第2版
運動 生理学20講 勝田
大石康晴 秋間
茂 編著
広 宮田浩文
久 野譜 也 征 矢 英 昭 大 森
肇
和 田正 信 金 尾 洋 治 稲 木 光 晴 山 口明 彦 狩 野
豊 酒井俊郎...
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第2版
運動 生理学20講 勝田
大石康晴 秋間
茂 編著
広 宮田浩文
久 野譜 也 征 矢 英 昭 大 森
肇
和 田正 信 金 尾 洋 治 稲 木 光 晴 山 口明 彦 狩 野
豊 酒井俊郎
七五三木 聡 石 原 昭 彦 奥 本 満 園 良 一 田 中
正
守 志 手 典 之
高 橋英 幸 中 村 友 浩 麻 場 一 徳
朝倉書店
■ 編 著 者 ・執 筆分 担 勝田
茂
前 筑波 大 学 体育 科 学 系 ・教授 ・医 学 博士
[1,2,18講]
■ 執 筆 者 ・執 筆 分 担(執 筆順) 大 石 康 晴 熊本大学教育学部 ・助教授 ・博士(医 学)
[1講]
秋
間
宮
田
久 征
広
東京 大 学生 命 環 境科 学 系 ・助 手 ・博 士(体 育 科 学)
[2講]
浩
文
山口 大 学 農学 部 ・助 教 授 ・博士(学 術)
[3講]
野
譜
也
筑 波 大 学先 端 学 際 領域 研 究 セ ン ター ・講 師 ・博 士(医 学)
[4,10,19講]
矢
英
昭
筑波 大 学 体 育科 学 系 ・助 教 授 ・医学 博士
[5,11講]
大 森
肇 筑波大学体育科学系 ・講師 ・医学博士
和
信
田 正
[6,16講]
広 島大 学 総 合科 学 部 ・助教 授 ・博 士(体 育科 学)
金 尾 洋 治 愛知県立看護大学 ・助教授
[7講]
稲 木 光 晴 西南女学院大学保健福祉学 部 ・講師 ・博士(体 育科学)
[8講]
山 口 明 彦 北海道医療大学基礎教育部 ・助教授 狩
野
豊
[9講]
電 気 通信 大 学 量 子 ・物 質 工 学科 ・講 師 ・博 士(体 育 科 学)
酒 井 俊 郎 浜松短期大学幼児教育科 ・教授
[8講]
[9講]
[11,17講]
七 五 三 木 聡 大阪大学健康体育部 ・講師 ・博 士(医学)
[12講]
石 原 昭 彦 京都大学総 合人間学部 ・助教授 ・学術博士
[13講]
奥
本
満
園
田
中
志
手
高
橋
正
東 亜 大 学総 合 人 間 ・文 化学 部 ・講 師 ・博 士(体 育科 学)
[13講]
一
久留 米 大学 保健 体 育 セ ン ター ・教授
[14講]
守
福 岡大 学 ス ポ ー ッ科 学 部 ・教 授
典
之
北 海道 教 育 大学 函 館 校 ・助 教 授 ・博 士(歯 学)
[17講]
英
幸
国 立 ス ポー ツ科学 セ ン ター ・研 究 員 ・博士(医 学)
[18講]
良
[15講]
中 村 友 浩 大阪工業大学工学部 ・助教授
[19講]
麻 場 一 徳 都留文科大学文学部 ・助教授
[20講]
は じ め に
運 動 生 理 学 の最 近 の 進 歩 は め ざ ま しい.編
者 が 学 生 で あ っ た1950年
受 け た 運 動 生 理 学 の 講 義 の 内 容 と現 在 の そ れ とを比 べ る 時,あ
代 の 終 わ り頃,大
学で
ま りの 違 い に 驚 く.も ち ろ ん,
そ の こ ろ の 講義 の レベ ル が 低 か っ た とい う意 味 で は毛 頭 な く,当 時 は 講 義 の 題 目が 運 動 生 理 学 で も,中 身 は 大 半 が 人 体 の 基 礎 生 理 学 で,い
わ ゆ る運 動 生 理 学 プ ロ パ ー の 内 容 が 少 な く,し か
も限 られ て い た と い う こ とで あ る.も と よ り生 理 学 は 「人 間 の正 常 な か らだ の 働 き に 関 す る 学 問」で あ り,運 動 生 理 学 は 生 理 学 を 親 学 問 と して 「運 動 に よ って か ら だ に どの よ う な変 化 が 生 ず る の か,そ
の 現 象 と し くみ を研 究 す る 学 問 」 で あ る.し た が っ て 親 学 問 と して の 人体 生 理 学
の 基 礎 の 上 に 運 動 生 理 学 を学 ぶ の が 常 套 で あ る. 運 動 生 理 学 の 発 展 は社 会 の 変化 と無 縁 で は な い.近 代 化 に伴 う生 活 様 式 の 省 力 化,便 活 は,人
間 か ら身 体 活 動 の機 会 を奪 い,そ
の 結 果,運
利 な生
動 不 足 の状 態 を作 り出 し,健 康 へ の影 響
が 心 配 され る よ うに な っ た.一 方 で は,ス ポ ー ツ が エ リ ー ト選手 の た め ばか りで な く,多 くの 一 般 の 人 た ち の健 康 や 楽 しみ の た め に生 活 の 中 へ 身体 運 動 と して取 り入 れ ら れ る よ う に な って きた.必
要 は発 明 の 母 とい わ れ る よ う に,こ の よ うな 社 会 的 背 景 が 運 動 生 理 学 の 発 展 に寄 与 し
た こ と も見 逃 せ な い. 1960年 代 に 始 まっ た筋 力 や 持 久 力 向 上 の た め の トレー ニ ン グ法 の 運 動 生 理 学 的 解 明 は,や が て 一般 の 人 た ち を対 象 と した 運 動 処 方 の研 究 へ と 大 き く進 展 した.ま
た,1970年
代 に は筋
バ イ オ プ シ ー 法 が ス ポ ー ツ選 手 や 健 康 な 人 た ち に も適 用 され る よ う に な り,こ れ に よっ て 得 ら れ た 成 果 は は か り しれ な い ほ ど大 きい.そ れ は筋 肉 の 研 究 分 野 の み に と ど ま らず,呼
吸や循環
も含 ん だ 多 くの研 究 を進 展 させ る こ と に な っ たか らで あ る. さ ら に1980年 代 後 半 か らは,磁 気 共 鳴 映 像(NMR)法
とい う新 しい 道 具 の 開 発 ・利 用 に よ
っ て,非 観 血 的 に 生 体 内部 の情 報 を形 態 的 の み な らず,代 謝 的 な 面 か ら も得 る こ とが で きる よ う に な っ た.た か,筋
と え ば,筋
肉 中 のATPや
肉 中 の 水 素 イ オ ン濃 度(pH)は
リ ン 酸 が,運
動 に よ っ て ど の よ う に変 わ っ て い くの
ど の よ う に 変 わ る の か,な
ど も刻 々 と知 る こ とが で き
る. 本 書 は,こ
の よ う な 新 し い 内 容 も存 分 に盛 り込 ん だ新 し い運 動 生 理 学 を20講 に ま とめ て み
た つ も りで あ る. 本 書 の 著 者 は,編 者 以 外 は いず れ も30代 の 新 進 気 鋭 の研 究 者 で あ り,編 者 が 筑 波 大 学 へ 赴 任 して 以 来,こ
こ十 数 年 の 間 に大 学 院 生 と して 一 緒 に 実験 や 討 論 を して きた 仲 間 で あ る.柔
か い頭 で 考 え,新
しい もの を吸 収 し,そ
ら
して 創 造 的 な 仕事 を手 が け て い る人 た ち の 息 吹 を感 じ
て い た だ け れ ば 幸 い で あ る. ま た,本 書 は 体 育 を専 攻 す る学 生 諸 君,ス
ポ ー ツの コー チ ン グ に携 わ っ て い る方 々,地 域 や
社 会 体 育 施 設 の 指 導 者 な ど は も と よ り,研 究 者 や学 校 の 現 場 の 先 生 方 に も ご利 用 い た だ け る こ と を願 っ て い る.そ
して,こ
れ らの 方 々 の スポ ー ツ や体 育 の 指 導 に 本 書 が い く らか で もお 役 に
立 つ こ とが で きる な らば 望 外 の喜 び で あ る. 最 後 に,本 書 の 出 版 に際 し,快
くお 引 き受 け下 さ っ た 朝 倉 書 店 に 対 して 心 か ら感 謝 の意 を表
し た い. 1993年3月 勝 田
茂
第2版 に寄 せ て
本 書 を刊 行 して か ら6年 が 過 ぎ,こ の 間 に 幸 い多 くの方 々 に読 んで い た だ き9刷 を 数 え た. 運 動 生 理 学 は 日進 月 歩 の 学 問 で あ る.こ ま え た うえ で,常 ざ し て い る.今
にup-to-dateな
の 「運 動 生 理 学20講 」 は基 本 的 な こ と を し っ か りふ
内容 を盛 り込 み 読 者 の 興 味,要
回 の 改 訂 に あ た っ て 全 体 は20講 で 変 わ ら な い が,各
望 に こ た え られ る もの を め 講 と も全 面 的 な 見 直 しを
行 い,内 容 の 面 か ら も充 実 を 図 っ たつ も りで あ る. 皆 さ まか らの 忌 憚 の な い ご 叱 声 を お 願 い した い. 1999年3月 勝 田
茂
目
次
1. 骨 格 筋 の 構 造 と機 能
1
1.1 骨 格 筋 の 構 造 1
1.5 筋 線 維 タ イ プ と ス ポ ー ツ 4
1.2 興 奮 収 縮 連 関 1
1.6 筋 線 維 組 成 お よ びMHCア
1.3 骨 格 筋 線 維 の タ イ プ 分 類 2 1.4 筋 線 維 タイ プ と ミ オ シ ン重 鎖 成 分 3
イ ソ フ ォー ム の 変 化
6 1.7 筋 線 維 タ イ プ の 推 定 7
2. 筋 力 と筋 パ ワ ー
9
2.1 筋 収 縮 の 様 式 9
2.4 筋 パ ワ ー 12
2.2 筋 力 に影 響 す る 因 子 10
2.5 さ ま ざ ま な トレ ー ニ ン グ に 伴 う 筋 力 の 変 化 12
2.3 固 有 筋 力 11
3. 神 経 系 に よ る運 動 の 調 節
15
3.1 神 経 系 の 構 造 15
3.4 筋 力 調 節 18
3.2 ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と 機 能 15
3.5 反 射 運 動 に お け る 神 経 系 の 調 節 19
3.3 運 動 単 位 の 特 性 17
3.6 随 意 運 動 に お け る 神 経 系 の 調 節 19
4. 運 動 と筋ATP代
謝
4.1 ATP 21 4.2 エ ネ ル ギ ー 供 給 系 21
21 4.4 ス プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ と 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 26
4.3 持 久 的 トレ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 24
5. 運 動 時 の ホ ル モ ン分 泌
29
5.1 ホ ル モ ン分 泌 と 視 床 下 部 調 節 29
5.3 運 動 ス ト レス と 脳 33
5.2 運 動 とス ト レス ホ ル モ ン 32
5.4 運 動 適 応 とホ ル モ ン作 用 37
6. 運 動 時 の 糖 質 ・脂 質 ・蛋 白質 代 謝 と ホ ル モ ン作 用
40
6.1 糖 質 代 謝 の 概 要 40
6.4 糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質代 謝 の 相 互 補 完 関 係 41
6.2 脂 質 代 謝 の 概 要 41
6.5 運 動 時 の 代 謝 と ホ ル モ ン作 用 42
6.3 蛋 白 質代 謝 の 概 要 41
7. 筋 の 肥 大 と損 傷 7.1 筋 肥 大 の メ カ ニ ズ ム 48
8.運
48 7.2 筋 損 傷 の メ カ ニ ズ ム 51
動 と呼 吸 ・心 循 環
8.1 肺 換 気 の メ カ ニ ク ス 54
54 8.2 死 腔 と肺 胞 換 気 量 54
8.3 呼 吸 の 調 節 機 構 55
8.8 循 環 す る 血 液 58
8.4 運 動 時 の 肺 換 気 量 と ト レー ニ ン グ 56
8.9 神 経 性 の 心 拍 調 節 機 構 59
8.5 有 酸 素 運 動 パ フ ォ ー マ ン スの 制 限 因 子 と し て
8.10 体 液 性 の 心 拍 調 節 機構 59 8.11 ス ポ ー ツ 心 臓 60
の 換 気 能 力 56 8.6 心 筋 の 特 性 57 8.7 刺 激 伝 達 系(特
8.12 運 動 性 貧 血 61 殊 心 筋) 58
9. 運 動 と末 梢 循 環
63
9.1 運 動 と血 流 配 分 63
9.5 末 梢 循 環 の 構 造 67
9.2 運 動 中 の 血 流 変 化 の 調 節 64
9.6 毛 細 血 管 と ト レー ニ ン グ 68
9.3 血 流 量 に 影 響 を 与 え る 因 子 65
9.7 毛 細 血 管 の 新 生 68
9.4 トレ ー ニ ン グ に よ る 血 流 量 の 変 化 66
9.8 末 梢 で の ガ ス交 換 69
10. 乳 酸 と高 強 度 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 10.1 い わ ゆ るATの
71 10.5 イ ン タ ー バ ル 高 強 度 運 動 中 の エ ネ ル ギ ー 代 謝
概 念 71
10.2 Lactate shuttleの 概 念 71
10.3 乳 酸 が 生 成 され る よ う な 高 強 度 運 動 時 の 他
10.6
の 代 謝 産 物 72
74 トレーニ ングお よび加齢 が 高 強度 運動 時 の 代 謝 に 及 ぼ す 影 響 74
10.4 高 強 度 運 動 時 のATP供
10.7 酸 素 利 用 能 力 と基 質 利 用 と の 関 係 75
給 系 72
11. 運 動 と酸 化 ス トレ ス
77
11.1 酸 素 と酸 素 ス ト レス:活 ジ カ ル と は何 か?
性 酸 素,フ
リー ラ
77
11.3 活 性 酸 素 の 消 去 81 11.4 運 動 と活 性 酸 素 83
11.2 生 体 で の 活 性 酸 素 の 生 成 78
12. 運 動 と 骨 代 謝
85 モ デ リ ン グ 87
12.1 骨 量 に及 ぼ す 運 動 の 効 果 85 12.2 組 織 お よ び 細 胞 レ ベ ル か ら み た 運 動 の 効
12.4 運 動 の 効 果 を 媒 介 ・修 飾 す る 要 因 87 12.5 運 動 の 力 学 的 ス ト レス を 介 し た 骨 量 変 化 の メ
果 86
カ ニ ズ ム 88
12.3 運 動 ・不 活 動 ・宇 宙 飛 行 と モ デ リ ン グ ・リ
13. 運 動 と 環 境 13.1
高 地 環
91 境 91
13.2 微 小 重 力 環 境 93
14. 運 動 時 の 水 分 ・栄 養 摂 取
98
14.1 栄 養 の 概 念 と栄 養 素 の働 き 98
14.4 運 動 時 の 糖 補 給 102
14.2 栄 養 と身 体 の 構 成 99
14.5 運 動 時 の 栄 養 補 助 食 品 の 補 給 104
14.3 運 動 時 の 水 分 補 給 101
15. 運
動
処
方
15.1 健 康 と運 動 との 関 係 106
106 15.2
運 動
処 方 108
16.運 動 と 生 活 習 慣 病
115
16.1 肥 満 と 運 動 115
16.3 高 血 圧 と運 動 117
16.2 高 脂 血 症 と 運 動 117
16.4 糖 尿 病 と運 動 118
17.運 動 と発 育 発 達
121
17.1 呼 吸 循 環 系 の 発 達 パ ター ン 121
17.5 筋 系 の発 育 発 達 パ ター ン 123
17.2 成 長 期 に お け る 呼 吸 循 環 系 能 力 の 特 徴 121
17.6 成 長 期 に お け る 筋 力,筋
17.3 成 長 期 に お け る トレ ー ナ ビ リテ ィ 122
17.7 成 長 期 に お け る トレ ー ナ ビ リ テ ィ(筋
17.4 成 長 期 に お け る 身 体 活 動 水 準 と 有 酸 素 的 能
パ ワ ー の 特 徴 124 と神 経
系 に お け る トレ ー ニ ング 効 果) 125
力 の 関 係 123
18.加
齢
と 運 動
128
18.1 加 齢 に 伴 う 呼 吸 循 環 系 機 能 の 変 化 128 18.2 有 酸 素 的 能 力 の 低 下 に 対 す る ト レ ー ニ ン グ の 効 果 129
18.4 神 経 ・筋 の 変 化 に 対 す る ト レ ー ニ ン グ 効 果 131 18.5 加 齢 に よ る 骨 の 変 化 と運 動 の 効 果 132
18.3 加 齢 に よ る 神 経 ・筋 の 変 化 129
19.ト
ッ プ ア ス リ ー トの 特 性
19.1 筋 肉 の 非 侵 襲 的 分 析 法 134 19.2 MRIに
よ る一流 選 手 にお け る筋 の形 態 的特
徴 134 19.3 MRIに
134 19.4 MRSに
よ る 筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 と ト レー ニ ン グ
状 態 の 関 係 136 19.5 呼 吸 循 環 器 系 に お け る 特 性 137
よ る ジュニ ア選 手 に おけ る筋 の形 態
19.6 ス ポ ー ツ パ フ ォー マ ン ス と遺 伝 139
的 特 徴 135
20.オー 20.1
索
バ ー ト レ ー ニ ン グ ト レ ー ニ ン グ 141
20.2
筋
20.3
オ ー バ ー ト レ ー ニ ン グ の 症 状 143
引
疲
労
142
141
20.4 子 ど もの 問 題 146 20.5 女 性 の 問 題 147
151
1 骨格筋の構 造 と機能
一 流 と い わ れ る競 技 者,と
く に 陸 上 競 技 で は,な
ぜ あ の よ う に"速
く"あ る い は"長
く"走
る こ とが で き る の で あ ろ う か.私 た ち が"身 体 を 動 か す"と い う こ と は,運 動 生 理 学 的 に は "筋 肉(骨 格 筋)が 収 縮 す る"こ と を意 味 して お り ,骨 格 筋 の"質(quality)"と"量 (quantity)"が
パ フ ォ ー マ ン ス あ る い は 競 技 成 績 に大 き く影 響 す る.本
を構 成 す る 骨 格 筋 が ど の よ う な 構 造 や 特 性 を も ち,そ か,あ
講 で は,私
た ちの身体
れが 身体運 動 とどの よ うに関連 してい る
る い は トレー ニ ン グ な ど に よ っ て ど の よ う に 変 化,適
応 す る か につ い て 最 新 の 知 見 をふ
ま え て 概 説 す る.
T管 と そ れ に 隣 接 す る 筋 小 胞 体 の 末 端 部 分(終 で は 三 つ 組 み 構 造(triad)を
1.1 骨 格 筋 の 構 造
末 槽)
形 成 し,神 経 か ら の 興 奮
を伝 達 す る 重 要 な働 き を し て い る. 私 た ち の 身 体 は 筋 肉(骨
格 筋)が
収 縮 す るこ とに よ
電 子 顕 微 鏡 に よ り筋 線 維 の 内 部 を観 察 す る と,筋
り,歩 行 や ラ ンニ ン グ あ る い は物 を持 ち 上 げ た りす る
線 維 の 長 軸 方 向 に 沿 っ て 明 る い 帯(I帯)と
こ と が 可 能 に な る.筋
(A帯)が
肉 は,そ
の 形 態 か ら横 紋 構 造 を
交 互 に 繰 り返 す,い
暗い帯
わ ゆ る 横 紋 が み られ る
もつ 横 紋 筋 と,横 紋 構 造 を も た な い 平 滑 筋 と に 大 別 で
(図1.1).I帯
き る.心 臓 の 筋 肉 で あ る 心 筋 や 腕 や 脚 な どの 筋 肉 で あ
よ ば れ る細 く密 度 の 高 い 縞 が み られ,こ
のZ膜
る骨 格 筋 は 横 紋 筋 で あ り,内 臓 や 血 管 を 形 成 す る 内臓
接 す るZ膜
よ び,こ
筋 や 血 管 筋 な ど は 平 滑 筋 で あ る.ま
筋 収 縮 の 基 本 単位 で あ る.筋 節 内 に は,収
た,骨
格 筋 は 自分
の 意 思 に よ り動 か す こ と の で き る 随 意 筋 で あ り,運 動 神 経 に よ っ て 支 配 され て い る.一
方,心
筋や 平滑 筋は
意 思 と は 関 係 な く収 縮 す る 不 随 意 筋 で あ り,自 律 神 経
原
の 中 央 部 に はZ膜(Z-membrane)と
ま で を 筋 節(sarcomere)と
か ら隣 れが
縮蛋 白質の
ミ オ シ ン フ ィ ラ メ ン トと ア クチ ン フ ィ ラ メ ン トや 数 多 くの 調 節 ・構 造 蛋 白 質 が 含 ま れ,安 2.3μmで
静 時 の長 さは 約
あ る.
の 支 配 を 受 け て い る. 私 た ち の 身 体 は,約400個 い る.こ
の 骨 格 筋 は,収
1.2
の 骨 格 筋 か ら構 成 さ れ て
興 奮 収 縮連 関
縮 機 能 を もっ た 細 長 い 多 核 細
胞 で あ る 骨 格 筋 線 維(muscle
骨 格 筋 は運 動 神 経 か らの 刺 激 に よ り収 縮 す る.神
経
も の で あ り,そ の 両 端 は 腱 組 織 と な っ て 骨 や 靭 帯 に 付
か らの 興 奮(イ
れ
着 して い る.骨 格 筋 線 維 は,収 縮 蛋 白 質 で あ る ア クチ
が 筋 線 維 内 部 の 筋 原 線 維 に 到 達 し,ミ
ン フ ィラ メ ン ト(actin ン ト(myosin と,そ
fiber)が
filament)や
filament)を
多 数 集 合 した
ミオ シ ンフィ ラメ
含 む 筋 原 線 維(myofibril)
の ま わ り を取 り囲 む 袋 状 の 筋 小 胞 体(sarco-
plasmic reticulum:SR),筋 行 小 管(transverse
原 線 維 の 内 部 に 達 す る横
tubule;T管),ミ
トコ ン ド リア,
グ リ コ ー ゲ ン顆 粒 な どに よ り構 成 さ れ て い る(図1.1).
ンパ ル ス)が 筋 線 維 に 伝 え られ,そ
オ シ ンフ ィラ メ
ン トと ア ク チ ン フ ィ ラ メ ン トの 相 互作 用 に よ っ て 筋 節 が 短 縮 す る こ と に よ り骨 格 筋 全 体 が 収 縮 す る(図1. 2).こ
の神 経 と筋の 連動 に よる筋収 縮 の一連 の システ
ム を興 奮 収 縮 連 関(excitation-contraction E-C
coupling)と
よぶ.そ
の 経 路 は,ま
coupling: ず 中 枢(脳)
か らの 興 奮 が 脊 髄 に あ る 神 経 を 介 し て電 気 的 イ ンパ ル
図1.1
図1.2
ス と して 伝 え られ る.こ
筋 線 維 が 収 縮 を 起 こす 経 過 の 要 約(Peachey,1974)
の イ ンパ ル ス が 神 経 細 胞 体 か
ら軸 索 を 介 し て 神 経 終 末 へ と伝 播 す る(1).神 合 部(神
経筋接
の 間 隙 に 放 出 さ れ,神 わ る(2).膜
セ チ ル コ リ ン)が こ
経 か らの興奮 が筋 線 維 の膜 に伝
に 伝 わ っ た 興 奮(3)は,横
か ら筋 線 維 内 部 へ と伝 わ り(4),そ 末 槽 に伝 え られ る(5).筋
骨格 筋 線 維 の タイ プ分 類
行 小 管(T管)
骨 格 筋 線 維 は そ の 特 性 に よ り数 種 類 の タ イ プ に 分 類 さ れ る.表1.1に を 示 し た.ヒ
は 比 較 的 よ く用 い ら れ て い る 分 類 法 トの 筋 線 維 は 大 別 し て,速
して筋 小 胞体 の終
twitch fiber;FTま
小 胞 体 は カル シ ウム イ オ ン
twitch fiber;STま
た はType
る4)(図1.3).Type
Ⅱ線 維 は,さ
内 部 に 蓄 え た 袋 状 の 貯 蔵 庫 で あ り,興 奮 が
伝 わ る とCa2+を 細 胞 内 に 放 出 す る(6).遊
離 し たCa2+
が ア ク チ ン に 結 び つ い た トロ ポ ニ ン(正
確 に は トロ ポ
ニ ンC)と
1.3
経 終 板 ま た は エ ン ドプ レ ー ト)に は わ ず か な
隙 間 が あ り,化 学 的 伝 達 物 質(ア
(Ca2-)を
骨 格 筋 の 構 造(Fowcett,1968)
結 合 す る こ と に よ り,ア
クチ ンと ミオ シ ン
の 収 縮 作 用 が 始 ま り筋 が 収 縮 す る(7).そ
し てCa2+が
た はType
筋 線 維(fast-
Ⅱ)と 遅 筋 線 維(slowⅠ)の2種
類 に分類 で き
ら にType
ⅡBの サ ブ タ イ プ に 分 け ら れ る3).こ
ⅡAとType
れ ら の 分 類 は,
ミオ シ ン 分 子 が 有 す るATPase(ATP加
水 分 解 酵 素)
のpHに
対 す る安 定性 に基 づ いた酵 素組 織染 色法
(myosin
ATPase染
色)に
再 び 筋 小 胞 体 内 部 へ 取 り込 ま れ る こ と に よ り筋 は 弛 緩
特 性 を 反 映 し て い る.Type
す る(8).
Type
Ⅰ線 維 が 遅 筋 型,そ
よ り な さ れ,筋
線 維 の収 縮
ⅡB線 維 が 最 も速 筋 型, し てType
ⅡA線 維 が そ の 中
表1.1
表1.2
骨 格筋 線 維 の タ イプ分 類
骨 格 筋線 維 の 特性
が 高 く疲 労 し に く い.一 方,速 は 収 縮 速 度 が 速 くATPase活 い が,酸
ヒ トの 骨 格 筋 線 維横 断 像(青 年 男 子,外 側 広 筋,ニ ー ド ル バ イ オプ シー 法 に よ るmyosin ATPase染 色,×495)
濃 染 して い る 筋 線 維 が 速 筋 線 維(FT,Type 筋 線 維 が 遅 筋 線 維(ST,
Type
Ⅱ),淡
染 して い る
Ⅰ).
Ⅱ)線 維
化 系 酵 素 活 性 は 低 く疲 労 しや す い.Type
線 維 の サ ブ タ イ プ の う ちType 図1.3
筋(FT,Type
性 や解 糖 系酵 素 活 性 は高
系 の 酵 素 活 性 はType 示 し,収
Ⅱ
ⅡA線 維 の 解 糖 系 や 酸 化
Ⅰ線 維 とType
ⅡB線 維 の 中 間 を
縮 特 性 ・酵 素 活 性 と もに 両 者 の 中 間型 の 特 性
を 有 して い る.こ
れ らの 特 性 か ら,遅 筋(ST,Type
Ⅰ)
線 維 は 有 酸 素 状 態 で エ ネ ル ギ ー を効 率 よ く産 生 し長 時 間 型 と し て 位 置 づ け られ る.一
方,ラ
ッ トな どの 齧 歯
類 の 筋 線 維 を 分 類 す る 場 合,収
縮 特性 に加 え て代謝 特
性 を 含 め た 分 類 もな さ れ て お り,そ れ に よ る と 筋 線 維
間 収 縮 す る 能 力 が 高 い こ と,こ Type
れ に 対 し速 筋(FT,
Ⅱ)線 維 は 無 酸 素 状 態 で エ ネ ル ギ ー を 産 生 し爆
発 的 な 収 縮 能 力 が 高 い こ と が わ か る.
は,SO(slow-twitch,oxidative),FOG(fast-twitch, oxidative,glycolytic),FG(fast-twitch,glycolytic)の 3タ イ プ に 分 類 さ れ る16).た だ し,こ
1.4
の 分 類 は ヒ トの 筋 原 線 維 内 の 主 要 な 収 縮 蛋 白 質 で あ る ミ オ シ ン分 子
筋 に は適 さ な い. 近 年,ミ myosin
オ シ ン分 子 の 重 鎖 成 分(ミ
heavy
筋 線維 タ イプ と ミオ シ ン重 鎖 成 分
chain:MHC)に
オ シ ン重 鎖:
対 して 特 異 的 に 反 応 す
は,分
子 量 約20万
の ミ オ シ ン重 鎖(myosin
chain:MHC)成
分2個
るモ ノク ロ ー ナ ル抗 体 を用 い た免 疫組 織 染 色 法
シ ン軽 鎖(myosin
light chain:MLC)成
(immunohistochemistry)や,MHC成
構 成 さ れ る(図1.4).ミ
分 を生 化学 的 に
分 析 す る 電 気 泳 動 法(SDS-PAGE)の 筋 線 維 に 含 ま れ るMHC成 プ 分 類 が な さ れ,Type
改 良 に よ り,
分 に基 づ いた 筋線 維 の タイ Ⅰ,ⅡA,ⅡBに
加 え て数種 類
の ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ イバ ー ※が 確 認 さ れ て い る(詳 につ い て は1.4節 表1.2に た.遅 ATPase活
細
で 述 べ る).
は そ れ ぞ れの 筋 線維 タ イプの 特 性 を示 し
筋(ST,Type
Ⅰ)線
維 は収 縮 速 度 が遅 く
性 や ク レ ア チ ン リ ン酸 の 貯 備 量 は 低 い が,
酸 化 系 酵 素 活 性 や ミオ グ ロ ビ ン含 有 量,毛
細血 管 密 度
※ ハ イ ブ リ ッ ドと は混 在 す る とい う意 味 で あ り,1本 イバ ー と よ ん で い る.
と,分 子 量20,000前
heavy 後 の ミオ
分4個 に よ り
オ シ ン重 鎖 ・軽 鎖 と も に,そ
れ ぞ れ 速 筋 型 ・遅 筋 型 の ア イ ソ フ ォー ム が 存 在 し,筋 線 維 タ イ プ ご と に,特
有 の ア イソ フ ォー ム が 含 ま れ
る19.20.22.(表1.3).ヒ
トの 場 合,MHC成
分 に よって
筋 線 維 タ イ プ は 以 下 の よ う に分 け られ る. Type
Ⅰ線 維:MHC
Type
ⅡA線 維:MHC
Ⅱaの み を 含 む.
Type
ⅡB線 維:MHC
Ⅱbの み を 含 む.
さ らに2種 類 のMHC成 イ バ ー と し て,MHC
Ⅰの み を 含 む.
分 を 含 むハ イブ リ ッ ドフ ァ Ⅰ とMHC
Ⅱaを 含 む 筋 線 維 は
の 筋 線 維 内 に 数 種 類 の ミオ シ ン重 鎖 成 分 が 混 在 し た 筋線 維 を ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ
い か ら あ る程 度 の 分 類 は 可 能 で あ る22).一 方,ラ
ット
や ラ ビ ッ トな ど の 書 歯 類 の 場 合 は ヒ トと若 干 異 な っ て い る.電 気 泳 動 法 に よ る分 析 の 結 果,ヒ
トで は み られ な
い 速 筋 型 ミオ シ ン重 鎖 ア イ ソ フ ォ ー ムMHC 者 に よ っ て はMHC (図1.4),そ
MHCア
イ ソ フ ォ ー ム は,寒
天 状 の ゲ ル の 上 方 か ら下 方 へ と移
型 のMHC
Ⅰが 移 動 度 が 最 も 大 き い.ラ
Type
C線 維 と よ ば れ て お り,MHC
ま れ る 割 合 に よ っ てType Ⅱa),Type IIAC線
Ⅰ<MHC
れ る こ と も あ る.MHC
Ⅰ ≒MHC
ⅡAB線
ブ リ ッ ドフ ァ イバ ー2.17)は,発
られ,分
と え ばMLC成
1.5
表1.2の
Ⅱbを 含 む ハ イ ブ 維 と よ ば れ る.ハ
イ
育 期や さ まざ まな刺 激
化 が 終 わ っ て い な い 未 分 化 な 状 態,あ
る いは
Ⅱ)線 維 は 無 気 的(無
ョ ン溶 液 のpHの
レイ ンキ ュ ベ ー シ
違 い に 対 す る 筋 線維 の 染 色 濃 度 の 違
,発 揮 す る 張 力 やATPase活
つ と考 え ら れ る.一 方,遅 気 的(有
酸 素 的)エ
ネルギ 性 も高
筋(ST,
性 も高 い こ とか ら有 気 的,持
は,ニ
Type
Ⅰ)線 維 は 有
ネ ル ギ ー 発 揮 能 力 に優 れ,疲
労耐
久 的 な 運 動 に 適 して い る
ー ドル バ イ オ プ シ ー 法(後
成(速
筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 比 率)を
健 常 者 で は,速 50%:50%で
述)に
よ
Ⅱb)と 遅 筋 型(MHCI)が あ り,そ れ ぞ れ1f,2f,3f,お
示 した10).一 般 の
筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 割 合 は ほ ぼ
あ る が,短
距 離 選 手 で は,一
ヒ ト骨 格 筋 線 維 タ イプ と ミオ シ ン重 鎖 ・軽 鎖 成分
ミオ シ ン重鎖 に は 速 筋 型(MHC Ⅱa,MHC に は速 筋型(MLC f)と 遅 筋 型(MLC s)が ソ フ オ ー ム を もっ て い る.
酸 素 的)エ
り測 定 した 一 流 の 陸上 競 技 選 手 の 外 側 広 筋 の 筋 線 維 組
素組織 染 色法 であ る
表1.3
3f)が 影 響
い こ と か ら,無 気 的 ・瞬 発 的 な 運 動 に 適 した 能 力 を も
図1.5に
の よ う な細 分 化 さ れ た 筋 線 維 の
で 述 べ た よ う に免 疫 組 織 染 色 法 や 電 気
色 に よ っ て も,プ
か で もMLC
筋 線 維 タ イプ とス ポ ー ツ
ー 発揮 能 力 に優 れ
と 考 え ら れ て い る.こ
ATPase染
分(な
分のほか
骨 格 筋 線 維 の 収 縮 ・代 謝 特 性 か ら み て,速
筋(FT,Type
と考 え られ る.
myosin
Ⅱx)>
Ⅰ)の 順 序 で あ
Ⅰ>MHC Ⅱa), Type
筋 線 維 が タ イ プ 変 化 を起 こ して い る途 中 の 段 階 の も の
泳 動 法 に よ り な さ れ る が,酵
Ⅱb)> ⅡX線 維(MHC
Ⅱa)> Ⅰ線 維(MHC
ま
筋 型 ア イソフ ォー ム間 の最大 短 縮 速度 に はか
Ⅱaの 含
る い は取 り除 い た)場 合 に 高 い 割 合 で み
分 類 は,1.3節
縮)速
して い る可 能 性 が 示 唆 さ れ て い る.
Ⅱa)に 細 分 化 して 分 類 さ ⅡaとMHC
リ ッ ドフ ァ イバ ー はType
を 加 え た(あ
ⅠとMHC
ⅠC線 維(MHC
ⅡC線 維(MHC
維(MHC
度 は,大
に も,た
Ⅱbの 移 動
ッ トと はそ の 位 置 が 異 な る こ とに 注 意.
度
ム を 含 む 各 筋 線 維 タ イ プ の 収 縮(短
な りの オ ー バ ー ラ ッ プ が 認 め ら れ,MHC成
ッ トと ヒ トで はMHC
ア イ ソ フ ォ ー ム の 数 が 異 な り,ま た ヒ トで はMHC 度 が 最 も遅 い た め,ラ
縮)速
イ ソフ ォー
る が,速
トと も に 遅 筋
ⅡA線 維 と
イ ソ フ ォ ー ム は 筋 線 維 の 収 縮(短
ⅡA線 維(MHC
動 し分子 量 の 違 い に よ り分 離 され る.ラ ッ ト,ヒ
ⅡX線 維 はType
た は ⅡD)
に 大 き く影 響 す る19).そ れ ぞ れ のMHCア
か に は ⅡB線 維(MHC
ミオ シ ン分 子 の 構 造 と電 気 泳 動 法 に よ る ミオ シ ン重 鎖 成 分の分離
ⅡX(ま
ⅡB線 維 の 中 間 の 特 性 を有 す る.
MHCア
図1.4
究
Ⅱdと も よ ば れ る)が 認 め られ18.19)
れ を 含 む 筋 線 維 はType
線 維 と よ ば れ る.Type Type
Ⅱx(研
あ る.ミ オ シ ン軽 鎖 よ び1s,2sの アイ
部 を除 い
図1.5 一 流 陸 上 競 技 選 手 ・球 技 選 手 お よび 日本 人一 般 男 子の 筋線 維 組 成(勝 田 と和 田,1986)
表1.4
速 筋 型:速 遅 筋 型:中
筋 線 維 組 成 か らみ た 適 性 ス ポ ー ツ種 目
筋 線 維 の 割 合 が 著 し く高 い.中 庸 速 筋 型:中 間型 で あ る が,や
て 速 筋 線 維 の 割 合 が70%以
上 を 占 め て い る.こ
対 し て,長
に遅 筋 線 維 の 割 合 が65%
距 離 選 手 は,逆
以 上 み ら れ た.中 た が,そ
れ に
距 離 選 手 で は そ の 中 間 の 値 が 得 られ
の 中 で も800mの
間型 で あ るが,や や 速 筋 線 維 の割 合 が 高 い.中
や 遅 筋 線 維 の割 合が 高 い.遅
筋 型:遅
筋 線 維 の 割 合 が 著 し く高 い.*:推
庸
定.
成 を有 す る こ とが 必 要 条件 で は な いか と考 え られ る. 一方 ,一 流 球技 選 手 につ い て も同様 に調べ た とこ ろ, 陸上 競 技選 手 の よ うな極端 な偏 りはみ られず,ど の球
選 手 は や や 速 筋 線 維 の 割合
技選 手 も,速 筋 線維 と遅筋 線維 はほ ぼ同 じ割合 で あっ
が 高 く,1,500mの
選 手 はや や 遅筋 線 維 の割 合 が高 い
た.陸 上競 技 に比べ,技 術 的 要素 の高 い球 技種 目では
傾 向 に あ っ た.こ
の よ う な結 果 か ら,陸 上 競 技 の よ う
持 久 的能 力,瞬 発 的 能 力 と もに必要 で ある こ とか ら,
な エ ネ ル ギ ー 系 へ の 依 存 度 の 高 い 種 目 に お い て 一 流の
む しろ両方 の筋 線維 タ イプが 必要 に なる のか も しれ な
成 績 を お さ め る た め に は,そ
い.
の 種 目 に 適 した 筋 線 維組
こ の よ う な 結 果 を も と に して,あ
らか じめ筋 線維組
少 す る と い う 報 告7)が み られ る.短
時 間 ・瞬 発 的 な ス
成 を 調 べ る こ と に よ り,そ の 人 に 適 し た ス ポ ー ツ種 目
プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ も 同 様 に 筋 線 維 組 成 は 変 化 しな
を 分 類 す る こ と も可 能 に な る10)(表1.4).た
い と い っ た 報 告6)と,MHC
極 端 に 速 筋 線 維 の 多 い 人(速 瞬 発 的 な 運 動 種 目 に,逆
筋 型)で
と え ば,
あれ ば短 時間 の
に 遅 筋 線 維 が 多 い(遅
筋 型)
場 合 に は持 久 的 種 目 にそ れ ぞ れ 適性 が あ る とい え よ う.や
や 速 筋 線 維 が 多 い 場 合(中
や や 遅 筋 線 維 が 多 い 場 合(中
庸 速 筋 型)あ
るい は
Ⅱaア イ ソ フ ォ ー ム の 割 合
が 増 加 す る と い う 報 告1)が み られ る.動 物 実 験 に 比 べ, ヒ トの 場 合 で は 負 荷 す る 刺 激 の 量(ト 間 や 期 間)が
少 な い た め,筋
レー ニ ン グの 時
線 維 組 成 を 変 化 させ る に
は 至 ら な い 可 能 性 が 考 え られ る.さ
ら に,ヒ
ト骨 格 筋
の 筋 線 維 組 成 の 検 討 の 多 くは ニ ー ドル バ イ オ プ シー 法
庸 遅 筋 型)は,表1.4に
示 し た 球 技 種 目 な ど に 適 して い る とい え よ う.
(後述)に
よる微 量 な筋 断 片の 分析 に よ りな され て お
り,骨 格 筋 全 体 の 変 化 を 正 確 に 知 る こ と は 難 し い こ と 1.6
筋 線 維 組 成 お よ びMHCア
イ ソ フ ォー ム
の変 化
か ら,こ
の よ う な 相 反 す る結 果 が 得 られ た の か も し れ
な い.ま
た,速
Type
ⅡB)で
筋 線 維 の サ ブ タ イ プ 間(Type
は トレ ー ニ ン グ に よ る タ イ プ 変 化(Type
一 流 の 陸 上 競 技 選 手 に み ら れ る よ う な極 端 に 偏 っ た
ⅡB線 維 の 減 少 とそ れ に 伴 うType
筋 線 維 組 成 が トレ ー ニ ン グ な ど に よ り後 天 的 に 得 られ
生 じや す い 傾 向 に あ る が,速
た もの か,あ
筋 線 維(Type
る い は も と も と持 っ て 生 まれ た もの か を
ⅡAと
ⅡA線 維 の 増 加)は
筋 線 維(Type
Ⅱ)と
遅
Ⅰ)の 間 の タ イ プ 変 化 は ほ と ん ど生 じ
知 る こ と は非 常 に 興 味 深 い.こ れ ま で の 知 見 で は,一 卵
な い.し
性 双 生 児 間 の 筋 線 維 組 成 が 非 常 に 類 似 して い る こ と11)
手 や 長 距 離 選 手 に み られ る よ う な 非 常 に偏 っ た 筋 線 維
や,数
組 成 は 生 ま れ つ き の 遺 伝 的 要 素 が 高 い と 考 え られ る
多 くの ト レ ー ニ ン グ 実 験 に よ っ て も 筋 線 維 組 成
た が っ て 現 時 点 で は,と
に は 変 化 が 認 め られ な い こ と5)な ど の 理 由 に よ り,ヒ
が,こ
ト骨 格 筋 の 筋 線 維 組 成 に は 遺 伝 的 要 素 が 強 い と 考 え ら
Bouchard21)は,ヒ
れ て き た.し
定 に は 遺 伝 的 要 素 が 約45%の
か し な が ら,1980年
代 の 後半 か らこの
れ に 関 す る 興 味 深 い 報 告 と して,Simoneauと ト骨 格 筋 のType
10年 間 の 間 に 数 多 く の 新 し い 知 見 が 報 告 さ れ て い る.
か に 環 境 因 子 が 約40%,分
オ ー トプ シ ー(剖
的 要 素 が 約15%関
の ヒ トで は,新
検)法
ⅡC線 維 が 高 い 割 合(筋 られ,一
に よ る 分 析 の 結 果22),発 育 期
生 児 の 骨 格 筋 に 未 分 化 な 状 態 のType
方,2∼5歳
線 維 全 体 の10∼17%)で
の 骨 格 筋 で はType
認め
Ⅰ線 維 の 比 率
くに 陸 上 の 短 距 離 選
Ⅰ線 維 の 割 合 の 決
割 合 で 関 与 し,そ
の ほ
析 時 のエ ラー を含 む技 術
与 す る と推 測 して い る.
ラ ッ トや ラ ビ ッ ト な ど の 齧 歯 類 を 用 い た 研 究 で は, 筋 線 維 組 成 やMHCア
イ ソ フ ォー ム の 変 化 に 関 し て 興
味 深 い 知 見 が 得 ら れ て い る.電 気 刺 激13や 協 働 筋 切 除17)
が そ の 前 後 の 年 齢 に比 して 有 意 に 高 い こ と が 報 告 さ れ
な ど に よ り骨 格 筋 の 活 動 水 準 を 増 加 させ る こ と に よ っ
て い る.そ
て,筋
し て5∼20歳
の 間 にType
ん どみ ら れ な くな り,TypeⅠ 半 数 を 占 め る よ う に な る(残
ⅡC線 維 は ほ と
線 維 は筋線 維 全 体 の 約 りの 半 数 がType
Ⅱ 線 維).
