遊びの創造共育法第5巻 積木遊びと造形 (遊びの創造共育法)

和 久 洋 三

積 木 遊 び と 造 形

玉川大学出版部

つながるかたち つながるこころ つながるいのち

❺

積木遊びと造形

和 久洋三

玉川大学出版部

目 次 

❺

積木遊びと造形 Ⅰ  積木遊びと造形活動  

6

1　積木遊び・四角柱／正三角柱 建築遊び

8

2　積木遊び・ケルンブロック 建築遊び

9

3　積木遊び・ケルンブロック 建築遊び

10

4　積木遊び・ケルンブロック 建築遊び

11

5　積木遊び・立方体／直角二等辺三角柱 構成遊び 6　積木遊び・園活動 ピアノの合奏 7　積木遊び・園活動 遊園地

14

16

8　積木遊び・園活動 宇宙ステーション 9　積木遊び・園活動 宇宙の街

18

20

10　積木遊び・ワークショップ／講座 恐 竜 11　積木遊び・園活動 錦帯橋のある町 12　積木遊び・園活動 岬のある町 13　積木遊び・園活動 五重塔

12

36

22 28

32 14　積木遊び 似たもの探し 15　造形活動 イスづくり 16　造形活動 クルマ

38 40

42

17　造形遊び 紙管の船

43

18　造形活動 木っ端の動物

44

19　造形活動 木っ端のオブジェ   20　造形活動 木っ端の塔

46

48

21　造形活動 鏡のレリーフ

50

22　造形活動 石膏のレリーフ

51

23　造形活動 発泡材のオブジェ

52

24　造形活動 紙管のオブジェ 25　造形活動 レンガに彩色 26　造形活動 紙管のスツール

53 54 55

27　造形活動 紙管の動物とロボット 28　造形活動 ロボット

58

29　造形活動 ダンボールののりもの 30　造形活動 空箱のビル

62

32　造形活動 ダンボールの公園 33　造形活動 紙管の海賊船

74

34　造形活動 紙管のお部屋

75

64

35　造形活動 ぼくの家 わたしの家 36　造形活動 お菓子の家

77

37　造形活動 巨大万華鏡

78

38　造形活動 正四面体のオブジェ

40　造形活動 三角柱のロケット

82

41　造形活動 三角錐の変身

83

42　料理活動 四角いゼリー

84

43　料理活動 お菓子の家

81

85

44　造形活動 ビニールハウス

86

45　造形活動・立方体 パターン積木

88

積木遊びと園活動

童具共育がはじまって　90 錦帯橋のある町をつくる   92

ピアノの合奏   94 岬のある町   95 エッセイ

積木の社会  

96

60

61

31　造形活動 トーテムポール

39　造形活動 トライアングルハウス

56

76

80

Ⅱ  積木遊びの発展   直角二等辺三角柱

100 102

ケルンブロック A C 1 の内容 探究認識活動

103

104

① すべての四角形が同じ大きさの場合 ② すべての四角形が異なる大きさの場合

112 112

③ 同じ大きさと異なる大きさの四角形の場合 ④ 内接する四角柱の塔 ⑤ 融合四角形

112

114

116

⑥ 形が同じで量が違うものと量が同じで形が違うもの

みたて遊び

121

建築遊び 126

パターン遊び

128

花模様の構成遊び 138 立方体の構成遊び ① 140 立方体の構成遊び ② 141 立方体・線対称の構成遊び ③ 142 立方体・線対称の構成遊び ④ 143 立方体の構成遊び ⑤ 144 立方体の構成遊び ⑥ 145 立方体の構成遊び ⑦ 146 立方体の構成遊び ⑧ 147 立方体の構成遊び ⑨ 148

116

正三角柱

150

探究認識活動 形の理解

152

152

同形同量・異形同量の展開 相似形の展開 

159

いろいろな形の展開

パターン遊び みたて遊び

154

159

161 167

ケルンブロックの展開

168

ケルンブロック B 2 建築遊び 168 ケルンブロック 建築遊び 169 ケルンブロック B 2 パターン遊び 169 ケルンブロック 建築遊び 170 ケルンブロック パターン遊び 170 ケルンブロック C 2 直角二等辺三角形 171 ケルンブロック 建築遊び 173 ケルンブロックのツートン遊び 174 ツートンブロック 174

　Ⅰ  積木遊びと造形活動 

1  積木遊び・四角柱／正三角柱 

建築遊び

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　2 歳 〜

写真のように a（立方体）b（2 倍体）c（3 倍体）の四角 柱パーツをそれぞれ 4 個用意します。屋根を取りは ずして自由に置き換えられることを条件にすると 様々な建築物をつくることができます。b と c は正 三角柱を両面テープで固定して変形しないようにす ると 2 〜 3 歳児でもこの活動を楽しむことができま す。

c b

b

a



a

1

2

3

4

5

6

7

8

9

2  積木遊び・ケルンブロック 

建築遊び

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　4 歳 〜

≪ケルンブロック≫ B 1 , A B 1 , B 2 で≪パターンケー ス 5 × 5 ≫を土台にして家屋のスペースをつくり、 A 1 , O M 1 だけを自由に移動させるといろいろな屋 根を表現することができます。

OM1

1

A1

B1

AB1

2

B2

3



4

5

6

7

8

9

3  積木遊び・ケルンブロック 

建築遊び

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　4 歳 〜

ケルンブロック A B 1 , B 1 , B 2 , C 2 を使って同形のユ ニットを 4 体つくり、様々な神殿形式の建造物をつ くります。ケルンブロック C 2 の部品を仕上げの最 終段階で使うと効果的です。

AB1

B1

B2

1

このユニットは直方体 2 個、正方 形 板 4 枚、 小 角 柱 2 倍 体 2 本、 小 角柱 4 本でつくられています。

10

2

5

3

4

6

C2

4  積木遊び・ケルンブロック 

建築遊び

1

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　4 歳 〜

ケルンブロック A 1 , B 1 , A B 1 の一部を使って基礎部 をつくり、残った部品を自由に組み合わせて、A S 1 の特徴を生かした建物を表現します。 ケルンブロック A S 1 は円柱状の形を内包させるこ とによって曲面を生かした構成ができます。立方体 と円柱を関係づける形にもなっています。 2

AS1

A1

B1

AB1

3

基礎部には立方体 6 個、直方体 3 個、正方形板 3 枚を使用してあります。

4

11

5  積木遊び・立方体／直角二等辺三角柱 

1

2

12

3

写真 1 のように 120 個の立方体を積み 重ね、四方向の同じ位置が対称になる ように直角二等辺三角柱の向きを変え ていくと、次々に美しい形の変化を生 みだすことができます。

構成遊び

美的表現活動・探究認識活動　5 歳 〜

4

5

13

6

14

6  積木遊び・園活動 

ピアノの合奏 （ P . 94 ）

どこからか四人以外の子どもの声も聞こえてきます。

共感共同活動　5 〜  6 歳児

箱の中で歌っていた子どもが出てきました。

手前の細い角柱によって鍵盤が 動く仕掛けになっています。

7  積木遊び・園活動 

遊園地

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　5 歳 児

17 たった一人の 5 歳児が 1 週間かけて行ったことのな い遊園地をつくりました。同じクラスの年長さんが 1 〜 2 歳児の侵入を防いでくれたおかげで夢に描い た遊園地を完成させることができました。

8  積木遊び・園活動  宇宙ステーション

共感共同活動・美的表現活動・探究認識活動

積木が導入されて 1 ヵ月後の活動です。年長さんと

紙工作もいっぱいつくって彩りを添えてあります。

年中さんがつくった後に、年少さんも加わりました。

全園児の心が一つになった活動でしたと園長先生。

20

9  積木遊び・園活動  宇宙の街

保護者参観日にお母さん達を驚かせようとつくった 宇宙の街、いたるところに細かい工夫があります。

探究認識活動・共感共同活動・美的表現活動　5 〜 6 歳児

星をかたどった基地。

21 宇宙船も立派にできました。

宇宙人もいるんだよ。

天の川には小さな舟が 浮かんでいます。

胴体は積木を重ね合わせました（童具子育て講座） 。

10  積木遊び・ワークショップ／講座 

ワークショップ　子どもと保護者

恐  竜

共感共同活動　4 歳 〜

保育者が十人がかりでつくりました。

子ども達が二十人集まって。

お母さんと一緒に。

24

保育者講座で。

2 〜 5 歳の子ども達と保護者が一緒に。

保育専門学校の学生達。

25

4 〜 8 歳児

積木の収納箱を利用して。

幼稚園のフェスティバルで、年長さんの卒園の思い出ができました。

26

ダスプレトサウルス

両面テープも使ってみました。

トリケラトプス

保育園で　5 〜 6 歳児 ダスプレトサウルス

27

保育園で　5 〜 6 歳児 トリケラトプス

保育園で　5 〜 6 歳児 トリケラトプス

11  積木遊び・園活動

錦帯橋のある町 （ P . 92 ） 共感共同活動・探究認識活動・美的表現活動　4 〜 5 歳児

河口の港に行った子ども達は川の中流にも興味を

28

もって出かけることにしました。ダイナミックな構 成力、緻密な観察力、的確な表現力。この子どもの 力を信じることができた時に子ども主体の共育がは じまった保育園での活動です。

