電 気機 器 要 論 工博 磯 部 直 吉 著
東京 電機 大 学 出版 局
ま
え
が
き
電 気機 器 は百 年 に も亘 る長 い歴 史 が あ る。 従 って,機 器 に 関す る図書 も,そ の 時 代 の要 ...
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電 気機 器 要 論 工博 磯 部 直 吉 著
東京 電機 大 学 出版 局
ま
え
が
き
電 気機 器 は百 年 に も亘 る長 い歴 史 が あ る。 従 って,機 器 に 関す る図書 も,そ の 時 代 の要 求 に応 じた ものが,古 今 を 通 じて 数 多 く出版 され てい る。 この 本 は,教 室 にお い て電 気 機 器 の 構 造 や 特 性 の 概 要 を説 明 す る ため に書 かれ た もの で あ る。 教 室 で は機 器 の 実 物 を示 しな が ら説 くこ とは無 理 で,黒 板 に図 を 画 くか,小 形 機 に使 わ れ る コ イル や 部 品 の見 本 に よ って 説 明 す る程 度 しかで き な い の で,こ の本 で はで き るだ け 多 くの図 を 用 い たつ も りで あ る。 最 近 の 図書 に は,電 気機 器 を エネ ル ギ ー変 換 を す る機 器 とい う見 方 に立 って述 べ た ものや,電
圧,速 度 の 制 御法 を 中 心 と した も の,最 新 機 器 に注 目 した もの,
さ らに は多 くの機 器 を統 一 した理 論 式 にの せ て説 い た もの な どが 多い 。 こ のよ うな時 代 に,こ の本 は 古 い感覚 で あ る とい わ れ そ うで あ るが,交 流 の機 器 につ いて は,各 機 に用 い られ て い る巻 線 の イ ンダ ク タ ンスを 前面 に出 して,一 応 基 本 特 性 を求 め てみ たの は一 つ の試 みで あ る。 一 冊 の本 を 一 つ の方 針 に従 って,よ
どみ な くす っ き り と書 き上 げ る こ とは 大変
む ず か しい。 い ままで 2冊 に亘 って 電 気 機器 の 一 通 りを述 べ て い た もの を,こ
こ
で 全 く新 し く 1冊 に ま とめて 書 きか え る に際 し,読 みや す い 内容 を 念 に お き,む ず か しい言 葉 を さけ,ま た例 題 や練 習 問 題 もな るべ く多 くす るよ うに した。 この本 を ま とめ るの に 多 くの 図書 を 参 照 させ て戴 い た こ とを 記 して 深 謝 す る と と もに,筆
者 の独 断 で ふ さわ し くな い 引用 の し方 を した所 が あ るの を 恐 れ る もの
で あ る。 諸 者 の ご叱正 を お願 い した い。 昭和52年 3月
著 者 し るす
目
第 1章
総
次
論
1・1 電 気 機器 の歴 史
1
1・2 電 気 機器 の分 類
2
1・3 起 電力 お よび 電磁 力 の発 生
4
1・4 電 気 機器 の基 本 的構 成
7
1・5 電 気機 器 の主 要 材 料 と して の 銅 と鉄12 1・6 電 気機 器 の温度 上 昇
15
1・7 損失 と効 率
18
1・8 定 格 と銘 板
19
1・9 電 気 機 器 に 関す る規 格
19
第 2章
直
流
機
2・1 直 流 機 の種 類
21
2・2 直 流 機 の構 造
22
2・3 直 流 発 電機 の特性
28
2・4 直 流 電 動機
45
2・5 直 流 機 の試 験 法
75
2・6 直 流 発 電機 の並 列 運 転
80
2・7 特 殊 構造 の直 流機 練 習 問題 2.
第 3章 3・1
変
圧
81 83
器
変 圧 器 の基 本 性 質
87
3・2 三 相 お よ び 並 列 結 線
103
3・3 変 圧 器 の 構 造
108
3・4
電 圧 調 整
116
3・5 単 巻 変 圧 器
120
3・6 三 巻 線 変 圧 器
125
3・7 試 験 用 変 圧 器
128
3・8 試
128
験
法
練 習 問 題 3.
133
第 4章
誘
導
機
4・1 三 相 誘 導 機 の 構 造
135
4・2 三 相 誘 導 機 の 特 性
156
4・3
等 価 回 路 と 特 性 式
166
4・4
L形 円 線 図
175
4・5
T 形 円 線 図
178
4・6
か ご 形 電 動 機
181
4・7 三 相 誘 導 機 の 特 性 算 定
186
4・8
始
動
法
194
4・9 制
動
法
201
4・10 速 度 制 御 法
206
4・11 誘 導 機 と 対 称 分 計 算 法
215
4・12 単 相 誘 導 電 動 機
229
4・13 誘 導 機 の 試 験 法
234
練 習 問 題 4.
第 5章 5・1
同
期
237
機
三 相 同 期 発 電 機
239
5・2 三 相 同 期 電 動 機
276
5・3
290
同 期 発 電 機 の並 列 運 転
5・4 特 殊 同 期 機
295
5・5 試
300
験
法
練 習 問 題 5.
314
第 6章 交流整流子機 6・1 種
類
316
6・2 Kronの
基 本 形 回 転 機
318
6・3 単 相 直 巻 整 流 子 電 動 機
323
6・4 反 発 電 動 機
325
6・5 三 相 分 巻 電 動 機
327
練 習 問 題 の 解 答
331
索 引
353
第 1章
1 ・1
総
論
電 気機 器 の歴 史
実 用 的 な電 気 機 器 等 が発 明 された の は,基 礎 研 究 か ら数 十 年 を経 て か らで,お もな もの は, 1877年 ベ ル(Bell)が
電話 器 を 発明 した。
1866年
ジー メ ンス(Siemens)が
自励 発電 機 を 造 っ た。
1878年
エ ジ ソ ン(Edison)が
1879年
エ ジ ソ ンが直 流 発 電機 を造 った。
1880年
テ ス ラ(Tesla)が 三 相電 流 に よ って 回転 磁 界 を造 る こ とを発 明 し,1887年
白熱 電 球を 造 った。
に は交
流 電 動 機 を造 った 。 1893年
ス タ イ ン メ ッツ(Steinmetz)が
交 流 量 の 計算 に 複 素数 を 取 り入 れ る 方 法 を発 表 し
た。 この よ うに,電 気 機 器 の 発 明 は,日 本 年代 で は 明 治 の初期 〔 明 治 元 年(1868年)〕 で あ る。 日本 で は外 国 で の発 明を 導入 して, 1885年(明
治18年)に
は,15kWの
直流 発電 機 が 造 られ た。 これ を電 源 と して40個
交流 発 電機 が 造 られ た。
の
白 熱電 球 が 点 燈 され た。 1893年(明
治26年)に
は,2000Vの
1895年(明
治28年)に
は,三 相,2000V,30kVAの
変 圧器 が,ま
た1899年(明
治32
年)に は三 相 誘導 電 動 機 が造 られ た。 一方,1887年(明 治20年)に はエ ジ ソ ン式 の 直流 発 電 機 が輸 入 され,こ れ を配 電 線 の電 源 と し た 。す なわ ち,初 期 の 家庭 用 配 電 は直流 で あ って,当 時 の負 荷 は 白熱電 球 が大 部 分 で あ った 。 三相 交 流 を 用 いれ ば,強 力 で一 定 速度 で 回 る回転 磁 界 を生 じさせ る こ とが で き るが,こ れ を 発明 した の は画 期 的 な ことで,こ れ が三 相 誘導 電 動 機 の 開発 を促 し,一 方 その電 源 と して 必 要 な三 相交 流 発 電 機,三 相 送電 線 お よび三相 変 圧 器 が急 速 に 拡充 され る よ うに な った 。 最 近 で は,一 台 で100万kVAの
容 量 の三 相 交 流発 電 機 や,出 力 数 万kWの
電 動 機 が造
られて い るが,こ の よ うな大 形機 も,原 理 で は明 治 の 時代 の もの と同 じで あ る。 電気 機 器 の 誕生 以 来100年 近 くを経 過 す る 間 に,理 論 的 解 明 が ます ま す深 め られ るの と並
行 して,前 述 の よ うに容 量 は増 大 し,使 用 電 圧 が高 め られ た 。 この た め に,機 器 の巻 線 の絶 縁材 料 の進 歩,鉄 心材 料 の 改 良,冷 却 方式 の改 善 な どが行 わ れ た。 例 えば,大 容量 の ター ビ ン発電 機 で は,1940年
ご ろか ら水 素 ガ ス 中で 運転 す る方 式 を 用 いて い る。 これ は,タ ー ビン
発 電機 の よ うに,回 転速 度 の高 い もの は空 気 よ りもは るか に 密度 の 低 い水 素 ガ ス 中で 運 転 す るほ うが,損 失 が 少 な く熱 の 放 散 も よい か らで あ る。 ま た,変 圧器 は,初 期 の もの は空 気 中で使 用 された が,今 で は一 般 に絶 縁 油 中 に本 体 を浸 した状 態 で使 用 す る と,放 熱 が よ く,か つ,絶 縁物 の劣化 を 防 げ るた め,こ の よ うな油入 変 圧 器 は比 較 的早 くに 開 発 され,明 治 末 期 か ら使 わ れ てい る。 電 気 が 生 活,産 業 に広 く普 及 す るに 伴 い,停 電 や電 圧変 動 の ない 電 源が 要 求 され る よ うに な り,こ の た め に多 くの発 電 機 を並 列 に結 ん で,大 きな電 力 系統 を つ くる よ うに な り,こ れ を 運 用す る技術 も著 し く高 度 化 され て い る。 電 動機 と して の用 途 も,は じめ はた だ 回転 す る とい うこ とだ けで 驚 きで あ った ものが,次 第 に,自 由な速 度 制 御 法 また は 完全 な一定 速 度 運転 法 な どの 技 術が 開 発 され て きた。
1・2
電 気機 器 の分 類
本 書 では,“ 電 気 機 器 ”を 「電 磁誘 導 現 象を 応 用 した 機器 に 限 る」 と狭 義に と ら え る こと に し,こ れ に よれ ば,表1・1の 表1.1の
よ うな分 類 が で き る。
中 の各 機 器 につ い て,次 章 以下 で 概要 を 述 べ るが,こ こで表 の 中の用 語 の い く
つ か に つい て,そ の 定 義 を して お く。 “直 流機 ” とは,直 流電 力 を 発生 す る か,ま た は直 流電 力 を 受 け入 れて 機 械 動力 を発生 す る回 転機 を い う。 前 者 は直 流 発 電機,後 者 は直 流電 動 機で あ る。 “交流 機 ” は,交 流電 力(無 効 電 力 も含 む)を 発生 ま た は変 換 す る機器,お
よび交 流電 力
を 受 け入 れ て機 械 動 力 を発 生 す る回 転 機 を い う。 “同期 機 ” とは,定 常 運 転 状 態 に おい て 同期 速 度 で回 転 す る交流 機 を い う。 な お,同 期速 度 とは,そ の交 流 機 の 主 巻 線 の 電 圧,電
流 の 周波 数 をf〔Hz〕,極
数 を P とす る とき,
2f/P〔 回/秒 ま た はrps〕 で 与 え られ る速 度 の こ とで あ る。 “非 同期 機 ” とは,定 常 運 転 速度 が同 期速 度 以 外 の 速度 で あ る交 流 機で,次 に述 べ る誘導 機 お よび交 流 整流 子 機 が これ に属 す 。 “誘 導機 ” は,固 定 子 お よび回 転 子 に互 い に独 立 した巻線 を も ち,一 方 の巻 線 か ら電 磁誘 導 作 用 に よ って エ ネル ギ ー を受 けて動 作 す る機 器 で,こ れ は電 動機 と して 最 も広 く用 い ら れ る。 “ 交 流 整流 子 機 ” は,回 転 子 側 に整 流子 を も ち,そ れ に 属す る ブ ラ シがお い て あ る。
表1・1
電 気 機 器 の分 類
多 くの 機種 が あ る が,ブ ラ シを移 動 で き るよ うに な って い る。 ほ とん どが 電 動機 と して使 わ れ る。 交流 電 源 か ら直 接 運 転 で きて,か つ,ブ ラ シ移 動 に よ って 速 度加 減 が 自由 にで き る電 動機 とい う特 長 が あ る が,構 造 が 複 雑で 高 価 で あ る の で,次 第 に 他 の電 動 機 に代 わ りつ つ あ る。 “回転 機 ” は三 相 機 と単相 機 とに分 け ら れ,前 者 は後 で 述 べ る回 転 磁界 が 機 器 内 に生 じて い て,電 動 機 の場 合 に は,回 転磁 界 が主 役 とな って,小 形 で 強力 な電 動機 とす る こ とが で き る。 単相 の電 動 機 は,大 きい動 力 を得 るに は不 適 当で あるが,家 庭 内 も含 め,単 相 電源 は ど こ に で もあ るの で,小 形 電 動 機 に広 く用い られ る。 “直 線運 動 を す る機 器 ” は電 動 機 に だ け そ の 例 が あ り,こ れ を リニ アモ ー タ とい う。 工 作 機 械 の 一部 に往 復 動作 を す る部分 が あ るが,こ の よ うな所 に も リニ ア モ ー タが適 用 で き る可 能 性 が あ る。 “静 止 器 ” は,静 止誘 導機 器 と も い い,変 圧器 が そ の代 表 的 な もの で あ る。変 圧 器 は 「一 つ の回 路 へ電 源 か ら交 流電 力 を受 け入 れ,こ の電 力 を電 磁 誘 導作 用 に よ り他 の 回路 に供給 す る機 器」 を い う。 そ う して,電 力 を受 け入 れ る側 を 一次 とい い,こ れ を他 の回 路 に供 給 す る