老 化 に 伴 う 変 化 と して は 筋 線 維 サ イ ズ の 縮 小(萎
縮)
線 維 タ イ プ あ る い はMHC成
筋 型 へ と 変 化 す る.具
分 は速 筋 型 か ら遅
体 的 に は,遅
維 の 増 加 や 遅 筋 型 のMHC
筋(Type
Ⅰ)線
Iを 含 む ハ イ ブ リ ッ ドフ ァ
イ バ ー の 著 し い 増 加 が 認 め ら れ,筋
線維 の特性 は
と と もに 筋 線 維 総 数 の 顕 著 な 減 少 が あ げ られ る.70∼
Type
80歳 代 の 骨 格 筋 で は,20∼30歳
ⅡA(MHC
Ⅱa)→Type
トす る.逆
に 後 肢 懸 垂15)や ス ペ ー ス フ ラ イ ト26),脊 髄
代 に比 べ 筋線 維 総 数
が 半 数 近 く ま で 減 少 す る と い う 報 告 も み られ る22.ま た,20年
間 の 縦 断 的研 究 に よ り,日 頃 運 動 を 行 っ て い
な い ヒ トの 骨 格 筋 で は 老 化 に よ っ てType
Ⅰ線 維 の 割
Ⅱb)→Type
ト レー ニ ン グ に よ る 筋 線 維 組 成 の 変 化 に つ い て は, 久
的 トレ ー ニ ン グ や 高 強 度 イ ン ター バ ル ト レー ニ ン グ で
ⅡX(MHC
Ⅰ(MHC
Ⅱx)→Type
Ⅰ)の 方 向 へ と シ フ
損 傷24)な ど に よ り骨 格 筋 の 活 動 水 準 が 低 下 し た 場 合, 筋 線 維 タ イ プ ま た はMHC成 の 変 化 が 生 じ,速 筋(Type
合 が 増 加 す る こ と が 報 告 さ れ て い る25).
ヒ トの 場 合 で は 一 致 し た 見 解 は 得 られ て い な い.持
ⅡB(MHC
は 速 筋 型 のMHC
ⅡxやMHC
分 は 遅 筋 型 か ら速 筋 型 へ ⅡA, ⅡX, ⅡB)線
Ⅱbを 含 む ハ イ ブ リ ッ ド
フ ァ イ バ ー が 著 し く 増 加 し,Type Type
ⅡA(MHC
Ⅱa)→Type
維 あ るい
Ⅰ(MHC
ⅡX(MHC
Ⅰ)→
Ⅱx)→Type
は 筋 線 維 組 成 は 変 化 しな い と い っ た 報 告25)と,Type
ⅡB(MHC
ⅡB線 維 あ る い はMHC
物 実 験 で は 骨 格 筋 の 活 動 水 準 を極 端 に 増 加 さ せ た り あ
Ⅱbア イ ソ フ ォー ム の 割 合 が 減
Ⅱb)の 方 向 へ と変 化 す る.こ
の よ う に,動
る い は 減 少 させ る こ と が 可 能 で あ り,そ の 結 果,筋
線
維 の 特 性 は あ る 一 定 の 方 向 へ と 変 化 して い く.
1.7
筋 線 維 タイ プ の推 定
筋線 維 組 成 は私 た ちが スポ ー ツを行 ううえで 重要 な 影 響 を 及 ぼ し て い る.そ の 評 価 や 方 向 づ け,さ
の た め,ス
ら に ス ポ ー ツ タ レ ン トの 発 掘 と
い っ た 意 味 に お い て,個
人の筋 線維 組 成 を知 る ことは
意 義 深 い と 考 え ら れ る.筋 か の 方 法 が あ る.直 て は,1962年
ポ ー ツ種 目の適 性
線 維 組 成 を知 る に は い くつ
図1.6 50m走
接 筋 を取 り出 して 調 べ る 方 法 と し ○:ス
ベ ル グ ス トロ ー ム が 開 発 した ニ ー ドル バ
イ オ プ シ ー(筋
生 検)法
が あ げ ら れ る.こ
れ は,バ
お よ び12分間
走 の 速 度 比 と筋 線
維 組 成 の 関係9) プ リ ン ター,△:長
技 選 手,●:非
イ
距 離 ラ ンナ ー,□:球
運 動 選 手.
オ プ シ ー 用 ニ ー ドル を 筋 内 に 挿 入 し微 量 の 筋 断 片(30 ∼50mgの る)を
重 量 で200∼500本
程 度の 筋線 維が 含 まれ
取 り 出 す 方 法 で あ る.取
り出 し た 筋 断 片 を 組 織
を 提 唱 し て い る.こ
化 学 的 に 染 色 し筋 線 維 組 成 を調 べ る こ とが で き る た め
る こ と を 認 め(図1.6),こ
信 頼 性 は 高 い.し
り,か
か し,こ
小 切 開 が 必 要 で あ り,誰
の 方 法 は 局 所 麻 酔 と皮 膚 の
もが手 軽 に行 える もの では な
れ に よ る と,50m走
の 速 度 を12
分 間 走 の 速 度 で 除 した 値 が 筋 線 維 組 成 と 密 接 に 関 連 す の速度比 を求 める こ とに よ
な り高 い 精 度 で 筋 線 維 組 成 を推 定 で き る と して
い る.こ
の 方 法 は,誰
で も グ ラ ン ド で 手 軽 に 行 え,し
い8).
か も 特 別 な 装 置 も 必 要 と し な い こ と な ど か ら,筋
筋 線 維 タ イ プ を 間 接 的 に推 定 す る方 法 と して い く つ
組 成 の 有 効 な 推 定 手 段 と 考 え ら れ る.
か の 方 法 が 考 え ら れ て い る.そ
の一つ に筋電位 伝 導速
度 に よ る推 定 法 が あ る14).こ れ は,筋 電 極 を 取 りつ け,筋
の表 面 に ア レー
の 収 縮 に よ り記 録 さ れ た筋 電 図 パ
タ ー ン と電 極 間 の 距 離 か ら伝 導 速 度 を 求 め る もの で あ る.こ の 伝 導 速 度 と筋 線 維 組 成 は密 接 に 関 連 して お り, 伝 導 速 度 の 速 い 筋 ほ どType
た が っ て 伝 導 速 度 を 知 る こ とに よ り間 接 的 に筋 線 維 組
気 共 鳴 映 像 法(magnetic
●
わ り 筋 が 収 縮 す る の か,そ
に よ る推 定 法 が あ る12).こ の 方 法 は,MRIの ラ メ ー タで あ る 緩 和 時 間 を 求 め,間
3. 筋 線 維 タ イ プ を 分 類 し そ れ ぞ れ の 筋 線 維 の 特 性 に つ い て 述 べ な さ い. ミ オ シ ン 重 鎖 ア イ ソ フ ォ ー ム と筋 線 維 タ イ プ の 関 連 に つ い て 述 べ な さ い.
独特のパ
接 的 に筋線 維組 成
の経 路 につ い て 述 べ な さ
い.
4.
imaging:MRI)
題
2. 興 奮 収 縮 連 関 に 関 し て 神 経 か ら の 刺 激 が ど の よ う に 伝
の 他 の 方 法 と して,磁
resonance
問
1. 骨 格 筋 は ど の よ う な 構 造 を し て い る か 述 べ な さ い.
Ⅱ 線 維 の 比 率 が 高 く,し
成 を 推 定 す る こ と が で きる.こ
線 維
5. 筋 線 維 組 成 と ス ポ ー ツ 種 目 は ど の よ う に 関 連 し て い る か 述 べ な さ い.
を 推 定 す る も の で あ る.さ
らに 最 近 で は,磁
光 法(magnetic
spectroscopy:MRS)を
resonance
気 共 鳴分
6.
用
い て 速 筋 線 維 と遅 筋 線 維 の 相 対 的 な ク レ ア チ ン リ ン酸 含 有 量 の 違 い を 検 出 す る こ とに よ り,筋 線 維 組 成 の 推
述 べ な さ い. 7. 筋 線 維 組 成 の 推 定 法 を い く つ か あ げ,そ
み も な く非 観 血 的 で あ る が,測
た 簡便 で誰 にで もで きる推 定法 の 開発
●
参 考
が 望 ま れ る.
法 と し て,50m走
文 献
1) Andersen, chain
勝 田 ら9)は,よ
J. L., Klitgaard, H. and Saltin,B.:Myosin
isoforms
in single fibres fron m. vastus
sprinters:Influence
り一 般 的 に 筋 線 維 組 成 を 推 定 す る 方 と12分
所
定の た め に
高 価 な 設 備 や 熟 練 し た 測 定 者 を 必 要 とす る.そ の た め, よ り一 般 的,ま
の 長 所,短
に つ い て 述 べ な さ い.
定 が 可 能 で あ る こ と も 示 さ れ て い る23).こ れ ら の 推 定 方 法 は,痛
ト レ ー ニ ン グ あ る い は 活 動 水 準 の 増 加 ・減 少 に よ り筋 線 維 組 成 や ミオ シ ン重 鎖 成 分 は どの よ う に変 化 す るか
間 走 の 速 度比 に よ る 推 定 法
Scand.,151
heavy
lateralis of
of training intensity. Acta
Physiol.
:135-142,1994.
2) Biral, D., Betto, R., Danieli-Betto.
and Salviati,G.:Myosin
heavy
chain
muscle.
composition
Biochem.
3) Brooke,
M.
of single
H. and
Kaiser,
normal
human
科 学,34:231-238,1985. 15)
K. K.:Three"myosin
triphosphatase"systems:The and
fibres from
J.,250:307-308,1988.
nature
sulfhydryldependence.
adenosine
of their
J. Histochem.
pH
liability
Cytochem.,18: 16)
V.
and
histochemical
study
activity in skeletal 5) Gollnick,
of oxidative
muscle.
W.
enzyme
L. and
activity
muscle.
J. Appl.
6) Harridge,
chain
and
and
R.:The
training.
Dynamic
茂:筋
of training skeletal
Pellegrino,
muscle
M.,
function,
system
Muscular
442-
and
its adaptation
Function
茂,高
薫,田
中
と12分
守,小
育 の 科 学,37:
野 譜 也,田
P. V., Viitasalo,
Sjodin,
B.
and
線 維 組 成 と 運 動 競 技 特 性.デ
muscle
enzyme
of both
sexes.
12) Kuno,
S., Katsuta,
Akisada, muscle
Physiol.
サ ン
S., Inoue,
T.
and
expression isoforms stimulated
Pette,
rabbit
A.,
fibres dizygous
ralaxation
D.:Coordinate subunit
fast-to-slow muscle.
渡 山 亜 兵,勝
functionally
overloaded
and
changes myosin
transition
Eur.
田
K. time
and
Schiaffino,
fibres
V.
of
the
multiple rat
R., Gillespie,
pigs
and
of
three
rabbits.
soleus
C.
fiber
A.
and
types
of
Biochemistry,11:
24)
chain
Muscle
Res.
and
Gorza,
L.,
Lee,
M.,
Ishihara,
MHC
exercised
A.
and
isoforms
rat
Sartore, K.
isoforms Cell
Schiaffino,
plantaris
in
fibers.
J.
in
S.,
and
Saggin,
Lomo,
type
2
L.,
Ausoni.
T.:Three
skeletal
S.,
myosin
muscle
fibres.
J.
Motil.,10:197-205,1989.
S.
and
Reggiani,
skeletal
Schiaffino,
S.
C.:Myosin
muscle.
J.
Appl.
and
the
25)
of low-frequency26)
尺性 収 縮 に お け る 外 力
Physiol.
Simoneau,
J. A.
fiber
proportion
type
isoforms
in
Physiol.,77:493-501,
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muscle
and
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J.
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Kuno,
H.,
and
and
NMR
Talmadge,
S., Katsuta,
Anno,I.
composition
S.,
Itai,
NMR
Shimojo,
H.,
Masuda,
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measurements
K.,
between in
human
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R.
chain
S.
Skeletal
muscle
W.,
20-yr
follow-up
Zhou,
M.
Y.,
R.
and
hybrid
rats.J.
Trappe,
Costill,
Appl. D.
Edgerton, fibers
study. Klitgaard,
Gollnick,
human
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P. after
V.
in
R.:Prominence
soleus
muscle
of
spinal
Physiol.,78:1256-1265,1995.
L., rink,
characteristics
R.and
:
skeletal
development,
Takahashi,
78
Reggiani,
proteins:Gene
of myosin
heavy-chain
側 広 筋 の 筋 電 位 伝 導 速 度 ‐ そ の 筋 線 維 組 成 と の 関 連.体
K.,
of
Gundersen,
cord-transected
in
Fox,
R.:Modulation
S., M.,
heavy
fiber
and
J. Biochem.,213:1039-1046,
茂:等
E.:
of
Physiol.,83:280-290,1997.
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J., Edgerton,
R.J.,
V.
Yoshioka,
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1993. 14) 宮 田 浩 文,佐
23)
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T., Anno, between
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single
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Talmadge,
Delineation,
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M.:Relationship
13) Leeuw,
M.,
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activities in monozygous Acta
R.,
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Karlsson,
R.
Edgerton,
9 22)
トス ポ ー ツ 科 学,7:34-43,1986. 11) Komi,
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間走 の 成績 に よ る 外 側 広 筋 の 筋 線 維
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E. :Metabolic
myofibrillar
育 学 研 究,34:141-149,1989.
茂,和
20)
Karger,1996.
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and
expression
1994.
P. and
21)
松
isoforms
Barnard,
mammalian
During
P., Saltin, B., Komi, Basel,
Roy,
Vianello,
and
Physiol.,84:
バ イ オ プ シ ー に つ い て.体
組 成 の 推 定.体 勝 田
18)
Saltin, B.:
1987.
渕 健 一:50m走
10)
Human
V. eds.),pp.82-94,
830-837, 9) 勝 田
In
contractile
J. B.,
Appl.
J. Appl.
Exercise(Marconnet,
Poortmans, 8) 勝 田
17)
19)
S. D.
Peter,
H. the
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Ⅳ, C. W.,
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P. D. and
in vivo
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chain
Acta
skeletal
:107-111,1973.
in vitro
heavy
heavy
muscle.
phosphorylase
M.,
Yamamoto, induces
myosin
K.
of human
R., Canepari,
A.,
suspension
Stempel,
R. E.:Effect
M., Balsom,
Ishihara,
comparative and
fiber composition
R.,Bottinelli,
training,
enzyme
Shepherd,
and
E. :A
R. B., Saltin, B., Saubert
C.,Esbjornsson,
myosin
G.
Histochemie,2:105-117,1960.
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S. D.
Reggiani, Sprint
A.
P. D., Armstrong,
Sembrowich, on
Pearse,
Y.,
Hindlimb
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Oishi,
W.
J. and
among
J. Appl. H.,
Pearson,
distance
D.
R.:
runners:a
Physiod.,78:823-829,1995.
Saltin,
B.,
Roy,
D.:Myosin
heavy
short-term
spaceflight.
R.
R.,
chain J.
Edgerton,
V.
isoforms
of
Appl.
Physiol.,
2 筋 力 と筋 パ ワ―
ス ポ ー ツ パ フ ォー マ ン ス に 及 ぼ す 筋 力 ・筋 パ ワ ー の 影 響 は 大 きい.競
技 種 目に よ っ て は,筋
力 ・筋 パ ワ ー の 大 小 が パ フ ォ ー マ ンス の大 部 分 を決 め て し ま う もの もあ る.し よ う な 筋 力 ・筋 パ ワー が ど の よ う な 生 理 学 的 要 因 に 影 響 され,ト に 変 化 す る の か に つ い て 検 討 す る こ と は重 要 と思 わ れ る.そ
た が っ て,こ
の
レーニ ングに よって どの よう
こで,本
講 で は 筋 力 ・筋 パ ワー の
大 き さ を 決 め る生 理 学 的 背 景 に つ い て 概 説 す る.
通 常 の 筋 活 動 で み られ る こ と は 少 な い.こ
2.1 筋 収 縮 の 様 式
の収縮 様式
はお もに等速 性 筋力 測定 器 な どを用い て行 われ る こと が 多 い.等
速 性収 縮 で は関節 の角 度 に よって筋力 は一
筋 収 縮 の 様 式 を 二 つ に大 別 す る と,ま ず 関 節 が 動 く
定 の 値 を と らず,時
か 否 か と い う 点 で 静 的 収 縮(static
張 性 収 縮 と等 速 性 収 縮 は 筋 が 短 縮 し な が ら力 を 出 して
び 動 的 収 縮(dynamic
contraction)に
contraction)お
よ
い るの か,あ
分 け られ る.す
々 刻 々 と筋 力 の 値 は 変 化 す る.等
る い は筋 が 伸 張 し な が ら力 を 出 し て い る
な わ ち,前 者 は 関 節 が あ る 一 定 の 角 度 で 固 定 さ れ た 状
の か に よ っ て,短
態 で 筋 力 発 揮 を行 う も の で,後
と 伸 張 性 収 縮(eccentric
者 は関節 の ある可動 域
内 で 筋 収 縮 が 行 わ れ る もの を意 味 して い る.静
は,伸
(isometric contraction)と
図2.1に
揮 さ れ た 張 力 が 一 定 で あ る場 合,関
contraction)に
contraction) 分類するこ
と が で き る.最 大 努 力 で 行 っ た 場 合 に発 揮 され る筋 力
的収 縮
は 筋 の 長 さが 一 定 で あ る と い う こ とか ら,等 尺 性 収 縮 い わ れ る.動
縮 性 収 縮(concentric
的収縮 で は発
節 の運動 の速 度が
張 性 収 縮 > 短 縮 性 収 縮 で あ る.筋
収縮 の様式 を
ま とめ た.
また,最
近 の 超 音 波 法 を 用 い た 研 究 か ら,安 静 時 ば
一 定 で あ る 場 合 を そ れ ぞ れ 等 張 性 収 縮(isotonic
か りで な く収 縮 中 の 筋 束(筋
contraction),等
の 動 態 を リ ア ル タ イ ム に 映 し 出 す こ と が で きる よ う に
よぶ.た
速 性 収 縮(isokinetic
と え ば,5kgの
contraction)と
ダ ンベ ル を 持 っ て,肘
関節 の
線 維 が 集 合 した 筋 の 束)
な っ た.そ れ に よ っ て,等 尺 性 収 縮 時 に お い て も筋 線
伸 展 や 屈 曲 を 行 う よ う な 運 動 は"等 張 性 収 縮"で あ る.
維 が 収 縮 す る よ うす が 確 認 さ れ て い る11).つ ま り,関
つ ま り,5㎏
節 角 度 は 一 定 で も,筋 の 中 で は 筋 線 維 は 収 縮 して い る
る の で,"等
の ダ ンベ ル の 重 さ が 常 に 腕 に か か っ て い 張 性"な
の で あ る.一
方,等
速 性 収縮 は
図2.1
の で あ る.こ れ は お そ ら く筋 以 外 の 腱 の よ う な 弾 性 組
筋 収縮 の 種 類
織 が 伸 ば され た た め 生 じ た こ と に よ る と考 え られ て い る.
2.2 筋 力 に 影 響 す る 因 子
a. 筋 断 面 積 最 大 筋 力 は そ の 筋 の 断 面 積 に ほ ぼ 比 例 す る と考 え る こ と が で きる.し よ り,大
た が っ て,筋
量 の多 い者 は少 ない者
きな 力 を 出 す こ とが で きる と 大 まか に い う こ 図2.2 羽 状 筋 の模 式 図
と が で き る.
θ:羽 状 角,生
筋 の 断 面 積 を 示 す 指 標 は 二 つ あ る.一 つ は生 理 学 的 断 面 積 で,も
う 一 つ は解 剖 学 的 断 面 積 で あ る.こ
の 二 つ の 筋 断 面 積 は 図2.2の が で きる.ま
た,こ
の 総 和(図2.2で
れ ら の 二 つ の 筋 断 面 積 は次 の よ う
の 筋 断 面 積 お よ びC-D間
b.神
経性 の 因子
筋 力 発 揮 に神 経 性 の 因 子 は 重 要 な 役 割 を す る.筋
・解 剖 学 的 断 面 積:筋 はE-F間
の長軸 方 向 に垂直 な筋 断面 積
の 筋 断 面 積)
電
力 発揮 時の 筋 の電気 的
な 活 動 状 態 を記 録 す る こ とが で き る.神
経性 の因子 に
は 大 き く分 け て 二 つ の 因 子 が あ る と 考 え られ て い る. 一 つ は筋収 縮 に参 加す る 運動 単位 の数 で
の 筋 断 面 積 の和)
(図2.2で
筋断面積の 合
筋 断 面積.
図 法 を 用 い る こ と に よ っ て,筋
に 含 まれ る 全 筋 線 維 の 断 面 積
はA-B間
剖 学 的 断 面 積:E-Fの
れら
よ うに模 式的 に表 す こ と
に 定 義 す る こ とが で き る. ・生 理 学 的 断 面 積:筋
計,解
理 学 的 断 面 積:A-BとC-Dの
,も
う一つ は
運 動 単 位 へ の イ ン パ ル ス の 発 射 頻 度 で あ る.ま 力 トレ ー ニ ン グ な ど を 行 う と,筋
た,筋
力発揮 時 に参加 す る
解 剖 学 的 断 面 積 に つ い て は 磁 気 共 鳴 映 像 法(MRI)
運 動 単 位 の 同 期 化 が 生 じ て く る こ と も報 告 さ れ て い
な ど を 用 い て,1枚
る.最
の 横 断 像 を撮 影 す る こ と に よ っ て
近,運
動 後 のMRIか
ら,筋
の動員 能力 を評価 す
ヒ トの 骨 格 筋 で も簡 単 に 測 定 す る こ とが で き る.一 方,
る こ と が 可 能 と な っ て き た.表2.1に
生 理 学 的 断 面 積 につ い て は,ヒ
速 度 に お け る等 速 性 膝 伸 展 力 と膝 伸 筋 群 の 生 理 学 的 断
トの 筋 に お け る す べ て
の 筋 線 維 の 断 面 積 を 測 定 す る こ と は で き な い の で,以
面 積(PCSA)お
下 の よ う な 式 を 用 い て 推 定 す る こ と が で き る.
算 出 した 生 理 学 的 断 面 積(activated
生 理 学 的 断 面 積=(筋
関 係 に つ い て 示 し た.等
筋 束 長 と は 図2.2に を示 して い る.ま 示 し て い る.こ
の 体 積)×(筋 東 長)−1×cosθ
お け る筋 束 の 腱 か ら腱 まで の 距 離 た,θ
れ を羽 状 角 と い う.図2.2を
筋 の 収 縮 方 向 と 筋 束(筋 い る.し
は 筋 束 と腱 膜 と の な す 角 度 を
た が っ て,筋
線 維)の
線 維 の 張 力(F)の
筋 の 収 縮 ベ ク トル(F・cosθ)と
み る と,
収 縮 方 向は異 な って 分 力 の う ち,
同一 の 方 向の 分力 の
み が 筋 の 張 力 発 揮 に 影 響 を与 え る の で,羽
状 角 の余 弦
よ び 筋 の 動 員 能 力 の 影 響 を 考 慮 して
積 との 間 に は 角 速 度0°/秒 め られ て い る が,筋
との 間 に の み 相 関 関係 が 認
つ の 角 速 度 と の 間 に も 相 関 関 係 が 認 め られ,さ
の二
らにす
べ て の 角 速 度 の 相 関 係 数 が 高 値 を 示 して い る.つ ま り, こ れ は 筋 の 動 員 能 力 が 筋 力 に影 響 す る こ と を 示 し て い る. 一 方,伸
張 性 収 縮 時 に は,筋
が も っ て い る 最 大 の張
力 が 発 揮 さ れ て お らず,神
と も報 告 され て い る.Dudleyら7)は 理 学 的 断 面 積 と解
の相 関
の 動 員 能 力 を 考 慮 す る と,他
る. み れ ば わ か る よ う に,生
PCSA)と
速 性 膝 伸 展 力 と生 理 学 的 断 面
成 分 の影 響 を生 理 学 的 断面 積 の計 算 に加 え るの で あ
図2.2を
は さま ざ まな角
経系 の抑 制 が生 じてい るこ 随 意 に よ る筋 力 発
揮 お よ び 電 気 刺 激 に よ っ て 誘 発 さ れ た筋 力 と の短 縮 性
剖 学 的 断 面 積 と で は 生 理 学 的 断 面 積 の ほ う が 大 きい.
収 縮 力/伸 張 性 収 縮 力 比 に つ い て 検 討 した.そ
た と え ば,ヒ
随 意 で 発 揮 され た 場 合 よ り,電 気 刺 激 の 時 の 比 の ほ う
トの 膝 伸 筋 群 で は 生 理 学 的 断 面 積 が 解 剖
学 的 断 面 積 の 約3倍 の 高 値 を 示 す1).図2.2に
示 したの
が 高 値 を 示 した.こ
の 結 果,
れ は 随 意 の 場 合 に は 上 位 中枢 か ら
は 羽 状 筋 の 例 で あ り,上 腕 二 頭 筋 の よ う な紡 錘 状 筋 で
の 抑 制 が か か っ て お り,筋 そ の も の が 本 来 発 揮 で きる
は そ れ ら二 つ の 筋 断 面 積 は 等 し い と考 え る こ と が で き
張 力 を 十 分 に 発 揮 で き て い な い こ と を 示 唆 し て い る.
る.
お そ ら く こ れ は 筋 の 損 傷 や 断 裂 な ど を 回 避 す る神 経 系
表2.1
等 速性 膝伸 展 筋 力 と生 理 学 的断 面 積(PCSA)お
よび
d.そ
の他 の要 因
筋 の動 員 能 力 を 考 慮 した 生 理 学 的 断 面 積(activated PCSA)と
筋 線 維 が 発 揮 し た 張 力 は 腱 に伝 わ り,関
の 関係(秋 間 ら,1998)
節 を 介 して
回 転 運 動 と な り,そ れ を わ れ わ れ は張 力 計 や 等 速 性 筋 力 測 定 装 置 な どで 測 定 して い る.し
た が っ て,筋
線維
が 発 揮 した 張 力 を 筋 力 と し て 測 定 さ れ る ま で に は さ ま ざ ま な もの の 影 響 を受 け る.た
と え ば,筋
力発揮 の仕
方 に よ っ て は 腱 の 弾 性 が 影 響 して くる.ま
た関 節 にお
け る モ ー メ ン トア ー ム(関 た ぐ腱 ま で の 距 離)の *:p<0
表2.2
節 の 回 転 中 心 か ら関 節 を ま
大 き さ に よ っ て も影 響 さ れ る.
.05.
2.3
等 速 性 膝 伸 展 力 と外 側 広 筋 の 筋 線 維 組 成 と の 関 係
固 有 筋
力
(秋 間 ら,1995b)
固 有 筋 力(specific 1cm2当
tension)は
筋 の 生理 学 的 断面積
た り に 発 揮 さ れ た 筋 の 張 力 を 意 味 し て い る.
生 理 学 的 意 味 と し て は 絶 対 筋 力(absolute と 同 じで あ る が,最
う 言 葉 を用 い る 場 合 が 多 い.こ *:p<0
strength)
近 の 論 文 で はspecific tensionと い れ は筋 の張 力発 揮 能力
の 質 的 な 側 面 を 反 映 した 指 標 と い う こ とが で き る.動
.05,**:p<0.01.
物 の 筋 を 実 際 に取 り出 し,固 有 筋 力 を測 定 し て み る と, の 適 応 で あ る と考 え る こ とが で きる.
ほ ぼ 一 定 の 値 が 得 られ る(22N/cm2). と こ ろ が,筋
c. 筋 線 維 組 成
の テ コ 比 を 考 慮 し,腱
等 尺 性 最 大 筋 力 と%FT線
維 との 間 には相 関関 係 が
あ る と す る 報 告 が い くつ か あ る が,有 な い とす る 報 告 も あ る.一 維 あ る い は%area
FT線
方,等
意 な相 関 関係 は
速 性 筋 力 と%FT線
維 との 間 に 有 意 な 相 関 関 係 が
あ る と す る 研 究 は 多 く存 在 す る.表2.2に に お け る%FT線
力 計 な どで 測 定 さ れ た 最 大 筋 力 を 関 節
維 お よ び%area
は 外側 広筋
FT線 維 と い ろ い ろ な
に か か っ て い る 張 力(つ
筋 自 体 が 実 際 に 発 揮 し た 張 力)を
ま り,
推 定 し,こ の 張 力 と
筋 の 生 理 学 的 断 面 積 の 比 を と っ て み る と,11∼72 N/cm2と
非 常 に 広 範 囲 に わ た る(図2.3).こ
の ような
筋 に お け る 固 有 筋 力 の バ ラ ツ キ の 原 因 に は,測
定上 お
よび算 出上 の さ まざ まな誤差 が 含 まれ てい る可 能性 は 十 分 に 考 え られ る が,7倍
の違 いの すべ て をそ れで 説
角 速 度 に お け る 等 速 性 膝 伸 展 力 との 関 係 に つ い て 示 し
明 す る こ と は で き な い.こ
れ に 関 し て は,い
た.%FT線
解 決 の ま まで あ る.
維 と等 速 性 膝 伸 展 力 と の 間 に は 角 速 度
まだ に未
60°/秒 にお い て の み 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ て い る が,%area
FT線
維 との 間 に は す べ て の 角 速 度 に お い
て 有 意 な 相 関 関 係 が 認 め ら れ て い る.ま Thorstenssonら19)の
(角 速 度180°/秒)と%FT線
維 との 間に有 意 な相 関関
係 が 認 め ら れ て い る(r=0.69,p<0.05).等 展 力 と%FT線 違 い は,前
た,
研 究 に お い て も等 速 性 膝 伸 展 力
維 お よび%area
FT線
速 性膝 伸
維 との相 関関係 の
者 は 生 来 的 に ほ ぼ変 わ る こ とが な い パ ラ メ
ー タ で あ る の に 対 して
,後 者 は ト レー ニ ン グ や 環 境 に
よ っ て 十 分 に 変 化 し う る も の で あ る.こ
の よ うな違 い
が 等 速 性 膝 伸 展 力 との 相 関 関 係 の 違 い に 表 れ て き た も の と思 わ れ る.
図2.3
ヒ ト生 体 の 筋 にお け る 固 有 筋 力 の 比較
こ れ ら の研 究 で は,す
べ てMRIを
用 いて筋の生理 学的
断 面 積 が 算 出 さ れ て い る.肩 つ きの 数字 は 文 献.
す.こ 2.4
筋
パ
の ほ とん どは収 縮速 度 の違 い に起 因す るもので
あ る.し
ワ ー
た が っ て,筋
パ ワー の違 い に は筋線 維 タ イプ
の 違 い が 大 き く影 響 して い る と思 わ れ る. 一 般 的 に"あ
の 選 手 は パ ワー が あ る"と
い う こ とを
わ れ わ れ は よ く口 に した り,耳 に した りす る.こ 合 の"パ
ワ ー"と
の場
ワ ー が 大 き い 」 は,あ
る 程 度 ま で は 正 し い か も しれ な い が,正
確 に はパ ワー
と は 以 下 の よ う に 算 出 で き る.
つ ま り,パ
仕事/ =力
×
時間
距離/ =力 ×速 度 時間
パ ワ ー とは 筋 が 発 揮 し
た 力 と筋 の 収 縮 速 度 の 積 で 表 す こ と が で き る.筋 態 的 観 点 か ら い え ば,筋
の形
が発 揮 した力 は筋 断面積 に比
の 収 縮 速 度 は 筋 線 維 の 長 さ に 比 例 す る.し
が っ て,形
a. 筋 力 トレー ニ ン グ 筋 力 ト レー ニ ング の よ う に 筋 に 大 きな 負 荷 をか け る こ と に よ っ て 随 意 最 大 筋 力(maximum
voluntary
contraction:MVC)は
は 筋 力 トレ
ー ニ ン グ に 伴 うMVC
ワ ー は 力 と速 度 の 積 で 表 す こ と が で き る.
筋 の レベ ル で 考 え て み る と,筋
例 し,筋
さ ま ざ ま な トレ ー ニ ン グ に 伴 う 筋 力 の 変 化
は お そ ら く力 の こ と を 意 味 し て い る
場 合 が 多 い.「 力 が 大 き い=パ
パ ワ ー=
2.5
た
態 的 に は 筋 断 面 積 と筋 線 維 長 の 積 は そ の 筋
増 加 す る.図2.5に ,筋 断 面 積,神
レー ニ ングの 初期 に は神経 性 の因
子 の 改 善 に よ り,ト
レ ー ニ ン グ 前 に は 動 員 す る こ とが
で き な か っ た 筋 線 維 が ト レー ニ ン グ に よ り,新
たに筋
力 発 揮 時 に 動 員 さ れ る よ う に な っ た こ とが 起 因 し て い る と考 え ら れ て い る.最
近,こ
の 筋 力 ト レー ニ ン グ初
期 に 生 ず る 新 た な筋 線 維 の 動 員 が,ヒ
が も っ て い る 筋 の パ ワ ー ポ テ ンシ ャ ル を示 して い る こ
際 に 生 じて い る こ とがMRIを
と と な る.し
れ て い る5).図2.6に
か し な が ら,筋 そ の も の の 筋 パ ワ ー を 測
経 性 因子 の 変化
に つ い て 示 し た.ト
トの 骨 格 筋 で 実
用 い た 研 究 か ら確 か め ら
は2週 間 の膝 伸 展 の 筋 力 ト レー ニ
定 す る こ とが 困 難 で あ る の で,慣 性 車 輪 や 等 速 性 マ シ
ン グ が 最 大 努 力 に よ る膝 伸 展 運 動 時 の 筋 の 動 員 様 相 に
ー ンな どを用 い て筋 パ ワーが 計算 され るこ とが ほ とん
及 ぼ す 影 響 につ い て 示 し た.ト
ど で あ る.慣
群 で は トレ ー ニ ン グ 前 と比 較 して,白
約1/3の
性 車 輪 を 用 い た 実 験 か ら は,最
大 筋力 の
負荷 の とこ ろで最 大 のパ ワー が 出現 す る こ と
っ て い る こ とが わ か る.こ
レーニ ング後 の膝伸 筋 い 部 分 が 多 くな
れ は トレ ー ニ ン グ前 に は 動
が 報 告 さ れ て い る12).
員 す る こ と が で き な か っ た 筋 線 維 が,2週
筋 パ ワー は筋 の形 態的 な特性 の他 に筋線 維 タ イプに
ニ ン グ に よ っ て,動
も大 き く影 響 を 受 け る.図2.4に
と考 え られ る.
線 維 お よ びST線 て 示 し た.こ ワ ー はST線
図2.4
は ヒ トの 骨 格 筋 のFT
維 に お け る 力,速
度,パ
ワ ー につ い
れ を み る と わ か る よ う に,FT線 維 の そ れ と比 較 し て,約4倍
ヒ トのFT線
維 お よ びST線
維 の 力,速
維のパ
の 高 値 を示
度,パ
ワー曲 図2.5
線8) 力,速 度,パ ワ ー はFT線
維 の 最 大 値 を1と
間 の ト レー
員 で きる よ うに なっ たた めで ある
して 表 され て い る.
筋 力 トレ ー ニ ング に 伴 う随 意 最 大 筋 力,筋 面 積,神
経 性 因子 の 変化9)
断
表2.3 20週 間 の筋 力 ト レー ニ ン グに よ る外 側 広 筋 の 変 化 (n=5)(Kunoら,1990)
**:p<0
.01vsト
レ ー ニ ン グ 前.
b. ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ に よ っ て 筋 力 が ど の よ う に 変 化 す る の か とい う研 究 は 非 常 に 少 な い.Shealyら17) お よ びAkimaら4)は
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ に よ っ て
膝伸 展 力お よび膝 屈 曲力が 低下 す る こ とを報告 してお り,Thorstenssonら18)は
等 尺性 最大膝 伸展 力 が有意 に
増 加 し た こ と を 報 告 し て い る.こ 図2.6
2週 間 の 筋 力 トレ ー ニ ン グ前 後 の 筋 の 動 員 様 相 の 変 化(Akimaら,1999)
最 大 努 力 の 膝 伸 展 運 動 直 後 に撮 ったMRIを
画像 処 理 し た もの.
の よ う に,ス
プ リン
ト トレ ー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ほ す 影 響 に つ い て は 一 致 し た 見解 は得 ら れ て い な い.
さ ら に ト レー ニ ング を続 け る と筋 に 肥 大 が 生 じ,こ
c. 持 久 性 ト レー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ぼ す 影 響
の 筋 量 の 増 加 が 筋 力増 加 の 主 要 因 と な る(図2.5).筋
持 久 性 ト レー ニ ン グ が 筋 力 に 及 ぼ す 影 響 に つ い て は
の 肥 大 はFT線
十 分 に 明 ら か に な っ て い な い.持
維 とST線
維 の 両 方 に 生 じ る が,FT線
久 性 トレ ー ニ ン グ に
維 の 肥 大 率 が 大 き い(表2.3).
よ り最 大 挙 上 重 量 が 増 加 した と す る 研 究,筋
筋 線 維 の 肥 大 と増 殖
響 を 及 ぼ さ な い6),あ る い は マ イ ナ ス の 影 響 を 及 ぼ す3)
筋 力 ト レ ー ニ ン グ に よ っ て 増 加 す る 筋 量 は,筋 の 肥 大 だ け に よ る も の か,新 増 殖 も生 じ る の か は,解
線維
力 には影
と い う研 究 が あ り,一 致 し た 見 解 は 得 られ て い な い.
た に 筋 線 維 が 形 成 され る
決 され て いな い議論 の 一つ で
あ る.実 験 動 物 を 用 い た研 究 で は 筋 線 維 の 増 殖 が み ら
● 問 題 1. 筋 力 発揮 を行 う場 合 の 筋 の収 縮 様 式 を分 類 しな さい.
れ る とす る 研 究 が い くつ か 報 告 さ れ て い る.し
2. 筋 力 発揮 を す る場 合,そ
が ら,ヒ
トの 場 合,方
か しな
法 論 的 な 問 題 か ら実 際 に 筋 線 維
が 増 え た の か 否 か とい う こ と に つ い て 調 べ る こ と は, 非 常 に 困 難 で あ る.MaCallら15)はMRIか 上 腕 二 頭 筋 の 筋 断 面 積 と,筋
ら 得 られ た
生 検 か ら算 出 した 筋 線 維
横 断 面 積 か ら,上 腕 二 頭 筋 の 筋 線 維 数 を 推 定 し て い る. 12週 間 の 筋 力 トレ ー ニ ン グ を 行 っ た 結 果,Type 維 で は27%,Type
Ⅱ線 維 で は40%の
の 有 意 な増 加 が み ら れ たが,推
筋線 維 横 断面積
定 に よる上腕 二頭 筋 の
筋 線 維 数 に は 変 化 が み ら れ な か っ た.ヒ 線 維 数 を調 べ る 場 合 に は,や わ ざ る を え な い た め,こ そ うで あ る.
Ⅰ線
トに お い て 筋
の大 き さ を左 右 す る 生体 の因
子 につ いて 述べ な さい. 3. 固 有 筋 力(specific tension)は,生
体 の筋 機 能 の どの
よ うな 側面 を 反 映 した指 標 で あ る のか,ま た,何 と何 の 比 で算 出 す る こ とが で きる のか を述 べ な さい. 4. 力 学 的 に い う と,パ ワ ー は何 と何 の積 で 求 め る こ とが で きるか 述 べ な さ い. 5. 筋 力 ト レー ニ ン グ の 初期 とそ れ 以 降(約3週
間 以 降)
につ い て,そ れ ぞ れ 筋力 増 加 にお もに貢 献 す る 因子 を あ げ な さい. 6. 筋 力 トレー ニ ング に伴 う筋 線 維 の肥 大 と増 殖 につ いて 述 べ な さい.
は り こ の よ う な 方 法 を使
の論 争 の決着 は まだ先 に な り ● 参 考 文 献 1) 秋 間 広,久 野譜也,福 永哲夫,勝 田
茂:MRIに
よる ヒ
トの膝伸筋 ・膝屈筋 にお ける形態 的特性 および生理学 的断
面 積 当 りの 筋 張 力.体 2) 秋 間
広,久
Edgerton,
力 科 学,44:267-278,1995a.
野 譜 也,高
橋 英 幸,下
條 仁 士,勝
田
茂:異
and
な る 部 位 に お け る 大 腿 四頭 筋 の 各 筋 頭 の 筋 断 面 積 お よび 筋 線 維 組 成 が 等 速 性 膝 伸 展 力 に 及 ぼ す 影 響.体
11)
広,久
田
辺
登,中
強 度(60%Vo2max)の
嶋 英 彦,板
井 悠 二,勝
な う 大 腿 部 の 筋 の 形 態 的 特 性 お よ び 脚 筋 力 の 変 化.体
力 科
4) Akima,
S., Inaki,
cycle training
on
velocity
relationships,
muscles.
Adv.
5) Akima,
and Sports
H., Takahashi,
Shimojo,
H., Anno,
adaptations Med.
Exerc.
6) Dudley,
G.A.
training.
Are
13)
Kawakami,
power
S.:Effects
characteristics, output
of
skeletal
use
and
and
Katsuta,
K., Masuda,
strength
S.:Early
to isokinetic
phase training.
15)
Fleck,
S. J.:Strength exclusive
and
? Sports
endurance
R.T., Duvoisin,
P.:Effect
the
relation
69
:2215-2221,1990.
8) Faulkner,
J.A.,
Human
torque
M.R,
Hather,
versus
B.M.
and
J. Appl.
and
McCulty,
slow
fibers
from
human
Muscle A.J.
Power(Jones, eds.)
K.K.:Power skeletal
N.L., McCartney,
pp.81-94,
Human
muscles.
村 実 晴,矢
部 京 之 助 編),真
力 ト レ ー ニ ン グ(宮
興 交 易 医 書 出 版 部,pp.41-60,
1985. 10) Fukunaga,
T., Roy,
R.R.,
Shellock,
F.G.,
Hodgson,
J.A. and
strength
MaCall,
G.E.,
based
and
vivo.J.
Appl.
on
M.,
training
J. Appl.
Byenes,
S.J.:Muscle density
in
T.,
Nozaki,
tension
D.,
of
magnetic
elbow
resonance
68:139-147,1994. Anno,I.
on
the
relaxation
Eur.
and
Matsumoto,
relationship
time
and
between
muscle
fibre
Physiol.,61:33-36,1990.
W.C.,
Dickinson,
fiber
hypertrophy,
college
men
A.,
Pattany,
P.M.
and
hyperplasia,
after
resistance
and
training.
J.
Physiol.,81:2004-2012,1996.
Narici,
M.V.,
Landoni,
knee
L.
and
extensor
Munetti,
A.E.:Assessment
muscles
cross-sectional
stress area.
Eur.
J.
G.A.
and
of
from
in
vivo
Appl.
Physiol.,
:438-444,1992.
Shealy,
M.J.,
Callister,
Human
torque
velocity
modes
of
Thorstensson, activities
格 筋 と ト レ ー ニ ン グ.体
and
R.,
Dudley,
adaptations training.
to
Am.
J.
sprint,
Sports
Fleck,
S.J.:
endurance,
or
Med.,20:581-
586,1992. 18)
Champaign,1986. 9) 福 永 哲 夫:骨
Y. length
in
Fujimoto,
S., Akisada,
resonance
combined
N. and Kinetics,
Kawakami, fascicle
T.:Specific
Physiol.,
Katsuta,
magnetic
65 17)
D.R.
muscles
J. Appl.
physiological
Physiol.,
flexors
倉 書 店,1988.
K.,
extensor
of
human
artificial activation
to speed.
Claflin,
of fast and
McComas,
of voluntary
of muscle
S.,
Appl.
plantar
muscle
ッ プ の 科 学,朝
Fukunaga,
K.:Effect
capillary
Med.,4:79-
N.,
human
and
Eur.
Kuno,
Ito,
of
Nakazawa,
M. and
Fleck,
16)
on
ワ ー ア
composition.
:588-594,1999.
mutually
G.A., Harris,
Buchanan,
In
14)
Y.,
contracting
Y.,
imaging.
T.,
85,1987. 7) Dudley,
output
flexor
torque-
in human
S., Masuda,
I., Itai, Y.
and
Katsuta,
Physiol.,3:9-15,1997.
Exerc.,31
they
and
H., Kuno,
of muscle
Sci. Sports
M.
architectural
Ichinose,
a
human
:354-358,1997.
金 子 公 宥:パ
Miyashita,
H., Kuno,
sprint
in
12)
学,44:365-374,1995c.
of
Physiol.,80:158-165,1996.
S.:Determination
Physiol.,82
持 久 性 ト レー ニ ン グ に と も
tension
Appl.
T.,
pennation
野 譜 也,渡
茂:中
Fukunaga, Fukashiro,
育 学 研 究,
39:417-427,1995b. 3) 秋 間
V. R.:Specific
dorsiflexors.J.
Acta 19)
A., and
Physiol.
Sjodin,
muscle Scand.,94
Thorstensson,
A.,
velocity
relations
extensor
muscles.J.
B.
strength
and after
Karlsson,J.:Enzyme "sprint
training"
in
man.
:313-318,1975. Grimby, and Appl.
G. fiber
and
Karlsson,
composition
Physiol.,40:12-16,1976.
J.:Forcein
human
knee
3 神経系 による運動 の調節
神 経 系 の 仕 事 は 大 き く分 け て 三 つ あ る.① ② 統 合 系:感
感 覚 系:ま
わ りで 起 こ っ て い る こ と を 検 出 す る.