ビーズの川の岸辺には子ども達の要求で 砂利を敷きつめました。川との素材感を 変えたかったようです。

山と川と錦帯橋のある岩国の町が再現されました。

山づくりには 3 歳児も参加しました。

岩国城は 4 回つくり変えて完成。

山と山をつなぐ馬の背。

博物館の白ヘビは粘土で。

31 山の基礎づくりは収納箱で。

12  積木遊び・園活動 

岬のある町 （ P . 95 ）

共感共同活動・探究認識活動・美的表現活動　4 〜 5 歳児

山から門を通り抜け海へ。積木でつくった岬のある町が完成しました。

32

山の土台には≪プレイボックス≫を使いました。

が び さ ん

浜辺から峨嵋山を望む。防波堤のテトラポットも表現されています。

≪おどろ木≫を積んでつくっている山。

象の鼻の形をした岬。

子ども達が表現した樹々の密集する森に保育士から感嘆の声が上がりました。

33 最初に直方体を並べて岬の形をつくりました。 「象の鼻みたいだったよね」

プールと体育館のある学校の校舎。

学校には鉄棒やスベリ台もあったよね。

「校舎の窓、うまくつくれたね」

学校の校舎と校庭。

遊具のある小学校の校庭。

板を使って屋根づくり。

「屋根の先は曲がってたよね」

34 仁王門の中には仁王様が。

格子のある仁王門は海につながっています。

「仁王門」大きいね。中に仁王様がいたね。

格子の中の仁王様。

ホテルは山の中腹にありました。

山道のお地蔵様。

35

もう一匹、もう一匹とモザイクでカニをつくりました。

灯台の展望台。

海にはここにもあそこ にも「カニ、カニ…」

山の中腹のホテル。

青空に向かって立つ灯台。

13  積木遊び・園活動 

五重塔

共感共同活動・探究認識活動・美的表現活動　4 〜 5 歳児

緻密な寺社建築のディテール表現。

≪かずの木≫でつくったのは塔の壁面。

瑠璃光寺の五重塔。

37

格子の中のお釈迦様。

る

り こう じ

荘厳なたたずまいの瑠璃光寺。背景には樹々が生い茂る山が、何度もつくり変えて仕上げました。

14  積木遊び 

似たもの探し

活動のねらい 立方体や直方体・三角柱・三角錐・四角錐等、積木 でみたてられる形を家の中で、街の中で探してみま

探究認識活動　2 歳 〜

す。

リモコンや電卓も四角

食パン 羊かん

38

電子レンジ

「あっ！　四角いね」

ビル群

サンドイッチ

テレビ 豆腐

三角柱のおにぎり

ノートや本や辞書も バッタ

39

バスも大きな角柱。

東京タワー

郵便ポスト

40

6 歳児

15  造形活動 

イスづくり 美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　2 歳〜

活動のねらい

活動の注意点

イスと立方体（直方体）の関係を感じとります。

背もたれや脚柱は座面と両方にドリルで穴をあけ、 細い丸棒（丸い竹箸等を 2 〜 3 c m に切って使うこと もできます）で接着すると丈夫になります。

4 歳児

5 歳児

41

6 歳児

3 歳児

4 歳児

2 歳児

4 歳児

16  造形活動  クルマ

活動のねらい 車体と直方体の関係を感じとりながら、子どもが大 好きな自分で動かせる手づくりのクルマをつくって

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　4 歳〜

楽しみます。

42

4 歳児 6 歳児

す。

に彩色しま

ら遊んだ後

組み立てた

2 歳児

角材でもできます。3 歳児

紙管と木っ端の船。2 〜 3 歳児

17  造形活動 

紙管の船

美的表現活動・共感共同活動　2 歳 〜

43

機械部品を取りつけた船。4 歳児

3 歳児

ビーズの海に船を浮かべて 遊びました。2 〜 3 歳児

サイ　5 歳児

18  造形活動 

木っ端の動物

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　4 歳 〜

象　12 歳児

ダックスフンド　6 歳児

45

象　5 歳児

鹿　7 歳児

ワニ　6 歳児

46 9 歳児

19  造形活動  木っ端のオブジェ

5 歳児

活動のねらい 粘土を使わず白で地塗りをしてから彩色すると、面 の組み立てに敏感になり、粘土を使った時とは違っ

美的表現活動・探究認識活動

ぼくの街　7 歳児

た味わいが出ます。

私の街　8 歳児

6 歳児

3 歳児

47

3 歳児 4 歳児 4 歳児

3 〜 4 歳児 2 歳児

20  造形活動 

木っ端の塔

美的表現活動・探究認識活動　4 歳 〜

活動の組み立て ① ガウディの建築写真を見せてイメージをふくら ませました。 ② 木っ端や板を貼り合わせてから紙粘土をつけ彩 色します。

4 歳児

49

5 歳児 ← 　6 歳児

5 歳児

21  造形活動 

鏡のレリーフ

美的表現活動・探究認識活動　3 歳 〜

活動のねらい

50

① 地の色とガラスに映るものとの関係の面白さを 感じとります。 ② その前を人が通ると画面が変化します。 活動の組み立て ① 板に木っ端を貼ります。 ② 好きな色で木っ端のレリーフに彩色します。 ③ 鏡の破片を貼って完成。

5 歳児

22  造形活動 

石膏のレリーフ 美的表現活動・探究認識活動　2 歳〜

活動のねらい

活動の組み立て

① 石膏にしみ込んだ偶然生まれる色彩の美しさを

① 板に木っ端を貼りつけます。

感じとります。

② 石膏液を上からまんべんなくたらします。

② 色彩の凹凸による光と陰影の変化を楽しみます。

③ 石膏が固まったら、水に溶かした絵具を振りか けたり、たらしたりして作品にします。

5 歳児

52 23  造形活動 

発泡材のオブジェ 美的表現活動・探究認識活動　2 歳〜

活動のねらい

活動の組み立て

① 角柱の変化を楽しみます。

① 発泡スチロールの角柱材にハンダごてで穴をあ

② 内部と外部に対する意識を持って彩色する活動

けたり線を彫ったりします。

となります。

② 白の水性ペイントを塗ってから彩色。

3 歳児

10 歳児

5 歳児

9 歳児

24  造形活動  紙管のオブジェ

6 歳児

活動の組み立て

53

角柱の紙管に紙粘土をつけてから軟らかい針金を巻 きつけて彩色します。 美的表現活動　4 歳〜

7 歳児

10 歳児

54

4 歳児

25  造形活動 

レンガに彩色

美的表現活動・探究認識活動　3 歳〜

活動の組み立て ① 色鉛筆の白や黄色でレンガに線を引きます。 ② 色鉛筆で分割させてできた面に彩色して完成さ せます。 活動の注意点 各面に線がつながるようにすると、面と面に関係性 が生まれます。 3 歳児

3 歳児

26  造形活動 

紙管のスツール

55

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　2 歳〜

活動のねらい 直方体状の紙管を組み合わせて立方体をつくる経験 をします。 活動の組み立て ① 水性ペイント白の地塗りをしてから紙管をボン ドで貼り合わせます。 ② 彩色して完成。 6 歳児

2 歳児

4 〜 5 歳児

4 〜 5 歳児

6 歳児

3 歳児

27  造形活動

紙管の動物とロボット 57

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　3 歳〜

活動のねらい 人体と動物の共通の構造を知ることができます。 活動の組み立て 腕部、脚部はその長さに合ったボルトとナット 2 本 を使います。

2 歳児

いろいろな部品を用意しておいて接着します。

5 歳児 ← 　6 歳児

28  造形活動  ロボット

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　4 歳〜

活動のねらい 人体の単純な構造を知ります。 活動の組み立て ① 足の部分は脚がはめ込めるように上面を凹字形 にカットしておきます。 ② 胴体と手をつなぐボルトとナットが必要です。 ③ テープデッキ等を分解した部品を貼ります。 ④ 彩色して完成。

8 歳児

58

6 歳児

5 歳児

5 歳児

60

斜面をゆっくりすべり おります。1 〜 2 歳児

29  造形活動 

ダンボールののりもの

みんなの車両とつないで「発車オーライ」 　2 〜 3 歳児

美的表現活動・共感共同活動　1 歳〜

上下面のダンボールを切りとってつなぐと歩いて動ける 電車になりました。2 〜 3 歳児

30  造形活動 

空箱のビル 美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　1 歳〜

活動のねらい

活動の組み立て

箱を組み合わせるといろいろな形のビルができるこ

① 空箱をつなぎ合わせてビルの形をつくります。

とを経験します。

② 水性ペイントで白を全面に塗ります。 ③ 自由に彩色して完成。

「お母さんも塗っていいよ」

1 〜 3 歳児

62

1 〜 3 歳児の作品

31  造形活動  トーテムポール

活動の組み立て ① ダンボールの箱を水性ペイントで白く塗ります。 ② ダンボールの切れ端や紙管を箱につけて顔をつ

美的表現活動・共感共同活動

くります。 ③ 彩色して完成。

「こうすると塗りやすいね」 　2 歳児

4 〜 5 歳児の作品

63

。

トごっこ

てロボッ

足につけ

紙管を手

講座でお母さん、お父さん、保育者がつくりました。

32  造形活動 

ダンボールの公園 美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　3 歳〜

活動のねらい

活動の注意点

積木遊びの経験を生かして、大きなダンボールを組

① ダンボールの下地は水性ペイントの白を使うと

み合わせてトンネルづくりをしたり、迷路をつくっ

発色がよくなります。

て遊びます。

② 内側と外側の色を変えてコントラストの美しさ を感じられるようにします。 ③ 入口や扉は床面から 10 c m くらい上に開けると 丈夫に使えます。

64 「手で塗ったんだよ」

6 歳児

切り抜いて内側の色が見えるように外側に張りつけました。4 〜 6 歳児

黒い線を描いてから彩色、2 枚の扉でつないでいきました。4 〜 5 歳児

65

う。」

度くぐろ

、もう一

「ワーイ

4 歳児

愛・地球博のワークショップ会場で迷路の街をつくりました。

ダンボールをロープで区切ってから彩色しました。

69

ところどころに木っ端も貼ってみました。4 〜 6 歳児

保育者講座の作品（線は絶縁テープ）

← 　いろいろな色の絶縁テープを貼ってからポスターカラーで彩色しました。↑

幼稚園のフェスティバルの入口。4 〜 5 歳児

保育者講座の作品

保育者講座の作品

72

三角柱のオブジェ　2 〜 3 歳児

73

幼稚園児  年中組

74

33  造形活動 

紙管の海賊船

美的表現活動・探究認識活動・共感共同活動

みんなで色塗りした紙管を組み合わせて船をつくりました。

34  造形活動 

紙管のお部屋

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動

2 〜 3 歳児

75

35  造形活動 

ぼくの家  わたしの家

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　2 歳〜

「窓はぼくが描いた形をお母さんに切ってもらったんだよ」 　3 歳児

2 歳児

1 〜 3 歳児 お菓子は紙粘土で形をつくり、 彩色して木工ボンドで貼りつけ ます。3 歳児

77

36  造形活動 

お菓子の家

美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動　2 歳〜

37  造形活動 

巨大万華鏡

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動

活動のねらい 巨大な万華鏡による異空間の体験をします。 活動の組み立て ① 小さな万華鏡をつくって遊びます。 ② 大きな画面にテーマを決めて作品をつくります。

78

③ 巨大な万華鏡をつくります。 ④ 万華鏡を少しずつ動かして画面を見て遊びます。

5 〜 7 歳児

色の輪ゴムでパターンをつくって覗いてみました。

万華鏡のつくり方 ① 筒状の正三角柱になるように黒画用紙を台紙と なる厚紙に貼りつけます。 ② 正三角柱の 1 面の大きさに合わせたプラ板を用意 し、黒画用紙にプラ板を 3 面貼ります（接着剤は面 に塗らず端にしかつけないように注意）。 ③ 三角柱状に組み立てて、接着すると完成。活動 でつくった作品を覗き込みましょう。 ④ 先にビー玉を取りつけると違った絵柄が楽しめ ます。 4 〜 5 歳児

79

38  造形活動 

正四面体のオブジェ 美的表現活動・探究認識活動

活動のねらい

活動の組み立て

① 正三角形が正四面体を構成することを知ります。

① 一辺が 15 〜 30 c m の同形同量の正三角形の塩ビ

② 透明な色の重なり合いの美しさを感じとります。

板 4 枚に透明のカッティングシートを帯状に切って

活動の注意点 光が差し込む場所に置くと美しさが際立ちます。

貼ります。 ②  4 枚の正三角形をセロハンテープで貼って正四面 体をつくります。

39  造形活動 

トライアングルハウス 美的表現活動・探究認識活動・共感共同活動

活動のねらい

活動の組み立て

① 正三角形と正四面体の関係を理解します。

① 割箸 6 本分が一辺となる正三角形をダンボールで

② 相似形の三角形がたくさんあることや菱形、台

3 枚つくります。

形、正六角形が正三角形によってできていることを

② ダンボールに割箸で三角形をつくって貼ってい

感じとります（形探しをして遊べます）。

きます（写真）。 ③ 割箸でできた三角形の中を彩色します。 ④ 内側をガムテープで止めて正四面体を組み立て ます（底の 1 面は省略します）。 ⑤ 窓を切り抜くと完成します。