側 を二 次 とい う。 変 圧 器 は,一 次側 に加 え る交流 電 圧 を これ よ り高 い ま たは 低 い二 次電 圧 に変 え る こ とを 目 的 と して,送 電線,配 電 線 に広 く使 わ れ る。 静 止 誘導 機 器 に は,一 次 に 加 え る電 圧 に対 し,任 意 の位 相 差 を もつ 二次 電 圧 を取 り出 す こ とが で き る移 相 器や,一 次 に一 定電 圧 を加 え,二 次 に連続 的 な可変 電 圧 を得 る誘導 電 圧 調整 器,遅 相無 効 電 力 を吸 収 させ る こ とを 目的 と した リア ク トル な どが あ るが,こ れ らにつ い て は後 の 章で 改 め て述 べ る。 以 上 の分 類 の ほか に は,使 用 電 圧 の大 き さに よる分 類,冷 却 方式 に よる分 類 な ど も考 え ら れ るが,こ れ らに つい て は第 2章以 下 で述 べ る こ とにす る。
1・3
起 電 力 お よび電 磁 力 の発 生
電 気 機器 の原 理 は,フ ァラデ ー の電 磁 誘導 の現 象 に あ り,静 止 機器,回 転 機 器 の いず れ の 場 合 に も,機 器 の特 性 を調 べ るに は,機 器 内 にあ る コ イル に生 ず る起 電 力 や電 磁 的 に生 ず る 力 の大 き さ お よび それ らの向 きにつ いて 考 え な けれ ば な らな い。 ま た,磁 極 や 電 流 に よ って 生 ず る磁界 の性 質 につ い て も知 って お く必要 があ る 。 これ らは電磁 気 学 の一 部 で あ るが,簡 単 に復 習 してみ る。 〔1〕 速 度起 電 力 図1・1(a)の
よ うに,磁
極 N,S の間 に磁 束 密 度B〔Wb/m2,T*〕
の磁 界 を つ くり,
この磁 界 内 に磁 界 と直角 に 長 さl〔m〕 の 導 体 を おい た とす る。 この導 体 を 図 の矢 の 向 き に速 度 υ〔m/s〕で 移 動 さ せ る と き,こ の導 体 には 図 の矢 の 向 きに 起電 力 e を生 ず る。 その 大 き さは, e=Blυ 〔V〕
(1・1)
で 与 え られ る。 この起 電 力 は磁 界 と導 体 との相 対 速 度 υに比例 す る ことか ら速度 (a)速
起 電 力(speed
emf)と い う。
度 起 電 力の 発 生(b)B,υ,e 図1・1速 度起電力
発 電 機 や電 動 機 内 に入 れ て あ る コイル に は,運 転 中式(1・1)で
の 向 きの 関 係
表 され る起 電 力 を生 じて い
る。 コイル の形 や 磁界 と コイル との相 対 的 な運 動 の様 子 な どにつ い て は,後 の 章 で 調 べ る
*SI単 位 。 テ〓 ラと読 む。1T=1Wb/m2図1・1速度起電力
が,実
際 の 機 器 で は B は 大 き く と も1Wb/m2,l
に70m/sと
は 大 形 の 同 期 発 電 機 を 考 え2m,υ
を仮
す る と, e=Blυ=1×2×70=140〔V〕
(1・1)
と な る。 しか し,1本 の導線 に この よ うな起電 力 を 生 じる例 は超 大 形 の発 電 機 の場 合 で あ り, 中形 お よび 小 形 の直 流 発 電 機 な どに お いて,設 計 上 か ら決 め られ る導線 1本 当 た りの起 電 力 は 数 V 以 下 で あ る。 従 って,100Vま
た は200Vの
直 流 発電 機 で は,多
くの導 体 を 入 れ て
お き,各 導 体 に 生 ず る起 電 力 を直 列 に加 え るよ うに工夫 しな けれ ば な らな い。 図1・1(b)は,磁
界 の 向 き B と,磁 界 に対 す る導 体 の 運動 の向 き υと,導 体 に生 ず る
起電 力の 向 き eの 三 者 の関 係 を示 す もので,こ れ は右手 三 指 則 と して知 られて い る。 この 図 の 関係 を,導 体 が 静 止 して いて,磁 界 が そ の導 体を 切 って 起電 力 を 生 じ させ る場 合 に適 用 す るに は,磁 界 の運 動 と反 対 向 きに υを と らな けれ ばな らない。 〔2〕 変 圧器 起 電 力 コイル に 鎖交 す る磁 束 が あ って,こ の 磁束 が 時 間 に対 して変 化 す る 場 合 に,そ の コイル に 起 電 力を 生 ず る。 これ を変 圧 器 起電 力(transformer
emf)と
図1・2は
い う。
コイル 1と 2が接 近 してお い て あ る簡単 な 例 を示 し,そ
れ らコイル の巻 数 をn1お
よびn2と
す る。
いま,コ イル 1に電 流i1〔A〕 を流 し,こ の電 流 に よって 両 コイル
図1・2変
圧 器 起電 力
を貫 く磁 束 φ 〔Wb〕 を 生 じた とす る と,コ イル 1お よび 2 に 生 ず る (磁 束)鎖
交 数 は,そ
て い れ ば,λ1お e2と
れ ぞ れn1φ=λ1お
よ びn2φ=λ2で
あ る。i1が
交 流 で 時 間 的 に変 化 し
よ び λ2も 時 間 的 に 変 わ る 。 こ の と き 両 コ イ ル に 生 ず る 起 電 力 をe1お
よび
す る と,
(1・2)
た だ し,e1,e2の
正 の 向 き は 右 ね じ 系 に と り,図1・1のi1の
向 き と 同 じ向 き を 正 と し
て い る。 電 流i1が1Aの
と き の λ1お よ び
λ2を そ れ ぞ れ コ イ ル 1の 自 己 イ ン ダ ク タ ン ス お よ び
コ イ ル 1か ら コ イ ル 2へ の 相 互 イ ン ダ ク タ ン ス と い い,こ 書 け ば,λ1=L1i1,λ2=M21i1と
な る か ら,
れ らを そ れ ぞ れL1お
よ びM21と
(1・3)
とな る。 た だ し,こ の ように書 け るの は,L1,M21が
時 間 に 対 し一 定で あ る場 合 に限 る。
コイル 2に も電 流 が流 れ,こ れが 時 間 的 に変 化 す る場 合 には 図1・2に 束 が あ り,こ れが 変 化 す る こ とにな るか ら,両 コイル で式(1・2)ま
示 した φ以外 の 磁
た は式(1・3)で
示 し
た起 電 力 以 外 の新 た な起 電 力を 生 ず るが,こ の ことに つ いて は後 の 章で 述 べ る。 変 圧 器 起電 力 は,文 字 通 り変 圧 器 の一 次 お よび 二 次 コ イ ル に 生 ず る起 電 力を 考 え る場 合 に,式(1・2)ま
た は式(1・3)に
よ って 求 め るの は もち ろん,回 転機 器 の コ イル に生 ず る
起 電 力 の 鎖交 数 の 変 化か ら求 め る場合 に も用 い る。 図1・2に
さ らに 第 3,第 4の コイル が 接 近 して お い て あ る とき,電 流i1の 変化 が 第 3,
第 4の コ イル の鎖 交 数 に変 化 を及 ぼす とき に,こ れ らコ イル に生 ず る起 電力 で 求 め られ る こ とは もち ろん で あ る。 〔3〕 電
磁
力
図1・2の
よ うに導 体が 磁 界 の 中に おか れ た とき,こ の導 体 に電 流 を流 す と,導 体 は 力を
生ず る。 これ を電 磁 力(electro-magnetic 図1・2の
force)と い う。
場合,導 体に 電流 iを 矢 の向 きに流 す とき,導 体 に生 ず る力 は 磁界 に も電 流 に
も直 角 に左方 に導 体 を 動か そ うとす る 向 きに生 ず る。 図1・3の
Bは 磁界 の 向 き,i は電 流
の向 き,f は生 ず る力 の向 きを示 す もので,こ の 三 者 の向 きの関 係 は左 手 三指 則 に よ って も 判 定 で きる。
図1・3電
磁力
力 の 大 き さ fは,磁 束 密度B〔Wb/m2〕,導 f=Bli〔N〕
図1・4回
体 長 さl〔m〕,電
転 機 に生 ず る トル クの例
流i〔A〕 の と き, (1・4)
で 与 え られ る。 図1・4は,後
で 述 べ る直流 電 動 機 の 回転 子 円筒 の 断 面 を示 す略 図で,外 側 に磁 極 を おい
て 図の 矢 の よ うに 円筒 面 に お いて 一様 な磁 束 密度B〔Wb/㎡ 向 の長 さをl〔m〕,周
辺 に配 置 され た導 線 数 を Z本,各 導 線 に流 す 電 流をi〔A〕
導 線 1本毎 に生 ず る力 はf=Bli〔N〕 とな る。 円筒 の 直径 をD〔m〕 D/
T=
2
〕を つ くった と し,円 筒 の軸 方 とす る と,
で,全 導 線 に よ つ てF=Z×f=Z×Bli〔N〕
の力
とす る とき,
×F〔N・m〕
を回 転 子 に生 ず る トル ク(torque)と
(1・5)
い う。
こ の トル クが回転 子 を 回転 させ る ので あ るが,回 転 中継 続 して一 定 の トル クTを 生 じ させ るこ とが で き,そ の回 転 速度 を 毎 秒 n回 とす れ ば,こ の回 転子 が 軸 を通 して機 械 的 に な した 仕事 の 速 さは,
(1・6) で あ り,2πnは さはW(ワ
回転 の角 速度 〔rad/s〕で,こ れ を ω と書 き,ま たN・m/sと
い う仕 事 の速
ッ ト)で あ るか ら,式(1・6)は, P=T×
ω 〔W〕
と書 け る。 これ が 電動 機 の 出 力(output)で
(1・7) あ る。
交 流 電 動機 で も,回 転 子 は 円筒 構造 で,図1・4の
形 に 相 似 の もの があ る。 しか し,交 流
電動 機 で は周 辺 に おか れ た各 導 線 に生 ず る電磁 力 fが等 し くな いの で,ト ル クを知 るた めの 計算 はや や複 雑 とな る。 この こ とに つ いて は,後 の 章 で述 べ る。 式(1・5)の
トル クは発電 機 で も生 じて い る が,発 電 機 で は 回転方 向 と反対 に トル クを 生
ず る ので,原 動機 が この トル クに反 抗 して 回 転 を続 け させ るだ けの 動力 を 生 じてい な い と発 電 機 と して の 運転 を続 け られ な くな る。 電 動機 に 生 ず る トル クを,電 流 が 流 れて い る二つ の コイル 間 に働 ら く力 や,N,S
両磁 極
間 に生 ず る吸 引 力 な どで考 え る こ と もで き る。
1・4電
気機 器 の基 本 的構 成
電 気 機器 の 主 要部 は 電気 回 路 と磁 気 回路 で あ り,こ れ ら回 路 に使 わ れ る材 料 は,電 気 回路 に は主 と して 銅 で,一 部 に アル ミニ ウ ムや 黄銅 も使 われ る。 磁 気 回路 は鉄 が主 で,交 流 磁 界 や回 転 磁界 が 通 る磁 路 に は けい素 鋼 板 ま た はけ い素 鋼 帯 が 使 われ る。 こ にで,静 止器 お よび回 転 機 の代 表 的 な もの の構 成 につ い て考 え て み る。
(b)外鉄 形変 圧 器
(a)内鉄 形 変 圧 器
(c)変圧 器 の 略 図
図1・5単
図1・5(a)は,内
図1・6電
相変 圧 器
機 子 コイ ル
鉄 形 といわ れ る変 圧 器 の略 図で,後 で述 べ るけ い素 鋼板 ま た は け い
素 鋼 帯 を積 み重 ね て 図 の よ うな閉 じた磁 路 をつ くり,こ れ に一 次 お よび二 次 コ イル を巻 く。 鉄 心 の うち コ イル を巷 く部分 を脚部,左 右両 脚 を 上側 お よび下 側 で つ な ぐ水 平 部 分 を継鉄 部 とい う。 図 で は,一 次 お よび二 次 コイル を それ ぞれ 脚 部 の左 側 お よび 右 側 に完 全 に 分 け て 示 し た が,実 際 に は左 右 両脚 に一 次 お よび二 次 コイル が巻 かれ るので,図(a)の
コ イル配 置 は あ
くま で も略 図で あ る。 図(b)は,外
鉄 形 変圧 器 の略 図 で,こ の形 で は 一次 お よび二 次 コ イ ル を 中 央脚 部 に巻
く。 コ イル 内 を通 る磁 束 は,図 の 破線 の よ うに,コ イル 外 で は左 右 に 分か れ る。 変 圧 器 の略 図は,さ
らに簡 単 に図(c)の
よ うに描 くこ とが多 い 。 こ の場 合は 鉄心 を 省略