覚 に よ っ て 得 られ た デ ー タ と 記 憶 と し て 蓄 え られ て い る デ ー タ を 合 わ せ て 処 理
す る.③
運 動 系:筋
ロ ン)が
複 雑 に絡 み 合 っ て 上 述 の 機 能 を円 滑 に 遂 行 し て い る.本
や 腺 に 働 い て 反 応 を 起 こ す.ヒ
る ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と 機 能 を説 明 し,次 最 後 に 反 射 運 動,随
トの 場 合,数
百 億 個 の 神 経 細 胞(ニ 講 で は,ま
ュー
ず神 経系 を構 成す
に筋 力 調 節 の 最 小 単 位 で あ る 運 動 単 位 に つ い て 述 べ,
意 運 動 に お け る情 報 の 流 れ を概 説 す る.
3.1 神 経 系 の 構 造
神 経 系 は 大 き く中 枢 神 経 系 と 末 梢 神 経 系 に分 類 さ れ て い る. 中 枢 神 経 系 は 脳 と脊 髄 を 含 み,脳
は発生 学 的に髄 脳
(myelencephalon),後
脳(metencephalon),中
脳
(mesencephalon),間
脳(diencephalon),終
脳
(telencephalon)に 髄 脳 は 延 髄,後 脚,間
分 類 され る.大 脳 は 橋 と 小 脳,中
脳 は 視 床 と視 床 下 部,終
脳 皮 質 へ とそ れ ぞ れ 発 達 す る.脊 髄,腰
髄,仙
人の 脳 にお いて は 脳 は 四丘 体 と 大 脳
脳 は大 脳 基底 核 と大 髄 は さ らに 頸 髄,胸
髄 の 各 髄 節 に 分 か れ る(図3.1).
末 梢 神 経 系 は,中
枢 神経 か ら身体各 部 に達す る電 気
的 信 号 の 伝 達 経 路 の 総 称 で あ る.機
能的 には運動 や 感
覚 に 関 連 す る 末 梢 神 経 を 体 性 神 経(somatic
nerve),
意 思 と は 無 関 係 に 働 く末 梢 神 経 を 自律 神 経(autono mic nerve)と
い う.さ
ら に,体
性 神 経 は,電
気 的信
図3.1
中 枢 神 経 系 の お も な構 成 部 分(BerneとLevy,19961)を 一 部 改 変)
号 を 中 枢 か ら末 梢 に伝 え る 遠 心 性 神 経(efferent nerve) と そ の 反 対 の 求 心 性 神 経(afferent
nerve)に
分類 され
る.自 律 神 経 は す べ て 遠 心 性 神 経 で あ る が,一 官 に 対 し て2種 類 の 神 経 線 維 を 送 る.胸 か ら発 す る 交 感 神 経(sympathetic
つ の器
3.2 ニ ュ ー ロ ン の 構 造 と機 能
髄 また は腰髄
nerve)と,脳
幹ま
ニ ュ ー ロ ンの 形 態 は,基
た は 仙 髄 か ら発 す る 副 交 感 神 経(parasympathetic
あ る が(図3.2),2種
nerve)で
突 起(dendrites)と
あ る.
で あ る.
本 的 に は 他 の 細 胞 と 同 じで
類 の 突 起 状 構 造,す 軸 索(axon)を
な わ ち樹 状
もつ こ とが特 徴
図3.2
シナ プ スの 形 態 と有 髄 線 維 の 模 式 図(BerneとLevy,19961)を
一 部 改 変)
図3.3 静 止膜電位 におけ る膜の帯電状態(Schmidt,19784)を一部改 変) 膜 を通 り抜 け て い る 矢 印 は,拡
散 に よ っ て 流 出 したKイ
が 細 胞 内 の 蛋 白 陰 イ オ ン(A-)に
図3.4
オン
活 動 電 位 の 各 相(Schmidt,19784)を
一 部 改 変)
オ ンが 細 胞 内 に 流 入 す る.そ
の 結 果,膜
よ っ て引 き寄 せ ら れ て い る状
態 を 示 す.
す るNaイ
位 が プ ラ ス 方 向 に 動 く(脱 ニ ュ ー ロ ン の 最 大 の 機 能 的 特 徴 は,細 ニ ケ ー シ ョ ン(活 あ る.こ
動 電 位 の 伝 達,伝
た 膜 電 位 が 閾 値(約
分 極).プ
−60mV)に
ラ ス方 向 に動 い
達 す る と,今 度 は そ
搬)を
行 うこ とで
の 電 位 変 化 を 感 知 し て 電 位 依 存 性 のNaイ
の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は 軸 索,樹
状 突起 お よ
ネ ル が 開 き,さ
び 細 胞 体 の 間 に 形 成 さ れ る 接 合 部(シ て 行 わ れ,そ
の 形 態 は 図3.2の
シ ナ プ ス に は10∼50nmの え る 側(シ
胞 間で コ ミュ
ナ プ ス)を
介 し
よ う に 多 岐 に わ た る.
狭 い 間 隙 が あ り,情 報 を伝
ナ プ ス 前 終 末)に 電 気 的 信 号 が 到 達 す る と,
小 さ な 球 状 物 質(伝 を 受 け る 側(シ
達 物 質)が
ナ プ ス 下 膜)に
放 出 さ れ る.伝 は,伝
に 受 け 取 る レ セ プ タ ー が あ る.こ
達物 質
達 物 質 を特異 的
の 節 で は,ま
ー ロ ンにお け る電気 的信 号 の発 生 につ いて
し,膜
ら に 大 量 のNaイ
電 位 は 急 速 に プ ラ ス に 傾 く.こ
ン ネ ル が 全 開 す る た め に,細
(NaとK)の
に 示 し た よ うな 変 化 を 示 す.こ
に電 気
構 で あ る.活
の 法 則 」(all or none
初 に 発 生 す る の は,軸
が 検 出 さ れ る.こ
れ は細 胞 膜 の 能 動 的 輸 送 お よ び 選 択
ュ ー ロ ンや筋
な わ ち活 動 電 位 発 生 の 機
動 電 位 の 発 生 は,細
胞 外 液 と の 間 に −90mV前
止 膜 電 位)
れ が,ニ
電 位 は 図3.4
胞 内の 電位 変 化が 閾
値 に 達 す る か 否 か に依 存 して お り,こ れ を 「全 か 無 か
ニ ュ ー ロ ンの 中 に ガ ラ ス 微 少 電 極 を 挿 入 す る と,細 後 の 電 位 差(静
オ
オ ンチ ャ
の二つの陽 イオン
反 対 方 向 の 流 れ の 結 果,膜
細 胞 に お け る 電 気 的 信 号,す
,次
の 時,Naイ
胞 内 に高濃 度 で存 在 する
オ ン は 細 胞 外 へ 流 出 す る.こ
ずニュ
的 信 号 の 統 合 方 法 に つ い て 簡 単 な 説 明 を 加 え る.
オ ンチ ャン
オ ンが 細 胞 内 に 流 入
ンチ ャ ン ネ ル に や や 遅 れ て 電 位 依 存 性 のKイ
Kイ
電
(axon hillock)で
law)と
よ ぶ.こ
の活動 電 位が 最
索 の起始 部す な わち軸索 丘
あ る.そ
の 後,活
動 電位 は軸索 に沿
的 透 過 性 の 結 果 生 ず る細 胞 内 外 の 各 種 イ オ ンの 不 均 衡
っ て 伝 搬 し,軸 索 の 終 末 に ま で 減 衰 す る こ と な く伝 わ
な 分 布 に 起 因 す る(図3.3).こ
る.軸
オ ン を 選 択 的 に 通 す 穴(チ が 加 わ る と,穴
の 細 胞 膜 に あ るNaイ
ャ ン ネ ル)に
何 らか の 刺 激
の ふ た が 開 き,細 胞 外 に 高 濃 度 で 存 在
索 に は そ の 周 囲 を シ ュ ワ ン細 胞(schwann
cell)
が 取 り囲 ん で 髄 鞘 を形 成 して い る 有 髄 線 維 と そ うで な い 無 髄 線 維 が あ る(図3.2).有
髄 線 維 の 場 合,軸
索丘
図3.5
ニ ュ ー ロ ンに お け る電 気 的 入 力 の 統 合様 式 例(a)と 伝 達 物 質作 動 性 イ オ ン チ ャ ン ネ ル の モ デ ル(b)(Berneと Levy,19961)を
一部 改 変)
で 発 生 し た 活 動 電 位 は 絶 縁 体 で あ る 髄 鞘 を 飛 び 越 え,
Clイ オ ン が 細 胞 内 に 流 入 し,膜 電 位 は マ イ ナ ス に 傾 く.
軸 索 が む き出 しに な っ て い る 部 分(ラ
こ の 場 合 の 伝 達 物 質 は 抑 制 性 の 伝 達 物 質 で あ り,生
に 存 在 す る 電 位 依 存 性Naイ
ン ビエ ー の 絞 輪)
オ ン チ ャ ン ネ ル を 開 き,
そ の 部 分 で 次 の 活 動 電 位 を 発 生 させ る.こ 髄 線 維 に お け る活 動 電 位 は,連 な く,絞 導),非
の た め,有
続 的 に伝 導す る ので は
輪 か ら絞 輪 へ と跳 ぶ よ う に伝 導 さ れ(跳 躍 伝 常 に速 い 伝 導 速 度 を 示 す.こ
れ に 対 し て,無
た 電 位 を 抑 制 性 の 後 シ ナ プ ス 電 位(IPSP)と IPSPが
生 じた 場 合(ケ
ー ス3),EPSPが
EPSPとIPSPが
複 雑 に 組 み 合 わ さ っ て,ニ
お け る電 気 的 入 力 の 統 合,活 な お,こ
索 の直径 に
時 間的 あ るい
動 電 位 の 発 生 が 抑 え られ る こ と も あ る.こ
な お,有
髄 の 各 線 維 群 の 中 で は,軸
よ ぶ.
は 空 間 的 に加 算 さ れ て も 膜 電 位 が 閾値 に 到 達 せ ず,活
髄 線 維 の 活 動 電 位 は 連 続 的 に 伝 導 し,そ の 速 度 が 遅 い. 髄,無
じ
の よ う に, ュー ロ ンに
動 電 位 の 発 生 が 起 こ る.
れ まで にわか って いる代 表 的 な興奮性 伝達 物
比 例 して 伝 導 速 度 は 速 く な る.
質 に は,ア
図3.5の
な どが あ り,抑 制 性 伝 達 物 質 に は グ リ シ ン,γ ア ミ ノ
入 力1か
ら放 出 さ れ た伝 達 物 質 が ニ ュ ー ロ
ン の シ ナ プ ス 下 膜 に あ る レ セ プ タ ー に 作 用 し,Naイ オ ンチ ャ ンネ ル が 開 い た と し よ う.ニ
ブ チ ル酸(GABA)な
に も との 膜 電 位 へ も ど る(ケ
ー ス1).こ
奮 性 伝 達 物 質 で あ り,生
奮 性 の 後 シ ナ プ ス 電 位(EPSP)と
ル タ ミ ン酸,セ
ロ トニ ン
どが あ る.
ュ ー ロ ンの 膜 電
3.3 運 動 単位 の特 性
位 は わ ず か に 脱 分 極 し,閾 値 に 達 し な い 場 合 に は す ぐ
物 質 は,興
セ チ ル コ リ ン,グ
の場合 の伝 達
じた電位 変化 を興 よ ぶ.次
に,入
力1
神 経 に よ る 骨 格 筋 の 収 縮 調 節 の 最 終 単 位 は,一
か ら 短 い 間 隔 で 断 続 的 に 伝 達 物 質 が 放 出 さ れ る と,
(筋 単 位)か
EPSPが
加 算 され て 膜 電 位 が さ らに 上 昇 し(時
単 位 の 収 縮 お よ び 疲 労 特 性 に 基 づ い て,S(slow-
算),閾
値 に 達 し 活 動 電 位 が 発 生 す る(ケ
た,入
力1に
さ れ,電
加 え て 入 力2か
間的 加
ー ス1).ま
ら同 時 に 伝 達 物 質 が 放 出
位 変 化 が 閾 値 に達 し活 動 電 位 が 発 生 す る 場 合
も あ る(ケ
ー ス2:空
間 的 加 算).一
別 の 種 類 の伝 達 物 質 が 放 出 さ れ,Clイ を 選 択 的 に 開 く.す
方,入
力3か
らは
オ ンチ ャ ンネ ル
る と,細 胞 外 に 高 濃 度 で 存 在 す る
つの
α運 動 ニ ュー ロ ン とそ の神 経 支 配 を 受 け る 筋 線維 群 ら な る 運 動 単 位 で あ る.運
twitch),FR(fast-twitch twitch intermediate)お
動 単 位 は,筋
fatigue resistant),FI よ びFF(fast-twitch
の 四 つ の タ イ プ に 分 類 で き る.そ 含 ま れ る筋 単 位 は,ATPaseのpHに
(fast-
fatiguable)
れ ぞ れの 運動単 位 に 対 す る感受性 の違
い を 利 用 した 標 準 的 な 組 織 化 学 的 染 色 結 果 に 基 づ い て,Sタ
イ プ=タ
イ プ Ⅰ,FRタ
イ プ=ⅡA,FIタ
イ
プ=ⅡX(ⅡDと プ=ⅡBに
称 す る 場 合 も あ る)お
分 類 さ れ る(第1講
よ びFFタ
参 照).
収 縮 速 度 は,FF,FIタ
イ プ が 最 も速 く,FRタ
Sタ イ プ の 順 で 続 く.こ
の 順 番 は,筋
myosin
ATPase活
性 値,お
よ びmyosin
は,収
縮 速 度 と 反 対 の 順 番,す な る.こ
の 結 果 は,筋
筋 小 胞 体 のCaイ
イ プ,
線 維 タ イプ の ATPase活
収 縮 速 度 と の 相 関 関 係 に よ っ て 説 明 さ れ る.疲
FFと
イ
性 と 労耐 性
な わ ちS>FR>FI>
線 維 の 酸 化 酵 素 活 性 値,
オ ン取 込 み 放 出 能 な ど の 要 因 と,神
経 筋 接 合 部 にお け る 疲 労,す
なわ ち伝 達 欠落 が複 合的
に 関 係 す る. 筋 単 位 の 収 縮 力 は,タ
イ プ 間 に 重 複 が み られ る が, 図3.6
平 均 す る と収 縮 速 度 と 同 様 にFF≧FI>FR>Sで る.こ
あ
の 収 縮 力 を規 定 す る 要 因 に は 以 下 の 三 つ が あ げ
ら れ る.①
ネ コ 内 側腓 腹 筋 お よび 横 隔 膜 運 動 単 位 の 動 員 様 式 モ デ ル(SieckとFournier, 19895)を 一 部 改 変)
運 動 単 位 の 神 経 支 配 比(一 つ の 運 動 ニ ュ ー
ロ ン に 支 配 され る 筋 線 維 の 数),②
筋 線 維 の横 断 面 積,
③ 単 位 筋 断 面 積 当 た りの 張 力 で あ る.筋
単位 の収 縮力
の 値 が 高 い と 少 な い 入 力 で 大 き な 電 位 変 化 が 生 じや す い),低
い 基 電 流nA(ニ
ュ ー ロ ン に活 動 電 位 を 発 生 さ
に 対 す る 各 要 因 の 貢 献 度 は,グ
リ コ ー ゲ ン枯 渇 法 に よ
せ る た め に 有 効 な 最 も弱 い 定 常 電 流),遅
っ て 直 接 測 定 さ れ て い る が,結
果 が 一 致 し て い な い.
速 度(m/秒)を
示 し,S筋
た と え ば,ネ コ の 内 側 腓 腹 筋 お よ び 横 隔 膜 に つ い て は,
明 ら か に さ れ て い る.一
方,大
タ イ プ 間 の 収 縮 力 の 違 い は,②
は,低
い 基 電 流,速
の筋 線 維 横 断 面積 と
い 膜 入 力 抵 抗,高
い軸 索伝 導
単 位 を 支 配 して い る こ とが き な α運 動 ニ ュ ー ロ ン
③ の 単 位 断 面 積 当 た りの 張 力 に依 存 して い る こ とが 報
し,F筋
告 さ れ て い る.と
れ らの 電 気 生 理 学 的 特 性 に 依 存 す る な ら ば,Sか
こ ろ が,ネ
イ プ の 神 経 支 配 比 はSタ
コ の 前 脛 骨 筋 で は,Fタ
イ プ の2倍 以 上 あ り,こ れ が
各 筋 単 位 タ イ プ の 収 縮 力 を 決 め て い る ら しい.ま ラ ッ トの ヒ ラ メ筋 で は,神 面 積,単
経 支 配 比,筋
た,
線維 群 の横 断
位 筋 断 面 積 当 た りの 張 力 と も タ イ プ 間 の 差 は
ほ と ん ど な い.筋
単 位 の 収 縮 力 を 決 め る 要 因 は,被 検
動 物 お よ び 筋 の 機 能(屈
筋 ・伸 筋 な ど)に
よ り異 な る
単 位 を 支 配 し て い る.運
い伝 導速 度 を示
の 順 で 起 こ る こ とが 予 想 さ れ る.実
際,ネ
て は,軸
コの 内 側 腓
索伝 導速 度の 速 い運動 ニ ュー ロンは遅 い運 動
ニ ュ ー ロ ン よ り後 に 動 員 さ れ る こ と,す
な わ ちSか
ズ の 原 理 」(小 さ い 運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら大 き な 運 動 ニ
す な わ ち,下
確 認 さ れ て い る.こ
肢 筋 に お い て は,起
個 々 の 発 火 頻 度(frequency)の れ る.こ
れ ま で,い
その
調節 に よっ て達 成 さ
くつ か の 反 論 は あ る も の の,運
単 位 の 動 員 は 主 と して 大 き い 筋 力 調 節 に,個
動
々の発 火
の 運 動 単 位 が 選 択 的 に 動 員 さ れ,走
よ う に な る.
動 で はSタ
た,横
運 動 単 位 が 動 員 さ れ,換
る.
段 階 的 に 動 員 され,爆
の 大 き さや 膜 特 性 と の 関 連 か ら検 討 さ れ て い る.こ ま で,小
れ
さ な α運 動 ニ ュ ー ロ ン は 高 い 膜 入 力 抵 抗MΩ
(入力 さ れ た 電 流 と 生 じ た 電 位 変 化 か ら計 算 さ れ,こ
吐)の
時,FFタ
っ イプ
ャ ン プ と運
イプ の動 員が 順
隔 膜 に お い て は,安
イ プ の 運 動 単 位 お よ びFRタ
頻 度 は細 か い調 節 にそ れ ぞ れ 関与 す る と い われ て い
運 動 単 位 の 動 員 様 式 に つ い て は,α 運 動 ニ ュ ー ロ ン
行,ジ
動 強 度 が 高 ま る に つ れFR,FI,FFタ 次 起 こ る.ま
れ
立 や 姿 勢 維 持,ゆ
く り と し た 歩 行 の よ う な 低 い 強 度 の 運 動 で はSタ 筋 力 調 節 は運 動 単 位 の 動 員 数(recruitment)と
ら
Fへ の 動 員 が 明 らか に さ れ て お り,基 本 的 に は 「サ イ
ま で の 実 験 結 果 を ま とめ る と,図3.6の
3.4 筋 力 調 節
らF
腹 筋 お よ び横 隔 膜 を 支 配 す る α運 動 ニ ュ ー ロ ン に お い
ュー ロ ンへ と動 員 が 起 こ る)が
よ う で あ る.
動 単 位 の 動 員 は,こ
静 時 の吸息 運 イ プの 一部 の
気 量 の 増 大 に 伴 いFR,FIと
発 的 な 呼 吸 運 動(く
し ゃ み,嘔
イ プ も動 員 さ れ る こ と が 推 察 さ れ る.
3.5 反 射 運 動 にお け る神 経 系 の 調 節
3.6 随意 運 動 にお け る神 経 系 の調 節
感 覚性 刺 激 に対 す る中枢 神経 系 の一 定 の反応 を反射 と い う.た
と え ば,熱
い も の を つ か ん だ 時,無
う ち に す ば や く手 を 引 く.こ
れ は"熱
い"と
意識 の い う感覚
先 に 述 べ た 伸 張 反 射 は 随 意 運 動 中,す
くい.こ
れは 随意運 動 中 には筋 紡錘 の 感度 が上 位 中枢
入 力 を 脊 髄 中 の 上 腕 屈 筋 支 配 の α運 動 ニ ュ ー ロ ンが 受
か ら調 節 さ れ て い る か らで あ る.こ
け 取 り,す
ぐ に 活 動 電 位 を発 生 し上 腕 屈 筋 群 の 収 縮 を
う の が γ運 動 ニ ュ ー ロ ンで あ る.
起 こ し,危
険 か らす ば や く回 避 し よ う と す る 反 射 で あ
る.
膝 蓋 腱 反 射 に お い て は,筋 射 の ス ター トで あ っ た.こ
こ こ で は,代
表 的 な 伸 張 反 射 で あ る 膝 蓋 腱 反 射(膝
下 を 叩 く と 下 腿 が 跳 ね 上 が る)を
例 に と り,活 動 電 位
の 流 れ を 具 体 的 に 説 明 す る(図3.7).骨 い わ ゆ る 筋 線 維(錘
外 筋 線 維)と
が 混 在 し て い る.突
然,膝
格 筋 の 中に は
筋 紡 錘(錘
内 筋 線 維)
下 を 叩 か れ る こ と に よ り,
な わち大 脳 に
よ っ て 企 画 さ れ て 遂 行 され て い る運 動 中 に は 出 現 し に
る.次
に,図3.8(b)の
紡錘 の 活動 電 位発 生 が反
の 時,筋
心 性 神 経 か ら 図3.8(a)の
の 感度 の調 節 を行
紡 錘 か ら発 す る 求
よ う な活 動 電 位 が 記 録 さ れ よ うに α運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら
の 軸 索 を 電 気 刺 激 す る と筋 線 維 が 短 縮 し,筋 紡 錘 は 弛 緩 して し ま う.そ
の 結 果,筋
時 的 に ス トッ プ す る.こ
紡 錘 か らの 活 動 電 位 は一
の 時,図3.8(c)の
よ うに α
大 腿 四頭 筋 の錘 外 お よび錘 内筋 線維 は わず か に伸 ば さ
運 動 ニ ュ ー ロ ンか ら の 軸 索 を 電 気 刺 激 す る と 同 時 に γ
れ る.す
運 動 ニ ュ ー ロ ン も 同 時 に 刺 激 して み る.す
る と,図3.7(b)に
模 式 的に示 され た筋紡 錘
内 に あ る ス ト レ ッ チ 感 受 性 の イ オ ンチ ャ ン ネ ル が 開 く
錘 も た る ま な い た め に,求
こ と を 引 き 金 に して,Naイ
電 位 が 記 録 さ れ る.こ
動 電 位 が 発 生 す る.活 筋)支
オ ン の 流 入,す
なわ ち 活
動 電 位 は 大 腿 伸 筋 群(大
配 の α運 動 ニ ュ ー ロ ン に 伝 わ り,そ
腿 四頭
こで また 活
る と,筋 紡
心 性 神 経 か ら連 続 的 に 活 動
の よ う に,α 運 動 ニ ュ ー ロ ン と
同 時 に γ運 動 ニ ュ ー ロ ン を コ ン トロ ー ル す る こ と に よ っ て,外
見 的 に は 同 じ運 動 で あ っ て も,反
動 電 位 が 発 生 して 大 腿 四頭 筋 が 収 縮 を起 こす.こ の 時,
た り起 こ ら な か っ た りす る.結
筋 紡 錘 か ら伝 わ っ て き た 活 動 電 位 は脊 髄 内 で 枝 分 か れ
ス ム ー ズ に行 う か と い う こ とは,脊
し,介 在 ニ ュ ー ロ ン に 活 動 電 位 を生 じ させ る.こ
の介
ン(α 運 動 ニ ュ ー ロ ン と γ運 動 ニ ュ ー ロ ン)の 活 動 様
配 の α運
式 を い か に う ま く コ ン トロ ー ル で き る か に 依 存 して い
在 ニ ュ ー ロ ン は 大 腿 屈 筋 群(大
腿 二 頭 筋)支
局,随
射が 起 こ っ
意 運 動 をいか に
髄 中の 両ニ ュー ロ
動 ニ ュ ー ロ ン に 抑 制 性 伝 達 物 質 を放 出 し,大 腿 二 頭 筋
る.
は 弛 緩 す る(図3.7).
随 意 運 動 にお け る両 運動 ニ ュ ー ロ ンに対 す る 命令
上 記 の 例 の よ う に,伸 筋 が 収 縮 す る 時,そ の 拮 抗 筋 で
は,大
あ る 屈 筋 は 弛 緩 す る.逆
外 路 を 伝 導 し て く る.こ れ ら の 命 令 の 源 で あ る 大 脳 に
に屈筋 が収 縮 す る時 は伸筋 が
脳 皮 質 運 動 野 に 端 を 発 し,錐 体 路 あ る い は 錐 体
弛 緩 す る.こ の よ う な 関 係 を相 反 神 経 支 配 と よ び,屈 曲
は 機 能 の 局 在 性 が あ り,と
反 射 が 強 く起 き る ほ ど伸 筋 に対 す る 抑 制 も 強 くな る.
含 ま れ る 特 定 の ニ ュ ー ロ ン と は1対1の
図3.7
膝 蓋 腱 反 射 に お け る電 気 的 信 号 の 流 れ(a)と とLevy,19961)を
一 部 改 変)
く に,骨
ス ト レ ッチ 感 受 性 イ オ ン チ ャ ンネ ル の モ デ ル(b)(真
格 筋 と大 脳 皮 質 に 対 応 をす る こ
島,19873);Berne
図3.8
α運 動 ニ ュ ー ロ ン と γ運 動 ニ ュ ー ロ ン の 共 同 活 動(BerneとLevy, 19961)を
図3.9
一 部 改 変)
随 意 運 動 の 発 現 に 関 連 した 脳 内 領 域 と神 経 情 報 の流 れ(久 保 田, 19842)を 一 部 改 変)
と が 確 か め られ て い る.さ
ら に,小
脳 と大 脳 基 底 核 に
あ る ニ ュ ー ロ ンの 活 動 も 随 意 運 動 に 先 行 し て 活 発 に な る.小
● 1.
2.
力 し て い る.こ
方 で は視 床 を 経 由 して 大 脳 皮 質 に 出
の よ う な知 見 か ら,大
脳皮 質 運 動野 に
端 を 発 す る 運 動 命 令 の 発 現 を 制 御 し て い る の は,大 皮 質 よ りむ しろ 小 脳,大
あ る と 考 え られ て い る.と
算 に つ い て 説 明 し な さ い. 動 単 位 の タ イ プ を 分 類
し て,そ
れ ぞ れ の 構 造 的 機 能
的 特 徴 を 説 明 し な さ い. 4.
運 動 強 度 と 運 動 単 位 の 動 員 様 式 に つ い て 説 明 し な さ い.
くに,速 い 運 動 で は小 脳 が,
遅 い 運 動 で は 大 脳 基 底 核 が 重 要 な 役 割 を演 じて い る ら
オ ン とKイ
ニ ュ ー ロ ン に お け る 電 気 信 号 の 時 間 的 加 算 と 空 間 的 加
3.運
脳
脳 基 底 核 な どの 深 部 の 構 造 で
題
静 止 膜 電 位 と 活 動 電 位 の 発 生 機 序 をNaイ オ ン の 動 態 か ら 説 明 し な さ い.
脳 と大 脳 基 底 核 は,大 脳 皮 質 の 広 範 囲 な 部 分 か
ら 入 力 を 受 け,一
問
5.
膝 蓋 腱 反 射 を 例 に と り,伸
長 反 射,相
反 神 経 支 配,介
在 ニ ュ ー ロ ン を 説 明 し な さ い.
し い.こ
れ ら の 結 果 の 多 くは,1960,1970年
代 に行 わ
れ た サ ル を 用 い た 実 験 に よ り も た ら さ れ た.最
近 は,
ヒ トに お い て 大 脳 皮 質 ニ ュ ー ロ ン を ほ と ん ど痛 み を 伴 う こ とな く刺 激 し,誘 発 電 位 を 記 録 す る こ とが で き る よ う に な っ て き た.こ
の よ う な 実 験 装 置 の 開 発 と発 達
●
参
考
1) Berne,
文
献
R.M.
and
Levy,
M.N.
eds.:Principles
of Physiology,
Mosby,1996. 2) 久 保 田 競:随
意 運 動 メ カ ニ ズ ム の 特 集 に あ た っ て.神
経 進
歩,28(1):3-6,1984.
に よ っ て,今
後,ヒ
トの 随 意 運 動 発 現 の 脳 内 機 構 が 飛
躍 的 に 解 明 さ れ る こ とが 期 待 さ れ る.図3.9に
随意 運
動 の 発 現 に 関 連 した 脳 内領 域 と神 経 情 報 の 流 れ を模 式 的 に 示 す.
3) 真 島 英 信:生 4) Schmidt,
理 学,文
R.F.
光 堂,1987.
ed.:Fundamentals
of Neurophysiology,
Springer-Verlag,1978. 5) Sieck,
G.C.
recruitment J.Appl.
and during
Fournier, ventilatory
M.:Diaphragm and
Physiol.,66(6):2539-2545,1989.
nonventilatory
motor
unit
behaviors.
4 運動 と筋ATP代
す べ て の 運 動 は,筋
が 収 縮 す る こ と に よ っ て な され るが,筋
ン三 リ ン 酸(adenosine れ は,自
謝
triphosphate:ATP)の
が 収 縮 す る た め に は,ア
分 解 に よ る 化 学 エ ネ ル ギ ー が 用 い られ る.こ
動 車 が 走 る た め に ガ ソ リ ン を必 要 と し て い る の と 似 て い る.車
図 的 に 補 給 し な い 限 り ガ ス 欠 を起 こ す が,筋 ど同 時 に 再 合 成 を行 っ て い る.し
か も,そ
デノシ
の 場 合 は運 動 時 にATPを
の場 合 はガ ソ リンを意 消 費 す る 一 方,ほ
とん
の 仕 組 み は 複 雑 で あ り,運 動 の 時 間 や 強 度 な ど に よ
り大 き な 影 響 を 受 け る.
し な け れ ば な ら な い.ATPを 4.1
ATP
す な わ ちADPをATPに 1).こ
筋 が 収 縮 す る 場 合,筋
中 に 存 在 す るATPが
に 用 い られ る.ATPは3個
の リ ン酸 が 結 合 して い るが,
第2と 第3の
結 合 は 高 エ ネ ル ギ ー リ ン酸 結 合 で あ り,
第1の 結 合 と は 異 な る.そ と,高
直接 的
の た め にATPが
エ ネ ル ギ ー を 発 生 す る.こ
分解 され る
の と きATPは
水 と
反 応 して お り,こ の 一 連 の 反 応 は加 水 分 解 と よ ば れ る. こ の 反 応 で,リ
ンイ オ ン とア デ ノ シ ン二 リ ン酸(ADP)
に 分 解 され る.こ
れ を 式 で 表 す と 以 下 の よ う に示 さ れ
る.
変 換 す る 主 要 経 路 は,運
強 度 や 時 間 な ど に よ り異 な る が,運 は 三 つ に 分 類 す る こ と が 多 い.そ
動の
動 生理 学の 分野 で
の三 つ のエ ネル ギー
供 給 系 と は,①ATPお
よ び ク レ ア チ ン リ ン酸(PCr)
の 分 解(ATP-PCr系),②
グ リ コ ー ゲ ン,グ
ス な ど の 分 解(解 糖 系),③
脂 肪 酸,グ
ル コー
ル コ ー ス,グ
リ コ ー ゲ ン な ど の 有 酸 素 的 分 解(酸 化 系)で あ る.① のATPお ATP供
よ びPCrの 給 で は,酸
分 解 お よ び,②
の解 糖系 に よる
素 の 介 在 が な く こ れ らの 反 応 が 進
酸 素 的 過 程 と い え る.一
方,③
の過
程 は,文 字 ど う り酸 素 の 介 在 下 で 行 わ れ る.
子当 た りの 加 水 分 解 に よ る 発 生 エ ネ ル ギ ー は
わ ず か で あ り(ATP
1 mol当
エ ネ ル ギ ー が 生 じ る),し ATPの
(1)
変 換 す る こ と で あ る(図4.
のADPをATPに
行 す る の で,無 ATP+H2O→ADP+Pi
ATP1分
再 合 成 す る こ と と は,
量 だ け で は,筋
と さ れ て い る.た
4.2
自由
か も筋 中 に も と も と あ る
収 縮 は わ ず か1秒
と え ば,100m走
1020molのATPが1歩1歩
a. ATPサ
た りお よそ7.3kcalの
も持 続 しな い
では少な くとも
で 使 わ れ て い る計 算 に な る.
エ ネ ル ギ ー供 給 系
イクル
運 動 を 継 続 す る た め に はATPが
必要 であ るこ とを
説 明 し て き た が,も
と も と筋 中 に あ るATPの
量 はわ
ず か で あ る た め,運
動 を 継 続 し な が らATPを
再合成
図4.1 ATP再 安 静 時 のATP/ADP>
合 成 の 基 本 的 な考 え方(久 野) 運 動 時 のATP/ADPの
関係 に あ る.
b. ク レ ア チ ン リ ン酸 に よ るATP再 ATP供 PCrの
もそ の 総 量 は 少 な い.解
合成
給 系 の 中 で 最 も 短 時 間 に 再 合 成 で き る の が,
分 解 に よ る も の で あ る.筋
を 合 わせ て,高
合 成 は,以
中 に あ るATPとPCr 分
下 の反応 に よって行 われ て
い る.
需 要 に 対 し て は,三 速 くATPを
は運動 時 の エ ネ ル ギー
つ のエ ネ ルギー 供給 系 の 中で最 も
供 給 す る こ とが で き る.さ
ら に,単
当 た りの エ ネ ル ギ ー 産 生 量 も最 大 で あ る.し ADP+PCr⇔ATP+Cr
上 式 の 反 応 は,ク kinase:CK)と
(2)
た,よ
式,た
ほ どの 激 しい 運 動 で な い 限 り,
す る.
れは
磁 気 共 鳴)法 と よ ば れ る 方 法 に よ り確 認 さ れ
か し,PCr
た が っ て,こ
の 供給
系 で は 短 時 間 で 高 い パ ワー を発 揮 す る よ う な運 動 様
方 向へ の 反応 が あ る こ とを
量 は 運 動 中 に は 変 化 し な い(図4.2).こ
NMR(核
常
位 時間
強度 運動 時 での エ ネル ギー
供 給 は短 時 間 しか 持 続 し な い.し
よ ば れ る 酵 素 に よ り触 媒 さ れ,通
さす)に あ る.ま
の 含 有 量 が 少 な い た め,高
レ ア チ ン キ ナ ー ゼ(creatine
は 平 衡 状 態(平 衡 と は,両
ATPの
約5倍 以 上 を 示 し て い る.
しか し な が ら,ATP-PCr系
エ ネ ル ギ ー リ ン酸 と も よぶ.PCrの
解 に よ るATP再
ン含 有 量 は,PCrの
糖 系 で 用 い られ る グ リ コ ー ゲ
と え ば ス プ リ ン ト走 な どの 初 期 に お も な 働 き を
一 方,PCrの
分 解 に よ るATP供
給,す
な わ ちCKと
い う酵 素 に よ る こ の 反 応 系(式(2))が,短
時 間で 高強
度 の 運 動 時 の み に 用 い られ て い る と理 解 す る こ と は 誤
て い る13). ヒ トに お け る 安 静 時 の 筋 中 のPCr,ATP,ADPお び グ リ コ ー ゲ ンの 量 を 表4.1に
示 した.筋
と あ るATP量
あ り,PCrと
はPCrの
約1/3で
よ
中 に も とも 合 計 して
りで あ る.こ
の 反 応 系 の 第1の 特 徴 は,短
度 の 運 動 時 にATPの
時 間で 高強
供 給 が 可 能 な こ と で あ る が,最
大
下 の 運 動 強 度(低 強 度)で 持 続 的 な 運 動 時 に お い て も こ の 系 は 重 要 な 働 き を し て い る.そ
の 証 拠 と して は,低
強 度 の 持 続 的 な 運 動 時 に お い て,運 だ ち にPCrの
動 を開始 す る とた
濃 度 は 安 静 時 よ り低 下 し,数 分 後 に は低
下 した ま ま で 定 常 な 状 態 を 保 つ こ と がNMR法 て 示 さ れ て い る13).し た が っ てPCrは,無
に よっ
酸 素 的 な運
動 と 有 酸 素 的 な 運 動 の い ず れ に お い て も重 要 な 役 割 を 果 た し て い る こ と に な る. 筋 は,も
う一 つ の 短 時 間 に よ るATP再
て い る.こ
れ は,ア
kinase)と
い う酵 素 に よ り触 媒 さ れ,そ
合 成 系 を もっ
デ ニ レー トキ ナ ー ゼ(adenylate の 反応 式 は以
下 の と お りで あ る. 図4.2
3)PNMPス
ペ ク トル ス コ ピー に よる 安 静 時,運
お よび 回 復 時 の 無 機 リ ン酸(Pi),ク (PCr),ア
デ ノ シ ン三 リ ン酸(ATP)の
変 化13)
運 動 が 開 始 さ れ る とPiの ピ ー ク は 上 昇 し,PCrの 低 下 す る の に 対 し,ATP(β)の 変 化 は 認 め ら れ な い.こ
ピ ー ク は安 静 時 と 運 動 時 で
れ は 運 動(筋 収 縮)に 伴 いATPを
ATPの
変 化 は 認 め られ な い.
注:一
般 にNMRで
は.ATPの
濃 度 は β-ATPの
消
か け上
ピ ー クで 評 価
す る.
(3)
こ の 反 応 で 産 生 さ れ た ア デ ノ シ ンー リ ン酸(AMP) は,解 糖 系 に よ るATPの
ピー ク は
費 して い る が 再 合 成 が 非 常 に 速 く な され る た め,み
2ADP→ATP+AMP
動時
レア チ ン リ ン酸
供給 を調節 してい るホ スホ フ
ル ク トキ ナ ー ゼ(phosphofructokinase:PFK)活 を 高 め る働 き を も っ て い る.ま と のADP量 1),い
もPCrと
た,筋
性
内 にあ る もと も
同 様 に わ ず か で あ る た め(表4.
ず れ に し て も こ れ ら の 系 単 独 で は,運
動 を長 く
持 続 す る こ と は で き な い. 表4.1
ヒ ト骨 格 筋 に お け る 安 静 時 のPCr, ATP,ADP,AMP,グ
リ コー ゲ ン量15)
c. 解 糖 系 に よ るATPの
供給
グ リ コ ー ゲ ン ま た は グ ル コ ー ス が 酸 素 の 介 在 な しで ピ ル ビ ン酸(pyruvic
acid)に
分 解 さ れ,そ
れ て 乳 酸 に な る経 路 を 解 糖 系(glycolysis)と 3).こ 単 位:mmol/kg.
れ が還元 さ い う(図4.
の経 路 は酸 素 を必要 と しない ため無酸 素 的 代謝
と も よ ば れ る が,こ
の 無 酸 素 と い う言 葉 か ら,解
糖系
図4.4 antiportは
ATP-ADPシ
ャ ト ル(Houston,1995)
両 側 通 行,symportは
ATP-ADPシ
片 側 通 行 を 意 味 す る.こ
の
ャ トル の ス ピー ドを高 め る こ とが ト レー ニ ン
グ 効 果 を 得 る こ と に な る.
縮 す る とATPを 図4.3
ATP合
成 過 程 の 概 念 図(NewsholmeとLeech,198315
を 一 部 改 変)
に よ るATPの
消 費 す る が,そ
れ は ミ トコ ン ドリ ア 内
で は な く細 胞 質 で 起 こ り,ATPは
供 給 は,筋 組 織 内 が 無 酸 素 な 状 態 に 陥 っ
て い る と い う 誤 解 を 生 ん で い る こ とが 少 な くな い.酸
た だ ち にADPとPi
に 分 解 さ れ る.し
た が っ て,ATPを
は,ADPとPiは
ミ ト コ ン ドリ ア 内 に,ATPは
再合 成す るため に 逆に ミ
トコ ン ドリ ア か ら細 胞 質 方 向 へ 移 動 し な け れ ば な ら な い(図4.4).
素 が 不 十 分 な 状 態 で あ っ て も,十 分 な 状 態 で あ っ て も,
ミ トコ ン ドリ ア 内 の マ トリ クス と 内 膜 の 関 係 は,前
グ ル コ ー ス は ピ ル ビ ン酸 に 変 換 さ れ る.こ
者 がATPの
ビ ン酸 が 乳 酸 に 変 換 さ れ る(無 ピ ル ビ ン 酸 が ア セ チ ルCoAに 糖),そ
酸 素 的 解 糖)場
ル
合 と,
変 換 さ れ(有 酸 素 的 解
の 後 酸 化 さ れ て 多 くのATPを
あ る(図4.3).し
の 時,ピ
た が っ て,無
産 生 す る場 合 が
酸 素 的 代 謝 と は,グ
リ
コ ー ゲ ン も し くは グ ル コ ー ス か ら ピ ル ビ ン酸 ま で の 変
る.糖
仕 込 み 工 場 で あ り,後 者 が 生 産 工 場 とい え
質 が 解 糖 過 程 を 通 過 す る と ピ ル ビ ン酸 ま で 分 解
さ れ,ミ
トコ ン ドリ ア ・マ ト リ ッ クス 内 に あ る ピ ル ビ
ン 酸 脱 水 素 酵 素 に よ り ア セ チ ルCoAに くマ ト リ ッ ク ス 内 のTCA回 (遊 離 脂 肪 酸,FFA)は
分 解 さ れ,同
路 へ と進 む,一
リ ッ ク ス 内 で β酸 化 され て ア セ チ ルCoAと
っ て,筋
回 路 に進 む.そ
解 糖 系 の 主 要 な 調 節 系 は,律 速 酵 素 で あ るPFK活 で あ る.PFK活 AMP濃
性 は,筋
度 が 高 く な る とそ の 活 性 が 高 ま り,解
を促 進 す る.一 や,脂
方,細
胞 内 のATP濃
性 が 低 下 し,解
CoAは
糖作用
こ のTCA回
給が 十分 な時
糖 系 に よ る 代 謝 を抑 制 す
NADH2と
な り,TCA
れ ぞ れ の 過 程 か ら分 解 さ れ た ア セ チ ル 路 で 分 解 さ れ,そ
酸 化 炭 素 と し て 取 り 除 か れ,水
度 が 十 分 に高 い 時
肪 酸 な ど に よ る 有 酸 素 系 のATP供
に はPFK活
性
収 縮 に 伴 い 細 胞 内 のADPや
の 炭 素部 分 は二 素 部 分 は お も に
して 内 膜 の 電 子 伝 達 系 に 供 給 さ れ る.電
伝 達 系 は,こ
質
同 じ く ミ ト コ ン ド リ ア ・マ ト
換 に お い て 酸 素 を 必 要 と し な い こ と を意 味 す る の で あ 組 織 内 の 酸 素 状 態 を 示 す もの で は な い.
方,脂
じ
子
の 水 素 を水 ま で 酸 化 し,そ の 時 に 発 生 す
る水 素 イ オ ンの 電 気 化 学 ポ テ ンシ ャ ル 差 をATP合 素 に 伝 え て 多 量 のATPを
成酵
合 成 す る こ と に な る(図4.3).
る. e.ADPに d.酸
化 系 に よ るATPの
酸 化 的 リ ン 酸 化(oxidative
供給 phosphorylation)は,ミ
コ ン ド リ ア の 内 膜 で 行 わ れ る.ま
た,解
り酸 素 の 介 在 下 で 行 わ れ る た め,こ ATP再
よる調節
た とえATP消 ト
糖 系 とは 異 な
の よ う な一 連 の
合 成 プ ロ セ ス を有 酸 素 的 過 程 と も よ ぶ.筋
が収
す ぐ にATPに
費 が 高 ま っ て 多 量 のADPが 再 変 換 さ れ れ ば,筋
昇 は 抑 制 さ れ,ミ
内 のADP濃
生 じて も 度の上
ト コ ン ドリ ア の 酸 素 消 費 は 抑 制 さ れ
た ま ま の はず で あ る.し
た が っ て,ミ
トコ ン ドリアの
酸 化 的 リ ン酸 化 能 力 を 向 上 さ せ れ ば 疲 労 に 対 す る 耐 性
4.3
持 久 的 トレ ー ニ ン グ と 筋 エ ネ ル ギ ー代 謝
a. ト レ ー ニ ン グ と筋 線 維 タ イ プ 別 の ミ トコ ン ド リ ア容量 の変化 筋 の 酸 化 能 力 を 向 上 さ せ る に た め に は,持 レー ニ ン グ が 効 果 的 で あ る.図4.6は,ヒ
久的 な ト トに6週 間
の持 久 的 トレ ー ニ ン グ を 実 施 した 前 後 の 筋 線 維 タ イ プ 別 の 相 対 的 ミ トコ ン ド リ ア 容 量 を 示 した も の で あ る. ト レ ー ニ ン グ 前 の デ ー タ が 上 部 に 示 さ れ て い る が, 図4.5
ミ トコ ン ドリ ア容 量 の違 い が ミ トコ ン ドリ ア呼 吸 と 細 胞 内ADP濃
低,普,高
は ミ トコ ン ドリア 容 量 の 程 度 を表 す.ま
場 合 酸 素 消 費量 は 仕 事 量 と考 えて よい.ミ 事 量 にお け る 筋 内のADP濃
た,こ
に比 べ て 同 じ仕
度 の 低 い こ とが わ か る.こ
酸 化 的 リ ン酸 化 能 が 高 い た め,他
の
トコ ン ド リア 容 量
が 高 い(酸 化 的 リ ン酸 化 能 が 高 い)と 普,低
に比 べ てADPか
れ は,
ⅡB<Type
ⅡA<Type
ドリ ア 容 量 が 多 い.ま
Ⅰの 順 で 相 対 的 ミ トコ ン
た,同
一の タイ プ内 での 相対的
ミ トコ ン ド リ ア 容 量 を 比 較 す る と,Type
Ⅰ線 維 が 示
す バ リエ ー シ ョ ンの 広 さ が 特 徴 的 で あ る.持 ー ニ ング後
らATPへ
久 的 トレ
,い ず れ の 筋 線 維 タ イ プ も相 対 的 ミ トコ ン
ドリ ア 容 量 が よ り多 い 方 向 に シ フ トし て い る.な
の 変 換 効 率 が よ り高 い と考 え ら れ る.
