解析教程 上 E.ハ
イ ラ ー/G.ヴ
● 江 幸 博 訳
Springer シュプ リンガ ー ・ジ ャパ ン
ァン ナ ー 著
Translation from the English language edition:...
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解析教程 上 E.ハ
イ ラ ー/G.ヴ
● 江 幸 博 訳
Springer シュプ リンガ ー ・ジ ャパ ン
ァン ナ ー 著
Translation from the English language edition: Analysis by Its History by Ernest Hairer, Gehard Wanner c 1996 Springer-Verlag New York, LLC. Copyright Springer is a part of Springer Science + Business Media All Rights Reserved
伝統的な無味乾燥な数学の教科書から離れて. . . (M. クライン (1972) のペーパーバック版の序文から) この理由からも,膨大な数の図を描く手間を惜しまなかった. (ブリースコルンとクネレー『平面代数曲線』ii ページ)
. . . 私の書き方が普通の教科書の書き方と特に異なっている点を再度あげて強調し ておきたい.
1. 抽象的な考察を図で説明する. 2. 差分法や補間法などの隣接分野との関係を強調して. . . 3. 歴史的な経緯を強調する. これから教師になろうとする人は,これらのことをきちんと考慮すべきである.こ のことは,私には極めて重要なことだと思われる. (F. クライン (1908)『高い立場から見た初等数学』III.3.3)
厳密な解析学入門の講義は,伝統的には(多かれ少なかれ)次のような順序で 行われています. 集合 写像
⇒
極限 連続関数
⇒ 導関数 ⇒ 積分
しかしながら,歴史的にはこれとはまったく反対の順序で,つまり アルキメデス カントール 1875 デデキント
⇐
コーシー 1821 ワイエルシュトラス
⇐
ニュートン 1665 ライプニッツ 1675
の順序で発展してきたのです.この本では 第I章
無限の解析入門
第 II 章
微積分法
⇐
ケプラー 1615 フェルマー 1638
iv
序 文
第 III 章
古典解析の基礎
第 IV 章
多変数の微積分
という章立てで歴史の順序を再現してみたいと考えました.まず第 I 章ではカル ダーノから始め,デカルト,ニュートンと進み,オイラーの有名な『無限解析入 門1 』の話をします.次いで第 II 章では, (音楽家の言う) 「古楽器2 」を使った 17,
18 世紀の微積分法を述べています.19 世紀になって,コーシー,ワイエルシュト ラス,ペアノが 1 変数や多変数関数に対して数学的に厳密なとり扱いを始めるこ とになりますが,それが第 III, IV 章の主題になっています. この本は 2 人の著者が長い期間教鞭をとってきた成果と言うべきものです.G. ヴァンナーは 1968 年に,初めてインスブルック大学で解析学の講義をしましたが, E. ハイラーはそのとき 1 年次の学生として聴講していたのです.それ以来我々は いくつかの大学で,またドイツ語やフランス語でもこの種の講義をし,沢山の本 や講義スタイルに影響を受けてきました.この本は最初ジュネーブ大学の学生の ためにフランス語でまとめられたものですが,毎年改訂・修正を繰り返し,英語 に翻訳し,また改訂をし,そして同僚であるジョン・スタイニヒの貴重な助けが あって修正をしたものです.彼は大変沢山の間違いを直してくれたので,彼がい なければどうなっていたか考えることもできないほどです. ◇番号づけ:各章はいくつかの節に分かれ,公式,定理,図,演習問題は各節で連続した 番号がついています.その際,節の番号はつけたが章の番号はつけませんでした.だから たとえば,II.6 節の 7 番目の式は (6.7) というように番号がついています.ただし,別の 章でこの式を引用するときは (II.6.7) というようにしてあります. ◇文献の引用の仕方:たとえば「オイラー (1737)」とか「(オイラー 1737)」とか書いて あったら,1737 年にオイラーが出版したテキストを引用しているということであって,そ のテキストの詳細については巻末の文献表にあげてあります.ときにはたとえば「(オイ ラー 1737,25 ページ)」のようにもっと細かく指定することがあります.オリジナルの文 献を調べてパイオニア達のエレガントで情熱に溢れているテキストを味わいたいと思う読 者の助けになればということから,このようにしました.文献表に対応する項目がない場 合には,括弧を省いたり,たとえば「(1580 年に)」という書き方をすることもあります. 1
2
[訳註]ラテン語原題:Introductio in Analysin Infinitorum. 以降本文中のラテン語の語句はす べて日本語に翻訳し,対応するラテン語を訳註で与えることにします. しかし,この Introductio は余りに頻出するので,単に『入門』とあったら,この本のタイトルで,ラテン語で書いてあるも のと思ってください. [訳註]period instrument の訳.著者はクラシック音楽にも造詣が深い.これは近年の音楽運動 を知らないと理解できない言葉です.クラシック音楽はその時代の楽器のために作られたのだから, 現代の楽器でなく,作曲された時代の楽器で演奏すべきだというのです.現在の楽器との違いや音 の高さが違うなど,著者はその蘊蓄を語ってくれました.このことを踏まえて,ここではライプニッ ツやオイラーの使った(時代の)「道具=楽器」で微積分をしようということなのです.
v ◇引用文:本書では文献から多くの引用をしています.テキストの中の引用文は普通英語 に翻訳してあり,英語でないオリジナルは付録にあげてあります3 .引用文の出典を文献表 にあげていないときには,上に引用したブリースコルンとクネレーの本のように直接本の タイトルをあげておきます. ◇謝辞:本書はジュネーヴ大学のサン・ワークステーション上でシュプリンガー・フェア ラークのニューヨーク支社のマクロを使って plain TEX で処理したものです.わが大学の 「サービス・インフォーメーション」のミスター・サンである J.M. ナエフさんが手伝ってく れたことを有り難く思っています.図は昔の本からの複製(ジュネーヴ大学図書館の J.M. メイランさんと A. ペルショウさんが写真を撮ってくれたもの)か,フォートランで計算し てポストスクリプト・ファイルの形で保存したものです.最終的にはジュネーヴ大学の心 理学部の 1200 dpi のレーザー・プリンタで印刷しました4 .また我々は,数学部の図書館 のスタッフや同僚達,とりわけ R. ブーリシュ,P. ドイフハード,Ch. ルービク,R. メル ツ,A. オスターマン,J.-Cl. ポント,J.M. サン・サーナの皆さんに貴重なコメントやヒ ントを出して下さったことに感謝します.最後になりますが最小では決してない感謝をイ ナ・リンデマン博士に捧げます.シュプリンガー・フェアラークのニューヨーク支社を代 表して,彼女は援助,適切な注意,心地よい協同作業をしてくれました.
1995 年 3 月
3
4
E. ハイラーと G. ヴァンナー
[訳註]日本語訳である本書では,すべて日本語に翻訳してあります. オリジナルの香気はオリジ ナルで味わっていただくことにして,それを手に入れることが可能なデータは残して, この付録は 割愛しました.また,著者達が伝えたい形を尊重する立場に立って,引用された英語の文章から翻 訳することにしました.引用文献がすでに日本語に翻訳されている場合もありますが, その訳文は 参考にするに止め,本書の精神に添って翻訳するようにしました. [訳註]もちろんこれは原著のことです.日本語版は,訳者が LATEX で原稿を作ったものを,シュ プリンガー・フェアラーク東京の標準の TEX マクロで作成したものです.
本書の英語版が初めて世に出たのは 1995 年のことでした.そうこうするうち, この日本語版や英語版の改訂第 2 刷のおかげで,ミスプリントや間違いがいくつ か見つかり,文章も多くの場所で改善されました.特に,3 次方程式のタルター リアの解にもっと幾何的な(元のものにより近い)解説を与え,包絡線の扱いを 改良し,多重積分の変換公式のより完全な証明を与えました.私たちは,間違い を見つけ,可能な改良をして助けてくれた多くの学生や同僚,特に R.B. バーケル と J.-L. ガウディンに感謝します. もちろん, 江幸博教授に,この本の素敵な翻訳と,また更に間違いを見つけ たり,演習問題とその解答について多くの注意をしてくださったことに,特別な 感謝をするものです. この日本語版は 1998 年,つまりオイラーの『入門』の出版からちょうど 250 年 という素晴らしい年に,出版されるだろうと聞かされていました.この翻訳が少 し早く仕上がるようなら,本書は 1997 年のうちにも出版されるでしょう.ラグラ ンジュの『解析関数論』の出版の 200 周年を祝って.
1997 年 7 月
E. ハイラーと G. ヴァンナー
目次
第 I章 無限の解析 入門 1 デ カ ル ト座 標 と 多 項 式 関 数
1 2
1.1 代 数 学 2 1.2 『 新 し き代 数 』 7 1.3 デ カ ル トの 幾何 学 9 1.4 多 項 式 関 数 13 1.5 演 習 問題 18
2 指 数 と 二 項 定 理
20
2.1 二 項 定 理 22 2.2 指 数 関 数 30 2.3 演 習 問題 32
3 対 数 と 面 積
35
3.1 対 数 の 計 算 37 3.2 面 積 の 計 算 40 3.3 双 曲 線 の 面 積 と 自然 対 数 42 3.4 演 習 問題 46
4 三 角 関 数
47
4.1 基 本 関係 式 と結 果 50 4.2 級 数展 開 54 4.3 逆 三 角 関 数 58 4.4 πの 計 算 62 4.5 演 習 問題 65
5 複 素 数 と 関 数 5.1 オ イ ラ ー の 公 式 とそ れ か ら得 ら れ る もの 69 5.2 三 角 関数 の 新 しい 見 方 72 5.3 サ イ ン 関数 の オ イ ラ ー積 74 5.4 演 習 問題 78
67
6 連 分 数
79
6.1 起 源 80 6.2 近 似 分 数 83 6.3 無 理 性 88 6.4 演 習 問 題 91
第 Ⅱ 章 微積分法 1 導 関 数
95 97
1.1 導 関数 98 1.2 微 分 の 規則 101 1.3 パ ラ メ ー タ表 示 と陰 関数 105 1.4 演 習 問題 107
2 高 階 導 関 数 と テ イ ラ ー 級 数
108
2.1 2階 導 関数 109 2.2 関数 の 級 数 へ の 変 換 に つ い て 113 2.3 演 習 問 題 116 3 包 絡 線 と曲 率
117
3.1 円 の 焦 線 117 3.2 弾 道 曲 線 の 包 絡線 119 3.3 直 線 族 の 包 絡 線 120 3.4 曲 率 121 3.5 演 習 問 題 125
4 積 分 法
128
4.1 原 始 関 数 128 4.2 応 用 131 4.3 積分 の 技法 134 4.4 剰余 項 の あ る テイ ラー の 公 式 139 4.5 演 習 問題 140
5 初 等 的 積 分 を もつ 関 数 5.1 有 理 関 数 の 積 分 141 5.2 有 効 な 変 数 変 換 147 5.3 演 習 問 題 149
141
6 積 分 の 近 似 計 算
150
6.1 級 数展 開 151 6.2 数値 計 算 法 153 6.3 漸 近展 開 156 6.4 演 習 問 題 158
7 常 微 分 方 程 式
159
7.1 い くつ か の 積 分 可 能 な 方 程 式 166 7.2 2階 微 分 方程 式 168 7.3 演 習 問題 170
8 線 形 微 分 方 程 式
172
8.1 定 数係 数 の 斉 次 方 程 式 173 8.2 非 斉次 線形 方 程 式 177 8.3 コ ー シ ー の 方 程 式 181 8.4 演 習 問題 182 9 微 分 方 程 式 の 数 値 解
183
9.1 オ イ ラ ー法 184 9.2 テ イ ラ ー 級 数 法 186 9.3 2階 の 方程 式 187 9.4 演 習 問題 188
10 オ イ ラ ー ‐マ ク ロ ー リ ン の 和 公 式
190
10.1 公 式 の オ イ ラ ー の 導 き方 190 10.2 『 マ ク ロー リン の和 公 式 を正 当 に使 う こ と につ い て 』 193 10.3 ス タ ー リ ング の 公 式 197 10.4 調 和 級 数 とオ イ ラー 定 数 199 10.5 演 習 問題 200
演 習 問 題 解 答
202
参 考 文 献
243
記 号 一 覧
253
人 名 索 引
256
事 項 索 引
264
下 巻 の 内容
第 Ⅲ 章 古 典 解 析 の 基 礎 1 無 限 数 列 と実 数 数列の収束/実 数の構成/単 調列と最小上界/集 積点/演 習問題 2 無 限 級 数 収束 の判定条件/絶 対収束/2重 級数/2つ の級数のコー シー積/無 限級数 と極限の交換/演 習問題 3 実 関 数 と連 続 性 連続関数/中 間値の定理/最 大値の定理/単 調関数と逆関数/関 数の極限/演 習問題 4 一様 収 束 と一 様 連 続 関数列の極限/一 様収束に対するワイエルシュトラスの判定条件/一 様連続性/演 習問題 5 リー マ ン積 分 積分可能性の定義 と判定条件/積 分可能関数/不 等式と平均値 の定理/無 限級数の積分/演 習問題 6 微 分 可 能 な関 数 微積分学の基本定理/ド ・ロピタルの定理/無 限級数の導関数/演 習問題 7 ベ キ 級 数 とテ イ ラ ー級 数 収束半径の決定/連 続性/微 分と積分/テ イラー級数/演 習問題 8 広 義 積 分 無限区間の有界関数/有 限区間の非有界関数/オ イラーのガンマ関数/演 習問題 9 連 続 関 数 の2つ の 定 理 連続だが,どこでも微分できない関数/ワ イエルシュトラスの近似定理/演 習問題 第
Ⅳ 章 多 変 数 の 微 積 分
1 n次 元 空 間 の 位 相 距離とノルム/ベ ク トル列の収束/近 傍,開集合,閉集合/コ ンパク ト集合/演 習問題 2 連 続 関 数 連続関数 とコンパク ト性/一 様連続と一様収束/線 形写像/連 続関数の八ウス ドルフの特徴づけ/ パラメータつきの積分/演 習問題 3 多 変 数 の 微 分 可 能 な関 数 微分可能性/反 例/勾 配の幾何的な説明/平 均値の定理/陰 関数の定理/パ ラメータに関する積分 の微分/演 習問題 4 高 階 の 導 関 数 とテ イ ラ ー級 数 2変 数のテイラー級数/n変 数のテイラー級数/最 大値・ 最小値問題/条 件つきの最小値(ラグラン ジュの乗数)/演 習問題 5 多 重 積 分 長方形上の2重 積分/零 集合と不連続関数/任 意の有界領域/2重 積分の変換公式/有 界でない領域 での積分/演 習問題 演習問題解答/参 考 文献/記 号一 覧/訳 者 あとが き/人 名索 引/事 項索引
I
我々の数学の学生達には,現代的な教科書を使うよりもオイラー (1748) の『無 限解析入門1 』を学ぶ方がはるかに役に立つでしょう. (アンドレ・ヴェイユ (1979) の言葉,ブラントン (1988), p.xii に引用)
. . . 他の生徒達には多くの課題を与えたが,並みはずれた生徒(ヤコビ)にはオイ ラーの『入門』だけに集中させた.彼の師は賢明だったのです.. . . (ディリクレのヤコビ記念講演 (1852), 『ヤコビ全集』1 巻,p.4)
本章では初等関数の起源とその計算に対するデカルトの『幾何学』(1637) の影 響を説明します.補間多項式はニュートンの二項定理を導き,さらには指数関数, 対数関数,三角関数の級数展開を導きました.複素数,無限積,連分数の議論を してこの章を終えます.書き方はこれらのテーマの歴史的発展に従い,数学的厳 密さは当時のものとします.厳密でない結論を正当化したいというのが,第 III 章 で収束を厳密に取り扱う動機の 1 つなのです. 本章の大部分は,タイトルと同様,オイラーの『無限解析入門』(1748) から影 響を受けています.
1
[訳註]ラテン語原題:Introductio in Analysin Infinitorum
2
第 I 章 無限の解析入門
I.1 デカルト座標と多項式関数 代数学と幾何学が別々のものであった間は,その進歩は遅く,応用するにも制限 がありました.しかし一旦この 2 つの学問が融合されるや,互いを支えあい,完 成に向かって急速に発展し始めたのです.代数学を幾何学に応用するようになっ たのはデカルトのおかげで,このことは数学の全分野での偉大な発見の鍵になっ ています.
(ラグランジュ(1795)『全集』第 7 巻,p.271)
ギリシャ文明は,数学の才能の最初の大きな開花期を創り出しました.ユーク リッドの時代(∼ 紀元前 300 年)から,アレキサンドリアは学問における世界の 中心になりましたが,この都市が 3 度にわたって(紀元前 37 年にローマ人により,
392 年にはキリスト教徒により,そして最後に 640 年にイスラム教徒によって) 侵略を受けたことで,この文明は没落していきます.アラビア語での著述の進歩 (コーランのための必要から)によって,アラブの著述家たちはギリシャ人の業績 の残存していた断片(ユークリッド,アリストテレス,プラトン,アルキメデス, アポロニウス,プトレマイオス)を競って翻訳したのです.インドの算術家のもの も翻訳し,数学の新しい研究を始めました.十字軍の時代(1100 年–1300 年)に なって,ヨーロッパ人はこの文明を発見することになります.クレモナのヘラル ド (1114–1187),チェスターのロバート(12 世紀),ピサのレオナルド(フィボ ナッチ)(1200 年頃),レギオモンタヌス(1460 年頃)が主な翻訳者であり,そ して西ヨーロッパの最初の科学者だったのです. 当時,数学ははっきりと 2 つに分かれていました.その一方が代数学で,もう 一方が幾何学でした.
I.1.1 代数学 ディオファントスが代数学を発明したのだと考えることができ,. . . (ラグランジュ(1795)『全集』第 7 巻,p.219)
代数学は古代ギリシャとオリエントの遺産です.モハンマド・ベン・ムサ・アル・ フワーリズミ (Mohammed ben Musa Al-Khowˆ arizmˆı) の有名な『アル・ジャブ ルの書 (Al-jabr w’al muqˆ abala)2 』(830 年)は 2 次方程式の解法を扱うことから 2
[原註]algebra(代数学)と algorithm(アルゴリズム)という言葉はそれぞれ Al-jabr と AlKhowˆ arizmˆı に由来している. [訳註] Al-jabr w’al muqˆ abala はもちろんアラビア語で, al は冠詞, jabr は方程式の移項, muqˆ abala は式の両辺から同じものを消去することを表わすようである.意味をとって訳せば, 『移 項と消去』ということになるが,代数的演算の定式化が不完全な時期の書なのでかえって誤解を生 む. 『アルジャブルとアルムカバラ』とするのがよいかも知れない.しかし,本書のラテン語,ヨー ロッパ諸国語への抄訳・翻訳の長く複雑な歴史の中で,アルジャブルの音だけが記憶に残り,代数 学へと結晶していくことを思うとき, 『アル・ジャブルの書』という音訳が適当であろう.
I.1. デカルト座標と多項式関数
3
始まっています.知られている最古の写本は 1342 年のもので,それは次のように 始まっています3.
アル・フワーリズミの例 2 次方程式
(1.1)
x2 + 10x = 39
を考えます.このような等式には,アラビア語で dshidr(根)と呼ばれる未知の 解 x が隠されていると考えます.根という言葉はもともと,与えられた面積をも つ正方形の 1 辺を意味していました(根とはそれ自身と掛けられるべき量のこと です(F. ローゼン (1831), p.6)). 解法 アル・フワーリズミのスケッチでは,1 辺 x の正方形は x2 を表しており, 辺が 5 と x の 2 つの長方形は 10x を表しています(図 1.1 参照).方程式 (1.1) は図 1.1 の影のついている部分の面積が 39 であることを意味しています.した がって,正方形全体の面積は 39 + 25 = 64 = 8 · 8 であり,それゆえ,5 + x = 8, つまり x = 3 となります. (アル・フワーリズミの)2 つ目の例
(1.2)
x2 + 21 = 10x
(またはチェスターのロバートのラテン語訳の方がよければ, 「真の実質と 21 ドラ クマが 10 のものと同じになる4」)では,符号が変わったので図も変えて説明す ることになります.その解を得るために x2 に対応する正方形を描き,面積は 21 で縦は x だが横の長さのわからない長方形をくっつけます(図 1.2 参照).(1.2) 3 4
[原註]この絵は図 1.1, 1.2 と同様,オックスフォード大学ボドリアン図書館の許可を得て転載. ハンチントン写本 214,2 つ折りページ 1R, 4R, 4V.英訳は F. ローゼン (1831). [訳註]ラテン語原文:Substancia vero et 21 dragmata 10 rebus equiparantur ドラクマとはギリシャの通貨の単位で, 1 ドラクマは銀貨であった.
4
第 I 章 無限の解析入門
1342 年手稿
5x
x2
25
5x
現代の描き方 2
図 1.1 x + 10x = 39 の解法
B
2
4
5 x
A
21
x2
10
1342 年手稿
現代の描き方 2
図 1.2 x + 21 = 10x の解法
式から横全体の長さが 10 であることがわかります.これを半分に分割して,正 方形 x2 と分割線の間の小さな長方形 (A) を上に載せると (B),この図形の高さ は 5 になります.灰色の部分の面積は 21 で, (灰色と黒で)作った正方形の面積 は 5 · 5 = 25 です.したがって,小さな黒い正方形の面積は 25 − 21 = 4 = 2 · 2 であり,x = 3 が得られます.アル・フワーリズミは同様の図を描いて,もう 1 つの解 x = 7 を出しています(トライして下さい5 ). モハンマド・ベン・ムサ・アル・フワーリズミはこの解法を次のように述べて います(F. ローゼン (1831), p.11). . . . たとえば, 「正方形と数 21 の和が同じ正方形の根の 10 倍に等しい」.これはす なわち,ある平方量で,21 ディルハムをつけ加えるとその平方量の根の 10 倍に等し くなるようなものは何でなければならないか,ということである. 解法 根の数を半分にすると 5 になる.これをそれ自身と掛けると 25 になる.こ 5
[訳註]ヒント:解法の本質は,代数式で解く場合と同じで,完全平方を作ること,つまり,この 場合は x の係数である 10 の半分の 5 を一辺の長さとする正方形を作ることです.作れる場所は いくつもありませんが,その場所ごとに雰囲気の違った,しかし本質的には同じ解法が得られるで しょう.
I.1. デカルト座標と多項式関数
5
れから平方と結びついた 21 を引くと,残りは 4 である.その根を求めると 2 である. これをもとの根から引き去ると残りは 3 である.これが求めていた平方の根であり, 平方は 9 である.根の数に新しい根を加えてもよく,和は 7 になりこれも求めていた 平方の根であり,平方自身は 49 になる.
この応用として,アル・フワーリズミは次のパズルを解いて見せています. 「2 つの数の和と積を知っている.これらの数を求めよ. 」 たとえば
(1.3)
x + y = 10,
x · y = 21
とすれば,x · (10 − x) = 21 が得られ,これは (1.2) と同値です.それゆえ,解 は方程式 (1.2) の 2 つの根,x = 3, y = 7 で与えられるし,逆も言えるのです.
3 次方程式の解 タルターリアは解法をなまりのあるイタリア語の詩の形で示した. . . (ラグランジュ(1795)『全集』第 7 巻,p.22)
. . . 私は一般的な規則を発見したが,しばらくの間ある理由で秘密にしておきた (タルターリア (1530),M. カントール『講義』第 2 巻 (1891), p.485)
い.
たとえば,方程式
(1.4)
x3 + 6x = 20
を解くことにしましょう. 「なまった」イタリア語の詩は, 「物がその立方と合わさっ て,ある離散な数になるときに,. . . 」(M. カントール (1891) 第 2 巻,p.488 参 照)と始まっています. ニッコロ・タルターリア (1499–1557) とシピオーネ・ダル・フェロ (1465–1526) は問題の解法を独自に発見していたのですが,競技に勝つために秘密にしていま した.強要もされたし嘘の約束にもだまされて,タルターリアはジェロラモ・カ ルダーノ (1501–1576) に, 「導き方も述べずに6」,詩の形に隠してではあったの ですが,その方法を漏らしてしまいました.カルダーノは「大変難しかったけれ ども7 」その導き方を再構成して,自著『アルス・マグナ』(1545) の中で公表して しまいました(ディ・パスクァル (1957) とストルイク (1969), pp.63–67 参照). 6 7
[訳註]ラテン語原文:suppressa demonstratione [訳註]ラテン語原文:quod difficillimum fuit
6
第 I 章 無限の解析入門
x
x
u v
x
x
u v v v v
v v 図 1.3a 3 次方程式 (1.4) 図 1.3b (1.6) の意味づけ
導き方 x3 を一辺の長さ x の立方体で表し(こうするしかない,ですよね? 図 1.3a の灰色の部分),6x の項は体積が x2 v と xv 2 のそれぞれ 3 つの直正方形 柱(図 1.3a の白色の部分)の形でくっつけます.得られた体積 20 の立体((1.4) 式による)は,体積 u3 の立方体と体積 v 3 の立方体の食い違い分です(図 1.3a 参照).つまり,
(1.5)
u=x+v
とおいたとき,
u3 − v 3 = 20 となっています.図 1.3a の 6 つの四角柱を図 1.3b のように積み上げて,その体 積が 6x であるとすれば(これが求められていること),
(1.6)
3uvx = 6x すなわち uv = 2
ということになります. こうして u3 と −v 3 の和 (= 20) と積 (= −8) とがわかったのですから,アル・ フワーリズミのパズル (1.3) のようにこの 2 つの数を得ることができて,
u3 = 10 +
(1.7)
√
108,
−v 3 = 10 −
√
108
となります.これから 3 乗根をとって,x = u − v を使えば(図 1.3b 参照),
(1.8)
x=
3 √
108 + 10 −
3 √ 108 − 10
が得られます8 . 8
[訳註]x =
p p √ √ √ √ 3 3 6 3 + 10 − 6 3 − 10 = ( 3 + 1) − ( 3 − 1) = 2.
I.1. デカルト座標と多項式関数
7
図 1.3c カルダーノのアルス・マグナ (1545),バジリア編 (1570) から抜粋9
数年して,4 次の方程式を解く方法も発見されました(ルドヴィコ・フェラー リ.ストルイク (1969), p.69 および演習問題 1.1 と 1.2 参照).5 次の方程式につ いては何世紀もの間謎のままでしたが,1826 年にアーベルによって,根号を使っ ての解法が不可能であることが証明されました.
I.1.2 『新しき代数 10 』 数計算術は数を使って表して扱うものだが,このすばらしい計算術ではモノの種 類とか形,たとえばアルファベットの文字を使うものである. (ヴィエート『新しき代数』(1600) のフランス語版 (1630)) 代数学はこの目的のために考案された符号や記号を使う一般的な計算の方法であ り,便利なものであることが認められてきたものである. (マクローリン『代数論』(1748), p.1)
古代のテキストでは特定の(値の)例だけを扱っており,数だけを使った「算 術的な」計算だけをしていました.フランソア・ヴィエート(=フランシスクス・ 9
10
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]左側は右の式 (?) を言葉で説明しているだけだから,右の式の説明をして,左側の逐語訳 は省略する.第 1 行は方程式 x3 + 6x = 20 を表わしている.cub9 は cubus の略で,立方,つま り 3 乗を表わしている. p:は plus,つまり足すことを意味している. reb9 は rebus で, 「もの」と いう感じの言葉,この時代,方程式の未知数を表わすのに用いていた. e¯ qlis は等しいということ, つまり,等号.代数記号が確立する前の大変さを味わって下さい. 6 の下の 2 は 6 を 3 で割ったもので,その 3 乗の 8 がその下に書いてある.右の 20 は 2 次方 2 程式の 1 次の係数になるので,半分の 10 にして,アル・フワーリズミのトリックで, √ 10 と 8 を 加えた 108 の平方根を使って,2 次方程式の解が次の 2 行に書いてある.Rτ は根号 を意味し ている.p:はプラスで, m:はマイナスである. p:の前は誤植か欠落かで, 108(左の文章ではそう √ なっている).最後の 2 行が解で, (1.8) 式そのものである. Rτ v:cu. は 3 乗根 3 を意味して いる.1 番最後の活字 0 が右下にこぼれているのがおかしい. [訳註]ラテン語原題:Algebra Nova
8
第 I 章 無限の解析入門
ヴィエタ,1540–1603)は(『解析的技法入門』(1591) と『新しき代数 10 』(1600) において), (しばしば幾何の)問題の未知の量を A, B, C, X, . . . などの文字で書 き,これらの文字を使って代数的な計算をするという基本的なアイデアを持って いました(図 1.4a 参照).ギリシャ時代の問題はどれも 文字をおく 幾何の問題
?
-
計算 代数の問題
?
-
解答
という方法に抵抗できそうになかったので,ヴィエートは大文字で「どんな問題 にも解を与える11 」と書いています.このアイデアを突き詰めていくことで,デ カルトの『幾何学』が生まれたのです.
図 1.4a ヴィエート (1600) のフランス語版 (1630) から抜粋12
例(角の 3 等分) 古典的に有名な「与えられた角を 3 つの等しい部分に分割せよ13」という問題は,
(1.9)
sin(3α) = 3 sin α cos2 α − sin3 α
(後出の (4.14) 参照)という公式と簡単な計算をするこ とにより,代数方程式
(1.10)
B X
−4X 3 + 3X = B
を解くことに変換されます(ヴィエート『全集』(1593), p.290).この解は次の 項にある公式 (1.15) で求められます. 11 12
13
[訳註]ラテン語原文:NVLLVM NON PROBLEMA SOLVERE [原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]図の中の文章部分は少し古いフランス語で書かれている. 「 例 A + D に B + 2D を加えるなら, A + B + 3D となりて,述べたるが如くなるを観るべし. 」 [訳註]ラテン語原文:Datum angulum in tres partes æquales secare
I.1. デカルト座標と多項式関数
9
2 次方程式の解の公式 アル・フワーリズミの込み入った説明が,ヴィエートの 記号を使えば,
(1.11)
x2 + ax + b = 0 =⇒ x1 , x2 = −a/2 ±
a2 /4 − b
という「公式」になります.
3 次方程式の解の公式 (1.12)
y 3 + ay 2 + by + c = 0
y+a/3=x
=⇒
x3 + px + q = 0
ですから,x = u + v と置くと(これは (1.5) 式で “v” を “−v” に代えたことに あたる),方程式 (1.12) は
u3 + v 3 + (3uv + p)(u + v) + q = 0
(1.13)
となります.uv = −p/3 と置けば((1.6) 式に対応している),
u3 + v 3 = −q,
(1.14)
u3 v 3 = −p3 /27
が得られます.アル・フワーリズミのパズル (1.3) と式 (1.11) とから,
(1.15)
x=
3 3 −q/2 + q 2 /4 + p3 /27 + −q/2 − q 2 /4 + p3 /27
が得られます(図 1.4b 参照).
I.1.3 デカルトの幾何学 ここでよく見てとっていただきたいのだが,古の著述家たちが幾何で算術的な用 語を使わないようにしていたためらいが,彼らの説明に多くの曖昧さや混乱を引 き起こしたということである.それはこの 2 つの学問の関係を明確に理解できな かったことの結果だということでしかないのかも知れないが. (デカルト『方法序説』1637)
古代ギリシャの巨大な遺産である幾何学がヨーロッパにもたらされたのは,ア ラビア語に翻訳されていたおかげです. たとえばユークリッドの『原論』 (紀元前 300 年頃)には 13 の「章」からなり, 「定義」と「公準」があり,全部で 465 もの厳密に証明のついた「命題」があり ます. アポロニウスの『円錐曲線論』 (紀元前 200 年)も同様に重要です. しかしながら,これらの科学者達の努力にもかかわらず解決されないままの多 くの問題もありました.角の三等分問題や円積問題がありますし, (紀元 350 年に
10
第 I 章 無限の解析入門
図 1.4b ヴィエート (1591a)(『数学全集』p.129 と p.150)から抜粋.A2 + 2BA = Z と A3 − 3BA = 2Z の解法14
述べられた)パッポスの問題はデカルトの研究のきっかけになったものです. パッポスの問題 (「ユークリッドが考え始めアポロニウスも解こうとしたが誰も 解決できなかった問題がこれです. 」) 3 つの直線 a, b, c と 3 つの角 α, β, γ が 与えられたとします.任意に選んだ点 C に対して,点 B, D, F をそれぞれ直線 a, b, c 上の点で,CB, CD, CF と a, b, c が角 α, β, γ をなすものとします(図 1.5a, 1.5b 参照).そのとき
CB · CD = (CF )2
(1.16)
を満たす点 C の軌跡を求めたいというものです. デカルトはこの問題をヴィエートの「新しく」高名な代数学を用いて解いたので す.点 C は AB, BC の長さで決まります.この 2 つの「未知の値」を文字 “x” 14
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載.ここで未知の変数は A である.未知数に x, y, z を使うようになったのはデカルトからである. [訳註]記号を整備中のヴィエートのもどかしさが伝わるように以下に訳してみたが,その訳文が またもどかしいものになってしまった. 「もし A 平方 +B・ (A の 2 倍)が Z 面に等しいとする.A + B を E とする.かくて,E 平方 は Z 面 +B 平方 に等しくなる. 結論
√
かくして, Z 面 + B 平方 − B は A となる.これが最初,問題としていたものである. A 立方 − B 面・ (A の 3 倍)が, 2 倍に等しかったとする. かくして,もし p Z 体の√ p √ C.Z 体 + Z 体・体 − B 面・面・面 + C.Z 体 − Z 体・体 − B 面・面・面 は A と なる.これが,問題としていたものである. 」 「平方,立方」は問題ないと思うが, 「面,体」はそれぞれ 2 次元,3 次元の量であることを示す 「単位」のようなものと思ったら近いかもしれない.等しいことの意味は量としてしか理解されず (長さと面積は等しくなり得ず,体積とも等しくならない),加減は等質の量の間でのみ可能で,積 をとると違う次元の量になる,と理解されていた.アル・フワーリズミやカルダーノの解法には, 2 次方程式は面積で, 3 次方程式は体積としてしか理解できなかったための苦心があり,その反映が ここにある.単位を忘れ,数の世界でだけ方程式を解くことの思想的凄じさが, 2 次方程式の解の √ 公式を習っている中学生に伝っているのだろうか ? もちろん C. の C. は Cubic(立方)を意味 しており,3 乗根の意味.
I.1. デカルト座標と多項式関数
11
図 1.5a デカルトのスケッチによるパッポスの問題15
図 1.5b パッポスの問題
と “y” で表します(「点 A, B の間にある線分 AB の長さに x という名をつけ, 線分 BC には y とつけるのです16 」). とりあえず(「すべての線分を扱って混乱することのないように17」)この 2 つ の線分だけを考えます(図 1.5c 参照).点 C を通って EF の平行線を引くと, すべての角が与えられているので,
15 16 17
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]フランス語原文:Que le segment de la ligne AB, qui est entre les points A & B, soit nomm´e x. & que BC soit nomm´e y [訳註]フランス語原文:& pour me demesler de la c˜ ofusion de toutes ces lignes . . .
12
第 I 章 無限の解析入門
図 1.5c 直線の方程式
u = K1 · CF,
v = K2 · y
を満たす定数 K1 , K2 が存在します.AE = x + u + v = K3 だから
(1.17)
CF = d + x + ky,
d, , k はある定数
という形になります.同様に
(1.18)
CD = mx + ny,
m, n はある定数
となります(「こうしてわかるように,. . . このような線分の長さ . . . はいつも 3 つの項で表され ,その 1 つは未知量 y にある既知の量を掛けるか割るかしたもの で,もう 1 つは未知量 x にある他の既知の量を掛けるか割るかしたものであり,
3 番目のものは既知の量である.与えられた直線が平行になる場合は例外である. 」 デカルト『幾何学』(1637) の D.E. スミスと M.L. ラタンによる英訳 (1925) では p.31218 ). こうして条件 (1.16) は y · (mx + ny) = (d + x + ky)2 となり,
(1.19)
Ax2 + Bxy + Cy 2 + Dx + Ey + F = 0
の形の方程式になります.任意の値 y に対して (1.19) は x の 2 次方程式になり, 代数によって解かれます((1.11) 参照).座標変換すれば,(1.19) はいつでも円 錐曲線を表わします.
18
[訳註]原亨吉の和訳(『デカルト著作集 1』白水社,所収)では p.13.
I.1. デカルト座標と多項式関数
13
I.1.4 多項式関数 代数が幾何を解く助けになるばかりでなく,幾何も代数を解く助けになります. デカルト座標が代数に新しい光を投げかけるのです.実際,もし (1.1) や (1.4) を 考える代わりに
(1.20)
y = x2 + 10x − 39 や
y = x3 + 6x − 20
を考え,x に任意の値を与えたとすれば,各 x の値に対して y の値を計算する ことができ,こうして得られた曲線を調べることができます(図 1.6).(1.1) や
(1.4) の根はこれらの曲線と x 軸(水平軸)との交点として現れてきます.たとえ ば (1.4) の解は単に x = 2 であることがわかります((1.8) 式と見比べてみよう). 定義 (1.1) 任意の定数 a0 , a1 , . . . , an に対して
y = an xn + an−1 xn−1 + · · · + a0 と表わされるものを多項式と言い,an = 0 のとき,多項式は n 次であると言う. 補間問題 n + 1 個の点 (xi , yi ) が与えられたとき(図 1.7 参照),これらすべ ての点を通る n 次多項式を求めます.主に興味があるのは,xi 相互の間隔が同 じ場合,たとえば
x0 = 0,
x1 = 1,
x2 = 2,
x3 = 3, . . .
のような場合です.この問題を解くことは」対数の計算や海洋航海に大変役に立 つことで,17 世紀の始めにブリッグスとトーマス・ハリオット卿によって問題と されました(ゴールドシュタイン (1977), p.23 参照).ニュートン (1676) はこの
図 1.6 多項式 x2 + 10x − 39 と x3 + 6x − 20
14
第 I 章 無限の解析入門
図 1.7 補間多項式
問題にヴィエートの『新しき代数』の精神でとり組んでいます(図 1.8 参照).問 題としている多項式の未知の係数を文字で書く,つまり,
y = A + Bx + Cx2 + Dx3
(1.21)
と書きます.y0 , y1 , y2 , y3 の値が与えられていれば, 「問題」は次のように「代数 方程式」に変えられます. 横座標
縦座標
x=0 x=1
A A+B+C +D
= y0 = y1
横座標
縦座標
x=2 x=3
A + 2B + 4C + 8D A + 3B + 9C + 27D
= y2 = y3
ここで,2 番目から 1 番目を,3 番目から 2 番目を,4 番目から 3 番目をというよ うに式を引けば,
B + C + D = y1 − y0 =: Δy0 (1.22)
B + 3C + 7D = y2 − y1 =: Δy1 B + 5C + 19D = y3 − y2 =: Δy2
となって A がなくなることに注意して下さい.ここでまた同様に式を引けば,B がなくなって
(1.23) 2C + 6D = Δy1 − Δy0 =: Δ2 y0 ,
2C + 12D = Δy2 − Δy1 =: Δ2 y1
となり,同様に C もなくなって,
(1.24)
6D = Δ2 y1 − Δ2 y0 =: Δ3 y0
I.1. デカルト座標と多項式関数
15
図 1.8 ニュートンによる補間問題 (ニュートン『微分の方法』1676)19
となり,これで D が得られます.(1.23) の第 1 式から C が,(1.22) の第 1 式か ら B が得られます.こうして得られた解
(1.25)
y = y0 + Δy0 · x +
Δ2 y0 Δ3 y0 · (x2 − x) + · (x3 − 3x2 + 2x) 2 6
は
(1.25 )
y = y0 +
x x(x − 1) 2 x(x − 1)(x − 2) 3 Δy0 + Δ y0 + Δ y0 1 1·2 1·2·3
と書き直すこともできます. 次の小節で,パスカルの三角形を用いて,この式が任意の次数の多項式に対す る一般的な公式の特殊な場合であることを示すことになります. 定理 (1.2) 値として
y( , y( , . . . , yn(x = n のとき) 0 x = 0 のとき) 1 x = 1 のとき) をとる n 次多項式は次の公式で与えられる.
x x(x − 1) 2 x(x − 1) · · · (x − n + 1) n Δy0 + Δ y0 + · · · + Δ y0 1 1·2 1 ·2 · ···· n x x−1 x−n+1 n 2 Δy0 + Δ y0 + · · · + Δ y0 · · · . = y0 + 1 2 n
y = y0 +
19
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載.
16
第 I 章 無限の解析入門
注意 (1.3) ニュートン以来(図 1.9 参照),差分を
y0
ここで
Δy0
y1 (1.26)
Δy1
y2
Δy2
y3
Δy3
y4
Δ2 y0 Δ2 y1 Δ2 y2
Δ3 y0 Δ3 y1
Δyi = yi+1 − yi Δ4 y0
Δ2 yi = Δyi+1 − Δyi Δ3 yi = Δ2 yi+1 − Δ2 yi など
のような仕方で並べる習慣になっています.(図 1.7 の)問題の値で計算すると
4 1 5
−3
2
3 (1.27)
5
−3
2
−4 6 −6
10 −12
−22
43
21
9
3
0 2 となり,求める多項式は次のものになります.
4 10 1 ·x− · x(x − 1) + · x(x − 1)(x − 2) 1 2·1 3·2·1 22 − · x(x − 1)(x − 2)(x − 3) 4·3·2·1 43 + · x(x − 1)(x − 2)(x − 3)(x − 4). 5·4·3·2·1
y =4 + (1.28)
他の例 a) 解として,わかっている多項式 y = x3 の場合を考えると,差分のス キームは次のようになります.
x=0:
0
x=1:
1
1 6 6 =⇒
7 x=2:
8
x=3:
27
x(x − 1) 2 x(x − 1)(x − 2) +6 · 6 2 = x + 3x − 3x + x3 − 3x2 + 2x
y = 0+1·x+6·
12 19
= x3
b) x = n での値が 13 + 23 + · · · + n3 ,つまり
I.1. デカルト座標と多項式関数
図 1.9 ニュートンの差分スキーム (ニュートン『微分の方法』1676)20
x=0:
0
x=1:
13 13 + 23
x=2:
13 + 23 + 33
x=3:
13 + 23 + 33 + 43
x=4:
1 7
23
12 19
33
6 18
37
43
0 6
24
0 0
の場合は,
y =x+7 =
x(x − 1)(x − 2) x(x − 1)(x − 2)(x − 3) x(x − 1) + 12 +6 2 6 24
x3 x2 x4 + + 4 2 4
という公式が得られ,同様にして,以下の公式が得られます.
n2 2 n3 1 2 + 2 2 + · · · + n2 = 3 n4 1 3 + 2 3 + · · · + n3 = 4 5 n 1 4 + 2 4 + · · · + n4 = 5 1 + 2 + ... + n =
(1.29)
1 5 + 2 5 + · · · + n5 = 20
n 2 n2 n + + 2 6 3 n n2 + + +0 2 4 n4 n3 n + + +0− 2 3 30 +
n5 5n4 n2 n6 + + +0− . 6 2 12 12
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載.
17
18
第 I 章 無限の解析入門
ルネ・デカルト (1596–1650)21 アイザック・ニュートン (1642–1727)21
ヤーコプ・ベルヌーイ (1705) は一般的な公式
1 q + 2 q + · · · + nq = +
nq q nq+1 q(q − 1)(q − 2) + + Anq−1 + Bnq−3 + q+1 2 2 2·3·4 q(q − 1)(q − 2)(q − 3)(q − 4) Cnq−5 + · · · 2·3·4·5·6
を見出しました22 .ここで,係数に現れる
(1.30) 1 1 1 5 691 7 1 , G= , . . . A= , B =− , C = , D =− , E = , F =− 6 30 42 30 66 2730 6 はベルヌーイ数と呼ばれています.
I.1.5 演習問題 1.1 ヴィエートの記号で書くと, x + y + z = 20,
x : y = y : z,
xy = 8
となる問題を,ツアンネ・デ・トニニ・ダ・コイはタルターリアに, 1536 年 12 月 15 日 に出しましたが,タルターリアには解くことができませんでした(ノタリ (1924) 参照). 変数 x と z を消去して,なぜ解けなかったのかを考えなさい. カルダーノは後にこの問題をフェラーリに手渡し,フェラーリは解を見出しました(次 21 22
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]右辺の項は無限に続くように見えるかも知れないが, n の指数が正の範囲しか考えてはい ない.左辺が n に関して q + 1 次の多項式であることは q に関する帰納法で容易に確かめられる. またそう考えたとき,n = 0 では 0 なので,定数項はない.後に II.10 節でベルヌーイ数を厳密に 定義するが,そうすれば右辺をきちんとした式で書くこともできるようになる.
I.1. デカルト座標と多項式関数
19
ヤーコプ・ベルヌーイ『推測術』(1705)23
の演習問題参照).その後数年にわたって,フェラーリとタルターリアは激しく反論しあ いながら数学の問題について手紙の交換をしました.
1.2 次の 4 次方程式に対するフェラーリの解を再構成しなさい. x4 + ax2 = bx + c.
(1.31)
ヒント a) 両辺に a2 /4 を加えて,次式にしなさい.
“
a ”2 a2 . = bx + c + 2 4 b) パラメータ y を考え,両辺に y 2 + ay + 2x2 y を加えて,次式にしなさい. ”2 “ a a2 . x2 + + y = 2x2 y + bx + y 2 + ay + c + 2 4 c) B 2 = 4AC とすれば,Ax2 + Bx + C = (αx + β)2 という形になるが,右辺の表示を この形にしなさい.このことにより,y はある 3 次方程式を満たすことになる. d) カルダーノの公式 (1.15) を使ってこの式を満たす y を求めれば, a x2 + + y = ±(αx + β) 2 23
x2 +
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]ベルヌーイの引用はベキ和の公式 (1.29) とその次の式に他ならない.もはや翻訳するまで もないほど,現代の形式と変わらない.ようやく等号も現れているが,まだ形が異なっている.図 1.8, 2.4, II.2.6 を見れば,ニュートンはすでに「=」を使っているし,大陸でもオイラーになると 「=」を使っていた(図 II.10.2)ことがわかる.
20
第 I 章 無限の解析入門
が得られ,このそれぞれに 2 つずつの根がある. 注意 どんな 4 次方程式 z 4 + az 3 + bz 2 + cz + d = 0 も x = z + a/4 の形の変換で
(1.31) の形に帰着することができる. 1.3(オイラー (1749)『全集』第 4 巻,pp.78–147)次の 4 次方程式を解きなさい. x4 + Bx2 + Cx + D = 0.
(1.32) ヒント 式
x4 + Bx2 + Cx + D = (x2 + ux + α)(x2 − ux + β) の係数を比較し,u2 に関する 3 次方程式を求めなさい.この方程式を解き,2 つの 2 次方 程式の解を計算しなさい.
1.4(L. オイラー『代数の完全入門』(1770)) 対称な係数をもつ 4 次方程式 x4 + 5x3 + 8x2 + 5x + 1 = 0
(1.33)
を考えなさい.多項式を (x2 + rx + 1)(x2 + sx + 1) の形に分解して, (1.33) の 4 つの 解を求めなさい. 注意 (1.33) のもう 1 つの解き方は方程式を x2 で割って,新しい変数 u = x + x−1 を 使うことです.
1.5 第 35 回国際数学オリンピック(1994 年 7 月 12–19 日に香港で行われた)で,アル メニア/オーストリアから提案された問題. AB = AC の二等辺三角形 ABC に対して,次のことを仮定する.(i) M を BC の 中点とし,O は直線 AM 上の点で OB が AB に垂直であるような点とする.(ii) Q は 線分 BC 上の点で B とも C とも異なる任意の点とする.(iii) E は直線 AB 上に,F は直線 AC 上にあり,E, Q, F は互いに異なり 1 直線上にあるとする. ヴィエートの方法を用いて, OQ と EF が垂直であることと QE = QF であることは 同値であることを証明しなさい.
I.2 指数と二項定理 1 1 , , 1 , 1 などの代わりに x−1 , x−2 , x x2 x3 x4 1 3 5 1 2 2 x などの代わりに x 2 , x 2 , x 2 , x 3 , x 3
よく見ていればわかるでしょうが,私は
x
−3
,x
−4
を, √1x ,
√
を, x, 1 1 √ 3 2, √ 4x x
√
x3 ,
√
√
x5 , 3
x,
√ 3
1
2
1
などの代わりに x− 2 , x− 3 , x− 4 を使っています.そしてこ 5
3
1
れは,類推の規則によって,幾何数列1 を x3 , x 2 , x2 , x 2 , x, x 2 , x0(または 1), 1
3
x− 2 , x−1 , x− 2 , x−2 ,等々のように書くことができるということからも,理解 1
[訳註]等比数列のこと.等差数列のことは算術数列と言う.日本語の用語の方がわかりやすいの は,移入された概念であることと, 日本語の造語能力の高さだっただろう.近年の訳語があまり日 本語に馴染んでいず,カタカナ語が多くなっているのは,日本語の生命力が低下しているのではな く,時間が必要なだけなのだと思いたい.
I.2. 指数と二項定理
21
できるのではないかと思います. (ニュートン『流率法と無限級数』(1671) の英語版 (1736), p.3)
数 a が与えられたとき,
a · a = a 2 , a · a · a = a 3 , a · a · a · a = a4 , . . .
(2.1)
と書きます.この記法はゆっくりと,主にボンベッリ (1572),シモン・ステヴィ ン (1585),デカルト,ニュートン(上述の引用参照)の仕事によって,歴史の中 に登場してきました.これらを掛けてみれば,たとえば,
a2 · a3 = (a · a)(a · a · a) = a · a · a · a · a = a5 となって,
an · am = an+m
(2.2)
という規則が成り立ちます.等比数列 (2.1) では,各項はその 1 つ前の項の a 倍 になります.各項を a で割れば,この数列を左に続けていくこともできて,
. . . , a−2 =
1 1 , a−1 = , a0 = 1, a1 = a, a2 = a · a, . . . a·a a
となります.ここで
1 am という記法を使っています.こうして,公式 (2.2) は負の指数に対しても成り立っ √ ていることになります.次に,1 に次々と a(a は正数でないといけない)を掛 a−m =
(2.3)
けていけば,等比数列
√ √ √ √ √ √ √ √ 1, a, a · a = a, a · a · a = a3 , a4 = a2 , . . . が得られます.これから
am/n =
(2.4)
√ n am
という記法を思いつくでしょう.ということで,(2.2) は有理数が指数のときにも 成り立ちます.平方根をとるときに,a5/2 が a2 と a3 の間にあるように,正の 根だけをとっています. (人類にとっての)最後の段階は無理数の指数ですが,オ イラーが言っているように,これは「ずっと理解し難いもの」なのです.しかし, 「それゆえ a 2
√
7
は a2 と a3 なる限界の間にある値であろう2」という言葉のよう √
[訳註]ラテン語原文:Sic a 7 erit valor determinatus intra limites a2 et a3 comprehensus
22 に,a
第 I 章 無限の解析入門 √
7
は a2 と a3 の間の値であり,a26/10 と a27/10 の間にあり,a264/100 と
a265/100 の間にあり,a2645/1000 と a2646/1000 の間にあり,等々ということにな るのです.
I.2.1 二項定理 この命題には無限の場合があるのだが, 2 つの補題を仮定してきわめて短い証明 を与えよう. 第 1 の補題は自明なもので,この釣り合いが第 2 の辺に対して成り立つというも のである.1 が 1 に釣り合うように ϕ が σ に釣り合うのはきわめて明らかだか らである. 第 2 の補題は,この釣り合いがある辺で成り立っていれば,その次の辺でも成り 立っていなければならないということである. (パスカル『算術三角形』1654,数学的帰納法による最初の証明の 1 つ)
(a + b)n という式を展開しましょう.それぞれの結果に a + b を掛けていけば 次々に
(a + b)0 = 1 (a + b)1 = a + b (a + b)2 = a2 + 2ab + b2
(2.5)
(a + b)3 = a3 + 3a2 b + 3ab2 + b3 (a + b)4 = a4 + 4a3 b + 6a2 b2 + 4ab3 + b4 等々が得られます.こうして「二項係数」の面白い三角形が現れてきます(ウマ ル・ハイヤーム (1080),朱世傑 (1303),M. シュティーフェル (1544),カルダー ノ (1545),パスカル (1654)(図 2.1 参照)).
1 1 1 1
(2.6) 1 1 1 1
2 3
4 5
6 7
1 3
6 10
15 21
1
10 20
35
1 4
1 5
15 35
1 6
21
1 7
1
I.2. 指数と二項定理
23
図 2.1 パスカルの三角形の元々の形,パスカル『算術三角形』(1654)3
ここで,各数はその上にある 2 つの数の和になっています.これらの数に対する一 般的な法則を求めたいものです.容易にわかることですが,この三角形の外から 見て最初の斜線の上には 1 が並び,2 番目の斜辺には 1, 2, 3, . . . と n が並んでい ます.3 番目の 1, 3, 6, 10, . . . は
n(n−1) 1·2
と推測できますし,4 番目も
n(n−1)(n−2) 1·2·3
でしょう.これから,次の定理が推測されます. 定理 (2.1)(パスカル 1654) n = 0, 1, 2, . . . に対して
(a + b)n = an +
n n−1 n(n − 1) n−2 2 n(n − 1)(n − 2) n−3 3 a a a b+ b + b + ··· 1 1·2 1·2·3
が成り立つ.この和は有限和であって,n + 1 項で終わりになる. 証明 (2.6) の各々の数のその左隣の数との比を計算すると(パスカル (1654), p.7, 「第 12 の結論4 」),
3 4
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]フランス語原文:Consequence douzieme
24
第 I 章 無限の解析入門
(2.7) 6 1
7 1
···
5 1 6 2
4 1 5 2
3 1 4 2 5 3
2 1 3 2 4 3
···
1 1 2 2 3 3 4 4
1 2
1 3
2 3
2 4
3 4
3 5
1 4 2 5
···
1 5 2 6
1 6
1 7
となり,その一般的な形を推測するのは難しくないでしょう.このことを「行の 数」に関する帰納法で証明してみましょう(小節冒頭の引用参照).パスカルの 三角形の一部を
(2.8)
A
B D
C E
D = A + B,
E =B+C
と書けば, 「帰納法の仮定」により
k B = , A −1
C k−1 = B
となりますから,
(2.9)
1+ C 1 + k−1 B+C k k + k 2 − k E = = A B = −1 = 2 = D A+B − + k + 1 + 1 B k
となり,次の行でも同じ構造になっていることがわかります. 第 n 行の比が n/1, (n − 1)/2, (n − 2)/3, . . . で与えられることから,(2.6) の係 数はこれらの比の積で表されることになります.たとえば,第 7 行の数「20」は
20 =
6·5·4 20 15 6 (2.7) 4 5 6 · · · · = = 15 6 1 3 2 1 3·2·1
となって,定理 2.1 が一般に成り立つことがわかります. これらの係数
(2.10)
n(n − 1) · · · (n − j + 1)(n − j) · · · 1 n(n − 1) · · · (n − j + 1) = 1 · 2 ····· j 1 · 2 · · · · · j · 1 · 2 · · · · (n − j) n! n = = j!(n − j)! j
は二項係数と呼ばれ,また n! = 1 · 2 · · · · · n は n の階乗と言います. 補間多項式への応用 (1.26) の差分スキームを展開すると,
□
I.2. 指数と二項定理
y0
y1 − y0
y1
y2 − y1
y2
y3 − y2
y3
y2 − 2y1 + y0
25
y3 − 3y2 + 3y1 − y0
y3 − 2y2 + y1
となります.パスカルの三角形と見掛けが異なっているのは,各項が左隣の 2 項 の差になっているからです. さらに,スキーム (1.26) の各項はその上の項と右上の項との和にもなっている ことから,このスキームは
y0
Δy0
y0 + Δy0
Δ2 y0
2
Δy0 + Δ y0
y0 + 2Δy0 + Δ2 y0
Δy0 + 2Δ2 y0 + Δ3 y0
y0 + 3Δy0 + 3Δ2 y0 + Δ3 y0
Δ2 y0 + Δ3 y0
Δ3 y0
と書くこともできて,ここにもパスカルの三角形がでてきます.こうして,公式
(2.10) から n n(n − 1) 2 n(n − 1)(n − 2) 3 Δy0 + Δ y0 + Δ y0 + · · · 1 2! 3!
yn = y0 +
が得られます.これで,定理 1.2 が証明されたことになります. 負の指数 最初に
(a + b)−1 =
1 a+b
を考えます.もし |b| < |a| であるなら,この比の第 1 近似は 1/a です.この値 との差である未知量 δ を考えて近似をよくしようとすると,
1 1 = +δ a+b a
=⇒
1=1+
b + aδ + bδ a
となります.|b| < |a| だから,bδ の項を無視すれば,δ = −b/a2 が得られます. このプロセスを次々とやっていけば(もちろん厳密には帰納法で示すのですが),
(2.11)
(a + b)−1 =
b 1 b2 b3 − 2 + 3 − 4 + ··· a a a a
が得られますが,これは定理 2.1 の n = −1 の場合に当たっています.しかしな がら,今回は無限級数になっています.
26
第 I 章 無限の解析入門
(2.11) に a を掛けて x = b/a と置けば,有名なヴィエート (1593) の幾何級数5 1 = 1 − x + x2 − x3 + x4 − x5 + · · · 1+x
(2.12)
|x| < 1
が得られます. 平方根 次に,(a + b)1/2 =
√
えると, a + b ≈
√
√ a + b を考えます.ここでも b が小さいものと考
a となり, √ √ a+b= a+δ
がよりよい近似であるように δ を探すことにすると,
√ √ a + b = ( a + δ)2 = a + 2 aδ + δ 2 √
となります.δ が小さいから,δ 2 を無視すれば,δ = b/(2 a) が得られ,した がって,
√
(2.13)
a+b≈
√ b a+ √ 2 a
(|b| |a| のとき)
が得られます.
√
例( 2 の計算) まず近似値として v = 1.4 から始めることにして,a =
v 2 , b = 2 − a = 2 − v 2 とおきます.すると,(2.13) により新しい近似値として 1 2 2 − v2 = +v v+ 2v 2 v が得られ,この公式を次々と使うことができて, 1.414285 1.4142135642 1.4142135623730950499 1.4142135623730950488016887242096980790 1.41421356237309504880168872420969807856967187537694807317667973799
が得られます.まったく同じ計算を 60 進法で行うことができ,1, 25 で始めると
1, 24, 51, 10 が得られます(コンマは 60 進法の数字の区切りを表す).この値が 5
[訳註]等比級数のこと.以下,歴史的な意味がある場合を除き, 「等差」「等比」という用語を使う.
