 ヲ抛 棄 セザ ル モノ

3. 家庭 ノ事 情 其 ノ他 一身 上 ノ事 由 ニ依 リ実 践 行 動 ニ出 デザ ル モ

去 ノ思 想 ヲ抛 棄 セザ ル モノ

2 .

(一) 非 転 向 1. 思 想及 言 動 ニ於 テ何 等 反 省 ナ キ モノ

(二)

(三)

第 三 部

決

職 藤

寿 夫

無

無

職

職

職

職

当時大阪刑務所北 区支所 菊治事 

石 田 英 一郎

明治参拾六年 六月参拾日生

武 藤

丸

海 洋

楠

一

明治参拾九年弐月七日生

内

明治参拾 五年弐月拾九日生

宮 崎

菊

次

本籍 佐賀県東松浦郡浜崎町大字横 田下千四百六拾弐番地

無

山 口県都濃郡徳山町千九百七拾番屋敷

本籍及住居

住居 東京府豊多摩郡落合町上落合弐百拾八番地

本籍 佐賀県佐賀郡本庄村大字袋参拾七番地

無

当時大阪刑務所北 区支所

三 四  学 連 事 件 第 二 審 判 決 文 (一 九二九)

判 本籍 大分県直入郡豊岡村大字会 々千九百九拾 八番地 無

職 賀 真

明治参拾六年 五月参拾日生

後

住居 東京府豊多摩郡杉並町高 円寺 四拾番地

本籍及住居 無

神戸市葺 合小野柄通四丁目七番 地 衣 谷

明治参拾四年九 月四日生 本籍 福島県相馬郡 小高町大字南小高字関場 五拾参番地 職 蔵

住居 東京府豊多摩 郡和田堀 町和田千七拾 六番地 無

木 安

明治参拾 七年参月参 日生

鈴

本籍 京都市上京区岡崎北御所町弐拾五番地

明治参拾 五年 八月弐拾八日生 本籍 福岡県京都郡泉村大字崎野弐千五百六拾番地

無

職 正

夫

明治参拾 六年七月壱日生

上 村

住居 東京府豊多摩郡和田堀 町和泉参百弐拾 七番地

本籍及住居

職 台

恒

治

明治参拾五年四月壱 日生

蓬

和歌山県那賀郡竜門村大字杉 原四百弐拾七番地 無

職

職

哲

二

本籍 兵庫県出石郡資 母村字畑山五拾八番屋敷 無

当時大阪刑務所北区支所

井

明治参拾 六年参月五日生

永

本籍 名古屋市中区流 川町五拾参番地 無

当時大阪刑務所北区支所 大 田 遼 一郎 明治参拾八年参月拾参 日生

職

見

重 雄

明治参拾弐年七月弐日生

逸

大

浦

梅 夫

香川県綾歌郡金山村大字江尻百 八拾七番戸

本籍及住居 無

明治参拾七年壱月弐拾弐日生

本籍 兵庫県揖保郡竜野 町竜野七百五番屋敷

職

黒

田 久 太

住居 東京府豊多摩郡代 々幡町代 々木富 ケ谷千参百九拾六番 地 米谷方 無

職

篤

一

明治参拾八年 四月壱日生

本籍 東京市芝区下高輪 町参拾番地 無

当時大阪刑務所北区支所

本

明治参拾六年四月 弐拾日生

松

本籍 佐賀県佐賀郡久保 田村大字久富 六百参拾七番 地 無

職

当時大阪刑務所北 区支所

二 男

本籍 鳥取県気高郡鹿野町大字鹿野千参百弐拾五番地

賀

本籍 札幌市北三条西拾 五丁目壱番地

明治参拾七年七月拾七 日生

古 職

住居 東京府北豊島郡西巣鴨町池袋 四百七拾参番地 無

無

職

当時大阪刑務所北区支所

本籍及住居

職

田

耕

明治参拾八年弐月六日生

原

(以下単 ニ学生事件 ト略称 ス) ニ付同年 五月三十 日原審京都地方裁

雄

右各被告人 ニ対 スル当院 昭和 二年 一五七号治安維持法違反被告事件

谷 孝

明治参拾 四年九月参拾日生

二

被告 人中宮崎菊次、大田遼 一郎、永井哲 二 ニ対 スル当院 昭和 四年五

阪地方裁判所 カ言渡 シタル有罪 ノ判決 ニ対 シ同被告人等 ヨリ、又右

事件 (以下単 ニ大阪共産党事件 ト略称 ス) ニ付同年 二月 一日原審大

谷武 二及熊谷孝雄 ニ対 スル当院昭和 四年四二号四三号同法違反被告

郎並原審検事 ヨリ又右被告 人中松本篤 一、古賀二男、黒川健三、鷲

判所 カ言渡 シタル有罪 ノ判決 ニ対 シ各被 告人ノ原審弁護人水谷長三

熊

谷 武

秋 田県南秋田郡下井 河村北川尻字海老沢村八番地 無

当時 大阪刑務所北区支所 鷲

九号同法違反被告事件 (以下単 ニ京都共産党事件ト略称 ス) ニ付同

明治参拾 六年弐月四 日生

健

主

文

月 ニ、被告人松本篤 一及同熊谷孝雄 ヲ各懲役 六年 ニ、被告 人古

被告人宮崎菊次 ヲ懲役 七年 ニ、被告人石田英 一郎 ヲ懲役 六年六

決 ヲ為 ス

為 シタ ルヲ以 テ当院 ハ同検事関与併合審理 ヲ遂 ケタル上次ノ如 ク判

神戸各 地方裁判所 ノ判決 ヨリモ重 キ求刑 ヲ為 シテ附帯控訴ノ申立 ヲ

黒川健 三、鷲谷武二、熊谷孝雄及石田英 一郎 ニ対 シ前掲原審大阪及

院検事南部金夫 ハ最終公判 ニ於 テ前記被告人松本篤 一、古賀 二男、

判決 ニ対 シ同被告 人 ヨリ何 レモ夫 々適法 ナル控訴 ノ申 立 ヲ為 シ尚当

称 ス) ニ付同年 二月十六 日原審神戸 地方鐵判所 カ言渡 シタル有罪 ノ

四年八〇号八 一号同法違反被告事件 (以下単 ニ神戸共産党事件 ト略

被告人等、並原審検事 ヨリ、尚被告 人石 田英 一郎 ニ対 スル当院昭和

年二月十八日原審京都地方裁判所 カ言渡 シタル有罪ノ判決 ニ対 シ同

職 正 潔

本籍 松山市大字千船 町七拾壱番地 無

川

三

明治参拾六年六月弐 日生

小 崎

住居 熊本市安 巳橋通三年坂日本 メソヂスト教会

本籍及住居

職

職

明治参拾七年壱 月六 日生

黒

大阪市東淀川区三国本 町九拾四番地 無

当時 大阪刑務所北区支所

本籍及住居 無

大津市北国町弐拾七番屋敷

賀 二男及同永井哲 二 ヲ各懲役五年 ニ、被告 人大 田遼 一郎 ヲ懲役 由

被 告 人 衣 谷 賀真 、 同 逸 見重 雄 、及 同 小 崎正 潔 ハ孰 レ モ無 罪 理

合 組 織 ニ シテ当 初 学 生 聯合 会 ト 称 シ大 正十 三年 九 月 中 東 京帝 国 大学

第壱、

四年 ニ、被告 人黒川健 三及同鷲谷武 二ヲ各 懲役三年 ニ処 ス

ニ於 テ第 一回 ノ大 会 ヲ開 催 シ便 宜 上全 国 ヲ関 東 、 関 西、 東 北 ノ三 地

被告人後藤寿夫及同鈴木安蔵 ヲ各禁錮二年 ニ、被告人黒 田久太、

被告人宮崎菊次 ニ対 シ学生事件 ノ原審 ニ於 ケ ル未決勾留 日数中

方 聯合 会 ニ分 チ、 次 テ大 正十 四 年 七 月中 京 都 帝 国 大 学 ニ於 テ第 二 回

同内海洋 一、 同大浦梅夫、同原田耕、同蓬台恒治及同上村 正夫

百参拾日京都共産党事件 ノ同未決勾留日数中弐百拾日 ヲ、被告

セ ラ レタ ル各 大 学 事 門学 校 ニ於 ケ ル学 生 生徒 ノ社 会 科 学 研究 会 ノ聯

人石 田英 一郎 ニ対 シ学 生事件 ノ原審 ニ於 ケ ル未決勾留日数 中百

ノ全 国 大 会 ヲ開 催 シ同年 末 ニ於 テ ハ加 盟 校 数 五 十 余 校 会員 数 千 数 百

日 本学 生 社 会 科 学 聯 合会 ︵学 聯 ︶ ハ大 正十 一年 末 東 京 市 ニ於 テ組織

参拾 日神戸共産党事件 ノ同未決勾留 日数中弐百拾 日ヲ、被告 人

名 ヲ算 ス ル ニ至 リ タ ル モノ ト ス。而 シテ被 告 人 後 藤 寿 夫 、松 本 篤 一

ヲ各禁錮壱年六月 ニ、被告人武藤丸楠 ヲ禁錮壱年 ニ処 ス

松本篤 一同古賀二男 ニ対 シ学生事件 ノ原審 ニ於 ケル未決勾留 日

武 二、 大 田遼 一郎 、 熊 谷孝 雄 、 永 弁哲 二、 武 藤 丸 楠 、 黒 田久 太 、 古

ハ東 京 帝 国 大 学 学 生 タ リ シモ ノ ニシテ同 大 学 学 生 タ リ シ原審 共 同被

賀 二男 ハ京 都 帝 国 大 学学 生、 同 宮 崎菊 次 、 内 海 洋 一、 大 浦梅 夫 ハ同

数中各八拾 日宛大阪共産党事件 ノ同未決勾留 日数中各弐百拾日

件 ノ同未決勾留日数 中各弐百拾日宛 ヲ、被告人永非哲二、 及同

志 社大 学 学 生 、 同 黒 川 健 三、 原 田 耕 ハ大 阪 外 国 語 学 校 生徒 、 同 蓬 台

ニ右 関 東 地方 聯 合 会 ニ属 シ、 又 被 告 人石 田英 一郎 、 鈴 木 安蔵 、 鷲 谷

大 田遼 一郎 ニ対 シ学生事件 ノ原審 ニ於 ケル未決勾留日数中各 百

恒 次 ハ神 戸 高 等 商業 学校 生徒 タ リ シ モノ ニ シテ何 レ モ京 都帝 国 大 学

告 人村 尾 薩 男 、 是 枝 恭 二、 明治 学 院 生徒 タ リ シ同 清 水 平 九郎 等 ト 共

日宛、京都共産竟事件 ノ同未決勾留日数中各弐百拾日宛 ヲ、被

宛 ヲ、被告人熊谷孝雄、同黒川健三、及同鷲谷武二 ニ対 シ学生

告人鈴木安蔵、同黒 田久太、同内海洋 一、同大浦梅夫、同原 田

学 生 タ リ シ原 審 共 同 被 告 人山 崎 雄 次等 ト共 ニ前 記 関 西 地 方聯 合 会 ニ

事件 ノ原番 ニ於 ケ ル未決勾留 日数中各百参拾 日宛大阪共産 党事

耕、及同蓬台恒治 ニ対 シ学生事件 ノ原審 ニ於 ケル未決勾留 日数

シ既 ニ右 高 等 学 校 在 学中 ヨリ前 記 日本 学 生社 会 科 学 研 究 会 ニ加 入 シ

チ 旧 日本 労 働 組 合 評 議会 京 都 地 方 評議 会 書 記 ト為 リ労働 運動 ニ従 事

社 会 科 学 ノ研 究 ヲ為 シ居 タ ル モ ノ ニシテ 以上 各 被 告 人 ハ孰 レ モ マル

属 シ、 尚 被 告 人 上 村 正 夫 ハ第 三 高 等 学校 ヲ中 途 退 学 後 職 工 ト為 リ後

ニ対 シ学生事件ノ原審 ニ於 ケル未 決勾留 日数中各六拾日宛 ヲ夫

ク ス主 義 レー ニン主義 ノ革 命思 想 ヲ抱懐 セ ル モノ ナ ルト コロ

ケル未決勾留 日数中 八拾 日ヲ、被 告人武藤 丸楠、及同上村正夫 々前記本刑 ニ算入 ス

(甲) 被 告 人 後 藤 寿 夫 ハ前 記 清 水 平 九郎 ト共 ニ大 正 十 四 年 六月 下旬 頃

中各百参拾日宛 ヲ、被告人後藤寿夫 ニ対 シ学生事件 ノ原審 ニ於

予ス

被告人内海洋 一、及同武藤丸楠 ニ対 シ各 五年間右刑ノ執行 ヲ猶

東京市下谷 区上野桜木町 ナル東京帝国大学新 人会本部 ニ於 テ日

蓬 台 恒治 等 約 二十 名 会 合 シ居 タ ル秘 密 会 ノ席 上 ニテ右 村 尾 薩 男、

中 町 ナ ル同 大 学 社 会 科 学 研究 会 合 宿 所 ニ於 テ開催 セ ラ レ村 尾 薩

山 崎 雄次 等 ニ於 テ交 々出 席 者 ニ対 シ我 国 現 時 ニ於 ケ ル社 会 組 織

男 、 山崎 雄 次 並 被 告 人松 本 篤 一、 鈴 木 安 蔵 、黒 田久 太 、 原 田 耕、

ハ世 界的 趨 勢 ニ伴 ヒ必 然 崩壊 ノ 過程 ニ在 ル帝 国 主義 即 チ最 上 ノ

本学 生社会科学聯合会第二回全国大会テーゼ (綱領)関東案草 日頃同 町 ニ於 テ同人及前 記村尾薩男其 ノ他ノ者 ト共 ニ同社会科

段 階 ニ達 シ没 落 期 ニ入 リタ ル資 本主 義 ノ段 階 ニ在 ル モノ ニシ テ

案 ( 証第 八七九号 ノ壱) ヲ起草 スル際同人ト共謀 シ同年七年七 学関東聯合会代表委員 会 ヲ開催 シ右原稿ノ各記載事項 ニ亘 リ協

動 従 ツテ資 本 主 義 社 会 ノ変革 ヲ為 シ新 社 会 ナ ル共産 主 義 社 会 ノ

議 ヲ遂ケ之 ヲ承認 シテ前 記第 二回全国大会 ニ提案 スルコトト為

創 進建 設 ヲ意 図 スル我 国無 産 階 級 運 動 ノ 一翼 ト ナ リ之 ト 共 通 ノ

ス主義 レー ニン主 義 ヲ指 導 精 神 ト ス ル反 資 本 主義 的 無 産 階 級 運

ル際同人 トモ共謀 シ、尚村尾薩男、山崎雄次並被告人石田英 一

テ前記山崎雄次 ニ対 シ同 大会 テーゼ関 西案 ノ作成方 ヲ勧誘 シタ

目標 戦 略 ヲ有 スル モノ ナ レ ハ該 社 会 組 織 ヲ変 革 シテ共 産 主 義 社

且 前 記学 生社 会 科 学 聯 合 会 ノ 運動 ハ我 国 ニ於 ケ ル学 生 ノ マ ルク

郎、鈴木安蔵等 ハ其ノ頃同所 ニ於 テ前 記是枝恭 二ト談合 ノ上恭

ト シテ ノ精 鋭 ナ ル革命 的 智 識 分 子 ノ養 成 訓練 ニ置 ク ヘキ モノ ナ

会 ヲ実 現 スル ニ ハ右 聯 合 会 ノ全 活 動 ノ焦 点 ヲ右 無 産 階 級 ノ前 衛

シタ ル際是等 ノ者ト共謀 シ更 ニ右村尾薩男 ニ於 テ同年四月十三

二 ニ於 テ同大会 テーゼ新草案 ︵証第五号︶ ヲ作成 スルニ当 リ恭

四日頃京都市北白川 ナル京都帝国大学社会科学研究会本部 ニ於

二ト モ共謀 シ茲 ニ被告 人後藤寿夫、石田英 一郎、鈴木安蔵 ハ右

ラ無 産 階 級 解 放 ノ武器 タ リ科 学 タ ル マ ルク ス主義 レー ニン主義

リ ト為 シ此 ノ目 的達 成 ノ為 当 面 為 ス ヘキ 一般 方 針 ト シ テ会 員 自

ヲ組 織 的 ニ研 究 ス ルト共 ニ校 内 ニ於 テ ハ学 生大 衆 ニ該 主義 ヲ宣

ニ於 ケ ル私有財産制度否 認ノ目的 ヲ以 テ同年 四月十六 日京都帝

伝 普 及 シ テ之 ヲ研究 会 内 ニ獲 得 シ又 ハ反動 化 ヲ防 止 シ校 外 ニ在

清水平九郎、村尾薩男、是枝恭 二、山崎 雄次等 ト共謀 ノ上我国

水平 九郎、山崎雄次並被 告人石 田英 一郎、鈴木安蔵、松本篤 一、

国大学学生集合所 ニ於 テ開催 セラレ右是枝恭二、村尾薩男、清

リ テ ハ無 産 階 級 ノ 教育 等 出 来 得 ル限 リ種 々ノ社 会 的 活動 及事 業

ト 、 理論 ト実 践 ト ノ統 一ヲ図 ラ ザ ル ヘカラ サ ル旨 勧 誘 シ以 テ 究

等 ニ従 事 シテ無 産 階級 運動 ヲ援 助 シ修 得 ト闘 争 ト、 研 究 ト活動

極 ニ於 テ不 法 ニ我国 ノ 私有 財 産 制 度 否 認 ノ実 行 ヲ為 ス ヘキ 旨煽

三、原 田耕等数十名集合 シ居 タ ル日本学生社会科学聯合会第二 回大会 ノ席 上 ニ於 テ是 枝恭二、清水平九郎等 ニ於 テ、更 ニ翌十

古賀 二男、武藤丸楠、黒 田久太、内海洋 一、蓬台恒治、黒川健

七日二ケ所 ニ分 レ其 ノ 一ハ前記京都帝国大学社会科学研究会本

(乙) 尚被 告 人石 田英 一郎 、鈴 木 安 蔵 及直 接 間 接 右煽 動 ヲ受 ケ タ ル被

動 シ

武藤 丸楠 、古賀 二男、内海洋 一、黒川健三等約 二十名会合 シ居

告 人 松本 篤 一、 鷲 谷 武 二、 大 田遼 一郎 、 熊 谷孝 雄 、 永 井哲 二、

部 ニ於テ開催 セラレ是枝恭二、清水平九郎被告 人石 田英 一郎、 リタル秘密会 ノ席上 ニテ右是枝恭 二 ニ於 テ、他 ハ京都市聖護院

(イ)

運 動 ニ従 事 シ居 タ ル被 告 人 上 村 正夫 ト共 ニ校 外 ニ於 ケ ル無 産 者

セ ム コト ヲ企 テ次 ニ述 フ ル カ如 ク或 ハ前 同 様 ノ目的 ヲ以 テ啓 蒙

産 制 度 否 認 ノ 目的 ヲ 以 テ前 記 一般 方 針 ニ基 キ該学 生運 動 ニ従 事

夫 、 黒 川 健 三 、 原 田耕 、 蓬 台恒 治 ハ前 同 様 我 国 ニ於 ケ ル私 有 財

武 藤 丸 楠 、黒 田久 太 、 古賀 二男 、 宮 崎 菊 次 、 内海 洋 一、 大 浦 梅

地方 評 議 会 本 部 ニ集 合 シ又被 告 人宮 崎菊 次 ハ右 被 告 人 上村 正

村 正 夫 ト共 ニ同 年 同 月 二十 一日京都 市 八条 夷 馬 場 町 ナ ル京 都

更 ニ被 告 人 鷲 谷 武 二、 内 海 洋 一、 宮 崎 菊 次 等 ハ前 記被 告 人 上

ル コト等 ニ付 夫 々協 議 ヲ為 シ

ルク ス主 義 レ ー ニン主 義 ノ文 献 ヲ掲 ケ其 ノ配 列 順 序等 ヲ定 ム

働 者 ノ部 ト農 民 ノ部 ト ニ二 大 別 シ各 部 ニ付 更 ニ章 節 ヲ分 チ マ

席 者 ノ平 均 水 準 ヲ標 準 ト スル コト ニ付 、 又 教 程 ニ関 シ都 市 労

夫其 ノ 他 ト共 ニ同 年同 月 二十 三 日 同 市 聖 護 院中 町 原 審 共 同被

ハ校 内 ニ於 ケ ル会員 ノ研 究 並 生活 方法 ニ関 シ或 ハ校 内 ニ於 ケ ル

告 人淡 徳 三郎 方 ニ集 合 シ又被 告 人 古 賀 二男 、 武 藤 丸 楠 、鷲 谷

階 級 ニ対 スル教 育 (プ ロ レツト カ ルト 又 ハプ ロカ ル) ニ関 シ或

目的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ル モノ ナ リ

学 生 運 動 ノ方 策 ニ関 シ具体 的 発 展 的 ニ種 々協 議 ヲ為 シ以 テ其 ノ

武 二 、 内海 洋 一、 宮 崎 菊次 、 大 浦 梅 夫 等 ハ右 被 告 人 上 村 正夫

被 告 人 石 田 英 一郎 、鈴 木 安 蔵、 武 藤 丸 楠 、 大 田 遼 一郎 、黒 田 久 太、 熊 谷 孝 雄 、 鷲 谷武 二等 ハ同 年即 チ大正 十 四年 九 月 二十

協 議 ヲ為 シ

従 事 ス ル為 京 都 無 産 者 教育 協 会 ノ創 立 ヲ為 ス コト ニ関 シ夫 々

無 産 団 体側 ノ者 ト相 提 携 シ テ前 記 無 産 者 階 級 ニ対 ス ル教 育 ニ

ト 共 ニ同年 十 一月 一日右 評 議 会 本 部 ニ集 合 シ労 働 組 合其 ノ他

即チ

シプ ロカ ル (無 産 者 教育 ) 運 動 ヲ為 ス ニ付 テ ノ テ ー ぜ ( 綱

日京 都 市 北 白 川 ナ ル京都 帝 国 大 学 社会 科学 研 究 会 本 部 ニ集 合

東 京 市 新 人 会 本部 ニ於 テ前 示是 枝 恭 二 ヨリ聞 知 セ ルユ ー ス即

チ 日本 青年 共 産同 盟 ノ学 生 団体 ニ対 スル組 織 方 針 ニ基 ク班 組

(ロ) 被 告 人 宮 崎菊 次 ハ前 記 研 究 会本 来 ノ目 的 ヲ達 ス ル為 予 テ前掲

織 ノ方 法 ヲ右 関 西 地方 ノ学 生 社 会 科学 聯 合 会 ノ組 織 ニ採 用 シ

一郎 、永 井 哲 二、 熊 谷 孝 雄、 大 田遼 一郎 、鷲 谷武 二、 武 藤 丸 楠 、黒 田久 太 、 古 賀 二 男等 ニ於 テ、 又 同 年同 月 十 七 日被 告 人

領 ) 及教 程 ヲ作 成 スル コト ト為 シ同年 十 月 四 日被 告 人 石 田英

石 田英 一郎 、 鈴 木 安 蔵 、 永 井哲 二、 原 田耕 、 黒 川健 三、 蓬 台

ス ル コト ナ ク寧 ロ全 会員 ノ生 活 ノ場 所 タ ラ シメ階 級戦 ニ於 ケ

テ学 生 班 ヲ組 織 シ之 ヲ理 論 研 究 ノ為 ノ単 ナ ル便 宜 上 ノ機 関 ト

ル 一兵 卒 ト シ テ ノ訓練 ノ機 関 タ ラ シ メ ムト シ同 年 十 一月 上旬

恒 治 等 ニ於 テ、 又 翌十 八 日被 告 人鈴 木 安 蔵 、黒 田久 太 、 古 賀

何 レ モ同 所 ニ集 合 シ右 テ ーゼ ニ関 シ教 育 ノ原則 ヲ マルク ス主

テ被 告 人 大 浦 梅 夫 、 内海 洋 一其 ノ他 ト諮 リ班 生活 ト シ テ ﹁班

頃 京 都市 塔 之段 毘 沙 門 町 同志 社 大 学 社 会 科学 研 究 会 本 部 ニ於

二 男 、熊 谷孝 雄 、 鷲 谷 武 二、 宮 崎 菊 次 、 大 浦 梅 夫等 ニ於 テ、

ノ排 撃 、都 市労 働 者 ト農 民 ト ノ 共同 戦 線 ヲ目 的 ト ス ル コト教

員 ハ委 員 ノ統 制 ニ従 ヒ テ研 究会 及 聯 合 会 ノ活動 ニ参 加 シ其 ノ

義 レ ー ニン主義 ニ則 リ闘 士 ノ訓 練 、 反 帝 国 主 義 、 日和 見主 義

育 ノ方 法 ヲ同 僚 式討 論 式 ト シ日常 現実 ノ問 題 ト結 ヒ付 ケ全 出

仕 事 ヲ分 担 シ既 ニ結 集 サ レタ ルレ ー ニズ ム理論 ノ体 系 的 研 究 ヲ為 シ又 一般 社 会 現 象 、時 事 問 題 、 無 産 階級 ノ陣 営 情 勢 並 社

結 合 研 究 シ後 者 ノ指 導 ニ当 ル ヘキ コト等 ニ付 テ モ協 議 ヲ為 シ

三 名 ハ同 年 十 一月 八 日兵 庫 県 武 庫 郡 西 灘村 成 宮 音 次 郎 方 ニ於

第 一五号 ) ト シ テ関 西 聯合 会 ニ提 出 スル コト ト為 シ右 被告 人

展 セ シメ行 ク コト ﹂ ヲ班 生 活 テ ー ぜ (綱 領 ) 同 志 社 案 (証

果 ヲ再 ヒ班 ニ於 テ研 究 批判 シ以 テ理 論 ト 実際 ト ヲ統 一的 ニ進

研 究 批判 決 議 ハ直 ニ之 ヲ班 員 ノ行 動 ニ移 シ更 ニ此 ノ行 動 ノ成

判 ト班 員 各 個 人 上 ノ事 件 生活 ノ互 助 的 批判 討 議 等 ヲ為 シ此 ノ

ノ機 関 集 団 ニ穿 入 シテ之 ヲ占 領 シ自 己 ノ目 的 ノ為 ニ利用 シ教

学 研究 会 、 基 督 及仏 教 青 年 会 、 エ スペラ ント会 等 凡 ユ ル学 生

ノ 当面 ニ於 ケ ル 一般 方針 ト シテ ﹁研 究 会員 ハ校 友 会 、文 芸 哲

ル学 生 大 衆 獲 得 運動 ヲ モ忘 ル ヘカ ラ サ ル モノ ト為 シ校内 運 動

防 止 シ階 級 戦 ニ善 意 的 中 立 ヲ保 タ シ ム ル為 該 階 級 ノ予備 軍 タ

成 訓 練 ニ在 ル コト ヲ確 信 ス ル モ同 時 ニ新中 間 階 級 ノ反動 化 ヲ

ノ如 ク無 産 階 級 ノ前 衛 ト シテ ノ精 鋭 ナ ル革 命的 智 識 分 子 ノ養

ノ 校内 運動 ノ 一般 方針 ニ関 シ学 生 運 動 ノ全 活 動 ノ焦 点 ハ前 述

会 本部 ニ於 テ前 記 山 崎 雄次 外 一名 ト 会 合 シ関 西 地 方 学聯 所 属

被 告 人大 田遼 一郎 ハ同年 十 一月 下 旬 頃 京都 市 今 出 川 関 西 聯合

テ開 催 セラ レ タ ル右 聯 合 会 翌 日 ノ懇 談 会 ノ席 上 ニテ被告 人石

室 ニ於 テ ハ国 家教 育 ノ本 質 ヲ曝 露 シテ 地盤 ヲ造 リ以 テ社 会 科

(ハ)

田英 一郎 、 永井 哲 二、 黒 田久 太 、 原 田耕 、 黒 川 健 三 等 ト 共 ニ

会 科学 運動 及 校 内 運 動 ノ戦 術 ノ研 究 ト 批判 、 班 生活 ノ自 己 批

右 案 ヲ関 西 聯 合 会 ニ採 用 シ其 ノ方針 ニ基 キ活 動 ス ヘキ コト ヲ

ト シテ班 生 活 ニ関 ス ルテ ー ゼ ニ則 ル何 レカ ノ班 ニ組 織 シ教 育

ト訓 練 ト ヲ受 ケ シメ戦 闘 的 活 動 的 ト為 リ シ会 員 ヲ直 ニ中 心 分

学 ヲ宣 伝 シ之 ニ興味 ヲ有 ス ル ニ至 リタ ル学 生 ヲ直 ニ研究 会 員

子 ノ組 織 ニ加 ヘ更 ニ各 研 究 会 ノ中 心分 子 ハ緊 密 ナ ル組 織 ト鉄

協 議 シ尚 其 ノ際 同被 告 人等 ハ関 東 学 聯 ヨリ送 付 シ来 レ ル日本

(証第 八 号 ) ニ基 キ教 育 テ ー ぜ ニ関 シ学 生運 動 ニ於 テ ハ マル

学 生社 会 科学 聯合 会 教 育 テ ー ゼ ( 綱領)骨 子 並 全 国 的教 程

ク ス主 義 的 一元教 育 ノ必 要 ア ル ヲ以 テ教 育 統 一ノ為 ノ事 業 ト

ス ヘク解散 ノ虞 ア ル研 究 会 ニ就 テ ハ予 メ仮 面 即 チ読 書 会 等 公

ノ如 キ規 律 ト統 制 ノ下 ニ結 集 シ絶 エス理論 ト 実践 ト ニ依 リ自

然 ノ会 ヲ作 リ置 キ未 知 ノ中 心分 子 ヲ シテ之 ニ当 ラ シメ両 者 ノ

シテ全 国 的統 一ノ教 程 作 成 、 各 研究 会 ヘノ巡 廻 宣 伝部 ノ派 遣 、

関 係 ヲ絶 体 ニ秘 ス ヘク其 ノ 他 軍事 教 育 ニ関 シテ ハ関 西 軍 教 対

シ校 内 校 外 ノ凡 ユ ル運 動 ヲ聞 知 批判 討 議 決 議 シ之 ヲ実 行 ニ移

キ コト ニ付 又全 国 的 教 程 ニ関 シ中 心 分 子 ト 一般会 員 ト ニ二大

究 会 並 無 産青 年 同 盟 等 労 働 者 教 育運 動 並 政 治 運動 ニ従事 ス ヘ

策委 員 会 ヨリ ノ詳 細 ナ ル方針 ニ従 フ ヘク尚 研究 会 ノ統 制機 関

己 ヲ深 化 ス ルト共ニ一 般 会 員 ヲ指 導 向 上 セ シ メ又定 期 ニ集 合

別 シ夫 々之 ヲ 一ケ年 三学 期 ニ分 チ テ マル ク ス主義 レー ニ ン主

ノ徹 底 的 修得 ヲ為 ス コト及 労 働 者農 民 ノ組 合 又 ハ学校 政 治 研

義 ノ文献 ヲ掲 ケ後 者 ノ教 育 ニ ハ主 ト シテ前 者 自 ラ之 ニ当 リ前

ナ ル中 央 部 ト ハ常 ニ密 接 ニ連 絡 ヲ保 チ会 ノ情 勢 及 運 動 方 針 ヲ

各 地 方 聯 合会 教 育 部 員 ノ定 期 交 代等 ヲ為 シ明 確 ナ ル指導 原 理

者 ハ教 育 者 タ ルト共 ニ組織 者 宣 伝 者 タ ル コト ヲ心 掛 ケ緊 密 ニ

報 告 ス ルト共 ニ之 カ批 判 ヲ求 ム ヘク吾 人 ハ学 校 当 局 以 上 ノ組

メ サ ル ヘカ ラサ ル旨 討 議 決 定 シタ ル モノ ナ リ

結 成 ト 運動 ヘノ積 極 的 参 加 ノ四段 階 ニ分 チ之 カ教 育 方 法 ヲ定

第弐、

織 ト戦 術 ト ヲ以 テ無 産 階 級 ノ解 放戦 ヲ戦 ハサ ル ヘ カ ラ サ ル 旨﹂協議決定 シ

教育 テーゼ ( 綱 領 ) 等 ニ関 シ協 議 ヲ遂 ケ其 ノ戦 術 ニ関 シ従来

催 シ宣 言 規 約 等 ヲ明定 シ次 テ昭 和 二 年中 同 党 ノ幹 部 数 名入 露 シ党

年 十 二 月 四 日 山形 県 下 五色 温 泉 宗 川 旅館 ニ於 テ第 一回 ノ大 会 ヲ開

社 ノ成 立 ヲ見 ﹁社 ﹂ ナ ル隠 語 ノ下 ニ漸 次 党 員 ノ数 ヲ増 シ大 正 十 五

日本 共 産 党 ナ ル秘 密 結 社 ハ大 正 十 二年 検 挙 ニ遇 ヒ次 テ大 正 十 三年

学 聯 ニ於 テ ハ無 産 階 級 運 動 ニ貢 献 ス ル小数 闘 士 ノ獲 得 ニ努 メ

方 針 ニ関 シ コミ ンテ ル ン ( 国 際 共 産 党) 中 央 部 ノ批判 ヲ受 ケ之 ニ

(二 被 告 人 松 本 篤 一ハ同 年 十 二 月 二 十 五 日東 京 帝 国 大 学 第 二学 生 )

タ ル カ漸 次 反動 的 諸 団 体 ノ組 織 化 ヲ見 学 生 大 衆 ヲ反動 ノ手 ニ

基 キ同 年 末 ヨリ翌 年 春 ニ亘 リ就 中 昭 和 三年 二月 ノ衆議 院 議 員 総 選

コ ロ其 ノ後 再 ヒ新 ニ結 成 セ ラ レ既 ニ大 正十 四年 八 月頃 ニ ハ之 カ結

奪 ハル ル虞 ア ル故 学 生 大 衆 ヲ獲 得 ス ル為 所 謂 共 同 戦 線即 チ思

挙 期 間 中 ヲ利 用 シテ 主 ト シテ我 国全 国各 地 ノ 工場 ヲ組 織 単 位 タ ル

二月 頃 ニ至 リ解 散 ノ決 議 ヲ為 スモノ ア リ テ 一時 消滅 ニ帰 シタ ルト

想 的 立 場 ヲ異 ニス ル者 カ同 一目 的 ノ為 ニ具 体 的 行動 ( 行動綱

細 胞 ト スル党員 ノ編 成 替 即 チ所 謂再 組 織 (再 建 設 ) ヲ企 テ無 産 大

控 所 ニ於 テ全 国執 行 委 員 会 ヲ開 催 シ前 記 清 水 平 九 郎其 ノ他 ノ

領 ヲ通 シテ) ニ依 リ結 成 ス ル必 要 アリ ト為 シ校 内 運動 ニ於 ケ

衆 ニ対 シ公 然 日本 共産 党 ノ名 ノ下 ニ其 ノ主 義 政 策 ヲ発 表 シ急 速 ニ

者 ト会 合 シ日本 学 生 社 会 科 学 聯 合会 ノ戦 術 テ ー ゼ (綱領 ) 並

ル共 同 戦 線 ニ付 テ ハ他 ノ自 由 主 義 諸団 体 ト相 提携 シテ共 通 ノ

党 ノ拡 大 ヲ計 ル ニ至 リ タ ル モノト ス。而 シテ同 党 ハ其 ノ成 立 ノ当

ツ テ資 本 私有 ヲ禁 止 シテ生 産 手段 ヲ社会 ノ公 有 ト為 ス コト即 チ我

闘 争 題 目 ヲ持 チ学 生 ヲ吾 人 ノ 予 備軍 タ ラ シ ム ルト 同時 ニ反 動

ト 共 ニ闘 争 題 目 ノ転 換 ヲ必要 ト ス ル旨 討 議 決 定 シ次 ニ教 育 テ

国 ニ於 ケ ル私有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ其 ノ究 極根 本 ノ目 的 ト

的 危 険 ヲ防 止 ス ル コト ト 為 シ校 外 運動 ニ於 ケ ル共 同戦 線 ニ付

ーぜ ニ関 シ従 来 ノ教育 テ ー ゼ ニ於 ケ ル マル ク ス主 義 的 一元 教

為 シ此 ノ目的 達 成 ニ至 ル段 階 方法 ト シ テ ハプ ロ レタ リ ア (無 産 階

ー ニン主義 ヲ指 導 精 神 ト ス ル共 産 主義 社 会 ノ建 設 ニ在 リ ト為 シ従

育 ニ基 礎 ヲ置 ク ヘキ ハ勿 論 ナ ル モ従 来 ノ如 キ単 ナ ル中 心 分 子

級 就 中 近代 的 労 働 者 階 級 ) 独 裁 ノ樹 立従 ツ テ該 階 級独 占 ノ政 治 支

初 ヨリ我 国 労働 者 階 級 ヲ解 放 ス ル為 ニ ハ唯 タ 一ニ マルク ス主 義 レ

及会 員 ノ教 育 ヨリ更 ニ学 生大 衆 ノ教 育 ノ必 要 ア ル故 宣 伝 煽 動

配 ニ非 ラ サ ル 一切 ノ政 治 権 力 ヲ否 定 ス ル ニ在 リ ト為 シ而 モ我 国 現

テ ハ学 生群 カ無 産 階 級 ト 異 レ ル性 質 ヲ理解 スルト 共 ニ学 生 生

等 ノ執 拗 ナ ル教 育 的運 動 ト共 ニ段 階 的 教 育 方法 ノ必 要 ア リト

ヲ其 ノ 当 面主 要 ノ目 的 ト 為 シ之 カ為 暴 力 革 命 ヲ遂 行 ス ル コト ヲ モ

在 ノ歴 史的 段 階 ニ於 テ ハ君 主 制 ノ撤 廃 即 チ我 国 体 ヲ変 革 スル コト

活 ニ密 接 ナ ル関 係 ヲ有 スル闘 争 題 目 ヲ捉 ヘテ共 同戦 線 ヲ張 ル

一般 会 員 ヘノ 理論 ノ注 入 ト行 動 ヘノ誘 致、 中 心分 子 ノ理論 的

為 シ未 組 織 学 生 ヘノ煽 動 及 組 織 化 新 入 学 生 ヘノ煽 動 及 宣 伝 、

者 ノ覇 権 ノ下 ニ貧農 大 衆 ト ノ同 盟 ヲ作 ラ ムト シ テ只 管 階級 闘 争 ノ

辞 セ スト為 シ自 ラ ヲ精 鋭 ナ ル軍 隊 ニ比 シ内 ニ在 リ テ ハ革 命的 労 働

ラ レ入 党 ノ勧 誘 ヲ受 ク ル ヤ前 同様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以

橋 附 近 ノ某喫 茶 店 ニ於 テ同 党員 山 崎 雄 次 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ

党 員 ト シ テ承 認 セラ レ昭 和 三年 二月 二十 日頃 大 阪 市 南 区心斎

阪 出 張 所員 ト ナ リ居 タ ル モノ ナ ルト コ ロ前 記 日本 共 産 党 ヨリ

テ同 党 ニ加 入 シ後 チ同 党 ノ大 阪鉄 工所 工場 細 胞 組 織 準 備 委員

激 化 ニ努 メ外 ニ在 リ テ ハ国 際 共 産 党 ト相 通 シテ世 界 無 産階 級 革 命

会 員 ト ナ リ タ ル モノ

ノ 一支 隊 ヲ以 テ任 シ東 京 市 所 在 露 国 大使 館 其 ノ他 ニ於 テ同党 ヨリ

立 ノ当 初 ヨリ中 央部 ヲ東 京 ニ置 キ之 ヲ最 高 ノ機 関 ト 為 シ全国 各 地

資 金 ノ供 給 ヲ受 ケタ ル モノ ナ リ。而 シテ党 ノ組 織 ト シ テ ハ其 ノ成

党 大 阪 支 部協 議 会 ノ書 記 長 ト ナリ労 働 運動 ニ従事 シ居 タ ル モ

( )ハ 被 告 人 黒 川健 三 ハ前 記 大 阪 外国 語 学 校 中途 退 学 後 旧 労 働 農 民

ノ ナ ルト コロ前 記 日本 共 産 党 ヨリ党 員 ト シテ承 認 セ ラ レ昭和

ニ数 名 ノ党 員 ヨ リ成 レ ル細 胞 ヲ作 リテ之 ヲ末 端 ノ機 関 ト為 シ後 ニ

三 年 二 月 上旬 頃 大 阪 市南 区道 頓 堀 ナデ シ コ喫 茶 店 ニ於 テ前記

歪 リ テ ハ其 ノ両 者 ノ連 絡 統 制 機 関 ト シテ関 東 、 関 西 、 九州 、 北 海 道 等 ノ各 地方 委 員会 其 ノ下 ニ大 阪 、京 都 等 各 地 方 委 員 会更 ニ其 ノ

山 崎 雄 次 ヨリ右 党 員 ノ候 補 者 ト シテ同 党 ニ編 入 セ ラ ルル コト

ト ナ リ居 ル旨 通 セ ラ レ入党 ノ勧 誘 ヲ受 ケ 次 テ同 年 同 月 下 旬頃

シテ フ ラ ク シ ヨ ン ( 分 派 ) ヲ構 成 セ シメ是 等 ノ組 織 的 活動 ニ依 リ

同 党 員 国領 巳三 郎 ヨリ同党 大阪 地方 委員 会 ニ於 テ正 式 ニ党員

下 ニ各 地 区委員 会 等 ヲ順 次 設 置 シ党 以 外 ノ団 体 内 ニ於 テ ハ党 員 ヲ

モノ ナ リ

上下 左 右 相 呼 応 シテ本 件 検 挙 ニ至 ル迄前 示 ノ目 的 達 成 ヲ図 リ タ ル

ト シ テ入 党 セ シム ル コト ニ決定 シタ ル旨 ノ通 告 ヲ受 ク ル ヤ前

同 様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以 テ其 ノ頃 同党 ニ加 入 シ其 ノ後

モノ

同 党 大 阪 市電 春 日出 車 庫 ノ細 胞 組 織 準 備委 員 会 員 ト ナ リタ ル

被 告 人松 本 篤 一 ハ前 記 東 京 帝 国 大 学中 途 退 学 後 大 阪 産業 労 働

而 シテ (イ)

ヨリ党 員 ト シテ承 認 セ ラ レ昭 和 二年 十 月 頃 大 阪 市南 区 心斎 橋

阪 市 北 区 大 江橋 附 近 美津 濃 運動 具 店 地 下室 喫 茶 店 ニ於 テ前 記

即 チ 日本 共産 党 ヨリ党員 ト シテ承 認 セ ラ レ昭和二 年 十 月 中大

部 書 記 ト為 リ農 民 運 動 ニ従事 シ居 タ ル モノ ナ ルト コ ロ前 記社

(ニ 被 告 人鷲 谷武 二 ハ前 記京 都帝 国 大 学 停 学後 日本 農 民 組 合総 本 )

調 査 所 ニ勤 務 シ居 タ ル モノ ナ ルト コ ロ前 記 社 即 チ日本 共 産 党

筋 大 丸 呉 服 店附 近 ノ某 喫 茶 店 ニ於 テ同 党 関 西 委 員長 タ リ シ柴

ヤ同 党 カ前 記 ノ如 キ我 国 ノ国 体変 革 私 有 財 産 制 度否 認 ヲ目 的

春 日庄 次郎 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ ラ レ入党 ノ勧 誘 ヲ受 ク ル ヤ前

川 事 春 日庄 次郎 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セラ レ入 党 ノ勧誘 ヲ受 ク ル

ニ加 入 シ其 ノ後 同 党 大 阪 地 方委 員 会 所 属 ノ東 部 地 区委 員 ト ナ

ト ス ル秘 密結 社 ナ ル コト ノ情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以 テ同 党

同 様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以 テ同 党 ニ加 入 シ其 ノ後 大 阪毎

日新 聞 社 工場 細 胞 組 織準 備 委 員 会 並 日 本農 民 組 合 フ ラ ク シ ヨ

リ タ ル モノ (ロ) 被 告 人 古 賀 二男 ハ前 記 京 都 帝 国大 学 中 途 退 学後 無産 者 新 聞 大

ン ( 分 派 ) ノ各委 員 ト ナ リ タ ルモ ノ ナ ルカ検 挙 後 脱 党 ヲ表 明 シ タ ル モノ ( チ)

(分 派 委員 会 ) ノ 一員 ト為 リ同 党 ノ為 活 動 シタ ル モノ

被 告 人 永井 哲 二 ハ前 記 京都 帝国 大 学 中 途 退 学後 無 産 者 新聞 京

テ承 認 セ ラ レ昭和 三年 二 月 上旬 頃 京 都 市 上 京 区 田中 上 柳 町同

被 告 人 当時 ノ住 居 附 近 ノ某 喫茶 店 ニ於 テ被 告 人 宮 崎 菊 次 ヨリ

都 支 局 長 タ リ シ モノ ナ ルト コ ロ前 記日 本 共 産党 ヨリ党員 ト シ

ルト コ ロ前 記 日 本 共産 党 ヨリ党 員 ト シ テ承認 セ ラ レ昭和 三年

右 承 認 ノ旨 通 セ ラ レ入 党 ノ勧 誘 ヲ受 ク ル ヤ前 同 様 情 ヲ知 リ乍

大 阪府 支 部 聯 合 会 書 記 ト為 リ労 働 運 動 ニ従事 シ居 タ ル モノ ナ

二 月十 日頃 大 阪 市南 区 心斎 橋 附 近 ノ森永 喫 茶 店 ニ於 テ前 記山

ラ之 ヲ承認 シ以 テ同 党 ニ加 入 シ其 ノ後 同 党 京都 地 方 委員 会 所

) (ホ 被告 人熊 谷 孝 雄 ハ前 記京 都 帝 国 大 学 中 途 退学 後 旧 労働農 民党

崎 雄 次 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ ラ レ入 党 ノ勧 誘 ヲ受 ク ル ヤ前 同様

属 ビ ー細胞 組 織 準 備 委員 会員 ト ナ リ同 党 ノ為 活 動 シ タ ル モノ

在 リ タ ル モノ ナ ルト コ ロ前 記社 即 チ 日本 共 産党 ヨリ党員 ト シ

被 告 人 石 田英 一郎 ハ前 記 京 都帝 国 大 学 中 途 退学 後 東 京 方 面 ニ

情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以 テ同 党 ニ加 入 シ其 ノ後 大 阪 市電 今 (リ)

( )ヘ 被 告 人宮 崎 菊 次 ハ前 記 同 志 社 大 学 中 途 退 学後 一時 旧労 働 農 民 党 京 都 府 支 部 聯合 会 書 記 タ リ シ モノ ナ ルト コ ロ前 記 社即 チ 日

里 車 庫 ノ工 場 細 胞組 織 準 備 委 員 会 員 ト為 リ タ ル モノ

本 共 産 党 ヨリ党員 ト シ テ承 認 セ ラ レ昭和 二年 九 月 中京 都 市 内

テ同 党 員中 野 尚 夫 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ ラ レ入党 ノ勧 誘 ヲ受 ク

地 小 石 川 アパ ー ト メ ント ハウ スナ ル同 被告 人当 時 ノ住 居 ニ於

同 党 ニ加 入 シ其 ノ後 京 都 地 方 ニ於 ケ ル最 高 幹 部 ト シテ同 党 ノ

レ入 党 ノ勧 誘 ヲ受 ク ルヤ前 同 様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承諾 シ以 テ

生 フ ラ ク シ ヨ ンノ委 員 ト 為 リ同 年 十 一月 頃 ヨリ関 西 地 方 ニ来

ル ヤ前 同様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承 諾 シ以 テ同党 ニ加 入 シ同党 学

被 告 人 石 田 英 一郎 、 鈴 木 安 蔵 、鷲 谷武 二、 大 田 遼 一郎 、 熊 谷 孝 雄、

リ昭 和 三年 二 月中 前 記 春 日 庄次 郎 及 神 戸 地 方 ノ最 高 幹 部 タリ

ト ナ リ居 タ ル モノ ナ ルト コロ前 記 日本 共 産 党 ヨ リ党 員 ト シ テ

永 井 哲 二 、武 藤 丸 楠 、 黒 田久 太、 古 賀 二男 、 大浦 梅 夫 、 内 海 洋 一、

拡 大 連 絡 統 制 等 ニ従 事 シ タ ル モ ノ

承 認 セ ラ レ昭和 三年 二月 上 旬頃 京 都 市 上 京 区 田中 玄 京 町 ナ ル

宮 崎 菊 次 、 原 田耕 、 黒 川 健 三、 上 村正 夫 ノ判 示第 一ノ各 所 為 並被 告

シ板野 勝次 等 ト会 合 シ其 ノ頃 ヨリ同 党 神戸 地方 所 属 ノ党員 ト

長 谷 川博 方 ニ於 テ前 記 宮 崎 菊次 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ ラ レ入 党

人 松 本 篤 一、 古賀 二男 、 黒 川健 三、 鷲 谷 武 二 、熊 谷孝 雄 、 宮 崎菊 次 、

シ テ同 党 ノ為 活動 シタ ル モ ノ ニ シテ

ノ勧 誘 ヲ受 ク ル ヤ前 同様 情 ヲ知 リ乍 ラ之 ヲ承諾 シ以 テ同 党 ニ

大 田 遼 一郎 、永 井 哲 二、 石 田英 一郎 ノ判 示 第 一ノ所 為 ト判 示 第 二 ノ

被 告 人 大 田 遼 一郎 ハ前 記 京 都 帝 国 大学 中 途 退 学後 旧労 働 農 民

加 入 シ同 党 京 都 地 方 委員 会 所 属 エー細 胞 組 織準 備 委 員 会 並 同

所 為 ト ハ夫 々意思 継 続 ニ出 テ タ ル モノ ト ス

党 京 都 府 支 部 聯合 会 調 査 部 長 並 産業 労 働 調 査 所京 都支 所 主 任

テ承 認 セ ラ レ昭和 二年 五 月 中頃 東 京 市 小 石 川 区丸 山 町参 拾 番

新 京 極 某 喫 茶 店 ニ於 テ前 記 春 日庄 次郎 ヨリ右 承 認 ノ旨 通 セ ラ

(ト)

党 ノ 旧労 働 農 民 党 京 都府 支 部 聯 合 会 フ ラ ク シ ヨ ンビ ユー ロ ー

事 作 成 ニ係 ル予審 訊問 調 書 ヲ指 称 ス)

昭 和 二 年 一五 七号 治 安 維 持 法違 反 被 告 事 件 ノ京 都 地 方裁 判 所 予 審 判

判 示 第 壱(甲) ノ 犯罪 構 成 事 実 ハ (以下 単 ニ予 審 訊 問 調書 ト ア ル ハ当 院

犯 罪 構 成事 実 ニ付 証拠 ヲ案 スル ニ

各供述記載

其 ノ趣 旨 ヲ了 知 シ承 認 ノ上 大会 提 案 ヲ可 決 シタ ル モノ ナ ル旨 ノ

ノ七 月 七 日頃 ノ関 東 学 聯 代表 委 員 会 ノ席 上 ニ於 テ モ出 席 者 一同

タ ル私 及清 水 平 九 郎 等 カ其 ノ作 成 協 議 ヲ為 セ ルト キ ハ勿論 前 陳

場 所 ニテ清 水平 九 郎 ト共 ニ学 生 社会 科 学 運 動 ノ 一般 方針 ニ関 シ

共 産 主 義 社会 ヲ建 設 ス ル ニ在 ル旨 並 自 分 ハ判 示 六 月 下旬 頃 判 示

本 主義 ヲ排 シ 一切 ノ生 産 機関 ヲ社 会 化 シ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 シ

ノ実 現 ヲ図 ラ ムト ス ルモ ノ ナ ル旨 並 自 分 ハ判 示第 二回 大 会 ノ前

独 裁 政 治 ヲ招 来 セシ メ 一切 ノ生 産手 段 ヲ共 有 ト為 シ漸 次 右 社会

理 ニシ テ資 本 家 的 私 有 財 産制 度 ヲ否 認 シ階 級 ト シテ無 産 階 級 ノ

ル 一切 ノ権 力 階 級 ヲ破 壊 シ共 産 主義 社 会 ノ建 設 ヲ目 的 ト ス ル学

ルモノ ニシテ該 主 義 ハ小 数 ノ資 本 家 地 主 階 級 ヲ排 シ之 ヲ擁 護 ス

本 件 事 件 当時 並 現 在 ニ於 テ モ マルキ シズ ム ノミ ヲ真 ナ リ ト信 ス

第 二回 大 会 テ ーゼ関 東 案 ノ原稿 (証第 八 七九 号 ノ壱 ) ヲ作 成 シ

日頃 判 示 京大 研 究 会 本 部 ニ開 カ レ山 崎 雄 次、 村 尾 薩 男 、是 枝 恭

一、 被 告 人 鈴木 安 蔵 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ判 示学 生会 員 ニシテ

判 示 七 月 七 日 頃 同所 ニ於 テ代 表委 員 会 ヲ開 キ清 水 平 九郎 、 秋 笹

一、 被 告 人後 藤寿 夫 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ判 示 学 生会 員 ニ シテ

正 之 輔 、 村 尾 薩 男等 ト共 ニ右 案 ニ基 キ協 議 シ之 ヲ同 会 ニ属 ス ル

ヲ纏 メ大 会 テ ー ゼ ヲ新 ニ作 ル必 要 ア リ ト ノ コト ニ付 協 議 シ自 分

二等 出 席 シ居 タ ル大 会 準 備 会 ニ出 席 シ其 ノ際判 示 関 東 案 関 西 案

本 件事 件 当時 マルク ス主 義者 ニシテ同 主 義 ノ目 的 ハ要 ス ル ニ資

一般 会 員 ニ諮 ラ ムカ為 第 二 回 全 国大 会 ノ関 東 案 ト シ テ提 出 ス ヘ

学 聯 ニ加 盟 セ ル会 員 一般 ノ コト ハ判 ラ サ ル カ私初 メ少 ク ト モ会

ス ル所 ノ学 生 運 動 ニ従事 シ居 リ タ ル旨 同 第 三 回訊 問 調書 中 判 示

希 望 シテ居 ルモ ノテ ア リ該 社 会 ノ実 現 ノ促 進 ヲ図 ル為 之 ニ貢献

リ タリ ト思 フ而 シ テ其 ノ後 判 示 ノ如 ク大会 及 其 ノ翌 日 ノ会 合 ニ

タ ル ニ山崎 、 是 枝 、村 尾 カ出 席 シ居 リ大会 開 催 ノ準 備的 ノ話 ア

ヲ信奉 シ居 リ タ ル旨 並自 分 ハ判 示 第 二 回大 会 前 ノ 会合 ニ出 席 シ

テ本件 事 件 当時 ハ勿 論 既 ニ高 等 学校 卒 業 当 時 ヨリ マルク ス主 義

一、 被告 人 石 田英 一郎 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ判 示学 生会 員 ニシ

ノ如 ク大 会 及其 ノ翌 日 ノ会 合 ニ出席 シタ ル旨 ノ供 述

ハ新 案 ヲ右 大会 ニ提 出 スル コト ヲ承 認 シ タ リト思 フ而 シ テ判 示

ク協 議 ヲ為 シ タ ル旨 ノ供 述 ヲ為 スト 一、 同 被 告 人 ニ対 スル予審 第 一回 訊 問 調書 中 私 ハマ ルキ シズ ム ノ真

ノ中 心 分 子 ノ間 ニ於 テ ハマ ルキ シズ ム レ ー ニ ニズ ムヲ指 導精 神

ナ ル コト ヲ信 スル モノ テ ア リ共 産 主 義 社 会 ノ実 現 サ レ ム コト ヲ

ト シテ所 謂 共産 制 社 会 ノ実 現 ヲ企 図 シ此 ノ学 生 運 動 ニ従 事 シ居

ニ送 リ タ ル手 紙 ノ原 稿 ノ 一部 ト シテ君 ノ依頼 ニ依 リ テ千九 百 二

一、 同 被告 人 ニ対 ス ル予 審 第 八 回訊 問 調 書 中 自分 ハ支 部 学 生黄 布 山

出 席 シ タ ル旨 ノ供 述

ヲ確 定 シ ソ レ ニ記 載 ノ趣旨 ニ基 キ運 動 ヲ行 フ ヘキ コト ヲ明 ニ ス

タ ル旨 同 第 二 回訊 問 調 書中 第 二 回大 会 テ ー ゼ ハ学 聯 ノ 運動 方 針

ル為 ニ作 成 シ大 会 ニ上 程 ス ル ニ至 リ シ モ ノ ニシテ之 カ起 草 委 員

其 ノ他 所 謂 中 心 分 子 ハ無 産 階 級 ノ解 放 即 チ共 産 主 義 社 会 ノ実 現

運 動 ハ マ ルキ シズ ム レー ニ ニズ ム ヲ其 ノ指 導 精 神 ト シ従 ツ テ私

旨 、 同 第 六 回 訊 問 調書 中 所 謂 学 生 社会 科学 運 動 ナ ル我 々 ノ学 生

シ テ書 カ レタ ル モノ ナ ル故 其 ノ旨 御含 ミア リ タ キ旨 記 載 シタ ル

ヲ御 送 リ スル然 シ是 ハ大 会 ノ席 上 ニ官 憲 ノ臨 席 ス ル コト ヲ予測

十 五年 七 月 十 六 日 ノ全 日本 学 生 社会 科 学 聯 合 会 ノ テ ーゼ規 約 等

依 頼 シ同 人 カ之 ヲ作 成 シタ リ而 シテ自 分 ハ十 六 日 ノ大 会 ニ出 席

成 ス ル コト ニ致 シ翌 日是 枝 ニ対 シ大 会 テ ー ゼ新草 案 ノ作 成 方 ヲ

ヨリ是 等 ニ今少 シ保 護 色 ヲ施 シ表現 ヲ穏 カ ニ スヘ ク新 草 案 ヲ作

余 リ ニ露 骨 ニテ公 開 ノ席 上 ニ於 テ発 表 スル ニ不適 当 ト認 メ タ ル

リ 大会 テ ーぜ関 東 案 ト 関 西 案 ヲ審議 シ其 ノ両 案 ハ何 レ モ表 現 カ

北 白川 本 部 ニ緊 急 会 議 ヲ開 キ大 会 ヲ公 開 スル コト ニ定 メ タ ルヨ

人作 成 ノ テ ーゼ補 足 案 ヲプ リ ント シ居 リ タ リ同夜 議 案 整 理 ノ為

シ テ貰 ヒ度 旨形 式 的 ニ述 ヘ翌 日 ノ第 二次 会 ニ ハ午後 二時 頃 ヨリ

シ全国 的 教 程作 成 ノ件 ニ関 シ秋 笹 ノ説 明 後 自 席 ヨリ委 員 附 託 ニ

ヲ図 ル為 ニ其 ノ運 動 ニ従 事 シ居 リ タ ル旨 ノ各 供 述 記 載

回 調書 中 大 正 十 四 年六 月 二十 五 日頃 ノ代 表 委 員 会 ニ於 テ村 尾 カ

一、 原審 共 同 被 告 人 タリ シ清 水 平 九 郎 ニ対 ス ル予審 訊 問 調 書 ノ第 五

ナ ル旨 、 同 第 三 回調 書 中 吾 々ノ所謂 学 生運 動 ハ単 ナ ル研 究 ノ為

北 白 川本 部 ニ出 席 シタ ル旨 、 同 第 二 回調 書 中 私 ハ判 示 生徒 会 員

ノ研 究 ヲ為 ス団 体 ニ非 スシ テ研 究 ト実 践 ト ヲ結 合 ス ル ニ躊躇 セ

私 等 カ起 草 委 員 ニ挙 ケ ラ レ七 月 三日 頃 新 人会 本部 ニ於 テ私 ト後

サ リ シ モノ ナ リ要 ス ル ニ吾 々ノ運動 ノ目 的 及 任 務 ハ社会 科 学 ノ

起 草 シタ ル大 会 テ ーゼ草 案 ヲ審 議 シタ ル モ不 備 ナ リ シ ヨリ後 藤 、

ヲ終 リ之 ヲ私 方 ニ持帰 リ字 句 ヲ修 正 シ草 案 ノ 原稿 (証第 八 七 九

藤 ト相 談 ノ上 約 二時間 ヲ費 シ草 案 (証 第 八 七 九号 ノ 一) ノ起 草

ノ解放 即 チ共 産 主義 社 会 ノ実 現 ヲ期 ス ル ニ在 リ私 ハ第 一回全 国

協 議会 ヨリ第 二 回全 国 大 会 ヲ経 テ大 正十 四年 十 二 月 下旬 ノ全 国

普 及学 生 群 ノ組織 化無 産 階 級 運 動 ヘノ貢 献 ニ依 リ テ全 無 産 階 級

改 正規 約 草 案 及 私 共 ノ作 成 シタ ル大 会 テ ーゼ草 案 ヲ可 決 シ タ ル

運動 ニ従 事 シ タ ルカ私 ハ マル ク ス主義 ヲ信 シ共 産主 義 社会 ノ実

執 行委 員 協 議 会 ニ至 ル迄 各 集 会 ニ出 席 ス ル等 所 謂 学 生 社会 科 学

号 ノ二) ヲ完 成 シ七 月 七 日頃 最 後 ノ 代表 委 員 会 ヲ新 人会 本 部 ニ

次 第 ニ シテ右 テ ーゼ草 案 原 稿 ヲ作 成 シ タ ル目 的 ハ之 ヲ第 二 回 全

開 キ私 ノ外 秋 笹 正 之輔 、 後 藤 寿 夫 、 村 尾 薩 男 等十 三 四名 出 席 シ

国 大会 ニ於 テ可 決 セ シメ吾 々学 生 運動 ヲ シテ マルキ シズ ム ヲ指

ヲ認 ム ルヲ以 テ私 ハ斯 ル条 件 ニ働掛 ケ之 ヲ助 長 セ シ ム ル コト ハ

リ 過渡 的 形 態 社会 ニ推 移 ス ヘキ物質 的 条 件 カ稍 々備 リ居 ル コト

必要 ナ リト 信 シ居 ル モノ ニシ テ究極 ス ルト コ ロ共産 主 義 社 会 ノ

現 ヲ期 待 シ居 リ現 在 日本 ノ資 本 主義 カ没落 ノ過 程 ヲ辿 リ ツ ツ ア

ノ ナ ル旨 、 同 第 六 回調 書 中 私 ハ村 尾 ト 共 ニ東 京 ヲ出 発 シ大 正十

実 現 ヲ図 ル為 ニ右 運 動 ニ従 事 シ タ ル モノ ナ ル旨 、同 第 四 回調 書

ニ到 達 ス ヘク原 稿 記載 ノ任 務 ニ従事 セ シメ ム コト ヲ図 リ タ ル モ

四年 七月 十 二 日 昼頃 京 都 市 ニ来 リ翌十 三 日朝 山 崎 カ名 古 屋 ヨリ

中 学 生 社 会 科学 聯 合 会 会 歌 草 案 ハ大 正十 四年 三 月頃 私 カ作 成 シ

導精 神 ト シ聯 合 会 ノ中 心分 子 ノ目 標 ト セ ル共 産 主 義 社 会 ノ建 設

ス ル様 申 置 キ タ ルカ十 四 日是 枝 モ東 京 ヨリ北 白 川 本 部 ニ来 リ 同

帰 リ来 リ タ ル ヨ リ私 ハ同 人 ニ対 シ大 会 テ ー ぜ関 西 案 ヲ早 ク作 成

逝 ク ヘキ闇 ヲ逝 カ シメ ヨ我 等 ハ曙 ムカ フ﹂ ノ文 句 ハ大 正十 三 年

タ ルモ ノ ニシ テ其 ノ草 案 中 ﹁築 キナ ント モド モ ニ共産 ノ新 社 会

望 シ居 ル モノ ナ ル故 究 極 ノ目 的 ト シテ ハ共 産 社会 実 現 ノ促 進 ヲ

リ タ ル カ私 ハマ ルキ シズ ム ヲ信 シ居 リ共 産 主義 社 会 ノ実 現 ヲ希

学 生 運 動 ノ方 針 其 ノ他 ヲ定 メ タ ル会 議 其 ノ他種 々ノ協 議 ニ与 カ

十 四 年 七 月中 ノ第 二回 全 国 大 会 及其 ノ翌 日 ノ懇 談 会 ニ出 席 シテ

一、 同 村 尾 薩 男 ニ対 ス ル予 審 第 四回 訊問 調 書 中 同 人 ノ供 述 ト シテ判

九 月 当 時 ヨ リ全国 聯 合 会 ノ中 心分 子 ハ共 産 主 義 社 会 ノ建 設 ヲ学

示第 二回 大会 当 日私 カ議 長 鈴木 安 蔵 カ副 議 長 ト ナ リ会 員 五 六 十

図 ル為 所謂 学 生運 動 ニ従 事 シ居 タ ル モノ ナ ル旨 ノ各 供 述 記 載

一、 同山 崎 雄 次 ニ対 ス ル予審 訊 問 調 書 中 ノ第 四 回調 書 中 私 ハ大 正十

名 出 席 シ大 会 テ ー ゼ ノ件 ハ是 枝恭 二 カ其 ノ説 明 ニ当 リ前 陳 ノ折

生運 動 ノ目 標 ト シテ居 リ シ故 之 ヲ記 入 シタ ル モノ ナ ル旨 ノ各 供

四年 七月 十 三日朝 古 賀 二男 ト共 ニ愛 知 県 佐久 島 村 ヨリ判 示京 大

述記載

社会 科 学 研 究 会本 部 ニ帰 リ タ ル ニ東 京学 聯 ヨリ村 尾 、清 水 ノ両

衷 案 (証 第 五 号) ヲ 一読 ノ程 度 ニテ説 明 ヲ為 シ字 句 修 正 ノ上可

宿 ト ノ 二 ケ所 ニ分 レ開 キ タ ルカ私 ハ聖 護 院 ノ方 ニ出 席 シタ リ同

名 カ既 ニ来 リ居 リ 翌十 四 日 ニ ハ是 枝 モ来 リ タ リ而 シ テ村 尾 ハ関

所 ニ ハ山崎 雄 次 、 淡 徳 三 郎 等 約 二十 名出 席 シ居 リ大 会 テ ーゼ ニ

ナ リ タ リ大 会 翌 日 ノ懇 談 会 ハ北白 川 本 部 ト 聖護 院 淡 徳 三 郎 ノ下

様 云 ヒタ ル ヨ リ私 ハ右 佐 久 島 滞 在 中 ニ作 成 セ ル全 国 学 聯 ノ方 針

付 テ ハ私 カ関 東 案 (証 第 二 号 ) ノ説 明 ヲ為 シ山 崎 カ関 西案 ( 証

決 ト ナ リ全 国 的 教 程 作 成 ノ件 ハ秋 笹 正之 輔 カ説 明 シ委員 附 託 ト

ニ関 ス ル覚 書 ヲ大 体 ノ骨 子 ト シテ大 会 テ ー ゼ関 西 案 ノ原 稿 ヲ作

第 四 号 ) ノ説 明 ヲ為 シ大 会 ニテ可 決 セ ラ レ タ ルテ ー ゼ ハ右 関 東

東 学 聯 ニテ ハ大会 テ ー ゼ関 東 案 ヲ作 成 シテ居 ルト テ其 ノ プ リ ン

成 シ慥 カ十 四 日ノ午 後 出 来 上 リ シト思 フカ村 尾 ニ対 シ読 ンテ置

案 関 西 案 ヲ折 衷 シ其 ノ精 神 ヲ採 用 セ ル モノ ニ シテ其 ノ趣 旨 ニ於

ト ニシ タ ル モノ ヲ持 チ居 リ私 ニ右 大会 テ ー ゼ関 西 案 ヲ早 ク作 ル

イ テ呉 レト テ渡 シ置 キタ リ而 シ テ其 ノ 日午 後 北 白 川 本部 ニ於 テ

セムト シタ ル モノ ニ シテ即 チ我学 生 ノ運 動 カ無 産 階 級 運動 ノ 一

月例 会 カ開 カ レ関東 側 ニテ ハ是 枝 、 村 尾等 関 西 側 ニテ ハ私、 栗

翼 ト シテ之 カ運動 ノ目 標 ヲ明 ニシタ ル モノ ニシテ其 ノ目 標 ニ付

シテ証 第 五 号 テ ー ゼ ハ之 ニ依 リ 我学 生運 動 ノ将 来 ノ方 針 ヲ確 立

ハ不穏 当 ノ点 カ ア ル ノテ如 何 カ ト云 フ話 カ出 テ其 ノ結 果 右 両案

テ ハ前 述 ノ関 東 案 同 補 足 案 及 関西 案 ニ比 シ其 ノ表 現 ノ程 度 ノ差

テ差 異 ナ ク マルク ス主 義 ヲ指 導原 理 ト シ テ居 ル旨 ヲ述 ヘタ リ而

ヲ折 衷 シテ別 ニ新 草 案 ヲ作 成 ス ル コト ニナリ其 ノ起 案 委 員 ト シ

ア ル モ学 生 運動 ハ マ ルキ シズ ム ヲ其 ノ指 導 精神 ト シテ居 ル故 之

原 佑、 池 田隆 等 十 数 名集 リ タ ル際 大 会 テ ーゼ ニ付 テ モ関 東 案関

テ私 、 是枝 其 ノ他 関 東 学聯 ノ者 カ 一、 二 名 挙 ケ ラ レ村 尾 ハ私 ニ

西案 共 ニ其 ノ儘 之 ヲ大会 ノ公 開 ノ席 上 ニテ上程 ス ルモ ノト シテ

之 ヲ作 成 ス ル様 申 シ タ ル モ多 忙 ナ リ シ為 之 ヲ関 東 側 ニテ作 成 シ

ヲ蓋 然 的 ニ明 ニシタ ル モノ ナ ル旨 ノ 記載

一、 同是 枝 恭 二 ニ対 ス ル予 審 第 五 回 訊問 調 書 中 同 人 ノ供 述 ト シテ判

テ呉 レト 云 ヒ置 キ タ ル カ其 ノ後 出 来 上 リ居 リ タ ル旨 、 同 第 二 回 調 書 中 私 ハ判 示学 生 及 会員 ニ シテ種 々研 究 会 ノ委 員 ト ナ リ大 正

可 成 リ詳 シ キ説 明 ヲ為 シ全 国的 教 程 作 成 ノ件 ニ付 テ ハ初 メ秋笹

ヲ朗 読 シ各章 句 ノ連 絡 及 意 義 ヲ説 明 シ殊 ニ幾 多 ノ学 生 運動 ニ付

ー ゼ作 成 ノ件 ニ付説 明 シ新 草案 ニ付 先 ツ其 ノ骨 組 ヲ述 ヘ次 テ之

示 第 二回 全 国 大会 ニ於 テ私 ハ五 六十 名 ノ出 席 者 ニ対 シ同 大 会 テ

モノ ニ シテ実 践 団体 ニシ テ ユー スノ如 キ モノ ナリ シ而 シテ此 ノ

産 階 級運 動 モ将来 ソ レヲ行 フ計 リ ニ非 ス シテ現 在 モ現 実 ニ行 フ

蒙 ヲ モ為 ス実 践 ト 啓 蒙 ト ヲ兼 ネ行 フ モノ ニシ テ其 ノ実 践 タ ル無

産 階級 運 動 ヲ為 シ且 一方 学 生 ノ ミ ナ ラ ス労 働 者 農 民 ニ対 スル啓

標 ハ無 産 階 級 ノ解放 ニ在 リ而 シ テ其 ノ聯 盟 ハ自 分 自身 モ其 ノ無

盟 ハ社会 主 義 的 啓蒙 ヲ任 務 ト ス ル秘 密結 社 ニシ テ其 ノ啓 蒙 ノ目

聯 盟 ノ会員 カ大学 ニ入 ル ヤ其 ノ者 ニ ハ既 ニ経験 モ出 来 居 ル故 右

正 之 輔 カ 一般 的 ノ説 明 ヲ哲 学的 純 理 的 ニ説 明 シ理論 カ大 衆 ヲ把

ニ清 水 平九 郎 カ右 教 程 作 成 ノ件 ニ付 具 体 的 ニ説 明 シタ リ而 シテ

レ ハ組 織 的 ニ与 ヘタ ル モノ ニ非 スシテ個 人 的 ニ与 ヘタ ルモ ノ ナ

聯 盟 ノ精 神 ニ依 ル影 響 ヲ学 聯 ニ与 ヘタ ル コト ハ事 実 ナ リ然 シ ソ

握 スレ ハ物 質 的 権 力 ト ナ ルト 云 フ言 葉 ヲ使 用 シ タリ ト記 憶 ス次

レ懇 談会 ヲ開 キ タ ルカ私 ハ北白 川 ノ研 究 会 本 部 ニ出 席 シ約 二 十

リ而 シテ其 ノ個 人 ト ハ自 分 是 枝 恭 二、 中 野 尚 夫等 ニ シテ後 藤 寿

翌 十 七 日 ハ同 一事 項 ヲ更 ニ徹 底 的 ニ討 議 ス ル等 ノ為 二 ケ所 ニ分

キ主 ト シテ我 国資 本 主義 ノ現 勢 ニ付 テ詳 細 ナ ル説 明 ヲ為 シ尚吾

名 位 ノ出 席 者 ニ対 シ大会 テー ぜ ノ再 審 議 ニ付 テ ーゼ補 足 案 ニ基

シ尚京 大 等 ノ関 西 側 ニ モ左 様 ナ ル者 カ居 リ シ モ誰 々ナ リ シ ヤ ハ

夫 モ同聯 盟 ニ入 リ居 リ シ モノ ニシ テ自 分 等 ト 同様 ナ ル 一人 ナ リ

ハ自 分 村 尾 、 山崎 等 カ寄 リ作 ル コト ヲ決 定 シ自 分 ニ於 テ書 キ シ

一、 同 是 枝 恭 二 ニ対 ス ル同 調 書 中 同 人 ノ供 述 ト シ テ新 案 ︵ 証 第 五 号)

判 ラサ ル旨 ノ各 記 載

々学 生運 動 ノ方 針 ニ付 テ ハ其 ノ具 体 的提 要 ニ於 ケ ル関 東 草案 関

四 案 ハ少 シ モ異 ル所 ナ キ故 右 四案 ヲ綜 合統 一シタ ル モノ ヲ以 テ

西草 案 新 草 案 及 補 足 案 ノ関 聯 ヲ詳 細 ニ説 明 シ根 本 方 針 ニ於 テ右

吾 々学 生 運 動 ノ指 導 精神 ニセサ ル ヘカ ラサ ル趣 旨 ノ説 明 ヲ為 シ

ナ リ而 シテ大 会 テ ー ゼノ 実際 ノ意 味 ハ無 産 階級 運 動 ノ教 化運 動

ト カ主 タ ル理由 ニテ翌 日 秘 密会 ト シテ更 ニ会合 ヲ開 キ タ ル モノ

モノ ニシ テ判 示第 二回 大 会 ニテ ハ只 一般 ニ社会 科 学 ノ研 究 団 体

一、 同 村 尾 薩 男 ニ対 ス ル当 院 受 命 判事 ノ公 判 準 備 調 書 中 同 人 ノ供 述

ノ有 力 ナ ル部 隊 陣 営 ト シ テ学 生運 動 ヲ組 織 シ行 カ サ ル ヘカ ラ ス

タ ルト コ ロ大 分 質 問 アリ タ ルカ結 局 承 認 可決 シタ リ尚 全 国的 教

ト シテ自 分 及 是枝 恭 二 ハ個 人 ト シテ ハ判 示 学 聯 ノ中 ヨ リ無 産 階

ソ レ ハ マルク ス主 義 ヲ徹 底 的 ニ研究 サ セ第 一ニ ハソ レ ヲ学 生大

タ ト 云 フ風 ナ ル コト ニシ テ アリ シ故 夫 レヲ純 マルク ス主 義 ノ 研

級 運 動 ニ働 キ又 ハ夫 レヲ指 導 スルカ如 キ人 物 ヲ獲 得 セ ムト ス ル

究 ヲ為 シ無産 階 級 運 動 ノ 一翼 タ ル モノ ナ ル コト ヲ徹 底 サ セ ル コ

意 図 ヲ持 チ之 ニ働 掛ケ居 リ シ コト ハ相 違 ナキ旨 並 大 正十 二年 一

タ ルニ一 同 之 ヲ書 キ取 リ タ ル旨 ノ記載

月 頃 成 立 シ同 年末 ニ消 滅 シ タ ル高 等 学 校 聯 盟 即 チ エツ チ、 エ ス、

モ関 係 セ シメ ソ レ ニ依 リ テ無 産階 級 運 動 ヲ促 進 セ シ メ同時 ニソ

衆 ノ間 ニ普 及 シ第 二 ニ ハ政 治 研究 会 ヤ労働 組合 ヤ青 年 運動 等 ニ

程 ニ付 テ ハ私 ト 清 水 ト相 談 ノ上 定 メタ ル教 程 ノ具 体 案 ヲ読 上 ケ

エ ル、 ナ ル モノ カ判 示学 生 運動 ノ背 後 ニア リ シ モノ ニシテ該 聯

ハ 一個 ノ マルク ス主 義者 ト シテ持 居 リ シ意 見 ナ ルカ結 局 右 ノ意

右意 見 ヲ極 力自 分 等 ハ主張 シタ ルナ リ而 シテ右 意 見 ハ自 分 自 身

ル社 会 科 学 ノ 研究 普 及 ト 云 フ事 ニ シテ置 キタ ルカ秘 密 会 ニテ ハ

サ ル ヘカ ラ サ ル コト ヲ主 張 シタ ル モノ ニシ テ大会 ニ於 テ ハ単 ナ

レ ニ依 リテ 学 生自 身 ヲ実 践 的 ニ教 育 ス ルト 云 フ目標 ヲ掲 ケ行 カ

産階 級 運動 ノ 一部 門 一環 ヲ成 ス モノ ナ リ故 ニ吾 人 ノ運 動 ハ 一般

無 産階 級 ヘノ普 及 及促 進 ト ヲ必 要 ト ス。抑 モ学 生 運 動 ハ 一般 無

ナリ得 ル(三) 吾 人 ノ運動 ハ総 ユ ル社 会 的 現 象 正確 ナ ル理 解 ト之 カ

イ デ オ ロギ ー ノ桎梏 ヲ脱 シ真 ノ無 産 階 級 的建 設 事 業 ヘノ参加 ト

動 ト 不可 分 ニ結 合 サ レタ ル研究 ニ依 リ テ ノミ吾 人 ハブ ルジ ヨア

練 ス ル為 ニ ハ会 員 ハ凡 ユル活 動 ト事 業 ニ参 加 セサ ル ヘカ ラ ス活

セ リ従 ツ テ我学 聯 ノ 一般 的 目標 ハ(一) 学 生 一般 ノ 有 ス ルブ ルジ ヨ

識 的 ニ組 織 セ ラ レ現 実 ニ即 シ展 開 シ初 メ タ ル現 実 化時 代 ニ進 展

内 ヨ リ生 レ出 テ タ ルモノ ニシテ今 ヤ方 向 転 換 期 ヲ経 テ運 動 カ意

ツ ツ ア ル日本 資 本 主 義 ハ特殊 ノ経 済 的 政 治 的 事情 ヲ具 備 シ支 配

界 資 本 主義 経 済 ノ没 落動 向 ニ捲 キ込 マ レ此 ノ 一般 的 運 命 ヲ辿 リ

科 学 ヲ指 導 精 神 ト スル運動 ニ進 展 シツ ツ ア ル モノ ナ リ而 シ テ世

握 ノ運動 及同 時 ニ実 行 ヘト突 進 ミ反 資 本 主 義 ニシテ且 無 産 者 的

ノ 決定 的闘 争 ノ進 展 ニ絡 ミ合 ヒ無 産 階 級 的 意識 無 産 階 級 科 学 把

無 産 階 級運 動 ト共 同 ノ目的 方 向 ヲ有 シ共 通 ノ戦 略 ヲ有 ス ル ヲ以

見 ハ学 聯 全 体 ノ指 導 的意 見 ニナリ居 リ タ ル旨 ノ 記 載

ア イデ オ ロギ ー ノ徹 底 的 批 判 ト其 ノ打 破 (二) 会 員 一般 ノ反 資 本 主

階 級 ノ反動 的 弾 圧 政 策 ト革 命 的 無 産 階 級 ノ闘争 ト ハ決 戦 ノ 日 ノ

テ 此 ノ 共通 ノ目 標 ヲ見失 フ コト ナ ク吾 人 ノ戦 術 ヲ活 用 ス ル コト

義 的 傾 向 ノ促 進 其 ノ無 産 階 級的 啓 蒙 及 組 織 化 ( 三) 無 産階 級 運動 ニ

近 キ ヲ思 ハシ ム此 ノ資 本 主 義 ノ崩 壊 期 有 産 無 産 両階 級 ノ決 戦 期

一、 証 第 八 七 九 号 ノ壱 並 弐 及 証 第 二号 学 生 社 会 科 学 聯合 会 第 二回 全

実 質 的 貢 献 ヲ為 シ得 ル為 ノ会員 ノ教 育 ト訓 練 ニ在 リ又 此 ノ運 動

ニ当 面 セ ル我 日本 ノ無 産 階 級 ノ運 動 ニ於 テ ハ戦 闘 的前 衛 ハ漸 ク

ニ依 リ テ無 産 階 級 運 動 ノ促 進 ヲ期 セサ ル ヘカ ラサ ル旨 ノ各 記 載

ノ目 的 ヲ達 成 ス ル為 ニ吾 人 カ当 面 ノ問 題 ト シ テ為 ス ヘキ教 育 組

形 成 セ ラ レ タ ル モ無 組 織 労 働 者 ニ対 ス ル組 織 労 働 者 ノ数 組 織 労

国 大 会 テ ーゼ草 案 中 我 国 ニ於 ケ ル学 生 ノ反 資 本 主義 的 無 産 階 級

織 及 事 業 ヲ為 ス ニ当 リ次 ノ原則 ヲ有 ス(一) 教 育 ハ常 ニ最 モ重要 ナ

働 者 ノ質 的 程 度更 ニ近 ク現 ハレ タ ル労 働 階 級 層 ノ分裂 等 ハ決 定

運動 即 チ我学 生社 会 科学 聯 合会 ノ萌 芽 ハ世 界 大 戦 ノ終 期 ニ其 ノ

ル基 石 ナ ル カ吾 人 ノ教 育 ハブ ルジ ヨア科 学 ( 支 配 階 級 ノ 用 具)ノ

的 勝 利 ヲ獲 得 ス ル ニハ十 分 ナ ル勢 力 ト 云 ヒ得 サ ル状 況 ニ在 ルヲ

我 日 本 ニ於 ケ ル学 生 運動 ハ世 界 的 経 済 ノ破 綻之 ニ伴 フ無 産 階 級

神 聖 ナ ル秘 密 ノ 解剖 ト プ ロ レタ リ ア ート ノ科 学 ( 無 産 階 級 ノ自

一、 証 第 四 号学 生 社 会 科 学聯 合 会 第 二 回大 会 テー ゼ関 西 学 聯 草 案 中

己 開 放 ノ為 ノ武 器︶ ノ修 得 ヲ目 標 ト シ之 ヲ達 成 発 展 セ シ ム ル ニ

ス逃 避 背 離 スル モノ多 キ情 勢 ニ在 リサ レ ハ我 学 生 社会 科学 聯 合

以 テ マ ルキ シズ ム ヲ把 持 セ ル智 識 階 級 ノ任 務 ハ重 大 ナ ル ニ拘 ラ

端 ヲ発 シタ リ即 チ世 界経 済 ノ破 綻 ト共 ニ最 先 ニ没落 期 ニ入 リ シ

ハ闘 争 ト結 付 ケ ラ レサ ル ヘカ ラ ス(二) 如 何 ナ ル場 合 ニ於 テ モ研 究

日 本 帝 国 主義 ( 資 本 主 義 最 上 ノ段 階 ニ シテ後 退 的資 本 主 義 )ノ胎

ト活 動 ト ハ不 可 分 ノ 一致 ヲ為 ス モノ ナ ル ヲ以 テ自 己 ヲ教 育 シ訓

カ ラ サ ル モノ ニ シテ マ ルク ス主 義 ノ神 髄 タ ル弁 証法 ニ於 ケ ル理

ノ殲 滅 等 ニ在 リ殊 ニ如 何 ナ ル場 合 ニ モ理論 ト実 際 ト ハ引 離 スヘ

一般ヘ ノ 普 及並 煽 動 一般 学 生 ノ進 歩 的 運 動 ノ援 助 並之 カ反 動 化

会 ノ 一般 的 目標 並事 業 ハ マル ク シズ ムノ徹 底 的 体 得 ト 之 カ会 員

ル目標 ノ下 ニ吾 人 ハ次 ノ任 務 ヲ果 サ サ ルヘ カ ラ ス即 チ(一) 科学

究 並普 及 及 社会 科 学 研 究 会 ノ存立 権 ノ主 張 ニ在 ルヲ要 ス ヘク斯

大 ナ ル ヲ覚 ユ斯 ル時 期 ニ当 リ吾 人 ノ 一般 的 目標 ハ社 会 科 学 ノ研

認 識 シ之 ト歩 調 ヲ共 ニシ来 リ シ吾 人 ノ運 動 ハ益 々此 ノ使 命 ノ重

ヲ以 テ明確 ナ ル科 学 的 知 識 ノ獲 得 ニ依 リ テ新 時代 創 造 ノ運動 ヲ

ニア ラサ ル ノミ ナ ラ ス反動 運動 ニ包 括 セ シ メラ ルヘ キ危 懼 ア ル

ル理論 ヲ獲 得 セサ ルヘ カ ラ ス之 カ為 ニ ハ研 究 ト 同時 ニ社会 的 現

的 社 会 観 ノ体得 、自 ラ斯 ル社会 的 使 命 ヲ果 タサ ムカ為 ニ明 確 ナ

論 ハ常 ニ実 践 的 批 判 的 活 動 ヲ意 味 ス ルヲ 以 テ種 々ノ社 会 的 活動

学 ノ普 及 ニ必要 ナ ル種 々ノ事業 等 ハ可 能 ナ ル限 リ ニ於 テ行 フ ヲ

及 事 業ヘ ノ参 加 補 助 ヲ為 スヘ ク就 中無 産 階 級 教 育 運動 並社 会 科

要 ス ル旨 ノ記 載

ハサ ルヘ カ ラ ス蓋 シ理 論 ハ実 践 ト 共 ニ固 ク統 一サ ル ル コト ニ依

リ テ ノ ミ力 タリ得 ルヲ 以 テ ナ リ(二) 社 会 科 学 ノ普 及即 チ徹 底 的

象 ノ留 意 ヲ怠 ラ ス又可 能 ナ ル限 リ ニ於 テ社 会 的 事業 及 調査 ニ従

ニブ ルジ ヨア的 イ デ オ ロギ ー ノ批 判社 会 科 学 研 究 会 ノ拡 張ト 緊

一、 証 第 一八 号 テ ーゼ補 足 案 中 資 本 主 義 ハ其 ノ発 達 ノ過 程 ニ於 テ種

支 持 シ (積 極的 消 極 的 ) 該 運動 ニ依 リ規 定 セ ラ レ之 ト目 的 ヲ同

密 ナ ル統 一組 織 及 社会ヘ ノ普 及 ヲ必要 ト ス ル旨 ノ記 載

々 ナ ル学 生 運動 ヲ生 ス ル モノ ナ ル カ其 ノ中 ニ純 無 産 階級 運 動 ヲ

シク スル 一派 ヲ必然 ニ生 産 ス ル モノ ニ シテ自 由 主 義 ノ時 代 ヲ殆

蓬 台恒 治 、 黒 川 健 三、 原 田耕 等 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル判 示 七月 十