40  造形活動 

三角柱のロケット 美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動

活動のねらい

活動の組み立て

①  3 面で三角柱がつくれることを体験します。

① 長方形と正三角形と直角二等辺三角形の板をそ

② 三角形と四角形の板で三角柱のロケットをつく

れぞれ 3 枚用意します。

り三角形の構造と機能を知ります。

② それぞれの板に地塗りをします（例えばライトグ レー）。 ③ 金属部品等を板に貼りつけます。 ④ 彩色。 ⑤ 蝶番で板を留めて完成。 活動の注意点 長方形の 3 枚の板の両端は開けられるようにして蝶 番はつけません。

テープデッキの分解も楽しい作業です。　5 歳児

83

41  造形活動  三角錐の変身

美的表現活動・探究認識活動　4 歳〜

活動のねらい ① ユニット（単体）が組み合わさることによって形 体が多様化することを知ります。 ② 三角と四角の関係を感じとります。 ③ 色彩の組み合わせに対して敏感になります。 活動の組み立て

貼り合わせたり彩色する時に箱を使うと便利です。

① 正方形を対角線上で二度折り、対角線の一つを 正方形の中心まで切断します。 ② 切断された隣同士の三角形を重ね合わせて貼る と三角錐がつくれます。 ③ 三角錐を四つつくって写真のように貼り合わせ るとできあがります。

た。

っちゃっ

帽子にな

84

42  料理活動  四角いゼリー

探究認識活動・共感共同活動・探究認識活動　3 歳〜

活動のねらい ① 素材の変化（固体→液体→固体）。 ② 立方体をつくります。 活動の組み立て ① グラニュー糖と水を合わせて火にかけます。 ② 沸騰したら火からナベをおろし、ゼラチンを加 えて溶かします。 ③ あら熱をとって、レモン汁を加えます。 ④ 型に流し込み、冷蔵庫で冷やし固めて完成です （フルーツを入れるとフルーツゼリーになります）。

43  料理活動 

お菓子の家

探究認識活動・美的表現活動・共感共同活動　4 歳〜

活動のねらい 食パンの四角柱から三角柱をつくりだすことを経験 します。

① 食パン一斤を半分に切ってジャムをつけます。

③ クリームを塗って。

② 食パンのミミを切り落としてから三 角形に切って屋根にします。

④ クッキー等をつけて完成。

44  造形活動 

ビニールハウス 美的表現活動・共感共同活動・探究認識活動

86

活動のねらい

活動の組み立て

① 四角や三角の空間が面で構成されていることを

① プラスチックのパイプを組み合わせて四角や三

知ります。

角の空間をつくります。

② 水で洗い落とされる色彩の変化を楽しみます。

②透明のビニールシートで囲います。 ③ ポスターカラーで各面を彩色します。 ④ 子どもを中にも入れて水をかけ、水鉄砲やホー スで子ども達にポスターカラーを洗い落とさせま す。

「ワーイ見えてきた」

水鉄砲でエイエイエイ。4 〜 5 歳児

87

見えなくしちゃおう。3 歳児

トンネルくぐりをしよう。3 歳児

上から水をかけられて、 「びっくりしたなぁ」 　3 歳児

88

45  造形活動・立方体 

パターン積木 美的表現活動・探究認識活動

活動のねらい

活動の注意点

立方体の表面に一定の秩序をもったパターンを描く

① スプレーラッカーを使用すると美しく仕上りま

ことによって、立体的な連続パターンの美しさを感

す。

じとります。

② 10 歳以上の児童、保護者によって制作します。

活動の組み立て ① 立方体（1 辺 45 m m ）を 8 個用意します。 ② 目どめ材を塗り、スプレーラッカーの白で地塗 りをします。 ② パターンに合わせてマスキングテープを貼って 好みの色のスプレーラッカーを吹きつけます。