I.2. 指数と二項定理
27
紀元前 1900 年のバビロニアの粘土板で見つかるのです(図 2.2 およびファン・デ ル・ヴェルデン『科学の黎明』(1954) II 章,図版 8b 参照).このことは古代バビ ロニアや古代ギリシャの時代から公式 (2.13) が使われていたことを示しています.
図 2.2 バビロニアの楔形文字の粘土板 YBC 7289(紀元前 1900 年).正方形の 1 辺が 30,対角線の長さが 42, 25, 35 で,その比が 1, 24, 51, 10 であることを表して いる6 .
次のステップ (アルカルサーディー(1450 年頃),ブリッグス『対数的算術』
1624) (2.13) 式を改良するために, √ √ b a+b= a+ √ +δ 2 a を考えて,平方を計算すると,
a+b=a+b+
√ b2 bδ + 2 aδ + √ + δ 2 4a a
が得られます.最後の 2 項を無視すれば,
(2.14)
√ √ b2 b a+b≈ a+ √ − √ 2 a 8 a3
が得られます. 6
[原註]エール大学のバビロニア・コレクション YBC の許可を得て転載. [訳註]微小量のオーダーの感覚が必要な, この逐次近似式がこれほど古い時代に知られていたこ √ √ とは,それほど不自然なことではないかもしれない. v が 2 の近似値なら, 2/v も 2 の近似 √ 値であり,しかも, v と 2/v の間に 2 はある.その相加平均がよりよい近似値を与えると考え るのは自然なことであろう.
28
第 I 章 無限の解析入門
例
√
2 に対して今度は v+
4 − 4v 2 + v 4 3 1 2 − v2 3v − + − 3 = 3 2v 8v 8 2v 2v
が得られ,v = 1.4 に次々と使っていけば,速く収束する近似列
1.4142128 1.41421356237309504870 1.41421356237309504880168872420969807856967187537694807317643 が得られます.
√ a で割って,b/a を x で置き換えると極めて簡潔な式
等式 (2.13) や (2.14) は 1
(1 + x) 2 ≈ 1 +
x , 2
1
(1 + x) 2 ≈ 1 +
x x2 − 2 8
になります.もっと精密な近似式が欲しければ,この計算を続けていけて,結果は 1
(1 + x) 2 = 1 +
x + bx2 + cx3 + dx4 + · · · 2
の形の級数になって,係数 b, c, d, . . . を決めていきたいということになります.こ 1
1
の級数を (1 + x) 2 (1 + x) 2 = 1 + x に代入して,x の同じベキの係数を比較す れば,b = −1/8, c = 1/16, d = −5/128, . . . がわかります.この結果,もっとよ い近似
1 1 5 4 1 1 x + ··· (1 + x) 2 = 1 + x − x2 + x3 − 2 8 16 128
(2.15)
が得られます(ニュートン 1665).ここで
− −
1·1 1 =− = 8 2·4
1 1 2(2
− 1) , 2
1·1·3·5 5 =− = 128 2·4·6·8
1 1 2(2
1 1·1·3 = = 16 2·4·6
1 1 2(2
− 1)( 12 − 2) , 1·2·3
− 1)( 12 − 2)( 12 − 3) 1·2·3·4
であることに注意しましょう.このことから,定理 2.1 が n = 1/2 のときにも成 り立つと予想することができます.関数列 1 + x/2, 1 + x/2 − x2 /8, . . . は,図
2.3 にスケッチしてありますが,級数 (2.15) が −1 < x < 1 の範囲で
√ 1+x に
向かって収束していくことがわかるでしょう. 任意の有理指数 これらのことはすべて,ペストが流行した 2 つの年 1665 年と 1666 年の間のこ
I.2. 指数と二項定理
1
図 2.3 (1 + x) 2 = 1 +
1 x 2
− 18 x2 +
1 3 x 16
−
5
128
29
x4 + · · · に対する級数
とであった.それは私の創造力が最高潮の時期だったし,それ以降のどんなとき よりも数学と哲学に心を傾けていた. (ニュートン,M. クライン『数学思想』(1972), p.357 から引用)
この「驚異の年7 」のニュートンのアイデアは,ウォリスの仕事に示唆を受けた ものですが(式 (5.27) の注意参照),a がある有理数のときの関数 (1 + x)a に対 する級数を求めるために,多項式 (1 + x)0 , (1 + x)1 , (1 + x)2 , . . . を補間しよう とすることでした.つまり,定理 2.1 の係数を補間しなければなりません(図 2.4 参照).その係数は n の多項式だったのですから,同じ式で n の代わりに a を 代入したものが結果になるはずです.こうして,次の一般的な定理が得られます. 定理 (2.2)(ニュートンの一般二項定理) 任意の有理数 a に対して,|x| < 1 の 範囲で
a(a − 1) 2 a(a − 1)(a − 2) 3 a x + x + ··· (1 + x)a = 1 + x + 1 1·2 1·2·3 が成り立つ. ニュートン自身も,この補間の議論が危険なものであることに気づいていまし た.オイラーはその『無限解析入門』(1748, §71) で証明もコメントもつけない 7
[訳註]ラテン語原文:anni mirabiles ペストを避けて実家に帰っていたニュートンは何にも煩わされず研究に没頭し,実り多い 1 年を過 ごした.大学は閉鎖されていた.
30
第 I 章 無限の解析入門
図 2.4 パスカルの三角形の補間,ニュートンの自筆原稿 (1665)8
ままこの一般的な定理を述べています(「この普遍的な定理から9」).アーベル だけが,1 世紀も後になって,厳密な証明の必要性を感じたのです(後出 III.7 節 参照). 注意 この式はウェストミンスター寺院にあるニュートンの墓石に 1727 年に 刻み込まれました.役に立たない努力はしない方がよいでしょう. . . それから何百 年という時がたって,刻まれた公式は判別できないものになっています.
I.2.2 指数関数 . . . そこでその双曲的対数が 1 となる数を e と表す10 . (e の最初の定義,オイラー『力学』(1736b), p.60)
起源 1 F. ド・ボーヌ (1602–1652) はデカルトの『幾何学』(1637) の最初の読 者でした.1 年後,彼はデカルトに次のような幾何の問題を提案しました. 「曲線上 の各点 P に対して x 軸への垂線の足 V と P での接線と軸との交点 T との距離 が,常に与えられた定数 a と等しいような曲線 y(x) を求めよ(図 2.5a 参照). 」 デカルトとフェルマーが努力したにもかかわらず,この問題は 50 年近くも未解 決のままでした.ライプニッツは(1684 年,「. . . 攻撃はしたが,解けなかった11 」), 次のような解法を提案しました(図 2.5b 参照).点 x, y が与えられたとします.
x を小さい増分 b だけ大きくしたら,y を yb/a だけ大きくします(2 つの三角 形が相似になるように).これを続けていけば横座標 x, x + b, x + 2b, x + 3b, . . . 8
[原註]図 2.4 は Cambridge University Press の許可を得て転載.
9
[訳註]ラテン語原文:ex hoc theoremate universali
10 11
[訳註]ラテン語原文:ubi e denotat numerum, cuius logarithmus hyperbolicus est 1. [訳註]ラテン語原文:tentavit, sed non solvit
I.2. 指数と二項定理
31
図 2.5a ド・ボーヌの問題 図 2.5b ライプニッツの解法
に対する値
y,
b y, 1+ a
2 b 1+ y, a
1+
b a
3 y,
...
の列が得られます. 起源 2 「もしある地域の人口が毎年 30 分の 1 ずつ増えるとし,あるとき 10 万人の人口があったとすれば,100 年後の人口はどうなるだろうか?」というよ うな問題(オイラー『入門』§110)とか, 「ある男が,年率 5 パーセントの高利で
400,000 フローリン借りたら,. . . 」(『入門』§111)というような問題では 100 1 (2.16) 1+ , (1 + 0.05)N , また一般に (1 + ω)N 30 のような計算をすることになります.ここで,ω は小さい数で,N は大きな数 です. オイラーの数 まず ω =
1 N
としましょう.定理 2.1 を使って (2.16) を計算す
ると,
N N (N − 1) 1 1 N N (N − 1)(N − 2) 1 + 1+ = 1+ + + ··· N N 1·2 N2 1·2·3 N3 1(1 − N1 ) 1(1 − N1 )(1 − 2 N1 ) + + ··· 1·2 1·2·3 となります.ここでオイラーは何のためらいもなく, 「N がどのように指定した数 N −1 よりも大きければ N は 1 に等しい」と言っています.そうであれば,N が無 1 N 限大に近づくとき,(1 + N ) はいわゆるオイラーの数 = 1+1+
32
第 I 章 無限の解析入門
(2.17)
e=1+1+
1 1 1 + + + ··· 1·2 1·2·3 1·2·3·4
に近づくことになります. この議論が危険であることを強調しておきます.議論を無限回行っていること が危険なのです.たとえば,同様な「証明」をしてよいならば,
1=
1 1 1 1 1 1 1 1 + = + + = + + ···+ = 0 + 0 + 0 +··· = 0 2 2 3 3 3 N N N
ということになってしまうでしょう. この問題には III.2 節でもう 1 度考えることにします.表 2.1 は上の級数の収束 と (1 +
1 N N)
の収束を比べたものです.
e のベキ 次に (2.16) で ω = x/N と置きます.ここで x は,たとえば有理数 で,固定されているとします.つまり,N を無限大に近づけることと ω を 0 に 近づけることを,常に 2 つの積が一定の x であるようにして,同時に行うのです. 上で行ったのとまったく同じ扱いで,今度は
(2.18)
x3 x4 x N x2 + + + ··· 1+ −→ 1 + x + N 1·2 1·2·3 1·2·3·4
という結果が得られます.一方,M = N/x, N = xM と置いて,M が整数で あるようにしながら,N と M を無限大に近づけると
(2.19)
x N 1+ = N
Mx M x 1 1 1+ = 1+ −→ ex M M
となります.(2.18) と (2.19) を一緒にすれば次の定理が得られます. 定理 (2.3)(オイラー『入門』(1748) §123, §125) N が無限大に近づくとき 次が成り立つ.
x3 x4 x N x2 + + −→ ex = 1 + x + + ··· N 2! 3! 4!
1+
2
ex (exp x とも書く)のこの表示の収束が図 2.6a と図 2.6b で図示されていま す.点線は関数 ex の正確なグラフを示しています.
I.2.3 演習問題 2.1 50 = 2 · 52 = 72 + 1 を使って, „ « √ 7 1 1·3 1·3·5 2= 1+ + + + ··· 5 100 100 · 200 100 · 200 · 300
I.2. 指数と二項定理
33
表 2.1 e の計算 N 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
(1 +
1 N ) N
2.000 2.250 2.370 2.441 2.488 2.522 2.546 2.566 2.581 2.594 2.604 2.613 2.621 2.627 2.633 2.638 2.642 2.646 2.650 2.653 2.656 2.659 2.661 2.664 2.666 2.668 2.670 2.671
1+
1 1!
+
1 2!
+ ··· +
1 N!
2.0 2.5 2.66 2.708 2.7166 2.71805 2.718253 2.7182787 2.71828152 2.718281801 2.7182818261 2.71828182828 2.718281828446 2.7182818284582 2.71828182845899 2.7182818284590422 2.71828182845904507 2.718281828459045226 2.7182818284590452349 2.718281828459045235339 2.7182818284590452353593 2.718281828459045235360247 2.7182818284590452353602857 2.718281828459045235360287404 2.7182818284590452353602874687 2.71828182845904523536028747125 2.718281828459045235360287471349 2.71828182845904523536028747135254
という公式(オイラー (1755), 『全集』第 10 巻,p.280)を証明しなさい.「この式は 10 進の分数に整理して計算するのに最適なものである12 」.この級数の 5 項までの数値を求 めなさい. ヒント (1 − x)−1/2 の級数を考えること.
√ 2.2 60 進法で表した 1,25 が 2 のよい近似であることを示しなさい. 「バビロニアの 平方根のアルゴリズム」を 1 回繰り返すと,公式 (2.13) から 1, 24, 51, 10, . . . (図 2.2 の 値) が得られることを示しなさい. 2.3 級数 (1 + x)1/3 = 1 + ax + bx2 + cx3 + · · · を 3 乗し,係数 a, b, c, . . . を決定することによって,
(1 + x)1/3 = 1 + 12
x 2·5 3 2 2 − x + x − +··· 3 3·6 3·6·9
[訳註]ラテン語原文:quae ad computum in fractionibus decimalibus instituendum est
optissima
34
第 I 章 無限の解析入門
図 2.6a (1 +
図 2.6b 1 + x +
x N ) N
x2 2!
+
x3 3!
+ ···
であることを示しなさい.そこで,2 · 43 − 53 = 3 であることを使って,次式を示しな さい.
” 5“ 2·5 2·5·8 1 2 + − + · · · . 1+ − 4 1 · 125 1 · 2 · (125)2 1 · 2 · 3 · (125)3 1 · 2 · 3 · 4 · (125)4 √ 3 注意 2 の決定はギリシャ数学の大問題でした(立方体の体積を 2 倍にする問題). √ 3
2=
2.4 (ベルヌーイの不等式.ヤーコプ・ベルヌーイ (1689)『全集』(1744), p.380 参照. バロー (1670)『著作集』(1860) 第 7 講 §13, p.224 参照)n に関する帰納法で,次を証明 しなさい.
(1 + a)n ≥ 1 + na
(a ≥ −1, n = 0, 1, 2, . . .)
1 1 + na
(0 < a < 1, n = 2, 3, . . .)
1 − na < (1 − a)n < 2.5 (1 +
1 n ) n
の e への収束を調べるために 2 つの数列
„ «n 1 an = 1 + , n
„
bn =
1 1+ n
«n+1
を考えなさい.そのとき,
a 1 < a 2 < a 3 < · · · < e < · · · < b 3 < b2 < b1 であることと,bn − an ≤ 4/n であることを示しなさい. ヒント 演習問題 2.4 の第 2 の不等式で a = 1/n2 と置いてみなさい.
35
I.3. 対数と面積
I.3 対数と面積 しかし,対数の表は(数値計算を実行するのに)大変役に立つもので . . . 1 (オイラー『入門』(1748)§110) 学生は普通,対数の概念をひどく理解し難いものと思うようだ. (ファン・デル・ヴェルデン (1957), p.1)
M. シュティーフェル (1544) は次の 2 つの数列に特に注目しています(図 3.1 参照).
... ...
−3
−2
−1
1 8
1 4
1 2
0 1
1 2
2 4
3 8
4 16
5 32
6 64
7 128
8 256
... ...
下の行から上の行に移ると,積が和に変わることがわかります.たとえば, 「下の 行で2 」 8 に 32 を掛ける代わりに, 「上の行で3 」 対応する「対数」である 3 と 5 をとり,その和 8 を計算し,そこから下の行に移り,積 8 · 32 = 256 を得ます. こうしたタイプのもっと細かい表があれば,足すことは掛けることよりずっと易 しいから,大変役に立つでしょう.このような「対数」表(λ´ o γoσ は「言葉,関 係」を,αριθμ´ o ζ は「数」を表すギリシャ語で,したがって対数 (logarithm) と は数の間の役に立つ関係のことです4 )を最初に計算したのは,ジョン・ネイピア
(1614, 1619),ヘンリー・ブリッグス (1624),ユースト・ビュルギ (1620) です. 定義 (3.1) 正の値の x に対して定義された関数 (x) は,すべての x, y > 0 に対して
(3.1)
(x · y) = (x) + (y)
が成り立つとき,対数関数と呼びます. まず (3.1) で y = z/x とか x = y = 1 と置けば,
(3.2)
(z/x) = (z) − (x)
(3.3)
(1) = 0
1 2 3 4
[訳註]ラテン語原文:Tabularum autem logarithmicarum amplissimus est usus . . . [訳註]ラテン語原文:in inferiore ordine [訳註]ラテン語原文:in superiore ordine [訳註]ギリシャ文字のままだと対応がわからない人があるかも知れませんので, アルファベット に変えると, logos と arithmos となります.以降,ギリシャ文字が出てくる都度,断りなく対応 するアルファベットを脚註に書いておきます.
36
第 I 章 無限の解析入門
図 3.1 シュティーフェル (1544) からの抜粋 (p.237 と p.250)5
が得られます.x · y · z = (x · y) · z に (3.1) を 2 回使えば,
(x · y · z) = (x) + (y) + (z)
(3.4)
√ √ √ 3 x· 3x· 3x √ = x を (3.4) 式に代入すれば,( 3 x) = 13 (x) が得られ,さらに一般に √ m m m (3.5) (x n ) = (x) (ここで x n = n xm ) n が得られ,4 つ以上の積に対しても同様の式が得られます.次に
が得られます. 底 対数関数 (x) がひとつ与えられていて,(a) = 1 を満たす 数 a が存在する ものとしましょう.そうすると,(3.5) 式から m
(3.6) 5
(a n ) =
m n
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]内容としては本文と変わりないが,訳してみる. 算術 第 3 冊 237 ページ そして割ることによって,第 1 冊で十分に説明したように,幾何数列が得られる.かくして,見よ. 0. 1. 2. 3. 4. 5. 7. 8. 1. 2. 4. 8. 16. 32. 128. 256. (上の行で) 3 を 5 に足すと 8 になるように, (下の行では) 8 を 32 に掛けると 256 になる.しか し 3 は 8 の指数であり,5 は数 32 の指数であり,8 は数 256 の指数である.同じように,上の行 で 3 を 7 から引いて 4 が残るように,下の行で 128 を 8 で割れば 16 になる. しかしこの推測は例によって説明されるべきである.
−3
−2
−1
0
1
2
3
4
5
6
1 8
1 4
1 2
1
2
4
8
16
32
64
I.3. 対数と面積
37
が得られます.つまり,この対数関数は指数関数 ax の逆関数です.これを a を 底とする対数と呼び,
y = loga x (x = ay のとき)
(3.7) と書きます.
10 を底とする対数(ブリッグスの対数6)が数値計算をするには一番便利でしょ う.というのも,10 進数の位の移動はこの対数では整数を加えるだけでよいから です.理論的な作業をするために最適な底は,すぐ後で出てきますが,オイラー の数 e(自然,ネイピアの,双曲的対数ともいう)です.この対数関数は普通(e を使わずに)ln x とか log x と書かれます7 . オイラーの「黄金律」 もし 1 つの底に対する対数を知っていたら,他のすべて の底に対する対数は簡単な割り算で求められます.これを示すために,x = ay の 底を b とする対数を考えて,(3.7) と (3.5) を使うと,
(3.8)
logb x = y · logb a
=⇒
y = loga x =
logb x logb a
が得られます.
I.3.1 対数の計算 底 a の平方根を計算し,平方根の平方根を計算し,次々と平方根を計算し,そ れらの値を掛け合わせて,(3.6) と (3.1) を使えば,多くの数の対数を求めること ができます.a = 10 に対してやってみると図 3.2 のようになります. 残る問題は,4.2170 とか 2.3714 というような数の対数ではなく,2, 3, 4, . . . の ような数の対数の方が知りたいのだということです. ブリッグスの方法 10 の平方根を計算し,平方根の平方根を計算し,というこ とを 54 回行うと(図 3.3 の最下段参照),c = 1/254 と置くとき 6 7
[訳註]日本では常用対数と呼ぶことが多い. [訳註]本書では以降,ln x を使っている.自然対数 (natural logarithm) の自然さよりも普及 した計算法としての(常用)対数の方が人の意識に馴染んでいるためか,ヨーロッパでは ln x を使 うことが普通である国の方が多い. 日本は確立した概念としての対数の輸入国だから, log x を使 う場合がほとんどであると思う.実際,大学までの教育現場や教科書では,log x を使うことが圧 倒的に多いのだが,電気関連などの工学の分野では ln x を使うこともある.また,自然科学系の専 門書籍・論文などでは,特に英文の場合 ln x が多い.ISO 標準でも ln であって,log x は底を指 定しない状況下でのみ使用するように,となっている.ちなみに ISO 標準では常用対数と 2 進対 数を lg x = log10 x, lb x = log2 x と書く. しかし,数学では,教育上も専門的にも log x を用いることがほとんどであり,演習問題の解答 では log x を使うことにしたい(ln x を使うことにしても無意識に log x を使ってしまうだろうか らという言い訳である).
38
第 I 章 無限の解析入門
数
対数
10.0000 7.4989 5.6234 4.2170 3.1623 2.3714 1.7783 1.3335 1.0000
1. 0.875 0.75 0.625 0.5 0.375 0.25 0.125 0.
1.00
.75
.50
.25
.00
1 101/4 101/2
103/4
10
図 3.2 10 の平方根を次々ととり,それらを掛けた数
(3.9a)
10c = 1.00000000000000012781914932003235 = 1 + a
となります.同じように 2 の平方根を次々ととっていくと,
(3.9b)
2c = 1.00000000000000003847739796558310 = 1 + b
が得られます.求めようとする値が x = log10 2 ならば,2 = 10x を満たすから, (3.9b)
(3.9a)
1 + b = 2c = (10c )x = (1 + a)x
定理 2.2
≈
1 + ax
となり,
(3.10)
log10 2 = x ≈
3847739796558310 b = ≈ 0.3010299956638812 a 12781914932003235
が得られることになります.やっと 1 つの値が得られました.対数表全体に必要 な仕事の量は想像を絶するものがあります. 補間 古い時代には,補間は対数の計算の速度を上げるための重要な手段でした. たとえば,log10 の 4 つの値が計算されていたとしましょう.それに対して差分 スキーム 8
[原註]図 3.3 はジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]「Arithmetica(算術)」は本の名前.左上の「D」は decimal で 10 進数を表し, 「10 と 1 との間の連続的な数」.右上の「E」は exponent で指数のつもりか, 「有理的な対数」.コピーの せいで図の左下の各行の先頭の 1 ないし 10 が欠けており,補って理解すること.
I.3. 対数と面積
図 3.3 10 の次々の平方根のブリッグスの計算 (ブリッグス,1624)8
39
40
第 I 章 無限の解析入門
log(44) = 1.6434526765 0.0097598373 log(45) = 1.6532125138 0.0095453179 log(46) = 1.6627578317
−0.0002145194 −0.0002052917
0.0000092277
0.0093400262 log(47) = 1.6720978579
を計算します.これから定理 1.2(をずらしたもの)を使うと補間多項式
p(x) =1.6434526765 + (x − 44) 0.0097598373
(3.11) +
x − 46 x − 45 −0.0002145194 + · 0.0000092277 2 3
が得られます.それぞれの値に対する誤差は表 3.1 に与えられています.この結 果は計算が簡単な割りにはかなりよいものです.さらに点を加えれば,欲しいだ け精度を上げることができます. 表 3.1 補間多項式の誤差
x 44.25 44.50 44.75 45.25 45.50 45.75 46.25 46.50 46.75
p(x) 1.645913252 1.648359987 1.650793026 1.655618594 1.658011411 1.660391109 1.665111724 1.667452930 1.669781593
log10 x 1.645913275 1.648360011 1.650793040 1.655618584 1.658011397 1.660391098 1.665111737 1.667452953 1.669781615
誤差
2.34 · 10−8 2.42 · 10−8 1.35 · 10−8 −1.05 · 10−8 −1.43 · 10−8 −1.04 · 10−8 1.32 · 10−8 2.34 · 10−8 2.24 · 10−8
対数の計算を続ける前に,少し幾何の世界へ遠足に行くことにしましょう.
I.3.2 面積の計算 面積や体積を求めるという問題は,古代ギリシャの時代から数学者の好奇心を 刺激し続けてきました.アルキメデス(紀元前 283–212)の偉大な業績の中に放 物線と円の面積の計算があります.17 世紀の始めには,整数だけでなく任意の a の値に対して,曲線 y = xa の下方の領域の面積が計算されています(ボナヴェ ントゥラ・カヴァリエーリ,ロベルヴァル,フェルマー).
41
I.3. 対数と面積
y = x1/3
Ba θaBa θ2aBa θ2B θB B
図 3.4a フェルマー 1601–16659 図 3.4b xa の下方の面積のフェルマーの計算
問題 a を与えたとき,曲線 y = xa の下方にあって,x = 0 と x = B の間に ある領域の面積を求めよ. 解答(フェルマー 1636) θ < 1 を 1 に近く選んで,等比数列 B, θB, θ2 B, 3
θ B, . . . で区切られる,B a , θa B a , θ2a B a , θ3a B a , . . . の高さの長方形を考えます (図 3.4b 参照).すると,問題の面積は,a + 1 > 0 すなわち a > −1 であれば ((2.12) 式参照), 第 1の長方形 + 第 2 の長方形 + 第 3 の長方形 + · · ·
(3.12)
= B(1 − θ)B a + B(θ − θ2 )θa B a + B(θ2 − θ3 )θ2a B a + · · · 1−θ = B a+1 (1 − θ) (1 + θa+1 + θ2a+2 + · · · ) = B a+1
1 − θa+1 等比級数
という等比級数で近似することができます.小さい ε に対して,θ = 1 − ε と置 けば,定理 2.2 により,1 − θ = ε, θa+1 = 1 − (a + 1)ε + · · · となります.結局,
1 ε 1−θ = ≈ (ε → 0 のとき) 1 − θa+1 (a + 1)ε a+1 となります.長方形の和 (3.12) は(a > −1 のとき)求める面積 S を上から近似 します.長方形の高さを θa B a , θ2a B a , . . . にとり換えれば,今度は S の下から の近似を得ることになります.この場合,(3.12) の値に θa を掛けるだけでよく,
θa は θ → 1 に従って 1 に近づきます.したがって,近似は両方とも同じ値に近 づき,次の結果が得られます. 定理 (3.2)(フェルマー 1636) 曲線 y = xa の下方で x = 0 と x = B で囲ま れた領域の面積は次で与えられる. 9
[原註]フェルマーの肖像はジュネーヴ大学数学図書室の許可を得て転載.
42
第 I 章 無限の解析入門
B a+1 (a > −1 のとき). a+1
S=
2
I.3.3 双曲線の面積と自然対数 1668 年の 9 月に N. メルカトールは『対数術』を出版しましたが,そこにはこの 方法(すなわち,無限級数) の 1 つの場合の例が,つまり,双曲線の求積の例が (J. コリンズの 1672 年 7 月 26 日付の手紙)
含まれています.
フェルマーの方法は双曲線 y = 1/x の場合には適用できません.実際,横座 標で B, θB, θ2 B, θ3 B, . . . と等比数列をとっていくと,面積の方では,等差級数
(1 − θ)(1 + 1 + 1 + · · · ) の部分和が得られます.このことが動機となって,次の 発見がなされたのです(1647 年に聖ヴァンサンのグレゴリーが,1649 年にアル フォンス・アントン・ドゥ・サラサが発見しました.M. クライン (1972), p.354 参照).双曲線 y = 1/x の下方の領域の面積は対数である(図 3.5 参照). (x 座標を縮小し,y 座標を引き伸ばせば, )たとえば,面積 (3 → 6) = 面積 (1 → 2) であることがわかります.したがって 面積 (1 → 3) + 面積 (1 → 2) = 面積 (1 → 6) となります.ということは,関数 ln(a) = 面積 (1 → a) は等式
ln(a) + ln(b) = ln(a · b) を満たすということであり,対数関数(これが自然対数10 )であるということに なります. メルカトールの級数 原点を 1 ずらせば,ln(1 + a) は 0 と a の間の 1/(1 + x) の下方の領域の面積になります.1/(1 + x) = 1 − x + x2 − x3 + · · · ((2.12) 式)
y = 1/x
y = 1/x
同じ面積
1
0
1
1
2
3
4
5
6
0
図 3.5 対数としての,双曲線の面積
10
[訳註]ラテン語原文:logarithmus naturalis
1
2
I.3. 対数と面積
43
図 3.6 等比級数の 1 項ごとの積分
を代入し,0 と a の間の面積に対する定理 3.2 の表示
a,
a2 , 2
a3 , 3
a4 , 4
...
(図 3.6 参照)を使うことにすれば,a を x にとり換えると,
(3.13)
ln(1 + x) = x −
x3 x4 x5 x2 + − + − +··· 2 3 4 5
が得られます(N. メルカトール 1668).x の色々な値に対するこの級数の収束の 様子が図 3.7 に示されています.x = 1 での値をとるとこの級数は
(3.13a)
ln 2 = 1 −
1 1 1 1 1 + − + − + −··· 2 3 4 5 6
という,美しいけれど実用上は限界のある式になります(表 3.2 参照).x の値が さらに大きくなればこの級数はまったく収束しなくなります. グレゴリーの級数 (3.13) 式 で x を −x にとり換えると,
(3.14)
ln(1 − x) = −x −
x3 x4 x5 x2 − − − − ··· 2 3 4 5
が得られます.この式を (3.13) 式から引くと
(3.15)
ln
x3 x5 x7 x9 1+x =2 x+ + + + + ··· 1−x 3 5 7 9
が得られます(グレゴリー 1668). 例 (3.14) 式で x = 1/2 と置き,(3.15) 式で x = 1/3 と置けば,ln 2 に対す る 2 つの級数
44
第 I 章 無限の解析入門
3
N=1
1
ln (1 + x)
N=2 0
−1
1 4
−1 N = 10
図 3.7 x −
(3.14a)
(3.15a)
x2 2
+
x3 3
−
x4 4
+ ··· ±
xN N
の ln(1 + x) への収束
1 1 1 1 + + + + ··· 2 2 · 22 3 · 23 4 · 24 1 1 1 1 + ln 2 = 2 + + + · · · 3 3 · 33 5 · 35 7 · 37 ln 2 =
が得られます.ln 2 に対するこの 3 つの級数 (3.13a), (3.14a), (3.15a) の収束を 比べてみると(表 3.2),どれが一番よいかは明らかです. 素数 p ≥ 3 に対する ln p の計算 (3.1) があるから,素数の対数だけ計算すれ ば十分です.合成数や有理数の対数の値は,それから足したり引いたりすると得 られます.ここで素数 p を,対数の値がわかっているような,p に近い数 q で割 るというアイデアがあります,そして,小さい値の x で級数 (3.15) を使うことが できれば,収束が速くなります.たとえば,p = 3 のときには,q = 2 ととれば,
3=
3 · 2, 2
3 1+x = 2 1−x
⇔
x=
1 5
と書けるから,
(3.16)
ln 3 = ln
1+ 3 + ln 2 = ln 2 1−
1 5 1 5
+ ln 2
I.3. 対数と面積
45
表 3.2 ln 2 に対する級数の収束
n 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
(3.13a) 1.000 0.500 0.833 0.583 0.783 0.617 0.760 0.635 0.746 0.646 0.737 0.653
(3.14a) 0.500 0.625 0.667 0.6823 0.6885 0.6911 0.69226 0.69275 0.69297 0.693065 0.693109 0.693130
(3.15a)
0.667 0.6914 0.69300 0.693135 0.6931460 0.69314707 0.693147170 0.6931471795 0.693147180559 0.6931471805498 0.6931471805589 0.69314718055984
となります.また,3 = (3/4) · 4 を使って,
ln 3 = 2 ln 2 − ln
(3.17)
1+ 1−
1 7 1 7
とすることもできます.上の表示の 相乗平均 を使えばさらによくなって,
3= (3.18)
5= 7=
1 1+ 3 9 √ · 8 =⇒ ln 3 = ln 2 + ln 8 2 2 1−
1 17 1 17
1 1 1+ 3 25 √ · 24 =⇒ ln 5 = ln 2 + ln 3 + ln 24 2 2 2 1− 1 1+ 1 49 √ · 48 =⇒ ln 7 = 2 ln 2 + ln 3 + ln 48 2 2 1−
1 49 1 49 1 97 1 97
などが得られます.p が大きくなれば,級数 (3.15) の収束もよくなります.この ようにして得られた値の初めの方は
ln(1) = 0.000000000000000000000000000000 ln(2) = 0.693147180559945309417232121458 ln(3) = 1.098612288668109691395245236923 ln(4) = 1.386294361119890618834464242916 ln(5) = 1.609437912434100374600759333226
46
第 I 章 無限の解析入門
ln(6) = 1.791759469228055000812477358381 ln(7) = 1.945910149055313305105352743443 ln(8) = 2.079441541679835928251696364375 ln(9) = 2.197224577336219382790490473845 ln(10) = 2.302585092994045684017991454684 です. (ブリッグスの計算と比べると),その後の数十年(1620 年から 1670 年) で,この計算は目を瞠るほど劇的に改良されたのです.これはデカルトの『幾何 学』が現れて以来,数学が再び長大な進歩を遂げたことを示しています. オイラーの数との関係 次の定理は自然対数と e との関係を与えるものです. 定理 (3.3) 自然対数 ln x は e を底とする対数である. 証明 定理 2.3 の公式の自然対数をとると,(3.5) と (3.13) から
x2 x N x x =N· − ln 1 + = N · ln 1 + + · · · −→ x N N N 2N 2 2
となり,したがって ln ex = x となります.
こうして e の幾何的な説明が得られました.つまり e とは,双曲線 y = 1/x の 下方の,1 と e の間の領域の面積が 1 になるような数のことです(図 3.8 参照). 任意のベキ 対数を使えば任意のベキを計算(し定義)することができます(ヨ ハン・ベルヌーイ『指数計算の原理』(1697)).a = eln a という式を使うと,
ab = (eln a )b = eb ln a
(3.19)
が得られます.これらの関数のグラフを, a の関数と見たものと b の関数と見た ものを,図 3.9a と図 3.9b にスケッチしておきます.
I.3.4 演習問題 3.1 (ニュートン『流率法』(1671),オイラー『入門』(1748) §123)2 = (4/3) · (3/2) を使えば
„ ln 2 = ln
1+ 1−
1 5 1 5
«
„ + ln
1+ 1−
1 7 1 7
«
„ ,
ln 3 = ln
1+ 1−
1 5 1 5
« + ln 2
が得られることを示しなさい.ln 2 と ln 3 を 2 つの速く収束する級数 (3.15) で同時に計 算することができるようにしてある.
3.2 (ニュートン『与えられた面積から底辺を求めること』(1669a)) 双曲線の下方の
47
I.4. 三角関数
図 3.8 e の幾何的説明
4
4 3x
10x 3
3
y = x3
2x
y = x2 y=x
2
e-x
1
ex
1 y = 1/x3
0
2
0
1
y = 1/x
2
3
図 3.9a 関数 y = x
a
4 −2
−1
0 0
1
図 3.9b 関数 y = a
2 x
面積 z が式
z =x−
1 2 1 3 1 4 1 5 x + x − x + x − ··· 2 3 4 5
で与えられているとしなさい.そのとき,x = ez − 1 に対する
x = z + a2 z 2 + a3 z 3 + a4 z 4 + · · · の形の級数を求めて,指数関数に対する級数を(再)発見しなさい.
I.4 三角関数 シビル: それって,文明の曙にまで遡るのでしたわね. (J. クリース,C. ブース『フォルティー・タワー1 ,精神病医』(1979)) 1 [訳註]イギリスで(1975–79
年に)放送されていた人気テレビコメディの中の台詞.Fawlty Towers はその舞台となるホテルの名前で,ドラマのシリーズタイトルである. シビルはホテルのオーナー の夫人である.夫婦とも貴族や名士を招いてパーティーをすることを好み,エジプトなどの古代の
48
第 I 章 無限の解析入門
角を測る 幾何学における関心事で最も古いものの 1 つに,主に天文学的な目的か らですが,角を測ることがあります.バビロニア人が円周を 360◦ に分けたのは, おそらく,1 年の日数に近い数だったからでしょう.そのとき,半円は 180◦ であ り,直角は 90◦ ,正三角形の内角は 60◦ ということになります(図 4.1a 参照).プ トレマイオス2 は『アルマゲスト』 (150 年)の中で,60 を基数とする数の体系での 測り方を細密化し,partes minutae primae(最初の小細分)と partes minutae
secondae(2 番目の小細分)という単位を導入し,それ以降この単位を使うのが 流行ることになりました.これが今日の英語の “minute”(分)と “second”(秒) になったのです.しかし,360◦ が唯一可能なものということではありません.他 の多くの単位を使うこともできます.たとえば,ある工学的な応用ではグレードと いう単位を使っています.直角を 100 グレードとしています.しかしながら,対 数と同じように,自然な単位というものがあります.それは,半径 1 の円周の弧 長に基づいたラジアン です(図 4.1b 参照).ここで半円周の弧長は,Th.F. ラ ニーによって 1719 年に厳密に計算され,オイラーによって再現されたものをあ げておきます(もとは 113 桁目に間違いがあったのですが,ここでは訂正してあ ります).
3.14159265358979323846264338327950288419716939937510 58209749445923078164062862089986280348253421170679 821480865132823066470938446 · · · この表示はいささか扱いにくいので,W. ジョーンズ (1706, p.243) は省略記号と して π (periphery = 周辺)を導入しました.すると,図 4.1 の 54◦ という角度 は 54π/180 = 0.9425 ラジアンということになります. 三角関数の定義 堅くて曲がらない定規を使って角を測ることが,どうしたらで きるのでしょうか? そう,弦 (chord) を測ることだけはできます(図 4.2).そ して表を作って角を求めることも,逆のこともできます.そのような表の起源は 古代ギリシャにあります(ヒッパルコス(紀元前 150 年) (失われている),プト レマイオス(150 年)).正弦関数と弦関数との関係は sin α = (1/2)chord(2α) ということですが,正弦関数の起源はインド(ブラフマーグプタ,630 年頃)に あり,ヨーロッパ科学においては中世にレギオモンタヌス (1464) が初めて使った 文物のメダルを勲章のように胸につけた客に向かって言う台詞である.人類最古の特殊関数である 三角関数をみて,シビルが語ればこうなるか,というこのシリーズのビデオを所有している著者の しゃれである. 2
[原註]= トレミー,プトレマイウス,プトレメーなど.
49
I.4. 三角関数 120 130 140 150
110 100
90 80 70
2π/3 60 50
π/4
1.
40 30
160
π/6
20
170 180
π/3
π/2
2.
3π/4
−1
0
10
α
1
0
3. π
−1
0
α
1
0.
図 4.1a バビロニアの度 図 4.1b 弧長で測った角
1
1
1
cos α
α 0
tan α
sin α
cot α
chord α
1
x
α 1
0
1
図 4.2 プトレマイオスの弦関数 図 4.3 sin, cos, tan, cot の定義
とされています.正弦(サイン)関数のもともとの名前は sinus rectus(垂直の 弦)だったのですが,この関数の方が三角形の計算には弦関数よりもずっと適し ています. 定義 (4.1) 半径 1 の円の中に図 4.3 に示されたように置かれた直角三角形を考 えます.角 α の対辺の長さを sin α と書き,底辺の長さを cos α と書きます.そ れらの商は円への垂直の接線と水平の接線の長さになっていて,
tan α =
sin α cos α
や
cot α =
cos α sin α
と表わされます. これらの定義は斜辺の長さを c,他の辺の長さを a, b(a は角 α の対辺)とす る任意の直角三角形に対して,すぐに使うことができます.
(4.1)
a = c · sin α,
b = c · cos α,
a = b · tan α.
幾何では角を小文字のギリシャ文字で表す伝統になっていますが,ラジアンに
50
第 I 章 無限の解析入門
移り,また実変数の関数と考えるようになると(図 4.4 の図参照),変数には(x のように)小文字のラテン文字を使うことにします.これらの図から
sin 0 = 0, cos 0 = 1, sin π/2 = 1, cos π/2 = 0, sin π = 0, cos π = −1, (4.2a)
sin(−x) = − sin x,
(4.2b)
sin(x + π) = − sin x,
cos(x + π) = − cos x
(4.2c)
sin(x + π/2) = cos x,
cos(x + π/2) = − sin x
(4.2d)
sin2 x + cos2 x = 1
cos(−x) = cos x
のような公式がたくさん得られます.関数 sin x と cos x は周期 2π ,tan x は周 期 π の周期関数です. 2
y=x
tan x
cos x
sin x
1
−π/2
0
π/2
π
3π/2
2π
5π/2
3π
−1 −2
図 4.4 三角関数 sin x, cos x, tan x
図 4.5 は A. デューラー『求積法の研究』(1525), p.17 にあるサイン曲線の図を 転載したものです.A. デューラーはこの曲線を「環状線3 」と呼び,らせん階段 を作る石工に役立つものだと言っています.
n の整数値に対してだけ sin n をプロットすると奇妙なパターンが浮かび上がっ てきます(図 4.6,シュトラング (1991) とリシャート (1992) 参照).
I.4.1 基本関係式と結果 これらの等式は尊敬すべき年月を経たものである.すでにプトレマイオスが導い たもので. . . 3
[訳註]中世ドイツ語原文:eynn schraufen lini
(L. ヴィエトリス (1949), p.1)
I.4. 三角関数
51
図 4.5 デューラー (1525) にあるサイン曲線4
1
0 0 10
101
102
103
−1 図 4.6 対数目盛りでの sin 1, sin 2, sin 3, . . . , sin n の値
α と β をそれぞれ弧 x と y に対する角とします. 定理 (4.2) (プトレマイオス (150),レギオモンタヌス (1464))
(4.3)
sin(x + y) = sin x cos y + cos x sin y
(4.4)
cos(x + y) = cos x cos y − sin x sin y
証明 これらの等式は 0 ≤ x, y ≤ π/2 の範囲でなら,図 4.7 の 3 つの直角三 角形を見ていればすぐにわかることです.他の場合はすべて,(4.2b) と (4.2c) を 使ってこの区間に移すことができます. 定理 4.2 の 2 つの式を割れば次の式が得られます.
(4.5)
tan(x + y) =
tan x + tan y sin x cos y + cos x sin y = . cos x cos y − sin x sin y 1 − tan x tan y
その他の公式 (4.3) と (4.4) で y を −y にとり換えれば, 4
[原註]Dr.Alfons Uhl Verlag (N¨ ordlingen) の許可を得て転載.
2
52
第 I 章 無限の解析入門
sin β cos α
α
sin β sin β sin α
1 cos β sin α cos β β α 0
cos β cos α
1
図 4.7 式 (4.3) と (4.4) の証明
(4.3 )
(4.4 )
sin(x − y) = sin x cos y − cos x sin y cos(x − y) = cos x cos y + sin x sin y
となります.(4.3) と (4.3 ) を足せば,sin(x + y) + sin(x − y) = 2 · sin x cos y が 得られます.x + y と x − y に新しい変数を導入すれば,つまり,
x+y =u x−y =v
すなわち
x = (u + v)/2 y = (u − v)/2
と置けば,次の 3 つ式のうち,最初の式が得られます.
u−v u+v · cos 2 2 u+v u−v cos u + cos v = 2 · cos · cos 2 2 u−v u+v · sin cos v − cos u = 2 · sin 2 2
(4.6) (4.7) (4.8)
sin u + sin v = 2 · sin
他の 2 つの式も同様にして得られます.
(4.3) と (4.4) で x = y と置くと, (4.9) (4.10)
sin(2x) = 2 sin x cos x cos(2x) = cos2 x − sin2 x = 1 − 2 sin2 x = 2 cos2 x − 1
となります.(4.10) で x に x/2 を代入すれば,
(4.11)
sin
x 2
=±
1 − cos x , 2
cos
x 2
=±
I.4. 三角関数
53
1 + cos x 2
となります.さらに,(4.3) と (4.4) で y に nx を代入すれば,漸化式
(4.12)
sin(n + 1)x = sin x cos nx + cos x sin nx
(4.13)
cos(n + 1)x = cos x cos nx − sin x sin nx
が得られます.(4.9) と (4.10) から始めて,(4.12) と (4.13) を繰り返し使えば,
cos 3x = cos3 x sin 3x = cos 4x = cos4 x sin 4x = cos 5x = cos5 x sin 5x =
− 3 sin2 x cos x 3 sin x cos2 x
− sin3 x
− 6 sin2 x cos2 x 4 sin x cos3 x
+ sin4 x
− 4 sin3 x cos x
− 10 sin2 x cos3 x 5 sin x cos4 x
+ 5 sin4 x cos x
− 10 sin3 x cos2 x
+ sin5 x
が得られます.ここでもまたパスカルの三角形が現れています.計算は I.2 節(定 理 2.1)のときと全く同じです.こうして,次の一般的な公式を述べることがで きるようになります(ド・モアヴル (1730) が発見.オイラー『入門』(1748)§133 参照).
(4.14) n(n − 1) 2 n(n−1)(n−2)(n−3) 4 sin x cosn−2 x+ sin x cosn−4 x − · · · 1·2 1·2·3·4 n(n − 1)(n − 2) sin3 x cosn−3 x + · · · . sin nx = n sin x cosn−1 x − 1·2·3
cos nx= cosn x−
sin とcos の特殊値 正三角形と正方形の形か ら,30◦ , 60◦ , 45◦ の角度のサインとコサインの 値が求められます.正 5 角形に対しては右の図 (ヒッパソス,紀元前 450 年)を見ると,三角形 ACE と AEF は相似ですから,1 + 1/x = x √ となり,したがって x = (1 + 5)/2 となり ます.つまり,点 F は対角線 CA を黄金比 に分割します(ユークリッド『原論』第 13 章 §8 参照)こうして,sin 18◦ = 1/(2x) である ことがわかります.このようにして得られた
B
1
C
1/x
F x x
1 18˚ 18˚ 1 36˚ 36˚
D
E
A
54
第 I 章 無限の解析入門
表 4.1 sin, cos, tan の値
α
ラジアン
sin α
cos α
0◦ 15◦
0 π/12
0 √ √ 2 4 ( 3 − 1)
18◦
1 √ √ 2 4 ( 3 + 1) √
π/10
30◦
π/6
36◦
π/5
45◦
π/4
◦
π/3
60
75◦ 90◦
√
5π/12 π/2
5−1 4 1
1 2
√
2
√ 5− 5 2 √ 2 2 √ 3 2
√ 3 + 1) 1
2 4 (
1 2
5+ 5 2 √ 3 2 √ 5+1 4 √ 2 2 1 2
√ √ 2 4 ( 3
− 1)
0
tan α 0 √ 2− 3 √ √
√ (3 5−5) 5+ 5 √ 10 2 √ 3 √ √3 √ 5− 5( 5−1) √ 2 2
1 √ 3 √ 2+ 3 ∞
値を表 4.1 にあげておきます.ランベルト (1770c) に,α = 3◦ , 6◦ , 9◦ , 12◦ , . . . に 対する sin α の完全な表があります.
I.4.2 級数展開 弧 z が限りなく小さかったとせよ.そのとき,sin z = z であり cos z = 1 であっ て ...5
(オイラー『入門』(1748) §134)
上の (4.5) から (4.14) までの式はすべて (4.3), (4.4) と (4.2a) とだけから導か れたのですが,ここで新しく基本的な仮定が必要になります.それは,x がゼロ に近づくとき, 「垂直の弦」は弧に近づいていく,ということです.角をラジアン で測っているので,x がゼロに近づけば近づくほど sin x が x によって近似され る度合いがよくなる,ということです.このことを
(4.15)
sin x ≈ x
(x → 0)
と書きます.等式 (2.14) や (2.15) の証明と同じアイデアを使ってみましょう.ド・ モアヴルの公式 (4.14) で,固定した値 y に対して x = y/N, n = N と置き, N を無限に大きくし,x をゼロに近づけます.そこで,(4.15) により sin x を x で置き換え,cos x を 1 で置き換えます.さらに N → ∞ だから,すべての項 (1 − k/N ) は 1 になります.こうして次の公式が得られます(ニュートン (1669), 5
[訳註]ラテン語原文:Sit arcus z infinite parvus; erit sin z = z et cos z = 1; . . .
I.4. 三角関数
55
ライプニッツ (1691),ヤーコプ・ベルヌーイ (1702)).ただし,変数 y を x に 書き戻しています.
(4.16)
cos x = 1 −
x2 x4 x6 x8 + − + − ··· 2! 4! 6! 8!
(4.17)
sin x = x −
x5 x7 x9 x3 + − + − ··· 3! 5! 7! 9!
ニュートンの導き方は演習問題 4.1 で示してあります.上の証明はヤーコプ・ベ ルヌーイとオイラー『入門』§134 のものです. 注意 N の値が大きいときに cos(y/N ) を 1 で置き換えることは,少し注意 する必要があります.というのはこの表示には N のベキが掛かっているからで す.たとえば,N → ∞ のとき 1 + y/N は 1 に近づくのですが,(1 + y/N )N はそうはなりません(定理 2.3 参照).cos(y/N ) が 1 + y/N よりも速く 1 に収 束することで救われているのです.実際,(4.2d),定理 2.2,(4.15) によって,
cosN (y/N ) = (1 − sin2 (y/N ))N/2 ≈ 1 −
1 y2 −→ 1 2N
となっています. 級数 (4.16) と (4.17) の収束の様子は図 4.8 に図示してあります.この級数は すべての x に対して収束するのですが(III.7 節参照),図で見ると数値的には
x = 15 を越えると丸めの誤差6 の問題が起きています(計算はわざと単精度でやっ ている).
tan x に対する級数 sin x = a1 x + a3 x3 + a5 x5 + a7 x7 + · · · cos x とおきます.a1 , a3 , a5 , . . . を求めるためにこの式に cos x を掛けて既知の級数 (4.16) と (4.17) を使うと x5 x4 x3 x2 + − · · · = (a1 x + a3 x3 + a5 x5 + · · · ) 1 − + − ··· x− 6 120 2 24 y = tan x =
となります.x, x3 , x5 の係数を比較すると 6
[訳註]計算の各段階で得られる数値を一定の精度で定めていかないといけないが,この操作を丸め るといい,結果を得るために行う計算の回数が増えれば結果に影響することになる.今日では「計 算誤差」という用語の方が適切と言われている.
56 3 2
第 I 章 無限の解析入門
y = sinx
1
5
9
13
17
21
25
29
33
37
41
45
1 0
5
−1
10
15
−2 −3 3 2
3
y = cosx
7 4
11 8
15
12
19
16
23
20
27 24
31
28
35
32
39
36
43 40
44
1 0
5
−1
10
15
−2 2
−3
6
10
図 4.8 級数 sin x = x −
1 = a1 ,
−
14 x3 3!
+
18 x5 5!
22
26
30
− · · · と cos x = 1 −
a1 1 = − + a3 , 6 2
34 x2 2!
+
38 x4 4!
42
− ···
a1 a3 1 = − + a5 120 24 2
となり,したがって,
a1 = 1,
1 1 1 a3 = − + = , 6 2 3
a5 =
1 1 2 1 − + = 120 24 6 15
となります.これを続けていけば,
(4.18) tan x = x +
2x5 17x7 62x9 1382x11 21844x13 x3 + + + + + + ··· 3 15 315 2835 155925 6081075
という級数が得られます.これだけでは一般的な規則は見えてきませんが,実は ベルヌーイ数 (1.30) に基づいた規則があります(II.10 節の演習問題 10.2 参照).
古代の計算の表 sin 15◦ , cos 15◦ , sin 18◦ , cos 18◦ がわかっていることから,プ トレマイオスは (4.3 ) と (4.4 ) を用いて sin 3◦ , cos 3◦ を求め,次いで (4.11) に よって sin 1.5◦ , cos 1.5◦ , sin 0.75◦ , cos 0.75◦ などを求めました.しかし,sin 1◦ を求めることは不可能なのです.プトレマイオスは幾何的直観により(すでに知っ ているように,角が小さいとサインは弧に近づいていくので),
(4.19)
sin 1◦ ≈ sin 0.75◦ · 4/3
I.4. 三角関数
57
であると述べています.そうすれば,角 2◦ , 3◦ , 4◦ などに対するサインとコサイ ンの値を,(4.14) を使って得ることができます.1464 年頃,レギオモンタヌスは
1 分刻みですべての角に対して,小数点以下 5 桁の精度でサインの値を与える表 (「1 分ごとに拡張された,同じヨハネス・レギオモンタヌスのサインの表が今や 出されるのである . . . 7 」)の計算をしています.図 4.9 の彼の手で書かれた tan x の表を見て欲しい(普通 4 桁目まで正しい).
図 4.9 レギオモンタンヌスによる tan α の自筆の表 (カウンツナー (1980) 参照)8
sin 1◦ の非常に精密な計算がアル・カーシー(1429 年のサマルカンドで)によっ てなされています.方程式
−4x3 + 3x = sin 3◦
(4.20)
((1.10) 式参照)を,逐次近似を使って数値的に解くことで,60 進数表示での解
sin 1◦ = 1, 2, 49, 43, 11, 14, 44, 16, 19, 16, . . . を与えています(「我々はそれを永遠の存在から霊感の力で引き出したのだ. 」A. アアボエ (1954) 参照).ここで現在のコンピュータを使って計算した 60 進数で の正しい値
sin 1◦ = 1, 2, 49, 43, 11, 14, 44, 16, 26, 18, 28, 49, 20, 26, 50, 41, . . . 7 8
[訳註]ラテン語原文:SEQVITVR NVNC EIVSDEM IOANNIS Regiomontani tabula sinuum, per singula minuta extensa . . . [原註]ニュルンベルク市立図書館の許可を得て転載. Cent V, 63, f30r .
58
第 I 章 無限の解析入門
をあげておきます.ここでもう一度,級数 (4.17) の方法が目覚ましい進歩であっ たことを見ておきましょう.sin 1◦ = sin(π/180) = sin(0.0174532925 · · ·) の値 が,たった 3 項で
sin 1◦ ≈ 0.0174532925199 − 0.0000008860962 + 0.000000000013496 ≈ 0.0174524064373 と,得られているのです.
I.4.3 逆三角関数 三角関数とは弧 x が与えられたときに sin x, cos x, tan x を定めるものでした. 逆三角関数とは,弧 x を sin x, cos x, tan x の関数として定めるものです. 定義 (4.3) 斜辺の長さ 1 の直角三角形を考えます.x を角の対辺の長さとする と,arcsin x は弧の長さです(図 4.10a 参照).arccos x や arctan x の値も同様 に定義されます(図 4.10b と図 4.10c 参照).
1
1
1 x
1
x
0
arcsin x 1
0
a)
1
arccos x
x
1
1
arctan x
0
b)
1 c)
図 4.10 arcsin x, arccos x, arctan x の定義
三角関数が周期的であるために,逆三角関数は多価になります.そこで,次の 不等式を満たす主値と呼ばれる値をとることにします.
y = arcsin x
⇐⇒ x = sin y
(−1 ≤ x ≤ 1, −π/2 ≤ y ≤ π/2)
y = arccos x
⇐⇒ x = cos y
(−1 ≤ x ≤ 1, 0 ≤ y ≤ π)
y = arctan x
⇐⇒ x = tan y
(−∞ < x < ∞, −π/2 < y < π/2)
arctan x の級数 arctan x の級数は 1671 年に J. グレゴリーによって発見され ました.その後 1674 年にライプニッツにより再発見され,1682 年の『学術論叢』 に発表されました.ライプニッツはそこで,この結果に彼を導いた筋道を暴かな
I.4. 三角関数
59
かった神 (the Lord) の優しさを感激を込めて語っています9.その方法は彼の個 人的なノートを調べることによってやっと発見されたものです(M. カントール
(1880–1908) 第 III 巻,p.80 参照).
a)
b)
c)
図 4.11 y = arctan x の級数の導出
図 4.12 ケプラー (1615) にある円の面積10
b を与えられた値として y = arctan b と置きます(図 4.11 参照.弧 AD と DC は同じ長さです).アルキメデスとケプラー(図 4.12 参照)以来,扇形 OADCO の面積 G は弧長の半分であること,つまり, (4.21)
G=y
であることが知られていました.2 つの合同な三角形からなる四角形 OABCO の 面積 F は
(4.22) 9 10
F =b
[訳註]日本人の読者にとって,先取権争いのこの凄じさはすこし辟易するかもしれない.ニュー トンとの激しい争いを考えないと理解しにくいものがある. [原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載.
60
第 I 章 無限の解析入門
です.問題は三日月型の領域 ABCDA の面積 L を計算することです.ライプ ニッツはそれを小さな三角形(その 1 つを図 4.11b に描いた) に分割しました.そ の三角形の面積が
x2 Δx · h = · Δx 2 1 + x2
(4.23) となるのは, (4.10)
h = 1 − cos(2α) = 2 sin2 α =
2 tan2 α 2 sin2 α 2x2 = = 2 2 x +1 tan α + 1 sin α + cos2 α 2
だからです.したがって,三日月型の面積 L は関数
x2 x2 + 1
(2.12)
= x2 − x4 + x6 − x8 + x10 − · · ·
のグラフ(図 4.11c)の下方の領域の面積となります.それゆえ,定理 3.2(フェ ルマー)によって,
L=
b5 b7 b9 b11 b3 − + − + − ··· 3 5 7 9 11
となります.最後に (4.21) と (4.22) とから
y =G=F −L=b−
b5 b7 b9 b11 b3 + − + − + ··· 3 5 7 9 11
となります.こうして公式
(4.24)
arctan x = x −
x5 x7 x9 x11 x3 + − + − + ··· 3 5 7 9 11
が得られます.この式は |x| ≤ 1 で有効です.
arcsin x の級数 これらの事柄に極めて優れた才能を持っている友人が,先日数枚の論文を持って こられました.そこには,メルカトール氏の双曲線に関する計算法に似た,広がり の大きさを計算する方法が書き下されております.その方法は大変一般的なもの で. . . 彼の名前はニュートン氏です.我がカレッジのフェローで,非常に若く. . . け れど,これらの事柄についての尋常でない才能と練達の士であります.(バロー からコリンズへの手紙 (1669),ウェストフォール (1980), p.20211 から引用)
ln(1 + x) の級数が記載されたメルカトールの本が 1668 年末に出版されると, 11
[訳註]日本語訳では p.218.