は 高 ま り,い
わ ゆ る トレ ー ニ ン グ 効 果 を得 る こ と が で
き る.図4.5は
筋 の ミ トコ ン ドリ ア 容 量 の 違 い が,筋
収 縮 中 のADP濃
Type
度 に 及 ぼ す 影 響7)
かで
度 と ミ トコ ン ドリア の酸 素 消 費 量 と
の 関 係 に どの よ う な 影 響 を 及 ぼ す の か を 示 し た も の で あ る.図
の 最 も左 の プ ロ ッ トは安 静 時 の 状 態 を 示 す と
考 え られ るが,す
で に ミ ト コ ン ドリ ア 容 量 の 違 い に よ
り筋 細 胞 内 のADP濃
度 は 異 な り,低
容 量 の 筋 が 最 も 高 いADP濃 味 深 い の は,酸 は,3群
ミ トコ ン ドリ ア
度 を 示 し て い る.ま
素 消 費 量 が 高 い 地 点(高
間 の 差 が 縮 ま り,ミ
た興
強 度 運 動)で
トコ ン ドリア容 量 の差 の
影 響 を あ ま り受 け な い の に 対 し,中 程 度 の 酸 素 消 費 量 (最 大 下 運 動)で は,最 で あ る.も れ ば,異
も容 量 の 差 の 影 響 を 受 け る こ と
し最 大 下 運 動 に お い て 酸 素 消 費 が 同 量 で あ
な る 群 で あ っ て もATPの
と仮 定 で き る.同
じ量 のATPが
分 解 され る と い う こ と
は,両
群 と も等 モ ル のADPが
る.そ
れ に もか か わ らず,図4.5の
異 な る と い う こ と は,高
消 費量 が 同一 であ る
生 じ る とい う こ と に な よ う にADP濃
度が
ミ トコ ン ド リア 容 量 群 に お い
て 酸 化 的 リ ン酸 化 の 速 度 が よ り速 い こ と を 示 し て い る.こ
れ は,筋
の 最 大 呼 吸 能 力 が 相 対 的 ミ トコ ン ドリ
ア 容 量 と 直 線 関 係 に あ る と い う報 告 か ら も支 持 さ れ て い る11).
図4.6
持 久 的 トレー ニ ン グ に よ る ヒ ト筋 線 維 タイ プ 別 の ミ トコ ン ドリ ア容 量 の変 化(Hoppeler,1986)
A:ト
レー ニ ン グ前,B:6週
間 の持 久 的 ト レー ニ ン グ後.
ト レー ニ ング 前 に お い て 筋 線 維 タ イ プ ご と に ミ トコ ン ドリ ア 容 量 が 異 な り,Type の 順 で あ る.こ
Ⅰ(■)>Type
ⅡA(●)>Type
の と き注 意 を要 す る の は,一
ⅡB(○)
つの筋線維の タ
イ プ の 中 で も ミ トコ ン ドリ ア容 量 に差 が あ る こ とで あ る.持 久 的 トレー ニ ン グ に よ り,い ず れ の筋 線 維 タ イ プ も容 量 が 増 す 方 向 に シフ トして い る.ま
た,そ
れぞれの タイプごとの分
布 は,ト レー ニ ン グ前 に比 べ て広 くな っ て い る.こ れ は ト レ ー ニ ン グ中 に な さ れた 運 動 にお け る 動 員 率 の 差 で あ る か も し れ な い.ま
た,典
型 的 な 速 筋 で あ るType
ⅡBに お い て も,
トレー ニ ン グ効 果 がみ られ る こ とに は 注 意 を要 す る.
も,Type
Ⅰ,Type
ⅡA線 維 の 変 化 が 大 き い.こ
のよ
c.運
動 時 間,強
度 と ミ トコ ン ド リ ア 容 量
う に 筋 線 維 タ イ プ 別 に 変 化 が 異 な る の は,こ
の トレー
持 久 的 トレ ー ニ ン グ の 開 始 に伴 い,ミ
ニ ン グ に 用 い られ た 運 動 様 式 に お い て,Type
Ⅰ,Type
容 量 は 比 較 的 早 く増 大 す る こ とが 知 ら れ て い る.図4.
ⅡA線 維 が お もに 動 員 さ れ た た め で あ る と考 え ら れ る.
8に ト レー ニ ン グ 期 間 と ミ トコ ン ド リ ア 容 量 と の 関 係 を,図4.9に1日
b.酸
化 能 力 の 向 上 に 貢 献 す る他 の 要 因
トコ ン ドリ ア
の トレーニ ング時 間 と運動 強 度が ミ
トコ ン ドリ ア 容 量 に 及 ぼ す 影 響 を 示 した.あ
持 久 的 トレ ー ニ ン グ に よ る 筋 の 酸 化 能 力 の 向 上 は,
る一定 刺
激 に 対 し て の 適 応 が 定 常 に な る た め に は,約4∼5週
ミ ト コ ン ド リ ア 容 量 の 変 化 の み に よ る もの で は な く,
間 必 要 とす る.逆
当 然 他 の 細 胞 内 器 官 な ど の 発 達 と リ ン ク し て い る.表
増 加 し た 容 量 分 の 約1/2が
4.2お
開 し た と し て も も と の レベ ル に 達 す る ま で 数 週 間 を要
よ び 表4.3に
は,エ
ネ ル ギ ー 産 生 系 か らみ た 持
に ト レー ニ ン グ を1週 間 中 止 す る と 失 わ れ,ト
レ ー ニ ン グ を再
久 力 の 制 限 因 子 と持 久 的 ト レ ー ニ ン グ の 効 果 を 規 定 す
して し ま う.一
る 因 子 を 示 した.持
増 加 した ミ ト コ ン ド リ ア 容 量 は トレ ー ニ ン グ前 の レベ
は ほ ぼ2倍
久 的 ト レ ー ニ ン グ に よ り毛 細 血 管
ま で 増 加 す る こ とが 知 ら れ て い る.こ
加 に よ る 生 理 ・生 化 学 的 利 点 は,酸
の増
素 や 栄 養 分 な どの
方,ト
ル に 戻 っ て し ま う.ま させ る た め に は,長
レ ー ニ ン グ 中 止 後 約5週
た,ミ
間 で,
トコ ン ドリ ア 容 量 を増 大
い 時 間 を必 要 とせ ず 短 時 間 で 運 動
毛 細 血 管 か ら筋 線 維 へ の 拡 散 距 離 が 縮 小 す る こ と,お よび毛 細血 管 の総 横 断面積 が 増 すの で毛 細血 管 内の 血 流 速 度 が 遅 くな り,筋 線 維 へ の 基 質 供 給 お よ び筋 線 維 か ら の 代 謝 産 物 の 除 去 が 容 易 と な る こ と で あ る.さ に,持
ら
久 的 ト レー ニ ン グ に よ る ミ トコ ン ド リ アへ の 酸
素 供 給 能 の 向 上 と い う観 点 か らす る と,ト
レー ニ ン グ
後 の 適 応 と して 起 こ る血 流 再 配 分 も重 要 で あ る. 持 久 的 トレーニ ングに よるパ フ ォーマ ンスの向 上 に 貢 献 す る要 因 と し て も う 一 つ 重 要 な の は,ミ トコ ン ド リ ア の 酸 化 的 リ ン酸 化 能 の 向 上 に 伴 う筋 中 の グ リ コ ー
図4.7
12週 間 の 持 久 的 ト レー ニ ン グが 筋 の 脂 質(ト リグ リ セ ラ イ ド)利 用 に及 ぼす 影響(Hurleyら,1986)
ゲ ン分 解 の 抑 制 お よ び脂 質 酸 化 の 割 合 の 増 大 で あ る (図4.7).グ
リ コ ー ゲ ンの 枯 渇 は 筋 活 動 の 限 定 要 因 と な
り う る た め,脂
運 動 は60%Vo2maxで120分
間.持
久 的 ト レー ニ ン グ に よ り運
動 中 の 脂 質 利 用 が 高 まる.
質酸 化 の割 合 の増 大 は疲 労 に達す るの
を 遅 延 さ せ る.持 久 的 トレ ー ニ ン グ に よ り脂 質 酸 化 の た め の 酵 素 活 性 が100%増
表4.2
加 す る こ とが 示 され て い る.
筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 の 観 点 か らみ た 持 久 力 の 制 限 因 子15)
表4.3
持 久 的 トレ ーニ ン グ の 効 果 を 規 定 す る 因子(久 野)
図4.8
ト レー ニ ン グ と脱 ト レー ニ ング に対 す る ミ トコ ン ド リ ア 容 量 の 適 応(Booth,1977)
ミ トコ ン ドリ ア容 量 の 単 位 は任 意.a:脱 b:脱
トレー ニ ング期 間,
トレー ニ ン グ も し くは再 トレー ニ ン グ期 間.
持 久 的 トレー ニ ン グ を開 始 す る と,ミ 較 的早 い段 階 で 増 大 す る.一 方,ト す ぐに低 下 しは じめ る.
トコ ン ドリ ア容 最 は比
レー ニ ン グ を中 止 す る と
4.4
ス プ リ ン ト ト レ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝
a.エ
ネ ル ギ ー供 給 系 能 の 向 上
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ は,短
時 間 しか 持 続 で き な
い 高 強 度 な 運 動 を 負 荷 す る も の で あ る た め,主 ATP供
給 系 はATP-PCr系
要な
お よ び 解 糖 系 で あ る.そ
の
た め ス プ リ ン ト能 力 の 向 上 は こ れ ら の エ ネ ル ギ ー 供 給 系 が 改 善 され る こ と に な る が,と
く に そ の 中 で も解 糖
系 の 能 力 の 発 達 が 重 要 と な る.な
ぜ な ら ば,ト
レーニ
ン グ に よ り激 しい 運 動 中 に 筋 で 再 生 さ れ るATP量 加 が 確 か め られ て い る が,こ 図4.9
ミ トコ ン ドリア 容 量 の ト レー ニ ン グ効 果 に お け る 運
は 解 糖 系 に よ るATP供
動 強 度 と運 動 時 間 の 関 係(Dudleyら,1982)
の増
れ らの 増 加 分 の ほ と ん ど
給 の た め で あ る.
ト レー ニ ン グ強 度:%Vo2max.a:40%,b:50%.c:70
ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ に よ り解 糖 系 の 律 速 酵 素 で
%,d:85%,e:100%.ミ
あ るPFK活
トコ ン ドリア 容 量 を増 大 させ
る ため に は,運 動 強 度 が 高 い ほ うが 効 果 的で あ る.40%Vo2max 程 度 の運 動 強 度 で は,ミ
性 の 増 加 が み られ る が,一
トコ ン ド リア容 量 に お い て トレー ニ
ング 前 と変 化 しな い(図4.11).
ン グ効果 は 認 め られ な い.
強 度 を 高 くす る こ とが 重 要 で あ る.し 度 ・長 時 間 運 動 の ト レー ニ ン グ は,ミ
た が っ て,低
接 に 関 係 し な い 心 臓 循 環 系 機 能,体
強
トコ ン ドリ ア の
酸 化 的 リ ン酸 化 能 の 向 上 に は あ ま り影 響 せ ず,筋 液 バ ラ ンス,代
と直 謝
b.筋
の緩 衝系 の 向上
短 時 間 で の 激 し い 運 動 を 行 う と,筋 内 に はATPの 水 分 解 で 生 じるADP,Piや はATPの
化 さ れ る とIMPお
な お,持
さ ら に,解
久 的 トレ ー ニ ン グ と筋 エ ネ ル ギ ー代 謝 との
関 係 を シ ェ ー マ と し て 図4.10に
示 した.
水 素 イ オ ン(H+),あ
再 合 成 に よ りAMP,そ
産 物 の 処 理 な ど の 他 の 適 応 を生 じ させ る18).
し てAMPが
加 るい
脱 ア ミノ
よ び ア ン モ ニ ア が 蓄 積 さ れ て い く.
糖 系 が 高 進 さ れ る た め 乳 酸 が 産 生 され,そ
の 乳 酸 か ら は 等 モ ル のH+が か か わ らず 筋 のpHは
遊 離 さ れ,緩
衝作用にも
低 下す る.こ のH+は,一
解 糖 系 の 律 速 酵 素 で あ るPFK活
図4.10
方スプリントト
レー ニ ン グ を 実 施 して も 酸 化 系 の 酵 素 活 性 は トレ ー ニ
方では
性 を抑 制す る働 きもも
持 久 的 トレー ニ ン グ に よ り筋 エ ネ ル ギ ー 代 謝 能 の 向 上を示 す シ ェ ー マ(久 野)
図4.11 ス プ リ ン ト トレー ニ ング に よ る解 糖 系 図4.12 ス プ リ ン ト トレ ー ニ ン グ に よ る
酵 素 活 性 と酸 化 系 酵 素 活 性 の 変 化 (Faulknerら,
っ て い る.す はH+が
な わ ち,解
細 胞 内 にH+が
のH+を
蓄 積 され て 筋 のpHが
の 代 謝 性 ア シ ドー シ ス はPFK活
動 を 継 続 し て い く の に必 要 なATPの さ せ る た め 筋 疲 労 を招 く.さ pHの
低 下 は,筋
(Ca2+)の
低
性 を抑 制 し,運
蓄積 に よ る
4. 解 糖 系 の特 徴 を述 べ な さい. 5. 筋 エ ネ ル ギー 代 謝 か らみ た持 久 力 の 制 限 因 子 を 六 つ あ げ な さい. 6. 持 久的 トレー ニ ング に よ る ミ トコ ン ドリア酸 化 能 の適 応 につ い て説 明 しな さい. 7. ス プ リ ン ト トレー ニ ン グ に よる 筋 エ ネ ル ギ ー代 謝 か ら み た 適応 を説 明 しな さ い.
小 胞体 か らのカ ル シウ ム イオ ン
た が っ て,運
の収 縮 力 を低 下 さ
動 継 続 の た め に はH+を
合 成 に お け る ク レ アチ ン リ ン酸 の役 割 を説 明 し
な さ い.
産生 に遅 延 を生 じ
ら に,H+の
放 出 低 下 な ど を 招 き,筋
せ る.し
3. ATP再
緩 衝系 で緩 衝 し
下 し,細 胞 内 は 酸 性 化(代 謝 性 ア シ ドー シ ス)状 態 に な る.こ
衝能
の 向 上(Sharpら,1986)
糖 系 が 亢 進 す る と筋 細 胞 内 に
遊 離 さ れ て く る が,こ
き れ な い と,筋
骨 格 筋 の 水 素 イ オ ン(H-)緩
1982)
8. 短 時 間 の激 しい運 動 時 に筋 内 に蓄 積 さ れ る代 表 的 な代 謝 産物 を複 数 あげ な さ い.
で きる
限 り筋 細 胞 内 に 蓄 積 しな い よ う に す る こ とが 必 要 と な る が,骨
格 筋 は こ のH-を
っ て い る.そ
緩 衝 す る ため の 仕組 み を も
の 緩 衝 系 と は,無 機 リ ン酸,重
ン(HCO3-),カ
ル ノ シ ン,蛋
炭酸 イオ
● 参 考 文 献 1)
白質 な どの物 理 化学 的
な 緩 衝 系 と ク レ ア チ ン リ ン酸 の 分 解,ア
れ らの
緩 衝 系 の 能 力 を 向 上 さ せ な け れ ば な ら な い.こ
れ につ
加 す る こ と が 明 らか に さ れ て い る(図4.12).
ま た,こ
R.K.,
4)
の 緩 衝 に は カ ル ノ シ ン と よ ば れ る物 質 が 関 与 5)
述 べ な さ い. 2. ATPを
再合 成す る供 給 経路 をすべ て 説 明 しな さい.
Gollnick,
Rennie,
fully
rest
Appl.
aerobic
and
M.J.,
exercise.
Winder,
W.W.
phosphorylase
contractile
T.E.J.
and
intracellular
and
activation
activity.
Am.
J.
in
Physiol.,
PO2
Honig, in
a
C.R.:Lactate working
efflux
red
muscle
Physiol.,61:402-408,1986. P.D.
and
Hermansen,
and
Sports
L.:Biochemical
metabolism. Medicine,
adaptations
Perspectives Vol.1,
in
pp.1-42,
Exercise
Benchmark
Indianapolis,1973.
Gollnick,
P.D.:Metabolic,
Infulence
of
protein 556)
during
of
to exercise:Anaerobic
6)
1. 筋 が 収 縮 す る ため に必 要 な化 学 化合 物 は何 で あ るか を
J.A.,
Gayeski, to
J. Appl.
Press,
題
and
J.
:2924-2929,1986.
continued
R.J.,
Sciences
● 問
lactate
:R291-R296,1979.
Connett,
situ.
合 が 高 い 者 ほ ど 量 が 多 い こ と が 示 され て い る.
of
exercise.
under
shuttle
J.O.:Reversal
is unrelated
し て い る 可 能 性 が あ り,こ れ に つ い て も 速 筋 線 維 の 割
points
production lactate
McLane,
despite
237
30%増
A.:End
exhausting
1057-1069,1980.
Proc.,45
Conlee,
muscle
よ び ス プ リ ン ト ト レー ニ ン グ で 緩 衝 能 が 約
G.
after
:the
Holloszy,
筋 線 維 の 割 合 が 高 い 者 ほ ど 筋 の緩 衝 能 が 高
Gaesser,
G.A.:Lactate
Federation 3)
and
:
Brooks, conditions
プ リ ン ト トレー ニ ン グ は,こ
い こ と,お
A.
metabolism
Physiol.,49
ンモ ニ ア の 産
生 な どの 代 謝 的 な 緩 衝 系 で あ る.
い て は,速
G.
glucose
2)
し た が っ て,ス
Brooks,
endurance
concentration. :
53-66,1986.
regulation training Acta
in
as Physiol.
exerted
skeletal by
Scand.,128
muscle:
mitochondrial (Suppl.
in
7)
八 田 秀 雄:乳
酸 の 産 生
と 除 去
のLTと
の
関 係.臨
床
the
ス ポ ー ツ
8)
Hirvonen,
J.,
Rehunen,
Breakdown
of
lactate
S.,
Rusko,
high-energy
accumulation
H.
and
Harkonen,
phosphate
during
short
14)
M.:
compounds
and
supramaximal
Holloszy,
J. O.
endurance
and
in
F.
W.:Biochemical
muscle.
Ann.
Rev.
adaptation
to
J.O. to
endurance
F.:Adaptation
exercise Physiol.,65
Hoppeler,
range
H.:The fibers.
(Pette,
D,
Jacobs,
P.
S.,
W. A.,
human
Appl. and
their
skeletal
B.,
mitochondrial
adaptation
State
of
O., muscle
Muscle
Karlsson,J. after
and 10
18)
30s
of
F.:31P
NMR
Saltin,
study
on
C.,
rat
skeletal
muscle.
Bro-Rasmussen, B.
T.,
and
Saltin,
after
training
in athletes
E.
A.
Science,
and
S. and
synthetase Acta
Eur.
J.
Mygind,
B.:Limb at
E., skeletal
altitude.J.
Appl.
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R.
L.,
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intrained
P.
and
untrained
muscle
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performance.
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M.,
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storage
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Mitsumori,
Juel,
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fibers
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:496-502,1990.
significance
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training
Rasmussen,
Newsholme,
of man.
metabolic
endurance
adaptation
glycogen
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eds.),pp.567-586,
skeletal
M.
and
Bar-Or,
exercise.J. Akisada,
of
of
:197-201,1992.
Dynamic
Gruyter,
in
supramaximal Kuno,
In:The
and
I.,Tesch,
R.:Lactate
13)
Coyle,E.
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muscle
12)
and
M.,
Schibye,
Medical 16)
Holloszy, muscle
11)
15)
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291,1976. 10)
Mizuno,
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Booth,
exercise
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Physiol.,65:197-201,1992.
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to
low
P. blood
and flow
15E-19E,1988.
Ogilvie, in
muscle
R.
5 運動 時のホル モン分泌
運 動 時 に は筋 活 動 に 必 要 な 糖,脂
質 の エ ネ ル ギ ー を 血 中 に 遊 離 させ,そ
れ を利 用 す る.ま た,
酸 素 の 利 用 も高 ま る こ とか ら酸 素 供 給 を 高 め る た め に 血 流 量 を 増 加 させ る.ま
た,持
続的 な運
動 時 の 筋 疲 労 に 対 抗 す る た め に,運 動 野 か ら よ り多 くの イ ンパ ル ス を送 り(中 枢 指 令 の 増 加), 運 動 単 位 の 活 動 を高 め る 必 要 も あ る.こ
の よ う な 運 動 中 の 生 体 応 答 は,意
な 身 体 の 緊 急 応 答 と し て い わ ゆ る ス トレ ス 反 応 系 に よ り調 節 さ れ る.こ と体 液 性 の 二 つ が あ る.前 体‐副 腎 皮 質 軸 で あ る.こ を 変 え る こ と に よ り,さ シ ス テ ム は,い
識 し な く と も 自動 的
の調 節機構 には神経 性
者 は 視 床 下 部 ‐自律 神 経‐副 腎 髄 質 軸 で あ り,後 者 は視 床 下 部 ‐下 垂 れ ら二 つ の シ ス テ ム は,繰
り返 しの 運 動 刺 激 に 対 し て 徐 々 に応 答 性
ま ざ ま な生 体 の 合 目的 な 適 応 を 生 む も の と考 え られ る.ま
た こ れ らの
ず れ も ホ ル モ ン と よ ば れ る微 量 な 化 学 物 質 を 介 して 行 わ れ る.本 講 で は,運
動
時 の ス トレ ス ホ ル モ ン の 分 泌 や 適 応 の 仕 組 み につ い て,視 床下 部 を 中 心 に ど の よ う な 中 枢 機 構 が 介 在 し て い る か に つ い て 述 べ る.
ホ ル モ ン は そ の 化 学 構 造 か ら ス テ ロ イ ドホ ル モ ン,
5.1 ホ ル モ ン分 泌 と視床 下 部調 節
ア ミノ 酸 を も と につ く られ る ペ プ チ ドホ ル モ ン(ア ノ 酸 ど う しの ペ プ チ ド結 合(−C(=0)−NH)が
a.ホ
ルモ ンの特 性
図5.1に
とな る)や
視 床 下 部 を 支 配 中 枢 とす る下 垂 体,な
らび
に 自律 神 経 系(交 感 ・副 交 感 神 経 系)ホ ル モ ンの 由 来 と標 的 器 官 へ の 作 用 に つ い て 示 し た.ホ 語 源 か らい っ て,血
中 に 分 泌 され る.血
中
に 分 泌 され た ホ ル モ ン は そ の ほ と ん ど が 肝 臓 で 分 解 さ れ るの で,.血 中 で の 生 物 活 性 が 維 持 さ れ る時 間 を 表 す
な わ ち 代 謝,循
環の 液性 調節
の シス テム は内分
の 作 用 の 特 徴 と し て は,き
た り10億 ∼1兆 分 の1g)で
し,高 親 和 性 を も つ こ とに 加 え,触 反 応 の 促 進,抑
細 胞 で 合 成 さ れ,血
ルモ ンはその
を担 う メ デ ィ エ ー ター とい え る.こ 泌 系 と よ ば れ,そ
図5.1)の
れ らの ホ
泌 に あ た っ て は 内 分 泌 器 官(表5.1,
液 に分泌 され離 れた 標的 器官 に ま
で 運 ば れ て 作 用 す る,す
量(1ml当
ア ミ ン類 の 三 つ に 分 け られ る.そ
ル モ ンの 合 成.分
ミ
基本
わめ て微
特 異 的 に作 用
媒 作 用 に よ り代 謝
制 を 通 じて 代 謝 の 調 節 を 行 う,な
「生 物 学 的 半 減 期 」 を 考 慮 す る 必 要 が あ る.こ
カ テ コ ラ ミ ン(ノ ル ア ド レナ リ ン,ア ー パ ミ ンの 総 称)で 60分,そ
,ペ
ドレ ナ リ ン,ド
プ チ ドホ ル モ ンは5∼
どが b.ホ
こ と に よ る.最
表5.1,図5.1に
床 下 部 の 神 経 が ペ プ チ ドホ
ル モ ン を分 泌 す る 「神 経 内 分 泌 」 や,標
は数分
し て 甲 状 腺 ホ ル モ ン で は1週 間 と 長 い7.21).
特 徴 と な っ て い る5.11).い ず れ も特 異 的 受 容 体 を もつ 近 で は,視
れはホ
ル モ ンの 種 類 に よ り異 な り,自 律 神 経 ‐副 腎 軸 か ら の
的器官 の細 胞
ル モ ン分 泌 の 視 床 下 部 調 節 お も な 内 分 泌 器 官 と ホ ル モ ン,な
ら び に そ の 標 的 器 官 へ の 作 用 を ま とめ て 示 した.ほ
と
が ホ ル モ ンの 刺 激 を 受 け て さ ら に 独 自 の ホ ル モ ン を 合
ん どの ホ ル モ ン は 視 床 下 部 に よ る 調 節 を 受 け る こ とが
成 し,自
己 な らび に 隣 接 細 胞 に 作 用 す る 際 の 「自 己 分
わ か る7.21).下 垂 体 で は 前 葉 ・中 葉 と後 葉 で 分 泌 の 機
分 泌 」 な ど を 含 め た 情 報 伝 達 も含 め て 内 分 泌 系
構 が 異 な っ て い る.下 垂 体 前 葉 な らび に 下 垂 体 中 葉 か
泌/旁
と 定 義 す る場 合 もあ る7.21).
ら は8種 類 の ホ ル モ ン が 分 泌 され る が,い
ず れ も視 床
図5.1
お も な ホ ル モ ン と生 理 作 用(征
矢)
表5.1
*:エ
お もな 内 分 泌 器 官 と ホ ル モ ン2)
ス トロ ゲ ン に は4種 類 あ る.
下 部 に 支 配 神 経 が 存 在 し,そ の 神 経 で 合 成 さ れ る ペ プ
投 射 す る 自律 神 経 の 末 端 か ら ノ ル ア ド レ ナ リ ン(NA)
チ ドが 下 垂 体 門 脈 に い っ た ん 分 泌 さ れ(神
と し て 血 中 に 分 泌 さ れ る.自
経 内 分 泌),
血 液 を 介 して 前 ・中 葉 に 到 達 す る こ と に よ り生 じる.
わ れ る よ う に,副
た と え ば 卵 巣 か らの エ ス ト ロ ジ ェ ン 分 泌 を 刺 激 す る 黄
ナ リ ン(A)を
体 形 成 ホ ル モ ン(LH)の
NAは
LHRH(性
分 泌 は,視
床下 部 由来 の
腺 刺 激 ホ ル モ ン放 出 因 子)に よ る 分 泌 抑 調 節
を 受 け る.一
方,下
垂 体 後 葉 に はAVP(ア
バ ソ プ レ ッ シ ン)とOT(オ
ルギ ニ ン ・
キ シ トシ ン)が あ る が,こ
律 神 経 ‐副 腎 髄 質 軸 と い
腎 髄 質 は 自律 神 経 支 配 が 強 くア ドレ
分 泌 す る.血
中 で はAは
自 律 神 経 由 来 とみ て よ い.膵
副 腎 髄 質 由 来,
臓 で は,血
分 泌 し血 糖 の 維 持 が 図 ら れ る.こ に よ る 刺 激 を 受 け てIGF-Ⅰ(イ
の ほ か,肝
分 泌 し,骨,筋
軸 索 を 通 して 後 葉 まで 運 ばれ た 結 果貯 蔵 され た も の
を も つ 心 房 性 ナ ト リ ウ ム 利 尿 ホ ル モ ン(ANP)を
で,そ
さ せ る.さ
部 のCRH(コ
律 神 経 は,視 床 下
ル チ コ トロ ピ ン(ACTH)放
に よ り刺 激 を受 け,最
出 因 子)な ど
終 的 に は 胸 髄 か ら全 身 に 向 け て
に 作 用 さ せ る.ま
ら に,最
近,脂
子 と し て 発 見 さ れ た.こ た 後,視
た,心
臓 も降圧 効 果
肪 細 胞 か ら肥 満(ob)遺
れ は,脂
床 下 部(室 傍 核,弓
臓 はGH
ンス リ ン様 成 長 因 子)を
れ は視 床下 部 に あ る神経 の細 胞体 で合 成 され た ものが
こ か ら血 中 に分 泌 さ れ る.自
糖の増
減 を 受 け て α,β 細 胞 か ら グ ル カ ゴ ン や イ ン ス リ ン を
分泌 伝
肪 細 胞 か ら分 泌 さ れ
状 核 な ど)に 作 用 し て 摂 食
図5.2 視 床下 部 の 向下 垂 体 神 経 の 投 射 経 路(征 矢) 下垂 体 前 葉 か らの ホ ル モ ン は,い
ず れ も 視 床 下部 の 正 中 隆 起 部 に投 射 す る神 経 分
泌 細 胞 の 末端 か ら 神経 内 分 泌 に よ り放 出す るペ プ チ ドホ ル モ ンに よ り調 節 され る.
行 動 を 抑 制 し,交 感 神 経 を 介 して 代 謝 を 促 進 す る こ と
じて 初 め て 前 葉 ホ ル モ ンが 合 成 ・分 泌 され る こ と に な
か ら レ プ チ ン(ギ
リ シ ャ語 で や せ る を 意 味 す る)と
る2.7.18.21).
づ け ら れ た5).脳
も含 め こ れ らの 臓 器 も ホ ル モ ン を合
名
成 ・分 泌 す る こ と か ら 内 分 泌 器 官 と み る こ と も で き る.い
わ ゆ る 内 分 泌 器 官(下 垂 体,甲
状 腺,副
5.2
運 動 とス トレスホ ル モ ン
腎,性
腺 な ど)だ け で 定 義 す る の は も は や 難 し くな っ て い る.
a.ス
トレ ス と は?
身 体 運 動 は,そ
の開始 と ともに莫 大 なエ ネ ルギ ー と
c.視 床 下 部‐下 垂 体 前 葉 軸
酸 素 を必 要 とす る の で,糖
運 動 時 に 分 泌 され る ホ ルモ ン は そ の ほ とん どが ス ト
の 代 謝 ・循 環 応 答 を 即 座 に動 員 す る必 要 が あ る.こ
レ ス に 関 連 し た ホ ル モ ンで あ る.い ず れ も下 垂 体 前 葉
を満 た す の は,視
由 来 で あ る こ とか ら,そ
の 視 床 下 部 調 節 の し くみ を も
う少 し詳 し く述 べ る.図5.2は
ラ ッ トの 脳 の 前 額 断 を
示 し,視 床 下 部 を ク ロ ー ズ ア ッ プ して い る.視 は 間 脳 に あ り,さ
身 の 統 合 的 調 節 を 行 う部 位 と して 知 ら れ る.お 徴 は,神
床 下部
ま ざ ま な 神 経 と 連 絡 を も ち な が ら全 もな特
経 が 無 髄 で 信 号 の 伝 達 速 度 が 遅 い か わ りに ペ
新 生 と血 流 増 加 とい う二 つ れ
床 下 部 ‐下 垂 体‐副 腎 軸 な ら び に視 床
下 部 ‐自律 神 経 軸 と い う 全 身 の 二 大 調 節 系 で あ る.医 科 ・生 理 学 領 域 で は,こ
の 二 大 調 節 系 は 「ス トレ ス 反
応 」 を 生 み 出 す 機 構 と し て と ら え ら れ て い る7).こ れ は も と も とW.CannonとH.Selyeの
学 説が もとに なっ
て お り,生 命 維 持 に 赤 信 号 を灯 す 行 動 や 臓 器 の 反 応 を 促 す 物 理 ・化 学 的 刺 激 群 を 意 味 す る もの で,身
体 に溜
プ チ ドホ ル モ ン を 合 成 し,軸 索 輸 送 に よ り正 中 隆 起 や
まっ た りす る も の で は な い.ス
下 垂 体 後 葉 に 運 搬 す る こ とで あ る.表5.1,図5.1で
熱 な どの 身 体 的 な 刺 激 因子 の ほ か に,恐
も示 した よ う に,LHを
の 心 理 的 ・社 会 的 因 子 な ど 多 くの 種 類 が あ る18.20.21).
野,GHを
支 配 す るLHRH神
支 配 す るSRIF神
弓 状 核,そ
し てACTHを
経 は視 索 前
経 は 室 周 核,GRH神 支 配 す るCRHな
経は
ら び にAVP
トレ ス に は 痛 み,空 腹, 怖,不
生 理 学 で は ス ト レス を 科 学 的 に と ら え る た め に,下 体 前 葉 か ら分 泌 され るACTH(副
の 分 泌 を ス トレ ス の メル ク マ ー ル と して い る.
れ も 最 終 共 通 経 路 と な る 正 中 隆起 に そ の 軸 索 を投 射 し
と こ ろ で,ACTHに
て い る.す
ル チ ゾ ー ル(グ ル コ コ ル チ コ イ ドの 一 つ,以
れ らの ペ プ チ ドは 正 中 隆 起 か ら
垂
腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン)
神 経 は 室 傍 核 に そ れ ぞ れ 細 胞 体 が 局 在 して お り,い ず
な わ ち,そ
安 など
よ り副 腎 皮 質 か ら分 泌 さ れ る コ 後GCと
下 垂 体 門 脈 血 中 に 分 泌 さ れ る こ と に よ り下 垂 体 前 葉 に
よ ぶ)は ア ル ドス テ ロ ンや ミネ ラ ル コ ル チ コ イ ド と い
作 用 で き,独
っ た ス テ ロ イ ドホ ル モ ン な ど共 同 して 生 体 の ホ メ オ ス
自 の 受 容 体 を 介 した 刺 激 ‐分 泌 連 関 を 通
図5.4
筋 収 縮 に よ る 反射 的 ス トレ ス調 節 とそ の 脳 内 情 報 伝 達 機 構 の 想 定 図18)
ン濃 度 やGCの
分 泌 増 加 が み ら れ る の で,運
レ ス と い え る(運 図5.3
負 荷 漸 増 運 動 にお け るLT強
動 ス ト レ ス).こ
ル モ ン は,GH,プ
度の運動 に対す る 血中
ホ ル モ ン分 泌 応 答18.21)
の時 分泌 され る ホ
ロ ラ ク チ ン(PRL),甲
ル モ ン(TSH),AVPな
動 もス ト
状 腺 刺激 ホ
どが あ り,い ず れ もACTH同
様
各 ス テ ー ジ の 最 後 で 採 血 した 場 合 を 想 定 す る.
下 垂 体 か ら分 泌 さ れ,視 テ ー シ ス(恒 常 性)維 持 に働 く と 考 え られ て い る.し し,コ
か
ルチ ゾー ルは慢性 的 に高 濃 度で 作用 す る場 合 は
免 疫 を 抑 制 した り,脳 に 移 行 し て,海
馬 の神経 を脱落
参 照)こ と か ら,ス こ の ほ か に,LTを
床 下 部 調 節 を 受 け る(図5.4
トレ ス 関 連 ホ ル モ ン と い え る6.21). 境 に 分 泌 増 加 す る グ ル カ ゴ ン,唯
一分泌 が低下す るイ ンス リン
,さ
ら に,LT以
40%酸
る7.18.14).海 馬 は 短 期 の 学 習 ・記 憶 を 司 る 機 能 で 知 ら
の ホ ル モ ン分 泌 が 運 動 強 度 に 依 存 して 変 化 す る.図5.
れ る が,最
3に 示 した よ う に,LTはBorg(1973)に
近 で は,視 床 下 部 を 持 続 的 に 抑 制 し,ス
レ ス 反 応 の 正 常 化 す る機 能 を も ち,末
ト
梢 の ス トレス状
素 摂 取 水 準 で 分 泌 が 増 強 す るANPな
下の
させ る な ど の マ イ ナ ス 面 も 生 じ る こ と が 指 摘 さ れ て い
ど,多
く
よる主 観的 運
動 強 度 で み る と や や 苦 し く な る 強 度 で あ り,少
しの
態 を 中 枢 に 反 映 させ る モ デ ュ ー ル の 役 割 を 果 た し て い
「さ らな る 頑 張 り」 を 必 要 とす る 強 度 に 相 当 す る.し
る と 考 え ら れ て い る.ス
た が っ て,LTと
ト レス が 身 体 に 悪 い と は こ の
よ う な 面 を い う.
は,運
動 に よ る 中 枢(視 床 下 部)の 興
奮 の た め の 閾 値 と も い え そ う で あ る18.21).表5.2に
こ
れ ま で 運 動 時 に 血 中 に 分 泌 さ れ る こ とが 報 告 さ れ て い b.運
動 ス ト レス とは?
図5.3は,運
る ホ ル モ ン につ い て ま と め た.し か し先 述 した よ う に,
動 強 度 に 依 存 して 分 泌 が 増 加 す る い く
つ か の ホ ル モ ン の 分 泌 プ ロ フ ィー ル を 示 して い る.生
ス ト レ ス ホ ル モ ン以 外 は 研 究 が 少 な く明 確 に 定 義 で き る 現 象 や 機 構 は きわ め て 少 な い.
体 に と って 運 動 は そ の 条件 に よ り異 な る刺 激 とな る が,強 準,血
度 の 点 か ら み る と お よそ50∼60%酸
5.3
運 動 ス ト レ ス と脳
中 乳 酸 で い わ ゆ る 乳 酸 性 作 業 閾 値(lactate
threshold:LT)付 拍/分
素 摂取 水
近,そ
して,心
拍 数 で は110∼130
を 超 え る 頃 か ら血 中ACTH,β-エ
ン ドル フ ィ
LT強
度 付 近 か ら み ら れ る 運 動 ス ト レ ス に 付 随 して
多 くの ホ ル モ ン分 泌 が 生 じる こ と を 述 べ た が(図5.3),
表5.2 運 動 時 の ホ ル モ ン分 泌
そ れ ら は い ず れ も視 床 下 部 神 経 に よ る 神 経 内 分 泌 調 節
運 動 ス トレ ス は,① 運 動 野 の興 奮 とそ こ か らの 指 令,
に よ る と考 え られ る.こ
こ で は,視
② 情 動(恐 い,気
動 ス ト レ ス の 要 因 と,実
際 の視 床下 部調 節 につ い て述
床 下部 を中心 に運
べ る.
持 ち よ い な ど),③
活 動 筋(脊 髄 の 運
動 神 経 とそ れ に よ り支 配 さ れ る 筋 線 維,運 ぶ)か
らの 求 心 性 神 経 イ ンパ ル ス,④
動単位とよ
運動 中 の低血糖
な ど の 代 謝 変 化(こ れ ら は 長 時 間 の 消 耗 性 運 動 に 限 ら a.運
動 ス トレス の 原 因
れ る)な ど が,い
運 動 に よ る ホ ル モ ン分 泌 機 構 に 関 す る 研 究 は,ま そ の 緒 に つ い た ば か りで あ る.な と して のACTH分
泌 は,ヒ
が な され て い る.こ なLT付
だ
か で もス トレ ス 反 応
トや 動 物 で い くつ か の 試 み
こで は比較 的長 時 間の運 動 が可 能
近 の 適 度 な 運 動 ス トレ ス の 調 節 に つ い て 考 え
て み た い.
CRHやAVP神
ず れ も最 終 的 に 視 床 下 部 に 到 達 し,
経 を 刺 激 し,下
垂 体 か ら のACTH分
泌
応 答 を引 き起 こ す こ と に よ り生 じ る と考 え られ る18.21). そ の 想 定 さ れ る 経 路 は 図5.4に
ま とめ て 示 した.こ
中 で2)の 反 射 調 節 に 関 す る も の は,実 際 に,ヒ
の
トで も ラ
ッ トで も そ れ を 示 唆 す る 証 拠 が 報 告 さ れ て い る. こ の 機 構 は,「 運 動 昇 圧 反 射 」 と し て 知 ら れ る 循 環
の 求 心 性 反 射 調 節 と類 似 し た もの で あ る15.18.21).「運
走 運 動 中 の 視 床 下 部 室 傍 核(PVN)に
動 昇 圧 反 射 」 で は,活
興 奮 を,細
動 筋 内 に あ り代 謝 や 機 械 的 刺 激
局 在す る神経 の
胞 興 奮 の マ ー カ ー と し て 有 用 なc-fos原
遺 伝 子(c-fos
が,ゆ
る18.20).こ れ は, in situハ イ ブ リ ダ イ ゼ ー シ ョ ン法 に
っ く り と し た 伝 達 速 度 で 心 臓 血 管 中 枢(延 髄 に
mRNA)の
癌
を 同 時 に 受 容 ・興 奮 す る ポ リ モ ー ダ ル 受 容 器 の 興 奮
発現 か らとらえた もので あ
あ る)に 伝 え ら れ た 結 果 生 じる こ とが わ か っ て き た.
よ る もの で,さ
こ の 筋 か ら の 求 心 性 神 経 伝 達 は,脳
る際 に一 過性 にこの遺 伝子 が核 内 で転 写 され蛋 白がつ
幹 にお い て以下 の
ま ざ ま な刺 激 に よ り神 経 細 胞 が 興 奮 す
二 つ の 分 枝 か ら ス ト レ ス 反 応 を 担 う全 身 の 二 大 調 節 系
く ら れ る こ とか ら,最 近 神 経 科 学 領 域 で 頻 繁 に 利 用 さ
を 調 節 す る.一
れ て い る9).LT強
つ は,C群
と よ ば れ る ア ド レナ リ ン 作
度 で1時 間 の 走 運 動 を行 わ せ た 際 に,
動 性 神 経 を 介 して 脊 髄 を下 降 し脊 髄 中 間 質 外 側 柱 に あ
PVNで
る 交 感 神 経 節 に 伝 え ら れ,そ
そ の 増 加 はACTHと
こ か ら心 臓 交 感 神 経 を 介
のc-fos mRNAの
発 現(黒 い 濃 染 部 分)が み られ, も相 関 す る(征 矢,1997).ま
し て 心 臓 機 能(陽 性 変 時 ・変 力 作 用)を 反 射 的 に 調 節
同 じ 条 件 で,CRHとAVPの
す る.も
比 較 し て み る と,CRHよ
う 一 つ は 脳 幹 のA1,A2,A6(青
斑 核)神 経 と
よ ば れ る ノ ル ア ド レナ リ ン 作 動 性 神 経 を 中 継 し,脳 前 方 に 向 か い,視
の
床 下 部 の ペ プ チ ド作 動 性 神 経 を 刺 激
す る こ と が 報 告 さ れ て い る.お 視 床 下 部 へ 向 か う信 号 は,視
そ ら く脳 幹 網 様 体 か ら
床 や 大 脳 基 底 核 を介 し て
辺 縁 系(扁 桃 核 や 海 馬)に も伝 達 さ れ,運
動 時の気 分 の
合 成 能 を遺 伝 子 発現 か ら り もAVPが
強 か っ た20).運
動 時 に そ の 興 奮 が 顕 著 な 部 位 はPVN以 海 馬 な ど の 大 脳 辺 縁 系,梨 が み ら れ た(他
た,
外 に は視 床 や
状 皮 質 な ど に もc-fos発 現
の 視 床 下 部 も腹 内 側 核 や 外 側 野 で も発
現 が み られ て い る).こ
れ ら は,走
運 動 ス トレス に特
異 的 な 脳 内 情 報 伝 達 に 関 わ る 部 位 と して 重 要 で あ る6).
変 化 に も影 響 を 与 え る は ず で あ る4.18). c.ス b.運
動 時 の視 床 下部 の興奮
トレ スの 新 概 念 か らみ た運 動 ス トレ スの 特 異性
ス ト レ ス 反 応 の 最 も強 力 な 刺 激 因 子 と し て は 視 床 下
で は 実 際 に運 動 時 に視 床 下 部 は 興 奮 す る の だ ろ う
部CRHが
か.図5.5は
演 ず る.こ
ラ ッ トの 走 運 動 ス トレ ス モ デ ル を用 い て,
図5.5 a:脳
前 額 断 切 片.視
あ げ られ,多
1時 間 の 走運 動 に よ る お もなc-fos
床下 部室 傍 核(PVN)に
お け る発 現(黒
色)の
くの ス ト レス で 主 要 な 役 割 を
の ほ か に,AVPやOTあ
mRNA発
増 加21.b:上
るい は血 中 カテ コ
現部位 が運 動 前,下
が 運動 後 で あ る.