し,一 次,二 次 コ イル だ けを示 す 。 図 中 ・印 は,こ の印 の あ る側 か ら電 流 が流 入 す る と き鉄 心 内に 同 じ向 き に磁 束 を生 ず るこ とを示 す 。す なわ ち,コ イル の巻 き方 向 を示 す 記 号で,こ れ は広 く用 い られ て い る。 図1・6は,直
流 機 お よび 交流 機 に 用い られ る電機 子*コ イル の略 図で,図 の よ うに大 体
六 角 形 で,コ イル 辺 の 部分 が 鉄心 に設 けた ス ロ ッ ト内 に入 れ られ る。 コ イル の鉄 心外 にあ る 部分 を コイ ル端 とい う。 この よ うな コイル が一 つ の 機器 内 に 多数 収 め られ,互 い に 直列 ま た は並 列 に結 ば れ る。 コイル の寸 法,導 線 断面 積,一 機 内に必 要 な コイ ル数 などは,そ の機 器 の電 圧,電 流,容 量 な ど に よ って 決 め られ る。 *電 機子(armature)と は
,磁 界 との相対回転運動によって誘導起電力を発生す る部分をいい,こ の巻 線を電機子巻線 とい う。
図1・7(a)は
直 流 機 の 原理 を 示
す もの で,外 側 に磁 極 N,S が あ り, そ の 内 側 に電 機子 が あ る。aa′ が電 機 子 コ イル の断 面 で あ る。 この コイ ル が 電 機 子 鉄心 の ス ロ ッ ト内 に 収 め ら れ る。 電 機子 を外 力 に よって あ る角速 度 ω で 図 の矢 の 向 きに 回転 させ る と,コ イル 辺 に 〓,〓
(a)直
流機 の原理
で示 した起 電 力 を生
ず る。 コ イル の 口 出 し線bb′ を図 に示 した整 流 子(commutator)に
結んでお
け ば,整 流子 上 に お い た +,−
のブ
ラ シにつ け た リー ド線 か ら起 電 力 を取 り出せ ば 直流 起 電 力 が得 られ る。 す な わ ち,直 流 発電 機 は コイル 内 に交 流起 電 力 をつ くり,こ れ を整 流 子 お よび ブ ラ シを通 して取 り出 す こ とに よ り直流 とす る もの で あ る。 ま た,直 流 電 動 機 で は +,−
ブ ラシか ら直 流 を つ くり,
(b)2
極 の 直 流発 電 機 図1・7
ブ ラ シと整流 子 の 作 用で コイル 内 の電 流 を交 流 とす る ので あ る。 実 際 の 直流 機 で は,電 機子 コ イル は数 十 個 な い し数百 個 とい う多数 が 用 い られ,こ れ らが 直 列 お よび 並列 に 組 み合 わ され る。 図(b)は,実
際 の形 に やや 近 い直 流 機 の略 図 で,こ の
図 で は12個 の電 機 子 コ イル を用 い て い る。 図 中破線 で示 し た の は,磁 極 に よ って生 ず る磁 束 の通 路 で電 機 子 鉄心 を 通 った磁束 は,外 側 の継 鉄 を通 って元 へ も どる。 図 には 整流 子 や ブ ラ シを 省 い て あ るが,こ れ らの電機 子 へ の結 線 に つ いて は 後 の章 で述 べ る。 図1・8は
同期 機 の略 図 で,普 通 は電 機子 が固 定子 側,磁 極 が 回転 子 側 に あ る。
こ の逆 の構 成 の もの もあ るが ま れで あ る。 こ こで は,起 電 力を 生ず る原理 だ けを考 え るた め,電 機 子 コイル は 1個 だ けを 示 した。 図1・9(a)は
図1・8を
展 開 した もの で あ る。
こ こで は,理 想 的 な 場合 を考 え,磁 極 に よ って ギ ャ ップ部 分 に 生 ず る 磁 束 密度 分 布 を 同 図 (b)の よ うに正 弦 分布 とす る。 1・10の
この 分布 の 磁 束が コイル 辺aa′ を切 って移 動 す れ ば,図
よ うに時 間 に対 し正弦 的 に変 化 す る起 電 力 を生 ず るこ とは 明 らか で あ る。
同期 機 は 4極以 上 の もの が実 際 に は多 いか ら,一 般 に極 数 を P とす る と,N,S
の一 対 の
(a)展開図
図1・8同
期
機
極 が 通過 す る起 電 力 の 1サ イ クル を 生 ず る か (b)ギ ャ ップ の磁 束分布
ら,回 転 子 が 毎 秒 n回転 す る と き,毎 秒 の 起電
図1・9図1・8の
展 開 図 と磁 束分 布 図
力 の サ イ クル 数,す なわ ち周波 数 f は, P/
f=
×n(Hz)
2
(1・8)
とな る。 一方
,コ
イ ル 辺aa′
か ら な る 巻 数 1回 の コ イ
ル に 生 ず る 起 電 力 の 大 き さ は, 図1・10図1・8の
e=2×blν
コイ ル に生 ず る起 電力
で 与 え ら れ る。 た だ し, π/
x=図l・9で
b=Bmsin
示 され る磁 束 密 度 〔Wb/㎡ 〕
τ
l=コ
イル 辺長 さ
〔m〕
ν=コ
イ ル 辺 と 磁 束 と の 相 対 速 度=Pτ
×n〔m/s〕
π /τ x
∴e=2l×Pτn×Bmsin そ う し て, 2/
π×Bm× τl=φ を毎 極 の磁 束 数 〔Wb〕
と お く と,Pn=2fで e=φ
あ る か ら, ×2πf×sin
π
x(V)
/τ
と な る 。 時 刻t=0に x=νt=Pτ
お い て,N ×n×t〔m〕
極 の 中 心 が 図1・9(a)のPP′
(1・9) に あ っ た とす る と,
と な る か ら,
∴e=φ
×2πf×sin2πft
(1・10)
よ って,起 電 力 の最 大 値 は φ×2πf〔V〕 で あ り,こ の実 効 値 をE0と
す れ ば,
1/√2 × φ ×2πf=4.44φf〔V〕
E0=
(1・11)
と な る。 この 式 は 同期 機(発 電機 お よび電 動 機)の 電 機 子 コイル の巻 数 一 回当 た り生 ず る起 電 力 の実 効 値 を 表 す式 で,後 の章 で述 べ るが,多 数 の コ イルを も った機 械 の一 相 の起 電 力 を 求 め る基 本 と な る。 図1・7,図1・8に
示 す よ うに,磁 極 鉄 心 に は界 磁 コイル が 巻 いて あ り,こ れ に直流if
て 界 磁 電流 とい う)を 流 す。ifを 加 減 すれ ば φが変 え られ,E0の 図1・11は
値 を 変 え る こ とがで きる。
三 相 誘導 機 の構成 を 示 す 略
図 で,固 定 子 内面 に12ス
ロ ッ トをつ くり,
これ に電 機 子 コ イル を収 め る。 図 は 4極 機 で あ り,一 相 ご とに 2コ イル,合 計 6個 の コ イル を入 れて あ る。回 転子 側 も鉄 心 の 外 面 に ス ロ ッ トを つ くり,こ れに 三相 また は 多 相 の巻線 を入 れ る。誘 導 機 は同 期機 の よ うに直流 励磁 され た磁 極 は ない が,三 相電 流 に よ って 同期 速 度 で回 る回転 磁界 を 生 じ 図1・114
て い る。 こ の こ とに つい て は 後 で 述 べ る が,図1・11の
極の 三相 誘 導 機
破 線 は 4極 機 の あ る瞬 時 にお け る磁 束 分布 を 示 し,こ の よ うに 分布 した磁 束
が 同 期速 度 で 回 転 してい るので あ る。 実 際 の誘 導 機 の 固 定子 コイル 数 は 図1・11の
よ うに少 な い もの は な く,1kW程
度 の小 容
量 機 で も24コ イル ま たは36コ イル などが 用 い られ,こ れ らに つ い て も後 の章 で述 べ る。 図1・12は,代
表 的な電 気 機 器 の電気 回 路 を示 す略 図 で,同 図 の(a)は
流 を 別 の電 源 か ら流 す 方式)の 直 流 発電 機 ま た は直 流電 動 機 で,A,B 間 が 界磁 巻 線 を 表 す。 同 図(b)は 電 機 子 巻 線,J,K
他 励磁(界 磁 電
間 が電 機子 を,J,K
三相 同期 発電 機 また は 同期 電 動機 で,U,V,W
が 界磁 巻線 で あ る。 同 図(c)は
三 相 誘導 電 動機 で,U1,V1,W1が
次 三 相 巻線 で,一 般 に一 次が 固定 子 側で あ る。U2,V2,W2は
が三 相 一
二 次 三相 巻線 で あ る。 誘導 機
(b)三相 同期 機
(a )他励 直 流 機
(c)三相 誘導 機 図1・12代
表 的 回 転機 の 電気 回路 略 図
の 二 次 は,か ご形 とい って三 相 よ り相 数 が多 い 回路 も広 く用 い られて い る が,こ れ を一 次 か ら見 る場 合 に か ご形 に 等価 な三 相 回路 を 考 え る こ とが で き るの で,図(c)は
二 次が か ご形
の 誘 導機 の 電気 回 路 を も表 して い る とい うこ とが で き る。 1・5電
気 機 器 の 主 要 材 料 と して の 銅 と 鉄
〔1〕 銅 銅 は巻 線 材料 と して 広 く用い られ る。 そ のお もな性 質 は次 の とお りで あ る。 (1)抵
抗率
銅 の抵 抗 率 は,20℃
軟 銅 と いわ れ る もの は,断 面 積1m㎡,長
に お い て1.69×10-6Ω・cmで さ1m,20℃
あ る。 た だ し,標 準
に お け る電 気 抵 抗 が1/58=0.017241
〔 Ω)の もの をい う。 ま た,抵 抗 率 の逆 数 を導 電率 とい い,断 面 積,長
さお よび 温度 が 等 しい
ときの あ る導 体 の 導電 率 と標 準軟 銅 の 導電 率 の比 を % で 表 し,こ れ を % 導電 率 とい う。 巻 線 に使 わ れ る銅 の導 電 率 は98∼100%で (2)電
気抵 抗
断面 積S〔m㎡
あ る。 〕,長 さl〔m〕,抵 抗 率 ρ 〔Ω・m㎡/m〕 の銅線 の電 気
抵抗 は, R=
ρ・l/S〔 Ω 〕
で あ る。 (3)銅
の 密 度20℃
で8.899/cm3で
銅 線 の 重 量 は,Gc=Sl×8.89×10-3〔kg〕 (4)銅
線 の抵 抗 と温度 の関 係
に お い て 抵 抗Rt〔 き,⊿R/Rt=αtをt〔
あ る 。 従 って,断
〕,長 さl〔m〕
の
で あ る。 銅 線 は 温 度 が高 くな る と抵 抗 が 増 す 。 あ る 温 度t〔 ℃)
Ω 〕 で あ っ た 銅 線 の 抵 抗 がt+1〔 ℃)に
面 積S〔m㎡
℃ 〕に お い てRt+⊿R〔
お け る 抵 抗 温 度 係 数 と い う。 tを0℃
Ω〕に な っ た と
と した と き α0=0.00427
=1/234.5で 0℃
あ る 。 よ っ て ,つ
でR0〔
ぎ の よ う な 関 係 が つ くれ る 。
Ω 〕 で あ っ た 銅 線 はt〔 ℃ 〕 お よ びT〔
℃ 〕で は,つ
ぎ の よ うな抵 抗値 にな る。
Rt=R0(1+α0t) RT=R0(1+α0T)
(1・12)
式(1・12)は,変
形 す れ ば 次 の よ うに も書 け る 。
(1・13) こ の式 は,銅 線 の抵 抗 の変 化 を 知 って 温度 の変 化 を 求 め る式 で,こ れ が 巻線 の 温度 測 定 に 用 い られ る。 これ を 抵 抗 法 に よ る温度 測 定 とい う。 (5)銅
線 の種 類
電気 機 器 に用 い られ る銅 は,か ご形 誘 導機 の 回 転子 の よ うに 裸 の銅
棒 や銅 帯 が 用 い られ る部 分 もあ る が,そ の他 は すべ て 絶縁 され た線 が 用 い られ る。絶 縁方 式 は多 種 類 が あ り,そ れ ぞ れJIS(Japan
Industrial Standard)規 格 に 決 め られ て い るが,大
別 す れ ば 次 の よ うに な る。 エ ナ メル 線
小 形 電 動機 用
ホル マ ー ル線
汎 用 電 動機,油 入 変 圧 器用 な ど
ポ リエ ス テ ル線
E種 絶 縁 の汎 用電 動 機,乾 式 変圧 器 な ど
ポ リウ レ タン線
電 子 機 器用 巻 線
ガ ラス絶 縁 線
中 容 量 以上 の 回転 機 電機 子 巻 線用,乾 式 変圧 器 用
紙巻線
油 入 変 圧器
綿 巻線
油 入 変圧 器
等 が あ る。 これ らは絶 縁材 料 の種 類 に応 じて 許 容最 高 温度 が異 な るので,こ の温 度 限度 を超 え な い よ うに機 器 を 使 用 しな けれ ば な らな い。 〔2〕 鉄 心 材 料 電 気 機器 の磁 気 回 路 に は鉄 が 用 い られ るが,回 転 機 の よ うに 固定 部 と回転 部 とが あ る場合 には,そ の間 にギ ャ ップ(gap)と
い う空 気 の 部分 が あ る。 ギ ャ ップ の部 分 は一 般 に非 常 にせ
ま いが,空 気 の比 透 磁率 が鉄 に比 べ て小 さい ので,機 器 の特 性 に重 要 な 関係 を も ってい る。 磁 気 回路 の うち,交 番磁 束 や 回転 磁 束 の通 る部分 は,う す い 鋼 板を 積 み 重 ね て鉄心 を 造 る。 これ を 成 層鉄 心 と いい,成 層 す る こ とに よ り鉄心 内に生 ず る うず 電 流 損 を 減 ら し,鉄 心 が発