I.4. 三角関数
61
ニュートンは急いで原稿(ニュートン『解析について』(1669))を何人かの友人に 見せましたが,出版することは許しませんでした.最終的には,それは W. ジョー ンズによって出版された『量の解析』(ニュートン 1711)の中に第 1 章として入 れられることになりました.ニュートンはメルカトールの級数をずっと早く発見 していたばかりでなく,級数
(4.25)
arcsin x = x +
1 · 3 x5 1 · 3 · 5 x7 1 x3 + + + ··· 2 3 2·4 5 2·4·6 7
や,sin x, cos x の級数の第 1 発見者でもありました(演習問題 4.1 参照).(4.25) 式に対するニュートンの証明は次のようなものです. 証明 x が与えられたとして,x = sin y を満たす弧 y を計算したいものとし ます(図 4.13 参照).x が Δx だけ増えたら,y が Δy だけ増え,図 4.13 の 2 つの影のついた三角形が相似だから,
Δx Δy = √ 1 − x2 √ となります.この量は幅が Δx で高さが 1/ 1 − x2 の長方形の面積なので,図 √ 4.11c のときと同様に,全弧長 y は関数 1/ 1 − x2 の下方の 0 から x までの領 域の面積に等しくなります.この関数を a = −1/2 として二項定理 2.2 で展開す (4.26)
れば,
(4.27)
√
1 1 1·3 4 1·3·5 6 x + x + ··· = 1 + x2 + 2 2 2·4 2·4·6 1−x
となり,また関数 1, x2 , x4 , . . . をその面積 x, x3 /3, x5 /5, . . . で置き換えると(定 理 3.2),公式 (4.25) が得られます.
図 4.13 y = arcsin x に対する (4.25) の証明,ニュートン (1669) のイラスト12
12
[原註]図 4.13 の右側の図はジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載.
2
62
第 I 章 無限の解析入門
I.4.4 π の計算 . . . 貴方は,幾何学者の間で永遠によく知られることになる,円の極めて顕著な性 質を発見されたことを否定なされないでしょう. (ホイヘンスからライプニッツへの手紙(1674 年 11 月 7 日)) それゆえ,直径対円周の比は 1.000· · · 対 3.141592653.5897932384.626433832
7.9502884197.1693993751.0582097494.4592307 816.4062862089.9862803482. 5342117067.9+ となる.これは 100 桁以上正しく,真に巧妙なジョン・マチン 氏の正確で調整されたペンによって計算されたものである.これはまさに,算術 計算が現代の解析から受けた大きな利点の例になっている.このテーマは,汲め ども尽きぬ魅惑を持っていて,いつの世においても,最も傑出した数学者の精神 をその考察に捧げさせてきた.. . . しかし, (ニュートン氏とハリー氏が改良した) 級数の方法はアルキメデス,ヴィエート,ファン・ケーレン,メチウス,スネリ ウス,ランスベルギウスなどの冗長で込み入った方法と比べて,遥かに容易にこ のことを達成するものである.
(W. ジョーンズ 1706)
アルキメデス(紀元前 283–212 年)は n = 6, 12, 24, 48, 96 の正 n 角形の周の 長さを計算し,半角の公式 (4.11) を繰り返し使うことによって,
(4.28)
3
1 10 0 だったら f (x) は増加するでしょう. つまり,2 点 x0 < x1 に対して f (x0 ) < f (x1 ) ということになります.これは, 曲線は x0 でより x1 での方が急な傾きであるという意味で,つまり上向きに曲 がっているということです(図 2.1a の左図参照).このとき,関数 f (x) は下に 凸であると言います.
図 2.1a 2 階導関数の幾何学的意味
1 2
[訳註]ラテン語原文:ad infinitum [原註]バーゼル大学図書館の許可を得て転載.
図 2.1b ヨハン・ベルヌーイの手描 きの図 (1691/92)2
110
第 II 章 微積分法
同様に,a < x < b に対して f (x) < 0 であったら,関数 f (x) は上に凸にな ります(図 2.1a の右図参照).f (x0 ) = 0 で 2 階導関数が符号を変える点 x0 を 変曲点と言います.図 2.1b は,これらのことを説明する,ヨハン・ベルヌーイの 手描きの図を複製したものです. 「最大最小3 」問題 8–10 年前には最大最小3 問題と曲線の接線4 の問題は申し分ない状態になってお り,この 5, 6 年の間にそのことを見てきた数人の人には証人になって貰えるとい うことを,彼に知って欲しいだけなのです.(フェルマーからデカルトへの手紙 (1638 年 6 月)『全集』第 2 巻,pp.154–162) ある量が,なれるとして,最大か最小かになったとき,そのときそれは後にも前 にも流れません.というのも,もし前へ流れる,つまり増加するのであれば,かっ てはより小さかったのであり,やがて今より大きくなるでしょう.. . . そのために その流率を求め,命題 1 によって,それが無であると仮定するのです. (ニュートン (1671),英語版 (1736), p.44)
最大値や最小値を求めるという問題は微積分法に対する元々の動機であり(フェ ルマー 1638),ラグランジュはその生涯をかけてそれを洗練させたのです(ラグ ランジュ 1759). 関数 f (x) の最大値,または最小値では,この関数は増加も減少もできません. それゆえ,f (x0 ) = 0(停留点)となります.f (x) の符号が + から − に変わる とき(これは f (x0 ) < 0 の場合に起きます)関数は(局所的に)最大値になり, 符号が − から + に変わるとき(これは f (x0 ) > 0 のときに起きます), (局所 的に)最小値になります5.これをまとめると
(2.1)
f (x0 ) = 0 かつ f (x0 ) > 0
⇒
x0 は局所的な最小値
f (x0 ) = 0 かつ f (x0 ) < 0
⇒
x0 は局所的な最大値
となります.この事実を「一連の例によって説明しましょう6」.
3 4 5 6
[訳註]ラテン語原文:de maximis & minimis [訳註]ラテン語原文:tangentibus linearum curvarum [訳註]局所的な最小値を極小値と言い, 局所的な最大値を極大値と言うこともある.日本語とし て便利だからこれを使う人も多い. [訳註]ラテン語原文:sequentibus exemplis illustrabimus
II.2. 高階導関数とテイラー級数
111
例 1 例として
y = x3 − x2 − 3x (2.2)
y = 3x2 − 2x − 3 y = 6x − 2
を考えると,関数は y > 0 のところで,つ
√
√
まり x < (1− 10)/3 と x > (1+ 10)/3 のとき増加することがわかります.x >
1/3 のとき下に凸で,x < 1/3 のとき上 に凸です.点 x = 1/3 は変曲点です.点 x = (1 −
√
10)/3 は局所的には最大で √ (全体としての最大値でなく),点 x = (1 + 10)/3 は局所的な最小値です. 例 2(オイラー (1755) 後編 §265 参照) 図 2.2 に描かれた関数とその導関数,2 階の導関数
(2.3)
y=
x , 1 + x2
y =
1 − x2 , (1 + x2 )2
y =
−6x + 2x3 (1 + x2 )3
を考えます.関数 y(x) は x = −1 で(全体としての) 最小値をとり,x = 1 で
√
(全体としての)最大値をとり,x = 0 と x = ± 3 は変曲点となります.区間
√ √ − 3 < x < 0 と 3 < x < ∞ では下に凸で,他の区間では上に凸です.
図 2.2 最大値,最小値,変曲点のオイラーの例
112
第 II 章 微積分法
A v1
a α1 x
α2
l−x b
v2 B 図 2.3 ヨハン・ベルヌーイ (1691/92) の手描きの図7
図 2.4 フェルマーの原理
フェルマーの原理 . . . そして,自然はいつも最も短く最も易しい道を通って動くという,我々の共通 の原理の中に屈折の理由を見つけることです. (ド・ラ・シャンブルへのフェルマー の手紙(1657 年 8 月), 『フェルマー全集』第 2 巻, p.354)
フェルマーは,光の速さがそれぞれ v1 と v2 である 2 つの媒質の境界での光 の屈折に関するスネリウスの法則を説明したいと考えました.(図 2.4 の)2 点
A, B が与えられたとき,A から B まで最短時間で,つまり最小の抵抗で光が走 るような角 α1 と α2 を求めること,言い換えれば √ b2 + ( − x)2 a2 + x2 (2.4) T = + = 最小 ! v1 v2 となるような x を求めることが問題です.フェルマー自身この問題が解析的な扱 いをするには難しすぎると考えています(「この問題が最も易しい問題の 1 つで ないことを認めよう」).その後,ライプニッツ (1684) は誇らしげに「3 行で8 」 この計算をやって見せています.x の関数として T を微分すると
1 −2( − x) 2x 1 √ + 2 2 v1 2 a2 + x2 v 2 b + ( − x) 2 √ となります.sin α1 = x/ a2 + x2 と sin α2 = ( − x)/ b2 + ( − x)2 である T =
ことから,この導関数が
(2.5)
sin α1 sin α2 = v1 v2
のときに 0 になること(スネリウスの法則)がわかります.T を計算すると 7 8
[原註]バーゼル大学図書館の許可を得て転載. [訳註]ラテン語原文:in tribus lineis
II.2. 高階導関数とテイラー級数
T =
2
113
2
1 1 a b + >0 2 2 3/2 2 v1 (a + x ) v2 (b + ( − x)2 )3/2
となり,この結果が本当に最小値であることがわかります.
II.2.2 関数の級数への変換について 9 テイラーのアプローチ 実際ここには 比べるもののないほど大胆な極限移行がある. (F. クライン (1908),英語版,p.23310 )
関数 f (x) に対して点 x0 , x1 = x0 + Δx, x2 = x0 + 2Δx, . . . とそこでの値
y0 = f (x0 ), y1 = f (x1 ), y2 = f (x2 ), . . . を考えます(テイラー 1715).このと き,これらの点を通る補間多項式を計算すると(図 2.5 と定理 I.1.2 参照.定理は 0 x = x0 + tΔx, t = x−x Δx として使う), (x − x0 )(x − x1 ) Δ2 y0 x − x0 Δy0 + 1 Δx 1·2 Δx2 とか,もっと高次の項のあるものが得られます.もし,Δx → 0, x1 → x0 , x2 → x0 とすれば(つまり,述べてきたように,Δx を無限に小さくすれば), 第 2 項の商 Δy0 /Δx は f (x0 ) に近づいていきます.さらに,第 3 項にある積 (x − x0 )(x − x1 ) は (x − x0 )2 に近づいていきます.ここでテイラーは,2 階差 分(を Δx2 で割ったもの)は 2 階の導関数に近づいていくものと仮定しました (演習問題 2.5 と III.6.4 節参照).さらに一般に Δk y0 dk y (2.7) → k = f (k) (x0 ) k Δx dx 0 (2.6)
p(x) = y0 +
図 2.5 テイラーの多項式の創造 9 10
[訳註]ラテン語原文:De Conversione Functionum in Series [訳註]日本語版の第 2 巻, p.313
114
第 II 章 微積分法
と仮定しました.もし,補間多項式 (2.6) で次々と高次の項を考え,同時に Δx → 0 という極限をとれば,有名な公式
(2.8) f (x) = f (x0 ) + (x − x0 )f (x0 ) +
(x − x0 )2 (x − x0 )3 f (x0 ) + f (x0 ) + · · · 2! 3!
が得られることになります.第 I 章であげたすべての級数はこの「普遍的な級数11」 の特別な場合になってしまいます.たとえば,関数 f (x) = ln(1 + x) の値は,そ の導関数と共に
f (0) = 0,
f (0) = 1,
f (k) (0) = (−1)k−1 (k − 1)!
という値ですから,
ln(1 + x) = x −
x3 x4 x2 + − ± ··· 2 3 4
という級数が得られます. 注意 1 世紀以上もの間,(2.8) 式は一般に正しいと信じられていましたが,コー シーは,級数 (2.8) は収束するものの f (x) には収束しない関数の例を見つけまし た(III.7 節参照).さらに級数 (2.8) が x = x0 に対してまったく収束しないよ うな関数の例も存在します(演習問題 III.7.6 参照).(2.8) 式のもっと納得のい く証明(ヨハン・ベルヌーイによる)は積分法を使うもので,II.4 節で考えるこ とにします. マクローリンのアプローチ(マクローリン (1742) pp.223–224,第 255 項) 関数
y = f (x) と点 x0 が与えられたとき,級数(または多項式) (2.9)
p(x) = p0 + (x − x0 )q0 + (x − x0 )2 r0 + (x − x0 )3 s0 + · · ·
であって,
(2.10)
p(i) (x0 ) = f (i) (x0 ),
i = 0, 1, 2, . . .
を満たすものを探すことにします.つまり,ある階数までの導関数の x = x0 で の値が等しいような関数を求めます.(2.9) 式で x = x0 と置けば,(2.10) によ り p0 = p(x0 ) = f (x0 ) となります.(2.9) 式を微分してまた x = x0 と置け ば,q0 = p (x0 ) = f (x0 ) となります.さらに微分していけば,2!r0 = f (x0 ),
3!s0 = f (x0 ) などなどが得られます.それゆえ,級数 (2.9) は 級数 (2.8) と同 11
[訳註]ラテン語原文:series universalissima
II.2. 高階導関数とテイラー級数
115
じものなのです. 級数 (2.8) の部分和を テイラー多項式と呼びます. 例 (2.2) 式の関数に対して,点 x0 = 1 を選 ぶと f (x0 ) = −3, f (x0 ) = −2, f (x0 ) = 4,
f (x0 ) = 6 となるので,1 次, 2 次, 3 次のテイ ラー多項式は
p1 (x) = −3 − 2(x − 1) = −2x − 1, p2 (x) = p1 (x) + 42 (x − 1)2 = 2x2 − 6x + 1, p3 (x) = p2 (x) + 66 (x − 1)3 = x3 − x2 − 3x となります. 方程式の根に対するニュートンの方法 テイラー多項式は根の近似計算をするの に極めて役に立つ道具です.ニュートン (1671) が扱った例
x3 − 2x − 5 = 0
(2.11)
を考えます.関数 f (x) = x3 − 2x − 5 の値をいくつか調べると,f (0) = −5,
f (1) = −6, f (2) = −1, f (3) = 16 となります.したがって,x0 = 2 の近く に根があります.ここで用いるアイデアは曲線 f (x) を点 x0 での接線,つまり
p1 (x) = −1 + 10(x − 2) にとり換えることです.p1 (x) = 0 の根は x = 2.1 で あり,これは (2.11) の根へのよりよい近似になっています.そこで x0 = 2.1 と おいて,同じ計算をします.こうして p1 (x) = 0.061 + 11.23(x − 2.1) が得られ, (2.11) の根への新しいよい近似として x = 2.0945681 が得られます.もう 1 ス テップ行えば x = 2.0945515 が得られますが,ここの数字はすべて正しいもので す(図 2.6 のニュートンの計算参照). 2 次の多項式の使用(E. ハリー 1694) 上の例で点 x0 = 2.1 を選び,テイラー 多項式の 2 つの項を使うと,z = x − 2.1 に関する 2 次方程式 0.061 + 11.23(x − 2.1) + 6.3(x − 2.1)2 = 0 が得られます.2 つある根のうち絶対値の小さい方(つまり 2.1 に近い方)を選 べば
z = x − 2.1 =
−11.23 +
√ 11.232 − 4 · 0.061 · 6.3 12.6
が得られ,x = 2.0945515 となります.これもまたすべての数字が正しいのです
116
第 II 章 微積分法
図 2.6 x3 − 2x − 5 = 0 に対するニュートンの計算12
が,今回は 1 度しか繰り返しをしていません.
II.2.3 演習問題 2.1 (オイラー (1755) §261)関数 y = x4 − 8x3 + 22x2 − 24x + 12
と
y = x5 − 5x4 + 5x3 + 1
を調べ,最大値,最小値,下に凸な領域,変曲点を求めなさい.
2.2 (オイラー (1755) §272)数列 √ √ √ √ √ 1 2 3 4 5 1 = 1, 2 = 1.4142, 3 = 1.4422, 4 = 1.4142, 5 = 1.3797 , . . . √ を見ると,関数 y = x x = x1/x は x = 3 の近くに最大値があるように見える.厳密に はどこにあるのか? この値と y = xx の最小値とはどんな関係にあるのか? 12
[原註]ジュネーヴ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]表の計算を追っていけば, y の方程式を 2 からのずれ p の式にして,1 次の部分で 0.1 と いう近似値を得,さらに p の 0.1 からのずれ q を求め,さらに q の近似値 −0.54 からのずれ r を求めようとしている. q の表の 2,3 行目では q とそのベキが省略され, r の表でも 1ヶ所 r の記 号が省略されている.さらに r の表では q 3 にあたる部分も省略されているが,得られる近似値に 影響しないことを見極めての省略で, 有効数字の感覚が素晴らしい. 表の中の「和 (Summa)」がわかれば,表の下の文章は一番下の箱と一番上の箱の内容を表してい るだけだが訳しておこう. (まだ小数点の代わりにコンマを使っている. ) 「. . . を省略すると,6.3r 2 + 11.16196r + 0.000541708 = 0 となり,また(6.3r 2 を省略すると) r = −0.000541708 = −0.00004853 となり,商の負の部分に書く.そして正の部分から負の部分 11.16196 」 を引けば,2.09455147 が得られ,これが求めていた商である.
II.3. 包絡線と曲率
117
2.3 (ヨハン・ベルヌーイ 1691/92)円 √ y = x − x2 上の点に対して横座標と縦 座標で作られる長方形の面積が最大になる ような x を求めなさい.2 階導関数を計算 して最大値であることを検証しておくこと.
0
x
1
2.4 (オイラー (1755)§272)x sin x の(局所的な)最大値を与える x を求めなさい(ニュー トンかハリーの方法で,解くのに最良の方程式が得られる.オイラーは x = 116◦ 14 21 20 35 47 という結果を与えている.正しい値は最後の 2 つが 32 38 である). 2.5 関数 y = x3 に対して 2 階差分 Δ2 y = (x + 2Δx)3 − 2(x + Δx)3 + x3 を計算し,この差分を Δx2 で割ったものが,Δx → 0 のときに,2 階導関数 6x に近づ いていくことを示しなさい.
2.6 f (x) = sin(x2 ) とする.f (x), f (x), f (x), f (x), . . . を計算して,テイラー 級数
f (x) = f (0) + f (0)x + f (0)
x2 x3 x4 + f (0) + f (0) + ··· 2! 3! 4!
を求めなさい.この結果を得るのに,もっとよい方法があるか?
√ 2.7 x2 − 2 = 0 にニュートンの方法を適用したものが, 2 のバビロニアの計算であ る (I.2.13) 式と同じであることを示しなさい.それなのに,(I.2.14) 式がハリーの方法で 得られるものと異なるのはなぜか?
2.8 (ライプニッツ 1710)関数 y(x) = u(x) · v(x) に対して (1.4) 式を拡張して y = u v + 2u v + uv ,
y = u v + 3u v + 3u v + uv
を示しなさい.y (n) に対する一般的な式を見つけなさい.
II.3 包絡線と曲率 バーゼル大学の教授をしている兄がこの機会をとらえて,毎日自然が目の前に現 すいくつかの曲線を研究して. . .
(ヨハン・ベルヌーイ 1692)
貴方と比較できるほどの幾何学者が他にいそうもないことを,私は確信していま す.
(ロピタル侯爵 (1695) のヨハン・ベルヌーイへの手紙)
II.3.1 円の焦線 次の問題を考えましょう.x2 + y 2 = 1 を円とし(図 3.2),上からの平行な光 線がこの円で反射されるとします.すると新しい直線族が得られ,それにより興 味深い包絡線が得られているのがわかります.問題はこの包絡線の方程式を求め
118
第 II 章 微積分法
ることです. ヨハン・ベルヌーイ (1692) は「普通のデカルト幾何による1」解を与えていま すが,一方 「講義2 」(ヨハン・ベルヌーイ 1691/92b, 27 講「平行な放射の円の 焦線3 」, 『全集』第 3 巻,p.467)の中では,彼は「現代の」微積分法を使ってい ます. 中心から距離 a だけ離れている垂直に射す光線(図 3.1a 参照)に対しては,
b=
√ 1 − a2 , tan α = a/b であり,反射光線の傾きは, −1 π = tan 2α − 2 tan 2α
(I.4.5) =
1 tan2 α − 1 = 2 tan α 2
b a − b a
となります.こうして,この光線の方程式は
(3.1)
1 y = −b + 2
b a − b a
(x − a) =
−a + (2a2 − 1)x √ 2a 1 − a2
となります.この式は問題となっている直線族を表しています.ここでパラメー タ a は −1 から 1 まで動きます.問題は,この族が覆っている領域の境界(図
3.2 参照)になっている曲線の式を求めることです.この曲線を直線族 (3.1) の包 絡線と言います. アイデア(ライプニッツ 1694a) パラメータが a と a + Δa に対応する 2 本 の隣り合った直線を考えます(図 3.1b 参照).この 2 本の直線の交点が(Δa → 0 とすれば)包絡線の点になるでしょう.この交点は,x を固定するとき,a が変
図 3.1a 光線の反射 1 2 3
図 3.1b 2 本の隣り合う光線
[訳註]ラテン語原文:per vulgarem Geometriam Cartesianam [訳註]ラテン語原文:Lectiones [訳註]ラテン語原文:Lectio XXVII, Caustica circularis radiorum parallelorum
II.3. 包絡線と曲率
−1
0
119
1
図 3.2 円の焦線(ヨハン・ベルヌーイ 1692)
わっても (3.1) の縦座標 y が変化しないということで特徴づけられることになり ます.それゆえ,式 (3.1) の a に関する導関数が(x を一定と考えて)0 になら なければなりません.これを a に関する偏導関数と呼び,ヤコビ (1827)(『全集』 第 3 巻,p.65)に従って
∂y =0 ∂a
(3.2)
と書くことにします.関数 (3.1) に対して,(1.6) を使えば,
√ 1−2a2 a 1 − a2 (−1 + 4ax) − (−a + (2a2 − 1)x) √ −a3 + x ∂y 1−a2 = = ∂a 2a2 (1 − a2 ) 2a2 (1 − a2 )3/2 が得られます.条件 (3.2) から x = a3 が,つまり a = x1/3 が得られます.この 値を (3.1) 式に代入すると,各 x に対する円の焦線の位置が
(3.3)
y=
−x1/3 + 2x5/3 − x √ =− 2x1/3 1 − x2/3
1 + x2/3 1 − x2/3 2
という式で得られます.
II.3.2 弾道曲線の包絡線 私は,焦線の性質を解いたのと似たような方法で . . . 弾道曲線の性質を発見しま した.ファティオ氏が証人です. 『書簡集』,p.111) (ヨハン・ベルヌーイの手紙(1691 年 6 月),
問題 大砲が砲弾をあらゆる角度で,初速 v0 = 1 で打ち上げます.すべての 弾道放物線の包絡線を求めたいとします(図 3.3 参照).
120
第 II 章 微積分法
.4 .2
.5
1.0
図 3.3a 砲撃放物線の包絡線
図 3.3b サンクト・ペテルブルグ,ペ テルホフ,太陽の噴水(1721 年)
解法(ヨハン・ベルヌーイ,引用参照) a を大砲の勾配とすると,砲弾の運動 は(重力加速度 g = 1 のもとで),
at t2 y(t) = √ − 2 1 + a2 √ によって与えられます.パラメータ t = x 1 + a2 を消去すれば t x(t) = √ , 1 + a2
y = ax −
(3.4)
x2 (1 + a2 ) 2
が得られます.(3.4) 式を a に関して微分すれば,∂y/∂a = x − ax2 となり,条 件 (3.2) は a = 1/x を表しています.これを (3.4) 式に代入すれば
y = (1 − x2 )/2
(3.5)
が得られるので,包絡線は大砲を焦点とする放物線となります.
II.3.3 直線族の包絡線 3 つ目の例として A. デューラー(1525, p.38. 図 3.4 参照)の線画の中に見られる包絡線を選び ます.点 (a, 0) と (0, 13 − a) を通る直線族
(3.6)
y=
a − 13 (x − a) a
13−a
を考えます.微分すると ∂y/∂a = −1 + 13x/a2 が得られ,条件 (3.2) から a = と包絡線
(3.7)
a
√ 13x が得られます.これを (3.6) 式に代入する
√ √ √ 13x − 13 √ x − 13x = x − 2 13x + 13 y= 13x
II.3. 包絡線と曲率 20
121
y
15 10 ξ
5
x −5
0
5
10
15
20
η 図 3.4 放物線を作る直線族とデューラーのスケッチ (1525)4
が得られます.平方根を除きたいので,両辺から x + 13 を引いて,2 乗すると
(y − x − 13)2 = 52x
(3.8)
となります.これは円錐曲線です.その性質を決めるために,新しい座標 ξ =
√ √ (x + y)/ 2, η = (x − y)/ 2 を導入すれば,方程式 (3.8) は √ √ √ (3.9) (13 + η 2)2 = 26 2 (ξ + η) または 2η 2 = 26 2 ξ − 169 となります.つまり,この包絡線は放物線になります.
II.3.4 曲率 神がねじ曲げたものを誰が真っすぐにできるだろうか? (『旧約聖書,伝道の書』 VII, 13) これよりもエレガントというか,その本質を鋭く洞察するような,曲線に関する 問題がいくつかある.
(ニュートン 1671,英語版 (1736), p.59)
問題 曲線 y = f (x) と曲線上の点 (a, f (a)) が与えられたとき,a の近くで関 数 f (x) をできるだけ近似する円の方程式を求めたいとします.そのとき,この 円を曲率円と言い,その中心を曲率中心と言います.そして,半径の逆数を,曲 線の点 (a, f (a)) での曲率と言います.
4
[原註]Dr. Alfons Uhl Verlag (N¨ ordlingen) の許可を得て転載.
122
第 II 章 微積分法
アイデア(ニュートン 1671)
y = f (a) −
(3.10)
1 f (a)
(x − a)
を曲線 y = f (x) の点 x = a における法線とします.a を増やしてみると(「点
D を曲線上で無限に小さい距離を動かすことを想像すると」),そこでの法線は元 の法線と曲率中心で交わるでしょう(図 3.5 参照).
図 3.5 ニュートン (『流率論』1671.仏訳 1740)5 のスケッチした曲率
状況は包絡線のとき(図 3.1b 参照)とまったく同じです.そこで,
∂y f (a) 1 = f (a) + (x − a) + 2 ∂a (f (a)) f (a)
(3.11)
を計算して,条件 (3.2) を使うと,曲率中心は
(3.12)
1 + (f (a))2 f (a) 1 + (f (a))2 x0 − a , y0 − f (a) = − = x0 − a = − f (a) f (a) f (a) となります.したがって,半径 r = (x0 − a)2 +(y0 − f (a))2 と曲率 κ = 1/r は 3/2 1 + (f (a))2 |f (a)| (3.13) r= と κ = 3/2 |f (a)| 1 + (f (a))2 となります. 例 放物線 y = x2 に対しては r = (1 + 4a2 )3/2 /2 であり,曲率中心は
(3.14) 5
x0 = a −
(1 + 4a2 )2a = −4a3 , 2
y 0 = a2 +
[原註]Editions Albert Blanchard (Paris) の許可を得て転載.
1 1 + 4a2 = + 3a2 2 2
II.3. 包絡線と曲率
123
となります.この式は曲率中心 (x0 , y0 ) の幾何的な軌跡のパラメータ表示になっ ています.この曲線を縮閉線6と言います.(3.14) 式で,パラメータ a を消去す ると,
2/3 1 x0 +3 2 4
y0 =
が得られます(図 3.6b 参照).図 3.6a を見ていると,縮閉線が元の曲線の法線 族の包絡線であることがわかるでしょう.
図 3.6b 放物線 y = x2 とその縮閉線
図 3.6a 縮閉線 = 法線族の包絡線
パラメータ表示での曲線の曲率 曲線 (x(t), y(t)) が点 (x(a), y(a)) の近くで,
y = f (x) と表わすことができるとします.すると,(1.20) によって f (x) = となり,2 階微分は
d f (x) = dx
6
dy dx
d = dt
dy/dt y (t) dy = = dx dx/dt x (t)
y (t) x (t)
x (t)y (t) − x (t)y (t) dx = dt x (t)3
[訳註]evolute の訳.縮閉線という日本語の用語は,曲率中心の軌跡という定義にあっているの だが,evolute という言葉の語感は反対である.evolvo というラテン語の動詞は「ひもとく,解き 開く,流出させる,追い出す,押しのける,書物を開いて読む」などという意味で,開いていくと いうイメージが強い. すぐ後に出てくる 「伸開線」は involute の訳で,ラテン語の involvo という動詞は「中へ転が す,... へ転がしこむ,包む,くるむ」という意味で,むしろ内側へ向かってくるというイメージの 強い言葉である. 訳者は学生のころから,日本語と英語で語感が反対のこの言葉をとり違えることが多くて困って いる.数学的な定義は日本語の語感の方に適合している.
124
第 II 章 微積分法
となります.(3.12), (3.13) 式に代入すると
(3.15)
y (a) x (a)2 + y (a)2 , x0 − x(a) = − x (a)y (a) − x (a)y (a)
(3.16)
x (a) x (a)2 + y (a)2 , y0 − y(a) = x (a)y (a) − x (a)y (a)
(3.17)
r=
2 3/2 x (a) + y (a)2 |x (a)y (a) − x (a)y (a)|
となります. 例 サイクロイド(バイクの車輪のバルブの軌跡)は
x = t − sin t,
(3.18)
y = 1 − cos t
というパラメータ表示を持っています.微分を計算すれば,(3.15–17) 式からサ イクロイドの縮閉線は
(3.19)
y0 = −1 + cos a
x0 = a + sin a,
で与えられることになります.位置は違っていますが,これもまたサイクロイド になっています. 伸開線 さて,縮閉線 ABB(図 3.6b 参照)が与えられているとして,弧 ABC の長さが一定であるという性質で定まる新しい曲線 CC を作ることにします(縮 2
1
−1
0
1
2
3
4
5
−1
−2 図 3.7 サイクロイドとその縮閉線
6
7
II.3. 包絡線と曲率
125
図 3.8 ヨハン・ベルヌーイ(1955, p.254, 1695 年 1 月 12 日のド・ロピタルへ の手紙)の手描きのサイクロイド7
閉線から巻きほどかれる弦をイメージして).このような曲線を 伸開線と言いま す.伸開線の 1 つの点が元の関数 f (x) と一致すれば,2 つの曲線は同じ曲率を 持つことになります.このことから, (III.6 節のアイデアを使って厳密に証明され るのですが)2 つの曲線は同じものになります.したがって,サイクロイドは(弧 長を適当に選べば),縮閉線だけでなく,伸開線もまたサイクロイドになります (ニュートン (1671), 問題 V, Nr. 34).ホイヘンス (1673) はこの性質を使い,サ イクロイドに従う振子が等時であるという事実に基づいて,彼の世紀で最良の振 子時計を作り上げたのです(II.7 節の図 7.8 参照).
II.3.5 演習問題 3.1 長さ 1 の棒が垂直な壁をすべっている(図 3.9a 参照).これから得られる包絡線を 定める式を求めなさい.
3.2 直線族 y = αx −
5 3 (α − α) 2
で作られる包絡線(図 3.9b 参照)を定める式を求めなさい.
3.3 (コーシー 1824)b をパラメータとする放物線族 y = b(x + b)2 で作られる包絡線(図 3.9c 参照)を求めなさい.
3.4 関数 y = ln x の点 a での曲率半径を計算し,この半径が最小となる点 a を求めな さい(図 3.9d 参照).この最小の位置で縮閉線は停留点 (カスプ)8 を持っていることがわ かります.
3.5 楕円(図 3.9e 参照) y2 x2 + 2 =1 2 a b 7 8
または
x = a cos t y = b sin t
(0 ≤ t ≤ 2π)
[原註]Birkh¨ auser Verlag (Basel) の許可を得て転載. [訳註]これはカスプになっている停留点であるという意味.カスプを尖点と訳す場合があるよう に,尖っている点という意味である.図 3.9d を見ても半径が最小になっている点で尖っている.そ の点に近づいている 2 本の曲線の接線がこの点で一致していることを示す必要がある.
126
第 II 章 微積分法
図 3.9 包絡線と縮閉線 の縮閉線を計算し,最大曲率と最小曲率を求めなさい. 2
2
x = (a − ba ) cos3 t, y = (b − ab ) sin3 t. 3.6 カテナリー9 y = (ex + e−x )/2 の曲率半径を計算しなさい.曲線上の点 M での曲 率半径が法線 M N の長さに等しいことを示しなさい(図 3.9f 参照). 3.7 図 3.7 を見ていると,転がる車輪のスポークが,半分の大きさのサイクロイドに似 た包絡線を作るように見える.このことは直径全体を描けばもっと見やすくなる(図 3.10 結果
参照).この直線族
y = 1 + (x − t) ·
cos t sin t
の包絡線を計算しなさい.
2
1
−1
0
1
2
3
4
5
6
7
図 3.10 包絡線としての小さなサイクロイド 9
[訳註]懸垂線という訳語もあり,漢字に強い人はそう覚えてもよい.両端で支えられたロープや 鎖などの作る曲線のこと.
II.3. 包絡線と曲率
127
ヨハン・ベルヌーイ (1667–1748)10
ギヨーム・フランソア・アントワーヌ・ ド・ロピタル,サント・メームとモンテ リエの侯爵,オートルモン伯爵にしてウー クその他の領主 (1661–1704)11
10 11
[原註]Georg Olms Verlag (Hildesheim) の許可を得て転載. [原註]Birkh¨ auser Verlag (Basel) の許可を得て転載.
128
第 II 章 微積分法
II.4 積分法 . . . 差に対して d と書くように,和に対して
R
と書いていた . . .1
(ヨハン・ベルヌーイへのライプニッツの手紙,1696 年 3 月 8, 18 日)
. . . しかしながら当時「積分」に,どんな言葉を使ったか. . . 2 (ライプニッツへのヨハン・ベルヌーイの手紙,1696 年 4 月 7 日) R
そしてライプニッツ氏が縦座標の和や曲線の面積を表わすのに
という文字を前
に置いているとしても,私は数年前に正方形に縦座標を内接することによって同 じことを表わしており,. . . 私の記号はそれゆえ,. . . この種のものとしては最も 古いものなのです. (キールへのニュートンの手紙, 1714 年 4 月 20 日)
積分法というのは,実際,微分法よりずっと古いものです.というのも,面積, 曲面積,体積の計算は,古代から偉大な数学者たち,アルキメデス,ケプラー,カ ヴァリエーリ,ヴィヴィアーニ,フェルマー(定理 I.3.2 参照),聖ヴァンサンの グレゴリー,グルディン,グレゴリー,バローなどの心を占めてきたのです.決 定的な飛躍的前進がなされたのは,ニュートン,ライプニッツ,ヨハン・ベルヌー イが独立に,積分が微分の逆演算であり,したがって,上に述べた研究者たちの あらゆる努力が数個の微分の規則に帰着してしまうことを発見したときだったの です.積分記号はライプニッツ (1686) が作り, 「積分」という用語はヨハン・ベル ヌーイが作り,兄のヤーコプ・ベルヌーイが出版物 (1690) で公表したのです.
II.4.1 原始関数 関数 y = f (x) が与えられたとき,x 軸とこの関数のグラフの間の面積を計 算したいのです.点 a を固定し,a と x の間の f (x) のグラフの下方の面積を
z = F (x) と表わすことにします(図 4.1 参照).そのとき決定的なのは (4.1)
関数 f (x) は F (x) の 導関数 である
という事実です.このとき F (x) を f (x) の原始関数といいます. 理由づけ ニュートンは線分 BD が問題となっている領域の上を動くと想像しまし た(「この領域が直線 BE と BD が . . . に沿って動くときに生成されると考えて」図
4.1a, 4.1c 参照).結局,x が Δx だけ増加すれば,面積は Δz = F (x+Δx)−F (x) 1 2
[訳註]ラテン語原文:. . . notam
R
pro summis, ut adhibetur nota d pro differentiis . . .
[訳註]ラテン語原文:. . . quod autem . . . vocabulum i n t e g r a l i s etiamnum usurpaverim
...
II.4. 積分法
図 4.1a ニュートンのア イデア
図 4.1b ライプニッツの アイデア
129
図 4.1c ニュートンによ るスケッチ3
だけ増加しますが,ここで,Δx の高次の項を無視すれば,f (x)Δx となります (図 4.1a の黒く塗った長方形).こうして,Δx → 0 の極限では
(4.2)
dz = f (x) · dx であり,
dz = f (x) dx
となります. ライプニッツは,この領域は小さい長方形の和
(4.3)
zn = f (x1 ) Δx1 + f (x2 ) Δx2 + · · · + f (xn ) Δxn
(後には「積分」)であると想像しました(図 4.1b 参照).このことから
zn − zn−1 = f (xn ) Δxn となり,Δxi → 0 とすればまた (4.2) 式が得られます.ですから,差が和の逆演 算であるように,微分は積分の逆演算になっています. 長い間の試みの後に,ライプニッツは (Δxi → 0 の極限のときの)(4.3) 式の和を
(4.4)
f (x) dx
の形に記号化したのです(図 4.2 参照).今日では a と b を端点とするこの面積は
(4.5)
b
f (x) dx a
3
[原註]Editions Albert Blanchard (Paris) の許可を得て転載.
130
第 II 章 微積分法
図 4.2 積分記号の最初の出版物,古いスタイルの “s”(ライプニッツ 1686)4
というように書かれ(フーリエ 1822),一方「不定積分」(4.4) は f (x) の勝手な 原始関数を表わすようになっています. 原始関数は 1 つだけではありません.どんな原始関数 F (x) に勝手な定数 C を 加えてもまた F (x) + C は同じ関数の原始関数になります.C = −F (a) とすれ ば,その原始関数 F (x) − F (a) は(面積 z 同様)x = a で 0 になります.です から,a と b の間の面積は
b
f (x) dx = F (b) − F (a)
(4.6) a
となります(III.6 節「微積分学の基本定理」参照). 微分公式を逆にすれば,原始関数に関する公式が得られます.たとえば,関数
f (x) = xn+1 の微分は f (x) = (n + 1)xn なので,xn+1 /(n + 1) は xn の原始 関数です.II.1 節のこの他の公式も表にまとめておきましょう. 表 4.1 いくつかの原始関数の表
xn dx =
xn+1 +C n+1
(n = −1)
1 dx = ln x + C x
ex dx = ex + C
sin x dx = − cos x + C
4
1 dx = arctan x + C 1 + x2
cos x dx = sin x + C
1 √ dx = arcsin x + C 1 − x2
[原註]ジュネーブ大学図書館の許可を得て転載. R [訳註]古いスタイルの “s”の活字を表わせないのでそのかわりに を使って,この文を以下に訳 すことにする.図版を見て,古いスタイルの “s”が f と見間違えるほど縦長だったことを確認して 欲しい.和 (sum) の頭文字の “s”を記号化した積分記号の形が今のようになった理由の 1 つであ ることがわかる. 「しかしながら,接線の方法において説明してきたことから明らかなように, d, 12 xx = xdx であ
R
り;それゆえ逆に 12 xx = xdx である(普通の計算でのベキと根と同じように,ここでは和と差 R と d が互いに逆なのである). 」 が,つまり
II.4. 積分法
131
原始関数の長い表は何百ページもの長さにもできるでしょうが,グレプナーと ホフライター (1949) の表とグラドシュテインとリィジク (1980) の表をあげてお きます5 .最近ではこの知識は多くのコンピュータの記号処理システムに組み込ま れています.
II.4.2 応用 放物線の面積 a と b の間の,n 次の放物線 y = xn の下方の面積は (4.6) と表
4.1 によって
b
b xn+1 bn+1 − an+1 x dx = = n+1 a n+1 n
(4.7) a
となります.ここで F (x)|ba = F (b) − F (a) という記法を使っています6.a = 0 のとき,この公式はフェルマーの定理 I.3.2 になります. 円の面積 円の 4 分の 1 の面積を計算するために関数 f (x) =
√
1 − x2 を 0 ≤
x ≤ 1 で考えます.f (x) の原始関数が x 1 (4.8) F (x) = 1 − x2 + arcsin x 2 2 であることは,(4.8) を微分したら確かめられます.後で,このような式をどうやっ て見つけるのかということを考えます.(4.6) を使い sin(π/2) = 1 に注意すれば,
単位円の面積 = 4 0
1
1 − x2 dx = 4 F (1) − F (0) = π
が得られます. 円の面積を計算する別のエレガントな方法があり ます.f (x) dx を直立した小さな長方形のスライス
π/2
dϕ·a
と思わなければいけないわけではありません. (半径
a)の円を無限に細い三角形に切り分けてみましょう (ケプラー 1615,またライプニッツのアイデアと図 I.4.11 参照).このような三角形の面積は a2 · dϕ dS = 2
ϕ 0
a
5
[訳註]後者の日本語訳が丸善から出ています.岩波全書の『数学公式 I』(森口繁一他著)か共立 全書の『数学公式集』(小林幹雄他編)程度の公式集を常備することをお勧めします.
6
[訳註]日本では [F (x)]ba = F (b) − F (a) を使うことが多い.多くの式が混在するときは, F (x) の範囲を確定できるこの方式の方が見やすい.場合に応じて使い分ければよい.
132
第 II 章 微積分法
です.ここで dϕ は角の無限小の増分です.面積全体は(これらの三角形の和で)
2π
S= 0
a2 a2 dϕ = 2 2
2π
dϕ = 0
a2 2
2π ϕ = a2 π 0
となります. 球の体積 半径 a の球を考え(図 4.3),薄いスライス(厚さ dx で半径 r =
√
a2 − x2 の円板)に切り分けます.このようなスライスの体積は dV = r2 π dx = (a2 − x2 )π dx であり,球の全体積は +a +a x3 4a3 π V = (a2 − x2 )π dx = π xa2 − = 3 −a 3 −a となります.
dx x = −a
(a2 − x2)1/2 x=a
図 4.3 球の体積
力場における仕事 パラメータ s を持つ直線の方向に働く力 f (s) を考えます.s から s + Δs に物体を動かす仕事は f (s)Δs(力 × 長さ)ですから,全仕事は
b a
f (s) ds となります.
例 1 kg の質量にかかる地球の重力は,s を地球の中心からの距離とすると き, f (s) = 9.81 · R2 /s2 [N ] となります.したがって,1 kg を地表から無限遠 まで動かすエネルギーは
∞
E= R
∞ R2 R2 9.81 2 ds = −9.81 = 9.81 R = 62.106 [J] s s R
II.4. 積分法
133
で与えられます7 . 弧長 弧長の流率は横座標と縦座標の平方の和の平方根に等しいと定められる. (ニュートン 『流率』(1736) p.130)
曲線 y(x), a ≤ x ≤ b が与えられたときその長さ L を計算したいとしま す.x を Δx だけ増やせば(図 4.4 参照),縦座標は(高次の項を無視すれば)
Δy = y (x)Δx 増えます.ですから,曲線の小部分の長さは Δs2 = Δx2 + Δy 2 = 1 + y (x)2 Δx2 で定まる Δs で与えられることになります(ピュタゴラスの定理).Δx → 0 の 極限で
(4.9)
ds =
1 + y (x)2 · dx
b
となり, L =
1 + y (x)2 dx
a
となります.
1 dy
ds
dy
dx dx 0
0
1 図 4.4 y = x2 の弧長
例 放物線 y = x2 に対して,y = 2x で,x = 0 と x = 1 の間の弧長は
L= 0
7
1
1 1 1 1 + 4x2 dx = x 1 + 4x2 + ln 2x + 4x2 + 1 2 4 0 √ √ 5 1 + ln(2 + 5 ) = 2 4
[訳註][N] はニュートン(力の単位),[J] はジュール(仕事の単位),R は地球の半径(約 6378km) です.
134
第 II 章 微積分法
で与えられます(後出の (4.27) 参照). 重心 たとえば,2 つの質量 m1 , m2 が横座標 x1 , x2 の点に置かれていたと考え ましょう.原点に働くモーメントは m1 x1 + m2 x2 です.重心 x とは 2 つの質量 がそこに集まったとしたら同じモーメントを作り出すような点,つまり
(m1 + m2 ) · x = m1 x1 + m2 x2
(4.10)
を満たす点のことです.物体の密度が連続的に変化していて,厚さ dx のスライ スの質量が m(x) dx であるようになっていたら,(4.10) と同じように考えて,
b
b
m(x) dx · x =
(4.11) a
x m(x) dx
となり
a
b x m(x) dx x = a b a m(x) dx
が得られます. 例 直線 y = cx, 0 ≤ x ≤ a で作られる三角形に対しては
(4.12)
m(x) = cx,
a 2 cx dx 2a a3 /3 = 2 = x = 0a a /2 3 0 cx dx
となります8 . 注意 「密度関数」f (x)( 対して,x =
∞
−∞
∞ −∞
f (x) dx = 1 を満たす)を持つ確率変数 X に
x f (x) dx という値を平均と言います.
II.4.3 積分の技法 さて,原始関数を求める一般的な技法をいくつか説明しましょう.いくつかの 重要な関数に対する系統的なアプローチは II.5 節で述べることにします. まずわかることは,積分が線形な演算であること,つまり
(4.13)
c1 f1 (x) + c2 f2 (x) dx = c1
f1 (x) dx + c2
f2 (x) dx
を満たすことです.これは微分が線形であるという事実((1.3) 参照)からすぐに わかります. 新しい変数への置換
F (z) が f (z) の原始関数である 8
[訳註]3 直線 y = cx, x = a, y = 0 で囲まれる三角形のことらしい.その重心の横座標を求めて いる.また,棒 0 ≤ x ≤ a の材質が不均等で, m(x) = cx の密度を持っていると思ってもよい.
II.4. 積分法
135
こと,つまり F (z) = f (z) であるとし,変数 z を x に変換する置換 z = g(x) を考えます.すると (1.16) から
F g(x) は f g(x) g (x) の原始関数である ことになります.したがって
(4.14)
b
f g(x) g (x) dx =
a
g(b)
f (z) dz g(a)
となります.というのは,(4.6) によって,両辺とも F g(b) − F g(a) に等しく なるからです.左辺の表示は,右辺の f (z) で z = g(x) と置き換え,dz = g (x)dx とすることで得られます. 幾何的な説明
1.5
0
4x dx 1 + x2
を計算したいときは z = x2 という置換をします.dz = 2x dx なので (4.14) 式 から
0
1.5
2.25 2 dz = 2 · ln(1 + z) 1+z 0 0 1.5 = 2 · ln(1 + x2 ) = 2 ln 3.25
2 · 2x dx = 1 + x2
2.25
0
2
が得られます.図 4.5 に変換 z = x と,関数 4x/(1 + x2 ) と 2/(1 + z) を図示
図 4.5 積分での変数変換
136
第 II 章 微積分法
しました.点 x と x + Δx は z = x2 と z + Δz = x2 + 2xΔx + Δx2 に写され, 影をつけた長方形は Δx → 0 のとき同じ面積を持ち,(4.14) の両辺の積分が同 じ値になることがわかります. 例 技法はすべて, 「よい」置換を見つけるという点にあります.このことを, 例をあげて説明することにしましょう.
f (ax + b) の形の関数に対しては,z = ax + b という置換が役に立つことが多 いものです.たとえば,z = 5x + 2, dz = 5dx なら,
(4.15)
e
5x+2
ez
dx =
1 1 dz = ez = e5x+2 5 5 5
となります. ときには置換 z = g(x) の因子 g (x) があることを,簡単に見抜くことができるこ とがあります.たとえば,下の積分の因子 x を見ていると z = −x2 , dz = −2x dx を使うとよいだろうと思えてきて,
(4.16)
xe
−x2
1 dx = − 2
となることがわかります.
2 1 1 ez dz = − ez = − e−x 2 2
√
表 4.1 から 1/(1+x2 ) や 1/ 1 − x2 の積分がわかっています.たとえば 1/(7+
√ √ x2 ) や 1/ 7 − x2 の原始関数が求めたいのなら,x2 = 7z 2 , x = 7 z, dx = √ 7 dz という置換を使うことになります.これから, √ 1 1 x 7 dz dx = √ arctan z = √ arctan √ (4.17) = 2 2 7+x 7(1 + z ) 7 7 7 が得られます.
2 次式 x2 + 2bx + c は完全平方 (x + b)2 + (c − b2 ) の形にして,z = x + b と置 き換えると簡単になることが多いようです.こうして,次の積分は z = x + 1/2 という置換をすると (4.17) に帰着して, (4.18) 2 dz 2z 2 2x + 1 dx √ √ √ √ = = arctan = arctan x2 + x + 1 z 2 + 3/4 3 3 3 3 となります. 最後の例として関数 (x + 2)/(x2 + x + 1) を考えます.ここで分子を x + 2 =
(x + 1/2) + 3/2 と書けば(オイラー (1768), §62),最初の部分 x + 1/2 は分母 の微分のスカラー倍になっているので,この部分の積分は z = x2 + x + 1 とい う置換をすれば計算できます.後半の部分は (4.18) のスカラー倍だから,
II.4. 積分法
(4.19)
x2
√ 1 x+2 2x + 1 √ dx = ln(x2 + x + 1) + 3 arctan +x+1 2 3
137
が得られます. 部分積分 積分の技法の 2 番目は積の微分規則 (1.4) に基づいたものです.公式
(uv) = u v + uv を積分すれば u(x)v(x) =
u (x)v(x) + u(x)v (x) dx とな
り,書き直せば,
(4.20)
u (x)v(x) dx = u(x)v(x) −
u(x)v (x) dx
となります.この公式では 1 つの積分が別の積分に置き換わっています.しかし, 因子 u と v を適当に選んでやると,2 つ目の積分の計算が元の積分より計算し やすくなることがあります.
x sin x dx を計算してみましょう.u (x) = x (u(x) = x2 /2) , v(x) = sin x としても何の役にも立ちませんが,それは 2 つ目の積分の方がずっと求めに くいものになるからです.そこで,u (x) = sin x (u(x) = − cos x), v(x) = x と 選び,(4.20) を使うと (4.21) x sin x dx = −x cos x + 1 · cos x dx = −x cos x + sin x 例
となります. 部分積分を繰り返し使う必要のあることもあります.次の例で,最初は v(x) =
x2 , u (x) = ex とおき,次の積分で v(x) = x, u (x) = ex とおくと (4.22) x2 ex dx = x2 ex − 2 x ex dx = ex (x2 − 2x + 2) が得られます.
ln x や arctan x は簡単な微分を持っていますから,よく v(x) の役割に使われ ることがあります.
(4.23)
ln x dx =
1 · ln x dx = x ln x −
(4.24)
arctan x dx = x arctan x−
x dx = x(ln x − 1), x
1 x dx = x arctan x− ln(1+x2 ). 2 1+x 2
(4.24) の最後の積分は z = 1 + x2 , dz = 2x dx という置換を使って求められます. √ 次に放物線の弧長の計算に出てきた積分 1 + 4x2 dx を考えましょう.u (x) = √ 1, v(x) = 1 + 4x2 と置いて部分積分すると
138
第 II 章 微積分法
(4.25)
1+
4x2
4x2 2 √ dx = x 1 + 4x − dx 1 + 4x2
となります.第 2 の積分は最初の積分よりよいもののようには見えませんが,分 子を 4x2 = (1 + 4x2 ) − 1 と書くことができます.すると積分は 2 つに分かれ
√ 1 + 4x2 dx(求めていた積分)で左辺に移項することができま √ す.もう 1 つは表 4.1 の最後の積分に似ています.arsinhz の微分は 1/ 1 + z 2 で,z = 2x(演習問題 I.4.3 参照)という置換をすれば, 1 1 dx √ (4.26) = arsinh(2x) = ln 2x + 4x2 + 1 2 2 1 + 4x2 て,1 つは −
が得られます.これから,(4.25) は
(4.27)
1 + 4x2 dx =
1 1 x 1 + 4x2 + ln 2x + 4x2 + 1 2 4
となります. 漸化関係
(4.28)
sinn x dx
In =
を計算します.u (x) = sin x, v(x) = sinn−1 x と置いて部分積分すれば,
sin x dx = − cos x sin n
n−1
x + (n − 1)
cos2 x sinn−2 x dx
が得られます.cos2 x = 1−sin2 x を代入すれば,右辺の積分は 2 つの積分 In−2 と
In に分かれます.In を左辺に移せば (1+n−1)In = − cos x sinn−1 x+(n−1)In−2 が得られ,それから,
1 n−1 cos x sinn−1 x + In−2 n n が得られます.この漸化式から,In の計算は I1 = sin x dx = − cos x(n が奇 数のとき)か I0 = dx = x(n が偶数のとき)に帰着されます. In = −
(4.29)
別の例として積分
(4.30)
Jn =
dx (1 + x2 )n
を考えます.よいアイデアが思い浮かばないので,u (x) = 1, v(x) = 1/(1 + x2 )n と置いて部分積分すると,
Jn =
1·
1 x dx = +n 2 n (1 + x ) (1 + x2 )n
2x2 dx (1 + x2 )n+1
II.4. 積分法
139
となります.(4.25) と同じようにして,最後の積分で 2x2 = 2(1 + x2 ) − 2 と書 けば,
Jn =
x + 2nJn − 2nJn+1 (1 + x2 )n
となります.指数 n が小さくならずに大きくなって,困ってしまいますね.でも 大したことはありません.式を逆にすれば
(4.31)
Jn+1 =
1 2n − 1 x Jn + 2n (1 + x2 )n 2n
となります.この漸化式によって,(4.30) の計算は J1 = arctan x に帰着され ます.
II.4.4 剰余項のあるテイラーの公式 ヨハン・ベルヌーイ(1694b『すべての求積を実行する . . .』)は部分積分を繰 り返し行って,後にテイラーによって発見された「最も一般な9 」級数を得ていま す.後にコーシー (1821) は,これを巧妙に修正した方法で,誤差項を積分で表わ した関数 f のテイラー級数を厳密に求めることが,可能なことを示しています. アイデアは
x
f (x) = f (a) +
1 · f (t) dt
a
と書き((4.6) 参照),u (t) = 1, v(t) = f (t) と置いて部分積分することです. 肝心なことは u(t) = t とする代わりに u(t) = −(x − t)(x は定数と見て)と置 くことです.すると,
x x f (x) = f (a) − (x − t)f (t) + (x − t)f (t) dt a a x = f (a) + (x − a)f (a) + (x − t)f (t) dt a
となります.次のステップでは,u(t) = −(x − t)2 /2!, v(t) = f (t) と置けば,
(x − a)2 f (a) + f (x) = f (a) + (x − a)f (a) + 2!
x
a
(x − t)2 f (t) dt 2!
となります.この手続きを続けていけば,求めていた結果
(4.32)
f (x) =
k (x − a)i i=0
9
i!
[訳註]ラテン語原文:generalissimam
f
(i)
x
(a) + a
(x − t)k (k+1) f (t) dt k!
140
第 II 章 微積分法
に到達します. 例 f (x) = ex , f (i) (x) = ex , a = 0 と置けば,(4.32) 式は
xk x2 + ···+ + e =1+x+ 2! k!
x
(4.33)
0
x
(x − t)k t e dt k!
となります.級数の誤差項が積分で表わされているのを見ると,こんな積分を計 算するのがどんなに大変かわかっている今では,どうしてこんなことをするのか と思うかも知れません.(4.33) の積分を上の技巧的な方法で計算したとしても, もちろん,単に ex −
k
i=0
xi /i! となるだけで,何の役にも立ちません.(4.33)
の被積分関数を何か簡単なもので置き換えるというアイデアを使います.たとえ ば,0 ≤ x ≤ 1 と仮定すれば,0 ≤ t ≤ 1 となり,さらに関数 et は 1 と 3 の間 の値になるので,対応する面積もまた,
x 0
xk+1 (x − t)k · 1 dt = k! (k + 1)!
と 0
x
3xk+1 (x − t)k · 3 dt = k! (k + 1)!
の間にあることが納得できるでしょう(これは後出の定理 III.5.14).これからた とえば,k = 10 なら誤差は 10−7 より小さくなるという結論が得られます.
II.4.5 演習問題 4.1 曲線がパラメータ表示 x(t), y(t) で与えられているとします.その a ≤ t ≤ b に対 する弧長が
Z
b
L=
p
x (t)2 + y (t)2 dt
a
となることを示しなさい. 0 ≤ t ≤ 2π に対してサイクロイド (3.18) の弧長を計算しな さい.
4.2 次の積分を計算しなさい. Z Z x dx dx √ √ a) b) 2 9−x 9 − x2 Z Z 2 dx e) x3 e−x dx d) I−n = sinn x Z Z eαx sin βx dx g) eαx cos βx dx h)
Z c)
x2 sin x dx
Z f)
arccos x dx Z
i)
x dx x2 − 6x + 13
ヒント (d) は (4.29) 式の逆で,(e) では x3 = x · x2 と書き,(g) と (h) では部分積分
R
をするか, e(α+iβ)x dx を虚部と実部に分解するかしなさい.
4.3 部分積分を繰り返して,整数値 m, n に対して Z b (b − a)m+n+1 (b − x)m (x − a)n dx = (4.34) m! n! (m + n + 1)! a
II.5. 初等的積分をもつ関数 であること,特に
Z
1
−1
(1 − x2 )n dx =
141
2 · 2 · 4 · 6 · · · 2n 1 · 3 · 5 · · · (2n + 1)
であることを示しなさい.
II.5 初等的積分をもつ関数 上の量
ppads qqss − ppaa
はすぐに,何も変えないで, 1
1
pds pds ppads = 2 − 2 ··· qqss − ppaa qs − pa qs + pa のようにすれば,2 つの対数微分に分けられます. (ヨハン・ベルヌーイの手紙 (1699) の付属文書, 『書簡集』第 1 巻,p.212) 問題 3:X を x の任意の有理関数として,Xdx という表示を積分できる方法を (オイラー 1768, 『全集』第 XI 巻,p.28)
述べよ.
前節で積分の技法をいくつか学びました.ここではこれらの方法を系統的に使っ て,いくつかのクラスの関数の積分が初等関数であるという事実をはっきりさせ ます.多項式,有理関数,指数関数,対数関数,三角関数,逆三角関数の合成で 得られる関数を,初等関数と言います.
II.5.1 有理関数の積分 R(x) = P (x)/Q(x) を有理関数とします(P (x) と Q(x) は多項式). R(x) dx が初等関数であるという事実の構成的な証明をすることにします.原始関数の計 算は 3 つのステップに分けて行います.