ラ ミ ン な ど もCRHと 起 こ す2.3).最
協 同 し てACTH分
近,ス
泌 反 応 を引 き
トレ ス の 種 類 に応 じた こ れ ら の
ス ト レ ス で も 繰 り返 し 行 う と,CRHに
か わ っ てAVP
の 貢 献 が 強 く な る と い う 「化 学 的 ス イ ッチ ン グ仮 説 」
因 子 の 相 対 的 貢 献 度 が 異 な る こ とか らス ト レス の新 概
が 注 目 され て い る3.16.20).
念 が 生 ま れ,研
で は 運 動 ス トレ ス の 質 は 他 の ス ト レ ス と異 な る の だ
え ばACTH応
究 に お け る 実 用 性 を増 し て い る.た
答 は 定 型 的 に み ら れ て も,そ
と
の調 節 機 構
ろ うか?ラ
ッ トや ウ マ の 走 運 動 モ デ ル を 用 い て ス トレ
が 異 な れ ば ス トレ ス の 質 は 異 な る とい う もの だ2.8).
ス 反 応 にお け るCRHやAVPの
CRHは
ラ ッ トで はAVPの
も と も とACTH分
泌 促 進 因 子 と して 最 も 強
力 な ペ プ チ ド と して 同 定 さ れ,視
床下 部室 傍核 に局 在
す る 小 細 胞 系 神 経 で 合 成 さ れ る.一
方AVPは
下垂 体 後
葉 と前 葉 に 別 々 に 投 射 す る 神 経 が 同 定 さ れ て い る.後 葉 に 投 射 す る 神 経 は,室
傍核 の外 側 にあ る大細 胞神 経
関 与 がCRHよ
唆 さ れ て い る.ウ よ り もAVPが
関 与 が 検 討 さ れ て い る1.21). り も大 き い こ とが 示
マ で は 運 動 中 の ス ト レ ス 反 応 にCRH
よ く平 行 す る こ とか ら,後 者 の 関 与 を示
唆 し て い る.ヒ
トで もCRHを
あ ら か じ め 大 量 に投 与
し て お き,下 垂 体 か らのACTH応
答が 起 こ らない よ う
で 合 成 さ れ る の に 対 し,下 垂 体 門 脈 に つ な が る 正 中 隆
に して 運 動 させ,そ
起 へ 投 射 す る 神 経 は 同 じ室 傍 核 の 小 細 胞 系 に 局 在 す
を 検 討 して い る17).そ の 結 果,ス
る.ほ
こ と は な く,CRH以
と ん ど の 神 経 がCRHと
共 存 す る が,CRH/AVP
の 際 の ス ト レス 反 応 へ の 修 飾 効 果
の分 泌比 率 は ス トレスの条 件 で異 な るこ と もわか っ て
い 結 論 を 導 き出 した.こ
い る.い
CRHの
ず れ に して も,ス
小 細 胞 系 か らのCRH/AVPが 系AVPも
トレス反応 の形 成 には この 重 要 で あ る2.3.18).大 細 胞
軸 索 の 途 中 か ら正 中 隆 起,あ
前 葉 と い う ル ー トを 経 てACTH分 唆 さ れ て い る(図5.6).動
る い は後 葉 か ら
泌 を 促 す 可 能 性 も示
物 実 験 で は,拘
束 ス トレス
トレ ス 反 応 は 下 が る
外の 因子 の関与 を考 えざ るを えな の よ う に,走
運 動 ス ト レ スが
関 与 が 大 き い エ ー テ ル ス ト レス や 拘 束 ス トレ ス
と は 異 な る 機 序 で 発 現 す る こ とが,種 れ る よ う だ1.3.16).も
を越 え て 認 め ら
ち ろ ん 運 動 も 高 強 度 に な れ ば,
ホ ル モ ンの 調 節 機 構 も変 わ る可 能 性 が あ る.ス が 強 く な る とCRHの
関 与 は 高 く な る は ず で あ る.LT
や エ ー テ ル ス トレ ス な ど多 くの 強 い 身 体 的 ス ト レ ス で
以 上 の 強 度 で4週 間 ト レー ニ ン グ す る と,GCの
はCRH神
な 増 加 に加 えCRH遺
べ てCRHで
経 の 興 奮 が 優 位 と さ れ て い る18).し か し,す 説 明 で き る わ け で は な い.高
調 食塩 水 負
荷 に よ る 浸 透 圧 ス トレ ス や 侵 害 ス トレ ス な ど を繰 り返 す 際 に はAVPの
関 与 が 強 くな る1.6.18.22).ま た,拘
トレ ス
顕著
伝 子 の安 静 レベ ルで の 発 現 が増
加 す る と す る 知 見(川
島,1997)も
あ り,今 後 の 詳 細
な 検 討 が 望 まれ る.
束 d.運
動 ス トレ ス の 生 理 的 意 義:仮
説
運 動 に伴 う ス ト レ ス 反 応 が 運 動 時 の 緊 急 な 代 謝,循 環 の要 求 を満 たす ため に必 要で あ る こ とはい うまで も な い.そ
れ 以 上 に運 動 ス トレ ス が 他 の ス ト レ ス と 質 的
に異 な る こ と が い っ た い ど ん な 生 理 的 意 義 を もつ の で あ ろ う か.AVPが
脳 内 で はCRHと
(Plotsly,1984),さ
ら にAVPの
拮 抗 的 に働 く こ と
脳 内 作 用 は 学 習,記
憶
の 保 持 に 必 須 な役 割 を もつ こ とが 報 告 さ れ て い る7.18). LT強
度 付 近 の 適 当 な 運 動 ス トレ ス が 脳 内AVPを
増加
させ る こ と に よ り,認 知 機 能 を 高 め る 効 果 が 期 待 で き る か も し れ な い.そ
こ で,あ
増 加 し た 脳 内CRHを,適 のAVPを
ら か じめ 他 の ス トレ ス で
度 な運 動 ス トレス は脳 内 へ
介 して 軽 減 す る 可 能 性 が 考 え られ る.実 際 に
ラ ッ トで は 運 動 ト レー ニ ン グ が 新 奇 ス トレ ス の 反 応 を 減 弱 さ せ る,い
わ ゆ る 交 叉 適 応 の 可 能 性 を示 唆 す る 報
告 もあ り23),関 連 性 が 示 唆 さ れ る.
図5.6
ス トレス 時 の 神 経 内分 泌 機 構 の模 式 図(征 矢)
知 ら れ て い る10).エ ネ ル ギ ー 代 謝 に お い て も,ア
ス 合 成(ア 運 動 適 応 に お け る ホ ル モ ン の 貢 献,あ
ラニ
ンな どの 分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸 の 分 解 とそ れ に よ る グ ル コ ー
5.4 運 動 適 応 とホ ル モ ン 作 用
る い は ト レー
ラ ニ ン 回路)の 効 率 が 増 加 す る(Viru,1994)
と い う こ と もあ る.
ニ ン グ に よ る ホ ル モ ン分 泌 の 適 応 な ど つ い て も 研 究 は ま だ 十 分 と は い え な い.こ
こ で は,運
動 適 応 にお いて
共 通 した 重 要 な 現 象 に つ い て 述 べ る.
b.オ
ー バ ー トレ ー ニ ン グ
オ ー バ ー ト レー ニ ン グ(ス
テ イ ル ネ ス と も い う)な
ど,長 期 的 な 運 動 の や りす ぎ に よ る抑 う つ 傾 向 の 増 加, a.運
動 適 応 と ス トレ ス
高 強 度 の 運 動 を 行 う とGCの 週 間 で ピ ー ク に 達 し,そ
血 中 レ ベ ル は お よ そ4
の 後 漸 減 し,6週
うつ 病 へ の 罹 患,慢
性 疲 労 の 進 行,あ
る いは 月経異常
な どが 報 告 さ れ,こ
れ らが 運 動 ス トレ ス に 対 す る 視 床
間 後 を経 て
下 部 ‐下 垂 体‐ 副 腎 軸 の 不 適 応 に よ る と す る 見 方 が あ
も と に戻 る こ とが ヒ トで も ラ ッ トで も 報 告 さ れ て い る
る4.13.14.18.21).うつ 病 は 世 界 的 マ ラ ソ ン ラ ン ナ ー の サ
(図5.7)22).し
ラ ザ ー ル 選 手 の 例(Wischina,B,1994)に
た が っ て,短 期(お
よ そ1か
月)の
ー ニ ン グ 効 果 を 考 え る 場 合 は と く に こ のGCに 特 異 的 影 響 を 考 慮 す る 必 要 が あ る21)Lugerら ーニ ング効 果 を検 討 し
トレ
よる非 は13)ト レ
,適 度 に 行 う群 とハ ー ドに 行 う
群 と で 外 因 性 に 投 与 し たCRHに 泌 応 答 を 比 較 し て い る.血
対 す る 血 中ACTH分
中GCレ
時 間 激 し い 運 動 を 行 う ア ス リ ー トに 多
い4.13.18.21).適 応 性 うつ 病 で は,ス 伴 い,脳
幹 の ノ ル ア ドレ ナ リ ン や セ ロ トニ ンな ど,ア
泌
の低 下,自
律 神 経 や 内 分 泌 失 調 な どが 発 現 し,い わ ゆ
(北 山 ら,1994).こ
が わ か っ た.で
慢 性 的 な 増 加 に 加 え,脳
フ のCRH感
受 性(受
垂 体 の コ ル チ コ トロ ー
容 体 の 数 や 親 和 性 の 低 下 に よ る)
が 低 下 し た結 果 で あ ろ う か.そ
れ と も 増 加 したGCに
よ る フ ィ ー ドバ ッ ク に よ る も の だ ろ うか.い る か は い まだ に決 着 を み な い が,わ
ずれによ
れわ れ の知 見で は
動性
る 「適 応 性 う つ 病 」 に な る こ と が 報 告 さ れ て い る18)
応 答 は ハ ー ド ト レ ー ニ ン グ群 の ほ う が 有 意 に 低 い こ と は い っ た い,下
トレスの慢 性 化 に
ミ ン作 動 性 神 経 が 疲 弊 し,情 動 ・意 欲 の 障 害,活
ベ ル は有 意 にハー
ド ト レ ー ニ ン グ 群 で 高 い 値 を 示 し,CRH-ACTH分
う に,長
み られ るよ
さ れ て い る.脳
の 原 因 と し て,血
内CRHが
内CRHの
中GCレ
ベ ルの
慢 性 的増 加 が示 唆
過 剰 に な る とLHRH神
経が
抑 制 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る7.18.21).実 際 に 激 しい ト レー ニ ン グ を 行 い 無 月 経 に あ る女 性 に お い て,黄 体 形 成 ホ ル モ ン(LH)の
分泌 頻 度 の低 下 と分泌 総量 の 低
後 者 を支 持 す る 結 果 が 得 られ て い る18.21).
下 が 報 告 され て い る.こ
と こ ろ で,GCは
性 で も起 こ り,精 子 の 合 成 能 の 低 下 な ど に よ る 不 妊 症
先 述 し た よ う に 適 量 な ら生 理 機 能
に 必 須 な 役 割 を も つ.副
腎 の 萎 縮 が 認 め られ る 人 に 突
の よ う なLH分
泌 の 抑 制 は男
も懸 念 され る.
然 死 が 起 こ りや す い と す る 臨 床 報 告 が あ る11).副 腎 摘 出 動 物 の ラ ッ トは 運 動 の パ フ ォ ー マ ンス が 低 い こ と も
c.GHと GH分
ア ナ ボ リ ッ ク効 果 泌 は ヒ トで は お も に 入 眠 時 に 増 加 す る.ラ
ッ
トで は お よ そ3時 間 ご と に 分 泌 が 増 加 す る 超 日 リズ ム を 示 す.い
ず れ も 睡 眠 と深 い 関 係 を もつ.こ
脈 動 的 な 分 泌 は促 進 性 のGRH,抑
の よ うな
制 性 のSRIF(ソ
マ
トス タチ ン)の 相 反 す る 作 用 を もつ ペ プ チ ドに よ る 二 重 調 節 を 受 け る.ヒ 加 が み られ る が,情
トで はLT付
近 か らGH分
泌 の増
緒 的 な ス トレ ス で も 分 泌 が 増 加 す
る こ とが 知 られ て い る. 運 動 時 に 増 加 す るGH分
泌 の生 理 的意 義 は不 明 であ
る.脂 肪 分 解 作 用 は 長 時 間 を要 す る こ と か ら,お く,ト 図5.7
ヒ トの ト レー ニ ング の 経 過 に伴 う安 静 時 血 清 コ ルチ ゾ ー ル濃 度 の 変化22)
そら
レー ニ ン グ に よ っ て 血 中 の 安 静 レベ ル が 慢 性 的
に 増 加 した 時 に の み 脂 肪 分 解 作 用 が 期 待 で き る21).実 際 にLT以
上 の 強 度 で 走 ト レ ー ニ ン グ を 行 う と,ヒ
ト
よ り刺 激 さ れ たIGF-Ⅰ と の 協 同 効 果 が 期 待 で き る の は そ の た め で あ る(図5.8)19).
● 問 題 1. ホ ル モ ンを 三つ あげ,そ の 作 用 と分泌 調節 につ い て 述 べ な さい. 2. 神経 内分 泌 につ い て 説 明 しな さい. 3. 下 垂 体前 葉.中 葉,後 葉 か ら分 泌 され る ホ ルモ ン を 一 つ ず つ あ げ.そ の分 泌 機 構 と標 的 器官,な
らび に生 理
作 用 につ い て述 べ な さい. 4. ス トレス と は何 か 説 明 し,そ の 調 節 機構 につ いて 書 き な さ い. 5. 運動 ス トレスの 視床 下 部 調節 機 構 につ いて述 べ な さい. 6. 運 動 ス トレスの 生 理 的 意 義 に関 す る仮 説 を一 つ 述べ な さい. 7. オ ー バ ー ト レー ニ ン グ に よ る グル コ コルチ コ イ ドの増 加が もた らす 弊 害 につ いて 述べ な さい. 8. 成長 ホ ルモ ン分 泌 機構 と作 用 につ いて 述べ な さい.
図5.8
血 中GH,
● 参 考 文 献
IGF-Ⅰ お よ び コ ル チ ゾ ー ル 濃 度 の 日内 変
1)
Alexander,
S.
L.,
Irvine,
C.
H.
on
the
G.
and
Donald,
R.
A.:The
動 に対 す る運 動 の 修 飾 効 果 の 想 定 図 effect
of
acute
exercise
secretion
of
corticotropin-
矢 印 は運 動 に よる ホル モ ン分泌 促 進 または抑 制 効 果 を示 す.?は
releasing
確 か な デ ー タが な い こ とを 示 す.
factor,
otropin
as
arginine
measured
Endocrinology,128
で も ラ ッ トで もGH分
泌 総 量(振
2)
幅 の 増 加 に よ る)の
Antoni,
F.
トレー ニ ング
に よ る 身 体 の 適 応 に どの よ う に 作 用 す る の だ ろ う か. 一 般 に ,GHに
よ る 骨,筋
ッ ク)作 用 は,肝
へ の 蛋 白 の 同 化(ア
ナボリ
臓 で 合 成 ・分 泌 さ れ るIGF-Ⅰ
を介 し
CRF. 3)
長 促 進 のIGF-Ⅰ
る 直 接 的 作 用(成 長 促 進 のGH仮
仮 説)とGHに
よ
の貢献 機
序 な ら び に 貢 献 度 は 今 で も議 論 の 段 階 で あ る が,最 ・筋 は 他 の 臓 器 よ り もGHの
や す い と す る 報 告 が 目立 つ.と 増 加 す るGHは,運 中GCレ
直接 作 用 を受 け 7)
動 時 の 交 感 神 経 活 動 が 残 存 し,血
ベ ル も高 い の で,ど
ち らか と い う と 異 化 的 な
A.
中GCレ
骨 ・筋 の 修 復 は 行 わ れ,そ 効 果(肥
大 な ど)も
horse.
of
the
discovery
adrenocorticotropin of
41-residue
pituitary
in
ACTH
secretion
during
Neuroendocrinology(15),pp.
Dishman,
R.
depression.
K.:Exercise
Exercise
and
Sports
Sciences
the
Reveiws,
:41-98,1991. J. M.
body
and
weight
in
Galbo,
H.:Exercise
Science
Review,1
Ganong,
W.
Halaas,
K.
mammals.
L.:Leptin
and
the
regulation
Nature,395:763-770,1997.
physiology :humoral
function.
Sports
:65-93,1992. F.:Review
of
Medical
Physiology,18th
ed.,
p.
383,Appleton&Lange,1997. 8)
ベ ル が 低 下 した 夜 間 に
の 際 に蛋 白 のア ナ ボ リ ック
and of
Gibbs,
D.
secretion
作 用 が 優 先 さ れ る.血
of
Frontiers
L.
Friedman, of
近
こ ろ で 日中 の 運 動 時 に
the
:351-378,1986.
G.:Regulation stress.
Dunn,
19 5)
6)
で は,骨
control science
Rev.,7
nuerobiology
説)の い ず れ か に よ る
と考 え ら れ て き た.成 長 促 進 へ のGH/IGF-Ⅰ
from
321-350,1994. 4)
て の 間 接 的 作 用(成
Endocrine
chronic
adrenocortic-
blood
:65-72,1991.
:Advances
Aguilera,
and
venous
A.:Hypothalamic
secretion
増 加 が 報 告 さ れ て い る19.21).このGHは
vasopressin,
in pituitary
M.:Dissociation during
of
different
oxytocin
types
of
and
corticotropin
Life
Science,35 :
stress.
487-491,1984. 9)
高 ま る もの と 考 え られ る.GHは
肝 臓 だ け で な く骨 ・筋 な ど の 組 織 で のIGF-Ⅰ の 合 成,
Imaki,
T.,
Shibasaki,
expression
in
molecular
pathways
T.
the
and
Demura,
central of
H.:Regulation
nervous
stress
system
response.
of by
Endocrine
gene
stress : J.,42 :
121-130,1995.
分 泌 を 促 す が そ の タ イ ミ ン グ は12時 い わ れ る.力 ば,就
間 以上 か か る と
10)
士 の よ う に午 前 に 筋 ト レー ニ ン グ を 行 え
寝 後 に は 睡 眠 に よ る 大 量 のGHと
John-Alder, Reduced
昼 間の運 動 に
rats. 11)
川 原
H. running
Am.
B.,
McAllister,
J. Physiol.,251 貴:運
R.
endurance
動
に よ
in
M.
and
Terjung,
R.
L.:
gluconeogenesis-inhibited
R137-R142,1986. る 内 分 泌
学
的 検
討.ホ
ル モ
ン と 臨 床,
40 12)
:707-713,
Loucks,
1992.
A.
B.,
Alterations
exercise-induced
Mortola,
in
the
J.
F.,
Girton,
13)
Endocrinol.
Luger,
A.,
of
in
C.:
athletic
C.,
P.
A.,
Gold,
P.
Kyle, W.,
exercise.
N.
S.
B.,
Loriaux,
the
women.
Galluucci, D.
J.
J.
W.
L. and
T.,
Chrousos,
responses
Engl.
to
the
stress
Med.,316:1309-1315,
15)
16)
B.
S.:Protective
mediators.
N.
Engl.
Mitchell,
J.
H.:Neural
exercise.
Med.
Smoak,
release
in humans.
J.
:302-306,1991.
動 に よ る メ ン タ ル ヘ ル ス 改 善 の 生 理 学 的 基 礎,
健 康 ス ポ ー ツ の 心 理 学(竹
中 晃 二 編),pp.52-64,大
修 館,
19) 征 矢 英 昭:成 軸 の 適 応.体
長 ホ ル モ ン と 運 動‐
視 床 下 部 ‐成 長 ホ ル モ ン
育 の 科 学,44:607‐613,1994.
20) 征 矢 英 昭,酒
巻 哲 夫,吉
里 秀 雄,冨
樫 健 二,中
瀬 真 治,浜
動 ス ト レ ス は 他 の ス ト レ ス と 質 的 に 異 な る か?
I.,Soya,
mRNA depression B.,
effects
of
stress
Deuster,
in rats.
the
circulation
Hamanaka,
of
K.
P.,
Rabin,
hormone
and
Nomura, arginine
nucleus
Science,63
of
stress-
:23-31,1998. D.
is not
and sole
22) Tabata,
動 と ホ ル モ ン,新
I., Atomi,
of serum
magnocellular
paraventricular Life
during
:141-154,1990.
H.,
21) 征 矢 英 昭:運
興 交 易 医 書 出 版 部,pp
.
297-321,1996.
of
Exerc.,22
expression
Corticotropin-releasing
damaging
control Sports
S., Kitayama,
vasopressin
17)
and
J. Med.,338:171-179,1998.
Sci.
J.:Increased
induced
Metab.,73
運 動 生 化 学,6:17-29,1994.
McEwen,
Nakase,
18) 征 矢 英 昭:運
中 健 二:運
1987. 14)
adrenocorticotropin
Clin. Endocrinol.
1998.
hypothalamic-pituitary
treadmill
S.S.
Metab.,68:402-411,1989.
L.
G.P.:Acute
Yen,
and
axes
Deuster,
Montgomery,
and
hypothalamic-pituitary-ovarian
hypothalamic-pituiary-adrenal Clin.
L.
Chrousos, factor
intensity
G.:
physical
Miyashita,
concentration training
M.:Bi-phasic in the
morning
Horm.
Metab.
in man.
changes duringRes.,21:
218-219,1989. 23) Watanabe, and
mediating
Y. and
cortisol
responses Appl.
T., Morimoto,
Murakami,
in rats
Physiol.,73
A., Sakata,
N.:Running to swimming :2452-2456,1992.
Y., Tan,
training and
N., Morimoto,
attenates
cage-switch
K.
the ACTH stress. J.
6 運 動 時 の糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質代 謝 とホル モ ン作 用
生 物 は 体 外 か ら摂 取 した 栄 養 素 を 素 材 に し て体 成 分 を 合 成 し,そ れ を 分 解 す る こ とで 生 命 活 動 の た め の エ ネ ル ギ ー を 得 て い る.前 代 謝(metabolism)と
は,そ
者 を 同 化(anabolism),後
者 を異 化(catabolism)と
よ ぶ.
れ ら の 過 程 で 起 こ る す べ て の 化 学 変 化 とエ ネ ル ギ ー 変 換 を 意 味 し
て い る. 筋 運 動 はATPが
加 水 分 解 さ れ る 際 に 生 じる エ ネ ル ギ ー を 必 要 と す る が , 筋 内 のATPは
に 限 りが あ る.し
た が っ て,実
際 に 運 動 が 行 わ れ る た め に は,ATPが
量的
消 費 され る一方 で産 生
も同 時 に な さ れ な け れ ば な ら な い.そ れ で は,貯 蔵 エ ネ ル ギ ー 源 で あ る糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 は, ATPを
産 生 す る た め に どの よ う な 過 程 を た ど る の で あ ろ うか?
本 講 で は 運 動 時 の エ ネ ルギ ー 供 給 と い う視 点 か ら糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 を と らえ,そ
れ らの 調
節 系 と して の ホ ル モ ン の 生 理 作 用 に つ い て 述 べ る こ と に す る.
ルCoAに
6.1 糖 質 代 謝 の 概 要
な りTCA回
る過 程 でNADH2な
路 に 入 っ て い く.こ
の 回路 を回
どの 補 酵 素 が 生 じ,そ
れ らが 電 子
伝 達 系 に 渡 さ れ て 酸 化 さ れ,H2Oが 糖 質 代 謝(carbohydrate に 示 す.糖
metabolism)の
概 要 を 図6.1
ATPが
産 生 され る.こ
生 じる と同 時 に
れ を 酸 化 的 リ ン酸 化 と よぶ.
質 は お も に で ん ぷ ん(多 糖 類 の 一 種)の 形
で 摂 取 され,消
化 に よ り グ ル コ ー ス,フ
ル ク トー ス な
ど の 単 糖 類 に分 解 さ れ た 後,吸
収 され る.こ
臓 で グ ル コ ー ス に 変 換 され,一
部 は多糖 類 であ る グ リ
コ ー ゲ ン と して 貯 蔵 さ れ る.ま
た 他 の 一 部 は,そ
ま血 液 に 入 る.こ
れ ら は肝
のま
の 血 中 グ ル コー ス を血 糖 と よ ぶ.糖
質 の も う一 つ の 貯 蔵 形 態 で あ る 筋 グ リ コ ‐ ゲ ン は,血 糖 が 筋 肉 に取 り込 ま れ 合 成 さ れ た もの で あ る. 糖 質 代 謝 に お い てATPを
産 生 す る 過 程 は,概
に は 二 つ に 分 け て 考 え る こ と が で きる.一 程 で あ る.グ
つ は解 糖過
ル コ ー ス あ る い は グ リ コ ーゲ ンが い くつ
もの 段 階 を経 て,ピ さす.こ
念的
ル ビ ン酸 に ま で 分 解 さ れ る 過 程 を
の 過 程 の 生 理 的 意 義 の 一 つ は,無
下 で も 糖 質 の 分 解 が 起 こ りATPを
酸 素 的条件
産 生 で き る こ とで
あ る.二
つ 目 の 過 程 はTCA回
あ る.グ
ル コー ス や グ リ コ ‐ ゲ ン が 有 酸 素 的 条 件 下 で
解 糖 され る時,ピ
路 お よび電 子伝 達系 で
ル ビ ン酸 が さ ら に 酸 化 され て ア セ チ
図6.1 糖 質 代 謝 と蛋 白 質代 謝 の概 要(大 森)
れ,血
6.2 脂 質 代 謝 の概 要
中 に 放 出 さ れ る.ま
の 一 部 は血 中 でFFAに
た カ イ ロ ミ ク ロ ン 中 のTG
分 解 さ れ る.そ
骨 格 筋 な ど に 取 り込 ま れ て 再 びTGの 脂 質 代 謝(lipid metabolism)の
概 要 を 図6.2に
示 す.
摂 取 さ れ た ト リ グ リセ リ ド(triglyceride:TG)は さ れ,大
消化
部 分 が モ ノ グ リ セ リ ドと 遊 離 脂 肪 酸(free
fatty acid:FFA)と
に 分 解 され る.そ
細 胞 内 で 再 びTGに た め,表
の 後,小
合 成 さ れ る.TGは
腸 上皮
り,エ
れ ら のFFAは 形 で貯 蔵 され た
ネ ル ギ ー 源 と して 利 用 さ れ た りす る.利
る 場 合 は,FFAは る 過 程 と,さ
用 され
β 酸 化 を受 け て ア セ チ ルCoAを
ら にTCA回
生 じ
路 を回 る 過程 にお い て電 子
伝 達 系 に よ り完 全 酸 化 されATPが
生 じ る.
水 に不溶 で あ る
6.3 蛋 白 質代 謝 の概 要
面 を蛋 白質 で 覆わ れた 親水性 の カ イロ ミク ロ
ン に 含 ま れ る形 で 血 行 内 に 入 っ て い く. リ ポ 蛋 白 質(lipoprotein)は あ る.脂
質 と し てTGや
ど を 含 み,そ る.比
蛋 白 質 と脂 質 の 複 合 体 で
コ レ ス テ ロ ー ル,リ
ン脂 質 な
れ らの 輸 送 体 と し て の 役 割 を 果 た して い
重 に よ り カ イ ロ ミ ク ロ ン,VLDL(very
density
lipoprotein),LDL(low
HDL(high 肝 臓,心
density 筋,骨
density lipoprotein),
lipoprotein)な
格 筋 な ど で はTGが
ど に分 類 さ れ る. リポ 蛋 白質 の形 を
と っ て い る の で 貯 蔵 量 に 限 界 が あ る.そ 織 はTGを
low
の 点,脂
肪組
そ の 形 の ま ま で 蓄 え る こ と が で き る た め,
蛋 白 質代 謝(protein す.食
metabolism)の
概 要 を 図6.1に 示
物 と して 摂 取 され た 蛋 白 質 は 消 化 さ れ,ア
酸 に 分 解 さ れ た 後,小
腸 よ り吸 収 さ れ る.ア
ミノ
ミ ノ酸 の
大 部 分 は 各 組 織 に お い て 再 び 蛋 白 質 に 合 成 さ れ る が, 一 部 は 遊 離 した 状 態 で 存 在 す る ル と よ ぶ.ア
.こ れ を ア ミ ノ酸 プ ー
ミ ノ 酸 プ ー ル は 約80%が
は 血 液 お よ び 肝 臓 に 存 在 す る.筋 40%を
占 め る た め,蛋
骨 格 筋,残
り
肉 は 体 重 の35∼
白 質 の 貯 蔵 庫 と して も 大 き く貢
献 して い る.
量 的 に み て も主 要 な 貯 蔵 庫 とな っ て い る.
20種 類 の ア ミノ 酸 の 中 で,ロ
脂 質 代 謝 に お い て,直
バ リ ン は炭 素 鎖 が 分 岐 して い る た め 分 岐 鎖 ア ミ ノ 酸 と
接 的 なエ ネル ギー源 と して骨
格 筋 な ど で 酸 化 さ れ る の は お も にFFAで 形 態 と して はTGの 織,骨
格 筋,血
あ る.貯
蔵の
よ ば れ て お り,筋 肉 に 取 り込 ま れ て エ ネ ル ギ ー 源 と し
形 を と り,そ の プ ー ル は,脂
肪組
て 利 用 され る 点 で 重 要 で あ る.ま
液 な ど に あ る.図6.2に
脂 肪 組 織 のTGは
イ シ ン,イ ソ ロ イ シ ン,
示 す よ う に,
代 謝 的 需 要 に 応 じ てFFAに
分解 さ
た,ア
ラ ニ ンは 後 述
す る よ う に 糖 新 生(gluconeogenesis)の
基 質 と し て重
要 な役 割 を 担 っ て い る.
6.4
糖 質 ・脂 質
・蛋 白 質 代 謝 の 相 互 補 完 関 係
糖 質 ・脂 質 ・蛋 白 質 代 謝 は,そ 作 用 して い る わ け で は な い.こ (homeostasis)の
れ ぞ れ 全 く独 立 し て
こ で は,生
体 の恒 常性
維 持 とい う視 点 で 三 者 の 相 互 補 完 関
係 を述 べ る こ と に す る.生
命 の 中 枢 で あ る 脳 は 通 常,
血 糖 の み を エ ネ ル ギ ー 源 と し て い る.し 糖 値 を 正 常 範 囲 に維 持 す る こ と は,生
た が っ て,血
体 に と っ て きわ
め て 重 要 な 仕 事 で あ る. 血 糖 値 は 早 朝 空 腹 時 で80∼100mg/dl程 が,糖
度である
質 の 豊 富 な 食 事 の 後 な ど で は130∼140mg/dl
程 度 に 上 昇 す る.増 加 し た 血 糖 は 骨 格 筋 な どの 組 織 に 取 り込 ま れ,エ
ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ た り,グ
コ ‐ ゲ ン と して 蓄 え られ た りす る.そ も と の 値 に 戻 る.も
し こ の 時,肝
の 結 果,血
リ
糖は
臓 や 骨 格 筋 な どで の
利 用 や 貯 蔵 の 限 界 を 超 え て 糖 質 が 過 剰 に 摂 取 され た 場 図6.2 脂 質 代 謝 の 概 要(大 森)
合 は,余
分 の糖 質 は 中 性 脂 肪(お も にTG)に
変 換 され,
脂 肪 組 織 に 貯 蔵 さ れ る こ とに な る.
し な が ら 脂 質 を 筋 内TGと
逆 に,絶
る と,中
食 時 な ど で は 血 糖 値 は60mg/dl以
で 低 下 す る こ とが あ る.こ
下にま
の よ う な 状 態 が 進 む と,肝
グ リ コ ー ゲ ン の 分 解 に よ る 血 糖 の 補 充 と,さ
らにそれ
血 中FFAと
程 度 の 強 度 で 筋 内TGへ
な っ た.近
年,持
に分 けて観 察す
の 依存 度 が最 も高 く
久 性 トレ ー ニ ン グ に よ り もた ら され
た 脂 質 代 謝 亢 進 の 中 身 が,脂
肪 細 胞TG由
を補 う た め に糖 新 生 が 起 こ る.糖 新 生 系 の 一 つ と して,
は な く筋 内TG由
ある こ とが明 らか になっ
グ ル コ ー ス ‐ア ラ ニ ン 回 路(図6.1)が
て き て い る こ と11)と も 考 え 合 わ せ る と,従 来 以 上 に 筋
あ る.骨
格 筋蛋
来 のFFAで
来 のFFAで
白 質 由 来 の ア ミ ノ酸(分 岐 鎖 ア ミ ノ酸 な ど)が 分 解 さ
内TGの
れ,そ
酸 素 の需 給 バ ラ ンスが 定常 状態 に あ る中強 度以 下の
の 際 生 じ る ア ミ ノ 基(NH4-)と
解糖 系 の 代 謝産
重 要 性 を 再 認 識 す る必 要 が あ ろ う.
物 で あ る ピル ビ ン酸 と が結 合 して ア ラニ ンを形 成 す
有 酸 素 的 運 動 中 で あ っ て も,時
る.ア
れ る エ ネ ル ギ ー 源 は 異 な っ て くる.図6.4はFelig4)が
ラ ニ ン は 血 液 を 介 して 肝 臓 に 取 り込 ま れ,そ
こ
で 脱 ア ミ ノ(ア ミ ノ基 が 離 れ る こ と)さ れ て ピ ル ビ ン酸
示 し た 模 式 図 で あ る.最
に な りグ ル コ ー ス に ま で 合 成 さ れ,血
た,骨
初 の10分
間 ぐらい を ピー ク
液 を 介 して 再 び
に筋 グ リ コ ー ゲ ン 分 解 の 寄 与 率 が 非 常 に 大 き くな っ て
れ を グ ル コ ー ス ‐ア ラ
い く.こ れ は 定 常 状 態 の 成 立 す る 運 動 で も,そ の 初 期
格 筋 な ど で 解 糖 に よ り生 じ
には骨格 筋 な どで の酸 素需 要 に呼 吸循 環系 の適 応が 間
骨 格 筋 に取 り込 ま れ て い く.こ ニ ン同 路 と よぶ.ま
間的 局面 に よって 使わ
た 乳 酸 が 血 液 を経 て 肝 臓 に取 り込 ま れ,解
糖 過 程 を逆
に合 わ な い た め で あ る.そ
の た め,ま
ず筋 グリ コーゲ
行 して グ ル コ ー ス に ま で 再 合 成 され る の も糖 新 生 経 路
ン の 無 酸 素 的 分 解 が 先 行 す る と解 釈 で き よ う.こ の 局
の 一つ(コ
面 を 過 ぎ る と,急 速 に筋 グ リ コ ー ゲ ン の 寄 与 率 が 低 下
リ 回 路)で あ る.
さ ら に,脂
質代 謝 にお いて もこの ような補 完 シ ステ
ム が 存 在 す る.絶 血 中FFAが
食 時 に は 脂 肪 分 解 が よ り促 進 され,
上 昇 す る.こ
過 程 に お い て,あ す)と し て,肝
のFFAを
れ に 代 わ り,血 中FFAと
血糖 の骨 格筋へ
動 が1∼2時
間 を超 え
前 駆 体(一 連 の 代 謝
る物 質 よ り前 の 段 階 に あ る 物 質 を さ
臓 で ケ ト ン体(脂 質 の 一 種)が 産 生 さ れ
る(図6.2).絶
食 が 長 期(1日
以 上)に わ た り,血 糖 の
供 給 が 不 足 して く る状 況 で は,ケ ま れ,代
して く る.そ
の 取 り込 み が 上 昇 し て くる.運
ト ン体 が 脳 に 取 り込
替 的 に非 常 時 の エ ネ ル ギ ー 源 と し て 利 用 さ れ
る よ う に な る.
6.5
a.運
運 動 時 の 代 謝 とホル モ ン作 用
動時 の代 謝
運 動 を生 理 学 的 に と ら え る 時,強 度,形
態(走 る,泳
度,持
続 時 間,頻
ぐ,自 転 車 を こ ぐ な ど)な ど を考
慮 す る 必 要 が あ る.こ
こで は,運
図6.3 運 動 強 度 とエ ネル ギ ー 供 給 源13)
動 の 強 度 ・時 間 と代
謝 との 関 係 に つ い て 述 べ る. 強 度 に は 絶 対 的 運 動 強 度 と相 対 的 運 動 強 度 とが あ る.前
者 はた とえば物理 的 な 身体移 動 速度 や挙 上 重量
な ど を さす.後
者 はそ れ らを各 自の体 力や 体格 で 補正
し た も の で あ り,い わ ば 各 自 に と っ て の 生 体 負 担 度 を 表 して い る.全
身 運 動 の 相 対 的 強 度 の 一 つ と して 用 い
られ て い る%Vo2maxと エ ネ ル ギ ー 供 給 源 との 関 係 を 図6. 3に 示 し た,脂
質 と糖 質 に 大 別 して み る と,運
動 強度
が 低 い 場 合 は 脂 質 へ の 依 存 度 が 高 く,運 動 強 度 が 高 い 場 合 に は糖 質 へ よ り依 存 し て い る こ とが わ か る.し
か
図6.4 運 動 時 間 の 経 過 に伴 う エ ネ ル ギ ー 源 の 推 移4)
る と,血 糖 へ の 依 存 度 が 低 下 す る一 方 でFFAへ 度 が 上 昇 し て くる.こ
れ は,血
の依 存
糖 の供給 源 であ る肝 グ
リ コ ー ゲ ン が 枯 渇 して くる た め で あ る1).こ の よ う な 運 動 時 間 の 延 長 に 伴 い,肝
臓 で の 糖 新 生 も亢 進 して い
く3).貯 蔵 量 的 に 限 界 が あ る糖 質 に比 べ て 脂 質 の 貯 蔵 量 は は る か に 多 い.運
動 の 後 半 に な っ てFFAの
が 増 大 して くる 理 由 は こ こ に あ る.ま
貢 献率
た,FFAを
前駆
体 とす る ケ ト ン体 も長 時 間 運 動 で は 血 中 濃 度 を 上 昇 さ せ12),エ ネ ル ギ ー 源 と して 使 わ れ る よ う に な る.絶 時 な ど で は,糖
食
質 ・脂 質 ・蛋 白 質 代 謝 が 相 互 補 完 的 に
作 用 す る こ と は す で に 述 べ た が,運
動 が長 時 間 にわた
る よ う な 時 に も同 様 な 機 構 が 働 く もの と考 え ら れ る. 運 動 の初 期以 外 は筋 グ リコー ゲ ンの量 的関与 は大 き く な い が,運
動 持 続 中 は 少 量 の 筋 グ リ コ ー ゲ ンが 利 用 さ
れ 続 け る.こ
の 筋 グ リ コ ー ゲ ン の 枯 渇 が 疲 労 困憊 を も
た らす と さ れ て い る4).
b.ホ
ル モ ン作 用
生 体 は,体
内や 体外 の環 境 変化 や刺 激 に対 して諸器
官 組 織 が 互 い に 情 報 を 交 換 し調 整 し合 う こ と で,常
に
内 部 の 機 能 を 正 常 な状 態 に 維 持 す る機 構 を 備 え て い る.こ
の 調 節 機構 は 自律 神 経 系(autonomic
system)に
図6.5
nervous
肝 グ リ コー ゲ ン分 解 にお け る ア ド レナ リン の 作 用 メ カ ニ ズ ム(大 森)
よ る 神 経 性 協 関 と ホ ル モ ンに よ る 液 性 協 関
の 二 つ に 大 別 さ れ る が,両 い る わ け で は な く,そ
者 は 全 く独 立 して 機 能 して
の 間 に は 緊 密 な連 絡 関 係 が 存 在
生 じ,最 終 的 に グ ル コ ー ス が 血 中 に 放 出 さ れ る こ とに な る.
す る. ホ ル モ ン の 定 義 や 分 泌 メ カ ニ ズ ム につ い て は 第5講
c.運 動 時 の ホ ル モ ン 分 泌 と生 理 作 用
に 委 ね る こ と に して,こ
こ こ で は 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 供 給 を主 眼 に お い て,
こで は生理 的需 要 に呼応 して
分 泌 さ れ た ホ ル モ ンが,特
有 の 標 的 細 胞 に到 達 して か
そ れ に 関 与 す る ホ ル モ ン を取 り上 げ,そ
ら生 理 作 用 を発 現 す る ま で の メ カ ニ ズ ム に つ い て 概 説
作 用 に つ い て 述 べ る.
す る(図6.5).
1)カ
た と え ば,運
動 時 の エ ネ ル ギ ー 基 質 と して 血 糖 の 上
昇 が 必 要 と され る時,副 泌 さ れ る.ア
腎 髄 質 か ら ア ド レナ リ ン が 分
ドレ ナ リ ン は血 液 を 介 し て 肝 臓 に 到 達 し,
の分 泌 と生理
テ コ ールア ミン
カ テ コ ー ル 核 を も つ 生 体 ア ミ ン,す リ ン(エ ピ ネ フ リ ン),ノ フ リ ン),ド
なわ ちア ドレナ
ル ア ド レ ナ リ ン(ノ ル エ ピ ネ
ー パ ミンを 総称 して カ テ コー ルア ミ ンと
細 胞 膜上 の ア ドレナ リ ンに特 異 的 な受 容 体 に結 合 す
よ ぶ.ア
る.ア
ド レ ナ リ ン と 受 容 体 の 複 合 体 はG蛋
副 腎 髄 質 か ら循 環 血 中 に 分 泌 さ れ る ホ ル モ ンで あ る.
し,さ
ら にG蛋
白 質 と結 合
白 質 の 作 用 を介 し て ア デ ニ ル 酸 シ ク ラ
ー ゼ が 活 性 化 さ れ る .そ の こ と に よ ってATPか
らサ イ
ク リ ッ クAMP(cAMP)が
合 成 さ れ,プ
ー ゼAが
き続 い て ホ ス ホ リ ラー ゼ キ
活 性 化 さ れ る .引
ナ ー ゼa,さ
ロテ イ ンキナ
ら に ホ ス ホ リ ラ ー ゼaが 生 じ る.ホ
スホ
ドレ ナ リ ン は 交 感 神 経 系 の 支 配 を 受 け て い る
ノ ル ア ド レナ リ ン は 心 臓,肝
臓,膵
臓 な ど 多 くの 効 果
器 を 支 配 す る 交 感 神 経 の 終 末 か ら分 泌 され る 神 経 伝 達 物 質 で あ り,一 部,循
環 血 中 に 放 出 さ れ る ホ ル モ ンで
もあ る. 運 動 の 開 始 に よ り視 床 下 部 が 刺 激 さ れ 交 感 神 経 系 の
リ ラー ゼaの 作 用 に よ っ て グ リ コ ー ゲ ンが グ ル コ ー ス
活 動 が 亢 進 す る.そ
1-リ ン酸 に 分 解 さ れ,さ
さ れ た ア ド レ ナ リ ン は肝 グ リ コ ー ゲ ン分 解 を 促 し,血
ら に グ ル コ ー ス6-リ
ン酸 を
の 作 用 を 受 け て 副 腎 髄 質 か ら分 泌
図6.6 走 行 運 動 の 強 度(%Vo2max)と
糖 の 上 昇 を は か る.骨 解 糖 が 促 進 さ れ,同
血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン濃 度5
格 筋 で は 筋 グ リ コ ーゲ ン分 解 と
時 に 肝 臓 に お け る糖 新 生 系 が 亢 進
す る.脂
肪 組 織 に お い て も ま た 脂 肪 分 解 を 亢 進 させ る
結 果,血
中FFAが
上 昇 す る.い ず れ に せ よ,運 動 を 遂
行 す る た め に 必 然 的 に 高 ま る エ ネ ル ギ ー 需 要 に 対 して 代 謝 を亢 進 させ る こ とが ア ドレナ リ ンの 生 理 的 意 義 の 一つ で あ る . 血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン 濃 度 は,運 も に 上 昇 す る(図6.6).高 ル ア ミ ン の 上 昇 は,筋
動 強 度の増 加 とと
強 度 運 動 時 の 血 中 カテ コー グ リコー ゲ ン分解 な らびに解 糖
の 促 進 に 関 与 す る も の と 思 わ れ る.一 (た と え ば60%Vo2max)で
方,一
定の 強度
運 動 を続 け た 場 合,運
動 時間
の 経 過 と と も に 血 中 エ ネ ル ギ ー 源 の 中 に 占 め るFFAの 寄 与 率 は 増 大 す る(図6.4)が,こ
う した局面 にお いて
は カ テ コ ー ル ア ミ ン が 脂 肪 分 解 促 進 に 大 き く関 与 して い る の で あ ろ う. と こ ろ で トレ ー ニ ン グ を積 む と,絶 対 的 運 動 強 度 が 同 一 の 場 合,血
中 カ テ コ ー ル ア ミ ンの 上 昇 は 小 さ く な 図6.7
る.こ
れ は 一 つ に は,ト
強 度(%Vo2max)が
レ ー ニ ン グ に よ り相 対 的 運 動
低 下 し た た め と 考 え られ る.さ
長 時 間 運 動 中 の 血 中 グ ル コー ス,グ ゴ ン,イ ン ス リ ン の変 動5)
ルカ
ら
に%Vo2maxを 同 一 に した 場 合 で も,鍛 練 者 の 方 が 血 中 カ
ー ル ア ミ ン ,ソ マ トス タ チ ン(中 枢 神 経 系,消
テ コ ー ル ア ミ ン 濃 度 上 昇 は 小 さ い と い わ れ て い る16).