89

積木遊びと園活動

90

童具共育がはじまって

　数年前まで、各クラスには「童具コーナー」

ループで遊んでみたのですが、２歳の子どもが

と一緒に、ごっこ遊びが楽しめるように木の流

自分のつくりたいものをつくって、保育士達に

し台、テーブル、椅子、ベッド、おままごと

「見て、見て、これね。ゆきちゃんのお家」と

セット等、いわゆるどこの保育園にもある「お

つくった喜びを伝えたり、３人で協力して長い

世話コーナー」を設置していました。

電車をつくったりしはじめました。

　このコーナーでは子どもたちが家庭でのお父

　だんだん積木の持っている力に納得してきた

さん、お母さん、子ども役になりきって生き生

保育士達は、クラスの年齢に応じた積木の量や

きと遊んでいましたので、和久先生の「そのう

大きさを考える等、積木の活動に意識が向かう

ち、そのコーナーはいらなくなるよ」と言われ

ようになっていきました。

た言葉に内心、反発を感じていました。

　それから、子ども達が目を見張るばかりの構

　「私達は『童具コーナー』も大事なのですが、

築物をつくるようになるまでそんなに時間はか

やはり『お世話コーナー』も子ども達には必要

かりませんでした。

不可欠なものなので排除するわけにはいきませ

　こんなことがありました。年長児のクラスに

ん」とはっきりと言ったことを覚えています。

自己表現が下手で、こちらからその子の言いた

　そればかりか、じつは当初、保育士達は積

いことを予想して話すと、首をタテやヨコに振

木に子ども達が本当に夢中になるのかどうか

るだけの意志表示しかしないＡくんがいました。

半信半疑だったのです。最初２歳児のクラスで

でも A くんは積木の活動が大好きで、その時ば

45 m m の立方体を８個ずつ与えて個別指導し

かりは充実している様子がうかがえました。あ

てみました。

る日、体験学習で市立図書館に行った帰りに立

　「ポーポーポー、電車が走っているよ。たく

ち寄ったマクドナルドのお店を積木で見事につ

ちゃんも乗ってみようね。そして、パパとママ

くりました。 「Ａくん、すごいね。本物のマク

もね」「ピーポー、ピーポー、救急車が通りま

ドナルドのお店みたいだね」と保育士達が褒め

すよ。その横をパトカーも通りました」

てあげると、クラスのお友達と一緒にその時の

　子どもたちに解りやすい話をしながら積木を

楽しかった話をしはじめました。その日を境に、

連ねて走らせてみました。すると子どもたちは、

Ａくんの表情が日増しに明るくなり、積木でつ

すぐに保育士達がやって見せたように、「ポー

くる世界もダイナミックでありながら、細かい

ポーポー」と積木を動かして楽しみはじめたの

箇所も細心の注意をはらったみごとな創作をす

です。翌日、少し積木の数を増やして３人のグ

るようになりました。

　A くんは言葉でなかなか伝えられなかったの

力を合わせて共同作業することができるように

ですが、積木活動を通し自己表現することがで

まで成長したのです。

き、ひとに自分の存在を認めてもらえたことが

　このように積木の秘めた力を教えてくれたの

自信となって、初めて生きる喜びを味わうこと

は子ども達でした。いつの頃からか、クラス

ができたようです。

の中から「お世話コーナー」は消えていました。

　そして、忘れることができないのがみっく

これは具体的な形あるものすべてを、積木でつ

んです。この子は０歳児から童具で遊び、ク

くることができる楽しさを知った子ども達に

ラスの中でいつも童具活動の中心となっている

とっては、すでに不要なものになっていたので

子でした。2 歳の時のことです。自分が積木で

す。

つくった家と友達がつくった家を「つなげよう、

　こうした中で子ども達には計り知れない力が

つなげよう」とみんなを誘い、直方体で道路を

存在していることを知った保育士達は、保育内

つくり、大きな構築物をつくるきっかけをつ

容を真剣に考えるようになりました。そして、

くったことがありました。２歳にもかかわらず、

細切れの保育ではなく、子ども達の欲求を一番

積木だけでなく友達を一つにまとめる力、＜多

に考え、一つひとつの活動に「つながり」のあ

様を統一＞する力があることを実証してくれま

る「創造共育」に向かいはじめたのです。

した。

　そして、お互いの保育にプラスになるように

　みっくんと一緒に入園した子ども達は０〜１

１日１回、みんなが考えていることや新情報を

歳児の時、基本になる立方体と直方体の積木で

知らせあったり、子どもの活動で感じたことを

約１年６ヶ月間、つくっては壊すことの繰り返

話し合うようになりました。このミーティング

しを楽しみました。

によって、担任のクラスの子どもだけでなく、

　それがある日、つくった物をひとに認めて

全体の子ども達の様子が解るようになり、園内

もらいたい、という思いが生まれたようです。

がバリアフリーになりました。

「こわさないで」「先生、見て見て」の言葉が出

　いつの間にか、我が園の子ども達は積木の活

はじめました。そして、それと同時に子ども達

動を自分達で計画するようになり、その内容も

はお互いをも認めあうようになり、クラスが童

多岐にわたるようになりました。その幾つかの

具を通して一つにまとまっていったのです。そ

活動を紹介させていただきます。

して、さらに１年間経過し、3 歳児クラスにな るとテーマを決めて活動することが可能になり、

（共楽保育園主任保育士・伊藤己千代）

91

積木遊びと園活動 ①（ P . 28 〜 31 ）

錦帯橋のある町をつくる

92

　積木遊びを通して、私達保育士の子どもに対

見方をする子どももいることを知りました。

する認識が全く変わった体験をお話します。

　こんなこともありました。2 ヵ月前に入園し

　年長、年中、年少児が城下町の山口県岩国市

た年長児のゆう子ちゃんは、すぐに積木の魅力

を訪れ、錦帯橋を渡り、ロープウェイに乗車し

にとりつかれました。しかし、みんなと同じよ

て、岩国城から岩国市を一望した活動を積木で

うに複雑な構成ができずとまどっています。他

表現した時のことです。

の子ども達は 3 年間の童具活動を積み重ねる中

　私達は子ども達の思いもよらなかった洞察力

で、しぜんと積木の形や大きさに法則性がある

や、観察力の鋭さと表現力の豊かさに圧倒され

ことを知り、いろいろな組み合わせ方を学習し

たことがあります。

てきたのですから無理もありません。そんな時、

　年長児が錦帯橋の優雅さをみごとに構築して

いつも童具活動の中心になるりさちゃんが「ゆ

見せてくれました。彼等は長い時間、錦帯橋の

う子ちゃん、一緒にやろう。ゆう子ちゃんは欄

下からあごをあげ、目を見開き、巧みに組み合

干のところをつくってくれる？」と誘っていま

わされた技術に感動して釘づけになっていまし

す。年長児クラスになるとお互いの能力をしっ

たが、すでにこの時、どの形のどの大きさの積

かり受け止めているので、童具活動のリーダー

木を組み合わせたらこの橋を表現できるか頭の

が担当のポジションを指示してくれるのです。

中でイメージしていたようです。

　私達はほとんど傍観者としているだけで、指

　橋だけではなく、しんちゃんは上昇していく

導は不必要でした。

ロープウェイの中から見た眼下の建物がだんだ

　保育者の役割は教えることではなくあくまで

ん小さくなったことが印象深かったようで、小

も子ども達の力を引きだす援助者であればいい

さい建物をたくさんつくって街並を表現しまし

のだとこの時自覚させられました。積木遊びを

た。けんくんは武家屋敷やおみやげもの屋さん

はじめて 3 年の月日が必要でした。

の内部をダイナミックにつくりました。

　岩国城から見た大パノラマは 85 箱の積木で

　そして、同じものを見ても積木で立体的に表

表現されましたが、これだけの積木を使いこな

現する子どももいれば、≪ケルンモザイク≫で

せる集中力に対しても脱帽した 3 週間の活動で

平面的に表現しようとする子どももいました。

した。

三次元的な見方をする子どももいれば二次元的

（主任保育士・伊藤己千代）

93

積木遊びと園活動 ②（ P . 14 〜 15 ）

ピアノの合奏

94

　6 月のある朝、保育園の玄関に入ると子ども

ありました。

達に両手を引っ張られて年長組に連れて行かれ

　それから 2 〜 3 日して、また、ごろうくんと

ました。子ども達の顔を見ればなにかをたくら

ゆりちゃんに引っ張って行かれました。こんど

んでいるのは明らかです。

はなにがはじまるのだろう……。私がスタンバ

　「はじまり、はじまり」という声と同時に、

イすると、 「かえるのうた」の輪唱が始まりま

保育室を区切るアコーディオンカーテンが開き

した。そして、それと同時にどこからともなく

ました。

ドレミに転嫁した「かえるのうた」の旋律が聞

　「かえるの歌が聞こえてくるよグァグァグァ

こえてきます。

…」

　 「ひょっとしてここに子ども達が入っている

　みんなが積木の鍵盤を指で叩きながら一斉に

の？」

歌いはじめました。私は胸に熱いものが込みあ

　積木の収納箱で、前後左右と上部が囲まれて

げてきて、一瞬声が出ませんでした。

いる場所を指さすと、担任がにっこりうなずき

　驚いたのは、ピアノを弾くと鍵盤が動くよう

ました。

に工夫されていたことです。仕掛けは長細い積

　そこには子ども三人が入っていました。

木を土台にして直方体を 2 列に組み合わせただ

　私は嬉しくなって、保育士全員とこの感動を

けの単純なものでしたが、ほんとうに美しい音

分かち合いたくてみんなを呼び集めました。

色が聞こえてくるようでした。

　 「もう一度聴かせて」

　「先生、どうじゃった？　森の音楽隊」

　子ども達はまるで本物のピアノを弾くように

　「森の音楽隊？」

歌いながら合奏してくれました。保育士が子ど

　子ども達にいきさつを聞いてみると 5 月の体

も達に熱烈な拍手とエールを送ったのは言うま

験学習＜森の探検＞につながっていることが解

でもありません。

りました。

　子ども達は「音」という形のない抽象的なも

　森の奥深くに小川が流れていて、静けさの中

のまで積木遊びに導入して、自分達が体験した

に「グァグァ」と聞こえてきた数匹のカエルの

感動を表現してくれました。こんな子ども達の

鳴き声が耳に残っていたようです。

光景を見られる私達はなんて幸せなんだろうと

　夕方、その部屋をのぞいてみると、大切なピ

改めて思わされた活動でした。

アノが傷つかないように、そっとフタが閉めて

（主任保育士・伊藤己千代）

積木遊びと園活動 ③（ P . 32 〜 35 ）

岬のある町 　園児達と、＜園外保育＞で山口県室積の象鼻

　帰路、普賢寺に立ち寄りました。海を守り続

ケ岬を訪ねました。山があり、海があり、子ど

けている仁王像や、変わった屋根の形に見入っ

も達が求めている自然がたくさんある岬です ｡

ていた子どもの「積木でつくってみたいなあ」

その日は空の澄みわたるとてもよい天気でした。

というつぶやきが聞こえました ｡

　「象鼻ケ岬ってほんとうに象の形になってい

　保育園に帰ると、さっそく積木の活動 ｡ はじ

るのかな？」と楽しみにしていた子ども達……。

めにつくったのは直方体を並べた「象の鼻」の

　まず岬が一望できる展望台に行きました ｡

地形です ｡

　「わぁほんとうに象の鼻みたい。あそこは目

　 「ここが灯台で、ここが小学校…」

だよ！」と喜びの声。

　子ども達の頭の中ではイメージが共有されて

　岬を指さし、「あそこに行くんだよね」と期

いるようです。21 名の子ども達が四つのグルー

待でいっぱいです。

プに分かれて、どのようにつくるか、どんな積

　象鼻ケ岬へはいろいろな表情のお地蔵様が見

木を使うかを話しあいながら活動は進みました。

守る峨眉山の山道を通り抜けて向かいます。

活動中なかなか納得するものができず、形にな

　「森みたい」「熊はいる？」あたりを見渡して

らないまま 4、5 日過ぎたり、突然ひらめいて、

います。その時、子ども達が「カニ」を発見し

一気に制作が進んだり。

ました。でもカニはすぐに穴の中に入ってしま

　仁王門は 1 週間の試行錯誤の末、完成しまし

います ｡「これがカニのおウチなんだ。恥ずか

たが、中の仁王像をつくり忘れたことに気づく

しいのかなぁ」と残念そうです ｡

と、あれほど苦心してつくったものをただちに

　潮の香りがしてきました。「海だ！」

解体して、粘土で仁王像をつくり、こんどはま

　浜辺には期待どおりカニがたくさんいました。

たたくまに再構築してしまいました。そしてつ

子ども達の目が輝きます。「ここにも！ ここに

いに完成！ それは子ども達の心が一つになっ

も！」と次々に石をどけて、海の生きものを発

た瞬間でもありました。

見します。子ども達の心を満たすものがたくさ

　この活動を見て、子ども達一人ひとりの感じ

ん見つかりましたが、帰る時にはみんな海に戻

たことは違うかもしれませんが、同じ体験、発

しました。

見をして、意見を出しあいながら共同で表現し

　「また来るからね ｡ バイバイ」

た楽しさはきっと大きな心の財産になるだろう

　命を大切に扱う子ども達の心のやさしさを感

と思いました。

じました ｡

（年長組保育士・山本靖子）

95

エッセイ

積木の社会

　子どもの頃、積木で日課のように遊んだ記憶があります。いろいろ な大きさの角柱や円柱が私の気持のおもむくままに変貌してくれるの が魅力でした。都市計画をしたり、建築家になったり、時には 1 個の 角柱をクルマに変える魔法使い。 　そんな思い出が心に深く残っていたためでしょうか。学生時代に幾 種もの積木をデザインしました。一人、二人で遊ぶものも、集団で遊 ぶものもつくりました。 　大学を出て、入社した会社でも続けた積木の創作。その後、保育園 でお手伝いをさせていただいた時に、子ども達がすぐ飽きてしまう童 具が多い中で、積木は子どもの心を捉え続ける力があることを再認識 しました。 　いつの時代にも、どんな民族の子にも変わりなく愛され続ける積木、 できることなら、デザイナーとして、そんな童具をつくりたい。私の 96

心に新たな意欲が芽生えました。 　それは普遍性に対する希求でもありました。あまりにもあっけなく 移ろいゆく人の世が若い心に淋しく哀しく感じられたのです。 　確かなものが欲しい、確かなものがつくりたい。変節し、変心する 自分の心を見るにつけ、感じるにつけその願いは強まっていきました。 　おもちゃとはなにか。人間とはなにか。 　自分はいったいなんのために生まれたのか、生きているのか。 　他者を傷つけ、ヌケヌケと生きている自分を知りながら、いつもど こかで＜変わらぬもの＞を求め続けていました。そして、それは、な ぜ積木が子どもの心をつかみ続けるのか、という問いと、いつかどこ かでつながり合うはずだと感じていました。

　幾つも幾つもの角柱からその後も積木をつくり続けました。童具づ くりをはじめて 30 年たった頃でした。やっと人生の命題と積木の魅 力が一致しました。 　多様と統一の中での関係性＝多様と統一の中でのつながり。 　これが童具と宇宙謎解きのキーワードでした。 　子どもは立方体と直方体があればあるだけ使って遊びを広げます。 球と同じように単純な形ほど、生みだす世界の可能性が広がることを 子どもに学びました。それは一つ一つが様々なものにみたてられ、ま た、つなぎ合わすことによってもイメージを具体化することができる からでした。関係性を見つけだすツールとして単純であればあるほど 有効であることを知りました。

97

　積木に限らず、万物は関係性の中で個々の生命が全うされ、全体の 統一をはかっています。人間の肉体は血液があらゆる器官をつなぐこ とによって統一され、生を持続します。 　私達はきょうこの日を自然や人や宇宙史とのつながりの中で生か されています。ものみなに生かされている生命は、ものみなに感謝し、 感謝を行為に変えて他者に手渡す生命となってはじめて心の平和が訪 い

ま

れるようにできているようです。しかし、現 代はともすると＜自分 が＞＜私の＞の意識の中でがんじがらめになっています。 　積木を積み重ねて塔をつくったとしましょう。誰もがてっぺんの三 角形のブロックになりたがって、柱状の、すでに個としての形を失っ た立方体の存在には目を向けようとはしません。あるいは、残念なこ とに誰にも目を向けられていないと思い込んでいる立方体は自分の役 割の重要さに気づこうとしないこともあります。しかし、その積木を 一つ取りはずしたら積木の塔は一挙に崩壊することもあります。どの 形も役割をもっていて、価値に上下はありません。積木は人間社会に おける全体と部分、公と個の関係も暗示していました。 98

　たくさんの積木をつくってきましたが、次に私が考えていることは 捨てられていく木々を積木に再生していくことです。虫喰いの木、ふ し穴のある木、端材、そして大量廃棄物となる間伐材や木製の家具。 どの木も何十年、何百年の歳月を生きてきた樹です。樹は木となって

も生き続けます。そんな木が用済みになると灰になります。まだまだ 生き続けていけるのに消滅します。どうにかしたい、そんな願いをも つようになりました。それは一人ひとりの人間に存在意義があるよう に、1 個、1 本の木にも同じように存在価値があると思うようになっ たからです。片腕や片足を失った人もいます。皮膚がケロイドの人も います。生まれながらの知的障害者もいます。年老いて身体が不自 由になり、体臭が気になる人達もいます。しかし、誰一人好んでそう なっているわけではありません。そんな人達の中には五体満足な人間 が磨きをかけない能力を開発する人や、分けへだてないやさしさのあ る人がたくさんいます。 　しかし、都市を中心にした表層の美化が進むにつれて、ハンデを 背負った人達をないがしろにする子ども、青年達が増えています。私 は私の中にもきっとあるに違いない、そのゆがめられた感情を積木に よっても変えられるものなら変えていきたいと思うようになりました。 　人間の思考形式や社会のあり様と一致する積木にそんな役割を付 加することもできるのではないかと思うようになったのです。そして、 子どもはきっとそれを喜んで受け入れるだろうと確信しています。 　私にとって積木はいまだに創造力を刺激し、自分の生き方を問い、 社会的発言をするためのかけがえのないツールとなっています。