• deg P < deg Q の場合への帰着(deg P は P (x) の次数). • Q(x) の因数分解と R(x) の部分分数展開. • 部分分数の積分. deg P < deg Q の場合への帰着 まず,deg P ≥ deg Q のときは,P を Q で 割って
(5.1)
P (x) P (x) = S(x) + Q(x) Q(x)
とすれば,関数 R(x) は少し簡単になります.ここで,S(x) と P (x) は多項式
142
第 II 章 微積分法
(商と余り)で,deg P < deg Q です.たとえば,
2x6 − 3x5 − 9x4 + 23x3 + x2 − 44x + 39 P (x) = Q(x) x5 + x4 − 5x3 − x2 + 8x − 4
(5.2)
を考えます.まず,P (x) から 2xQ(x) を引けば 2x6 の項がなくなり,次に 5Q(x) を P (x) に加えれば,
6x4 − 20x2 + 4x + 19 P (x) = 2x − 5 + 5 Q(x) x + x4 − 5x3 − x2 + 8x − 4
(5.3)
となります.多項式 S(x) は積分できたのですから,(5.1) の第 2 項だけを調べれ ばよいことになります. 部分分数展開 Q(x) の 1 次式への分解
(5.4)
Q(x) = (x − α1 )
m1
(x − α2 )
m2
· · · · · (x − αk )
mk
=
k
(x − αi )mi
i=1
が知られていたとします.ここで,α1 , . . . , αk は Q(x) の(複素数かもしれない) 相異なる根で,mi はその重複度です.次の補題は有理関数を部分分数と呼ばれ る,単純な分数の 1 次結合として書き表す方法を示しています.このアイデアは ヨハン・ベルヌーイとライプニッツの文通にまで遡り(1700 年頃),ヨハン・ベ ルヌーイ (1702),ライプニッツ (1702),オイラー(1768, I 章,問題 3),エル ミート (1873) によって系統的に改良されてきました. 補題 (5.1) Q(x) が (5.4) で与えられ,P (x) が deg P < deg Q を満たす多項 式とすると, i P (x) Cij = Q(x) (x − αi )j i=1 j=1
k
(5.5)
m
を満たす定数 Cij が存在する. 証明 Q(x) の因子を 1 つずつ消去していくことにしましょう.α を Q(x) の根として,Q(x) = (x − α)m q(x) (q(α) = 0) と書きます.定数 C と次数が
< deg Q − 1 である多項式 p(x) があって, (5.6)
C P (x) p(x) = + m m (x − α) q(x) (x − α) (x − α)m−1 q(x)
を満たすか,それと同じことだが(公分母を掛けて),
(5.7)
P (x) = C · q(x) + p(x) · (x − α)
II.5. 初等的積分をもつ関数
143
を満たすようにできることを示します.x = α と置けば,この式から
(5.8)
C = P (α)/q(α)
と選ぶことになります.多項式 p(x) は P (x) − C · q(x) を因子 (x − α) で割っ て得られます.同じ手続きを (5.6) 式の右辺に施していけば,求める分解 (5.5) が 得られます.
2
例 (5.2) の多項式 Q(x) は
(5.9)
Q(x) = x5 + x4 − 5x3 − x2 + 8x − 4 = (x − 1)3 (x + 2)2
と因数分解されます.α = −2, m = 2 で (5.7) と (5.8) を適用すれば,(5.6) は
−1 6x3 − 11x2 − x + 9 6x4 − 20x2 + 4x + 19 = + 3 2 2 (x − 1) (x + 2) (x + 2) (x − 1)3 (x + 2) となります.ここでさらに,α = −2, m = 1 とすれば
(5.10)
3x2 − 8x + 6 6x4 − 20x2 + 4x + 19 −1 3 + = + (x − 1)3 (x + 2)2 (x + 2)2 x+2 (x − 1)3
が得られます.最後の式で,x = (x − 1) + 1 と置けば,3x2 − 8x + 6 = 3(x −
1)2 − 2(x − 1) + 1 となって,結局 (5.10) は (5.11) −1 1 −2 3 3 6x4 − 20x2 + 4x + 19 + = + + + (x − 1)3 (x + 2)2 (x − 1)3 (x − 1)2 x − 1 (x + 2)2 x+2 となります. 別のやり方 補題 5.1 から
(5.12) B0 A0 A1 A2 B1 6x4 − 20x2 + 4x + 19 + = + + + (x − 1)3 (x + 2)2 (x − 1)3 (x − 1)2 x − 1 (x + 2)2 x+2 となることはわかっています.係数 Ai と Bi は次のように計算できます.(5.12) に (x − 1)3 を掛けると
6x4 − 20x2 + 4x + 19 = A0 + A1 (x − 1) + A2 (x − 1)2 + (x − 1)3 g(x) (x + 2)2 となりますが,ここで g(x) は x = 1 の近くではきちんと定義される関数です.
Ai は P (x)/(x + 2)2 のテイラー級数の初めの方の係数で(II.2 節参照), 4 1 di 6x − 20x2 + 4x + 19 Ai = i! dxi (x + 2)2 x=1
144
第 II 章 微積分法
を満たし,つまり A0 = 1, A1 = −2, A2 = 3 となります.同様にして,
Bi =
1 di i! dxi
6x4 − 20x2 + 4x + 19 (x − 1)3 x=−2
が得られ,つまり B0 = −1, B1 = 3 が得られます. 部分分数の積分 分解 (5.5) の各項は II.4 節の公式(表 4.1 参照)
(5.13)
⎧ ⎪ ⎨
−1 dx (j − 1)(x − α)j−1 = j ⎪ (x − α) ⎩ ln(x − α)
(j > 1) (j = 1)
を使って容易に積分できます.この例では,(5.3), (5.9), (5.11) 式を合わせれば,
1 1 2 P (x) dx = x2 −5x− +3 ln(x−1)+ +3 ln(x+2)+C + Q(x) 2(x − 1)2 x − 1 x+2
となります.
Q(x) のすべての根が実数(つまり,(5.4) の αi がすべて実数)ならば,(5.5) の Cij も実数で,実関数の 1 次結合として積分が表わされます.しかし,Q(x) が複素 数の根を持つ場合でも,この還元の手続きが適用できないわけではありません.
複素根を持つ例 (1 + x4 )−1 dx を計算することを考えま す.x4 + 1 = 0 の根は α1 = (1 + i)/ 2, α2 = (1 − i)/ 2,
√ √ √ √ α3 = (−1 + i)/ 2, α4 = (−1 − i)/ 2 ですから,補題 5.1
α3
の分解は
−1
(5.14)
A 1 B √ + √ = 1+x4 x−(1+i)/ 2 x−(1−i)/ 2 C D √ + √ + x+(1−i)/ 2 x+(1+i)/ 2
α1 0
α4
1 α2
となります.(5.8) から
√ 1 1 2 √ √ = = √ √ (−1 − i) A= (α1 − α2 )(α1 − α3 )(α1 − α4 ) 8 i 2 · 2 · ( 2 + i 2) √ √ √ となり,同様に B = (−1 + i) 2/8, C = (1 − i) 2/8, D = (1 + i) 2/8 とな るので,
(5.15)
√ √ dx =A ln(x − (1 + i)/ 2) + B ln(x − (1 − i)/ 2) 4 1+x √ √ + C ln(x + (1 − i)/ 2) + D ln(x + (1 + i)/ 2)
II.5. 初等的積分をもつ関数
145
となります.(I.5.17) 式から
1 β dx = ln(x − α − iβ) = ln (x − α)2 + β 2 − i arctan x − (α + iβ) 2 x−α
となり,(I.4.5) 式か (I.4.32) 式から得られる関係式
arctan u + arctan(1/u) =
π/2 (u > 0) −π/2 (u < 0)
から,(5.15) の右辺は
(5.16) √ √ √ √ √ x2 + 2x + 1 2 2 dx √ = ln arctan(x + 2 + 1) + arctan(x 2 − 1) x4 + 1 8 4 x2 − 2x + 1 と書くことができます. 複素数の算術を避ける 複素数の算術を避けたいのであれば,次のようにすること もできます.多項式 Q(x) が l 個の異なった複素共役な根 α1 ± iβ1 , . . . , αl ± iβl と k 個の異なった実根 γ1 , . . . , γk を持つとすると,実数での因数分解
(5.17)
l
(x − αi )2 + βi2
Q(x) =
k mi
i=1
(x − γi )ni
i=1
が得られます.ここで mi や ni は根の重複度です.補題 5.1 の実数版は次のよう になります. 補題 (5.2) Q(x) を (5.17) で与えられたもので,P (x) を deg P < deg Q を満 たす実係数の多項式とすると, i i P (x) Aij + Bij x Cij = + j 2 2 Q(x) (x − γi )j i=1 j=1 (x − αi ) + β i=1 j=1
l
(5.18)
m
k
n
i
を満たす実係数 Aij , Bij , Cij が存在する. 証明 実根については補題 5.1 の証明と同じように扱うことができます.複素
根については,Q(x) = (x − α)2 + β 2
m
q(x) を考えます.ここで α + iβ は
Q(x) の根で,q(α ± iβ) = 0 とします.すると, p(x) P (x) A + Bx m m + = m−1 2 2 2 2 2 (x − α) + β (x − α) + β q(x) (x − α) + β 2 q(x)
を満たす実係数 A, B と次数が < deg Q − 2 の多項式 p(x) が存在します.これ を示すために,これと同値な方程式
146
第 II 章 微積分法
P (x) = (A + Bx) · q(x) + p(x) · (x − α)2 + β 2 を考えます.x = α ± iβ と置けば,この式から A と B が得られ,多項式 p(x)
は P (x) − (A + Bx) · q(x) を因子 (x − α)2 + β 2 で割って得られます.補題 5.1 の証明と同じように,公式 (5.18) は Q(x) の次数に関する帰納法で得られます.
2 (5.18) の一般項の積分については, A + Bx
(x − α)2 + β 2
B(x − α)
j =
(x − α)2 + β 2
A + Bα
j +
(x − α)2 + β 2
j
と書けば,最初の項は z = (x − α)2 + β 2 , dz = 2(x − α)dx という置換ですぐ に積分されます.第 2 の項は z = (x − α)/β という置換を使うと,II.4 節の例の 積分 (4.30) が得られます.こうして,j = 1 のときは
x − α A + Bα B A + Bx 2 2 ln (x − α) arctan + dx = + β (x − α)2 + β 2 2 β β
となり,j > 1 のときは
A + Bx
(x − α)2 + β 2
j dx =
−B A + Bα x − α j−1 + 2j−1 Jj β β 2(j − 1) (x − α)2 + β 2
となります.ここで,J1 (z) = arctan z であり,
(5.19)
Jj+1 (z) =
z 2j − 1 Jj (z) + j + 1) 2j
2j(z 2
となります. 例 (5.14) 式に対しては補題 5.2 から,
1 A + Bx C + Dx 1 √ √ √ √ = = + 4 2 2 2 2 1+x (x + 2x + 1)(x − 2x + 1) x + 2x + 1 x − 2x + 1 √ √ という分解が得られます.この関係式に (x2 + 2x+1) を掛けて x = (−1±i)/ 2 を代入すると
1±i −1 ± i 1 = = A+B √ 2 ∓ 2i 4 2 √ となり,A = 1/2, B = 2/4 であることがこの式の実部と虚部を比較すること √ から得られます.定数 C = 1/2 と D = − 2/4 も同じように得ることができま す.後は上の公式を使えば,また (5.16) 式が得られます. 注意 部分分数展開が,多項式の根や代数学に対する 18 世紀の数学者たちの関 心を新たにしたのです.
II.5. 初等的積分をもつ関数
147
II.5.2 有効な変数変換 さて上の結果を使って,不定積分が初等関数であるような別の関数を与えるよ うな置換を示すことにしましょう.この節の残りでは R は 1,2 または 3 変数の有 理関数とします.
R n ax + b, x dx の形の積分 すぐに気のつく置換 √ n ax + b = u,
(5.20)
x=
un − b , a
dx =
n n−1 ·u · du a
を行えば,
√ un − b n−1 n n R u, u R ax + b, x dx = du = R(u) du a a
となります.ここで R(u) は有理関数になります.この最後の積分はこれまでに 説明した技法で積分することができます.
R(eλx )dx の形の積分 すぐに気のつく置換 u = eλx をすれば,du = λeλx dx,
dx = du/(λu) となって,得られる積分はある有理関数の積分になります. 例
dx du dx = = 2 x −x 2 2 + sinh x 2 + (e − e )/2 u + 4u − 1 √ √ 1 u+2− 5 1 ex + 2 − 5 du √ = √ ln √ . = √ ln =2 (u + 2)2 − 5 5 u+2+ 5 5 ex + 2 + 5
ここでは後出の演習問題 5.1 の公式を使っています.
R(sin x, cos x, tan x)dx の形の積分 古代から知られていたことですが(ピュ タゴラス(紀元前 570–501),R.C. バック『バビロンのシャーロックホームズ』
(1980) も参照),(3, 4, 5), (5, 12, 13), (7, 24, 25), . . . などの 3 つ組は a2 + b2 = c2 を満たし,(u, (u2 − 1)/2, (u2 + 1)/2) の形をしています.このことから, (5.21)
sin x =
2u , 1 + u2
cos x =
1 − u2 , 1 + u2
tan x =
2u 1 − u2
という置換を思いつきます(オイラー (1768),第 V 章,§261).sin x = u(1+
148
第 II 章 微積分法
cos x) が確かめられるので,点 (cos x, sin x) は 直線 η = u(1 + ξ) と単位円との交点になります (右図参照).したがって,u = tan(x/2), x = 2 arctan u であり, 2 dx = du 1 + u2 となります.これらの式をすべて R(sin x, cos x, tan x)dx に代入すれば,ある 有理関数の積分になります. 例
dx = 2 + sin x
2du 2 (1 + u )(2 +
2u 1+u2 )
=
u2
du . +u+1
最後の積分は (4.18) 式からわかっているので,
2 2 1 x 1 dx 2 2 = √ arctan √ u + = √ arctan √ tan + 2 + sin x 2 2 2 3 3 3 3
となります.
R ax2 + 2bx + c, x dx の形の積分 アイデア(オイラー (1768), §88)
は新しい変数 z を ax2 + 2bx + c = a(x − z)2 という関係で定義することです. これから
x= (5.22)
az 2 − c , 2(b + az)
dx =
a(az 2 + 2bz + c) dz, 2(b + az)2
√ √ az 2 + 2bz + c , ax2 + 2bx + c = ± a (z − x) = ± a · 2(b + az) √ z = x ± ax2 + 2bx + c a
という置換が導かれ,また有理関数の積分が得られます.a < 0 のときは複素数 の演算をすることになりますが,演習問題 5.3 の変換をすれば避けることができ ます. ときには,適当な線形置換 z = αx + β をすることによって を
z 2 + 1,
z 2 − 1,
1 − z2
のどれかに変える方が便利なことがあって,そのときは,
(5.23)
z = sinh u,
z = cosh u,
z = sin u
√ ax2 + 2bx + c
II.5. 初等的積分をもつ関数
149
という置換をすれば,積分の平方根をなくすことができます. 例 もう一度,積分 (4.27) を考えます.x = sinh u と置けば,
u sinh 2u 1 cosh 2u + du = + + 1 dx = cosh u du = 2 2 2 4 √ x x2 + 1 1 u sinh u cosh u = ln x + x2 + 1 + = + 2 2 2 2
x2
2
となります.x = sinh u の逆関数に関しては演習問題 I.4.3 を参照のこと.
II.5.3 演習問題 5.1 (ヨハン・ベルヌーイ,この節の最初の引用参照) Z dx 1 x−a = ln +C x2 − a2 2a x+a を証明しなさい.
„s
Z
5.2
n
R
« ax + b , x dx が初等関数であることを証明しなさい. ex + f
5.3 (オイラー 1768, II 章, §88)ax2 + 2bx + c が異なる 2 実根 α, β を持つとして, z 2 = (x − β)/(x − α) という置換によって積分 Z “p ” R ax2 + 2bx + c, x dx (R は 2 変数の有理関数)が
R
eは e R(z) dz という形になることを示しなさい.ここで R
有理関数である.
5.4 秀才君1 は,(5.16) を (I.4.32) を使って √ √ √ √ Z x2 + 2x + 1 2 2 2x dx √ = ln arctan + 2 x4 + 1 8 4 1 − x2 x − 2x + 1 と簡単にしたが,たとえば,
Z 0
√ 2
√ √ dx 2 2 = ln 5 + arctan(−2) = −0.1069250677 x4 + 1 8 4
となり,正の関数の積分の値が負になってしまった.どこで間違ったのだろう? そして 正しい値はいくつだろうか? 1
[訳註]Mr.C.L.Ever の訳ですが,このままでは意味がわかりません.実はドナルド・クヌース の『TEX ブック』(斎藤信男監修,鷺谷好輝翻訳,アスキー出版局)の演習問題 23.5 に B.C.Dull という人が出てきます (日本語訳では意訳をしてあるので人名になっていません).このクヌース のジョークの向こうを張って,C.L.Ever 氏,そう,Clever 氏を創作したのだそうです.何でもす ぐにわかってしまう「秀才君」だからこそ陥ってしまう誤りを考察するのが,この問題の趣旨です. 彼は,第 IV 章でもう 1 度登場してくれます.
150
第 II 章 微積分法
5.5
Z √
dx x2 + 1
を 1 つは置換 (5.22) で,1 つは置換 (5.23) でと,2 つの方法で計算しなさい.これによっ て,arsinhx = ln(x +
√
x2 + 1) という式が得られる(演習問題 I.4.3 参照).
5.6
Z
が置換
sin2 x =
R(sin2 x, cos2 x, tan x) dx
u2 , 1 + u2
cos2 x =
1 , 1 + u2
tan x = u
を使って積分できることを証明しなさい.
II.6 積分の近似計算 この種のあらゆる試みの後,解析学者はついに,楕円の弧の長さを代数的な式,対 数,円の弧を使って表わすためのあらゆる望みを捨て去るしかないという結論に 達したので . . . (ランベルト (1772)『楕円の弧の求長 . . .1 』, 『全集』第 I 巻,p.312) 数値積分の問題は 200 年ほどにもなり,多くの幾何学者,ニュートン,コーツ,ガ ウス,ヤコビ,エルミート,チェビシェフ,クリストッフェル,ハイネ,ラドー,
A. マルコフ,T. スティルチェス,C. ポッセ,C. アンドレーエフ, N. ソニン他 の人々が考えてきたのだが,それにもかかわらず,十分に開拓されているとは言 (スチェクロフ 1918)
えない. 大いに幾何学者たちを悩ませてきた積分
R
x
e dx x
を,有限の形に書くのが不可能
なことは,我々の方法から容易に納得されるであろう . . . (リウヴィル 1835, p.113)
これまでの節でめざましい結果を述べてきたが,ベルヌーイ一族,オイラー,ラ グランジュらの天才が挑んでも陥落しなかった積分も沢山あります.それは
e
dx
, 4x3 − g2 x − g3
−x2
dx,
ex dx , x
1 − k 2 cos2 x dx,
dx , ln x dx 2 (1 − x )(1 − k 2 x2 )
のような積分です.最後の 3 つの積分は, 「楕円積分」と呼ばれるもので,ルジャ 1
[訳註]ドイツ語原題:Rectification elliptischer B¨ ogen . . .,
II.6. 積分の近似計算
151
ンドル,アーベル,ヤコビ,ワイエルシュトラスはその大部分の仕事をこの積分 の研究に費やしています.上にあげた積分は有限項の初等関数では表わすことは できず(リウヴィル (1835),引用参照),新しい方法で計算せねばならない新し い関数なのです. この節では (1) 級数展開,(2) 多項式近似(数値積分),(3) 漸近展開という 3 つのアプローチを考えます.
II.6.1 級数展開 アイデアは,関数を(x のベキか,何か他の形の表示の)級数に展開して,項 別に積分するというものです.この手続きを正当化するのは後出の III.5 節で行い ます. 歴史的な例 メルカトールの計算((I.3.13) 式参照)
x3 x2 1 dx = 1 − x + x2 − · · · dx = x − + − ··· ln(1 + x) = 1+x 2 3 √ は最も古い例です.円 y = 1 − x2 の弧の長さの計算 x x x t2 2 arcsin x = 1 + y (t) dt = 1+ dt = (1 − t2 )−1/2 dt 1 − t2 0 0 0 x 1 · 3 x5 1 1·3 4 1 x3 = t + · · · dt = x + + + ··· 1 + t2 + 2 2·4 2 3 2·4 5 0
((4.9) 式と定理 I.2.2 参照)はまさに,(I.4.25) 式に対してニュートンが行ったア プローチです. 楕円の周の長さ 半軸の長さが 1 と b の楕円
y2 = 1 または x = cos t, y = b sin t b2 の周の長さを計算します.dx = − sin t dt, dy = b cos t dt だから,周の長さは 2π π/2 2 2 P = dx + dy = 4 sin2 t + b2 cos2 t dt x2 +
(6.1)
0
0
=4
0
π/2
1 − (1 − b2 ) cos2 t dt
α
となります.これは初等的でない「楕円積分」 (これから名前が由来する)です. 計算は次のようにします.1 > b > 0,つまり 0 < α < 1 と仮定します.アイデ アは
√ 1 − x に対するニュートンの級数(定理 I.2.2)
152
第 II 章 微積分法
√ x 1·1 2 1·1·3 3 x − x − ··· 1−x=1− − 2 2·4 2·4·6
(6.2)
を使うことです.これから
(6.3)
α 1·1 2 α cos4 t − · · · dt 1 − cos2 t − 2 2·4
π/2
P =4 0
が得られます.II.4 節の技法((4.28) 式参照)を使うと
π/2
cos2n t dt =
0
π 1 · 3 · 5 · · · · · (2n − 1) · 2 2 · 4 · 6 · · · · · (2n)
ですから,(6.3) 式は
(6.4)
1 1 2 1·1 1·3 3 1·1·3 1·3·5 · −α · − ··· P = 2π 1 − α · − α 2 2 2·4 2·4 2·4·6 2·4·6
となります(オイラー (1750),『全集』第 XX 巻,p.49).この式の収束性は図
6.1 に描いてあります.α = 0(つまり b = 1)のときは円になり,P = 2π です. α = 1(つまり b = 0)のときは級数は非常にゆっくりと正しい値 4 に収束して いきます.
図 6.1 級数 (6.4)(楕円の周の長さ)の収束
フレネル積分 フレネル積分(フレネル 1818)
(6.5)
x(t) = 0
t
cos(u2 ) du,
y(t) =
t
sin(u2 ) du
0
は面白い性質を持っており(演習問題 6.4),(x, y) 平面に美しい螺旋を作ります (図 6.2).それは初等的ではありませんが,関数 sin(u2 ) と cos(u2 ) は単純な無 限級数(z = u2 と置いた sin z と cos z の級数である (I.4.16) と (I.4.17) を参照)
II.6. 積分の近似計算
153
図 6.2 フレネル積分
を持っており,項別に積分を求めると
u10 t3 t7 t11 u6 + − · · · du = − + − ··· 3! 5! 3 7 · 3! 11 · 5! 0 0 t t t5 t9 t13 u4 2 + · · · du = t − + − + ··· 1− cos(u ) du = 2! 5 · 2! 9 · 4! 13 · 6! 0 0
t
sin(u2 ) du =
t
u2 −
となります.この級数の収束を図 6.3 に描いておきます.t の値が小さいときの結 果は素晴らしいのですが,|t| の値が大きくなっていくと,段々多くの項を勘定に 入れなければいけなくなります.
図 6.3 ベキ級数によるフレネル積分. 数 5, 9, 13 と 7, 11, 15 は 勘定に入れる最後の t のベキを示している.
II.6.2 数値計算法 b
f (x)dx を計算したいとしましょう.アイ デアを述べます.N を固定して,区間 [a, b] を長さ h = (b − a)/N の N 個の部 積分区間が与えられていて,積分
a
分区間に分けて,
x0 = a,
x1 = a + h,
...,
xi = a + ih,
...,
xN = b
として,関数 f (x) を局所的に容易に積分できる多項式に置き換えます.
154
第 II 章 微積分法
台形則 区間 [xi , xi+1 ] の上で,関数 f (x) を (xi , f (xi )) と (xi+1 , f (xi+1 )) を通
る直線に置き換えます.すると,xi と xi+1 の間の積分は台形の面積 h · f (xi ) +
f (xi+1 ) /2 で近似され,
b
f (x) dx ≈ (6.6)
a
N −1 i=0
=h
h f (xi ) + f (xi+1 ) 2
f (xN ) f (x0 ) + f (x1 ) + f (x2 ) + . . . + f (xN −1 ) + 2 2
となります. 例 図 6.4 の上の図は関数 cos x2 と sin x2 とその台形近似(刻み幅の大きさは
h = 0.5, N = 10)を示しています.下の図の点は h = 1/2 と h = 1/8 として 得られるフレネル積分の近似を表しており,対応する値を直線で結んだものです.
図 6.4 台形則によるフレネル積分
シンプソンの方法(シンプソン 1743) アイデアは,3 つの連続した値 f (xi )
(yi = f (xi )) を選んで,この 3 点を通り補間する放物線 p(x) = y0 + (x − x0 )
(x − x0 )(x − x1 ) Δ2 y0 Δy0 + h 2 h2
を計算することです(定理 I.1.2 と (2.6) 式参照).x = x0 + th を代入すれば,x 軸とこの放物線の間の面積は
(6.7)
x2
x0
p(x) dx = 2h · y0 + h
0
2
t dt · Δy0 + h
h = (y0 + 4y1 + y2 ) 3
0
2
t(t − 1) dt · Δ2 y0 2
II.6. 積分の近似計算
155
となります.シンプソン則
(6.8) b h f (x0 ) + 4f (x1 ) + 2f (x2 ) + 4f (x3 ) + 2f (x4 ) + · · · + f (xN ) f (x) dx ≈ 3 a (N は偶数)が得られます. ニュートン–コーツ法 同じようにして高次の補間多項式をとれば,
3h f (x0 ) + 3f (x1 ) + 3f (x2 ) + f (x3 ) 8 x0 x4 2h 7f (x0 ) + 32f (x1 ) + 12f (x2 ) + 32f (x3 ) + 7f (x4 ) f (x) dx ≈ 45 x0 x3
f (x) dx ≈
などが得られます.最初のものはニュートン (1671) によるもので,3/8 則と言わ れています.1711 年にコーツは 10 までのすべての次数での公式を計算していま す(ゴールドシュタイン (1977), p.77 参照). 数値例
10
dx x
1
= ln(10) を上の方法で,N = 12, 24, 48, . . . に対して近似し
た結果を,表 6.1 にあげておきます2 .隣り合うどの 2 つの行を見ても,近似が本 当によくなっていることがわかります(説明は演習問題 6.5 を参照). 表 6.1
2
R 10 1
dx x
の色々な積分公式による計算
N
台形
シンプソン
ニュートン
コーツ
12
2.34
2.307
2.31
2.305
24
2.31
2.303
2.303
2.3027
48
2.305
2.3026
2.3026
2.30259
96
2.303
2.302587
2.30259
2.3025852
192
2.3027
2.3025852
2.3025854
2.302585095
384
2.3026
2.3025851
2.3025851
2.3025850930
768
2.3025
2.302585093
2.302585094
2.3025850929947
1536
2.302587
2.3025850930
2.3025850930
2.30258509299405
3072
2.3025858
2.302585092996
2.302585092999
2.3025850929940458
6144
2.3025852
2.3025850929941
2.3025850929943
2.302585092994045686
[訳註]分点の数 N は 12 · 2n (n ≥ 0) となっています.シンプソン法では 2 の倍数,ニュート ン法では 3 の倍数,コーツ法では 4 の倍数であることが必要なので,効果を共通に比較するために 12 の倍数にしてあります.
156
第 II 章 微積分法
2π √ 1 − α cos2 t dt に使うと面白い現象が見られます 0 (ここで b = 0.2, α = 0.96 としています.表 6.2 参照).期待するよりずっと速く 収束するのです.理由は関数 f (t) が周期的なことで,この「超収束性」は II.10 節のオイラー–マクローリンの公式で説明されるものです. 台形則を楕円積分 P =
表 6.2 ある楕円積分の台形則による計算 N
台形則
12
4.1
24
4.201
96
4.20200890792
192
4.20200890793780018891
384
4.2020089079378001889398329176947477824
II.6.3 漸近展開 x
2
e−t dt に対してラプラス (1812) によって使われ(『全集』第 VII 巻,p.104 と演習問題 6.7 参照),またフレネル積分に対してコーシーによっ て 1842 年に使われたものです(M. クライン (1972), p.1100 参照).級数展開や 数値的な方法は,小さいかそこそこの値の x に対して有効なのに対して,漸近展 開の方法は特に大きな x に対して有効なのです. この技法をフレネル積分を例にして説明しましょう.x → ∞ の極限では積分 この方法は
0
の厳密な値が
∞
(6.9)
2
∞
cos t dt = 0
0
1 sin t dt = 2 2
π 2
であることが知られています(演習問題 IV.5.14).ここでアイデアは,積分を
x 0
=
∞ 0
−
∞ x
と分けることです.つまり,
(6.10)
x
cos t2 dt =
0
1 2
π − 2
∞
cos t2 dt
x
3
とします.右辺の積分に手で ,2t と 1/(2t) という因子をつけ加えて,u(t) =
sin t2 , v(t) = 1/t と置いて部分積分すると, 3
[訳註]「手で」は artificially の訳.式の変形は何らかの必然があってなされるものなのだが,と きに理由を説明できないがそうするとうまくいくという偶然の変形を思いつくことがある. 経験と か慣れとか思いつきとしか言いようはないのだが.本当は何かの必然があるはずなのにその理由づ けが見つからない.そんなとき数学者は,はにかみながら「手で」入れたと言うことがある.
−
∞
cos t2 dt = −
x
1 2
II.6. 積分の近似計算 ∞
x
1 1 1 1 · 2t cos t2 dt = sin x2 − t 2 x 2
∞
x
157
1 sin t2 dt t2
となります.得られた積分はどう見ても初めのものより易しくはなさそうですが,
x が大きければ,右辺の積分は余分の因子 1/t2 を含んでいるので,元の積分よ ∞ りずっと小さくなります.ですから,(2x)−1 sin x2 は − x cos t2 dt に対するよ い近似だということになります.もしまだ精度が不十分なら,同じ手続きを繰り 返せば(今度は u(t) = − cos t2 , v(t) = 1/t3 と置いて),
(6.11)
−
1 2
∞
x
1 1 1·3 1 sin t2 dt = − cos x2 + 2 3 t 2·2 x 2·2
∞ x
1 cos t2 dt t4
が得られます.これを続ければ,(6.10) 式は
(6.12) x 0
11 1 1 1·3 1 π + sin x2 − cos x2 − sin x2 3 2 2x 2·2 x 2 · 2 · 2 x5 1·3·5 1 1·3·5·7 1 + cos x2 + sin x2 − · · · 2 · 2 · 2 · 2 x7 2 · 2 · 2 · 2 · 2 x9
1 cos t dt = 2 2
となります.類似の公式
(6.13) x
11 1 1 1·3 1 π − cos x2 − sin x2 + cos x2 2 2x 2 · 2 x3 2 · 2 · 2 x5 1·3·5 1 1·3·5·7 1 + sin x2 − cos x2 − · · · 7 2·2·2·2 x 2 · 2 · 2 · 2 · 2 x9
sin t2 dt =
0
1 2
も成り立ちます.この近似の,大きな x に対する,並外れた精度は図 6.5 を見れ ばわかるでしょう.1, 3, 5 という数は勘定に入れた 1/x のベキの最後のものを表 わしています.
図 6.5 1, 2, 3, 10, 20, 30 項の漸近展開 (6.12) と (6.13)
158
第 II 章 微積分法
注意 (6.1) 級数 (6.12) を切り詰めたものの誤差は容易に評価することができ ます.たとえば,(2x)−1 sin x2 の項の後ろで切り詰めれば,上の議論から,誤差 は x ≤ t < ∞ でとられた (6.11) の積分の値で与えられます.| cos t2 | ≤ 1 を使 えば,(2x3 )−1 という評価が得られ,x > 2 では 0.0625 より小さくなります4. 注意 (6.2) 無限級数 (6.12) と (6.13) は,x の値を固定すると収束しません. 理由は,分子の一般項が 1 · 3 · 5 · 7 · 9 · · · · という因子を含んでいて,他の因子を 抑え込んでしまうからです.このような級数をポアンカレの漸近展開と言います.
II.6.4 演習問題 6.1 (ヨハン・ベルヌーイ (1697)) Z 1 1 1 1 1 xx dx = 1 − 2 + 3 − 4 + 5 − + · · · 2 3 4 5 0 であることを示しなさい. ヒント xx = ex ln x と置いて,指数関数に対する級数を使い,部分積分によって,
R
xn (ln x)n dx を計算しなさい. √ R 6.2 x2 dx/ 1 − x4 という積分は,弾力のある線の計算でヤーコプ・ベルヌーイに よって,側心等時曲線5 の研究でライプニッツによって扱われています.公式
Z
x2 dx 1 1 1·3 1·3·5 √ x7 + x11 + x15 + · · · = x3 + 3 7·2·1 11 · 4 · 1 · 2 15 · 8 · 1 · 2 · 3 1 − x4
(ライプニッツ 1694b)を証明しなさい.
6.3 (6.7) と同じように,ニュートン–コーツの公式を,それぞれ 3, 4 次の補間多項式 を区間 [x0 , x3 ], [x0 , x4 ] で積分することによって導きなさい.
6.4 (6.5) で定義された曲線(図 6.2 参照)に対して次を示しなさい.a) 原点と (x(t), y(t)) の間の弧の長さが t に等しく,b) 点 (x(t), y(t)) での曲率半径が 1/(2t) に等しい. 6.5 シンプソンの方法が 3 次多項式に対して厳密に成り立つことを示しなさい. 6.6 シンプソンの方法を使って,
Z
1 0
ln(1 + x) dx 1 + x2
を計算しなさい.N が大きくなるにつれ誤差が小さくなることを調べなさい. 結果 正しい値は (π/8) ln 2 = 0.2721982613 です.
6.7 4 5
R∞ 0
2
e−t dt =
√
π/2 (後出の (IV.5.41) 参照)を使って,誤差関数 Φ(x) =
[訳註]もちろんこれは, (6.11) 式の右辺の各項を別々に (4x3 )−1 で評価して得るのである. [訳註]Isochrona Paracentrica の訳.普通の Isochrona は高さが同じ速さで減小するものだが, これは与えられた点からの距離が同じ速さで増加する曲線.
II.7. 常微分方程式 Rx
159
2
e−t dt に対する,大きな値の x に対して有効な漸近展開を導きなさい(ラプラス (1812),第 I 巻,No.44). « 2 „ 1 1 e−x 1·3 1·3·5 − + 2 5 − 3 7 + ··· . 結果 Φ(x) = 1 − √ x 2 · x3 2 ·x 2 ·x π 6.8 次の積分を数値的に計算しなさい. √ p √ Z ∞ π 2 2+ 2 1 √ cos x2 dx = ≈ 1.674813394. 4 · Γ (3/4) x 0 √2 π
0
2 数 A ≈ 1/10 と B ≈ 10 を選んで,積分を次の条件で計算しなさい.a) 区間 (0, A] 上, 級数で,b) 区間 [A, B] 上,シンプソンの方法で,c) 区間 [B, ∞) 上,漸近展開で.
II.7 常微分方程式 それゆえ,これらの積分は相等しい1 .
(ヤーコプ・ベルヌーイ (1690))
II.4 節と II.5 節で, 与えられた関数 f (x) の原始関数を求める問題,つまり, y (x) = f (x) を満たす関数 y(x) を探す問題を扱いました.ここでは,関数 f が 未知関数 y(x) にも依存していてもよいという,もっと難しい問題を考えましょう. (7.1)
y = f (x, y)
の形をした関係式を常微分方程式と言います. ある区間のすべての x に対して y (x) = f (x, y(x)) を満たす関数 y(x) を探す のです.いくつかの歴史的な例から始めましょう(もっと詳しくは,ヴァンナー
(1988) を参照). ライプニッツの等速降下曲線2 ガリレイは原点から y 軸に沿って落ちる物体は
v=
√ −2gy に従って速度を増すことを発見しました.ここで g は重力加速度で
す.ライプニッツは,デカルト主義者たちと力学に関する論争中, (『文壇ニュー ス』3 誌,1687 年 9 月号)次の問題を提案しました.物体がある曲線 y(x) に沿っ て滑り落ちていくとき,その鉛直方向の速度 dy/dt がどこでも,与えられた定 数 −b に等しいような曲線を求めよ(図 7.1 参照).
1 月後, 「高名なるクリスチアヌス・フゲニウス4氏」 (ホイへンスのこと)は, 「し 5 かし証明も説明も与えずに 」,解を与えました.その後ライプニッツ (1689) が公 1
[訳註]ラテン語原文:Ergo & horum integralia aequantur
2
[訳註]ラテン語原文:isochrone
3
[訳註]フランス語原題:Nouvelles de la R´ epublique des lettres
4 5
[訳註]ラテン語名:Vir Celeberrimus, Christianus Hugenius [訳註]ラテン語原文:sed suppressa demonstratione& explicatione
160
第 II 章 微積分法
図 7.1 ライプニッツの等速降下曲線
表した「証明」は不満足なものでした.解を推測し,それが求める性質を持って いることを示したものだったのです.その後,ヤーコプ・ベルヌーイ (1690) は, 「現代の」微積分法の助けを借りて解を見つける一般的な方法を出版しました.こ れが,ヤーコプとヨハンのベルヌーイ兄弟や,後にオイラーやダニエル・べルヌー イによってなされる壮大・華麗な発見の時代の幕開けでした.そして数十年の間, バーゼルを数学研究の世界的な中心地にしたのです. ガリレイの公式を
(7.2)
ds dt
2 =
dx2 + dy 2 = −2gy (s = 弧長) dt2
と書いて,(dy/dt)2 = +b2 (この b が一定というのが条件)で割ると
(7.3)
dx dy
2 +1=
−2gy b2
つまり
−1 dy = dx −1 − 2gy/b2
という,(7.1) の形の微分方程式が得られます.ベルヌーイのアイデアを理解する ために,(7.3) 式を
(7.4)
dx = −
−1 −
2gy dy b2
と書いてみると,これは(図 7.1 の)2 つの縞を入れた長方形の面積が,いつも 同じ面積を持つことを表わしています. そこでヤーコプは, 「それゆえ,これらの 積分は相等しい1 」と書いています(これが数学において, 「積分」という言葉が初 めて現れた瞬間です).このことは,S1 と S2 の面積もまた等しくなければなら
II.7. 常微分方程式
161
ないことを意味しています. これを積分すれば,解
b2 x= 3g
3/2 2gy −1 − 2 b
が得られ,そして「解は 2 分の 3 乗の放物線になるだろう6」(ライプニッツ)と いうことになるのです. トラクトリックス7 傑出せるパリの医師であり,同時に力学や建築においても高名であり,ペロー版 のヴィトルヴィウスによってもよく知られており,終生フランス王立科学アカデ ミーの重要な会員でもあったクロード・ペローは,余と余の面前の多くの人士に, 自分では解けなかったことを認めつつ,この問題を提出し,. . . (ライプニッツ (1693))
ライプニッツがホイヘンスから数学のレッスンを受けて いた頃 (1672–1676),有名な解剖学者で建築家のクロー ド・ペローは次の問題を定式化しました. 「どんな曲線に 対して,各点 P での接線の P と x 軸との間が一定の長 さ a になるだろうか?(図 7.2 参照)」この質問を説明 するために,彼は「銀の懐中時計8 」をズボンの時計隠 しからとり出してテーブルの向こうまで引き出したので す.パリやツールーズ(フェルマーのこと)のどんな数学者もこの式を求められ なかったと,言い添えました. ライプニッツが彼の解を公表したのは 1693 年のことで(ライプニッツ (1693) 参照),
y dy = − , 2 dx a − y2 6 7
8
つまり
a2 − y 2 dy = dx − y
[訳註]ラテン語原文:Solutio sit linea paraboloeides quadrato cubica . . . [訳註]日本語に訳すことは少ない.無理に訳せば「牽引曲線」とでもするのだが,歴史的な意味 しかない.曲線を (7.5) 式のように書いても,あまりわかったような気がしないだろう. むしろ x = a log(tan t/2) + a cos t, y = a sin t というパラメータ表示の方がわかりやす いだろう.(0, a) にカスプを持つ曲線になる.さらに面白いことに,次項にでてくるカテナリー y = a cosh(x/a) の 点 A = (0, a) から発する伸開線になっている.カテナリーを述べる前にその 証明を与えるのは変なので,演習問題 7.1 の解答の中で述べることにする. また,トラクトリックスの微分方程式は,曲線 y = y(x) > 0 の接線の x 軸との交点までの距離 が一定 a(鎖の長さ)であることを表わしたもの. [訳註]ラテン語原文:horologio portabili suae thecae argenteae .懐中時計の先についている 鎖の先端をテーブルの表面につけて真っ直ぐに引けば時計はこの曲線を描くことになるということ です.
162
第 II 章 微積分法
図 7.2 トラクトリックス9
図 7.3 ライプニッツ (1693) によるスケッチ10
という彼の解を見つけるのにかなり時間がかかったことを力説しています.これ から(「それゆえ,これらの . . .1 」),求積によって解が得られることがわかります (図 7.2 か図 7.3 参照).この面積が対数で表わされるのは「よく知られた事実で ある」と主張していますが,実際,
a2 − y 2 = v, a2 − y 2 = v 2 , −y dy = v dv
という置換により,
(7.5)
x= y
a
a − a2 − y 2 a2 − y 2 dy = − a2 − y 2 − a log y y
が正しいことがわかります(演習問題 7.1 も参照).この理論への彼の興味は変 わった方向にも向いていったことを言わないといけないでしょう.積分 (7.5) の (それゆえ対数の)計算をするのにペローの懐中時計を力学的な積分機械として 使ったことになっていますが,類似の積分のためにも力学的な道具をデザインし ようとしたのです. カテナリー しかし,貴方のアルゴリズムの質をよりよく判定するために,もどかしさに堪え ながら,釣り下げられたロープや鎖の形に関して貴方が得た結果を待っています. ベルヌーイ氏が貴方にこの問題を研究するように勧めたことに対して,彼にとて も感謝しています.この曲線が際立った性質を持っているからです.私は昔これ を考えたことがあるのです.若くて,そう 15 歳のときでした.メルセンヌ神父 に,これが放物線にはならないことを証明してみせたものでした . . . (ホイヘンスのライプニッツへの手紙, 1690 年 10 月 9 日)
9 10
[訳註]この図では a = 1 としている. [原註]ジュネーブ大学図書館の許可を得て転載.
II.7. 常微分方程式
163
兄の努力は実を結ばなかったのですが,私は方法を見つけたのですから幸運だっ たと言えるでしょう . . . 本当にこれには深く瞑想することが必要で,一晩の眠り を私から奪うほどでした . . .
(ヨハン・ベルヌーイ『書簡集』第 1 巻,p.98)
ガリレイ (1638) は 2 つの爪から釣り下げられた鎖は, 「とても正確に11」放物 線になっていると主張しました.20 年ほど後,16 歳のオランダの少年(クリス ティアン・ホイヘンス)はこの結果が誤っているに違いないことを発見しました. そのときから,釣り下げられた柔軟な曲線(「鎖の,または,ロープの曲線12」) の形の問題はライプニッツ (1691b) とヨハン・ベルヌーイ (1691) によって最終 的に解かれるまでは,未解決のままだったのです.ここでは,ヨハンのアイデア (『全集』,第 III 巻,pp.384, 426)を述べましょう. その曲線上の点 P での水平な力 H と鉛直な力 V (図 7.4 参照)を考えると, 定数 a, q に対して
V =q·s
H = a,
となっています.水平方向の外力はないし,V が鎖 AP の重さを表わしているか らです. (傾き y を p と表わせば)
V qs dy = = dx H a となり,これを微分すれば(c = a/q と置いて), (7.7) c · dp = ds = 1 + p2 dx (7.6)
p=
という微分方程式が得られます.「それゆえ,これらの . . .1 」ということから,彼
の解は
c
dp = 1 + p2
となり,したがって
(7.8)
p = sinh
x − x0 c
dx,
つまり
arsinh(p) =
x − x0 c
であり
y = K + c · cosh
x − x0 c
となります13 . 11
[訳註]ラテン語原文:ad unguem.文字通りには「爪にまで」という意味.ガリレイの論文から の引用で,もしかするとこれは,ガリレイのしゃれかも知れない.
12
[訳註]ラテン語原文:Linea Catenaria vel Funicularis
13
[訳註]K = 0, x0 = 0 としたカテナリー y = c · cosh(x/c) は放物線と似ていなくもない.これ はまた,放物線 4cy = x2 を x 軸上を滑ることなく転がすときの,焦点 F = (0, c) の軌跡になっ ている.これまでの知識だけで証明できるのでトライして下さい. ヒント:放物線 4cy = x2 の点 P = (a, a2 /4c) での接線の x 軸との交点 T を考えると,\P T F は直角である.放物線上の点 P から原点 O までの長さと線分 P T の長さとの差が,転がる放物 線の点 P が x 軸に点いているときの焦点の x 座標であり, F T が y 座標であることがわかる.
164
第 II 章 微積分法
図 7.4 カテナリー
図 7.5 カテナリー (ライプニッツ 1691)14
最速降下線15 垂直な平面に 2 点 A, B が与えられたとき,粒子 M が A を出発して,自重だ けの影響下で降下し,最短時間で B に到達するような道 AM B を決定せよ. (ヨハン・ベルヌーイ 1696) この問題はこれまで提案された中でも最も不思議でかつ美しい問題の 1 つのよう に思えます.是非頑張ってやってみたいと思いますが,問題を純粋に数学の問題 に変えていただかないといけないかと思います.何しろ物理は面倒で . . . (ド・ロピタルの,ヨハン・ベルヌーイへの手紙,1696 年 6 月 15 日)
1638 年にガリレイは,A から C まで滑り落ちる物体(図 7.7 参照)は,回り 道 ADC をした方が時間が掛からない(初速が大きくなるという理由で)ことを 証明しました.これを続けて,ADEC, ADEF C, ADEF GC はいつも前のもの より速くなることを示し,最終的には円がすべての曲線の中で最も速いという結 論を出したのです.兄のヤーコプが同じ間違いをしているのを聞いたヨハンはこ れを,最速降下線 (brachis= βραχ´ υ ς = short, chronos = χρ´ oνoς = time) を見 つける公開のコンテストを開催する機会であると捉えたのです (1696).ヤーコプ 14 15
[原註]ジュネーブ大学図書館の許可を得て転載. [訳註]ラテン語原文:Brachistochrone 文字通りに訳せば最短時間線となるが, どんな条件下の最短時間かがわかりにくく,最短降下線と いう訳もある.しかし状況を忘れて字だけ見ていると,距離が最短であるように錯覚するかもしれ ない.やはり「最速」が簡潔でよい.
165
II.7. 常微分方程式 B
A
A
x D E
α F
C
y 図 7.6 最速降下線
C
G
図 7.7 ガリレイが見た誤りの最速降下線
のものも含めて,期限までにいくつかの解答が寄せられましたが,残念なことに, どれも正しいものだったのです.それでも,ヨハンの解が最もエレガントでした. 彼は「フェルマーの原理」のアナロジー16 をしてみせたのです((2.5) 式参照). 彼は「光の速さ」が v =
√ 2gy で与えられるような多くの層を考えました((7.2)
式と図 7.6 参照).最速の道はあらゆるところで屈折の法則(フェルマーの原理)
v =K sin α を満たすようなものになります.sin α = 1/ 1 + y 2 なのだから, y · dy (7.9) 1 + y 2 · 2gy = K つまり dx = c−y となります17 .やはり, 「それゆえ,これらの積分は相等しい 1 」に従って,置換
(7.10)
y = c · sin2 u =
c c − cos 2u 2 2
をすれば,
(7.11)
x − x0 = c u −
c sin 2u 2
という式が得られ,「これから,最速降下の曲線は普通のサイクロイドであると 16
[訳註]analogy を漢語に訳せば「類推」となるが,類推でわかる人はアナロジーでもわかると思 う.アナロジーは三段論法で得られないような命題を得ようとするときの最も強力な方法の 1 つで, ギリシャ時代以来多方面で用いられ,いろいろなニュアンスが付加されてきた.しかし,漢語の「類 推」にはそれよりもずっと東方的(日本的?)なニュアンスがあり,あいまいさが含まれる.論理 学の言葉としてのアナロジーの原義を『広辞苑』から引用すれば, 「間接推理の一.帰納推理に似て 二つの特殊的事例が多数の本質的な点において一致することから他の属性に関しても類似相当の存 在することを推論するもので,特殊から他の特殊への推理」となる.数学においてアナロジーとい うとき,他の類似相当のものを推理するだけでなく,推理したことを証明(確立)することをも込 めているのである.類似なものを推理し想像しただけではないことを強調するために, 以下でもア ナロジーという言葉を用いることがある.
17
[訳註]もちろん,c = K 2 /2g です.
166
第 II 章 微積分法
いう結論が得られる18 」ことになります.
II.7.1 いくつかの積分可能な方程式 さて,積分の計算で解くことができる微分方程式の簡単なものをいくつか議論 しておきましょう. 変数分離方程式
y = f (x)g(y).
(7.12)
これまでのすべての例,つまり (7.3), (7.5), (7.7), (7.9) は皆このタイプです.こ れらは y = dy/dx と書いて, 「変数を分離する」ことによって,積分して(「それ ゆえ,これらは . . . 1 」)解かれます.つまり
(7.13)
dy = f (x) dx g(y)
として
dy = g(y)
f (x) dx + C
とすることによって解かれます.G(y) と F (x) がそれぞれ 1/g(y) と f (x) の原 始関数なら,解は G(y) = F (x) + C のように表わされます. 線形斉次方程式
y = f (x)y
(7.14)
は (7.12) の特別な場合で,その解は
(7.15)
ln y =
f (x) dx + C,
または y = C · exp f (x) dx
で与えられます. 線形非斉次方程式
(7.16)
y = f (x)y + g(x) .
ヨハン・ベルヌーイは(タルターリアのアイデアである (I.1.5) 式のように),解 を 2 つの関数の積 y(x) = u(x) · v(x) として書くことを提案しました.すると,
dv du ·v+ · u = f (x) · u · v + g(x) dx dx となります.ここで,2 つの項を別々に等しいと置いて, (7.17a) 18 [訳註]ラテン語原文:ex
du = f (x) · u dx
(u を得るため)
qua concludo Curvam Brachystochronam esse Cycloidem vulgarem
167
II.7. 常微分方程式
g(x) dv = dx u(x)
(7.17b)
(v を得るため)
とすることができます.(7.17a) 式は u に対する線形斉次方程式でその解は (7.15) によって与えられます.それから関数 v(x) は (7.17b) を積分して得られます.結 局 (7.16) の解は
(7.18)
y(x) = C · u(x) + u(x)
x 0
g(t) dt, u(t)
u(x) = exp
x
f (t) dt
0
となります19 .この関係式は,(7.16) の解が斉次方程式の一般解と非斉次方程式 の特殊解の和であるという事実を表わしています. ベルヌーイの微分方程式 本当のところ,お兄さんの方程式に貴方が与えた解ほど創意に満ちたものはあり ません.この解が余りに単純で,問題がどんなに難しく見えたかを思えば驚くほ どです.これは本当にエレガントな解と言うべきものでしょう. (P. ヴァリニョンのヨハン・ベルヌーイへの手紙,1697 年 8 月 6 日)
1695 年,ヤーコプ・ベルヌーイは (7.19)
y = f (x) · y + g(x) · y n
を解くために,数ヵ月の間奮闘していました.これはヤーコプにとって,公的な コンテストを開くよい機会でした.不幸なことに,ヨハンは 2 つもエレガントな 方法を持っていました(ヨハン・ベルヌーイ 1697b).最初のアイデアは演習問 題 7.2 で扱います.2 つ目のアイデアは上で説明したものと同じ,つまり,解を
y(x) = u(x) · v(x) と書くことです.微分方程式 (7.19) に対してこうすると,u に対してはまた (7.17a) 式が得られ,v に対しては (7.20)
dv = g(x)un−1 (x)v n dx
という,変数分離によって解くことのできる微分方程式が得られます.これから,
u(x) を (7.18) のものとして, y(x) = u(x) C + (1 − n)
x
g(t)un−1 (t) dt
0
という解が得られます.
19
[訳註]ここで C は C = v(0) によって定まっている.
1/(1−n)
168
第 II 章 微積分法
II.7.2 2 階微分方程式 上の公式から 2 階差分をなくすために,. . .,法線影20 BF を p と書くことにしよ (リッカティ(1712))
う.
y = f (x, y, y ) という形をしたものを 2 階の微分方程式といいます.このような方程式を解析的 に解くことは極めて稀にしかできません.しかし,いくつかの例外はあります.
y を含まない方程式 p = y と置いて,微分方程式 y = f (x, y ) を 1 階の方程 式 p = f (x, p) にするのが自然でしょう.カテナリーの微分方程式 (7.7) は実際 にこのタイプであることを注意しておきます.
x を含まない方程式 y = f (y, y ).
(7.21)
y を独立変数と考えて y = p(y) となるような関数 p(y) を探すのがアイデアで す(リッカティ(1712)).合成関数の微分から, y =
dp dy dp = · = p · p dx dy dx
となって,(7.21) 式は 1 階の方程式
(7.22)
p · p = f (y, p)
となります.(7.22) 式から関数 p(y) が求められたなら,後は (7.12) のタイプの 方程式 y = p(y) を積分するだけです. 例 振子の運動(レオナルド・ダ・ヴィンチのスケッチ参照)は
(7.23)
y + sin y = 0
(y は平衡点からの変位を表わす)という方程式で記述されます.(7.23) 式は t を 含まないので(x の代わりに t と書いているのは,この変数がここでは時間 (time) を意味しているから),上の変換を使うと, 20
[訳註]subnormal の訳.関数 y = f (x) のグラフのある点での法線を延長して x 軸と交わらせ dy る.その交点までの線分の x 軸への正射影のこと.したがって,その長さは y dx となる.したがっ て,本文の変数 p とは違うものだが,精神が同じだからこの引用をしたと著者からコメントをも らっている.また,BF というのはおそらく,グラフ上の点 A を x 軸上に下ろした垂線の足が B で,交点が F であるという図がリッカティの本にあって,この法線影の線分を表わすのであろう.
II.7. 常微分方程式
169
c 国立図書館21 ,マドリッド写本 I 147r
p · dp = − sin y · dy,
p2 = cos y + C 2
それで
という式になります.振動の振幅を A と書けば(そこでは p = y = 0),C =
− cos A であり, (7.24)
p=
dy = 2 cos y − 2 cos A dt
という y に関する微分方程式が得られます.変数分離をすれば結局,解は楕円 積分
y
(7.25) 0
dη =t 2 cos η − 2 cos A
を使って陰関数の形で表わされます(積分定数は t = 0 のとき y = 0 となるよう に定められています).
T を振動の周期とすれば,最大変位である A は t = T /4 のときに到達するの で,周期は
(7.26)
T =4 0
A
dy √ =2 2 cos y − 2 cos A
A
0
dy sin2 (A/2) − sin2 (y/2)
となります.周期は振幅 A に依存し,A が小さいときは 2π に近いことがわかり ます(演習問題 7.5 参照). 等時の振子 問題は普通の振り子を手直しして,周期が振幅によらないようにす 『振子時計』)は,普通の振子の円を ることです.ホイヘンスのアイデア(1673, 修正して加速する力が弧長 s に比例するようにすることです.そうすると振子の 運動は 21
[訳註]もちろんスペイン,マドリッドの国立図書館です.
170
第 II 章 微積分法
s + Ks = 0
(7.27)
と書かれ,振幅にはよらないようになります. 解 α を曲線の接線と水平軸とのなす角とするとき,牽引力は sin α に比例し ます.ですから,ホイヘンスの条件は
p s = c · sin α = c · 1 + p2
(7.28)
となります(ここでまた p は曲線の傾きです).(7.28) 式を微分すると,
(7.29)
ds =
c dp (1 + p2 ) 1 + p2
となります.一方,ds2 = dx2 + dy 2 と p = dy/dx とから
(7.30)
ds =
1 + p2 dy p
となりますから22 ,関係式 (7.29) と (7.30) を等しいと置けば,微分方程式
(7.31)
dy =
c·p dp (1 + p2 )2
が得られます.これを積分すれば
y=−
(7.32)
c 2(1 + p2 )
となります(原点を適当に選べば,積分定数は 0 になります).この微分方程式 は (7.9) と同じで23 ,等時の振子はサイクロイドであることがわかります.まさに ヨハン・ベルヌーイ (1697c) が言っているように, 「このホイヘンスの等時曲線と 最速降下線が同じであることの予期せぬ素晴らしさに驚いています24 」というこ とになります(図 7.8 参照).
II.7.3 演習問題 7.1 トラクトリックスに対する積分 (7.5) を,置換 y = a cos t をして,計算し,sin2 t = 1 − cos2 t を代入し,さらに置換 (5.21) をしなさい. 7.2 (ヨハン・ベルヌーイ 1697b)「私の兄の25 」微分方程式 “
dx2 dy 2
” ” “ ” “ 2 dy 2 + 1 dy 2 = p12 + 1 dy 2 = 1+p 2 p
22
[訳註]ds2 =
23
[訳註](7.32) で c = −2c と置けば,(7.9) で c を c としたものになる.
24 [訳註]ラテン語原文:animo 25
revolvens inexpectatam illam identitatem Tautochronae Hugeniae nostrae que Brachystochronae [訳註]フランス語原文:de mon Fr` ere
II.7. 常微分方程式
171
図 7.8 ホイヘンスの等時の振子
y = g(x) · y + f (x) · y n
(7.33)
を変換 y = v β を使って解きなさい.(7.33) 式が v に対する線形微分方程式になるように 定数 β を決めなさい.
7.3 人口増加に関するロジスティック26 法則は,微分方程式 y = by(a − y) (フェルフルスト (1845))によって与えられます.ここで,a, b は定数です.a = 5, b = 2 と選んで,y(0) = 0.1 を満たす解を求めなさい.