熱 す るの を防 ぐ。 成 層 鉄心 を 造 るた めの 鋼板 には,ご
く小形 機 器 用を 除 い て,け い素 を 少 量
含 ませ た け い素 鋼板 ま た は け い素 鋼帯 が 用 い られ る。 最 近 は後 者 が広 く用 い られ る。 現 在 使 われ る鋼帯 は,大 体 表1・2の 表1・2電
(1)小
よ うに分 類 され る。
気 機 器用 鋼 帯 の種 類(JIS規
形 電 動機 用 磁 性鋼 帯
格 の抜 す い)
これは け い素 を含 まな い鋼 帯 で,鉄 損 は や や多 い が,安
価で,か つ,工 作 が しや す く,家 庭電 器 品 に組 み込 まれ るよ うな小形 電 動 機 用鉄 心 に 広 く用 い られ て い る。 な お,表1・2で 磁 束 密 度B=1〔Wb/㎡ の鉄 心1kg当 図1・13に (2)冷
鉄損
とい うの は,
〕,周 波数f=50〔Hz〕
に お いて
た りの鉄 損 値 〔 W 〕 を 示 す も の で あ る。 鋼 板 の鉄 損 の 例 を示 す 。
間圧 延 け い素 鋼 帯
この 鋼帯 は,主 と して回
転機 に用 い られ,幅 は150∼600mmで
長 尺 の 帯状 で ドラ
ムに巻 いた形 で 供 給 され るの で,連 続 打 ち抜 きに便 利 で あ る。 この鋼 帯 の う ち,S23は
け い素 含 有量 が 少 な く,S12
が 最 も多 い が,そ れ で も3.5%以
下 で あ る。 一 般 に,け い
素 を 多 く含 ませ る と抵抗 率 が 大 き くな り,う ず 電流 損 が減 少 す るが,硬
くな るの で,回 転 機鉄 心 と して のス ロ ッ トの
図1・13鋼
板の鉄損例
よ うな,細 か く,か つ,正 確 な寸法 に打 ち抜 きを しな けれ ば な らな い場 合 に工 作 が難 か し く な る。 なお,S23と
い う よ うな記 号 の Sは シ リコ ンを表 し,23は 厚 さ0.35mmの
の 値 の概 略値 の小 数 点 を と って記 号 化 した もの で あ る。 例 え ば,S18と 0.35mmの
が 約1.8W/kgで
ま た,B1990と
あ り,こ の1.8の
小数 点 を と って18と
は,磁 化力 が1990AT/m=25〔Oe:エ
鋼帯 の
い う鋼帯 は,厚 さ した もの で あ る
。
ール ス テ ッ ド〕 に お け る 磁束 密 度
〔Wb/㎡ 〕 を示 す もの で あ る。 冷間 圧延 け い素 鋼板 の う ち損失 の 少 な いS14,S12な (3)方
向性 け い素 鋼 帯
ど は,変 圧 器 鉄 心 に も用 い られ る。
方 向 性 とい うのは,磁 束 を通 す 向 き に よ って磁 気 特性 の異 な
る こ とを いい,圧 延 の向 きに磁 束 を通 した ときに最 も透磁 率 が高 い。 この 鋼帯 は,主 と して 電 力 用 変圧 器 鉄心 に,ま た大 形 ター ビン発電 機 の 固定 子鉄 心 に 用 い られ る。 これ らの 鋼 帯 に は,表 面 に絶 縁皮 膜 を つ くる処 理 が して あ るので,積 み重 ね た ときに 層 間 は絶 縁 され て い る とみ る ことが で き る。
(a)小
形 同 期発 電 機 の 磁極 鉄 心 の 例 (厚 さ1・6mm)
(b)小
形 直 流 機 の主 磁 極 鉄 心 の例 (厚さ1.6mm)
図1・14
1・6電
気機 器 の温 度上 昇
電 気機 器 の巻 線,鉄 心,軸 受 な ど は,使 用 中,鉄 損 に よ る熱 のた め に温 度 が 高 ま る。 使用 中の 測定 温 度 と冷媒 温 度(空 冷 の場 合 は周 囲 の空気 温 度)と の 差 を 温度 上 昇(temperature rise)と い う。 〔1〕 温 度上 昇 の 限度 温 度 上昇 の 限度 は,日 本 電 気 規格 調 査会(Japan JECと
Electrotechnical
い う)の 規 格 に細 か く決 めて あ る が,そ の一 部 を示 す と表1・3の
Committee,略
して
ように なって い
る。 た だ し,こ の温 度 上昇 限度 は,電 機子 巻 線 につ い て は抵
表1・3交
流 機,直 流 機 の電 機 子 巻 線 お よび 鉄心 の 温度 上 昇 限度
抗 法 で,鉄 心 に つ いて は温 度 計法 に よ って測 定 した場 合 の値 で あ る。 なお,こ の表 の絶 縁 の種 類 に つ いて は 次 の項 で述 べ る。 一 般 に,電 気機 器 は銘板 に 示 され た 電圧,電 流,出 力等 の 範 囲 内 で使 用 す れ ば,温 度 上 昇が 表1・3の
限度 を超 え な い
よ うに造 られ て い る。 〔2〕 冷 媒 温 度 回 転機 の 温 度上 昇 を きめ る ときの 基準 とす る冷 却 媒 体の 温度 を 冷 媒温 度 とい う。 冷却 媒 体 は多 くの場 合 空気 で あ るが,水 素 ガ ス,油,水
の こ と もあ る。
冷 媒 の温度 は季 節 や その 機 器の お か れた 環境 に よる変 動 が あ るが,機 器 の定 格 を決 め るた め に冷 媒 温 度 の限 度 が決 め て あ る。 これは 空気 に対 しては40℃,水 て い る。 す な わ ち,表1・3の
に 対 して は25℃
温度 上昇 限 度 は,冷 媒 温 度 の 限度40℃
とな っ
か ら起 算 して 高 ま る
温度 の限 度 を示 した もので あ る。 しか し,冷 媒 温 度 が決 して30℃
を超 え な い と して設 計 され る機器 や,40℃ を超 え るこ と
を 予期 して 設 計 され る機 器 につ い て は,表1・3の
温 度 上 昇 限度 値 に修 正が 加 え られ る。
〔3〕 絶縁 の種 類 と温 度 限度 回転 機 や 乾式 変 圧 器 には,巻 線 の絶 縁 材 料 の構 成 に応 じて Y,A,E,B,F,H,C
種 の絶 縁 種別 が あ る。 各絶 縁 種別
の温 度 限 度 は,表1・4の
とお りで あ る。 ま た,各 絶 縁 種別
表1・4絶
縁種 別 と温度 限 度
の お もな 構成 材 料 は 次 の とお りで あ る。 Y 種:木 綿,紙,絹
などを 用 い ワニ ス含 浸を しな い絶 縁
A 種:Y 種 と同様 な材料 を 用 い,ワ ニス 含浸 を す るか ま た は油 中に 浸 して使 用 す る巻 線 E 種:A 種 よ り耐熱 性 のす ぐれ た材 料。 例 え ば,マ イ ラ, ポ リエス テル フ ィル ムな どを 用 い ワニ ス含 浸 処理 を した もの B 種:マ イ カ,石 綿,ガ ラス繊 維 な ど を主 と し,接 着材 料 を 用 いて 構成 した絶 縁 F 種:B 種 とほ ぼ同 じ主 要材 料 を 用 い るが,シ
リコ ンアル キ ッ ド樹 脂 な どの接 着材 料 を 用
いて 構成 した もの H種:B 種 とほ ぼ同 じ主材 料 を 用 い,シ
リコン樹 脂 な どの 接着 材 料 を用 い て構成 した もの
C 種:マ イカ,石 綿,磁 器 な どを 単 独で 用 い た もの,お よび ガ ラス,セ メ ン トの よ うな無
機 質 の接 着 剤 と と もに用 い た もの 表1・4に
よ る とB種 絶 縁 の温 度 限度 は130℃,ま
昇 限 度 は80℃
で あ り,冷 媒空 気 温度 の 限 度 は40℃
よ って,ぎ りぎ りの冷 媒 温度40℃ と な り,温 度 限度130℃
の場 所で,80℃
に対 し10℃
た表1・3に
よ る と B種 絶 縁 の温 度 上
で あ る。 の温度 上 昇 を 起 こせ ば 温 度 は120℃
の余 裕 があ るよ うに 見 え るが,こ れ は 温 度 上 昇 が 抵
抗 法 に よ って 測 られ る場 合 に,さ きに述 べ た よ うに,平 均 温度 上 昇 を測 ってい る こと に な る の で,抵 抗 法 で80℃
の温 度上 昇 が 測定 され れ ば,巻 線 の あ る部 分 の 最 高 温度 上 昇 は90℃
に 近 い とみ なけれ ば な らない か ら,10℃
は 余裕 とは い えな い こ とに な る。
〔4〕 機 器 温度 の 測定 電 気機 器 の巻 線 や 鉄心 の 温度 測 定 法 に は,次 の各 種が あ る。 (1)温
度 計法
棒 状 温度 計,抵 抗 温 度計,熱 電対 温 度計 な どを,外 部か ら接近 で き る
場 所 で,温 度 が最 高 と思 わ れ る所 の 温度 を 測 る。 この方 法 で は,巻 線 や 鉄 心 の奥 深 い最 高 温 度 の 所 は測 れ な い。 (2)抵
抗法
は 式(1・13)に
巻線 の 抵抗 の変 化 を測 って,そ れか ら温度 を 逆 算す る方法 で ある。 逆 算 よ って行 うの であ る が,温 度試 験 を終 わ る時 の冷媒 温 度ta〔 ℃ 〕 が,始
の冷 媒 温度t〔 ℃ 〕 に 等 しい とは限 らな いか ら,JEC規
め
格 には,温 度計 算 法 と して,次 の式
が 示 され て いる。
(1・14) ただ し,巻 線 が アル ミニ ウム の場 合 は,式(1・14)の234.5の
代 わ りに230を
用 い る。
この 抵抗 測 定 は温 度 試験 中にで きな い ので,電 源 を切 った後 に行 う ことに な るが,電 源 を 切 れば 巻線 温 度 は急 速 に下 が る ので,抵 抗 測 定 は手 早 く行 わ な けれ ば な らない。 測 定 器 具 は 普 通 は ホイ トス トンブ リッジに よる。 なお,使 用 中の機 器 の巻 線温 度 はす べ て の部 分 が同 じとは な らず,抵 抗 法 に よ って 測 られ る温 度 上 昇 は平 均値 を 測 って い る こ とに な るの で,最 高 温度 上 昇 は,式(1・14)で
得 られ る
値 よ り若 干高 い と見 な け れば な らない 。 (3)埋
入温 度 計法
電 機 子 の ス ロ ッ ト内の よ うに,完 成 後 に は接 近で きな い場 所 に,
機 器 の製 造 工程 の 中で,抵 抗 温 度計 素 子 ま た は熱 電対 温 度 計素 子 を予 め入 れて お き,外 部 に 引 き出 した端 子 を用 いて 温 度 を測 る方 法 で あ る。
1・7
損 失 と効率
〔1〕 損 失 と効率 あ る機 器 の入 力 と出 力 の差 を損 失(loss)と
い う。損 失 は W ま た はkWで
表 す が,そ の
機器 の 容 量 を基 準 と した百 分率 で 表 す こ と もあ る。 また,あ る機 器 の出 力(output)と
入 力(input)の
比を 効 率(efficiency)と いい,普 通 は
百分 率 で 表 し,特 に こ とわ らな い場 合 は その機 器 の 定格 出力 時 の値 が 示 され る。 効 率 を 測 る に は出 力P2お
よび入 力P1を
実 測 して,そ の 比 か ら求 め る方 法 と,あ る出 力
ま たは入 力 時 の損 失 pを測 って,効 率 η を
(1・15) の よ うに して求 め る方 法 とが あ る。 前者 を 実 測効 率(efficiency by 者 を規 約 効 率(efficiency by summation
input-output
test),後
of losses)とい う。一 般 には,規 約効 率 が用 い られ
る。 これ は,入 力,出 力 を直接 測 るこ とが 困難 な こ とが 多 い か らで あ る。 〔2〕 損 失 の種 類 損 失 は,発 生 場 所 や負 荷 の変 化 に対 して ほ ぼ一 定 の もの,変 化 す る ものな どに応 じて,次 の よ うに 分 類 され る。 定 電 圧,定 周 波 数,定 速 度 で運 転 され る発電 機 や電 動 機 に お いて は, ①
固 定損
負荷 が 変 化 して もほ ぼ一 定の 損 失 が これ に属 し,① 無 負 荷鉄 損,② 軸 受 の
摩 擦 損,ブ ラ シの摩 擦 損(friction loss),風 損(windage ②
直接 負 荷 損
loss)な どに 分 け られ る。
負 荷 の変 化 に著 し く変 化 す る損 失 が これ に属 し,① 電 機子 巻線 の 抵抗
損,直 流 機 の 直巻 界 磁 ・補 極 ・補 償 巻 線 の抵 抗損,② ブ ラシ の電気 損,③ 負 荷 に よ り変 化 す る 鉄損 な どが これ に属 す 。 ③
分 巻 お よび 他励 界 磁 巻線 の 抵抗 損
④
漂 遊負 荷 損(stray-load
loss)負
荷 の 変 化 に よ って変 化 す る損 失 で あ るが,導 体 の