99

この章はフレーベルの文献や荘司雅子先生の御著書、玉成保育専門学校の文献、 そしてエドワード・ヴィーベの『子どもの楽園』を元に著者が独断を恐れず書 き改めたものです。フレーベルの直訳は『フレーベル全集』第四巻（玉川大学出 版部）にあります。読み較べていただければ、なお理解が深まると思います。

Ⅱ  積木遊びの発展

直角二等辺三角柱

ケルンブロック C 1

　この三角柱は立方体で遊んだ時に、一時的に現れる＜斜線＞ですが、 斜線は立方体や直方体の遊びの中で、面が稜に、あるいは稜が面に触 れる時に現れていました（写真下）。そしてこの斜線は対立する垂直 線と水平線を媒介する線でもあります（図 1 ）。 102

図1

　この積木は、一時的に現れていたその斜線を形として示したもので、 部分立方体を対角に切断することによってつくりだしたものです。こ れが≪ケルンブロック C 1 ≫で、立方体 8 個のうち 4 個を 2 分の 1 に 切断し、そして残りの 4 個の立方体を 4 分の 1 に切断したものによっ て構成されています。 　これによって、8 個の 2 分の 1 立方体（直角二等辺三角柱）、16 個の 4 分の 1 立方体（直角二等辺三角柱）が生まれ、これらが一つの主立方 体を形成します（写真上）。

ケルンブロック A C 1 の内容

　≪ケルンブロック C 1 ≫で使用する直角二等辺三角柱の理解を、無 理なくしぜんに導入するために、すでに遊んでその特徴をつかんでい る部分立方体を 4 個を導入し、これに直角二等辺三角柱 2 分の 1 を 4 個、4 分の 1 を 8 個を組み合わせて主立方体を構成する積木をつくっ て遊びます。 　この積木は写真のように≪ケルンブロック A 1 ≫と≪ケルンブロッ ク C 1 ≫を半分ずつ使用するので≪ケルンブロック A C 1 ≫と便宜的に 名づけましたが、これも統一体として、主立方体を目の前に置くこと からはじめます。 　そのために部分立方体を箱に納める時は、斜めに分割された部分 立方体（写真 1 ）を最初にフタの上に置き、立方体 4 個（写真 2 ）をそ の上にのせてから箱をかぶせれば箱に納まります。使用する時にはフ タの面を机の上に置き、フタを引き抜いて、箱を静かに引きあげれば、 中の部分立方体（直角二等辺三角柱）が、きれいに秩序正しく並べら れている姿として、子どもの前に現れます（写真 3 ）。

写真 1

写真 2

写真 3

ケルンブロック C 1

ケルンブロック A 1

ケルンブロック A C 1

103

探究認識活動 ケルンブロック A C 1（直角二等辺三角柱と立方体）

　最初の分割は、全体の形と似ていて、しかも最小限度の数に分割 します。この条件で分割すると、同じ大きさの二つの正方形の板にな ります。8 個の立方体≪ケルンブロック A 1 ≫では前後・左右・上下 の三つの分割が示されましたが、その分割法はこの積木でも行います。 しかし、ここで注意することは部品の構成が異なることです。 　水平に二等分すると、部分立方体と部分三角柱に分かれます（図 1 −1） 。 　左右に分割すると、部分立方体も三角形に分割された大小の積木も 両方に含まれます（図 1 − 2 ）。 　前後に分割すると、部分立方体は両方に含まれますが、2 分の 1 の 三角柱と 4 分の 1 の三角柱に分かれます。（図 1 − 3 ） 104

　実物を使ってこの分割と統合の活動に言葉をそえてあげます。

♪  大きな一つの立方体を真中から離すと　二つに分かれて 二つの四角い板になって、くっつけるとまた立方体になりました

　さて、簡単な最初の分割から、変化に富んだ表現が生まれてきます。 水平に分割された 2 枚の板状の部分（図 1 − 1 ）は、2 本の棒状にする ことができます（図 2・3 ）。

図1−1

図1−2

図1−3

　そしてそれを壁につくり変えることも可能です。（図 4・5 ） 　壁にする場合も、棒状に立てる場合も分割面を上面にすることに よって可能になります（図 3・4・5 ）。立てられたものとヨコにされ たものは子どもには違ったものとして目に映ります。

♪   1 枚の板　2 本の柱（図 5・3 ） 　  2 本の柱　1 枚の板

♪   1 枚の板は　2 本の棒に（図 5・3 ） 　  2 本の棒は　1 枚の板に

♪  一つの板　二つの棒（図 5・3 ） 　  二つの棒　一つの板

　これらの作業を子どもが好きなようにくっつけたり、離したりさせ た後、四角形の板や柱の遊びから、やがて平行する面をもつ平行四辺 形や台形、そして五角形や六角形に発展させていくことができます。

105

　そこで図 6・7 のように主立方体を上下に分け、上面を左右に分け て、接合させると、いろいろな形が無理なく展開されます（ P . 107 図 表1） 。

長方形を台形に（1 → 2 ） 台形を五角形に（2 → 3 ）

図2

図3

図4

図5

五角形を六角形に（3 → 4 ） 六角形を正方形に（4 → 5 ） 正方形を平行四辺形に（5 → 6 ） 平行四辺形を三角形に（6 → 7 ） 三角形は元の長方形に戻りました（7 → 8 ）

　この連続的な形の変化を子どもが発見し、こうした活動をしぜんに 繰り返し表現することは、8 個の立方体やこの積木で展開するパター ン遊び（ P . 130 〜 135 ）と同様に＜万物の関係性＞や＜生命の循環法 則＞を予感させます。 　そしてこの時、各々の形に次のようなことを感じとっていきます。

正方形（長方形）には四つの直角がある 台形には四つの角があり、二つの鈍角と二つの鋭角がある

台形と平行四辺形にはどちらにも 106

二つの鈍角と二つの鋭角がある

　そして平行四辺形の 鈍角は短い対角線の両端にあるが 鋭角は長い対角線の両端にある

　この遊びを見て解るように、ここには小学生になってから理解する 内容が含まれていますが、幼児にはたった二種類の角柱を組み合わせ

図6

図7

図表1　面の展開

1

5

2

6

107

3

7

8

4

るだけで、こんなに均衡のとれた美しい形が次々に生まれていくこと を感じるだけで充分です。 　この≪ケルンブロック A C 1 ≫は小学生、中学生にとっても楽しい 積木となります。

　ではまた主立方体の分割に話を戻します。 　主立方体の二つの部分の分割が幾つかの方法でされたように、主立 方体を四つの正四角柱にも、また八つの部分立方体にも分割すること ができます。 　また、台形・平行四辺形や、五角形や六角形をつくることからさ らに進んで、立方体を幾つかの違った方法で、二つ、三つ、四つ、五 つ、六つの、あるいはもっと多くの同じ形に分けることもできます （ P . 112 〜 114 ）。あるいはまた、4 面、5 面、6 面、8 面の常に垂直 に立つ角柱になります。つまり、側面が底面・上面に対して直角に 立っているような角柱になります（ P . 110 図表 4 ）。

108

主立方体は様々な六角柱にすることができます（ P . 109 図表 2 ）。

違った形の二つの四角柱にすることもできます（ P . 109 図表 3 ）。

四つの三角形にすることもできます。 同じように、四つの四角形、五角形、六角形、七角形にすることも できます（ P . 110 図表 4 ）。

図表2　いろいろな六角柱をつくる

109 図表3　二つの四角柱をつくる

A

B

C

図表4　同じ形を四つつくることができる形の例

三角形

110

四角形

五角形

六角形

七角形

ここでできた形はただ積むだけで 二つの三角柱〜七角柱をつくれます。 一つの三角柱〜七角柱にもなります。 　そして 四つの三角柱を四つの四角柱（〜七角柱）に 四つの四角柱を四つの五角柱（〜七角柱）に 四つの五角柱を四つの六角柱（〜七角柱）に 四つの六角柱を四つの七角柱に 連続的に変化させていくこともできます。

四つの四角柱を合体させて（図 8 ） 二つの同じ六角柱もつくれます（図 9 ）。 その両方の六角柱は最後に一つにすることもできます（図 10 ）。

　好きなように形をつなぎ合わせて四角柱や五角柱、六角柱をつくっ てみます。立方体は子どもの思いどおりに四角になったり、五角に なったり、六角になったりします。

111

　これらの活動のように、ある形から他の形への連続的な変化によっ て、子ども達は＜多様と統一＞の関係を知覚していきます。 　さて、変化の段階で、部分を並び変えることによって、立方体から は四角柱、五角柱、六角柱、七角柱が生まれてきました。その形を分 割して、簡単にまたいろいろな形に分解することができます。 　ではこの積木によって、幾つの正四角柱が表現できるでしょうか。

図8

図9

図 10

　この時、正四角柱は、すべてが全部同じ大きさのもの、全部が異な る大きさのもの、あるいは同じ大きさのものと異なる大きさのものが 同時に表現されているものをつくることができます。

① すべての四角形が同じ大きさの場合 　 （上面から見て平面図形として捉えることにします）

部分立方体 4 個分の正方形　二つ

部分立方体 1 個分の正方形　八つ

112

② すべての四角形が異なる大きさの場合

四つの正方形

③ 同じ大きさと異なる大きさの四角形の場合

三つの四角形

四つの四角形

五つの四角形

113

六つの四角形

七つの四角形

八つの四角形

九つの四角形

十の四角形

　この≪ケルンブロック A C 1 ≫の、立方体で表現できる四角形づく りから、一つのものから多くの秩序ある表現が可能なことを子どもは 感じとるはずです。さらに二つの例を書き加えておきます。 114

④ 内接する四角柱の塔 　正四角柱を重なり合わせて、写真 1 のような美しい構成物をつくる ことができます。 　底部から部分立方体が 4 個分、その次は 2 個分、その次は 1 個分、 上の二つは 2 分の 1 個分でできています。 　この塔には次のような数量的な秩序があります。 　上の二つの四角柱の体積を加えると 3 段目の四角柱と同じ体積にな

り、3 段目までの体積は 4 段目の体積になり、4 段目までの体積は 5 段目の体積になることです。 　そして、最上の四角柱を取りのぞくと、下段から上段に向かって、 その体積は 2 分の 1 に減少しています。 　次にくる四角柱を前の四角柱と比較すると、常に小さい方の四角柱 は大きい方の半分の体積です。 　この関係（正方形に内接する正方形の面積は 2 分の 1 になる）はやが て幾何学で学ぶことですが、幼児期の子どもは、連続的に秩序だって 組み立てられたものの美しさを感じとります。

115

写真1

⑤ 融合四角形 　部分立方体の 2 分の 1 の直角二等辺三角柱を、真上から見た時に互 いに直交する点で結びつけてみます（図 11 ）。この形の外側にある四 つの頂点を結んでできる四角形＜融合四角形＞は、常に 2 個の三角柱 を一緒にしたものと同じ大きさになります（図 12 ）。もし結びつけら れる両方の同じ三角形の各々が 4 個分の直角二等辺三角柱（図 13 ）の 量であれば、融合四角形の部分立方体は 8 個分になります（図 14 ）。 　また、結びつけられる両方の同じ三角形の各々が 2 分の 1 直角二等 辺三角柱 4 個と、4 分の 1 個分の直角二等辺三角柱 1 個分の量であれ ば、融合四角形の 2 分の 1 直角二等辺三角柱は 9 個分になります（図 15 ） 。 　そして、結びつけられる両方の同じ三角形の各々が 8 個の直角二等 辺三角柱であれば、融合四角形の部分立方体は 16 個になります（図 16 ） 。 　また図 17 のように四つの三角形で四角形をつくると、その内側の 空間は外側の四つの三角形と同じ大きさになります。 116