7.4
y = G
“y” x
の形の微分方程式は,v(x) = y(x)/x によって解くことができることを示し,関数
y =
9x + 2y 2x + y
にこの方法を適用してみなさい
7.5 初期値 y(0) = A, y (0) = 0 に対応する振子の方程式 y + ω 2 sin y = 0 は周期
T = 26
2 ω
Z 0
A“
sin2 (A/2) − sin2 (y/2)
”−1/2
dy
[訳註]訳せば「兵站学上の」とでもするしかないが,生物の個体数に関するこの方程式を logistic と言う.軍学校で教えていたフェルフルストが人口問題を兵站学の問題だと捉えたのか, 講義の題 目がたまたま兵站学だったかしたのだろう. 20 世紀になって、レイモンド・パール (Raymond Pearl, 1879–1940) と L.J. リードが 1920 年までのアメリカの人口増加問題の研究 (1920) に際して再発見し,ロジスティック曲線という名で 呼ぶようになり,フェルフルストの業績も有名になった.
172
第 II 章 微積分法
を持ちます((7.26) 式参照).k = sin(A/2) と置いて,置換 sin(y/2) = k · sin α をし
k のベキ級数展開の初めの方の項を計算しなさい. て,T の “ ” “ ` ´2 ` ´2 2π + · · · .A のベキ級数ならば, 2π 1 + k2 12 + k4 1·3 1+ ω 2·4 ω
結果 6
173A 737280
”
A2 16
+
11A4 3072
+
+ ··· .
7.6 次の微分方程式を積分しなさい. y =
4 + y2 . 4 + x2
7.7 地球の重力場での運動は,微分方程式 y = −
gR2 y2
で記述されます.ここで,g = 9.81m/sec2 , R = 6.36 · 106 m で y は物体と地球の中心と の距離です.解の中の定数を y(0) = R, y (0) = v となるように定めなさい.そのとき, 物体が地球に戻ってこない最小の速度(脱出速度)を求めなさい.
II.8 線形微分方程式 . . . 今日ではダランベールを 1 行でも飲み込むことはまったく不可能だが,オイ ラーの書いたものはほとんど,今も読めば喜びを感じられるのだ. (ヤコビ,シュピース (1929), p.139 参照)
関数 a0 (x), a1 (x), . . . , an−1 (x) が与えられているとします.
(8.1)
y (n) + an−1 (x)y (n−1) + · · · + a1 (x)y + a0 (x)y = 0
を n 次の線形斉次微分方程式と言い,
(8.2)
y (n) + an−1 (x)y (n−1) + · · · + a1 (x)y + a0 (x)y = f (x)
を線形非斉次微分方程式と言います.この式の左辺を簡単に
(8.3)
L(y) : = y (n) + an−1 (x)y (n−1) + · · · + a0 (x)y
と表わすことにすると,(8.1) と (8.2) はそれぞれ
(8.4)
L(y) = 0
と
L(y) = f
となります.L を微分作用素と言います.これは関数 y(x) に作用し,その結果
L(y) はまた (8.3) で与えられる関数になります.この作用素の主な性質は線形で あること,つまり
(8.5)
L c1 y1 + c2 y2 = c1 L(y1 ) + c2 L(y2 )
II.8. 線形微分方程式
173
です.この線形性から直ちに次の結果が得られます. 補題 (8.1) 斉次方程式 (8.1) の n 個の解 y1 (x), y2 (x), . . . , yn (x) が与えられた なら,任意の定数 c1 , . . . , cn に対して関数
c1 y1 (x) + c2 y2 (x) + · · · + cn yn (x)
(8.6)
もまた同じ方程式 (8.1) の解である.
2
注意 1 階の方程式の解は定数を 1 つ含み(II.7 節参照),2 階の方程式は 2 つの 任意定数を持ちます(たとえば,(7.23) 式参照).アナロジーで考えれば,n 次の方 程式は n 個の定数を持ち,y1 (x), . . . , yn (x) が 1 次独立な関数ならば (8.6) は一般 解であると仮定することができます(オイラー).ここで,関数 y1 (x), . . . , yn (x) が 1 次独立であるとは,1 次結合 (8.6) がすべての ci が 0 のときにだけ 0 にな ることを言います.たとえば,1, x, x2 , x3 は 1 次独立な関数です. 補題 (8.2) 斉次方程式 (8.1) の一般解 + 非斉次方程式 (8.2) の 1 つの特殊解
= 非斉次方程式 (8.2) の一般解 証明 y を (8.2) の特殊解,つまり,L( y ) = f であるとします.(8.1) の任意 の解 y(すなわち,L(y) = 0)をとれば,(8.5) によって,L(y + y) = f となり, それゆえ y + y は (8.2) の解になります. 一方 y を (8.2) の別の解とする(つまり L( y ) = f )と,また (8.5) によって,
L( y − y) = 0 となり,y = y + ( y − y) は y と斉次方程式 (8.1) の解との和になっ ています. 2 結論 微分方程式 (8.1) と (8.2) を解くのに必要なことは,次の 2 つのことです. — (8.1) の n 個の異なった(1 次独立な)解を見つける. — (8.2) の 1 つの 解を見つける.
II.8.1 定数係数の斉次方程式 方程式 (8.1) を完全に解くことはごく稀にしかできません.しかし,例外もい くつかあります.最も重要な例外は,すべての係数 ai (x) が x によらない定数の とき,つまり,
(8.7)
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y + a0 y = 0
のときです.もう 1 つの例外は ai (x) = ai xi−n となるときで(「コーシーの方程
174
第 II 章 微積分法
式」),この方程式はこの節の終わりに考えることにします.
(8.7) を解く本質的なアイデアは, y(x) = eλx
(8.8)
の形の解を探すことです(オイラーが 1739 年 9 月 15 日の手紙でヨハン・ベル ヌーイに知らせており,1743 年に公表したもの).ここで λ はこれから決める定 数です.導関数を計算して,
y (x) = λeλx ,
y (x) = λ2 eλx ,
...,
y (n) (x) = λn eλx
を (8.7) 式に代入すれば,
(λn + an−1 λn−1 + · · · + a1 λ + a0 )eλx = 0
(8.9)
が得られます.ですから,関数 (8.8) が (8.7) の解であることと,λ がいわゆる特 性方程式
(8.10)
χ(λ) = 0,
χ(λ) := λn + an−1 λn−1 + · · · + a1 λ + a0
の解であることは必要十分になります. すべて異なる根 (8.10) 式が n 個の異なる根,たとえば λ1 , . . . , λn を持ってい れば,eλ1 x , . . . , eλn x は (8.7) 式の n 個の独立な解です(演習問題 8.1 参照).こ うして一般解は
(8.11)
y(x) = c1 eλ1 x + c2 eλ2 x + · · · + cn eλn x
で与えられます. 重根 まず簡単な微分方程式
(8.12)
y (n) = 0
を考えると,特性方程式 λn = 0 は重複度 n の根 0 を持ちます.また明らかに,
(8.12) の一般解は n − 1 次の多項式 c1 + c2 x + c3 x2 + · · · + cn xn−1 となります. 次に,方程式
(8.13)
y − 3ay + 3a2 y − a3 y = 0
を考えると,特性方程式 (λ − a)3 = 0 は重複度 3 の根 a を持ちます.新しい未 知関数 u(x) を
(8.14)
y(x) = eax · u(x)
II.8. 線形微分方程式
175
という式で導入します(オイラー (1743b)).この式を 3 回微分して (8.13) に代 入すれば,n = 3 のときの u に対する (8.12) 式が得られます.ですから,(8.13) の一般解は
y(x) = eax · c1 + c2 x + c3 x2
(8.15) によって与えられます.
微分作用素 上の計算は,定数 a を与えて,微分作用素 Da を
Da y = y − a · y
(8.16)
によって導入すると,特にエレガントになります.このような 2 つの作用素 Da と Db を合成すると
(8.17)
Db Da y = (y − ay) − b(y − ay) = y − (a + b)y + aby = Da Db y
となります.Da と Db が交換することがわかり,Da Db Dc · · · y = 0 は微分方程 式 (8.7) であって,その係数は特性多項式 (λ − a)(λ − b)(λ − c) · · · の係数です. ですから,(8.13) 式は
Da3 y = 0
(8.13 )
と同じです.Da を (8.14) に作用させると,
Da y = aeax · u + eax · u − aeax · u = eax · u となり,Da2 y = eax · u となり,最後は Da3 y = eax · u(3) となります.このこと から, (8.15) は (8.13) 式の一般解になります. 定理 (8.3)(オイラー (1743b)) 特性方程式 (8.10) が因数分解
χ(λ) = (λ − λ1 )m1 (λ − λ2 )m2 · · · · · (λ − λk )mk (λi は異なるもの)を持っているならば,(8.7) の一般解は
y(x) = p1 (x)eλ1 x + p2 (x)eλ2 x + · · · + pk (x)eλk x
(8.18)
で与えられる.ここで pi (x) は次数 mi − 1 の任意の多項式である. (この解はちょ うど
k
i=1
mi = n 個の定数を持つ. )
証明 2 つの重根を持っている場合 χ(λ) = (λ − a)3 (λ − b)4 の証明で説明し ます.Da と Db は交換するので微分方程式は
(8.19)
Db4 Da3 y = 0
とも
Da3 Db4 y = 0
176
第 II 章 微積分法
とも書くことができます.Da3 y = 0 の解 y = eax · c1 + c2 x + c3 x2 は (8.19) の
左の書き方から 0 になることがわかります.Db4 y = 0 の解 y = ebx · c4 + c5 x +
c6 x2 + c7 x3 は右の書き方でみれば,0 になります.ですから,両方とも解になっ ているし,合わせれば 7 つの自由な定数を持っています(問題の関数の 1 次独立 性についての演習問題 8.2 を参照のこと). 2 複素数の算術を避ける 定理 8.3 の結果は λi が複素数のときにも意味を持ちま す.しかしながら,方程式 (8.7) の係数 ai が実数であれば,主に実数値の解に興 味があることになります.実の多項式の複素根はいつでも共役な対になっている という事実から1 ,(8.18) は簡単になります.λ1 = α + iβ と λ2 = α − iβ をそ のような 2 つの根とします.解 (8.18) の対応する解は多項式に
eαx c1 eiβx + c2 e−iβx
(8.20)
を掛けたものになります.オイラーの公式 (I.5.4) を使えば,この表示は
(8.21)
eαx d1 cos βx + d2 sin βx
となります.ここで d1 = c1 +c2 と d2 = i(c1 −c2 ) は新しい定数です.d2 +id1 = Ceiϕ = C cos ϕ + iC sin ϕ を使えば,この表示はさらに簡単になります.すると (I.4.3) 式から Ceαx sin ϕ cos βx + cos ϕ sin βx = Ceαx sin βx + ϕ となります(図 8.1 参照).
α0
図 8.1 安定振動と不安定振動
1
[訳註]もちろん,実多項式とは係数が実数の多項式 p(x) のことで,p(x) = p(x) となることか らわかる.
II.8. 線形微分方程式
177
例 振子の方程式 (7.23) は,振動が小さいときは,sin y を y で置き換えて簡 単にすることができて
y + ω 2 y = 0,
(8.22)
ω 2 = g/
となります.ここで,g = 9.81m/s2 で, は棒の長さです.特性方程式 λ2 +ω 2 = 0 の根は ±iω です.ですから,(8.22) の一般解は
y(t) = C sin(ωt + ϕ) であり,周期は
T = 2π/ω = 2π
/g
となります.
II.8.2 非斉次線形方程式 問題は L(y) = f ,つまり
(8.23)
y (n) + an−1 y (n−1) + · · · + a1 y + a0 y = f (x)
の特殊解を 1 つ見つけることです.(8.5) の線形性からすぐに次のことがわかり ます. 補題 (8.4)(重ね合わせの原理) y1 (x) と y2 (x) をそれぞれ L(y1 ) = f1 と
L(y2 ) = f2 の解とすれば,c1 y1 (x) + c2 y2 (x) は L(y) = c1 f1 + c2 f2 の解である. 2 (8.23) の f (x) の非斉次性を単純な項の和に分解することができる場合には, 個々の項をそれぞれに扱うことができます. 速 い 方 法( オ イ ラ ー (1750b)) こ の 方 法 が 使 え る の は,f (x) が xj , eax ,
eαx sin(ωx), . . . の 1 次結合であるとき,もっと正確にいえば,f (x) 自身があ る定数係数の線形斉次方程式の解であるときです.このアイデアは同じ構造を持 つ解を探すことです. 例 f が 2 次の多項式,すなわち
(8.24)
y + 5y + 2y + y = 2x2 + x
の場合を考えます.
(8.25)
y(x) = a + bx + cx2
178
第 II 章 微積分法
の形の解を探します.(8.25) の導関数を計算して (8.24) に代入すれば,
cx2 + (b + 4c)x + (a + 2b + 10c) = 2x2 + x となります.係数を比較すれば,c = 2, b = −7, a = −6 が得られるので,
y(x) = 2x2 − 7x − 6 が (8.24) の特殊解になっています. 例 f (x) がサイン関数で,
y − y + y = sin 2x
(8.26)
であるとしましょう.y(x) = a · sin 2x としても十分ではありません.y が cos 2x を生み出してしまうからです.そのため,
y(x) = a · sin 2x + b · cos 2x
(8.27)
と置いて導関数を計算し,(8.26) に代入すると,
(a + 2b − 4a) sin 2x + (b − 2a − 4b) cos 2x = sin 2x という条件が得られます.連立 1 次方程式 −3a + 2b = 1, −2a − 3b = 0 を解け ば,a = −3/13, b = 2/13 となります.こうして特殊解
y(x) = −
(8.28)
2 3 sin 2x + cos 2x 13 13
が得られます.
(8.26) を解くのにはもう 1 つ方法があります.それは方程式 (8.29)
y − y + y = e2ix
を考え,y(x) = Ae2ix の形の解を探すことです.その導関数を代入すれば,−4A−
2iA + A = 1 となり A = (−3 + 2i)/13 が得られます.ですから,(8.29) の解は −3 + 2i 2ix e 13 となります.(8.26) 式はちょうど (8.29) 式の虚部になっていますから,(8.30) の 虚部をとれば (8.26) の解になります. (8.30)
y(x) =
このアプローチの正当化 仮定により,f (x) はある定数係数の微分作用素 L1 =
Dam Dbp
· · · に対して L1 (f ) = 0 を満たしています.この作用素を (8.23) 式,す
なわち L(y) = f に作用させれば,(L1 L)(y) = 0 となり,(8.23) の解が線形の
179
II.8. 線形微分方程式
斉次方程式 (L1 L)(y) = 0 を満たすことになります.この方程式の一般解なら定 理 8.3 によってわかっています. 共鳴の場合 たとえば,方程式
y + y = sin x
(8.31)
を考えます.ここで y(x) = a sin x + b cos x と置くことができないのは,この関 数自体が対応する斉次方程式の解になっているからです.重根の場合の議論を思 い出すと(図 8.2 も参照),
(8.32)
y(x) = ax sin x + bx cos x
を試してみる気になります.いつもの手続き((8.32) の導関数を (8.31) に代入) によって
2a cos x − 2b sin x = sin x が得られ,a = 0, b = −1/2 が得られます.こうして (8.31) の特殊解として
1 y(x) = − x cos x 2 が得られます.この解は x → ∞ とすると爆発するように大きくなります(図 8.2 (8.33)
参照). 100
ω = 1.
50
ω = 1.015
ω = 1.03 ω = 1.09
0
100
200
300
−50 −100 図 8.2 y + y = sin ωx, y(0) = 0, y (0) = 1, ω = 1.09, 1.03, 1.015, 1 の解
定数変化法(ラグランジュ(1775, 1788)) これは斉次方程式 (8.1) の一般解が知 られている場合に (8.2) の特殊解を見つける一般的な方法です.記号を煩雑にし ないために,n = 2 の場合にこの方法を説明しましょう.
(8.34)
y + a(x)y + b(x)y = f (x)
180
第 II 章 微積分法
という問題を考えて,斉次方程式 y + a(x)y + b(x)y = 0 の 2 つの独立な解
y1 (x) と y2 (x) が知られているとします.アイデアは (8.35)
y(x) = c1 (x)y1 (x) + c2 (x)y2 (x)
の形の解を探すということです(このため「定数変化」という名前がついている のです).(8.35) の導関数は
y = c1 y1 + c2 y2 + c1 y1 + c2 y2
(8.36)
となりますが,高次の微分での複雑さを避けるために
c1 y1 + c2 y2 = 0
(8.37)
であることを仮定します.すると,(8.35) の導関数は y = c1 y1 + c2 y2 になり,
2 階の導関数は y = c1 y1 + c2 y2 + c1 y1 + c2 y2
(8.38)
となります.これらの式をすべて (8.34) に代入すれば,y1 (x) と y2 (x) が斉次方 程式の解であると仮定したことから,c1 と c2 を含む項は消えてしまいます.そ れで,残っているのは
c1 y1 + c2 y2 = f (x)
(8.39)
だけになります.この式と (8.37) を連立させて線形系
(8.40)
y1 (x) y1 (x)
0 c1 (x) = · c2 (x) f (x)
F (x) c (x)
y2 (x) y2 (x)
W (x)
が得られます.この行列 W (x) をロンスキアン2と言います.(8.40) から c (x) を 計算して積分すると,
c(x) =
x
W −1 (t)F (t) dt
0
となり,(8.34) の解は
(8.41) y(x) = y1 (x), y2 (x) 2
c1 (x) c2 (x)
= 0
x
y1 (x), y2 (x) W −1 (t)F (t) dt
[訳註]Wronskian.ロンスキー (Wronskii) 行列とも言う.
II.8. 線形微分方程式
181
によって与えられます. 例 a2 < b として,定数係数の方程式
y + 2ay + by = f (x)
(8.42)
を考えます.斉次方程式は y1 (x) = e(α+iβ)x と y2 (x) = e(α−iβ)x という解を持っ
√
b − a2 です.ロンスキアンと逆行列は e−iβx eiβx αx W (x) = e (α + iβ)eiβx (α − iβ)e−iβx e−αx (−α + iβ)e−iβx e−iβx −1 W (x) = 2iβ (α + iβ)eiβx −eiβx
ています.ここで,α = −a, β =
となります.この結果,解は (8.41) から
(8.43) y(x)=
1 β
x x 1 eiβ(x−t) −e−iβ(x−t) f (t)dt = eα(x−t) eα(x−t) sin β(x−t) f (t)dt 2i β 0 0
となります.この式はどんな関数 f (t) に対しても成り立ちます.
II.8.3 コーシーの方程式
(8.44)
y (n) +
an−1 (n−1) a1 a0 y + · · · + n−1 y + n y = 0 x x x
の形の方程式を通常「コーシーの方程式」と言います.この解析的な解について は,オイラー(1769,「第 II 節,第 V 章」)が完璧に扱っています.eλx の代わ りに
y(x) = xr
(8.45) の形をした解を探すのです. 例
y +
(8.46)
1 1 y − 2y = 0 x x
という問題を考えます.(8.45) を代入すると,
r(r − 1) + r − 1 xr−2 = 0
となります.この方程式の解は r = 1 と r = −1 なので,(8.46) の一般解は
182
第 II 章 微積分法
(8.47)
y(x) = c1 x +
c2 x
となります.
(8.44) のもう 1 つの解き方は x = et ,
(8.48)
y(x) = z(t)
という変換を使うことです.
z =
(8.49)
dy dx dz = · = xy , dt dx dt
z = · · · = xy + x2 y
ですから,方程式 (8.46) は定数係数の方程式 z − z = 0 となり,これには上の 理論(定理 8.3)が使えて,z(t) = c1 et + c2 e−t となり,置換を戻せば,(8.47) が得られることになります.
II.8.4 演習問題 8.1 λ1 , . . . , λn が異なる複素数であれば, c1 eλ1 x + c2 eλ2 x + · · · + cn eλn x = 0
(8.50)
がすべての x に対して成り立つためには, c1 = c2 = · · · = cn = 0 であることが必要十 分である. ヒント (8.50) 式を x = 0 で微分すれば,k = 0, 1, . . . に対して
Pn
k i=1 ci λi
= 0 が成り立 c p(λ ) という表示を考えなさい. ただし, p(x) は λ , . . . , λ , λj+1 , . . . , i i 1 j−1 i=1 λn では 0 になるが,λj では 0 にならない多項式とする. Pn
つ.そこで,
8.2 相異なる値 λ1 , . . . , λn に対して, n “ X
” ci + di x + ei x2 eλi x = 0
i=1
がすべての x に対して成り立つためには,すべての係数 ci , di , ei が 0 であることが必要 十分である. ヒント 任意の多項式に対して
´ Pn ` i=1 ci p(λi ) + di p (λi ) + ei p (λi ) = 0 であることを
示しなさい.
8.3 重複する特性値の場合の第 2 の対処法(ダランベール 1748) λ を (8.10) の 2 重 根とする.この根を 2 つの近い根 λ と λ + ε に分離しなさい(ε は無限小).この場合,
eλx , e(λ+ε)x は,また 1 次結合 y(x) =
e(λ+ε)x − eλx ε
も問題の解となる.これが ε → 0 のとき解 xeλx となることを示しなさい.
8.4 y + 0.2y + y = sin(ωx) の特殊解を求め,ω の関数としてこの振幅を調べなさ
II.9. 微分方程式の数値解
183
い.どんな現象が見つかるか?
8.5 y − 2y + y = ex cos x の特殊解を次の 3 つの方法で求めなさい. a) y = Aex sin x + Bex cos x と置く.b) 定数変化法.c) y − 2y + y = e(1+i)x を解く. 8.6 次の斉次と非斉次のコーシーの方程式を解きなさい. x2 y − xy − 3y = 0,
x2 y − xy − 3y = x4 ,
x2 y − 3xy + 4y = 0
最後の方程式は重根の問題です.頑張って,やっつけろ(ローレルとハーディー 1933, 『砂 漠の息子たち』3 ).
8.7 y1 (x) と y2 (x) を y + a(x)y + b(x)y = 0 の 2 つの解とするとき,ロンスキア ン (8.40) が „ Z x « “ ” det W (x) = det (W (x0 )) · exp − a(t) dt x0
を満たすことを示しなさい.
`
´
ヒント z(x) = det W (x) に対する微分方程式を見つけなさい.
II.9 微分方程式の数値解 いつもそう思うのですが,卒業して数学者や物理学者になった人たちは,理論的 な結果については非常によくわかっているのに,近似法についてはほんの簡単な (L. コラッツ (1960))
ことも知らないのです.
微分方程式
(9.1)
y = f (x, y)
は,解析的な方法で解けないことが多いものです(たとえば,y = x2 + y 2 ).解 くことができても,得られる積分が初等関数でないこともあります(たとえば,
y + sin y = 0 (7.23) 参照).すべての積分が初等関数であるような場合でも,得 られた式が役に立たないこともあります.たとえば,y = y 4 + 1 の解は √ √ √ √ √ y 2 + 2y + 1 2 2 √ ln arctan(y 2 + 1) + arctan(y 2 − 1) = x + C + 8 4 y 2 − 2y + 1 3
[訳註]ローレルとハーディーとは, チャーリー・チャップリン以降最大の喜劇映画俳優のコンビ で,その功績に対しオスカーも受賞されています.これは 1935 年に上映された短編コメディー映 画です (M.G.M.).日本でのタイトルが『極楽発展クラブ』であることしかわかりません. 著者は彼らの大のファンで,ほとんどの作品をビデオで持っているということです.その中でも この映画が大好きで, Meet the situation with determination という台詞はこの映画のランニ ング・ギャグなのだそうです.トラブルに巻き込まれるたび, あらゆる出演者がこの台詞を大声で 怒鳴るのだそうです.トーキーではあるものの,無声映画の動き(たとえばチャップリンの)を想 像すれば,何とか感じがつかめるのではないでしょうか. 直訳すれば, 「決然として山場に立ち向かえ」となるのですが,映画の字幕につけるとしたらとい う感じで訳してみました.日本語版の映画を見た人は,その字幕スーパーを訳者に教えていただけ ませんか.
184
第 II 章 微積分法
ですが((5.16) 式参照),あまり実用的とは言い難いようです.特に,x の関数 として y が欲しいというならなおさらです.ですから,(9.1) を直接にとり扱う 数値的な方法を探すのにも意味があるのです.
II.9.1 オイラー法 問題 85:任意の微分方程式が与えられたとき,その積分に近い近似値を求めなさ (オイラー (1768), §650)
い.
(9.1) 式は各点 (x, y) に,解の傾きである値 f (x, y) を指定するものなのだか ら,方向の場をイメージすることができます(ヨハン・ベルヌーイ 1694).どこ でもこの方向に沿っている曲線が (9.1) の解になります. 「ことは例によって明ら かになる1 」のだから,図 9.1 を見てください.例として
y = x2 + y 2
(9.2)
(リッカティ方程式という)を考えましょう.これは初等関数解を持ちません(リ ウヴィル (1841),「ですから,この問題は厳密に解析学的に考える方がよいのでは ないかと考えたのです. . . 2 」).明らかに解は一意的ではないので,初期値
(9.3)
y(x0 ) = y0
を指定しておきます. オイラーのアイデア(オイラー (1768),第 II 節,第 VII 章) h > 0 を選んで,
x0 ≤ x ≤ x0 + h の間では,解を接線 (x) = y0 + (x − x0 ) · f (x0 , y0 ) で置き換えます.点 x1 = x0 + h では y1 = y0 + hf (x0 , y0 ) となります.この点 でまた,新しい方向を計算し,上と同じ手続きを繰り返せば, 「一連の値3 」
(9.4)
xn+1 = xn + h,
yn+1 = yn + hf (xn , yn )
が得られます.これがオイラー法です.これらの接線を結んで得られた関数をオ イラー多角形と言います.h → 0 とすれば,この多角形はますます解に近づいて いきます(図 9.2 参照). 1
[訳註]ラテン語原文:Exemplo res patebit
2
[訳註]フランス語原文:J’ai donc pens´ e qu’il pouvait ˆetre bon de soumettre la question
3
[訳註]ラテン語原文:valores successivi
a une analyse exacte . . . `
II.9. 微分方程式の数値解
185
1
−1
0
1
−1
図 9.1 y = x2 + y 2 に対して指定された傾きと,4 つの解
図 9.2 y = x2 + y 2 に対する多角形
数値実験 微分方程式 (9.2) を考え,初期値を x0 = −1.5, y0 = −1.4 と選び, ステップの大きさを h = 1/4, 1/8, 1/16, 1/32 とします.これで得られるオイ ラー多角形を図 9.2 に描いておきます.近似値と x = 0 での誤差を表 9.1 に示 しておきます.表を見ていると,ステップの大きさが半分になると誤差も 2 分の
1 程度に小さくなります(「比」は隣り合ったサイズの誤差の比を表わしていま
186
第 II 章 微積分法
す).この事実の説明は数値解析のどんな教科書にも載っています(たとえば,ハ イラー–ネルセット–ヴァンナー (1993),II.3 節,p.159). 表 9.1 オイラー法 1/h
表 9.2 (9.5) の方法
y(0)
誤差
4
0.7246051
−0.6762019
8
0.2968225
−0.2484192
2.722
16
0.1577289
−0.1093256
2.272
8
0.0153874
0.0330159
4.688
32
0.0999576
−0.0515543
2.121
16
0.0409854
0.0074179
4.451
32
0.0466509
0.0017523
4.233
比
1/h
y(0)
誤差
2
−0.7330279
0.7814312
4
−0.1063739
0.1547771
比
5.049
64
0.0734660
−0.0250628
2.057
128
0.0607632
−0.0123599
2.028
64
0.0479776
0.0004257
4.116
256
0.0545412
−0.0061380
2.014
128
0.0482984
0.0001049
4.058
512
0.0514618
−0.0030586
2.007
256
0.0483772
0.0000260
4.029
1024
0.0499300
−0.0015267
2.003
512
0.0483968
0.0000065
4.014
II.9.2 テイラー級数法 問題 86:微分方程式の積分の上の近似方法を改良して,結果をもっと真の解に近 (オイラー 1768, §656)
づけよ.
(9.4) 式がテイラー級数の最初の 2 項しか表わしていないことに注意します.精 度を上げるために,3 項使ってみると, (9.5)
yn+1 = yn + hyn +
h2 y 2 n
となります.yn = f (xn , yn ) ですが,yn の計算は単に微分方程式を x に関して 微分します.ですから,y = x2 + y 2 に対しては
(9.6)
y = 2x + 2yy = 2x + 2x2 y + 2y 3
となります.h = 1/2, 1/4, 1/8, 1/16 としたときの (9.5) によって得られる数値 の結果を図 9.3 に描いておきます.オイラー法の多角形の代わりに切り詰められ たテイラー級数からなる「多放物線4 」が使われています.x = 0 での誤差を表
9.2 にあげておきます.h が小さいと,結果はオイラー法よりも遥かによくなりま す.刻み幅 h を半分にすると,誤差は 4 分の 1 になっていきます. 4
[訳註]ラテン語原文:polyparabolas
II.9. 微分方程式の数値解
187
図 9.3 2 次の放物線
注意 もちろんテイラー級数の項をさらに勘定に入れることも可能で,たとえば,
yn+1 = yn + hyn +
(9.7)
h2 h3 y + y 2! n 3! n
となります.高次の導関数は微分方程式を繰り返し微分すれば得られます.リッ カティの方程式に対しては,(9.6) を微分して
y = 2 + 2y y + 2yy = 2 + 4xy + 2x4 + 8x2 y 2 + 6y 4 y = 4y + 12x3 + 20xy 2 + 16x4 y + 40x2 y 3 + 24y 5 などとなります.
II.9.3 2 階の方程式 たとえば振子の方程式 (7.23)
(9.8)
y = − sin y
を考えます.y を新しい変数と思うと,(9.8) は
(9.8 )
y = v v = − sin y
となります.この系は,各点 (y, v) に対して,x に関する動点 (y(x), v(x)) の速 度を指定するベクトル場と見ることもできます(図 9.4 参照).解 (y(x), v(x)) は
188
第 II 章 微積分法
常にこの指定された速度を持っています.その様子を図 9.5 にスケッチしておき ます.卵型の曲線は振動を表わし,サイン曲線のようなものはグルグル回る振子 の回転を表わしています. オイラー法 関数 y(x) と v(x) の双方にオイラー法 (9.4) を使うのが,アイデア です(コーシー (1824)).初期値 y(x0 ) = y0 , v(x0 ) = v0 が与えられ,刻み幅
h > 0 が選ばれていると,(9.4) のアナロジーを (9.8 ) に対して行えば, (9.9)
xn+1 = xn + h,
yn+1 = yn + h · vn ,
vn+1 = vn − h · sin(yn )
となります.図 9.6 に描いたものは,初期値が y(0) = 1.2, v(0) = 0 で刻み幅が
h = 0.15 のときのオイラー多角形です.このとてつもない方法が示しているの は,物理的現実とは違って,振子が加速していき,最後にはグルグル回り出すこ とです. テイラー級数法 (9.8 ) を x に関して微分すれば,
y = v = − sin y,
(9.10)
v = − cos y · y = − cos y · v
となり,テイラー級数の項をさらに使うことができるようになります.(9.5) 式の アナロジーは
h2 h2 yn = yn + hvn − sin yn 2 2 h2 h2 vn = vn − h sin(yn ) − cos yn · vn = vn + hvn + 2 2
yn+1 = yn + hyn + (9.11) vn+1
となります.この結果(図 9.6 の右側参照)は,h が 2 倍の大きさであってもずっ とよくなっています.
II.9.4 演習問題 9.1 h = 1/N でオイラー法を方程式 y = λy,
y(0) = 1
λ
に適用して,y(1) = e の近似値を求めなさい.結果は第 I 章の有名な公式になります.
9.2 (逆誤差関数)関数 y(x) を関係式 2 x= √ π
Z
y
2
e−t dt
0
で定義し,微分して,y(x) が微分方程式
y =
√
π y2 e , 2
y(0) = 0
II.9. 微分方程式の数値解
図 9.4 振子 (9.8 ) に対するベクトル場
図 9.5 振子 (9.8 ) に対する解
図 9.6 振子 (9.8 ) に対する数値解
189
190
第 II 章 微積分法
を満たすことを示しなさい.y(x) の(点 x = 0 で展開した)テイラー級数の最初の 4 項 を求めなさい.
9.3 (ファン・デル・ポルの方程式)微分方程式 y = v, v = ε(1−y 2 )v − y
2
の解に対して y (i) , v (i) (i = 1, 2, 3) を計算し,
1
3 次のテイラー級数を使って,ε = 0.3,初期値が y(0) = 2.00092238555422, v(0) = 0 で,0 ≤ x ≤ 6.31844320345412 の範囲の数値解を計算しなさ
−2
−1 −1
い.真の解は,同じ初期値と同じ区間に対して周期的
−2
になっています.
II.10 オイラー–マクローリンの和公式 王は私を「朕の教授」と呼んで下さる.私は世界一幸せな男だ! (オイラーはベルリンのフリードリヒ II 世に仕えることを誇りに思っていた) 朕はここに巨大なサイクロプスたる幾何学者を持っている.片目しか残っていな いが,今計算中の新しい曲線の所為でまったくの盲目になってしまうだろう. (フリードリヒ II 世の言葉.シュピース (1929), p.165–166 参照)
この公式は,オイラー (1736) とマクローリン (1742) によって独立に,調和級
+ 13 + · · · + n1 ,対数の和 ln 2 + ln 3 + ln 4 + · · · + ln n = ln n!,ベキの 和 1 + 2k + 3k + · · · + nk ,逆ベキの和 1 + 21k + 31k + · · · + n1k などの和の計算
数 1+
1 2
k
を微積分法を使って計算する強力な道具として開発されたものです. 問題 関数 f (x) が与えられたとき,
(10.1)
S = f (1) + f (2) + f (3) + · · · + f (n) =
n
f (i)
i=1
に対する公式を見つけよ(「一般項から級数の和を求めること1」).
II.10.1 公式のオイラーの導き方 最初のアイデア(オイラー (1755) 後篇,§105 とマクローリン (1742),第 2 冊, 第 IV 章,p.663)は変数をずらした和
(10.2) 1
s = f (0) + f (1) + f (2) + · · · + f (n − 1)
[訳註]ラテン語原文:investigatio summae serierum ex termino generali
II.10. オイラー–マクローリンの和公式
191
も考えるということにあります.その差 S − s をテイラー級数を使って((2.8) 式 で x − x0 = −1 と置いて),
f (i − 1) − f (i) = −
f (i) f (i) f (i) + − + ··· 1! 2! 3!
と計算すれば, n
n n n 1 1 1 f (n) − f (0) = f (i) − f (i) + f (i) − f (i) + · · · 2! i=1 3! i=1 4! i=1 i=1 となります. f (i) に対するこの公式を f (i) に対する式に変えるために,f をその原始関数で置き換えると(これをまた f と表わす), n n n n n 1 1 1 (10.3) f (i) = f (x) dx+ f (i)− f (i)+ f (i)− · · · 2! i=1 3! i=1 4! i=1 0 i=1 が得られます.第 2 のアイデアは右辺の和 f , f を,この同じ式 f, を使って,ただし,f の代わりに次々と f , f , f などで置き換えた式を使っ
て,消去していくことです.このことから, n
(10.4)
f (i) = 0
i=1
n
f (x) dx − α f (n) − f (0) + β f (n) − f (0)
−γ f (n) − f (0) + δ f (n) − f (0) − · · ·
という形の公式が得られます.この係数 α, β, γ, . . . を計算するために,(10.4) 式 の f を f , f , . . . で置き換えたものを考えると,
n
f (i) = 0
f (x) dx − α(f (n) − f (0)) + β(f (n) − f (0)) − · · ·
1 1 − f (i) = − (f (n) − f (0)) + 2! 2! 1 + f (i) = 3! .. .
α (f (n) − f (0)) − · · · 2! 1 (f (n) − f (0)) − · · · 3! n
が得られます.これを全部足せば,(10.3) より,
(10.5)
α+
1 = 0, 2!
β+
α 1 + = 0, 2! 3!
となり,これから,α = − 21 , β = きて,
1 12 ,
0
γ+
f (x) dx になりますから, β α 1 + + = 0, . . . 2! 3! 4!
1 γ = 0, δ = − 720 , . . . と計算することがで
192
第 II 章 微積分法
(10.6)
n
n
f (i) =
f (x) dx + 0
i=1
−
1 1 f (n)−f (0) + f (n)−f (0) 2 12
1 1 (5) f (n)−f (0) + f (n)−f (5) (0) + · · · 720 30240
が得られます. 例 (10.1) この公式を 100 万項ほどの和
1 1 1 1 1 1 + + + ··· + = ln(106 ) − ln(10) + 10−6 − 11 12 13 1000000 2 20 +
1 1 1 − 10−4 + 10−6 + · · · ≈ 11.463758469 1200 120 252
に適応してみると,数個を計算するだけで素晴らしくよい近似値が得られます2 . 1 2
しかしながら,この公式は最初の 1 +
+···+
1 10
の和を計算する役には立ちま
せん. ベルヌーイ数 例によって,係数 α, β, γ, . . . を Bi /i! (B0 = 1, α = B1 /1!, β = B2 /2!, . . .) に置き換えてみると,(10.5) 式は
(10.5 )
2B1 + B0 = 0,
3B2 + 3B1 + B0 = 0,
... ,
k−1 i=0
k Bi = 0 i
となります.オイラーが計算した分だけ,このベルヌーイ数をあげておくと,
1 B1 = − , 2
B0 = 1, 5 , 66
B10 =
B20 = −
174611 , 330
8553103 , 6
B26 = 2
B12 = −
B2 = 691 , 2730
B22 =
1 , 6
B4 = −
B14 =
854513 , 138
B28 = −
7 , 6
1 , 30
B16 = −
B24 = −
23749461029 , 870
B6 =
1 , 42
3617 , 510
B8 = − B18 =
1 , 30
43867 , 798
236364091 , 2730
B30 =
8615841276005 14322
[訳註](10.6) 式の直接の帰結である.ただし,f (x) = 1/x, a = 10, b = 106 と置いて,
Z
b
f (x) dx + a
´ 1 1` 1 1 f (b)−f (a) − f (a) + f (a) − f (5) (a) + · · · 2 12 720 30240
を計算したものになっている. 10−8 程度より小さい項を省略してあるので, 分かり難いかもしれ ない.
II.10. オイラー–マクローリンの和公式
193
であり,B3 = B5 = · · · = 0 となっています.この記号を使えば,(10.6) 式は
(10.6 ) n
f (i) =
i=1
n
f (x) dx+ 0
B2k (2k−1) 1 f (n)−f (0) + f (n)−f (2k−1) (0) 2 (2k)! k≥1
となります. 例 f (x) = xq に対しては (10.6 ) 式は有限和になり,有名なヤーコプ・ベル ヌーイの公式 (I.1.28), (I.1.29) になります. 母関数 ベルヌーイ数というものをもっとよく理解するために,オイラーの偉大 なアイデアを使うことにします.そのアイデアは,問題にしている数をテイラー 係数とするような関数 V (u) を考えること,つまり,母関数
V (u) = 1 + αu + βu2 + γu3 + δu4 + · · · (10.7) =1+
B 2 2 B3 3 B4 4 B1 u+ u + u + u + ··· 1! 2! 3! 4!
を定義することです.すると,(10.5) 式は,言い換えると (10.5 ) 式は単に
u2 u3 u + + ··· = 1 V (u) · 1 + + 2! 3! 4! であることを,すなわち
(10.8)
V (u) =
eu
u −1
であることを意味します.こうして無限個の代数方程式が,1 つの解析的な公式 になるのです.さらに
(10.9)
V (u) +
u u u eu/2 + e−u/2 u = u + = · u/2 2 e −1 2 2 e − e−u/2
が偶関数であるという事実から,B3 = B5 = B7 = · · · = 0 がわかります.
II.10.2 『マクローリンの和公式を正当に使うことについて 3 』 さて f (x) = cos(2πx) を (10.6 ) 式に代入してみましょう.ここで,すべて の i に対して f (i) = 1 であることに注意します.左辺は 1 + 1 + · · · + 1 とな りますが,cos(2πx) とそのすべての導関数は周期 1 の周期関数なので,右辺は 3
[訳註]ラテン語原文:De Usu Legitimo Formulae Summatoriae Maclaurinianae
194
第 II 章 微積分法
0 + 0 + 0 + · · · となります.このままでは公式は間違っていることになります. もう 1 つの問題は,ほとんどの関数 f に対して (10.6 ) の無限級数が普通は収束 しないことです. ですから,公式を有限個で打ち切って,剰余項を表示する必要があるのです.こ のことはヤコビ (1834) によって,ベルヌーイ–コーシーの誤差項 (4.32) を徹底的 に使うオイラーの証明を整理し直すことによってなされ,美しいラテン語で書か れました(上の表題参照).後になって(ヴィルティンガー (1902)),(4.32) 式 の証明と同じように,単に部分積分を繰り返し使うだけで得られる証明が発見さ れました.その証明で主に使われるのはいわゆるベルヌーイ多項式と呼ばれてい るものです. ベルヌーイ多項式 多項式 1 2
B1 (x) = B0 x + B1
=x −
B2 (x) = B0 x2 + 2B1 x + B2
=x2 − x +
B3 (x) = B0 x3 + 3B1 x2 + 3B2 x + B3
=x3 − 32 x2 + 12 x
1 6
B4 (x) = B0 x4 + 4B1 x3 + 6B2 x2 + 4B3 x + B4 =x4 − 2x3 + x2 −
1 30
また,一般に多項式 k k Bi xk−i Bk (x) = i i=0
(10.10) は
Bk (x) = kBk−1 (x),
(10.11)
Bk (0) = Bk (1) = Bk
を満たします.実際,(10.11) の第 1 式は二項係数の性質(定理 I.2.1 参照)その ものですし,第 2 式は定義式と (10.5 ) 式から得られます4 . 4
[訳註]ベルヌーイ数の母関数表示が (10.7,8) で与えられているので,ベルヌーイ多項式の母関数 表示も与えておこう.
V (x, u) = 1 +
B2 (x) 2 B1 (x) Bn (x) n u+ u + ··· + u + ··· 1! 2! n!
と置くと,(10.10) 式より
V (x, u) =
∞ X n=0
Pn i=0
`n´ Bi xn−i i n!
un =
∞ X (xu)i i! i=0
1 ∞ X Bj j uexu @ u A = exu V (u) = u j! e −1 j=0
!0
が得られる.これから,(10.11) 式はすぐに得られる.ただし,B1 (1) = 12 = − 12 = B1 (0) = B1 であって,(10.11) 式の後半が成り立つのは k ≥ 2 のときである.
II.10. オイラー–マクローリンの和公式
195
定理 (10.2) n
f (i) =
i=1
n
f (x) dx + 0
k 1 Bj (j−1) k f (n)−f (0) + f (n)−f (j−1) (0) + R 2 j! j=2
が成り立ちます.ここで, k−1 k = (−1) R k!
(10.12)
n
0
k (x) f (k) (x) dx B
k (x) は 0 ≤ x ≤ 1 では多項式 Bk (x) とし,あとは周期 1 で周 です.ここで,B 期的に拡張したものです(図 10.1 参照).
図 10.1 ベルヌーイ多項式
証明 n = 1 のときの証明から始めましょう.このときは
(10.13)
k 1 1 Bj (j−1) f (1)+f (0) = f f (x) dx+ (1)− f (j−1) (0) + Rk 2 j! 0 j=2
であり,
(−1)k−1 Rk = k!
(10.14)
0
1
Bk (x) f (k) (x) dx
となりますが,これを証明しましょう.B1 (0) = −1/2, B1 (1) = 1/2 ですから, 部分積分によって
1 f (1) + f (0) = B1 (1)f (1) − B1 (0)f (0) 2 1 1 B1 (x)f (x) dx + B1 (x)f (x) dx = 0
0
196
第 II 章 微積分法
となります.B1 (x) = 1 ですから,k = 1 の場合の (10.14) 式が証明されたこと になります.さらに部分積分をすると,
0
1
B1 (x)f (x) dx =
1 1 1 B2 (1)f (1) − B2 (0)f (0) − B2 (x)f (x) dx 2! 2! 0
となって,k = 2 の場合の (10.14) 式が証明されます.部分積分を次々と行えば, 一般の k の場合にも証明されるのです. 次に,変数をずらした関数 f (x + i − 1) に (10.14) を適用すると,
0
1
Bk (x)f (k) (x + i − 1) dx =
i
k (x)f (k) (x) dx B
i−1
となりますが,これを i = 1 から i = n まで足し合わせると,定理 10.2 が得ら
2
れることになります. 剰余項の評価 (0 ≤ x ≤ 1 での)評価
√ 1 1 3 |B2 (x)| ≤ , |B3 (x)| ≤ , |B4 (x)| ≤ 6 36 30 n n は容易に確かめられるので,| 0 g(x) dx| ≤ 0 |g(x)| dx という事実から, n 1 n 1 (10.15) |R1 | ≤ |f (x)| dx, |R2 | ≤ |f (x)| dx, . . . 2 0 12 0 |B1 (x)| ≤
1 , 2
が得られます.これらが,オイラー–マクローリンの和公式の剰余項の欲しかった 厳密な評価です.これ以上の,ベルヌーイ多項式の最大・最小値はレーマー (1940) によって計算されています.演習問題 10.3 参照. 注意 (10.3) 定理 10.2 の公式を関数 f (t) = hg(a+th)(ただし h = (b−a)/n)
に適用して, f (n) − f (0) /2 の項を左辺に移項すれば,
(10.16)
b n−1 k h h hj (j−1) g(x0 )+h Bj g g(xi )+ g(xn ) = g(x) dx+ (b)−g (j−1) (a) 2 2 j! a i=1 j=2 + (−1)k−1
hk+1 k!
0
n
k (t)g (k) (a + th) dt B
となります(ここで xi = a+ ih).この左辺は台形則の式になっています.(10.16)
式は誤差項の中で (h2 /12) g (b) − g (a) が支配的な項になっていることを示し ています.しかし,g が周期的ならば,オイラー・マクローリン級数のすべての項
k になってしまいます.これが表 6.2(II.6 はなくなり,任意 k に対して誤差は R 節)の結果が驚異的によいことの説明になっています.
II.10. オイラー–マクローリンの和公式
197
II.10.3 スターリングの公式 オイラー–マクローリンの公式で f (x) = ln x と置けば, n
f (i) = ln 2 + ln 3 + ln 4 + ln 5 + · · · + ln n = ln (n!)
i=2
となるので,階乗 n! = 1 · 2 · · · · · n に対する近似公式が得られます. 定理 (10.4)(スターリング (1730))
√ 1 1 1 1 2πn nn 9 − (10.17) n! = · exp + − + R en 12n 360n3 1260n5 1680n7 9 | ≤ 0.0006605/n8 となる.これから n → ∞ とすると が成り立つ.ここで |R
階乗の近似
√ 2πn nn n! ≈ en
(10.18) が得られる.
注意 この有名な公式は,特に組合せ論,統計学,確率論で役に立っています.
(10.17) 式が 4 項で打ち切ってあるのは,単にこれ以上の項を書くと 1 行に納ま らないというだけの理由です.
(10.18) 式と (10.17) 式(1,2,3 項までの式)の,n = 10, n = 100 に対する数 値と n! の値を次の表 10.1 で比較しておきます. 表 10.1 階乗関数とスターリングの公式による近似
n = 10 : Stirling 0 Stirling 1 Stirling 2 Stirling 3 n!
= = = = =
0.35|9869561874103592162317593283 · 107 0.36288|1005142693352994116531675 · 107 0.36287999|7141301292538591223941 · 107 0.3628800000|21301281279077612862 · 107 0.362880000000000000000000000000 · 107
n = 100 : Stirling 0 Stirling 1 Stirling 2 Stirling 3 n!
= = = = =
0.93|2484762526934324776475612718 · 10158 0.93326215|7031762340989619195146 · 10158 0.933262154439|367463946383356624 · 10158 0.9332621544394415|32371338864918 · 10158 0.933262154439441526816992388563 · 10158
証明 上で見たように(例 10.1),f (x) の高次の微分が考えている区間の上で
198
第 II 章 微積分法
大きくなるようなら,オイラー–マクローリンの公式は有効ではありません.です から,f (x) = ln x の公式は i = n + 1 から i = m までの和に対して使うことに します.
ln x dx = x ln x − x,
dj (j − 1)! ln x = (−1)j−1 j dx xj
なので,定理 10.2 から m
(10.19)
f (i) = ln m! − ln n! = m ln m−m−(n ln n−n)+
i=n+1
+
1 ln m−ln n 2
1 1 1 1 1 1 − − + R5 − 12 m n 360 m3 n3
5 | ≤ 0.00123/n4 となります. となります.ここで,すべての m > n に対して |R この評価は (10.12), (10.15) 式と 0 ≤ x ≤ 1 に対して |B5 (x)| ≤ 0.02446 である という事実から得られます.(10.19) 式の ln n!, n ln n, n, (1/2) ln n といった項 は n → ∞ のとき,個別には発散してしまいます.ですからまとめて扱うことに して,
(10.20)
1 ln n γn = ln n! + n − n + 2
とおきます.すると,(10.19) 式は
(10.21)
γn = γm +
1 1 1 1 1 1 − − − R5 − 12 n m 360 n3 m3
となります.n と m が十分大きくなれば,γn と γm はどれほどでも近くなりま す.ですから,γm の値は m → ∞ のとき,ある値(γ と書きましょう)に収束 するように見えます(厳密な証明はコーシーの定理 III.1.8 で与えます).(10.21) 式で,m → ∞ の極限をとれば,
1 1 1 5 ln n = γ + − ln n! + n − n + +R 2 12n 360n3
5 | ≤ 0.00123/n4 です. が得られます.ここで,|R この表示の指数関数をとれば
√ n nn n! = Dn en
1 1 5 − Dn = eγ · exp + R 12n 360n3 √ となります.あとは,Dn の極限(つまり D = eγ )が実際に 2π に等しいこと がわかりさえすれば,(10.18) 式,また (10.17) 式が示されたことになります.さ て,この計算のために (10.22) 式から, (10.22)
ここで
199 √ √ 2 · 4 · 6 · 8 · · · · · 2n n! · n! · (2n) · e 2n 2 Dn · Dn = ·√ = 2n −2n D2n n ·e · n · (2n)! 1 · 3 · 5 · 7 · · · · · (2n − 1) n II.10. オイラー–マクローリンの和公式
2n
−2n
を考えてみれば,これも D に収束します.この式を見ていると,(I.5.27) 式の ウォリスの積を思い出します.実際,2 乗すると,
D · D 2 2 · 2 ·4 · 4 ·6 · 6 ··· (2n)(2n) 2(2n + 1) n n = · D2n 1 · 3 · 3 · 5 · 5 · 7 · · · (2n − 1)(2n + 1) n
→4 → π/2 √ 9 に対する評価は (10.12) は 2π に収束するので,D = 2π となります.定理の R 式と |B9 (x)| ≤ 0.04756 とから得られます. 2
II.10.4 調和級数とオイラー定数 定理 10.2 で f (x) = 1/x と置いて,
1+
1 1 1 1 + + + ···+ 2 3 4 n
を計算してみましょう.f (j) (x) = (−1)j j!x−j−1 なので,(10.19) 式の代わりに
(10.23) m m 1 1 1 1 1 1 1 1 = dx + − − − i 2 m n 12 m2 n2 n x i=n+1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 − 4 − − 6 + − 8 +R + 9 4 6 8 120 m n 252 m n 240 m n 9 | ≤ 0.00529/n9 となり が得られます.ここで,|B9 (x)| ≤ 0.04756 ですから |R ます.発散項をまとめると今度は,(10.20) の代わりに
γn =
n 1 i=1
i
− ln n
が得られますが,これも上と同じように調べると収束することがわかります.こ うやって得られる定数
(10.24)
1+
1 1 1 + + · · · + − ln n → γ = 0.57721566490153286 · · · 2 3 n
は数学における新しい定数で, 「オイラー定数」と呼んでいます(図 10.2 のオイ ラーの自筆原稿参照.オイラー定数と例 10.1 の和の計算への利用が書かれていま す).前のように,(10.23) 式で m → ∞ とすれば,
200
第 II 章 微積分法
図 10.2 オイラーの自筆原稿 (ヨハン・ベルヌーイへの手紙 (1740) とし て,フェルマン (1983), p.96 参照)5
(10.25)
n 1 i=1
i
= γ + ln n +
1 1 1 1 1 9 − + − + +R 2 4 6 2n 12n 120n 252n 240n8
9 | ≤ 0.00528/n9 です.定数 γ を求めるには,たとえ が得られます.ここで,|R ば(オイラーがやったように)(10.25) 式で n = 10 と置けば,(10.24) の値が得 られます.この定数は D. クヌース (1962) によって,高い精度で計算されていま すが,今日でもなお,有理数なのか無理数なのかすらわかっていません.
II.10.5 演習問題 √ √ 10.1 テオドロスの螺線は,辺の長さが 1, n, n + 1 の直角三角形からできている. √ 17 個の三角形を集めると 1 回転分になる(テオドロスが 17 までしか根を考えなかった のはこのためのようだ6 ).こんなことに躊躇わないで,このような三角形を 10 億個集め たらどれくらいの回転になるかを知りたいとする(図 10.3 参照).このためには 1+ 5
6
1 2π
1000000000 X i=18
1 arctan √ i
[原註]Birkh¨ auser Verlag (Basel) の許可を得て転載. [訳註]当時はまだ学術雑誌に速報性はなく,手紙によって研究成果を伝え合っていた.論文の自 筆原稿という意味合いが強い. [訳註] √ 17 個目の三角形を描くと前の三角形に重なってしまい,16 個目の三角形の辺の長さは 1, 4, 17 である.
II.10. オイラー–マクローリンの和公式
201
図 10.3 キュレネのテオドロス(紀元前 470–390)の螺線 を,1 より小さい誤差で計算することになる.この演習問題は,オイラー–マクローリンの 公式がとても強力だと感じる機会であるだけでなく,計算して面白いと思える積分の例に もなっている.
10.2 (tan x のテイラー級数)cot x = 1/ tan x, coth x = 1/ tanh x と置けば,(10.9) 式は (x/2) coth(x/2) のテイラー級数を表わしていると見ることができる.このことから, x · coth x の級数展開が得られるし,x → ix と置けば,x · cot x の級数展開が得られる. 最後に
2 · cot 2x = cot x − tan x という式を使えば tan x の展開の係数が得られる.これを (I.4.18) 式と較べなさい.
10.3 0 ≤ x ≤ 1 におけるベルヌーイ多項式の評価(レーマー (1940)) |B3 (x)| ≤ 0.04812, |B9 (x)| ≤ 0.04756, を数値的に確かめなさい.
|B5 (x)| ≤ 0.02446, |B11 (x)| ≤ 0.13250,
|B7 (x)| ≤ 0.02607, |B13 (x)| ≤ 0.52357
[訳者注意]この演習問題解答は,原著にはないもので,訳者が作成したものである.読者の便宜と, 叙述を簡単にするため,必要に応じて現代の記法を使った.勘違いや,タイプミスなどのゆえに,解 答の中には間違いや不適当な記述が残っていると思われる. 幸いにして,増刷・再版することができ れば,随時訂正していくつもりである.しかし,その間違い探しもゲームのうち,という位の気持ち で演習問題にとり組んでほしい. 本文だけではわからなかった英雄たちの心の襞に分け入る気持ちが するはずだ.
第I章 I.1
I.1.1 x, z を消去すると, y 4 + 8y 2 − 160y + 64 = 0 と,4 次方程式になる. I.1.2 2x2 y + bx + y 2 + ay + c + a2 /4 = Ax2 + Bx + C と置くと, B 2 = 4AC √ という 条件は 8y 3 + 8ay 2 + (8c + 2a2 )y − b2 = 0 となる.この解 y に対して, α = ± 2y, β = p ± y 2 + ay + c + a2 /4 と置けば(符号は 2αβ = B を満たすように選ぶ),x は 2 次方程式 2 x + y + a/2 = ±(αx + β) の解である. I.1.3 係数比較して,α, β を消去すれば,u2 (u2 + B)2 = 4Du2 + C 2 となる.w = u2 + 2B/3 と置けば,27w 3 − 9(B 2 + 12D)w − 2B 3 + 72BD − 27C 2 = 0 となって,公式 (1.15) で w が, よって u が得られる. α, β は u, B, C, D で書けるから, x は 2 次方程式を解いて得られる.手順 としてはうまくできており, 各ステップではさほど面倒な式でもないが,それが積み重なって最後の 式まで書き下そうとすると,ほとんど意味がないほどに複雑になる.しかし,B, C, D の値を具体的 に与えれば,困難なところはない. I.1.4 係数比較すると, r + s = 5, rs = 6 となり,アル・フワーリズミのトリックで √ r, s = 2, 3 が得られる. (x + 1)2 = 0, x2 + 3x + 1 = 0 を解けば,x = −1(重根), x = (−3 ± 5)/2 が得ら れる.u = x + 1/x と置く方法でも u = −2, −3 が得られ,x の方程式としてはまったく同じ 2 次 方程式が得られる.
I.1.5
座標の入れ方がポイント.底辺 BC が x 軸,その中点 M が原点,AM が
y y 軸になるように直交座標を入れ, A = (0, b), B = (−a, 0), C = (a, 0) 6 と座標を入れよう. OB⊥AB から,O = (0, −a2 /b) であることがわか b A る.BC 上の点 Q を勝手にとって,座標を Q = (α, 0) と置き,勝手 B な傾き m の直線 y = m(x − α) を引き,AB : y = ab (x + a) との B B 交点を E ,AC : y = − ab (x − a) との交点を F とすると,その座標 a(mα+b) mb(a+α) a(mα+b) mb(a−α) B は E = ( am−b , am−b ), F = ( am+b , am+b ) となる.す E B Z Z ると, Z B EQ2 = F Q2 ⇐⇒ (a + α)2 (am + b)2 = (a − α)2 (am − b)2 M BP Z BC−a P a x PQZ Z B となる.m を求めると,m = −bα/a2 , −b/α となる.m = −b/α のと F O B き,Q を通る直線は A を通ることになり,このとき E = F = A となっ
て,条件に反する. m = −bα/a2 のときは, OQ の傾きが a2 /bα であ ることから, OQ⊥EF となる.逆に OQ⊥EF のとき EQ = F Q となることは計算を逆にたどれ ばよい.