中,鉄 心 内,ブ ラ シ内な ど に生 じる損失 で,こ れ ら は測定 も計 算 も困難 で あ る。 漂 遊負 荷 損 は小 容 量 機 で は無 視す る。 これ ら損失 の うち抵 抗 損 は,巻 線 抵 抗 ×(電流)2と な る が,巻 線抵 抗 は 温度 に よって 変化 す るの で,規 約 効 率 を求 め る場 合 に は,巻 線 温 度 が,A,E,B 絶 縁 で は115℃
種 絶 縁 で は75℃,F,H
種
で あ る場 合 の抵抗 損 を 求 め る こ とに な って い る。
なお,ベ ル トや 歯車 な ど伝 動 装 置の 損失,界 磁抵 抗 器 の 損失,冷 却 用 の 送風 機,ポ ンプ な
どの動 力 は損失 に含 め ない 。
1・8定 〔1〕
格 と銘 板 定
格(rating)
電 気 機 器 に は 使 用 上 保 証 さ れ た 限 度 が あ り,出 い,ほ
か に 電 圧,電
格 電 流,定
流,回
格 回 転 速 度,定
転 速 度,周
力 の 限 度 を 定 格 出 力(rated
波 数 な ど に も使 用 限 度 が あ り,そ
格 周 波 数 と い う。 こ れ ら は す べ て 銘 板(name
output)と
い
れ ぞ れ 定 格 電 圧,定 plate,rating plate)
に記 載 す る こ とに な って い る。 定 格 出 力 は,
① 直 流 発 電機 にお い て は,端 子 に お け る定格 出力 を W ま た はkWで
表 す。
② 交 流 発電 機 にお いて は,端 子 に お け る定 格 出 力 を W ま たはkWで
表 す か,VAま
はkVAで
た
表 し,定 格 力率 を並 記 す る。
③ 電 動 機 の定 格 出力 は,直 流,交 流 い ずれ の 場 合 も軸 に生 ず る機 械 的 出力 を W ま た は kWで
表 す。 なお,加 減 速度 電 動機 につ い て は,最 高 お よび 最 低速 度 に 対 し,そ れ ぞれ
定 格 出 力を 決 め る こ とにな ってい る。 電 気 機 器 が連 続 的 かあ るいは 断続 的 に 使 わ れ る べ き 設 計 で あ る か に よ って,連 続定 格 (continuous
rating),短 時 間定 格(short-time
rating),反 復 定格,等
価 定 格 な どの 区別 が
あ る。 ①
連続定格
銘 板 に示 され た定 格 の も とで連 続 に使 用 した と き,JEC規
格 の 温度 上 昇
限度 を 超 え な い定格 を い う。 ②
短 時 間 定格 とき,JEC規 60分,90分
③
冷状 態 か ら使 用 を開 始 し,指 定 され た一定 時 間,指 定 の条 件 で 使用 した 格 の温 度 上昇 限 度 を超 え な い定 格 を い う。 時間 の標 準 値 は10分,30分,
が あ り,そ れ ぞれ10分 定 格,30分
反 復 定 格 お よび等 価 定格
定 格 など とい う。
断続 的 に 使 用す る機器 に つ いて 決 め られ た定 格 で あ るが,
こ こで は詳 細 は 省 く。 〔2〕 銘 板 電 気 機 器 ご とに,そ の 機器 の機 体 の見 や す い所 につ け られ る表示 板 を 銘板 とい い,銘 板 に は定 格 出 力 その他 の定 格事 項 の ほか,製 造 者 名,製 造 年,製 造番 号 などを 記 載す る。 大 容 量 の機 器 に な る と銘板 に記 載 す べ き事 項 は さ らに 多 くなる が,こ れ らに つ いて はJEC 規 格 に 細か く決 め られ て い る。
1・9電
気 機器 に関 す る規格
〔1〕 JEC規 1・6節
格
で 述 べ たJECの
規 格 の う ち 電 気 機 器 に 関 係 す る お も な も の は,次
こ れ ら は 国 際 電 気 標 準 会 議(International 一 され た 規 格 に 近 づ け られ つ つ あ る
Electrotechnical
Commission)に
の各 種 で あ る。 よ り国際 的 に統
。
①JEC-146回
転 電気 機 器 一般
②JEC-147電
気 機 器絶 縁 の種 類
③JEC-54直
流機
④JEC-168変
圧器
⑤JEC-37誘
導機
⑥JEC-114同
期機
⑦JEC-164試
験 電圧 標準
これ らの規 格 に は,機 器 に関 す る用 語 の定 義,損 失 や特 性 の決 定 法,温 度 測定 法,端 子記 号 の 標準,絶 縁試 験 法 な どが 詳 し く規 格化 され,説 明 が加 え られ て い る。 な お,こ れ らの規 格 は技 術 の進 歩 に応 じ,し ば しば改 訂 され るか ら注 意 を 要す る。 〔2〕JIS規
格
これ は国 家規 格 で,電 気 機 器 に関 す る もの として は,標 準 化 され た小 形 お よび中 形交 流電 動機 や変 圧 器 のJIS規 格 の よ うに製 品 と して の規 格 は もち ろん,電 気 鉄 板,絶 縁物,ね じ類 巻 線用 電 線 な どの機 器 を構 成 す る部 品 につ い て も多 くの規 格 が あ る。
第 2章
2・1
直
流
機
直 流機 の種 類
直 流機(DC
machine)は,表1・1に
も示 した よ うに,各 種 の 励磁 方式 が あ り,ま た特 性
上 か らみて もい くとお りか に分 け られ る。 〔1〕 励 磁 方 式 に よ る 分 類(図2・1) (1) 自 励 発 電 機 自 励 発 電 機(self-excited
generator)と
は,そ
の界 磁 電 流が発 電 機
自 身 の 電 機 子 か ら供 給 さ れ る発 電 機 を い う。 (2) 他 励 機 他 励 機(separately
excited
machine)と
は,界
磁 電 流 が 他 の 電 源 か ら供
給 さ れ る 方 式 を い う。
(3)磁
石直 流 機 磁 極 が永 久 磁石 で あ る直 流 機 を い う。 これ は ご く小形 機,特 に電 動
機 に 用 い られ る。
(イ) 分
巻
機
(ロ) 内 分巻 複 巻
(ハ) 外分 巻 複 巻
(a) 自励 直 流機
(b) 他励直流機
(c) 他励 付 き分 巻機
(d) 直
{F… 分巻界 磁 S…
直 巻 界磁
Rf… 界 磁抵 抗 器
図2・1直
流 機 の種 類
巻
機
〔2〕 界磁 巻 線 によ る分類 (1) 分 巻機 分 巻機 とは,界 磁 回路 と電 機子 回 路 とが 並列 に接 続 され た もの を い う。 分 巻機 で さ らに他 励 界磁 巻 線 を もつ 場合 は他 励付 き分巻 機 とい う。 (2)直
巻 機 直 巻機 とは,界 磁 回路 と電 機子 回 路 とが 直列 に接 続 され た もの を い う。
(3)複
巻 機 複 巻(compound)機
とは,分 巻 界磁 巻 線 と直 巻 界磁 巻 線 とを もつ もの を
い う。 分 巻 界磁 と直 巻界 磁 とが 同 じ極 性 の もの を和 動(cumulative)複
巻,逆
の極性 の もの
を差動(defferential)複 巻 とい う。 複巻 機 で は和 動 の ものが 多 く使 用 され,単 に複 巻 といえ ば 和動 を 意 味 して い る。 ま た,複 巻 で は,図2・1(a)に 複 巻 と外 分 巻(long
示 す よう に,分 巻 界 磁 回路 の接 続位 置 に よ り内 分 巻(short
shunt)
shunt)複 巻 とが あ る。 内分 巻 とは,分 巻 界 磁 が電 機子 側 に直 巻 界 磁 が
端子 側 に あ る も のを い い,外 分巻 とは,分 巻 界磁 が端 子 側 に,直 巻界 磁 が 電 機子 側 に あ る も のを い う。 発 電 機 で は 内分 巻 複 巻が,電 動 機 で は外 分巻 複 巻 が それ ぞれ 標 準 に な って い る。 〔3〕 速 度 に よ る分 類 速度 につ い て は,つ ぎの よ うな用 語 が あ る。 (1)定
速 度 発 電機 速 度が 一定 か また は ほぼ 一定 で 運転 す る発 電 機 を い う。 直流 発電
機 は この 類 に入 る もの が大 部 分 で あ る。 (2)変
速 度 発 電機 速 度が 広範 囲 に変 わ る発電 機 を いい,こ れ は特 殊 用途 の もので あ
る。 (3)定
速 度 電 動機 負 荷 にか か わ らず速 度 が一 定 か また は ほ ぼ一 定 の電 動 機 をい う。
定電 圧 で 運転 され る分 巻, 複巻 お よび他 励電 動 機 が この特 性 を も って い る。 (4)多
速 度 電 動機 数段 の速 度 に変 更 で き る電 動 機 を い う。
(5)加
減 速 度電 動 機 速 度 を 広 い範 囲 に連 続的 に変 え られ る電 動 機 を い う。
(6)変
速 度 電動 機 負 荷 が 変化 す ると速 度 が著 し く変 わ る電 動 機 を い う。
2・2
直 流機 の構造
直 流 機 の構 造 に つ いて は,図1・6に
略 図 を示 した が,こ こで再 び 考 え て み る。
〔1〕 固 定 子 直 流 機 の固定 子 は,主 磁極(main
pole),固 定 子継 鉄(yoke),ブ
ト,外 枠,軸 受 な どか らな る。 なお,補 極(interpole),補 を もつ 場 合 には,こ れ らも固定 側 に お かれ る。
ラシ保持 機 構,ブ ラケ ッ
償巻 線(compensating
winding)
主磁 極 鉄 心 は,厚 さ1.0∼1.6mmの 主 磁 極 の 界 磁 コイ ルは,図2・2の
鋼板 を積 み重 ねて つ くる。 例 の よ うに,細
くて巻 数 が 多 い分 巻 界 磁 と,断 面 積 が
大 き く巻 数 が 少 な い直 巻 界 磁 とを お く複 巻 が多 い 。 ご く小 容 量 の直 流 機 を 除 いて,整 流 を よ くす るた め に,図2・2の
例 の よ うに主 磁 極 の間 に
補極 を お く。 補極 の巻 線 は電 機 子 と直 列 に接 続 し,補 極 に 生 ず る磁 束 が電 機 子 電 流 に比例 す る よう にす る。 補 極 鉄 心 は 塊状 鉄 心 でつ く られ る ことが 多 い が,大 容 量 機 で負 荷 が急 変 す る よ う な用 途 の もの で は,主 磁極 と同 様 に積 み重 ね た 鉄 心 と し,電 流 変 化 に 応 じて 補極 磁 束 が時 間 遅 れ な く生 ず る よ うに す る。 継 鉄 は,主 磁 極 お よび補 極 を取 り付 け る外 周 部 の 鉄 心 で,主 磁 束 の帰 路 と して磁 気 的 に も重 要 な部 分 で あ る。 継 鉄 も塊 状 鉄心 でつ くる場 合 が多 い が,厚 鋼 板 を 積 み重 ねてつ くる こと もあ る。 回 転 子側 の整 流 子 が あ る部 分 の外 周部 に は ブ ラシ保 持 機構 を お き,ブ ラシを適 正 位 置 に保 持
図2・2
直流 複 巻 発 電 機の 例
す る よ うに し て あ る。 〔2〕
回 転 子
回 転 子 は,電 機 子 鉄 心,電 機子 巻 線,整 流 子 お よび 軸 な どに分 け られ る。 (1)電
機 子 鉄 心 電 機 子鉄 心(armature
素鋼 帯 が 用 い られ る。 図2・3は,コ
core)に は,0.35ま
た は0.5mm厚
イ
ル を入 れ るた め の ス ロッ トをつ け た素 板 の 例で あ る。 この 形 の もの を必要 な厚 さ だ け積 み 重 ね て成 層 鉄 心 とす る。 この ス ロ ッ トに入 れ る コイル は,絶 縁 種別 に応 じ,エ ナ メル 銅線,ホ ル マ ール 銅線,ポ
リエ ス テル 銅 線 な どの マ グ ネ ッ
トワイ ヤ(絶 縁皮 膜 を施 した電 気機 器 の
図2・3
電 機 子 鉄 心 の例
のけい
図2・4 巻 線 用 電 線 を い う)や,綿,ガ 図2・4は (2)電
コイル 入 れ 中の 電機 子 鉄心
ラス繊 維 な どを巻 いた 銅線 が 用 い られ る。
コイル 入 れ 中の 電機 子 鉄 心 で あ る。 機 子 巻 線 電 機 子 巻 線(armature
イ ル を 図2・4の
winding)は,例
鉄 心 の ス ロ ッ トへ 入 れ て,コ
え ば,図1・6の
よ うな コ
イ ル 相 互 間 を 口 出 し線 を 通 じて 結 び,各
コイ
ル に 生 ず る起 電 力 が 正 負 ブ ラ シ 間 に 効 率 よ く直 列 に 加 わ る よ う に す る 。 電 機 子 コ イ ル 相 互 間 を 結 ぶ の に 重 ね 巻(lap
winding)と
波 巻(wave
winding)の
二つの
方 式 が広 く用 い られ て い る。 重ね 巻 の場 合 の一 部 を略 図 で 示 した のが 図2・5で
あ る。
電 機 子 コイル 間 お よび電 機 子 コ イル と整 流 子片 との つ なが りを 図で示 す と 複 雑 に な る が,大 体 つ ぎの よ うにす る。 (a) コ イル辺 の番号 番