⑥ 形が同じで量が違うものと量が同じで形が違うもの 　さて、ここまで、いつも形が同じで面積（体積）が違う形を示しま したが、＜体積が同じ＞で＜形が違う＞ものを発見したり（ P . 118 図

a

図11

図12

図13

図15

図14

a a

図16

図17

表 5  第 1・2 の系列） 、＜同じ四角形＞同士の体積の関係を探ること （ P . 118 図表 6  第 3 の系列）もできます。

第 1 の系列・量が同じで形が違うもの

⑴  1 枚の正方形の板で、各々の辺が 2 個の部分立方体の長さをもつ形、 つまり全体で 4 個の部分立方体でできている形（1 A ） ⑵  1 枚の平行四辺形の板で、最小の辺が 2 個の部分立方体の長さをも つ形（1 B ） ⑶ 底辺に 4 個の部分立方体の長さをもった直角二等辺三角形の板 （1 C ）

第 2 の系列・量が同じで形が違うもの

⑴  1 枚の長方形の板で、長さは部分立方体の 2 個分の長さと同じで、 幅は 1 個の辺の長さと同じもの（2 A ） ⑵ 長方形（2 A ）と大きさが同じ平行四辺形（2 B ） ⑶  1 枚の直角二等辺三角形の板で、その両辺の長さが 2 個の部分立方 体の辺の長さのもの（2 C ）

第 3 の系列・上面が正方形の形

⑴  1 個の部分立方体（3 A ） 　 ⑵  4 個の部分立方体でつくられる一つの正方形（3 B ） ⑶  1 個の部分立方体を底面として、4 個の部分立方体の高さをもつ一 つの正四角柱（3 C ）

　以上のことから、ごく簡単な観察でただちに次のようなあり方を直 感することもできます。 ⑴ 同じ底辺の二つの四角柱は高さが等しければ、体積も同じ（図 18 ）。

117

図表5　体積が同じで形が違うもの

図表 6　同じ四角形の体積の関係

第1の系列

第2の系列

第3の系列

1A

2A

3A

1B

2B

3B

1C

2C

3C

118

二つの四角形は 傾いていても　まっすぐでも 底面と高さが同じであれば面積も同じ

⑵ 平行四辺形と直角二等辺三角形は、もし高さが同じで三角形の底 辺が平行四辺形の底辺の 2 倍である時は、二つは同じ大きさ（図 19 ）。

四角形と三角形でも 高さが同じで 2 倍の底辺ならば 同じ大きさ同じ面積

　第 2 の系列の A と B とは、ここにあげた⑴ と一致しています（同量 異形） 。この両方の四辺形は、第 1 の系列の四辺形と比較すると、底 辺が同じで、高さが半分の平行四辺形は半分の面積しかないことも示 しています。

平行四辺形と

119

三角形でも 三角形の高さが 2 倍で 同じ底辺ならば同じ面積（図 2 B −図 2 C ）

　第 2 の系列の三角形と第 1 の系列の三角形の比較、 　二つの三角形がもし高さが同じで、一方の底辺が他方の半分なら、 一方の三角形の面積は他方の三角形の半分になります。

図18

図 19

　第 3 の系列で、両方の四角形の両方の上面は次のことを示します。 ⑴ 小さいものから大きいものへ進む時 　底辺も高さも他方の半分の時には、体積はその 4 分の 1 になります。 ⑵ 大きいものから小さいものへ進む時 　底辺と高さが他方の 2 倍の時には体積は後者の 4 倍になります。 ⑶ 三つの関係 　底面が同じで高さが 4 倍の時は体積は 4 倍になります（3 A と 3 C の 関係） 。それ は底面と高さが 2 倍の形と同じ体積です（3 B と 3 C の関 係） 。 　以上の 3 点は、すでに 8 個の立方体≪ケルンブロック A 1 ≫で示し たことですが、しかし、このように時に応じて別の積木で反復するこ とによって、子どもは量の関係に対してより敏感になります。 　これらの＜探究認識活動＞から＜パターン遊び＞や＜みたて遊び＞ に移行することは容易にできますが、しかし子ども達は、ほとんどこ の基本的な道筋に関係なく＜みたて遊び＞をはじめます。

120

　以上のケルンブロック A C 1 の探究認識活動は≪ケルンブロック C 1 ≫でも行えます。とくに「⑤ 融合四角形」「⑥ 形が同じで量が違う ものと量が同じで形が違うもの」はケルンブロック C 1 で行った方が 理解しやすい活動となります。

みたて遊び ケルンブロック A C 1（直角二等辺三角柱と立方体）

　積木による＜みたて遊び＞の中で、子どもは身近な物を形づくりな がら、秩序や美への洞察を深める中で、自己表現をしていきます。 　そこで、≪ケルンブロック A C 1 ≫で身近なものとの関係を深める 遊びを紹介します。

これは 1 軒のおウチよ これは 1 台のテレビよ（ P . 122 図表 7 − 1 ）

　この言葉がけの後には、半分に分けて、二つのスツールをつくりま す（図表 7 − 2 ） 。そして、半分に分割された立方体を、分割されてい ない立方体の上に置けば、寄り掛かる部分ができます（図表 7 − 3 ）。 　そして、4 分の 1 に分割された立方体を、両側に並べればひじ掛け になります（図表 7 − 4 ） 。それは 1 個のソファーに変えられ、このソ ファーからベッドがつくられます（図表 7 − 5・6 ）。 　ベッドはテーブルと四つのイスになります（図表 7 − 7 ）。 　思いついた形をつくりながら話しかけて下さい。

　子どもの日常生活はやがて、部屋の中から、家を出て、庭に降り、 街や商店街等の外の世界へと行動範囲が広がっていきます。それと同 時に子どものイメージによって生まれる表現も発展していきます。 　そして、家の階段や屋外の階段・スーパーマーケット・児童館・幼 稚園・アーケードの入口・橋等、村や街の全体が表れてきます。

121

図表7　家具づくりの展開

1

3

2

4

122

5

7

6

8

　この子どもの表現活動を見ると、積木遊びがいかに子どもの精神活 動や行動範囲と結びついているかが解り、同時に、積木が精神の発達 や行動の発展を促していることも理解できます。次の遊びは 4 歳の子 なら私達がつくったものを喜んで真似て遊びます。

① 部分立方体を 4 個並べて一つの長方形をつくります（図 1 ）。 ② その両端の上に、稜斜面をもつ 2 分の 1 の直角二等辺三角柱を 1 個 ずつ、置きます（図 2 ） 。 ③ できたくぼみの中に、4 分の 1 の直角二等辺三角柱 8 個を沈めるよ うに置きます（図 3 ） 。 ④ 一番上に 2 分の 1 の直角二等辺三角柱を置きます（図 4 ）。

♪  これはなんでしょう。── 2 階建ての家

　この 2 階建ての家から変化させることもできます（ P . 124 図表 8 ）。 　子どもが喜んで建てるこの独特な建築物は、均衡や均整に対する感 覚を養う活動となります。 　P . 125 の図表 9 は子どもの好きなクルマや飛行機をつくりだす遊び です。

図1

図2

図3

図4

123

図表8　建築遊びの展開

1（図 4 ）

2

3

4

5

6

8

9

124 7

10

11 12

14

15

13

16

図表9　のりものづくりの展開

1　飛行機 2　ジェット機

3　ジェット機

4　宇宙ロケット

6　2 台の乗用車 5　レーシングカー

7　ショベルカー

8　ロケット

125

建築遊び ケルンブロック C 1 , A 1 , B 1 , A B 1 , B 2 を写真 1 のようにセットして、その形のまま対称になるように前後左 右に移動させると様々な建築物を次々に表現することができます。2 〜 3 歳児にはそれぞれの形を両面テー プで固定すると操作が簡単になります。

C1

A1

B1

AB1

1

126

2

3

4

5

6

7

B2

127

8

9

10

11

12

13

パターン遊び ケルンブロック A C 1（直角二等辺三角柱と立方体）

　この遊びは、＜みたて遊び＞からスタートすることもできますし、 単純な秩序をもった形をつくることからはじめることもできます。遊 びはじめる時には次のことを配慮して下さい。 　≪ケルンブロック A C 1 ≫の主立方体を、四つの部分立方体からつ くられる一つの四角形と、四つの直角二等辺三角形とに分けます（図 2） 。この時、四つの三角形は、一つの四角形にすることができます （図 1 ） 。 　ここでは、四角形の基本形から展開される一連のパターン遊びを紹 介します（ P . 130 図表 10・P . 134 図表 11 ）。

　図表 10 のスタートの形は内側のものと外側のものとが向かい合っ 128

ています。この図形の変化を、内側の四角形からはじめることも、外 側の三角形からはじめることもできます。 　ここでは外側から展開していく方法を取りあげます。 　まず最初に、四角形を包み込んでいる四つの三角形を外側に離して から、立方体を直角三角形の底面の両サイドの頂点に触れるまで動か します（図表 10 − 3 ）。 　次に四つの立方体を三角形の長辺に沿って動かすと図表 10 − 4 に なります（もし、このプロセスを同じように続ければ再び図表 10 − 3 になります。位置は変わったのに外観は全く同じです）。 　次に四つの立方体を中央に戻し（図表 10 − 5 ）、四つの三角形を動 かします。三角形は立方体の辺に触れながら変化します（図表 10 − 6

〜 10 ） 。 　次に三角形をさらに外側に出し、立方体を直角三角形の頂点に移動 させます。立方体は三角形の外側で移動します。

　このように変化を続けて、最終的に元の形になりますが、これに よって全体は、空間を囲む形として、または、直角に交差する放射状 の形として、あるいは両者をかねそなえた、いわば車輪状の形として 形成されます。 　図表 11 は中心の四つの小さな直角二等辺三角形が常に全体の形の 中心、あるいは中心近くに位置する構成です。そして、常に全体が正 方形を保つように移動を最小限にした展開が行われます。これによっ てたとえかすかな変化の繰り返しでも形体が多様に変化することや、 中心の意識が子どもに感得されるようになります。

　三角形を加えることで、このようにより変化にとんだ複雑な表現が 可能となりました。このことは子どもに、多様性にとっても秩序がい かに大切であるかを直感させます。 　この展開図によって、私達は子どもに次の操作を暗示できるように なり、もし子どもが表に似たパターンをつくりはじめたら、この図表 を与えて、表現を確実にしたものにすることができます。この中で子 どもはどんなに複雑に見えるものでも基本となるものは単純であるこ とを直感します。