I.2 −1/2 −1/2(−1/2−1) 2 x+ x 1 1·2 −1/2(−1/2−1)(−1/2−2) 3 1 1·3 1·3·5 1 2 3 − x +· · · = 1+ x+ x + x +· · · となる.ここで x = 2 3 1·2·3 2 50 1·2·2 1·2·3·2 q √ 1 −1/2 50 1 1·3 1·3·5 と置くと,(1 − 50 ) = = 5 7 2 = 1 + 100 + 1·2·100 2 + 1·2·3·1003 + · · · となる. 49
I.2.1 定理 (2.2) で x → −x, a → − 12 と置けば,(1−x)−1/2 = 1−
5 5 2 5 2 I.2.2 60 進法の 1,25 は v = 1+ 25 = 1+ 12 であり,2 乗すれば,(1+ 12 ) = 1+ 56 +( 12 ) = 60
203 5+ 25 24 6
となる.(2.13) 直下の式に入れると次の近似値は w = 12 ( v2 + v) であるが,こ 25 ) = 12 + 12 + 120 = れを 60 進の計算を分数で再現しながら計算してみよう.w = 12 ( 2 5 + 1 + 25 60 17
1+
= 2+
1 144
1+ 12
7 1 1·1 1 420 30 1 6 24 30 + 34 + 12 + 12 + 120 = 1+ 12 + 60·2 + 60 = 1+ 12 + 60 2 + 60 (12+ 17 ) = 1+ 60 + 602 + 60 60 34 60 1 360 24 30 1 3 24 51 1 180 24 51 1 10 = 1+ + + (21+ ) = 1+ + + = 1+ + + (10+ ) 60 17 60 60 17 602 17 602 602 602 603 17 602 603 となる.これを本当に 60 進のままやろうと思えば,60 進での繰り上がり,掛け算の九九が必要にな 1 2
る.バビロニアでは粘土板の上でどのようにしたのだろうか ?
I.2.3 両辺を 3 乗して,x, x2 , x3 の係数を比較すると,3a = 1, 3b + 3a2 = 0, 3c + 6ab + a3 = 0 5 が得られ,解けば a = 13 , b = − 19 , c = 81 が得られる.ついで, dx4 を考えれば, 3a2 b + 6ac + 2 3b + 3d = 0 から d = −10/243 が得られる.定理 2.2 で a = 1/3 と置いて得られるものと一致す √ 3 3 3 = 2·4 であり,(1 + x)1/3 = 45 2 ることに注意すること.次に,x = 533 と置けば,1 + x = 5 5+3 3 53 である. I.2.4 n = 0 のとき 1 = 1 ,n = 1 のとき 1 + a = 1 + a である.n ≥ 1 のときは (1 + a)n+1 = (1+a)n (1+a) ≥ (1+na)(1+a) = 1+(n+1)a+na2 ≥ 1+(n+1)a から.等号は a = 0 のみ.第 2 式の左の不等号は第 1 の不等式の a に −a を入れればよい.右については,n ≥ 1 で成り立つ.n = 1 の ときは (1−a)(1+a) = 1−a2 < 1 で OK.また,(1−a)(1+(n+1)a) = 1+na−(n+1)a2 < 1+na 1−a 1 だから,(1 − a)n+1 = (1 − a)n (1 − a) < 1+na < 1+(n+1)a が得られる.
I.2.5 演習問題 2.4 の第 2 の不等式で a = 1/n2 と置くと, « „ 1 n (n − 1)n (n + 1)n 1 1 n n−1 < 1− < 1− 2 < , すなわち < 1 n n n n2n n+1 1+ n となり,単調性
«n−1 „
« an n+1 n = , n an−1 «n „ «n+1 „ bn−1 n n = = n−1 n+1 bn
1
0 より,ey = x + x2 + 1. I.4.4 (A.1.1) 式により, ! Z 1/4 Z 1/4 ∞ X x 1 · 3 · 5 · · · · (2n − 3) n dx x a= x1/2 (1 − x)1/2 dx = x1/2 1 − − 2 n=2 2n · n! 0 0 " #1/4 ∞ 1 5/2 X 1 · 3 · 5 · · · · (2n − 3) 1 2 3/2 n+3/2 = x − x − x 3 5 2n · n! n + 32 n=2
(ex+y
0
∞ X 2 1 1 1 1 · 3 · 5 · · · · (2n − 3) 2 1 = − − 3 23 5 25 2n · n! 2n + 3 22n+3 n=2 √
となる.一方,図を描いて,原点 O = (0, 0),円の中心 C = ( 12 , 0) と点 P = ( 14 , 43 ), M = ( 14 , 0) を考える.原点から P までの弧を見込む扇形は,全円の 16 であり,a を表わす領域に CM P を √
= a + 12 · 14 · 43 である. つけ加えたものであり, 16 π 4
I.5 I.5.1 (5.28) は 1−
1 (6k − 1)(6k + 1) = (6k)2 (6k)2
であることから直ちに.定理 5.2 の式に x = π/4 を代入して 2 を掛けると,
√
2=
« ∞ „ ∞ 1 π Y (4k − 1)(4k + 1) π Y 1− = 2 k=1 (4k)2 2 k=1 (4k)2
となるので, (5.27) を代入すれば,
√ 2=
∞ Y k=1,k:奇数
となる.
∞ Y (2k)2 (4m − 2)2 = (2k − 1)(2k + 1) (4m − 3)(4m − 1) m=1
205 I.5.2 無限個の変数 α1 , α2 , α3 , . . . に対する基本対称式 A1 , A2 , A3 , . . . とベキ和 S1 , S2 , S3 , . . . との関係 (5.30) は変数の数を有限個にして確かめれば納得できるだろう (Si に関する式は i 個以上 の変数で確かめること).この確かめ方はいろいろある.著者が意図した「ニュートンの定理の証明を まねる」という意味がわからない.オイラーの『入門』には直観的には明らかで,厳密には微分を使 えと書いてある.著者の意図とオイラーの言葉が同じ意味なのだろうか. ここではおそらくオイラー が意図したであろう微分を使った証明をしてみる. 厳密さは忘れること.
(A.1.2)
f (x) = (1 + α1 x)(1 + α2 x)(1 + α3 x) · · · · = 1 + A1 x + A2 x2 + A3 x3 + · · ·
と置き,対数微分をする. ∞ ∞ X X f (x) αi = = αi (1 − αi x + (αi x)2 − (αi x)3 + · · · ) f (x) 1 + αi x i=1 i=1
=
∞ X
(αi − α2i x + α3i x2 − α4i x3 + · · · ) = S1 − S2 x + S3 x2 − S4 x3 + · · · ,
i=1
f (x) = (1 + A1 x + A2 x2 + A3 x3 + · · · )(S1 − S2 x + S3 x2 − S4 x3 + · · · ) f (x) = A1 + 2A2 x + 3A3 x2 + . . . + nAn xn−1 + · · · ここで,xn−1 の係数を比較すれば,
nAn = An−1 S1 − An−2 S2 + · · · + (−1)n−2 A1 Sn−1 + (−1)n−1 Sn
(A.1.3)
が得られ,移項すれば,(5.30) が得られる.無限積で定義される関数の意味とか,無限和の収束とか, 気になる人は有限変数 (αi の個数が有限ということ) で等式を示し,それが任意有限和で同じ式が成 立することを示すということになる.そのどちらのステップにも帰納法を使う余地があり, それ自身 面白い計算を楽しむことはできるのだが,オイラーが言うような直観は何に基づくのかわからない. n 個の変数のときには, m > n に対しては Am = 0 と考える.意味のある一番大きな式は (A.1.3) な ので,これだけ示す簡単な方法を紹介しておこう.根と係数の関係の n 次式版として基本対称式 Ai を定義することにすると,
g(x) = (x − α1 )(x − α2 ) · · · (x − αn ) = xn − A1 xn−1 + A2 xn−2 − · · · + (−1)n−1 An−1 x + (−1)n An となる.各 x = αi は g(x) の根なので, g(αi ) = 0 である.したがって,
0=
n X
g(αi ) = Sn − A1 Sn−1 + A2 Sn−2 − · · · + (−1)n−1 An−1 S1 + (−1)n nAn
i=1
となる.後は,変数に関して帰納法を使えばよいのだが,注意が必要である,まず (A.1.3) 式が (< n) 変数のときに成り立つことは αj = 0 ( < j ≤ n) と置けばよいので当たり前なのだが, m(> n) 変 数のときに成り立つことを示すにはかなり複雑な帰納法が必要である.オイラーの計算力は偉大と言っ てもいいほどなので,この程度は明らかなことなのか,本当に当たり前に思える帰納法が別にあるの Q x2 か,今はわからない.さて,sin x に対するオイラー積 (定理 5.2) sin x = x ∞ k=1 (1 − k2 π 2 ) を考
える.αk = − k21π2 , z = x2 と置いて,
1 + A1 z + A2 z 2 + A3 z 3 + · · · = (1 + α1 z)(1 + α2 z)(1 + α3 z) · · · · と置けば,求めたい和
sk = 1 +
1 1 1 + 2k + 2k + · · · 22k 3 4
1 1 1 は sk = (−1)k π 2k Sk と書けるので, S1 = − 16 , S2 = 90 , S3 = − 945 , S4 = 9450 , . . . を示せば よい.ところで,
` ´ sin x = x 1 + A1 x2 + A2 x4 + A3 x6 + · · · = x + A1 x3 + A2 x5 + A3 x7 + · · ·
なので,Ak が欲しければ両辺を 2k + 1 回微分して x = 0 と置けばよいのだから
(2k + 1)!Ak = (−1)k cos 0 = (−1)k
206
演習問題解答
となる.後は順次 (5.30) 式に代入していけばよい.
„ « 1 1 1 1 4 1 1 1 = − = = − 2 62 5! 6 6 10 6 60 90 1 1 1 28 − 21 + 9 1 1 1 + −3 = − =− S3 = A1 S2 − A2 S1 + 3A3 = − 6 90 5! 6 7! 3 · 7! 945 1 1 1 1 1 320−168+60−20 1 1 1 − + −4 = = S4 = A1 S3 −A2 S2 +A3 S1 −4A4 = 6 945 5! 90 7! 6 9! 5·9! 9450 S1 = A 1 = −
1 1 =− , 3! 6
S2 = A1 S1 − 2A2 =
など好きなだけ計算できる. I.5.3 まず (5.31) 式から直接出すことを考える. (5.32) の第 1 式を t1 とすれば,s1 を表わす (5.31) の第 1 式の奇数次部分をとり出したものになっており,また s1 の偶数次部分は s1 /22 なので
t1 = s1 −
π2 3 π2 1 1 = s1 = s1 · (1 − ) = 2 2 4 6 4 8
となり,同様に第 2 式に対し
t2 = s2 −
π 4 15 π4 1 1 )= = s2 = s2 · (1 − 4 2 16 90 16 96
が得られる.さて,z n + 1 = 0 の根から始めて,本文と同様な証明で
cos x =
∞ „ Y
1−
k=1
4x2 (2k − 1)2 π 2
«
„ 1−
=
4x2 π2
«„ 1−
4x2 9π 2
«„ « 4x2 1− ··· . 25π 2
を示すことにしよう. n を奇数 n = 2m + 1 とする.(5.24) と同様にして,
z n + 1 = (z + 1)
(n−1)/2 “
Y
” “ ” z − e(2k−1)iπ/n · z − e−(2k−1)iπ/n
k=1
(A.1.4)
(n−1)/2 „
= (z + 1)
Y
z 2 − 2z cos
k=1
« (2k − 1)π +1 n
が得られる. (A.1.4) 式で z → z/a と置き換えて, an を掛けると (n−1)/2 „
z n + an = (z + a)
(A.1.5)
Y
z 2 − 2az cos
k=1
(2k − 1)π + a2 n
«
が得られ,(A.1.5) 式に z = (1 + x/N ), a = (1 − x/N ) を代入し, n = N と置くと,
“ 1+
x ”N “ x ”N + 1− =2 · N N „„
(N−1)/2
=2·
Y
2
1−cos
k=1 (N−1)/2 „
= CN ·
Y
k=1
1+
(N−1)/2 „
Y
k=1
2+
« « „ 2x2 (2k − 1) x2 cos π −2 1− N2 N2 N
„ « «« 2k − 1 x2 2k − 1 π + 2 1+cos π N N N
x2 1 + cos((2k − 1)π/N ) · N 2 1 − cos((2k − 1)π/N )
«
となるが,左辺の定数項は 2 なので,すべての N に対し CN = 2 となる.大きな N に対しては上 の式の左辺は ex + e−x になり,小さい y に対して cos y ≈ 1 − y 2 /2 であるという事実を使うと右 辺の k 番目の因数は „ «
1+
(2x)2 (2k − 1)2 π 2
207 に近づく.したがって,
ex + e−x = 2
„ 1+
4x2 π2
«„
4x2 9π 2
1+
«„ 1+
4x2 25π 2
« · ···
が得られ,ここで x を ix で置き換えれば,左辺は望んでいた cos x となって証明が終わる. 4 後は (A.1.2) 式で αi = − (2i−1) 2 π 2 と置いて,上の問題と同じようにすればよい.
I.5.4 定理 5.2 のオイラー積の対数をとると, log(sin x) = log x +
« „ x2 log 1 − 2 2 k π k=1 ∞ X
となる.この第 2 項に (3.14) 式を使うと,収束性は気にしないでやれば,
log(sin x) = log x − = log x −
∞ X ∞ „ X
x2h hk 2h π 2h
k=1 h=1 ∞ X x2h
sh
h=1 x2
hπ 2h
« = log x −
∞ X h=1
= log x −
∞ X
(−1)h−1
h=1
∞ X 1 2h k k=1
!
x2h hπ 2h
22h−1 B2h x2h h(2h)!
x4 x6 x8 − − − ··· = log x − 6 2 · 90 3 · 945 4 · 9450 2h P∞ 1 h−1 (2π) となる.ここで,演習問題 I.5.2 の (5.31) 式を sh = · B2h の形で k=1 k2h = (−1) 2·(2h)! 使った.B2h はベルヌーイ数 (II.10 参照) である. 3 2 I.5.5 (5.33) √ を因数分解すれば x − 5x + 2 = (x − 2)(x + 2x − 1) = 0 となり,3 実根は x = 2, −1 ± 2 であるが,これを (1.15) を用いて求めるわけである. (1.15) を適用すれば q q q q p p p p 3 3 3 3 x = −1+ 1 − 125/27+ −1− 1 − 125/27 = −1+i 98/27+ −1−i 98/27 p p となる.u, v を u3 = −1 + i 98/27, v3 = −1 − i 98/27 と置き,uv が実数となるような組合
せを考えればよい.さて,
√ p √ √ u3 = −1 + i 98/27 = (− 27 + i 98)/ 33 √ √ √ √ √ √ √ √ = (−3 3 + i7 2)/ 33 = ( 3 + i 2)3 / 33 = (1 + i 2/ 3)3 √ √ v3 = (1 − i 2/ 3)3 √ √ √ だから,z = 1 + i 2/ 3 と置き,1 の原始 3 乗根 ω = (−1 + i 3)/2 をとれば,u = z, zω, z ω ¯ と,v = z¯, z¯ω, z¯ω ¯ が候補で可能性は 9 組みだが, uv が実数となるような組合せは (u, v) = (z, z¯), (zω, z¯ω ¯ ), (z ω ¯ , z¯ω) になる.したがって, √ √ x = z + z¯ = 2, zω + z¯ω ¯ = −1 − 2, z ω ¯ + z¯ω = −1 + 2 となる.uv が実数でなければならない理由を注意しておこう. (I.1.14) 式は u3 , v3 の和と差の式に なっており,9 組の解が得られるのだが,本来は
u3 + v3 = −q,
uv = −p/3
という連立方程式であって, uv = −p/3 の条件によって 3 組に絞られるのである.今は実係数の 方程式を考えているので, uv(= −p/3) は実数になり,また実数という条件さえあれば,すでに u3 v3 = −p3 /27 を満たしているので, uv = −p/3 を満たすことになる.
I.5.6 問題の通りに比較すると (x = μ cos α), 3 − μ2 = −5, 4
−
μ3 cos 3α = 2 4
208
演習問題解答 q
となり,μ =
√
20 3
1 − cos2 3α =
q = 2 53 ,
√ 7√2 5 5
cos 3α = −
q
3 5
3
となる.これから cos α を求めるために,sin 3α =
を求めて,複素数 z = cos α + i sin α を z 3 = cos 3α + i sin 3α から求め
ることにする.ほしいのは実部だけなので, sin 3α > 0 ととってもよかったのである.
√ √ √ √ √ √ 3 3 ( 3 + i 2)3 7 2 −3 3 + i7 2 z3 = − √ + i √ = = √ 3 √ 3 5 5 5 5 5 5 √
となるので, z0 =
ω=
√ −1+i 3 2
√ 3+i 2 √ 5
と置くとき,z = z0 , z0 ω, z0 ω 2 の実部を求めればよい.ここで, √
√
√
√
√
√ 6 , − 3+ √ 6 となり, は 1 の原始 3 乗根である.実行すれば, cos α = √3 , − 3−
5 2 5 2 5 √ したがって x = μ cos α = 2, −1 − 2, −1 + 2 が得られる.因数分解はいつもできるわけでは ないし,これがヴィエートのアイデアだということは, 3 乗根をとる方法が一般に知られているべき
√
で,そうするとこれは三角関数表 (コサインの表だけでよい)を使うということであろう.対数表と いい,三角関数表といい,計算技術として今日考えられないほど重要であったという証であろうか.
I.6
I.6.1 (6.11) 式を行列の形に書けば, ! Ak Ak−1 Bk
Bk−1
となるから,次々とやれば,
Ak
Ak−1
Bk
Bk−1
!
=
=
A0 B0 q0 1
A−1
!
=
q1
Ak−1
Ak−2
Bk−1
Bk−2
! 1
q2
!
1
qk
! 1
pk
0
!
B−1 p1 0 p2 0 ! ! ! 1 q2 1 q1 1 ··· 0 p1 0 p2 0
···
qk−1
1
!
qk
! 1
pk−1 0 pk 0 ! ! qk−1 1 qk 1 pk−1 0 pk 0
となる. I.6.2 平方数以外の自然数に対して, 折角だから少し,平方根を計算してみる. 正則連分数に表わ して,整数部分を q0 ,分母の列を q1 , q2 , q3 , . . . として,q0 , q1 , q2 , q3 , . . . を書くと,
√
2 =⇒ 1, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, 2, . . . √ 3 =⇒ 1, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 2, 1, . . . √ 5 =⇒ 2, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, 4, . . . √ 6 =⇒ 2, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, 4, 2, . . . √ 7 =⇒ 2, 1, 1, 1, 4, 1, 1, 1, 4, 1, 1, 1, 4, 1, 1, 1, 4, 1, 1, 1, 4, . . . √ 8 =⇒ 2, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, 1, 4, . . . √ 10 =⇒ 3, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, 6, . . . √ 11 =⇒ 3, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, 3, 6, . . . √ 12 =⇒ 3, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, 2, 6, . . . √ 13 =⇒ 3, 1, 1, 1, 1, 6, 1, 1, 1, 1, 6, 1, 1, 1, 1, 6, 1, 1, 1, 1, 6, . . . √ 14 =⇒ 3, 1, 2, 1, 6, 1, 2, 1, 6, 1, 2, 1, 6, 1, 2, 1, 6, 1, 2, 1, 6, . . . √ 15 =⇒ 3, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, 1, 6, . . . √ 17 =⇒ 4, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, 8, . . . √ 18 =⇒ 4, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, 4, 8, . . .
209 √
19 =⇒ 4, 2, 1, 3, 1, 2, 8, 2, 1, 3, 1, 2, 8, 2, 1, 3, 1, 2, 8, . . . √ 20 =⇒ 4, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, 2, 8, . . . √ 21 =⇒ 4, 1, 1, 2, 1, 1, 8, 1, 1, 2, 1, 1, 8, 1, 1, 2, 1, 1, 8, . . . √ 22 =⇒ 4, 1, 2, 4, 2, 1, 8, 1, 2, 4, 2, 1, 8, 1, 2, 4, 2, 1, 8, . . . √ 23 =⇒ 4, 1, 3, 1, 8, 1, 3, 1, 8, 1, 3, 1, 8, 1, 3, 1, 8, 1, 3, 1, 8, . . . √ 24 =⇒ 4, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, 1, 8, . . . √ 26 =⇒ 5, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, 10, . . . √ 27 =⇒ 5, 5, 10, 5, 10, 5, 10, 5, 10, 5, 10, 5, 10, 5, 10, 5, 10, . . . √ 28 =⇒ 5, 3, 2, 3, 10, 3, 2, 3, 10, 3, 2, 3, 10, 3, 2, 3, 10, . . . √ 29 =⇒ 5, 2, 1, 1, 2, 10, 2, 1, 1, 2, 10, 2, 1, 1, 2, 10, 2, 1, 1, 2, 10, . . . √ 30 =⇒ 5, 2, 10, 2, 10, 2, 10, 2, 10, 2, 10, 2, 10, 2, 10, 2, 10, . . .
などとなる.立方数を除いて,立方根を少し計算してみると,
√ 3
2 =⇒ 1, 3, 1, 5, 1, 1, 4, 1, 1, 8, 1, 14, 1, 10, 2, 1, 4, 12, 2, 3, 2, 1, 3, 4, 1, 1, 2, 14, 3, 12 . . .
√ 3
3 =⇒ 1, 2, 3, 1, 4, 1, 5, 1, 1, 6, 2, 5, 8, 3, 3, 4, 2, 6, 4, 4, 1, 3, 2, 3, 4, 1, 4, 9, 1, 8 . . .
√ 3
4 =⇒ 1, 1, 1, 2, 2, 1, 3, 2, 3, 1, 3, 1, 30, 1, 4, 1, 2, 9, 6, 4, 1, 1, 2, 7, 2, 3, 2, 1, 6, 1 . . .
√ 3
5 =⇒ 1, 1, 2, 2, 4, 3, 3, 1, 5, 1, 1, 4, 10, 17, 1, 14, 1, 1, 3052, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 2, 2, 1, 3, 2 . . .
√ 3 √ 3 √ 3
6 =⇒ 1, 1, 4, 2, 7, 3, 508, 1, 5, 5, 1, 1, 1, 2, 1, 1, 24, 1, 1, 1, 3, 3, 30, 4, 10, 158, 6, 1, 1, 2 . . . 7 =⇒ 1, 1, 10, 2, 16, 2, 1, 4, 2, 1, 21, 1, 3, 5, 1, 2, 1, 1, 2, 11, 5, 1, 3, 1, 2, 27, 4, 1, 282, 8 . . . 9 =⇒ 2, 12, 2, 18, 1, 1, 1, 1, 4, 1, 1, 24, 1, 9, 1, 2, 19, 1, 2, 2, 12, 3, 2, 1, 3, 1, 2, 1, 2, 1 . . .
√ 3
10 =⇒ 2, 6, 2, 9, 1, 1, 2, 4, 1, 12, 1, 1, 1, 1, 57, 4, 2, 16, 1, 1, 1, 1, 9, 6, 2, 3, 1, 1, 12, 1 . . .
√ 3
11 =⇒ 2, 4, 2, 6, 1, 1, 2, 1, 2, 9, 88, 2, 1, 2, 1, 8, 1, 1, 3, 4, 1, 7, 1, 40, 1, 1, 36, 2, 3, 1 . . .
√ 3
12 =⇒ 2, 3, 2, 5, 15, 7, 3, 1, 1, 3, 1, 1, 96, 7, 2, 6, 3, 36, 1, 17, 25, 2, 4, 9, 24, 9, 1, 3, 2, 34 . . .
√ 3 √ 3 √ 3 √ 3
13 =⇒ 2, 2, 1, 5, 1, 1, 43, 3, 2, 1, 1, 3, 10, 7, 1, 12, 2, 20, 3, 1, 3, 9, 1, 6, 1, 1, 22, 1, 2, 2 . . . 14 =⇒ 2, 2, 2, 3, 1, 1, 5, 5, 9, 6, 21, 1, 1, 54, 1, 22, 1, 1, 3, 2, 1, 5, 3, 237, 2, 20, 1, 1, 3, 3 . . . 15 =⇒ 2, 2, 6, 1, 8, 1, 10, 8, 12, 1, 719, 4, 2, 5, 2, 2, 3, 3, 2, 1, 46, 4, 2, 11, 2, 1, 3, 11, 2, 1 . . . 16 =⇒ 2, 1, 1, 12, 10, 18, 1, 6, 1, 21, 1, 2, 2, 24, 1, 6, 1, 2, 1, 1, 1, 1, 1, 3, 1, 28, 1, 1, 1, 5 . . .
√ 3
17 =⇒ 2, 1, 1, 3, 138, 1, 1, 3, 2, 3, 1, 1, 207, 1, 2, 2, 1, 1, 1, 1, 2, 4, 9, 1, 2, 4, 1, 1, 3, 4 . . .
√ 3
18 =⇒ 2, 1, 1, 1, 1, 1, 3, 22, 1, 2, 2, 2, 24, 64, 2, 2, 1, 2, 1, 2, 1, 4, 24, 1, 1, 1, 2, 2, 1, 16 . . .
√ 3
19 =⇒ 2, 1, 2, 63, 1, 2, 2, 2, 1, 95, 2, 1, 1, 2, 7, 4, 2, 3, 1, 2, 3, 127, 1, 4, 1, 3, 1, 4, 4, 12 . . .
√ 3 √ 3 √ 3
20 =⇒ 2, 1, 2, 1, 1, 154, 6, 1, 1, 1, 6, 231, 1, 15, 8, 3, 1, 10, 3, 2, 1, 1, 17, 1, 2, 77, 42, 1, 4, 8 . . . 21 =⇒ 2, 1, 3, 6, 1, 3, 17, 1, 7, 3, 3, 11, 2, 92, 1, 3, 1, 3, 1, 2, 2, 26, 2, 1, 20, 1, 4, 2, 10, 43 . . . 22 =⇒ 2, 1, 4, 19, 2, 2, 2, 2, 2, 29, 56, 35, 49, 39, 4, 2, 56, 1, 97, 2, 11, 1, 5, 1, 2, 1, 1, 1, 2, 1 . . .
210 √ 3 23 √ 3 24 √ 3 25 √ 3 26 √ 3 28 √ 3 29 √ 3 30
演習問題解答 =⇒ 2, 1, 5, 2, 2, 7, 1, 16, 4, 1, 8, 10, 7, 1, 4, 5, 1, 2, 2, 3, 1, 1, 1, 1, 3, 7, 1, 12, 1, 1 . . . =⇒ 2, 1, 7, 1, 1, 1, 12, 13, 1, 10, 4, 6, 1, 1, 1, 1, 1, 2, 1, 2, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 1, 7, 1, 6 . . . =⇒ 2, 1, 12, 6, 4, 1, 2, 2, 2, 5, 1, 1, 4, 1, 2, 1, 3, 1, 2, 3, 3, 610, 3, 10, 1, 14, 1, 5, 1, 1 . . . =⇒ 2, 1, 25, 1, 1, 1, 39, 12, 1, 1, 4, 4, 13, 93, 3, 17, 3, 1, 85, 1, 3, 5, 1, 1, 8, 1, 6, 1, 2, 1 . . . =⇒ 3, 27, 3, 40, 1, 10, 1, 1, 21, 13, 1, 2, 2, 1, 7, 2, 2, 63, 1, 1, 2, 1, 5, 3, 3, 1, 1, 1, 11, 4 . . . =⇒ 3, 13, 1, 4, 1, 4, 2, 2, 2, 3, 1, 1, 2, 1, 1, 4, 1, 3, 2, 3, 8, 7, 2, 2, 1, 2, 8, 1, 3, 12 . . . =⇒ 3, 9, 3, 13, 1, 9, 1, 2, 5, 4, 1, 1, 3, 1, 18, 3, 2, 4, 5, 3, 4, 1, 2, 2, 22, 1, 3, 1, 3, 79 . . .
などとなる.重要な違いと言えば,平方根は 2 項目以降は周期的になるが,立方根は規則性が見当た らないということだろう.平方根の周期が数によってかなり異なるのも面白い. 周期の短いものがど うなるかという自然な疑問は,次の演習問題を見ること.
I.6.3 x=
1 a+
,
1 a+
√
a2 + 4 − a , 2
y=
1 b+
x2 + ax − 1 = 0, √
1 a+
1 , a+x
の正の解になるので,
1 b+
1 a+ a + ···
x=
x=
1 a+
1
と置けば,
となるから,
y=
y=
1 a + ···
1 a+
1 b+y
ay 2 + aby − b = 0
a2 b2 + 4ab − ab = 2a
p
b2 + 4b/a − b 2
となる.一般に,あるところから先が周期的になる連分数はある有理数係数の 2 次方程式の解であ ることである.また前問のような平方数でない自然数の平方根がどういう形の周期を持つ連分数であ るかも知られていて (ルジャンドルの定理),前問の表示で q0 , q1 , q2 , q3 , . . . と書くとき,循環節が q1 , q2 , . . . , qk−1 , qk = 2q0 となることが必要十分である.
I.6.4 5 時間 48 分 55 秒を正則な連分数で表わせば, 1 4+
日
1 7+
1 1+
1 6+
1 1+
1 2+
1 2+
1 4+
1 2
になる.1 次の近似分数は 1/4 で,1 年に本当の日数は 1/4 日多いというわけで,4 年に 1 度閏年を設 7 日となり, けて,1 日増やしておかないといけないことになる.しかし,2 次の近似分数は 1 1 = 29
100 年の間に 100 ×
7 29
4+ 7
= 24.13793103448 日多くなるようにした方が精確なのだが, 4 年に 1 度の
211 閏年では,100 ÷ 4 = 25 日多くなってしまう.そこで,100 年に 1 度,閏年を止めた方がよいことにな 1 8 8 = 33 日となり,400 年の間に 400 × 33 = 96.9696969697 る.さて,3 次の近似分数は 1 4+ 7+1/1
日多くなるようにした方が精確なのだが,100 年に 24 度の閏年では 400 年では,24 × 4 = 96 日し か多くない. 400 年のうちに 0.9696969697 日,つまりほぼ 1 日足らなくなるので, 400 年に 1 度 は閏年を止めることを止めた方がよいことになる.かくて,4 で割り切れる年は閏年として 1 日を増 やし,100 で割り切れる年は閏年であることを止め, 400 で割り切れる年は閏年を復活させるという, グレゴリオ暦が制定された.もちろんこれでもいつか,太陽年とのずれが起きてくるが, どれくらい になるのか調べてみよう. 4000 年をとってみよう.グレゴリオ暦では 400 年に 97 日ふやすのだか ら,4000 年では, 97 × (4000/400) = 970 日増やすことになっている.太陽年と 365 日とのずれ 4187 4187 は 17280 であり,4000 年では 17280 × 4000 = 969.212962963 となり,暦とのずれは 1 日に満た ない.5000 年で約 1 日,1 万年で約 2 日.人類が滅亡している歴史観もあるほどの未来である.そ んな未来に 1 日違ったからといってさしたることではない.地球の公転速度も変わるし,地球規模の 気象の変化も起こるだろう.それに比べれば,実用の暦として,グレゴリオ暦は十分過ぎるほどに精 確なのである. I.6.5 どこまでの厳密さを要求しているのかがわからないが,(6.21) 式で形式的に ck ← c1 c2 · · · ck を代入すれば,(6.24) 式が得られる.次々と約分していくプロセスが辛いということなのだろう.そ こで,(6.21) を導いたプロセスを
1 1 1 − + − ··· c1 c1 c2 c1 c2 c3
(6.17 )
に対して行おう.この出発点は, (6.17) 式と平行しているので (6.17 ) 式と呼ぼう. p1 = 1, q1 = B1 = c1 と置き,(6.16) 式の連続した項の商をとると
(6.18 )
Bk = ck pk Bk−2
となる. (6.18 ) 式から,(6.11) 式と (6.11) 式に ck を掛けたものをそれぞれ引けば,
qk Bk−1 = (ck − 1)pk Bk−2 ,
(1 − ck )Bk = −ck qk Bk−1
が得られる.上の式の k を k + 1 にとり換えて,辺々を割れば,
(ck+1 − 1)pk+1 qk+1 = ck − 1 ck qk
(6.19 )
となる.このとき,pi , qi は一意的には決まらないが,それらが整数になって欲しいのだから,(6.19 ) 式を満たすようにしたければ, k ≥ 1 に対して
(6.20 )
pk+1 = ck ,
qk+1 = ck+1 − 1
と選ぶのが自然だろう.
I.6.6 a a2 a3 + + + ··· 1·z 1 · 2 · z(z + 1) 1 · 2 · 3 · z(z + 1)(z + 2) an + ··· + 1 · 2 · · · · · n · z(z + 1)(z + 2) · · · (z + n − 1)
ϕ(z) = 1 +
だから,
ϕ(z) − ϕ(z + 1) =
∞ “ X n=1
−
=
=
∞ X n=1 ∞ X n=1
an 1 · 2 · · · · · n · z(z + 1)(z + 2) · · · (z + n − 1) ” an
1 · 2 · · · · · n · (z + 1)(z + 2) · · · (z + n) „ « 1 an 1 − 1 · 2 · · · · · n · (z + 1)(z + 2) · · · (z + n − 1) z z+n an 1 · 2 · · · · · (n − 1) · z(z + 1)(z + 2) · · · (z + n − 1)(z + n)
212
演習問題解答 ∞ X a a an−1 = ϕ(z +2) z(z +1) n=1 1 · 2 · · · · · (n − 1) · (z +2)(z +3) . . . (z +n−1)(z +n) z(z +1)
=
となる.次に,(6.32) の前の式で ψ(z) を定義したら,後ろの式を満たすことを見る.
„ « a · ϕ(z + 2) a · ϕ(z + 1) × z+ z · ϕ(z) (z + 1) · ϕ(z + 1) a · ϕ(z + 1) a aϕ(z) a · ϕ(z + 1) a · ϕ(z + 2) a + = +(ϕ(z) − ϕ(z + 1) = =a = ϕ(z) z(z + 1) ϕ(z) ϕ(z) ϕ(z) ϕ(z)
ψ(z) × (z + ψ(z + 1)) =
となる.こうして,
ψ(z) =
a = z + ψ(z + 1) z+
a
= a z+ z + 1 + ψ(z + 2) z+1+
a a a z + 2 + ψ(z + 3)
などと,連分数が得られる. a = x2 /4 と置く.
ϕ
“1” 2
∞ X
=
=
n=0 ∞ X n=0
n! ·
1 2
x2n /22n · ( 12 + 1) · · · ( 12 + n − 1)
∞ X x2n x2n = = cosh x 2n n! · 1 · 3 · · · · · (2n − 1) (2n)! n=0
であり
xϕ
“3” 2
=x
=
∞ X
n=0 ∞ X n=0
n! ·
2n n!
3 2
·
( 32
x2n /22n + 1) · · · ( 32 + n − 1)
∞ X x2n+1 x2n+1 = = sinh x · 3 · 5 · · · · · (2n + 1) (2n + 1)! n=0
である.また,
ψ
“1” 2
=
x2 ϕ( 32 ) 4 1 ϕ( 12 ) 2
=
3 x ex − e−x x xϕ( 2 ) x sinh x = = 2 ϕ( 12 ) 2 cosh x 2 ex + e−x
ここで,x → ix と置き換えると,
ψ
“1” 2
=
ix eix − e−ix x x eix − e−ix x sin x 2 = − tan x =− =− 2 eix + e−ix 2 2i eix + e−ix 2 cos x 2
となる.一方
ψ
“1” 2
=
x −x2 /4 x/2 =− −x2 /4 −x2 /4 1 2 1 + + 2 −x /4 −x2 /4 2 3 2 3 + + 2 −x /4 −x2 /4 2 5 2 5 + + 7 7 2 2 + ··· + ··· 2 2
=−
x 2
x x x =− x2 /2 x2 2 1− 1− 2 x /4 x2 /2 3 − 3− 2 −x /4 −x2 /4 5 5 2 + + 7 7 2 2 + ··· + ··· 2 2
213 −
x x tan x = − 2 2
x x2 1− x2 3− −x2 /2 5+ 7 + ··· 2
=−
x 2
x 1−
x2 x2 3− x2 5− 7 − ···
となって,(6.6) が得られる.
第 II 章 II.1 II.1.1 y = u·v ·w を微分すると,y = (u·v) ·w +(u·v)·w = (u ·v +u·v )·w +(u·v)·w = u · v · w + u · v · w + u · v · w となる. II.1.2 y =
v w
dy と置けば, dx = v w−vw だから,w , v を書き下すことで許して貰おう. w2
« „ “ k 2 x2 ” p x + e2x tan v = 5 cos(3x + b x2 + e2x ) 3 + b √ 1 + u2 x 2 x2 + e2x „ “ k 2 x2 ” « p ` ´ 2k 2 x + 5 sin 3x + b x2 + e2x · 1 + tan2 1 + u2 x 2 (1 + u2 x2 )2 s„ « 1 3 a2 + x2 2 a3 − x − ax2 − a2 /x + 2x ln x + · , 3 ax − ln x (a2 + x2 )2
9a2 x2 3a2 x3 x+6 + + 1 1 2 2 2(x + 3) arctan (arctan ) (x + 1) 3+x− x x r 2 2 2 2 b −x b −x 3x 3(1 + x2 ) − xe 2 arcsin +e 2 p . 2 1−x 2 3x(1 − 3x − x2 )(1 − x2 )
w = √
−1
ex
x2
x
II.1.3 y = ee に対し z = log y = ee , w = log z = ex と置いて,微分すると,z = y = z = ex = w となり, y = yz = y(zw ) = yzw となる. , w y z II.1.4 本文の図には座標が入っているように見える.円 M BCDEF は単位円のようだ.する と,定点の座標は M = (1, 0), C = (0, 1), E(−1, 0) になる.円の方程式は x2 + y 2 = 1 だか √ ら,B の座標を B = (x, 1 − x2 ) と与えて,他の点をすべて x で表わすことにする.弧 BC √ と CD の長さが等しいから,D = (−x, 1 − x2 ) となる.シッソイド上の点 A = (x, y) は直線 √
√ q (1−x) 1−x2 (1−x)3 − 1) 上にあるから, y = = である.図では y > 0 1+x 1+x √ (1−x) 1−x2 (1−x)3 2 に点 A があるが,曲線としては y = ± であり,y = 1+x が方程式である. M を 1+x MD : Y =−
1−x2 (X 1+x
3
x はよく知られたシッソイドの方程式で 原点に平行移動して,x 軸の向きを変えて得られる y 2 = 2−x ある.ところで,シッソイドは普通本書とは異なる仕方で定義されている.本文の図に則していうな ら,E から EM への垂線を立てる.座標で書けば x = −1 である.M から半直線を描いて,円 との交点を D とし,今引いた垂線との交点を L としよう.そのとき半直線上で DL = AM とな A る点 A の軌跡として定義するのである.この定義と一致することを示すには,本書の定義での √ 1−x2
をとり,DL = AM であることを示せばよいが, L の座標が (−1, 2 1+x ) であることは M D の方程式からすぐにわかる. DL と AM それぞれの √ x 座標の差は 1 − x であり, y 座標の差は √
√ √ (1−x) 1−x2 2 − 1 − x2 = 1 − x2 ( 1+x − 1) = であって,一致する.さて,問題に 1+x 戻ろう.A での接線の傾きは 方程式を微分すればよいから, s r 1 2+x 1−x dy 1 + x −3(1 − x)2 (1 + x) − (1 − x)3 = = − dx 2 (1 − x)3 (1 + x)2 1+x 1+x 2
1−x2 1+x
214
演習問題解答 √
となる.これが EH の傾きに一致すればよい.さて,他の点の座標は F = (x, − 1 − x2 ) と
√
√
1−x2
1−x2
G = (−2, 0) である.EF の傾きは − 1+x であり GH の方程式は Y = − 1+x (X + 2) だ q √ 1−x から,H = (x, − 2+x 1 − x2 ) となり,EH の傾きは − 2+x となって一致する.ところ 1+x 1+x 1+x で,この問題にシッソイドが倍積問題を解くために考案されたとあることについて若干の説明をして √ おこう.立方体の体積を 2 倍にしたいということは,辺の長さを 3 2 倍したいということである.つ √ 3 まり, 2 自体が求まればよい.もし y = x3 のグラフが描けるものなら,y = 2 に対応する点の X 座標をとればよい.しかし,y = x3 を正確に描く方法がない.シッソイドは描き方によって定義 されているので,どれ程でも精密にこの曲線を描き,その形を金属ででも成形する.ディオクレスが どのように用いたかはギリシャ数学史を調べればわかるのだろうが,今はその暇がない.原理的に当 1 つ,当時の技術で描くことのできる曲線を考えて,その 時の技術でできることを考えてみる.もう √ 3 交点の座標に 2 が現れればよいと考えることにする.シッソイドの方程式は,一番よく知られた形 3 x y 2 = 2−x で使おう.求める曲線を y 2 = f (x) で,f (x) は 2 次式でできないかと考えることにす る.y 2 = f (x) = ax2 + bx + c, (a, b, c ∈ Q) とおいて連立させると,
−ax3 + (2a − b)x2 + (2b − c)x + 2c = x3 √ 3 となる,この交点の x 座標に 2 が現れればよいのだから,それを代入すると √ √ 3 3 2(a + 1 − c) + (b − 2a) 4 + (c − 2b) 2 = 0 √ √ 3 3 となり,1, 2, 4 は Q 上一次独立だから係数を 0 とおけば, c = a + 1, b = 2a, c = 2b = 4a となり,a = 1/3 が得られる.かくして,欲しかった曲線の式は
y2 =
(x + 1)2 x2 + 2x + 4 = +1 3 3
となり,これは双曲線を表わしている.円錐曲線はギリシャ時代もよく研究されていたもので,描く ことはできたはずである.一応,これが倍積問題に利用できるという根拠であるが,もちろん実際に 使った方法はもっと巧妙なものであったに違いない. dy II.1.5 x2 + y 2 = r 2 を微分すると,2xdx + 2ydy = 0 となり, dx = −x = ∓ √ 2x 2 と y r −x √ −2x なる.また,y について解けば,y = ± r 2 − x2 であるから,y = ± √ 2 2 = ∓ √ 2x 2 で 2
r −x
r −x
ある.
II.1.6 問題の式を少し見やすくすると, p (a + bx) · (c − x2 ) y2 x + + ax g 2 + y 2 + √ =0 2 2 y (ex + f x ) h2 + x + mx2 となる.これを微分すると,
0=
y − xy (bc − 2ax − 3bx2 )(ex + f x2 ) − 2(a + bx)(c − x2 )(e + 2f x) + 2 y (ex + f x2 )3 p yy 4yy (h2 + x + mx2 ) − y 2 ( + 2mx) + a g 2 + y 2 + ax p + p 2 (h2 + x + mx2 )3 g2 + y2
となる.y について解く必要があるとも思えないが,解いてきれいな式になったなら,訳者に教えて 下さい.改版することがあれば,反映させて頂きます.
II.2 II.2.1 まず,関数 y = x4 − 8x3 + 22x2 − 24x + 12 を考える.1 階,2 階の導関数を計算すると, y = 4x3 − 24x2 + 44x − 24 = 4(x − 1)(x − 2)(x − 3),
y = 4(3x2 − 12x + 11)
となり,極値の候補の値を調べると, y(1) = 3, y(2) = 4, y(3) = 3 となるし,y = 0 の根も
215 √ 2 ± 1/ 3 なので,このまま計算してもよいが, x = 2 を原点に移した方が見易いだろう. x = z + 2 と置くと,y = 4z(z + 1)(z − 1) = 4(z 3 − z), y = 4(3z 2 − 1) であり,y = z 4 − 2z 2 + 4 であ ることも y(2) = 4 からわかる.原点対称になっていて見易い. y と y の増減表を書けば, √1 3 − √1 3
2−
x x
1
2
3
z
−1
0
1
z
y
−
0
+
0
−
0
+
y
3
4
3
2+
√1 3
y
+
0
−
y
8 √ 3 3
y
√1 3
−
0
+
8 √ 3 3
下に凸 変曲点 上に凸 変曲点 下に凸
となり,最小値は 3 (x = 1, 3) で,局所的な最大値 (極大値ということも多い) は 4 (x = 2) であり, ) である.次に y = x5 − 5x4 + 5x3 + 1 の 1 階,2 階の導関数を計算すると, 変曲点は (2 ± √1 , 31 9 3
y = 5x4 − 20x3 + 15x2 = 5x2 (x − 1)(x − 3), y = 5(4x3 − 12x2 + 6x) = 10x(2x2 − 6x + 3) で,y と y の増減表は x
0
1
y
+
0
+
0
y
1
2
3 −
0
+
−26
√
y
−
√ 3+ 3 2
3− 3 2
0
x
0
+
y
0
y
上に凸
変曲点
下に凸
0
−
変曲点
上に凸
0
+
変曲点
下に凸
となる.極大値は 2 (x = 1) で,極小値は −26 (x = 3) である.変曲点と凸性の領域は表を参照の こと. 1
II.2.2 y = x x の対数をとれば, log y = 1 1 1 − log x y = − 2 log x + 2 = , y x x x2
1 x
log x となり,これを微分すると, 1
1
y = x x × x−2 (1 − log x) = x x −2 (1 − log x)
となる. x > 0 では x1/x−2 > 0 だから, y = 0 の零点は log x = 1 すなわち x = e となる.y の増減表を書けば,
x
0
e
y
+
0
−
y
e1/e
となり,最大値は e1/e (x = e) である. y = xx についても,対数を取って log y = x log x とし, 微分すると,
y = log x + 1, y
y = xx (1 + log x)
となる. x > 0 では xx > 0 だから, y = 0 の零点は log x + 1 = 0 すなわち x = 1e となる.y の増減表を書けば,
x
0
1/e
y
−
0
+
y
e−1/e
となり,最小値は e−1/e (x = 1/e) である.
√ II.2.3 0 ≤ x ≤ 1 に対して,問題の長方形の面積は f (x) = x x − x2 で与えられる.これを微
216
演習問題解答
分すると,
f (x) =
p 1 − 2x x(3 − 4x) x − x2 + x √ = √ 2 x − x2 2 x − x2
となり,f の増減表は
となり,最大値は f ( 34 ) =
√ 3 3 16
x
0
f
0
+
3/4
f
0
0
1 −
0
となる.後は,f (3/4) < 0 を示せばよい.
f (x) =
8x2 − 12x + 3 √ 4(1 − x) x − x2
の分子の 8x2 − 12x + 3 の 3/4 での値は −3/2 < 0 となる.分母の値は正である.
II.2.4 y = x sin x を微分すれば y = sin x + x cos x で,y = 0 を解くことは x + tan x = 0 を解くことになる.グラフを書けばすぐにわかることだが, π/2 を少し越えたところに解があり,こ れが求めるものであることには何の問題もない. しかし,この解をオイラーが求めた程の精度で, ど うやったら計算することができるのだろうか.級数展開といっても,tan x は,π/2 で発散しており, それを越えて級数は収束しない.さて,オイラーはどうしたのだろう.やはり,原点を π/2 に移すの だ.x = u + π/2 と置けば,
u + π/2 = x = − tan x = − tan(u + π/2) = −
cos u sin(u + π/2) =− = cot u cos(u + π/2) − sin u
となる.これなら,u はそんなには 0 から遠くないところに解を持つ. z = u + π/2 − cot u の零点 を求める問題になった.微分を求めておくと
z (u) =
1 1 + sin2 u dz =1+ = , 2 du sin u sin2 u
z (u) =
d2 z cos u = −2 3 du2 sin u
2 u0 である.ニュートン法で,第 1 近似 u0 からよりよい近似値を求めるには,z −z(u0 ) = 1+sin (u− sin2 u0 u0 ) で z = 0 と置いて u に関して解けばよく,
(A.2.1)
u = u0 −
1 z (u
0)
z(u0 ) = u0 −
sin2 u0 π (u0 + − cot u0 ) 1 + sin2 u0 2
となる.ハリーの方法なら,
p z (u0 )2 − 2z(u0 )z (u0 ) z (u0 ) « „ q tan u0 1 + sin2 u0 − sin4 u0 + 6 sin2 u0 − 3 + (2u0 + π) sin 2u0 = u0 + 2
u = u0 −
z (u0 ) −
となる.解はグラフを描いて見ても, 30◦ = π 弱くらいに見えるし, (A.2.1) 式の値も計算しやすそ 6 とすると, うなので,まず, u0 = π 6
u=
√ 1/4 π π √ 1 2π √ π π π 3 . ◦ − ( + − 3) = − ( − 3) = + = 6 + 19◦ 51 = 25◦ 51 6 1 + 1/4 6 2 6 5 3 30 5
π が得られ,オイラーの与えている初期値 26◦ 15 に近い. (A.2.1) 式に 25◦ 51 = 1551 秒 = 30 + √ 3 ◦ 14 5 となる.これをもう一度 (A.2.1) 式に入れれば, を入れてみると, 1574.082 秒 = 26 5 1574.3556956696 秒 = 26◦ 14 21 20 25 となり,最後の桁以外は合っている.これを再度 (A.2.1) 式に入れれば,1574.355706668779137 秒 = 26◦ 14 21 20 32 38 となり,最後の桁まで合っ ている.しかしこの計算はコンピュータの助けを借りて行ったもので, オイラーの時代,途中に現れ る三角関数の値が必要なだけの精度で知られていることは考えにくく, これを実行したとは考えにく
217 い.まして,ハリーの方法で計算するのは考えるだけで途方に暮れてしまう. 実際オイラーの論文を 見てみると,本質的な繰り返しは 1 回しか行っていない.繰り返そうとしても対応する数表がなかっ ただろう.彼は u0 = 26◦ 15 = 1575 での cot u0 と sin u0 の値しか使わずにこの精度を出してい るのである.その方法は,当時としては当たり前の発想だったのかもしれないが, z = z(u) の逆関 数 u = f (z) を考えるのである. z = 0 の零点を求めるとは,値 f (0) を求めることであると考える. ただ,z の値は u を通して間接的にしかわからないとするのである.解の近似値 u0 が与えられたと き,z0 = z(u0 ) で f (z) を展開して,
f (z) = f (z0 ) + f (z0 )(z − z0 ) +
f (z0 ) f (z0 ) (z − z0 )2 + (z − z0 )3 + · · · 2 6
とし,f (0) を求めるのだが,f (z), f (z), f (z), f (z) は u で表わすのである. u = f (z) であり,
1 2 sin u cos u du 2 sin3 u cos u du sin2 u df (z) = dz = , f (z) = = = 2 2 2 dz 1 + sin u dz (1 + sin u) dz (1 + sin2 u)3 du « „ df (z) 6 × 2 sin4 u cos2 u du 6 sin2 u cos2 u − 2 sin4 u = f (z) = − dz dz (1 + sin2 u)3 (1 + sin2 u)4 f (z) =
=
2 sin4 u(3 − 7 sin2 u + 2 sin4 u) (1 + sin2 u)5
となる.上にも述べたように,オイラーは u0 = 26◦ 15 に対して,
u0 − f (z0 )z0 +
f (z0 ) 2 f (z0 ) 3 z0 − z0 2 6
を順次計算している. 1 次までの計算はニュートン法に他ならないが, 2 次までの計算はハリーの方 法に一致しないことを注意しておく.オイラーは cot u0 や sin u0 の値を求めるのにその対数を,おそ らくは表で求めている.log cot 26◦ 15 の値が現在でも手に入る丸善の対数表の値と (桁数を込めて) まったく同じであるのを見たときは,ちょっとした感動した.一致するのは当たり前なことなのかも しれないが.
II.2.5 Δ2 y = (x + 2Δx)3 − 2(x + Δx)3 + x3 = 6x(Δx)2 + 6(Δx)3 となるから, Δ2 y = 6x + 6Δx −→ 6x Δx2
(Δx −→ 0).
II.2.6 f (x) = sin(x2 ) を微分すると, f (x) = 2x cos x2 ,
f (x) = 2 cos x2 − 4x2 sin x2 ,
f (x) = −12x sin x2 − 8x3 cos x2
f (x) = −12 sin x2 − 48x2 cos x2 + 16x4 sin x2 f (5) (x) = −120x cos x2 + 160x3 sin x2 + 32x5 cos x2 f (6) (x) = −120 cos x2 + 720x2 sin x2 + 480x4 cos x2 − 64x6 sin x2 などとなり,f (0) = f (0) = 0, f (0) = 2, f (0) = f (4) (0) = f (5) (0) = 0, f (6) (0) = −120 P∞ n (n) (0) x などとなる.テイラー級数 f (x) = f (0) + に代入すれば,最初の方は f (x) = n=1 f n!
x2 − 16 x6 + · · · となる.0 になる項が多いのに,これでは微分の計算が大変だ. この程度の項を求 めるだけなら簡単な方法がある.f (x) を sin x と x2 の合成関数だと見れば,sin x のテイラー展開 P∞ 2n−1 n−1 x は sin x = とわかっているのだから, n=1 (−1) (2n−1)! f (x) = sin x2 =
∞ X
(−1)n−1
n=1
x10 x14 x6 x4n−2 = x2 − + − + ··· (2n − 1)! 3! 5! 7!
となる.
II.2.7 f (x) = x2 − 2 の微分は f (x) = 2x で,点 (a, a2 − 2) での接線は y = 2ax − a2 − 2
218
演習問題解答 2
+2 だから,x = a の次の近似値は接線と x 軸との交点である a 2a = 12 ( a2 + a) になるというのが ニュートンの方法だが,これはまさに (I.2.13) 式の直後にあるバビロニアの式と同じである.ハリー の方法を f (x) = x2 − 2 の零点を求めるのに使おうとすれば, 点 (a, a2 − 2) での接 2 次曲線と x 軸との交点を求めることになるが,もとの関数のグラフ自身が 2 次曲線であるため,どの初期 (近似) √ 値から始めても,その交点は 2 そのものになってしまい,新しい近似値は得られない.それでは √ (I.2.14)√ 式はどのようにして得られるのだろうか.y = f (x) の逆関数 x = g(y) = y + 2 を考え, g(0) = 2 を求めたいと考えるのである.こんなことで実際に値が求まるとは思いにくいだろう.演 習問題 2.4 をオイラーが解いている方法と同じことで, g(y) の 2 次のテイラー多項式を使うのであ る.ただし,微係数は x で表わしておく.数値を推測し,計算するのは x の方であって, y の方は ひとえに 0 になって欲しいのだから.
g (y) =
1 1 (y + 2)−1/2 = , 2 2x
1 1 g (y) = − (y + 2)−3/2 = − 3 4 4x
となり,y = y0 でのテイラー多項式は (x0 = g(y0 ) と置いて)
g (y0 ) 1 1 . x = g(y) = g(y0 ) + g (y0 )(y − y0 ) + (y − y0 )2 = x0 + (y − y0 ) − (y − y0 )2 2 2x0 8x30 となる.x = v を y = f (x) = 0 の解の近似値とすれば,f (v) は 0 に近い値である.これを上のテ イラーの 2 次式を利用して,さらに解に近づけようというのだ.上で,y0 = f (v) = v2 − 2, x0 = v とおき,g(0) を計算すれば,よりよい近似値が得られるはずである.
1 3 1 1 2−v2 (v2 −2)2 3v . − + − x = v+ (0−f (v))− 3 (0−f (v))2 = v+ = 2v 8v 2v 8v3 8 2v 2v3 が得られ,これは (I.2.14) 式そのものである.
II.2.8 y = u · v を微分したら y = u · v + u · v となるのが (1.4) 式で,これを繰り返し使えば, y = u · v + u · v + u · v + u · v = u · v + 2u · v + u · v y = (u · v + u · v ) + (2u · v + 2u · v ) + (u · v + u · v ) = u · v + 3u · v + 3u · v + u · v となり,
y (n) =
n “ ” X n k=0
k
u(k) · v(n−k)
となることは容易に想像がつく. n = 0, 1, 2, 3 の場合はすでに知っているから,
y (n+1) =
n “ ” X n (u(k+1) · v(n−k) + u(k) · v(n−k+1) ) k k=0
n n ” (k) (n−k+1) X “n” (k) (n−k+1) u u ·v + ·v k−1 k k=1 k=0 « n „“ “n” “n” X n ” “n” u(k) · v(n−k+1) + + u(n+1) · v(0) + u(0) · v(n+1) = k k − 1 n 0 k=1
=
=
=
n+1 X“
n “ “n + 1” X n + 1” (k) (n+1−k) “n + 1” (0) (n+1) u u(n+1) · v(0) + u ·v ·v + k n+1 0 k=1 n+1 X“ k=0
n + 1” (k) (n+1−k) u ·v k
とすれば,帰納法による証明が終わる.