一、被 告 人松 本 篤 一、 古賀 二男 、 武 藤 丸楠 、 黒 田久 太、 内 海洋 一、

ント飛 躍 シ テ帝 国 主 義 ノ段 階 ニ達 シタ ル我国 資 本 主義 ノ現 勢 ニ

(一) 無産

一、 被 告 人 蓬 台 恒治 ニ対 ス ル予 審 第 二 回 訊問 調書 中 私 ハ京 都学 聯 ヨ

出 席 シタ ル旨 ノ各 供述

六 日及 翌 十 七 日 ノ両 度 夫 々判 示各 関係 ノ 日場 所 ニ於 ケ ル会 合 ニ

於 テ モ又然 リ我 等 ノ学 生 運 動 ( 学 聯 ) ノ性 質 ハ即 チ斯 ル 一派 ニ 属 スル モノ ナ ルヲ 以 テ吾 人 ノ方針 ノ具 体 的 提 要 ト シテ

階 級 運 動 ニ貢献 シ得 ル者 ノ獲得 ト其 ノ教 育 (二 他) ノ学 生運 動 ノ (三 全) 国 的 統 一組織( 四) 無 産 階 級 教 育(五) 社会科 大 衆 化 ノ予 防

ニ於 テ催 サ レタ ル日本 学 生 社 会 科 学聯 合 会 第 二回 全 国 大会 ニ出

リ ノ通知 ヲ受 ケ 大 正十 四年 七 月 十 六 日京 都 帝 国 大 学 学 生集 合 所

学 ノ徹 底 的 普 及 ヲ必要 ト スル モノ ナ ル旨 ノ記 載

ハ其 ノ発 達 ノ段 階 ニ応 シ テ種 々ナ ル学 生 運 動 ヲ生 シ其 ノ中 ニ新

一、 証 第 五 号 学 生社 会 科 学 聯 合会 第 二 回全 国 大 会 テ ー ゼ中 資 本 主 義

ノ件 全 国 的 教 程作 成 ノ件 等 ノ提 案 事 項 可決 セ ラレ タ リト記 憶 ス

私 ハ右 全 国 大 会 テー ゼ ニ付 テ ハ東 京 側 ノ者 ノ説 明 ヲ聞 キ非 常 ニ

席 シタ ルカ当 日 ノ 会合 ニハ会 員 約 五十 余 名出 席 シ同 大 会 テ ー ゼ

感 動 ヲ受 ケ神 戸 ノ 研究 会 ハ他 ノ学 聯 ノ 研究 会 ニ比 シ所 謂社 会 科

時 代 ノ創 造 ヲ目 的 ト ス ル社 会 運動 ニ対 シ之 ト歩 調 ヲ 一ニ スル学

ヲ飛 躍 シテ帝 国 主 義 ノ段 階 ニ入 リ シ我国 ニ於 テ モ亦 同 様 ニシ テ

生 運 動 ノ 生 ス ル コト モ亦 歴史 的 必要 ナ リ而 シ テ自由 主 義 ノ時 代

種 々 ナ ル学 生運 動 ノ多 ク ハ決 シ テ社会 的 不安 ヲ解 決 シ得 ル モノ

号) 同 関 東 案 (証 第 二 号) 同 補 足 案 (証 第 一八 号 ) 及 関 西 案

様 ヲ私 ノ友 人 数 名 ニ夫 々知 ラ セ遣 リ タ リ右 大 会 テ ー ゼ (証 第 五

学 ノ研 究 カ遅 レ テ居 ル コト ヲ痛 感 シ タ ル ヨリ右 大 会 ニ於 ケ ル模

行 動 的 統 一ヲ作 ラ サ ル ヘカ ラ ス実 ニ現実 ノ闘 争 ヨ リ理論 カ生 レ

自 由 主義 的 大 衆 運 動 タ ル ニ止 ラ ス シテ質 ト 量 ノ上 ニ堅 キ思 想 的

運動 ハプ ロレ タ リ ア運動 ノ 一翼 ト シテ ノ ミ其 ノ意 義 ヲ有 シ単 ニ

ノ席 上 之 ヲ発 表 ス ル コト ヲ憚 リ右 両 案 ヲ折 衷 シ露 骨 ノ部 分 ヲ削

耳 ニシ タリ尚 関 東 案 関 西 案 ニ付 テ ハ内 容 カ露 骨 過 キ ルノ テ公 開

洛後 大 会 ニ出 席 セ ル沢 田政 雄 ヨリ其 ノ大会 ノ模 様 ヲ聞 キ尚 大会

大会 ニ ハ帰 省 中 ナリ シ為 出 席 スル コト 能 ハサ リ シ モ九 月中 旬 帰

一、 被 告 人 宮 崎菊 次 ニ対 ス ル予 審 第 三 回 訊 問調 書 中 私 ハ第 二 回全 国

理 論 ト 実 際 ト ノ統 一ヲ得 ルト 云 フ趣 旨 ナリ シ旨 ノ供述 記 載

ハ積 極 的 ニ凡 ユ ルプ ロレ タリ ア運動 ニ参 加 スル コト ニ依 リ其 ノ

除 シ タ ル旨 聞 知 シタ リ而 シ テ私 ハ右 大 会 翌 日聖 護 院 ノ米 谷 ト カ

テー ゼ関 東 草 案 (証第 二号 )及 同 関 西 草 案 (同第 四号 )ヲ借 受 ケ

理 論 ノ実 際化 ニ依 リ テ現 実 ノ 闘争 ヲ遂 行 シ居 ル ノ テ アツ テ吾 々

云 フ家 ニ参 リ タ ルカ同 家 ニ ハ山 崎 雄 次 等約 二十 数 名 ノ者 カ集 リ

自 宅 ニテ之 ヲ読 ミタ ルカ私 ハ右 両 案 ヲ読 ミ従 来吾 々ノ社 会 科 学

(証第 四 号) ハ大 会 ノ前 日北 白 川 本 部 ニ於 テ受 取 リ タ ルカ同 所

居 リ タ リ其 ノ時 或 ル者 カ第 二 回大 会 テー ゼ ニ付 説 明 シ学 生 社会

ニテ右 大 会 テ ー ゼ ハ爾 余 ノ 三案 ヲ折 衷 シ作 成 シ タ ル コト ヲ 一寸

科 学 運 動 ノ目 標 ハ右 大会 テ ー ゼ ニ記 載 ノ趣 旨 ニ従 ヒ進 ム ヘキタ

運 動 カ常 ニ学 究 的 ナリ シ ニ此 シ著 シ ク現 実 的 ニ ナリ シ コト ヲ感

資 本 主 義 ノ行 詰 リ ハ国 際 資 本 主義 ノ 没落 傾 向 ト 共 ニ其 ノ最 後 ノ

大 会 ニ出 席 セサ ル者 ノ為 報 告 ヲ為 シタ ルカ ソ レ ハ要 ス ル ニ我 国

帰 リ シ大 会 テー ゼ ノプ リ ント ニ基 キ 二三 度 モ其 ノ趣旨 ヲ話 シテ

ト 記憶 ス私 ハ暑 中 休 暇 後神 戸 ノ研 究 会 並 月例 会開 催 ノ際 私 カ持

会 ニ於 ケ ル討 議 ヲ モウ 一度 徹 底 的 ニ遣 リ直 スト 云 フ意 味 ナ リ シ

ル所 ヲ以 テ スレ ハ東 京 学 聯 ノ者 カ屡 々関 西 ニ於 ケ ル会合 ニ来 リ

一翼 ト シテ其 ノ重要 ナ ル任 務 ヲ帯 フ ル ニ至 リ タ リ而 シテ 私 ノ観

ルト共 ニ其 ノ理論 ヲ実 践 ニ移 シ所 謂 学 生運 動 カ無 産 階級 運動 ノ

ル ニ至 リ各 研究 会 ノ研 究 組 織 ノ内容 ヲ 一新 シ其 ノ組 織化 ニ努 ム

於 ケ ル研 究 ノ ミ ニ非 スシテ其 ノ目 ヲ実 際 的 ノ組 織 ノ方面 ニ向 ク

ルキ シズ ム レー ニ ニズ ム ヲ指 導精 神 ト シテ従 来 ノ 理論 的 方 面 ニ

ラ ル ル ニ及 ヒ急 転 直 下 シ所 謂 マル ク ス主 義 的 社会 運動 ニ走 リ マ

シ タリ而 シテ 日本 学 生 社会 科 学 聯 合 会 員 ノ思 想 ハ右 大 会 開 催 セ

ト申 シ居 リ其 ノ他 ニモ話 カ アリ マル ク ス主義 ノ研 究 ヲ為 ス為 其

段 階 タ ル帝 国 主 義 ニ到 達 シタ ル為 今 ヤ帝 国 主 義 ニ於 ケ ル資 本 ノ

ノ教 程 ヲ挙 ケ居 リ タ ル カ要 ス ル ニ右 ノ会 合 ニテ ハ其 ノ前 日 ノ大

攻勢 ハ全 プ ロ レタ リ アノ搾 取 ト奴 隷 化 ヲ益 々深 刻 化 ス ルト 共 ニ

ハ急 角度 ニ其 ノ方 面 ヲ転 ス ル ニ至 リ シ モ ノ ノ如 キ旨 ノ供 述 記載

其 ノ急 進 的 思 想 ヲ伝 ヘ其 ノ影 響 ニ依 リ関 西 ノ学 生 社 会 科学 運動

二回 大会 ノ模 様 ハ大 正 十 四年 九 月 十 八九 日頃天 津 ヨリ京 都 ニ帰

一、 被 告 人大 田遼 一郎 ニ対 ス ル予 審 訊 問 調 書 ノ第二 回調 書 中 判 示第

他 方帝 国 主 義 国 家 主 義 ノ 反動 的 弾 圧 政 策 ハ社会 運動 ノ上 ニ日和

ル的 ナ我等 ノ 先輩 ノ中 ニ ハ漸 次 日和 見 主 義 化 ス ル者 カ続 出 シ テ

見 主義 ト革 命主 義 ト ノ二 大 分 野 ヲ現 出 セ ムト シ ツツ ア リプ チブ

却 ツ テプ ロレタ リ ア革 命 ノ進 路 ヲ遮 ラ ム ト シ ツ ツ アリ吾 々学 生

モ貫 ヒ又 関 西 案 (証 第 四 号) モ見 タ ル コト ア ル旨 同 第 五 回調 書

リ テ間 モナ ク方 々 ヨリ断 片 的 ニ聞 知 シ其 ノ テ ー ぜ ︵証第 五号 )

ノ北 白 川本 部 ニ於 ケ ル京 大 研究 会 第 二委 員 会 ニ出 席 シ タ ルト キ

年 九 月 十 三 日頃 暑 中 休 暇 ヲ終 ヘ郷里 秋 田 ヨリ帰 洛 後 同 月 二十 日

中 私 ハ マル キ シズ ムノ共 産 主義 社 会即 チ無 階 級 ノ社 会 ノ到 来 ヲ

且其 ノ行動 ニ於 テ モ著 シ ク現実 的 ニナ リ居 ル コト ヲ感 シ私 モ会

其 ノ会 ノ模 様 ヨリ観 テ会 員 一般 ノ思 想 ハ急 激 ニ其 ノ発 展 ヲ遂 ケ

テ ー ゼ及 教 程 ニ関 ス ル協 議 ニ与 カリ シ等 所 謂 学 生 社会 運 動 ニ従

ヘカ ラサ ル コト ヲ考 フ ル ニ至 リ タ リ而 シ テ京都 帝 国 大 学 社会 科

員 ノ 一人 ト シテ大 イ ニ其 ノ研究 ヲ為 シ会 員 ト歩 調 ヲ共 ニセサ ル

希 望 シテ校 内 運動 ノ 一般 方 針 ニ関 ス ルテ ー ぜ ヲ作 リ 又 プ ロカ ル

事 シ タ ル ナ リ斯 ル目的 ハ私 一人 ニ止 ラ ス京 大 社 会 科学 研 究 会 ノ 中 心 分 子 ハ同 一目的 ニテ所 謂 学 生 社会 科 学 運 動 ニ従事 シ居 タ ル

シ者 ハ山崎 雄 次 、 石 田英 一郎 、 鈴 木 安蔵 、 淡徳 三郎 等 ニシテ尚

学 研 究 会 ニ於 テ実 際 上 会 ノ為 ニ熱 心 ニ其 ノ劃 策 発 展 ニ任 シ居 リ

判 示 第 二 回大 会 ノ模 様 ハ橋 本省 三 ヨリ話 ヲ聞 キ大 会 テ ーゼ ヲ朗

ナ リ尤 モ大 正 十 四年 ノ第 一学期 中 迄 ハ京 大 社 会 科 学 研究 会 ニテ ハ資 本 論 唯 物 論的 弁 証法 ヲ主 ト シ テ学 問 的 ニ研 究 シ居 タ ル ニ第

一、 原 審 共 同被 告 人 岩 田義道 ニ対 ス ル予 審 第 五 回訊 問 調 書 中 同 人 ノ

読 セ ラ レタ ル旨 ノ記 載

池 田隆 、 石 田英 一郎 、 栗 原 佑等 カ今迄 ノ如 ク校 内 ニ止 リ テ学 生

供 述 ト シテ然 ル ニ其 ノ後 七 月 ノ第 二回 全 国 大会 カ済 ミ会 員等 ハ

二学 期 ト ナ リ急 ニ空 気 カ変 リ中 心分 子 ナ ル鈴 木 安蔵 、 岩 田義 道 、

ニ対 シテ ノ ミ社会 科 学 ヲ普 及 シ居 リ テ ハ不 可 ナ ル故 校 外 ニ出 テ

治 研 究 会無 産 青年 同 盟 労 働 評議 会 産 業 労 働 調 査 所 等 ノ無 産 階 級

委 員 総 会直 接 ノ事 業 ト為 ス様提 議 シ其 ノ結 果 研究 会 委 員 全部 カ

機 運 カ向 キ来 リ九 月 ニ入 リ委 員 総 会 ニ於 テ 従来 ノプ ロカ ル部 ヲ

何 レ モ無産 階 級 教 育 運 動 ノ重要 ナ ル コト ヲ知 リ プ ロカ ル運動 ノ

運 動 ヲ援 助 セサ ル ヘカ ラ スト強 調 ス ル様 ニナ リ タ ルナ リ而 シ テ

プ ロカ ル ニ従 フ コト ニナリ タ ルナ リ而 シテ九 月 十 三 日 ノ委 員 会

プ ロカ ル即 チ無 産 階 級 教育 ヲ遣 リ無 産 階 級 運 動 ノ 一翼 ト シ テ政

其 ノ原 因 ハ判 然 セサ ル モ日 本学 生社 会 科 学 聯 合 会第 二回 大 会 ニ

席 者 ノ中 ニ反 対論 ア リ私 モ其 ノ 一人 ト シテ レー ニ ニズ ムノ研 究

ノ際 ナリ シト思 フ カ石 田英 一郎 ノ如 キ ハ今後 研 究 会 ノ研 究方 針

モ結 局 ハ現 実 ノ事 象 ヲ科 学 的 ニ分 析 シ之 ニ適 応 セ シ ム ル政 策 ヲ

東 京 ヨリ出 席 シタ ル者 等 カ資本 論 唯 物 論 的 弁 証法 等 ノ研 究 ニ止

一、 被告 人鷲 谷 武 二 ニ対 スル予審 第 二 回訊 問 調 書 中同 人 ノ供 述 ト シ

打建 ツ ル ニア ル故 此 ノ意 味 ニ於 テ資本 論 ノ研 究 モ是非 必要 ナ リ

ト シテ ハ マ ルク スノ資 本 論 ノ研 究 ハ之 ヲ廃 止 シ レー ニ ニズ ム ノ

テ マルキ シズ ム ト云 ヘ ハ大体 共 産 主 義 社 会 ノ実 現 ヲ目 的 ト ス ル

ト ノ趣 旨 ヲ述 ヘ反 対 シタ リ然 シ私 ノ観 ル所 ヲ以 テ ス レ ハ七月 ノ

ラ スレー ニ ニズ ムヲ研 究 シ ナケ レ ハナ ラ ヌト 云 ヒタ ルノ ニ刺戟

研 究 及方 策 テ ア ル コト ハ私 モ研 究 会 ニ入 会 後種 々ノ研 究 ニヨリ

研 究 ニ従 フ ヘキ モノ ナリ ト主 張 シ掛 ケ タ ル位 ナ リ シ カ之 ニ ハ出

承 知 シ居 リ タ ルカ私 ノ入会 当 時 ニ ハ会 員 各 自 ノ思 想 行 動 ニ付未

全国 大 会 ヲ機 ト シテ右 大 会 ニ出 席 シタ ル モノ ハ其 ノ思 想 上 ニ大

セ ラ レタ ル モノ ナ ラ ムト 思 フ旨 ノ各 供 述 記 載

タ其 ノ 理論 ノ把 握 其 ノ他 ニ付徹 底 的 ナ ラ サリ シカ私 カ大 正十 四

分 影 響 ヲ受 ケ其 ノ為 石 田 ノ如 キ議 論 モ出 タ ル モノト 思 フ而 シテ

導 者 ト ナ リ居 ル者 ニ共 産 主 義 思 想 ヲ抱 イ テ居 ル者 カ ア リ学 聯 ノ

員 カ悉 ク共 産主 義 思 想 ヲ抱 キ居 ル訳 ニテ ハナ キ モ其 ノ運 動 ノ指

会 ノ研 究 普 及 ノ対 照 ト シ居 リ タ ル旨 並 学 生 社会 科 学 聯 合 会 ノ会

タ ルモ ノ ニシテ自 分 モ新 人 会 ノ先輩 ノ思 想 ノ影 響 ヤ研 究 ノ結 果

斯 ル時 ニ当 リ大会 ニ出 席 シタ ル者 ノ間 ヨリ プ ロカ ル テ ーゼ 及 プ

日本 ノ将来 モ共 産 主 義 社 会 ニ変 革 ス ル コト ヲ希 望 シ窮 極 ノ目 的

運 動 ノ指 導 精神 ヲ マ ルキ シズ ム ニ置 キ之 カ書 及 ヲ企 ツ ル ニ至 リ

ト シテ ハ同 社会 ノ実 現 ヲ目 的 ト シテ大 正 十 四年 十 二月 中 ノ全 国

ロカ ル教 程 作 成 ニ関 シ其 ノ提 案 カ出 サ ル ル ニ至 リ タ ル モノ ト考

十 四年 七 月 十 六 日京 都 ニ於 テ第 二 回全 国大 会 ヲ開 キ我 学聯 ノ方

一、 同 栗 原 佑 ニ対 ス ル予審 第 六回 訊 問 調書 中 同 人 ノ供 述 ト シテ大 正

執 行 委員 会 ニ出 席 シテ種 々 ノ協 議 ニ参 加 シ タ ル等 所 謂 学 生 運 動

フ ル旨 ノ記 載

ヲ与 ヘタ リ即 チ是 迄 ノ運 動 カ消 極 的 対内 的 ナ リ シ ニ比 シテ之 ヲ

針 ヲ定 メ タ ル カ同大 会 ハ私 達 ノ運 動 ノ上 ニ種 々ノ重 大 ナ ル影 響

ニ従 事 シ タ ル モノ ナ ル旨 ノ記 載

学 聯 合 会 ハ 一九 二 五年 第 二 回 大会 ニ於 テ採 用 セ ルテ ー ゼ ニ於 テ

一、 証 第 七 九 号 プ ロ レツ ト カ ルト ニ関 ス ルテ ーゼ中 日本 学 生 社 会 科

機 ト シテ著 シ ク現 実 的 対 外 的 ニナリ タ リ京 大 研 究 会 ニ於 テ ハ従 来 ニ於 テ モ既 ニ同 年 四月 頃 ヨリ会 員 ノ或 ル者 ハ労 働 組 合労 働 学

シズ ム ハ理論 ト実 践 ノ弁 証 法的 統 一ヲ必 要 ト ス ル コト ヲ明 確 ニ

学 生 運 動 カ無産 階 級 運 動 ノ 一翼 テ ア リ其 ノ指 導 精 神 タ ル マル キ

校 等 ニプ ロカ ル ニ出 掛 ケ居 リ タ ル カ ソ ハ単 ニ個 人 的 ノ活動 ナ リ シカ右 大 会 テ ーゼ ニ於 テ会 員 カ科 学的 社会 観 ノ体 得 ヲ為 ス為 ニ

コト ヲ掲 ケ タリ而 モ教 育 者 ハ又教 育 セ ラ ルプ ロ レツ ト カ ルト 運

シ従 ツ テ 一般的 目 標 ノ 一ニプ ロ レツ ト カ ルト運 動 ニ献 身 ス ヘキ

社 会 科学 ノ研究 ト 同時 ニ出 来得 ル限 リ実 社会 ニ出 テ テ社会 的 事

ヲ 図 ル コト ニナ リ此 ノ為 従来 個 人 的 ニ従事 シ居 リ シプ ロカ ル運

コト ハ疑 ヲ容 レ ス而 シテ吾 人 ハ今 多 数 ノ員 数 ヲ以 テプ ロレ ツト

動 ニ携 ハル コト ニ依 リ テ学 生 運動 ハ ヨリ 一層 徹 底 シ真 剣 ニナ ル

業 及其 ノ調 査 ニ従 フ ヘキ コト ヲ明 ニシ所 謂 理論 ト実 践 ト ノ統 一

リ其 ノ運 動 ノ方 針 並其 ノ方 法 ヲ明 ニス ル為 プ ロカ ルテ ーゼ及 プ

蓋 シ言 ヲ俟 タサ ル ヘキ旨 ノ記 載

シ革 命 的 統 一的 ノ教 育 運 動 ニ付 テノ統 一的 方針 ヲ必 要 ト スル ハ

カ ルト運 動 ニ従 ハント シ日本 ノ無 産階 級 運動 ノ 現勢 ハ以 上 ノ如

動 ヲ京 大 研 究会 一般 ノ活 動 ト為 シ之 ヲ統 一セ ムト云 フ コト ニナ

ロ カ ル教 程 ヲ作 成 ス ル ニ至 リ タ ル旨 ノ記 載

テ 私 ハ大 正 十 四 年 七月 中 京 都 市 ニテ開 カ レタ ル学 生 社 会 科 学聯

一、被 告 人松 本 篤 一 ニ対 ス ル予 審 第 一回訊 問 調書 中 同 人 ノ供 述 ト シ

大 会 ニ於 テ過去 ノ運 動 ノ経 験 ヲ徹 底 的 ニ批判 綜 合 シ以 テ無 産 階

一、証 第 一 一号 校内 運 動 ノ 一般 方針 ニ関 ス ルテ ーぜ中 吾 々 ハ第 二 回

リ而 シ テ該 大会 テ ー ゼ ニ於 テ示 セ ルカ如 ク吾 人 ノ全 活 動 ノ焦 点

級 運 動 ノ 一翼 ト シテ ノ吾 人 ノ目的 ト任 務 ト ヲ明 確 ニ認 識 シ得 タ

合 会 ノ第 二回 全 国 大会 迄 ハ学 聯 ニ余 リ関係 セサ リ シ故 其 ノ 以前

マルキ シズ ム レ ー ニ ニズ ムヲ其 ノ運動 ノ指 導 精 神 ト スル事 カ高

ノ事 ハ能 ク知 ラ サ ルカ右 第 二 回大 会 及其 ノ翌 日 ノ協 議 会 ニ於 テ

調 セ ラ レタ ル故 同 大会 以後 ハ マル キ シズ ム レー ニ ニズ ムヲ聯 合

命 的智 識 分 子 ノ養 成 ト訓 練 ト ニア ル コト ヲ確 信 スル旨 ノ記 載 ア

ハ飽 ク迄 無 産 階 級 ノ為 ノ精 鋭 分 子 即 チ該 階級 ノ前 衛 ト シテ ノ革

ハ未 タ 一ノ信 念 ト 云 フ程 度 ニ ハ研 究 ヲ積 マサ リ シ モ現在 ハ信 念

判 示 学 生会 員 タ リ シ モノ ニ シテ マル キ シズ ムヲ研 究 シ本件 当 時

判 示学 生会 員 タ リ シ モノ ニ シテ勿 論 マルキ シズ ム ヲ信 奉 ス ル モ

ト ナリ共 産 主 義 ニ ハ大 賛 成 ナ ル旨 、被 告 人大 田遼 一郎 ノ自 分 ハ

ノ ナ ルカ本 件 事 件 当時 ハ理解 ス ルト コ ロ極 メ テ幼 稚 ナリ シ モ今

ルト ヲ 彼 此 綜 合考 覈 シテ之 ヲ認定 シ

日 ニ於 テ ハ之 ヲ確 信 ス ル モノ ニ シテ該 主 義 ノ政 治 的 目 的 ハ共 産

主 義 社会 ニ シテ其 ノ事 ハ本 件 当 時 モ判 リ居 リ正 シ キ モ ノト考 ヘ

一、 以 上掲 ケ タ ル各 証拠 就 中 被 告 人 鈴木 安 蔵 、 石 田英 一郎、 古 賀 二 男 、武 藤 丸 楠 、黒 田久 太 、 内 海 洋 一、 蓬 台 恒 治 、 黒 川 健 三、 原

ニシテ マルキ シズ ム ヲ研究 シ之 ヲ正 当 ト ス ル旨 、 被 告 人黒 田久

居 リタ ル旨 、 被 告 人 大浦 梅 夫 ノ自 分 ハ判 示学 生会 員 タ リ シ モノ

判 示 第 壱( 乙) ノ犯 罪 構 成事 実 ハ

一郎 、 鷲 谷 武 二 ノ供 述 記 載 ト

ル キ シズ ムヲ主 義 ト セ ル コト ハ今 日 ト変 リ ナカ リ シ旨 、被 告 人

太 ノ自分 ハ判 示 学 生 会員 タ リ シ モノ ニシ テ本 件 検 挙 迄 矢張 リ マ

田耕 ノ供 述 並 被告 人石 田英 一郎 、 蓬 台 恒治 、 宮 崎 菊 次、 大 田遼

生 会員 タ リ シ モノ ニ シテ本 件 事 件 当時 ヨリ今 日 ニ至 ル迄 マ ルク

キ シズ ム レー ニ ニズ ム ヲ理論 的 ニ正 シキ モ ノト信 シ居 リ シカ今

松 本 篤 一ノ自 分 ハ判 示 学 生会 員 タ リ シモ ノ ニシテ本 件 当時 マル

一、 当院 法 廷 ニ於 テ被 告 人武 藤 丸 楠 並 内海 洋 一ノ夫 々自 分 ハ判 示学

ス主義 ヲ信 奉 ス ル モノ ニシ テ該 主義 ハ鈴木 安 蔵 等 ノ申 シタ ルカ

ハ マル キ シズ ム ヲ真 正 ナル社 会 観 ナ リト信 シ居 ル モノ ニシ テ該

村 正夫 ノ自 分 ハ判 示第 壱 冒 頭 掲 記 ノ如 キ経 歴 ヲ有 シ今 日 ニ於 テ

々正当 ナ ル意味 ノ マ ルキ スト タ ラ ント 決意 シ居 ル旨 、 被 告 人 上

該 主義 通 リ行動 セム ト スル程 度 ニ達 セサ リ シ モ今 日 ニ於 テ ハ愈

示 学 生 会員 タ リ シ モノ ニシ テ マル ク シズ ム ヲ正 当 ナリ ト信 シ本

ズ ム レ ー ニ ニズ ムヲ信 奉 シ居 ル旨、 被 告 人 熊 谷 孝雄 ノ自 分 ハ判

リ社 会 科 学 ノ研究 ヲ為 シ本 件 当 時 ハ勿 論 今 日 ニ於 テ モ マ ルク シ

五 高 ノ 一年 ノ終 リ頃 ヨリ後 藤 寿 夫等 中 心 ノ社 会 思潮 研究 会 ニ入

ル旨 、被 告 人古 賀 二男 ノ自 分 ハ判 示学 生会 員 タリ シ モノ ニシ テ

コト ハプ ロレタ リ ア ート ノ持 ツ歴史 的 使 命 ニシテ歴 史 的 必 然 ナ

モノ ニシ テ マル キ シズ ムノ理 論 就 中其 ノ経 済 社 会 政 治 理論 ヲ正

如 キ モノ ナ ル旨 、被 告 人宮 崎 菊 次 ノ自 分 ハ判 示学 生 会員 タ リ シ

主 義 ヲ信 奉 シテ社 会 運 動 ヲ為 シ居 ル モノ ハ共 産 主 義 社 会 ノ 実 現

件 当 時 ハ学 説 ト シテ信 シ居 リ シ モ今 日 ニテ ハ此 ノ無 産 階 級 解 放

ハ無 産 階 級解 放 ニ関 ス ル学説 ニシテ共 産 主 義 社会 ノ建 設 ト 云 フ

ヲ望 ミ之 ヲ目標 ト為 シ居 ル モ ノト謂 ヒ得 ヘク同 主 義 ニ依 レ ハ必

ノ為 ニ ハ生 命 ヲ投 出 シ テ モ構 ハヌト 云 フ迄 ニ信 シ居 リ而 シ テ該

日 ニ於 テ ハ実行 的 ニ モ正 シ キ モノ ト信 シ居 ル モノ ニ シテ該 主義

然 的 ニ資 本 主義 私有 財 産 制 度 ハ崩 壊 ス ル モノ ナ ル旨 、 被告 人蓬

主 義 ハ無 産 階級 解 放 ノ科 学 ニシ テ其 ノ 目的 ハ共 産 主義 社 会 ノ実

シ キ モノ ト信 シ居 リ シカ本 件 当 時 ハ未 タ自 分 ノ全 生 活 ヲ挙 ケテ

ル キ シズ ム ヲ多 少 研 究 シ居 リ タ ル旨 、被 告 人 永 井哲 二 ノ自 分 ハ

台 恒 治 ノ自 分 ハ判 示 生 徒 会 員 タ リ シ モノ ニ シテ本 件 事 件当 時 マ

ハプロ カ ル運 動 ヲ モ為 シタ ルカ其 ノ目的 ハ無 産 階級 意 識 ヲ目 覚

解 放 ニ努 力 スル為 ニ其 ノ組 織 原 則 ヲ定 メ タ ル モノ ニ シテ 又自 分

シズ ム レー ニ ニズ ム ノ理論 的 体 系 的 研究 ヲ為 スト 共 ニ無 産 階 級

ル ニ際 シ緊 密 ナ ル統 一組 織 ニ依 リ研 究会 本 来 ノ 目的 タ ル マル キ

ニ於 テ ハ確 乎 タ ル信 念 ト 為 リ居 ル旨 、 被 告 人 黒 川 健 三 ノ自 分 ハ

シ モ矢 張 リ マルキ シズ ム ヲ正 シキ モノ ト考 ヘツ ツア リ シカ今 日

メ シ メ之 ヲ団 結 セ シ メ資 本 主 義 ヲ倒 シ搾 取 ヲ廃絶 シ新 社 会 ヲ建

中 班 生活 テ ー ゼ (証第 一五号 ︶ ハ会 員 カ 無産 階級 運動 ニ参 加 ス

判 示 生 徒 会員 タ リ シモ ノ ニシテ自 分 ノ研 究 シ主 義 ト ス ルト コ ロ

設 シ以 テ無 産 階 級 ノ解放 ヲ行 フ ニ在 ル モノ ナ ル旨 ノ各 供 述 記 載

現 ニ在 リ ト マル ク スノ本 ニ書 キ ア ル旨 、 被 告 人鷲 谷武 二 ノ自 分

ハ マル キ シズ ム ニ シテ今 日 モ本 件 当 時 モ変 リ ナ キ旨 、 被 告 人 原

ハ判 示 学 生会 員 タ リ シ モ ノ ニ シテ本 件 当 時 ハ極 メテ不 十 分 ナ リ

田 耕 ノ自 分 ハ判 示 生徒 会 員 タ リ シ モノ ニ シテ本 件 当時 マルキ シ

ノ解 放 即 チ何 等 階 級 モ搾 取 モナ キ共 産 社会 ノ実 現 ヲ期 シ居 ル モ

一、 被告 人 大浦 梅 夫 ニ対 ス ル予審 第 二回 訊問 調 書 中 私 ハ無 産 者 階 級

カ リ学 生社 会 科 学 運 動 ニ従事 シタ ル旨、 同 第 三 回 訊問 調 書 中 判

ノ ニシテ其 ノ実 現 ノ促進 ヲ図 ル為 同 被告 人 関 係 ノ 判 示協 議 ニ与

スト

ズ ム レ ー ニ ニズ ム ノ正 シ キ コト ヲ信 シ居 リ タ ル旨 ノ各 供 述 ヲ為

級 運 動 ニ貢献 シテ資 本 主 義 社 会 ヨリ共 産 主 義社 会 ヘ推 移 ス ル コ

リト 記 憶 ス而 シテ大 会 テ ーゼ (証 第 五 号) ハ 一部 貰 ヒ同 案 ハ関

示 第 一(甲) ノ第 二回 大 会 ノ模 様 ハ多 分 内海 洋 一ヨリ報告 ヲ受 ケ タ

一、 被 告 人 内海 洋 一ニ対 スル予 審 第 三 回訊 問 調 書 中 自 分 ハ無 産 者 階

ト ニ貢 献 スル考 ニテ判 示 同 被 告 人関 係 ノ各 審 議 等 ニ与 カ リ所 謂

一、 被 告 人 黒 田久 太 ニ対 ス ル予審 第 二回 訊 問 調書 被 告 人 古賀 二男 ニ

旨 ノ各 供述 記載

東 案 同 補足 案 及 関 西 案 ヲ折 衷 シタ ル コト モ耳 ニシ タ ル コト ア ル

学 生 社 会 科 学 運動 ニ従 事 シ タ ル モノ ニ シテ共 産 社 会 ノ実 現 サ レ ム コト ヲ希 望 シ居 ル モノ ナ ル旨 ノ供述 記 載

対 スル同第 一回訊 問 調 書 並 被告 人 黒 川 健 三 ニ対 スル同 第 二 回訊

一、 被 告 人 宮 崎 菊 次 ニ対 ス ル予 審 第 二 回訊 問 調 書 中 帰 スル所 自分 ハ 共 産 社 会 実 現 ヲ希 望 シ居 ル モノ ニシテ従 ツテ該 社 会 ノ実 現 ヲ促

問 調 書 中 夫 々同 被 告 人 等 ノ供述 ト シテ私 ハマル キ シズ ム ヲ正当

ト 信 シ社 会 主義 ノ実 現 サ レ ン コト ヲ希望 シ之 カ実 現 ヲ図 ル為 判

進 ス ル為 判 示 同被 告 人関 係 ノ各 協 議 ニ与 カ ル等 所 謂 学 生 社会 科

一、被 告 人永 井 哲 二 ニ対 ス ル予審 第 三 回 訊問 調書 中 判 示 第 一(甲) ノ第

シ居 タ ル旨 ノ各 記 載

示 同 被 告 人 等関 係 ノ各 討 議 ニ与 カ ル等 学 生社 会 科 学 運 動 ニ従 事

学 運 動 ニ従 事 シ タ ル旨 ノ供 述 記 載

二 回大 会 ノ模 様 ハ大 正十 四年 九 月 十 五 六 日頃 京 都 帝 国 大 学 学 生

日 ノ会 合 ニ出席 シプ ロカ ル テ ーゼ及 教 程 等 ヲ議 シ又十 一月 八 日

一、 被 告 人 原 田 耕 ニ対 ス ル予 審 第 一回訊 問 調 書 中私 ハ判 示 十 月十 七

集 合 所 ニ京 大 研 究 会 秋季 大会 カ催 サ レ会 員 約 七 八十 名 集 合 シタ ル際 橋 本 省 三 ヨリ聞 知 シタ ルカ其 ノ際 同 人 ハテ ー ゼ (証 第 五

ノ会 合 ニ出 席 シ全 国 的 教 育 テ ーゼ骨 子 及 全 国的 教 程 等 ヲ議 シ所

号 ) ヲ朗 読 シ其 ノ説 明 ヲ為 シ会 員 ハ右 テ ーゼ ノ方 針 ニ基 キ社会 科 学 ノ研 究 普 及 ニ従 事 ス ヘキ旨 述 ヘタ ル旨 、 同 第 五 回 訊 問 調書

ヘ進 展 セ シ ム ル為 所 謂 学 生 社会 科 学 運 動 ニ従 事 シタ ル旨 ノ供 述

謂 学 生 社 会 科学 運 動 ニ従 事 シタ ルカ私 ハ現 代 ノ社会 ヲ共 産 社会

生 運動 ニ従 事 シ居 タ ル旨 ノ各 供 述 記戦

理 ト シテ マル キ シズ ム ニ所 謂 共 産 制社 会 ノ実 現 ヲ目 的 ト シテ 学

書 中 少 クト モ吾 々中 心分 子 ノ間 ニ於 テ ハ マル キ シズ ム ヲ指 導 原

議 ニ与 カ リ タ ル旨 、 同 第 四 回訊 問 調書 中 判 示 無 産者 教 育 協 会 ハ

実 現 ヲ希 望 シ テ同被 告 人 関 係 ノ判 示 プ ロカ ルテ ー ゼ及 教 程 ノ討

一、 被 告 人 鷲 谷 武 二 ニ対 ス ル予 審 第 一回訊 問 調 書 中 私 ハ共 産 社 会 ノ

記載 アルト

被 告 人 岩 田義 道 、 栗 原 佑 ノ供 述 記 載 及 証 第 七 九 号中 ノ記 載

一、 就 中 前 掲 第 一甲 ︵︶ ノ犯 罪 構 成事 実 ノ証 拠 説 明 ニ挙 ケ タ ル原 審 共 同

ヨリ真 ノ無 産 階 級 教 化 ノ実 ヲ挙 ケ ムト シタ ル モ ノ ニ シテ茲 ニ真

学 生 カ労 働 組 合 側 ノ者 ト相 提 携 シ テ所 謂 理 論 ト 実践 ト ノ統 一ニ

尚 特 ニ(乙 ノ) (イ) ニ関 シ

判 示 各 日 場所 ニ於 ケ ル会 合 ニ出 席 シタ ルヤ判 然 セ スト供 述 スル

一、 当 院 法 廷 ニ於 テ被 告 人 熊 谷 孝雄 カ否 認 セ サ ル モ同 被 告 人 関 係 ノ

ニヨリ無 産 階 級 解 放 ノ凡 ユル条 件 ヲ説 示 シ階 級 闘争 ヲ経 テ マル

ノ無 産 者 教 育 ト ハ マル ク ス主 義 的 一元教 育 ヲ指 ス モノ ニシ テ之

キ シズ ム ニ所 謂共産 制社 会 ヲ実 現 セ ムト スル モノ ナ リ而 シ テ吾

外 爾 余 ノ関 係被 告 人 カ夫 々判 示各 関 係 ノ 日場 所 ニ於 ケ ル会 合 ニ

々学 生 カ従 来 ヨリ京 都学 聯 ノ社 会 部 ニ於 テ斯 ル目的 ノ下 ニ マ ル

出 席 シ タ ル旨 並 被 告 人 鈴木 安 蔵 、 石 田英 一郎 、武 藤 丸 楠 、 内 海 洋 一、宮 崎菊 次 、 大 田 遼 一郎 、 古 賀 二男 、 黒 川健 三、 原 田 耕 ニ

キ シズ ム ヲ指 導 原 理 ト シテ プ ロカ ル ニ従 事 シ居 タ ル コト ハ上 村

正夫 初 メ労 働 組 合側 ノ主 脳 者 ハ何 レ モ之 ヲ熟 知 シ居 リ労 働 組 合

ク作 成 ス ル コト ト為 シ判 示十 月 四 日 ニ ハ証 第 八〇号 第 八 一号 ニ

側 ニ於 テ モ此 ノ目 的 ノ為 ニ吾 々学 生 ト共 同 シ テ右教 育 協 会 ナ ル

於 テ夫 々同 被告 人 等 関 係部 分 ニ付 判 示 九 月 二 十 日 ニ ハ判 示 ノ如

ヲ為 シ尚 判 示 二十 一日 二十 三 日及 十 一月 一日 ニハ判 示 協 会 ノ創

基 キ判 示 十 月十 七 日 及 翌十 八 日 ニ ハ証 第 七 九 号 ニ基 キ夫 々討 議

一ノ労 働 教 育 団 体 ヲ組織 シ無 産 階 級 ノ教 化 ニ当 ラ ムト シタ ル モ ノ ト思 フ旨 ノ各 供 述 記載

立 ニ関 シ協 議 ヲ為 シ タ ル旨 ノ各 供 述 ヲ為 スト

於 テ プ ロ レツト カ ルト ニ関 スル テ ーゼ プ ロカ ル教 程 等 ヲ議 シ タ

一、被 告 人蓬 台 恒 治 ニ対 ス ル予 審 第 一回 訊問 調 書 中 私 ハ判 示場 所 ニ

一、 被 告 人熊 谷 孝雄 ニ対 スル予審 第 五 回訊 問 調書 中 同被 告 人関 係 ノ 判 示 各 日場 所 ニ於 ケ ル会 合 ニ出 席 シプ ロカ ルテ ーゼ及 教 程 ニ付

ル等 所 謂 学 生 社 会 科 学運 動 ニ従 事 シタ ルカ私 ハ マルキ シズ ム ヲ

協 議 ヲ為 シ タ ル旨 並 自 分 等 ノ学 生 運動 カ マル キ シズ ム ニ所 謂 プ ロレ タリ ア解 放 ニ依 ル共 産 主義 社 会 ノ実 現 ヲ目的 ト ス ルモ ノ ナ

正当 ナ リト 信 シ共 産 主義 社会 ノ出 現 ヲ希 望 シ居 ル者 ナ ル故 其 ノ

実 現 ヲ図 ル為 該 運動 ニ従 事 シタ ル旨 ノ供 述 記 載

ル コト ハ相 違 ナ キ旨 ノ各 供述 記載

プ ロ レツ ト カ ルト ニ関 ス ルテ ー ゼ中 ニ夫 々判 示 ニ摘 示 セ ルカ如

一、 証第 八〇 号 プ ロレ ツト カ ルト運 動 ニ関 ス ルテ ー ゼ並 証第 七九 号

一、被 告 人武 藤 丸 楠 ニ対 ス ル予審 第 二 回訊 問 調書 中 自 分 ハ社 会 主 義

ル等 所 謂 学 生社 会 科 学 運動 ニ従 事 シ居 タ ル旨 並 同 第 四回 訊 問 調

社 会 ノ実 現 ヲ促 進 セ シ ム ル為 同 被 告 人 関 係 ノ判 示各 協 議 ニ与 カ

カ ル教 程 中夫 々判 示 ニ摘 示 セ ルカ如 キ同 教 程 ニ関 ス ル記 載

キ同 テ ー ゼ ニ関 ス ル記 載 、証 第 八 一号 並 同 第 七九 号 中 ノ各 プ ロ

ケ マルキ シズ ム ノ 一元 的 教育 ヲ指 導 原 理 ト ス ルプ ロカ ル ヲ為 ス

働 者 ニ対 シ真 ノ無 産 階 級 的教 育 ヲ施 ス コト ヲ目的 ト スル判 示協

鷲 谷、 内 海 、 宮 崎 、 私 、 国領 五 一郎 其 ノ他 計約 三十 名 出 席 シ労

コト ト シ京 大 及 同 志 社 ノ学 生連 カ或 ハ労働 学校 ニ或 ハ組合 ニ出

会 ヲ創 立 シタ ルカ元 来 京 都学 聯 ニ ハ組 織 上 社 会部 ナ ルモ ノ ヲ設

カ ケテ熱 心 ニプ ロカ ル ヲ遣 リ居 リ タ ル故 私 ハ其 ノ力 ヲ利用 シ学

一、 被 告 人 上 村 正 夫 ニ対 スル予審 第 二回 訊 問 調 書 中 私 ハ京 都 帝 国 大

当 時 其 ノ活動 分 子 ナ ル淡 徳 三郎 、 岩 田義 道 等 ト友 人関 係 カ ア リ

学 社 会 科 学研 究 会 ト ハ形 式 上 ニ於 テ何 等 関 係 ナカ リ シ モ伍 民 会

其 ノ後 同 会 カ社 会 科 学 研 究会 ト ナ リ シ後 同 会 ノ組 織 ニ関 スル件

ノ 一元 的 教 育 ヲ施 ス為 一ノ教 育 機 関 ヲ作 ラ ムト決 心 シタ ル モノ

ナ リ而 シテ淡 、 岩 田、 泉 、 私 等 ノ如 キ所謂 中 心 分 子 ハ右 教 育 ヲ

聯 社会 部 ト協 力 シ テ京都 地方 ニ於 テ無 産者 ニ対 シ マルキ シズ ム

施 ス為 ニ該 協 会 ヲ創 立 シタ ル モノ ナ ル旨 、 同 第 四 回訊 問 調 書 中

ヨリ同 月 四 日午 後 六 時 半 ヨリ北 白 川 本 部 ニ於 テ プ ロ レツト カ ル ト運 動 ニ関 ス ルテ ー ゼ及 プ ロカ ル教 程 作 成 ニ付委 員 会 ヲ開 クト

其 ノ他 ニ付多 少 協 力 シ タ ル コト ア リ又 大 正 十 四年 十 月 初 頃 同 会

日京 都 学聯 社 会 部 員 総 会 ヲ開 キ プ ロカ ルテ ーゼ教 程 ヲ審 議 スル

云 フ通 知 アリ其 ノ後 誰 カ ラ通知 ア リ シ カ記憶 セサ ル モ同 月 十 八

ヲ為 セ ル日本 ノ資 本主 義 モ世 界 ノ資 本 主 義 ノ没 落 ニ伴 ヒ早 晩 プ

私 ハマ ルキ シズ ム レー ニ ニズ ム ヲ信 シ居 リ世 界 資 本主 義 ノ 一環

ロ レタ リ ア革命 ニ依 リ私 有 財 産 制度 ヲ認 メ サ ル共産 主義 社 会 ニ

ト ノ コト ナリ シ故 同 総 会 ニ出 席 シ岩 田、 淡 、 鈴 木 、 池 田 、黒 田、 武 藤 、 鷲 谷、 大 浦 、 宮 崎其 ノ他 計 二 十 人 計 リ協 議 シ居 リ シ席 上

並判 示 協 会 ヲ設 立 シ又 ハプ ロカ ル運動 ニ従 事 シタ ル モノ ニシテ

私 ハ社 会 運 動 ニ身 ヲ投 シ判 示 プ ロカ ル運動 ノ テ ーゼ教 程 ノ協議

結 局共 産 主 義 社会 ノ建 設 ヲ目 標 ト シテ其 ノ実 現 ニ努 力 スル為 啓

推 移 ス ル モノ ナリ ト信 シ且其 ノ実 現 サ レム コト ヲ希 望 シ居 ル故

テ労 働 者 ニ対 シテ ハ日常 目 ニ触 レ易 キ平易 ナ ル書 物 又 ハ新 聞紙

ニテ教 程 ハ全 体 的 ニ見 レ ハ大 学 ノ講 義 式 ニシテ労 働 者 ニ不 向 テ

ノ 日常 実際 問 題 ヲ主 タ ル材料 ト為 シ実 際問 題 ニ理 論 ヲ織 込 マサ

蒙 運動 ニ従 事 シタ ル旨 ノ各 供 述 記載 ア ルト

ア リ教 程 記載 ノ参 考書 モ其 ノ章 節 等 ヲ学 ケ居 ラ サ ル ハ不可 ニシ

ル ヘカ ラサ ル旨 ノ意 見 ヲ述 ヘタ ル カ自分 ニ出 席 ヲ求 メ タ ル ハ組

正 十 四 年 八 月 ユー ス ニ加 入 シ タ ルカ同 年 九 月 十 月頃 北 浦 千 太郎 、

ス ル当 院 受命 判 事 ノ公 判 準 備 調書 中 同 人 ノ供 述 ト シテ自 分 ハ大

一、 前 掲 第 壱( 甲) ノ 犯罪 構 成 事 実 ノ証拠 説 明 中 挙 ケ タ ル是 枝 恭 二 ニ対

片 山 久 ト 二 回程 会 合 シ タ ル際 ユー スノ合 法 的 ナ ル青 年 運動 ノ 一

尚特 ニ(乙) ノ(ロ ニ) 関シ

ハ私 ノ外淡 、 鷲 谷 、 宮 崎 、内 海 、 池 田、 岩 田其 ノ他 評 議会 及組

ノ ナ ラ ムト思 フ旨 、 同 第 三 回訊 問 調書 中判 示 二十 一日 ノ会 合 ニ

翼 ト シ テ青 年 運 動 ヲ指 導 ス ル為 ニ学 生 ヲ東 京青 年 同 盟 ノ学 生班

ル方 針 及 プ ロカ ル教 程 ヲ確 立 シ之 ヲ実 行 セ ムカ為 協 議 シタ ル モ

合 側 ノ者 計 約 二十 名出 席 シ同 二十 三 日 ノ会 合 ニ ハ私 、 淡、 岩 田、

合 ノ意 見 ヲ聞 ク為 ナ リ シト思 フ又 右 協 議 ハプ ロカ ル運 動 ニ関 ス

宮 崎等 出 席 シ同 十 一月 一日 ノ会 合 ニ ハ、 淡 、 岩 田、 武 藤、 大 浦 、

屡 々新 人 会 ノ委 員 会 ヤ総 会 ニテ其 ノ必 要 ヲ訴 ヘ又関 西 方 面 ニ対

ヲ関西 学 聯 総 会 ニ提 案 ス ル コト ニ決 議 シタ ルモノ ニシテ其 ノ後

リ ソ レ ヲ自 分 宮 崎、 内 海 洋 一、 沢 田 政 雄等 カ更 メテ審 議 シソ レ

上旬 頃 判 示 研 究 会本 部 ニテ宮 崎 カ大 体班 生 活 テー ゼ ノ草 案 ヲ作

カ出 サ レタ ル コト ハ相 違 ナ キ旨 、被 告 人大 浦 梅夫 ノ判 示 十 一月

シテ ハ同 年十 月頃 政 治 研 究 会 ノ用 件 ニテ 京 大 ノ岩 田外 二三 人 ノ

判 示十 一月 八 日判 示会 合 ニ出 席 シ タ ル旨、 被 告 人 石 田英 一郎 、

骨 子及 全 国 的教 程 ( 証 第 八 号 ) 並 班 生活 テ ー ぜ (証第 一五 号 )

連 中 カ上 京 シ来 リ タ ル際 右 ノ 心要 ヲ説 キ タリ シタ ル以外 ニ ハ学

永 井 哲 二、 黒 田久 太、 黒 川 健 三、 原 田 耕 ノ判 示 十 一月 八 日判 示

ニ組 織 シ又 地方 ニテ ハ学 生 ヲ シテ青 年 同 盟 ノ組 織 運動 ヲ起 サ シ

生 運 動 ニ対 シ ユー スト シ テ何 等働 キ掛 ケ ヲ為 シタ ル コト ナ シ尤

成 宮 音 次郎 方 ノ会 合 ニ出席 シタ ル旨 ノ各供 述

メ サ ル ヘカ ラサ ル旨 ノ相談 ヲ為 シ タ ル コト アリ テ ソ レ ニ従 ヒテ

モ同 年 九 月 十 月頃 東 京 ニ於 テ ノ話 ナ ルカ自 分 ハ新 人会 ノ会 合 ニ

ノ会 合 ニ ハ出 席 者 約 二 十 名 ニシテ同 志 社 大 学 ノ提 案 ニ係 ル班 生

一、 被 告 人 宮崎 菊 次 ニ対 ス ル予審 第 四 回訊 問 調書 中 判 示 十 一月 八 日

テ前 述 ノ如 ク個 人的 ニ話 ス丈 ケ ナリ シ ニ拘 ラ ス当時 学 生班 ハ非

ヲ学 生 班 ニ組 織 ス ル運 動 ヲ為 シ居 タ ルヤ モ知 レ スト 思 フ旨 ノ記

常 ニ進 ミ行 キ居 リ シ点 ヨリ自 分 ヲ通 セ ス ニ別 個 ノ系 統 ヨリ学 生

ハ私 カ内 容 ヲ読 上 ケ後 者 ハ座 長石 田英 一郎 カ ソノ内 容 ヲ説 明 シ

育 テ ー ゼ骨 子並 全 国 的 教 程 (証第 八号 ) ニ付討 議 カ行 ハレ前 者

活 ニ関 スルテ ー ゼ (証 第 一五 号) 及 日本 学 生社 会 科 学聯 合 会 教

一、 被告 人宮 崎 菊 次 ノ当 院法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ判 示 場 所 ニ於 テ判 示

多 分 岩 田義道 カ ソ ノ両 者 ニ付 意 見 ヲ述 ヘ出 席 者 ハ何 レ モ之 ニ賛

載

ヲ判 示 ノ如 ク提 出 ス ル コト ト為 シ其 ノ後 判 示 十 一月 八 日判 示場

成 シ可 決 シタ ル旨 ノ供 述 記 載 ア ルト

同志 社 ノ者 等 ト 会合 シ班 生 活 テ ーゼ (証 第 一五 号 ︶ ヲ作 成 シ之

所 ノ会 合 ノ際 之 ヲ提 出 シ之 ヲ朗 読 シ又其 ノ際 関 東 ヨリ送 リ来 リ

兵 卒 ト シテ ノ任 務 ヲ全 ウ シ得 ル如 ク教 育 スル訓 練 ノ唯 一ノ機関

的 ニ達 スル為 ノ唯 一ノ武 器 ニシテ 且全 会 員 ヲ階 級 戦 ニ於 ケ ル 一

究 会 ノ基 礎 単位 ト シテ ノ班 組 織 ハ強 圧 ニ抗 シ テ研 究 会 本 来 ノ目

非 ス シテ自 分 カ東 京 ニ行 キ タ ル際 是 枝恭 二 カ新 人 会 ニ於 テ班 ニ

一、 証第 一五 号班 生活 テ ー ゼ草 案 関 西学 聯 大 会 提出 同 志 社 原 案 中研

関 ス ル意 見 ヲ述 ヘ居 リ シ ヲ聞 キ ソ レ カ同 志 社 ニテ班 組 織 ヲ作 リ

ナ リ夫 レ故班 ハ 一般 会 員 ノ社 会 科学 研究 会 員 ト シテ ノ生 活 ノ主

シ教 育 テ ー ゼ骨 子 及全 国 的 教 程 (証第 八号 ) ヲ誰 レカ カ朗読 シ

テ ヨリ 二 三 ケ月 間 ノ状 態 ニ 一致 シ居 リタ ル故 自 分 ノ方 モ班 生活

要 ナ ル場 所 ニシテ断 シテ従 来 ノ如 ク理論 研 究 ノ為 ノ単 ナ ル便宜

タリ而 シテ右 班 生 活 ソノ モノ ハ自 分 カ之 ヲ考 ヘ出 シタ ル モノ ニ

ニ関 ス ルテ ー ゼ ヲ 一ツ作 リ見 ント イ フ考 ヘ ニナ リ右 ノ如 ク作成

班 ニ於 テ判 示摘 示 ノ如 キ事 項 ノ班 生活 ヲ為 ササ ル ヘカ ラ サ ル旨

上 ノ機 関 ニ非 ラサ ルヲ以 テ研 究会 員 ハ其 ノ目 的達 成 ノ為 ニ所 属

一、 当院 法 廷 ニ於 ケ ル被 告 人内 海 洋 一ノ判 示十 一月 八 日判 示 成 宮音

ノ記 載 ア リ又 証第 八号 日本 学 生 社 会 科学 聯 合 会教 育 テ ー ゼ骨 子

シ タ ル モノ ナ ル旨 ノ供 述

次郎 方 ノ会 合 ニ出席 シタ ル旨 並 該 会合 ノ席 上 ニ判 示 教 育 テ ーゼ

中 教 育 テ ー ゼ ニ関 シ又同 号 証 全 国 的 教程 中 全 国 的 教 程 ニ関 シ夫

日本 共 産 党 カ判 示 ノ頃 新 ニ成 立 シ タ ル点 ハ (以下 学 生事 件 ト ア ル ハ

判 示 第 弐 ノ犯 罪 構 成事 実中

共 産 党 事件 ト ア ル ハ当 院 昭 和 四年 四 二号 四 三 号治 安 維 持 法 違反

当 院 昭 和 二年 一五 七 号 治 安 維 持法 違 反 被 告 事件 ヲ指 称 シ、 大阪

々判 示 摘 示 ノ如 キ事 項 ノ記 載 ア ルト

被 告事 件 ヲ指 称 シ又 京 都 共産 党事 件 ト ア ル ハ当 院 昭和 四 年 五九

尚 特 ニ(乙) ノ(ハ ニ) 関シ

次 ニ対 ス ル予審 第 二回 訊 問 調書 ノ供 述 記 載 並 証 第 一 一号 ノ記 載

一、 就 中 前 掲 第壱( 甲) ノ犯 罪 構 成事 実 ノ証 拠 説 明 中 ニ挙 ケ タ ル山 崎 雄

於 テ山 崎雄 次 、 橋 本 省 三 ト会 合 シ校 内 運 動 ノ 一般 方 針 ニ付 協 議

ス ル同 裁 判 所 予 審 第 一回訊 問 調 書 ノ謄本 中 同 人 ノ供 述 ト シテ同

一、 東 京 地 方裁 判 所 治 安 維 持法 違 反 被 告事 件 ノ被 告 人 佐 野 文 夫 ニ対

号 治 安維 持 法 違 反 被 告 事件 ヲ指 称 ス)

ヲ為 シ其 ノ校 内 運 動 ノ 一般 方 針 ニ関 ス ル テ ーゼ ( 証 第 一 一号)

人 カ大 正 十 四 年 八 月頃 判 示 党 ニ入 党 当時 同 党 カ既 ニ成 立 シ居 タ

一、 被 告 人 大 田遼 一郎 ノ当 院法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ判 示頃 判 示 場 所 ニ

ヲ作 成 シタ ル コト ハ相 違 ナ ク右 ハ研 究会 ノ拡張 ト其 ノ存 立 ヲ図

ル旨 ノ記 載 ア ルト

シテ大 正 十 二年 ノ共 産 党 ハ検 挙 ノ為 党 員 ノ意 気 カ 沮喪 シ タ ル等

一、 同 荒 畑 勝 三 ニ対 ス ル予審 第 一回 訊 問 調書 ノ抄 本 中 同 人 ノ供 述 ト

ル為 ニ作 リ タ ルモノ ナ ル旨 ノ供 述

旨 ノ下 ニ判 示 摘 示 ノ如 キ 一般 方針 ヲ執 ルヘ キ モノ ナ ル旨 ノ記 載

一、 証第 一 一号 校 内 運動 ノ 一般 方 針 ニ関 ス ルテ ー ゼ中 判 示 ノ如 キ趣

ノ理 由 ノ為大 正十 三 年 二月 頃 解散 ノ決 議 ヲ為 シタ ル旨 、 同 野坂

ヲ根 絶 シ テ共 産 主 義 ノ社 会 ヲ建 設 スル為 ニ ハ今 日 ノブ ルジ ヨア

発 行 ノ テ ーぜ等 ノ冊 子 中 全国 ノ革 命 的 労 働 者 諸 君 ハ 一切 ノ搾 取

一、 大 阪 共 産 党事 件 ノ被 告 人 春 日 庄 次郎 ニ対 スル証第 一九 四 号 同党

点ハ

同党 ノ 目的 カ判 示 ノ如 ク我 国 体 ノ変 革 及 私有 財 産 制度 ノ否 認 ニ在 ル

ニ依 リ之 ヲ認 メ

ルト

由 ヲ以 テ大 正 十 三年 二 月頃 解 散 ノ決 議 ヲ為 シタ ル旨 ノ各 記 載 ア

参 弐 ニ対 ス ル予 審 第 二回 訊問 調書 ノ謄 本 中 同 人 ノ供 述 ト シ テ大

ト活動 分 子 ヲ取 ラ レ タ ル為 殆 ント潰 滅 ノ状 態 ニ陥 リ タ ル等 ノ理

正 十 二年 ノ共 産 党 ハ同 年 六 月事 件 ノ検 挙 ニ依 リ党 員 ノ意 気 沮 喪

ア ルト

九 郎 ニ対 ス ル予審 第 三 回 訊問 調書 ノ供 述 記 載 及被 告 人松 本 篤 一

尚 特 ニ(乙) ノ ( ニ) ニ関 シ 一、 就 中 前 掲 第壱( 甲) ノ犯罪 構 成事 実 ノ証 拠 説 明 中 ニ挙 ケ タ ル清 水平

ノ供 述 並 供述 記 載 一、 被 告 人 松 本篤 一ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル判 示 日 場 所 ニ於 ケ ル会 合ニ 出 席 シ タ ル旨 ノ供 述 一、 同 被 告 人 ニ対 スル予 審 第 四 回訊 問 調 書 中判 示 日 ノ会 合 ニ ハ清 水 平 九 郎、 秋笹 正 之 輔 、 池 田隆 、 橋 本 省 三、 朝 倉 菊 雄 等 出席 シ最

ア ルト

初 私 カ議 長 ト為 リ判 示 ノ如 キ討 議 決 定 ヲ為 シタ ル旨 ノ供 述 記 載

ヲ夫 々彼 此綜 合 考覈 ス レ ハ之 ヲ認 ム ル ニ十 分 ナ リ ト ス

ス ル精 鋭 ナ ル軍隊 即 チ共 産 党 ヲ組 織 セサ ルヘ カ ラ ス日本 ニ ハ実

イ テ勝 利 ヲ得 ル為 ニ ハ諸 君 ハ正 シキ戦 術 ト 鉄 ノ如 キ規 律 ト ヲ有

決 死 ノ闘 争 ナ ク シテ ハ不 可 能 ニシテ此 ノ階 級 戦 ヲ最 後 迄 戦 ヒ抜

社 会 ヲ倒 シテ プ ロ レタ リ ア独裁 ヲ樹 立 セ サ ルヘ カ ラ ス然 シ之 ハ

此 ノ革命 ノ展望 ノ下 ニ中 心 ス ロ ーガ ンヲ労働 者 農 民 ノ民 主的 独

労 働 者 本来 ノ政 治 形態 ソビ エツト ヲ生 ム モノ ナ リ ソ レ故 我党 ハ

ス ニ ハ暴 動 ト内 乱 ニ依 ル モノ ニ シテ此 ノ暴 動 ト内 乱 ハ必然 的 ニ

ブ ルジ ヨア ヲ半 身 不随 ノ状 態 ニ シテ終 フ コト ナ リ而 シテ之 ヲ為

死 ノ激 戦 カ展開 サ レ資 本 家 階 級 及 地主 ヲ絶 滅 シ此 ノ世 ノ中 ニ搾

ル次 第 ナリ而 シテ党 ハ前 述 ノ如 ク武 装 シ タ ル軍 隊 ニシ テ其 ノ決

取 ノ根 ヲ絶 シ然 ル後 初 メ テ労 働 者農 民 ハ其 ノ生 活 ハ保 証 サ レ完

裁 ト シ ソ レ ハ常 ニプ ロ レ タリ ア独 裁 ト結 付 ケ テ大 衆 ニ宣伝 シ居

ラ レタ ル モノ ノ ミカ 共産 党 ナ リ党 ハ厳 然 タ ル マ ルク ス主義 レー

内 ニ働 ク モノ ノ ミカ真 ノ 共産 主 義 者 ニシテ右 支 部 ト シテ組 織 セ

ナ キ旨 ノ記 載

全 ナ ル自 由 ヲ齎 ラサ ル ルモ ノ ニシテ ソ レ以 外 ニ解放 ノ道 絶 対 ニ

テ ル ン) ノ日 本 支部 ト シテ組 織 セ ラ レタ ル モノ ニシテ党 ノ組 織

ニン主 義 ヲ以 テ全 身 ヲ武 装 セサ ルヘ カ ラサ ル旨 並 日本 ニ於 ケ ル

際 既 ニ七 年 前 ヨ リ共産 党 カ存 在 シ最 初 ヨリ国 際 共 産 党 (コミ ン

客 観 的形 勢 ノ下 ニ於 テ我無 産 階 級 ノ当 面 ノ闘 争 目 標 ハブ ルジ ヨ

ジ ヨア ヲ孤 立 セ シメブ ルジ ヨ アジ ー ヲ痲痺 セ シ ム ル ニ在 リ我 党

的 ト シ共産 党 ト シテ ノ 公 式的 政 策 ヲ採 リ居 リ シト 思 フ夫 レ故 大

共 産党 ト 云 フ以 上 ハ無 産 者 独 裁 ニ依 ル共産 主 義 社 会 ノ実 現 ヲ目

特 ニ党 ノ目 的 政策 等 ニ付 テ他 人 ヨリ聞 キタ ル訳 ニ ハアラ サ ル モ

ト シテ自 分 ハ大 正十 四年 八月 頃 日本 共産 党 ニ加 入 シタ ルカ当 時

ハ以上 ノ如 キ根 本 方 針 ニ基 キ当 面 ノ ス ローガ ント シテ君 主 制 ノ

一、 前 記 佐 野 文 夫 ニ対 ス ル予 審 第 一回 訊問 調 書 ノ謄 本中 同 人 ノ供 述

撤 廃 、 議 会 解散 、 ソ ビ エツト ロシア ノ防 衛 、 殖 民 地 ノ完 全 ナ ル

タ ル カ矢張 リ私 カ考ヘ 居 リ タ ルト同 様 労働 者 農 民 ノ中 ニ共 産 党

正 十 五年 五月 下 旬 頃 私 カ中 央 部 ニ入 リ テ ヨリ実 際 ノ政策 カ判 リ

アト 地 主 ト ノ権 力 ニ抗争 シテ達 セ ラ ルヘ キブ ルジ ヨア的 民 主 主

独 立、 宮 廷寺 院 地主 等 ノ土 地 ノ無償 没 収 等 十 三 ケ条 ヲ採 用 シ是

義 労働 者農 民 ノ革 命 的 独 裁 ニシテ ソ ノ攻 撃 ノ 主要 方 面 ハ小 ブ ル

等 ノ ス ローガ ン ハ常 ニ労 働 者 農 民 ノ政 府 プ ロレ タリ アノ独 裁 ノ

一、 同春 日庄 次 郎 ニ対 ス ル証第 一一 一号 日本 共 産 党 ノ組 織 ト政 策 及

迫 搾 取 ヲ排除 シテ社 会 的 ニ生 産 シ社会 的 ニ分 配 ス ル無 支 配 無 搾

的 ニ ハ圧 迫 サ レ経 済 的 ニ ハ搾 取 サ レテ居 ル有様 ナ リ シ故 此 ノ 圧

ケ ル 日本 ノ社 会 状 態 ハ労働 者 階 級 ハ小 数 ノ資 本家 階 級 ノ為 政 治

ノ勢 力 ヲ扶 植 シ夫 等 ノ多 数 ヲ獲 得 スル コト ヤ組 合 ヲ統 一シ共 同

革命 ノ展 望 ナ ル文書 中 日本 共 産 党 ハ今 日 ノ資 本 主 義 ノ諸関 係 ヲ

戦 線 ヲ採 ル コト等 カ主 タ ル政 策 ナ リ キ而 シテ自 分 入 党 当時 ニ於

科 学的 ニ観 察 シテ来 ル ヘキ革 命 ノ性質 ヲブ ルジ ヨア革 命 ノ徹 底

ヲ実 現 スル ニ ハプ ロ レタ リ ア (無産者 ) 独 裁 ト 云 フ過 程 ヲ経 サ

取 ノ社 会 即 チ共産 主 義 社 会 ヲ造 ラサ ル ヘカ ラ ス而 シテ此 ノ社 会

二中 心 ス ローガ ント結 ヒ付 ケ テ宣 伝 セラ レサ ルヘ カ ラサ ル旨 ノ

的 遂 行 ニ在 リ ト規 定 ス此 ノブ ルジ ヨア革命 ト ハ先 ツ政 治的 ニ ハ

各記 載 ア ルト

君 主 制 ヲ撤 廃 シテ最 モ民主 的 ナ ル共 和 国 ヲ作 ル コト ニシ テ即 チ

カ サ ルヘ カ ラ ス従 ツ テ資 本 家 階 級 ノ独 裁 ヲ排 除 シ テプ ロ レ タリ

ル モノ ナ ル故 搾 取関 係 ヲ除 ク為 ニ ハ先 ツ政 治 上 ノ圧 迫 支配 ヲ除

ル モノ ナ ルカ政 治 上 ノ関 係 ハ経 済 上 ノ関係 ヲ常 ニ擁 護 シ支持 ス

ル ヘカ ラ ス即 チ政 治 上 ノ支 配 圧 迫 ハ経 済 上 ノ搾 取 関 係 ヨリ 生 ス

ニ到 達 スル過 程 ニ於 テ先 ツ我 国 ノ立 憲 君 主 制 ヤ私有 財 産 制 度 ヲ

我国 ニ共 産 主義 的 社会 ヲ実 現 セ シ ム ル コト ヲ理 想 ト シ其 ノ理 想

働 階 級 ノ前 衛 分 子 ヲ以 テ組 織 サ レ 一般 被 圧 迫 民 衆 ヲ解 放 スル為

ハ大 正 十 五 年 八 月中 日本 共 産 党 ニ加 入 シタ ル カ同党 ハ我国 ノ労

ト スル秘 密 結 社 ナ ル コト ヲ知 リ テ加 入 シタ ル旨 ノ記 載

革 命 ニヨ リ破壊 シ労 農 独 裁 ノ政 治 ヲ樹 立 セ ム コト ヲ当 面 ノ目 的

一、 被 告 人 石 田英 一郎 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル自 分 ハ昭和 二年 五 月 中 日

ルト考ヘ 居 リタ ル旨 、 同 第 四 及 五 回 予審 訊 問 調 書 ノ謄 本 ヲ 通 シ テ同 人 ノ供 述 ト シテ 五色 温 泉 ニ於 ケ ル大 会 ニ於 テ福 本 和夫 ハ日

シ テ社 ハ判 示党 ノ前 身 ニシテ共 産 主 義 社 会 ヲ建 設 ス ル為 ソノ 過

本 共 産 党 ニ加 入 シタ ル カ当時 同 党 ノ コト ヲ社 ト申 シ居 リ タ リ而

ア 独裁 ノ過 程 ヲ経初 メ テ共 産 主 義 社会 ノ実 現 ヲ見 ル コト カ出 来

カブ ルジ ヨア民主 主 義 ノ獲 得 ニア ル コト ヲ教 ユル吾 人 ノ闘 争 ハ

本 共 産 党 ノ任務 ト シテ以 上 ノ 分 析究 明 ハ吾 人 ノ当 面 ノ闘 争 目 標

スル ニ ハ無 産 者 カ議 会 ニ多 数 ヲ占 メ テ行 ク コト カ不 可 能 ナ ル故

程 ト シテ プ ロ レタ リ ア独裁 ヲ樹 立 スル コト ヲ目 的 ト シ之 ヲ遂行

ニ シテ国 体 ノ変 革 私有 財 産 制 度 ノ否認 等 治 安 維 持法 ニ ハ勿 論 衝

大衆 ノ革 命 的 闘 争 ニ依 リ暴 力 革 命 ヲ行 フ コト ヲ モ辞 セ サ ル モノ

ニ向 ケ ラ レタ ル革 命 ハ其 ノ内 的 ニ シテ必 然 ナ ル弁証 法 的 転 化 ニ ヨ リプ ロレタ リ ア革 命 ニ転 化 ス ルテ ア ロウ ト述ヘ 一同 ニ諮 リ タ

其 ノ為 ニ先 ツ専 制 的 遺 制 ノ打 破 ニ向 ケ ラ レ ネ ハナ ラ ヌ而 シテ之

ル処 異議 ナク可 決 シ タ ル旨 ノ各 記 載

政 治 ヲ変 革 シ労働 者階 級 独 裁 ヲ通 シテ 人 カ人 ヲ搾 取 シ支 配 ス ル

礎 ヲ置 キ国 民大多 数 ノ搾 取 ト支 配 ト ヲ目 的 ト スル資 本 階級 独裁

ハ大 正十 二年 ノ共 産 党 ノ 目的 ト変 リ ナ ク結 局私 有 資 本 制度 ニ基

シ テ私 ハ昭和 二年 三 月 日本 共 産 党 ニ入 党 シタ ルカ共 産 党 ノ目 的

ト ハ云 ハレ居 リ タ リ又 無 産階 級 ノ 独裁 ト云 フ事 モ社 モ再 組織 後

云 フ名 目 ノ下 ニ君 主 制 ヲ指 シ其 ノ撤 廃 ヲ為 サ サ ルヘ カ ラ サ ル コ

方 針 ハ違 フト思 フ而 シ テ社 ト 云 ヒ居 リ シ時 代 モ絶 対 専 制 勢 力 ト

ト カ云 フ目 的 ハ変 リ ナ ク同 一ナ ルカ其 ノ具 体 的 ナ政 治 方 針 組 織

ト ノ間 ニ ハ抽象 的 ニ私 有 財 産制 度 否 認 ト カ共 産 主義 社 会 ノ実 現

一、被 告 人 宮 崎 菊 次 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル社 ト再 組 織 後 ノ 日本 共 産 党

突 ス ルモ ノ ナ ル コト ハ入 党 当 時 モ判 リ居 リ タ ル旨 ノ供 述

コト ナ キ共 産 主 義 社会 ヲ建 設 スル コト ヲ目的 ト ス ル労働 階 級 ノ

一、 同野 坂参 弐 ニ対 スル予審 第 三 回訊 問 調 書 ノ謄 本中 同 人 ノ供 述 ト

政 党 ナ リ ト思 フ而 シテ共 産 主 義 ハ人 民 ノ意 思 ヨリ独 立 シタ ル支

ノ党 モ同 シ ク目 的 ト シ居 リタ ル旨 ノ供 述

一、前 掲 佐野 文 夫 ニ対 スル予審 第 一回 訊 問 調書 ノ謄 本 中 同 人 ノ供 述

判 示 党 ノ組織 カ判 示 ノ如 ク ナ ル点 ハ

ア ルト ヲ彼 此 綜 合 シテ之 ヲ認定 シ

配 権 ヲ認 メ サ ル故 君 主 制 ノ撤 廃ト 云 フ事 モ資 本 家階 級 ノ独 裁 政 治 ノ変 革 ト 云 フ中 ニ含 マレ テ居 ル旨 ノ記 載

郎 ニ対 ス ル予審 第 一回 訊問 調書 ノ謄 本 中 同 人 ノ供 述 ト シテ自 分

一、 前 掲 東 京 地 方裁 判 所 治 安 維 持 法違 反 被 告 事 件 ノ被告 人喜 入 虎 太

ト シ テ同 人 カ大 正十 四年 八 月頃 判 示 党 ニ入 党 当時 既 ニ判 示 ノ如

央 ニ推 薦 シ堂中 央 ヨリ党 員 ニ編 入 ノ許 可 通 知 来 リ タ ルト キ関 西

中 同 人 ノ供 述 ト シテ党 員 ヲ入 党 セ シ ム ル ニ ハ最 初 適 任者 ヲ党 中

一、前 記 春 日庄 次 郎 ニ対 ス ル大 阪 共産 党 事 件 ノ予 審 第 六 回訊 問 調書

地 方委 員 長 タ ル自 分直接 又 ハ他 ノ者 ヲ シテ被 推 薦 者 ニ入党 ノ通

ク中 央 部並 細 胞 アリ タ ル旨 ノ記載 ア ル ト 一、 大 阪 共 産党事 件 ノ被 告 人 春 日庄 次 郎 ニ対 スル予審 第 四 、 五 回 訊

知 ヲ為 ス モノ ニシ テ私 カ直 接 入 党 セ シメ タ ル党 員 ハ鷲 谷武 二、

ノ来 阪 当時 既 ニ同 党 員 ナリ シ旨 ノ記 載 ア ルト

松 本篤 一、 宮 崎 菊 次 、 池 田隆 其 ノ他 ノ者 ニ シテ山 崎 雄 次 ハ自 分

問 調 書 ヲ通 シテ同 人 ノ供 述 ト シテ 昭和 二年 二月 以来 ノ判 示 党 ノ

ヲ綜 合 シテ之 ヲ認 定 シ

(ロ︶ノ犯 罪構 成 事 実 ニ関 シ 一、 被 告 人 古賀 二男 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル知情 ノ点 ヲ除 キ判 示 同 趣旨

判 示 第 弐 ノ( イ) 乃 至 ( リ) ノ犯罪 構 成 事 実 ハ以 上 ニ掲 ケ タ ル各証 拠 ト

組 織 ニ付 判 示同 趣 旨 ノ記 載 ア ルト

尚

ニ知 リ居 リ 又判 示 党 ノ目的 ニ付 テ ハ党 ハ近 キ将 来 或 ル条 件 ノ下

並 自 分 ハ入 党 当 時 一般 ニ共産 党 カ如 何 ナ ル モノ ナ ルカ ハ公 式的

一、被 告 人 松 本篤 一ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル判 示 頃 判 示 場 所 ニ於 テ柴 川

尚 (イ) ノ犯 罪 構 成事 実 ニ関 シ

事 春 日庄 次 郎 ヨリ判 示社 ニ仮 リ ニ加 入 セ シム ル旨 申 サ レ之 ヲ承

ニ第 一次革 命 ヲ行 ヒ君 主制 ヲ撤 廃 シ大 土 地 ヲ没 収 シ第 二 次 ノ革

諾 シ自 分 ハソ レ ニテ党 ニ加 入 シ タ ル モノ ト思 ヒ居 ル旨 ノ供 述 一、 大坂 共 産 党事 件 ノ原 審 第 十 三 回 公判 調書 中 被 告 人篤 一ノ供 述 ト

ラ レ ルト 云 フ見 通 シヲ持 チ居 リ第 一次革命 ニ於 テ労農 政 府 樹 立

ノ為 党 ノ十 三 ケ条 ノ スロー ガ ンヲ実 現 セ ム コト ヲ目 的 ト シテ行

命 ト シ テプ ロ レタ リ ヤ独 裁 ノ樹 立 ヲ経 テ共産 主 義 社 会 カ実 現 セ

動 セ ルモ ノト思 ヒ居 リ タ ル旨 ノ供 述

シテ私 ハ京 大学 生事 件 ニ引 掛 リ テ ヨリ共産 主 義 者 ト シテ自 認 シ

場所 ニ於 テ春 日庄次 郎 ヨリ 日本 共 産 党 ニ編 入 ス ルト申 サ レタ ル

居 リ 日本 ニ共産 党 カ ア レ ハ這 入 ル心算 テ居 リ タ ルニ判 示 頃 判 示

故 之 ヲ承 諾 シ タリ而 シテ私 ハ共 産主 義 ノ理 論 ヨリ同党 ニ加 入 ス

対 スル前掲 予審 第 六 回 訊 問 調書 ノ記 載 及 同 第 五 回訊 問調 書 中同

人 ノ供 述 ト シテ山 崎 雄 次、 国 領 巳 三 郎、 鷲 谷 武 二、 熊 谷 孝 雄、

一、 大 阪共 産党 事 件 ノ当 審 ニ於 ケ ル共 同 被 告 人 タリ シ春 日庄 次 郎 ニ

黒 川 健 三、 古 賀 二男 等 ハ大 阪 ニ於 ケ ル日 本 共産 党 員 ナ リ シ旨 ノ

ル ニ至 リ タ ル モノ ニ シテ最 初 ヨリ党 ノ目 的 ヲボ ンヤリ推 知 シ テ

之 ヲ知 リ之 ニ賛 成 シタ ル モ ノ ニシテ党 員 タ ル コト 相違 ナ キ旨 並

記 載 ア ルト

入党 シタ ル カ昭和 三年 一、 二月頃 同党 ノ政 治 テ ー ゼ ヲ貰 ヒ判 然

同 事 件 ノ共 同 被告 人 タ リ シ春 日 庄 次郎 ノ供 述 ト シ テ松 本 篤 一ニ

趣 旨 並 自分 ハ入 党 当 時 一般 的 ニ共 産 党 ノ如 何 ナ ル モノ ナ ル コト

一、 被 告 人黒 川 健 三 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル知 情 ノ 点 ヲ除 キ結 局 判 示同

尚︵ハ ノ︶ 犯 罪 構成 事 実 ニ関 シ

対 シ テ ハ私 ヨリ 入党 ノ通 知 ヲ為 シタ ル コト ハ右 同 人 ノ申 ス通 リ ナ ル旨 ノ各 記 載 一、 被 告 人 篤 一ニ対 ス ル大 阪 共産 党 事 件 ノ予 審 第 二回 訊問 調 書 中 知 情 ノ点 ニ付判 示同 趣 旨 ノ供 述 記載