　ここで一つ附記しておかねばならぬことは、この≪ケルンブロック

図1

図2

129

図表10　ケルンブロックAC1のパターン遊び

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

130

13

14

15

16

131

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

27

28

29

30

31

32

33

34

35

36

37

38

39

40

41

42

43

44

132

45

46

47

48

49

50

51

52

133

53

54

55

56

図表11　四角形状のパターン遊び

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

134

17

18

19

20

21

22

23

24

135

A C 1 ≫はフレーベルの第五恩物の改作であることです。第五恩物の 内容は 3 × 3 × 3 ＝ 27 個の部分立方体によって構成され、そのうち の 3 個の部分立方体が 2 分の 1 直角二等辺三角形に分割され、その数 は 6 個。さらに 3 個が 4 分の 1 直角二等辺三角形に分割されて 12 個あ ります。 （第 4 巻 P . 90 参照） 　フレーベルはこの第五恩物で三角柱を導入した時、三角形の「3 」と いう数と 3 が奇数であることから、子どもに奇数の概念を直感させよ うとしました。そのため部分立方体の数を 3（タテ）× 3（ヨコ）× 3（タ カサ）＝ 27 個（いずれも奇数）にして主立方体を形づくるようにした のです。 　すでに 8 個の立方体と 8 個の直方体を組み合わせて遊んでいる子ど もにとって、21 個の小さな立方体と、18 個の三角柱を使って遊ぶこ とは、4、5 歳の子どもにとって、それほど難しいことではありませ ん。しかし、それは＜みたて遊び＞に限られます。 　＜パターン遊び＞や＜探究認識活動＞をする時には、複雑なうえに 手がかかりすぎるので、途中であきらめたり、最初から意欲を示さな 136

い子がいます。そのために私は≪ケルンブロック A C 1 ≫を提案しま した。 　この積木によってフレーベルが＜探究認識活動＞や＜みたて遊び＞ の中で子ども達に理解させようとしたほとんどのことは表現可能とな るだけでなく、数が少ないので操作が容易になりました。 　しかし、ここにはまだ奇数の概念が直角二等辺三角柱の形のうえに しか現れていません。そこで創作したのが≪ケルンブロック O M 1 ≫ です。 　その O M 1 の遊びに移る前に、直角二等辺三角柱を使った立体的な 構成遊びの広がりを紹介します。

花模様の構成遊び

1 10

2

9

3

8

4

7

138

5

6

W A K U - B L O C K の中から選んだ六種の形 直方体の統一から多様へ 4 個の直方体を 1 〜 10 まで接する箇所を右回りに

半円柱

少しずつ回転して生まれる形の変化です。これ によって三種の面を内在させている形体は二種 の面の構成の変化を可能にすることが解ります。 1 と 6 がその典型的な例です。同様に「 W A K U B L O C K の中から選んだ六種の形」についても回転

正三角柱

していくと同じ結果が表れます（点・をつけた二 つがその形です）。立方体にはこの変化はありま せん。

四角柱 3 倍体

1

12

2

11

3

10

4

9

5

8

6

7

直角二等辺三角柱の統一から多様へ  ↑ 4 個の直角二等辺三角柱を 1 〜 12 まで接する箇所 を右回りに少しずつ回転して生まれる形の変化で すが、これによって内包された形が外に表れる変

小角柱

化を理解することができます。 P . 138 〜 139 にあるパターン変化を 4 弁の花びら にみたてると、回転体が同種の花の変化、直方体 と直角二等辺三角柱と六種の形を異種の花の変化 に結びつけることができます。統一と多様の関係 を一目瞭然にする遊びです。そして、複雑に見え

小角柱（1 / 2 ）

てもあらゆるものは単純な仕組み（原型・原理） によって成り立っていることも示唆します。

正方形板

139

立方体の構成遊び ① 立方体の面を接合させて点対称に並べて積む活動には＜中心が立方体となる構成＞と＜中心が点となる構 成＞があります。両者共に A , B , C , D 各列の a , b と d が対立する形としてあり、c が媒介する形です。また a , b , c , d 各列の C と D が対立する形で B が媒介する形でもあります。 B , C , D 列はどれも A 列の形を土台にして積木を積んだものですが、積み方には B 列のように垂直に積むこ とも、C 列のように凸状に積むことも、D 列のように凹状に積むこともできます。

① 中心が立方体となる構成−底面の立方体が 5 個× 5 個で構成されています。

①

a

140

b

c

d

A

B

C

D

立方体の構成遊び ② 立方体の構成遊び ① 〜 ⑤ は立方体を積み重ねた角柱を、対立と媒介の法則によって分割整理し、核にな る形を求めたものですが、その過程で現れる様々な形は極めて建築的な形体となっています。それぞれの 形をそのままに立方体を加えて拡大していくだけでも美しい建造物のミニチュアとなりますが、これに 直角二等辺三角柱や、正三角柱、半円柱等を加えていくと多様化はさらに広がります。その作例を ⑥ 〜 ⑨ に直角二等辺三角柱によって示してあります（ P . 145 〜 149 ）。

② 中心が点となる構成−底面の立方体が 6 個× 6 個で構成されています。

②

A

B

C

D

a

141

b

c

d

立方体・線対称の構成遊び ③

③ 中心が立方体となる構成− P . 140 ① の形体を中心の立方体を残して二分したものです。

③

a

142

b

c

d

B

C

D

立方体・線対称の構成遊び ④

④ 中心が点となる構成− P . 141 ② の形体を中心から側面に平行に二等分したものです。

④

B

C

D

a

b

c

d

143

立方体の構成遊び ⑤ P . 140 ① の形体を中心の立方体を残して、四分割した形体（ P . 142 ③ の形体 を中心を残して二分割した形体と同じもの）と P . 141 ② を四等分した形体 （ P . 143 ④ を二等分した形体と同じもの）は下のように同量同形となります。 これらは 3 × 3 × 3 ＝ 27 個の立方体の一部でもあり、また a 〜 d 列の C と D を 重ね合わすと B 列の形体が 1 段増えた形になります。そして、これらすべての 形体は E の形を内在させていることが読みとれます。このことは E を発展させ ることによって P . 140 〜 144 のすべての形をつくりだせることにもなります。 そして、この E を基本に立方体の数を増加させ直角二等辺三角柱を加えると P . 145 〜 149 までの複雑な形体が次々に誕生して、統一と多様の関係を解りや

E

すく示す活動になります。

⑤

a

144

b

c

d

B

C

D

立方体の構成遊び ⑥　直角二等辺三角柱を加えて P . 144 ⑤ C − c の形を基本形として立方体 56 個に直角二等辺三角 柱を加えた構成。

基本は⑤ C − c

⑥

145

立方体の構成遊び ⑦　直角二等辺三角柱を加えて P . 144 - E を基本形とした 95 個（奇数個）の立方体に直角二等辺三 角柱を加えた構成。

⑦

146

E＋d

立方体の構成遊び ⑧　直角二等辺三角柱を加えて P . 144 - E を基本形として、60 個（偶数個）の立方体に直角二等辺 三角柱を加えた構成。

E×2

⑧

147

≪わくわくミラー≫に構成を 映したものです。四方向 の構成を楽しむこと ができます。

立方体の構成遊び ⑨　直角二等辺三角柱を加えて P . 144 ③ C − c を基本形として 30 個の立方体に直角二等辺三角柱 を加えた構成。1 と 2 は中心を点にする構成で、3 〜 7 は中心を立 方体にした構成です。

基本は③ C − c

⑨ 1

148 2

3

4

5

149 6

7

正三角柱

ケルンブロック O M 1

　この積木は正三角柱 12 個によって一つの正六角柱を構成してい ます（写真上） 。12 は 3 の倍数であり、4 の倍数でもあるので、三方、 四方、六方に広がる構成が可能になります（図 1 ）。つまり、奇数の構 成も偶数の構成もできるのが 12 という数です。そしてこの正三角柱 150

の 2 面を構成する正三角形はあらゆる三角形の中で最も単純で、最も 均整のとれた形であり、しかもそれは正六角形をつくりだす形でもあ ります。 　自然界を見ると、正六角形はいろいろなところにその姿を表します。 　例えば、花びらの構成、雪の結晶、水晶、蜂の巣等。そして、い ままで何度も子どもの目に触れてきた立方体も、ある角度から見ると、 図 2 のようにそのシルエット（輪郭）は正六角形です。 　また、ゴムボールを敷きつめて、大きなガラス板で上から押さえる と、その形は蜂の巣のように正六角形になります。石けん液を皿に入

図1

れ、ストローで吹いた時に湧き出るしゃぼん玉が、六角形になる瞬間 もあります。 　まるで正反対な球と立方体が正六角形によって結びつきます。 　この積木をつくる時、分割される前の基本形を図 3 のように正三角 柱として表現するか、正六角柱にするか、推敲を重ねた時期がありま した。全体を正三角柱にすると主三角柱と部分三角柱の関係は一目瞭 然です。しかも、3 段 3 面がはっきり目に移ります。3 や奇数を暗示 するには、この形の方が説得力があります。 　しかし、自然の成り立ちからいって、正三角形は正六角形に内在す る形として捉える方が文字どおり自然です。 　そして、≪ケルンブロック A 1 ≫（8 個の立方体）や≪ケルンブロッ ク B 1 ≫（8 個の直方体）の＜四角形＞の延長線上にあるものとして考 えた時に、角数を少なくして三角形に逆戻りするより、角数の増える 六角形を取り入れる方がより複雑になるという点で発展性を暗示させ ます。結論として、全体を正六角柱として示すことにしました。 　しかし、正三角柱を基本形として時にはさりげなく子どもに示して あげて下さい。それによって、子どもは三角形に対する意識を強める ことができるようになります。 　では、ここでも三つの遊びを紹介します。

図2

図3

151

探究認識活動 ケルンブロック O M 1（12 個の正三角柱）

　探究認識活動を最初に取りあげるのは、この形を取りあげたねら いを最初に理解しておきたいからです。これまでのテキストで、すで に子どもとの対話の方法は充分に語り尽くされているので、ここでは、 遊びの中で認識する内容を列記するだけにします。

形の理解

⑴  8 個の立方体との比較（図 1・2 ）

面・線・点の構成 　① 構成面の数 152

立方体は六つの面でできています。 正六角柱は八つの面でできています。

　② 構成稜（辺）の数 立方体には 12 の稜があります。 正六角柱には 18 の稜があります。

　③ 頂点の数

図1

図2

図3

立方体には八つの頂点（角）があります。 正六角柱には 12 の頂点（角）があります。

　以上のことは六角柱と主立方体を上下に二等分し、比較しても、そ の面と線と点の構成のあり方は変わりません。 　この他にも部分立方体と部分三角柱の面と線（稜）と点（頂点）の比 較や、三角形と四角形の比較等も子どもの関心に応じて取り入れて下 さい。しかし、就学前の子どもにはこうした活動は省いて、二つの形 の違いを「どこが違う？」という言葉がけによって意識づけるだけで 充分です。面や線や点の数を数えさせるような活動は、無理にさせる ことではありません。 　次に正三角形と正方形に対して、また立方体と正三角柱に対して、 子どもの感覚を鋭くするために、次のような活動も用意できます。