219 II.3
√ II.3.1 棒の端が (a, 0) と (0, b) にあれば,長さが 1 だから b = 1 − a2 となり,棒の方程式は √ √ p 1 − a2 1 − a2 (x − a) = − x + 1 − a2 y=− a a となる.(3.2) を計算すると, √ √ a a + 1 − a2 −2a x − a3 ∂y 1−a2 = x+ √ = √ =0 2 2 2 ∂a a 2 1−a a 1 − a2 √ となり,x = a3 ,つまり a = x1/3 = 3 x が得られる.この値を元の式に代入すると, p √ q 3 √ √ √ √ 3 1 − x2 3 3 3 3 (x − y=− x) = − 1 − x2 ( x2 − 1) = (1 − x2 ) 2 √ 3 x 2
2
となる.これを整理すれば, x 3 + y 3 = 1 が得られる. II.3.2 (3.2) を解けば,
5 ∂y = x − (3α2 − 1) = 0, ∂α 2
α2 =
つまり
2x + 5 15
となる.これを元の式に代入すれば,
y = αx −
α(2x + 5) 5 5 2x − 10 α(α2 − 1) = αx − α = 2 2 15 3
となり,これを 2 乗すれば,
9y 2 = α2 (2x + 5)2 =
(2x + 5)3 15
となる. II.3.3 (3.2) を解けば,
∂y = (x + b)2 + 2b(x + b) = (x + b)(x + 3b) = 0, ∂b
b = −x, または b = −
つまり
x 3
となる.これを元の式 y = b(x + b)2 に代入すれば,
y=0
y=−
または
x ”2 x“ 4 x− = − x3 3 3 27
となる.3 次曲線以外にも x 軸が包絡線になっていることを忘れないように. II.3.4 y = ln x の点 a(> 0) での曲率半径は ((3.13) 式から)
(1 + ( a1 )2 )3/2 (1 + a2 )3/2 (1 + f (a)2 )3/2 = = −1 |f (a)| a | a2 | √ √ 2 1+a dr = a2 (2a2 − 1) となり, da = 0 となるのは a = 1/ 2 だけで,増減
r= dr となる.微分すると da
√
表を書けば,ここが最小値 3 2 3 を与えることがわかる.次に縮閉線を求めよう. (3.12) 式から,
x0 = a−
` ´ 1+(f (a))2 f (a) f (a)
= a+
1+a2 1 = 2a+ , a a
y0 = f (a)+
1+(f (a))2 = ln a−(1+a2 ) f (a)
となり,(x0 , y0 ) の軌跡が縮閉線である. ∂a0 = 2 − 1/a2 , ∂a0 = 1/a − 2a で,増減表は ∂x
√ 1/ 2
a
0
x0
−∞
−
x0
∞
0 √ 2 2
∂y
√ 1/ 2
∞
a
0
+
2
y0
∞
+
∞
y0
−∞
0 − 32 −
1 2
ln 2
∞ −
−∞
−∞
220
演習問題解答 √
となる.a が 0 から大きくなるにつれて,図 3.9.d の右上の曲線が無限遠方からやってきて,a = 1/ 2 √ でカスプに至り,下方に遠ざかっていく.縮閉線のこの 2 つの分枝が,(2 2, − 32 − 12 ln 2) で出会う 1 ときの傾きが同じである (つまり,そこで尖っている) ことを確かめるのも難しくはない.x = 2a + a
を解けば, a± =
x±
„
√
x2 −8 4
x±
で,代入して得られる y± = ln
√
x2 −8 4
«
−
√
x2 +4±x 8
x2 −8
の
√ √ y− が a の (0, 1/ 2) 2, ∞) に対応する y+ よりも上方にある.また導 √ に対応する分枝で,(1/ √ dy± dy dy x± x2 −8 < 0 で,a = 1/ 2 では一致するが,それ以外では, dx+ < dx− と 関数は dx = − 4 なっている. II.3.5 パラメータ表示の方が便利だから,x = a cos t, y = b sin t を微分して,x = −a sin t, y = b cos t,x = −a cos t, y = −b sin t を (3.15)-(3.17) 式を代入して計算する. t = c として,ま ずこれらの式の分母が −a sin c × (−b sin c) − (−a cos c) × b cos c = ab であることを計算してお けば
x0 (c) =
a2 − b2 cos3 c, a
y0 (c) =
b2 − a2 sin3 c, b
r(c) =
(a2 sin2 c + b2 cos2 c)3/2 ab
であることは容易にわかる.この (x0 , y0 ) 自身が縮閉線のパラメータ表示ではあるが,方程式が欲し いのなら, 2
2
2
|ax| 3 + |by| 3 = |a2 − b2 | 3
であることも容易にわかる.また,曲率の最大最小は曲率半径の最小最大だから, f (t) = a2 sin2 t + b2 cos2 t, (0 ≤ t ≤ 2π) を調べればよい.a > b と仮定すると, f (t) = (a2 − b2 ) sin 2t から,増 減表を書いて,t = π/2, 3π/2 のとき最大になり,t = 0(2π), π のとき最小になることがわかり,そ の値は „ «
rmax = r
“π” 2
となる.曲率は,
κmin = κ
“π” 2
3π 2
=r „ =κ
3π 2
=
a2 , b
rmin = r(0) = r(π) =
=
b , a2
κmax = κ(0) = κ(π) =
«
b2 a
a b2
となる.もちろん a < b のときはこの反対になり, a = b のときは縮閉線は 1 点 (原点) だけに縮退 し,曲率は一定になる.
II.3.6 カテナリー y =
ex +e−x 2
= cosh x を微分すると,y =
ex −e−x 2
= sinh x, y = cosh x
となり,曲率半径は
(cosh 2 x)3/2 (1 + sinh2 x)3/2 = = cosh2 x cosh x cosh x となる.一方,点 M = (a, cosh a) での法線は r(x) =
y − cosh a = −
1 (x − a) sinh a
となり,N = (a + sinh a cosh a, 0) が得られる.すると,
M N 2 = (sinh a cosh a)2 + cosh2 a = (sinh2 a + 1) cosh2 a = cosh4 a となり,M N = cosh2 a = r(a) となる.
II.3.7 サイクロイドの点 (t − sin t, 1 − cos t) を通る直径は,そのときの車輪の中心の点が (t, 1) だから,これを結ぶ直線の方程式を求めると,
y−1=
cos t 1 − cos t − 1 (x − t) = (x − t) t − sin t − t sin t
となる.これをパラメータ t で微分すると,
cos t − sin2 t − cos2 t cos t sin t + x − t ∂y =− + (x − t) =− ∂t sin t sin2 t sin2 t
221 となり,これを 0 と置けば,x = t − sin t cos t が得られる.これを直線の式に代入すれば,
y = 1 − sin t cos t
cos t = 1 − cos2 t sin t
が得られる.これを変形して
x = t − sin t cos t =
1 (2t − sin 2t), 2
y = 1 − cos2 t =
1 (1 − cos 2t) 2
とすれば,ちょうど半分の大きさのサイクロイドが得られていることがわかる.
II.4 II.4.1 曲線 (x(t), y(t)) の小部分の長さ Δs は,ピュタゴラスの定理から (Δs)2 = (Δx)2 + (Δy)2 となり,これを (Δt)2 で割って,Δt → 0 とすれば,
s„
ds =
dx dt
«2
„ +
となるので,
Z
b
L=
dy dt
«2 dt =
q x (t)2 + y (t)2 dt
q x (t)2 + y (t)2 dt
a
が得られる.これはまた,(II.4.9) 式から,x = x(t), y = y(x) = y(x(t)) という変数変換を行って も得られる.サイクロイド x = t − sin t, y = 1 − cos t の弧長を求めるため,まず,
x (t)2 + y (t)2 = (1 − cos t)2 + sin2 t = 2(1 − cos t) = 4 sin2 を計算して,積分に代入すると,
Z
2π
L=
Z q x (t)2 + y (t)2 dt = 2
0
0
2π
sin
t 2
» – t 2π t dt = 4 − cos =8 2 2 0
が得られる.このような曲線の長さがこのような単純な整数になることは一種の驚きである.
II.4.2 a) 9 − x2 = t と置く. Z Z p √ x dx −dt √ = √ = − t = − 9 − x2 . 2 t 9 − x2 b) x = 3t とおく.
Z √
dx 9 − x2
Z =
√
dt 1 − t2
= arcsin t = arcsin
x . 3
c) 部分積分を 2 度する. Z Z x2 sin x dx = −x2 cos x + 2 x cos x dx Z = −x2 cos x + 2x sin x − 2 sin x dx = −x2 cos x + 2x sin x + 2 cos x. d) 少し工夫してから,部分積分すると, Z Z Z cos x sin xdx cos2 x dx = = − −(n + 1) dx I−n = sinn x sinn+1 x sinn+1 x sinn+2 x Z 2 cos x cos x 1−sin x dx = − n+1 −(n + 1)I−n−2 +(n + 1)I−n = − n+1 −(n+1) sin x sinn+2 x sin x
222
演習問題解答
が得られ,移項すると,
(n + 1)I−n−2 = −
cos x + nI−n sinn+1 x
となる.これは (II.4.29) 式が負の n まで成り立つと考えた式に他ならない.実際,その際に n が 負になることも気をつけていれば,それでもよかったのである. n に n − 2 を代入すれば
I−n = −
n−2 cos x + I−n+2 (n − 1) sinn−1 x n−1
となる.この漸化式を繰り返せば,この計算は I0 = x と
Z
I−1 =
˛ x ˛˛ dx ˛ = log ˛tan ˛ sin x 2
に帰着する.この積分は次節でやるように t = tan x と置けばすぐに得られる. 2 e) 簡単に積分できるものを括りだす.
Z
2
x3 e−x dx =
Z
2 2 1 x2 (xe−x ) dx = − x2 e−x + 2
Z
2 2 2 1 1 xe−x dx = − x2 e−x − e−x . 2 2
f) arccos x の微分を知っているのだから,部分積分して Z Z p 1 arccos x dx = x arccos x + x √ dx = x arccos x − 1 − x2 2 1−x √ R となる.同様に, arcsin x dx = x arcsin x + 1 − x2 となることも確かめるとよい. g) と h) は本文にあるように複素積分を使えば簡単にできるのだが,複素積分を避けることもでき る.それでもやはり, g) と h) はいっしょに考えた方がよい. Z Z C= eαx cos βx dx, S = eαx sin βx dx とおいて,部分積分をすると,
C=
β eαx cos βx + S, α α
となるから,
C=
S=
eαx β sin βx − C α α
βeαx eαx β2 cos βx + sin βx − C α α2 α2
が得られる.移項して整理すると,
C=
eαx (α cos βx + β sin βx) α2 + β 2
となり,これを代入してもよいし,同様にしてもよいが,
S=
eαx (α sin βx − β cos βx) + β2
α2
が得られる.やはり,複素積分でやる解法も書いておこう.
Z
C + iS = =
e(α+iβ)x dx =
1 α − iβ αx e(α+iβ)x = 2 e (cos βx + i sin βx) α + iβ α + β2
eαx (α cos βx + β sin βx + i(α sin βx − β cos βx)). + β2
α2
i) 分母を平方完成して,分子を分ける. Z Z Z Z x−3+3 x−3 dx x dx = dx = dx + 3 2 2 2 x − 6x + 13 (x − 3) + 4 (x − 3) + 4 (x − 3)2 + 22
223 =
x−3 1 3 log((x − 3)2 + 4) + arctan . 2 2 2
II.4.3 ここだけの記号を
Z
b
Im,n = Im,n [a, b] = a
(b − x)m (x − a)n dx m! n!
と置いて,部分積分すると,
» Im,n =
(b − x)m (x − a)n+1 m! (n + 1)!
–b
Z
b
+ a
a
(b − x)m−1 (x − a)n+1 dx = Im−1,n+1 (m − 1)! (n + 1)!
となる.繰り返せば,
Z Im,n = · · · = I0,m+n =
b
a
(x − a)m+n dx = (m + n)!
»
(x − a)m+n+1 (m + n + 1)!
–b = a
(b − a)m+n+1 (m + n + 1)!
が得られる.特に次が得られる.
Z
1
−1
(1 − x2 )n dx = (n!)2 In,n [−1, 1] =
2 · 2 · 4 · 6 · · · 2n 22n+1 (n!)2 = . (2n + 1)! 1 · 3 · 5 · · · (2n + 1)
II.5 II.5.1
Z x2
II.5.2 u =
q n
1 dx = − a2 2a
ax+b ex+f
un = となる.結局,
Z
Z „
1 1 − x−a x+a
« dx =
1 x−a ln + C. 2a x+a
と置くと,
−f un + b (af − be)nun−1 ax + b , x= , dx = du ex + f eun − a (eun − a)2
« « „s Z „ −f un + b (af − be)nun−1 ax + b , x dx = R u, R n du ex + f eun − a (eun − a)2
となり,u の有理関数の積分になる. ただし,この変数変換が意味のあるのは, det
a
b
e
f
! =
af − be = 0 のときだけである.しかし,af − be = 0 のときは, b (af − be)x ax + b − = =0 ex + f f f (ex + f ) となるから,
Z
« « „s Z „s b n ax + b , x dx = R n , x dx R ex + f f
となって,もともと x の有理関数の積分になっている.
II.5.3 仮定から ax2 + 2bx + c = a(x − α)(x − β) となっている.変数 z を z 2 = (x − β)/(x − α) とおけば,
x= となり,
p
αz 2 − β , z2 − 1
ax2 + 2bx + c =
x−α =
α−β , z2 − 1
dx =
2z(β − α) dz (z 2 − 1)2
˛ ˛ q √ √ ˛α−β ˛ z ˛˛ a(x − α)2 z 2 = a|(x − α)z| = a ˛˛ 2 z −1
224
演習問題解答
となる.したがって,
” “√ ˛˛ α − β ˛˛ αz 2 − β ” 2z(β − α) “p e z˛ , ax2 + 2bx + c, x = R a ˛˛ 2 R(z) =R z − 1 ˛ z 2 − 1 (z 2 − 1)2
となり,これは z の有理関数である.ここで,絶対値についてはあまり気にしなくてよい.もともと √ z 2 = (x − β)/(x − α) ≥ 0 と置いているし, ax2 + 2bx + c は内部が正になる範囲でしか考えて いない.正当化できる変数の範囲を適当に決める必要があり,それを実行すれば,この絶対値はほぼ 自動的に外れる. II.5.4 (5.16) 式の逆三角関数部分を (I.4.32) 式で変形すると,確かに秀才君の言うように
√ √ x 2+1+x 2−1 √ √ 1 − (x 2 + 1)(x 2 − 1) √ √ 2x 2 2x = arctan = arctan 2 − 2x2 1 − x2
√ √ arctan(x 2 + 1) + arctan(x 2 − 1) = arctan (A.2.3)
となる.これが間違っているとなると,何を信じたらいいのかということにもなりかねない.実は,こ √
R
れはこれで正しいのである.しかし,それを 0 である.このまま使えば, √
Z
2
0
2
dx x4 +1
の計算に使おうとするのが間違っているの
√ √ dx 2 2 = ln 5 + arctan(−2) = −0.1069250677 x4 + 1 8 4
となるが,(5.16) 式のままなら,
Z
√
√ √ “ π” dx 2 2 = ln 5 + arctan 3 + >0 x4 + 1 8 4 4
2
0
となって,何の矛盾も起こらない.秀才君はこの式の第 2 項に加法公式を使ったのだが, (I.4.32) √
2 式の適応範囲内にあるかどうかを確かめなかったのである. ln x2 +√2x+1 の部分は共通だから,
√ √ arctan(x 2 + 1) + arctan(x 2 − 1) と arctan
x −
√
2x 1−x2
2x+1
のどんな違いが問題なのだろう.arctan 自 √
2x 体は (−∞, ∞) で定義された C ∞ 関数だから本質的な問題がありそうにも思えない. 1−x 2 が問題 √ なのである.それ自体に問題があるというよりも,その定義域が問題なのである.積分区間は (0, 2) であった.一般に
Z
b
f (x)dx = F (b) − F (a)
(F (x) = f (x))
a
と書かれるが,このとき F (x) は何でもよいとはいうものの,F (x) = f (x) ではある.つまり, F (x) √ 2x は少なくとも微分可能,つまりは連続関数でないといけなかったのである. 1−x 2 は積分の値を問題
√
としている区間 (0, 2) 全体では連続ではなく,x = 1 で ∞ である.もともと,(A.2.3) 式は,と いうよりむしろ (I.4.32) 式は,その両辺の関数の滑らかさ (連続性や微分可能性の度合) が同じとこ ろでしか成り立っていなかったのである.tan 自体の加法定理 (I.4.5) が変数の制限なく (もちろん ∞ になる値のところでは若干の注意が必要だが) 成り立っているが,その逆関数の関係式は逆関数が きちんと対応しているところでしか成り立つことが期待できないものだったのである. この種の注意 を喚起するための反例には,たとえば 1/x, log |x| のように直接的に不連続であることがわかる関 数が使われることが多いが,さらに一捻りしたこの例は面白い.
II.5.5 (5.22) の置換 x2 + 1 = (x − z)2 , z > 0 をすると, x=
x−z =−
z2 + 1 , 2z
dx =
z2 + 1 dz 2z 2
x2 + 1 > 0 をとっているから), Z Z p dx 1 2z z 2 + 1 dz = log z = log(x + x2 + 1) √ dz = = 2 2 2 z + 1 2z z x +1
となり (z = x +
Z
√
z 1 z2 − 1 = − , 2z 2 2z
225 となる.一方,(5.23) の置換 x = sinh u とおけば,
Z
Z
Z
Z cosh u √ du = du = u = arsinh x x2 + 1 cosh2 u 1 + sinh2 u √ が得られる.ともに x = 0 で 0 なので,log(x + x2 + 1) = arsinh x である. II.5.6 u = tan x という置換をすると, √
dx
cosh u
p
=
du =
du = (1 + tan2 x)dx = (1 + u2 )dx,
u2 sin2 x = sin2 x = 1 + u2 sin2 x + cos2 x
2
1 cos x 2 が得られ, 1+u 2 = sin2 x+cos2 x = cos x もわかる.したがって,
Z
R(sin2 x, cos2 x, tan x) dx =
Z
R(
u2 1 1 , , u) du 1 + u2 1 + u2 1 + u2
となり,有理関数の積分となる.
II.6 II.6.1 ヒントにあるように xx を級数展開すると, xx = ex log x =
∞ X (x log x)n n! n=0
となる.各項の積分を計算するために, m, n ≥ 0 に対して,仮に Im,n = くと,
R
xm (log x)n dx とお
Z xm+1 xm+1 n nxm (log x)n − (log x)n−1 dx = (log x)n − Im,n−1 m+1 m+1 m+1 m+1 m+1 m+1 x nx n(n − 1) (log x)n − = (log x)n−1 + Im,n−2 m+1 (m + 1)2 (m + 1)2
Im,n =
n X
=
k=0
n n!xm+1 X (−1)k (log x)n−k (−1)k n!xm+1 n−k (log x) = (m + 1)k+1 (n − k)! m + 1 k=0 (m + 1)k (n − k)!
となる.ここで,m, n > 0 であれば,
[xm (log x)n ]10 = 0 なので,
Z
»
1
xm (log x)n dx = 0
(−1)n n!xm+1 (m + 1)n+1
–1 = 0
(−1)n n! (m + 1)n+1
となり,項別積分すると,
Z
1
xx dx =
0
∞ Z X n=0
0
1
∞ ∞ X X (x log x)n (−1)n n! (−1)n dx = = n+1 n! n!(n + 1) (n + 1)n+1 n=0 n=0
が得られる. II.6.2 一般二項定理 I.2.2 を α = −1/2 として使うと,
(−1)(−3) −1 (−1)(−3)(−5) (−x) + (−x)2 + (−x)3 + · · · 21 1! 22 · 2! 23 · 3! 1·3 2 1·3·5 3 1 1 · 3 · 5 · (2n − 1) n x + 3 x + ··· + x + ··· = 1+ 1 x+ 2 2 1! 2 · 2! 2 · 3! 2n · n!
(1 − x)−1/2 = 1 +
で,x に x4 を代入すれば,
√
x2 1 − x4
= x2 +
1 6 1 · 3 10 1 · 3 · 5 14 1 · 3 · 5 · (2n − 1) 4n+2 x + 2 x + 3 x + ··· + x + ··· 21 1! 2 · 2! 2 · 3! 2n · n!
226
演習問題解答
となり,次を得る.
Z
1 1 1·3 1 · 3 · 5 15 x2 x7 + x11 + x + ··· √ dx = x3 + 3 7 · 21 · 1! 11 · 22 · 2! 15 · 23 · 3! 1 − x4 1 · 3 · 5 · (2n − 1) 4n+3 x + ··· . + (4n + 3) · 2n · n!
II.6.3 h > 0 に対して,x = x0 , x1 = x0 + h, x2 = x0 + 2h に対する 3 次の補間多項式と, x = x0 , x1 = x0 + h, x2 = x0 + 2h, x3 = x0 + 3h に対する 4 次の補間多項式は,それぞれ (x − x0 )(x − x1 ) Δ2 y0 Δy0 (x − x0 )(x − x1 )(x − x2 ) Δ3 y0 + + 2 h 2 h 6 h3 (x − x0 )(x − x1 )(x − x2 )(x − x3 ) Δ4 y0 q(x) = p(x) + 24 h4 となる.ここで,yi = y(xi ) (i = 0, 1, 2, 3) であり, p(x) = y0 + (x − x0 )
Δy0 = y1 − y0 ,
Δ2 y0 = Δy1 − Δy0 = y2 − 2y1 + y0 ,
Δ3 y0 = Δ2 y1 − Δ2 y0 = y3 − 3y2 + 3y1 − y0 , Δ4 y0 = Δ3 y1 − Δ3 y0 = y4 − 4y3 + 6y2 − 4y1 + y0 である.x = x0 + ht と置くと,x − xi = (t − i)h, dx = hdt となり,積分を計算すると,
Z
x3
p(x) dx
x0
ff j Z 3 Z Z Z 3 Δ 2 y0 3 Δ 3 y0 3 dt + Δy0 t dt + t(t − 1) dt + t(t − 1)(t − 2) dt = h y0 2 6 0 0 0 0 ( » 2 –3 –3 ) » 3 –3 » 4 2 2 3 t Δ y0 t Δ y0 t t − − t3 + t2 + + = h y0 [t]30 + Δy0 2 0 2 3 2 0 6 4 0 =
h 3h (24y0 + 36Δy0 + 18Δ2 y0 + 3Δ3 y0 ) = (y0 + 3y1 + 3y2 + y3 ) 8 8
となって,ニュートンの公式が得られる.また
Z Δ 4 y0 4 t(t − 1)(t − 2)(t − 3) dt 24 x0 0 0 ( » 2 –4 –4 » –4 » t2 Δ2 y0 t3 Δ3 y0 t4 t = h y0 [t]40 +Δy0 − − t3 + t2 + + 2 0 2 3 2 0 6 4 0 –4 ) » 5 4 4 3 3t 11t Δ y0 t − + − 3t2 + 24 5 2 3 0
Z
=
x4
Z
q(x) dx = h
4
p(x(t))dt +
2h 2h (90y0 +180Δy0 +150Δ2 y0 +60Δ3 y0 +7Δ4 y0 ) = (7y0 +32y1 +12y2 +32y3 +7y4 ) 45 45
となって,コーツの公式が得られる.
R R II.6.4 フレネル積分 (II.6.5) の式 x(t) = 0t cos(u2 ) du, y(t) = 0t sin(u2 ) du を微分すると, x (t) = cos t2 , x = −2t sin t2 , y (t) = sin t2 , y = 2t cos t2 となる. a) 演習問題 II.4.1 により,曲線の長さは Z tq Z t L= x (t)2 + y (t)2 dt = dt = t 0
となる.
0
227 b) 曲率半径をその式 (II.3.17) で求めるために, x (t)y (t) − x (t)y (t) = cos t2 (2t cos t2 ) + 2t sin t2 sin t2 = 2t(cos 2 t2 + sin2 t2 ) = 2t を計算しておけば,
` 2 ´3/2 x (t) + y (t)2
r=
=
|x (t)y (t) − x (t)y (t)|
1 2t
はすぐにわかる. II.6.5 シンプソンの方法は 3 点を通る 2 次の補間多項式で関数をとり換えることが原理なので, 少し変に思うかもしれない. (6.7) 式を 3 次の多項式 f (x) に当てはめようとしてもできるはずがな
Rb
い気がする.積分 a f (x) dx を求めるとして,区間 [a, b] を 4 等分してシンプソンの方法 (6.8) を 使ったらどうだろうか.2 次式なら厳密な値を与えるのは明らかなので,f (x) = x3 に対してだけ行 えば十分である.こうして計算しても一致するのだが,実は素直に 2 等分で,シンプソンの公式を使 えばよいことがわかる.実際,h = (b − a)/2 として x3 を計算すれば,
h (a + b)3 h 3 (a + 4(a + h)3 + (a + 2h)3 ) = (a3 + + b3 ) 3 3 2 b−a b−a a2 + 2ab + b2 = (a + b)(a2 − ab + b2 + )= (a + b)(a2 + b2 ) 3·2 2 4 となって一致する.したがって,シンプソン則は 3 次までの多項式に対しては厳密に積分値を与える.
II.6.6 シンプソン則 (II.6.8) を f (x) =
ln(1+x) 1+x2
に適用すればよい.どんな処理系で計算してもよ いが,ここではアルゴリズムと計算結果だけを示すことにする.n = 0, 1, 2, . . . に対して N = 2n · 12 と置く.f (0) = 0, f (1) = ln22 だから,
8 9 « « N/2 „ N/2−1 „ X ln 2 = 1 < X 2i − 1 2i 4 +2 + f f 3N : i=1 N N 2 ; i=1
を計算すればよい. 12 桁の精度で計算してみると,
n
N
シンプソン則
n
N
シンプソン則 n
n
N
0 1
12 24
0.272199690273 0.272198349542
4 5
96 192
0.272198261631 0.272198261309
7 8
768 1536
2
48
0.272198266788
6
384
0.272198261289
シンプソン則 n
0.272198261288 0.272198261288
と,n ≥ 7 は同じ値になり,問題に挙げられている精度なら, N = 192 で十分である.これまでの 2 知識でできるので,厳密な値 π ln を求めてみよう. x = tan t と置くと, 8
Z
0
1
ln(1 + x) dx = 1 + x2
Z
Z
π/4
0
„
π/4
ln(1 + tan t)dt =
ln 0
cos t + sin t cos t
«
dt
となる.単振動の合成をして,対数を分けると,
Z
” √ π ln( 2 cos(t − )) − ln(cos t) dt 4 0 Z π/4 “ ” √ Z π/4 π = ln 2 · ln(cos(t − )) − ln(cos t) dt dt + 4 0 0 π/4
“
=
2 となり,後ろの 2 項は cos t が偶関数なことから打ち消しあって,前の項から π ln が得られる. 8
II.6.7 記述を簡単にするために, Jn = Jn (x) = Z
∞
Jn = x
2
e−t dt = t2n
Z
∞
x
R∞ x
2
e−t t2n
dt と置くと,
2 −1 · (−2te−t )dt 2t2n+1
228
演習問題解答 #∞ Z " 2 2 ∞ 2n + 1 e−x 2n + 1 −e−t −t2 Jn+1 = + − · e dt = − 2n+2 2n+1 2t2n+1 2t 2x 2 x x
Rx 2 となる.したがって,誤差関数 Φ(x) = √2π 0 e−t dt は „Z
« 2 2 e−t dt = 1 − √ J0 π 0 x ! ! „ « 2 2 2 2 −x −x −x 3 e−x 1 e e 3 5 1 e −x2 = e + − J1 = − J − J 2J0 = − − 2 3 x x 2x3 2 x 2x3 2 2x5 2 ! „ « 2 2 3 · 5 e−x 1 1·3 7 1 = e−x − + 2 3 − 2 − J4 3 7 x 2x 2 x 2 2x 2 „ « 2 1 1·3 1·3·5 1·3·5 · · · (2n−1) 1·3·5· · ·(2n+1) 1 = e−x +(−1)n − 3 + 2 3 − 3 7 +· · ·+ Jn+1 x 2x 2 x 2 x (−2)n−1 x2n+1 2n 2 Φ(x) = √ π
∞
2
e−t dt −
Z
∞
という漸近展開を持っている.
R∞
√1 x
cos x2 dx ≈ 1.674813394 であることを,A ≈ 1/10 と B ≈ 10 を選び,積 分区間を,(0, A], [A, B], [B, ∞) の 3 つに分けて計算するわけである.計算精度が 10 桁要求され ているので,コンピュータで計算することだから 12 桁精度で各々を計算することにしよう.以下, A = 1/10, B = 10 とする. a) (0, A] の上では,マクローリン展開 II.6.8
0
cos x = 1 −
x4 x6 x2 x2n + − + · · · + (−1)n + ··· 2! 4! 6! (2n)!
cos x2 = 1 −
x8 x12 x4 x4n + − + · · · + (−1)n + ··· 2! 4! 6! (2n)!
x15/2 x23/2 x7/2 cos x2 x(8n−1)/2 = x−1/2 − + − + · · · + (−1)n + ··· √ x 2! 4! 6! (2n)! を使えば,
Z
A
0
" #A 2x17/2 2x9/2 cos x2 2x(8n+1)/2 + − · · · + (−1)n + ··· √ dx = 2x1/2 − x 9 · 2! 17 · 4! (8n + 1) · (2n)! 0 « „ √ A8 A12 A4 A4n n + − + · · · + (−1) + ··· =2 A 1− 9 · 2! 17 · 4! 25 · 6! (8n + 1) · (2n)!
となり,ここに A = 1/10 を入れれば次が得られる.
n 項まで
級数の値
1 2
0.632455532033675866399779 0.632452018391831234867188
3
0.632452018407332595946444
n 項まで 4 5
級数の値
0.632452018407332560810026 0.632452018407332560810073
b) [A, B] 上ではシンプソン則を使う.n = 0, 1, 2, · · · に対して N = 2n · 12 と置いて h=
B−A N
2 √ x に対して, とし,f (x) = cos x
8 9 « « N/2 „ N/2−1 „ = X X (2i − 1)(B − A) 2i(B − A) B−A < f (A) + 4 +2 + f (B) f A+ f A+ ; 3N : N N i=1 i=1 を計算すればよい. n = 11 まで計算してみると次が得られる.
229 n
N
シンプソン則
n
N
シンプソン則
n
N
0
12
2.54472541796
4
192
1.03436221675
8
3072
1.03425387456
1
24
1.19073886102
5
384
1.03436221675
9
6144
1.03425387197
2 3
48 96
0.934291755538 1.03423176819
6 7
768 1536
1.03425455424 1.03425391576
10 11
12288 24576
1.03425387181 1.03425387180
シンプソン則
c) [B, ∞) の上では漸近展開を使う.ここだけの記号として, k > 0 に対して, Z ∞ Z ∞ cos x2 sin x2 Ck = dx, S = dx k k x xk B B と置くと,
» Ck = »
sin x2 2xk+1
–∞
Z
∞
+ B
B
cos x2 Sk = −2xk+1
–∞
Z
−
1 sin B 2 k+1 (k + 1) sin x2 Sk+2 dx = − + 2xk+2 2 B k+1 2
∞
1 cos B 2 k+1 (k + 1) cos x2 Ck+2 dx = − k+2 2x 2 B k+1 2
B
B
となる.したがって,
„ « 1 sin B 2 3 7 cos B 2 + 2 − 2 C9/2 5 +1 3/2 2 2 B 2 2 2B 2 „ « sin B 2 3 cos B 2 3·7 11 1 sin B 2 − + 3 − 4 + 2 S13/2 =− 9 2 B 3/2 2 B 7/2 2 2 2B 2 +1 „ « 3 cos B 2 3 · 7 sin B 2 3 · 7 · 11 cos B 2 15 1 sin B 2 + + − − C =− 17/2 2 B 3/2 23 B 7/2 25 B 11/2 26 22 2B 15/2 „ « 1 sin B 2 3·7 3 · 7 · 11 · 15 3 · 7 · · · (8n − 1) n =− 1 − + + · · · + (−1) + · · · 2 B 3/2 24 B 4 28 B 8 (2B)4n „ « 7 · 11 7 · 11 · 15 · 19 7 · 11 · · · (8n + 3) 3 cos B 2 n − · · · + (−1) + · · · + 3 7/2 1 − 4 4 + 2 B 28 B 8 (2B)4n 2 B 1 sin B 2 + 2 B 3/2
C1/2 = −
1 2
+1
S5/2 = −
となる.sin2 B の項と,cos2 B の項とをそれぞれ N 項ずつ足していくと,
N
N 項までの漸近展開
N
N 項までの漸近展開
0
0.008108602212757781723091071677
6
0.008107503336311143063522883495
1 2
0.008107502168263718941998574484 0.008107503339593508758761387505
7 8
0.008107503336311143026924808195 0.008107503336311143027798171452
3
0.008107503336293506822684071837
9
0.008107503336311143027771517164
4 5
0.008107503336311297306772644521 0.008107503336311141032759444891
10 11
0.008107503336311143027772529687 0.00810750333631114302777248284
となり,小数点以下 15 桁なら 0.008107503336311 となる.この精度でよければ N = 4, 5 で得ら れている.この 3 つの値を足せば, 1.674813393543311 となって,十分な精度を持っている.理論 的には,B を止めたとき漸近展開は収束するわけではないのだが,実用上は十分なほどの精度が得ら れている.精度が足らなければ, B を大きくしてやればよい.この解答の計算は Mathematica で 行った.厳密な値について,本書の範囲を越えるが,複素積分の留数計算を用いた解法を示しておく. 複素関数の威力である.わからない部分は複素関数論の教科書を参照すること. y = x2 とおけば,
Z
0
∞
1 1 √ cos x2 dx = x 2 =
Z
∞
0
1 Re 2
y −3/4 cos y dy =
„
Z
R
lim
R→∞
0
1 Re 2
y −3/4 eiy dy
Z
0
«
∞
y −3/4 eiy dy
230
演習問題解答
となる.ここで,留数の定理を使って,積分経路を虚軸の正の部分 (y = it) と 4 分の 1 円 (y = Reiθ ) 上に変更すれば,
=
Z
1 Re 2
i lim
R→∞
R
(it)−3/4 e−t dt + lim
Z
R→∞
0
!
0
iθ
(Reiθ )−3/4 eiRe
iReiθ dθ
π/2
となり,第 2 項は 0 になるので (後で示す),
„ « Z R 1 Re i(cos(−3π/8) + i sin(−3π/8)) lim t−3/4 e−t dt R→∞ 0 2 √ p √ π sin(3π/8) π 2 2+ 2 1 = = sin(3π/8)Γ (1/4) = 2 2 sin(π/4)Γ (3/4) 4 · Γ (3/4) √ √ 2+ 2 となる.ここで,関数等式 Γ (z)Γ (1−z) = π/ sin πz を用いた.sin(3π/8) = は sin(π/4) = 2 =
√
2 2
から 2 次方程式を使って得られる. 上の第 2 項が 0 になることを示す.まず
˛ ˛Z Z π/2 ˛ ˛ ˛ 0 ˛ iθ ˛ ˛ ˛ ˛ iθ −3/4 iReiθ iθ lim ˛ (Re ) e iRe dθ˛ ≤ lim ˛(Reiθ )−3/4 eiRe iReiθ ˛ dθ ˛ R→∞ 0 R→∞ ˛ π/2 Z π/2 R1/4 e−R sin θ dθ ≤ lim R→∞
となる.[0, π/2] の範囲で,sin θ ≥
2θ π
0
となることはよく知られており (証明は容易),さらに積分
の計算を簡単にするために 2θ ≥ θ2 という評価を使えば, π
Z
≤
π/2
0
–π/2 » 2 2 R1/4 e−Rθ/2 dθ = − R1/4 e−Rθ/2 ≤ 3/4 (1 − e−πR/4 ) → 0 R R 0
となる.
II.7
II.7.1 y = a cos t と置いて問題にあるように置換しても積分はできるが,本文の脚註にあげたパ ラメータより,積分も少し面倒で,そうしなければならない理由もわかりにくい.この場合の答だけ を書いておこう. « „ x = a log
1 + tan t cos t
− a sin t
は,もちろん,(7.5) 式を満足する. y = a sin t と置いて置換積分すれば,
x = a log(tan t/2) + a cos t というもう 1 つのパラメータ表示が得られる. これも (7.5) 式を満足する.証明しておこう. y = a となるのは t = π で,パラメータの範囲は t > π でとることにすると, cos t < 0 に注意する. 2 2 dy/dt = a cos t だから,
p Z π/2 p 2 a2 − y 2 a (1 − sin2 t) dy = a cos t dt x= y a sin t y t „ « Z Z t t cos2 t 1 dt = a − sin t dt =a sin t sin t π/2 π/2 Z
a
となる.後は,u = tan 2t > 1 という置換 (5.21) を行えばよい.
–u 2 1 + u2 1 1 « „ « „ « „ t 2 1 − u2 = a log tan + cos t . = a log u + − 1 = a log u + 2 2 1+u 1+u 2 Z
x=a
u
„
4u 1 − u (1 + u2 )2
«
» du = a log u +
231 このパラメータ表示は, 実は本文の脚注で予告しておいた事実 「トラクトリックスはカテナリー y = a cosh(x/a) の点 A = (0, a) から発する伸開線になっている」に則した表示になっているのだ. このことを示そう.図が描けないので,図 II.7.4 のカテナリー y = a cosh(x/a) の図を見てもらお う.座標を固定する. A = (0, a) と点 P = (x, y = a cosh(x/a)) とする.点 A と P との間のカ テナリーの長さを s とするとき,伸開線の定義から,点 P での接線上 P から距離 s の所にある点 Q を求めればよい.そして Q の軌跡が作る曲線がトラクトリックスであることを見るために, Q で の接線の x 軸との交点を T とするとき,長さ QT が一定 (実は = a) であることを示せばよい.さ て,y = sinh x だから a
Z
x
s=
Z p 1 + y 2 dx =
0
s
x
1+
0
e2x/a − 2 + e−2x/a dx = 4
Z
x
0
x ex/a + e−x/a dx = a sinh 2 a
となる.点 P での接線の方程式は
Y − a cosh
x x = sinh (X − x) a a
で,ちなみにこの x 切片 R の座標は R = (x − a coth x , 0) である.ここで記号を簡単にするた a めに,
ex/a = u = tan
t , 2
x = a log u = a log tan
t 2
という変数を導入すると,
y=a
u + u−1 , 2
y =
u − u−1 , 2
s = ay = a
u − u−1 2
となり,Q = (X, Y ) = (X(Q), Y (Q)) は
Y −y =Y −a
u − u−1 u + u−1 = (X − x), 2 2
を解けばよい.
s2 = (Y − y)2
„
« (u + u−1 )2 4 + 1 = (Y − y)2 −1 2 (u − u ) (u − u−1 )2
から,Y − y < 0 であることに注意すれば,
Y = y−a
(u − u−1 )2 =a 2(u + u−1 )
„
s2 = (Y − y)2 + (X − x)2
(u − u−1 )2 u + u−1 − 2 2(u + u−1 )
« =
2a 2au = = a sin t u + u−1 1 + u2
となり,
X =x+
2 u − u−1 1 − u2 t (Y − y) = x − a = x+a = a(log tan + cos t) u − u−1 u + u−1 1 + u2 2
が得られる.さて,伸開線としての意味から (陰関数微分してもいいのだが), Q の軌跡の接線は P Q に直交しているので,その方程式は
Y − Y (Q) = −
1 (X − X(Q)) y
となり,x 軸との交点 T の x 座標は
X(Q) + Y (Q)y = X(Q) +
u2 − 1 2au u − u−1 = X(Q) + a =x 2 1+u 2 1 + u2
となり,T は点 P の x 軸への垂線の足になる. QT の長さは,
QT 2 = (X(Q) − x)2 + (Y (Q) − 0)2 = (a cos t)2 + (a sin t)2 = a2 となって,一定であり,トラクトリックスであることが示された.微分方程式を解いたわけでなく,カ
232
演習問題解答
テナリーの伸開線を計算したらトラクトリックスになっていたというわけである.ついでに,トラクト リックスの面白い性質を述べておこう. 「曲率半径と,法線の x 軸までの距離の積が一定」というもの である.点 Q での曲率半径は P Q であり,法線の x 軸までの距離は QR である.すべての座標がわ 2 かっているので計算して, a であることを示せばよいのだが,幾何的に示すこともできる. P QT と T QR が相似であるというのがヒントである.
II.7.2 y = vβ と置くと, y = βvβ−1 v = g(x)vβ + f (x)vβn となり,vβ−1 で割れば,
βv = g(x)v + f (x)vβ(n−1)+1
となる.これが線形方程式になるには後ろの項が v に依らないように,つまり,β(n − 1) + 1 = 0, 1 すなわち β = 1−n となればよい.すると,線形方程式
v = (1 − n)(g(x)v + f (x)) R が得られる.この解は (7.18) 式を使えば,u = exp{(1 − n) g(x) dx} と置いて, Z x f (t) dt v(x) = Cu(x) + (1 − n)u(x) 0 u(t) となる. II.7.3 方程式は変数分離で,
1 dy = y(a − y) a
bdx = となるから,
bx + C =
1 a
Z „
„
1 1 + y a−y
1 1 + y a−y « dy =
« dy
1 y log a a−y
となる.ここで,a = 5, b = 2, y(0) = 0.1 を代入して C を定めれば,
1 10x y = e 5−y 49 が得られる.これを y について解けば,
y=
5e10x 49 + e10x
となる.グラフを描けば, (0, 0.1) を通り,急速に増大するが,しだいに頭打ちとなり, y = 5 に漸 近していくロジスティック曲線が得られる.
II.7.4 v =
y(x) x
と置けば,y = xv だから,
y = xv + v = (xv) = G(v), となるので,
Z log x =
dv 1 dx = x G(v) − v
dv G(v) − v
と,v の有理式の積分になる.さて問題の G(v) で計算すると,
G(v) − v = となるので,
log x =
Z
1 2+v dv = 9 − v2 6
9 + 2v 9 − v2 9x + 2y −v = −v = 2x + y 2+v 2+v Z „
1 5 − 3−v 3+v
« dv = −
1 log(3 − v)5 (3 + v) 6
233 が得られる.log をはずすと,
x6 =
1 = (3 − v)5 (3 + v) (3 −
となり,結局次式を得る.
1 y 5 ) (3 x
+
y ) x
=
x6 (3x − y)5 (3x + y)
(3x − y)5 (3x + y) = 1.
II.7.5 (7.23) 式から (7.26) 式を得たようにすれば, Z 2 A dy (7.26 ) T = p 2 ω 0 sin (A/2) − sin2 (y/2) が得られる.k = sin(A/2),
Z
2 ω
T =
π/2
p
0
sin(y/2) = k sin α と置けば, 2k cos α
k2 −
k 2 sin2
4 dα = p ω α 1 − k 2 sin2 α
Z 0
π/2
dα p 1 − k 2 sin2 α
となる.ここで,一般二項展開 (定理 I.2.2) を使うと,
(1 + x)−1/2 = 1 − となるので,
T
Z
1·3 2 1·3·5 3 1 1 · 3 · · · (2n − 1) n x+ 2 x − 3 x + · · · + (−1)n x + ··· 2 2 · 2! 2 · 3! 2n · n!
„
k2 1·3 4 sin2 α + 2 k sin4 α + · · · 2 2 · 2! 0 « 1 · 3 · · · (2n − 1) 2n k sin2n α + · · · + n 2 · n! „ « 4 k2 1·3 4 1 · 3 · · · (2n − 1) 2n I0 + I2 + 2 k I4 + · · · + k I2n + · · · n ω 2 2 · 2! 2 · n! 4 ω
=
=
π/2
1+
が得られる.ここで,(II.4.29) から
Z In =
π/2
0
sinn αdα = −
˜π/2 n − 1 1ˆ n−1 cos α sinn−1 α 0 + In−2 = In−2 n n n
となる.したがって,
I2n =
2n − 1 (2n − 1)(2n − 3) · · · 1 I2n−2 = · · · = I0 2n 2n(2n − 2) · · · 2
であり,I0 = π だから, 2
T =
2π ω
„
1+
1 2 32 (1 · 3 · 5 · · · (2n − 1))2 2n k + 2 k4 + · · · + k + ··· 2 2 2 (2 · 2!) (2n · n!)2
が得られる.後は
k = sin
A A3 A5 A A2n−1 = − 3 + 5 + · · · + (−1)n−1 2n−1 + ··· 2 2 2 3! 2 5! 2 (2n − 1)!
を代入して,A の低次部分から順に係数を決めていけばよい. II.7.6 方程式
4 + y2 dy = y = dx 4 + x2
は変数分離だから,
Z
1 dy = 4 + y2
Z
1 dx, 4 + x2
すなわち
y 1 x 1 arctan = arctan + C 2 2 2 2
«
234
演習問題解答
となる.y(0) = C ならば, C = 12 arctan C となり, 2
x C x/2 + C/2 2(x + C) y = arctan + arctan = arctan = arctan 2 2 2 1 − (x/2)(C/2) 4 − Cx
arctan となって,
4(x + C) 4 − Cx
y=
となる.C = 0 のときは y = x で, C = 0 のときは
y=−
16 + 4C 2 4 1 + C C 4 − Cx
となる.C をすべての実数にわたって動かせば,この解のグラフは xy = −4 を除いて,全平面を埋 めつくす.それが C が動くに連れてどう変化するかを見ることをお薦めする. II.7.7 問題は y(0) = R, y (0) = v のときに,方程式
y = −
gR2 y2
を解くことである. p = y と置けば,p(R) = v で,
y = p · y = pp = −
gR2 y2
gR2
なのだから, pdp = − y 2 dy を解いて,
gR2 p2 = + 2 y
„
« v2 − gR 2
となる.これを p に関して解けば,変数分離の方程式が得られて,
Z
Z
x
x=
y
dx = 0
q
R
dy 2gR2 y
+ v2 − 2gR
を計算すればよい.ここで,3 つの場合 a) v2 > 2gR, b) v2 = 2gR, c) v2 < 2gR に分ける.以下 記号を簡単にするため, r = 2gR2 と置く. a) v2 > 2gR の場合. 定数 a = v2 − 2gR を導入し,u = ay と置くと,
a3/2 x = が得られる.ここで,t =
t2 =
q
Z
t
√
a/v
u
r
aR u u+r
u du u+r
と置くと,
r u =1− , u+r u+r
となるから, a3/2 x は
2r
Z
r t2 dt = (1 − t2 )2 2
Z
2tdt =
r du, (u + r)2
du =
2rt dt (1 − t2 )2
„
1 1 −1 −1 + + + 1+t (1 + t)2 1−t (1 − t)2 a/v –t » r 1−t 2t = log + 2 1+t 1 − t2 √a/v t
√
となる.ここの t の式を u の式に変えると,
(1 − t)2 u+r 1−t = · = 1+t 1 − t2 r
„
r 1−
u u+r
«2 =
√ √ ( u + r − u)2 r
« dt
2t 1 − t2
r =2
„
u · u+r
r u+r
p
«−1 =2
235 u(u + r) r
となるので,
" #u p √ √ √ √ √ ( u+r− u)2 r u(u+r) u+r − u p log +2 = r log √ √ + u(u+r)−Rv a 2 r r R(v− a) aR √ √ p √ √ √ R(v − a) − Rv a = u(u + r) − r log( u + r + u) − r log r
a3/2 x =
が得られる.ここで,u = ay, a > 0 であることに注意すると, x → ∞ と y → ∞ が対応しあい, 時刻 x = 0 で地表から速さ v で打ち出された物体は無限のかなたに飛びさる. b) v2 = 2gR の場合.
Z
y
r
x= R
2 y dy = r 3
"
#y
y 3/2 √ r
2 = √ (y 3/2 − R3/2 ) 3 r
R
となり,これも無限に飛びさる. c) v2 < 2gR の場合.a = −(v2 − 2gR) > 0 と置き,u = ay と置けば,
a3/2 x = が得られる.ここで,t =
t2 =
q
Z
r
u
aR u r−u
u du r−u
と置くと,
r u = −1 + , r−u r−u
2tdt =
r du, (r − u)2
du =
2rt dt (1 + t2 )2
となるから,(II.4.31) を使えば,
a3/2 x = 2r
Z
t √ a v
t2 dt = 2r (1+t2 )2
Z
t √ a v
„
1 1 − 1+t2 (1+t2 )2
が得られる.ここの t の式を u の式に変えると,
t = 1 + t2 となり,
a3/2 x = r arctan
r
r
u · r−u
„
r r−u
«
» dt = 2r
«−1 =
t 1 arctan t− 2 2(1+t2 )
–t √
a v
p u(r − u) r
√ √ u a p − arctan − u(r − u) + vR a r−u v
が得られる.この解では u は 0 ≤ u < r の範囲を,したがって y は 0 ≤ y < r/a の範囲を動く. √ つまり地球の重力の影響から解き放たれない.結局,脱出速度は, 2gR = 11.171km/s というこ とになる.
II.8 II.8.1 十分性は明らか.必要性を示そう.ヒントにあるように, (8.50) 式を k 回微分すると c1 λk1 eλ1 x + c2 λk2 eλ2 x + · · · + cn λkn eλn x = 0 となり,x = 0 と置けば,
n X
ci λki = 0
i=1
(k = 0, 1, 2, 3, . . .) Pn
が得られ,結局,すべての多項式 p(x) に対して, 定して考える. Y
i=1 ci p(λi )
p(x) =
1≤j(=i)≤n
(x − λj )
= 0 となる.さて,任意の i を固
236
演習問題解答
と置けば,明らかに,p(λj ) = 0 (j = i) となり,λj , (1 ≤ j ≤ n) がすべて異なっていることから, p(λi ) = 0 となる.この p(x) に対しても上の式が成り立つので,
0=
n X
cj p(λj ) = ci p(λi )
j=1
となるので, ci = 0 が得られる. II.8.2 十分性は明らか.必要性も前問をまねればよい.
dk λx e = λk eλx , dxk
dk xeλx = kλk−1 eλx + λk xeλx , dxk
dk 2 λx x e = k(k − 1)λk−2 eλx + 2kλk−1 xeλx + λk x2 eλx dxk “ ” P 2 eλi x = 0 を k 回微分し となることは容易に確かめられる. したがって, n i=1 ci + di x + ei x て,x = 0 と置けば, n “ ” X ci λk + di kλk−1 + ei k(k − 1)λk−2 = 0 i=1
P
`
´
が得られる.これは任意の単項式 p(x) = xk に対して, n i=1 ci p(λi ) + di p (λi ) + ei p (λi ) = 0 が満たされていることを意味し, 微分の線形性から,任意の多項式 p(x) に対しても成り立つことが 言える.さて,多項式 p(x) を各係数だけが残るようなものをとれればよいのだが,一気に行くのは 面倒になる.まず,ei だけ残すようにするには
p(x) =
Y
(x − λj )3 × (x − λi )2
1≤j(=i)≤n
と置けば,
p(λj ) = p (λj ) = p (λj ) = 0(j = i),
p(λi ) = p (λi ) = 0
ではあるが, p (λi ) = 0 となる.これから,ei = 0 が得られる.すべての ej = 0 が言えたところ で,今度は Y
(x − λj )2 × (x − λi )
p(x) =
1≤j(=i)≤n
と置けば,同様にして, di = 0 が得られる.これで,前問に帰着した.この証明は完全に帰納法の効 く形なので,任意の多項式の組 pi (x) に対して, n X
pi (x)eλi x = 0
i=1
がすべての x に対して成り立つことと, pi (x) = 0 であることが同値であることも証明することがで きる (トライして下さい).
II.8.3 これは問題を解くということよりも, こういう考え方があることを知ることに意味がある. 問題自体は次のようにすればよい. lim
ε→0
P (εx)n e(λ+ε)x − eλx eεx − 1 n≥1 n! = lim eλ = lim eλ ε→0 ε→0 ε ε ε X (εx)n−1 λ ) = xeλx . = lim e (x + ε→0 n! n≥2
ド・ロピタルの公式や,指数関数の微分の定義から明らかなどとやるのは時代精神に合わない. II.8.4 y(x) = a sin ωx + b cos ωx と置いて,方程式に代入すれば,
sin ωx = y + 0.2y + y = (−aω 2 − 0.2bω + a) sin ωx + (−bω2 + 0.2aω + b) cos ωx
237 となり,sin ωx と cos ωx は 1 次独立なので,
1 = −aω 2 − 0.2bω + a,
−bω2 + 0.2aω + b = 0
ω 2 −1
となる.後者から,a = 0.2ω b が得られ,前の式に代入すると,
0.2ω = {−(1 − ω 2 )2 − 0.04ω 2 }b となり,
b=− が得られ,
(1 −
0.2ω , + 0.04ω 2
a=
ω 2 )2
1 − ω2 (1 − ω 2 )2 + 0.04ω 2
1 {(1 − ω 2 ) sin ωx − 0.2ω cos ωx} (1 − ω 2 )2 + 0.04ω 2
y(x) =
となる.すると,単振動の合成により,
y(x) = p p
1
sin(ωx + θ)
(1 − ω 2 )2 + 0.04ω 2
となる.ここで, A = (1 − ω 2 )2 + 0.04ω 2 と置くとき, θ は sin θ = −0.2ω/A, cos θ = (1 − ω 2 )/A を満たすものである.
A2 = (1 − ω 2 )2 + 0.04ω 2 = ω 4 − 1.96ω 2 + 1 = (ω 2 − 0.98)2 + 0.0396 √
√
である.斉次方程式 y + 0.2y + y = 0 の解 e−0.1x (c1 ei 0.99x + c2 e−i 0.99x ) は系の固有振動 を表わしている.時と共に減衰していくのは, 0.2y が抵抗項として働いているからである. 簡単の ため,以下では固有振動分は考慮せずに議論する.振幅は 1/A であり,強制振動 sin ωx の振動数 ω を上げていくとどうなるかを見よう.ω = 0 のときは y(x) = 0 で,振動は起こらない.振動数 ω を増やしていくと振幅は段々大きくなり (振動数は ω のまま),ω = 0.98 となると,振幅は最大にな √ る (今の場合, 1/ 0.0396 = 5.025 · · · ).その後,少しずつ振幅は小さくなり, ∞ に行くに従って 0 に近づいていく.あまりひんぱんに強制振動を受けると,どんな風にも振動できなくなっていくと いうことである.ここで,方程式の 1 階の項 0.2y がなければ,解は
y(x) =
1 sin(ωx) (1 − ω 2 )
となり,ω が 1 に近づけば無制限の共鳴が起こり,振幅は ∞ に発散してしまう.しかし,現実には こんなことは起こらず,それを保証するのが抵抗項である.この項が大きくなるほど,共鳴の度合は 小さくなる. II.8.5 y − 2y + y = ex cos x を 3 通りの方法で解くのである. a) y = Aex sin x + Bex cos x と置けば, y = (A − B)ex sin x + (A + B)ex cos x, y = −2Bex sin x + 2Aex cos x となるので,
ex cos x = y − 2y + y = −Aex sin x − Bex cos x が得られ,A = 0, B = −1,つまり,y = −ex cos x が得られる. b) 斉次方程式 y − 2y + y = 0 の解は,特性方程式 λ2 − 2λ + 1 = (λ − 1)2 = 0 が重根な ので,ex と xex である.定数変化法を実行すると,ロンスキアンと逆行列は
ex ex
W (x) =
xex (1 + x)ex
となります.すると,(8.41) 式により,
´ ` y(x) = ex , xex
Z
x
e
−t
0
´ ` = ex , xex
Z 0
x
−t cos t cos t
1+t !
−1
!
,
W
! −t 1
−1
(x) = e
0 et cos t
´ ` dt = ex , xex
−x
! −x 1
1+x −1
! dt
−x sin x − cos x + 1 sin x
! = ex (1 − cos x)
238
演習問題解答
が得られる. ex は斉次方程式の解なので, a) で得られたものと同じものになる. c) y − 2y + y = e(1+i)x = ex (cos x + i sin x) の特殊解を求めるために, y = aeλx と置 けば,
a(λ − 1)2 eλx = e(1+i)x
となるから,λ = 1 + i と置いてみると, 1 = a(λ − 1)2 = ai2 = −a となり,−e(1+i)x は特殊解 になっている.この実部 −ex cos x は,方程式の実部の方程式の特殊解になっている.
II.8.6 (1) x2 y − xy − 3y = 0 を解こう.y = xr と置くと,y = rxr−1 , y = r(r − 1)xr−2 となるから,
0 = x2 y − xy − 3y = (r(r − 1) − r − 3)xr = (r − 3)(r + 1)xr となり,r = 3, −1 が得られるので,一般解は y = c1 x3 + x2 である. (2) x2 y − xy − 3y = x4 を解く.斉次方程式の一般解は a) で得られているので,特殊解を 1 つ見つければよい. y = axr と置いて代入すれば, c
a(r − 3)(r + 1)xr = x4 となるので, r = 4 と置けば,a · 1 · 5 = 1 より,a = 1/5 が得られる.こうして,一般解は
y(x) =
1 4 c2 x + c 1 x3 + 5 x
となる.
(3) x2 y − 3xy + 4y = 0 を解く.y = xr と置くと, 0 = x2 y − 3xy + 4y = (r(r − 1) − 3r + 4)xr = (r − 2)2 xr
となり,r = 2 は重根となる. x2 は解であるがもう 1 つを探さないといけない.演習問題 8.3 のダ ランベールのアイデアに従えば,
lim
ε→0
x2+ε − x2 xε − 1 = x2 lim = x2 log x ε→0 ε ε
が得られる.本当に解かどうか心配になるかもしれないが,解の見当をつけるというくらいに思えば, 便利な方法である.少しもっともらしくやるのは,定数変化法を使うことで, y = x2 u(x) と置けば,
0 = x2 y − 3xy + 4y = x2 (2u + 4xu + x2 u ) − 3x(2xu + x2 u ) + 4x2 u = x3 u + x4 u が得られる.
0 = u + xu = (xu )
だから,xu = C(定数) となる.したがって,u = C/x だから,u = C log x となり,y = Cx2 log x が得られる.
II.8.7 y1 (x), y2 (x) を方程式 y + a(x)y + b(x)y ˛ ˛ y ˛ 1 y2 z = det(W (x)) = ˛ ˛ y1 y2
= 0 の解とする. ˛ ˛ ˛ ˛ = y1 y2 − y2 y1 ˛
を微分すると,
z = y1 y2 − y2 y1 = y1 (−ay2 − by2 ) − y2 (−ay1 − by1 ) = −a(y1 y2 − y2 y1 ) = −az となる.それゆえ,
Z
−
x x0
となるから,
adt = −
Z
x
x0
z(x) z dt = [log z]x x0 = log z(x) − log z(x0 ) = log z z(x0 ) „ Z x « z(x) = exp − a(t)dt . z(x0 ) x0
239
II.9
II.9.1 h = 1/N と置き,y = λy, y(0) = 1 をオイラー法で求めていくと,まず,y0 = 1 とし, λ λ k 次のステップは,y1 = y0 + hy (0) = 1 + hλy0 = 1 + N となる.yk = (1 + N ) と予想するこ λ λ k+1 とは難しくないので,帰納法で, yk+1 = yk + hλyk = yk (1 + N ) = (1 + N ) と示せば,次 式が得られる.
. y(1) = yN =
„ 1+
λ N
«N .