ヤ生 産 手 段 ヲ社 会 化 シ共 産 主 義 社 会 ノ実 現 ニ進 ミ以 テ無 産 階 級

即 チ無 産 階 級 独 裁 ノ社 会 即 チ 労働 者 農 民 カ政 権 ヲ獲 得 シ大資 本

諾 シタ ル故 党 ニ編 入 シタ ル モノ ナ ル旨 ノ各 記 載

ル ハ自 分 ニシ テ柴 川 ト ハ自 分 ノ偽 名 ナ リ而 シテ鷲 谷 カ加 入 ヲ承

谷 ニ対 シ判 示場 所 ニテ 日本 共 産 党 ニ入党 セ シ ムル勧 誘 ヲ為 シタ

ノ実 現 ニ在 リ ト考 フ ル カ其 ノ段 階 ト シテ無 産 者 独裁 政 治 ノ樹 立

在 ノ資 本 主義 社 会 ヲ変 革 シテ 生産 手 段 及 分 配 方法 ノ共 有 ノ社 会

七問 答 ニ日本 共 産 党 ノ 目的 ハ要 ス ル ニ無 産 者階 級 解 放 ノ為 ニ現

一、被 告 人武 二 ニ対 スル大 阪 共産 党 事 件 ノ予審 第 二 回訊 問 調書 ノ第

ノ解 放 ヲ目 的 ト スル モノ ナ ル コト ヲ知 リ居 リ判 示 日本 共 産 党 モ 斯 ル目的 ヲ有 スル モノ ト思 ヒ之 ニ加 入 シ タ ル旨 ノ供 述 一、 被 告 人 健 三 ニ対 スル大 阪 共産 党 事 件 ノ予 審 第 三 回訊 問 調 書 中 知 情 ノ点 ニ付 判 示 同 趣 旨 ノ供 述 記 載 一、 前 記 (イ) 及 ) ( ロノ犯 罪 構 成 事 実 ノ 証拠 説 明 ニ掲 ケ タ ル春 日庄 次 郎 ニ

リ同 党 ノ当面 ノ政 策ト シテ ハ君 主制 ノ廃 止 天 皇寺 院 地主 等 ノ土

カ主張 セ ラ ル ルト思 フ尚 私 ハ同 党 ニ加 入 シ テ以来 党 ノ文 書 ニ依

地 ノ没 収 等 ナ ル コト ヲ知 リ タ ル旨 ノ供 述 記 戦

対 ス ル予審 訊 問 調 書 ノ記 載 ア ルト 尚) (ニ ノ犯罪 構 成 事 実 ニ関 シ

一、 被 告 人 熊 谷孝 雄 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル知情 ノ点 ヲ除 キ判 示 同 趣 旨

尚 (ホ) ノ犯 罪 構 成事 実 ニ関 シ

郎 ニ対 スル予審 訊 問 調 書 ノ記 載 ア ルト

一、 前 記 (イ) ノ犯罪 構 成 事 実 ニ関 ス ル証拠 証 明中 ニ掲 ケ タ ル春 日庄 次

一、 被 告 人鷲 谷武 二 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル判 示頃 判 示場 所 ニ於 テ柴 川 ナ ル者 ヨリ社 ナ ルモ ノ ニ加 入 ス ル コト ヲ勧 メ ラ レ之 ヲ承 諾 シタ ル旨 並 自 分 ハ入 社 当 時 一般的 ニ共 産 党 ト ハ如 何 ナ ル モノ ナ リ ヤ ハ知 リ居 リ タ ル旨 ノ供 述

ロー ガ ン等 モ見 テ党 ノ目 的 ヲ知 リ入 党 シタ ル旨 ノ供述

並 自 分 ハ昭 和 三年 一月 頃 判 示 党 ノ政 治 テー ゼ ヲ見 十 三 ケ条 ノ ス

一、 大 阪 共 産 党事 件 ノ原 審 第 十 三 回 公判 調書 中 被 告 人 武 二 ノ供 述 ト シ テ判 示 頃判 示場 所 ニ於 テ柴 川 ナ ル者 カ 私 ニ対 シ 日本 ノ無 産階

次 郎 ニ対 スル予 審 訊問 調書 ノ各 記 載 ア ルト

一、前 記( イ )( ロ) ノ犯 罪 構成 事 実 ニ関 スル証 拠 説 明中 ニ掲 ケ タ ル春 日庄

情 ノ点 ニ付 判 示 同 趣旨 ノ供 述 記 載

一、 被 告 人 孝 雄 ニ対 ス ル大 阪 共 産 党 事 件 ノ 予審 第 二回 訊 問調 書 中 知

級 解 放 運 動 ノ為 ニ ハ社 カ必 要 ナ ル コト ヲ簡 単 ニ説 キ 日本 ニ無 産

タ リ其 ノ時 ハ社 ノ細 カ イ綱 領 目 的 政 策 ハ同 人 モ話 セ ス又 自 分 モ

階 級 運 動 ノ前 衛 分 子 ニ依 リ結 成 セ ラ レ居 ル社 カ ア ル コト ヲ話 シ

聞 カ サ リ シ カ私 ハ勿 論 マル ク ス主 義 ニ対 ス ル共 鳴 ハ頭 ノ上 カ ラ

尚) ( ヘノ犯罪 構 成 事 実 ニ関 シ

持 チ居 リ シ故 ソ ノ社 ノ 正体 ヲ判 然 聞 カウ ト モセ ス ニ社 ニ加 入 ス ル コト ヲ承 諾 シ タリ ス ルト ソ ノ人 ハ党 ノ規 律 等 ヲ話 シ タ リ而 シ

一、前 記( イ) ノ犯 罪 構 成事 実 ニ関 ス ル証 拠 説 明 中 ニ掲 ケ タ ル春 日庄 次

一、被 告 人宮 崎 菊 次 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル判 示 同趣 旨 ノ供 述 ヲ為 スト

郎 ニ対 スル予 審 訊 問 調書 ノ記 載 ア ルト

テ 予審 第 二回 訊 問 調書 ノ 七問 答 ハソ レ ニテ差支 ナ シト思 フ又 日

ヲ受 取 リ テ初 メ テ知 リ タ ル旨 並 前 記 春 日庄 次 郎 ノ供 述 ト シ テ鷲

本 共 産 党 ノ具 体 的 政策 ハ昭和 三年 三 月 初 頃 パ ンフ レツト 第 一輯

尚) (ト ノ犯 罪 構 成 事 実ニ 関 シ

一、 被 告 人 石 田英 一郎 ノ当 院法 廷 ニ於 ケ ル結 局判 示 同 趣 旨 ノ供 述 ヲ

テ資 本 家 的 私 有 財 産 制度 ヲ否 認 シ共 産 主義 社会 ノ実 現 ヲ目的 ト

旨 並 自 分 ハ判 示 党 カ君主 制 ヲ廃 止 シ無 産 階 級 ノ独 裁 ヲ階 段 ト シ

洋 一、 宮 崎 菊 次、 原 田耕 、 黒 川 健 三、 上村 正 夫 ノ判 示第 壱 ノ各 所為

孝 雄、 永 井 哲 二 、武 藤 丸 楠 、 黒 田久 太、 古 賀 二男 、大 浦 梅 夫 、 内海

而 シテ被 告 人 石 田英 一郎 、 鈴 木 安 蔵、 鷲 谷 武 二、 大 田遼 一郎 、熊 谷

ヲ 夫 々彼 此 綜 合 ス レ ハ之 ヲ認 定 スル ニ足 レリ

為 スト

ス ル非 合 法 的 秘 密 結 社 ナ ル コト ヲ知 リテ 入党 シタ ル旨 ノ供 述

一、被 告 人 大 田遼 一郎 ノ当院 法 廷 ニ於 ケ ル知 情 ノ点 ヲ除 キ判 示同 趣

一、被 告 人 宮 崎 菊 次 ニ対 ス ル京 都 共 産 党事 件 ノ 予審 第 三回 訊 問 調書

ニ同種 同 質 ノ判 示 犯行 ヲ反 覆 累 行 シタ ル事 蹟 ニ徴 シ之 ヲ認 定 シ

尚 被 告人 松 本 篤 一、 古 賀 二男 、 黒 川 健 三、 鷲 谷 武 二、 熊 谷孝 雄 、 宮

カ意 思継 続 ニ出 テ タ ル モノ ナ ル コト ハ同 被 告 人 等 カ夫 々判 示 期 間 内

旨 告 ケ ラ レタ ル ヨリ大 阪 ヨリ京 郡 ニ帰 リ テ ヨリ 二 三 日内 ニ永 井

崎 菊 次、 大 田遼 一郎 、 永 井 哲 二、 石 田英 一郎 ノ判 示 第 壱 ノ所 為 ト判

ヨリ永 弁 哲 二、 大 田遼 一郎 其 ノ他 ニ対 シ入 党許 可 指 令 ア リタ ル

ニ対 シテ ハ同 人 宅 附 近 ノ カ フ エー ニ於 テ又 大 田 ニ対 シ テ ハ長谷

一、 前 記 認 定 ニ係 ル第 壱 第 弐 ノ犯罪 事 実 ソ レ自 体 ト

示 第 弐 ノ所 為 ト意 思 継 続 ニ出 テ タ ル コト ハ

中 同 人 ノ供 述 ト シ テ昭 和 三年 二月 上 旬 頃 大 阪 ニ於 テ春 日庄 次郎

川 宅 ニ於 テ判 示党 ニ入 党 許 可指 令 ア リ タ ル コト ヲ告 ケ入 党 ヲ勧

一、 前 記 判 示第 壱( 甲) 及( 乙) ノ犯罪 構 成 事 実 ノ証拠 説 明 中 ノ各最 初 ノ部

誘 シ タ ル ニ皆 同 意 シ テ入 党 シタ ル旨 ノ記 載 ア ルト 尚︵チ ノ︶ 犯 罪 構 成事 実 ニ関 シ

ニ ン主 義 ヲ信 シ居 ル点 ニ関 スル供 述 ト

分 ニ掲 ケタ ル右 各 被 告 人 ノ当 院法 廷 ニ於 ケ ル マ ルク ス主 義 レ ー

一、 被 告 人 松本 篤 一ニ対 スル学 生事 件 ノ予 審 第 五 回訊 問 調 書 中 私 カ

並 自 分 ハ昭和 三年 一月 中 宮 崎 ヨリ判 示党 ノ テー ゼ ( 京都共産党

一、 被 告 人 永井 哲 二 ノ当 院 法 廷 ニ於 ケ ル知 情 ノ点 ヲ除 キ判 示 同 趣 旨

事 件 ノ証 第 四 四 八 号) ヲ貰 ヒ之 ヲ読 ミ党 ノ中 心 スロー ガ ン及 十

シ居 ル故 目下 将 来 モ従 前 ト 同 一ノ方 針 ニ基 キ依 然 無 産 階 級 運動

従 来 学 生社 会 科 学 運 動 ニ携 ハリ為 シ来 リ シ行動 ハ正 当 ナ リト信

ニ従 事 ス ル考ヘ ナ ル旨 ノ供述 記載 及 前 記 判 示第 弐 ノ( イ) ノ犯 罪構

三 ケ条 ノ ス ロー ガ ンヲ モ見 同 党 ノ目的 ヲ知 リ テ加 入 シタ ル旨 ノ

成 事 実 ニ関 ス ル証 拠 説 明 中 ニ掲 ケ タ ル公 判 調書 中 ノ同 被 告 人 ノ

供述

被 告 人春 日庄 次 郎 ニ対 ス ル証 第 一九 四号 ノ記 載 ト同 一ノ記 載 ア

一、 京 都 共 産 党 事 件 ノ 証第 四 四八号 テ ーゼ中 前 掲 大 阪 共産 党 事 件 ノ

供 述 記 載 ア ルト

依 然 ト シ テ其 ノ研究 ヲ継 続 シテ行 キ度 イ ト思 フ然 シ私 ノ現 在 ノ

マルキ シズ ム ノ理論 ノ正 当 ナ ル コト ヲ信 スル モ ノ ニシテ将 来 モ

一、 被 告 人 古 賀 二 男 ニ対 ス ル学 生 事件 ノ 予審 第 四 回 訊 問調 書 中 私 ハ

リ 一、 右︵ト ノ︶ 犯 罪 構 成事 実 ニ関 ス ル証 拠 説 明中 ノ宮 崎 菊 次 ニ対 ス ル京 都 共 産 党 事 件 ノ予 審 訊問 調書 ノ記 載 ア ルト 尚︵リ ノ︶犯罪 構 成 事 実 ニ関 シ

ノ宣 伝 普 及 ニ従 フ コト ハ当 分 避 ケ度 イ ト思 フ旨 、同 被 告 人 ニ対

戦 線 ニ立 チテ之 カ実 行 運 動 ニ携 ハルヘ キ器 テ ハナイ ノテ右 思 想

心 持 ヨリ云ヘ ハ自 分 ノ才 幹 ヨ リ見 ル モ到 底 無 産 階級 解 放 運 動 ノ

研 究 ヲ継 続 シテ行 キ度 イ ト思 フ カ今 後 ノ生 活 態 度 ニ付 テ ハ只 今

マル キ シズ ムノ理 論 ノ正 当 ナ ル コト ヲ信 スル ヲ以 テ今 後 モ其 ノ

一、 被 告 人熊 谷孝 雄 ニ対 スル学 生 事件 ノ予 審 第 六 回 訊問 調 書 中 私 ハ

ハ之 ヲ避 ケ度 イ ト思 フ旨 、 同 被告 人 ニ対 スル大 阪共 産 党 事 件 ノ

申 兼 ヌ ル モ無産 階 級 運 動 ノ陣 頭 ニ立 テ其 ノ実 際 運動 ニ従 フ コト

予 審 第 一回 訊 問 調書 中 私 カ日 本 共産 党 ニ加 入 シタ ル真 ノ動 機 ハ

ス ル大 阪 共 産党 事 件 ノ予 審 第 一回 訊問 調 書 中 私 ハ日 本 共産 党 ノ

私 ノ 一家 ノ没落 ト京 都 学 生 事 件 ト ニ依 リ益 々 マル ク ス主 義 ノ正

目 的 及 政 策 カ私 カ予 テ抱 懐 セ ル共 産 主義 ノ主 張 ト 合 致 ス ル コト ヲ認 メ タ ルノ テ同 党 ニ加 入 シ活 動 シ来 レ ル モノ ナ ル旨 ノ各 供 述

当 ナ ル コト ヲ痛 感 シ タ ル ニ依 ル旨 ノ各 供 述 記 載 ア ルト

記 載 ア ルト 一、 被 告 人 黒 川 健 三 ニ対 ス ル学 生 事 件 ノ 予審 第 三 回 訊 問 調 書中 私 ハ

々ノ行 動 ハ余 リ ニ無 産 階 級 運 動 ノ陣 営 ノ確 立 ニ急 ニ シテ所 謂 支

マ ルキ シズ ムノ 理論 ノ正 当 ナ ル コト ヲ信 スル モ過去 ニ於 ケ ル吾

配 階 級 ノ攻 勢 ヲ無 視 シ タ ル嫌 ア ル点 カ重 大 ナ ル誤 謬 ナ リ シ コト

一、 被 告 人 宮 崎 菊次 ニ対 ス ル学 生事 件 ノ予 審 第 七 回 訊問 調 書 中 私 ハ

ト ヲ主 要 ナ ル任 務 ト シ此 為 メ無 産 階級 ノ解 放 ヲ図 ラネ ハナ ラ ヌ

ヲ知 リ タ リ仍 テ私 ハ将 来 モ無 産 階級 解 放 ノ為 ニ働 キ度 イト思 フ

マルキ シズ ム ヲ信 ス ル モノ ニシ テ此 ノ理論 ニ従 ヒ現 時 ノ資 本 主

ト思 フ モ ノ ニシテ此 ノ信 念 ハ将来 ト雖 モ変 ラ サ ル故 今後 モ直 接

カ自 分 直 接 所謂 労 働 運 動 ニ身 ヲ投 ス ル コト ハ之 ヲ避 ケ マル キ シ

義 社 会 及 之 ヲ基 礎 ト シ存 立 スル国 家 ヲ批判 解 剖 実 践 克 服 ス ル コ

間 接 何 等 カノ形 式 ニ於 テ無 産 階 級 ノ解 放 ニ努 力 スル考ヘ ナ ル旨

シ モノ ニ シテ過去 ノ自 分 ノ行 為 ニ付 テ ハ之 ヲ正 当 ト 信 シ居 リ将

ハ将 来 モ社 会 科学 ハ研 究 シ様 ト 思 フカ実 際 運 動 ニ ハ携 ハラ ヌ様

ハ従 来 ノ運 動 カ学 生 ノ身 分 ト シ テ ハ余 リ ニ軽 卒 ナリ シト思 フ私

一、被 告 人 大 田 遼 一郎 ニ対 スル学 生事 件 ノ予 審 第 六 回訊 問 調 書 中 私

述 記 載 ア ルト

ズ ム ノ研 究 ヲ為 シ理論 的 方 面 ニ大 イ ニ貢 献 シ度 イ ト思 フ旨 ノ供

ノ供 述 記 載 ア ルト 一、被 告 人 鷲 谷 武 二 ニ対 ス ル学 生 事 件 ノ予審 第 五 回訊 問 調書 中 私 ハ

来 モ此 ノ理 論 ノ研究 ヲ依 然 継 続 シ テ行 キタ イ ト思 フ然 シ今 後 ニ

マルキ シズ ムノ 理論 ノ正 当 ナ ル コト ヲ信 シ之 ニ従 ヒ行動 シ来 リ

於 ケ ル私 ノ生 活態 度 ニ付 テ ハ只 今 判 然 タ ル コト ヲ申 上 ケ兼 ヌ ル

一回訊 問 調 書 中 私 ハ病 気 中 ニシ テ且検 挙 サ レ親 ニ迷 惑掛 ルト思

ヒ 一時 躊 躇 シ タ ル モ日本 共 産 党 ハ マル ク ス主 義 ノ理論 ニ合 シ居

ニ シヤウ ト 思 フ旨 、 同 被 告 人 ニ対 ス ル京 都 共 産 党事 件 ノ予 審 第

レ ー ニ ン等 ノ著書 ニ依 リ動 カ サ レ タ ルト コ ロ モ尠 カ ラサ ル モ其

ルノ テ私 ハ之 ニ賛 同 シ居 リ タ ル故意 ヲ決 シテ入 党 シ タ ル旨 ノ各

旨 、同 被 告 人 ニ対 ス ル大 阪 共 産 党 事 件 ノ予審 第 二回 訊 問調 書 中

ノ 他自 分 ノ生 立、 京都 学 生事 件 等 ノ実 際 上 ノ経 験 ニ依 リ タ ルト

供 述 記 載 ア ルト

私 カ共 産 主 義 ニ共鳴 シ又 日本 共 産 党 ニ加 入 シタ ル ハ マル ク ス及

コロ ア ル旨 ノ各 供 述 記載

マ ルキ シズ ムノ 正当 ナ ル コト ヲ信 シ従 ツ テ将 来 モ此 ノ無 産 階 級

ノ右 各 所為 ハ意 思 継 続 ニ出 テ タ ル モノ ナ ルヲ以 テ同被 告 人 等 ニ付 テ

雄 、 哲 二 、丸 楠、 久 太 、 二 男 、 梅 夫、 洋 一、 菊 次 、耕 、 健 三 、 正 夫

ハ新 旧 両 法 共 更 ニ刑 法 第 五 十 五 条 ヲ モ適 用 シ安 蔵 、英 一郎 ニ付 テ ハ

一、 被 告 人 永 井哲 二 ニ対 スル学 生事 件 ノ予審 第 六 回 訊 問 調書 中 私 ハ

解 放 運 動 ニ対 シテ ハ之 ヲ拱 手 傍観 ス ル コト ナ ク之 ニ助力 シ貢 献

英 一郎 ノ各所 為 ハ旧法 ニ於 テ ハ第 一条 第 一項 後 段 ニ、 新 法 ニ於 テ ハ

夫 々犯 情 重 キ判 示第 壱( 甲) ノ所 為 ニ付定 メタ ル刑 ニ従 フヘ ク、 又 判 示

第 一条 第 一項 並同 条 第 二 項 中各 結 社加 入 ニ関 スル規定 ニ該 当 シ新 法

第 弐 ノ被告 人篤 一、 二男 、 健 三 、 武 二、 孝 雄 、 菊 次、 遼 一郎 、 哲 二 、

ハ従 来 ノ我 々ノ 運動 カ運 動 上 ニ於 テ多 ク ノ過 失 ア リ タ ルカ 運動

一、 被 告 人石 田英 一郎 ニ対 スル学 生事 件 ノ予 審 第 九 回 訊 問 調書 中私

一項 ノ国 体 変 革 ヲ目的 ト スル結 社 加 入 ニ関 ス ル罪 ノ刑 ヲ以 テ問 擬 ス

ニ於 テ ハ更 ニ刑法 第 五十 四条 第 一項前 段 第 十 条 ニ則 リ 重 キ第 一条 第

シタ イト 思 フカ今 後 如 何 ナ ル方法 ヲ採 ルカ ニ付 テ ハ只今 予測 ス

ソ レ自 体 ハ正 当 ナ ル モノト 確 信 シテ居 ル故 従 来 ノ方 針 ニ基 キ テ

ル コト能 ハサ ル旨 ノ供 述 記 載 ア ルト

無 産 階 級 解 放 運 動 ニ努 力 ス ル考 ナ ル旨 ノ供 述 記 載 ア ルト

仍 テ判 示 犯罪 事 実 ヲ認定 ス

ヲ異 ニ スル ニ過 キ ス相 結 ヒ相連 リ テ進 展 シタ ル モノ ニシテ前 者 ハ後

的 ヨリ流 レ出 テ其 ノ目 的 達 成 ノ手 段方 法 上 ニ於 ケ ル段 階 ト シテ形 態

ノ如 ク意 思 継 続 ニ係 レ ルノ ミ ナ ラ ス共 ニ透 徹 一貫 セ ル同 一ノ根 本 目

キヘ ト コ ロ該 第 二 ノ所 為ト 同 被 告 人等 ノ前 記 第 一ノ所 為 ト ハ前 認 定

法 令 ノ適 用 ニ付 按 スル ニ

者ヘ ノ道 程 後 者 ハ前 者 ノ発 展 帰 結 ニ外 ナ ラ ス従 ツ テ結 局前 者 ハ後 者

ヲ夫 々彼 此 綜 合 考覈 ス レ ハ之 ヲ認 定 ス ル ニ十 分 ナ リ ト ス

被 告 人後 藤 寿 夫 、 鈴木 安 蔵 、 石 田英 一郎 、武 藤 丸 楠 、 内 海 洋 一、宮

ヘキ モノト ス、 以 上 説 示 セ ル所 ニ従 ヒ新 旧両 法 ノ刑 ヲ比 照 ス ル ニ被

崎 菊 次、 上村 正 夫 、 蓬台 恒 治 、 永 井 哲 二 、 大 田遼 一郎 、 大 浦 梅 夫、

ニ違 反 ス ル モノ ナ ルト コ ロ同 法 ハ右 所為 後 昭和 三年 六月 二 十 九 日勅

告 人 篤 一、 二 男 、 健 三、 武 二、 孝 雄 、菊 次、 遼 一郎 、哲 二及 英 一郎

ニ吸収 セ ラ ルヘ キ モノ ト謂 ハサ ルヘ カ ラサ ル ヲ以 テ是 等九 名 ノ被 告

令 第 百 二十 九 号 緊 急 勅令 (以下 之 ヲ新 法 ト 称 ス) ヲ以 テ改 正 セ ラ レ

ノ 九名 カ結 局 従 フ ヘキ新 法 第 一条 第一 項 ノ国 体 変 革 ヲ目的 ト スル結

人 ニ付 テ ハ結 局新 旧 両法 共 右 判 示 第 弐 ノ所 為 ニ付 定 メ タ ル刑 ニ従 フ

タ ル ヲ以 テ刑 法 第 六 条第 十 条 ニ則 リ右 新 旧 両法 ノ刑 ヲ比 照 シ テ法 令

社 加 入 ニ関 スル罪 ノ刑 ト 旧法 第 一条第 一項後 段 ノ刑 ト ハ旧法 ノ刑 軽

及 原 田耕 ノ判 示 所為 ハ孰 レ モ大 正 十 四 年 法律 第 四十 六 号 治 安 維 持法

ノ適 用 ヲ為 ス ニ判 示第 壱( 甲) ノ被 告 人 寿 夫 、安 蔵 、 英 一郎 ノ各 所 為 ハ

キ ヲ以 テ旧法 ヲ適 用 スヘ ク其 ノ余 ノ各 被 告 人 中 寿 夫、 安 蔵 ノ 二名 カ

黒 田 久太 、 松 本 篤 一、古 賀 二男 、熊 谷 孝 雄、 鷲 谷武 二、 黒 川 健 三 、

何 レ モ新 旧両 法 ノ各第 三条 刑 法 第 六 十 条 ニ、 判 示第( 壱) 乙 ノ被 告 人安

久 太、 篤 一、 二 男 、孝 雄 、 武 二 、 健 三 、耕 ノ所 為 ハ何 レモ新 旧 両法

同 一ナ ル ヲ以 テ夫 々犯罪 時 ノ法 規 タ ル旧 法条 ヲ適 用 スヘ キ モノ ト ス

夫 、 久 太 、 耕 ノ 七 名 カ従 フヘ キ新 旧 両 法 ノ各 第 二条 ハ新 旧共 其 ノ刑

蔵 、 英 一郎 、 丸 楠、 洋 一、 菊 次 、 正 夫、 恒 治 、 哲 二、 遼 一郎 、梅 夫 、 従 フヘ キ新 旧 両 法 ノ各 第 三条 並 被 告 人 丸 楠、 洋 一、 正 夫、 恒 治 、 梅

ノ各 第 二条 ニ夫 々該 当 シ尚 被 告 人 安蔵 、 英 一郎 、 武 二、 遼 一郎 、 孝

三 条 所 定 刑 中禁錮 刑 ヲ又 被 告 人 丸 楠、 洋 一、 正 夫 、恒 治 、 梅 夫 、 久

懲 役 刑 ヲ選 択 シ被 告 人 寿 夫 、 安蔵 ノ二 名 ニ付 テ ハ何 レ モ前 記 旧法 第

及 英 一郎 ノ九 名 ニ付 テ ハ何 レ モ前 記 旧法 第 一条 第 一項 後 段 所 定 刑 中

仍 テ被 告 人 篤 一、 二男 、 健 三 、 武 二、 孝 雄、 菊 次 、 遼 一郎 、 哲 二、

ム ヲ指 導 精 神 ト シ無産 階 級 運 動 ノ 一翼 ト ナ リ之 ト 共 通 ノ戦 略 ニ ヨ

ト 共 ニ学 生社 会 運 動 ノ 一般 方 針 ニ関 シ学 生社 会 運動 カ マルキ シズ

ナ ル新 人会 本部 ニ於 テ被 告 人後 藤 寿 夫 原 審 共同 被 告 人 清水 平 九 郎

被 告 人 衣 谷賀 真 ハ大 正 十 四年 六 月下 旬 頃 東京 市 下 谷 区 上野 桜 木 町

作 成 ヲ必 要 ト シ居 タ ル処

(証第 八七 九 号 ノ壱) 記 載 事 項 ニ付協 議 ヲ遂 ケ タ ル上之 ヲ作 成 シ

リ無 産 階 級 ノ解 放 ヲ図 ラ ムカ為 第 二 回全 国 大 会 テ ーゼ関 東 案 原 稿

太 、耕 ノ 七 名 ニ付 テ ハ何 レ モ旧法 第 二条 所 定 刑 中 禁錮 刑 ヲ選 択 シテ 夫 々其 ノ所 定 ノ刑 期 範 囲 内 ニ於 テ主 文 ノ刑 ニ処 シ本件 各 事 件 ノ第 一

同 年 七月 七 日頃 同所 ニ於 テ 日本 学 生 社会 科 学 関東 聯 合 会 代 表 委 員

審 ノ未 決 勾留 日数 ノ算 入 ニ付 テ ハ刑 法 第 二十 一条 ニ則 リ夫 々主 文掲 記 ノ如 ク之 ヲ本 刑 ニ算 入 シ尚 被 告 人 内 海 洋 一及武 藤 丸 楠 ノ両 名 ニ対

シ前 記 第 二 回全 国 大会 テ ー ゼ原 稿 ノ各 記 載 事 項 ニ亘 リ協 議 ヲ遂 ケ

会 ヲ開 催 シ タ ル際 其 ノ他 ノ者ト 共 ニ学 生 社 会 運動 ノ 一般 方 針 ニ関

回全 国 大 会 ニ提 案 スル コト ニ決 シタ ル旨 ノ賀真 ニ対 スル第壱 ノ 一

之 ヲ承 認 可 決 シ更 ニ之 ヲ同 会 ニ属 ス ル 一般 会員 ニ諮 ラ ムカ為 第 二

シ テ ハ刑 ノ執 行 ヲ猶 予 スヘ キ情 状 ア リト 認 ム ル ヲ以 テ同 法 第 二 十 五

当 院 昭和 二年 一五 七 号治 安 維 持 法 違 反 被 告事 件 ノ公 訴 事 実 中 本件 被

条 ニ則 リ主 文 掲 記 ノ期間 右 刑 ノ執 行 ヲ猶 予 スヘ キ モノ ト ス

告 人 等 ハ孰 レモ日 本帝 国 ノ国 体 及 経 済 組 織ト 相 容 レ サ ル マル キ シズ

第 壱 、 日本 学 生 社会 科 学 関 東 聯 合 会 ニ於 テ ハ予 テ ヨリ第 二 回全 国 大

種 々協 議 ヲ為 シ タリ 即 チ

度 ヲ破 壊 シ共 産 主義 社会 ヲ建 設 セ ムト 企 テ其 ノ実 行 ニ関 シ次 ノ如 ク

産 機 関 ヲ社 会 ノ共有 ニ帰 セ シメ以 テ経済 組 織 ノ根 底 タ ル私有 財 産 制

支 配 階 級 タ ル地位 ヲ獲 得 シ其 ノ独 裁 政治 ヲ施 行 スルト 共 ニ凡 ユ ル生

階 級 ニ掌 握 セ シ メ日本 帝 国 ノ根 本 組 織 ヲ変 革 シテ無 産 階 級 ノ政治 的

ス ル大 団 体 ヲ創 成 シ組 織 的 大 衆 ノ革 命 運動 ニヨリ 一切 ノ権 力 ヲ無 産

的 ニ是 等 ノ革 命思 想 ヲ普 及 シ之 ヲ指 導訓 練 シテ所 謂 無 産 大衆 ヲ抱擁

モ存 シタ ルヲ以 テ学 生社 会 運動 ノ 一般 方針 ニ関 ス ル件 其 ノ他 ノ事

案 ヲ審 議 シ得 サ リ シト 又学 校 当 局 ノ注意 ニ ヨリ撤 回 シタ ル議 案 等

第 二 回全 国 大 会 ニ於 テ ハ学 校 当 局 及警 察 官 ノ臨 席 アリ徹 底 的 ニ議

シ タ ル旨 ノ同 被 告 人 等 ニ対 ス ル第 壱 ノ 一ノ(四 ノ) 公 訴事 実

ヲ学 生社 会 運 動 ノ 一般 方針 ト為 ス ヘキ旨 ノ協 議 ヲ遂 ケ同 案 ヲ可 決

会 科 学聯 合 会 第 二回 全 国 大会 テ ー ゼ新 草 案 ( 証 第 五 号) ニ基 キ之

数 十 名 ノ出 席 者 ト共 ニ学 生 社会 運動 ノ 一般方 針 ニ関 シ日本 学 生 社

集 合 所 ニ於 テ 日本 学 生 社 会 科学 聯 合 会 第 二 回全 国 大 会 ヲ開 催 シ外

台 恒 治 、黒 川健 三、 原 田耕 等 ハ同年 七 月 十 六 日京 都 帝 国 大学 学生

ノ) ( 一( 二) ノ公 訴事 実 被 告 人 松 本篤 一、 古 賀 二 男 、武 藤 丸楠 、 黒 田久 太 、 内 海 洋 一、 蓬

ム レ ー ニ ニズ ム ノ社会 革 命 思 想 ヲ抱 懐 シ学 生及 無産 階 級 ニ対 シ組 織

会 ニ際 シ全 国的 ニ学 生 社 会 運動 ノ過去 ノ経 験 ヲ批判 シ其 ノ本 質 及

項 ヲ更 ニ徹 底 的 ニ審 議 ス ル要 ア リ タ ル ヨリ大 会 翌 日 ナ ル十 七 日 左

職 分 ヲ明 確 ニ定 メ将 来 ノ運 動 ノ 一般 方 針 ヲ統 一的 ニ確 立 シ其 ノ根 本 方 針 ニ従 ヒ学 生 社 会 運 動 ニ従事 ス ル為 第 二 回全 国 大 会 テ ー ゼノ

ニ会合 シ学生社会運動 ノ方針 ニ関 シ右是枝恭 二 ニ於 テ前記第

(甲)被告人武藤丸楠、古賀 二男、内海洋 一、黒川健三等 ハ原審 共 同被告人是枝恭 二等 ト共 ニ京都帝国 大学社会科学研究会本部

記二 ケ所 ニ分 カ レ秘密会 ヲ開 キタルカ

シ尚学 生社 会 科 学 聯 合 会 ノ教 育 方 針 ノ確 定 及教 程 ノ確 定 ニ関 シ原

前掲 第 壱 ノ 一ノ(五 ) ノ公 訴 事 実 ト同 趣 旨 ノ協 議 ヲ為 シ之 ヲ承 認可 決

社 会 運 動 ノ 一般 方 針 ニ関 シ原 審 共同 被 告 人 是枝 恭 二 ノ説 明 ニ依 リ

生社 会 科 学関 東 聯 合 会 総 会 ヲ開 催 シ約 七 八十 名 ノ会 員 出 席 シ タ ル

カ被 告 人後 藤 寿夫 、 松 本 篤 一、 衣 谷賀 真 ハ右出 席 会 員 ト共 ニ学 生

二回全国大会 テーゼ関東案 同補足案関西案及新草案 ノ関聯 ニ

審 共同 被 告 人 清 水 平 九 郎 ノ説 明 ニ依 リ学 生社 会 科 学 聯合 会 ノ教 育

ヲ要 ス ルヲ以 テ之 カ方 針 ヲ確 立 シ教 程 ヲ確 定 スル為 証第 九 八 一号

付詳細説明 ヲ為 シ ( 乙)被告人松 本篤 一、黒田久 太、蓬台恒治、原 田耕等 ハ原審共同 被 告人村 尾薩男山崎雄次等 ト共 ニ京都市聖護 院中町 ナル京都

ニ記 載 セ ルト 同 趣旨 ノ教 育 テ ー ゼ及 教程 ヲ作 成 ス ヘキ コト ヲ協 議

ハ マルク ス主 義 的 一元 教育 ヲ行 ヒ且 之 ヲ階 級 闘 争 ニ結 付 ク ル コト

帝国大学社会科学研究会合宿所 ニ会合 シ学 生社会運動 ノ方針

シ之 ヲ可 決 シ タ ル外種 々ノ事 項 ヲ協 議 シタ ル旨 ノ同被 告 人 等 ニ対

モ アリ タ ル ヨリ更 ニ翌 八 日 神戸 市 外 西 灘 村原 田成 宮 音 次 郎 方 ニ於

シタ ル モ同 総 会 ハ公 開 セ ラ レ官憲 ノ臨 席 アリ為 ニ上 程 ヲ憚 ル議 案

名 出席 シ校 内 運 動 ノ 一般 方 針 ニ関 ス ル件 其 ノ他 ノ提 案 事 項 ヲ協 議

神 戸 関 西 学院 ニ於 テ同 聯 合 会 総会 ヲ開 催 シ被 告 人 小崎 正 潔 外 数 十

第 参 、 日 本 学 生 社会 科 学 関 西 聯 合会 ニ於 テ ハ大 正十 四年 十 一月 七 日

ス ル第 壱 ノ二 ノ) (二 ノ公 訴 事 実

ニ関 シ右村尾薩男 ニ於 テ第 二回全国大会 テーゼ関東案 ヲ又同 山崎雄次 ニ於 テ同関西案 ヲ各説明 シ 以テ孰 レモ学生社会 運動 ノ 一般方針 ニ関 シ前記第 二回全国大会 テ ーゼ関東案同補足案同関西案及同新草案 ハ何 レモ其 ノ趣旨 ニ於 テ 同 一ナ ルヲ以 テ是等総 テヲ綜合 シタ ルモノヲ学生社会運動 ノ根本 方針 ト為 シ之 ニ従 ヒ運動 ニ従事 スヘキ旨協議 ヲ遂ケ尚全国的教程 (証第九号) ヲ定 メタル外種 々ノ事項 ヲ協議 シタ ル旨 ノ同被告人

テ秘密 裡 ニ同 総 会 継 続 会 ヲ開 催 シ会 員 約 三十 名出 席 シタ ルカ被 告

合 シ又同月二十日頃東京市芝区栄町 マクド ナルド教会 ニ代表委員

前記新 人会本部 ニ常任委員会 ヲ開 キ被告人後藤寿夫其 ノ他 ノ者会

一五 号 班 生 活 テ ーゼ所 掲 事 項 ニ付 何 レ モ協 議 ヲ遂 ケ各 之 ヲ関 西 聯

全 国 的 教 程 ニ基 キ其 ノ所 掲 事 項 ノ全 般 ニ亘 リ 又班 生 活 ニ関 シ証 第

針 ノ確 立 及 教 程 ノ確 定 ニ関 シ証 第 八 号 同聯 合 会 教 育 テー ゼ骨 子 及

人 小崎 正 潔 ハ他 ノ出 席 者 ト共 ニ日本 学 生 社会 科 学 聯 合会 ノ教 育 方

会 ヲ開 キ被告人後藤寿夫、松本篤 一、及其 ノ他 ノ者会合 シ其 ノ都

合 会 ニ採 用 シ其 ノ各 ノ方 針 ニ基 キ活動 ス ヘキ コト ニ決 シ タ ル旨 ノ

等 ニ対 スル第壱 ノ 一ノ(五 ノ公 )訴事実 第弐、日本学生社会科学関東聯合会 ニ於 テ ハ大正十 四年九月中旬頃

度同年第二学期中 ニ於 ケル同聯合会 ノ諸計画及同聯合会秋季総会

同 被告 人 ニ対 ス ル第 壱 ノ三 ノ(二 ノ) 公訴 事 実

第 四 、京 都 帝 国 大 学 社 会 科 学 研 究会 ニ属 スル 一部 ノ学 生 ハ無 産 階級

ニ提出 スヘキ提案等 ニ付種 々審議 ヲ為 シタル上四月二十六 日同市 芝 区三田四国 町日本労働組合評議会関東地方協議会本部 ニ日本学

解 放 ノ実 現 ヲ図 ラ ム為 学 生 社 会 運 動 ノ方 針 ニ基 キ大 正 十 四年 三 月

決 シタ ル旨 ノ 同被 告 人 ニ対 スル第 一ノ六 ノ(二 ノ) 公 訴事 実

プ ロカ ル教 程 ハ 一部 修正 ヲ加 ヘ何 レ モ更 ニ協 議 ス ヘキ コト ヲ

ト カ ルト運 動 ニ関 ス ルテー ゼ ハ右 骨 子 ニ基 キ尚 詳 細 ニ作 成 シ

被 告 人 小崎 正 潔 ハ其 ノ他 ノ者 ト共 ニ同年 同 月十 七 日同所 ニ於 テ同 研 究 会 関 西 聯合 会 委 員 会 ヲ開 キ其 ノ他 ノ者 ト会合 ノ 上山

ト 又 ハプ ロカ ル即 チ無 産 階 級 的 教 化 ヲ施 シ居 リ タ ル処 漸 次 同 運動 ( 三)

頃 以来 都 市 労 働 者 及農 民等 ノ無 産 階 級 ニ対 シ所 謂 プ ロレ ツト カ ル

ハプ ロカ ル部 ヲ廃 シ同 運動 ヲ委 員 総 会 ノ統制 ノ下 ニ置 キ委 員 総会

カ組 織 化 サ レ或 ハ同 研 究 会 ニプ ロカ ル部 ヲ設 ケ同 部 ノ事 業 ト シ或

カ ル教 程 (証 第 七九 号) ニ基 キ同 記 載事 項 ニ付 夫 々協 議 ヲ遂

崎 雄 次 ノ作 成 ニ係 ルプ ロ レツ ト カ ルト ニ関 ス ルテ ーゼ及 プ ロ

ケ幾 分 字 句 ニ関 ス ル修 正意 見 ア リ タ ル モ結 局 テ ー ゼ案 ハ之 ヲ

ノ直 接 ノ事 業 ト為 シ タ ル モ同 年 十 月 三 日大 阪 市東 区生 野 国 分 町 ナ

承認 シプ ロカ ル教 程 ニ付 テ ハ更 ニ之 ヲ協 議 ス ヘキ コト ニ決 シ

ル原 審 共 同被 告 人 原 田 耕 方 ニ日本 学 生 社 会 科 学 関西 聯 合 会 代 表委

シ新 ニ社会 部 ヲ設 ケ同 部 ニ於 テ プ ロカ ル運 動 ニ関 ス ル事 務 一切 ヲ

員 会 ヲ開 キ被 告 人 小 崎 正 潔等 会 合 シ関 西 聯 合 会 ノ組 織 ヲ 一部 改 正

タ ル旨 ノ同 被 告 人 ニ対 ス ル第 一ノ六 ノ( 三) ノ公訴 事 実

(四) 被 告 人 逸 見 重 雄 、 武 藤 丸 楠及 上 村 正 夫 ハ同 年 同 月 十 八 日 同所 ニ於 テ同 研 究 会 京都 地方 聯 合 会 社 会 部員 総 会 ヲ開 キ其 ノ他 ノ

統 制 ス ル コト ト為 ス ニ至 リ タ ル モノ ニシ テ右 プ ロカ ル運 動 カ漸 次 組 織 化 サ ル ル ニ従 ヒ同 運 動 ニ関 ス ル方 針 及 教 程 ヲ統 一ス ルノ必 要 ヲ生 シ タ ル ヨリ

ト為 シ之 ニ従 フ ヘキ コト ニ定 メ タ ル モ教 程 ニ付 テ ハ多 少 ノ異

ケ テ ーゼ ニ付 テ ハ之 ヲ承 認 シ将 来 ノプ ロ カ ル運 動 ノ 一般 方針

者 ト会 合 ノ上 前記(三ニ ) 記 載 シタ ル各事 項 ニ亘 リ種 々協 議 ヲ遂

論 ア リ シ ヨリ之 ヲ参 酌 シ適 宜 作 成 ノ上 更 ニ協 議 ス ヘキ コト ニ

ニ付 審 案 ス ル ニ被 告 人 等 カ前掲 公訴 事 実 冒 頭 ニ掲 ケ タ ルカ如 キ所謂

北 白 川 ナ ル京 都 帝 国 大 学 社会 科 学 研 究 会 本 部 ニ同 研究 会 委 員

無 産 大 衆 ヲ抱 擁 ス ル大 団 体 ヲ創 成 シ組 織 的 大 衆 ノ革 命 運動 ニ依 リ 一

決 シタ ル旨 ノ同 被 告 人等 ニ対 スル第 一ノ 六 ノ (四) ノ公 訴 事 実

ゼ及 教 程 ヲ作 成 ス ヘキ コト ニ関 シ協 議 ヲ遂 ケ原 審 共同 被 告 人

切 ノ権 力 ヲ無 産 階 級 ニ掌 握 セ シ メ日本 帝 国 ノ根 本 組織 ヲ変 革 シ テ無

会 ヲ開 キ会 合 ノ上 都 市労 働 者 及 農 民 ニ対 シ マル キ シズ ム レ ー

山 崎 雄 次 外 数 名 ヲ其 ノ作 成 委員 ニ挙 ケ タ ル旨 ノ同 被告 人 等 ニ

同 研 究 会 委 員 会 ヲ開 キ会 合 ノ上前 記 山 崎 雄 次 ノ作 成 ニ係 ルプ

確 認 スル ニ由 ナク、 又前 掲 被 告 人 衣谷 賀 真 ニ対 スル第 一ノ 一ノ) ( 一) ( 二

之 カ実 行 ノ協 議 乃至 煽 動 ヲ為 シ タ ル コト ハ全 証 拠 ヲ以 テ シテ モ之 ヲ

等 我 日本 帝 国 ノ国 体 ヲ変 革 セ ムト ス ル目 的 ヲ有 シ居 タ ル コト従 ツ テ

産 階 級 ノ政治 的 支 配 階 級 タ ル地 位 ヲ獲 得 シ其 ノ独 裁 政治 ヲ施 行 ス ル

ロ レツ ト カ ルト 運動 ニ関 スル テ ーゼ附 プ ロカ ル教 程 (証第 八

被 告 人逸 見 重 雄 ハ其 ノ他 ノ者 ト 共 ニ同 年 十 月 四 日同所 ニ於 テ

対 ス ル第 一ノ六 ノ︵一 ノ︶ 公訴事実

ニ ニズ ム ヲ指 導 精 神 ト シ テプ ロカ ル運 動 ヲ為 ス ニ就 テ ノ テ ー

(一 被 告 人 石 田英 一郎 、 鈴木 安蔵 、 熊 谷 孝 雄 、 大 田 遼 一郎 、 鷲 谷 ) 武 二 、 武藤 丸 楠 、黒 田 久 太等 ハ大 正 十 四 年 九 月 二 十 日京 都 市

( 二)

〇 号 八 一号 ) ニ基 キ同 記 載 事 項 ニ付夫 々協 議 ヲ遂 ケ プ ロ レツ

並 学生 事 件 ノ予審 記 録 中 宮 崎菊 次 、 大 田遼 一郎 、 熊 谷孝 雄 ニ対 スル各

武 二、岩 田義 道 、栗 原佑 、松 本篤 一ニ対 ス ル予審 訊問 調 書 ノ供 述 記載

事 実 ノ証拠 説 明中 ニ掲 ケ タ ル蓬 台 恒 治 、宮 崎 菊 次 、大 田遼 一郎 、鷲 谷

ノ公 訴 事 実 ハ之 ヲ確 認 ス ル ニ足 ル証 拠 ナ ク又判 示第 壱( 甲) ノ犯 罪 構成

シ居 タ ル コト 即 チ同 被 告 人 等 ニ対 ス ル前 掲 第 壱 ノ三 ノ(二 及) 第 一ノ六

又被 告 人 小 崎 正潔 、 逸 見 承 雄 カ我国 ノ私 有 財 産 制 度否 認 ノ目 的 ヲ有

行 ノ協 議 ヲ為 シ タ ル モノ ト ハ認 メ難 シ

解 スヘ ク未 タ之 ヲ以 テ我 国 ノ私有 財 産 制 度 否 認 ノ目的 ヲ 以 テ之 カ実

ノ(二 乃) 至( 四) ノ公 訴事 実 ハ之 ヲ認 ム ヘキ証拠 ニ乏 シク、 又前 掲 第 一ノ

前掲 第 一ノ六 ノ(四 ノ) 公訴 事 実 ノ協 議 ニ参 加 シタ ル コト並 被 告 人 上 村

予 審 第 二 回 訊問 調 書 中 ノ各 十 一問 答 白 谷 忠 三 ニ対 ス ル同 第 二回 訊問

正 夫 カ同 公 訴 事 実 ノ当 時 学 聯 ノ者 ト 協 力 シテ自 ラ無 産階 級 ノ教 育 ニ

ノ被 告 人等 ニ対 ス ル同公 訴 事 実 ハ之 ヲ認 メ難 シ尚 被告 人武 藤 丸 楠 カ

ル同 第 二 回 訊問 調 書 中 ノ第 十 問 答 淡徳 三郎 ニ対 スル同第 二 回訊 問 調

六 ノ) ( 一ノ協 議 ハ未 タ之 ヲ以 テ具 体 的 ノ協 議 ト認 メ難 ク従 ツ テ同 掲 記

書 中 ノ第 九 問 答 沢 田政 雄 ニ対 ス ル同第 二 回訊 問 調書 中 ノ第 二十 二問

調書 中 ノ第 十 二問 答 逸 見 重 雄 ニ対 ス ル同 第 一回訊 問 調 書 中 ノ第 十 三

答 中 関 西 学 聯 ニ於 テ ハ大 正 十 四 年 七月 頃 又 ハ主 ト シテ九 月頃 以後 ニ

スル第 一ノ六 ノ(四 ノ) 公訴 事 実 ハ結 局 之 ヲ認 ム ル ニ足 ル証 拠 ナ シ

従事 ス ル意 志 ヲ以 テ同協 議 ニ参 加 シ タ ル コト従 ツ テ同被 告 人 等 ニ対

問 答 古 賀 二 男 ニ対 スル同 第 一回 訊問 調書 中 ノ第 十 二問 答 泉 隆 ニ対 ス

至 リ初 メ テ マルキ シズ ム 殊 ニレ ー ニ ニズ ム ヲ学 聯 ノ研 究 普 及 ノ対 照

カ本 件 公 訴 事 実 ノ第 一ノ 一ノ(四 及) (五 ノ) 当 時 我 国 ノ私 有財 産 制 度 ヲ否

判 示 第 壱 ノ犯 罪 事 実 ノ 一部 ト シテ公 判 ニ付 セ ラ レタ ル モノ ト認 ムヘ

見 重 雄 、 小崎 正潔 ノ三 名 ヲ除 ク以 外 ノ各被 告人 ニ対 スル部 分 ハ結 局

十 二条 後 段 ニ則 リ無 罪 ノ言 渡 ヲ為 ス ヘキト コ ロ被 告 人 衣 谷賀 真 、 逸

ト ス ル ニ至 リタ ル旨 ノ供 述 記 載 等 ニ依 レ ハ被 告 人 松本 篤 一、 古 賀 二

認 ス ル目 的 ヲ以 テ之 カ実 行 ニ関 シ協議 ヲ為 シ タ ルモ ノト ハ認 メ難 シ

キ ヲ以 テ此 ノ部 分 ニ付特 ニ無 罪 ノ言 渡 ヲ為 サ ス

ハ総 テ其 ノ犯 罪 ノ証 明十 分 ナ ラ サ ル モ ノト認 メ刑 事 訴 訟法 第 三百 六

然 リ而 シ テ被 告 人後 藤 寿 夫 、 松 本 篤 一及 衣谷 賀 真 ニ対 ス ル前 掲 第 一

仍 テ主 文 ノ如 ク判 決 ヲ為 ス

以 上述ヘ タ ルト コ ロ ニ依 リ本 件 被 告 人 ニ対 ス ル前掲 公訴 事 実 ノ部 分

ノ 二 ノ(二 ノ) 公 訴事 実 ニ付 テ ハ同 日 ニ於 ケ ル会 合 ノ性質 カ判 示 日本 学

本 件控 訴中 共 産 党 事 件 ノ各 被 告 人 ノ控 訴 ハ何 レ モ結 局 理由 ア リ

男 、武 藤 丸 楠 、黒 田久 太 、内海 洋 一、蓬 台恒 治 、 黒 川 健 三、 原 田耕 等

レタ ル 一地 方 聯合 会 ナ ル関 東 聯 合 会 ノ秋 季 総 会 ニ過 キサ ル点 並 公 訴

昭 和 四年 十 二 月 十 二 日

生 社 会 科 学 聯 合会 ノ全 国 的 最 高 決 議機 関 タ ル第 二回 大 会 以後 ニ開 カ

事 実 中 ノ第 一ノ 一ノ(及 四( )五 ノ) 両 日 ニ於 テ決 議 セ ラ レタ ル協 議 事 項 ト 右 公 訴 第 一ノ二 ノ) ( 二ノ 日 ニ提 案 決 議 セ ラ レタ リト ス ル決 議 事 項 ト カ

斎

松

藤

本

悠

堅

輔

吾

前 沢 幸 次 郎

判 事 

裁 判 長 判事 

大 阪控 訴 院 第 一刑 事 部

実( 学 生 事 件 ノ 証 人斎 藤 卯 一ニ対 ス ル予審 訊 問 調書 ノ供 述 記 載 参 照 )

判 事 

殆 ント同 一ナ ル点及 同 会 カ公 開 セ ラ レ警 察 官 吏 ノ臨席 シ居 リ タ ル事

等 ヲ綜 合 考覈 ス ルト キ ハ前 記 第 二 回大 会 ノ報告 会 ニ過 キ サ ル モノト

◇ ⋮社 会 は 批 評 に よ つ て進 歩 す ると 云 ふ が実 は 批 評的 実 行 によ つ

の実 行 的 努 力 だ か ら と い ふ わけ で いけ な い と は言 へな い

を よ り良 く す る理想 の下 に労 働 教 育 を計 画 す る こと も、 そ れ が学 生

運動 、 或 は 貧 民救 済 、 或 は政 治 的 啓 蒙 いづ れも 可 であ る、 社 会 組織

る こと あ ると も むし ろ 自 然 の事 柄 であ る、 或 は禁 酒 運動 、 或 は廃 娼

い、 そ れ故純 真 で勤 勉 で若 い学 生 等 が 理想 に燃 え て実行 方 面 に携 は

中 は研 究 、卒 業 後 は実 行 と 云 ふ風 に使 ひ わ け る こと は余 程 む づ か し

研 究 と信 念 と実 行 と は本 来 切 り離 す こと の困 難 な も ので、 殊 に在 学

す る も のと も 云 へな い、 学 問 は遊 戯 でも な く銭 勘 定 で もな い のだ、

三 五  学 連 事 件 へ の 感 想 (一 九二六)

a  学 問 は 遊 戯 で は な い 研 究 と 信念 と実 行 とを

経 済 学部 教 授  矢 内 原 忠 雄

切 り離 す こと は 困難 だ

◇ ⋮ 三十 余 人 も の若 い学 生 が、 如 何 な る悪 党 か は知 ら な いが、 一 網 打 尽 せ ら れ て 一月 から 九 月 ま で も の長 い間未 決 監 に つな が れ て居 た と いふ こと だけ でも 、 私 は気 の毒 で仕 様 が な い、 何 よ り も 先 き の

て進 む のだ 、 旧 き革 嚢 を い つ迄 も 維 持 せ ん とす る程 の社 会 に対 す る

には、 社 会 組 織 の現 状 に対 す る批 評 及 批評 的 実 行 に対 す る政 府 の取

暴行 は な い、 そ れ故 に苟 く も社 会 が進歩 し そ の発 展 が 円滑 た る為 め

感 想 は 之 であ る ◇ ⋮ 学 生 は種 々の講 義 種 々 の学 説 を種 々 の教 授 か ら学 ぶが、 そ の

はな るか も知 れぬ が正 し い こと で は な い、 殊 に帝 国 大学 は 私的 利 益

◇ ⋮ 特 定 の学 説 傾 向 を 有 す る教 授 を処 分 すべ し と い ふは 、嚇 かし に

は あ るま い

確 定 す る ま で は、 大学 と し て退 学 停 学等 何等 処 分 を 加 ふ べ き筋 合 で

◇ ⋮学 生 が裁 判 に附 せ ら れた と て公判 終 了 し て犯 罪 人 た る こと が

締 は能 ふ限 り弾 力性 を有 せ ねば な らな い

中 あ る科 目 あ る学 説 、 あ る教授 に特 別 の興味 を も つこと は寧 ろ自 然 で あ る、特 にあ る学 説 に興味 を感 じ主 力 を 注 いで 之 を研 究 す れ ば と て ﹃研 究 の範 囲﹄ を脱 し た るも の等 と言 は るべ き でな い ◇ ⋮学 問 研 究 に際 し あ る真 理 に近 づ けば 必 然 に研究 者 の思 想 及感

る や否 や は人 々 の性 格 及 判 断 によ るが、 人 々の心 を動 か し て実 行 に

情 に迫 ま つ て実行 的 努 力 に向 は し め る、 之 を 如 何 に コ ント ロー ルす

傾 か し む る だ け の力 が な い も のは 真 の学 問 でも な く、 又学 問 を 研 究

る か ら、 国 民 及 教 授 の本 分 に反 せざ る以 上能 ふ限 り各 種 の学 説 傾 向

に拠 り て設 立維 持 せら れ て居 る も の では な く、 国 民 の公 の大学 で あ

でな いかを 憂 へる

喜 ぶ、 し かし 、 学 生 は血 気 だ、 私 は そ の研究 の態 度 が或 は小 児病 的

であ る、 私 は学 生 の社会 科 学 的 熱 意 が 今特 に盛 大 と な つて来 た のを

◇ 小 児病 的 な 学 生 は、 研 究 に つき 時 に誤 り を侵 さな いと は限 ら な い

の学 者 を包 含 す る こと が、 学 問 研 究 上 は 勿論 、 国 民 の発展 に貢献 す

る、 し かし それ を 侵 し た と き、 長 者 の態 度 は そ の誤 り を救 ふ る こと

そ れ は情 熱 に富 み而 も世 故 にた け て ゐな いも の に免 れ難 い失 策 であ

る所 以 であ らう ◇ ⋮総 長 が進 退 伺 を出 さ ねば なら ぬな ら、 文 部 大 臣 も出 さ ねば な

意 気 を失 はし め ては な ら な い、 何 と な れ ば童 気 の圧 せ ら れ た青 年 の

によ つて匡 す にあ つ てほ し い、 そ れを 威 嚇 す る こと に よ つて彼 等 の

るま い、 総理大 臣 はど う か、 思 想 の監 督 取締 若 くは 善 導 は こんな 方

◇ ⋮ 私 は 事件 の内 容 を 詳 か に し な い から具 体 的 に此 事件 に就 て の

法 では 出 来 る も ので はな い

衰 へさせ ては な らな い、 第 二 に は無 用 の疑 惑 を た ゞよ わ せ て学 内 の

第 一には か ゝる事 件 のた め に誤 つた処 置 によ つて学 生 攻 学 の意 気 を

旦起 つた 以 上、 そ の結果 に つい て は矢 張 左 の希 望 を かけ た い、 即 ち

国 は 却 つて危 険 で あ るか ら だ

衛

批 評 は 何 も いふ こと は出 来 な い、 た ゞ 一般的 抽 象 的 な 感 想 を述 べた

兵

◇ 私 は今 回 の事 件 に つ い て何事 も知 らな い、 し かし こ の不祥 事 が 一

内

ま でゞある

経 済 学 部 教授  大

官 憲 に対 し て争 ふ べき を 争 つ て ゐら れ る こと ゝ信 ず る

b  冷 静 な る 自 由

◇ 私 は 社 会 人 と し て の学 生 が、 社会 に対 し て少 し でも ヨ リ多 く関 心

学 生 の冷 静 を少 し でも 害 し ては な ら な い、 こ のため 学 校 の当 局者 は

的 であ る こと を希 望 す る、 伝 統 そ の ま ゝを晏 如 とし て受 け 容 れ てゐ

又吾 々は た と へ学 生と雖 も 日 本 臣 民 と し て 一定 の社 会 的 政 治 的 自由

◇ 吾 々は 一般 の原 則 と し て攻 学 の自 由 を有 し て ゐると 信 じ て ゐる、

を有 し て ゐ る こと を疑 は ぬ、 若 し 今 回 の事 件 が この研 究 と 行 動 と の

る学 生 ほど た のも し くな い青 年 は な い と思 ふ、 社会 改 善 の意 図 を有

わ る人 々は、今 後 進 ん で充 分 の親 切 を 以 て学 生 にそ の不 自 由 の範 囲

せず し て社 会 の学 を為 す 者 は、 畢竟 デ イ レ ツ タ ント だ

を 明 示す る の労 を採 る べ きだ と 思 ふ、 学 生 は皆 法律 家 で あ る はず は

あ る な らば 、 (た と へ法 律 の適 用 に つ いてゞ も )私 は教 育 に た づ さ

て これ に対 し な け れば 成 就 す るも の ではな いと 思 ふ、 故 に私 は学 問

な い、 法 の制 限 す る範 囲 を知 らず し て法 に触 れ る のは最 も悲 し む べ

自 由 の範 囲 に つ い て多 少 と も 不 明 の点 あ る こと を思 はし む るも のが

上 に お け る セ ン チメ ンタ リズ ムを排 し 又 みだ り に学 問 内 に いろ いろ

き こと で あ る、 こと に 悪法 ほ ど さう 云 ふ危険 を伴 ふ、 そ れ を直 ち に

◇ 然 し 意 図 が 壮 ん で あ ると 云 ふ こと ゝ事 物 に対 す る認 識 の態 度 が 冷

の 理想 を もち こむ こと を排 斥 す る

静 であ る こと ゝは全 く別 問 題 であ る、 私 は学 問 は氷 の如 き 冷 静 を 以

◇学 生 は学 徒 の内 最 も若 き学 徒 であ る、現 代 は社 会 思想 混乱 の時 代

学 が これ の研 究 を 拒否 す るな ら ば そ れ は ほ ゞ自 己 否 定 であ る、 何 の

容 の複 雑 な も の であ る、 い やし く も 社会 を学 問 の対象 と す る文 化 科

主 義 は何 人 にも カ テゴ リ ツ シユ に定義 す る こと を許 さ ぬ ほ ど思 想 内

◇ 世 界 に社 会 主 義 が これ ほ ど勢 力 を 得 て ゐる時 代 であ る、 そ の社 会

ば ならぬ

網 す る は法 的 に正 当 で あ つても 、 教育 的 に不 適 当 な こと だと 云 はね

の が、 私 の社 会 に対 し 、 ま た 子供 に対 す る責任 で あ ると 考 へて居 り

も し これ が許 さ る るな ら ば 、 こ の目 的 のた め に最 善 の努 力 を試 み る

得 るな ら ば、 せめ て学 校 だ け は無 事 に卒 業 さ し ても ら ひた い の です 。

な れ ば 、 これ は実 に忍 び難 い苦 痛 であ りま す。 そ こで この際 、出 来

め に踏 み はず し、 遂 に天 下 浮浪 の徒 の仲 間 いり を さす やう な こと に

と し ては、 これ ま で大 過 な く踏 み来 つた 学 生 生 活 を、 この 一事 のた

哲

み であ り ま す﹂

山

ま す 。今 は、 大 学 当 局 の明察 を信 じ て、 そ の理解 あ る処 罰 を待 つの

片

予審 決 定書 も 記 録 も 見 な い の でな ん と も い へな い が吾 々弁護 人 とし

弁 護  士

研 究 を も為 さず し て、 警 察 用 語 的 概念 を 以 て真 正 の学 問 的 研 究 を圧

基

d  治 安 法 の 適 用 は 不 当

迫 す るも のあ ら ば、 そ れ こ そ危 険 思想 であ る、 それ は大 学 と 国 家 と

原

を 危 く す るも ので あ る、 故 に学徒 は自 由 を要 求 す ると同 時 に相 互 に

三 高 教 授  栗

相 戒 め て学 的 冷静 を保 つ に努 力 せ ねば な ら ぬ

c  子 の 将 来 を 思 ふ

法 の趣 旨 はど う であ つた か ?︱

こ の二 つの題 目 の下 に この事 件 に

今 回 の事 件 に関 し 父 兄代 表 と し て種 々折 衝 し て居 る栗 原佑 氏 の厳

対 し た いと 思 ひます が本 件 は学 生 運 動 に関 聯 し た も の でも あ り、 学

て は第 一研 究 の自 由 、 第 二治 安 維 持 法適 用 の不 当 な る こと、 特 に立

父栗 原 三高 教 授 は語 る

そ の意 味 にお い てあ る ひ は専 門的 に わ た る こと に つ い ては経 済 学 専

然 し 討 論 の場 合 と違 つて、 結 論 は どう で も よ いと いふ ので はな く 吾

意 見 を のべ て

問 研 究 の自 由 を 尊 重 す る学 者 的態 度 を あ く ま で失 は な い様 にし た い

も ら ふ こと が 必要 だ らう と 思 ひ ま す。

攻 の教 授 あ るひ は刑 事 学 専 攻 学者 の立場 か らそ れ〓

﹁ 私 は子 供 と 一緒 に起 臥 し て を りな がら 、 不注 意 にも 、 つひ こう

次第 と思 つて をり ま す。 殊 に教 職 の末 席 を け が し て居 る者 と し て、

いふ風 に世 間 を騒 がす こと を仕 で か さし め た こと を、 誠 に相 済 ま ぬ

自 責 の念 に堪 へな い のです 。 が、 父 兄 の 一人 とし て、 子供 達 の動 機

々弁 護 人 の職務 は この事 件 にお いて被 告 を 有 利 に 導 く こと にあ る の

◇

し社 会 も こ れだ け は認 め て頂 き た いと願 つて居 ま す。 併 し万 一本 人

です か ら色 々な方 面 から考 へ慎 重 な態 度 を も つ て我国 刑 事 問 題 上初

が あ くま で純 真 で終 始 し てを つた こと だ け は、 ど こま でも信 じ た い

しく こ れ に服 す る のが当 然 であ ると覚 悟 は し て居 ま す。 だ が親 の情

達 の行 動 が、 国法 に抵 触 し て居 る こと が 明 か にな つた暁 に は、 男 ら

め て の こ の事 件 を扱 ひた いと 思 ひ ま す。 聞 く 所 によ れ ば被 告 学 生 の

の見 解 も 悉 く 此 の研 究 の範 囲 内 に網 羅 せ ら る べき 筈 であ る。 而 し て

種 社 会 運 動 の実 行 を 意 味 す る訳 では尚 更 らな い。 そ れ は社 会 を 研究

正 し き 意 味 に於 け る社 会 科 学 の研 究 は、 思 想 界 混 乱 の甚 し き今 日、

対 照 と す る科 学 的 研 究 であ つて、 マルク シズ ム の反 対論 も其 他 種 々

社 会 問 題 を 批判 的 に考 察 せ ん が為 には何 人 も 踵 む べ き準 備 過 程 な り

日 公判 にな り事 実 関 係 が明 白 にな つた時 、 学 生 の真 意 が明 にな つ て 世間 の騒 ぐ様 な そ んな も の では な い こと がわ か る でせう 。 そし て輿

態 度 は極 め て純 真 で あ り真 面 目 であ つたと い ふ こと であ る から 、 他

論 も 又学 生 の立場 を了 と す る でせう 。 知 らず し て想 像 を た くま し う

と も云 へる。 然 る に偶 々社 会 研 究学 徒 の 一部 が国 法 に触 れ た る の故

ば 、 これ恰 も 医 学研 究 生 の或 者 が誤 つて投 薬 した る の故 を 以 て医 学

を 以 て、 学 生 の社会 科 学 研 究 を 悉 く 阻 止 せ んと す る が如 き こと あら

す る のは よろ し く な いと 思 ひま す

の研究 自 体 を 禁 ぜ ん とす る に類 す るも のな りと 評 す る こと が出 来 よ

◇ 私 の希望 とし ては こん ど の事 件 に関 し ては学 校 も積 極 的 に研究 の自

う。

ら し め ん こと で あ る。 医学 と 医術 と は 如何 に密 接 な る関 係 あ り と は

ら し め て在 来 の如 く 一派 の社 会 学 説 の研究 のみ に偏 す る如 き弊 無 か

研 究 の領 域 を 確 守 さ れ ん こと であ る。 又社 会 科 学 研 究 の基 礎 を広 か

之 と同 時 に私 が学 生 諸君 に注 意 を 請 ひ度 き は諸君 が飽 迄、 学 術 的

由 を擁 護 し ても ら は ね ばな ら ぬ。 最 後 に治 安 維 持 法 の趣 旨 から い へ

須皓

ば これ を本 件 に適 用 す る こと は断 じ て不当 であ る こと は法 律 的 に も い へると私 は考 へま す 。 ( 談)

農 学 部教 授  那

e  学 生 検 挙 事 件 と 社 会 科 学 の 研 究

る が、 学 生 の社 会 運 動 迄 を そ の性 質 の如 何 を問 はず 学 術 的 研 究 の名

危 険 千 万 な こと はな い。大 学 は学 術 的 研 究 の自 由 を確 保 す べき であ

云 へ、 研 究 中 途 にし て未 経 験 な る医 学 生 が勝 手 に診 察 投 薬 す るほ ど 今 回 の学 生 検 挙 事 件 に就 ては深 く之 を遺 憾 とす る が、 予 審 調書 の

と を 益 々感 ぜし め る。

今 回 の事 件 は私 に 正 し き意 味 に於 け る社会 科学 研 究 の必 要 な る こ

唯 物的 弁 証法 の信 者 に は特 に留意 し ても ら ひた い。

の下 に悉 く保 障 す る訳 には ゆ か な い。 此 の点 は思 想 即 実 行 と考 ふ る

発 表 せ ら れざ る今 日其 の内 容 に就 い て充 分精 確 な る知 識 を 有 せ ざ る

唯 憂 ふ る所 は今 回 の事 件 が動 機 と なり て、 学 生 の社 会 科 学 研究 が

私 は 兎 角 の意 見 を 述 ぶ る こと を差 控 へた い。

の研 究 は勿 論 マル ク シズ ム の研 究 の みを意 味 す る訳 では な く、 又或

不 当 に不利 な る地位 に置 か る ゝ に至 ら ん こと こ れ であ る。 社会 科 学

○

理

由

三 六  治 安 維 持 法 違 反 被 告 事 件 ・大 審 院 判 決 (一 九二九︲一 九三四)

a  ﹁国 体 ノ 意 義 及 国 体 ノ変 革 ﹂ ニ関 ス ル モ ノ

)

各被 告弁 護 人 神 道 寛 次 中 村高 一上村 進 布 施 辰治 上告 趣 意 書 第 三 点原

判 決 ハ其 ノ 理由 中 ﹁革 命 的 手段 ニ ヨリ政 治 上 我大 日本 帝 国 ノ大 本 タ

会 ヲ実 現 セ ント スル同 党根 本 ノ目 的 ノ下 ニ其 ノ政 綱 組 織 ヲ新 ニシ先

道 寛 次  村 高 一  ル君 主 国体 ヲ変 革 シ無 産 階 級独 裁 ノ政 府 ヲ樹 立 シ依 テ経 済 上 私 有財 村 進  産 制度 ヲ否 認 シ凡 ユル生 産機 関 ヲ社 会 ノ共 有 ト ス ル所 謂 共 産 主 義 社 施 辰 治

昭 和 四 年 (れ)第 三 八 九 号棄却 一 治 安維持法違反被告事件 (同 年五月三十 一日第 四刑事部判決

神 中 上 布

ツ当 面 ノ ス ロー ガ ン (政 綱) ト シテ云 々﹂ ト判 示 シタ リ按 スル ニ国

体 ト ハ何 ソ ヤ国 体 ノ意 義 ニ関 シテ ハ法 律 学 者 中非 常 ナ ル異 論 ア リ法

領 制 ノ国 ハ民 主国 体 ニシ テ ﹁ 政 体 ト ハ政 治 ノ方 法 ノ如 何即 チ専 制 カ

民 ニ在 ス ルカ ヲ 云 フ﹂ 而 シ テ君 主 ノ所 在 スル国 ハ当然 君主 国 体 大統

( 第二審) 札幌控訴院

山 名 正 実  松 岡 二 十 世  (上告 人) 被告人︷ 荒 量 太 郎  弁護人︷ 吉 田 吉 之 助  伏 見 武 夫

○ 判 示事項

(第 一審) 旭川地方裁判所

律 学者 中 国 体 ノ意 義 ニ関 シ (1) 穂 積 八 束 上 杉 慎 吉 ノ諸 氏 ハ国 体 ト

我帝国 ハ万世 一系 ノ天皇君臨 シ統治権 ヲ総攬 シ給 フ コトヲ以テ其

立 憲 カ ヲ云 フ﹂ 従 テ我 日本 ハ君 主制 ヲ国 体 ト シ立憲 ヲ政体 ト ス而 シ

政 体 ト ヲ 区別 シ ﹁国 体 ト ハ主権 ノ所 在 即 チ主権 カ 君主 ニ在 スル カ人

ノ国体ト為 シ治安維持法 ニ所謂国体 ノ意義亦此ノ如 ク解 ス ヘキモ

○ 判 決要旨

治安維持 法 ニ所謂国体ノ意義

ノト ス

テ政 体 ハ幾 度 カ変 革 ヲ経 タ レ共 国 体 ハ何 等 ノ変 革 ナ シト説 明 シ タリ

風 俗 習 慣道 徳 ノ謂 ニ非 サ ル如 シト雖 個 性 カ個人 即 チ自 然 人 ナ ラサ ル

目 ノ下 ニ ﹁日本 民 族 ノ個 有 ナ ル理想 信 念 ﹂︱

限 リ環 境 生 ヒ立 チ天 性 修養 ト云 ヘ共 要 スル ニ風 俗 習慣道 徳 ノ範 疇 ヲ

本 国 体 ﹂ ナリ ト主 張 セ リ又 更 ニ海 軍 中 将 男 爵 梨 羽 時起 氏 謹述 ニカ カ

然 レ共此 ノ見解 ノ誤 レ ル コト ハ幾 多 ノ実 例 ニ依 リテ 証 明 スル コト ヲ

ニ依 レ ハ ﹁主権 ハ人 民 テ在 リ﹂ ト 明確 ニ規 定 セ ラ レ タリ若 シ主 権 ノ

ハル ﹁教 育 勅 語 ノ義 解 ﹂ 二十 一頁 ニ ハ ﹁世 界 各 国 ソ ノ国 家 カ ア レ ハ

脱 スル モノ ニ非 ス氏 モ亦 ｢古 典 ヲ透 シ テ見 タ ル日 本 ノ個 性 ﹂ ナ ル題

所 在 ヲ以 テ国 体 ノ如 何 ヲ決 定 セ ント 欲 ス ルナ ラ ハ ﹁ベルギ ー｣ 国 ハ

其 ノ歴 史 カ ア ル其 ノ歴 史 カ ア レ ハ其 ノ国 体 ア リ﹂ ト 断 定 シタ リ氏 ニ

レ ハ其 ノ国 体 ハ当 然 君 主 制 ト云 ハサ ル ヘカ ラ ス然 ル ニベ ルギ ー憲法

正 シ ク君 主 ア ル民 主制 ナ リ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス又 英 国 ノ如 キ君 主 ハ

得 ヘシ例 ヘ ハベ ルギー 国 ノ如 キ ハ君主 ア リ然 モ世 襲 ナ ル事 実 ヨリ見

厳 ト シテ在 スル モ ﹁主 権 ハ議 会 ニ在 リ﹂ ト ノ伝 統 法 ヲ有 ス然 ラ ハ英

ナ ル コト明 瞭 ナ リ氏 ハ国 体 ノ字 解 ニ於 テ ﹁国 体 ト ハ国 家 ノ体 テ 即 チ

依 レ ハ ﹁国 体 ハ歴史 ニ依 ル モノ ニシ テ伝 統 的 風 俗 習 慣 道 徳 ﹂ ノ 謂

｢ 国 民 的 道 徳 ﹂カ ﹁日

国 モ亦 君主 制 ノ国 体 ニ非 スト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス伊 太利 ニ於 テ ハ主権

国 家 ノ精 神 的 要 素 ト ナ ル ヘキ性 格 ヲ云 フ﹂ ト述 ヘタ リ 以上 ハ唯 一例

ハ形 式 的 ニ ハ君 主 ニ存 ス レ共実 権 ハ ﹁フア シ スト ﹂専 制 ナ ル コト 万 人 ノ認 ム ル処 ナ リ斯 ノ如 キ場合 之 モ君主 国 体 ト 称 シ得 ヘキ ヤ疑 ナキ

説﹂ ﹁ 同 一民族 説 ﹂ ﹁ 弥 栄 説 ﹂ 等 ヲ生 ム ニ至 リ之 レ ヲ以 テ日本 ノ国 体

ニ過 キサ ル モ斯 ク ノ如 ク ニ幾多 諸 家 説 ヲ ナ シ其 ノ結 果 此 ノ ﹁国 体 ﹂

其 ノ モ ノ ナ リト ノ結 論 ニ到 達 シ ツツ ア リ而 シ テ今 日 一般 ノ通 説 乃 至

ヲ抽 象 化 シ宗 教 化 セ ント 努 力 シ斯 ク テ ﹁君 民 一体 説 ﹂｢一大 家 族

政 体 以 外 ノ観 念 ヲ作 リ出 ス必 要 ナ シト称 ス随 テ美 濃 部 氏 ニ依 レ ハ国

ノ 区別 ヲ認 メ ス総 テ之 レ政 治 形 態 ヲ表 現 セ ント ス ル モノ ナ ルカ故 ニ

体 ナ ル観 念 ハ憲 法 学 行 政 学 其 他 ノ 一切 ノ法 律 学 ノ範 囲 外 ニ存 ス ル コ

ナ リ ト ノ断 定 ニ立 脚 ス ル コト ヲ見 ル ヘシ随 テ右 諸 説 ノ所謂 国 家 ノ個

信 念 ト ナ ル ニ至 レ ル右 諸 説 カ究 極 ス ル処 ｢国 体 ﹂ ト ハ風 俗 習 慣 道 徳

能 ハ ス (2) 美 濃 部 達 吉 氏 ハ之 レ等 上叙 ノ見 解 ニ反 シ国体 ト政 体 ト

ト ト ナ ル ヘシ今 日 ノ既 存 法 律 学説 ト シテ此 ノ見 解 ノ正 当 ナ ル コト論

性 又 ハ性 格 ハ所 謂 ｢主 権 ノ所在 ﹂ ヲ指 称 ス ル ニ非 サ ル コト モ亦明 瞭

ヲ俟 タ ス (3) 更 ニ国 体 ノ本 質 意 義 ヲ決 定 ス ヘキ最 大 唯 一ノ権威 ア リ教 育 勅 語 之 レナ リ即 チ ﹁我 カ臣 民 克 ク忠 ニ克 ク孝 ニ億 兆 心 ヲ 一ニ

﹁政治 問 題 ﹂ ニ非 ス シテ自 然 乃至 必 然 ノ問 題 ナ レ ハナ リ然 ラ ハ国 体

ノ変 革 ト ハ如 何 国 体 ノ意 義 ニ関 シテ上 叙 ノ如 キ国 家 ノ個 性乃 至性 格

ナ リ何 ト ナ レ ハ ｢主権 ノ所 在 ｣ ハ政 治問 題 ナ ル モ 個 性 乃 至 性 格 ハ

又 ハ伝統 的 風 俗 習 慣 道 徳 ナ ル以 上 ソ ノ変 革 ト ハ果 シテ何 カ 二荒伯 ハ

シテ世 々厥 ノ美 ヲ済 セ ル ハ此 レ我 カ国 体 ノ精 華 ニ シテ教 育 ノ淵源 亦

ノ 余 地 ナ シ之 レ ニ拠 テ之 レ ヲ見 レ ハ何 人 モ ﹁国 体 ト ハ伝 統 的 風 俗 習

実 ニ此 ニ存 ス﹂ ト 宣 ヘリ之 レ実 ニ国 体 ノ意 義 ヲ究 明 シ尽 シ得 テ疑 問

慣 道 徳 ノ謂 ナ リ﹂ ト的 確 ニ答 フ ル コト ヲ得 ヘシ果 セ ル哉 伯 爵 二荒 芳

ハソノ個 性 ニ従 テ敢 然 ト 其 ノ行 フ ヘキ所 ニ赴 キタ ル ニ過 キ ス﹂ ト述

上 叙 著書 八十 一頁 ニ於 テ ロシ ヤノ現 今 ノ如 キ支 那 カ現 今 ノ如 キ彼 等

即 チ内 在 的 法 則 ニ依 ル

家 ノ個性 ナ リ﹂ ト 説 明 シ更 ニ其 ノ国 家 ノ個性 ハ⋮ ⋮個 人 ノ個 性 ト 同

ヘタリ 以 テ 一革 命 ハ国 体 ノ自 然 ノ必然 的 ︱

徳 氏 ハ其 ノ著 ﹁新 日本 ノ 自 主的 建 設 ﹂ 四十 二 頁 ニ ﹁国 体 ト ハ其 ノ国

シ ク環 境 生 ヒ立 チ天性 修 養 ニヨ ツテ定 マル﹂ ト 述 ヘタリ 一見伝 統 的

政 治 的 変 革 ハ国 体 ソ ノ モ ノト ハ無 関 係 ニ存 在 シ得 ル カ故 ナリ随 テ国

モノ ニ非 ス我 カ国 体 ハ終 始 一貫 ト称 ス ル モ之 レ ハ勿論 ノ コト ニ シテ

乃 至性 格 ハ或 ハ発 展 シ或 ハ萎 縮 ス ル コト ア ル モ変 革 サ ル ヘキ性 質 ノ

ヘシ何 ト ナ レ ハ国 家 ノ個性 乃 至性 格 ノ変 革 ナ ル観 念 ハ存 在 セ ス個 性

命 ニ非 サ ル コト明 瞭 ナ リ否 国 体 ノ変 革 ト称 スル事 実 ハ生起 シ得 サ ル

自 然 ニ存 在 ス ル自 己 発 展 ノ意 ナリ随 テ ｢国 体 ノ変 革 ｣ ト ハ政 治 的 革

帰結︱

ク其 ノ本 質 内 容 ノ 全 ク別 ニ シテ政 治 行動 ヲ目的 ト スル共産 党 結 社 処

治 安 維 持 法 ノ法 条 ニ規 定 シタ ル ﹁国 体 ノ変 革 ﹂ ナ ル字句 ハ上叙 ノ如

結 社 即 チ政 治 結 社 ニ向 テ適 用 サ ル ヘク制 定 サ レタ ル所 以 ナリ然 ル ニ

タ メ ノ モノ ナ ル コト疑 ナ シ随 テ治 安 維持 法 カ政 治 行 動 ヲ目的 ト スル

判 例 ノ示 スト コロ ニシテ治 安 維 持 法 モ又 コノ同 一法 益 ヲ擁 護 セ ンカ

ノ紊 乱 ト ハ現 在 ノ政 治 形 態 ノ維 持 保 存 ヲ侵 害 ス ル﹂ ノ謂 ナ ル ハ幾 多

条 ニ依 テ処 断 シ得 サ ルノ ミ然 ラ ハ其 ノ法 益 ﹁朝 憲 ﹂ ト ハ何 カ ﹁朝 憲

ト明 ナ リ共 産党 結 社 ニ ハ唯 暴 動 ナ ル要素 存 セサ ル カ故 ニ内 乱 罪 ノ法

ノ側 ヨリ見 レ ハ共産 党 結 社 ハ結 局 此 ノ同 一 ﹁法 益 ﹂ ヲ目標 ト スル コ

結果 ナ ル コト ヲ結 論 セリ国 体 ノ方 面 ヨリ観 レ ハ即 チ革 命 ハ

体 ノ変 革 ナ ル事 実 ハ政 治 的 結 社 ノ 目的 ト ナ ス コト 不 能 ナ ル モノ ナ リ

ス ル コト能 ハサ ル モノ ニ シテ就 中 原 判決 表 示 ノ如 キ ﹁政 治 上⋮⋮ 変

断 ニ ハ全 然 無 関 係 ナ ルノ結 果 ヲ見 ル モノ ナリ之 レ ヲ要 ス ル ニ原 判 決

革 ﹂ ス ルカ如 キ コト ハ全 然 事 実 ノ認 識 ト其 ノ判 断 ヲ誤 レ ル モノ ナ リ

ト シ テ自 働的 ( 内 在 的 法 則 ニ随 ヒ自 然 発 生的 ニ) ニ発 展 転 化 ス ル モ

仮 ニ百 歩 ヲ譲 ル モ国 体 ノ変 革 ト ハ経 済及 政 治 ノ変 革 ニ伴 ヒ ソノ結 果

罪 ﹂ ノ規 定 アリ ﹁内 乱 罪 ノ本 体 ヲ ﹁政府 ヲ顛 覆 シ又 ハ邦 土 ヲ僣竊 シ

何 ト ナ レ ハ原 判 決 ノ謂 フ カ如 ク ン ハ政 治 上 ノ革 命 乃 至 変革 ア ル毎 ニ

ヲ変 革 ﹂ ス ル コト ハ上叙 国 体 其 ノ モ ノ ノ本 質 上 国 体 ハ人為 的 ニ変 革

其 ノ他 朝 憲 ヲ紊 乱 ス ル コト ヲ目的 ト シテ暴 動 ヲ 為 シ タ ル モ ノ ハ云

国体 ノ変 革 ヲ見 ル ノ不合 理 ヲ生 ス ヘシ原始 共産 制 ヨリ奴 隷 制 度 (王

ノ所 謂 ｢革 命 的 手段 ニヨリ政 治 上 我 大 日本 帝 国 ノ大 本 タ ル君主 国 体

々﹂ ニシ テ此 ノ政府 ヲ顛 覆 シ又 ハ邦 土 ヲ僣竊 シ其 ノ他朝 憲 ヲ紊乱 ス

ノ ト解 ス ヘキ ナリ尚 治 安 維 持 法 ニ所 謂 ｢国 体 ノ変 革 ﹂ ト 比 較 対 照 セ

ル コト カ ﹁治安 維 持 法 ニ所 謂 国 体 ノ変革 ﹂ ト対 比 セ ラ ル ヘキ モ ノ ナ

朝 時 代 ) 等 々 ニ又 封 建 制度 ヨリ資 本 主義 制 度 (原 判 決 ハ其 ノ冒 頭 ニ

サ ル ヘカ ラサ ル モノ ニ刑 法 第 七十 七条 乃至 第 八 十 条 ﹁内 乱 ニ関 ス ル

リ共 産 党 ノ結 成 共産 党 ノ政 治 的宣 伝 煽 動 カ直 接 此 ノ内 乱 罪 ノ 本 体 ニ

シ得 サ ル ヘシ然 ル ニ資 本主 義 制 度 ヨリ共 産 主義 制 度 ニ政 治 上経 済 上

ノ社会 制 度 ノ変 革 ヲ経 タ レ共 之 レヲ以 テ国 体 ノ変 革 ヲ経 タ リ ト ハ称

変 革 ス ル コト ノ ミ当 然 国 体 ノ変 革 ナ リト ハ解 シ能 ハサ ルト コ ロナ リ

現今 ノ 日本 ヲ資 本 主 義 制度 ト断 定 シ タ リ) ニ幾 度 カ政 治 上経 済 上 其

同 法 条 ニ牴触 スルト コ ロア ラ ハ別 ニ治安 維 持 法 ヲ制 定 スル迄 モ ナク

モ死 刑 迄 ノ規 定 ア リ非 常 ナ ル広範 囲 ノ性 質 ヲ有 ス若 シ共 産 党 結 社 カ

同 法 条 ニ依 テ処断 サ ル ヘキ モ ノ ナリ然 ル ニ治 安 維 持 法 ヲ制 定 シタ ル

ル事 由 ア ル モノ ニ シテ原 判 決 ハ破毀 ヲ免 レサ ル モノ ナリ ト 云 ヒ﹄ 同

以 上原 判 決 ハ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル ヘキ顕 著 ナ

牴 触 ス ルヤ否 ヤ問題 ナ リ内 乱 罪 ハ予 備陰 謀幇 助 ヲ モ犯 罪 ト シ其 ノ刑

所 以 ヨリ見 レ ハ同法 条 ハ直 ニ ハ共産 党 結 社 ヲ処 断 シ得 サ ルカ故 ナリ

第 六 点原 判 決 ハ其 ノ理 由 中 ﹁革 命 的 手 段 ニヨリ政 治 上 我 大 日本 帝 国

即 チ内 乱 罪 ニ於 テ ハ暴 動 ナ ル行為 カ犯罪 現 象 ノ根 本 的 ナ ル 一要 素 ヲ 為 スヲ以 テ ナリ 従 テ単 ニ此 ノ暴 動 ニ依 テ侵 害 セ ラ ル ル所 謂 ｢ 法 益﹂