膵 臓 な ど か ら分 泌 され る ホ ル モ ン)な どが あ る.
トレー ニ ン グ に よ り運 動 時 の 血 中 カ テ コ ー ル ア ミ ン の
図6.4に
上 昇 度 は 抑 制 さ れ る に もか か わ らず,代
謝 は よ り亢 進
す る16). 2)イ
み ら れ る よ う に,運 動 時 に は 骨 格 筋 へ の血
糖 の 取 り込 み が 増 大 し,エ ネ ル ギ ー 源 と し て の 利 用 が 高 ま る.こ
の 時,血
糖 取 り込 み 作 用 を もつ イ ンス リ ン
の 血 中濃 度 が 高 くな っ て も よ さ そ う な も の で あ る.し
ンス リン
イ ンス リ ン は 膵 臓 か ら分 泌 さ れ る ポ リペ プ チ ドホ ル モ ンで あ る.分
化 器 系,
泌 を 促 進 す る 刺 激 と し て は,食 事 な ど
に よ る 血 糖 の 上 昇 が 代 表 的 な もの で あ る.分 イ ン ス リ ン は 骨 格 筋,心 取 り込 み を 促 進 し,そ
筋,脂
泌 され た
肪 組 織 な どへ の 血 糖 の
の 結 果,血
糖 が 低 下 す る.血 糖
の低 下 が さ らに 進 む と イ ン ス リ ン分 泌 は 抑 制 さ れ る.
か し な が ら,運 動 時 の 血 中 イ ンス リ ン レベ ル は 低 下 す る(図6.7).低
下 す る の は,運 動 に よ っ て 増 加 した カ
テ コ ー ル ア ミ ンが イ ンス リ ン 分 泌 を 抑 制 して い る か ら で あ る.運
動 時 に 血 中 イ ンス リ ン レベ ル が 低 下 す る に
も か か わ らず 血 糖 の 取 り 込 み が 増 加 す る 理 由 と し て, 骨 格 筋 に お け る イ ン ス リ ン感 受 性 が 増 加 す る(イ
そ の ほ か に イ ン ス リ ン分 泌 を 促 進 す る 因 子 と し て は,
リ ン の 効 きが 良 くな る)こ
FFA,ケ
が イ ンス リ ン と は 無 関 係 に 血 糖 の 取 り込 み を 亢 進 させ
一方
,イ
ト ン体,ピ
ル ビ ン酸,グ
ル カ ゴ ン な ど が あ る.
ン ス リ ン分 泌 を 抑 制 す る 因 子 と し て は カ テ コ
と や,骨
ンス
る こ と な どが 明 らか に な っ て い る7).
格 筋 収 縮 そ の もの
図6.8 糖 輸 送 体(GLUT4)に
と こ ろ で,グ
よる 糖 取 り込 み メ カ ニ ズ ム(樋 口 ら,19967)を
ル コー スは親水 性 であ る ため脂 質 二重
膜 で あ る 細 胞 膜 を そ の ま ま で は 通 過 で き な い.グ
ルコ
す で に 述 べ た が,運
改 変)
動 時 の イ ンス リ ン低 下(す な わ ち
脂 肪 分 解 抑 制 が 緩 和 さ れ る)は そ う い っ た カ テ コ ー ル
ー ス は グ ル コー ス トラ ン ス ポ ー タ ー と よ ば れ る 輸 送 体
ア ミ ンの 作 用 と 協 同 す る も の と思 わ れ る.ト
を 介 し て,促
グ に よ っ て 運 動 時 の イ ン ス リ ン分 泌 低 下 の 度 合 い は 減
る.複
進 拡 散 的 に 細 胞 内 に 取 り込 ま れ る の で あ
数 の サ ブ タ イ プ の う ち,骨
格 筋や 脂肪 組 織 に存
在 す る の が グ ル コ ー ス トラ ン ス ポ ー タ ー4(GLUT で あ る.図6.8に
4)
血 糖 取 り込 み の メ カ ニ ズ ム を示 した.
ま ず イ ン ス リ ンが 細 胞 膜 上 の 受 容 体 に 結 合 し,細 胞 内 に あ るGLUT4の
プ ー ル にそ の シ グ ナ ル が 伝 達 さ れ る.
次 に そ れ を 感 知 し たGLUT4が
細 胞 膜 へ と 移 動(ト
ン ス ロ ケ ー シ ョ ン)し て くる.GLUT4は し融 合 さ れ,こ
ラ
細 胞 膜 と結 合
の状 態 に な っ て は じ め て グ ル コ ー ス が
輸 送 さ れ る.GLUT4は
その 後再 び細 胞 内 プ ー ルへ と
弱 し,逆 3)グ
レーニ ン
に 分 泌 上 昇 を 示 す こ と す ら あ る16). ル カゴ ン
グ ル カ ゴ ン は 膵 臓 か ら分 泌 さ れ る ポ リペ プ チ ドホ ル モ ンで あ る.主
要 な 分 泌 刺 激 は 低 血 糖,カ
ミ ン な どで あ る.グ
ル カ ゴ ン は,肝
テ コー ル ア
臓 で の グ リコー ゲ
ン の 分 解 や 糖 新 生 を 亢 進 さ せ る こ と に よ り血 糖 を 上 昇 させ る作 用 を も つ.ま
た,脂
肪組 織 で の脂肪 分解 や肝
臓 で の ケ ト ン体 産 生 も グ ル カ ゴ ンの 生 理 作 用 で あ る. 逆 に 血 中 の グ ル コ ー ス,FFA,ケ
ト ン体 な どの 濃 度 が
移 動 し,一 連 の 流 れ が 完 結 す る7).持 久 的 な ト レ ー ニ
高 い と グ ル カ ゴ ン の 分 泌 は 低 下 す る.
ン グ を す る と,そ
運 動 時 間 が 長 時 間 に 及 ぶ と血 糖 値 が 徐 々 に 低 下 して
み でGLUT4含
の トレ ー ニ ン グ に 関与 す る骨 格 筋 の
量 が 増 加 す る.こ
グ に よ るGLUT4含
の こ と は トレ ー ニ ン
量 の増 加 が筋 活 動 の刺 激 に よる も
の で あ る こ と を 示 し て い る8).ま
た,こ
の トレ ー ニ ン
く る.一
方,血
(図6.7).こ
中 グル カ ゴ ン レベ ル は 上 昇 をみ せ る
の よ う な 時,体
内 に ブ ドウ 糖 を 注 入 す る
と血 糖 値 は 上 昇 す る 反 面,血
中 グ ル カ ゴ ン レベ ル は低
グ 効 果 に は イ ン ス リ ン の 働 き は必 須 で は な い こ と9)も
下 す る16).し た が っ て,長
わ か っ て い る.
ゴ ン の 生 理 的 意 義 の 一 つ は,筋
時間 運動 時 に お け るグ ル カ 収 縮 のエ ネルギ ー源 と
イ ン ス リ ン は 血 糖 取 り込 み 作 用 の ほ か に 脂 肪 組 織 に
して 利 用 さ れ た た め に 低 下 した 血 糖 レベ ル を,肝
お け る 脂 肪 分 解 抑 制 作 用 を も っ て い る.運
動 時 にカ テ
の グ リ コ ー ゲ ン分 解 な ら び に糖 新 生 を 促 す こ と で 補 お
臓で
コ ー ル ア ミ ンの 作 用 に よ り脂 肪 分 解 が 亢 進 す る こ と は
う とす る と こ ろ に あ ろ う.持 続 的 ト レー ニ ン グ を 積 む
と 同 じ 強 度 の 運 動 を 負 荷 さ れ た 時 の グ ル カ ゴ ン分 泌 が
FFA,コ
減 弱 す る と い う点 で,カ
下 す る.エ
テ コー ル ア ミ ンや イ ンス リ ン
ル チ ゾ ー ル,GHの
増 加 な ど に よ り分 泌 が 低
ネ ル ギ ー 供 給 面 か らみ た 生 理 作 用 は,脂
肪
の 場 合 と 同 様 で あ る.
分 解 亢 進,骨
4)グ
下 や グ ル コ ー ス 酸 化 の 抑 制 に よ る 血 糖 上 昇 作 用,肝 臓
ル ココル チ コイ ド
グ ル コ コ ル チ コ イ ドは 副 腎 皮 質 か ら分 泌 さ れ る ス テ ロ イ ドホ ル モ ンの 中 で,糖 ド(コ ル チ ゾ ー ル,コ ど)な
質代 謝 に関係 す る ステ ロ イ
ル チ コ ス テ ロ ン,コ
ど の 総 称 で あ る.体
(寒 冷,疲
労,精
ルチ ゾ ンな
内 外 か らの ス トレ ッサ ー
神 的 負 荷,運
動 な ど さ ま ざ ま な も の)
格 筋 な ど にお け る イ ン ス リ ン感 受性 の低
で の ケ トン体 産 生 促 進 な ど で あ る. 血 中GHは50%Vo2max以
上 の 強 度 で 上 昇 す る とい う報
告 が あ り15),そ の 上 昇 度 は 強 度 依 存 性 で あ る16).マ ラ ソ ン の よ う な 長 時 間 運 動 で は,一
度 上 昇 し た 血 中GH
が し だ い に 低 下 し,安 静 時 レベ ル 程 度 に 回 復 す る と も
が 視 床 下 部 を刺 激 し,視 床 下 部 か ら副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル
い わ れ て い る16).他 の ホ ル モ ン と 同 様 に,ト
モ ン 放 出 ホ ル モ ン(corticotropin-releasing
グ 後 で は 運 動 時 のGH応
CRH)が
下 垂 体 門 脈 中 に 放 出 され,次
hormon:
い で,下
垂体 前
レー ニ ン
答 は 減 弱 す る6).GHの
用 と して 脂 肪 分 解 の 促 進 を 先 に あ げ た が,そ
生理作 の作用 発
葉 か ら血 中 に 副 腎 皮 質 刺 激 ホ ル モ ン(adrenocortico-
現 が ピー クに達 す る まで には長 い 時 間が かか る といわ
tropic hormone:ACTH)が
れ て い る.ヒ
放 出 さ れ る.こ
のACTH
トにGHを
投 与 し た 実 験 で は 約4時
の 刺 激 に よ り副 腎 皮 質 か ら グ ル コ コ ル チ コ イ ドが 分 泌
い う 報 告 が あ る10)こ と を 考 え る と,運
さ れ る.グ
ル コ コ ル チ コ イ ドは そ の 分 泌 量 を 調 節 す る
員 にGHが
た め に,視
床 下 部 や 下 垂 体 に 働 きか け てACTH分
も 後 半 か らで あ ろ う10).ま た 一 方 で,そ
泌 を
寄 与 す る の は か な り の 長 時 間 運 動 の,し
低 下 させ る と い う負 の フ ィ ー ドバ ッ ク機 構 を も っ て い
間 の 長 さ ゆ え,運
る.エ
で は な い3.14)と も考 え られ て い る.
ネ ル ギ ー 供 給 に 関 係 す る 生 理 作 用 と し て,肝
臓
間と
動 時 のFFA動
動 時 のGH上
か
の作 用発 現 時
昇 は脂肪 分解 には重要
に お け る 糖 新 生 の 亢 進 と骨 格 筋 な ど で の 血 糖 取 り込 み 抑 制 と に よ る 血 糖 上 昇 作 用,糖 質 の 分 解 促 進,肝 る.ま
た,カ
新 生 に関係 した筋蛋 白
グ リ コ ー ゲ ン の 増 加 な ど が あ げ られ
テ コ ー ル ア ミ ン や グ ル カ ゴ ン と 同 様 に,
を 決 定 す る の は,分
ルチ ゾー ルの血 中濃 度
泌 さ れ た 量 と組 織 へ の 取 り込 み な
ど に よ り消 失 した 量 と の バ ラ ン ス で あ る.運
動 時 の血
中 コ ル チ ゾ ー ル の 変 動 に 関 し て,50%Vo2max以
下の運
動 で は 時 間 と と も に 低 下 す る 一 方,60∼90%Vo2maxの 運 動 で は 上 昇 す る と い う報 告 が あ る16).50%Vo2maxの 動 で あ っ て も,長 mg/dl程
題
の調 節 シス テム につ い て 述 べ な さい. 2. 運 動 の エ ネ ルギ ー 源 とな る もの を あ げ,運 動 の 種 類や
脂 肪 分 解 促 進 作 用 もあ わ せ も っ て い る. 他 の ホ ル モ ンや 基 質 同 様,コ
● 問
1. 生 体 に と って 血 糖 の 恒常 性 を維 持 す る こ との 意 義 とそ
局面 との 関係 で利 用の され 方 の 違 い を 述 べ な さ い. 3. 運 動 時 の カテ コー ル ア ミ ンの動 態 とその 生 理 的 意 義 を ま とめ な さ い. 4. 血 糖 の 筋 細 胞へ の取 り込 み メ カニ ズ ム につ い て 説 明 し な さい. 5. 運 動 時 の ホ ルモ ン応 答 が トレー ニ ング に よ って どの よ
運
う に変 化す るか につ い て 述 べ な さい.
時 間 継 続 す る こ と で 血 糖 値 が60
度 を 下 回 る と,急 激 に 血 中 コ ル チ ゾ ー ル 濃 度
が 上 昇 し た と い う 報 告3)も あ る.こ
の 報 告 か ら,長
時
● 参 考 文 献 1) Ahlborg,
間 運 動 に 伴 う低 血 糖 に 対 す る 補 償 と い う 役 割 が 推 測 さ
Wahren,
れ る.し
man.
か し な が ら,グ
ル コ コ ル チ コ イ ドの も つ 運 動
G.,
Felig,
Splanchnic
5)成
長 ホル モ ン
2) 跡 見 順 子:運 Sci.,3
成 長 ホ ル モ ン(growth 葉 か ら分 泌 さ れ る.視
hormone:GH)は
下 垂体 前
床 下 部 由 来 の 成 長 ホ ル モ ン放 出
turnover
and
acids, and amino
時 の 生 理 的 意 義 に 関 し て は い まだ 不 明 な 点 が 多 い.
P., Hagenfeldt,
J.:Substrate
leg
L., Hendler,
during
metabolism
prolonged
R.
of glucose,
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exercise free
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fatty
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動 と 糖 代 謝 に 関 す る ホ ル モ ン.Jpn.J.
Sports
:426-435,1984.
3) 跡 見 順 子,田
畑
泉:血
糖
・運 動
み た 運 動 時 の ホ ル モ ン 分 泌 動 態.ホ
トレ ー ニ ン グ と の 関 係 で ル モ ン と 臨 床,32:
521-526,1984.
ホ ル モ ン(growth GRH)の
刺 激 に よ り分 泌 さ れ,ソ
抑 制 さ れ る.絶 運 動,睡
hormone-releasing
食,低
血 糖,蛋
hormone:
マ トス タ チ ンに よ り 白 質 摂 食,ス
眠 な ど で 分 泌 が 増 加 し,血
ト レ ス,
中 の グ ル コ ー ス,
4) Felig,
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utilization, Frontiers and
White,
of exercise
insulin of Exercise T.
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Holloszy,
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Wahren,
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and
満,川
New
中 健 太 郎,田
畑
Adaptation
口
満,大
田
茂:筋
活 動 に よ
本 運 動 生 理 学 雑 誌,3:67-
森
肇,勝
田
茂:筋
お よ び 種 類 に よ る 糖 輸 送 体 濃 度 の 変 化.体 269-276,
0.and GLUT4 Metab.
protein
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力 科 学,43:
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Endocrinol.
by
training
oxidation
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Japan,37
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見 順 子,富
and and
ル モ ン と 運 動.運 野 士 良,原
動 生 理 生 化 学(山
出 邦 彦,岩
田 耕 造),pp.204-238,培
垣 丞 垣,渡 風 館,1990.
田
茂,跡
辺 雅 之,堤
7 筋の肥大 と損傷
多 くの 競 技 ス ポ ー ツ に お い て,ウ
ェ イ ト ト レー ニ ン グ は競 技 成 績 を 向 上 させ る う え で,不
可
欠 な も の に な っ て き て い る.そ
の よ う な トレ ー ニ ン グ を 継 続 し て 行 っ て きた 者 の 骨 格 筋 が き わ
め て よ く発 達 して い る の は,強
度 の 高 い 収 縮 を 繰 り返 し行 う こ と に よ り,筋 が 肥 大 す る か ら で
あ る.し
か し なが ら,ト
レー ニ ン グ さ え 行 え ば,誰
で もが よ く発 達 した 筋 を持 ち う る か とい う
とそ うで は な く,肥 大 の 程 度 は 人 に よ っ て 異 な る 場 合 が 多 い.そ らの 刺 激(ト
レ ー ニ ン グ あ る い は 過 負 荷 な ど)の
み な らず,遺
れ は 筋 肥 大 に 対 して,外
伝 的 因 子,神
経 支 配,ホ
部か
ルモ ン
な ど 生 体 内 部 の 要 因 も 調 節 因 子 と して 作 用 し て い る た め で あ る. 競 技 ス ポ ー ツの よ う な ど ち ら か と い う と特 殊 な 例 に 対 し て,日 常 生 活 と骨 格 筋 の 関 係 か ら は, 慣 れ な い 運 動 を行 っ た り した 時 に 起 こ る 筋 痛 が 連 想 され る.筋
痛 が 生 ず る 事 実 は,収
こ と に よ り,既 存 の 組 織 に 何 ら か の 損 傷 が 起 こ る こ と を 意 味 す る.筋 大 の 場 合 と 同 様,複
数 の 要 因 が 関 与 して い る.本
講 で は,筋
縮 を行 う
が 損 傷 す る 過 程 も筋 の 肥
の 肥 大 お よ び損 傷 の メ カ ニ ズ ム に
つ い て 概 観 して み た い.
因 子 の 存 在 に 左 右 さ れ,こ 7.1
筋肥 大 の メ カ ニズ ム
筋 の 形 成 は 起 こ る こ と は な い.筋 た 体 節 は,脊
柱,肋
a.成
長 に 伴 う筋 の 分 化 お よ び 肥 大
に な る(図7.1).筋
1)筋
細胞 の分 化
が 起 こ る.こ
哺 乳 類 で は,筋
の 分 化 は胎 生 期 に起 こ り,体 節 → 筋
芽 細 胞 → 筋 管 → 筋 線 維 の 順 で 進 行 す る.各 特 徴 を 表7.1に
示 した.こ
々の 細 胞 の
の 筋形 成の 過程 にお いて 重
要 な 役 割 を 担 う蛋 白 が 存 在 し,こ れ ら は2種 類 に 大 別 す る こ とが で き る.一
つ は,筋
genic regulatory factor)と け る も の で あ り,ミ Myf-5,
Myf-6の
長 因 子(growth
分 化 制 御 因 子(myo
よば れ,筋
オD(Myo
D),ミ
四 つ が 含 ま れ る.も
factor)と よ ば れ,細
の分 化 を決定づ オ ジ ェ ニ ン, う 一 つ は,成
胞 の増 殖や発 育 を
促 進 す る も の で あ り,ト
ラ ンス フ ォー ミ ン グ成 長 因 子
β (transforming
factor-β:TGF-β),線
growth
芽 細 胞 増 殖 因 子(fibroblast ク チ ビ ン,イ growth
growth
維
factor:FGF),ア
ン ス リ ン様 成 長 因 子-1(insulin-like
factor-1:IGF-1)な
どの 種 類 が 存 在 す る9).
体 節 が 筋 芽 細 胞 へ の 途 を歩 む か 否 か は,筋
の蛋 白が不在 の環 境下 で は
分化 制御
FGFお
芽 細胞 にな らなか っ
骨 あ る い は 真 皮 へ と分 化 す る こ と 芽細 胞 の段 階 におい て細 胞の 増殖
こ で は 成 長 因 子 が 作 用 し,ア
よ びTGF-β
に よ っ て 増 殖 が 促 進 さ れ,細
数 は 飛 躍 的 に 増 加 す る.成 表7.1
ク チ ビ ン,
熟 した 個 体 で は,解
発 生 段 階 に お け る細 胞 の特 徴
胞の
剖 学的
図7.2 発 育 に 伴 う筋 線 維 横 断 面 積 の 変 化1
図7.1 筋 線 維 形 成 の過 程
に 同 一 の 筋 で あ っ て も そ こ に 含 まれ る 筋 線 維 の 数 の 個 体 差 は 大 き く,こ の こ と が 筋 の 大 き さが 人 に よ っ て 異 な る 要 因 の 一 つ と な る.筋
線 維 の数 の差異 を生 む理 由
は 明 確 に は な っ て い な い が,筋
芽 細胞 の増 殖 の程 度 の
差 異 に起 因 し て い る の か も しれ な い. 増 殖 の 過程 におい て筋 分化 制御 因子 の濃 度 が高 まる と,筋
芽 細 胞 の 増 殖 は 停 止 す る9).こ の 段 階 で の 細 胞
の 横 断 面 積 は 約50μm2ほ
ど で あ る.こ
う して で き た
筋 芽 細 胞 は 融 合 し,複 数 の 核 を もつ 筋 管 を 形 成 し,細 胞 は 約80μm2(横
断 面 積)に まで 成 長 す る.ま
れ と同 時 に収 縮 ・調 節 タ ンパ ク(ミ トロ ポ ニ ン な ど)の
た,そ
オ シ ン,ア ク チ ン,
筋 細 胞 を特 徴 づ け る物 質 が 活 発 に
合 成 さ れ る よ う に な る. 2)筋
図7.3
発 育 に伴 う筋 原 線 維 数 お よ び筋 原線 維 直 径 の 変 化5)
線 維 の肥 大
筋 の 大 き さ は,「 筋 線 維 の 横 断 面 積 × 筋 線 維 の 長
上 に も な る(図7.3).一
さ ×筋 線 維 の 数 」 で ほ ぼ 決 定 され る.し
場 合 と は 異 な り複 雑 な 変 化 を 示 す.す
肥 大 に 関 して は,こ
た が っ て,筋
の三 つの 要素 の変 化が 話題 の 中心
と な る.
原 線 維 の 太 さ は,数 な わ ち,直
ま で 増 加 す る と突 然 減 少 し始 め,少
の
径が した つ
と ま た 増 加 す る と い う 変 化 を繰 り返 す の で あ る(図7.
哺 乳 類 で は,誕 て い る が,そ
約1μmに
方,筋
生 時 には筋線 維 の分化 はほ ぼ終 了 し
の 横 断 面 積 は 成 人 の1/5以
下 で あ る.発
3).こ
れ は,筋
が 形 成 さ れ,個
原 線 維 の表 層 部 に 新 た な フ ィ ラ メ ン ト 々 の 筋 原 線 維 は 肥 大 す る が,あ
る一 定
育 に 伴 い 筋 線 維 横 断 面 積 は ほ ぼ直 線 的 に増 加 す るが
の 太 さ に な る と分 裂 が 起 こ る た め で あ る と 考 え られ て
(図7.2),こ
い る.
の太 さの増加 は筋 原線維 の肥大 と分 裂 に
よ っ て 起 こ る.1本 は,誕
の 筋 線 維 に 含 まれ る 筋 原 線 維 の 数
生 時 で は 約75本
ほ どで あ る が,分
裂 を 繰 り返
し筋 線 維 横 断 面 積 の 増 大 と と も に 増 加 し,1,200本
以
筋 線 維 の 長 さ の 増 加 は,筋 る.マ
節 の 数 が 増 す た め に起 こ
ウ ス の ヒ ラ メ筋 の 例 で は,1本
れ る 筋 節 の 数 は,誕
生 時 約700で
の筋 線 維 に含 ま
あ っ た も の が,成
長
に 伴 い 約2,100に
ま で 増 加 す る.新
た な 筋 節 の 形 成 は,
は ク レ ア チ ンキ ナ ー ゼ や ミ オ シ ンの 合 成 を 亢 進 す る作
筋 腱 接 合 部 に お い て 生 ず る.
用 を も っ て お り,ト
3)筋
の 増 加 に対 し て も 促 進 的 に 働 きか け て い る と 考 え られ
線 維数 の変 化
こ こ ま で 述 べ て き た よ うに,成 増 加 に は,筋
長 に伴 う筋 の容 量 の
線 維 の横 断面 積 と長 さの 二つ の要 素 が 関
与 し て い る.そ
れ で は,も
う 一 つ の要素 で あ る筋線 維
の 数 は 生 後 変 化 す る の で あ ろ う か.ヒ
トの 上 腕 二 頭 筋
を 構 成 す る 筋 線 維 の 数 は 平 均 で は 約210,000本 が,個
体 差 が 大 き く,少
い 者 で は290,000本
である
な い 者 で は 約110,000本,多
て い る. 2)筋
線維 数の 変化
筋 線 維 の 数 は 遺 伝 的 要 因 に 大 き く左 右 さ れ て い る こ とは す で に 述 べ た とお り で あ る が,こ
と え ば,ラ
状 に 切 り刻 み,も
ッ トの 下 肢 筋 を 取 り出 し,ミ
ンチ
とあ っ た場 所 に 刻 ん だ 筋 を も ど して
在 の と こ ろ,筋 線 維 の 数 は 生 後 大 き く変 化 す る こ と は
皮 膚 を 縫 合 し 生 育 を 続 け る と,約60日
な い と考 え られ て お り,し た が っ て,筋
ぼ 再 生 す る こ と,ま
線維 数 に み ら
の こ とか ら筋が
増 殖 ・再 生 能 力 を も っ て い な い と 結 論 す る こ と は で き な い.た
と じつ に3倍 近 い 違 い が あ る.現
レー ニ ン グ に よ る 筋 原 線 維 の 容 量
後 には 筋 はほ
た そ の 過 程 に お い て,筋
形 成 の一
れ る 個 体 差 は 遺 伝 的 な要 因 に 主 と して 支 配 さ れ て い る
時 期 に特 有 に み ら れ る蛋 白(幼 若 型 ミ オ シ ン重 鎖 な ど)
と い え る.
が 出 現 す る こ と が 確 か め ら れ て い る8).こ れ ら の 事 実 は,発
育 が 終 了 し た 筋 で あ っ て も,成
b.ト レ ー ニ ン グ に よ る 肥 大
化 の 過 程 を た ど り,新
1)筋
っ て い る こ と を 意 味 す る.
線維 の肥 大
長 で み られ た 分
た な筋 線 維 を 形 成 す る 能 力 を も
適 切 な ト レー ニ ン グ を継 続 して 行 う と筋 肥 大 が 起 こ
新 た な筋線 維 が形 成 され る詳細 な過 程 につい て は不
る が,そ
明 な 点 が 多 い が,筋
の 変 化 の 様 相 は 成 長 に 伴 う も の と 類 似 して お
り,第1は
個 々 の 筋 線 維 の 肥 大 に よ る と こ ろが 大 き い.
図7.4は20週
間 ウ ェ イ ト トレ ー ニ ング を 行 っ た 大 学 生
の 筋 線 維 横 断 面 積 の 変 化 を 示 して い る.ト
レー ニ ング
線 維 の基 底膜 と形 質膜 の間 に存 在
す る 衛 星 細 胞 が 関 与 し て い る と 考 え られ て い る(図7. 5).筋
線 維 を傷 つ け た りFGFで
る と,衛
人 工 的 に 処 理 した りす
星 細 胞 は 増 殖 を 開 始 し,そ
後 で はFTb線
維 の 数 が 極 端 に 少 な くな り評 価 で きな く
管 を形 成 す る.こ
な る た め,こ
の 線 維 の 結 果 に つ い て は,FTa線
した 筋 芽 細 胞 で あ る可 能 性 が 高 く,新
FTb線
維 の 中 間 の 性 質 を もつFTab線
し て あ る.ト
維 と
維 とあ わ せ て記
レー ニ ン グ に よ っ て す べ て の 線 維 に 肥 大
が 起 こ っ た が,そ る の に対 して,FT線 よ う な現 象 をFT線
の 肥 大 率 はST線 維 で は35%を
維 が20%以
下であ
超 え て い る.こ
維 の 選 択 的 肥 大 と い う.こ
の
の トレ
の こ と か ら,衛
の 子 孫 は 融 合 し筋
星細 胞 は分 化 が休止 たな筋 線維 の形
成 は,衛 星 細 胞 が 眠 りか ら さ め た 結 果 起 こ っ た と思 わ れ る. ト レー ニ ン グ に よ る 筋 肥 大 の 過 程 に お い て,衛
星細
胞 の 働 き に よ る で あ ろ う筋 線 維 数 の 増 殖 が 生 じ て い る の で あ ろ うか.図7.6は
ネ コの右 前肢 の筋 にウ ェ イ ト
ー ニ ン グ に よ る 筋 線 維 の 肥 大 は ,成 長 の場 合 と 同 様 に
トレ ー ニ ン グ を 負 荷 し,ト
レ ー ニ ン グ を行 わ な か っ た
筋 原 線 維 が 肥 大 と分 裂 を 繰 り返 し,筋 原 線 維 の 容 量 が
左 前 肢 の 同 一 の 筋 とで,含
ま れ る 筋 線 維 数 を比 較 し た
増 す こ とが 主 た る 成 因 で あ る7).肥 大 が 生 じ て い る 筋
結 果 で あ る.6匹
で は,FGFの
図7.4
す べ て の ネ コ で,右
前 肢 の筋 にお い
濃 度 が 高 ま る こ とが 知 ら れ て い る.FGF
ウ ェ イ ト トレー ニ ン グ に よ る筋 線 維 横 断面 積 の 変 化10)
図7.5 筋 線 維 の 発 生 と衛 星 細 胞(Albertsら,19832)を
改 変)
図7.6
ウ ェ イ ト トレー ニ ン グに よ る 筋線 維 数 の 変化5
て 筋 線 維 数 が 多 く,ト
図7.7 運 動 に よ る 筋 小 胞 体 のCa2+取 り込 み 速 度 の 変 化3)
レー ニ ン グ に よ っ て 筋 線 維 の 増
殖 が 起 こ っ た と結 論 さ れ る.こ
の こ と は,肥
大 の途 に
と,SRのCa2-チ
ャ ネ ル が 開 口 しCa2+が 放 出 さ れ,筋
形 質 のCa2-の
濃 度 は1∼10μMに
上 昇 す る.Ca2+の
濃
あ る 筋 で は 筋 芽 細 胞 の 増 殖 を 促 進 す るFGFやIGF-1
度 の 上 昇 に よ っ て 筋 原 線 維 の 収 縮 が 起 こ る一 方 で,弛
が 発 現 す る 事 実 か ら も 裏 づ け ら れ る.し
緩 に はSRがCa2+を
そ の 増 加 率 は た か だ か 数%で
あ る こ と,ま
か し な が ら, た筋線 維 の
び 低 下 さ せ る 必 要 が あ る.こ
増 殖 は 既 存 の 線 維 の 損 傷 に 対 し て 代 償 的 に生 ず る 場 合
SRの
が 多 い こ と な どか ら は,ト
ATPase)に
レー ニ ン グ は 筋 線 維 数 の 増
殖 を 招 来 す る で あ ろ う が,遺
伝 的 に決定 された筋 線維
の 総 数 を大 き く変 化 さ せ る こ と は な い と考 え られ る.
取 り込 み 筋 形 質 のCa2+の
膜 上 に 存 在 す るCa2+依
a.運
筋 損 傷 の メ カニ ズ ム
分 解 に よ っ てCa2-2分 図7.7は,ラ
子 がSR内
筋 線 維 増 殖 の き っ か け と な る 筋 の 損 傷 は,ど に し て 起 こ る の で あ ろ う か.疲 を 行 っ た 筋 で は,A帯
やZ線
の 乱 れ あ る い は ミ トコ ン
ド リ ア や 筋 小 胞 体 の 膨 張 な ど,筋 る 変 化 が,運
のよう
労 困憊 に 至 る ま で 運 動
損 傷の 兆候 とみ られ
動 終 了 直 後 に 早 く も観 察 さ れ る.運
に み られ る こ の よ う な 変 化 は,実 カ ル シ ウ ム(Ca2+)を
度が
損 傷 を招 くお も な 要 因 で あ る と考 え
ら れ て い る.
b.筋
小胞体 の機 能 の変化
(sarcoplasmic る.通
reticulum:SR)に
常,Ca2+はSRの
筋 形 質 の 遊 離Ca2+の い る.神
強 度 で ラ ンニ ン
肢 筋 に お け るSRのCa2+取 動 開 始20分
まで
は 大 き な 変 化 は み ら れ な い が,45分
後 に は初 期 値 の 約
60%に,疲
は50%以
労 困 憊 時(140分
低 下 す る こ と が わ か る.こ み 能 力 の 低 減 は,長
後)に
下 に まで
の よ う なSRのCa2+取
時 間 運 動 だ け で は な く,高
短 時 間 運 動 に よ っ て も 起 こ る.運 Ca2+濃 度 が 高 ま る の は,こ
り込 強度 ・
動 に よ り筋 形 質 中 の
こ で 示 さ れ る よ う なSRの
機 能 の 不 全 が 生 じ る た め で あ る.
c.筋 小 胞 体 のCa2+取 SRに
よ るCa2-取
状 膜 構 造 を なす 筋 小 胞 体 よって調節 されて い
内 腔 に 蓄 え ら れ て い る た め, 濃 度 は0.1μM以
下 に 抑 え られ て
経 か らの イ ンパ ル ス が 筋 線 維 の 内 部 に 達 す る
り込 み 能 力 低 下 の 要 因
り込 み 能 力 の 低 下 に は,以
下 に述
べ る多 くの 要 因 が 関 与 して い る. 1)水
筋 形 質 のCa2+の 濃 度 は,袋
子 の加水
験 的 に筋 を高濃 度 の
含 む 溶 液 に 浸 漬 して も同 様 に 生
ず る こ とか ら,運 動 に よ り筋 形 質 中 の 遊 離Ca2+濃 高 ま る こ とが,筋
動後
Ca2+-
腔 へ と輸 送 さ れ る.
ッ トに 約75%VO2maxの
り込 み 速 度 の 変 化 を 示 して い る.運
動 後 に み られ る 筋 線 維 の 構 造 的 変 化
取 り 込 み は,
存 性ATPase(SR
よ っ て 能 動 的 に 行 わ れ,ATP1分
グ 運 動 を 行 わ せ た 時 の,後 7.2
のCa2-の
濃 度 を再
素イオン
安 静 時 に は細 胞 内 のpHは7.0∼7.1で
あ る が,強
の 高 い 運 動 を 行 う と 水 素 イ オ ン(H+)の
発 生 に よ り,
pHは6.2あ
た り に ま で 低 下 す る こ とが あ る.pHの
下 がSRのCa2+取 つ あ る.一
H+がSRの
低
り込 み 能 力 を 減 少 させ る ル ー トは 二
つ は,H+がSRCa2+-ATPaseのCa2+結
位 に お い てCa2+と
度
競 合 す る こ とで あ り,他
膜 のCa2+に
合部 の 一 つ は,
対 す る 透 過 性 を高 め る 作 用 を も
つ た め,SR内
腔 へ 取 り込 ま れ たCa2+が
筋 形 質 へ と漏
出 す る こ と で あ る. 2)活
る 酵 素 で あ り,通 常 の 反 応 で は活 性 酸 素 は 発 生 し な い. と こ ろ が,筋
性 酸 素
形 質 のCa2+濃
度 が 上 昇 す る とXDHは,
キ サ ンチ ン酸 化 酵 素(xanthine
活 性 酸 素 と は,通
常 の 酸 素 よ り反 応 性 の 高 い 酸 素 化
さ れ る(図7.8).XODは
oxidase:XOD)に
変換
触 媒 反 応 に 「酸 素 → ス ー パ ー
合 物 の 総 称 で あ る が,生
体 との 関連 か らはス ーパ ー オ
オ キ シ ド」 の 反 応 を 伴 うた め,筋
キ シ ド,過 酸 化 水 素,ヒ
ドロ キ シ ル ラ ジ カ ル お よ び 一
濃 度 は さ ら に 高 ま る こ と に な る.活 性 酸 素 は 酵 素 の 活
重 項 酸 素 の4種
を さ して い る.ミ
化 的 リ ン酸 化 の 過 程 で,安
キ シ ドが 産 生 さ れ て い る.そ 形 質 へ と漏 出 し,鉄
トコ ン ド リ ア で は 酸
静 時 に お い て もス ー パ ー オ れ らの う ち1∼4%が
あ る い は 銅 と 反 応 し,前
筋
述 の4種
形 質 中の活 性酸 素 の
性 を 失 活 させ る だ け で な く,不 飽 和 脂 肪 酸 に 過 酸 化 反 応 を引 き起 こ し,生 体 膜 を破 壊 す る 作 用 も もつ. Ca2+の 濃 度 の 上 昇 に よ っ て,い 素(プ
ロ テ ア ー ゼ)が
くつ か の 蛋 白 分 解 酵
活 性 化 さ れ る.Ca2+依
存 性 中性
の 中 で は 最 も反 応 性 の 高 い ヒ ドロ キ シ ル ラ ジ カ ル と な
プ ロ テ ア ー ゼ で あ る カ ル パ イ ン は,Z膜
る.運 動 中 で は ミ トコ ン ド リ ア の 代 謝 は10倍 以 上 に 亢進 す る た め ,そ れ に伴 い 筋 形 質 中 の 活 性 酸 素 の 濃 度
れ を 分 解 す る.ま
も 高 ま る こ と に な る.活
チ ン フ ィ ラ メ ン トを切 断 す る こ とが 知 られ て い る(図
酸 化 す る と,SR
生 じ, SR Ca2+-ATPase活 3)グ
性 酸 素 がSRの
Ca2+-ATPase蛋
チ オ ー ル基 を
白 に構造 的 な変化 が
た,筋
を標 的 と し こ
形 質 の 硬 度 を 調 節 す る タ ンパ
ク で あ る ゲ ル ゾ リ ン は,Ca2+の
濃 度が 上昇 す る とア ク
7.8).
性 が 低 下 す る4).
リコー ゲ ン
SRの
膜 に は解 糖 系 酵 素 お よび ク レア チ ンキナ ー ゼ
が 結 合 し て お り,Ca2+の
取 り込 み に必 要 なATPは,そ
れ ら の 働 き に よ り局 所 的 に 産 生 さ れ て い る と 考 え ら れ て い る.解 渇 は,SR
糖 系 の お も な 基 質 で あ る グ リ コー ゲ ンの 枯 Ca2-ATPaseへ
のATP供
給 の低 減 を誘 因す
る. 4)一
酸 化窒 素
骨 格 筋 内 に 存 在 す る 一 酸 化 窒 素 合 成 酵 素 は,L-ア ラ ギ ニ ン を基 質 と し て 一 酸 化 窒 素(nitric oxide:NO) を 産 生 す る.筋 NOの
活 動 を行 う と こ の 酵 素 が 活 性 化 さ れ,
濃 度 が 数 倍 に 高 ま る.NOの
た 電 気 的 に 中 性 で あ る た め,細
分 子 は 小 さ く,ま 胞 内 で す ば や く拡 散 し
種 々 の 器 官 と 反 応 す る.NOはSR
Ca2+-ATPase蛋
に は 直 接 影 響 を 及 ぼ さ な い が,SRの
白
膜 に 結 合 して い
る ク レア チ ン キ ナ ー ゼ お よ び グ リ セ ル ア ル デ ヒ ド3-
図7.8 筋 損 傷 の メカ ニ ズ ム
リ ン酸 脱 水 素 酵 素(解 糖 系 の 酵 素 の 一 つ)の 活 性 を抑 制 す る作 用 を もつ11).し た が っ て,グ の 場 合 と 同 様 に,SR
リコー ゲ ンの枯 渇
Ca2+-ATPaseへ
のATPの
供給を
低 減 させ る結 果 と な る.
リ ン脂 質 加 水 分 解 酵 素 の 一 つ で あ る ホ ス ホ リパ ー ゼ A2が,Ca2+の
濃 度 の 上 昇 に よ っ て 活 性 化 さ れ る と,
生 体 膜 リ ン脂 質 の 分 解 が 起 こ り,活 性 酸 素 の 作 用 とあ わ せ 生 体 膜 の 破 壊 が 亢 進 さ れ る.ホ
d.Ca2+濃
の 影 響 は,こ
度 の上 昇 がも た らす変化
活 性 酸 素 が 筋 形 質 のCa2+の
濃 度 の 上 昇 を もた らす 要
因 の 一 つ で あ る こ と は 前 述 し た が,Ca2+濃
度 の上 昇 は
活 性 酸 素 の 発 生 を さ らに 助 長 す る こ と に な る.筋 に 存 在 す る キ サ ンチ ン脱 水 素 酵 素(xanthine genase:XDH)は,AMPか
形質
dehydro
ら尿 酸 へ の 反 応 を 触 媒 す
ス ホ リ パ ー ゼA2
れ だ け に と ど ま ら な い.リ
ン脂 質 分 解 の
結 果 産 生 さ れ る プ ロ ス タ グ ラ ン ジ ンに は,白
血球 やマ
ク ロ フ ァ ー ジ を凝 集 す る 働 きが あ り,組 織 に 炎 症 反応 を も た らす こ とに な る.図7.8に,筋 ま で の 変 化 の 概 要 を ま とめ た.
活 動 か ら筋 損 傷
muscle
● 問 題 1. 未 分 化 な細 胞 が 筋 線 維 に 分化 す る まで の 過 程 を 説 明 し 5)
な さい.
Goldspink, fibre
2. 筋 肥 大 に伴 って,筋 原線 維 が どの よ う に変 化 す る の か 6)
説 明 し な さい.
sarcoplasmic
G.:The
growth.J.
Gonyea,
J.
3. 筋 肥 大 に 伴 って,筋 線維 の数 が 変 化 す るか 否 か 論 じな
Sci.,6
L., Sale,
induced
Appl. 7)
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W.
Exercise
さい.
reticulum.
Appl.
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F.
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Mikesky,
fiber
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MacDougall,
J.
D.:Morphological
changes
in
human
4. 筋 小 胞体 の 機 能 お よび運 動 に よ るそ の 変 化 に つ い て述 skeletal
べ な さ い.
Human 8)
Aherne,
W.,
Ayyar,
Muscle
fiber
size
J.Neurol.
Sci.,14
Alberts,
B.,
New
D. in
R.,
Clarke,
normal
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C.
infants,
A.
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Walton,
children
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9) adolescents.
D.,
Lewis,
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S.
K.,
varying
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J.,
Biology
Raff, of
M.,
the
Roberts,
Cell,
Garl
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Staron,
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Leonaddi,
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8 運 動 と呼 吸 ・心循 環
呼 吸 と 循 環 の 目 的 は,生 体 の 各 組 織 に供 給 し,代 る.O2の
供 給 とCO2の
ガ ス の 運 搬(循
環)お
命 維 持 の た め に絶 え ず 酸 素(O2)と
謝 の 結 果 生 じた 二 酸 化 炭 素(CO2)と
排 泄 は,肺
と血 液 との ガ ス 交 換(肺
よ び 血 液 と 組 織 との ガ ス 交 換(組
栄 養(エ
ネ ル ギ ー 基 質)を
身
老 廃 物 を 除 去 し続 け る こ と で あ 呼 吸 あ る い は 外 呼 吸),血
織 呼 吸 あ る い は 内 呼 吸)に
液による よって行 わ
れ る. 運 動 は 活 動 筋 に お い てO2消
費 とCO2生
要 の 増 大 に す ば や く応 答 す る.す の 増 加 を通 して,運
成 を 増 加 させ る.呼
な わ ち,呼
吸 ・循 環 系 は こ の よ う な 代 謝 需
吸 系 は換 気 量 の 増 加 を通 し て,循
環 系 は 心 拍 出量
動 に よ っ て 増 大 し た 代 謝 需 要 を満 た す.
本 講 に お い て は,前
半 で お もに 運 動 時 の 呼 吸(肺
換 気)に
つ い て,後
半 で は 主 と して 心 臓 の
働 きに 焦 点 を あ て て 述 べ る.
8.1肺
換 気 の メ カニ ク ス
肺 へ の 空 気 の 出 入 りは,呼 は換 気(ventilation)と 安 静 時 に お い て,吸 始 ま る.こ 大 し,肺
8.2死
吸(breathing)あ
るい
定 義 さ れ て い る.
大 気 と 身 体 と の 間 の ガ ス 交 換(外
息 は 横 隔 膜 と外 肋 間 筋 の 収 縮 で
の 結 果,大
気と
で,上
部 の 呼 吸 経 路(気
部 分 は 解 剖 学 的 死 腔(D)と 150∼200ml(安
に 行 わ れ る.吸
は,Dの
隔 膜 と外 肋 間筋 の
た め に 肺 換 気 量(VE)よ
は1回 換 気 量(VT),D,呼 うに 表 され る.
る.
よ ば れ,そ
の容 量 は約 あ る.