II.9.2 問題に与えられた式を y で微分すれば, 2 2 dx = √ e−y dy π
となる.したがって,
√ dy π y2 = e dx 2
が得られる.x(0) = 0 だから,y(0) = 0 も出て,y (0) = さらに,これを微分していくと,
y =
√
y = y (4) = y (5) =
2
πyey y =
π 2y 2 (e 2
2
+ 4y 2 e2y )y =
√ π π (1 4
π/2 である. y (0) = 0 2
+ 4y 2 )e3y ,
2 π2 (7y + 12y 3 )e4y , 4 √ 2 π2 π (7 + 92y 2 + 96y 4 )e5y , 8
y (6) =
π3 (127y 8
y (7) =
d (6) y dy
となるので,
2 π ye2y , 2
√
y (0) =
π
√
π
4
y (4) (0) = 0 y (5) (0) = 2
+ 652y 3 + 480y 5 )e6y ,
· y ,
√ 7π 2 π 8
y (6) (0) = 0 y (7) (0) =
127π 3 16
√
π
√ √ √ π π 3 7π 2 π 5 127π 3 π 7 π x+ x + x + x + ··· 2 4 · 3! 8 · 5! 16 · 7! „ « √ π 7π 2 5 127π 3 7 x = π + 2 x3 + 3 x + 4 x + ··· 2 2 · 3! 2 · 5! 2 · 7! √
y(x) =
というテイラー展開が得られる. II.9.3 手計算ではやる気も起こらないことだから, 何らかのコンピュータ処理をする必要がある. 処理系が何であっても実行できるアルゴリズムを, 問題が要求するように示しておく. 3 次のテイラー級数を使えというのだから, y, v の 3 階までの微分を y, v を用いて表わしておく 必要がある.
y = v,
v = ε(1−y 2 )v − y
を微分して,y , v に上の式を代入すると,
y = v = ε(1−y 2 )v − y v = ε{(−2y)y v + (1−y 2 )v } − y = ε2 (1−y 2 )2 v − ε(2yv2 + (1 − y 2 )y) − v となる.y は v だから計算しなくてよいが, v はうんざりするような式になる. 具体的にこの 式を使ってプログラムを書くのなら,間違うわけにはいかない.あまり自信はないが,
v = ε3 (1−y 2 )3 v − ε2 {(1−y 2 )2 y + 8y(1−y 2 )v2 } + 2ε(−v3 + (4y 2 − 1)v) + y となる.これを使って,h を適当に小さくとって,初期値 (y0 , v0 ) を問題にあるようにおいて, yn+1 = yn + hyn +
h2 h3 yn + y , 2 6 n
vn+1 = vn + hvn +
h2 h3 vn + v 2 6 n
240
演習問題解答
を逐次計算して,折れ線でつないでいけば,問題に添付されている図の点線の閉曲線が得られるだろう. 実は訳者はこの時点で,普通の Basic,Pascal,C などの処理系を持っていない.大きなファイルを TEX で扱えるようにするために Windows95 に移行したのだが,DOS 時代のように軽くて快適な 処理系がなく,むしろ Mathematica とか Maple のような数式処理言語の機能が上がり,大抵のこ とはできるようになっている.しかし,この種の手続きをそのまま書き下すことは却って難しいので, 訳者はこのアルゴリズムを実行していない.しかし,Mathematica で言えば,NDSolve という微 分方程式の数値解を求める関数があって,さらに得られた解曲線を表示することができ,問題の図を 再現することができる.点線の閉曲線はリミットサイクルと呼ばれるもので,その外側の任意の点を 初期値とすると,急速にこの曲線に巻きついてくる.内側の点をとっても同様に,巻き出していって この曲線にくっついてくる.この現象は自励振動と言い,まったくの静止状態からも励起されて, リ ミットサイクルが表わす周期運動に近づいていくのである. つまり,系にエネルギーが注入されるこ とになる.ε が 0 ならば,調和振動で,この図ではただの回転になり,エネルギーの注入も減衰もな い.ε > 0 になると,リミットサイクルが生まれ,リミットサイクルの内側ではエネルギーの注入が 起こり,外側では減衰が起こる. この方程式は,真空管を含む電気回路の研究に用いられる. ε が 0 に近いとリミットサイクルは円に近いが, ε が大きくなるに連れて,リミットサイクルの形は歪んで くる.これらのことを初期条件を変えながら, ε の値を変えながら,確かめるとよい.コンピュータ 実験である. Mathematica などでは簡便にできるが, もちろん,この問題にあるように具体的に計 算してもよい.一旦バグのないプログラムを作れたら,その方が便利なことも多い.著者は Fortran と Maple を使っているようだ.
II.10
√
√
n + 1 の直角三角形の中心角への寄与が arctan √1n であることはす ぐにわかるので,まず,テオドロスのためらいを確かめてみよう.Mathematica などで計算すれば,
II.10.1 辺の長さが 1,
n,
16 X
17 X 1 1 arctan √ = 6.12871001 < 2π < arctan √ = 6.366721126 i i i=1 i=1 1 P1000000000 1 はすぐに得られる.ついでだからと, 2π arctan √ を計算させたら,その途端にメモ i=18 i
リー不足ですよと言われてしまった. 17 個で始めて 1 周を少し越えるので, 18 個から先の
1 2π
1000000000 X i=18
1 arctan √ i
を計算すればよい. f (x) = arctan √1x , n = 109 として,オイラー–マクローリンの公式 n X
(II.10.6)
Z
f (i)
´ ´ 1 ` 1` f (n)−f (17) + f (n)−f (17) 2 12 ´ ´ 1 ` (5) 1 ` f (n)−f (17) + f (n)−f (5) (17) + · · · − 720 30240 n
=
f (x) dx +
17
i=18
を計算すればよい.微分の方の計算を先にすると,
f (x) =
−1 3x + 1 −(15x2 + 10x + 3) √ , f (x) = √ , √ , f (x) = 2 3 2(1 + x) x 4(1 + x) x 8(1 + x)3 x5
f (4) (x) =
3(35x3 + 35x2 + 21x + 5) −3(315x4 +420x3 +378x2 +180x+35) √ , f (5) (x) = √ 4 7 16(1 + x) x 32(1+x)5 x9
となり,積分以外の値を見ていくと
1 2
„
1 1 arctan √ − arctan √ 9 17 10
などで,一番大きなものでも arctan √1
17
けが問題.その積分
Z
« +
1 1 √ − ··· 12 2(1 + 17) 17
= 0.2379411 で,他はオーダーがぜんぜん違う.積分だ 1 arctan √ dx x
241 √ x と置けば,dy/dx = 1/2 x = 1/2y となるので, « Z „ Z Z 1 1 1 1 1 −1 arctan 2ydy = y 2 arctan − y 2 arctan √ dx = dy = y 2 arctan + x y y y 1 + y12 y 2 « Z „ √ √ 1 1 1 1− dy = y 2 arctan +y−arctan y = x arctan √ + x−arctan x 1+y 2 y x
は,y =
√
となる.かくて,
Z
109 17
» – 9 √ √ 10 1 1 arctan √ dx = x arctan √ + x − arctan x x x 17
= (31622.7766 − 4.0450) + (31622.7766 − 4.1231) − (1.57076 − 1.33286) = 63237.1472 となり,これを 2π で割ると, 10064.5046 となり,積分以外の項はこの整数部分に影響しない.結 局はこれに 1 を足した, 10065 回と少しの回転をすることになる. 最も大きな 2 つの項が同じに見 えるのが不思議だという人のために,必要はないのだが, 20 桁精度の値をあげておこう.
109 arctan √
1 109
= 31622.776591142867792,
II.10.2 (10.9) 式で x =
u 2
√
109 = 31622.776601683793320.
と置けば,
B2 B1 B3 B4 2x + (2x)2 + (2x)3 + (2x)4 + · · · 1! 2! 3! 4! B4 B6 B2n B2 (2x)2 + (2x)4 + (2x)6 + · · · + (2x)2n + · · · =1+ 2! 4! 6! (2n)!
x coth x = x + 1 +
となる.
coth ix =
eix + e−ix 2 cos x = −i cot x = eix − e−ix 2i sin x
であることに注意して, x に ix を代入すると,
ix coth ix = −i2 x cot x = x cot x =1−
B2 B4 B6 22n (2x)2 + (2x)4 − (2x)6 + · · · + (−1)n B2n x2n · · · 2! 4! 6! (2n)!
となる.cot の 2 倍角の公式
2 cot 2x = 2
cos2 x − sin2 x cos 2x =2 = cot x − tan x sin 2x 2 sin x cos x
を使えば,
1 tan x = cot x − 2 cot 2x = (x cot x − 2x cot 2x) x „ 1 B2 B4 22n = (1 − (2x)2 + (2x)4 · · · + (−1)n B2n x2n · · · ) x 2! 4! (2n)!
« B2 B4 42n (4x)2 + (4x)4 · · · + (−1)n B2n x2n · · · ) 2! 4! (2n)! ∞ ∞ 2n − 42n X 1 X 2 22n − 42n B2n x2n = B2n x2n−1 (−1)n (−1)n = x n=1 (2n)! (2n)! n=1 − (1 −
となる.これでよいのだが,心配ならば,少し計算して, (I.4.18) と一致することを示せばよい.
(−1)1
1 16−4 1 22 −42 B2 = = 12· = 1, 2! 2 6 12
(−1)2
42 −162 −1 20·12 1 24 −44 B4 = = = 4! 4! 30 24·30 3
242
演習問題解答
8 · 63 2 642 − 82 1 1 1 26 − 46 B6 = = 82 (82 − 1) = = 6! 6! 42 6! 42 6 · 5 · 3 · 42 15 44 (44 − 1) 4 · 15 · 17 17 44 − 164 −1 28 − 48 B8 = = = = (−1)4 8! 8! 30 8! · 30 7 · 6 · 5 · 3 · 30 315 2 · 31 45 (45 − 1) 5 62 210 − 410 B10 = = = (−1)5 10! 10! 66 9 · 7 · 5 · 32 2835 1382 21844 46 (1 − 46 ) −691 47 (47 − 1) 7 212 −412 214 −414 B12 = = , (−1)7 B14 = = (−1)6 12! 12! 2730 155925 14! 14! 6 6081075 (−1)3
となる.混沌のなかに秩序をもたらすベルヌーイ数,という感じですね. (x) = II.10.3 ベルヌーイの多項式 Bn (x) は n 次多項式だから,原理的には,微分すると Bn nBn−1 (x) で,この零点を求めて,そこでの Bn (x) の値を (Bn とも) 比べればよい.しかしこれを 具体的に実行するとなると,かなりの困難が伴う.著者にこの問題の意図を訊ねたところ,この問題は これらのベルヌーイ多項式の評価を本文中で引用するためであり,数値的にこれを求めることは, 現 在でも 1940 年のレーマーの仕事と同様に難しいという.彼ら自身の解法は [0, 1/2] を 10000 等分し て,そこでの値を比べていくものだという (FORTRAN で書いたもの).しかし,現在では,Maple や Mathematica のようなプログラムがあり,ベルヌーイ多項式も内蔵しており,ある点から出発し て近くの極小値を求める関数も備わっている.したがってたとえば, Mathematica でなら,
Do[Print[BernoulliB[n,x], FindMinimum[BernoulliB[n,x], x,0.52], FindMinimum[-BernoulliB[n,x], x,0.52]], {n,3,13,2}] とでもすれば,演習問題の |B3 (x)| から |B13 (x)| までの評価を多項式の形を込めて表示してくれる. しかし,これが本当に [0, 1] の上の最大値を与えていることを確認するのには別の作業が必要である. 以下を厳密に実行するくらいなら,やはり,定義域を細かく等分して,値を比べるのが簡単であろうが, 事情だけを説明しておこう.それらは,ベルヌーイ多項式のグラフを,n を動かして,見比べていると自 然に了解されてくることである.ベルヌーイ多項式は [0, 1] の上だけで考えればよい.他は周期的に拡 張するのだったからである.また,奇数 k 次のベルヌーイ多項式は,Bk (0) = Bk (1) = 0 = Bk (1/2) で(これは母関数表示から簡単に示される),Bk−1 (x) (偶数次のベルヌーイ多項式) の零点は 2 個, 1/2 に関して対称な点にあり, Bk (x) はその点で,最大・最小値を取る (絶対値は等しい).偶数次の ベルヌーイ多項式は 1/2 で最大か最小かであり,後は端点以外に極値はない. ベルヌーイ数は 2 次 以降は,奇数次は 0 であり,偶数次については符号が入れ代わることに注意する.1/2 に関する対称 性以外の定性的な部分は容易に確認される.これも嫌なら, k ごとにベルヌーイ多項式の極値をとる 初期条件 x = a を,FindMinimum[BernoulliB[k,x], {x, a}] の中の変数にして,納得が行くほど 何度もとり直してみればよい.実験数学のようで,結構面白い作業である.ついでに,2 ≤ n ≤ 13 でのベルヌーイ多項式の形と,最大値の値をあげておこう. k Bk (x) |Bk (x)| の最大値 値を取る点
2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
x2 − x + 16 x3 − 32 x2 + x2 1 x4 − 2x3 + x2 − 30 5 4 5 3 5 x − 2 x + 3 x − x6 2 1 x6 − 3x5 + 52 x4 − x2 + 42 x7 − 72 x6 + 72 x5 − 76 x3 + x6 1 x8 − 4x7 + 14 x6 − 73 x4 + 23 x2 − 30 3 9 8 21 5 3x 9 7 3 x − 2 x + 6x − 5 x + 2x − 10 5 x10 − 5x9 + 15 x8 − 7x6 + 5x4 − 32 x2 + 66 2 10 + 55 x9 − 11x7 + 11x5 x11 − 11 x 2 6 − 11 x3 − 5x 2 6 33 8 12 11 10 6 x − 6x + 11x − 2 x + 22x 691 − 33 x4 + 5x2 − 2730 2 12 + 13x11 − 143 x9 − 286 x7 x13 − 13 x 2 6 7 − 429 x5 + 65 x3 − 691x 10 3 210
1 6
0.132497
0, 1 0.211325, 0.788675 0, 1 0.240335, 0.759665 0, 1 0.247541, 0.752459 0, 1 0.24938, 0.75062 0, 1 0.249845, 0.750155
0.253114
0, 1
0.523566
0.249961, 0.750039
0.0481125 1 30
0.0244582 1 = 0.0238095 42 0.0260651 1 30
0.0475506 5 66
[訳者注意 1]日本語で読む読者のために便利であることを原則とし,配列は著者名の 50 音順にした. 内容の理解に役立つことはすべて日本語に訳すが, 文献を手に入れようとする読者に必要なデータは 残すこととした. 書名の日本語訳は,日本で出版されているのものはそのタイトルで,そうでないものは意味をとっ て訳すか,すでに日本語の数学史の本の中で訳されているものはそれに従うことを原則とした. しか し,諸本の中で訳語が同じでないこともある.ボイヤー『数学の歴史』 (加賀美鐵雄・浦野由有訳,朝 倉書店)の訳語はおおむね適正で,それに従ったことが多いが,最終的には,予備知識のない読者に 最もわかりやすいと思われる訳語を与えるようにした. 雑誌名は,頻出して訳語でもわかるものだけ日本語に訳し(原タイトルは文献表の後尾を参照),他 は原著に挙げられているままにした.書籍のデータで,出版地と出版社がともに記載されている場合 は, 「出版社,出版地」ないし「出版社名(出版地)」のように書く.古い出版物に関しては出版組織が はっきりしていないことも多く,出版地のみが記載されていることがある.記述上の統一のため,社 名と地名は訳さないことにした.地名が古名だったりラテン語名だったりすることもあるが,再版さ れていなければ手に入れることは不可能に近いので,あえてそのままにした.
[アアボエ (1954)] A. Aaboe:『sin 1◦ の決定のためのアル・カーシーの逐次近似法』,Scripta Math. 20(1954), pp.24–29.[I.4] [アポロニウス (紀元前 200)] Apolonius:『円錐曲線論』全 8 巻.[I.1] [有馬頼 (1769)] Y.Arima:『拾 算法』,1769.[I.6] [アルキメデス (∼240 B.C.)] Archimedes:『円を測ること』.版多数あり.代表的なものに J.L. ハ イベルグ (Leipzig 1880) と T.L. ヒース(『アルキメデスの仕事』 , Cambridge Univ. Press, 1897)を参照1 .[I.4, 6] arizmˆı:『ジャブルとムカバラについて2 』.チェスターのロ [アル・フワーリズミ (830)] Al-Khowˆ バート (1145) と F. ローゼン (1831) 参照.[I.1] [ヴァリニョン (1725)] P. Varignon: 『無限小解析の解説』,死後出版,1725.[II.7] [ヴァンナー (1988)] G. Wanner: 『 微 分 方 程 式 は 350 歳 』 ,L’Enseigment Math´ematique 34(1988), pp.365–385.[II.7] 『全集』 (フランシスクス・ファン・ [ヴィエート (1591)] F. Vi`ete:『解析的技法入門』,Torus, 1591, スホーテン編),1646, pp.1–12.[I.1] 『全集』(フランシスクス・ [ヴィエート (1591a)] ——:『方程式の認容と改良』,死後出版 (1615), ファン・スホーテン編),1646, pp.84–158.[I.1], [I.5] 『全 [ヴィエート (1593)] ——: 『角の切片についての普遍的な定理について』,死後出版 (1615), 集』(フランシスクス・ファン・スホーテン編),1646, pp.287–304. [I.1–2]
[ヴィエート (1600)] ——:『新しき代数』.注釈つきのフランス語訳 (1630).[I.1] 1 2
[訳註]日本語では, 『数学の歴史−ギリシャの数学』(共立出版)の第 3 章の中に, 「円の計測」と して翻訳・解説(佐藤徹による)がある. [訳註]『アル・ジャブルの書』と言いならわされてもいる.
244
参考文献
[ヴィエトリス (1949)] L. Vietoris:『サインとその種の関数の関数方程式による特徴づけについて』, 『クレレ誌』186(1949), p.1.[I.4] [ヴィルティンガー (1902)] W. Wirtinger:『オイラー–マクローリンの和公式のいくつかの応用,特 にアーベルの問題に対して』,Acta Mathematica 26(1902), pp.255–271. [II.10] [ウェストフォール (1980)] R.S. Westfall:『休むことなく — アイザック・ニュートン伝 —』,Cambridge Univ. Press (1980), 908pp.3 .[I.4] [ウォリス (1655)] J. Wallis:『無限算術,または曲線の求積を研究する新しい方法と種々の数学の問 題』,Anno 1655 typis edita; 『数学の全集』 I(1695), pp.355–478.Georg Olms Verlag か らリプリント (1972). [I.5–6] [ウォリス (1685)] ——:『代数論 — その歴史と応用』 (1685). [I.6] [エルミート (1873)] Ch. Hermite:『エコール・ポリテクニークの解析学教程』,Paris, GauthierVillars, 1873 ; 『全集』3, pp.35–54.[II. 5] 『ペテルブルグ・アカデミー紀要』 [オイラー (1736)] ——:『級数の和に関する普遍的な方法再論』, 8, pp.147–158. 『全集』24, pp.124–137.[II.10] 『ペ [オイラー (1736b)] ——:『力学,または解析的科学によって記述された運動,その補遺と注釈』, テルブルグ・アカデミー紀要』 (1736). 『全集』Ser.2, vol.I–II.[I.2] 『ペテルブルグ・アカデミー紀要』 [オイラー (1737)] ——:『円の求積を数で近似する色々な方法』, 9(1737), pp.222–236. 『全集』14, pp.245–259.[I.4] 『ペテルブルグ・アカデミー紀要』9(1737), pp.98–137. 『全 [オイラー (1737b)] ——:『連分数論』, 集』14, pp.187–215. [I.6] 『ペテルブルグ・アカデミー紀要』7(1734/5), 1740, [オイラー (1740)] ——:『2 乗の逆数の和』, pp.123–134. 『全集』14, pp.73–86.[I.5]
[オイラー (1743)] ——:『自然数のベキの逆数の級数の和について,また同じ和がまったく異なった 源から導かれることについての論文』,Miscellanea Berolinensia, 7(1743), pp.172–192. 『全 集』14, pp.138–155. [I.5] [オイラー (1743b)] ——:『高次の微分方程式の積分について』,Miscellanea Berolinensia, 7, pp.173–242. 『全集』22, pp.108–149.またオイラーからヨハン・ベルヌーイへの 1739 年 9 月 15 日の手紙も参照のこと. [II.8] 『全集』8.仏訳 [オイラー (1748)] ——:『無限解析入門』,第 1 巻,Lausanne MDCCXLVIII, (1785, 1796),独訳 (1788, 1885),英訳(ブラントン訳, 1988).[I.0, 2–6]
[オイラー (1750)] ——:『楕円の求長に関する検討』 ,Opuscula varii argumenti, 2(1750), pp.121–166. 『全集』20, pp.21–55.[II.6] 『新・ペテルブルグ・アカデミー紀要』3, [オイラー (1750b)] ——:『高次の微分方程式の方法再論』, pp.3–35. 『全集』22, pp.181–213. [II.8]
[オイラー (1751)] ——:『負の数と虚数の対数に関するライプニッツ氏とベルヌーイ氏の論争につい て』, 『ベルリン科学アカデミー会報』 5(1751), pp.139–179. 『全集』17, pp.195–232. [I.5] 『ペテルブルグ・アカデ [オイラー (1755)] ——:『微分法,およびその有限解析と級数論への応用』, ミー紀要』. 『全集』10.[I.2, 5], [II.1–2, 10] 『全集』11.[II.4–5, 9] [オイラー (1768)] ——:『積分法 I』. 『全集』12.[II.8] [オイラー (1769)] ——:『積分法 II』.
[オイラー (1770)] ——:『代数の完全入門』,von Hrn. Leonhard Euler, St. Petersburg, gedruckt bey der Kays. Acad. der Wissenshaften, 1770. 『全集』1.[I.1] [オイラー (1911–)] ——:『全集』,4 シリーズで 80 巻以上.数学の業績は第 I 集の中にある. Teubner(Leipzig und Berlin),後に F¨ ussli(Z¨ urich).[I.1] 3
[訳註]日本語訳は『アイザック・ニュートン I, II』(田中一郎・大谷隆昶訳,平凡社,1993).
245 [ガウス (1799)] C.F. Gauss:『1 変数の整係数代数的な関数が 1 次または 2 次の実の因子に分解さ れるという定理の新しい証明』,Helmstadii, 1799. 『全集』3, pp.1–31.[I.5] ongl. Ges. de Wiss. G¨ ottingen,12 巻.Georg Olms [ガウス (1863-1929)] ——:『全集』,ed. K¨ Verlag よりリプリント (1973). [I.4] 『レギオ [カウンツナー (1980)] W. Kaunzner:『数学者としてのレギオモンタヌス』,pp.125–145. モンタヌス研究』 G. ハマン編,オーストリア科学アカデミー, Wien, 1980 所収.[I.4]
[ガリレイ (1638)] G. Galilei:『機械学および地上の運動についての 2 つの科学に関する対話と数学 的証明,トスカナ大公の哲学者で第 1 数学者である,リンチェイ・アカデミー4 会員ガリレオ・ガ リレイ著,ライデン,1638 年5 』.[II.1, 7] [カルダーノ (1545)] G. Cardano:『アルス・マグナ=大いなる術,代数的な事柄についての』 , N¨ urnberg, 1545.[I.1–2, 5] [M. カントール (1880-1908)] M.Cantor:『数学史講義』,vol.I 1880, vol.II 1891, vol.III 1898, vol.IV 1908, Teubner Verlag(Leipzig).以降多くの版と刷を重ねている. [I.1, 4] [クヌース (1962)] D.E. Knuth:『1271 桁までのオイラーの定数』,Math. of Comput. 16(1962), pp.275–281.[II.10] [クライン (1908)] F. Klein:『高い立場から見た初等数学』,第 3 版 (1924),Grundlehren, Band 14, Springer-Verlag (Berlin), 1924.英訳は Dover から6 .[II.1–2] [M. クライン (1972)] M. Kline:『古代から現代までの数学思想』,Oxford Univ. Press (New York), 1238pp.7 .[I.2–3, 5], [II.6] [グラドシュテインとリィジク (1980)] I.S. Gradshteyn & I.M. Ryzhik:『積分,級数,積の表』, 1156pp., Academic Press;最初の英訳版は 1965 年,元のロシア語版 , , は 1962 年8 .[II.4] [グレゴリー (1668)] J. Gregory:『幾何学演習,付録として円と放物線の正しい求積について』, London, 1668.[I.3] [グレゴリー,聖ヴァンサンの (1647)] Gregory of St. Vincent: 『円と円錐曲線の平方化に関する 幾何学的研究』,1647.[I.3] obner & N. Hofreiter:『積分表,I 部:不定積分』, [グレプナーとホフライター (1949)] W. Gr¨ 166pp., Springer-Verlag (Wien und Innsbruck), 1949 .[II.4] [ケプラー (1615)] J. Kepler:『新・ワインのたるの容積測定とすべてのものの最も適切なる形状, オーストリア初』,Authore Ioanne Kepplero, imp. Cæs. Matthiæ I. ejusq; fidd. Ordd. Austriæ supra Anasum Mathematico, Lincii, Anno M.DC.XV 9 .[I.4] 『全集』,シリーズ 2,第 III 巻.[II.4] [コーシー (1821)] A.L. Cauchy:『代数的解析学教程』, 『全集』,シリーズ 2,第 IV 巻,pp.1–26110 . [コーシー (1823)] ——:『無限小解析講義のレジュメ』, [II.1]
4
5 6 7 8 9 10
[訳註]モンティチェリ候フェデリコ・チェージ (1585–1630) が創設した科学研究のための学会. リンチェとは山猫のことで,その目のように鋭く物事を見抜くという意味がある.ガリレイは 5 番 目の会員である. [訳註]日本語訳は『新科学対話(上)(下)』(今野武雄・日田節次訳,岩波文庫,1937). [訳註]日本語訳は『高い立場からみた初等数学』(遠山啓訳,商工出版). [訳註]残念ながらこの本の日本語訳はない.資料的価値は少ないが,同じ著者の啓蒙的な本に, 『数 学文化史(上)(下)』(中山茂訳,現代教養文庫)がある. [訳註]日本語訳は『数学大公式集』(大槻良彦訳,丸善). [訳註]オーストリア皇帝マテウス I 世に,オーストリア第 1 の数学者の称号で仕えていた. [訳註]日本語訳は現代数学の系譜 1『微分積分学要論』(小堀憲訳,共立出版,1969).
246
参考文献
[コーシー (1824)] ——:『王立理工科学校で行った講義のレジュメ.続・無限小解析』,出版された のは『常微分方程式』,Chr.Gilain 編,Johnson, 1981.[II.3, 9] [コラッツ (1960)] L. Collatz:『微分方程式の数値処理』,第 3 版,Springer-Verlag,初版はドイ ツ語 (1951).[II.9] [ゴールドシュタイン (1977)] H.H. Golstein:『16 世紀から 19 世紀の数値解析の歴史』,SpringerVerlag (New York), 1977, 348pp. [I.1], [II.6] [サラサ (1649)] A.A. de Sarasa:『メルセンヌが提出した問題の解答』,1649.[I.3] [シャンクスとレンチ Jr.(1962)] D. Shanks & J.W. Wrench Jr. :『1000000 桁までの π の計算』, Math. Comp. 16(1962), pp.76–99.[I.4] [朱世傑 (1303)] Tshu shi Kih:『四元玉鑑』,1303 年.[I.2] urnberg, 1544.[I.2–3] [シュティーフェル (1544)] M. Stifel:『算術全書』,N¨ [シュトラング (1991)] ——:『解析学』,Wellesley-Cambrige Press (Wellesley, Mass.), 1991 . [I.4] [シュピース (1929)] O. Spiess:『レオンハルト・オイラー,18 世紀思想史への寄与』,Verlag von Huber (Frauenfeld, Leipzig), 1929.[II.8, 10] [ジョーンズ (1706)] W. Jones:『数学の傑作の梗概,または,新数学入門 — 簡易な方法による算 術と幾何の原理を含む』,London, 1706.[I.4] [シンプソン (1743)] T. Simpson: 『多様な物理的かつ解析的な主題に関する数学学位論文』,London, 1743.[II.6] [スターリング (1730)] J. Stirling:『微分の方法:あるいは,和と無限級数の補間を論ずること』, Londini, MDCCXXX.[II.10] [スチェクロフ (1918)] V. Steklov:『求積についての注意』,Bull. de l’Acad. des Scienes de Russie(6), vol.12, 1918, pp.99–118.[II.6] [ステヴィン (1585)] S. Stevin:『10 分の 1』,1585 年.フランス語訳『小数』(La disme) も 1585 年に出版.[I.2] [ストルイク (1969)] D.J. Struik :『数学の原典 1200–1800』,Harvard Univ. Press (Cambridge, Mass.), 1969.[II.1–2] [ダランベール (1748)] J. le Rond d’Alambert:『続・積分法に関する研究,第 4 部:微分方程式を 積分する方法』,Hist.Acad.Berlin,第 4 巻,pp.275–291. [II.8] [ダランベール (1754)] ——:『微分法』,有名な『百科全書または科学・工芸の合理的説明の辞書,ディ ドロ氏とダランベール氏監修』の第 4 巻,p.985.Paris(1754) の “D”の項にある論説. [II.1] [テイラー (1715)] B. Taylor:『直接および逆増分法』,Auctore Brook Taylor, LL.D. & Regiæ Societatis Secretario, Londini, MDCCXV.[II.2] 『方法序説』の付録,Paris, 1637.D.E. スミスと M.L. [デカルト (1637)] R. Descartes:『幾何学』, ラタンによる英訳(初版の複製がついている)が 1925 年に The Open Court Publishing か ら発行され,1954 年に Dover からリプリントが出ている11 .[I.1–2, 5], [II.1]
urer:『コンパスと定木による平面および立体図形の測定論』,durch Al[デューラー (1525)] A. D¨ brecht D¨ urer zu samen getzog˜e, und zu nutz all˜e kunstlieb habenden mit zu geh¨ origen figuren, in truck gebracht, im jar. M.D.XXV. Verlag Dr.Alfons Uhl (N¨ordlingen) から 複製によるリプリントとして出版されている. [I.4], [II.3] [ド・フォンスネ (1759)] D. de Foncenex:『仮想的な量についての省察』,Miscellanea Phil.-Math. Soc. Taurinensis, 1 Torino (1759), pp.113–146.[I.4] [ド・モアヴル (1730)] A. de Moivre:『級数と求積についての,解析学の諸問題』,Londini, 1730. [I.4] 11
[訳註]日本語訳はデカルト著作集 1『幾何学,方法序説の試論』(原亨吉訳,白水社)がある.
247 [ニュートン (1665)] I. Newton:『ウォリスからの注解』,1665 年手稿.出版は『アイザック・ニュー トンの数学論文集』,1, Cambrige Univ. Press (1967) の中で.[I.2], [II.2] [ニュートン (1669)] ——:『無限項を持つ方程式による解析について』,1669 年手稿.W. ジョーン ズにより刊行(ニュートン,1711),pp.1–21. 『著作集』2, pp.165–173. [I.3–4] [ニュートン (1669a)] ——:『与えられた面積から底辺を求めること』,1669 年手稿.[I.3] [ニュートン (1669b)] ——:『与えられた曲線の長さから底辺を求めること』,1669 年手稿.[I.4] 「著者の未発表のラテン語原稿より翻 [ニュートン (1671)] ——:『流率法と無限級数』,1671 年手稿. 訳して」出版,London(1736).Opuscula mathematica, vol.1(ビュフォン氏による仏訳,パ リ (1740)).複製による再版, Edition Albert Blanchard (Paris), 1966.[I.2–3], [II.1–2, 4, 6]
[ニュートン (1676)] ——:『微分の方法』,オルデンブルグ宛の手紙(1676 年 10 月)に言及されて いる手稿.W. ジョーンズによりニュートン (1711) の一部として刊行. [I.1] [ニュートン (1686)] ——:『プリンキピア(然哲学の数学的原理)』,ロンドン (1686),第 2 版 (1713),第 3 版 (1726).英訳 (1803). 「故シャトレ侯爵夫人」による仏訳, Paris (1756)12 . [II.1] [ニュートン (1711)] ——:『量の級数,流率,微分による解析』.W. ジョーンズにより刊行,London (1711).[I.4], [II.3] [ニュートン (1736)] ——:ニュートン (1671) 参照. [ネイピア (1614)] John Napier:『驚くべき対数の規準の叙述』,Edinburgi, 1614.[I.3] [ネイピア (1619)] ——:『驚くべき対数の規準の構成』,Edinburgi, 1619.W.R. マクドナルド (William Rae MacDonald) による英訳は The construction of the wonderful canon of logarithms(1888). [I.3] [ノタリ (1924)] V. Notari:『4 次の方程式』,Periodico di Matematiche, Ser. 4, vol.4 (Bologna, 1924), pp.327–334. [I.1] [ハイラー,ネルセット,ヴァンナー (1993)] E. Hairer, S.P. Nørsett & G. Wanner: 『常微分方 程式の解法 I.硬くない問題』,Springer-Verlag (Berlin, Heidelberg), 1987 ,第 2 版,1993, 528pp. [II.9] [バック (1980)] R.C. Buck:『バビロンのシャーロック・ホームズ』『 ,アメリカ数学月報』,87–5(1980), pp.335–345.[II.5] [バークリー司教 (1734)] Bishop Berkeley: 『解析者』,1734.[II.1–2] [パスカル (1654)] B. Pascal:『算術三角形』,1654 年に書かれ,死後 1665 年にパリで出版された. [I.2] [パスクァル (1957)] L. di Pasquale:『ニッコロ・タルターリアの「あれやこれやの考案」から 3 次 方程式』,Periodico di Matematiche, Ser.4, vol.35 (Bologna, 1957), pp.79–93 .[I.1] [林鶴一 (1902)] T. Hayashi:『17,18 世紀の日本の数学者の使った π の値』,Bibliotheca mathematica, ser.3, 3(1902), pp.273–275.[I.6] [ハリー (1694)] E. Halley:『あらかじめ還元をしなくても, 方程式の根を見つける新しく, 厳密で 易しい方法』,サヴィル幾何学教授エドモンド・ハリーによる.Philosophical Transactions, Nr.210, A.D.1694. ニュートンの『普遍算術』(1728), p.258 の付録として,再刊行される. [II.2] [パール,リード (1920)] R. Pearl & L.J. Reed: 『1790 年以来の合衆国の増大率とその数学的表 現について』,Proceedings of the National Academy of Science of the USA, 6(1920), pp.275–288. [II.7] 12
[訳註]日本語訳は河辺六男訳(『世界の名著 26 ニュートン』中央公論社,1971)と中野猿人訳
(講談社,1977) がある.
248
参考文献
[パルマンティエ (1989)] M. Parmentier:『G.W. ライプニッツ,微分法の誕生,学術論叢の 26 編 の論文』,Mathesis, Paris, Libraie Philsophique J.Vrin, 1989 13 .[II.1] [バロー (1860)] I. Barrow:『数学著作集』,W. ホイーウェル編,xx+320pp.+220 図,ケンブリッ ジ (1860), G.Olms Verlag からリプリント (1973).[I.2] urgi:『算術数列・幾何級数表』,Prag, 1620.[I.3] [ビュルギ (1620)] J. B¨ [ファン・ケーレン (1596, 1616)] L. van Ceulen:『円について,ここでは円の直径と周の長さのもっ とも近い比を見いだす方法が述べられる』,Delft14 .[I.4] [ファン・デル・ヴェルデン (1954)] B.L. van der Waerden: 『科学の黎明 I,エジプト,バビロニ ア,ギリシャの数学』,Kluwer Acad. Publ (Dordrecht, The Netherlands);英語版が 1961, 1969, 1975, 1988 年に出版.[I.2] [ファン・デル・ヴェルデン (1957)] ——–: 『学校教育における対数概論』,Elemente der Math. 12(1957), pp.1–8.[I.3] [フェルフルスト (1838)] P.F. Verhulst:『人口が増加する法則についての注意』,Correspondance Mathematique et Physique, 10(1838),pp.113–121. [II.7] [フェルフルスト (1845)] ——: 『人口の増加に関する数学的研究』,Nuov. Mem. Acad. Roy. Bruxelles, 18(1845), pp.3–38.[II.7] [フェルマー (1636)] P. Fermat:『局所的な方程式を,曲線相互また直線といろいろと比較しながら 変換したり改良したりすることについて.付録として,無限の双曲線と放物線の求積の幾何的な関 係について』, 『著作集』第 1 巻,pp.255–288.フランス語訳の『著作集』第 3 巻,p.216.[I.3] 『著作集』第 1 巻,pp.133–179.フランス [フェルマー (1638)] ——:『極大と極小を求める方法』, 語訳の『著作集』第 3 巻,pp.121–156.[II.1–2] [フェルマー (1891, 1894, 1896)] ——:『著作集』,3 巻,Gauthier-Villars (Paris). [フェルマン (1983)] E.A. Fellmann:『レオンハルト・オイラー,その生涯と業績』, 「レオンハルト・オ イラー 1707–1783」,Gedenkband des Kantons Base-Stadt, Birkh¨ auser Verlag (Basel), 1983 所収15 .[II.10] αλη σ´ υ ντ αξιζ = 『大集成』=『アルマゲスト』 (Al[プトレマイオス (∼150)] Ptolemaios: μγ´ magest) = Alμγ´ιστ η 16 . G. ポイエルバッハとレギオモンタヌスによるラテン語訳(教師ゲオ ルギウス・デ・ペウルバックとその弟子である J. デ・キュニヒスペルグによるアルマゲストの梗 概17 )は 1462 年に完成し, 1496 年に出版された. [I.4] [ブラントン (1988)] J.D. Blanton : オイラー (1748)『無限解析入門』の英訳, Springer-Verlag (New York), 1988.[I.1] 『熱の伝播につ [フーリエ (1822)] J.B.J. Fourier: 『熱の解析的理論』,Paris, 1822 ;1807 年の, いて』と題する手稿はラグランジュの反対で出版されなかった. [II.4] 13 [訳註] 『学術論叢』に掲載されたライプニッツの論文(ラテン語)のフランス語訳である.1908
年にラ ¨ber die Analysis des Unendlichen イプツィッヒで出版された G. コワレフスキー訳編の Leibniz u もライプニッツの論文のタイトルを訳すときの参考にした.ライプニッツの論文集の英訳は見当た らない.
14 15 16
17
[訳註]オランダ語のこの本は弟子のスネリウスによってラテン語に翻訳されてからヨーロッパに 広く知られるようになった. [訳註]この論文を元にした著者の和訳『オイラー — その生涯と業績』(山本敦之訳,シュプリン ガー・フェアラーク東京)がある. [訳註]元々はギリシャ語の『数学集成』という著書で,他の著者たちの『(数学) 集成』と区別す るため, 『大集成』と呼ばれていた.アラビアに伝わり,magiste というアラビア語で呼ばれていた が,後に尊敬を込めて, 『もっとも偉大なもの』という意味の『アルマゲスト』 (Almagest) という 名で呼ばれる習慣になったもの. [訳註]ラテン語原文:Epitoma almagesti per Magistrum Georgium de Peurbach et eius Discipulum Magistrum J. de K¨ unigsperg . . . . 日本語訳は『アルマゲスト』(藪内清訳,恒星 社厚生閣)がある.
249 [ブリッグス (1624)] H. Briggs:『対数的算術』,Londini, 1624.ウィリアム・ジョーンズにより発 行.[I.2–3] [フレネル (1818)] A. Fresnel:『光の回析についての覚え書き』,Mem.Acad.sc. 5, Paris, 1818, p.339,[II.6] urich, [フルヴィッツ (1962,1963)] A. Hurwitz:『数学著作集』,ed. Abtlg. Math. Phys. ETH, Z¨ 2 巻,Birkh¨ auser Verlag (Basel, Stuttgart), 1962, 1963 .[I.6] [ヤーコプ・ベルヌーイ (1689)] Jakob Bernoulli I:『無限級数とその有限和に関する算術の命題』, Basileæ, 1689. 『全集』1, pp.375–402.[I.2] [ヤーコプ・ベルヌーイ (1690)] ——:『重い物体が,同じ高さ,同じ時間で一様に降下する曲線を見 いだすことに関する,以前定式化した問題の解析:その他の問題の定式化』, 『学術論叢』9(1690), pp.217–219.[II.4–7] [ヤーコプ・ベルヌーイ (1702)] ——:『望むように円弧を切断すること.サインを導く方法などを含 む』,Hist. Acad. Sciences de Paris (1702), p.281. 『全集』p.921.[I.4] 『著作集』3, pp.107– [ヤーコプ・ベルヌーイ (1705)] ——:『推測術』,死後出版,Basileæ, 1713. 286, Basel, 1975.[I.1] [ヤーコプ・ベルヌーイ (1744)] ——:『全集』,2 巻,VII+48+1139pp. G. クラメール編,Geneva, 1744.
[ヨハン・ベルヌーイ (1691)] Johann Bernoulli I:『ロープの問題の解』,exhibita a Joh. Bernoulli, Basil. Med. Cand., 『学術論叢』10(1691), pp.274–276. [II.7] [ヨハン・ベルヌーイ (1691/92)] ——: 『ヨハン・ベルヌーイの微分学』 ,Nach der in der Basler Universit¨ atsbibliothek befindlichen Handschrift ¨ ubersetzt von Paul Schafheitlin, Akademische Verlagsgesellschaft (Leipzig), 1924 .[II.1–2] [ヨハン・ベルヌーイ (1691/92b)] ——:『輝かしきロピタル侯爵の使用に供した, 積分法とその応 用の数学講義,その他』, 『全集』3(1742), pp.385–558 として出版された. [II.3] 『学術論叢』 [ヨハン・ベルヌーイ (1692)] ——:『普通のデカルト幾何による焦線の解,その他』 , 11(1692), p.30. 『全集』I, pp.52–59.[II.3] 『学術論叢』 [ヨハン・ベルヌーイ (1694)] ——:『1 階の微分方程式を構成する一般的な方法』 , 13(1694), p.435. 『全集』I, pp.123–125.[II.9]
[ヨハン・ベルヌーイ (1694b)] ——:『ある非常に一般な級数を使って,すべての曲線の求積と求長 を行うこと』 , 『学術論叢』13(1694).ヨハン・ベルヌーイ (1694) の論文への追加. [II.4] 『学術論叢』15(1696), [ヨハン・ベルヌーイ (1696)] ——:『解法に数学者を招く新しい問題』 , pp.264–269. 『全集』I, pp.155–161.[I.3], [II.6–7] 『学術論叢』16(1697), p.125. [ヨハン・ベルヌーイ (1697)] ——:『指数計算の原理,あるいは概説』, 『全集』I, pp.179–187.[I.3], [II.6] (兄のヤーコプ・ベルヌーイに [ヨハン・ベルヌーイ (1697b)] ——:『円錐と回転楕円体について, よって)提案された, 1695 年の論文の 553 ページにある方程式の解析の解法』 , 『学術論叢』 16(1697), pp.113–118. 『全集』I, pp.174–179. [II.7]
[ヨハン・ベルヌーイ (1697c)] ——:『私の提案した 1696 年の論文の 269 ページにある,最短降下 線についての問題の解法』, 『学術論叢』16(1697), p.206. 『全集』I, pp.187–193.[II.7] [ヨハン・ベルヌーイ (1702)] ——: 『積分法に関わる問題の解法,およびこの計算法によって簡単に なるいくつかの問題』,Histoire de l’Acad. Royale des Sciences ` a Paris, Ann´ee MDCCII, M´ emoire, pp.289–297. 『全集』I, pp.393–400. [II.5] aser Verlag [ヨハン・ベルヌーイ (1955,1988)] ——:『ヨハン・ベルヌーイ書簡集』,2 巻本,Birkh¨ (Basel).[II.3, 5, 7] [ペロン (1913)] O. Perron:『連分数論』,Teubner (Leipzig und Berlin),520pp. 重版多数. Chelsea, 1950.[I.6] [ホイヘンス (1673)] C. Huygens: 『振子時計,または時計にとりつけられた振子の運動の幾何的証 明』,Paris, 1673.[II.1, 3, 7]
250
参考文献
[ホーキング (1988)] S.W. Hawking:『ホーキング,宇宙を語る — ビッグ・バンからブラックホー ルまで』,198818 .[II.1] [ボルツァーノ (1817)] B. Bolzano:『反対符号の値を持つ 2 つの値ごとの中間に少なくとも 1 つの 実根があるという定理の純粋に解析的な証明』,Prag, 1817;Ostwald’s Klassiker #153, 1905 (シュトルツ 1881 も参照).[II.1] [ボンベッリ (1572)] R. Bombelli:『代数学』.1560 年頃書かれ, 1572 年に出版された. [I.6] [マクローリン (1742)] C. Maclaurin:『流率論』,2 巻本,Edinburgh, 1742.[II.1–2, 10] [マクローリン (1748)] ——:『代数論』,1748.[I.1] 『アメリカ [ミール (1983)] G. Miel:『過去と現在の計算について :アルキメデスのアルゴリズム』, 数学月報』90(1983), pp.17–35.[I.4]
[メルカトール (1668)] N. Mercator(=Kaufmann): 『対数術,または対数を構成する新しく,厳密 で易しい方法』,1667 年に書かれ,1668 年にロンドンで出版された. [I.3] 『クレレ誌』2(1827), [ヤコビ (1827)] C.G.J. Jacobi:『単一あるいは 2 重積分のある変換について』, pp.234–242. 『全集』3, pp.57–66.[II.3] 『クレレ誌』12(1834), [ヤコビ (1834)] ——:『マクローリンの和公式を正当に使うことについて』, pp.263–272. 『全集』6, pp.64–75.[II.10]
[ヤコビ (1881-1891)] ——:『全集』,8 巻,C.W. ボルチャルト編,Berlin, 1881–1891.新版は Chelsea (New York), 1969.[I.1] [ユークリッド (∼300)] EY KΛEIΔOY :『原論』.多くの翻訳と版がある.印刷された最初の数学 の本 (Venice,1482),現在の定本は J.L. ハイベルグによるもの (1883–1888).注釈つきの英 訳がトーマス・L・ヒース卿により 1908 年と 1925 年に出版され,1956 年に Dover から 3 巻 本で再版されている19 .[I.1, 4, 6] [ライプニッツ (1682)] G.W. Leibniz20 :『円と外接正方形との,有理数で表された正しい比につい て』, 『学術論叢』 1, 1682, pp.41–46.[I.4] [ライプニッツ (1684)] ——:『無理量でも適用可能な極大,極小,および接線に関する新しい方法と その特殊な計算法』, 『学術論叢』 3, 1684, p.467.[I.2], [II.1–2] 『学術論叢』5,6 [ライプニッツ (1686)] ——:『不可分で無限なものの深遠な幾何と解析について』, 月 (1686), pp.292–300.[II.4]
[ライプニッツ (1689)] ——:『重い物体が加速することなく降下する等時曲線と,デ・コンチの大修 道院長21 との論争について』, 『学術論叢』8, 1689, p.195.[II.7] [ライプニッツ (1691)] ——:『中心を持つ円錐曲線の共通の算術的求積法と,それから標準的な三角 法が,表を使わずに,最大限の正確さで厳密な数を使って導かれること,さらにその菱形の航海 線や球面への特別な応用』, 『学術論叢』10,4 月 (1691), pp.178–182.[I.4]
[ライプニッツ (1691b)] ——:『自重で自由に曲がる曲線について,さらにこの任意の比例中項や対 数を求めることへの顕著な応用』, 『学術論叢』10, 1691, pp.277–281 と pp.435–439. [II.7] 18 19 20
21
[訳註]日本語訳は林一訳で早川書房より刊行. [訳註]日本語ではギリシャ語の原典からの翻訳『ユークリッド原論』(中村幸四郎他訳,共立出版) がある. [原註]ライプニッツは通常ラテン語で, G.G.L.(Gothofredo Gulielmo Leibnitio) と署名して いる. [訳註]ライプニッツのラテン語は読みにくい. 幸いライプニッツ著作集全 10 巻が工作舎から出 版されている. 2, 3 巻が数学に関するものである. [訳註]ライプニッツの全集で見てみると,最後の部分は Abbate De Conti,つまりデ・コンチ大 修道院の院長となっていて,デカルト主義者である大修道院長への反論として書かれている. DN. は Domine の略で,字義通りには「神のもの」という意味で,聖職者への敬称と思っていたが,こ の論文の中でベルヌーイなどの数学者にもこの敬称を使っている.知識人一般に対する敬称なのか もしれない.
251 [ライプニッツ (1693)] ——:『幾何的計測の補遺,または運動によるすべての求積の非常に一般な実 現.さらに同様に得られる,与えられた接線の条件からの曲線の多様な構成』, 『学術論叢』 12, 1693, pp.385–392.[II.7] [ライプニッツ (1694a)] ——:『微積分法の新しい応用と,与えられた接線の条件から多くの曲線を 構成することへの応用』, 『学術論叢』13,7 月 (1694). [II.3] [ライプニッツ (1694b)] ——:『側心等時曲線についての問題の固有な構成.もっと一般な振動の本 性や微分法と,極めて幾何的でありながら他方機械学的なしかし最も一般な,超越曲線の構成. 与えられた点を通る任意の落下を理解するために,超越曲線の普遍的な発見法を付け加える』, 『学術論叢』13,8 月 (1694). [II.6] 『学術論叢』21, [ライプニッツ (1702)] ——:『和と求積法に関する無限科学の解析の新しいモデル』, 5 月 (1702). [II.5]
[ライプニッツ (1710)] ——:『ベキと微分の比較における代数計算と無限小解析の注目すべき記号法 と超越的な等質性の法則について』,Miscellanes Berolinensia as incrementum scientiarum, 1710.[II.2] [ラグランジュ(1759)] J.L. de Lagrange: 『最大値・最小値の方法の研究』,Misc. Taurinensia, Torino 1(1759). 『全集』I, pp.3–20.[II.2] [ラグランジュ(1775)] ——:『再帰的数列についての研究』,Nouveaux M´em. de l’Acad.royale des Sciences et Belles-Lettres, Berlin . 『全集』4, p.159.[II.8] [ラグランジュ(1788)] ——:『解析力学』,ラグランジュ氏 (M.de la Grange) による.Paris, MDCC.LXXXVIII. 『全集』11, 12.[II.8] [ラグランジュ(1797, 1813)] —— :『解析関数論』,A Paris, de d’imprimerie de la r´epublique, Prairial an V(1797).第 2 版 Gauthier-Villars(1813).[II.1] [ラグランジュ(1867–1882)] ——:『全集』,14 巻本(J.-A. セレ,G. ダルブー編),Paris, 1867– 1882.1973 年再版,Georg Olms Verlag (Hildesheim).[I.1] [ラプラス (1812)] P.-S. de Laplace: 『確率の解析的理論』,Paris, 1812,第 2 版 1814 年,第 3 版 1820 年22 .[II.6] [ランベルト (1768)] J.H. Lambert: 『超越的な円的量と対数的量のいくつかの顕著な性質について の覚書』, 『ベルリン科学アカデミー会報』17(1768), pp.265–322. 『全集』II 巻,pp.112–159. [I.6] [ランベルト (1770a)] ——:『円の面積と長さを求めることに対してあらかじめわかっていること』, Berlin(1770). 『全集』I 巻,pp.194–212.[I.6] 『ベルリン科学アカデミー会報』24(1770), pp.327– [ランベルト (1770b)] ——:『三角関数的観察』, 357. 『全集』II 巻, pp.245–269. [I.4] 『全集』 [ランベルト (1770c)] ——:『3 グレードごとのサインに対する代数的公式』,Berlin(1770). I 巻,pp.189–193.[I.4]
ussli Verlag (Z¨ urich).[II.6] [ランベルト (1946,1948)] ——:『数学全集』,2 巻,Orell F¨ 『クレレ誌』 [リウヴィル (1835)] J. Liouville:『あるクラスの超越関数の積分についての覚書』, 13(1835), pp.93–118.[II.6] 『リウヴィル誌』6(1841), pp.1– [リウヴィル (1841)] ——:『リッカティ方程式に関する新しい覚書』, 13.[II.9]
[リッカティ(1712)] J. Riccati:『接触する光線に関する逆問題の一般的解法, . . . そのような式に適 した曲線を見つけるための』,Giornale de’Letterati d’Italia, 11(1712), pp.204–220.[II.7] 『アメリカ数学月報』99–2, pp.101– [リシャート (1992)] N. Richert:『シュトラングの奇妙な図形』, 107.[I.4] 22
[訳註]日本語訳は現代数学の系譜 12『ラプラス 確率論』(伊藤清・樋口順四郎訳,解説,共立 出版,1986)がある.
252
参考文献
[ルジャンドル (1794)] A.M. Legendre: 『幾何学の基礎』,初版 (1794),第 4 版 (1806),他多く の版がでている. [I.6] [レギオモンタヌス (1464)] Regiomontanus:『三角法のすべて,全 5 冊』,1464 年に書かれ,1533 年に出版された. [I.4] 『アメリカ数学月 [レーマー (1940)] D.H. Lehmer:『ベルヌーイ多項式の最大値と最小値について』, 報』47(1940), pp.533–538. [II.10]
[ロクス (1963)] G. Lochs:『π の連分数・最初の 968 項』,Monatsh. f. Math.67(1963), pp.311– 316.[I.6] [ローゼン (1831)] F. Rosen:『モハメド・ベン・ムサの代数』,フレデリック・ローゼン訳編,London 1831.1986 年に Georg Olms Verlag から再版.[I.1] [ロバート,チェスターの (1145)] Robert of Chester:『算術と幾何の問題のアルジャブルとアルム カバラの書』,アル・フワーリズミの『アル・ジャブルの書』の最初のラテン語訳.B.B. ヒューに よる文献批判した新版が Steiner Verlag (Wiesbaden, Stuttgart), 1989 から出ている.[I.1] [ロピタル (1696)] G. de L’Hospital:『無限小解析』,pour l’intelligence des lignes courbes, A Paris, de l’Imprimerie Royale, M.DC.XCVI. [II.1] [ワイエルシュトラス (1861)] ——:『微分計算』,Vorlesung an dem K¨ oniglichen Gewerbeinstitute,手稿 (1861),H.A. シュヴァルツがタイプ.ベルリン・フンボルト大学数学図書館. [II.1] [訳者注意 2]頻繁に引用される学術雑誌は,雑誌のタイトルがすでに馴染みのあるものも多く,訳を 与えたものもある.原タイトルが知りたい人のために, 訳した雑誌名をまとめておく. 『アメリカ数学月報』 The American Mathematical Monthly.
An Official Journal of the Mathematical Association of America (Washington, D.C.)
『王立協会報』 Philosophical Transactions of the Royal Society of London, London 23 『学術論叢』 Acta Eruditorum Lipsiensium24 『ペテルブルグ・アカデミー紀要』 Commentarii Academiae Scientiarum Imperialis
Petropolitanae 『ベルリン科学アカデミー会報』 Memoires de Academie Science Berlin 『数学年報』 Mathematische Annalen (Springer-Verlag, Berlin) 『クレレ誌』 Journal f¨ ur die Reine und Angewandte Mathematik.
通称 Crelles Journal
(Walter de Gruyter, Berlin) 『リウヴィル誌』 Journal de Math´ ematiques Pures et Appliqu´ees. 通称 Liouville Journal
(Gauthier-Villars, Montrouge)25
23 24
25
[訳註]王立協会はロンドンばかりでなく, エジンバラや,ダブリンにもあったが,もっとも有名 で重要なのはロンドンのものであり, 特に断らない限り,ロンドン王立協会のことを意味する. [訳註]『ライプツィッヒ学術論叢』ないし『ライプツィッヒ学報』と訳すべきもの. 1409 年に設立 されたライプツィッヒ大学(ラテン名ウニヴェルシタース・リプシエンシウム)のオットー・メンケ が,1681 年の春ライプニッツに学術研究雑誌の創刊を相談し,翌 1682 年に創刊されたもの.第 1 号にライプニッツの論文が掲載されている. [訳註]本来この 2 誌は,ドイツ語とフランス語の違いはあれ,同じ『純粋及び応用数学雑誌』と いう名前で紛らわしいため,創刊者の名前で区別される.
[注意]記載ページは各項目の末尾に示し,ローマン体が上巻,イタリック体が下巻を表す ものとする. ◦
A A α0 + α1 + α2 + · · · (a, b) [a, b] a + ib arccos x arcsin x arctan x arcoshx arsinhx B(α, β) Bε (a) Bk Bk (x) cos x cosh x D det dx, dy d(x, y) dy/dx e ex exp x f (U ) f −1 (V ) f (x) f (x) grad f inf X L(y)
A の内部 135 A の閉包 136 無限級数 24 開区間 40 閉区間 40 複素数 68 アークコサイン関数,または逆余弦関数 58 アークサイン関数,または逆正弦関数 58 アークタンジェント関数,または逆正接関数 58 逆双曲的コサイン関数 67 逆双曲的サイン関数 67 ベータ関数 205 半径 ε,中心 a の円盤(または球体) 127 ベルヌーイ数 192 ベルヌーイ多項式 194 コサイン関数,または余弦関数 49 双曲的コサイン関数 65 区間の分割 61 行列式 198 無限小量 98
x と y の間の距離 121 y の導関数 98 オイラーの数,または自然対数の底 32 指数関数 32 指数関数 32
U の順像 146 V の逆像 146 関数 f (x) の導関数 101 f (x) の 2 階導関数 109 f の勾配 158 最大下界(または下限) 19 微分作用素 172
254
記号一覧
limn→∞ sn limx→x0 f (x) lim inf n→∞ sn lim supn→∞ sn ln x log a x n! `n´ j
Q R Rn |s| s(D) S(D) sin x sinh x {sn } sup X tan x x∈A (x1 , . . . , xn ) y y Δy0 , Δ2 y0 , . . . ϕn (x) Φ(x) γ Γ (α) κ μ(I) π ρ ∂A ∂f /∂x1 ∇f A2 z1 z2 zp
(数,点) 列の極限 5 関数の極限 48 最小集積点,または下極限 21 最大集積点,または上極限 20 自然対数 42
a を底とする対数 37 n の階乗 24 二項係数 24 有理数体 12 実数体 12 実 n 組全体の集合,または n 次元 (実) 線形空間 121 実数の絶対値 15 ダルブーの下方和 61 ダルブーの上方和 61 サイン関数,または正弦関数 49 双曲的サイン関数 65 (無限)(数,または点) 列 4 最小上界 (または,上限) 17 タンジェント関数,または正接関数 49 x は集合 A の元 42 ベクトル (または,n 組) 121 y の導関数 101 y の 2 階導関数 109 有限差分 14 ディラック列 113 誤差関数 158 オイラーの定数 199 オイラーのガンマ関数 107 曲率 122 長方形 I の面積 186 円周率 48 収束半径 92 集合 A の境界 194 偏微分 152 f の勾配(ナブラ) 158 行列のノルム 145 z の 1 ノルム 123 z のユークリッドノルム 121 z の p ノルム 123
255 z∞ P P∞ ai , i≥0 ai R i=0 f (x) dx Rb f (x) dx Ra f (x, y) d(x, y) I A⊂B A∩B A∪B A\B {A ∀ ∃