図2・5電
機 子 コ イル と整 流子 片 との つ なが りの一 部(重 ね 巻 の 例)
号 の付 け方 は一通 りでは な いが,任 意 の ス ロ ッ トに あ る コイル 辺 か ら始 め て図2・5の
よう
につ け るの も一 つ の方 法 で あ る。 直 流 機 の電 機 子 は 2層巻 とす るか ら コイル 辺番 号 は少 な く と も ス ロ ッ ト数 の 2倍 ま でで き る。 ス ロ ッ ト入 口 に あ るコ イル辺(に れ を上 口導 体 とい う) には 奇 数,ス ロ ッ ト底 に あ る コイ ル辺(こ れ を下 口導体 と い う)に は偶 数 の番 号 をつ け る。一 つ の コイル の巻 数 が 2 回以 上 あ って も巻 線 図 で は 1回 の よ うに示 す 。 1ス ロ ッ トに 上 口お よび下 口 導体 をそ れ ぞれ 二 つ以 上入 れ る場 合 も多い が,こ の と きは 図2・6の
よ うに番 号 を つ
図2・6
1ス ロ ッ ト内 の コイル 辺 の横 な らび 数u=2 の 場合
け る。
(b) コ イル ピ ッチ 一 つ の コ イル の広 が りは ほ ぼ 1極 分 の 幅 と な って い る こ とが必 要 で あ り,こ の た め には 一 つ の コイ ル の左 右 の コイル 辺 の番 号 の差(こ れ を コ イル ピ ッチ と い う) は,全
コイ ル辺 数 を 極 数 で 割 った 値 に 近 くな けれ ば な らない 。 図2・5の
例 で は,4 極24ス
ロ ッ トで あ り, 全 ス ロ ッ ト数=全
コ イ ル 数=24,全
コ イ ル 辺 数=24×2=48
1極 当 た りの コ イ ル の 辺 数=48/4=12 で あ る。 巻 線 を 図 で 示 す 場 合,整
流 子 が あ る 側 を 前,反
つ な が れ る コ イ ル 辺 番 号 の 差 を 後 ピ ッ チ(back pitch)と
い う 。 図2・5の
対 側 を 後 と い い,後 pitch),前
側 で コ イ ル 端 を 通 じて
側 で の そ れ を 前 ピ ッ チ(front
例 で は,
後 ピ ッ チyb=14-1=13,前
ピ ッ チyf=14-3=11
で あ る。 これ らは 1極 当た りの コイル 辺 数12に 近 い 奇数 に な って い る。 (c)整
流子 片 の番 号 整 流子 片 に も番 号 を付 す が,コ
子 片 をNo.1と
す る。 あ る整流 子 片 か ら一 つ の コ イル を通 じて,つ
片 との番 号 差 を整 流 子 ピ ッチ とい う。 図2・5の (d)重
イル 辺No.1に
ね 巻 の巻 線 図 例 図2・5の
例 で は2‐1=1で
ぎにつ なが れ る整流 子
あ る。
重 ね巻 巻 線 の 全体 は,図2・7(a)の
よ うな 略 図 で示
(b)起電 か群
(a)放 射 式 巻 線 図 図2・7重
つ なが れ る整 流
ね巻 巻線
さ れ る。 この 図 の コイ ル辺 1か ら出発 して つ なが り の 順 に た ど って み ると,最 後 に 1へ戻 る。 す な わ ち,全 コイ ル は環状 に な って い る。 そ う して,こ の図 の場 合,環 内 には 同 図(b)の よ う に 四つ の 起電 力 の 群 が で きて い て,環
内 で の 起 電 力 の 総 和 は零 で あ るが,(全
コイ ル 辺
数/極 数)個 の 起電 力 が 直列 に な るの で,同 図(a)の よ うに整流 子 片 上 に ブ ラ シを お い て, これ ら ブ ラ シを 発電 機 の 十,一 端 子 へ 結べ ば,端 子 間 に極 数 に等 し い並 列 回 路が で きる。 (e)波
巻 の 巻線 図 例
で は,図2・5の
重 ね巻 巻 線
よ うに六 角 形 の コ イ
ル を用 い,こ れ を 改 めて 画 けば図2・8 (a)の よ う に な るの で あ るが,波 巻 巻 線 で は 同 図(b)の よ うに前 側(整 流 子 側)で の 口 出 し線 が足 を開 い た よ うな 形 の コイ ルを 用 い る。
(a)重
ね巻
(b)波
実 線 は 上 ロ コイル 辺
破 線 は下 ロ コイ ル辺
図2・8重 図2・9(a)は,4
数=23の 25-14=11,整
極,全
巻
ね 巻 と波 巻 の コ イル の形 の相 異
ス ロ ッ ト
場 合 の 波 巻 の 例 で あ る 。 こ の 図 の 場 合,後 流 子 ピ ッチyc=13-1=12と
ピ ッ チyb=14-1=13,前
ピ ッチyf=
な って い る 。
波 巻 で も,同 図(b)の よ うに,全 コ イル辺 を通 じて 環状 につ な が れ,環 内 の起 電 力 群 は 二
(b)起電 力群
(a)放射 式 巻 線 図 図2・9波
巻 巻 線
つ し か で き な い 。 す な わ ち,正 図2・10は,4kW,6 ト内 の コ イ ル 辺 数 子 片 数100で 200/6=33.3に と も に33に
負 ブ ラ シ 問 の 並 列 路 の 数 は 極 数 に か か わ らず 常 に 2 で あ る 。
極,110V,600rpmの
直 流 発 電 機 の 例 で,全
4,1 コ イ ル の 巻 数 4,よ
あ る 。 従 っ て,巻
近 い 奇 数 が 選 ば れ な く て は な ら な い。こ
ね巻 と波 巻 と の比 較
で あ り,コ
の 例 で は,前
流 子 ピ ッ チycも33で
図2・10波
(f)重
っ て 巻 線 図 上 で は 全 導 線 数=4×50=200,整
線 図 上 の コ イ ル 辺 番 号 は1∼200ま
な っ て い る 。 ま た,整
ス ロ ッ ト数50,1
ス ロッ 流
イル ピッチ は
ピ ッ チyf,後
ピ ッ チyb
あ る。
巻 の 例
重 ね巻 で は,正 負 ブ ラ シ間 に極 数 に 等 し い並 列 回 路 が で き
る ので,外 部 電 流 が大 で もコイ ル電 流 は 小 とな るの で,電 圧 が 低 く,電 流 が多 い場 合 に 適す 。 この巻 線 は,中 形 機,大 形機 に広 く用 い られ る。 な お,重 ね 巻 で は,各 磁 極 の磁 気 的 な 不 均 一 ,例 えば ギ ャ ップ長 さの不 均 一 な どの原 因 で,各 並 列 回路 の 起電 力 が 等 し くな らな いお そ れ が あ り,こ の とき は並 列 回路 内で 循 環 電流 が流 れ 好 ま し くない の で,電 機 子 内 各導 線 の う ち常 に電 位 が 等 し くな る点 の相 互 間 を結 ぶ均 圧結 線 が 必 要 で あ る。 波巻 で は極 数 に か かわ らず 並列 回路 数 は 2 とな る ので,4 極 以 上 の場 合 は同 じ全 導線 数 で 重 ね 巻 よ りも正 負 ブ ラシ間 の 直 列導 線 数 が 多 くな り,高 い起電 力 が 得 ら れ る。波 巻 は 中形 機,小 形 機 に広 く用 い られ る。 波 巻 で は,N,S
極 を 順 次 ま わ って 各 コイ ル辺 の 起 電 力が 加 わ り,ギ
ャ ップの 不 均 一 が あ
って も,並 列 回路 間 の起 電 力 に不 揃 い を生 じない か ら,均 圧 結線 は不 要 で あ る。 な お,波 巻 で は極 数 にか か わ らず,正 負各 1個 の ブ ラシ だ けで 集電 す る こ と が で き る か
ら,ブ ラシ保 持 機 構 が 簡 単 に な り,保 守上 都 合 が よい。 た だ し,1 個 の ブ ラ シで は集 電 電流 が 多 す ぎ る とか,整 流 の 点 か ら 2個 以上 の ブ ラ シを お く こと も あ る。 (g)そ
の他
電 機 子巻 線 には,こ
こで示 した 例 の ほか,い くつ か の 変 形,例 え ば図2・7
(b)で 示 した 環状 回路 が 二 つ以 上 で きる多 重 巻 線 や,コ イ ルは 入 れ て お くが,結 線 を しな い で遊 び コ イル(dummy (3)整
流子
整 流 子(commutator)は,直
例 を 図2・11に と い う。整
coil)を お く波 巻 な どが あ るが,こ
こでは 省 く。
流 機 を 構 成 す る 重 要 な 部 分 で,大
示 す 。 材 料 は 硬 銅 を 用 い,一 枚 ご と の 銅 片 を 整 流 子 片(commutator 流 子 片 は,同
図 の よ う に テ ー パ が つ け て あ り,図
体 の形 の segment)
の 例 で は 合 計432枚
で 円筒 形 の
整 流 子 を 組 み 立 て い る 。 隣 接 の 整 流 子 片 間 に は 片 間 電 圧 に 応 じ,0.5,0.8,1.Ommの
いず
れ か の 軟 質 マ イカ を は さむ 。
図2・11
100kW,6
極,直 流 発 電 機 の整 流
子 片例,全 整 流 子 面 は,ブ
ら か じ め 図2・12の
ン ダ カ ッ ト(under
流 子 の ア ンダ カ ッ ト
ラ シ と の 摩 擦 の た め に 連 続 運 転 で 年 間0.5∼1.Omm摩
マ イ カ が 整 流 子 面 に 少 し で も 出 る と,ブ の で,あ
図2・12整
整 流 子 片数432
cut)と
ラ シ と の 接 触 が 悪 く な り,火
よ う に 片 間 マ イ カ を1.0∼1.5mm切
耗 す る。 こ の た め 花 を生 ず る原 因 とな る り こん で お く。 こ れ を ア
い う。
整 流 子全 体 の 円 筒形 が,回 転 に よ る遠 心 力 の た め に,変 形 し ない よ うに V形 環 と い わ れ る締 め 付 け環 で機 械 的 に 固定 す る。 高 速 機 で整 流 子 面 の 周辺 速 度 が50m/sを
超 す よ うな場
合,ま た は大 電 流 機 で整 流子 が 軸 方 向 に非 常 に 長 くな る場 合 に は,整 流 子 の外 周 に整 流子 と 絶 縁 を した環 を取 り付 け,遠 心 力 に よ って 整 流子 が ふ く らむ の を 防 ぐ。 これ を シ リンク リン グ(shrink
2・3直
ring)と い う。
流 発 電 機 の特 性
直 流 発電 機 の端 子 に生 ず る起 電 力,負 荷 時 の 電 圧・電 流・出 力 な どの関 係,お よび 負 荷時 に ギ ャ ップ に生 ず る起 磁 力,補 極 の 作用,整 流現 象 な ど につ い て 考 え て み る。
〔1〕 電機 子 起 電 力 直 流機 の電 機 子 導 体 1本 ご との 起電 力 は,式(1・1)で
表 され るが,発 電 機 と して の起 電 力
は正 負端 子 間 に生 ず る起 電 力 を 考 え な けれ ば な らな い。 図2・7お
よ び 図2・9の
例の よう
に,電 機 子 全 体 の 導体 数 をZ〔 本 〕 とし,並 列 回 路 数 を a とす れ ば ,ブ ラ シ間 に直 列 に結 ば れ る導 線 数 はZ/a〔 本 〕で あ る。 導 線 1本 の 起 電 力 eはBlυ 〔V〕で表 され るか ら,ブ ラシ 間 の起 電 力 をEaと
す れ ば, z/
Ea=e×
〔V〕
(2・1)
a
と な る。
こ こで,ギ
ャ ップの 磁束 分 布 を 図2・13の
斜 線 部分 の よ うに 極間 隔 に わ た って 一様 な磁 束
密 度 B で あ る と し,電 機子 直 径 をD〔m〕,軸
方 向 の コイ ル辺 長 さをl〔m〕,極 数 を P,回 転
速 度 をn〔rpm〕,1 極 の磁 束 数 を φ〔Wb〕 とす れ ば,周 辺 速 度 は υ=πDn/60〔m/s〕 で あ り, φ=
πD/
P
×l×B
∴B=φ
P
×
/πDl
と書 け るか ら,
(2・2) とな る。 ギ ャ ップ の 実 際 の磁 束分 布 は,図2・ 13の 破 線 の よ うに な って い る の で あ る が,式(2・2)の
中 の φ は B の分 布状 況
に は 関係 な く,1 極 分 の 磁束 数 が φで あ れば よ い。 電 機 子 の 回 転 角 速 度 を ωγ〔rad/s〕と す れ ば,ω
γ=2πn/60で
Ea=
PZ
あ る か ら,
(実際 には 破線 の よ うな 分 布 に な る) 図2・13ギ
ャ ップ の磁 束 分 布 の 理 想化
× φωγ〔V〕
(2・3)
/2πa
とな る。上 式 で,PZ/2πaは,完 Kaと
成 した 直 流機 で は一 定 で,電
機 子 定 数 と もい う。 これ を
お け ば,
Ea=Kaφ
ωγ=
2πKa/
60
φ・n
(2・4)
と書 け る。 す な わ ち,Eaは
〔例題1〕
図2・10の
主 磁極 の磁 束 φ と電 機 子 角 速 度 ωγとの 積 に比 例 す る。
直 流 発電 機 にお い て,
(1)定
格 電 圧,無
(2)電
機 子 直D=O.25〔m〕,軸