又如 何 ナ ル手 段 ヲ以 テ ス ル モ之 レカ変 革 ヲ為 ス コト能 ハサ ル モノ ナ

ノ大 本 タ ル君 主国 体 ヲ変 革 シ﹂ ト判 示 シタ リ惟 フ ニ国 体 ハ何 人 ト雖

一ニ非 ス現在 日 本 カ資 本 主 義 経 済 組 織 ノ過 程 ニ在 ル コト ハ世 人 ノ ヒ

ヲ新 ニシ﹂ ト 判 示 シタ リ惟 フ ニ私 有財 産 制 度 ト資 本主 義 制 度 ト ハ同

共産 主 義 社 会 ヲ実 現 セ ント スル同 党 根本 ノ目 的 ノ下 ニ其 ノ政 綱 組 織

律 カ規 定 シ乃 至 ハ保 障 ス ル所有 権 及 此 レ ヨリ派 生 シ タ ル各種 私 権 ト

立 ノ社会 制 度 ハ存 在 セ ス況 ンヤ法 律 上 私 有財 産 制 度 ナ ル モノ ナ シ法

対 ス ル認 識 ノ錯 誤 乃 至 ハ迷 信 的 結 果 ニシテ 私有 財 産 制度 ナ ル単 一独

ニア ル モノ ト認 識 ス ル モ ノノ如 キ モ斯 ノ如 キ ハ立 法 者 カ 社会 組 織 ニ

法 ニ於 テ ノ ミ ナリ 治 安 維持 法 ハ現 代 日 本 ヲ 以 テ私 有 財産 制 度 ノ段 階

財 産 制 ナ ル制度 ヲ独 立単 一ノ制 度 ト シテ規 定 シ タ ル ハ実 ニ治 安 維 持

封建 制 資 本 主 義 制 共 産主 義 制 等 々 々 ニ区別 セ ラ ル ル コト ア ル モ私 有

留 ス ル コトモ 亦看 過 スヘ カ ラ サ ル事 実 ナ リ 凡 ソ社 会 ノ制 度 ヲ分 ツ テ

ト シ ク認 ム ルト コ ロナ ル モ尚 其 ノ構 成中 ニ ハ幾 多 ノ封建 的要 素 ノ残

リ変 革 シ能 ハサ ルト コ ロ ニ国 体 ノ本質 ノ存 ス ルヲ見 ル ヘシ然 ラ ハ国 体 ノ変 革 ヲ目 的 ト ス ル行 為 ハ絶 対的 不能 犯 ナ リ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス 絶 対 的 不 能 ノ事実 ヲ目的 ト スル行為 ヲ断 罪 ノ対 照 ト シタ ル原 判 決 ハ 違 法 ナ リト 云 ヒ﹄ 同 第 七 点 原 判 決 カ被 告 等 ヲ有 罪 ナ リト処 断 シタ ル 所 以 ノ モノ ハ国 体 ノ変 革 ヲ可 能 ナリ ト シタ ル モノ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス然 ル ニ原 判 決 ハ国 体変 革 カ可能 ナ ル所 以 ヲ判 示 セ ス又 国体 変 革 カ 可 能 ナ ル ハ顕著 ナ ル事 実 ナ リト 云 フ ハ当 ラ ス此 ノ点 原判 決 ハ理由 不 備 ノ違 法 ア リト 云 ヒ﹄ 同 第 八 点 原 判 決 カ国 体変 革 カ可 能 ナリ ヤ ニ関 シ敢 テ 一言 ノ論 及 ス ルト コ ロナ カ リ シ ハ判 決 ニ示 ス ヘキ判断 ヲ遺 脱 シ タ ル違 法 ア ル モノ ナリ ト 云 フ ニ在 レト モ○ 我帝 国 ハ万

コロ ニシテ更 ニ原 始 国 家 即 チ王 朝 時代 ヲ見 ル ニ当 時 ハ奴 隷 制度 ノ時

財産 制 ニ関 スル法 規 ア リ テ私 権 ノ保 護 ヲ全 ウ シタ ル コト ハ疑 ナ キ ト

カ ラ ス何 ト ナ レ ハ封建 制 度 ノ下 ニ於 テ ハ封 建制 度 ニ適 合 シタ ル私 有

制度 ト シ テ ノ私 有 財 産 制 ノ法律 的意 義 ハ厳 格 ニ之 レヲ区 別 セサ ルヘ

国 体 ト為 シ治 安維 持 法 (大 正 十 四年 法 律 第 四十 六 号 昭 和 三年 勅 令 第

代 ト シテ茲 ニ モ亦 其 ノ社 会 制度 ニ適 合 シ タ ル私 有財 産 ノ規 定 存在 シ

世 一系 ノ天 皇 君 臨 シ統 治 権 ヲ総攬 シ給 フ コト ヲ以 テ其 ノ

百 二十 九 号 ) 第 一条 ニ所 謂 国 体 ノ意 義 亦之 レ ニ外 ナ ラ サ ルカ故 ニ帝

更 ニ遡 テ原 始 共 産 制 ノ末 期 ノ状 態 ヲ見 ヨ茲 ニ ハ私 有財 産 制度 ニ対 ス

(要旨 )

ヲ企 図 スル モ ノト 云 フ ヘシ而 シテ 此 ノ如 キ企 図 ヲ遂 行 セ ンカ為 同法

国 ニ無産 階 級 独裁 ノ政 府 ヲ樹 立 セ ント ス ルカ如 キ ハ即 我 国 体 ノ変 革

所 定 ノ行 為 ヲ為 ス ニ於 テ ハ犯 罪 ヲ構 成 ス ヘキ コト多 言 ヲ要 セサ ルト

ト シ テ存 シ法 規 ニ於 テ許 容 シ私権 ノ保 護 全 キ ヲ 見 ル ヘシ唯 ﹁ソ ビ エ

﹁社 会 主義 ソ ビ エツ ト共 和 国 聯 邦﹂ ヲ見 ヨ茲 ニモ亦私 有 財 産 ハ事 実

ナ ル コト ヲ説 示 ス ルノ要 ア ル モノ ニ非 ス各 論 旨 ハ何 レ モ其 ノ 理由 ナ

ツ ト聯邦 ﹂ カ他 ノ資 本 主 義 国 家 ト相 違 スル点 ハ生 産機 関 (茲 ニ所 謂

ル 一般 的萌 芽 ヲ発 見 ス ル コト ヲ得 ヘシ更 ニ飜テ 現 代 ノ ロ シ ヤ 即 チ

シ

ソ ノ国 家 ニ依 ル管 理 ノ 一点 ニ存 ス ルノ ミ ナリ 即 チ原 始 共 産 制奴 隷 制

生 産 ト ハ分 配 マテ含 ム分 配 ハ従 属 的性 質 ヲ有 ス レ ハナ リ) ノ国有 ト

コ ロナ レ ハ原 判決 カ判 示 ノ如 ク事 実 ヲ認 定 セ ル以上 其 ノ目的 ノ可 能

同第 四点 原 判 決 ハ其 ノ理 由 中 ｢革 命 的 手 段 ニ依 リ政 治 上 我 大 日 本帝

封 建 制資 本 主 義 制 共 産 制 夫 々 ノ制 度 ニ適 応 シタ ル私有 財 産 ハ存在 シ

国 ノ大 本 タ ル君 主 国 体 ヲ変 革 シ無 産 階級 独 裁 ノ政 府 ヲ樹 立 シ依 テ経 済 上 私 有 財 産 制度 ヲ否 認 シ凡 ユル生 産 機 関 ヲ社 会 ノ共 有 ト スル所 謂

私 権 ノ保 護 全 キ ヲ得 ル モノ ナリ 唯 々資 本 主 義 制 度 ノ 下 ニ於 テ私 有 財

モノ ニシ テ即 チ前 記 法 条 ニ規 定 セ ル私 有 財 産 制度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ

認 ス ル モ ノ ニ非 スト スル モ尚 我 カ 私有 財 産 制度 ヲ根本 的 ニ破 壊 ス ル

ヲ適 用 処 断 シタ ル ハ正当 ニシテ 原判 決 ニ ハ所 論 ノ如 キ 不法 ナ ク又記

目 的 ト ス ル モノ ニ外 ナ ラ ス然 レ ハ原 判 決 カ判 示事 実 ヲ認 メ判 示 法条

産 ハ最 大 ノ保 議 ヲ得 テ爛 熟 ノ絶 頂 ニ在 ルノ差 ア ルノ ミ ナ リ即 チ私 有

ラ スシ テ叙 上 ノ如 キ如 何 ナ ル社 会 形態 ノ下 ニ於 テ モ夫 々ニ適 応 シ テ

キ顕 著 ナ ル事 由 ア ル コト ヲ認 メ ス論 旨 ハ理 由 ナ シ ( 其 ノ他 ノ上告 論

録 ヲ査 ス ル ニ原 判 決 ニ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル ヘ

財 産 制 度 ト ハ 一社 会 形 態 ニ特有 ナ ル制 度 乃 至 ハ単 一独 立 ノ制 度 ニア

存 在 シ得 ル社 会 的 必然 タ ル 一ノ事 実 ニ過 キ サ ルナ リ 原判 決 カ本 件 被

昭和 六 年 (れ)第 三〇 五号棄 却) 二 治安維持法違 反被告事件(同 年七月九日第 一刑事部判決

検事 柴 碩 文 関 与

決ス

右 ノ 理由 ナ ルヲ以 テ刑事 訴 訟 法 第 四 百 四十 六条 ニ則 リ 主文 ノ如 ク判

旨 及 判 決 理 由 ハ之 ヲ省 略 ス)

告 等 ヲ治 安 維 持法 違 反 ナ リ ト断 ス ル ニ ハ先 ツ事 実 ト シテ ノ私 有 財 産 制 度 ナ ル社 会制 度 ノ存 否 如 何 若 シ存在 ス ル卜 セ ハ本件 犯 罪発 生 当 時 ノ 日本 ニ於 ケ ル私 有 財 産 制 度 ト ハ如 何 ナ ル形 態 ヲ指 称 ス ル モノ ナ リ ヤ ニ関 シ テ事 実 ノ判 断 ヲ為 ス ヘキ 義務 ア リ然 ル ニ原 判決 ハ叙 上 ノ如 ク虚 無 ノ事 実 タ ル私 有 財 産 制度 ヲ当然 ノ存 在 事 実 ナ ルカ ノ如 ク前 提 シ此 ノ基 礎 ノ上 ニ本 件 事 実 ノ全 認 定 ヲ為 シタ ル ハ重大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル ヘキ顕 著 ナ ル事 由 ア ル モノ ト言 フ ヘク同 時 ニ原 判 決ヵ 理由 中 以 上 ノ点 ニ関 シ何等 判 示 ス ルト コ ロナ キ ハ 一面 事 実 竝 ニ法 律 ニ関 スル判 断 ヲ遺脱 シタ ル違 法 ア ルト 共 ニ又 一面 理由 不

( 上告人) 被告 人 山 代 吉 宗 

弁護人 {小 林 恭 平 細 迫 兼 光 (第二審) 東京控訴院 ( 第 一審) 水戸地方裁判所  我カ国体︱

君主制 ノ廃止ト国体 ノ変革

外二名

テ ハ存 ス ル ア ルヲ見 ス私 有 財産 制 度 ハ即 チ財 産 ノ私有 ヲ国 法 カ認 許

︹ 省略︺︱

○ 判示事 項

備 ノ違 法 ア ル モノ ナ リ ト云 フ ニ在 レト モ○凡 ソ制度 ハ国 法 ヲ外 ニシ

コト ハ極 メ テ顕 著 ナ ル事 実 ニ属 ス而 シテ財 産 私 有 ニ関 スル法 ノ推 移

シ之 ヲ保 護 ス ル ニ因 リ生 シ我 国 法 ノ下 ニ於 テ モ亦 其 ノ制 度 ノ存 ス ル

○  判 決要 旨 一 ︹ 省略︺

変 遷 ハ同 時ニ 私有 財 産 制 度 ノ推 移 変遷 タ ル ニ帰 シ 一定 不変 ノ財 産 制 度 ヲ想 像 ス ルノ難 キ ハ論 旨云 フト コ ロノ如 シ ト雖 治安 維 持 法 (大 正

二  万世 一系 ノ 天 皇 ヲ君 主 ト シ テ奉戴 スル ハ我 カ国 体 ナ リ (要旨

( 要旨第三)

三  君 主 制 ノ廃 止 ハ治 安 維 持 法 第 一条 ニ所 謂 国 体 ノ変 革 ニ該当 ス

第 二)

十 四年 法 律 第 四 十 六 号及 昭 和 三 年 勅令 第 百 二十 九 号) 第 一条ニ 所 謂

シ 我現 行 ノ私 有財 産 制 度 ヲ根 本 的 ニ破 壊 スル ノ謂 ナ リ ト解 ス ヘク判

私 有 財 産 制 度 ノ 否 認 ト ハ重 要 財 産 ノ私有 ニ関 ス ル国 法 ノ保 護 ヲ排 斥

スル ノ行 為 ハ仮令 共産 制 度 ノ主 義 ト ス ルト コ ロ 一切 ノ財 産 私 有 ヲ否

示 ノ如 ク凡 ユル生産 機 関 ヲ社 会 ノ共有 ト為 シ共 産 制度 ヲ実 現 セ ント

合 理的 ノ土 地 所有 制 度 ヲ確 定 ス ル コト ニ在 レ ハナリ若 シ之 ヲ シ モ私

所 有 及 耕 作 権 ノ確 立 ニア リ所 有権 存在 ノ推 移 ニ過 キ ス シテ寧 ロ最 モ

ニ非 ス蓋 シ此 ノ主 張 ハ其 ノ反 面 ニ於 テ耕 作 権 ノ確 立 即 チ貧農 ノ土 地

﹁大 地 主 ノ土 地没 収 ﹂ ノ主 張 モ私 有財 産 制 度 ノ否 認 ニ該 当 ス ル モノ

同 視 スヘ キ モノ ニア ラ ス次 ニ日本 共産 党 当 面 ノ 一 ス ロ ー ガ ン ナ ル

ヲ利 用 シ テプ ロ独 裁 国 家 ヲ実 現 セ ント ス ル モノ ニシテ国 体 ノ変 革 ト

実 現 セ ント ス ル モノ ニ非 ス寧 ロ或 段 階 マテ ハ ヨリ強力 ナ ル国 家 権 力

面 ノ問 題 ニシテ国 家 ノ廃 止 絶滅 ヲ来 ス ヘキ最 高 度 ノ共 産 主義 社 会 ヲ

中 心 スロー ガ ンナ ル ﹁労 働 者農 民 ノ政 府 ﹂ ﹁プ ロ独裁 ﹂ ノ 主 張 ハ当

ノ ニシテ国 体 ノ変 革 ナ ル行 動 ト認 ムヘ キ モノ ニ非 ス又 日本 共 産 党 ノ

ル モノ ニ非 ス恰 モ枢 密 院 ノ廃 止貴 族 院 ノ廃 止 等 ト 同 一範 囲ニ 在 ル モ

ローガ ン ハ決 シ テ全 政治 機 構 ノ全 般 的 包 括 的 根 本的 ノ改 廃 ヲ意 味 ス

治 上 ノ 一制 度 ニシ テ封建 時 代 ノ残 存 物 ナ リ故 ニ君主 制 ノ廃 止 ナ ル ス

カ国 体 ノ変 革 ヲ意 味 ス ル モ ノト ハ思 考 セ ス君主 制 ハ要 スル ニ 一ノ政

国 精 神 ト認 ム ルヲ得 ス共産 党 カ ス ロー ガ ント ス ル ﹁君 主 制 ノ廃 止 ﹂

世 一系 ハ日本 ニノ ミ特殊 的 ノ モノ ニ非 ス之 ヲ以 テ他 国 ト相 違 スル建

標 ト ナ ス コト ハ不 当 ナリ 万世 一系 説 ハ或 ハ裁 判所 ノ解 釈 ナ ラ ン モ万

適 用 ニ付同 法 第 一条 ニ所 謂 国 体 ノ意 義 不 明 ニシテ之 ヲ行 為 批判 ノ基

ノ 立法 沿革 ヲ述ヘ テ当 然 廃 止 セ ラ ルヘ キ モノ ナ リ ト云 ヒ法 文 ノ解 釈

安維 持 法 ノ本 質 カ共 産党 活 動 ニ対 スル弾 圧法 ナ ル コト ヲ説 キ次ニ 其

被告 人山 代 吉 宗 上 告 趣意 書 第 十 三 点 治安 維 持 法 ノ解 釈 適 用 ト シテ治

ト云 フ ニ在 レト モ○憲 法 第 一条 ニ ハ大 日本 帝 国 ハ万

放 ヲ要求 ス ル モノ ナ リ始 メ ヨリ裁 判 ノ遣 リ直 シ ヲ要 求 ス ル モノ ナ リ

当 ノ甚 シキ モノ ナ リ上告 審 ニ於 テ ハ飽 ク マテ モ無 罪 ヲ要 求 シ即 時 釈

故ニ 被 告 人 等 ノ行 為 ヲ控 訴審 ニ於 テ之 ヲ有罪 ト シテ処 刑 シタ ル ハ不

イ テ最 少 限 度 ニ解 釈 ス ル モ其 ノ未 遂 ト シテ論 断 セラ ルヘ キ モノ ナリ

ル モノ ニ非 サ ル ヲ以 テ該 法 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行為 ニ該 当 セ ス強

モ被 告 人等 ノ行 為 ハ未 タ完 全 ニ党 ノ組 織 卜統 制 卜 ヲ受 ケ テ為 サ レ タ

全 ナ ル党 ノ組 織 ト 統 制 ノ下 ニ組 織 ヲ通 シ テ為 サ レタ ル コト ヲ要 スル

思 想 ヲ活 動 スル ノ ミ ニテ ハ達 成 スル コト能 ハ ス之 ヲ達 成 セ ン ニ ハ完

共産 党 活 動 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ハ単 ニ意 識 的ニ 共産 主 義 的 ノ

ヲ主 張 スル コト ソ レ自 体 ハ勿 論 該 法 ノ適 用 ヲ受 クヘ キ モノ ニ非 ス又

私財 制 カ完 全ニ 廃 止 サ ル ヘキ ヲ主 張 ス ル モ斯 ル思 想 ヲ抱 キ斯 ル理論

的 必然 性 ヲ信 シ高 度 ニ発 展 シタ ル共産 主 義 社 会 ニ於 テ国 家 カ絶 滅 シ

ル結 社 ニ非 サ ル コト明 ナ リ既 述 ノ如 ク共 産 主 義 者 ハ社 会 進 化 ノ 歴史

動 ハ法ニ 所 謂 ﹁国 体 ノ変 革 ﹂ 及 ﹁私有 財 産 制 度 ノ否 認 ﹂ ヲ目的 ト ス

ノ問 題 ト セサ ル コト ヲ識 ルヘ シ要 ス ル ニ日本 共 産 党 ノ現 実 当 面 ノ活

地及 生 産機 関 ノ私 有 ヲ認 メ タ リ之 ヲ観 ル モ共 産 党 カ私 財 否 認 ヲ当 面

ル ト モ又之 ヲ実 現 セ シメ ント モ思 惟 セ ス現 ニ露 国 ニ於 テ モ 一部 ノ土

障 サ レ ル様 ニナ リ シ場 合 ニシテ被 告 人 等 ハ今直 ニ斯 ル社 会ヵ 実 現 ス

産 主 義 社会カ 非常ニ 高 度 ノ生産 力 ニ依 リ万 人 ノ経 済 生 活 カ完 全ニ 保

ノ必 然 ト シテ私 有 財 産 制 度 カ全廃 サ ルヘ キ コト確 信 スル モ其 レ ハ共

第 一条 第 二項 ノ適 用 ヲ受 ク ル ニ至 ルヘ シ勿 論 共産 主 義 者 ハ社会 進 化

世 一系 ノ天 皇之 ヲ統 治 スト 規定 シ我 国 国 体 ノ如 何 ナ

ル モ ノ ナリ ヤ ヲ明 示 シ タ リ即 チ万世 一系 ノ天皇 ヲ君 主 ト シテ奉 戴 ス

(要 旨 第 二)

有 財 産 制 度 ノ否認 ナリ ト解 セ ハ土 地国 有 運動 私 設 鉄 道 私 有鉱 山等 ノ 国 有 化 運 動 其 ノ他官 公 営 事 業 ノ設 立拡 張 等 ノ運 動 若 ハ急 進的 ナ ル私 有 制 限 ノ社 会 政策 的 施 設 等 ハ孰 レ モ私有 財 産 制 度 ノ否 認 ト シテ該 法

ル コト カ我 国 ノ国体 ナ リ換 言 ス レ ハ万世 一系 ノ天 皇 ヲ戴 ク君 主 制 カ

モ ノ ナリ従 テ我 国 ニ於 テ所 謂 ｢君 主 制 ノ廃 止﹂ ハ同

我国 ノ国 体 ナ リ治安 維持 法 第 一条 ニ所 謂 国 体 モ亦 此 ノ意 義 ヲ有 スル (要旨 第 三) 法ニ 所 謂 国 体 ノ変 革ニ 外 ナ ラ サ ル モノ ト ス又私 有 財 産制 度 ノ全 廃 ヲ共 産 主義 社会 ノ最 高度 ノ 理念 ト シ其 ノ当 面 ノ過 程 ト シテ 日本 共 産 党 カ論 旨 第 十 一点 ニ於 テ詳 述 スル如 ク皇室 社寺 大 地 主 ノ土 地没 収 ヲ主 張 ス ル コト ハ結 局 同法 第 一条 第 二 項 ニ所 謂 私有 財 産

昭 和 九 年 (れ)第 一 二 一 二 号 三 治安維持法違反被告事件 (同 年 十二月 六日第 一刑事部判決棄却)

一

( 第 二審 ) 東 京 控 訴 院

(上告 人 ) 被 告 人  市 川 正

判示事項

(第 一審 ) 東 京 地 方裁 判 所 ○

判決要旨

治 安 維持 法 第 一条 国 体変 革 ノ目 的 ノ範 囲 ○

シ テ君 主制 ノ廃 止 ヲ企 図 ス ル ニ於 テ ハ治 安維 持 法 第 一条 第 一項ニ

究 極 ノ目的 タ ル共 産 主義 社会 ノ実 現 ヲ期 ス ル為 其 ノ経 過的 目 的 ト

制度 ヲ否 認 スル コト ヲ目的 ト スル モ ノ ニ該 当 ス ルヲ以 テ日 本共 産 党

シ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ ニ該 当 ス而 シテ原

○

理

由

所 謂 国 体 ノ変 革 ヲ目 的 ト ス ル モノ ニ該 当 スル モノト ス

ノ現 実 当 面 ノ所 論綱 領 ニ於 ケ ル主張 ハ同 法 第 一条 ニ所 謂 国 体 ヲ変 革

判 示 事 実 ノ如 ク被 告 人 カ 日本 共 産党 カ前 記 ノ如 キ目的 ヲ有 ス ル秘 密 結 社 ナ ル コト ヲ知 リ ナカ ラ同 共産 党 ニ加 入 ヲ承 諾 シ其 ノ党 員 章 ノ交 付 ヲ受 ケ同 共 産 党 ノ 主義 ノ宣 伝 又 ハ同 党 ノ拡 大 ニ関 ス ル行 為 ヲ為 シ

ア ート独 裁 ノ社 会 ヲ樹 立 シ因 テ以 テ共 産 主義 社 会 ノ実 現 ヲ企 図 スル

﹁暴 力革 命ニ 依 テ我 国 体 ヲ変 革 シ私 有 財 産制 度 ヲ否 認 シプ ロ レタ リ

結 社 ﹂ ト ナ セ ル モ之 本事 件 ニ関 ス ル最 重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ナリ其 ノ

被 告 人市 川 正 一上告 趣意 書 第 一点 原 判 決 ハ日本 共 産 党 ノ目的 ヲ以 テ

事 実 ハ挙 示 ノ各 証拠 ヲ綜 合 シ之 ヲ認 ムル ニ足 ル ヲ以 テ原 判 決カ 被告

理 由下 ノ如 シ日本 共産 党 ハ資 本 主 義 ノ支 配 ノ顛 覆 トプ ロレ タリ ア ー

タ ル以 上 未 タ直 接 ニ同 党 ノ組 織 及統 制 ノ下 ニ行動 シタ ル ニ非 ス卜 ス

人 ノ本 件 行 為 ヲ治安 維 持 法 第 一条 第 一項 第 二項ニ 問 擬 処 断 シタ ル ハ

ト ノ独 裁 ノ樹 立 ( 当 面) 階 級 ノ廃 絶 即 人 ニ依 ル人 ノ搾取 ノ廃 絶 ト 共

ル モ同 党 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ スル行為 ヲ為 シタ ル モ ノ ニ該 当 シ右 判 示

以上 当 院ニ 於 テ本 件 事 実 ニ付 更 ニ審 判 ヲ為 スヘ キ モノ ニ非 サ ル ヲ以

相 当 ナ リト 謂 フ ヘク原 判 決 ニ事 実審 理 ノ決 定 ヲ言渡 スヘ キ違 法 ナ キ

存 セ ス又 其 ノ政 綱政 策 其 ノ他 何 処 ニモ存 ス ル コト ナ シ殊ニ (一) 日

﹁私有 財 産 制 度 ノ否 認 ﹂ ト カ謂 フ様 ナ モノ ハ其 ノ目 的中 ニ影 モ形 モ

本 共産 党カ 君 主制 ヲ廃 シプ ロ レタ リ ア ート独 裁 ノ政 治 ヲ樹 立 セ ント

産 主義 社 会 ノ建 設 ( 究 極 ) ヲ以 テ目 的 ト ス ルカ ﹁国 体 ノ変 革 ﹂ ト カ

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟法 第 四百 四 十 六条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク

テ論 旨 ハ之 ヲ採 用 ス ル ニ由 ナ シ ( 其 ノ他 ノ上 告論 旨 及判 決 理 由 ハ之

判決 ス

スル ハ 一時 経 過的 ノ手 段 ニシ テ其 ノ究極 ノ目 的 ニア ラ ス (二) 君 主

ヲ省 略 ス

検 事 松 井和 義 関 与

制 ヲ廃 シプ ロレ タ リ アー 卜政 治 ヲ樹 立 ス ル ハ政 体 ノ変革ニ 過 キ サ ル

ノ目的 ヲ以 テ共 産 主 義 社会 ノ実 現 ヲ期 ス ル ニ在 リ テ君 主制 廃 止 及 プ

ノ ナ ル コト 多 言 ヲ要 セサ ルト コ ロナリ ト ス所 論 ハ日 本 共産 党 ノ究 極

ロ レタ リ ア ート 独 裁 制度 樹 立 ハ唯 当 面 ノ 目的 タ ル ニ止 マル モノ ニシ

カ故 ニ同党 ノ目 的 ハ治安 維 持 法 ニ所 謂 国 体変 革 ノ目 的 ニ該当 ス ル モ ノ ニ非 ス又 (三) 同党 ハ資 本 家 的 及 地 主的 私 有 財 産 ヲ廃 絶 シ之 ヲプ

テ究 極 目 的達 成 ノ為 ニス ル経 過 的 闘争 ノ 一タ ル ニ過 キ ス従 テ君 主 制

廃 止 ヲ以 テ同党 ノ目 的 ト為 ス ヘカ ラ スト 主張 ス ル モ已 ニ

ロレ タリ ヤ所 有 ト ス ル コト ヲ目 的 ト スル モノ ニシ テ而 カ モ私 有 財 産 制 度 ハ暴 力的 革 命 又 ハ革 命 手 段 ニ依 リ之 ヲ廃 絶 シ得 ヘキ モノ ニ非 サ

云 フ ニ在 レト モ

ニ付 テ治安 維 持 法 ヲ適用 シタ ル ハ大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル モノ ナリ ト

ス ルト コ ロ ニア ラ ス然 ル ニ原 判 決 カ同 党 ノ目的 ヲ誤 認 シ被 告 ノ 行為

ス ル ニ過 キサ ルカ故 ニ私有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コ卜 ハ同 党 ノ目的 ト

体 ノ変 革 ニ非 スト為 スヲ得 サ ルナ リ縷 々叙 述 ス ル所 論 ハ畢竟 原 審 ト

ル モノ ニシ テ所 論 ノ如 ク之 ヲ以 テ単 ナ ル政 体 ノ変 動ニ 過 キ ス シテ国

我 国 ニ於 テ ハ君主 制 ノ廃 止 ハ治安 維 持 法ニ 所謂 国 体 ノ変 革 ニ該 当 ス

非 サ ルカ故 ニ之 ニ関 ス ル所 論 ハ採 用 ノ限 ニ在 ラ ス (二 )前 述 ノ如 ク

経 過的 ノ目 的 ナ ルト ハ治 安 維 持 法 ノ適 用 上結 論 ヲ異 ニ ス ヘキ モノ ニ

立 ス ル為 君 主 制 ノ廃 止 ヲ企 図 スル以 上其 ノ 企図 カ究 極 ノ目的 ナ ルト

同 党 カ当 面 ノ 目的 ト シ テプ ロ レタ リ ア ート 独裁 制 度 ヲ樹

原 判 示事 実 中日 本 共 産党 カ暴力 革 命 ニ依 リテ我 国 体 ヲ変 革 シ私有 財

相容 レサ ル独 自 ノ見 地 ニ立脚 シテ徒 ニ原審 ノ事 実 認 定 ヲ非 議 ス ル ニ

(要旨 )

産 制度 ヲ否認 シプ ロレタ リ ア ー ト独 裁 ノ制度 ヲ樹 立 シ因 テ以 テ共産

帰 シ採 用 ス ヘカラ ス (三 ) 日 本共 産 党カ 私 有財 産 制 度 ノ否 認 ヲ企 図

ル カ故 ニ同 党 ハ社 会 主義 的 経 済 ノ発 展 ニ依 リ自 然 的 ニ右 変動 ヲ期待

ニ証拠 ト シテ引 用 セ ル佐野 学 鍋 山 貞 親 高 橋 貞樹 及 杉 浦 啓 一 ニ対 ス ル

主 義 社 会 ノ実 現 ヲ企 図 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル結 社 ナ ル コト ハ原 判 決

スル結 社 ナ ル コト ハ前 掲 原判 決 認 定 ノ事 実 ニ依 リ テ之 ヲ認 ム ル コト

カ故 ニ更 ニ全労 働 人 民 ニ依 ル之 カ共 有 ヲ目 的 ト ス ル コト ア ル モ之カ

治 安維 持 法 違 反 三 田村 四郎 ニ対 ス ル治 安 維持 法 違 反 竝 傷 害 各被 告 事

為 ニ叙 上目 的 ヲ阻 却 スル モノ ニ非 ス而 シテ 同党 カ所 論 ノ如 ク社会 主

ヲ得 ヘク所 論 ノ如 ク同 党 カ資 本 家 的 私 有 財 産 及 地 主的 私 有 財 産 ヲ廃

誤認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ルヘ キ顕 著 ナ ル事由 ヲ発 見 セ ス所論 ハ畢竟

義 的経 済 ノ自 然 発 展 ニ依 リテ右 目 的 ヲ達 セ ント ス ル モノ ナ ル コト ハ

絶 セ ン卜 ス ル以上 ハ此 ノ点 ニ於 テ私 有 財 産 制度 否 認 ノ目 的 ヲ存 ス ル

原 審 ト相 容 レサ ル独 自 ノ見 解 ニ基 キ又 ハ原 審 ノ採 用 セ サ ル第 一審 第

原 判決 ノ認 メ サ ルト コ ロナ ルカ故 ニ所 論 ハ到底 採 用 シ難 シ論旨 理由

ニ明 瞭 ナ リ記 録 ヲ精 査 ス ル モ此 ノ点 ニ関 シ原 判 決 ニ重 大 ナ ル事 実 ノ

二審 ニ於 ケ ル被 告 人 等 ノ供 述 ヲ云 為 シ テ原審 ノ専 権 ニ属 ス ル証拠 ノ

件 ノ原審 第 一回公 判 調書 中 ノ佐 野 学 ノ其 ノ旨 ノ供 述 記 載ニ 依 リ テ洵

取捨 判 断 延 イ テ事 実 ノ認 定 ヲ非 議 スル ニ帰 シ採 用 スヘ カ ラ ス而 シテ

右 ノ理由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟法 第 四百 四 十 六 条ニ 則 リ主 文 ノ如 ク判

ナ シ (其 ノ他 ノ上 告 論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

其 ノ国 体 ト為 ス モノ ナ レ ハ我 国 ニ於 テ 君主 制 ヲ廃 止 シ テプ ロ レタ リ

決ス

(一) 我 国 ハ万 世 一系 ノ天 皇 君 臨 シ統治 権 ヲ総攬 シ給 フ コト ヲ以 テ

ア ート独 裁 政 治 ヲ樹 立 セ ント スル コ卜 ハ国 体 ノ変 革 ヲ目的 ト ス ル モ

検事棚町丈四郎関与

)

中央組織部委員長及中央委員 長ニ被告人松崎豊作ヲ中央常任書記兼

助其ノ他八名合計十九名ニ指定 シ被告人石井長治 ヲ中央情報調査兼

党員 ヲ前 示被告人等 ノ外被告人中山茂原審相被告人藤 田永伯松川泰

名 セル結社 ヲ組織 シ翌二十 八日中央執行委員 会 ヲ開催 シ同会 ニ於 テ

右被告人等 ヲ党員 トシ前 示中央執行委員等ノ機関 ヲ備ヘ集産党 ト命

国 ノ私有財産制度 ヲ否認 シ共産制社会 ヲ実現 スルコト ノ目的 ヲ以 テ

局前記列席 ノ各被告人等 ハ孰 レモ右石井長治 ノ提唱 ニ賛同 シ茲 ニ我

各被告人弁護人神道寛 次上告趣意書第 一点原判決 ハ其 ノ理由中 ﹁ 結

b  ﹁私 有 財 産 制 度 否 認 ノ意 義 ﹂ニ 関 ス ル モ ノ

昭 和 四年 (れ)第 一 一 一号棄却 一 治安維 持法違反被告事件 (同 年四月 三十日第 一刑事部判決

(上告人) 被告人 石 井 長 治  弁護 人 神 道 寛 次 外三名 ( 第二審) 札幌控訴院 判示事項

(第 一審 ) 旭川地方裁判所 ○

大正十四年法律第 四十六号治安維持法第 一条第 一項 ト私有財産制 私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的 ト スル結 社

判決 要 旨

中央執行委員長及中央委 員ニ被告人中山茂村山政儀浜野勇 一北村順

○

度 ノ否 認 ︱

治郎佐藤鉄之助原審被告人松川泰助藤 田永伯外 一名 ヲ中央委員ニ選

ヲ為 シ前 記新芸術協会 ノ外 ニ日本プ ロレタリヤ芸術聯盟北海道同盟

一 私 有 財産 制 度 ヲ根 本 的 ニ破壊 ス ルヲ目 的 ト ス ル ハ大 正 十 四年

無産者協会士別婦人協会等 ノ行動機関 ヲ設立 シタルモノナリ﹂ト判

定 シ其 ノ後中央執行委員 会 ヲ数 回開催 シ党 ノ組織行動戦術ニ付決議

二  生 産 機 関 ヲ公 有 ニ帰 セ シ メ共産 主 義 的 社 会 ヲ建 設 ス ル為 又 ハ

示 シタリ治安維持法第 一条第 一項 ハ ﹁国体 ヲ変革 シ又 ハ私有財産制

法 律 第 四十 六 号 治 安 維持 法第 一条 第 一項 ノ 私有 財 産 制 度 ヲ否

産 業 機 関 ヲ社会 公 有 ニ移 シ共産 制 度 ヲ実 現 ス ル目的 ヲ以 テ結

度 ヲ否認 スルコトヲ目的ト シテ結社 ヲ組織 シ又 ハ情 ヲ知 リテ之ニ加

認 スル ヲ目 的 ト スル モ ノ ニ該 当 ス ( 要 旨 第 一)

ト スル モノ ニ シテ前 掲 治 安 維持 法 第 一条 第 一項 ノ私 有 財 産 制

社 ヲ組 織 スル ハ即 チ私 有 財 産 制度 ヲ根 本 的 ニ破 壊 ス ルヲ目 的

入 シタル者 ハ十年 以下 ノ懲役又 ハ禁錮 ニ処 ス｣ト規定 シ私有財産制

ルコトナシ斯ノ如 キ抽象的且相対的字句ヲ用 ヒタル刑罰法規 ハ他ニ

言 スレハ否認 ナル行為 ノ内容 タル事 実 ニ関 シテ ハ同法 ハ何等規定 ス

度 ノ意義本質竝 ソノ否認 ト ハ如何 ナル行為 ヲ指称 スルモノナリヤ換

由

ス ( 要旨第二)

理

度 ヲ否 認 スル コト ヲ目 的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 ス ルモ ノ ニ外 ナ ラ

○

制 ノ法 律 的意 義 ハ厳格 ニ之 ヲ区 別 セサ ル ヘカ ラ ス何 ト ナ レ ハ封 建 制

ス ル所 有 権 及 此 レ ヨリ派 生 シ タ ル各種 私権 ト制度 ト シテ ノ私 有 財 産

セ ス況 ンヤ法 律 上私 有 財 産 制 度 ナ ル モノ ナ シ法律 カ規 定 乃 至 ハ保 障

至 ハ迷 信 的 結 果 ニシテ私 有 財 産 制度 ナ ル単 一独 立 ノ社会 制 度 ハ存 在

ル モノ ノ如 キ モ斯 ノ如 キ ハ立 法 者 カ 社会 組 織 ニ対 ス ル認 識 ノ錯 誤 乃

安 維 持 法 ハ現代 日本 ヲ以 テ私 有財 産制 度 ノ段 階 ニ在 ル モノ ト認 識 ス

独 立 単 一ノ制 度 ト シテ規 定 シ タ ル ハ実 ニ治 安 維持 ニ於 テ ノ ミ ナ リ治

本 主 義 制 共 産制 等 ニ区 別 セ ラ ル ル コト ア ル モ私有 財 産 制 ナ ル制度 ヲ

コト モ亦 看 過 スヘ カ ラ サ ル事 実 ナリ 凡社 会 ノ制度 ヲ分 ツ テ封 建 制 資

認 ム ルト コロ ナ ル モ尚 其 ノ構 成中 ニ ハ幾 多 ノ 封建 的 要 素 ノ残 留 ス ル

ス現 在 日本 カ資 本 主 義 経 済 組織 ノ過 程 ニ在 ルコト ハ世 人 ノ ヒト シ ク

類 例 ヲ見 サ ル処 ナリ惟 フ ニ私 有財 産 制 度 ハ資 本主 義 制 度 ト同 一 ニ非

脱 シ タ ル違 法 ア ルト共 ニ又 一面 理由 不 備 ノ違法 ア ル モノ ナ リト 云 フ

ニ関 シ何 等 判 示 スルト コロナ キ ハ 一面 事 実 竝 法律 ニ関 スル判 断 ヲ遺

著 ナ ル事 由 ア ル モノ ト云 フヘ ク同 時 ニ原判 決 カ ソノ理 由 中 以 上 ノ点

認 定 ヲ為 シタ ル ハ重 大 ナ ル事実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ルヘ キ顕

ヲ当然 ノ存 在 事 実 ナ ル カノ如 ク前 提 シ此 ノ基 礎 ノ上 ニ本件 事 実 ノ全

キ義務 アリ然 ル ニ原 判 決 ハ叙 上 ノ如 ク虚 無 ノ事 実 タ ル私 有財 産 制 度

ハ如何 ナ ル形 態 ヲ指 称 ス ル モノ ナ リ ヤ ニ関 シテ事 実 ノ判断 ヲ為 スヘ

シ存在 ス ルト セ ハ本 件 犯罪 発 生 当 時 ノ日本 ニ於 ケ ル私 有財 産 制 度 ト

スル ニ ハ先 ツ事 実 ト シ テノ私 有 財 産 制 度 ナ ル社 会 制 度 ノ存 否 如 何若

事 実ニ 過 キ サ ル ナ リ原 判 決 カ本 件 被告 等 ヲ治 安 維 持 法違 反 ナ リト 断

社会 形 態 ノ下 ニ於 テ モ夫 々適 応 シ テ存 在 シ得 ル社 会 的 必然 タ ル 一ノ

有 ナ ル制 度 乃 至 ハ単 一独 立 ノ制 度 ニア ラ ス シテ叙 上 ノ如 キ如 何 ナ ル

絶 頂ニ 在 ルノ差 ア ル ノ ミナ リ即 チ私 有財 産 制 度 ト ハ 一社会 形 態ニ 特

リ唯 々資 本 主 義 制 度 ノ下 ニ於 テ私 有財 産 ハ最 大 ノ保護 ヲ得 テ爛 熟 ノ

ス ルヲ目 的 ト ス ル ハ大 正十 四 年法 律 第 五 十 六 号治 安

ニ在 レト モ○ 按 ス ル ニ私 有 財 産制 度 ヲ 根本 的 ニ破 壊

テ私 権 ノ保 護 ヲ全 ウ シタ ル コト ハ疑 ナキ ト コ ロ ニシ テ更 ニ原始 国 家

( 要 旨 第 一)

度 ノ下 ニ於 テ ハ封建 制 度 ニ適 合 シ タ ル私有 財 産 制 ニ関 ス ル法 規 ア リ

即 チ王 朝 時 代 ヲ見 ル ニ当 時 ハ奴 隷制 度 ノ時 代 ト シテ茲 ニ モ亦 ソ ノ社

ノ ニ該 当 ス ル モノ ト謂 フヘ ク原判 決 ノ判 示 スル事 実 ニ依 レ ハ被告 人

維 持 法 第 一条 第 一項 ニ所 謂 私 有財 産 制 度 ヲ否 認 スル ヲ目 的 ト ス ル モ

会 制 度 ニ適 合 シ タ ル私 有 財 産 ノ規 定 存 在 シ更 ニ遡 テ原始 共 産 制 ノ末 期 ノ状 態 ヲ見 ヨ茲 ニ ハ私 有 財 産 制 度 ニ対 ス ル 一般 的 萌芽 ヲ発 見 ス ル

石 井 長 治 松崎 豊 作 浜 野 勇 一佐 藤 鉄之 助 等 ハ共 産 主 義 ヲ実 現 スル コト

コト ヲ得ヘ シ更 ニ飜テ現 代 ノ ロシ ヤ即 チ ｢社 会 主義 ソビ ヱツ ト共 和 国 聯 邦 ﹂ ヲ見 ヨ茲 ニモ亦 私 有 財 産 ハ事 実 ト シテ存 シ法規 ニ於 テ許 容

日 名寄 新 芸 術 協 会事務 所 ニ右 被 告 人 四 名其 ノ他 数 名 会合 シ同 席 上 ニ

ニ関 ス ル規約 ヲ作 成 ス ル等 ノ準 備 ヲ為 シタ ル上 昭 和 二年 八月 二 十 七

於 テ被 告 人 石井 侵治 ハ現 在 ノ社 会 制度 ニ欠 陥 ア リ之 レ有 産 支 配 階 級

ヲ目 的 ト ス ル党 ヲ組 織 セ ン コト ヲ謀 議 シ石 井 松 崎 ニ於 テ其 ノ党 組織

配 ハ従 属 的 性 質 ヲ有 ス レ ハナ リ) ノ国 有 ト国 家 ニ依 ル管 理 ノ 一点 ニ

シ私 権 ノ保 護 全 キヲ見 ルヘ シ唯 ｢ソビ ヱツト 聯 邦 ﹂ カ他 ノ資 本 主 義

存 ス ルノ ミ ナ リ即 チ原 始 共 産 制 奴 隷 制 封建 制 資 本 主 義 制 共 産制 夫 々

カ無産 階 級 ヲ圧 迫 搾 取 シ労 働 ニ対 スル賃金 ヲ正当 ニ支 給 セサ ル ニ基

国 家 ト相 違 スル点 ハ生 産 機 関 (茲 ニ所 謂 生産 ト ハ分 配 マテ ヲ含 ム分

ノ制 度 ニ適 応 シ タ ル私 有財 産 ハ存 在 シ私権 ノ保 護 全 キ ヲ得 ル モノ ナ

因 ス之 ヲ防 止 スル手 段 ト シテ ハ生 産 機 関 ヲ公 有 ニ帰 セ シ メ分 配 ハ社

審 第 一回 公 判 調書 中 被 告 人 浜 野 勇 一ノ供 述 ト シ テ之 ヲ防 止 スル手 段

於 テ私 有 財 産 制度 ヲ否 認 シ共 産 制 社 会 ヲ組 織 シ タ ル事 実 ハ (イ ) 原

回訊 問 調 書 中 同 人 ノ供 述 ト シ テ集 産党 ノ目 的 ハ政 治 ノ自由 ヲ獲 得 ス

委 員 制 ヲ執 リ ⋮ ⋮中 略 ⋮⋮ (ニ)被 告 人松 崎 豊 作 ニ対 ス ル予 審 第 一

放 運動 ノ前 衛 分 子 ト シテ正 統 マル ク ス主 義 ノ集 団 ニシテ 組織 ハ執 行

調書 ニ同 人 ノ供 述 ト シ テ⋮⋮ 中 略 ⋮ ⋮右 統 一機 関 タ ル党 ハ無 産 者 解

ス ル組 織 ナ ル記 載 (ハ) 被 告 人 佐 藤 鉄 之 助 ニ対 スル予 審 第 一回 訊 問

⋮ ⋮ 下層 ノ無 産 者 ニ対 シ教化 運動 ヲ ナ シ大 衆 ヲ マル ク ス主 義 ニ獲 得

記 載 (ロ) 被 告 人 石 井 長 治 ニ対 スル予 審 第 一回訊 問 調 書 中 ⋮ ⋮中 略

⋮ ⋮ 集 合 シタ ル者 ノ全 部 石井 ノ説 ヲ賛 成 シ集 産党 ヲ結 社 シ タ ル旨 ノ

シ テ政 治 行動 ヲ執 ル集 産 党 ヲ組織 スル必 要 アリ 此 ノ結 社 ハ⋮ ⋮ 中 略

値 ニ応 シ報酬 ヲ得 セシ メ サ ルヘ カ ラ ス而 シ テ ソ ノ実 現 ヲ計 ル機 関 ト

ハ生 産 機 関 ヲ国 家 ノ有 ニ帰 セ シ メ分配 ヲ国 家 ノ手 ニヨリ テ労 働 ノ価

会 ノ手 ニ依 リ テ労 働 ノ価値 ニ相 当 シ テ分 配 ス ルノ要 ア リ而 シ テ現在 ノ資 本 的 組 織 ヲ破 壊 シ共産 主 義 的 社 会 ヲ建 設 ス ル為 ニ ハ其 ノ実 現 運 動 ヲ為 ス機 関 ト シテ 政 治行 為 ヲ為 ス結 社 ヲ組 織 ス ル コト 急 務 ナ ル ニ 依 リ吾 々 ハ共 産 主義 者 (コ ンミ ユ ニスト )ト シテ前 衛 分 子 (ケ ル ン) ヲ以 テ新 芸 術協 会 ノ 上 ニ立 ツ集 産 党 ト称 ス ル結 社 ヲ組 織 ス ヘク其 ノ 党 ノ目 的 ハ マル ク ス主 義 ヲ実 行 シ我国 ニ於 ケ ル私 有 財産 制 度 ヲ否 認

会 ヲ実 現 スル目 的 ヲ以 テ集 産 党 ト 名 ツ ク ル結 社 ヲ組

ノ ニ シテ結 局 我 国 ノ私 有 財 産 制 度 ヲ否認 シ共 産 制 社

シ産 業 機 関 ヲ社 会 公 有 ニ移 シ以 テ 共産 制 度 ヲ実 現 スル ニ在 リ タ ル モ (要 旨 第 二)

織 シタ ル モノ ニ係 リ其 ノ生 産機 関 ヲ公 有 ニ帰 セ シ メ共産 主 義 的 社 会 ヲ建 設 ス ル為 ト 云 ヒ又 ハ目 的 ハ産 業 機 関 ヲ社 会 公 有 ニ移 シ共 産 制 度

モ変 革 ス ル コト ヲ図 ル ナ リ資 本主 義 的 経 済 組 織 ヲ否 定 スル ハ物質 ノ

生 産 過 程 全部 ト要 素 ヲ民 衆 ニ共有 ニ帰 ス ル コト ナ リ例ヘ ハ土 地鉄 道

換 言 スレ ハ資 本主 義 的 経 済 組 織 ヲ否 定 シ共 産 主義 的 組織 ニ社 会 制度

鉱 坑 汽 船 其 ノ他 生 産 ヲ為 ス モノ ハ総 テ民 衆 ノ共有 ニ帰 スル コト ナ リ

ヲ実 現 ス ル ニ在 リト 云 フカ如 キ ハ要 スル ニ私 有財 産 制 度 ヲ根 本的 ニ

ニ於 テ私 有 財 産 制 度 ノ行 ハレ居 ル コト ハ顕 著 ナ ル事 実 ニ属 シ原判 決

ノ私有 財 産 制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ ニ外 ナ ラ ス且 我国

集 産 党 ハ以上 ノ事 項 ヲ実 行 ス ル萠芽 形 態 ナ リ 石井 ハソ ノ主 宰 ト ナ リ

破 壊 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ ニシ テ即 チ治 安維 持 法第一 条第一 項

カ判 示事 実 ヲ認 メ テ之 ニ同条 項 ヲ適 用 シタ ル ハ固 ヨリ正 当 ニシテ原

⋮ ⋮無 産 者 ヲ マルク ス主 義 ニ教 化 シ政 治闘 争 ヲ目 的 ト ス ル集 産 党 ヲ

順 治郎 ニ対 スル予 審 第 三 回訊 問 調 書 中 同 人 ノ 供 述 ト シ テ⋮ ⋮ 中 略

組 織 スル コト ノ相 談 アリ ⋮⋮ 中 略 ⋮ ⋮ 下略 (ヘ) 被 告 人 村山 政 儀 ニ

被 告人 等 ハ之 ニ加 盟 シ同 党 ヲ組 織 シ タ ル旨 ノ記 載 (ホ) 被 告 人北 村

ハ理由 ナ シ

判決 ニ ハ所 論 ノ如 キ違法 ナク 又記 録 ヲ査 ス ル ニ原 判 決 ニ ハ重 大 ナ ル

第 二 点原 判 決 ハ其 ノ理 由 中 ﹁(二) 而 シテ被 告 人石 井 長 治 松 崎 豊 作

ニ進 出 シ マル ク ス共産 主 義 ニ教 化 シ共産 主 義 ヲ実 行 シ行 ク ナ リト 説

対 スル予 審 第 二 回 訊問 調書 中 同 人 ノ供 述 ト シ テ⋮ ⋮ 中 略 ⋮ ⋮各 階 級

事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ルヘ キ顕著 ナ ル事 由 ナ キ ヲ以 テ論 旨

シタ ル コト乃 至 被 告 人 石井 長 治 松 崎 豊 作浜野 勇 一佐 藤 鉄 之 助 北村 順

明 シタ ル ニヨリ自 分等 モ賛 成 シ タリ ⋮ ⋮中 略 ⋮ ⋮ ヲ綜 合 シテ之 ヲ認

浜 野勇 一佐 藤 鉄 之 助 等 カ共産 主 義 実 現 ヲ目 的 ト ス ル党 ノ組 織 ヲ謀 議

治 郎 等 カ判 示 ノ如 ク 昭和 二年 八 月 二 十 七 日名 寄 新 芸 術 協 会事 務 所 ニ

ル モ ノト ノ誤 レ ル前提 ノ 下 ニ全 判 決 ヲ構 成 シタ ル モノナ リ ﹁共 産 ﹂

右目 的 ノ為 結 社 ヲ組 織 ス ル コト ハ直 ニ以 テ治 安 維 持 法 違 反 ニ該 当 ス

実 現 ヲ 目的 ト ス ル コト ハ直 ニ私 有 財 産制 度 否 認 ノ結 果 ヲ予 想 シ随 テ

制 ノ下 ニ於 テ ハ財 産 私 有 ノ観 念 ヲ容 ルヘ カ ラ サ ル モ ノト シ共 産 主 義

制 度 ト ヲ同 一ニ解 シ更 ニ共 産 主 義 ハ即 チ私有 財 産 制度 ヲ否 認 シ共 産

分 ナ リ ト ス｣ ト判 示 シ タ リ惟 フ ニ原判 決 ハ私 有 財産 制 度 ト資 本 主 義

指 定 シ役 員 ヲ選 定 シタ ル コト ハ⋮ ⋮ 以 下略 ス⋮ ⋮ ニヨリ其 ノ証 明 十

定 スル ニ足 リ (三) 尚 右 結 社 ノ翌 二 十 八 日判 示 ノ如 ク 正式 ニ党 員 ヲ

チ ソ ノ所 有 関係 ニ至 リ テ ハ大多 数 民衆 ハ資 本 主義 制 度 ノ下 ニ於 テ極

ル管 理 ニア リテ 私有 財 産 制 度 ノ否 認 ニ非 ルナ リ 生産 ノ分 配 ト消 費即

惟 フ ニ共 産 主義 ノ 目的 ト ス ルト コ ロ ハ生 産機 関 ノ公 有 ソ ノ社 会 ニ依

制 度 ヲ認 メ ス﹂ ト言 語 又 ハ実 行 ヲ以 テ意 思 表 示 ス レ ハ足 ル モ ノナ リ

ル カ如 キ 之 ナ リ 此 ノ意 味 ニ於 テ 私有 財 産 ノ否 認 ト ハ ﹁余 ハ私 有財 産

ヲ殺 シタ ル ニ拘 ラ ス公 判 ニ於 テ 人 ヲ殺 シ タ ル ハ被 告ニ 非 スト 主張 ス

ル ニ拘 ラ ス之 ヲ認 メ サ ル｣ コト ヲ指 称 ス ルナ リ即 チ現 ニ被告 人カ 人

葉 ヲ取 テ以 テ直 ニ私有 財 産 制 否 認 ノ証拠 ト為 シ タ ル ハ採証 ノ原 則ニ

否 認 主 義 ト断 定 シ被 告 等 ノ前 記 供 述中 ﹁マル ク ス主 義 実 現 ﹂ 等 ノ言

ハ亦 全 円 滑 ナ ル ヲ期 待 シ得ヘ キ ナ リ原 判 決 カ共 産主 義 即 チ私 有 財産

度ニ 窮 乏 化 シ今 ヤ失 フヘ キ何 物 ヲ モ有 セ サ ル実情 ニア リ寧 ロ共 産主 ︹ママ︺ 義 ノ目 的 ト ス ル処 ニ於 テ コソ民 衆 ノ主 産 物 ノ所有 ト生 活 資 源 ノ供給

ロシ ヤ﹂ ノ権力 下 ニ私有 財 産カ 店 舗 住 宅ニ 日用 消 費 物ニ 随 所ニ 存 在

反 シ不当 ニ事 実 ヲ認 定 シタ ル違 法 ア ル モノ ナ リ就 中被 告等 ノ供 述 中

ナ ル言葉 ノ意 義 如 何 ﹁共 産 ﹂ ト ハ財 産 ノ共有 ヲ意 味 ス ル ニ非 スシ テ

シ ソノ私 権カ 国 法 ノ保 護 ヲ受 ケ ツ ツ ア ル事 実 ハ決 シ テ共 産 主義 ノ主

生 産 機 関 ノ公 有 ヲ意味 ス ル モノ ナ リ共 産 主義 ヲ奉 スル ｢ソビ エツ ト

張 ト矛盾 スル モ ノ ニ非 ルナ リ奴 隷 制 度 封 建制 度 資 本 主 義 制度 ノ発 展

ナ ス モノ ハ総 テ民 衆 ノ 共有 ニ帰 ス ル コト ナ リ﹂ ト ア ル如 キ ハ 一見 治

最 モ具 体 的 ナ リ ト認 メラ ルヘ キ ｢土 地 鉄道 鉱 坑 汽 船 其 ノ他 ノ生 産 ヲ

シ易 シト雖 土 地 鉄 道鉱 坑 汽 船 等 カ ソ ノ 一部国 家 ノ所 有 ニ帰 シ国 家ニ

安 維 持 法 ノ予 想 ス ル私有 財産 制 否 認 ニ該 当 スル コト ナ キ ヤ ノ疑 ヲ生

過 程 カ過去 ニ於 テ示 スカ如 ク共 産 主 義 モ亦資 本主 義 制 度 ヲ母 胎 ト シ

ニ共 産 主義 ノ綱 領 ヲ産 ミ出 シタ ル モノ ナ リ随 テ ソ レカ 一切 ノ ﹁ 私有

テ 資 本主 義爛 熟 ノ裡ヨ リ 即 チ資 本 主 義 展 開 ノ内在 的 法 則 ヨリ必然 的

財 産 ﹂ ソ ノ モノ ノ撤 廃 ニ存 ス ル ニ非 スシ テ生 産 機関 (前 述 ノ通 リ分 配 過 程 マテ含 ム) ノ所 謂 資 本制 ヲ撤 廃 スル ニ存 ス ル コト論 ヲ俟 タ サ

人ニ 禁 シタ ル コト ハ現在 日本 ニ於 テ公 知 ノ事 実 ニシ テ更 ニ米 専 売 全

於 テ 之 カ経 営 管 理 ヲナ シ ツツ ア ル コト 更 ニ塩煙 草 等 ノ生産 経営 ヲ私

土 地 国有 等 ノ議 (貴 族 院 関係ニ 於 テ多 額納 税 議 員 ニ依 リ現 実 ノ問 題

ル ト コロナ リ更 ニ否 認 ト ハ如 何 否 認 ト ハ言 論 又 ハ行 動 ヲ以 テ ス ル人 間 ノ意 思表 示 ナ リ社 会 カ ソノ歴 史 的 必 然 ニ随 テ 生 スル幾 多 制 度上 ノ

スヘ カ ラ スト謂 ハン モ斯 ノ如 キ事 実 ハ明 治維 新 当 時ニ 於 テ 既ニ 明 治

セ ラ レタ ル コト ヲ聞 カ サ ルナ リ或 ハ無 償 大土 地没 収 ノ主 張 ノ如 キ許

政 府 ハ大 名 ノ土 地 邸 宅 ヲ スヘ テ 没収 シ タ ル ニ非 ス ヤ明 治 維 新 ハ封 建

ト シテ論 セラ レ タ ル コト アリ) 等 ア ルモ 何等 治 安 維 持 法 ニ依 テ処 断

ノ程 度等 ニ於 テ モ必 ス シ モ同 一ニ非 ス然 レト モソ ノ如 何 ナ ル社会 制

変 革 ノ如 キ ハ所 謂 否 認 ニ該 当 セサ ル モノナ リ封 建 制 度 ト資 本 主義 制

度 ノ実 現 ヲ目 的 卜 ス ル ニ セ ヨ私 有 財 産 ノ撤 廃 乃至 否 認 卜称 スヘ キ 理

制 度 ヲ撤 廃 シ タ レ ト モ之 ヲ以 テ 私有 財 産 制度 否 認 ヲ実 行 シタ リ ト称

度 ト共 産主 義 制 度 ノ下 ニ於 テ私 有 財 産 ノ範 囲 形態 ソ ノ制 限 法 律保 護

由 ヲ発 見 シ能 ハサ ルナ リ ﹁否 認 ト ハ通 常 ノ意 味 ニ於 テ ハ事 実 存在 ス

ス ル コト ヲ得 サ ル ナ リ要 ス ル ニ財 産 私 有 ノ形 態 ヲ或 ル特 定 ノ条 件 ノ

決ス

右 ノ理由 ナ ルヲ以 テ刑事訴訟法第 四百四十六条 ニ則 リ主文ノ如 ク判 検事三橋市太郎関与

昭和 七 年 (れ)第 七〇 六号棄却 二 治安維持法違反被告事件(同 年七月七日第二刑事部判決

判示事項

(第 二審 ) 大 阪 控 訴 院

著 ナ ル事 由 アリ(4 原) 判 決 ノ摘 示 シタ ル全 証 拠 ヲ綜 合 ス ル モ集 産 党カ

タ ル ハ理由 不備 ノ違 法 ア ルト 共 ニ重大 ナ ル事 実 誤 認 ヲ疑 フ ニ足 ル顕

ノ ニシ テ治 安 維 持 法 第 一条 第 二 項 ニ所 謂 私 有 財 産制 度 ノ否 認ニ 該

モノ ナ ル以 上 ハ我 国 法 ノ認 ム ル私有 財 産 制 ヲ根 本的 ニ破 壊 スル モ

等 重要 財 産 ノ 私有 ニ関 スル国 法 ノ保 護 ヲ排 斥 シ之 カ撤 廃 ヲ期 ス ル

一切 ノ財 産 私 有 ヲ否 認 ス ル モノ ニ非 スト モ苟 モ土 地資 本生 産 機関

項 ノ適 用

﹁私 有財 産 制 度 否 認 ﹂ ヲ目 的 ト ス ル結 社 ナ ル コト ヲ認 ム ヘキ何 物 モ

判○ 決要旨

一切 ノ財 産 私 有 ヲ否 認 ス ル ニ非 サ ル場 合 卜治 安 維 持 法 第 一条 第 二

○

(第 一審 ) 大 阪 地 方 裁 判所

大 塚 力  (上告人) 被告人 服 部 麦 生  弁護人︷ 大 森 詮 夫

)

下ニ 於 テ 一社会 制 度 ナ リ ト認 容 シタ リ ト ス ル モ私有 財 産 制 度 ノ否 認 ナ ル行 為 ハ唯物 弁 証 法 ノ理 論 ノ上 ニ科 学 的 真 髄 ヲ把 握 シツ ツ ア ル共 産 主 義 者 ノ夢 想 タ ニセ サ ルト コロ ニ シテ治 安 維 持 法 ハ共産 主 義 ト ハ 異 レ ル的 ニ向 ケ 矢 ヲ放 チ タ ル モ ノナ リ仍 テ案 ス ル ニ原判 決 ハ(資 1) 本 主 義 制度 ト 私有 財 産 制 度 ト ヲ混 同 シ資 本 主 義 制 度 即 私 有財 産 制 度 ヲ 認 識 シタ ル点 ニ於 テ重 大 ナ ル事 実 誤認 ヲ疑 フ ニ足 ル顕 著 ナ ル事 由 ア リ( 2)共産 主義 ノ意 義 本 質 竝 其 ノ目 的 ヲ摘 示 セ ス シテ 共産 主 義 ヲ以 テ 直ニ 私 有財 産 制 度 否 認 ヲ目 的 卜 ス ル モノ ナ リ ト認 定 シタ ル点 ニ於 テ 理 由 不 備 ノ違 法 ア ルト共 ニ重 大 ナ ル事 実 誤 認 ヲ疑 フ ニ足 ル顕 著 ナ ル 事 由 アリ(3 私) 有 財 産 制 度 ノ否 認 ト ハ何 ンラ ソ ノ内容 ヲ摘 示 セ スシテ ﹁生 産機 関 ノ公 有 例 ヘ ハ土 地 鉄 道鉱 坑 汽 船 其 ノ他 生産 ヲ ナ ス モノ ハ

ナ シ原 判決 ハ証 拠 ニ依 ラ ス シテ事 実 ヲ認 定 シタ ル違 法 アル モノナ リ

当 ス ルモ ノト ス

総 テ民衆 ノ 共有 ニ帰 ス ル﹂ コト ヲ直 ニ私 有 財 産 制度 ノ否 認 ト認 定 シ

(5)原 判 決 ハ財 産 私 有 ノ形 態 範 囲 等 ニ関 スル変 革 ト之 カ否 認 ト ヲ混 同 シ タ ル モ ノニ シ テ重 大 ナ ル事 実 誤 認 ヲ疑 フニ 足 ル顕 著 ナ ル事 由 アリ

被 告 人 上告 趣 意 書 第 一点 (中 略 ) 日本 共 産 党カ 其 ノ闘 争 ノ対 象 ト ス

由

持 法 第 一条 第 一項ニ 該 当 スル所 以 ハ前 項 ニ説 示 ス ル所 ノ如 シ原 判 決

ル資 本 主義 的 所 有 関 係 ノ私 有財 産制 度 ト ハ単 ニ有 体物 ニ対 スル占有

理○

ハ其 ノ判 示事 実 ニ対 シ証 拠 ヲ挙 示 シ之 ヲ認 メタ ル所 以 ヲ説 明 シ毫 モ

リ人 間 ト シテ生 ル ル ヤ否 ヤ必 ス此 ノ生 産 関 係 ニ入 リ此 ノ関 係 ヨリ孤

権 及 之 ニ基 ク諸 権 利 ノ制 度 ニ非 ス シテ 一定 ノ生 産 関係 ヲ意 味 スルナ

ト 云 フ ニ在 レト モ○原 判 決 ノ認 メタ ル被 告 人 等 ノ行 為 カ前 掲 治 安 維

其 ノ理由 ニ欠 ク ル所 ナ ク従 テ 原判 決 ニ ハ所 論 ノ如 キ違 法 ナ ク且 又 重

立 シ テ生存 スル コト 能 ハ ス然 ル ニ私有 財 産 制度 ニヨリ生 産 物 ヲ生産

大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コ卜 ヲ疑 フ ニ足 ルヘ キ顕 著 ナ ル事 由 ナ キヲ 以 テ論 旨 ハ理由 ナ シ

リ 日本 共 産党 ハ此 ノ資 本 主義 的 私 有 財 産 制度 ノ撤 廃 ヲ要 求 ス ルノ ミ

及 日本 共 産 青 年 同盟 ノ根 本 目 的カ 治安 維 持 法 違反ニ 該 当 ス ルモノ ナ

シタ ル ハ其 ノ理由 不備 ノ違 法 ア ル モノ ト云 フヘ シ惟 フ ニ日本 共 産党

ヲ廃 シ私 有財産 制 ヲ撤 廃 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル秘 密 結 社 ナ リト断 定

ヤ否 ヤ ハ公知 ノ事 実 ト 云 フヘ カ ラサ ル ハ勿 論之 ヲ以 テ直 チ ニ君 主制

即 チ人 間 ヨリ 人間 ノ搾 取 ノ廃 止 ヲ要 求 スル ノミ ナ リ治 安 維 持 法中 ニ

党 及 日 本 共産青年 同 盟 カ果 シ テ斯 ノ如 キ目的 ヲ有 ス ル秘 密 結 社 ナリ

ア ル私 有 財産 制 度 ト ハ日本 共 産党 ノ前 述 ノ意 味 ノ モノ ニ非 ス日 本 ノ

ロー ガ ン等ニ 由 ル モノ ナ ラ ン モ之 等 ハ孰 レ モ同党 及 同同 盟 ノ根 本 目

リ ト認 定 セ ラ ル ルノ根 拠 ハ同 党 及 同 同盟 ノ政 治 テ ーゼ組 織 テ ーゼ ス

スル ニ必 要 ナ ル原 料 機 械資 本 等 ハ総 テ資 本家 ノ独 占 スル所 ナリ其 ノ

法 律ニ 規 定 セ ラ レタ ル私 有 財 産制 度 ノ内 容 ハ資本 家 地主 ノ私 有 スル

結 果 生 産 物 ハ生 産 者 タ ル労働 者 ニ属 セ ス悉 ク資 本 家 ニ属 スル ニ至 レ

資 本 生産 機 関 土 地 ノ ミ ニ限 ラ ス労 働 者 ノ賃 金 給料 自 作 農 小作 農 等 ノ

ニ非 ス故 ニ日本 共 産党 ノ私 有 財 産 制 度 ノ撤 廃 ハ治 安 維持 法 ノ私 有 財

社 ノ根 本 目的 ヲ決 定 シ乃 至 ハ行動 ノ基 準 ヲ定 ム ル モノ ニ非 ス単 ニ大

ヲ記述 スヘ キ性 質 ノ モ ノ ニ非 ス又 ス ローガ ン ニ ハ政 綱 政策 ト異 リ結

ハ当面 ノ方 針 意 見 書 ト 称 スヘ キ モノ ニシテ 一定 ノ根 本 目的 ナ ル モノ

産 制 度 ノ否 認ニ 該 当 セ スト云 ヒ﹄ 同 第 二 点 ハ日本 共 産 青 年 同盟 (共

衆 動員 ノ旗印 ト シテ ソ ノ時 々 ニ応 シテ掲揚 ス ル 一時 的 ノ合 言葉ニ 過

的 ヲ表 示 シ タ ル モノ ニ非 スト謂 ハサ ルヘ カ ラ ス即 チ テ ーゼ ナ ル モノ

青 )ニ 対 シ治 安 維 持 法 ヲ適 用 シタ ル ハ違 法 ナリ上 来 ノ説 明 ニ依 リ 日

ン中ニ ﹁君 主制 ノ撤 廃 ﹂ ヲ掲 ケ タリ ト スル モ之 ヲ以 テ同 党 及 同 同盟

キ サ ル モノ ナリ 従 テ 日本 共 産 党 及 日本 共 産 青年 同 盟 当 面 ノ ス ロ ーガ

ト 認 メ ス又 自 作 農 小作 農 等 ノ財 産 ヲ暴力 ヲ以 テ廃 止 セ ント ス ル モノ

本 来産 党ニ 治 安 維 持 法 ヲ適 用 ス ル コト ノ違 法 ナ ル コト 明 カ ナ レ ハ同

財 産 ヲ モ包 含 ス レト モ日本 共 産 党 ハ労 働 者 ノ賃 金 給 料等 ヲ私有 財 産

法 ヲ日 本 共産 青年 同 盟ニ 適 用 スヘ カ ラ サ ル コト勿 論 ナ リ殊ニ 日本 共

ハ各 国 ノ共 産 党 ノ テ ーゼ スロ ーガ ン ニ於 ケ ルト同 シク共 産 党 ノ根 本

ノ根 本 目 的 乃 至 政綱 ナ リ ト断 定 スヘ カ ラ ス要 之 テ ー ゼ ス ローガ ン等

目 的 ヲ表 示 シ タ ル モノ ニ非 スシ テ当 該社 会 発 展 ノ諸 条 件 ヲ具 体 的 ニ

テ日 本 共産 青 年 同 盟 ハ其 ノ階 級 ノ 一部 タ ル青年 大 衆 ノ組 織 ニシテ 二 者 各 異 ナ リ タ ル目 的 ヲ有 シ同 一ニ非 ス日本 共産 青 年 同 盟 ハ日 本 共産

経済 上ニ 於 ケ ル大衆 的 行動 ニ大 衆 ヲ動 員 ス ル合 言葉 ニシテ労 働 者 階

指 摘 シ労 農 大 衆 ノ当 面 ノ要 求 条 件 ヲ指摘 シソ レ ニ基 キ活 動 シ政 治 上

産 党 ハ全 プ ロ レタ リ ヤ階級 闘争 ヲ指 導 スルプ ロ レタ リ ヤ ノ組織 ニシ

ト被 指導 者 カ同 一目 的 ナ リト 云 フ ヲ得 スト云 ヒ﹄ 弁 護 人 大 塚 力 上 告

党 ノ指 導 ノ下 ニア ル モ司命 ノ下 ニ非 ス指 導 ノ下 ニア レ ハト テ指 導 者

ーガ ン及 ソ ノ他 ノ文 書 等 ノ内 容 ヲ探 究 ス レ ハ畢竟 スル ニ其 ノ根 本 目

リ要 之 日本 共 産 党 及 日 本共 産 青 年 同 盟 ノ根 本 目 的 ハソノ テ ー ゼ ス ロ

的 ト ス ル所 ハ労 働 者 階 級 ノ権 益 ヲ真 実 ニ擁 護 スル コト ニアリ原 審 判

級 ノ必 然 的 要 求 ノ異 ナ ル ニ従 テ異 リ変 化 ス ル ニ従 テ変 化 ス ル モノ ナ

カ国 際 共 産 青 年同 盟 ノ 一支 部 ト シ テ孰 レ モ我 カ君 主制 ヲ廃 シ私 有 財

ニ於 テ ﹁日 本 共産 党カ 国 際 共 産党 ノ 一部 ト シ テ又 日本 共 産 青 年 同 盟

産 制 ヲ撤 廃 シ無 産 階 級 ノ独 裁 ノ階 段 ト シテ共 産 主 義 社 会 ヲ建 設 スル

示 ノ如 キ君 主 制 ノ廃 止 私 有財 産制 ノ撤 廃 ヲ根 本 目 的 ト スル モノ ニ非

趣 意 書 第 一点 ハ原 判 決 ハ理 由 不備 ノ違 法 ア リ原 審 判 決 ハ其 ノ理 由 中

コト ヲ目 的 ト ス ル秘 密 結 社 ナ ル ノ云 々｣ ト説 述 シ ヲ レト モ日本 共 産

日本 共 産 青 年同 盟 ト ハ窮 極 ス ル所 同 一ナ リト ナ シ日本 共 産 青 年 同盟

君 主 制 撤 廃 私有 財 産 制 ノ否 認 ニ在 リ ト ナ スモ之 ヲ以 テ 日本 共 産党 ト

スト云 ヒ﹄ 同第 二点 ハ仮 ニ 一歩 ヲ譲 リ 日本 共 産 党 ノ根 本 目 的 ヲ以 テ

ア リ マ シテ此 ノ社 会 ヲ通 リ過 キ タ後 ニ於 テ真 ノ世 界 共 産 主義 ト云 フ

テ ア リ マ ス コノ社 会 主義 ト 云 フ階 段 ハ共 産 主義 ノ最 初 ノ第 一階 段 テ

ア独 裁 ヲ立 テ ソウ シ テ社会 主 義 ノ社 会 ヲ建 設 ス ル コト カ直接 ノ目 標

ノ階 級 闘 争 ノ労 働 者 軍 ノ前 衛 テ アリ マシテ要 スル ニブ ルヂ ヨア ーノ

記 録 ) 又 同 党 中 央 委員 三 田村 氏 ハ ﹁日 本 共産 党 ハ唯 今申 シ マシ タ コ

ハ大 体 ヲ申 セ ハサウ 云 フ モノ テ ア リ マス｣ ( 東 京 地 方裁 判 所 公 判速

党 ト同 同 盟 ト ハ其 ノ組 織 カ全 然 独 立 シ居 リ従 テ其 ノ機 関 モ自 ラ相 違

手 カ ラ政 権 ヲ奪 取 シプ ロ レタ リ ヤ独裁 ヲ樹 立 シブ ルジ ヨアジ ーノ労

モノ カ成 立 スル訳 テ アリ マ ス共 産 イ ン タ ー ナ シ ヨナ ル ノ性 質 及 目 的

シテ ヲ リ後 者 ハ階 級 闘争 ノ理論 ノ下 ニ青 年 ヲ教育 シ青 年 ノ要 求 ヲ容

働 者ニ 対 スル搾 取 ソノ支 配 ヲ廃絶 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ルト コ ロノ労

ヲ以 テ日 本 共産 党 ノ貯 水 池 ト視 日本 共 産 青 年 同 盟 ハ将 来 共 産 党 ニナ

レ之 ヲ指 導 シテ行 クト 云 フ立 場 ニア リ君 主制 ノ撤 廃 私 有 財 産制 ノ否

働 者 階 級 ノ政党 テ ア ル然 ルニ日本 ノブ ルジ ヨアジ ー ハ我 党 ヲ自 己 ノ

ルヘ キ者 ヲ教 育 スルト 云 フ立 場 ニア ル モノト断 定 ス ル ハ軽 卒 ナリ同

ル モノ ナリ ト ナ ス ニ至 ツテ ハ恰 モ無 産 者 解放 ヲ叫 ヒ之 カ運動 ヲナ ス

認 ヲ目的 ト ス ル モノ ニ非 ス然 ル ニ之 ヲ以 テ日本 共産 党 ノ指 導下 ニア

判 速 記 録 ) ト主 張 シテ居 ル即 チ日本 共 産 党 ノ目 的 ハ日本 共 産党 ノ右

リト シテ告 発 シテ居 ルノ テ アリ マス﹂ ( 東 京 地 方裁 判 所 刑 事 二 部 公

代 表 的意 見ニ 依 レ ハ原 判 決 ノ認 定ト 根 本 的 ニ相 違 ス ル モノ ニシテ同

政 敵 ト シ テ闘 フ コト ヲ セ ス ニ君 主 ニ対 スル敵 ト シテ吾 々ヲ犯 罪者 ナ

ア ル モノ ニシ テ同 同盟 ノ根 本 目 的 ヲ以 テ君主 制 ノ撤 廃 私有 財 産 制 ノ

党 ノ ス ロ ーガ ン中ニ ﹁君 主 制 ノ撤 廃 ﹂ ナ ル語 ア ル モ右 ハ同党 ノ目 的

一般 労働 組 合 ヲ モ党 ノ指 導下 ニア ル モ ノ ナリ ト論 スルト其 ノ軌 ヲ 一

否 認 ヲ目 的 ト スル秘密 結 社 ナ リト論 ス ル同 同 盟 ノ根 本 目的 ノ認 定ニ

又 ハ根 本 目標 ニ非 サ ル コト ハ前 掲 佐 野 三 田村 氏等 ノ主 張 ニヨリ テ明

ニス ル モノ ト云 フヘ シ両 者 ハ事 実 上 同 一テ ナ ク全 ク各 独自 ノ立 場 ニ

当 リ 重大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ヲ疑 フ ニ足 ルヘ キ顕 著 ナ ル事由 ア ル モノト

白 ニシテ 日本 共 産 党 ヲ規 定 ス ル ニ当 リ事 実 ト符 合 セ サ ル ハ正ニ 治 安

セ ルノ ミ ニ シテ果 シ テ君 主制 ノ廃 止 カ治 安維 持 法 ノ所 謂 国体 ノ変 革

云 フ ヘ シト 云 ヒ﹄弁 護 人 大 森 詮 夫 上告 趣 意 書 第 一点 ハ原 判 決 ハ重 大

ト ナ ルヤ否 ヤ ニ就 テ ハ何等 ノ説 明 セ ス然 レト モ日本 裁 判 例上 国 体変

ナ ル事 実 ノ誤認 ア ル不法 ノ判 決 ナリ 即 チ原 判 決 ハ ｢日本 共 産 党カ 国

ノ独 裁 ヲ階 段 ト シテ共 産 主 義 社会 ヲ建 設 スル コ卜 ヲ目的 ト ス ル秘 密

維持 法違 反 事 件 ニ於 ケ ル最 モ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ト謂 フノ外 ナ シ第

結 社 ナ ル ノ情 ヲ知 リ乍 ラ犯 意 ヲ継 続 シテ 云 々｣ ト判 示 シテ居 ル然 シ

革ニ 就 キ テ或 ハ ﹁吾 国家 存 立 ノ大 本 タ ル立憲 君 主 制 ヲ廃 止 シ﹂ 又 ハ

二 ニ原判 決認 定 ハ単 ニ日 本 共産 党 カ ｢君 主制 ヲ廃 止 シ｣ 云 々ト判 示

此 ノ認 定 カ第 一ニ日本 共 産 党 ノ 目的 ニ就 テ重 大 ナ ル誤 認 ア ル モ ノ ナ

﹁君主 制 ノ廃 止 ﹂カ 国体 変 革 ト如 何 ナ ル関 係 ヲ有 スル カ ハ判 決 ニ於

単ニ ﹁君 主 制 ノ廃 止 ﹂ ト判 示 シ テ未 タ統 一的 ナ 主 張 ヲ見 ス従 ツ テ

一支 部 ト シ テ孰 レ モ我 君 主 制 ヲ廃 止 シ私 有 財 産 制 ヲ撤 廃 シ無 産 階 級

リ コミ ン タ ンノ目 的 従 テ又 日本 共 産 党 ノ目的 ハ同党 中 央 委 員 長 佐野

際 共 産 党 ノ 一支 部 ト シテ 又日 本 共 産青 年 同 盟カ 国 際 共産 青 年 同 盟 ノ

学 氏ニ 依 レ ハ ﹁コミ ン タ ンノ直 接 ノ目 標 ハ世 界 中 ニ於 テプ ロレ タリ

テ之 ヲ明 的 ニ判 断 シ説 明 セサ ルヘ カ ラサ ル モノ ナリ此 ノ点 ニ於 テ原

( 其 ノ他 ノ上告 論 旨 及 判 決 現由 ハ之 ヲ省 略 ス)