　正三角柱のまわりを立方体で囲みます（図 4 ）。あるいは、立方体の まわりを正三角柱で囲みます（図 5 ） 。この時、この形のまわりに正三 角柱や立方体を加えていけば、ただちに＜パターン遊び＞に発展しま す。

図4

図5

153

⑵ 分 割

　① 正六角柱を図 6 のように二つに分けます。 　　 同じ形が二つ現れます。　 　　 これを私達と子どもが一つずつ自分の前に置きます。

② 左右にそれぞれ均等に二つに分割します（図 7 ）。 　　 二つの台形になります。

③ 斜めにそれぞれ均等に二つに分割します（図 8 ）。 　　 どう分けても二つの形は同形です。 　　 この二つを重ね合わせると、一目瞭然です。

④ 同じように、こんどは三つに均等に分割します。 　　 菱形になります（図 9 ）。 　　 どこで三等分しても同じ形になります。 154

⑤ 正六角形の中の正三角柱を一つおきに外に出します（図 10 ）。 　　 残った正三角形を同様に外に出します（図 11 ）。 　　 正六角形が六つの正三角形で構成されていることが解ります。

同形同量・異形同量の展開

⑴ 正三角柱 12 個全部を使って、平面的な形をつくって遊びます

図6

　この時は三角柱の 1 面が他の 1 面にかならず接合することを条件と します（ P . 156 図表 12 ） 。 　六角柱の上段を下段につなげたところからはじめます。 正三角柱を幾つかずつ動かして、図表 12 のような形の展開を楽し んで下さい。

⑵ 正三角柱 6 個を使って、図表 13 のような平面的な形を二つつくり ます（ P . 157 ） 。正三角柱を一つ、あるいは二つ動かすと、図のよう に形が変化します

図7

図8

155

図9

図10

図 11

図表 12　正六角柱の構成遊び

2

1 3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

156

17

18

19

20

21

22

23

24

157

図表13　正六角形の構成遊び

1

2

4

3

5

6

7

8

　子どもと私達が半分ずつに分けて一緒に遊ぶと、楽しい時間が生ま れます。同じ形ができたかどうか、重ね合わせてみます（合同の認識）。 ぴたっと形が重なった時、子どもは「ヤッター！」と喜びの声をあげ ます。これは一致を求める人間の希求の素直な表れです。子どもと一 緒に私達も喜んであげましょう。それによって、子どもは形と心の二 重の一致の喜びがもてます。 　また、この二分割による遊びによって、子どもは二等分にも多様な 分け方があることを感じとります。

⑶ 同様に正三角柱 3 個でできる形（正六角形の二等分） 　3 個の正三角柱では側面同士を合わせた形は台形しかできません。

⑷  4 個でできる形をつくります 158

　三つの形をつくることができます。

⑸  2 個でできる形をつくります（三等分） 　菱形ができます。

相似形の展開　

　正三角形をつくります。

　菱形をつくります。

　台形（相似形に限る）をつくります。

いろいろな形の展開

　いろいろな台形の展開（小学生対象）

　いろいろな平行四辺形の展開（小学生対象）

159

パターン遊び ケルンブロック O M 1（12 個の正三角柱）

　面と面、稜と稜（点と点） 、面と稜（点）を合わせたり、離したりし

12 c m

てつくるパターン展開の一例を示します（ P . 162 図表 14 ）。 　正三角柱に 9 個の立方体を加えてパターン展開をすることもできま す（ P . 164 図表 15 ） 。 　正三角柱によって、三方、四方、六方に広がるパターンがしぜんに つくられます。基本となる形（三角形、四角形、六角形）の各辺にそ れぞれ同じ形を置いていくと、美しい模様ができます。 　平面的な構成にとらわれずに、立体的なパターンも積む作業を加え ることによって可能になります。正三角柱の数を増やしながら活動を

パターン遊び（六角） 用紙のつくり方 1 辺が 12 c m の正六角形を黒 のミューズコットン紙（ある いはラシャ紙）に鉛筆で図の ように描き込む

広げてみましょう。この時は一つの辺だけではなく、三角形や六角形 を形づくる各辺に 1 個ずつ積木を置いていくことが原則です（ P . 165 図表 16 ） 。また、立方体を加えた立体的な構成遊びに発展させること もできます（ P . 166 図表 17 ） 。正三角柱と立方体の組み合わせは無理 なく展開していきます。 これはモザイクや積木等を使用して建築物や街をつくる時の準備活 動にもなる遊びです。また、ここで行った同じ活動をやがて色彩が加 わるケルンモザイクで行うことは、形の関係性を知るうえでも、多様 と統一の意識を育むうえでも大切な活動となります。

161

図表14　正三角柱のパターン遊び

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図表15　正三角柱と立方体による三角形状の構成

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164 9

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10

8

図表16　正三角柱による三方向と六方向の構成　4 からまた自由にパーツを移動させて楽しめます

1

2

3

4

165

1

2

3

4

・点印をつけた正三角柱を次の形にする時に移動させます。：印は上下2個のパーツを移動させます。

図表17　正三角柱と立方体によるパターン遊び

1

正三角柱と立方体で土台をつくります。

2

土台の上に正三角柱と立方体を6個ずつ積んだり、 並べたりして立体的な構成にします。

3

みたて遊び ケルンブロック O M 1（12 個の正三角柱）

　みたて遊びでこの正三角柱が子どもを魅了するのは屋根のイメージ と結びつくからです。 　8 個の立方体や 8 個の直方体を与えた後に、この積木を与えると活 動が生き生きするのはそのためです。 　1 〜 3 歳児に≪ケルンブロック A C 1 ≫を与えると、図 1 のような家 を子どもはすぐにつくりだします。 　しかし、二つ、三つこれをきれいに並べることがなかなかできませ ん。図 2 のようになって、バランスが悪くなります。図 3 のように置 けば問題はないのですが、1 〜 2 歳の子どもはそれをしません。 　4 分の 1 の直角二等辺三角柱は図 4 のようにきちっとそろいますが、 小さすぎるためか屋根にしようとする子は限られます。 　その点、正三角柱は側面が部分立方体の正方形と同形同量の正方形

167

なので、かならずぴたっと一致します。大きさも子どもがイメージす る屋根にちょうどいいようです。また、方向を 90 度変えても片方が ずれることがなく写真のような建物が無理なくつくれます。

図1

図2

図3

図4

ケルンブロックの展 開

B1

B2

A1

OM1

AB1

AS1

C1

C2

ケルンブロックは積木同士の関係性が子どもに理解しやすい構成になっています。 この積木で遊び込むほど、W A K U - B L O C K での床上のダイナミックな遊びが多様 化します。また、一人で静かな時間と空間の中で秩序が生みだす調和の美しさを感 じとることは、共感共同活動とは質の違う、ものごとを深め、極める内的な喜びと 168

落ち着きを子どもに与えます。

ケルンブロック B 2　建築遊び B2

点対称にパーツを置いて一つの建築物ができたら点対称にパーツを移動さ せて形の変化を楽しみます。

1

2

3

4

B2

AB1

B1

ケルンブロック　建築遊び ① ケルンブロック B 1、B 2、A B 1 で写真と同形のユニットを四つつくります。 ② 四つのユニットと残った部品を使うといろいろな建造物をつくって楽 しめます。

ケルンブロック B 2　パターン遊び B2

放射状のパターンをつくり、これを移動させながらパターン変化を楽しみます。

1

2

3

4

169

ケルンブロック　建築遊び

2

ケルンブロック C 2 直角二等辺三角形を生かした建 築物をつくります。土台を動かさずに他の形を次々 に左右対称に移し替えて建物の変化を楽しみます。

C2

B2

AB1

B1

1

3

ケルンブロック　パターン遊び 170

ケルンブロック C 2 直角二等辺三角形を生かしたパ ターン遊び。ケルンブロック C 2、A B 1、B 2 を全部 使って点対称のパターンをつくってから、点対称の 部品を移動させてパターンの変化を楽しみます。

C2

AB1

1

2

3

4

B2

ケルンブロック C 2　直角二等辺三角形 パーツをすべて使って 1 〜 8 個の正方形がつくれます。

C2

171

パーツをすべて使って 1 〜 16 個の直角二等辺三角 形がつくれます。

172

パーツをすべて使って 1 〜 8 個の平行四辺形がつくれます。

パーツをすべて使って 1 〜 5 個の等脚台形がつくれます。

1

2

3

ケルンブロック　建築遊び ケルンブロック A S 1 円柱内包体を生かした建築物 をつくります。点対称の土台を A 1、B 1、A B 1 でつ くってから A S 1 と残ったパーツを加えて形の変化 を楽しみます。

173 AS1

A1

B1

AB1

4

5

ケルンブロック茶

ケルンブロックのツートン遊び ≪ケルンブロック≫のパーツを≪パターン ケース≫に入れると平面で形をまとめた り、レリーフ状に表現したり、立体物をつ くったりすることができます。とくに平面 にまとめてつくるパターン遊びはパズルと して遊ぶのに最適です。発達に応じてパ ターンケースの大きさを変えたり、パーツ の内容を変えると 1 歳児から大人まで飽き ずに遊ぶことができます。 ケルンブロック白木

ケルンブロックの収 納箱 4 個を土台にし てつくったお城

パターンケース

4×4

5×5

2×2

ツートンブロックでできる平面形

ツートンブロック 直角二等辺三角柱とそれが三個接合した小刀状の パーツがそれぞれ 8 個あり、2 色 4 個ずつ収納され ています。右はそれによってつくられる形ですが、 これはケルンブロックの A 1 と C 1 を組み合わせて も同じ遊びができます。

家

らくだ

バス

もみの木

猫

トナカイ（逆に向けると建物）

レリーフ上のパターン例

市松模様

パターン

パターン

175

著  者　和 久 洋 三 　わく・ようぞう わくわく創造アトリエ代表 童具館館長 1942 年東京生まれ。東京芸術大学美術学部工芸科 工業デザイン専攻卒業、同大学大学院修了。保育園 での保育体験、玉川学園女子短期大学講師等を経て、 創造性を開発する童具づくりに専念する。1989 年 「童具館」を設立し、新しい創造教育活動を展開す る。2001 年全国に「わくわく創造アトリエ」を開校。 かたわら、幼児教育についての講演・講座活動、美 術大学や幼児教育者養成校での指導にあたる。 協力 覚王山プレイルーム 加古川プレイルーム 神戸岡本プレイルーム 相模原プレイルーム 高根沢プレイルーム つくば学園都市プレイルーム 童具館プレイルーム 西新プレイルーム 文京プレイルーム 瑞穂プレイルーム 宮崎プレイルーム （五十音順） 共楽園プレイルーム 中関プレイルーム 幼稚園、保育園等の公的施設や、ご家庭の方々のご協力も数多くいた だいております。ありがとうございます。

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 積木遊びと造形 2006 年 2 月 25 日　第 1 刷

著　者　　和久  洋三 発行者　　小原  芳明 発行所　　玉川大学出版部 〒 194 - 8610　東京都町田市玉川学園 6 - 1 - 1 T E L  042 - 739 - 8935　F A X  042 - 739 - 8940 http://www.tamagawa.jp/introduction/press 振  替　00180 - 7 - 26665

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木は生きている だからぶつかって ばらばらになって またつながる 生きている