ガ ス 交 換 に 有 効 な 換 気 量 す な わ ち 肺 胞 換 気 量(VA)
上 昇 す る た め に,肺
中 の 空 気 は 大 気 中 へ と呼 出 さ れ
の よ うな 呼 吸 経 路 の
静 時 換 気 量 の約30%)で
弛 緩 に よ っ て 胸 郭 容 積 が 減 少 し,肺 内 圧 が 大 気 圧 よ り
り少 な く な る.VA
吸 数(f)を
用 いて 次 の よ
VA=(VT−D)×f
運 動 時 に お い て は,吸
息 に 胸 鎖 乳 突 筋,斜
び 僧 帽 筋 も関 与 す る.一
方,呼
収 縮 に よ っ て,積
角筋およ
れ らの
補 助 呼 吸 筋 の す ば や く力 強 い 収 縮 に よ っ て,肺
換気量
増 加 す る.
上 記 の 式 か ら明 らか な よ う に,Dに
対 す るfの 影 響 は
息 は内 肋間 筋や 腹筋 の
極 的 で 力 強 い 活 動 と な る.こ
(VE)は
胞と
管 や 気 管 支 な ど)に あ る 空 気
は ガ ス 交 換 に 全 く関 与 し な い.こ
肺 と の 間 で 圧 力 勾 配 が 生 じ,空 気 は 肺 へ と流 入 す る. 一方 ,呼 息 は 横 隔 膜 と外 肋 間 筋 の 弛 緩 と と も に 受 動 的 息 の 時 と は逆 に,横
呼 吸)は,肺
そ れ を 取 り巻 く肺 毛 細 血 管 と の 間 で の み 行 わ れ る の
れ らの 筋 の 収 縮 に よ っ て,胸 郭 の 容 積 は 増
内 圧 が 一 時 的 に減 少 す る.そ
腔 と肺 胞 換 気 量
表8.1 安静時の肺 胞換気量に対す るあえ ぎ呼吸の影響 (Brooksら,19963)よ り作成)
図8.1
大 き く,速
く て 浅 い呼 吸(あ
安 静 時 お よび 運 動 時 の 換 気 調 節(Brooksら,19963よ
え ぎ 呼 吸)は,VAの
な 減 少 を も た らす(表8.1).こ
れ は,VEが
り作 図)
大き た とえ 同
じ で も,呼 吸 の 仕 方 に よ っ て ガ ス 交 換 の 効 率 が 大 き く 異 な る こ と を 意 味 して い る.
8.3
呼 吸 の 調 節機 構 図8.2
a.呼
吸 中 枢
ス テ ップ 負 荷 運 動 時 の 換 気 応 答 (Wassermanら,198624)よ
吸 息 と呼 息 を 交 互 に繰 り返 す 呼 吸 の リ ズ ム は,脳
り作 図)
の
延 髄 と 橋 に あ る 呼 吸 中 枢 に よ っ て つ く り出 さ れ る.呼
的 に は神 経 性 と体 液 性 の 多 重 制 御 で 説 明 され る15).
吸 中 枢 は,延
神 経 性 の調 節 に は,高
髄 に あ る 吸 息 中 枢 と 呼 息 中 枢,橋
にあ る
持 続 性 吸 息 中 枢 と呼 吸 調 節 中 枢 の 四 つ の 領 域 に 分 け ら
中 枢 へ の 興 奮 性 入 力(セ
れ る.こ
関 節,腱
質)や
れ ら の 呼 吸 中 枢 は,高
位 中 枢(大
脳 の運動 皮
末 梢 か ら多 くの 神 経 性 お よ び 体 液 性 の 入 力 を 受
け 取 り(図8.1),こ
れ ら を統 合 し て適 切 な 換 気 応 答 を
位 中 枢(運
動 皮 質)か
ら呼 吸
ン ト ラ ル コ マ ン ド)4)と 筋,
に存 在 す る 末 梢 の 固 有 受 容 器 か ら呼 吸 中 枢 へ
の 求 心 性 入 力 が あ る(フ
ィー ド フ ォ ワ ー ド機 構).こ
れ ら の 調 節 は す ば や く働 き,ス
テ ップ負荷運 動 時 の開
も た らす.
始 直 後 と終 了 直 後 に み ら れ る よ う な 急 速 な 換 気 応 答
b.運
体 液 性 の 調 節 と は,末
(phase 動 時の 呼吸調 節
運 動 時 の 換 気 亢 進 は,単 く,い
一の 要 因に よる もので はな
くつ か の 要 因 が 重 な り合 っ た 結 果 で あ り,基 本
Ⅰ)に 関 与 して い る(図8.2). 梢(頸
よ び 中 枢 の 化 学 受 容 器(延 PCO2お よ びpHを
感 知 し,そ
動 脈 体,大
髄 腹 側 表 層)が
動 脈 体)お 体 液 のPO2,
れ ら を 一 定 レベ ル に 維 持
図8.3
運 動 時 の 毎 分 換 気量(VE)と
代 謝 率(Vo2)と
の 関 係(Brooksら,19963よ
り作 図)
す る よ う に 換 気 量 を微 調 節 す る フ ィ ー ドバ ッ ク機 構 で
練 者 の よ り高 いVEmaxはMVVとVEmaxと
あ り,呼 吸 の 化 学 調 節 と よ ば れ て い る.こ
換 気予 備 能 力 を よ り多 く動 員 し た 結 果 で あ る25).
は 比 較 的 ゆ っ く り と 働 き,ス
れ らの調節
テ ップ負荷運 動時 の
phase Ⅰ 後 に み られ る ゆ っ く り と した 指 数 関 数 的 な 換 気 応 答(phase Ⅱ
8.4
∼Ⅲ)に
8.5
関与 して い る(図8.2).
有 酸 素 運 動 パ フ ォ ー マ ン ス の 制 限 因 子 と しての 換 気 能 力
運 動 時 の 肺 換 気 量 と トレ ー ニ ン グ
一 般 に,定
期 的 な 持 久 性 ト レー ニ ン グ を 行 っ て い な
い 健 康 な 人 に お い て,換 運 動 時 の 毎 分 換 気 量(VE)は,仕 グ状 態(鍛
練 度)な
事 率 や トレ ー ニ ン
ど の 多 くの 要 因 に よ っ て 左 右 され
る.
気能 力 は有酸 素 運動 パ フ ォー
マ ン ス の 制 限 因 子 と は な ら な い と い わ れ て き た.そ
れ
は 以 下 に 示 す よ う な い くつ か の 理 由 に よ る も の で あ る.
図8.3は
持 久 性 鍛 練 者 と非 鍛 練 者 の 漸 増 運 動 中 のVE
の 典 型 的 な 変 化 を 示 し て い る.VEとVO2と が 崩 れ,VEが
の直 線 関係
急 激 に 増 加 し は じ め る 点(換
ventilatory threshold:VT)は,非
気 性 閾 値,
鍛 練 者 よ り鍛 練 者
に お い て 高 いVO2レ ベ ル で 生 じ る. 最 大 下 強 度 で は,あ
① 肺 換 気 を 増 大 させ る 能 力 は,心
安 静 時 の 毎 分 換 気 量(VE)は が,最
お よ そ6l/分
大 運 動 時 に お い て は,お 静 時 の20倍
以 上 も の 値 に 達 す る.
しか し な が ら,心 拍 出 量 は 運 動 強 度 の 増 大 に 伴 い 増 加 す る もの の(一
い て 高 く,最 大 強 度 で は 逆 に 非 鍛 練 者 よ り鍛 練 者 に お
運 動 時;20l/分),そ
い て 高 い.運 動 中 に 得 られ る 毎 分 換 気 量 の 最 大 値 は,最
増 加 と比 較 して 非 常 に 小 さ い.し
大 毎 分 換 気 量(maximum
気 量 と心 拍 出 量 の 比(換
pulmonary
ventilation:VEmax)
い な い 一 般 男 子 で は120∼1401で
あ る.一
方,持
久性
トレ ー ニ ン グ を 行 っ て い る鍛 練 者 に お い て は,VEmaxが 越 え る場 合 もあ る.し
ス パ イ ロ メー タ ー を通 して,意
か し なが ら,安 静 状 態 で 図 的に深 く速 い呼吸 を
し た と き に 測 定 さ れ る 分 時 最 大 換 気 量(maximum voluntary ventilation:MVV)はVEmaxよ 者 と非 鍛 練 者 とで は 差 が な い.こ に お い て,最
しい 運 動 中
大 に換 気 を 行 っ て い る 時 で さ え も,な
お
換 気 能 力 に 余 力 を 残 して い る こ と を 意 味 し て お り,鍛
般 人 で,安
静 時;約5l/分,最
の 程 度(4倍
大
の 増 加)はVEの た が っ て,毎
分換
気/還 流 比,VE/Q)は,最
大 運 動 時 に は 安 静 時 の5∼6倍
に 増 加 す る.
② 最 大 運 動 時 で さ え も,換 気 能 力 に は 予 備 力 が 残 っ て い る. 前 に も述 べ た が,運 (VEmax)は,意 MVVよ
り 高 く,鍛 練 れ は,激
である
よそ120∼140l/分
般 に 鍛 練 者 よ り非 鍛 練 者 に お
と よ ば れ て お り,定 期 的 な 身 体 ト レー ニ ン グ を 行 っ て
拍 出量 を増加 さ
せ る能 力 よ り非 常 に 大 きい.
ま で 増 加 し,安
る 一定 の絶対 強 度お よび相対 強
度 に お け る換 気 量 は,一
200lを
の 差 で 表 され る
図 的 に深 く速 い 呼 吸 を した 場合 の
り少 な く,一
の 約60∼70%で
動 中 に 観 察 さ れ る 最 大 のVE
般 成 人 男 子 で はVEmaxはMVV
あ る.
③ 動 脈 血 の 酸 素 分 圧(PAO2)は
運 動 中 に維 持 さ れ
て い る. PAO2は 運 動 中 に 維 持 さ れ て い る が,こ
れ は換 気 の
増 大 に 伴 っ て 肺 胞 酸 素 分 圧(PAO2)が す る こ と(肺
わず か に増 加
胞 ― 動 脈 圧 勾 配 の 増 大),肺
胞 か ら肺
毛 細 血 管 を 通 過 し て い る 赤 血 球 ま で のO2の 離 が 非 常 に 短 い こ と,赤
血球 の肺 毛細 血管 通 過時 間
(運 動 中 お よ そ0.4∼0.5秒)がO2の あ る こ と,ガ く(50m2,シ に 相 当),肺
拡散距
こ と,さ
らに乳酸 性作 業 閾値 強 度で の 自転車 運 動 の持
久 力 が 高 ま っ た こ と が 示 さ れ て い る.こ ら,呼 吸 ト レー ニ ン グ に よ っ て,一
れ らの 結 果 か
定 強 度 にお け る呼
吸 筋 そ れ 自体 の 仕 事 量 を減 少 させ,そ
の 結果 呼吸 筋 の
平 衡 に 十分 で
酸 素 消 費 量 を抑 え る こ とが で き,運 動 に 正 味 使 う こ と
ス交 換 のた め の肺胞 表面積 が 非常 に広
の で き るエ ネ ル ギ ー を 増 加 させ る こ と が で き る よ う に
ン グ ル ス テ ニ ス コー トの 半 面 の 広 さ
な る と 考 え られ る.
胞 表 面 積 と肺 毛 細 血 管 血 液 量 と の 比 が
非 常 に 大 き い こ と(大
き な 拡 散 面 積)に
よ る もの で
8.6
心筋 の特 性
あ る. し か し な が ら,最 近 に な っ て,健 持 久 性 鍛 練 者 に お い て,換
常 な座 業従 事 者 や
気 システ ムが有 酸素 運動 パ
心 筋 は,収
縮 す る こ と で 働 く 固 有 心 筋(ordinary
cardiac muscle)と,興
フ ォーマ ンスの 制 限 因子 とな りうる可 能性 の あ るこ と
殊 心 筋(specialized
が 報 告 さ れ て き て い る1,2).持 久 性 鍛 練 者 を 対 象 と し た
れ る.固
報 告 で は,呼
吸 ト レー ニ ン グ に よ っ て 呼 吸 の 持 久 性 が
高 ま っ た こ と,自
転 車 運 動 時 の 毎 分 換 気 量 が 低 下 した
図8.4 心 臓 の 横 断 面,刺
奮 の 発 生 と伝 導 を 受 け 持 つ 特 cardiac muscle)の
有 心 筋 は 横 紋 筋 で あ る が,筋
二 つ に分 け ら 細 胞 の 端 は二 つ
に 分 岐 し,隣 接 す る 筋 細 胞 端 と次 々 に結 合 し て 網 目構 造 をつ くっ て い る 点 で(図8.4右
激 伝 達 系 お よび 心 臓 の 活 動(左)と
心 臓 細 胞 の拡 大 模 式 図(右
上)骨
上)23)
格 筋 と は構 造
上 の 差 異 が あ る.こ
の 構 造 ゆ え に,刺 激 が 隣 の 筋 細 胞
に は,他
の 部 位 の 放 電 レ ー トで 最 も速 い もの が,新
た
へ 順 々 に 伝 わ り,心 臓 の 調 和 の と れ た 収 縮 が 可 能 と な
な ペ ー ス メ ー カ ー と して 置 き換 え ら れ る.心
る の だ が,構
を 停 止 しな い よ うに 何 重 に も補 償 機 構 が 働 い て い るの
成す るすべ ての細 胞 が毎 回の 収縮 に参加
し な け れ ば な ら な い こ と に も な る.つ
ま り心 筋 で は,
筋 の収縮
で あ る.
筋 力 の 調 節 を 骨 格 筋 の よ う に動 員 す る 筋 線 維 の 数 を 変
心 房 筋 と心 室 筋 の 間 に は 前 記 した 筋 細 胞 ど う しの 接
え る こ と に よ っ て 行 うの で は な く,心 筋 自 体 に 備 わ っ
合 が な く,収 縮 の 刺 激 は特 殊 伝 導 系 を 通 じて の み 伝 わ
た 内 因 性 機 構(収 縮 に 先 立 つ 伸 展 に よ っ て 張 力 を 増 す)
る.洞
と,外
始 め,特
因 性 機 構(Ca2-濃
度 の 増 加,自
律神 経系 もし く
房 結 節 で 起 こ っ た 刺 激 に 対 し て 心 房 筋 は収 縮 し 殊 伝 導 系 を 通 っ て きた 刺 激 に 対 して 心 室 筋 が
は カ テ コ ー ル ア ミ ンの 影 響)に よ っ て 行 うの で あ る22).
反 応 し心 臓 下 部 か ら収 縮 し始 め る 頃 に は,心
固 有 心 筋 の 他 の 興 味 深 い 特 徴 を 簡 略 化 し て ま とめ れ
縮 は 完 了 し て拡 張 期 に入 っ て い る こ と に な る(図8.4).
ば次 の よ う に な る
房 室 結 節 の 伝 導 速 度 は 遅 い た め に,心
① 赤 筋 に 近 い 性 質 を も っ て い る5).実 際 に 心 筋 の 収 縮 蛋 白 系 は,骨 ATPase活
格 筋 の 遅 筋 線 維 に 類 似 し て お り,
性 も 比 較 的 低 い.ま
含 有 量 が 豊 富 で,動
た ミ ト コ ン ドリ ア の
開 始 時 間 に0.12∼0.18秒
房 筋 の収
房 と心 室 の 収 縮
の ず れ が あ る の で,そ
の 間に
心 房 か ら心 室 へ の 血 液 の 移 動 が 円 滑 に行 わ れ る の で あ る.
脈 血 か ら酸 素 を 取 り込 み 利 用 す 8.8
る能 力 が す べ て の 臓 器 の 中 で 飛 び 抜 け て 高 い.
循環 す る血 液
② 心 臓 が 増 大 す る の は 筋 線 維 の 増 殖 で は な く,1 本1本
の 肥 大 に よ る も の で あ る と考 え ら れ て い る.
血 液 は 心 臓 か ら の 拍 出 に よ っ て,血
管 系 で 閉 鎖 した
しか し小 児 と成 人 と の 間 で の 心 筋 細 胞 の 長 さ や 幅 を
連 続 回路 を 一 巡 して 戻 っ て く る(図8.5).成
比 較 し た り,重 量 の 違 う心 臓 の 細 胞 の 太 さ を 調 べ た
量 は 体 重1kg当
報 告 で もそ の 差 は 明 確 で な く26),は っ き り と は わ か
で あ る.体
っ て い な い.
と計 算 され る.安 静 時 に は そ の う ち の0.8lの
③ 心 筋 は 単 収 縮 しか し な い.つ な 強 縮 が 起 こ らな い の で,心
ま り骨 格 筋 の よ う
臓 全 体 と し て 収 縮 と弛
緩 が 毎 回 必 ず 交 互 に 生 じ る こ とが 保 証 さ れ て い る.
人の 血液
た り男 性 で お よ そ75ml,女
重65kgの
男 性 で は,約5lの
循 環 系 に存 在 し て い る.右 る1回 拍 出 量70ml,1分 肺 循 環 は 約10秒,全
性 で65ml 血液 量 であ る
・左 の 各 心 室 か ら 拍 出 され 間 の 心 拍 数 を70回
細 胞 の 結 合 と い う点 で 筋 細
す る こ と に な る.ち
胞 の 分 化 を 考 え れ ば,最
も 原 始 的 な 筋 細 胞 と して 平
環 に か か る 時 間 は6∼8秒
で あ り,1分
間 に200∼250
滑 筋 細 胞 を 想 定 し,心 筋 細 胞 と い う 中 間 段 階 を 経 て 最 も 高 度 な 分 化 が 骨 格 筋 細 胞 に み られ る と い う 考 え
運 動 時 に は 血 流 配 分 も変 わ る が(図8.5右
8.7
く は 第9講 参 照),1回
刺 激 伝 達 系(特
殊 心 筋)
枝,プ
房 結 節,房
室 結 節,His束,左
ル キ ン エ 線 維 網 と い う,特
(図8.4左)心
殊心筋細胞があ り
臓 の 収 縮 を ま と め て い る.特
殊心筋細
し
拍 出 量 と心 拍 数 の 両 方 を増 加 さ
動 で の1回 拍 出 量 を130ml,最
・右 脚
上,詳
位 時 間 当 た りの 拍 出 量 を増 加 させ る.激
て 計 算 し て み る と,1分 心 臓 に は,洞
で 一巡
なみ に心 筋へ 血 液 を供給 す る冠循
mlも の 量 の血 液 が 心 筋 へ 流 れ て い る.
せ,単
とす れ ば,
身 循 環 は 平 均 す れ ば50秒
④ 収 縮 蛋 白 の 量 や,筋
が 成 り 立 つ26.
血液 が肺
し い運
高 心 拍 数 を190回
間 当 た り25lの
とし
血 液 が 右・ 左
の 心 室 か ら そ れ ぞ れ 駆 出 され る こ と に な る.そ の 場 合, 肺 循 環 に か か る時 間 は4秒(運
動 時 に 肺 循 環 に存 在 す
る血 液 量 が 多 少 増 加 した と し て),全
身 循 環 の 時 間 は8
胞 は 固 有 心 筋 と は異 な り,そ れ ぞ れ 自動 的 に 活 動 電 位
秒 とい う計 算 に な り,血 流 速 度 が か な り速 く な る こ と
を 生 じ る 能 力 を も っ て い る.な
が わ か る.一
レー トが 最 も速 い の で,通
か で も洞 房 結 節 の 放 電
常で は それが 心臓 拍 動の ペ
ー ス メ ー カ ー と な っ て い る.洞
房 結 節 は,右
壁 の 大 静 脈 との 境 界 部 に あ る2×0.2cmほ わ ず か1,000∼2,000個
心 房 の後 どの部位 の
の 細 胞 か ら構 成 され て い る.も
し洞 房 結 節 に ダ メ ー ジ が 生 じ,こ
の能力 が 失 われ た時
方,心
臓 へ の 血 流 量 は 安 静 時 の5倍
で 増 加 し て(1.2l/分)心 あ る.
にま
筋 の活 動 を支 え て いる ので
図8.5 循 環 回路 を模 式 的 に 表 した もの(a)と 各 器 官 へ の 血 管 が 並 列 に つ な が っ た もの と し て示 す.数
循 環 器 系(b)7)
字 は安 静 時 お よ び 運 動 時 の 心 拍 出量 と分 配 率 を 示 す.
8.9 神 経 性 の 心 拍 調 節 機 構
8.10 体 液 性 の 心 拍 調 節 機 構
心 臓 は 自律 神 経系 に よって密接 です ばや い調 節 を受
交感 神経 系 の刺激 に よって,副 腎髄 質 か らア ドレナ
けて い る(図8.6).心
臓 交 感神 経か らの 刺激 で心拍 数
リ ンが 血液 中 に放 出 され て心臓 に達 し,洞 房結 節 の β
は増 加す る.こ れ は心 臓 交 感神経 末 端 か ら遊 離 され る
受 容体 に作 用 して心 拍 数 を増加 させ る.ま た心 筋 だけ
ノル ア ドレナ リ ンが 洞房 結節細 胞 の β受 容 に作 用 して
で はな く全 身 に分布 してい る交 感 神経 終末 か らもノル
自発 興 奮 頻度 を増 加 させ る ため であ る.逆 に副 交感 神
ア ドレナ リ ンが分 泌 され,一 部 は血 中 に流 れ出 して心
経(迷 走神 経)末 端 か らの アセ チル コリ ンが 分泌 され
臓 に まで達 して,ア
る こ とに よ って,洞 房 結節細 胞 の 興奮 頻 度 は低下 し心
作 用 を もた らす.時 間的 にす ばや い 自律 神経 系 の調節
拍 数 が 減少 す る.こ の 二つ の拮 抗 す る神経 の 作用 がせ
機 構 とは異 な り,体 液 性 の調 節機 構 は持 続 的な局 面で
め ぎ合 って心 拍 数 が調 節 され る こ と にな る19,20).この
の心拍 の変 動 を調 節す る作 用 が あ るの では ない か と考
ドレナ リ ンと同様 に心拍 数増 大 の
よう に心 拍 数 は,自 律神 経系 に密接 に直接 影響 を受 け
え られ てい る20).
て い る こ とか ら,逆 に 自律 神 経 活動 を心拍 数 の1拍 ご
体 液 性 の 心拍 調節 機 構 の み が 関与 して い る例 とし
との 間 隔の 変化 か ら(心 拍 変 動 か ら)評 価 しよ うとい
て,心 臓 移 植患 者 のケ ース が あ げ られ る.こ の場合 の
う試 み もみ られ る6,17).
心臓 は神経系 の心 拍 調節 機構 を受 け てい ない ため運 動
また心 拍 の頻 度だ けで な く,心 筋 の収 縮 の強 さも こ
が 始 ま る前 に興 奮 した と して も心 拍 数 は変 化 しな い.
の 神経 系 に よっ て影響 を受 け る.す なわ ち交 感神 経 か
さ らに運 動が 始 ま ってか らの心 拍 数の 上昇 は健 常者 と
ら出 て くる ノル ア ドレナ リンに は心房,心 室 筋 の収 縮
比 較 して遅延 す る し,さ らに運 動終 了 後の 安静 時の レ
の 強 さ を増 す作 用 が あ り,ア セチ ル コ リ ンには心 房筋
ベ ルに まで心拍 数 が戻 るの に時 間 がか か る ことが認 め
の収 縮 力 を弱 め る作用 があ る.
られ る.
図8.7
各種 ス ポ ー ツ 選 手 の 心 臓 容 積 お よ び体 重 当 た りの心 臓 容 積(飯
る.1回
田 ・山 口,19979);Kuelら,198210)よ
り作 図)
拍 出 量 が 増 大 した た め に そ の 帰 結 と し て 徐 脈
が 生 じ た の か,そ
の 逆 な の か よ く わ か っ て い な い が,
こ れ ま で に 最 も低 い 値 で1分 間 に21拍 さ れ て い る21).ま た,血
とい うのが報 告
液 の循 環量 が増 す ような ラ ン
ニ ン グ な どの 競 技 で は,心
筋 の 肥 厚 で は な く心 室 自体
の 容 積 が 増 す よ う に肥 大 し,ウ エ イ トリ フ テ ィ ン グの 図8.6 (a)心
臓 の 自律 神 経 支 配7
(b)交
感神 経(ノ 作 動 性)刺
よ う な 収 縮 期,拡
ル ア ド レナ リ ン作 動 性)と
迷 走 神 経(コ
リン
は,壁
張 期 の 血 圧 を増 大 す る よ う な 競 技 で
の 肥 厚 が 生 じ て い る と考 え ら れ て い る.し
後 者 に 関 して は,そ
激 の 洞 房 結 節 の 膜 電 位 に 対 す る 効 果5)
か し
の よ うな短 時間 の刺激 で 心筋 肥大
の 刺 激 と な り う る の か,ま
た,骨
格 筋 肥 大 を 生 じや す
い競技 を選ぶ 選 手の場 合 には心 筋 は もと もと肥大 して 8.11ス
い る の で は な い か,と
ポ ー ツ心 臓
い う疑 問 も示 さ れ て い る.ま
ス ポ ー ツ 心 臓 の 肥 大 につ い て も,組 ト レ ー ニ ン グ を積 ん だ ス ポ ー ツ マ ン に は,安 徐 脈,心
臓 容 積 拡 大(図8.7),心
静時の
電 図異常 な どが高 頻
た
織学 的 に細胞 の数
の 増 加 か 大 き さ の 変 化 な の か い ま だ 明 確 な解 答 は な さ れ て い な い.
度 で み ら れ て き た8,12,14).単純 に トレ ー ニ ン グ効 果 と さ
最 初 に 考 え られ る 重 要 な こ と は,心 筋 の 肥 大 に 見 合
れ る骨 格 筋 の 肥 大 の 場 合 と は 異 な り,ス ポ ー ツ心 臓 は
っ た 冠 循 環 の 発 達 が あ る の か ど う か と い う 点 で あ る.
病 的 な 心 臓 と所 見 が 類 似 し て い る 点 で,注
心 筋 症 の 場 合,心
意 すべ き危
筋 肥 大 に見合 うだけ の毛細 血管 や収
険 な 兆 候 か ど う か 論 争 さ れ 続 け て い る11,13).と く に
縮 蛋 白 の 増 加 が み られ な い,あ
1998年 の フ ロ ー レ ン ス・ ジ ョ イ ナ ー の 心 臓 発 作 に よ る
オ シ ン の 方 向 性 が 正 常 な もの ほ ど は 認 め られ な い こ と
急 死 と い う シ ョ ッキ ン グ な 事 実 が 生 じた よ う な場 合 に
が 問 題 視 さ れ て い る.現
は,論
そ の よ う な 欠 点 は 指 摘 さ れ て い な い.さ
争 が 再 燃 す る.
る い は,ア
クチ ン と ミ
在 の と こ ろ ス ポ ー ツ心 臓 で は らに は,ス
ポ
ス ポ ー ツ心 臓 の 安 静 時 の 徐 脈 は,副 交 感 神 経 の 亢 進
ー ツ 心 臓 は 可 逆 的 な 適 応 で あ る と 考 え ら れ て お り,徐
に よっ て もた ら され て い る こ とは 明 らか に な って い
脈 と 同 様 に 心 筋 肥 大 も ト レ ー ニ ン グ 休 止 と同 様 に も と
の 状 態 へ 戻 る と さ れ て い る.し 弁(僧
帽 弁)の
か し な が ら,変 化 し た
大 きさ まで も とに戻 るの か どうか に 関
● 問
題
1. 浅 くて速 い 呼 吸 が ガ ス交 換 の 効 率 を低 下 させ る の は な ぜ か.そ の 理 由 を述 べ な さい.
して は 現 在 ま だ わ か っ て い な い21).
2. 運 動 時 の 呼 吸(換 気)調 節 の メカ ニ ズ ム につ い て述 べ 8.12
な さい. 運 動 性 貧 血
3. 漸 増 運 動 中 の換 気 応 答 に対 す る持 久 性 トレー ニ ン グの 影 響 につ い て述 べ な さい.
長 距 離 ラ ンナ ー な ど に は 貧 血 の 状 態(ヘ
モ グ ロビ ン
濃 度 が 男 性14g/dl,女
な り,パ
性12g/dl以
下)に
ォ ー マ ン ス が 低 下 す る こ と が よ くみ ら れ る.こ しい トレ ー ニ ン グ に 伴 い,赤
フ
れは 激
血球 が物 理 的 衝撃 あ るい
4. 心 筋 に は 固 有心 筋 と特 殊 心 筋 が あ るが,そ れ ぞ れ の 特 徴 につ いて述 べ な さい. 5. 心 拍 の 調 節機 構 につ い て述べ な さい. 6. ス ポ ー ツ 心 臓 と病 的 心 臓 との 違 い に つ い て 述 べ な さ い.
は 乳 酸 な どの 影 響 に よ っ て 壊 れ や す く な っ て い る た め だ と考 え られ て い る.一 低 い の は,血
方 で は,ヘ
モ グ ロ ビ ン濃 度 が
漿 量 を増 加 させ 血 液 粘 性 を 下 げ て 流 れ や
● 参 考 文献 1) Boutellier,
す くす る 適 応 で も あ る と い わ れ る が18),そ の 場 合 に は
exercise
安 静 時 に お い て で さ え,長
Appl.
般 人 よ り1lも
距 離 ラ ンナー の血液 量 は一
多 い 計 算 に な る.ま
た エ リス ロポエ チ
ンや 自 己 血 液 の 再 注 入 な ど に よ っ て ヘ モ グ ロ ビ ン濃 度 を 上 昇 さ せ,パ グ が,マ
フ ォー マ ン ス を 上 げ る 目 的 の ドー ピ ン
ラ ソ ン,自 転 車 競 技,ス
キ ー 距 離 競 技 にお い
て 行 わ れ て い る の で は な い か と疑 わ れ る こ と も 多 い.
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図8.8
ま た,長
赤 血 球 膜 浸透 圧 抵 抗 曲 線(CPC法
に よ る測 定)
距 離 ラ ン ナ ー の 赤 血 球 の 寿 命 は,一
わ れ て い る 寿 命(120日)よ
般にい
り も 短 く な っ て い る と容
8) 家 光 素 行,宮
難 し い が,食
血 球 の 寿 命 を 簡 単 に測 定 す る の は
塩 水 の 濃 度 勾 配 を 利 用 し赤 血 球 膜 の 浸 透
圧 抵 抗 を 測 定 す る こ と に よ っ て,赤
血 球の 脆弱 性 をみ
る こ とが で き る.こ
planet centrifuge)
法 と よ ば れ,螺
れ はCPC(coil
旋 状 に巻 いた コ イルの 中 に濃度 勾配 を
つ け た 食 塩 水 と血 液 を 封 入 し て,二 を か け て,ど
重 回転 の遠 心分 離
れ く らい の 浸 透 圧 ま で 赤 血 球 膜 が 壊 れ な
い で 耐 え る こ と が で き る か を 測 定 す る もの で あ る(図
地 元 彦:安
の グ ラフの 曲線 の面積 を検討 す る ことで運動
性 貧血 にお け る赤 血球 の強 さご との状態 を詳細 にみ る こ とが で き る.
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9 運動 と末梢循環
末梢 循環 にお け る血 流 は酸素 や栄 養物 な ど組織 が必要 とす る物 質 を供給 す る とと もに,二 酸 化 炭素 や代謝 産物 な どの老 廃物 を洗 い 出す重 要 な役 割 を果 た してい る.本 講で は,運 動 に よっ て生 じる末梢 循環 の 血流 の変化 とそ の調節,な らびに トレー ニ ングの結 果 生 じる末梢 循環 の適 応 につ い て機 能的 ・構 造的側 面 か ら論 じる.
した もの で あ る.安 9.1運
動 と血 流 配 分
大 し,激 a.運
動 強 度 と血 流 変 化
量 は22lと
運 動 強 度 の 高 ま りと と もに 心 拍 出 量(cardiac が 増 加 す る こ とか ら わ か る よ う に,全
静 時 に1.2l,割
で あ っ た 筋 血 流 量 は,運
output)
身 の 血 流 量 も運
合 に し て 約20%
動 強 度 が 強 くな る と と も に 増
しい 運 動 時 に は 心 拍 出 量 が25lに な り,割
合 に し て88%に
こ の よ う な筋 血 流 量 の 変 化 に 対 し,激
対 し筋 血 流
ま で 増 加 す る. しい 運 動 時 の 内
臓 や 腎 臓 の 血 流 量 は 安 静 時 と比 べ て 逆 に 低 下 す る.つ
動 強 度 と と も に 増 加 す る.一 般 に 成 人 にお け る 安 静 時
ま り運 動 に伴 う心 拍 出量 の 増 加 は,暑
の 心 拍 数(heart
て 皮 膚 血 流 量 が 大 き く増 加 す る場 合 を 除 い て,そ
出 量(stroke
volume:SV)は60∼70mlで
拍 出 量 は 約5lで 拍 数,1回 150ml以
rate:HR)は50∼70拍/分,1回
あ る と さ れ て い る.運
拍 出 量 は増 加 し,そ
は 約4∼6倍
あ り,心 動 に よっ て心
れ ぞ れ 最 高180拍/分,
上 に も達 す る こ とが あ る.し
出 量 も最 高20∼40lに
拍
た が っ て,心
拍
に ま で 増 加 す る.図9.1は
安 静 時 に約5l
の 心 拍 出 量 を もつ 人 の 運 動 に よ る血 流 配 分 の 変 化 を示
のほ
と ん どが 筋 血 流 量 の 増 加 と考 え る こ とが で き る.な お, 脳 や 心 臓 は 激 しい 運 動 時 に お い て も安 静 時 の 血 流 量 は 維 持 され る.静
も な り,運 動 に よ っ て 血 流 量
熱 環境 下 におい
的 運 動 時 に は 強 度 が 高 くな る と筋 収 縮
に伴 う筋 内 圧 の 上 昇 に よ っ て 血 流 は 阻 害 され,血 下 が み ら れ る もの の,一
般 に,動
流低
的 運 動 時 に は筋 血 流
量 は 最 大 運 動 に 至 る ま で 運 動 強 度 に 依 存 して 増 加 す る.ヘ
モ グ ロ ビ ン濃 度 が 低 下 し た り,低 酸 素 環 境 下 に
図9.1 運 動 強 度 の 増 加 に伴 う 各組 織 で の 血 流 量 の 変 化(Andersen.19682)を
改 変)
図9.2
トレ ッ ド ミル で の ラ ンニ ン グ ス ピー ドと筋 血流 量 の 関 係13)
GR,GM,GWは,そ
れ ぞ れ 腓 腹 筋 深 層部,中
部 を示 す.P,S,TAは,そ
れ ぞ れ 足 底 筋,ヒ
間 層 部,表 ラ メ 筋,前
層 脛
骨 筋 を示 す.
お い て 酸 素 運 搬 能 力 が 低 下 し た場 合 で は 血 流 量 が 増 加 す る こ と で 酸 素 運 搬 は一 定 に 保 た れ,逆
にヘ モグ ロ ビ 図9.3
ン濃 度 が 上 昇 した 場 合 に は血 流 量 が 減 少 す る.こ う に,運
動 中 の 筋 血 流 量 は筋 の 酸 素 消 費 量(VO2)に
接 に 関 係 し て 変 化 す る.筋
のよ
安 静 時 か ら受 動 的 運 動 時,お 30W,50W,お 動)ま
密
よび70Wで
で の 時 間経 過 に お け る 大 腿 動 脈 の 血 流 変 化19)
自発 的 運 動 の 開 始 時 を0秒 と した.
血 流 量 と い っ て も活 動 筋,
非 活 動 筋 に よ っ て 筋 血 流 量 の 増 加 に 違 い が あ り,活 動
数 秒 以 内 に10倍
筋 に 特 異 的 に増 加 す る.非
活動 筋で は時 間経過 に よっ
筋 血 流 量 は 比 較 的 安 定 し,高
て 逆 に 血 管 収 縮 が 生 じ,血
流 が 減 少 す る こ とが あ る.
上 昇 し 続 け る も の の,軽
活 動 筋 で あ っ て も筋 線 維 タ イ プ に よ っ て 筋 血 流 量 の 変 化 に 違 い が あ る.図9.2は
の 後 約30∼90秒
で
強度 の運 動で はそ の後 も
い運 動 で は定 常 状 態 に なる
(図9.3).
9.2
運 動 中 の 血 流 変化 の調 節
ほ と ん どType Ⅰ 線 維 か ら な る筋 で
あ り,腓 腹 筋 表 層 部(GW)は ら な る 筋,そ
に も増 加 す る.そ
ネ ズ ミ を 使 っ た ラ ンニ ン グ
中 の 下 肢 筋 群 の 筋 血 流 量 を調 べ た も の で あ る13).図 中 の ヒ ラ メ 筋(S)は
よび 自 発的 運 動(10W,
の 片 足 に よ る動 的膝 伸 展 運
す べ てType ⅡB線
の 他 の 筋 はType Ⅰ, ⅡA, ⅡB線
在 した 筋 で あ る.ラ
維か 維 が混
ンニ ン グ ス ピー ドが0m/分
つ ま り立 位 安 静 時 の 血 流 量 は お も にType Ⅰ な る ヒ ラ メ筋 の 血 流 量 が 多 く,そ
の 時,
運 動 時 の 血 流 は どの よ う に し て 調 節 され て い る の だ ろ う か.血
流 量(F)は
圧:Pa-Pv)と
末 梢 血 管 抵 抗(R)に
線維 か ら
の 後 し だ い に ラ ンニ
還 流 圧 差(動
脈 血 圧-静
脈血
よ っ て 決 ま り,
F=(Pa-Pv)/R で 表 さ れ る.こ
れ は ポ ワ ズ イ ユ の 法 則(Poiseuille's
ン グ ス ピ ー ドが 増 す につ れ 混 在 型 の 筋 の 血 流 量 が 増 加
law)と
す る.一
加 す る の は 動 脈 血 圧 が 高 く な る こ と,静 脈 血 圧 が 低 下
方,Type ⅡB線
維 よ りなる腓 腹 筋表 層部 の血
流 量 の 増 加 は ス ピ ー ドが60m/分 て 顕 著 に な る.ヒ
以 上 に な っ て は じめ
トで は 技 術 的 問 題 か ら こ の よ う な 関
係 は 調 べ られ て い な い が,運
動 中 の 血 流 量 は,低
の 運 動 で は 優 先 的 にTypeⅠ
線 維 に 血 液 が 供 給 さ れ,
運 動 が 激 し く な る に つ れ てType ⅡA線 に な り,さ
強度
維 の血 流が 顕著
ら に 高 強 度 の 運 動 に な る とType ⅡB線
維の
よ ば れ る.つ
す る こ と,さ
ら に 末 梢 血 管 抵 抗 が 低 下 す る こ との 三 つ
が 相 互 作 用 した 結 果 で あ る.運
動 によ って生 じるこれ
ら変 化 の 主 要 な 影 響 因 子 と して,動
脈 血 圧 は運 動 強 度
に 比 例 し た 心 拍 出 量 の 増 加(第8講
参 照)が,静
圧 は 運 動 中 の 筋 収 縮 に よ る 筋 ポ ン プ作 用,さ 血 管 抵 抗 に つ い て は 交 感 神 経 系(ア
脈血
らに末梢
ド レナ リ ン作 動 性
ニ ュ ー ロ ン)の 作 用 や ホ ル モ ン(ア ン ギ オ テ ン シ ンⅡ,
血 流 量 が 増 加 す る と考 え られ る.
バ ソ プ レ ッ シ ン)な b.時
ま り,運 動 に よ っ て 血 流 量 が 増
(ア デ ノ シ ン な ど)な
間 経 過 に伴 う血 流 量 の 変 化
どに よる血管 収縮 作 用 と代謝 産物 どの血 管 拡 張 因子 の相 対 的 な変
運 動 の 開 始 と と も に急 激 な 筋 血 流 量 の 増 加 が 観 察 さ
化 が あ げ られ る.一
れ,安
血 流 量 の 増 加 の し くみ は 交 感 神 経 と代 謝 産 物 の 相 対 的
静 時0.3l/分
で あ っ た 筋 血 流 量 は,運
動 開始 後
般 的 に は,運
動 に よる 局所的 な筋
らの 因 子 は 血 管 拡 張 作 用 を もち,運
動 中の筋 血流 量 増
加 と 関 係 す る こ と が 指 摘 され て い る(表9.1).と
くに
ア デ ノ シ ン は そ の 阻 害 剤 を運 動 中 投 与 す る と筋 血 流 量 の 低 下 が 観 察 さ れ る21)こ とか ら,運 動 中 の 筋 血 流 量 を 増 加 させ る 主 要 な 因 子 と し て 考 え ら れ て い る.ア シ ン はATPを
分 解 し た 時 の 産 物 で あ るAMPを
デノ
基質 と
して 細 胞 膜 の 外 膜 に 局 在 す る5'-ヌ ク レ オ チ ダ ー ゼ と い う分解 酵素 に よって生 成 され るの で代 謝状 態 や筋収 縮 と 強 く関 連 し,筋 図9.4
て 増 加 す る.
機 能 的交 感 神 経 遮 断 の概 念 図21)
ノ ル ア ドレ ナ リ ン(NA)は 放 出 され るが,そ
血 流 量 と同 様 に 運 動 強 度 に 依 存 し
交 感 神 経 活 動 の 増加 に 関連 して
の 効 果 は骨 格 筋 の収 縮 に 関係 した 合 成物 質
に よ って 完 全 また は 部 分 的 に抑 制 さ れ る.そ
c.交
のため筋への血
感神 経 活動
運 動 中 の 筋 血 流 量 の 増 加 は 活 動 筋 に 特 異 的 で あ り,
液 や 酸 素 供 給 が 十 分 に 確 保 され る.
非 活 動 筋 で は 一 般 に 運 動 中 血 流 量 は 増 加 し な い か,あ
な力 関係 で 説 明 され,図9.4の
に ように表 され る.体
循 環(毛 細 血 管 を除 く)の すべ て の血 管 は交 感 神 経
る い は 時 間 の 経 過 と と もに 低 下 す る.非
活 動 筋 で は血
流 の 増 加 を起 こ す 筋 ポ ン プ作 用 の 働 きは 少 な く,代
(交感 神経 ア ドレナ リ ン作 動性 ニ ュー ロン)の 支配 を
産 物 もあ ま り生 成 さ れ な い 一 方 で,交
謝
感神 経 活動 が亢
受 けて い る.通 常,交 感神 経 は持 続的 に イ ンパ ルス を
進 す る こ とで 血 流 量 が 減 少 す る と考 え ら れ て い る.
血 管 に送 って いて,そ の 末端 は血 管壁 の外 膜 まで延 び
活動 筋 の血 流量 とは逆 に 内臓 や腎臓 の血 流 量 は運動
てお り,神 経伝 達物 質 と して ノルエ ピ ネフ リ ンを放 出
強 度 に 比 例 して 減 少 す る.運
す る.こ れ は血 管 平滑 筋 を収 縮 させ,適 度 な血 管 緊張
の血流 量 の低 下 の主 要 な因子 は交 感 神経活 動 の増 加 と
を起 こす こ とで さ まざ まな組織 の 血流 や血 圧維 持 に重
考 え られ て い る.実 際,腎 臓 の 交 感 神 経 活 動 の 増 加 は 運
要 な役割 を果 た して い る.運 動 に よって活 動筋 にアデ
動 強 度 に 依 存 して 増 加 す る こ とが 報 告 さ れ て い る17).
動 中に生 じる内 臓 や腎臓
ノシ ンな どの 代 謝 産物 が 蓄積 す る と,こ れ が交 感神 経 の血 管収 縮作 用 に拮 抗 的 に働 き,血 管 を拡 張 させ,筋
d.ア
の血流 量 を増 大 させ る.
運 動 中 血 管 を収 縮 させ,血 して,血
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ,バ
ソ プ レッシ ン 流減 少 に影響 す る 因子 と
圧調 節 に関 係す るホル モ ンであ る ア ンギ オテ
ン シ ン Ⅱ や バ ソ プ レ ッ シ ン の 関 与 が 指 摘 さ れ て い る.
9.3 血 流 量 に 影 響 を 与 え る 因 子
ア ン ギ オ テ ン シ ンⅡ は 運 動 中 腎 交 感 神 経 活 動 の 増 加 に
a.筋 ポ ンプ作 用
よ る 血 中 レ ニ ン の 上 昇 に起 因 して そ の 合 成 が 高 ま る.
運 動 中,筋 血 流量 は筋収 縮 と同期 して変 化 す る.こ
バ ソ プ レ シ ン は運 動 中 の 体 温 や 血 漿 量 の 変 化 に 関 係 し
れ は筋収 縮 時 に筋 内圧 が高 ま り,細 静 脈が 押 しつぶ さ
て 下 垂 体 後 葉 か らの 分 泌 が 亢 進 す る.ア
ンギ オ テ ン シ
れ,血 管 内 の血 液 が心 臓側 へ押 し出 され る(静 脈弁 の
ンⅡ や バ ソ プ レ ッ シ ン は 運 動 強 度 に 依 存 し て 増 加 す
働 きで 末梢 側 へ は逆 流 しな い).こ の細 静 脈 の 内圧 の
る.ア
低 下 は動 脈血 圧 と静 脈 血圧 の 血圧 差 を増大 させ,血 液
投 与 す る と 運 動 中 の 内 臓 の 血 流 低 下 が 軽 減 さ れ る22,23)
を よ り流 れ やす く させ る.こ の よ うな筋ポ ンプ作用 は
こ と か ら,ア
と くに,運 動 開始直 後 の筋 血 流量 の増 加の 主要 な 原因
動 中 の内臓 血 流量 の 低下 の重 要 な因 子 と考 え られて い
と考 え られて い る19).