論 ノ如 キ理由 不備 ノ違 法 ア ル コト ナ シ論 旨 ハ孰 : モ其 ノ 理 由 ナ シ

検 事 平 井 彦 三 郎関 与

判決 ス

以上 ノ理 由 ナ ル ニ依 リ刑 事 訴 訟 法 第 四百 四十 六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク 原 判 決 ノ判 示 ス ル所 ニ依 レ ハ日本 共産 党 竝 日本 共産 青 年

( 第 二審 ) 東 京 控 訴 院

和九年 (れ)第 一二 一二号 三 治安維持法違 反事件 (昭 同年十 二 月六日第 一刑事部判決棄却)

同 盟 (共 青 ) ハ共 ニ我 カ君 主 制 ヲ廃 止 シ私 有 財 産制 ヲ撤

判 決 ハ判 決 ニ理 由 ヲ附 セサ ル違 法 ア リト 謂 ハサ ルヘ カ ラ スト 云 フ ニ 在 レト モ (要 旨 ) 廃 シ無産 階 級 ノ独 裁 ヲ階 段 卜 シテ共 産 主 義 社 会 ヲ建 設 スル コト ヲ目

シ得ヘ ク記 録 ヲ精 査 ス ル モ原 判 決 ニ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ

的 ト ス ル秘 密 結 社 ニシ テ該事 実 ハ原 判 決 引 用 ノ 証拠 ニ ヨリ之 ヲ認 定

(上告 人 ) 今 野 健

夫

疑 フ ニ足 ルヘ キ顕 著 ナ ル事 由 ナ シ而 シ テ我 大 日 本帝 国 ハ万 世 一系 ノ

判示事項

天 皇 君臨 シ統治 権 ヲ総攬 シ給 フ コト ヲ以 テ其 ノ国体 ト為 ス ハ建 国 ノ

○

( 第 一審 ) 東 京 地 方裁 判所

私 有財 産 制 度 ノ要 素 ヲ破 壊 ス ル場 合 ト 大 正十 四年 法 律 第 四十 六 号

肇 ヨリ確 立 シテ無 窮 ニ伝 ハリ憲 法 首 条 ノ昭 示 スル所 ナリ治 安 維 持法 第 一条ニ 所 謂 国 体 ノ意 義 モ亦 之 ニ外 ナ ラ サ ル カ故 ニ君 主 制 ノ廃 止 ハ

判決要旨

第 一条 第 一項 ノ適 用

現 在 ノ資 本 家 所 有 ノ大 土 地 ヲ非 合 法 的 ニ無 償 没収 シ之 カ所 有 権 ヲ

○

同 条ニ 所 謂 国 体 ヲ変 革 ス ル モノ ニ該 当 スル コト論 ヲ竢 タ ス次 ニ原判

縦 令 所論 ノ如 ク 一切 ノ財 産 私有 ヲ否 認 スル モ ノ ニ非 スト ス ル モ苟 モ

ヲ破 壊 ス ル結 果 ヲ来 スヘ キ モノ ニ シテ治 安 維持 法ニ 所 謂 私 有財 産

無 視 ス ルカ如 キ ハ我 国 法 ノ認許 セ ル私 有 財 産 制度 ノ重 要 ナ ル成 素

示 日 本 共産 党 竝 日本 共 産 青年 同 盟 ノ目 的 ト ス ル私有 財 産 制 ノ撤 廃 ハ

カ撤 廃 ヲ期 ス ル モノ ナ ル以 上 ハ我 国 法 ノ認 ム ル私有 財 産 制 ヲ根 本 的

由

制 度 ノ否 認 ニ該 当 スル モノト ス

土 地 資本生 産 機 関 等 重 要 財 産 ノ私 有 ニ関 ス ル国 法 ノ保 護 ヲ排 斥 シ之

ニ破 壊 ス ル モノ ニシテ治 安維 持 法 第 一条ニ 所 謂 私有 財 産 制 度 ノ否 認 ニ該 当 ス ル モノト 云 ハサ ル ヘカ ラ ス果 シ テ然 ラ ハ原 審カ 判 示 事 実 ヲ

理

被 告 人今 野 健 夫 上 告 趣 意 書 ノ要 領 ハ (一) 原 判 決 ハ日 本共 産 党カ 治

○

処断 シタ ル ハ毫 モ違 法 ニ非 ス且 又原 判 決 カ日 本 共産 党 竝 日本 共 産 青

ヤ ハ裁判 官 ノ決 定 ス ルト コ ロナ リト ハイヘ 同 法 ヲ適 用 シ得 サ ル共産

安 維 持法 違 反 ナ リ ト ノ前 提 ニ基 キテ為 サ レ ア リ此 ノ前 提カ 正 当 ナリ

治 安 維持 法 第 一条 第 一項 第 二項 ニ該 当 スル モ ノト認 メ同 法 条 ヲ適 用

ヲ判 示 ス ル以上 治 安 維 持 法第 一条 第 一項 冒 頭 ニ所謂 国 体 変 革 ニ該 当

党ニ 対 シ之 ヲ適 用 スル ハ正 当 ニ非 ス被 告 人 ハ検 事 又 ハ裁 判 官カ 考 フ

年 同 盟 ハ孰 レ モ我 君 主制 ヲ廃 止 スル コト ヲ目 的 ト ス ル モノ ナ ル コト

ス ル事実 ヲ判 示 ス ル ニ付 欠 ク ル所 ナ キ ヲ以 テ原 判決 ハ大 森 弁 護 人所

体 的 ニ反 対 シ更 ニ正 当 ナ ル裁 判 ヲ要 求 ス ル ナリ法 律 的 ニ云ヘ ハ日本

テ処断 ス ル ハ不 当 ニシテ被 告 人 ハ斯 ノ如 キ裁 判 ニ対 シ根 本 的ニ 且全

ル如 キ共産 党 ニ関 係 スル モノ ニ非 サ レ ハ被 告 人 ノ行 為 ヲ同 法ニ 依 リ

スシ テ単 ニ政 治 形態 ノ変 革 ニ過 キサ ルナ リ ( 三 ) 次ニ 日本 共 産 党カ

ア リ然 レト モ君 主制 ヲ廃 シテ共 和制 等 ニ ス ル コト ハ本質 的 変 革ニ 非

的ニ 云 ヘ ハ君 主 制 ヲ共 和 制 度 又 ハソビ エツ ト制 度 ト為 ス コト ナ リト

リ其 ノ具 体的 証拠 ハ共 産 党 カ大 土 地 ノ無 償 没 収 或 ハ大 土 地 所 有 ノ廃

止 卜云 フ ス ロ ーガ ンヲ掲 ケ タ ル コト ニ過 キ ス大 土 地 ヲ無 償 没 収 シ大

治 安 維 持 法違 反 ナリ ト ス ル理 由 ハ私有 財 産 制 度 ノ否 認 ト 云 フ コト ナ

ニ於 テ ハ夫 レ カ区 々ト ナリ居 リ第一 審 裁判 長 ハ其 ノ判 決 ニ於 テ 日本

ス何 ト ナ レ ハ大 工場 鉱 山 銀 行 等 所謂 大産 業 ハ依 然 ト シテブ ルヂ ヨ ア

土 地 所 有制 ヲ廃 止 シタ ノ ミ ニテ ハ決 シテ私 有 財 産制 度 ノ否 認 ト ナ ラ

共 産党 ハ国 体 ノ変革 私有 財 産 制 度 否 認 ヲ以 テ 目的 ト ス ル秘 密結 社ニ

共 産党 カ右 ノ如 キ目的 ヲ有 ス ル秘 密 結 社 ナ リ ト認 定 セサ ル ニ拘 ラ ス

非 サ ル ニ拘 ラ ス検事 ハシカ ク解 釈 シ テ起 訴 シタ ル モ予審 終結 決 定 書

之 ニ治 安 維 持 法 ヲ適 用 シテ其 ノ理由 ヲ示 サ ス第 二審 判 決 亦之 ヲ明 確

ハ之 ヲ以 テ決 シテ私 有 財 産 制 ノ否 認 ト ハナ ラ ス殊ニ 中 小 農 ノ土 地 ヲ

階 級 ノ モノ ナ レ ハナ リ 又土 地 ヲ没収 ス ル モ之 ヲ農 民ニ 分 配 スル ナ ラ

無 償 没収 シタ リ土 地 所 有 制 ヲ廃 止 シタ リ為 サ サ ル限 リ未 タ同制 度 ノ

ハ統 一公 開 ノ裁 判 ニ拠 ラサ ルヘ カ ラサ ル ニ原 審 ハ反 対ニ 分 割 的 個 別

否 認 ト 云 フヲ得 サ ルナ リ ( 四 )検 事 ノ論 告 ニ社会 ノ基 礎 タ ル私有 財

ナラ シメ サ ル ナ リ共産 党 ノ如 何 ナ ル モノ ナ ルヤ ヲ明 確 ナ ラ シム ル ニ

ル コト ハ同 党 弾 圧 ナ ル階 級 的 闘 争 ヲ合 理化 合 法 化 ス ル モノ ニシ テ共

ヲ指 シテ云 フ モノ卜 ス レ ハ明 ニ是 等 ノ大 多 数者 ハ私 有 財産 ヲ所 有 セ

的 ニ裁 判 ヲ為 セ ル ハ失 当 ナ リ日 本共 産 党 ヲ治 安 維持 法 ニ該 当 セ シ ム

サ ル無 産 者 ニシ テ私 有 財 産制 度 ハ此 等 ノ社会 ノ基 礎 ヲ為 サ サ ルナ リ

ハ農 民或 ハ中 小 商 工 業者 其 ノ他 サ ラ リ ー マン等 即 チ人 民 ノ大多 数 者

維 持 法ニ 違 反 ス ル ハ国 体 ヲ変 革 シ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ルカ故 ナ リ

同制 度 ノ否 認 ト ハブ ル ヂ ヨア私 有 財 産 制度 ノ否 認ニ 過 キ ス シテ斯 カ

産 制度云 々ト ア リ タ リ然 レト モ社 会 ヲ以 テ数 百万 ヲ算 ス ル労 働 者 又

ト云 フ其 ノ国 体 ノ変 革 ト 為 ス モノ ハ同 党 カ君 主制 ノ廃 止 或 ハ天 皇制

ル制 度 ノ否 認 ハ社 会 ノ基 礎 ヲ破 壊 ス ル モノ ニ非 ス (五 )裁 判 官カ 共

コト ヲ目 的 ト ス ル コト ニ外 ナ ラ ス (二) 裁 判 官 ハ日 本共 産 党カ 治 安

ノ廃 止 ト 云 フ ス ロー ガ ン ヲ掲 ケ タ リ ト云 フ ニ在 リ検 事 ノ論 告 ハ君主

産 党 ハ治 安 維 持 法 違 反 ナリ ト判 決 スル モ被 告 人 ハ全 然 之 ニ反 対 スル

産 党 事 件 ノ裁 判 ハブ ルジ ヨアジ ー ノ階 級 闘 争 ヲ合 理 化 シ合 法 化 スル

ナ リト 云 フ モ斯 ク ノ如 キ歴 史的 確 信 カ ア リ得 サ ルカ故 ニ共 産 党カ 君

モノ ナ リト 論 シ独 自 ノ 見解 ヨリ 日本 共 産党 ノ主 義 精 神 ヲ説 明 シ テ反

制 ノ廃 止 即 チ国 体 ノ変 革 ニシテ国 体 ハ国 民 ノ歴史 的 確 信ニ 基 ク モノ

覆 理論 闘 争 ヲ試 ミ被 告 人等 ノ行 動 ハ同 法違 反 ニ非 サ ル ニ依 リ無 罪 即

時 解 放 ヲ要 求 ス ル モノ ナ リ然 ル ニ原 審 ハ被 告 人 ヲ以 テ同党ニ 加 入 シ

モノ ニ非 ラ ス共 産 党 ハ労 働者 農 民 ノ ソビ エツト権 力 ノ樹 立 ト シテ ノ

其 ノ活 動 ヲ為 シ タ ル モノ ナ リ ト認 メ同法 ニ依 リ懲 役 七年 未 決 勾留 日

主 制 廃 止 ノ ス ロ ーガ ンヲ掲 ク ル ハ決 シテ検 事 ノ論 告 ニ於 ケ ル意味 ノ

モノ ニシテ検 事 論 告 ノ 如 キ単 ナ ル国 体 ノ変 革 ト云 フ 一方 的 無政 府 的

数 四百 日 通算 ノ 判決 ヲ為 シタ リト雖 モ六箇 年 以 上 ノ未 決 勾 留ニ 対 シ

闘 争 ヲ ス ロー ガ ント シ テ此 ノ君 主 制 廃 止 ト 云 フ ス ローガ ン ヲ掲 ク ル

ノ モノ ニ非 サ ルナ リ司法 省 当 局 ノ解説 ニ依 レ ハ国 体 ノ変革 ト ハ具 体

四 百 日 ノ通 算 ハ過 少 ナ ルノ ミ ナ ラ ス七年 ノ懲 役 ハ過 重 ナリ仍 テ上 告

判 決 ヲ攻 撃 ス ル ニ帰 シ採 用 ス ヘカ ラ ス (三) 現行 法 ノ下 ニ在 リ テ ハ

解 ニ基 キ恣 ニ日本 共 産 党 ハ治安 維 持 法 ノ結 社 ニ該 当 セ スト為 シテ原

モノ ニ シテ斯 カ ル土 地 ヲ非 合 法 的 ニ無 償 没収 シ之 カ所 有

資 本 階 級 所 有 ノ大 土 地 ト雖 固 ヨリ法 律 ノ保 護 ヲ受 クヘ キ

権 ヲ無 視 スルカ 如 キ ハ我 国 法 ノ認許 セ ル私 有 財産 制 度 ノ重 要 ナ ル成

( 要旨)

ニ及 フト 云 フ ニ在 レト モ (一) 原 判 示 事 実 ハ原 判 決 挙 示 ノ証 拠 ニ依 リ テ優 ニ之 ヲ証 明 スル ニ

素 ヲ破 壊 ス ル結 果 ヲ来 スヘ キ モノ ナ レ ハ治 安 維持 法ニ 所 謂 私 有財 産

足 ル之 ニ依 レ ハ被 告 人 ハ日本 共 産党 カ 我国 建 国 ノ大 本 タ ル君主 制 ヲ

ア ート独 裁 制 度 ヲ樹 立 シ之 ニ依 リ テ共 産 主義 社会 ヲ実 現 セ シ ム ル コ

企 図 ス ル以上 私 有 財 産 制度 否 認 ヲ目 的 ト ス ル結 社 ナ ル コト言 ヲ マタ

撤 廃 シ私有 財 産 制度 ノ基 調 ト スル資 本 主義 社 会 ヲ顛 覆 シプ ロ レタ リ

サ ルト コ ロ ニシ テ他 日没 収 土 地 ヲ農 民 ニ分 配 ス ルト否 ト ハ右 制 度 否

ヲ為 シ延 イ テプ ロ レ タリ ア ー ト独 裁 ヲ樹 立 シ共 産 主 義 社会 ノ実 現 ヲ

大 正 十 四年 法 律 第 四十 六 号治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段ニ 該 当 ス ル

認 ノ観 念 ニ消 長 ヲ来 スモ ノ ニ非 ス所 論 採 用 ス ヘカ ラ ス (四 )所 論 ハ

制 度 ノ否認ニ 外 ナ ラサ ルカ故 ニ日本 共 産 党 カ右 ノ如 キ所 有 権 ノ廃 止

犯 罪 ヲ構 成 ス ル モノ ト ス記 録 ヲ精 査 スル モ原 判決 ニ重大 ナ ル事 実 ノ

ト ヲ企 図 ス ル非 合 法 結 社 ナ ル コト ヲ知 リ ナ カ ラ之 ニ加 入 シ原判 示 ノ

誤 認 ア ル ヲ認 メ ス又 裁 判 所カ 共同 被 告 事 件 ヲ分 離 シテ審 判 スルト 否

ノ方 法 ナ レ ハ右 ノ如 キ ハ適 法 ナ ル上告 理由 ニ非 サ ルナ リ (五) 被 告

専 ラ検 事 ノ論 告 ニ対 スル攻 撃 ナ ル モ上 告 ハ原 判 決 ニ関 スル不服 申 立

如 キ同 党 ノ目 的 遂 行 ノ行為 ヲ為 シ タ ル モノ ナ ル コト明 白 ニシテ右 ハ

ト ハ其 ノ職権 ニ属 ス ルモ ノ ナ ルカ故 ニ原 審 カ当 該 事 件 ヲ分 離 シ テ個

ナ ル コト ハ叙 上 (一)ニ 於 ケ ル説 明 ニ依 リ テ明 瞭 ナリ ト ス要 之所 論

人 ノ原 判 示行 為 カ前 記 治 安 維 持法 第 一条 第 一項後 段ニ 該 当 ス ル犯罪

別 的ニ 審 判 シタ リ ト スル モ毫 モ違 法 ノ処 置ニ 非 ス所論 ハ畢竟 原審 ト

シ以 テ被 告 人 ノ 行動 ヲ以 テ同 法 ニ問 擬 処 断 シタ ル ハ不可 ナリ ト做 ス

ハ原 審 ト相 容 レサ ル独 自 ノ見 解 ニ基 キ テ 日本 共 産 党 ノ主義 目 的 ヲ縷

相 容 レサ ル独自 ノ見 解 ニ基 キ テ原 審 ノ職 権 ニ属 スル事実認 定 ヲ非 議

モノ ニ外 ナ ラ ス其 ノ他 ノ第 一審 判決 等 ニ対 ス ル非 難 ノ如 キ ハ元 来 第

テ主 眼 ト スル モ日 本 臣 民 タ ル者 ハ何 人 ト雖日 本 法 律 ニ服 従 スヘ ク之

カ服 従義 務 ヲ否 定 スル カ如 キ ハ国 法 ノ許 サ サ ルト コ ロナ リ更ニ 記 録

述 シテ被 告 人 ノ所為 ハ同法 ノ支 配 ヲ受 クヘ キ モノ ニ非 スト為 スヲ以

ヲ精 査 シ犯 行其 ノ他 諸 般 ノ情 状 ヲ考 量 ス ル モ原 審 ノ量 刑 甚 シク不 当

モノ ニ非 ス (二 ) 我 国 ハ万 世 一系 ノ天皇 君臨 シ統 治 権 ヲ総攬 シ給 フ コト ヲ以 テ其 ノ国 体 ト為 シ治 安 維 持 法 ニ所 謂 国 体 ノ意 義毫 モ之 ニ異

二審 ノ判 決 ニ対 ス ル不服 申 立 ノ方法 ナ ル上告 理 由 ト シ テ ハ適 法 ナ ル

ラ ス而 シテ我 君 主 制 ヲ廃 止 ス ル コト ハ即 チ右 ニ云 フト コ ロノ国 体 ノ

ナリ ト思 料 スヘ キ顕 著 ナ ル事 由 ア ルヲ認 メ ス爾 余 ノ所 論 ハ現行 法 ノ

上 告 ノ適法 ナ ル理 由 ト為 スヲ得 ス論 旨 総 テ理由 ナ シ

規 定ニ 照 シ原 裁 判 ノ違 法 ナ ル点 ヲ指 摘 攻 撃 ス ル モノ ニ非 サ ルカ故ニ

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟 法 第 四百 四十 六条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

リ ア ート独 裁 制 度 ヲ樹 立 シ之 ニ依 リ テ共産 主義 社会 ヲ実 現 セ シ ム ル コト ヲ企 図 ス ル非 合 法 的結 社 ハ即 チ同 法 ニ所謂 国 体 ノ変 革 ヲ目 的 ト

変 革 ヲ招 来 ス ルモ ノ ニ外 ナ ラサ ル カ故 ニ右 君主 制 ヲ撤 廃 シプ ロ レタ

スル結 社 ニ該 当 ス ル モノ ト ス所 論 ハ畢竟 原 審 ト 相容 レサ ル独 自 ノ見

決ス

c  ﹁結 社 ノ 意 義 ｣ ニ關 ス ル モ ノ

一 治安維持法違反殺人未 遂公務執行妨害傷害被告事件 昭 和 六 年 (れ)第 一七 八 五 号棄却) ( 同 七年 四月 二十八日第 一刑事部判決

弁護人

越 村 安 太 郎  細 迫 兼 光  { 河 合 篤  布 施 辰 治

(上告審 ニ

(第二審 )  東京控訴院

外七名

(上告人) 被告人 阿 部 作 蔵 

判示事項

( 第 一審) 横浜地方裁判所  ○

於 ケ ル未 決 勾 留日 数 ノ算 入 )

国体 ノ変革私有財 産制度 ノ否認 ヲ目的 ト スル結社︱

検 事 棚 町 丈 四郎 関 与

被 告 人 阿部 作 蔵 上 告 趣意 書第 一 (一) 所 謂 国 家 ヲ変 革 シ私 有財 産 制

プ ロレタ リ ア ノ党 即 チ共 産 党 テ ア ツ テ此 ノ仕 事 ハ勿 論 共 産青 年 同 盟

度 ヲ否認 シプ ロレ タリ ア独 裁 ノ政 治 組 織 ヲ実 現 シ得 ル モノ ハ唯 一ノ

ノ実 現 シ得 ル モノ テ ハアリ マセ ン 一言 ニシテ 云 フナ ラ ハ共産 青 年 同

盟 ハ絶 対 ニ資 本 主 義 社会 ヲ転 覆 シ得 ルト コロノ組 織 テ ハアリ マセ ン

同 盟 ハ党 ノ貯 水 池 テ アツ テ党 カ ラノ働 キ カケ ニ依 ツ テ ノミ始 メ テ共

産 主義 カ ソ コテ訓練 サ レ ルノ テ ア リ マス従 ツテ同 盟 ハ党 ト ノ関 係 ニ

於 テ ハ謂 ハ ハ受 働 的 ナ モノ テ ア ツ テ共 産 主義 ト シテ ハソ レ自 身 ハ未

モ厳 然 卜 区別 サ レネ ハナ リ マセ ン (二 )労 働 組 合 (全 協 ) ニ ハ所 謂

タ未成 ノ組 織 テ ア リ マス党 ト同 盟 ト ハソ ノ組 織 ニ於 テ モ目的 ニ於 テ

共 産 党 ノ フ ラ ク シ ヨ ンナ ルモ ノ カ入 ツテ ヰテ ソノ組合 ノ経 済 的 乃 至

政 治 的 闘 争 ヲ指 導 シソ ノ闘 争 ヲ通 シテ優 秀 ナ労 働 者 ヲ党 ニ獲 得 スル

判 決 要旨

一 治 安 維持 法 ニ所 謂 結 社 ハ必 シ モ其 ノ結 社 独 自 ノ力 ニ ヨリ テ其

ント カ要 求 ト カ ヲ ソノ組 合ヘ 持 ツ テ行 ツテ党 ノ方 針 テ闘 争 サ セ ル コ

ノ テ ア リ マ ス然 シ ソレ等 ノ闘争 ハ党 ノ フ ラク シ ヨンカ党 ノ ス ローガ

○

ノ目 的 ノ実 現 ヲ為 シ得 ル組 織体 タ ル コト ヲ要 セ ス他 ノ同 一目

由

ア リ マス党 ノ フ ラク シ ヨン カ組 合 ニ入 ツ テ居 リ且 ツ ソ レヲ指 導 ス ル

ス ルノ テ ア ツテ従 ツ テ組 合 テ ヤ ル活動 ハ飽 ク迄 モ組 合 テ ヤ ル活 動 テ

ノ 一フ ラ ク シ ヨ ン ハソ ノ組 合 ノ 一組合 員 ト シ テ ソノ協 議 決 定 ニ参加

針 テ闘 争 サ セ ソ レ ヲ指 導 スル ノ テ アリ マス又 組 合 ノ協 議 決 定 ニ ハ党

ト テ ハナ ク組 合 テ決 定 シ タ組 合 ノ ス ロー ガ ンヤ要 求 ヲ ソノ組 合 ノ方

的 ヲ有 ス ル結社 ト 相俟 チ テ其 ノ目 的 ヲ実 現 セ ント ス ル結 社 モ 亦 右 ニ所 謂 結 社 タ ル モ ノト ス ( 要 旨 第 一)

理

言渡 ヲ為 シ得 ル モノト ス ( 要旨第二)

二  上告 裁 判所 ハ上 告 審 ニ於 ケ ル未 決 勾 留 日数 ヲ本 刑 ニ算 入 スル

○

マス (三) 日本 共 産 党 日 本共 産 青 年 同 盟 日 本労 働 組 合全 国 協 議会 ハ

ク党 ノ目 的 達成 ヲ期 ス ル モノ ハ党 ノ組 織 以 外 ニア リ得 ナ イ ノ テア リ

カ ニ間達 テ ア リ マス組合 ハ断 シテ党 ノ目 的達 成 ヲ期 スル モ ノ テ ハナ

コト ニ依 ツ テ組 合 カ党 ノ目 的達 成 ヲ期 ス ル モノ テ ア ルト 云 フ考 ハ明

ト スル結 社 ナリ ト認 メ被 告 人 作蔵 ノ之 ニ加 入 セ ン卜 シテ遂 ケ サ リ シ

原 判 決 カ 日本 共産 青 年 同 盟 ヲ国 体 ノ変 革 私 有 財 産制 度 ノ否 認 ヲ目 的

情 ハ叙 上 ノ理 ニ照 ラ シ毫 モ該 結 社 ノ右 ノ性 質 ヲ害 ス ル モノ ニア ラ ス

日ヵ 本 共 産 党 ト ノ関 係 ニ於 テ常 ニ受 働 的 立場 ニ在 リ ト ス ル モ右 ノ事

獲 得 シ テ呉 レ レ ハ当 然 プ ロレ タリ ア階 級 ハ解 放 サ レ ル シ ソ シテ ソ ノ

ニ於 テ正 ニ 一致 ス ル モノ テ アリ マ スプ ロレ タ リ ア党 カ政 治 的 権 力 ヲ

為 ス点 ニ於 テ共 産 主 義 社 会 ノ実現 ノ為 専 ラ政 治 闘争 ニ当 ル日 本共 産

放 ハ共産 主義 社 会 ノ実 現 ヲ俟 チテ初 メ テ完全 ニ実現 セ ラ レ得ヘ シト

的 ト ス ル モノ ニ ハア ラ サ ル モ其 ノ終 局 ノ 目標 ト スル労 働者 ノ真 ノ解

レ自 体経 済 闘 争 ヲ使 命 ト シ従 テ国 体 ノ変 革 私 有 財 産 制度 ノ否認 ヲ目

リ (二) 原 判 決 ノ認定 シタ ルト コロ ハ日本 労 働 組 合全 国協 議 会 ハ其

コト ハ又 組 合 ヤ同 盟 モ自 ラ ノ目 的 ヲ達 成 ス ル コト ニ ハナ ルテ セ ウト

行 為 ヲ治 安 維持 法 第 一条 第 一項 第 二項 第 三項ニ 問 擬 シタ ル ハ正 当 ナ

云 フテ組 合 ヤ同 盟 カ党 ノ仕 事 ヲ シ ヨウ ト ス ル モノ テ モ ナ シ又 シ ヨウ

ニ於 テ苟 モ党 又 ハ同 盟 ノ指 導 ノ下 ニ党 及 同 盟 ノ目的 実 現 ノ為ニ 寄 与

党 日本共 産 青 年 同 盟 ノ目 的 達 成 ヲ望 ム モノ ニシテ従 テ其 ノ経済 闘 争

ソ レ ソ レ異 ツ タ組 織 ト目 的 ト ヲ持 ツ テ居 リ従 ツテ 又 ソ レソ レノ任務

ト シテ モ出 来 ナ イノ テ ア リ マ ス 一 ニ述 ヘタ ル如 キ目 的 ノ実現 ヤ ソ ノ

モ活 動 モ違 ツ テ居 ル訳 テ アリ マス唯 此 レ等 ノ組 織 ハソノ階 級 的 利害

為 ノ活 動 ハプ ロレ タリ アノ党 テ ナ ケ レ ハ勿 論 出 来 ナ イ コト テ唯 此 レ

スヘ キ機 会 ア ル ニ於 テ ハ其 ノ機 会 ヲ捉 ヘテ党 及 同 盟 ノ目 的 達 成 ヲ援

ノ整 備 拡 大 ニ資 スル行 動 ヲ為 スヘ キ指 令 ヲ下 シ被 告 人作 蔵 等 ハ其 ノ

助 扶 翼 スル ヲ懈 ラサ ル モノ ナ ルト コ ロ本 件 ニ於 テ モ右 協 議 会 ハ其 ノ

指 令ニ 従 ヒテ夫 々原 判 示各 行 動 ニ出 テ 以 テ党 及 同 盟 ノ目的 遂 行 ノ為

等 ノ三 ツ ノ組 織 体 ヲ竝 ヘル コト ニヨ ツ テ孰 レ モ党 ト同 シ目 的 ヲ持 ツ

(一) 治 安維 持 法ニ 所 謂 国 体 ノ変 革 私 有 財 産 制度 ノ

ニス ル行 為 ヲ為 シ タリ ト謂 フ ニア リテ右 ノ事 実 ハ原 判 決 ノ挙 示 スル

経 済 闘 争 ノ手段 タ ルメ ーデ ー 示威 運動 ノ機 会 ニ於 テ同時 ニ党 及 同 盟

否 認 ヲ目 的 ト スル結 社 ト ハ必 シ モ其 ノ結 社 独 自 ノ力

証拠 ヲ彼 此 綜 合 考覈 ス ル コト ニ ヨリ 明瞭 ニ認 定 ス ル コト ヲ得ヘ ク記

モノ テ ア リ若 ク ハ同 シ目的 達 成 ヲ期 ス ル モノ テ ア ルト 云 フ考ヘ ハ明

ニヨリ テ其 ノ目 的 ノ実 現 ヲ為 シ得 ル組 織 体 タ ル コト ヲ要 セ ス他 ノ同

白 ニ間 違 テ ア リ マスト謂 フ ニ在 レト モ

一目的 ヲ有 ス ル結 社 ト 相俟 チ テ右 ノ目的 ノ実 現 ヲ為 ス結 社 モ亦 右ニ

録 ヲ精 査 スル モ其 ノ誤 認 ナ ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル事 由 ヲ発 見 セ ス従 テ

(要 旨第一 )

所 謂結 社 タ ル モノ ト ス原 判 決 カ証拠 ニヨ リ テ認定 シタ ルト コ ロ ハ日

同 盟 ノ目 的 達 成 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シ タリ ト シテ治 安 維持 法 第 一条

被 告人 作 蔵 カ全 国 協 議 会 ノ指 令ニ 基 キ メ ーデ ーノ機 会 ニ於 テ右 党 及

盟 モ日本 労 働 組 合 全 国 協 議会 モ夫 々其 ノ独自 ノ立 場 ヲ有 シ従 テ 日本

第 一項 第 二項ニ問 擬 シ タ ル原 判 決 ハ正 当 ナ リ ( 三 ) 日本 共産 青 年 同

本 共産 青 年 同 盟 ハ脊 年 独 自 ノ立 場 ニ於 テ国 体 ノ変 革 私 有 財 産 制 度 ノ

ト謂 フ ニ ア ルヲ以 テ日本 共産 青 年 同 盟 カ治 安 維持 法 第 一条 第 一項第

否 認 ヲ目的 ト ス ル日本 共 産党 ト同 一ノ目 的 ノ実現 ヲ期 ス ル結 社 ナリ

二 項ニ 所 謂 結 社 ニ該 当 スル コト疑 ナ ク而 シ テ仮 ニ所 論 ノ如 ク該 同 盟

リ ト雖 国 体 ノ変 革 私 有 財 産 制 度 ノ否 認 ハ日本 共 産 党 ニア ラサ レ ハ之

共 産 党 ト ハ別箇 ノ存 在 ヲ有 スル コト ハ以 上 ノ認 定 ニ依 リテ モ明 白 ナ

団 ハ スト ラ イキ、 サ ボ、 集 会 、 デ モ等 ア ラ ユル労 働者 ノ利 益 ノ闘争

ル労 働 者 ノ階 級的 正当 防 衛 ト シ テ生 レタ モノ テ アリ マス労 働 者 自衛

ウ シテ モ組 織 的 テ ナケ レ ハ駄 目 テ ア ルカ ラソ コテ赤色 自 衛 団 ヤ労働

ヲ守 ル為 ノ モノ テ アリ マ ス今 日 ノ労働 者 ハ全 ク武 力 卜暴 力 ノ迫 害 ヲ

者 自 衛 団 カ組織 サ レ ルノ テ ア ツ テ又自 衛 団 テ ア ル カ ラ ソ レ ハ飽 ク迄

ヲ為 シ得 サ ルノ 理 ナク又 日本 共 産党 以外 ノ モノ カ同 党 ノ目的 遂 行 ノ

シ 日本 労 働 組 合 全国 協 議 会 カ日 本 共産 党 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 動

モ自 衛 的 ナ モノ テ ア リ マ ス我 々 ハ成 ル可 ク労 働 者 カ武 器 ナ ト ヲ持 タ

ナ ツ テ来 タ時 仕方 ナ ク武 器 ヲト ル様 ニナ ツ タ ノ テ アリ マス武 装 ハト

ヲ指 令 シ タ リト認 定 ス ル モ毫 モ不 当 ト謂 フヘ カ ラ ス シ テ論 旨 ハ敦 レ

テ イ テ闘 争 シ且 ツ自 分 達 ノ階 級 的 利益 ヲ守 リ得 ル コト ニ常 ニ腐 心 シ

受 ケ テ居 ル ノテ ア リ マ ス労 働 者 ハイ ヨイ ヨ自 分 達 ノ身 体 生命 カ危 ク

モ理 由 ナ シ

為 ニ スル行 為 ヲ為 シ得 ラ レ スト スヘキ理 由 存 セ サ ル ヲ以 テ 日本 共 産

第 二 (四 ) メ ーデ ー ハ労 働 者 階 級 カ ソノ 日 一日 ヲ休 ン テ示威 行 列 ヲ

テ来 タ シ又 ソ レヲ ア ラ ユル闘争 ニ於 テ実 際 ニ実 行 シテ来 テ ヰ ル モノ

青 年 同 盟 カ 日本 共産 党 ト同 一ナ ル目的 ヲ有 ス ル結 社 タ ル コト ヲ認 定

為 シア ラ ユル生産 機 関 カ ラ離 レ ル コト ニ依 ツ テ自 分達 ノ力 ヲ ハツ キ

﹁赤 タ ン ク﹂ ノ配 布 線 ノ確 立等 カ協 議 サ レテ居 マス然 シメ ーデ ー闘

争 ヤ自 衛 団 ノ組 織 ニツイ テ ハ実 際 ニ ハ工場 分 会 卜 シテ如 何 ニ闘争 シ

テ ア リ マス (六) 池 上 本門 寺 裏 山 ノ細 胞 会 議 ニ於 テ職 場 細 胞 ノ組織

組 織 シテ 行 クカ ニツ イ テ討 議 サ レタ ノ テ ア リ マスメ ー デ ー闘 争 ハモ

リ資 本 家 階 級ニ 示 ス国 際 的 闘争 記念 日 テ ア リ マス然 シ メーデ ー ハ単

工場 内 ニ於 ケ ル自 分 達 ノ切 実 ナ日常 要 求 ヲ持 ツテ起 チ ソノ 日常 要 求

ト ヨリ全 工場 労 働 者 ノ闘争 テ アツ テ ソ レ ハ同 盟 ( 党 テ ナ イ) ノ工場

ニオ祭 リ式 行 列 ヲヤ ツ テ ソ レテ イ イ コト テ ハナ ク其 ノ 日 ハ労 働 者カ

ヲ戦 ヒ取 ルヘ キ 日 テ ア リ マス斯 カ ルメ ーデ ー闘争 ハ我 カ国 ニ於 テ モ

細 胞 ト シテ ハ決 シテ指 導協 議 ハ出 来 ナ イ ノ テ アリ マ ス分 会 員 カ又同

時 ニ細 胞員 テア ツ タ ノ テ此 レカ ゴ ツチ ヤ ニサ レタ ノ テ ア リ マス工場

ニ行 ハ レテ来 タ シ又 メ ーデ ー闘 争 ハ以上 ノ如 キ目 的 ト闘 争 性 質 ト ヲ

分 会 ト シテ 一九 三〇 年 ノ メ ーデ ー闘 争 ニ対 ス ル方 針 ニ付 テ討 議 サ レ

今 迄 種 々圧 迫 サ レテ血 ヲ見 ル様 ナ事 件 モア ツ タ ケ レト モ毎 年 合 法 的

ナ ラナ イ ノ テ アリ マス然 ル ニ昭 和 三年 以 来 打 チ続 ク暴 力 的 弾 圧 ノ為

タ コト ハ 一、 工場 ニ於 ケ ル四 月 三十 日 ノ従 業員 大会 ハ右 翼 ダ ラ幹 ニ

持 ツ モノ テ ア ルカ ラ其 ノ本 質 上 ヨリ絶 対 ニ合 法 的 ノ モノ テ ナ ケ レ ハ

ニ左 翼 労 働 組 合 ノ組 織 活 動 ハ殆 ント非 合 法 ニ追 ヒ ヤ ラ レ国 際 的 メ ー

中 心 スロ ーガ ン) ヲ取 リ 上 ケ テ決 議 シ労 働 者 ヲ スト ラ イ キ、 デ モ ニ

テ 工場 ノ大事 ナ要 求 (メ ーデ ー ヲ公 休 ニシ テ日給 全 額 支 給 セ ヨト ノ

組 織 シ更 ニソ レヲ 工場 闘争 カ ラメ ーデ ー闘 争ヘ 発 展 サ セ ル コト 三、

任 セ ナイ テ ソノ指 導 権 ヲ分 会 ハ握 ル コト二 、分 会 ハソ ノ従業 員 大会

ハレテ居 タ ノ テ アリ マス (五) 労 働 者自 衛 団 ハ我 カ国 ノプ ロ レタ リ

デ ー カ来 テ モ全協 ノ下 ニア ル労 働 者 ハ当 然 参 加 出 来 ル筈 ノ メ ー デ ー

ア運動 カ大 キ ナ発展 ヲ ナ シソ レ ニ伴 フ武 装 官 憲 ノ迫害 暴 力 団 ノ暴 行

メ ーデ ーノ デ モ ハ社 会 民主 主 義 幹 部 共 及 ヒ官 憲 ニ守 ラ レ タ ル葬 式 的

ノ デ モ ニ実 際 ニ ハ参 加出 来 ナ カ ツ タノ テ ア リ マ ス合法 性 カ ミ ンナ奪

白 色 テ ロ ルノ横 行 カ イ ヨイ ヨ激 シ ク ナ ツテ来 タ時 始 メ テ ソ レ ニ対 ス

自 衛 団 ) ノ組 織 五、 斯 ク シ テ分会 ハ左 翼 労 働組 合 ト シ テ メ ーデ ー ニ

ト四 、 此 ノ闘 争 ヲ守 ルタ メ ノ職場 班 カ ラ ナ ル労 働 者 ノ武 装 ( 労働者

行 列 テ ハナ ク工場 闘 争 ニモ卜 ツ ク労 働 者 ノ戦闘 的 デ モタ ラ シ メ ル コ

テ無 理矢 理 ニ労 働 者 ヲ仕 事 ニ就 カ セ ルカ ソ レヲ防 ク為ニ ベ ルト ヲ止

ヲ守 ル為 ニ武 器 ノ必 要 ナ ル場合 労働 者 ニ武 器 ヲ持 タ セ三、 破 壊 隊 ハ

モ ヲ ヤ ラナ ケ レ ハナ ラ ナイ コ卜 ヤ ヲア ヂ ・プ ロシ二 、武 器隊 ハデ モ

一、 ア ヂ ・プ ロ隊 ハメー デ ー ノ正 シイ闘 争 ノ事 ヤ労 働者 ハ戦 闘 的 デ

メ スヰ ツ チ ヲ切 リ (ソ シテ ソ レ ヲ ヤ ルノ ハソノ仕 事 ヲ ヤ ツテ ヰ ル労

資 本 家 カ労 働 者 ヲ メレ デ ーニ 参 加 サ セ ナイ タ メ ニ種 々懐 柔 脅 迫 手 段

働 者 自 身 カ ヤ ラネ ハナ ラ ヌ) 或 ハ又 デ モノ邪 魔 ニナ ル ヤウ ナ モノ カ

ノ必 然 的 ニ社会 民 主 主 義 裏 切 リ幹 部 ヲ大 衆 カ ラ切 リ離 シ左 翼労 働 組 合 自 身 ノ拡 大 強 化 ニ導 ク等 ニアツ タ ノ テ ア リ マス七 、 分 会 ハ労 働 者

ア レ ハ取 リ除 イ タリ ス ル役 目 テ決 シテ 工場 ヲ襲 繋 シ工 場 ヲ破 壊 スル

参 加 シ失 ハレタ ル合 法 性 ヲ再 ヒ獲 得 スル コト 六、 斯 ル メ ーデ ー闘 争

自 衛 団 ノ組 織 ニツ イ テ協 議 シ且 ツ其 ノ組 織 ノ為 ニ努 力 シ タ モノ テ ア

ヤウ ナ モノ テ ハナイ ト考 ヘ マス (九) 我 々 ハ日本 労 働組 合 全 国 協 議

体 ハ全 協 テ ア リ此 ノ闘 争 ヲ ヤ ツ タノ ハ化 学 ト金 属 ト ノ 一部 ノ モ ノ テ

リ マ ス前 ニモ述 ヘタ通 リ労働 者 カ メ ーデ ー ニ参 加 シテデ モ ヲ ヤ ル コ

ア ルト 云 フ コト ハ既 ニ明 カ テ ア リ マス ソ シテ此 ノ闘 争 ニ就 テ我 々 ノ

卜 ハ政 府 モ此 レヲ認 メ テ ヰ ル シ又絶 対 ニ認 メ ラ レネ ハナ ラ ヌ モノ テ

的 行 列 ニ終 ルノ ミ ナ ラ ス左 翼 労働 組 合 ハソ ノデ モ ニ参 加 スル コト ス

考ヘ テ居 タ コト ハ至 ツテ簡 単 テ アツ テ唯 労 働 者 ラ シイ戦 闘 的 デ モ カ

ア リ マス然 ル ニ実 際 ニ於 テ ハ労働 者 ハ官 憲 ノ為 ニ強 圧 妨 害 検 束 サ レ

ラ モ出 来 ナカ ツ タ ノ テ ア リ マス分 会 ハメ ーデ ー ニハ労 働 者 ノ利 益 ヲ

メ ーデ ー闘 争 ヲ ヤ ル コト ニナ ツ タノ テ ア リ マ ス従 ツテ 此 ノ闘 争 ノ主

戦 ヒ取 ルタ メノ デ モヲ ヤ ラウ ソ シテ ソ ノデ モ ヲ守 ル為 ニ労 働 者 ノ自

会中 央 常 任 委 員 会 ノ メー デ ー闘 争ニ 対 ス ル指 令 書 ヲ受 ケ ソ レ ニ基 テ

衛 団 ヲ作 ラウ カウ考ヘ タ ノ テ アリ マス分 会 ハ武装 ノデ モヲ ヤ ラウ ト

ニ ハ要 求 ト云 フ モ ノ カナ ケ レ ハデ モ モ スト ライ キ モ出来 ナ イ カ ラ労

ヤリ タ カ ツ タ ノ テ ア ルト 云ヘ ハソ レテ 尽 キ テ居 ル ノテ アリ マ スソ レ

自 分 達 ノ階 級 的 利 益 ヲ守 ル タメ ノ デ モ ハ到 底出 来 ス何 時 モ所謂 葬 式

シ タ ノ テ ハナ クデ モヲ武 装 テ守 ラウ ト シ タ ノテ ア リ マ ス労 働者 自 衛 団 ノ組 織 ノ為 ニ協 議 シタ コト ハソノ コト ハ決 シテ メ ーデ ーノ暴 動 化

ソノ要 求 ノ中ニ ﹁日 本 共産 党 日本 共 産青 年 同 盟ニ 入 レ﹂ ﹁ 資本家地

働者 ノ持 ツ テ居 ル日常 切実 ナ要 求 ヲ掲 ケ ル コト ニシ タノ テ ア リ マス

主 ノ政 府 ヲ倒 セ﹂ ﹁労働 者農 民 ノ政府 ヲ作 レ﹂ 等 ノ ス ロー ガ ン カ ア

乃 至 革 命 化 ヲ意 味 ス ルモ ノ テ ハア リ マセ ン勿論 又分 会 ハメー デ ーノ 暴 動 化 革命 化 ナト ニツイ テ ハ 一 言モ協 議 シ テ居 ナイ シ ソ ンナ コト ハ

テ居 ル シ又 サ ウ云 フ傾 向 ニ モナ ツ テ居 ルノ テ メ ー デ ー闘争 ノ附 随 的

ツタ ケ レト ソ レ ハ従 属的 ナ モノ テ決 シテ メ ーデ ー闘 争 ノ 目的 ト ナ ル

ナ ス ローガ ント シ テ出 サ レタ モ ノ テ アリ マスメ ーデ ー闘 争 ハ ﹁メ ー

モノ テ ハ勿 論 ア リ マセ ン今 日 ノ労 働 者 カ ミ ンナ サ ウ云 フ要 求 ヲ持 ツ

(八 ) 三隊 (アヂ ・プ ロ隊 、 武 器隊 、破 壊 隊 ) ノ編 成 ハ五 月 一日 ノ

カ シテ左翼 労働 組 合 卜 シ テ メ ーデ ー ニ参 加 シ タ カツ タ ノ テ アリ マス

朝 全 協 本部 員 ノ話 ニ基 イ テ急 ニ作 ラ レタ モ ノ テ アリ マ ス然 シ此 レ等

デ ー ヲ公 休 日 ニシ テ日 給全 額 支 給 セ ヨ﹂ ヲ中 心 ト スル労 働 者 ノ日 常

客 観 的 主情 的 ノ状 勢 カ ラ見 テ モ到 底 考ヘ ラ レ マセ ン分 会 ハ唯 々ト ウ

ノ各 役 割 ニ付 テ ハ何 モ話 サ レテ居 マセ ンテ シ タ然 シ大 体 ソ ノ役 割 ハ、

モ ツト モ切実 ナ要 求 カ ソノ目 的 テ ナケ レ ハナ リ マセ ン蓋 シ此 ノ要 求

ト ス ルモ之 カ為被 告 人等 ノ行 動 ヲ日 本共 産 党 日 本 共産 青 年 同 盟 ノ目

人 等 ノ メ ーデ ー示威 運 動 参 加カ 全 国協 議 会 ノ指 令 ニ基 キ為 サ レ タリ

ノ他 ノ所 論 ハ要 ス ル ニ原 判 決 ノ事 実認 定 ト相容 レサ ル事 実 ヲ主 張 シ

的 遂 行 ノ為 ニ スル行動 ナリ ト認 定 スル コト ヲ妨 ク ル モノ ニア ラ ス其

ヲ除 イ テ如 何 ナ ル メ ーデ ー闘 争 モア リ得 ナイ シ又 デ モ モ此 ノ様 ナ要 求 カ アツ テ コソ立 派 ナデ モ モ出 来 ルノ テ ア リ マス繰 リ返 シ テ云 ヒ マ

ト ヲ得 ス (以 下省 略 )

原 判 決 ノ事 実 認定 ヲ攻撃 ス ル ニ帰 ス ル モノ ニシテ孰 レ モ採 用 スル コ

スカ此 ノ闘 争 ノ全 体 ハ全 協 テ ア ツ テ此 ノ闘 争 ヲ ヤツ タ ノ ハ化 学 ト金 属 ノ組 合 テ ア リ マス此 ノ闘 争 ハ党 ヤ同 盟 テ ヤ ツタ モノ テ ハナ ク又組

︹ 結社 ノ拡大強化 ヲ図 ル行為ト結社

( 第 二審) 東京控訴院

弁護 人 青 柳 盛 雄

昭 和 七 年 (れ)第 一二 八 九 号棄却) 二 治安維持法違反被告事件(同 年 十二月 二十二日第 一刑事部判決

合 カ党 ヤ同 盟 ノ目的 達 成 ノ為 ニヤ ツタ モ ノテ モ断 シテ ア リ マセ ン又 サ ウ 云 フ コト ノ出 来 ナイ コト ハ前 ニモ述 ヘ マシタ ト謂 フ ニア ル モ原 判 決 ノ認 定 シ タ ル事 実 ハ被 告 人 作 蔵 等 ハ外十 数 名 ノ者 ト共 ニ昭和 五 年 五月 一日川 崎 市 ニ於 テ メ ーデ ー示 威行 進 ノ挙 行 セ ラ ルル際 ニ於 テ

(上告人) 被告 人 後 藤 宗 一郎 

一、 名

(第 一審) 静岡地方裁判所

外

武装 デ モヲ敢 行 セ ント シ日本 労 働 組 合全 国協 議 会 中 央 常 任委 員 会 ノ

判示事項

指 令 ヲ受 ケ当 日 日石 工場 職 工等 ヲ武 装 セ シメ之 ヲ使嗾 シ テ日石 工場

○

日本共産青年同盟 ノ目的︱

其 ノ他 附 近 ノ工場 ヲ襲 撃 シ次 テ メ ーデ ー 示威 行 進 ヲ要 撃 シ之 ヲ暴 動

判決要旨

化 セ シ メ ント シ以 上 ノ機 会 ニ於 テ日本 共 産 党 及 日本 共 産 青年 同 盟 ノ

○

ノ目的遂行︺

レ﹂ ﹁ 資 本 家 地 主 ノ政 府 ヲ倒 セ﹂ ﹁労働 者 農 民 ノ政 府 ヲ作 レ﹂ 等 ノ ス

目 的 ノ達 成 ニ資 ス ル目 的 ヲ以 テ ﹁日 本共 産 党 日本 共 産 青年 同 盟ニ 入

私有財産制度 ノ否認 ヲ目的 ト スル結社 ニ該当 ス (要旨第 一)

一 日本共産青年同盟 ハ治安維持法第 一条 ニ所謂国体 ノ変革 竝 ニ

二 結社 カ其 ノ組織 ヲ強固ニ シ且其 ノ充実拡大 ヲ図 ル必要 ノ為ニ

ロー ガ ン ヲ墨書 セ ル長旒 八 竿 ヲ押 立 テ竹 槍 拳 銃匕 首 等 ヲ携 ヘテ潮 田

為 サルル行為 ハ結社 ノ目的遂行 ノ為 ニスル行為 ニ属 ス ( 要旨

神 社 境 内ニ 至 リ タ ル モ既 ニメ ーデ ー参 加 ノ 日石 工場 職 工等 ハ同 所 ヲ 去 リ タ ル後 ナリ シ為 同 職 工 ノ跡 ヲ追 ヒテ稲 毛神 社 ニ至 リ同所ニ 在 リ

第二) 由

シメ ーデ ー参 加 団 体 中ニ 乱 入 シ タリ ト謂 フ ニア リ テ右 ノ事 実 ハ原 判

理

ヲ ﹁日本共産党ノ目的遂行 ノ為 ニスル行為﹂ト ﹁日本共産 (主義)

各被告人弁護人青柳盛雄上告趣意書第 一点原判決 ハ被告人等 ノ所為

○

決ニ 挙 示 セ ル各 証 拠 ヲ綜 合 シ テ優 ニ之 ヲ認 ム ル ニ足 リ記 録 ヲ精 査 ス ルモ原判 決 ニ重大 ナ ル事 実 誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル ヘキ事 由 ヲ認

ニ全 国 協議 会 所 属 労 働 組 合 員 ノ メ ーデ ー参 加 ヲ妨 ク ル官 憲 ノ 不当 ナ

ム ル能 ハス果 シテ然 ラ ハ被 告 人等 カ武 装 シタ ル コト ハ所 論 ノ如 ク単

ル弾 圧 ヲ防 衛 ス ル目 的 ノ ミ ニ出 テ タリ ト謂 フ ヲ得 ス又 右 ノ如 ク被 告

シ テ居 ル日本 共 産 党 カ治 安 維持 法 第 一条 ニ所 謂 ｢国体 ヲ変革 スル コ

第 一項 最後 段 同 条 第 二 項 最 後 段ニ 該 当 ス ル モノト シテ法 律 適 用 ヲ為

青 年同 盟 ノ為 ニ スル行為 ｣ ト ニ分 チ其 ノ孰 レ モ カ治安 維 持 法 第一 条

活動ニ 於 テ同 盟 員 ハ共 産党 員 ト連 絡 提 携 シ共産 主 義 ノ宣 伝 同盟 員 党

ヲ共 産 党 ニ送 ル コト ヲ旨 ト スル モノ ナ ル ノ ミナ ラ ス更 ニ其 ノ実 際 ノ

サ ル青 年 ヲ訓 練 シテ将来 共産 党 員 タ ルヘ キ素 地 ヲ作 リ有 力 ナ ル闘 士

ハ日本 共産 党 ト共 通 ノ目的 ヲ其 ノ目 的 ト シ共 産 党 ノ直接 指 導 ノ下ニ

ヨリ極 メ テ明 瞭 ナ リト ス而 シテ此 ノ認 定 ニ依 レ ハ日本 共 産 青年 同 盟

之 ト緊 密 欠 ク ヘカ ラ サ ル連 繋 ヲ保 チ異 体 同 心 ノ作 用 ヲ営 ム補 助 機 関

員 ノ獲 得 ニ努 メ ツ ツ ア ルノ状 況 ナ ル コト原 判 決 ノ認 定 ス ルト コ ロ ニ

カ ノ点 ニ関 ス ル論 議 ハシ ハラク措 キ原 判 決 カ日 本 共産 主 義 青 年 同 盟

ト ヲ目的 ト シテ組 織 セ ラ レ タ結 社 ｣及 ﹁私 有 財 産 制度 ヲ否認 スル コ

モ亦 治安 維 持 法 第 一条 所定 ノ結 社 ニ該 当 スル モノ ナリ ト ノ判 決 ヲ為

ト ヲ目的 ト シテ組 織 セ ラ レ タ結 社｣ ノ孰 レ ニモ該当 ス ル モノ カト ウ

シ テ居 ル根 拠 ヲ其 ノ理由 中 ノ事 実 摘 示 カ ラ窺 フト 要 ス ル ニ日本 共産

同 盟 ハ治安 維 持 法 第 一条ニ 所 謂 国 体 ノ変 革竝 ニ私 有

財 産 制 度 ノ否 認 ヲ目 的 ト ス ル結 社 ニ該 当 ス ル モノ ナ

ニシ テ実際 ノ活 動 ニ於 テ 日本 共 産 党 卜選 フ所 ナ キ モ ノ ナ ルカ故 ニ該 (要 旨 第 一)

主 義 青 年同 盟 モ亦 日本 共産 党 ト同 種 ノ目 的 ヲ有 スル結 社 タ ト云 フ ニ ア ルモ ノノ如 ク テ ア ル併 シ乍 ラ日本 共 産 主 義 青 年 同盟 カ 日本 共 産 党

カ如 キ形 態 ヲト リ故 意 ニ被 告 人等 ヲ シ テ日 本共 産 主 義 青 年 同 盟 ノ 目

同 盟 ニ対 ス ル認識 ノ程 度 低 キ ヲ利 用 シ ソ ノ空漠 タ ル認 識 ヲ誘 発 ス ル

アリ ソノ訊 問 ノ方法 ハ被 告 人等 ノ 日本共 産 党 竝 ニ日本 共 産 主義 青 年

援 用 シテ居 ル原 審 公判 廷 ニ於 ケ ル被 告 人 等 ノ陳 述 ハ空 漠 タ ル モノ テ

陳 述 ヲ反対 ニ援 用 シ テ居 ルノ ハ不法 テ ア ル此 ノ点 ニ関 シテ原 判決カ

根 拠 ヲ明 白 詳 細ニ 説 明 シテ居 ナイ其 ノ理由 中 事 実 記 述 ヨリ窺 知 スル

法 律 適 用 上 ノ判 断 ヲ為 シ居 ルカ何 故 ニカ ク ノ如 キ判 断 ヲ為 シタ カ ノ

維 持 法 第 一条ニ 所 謂 ｢目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ﹂ ニ該 当 スル モノ ト

産 青 年 等 ノ諸 新 聞 ヲ他 人 ニ配 布 シ タ リト ノ事 実 ヲ認 定 シ コレカ治 安

第 二点 原 判 決 ハ被 告 人等 ノ所 為 ト シ テ無 産者 新 聞 第 二 無 産 者新 聞 無

第 一条ニ 所 謂 結 社ニ 該 当 セサ ル コト ヲ主 張 ス ル論 旨 ハ理 由 ナ シ

ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル事 由 ナキ カ故 ニ日本 共産 青 年 同 盟カ 治 安維 持 法

ニヨリ テ之 ヲ認定 スル コト ヲ得 ルノ ミ ナ ラ ス記録 ニ徴 シ其 ノ誤 認 ナ

的 カ日本 共 産 党 ノ ソ レト同 種 ノ モノ タ ル コト ヲ認 メ シメ テ居 ル此 ノ

リト解 ス ルヲ当 然 ト ス而 シテ右 判 決 ノ認定 事 実 ハ原 判 決 挙 示 ノ証 拠

点 ニ於 テ モ亦 原 判決 ハ審理 不尽 理 由 不備 ノ違 法 ア ルモ ノト 謂 ハネ ハ

ニ漠 然 ナ カ ラ其 ノ根 拠 ト ス ル卜 コロ ハ前 記 原 判 決 認 定 ノ所 為 ハ日本

ト同種 ノ目的 ヲ有 スル モノ タト 云 フ コト ハ事 実 ニ反 ス ル虚 偽 テ アツ

ナ ラ ヌト云 フ ニ在 レト モ

共 産 党 又 ハ日 本 共産 主 義 青 年 同 盟 ノ 目的 共 産 主義 ノ宣 伝 煽 動ニ 役 立

テ原 判 決 カ此 ノ公 知 ノ事 実 ヲ隠 蔽 シ被 告 人 等 ノ原審 公 判 廷 ニ於 ケ ル

日本 共 産 青年 同盟 ハ日本 共 産 党 ノ直 接指 導 下 ニア リ青 年 独 自 ノ立 場

ツ コト ニヨリ テ 同結 社 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル モノ タト云 フ ニア ル モノ ノ

ニス ル行 為 ﹂ニ 該 当 スルト 云 フ説 明 ハ何 等 具 体的 テ ハナ イ唯抽 象 的

如 ク テ ア ル併 シ乍 ラ結 社 ノ拡 大強 化 ヲ図 ル コト カ ｢目 的 遂 行 ノ タ メ

ニ於 テ 日本 共産 党 ノ目 的 ト スル私 有財 産 制 度 ヲ否認 シ君 主制 ヲ廃 止 シテ無 産 階級 独 裁 ニ依 リ共 産 主義 社会 ノ実 現 ヲ期 スル秘 密 結 社 ニシ テ其 ノ本 来 ノ職 能 ニ於 テ弘 ク青年 大 衆 ニ働 キ カ ケ未 タ 共産 党 員 タ ラ

概 念 ノ置 換 ニ過 キ ナイ 加之 結 社 ノ拡 大 強 化 ト 云 フ コト ハ絶 対 ニ日本

的 ヲ達 成 セ ン カ為 ニ ハ其 ノ組織 ヲ強 固 ニシ且其 ノ充

実 拡 大 ヲ図 ラサ ル ヘカ ラサ ル コト言 ヲ俟 タサ ルカ故

ニ斯 ル必 要 ノ為 ニ為 サ ル ル行 為 ハ党 又 ハ同 盟 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル

(要 旨 第 二) 立 行為 カ ﹁目 的 遂 行 ノ タメ ニ ス ル行 為 ﹂ ト強 ヒ ル コト ハ日 本 共産 党

カ無 産 新 聞第 二無 産 新 聞 無産 青 年 等 ヲ他 人 ニ配布 シテ日 本 共産 党 及

行 為 ニ属 ス ル モノト 謂 ハサ ル ヘカ ラ ス然 レ ハ原 判 決 ニ於 テ被 告 人 等

共産 党 又 ハ日 本 共 産主 義 青 年 同 盟 ノ目 的 テ ハナイ ソ ノ拡 大 強 化 ニ役

又 ハ日本 共 産 主 義 青年 同盟 ノ目 的 ニ対 ス ル誣 告 テ ア リ此 等 ノ結 社 治

日本 共 産 青年 同 盟 ノ拡 大 強 化 ヲ図 リ タ ル行為 ヲ認 メ之 ヲ党 及同 盟 ノ

安 維 持 法 第 一条 所 定 ノ結 社 ニ該 当 スル モノ ト シタ ル原 判 決 判 定 ト ノ 矛 盾 テ ア ル抑 モ日 本 共産 党 又 ハ日本 共 産 主義 青年 同 盟 ノ目 的 遂行 行

省 略 ス)

ハ正 当 ニシテ論 旨 ハ理 由 ナ シ (其 ノ他 ノ上告 論 旨 及 判 決 理由 ハ之 ヲ

右 ノ理由 ナ ル ヲ以 テ刑事 訴訟 法 第 四 百 四十 六条 ニ則 リ主文 ノ如 ク判

目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為 ナリ ト シテ治 安 維持 法 第 一条 ニ問擬 シタ ル

ル コト ナ ク唯 漠 然 日 本 共 産党 又 ハ日本 共 産 主義 青 年 同 盟 ノ拡 大強 化

決ス

ノ為 ニ ス ル行 為 カ何 テ ア ルカ ハ判 明 シ ナイ コノ点 ヲ具 体 的 ニ説 明 ス

ヲ図 ル行 為 カ治 安 維持 法 ノ ﹁目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ﹂ ニ当 ルト独

検 事 佐 々波 与佐 次 郎 関 与

為 ト ハ何 テ ア ル カ之 カ明白 ニ解 決 セ ラ ル ル コト ナ ク シテ ハ目 的 遂行

テ日本 共 産 党 又 ハ日 本 共 産青 年 同 盟 ノ拡 大強 化 ヲ図 ル コト 自 体 カ党

テ之 ヲ承 諾 シ タ ル以 上 ハ治 安 維 持 法 第 一条 ノ加 入 罪 ヲ構 成 スル モ

日本 共産 主 義 青 年 同 盟員 ヨリ該 同 盟 ニ加 入 ス ヘキ旨 ノ勧 誘 ヲ受 ケ

断 ス ル原 判 決 ハ理由 不備 ノ違 法 ア リ ト云 ハネ ハナ ラ ヌト 云 フ ニ在 リ

又 ハ同 盟 ノ目 的 ニア ラ サ ル コト所 論 ノ如 シト雖 党 又 ハ同 盟 カ其 ノ 目

d  ﹁結 社 加 入 ノ意 義 ﹂ ニ関 ス ル モ ノ

昭 和 九 年 (れ)第 五 一二 号棄却) 一 治安維持法違反被告事件(同 年 六月十八日第 一刑事部判決

ノ ニシテ該 同 盟 ニ於 テ更 ニ加 入 ノ手 続 ヲ為 ス コト ハ同罪 ノ構 成 要

弁護人 斎 藤 素 雄

夫 

利

由

(上告 人) 被告人 林

理

件 ニ非 ス

ヲ認 定 シタ ル ノ不法 ア ルカ又 ハ審 理 不 尽 理由 不 備 ノ不法 ア リ即 チ原

弁 護 人斎 藤 素 雄 上 告趣 意 書 第 一点 ハ原 判決 ハ証 拠 ニ基 カ ス シテ事 実

○

(第二審) 東京控訴院

○ 判示事項

(第 一審 ) 東京地方裁判所

○ 判決要旨

治安維持法第 一条 ニ所謂加 入ノ意義

ニ拘 ラ ス事 茲 ニ出 テ ス氏 名 不 詳 ノ者 ノ加 入 勧 誘 ニヨリ承 諾 シ タ ル旨

須 ク 以上 ノ事 実 ヲ審 理 シ之 カ証 拠 ニ基 キ テ加 入 ノ事 実 ヲ認 定 ス ヘキ

ノ供 述 ニ ヨリ漫 然 右 ノ事 実 ヲ認 定 シ タ ル ハ証 拠 ニ基 カ ス シテ事 実 ヲ

判 決 ノ 理由 ノ部 ニ於 テ ﹁( 前 略 ) 日本 共産 主 義 青 年 同 盟 カ 国 際 共 産

リ我 国 体 ヲ変 革 シ私有 財 産制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル秘密 結

主 義 青年 同 盟 ノ日 本支 部 ニシテ青 年 独自 ノ立 場 ニ於 テ革 命 手段 ニ ヨ

レト モ

認 定 シタ ルカ又 ハ審 理 不 尽理 由 不 備 ノ不法 ア ルモノ ト スト云 フ ニ在

供 述 ハ前 記 ノ如 ク昭和 五年 五 月 頃 市電 電 車 内 ニ於 テ右 同盟 中 央 資 料

ニ依 リ テ之 ヲ認 ム﹂ ト シテ之 カ事 実 ヲ認 定 シタ リ然 レト モ被 告 人 ノ

員 ニ シテ同 同 盟 中 央資 料 調 査 部 内 経 済 部責 任 者 通 称 一郎 コト某 ヨリ

ハ昭和 六 年 五 月 頃 東京 市 営 電 車 内 ニ於 テ判 示 日本共 産 主 義 青 年 同盟

入 ノ必 要 条 件 ニ非 サ ル モノト ス所論 原 判 示 第 三事 実 ニ依 レ ハ被告 人

ノ ニシ テ該 同 盟 ニ於 テ更 ニ加 入 ノ手 続 ヲ採 リ タ ル コト ハ法 ニ所 謂 加

誘 ヲ受 ケ テ之 ヲ承 諾 シタ ル以 上 ハ同 同 盟 ニ加 入 シタ ル モ

調 査部 内 経 済 部 責 任者 通 称 一郎 事 某 ヨ リ右 同 盟 ニ加 入 ス ヘキ旨 ノ勧

(要 旨 )

日本 共 産 主 義 青年 同 盟 員 ヨリ該同 盟 ニ加 入 ス ヘキ旨 ノ勧

社 ナ ル コト (中 略 ) ヲ知 リ乍 ラ (中 略 ) 第 三同 年 五月 頃 東 京 市営 電 車 内 ニ於 テ右 同 盟 員 ニシ テ同 同 盟 中 央 資 料 調 査 部内 経 済 部 責 任者 通 称 一郎事 某 ヨリ右 同 盟 ニ加 入 ス ヘキ旨 ノ勧 誘 ヲ受 ケ テ之 ヲ承 諾 シ以

誘 ヲ受 ケ タ ル ニヨリ之 ヲ承 諾 シタ ル旨 ノ記 載 ア ル ニ過 キ ス シテ之 カ

テ右 事 実 ハ原 判 決 挙 示 ノ証 拠 ニ ヨリ之 ヲ認 メ得 ル カ故 ニ原 判 決 ハ被

右 同盟 ニ加 入 ス ヘキ旨 ノ勧 誘 ヲ受 ケ テ之 ヲ承 諾 シタ リ ト謂 フ ニ在 リ

テ同 同 盟 ニ加 入 シタ ル ハ云 々被 告 人 ノ当 公 廷 ニ於 ケ ル其 ノ旨 ノ供 述

ス同盟 ニ加 入 シ タリ ト ス ル ニ ハ被 告 人 ノ加 入承 諾 ニ基 キ同 同 盟 ニ於

供 述記 載 ノ ミ ニ ヨリ被 告 人 カ同 同 盟 ニ加 入 シタ ル モノト 云 フ ヘカ ラ

内 経 済部 責 任 者 通 称 一郎 ト 称 ス ル氏 名 不 詳 ノ者 ニシテ同 人 カ果 シテ

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟 法 第 四 百 四十 六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

理 由 ハ之 ヲ省 略 ス)

理 不 尽 等 ノ違 法 ナキ ヲ以 テ論 旨 理由 ナ シ ( 其 ノ他 ノ上 告 論旨 及判 決

証 拠 ニ基 カ ス シテ事 実 ヲ認定 シタ ル違 法 ア ル コト ナ ク又 理由 不備 審

同 盟 員 ナ ル ヤ又 ハ其 ノ加 入 ヲ勧 誘 シ之 カ承 諾 ア ル ニ於 テ ハ直 チ ニ同

決 ス

告 人 カ判 示同 盟 ニ加 入 シタ リ ト認 メ タ ル ハ正当 ナ リ然 ラ ハ原 判 決 ニ

盟 加 入 シ タ ル モノ ト為 ス ヘキ権 限 ヲ有 シタ ル ヤ否 ヤ全 ク不 明 ナ リト

検 事 佐 々波 与 佐 次郎 関 与

テ被告 人 ヲ同 盟 ニ加 フ ヘキ手続 ヲ採 リ テ始 メテ同 盟 ニ加 入 シ タリ ト

ス従 テ如 斯者 ノ勧 誘 ニ ヨリ加 入 ヲ承 諾 シ タ リト ス ル モ之 ノ ミ ニ ヨリ

云 フ ヲ得 ヘキ モノト ス況 ン ヤ右 ノ勧 誘 ヲ為 シ タ ル ハ中 央 資 料 調 査部

俄 ニ同 同 盟 ニ加 入 シタ ル モノト 為 ス ヘカ ラ サ ル コト モト ヨリ明 ナ リ

e  ﹁目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ノ 意 義 ﹂ ニ関 ス ル モ ノ

布 施 辰 大森 詮 弁護 人︷ 河 合 小 林 恭

治  夫  篤  平

(昭 和 五 年 (れ)第 一四 六 五 号 同年 十 一月十七日第五刑事部判決棄却)

一 治安維持法違 反新聞紙法違反被告事件

判 示事 項

(第 二 審 ) 広 島 控 訴 院

(上告 人) 被告人 吉 田 雅 雄 

○

( 第 一審 ) 岡 山 地 方 裁 判所

治 安 維持 法 第 一条 ニ所 謂 結社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ト結 社 ト

毎月 六 回発 行 セ ラ ル ル合 法 新 聞 ニ シテ日 本 共産 党 指 導 ノ下 ニ同 党 ノ

ラ レ次 ニ記 載 スル各 号 ハ孰 レ モ之 ニ副 フ記 事 ヲ掲 載 シ居 レ ル コト ヲ

政策 ヲ大 衆 ノ間 ニ宣 伝煽 動 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル目 的 ヲ以 テ発 行 セ

知悉 シツ ツ 昭和 四年 八 月 下旬 頃 ヨリ同 年 十 月中 旬 頃 迄 ノ間 ニ亙 リ無

ナ ル東 京市 麹 町 区 三番 町 戦 旗社 ヨリ自 己 ノ秘密 通信 先 ナ ル岡 山 市 上

産 者新 聞 終 刊 号 及 第 二無 産 者新 聞 創 刊 号 ヨリ第 六号 迄 ヲ其 ノ発 売 所

西 川 町 石原 弥 平 内 安 東 幸 子 方 ニ取 寄 セ タ ル上其 ノ内 第 二無産 者 新 聞

シ テ其 ノ発 売頒 布 ヲ禁 止 セ ラ レタ ル コ卜 ヲ確 実 ニ了知 シ乍 ラ右 取寄

第 二 乃 至 四 号及 第 六 号 ニ付 テ ハ内 務 大 臣 ヨリ 安寧 秩 序 ヲ紊 ス モノ ト

藤 敏 雄 等 ニ手 交 又 ハ郵 送 シ尚 長 門 錠 一 ニハ其 ノ秘 密 通信 先 ナ ル岡山

セ タ ル全 部 ヲ其 ノ頃 回 ヲ重 ネ岡 山 市 内 ニ於 テ藤 田俊 徳  堺 好 明  伊

県 吉 備 郡足 守 町大 木 誠 治 方 ニ郵 送 シ以 テ之 ヲ頒 布 シ同 人 等 ノ閲読 ニ

判 決要 旨

治 安 維持 法 第 一条 所 定 ノ結 社 ノ存 在 ヲ知 リ其 ノ結 社 ヲ支 持 シ之 カ

供 シ第 二 昭 和 四年 十 月下 旬 頃 ノ夜岡 山 県 和 気 郡 本 荘村 大 字 日 室 ノ山

○

ノ関係

拡 大 強 化 ヲ図 ル行 為 ヲ為 シ タ ル者 ハ同 結 社 ト組 織 関係 ヲ有 セ ス又

ヲ改 革 シ無 産 階 級 ヲ解放 セサ ル ヘカ ラ ス而 モ其 ノ解 放 ハ日本 共 産党

度 ヲ認 メ タ ル資本 主義 社 会 ハ矛 盾 シ居 ル ヲ以 テ革 命 ノ方 法 ニ依 リ之

民 及 労 働者 ト 荻野 ナ ル偽 名 ニテ密 ニ会 合 シ同 人 等 ニ対 シ私 有 財 産制

腹 ニ在 ル大 師 堂 ニ於 テ無 産 運動 ニ興味 ヲ有 スル恒 次光 高 外 四 名 ノ農

由

ハ其 ノ機 関 ノ統 制 指 揮 ヲ受 ク ル コト ナキ モ同 条 ニ所謂 結 社 ノ目 的

理

遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シ タ ル者 ニ該 当 ス

○

ル ンノ 一支 部 ト シ テ活動 シ居 ル ヲ以 テ諸 君 ハ日本 共産 党 ヲ支 持 シ其

ノ力 ニ依 ルノ外 ナ シ同党 ハ度 々 ノ検 挙 ニ遭 ヒタ ル モ依 然 コ ンミ ンテ

弁 護 人 布 施 辰 治  大 森 詮夫  河 合 篤  小林 恭 平 上 告 趣 意 書原 判 決 ハ 被 告 ノ犯 罪 事 実 ヲ ﹁被告 人 ハ昭 和 四年 七 月頃 ヨリ再 ヒ岡 山市 在 住 ノ

ノ指 導 下 ニ活 動 シ無 産階 級 ノ解 放 ヲ期 セサ ル ヘカ ラ ス又無 産 階 級解

無 産 運動 者 ト往 来 シ或 ハ無 産 者 新 聞 ニ対 シ岡 山市 ニ於 ケ ル無 産 運動 ノ情 況 ヲ通 信 シ タ ル コト モア リ シカ右 日本 共 産党 ハ昭和 三 年 三 月十

ヲ組 織 シ団 体 ノ力 ニ依 リ無 産 運 動 ヲ起 ス ヘキ旨 説 示 シ テ日本 共 産 党

ノ存在 及 其 ノ活 動 ヲ知 ラ シ ム ルト 共 ニ同 党 ニ共鳴 シ之 ヲ支持 ス ヘキ

放 運動 ニ関 スル新 聞 雑誌 ヲ読 ミ テ階 級 意 識 ヲ高 メ農 民 組合 労 働 組 合

旨 ヲ宣伝 煽 動 シ以 テ孰 レ モ日本 共 産 党 ノ目的 遂行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ

五 日 及 昭和 四年 四月 十 六 日其 ノ党 員 ノ多 数 カ検 挙 セラ レタ ル モ未 タ

支 持 シ其 ノ 目的 卜 スル ト コロ ヲ他 人 ニ宣 伝 シ同 党 ノ拡 大強 化 ヲ図 ラ

潰 滅 ニ至 ラ ス依 然 存 在 シ テ活動 ヲ続 ケ居 レ ル コト ヲ知 リ又 モ同 党 ヲ

ント 決意 シ犯意 継 続 シ テ第 一無 産者 新 聞 及 第 二 無産 者 新 聞 カ孰 レ モ

ニ包 含 セ ラ レタ実 質 的 内 容 ヲ二分 シ結 社 ト ノ関 連 ヲ欠 ク行為 ヲ第 二

ニ於 テ新規 定 第 一条 第 一項 後 段 及第 二項 後 段 ハ旧規 定 第 二条第 三条

条 第 三 条 ニ該 当 ス ヘキ モ ノト シテ改 正 ニ依 テ第 二条 第 三 条 ノ 内容 以

カ主 観 的客 観 的 ニ結 社 ト ノ具 体的 関 連 ニ於 テ為 サ レル コト (此 ノ点

重 ニ検 討 シ タ治 安 維 持法 第 一条 第 一項 後 段 竝 第 二 項 ノ解釈 ト被 告 人

上 ノ モノ カ新 ニ附 加 サ レ タ モノ テ ハナ イ) 四、 行 為 ノ主 観 的 要件 ハ

ヲ適 用 シ テ懲役 二年 六 ケ月 ノ厳 罰 ニ処 シテ居 リ マシタ カ弁 護 人 ノ慎

ノ行 為 ト シ テ原 判 決 ノ認 定 シ タ事 実関 係 ハ事 実 ノ誤 認 若 ハ擬 律 錯 誤

為 シタ ル モノ ナ リ﹂ ト認 定 シ治安 維 持 法 第 一条 第 一項後 段 竝 第 二 項

ノ不 法 タ ル コト ヲ免 レサ ル左 記 ノ如 キ失 当 ヲ弾 劾 セ ラ ル ヘキ モノト

身 ニ於 テ結 社 ノ目 的 ヲ自 己 ノ行為 ノ目 的 ト ス ル コト (3) 既 存 ノ結 社

(1) 斯 ノ如 キ 目的 ヲ有 スル結 社 ノ存 在 ヲ認 識 スル コト (2) 行 為 者 自

月 二十 九 日勅 令 第 一二九 号 ヲ以 テ改 正 セラ レタ際 新 ニ附 加 セ ラレ タ

其 ノ モノ ノ為 ニ ス ル積 極 的 意 欲 ア ル コ卜五 、 行 為 ノ 客 観 的 要 件 ハ

確 信 シ マス治 安 維 持 法 第 一条 第 一項後 段 竝 第 二 項 後 段 ハ昭和 三 年 六

モノ テ其 ノ意 義 頗 ル明確 ヲ欠 キ制 定当 時 ノ立 法 者 ノ説 明 亦曖 昧 ニシ

ニ慎 ム ヘキ コト ヲ要 シ其 ノ解 釈 適 用 ニ ハ明確 ナ ル限 界 ヲ付 ス ヘキ モ

的 法 治 国 家 ニ於 ケ ル法律 制 度 発 展 ノ傾 向 ニ逆 行 ス ル モノ テ ア ツテ厳

如 キ ハ実 ニ人 民 ノ自 由 権 ノ尊 重 ヲ以 テ其 ノ主 要 ナ ル使 命 卜 ス ル近代

用 ハ驚 ク ヘク広汎 ナ ル範 囲 ニ亙 リ殆 ト 限界 ナ キ カ如 ク テ ア ル斯 ク ノ

ス ル限 リ直 接 間接 ア ラ ユ ル行 為 ヲ此 ノ条 規 ニ依 テ律 セ ント シ其 ノ適

実 施 後 ノ適 用 ノ 実際 ニ於 テ ハ何 等 明確 ナ ル基 準 ナ ク日 本 共産 党 ニ関

ノ題 材 ノ下 ニ (実行 ノ方 法 場 合 時 期 又 ハ実 行 ノ為 ニ要 ス ル資 金 ノ調

行 ニ関 ス ル協 議 ト ハ目的 意 思 ヲ同 シ ク ス ル二人 以 上 ノ 特 定人 カ特定

為 ) ヲ了 セ サ ル者 ヲ意 味 ス ル行 為 ノ実質 タ ル党 ノ目 的 タ ル事 項 ノ実

メ ラ レタ ル機 関 ヲ通 シ テ承 諾 ヲ与 ヘル コト ニ依 テ成 立 ス ル契 約 的行

チ加 入行 為 (加 入 ヲ欲 ス ル意 思 表 示 ニ対 シテ党 ノ側 カ ラ党 規 則 ニ定

カ 日本 共 産 党 ヲ指 ス場 合 ニ於 テ ハ行為 主 体 ハ未 タ党員 ニ非 サ ル者即

(1) 行 為 カ結 社 ノ機 関 ノ統 制 指 導 ノ下 ニ為 サ レル コト (2) 目 的 実 現 ニ対 シテ客 観 的具 体 的 ニ因 果 関 係 ヲ認 メ得 ヘキ コト而 シテ此 ノ結社

テ能 ク其 ノ意 ヲ捉 フ ル コト ヲ得 ナイ程 漠 然 ト シ テ居 タ モノ テ ア ル カ

ノ テ ア ル弁 護 人 ハ第 五十 六議 会 衆 議 院 昭和 三年 勅 令 一二九 号 治安 維

行 為 ヲ為 シ タ ル者 ﹂ ニ該 当 ス ヘキ要件 ヲ左 ノ如 ク厳 格 ニ分析 ス ル 一、

産 党 ノ組 織 統 制 及 活動 卜 ヲ批 判 考覈 シ ﹁結 社ン 目的 遂 行 ノ為 ニス ル

ル党 名 義 ノビ ラ撒 キ 又 ハレポー ター ノ如 キ ハ之 ニ該 当 セ ス又 一定 ノ

ノ結 果 相 手 方 ノ意 思 ヲ刺 激 シ実 行 ノ決意 ヲ生 シ タ ル コト ヲ謂 ヒ単 ナ

且多 数 人 ニ対 シ テ目的 実 行 ノ方 法 手段 ヲ具 体 的 且 直接 的 ニ指 摘 シ其

持 法 改正 ノ件 (承 諾 ヲ求 ム ル件 ) 委員 会 ニ於 ケ ル泉 二刑 事 局 長 ノ説

結 社 ノ目 的 ハ団 体変 革 又 ハ私有 財 産 制度 否 認 ニ存 ス ル コト 二、 行 為

事 項 ヲ単 ニ公 衆 ニ告 知 伝 達 スル演 説講 義 研究 発 表 ノ如 キ宣伝 (又 ハ

ノ合 致 ヲ得 タ ル コト ヲ謂 ヒ又目 的 タ ル事 項 ノ実 行 ノ煽動 ト ハ不 特定

ノ主 体 ハ未 タ結 社 ノ 加 入者 ニ非 サ ル コト 三、 行 為 ハ団 体 ノ変 革 又 ハ

達 方 法 等 具 体 的 ニ実 行 ニ関 ス ル コト ヲ要 ス) 討 論 シ当 事 者間 ニ意 見

私 有 財 産 制 度 ノ否 認 ノ 目的 ヲ以 テ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協

ヲ何 等 積 極 的 ニ他 人 ニ強 制 ス ル意 思 ナ ク シテ不 特 定 人 ニ伝達 解 明 ス

流 布 ) ハ含 マナイ モノ テ ア ル従 テ共 産党 ノ目 的 乃 至 ハ共 産主 義 理論

明 ニ現 ハレ タ ル立法 者 ノ意 思 及 制 定後 ニ於 ケ ル適 用 ノ実 際 ト 日本 共

議 シ又 ハ其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ノ煽 動 ヲ為 ス コト而 モ之 等 ノ行 為