は 極 間 隔 の65%の と す る とき,B
負 荷 時 の 1極 の 磁 束 数 φ〔Wb〕 は い く ら か 。 方 向 の コ イ ル 辺 長 さl=0.13〔m〕
で あ る 。 1極 の 磁 束
幅 内 に あ り,こ の 間 で ギ ャ ップ は一 様 な磁 束 密 度B〔Wb〕
と な って い る
の 値 は い ぐ らか。
〔解 〕 定 格 速 度600rpmに
お い て,ω
全 導 線数Z=200×4=800〔
6×800
/2πa=
よ っ て,式(2・3)よ
=20π
〔rad/s〕
60
本 〕,波 巻 で あ るか らブ ラ シ間 並列 回 路 数a=2,極
PZ
∴Ka=
2π ×600/
γ=
数P=6
1200
/2π×2=
/π
り, 1200
110=
× φ×20π=2400Oφ
/π
と お い て,
φ=
110/
=1.1
×10-2=0.458×10-2(Wb) /2.4
24000
極 間 隔 を τ〔m〕とす る と, τ=
π ×0.25/
=0.131〔m〕,ま
たl=0.13〔m〕
6 1極 の 有 効 面 積=0.131×0,65×0.13=0.0111〔m2〕
ギ ャ ップ 磁束 密 度B= 〔例 題
2〕250V,10kW,4
ロ ッ ト数37,1ス
(1)無 (2)75℃
=0.415〔Wb/m2ま
た はT〕
/0.0111 極,1500rpm,電
ロ ッ ト内 の コ イ ル 辺 数
線 長 さ は0.75m,導
(3)他
0.46×10-2
線 断 面 積 は5.4m㎡
機 子 は 波 巻 の 直 流 発 電 機 が あ る 。電 機 子 ス
6,1 コ イ ル の 巻 数 2 回,ま
た 巻 数 1回 当 た り の 導
で あ る。
負 荷,定 格 速 度 で定 格 電 圧 を生 ず るた め の磁 束 φ〔Wb〕 は い く らか 。 に お いて の正 負 ブ ラ シ間 の電 機子 抵 抗 は 何 Ω か(接 触 抵 抗 を 除 く)。 励 発 電 機 とし て定 格 速 度 で運 転 し,端 子 電 圧250V,電
機 子 電 流40Aと
きの磁 束 φ′ 〔Wb〕 は い くらか 。 た だ し,電 機子 反 作 用 を無 視 し,ブ 電 圧 降 下 を 正 負 合 計 で2Vと
す ると
ラシ の接 触 抵 抗 に よ る
す る。
〔 解 〕 電 機 子 全 導 線 数Z=37×6×2=444〔
本 〕,ま た波 巻 で あ るか ら,ブ
ラ シ間 の並 列 回
路 数a=2で (1)起
あ る。 電 力 の 式(2・2)に 4×444
250=
/60×2
∴
(2)導
φ=
× φ×1500
60×2
×
/4×444
線 全 長 は 444×
電 機 子 巻 線 は,ブ ra=0.021×
よ り,
0.75/ =166.5〔 2
(3)電
m〕
ラシ 間 に166.5/2〔 m〕の導 線 が 2組 並列 に な るか ら, 166.5/ 5.4
Vを
250/ =1.126×10-2〔Wb〕 1500
×
1/=0.162〔
Ω 〕
4
機 子 抵 抗 に よ る 電 圧 降 下 は0.162×40=6.48〔
加 え,8.48Vが
250+8.48=258.48〔
電 機 子 電 圧 降 下 で あ る。 よ って ,電
V 〕,こ れ に ブ ラ シ の 電 圧 降 下2.0 機 子 電 流40Aの
とき に起 電 力 は
V〕を生 ず れ ば よ い。
磁 束 φは,起 電 力 に 比 例す る値 が必 要 で あ る か ら,
磁 束 φ は,界 関 係 は 図2・14の
磁 起 磁 力nfif(nfは
界 磁 コ イ ル の 巻 数)に
よ う に な る。 ωr一 定 な らEaは
す 曲 線 〔ωrが 定 格 回 転 速 度 の と き,こ と い う〕 は,縦
よ っ て 生 ず る が,ifと
φ に 比 例 す る か ら,iaとEaの
の 曲 線 を 無 負 荷 飽 和 曲 線(no-load
軸 の 目 盛 を 適 当 に 選 べ ばif-φ
曲 線 と 同 じ に な る。
図2・15無 図2・14if-φ
曲 線 とif-Ea曲
線
saturation
負荷 飽 和 曲 線
φ との 関 係 を示 curve)
if-Ea曲
線 に お い て,
①if=0に
お い て,図2・15の
よ うに小 さ い起 電力Erを
生 ず るが,こ れは 磁 気 回路 の
残 留 磁気 のた め で あ る。 こ の値 は定 格 速 度 に お いて も定 格 電 圧 の 数%以 下 の 小 さい値 で あ るが,自 励 発 電 機 と し て動 作 させ る には,Erが ②
あ るifに
お い て,ifを
な い と発電 で き な い。
増 す とき と減 らす とき とで は,Eaは
後 者 が僅 か に大 きい。
これ は磁 気 回 路 の 磁 気 ヒス テ リシス のた め で あ る。 ヒス テ リシ スの 影 響 は少 な いの で, 往 路,復 路 のEaの
値 の平 均 を して 1本 の 曲線(図2・14の
破 線)を つ く り,こ れ を一
般 に 無負 荷 飽 和 曲 線 と い う。 ③
図2・15は
無 負 荷 飽 和 曲線 を改 め て画 いた もの で,こ の 曲線 は定 格 電 圧 を超 え る と次
第 に飽 和 し て水 平 に 近 づ く。 これ は 磁気 回路 の 鉄心 の 部 分 が磁 気 飽 和 を お こし,ifが 増 して も φが増 さ な くな るか らで あ る。 ④
飽 和 曲線 は,ifが 分 に接 線0gを
小 さ い間 はifとEaは
ほ ぼ比 例す る とみ る ことが で き る。 この部
つ くる と き,こ れ をギ ャ ップ線(air-gap
部 分 に磁 束 を生 じさせ るた め のifを 示 す 線 で,飽 て考 え れ ば,bcは
line)と い う。 これ が ギ ャ ップ
和せ ず 直線 と な る。 定格 電 圧 にお い
無 負 荷,定 格
電 圧 時 に ギ ャ ップ の部 分 に 磁束 を生 じさせ るた め のifを,cd は 同 じ磁 束 を鉄 心 部 分 に 生 じさ せ るた め のifを て,bd/bcを
(a) 直 流機 の 展開図
示 す 。 そ うし
飽 和 度 ま た は 飽和
率(saturation factor)と い う。
〔2〕 電 機 子 起 磁 力 と電 機 子
(b) 電機子電流による
起磁力Fa 磁束φa野
反作用 直流 発 電 機 に 負荷 を か け る と電 機 子 電 流Iaが 力Faを
流 れ,Iaに
よ って 起磁
生 じ,ギ ャ ップ磁 束 は 無負
(c) 界磁 に よる 磁 束 φfと φa+φf
荷 とは異 な った 分布 と な る。 これ を 電 機 子 反作用(armature とい う。 図2・16(a)は
reaction) 直流機の展
開 図 を示 した もの で,電 機 子 導 線 は ス ロ ッ トを省 い て 周 辺 に密 に並 べ て
(d) 磁 補極による 束 φi 図2・16電
機 子反 作 用(発 電 機 の 場合)
あ る と仮 定 す る。 各導 線 の電流Ic(=Ia/a)に に 多い とす れば,同 図(b)のFaの
よ って生 ず る起 磁 力 の分 布 は,導 線数 が 非 常
よう な三 角形 分 布 と な り,こ の 高 さ はIcに 比例 す る。
このFaに
よ って ギ ャ ップ部 分 に生 ず る磁 束 の分 布 φaは,大 体 図(b)の φa曲線 の よ うに
な る。Faの
三 角形 の頂 部 に対 応 す る磁束 分 布 が か え って少 ない の は,こ
の部 分 は磁 極 と
磁 極 の 中 間 で あ るの で ギ ャ ップが 広 く,磁 気 抵 抗 が 磁 極 中心 の それ に 比べ て 高 いか らで あ る。 同図(c)の φfは,主 磁 極 N,S に よ って生 ず る磁束 分 布 で,無 負 荷時 す なわ ちIc=0の と きは,ギ ャ ップ部 分 の 磁 束 は φfだ けで あ る。 この分 布 は,磁 極 中 心 の あた りでは 大 体一 様 であ るが,極 の 中間 a,b,cの あた りでは 磁束 が な い。 実 際 に は,磁 束 が ない 部分 は あ る 幅 を も って い る と考 え られ,こ れ を無 負 荷 中性 帯 とい う。 負 荷 時 に は φfと φaの両 者 が生 ず るので,こ れ らの合 成 は φf+φa曲 線 の よ うに な る。 こ の よ うに磁 束 分布 が変 形 す るた めに, ①
無 負 荷 中性 帯 に磁 束 を生 じ,こ れ が後 で 述べ る よ うに整 流 に悪 影 響 を与 え る。
②
電 機 子 各導 体 に生 ず る起 電 力が 不均 一 に な り,整 流 子 片 間電 圧 も不 均一 とな る。
③
主磁 極 の 面 で考 えれ ば,面 の 半分 は φaに よ って 弱め られ,他 の 半分 は強 め られ るが, 強 め られ る側 は磁 気 飽 和の た め磁 束増 加 は少 な く,φa+φfの
1極 分 の 磁束 数 は φfの み
の と き よ り減少 し,こ の ため 負荷 時 に は電 機子 起 電 力 が減 少 す る。 ④
主磁 極 の 中 間 に,図2・16(a)の
よ う に小磁 極 す な わ ち補極(interpole)を お き,同
図(d)の よ うに磁 束 を 生 じさせて 無 負荷 中 性帯 に生 じた 磁 束 を消 す よ うに し なけれ ば 良 好 な整 流 が で き な くな る。 なお,こ の こ とにつ い て は後 の 整 流の 項 で 改 めて 述べ る。 直 流電 動 機 に お いて も電 機子 反 作用 を生 ず るが,そ の模 様 は 図2・16の
電機 子 の 回転 方 向
を反 対 に して 考 え れば,各 磁束 分 布 の相 互 関係,補 極 の極 性 の 主 磁極 の 極 性 に対 す る関 係 な ど は,同 図 の関 係 を そ の まま に して考 察 す れば よい。
〔3〕 端 子 電 圧 直 流発 電 機 に負 荷 をか け ると,端 子 に現 れ る電圧 は 一 般 に低 下 す る。 た だ し,こ の場 合, 回 転 子速 度 は 一定,ま た 界 磁 回路 は無 負 荷時 に 調 整 した状 態 をそ の ま まに して お くもの とす る。 電 圧 が低 下 す る原 因 は, ①
電 機 子 巻 線抵 抗Raの
た め にお こ る電圧 降 下 υa=RaIa
②
ブ ラシ接触 抵 抗 に よ る電 圧 降下 υb
③
電 機 子 反作 用 に よ るギ ャ ップ磁 束 の減 少
④
自励 発 電 機 の場 合 は,界 磁 電流 の減 少が 起 電力 の 減 少 と な るた め の電 圧 降下
(a)回路 図
(b)無負 荷 飽 和 曲 線 図2・17他
(c)外部 特 性 曲 線 励 発 電 機 の端 子電 圧
など で あ る。
図2・17は,他
励 発電 機 の場 合 の無 負荷 時 と負荷 時 の端 子 電 圧 の 関係 を示 す 作 図 で あ る。
負 荷時 の端 子電 圧をVtと
す れ ば,
Vt=Ea-RaIa-υb=Ka(φf-φ
γ)ωγ-RaIa-υb
(2・5)
た だ し,φ γは電 機子 反 作 用 に よ る磁 束 の減 少 分 で あ る。 電 機 子 抵 抗Raは
図2・7(b)ま
た は 図2・9(b)の
環状 回路 を一 周 す る抵 抗 の1/a2で
あ
り,正 と負 の ブ ラ シが接 触 す る整流 子 面 か ら測 れ ば実 測 で き る。 ブ ラシの接 触 電 圧 降下 は,電 機 子 電 流値 にか かわ らず一 定 とみ られ,電 気 黒 鉛 ブ ラシで は 正 負 ブ ラシ各 々 につ い て ほぼ1Vず
つ,合 計約2V,金
属 黒鉛 ブ ラシ では正 負 合 計 で約0.5V
で あ る。 電 機 子 反作 用 に よ る磁 束 の 減 少分 φγを計 算 で求 め る ことは 困難 で あ り,発 電 機 の基 本 的 性 質 を考 え る場 合 φγを無 視 して も大 きな誤 に はな らない 。 式(2・5)の
値 のIaに
を 外 部 特 性 曲 線(external
対 す る 変 化 を 画 け ば,図2・17(c)の characteristic
curve)と
同 図(b)は 無 負 荷 飽 和 曲線 で,無 負 荷 時 にif=0aと ら次 第 に増 せ ば,前 記 ①,②,③
太 線 の よ うに な る。 この曲線
い う。
し,起 電力0bを
生 じさせ,Iaを
零か
な どの原 因 に よ り,端 子 電 圧 が低 下 して行 く。 な お,さ き
の外部 特 性 曲線 は特 に ことわ りが な けれ ば,定 格 電 流Iarの
とき に定 格電 圧Vtrと
うな 曲線 をい う。 従 って,定 格 電流 か ら無 電 流 す な わ ち無 負 荷 にす れ ば,端
な るよ
子 電 圧 が ⊿Vt
だ け上昇 す る ことに な る。 そ う して, ε=
⊿Vt
/ Vtr
×100〔%〕
を 電 圧 変 動 率(voltage