る.
b.代 謝産 物 な ど(ア デ ノ シ ン,乳 酸 な ど) 運 動 中 に活 動 筋 で は乳 酸 の生 成 が 高 ま り,pHの
e.血
低
ン ギ オ テ ン シ ン Ⅱや バ ソ プ レ ッ シ ンの 拮 抗 剤 を
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ や バ ソ プ レ ッ シ ン は 運
管 内皮 細胞 由来 弛緩 因子 の一酸化 窒 素
一 酸 化 窒 素(nitric
oxide
下やPCO2の 上 昇 が 起 こ る.ま た,筋 収 縮 に伴 い筋温 も
解 明 に よ る1998年
上 昇 し,ア デ ノ シ ンな どの代 謝産 物 も増加 す る.こ れ
表 さ れ る よ う に,NOは
: NO)の
生理 的 な役 割 の
ノ ー ベ ル 生 理 学 ・医 学 賞 受 賞 に 代 今 日非常 に注 目され て い る物
質 で あ る.血
管 内 皮 細 胞 由 来 のNOは
的 な 刺 激(ず
り応 力)や
セ チ ル コ リ ン),ハ
血流 に よる機 械
コ リ ン作 動 性 ニ ュ ー ロ ン(ア
イポキ シア な どに よる 刺激 に よっ
て 増 加 す る こ とが 知 られ て お り,内 皮 細 胞 のNO合 酵 素 の 働 き に よ っ てL-ア NOは
成
ル ギ ニ ン か ら生 成 さ れ る.
動 脈 壁 に あ る 血 管 平 滑 筋 の グ ア ニ レー トシ ク ラ
ー ゼ の 活 性 化 と そ の 後 のcGMPの 張 を 引 き 起 こす.NOの
働 きに よって血 管拡
役 割 と しては安 静 時 の血 管 緊
そ の 産 生 が 増 大 す る こ とが 報 告 さ れ14),そ の 役 割 が 注 目 さ れ て い る.エ
ン ドセ リ ン-1は
作 用 を も つ ほ か,ノ
直 接 的 な血 管収 縮
ル エ ピ ネ フ リ ンの 血 管 収 縮 作 用 を
増 大 さ せ る 作 用 を も っ て い る.こ て エ ン ドセ リ ン-1が
の よ う な 働 き に よっ
運 動 中 の 血 流 再 配 分 に 貢 献 して
い る 可 能 性 が あ る.そ
の ほ か に,神
経伝 達物 質で あ る
ドー パ ミ ンや ニ ュ ー ロ ペ プ チ ドYが 運 動 中 増 加 し,腎 臓 の 血 管 収 縮 に影 響 を 及 ぼ す こ と を 示 唆 した 報 告24)が
張 の 維 持 に と っ て 重 要 で あ る こ と が 知 ら れ て い る が,
あ る.し
運 動 時 の 筋 血 流 量 の 増 加 に対 す る 役 割 につ い て は あ ま
子 に つ い て 運 動 との 関 わ りは現 在 の と こ ろ明 確 で な
り明 確 で な い と こ ろ が あ る.NO合
い.
成酵 素 の 阻害 剤 を
か し な が ら,こ れ らの 因 子 を 含 め,多
くの因
投 与 す る と運 動 時 の 血 流 量 が 低 下 した と す る報 告6)が あ る 一 方 で,そ
の よ うな阻害 剤 を投与 して も運動 時 に
9.4 ト レ ー ニ ン グ に よ る 血 流 量 の 変 化
血 流 低 下 が み ら れ な か っ た り25),あ る い は 安 静 時 の 血 流 低 下 と 同 程 度 で あ っ た7)と す る 報 告 もあ る.そ か で,最
近,Hicknerら8)は
のな
今 までの 技術 的 な問題 を
考慮 した うえ で いろ い ろな強 度で の持 久的 な運 動 中の NOの
影 響 を 調 べ,筋
血 流 量 の 増 加 にNOが
す る こ と を 報 告 し て お り,NOが
運 動 中 の 血 流 量 に 及 ぼ す ト レー ニ ン グ の 効 果 に つ い て は,安
静 時,最
大下 の 運 動,最
大運 動 に分 け て論 じ
て い く こ とに す る.
強 く関与
運動 中 の筋 血 流量 の
増 加 に 関 与 す る 可 能 性 を指 摘 して い る.
a.安
静
時
安 静 時 に お い て は トレ ー ニ ン グ に よ っ て 筋 の 交 感 神 経 活 動 に 変 化 が み ら れ な い.ま
た,心
拍 出 量 も ト レー
f.そ の 他 の 因 子
ニ ン グ 前 と比 較 して 違 い が み られ な い .こ の よ う な 現
上 記 以 外 に も 数 多 くの 因 子 が 血 流 調 節 に 関 係 し て い
象 と 関 連 して,安
る こ と が 知 ら れ て い る(表9.1).そ
響 を 受 け な い と考 え られ て い る.
れ らの 因 子 の 中 で,
静 時 の 筋 血 流 量 は ト レー ニ ン グ の 影
内 皮 細 胞 由 来 の 血 管 収 縮 因 子 で あ る エ ン ドセ リ ン-1 を 運 動 中 に投 与 す る と 内臓 の 血 流 量 が 低 下 す る こ と1),
b.最
ま た 運 動 中 血 流 量 が 増 加 す る 活 動 筋 に お い て エ ン ドセ
持 久 性 トレ ー ニ ン グ 後,ト
リ ン-1の
運 動 を 行 っ た 場合,酸
産 生 が 変 化 し な い の に 対 し,非
活動筋では
大 下 の運動
表9.1 細 動 脈 を収 縮 ま た は 拡 張 させ る要 因(熊 田,199412を
レー ニ ン グ 前 と 同 負 荷 の
素 摂 取 量 や 心 拍 出 量 は トレ ー ニ
改 変)
ン グ前 と 変 わ ら な い こ と が 知 ら れ て い る.血 い て 観 察 す る と,筋
流量 につ
血 流 量 は 変 化 し な い か,あ
少 な い 値 を示 す 一 方,内
臓 な ど の 非 筋 肉組 織 につ い て
は ト レー ニ ン グ前 よ り血 流 量 は 増 加 す る.ト グ 前 と 同 等 か,そ
るい は
レーニ ン
れ 以 下 の 筋 血 流 量 で ト レー ニ ン グ 後
に 運 動 す る と い う こ と は,ト
c.最
大 運 動
持 久 性 ト レー ニ ン グ 後,最
大 心 拍 出 量 は 増 加 す る.
各 組 織 の血 流 量 に つ い て み る と最 大 運 動 中 の筋 血 流 量 は 増 加 す る 一 方,非
筋 肉組 織 や非 活動 筋 の血流 量 は ト
レ ー ニ ン グ前 と変 わ ら な い.最
大 運動 中の筋血 流量 の
レ ー ニ ン グ前 と 運 動 中 の
増 加 は 活 動 筋 の 血 流 の 増 加 に起 因 し,そ の 増 加 の 程 度
酸 素 消 費 量 が 等 し い こ と か ら,筋 の 酸 素 吸 収 率 が 高 ま
も ほ ぼ 心 拍 出 量 の 増 加 に等 しい こ と か ら も,最 大 運 動
っ た こ と が 推 察 さ れ る.ArmstrongとLaughlin4)は
中 の 筋 血 流 量 の 増 加 は 心 拍 出量 の 増 加 が そ の 主 要 な 原
持
久 性 トレ ー ニ ン グ を ラ ッ トに 行 わ せ トレ ー ニ ン グ 群 と 非 ト レー ニ ン グ群 を比 較 した と こ ろ,ト
レー ニ ン グ群
で は 運 動 中 活 発 に 動 員 され る 活 動 筋 内 のType ⅡA線 か ら な る 部 位 に,よ と を み つ け た.こ
因 と考 え られ て い る.
維
9.5
末 梢 循 環 の 構造
り 多 くの 血 液 が 供 給 さ れ て い た こ
の よ う な 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ る
筋 の 酸 素 吸 収 率 の 増 大 は,運 動 中 の 筋 肉 内,お
よび 筋
血 管 は血 液 を 全 身 に 循 環 させ る パ イ プ と して の 役 割 を もつ ほか に,運
動 時 の 血 流 再 配 分 や 血 圧 調 節 な どの
肉 間 の 血 流 分 布 が 変 化 し,活 発 に動 員 さ れ て い る 筋 線
血 流 制 御 に 深 く関 わ っ て い る.そ
の た め,こ
維 に よ り多 くの 酸 素 を 供 給 した た め に 生 じた と 考 え ら
べ て き た機 能 面 と 関 連 づ け て,そ
の構 造 を理解 す る こ
れ る.ま と,ト
た,最
大 運動 で あ ろ うと最大 下運 動 であ ろ う
レ ー ニ ン グ 効 果 が あ ら わ れ る の は トレ ー ニ ン グ
に よ っ て 活 発 に 動 員 さ れ た 部 位 に特 異 的 で あ る.最 下 の 運 動 中,ト
大
レ ー ニ ン グ に よ っ て 活 動 筋 に よ り多 く
とが 大 切 で あ る.動
れ まで述
脈 は 心 臓 か ら末 梢 へ い くに 従 っ て
分 岐 し,そ の 径 は しだ い に 細 く な っ て い く.血 管 の 直 径 が1mm∼100μmま
で の 動 脈 を 小 動 脈 とい い,さ
ら に細 くな り直 径 が 約40μm(100∼20μm)と
なっ
の 血 流 量 が 供 給 さ れ る よ うな 血 流 の 再 配 分 が 生 じた し
た と こ ろ を 細 動 脈 とい う.血 管 の 内 層 は 内 皮 細 胞 に よ
くみ と し て は,ト
っ て す べ て 覆 わ れ て い て,そ
レーニ ングに よる筋 線維 の動 員 の変
の ま わ り を平 滑 筋 細 胞 や
化 とそ れ に 付 随 した 血 管 拡 張 因 子 で あ る代 謝 産 物 や ア
弾 性 線 維 が 囲 っ て い る(図9.5).平
滑 筋 細 胞 に は血 管
シ ドー シ ス の 局 所 的 な 増 加 と筋 ポ ン プ 作 用 の 効 率 化 な
を 収 縮 ・弛 緩 させ る 働 きが あ る.小
ど の 血 流 増 加 要 因 の 関 与 と,筋 の 交 感 神 経 活 動 の 低下
の 平 滑 筋 細 胞 が 発 達 し て い て,血
動 脈や 細動 脈 は こ
管 内 径 を 変 化 させ る
や そ れ に対 す る 血 管 の 感 受 性 の 低 下 と い っ た 血 管 収 縮
こ と に よ っ て 末 梢 抵 抗 をつ く り 出 し,血 圧 や 毛 細 血 管
活 動 の 低 下 が 関 与 し て い る も の と考 え ら れ る.ト
へ の 血 流 量 を 調 節 し た りす る.
レー
ニ ング後 に内臓 な どの非筋 肉組 織 の血 流量 の低 下 が軽
毛 細 血 管 は 血 液 と細 胞 間 の 物 質 交 換 が 行 わ れ る 主 要
減 され るが,そ
の 理 由 と して は 交 感 神 経 活 動 や 血 漿 ア
な 場 所 で あ る.毛 細 血 管 の 構 造 は物 質 の 出 入 り に適 し
ン ギ オ テ ン シ ンⅡ お よ びバ ソ プ レ ッ シ ン濃 度 が 低 下 し
て お り,非 常 に 薄 く,内 皮 細 胞 と周 皮 細 胞 か ら構 成 さ
た こ とが 関 係 し て い る と考 え ら れ て い る.
れ て い る(図9.5).毛
図9.5 末梢循環 と毛細血管 の模式図20)
細 血 管 自体 は 平 滑 筋 を も た な い
こ と か ら,毛 細 血 管 へ の 血 流 量 の 調 節 は 小 動 脈 や 細 動
む よ う に 配 列 さ れ て い る.筋
脈 の 収 縮 ・拡 張 に依 存 し て い る こ と に な る.毛
毛 細 血 管 に よ っ て 囲 ま れ て い る が,筋
の 全 周 は,2∼3個
そ の 直 径 は 部 位 に よ っ て 異 な る が,ほ ∼10μmの
細 血管
の 内 皮 細 胞 に よ っ て 囲 ま れ て い て,
範 囲 に あ る .赤
μmで あ る た め,毛
と ん ど が 直 径4
血 球 の 大 き さ は 直 径 約8
細 血 管径 は赤 血 球が 一 時的 に 変形
線 維 の 多 く は3∼6本
線 維 タイ プに よ
っ て そ の 毛 細 血 管 数 は 異 な り,Type ⅡB線 Ⅰ 線 維 やType ⅡA線
の
維 は,Type
維 と比 較 して そ の 数 は 少 な い.そ
の 一 方,毛 細 血 管 の トレー ニ ン グ に対 す る 適 応 能 力 は, 筋 線 維 タ イ プ 問 で ほ と ん ど違 い は み ら れ ず,運
動 に動
し て 管 内 を通 過 す る こ と が で き る 大 き さ で し か な い.
員 され,毛
赤 血 球 は そ の よ う な 狭 い と こ ろ を ゆ っ く り と流 れ,効
管 数 は増 加 す る.つ
率 よ く物 質 交 換 を行 っ て い る.毛
員 さ れ る よ う な ト レー ニ ン グ で は どの タ イ プ の 筋 線 維
胞 の 役 割 に つ い て は,現
細 血管 を囲む 周皮 細
在 で も不 明 の 点 が 多 い.
毛 細 血管 と トレーニ ング
格 筋 の毛 細 血管 は筋 線維 の走 行 に沿 って 伸
び て い る が,そ れ は 直 線 的 で な く大 き く蛇 行 して い る. そ の 結 果,毛
満 園 ら16)が5000m∼20kmま
ま り,す べ て の 筋 線 維 タ イ プ が 動
も毛 細 血 管 数 の 増 加 が み られ る. ま た,骨
9.6
細 血 管血 流 量が 増大 す る筋 にお い て毛細 血
で の ラ ンニ ン グ パ フ
細 血 管 長 は 直 線 的 で あ る よ り もず っ と 延
長 す る こ と に な り,筋 線 維 と の接 触 面 積 を広 く保 つ こ
ォ ー マ ン ス と毛 細 血 管 密 度 との 間 に 有 意 な 相 関 関 係 を
とが で き る.こ
み つ け て い る よ う に,毛
効 率 よ く 行 う こ と に 貢 献 して い る.そ し て,ヒ ラ メ筋 な
細血 管 の発 達度 は持 久性 パ フ
ォー マ ン ス に 影 響 を 与 え る 重 要 な 因 子 で あ る.持
久性
トレ ー ニ ン グ は毛 細 血 管 の 形 態 を 発 達 させ る が,そ 変 化 は 最 大 酸 素 摂 取 量 の 変 化 に 先 行 す る か,も ほ ぼ 平 行 す る と考 え られ て い る.図9.6に 取 量,筋
の 酸 化 系 酵 素 活 性,毛
の
し くは
最 大酸 素摂
ど のType Ⅰ 線 維 が 多 い 筋 で は,Type Ⅱ
線 維 の多 い筋
よ り も蛇 行 の 程 度 が 大 き い こ と が わ か っ て い る.し か し な が ら,持
久 性 ト レ ー ニ ン グ は 蛇 行 の 程 度 に対 し て
は ほ とん ど影 響 し な い こ とが 報 告 され て い る18).ま た,
よ
トレ ー ニ ン グ は 毛 細 血 管 内 腔 の 大 き さ に も 影 響 す る.
び 筋 線 維 横 断 面 積 の 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ る 変 化 を
高 強 度 の 持 久 性 トレ ー ニ ン グ で は 毛 細 血 管 数 の 増 加 と
模 式 的 に 示 し た.8週
と も に 内 腔 面 積 の 拡 大 が 起 こ り,そ の 結 果 と し て 毛 細
間 の 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ っ
て 最 大 酸 素 摂 取 量 は 約15%の も 約20%程
細 血 管 数 と密 度,お
の こ と は 血 液 と筋 線 維 間 の 物 質 交 換 を
増 加 を,毛
度 の 増 加 を 示 して い る.ま
細 血 管密 度
た,脱
ニ ン グ に よ っ て も これ ら の 指 標 は 比 較 的 ゆ る や か な 低 下 を示 す.こ ー ニ ン グ後
血 管 表 面 積 の 増 加 を生 じる こ とが 観 察 さ れ て い る10).
トレー 9.7
毛 細 血 管 の 新 生
れ に 対 し酸 化 系 酵 素 活 性 は8週 間 の ト レ ,約40%の
増 加 を 示 す 一 方 で,脱
トレー
持 久 性 トレ ー ニ ン グ を行 う と動 員 さ れ た 筋 線 維 で は
ニ ン グ に よ っ て す み や か に ト レー ニ ン グ 効 果 が 失 わ れ
酸 素 や 栄 養 素 な ど の 需 要 が 高 ま り,よ
る.
給 を必 要 とす る よ う に な る.こ
図9.7に
図9.6
示 した よ う に,毛
り多 くの 血 液 供
の 際,血
液 供給 が十 分
細 血 管 は筋 線 維 を 取 り 囲
トレ ーニ ングお よ び脱 ト レー ニ ン グに よ る最 大 酸 素 摂 取 量 お よ び 筋 の 適 応 の 模 式 図(Andersenと Henriksson,19773);Klausenら,198111)よ
り作 図)
図9.7
ラ ッ ト足 底 筋 の横 断像9)
毛細 血管 が拡 張 した状 態 にあ る顕 微 鏡 写 真.バ
ー は30μm.
で な け れ ば,筋
細 胞 は必 要量 の酸 素 や栄 養素 を摂取 す
る こ とが で きな い.こ の よ う な 状 態 に 対 処 す る た め に, 生 体 は既 存 の 毛 細 血 管 か ら枝 を伸 ば す(発 う に 新 し い パ イ プ をつ くる.こ 生 と よ ん で い る.毛
細 血 管 は血管 内 皮細 胞 によ って構
成 され て い る た め,血 味 して い る.血
芽 す る)よ
の よ う な現 象 を 血 管 新
管 新生 とは内皮 細 胞の増 殖 を意
管 新 生 の 結 果,毛
細血 管 の容積 が増 大
し,細 胞 へ 十 分 な 血 液 を供 給 す る こ とが 可 能 に な る. 近 年,内
皮 細 胞 の 増 殖 メ カ ニ ズ ム の 解 明 は 分 子 レベ
ル で 急 速 に 進 ん で い る.運
動 時 には毛 細血 管へ の血 流
量 が 急 激 に 高 ま り,こ れ に 伴 っ て 毛 細 血 管 壁(血 皮 細 胞)に
は,ず
り応 力 が 加 わ る.ず
管内
り応 力 の 増 大 は
血 管 内 皮細 胞 の 増 殖 活 性 を示 す 線維 芽 細 胞 増 殖 因 子 (fibroblast growth ま た,運
factor:FGF)な
細 胞 増 殖 因 子(vascular VEGF)を
ど の 産 生 を 高 め る.
動 中 に 生 じ る よ う な低 酸 素 状 態 は,血 endthelial
growth
管 内皮
factor:
発 現 さ せ る こ と が 報 告 さ れ て い る5).こ れ
面 積 の 拡 張 は ガ ス交 換 の 行 わ れ る 毛 細 血 管 表 面 積 を増 加 さ せ る た め,ガ
ス の 移 動 効 率 を 高 め る.ま
と 細 胞 内 の ガ ス 分 圧 差 を つ く り 出 し,毛
た,血
液
細 血 管 か ら筋
細 胞 ま で の 酸 素 輸 送 に 重 要 な 役 割 を 果 た して い る の が ミ オ グ ロ ビ ン で あ る.ミ
オ グ ロビ ンは赤 血球 中 のヘ モ
グ ロ ビ ン と 同 様 に 鉄 を 含 ん だ 蛋 白 質 で あ り,筋 多 量 に 含 ま れ て い る.ミ
細 胞 に
オ グ ロビ ンの機 能 には筋 細胞
内 に 酸 素 を 貯 蔵 す る こ と,運
動 時の細 胞 内の 酸素 分圧
を 非 常 に 低 く(1∼3torr)保
つ こ と,細
胞 内で の酸素
濃 度 を ほ ぼ 均 一 に す る こ と な ど が あ る.と
くに 筋 細 胞
内 に お け る 低 い 酸 素 分 圧 は 毛 細 血 管 との 間 に 大 き な分 圧 差 を 生 じ さ せ,効
率 の よ い 酸 素 輸 送 を可 能 に して い
る 点 で 重 要 で あ る. ミ オ グ ロ ビ ン の 濃 度 は 筋 の 種 類 に よっ て 異 な っ て い る.一
般 的 に 心 筋,横
隔 膜,ヒ
ラ メ筋 な どの 酸 化 能 力
の す ぐ れ て い る 筋 で は 濃 度 が 高 い.小
動 物 に 持 久性
ト
レ ー ニ ン グ を 行 う と ミ オ グ ロ ビ ン 濃 度 は 増 加 す る が,
ら の 血 管 新 生 因 子 は 細 胞 の 増 殖 と形 態 形 成 を調 節 して
ヒ トの 持 久 性 ト レー ニ ン グ に よ っ て ミオ グ ロ ビ ン濃 度
い る.運
が 増 加 し た と い う 研 究 結 果 は 示 さ れ て い な い15).
せ,毛
動 は これ らの血 管新 生 因子 の発現 量 を増加 さ
細 血 管 の 形 態 を 発 達 さ せ る と考 え ら れ て い る.
し か し な が ら,血
管 新 生 の 機 序 に つ い て は 不 明 な点 が
多 く残 され て お り,現 在 の と こ ろ,運 や 筋 収 縮 に よ る 機 械 的 な刺 激,さ
動 時の血 流変 化
●
問
題
1. 一 般 の 健 康 な 人 の 安 静 時 に お け る 心 拍 数,1回
拍 出 量,
お よび 心拍 出量 は そ れぞ れ どの く らい で あ るか 答 え な
らに筋細 胞 の低酸 素
さ い.
状 態 な どの さ ま ざ ま な 要 因 が 相 互 に 働 い て 血 管 新 生 を 導 くの で は な い か と考 え られ て い る.
2. ポ ワ ズ イ ユ の 法 則 を 説 明 し な さ い. 3. 筋 ポ ン プ 作 用 を 説 明 し な さ い. 4. 血 流 調 節 に お け る 交 感 神 経 活 動 と 代 謝 産 物 の 関 わ り を
9.8
説 明 し な さ い.
末 梢 で の ガ ス 交換
5. 細 動 脈 と 毛 細 血 管 の 構 造 や 機 能 的 な 違 い に つ い て 述 べ
血 液 が動 脈か ら筋組 織 の毛細 血 管 を経 由 して静脈 に
な さ い. 6. 持 久 性 ト レ ー ニ ン グ に 対 す る 毛 細 血 管 の 適 応 に つ い て
流 れ た 際 に 生 じ る 酸 素 量 の 差 を動 静 脈 酸 素 較 差 と い う.安 静 時 の 動 静 脈 酸 素 較 差 は 血 液100mlに ∼6ml程 mlに 度,体
度 に す ぎないが
達 す る.運
,高
対 し て4
強 度 運 動 時 に は15∼16
動 中 に は 二 酸 化 炭 素,水
果)こ
とが 知 られ て い る.こ
れ は末
梢 組 織 に お い て ヘ モ グ ロ ビ ン か ら酸 素 の 解 離 が 促 進 さ れ,運
さ い.
素 イ オ ン濃
温 の上 昇 な どに よって酸 素解 離 曲線 が右 方へ 移
動 す る(Bohr効
述 べ な さ い. 7. 酸 素 運 搬 に お け る ミ オ グ ロ ビ ン の 役 割 に つ い て 述 べ な
動 中 に 酸 素 が 効 率 よ く筋 組 織 へ 取 り込 ま れ る こ
と を 意 味 して い る.
●
参 考
文
vascular moderately
ガ ス 交 換 は 毛 細 血 管 と 筋 細 胞 膜 を 介 した 拡 散 に よ っ て
In:Exercise Press, New 3) Andersen,
行 わ れ る.ガ 積)な る.ト
ス の 移 動 率 は 拡 散 面 積(毛
細 血管 の表 面
らび に 血 液 と細 胞 内 の ガ ス 分 圧 差 に 比 例 し て い レー ニ ン グ が も た らす 毛 細 血 管 数 の 増 加 や 内 腔
effects
E. and Lundberg,
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heavy prolonged
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endothelia-1
and
during
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Role
of
K.,
C., P.
Wagner,
H.,
Tseng,
bout
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muscle
to
a
H.-M.,
growth
single
muscles
factor
15)
exercise.
J.
:355-361,1996. Proctor,
nitric
rhythmic
E.
Wagner,
responses
Appl. 6)
C.,
D.
oxide
in
16)
N.,
Dietz,
exercise
handgripping
in
N.
M.
and
hyperaemia
Joyner,
humans. J.
M.
during
J.:
M.,
A.,Casino,
Panza,
P.
R.
J. A.,
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vasodilation. R. of
C.,
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oxide
dynamic
M.,
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J. S., in
oxide
to
Ehsani,
skeletal
exercise
A.
Kano,
exercise-induced
Kano,
Shimegi,
S.,
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Kohrt,
blood
humans.
W.
flow
Am.
Masuda,
K.,
J.
at
M.:
rest
and
on
plantaris
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Klausen,
of
muscle.
H.
and
capillary
Eur.
Katsuta,
network
J. Appl.
20) in
113
Physiol.,75:
of
different in
L.
B.
skeletal
Maeda,
J.
Sakato,
H.,
intensity rat
Ohmori,
H.
endurance
skeletal
and
D.
C.,
ビ ン の 特 性
場
一
徳,金
尾
ン ス に 貢 献 す
L.
B.,
と 運 動
洋 治,勝
る 生 理 的 要
Mittelstadt,
exercise
S. W.
on
rabbits.J.
renal
Appl.
へ の
関 わ
田
茂:
因
に つ い
and
Clifford,
sympathetic
P.
nerve
Physiol.,74:2099-2104,
Mathieu-Costello,O.
in
rat
Am.
soleus
and
muscle
is
not
West,
J.B.:Capillary
affected
by
endurance
J. Physiol.,256:H1110-H1116,1989. G.
and
Saltin,
exercise
Rhodin,
and
Int.
Pelle, I.:Adaptive
muscle
and
Acta
and
in
B.:Muscle
humans.
blood
Am.
J.
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岡 正
道
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中
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of
endothelium vasodilation
in
10 乳酸 と高強度運動 時のエネルギー代謝
100m走
な ど の 短 距 離 走 を 行 っ た 直 後 の 脚 の 筋 肉 に は,安
胞 内 に 蓄 積 す る.こ
ー プ が 「AT」(anaerobic
threshold:無
た,1970年
酸 素 性 作 業 閾 値)と
な 論 争 が 行 わ れ て き た10).改 訂 前 の 「 運 動 生 埋 学20講 の 概 念 お よ び論 争 点 に つ い て の 解 説 を 行 っ て き た.し
い る.し
近 くの 乳 酸 が 筋 細
の よ う な こ と か ら,乳 酸 は疲 労 物 質 の 代 表 と して 古 くか ら注 目 さ れ,ス
ー ツ 生 理 学 に お い て も多 く の 研 究 が な さ れ て き た .ま
終 わ りが み ら れ,現
静 時 の5∼7倍
代 に はWassermanら
ポ
のグル
い う概 念 を 提 唱 し,最 近 まで 活 発
」 に お い て もATに一
つ の 章 を さ き,そ
か し なが ら,近 年 お お よ そ こ の 論 争 に も
在で は無 酸素性 作 業閾 値 とい う初期の 概念 は ほぼ崩 れ去 った と考 え られて
か し,こ の 論 争 に よ っ て 多 くの 研 究 が な さ れ た こ とか ら,乳 酸 そ の もの お よ び 乳 酸 生
成 の お お も と で あ る解 糖 系 を 含 め て,運 トが 生 じ た.本
講 で は,乳
動 中 の筋 エ ネ ルギ ー 代 謝 の 理 解 が 進 ん だ と い う メ リ ッ
酸 が 生 成 さ れ る よ う な 短 時 間 ・高 強 度 運 動 時 の エ ネ ル ギ ー 代 謝 に つ
い て 概 説 す る.
は乳 酸 性 作 業 閾 値(lactate 10.1
い わ ゆ るATの
概 念
る こ とが 一 般 的 に な りつ つ あ る.し もATと
Wassermanら
は,漸
く よ う な 運 動 で,換
threshold:LT)と
増 的 に 運 動 負 荷 が 上 昇 して い
VTお
た が っ て,本
い う 表 記 は 基 本 的 に は 用 い ず,内
よ びLTと
表記 す 講で
容 に応 じて
い う表 現 を 用 い る.
気量 あ るい は二酸化 炭 素排 出量 が
非 直 線 的 に 増 加 す る 地 点 をATと
名 づ け た10).ま
10.2
た,
Lactate
shuttleの
概 念
血 中 乳 酸 の 上 昇 ポ イ ン トも ほ ぼ 同 地 点 を 示 す こ とが 多 く観 察 さ れ た.そ
れ ら の 結 果 か ら 彼 ら は,運
動 強 度が
近 年,運
動 中 の 乳 酸 の 役 割 に つ い て,Lactate
高 ま る と筋 組 織 内 が 低 酸 素 に 陥 り,無 酸 素 的 エ ネ ル ギ ー 代 謝 に よ る エ ネ ル ギ ー 供 給(解 糖 系)が 開 始 され る
shuttleと い う概 念 が 提 示 さ れ て い る(図10.1)1).従
地 点 がATで
さ れ て い た が,じ
あ る と い う解 釈 を行 っ て き た.
来,乳
酸 は"疲
労 物 質"あ
る い は"最
終 産 物"と
つ は 運 動 中 に お け るATP生
規定
成のた
こ こ で 問 題 とな る の は,組 織 内 が 低 酸 素 状 態 に 陥 っ
め の 重 要 な 酸 化 基 質 で あ る こ とが 証 明 さ れ た.ま
て か ら解 糖 系 が 動 員 され る と い う概 念 で あ る.こ
乳 酸 が 生 成 さ れ るの は お も に 速 筋 線 維 で あ る が,こ
関 して は こ の 後 で 詳 述 す る が,解 ギ ー 需 要(運
動 強 度)に
れに
糖 系 の動 員は エ ネル
依 存 して い る の で あ っ て,筋
た, の
生 成 され た 乳 酸 を基 質 と して 利 用 す る の は お も に遅 筋 線 維 で あ る と 考 え ら れ て い る.こ
の よ うな乳酸 の振 る
組 織 内 が 低 酸 素 に な っ た た め な さ れ る の で は な い.し
舞 い をLactate shuttleと 定 義 づ け て い る.ヒ
か しな が ら,非
た と え ば 脚 な どの 筋 は 速 筋 と 遅 筋 の ミ ッ ク ス で構 成 さ
直 線 的 に換 気 量,二
酸化 炭素 排 出量お
よ び 乳 酸 が 上 昇 す る と い う 現 象 は,か 際 に 確 認 さ れ る現 象 で あ る.し
な りの 頻 度 で 実
た が っ て,現
在 で は換
れ て い る が,こ
れ はLactate
トの 場 合,
shuttleが 効 率 よ く機 能 す
るた め に は 都 合 が よ い こ と に な る.
気 量 を 指 標 に し た 場 合 に は 換 気 性 作 業 閾 値(ventila
パ フ ォ ー マ ンス 向 上 の 立 場 か ら考 え る と,筋
tory threshold:VT),血
ー ゲ ンや 血 中 グ ル コ ー ス が 解 糖 系 のATP生
中 乳 酸 を指 標 に し た 場 合 に
グ リコ
成 の基 質
疲 労 を 引 き 起 こ す こ と は よ く知 ら れ て い る 事 実 で あ る.し
た が っ て,ATPの
る こ と は,筋
消 費 と再 合 成 の 収 支 を測 定 す
運動 の仕 組 み を理解 す る うえで は重 要 と
考 え られ る.し
か しな が ら,筋
のATP濃
度 を測定 す る
こ と は 非 常 に 難 しい の が 現 状 で あ る.な ぜ な ら ば,消 費 と 同 時 に 再 合 成 が な さ れ る の で,み
か け上 の変化 は
非 常 に小 さ い た め で あ る.
10.4
ATP再
高 強 度 運 動 時 のATP供
合 成 の た め の 運 動 中 の エ ネ ル ギ ー 利 用 は,運
動 強 度,運
動 時 間,ト
レ ー ニ ン グ状 態 お よ び 基 質 の 利
用 能 力 に 依 存 し て い る.た よ う な運 動 強 度 の 時,解 心 と な る.さ
と え ば50%VO2maxを
糖 に よるエ ネル ギー供 給が 中
以 内 の全 力 運 動 の 場 合,PCrと が 等 量 を 示 す.運 Lactate
shuttle1)
超 える
ら に 短 時 間 ・高 強 度 な 運 動 に な る とPCr
が 重 要 な 役 割 を 果 た す.表10.1に
図10.1
給 系
示 した よ う に10秒 解 糖 に よ るATP供
給量
動 時 間 が さ らに 短 くな れ ば,PCrに
よ る 供 給 の 割 合 が よ り高 くな る と考 え ら れ る.一
方,
運 動 時 間 が 長 くな る と解 糖 系 に よ る 貢 献 の 割 合 が 増 す と して 用 い られ て 乳 酸 が 生 成 さ れ る が,そ
の乳 酸 をい
か に 基 質 と し て 利 用 で き る か が キ ー と な る.こ 乳 酸 を筋 中 に た め な い よ う に,い で き る か の"洗
い 流 し能"に
れ まで
か に 早 く血 中 に 除 去
注 目 が 集 ま っ て い た が,
基 質 と して 利 用 し た 方 が 効 率 は よ い こ と に な る.し が っ て,ミ
た
トコ ン ドリ ア の 酸 化 能 力 を 高 め る こ とが 重
要 と な る.
10.3
こ と に な る.た
と え ば,運
動 時 間 が30秒
糖 に よ る 供 給 量 はPCrの2倍
以 上 に な る.
こ こ で 注 意 し た い の は,Margariaら5)以 動 生 理 学 の 教 科 書 に,「10秒 PCrに
よ るATP供
性 さ れ て,グ
に な る と解
来 多 く の運
以 内 の 激 し い 運 動 の 時,
給 が 枯 渇 す る こ と に よ り解 糖 系 が 活
リ コ ー ゲ ン分 解 に よ るATP供
給が 開始 さ
れ る 」 と 記 述 さ れ て い る こ と で あ る.し
か し な が ら,
10秒 以 内 の 全 力 運 動 で 解 糖 に よ るATP供
給 量 がPCr
乳 酸 が 生成 さ れ るよ うな 高 強度 運 動 時
分 解 に よ る供 給 量 と ほ ぼ 同 量 で あ る と い う こ と は,こ
の 他 の 代 謝産 物
れ ま で の 定 説 と の 矛 盾 を 示 す も の で あ る(表10.1).さ ら に,運
動 開 始 と同 時 に 解 糖 系 が 動 員 さ れ て い る こ と
乳 酸が 生成 され る ような非常 に高 強度 な活 動 が行 わ
を示 唆す る多 くの結 果 が こ れ まで に報 告 され て い る
れ る と,多 量 のATPが
(表10.2).
消 費 さ れ 細 胞 内 で は乳 酸 の 蓄 積
と と も に 相 対 的 にADP濃 謝 調 節 は基 本 的 に はATPの
度 が 高 ま っ て い く.筋
の代
に す る よ う働 く.消 費 が 再 合 成 を 上 回 る状 態 が 持 続 さ れ る と,筋 疲 労 に 達 す る こ と に な る.た が 上 回 り細 胞 内 にADP濃 ADP濃 るATP合 AMPを
と え ば,消
費
度 が 上 昇 し て い く と,筋
は
度 を 一 定 レベ ル に維 持 す る た め にAK活 成 を 促 進 す る.し 生 成 す る.AMPは
て い るH+と
結 合 し,IMPと
(脱 ア ミ ノ 化).細
短 時 間 高 強 度 の 運 動 はPCr分
解 と解 糖 系 に よ るATP
消 費 と再 合 成 の 収 支 を 同 じ
か しな が ら,こ
表10.1 運 動 時 間(高 強 度 運 動)とPCr,解
糖 系 か ら のATP供
給
の 関係(久 野,1996)
性 によ
の合 成系 は
細 胞 内 に多 量 に 蓄 積 し始 め ア ンモ ニ アに変 換 され る
胞 内 にお ける ア ンモニ アの 蓄積 が 筋
単位 はnmolATP/㎏
・dm/秒.*:30秒
中へ 出 た乳 酸 が 総 乳 酸 の25%あ
間 の運 動 で 筋 中 か ら血
る と仮 定 して 計 算 した 場 合 の 値.
表10.2
短 時 間 ・高 強 度 運 動 開 始 時 にお け る解 糖 系 に よ るATP供
供 給 の 合 算 が 中 心 に な さ れ る わ け だ が,aerobicに
よ
給 を示 す デ ー タ9)
表10.3 運 動 中 のATP再
合 成 に 占 め る 有 酸 素 的 代 謝 経 路,無
素 的 代 謝 経 路 の 割 合(%)(久
るATP供
酸
野,1996)
給 は な さ れ て い な い の で あ ろ う か.100m全
力 疾 走 中 のATP供
給 系 の 割 合 に つ い て 検 討 した 研 究 に
よ る と,酸 化 系 に よ るATP供
給 は 約17%に
こ と が 報 告 さ れ て い る.表10.3に つ か の 報 告 か ら,運 動 中 のATP供 とanaerobic系
もの ぼ る
は これ まで の い く 給 に 占 め るaerobic
の 割 合 を筆 者 が ま と め た もの を 示 した.
運動 はそれぞれの時期 にお いて疲労 困憊に達する ような強度 と 仮定 した場 合.
そ れ に よ る とaerobicの 20%,60∼90秒 で70%で
貢 献 度 は0∼30秒
の運 動 で
の 運 動 で55%,120∼180秒
の 運動
50%で
あ っ た の に対 し,3回
て い る.し
た が っ て,間
ン ス の 向 上 をATP供
あ っ た.
目 に は 約20%ま
で低 下 し
欠 的 高 強 度 運 動 の パ フ ォー マ
給 系 の 観 点 か ら考 え る と,2回
目
以 降 の 運 動 時 に お い て 解 糖 系 に よ る 供 給 率 を 低 下 させ 10.5
イ ンタ ー バ ル 高強 度 運 動 中 の エ ネル ギ
な い こ とが 重 要 に な る.
ー 代 謝 10.6 図10.2に
は,3回
の 間 欠 的 な30秒
お け る 総 仕 事 量(=ATP消 す る 三 つ(aerobic,解
間の全 力運動 時 に
費 量)とATP消 糖 お よびPCrの
費量 に対
分 解)の
の 占 め る 割 合 が 示 さ れ て い る.1回 仕 事 量 で 約40%の
目 と3回
供 給系 目で は 総
減 少 が み られ た が,ATP供
観 点 か ら み る とPCr分
トレ ー ニ ン グ お よ び 加 齢 が 高 強 度 運 動 時 の代 謝 に及 ぼ す影 響
解 とaerobicに
給系の
よる貢 献度 には
変 化 が み られ な い.そ れ に 対 し,解 糖(グ に よ る 割 合 が 著 し く低 下 し て い る.こ
リ コ ー ゲ ン)
の こ とか ら,疲
ト レ ー ニ ン グ が リ ン化 合 物 あ る い はanaerobicな ATP供
給 系 能 に 効 果 を 及 ぼ す の か ど う か に つ い て は,
い ま だ に 明 らか に さ れ て い な い,MacDougallら4)は, 長 期 に わ た る ウ ェ イ ト ト レー ニ ン グ に よ り安 静 時 の 筋 内 のPCr(+5%),ATP(+18%)お ゲ ン(+32%)含
よび グ リコー
量 が有 意 に増 加す る こ と を報告 し
労 に 伴 うパ フ ォ ー マ ン ス の 低 下 は,解 糖 系 に よ るATP
て い る.こ
の 報 告 を も と に し て,こ
供 給 能 の 低 下 に よ り導 き 出 さ れ て い る こ と が 理 解 で き
anaerobic系
の ト レー ニ ン グ に よ り筋 内 の リ ン化 合 物
る.NMRを
含 量 が 増 加 す る と考 え ら れ て き た.し
用 い た 研 究 か ら,PCrは
運 動 中 止後 の 比
較 的 早 い 段 階 で 安 静 レベ ル ま で 回 復 す る こ とが 知 られ
コ ー ゲ ン量 を 除 い て,anaerobicト
て い る(こ
PCrお
の 運 動 で も2分 間 の 休 息 の う ち に 安 静 レベ
ル ま で 回 復 した と考 え ら れ る).一 の 回 復 は2分
3回 目の 運 動 時 のATP供 く減 少 して い る.3回 え る と,1回
方,グ
リ コー ゲ ン
間 の 休 息 で は ほ と ん ど 回 復 し な い た め, 給 にお け る 解 糖 の 割 合 が 著 し の運 動 を それ ぞれ 単独 と して考
目の運 動 に おけ る解 糖 の 占め る割 合が 約
よ びATP量
か しなが ら グリ
レー ニ ングに よ り
につ いて はそ の効果 が み られ ない と
す る報 告 が あ る(表10.4).一 て,長
れ ま で は,
方,ラ
ッ ト骨 格 筋 に お い
期 に わ た る持 久 的 トレ ー ニ ン グ が 安 静 時 のPCr
量 を 減 少 させ る こ と が 示 さ れ て い る3).こ の 実 験 で は 加 齢 に よ る 変 化 は 否 定 さ れ て い る の で,持 ニ ン グ に よ る 影 響 と考 え られ る.し
久的 トレー
か しな が ら,ヒ
ト
に お い て こ の 結 果 が 適 用 で き る か ど うか は 明 ら か で は な い.anaerobicなATP供
給 系能 にお け る トレーニ ン
グ の 効 果 に つ い て も,否 (表10.4).し
定 的 な結 果 が 出 され て い る
た が っ て,こ
れ ら の ト レー ニ ン グ 効 果 に
つ い て 現 時 点 で 結 論 を 出 す に は あ ま り に も報 告 が 少 な く,今 後 の 研 究 が 待 た れ る. 加 齢 に よ る リン化合物 の変 化 につ い て簡 単 にふ れて お き た い.図10.3は
ラ ッ ト骨 格 筋 に お け る 加 齢 に よ
る 総 ク レ ア チ ン含 量 とPCr含 あ る.総 図10.2
間 欠 的 な30秒
間 全 力 運 動 時 に お け るATP消
(=仕 事 量)と3種 有 酸素 系)のATP供 運 動 間 の 休 息 に は2分 100%と
して2回
類(グ リ コ ー ゲ ン分 解,PCr分
解,
給 系 の 貢 献 度8
が あ て られ た.1回
減 少 を 示 して い る.一
給 率 は3回 の 運 動 で変 化 し ない.こ
酸 れ は,
も し運 動 中 に こ れ ら の エ ネ ル ギ ー 源 が 安 静 時 よ り減 少 し て も,2分
方,遅
齢 の 影 響 を 受 け 著 しい 筋 線維 につ いて は減 少傾
向 に は あ る もの の 大 き な 変 化 は み られ な い.加
齢によ
り速 筋 線 維 は 選 択 的 に 萎 縮 す る こ と が 知 ら れ て い る が,速
筋 線 維 に お け るPCr量
の 低 下 も ま たanaerobic
間 の 休 息 期 に 安静 レベ ル ま で 回 復 して い る こ と を 示
して い る.一 きず,結
イ プ と も ほ と ん ど 加 齢 に よ る影 響 を 受 け て い な い.そ れ に 対 し速 筋 線 維 のPCrは,加
目の仕 事 量 を
目以 降 を 相 対 的 に 表 し て い る.PCr,有
素 系 に よ るATP供
費量
量 の変 化 を示 した もので
ク レ ア チ ン含 量 に つ い て は い ず れ の 筋 線 維 タ
方,グ
リ コー ゲ ン は こ の 間 に 回復 す る こ と は で
果 的 に 総 仕 事 量 の 減 少 が 生 じる.
なATP供 る.さ
給 能 を著 し く低 下 させ る こ と を 示 唆 し て い ら に 安 静 時 のATP含
量 に お い て も,加 齢 に よ り
表10.4 安 静 時のPCr,ATP,グ
リコ ー ゲ ン含量 お よ び 短 時 間 ・高 強 度運 動 中 のATP供
給 系 能 と トレー ニ ン
グ と の 関 係12)
空 欄:測
図10.3
定 な し,-:変
化 な し,*:p