コト ハ其 ノ未 遂 ヲ罰 ス ル規 定 ア ル ニ依 テ モ明 白 テ ア ル行為 ノ主 観 的

ル コト ヲ要 シ単 ニ抽 象 的 ニノ ミ其 ノ関 係 ヲ認 メ得 ル場 合 ヲ除 外 ス ル

目 的 実 現 ノ可 能 状 態 ヲ具 体 的 ニ現出 シタ ル コト ヲ客 観的 ニ認 メ ラ ル

ル行 為 ハ之 ニ該 当 シナ イ而 シテ協 議 及 煽 動 カ既 遂 タ ル ニ ハ現 ニ其 ノ

ル範 囲 ヲ出 テ ス被 告 人 ハ党 ノ目 的 ニ関 シテ特 別 ニ深 キ認 識 ヲ有 ス ル

十 三 ケ条 ノ行 動 綱領 及 二箇 ノ中 心 ス ローガ ンノ如 キ ハ既 ニ共 産 党 検

三 回第 三 問答 ) 三、 被 告 人 カ 日本 共 産党 ノ 目的 ト シ テ供 述 セル所 ノ

ニ党文 書 ノ配 布 又 ハ党 関 係 者 ノ告 知 ニヨ ル モノテ ハナイ (予 審 調 第

ノ活動 ニ関 ス ル無 産 者 新 聞 其 ノ他 諸新 聞 ノ報 道 ニ基 ク モノ テ具 体 的

モノ ト云 フ ヲ得 ス (予審 調 第 三回 第 二問 答 ) 而 シテ被 告 人 ハ党 ノ掲

挙 等 ニ関 ス ル新 聞雑 誌 其 ノ他 ノ記 事 報 道 ニ依 テ 一般 公 著 ト ナツ テ居

ケ タ ス ロー ガ ン ニ就 テ必 ス シ モ無 条 件 ニ其 ノ正当 性 ヲ確 信 シテ之 ヲ

要 件 ト シ テ 日本 共産 党 ノ存 在 ノ認 識 ハ単 ニ存 在 ノ推 定 テ ハナク シテ

ル為 ニ ハ具 体 的 ニ党 ノ 目的 ヲ知 悉 シ タ ル上 ナ ル コト ヲ要 シ更 ニ党 其

自 己 ノ行 為 ノ目 的 ト スル モノ ニ非 サ ルモ ノ ナ ル コト ハ記 録 ノ各 所 ニ

確 定 的 認 識 ア ル コト ヲ要 シ又共 産 党 ノ目的 ヲ自 己 ノ行 為 ノ目的 ト ス

コト ニ非 ス シテ積 極 的 ニ之 ヲ実 践 化 スル意 思 ア ル コト ヲ要 ス ル行為

ノ モノ ノ為 ニ スル意 欲 ハ単 ニ理 論 的 ニ支持 シ或 ハ感 情 的 ニ共鳴 ス ル

共 産 党 ノ存在 ス ル事 実 ノ告 知 又 ハ日本 共 産 党 ト コムミ ンテ ルン ト ノ

的 ノ実 現 ニ対 シテ何 等 ノ具 体的 因 果 関 係 ヲ有 セサ ル行為 例 ヘ ハ日本

テ自然 発 生的 ニ為 サ レル場 合 ハ此 ノ規 定 ニ該 当 セ ス又行 為 ハ党 ノ目

シテ極 力 主張 シテ居 ル所 テ ア ル即 チ右 新 聞 ノ取 次頒 布 ハ藤 田俊 徳 ヨ

意 欲 ニ出 ツ ル モノ ニ非 サ ル コト ハ被 告 人 カ予 審 第 一審 及 第 二審 ヲ通

テ為 シ タ ル座 談 カ毫 モ日本 共 産党 其 ノ モノ ノ為 ニセ ント スル積 極 的

新 聞 ノ 取 次頒 布 及 判 示 第 二 事 実大 師 堂 ニ於 テ五 名 ノ農 村 青 年 ニ対 シ

ニヨリ 明 テ ア ル四、 被 告 人 カ判 示 第 一事 実 無 産者 新 聞 及 第 二無 産 者

ニ於 ケ ル最 終 ノ陳 述 竝 予審 判事 ニ提 出 シ タ ル感 想 録 中 其 ノ旨 ノ供 述

関 係 ノ解 説 等 ノ如 キ ハ此 ノ規定 ニ依 テ律 セ ラ ル ヘキ モノ テ ハナ イ此

リ依 頼 ヲ受 ケ之 ヲ引 継 イ タ モ ノテ無 産 階 級 解 放 運動 ニ対 スル 一資 料

現 ハレテ居 ルカ特 ニ予 審 調第 三 回第 七問 答 予 審第 七 回第 一審 第 二審

ノ点 ニ付 第 二 条第 三条 ノ協 議 煽動 以 上 ニ目的 実 現 ニ対 シテ 具体 的 可

ト スル意 思 ヲ以 テ解 放 運 動 ニ従事 セ ル者 又 ハ同 情 者 ニ交 付 シ タ ル モ

ノ客観 的 要 件 ト シ テ ハ行為 者 カ党 ノ統 制 ノ 下 ニ置 カ レ其 ノ機 関 ニ依

能 性 ヲ具 備 ス ル コト ヲ要 ス ル コト ハ其 ノ擬 セラ レ ル刑 ノ比 較 ヨリ観

ノ テ ア ツテ 日本 共 産 党 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニセ ント ス ルカ如 キ深 キ思 慮

リ伝達 サ レタ指 令 ニ依 テ行為 ノ為 サ レル コト ヲ要 シ此 ノ連 絡 ナ ク シ

ル モ明 テ ア ル被告 人 ノ所 為 ヲ以 上 ノ 諸点 ニ照 シ テ観 ル ニ一件 記 録 ニ

ノ旨 ノ供 述 ニ依 テ明 テ ア ル二、 被 告 人 ハ日 本 共産 党 ノ存 在 ヲ知 了 ス

者 ト何 等 ノ接 触 ナ キ コト ハ予 審 調 第 三 回 第 四問 答 ニ於 ケ ル被 告 ノ其

示 ス ル通 リ其 ノ当時 ニ於 テ未 タ党 員 ニ非 ス又其 ノ後 ニ於 テ モ党 関 係

反 被 告 事 件 ニ付 有 罪 ノ判決 ヲ受 ケ タ コト ハア ル ハ当 該 確 定判 決 ノ摘

〇九 二 丁) 各 審 ニ於 ケ ル被 告 ノ最 終 陳 述 及感 想 録 ニ現 ハレテ居 ル又

ニ於 ケ ル其 ノ旨 ノ供 述 記録 (第 九 九 一丁第 九 九 五丁 第 九 九 六 丁第 一

第 五 回第 一問 答 第 五 問答 第 十 四問 答 第 十 六問 答 及 第 一審 第 二審 公 判

第 三 回 第 一問 答 第 十 七問 答 第 二十 一問 答第 二十 七 問 答 第 二十 八 問 答

ト積 極 的 意 欲 ノナ カ ツ タ コト予 審 ハ第 一回第 二問 答 第 二 回第 一問 答

︹マ マ︺

現 ハレタ ルト コロ ハ左 ノ如 ク テ ア ル 一、 被 告 人 ハ曾 テ治 安維 持 法 違

ト雖 共 産党 検 挙 ニ関 スル新 聞 ノ報 導 及 警 官 ヨリ 聞 知 シタ ル事 実 竝 党

ノ テ ナ イ コト ハ 一件 記 録 ニ明 白 テ ア ツテ新 聞 ノ送 付 ヲ受 ケ テ居 タ東

関 連 ナ ク又 直接 ニモ間 接 ニ モ党 機 関 ヨリ ノ統 制 指 揮 ヲ受 ケ テ居 タ モ

及 感 想 録 ニ明 テ ア ル五、 被 告 人 ニ日本 共産 党 ニ対 シ テ何 等 ノ組 織 的

第 二審 ニ於 ケ ル供 述 ( 特 ニ記 録 一〇 〇 七 丁) 各 審 ニ於 ケ ル最 終 陳 述

ト 云 フ以 外 ニ他意 ナカ ツタ コト ハ予審 調 第 七 回 ニ於 ケ ル供述 第 一審

大師 堂 ニ於 ケ ル座 談 会 ニ臨 ンタ動 機 ハ単 純 ニ招 待 ニ応 シ テ雑 談 スル

カ ラサ ル コト テ ア ル以 上 ノ判 示 二所為 ハ性 質 上 日本 共 産党 ノ目 的 実

活 動 ス ヘキ モ ノ ナ ル旨 ノ 運動 ヲ為 スカ如 キ コト ハ常 識 ヲ以 テ考 フ ヘ

未 知 テ ア ツ テ被 告 人 カ斯 ル会 合 者 ニ対 シ日本 共 産 党 ノ為 ニ積 極 的 ニ

農 民 運動 ニ多 少 ノ興 味 ヲ有 セ シ程 度 ノ モノ ニシ テ而 モ全部 被 告 人 ニ

如 ク僅 ニ文 芸 雑 誌 ﹁戦 旗 ﹂ ノ読 者 ニ過 キ ス其 ノ意 識 水 準極 メ テ低 ク

述 ニ依 テ明 白 テ ア ル此 ノ座 談 会 ニ会合 セ ル人 物 ハ予 審 調書 ニ明 ナ ル

人恒 次 光 高  万 波文 二  徳 長 茂 三 衛  広 瀬 多 市 ノ予 審 調 ニ於 ケ ル供

法 的 ニ存 在 シ日 本 共産 党 ト何 等 ノ関係 ナク 又被 告 ハ自 己 ノ発 意 ニ依

ニ対 ス ル認 識 ニ於 テ モ亦 新 聞 頒 布 ヲ受 ケ 又 ハ被 告 人 ノ談話 ヲ聴 取 シ

現 ニ対 シ何 等 ノ因果 関 係 ヲ認 メ得 サ ルノ ミ ナ ラ ス被 告 人 ノ因 果 関 係

京 市麹 町 区三 番 町 戦 旗 社 ハ純 然 タ ル雑誌 ﹁戦 旗 ﹂ ノ発 行 所 ニシテ合

テ送 付 ヲ受 ケ タ新 聞 ヲ自 己 ノ知 レ ル無 産 階 級 運 動 者 間 ニ頒 布 シタ モ

審調 ( 第 二十 二 問答 同 万波 十 三 問 答 同徳 長 第 十 一問 答 )被 告 人 ノ行

タ ル者 ニ対 シ テ及 ホ シタ ル影 響 ヨリ見 ル モ共 産 党 目 的 遂行 ノ促 進 ヲ

為 ハ以上 ノ如 ク治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 及 第 二項 後 段 ニ該 当 ス

ノ テ アリ又 大 師 堂 ノ会 合 カ農 村 青 年 ノ招 待 ヲ受 ケ タ ル モノ テ全 ク日

ニ於 テ被 告 人 ノ所 為 ハ共産 党 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 タ ルノ客 観

テ居 ナカ ツ タ コト モ明白 テ ア ル (予 審 調 第 五 回第 十 六問 答 ) 此 ノ点

ヘキ主観 的 客 観 的 要件 ヲ欠 キ断 シテ同法 条 ヲ 以 テ処 断 ス ヘキ モノ ニ

一〇 九 二 丁) 及 各審 ニ於 ケ ル最 終 陳 述 竝感 想 録 証 人 恒 次 ニ対 スル予

的 要 件 ノ 一ヲ欠 〓 ス ル モノ テ ア ル六 、最 後 ニ被 告 人 ノ判 示 所 為 ハ党

非 ス シテ該 法 条 ハ厳格 ニ日本 共 産 党 ニ対 シテ具 体 的 直 接 的関 連 ニ立

結 果 シタ モノト ハ認 メ ラ レナ イ (記 録 九九 四 丁九 九 五 丁 一〇 〇 七 丁

ノ目 的実 現 ニ対 シ テ客 観 的 ニ何 等 ノ具 体的 因 果 関 係 ヲ及 ホ ササ ル モ

ツ準 党員 又 ハ党 員候 補 者 ニ対 シテ ノ ミ適 用 サ ル ヘキ モ ノテ ア ル本 件

本 共産 党 ト無 関 連 ナ ル コト ハ疑 ヲ挿 ム余 地 ナ キ ノ ミ ナ ラ ス被 告人 自

ノ テア ル今 日 ニ於 テ日本 共産 党 ハ其 ノ存 在 ヲ 一般 ニ知 悉 サ レ公然 ト

運動 ノ煽 動 ヲ為 シ タ ル者 ニ対 シ漫 然 治安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 及

被 告 人 ノ如 ク合 法 的第 二無 産 者 新 聞 ノ配 付及 農 村 青年 ニ対 シテ農 民

身 ニ於 テ右 新 聞 カ 日本 共産 党 ト如 何 ナ ル関係 ニア ルカ ヲ スラ理解 シ

論 議 ノ対 象 ト セ ラ レテ居 ル問 題 テ ア ツテ 之 ニ関 ス ル記 事 ヲ掲 載 ス ル

ノ テア リ マ スト 云 フ ニ在 レト モ○ 苟 モ国 体 ノ変 革 又 ハ私有 財 産 制 度

第 二項 ヲ適 用 シ タ ル原 判 決 ハ断 然 不 当 ニシテ到 底 破 毀 ヲ免 レサ ル モ

新 聞 ヲ頒 布 スル モ ソ レカ直 ニ共 産 党 ノ 目的 実 行 ノ煽 動 行 為 ト認 メ ラ ル ヘキ モノ テ ハナイ 又座 談 会 ノ如 キ モ其 ノ内 容 ハ未 知 ノ青年 数 人 ニ

ノ否 認 ヲ目的 ト ス ル結 社 ノ存在 ス ル コト ヲ知 リ該 結 社 ヲ

支 持 シ其 ノ拡 大強 化 ヲ図 ル行為 ヲ為 シ タ ル者 ハ同 結 社 ト

組 織 関係 ヲ有 セ ス又 ハ其 ノ機 関 ノ統 制 指 揮 ヲ受 ク ル コト ナ キ モ治 安

(要 旨 )

対 シ不景 気 問 題 戦 争問 題 金解 禁 問 題 資 本 主義 経 済 組 織 ノ矛 盾 等 ニ関 シ テ互 ニ論 談 シ タ ル ニ止 マリ偶 話 題 カ日本 共 産 党 ニ及 ンタト 云 フ迄 テ アツ テ具 体 的 ニ日本 共産 党 ノ目 的 実 行 ノ為 ノ協 議 ト認 メ ラ ルヘ キ モノ テ ナイ コト ハ其 ノ当 時 ノ談 話 ノ内 容 ニ関 ス ル被 告 人 ノ供 述 及証

該 当 ス ル モノ ト ス蓋 シ結 社 ヲ支 持 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル行 為 ハ畢 竟

維 持 法 第 一条 ノ所 謂 結社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ニ

ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行為 ヲ為 シタ ル者 ト シ テ治 安 維 持 法 第 一条 第

人 雅 雄 ヲ国 体 ヲ変 革 シ私 有財 産制 度 ヲ否 認 ス ル結 社 タ ル日 本共 産 党

ヲ疑 フ ニ足 ル ヘキ顕 著 ナ ル事 由 ア リ ト認 メ難 キ ヲ以 テ原 判 決 カ被 告

リ記 録 及 証拠 物 ヲ精 査 スル モ原 判 決 ニ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト

一項 後 段 及 同 条第 二項 ヲ適 用処 断 シタ ル ハ相 当 ナリト 謂 フ ヘク論 旨

ノ認 定 シ タ ル事 実 ニ依 レ ハ被 告 人 雅 雄 ハ日本 共 産 党 カ露 西亜 ニ於 ケ

ハ理 由 ナ シ

結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ニ外 ナ ラサ レ ハナ リ本件 ニ付 原 判 決

ル国 際 共産 党 ノ 一部 ト シテ我 国 ニ於 テ秘 密 ニ組 織 セ ラ レ我立 国 ノ大

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟法 第 四百 四 十 六 条 ニ則 リ主文 ノ如 ク判 決 ス

ル結 社 ト シ テ存在 シ活 動 スル コト ヲ知 リ同 党 ヲ支持 シ其 ノ拡 大 強 化

検 事 宮 城 長 五 郎関 与

本 タ ル立 憲 君 主制 ヲ廃 止 シ私 有 財 産 制度 ヲ撤 廃 スル コト ヲ目 的 ト ス

ヲ図 ラ ント 決 意 シ第 一、 無 産 者 新 聞 及第 二無 産 者 新 聞 カ孰 レ モ日本

弁護 人 山 田 勝 利

昭 和 六 年 (れ)第 四 四 五 号棄却) 二 治安維持法違反被告事件(同 年 五月 二十 一日第 一刑事部判決

共 産 党 指 導 ノ下 ニ同 党 ノ政 策 ヲ大 衆 ノ間 ニ煽 動 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル目 的 ヲ以 テ発行 セ ラレ其 ノ目 的 ニ副 フ記 事 ヲ掲 載 セ ル コト ヲ知 悉 シ之 ヲ取 寄 セ而 モ無 産 者 新 聞 ノ第 二 号 乃至 第 四 号 及第 六 号 ハ内 務 大

(上告 人) 被告人 石 村 英 雄 

臣 ヨリ安 寧 秩 序 ヲ紊 ス モノ ト シ発 売 頒布 ヲ禁 止 セ ラ レ タ ル コ卜 ヲ確 知 シ ナ カ ラ之 ヲ藤 田俊 徳  堺 好 明  伊藤 敏 雄  長 門錠 一等 ニ頒 布 シ

( 第 二審) 大阪控訴院

第 二、 岡 山 県 和気 郡 本 荘 村 大 字 日 室 ノ 山腹 ニ在 ル大師 堂 ニ於 テ無 産

結 社 ノ目的遂行 ノ為 ニスル行為

○ 判 示事項

( 第 一審) 大阪地方裁判所

運 動 ニ興味 ヲ有 ス ル恒 次 光 高 外 四 名 ト荻 野 ナ ル偽 名 ヲ以 テ密 会 シ無 産 階 級 ノ解 放 ハ日本 共 産 党 ノ力 ニ依 ルノ外 ナ シ諸 君 ハ日 本共 産 党 ヲ

判決要旨

治安維持法第 一条 ニ所謂結 社ノ目的遂行 ノ為 ニスル行為ト ハ国体

○

高 メ農 民 組 合 労働 組 合 ヲ組 織 シ団 体 ノ力 ニ依 リ無 産 運動 ヲ起 ス ヘキ

支 持 シ其 ノ指 導 ノ下 ニ活 動 シ テ無 産 階級 ノ解 放 ヲ期 シ又階 級 意 識 ヲ

旨 ヲ説 示 シ以 テ日本 共 産 党 ノ存在 及 活動 ヲ知 了 セ シ ム ルト共 ニ同 党

シテ該結社 ヲ支持 シ其ノ拡大 ヲ図 ル等結社ノ目的遂行 ニ資 スヘキ

ノ変 革又 ハ私有財産制度ノ否認 ヲ目的 トスル結社 ナル コトヲ認識

弁護 人山田勝利上告趣意書原判決 ハ被告人石村 英 雄 ノ犯 罪事 実 ヲ

一切ノ行為 ヲ包含 ス

ニ共 鳴 シ之 ヲ支持 ス ヘキ旨 ヲ宣 伝 煽動 シタ リト 云 フ ニ在 ルヲ以 テ被 告 人 雅 雄 ハ日本 共産 党 カ我 国 立憲 君 主制 ノ廃 止 即 チ国 体 ノ変 革 及 私

同 党 ヲ支持 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル行 為 ヲ為 シタ ル モノ ナ ル コト ヲ識

﹁ 被告 人石村英雄 ハ云 々 ( 中略)昭和二年末頃 ヨリ関東出 版労働組

有 財 産 制 度 ノ否認 ヲ目 的 ト スル結 社 ト シテ存 在 活動 ス ル コト ヲ知 リ

ル ニ足 リ右 判 示事 実 ハ其 ノ挙 示 セ ル証拠 ニ依 リ裕 ニ之 ヲ認 ム ル ニ足

合 ノ前 身 タ ル関 東出 版 俸 給 者 組合 ノ組 織 部 長 ト ナ リ昭和 四年 一月 ニ

タ結 社 ニ加 入 セサ ル者 ニシ テ其 ノ構 成員 外 ニ在 ル モ国体 ノ変革 又 ハ

条 ニ ヨレ ハ所 謂 結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル者 ト ハ未

後 ノ要 件 タ ル結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ノ限 界 ニ付 テ ハ何 等 ノ

ハ東 京 一般俸 給 者組 合 執 行 委 員 長 ニ挙 ケ ラ レ無 産 者 ノ解 放 運動 ニ従

規 定 ナ シ然 レト モ惟 フ ニ本 法 ニ所 謂 結 社 ノ目 的 ト ハ国体 ノ変 革 又 ハ

ヲ遂 行 スル為 ノ行為 ニ従事 スル者 ヲ指 称 ス ル モノト ス而 シテ此 ノ最

定 雄 ヨリ同党 員 黛 閣 太郎 カ中 外 商 業 新報 社 工場 内 ニ同党 ノ細 胞 ヲ組

私 有 財 産 制 度 否 認 ヲ目的 ト スル結 社 ノ存 在 ヲ認 識 シ其 ノ結 社 ノ目的

織 ス ル ニ付 之 ニ助 力 ス ヘキ旨 ノ指 命 ヲ受 ク ル ヤ同 党 カ前 記 ノ目 的 ヲ

ルカ為 ニ ハ行 為 者 ノ行為 カ直 接 国 体 ノ変 革 又 ハ私 有 財 産 制度 否 認 ニ

私有 財 産 制 度 否 認 ノ大 目的 ヲ意 味 スル モノ ナ リ サ レ ハ本罪 ノ成 立 ス

昭和 四年 二 月東 京市 日本 橋 区北島 町喫 茶 店 松 風 堂 ニ於 テ被 告 人 黒 岩

有 ス ル秘 密 結 社 ナ ル コト ヲ知 リ ナ カ ラ之 ヲ承 諾 シ爾 来 同党 員 黛 閣 太

事 シ 日本 共産 党 員 候 補 者 ト シ テ推 薦 セ ラ レ居 リ タ ルモノ ナ ルト コ ロ

郎等 ト前 記 松 風 堂其 ノ他 ニ於 テ数 次 会合 協議 ノ末 同 工場 従業 員 ヲ細

ニ所 謂 結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル モノ 卜 セ ム カ裁 判

否 認 ニ直 接 影 響 ナ キ即 間接 的 ニ関 係 ヲ有 スル ニ止 ル場 合 ト 雖 猶本 条

胞組 織 ニ導 ク為 工場 新 聞輪 転 機 ノ発 刊 ヲ企 図 シ同 年 四 月 十 日頃 ﹁日

テ我 々ノ真 ノ利 益 ヲ守 ル唯 一ノ政 党 ナ リ之 ニ対 ス ル弾 圧 ハ単 ニ日本

官 ノ主 観 的 且 独断 的 観 念 ヲ以 テ結 社 ノ大 目 的 ト ハ極 テ間 接 ニ而 シテ

カ結 社 ノ目的 ヲ認 識 シ居 リタ ル ニセ ヨ国 体 ノ変 革 又 ハ私 有 財産 制 度

共産 党 ノ消 長 ニ止 マラ ス我 々無 産 階 級 ノ消 長 ニ帰 ス ヘキ モノ ナ レ ハ

関係 ヲ有 ス ル場 合 ニ局 限 セサ ル ヘカ ラ ス蓋 シ然 ラ ス シテ仮令 行 為 者

此 ノ弾 圧 ニ反 抗 シ日本 共 産 党 ヲ守 ラ サ ル ヘカ ラサ ル旨 叙 説 シ テ日 本

モノ ナ リト 為 シ其 ノ甚 タ酷 ナ ル結 果 ヲ招 来 ス ル ニ至 ル ヘキ コト モ亦

極 テ軽 微 ナ ル関係 ヲ有 スル ニ止 ル場 合 ニ於 テ モ猶 且本 罪 ヲ構 成 ス ル

本共 産 党 ヲ守 レ﹂ ノ題 下 ニ日本 共 産 党 ハ我 々無 産 階 級 ノ前衛 党 ニ シ

共産 党 ノ必 要 ナ ル所 以 ヲ宣 伝 シ之 カ防 衛 ニ努 ム ヘキ コト ヲ煽 動 セ ル

ニ配 布 シ尚 同 年 三 月 東 京 市 会 議員 選 挙 ノ契 機 ニ日 本共 産 党 ノ主 義 目

事項 ヲ掲 載 シ タ ル輪 転 機 第 三 号約 八十 部 ヲ編輯 シ之 ヲ同 工場 従 業員

ク ル モノ ノ範 囲 ヲ不当 ニ拡 張 シ タ ル嫌 ナ シト セ ス之 レ法 律 カ求 メテ

ナ リ然 ラ サ ル ニ於 テ モ改 正 法 ハ此 ノ種 行 為 ヲ為 シ タリ ト ノ嫌 疑 ヲ受

名 ヲ以 テ作 成 セ ル ﹁革 命 的 労 働者 ヲ市 会 ニ送 レ﹂ ﹁合法 的 無産 政 党

ル者 ハ結 社 ノ構 成員 ニア ラ ス結 社 ノ構 成 員 ニア ラ サ ル者 ニ重 罪 タ ル

犯罪 ヲ作 ル ノ結 果 ヲ生 ス ル モノト 謂 フ ヘシ而 已 ナ ラ ス本 罪 ノ主 体 タ

看 易 キ道 理 ニシテ茲 ニ裁 判 ノ公平 且公 正 ハ保 持 セ ラ レサ ル ヘケ レ ハ

ヲ倒 シテ 日本 共 産 党 ノ旗 ノ 下 ニ﹂ ト ア ル同 党 ノ 主義 綱 領 ヲ宣 伝 煽 動

的 ヲ宣 伝 シテ同 党 ノ支 持 拡 大 ヲ計 ル為 日本 共 産 党 東京 地方 委 員 会 ノ

ス ル ニ足 ル伝 単 数 枚 ヲ黛 閣 太 郎等 ト共 ニ東 京 市 日 本橋 区北 島 町 中 外

ト直 接 重 要 ナ ル関 係 ヲ有 スル場 合 ニ局限 セラ レ サ ル ヘカ ラ ス飜 テ事

結 社 罪 ノ刑 罰 ヲ科 ス ルト セ ハ尠 クト モ行 為 者 ノ行 為 ハ結 社 ノ大 目 的

ス ル モ国 体 ノ変革 又 ハ私 有 財 産 制 度 否 認 ノ目的 ヲ有 セ ル事 実 ナ シ然

案 ヲ観 ル ニ被 告 人 ハ其 ノ意 思 ニ於 テ結 社 ノ 目的 ヲ認 識 シ居 リ タ リト

タ ル モノ ナ リ﹂ ト 認 定 シ治 安維 持 法 第 一条 第 一項 及第 二項 ヲ適 用 シ テ被 告 人 ヲ懲 役 三年 ノ厳 罰 ニ処 シ マシ タ カ弁護 人 ノ慎 重 ニ検 討 シ タ

商 業 新 報社 附 近 ニ貼 付 シ以 テ同党 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シ

結 果 原判 決 ハ左 記 ノ如 キ違 法 ア ル モノ ト確 信 ス抑 モ治 安 維 持 法 第 一

以 テ本条 ニ所 謂 結 社 ノ目 的 遂行 ノ為 ニス ル行為 ニ該 当 スル モノト 判

結 社 ノ 大 目 的ト 間 接 軽 微 ノ関 係 ヲ有 セ ル ニ止 ル被 告 人 ノ前 記 行為 ヲ

ル ニ原 判 決 カ国 体 ノ変 革 又 ハ私 有 財 産 制 度否 認 ノ目 的 ヲ有 セ ス且 ツ

又 ハ私 有 財 産制 度 否 認 ト直接 重 要 ナ ル関 係 ヲ有 ス ル モノ ニア ラ ス然

カ モ原 判 決 判 示 ノ如 キ行 為 ハ社会 通 念 ヨリ見 ル モ決 シテ国 体 ノ変 革

省 略 ス)

明 ニシ テ論 旨 ハ其 ノ 理由 ナ シ ︵ 其 ノ 他 ノ 上告 論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ

為 ハ治 安 維 持法 第 一条 第 一項 第 二 項各 後 段所 定 ノ罪 ヲ構 成 ス ル コト

中 外 商 業 新 報 社 附 近 ニ貼 付 シ タ リト 云 フ ニ在 ルヲ以 テ右 被 告 人 ノ行

支 持 拡 大 ヲ計 ル為 同 党 ノ主 義 綱 領 ヲ宣 伝煽 動 スル ニ足 ル伝 単 数 枚 ヲ

東 京 市 会 議 員 選 挙 ノ契 機 ニ日本 共 産 党 ノ 主義 目 的 ヲ宣 伝 シテ同 党 ノ

決 ス

示 シ テ漫 然 治安 維 持 法 第 一条 第 一項 及 第 二 項 ヲ適 用 シタ ル ハ右 法 条

云 フ ニ在 レト モ○治 安 維 持 法 第 一条 ニ所 謂 結 社 ノ目 的 遂

検 事 宮 城 長 五 郎関 与

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟 法第 四 百 四十 六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

行 ノ為 ニ スル行為 ト ハ国 体 ノ変革 又 ハ私 有 財 産 制 度 ノ否

昭 和 六 年 (れ)第 一七 九 二 号棄却) 三 治安維 持法違反被告事件(同 七年 三月十五日第四刑事部判決

布 施 辰 大 森 詮 弁護人︷ 河 合 青 柳 盛

( 第 二審 ) 札 幌控 訴 院

(上告人) 被告人 加 藤 秀 雄  (第 一審 ) 函 館 地 方 裁 判所 判 示事 項

治  夫  篤  雄

ノ解 釈 ヲ不 当 ニ拡 張 シ其 ノ適 用 ヲ誤 リ タ ル違 法 ア ル モノ ト確 信 スト (要 旨 ) 認 ヲ目的 ト シテ組 織 シ タ ル結 社 ナ ル コト ヲ認 識 シテ該 結 社 ヲ支持 シ 其 ノ拡大 ヲ図 ル等 結 社 ノ目的 遂 行 ニ資 ス ヘキ 一切 ノ行 為 ヲ包 含 ス ル モ ノト解 ス ヘキ モノ ナ ル ヲ以 テ苟 モ叙 上 ノ如 キ結 社 ナ ル コト ヲ知 リ 乍 ラ之 カ支 持 拡 大 ニ資 ス ヘキ行 為 ア リ タ ル以 上其 ノ行 為 カ国 体 ノ変 革 又 ハ私 有財 産 制 度 否 認 ノ目的 ニ出 テ タ ルト否 ト又 右 目 的 ト 直接 重 要 ナ ル関 係 ア ルト否 ト ハ同法 第 一条 第 一項第 二項 各 後 段 ノ罪 ノ成 立

○

日本 共 産党 ノ 目的 ヲ宣 伝 ス ル雑 誌 ノ読 者 ヲ増 加 セ シム ル行 為 ト治

ニ消 長 ヲ来 ス ヘキ モ ノ ニア ラ ス而 シ テ本 件 ニ付 原 判 決 ノ認 定 シタ ル 事 実 ハ被 告 人 ハ日本 共 産 党 カ国 際 共 産 党 ノ 一支 部 ニシ テ我 君 主制 ヲ

織 ニ助力 ス ヘキ指 命 ヲ承 諾 シ同 党 員 ト 協 議 ノ上 中 外 商 業 新 報 社 工場

義 社 会 ノ 実 現 ヲ目 的 ト ス ル秘 密 結 社 ナ ル コト ヲ知 リ乍 ラ同 党細 胞 組

党 支持 者 ノ増 加 ヲ図 リ同 雑誌 ノ読 者 ヲ増 加 セ シメ タ ル行 為 ハ治 安

雑 誌 ナ ル コトト ヲ知 リ ナ カ ラ日本 共 産 党 ノ主 義 目的 ニ共 鳴 スル同

ナ ル コト ト雑 誌 戦 旗 ハ同 党 ノ 目的 綱 領 ヲ宣 伝 ス ル記 事 ヲ掲 載 ス ル

日本 共 産 党 ハ国 体 ノ変 革 及 私有 財 産 制 度 ノ否 認 ヲ目的 ト スル結 社

判 決 要旨

安 維持 法 第 一条 第 一項 第 二項 各後 段

従 業 員 ヲ細 胞組 織 ニ導 ク為 工場 新 聞 発 刊 ヲ企 図 シ日本 共 産 党 ノ必要

維 持法 第 一条 第 一項 第 二 項各 後 段 ニ所 謂 結 社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス

○

廃 止 シ無 産 階級 独 裁 ヲ行 ヒ以 テ我 国 体 ヲ変革 シ生産 機 関 ノ私 有 ヲ禁

ナ ル所 以 ヲ宣伝 シ之 カ防衛 ニ努 ム ヘキ コト ヲ煽 動 ス ル事 項 ヲ掲 載 シ

シ テ之 ヲ社 会 ノ共 有 ニ移 シ以 テ私 有 財 産 制度 ヲ否 認 スル所 謂 共産 主

タ ル輪 転 機 第 三号 約 八 十部 ヲ編 輯 シ テ之 ヲ同 工場 従 業 員 ニ配 布 シ尚

理

由

ル行 為 ニ該 当 ス

○

団 体 ナラ サ ル ハ勿 論労 働 組合 テ モ共青 同 盟 テ モナ イ戦 旗支 局 ハ組 織

サ レタ ル個 人 カ他 ノ組 織 ニ動 員 サ レ組 織 サ レ様 ト モ夫 レ ハ我 々ノ組

ヲ演 シ テ有 罪 ト 為 シタ リ吾 々 ハ第 一 ニ吾 々ヲ窮 地 ニ陥 ル ル此 ノ論 理

認 識 不 十 分 ナ ル ニ拘 ラ ス重要 観 点 ヲ歪 曲 シテ最 都 合 ヨキ論 理 ノ軽 業

渉 シタ ル ノミ ナ ラ ス本 件 ヲ治 安 維持 法 違 反 タ ラ シ ム ル為 ニ事 実 ニ付

ニ吾 々 ノ披 瀝 ス ル正 シキ弁 明 ヲ理解 セ ス濫 リ ニ吾 々 ノ弁論 ヲ妨 害 干

強 化 ヲ目 的 ト シ テ組織 シタ ノ テ ハナイ戦 旗 支 局 ノ拡 大強 化 ト他 ノ組

何 等 カ ノ利 溢 擁護 ノ為 ニ戦 旗 支 局 ヲ組 織 シタ ケ レト モ共 産 党 ノ拡 大

ノ頭 ノ中 ニノ ミ存 ス ル コト タ我 々 ハ労 働 者 農 民 及 一般 被 圧 迫 民衆 ノ

ヲ治 安 維持 法 ニ ヒツ カ ケ ル為 ニ凡 俗 ナ論 理 ノ軽 業 ヲ為 ス所 ノ司法 官

ノ如 何 ナ ル部分 ニ モ表 ハレテ イ ナ イ右 ノ如 ク考 ヘ ルノ ハ合法 的 組 織

ハ政 党 組織 ニ転 化 シ タ リ ス ルテ ア ロート 考 ヘルノ ハ我 々 ノ階 級 組 織

織 ニ何等 ノ関 係 ハナ ク支 局 カ或 ル程 度 迄 発展 ス レ ハ労 働 組合 組 織 又

ノ軽 業 ヲ徹 底 的 ニ釈 明 シ同 時 ニ日 本 共産 党 ヲ目 指 シ テノ特 殊 ノ弾 圧

ス ル ﹁斯 々云 々 ノ行為 ヲナ シ⋮ ⋮ 日本 共 産 党 ヲ拡 大 強 化 セリ﹂ ト ノ

織 ノ拡 大 強 化 ト ヲ コツ チ ヤ ニ考 ヘテ ハナ ラ ヌ吾 々 ハ断 乎 ト シテ確言

被 告 人 上 告 趣意書 ノ要 旨 ハ原審 裁 判 長 ハ独 断 ト混 乱 セ ル見 解 ト ノ下

ノ 必然 性 ヲ強 調 スル コト ニ依 リ吾 吾 ノ即時 無 罪 ノ判 決 ヲ要 求 シ第 三

法 タ ル治 安 維 持 法 ノ 即時 撤 廃 ヲ要 求 シ第 二 ニプ ロ レタリ ア文 化運 動

ノ 陥穽 ニ突 落 スノ ハ全 ク不当 テ ア ル吾 々 ハ無 罪 テ ナ ケ レ ハナラ ヌ第

ノ意 図 ノ反 映 ニ シテ俗悪 ナ ル論 理 ノ軽 業 ニ過 キ ナ イ我 々 ヲ同 法 違 反

二、 一九 二九︱

判 決 ハ正 シク無 理 無道 ナ ル治 安 維持 法 違 反 捏 造 ノ為 ノ日本 支 配 階級

立 シタ カ ト イ ヘ ハ雑 誌 戦 旗 ハ無 茶 苦 茶 ニ毎 号 発 行禁 止 ト ナ リブ ルジ

合 併管 理 ノ数 ヲ増 加 シ賃 金引 下 操 短 時間 延長 大量馘 首 極 度 ナ ル労 働

ニ第 二審 ニ於 ケ ル吾 々 ノ言論 ニ対 スル干 渉 ヲ判 然 セ シム ル コト ニ依

ヨア的 取 次 所 書 籍 店 ヨリ ソノ姿 ヲ没 スル為 戦 旗 社 独自 ノ経 営 ノ下 ニ

リ テ分 離 的 暗 黒 裁 判 ニ反 対 ス ル第 一我 々 ハ何 ノ目的 テ戦 旗 支 局 ヲ樹

ア ル取 次所 ヲ必 要 ト シ タカ ラテ ア ル吾 々 ノ支 局 カ警 察 ノ認 可 ナ シ ニ

ラ ユル生 活条 件 ハ低 下 シ小作 争 議 ハ暴 動 化 シ労 働 者 ハ スト ライ キ ヘ

強 化 ト次 々 ニ行 ハレ失 業 者群 ハ増 大 シ新 企業 ハ縮 少 シ無 産 階 級 ノ ア

ル為 ノ 大衆 的 啓 蒙 雑 誌 テ ア ル従 ツ テ其 ノ記 事 ハ文 化 的啓 蒙 的 教 育 的

階 級 運 動一 般 ニ駆 リ立 テ且 ブ ルジ ヨア的 阿 片 雑 誌 ヨリ彼 等 ヲ切 離 ス

的 啓 蒙 教育 ヲ与ヘ 彼 等 ヲ シ テ正 シキ擁 護 ノ為 ノ方 法 ヲ執 ラ シム ル為

産 大 衆 ノ要望 ニ因 リ必 然 的 ニ生 レタ ルナ リ社 会 上 必然 ノ存 在 ナ ル以

質 ヲ知 ラ ント要 望 ス斯 カ ル時 ニ於 テ函 館 戦 旗 支 局 ハ如 上 真 摯 ナ ル無

厚 ナ ラ シ メタ リ無 産 大 衆 ハ自 己 ノ周 囲 ニ惹 起 ス ル諸現 象 ノ正 シキ本

ト駆 リ立 テ ラ レタ リブ ルジ ヨ ア文 化 ハ形 式 的 ト ナリ反 動 的 色 彩 ヲ濃

一九 三 〇年 ハ世 界 的 経済 恐慌 益 深 刻 化 シ工場 閉 鎖

ハ判 リ キツ テ居 タ カ ラ テ ア ル戦 旗 ハプ ロレ タ リア大 衆 ニ正 シイ階 級

存在 シタ ノ ハ事 実 テ ア ルカ ソ ハイ ヤ応 ナ ク干渉 サ レ蹴 散 サ レ ル コト

ルモノ テ ハナ イ戦 旗 支 局 ハ唯 雑 誌 戦 旗 ノ組 織 的 販 売 配付 ニ依 ル支 局

テ アツ テ絶 対 ニ党 ノ指 導 書 類 又 ハ労 働 組 合 ノ指 令檄 文 テ ア ツ タ リ ス

モ ノ ニ非 ス即 時 無 罪 ノ判 決 ヲ要 求 ス第 三 、 第 二審 ニ於 テ共 犯者 伊 月

上 到 底 形 式的 否 定 ヲ以 テ形 付 ケ ラ ル ヘキ モ ノ ニ非 ス又有 罪 タ ル ヘキ

ノ拡 大 強 化 ヨリ以 上 ノ任 務 ヲ有 セ スプ ロ レ タリ ア全 階 級 運 動 ノ代 表

ト シタ ル ニ裁 判長 ハ伊 月 ノ事 ハ言 ハナ イ テ モイ イ﹂ ト再 三再 四被 告

剛 三 ハ美 事 ナ ル改悛 振 ヲ示 シ我 々ノ組 織 ノ為 ニ正 シキ主 張 ヲ為 サ ス

シタ ル モノ ニシテ原 判 決 挙 示 ノ 証拠 ニ依 レ ハ右 事実 ヲ認 ム ルヲ得ヘ

任 者 ヲ通 シ テ約 五十 名 ノ読 者 ニ配 付 シテ閲 読 セ シ メタ ル事 実 ヲ認 定

努 メ同 年 十 一月発 刊 ノ戦 旗 数十 部 ノ密 送 ヲ受 ケ其 ノ 一部 宛 ヲ各 班 責

足 ル ヘキ顕 著 ナ ル事 由 ナ シ而 シテ右 被告 人 ノ行 為 ハ日本

ク記 録 ニ徴 ス ル ニ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ疑 フ ニ

依 テ自 分 ハ伊 月 ノ誤 謬 ヲ正 シ我 々ノ組 織 ニ対 シ正 シキ釈 明 ヲ為 サ ン

(要 旨 )

共 産 党 ノ主 義 目 的 ニ共 鳴 スル同 党 支持 者 ノ増 加 ヲ図 ル モノ ニ シテ即

シテ個 人 ノ裁 判 ナ リ吾 々 ハ個 人的 分 離 裁 判 ニ ハ絶 対反 対 ナ リ被 告 ノ

人 ノ弁 明 ヲ妨 害 シ タリ之 ハ明白 ニ分 離 裁 判 テ ア リ組 織 ヲ裁 ク ニ非 ス

言 論 ヲ干 渉 妨 害 スル コト ハ絶 対 反 対 ナ リ尚 予審 調書 ハ暗 黒 分 離 裁 判

一条 第 一項 第 二 項 各後 段 ニ該 当 スル モ ノト ス然 レ ハ原 判決 カ叙 上 事

同 党 ノ目 的 遂 行 ニ資 スル ノ行 為 ナ リト謂 フ ヘキ ヲ以 テ治安 維 持 法 第

ノ即 時 撤 廃 ヲ要 求 シ又被 告 人 カ無 産 大衆 ノ要 望 ニ副 フノ意 思 ヲ以 テ

実 ヲ認 定 シ同 法 条 ニ問 擬 シタ ル ハ正 当 ナリ被 告 人 カ所論 ノ如 ク同 法

ハ統 一裁 判 ヲ希 望 ス又 第 二 審 ニ於 ケ ル自 分 ノ主 張 及 同 志野 村 勝 治 ノ 証 言 及同 人 ノ調 書 ニ信 ヲ措 クト 云 フ ニ在 レト モ

ニ シ テ組 織 ノ統 一的 裁 判 ニ依 ル調書 ニ非 サ ル ヲ以 テ之 ヲ否 認 ス吾 々

原 判 決 ハ日本 共 産 党 ハ我 国 体 ヲ変 革 シ且私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 シ無 産

ニ非 ス論 旨 第 一第 二 ハ其 ノ理 由 ナ ク又 仮 ニ原 審 裁 判 長 カ論 旨 第 三 ニ

摘 示 ス ルカ如 キ言 辞 ヲ以 テ被 告 人 ニ注意 ヲ与 ヘタ ル事 実 アリ ト ス ル

本 件 行為 ニ及 ヒ タ ル モノト スル モ之 カ為 ニ其 ノ貴 ヲ免 レ得 ヘキ モ ノ

翼 的 雑誌 ニ属 シ屡 内 務 大 臣 ヨ リ発 売頒 布 ヲ禁 止 セ ラ レ殊 ニ昭 和 五年

ニ外 ナ ラサ ル コト其 ノ言 辞 自 体 ニ依 リ明白 ニ シテ記 録 ニ徴 ス ル ニ所

モ這 ハ被 告 人 ノ陳 述 カ自 己 ノ行 為 ニ関 スル弁 明 以外 ニ渉 リ タ ルカ為

階 級 独裁 ノ共 産 主 義 社 会 ノ実 現 ヲ目的 ト ス ル結 社 ニシ テ雑 誌 戦 旗 ハ

ニ於 テ ハ 一月号 及 四月 号 ヲ除 キ全 部其 ノ禁 止 ヲ命 セ ラ レ タ ル モノ ナ

同 党 ヲ支 持 シ同 党 ノ目 的 綱 領 ノ 宣 伝煽 動 ス ル記 事 ヲ掲 載 頒 布 ス ル左

ル処 被 告 人 ハ昭和 五年 三 月 頃 ヨリ日 本 共産 党 ノ主 義 ニ共 鳴 スル ニ至

ヘキ何等 ノ形迹 ナ キ ヲ以 テ其 ノ措 置 ハ違法 ニ非 ス又 予 審 ニ於 ケ ル取

論 ノ如 ク被 告 人 カ為 サ ント シタ ル正 当 ナ ル弁 明 ヲ阻 止 シタ リ ト認 ム

調 ハ被告 人各 別 ニ為 ス ヲ本 則 ト シ且 之 ヲ公 行 ス ヘキ モノ ニ非 サ ル コ

リ叙 上 同 党 ノ目的 ト戦 旗 ハ叙 上 ノ如 キ雑誌 ナ ル コト ト ヲ知 リ ナカ ラ

ト 言 ヲ俟 タ サ レ ハ予審 調書 カ統 一的 裁 判 ニ依 ラ ス分 離 的 秘密 ノ取 調

原 審 相 被 告 人伊 月剛 三等 ト協 力 シテ同 雑誌 ノ読 者 網 ヲ確 立 シ日本 共

ニ犯 意 ヲ継 続 シ テ原 判 示 第 二 ノ (一) 乃 至 (五) ノ如 ク同 年 四 月 以

産 党 ヲ支 持 シ以 テ其 ノ拡 大 強 化 ニ資 スル所 ア ラ ント シ其 ノ目 的 ノ下

弁 護 人 布施 辰治  大 森 詮 夫  河 合 篤  青 柳 盛 雄 上告 趣 意 書 第 一点 原

ニ成 リ タ ル コト ヲ云為 シテ之 ヲ攻 撃 スル論 旨部 分 ハ甚 タ其 ノ謂 ハ レ

判 決 カ被 告 人 ノ所 為 ト シ テ摘 示 シタ ル第 一乃 至 第 五 ノ所 為 ニ対 シ治

ナ キ モノ ニ シテ論 旨 第 三 モ亦 総 テ其 ノ理 由 ナ シ

委 員 支 局 銀 行班 ノ責 任 者 ト ナ リ爾 来 三 吉 良 太 郎 外数 名 ノ読 者 ヲ獲 得

安 維 持 法 第 一条 ヲ適 用 シ タ ル ハ左記 ノ点 ニ於 テ事 実 関 係 ニツ キ重大

ノ連 絡 班 組 織 ノ結 成及 支 局 ニ ュー スノ発 刊 ニ付協 議 ヲ為 シ支 局常 任

セ ル外 叙 上 協 議 セ ル各 事 項 ヲ遂 行 シ同 年 十 月 中戦 旗 函 館 支 局 ノ常 任

降 数 回同 志 ト 共 ニ雑 誌 戦 旗 ノ読 者 ノ獲 得 戦旗 支 局 ノ確 立 戦 旗 本社 ト

書 記 ト為 リ戦 旗 本 社 ト ノ連 絡 竝支 局 ノ統 制 ニ当 リ益 々読 者 ノ獲 得 ニ

ス ヘク モ ナカ ツ タ コト ハ明白 テ ア ル組 織 ニ関係 ナ キ者 ニ於 テ コノ点

カ ソノ目 的 遂 行 ノ為 ニ行 動 シタ リト 認 定 セ ラ レタ日本 共 産 党 ノ組 織

ニ関 ス ル認識 ヲ持 ツ コト ハ凡 ソ不可 能 事 テ ア ル況 ンヤ被告 人 ニ於 テ

ナ ル事 実 ノ誤 認 若 ク ハ擬律 錯 誤 ノ 不法 ア ル コト ヲ免 レサ ル失 当 ヲ弾

体 ノ変 革 又 ハ私有 財 産 制 度 ノ否 認 ヲ目的 ト スル結 社 ノ存 在 ス ル コト

行 為 ノ当 時 日 本 共産 党 ノ組 織 拡 大強 化 ヲ図 ルトイ フカ如 キ特 定 的 目

内容 又 ハ組 織 拡 大 方法 (組織 員 ハ獲得 ニ関 スル諸 他 ノ厳密 ナ ル要 件

ヲ知 リ該 結 社 ヲ支 持 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル行 為 ハ畢 竟結 社 ノ目 的 遂

標 ヲ有 スル意 思 ヲ有 シテ居 ナカ ツ タ点 ハ 一件 記録 被 告 人 訊 問 調書 ニ

注 意 順序 手 続 等 々) ニツキ テ何 等 ノ知 識 ヲ有 シテ居 ナ カ ツ タ シ又有

行 ノ為 ニ スル行 為 ナリ ト判 示 シ タ然 レト モ右 判 決 ハ毫 モ目的 遂 行 ノ

明 白 ナ ル ニ於 テ ヲ ヤテ ア ル第 二 被告 人 ノ行 為 ヲ客 観 的 ニ見 ルト キ亦

ル行為 ノ内 容 ニ ツキ大 審 院 判 決 (昭和 五年 十 一月十 七 日言 渡 ) ハ国

タメ ニ スル行 為 ノ実質 ヲ説 明 シタ ル モノ テ ハナ ク タ タ単 ニ法 文 ノ字

拡 大 強 化 ノ要 件 ヲ全 然 欠缺 シテ ヰ ル (一) 雑 誌 戦 旗 ハ日本 共 産 党 ヲ

劾 セ ラ ル ヘキ モノ テ ア ル治安 維 持 法 第 一条 ニ所 謂 目的 遂 行 ノ為 ニ ス

句 ヲ更 ニ ヨリ以 上 ニ抽 象 的 言 辞 ヲ以 テ置 キ換 ヘタ ニ スキ ナイ問 題 ハ

支 持 シ同 党 ノ目 的 綱 領 ヲ宣 伝 煽 動 ス ル記 事 ヲ掲 載 頒 布 シ因 テ同 党 ノ

シテ全 日 本無 産 者 芸 術 団 体協 議 会 (ナツ プ) ニヨ ツテ合 法 的雑 誌 ト

依 然 ト シテ ソ ノ謂 フ所 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル行為 ト ハ如 何 ナ ル実質 的 行

シテ届 出 発 刊 サ レタ ノ テ ア ル其 ノ後 一九 二九 年 十 一月 ナ ツプ ヨ リ独

為 ヲイ フカ ト イ フ点 ニ残 ツ テ ヰ ル此 ノ点 ニ関 ス ル弁 護 人 ノ見 解 ハ右

ノ行 為 者 ニ於 テ組織 ノ存 在 及 其 ノ目 的 ヲ認 識 ス ルノ ミ ナ ラ ス ソノ組

立 シテ組 織 的 存 在 ヲ有 ス ル ニ至 ツ タ戦 旗 社 ノ独 自 的発 行 ニカ カ ル雑

拡 大強 化 ヲ図 ル コト ヲ目的 ト ス ル モノ ナ リト イ フ原 判決 ノ認 定 ハ単

織 ノ内 容 ヲ知 リ又 組織 ノ拡 大 方 法 ニツイ テ知 悉 シテ ヰ ナ ケ レ ハナラ

誌 ト ナ ツ タ カ ソノ 目的 ハプ ロレ タ リ ア文 化 ノ宣 伝 普 及 ノ為 テ ア ツ テ

判 決 ト根 本的 ニ異 ル カ暫 ク目的 遂 行 ノ タ メ ニス ル行 為 ト ハ右 判 例 ニ

ヌ更 ニ加 之 ニ行 為 ノ際 組 織 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ルト イ フ 一定 ノ目 標 ヲ有

被 告 人 カ頒 布 シ タ リト認 定 セ ラ レタ当時 ノ戦 旗 ハ此 ノ意 味 ニ於 ケ ル

一九 二 八年 五 月 プ ロ レタリ ア芸術 運 動 ノ為 ノ純粋 ナ芸 術雑 誌 ヲ標 榜

ス ル意 思 ヲ必 要 ト ス ル (二) 客 観 的 ニ ハ行 為 カ組 織 ノ拡 大 又 ハ強 化

労 働 者 農 民 ノ大 衆 的 雑 誌 テ ア ツ タ雑 誌 戦 旗 ハタ ト ヒ頻 繁 ニ発 売 禁 止

ナ ル事 実無 根 以 上 ノ無 知 ト独 断 ト曲 解 ノ上 ニ立 ツ テ ヰ ル雑 誌 戦 旗 ハ

ト イ フ結 果 ヲ生 ス ヘキ実質 ヲ具 備 シ ナケ レ ハナ ラ ヌ而 シ テ組 織 ノ拡

所 謂 拡 大強 化 ヲ図 ル行 為 ナ リト仮 定 的 ニ前 提 シ テ左 ニソノ行 為 ノ要

大 ト ハ組 織 構 成 員 ノ数 的増 大 ヲ謂 ヒ強 化 ト ハ組 織 構 成 ノ高 度 化 緊 密

ノ行 政 処 分 ヲ受 ケ タリ ト ハ言 ヘ其 ノ発 行 ニ ツイ テ ハ当 初 ヨリ新 聞 紙

件 ヲ述 ヘル苟 モ組 織 又 ハ所 謂 結 社 ノ拡大 強 化 ト ハ (一) 主 観 的 ニソ

化統 制 化例 ヘ ハ切 断 セ ラ レタ ル連 絡 ノ回 復 セ クト的 行 動 ノ克 服 等 ヲ

ニシテ若 シ原 判 決 ノ イ フ如 ク日本 共 産 党 ノ拡 大強 化 ヲ目的 ト ス ル モ

ノ ナ リト セ ハ如 何 ニシ テ ヨ ク今 日 ノ 日本 ノ司法 竝行 政権 力 カ ソノ合

法 ニ準 拠 シテ届 出 タ合法 的 雑 誌 テ ア ツ タ事 実 ハ明 白 テ ア ル ソノ雑 誌

法 的存 在 ヲ保 ツ コト ヲ許 シ タテ ア ラウ カ又 コノ雑 誌 ニシ テ合 法 的 存

シ テ ソ ノ行 為 ハ何 等 カノ 点 ニ於 テ組 織 又 ハ団 体 ト組 織 上 ノ関 係 ア ル コト ヲ必要ト ス ル コト ハ論 ヲ俟 タ ナイ本 件 ニツ キ原判 決 ノ認 定 シ タ

指 ス モノ テ ア ル コト ハ コノ言 葉 ノ常 識 的 従 ツ テ標 準 的 解 釈 テ ア ル而

ル被 告 人 ノ行 為 ハ全 然 右 ノ要件 ヲ欠 缺 シ テ ヰ ル第 一主 観 的 ニ被 告 人

ルト イ フ認 定 ニ至 ツ テ ハ常 識 的 推 論 ノ範囲 ヲ逸 脱 シ テヰ ル(二)被告

ン ヤ コノ雑 誌 ノ配 布 行為 カ 日本 共 産 党 ノ拡 大強 化 ト イ フ結 果 ヲ生 ス

テ ア ラウ カ凡 ソ カカ ル コト ハ推 問 スル モ ノ モ愚 カナ コト テ ハア ル況

在 ヲ保 チ ツツ如 何 ニシ テ日本 共 産 党 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル コト カ出来 タ

検事溝淵孝雄関与

決ス

右 ノ理由 ナ ルヲ 以 テ刑 事 訴訟 法 第 四百 四 十 六条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

上 告論 旨 及判 決 理 由 ハ之 ヲ省 略 ス)

疑 フ ニ足 ル ヘキ顕 著 ナ ル事由 ナ キ ヲ以 テ論 旨 ハ理 由 ナ シ ( 其 ノ他 ノ

昭和 八 年 (れ)第 八七 三 号棄却) 四 治安維持法違反被告事件(同 年九月四日第 一刑事部判決

国 体 ノ変 革 竝 私有 財 産 制 度 ノ否認 ヲ目的 ト スル結 社 ノ拡 大 強 化 ヲ

武 潔

人 ノ組 織 シタ ル戦 旗 支 局 ノ任 務 ハ雑 誌 戦 旗 ノ取 次 配 布 ヲ ス ル コト 以 上 以外 ノ何 モノ テ モ ナイ既 ニ戦 旗 ノ実 質 ニシ テ前 述 ノ如 シ所 謂 支 局 ノ組 織 活 動 タ ル購 読 者 ノ獲 得 輪 読 研 究 会 カ日 本 共産 党 ノ拡 大 強 化 ト

(第 二審 ) 東 京控 訴院

蓬 田 弘  弁護人︷ 高 橋

ノ間 ニ持 ツ関 係 的 距離 ハ天 地 ト雲 泥 ノ間隔 ヲ遙 カ ニ超 越 シテ ヰ ル ニ

(上告人) 被告人 清

水

モ拘 ラ ス原 判 決 カ漠然 被 告 人 ノ行 為 ニツ キ治 安維 持 法 第 一条 ヲ適 用

判示事項

(第 一審 ) 東 京 地方 裁 判 所

目 的 ト スル団 体 ノ存 在 ス ル場 合 ニ於 テ其 ノ結 社及 団 体 ノ組 織 及 目

判決要旨

的 ヲ認 識 シ ナカ ラ其 ノ団 体 ノ 目的 ニ属 スル活動 ヲ為 スト キ ハ仮 令

○

結 社 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル団 体 ノ目 的 遂行 ト結 社 ノ 目的 遂行

○

シ タ ル コト ハ断 然 不当 ニシテ到 底 破 毀 ヲ免 レ サ ル モノ テ ア ルト 云 フ ニ在 レト モ 被 告 人 カ原 判 示 ノ如 ク 日本 共 産 党 ハ国 体 ノ変 革 及 私 有 財 産 制 度 ノ否

シ同 党 ヲ支 持 ス ル目的 ヲ 以 テ同 雑 誌 ノ読 者 ヲ増 加 セ シメ各読 者 ニ同

動 ス ル記 事 ヲ掲 載 ス ル モノ ナ ル コト ヲ知 リ ナカ ラ同 党 ノ主義 ニ共 鳴

結 社 ト 有 機的 ニ直 接 ノ連 絡 ヲ有 セサ ルト キト雖 其 ノ行 為 ハ治 安維

認 ヲ目 的 ト ス ル結 社 ナ ル コト及 雑 誌 戦 旗 ハ同 党 ノ目 的 綱 領 ヲ宣伝 煽

雑 誌 ヲ配 布 閲読 セ シメ タ ル行 為 ア ル以 上治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 第

由

持 法 第 一条 ニ所 謂 結 社 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ スル行為 ニ該 当 ス

理

二項 各 後 段 ノ犯罪 ヲ構 成 ス ル コト被 告 人 ノ 上告 論 旨 第 一第 二 ニ付 説

○

明 シタ ルカ如 ク ニシテ右 犯 罪 ノ成 立 ニ付叙 上事 実 以外 更 ニ所 論 ノ如 ク被 告 人 カ日 本 共産 党 ト組 織 上 ノ関 係 ヲ有 シ且詳 細 ニ同 党 ノ組 織 ノ 内 容 又 ハ組 織 拡 大方 法 ヲ知 悉 シタ ル コト ヲ要 ス ル モノ ニ非 ス又雑 誌

ヲ疑 フ ニ足 ル顕 著 ナ ル事 由 ア ル モノ ト信 ス (一) 思 想 ハ処 罰 ノ対 象

弁 護 人 蓬 田 武 上告 趣 意 書 第 一点 本件 ハ重 大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト

タ ル モノ ニア ラ ス原 審 判 決 ハ ﹁被 告 人 ハ石川 県 立 第 一中 学校 ヲ卒 業

戦 旗 カ新 聞 紙 法 ニ準 拠 シテ届 出 ヲ為 シ ア ル モノ ナ レ ハト テ之 カ為 ニ

後 大 正 十 五年 四月 関 西 学 院文 学 部 ニ入 学 シ当 時 同学 院 社 会 科 学研 究

右 犯罪 ノ成 立 ヲ妨 ク ル コト ナ シ然 レ ハ原 判 決 カ叙 上 事 実 ヲ認 定 シ前

ノ ト謂 フ ヘカ ラ ス尚 記 録 ニ徴 スル ニ重大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア ル コト ヲ

示 法 条 ニ問 擬 シタ ル ハ相 当 ニシ テ所 論 ノ如 ク擬 律 錯 誤 ノ違 法 ア ル モ

ノ激 化 日 ニ益 々甚 シキ貧 富 ノ懸 隔 ノ増 大労 働 者 農 民 小 市 民階 級 ノ加

タ ル ハ実 ニ現 代 ノ生 々 シキ客 観 的 社 会 現象 其 ノ モノ ニシ テ階 級 対 立

モ被告 ヲシ テ関 西 大学 及 日本 大 学 ニ於 テ社会 科学 ノ研 究 ニ趨 カ シメ

至 リ プ ロ レタ リ ア解 放 運 動 ニ従 事 セ ン コト ヲ決 意 シ﹂ ト判 示 ス レト

会 ニ加 入 シ社 会 科学 ノ研 究 ニ従 事 シ遂 ニ マルク ス主 義 ヲ信 奉 スル ニ

年 四 月 日本 大 学 予科 文 科 ニ入 学 シ間 モナ ク同 大 学 予 科 社会 科 学 研 究

会 ニ参 加 シ居 リ タ ルカ 昭和 二 年 三 月 同 学院 ヲ除 名 セ ラ レ次 テ昭 和 三

ト ス ル モ ノ ニシテ妥 当 ナ ル ヲ得 ス (三) 労 農 同盟 ノ本 質 ニ対 ス ル認

識 的 ナ ル認 識 ノ程 度 ヲ以 テ セ ル被 告 ノ行 為 ニ対 ス ル責 任 ヲ問 擬 セ ン

ニ出 テ タ ル モノ ナ ラ サ ル ヘカ ラ スト解 ス然 ル ニ原審 判 決 ハ唯 新 聞 常

認 識 ヲ有 シ其 ノ 目的 ヲ知 悉 シテ積 極 的 ニ之 ニ協 力 ス ル特 別 ナ ル目 的

目 的罪 タ ル性 質 上被 告 ノ其 ノ認 識 ハ具 体 的 ニ科学 的 ナ ル詳密 ニ亙 ル

シ テ日 本 共産 党 ノ組 織 目 的等 カ判 示 ノ如 キ モ ノト仮 定 ス ル モ本 件 カ

シ テ活 動 ス ル団 体 ナ ル点 ノ認 識 ハ全 然 被告 ノ否 認 スルト コロナ リ而

粗 雑 ナ ル モノ ニスキ ス尚労 農 同 盟 カ 日本 共産 党 ノ拡 大 強化 ヲ目 的 ト

ノ ナリ ト ノ公 判 廷 ニ於 ケ ル供 述 ニ観 ル モ被 告 ノ其 ノ認 識 タ ルヤ甚 タ

社 会 現象 ノ研 究 解 明 ニ熱 意 セ ル ニ至 リ タ ル ハ極 メ テ自 然 ニシテ叙 上

実 ヲ直 視 シ純 真 ニシテ 敏鋭 ナ ル感 激 性 ニ富 ム青 年 学 徒 被 告 カカ カ ル

ニ於 ケ ル生 活 利 益 ノ擁 護 ノ為 ニ果敢 ニ闘 争 スル政治 的 カ ン パ ニ ア ニ

的 結 合 体 ト シ テ成 立 シタ ル モノ ニ シテ労 働 者 農 民 一般 小 市 民 ノ 日常

動 ス ル団 体 ナリ ﹂ ト判 示 ス レト モ該 同 盟 ハ労働 者 農 民 小 市 民 ノ 一般

識 ア リ原 判決 ハ ﹁労 農 同 盟 ハ日本 共 産 党 ノ拡 大強 化 ヲ目 的 ト シテ活

︹マ マ ︺

ル失業 群 ノ激 増 等 之等 資 本 主 義 現 在 社 会 ノ内在 的 諸 矛 盾ニ 対 シテ現

速 度 的 生活 ノ窮 乏 化産 業 合 理 化 ノ美 名 ノ 下 ニ職 ヲ奪 ハル ル底 知 レサ

ノ如 キ過程 ヲ辿 リ マル ク ス主 義 ヲ信 奉 シプ ロレタ リ ヤ解 放 運動 ニ従

過 キ ス最 高 唯 一ノ政 治 団 体 ナ リト謂 ハル ル共 産党 ノ組 織 ト ハ全然 別

事 セ ン コト ヲ決 意 ス ル ニ至 リ タ ル モ ノ ニシテ而 カ モ被 告 カ多年 研究 ノ結果 共産 主 義 思 想 ヲ持 ス ル ニ至 レ ルト モ ソ ハ被 告 ノ自 由 ニシ テ何

ル ニ該 同 盟 ヲ目 シテ 日本 共 産 党 ノ指 導 下 ニ直 接 活動 スル団 体 ノ如 ク

ラ サ ル コト ハ被 告 ノ公 判 廷 ニ於 ケ ル供 述 ニ ヨリ テ極 メ テ明 白 ナリ然

断 セ ル ハ甚 シ キ事 実 ノ誤 認 ナ リト信 ス (四) 因果 関 係 ノ飛 躍 アリ 日

個 ノ モノ ニシ テ又共 産 党 ノ拡 大 強 化 ヲ目的 ト シ テ活 動 スル モノ ニア

﹁プ ロ レタ リ ア解放 運動 ノ 一方 法 ト シ テ政 治的 自 由 獲 得 労 農 同盟 後

等 処罰 ノ対 象 タ リ得 ル モノ ニア ラ サ ル ナリ (二) 日本 共 産 党 ト労 農

ノ労農 同盟 ニ参 加 シ日 本共 産 党 カ国 際 共 産 党 ノ 日本 支 部 ニシテ暴 力

ノ被 告 ノ行為 ハ何等 有 機 的 直 接 的 ニ日本 共 産 党 ト関 聯 ア ル行 為 ニア

本 共 産 党 カ原 審 判 決 判 示 ノ如 キ モノ ト仮 定 スル モ労 農 同 盟 員 ト シテ

同 盟 ト ニ付 テ ノ被 告 ノ認 識 ニ対 ス ル著 シキ誤 認 ア リ 次 ニ原 判 決 ハ

タリ ア独 裁 政 治 ヲ行 ヒ之 ヲ通 シテ共 産 主義 社会 ヲ実 現 セ ン コト ヲ目

手 段 ニヨリ我 国 ノ立憲 君主 制 ヲ変 革 シ私 有 財 産制 度 ヲ否 認 シプ ロ レ

的 ト ス ル秘 密 結 社 ナ ル事 実 及 前 記 同 盟 カ日 本 共産 党 ノ拡 大 強 化 ヲ目

一方 法 ト シ テ ノ活動 ニ スキ サ ルナ リ唯 偶 労 働 者 農 民 小市 民 ノ日常 生

ラ ス当 時 被告 ノ思 惟 シタ ル最 有 効適 切 ナ ルプ ロレタ リ ア解 放 運動 ノ

カ日 本 共産 党 ノ存 在 ヲ知 ル ニ至 リ タ ル ハ昭 和 三年 夏 頃 大 阪 新聞 ノ九

ノ活 動 ト 相 一致 セ シ コト ア ラ ン モ之 ヲ以 テ 日本 共産 党 ノ拡 大 強 化 ヲ

活 利 益 ヲ擁 護 シ テ最 モ果 敢 ニ闘争 セ シ コト ノ結 果 ニ於 テ 日本 共産 党

的 ト シテ活 動 スル団体 ナ ル事 実 ヲ知 リ ナ カ ラ﹂ ト判 示 スレト モ被 告

州 方 面 ニ於 ケ ル共 産 党員 ノ 一斉 検 挙 ノ新 聞 記事 ヲ読 ミ テ知 リタ ル モ

目的 ト スル行為 ナリ ト シテ処 断 セ ンカ世 ノ ア ラ ユル反資 本 主 義 的 行

ヲ否 認 シプ ロ レタ リ ヤ独 裁 政治 ヲ行 ヒ之 ヲ通 シテ共 産 主義 社 会 ヲ実

スル所 ニ非 サ ルナ リ (二) 被 告 人 カ 日本 共産 党 カ国 際 共 産党 ノ日 本

現 セ ン コト ヲ目 的 ト ス ル秘 密 結 社 ナ ル事 実 ヲ認 識 シ居 タ ル コト ハ原

支 部 ニシテ暴 力 手 段 ニ依 リ 我国 ノ立 憲 君 主制 ヲ変 革 シ私 有財 産 制 度

却 シ驚 ク ヘキ因 果 関 係 論 ノ飛 躍 矛盾 ニ陥 ラ サ ル ヲ得 ス甚 シキ事 実 ノ

カ労農 同盟 ハ日本 共 産 党 ノ拡 大 強 化 ヲ目 的 ト シテ活 動 ス ル団 体 ナ ル

判 決挙 示 ノ原 審 公 廷 ニ於 ケ ル被 告 人 ノ供 述 ニ依 リ明 ニシテ 又被 告 人

為 ハ総 テ治 安 維 持法 ヲ以 テ処 罰 セサ ルヲ得 サ ル ヘカ ラサ ル ニ至 ル ヘ

誤 認 ア リ (五 ) 予審 調書 ハ信 スル ニ足 ラ ス原 審 判 決 ハ労 農 同盟 カ 日

ク現 行 刑 法 上 ノ通説 ニ シテ マタ御院 ノ判 例 タ ル相 当 因果 関 係 説 ヲ没

本 共 産 党 ヲ支 持 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル団 体 ナ ル コト ヲ被 告 カ認 識 セ

持 法 第 一条 第 一項 後段 第 二項 ニ所 謂 結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為

事 実 ヲ認 識 シ居 タ ル事 実 ハ原 判 決 挙 示 ノ被 告 人 ニ対 ス ル予 審 第 一回

ヲ為 シタ ル犯 罪 ヲ構 成 ス ル モノ ニシ テ右 結 社 ノ組 織 及 目的 ニ対 ス ル

及第 六 回訊 問 調 書 中 ノ各 供 述 記 載 ニ依 リ之 ヲ認 ム ル ニ足 ル而 シ テ被

的 ニ否 認 セ ルト コ ロ ニシ テ直 接 審 理 口頭 審 理 主義 ノ大 原 則 ニ則 リ タ

被 告 人 ノ認 識 カ新 聞 ノ記 事 ニ依 リ テ得 タ ル モノ ナ ルト其 ノ他 如何 ナ

ル点 ノ立 証 ト シテ第 一回 及 第 六 回予 審 調 書 ヲ引用 シタ レト モ被 告 ノ

ル公 判 廷 ノ自 由 ナ ル被 告 ノ供 述 コソ真 ニ証 拠 ト シテ信 セ ラ ル ヘキ モ

ル方 法 ニ依 リ テ得 タ ル モノ ナ ルト ハ敢 テ問 フ所 ニ非 サ ル ナ リ (三)

予 審 調書 ハ秘 密暗 黒 身 体 ノ拘 束 威 圧 ノ裡 ニ作 成 セ ラ レタ ル モノ ニシ

ノ ニシテ 予審 調 書 ヲ引 用 シ テ判 示 セ ル ハ事 実 ノ認 定 上 妥 当 ナ ラ スト

労 農 同 盟 ノ本質 ハ原 判 示 ノ如 ク 日本 共産 党 ノ拡 大強 化 ヲ目 的 ト シテ

コト ヲ認 識 シ ナ カ ラ原 判 示 ノ如 キ行動 ヲ敢 テ シタ ル以 上茲 ニ治安 維

信 ス (六) 結 論 要 スル ニ本件 ハ自 然 発 生的 ニ下 ヨリ捲 キ起 サ レタ ル

活 動 ス ル団 体 ナ ル コト及 被 告 人 カ右 ノ事 実 ヲ知 悉 シ居 タ ル コト ハ原

告 人 ハ日本 共 産 党 及労 農 同 盟 ナ ル結 社 ノ組 織 及 目 的 カ右 ノ如 ク ナ ル

労 働 者 農 民 小市 民 ノ 日常 生 活利 益 擁 護 ノ為 ニプ ロ レタ リ ア解 放 ノ純

判 決 ノ挙 示 セ ル被 告 人 ニ対 スル予審 第 一回 及 第 六 回訊 問 調 書 中 ノ各

テ被 告 ノ獄内 ニ於 ケ ル孤 独 懊 悩 ハソ レ自 身 一種ノ 拷 問 ト謂 フ ヘク予

良 ナ ル念 慮 ニ基 キ当 時 ノ社会 状 勢 ノ先 頭 ニ立 チテ果 敢 ニ行 為 セ ル被

審 廷 ノ供 述 ハ自 然 タ ル モノ ニアラ ス被 告 マタ公判 廷 ニ於 テ之 ヲ全 部

キ事 実 ノ誤 認 ア リト 信 スト 云 フ ニ在 レト モ

告 ノ行為 ニ対 シテ治 安 維 持法 ヲ以 テ問 擬 セ ント ス ル モノ ニシテ甚 シ

又 ハ自 己 ノ見解 ニ基 キ テ原 審 ノ専権 ニ属 ス ル証 拠 ノ取 捨 判 断 延 イ テ

供 述 記 載 ニ依 リ テ明 ナリ所 論 ハ畢 竟 原 審 ノ採 用 セ サ ル証拠 ニ立脚 シ

事 実 ノ認 定 ヲ非 難 ス ル ニ帰 ス記 録 ヲ精 査 ス ル モ原判 決 ニ右 同 盟 ノ本

(一) 原 判 決 理 由 ノ冒 頭 ヨリ プ ロ レタ リ ヤ開 放運 動 ニ従 事 セ ン コト ヲ決意 シ迄 ノ所 論 事 実 ハ我国 体 ノ変 革 私有 財 産 制 度 否 認 ヲ目 的 ト ス

私 有 財 産制 度 ヲ否 認 セ ント ス ル結 社 ノ拡 大強 化 ヲ目的 ト

質 ニ対 スル誤認 ア ル コト ヲ認 ム ル ヲ得 ス (四) 凡 ソ我国 体 ヲ変革 シ

シテ活 動 ス ル行 為 ハ其 ノ結 社 ノ組 織 及 目的 ニ付 直 接 ナ ル

ト将間接 ナルトヲ問 ハス治安維持法第 一条第 一項後段第 二項 ニ所謂

( 要旨)

ル結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル罪 ヲ犯 シタリ ト ス ル本 件 犯 罪 行為 ニ対 スル動 機 ヲ叙 述 シタ ル モノ ニシテ原 審 ハ之 ヲ以 テ所 論 ノ如 ク被 告 人 処 罰 ノ対 象ト 為 シ タ ル モノ ニ非 ス而 シ テ犯 罪事 実 ヲ 認 定 ス ル ニ当 リ之 カ動 機 ニ関 スル事 実 ヲ判 示 ス ル コト ハ毫 モ法 ノ禁

ニ日 本共産 党 ハ我 国 体 ノ変 革 及 私 有 財 産制 度 ノ否 認 ヲ目 的 ト ス ル秘

ト 言 ヲ俟 タ ス飜 テ証 拠 ニ依 リ テ認 メ ラ レタ ル原 判 示事 実 ヲ査 閲 ス ル

絡 ヲ有 セサ ルト キト雖 其 ノ行 為 ハ前 示 治安 維 持 法 違 反 ニ該 当 ス ル コ

団 体 ノ 目的 ニ属 スル活動 ヲ為 ス者 ハ仮 令右 結 社 ト有機 的 ニ直接 ノ連

解 ニ基 キ原 審 ノ専権 ニ属 ス ル証 拠 ノ取 捨判 断 延 イ テ事実 ノ認 定 ヲ非

審 ノ採 用 セサ ル証拠 ニ立脚 シ又 ハ原 判 決 認定 事 実 ト 異 レ ル独自 ノ見

為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル モノ ニ該 当 ス ル コト寸 毫 ノ疑 ナ シ所 論 ハ原

ハ明 ニ治安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 第 二 項 ニ所 謂 結 社 ノ目 的遂 行 ノ

其 ノ挙 示 セ ル各 証拠 ヲ綜 合 シテ優 ニ之 ヲ認 ムル ニ足 リ而 シテ該 事 実

タ ル モノ ト断 ス ヘキ形迹 ヲ認 メ ス (六)之 ヲ要 スル ニ原 判 示事 実 ハ

ル予審 第 一回 及 第 六 回訊 問 調 書 中 ノ各 供述 記 載 ヲ採 用 シ被 告 人 ノ公

密 結 社 労 農同 盟 ハ右 結 社 ノ拡 大強 化 ヲ目的 ト ス ル団 体 ニシ テ被 告 人

難 攻撃 ス ル ニ帰 ス記録 ヲ精 査 ス ル ニ原 判決 ニ重大 ナ ル事 実 ノ誤 認 ア

結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ヲ為 シタ ル モノ ニ該 当 スル モノ ト ス

ハ右 共産 党 及 同 盟 ノ組織 及 目的 ヲ認 識 シナ カ ラ右 同 盟 ノ為 ニ判 示 ノ

ル コト ヲ疑 フ ニ足 ル ヘキ顕 著 ナ ル事 由 ア ル ヲ発 見 セ ス論 旨 総 テ理 由

ニ該 予審 調 書 カ所論 ノ如 ク被 告 人 ノ不 任意 ノ供 述 ニ基 キ作 成 セラ レ

如 キ活 動 ヲ敢 テ シ タ ル コト明 白 ナ ルカ故 ニ被 告 人 ノ右 行 為 ハ明 ニ右

ナシ ( 其 ノ他 ノ上 告 論 旨及 判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

廷 ニ於 ケ ル反 対 ノ供 述 ヲ排 斥 シタ ル ハ毫 モ違 法 ニ非 ス記 録 ヲ査 ス ル

日本 共 産党 ノ目 的 遂 行 ノ為 ユスル行 為 ヲ為 シタ ル モノト 謂 ハサ ル ヘ

従 ツテ右 ノ如 キ目 的 ヲ有 ス ル結 社 ノ拡 大強 化 ヲ目 的 ト スル団体 ノ存

カ ラ ス然 レ ハ原 判 決 ニ ハ其 ノ間 所 論 ノ如 キ因 果 関 係 ノ飛 躍 ア リト認

在 ス ル場 合 ニ於 テ其 ノ結 社 及 団 体 ノ組織 及 目的 ヲ認 織 シ ナ カ ラ其 ノ

ム ル コト ヲ得 サ ル ナ リ (五) 証拠 ノ取 捨判 断 ハ原 審 ノ専 権 ニ属 ス ル

決 ス

右 ノ 理由 ナ ルヲ以 テ刑 事 訴 訟 法 第 四百 四 十 六条 ニ則 リ主文 ノ如 ク判

検 事 平 井 彦 三郎 関 与

所 ナ レ ハ原 審 カ労 農 同 盟 ハ日 本共 産 党 ヲ支持 シ其 ノ拡 大 強 化 ヲ図 ル 団 体 ナ ル コト ヲ被告 人 ニ於 テ認 識 シ居 タ ル証 拠 ト シテ被 告 人 ニ対 ス

判示事項

判決要旨

ノ目的 事 業 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シ若 ハ其ノ実 行 ヲ煽動 ス ルカ如

国 体 ヲ変 革 シ又 ハ私 有 財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的ト ス ル結 社

○

改 正 治安 維 持 法第 一条 第 一項 後 段 及 第 二項 後 段 ノ適 用

○

f  ﹁結 社 ノ 組 織 、 加 入 、 目 的 遂 行 行 為 ノ 包 括 性 ﹂ ニ関 ス ル モ ノ

昭 和 四 年 (れ)第 一三 二 四 号破毀自判) 一 治安維持法違反被告事件(同 五年二月二十 一日第 四刑事部判決

外 二名

名古屋控訴院検事長 皆 川 治 広 (上告 人 ) 布 施 辰 治 被告 人 長谷川民之助  弁護人︷ 神 道 寛 次 ( 第 二審) 名古屋控訴院

(第 一審) 名古屋地方裁判所

キ ハ結 社 ニ加 入 セ ル者 ノ行 為 タ ルト否 ト ヲ問 ハス昭和 三年 六 月 二

動 ノ所 為 共 ニ第 一条 第 一項 第 二 項中 各 結 社 目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為

該 当 シ連 続 犯 ナ ルヲ 以 テ刑 法 第 五 十 五条 ニ従 ヒ新法 ニ於 テ ハ協 議 煽

四 日迄 ノ間 数 回 ニ亙 リ 犯意 継 続 シテ 日本 共 産 党 ノ目 的 タ ル国 体 ノ変

三 ノ犯 罪 事 実 ト シテ被 告 人 三 名 カ 昭和 三 年 二月 十 六 日 ヨリ同 年 三 月

其 ノ加 入 セ ルノ故 ヲ以 テ処 罰 セラ レタ ル ニ拘 ラ ス尚 且 該結 社 ノ目 的

所 謂 結 社 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ スル行為ト ハ既 ニ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 カ

此 点 ニ関 ス ル弁 護 人 布 施 辰 治 答 弁書 ノ要 旨 改 正治 安 維 持 法 第 一条 ニ

シタ ル ハ判決 ニ影 響 ヲ及 ホ ス ヘキ法 令 ノ違 反 ナリ ト思 料 スト 云 ヒ﹄

原 判 決 ハ事 爰 ニ出 テ ス漫 然 旧 法 第 二条 第 三条 第 五 十 五条 ノ ミ ヲ適 用

旧法 ヲ軽 シト シ テ同 法 ニ従 ヒ処 断 セサ ル ヘカ ラサ ル モノ ナ リ然 ル ニ

十 九 日勅 令 第 百 二十 九 号 ヲ以 テ改 正 セ ラ レタ ル治 安維 持 法 第 一条

由

ニ関 ス ル規 定 ニ当 リ刑 法 第 五 十 四 条 第 一項 前 段 第 五十 五条 ヲ適用 シ

理

第 一項 後 段 及 ヒ第 二 項後 段 ニ該 当 ス ル モノ ト ス

○

革 竝 私 有 財産 制 度 否 認 ノ実 行 ニ関 ス ル協 議 ヲ為 シ且 之 カ実 行 ヲ煽 動

ニ問 擬 ス ヘキ ニ非 スト 云 フ ニ在 リ○ 原 判 決 ハ被 告 人 三 名 ハ昭和 三年

遂 行 ノ為 ニ ス ル所 為 ヲ指 称 ス ル モノ ナ レ ハ本件 被 告 人 ノ行為 ハ同 条

名 古 屋 控 訴 院 検事 長 皆 川 治 広 上告 趣 意 書 第 二点 原 判 決 ハ第 一乃 至 第

シタ ル事 実 ヲ認 定 シ其 ノ法律 適 用 ニ於 テ右 煽 動 ノ所 為 ハ大 正 十 四年

二月 十 二 三 日頃 ヨリ同 年 三 月 四 日迄 ノ間 数 回 ニ亙 リ犯意 継 続 シ テ日

法 律 第 四 十 六号 治 安 維 持 法 第 三条 ニ右 協 議 ノ所為 ハ同法 第 二条 ニ各 該 当 シ連 続 犯 ニ係 ルヲ以 テ刑 法 第 五十 五 条 ヲ適 用 ス ヘキ旨 判 示 シ タ

為 ハ大 正十 四年 法 律 第 四 十 六号 治 安 維 持 法第 二条 右 煽 動 ノ行 為 ハ同

ル協 議 ヲ為 シ且之 カ実 行 ヲ煽 動 シタ ル旨 ノ事 実 ヲ認 定 シ右 協 議 ノ行

法 第 三条 ニ該 当 スル モノ ト シ前 示法 条 及 刑法 第 五十 五条 ヲ適 用処 断

本 共 産 党 ノ目的 タ ル国 体 ノ変 革 竝 ニ私 有 財 産制 度 否 認 ノ実行 ニ関 ス

ル行 為 ト ハ既 成 ノ結 社 ニ未 タ加 入 セ サ ル者 カ結 社 ノ目 的 ヲ認識 シテ

シ タ ル コト ハ検 事所 論 ノ如 ク ニシ テ前 顕治 安 維 持 法 ハ昭和 三 年 六 月

レタ ル治 安 維 持 法 第 一条第 一項 第 二項 ニ所 謂 結 社 ノ 目的 遂 行 ニ関 ス

其 ノ 目的 遂 行 ノ為結 社 ヲ援 助 スル 一切 ノ行 為 ヲ指 称 シ宣 伝煽 動 又 ハ

二 十九 日勅 令 第 百 二十 九 号 ニ ヨリ改 正 セ ラ レタ ル ヲ以 テ原 裁 判所 ハ

リ然 レト モ昭和 三 年 六 月 二十 九 日勅 令 第 百 二 十九 号 ヲ以 テ改 正 セ ラ

ヲ為 ス者 ハ前 示 大 正 十 四年 法 律 第 四 十 六号 ノ 旧法 ニ於 テ ハ協 議 ハ第

裁 判時 法 タ ル右 改 正後 ノ新 法 ヲ モ適 用 シ刑 法 第 六条 ニ従 ヒ其 ノ軽 キ

協 議 ノ如 キ ハ目 的 遂 行 行為 ノ内 容 タ ル ヘキ モノ ニシ テ此 ノ種 ノ行 為

二 条煽 動 ハ第 三 条 ニ該 当 スト雖 新 法 ニ在 リ テ ハ共 ニ第 一条 第 一項 又

刑 ヲ以 テ処 断 ス ヘキ モノ ト ス弁 護 人 ノ答弁 ニ付 按 ス ル ニ改 正 前 ノ 旧

治安 維 持 法 第 二条 第 三条 ニ該当 ス ル行為 カ国 体 ヲ変革 シ

ハ第 二項 ニ該 当 シ新 法 第 二条 第 三 条 ハ前 示 ノ如 キ既 成結 社 ヲ援 助 ス ル以外 ノ協 議 煽 動 ノ ミ ニ付 適 用 ア ル モノ ト解 スル ヲ相当 ト ス而 シ テ

又 ハ私 有財 産 制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト ス ル結 社 ノ 目

的 遂行 ノ為 ニス ル行為 ナ ル ニ於 テ ハ未 タ結 社 ニ加 入 セサ ル者 ナ ルト

(要旨 ) 刑 ノ変 更 ア リ シ ヲ以 テ刑 法 第 六 条 第十 条 ニ則 リ右 新 旧 両法 ノ刑 ヲ対

キ ト雖 改 正 後 ノ治 安 維 持 法 ニ在 リテ ハ其 ノ第 一条第 一項 後 段 及第 二

原 判 決 認 定 ノ犯 罪事 実 ハ旧 法 時 代 ノ 犯行 ニ係 リ犯 罪 後 ノ法 律 ニ依 リ

照 シ旧 法 ニ於 テ ハ判 示 協 議 ノ所 為 ハ第 二条 ニ煽 動 ノ所為 ハ第 三 条 ニ

ハ弁 護 人 ノ主 張 ハ之 ヲ採 用 ス ル ニ由 ナ シ而 シテ原 判 決 カ前 記 ノ如 ク

目的 遂 行 ノ為 ニ為 シタ ル場 合 ニ適 用 ス ヘキ モノ ナ ル ヲ以 テ ナリ然 ラ

ニ非 ス シテ単 タ国 体 ノ変 革 又 ハ私 有 財 産制 度 ノ否 認 ヲ目 的 ト シ其 ノ

異 ア ル コト ナ ク其 ノ第 二条 第 三 条 ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ為 シタ ル

コト ハ結 社 加 入者 ノ行 為 ナ ルト未 加 入者 ノ行 為 ナ ルト ニ依 リ毫 モ差

項 ニ該 当 スル モノ ト ス蓋 シ斯 ノ如 キ行 為 カ結 社 ノ目 的 遂 行 ニ資 ス ル

四 号) ハ孰 レモ本 件犯 罪 ノ用 ニ供 シ タ ル モノ ニシテ犯 人 以 外 ノ者 ニ

収 物 件 中 当 審 五年 第 七号 一乃 至 四 (原審 領 第 五 七条 証 第 一号 乃 至 第

ニ対 シ未 決 勾 留 日数中 二百 日 ヲ各 其 ノ本刑 ニ算 入 スヘ キ モノ ト ス押

懲 役 二年 六月 ニ処 ス ヘキ モノト シ刑法 第 二十 一条 ヲ適 用 シ各 被告 人

ノ範 囲 内 ニ於 テ被 告 人 民 之 助 ヲ懲役 三年 被 告 人 角 治郎 同 安 太 郎 ヲ各

テ之 ニ依 リ処 断 ス ヘク所 犯 情 状 ニ徴 シ右 所 定 刑 中懲 役 刑 ヲ選 択 シ其

ヘキ モノ ト ス ( 其 ノ他 ノ上 告 論 旨 及 判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

属 セサ ルヲ以 テ刑 法 第 十 九 条 第 一項 第 二号 第 二 項 ニ依 リ之 ヲ没 収 ス

右 ノ理由 ニ依 リ主 文 ノ如 ク判 決 ス

ト ス然 カ モ此 ノ違 法 ハ判 決 ニ影 響 ヲ及 ホ ス ヘキ モノ ナ ル ヲ以 テ原 判

検事溝淵孝雄関与

単 ニ行 為 時 法 タ ル旧法 ヲ適 用 処 断 シ タ ル ハ擬 律 錯 誤 ノ違 法 ア ル モノ

以 上 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ爾 余 ノ検 事 上告 論 旨 ニ対 スル説 明 ヲ省 略 シ刑

(上告 人) 被告人 西 山 武

(第二審) 東京控訴院

布 施 辰 治  森 詮 夫  一  弁護人︷ 大 河 合 篤  青 柳 盛 雄

結社組織罪及結社加入罪 ノ包

(第 一審) 新潟地方裁判所

昭 和 六 年 (れ)第 一 一七 七 号棄却) 二 治安維持法違反被告事件(同 年十 一月二十六日第 一刑事部判決

決 ハ破 毀 ヲ免 レ ス本 上告 論 旨 ハ其 ノ理由 ア リ

事 訴 訟 法 第 四 百 四十 七条 第 四百 四十 八条 ニ則 リ原 判 決 ヲ破 毀 シ当 院 ニ於 テ直ニ 判決 ヲ為 ス ヘキ モノト ス因 テ原 判 決 ノ認 定 シ タ ル事実 ニ 拠 リ之 ヲ行 為 時 法 タ ル大 正十 四年法 律 第 四十 六号 治 安 維 持 法 ニ照 ラ ス ニ被 告 人 三 名 ノ各 協 議 ノ行 為 ハ其 ノ第 二条 ニ各 煽 動 ノ行 為 ハ其 ノ 第 三条 ニ該 当 ス ルト コ ロ孰 レ モ連 続 ニ係 ルヲ以 テ刑 法 第 五 十 五条 ヲ 適 用 シ各 一罪 ト シテ処 断 ス ヘク之 ヲ裁 判時 法 タ ル昭和 三 年 六 月 二十 九 日勅 令 第 百 二十 九 号 ヲ 以 テ改 正 セ ラ レタ ル治 安 維 持 法 ニ照 ラ ス ニ

結社支持 ノ為 ニスル行為 ノ性質︱

各 協 議 ノ行 為 及各 煽 動 ノ行 為 ハ孰 レ モ 一面 ニ於 テ国 体 ノ変 革 ヲ目的

括性 ︱ 抱括 一罪ト新 旧法 ノ適用

○ 判示事項

ニ又他 面 ニ於 テ私 有 財 産 制 度 否 認 ヲ目的 ト ス ル結 社 ノ目 的 遂行 ノ為

二 治安維持法第 一条 ノ結 社組織罪 ハ結社 ヲ組織 スル行為ト当然

継続性 ヲ有 ス (要旨第 一)

一 治安維持法 ノ結 社支持 ノ為 ニスル行為 ハ其 ノ本質上包括性 竝

○ 判決要旨

ト ス ル結 社 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ スル モ ノト シテ其 ノ第 一条 第 一項後 段

ニ ス ル モノト シテ同 条 第 二項 ニ該 当 ス ル ニ付 刑 法 第 五 十 四 条 第 一項 前 段 第 十 条 ニ依 リ 重 キ前 者 ノ刑 ニ従 フ ヘク孰 レ モ連 続 ニ係 ルヲ以 テ

六条 第 十 条 ニ従 ヒ刑 ノ軽 重 ヲ稽 フ ル ニ孰 レ モ前 示 旧 法 ノ刑 軽 キ ヲ以

刑 法 第 五十 五 条 ヲ適 用 シ 一罪 ト シ テ処断 ス ヘキ モノ ト ス仍 テ刑法 第

犯意 継 続 ニ出 テ タ ル モ ノ ナリ﹂ ト認 定 シ其 ノ第 一及 第 二事 実 ニ対 ス

ニ ス ル行 為 ヲ為 シ タ ル モノ ニシ テ被 告 人 ノ右 第 一及 第 二 ノ各 所 意 ハ

ル法 律 ノ適 用 ヲ第 一事 実 ニ付 テ ハ ﹁大 正 十 四年 法 律 第 四十 六 号 治安

之 ニ伴 フ ヘキ活 動 ト ヲ包 括 シ同 結 社 加 入 罪 ハ社員 資 格 獲 得 行

維 持 法 第 一条 第 一項後 段 ニ該 当 ス ル処 同 法 条 ハ右犯 行 後 昭和 三 年 六

為 ト 結 社支 持 行 為 ト ヲ包 括 ス ( 要 旨 第 二)

代 ニ継 続 シ テ実 行 セラ レタ ル場 合 ニ ハ其 ノ全 体 ヲ包 括 一罪 ト

三  包 括 的 一罪 ヲ組 成 ス ル 一団 ノ多 数 行為 カ旧 法 時 代 ヨリ新 法 時

月 二十 九 日勅 令 第 百 二 十 九号 ヲ以 テ改 正 セ ラ レ刑 ノ変 更 ア リ タ ル ニ

因 リ之 ヲ新 治 安 維 持 法 ト照 セ ハ 一面 ニ於 テ国 体 ノ変 革 ヲ目 的 ト ス ル

シテ之 ニ対 シ新 法 ヲ適 用 ス (要 旨 第 三)

産 制 度 ノ否 認 ヲ目的 ト スル結 社 加 入 ノ所 為 ト シテ 同条 第 二項 前 段 ニ

結 社 加 入 ノ所 為 ト シ テ其 ノ第 一条 第 一項 後 段 ニ又他 面 ニ於 テ私 有財

該 当 ス ル ヲ以 テ刑 法 第 五十 四条 第 一項 前 段 第 十 条 ニ依 リ重 キ前 者 ノ

由

弁 護 人布 施 辰治 大 森 詮 夫 小林 恭 平 河 合 篤 青 柳盛 雄 上 告 趣 意 書 第

刑 ニ従 フ ヘク同 法 第 六 条 第 十 条 ニ依 リ 以上 新 旧 両法 ノ刑 ノ軽 重 ヲ比

理

一点原 判 決 ハ被 告 人 西 山 武 一ニ対 ス ル犯 罪 事 実 ヲ第 一昭和 三 年 二 月

照 スル ニ前 示 旧法 ノ刑 軽 ヲ以 テ之 ニ依 リ処 断 ス ヘク﹂ ト擬 律 シ テ旧

○

ニヨリ テ 日 本共 産 党 カ我 立憲 君 主制 ヲ撤 廃 シ且 私 有財 産 制 度 ヲ否 認

頃 日本 共 産 党 員 ニシ テ信 越 地方 オ ルガ ナ イザ ー タ ル河合 悦 三 ノ勧 誘

ル秘 密結 社 ナ ル コト ヲ知 リ乍 ラ之 ニ加 入 シテ其 ノ党員 ト ナリ第 二昭

刑 ニ従 フ ヘキ処 ﹂ ト擬 律 シタ ル後 ﹁以 上 ハ犯 意 継 続 ニ係 ル ヲ以 テ同

該 当 スル ヲ以 テ刑 法 第 五十 四 条 第 一項前 段 第 十 条 ニ依 リ 重 キ前 者 ノ

安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 ニ又 他 面 ニ於 テ同 法 第 一条 第 二項 後 段 ニ

﹁判 示 第 二 ノ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル各 行 為 ハ 一面 ニ於 テ右 新 治

和 三 年 三 月 中旬 頃 以降 ハ東 京 市 内 ニ居 住 シ各 結 社 ノ組 織拡 大 強 化 ヲ

法 第 五 十 五 条 第 十 条 ヲ適 用 シ連 続 一罪 ト シテ重 キ新 治安 維 持 法 第 一

法 ニ依 ル ヘキ モノ ナ ル コト ヲ説 示 シ第 二事 実 ニ対 スル法 律 ノ適 用 ヲ

図 ル為 (一) 昭和 四年 三 月 上 旬 頃 日 本 共産 党 員 ナ ル落 合直 文 ト協 議

条 第一 項 後 段 所 定 ノ刑 ヲ以 テ処 断 ス ヘキ モノ ト ス﹂ ト 説 示 シ第 一第

シ テ無産 階 級 独裁 ニ ヨ ル共 産 主 義 社会 ヲ実 現 スル コト ヲ目的 ト シ国

ノ上 東 京 府 内 ニ於 テ 四谷 郵 便 局 工場 新 聞郵 便 労 働 者 ヲ約十 五部 宛 二

二 ノ事 実 ハ犯 意 継 続 ニ係 ル連 続 一罪 ト シ テ結 局新 治 安 維持 法 第 一条

際 共 産 党 (第 三 イ ンタ ー ナ シ ヨ ナ ル) ノ 一支 部 ト シテ組 織 セラ レタ

ヲ依 頼 セ ラ ル ル ヤ其 ノ発 行 責 任 者 桑 江 常格 ト協 議 ノ上 東 京 府 内 ニ於

回 発 行 シ (二 ) 同年 七月 頃 同 党 員 ナ ル佐野 博 ヨリ無 産 者新 聞 ノ編 輯

ト シテ ハ第一 事 実 ニ対 シテ モ同 法 第 一条第 一項 後 段 ヲ擬律 シ第 二事

第 一項 後 段 ヲ適 用 シ テ居 タ ル カ原 判 決 ハ上来 摘 示 ノ通 リ新 法 ノ適 用

実 ニ対 シテ ハ勿 論 同 法 第 一条 第 一項 後 段 ヲ擬 律 シ事 実 認定 ニ於 ケ ル

テ同 年 八 月 十 四 日附 及 同 月 二十 日附 各 発 行 ノ 同新 聞 ノ編 輯 ニ関 与 シ

第 一事 実 ノ結 社 加 入 行為 ト第 二事 実 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ト カ

(三) 右 無 産 者 新 聞 カ其 ノ発 行 ヲ禁 止 セ ラ ル ルヤ同 年 九 月 中 右桑 江 常 格 ト協 議 ノ上 更 ニ東 京 府内 ニ於 テ第 二 無 産 者新 聞 ヲ編 輯 発 行 シ同

同 法第 一条 第 一項 後 段 中 ニ区別 セ ラ レテ居 ル孰 レノ行 為 ︱

具体的

テ右 日本 共 産 党 ノ政 策 ヲ労農 大 衆 ニ宣 伝 シ テ該結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為

年 十 月 下 旬 頃 以降 ハ自 ラ其 ノ責 任 者 ト ナ リ テ同新 聞 ヲ編 輯 発 行 シ以

ニ換 言 ス レ ハ第 一ノ結 社 加 入 ト 第 二 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ノ孰

説 示 ハ第一 点指 摘 ノ如 ク第 一第 二 ノ犯 罪 態 様 ハ各 独 立 シテ治 安維 持

用 ヲ受 ク ヘキ モノ ナ リト ノ見解 ヲ採 テ居 ル ノ テア ル蓋 シ刑 法 第 五十

法 ノ適 用 ヲ受 ク ヘキ モノ テ ア ル カ犯 意 継 続 ノ関 係 ニ於 テ連 続 犯 ノ適

以 テ処 断 セラ レタ ノ テ ア ル カ明白 ニ説 示 セ ラ レテ居 ナイ而 シ テ以 上

レヲ重 キ モノ ト シテ所 謂 新 治 安維 持 法 第 一条 第 一項後 段 所 定 ノ刑 ヲ

指 摘 ス ル カ如 キ原 判 決 ノ明 白 ニ説 示 セ ラ レテ居 ナイ擬 律 ノ不 徹 底 ハ

シ其 ノ間意 思 ノ継 続 ヲ 一貫 ス ル モノ ナ ル カ故 ニ所 謂 連 続 一罪 ト認 メ

ル法 律 ノ擬 制 テ ア ツ テ犯 罪構 成 ノ 一般 理 論 カ ラ云 ヘ ハ各 独 立 シタ犯

五 条 連 続 一罪 ノ適 用 ハ行 為 ソ レ自 体 ニ於 ケ ル犯罪 態 様 ノ独 立 ヲ認 定

レ タ モノ カ第 一事 実 ナ リト セ ハ既 ニ旧 法 ヲ適 用 ス ヘキ モノト 擬 律 セ

仮 ニ連続 一罪 ト シ テ重 キ新 治 安維 持 法 第 一条 第 一項後 段 ヲ適 用 セ ラ

ラ レタ第 一事 実 カ何 故 ニ第 二事 実 ト ノ間 ニ犯意 継続 アリ ト云 フ理由

ノ被 告 人西 山 武一 ニ対 ス ル第 一第 二 ノ犯 罪事 実 即 チ第 一ノ結 社 加 入

罪 構 成 ノ態 様 ヲ為 スモ ノト認 メ ラ レテ居 ルノ テ ア ル従 テ原 判 決 認 定

又仮 ニ連 続 一罪 ト シ テ重 キ新 治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 ヲ適 用 セ

モノ ト シ其 ノ間 犯意 継 続 ア リ ト ノ理由 ヲ以 テ速 続 一罪 ト認 メ タ原 判

行為 ト第 二 ノ目 的 遂行 ノ為 ニ ス ル行為 ト ヲ各 独 立 ノ犯 罪 ヲ構 成 ス ル

ヲ以 テ新 治 安 維 持 法 ヲ適 用 セ ラ レタ カ ノ擬律 説 示 ヲ欠 ク コト ト ナリ

ラ レタ ル モノ カ第 二事 実 ナリ ト セ ハ第 一事 実 ノ結 社 加 入 行為 カ如 何 ナ ル理由 ニヨ リ テ目的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為 ニ吸収 包 容 セ ラ ル ルカ ノ

社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ吸 収 包 含 ス ヘキ モ ノ ナ ル点 ニ於 テ犯

決 ハ治 安 維 持 法 ノ結 社 加 入即 チ所 謂党 員 資 格 獲 得 行為 ハ自 ラ加 入結

ヲ適 用 セ ラ ル ヘキ連 続 一罪 ハ同 一ノ罪 名 ニ触 レ ル 一切 ヲ包含 ス ル モ

擬 律 説 示 ヲ欠 ク コトト ナ ル不 当 ヲ犯 シ テ居 ル惟 フ ニ刑 法第 五十 五条

ノ所 謂 結 社 加 入 行為 即 チ党 員 資 格 獲得 ノ犯 罪 内 容 ハ治 安維 持 法 違反

罪 構 成 ニ関 スル擬律 ヲ誤 レ ル不 法 ヲ犯 シテ居 ル何 故 ナ ラ ハ第 一事 実

ノ 目的 罪 タ ル本 質 上第 二 ノ犯 罪 行 為 ト シテ認 定 セ ラ レタ ル目 的 遂行

ノ ト シテ原 判決 ハ第 一及 第 二 ノ事 実 ニ対 シ新 治 安 維 持 法 第一 条 第 一

モ差 支 ヘナ シト 云 フ見 解 ニ出 テ テ居 ルカ モ知 レナ イ カ治安 維 持 法 違

項 後 段 ヲ擬 律 シ テ居 ルノ タ カ ラ其 ノ孰 レ ニ対 シテ適 用 シ タリ ト ス ル

ラ ル ヘキ犯 罪 ノ結 果 ト シテ特 ニ独 立 ノ犯 罪 ヲ構 成 ス ヘキ モノ ニア ラ

ノ為 ニ スル行為 ヲ包含 シ第 二 ノ事 実 ハ当 然 第 一ノ事 実 ニ予 想 期待 セ

ノ為 ニ スル行 為 ト ハ其 ノ間 主 従 本末 ノ関 係 ニ於 テ第 一事 実 ノ結 社 加

反 ノ目 的 罪 タ ル点 ニ於 テ第 一事 実 ノ結 社加 入 ト第 二 事 実 ノ 目的 遂 行

ス ルカ ラ テ ア ル左 ニ其 ノ理 由 ヲ箇 条 書 的 ニ列 挙 シテ原 判 決 ノ法 律 見

サ ル ハ勿 論所 謂 連 続 犯 ノ適 用 ヲ モ受 ク ヘキ性 質 ノ モノ テ ハナイ ト信

解 ニ抗 議 シ断 然 原 判 決 ノ誤 謬清 算 ヲ要 求 ス ル 一、 治 安 維 持法 違 反 行

入 カ基 本的 ナ犯 罪 ニナ ツ テ居 ルノ テ ア ル而 シ テ基 本的 ナ結 社 加 入 ノ 第 一事実 ニ付 既 ニ旧 法 ノ擬 律 ヲ説 示 シテ居 ル限 リ単 ニ犯 意 継 続 ノ故

為 ノ目 的罪 タ ル コト ハ判 例 学説 共 ニ異 論 ナキ ト コ ロテ ア ル二、 治 安

自 身 ナ ル コト モ亦 判例 学 説 ニ異 論 ナ ク且条 文 ノ明 白ニ示 シテ居 ルト

個 人 テ ハナ ク シ テ行為 者 個 人 ノ組 織 シ若 ハ加 入 セ ント スル結 社 ソ レ

維 持 法違 反 行 為 ノ目 的 罪 ナリ ト称 セ ラ ル ル目 的 ノ保 有 主 体 ハ行 為 者

ヲ以 テ第 二事 実 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ニ対 ス ル新 治 安 維 持 法第 一条 第 一項 後 段 ノ適 用 カ第 一ノ結 社 加 入ニ 対 ス ル法 律 適 用 ヲ遡 及 セ ラ ル ヘキ テ ハナ イ此 ノ点 ニ於 テ原 判 決 ハ明 ニ擬 律錯 誤 ノ不 法 ヲ犯 シ テ居 ルト謂 ヒ﹄ 同 第 二 点原 判 決 ノ事 実 認 定 ト之 ニ対 スル法 律 適 用 ノ

ハ 一、 加 入 前 ノ目 的 認識 支持 実 行 ニ関 スル行為 カ独 立 シテ犯 罪 ヲ構

上 ノ如 キ治 安 維 持法 第 一条 ノ加 入 罪 ニ対 ス ル法 律 見 解 ノ正 シイ コト

加 入罪 ノ構 成 内 容 ナ ル コト モ亦 判 例 学 説 ノ異論 ナキト コ ロテ ア ル以

ハ手段 結 果 ノ関 係 ヲ有 ツ牽 連 犯 ヲ構 成 ス ルモノ テ ハナ イト 同時 ニ第

加 入罪 ニ包 容 吸 収 セ ラ ル ヘキ当 然 ノ党 員 活 動 テア ツ テ絶 対 ニ別 罪 若

西 山武 一ニ対 スル原判 決 認 定 ノ第 二 事 実 ハ第 一事 実 党員 資格 獲 得 ノ

何者 ノ異 議 ヲ モ挾 ム コ卜 ヲ許 サ ナ イ カ ラ テア ル果 シ テ然 ラ ハ被 告 人

ル行 為 ヲ包 容 吸 収 シ テ加 入罪 ノ犯 罪 内 容 ヲ為 ス ヘキ モ ノ ナ ル コト ニ

ノ活 動 ヲ以 テ ソノ遂 行 ヲ続 ケ ラ レ テ居 ル党 員 資 格 獲 得 ノ加 入 ハ事 実

成 ス ル場 合 ニア ツ テ モ斯 ル目的 認 識 支 持 実 行 ノ段 階 ヲ経 テ加 入 シタ

一ノ党 員 資 格 獲 得 ノ加 入罪 カ旧 法 時 代 ニ於 テ単 一ノ即 時 犯 ト シテ加

ト シテ モ条 理 ト シ テ モ ソノ目 的 遂 行 ニ協 力 ス ヘキ誓 約 ニ外 ナ ラ ナ イ

者 ノ 諸行 為 ハ加 入 罪 ノ 一罪 ト ナ ツテ前 段 ノ過 程 ニ於 ケ ル行為 一切 ヲ

入 ノ約 諾 ト共 ニ成 立 シ テ居 ル コ卜 ヲ認 メ ラ レ タ限 リ ソ ノ後 ニ第 二事

コ ロテ ア ル三 、 治安 維 持 法 ノ目 的 罪 タ ル目的 ノ保 有 主 体 ト治 安 維 持

加 入罪 ニ吸 収 ス ルト云 フ趣旨 ノ判 例 カ幾 ツ モ ア ル二、 目 的 罪 ニア ラ

実 ト シテ認 メ ラ レタ ル目 的遂 行 ノ為 ニ ス ル行為 ハ新 法 時 代 ニ及 ンテ

ト同 時 ニソ ノ目 的 遂行 ニ誓 約 スル加 入 罪 ハ必然 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス

サ ル 一般 犯 罪 ノ手 段 結 果 関係 ニ於 テ屋 内 竊 盗 罪 ノ構 成 過 程 ニ行 ハレ

居 ル カ ラト 云 フ理 由 ヲ以 テ新 法 ノ別 罪 構 成 若 ハ牽 連 罪 ヲ構成 ス ル モ

ソノ団 体 ニ加 入 セ ント ス ル者 ト ノ間 ニ加 入 ノ約 諾 カ成 立 ス ル コト カ

ル住 居 侵 入 ト 云 フ犯 罪 ト 竊盗 罪 卜 ハ手 段 結 果 ノ関 係 ヲ有 ツ牽 連 犯 ト

ノト シテ擬 律 セ ラ ル ヘキ モノ テ ハ絶 対 ニナイ コノ コト ハ余 リ ヨイ例

法 第 一条 第 一項 所 定 ノ 目的 ヲ認 識 シ支持 実 行 セ ント ス ル決意 ヲ以 テ

セ ラ レ乍 ラ職 務 強 要 罪 ト 云 フ目 的 罪 ニ於 ケ ル職 務 強 制 ノ過 程 ニ行 ハ

テ ハナイ カ竊 盗 罪 ニ於 ケ ル竊 盗 罪 ノ成 立 ハ現 ニ他 人 ノ物 テ ア ル贓物

一第 二 ノ所 為 ヲ連 続 犯 ト シテ擬 律 シテ居 ルカ新法 ノ所 謂 目 的 遂 行 ニ

レ ル暴 行 脅 迫 ト云 フ犯 罪 ハ職務 強 要 罪 ト 手 段 結果 ノ牽 連 罪 ヲ以 テ擬

関 スル規定 ハ其 ノ立 法 沿 革 ニ於 テ 且 ソ ノ処 罰 理由 ニ於 テ未 タ党 員 資

セ ラ レ ス単 一ナ職 務 強 要 罪 ヲ構 成 ス ル ニ止 マル点 ニ於 テ所 謂 目 的 罪

ラ ル ヘキ行 為 ハ目 的 罪 ニア ラサ ル 一般 犯 罪 ノ ソ レ ヨリ モ目 的 罪 ノ特

格 ヲ有 セサ ル者 若 ハ既 ニ党員 資 格 ヲ取 得 シタ ル モ ソノ点 ニ付 一旦処

ノ処 分 ヲ以 テ別 ニ新 シイ横 領 罪 ノ構 成 ヲ擬 セ ス贓物 ノ処 分 ハ当 然 竊

質 カ ソノ 目的 ニ見 透 サ レタ 一切 ヲ包 含 吸 収 スルト 云 フ点 ニ於 テ ソ ノ

罰 ヲ受 ケ再 ヒ之 ヲ処 罰 スル コト能 ハサ ル党 員 資 格 卜引 離 サ レ タ行為

ノ 犯罪 内 容 ハ其 ノ過 程 ニ於 ケ ル 一切 ノ行 為 ヲ吸 収 ス ル モノト セ ラ レ

範 囲 ト 結果 カ拡 大 セラ ル ヘキ モノ 卜確 信 ス ル従 テ目的 罪 タ ル治 安 維

者 ニ限 ツ テ適 用 セ ラ ル ヘキ モノ テ ア ル点 カ ラ見 テ モ党 員 資 格獲 得 ノ

テ ハ同 一ニ見 ラ レ ナ ケ レ ハナ ラ ナ イ尚 原 判 決 ハ被 告 人 西 山武 一ノ第

持 法 ノ加 入罪 ハ加 入 ス ヘキ団 体 ノ 目的 ヲ認 識 シ支 持 シ実 行 スル 一切

第 一行 為 ト相 竝立 シ テ目 的 遂行 事 項協 力 ノ第 二 行為 ヲ連 続 犯 ト ス ル

盗 罪 ノ結 果 ト シテ竊 盗 罪 ノ内 容 ニ包 含 吸 収 セ ラ レ ルノ ト法 理論 ト シ

カ加 入 ノ目 的 ト シテ加 入 罪 ノ犯 罪 内容 中 ニ包 容 吸 収 セ ラ ル ヘキ モ ノ

テ居 ル コト ニ異 説 カ ナ イト 確信 セ ラ レル点 ニ於 テ モ明 白 テ ア ル而 シ

テ ア ル コト ハ極 メ テ明 白 テ ア ル何 故 ナ ラ ハ治 安 維 持法 違 反 ノ処 罰 ヲ

コト ハ絶 対 ニ法律 解 釈 ノ誤 謬 ヲ犯 シテ居 ルト謂 フ ニ在 リ○ 仍 テ案 ス

テ更 ニ犯罪 ノ結 果 ニ対 スル見透 シ卜 シ テ目 的 罪 ノ犯罪 内 容 ニ吸 収 セ

弾 圧 セ ラ レ ル原判 決 ニ所 謂 秘 密結 社 日本 共 産 党 ノ有 ス ル目 的 ハ不 断

ハ継続 的 存 在 ヲ本 質 ト ス ル団 体 ナ ルカ故 ニ其 ノ支 持

罰 シ治 安 ヲ維 持 スル ノ目的 ト スル モノ ナリ元 来 結 社

ル ニ治 安 維 持 法 第 一条 ハ結 社 ノ創 設竝 支 持 拡 大 ノ為 ニス ル行 為 ヲ処

ノ認 定 事 実 ニ依 レ ハ被 告 人 ハ治 安 維 持 法 改 正前 ニ於 テ同 法 第 一条 ノ

コト ハ既 ニ久 シク本 院 判例 ノ趣 旨 ニ於 テ承認 セ ラル ル所 ナリ原 判 決

ナ ク其 ノ全 体 ヲ包 括 一罪 ト シ之 ニ対 シ テ新 法 ヲ適 用 ス ヘキ モノ ナ ル

( 要 旨 第一 )

狭 義 ノ組 織 行 為 ト当 然 之 ニ伴 フ ヘキ活 動 ト ヲ包 括 シ加 入 罪 ハ社員 資

精 神 ニ徴 ス ルト キ ハ組 織 罪 ハ結 社 ヲ創 設 ス ル行為 即

ナ キ ニ非 スト雖 之 ヲ治 安 維持 ノ 目的 ニ即 ス ル立法 ノ

コト自 ラ明 瞭 ナ リ組織 罪 及 加 入 罪 ハ其 ノ字 義 上所 謂 即 成 犯 タ ルノ観

モノ ナ ル以 上 ハ之 ニ対 シ更 ニ数 箇 ノ行 為 ヲ 一罪 ト シテ処 断 スル コト

行 為 カ同 条 ノ規 定 ニ依 リ当 然 ニ包 括的 ノ 一罪 ト シテ処 断 セ ラ ル ヘキ

第 一項 ノ刑 ヲ以 テ処 断 ス ルヲ正 当 ナリ ト ス而 シ テ既 ニ判 示 被 告 人 ノ

第 二項 ニ触 ル ル モノ ナ ルカ故 ニ刑 法第 五 十 四条ニ 依 リ テ重 キ ニ従 ヒ

叙 上 ノ説 明 ニ照 シ自 ラ明 白 ニシ テ判 示 被 告 人 ノ 行為 ハ同 条 第 一項及

包 括 的 ノ 一罪 ト シテ新 法 第 一条 後 段 ニ依 テ処 断 ス ヘキ モノ ナ ル コト

テ党 目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ルモノ ナ ルカ故 ニ其 ノ行 為 ハ

格 ノ獲得 即 チ狭 義 ノ加 入 行為 及 結 社 支 持 行為 ヲ包括 シ何 レモ継続 延

ヲ目的 ト スル刑法 第 五十 五条 ノ総 則規 定 ヲ適 用 ス ルノ 必要 ナ キ コト

結 社 ニ該当 ス ル日本 共 産 党 党員 資 格 ヲ獲 得 シ次 テ右 改 正 前後 ニ亙 リ

長 スル包 括 一罪 ト シ テ之 ヲ観 察 ス ルヲ以 テ正 当 ナリ ト ス然 レト モ此

ノ為 ニ スル行為 モ亦其 ノ本 質 上 包 括性 竝継 続 性 ヲ有 ス殊 ニ其 ノ指 導

等 ノ行為 ハ何 レ モ可 罰 性 ヲ有 ス ル モノ ナ ル カ故 ニ一ヲ以 テ他 ヲ吸収

犯 ナ リ ト為 シ タ ル ハ正当 ニ非 ス且 連続 犯 タ ル ヘキ数 箇 ノ行 為 ハ不可

勿 論 ナ リ ト ス然 ル ニ原 審 カ判 示 被 告 人 ノ行 為 ヲ包括 一罪 ト セ ス連続

行 為 及目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ノ如 キ ハ斯 ル概 念 ヲ有 ス ル モノ ナ ル

スル ニ非 ス シテ皆 其 ノ可 罰性 ヲ保 持 シツ ツ相 合 シ テ包 括 的 ノ 一罪 ヲ

ス ル多 数行 為 相 互 ノ関 係 又 ハ収 賄 罪 ニ於 ケ ル約 束 行為 及 収 受 行為 相

是 亦失 当 タ ル ヲ免 レ ス然 レト モ結 局 ス ル所 被 告 人 ノ 行為 ヲ治 安 維持

照 ス ヘキ モノ ニ非 サ ル ニ拘 ラ ス原 判決 カ斯 ノ如 キ比 照 ヲ為 シタ ル ハ

分 的 ニ処 分 ス ヘキ モノ ナ ルカ故 ニ之 ヲ分 割 シ テ 一部 ニ付新 旧 法 ヲ比

(要 旨第 二)

組 成 シ其 ノ内 容 ヲ拡 充 スル コト之 ヲ譬 ヘ ハ内 乱 罪 又 ハ騒 擾 罪 ヲ組成

ス ルモノ ニシテ其 ノ目 的 ニ出 ツ ル 一切 ノ行 為 ヲ包 括 ス ル 一罪 タ ル ヘ

互 ノ関係 ト異 ル所 ナ シ要 之結 社組 織 罪 ハ結 社 ノ創 設 及支 持 ヲ目 的 ト

テ罪 名刑 ノ範 囲 竝 刑 ノ量 定 等亳 モ結 果 ヲ異 ニ ス ヘキ モノ ニ非 サ ル カ

故 ニ右 擬 律 ヲ以 テ原 判 決 破毀 ノ理 由 ト為 ス ニ足 ラ ス ( 其 ノ他 ノ上告

法 第 一条 第 一項 後 段 ノ刑 ニ処 ス ヘキ 一罪 ト シ テ処 断 シタ ル モノ ニシ

論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

ク結 社 加 入罪 ハ其 レ自 体 ニ於 テ結 社 ノ支 持 行 為 ニ属 シ結 社 社 員資 格

為 ト目 的 遂行 行 為 ト ヲ加 ヘタ ル ハ前 者 カ狭 義 ノ組 織 行為 ト伴 ハス又

獲 得 行為 ト 目的 遂 行 行 為 ヲ包 括 ス ル 一罪 タ リ新 法 ニ於 テ新 ニ指 導行

モノ ナ ル ヘシ而 シテ斯 ノ如 ク終 始 発 展 拡 充 シ テ包 括的 ニ 一罪 ヲ組 成

検 事 松井 和 義 関 与

決 ス

後 者 カ狭 義 ノ加 入行 為 ト相 伴 ハサ ル場 合 ア ル コト ヲ慮 リ タ ル ニ因 ル

シテ実 行 セ ラ レ タ ル場 合 ニ於 テ ハ之 ヲ分割 スル コト

ス ル 一団 ノ多 数 行為 カ旧 法 時 代 ヨ リ新 法 ノ下 ニ継 続

右 ノ 理由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟 法 第 四 百 四十 六 条 ニ則 リ主文 ノ如 ク判

( 要旨第三)

弁 護 人  伊 東 長 一郎

( 第 二審 ) 大 阪控 訴 院

鉄 兵 

昭和 六年 (れ)第 一六 三九 号棄却) 三 治安維持法違反被告事件(同 七年四月二日第三刑事部判決

(上告 人 ) 被 告 人  片 岡

判 示事 項

(第 一審 ) 大 阪 地 方 裁判 所 ○ 治安 維 持 法 第 一条 ノ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ト同 法 第 五条 ノ行 為

(要旨 )

仍 テ按 スルニ治安維持法第 一条 ニ所謂結 社ノ目的遂行ノ

為 ニスル行為 カ国体 ノ変革又 ハ私有財 産制度 ノ否認 ヲ目

大強 化 ヲ図 ル諸 般 ノ 行為 ヲ指 称 スル モノ ナ ル コト ニ付 テ ハ既 ニ本 院

的 卜 シテ組 織 セ ラ レ タ ル結 社 ナ ル コト ヲ知 リ ナ カ ラ該結 社 ノ支 持 拡

判 例 ノ存 ス ル所 ナ ル モ其 ノ行 為 カ未 タ結 社 ニ加 入 セサ ル者 ニ依 リテ

為 サ ル ル コト ヲ要 ス ル ヤ言 ヲ俟 タ ス蓋 シ結 社 ニ加 入 シタ ル者 ニ於 テ

叙 上 ノ行 為 ヲ為 スト キ ハ結 社 社 員 資 格獲 得 ノ行為 ト 包括 シテ加 入罪

ヲ構 成 シ特 ニ別 罪 ヲ構 成 スル コト ナ ケ レ ハナ リ (昭和 六 年 十 一月 二

十 六 日第 一刑 事 部判 決 参 照 ) 然 ル ニ法律 カ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス

判決要旨

治安 維 持 法 第 一条 所 定 ノ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 ス者

ル行 為 ヲ為 シ タ ル者 ヲ結 社 ニ加 入 シ タ ル者 ト同様 ニ之 ヲ厳 罰 ス ル所

○

ニ於 テ同 法 第 五 条所 定 ノ行 為 ヲ為 スト キ ハ該行 為 ハ結 社 ノ目的 遂

以 ノ モノ ハ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ハ即 チ結 社 加 入 罪 ノ内 容

ヲ成 スモ ノ ニ外 ナラ サ レ ハ結 社 ノ 外 ニ在 リ テ之 ヲ為 ス モ結 社 ニ加 入

行 ノ為 ニ ス ル行為 ノ 包括 一罪 ト シ テ処 断 ス

ニ付 テ助 力 シ タト見 ルノ カ本 当 テ ハナイ カト思 ヒ マ ス即 チ原 判 決 摘

共 産 党 ノ目 的 ヲ遂行 ス ルト云 フ意 味 テ ナ ク同 党 員 田中 清 玄 等 ノ行 動

少 見 当 違 ヒ テ ハナイ カ ト信 ス ルノ テ アリ マス被 告 人 ノ各 所為 ハ日本

行 ノ為 ニ ス ル行 為 ニ関 ス ル規 定 ニ該 当 ス ルト シテ ア リ マス カ是 ハ少

被 告 人 ノ各 所 為 ハ治安 維 持 法 第 一条 第 一項第 二項 中 各 結 社 ノ目的 遂

弁 護 人 伊 東 長 一郎 上告 趣 意 書 第 三 点 原 判 決法 律 適 用 ノ部 ヲ見 マスト

成 セ サ ル モノ ト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス果 シテ然 ラ ハ原 判 決 カ被告 人 ニ判

該 行 為 ハ結 社 ノ 目的 遂 行 ノ為 ニス ル行 為 中 ニ吸収 セ ラ レ テ別 罪 ヲ構

目 的 遂 行 ノ為 ニ ス ル行 為 ヲ為 ス者 ニ於 テ第 五 条所 定 ノ行 為 ヲ為 ス モ

罪 ト シ テ処 罰 ス ルノ趣 旨 ニ過 キサ ル カ故 ニ若 シ第 一条 所 定 ノ結 社 ノ

第 二項 又 ハ第 二条 乃 至 第 四 条 ノ罪 ヲ幇助 スル従犯 行 為 ヲ 一箇 ノ独 立

ナ ク単 ニ金 品 ヲ供 与 シ又 ハ其 ノ申 込若 ハ約 束 ヲ為 ス等 第 一条 第 一項

法 第 五 条 ニ至 リ テ ハ叙 上 ノ如 キ結 社 ニ対 シ重 要 ナ ル関 係 ニ立 ツ コト

シテ之 ヲ為 ス モ其 ノ間 ニ何 等 ノ逕 庭 ナキ ニ由 ル然 リ而 シ テ治 安維 持

示 ノ第 一事 実 ノ (イ) 及 (ロ) ハ主 犯 田中 清 玄 等 ノ行動 ヲ幇助 シタ

示 田中 清 玄等 ヲ宿 泊 セ シ メタ ルカ如 キ結 社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル行

由

モノ テ ア リ マス又第 二事 実 ノ所 為 ハ治 安 維 持 法 第 五 条 ニ該 当 ス ルト

ヲ認定 シ之 ヲ治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 第 二 項中 各 結 社 ノ目的 遂行 ノ

為 ヲ為 シタ ル コトト 蔵 原 惟 人等 ニ金 品 供 与 ノ行為 ヲ為 シ タ ル コト ト

理

見 タ方 カ穏 当 テ ア ルト信 シ マ ス即 チ右 ノ如 キ意 味 ニ於 テ原 判 決 ハ法

○

律 ノ適 用 ヲ誤 ツテ居 ル モノト思 フノ テ ア リ マスト 云 フ ニ在 リ

為 ニ ス ル行 為 ニ関 ス ル規 定 ニ問 擬 シタ ル ハ寔 ニ相 当 ニシ テ毫 モ所 論

第 一項 後 段 竝 同 条第 二項 後 段 ニ該 当 ス ル モノ ナ リト ス ル原 判 決 ハ違

死 刑 重 罰 絶 対反 対階 級 的 政 治 犯 人 我等 ノ前 衛 ヲ無 罪 即 時釈 放 セ ヨノ

ノ如 キ擬 律錯誤 ノ違 法 存 在 ス ル モノ ト謂 フ ヘカ ラ ス論 旨 ハ理由 ナ シ

要 求 ハ今 ヤ日本 全 国 ハ勿 論 朝 鮮 台湾 等 ノ殖 民 地 ニ於 テ モ全 人 民 ノ 圧

法 デ ア ル何 卜 ナ レ ハ所 謂 階 級 運 動 ノ犠 牲 者 階 級 的 政 治犯 人 ニ対 ス ル

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑事 訴 訟 法 第 四百 四 十 六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

(其 ノ他 ノ上告 論 旨 及 判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

決 ス

倒 的 多 数 労働 階級 勤 労 農 民 全 労 苦 大衆 ノ熱 烈 ナ ル叫 ト シ テ スト ライ

キ テ モ工場 職 場 農村 街 頭 ニ於 ケ ル大 衆 的 集 会 無 罪 要求 演 説 会 決議 署

検 事平 井 彦 三郎 関 与

倒 的 多 数 カ正当 ナリ ト シテ要 求 ス ルト コ ロヲ其 ノ ママ行為 シタ ル コ

ト カ法 律 上 ノ 犯罪 ト シテ処 罰 サ レ ルト云 フ コト ハ到 底 全 国 民 ノ名 ニ

於 テ正 当 ナリ ト認 ム ル コト ハ出来 ナ イ カ ラ テ ア ルト 云 フ ニ在 レト モ

竝 原審 弁 護 人

(第 二 審 ) 東 京 控 訴院

雄

ス ヘキ謂 ハ レア ル コト ナ シ然 リ而 シテ原 判 決 カ証拠 ニ依 リ テ確 定 シ

烈 ナ ル叫 ト シテ行 ハル ル モノ ナリ ト スル モ其 ノ行 為 ノ違法 性 ヲ阻 却

民 地 ニ於 テ モ全 人 民 ノ圧 倒 的多 数労 働 階 級 勤 労農 民全 労 苦 大衆 ノ熱

タ ル行 為 ノ内 容 カ縦 シヤ所 論 ノ如 ク日本全 国 ハ勿 論 朝 鮮 台 湾 等 ノ殖

苟 モ刑罰 ノ制 裁 ヲ付 シテ禁 遏 シタ ル行 為 ヲ敢 テ シタ ル者 ハ其 ノ為 シ

経 

名 等 々 ア ラ ユ ル形態 ヲ以 テ展 開 サ レツ ツ ア ル カ クノ如 ク全 国 民 ノ圧

〓

昭 和 七 年 (れ)第 一 一五 七 号 四 治安維持法違反被 告 事件(同 年十 一月二十 一日第 一刑事部判決棄 却)

(上告 人 ) 被 告 人  金 弁 護 人  青 柳 盛

判示事項

( 第 一審 ) 東 京 地方 裁 判 所 ○

判決要旨

治 安 維 持 法 第 一条 ニ所 謂 結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行為 ノ包 括 性 ○

日本 共 産 党 及 朝 鮮 共産 党 ノ支 持 拡 大 強 化 ヲ図 ルカ為檄 文 ヲ起 稿 シ

タ ル事 実 ハ原 判 決 判 示 ノ如 ク ニシテ該 判 示 サ レ タ ル事 実 ニ従 ヘ ハ被

適 用 処 断 ヲ免 カ レ得 ヘキ モノ ニ非 サ ルナ リ論 旨 理由 ナ シ

謂 結 社 ノ目的 遂 行 ノ為 ニ スル行為 ヲ為 シタ ルモ ノ ニ該 当 シ同 罰則 ノ

印 刷 シ之 ヲ配 布 ス ル等 ノ行 為 ヲ敢 テ シタ ルト キ ハ其 ノ各 箇 ノ行 為

由

告 人 ノ行為 ハ治 安 維 持 法 第 一条 第 一項 後 段 及 同 法条 第 二 項 後段 ニ所

理

ハ其 ノ本 質 上 之 ヲ包括 的 ニ観 察 シ 一罪 ト シテ処 断 ス ヘキ モノ ト ス

○

弁 護 人 青 柳 盛 雄 上告 趣 意 書 第 一点 原 判 決認 定 ノ事 実 ハ之 ヲ要 ス ル ニ

ノ書 類 ノ原稿 ヲ作 成 シ謄 写 シ配 布 シタ ト云 フ所為 ヲ 一括 シ テ認識 シ

同 第 二 点 原判 決 ハ其 ノ事 実 記 載 ヲ見 ル モ明 瞭 ナ ル如 ク被告 人 カ問 題

テ居 ル ニ モ拘 ラ ス法 律 ノ適 用 ニ於 テ ハ此 ノ行 為 ヲ数 箇 ノ部 分 ニ分 離

所 謂 日 本 共産 党 事 件 朝 鮮 共 産 党事 件 ナ ル モノ ノ正 体 ヲ暴 露 シ支 配 階 級 ノ労 働 階級 ニ対 スル圧 迫白 色 テ ロルノ不 当 ニ憤 激 シ之 ニ反 対 シ テ

シ別箇 ノ行 為 ト シテ観 察 シ刑 法第 五十 五条 ニ所謂 連 続 犯 ニ該 当 ス ル

ト シテ居 ルカ今 更 連 続 犯 ノ概 念 ニ付説 明 ヲ要 スル迄 モナ ク連 続 シタ

階 級的 政治 犯 人 ノ即 時 釈 放 ヲ要 求 ス ル文 書 ノ原稿 ヲ作 成 シ之 ヲ謄 写 シ配布 シタ ル行 為 ソ ノ モノ テ ア ルノ テ ア ル カ之 ヲ治 安 維 持 法 第 一条

ト ヲ要 スル ハ論 ナ キト コロテ ア リ苟 ク モ原判 決 カ前 記 一所為 ヲ数箇

ル数個 ノ行為 ニシテ而 カ モ各 独 立 シテ同 一ノ罪 名 ニ触 ル モノ ナ ル コ

モ連続 一罪 ト シテ処罰 スル モ結 局 ハ同 一罰則 タ ル治 安 維 持法第 一条

断 シタ ル ハ正当 ナ ラ ス然 レト モ右 ノ行 為 ヲ包 括 一罪 ト シテ処 罰 スル

ノ ナ ル ニ不拘 原 判 決 カ之 ヲ刑 法 第 五十 五条 ニ依 リ連 続 一罪 ト シテ処

タ ル モノ ニ係 リ罪 名刑 ノ範囲 竝 刑 ノ量 定 等毫 モ結 果 ヲ異 ニ ス ヘキ モ

第 一項 後 段 又 ハ同 法条 第 二項 後 段 ノ刑 ニ処 ス ヘキ 一罪 ト シテ処断 シ

ノ行為 ニ分 離 シタ ル以上 ソノ分 離 セ ラ レタ各 部 分 ハ夫 々独立 シテ治

ルモ ノト解 ス ヘキ テ アラ ウ カ コ レ ハ全 ク不当 テ ア ル コノ如 キ法 律 適

安 維 持 法第 一条第 一項 後 段 同条 第 二項 後 段 ニ該 当 ス ル モノト認 メタ

ナリト ノ点 ヲ除 キ事 実関 係 ハ完 全 ニ之 ヲ認 メ テ居 ルノ テ アリ裁判 所

ア ル被告 人 ハ原審 ニ於 テ此 ノ 点 ニ付 テ ハソ レカ法律 ニ違 反 スル モノ

ノ ニ非 サ ル カ故 ニ右 ノ擬 律 ヲ以 テ原判 決 破毀 ノ理由 ト為 ス ニ足 ラ ス

按 スル ニ治 安維 持 法 第 一条 ハ結 社 ノ創 設 竝其 ノ支持 拡 大

ハ被 告 ノ主 張 ヨリ独 立 シテ法 律 上 ノ判断 ヲ為 シ得 ル モノ ナ ル ニ拘 ラ

同 第 三点 原 判決 ハ其 ノ判 示事 実 以 外 ノ公 訴事 実 ハ証明 不充 分 ナ ルモ

ノ為 ニスル行為 ヲ処 罰 シ治 安 ヲ維 持 ス ルヲ目的 ト ス ルモ

ス コノ明瞭 ナ ル事 実 カ証明 不 充分 ナリ ト ハト ウ シテ モ強 弁 シ得 ナイ

用 ハ到 底 正当 ナリト 認 メ ル コ卜 ハ出来 ナ イ何 ト ナ レ ハ例 ヘハ問 題 ノ

ノ ナリ元 来結 社 ハ継 続 的 存在 ヲ本質 ト スル団 体 ナ ルカ故 ニ其 ノ支 持

カ ラ テ ア ル コレ ハ明 カ ニ右事 実 カ法律 上無 罪 ナ リト ス ヘキヲ証 明不

判 示事 実 ト連続 犯 ノ関 係 ア ル モノト シテ起訴 セ ラ レタト観 テ特 ニ無

拡大 ノ為 ニス ル行為 モ亦其 ノ本 質 上包 括性 竝継 続性 ヲ有 シ殊 ニ結 社

充分 ナリ ト シ テ ソノ判断 ヲ事 実関 係 ノ方 面 ニ歪 曲 シタ ル誤謬 若 ク ハ

文 書 ノ原 稿 ヲ書 ク コト コ レヲ謄 写 ス ル コト等 カ治 安維 持 法第 一条 第

ノ支 持 拡 大 ヲ図 ル等 結 社 ノ 目的 遂行 ノ為 ニス ル行為 ノ如 キ ハ斯 ル概

意 識 的 偏 曲 ト見 ル ヘキ テア リ到 底 之 ヲ看 過 ス ル コト ハ出 来 ナ イト 云

一項 後 段 又 ハ同条 第 二 項後 段 ニ該 当 ス ル行 為 ナリト ハ余 リ ニモ極 端

念 ヲ有 スル モノ ナ ル コ卜自 ラ明 ナ ルヲ以 テ犯 意 ヲ継 続 シテ結 社 ノ支

フ ニ在 レト モ

タ ル ヲ免 カ レ ナイ モノ テ ア ル コト ハ原 審 ノ公 判 調書 ヲ見 レ ハ明瞭 テ

持 拡 大 ヲ図 ル等 結 社 ノ目 的 遂行 ニ資 ス ヘキ多 数 ノ行 為 ヲ敢 テ シタ ル

所論 ニ所 謂其 ノ余 ノ公 訴事 実 ト ハ予 審 終結 決 定書 ニ於 ケ ル被 告 人 カ

罪 ノ言渡 ヲ為 サ スト シテ居 ルカ コレ ハ明 白 ナ ル詭 弁 テ アリ ソ ノ違 法

ト キト雖 其 ノ各 箇 ノ 行為 ハ孰 レモ可 罰 性 ヲ保 持 シ ツツ相合 シ テ包括

ナ ル人 民 ノ政 治 的自 由 ニ対 スル法 律 ノ干渉 圧 迫 卜 シ テ到 底 ソノ主 張

的 ノ 一罪 ヲ組成 スル モノト観 察 ス ヘキ モノ ナ ル コト既 ニ本院 ノ判 例

同年 十 一月 二十 五 日頃 前記 申 基 元方 ニ於 テ同組 合 員 金練 事金 謂 哲 ト

ヲ維 持 シ得 ナ イ カラ テ ア ル卜云 フ ニ在 リ

ト スル卜 コ ロナリト ス (昭 和 六年 (れ) 第 一 一七 七号 同 年十 一月二

写版 ヲ使用 シ在 日本朝鮮労働総同盟東京朝鮮労働組合本部及在 日本

共 ニ作成 シタ ル原稿 ニ依リ同年二十七八日頃前記金千洙方 ニ於 テ謄

事件 ニ際 シテ全朝鮮被圧迫民族諸君 ニ檄 ス﹂及 ﹁光州学生事件 ニ際

朝鮮労総東京組合産業別委員会青年部委員会名義 ヲ以 テ ﹁光州学生

(要旨 )

十 六 日第 一刑 事部 判 決参 照  原 判 決 ノ認 定 事実 ニ依 レ ハ要 ス ル ニ被

ヲ起 稿 シ印 刷 シ之 ヲ配 布 スルノ行 為 ヲ敢 テ シタ ルモノ ナ レ ハ其 ノ各

︹ママ︺

告 人 ハ日本 共 産党 及朝 鮮 共 産 党 ノ支 持拡 大強 化 ヲ図 ルカ為判 示 檄文

箇 ノ行 為 ハ其 ノ本質 上 之 ヲ包 括的 ニ観察 シ 一罪 ト シテ処 断 ス ヘキ モ

ノ頃 之 ヲ東 京 朝 鮮労 働 組合 内 各班 員 ニ配布 シ タ ル事実 ニ属 ス ルモノ

シテ全 朝鮮 学 生 諸君 ニ檄 ス﹂ ト題 シ文書 合 計約 七八十 通 ヲ作 成 シ其

実 認 定 ニ関 スル職 権行 使 ヲ非 難 スル ニ帰 シ其 ノ 理 由 ア ル コト ナ シ

ニ非 スト為 ス本 論 旨 ハ究 極 ス ル所原 審 ノ為 シタ ル証拠 ノ取捨 判 断 事

決 ス

右 ノ理由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴訟 法 第 四百 四十六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

(其 ノ他 ノ上告 論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

遂 ケ タ ル末 証 拠 ノ取 捨 解釈 竝事 実 ノ確 定 ヲ為 ス ヘキ職 権 ノ範 囲 ニ於

ナ ル コト記 録 上 明瞭 ナ リ然 リ而 シテ原 審 ハ該 公訴 事実 ニ対 シ審 理 ヲ

テ其 ノ罪 ト為 ル ヘキ事 実 ヲ証 明 ス ヘキ資 料 ナ キ モノ卜 シ公 訴 ニ係 ル

検事 佐 々波 与 佐 次郎 関与

本 共 産党 ニ加 入方 勧 誘 ヲ受 ク ルヤ同 党 カ我国 体 ノ変 革 及私 有財 産 制

月十 二 三 日頃 小樽 合 同労 働 組合 事 務所 ニ於 テ被 告人 鮒 田勝 治 ヨリ 日

ノ理 由中 ﹁第 二十 被告 人 佐藤 富 雄 ハ⋮⋮ 中略 ⋮⋮ (一) 昭和 三年 二

同 (各被 告 弁護 人神 道寛 次布 施 辰治 上 告 趣意 書 )第 七 点原 判決 ハ其

一部 ノ事実 ヲ否 定 シタ ル モノ ナ ルカ故 ニ該 事 実 ハ罪 ト為 ル ヘキ モノ

ｇ  ﹁目 的 事 項 ノ実 行 協 議 ﹂ ニ関 ス ル モノ

内

神 道 寛 次  清  弁護 人︷ 布 施 辰 治

以 テ該勧 誘 ニ対 シ承 諾 ヲ為 シ以 テ右 目的 事項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為

度 ノ否認 ヲ目的 ト スル結 社 ナ ル コト ヲ知 リ ナ カ ラ之 ト同 一ノ目的 ヲ

(第 二審 ) 札 幌控 訴 院

外四名

昭 和 四 年 (れ)七 二 九 号 一 治安維持法違反被告事件(同 年十月二十二日第 一刑事部判決棄却)

(上告人) 被告人 武 判 示 事項

(第 一審 ) 札幌 地 方裁 判 所 ○

旧 治 安維 持 法 第 二条 ト結 社 ノ加入 勧 誘及 承 諾

国 体 ヲ変 革 シ又 ハ私有 財 産 制度 ヲ否 認 スル目的 ヲ遂行 スル為 其 ノ

ト判 示 シタ リ惟 フ ニ結社 ノ目的 其 レ自 体 ト該目 的 ヲ有 ス ル結 社 ヲ組

ノ承 諾 ヲ得 以 テ右 目 的事 項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ル モノ ナリ﹂

テ原 審 相被 告 人本 間喜 一郎 ニ対 シ同党 ニ加 入 ス ヘキ コト ヲ勧 誘 シ其

シ (二) 同 党 ノ 目的 ヲ達 成 ス ル意 図 ノ下ニ 昭利 三年 二月 小樽 市 ニ於

手 段 ト シテ他 人 ニ対 シテ叙 上 ノ事 項 ヲ目 的 卜 スル結 社 ニ加 入 スル

織 シ乃 至 ハ組 織 ヲ拡 大 スル行為 ト ハ明確 ナ ル区別 ノ存 スル コト自 明

判 決 要旨

コト ヲ勧 誘 シ又 ハ勧 誘 ニ対 シ承諾 ヲ為 スモ未 タ結 社 ニ対 シテ加 入

○

ノ申 込 ヲ為 シタ ルモノ ト認 メ得 ラ レサ ル程度 ノ モノ ナ ル ニ於 テ ハ

ノ理 ナ リ然 ル ニ原 判 決 ハ ﹁該 勧誘 ニ対 シ承 諾 ヲ為 シ以 テ右 目 的事 項

ノ実 行 ニ関 シ協議 ヲ為 シ﹂ 卜 謂 ヒ又 ハ ﹁加 入 ス ヘキ コト ヲ勧 誘 シ其

其 ノ行為 ハ改 正前 ノ治 安 維持 法 第 二条 ニ所 謂 目的事 項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ルモ ノ ニ該 当 ス

ノ承 諾 ヲ得 以 テ右 目 的事 項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ル モノ ナ リ﹂

モノト認 メ得 ラ レサ ル程度 ノ モノナ ル ニ於 テ ハ其 ノ行為 ハ治安 維 持

法 ( 改 正前 ノ)第 二条 ニ所 謂 前 示 目的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ

ノ為其 ノ加 入 ヲ承諾 ス ルモ未 タ結 社 ニ対 シテ加 入 ノ申 込 ヲ為 シタ ル

為 シタ ル モノト解 セ サ ル ヘカ ラ ス蓋 シ国体 ヲ変 革 シ私有 財産 制 度 ヲ

ト謂 フカ如 ク自 己 ノ結 社加 入 ニ関 ス ル協議 乃至 他 人 ヲ結社 加 入 ニ勧

シ ム ヘキ権 限 ナ キ コト勿論 ナ ル モ) 自 体 ヲ目 シテ直 チ ニ以 テ結社 ノ

誘 ス ル行為 ( 本 件 ニ在 リ テ ハ被告 人等 ハ党 員 ニ非 ス又他 人 ヲ加 入 セ

目的 ト ス ル事 項 換 言 スレ ハ治 安維 持 法 所謂 国 体 ノ変 革 及私 有 財産 否

コト ハ右 ノ目 的事 項 ヲ実行 スル手 段 ナ ル コト勿 論 ナ レ ハ其 ノ加 入 ノ

否 認 スル目的 ヲ遂 行 スル為 叙 上 ノ事 項 ヲ目 的 ト スル結 社 ニ加 入 ス ル

勧誘 及 承諾 ハ叙上 目 的事 項 ノ実行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ル モノ ニ外 ナ

認 タ ル事項 ノ実 行 ニ関 ス ル協 議 ナ リト 断定 スル ハ明 ニ前掲 両 者 ノ区

条 ニ所 謂 ﹁其 ノ目的 タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為 シタ ル者 ﹂ ニ該

( 未 タ以 テ日本 共 産 党 ニ対 スル加 入 ノ申 込 ト目 ス ル能 ハサ ルモノ)

ラサ レ ハナ リ然 ラ ハ原判 決 カ被 告 佐 藤富 雄 ニ対 シ テ 第 二 十 ノ事 実

別 ヲ混 同 シタ ル モノ ニシテ原 判決 ノ上叙 判 示 事実 ハ治 安維 持 法第 二

ル モノ ニシテ破 毀 ヲ免 レサ ル モノ ナ リト云 フ ニ在 リ○按 スル ニ国 体

ニ認 定 シ之 ヲ前 記 法条 ニ問 擬 シタ ル ハ寔 ニ正当 ニ シテ毫 モ擬律 錯 誤

当 セ サ ル モノト謂 ハサ ル ヘカ ラ ス此 ノ 点原 判 決 ハ擬 律錯 誤 ノ違 法 ア

ヲ変 革 又 ハ私 有財 産 制 度 ヲ否 認 スル コト ヲ目的 ト シ テ結 社 ヲ組 織 ス

右 ノ理由 ナ ルヲ以 テ刑 事 訴訟 法 第 四 百 四十 六 条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

ノ違 法存 在 セ ス論旨ス 理由 ナ シ (以下 省略 )

タ ル事 項 ノ実 行 ニ関 シ協 議 ヲ為 ス コト ハ固 ヨリ別 個 ノ観

決 ス

ル コト情 ヲ知 リテ結 社 ニ加 入 ス ル コト及 叙 上 ノ目 的 ヲ以 テ其 ノ目的 (要 旨 )

判 示事 項

判決 要 旨

者 ニ対 シ金 品其 ノ他 ノ財 産 ノ利益 ヲ供与 スル ニ依 リ成 立 ス ルモノ

度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目 的 ト スル モ未 タ結 社 ヲ構 成 ス ル ニ至 ラ サ ル

治安 維 持法 第 五条 ノ利 益供 与 ノ罪 ハ国 体 ヲ変革 シ又 ハ私有 財 産制

○

治 安維 持 法第 五条 ノ利 益供 与罪

○

検 事 溝淵 孝 雄関 与

念 ナリ ト雖叙 上 ノ目的 ヲ遂 行 ス ル為 他 人 ニ対 シテ結 社加 入 ノ勧誘 ヲ為 シ又 ハ他人ヨ リ結 社加 入 ノ勧誘 ヲ受 ケ叙 上 ノ目 的 遂行

h  ﹁利 益 供 与ノ意 義 ﹂ ニ関 ス ル モノ

昭和九年 (れ)第 一〇 六八 号棄却) 一 治安維持 法違反被告事件(同 年十 一月 一日第 一刑事部判決

(上告人) 被告人 滝 内 礼 作  原審弁護人  鈴 木 義 男 鈴 木 義 男  被告人 福田力之助  弁 護 人︷ 高尾市二郎  二関 敏 ( 第 二審) 東京控訴院 (第 一審) 東京地方裁判所

トス

理

由

︹ 屋？︺

ナ ル目 的意 思 ナ カリ シ コト ハ被告 人 ノ供 述 竝 上申書 ニ依 リ テ明 ナリ

ト 云 フ ヘシ故 ニ被告 人 ノ行 為 ハ党 ノ目 的遂 行 ノ為 ニスル行為 ト云 フ

ハ当 ラ ス仮 ニ百 歩 ヲ譲 リ テ 日本 共産 党 ノ目的 綱 領 ヲ知 リ之 ニ若 干 ノ

タ ル ニ止 マリ自 ラ率 先 シテ党 ノ目的 遂 行 ノ為 ニ スル行 動 ニ従 事 シタ

援助 ヲ為 スノ意 思 ア リト スル モ ソ ハ全 ク党 外 ニアリ テ金 品 ヲ供 与 シ

○ 被 告 人 滝内 礼 作弁 護 人 鈴木 義 男 高 尾市 二郎 上告 趣意 書 第 一点 原 判

ル ニア ラサ ルカ故 ニ治 安維 持 法第 五 条 ヲ以 テ律 セ ラ ルル ハ格 別 同法

決 ハ其 ノ理 由 ノ部 ニ於 テ ﹁被 告人 滝 内礼 作 ハ日本 共産 党 カ国 際 共産 党 ノ 日本支 部 ニシテ革 命的 手 段 ニ依 リ我国 体 ヲ変革 シ私 有財 産 制度

モノ ト信 スト謂 フ ニア レト モ

第 一条 ヲ以 テ問 擬 スル ハ擬 律 錯誤 ノ違 法 ア ル モノ ニ シテ破毀 スヘキ

(ロ) (ハ)(ニ) ノ各 行為 ハ国体 ノ変革 及 私有 財産 制 度 否認 ヲ目的

原判 決 カ証拠 ニ依 リ認定 シ タ ル被 告 人滝 内 礼作 ノ原 判 示第 一ノ(イ)

ヲ否 認 シプ ロレタ リ アー ト独裁 ノ政 府 ヲ樹 立 シ之 ヲ通 シ テ共産 主義

同 党 ヲ支持 シ其ノ拡 大強 化 ヲ図 ラ ン コト ヲ企 テ﹂ (イ) 若 干 金 員 ヲ

社 会 ノ実現 ヲ為 サ ン コ卜 ヲ目 的 ト スル秘 密結 社 ナ ル コト ヲ知 リ乍 ラ

西 館 仁 宮 石 三 郎 尾 崎 陞 ヲ介 シテ同 党 ニ活動 資 金 ト シテ交付 シ(ロ) 山 形 市 ニ於 テ社会 科 学 研究 会 ヲ開 催 シ常 井 白 井 福 田等 ノ寄 附 金 ヲ

ノ ニシテ原判 決 カ之 ヲ治安 維 持 法第 一条 第 一項後 段 第 二

ト ス ル結 社 ノ目 的遂 行 ノ為 ニス ル行 為 ニ該 当 スル モノト認 ム ヘキ モ

宜 ヲ与 ヘ (ニ)被 告 人 カ札 幌 転任 後 ニ於 ケ ル東 京 地方 責 任者 ヲ定 メ

為 ニ関 ス ル規 定 ニシテ原 判 示 ノ如 キ事実 ニ付 テ適 用 セ ラ ル ヘキ モノ

成 ス ル ニ至 ラサ ル者 ニ対 シ金 品其 ノ他 ノ財 産 上 ノ利 益 ヲ供 与 スル行

革 シ又 ハ私有 財 産制 度 ヲ否 認 ス ル コト ヲ目的 卜 スル モ未 タ結 社 ヲ構

項 ニ問擬 シ タ ル ハ正当 ト 謂 フ ヘク同 法第 五条 ハ国 体 ヲ変

活 動 方 針 ヲ協 議 シタ ル モノト シテ治安 維 持法 第 一条 第 一項後 段 及同

(要旨 )

条 第 二 項 ニ問 擬 シタ リ然 レト モ上 掲 (ハ) ノ事 実 ハ被 告 人 カ友 情 ヨ

ニ非 ス所論 ハ畢 竟原 判決 ノ認 定 セサ ル事 実 ニ基 キ又 ハ原判 決 ト異 ル

(ハ) 柴 田和 夫 カ山 形 市 ニ出 張 ス ルヤ滞 在宿 泊 セ シメ テ党 活動 ニ便

西 館 仁 尾崎 陞 柴 田和夫 等 ヲ介 シテ同党 ノ活動 資 金 ト シ テ 提 供 シ

リ出 テタ ル行 為 タ ル コト ハ記 録上 明 ニシ テ (ニ) ノ行 為 モ全 ク社会

ス論 旨 理由 ナシ ( 其 ノ他 ノ上 告論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ省略 ス)

右 ノ 理由 ナ ルヲ以 テ刑事 訴 訟 法第 四 百 四十 六条 ニ則 リ主文 ノ如 ク判

独自 ノ見解 ヲ以 テ原 判決 ノ擬 律 ヲ非難 スル モノ ニシテ採 用 スル ヲ得

決ス

科 学 研 究会 (必 セ シ モ共産 党 ノ為 ニスル モノ ニア ラ ス) ノ爾 後 ノ方

意 図 ナカ リ シ コト ハ記 録 ニ照 シテ明 ナリト ス而 シ テ (イ )(ロ)ノ資

検事 樫 田忠 美 関 与

針 ニ付 キ談 合 シタ ル ニ止 マリ被 告 人 ニ於 テ党 ノ目的 遂 行 ノ為 ニス ル

一ノ無産 党 ト信 スル日本 共産 党 ノ運動 資 金 ニ微 細 ノ金 ヲ寄 附 シ タ ル

金 提 供 ハ被 告 人 ニ於 テ ハ全 ク無 産 階級 開 放運 動 ニ同情 スルノ余 リ唯

ニ過 キ スシ テ共産 党 ノ国 体変 革 、 私有 財 産制 度 否認 等 ノ方面 ニ明確

理

由

数 テ ア ルト同 時 ニ必 ス夫 レ ハ特 定 シ テ居 ル コト ヲ必 要 ト スル モノ テ

(イ )結 社 ハ特 定 多 数 人 ノ団 体 テ ナ ケ レ ハナ ラ ヌ即 結 社 ノ分 子 ハ複

ノ継 続的 団 体 テ ナケ レ ハナ ラ ヌ即 チ結 社成 立 ノ 要 件 ヲ分 析 ス ル ト

カ、結 社 ハ 一定 ノ 共 同 ノ目 的 遂 行 ノ為 メ ニ組 織 セ ラ レタ特 定 複 数 人

律 ニ違 反 ス 一、 結 社 ナリ ヤ、 天 理 本 道 ハ結 社 ヲ為 セ ル モノ テ ア ラウ

被告 人野 原 百 合 熊 、芝 本清 治 弁 護 人 千 々松 秀 二 上告 趣意 書 (一) 法

○

三 七  天 理 本 道 に 対 す る 大 審 院 判 決 (一九四一 )

星 野 宗 治  小 河 虎 彦  弁護 人︷ 原 田 市 之 進  千 々松秀 二

昭 和 十 六 年 (れ)第 五 八 一号棄却) ○治安維持 法違反不敬被告事件(同 年七月二十二日第 四刑事部判決

外三名

(上告人) 被告人 野 原 百 合 熊 

(第 二審) 広島控訴院

ア ル之 ハ結 社 ニ限 ラ ス汎 ク団 体 ノ構 成 セ ラ ル ル場 合 必 然 ノ事 柄 テ ア

判示事項

ツ テ不 定多 数 ノ者 カ集 合 体 ヲ結 成 乃 至 設 立 ス ルト云 フ コト ハ明 ニ観

○

(第 一審) 山口地方裁判所

治安維持法 ニ所謂結社 ノ意義︱ 同法第 一条 ノ結社組織罪又 ハ結

念 上 ノ矛盾 テ ア ル然 ル ニ本 件 天 理本 道 成 立 経過 ニ関 スル小浦 正 雄 其

社加入罪 ノ成立 ト手段 ノ可能性

ノ他 ノ所謂 幹 部 級 ノ証言 ヲ精 読 シテ見 ル ニ何時 結 社 カ設 立 サ レタ ノ

判決要旨

カ 又何 人 カ結 社 ノ組 織 者 ナ ル ヤヲ明 瞭 ニ捕 捉 ス ル コト カ出 来 ナ イ今

○

ンカ為任意 ニ結成 シタル継続的団体 ヲ云フモノト ス (要旨第

一 治安維持法 ニ所謂結社ト ハ特定多数 人カ共同ノ目的 ヲ遂行 セ

此 ノ点 ニ関 ス ル証 拠 ト シ テ最 大 ノ価 値 ヲ持 ツ モノ ト観 ラ ル ル小浦 正

雄 ノ証 言 (予審 第 二 四訊 問 調 書 ) ヲ採 ルト同 人 ハ ﹁宗 教 団 体成 立 時

一)

二  同法 第 一条 ノ結 社組 織 罪 又 ハ結 社 加 入罪 ハ苟 モ同法 条 ノ規 定

(筆者 註 大 阪 市住 吉 区晴 明 通 ) ニ事 務 所 カ出来 テ後 内 規 制 定 ノ十 月

期 ハ自 然 発 生 的 テ困 難 テ ア ル カ強 イ テ言 ヘ ハ昭和 十 年 五 月 頃晴 明 通

上 旬頃 ト云 フ外 ハナ イ﹂ 又 曰 ク ﹁天 理本 道 ノ組織 者 カ誰 テ ア ルカ ト

ス ルカ如 キ目 的 ヲ有 ス ル結 社 ヲ組 織 シ又 ハ斯 ル目 的 ヲ有 スル

言 フ事 ニ付 テ ハ談 示 シタ コト ハアリ マセ ン甘露 台 カ天 理本 道ノ 主 盟

結社 ナ ル コ卜 ノ情 ヲ知 リ テ之 ニ加 入 シタ ルト キ ハ直 ニ成 立 シ

セサ ル モノト ス (要 旨第 二)

其 ノ結 社 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル手 段 カ適 切可 能 ナ ル コト ヲ要

員 ト言 フ様 ナ コト ハ事 実認 識 ノ問 題 テ アツ テ ソ レ ハ決 シテ当 為 ヤ推

キ供 述 ヲ シテ居 ルノ テ ア ル元 来 結 社 成 立 ノ時 期 ト カ 又 ハ結 社 ノ構 成

同 人 ハ本 道 最 高 幹 部 ノ 一人 ト目 サ ル ヘキ者 テ其 ノ 人 ニシテ斯 ク ノ如

付 テ モ亦 結 社 構 成員 ニ付 テ モ明 確 ノ認識 ヲ有 セ ヌノ テア ツ テ而 カ モ

カ組 織 者 テ ア ルト 言 フ外 ハナ イ﹂ 即 チ小浦 正 雄 ハ結 社 成 立 ノ時 期 ニ

露 台 ノ外 ニ小浦 兄弟 、 岩 田源 右 衛門 、 岸 岡 悟 カ シテ オ ツ タ カ ラ是 等

テ ア ル事 ハ勿論 テ重 要 ナ ル談 示 即事 務 所 開 設 内規 制 定 等 ハ何 レ モ甘

強 力 ナ ル命 令 権 ヲ持 ツ中 央 集 権 的 組 織 ヲ有 ス ル コト ハ結 社 ノ 目的 遂

果 ノ怖 ル ヘキ モノ ア ル ハ推 測 ニ難 ク ナ イ此 ノ如 ク結 社構 成 員 ニ対 シ

守 ヲ命 セ ル コト他 団体 ニ比類 ナ キ洵 ニ強靱 ナ ル組織 体 テ其 ノ行 動 効

本 共 産党 ハ組 織 ノ整備 充 実 セ ル コト 特 ニ党 員 ニ対 シ厳 重 ナ ル規 約 遵

本 共 産党 慴 伏 ヲ唯 一ノ 目的 ト シタ モノト謂 フ モ過言 テ ハナ イ蓋 シ日

ク本法 制 定 ノ由来 ニ遡 ル ニ第 三 イ ン ター ナ シ ヨナ ル日本 支 部 タ ル日

性 ヲ有 ス ル結 社 ヲ対象 ト シテ生 レ出 タ モノ テ ア ル コト論 スル迄 モ ナ

成 シ得 ル モノ テ ア ルカ ラ テ ア ル治 安維 持 法 亦 斯 クノ如 キ高 度 ノ交 化

何 謂 フ所 ノ ﹁信 徒 ニ ハ専 ラ人 格 修養 ヲ主 眼 ト シ国 家 社 会 ニ模 範的 行

行 ノ為 メ ニ必要 欠 ク ヘカ ラサ ル コト テ発 生的 ニ ハ コノ種 結 社 ハ必 然

為 ヲ奨 励 シ互 ニ立会 ヒ助 合 ヒ ノ実 ヲ揚 ケ安 心 立命 ヲ 得 セ シ メ ﹂ ﹁信

論 ニ属 ス ヘキ事 柄 テ ハナイ斯 カ ル カ故 ニ同 人 ハ此 ノ点 ニ関 シ実 在 的

素 因 ヲ失 フ モノ ト言 ハナ ケ レ ハナ ラ ヌ (ロ) 結 社 ハ目 的 遂 行 ノ為 メ

徒 ハ法 令 ニ触 ル ル 一切 ノ言 動 ヲ禁 セ ラ レ﹂ ﹁信 徒 ハ別 ニ入 信 ノ契 約

供 述 カ出 来 ナ イ ノ テ ﹁言 フ外 ハナ イ﹂ ト カ ﹁言 フ ヨ リ 外 方 法 ハナ

ニ組 織 セ ラ ル ル コト ヲ要 スル結 社 ハ単 ナ ル集 会 ヤ会 合 ト ハ異 ル モノ

テ天 理 本 道 ノ組 織 ハ如 何 殊 ニ信 徒 ニ対 スル所 謂 上意 下 達 ノ機 能 ハ如

テ強 イ結 合 力 ヲ持 ツ コト ヲ特 色 ト ス ルソ ノ強 力 ナ ル結 合 性 ヲ有 セ ン

ヲ要 セ ス去 就 ハ絶 体 ニ自 由 ト ﹂ シ テ アリ信 徒 ノ意 ニ反 シ之 カ脱 退 ヲ

高 度 文 化 社 会 ヲ前 提 ト ス ル モノ テ ア ル コト ニ注 目 ス ヘキテ ア ル飜 ツ

カ為 メ ニ ハ各 構 成 分 子 カ共 同 目 的遂 行 ノ為 メ ニ全 体 ノ統 一意 思 ニ服

ニ其 ノ発 生的 淵 源 ヲ有 ス ル治 安 維 持 法 カ此 ノ如 キ原 始 素 樸 ナ ル宗 教

阻 止 ス ル権 限 ハ何 人 ニ モ与 ヘラ レ テ ヰ ナイ ノ テ ア ル 一定 ノ文 化 社 会

イ ﹂ ト カ謂 フ様 ナ証 言 ナ ラ ヌ理窟 ヲ述 ヘテ居 ルノ テ ア ル然 ラ ハ天 理

従 ス ル紐 帯 的 ナ関係 カ要 件 ト サ レ ル訳 テ ア ル然 ル ニ今 天 理本 道 ヲ コ

本 道 ハ其 ノ構 成 員 ニ特 定性 ヲ欠 ク コトト ナ ル訳 テ結 社 構 成 要 件 ノ 一

ノ観 点 カ ラ視 ル ニ前 掲 小浦 正 雄 ノ 証言 ニ依 レ ハ ﹁信 徒 ニ ハ専 ラ人 格

ルヨ シヤ黙 示 ニ セ ヨ構 成 員間 ニ結 社組 織 ノ意 思 ノ聯 絡 ナ キ結 社 ヲ観

組 織 ノ意 思 表 示 ヲナ シ タ ル コト ヲ要 スル当 然 過 キ ル当 然 ノ コト テ ア

国 体 変 革 ノ目的 ヲ遂 ケ ラ レ ルテ ア ロウ カ (ハ) 結 社 ハ構 成 員 カ結 社

テ ア ル蓋 シ加 入 脱 退 カ全 ク信 徒 ノ恣 意 ニ委 ネ ラ レテ如 何 ニシテ克 ク

ト ス依 テ事 務 所 ニ ハ信 徒名 簿 ノ作 成 ノ要 ナ シ﹂ 一定 ノ目 的 遂行 ノ為

言 動 ヲ為 サ サ ル コト信 徒 ハ別 ニ入 信 ノ契 約 ヲ要 セ ス去就 ハ絶 体 自 由

念 ス ル コト ハ不可 能 テ ア ル而 カ モ驚 ク ヘキ コト ニ ハ本 件 天 理 本道 ニ

団 体 ヲ結 社的 範 疇 ニ包 含 セ シ ムル ト ハ到底 想 像 理 解 サ レナ イ ト コ ロ

メ ニ ス ル集 合 体 ノ結 成 ハ文 化社 会 ニ於 テ ノ ミ発 現 シ得 ル モ ノテ アツ

ノ実 ヲ揚 ケ安 心 立命 ヲ得 セ シム ル ニアリ信 徒 ハ法 令 ニ触 ル ル 一切 ノ

テ従 ツ テ構 成 員 相 互 間 ニ於 ケ ル服 従 命 令 ノ規 制 ハ権 力 的 ニ整備 サ レ

ア ツ テ ハ所 謂 幹部 級 ノ相 互間 ニ明 示黙 示 ノ結 社結 成 ノ意 思 カ交換 サ

修 養 ヲ主 眼 ト シ国家 社会 ニ模 範 的 行 為 ヲ奨 励 シ互 ニ立会 ヒ助 ケ合 ヒ

ナ ケ レ ハナ ラ ヌ蓋 シ鞏 固 ナ ル結 合 力 ニシ テ初 メ テ克 ク ソ ノ目的 ヲ達

⋮ 昭 和 五年 十 二 月同 人 (筆者 註 大 西 愛 治 郎 ) カ大審 院 ニ於 テ心 神喪

綜 合 的 ニ又 関聯 的 ニ陳 述 補充 セ ン ニ原 判 決 ハ其 ノ摘 示理 由 中 ニ ﹁⋮

レ タ事 実 カ 全記 録 ヲ通 シ微塵 モ観 ラ レナイ 以 上 (イ) (ロ) (ハ) ヲ

ハ如 何 ニ シテ モ首 肯 シ難 イ サ レ ハ コソ原 判 決 ハ ﹁⋮ ⋮ 同年 末頃 迄 ノ

最 後 ニ其 ノ変 転 ヲ止 メ タ ル時 ヲ以 テ輙 ク結 社 カ成 立 シ タト断 スル ノ

ケ ⋮ ⋮﹂ ト脱 線 結 論 ニ到 達 シ テ了 ツ テ ヰ ル事 務 所 カ漸 次増 大 変 転 シ

ヲ為 ス等 ⋮ ⋮﹂ ト説 示 ヲ続 ケ判 示 理 由 ノ不備 ヲ余 韻 的 ニ補 充 セ ント

シ タ企 図 カ窺 ヘ ル 一般 実験 則 ニ ヨ レ ハ団 体結 成 ニ当 リ発 生 的 ニ最 先

間 ニ於 テ役 員 ノ配 置其 ノ 他信 徒 ノ取締 竝 ニ指 導 ニ関 スル内 規 ノ制 定

岸 田悟 等 側 近 ノ信 徒 幹 部 ハ昭 和 六年 一月頃 ヨリ昭 和 十年 一月 頃 ニ至

セラ ル ル カ如 キ ハ寡 聞 ニシ テ未 タ聞 カ サ ル所 テア ル更 ニ原 判 決 ノ不

順 位 ニ形 成 セ ラ ルル ハ団 体 ノ役 員 テ ア ツ テ団 体 成立 後 ニ役 員 カ配 置

失 ノ故 ヲ以 テ無 罪 ノ判 決 ヲ受 ク ルヤ各 地 ニ離 散 セ ル信 徒 ニシ テ同 人

ル迄 ノ間 大 阪 市 住 吉 区橋 本 町 次 イテ同 区住 吉 町 ナ ル大 西愛 治 郎 ノ居

ヲ中 心 ニ集 合 シ来 タ ル者 漸 ク多 キヲ加 ヘタ ル為 同 人 及岸 田源 右 衛 門

宅 ヲ繞 リ信 徒 足 溜場 所 又 ハ受 附 所 ヲ開 設 シテ其 等 信 徒 ノ結 集 連 絡 ヲ

ス ル被 告 等 カ本 件 宗団 ニ入信 シ タ事 ハ事 実 テ ア ルト同 時 ニ其 ノ入信

シタ時 期 ハ各 被 告 カ夫 々最 初 ニ本道 事 務 所 ヲ訪 フ タ時 テ ア ル其 レカ

自 然 サ ハ被 告 等 ノ結 社 加 入 時 期 ノ説 示 ニ付 イ テ其 ノ甚 タ シ キ ヲ倍 加

最 自 然 ニ即 シ タ観 方 テ ア リ又 事 実 モ ソウ テ ア ル原 判 決 ハ結 社 結 成 ヲ

図 ル中 教 団 復 活 ノ機 運逐 次 醸 成 セ ラ ル ル ヤ再 ヒ甘 露 台 世界 建 設 運 動

ル大西 愛 治 郎 方 ニ於 テ同 人竝 ニ信 徒 幹 部 岸 岡 悟、 小浦 正 雄 、 岩 田源

ヲ開 始 ス ル為 昭 和 十年 二 月頃 同 市 西 成 区松 原 町 一丁 目 三十 五番 地 ナ

右 衛 門 等 協 議 ノ上 同年 五 月頃 同 市 住 吉 区晴 明 通 一丁 目七 十 四 番 地 ニ

立 ノ時 期 ニ付 テ モ予審 終 結 決 定 ハ昭 和十 年 五月 頃 ト云 ヒ第 一審 判 決

テ結 社 ニ加 入 シ タト為 サ サ ル ヲ得 サ ル第 二 ノ誤 謬 ヲ敢 テ シ又結 社 成

ハ同年 末 頃 ト 云 ヒ第 二審 判決 ハ再 転 シ テ同 年 五月 説 ニ復 シ弥 縫 ス ヘ

擬制 シテ第 一ノ誤 謬 ヲ侵 シ為 ニ被告 等 ハ 一律 ニ昭 和 十 年 五月 ニ至 リ

体 ヲ変 革 シ同 人 カ独 裁 統 治 ス ル社会 ヲ実 現 スル コト ヲ目 的 ト シ所 謂

カ ラサ ル困 乱 振 リ テ ア ル コ レ ハ結 局 法律 ニ謂 フ組 織 者 ニ該 当 ス ヘキ

事 務所 ヲ開 設 シ茲 ニ天 理 教本 部 ニ対 立 シ大 西 愛 治郎 ヲ以 テ神 格者 タ

﹁匂掛 ﹂其 ノ他 宣 伝 等 ノ方法 ニ依 リ我 国 体 観 念 ヲ攪 乱 ス ル コト ヲ当

ル甘露 台 ニ シテ究 極 ニ於 テ世 界 ノ統 治 者 タ ル ヘキ者 ナリト 做 シ我国

面 ノ任務 ト ス ル結 社 天 理 本道 ノ結 成 ヲ遂 ケ同 年末 頃迄 ノ間 ニ於 テ役

レタ ル コト ナ ク従 ツ テ又結 社 ノ組 織 セ ラ レ タ ル事 実 ナ キ ニカカ ハラ

ス強 イ テ其 ノ結 成 ヲ擬 制 セ ンカ為 メ牽 強附 会 ノ誤 謬 ニ陥 ツ テヰ ルノ

本 件天 理本 道 幹 部 間 ニ天 理本 道 ヲ結 社 タ ラ シ ム ヘキ意 思 交 換 ノ行 ハ

テ ア ツ テ前 後 撞 着 ノ不 整 頓 ハ争 ハ レナ イ コノ点 ニ関 シ前 掲 小 浦 正雄

員 ノ配 置其 ノ他 信 徒 ノ取 締 竝指 導 ニ関 ス ル内 規 ノ制 定 ヲ為 ス等其 ノ

ノ証 言 ﹁宗 団成 立時 期 ハ自 然 発 生的 テ⋮ ⋮ ﹂ ハ最 モ克 ク天 理 本道 生

組 織 ヲ整 備拡 充 シ爾 来 昭和 十 三年 十 二 月頃 迄 ノ間其 ノ目 的 ノ達 成 ニ

シ テ ノ成 立 ヲ昭 和十 年 五 月頃 ト認 定 シテ居 ルカ前 掲 判 示 事 実カ 何 故

努 メ居 リ タ ル モノ ナ ル卜 コ ロ⋮ ⋮﹂ ト述 ヘテ居 テ天 理本 道 ノ結 社 ト

成 過 程 ヲ喝 破 セ ル モノト 云 フ ヘク コノ自 然 発 生的 ナ ル語 句 コソ発 生

的 ニ何 等 人 為 工作 ノ施 サ レ タ形 跡 ノ ナ イ天 理 本 道 ノ 実体 ヲ如 実 ニ解

ルノ ミ テ其 ノ最 後 ノ事 務 所 開 設 ヲ述 ヘタ後 俄 然 論 法 飛躍 シテ ﹁茲 ニ 結 社 天 理 本道 ノ結 成 ヲ遂

結 社 成 立 ノ理由 ト ナ ルノ カ右 ハ単 ニ信 徒 事 務 所 ノ変遷 経 過 ヲ記 述 セ

天 理教 本 部 ニ対 立 シ大 西 愛 治 郎 ヲ以 テ⋮⋮

テ実 現 セラ ル ル場合 ハ其ノ目 的 ヲ行 為 者 ニ帰 セ シメ ル訳 ニ ハ行 カ ナ

ナケ レ ハナ ラ ヌ又 従 ツテ 一定 ノ事 象 カ当該 行為 者 以 外 ノ意 志 ニ ヨツ

ス ル モノ テ ア ル即 チ目的 実 現 ト行 為 者 ノ意 思 ト ノ間 ニ必 然 ノ連 繋 カ

タ結 社 テ ハナイ、 目的 ト ハ行 為 者 カ自 己 ノ意 思 ニ ヨツ テ実 現 セ ント

ニ書 キ現 ハシ タ ニ過 キ ヌ ニ於 テ オ ヤ テ ア ル二、 国 体 変革 ヲ目的 ト シ

事 実 ヲ確 認 シ タ程度 ノ モノ テ ア リ又 内規 ノ作 成 モ既 定 ノ方 針 ヲ書 面

取締 方 針 モ定 メ ラ レテ ア ツ テ昭 和 十年 末 ノ幹 部 ノ会 合 ハ単 ニ既 存 ノ

テ 本道 生 成 当初 ヨリ夫 々宗 務 ヲ分担 受 持 チ来 タ リ又信 徒 等 ニ対 スル

昭 和十 年 末 頃 ニ至 リ初 メ テ設置 サ レ タ モノ テ ナ ク小 浦、 岩 田等 ニ於

ス レ ハ事 実 ニ於 テ役 員 事 務 ノ分 配其 ノ他信 徒 ニ対 スル取 締 内 規 等 ハ

タ ル ニ対 シ明快 卒 直 比 フ ヘク モ ナイ 況 ヤ前 掲 小浦 其 ノ他 ノ証 言 ニ徴

明 シタ モ ノテ其 ノ秀 抜 適 切 ナ表 現 ニ ハ敬 服 ノ外 ハナイ原 判 決 ノ莫 然

ル方針 テ目 的 ノ実現 性 極 メ テ強 力 ナ ル モノ カ ア ル ニ比 シ天 理本 道 ニ

如 キ其 ノ綱 領 ノ実 現 手 段 ハ精 緻 巧 妙 ヲ極 メ暴 力 革 命 ヲ モ敢 テ辞 セサ

性 ヲ欠 除 セ ル行 為 ト謂 ハナ ケ レ ハナ ラ ヌ夫 ノ秘 密 結 社 日本 共 産 党 ノ

要 件 テ ア ル結 果 発 生 ノ潜 勢 力 ナ キ手 段 ハ実 害 ヲ生 ス ル ニ由 ナ ク違 法

レ自 体 ニ行為 者 ノ意 図 シ タ結 果 発 生 ノ潜 勢 力 ヲ有 ス ル コト カ必須 ノ

テ ハナ イ カ併 刑 法 学 上 犯 罪 ノ客 観 的 要 件 タ ル実行 行 為 ハ即 手 段 ハ其

モ之 ヲ変 革 ス ル コト ハ不 能 テ ア ルト云 フ様 ナ低俗 ナ論 拠 ヨ リ ス ルノ

出 来 ナ イ弁護 人 ハ我 国 体 ハ万 古 不動 テ如何 ナ ル手 段 方 法 ヲ以 テ ス ル

目 的 ア リト ス ル モ其 ノ目 的 ノ可 能 性 ニ関 ス ル検討 ハ本 罪 成 立 上観 過

三 、 目 的 ノ達 成 カ不 能 テ ア ル仮 ニ数 歩 ヲ譲 リ天 理 本 道 ニ国 体変 革 ノ

界 ヲ謳 歌 宣伝 シ以 テ人 々ノ本 道 入信 ヲ慫慂 シ タ ニ過 キ ナ イ ノテ ア ル

彼 等 ノ所 謂 天 然 自 然 ノ 道 理 ヲ 一般 大 衆 ニ解 キ 且理 想 境 タ ル甘露 台 世

伝 啓蒙 運動 テ其 ノ教 義 ノ内 容 ハ天 然 自 然 ノ 理 ニ因 ツ テ大 西愛 治 郎 カ

甘 露台世 界 ノ統 率者 即 チ我 国 引 イ テ世界 ノ統 治 権 者 タ ル ヘキ テ ア ル

於 テ ハ其 ノ目 的達 成 ノ為 メ ニ採 ルト コロノ手 段 ハ天 理 本道 教 義 ノ宣

ト 為 ス モノ テ其 ノ天 然 自 然 ノ 理 ナ ル モノ ニ ハ何 等 理 論 的根 拠 モナ ク

イ本件 天 理本道 ニ所 謂 甘露 台 世 界 即 チ大 西 愛 治郎 カ我 大 日 本帝 国 ノ

ソ ハ必至 ノ現象 ヲ其 ノ間 ニ施 ス ヘキ人 為 的 必 要事 モ亦 其 ノ余 地 モナ

統 治 権 者 タ ル ニ到 ル ヘキ ハ天 理本道 ニ謂 フ所 ノ天 然 自 然 ノ理 テ アリ

イ即 チ天 理本道 ニア ツ テ ハ国 体変 革 ノ目 的 ハ当初 ヨリ存 在 ノ余 地 カ

テ此 ノ如 キ低 調 妄 昧 ナ教義 ニ説伏 サ レル者 カ在 リ得 ヨウ カ之 レ本 道

荒 唐 無 稽 モ コ コ ニ到 ツ テ ハ極 マ レリ ト云 フ ヘク方 今 ノ文 化 社会 ニ於

ノ目 的 実 現行 為 カ全 ク結果 発 生力 ヲ欠 除 セ リト 云 フ所 以 テ ア ル以 上

ナ イ ノ テア ル夢 ノ様 ナ説 述 テ ハア ルカ本 件 被 告 人 ノ 凡 テ カ 又其 ノ他

ク被告 等 ハカ ク妄 信 シ テ居 ツ タノ テ ア ル宣 ナ ル カ本 道唯 一ノ運 動 手

ト做 シ又 結 社 ナリト スル モ結 社 ノ目 的 達 成 ノ不可 能 ナ ル点 ヲ観 過 シ

縷 述 ノ如 ク原 判 決 ハ結 社 成 立 ノ要 件 ヲ欠 缺 セ ル天 理本 道 ヲ結 社 ナリ

証 人 等 ノ悉 ク カ左 様 ニ信 シテ居 ルノ テ ア ル洵 ニ原 判 決 ノ述 ヘル カ如

段 タ ル ﹁匂掛 ﹂ ハ被 告 等 ニ ヨツ テ警 察 署 等 ニ於 テ公 然行 ハレ就 中 本

レナ イ (二 )刑 事 訴 訟 法 第 四 百十 二条 ニ該 当 ス 一、 第 一項 ノ論 述 ヲ

テ有 罪 ノ宣 告 ヲ為 シタ ル ハ法 律 ニ違 反 シタ モノト 云 フ ヘク破 毀 ハ免

道 カ此 ノ種 結 社 ニ絶 対 類 例 ヲ見 ナイ 公然 ノ結 社 (秘 密結 社 ニ対 ス) ナ ル ニ想 到 ス ルト キ 蓋 シ思 半 ニ ハ過 キ ル モノ カ ア ルノ テ ア ル由 是 観

綜合 的 ニ検 討 ス ルト キ ハ仮 ニ天 理 本 道 ヲ国 体 変 革 ヲ目的 ト ス ル結 社

之 天 理本 道 ハ我国 体 変 革 ヲ目 的 ト シ タ宗 団 テ ハ毛 頭 ナ ク従 ツ テ被 告 等 ノ ﹁匂 掛 ﹂ 等 ニヨ ル実 際 運 動 ハ甘 露 台 世界 出 現 ノ必 至 ナ ル所 以即

ナ リト スル モ其 ノ存 在 ニ社 会 ハ寸毫 モ恐 畏 ヲ覚 ヘナイ其 ノ教 義 ノ理

コト ヲ疑 フ ヘキ顕 著 ナ ル事由 ア ル コ卜 ナ シ加 之 同 法

社 ナ ル コト ノ情 ヲ知 リ テ之 ニ加 入 シ タ ルト キ ハ直 ニ成 立 シ其 ノ結 社

規 定 スルカ如 キ目 的 ヲ有 ス ル結 社 ヲ組 織 シ又 ハ斯 ル目 的 ヲ有 ス ル結

第 一条 ノ結 社 組 織 罪 若 ハ結 社 加 入 罪 ハ苟 モ同 法 条 ノ

ノ如 キ鞏固 不動 ノ国 体 ヲ変 革 セ ント ス ルカ如 キ蟷 螂 ノ斧 夢 物 語 ニ終

ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル手 段 カ其 ノ遂 行 ニ適 切 ニシ テ可 能 ナ ル コト ハ

(要 旨 第 二)

ラ スン ハ幸 テ ア ル社 会 ニ与 ヘル実害 ハ皆 無 ト云 フ モ過 言 テ ナ イ本 道

必 シ モ成 立要 件 ニ非 サ ル カ故 ニ本 件 ニ於 テ天 理本 道 カ国 体 ノ変 革 ヲ

論 的 貧 困 サ ニ至 ツテ ハ論 難 ノ外 ト 云 フ ヘク此 ノ如 キ教義 ヲ以 テ我 国

シタ カ為 メ テ ハナク同 教 義 ノ卑 俗 ナ ル部 面 タ ル ﹁極楽 世 界 ノ顕 現 ﹂

カ数 千 ニ達 ス ル大衆 ヲ包 容 シ得 タノ ハ信 徒 カ国 体 変 革 ノ教 義 ニ共 鳴

寛 容 ナ ル同 条 ノ存 在 カ炳 ト シテ輝 ク ヲ見 ルノ テ ア ル原 判決 カ被 告 人

ニ対 シテ モ 一脈 通 ス ヘキ立 法 精 神 ヲ汲 ム ニ難 ク ナ イ カ ク解 シテ コソ

ハレナ ケ レ ハナ ラ ヌ然 ラ ハ同 条 ハ事 後 ノ自 首 者 ト モ云 フ ヘキ転 向 者

維 持 法 第 六 条 ニヨ レ ハ本 法 違 反 ノ自 首 ハ当 然 刑 ノ減 軽 又 ハ免 除 カ行

(ロ)而 カ モ現 在 ニ於 テ ハ転 向 ノ赤誠 ヲ披 瀝 ス ル被 告 人 等 テ ア ル治 安

ノ ミ ニ出 テ タ モノ テ ア リ而 シ テ夫 レカ全 部 ノ目 的 テ他 ニ何 物 モナ ク

条 ノ結 社 加 入罪 ニ問 擬 シ タ ル ハ相 当 ナ リト 云 フ ヘク又 被告 人等 ニ対

於 テ オ ヤ果 シテ然 ラ ハ原 審 カ被 告 人 等 ノ前 記 行為 ヲ治 安 維 持法 第 一

観 念 ヲ攪 乱 シ国 家 ノ基 礎 ヲ危 カ ラ シム ル ノ惧 ナ シ卜為 ス ヲ得 サ ル ニ

判 示 ノ如 ク其 ノ教 義 ヲ喧 伝流 布 ス ルト キ ハ 一般 国 民 ノ純 正 ナ ル国 体

コト ナ シ殊 ニ況 ンヤ天 理 本道 カ判 示 ノ如 ク其 ノ組 織 ヲ整備 拡 張 シ又

論 ノ如 クナ リ ト スル モ前 記結 社 加 入 罪 ノ成立 ヲ断 ス ル ニ毫 モ妨 ア ル

伏 スル ノ力 ナク万 古 不 易 ノ国 体 ヲ動 カ ス ニ足 ラサ ルモ ノ ナ ル コト所

唯 荒 唐無 稽 ナ ル教 義 ノ喧 伝流 布 ニ過 キ スシテ到 底 忠 良 ナ ル国 民 ヲ説

ト判 示 ノ如 ク ナ ル以 上 仮 令天 理本 道 ノ目 的 遂行 ノ為 ニス ル手段 カ是

野 原 ヲ懲 役 三年 ニ処 シ又 被告 人 芝 本 清 治 ヨ リ執 行 猶 予 ヲ奪 ヒ去 ツ タ

ス ル原 判 決 ノ科 刑 ヲ甚 タ シ ク不当 ト思 料 ス ヘキ顕 著 ナ ル事 由 アリ ト

目 的 ト ス ル モノ ニシ テ被告 人等 カ其 ノ情 ヲ知 リ テ之 ニ加 盟 シタ ル コ

ノ ハ何 レ モ刑 ノ量 定 甚 タ シク不 当 ナ リ卜思 料 ス ヘキ顕 著 ナ ル事 由 ア

ナ スヲ得 サ ル コト ハ前 ニ小 河 弁護 人 ノ上 告趣 意 書 ニ付 説 明 シ タ ル如

ニ無 教 養 人 共 カ魅 惑 サ レタ カ為 メテ ア ル本 件 被 告 人 モ其 ノ例 ニ洩 レ

ル モノ テ有 罪 止 ムナ シト ス ル モ量 刑 上 ニ関 シ上告 理 由 ア リ卜思 料 ス

ナ イ ノ ミ ナ ラ ス (イ) 被 告 人 両 名 ノ 入信 ノ動 機 カ何 レ モ病 苦 ノ克 服

ル モ ノテ ア ルト 云 フ ニ在 レト モ

ク ナ ルヲ以 テ論 旨 ハ (一) (二) 共 其 ノ理 由 ナキ モノ 卜 ス ( 其 ノ他

右 ノ理 由 ナ ル ヲ以 テ刑 事 訴 訟法 第 四百 四十 六条 ニ則 リ主 文 ノ如 ク判

ノ上告 論 旨 及判 決 理由 ハ之 ヲ省 略 ス)

決 ス

ヲ遂 行 セ ンカ為 任 意 ニ結 成 セ ル継 続 的 団 体 ヲ云 フ モ

ノ ニシ テ原 判 決 ハ天 理 本 道 カ不 逞 ニ モ国 体 ノ変 革 ヲ目 的 ト ス ル斯 ノ

治 安 維 持 法 ニ所 謂 結 社 卜 ハ特 定 多 数 人 カ共 同 ノ 目的

種 ノ団 体 ナ ル コト ヲ認 定 シタ ル趣 旨 ナ ル コト判 文 上 極 メ テ明白 ナ ル

検 事 吉 弘 基 彦関 与

(要 旨 第 一)

ト同 時 ニ原判 決 挙 示 ノ証 拠 ニ徴 ス レ ハ原審 ノ為 シタ ル右 ノ認 定 ハ輙 ク之 ヲ肯 定 ス ル ニ足 リ記 録 ヲ査 ス ル モ其 ノ認定 ニ重 大 ナ ル誤謬 ア ル

明石順三 懲役十年 

未決四百 日通算

著述 業  明

無 職 

明

石

順

静

三

栄

当五十五年

石

本 籍 竝 住 居  東 京 市 杉 並 区 荻 窪 四 丁目 五 十 八番 地

当 五十 七年

右 者 等 ニ対 ス ル治安 維 持法 違 反 被 告 事 件 ニ付 昭和 十 七年五 月 三十 日

東 京 刑 事 地方 裁 判 所 カ宣告 シ タ ル有 罪 判決 ニ対 シ被 告 人 等 ヨリ適 法

ナル控 訴 申 立 アリ タ ル ヲ以 テ当院 ハ検 事 野村 佐太 男 関 与 更 ニ審 理 ヲ

文

遂 ケ判 決 スル コト左 ノ如 シ 主

被 告 人 明 石 順 三 ヲ懲 役 拾 年 ニ被 告人 明 石 静 栄 ヲ懲役 参 年 六 月 ニ 夫夫処 ス

由

米 国 紐 育州 ブ ルツ ク リ ン市 所 在 ノ ﹁ワツ チタ ワ ー ・バ イ ブ ル ・ア ン

理

原 審 ニ於 ケ ル未 決 勾留 日数 中 各 四 百 日 ヲ右 各 本 刑 ニ夫 夫 算 入 ス

ド ・ト ラク ト ・ソサ イ テ イ ﹂ ( 所 謂 燈 台 社総 本 部 ) ハ基 督 教 ノ 教 典

未決四百日通算 明石静栄 懲役三年 六月未決四百日通算

タ ル新 約聖 書 及 旧 約 聖 書 ニ付 キ独 自 ノ解 明 ヲ施 シテ構 成 シ タ ル教 理

(求刑原審 通り)

(求刑原審 通り)

本 籍 竝 住居  東 京 市 杉 並 区 荻窪 四丁 目 五十 八 番 地

三 八  灯 台 社 に 対 す る 第 二 審 判 決 (一 九四三)

明石順 三外 一名 に対する (灯台社関係) 治安維持法違反被告事件第 二審判決 ︱ 東京控訴院報告︱

昭和十四年 六月 二十 一日 検挙 同 十五年 八月 二十八日 求予審 同 十六年八月 二十三日 予審終結決定

( 求刑懲役六年)

明石静栄 懲役 五年 

( 求刑無期懲役)

明石順 三 懲役十 二年 未決 四百 日通算

同 十七年 五月 三 十 日 第 一審判決 被告人両名控訴申立

決

同 十八年 四月 十 三 日 第二審判決 被告人両名上告申 立

判

ノ宗 教 団 体 ニシテ 一八七 四 年 米 国 人 ラ ツ セ ルノ創 始 ニ係 ル モノ ナ ル

ヲ信 奉 ス ル信 者 ( 所 謂 エホバ ノ 証 者) ヲ以 テ組 織 セ ラ レタ ル国 際 的

﹁悪 魔 ノ組織 制度 ﹂ ヨリ離 脱 シ テ ﹁エホ バ﹂ ニ帰 依 シ以 テ ﹁ハル マ

音 ヲ伝 ヘ ﹁ハル マゲ ド ン﹂ ノ到 来 ヲ警 告 セ シ ム ル ト 共 ニ速 ヤ カ ニ

バ ﹂ ハ ﹁エホ バ ノ証 者 ﹂ ノ 一団 ヲ シテ地 上 ノ 人類 ニ対 シ神 ノ国 ノ福

ゲ ド ン﹂ ノ 災厄 ヲ免 カ レ其 ノ後 ニ建 設 セラ ル ヘキ神 ノ国 ニ於 テ祝福

ト コ ロ其 ノ教 理 タ ルヤ ﹁エホバ ﹂ ヲ以 テ宇 宙 万物 ノ創 造 主 タ ル唯 一 絶 対 至 上 至 高 ノ神 ナリ ト做 シ ﹁エホバ ﹂ ハ此 ノ地 球 ヲ人 類 ノ棲 処 ト

ヲ受 ク ヘキ コト ヲ勧 告 セ シ ム ル (所謂 証言 宣 明 行 為 ) モ ノ ニ シ テ

ト﹂ ノ追 随 者 ニシ テ将来 ﹁イ エ ス・ キ リ スト﹂ ヲ首 位 者 ト シテ之 ト

﹁エホバ ノ証 者 ﹂ ノ 一団 ハ右 ﹁約 束 ノ 裔 ﹂ タ ル ﹁イ エ ス・ キ リ ス

シテ創 造 シ其 ノ予 定 ノ時 至 ル ニ及 ヒ地 上 ヲ永 久 ノ生 命 卜 幸福 ト ヲ享

シテ ﹁ア ダ ム﹂ ﹁エバ ﹂ ヲ創 造 シ此 ノ両 名 ヲ通 シテ右 ノ目 的 ヲ実 現

ク ル完 全 ナ ル人 類 ニ依 リ充 サ シ ム ヘク其 ノ目的 達 成 ノ為 人 類 ノ 祖 ト

的 ヲ宣 明 シ現 存 ノ国 家 統 治 組織 社 会 機 構 ノ 全 部 カ ﹁悪 魔 ノ 組 織 制

一体 ト為 ル ヘキ者 及 之 ニ協 力 ス ル忠 信 者 ヨリ成 リ其 ノ当 面 ノ任 務 ハ

度 ﹂ ニ属 ス ル モノ ナ ル旨 ヲ暴 露 シ該 組 織 機 構 ハ近 キ将 来 ニ於 テ ﹁ハ

セ ント シタ ル モ ﹁アダ ム﹂ ﹁エバ﹂ ハ ﹁エホバ ﹂ ニ反 逆 セ ル ﹁ル シ

ヲ失 ヒ爾来 悪魔 ノ邪 導 下 ニ ﹁エホバ ﹂ ヨリ離 反 シ ツ ツ今 日 ニ至 レ ル

ル マゲ ド ン﹂ ニ依 リ撃 滅一 掃 セ ラ ル ヘキ コト ヲ警告 ス ルト 共 ニ主権

該 教 理 ノ内 容 ハ世 界 各 国 ノ主権 者 竝国 民 ニ対 シ前 記 ﹁エホバ ﹂ ノ目

モ ノ ニシ テ現在 世 界 諸 国 ニ於 ケ ル統 治 組織 社 会 機 構 ハ総 テ悪 魔カ 人

者 ニ対 シ テ ハ其 ノ主 権 ノ不 正邪 悪 ナ ル コト ヲ認 識 シ主 権 ヲ神 ニ返 還

前 記 ﹁証 言 宣 明 行 為 ﹂ ヲ為 ス ニ在 リ即 チ之 ヲ国 家 的 立 場ヨ リ観 ル ニ

類 ヲ ﹁エホバ ﹂ ヨリ離 反 セ シ メ ンカ為 ニ組 織 シ利 用 シツ ツ ア ル ﹁悪

ス ヘキ コト ヲ勧 告 シ 一般 国 民 ニ対 シテ ハ邪 悪 主 権者 ニ依 ル被 害 者 タ

フ ア ー﹂ ト 称 ス ル悪 魔 ニ誘 惑 セ ラ レ ﹁エホバ ﹂ ノ律 法 ヲ犯 シ タ ル為

魔 ノ組 織 制 度 ﹂ ニ属 シ人 類 ハ其 ノ支 配 下 ニ在 リ テ常 ニ圧制 戦 争 貧 困

﹁エホバ ﹂ ノ怒 ニ触 レ人 類 ハ永 久 ノ 生命 卜幸 福 ト ヲ享 受 ス ルノ特権

疾 病 其 ノ他 凡 ユル不幸 災 厄 ニ悩 ミ居 ル モノ ナリ然 レト モ ﹁エホバ﹂

コト ヲ勧 告 スル ニ在 ル モノ ナ ル ト コ ロ

日本 燈 台 社 ハ右 燈 台 社総 本 部 ノ 日本 支 部 ト シテ 昭和 二年 八月 下 旬 頃

ルノ立 場 ヲ認 識 シ其 ノ制 度 ノ下 ヨリ離 脱 シテ ﹁エホバ﹂ ニ帰 依 ス ル

被 告 人明 石 順 三 ニ依 リ創 設 セ ラ レ当初 東 京市 京 橋 区 畳 町十 三番 地 根

ハ其 ノ全 智 全 能 ニ依 リ 予定 ノ時 期 至 ラ ハ悪 魔 ノ全 勢 力 ヲ撃 滅 シ其 ノ

目 的 ヲ実 現 ス ル モノ ニシ テ此 ノ 目的 ヲ実 現 セ ンカ為 ニ ﹁ 約 束 ノ裔 ﹂

支 配 下 ニ在 ル人 類 ノ内 ﹁エホ バ ﹂ ニ服 従 スル者 ノ ミ ヲ救 出 シ当初 ノ

ナ ル神性 ノ 大霊 者 ﹁イ エス ・キ リ スト﹂ ヲ自 己 ノ 代 理 執 行 者 ト シ

宰 ノ下 ニ多 数 ノ同 信 者 ヲ結 集 シ機 関 紙 ノ発 行単 行本 小 冊 子 ノ出 版 講

窪 四 丁 目 五十 八 番 地 ニ事 務 所 ヲ移 転 シ同 所 ヲ本 部 ト シ テ同被 告 人 主

演 会 ノ 開催 等 ノ方 法 ニ依 リ前 記 燈台 社 教 理 ニ基 ク証 言 宣 明 活動 ヲ継

本 ビ ルデ イ ング 内 ニ事 務 所 ヲ設 ケ タ ル カ昭和 五年 以 来 同市 杉 並 区 荻

セ シメ然 ル後 ﹁エホバ ﹂ ヲ讃 頌 ス ル人 類 ヲ民 ト シ ﹁古 代忠 信 者 ﹂ ヲ

続 シ来 レ ル モノ ニシ テ即 チ我帝 国 ヲ モ亦 ﹁悪 魔 ノ組 織 制 度 ﹂ ニ属 ス

﹁ハル マゲ ド ン﹂ ト称 スル空 前 絶 後 ノ大 災 厄 ニ依 リ ﹁悪 魔 ノ組 織制

統 治 者 ト スルト コロノ ﹁エホバ ﹂ ノ全 地的 統 治 組 織 タ ル ﹁地上 神 ノ

度 ﹂ 竝 其 ノ支 配下 ニ在 リ テ ﹁エホバ ﹂ ニ服 従 セ サ ル人類 ヲ撃 減 一掃

国 ﹂ ヲ成 就 スル モノ ナ ルカ右 ﹁ハル マゲ ド ン﹂ ノ前 提 ト シテ ﹁エホ

理 ノ宣 伝 普 及 ヲ図 ル モノ ナ ル ヲ以 テ之 ヲ我 カ国 体 ニ照 シテ稽 フ ル ニ

福 ヲ享 ク ル ノ外 途 ナキ モノト妄 断 シ ﹁証言 宣 明 行為 ﹂ ニ依 リ前 記 教

ニ ハ帝 国 ノ上 下 ヲ挙 ケ テ斉 シ ク ﹁エホ バ﹂ ニ帰 依 シ前 記神 ノ国 ノ祝

ル モノト 做 シ帝 国 ヲ シテ ﹁ハル マゲ ド ン﹂ ノ災 厄 ヨリ免 レ シム ル為

ノ 日米 新 聞社 等 ヲ転 々勤 務 シ居 リ タ ル モノ ナ ルト コ ロ大 正十 年 春

シテ羅 府 新 報 社 サ ンデ イ ゴ支 社 ニ入 リ其 ノ後 サ ン フラ ン シ ス コ市

事 シ其 ノ傍 ラ文 学 演 劇 ニ関 スル研究 ヲ為 シ大 正 三年 頃 新 聞 記 者 ト

九 歳 ノ頃 出 稼 ノ目 的 ヲ以 テ渡 米 シ太平 洋 沿 岸 諸州 ニ於 テ労働 ニ従

メ テ燈台 社 ノ存 在 ヲ知 リ同 人 ニ勧 誘 セ ラ ル ル儘爾 来 同 総 本 部 発行

頃 燈 台 社総 本 部 ノ文 書 伝 道 者 ナ ル米 国 人 ワツ ソ ンノ来 訪 ヲ受 ケ始

ニ係 ル各 種 文 献 ヲ繙 読 研 究 シ タ ル結 果 深 ク該 教 理 ヲ信 奉 ス ル ニ至

以来 確 固 不 動 ノ我 国統 治 体制 ヲ否 定 シ ﹁エホ バ﹂ ニ対 ス ル大 権 ノ返 還 ヲ説 ク コト ニ依 リ御 退位 ヲ希 求 シ奉 ルノ不 逞 ヲ犯 ス ニ帰 着 シ即 チ

シテ右総 本部 ノ活 動 ニ専 心 従 事 シ大 正十 五 年 九 月総 本 部 ノ指 令 ニ

リ大 正十三 年 四月 頃 新 聞 社 ヲ辞 シ爾 後 ﹁エホバ ノ 証者 ﹂ ノ 一員 ト

畏 ク モ 天 皇 陛 下 カ皇 祖  天 照 大 神 ノ裔 ト シテ大 権 ヲ統 ヘ給 フ肇 国

弁 ハ万世 一系 ノ  天皇 君臨 シ統 治 権 ヲ総 攬 シ給 フ我 カ世 界無 比 ノ国

ル目的 ヲ以 テ帰 朝 シ 一時 神 戸 市 外須 磨 ヲ中 心 ト シ関 西 各 地 ニ於 テ

基 キ其 ノ正式 代 表 者 ト シテ我 国 ニ於 テ ﹁証 言 宣 明 ﹂活 動 ヲ遂 行 ス

体 ヲ変 革 スル コ卜 ヲ目的 ト スル結 社 ナリ ト謂 フ ヘキト コ ロ右 活 動 継

ノ 証者 ﹂ カ不 敬 事 件 ノ嫌 疑 ニ依 リ取 調 ヲ受 ケ更 ニ其 ノ出 版 物 ノ殆 ト

続 中 昭和 八 年 五 月 中旬 頃 千 葉 県 下 ニ於 テ同被 告 人 外 数 名 ノ ﹁エホバ

仰 強固 ナ ル分 子 ヲ選 ミ テ再 組 織 ヲ為 サ ン コト ヲ決 意 シ同 月下 旬 頃 前

ヤ同被 告 人 ハ陣 容 整 備 ノ必要 ヲ感 シ従 来 ノ組 織 ヲ 一応 解消 シ更 ニ信

因 リ其 ノ活動 ニ 一頓 挫 ヲ来 スヤ冒頭 掲 記 ノ如 ク同 年 六月 上 旬 頃 日

集 シテ前 記 ノ如 ク活 動 ヲ継 続 中 昭和 八年 五月 中 旬 頃当 局 ノ取 締 ニ

地 ニ事 務 所 ヲ移 転 シ主 幹 ト シテ其 ノ 主宰 ノ下 ニ多 数 ノ同 信 者 ヲ結

日本 燈 台 社 ヲ創 設 シ昭和 五 年 以 来 同市 杉 並 区荻 窪 四 丁目 五 十 八番

三番 地根 本 ビ ルデ イ ング内 ニ事 務所 ヲ設 ケ前 記 総 本部 ノ支 部 タ ル

記 東 京 本 部 竝 全 国 各 地 ニ分 散 セ ル ﹁エホバ ノ証 者 ﹂ ニ対 シ右 決 意 ヲ

本 燈 台 社 ノ再 組 織 ヲ遂 ケ同 月 下 旬 頃 ヨリ 昭和 十 四年 六月 二十 一日

活 動 シ タ ルカ 昭和 二年 八月 上 京 シ同 月下 旬 頃 東 京市 京 橋 区 畳 町十

披 瀝 シテ各 自 ノ意 嚮 ヲ糺 シタ ル上 同 年 六 月 上旬 頃 前 記 東 京事 務 所 ニ

全 部 カ発 売 頒 布 ヲ禁 止 セ ラ レ且全 国 各 地 ニ於 テ ﹁エホバ ノ 証者 ﹂ ノ

於 テ之 ニ同 意 セ ル多 数 ノ ﹁エホバ ノ 証 者 ﹂ ヲ糾 合 シ テ再 ヒ前 記 検 挙

検 挙 セ ラ ル ル迄 同 結 社 ノ最 高 首 脳者 ト シテ右 再組 織 前 ト同 様 ノ活

取 締 カ開 始セ ラ レタ ル為 其 ノ活 動 ニ 一頓 挫 ヲ来 スノ已 ム ナ キ ニ至 ル

前 ニ於 ケ ル日本 燈 台 社 ト本 質 目 的 ヲ同 シウ ス ル強 固 ナ ル結 社 日本 燈

動 ヲ為 シ来 リ タ ルカ其 ノ間

﹁証 言 宣 明﹂ ノ為 昭和 八 年 六 月中 ヨリ 昭和 十 四年 六 月 二 十 一

台 社 ノ結 成 ヲ遂 ケ同結 社 ハ同 月 下 旬 頃 ヨリ 昭和 十 四 年 六 月 二十 一日 本 件 ニ依 ル検 挙 ニ至 ル迄右 再 組 織 前 ト 同様 ノ活 動 ヲ為 シ来 リ タ ル モ

日検挙 セ ラ ル ル迄 ノ間 前 記 事 務所 ニ於 テ赤 松朝 松 等 東 京本 部員

ヲ指 揮 督 励 シテ自 己 ノ飜 訳 又 ハ執 筆 ニ係 ル燈 台社 教 理 ニ関 ス ル

(一)

而 シテ

記事 ヲ掲 載 セ ル機 関 紙 ﹁黄 金時 代 ﹂ (昭和 十 三年 一月 ヨ リ ﹁な

ノト ス

第 一、 被 告 人 明 石 順 三 ハ滋 賀 県 立 第 一中 学校 第 二学年 中 途 退 学 後 十

ぐ さ め﹂ ト改 題 ) 単 行本 ﹁富 ﹂ 小 冊 子 ﹁ 保 護 ﹂ ﹁警 告 ﹂ 外 数 種 ヲ印 刷 発行 シ其 ノ大 部 分 ヲ ﹁エホ バ ノ証 者 ﹂百 数 十 名 ノ手 ニ依 リ全 国 各 地 ニ於 テ戸 別 訪問 等 ノ方 法 ヲ以 テ販売 頒 布 シ

﹁エホバ ノ証 者 ﹂ ノ指 揮 督 励 ノ任 務 ニ従 事 セ シ メ

之 ヲ巡 回 指 導者 ト シテ任 命 シ同 人等 ヲ シテ各 地 ニ巡 回 セ シ メ テ

タ ル等 諸 般 ノ活 動 ヲ為 シ以 テ 日本 燈 台 社 ヲ組 織 シ其 ノ指導 者 タ ル 任 務 ニ従 事 シ

十 五年 神 田雄 二 郎 ト 結 婚 シ神 戸 市 外 須 磨 ニ居 住 中 大 正 十 三年 雄 二

第 二、 被 告 人 明 石 静 栄 ハ熊 本市 ノ私 立 尚絅 高 等 女 学 校 卒 業後 明 治 四

郎 ト死 別 シ昭和 五年 十 二 月 明石 順 三 ト結 婚 シ タ ル モノ ナ ルト コ ロ

(二) 昭 和 九年 十 一月 及 昭 和十 年 一月 ヨリ同 年 四月 迄 ノ間 東 京 市淀 橋 公 会 堂、 大 阪 市 実 業 会 館、 神戸 市 県 会 議 事堂 、 朝 鮮 京 城 府 京

右 高等 女 学 校 在 学 当 時 ヨリ基 督 教 ヲ信 仰 シ雄 二郎 ト結 婚 後其 ノ弟

シ居 リ タ ルカ大 正 十 五 年 九 月 明石 順 三 カ米 国 ヨリ帰 朝 スル ヤ右講

ス﹂ ナ ル題 下 ニ夫 々講 演 会 ヲ開催 シ又 昭和 十 二年 十 一月 三十 日

堂 ニ於 テ同 人 ヨリ親 シ ク該教 理 ノ解 説 ヲ受 ケ之 ニ共 鳴 シ爾 来 同 人

神 田繁 太郎 ノ主 催 スル須 磨浦 聖書 講 堂 ニ於 テ燈台 社 教 理 ヲ モ聴講

年 一月 九 日 ヨリ毎 週 二回 宛 十 回 ニ亘 リ右 淀 橋 公会 堂 ニ於 テ ﹁聖

ノ指 導 ニ依 リ同 教 理 ヲ研 究 シタ ル結 果 深 ク之 ヲ信 奉 ス ル ニ至 リ昭

シ以 テ多 数 ノ 一般 聴 衆 ニ対 シ燈台 社教 理 ヲ宣 伝 シ タ ル外 昭和 十

書 十 講 ﹂続 イ テ同 年 三 月 迄 同 所 ニ於 テ毎 週 木 曜 日 ニ ﹁聖 書 木 曜

和 二年 八 月下 旬 頃 日本 燈 台社 創 設 以 来 ﹁エホバ ノ証 者 ﹂ ノ 一員 ト

シ テ其 ノ活 動 ニ従 事 中 前 叙 ノ如 ク 昭和 八年 五 月下 旬 頃 前 記 日本 燈

﹁聖 書 十 講 ﹂ ナ ル各 研 究 会 ヲ開催 シ孰 レ モ自 ラ其 ノ講 師 ト ナ リ テ多 数 ノ来 聴 者 ニ対 シ燈 台 社 教 理 ヲ解説 宣 伝 シ

付 意 嚮 ヲ糺 サ ル ルヤ同 結 社 ノ 目的 カ前 記 ノ如 ク ナ ル コト ヲ知 悉 シ

昭 和 八年 九 月頃 ヨリ昭 和十 四年 六月 二 十 一日検 挙 セ ラ ル ル迄

本 燈 台 社 再組 織 ト共 ニ同 結 社 ニ加 入 シタ ル上

台 社東 京 事 務 所 ニ於 テ主 幹 明石 順 三 ヨリ日本 燈 台 社 再 組 織 ノ件 ニ

東 京 本 部 員 及全 国 各 地 ノ ﹁エホバ ノ 証者 ﹂ ニ対 ス ル教 理 ノ解 説 指 導 、 活 動 ノ指 揮 督 励 ニ資 ス ル為 前 記事 務 所 ニ於 テ昭和 九 年

ン コト ヲ決 意 シ即 時 同 人 ニ対 シ右決 意 ヲ表 明 シ同 年 六月 上 旬 頃 日

ナ カ ラ引 続 キ ﹁エホバ ノ証者 ﹂ ト シテ同結 社 ノ目 的 達 成 ニ協 力 セ

研 究 会 ﹂ 更 ニ同月 ヨリ同 年 四 月迄 ノ間 大 阪 、 神戸 両市 内 ニ於 テ

右 淀 橋 公 会堂 ニ於 テ ﹁老 淫婦 ノ魔 笑 ﹂ ナ ル題 下 ニ講 演 会 ヲ開 催

城 日 報 会館 、 平 壌 府 公 会 堂 等 ニ於 テ孰 レ モ ﹁偽 物 基 督 教 ヲ審 判

(三)

オ ー ド ノ原 著 ヨ リ夫 々飜 訳 シタ ル モ ノ ヲ複 写回 覧 紙 ト シ ﹁光 ﹂

春 頃 ヨリ総 本 部 ノ機 関 紙 ﹁ワ ツ チ タ ワ ー﹂及 総 本 部 会 長 ルサ フ

﹁ワ ツチ タ ワー﹂ ﹁正義 ノ世 ﹂ ﹁神 ノ国 ト平 和 ﹂ ﹁戯 曲 証 明 ﹂ ﹁ 黙 示録 研 究﹂ ﹁ 聖 書 研 究 ﹂外 数 種 ノ題 名 ヲ付 シテ作 成 シ尚 東 京 本

金 時 代 ﹂ (昭和 十 三年 一月 ヨ リ ﹁な ぐ さめ ﹂ ト改 題 ) 其 ノ 他 ノ

女 子 本 部員 ヲ指 揮 監 督 シ或 ハ燈台 社 教 理 ヲ記述 セ ル機 関 紙 ﹁ 黄

ノ間 東 京 本部 員 ト シテ前 記 事 務所 ニ起 居 シ本部 員 全 部 ノ賄 ニ付

知 ﹂ ト 題 ス ル文 書 等 ヲ作 成 シ是 等 ヲ ﹁エホバ ノ証 者 ﹂ 全 員 ニ回

燈 台 社 文献 ノ製 本 発 送 等 ニ関 ス ル事 務 ニ従 事 シ

(一)

覧 又 ハ配布 閲読 セ シ メタ ル外 随 時 自 ラ各 地 ニ出 張 シ地 方 ニ於 テ

部 ヨ リ指 令 及 各 地 ヨリノ報 告 ヲ集 録 セ ル複 写 回覧 紙 ﹁歓喜 ノ通

活 動 中 ノ ﹁エホバ ノ証者 ﹂ ヲ指 揮 督 励 シ又 ハ赤 松 朝 松 、 長縄 由

各 所 ニ於 テ右 機関 紙 約 三 百 部 ヲ販 売頒 布 シタ ル外約 二十 名 ニ対

(二) 昭和 九 年 六 月頃 ヨリ昭 和十 三年 九 月頃 迄 ノ間 数 回ニ 亘リ行 ハ レタ ル所 謂 ﹁特別 証 言 期 間 ﹂ ニ際 シ ﹁証 言 宣 明 ﹂ ノ為 東 京 市 内

各 被 告 人 ニ付 所 定 刑 中 有 期 懲役 刑 ヲ選 択 シ其 ノ刑 期 範 囲 内 ニ於 テ被

条 ニ従 ヒ孰 レ モ軽 キ旧 法 ノ規定 ニ依 リ定 メタ ル刑 ニ依 リ処 断 ス ヘク

新 法 第 一条 後 段 ニ夫 々該 当 ス ルヲ以 テ新 法 附 則 第 二 項 但書 刑 法 第 十

告 人 明石 順 三 ノ所 為 ハ新 法 第 一条 前段 ニ、 被 告 人 明 石 静 栄 ノ所 為 ハ

シ同 機 関 紙 購 読 ノ契 約 ヲ為 サ シ メ タ ル等 諸 般 ノ活動 ヲ為 シ以 テ

告 人明 石順 三 ヲ懲 役 拾 年 ニ、被 告 人明 石 静 栄 ヲ懲 役 三 年 六 月 ニ夫 々

順

春

三

第

判決年月日

判

同

一

決

審

検事求刑

二年 同 六年 (二五〇)

同 三年 懲役六年 (二五〇)

一七 、 五 、 三 〇 懲役十二年 無期懲役 (四〇〇)

同

一 同

田 義 雄

田

仍 テ主文 ノ如 ク判 決 ス

右 各本 刑 ニ算 入 ス ヘキ モノト ス

判 事 

裁 判長 判 事 

東 京 控 訴 院第 六刑 事 部

昭和 十 八年 四 月十 三 日

訴

審 決

告

審

裁 判 長判 事 

上

岸

盛

上告中

備

一

考

藤 井 五 一 郎

果

確 定

結

同

判決年月 日

同 二年 (二五〇) 三年猶 予 二年 (二五〇) 三年猶予

同

懲役十年 (四〇〇)

判

判 事 加藤 朔太 郎 ハ転 補 ニ付署 名 捺 印 ス ル コト能 ハ ス

控 判決年月日

一八 、 四 、 一三

一八 、 六 、 一二

同

藤 井 五 一郎

処 シ刑 法 第 二十 一条 ニ則 リ原審 ニ於 ケ ル未決 勾留 日数 中 各 四百 日 ヲ

日本 燈台 社 ニ加 入 シ其 ノ目 的 遂 行 ノ為 ニ スル行 為 ヲ為 シ タ ルモ ノ ナリ (証拠 説 明 省 略 ) 法 律 ニ照 ス ニ被 告 人明 石 順 三 ノ国 体 変 革 ヲ目的 ト スル結 社 ヲ組 織 シ 其 ノ指 導 者 タ ル任 務 ニ従 事 シタ ル点 ハ昭 和 三年 勅 令 第 百 二十 九 号 治 安 維 持 法 中 改 正 ノ件 (以 下 旧法 ト称 ス) 第 一条 第 一項 前 段 ニ、 被 告 人 明 石 静 栄 ノ国 体変 革 ヲ目 的 ト ス ル結 社 ニ加 入 シ其 ノ目 的 遂 行 ノ為

コロ同 法 ハ昭 和 十 六年 法 律 第 五 十 四 号 (以 下 新 法 ト称 ス) ヲ以 テ改

ニ ス ル行 為 ヲ為 シタ ル点 ハ同法 第 一条 第 一項 後 段 ニ夫 々該 当 ス ルト

山

勝

明 石

被告人氏名

最 近に於け る主要な る類似宗教関係事件判決結果 一覧表 ・燈台社関係

正 セ ラ レタ ル ニ依 リ新 法 附 則 第 二 項 本文 ニ則 リ之 ヲ新 法 ニ照 ス ニ被

庁 名 東 京 同

同

同

同

同

同

岩

斎

赤

崎

藤

松

喜

朝

一 同

光 同 松 同

奥 村 豹 太 郎 同

同

同

同

二年 同 (四〇〇) 三年 同 (三五〇) 五年 同 (二五〇) 三年 同 (二〇〇)

五年

六年

十 二年

六年

阪 岸

田 只

七

同

同

同 二年 ( 四〇〇) 二年猶予

同

同

定

定

三年

同

確

定

同

二年

定

定

同

上告取下確定

一七 、 一 一、二 五

同

同 二年 ( 二五〇) 三年猶予

確

上告棄却

同

同 二年 ( 二五〇) 四年猶予

一八 、 一 一、二 五

同

上告中 一八 、 六 、 一二

同

同

同 二年 (二〇〇) 三年猶予

五年 同 ( 四〇〇) 七年

一八 、 六 、 一六

大 赤 坂 シ ズ 岸 田 か め よ

信

五年

一八 、 四 、 一三

四年 同 (一五 〇)

八年

確

同 同 沢靏

田 重

同 一年六月 同 二年猶 予

確

一八 、 三 、 三

第 一事 実 同 同 二年 (三六〇) 第 二事実 同 三年

二年

造 同

一 生

忠

六年

同

同

三年

同

同 同

五年

同

四年

同

栄

確

同

同

三年

石 静

同 三年六月 (四〇〇)

同 二年 三年猶予

同

同

同 二年 五年猶予

松 村 本

相 川

同

エ 同

二年 三年猶 予

三

同

同

本

由

同

長 繩

木 同

明

二年 (一五〇) 四年猶予

同

同 角 田常 次 郎

同

同

三年 ( 三〇〇)

同

同 二年 三年猶 予

同 熊

同

同 二年 同 (三六〇) 三年猶予

同 新

潟

田 葉

辺 フ

と ミ

み イ

同 一八 、 七 、 二 二

(  )内は未決勾留日数 通算

二年六月 同 ( 三〇〇)

同 三年 同 (三六〇) 四年

二年

同

同

同

仙 作

由

三 十 六年 四 月米 国 ニ赴 キ、 カ リ フオ ル ニア州 ニ於 テ果 樹 ノ栽 培 日

事 シ、 明治 二十 四年 北海 道 ニ来 リ テ引 続 キ農 業 ヲ営 ミ、次 デ明 治

被 告 人 ハ新 潟 県 中 農 ノ家 庭 ニ生育 シ、 尋常 小学 校 卒業 後 家 業 ニ従

本 件 公 訴事 実 ハ、

審 理 ヲ遂 グ ル ニ、

ルベ キ コト前 記 事 実 審 理 開 始決 定 ニ説 明 セ ル如 ク ナ ル ヲ以 テ、 更 ニ

被 告 人弁 護 人鍛 冶 利 一上告 趣 意 書 ノ理 由 ア リ テ原 判決 ノ破 毀 セ ラ

理

三 九  浅 見 仙 作 に 対 す る 大 審 院 判 決 (一 九四五)

大審院判決書

決 書

昭和十九年 (れ)第五〇九号 判 本籍 札幌市北大通束 一丁目 一番地

浅 見

職

住居 北海道札幌 郡琴似町琴 似八十 八番地 渡 辺 ルツ方 無

雇 鉄 道 人 夫等 ヲ為 シ タ ル後、 明治 四 十 年 一月帰 国 シテ ヨリ北 海 道

厚 田郡 厚 田村 ニ於 テ再 ビ 農業 ニ従 事 シ、 更 ニ転 ジ テ大 正十 四年 ヨ

当七十八年 右治安維持法違 反被告事件 ニ付曩 ニ札幌地方裁 判所 ノ言渡 シタル

リ昭 和十 四年 十 二月 頃 迄 ノ間 札 幌 市 北 一条 西十 丁目 ニ於 テ浴場 業

牧 師 三 谷種 吉 ノ説 教 ヲ聞 ク ニ及 ビ テ基 督 教 ニ入信 シ、 同年 十 一月

ヲ経 営 シ居 リ タ ル者 ナ ルト コロ、 明 治 三 十 五年 七月 頃 福音 伝道 隊

札 幌 メ ソ ヂ スト教 会 ニ於 テ同 派 ノ牧 師 高 北 三 四郎 ヨリ洗 礼 ヲ受 ケ、

判決 ニ対 シ被告人 ハ上告 ヲ為 シタリ。因 テ本院 ハ事実審理開始 ノ決 原判決 ヲ破毀 ス。

定 ヲ為 シタ ル上判決 スルコト左ノ如 シ。 被告人 ハ無罪。

礎 ト シテ構 成 セ ル所 謂 無 教会 派 基 督 教 ヲ信 仰 ス ル ニ至 リ、 明 治 四

次 デ米 国 滞 在 中故 内 村 鑑 三 ノ旧新 約 聖 書 ニ対 スル独特 ノ解 釈 ヲ基

教 理 ノ解 説 ヲ為 シ

ノ集 会 ヲ開 催 シ、其 ノ都 度 数 名 乃至 十 数 名 ノ信 者 ニ対 シ、 前 記

同市 内 数 ケ所 ノ信 者宅 等 ニ於 テ、 前 記集 団 タ ル聖 書 研 究会 主 催

約 七 十 五 回 ニ亘 リ、 札 幌 市北 一条 西 二 十 丁 目当 時 ノ自 宅其 ノ他

朝 鮮 、関 東 州 及 満 洲 等 ノ 諸 地方 ニ於 テ開 催 セラ レタ ル同 派 地方

第 二  前 同 期 間 内 約 六十 八 回 ニ亘 リ、 北海 道 、 近 畿 、 中 国、 九 州 、

リ タ ルガ 、同 派 ノ教 理 タ ル ヤ、 父 ナ ル 神 (エホ バ)、 子 ナ ル 神 (キ リ スト) 及 聖 霊 ナ ル神 ノ所 謂 三位 一体 ノ神 ハ宇 宙 万物 ヲ創 造

十 年 帰 朝後 、 更 ニ右 内 村 鑑 三 ノ教 ヲ受 ケ テ深 ク之 ニ傾 倒 スル ニ至

シ、 且 永 遠 ニ之 ガ支 配 ヲ為 ス唯 一ノ活 ケ ル神 ニシテ、 ア ダ ム、 イ

ラ編 輯兼 発 行 人 ト ナリ テ、 前 記 教 理 等 ヲ自 ラ解 説 執 筆 セ ル集 団

第 三  昭和 十 六年 七 月 十 五 日及 同 年 九 月 二十 日 ノ 二回 ニ亘 リ、 自

ヴ 以 来悪 魔 ノ誘 惑 ニ陥 リ神 ヲ離 レテ罪 悪 ヲ重 ネ来 レ ル人 類 ヲ シ テ、

ト 共 ニ、 神 ノ本 意 ナ ラザ ル悪 魔 ノ活 躍 ト 人 ニ依 ル人 ノ支 配 ヲ黙 認

機 関 誌 ﹁純 福音 ﹂第 二十 三 号 及 第 二十 四 号 ヲ毎 号 各 二 百部 宛 発

数 名、 乃至 十 数 名 ノ信 者 求 道 者 等 ニ対 シ前 記 教 理 ノ解 説 ヲ為 シ

シ来 リタ ルガ、 神 ハ近 キ将 来 ニ於 テ キ リ スト ヲ空 中 ニ臨 マセ、審

行 シタ ル上 、其 ノ都 度 、 信 者 求 道者 等 約 二百 名 ニ対 シテ之 ヲ頒

集 団 主催 ニ係 ル聖 書 研究 会 、 聖 会 、 集 会 等 ニ出 席 シ、其 ノ都 度 、

判 ヲ開 始 シ、 戦 争其 ノ他 災 厄 ノ充 満 セ ル所 謂 患 難 時 代 ヲ現出 セ シ

布 シ

自 ラ悔 悟 シテ神 ニ復 帰 セ シ ムベ ク、 各 種 ノ試煉 ト祝 福 ト ヲ与 フ ル

メタ ル後 、 キ リ スト ヲ地 上 ニ再 臨 セ シ メ テ、 我 国 ヲ含 ム世 界 各国

リ、 私 製 葉 書等 ニ自 ラ前 記 教 理 ヲ解説 執 筆 セ ル集 団機 関 誌 ﹁雪

第 四  昭 和十 七年 六 月 頃 ヨリ昭和 十 八年 七 月頃 迄 ノ間 十 四回 ニ亘

ノ統 治 権 ヲ摂 収 セ シ メ、 キ リ スト ヲ統治 者 、 推 挙 セ ラ レ タ ル聖 徒 ヲ統 治 ニ参 与 スル王 ト為 ス千 年 王 国 ナ ル地 上神 ノ国 ヲ建 設 シ、 次

の下 よ り ﹂ ヲ毎 回 各 百 部 宛 発 行 シタ ル上 、其 ノ 都度 信 者 求 道 者

デ新 天新 地 ト称 スル神 ノ 理想 社 会 ヲ顕 現 スベ キ モノ ナ リト ナ シ、 畏 ク モ天 皇 統 治 ガ右 千年 王国 ノ建 設 ニ際 シテ廃 止 セ ラ ルベ キ モノ

等 約 百 名 ニ対 シテ之 ヲ頒 布 シ

タ ル等 諸 般 ノ活 動 ニ従 事 シ以 テ国 体 ヲ否 定 ス ヘキ事 項 ヲ流 布 スル

ト做 ス国 体 ヲ否 定 スベ キ内 容 ノ モ ノ ナ ル コト ヲ知 悉 シ ナガ ラ、 明 治 四十 一年 頃 前 記 当時 ノ自 宅 ニ於 テ信 者 数 名 ヲ糾 合 シ テ該教 理 ノ

コト ヲ目 的 ト ス ル集 団 ヲ指 導 シタ ル モノ ナ リ

ニ右 集 団 ヲ持 続 シ、 昭和 十 六年 五 月 十 五 日 改 正治 安 維 持 法施 行後

者 斎 藤 新次 郎 外 十 数 名 ノ集 団員 ヲ擁 シ テ聖 書 研究 会 ナ ル名 称 ノ下

行 セ ル印 刷物 ﹁純 福 音 ﹂ ﹁雪 の下 よ り﹂ ヲ信 者 、 同志 ニ頒 布 シ タ ル

ハ信 者 、 同 志 ヲ自宅 其 ノ他 ニ集 メ テ教 義 ヲ説 キ、 或 ハ自 己 ノ執 筆 発

及 其 ノ信 仰 ニ傾 倒 シ、 其 ノ説 ケ ル教 ヲ奉 ジ テ之 ヲ宣 布 セ ンガ為 、或

按 ズ ル ニ被 告 人 ガ夙 ニキ リ スト教 ニ帰 依 シ特 ニ故 内村 鑑 三 ノ人 格

ト謂 フ ニ在 リ。

宣 布 ヲ目的 ト スル集 団 ヲ結 成 シ爾 来 同 派 ノ 独立 伝 道 者 ト シテ前 記

モ前 記 目的 ヲ有 スル右 集 団 ノ指 導 者 タ ル地 位 ニ止 リ タ ル上

職業 ノ傍 ラ其 ノ指 導 ニ従事 シ来 リ、 昭 和十 四年 頃 以降 ニ於 テ ハ信

第 一 昭和 十 六年 五 月十 五 日頃 ヨリ昭和 十 八年 七 月中 旬 頃迄 ノ間

ニ在 リト ス、思 フ ニ基 督 教 ノ 一般 ニ教 義 ト スルト コ ロ ハ、 宇 宙 ニ ハ

果 シテ公 訴 事 実 ニ謂 フト コ ロノ如 キ不逞 ノ内 容 ヲ有 セ ル モノ ナ リ ヤ

本 件 ニ於 テ判 断 スベ キ要 点 ハ被 告 人 ノ宣 布 ニ努 メタ ル基 督 教 教 義 ガ

事 実 ハ、 被 告 人 ノ本院 公 廷 ニ於 テ認 ム ルト コ ロ ニ依 リ 明 カ ニシ テ、

而 シ テ本件 公 訴 事 実 ノ指 摘 ス ルト コ ロ ハ、基 督 教教 義 ノ中 ﹁キリ ス

其 ノ傾 倒 セ ル内 村 鑑 三 ノ所説 ニ照 シテ考 察 ス ルノ外 ナ キ モノ ト ス。

ス ル ニ ハ、 単 ニ被 告 人 ノ従来 宣 述 シ タ ルト コロヲ観 察 シ、 更 ニ之 ヲ

ハ愛 ヲ以 テ独 リ子 ﹁イ エ ス ・キ リ スト ﹂ ヲ此 ノ世 ニ下 シ、 之 ヲ救 ハ

神 ニ依 リ テ創 ラ レタ ル モノ ナ ガ ラ神 ニ背 キ テ罪 業 ニ沈淪 セ ル ヨリ神

コ ロ必 ズ シ モ詳 密 ナ リ ト謂 ヒ難 ク、 或 ル モノ ハ暗 示譬 喩 ヲ脱 セズ、

其 ノ コト タ ル聖 書 ノ各 所 ニ散 見 ス ルト コ ロナ レド モ、 其 ノ述 ブ ルト

タ ル後 、 再 ビ此 ノ 世 ニ出 現 ス ル コト ア ルベ キ コト ヲ謂 フ モ ノ ニ シテ、

﹁キ リ スト ﹂再 臨 ノ教 義 ハ ﹁キリ スト﹂ ガ十 字 架 ニツ ケ ラ レ昇天 シ

ト﹂ 再 臨 ノ問 題 ニ係 ル ガ故 ニ、 此 ノ点 ニ付 審 案 ヲ 遂 グ ル ニ、 所 謂

ント シ、 ﹁キ リ スト ﹂ ハ遂 ニ十 字 架 上 ニ犠牲 ト為 リ タ ル ヨ リ、 爾 来

シタ ル概 ア リ。 聖書 ノ記 述 ノ ミ ヲ以 テ シテ ハ ﹁キリ スト﹂ 再 臨 ノ具

或 ル モノ ハ希 望 的 観 測 ノ色 濃 ク又或 ル モノ ハ詩 的 空 想 ノ馳 スル ニ委

唯 一ノ神 在 リ、 神 ハ万 物 ノ創 造 主 ニシ テ天 地 ヲ支 配 ス、 人類 ハ素 ト

人 若 シ悔 改 メ テ ﹁キ リ スト﹂ ノ教 ヲ信 ズ ル ニ於 テ ハ罪 業 ヨリ救 ハレ、

ニ ハ由 来 多 ク ノ宗 派教 団 ア リ テ個 々 ノ教 義 ニ至 リ テ ハ其 ノ 説 クト コ

再 臨 ニ関 シ、基 督 教各 派 ノ祖 述 ス ルト コ ロ区 々タ ル ハ当 然 ニシテ、

ノ 正 シキ ヲ思 ハシ ム。 聖 書 ノ記 述叙 上 ノ如 ク ナ ル結 果 ﹁キ リ スト ﹂

ニ示現 セ ラ ル ルト コロ ニシ テ、 人 ハ聖 書 ニ依 リ神 ノ啓 示 ヲ悟 ルベ シ

神 ニ依 リ テ義 ト セ ラ レ、 永 生 ヲ享受 スベ ク、 如 上 ノ 神 ノ聖 旨 ハ聖 書

ロ必 ズ シ モ同 ジ カ ラザ ルモ、 故 内 村 鑑 三 ノ説 ケ ルト コロ ハ 一般 ノ新

或 ル会 派 ノ如 キ ハ種 々之 ニ附 会 ノ説 明 ヲ加 ヘ、 具 体 的 社会 事 情 ト結

ニ任 カ セ、 人意 ヲ以 テ徒 ニ揣摩 セザ ル コト コソ神意 ニ適 フト 解 ス ル

教 ノ教 義 ニシ テ特 ニ 一ノ教 派 ヲ成 スガ如 キ モノ ニア ラズ。 彼 ハ其 ノ

ルア リト 雖 、多 数 ノ会 派 ハ ﹁キリ スト﹂ ノ再 臨 ヲ信 ズ レド モ、其 ノ

ビ付 ケ テ人 心 ノ機 微 ヲ捉 ヘ、 予 言 的説 述 ニ依 リ テ衆 愚 ヲ誘 ハント ス

体 的 ナ ル形 体 ニ付 一定 ノ論 断 ヲ下 シ難 ク、 寧 ロ夫 レ ヲ 一切 神 ノ摂 理

剛 毅 一徹 苟 モ セザ ルノ性 格 ヨリ、 世 俗 ト 妥協 シ迎 合 ス ル教 会 基 督 教

ト謂 フ ニ在 ル コト ハ、 顕 著 ナ ル事 実 ニ属 ス ルト コ ロト ス。 唯 基 督 教

徒 ノ態 度 ヲ目 シ テ ﹁キ リ スト ﹂ ノ教 ヲ距 ル遠 シト 做 シ、 教 会 ニ依 ル

ニシ テ、 其 ノ内 容 ニ於 テ前 段 説 明 セ ル 一般 基 督 教 教 理 ヲ出 ズ ル モノ

ル被 告 人 ノ見解 ヲ尋 ヌ ル ニ、 被 告 人 ハ内 村 鑑 三 ノ教 ヲ奉 ズ ル関係 上

ヲ 一般 ノ事 例 ト ス ル コト顕 著 ナ ル事 実 ナ リト ス。而 シテ此 点 ニ関 ス

ト シテ待 望 ス ル ニ止 マリ、 之 ヲ教義 ノ枢 軸 的 問 題 ト シテ取 扱 ハザ ル

ニア ラザ ル コト ハ、 証 人 石 原 謙 、 塚 本 虎 二 ノ陳 述 ニ依 リ テ知 ルヲ得

聖書 ノ言 ヲ信 ズ ル コト特 ニ篤 ク、従 テ聖 書 ニ依 リ ﹁キリ スト ﹂ ノ将

説 明 ニ至 ツ テ ハ聖書 ノ記 述 以 上 ニ出 デ ズ、 将 来 必 ズ 成就 スベ キ希 望

ベ ク、 亦 証 拠 物 中 ノ内 村 鑑 三 全 集 ヲ繙 イテ之 ヲ諒 ス ル ニ難 カ ラザ ル

来 必ズ 此 ノ世 ニ再 臨 ス ル コト ヲ固 ク信 ズ ル モノ ナ レド モ、 其 ノ再 臨

ニ依 リ テ ノ ミ、 神 ノ国 ト其 ノ義 ト ヲ求 メ得 ベ キ コト ヲ力 説 セ ル モノ

ガ故 ニ、 其 ノ 所 説 ヲ指 シ、 無 教 会 派基 督教 ナ ル特 異 ノ教 義 ヲ形 成 ス

ハ霊 ノ救 ノ為 ニ為 サ ル ルモ ノ ナ レバ、 曩 ニ世 ニ在 リ シ日 ノ如 ク寧 ロ

伝 道 ノ方 式 ヲ排 シ、 基 督 教 徒 ハ日夕 聖 書 ニ親 シミ其 ノ教 ヲ遵 奉 ス ル

ル モノト 考 フ ル ハ誤 レリト謂 フベ ク、 従 テ被 告 人 ノ言 説 ノ当 否 ヲ験

待 ス ル ニ止 マリ、 ﹁キ リ スト ﹂ ノ再 臨 ガ如 何 ナ ル時 期 ニ実 現 セ ラ ル

ソ レ ニモ増 シテ罪 業 ニ陥 レ ル人類 ヲ悔 改 ニ導 ク活 動 ヲ為 スベ キ ヲ期

﹁キ リ スト ﹂ 若 シ地 上 ニ再 臨 スト セバ、 再 臨 セ ル ﹁キ リ スト﹂ ノ権

スト﹂ 再 臨 ノ信仰 ニ付 、 理 知 的 見 地 ヨリ推 理 ヲ逞 シ ク ス ルト キ ハ、

之 ヲ認 ムベ キ証左 ナ キ モノ ト断 ゼザ ルヲ得 ズ 。 唯 、右 ノ如 キ ﹁キ リ

ヤ ニ付 、 当 然 何等 カ ノ認 識 ヲ有 スベ キ筈 ナ リト ノ議論 ヲ生ズ ル余 地

力 ガ現 存 ス ル地 上各 国 主 権 ト、 果 シ テ如 何 ナ ル関 係 ニ立 ツ モノ ナ リ

ベ キ ヤ実 現 セラ レタ ル暁 ニ於 ケ ル ﹁キ リ スト ﹂ ノ容 相 ガ如 何 ナ ル モ

スト ﹂ ガ 地上 主 権 ト如 何 ナ ル関 係 ニ立 ツ ヤ ノ点 ノ如 キ、 嘗 テ寸 毫 モ

ノ ナリ ヤ ニ付 テ ハ深 ク思 索 セ ル コト ナ ク、 況 シ テ ヤ再 臨 セ ル ﹁キ リ

ス ルヲ本旨 ト シ、 理 知 ヲ積 ミテ到 達 スベ キ モノ ニア ラズ 。 従 テ信仰

ア ル ニ似 地リ ト雖 、 凡 ソ人 ノ信 仰 ハ直 覚 ニ依 リ テ絶 対 ノ境 地 ニ導 入

シ テ、 之 ヲ以 テ思 索 ノ不 徹 底 ヲ云 為 ス ル ハ、宗 教 ヲ識 ルノ言 ニ非 ズ。

者 ノ信 条 ニ ハ論 理 ノ追 及 ヲ容 レザ ル モノ ア ル ハ因 ヨリ其 ノ ト コロ ニ

思 ヲ馳 セタ ル コト ナ カ リ シ モノ ナ ル コト、 被 告 人 ガ当 公 廷 ニ於 テ陳

ル被 告 人執 筆 ノ印 刷 物 ﹁雪 の下 よ り﹂ 並 ニ ﹁純 福 音 ﹂ ノ全 部 ヲ通 読

述 ス ルト コ ロ ニシ テ、 右 ガ空疎 ナ ル弁 解 ニ非 ザ ル コト ハ、 証 拠 物 タ

ス ル モ、 右 ニ関 ス ル記 述 ヲ為 シタ ル形 跡 毫 モ存 セザ ルノ ミ ナ ラズ 、

セ ル ﹁キ リ スト ﹂ ニ期 待 スルト コ ロモ専 ラ霊 的 ノ活動 ニ在 リ ト謂 フ

加 之 純 粋 ナ ル信仰 ハ霊 ノ救 ニ重 キ ヲ置 ク モノ ナ レバ、 信 仰 者 ガ再 臨

ベ ク、 従 テ縦 シ ﹁キ リ スト﹂ ガ現 実 ニ此 ノ世 ニ出 現 スト ス ル モ、信

被告 人 ノ当 公 廷 ニ於 ケ ル、 被告 人 ガ嘗 テ ﹁キ リ スト﹂ 再 臨 問 題 ノ実

ヲ聴 キタ ルガ 一回 ニシ テ爾 後 ノ訪 問 ヲ断 念 シ タ ル旨 ノ陳 述 ニ徴 スル

ト シ、 之 ト ノ優 劣 ヲ品 隲 スルノ念 慮 ア リ ト為 スベ キ筋 合 ニ非 ズ ト謂

仰 者 ノ意 中其 ノ ﹁キ リ スト﹂ ヲ地 上 ノ権 力 者 ノ如 キ活 動 ヲ為 スモノ

体 ヲ捕 捉 ス ル ニ苦 シミ、 第 七 日基 督 再 臨 団 ノ 一教 師 ヲ訪 ヒ其 ノ説 明

モ明 カ ナリ。 更 ニ此 ノ問 題 ニ関 ス ル内 村 鑑 三 ノ見 解 ヲ検 ス ル ニ、 証

之 ヲ要 ス ル ニ本 件 公 訴 事 実 ハ結 局其 ノ証 明 ナ キ ニ帰 ス ルヲ以 テ、

ハザ ルベ カ ラズ。

人 塚 本 虎 二 ノ陳 述 ニ依 レバ 、内 村鑑 三 ハ前 世 界 大 戦 ノ後 半 世 界 ヲ挙 ゲ テ戦 渦 ニ入 ル形 勢 ヲ見 、 ﹁キリ スト﹂ 再 臨 ノ必 至 ナ ルベ キ ヲ 感 ジ 、

リ主 文 ノ如 ク判決 ス。

刑 事 訴 訟 法 第 三 百 六十 二条 後 段 第 四 百 四十 七 条 第 四 百 四 十八 条 ニ則

当時 熱 烈 ニ之 ガ唱 道 ヲ為 シ タ ル モ、 其 ノ唱 道 ハ其 ノ時 期 ニ止 マリ、 爾後 復 タ多 ク之 ニ言 及 セザ リ シ事 実 ヲ知 ルベ ク、 右 ハ前 示内 村 鑑 三

昭和 二 十 年 六月 十 二 日

検 事 戸 沢 重 雄 本件 審 理 ニ関 与 ス。

佐

江

裁 判長 判 事 

大 審 院 第 三刑 事 部

判 事 

伯

国

顕

二

亀

三 宅 正 太 郎

全集 ノ所 説 ノ経 緯 ト 一致 スル モノ ニ シテ、 該 所 説 ヲ検 スルト キ ハ、 内 村 鑑 三 モ亦 再 臨 セ ル ﹁キ リ スト﹂ ト地 上 主 権 ト ノ関 係 ニ付 何 等 触 ル ルト コロ ナカ リ シ事 実 明 瞭 ニ看 取 セ ラ レ得 ベ シ。 以 上 ニ叙 説 セ ルト コ ロヲ以 テ ス レバ、 被 告 人 ガ ﹁キ リ スト﹂ 地上

リ スト ﹂ ヲ統 治 者 ト スル千 年 王国 ヲ建 設 シ、 天 皇 統 治 ハ右建 設 ニ際

判 事 

ニ再 臨 ス ル暁 、 我 国 ヲ含 ム世 界各 国 ノ統 治 権 ヲ其 手 ニ摂 収 シ、 ﹁キ

シ テ廃 止 セラ ル ベ キ モ ノト 謂 フガ如 キ言 説 ヲ弄 シ タリ ト ノ事 実 ハ、

判事  裁判長判事 

垂

水 克

己

三 宅 正太 郎

判事 坂本英雄 ハ退職 ニ付署 名捺印 スル コト能 ハズ

付

表

別

自 至

年 度 区

理

独 教

立

左

立

翼

検挙人員 起

訴

処

起訴猶 予

不

理

付 一 治 安維 持法 違 反事 件 年 度 別 処理 人 員 表

別

処

区

宗

翼 立

左 独

教

独

計

宗

計

左 翼

別

昭和 三年 同十 八年四月 治安維持法違反事件年度別処理人員表 

犯

罪

昭 和 三 年

昭 和 四 年

昭 和 五 年

留保処分

人 起 無 嫌疑

員

処 理人 員

昭和十八年四月末日報告現在

訴

其 ノ 他

昭 和 六 年

昭 和 七 年

昭 和 八 年

昭和 九年

宗

教 計

独

教

立

左 翼

宗

独

左

教

立

翼

計

宗

左

立

翼

計

独 教

翼

宗 計

立

左

独

教

翼

宗 計 左

昭和 十 年

昭和 十 一年

昭 和 十 二年

昭和 十 三年

昭和十 四年

宗

独

教

立

立

翼

計

独 教

左

宗 計

独 教

立

左 翼

宗

独

左

教

立

翼

計

宗 計

独

教

立

左 翼

宗

計

昭和 十 五年

昭和 十 六年

昭和十 七年

四

一 月

昭和 十 八年

自 月

至

宗

独

左

教

立

翼

独

左

教

立

翼

計

宗 計

独 教

立

左 翼

宗 計

独 教

立

左 翼

宗 計

受

至

自

理

高

神

大

京

屋

松

戸

阪

都

一八 ・四 ・三 〇 

未 件数

受理

付 ス

決

一 覧 表 

禁 済

裁

拘 不請 求

事

受理 請求

検

保 護 刑執 件数 観 察中 行 中

上欄 ノ内

予 防 拘 禁 事 件

付 二  予防 拘 禁 事 件 一覧 表

〃

昭 和 一六 ・五 ・ 一五

処 分

京

庁 東 岡

別

静 野

別

長

名 古 沢

新潟

金

定

即 付 セズ 申立

時

棄却

抗

判

取下

告 付 ス

禁

所

退

昭和 一八 ・四 ・三〇報告現在

未

中

拘

確

済

所

定

自 至

年

十 二 年

一 年

受

理 訴

処

処

罰

起

付 三  右 翼関 係 犯罪 事 件 処 理状 況 一覧 表

別

昭 和 十 三 年

起

昭和十年 右翼関係 犯罪事件処理状況 一覧表  同十八年四月  区

度

昭 和 十 四 年

年

昭 和 十 五 年

十

昭 和 十 六 年

和

昭 和 十

昭

昭 和

昭 和 十 七 年 自 一月 昭和十八年 至 四月

訴 公訴棄却 其 ノ他

ノ

内 審 理 中

理

)

捜 査 中

昭和 一八 ・四 ・三〇 報 告 現 在

(

不起 訴

付 四  主 要 類似 宗 教 関 係 犯罪 事 件 処 理状 況 一覧表

最 近 ニ於 ケ ル主 要 ナ ル類 似 宗 教 関 係 犯 罪事 件 処 理 状 況 一覧 表 

検挙 人数

理

昭 和 一四 、

六 、二 一以 降

六、

理 状

訴

訴 訴

起 訴 不 起 訴 警 察 限釈 放 起 訴 不 起 訴 起 訴 不 起 訴 警察限釈放

起 不 起

況

八

一〇 五 三 九 四 五三 五二 一一

六 八

起 訴 二三八 不 起 訴 一〇 二 警察限釈放 四〇

起

起 訴 六 一 不 起 訴 一八 五 留 保 処 分 三 警察限釈放 六九 一 起 訴 一 不 起 訴 一一 起 訴 二 不 起 訴 六

処

昭和十八年 四月末日報告現在 日

昭 和 一〇 、一 一、

一二

月

検 挙 庁

二 、 一三 以 降

八

年 外 庁

昭 和 一 一、

六 、 一〇 以 降

八

挙

罪 東 卅

戸

昭 和 一 一、

九 、二 一以 降

検

治 安 維 持 法違 反 、 不敬 等

水

京 戸

昭 和 一 一、

名

団体主謀者

神宮並神詞不敬

東 神

阪

三八○

名

出 口 王仁 三 郎

敬

大

昭 和 一三 、 一 一、二 一以 降

体

竹 内 巨 磨 不

等

阪 十 庁

一四

団

皇 道 大 本教

亡矢野祐太郎

不

大 外

昭 和 一三 、 一 一、二 一以 降

一八

九 四〇

教

亡御 木 徳 一

治 安 維持法違 反 、 不敬

東 京、長 野 、 名古 屋

昭 和 一三 、 一 一、二 一以 降

一三

八 以降

神 聖 竜 神 会

大 西 愛 次郎

松 台

一以 降

東 京 外 十 三庁

京 四

扶桑教 ひと のみち教団

天

道

治安維持法違反

高 仙

昭 和 一四 、

津

天 山 田 梅次 郎

治安維持法違反

阪 治 安 維持法違 反 、 不敬

敬

根 株 天 理教

亡 石 々川 駒 吉

大

本

三 理 三 腹 元

治 安 維 持 法違 反 不 敬 三

一 一六

ヒサ ノ

明 石 順

亡勝

台

社

天 理 三輪 講 燈

自 至

年

事

人

理

件

員

調

付 五  不敬 事 件 調査 表

敬

数

受 件

昭和十 一年 不 昭和十八年 四月  区

十 二 年

十

三 年

別

十 四 年

別

昭 和

十 五 年

度

昭 和

十 六 年

一 年

昭 和

十

和

昭 和

昭

和

昭

和 十 八 年 一月 至 四 月

昭 和 十 七 年 昭 自

査

表 

数

起 件

訴 人

上

員

数

不 件

起

欄

訴 人

員

件

其

ノ

数

ノ

捜

査

人 員

中

(昭和 一八 ・四 ・三〇報告現在)

他

件 数

内

人 員

付 六  不敬 不穏 落 書年 度 別 一覧 表

別

二 年

一 年

別

不敬落書 共産 主 義 的 ノ モノ

不

其 ノ 他

書 計

(昭和 一八 ・四 ・三〇報告現在)

落

反戦反軍 的 ノ モノ

穏

自 昭和十 一年 不敬 不 穏 落書 年度 別 一覧 表  至 昭和十八年 四月  区

和 十

度

昭 和 十

年

昭

昭 和 十 三 年 昭 和 十 四 年 昭 和 十 五 年 昭 和 十 六 年

自 一月 至 四月

昭 和 十 七 年 昭 和 十 八年

自 至

年 別

昭 和

昭 和

昭 和

十

十

十

七 年

六 年

五 年

四 年

十 三 年

数

検 件

挙 人

員

数

起 件

訴 人

員

処

件

数

不

起

付 七  陸 海 軍 刑法 違 反 (造言 飛 語 ) 事 件 調査 表

別

昭和十三年 陸 、海 軍 刑 法 違 反 (造 言 飛語 ) 事 件 調 査表  昭和十八年 四月末日  区

度

昭 和 十

昭 和 十 二 年 (自 八 月 至十 二 月)

昭 和 一月 至 四月

昭和十八年 自

人 員

訴

件 数

其

ノ

理

員

件

捜

数

査

中

人

員

( 昭和十八年 四月末日報告現在)

他

人

自 至

年

昭 和

数

検 件

挙 人 員 件

起 数

員

処 訴 人

件

付 八 安 寧 秩 序 ニ対 ス ル罪 (流言 浮 説) 事 件 調 査 表

別

六 年

別

︹マ マ︺ 昭和十六年三月二十日 流言布説)事件調査表  昭和十八年四月 末 日 安寧秩序 ニ対 スル罪 (

区

度 十

昭 和 十 七 年 自 一月 昭和十八年 至 四月 備 考 ＝ 本 法 ハ 昭 和 十 六 年 三 月 二 十 日 ヨ リ 施 行 セ ラ レ タ ル モ ノ ナ リ。

不 数

起

訴 人

員

査

中

人

員

( 昭和十八年四月末日報告現在)

理

捜

件 数

別

数

検 件

挙 人

員

数

起 件

処 訴 人

員

件 数

不

起

人 員

訴

件 数

其

理

付 九  言 論 ・出 版 ・集 会 ・結 社等 臨 時取 締 法違 反 事件 調 査表

区

別

言飛語 言 論 ・出 版 ・集 会 ・結 社 等臨 時 取 締 法違 反 造 ( ) 件調査表  人 心惑乱 事

年 度

自 一月 至四月

昭 和 十 七 年 昭和 十 八年

備 考  本 法 ハ昭 和 十 六 年 十 二 月 二 十 一日 ヨ リ 施 行 セ ラ レ タ ル モ ノ ナ リ 。

ノ

件

数

捜

査

人 員

中

(昭 和 一八 ・四 ・三 〇報 告 現 在)

他

人 員

編 者 略 歴 奥 平康 弘 〈お くだいら ・やす ひろ〉1929年 北海道 に生 れ る。1953年東京大学法学部卒業。現在 東京大学社会科学 研究 所教授。著書 『表現 の自由 とはなにか』(中公新書, 1970)『治安維持法小史』(筑摩書房,1977)『 同時 代 へ の 発 言』(東京 大学 出版会,1979)『 知る権利』(岩 波 書 店, 1979)『表現 の自由』I∼ Ⅲ(有 斐閣,1983‐4)『日本人の 憲 法感覚』(筑摩書房,1985)ほ か。

現 代史 資 料45

治安維持法 奥 平康 弘 解 説

1973年8月25日 

第1刷

発行

1989年4月25日 

第6刷

発行

発 行 者 小 熊 勇 次 発 行 所 株 式 会 社 み す ず 書 房 電 話 814‐0131(営

〒113東

業)  815‐9181(本

京 都 文 京 区 本 郷3丁

目17‐15

社)  振 替 東 京0‐195132

本 文 印 刷 所 精 興 社 扉 ・ 口絵 ・函 印 刷 所 栗 田 印 刷 製 本 所 鈴 木 製 本 所

〓1973 Misuzu Shobo Printed in Japan 落丁 ・乱丁本 はお取替えいたします