(2・6)
regulation)と
い
表2・1直
流発 電 機 の電 圧 変 動 率
う。
電 圧変 動 率 は,励 磁 方式 や 発 電機 容 量 に よ って異 な り,表2・1の
よ うな値 で
あ る。 表 の うち 自励 分巻 お よび 複巻 機 の 端 子 電 圧 の性 質 につ い て は次 項 以下 で述
標 準電 気 機器 講 座 第 3巻 「直 流機 」 田付 修 著p.115
べ る。
東京 電 機 大学 出版 局
〔4 〕
自 励 発 電 機(self-excited
generator)
自励 分巻 発 電 機は,図2・18(a)の
よ うに,電 機 子 端子 に並 列 に分 巻 界 磁 回路 が 結 ん で あ
り,自 己の界 磁電 流 を 自己 の電 機子 起 電 力 か ら供給 す るの で,励 磁電 源 が い らない 。
(a)結 線 図
(c)外部 特 性
(b)無負荷特 性 図2・18自
励発電機
(1)自
励現象
分 巻界 磁 回路 の抵 抗(=界
磁 コ イル の抵 抗+界 磁抵 抗 器 の抵 抗)をRf
とす る と,ifを 流 す に 必要 な電圧 は 図(b)のVfの 線 とい う。 あ る界 磁 電 流0aに
おい,Vf=Rfif=abで
ら,界 磁抵 抗 線 の 正 接 が抵 抗値Rfに ab=bcだ
よ うに 直線 に な り,こ の直 線 を界 磁 抵抗 あ り,tanθ=ab/0a=Rfと
な る。 一 方,if=0aに
け起 電力 の ほ うが 大 き い。 この余 剰 分 はifを
おい てEa=acで
な るか あ り,ac-
さ らに増 す よ うに作 用 し,ifが 時間
と共 に増 加 す る。 い ま,界 磁 コイル の 自己 イ ンダ ク タ ンスをLfと
し,電 機 子 回 路 の抵 抗 お よび 自 己 イ ンダ
クタ ンス を無 視す る と,次 の 式 がつ くれ る。 Lf Ea>Vfで
dif/ +Rfif=Ea dt
あ れ ば,ifは
また は
dif/ dt
=1/ Lf
次 第 に 増 し,EaとVfの
(Ea-Rfif)=1/Lf(Ea-vf)
(2・7)
曲 線 の 交 点 p に 至 ってEa=Vfと
な り,
ifの 増 加 は 止 む 。
界 磁 抵 抗 値 を減 ら し界 磁 抵抗 線 をVf′ の よ う にす れ ば,p′ 点 までifの り高 い電 圧p′ で 落 ちつ く。 逆 に,Rfを
増 加 し界 磁 抵 抗線 がVfcの
増 加が 続 き,p よ
よ うに ギ ャ ップ線 に 重
な る よ うにす る と,電 圧 が落 ちつ くべ き交 点 p が明 らか で な くな り,Rfの
値 が 僅 か で も増
減 す れ ば p点 は大 幅 に 移動 し,安 定 した最 終 電 圧 値 を得 れ な くな る。 この と きのRfの
値を
臨 界界 磁 抵 抗(critical field resistance)と い う。 な お,if=0に
お い て残 留 起電 力Erが
あ れ ば,分 巻 回路 を閉 じた瞬 時 か ら(dif/dt)=Er/
Lfの 速 さでifの 増 加 が始 ま り,放 置 して お い て も電圧 が 上 昇 して 行 く。 す なわ ち,Erが
図2・19自
励発電機の界磁閉路直後か らの電圧上昇を見る実測
あ る ことは 自励 発電 機 と して動 作 させ るた め に絶 対 必 要 で あ る。 図2・19は,3kW,100V,1500rpmの
発 電 機 に つ い て,自 己 励磁 に よ って 電 圧 が 上 昇
して い く時 間 経 過 を 実 測 した もの で あ る。 な お,図 中に 他 励 と あ るの は,同 じ機械 を他 励 式 に し て,そ の界 磁 回路 を閉 じた瞬 時 か らの 電 圧上 昇 時 間 を 測 った もの で,こ の 場合 は,界 磁 回 路 の 時定 数Lf/Rfに
応 じてifが 指 数 的 に 上 昇 し,起 電 力 は ほ ぼifの
変 化 と同様 に増 し
て い き,自 励 の場 合 よ り最 終 電圧 に到 達 す る時 間 が短 か い 。 (2)負
荷時の電圧
自励分 巻 発 電 機 に 負 荷 を か けた 場合,電 機 子抵 抗 や ブ ラシ接 触 抵
抗 の た め に電 圧 降 下 を生 ず る と,ifの
減 少 も伴 うので,Ilが
増加 す る場合 の端 子電 圧 の下
り方 は,他 励機 よ り 自励機 の ほ うが大 き くな る。 こ こでは 電 機子 反 作 用 に よ る磁 束 の 減 少 を 無 視 して考 え る と,図2・18の 端 子 電 圧 が0hに た だ し,Rbは
外 部特 性 曲線 に お い て,無 負 荷 電圧 は0gで
下 った と きif=0aで,電
あ り,Ilが
機 子 電 圧 降下 はbc=(Il+if)(Ra+Rb)で
増し
あ る。
正 負 二 つ の ブ ラ シの 接触 抵 抗 の 和 で あ る。 よ って,Il+if=bc/(Ra+Rb)と
な るか ら,端 子 電 圧ohに
対 す るIl+if≒Il=hh′
この よ うに作 図 して み ると,自
が 決 ま る。
励分 巻 機 で は 最 大 負荷 電 流 とな る点 m が あ り,さ
荷 の抵 抗 値 を 減 らして もIlは か え って 減少 し,短 絡 して も短 絡 電 流 は0nに
らに 負
しか な らな い 。
た だ し,こ れ は負 荷 抵 抗 の変 化 が 緩 や か な場 合 で,急 に短 絡 を した場 合 は 別 で あ る。 m か ら nに 至 る間 の あ る負 荷 電 流Il1を 考 え る と,こ の電 流 に対 して 端 子電 圧 が x点 と y 点 と二 つ で き るが,x 点 は 安定 な点,y 加 す れ ば電 圧 が高 ま り,Ilが
点 は不 安定 な点 で あ る。 y 点 で はIlが 少 しで も増
さ らに 増 し,Ilが
減 少 す れ ば電 圧 も低 くな り,電 流 は さ らに
減 少 し,y 点 に止 って い る ことが で き な い か らで あ る。 つ ぎに,図2・20は
分 巻 発電 機 の負 荷
が変 化す る と きに,端 子 電 圧Vtを
一定
に保 つ た め の界 磁電 流 を求 め る作 図 で, O1Aを
無 負荷 飽 和 曲 線,MN,M′N′
を
外部 特性 曲線 とす る。 無 負 荷 に お いて,端 子 電 圧 をO2B(例 え ば,こ れ を定 格電 圧 とす る)に す るた め の界 磁電 流 はif0,負 荷 電 流Il1に おい てVt=O2Bに
保 つ た め に はif=if1に
す る必 要 が あ り,同 様 に,Il=Il2に
おい
図2・20界
磁 調 整 曲線 の 作 図
てVt=O2Bに なifを
保 つ た め にはif=if2に
す る必 要 が あ る。 このよ うに して,各Ilに
図 の よ う に作 図 して,曲 線GHが
対 し必 要
得 られ る。 これ を界 磁 調整 曲線 とい う。
〔5〕 複 巻 お よ び 直 巻 発 電 機 複 巻 発 電 機 は,図2・21の
よ うに分 巻 界 磁 Fの ほか に 同 じ磁 極 鉄 心 に直 巻 界磁 Sを もつ も
のである。 無 負 荷 に お いて は,S は何 の 寄 与 もし な いの で,自 励 現 象 は 図2・18で
説 明 で き る。
負 荷電 流Ilが
流 れ れ ば,Il
に よ る界 磁 起 磁 力nsIlが 界 磁 起磁 力nfifに こに,ns,nfは
分巻
加 わ る。 こ
それ ぞ れ 直 巻 お
よび 分巻 界 磁 コ イル の 巻 数 で あ
(a)結
線
(b)外
部 特性
る。 よ って,界 磁 起 磁 力 は,
ns/
と書 け る。こ の 式 で,(
)Ilは 分 巻 界 磁 側 に
nf
換 算 し た 負 荷 電 流 と い う こ と が で き る。 負 荷 時 の 端 子 電 圧 は,ifお
よ びIlに
よ る磁
束 を そ れ ぞ れ φfお よ び φsと す れ ば, Vt=Ea-RaIa-υb =Ka(φf+φs)ωr-RaIa-υb =Kaφfωr-(RaIa+υb-Kaφsωr)
(c)励 磁方式 による外部特性 の相異 図2・21複
(2・8)
巻発電機
と書 け る。 この 式 の 右 辺第 1項 は 無負 荷 時 の 起 電力,括 弧 内 は電 圧 降 下 で あ る。φsはIlに 比 例 す る と見 られ るか ら,nsを
適 当 な値 に す れ ば,電
と な る特 性 が つ くれ る。 よ って,複
た は B の よ うに な る。 曲 線 A は式(2・8)の 化 に対 す るVtの
た は負
曲線 A ま
電圧 降下 の 項 が 非 常 に小 さ い場 合 で,Ilの
変
変 化 が 少 な い。
この よ うな特 性 を 平 複 巻(flat compound)と 下 が負 と な る場 合 で,こ の特 性 を 過 複 巻(over 図2・21(c)は,定
圧 降下 が 非常 に少 な い か,ま
巻 発 電機 の 外 部 特 性 曲線 は,図2・21(b)の
い う。 曲線 B は n,が多 くな って い て電 圧 降 compound)と
い う。
格電 流時 に定 格電 圧 とな るよ うに界 磁 回 路 を調 整 した とき の各 励 磁方
式 に つ い ての 外部 特 性 を比 べ た もので あ る。 図2・21(a)で
分巻 界 磁 F を な くした も のが 直 巻 発電 機 で,こ の 場 合 は,起 電 力 はEa=
Kaφsωγで あ り,φ sはIlに 係,す
よ って生 ず るか ら,IlとEaの
関 係 が 分巻 機 のifとEaの
関
な わ ち飽 和 曲線 に な る。
負 荷 時 の 端子 電 圧 は, Vt=Ea-RaIl-υb=Kaφsω
と な るか ら,VtがIlと
γ-RaIl-υb
と もに大 幅 に変 わ る こ とに な り,ほ とん ど実 用性 が ない。
〔 例 題 3〕100kW,250V,400Aの 回路 の抵 抗0.025Ω,直
外 分 巻複 巻 直 流 発 電 機 が あ り,ブ
ラ シを含 む 電 機 子
巻 界 磁 コ イル の抵 抗0.005Ω,
無 負 荷 飽 和 曲線 は図2・22で
表 され る。 分 巻 界 磁 の巻
数 は 1極 当 た り1000回,直
巻界 磁 の 巻 数 は 1極 当 た
り 3回 で あ る。 分 巻 界 磁 電 流 が4.7A,回
転 速 度1150rpm,定
格負
荷 電 流 の と きの 端 子 電圧 を求 め よ。 た だ し,電 機子 反 作 用 を無 視 す る。 〔解 〕
定 格 電 流 は100×103/250=400〔A〕,定
荷 電 流 の と き 電 機 子 電 流 は400+4.7≒405〔A〕,よ て,等
格負 っ
価 界 磁 電 流 は4.7+3/1000×405=5.92〔A〕,if=
5.92〔A〕
に お け る 起 電 力 は 図2・22よ
て1150rpmで
り274V,よ
図2・22発
っ
はEa=274×(1150/1200)=263〔V〕,端
子 電 圧 をVtと
電 機 の 飽 和 曲線 す る と,
Vt=Ea-(γa+γs)Ia=263-(0.025+0.005)×405=251〔V〕 で あ る 。
〔6〕 直 流発 電機 の損 失 と効 率 再 び 図2・17の すれ
他 励 機 へ も ど って考 え ると,こ の 発 電 機 の端 子 電 圧 は 電 機子 反 作 用 を無 視
ば,式(2・5)は, Vt=Kaφfω
γ-RaIa-υb
とな り,こ の式 の両 辺 にIaを 乗ず る と, VtIa=Kaφfω
γIa-RaIa2-υbIa
と な る 。 上 式 に お い て,VtIa
は 出 力 で あ り,KaφfωrIa=EaIaを
機 械 動 力 が 電 力 に 変 換 さ れ た も の で あ る 。 ま た,RaIa2は 損 で あ る。 そ う し て,
(2・9)
発 生 電 力 と い い,原
電 機 子 の 銅 損,υbIaは
動機 の
ブラ シ電 気
EaIa=KaφfωrIa=(KaφfIa)×
と 書 け ば,Tg=KaφfIaは
ωr=Tg・
ωr
(2・10)
電 機子 に生 ず る トル クで,こ れ は 回 転方 向 に対 して逆 の 向 きに 生
じて い るか ら,原 動 機 には この トル ク に反抗 して 回 転 をつ づ け る動 力 が な けれ ば な らな い。 他 励発 電 機 を 運転 す る には,Tgωrの 電 機子 鉄 心 に生 ず る鉄 損 の パ ワーpiな
動力 の ほか に,機 械 的 損失 と な るパ ワーpm,お
よび
どを供 給 し な けれ ば な らな い 。
よ って,発 電 機 の 入 力 と して は, P1=Tgωr+(pm+pi)=KaφfωrIa+(pm+pi) =VtIa+RaIa2+υbIa+(pm+pi)
(2・11)
が 必 要 で あ る。 この ほ か に,界 磁 巻 線 を励 磁 す るた めの パ ワーpfを
要す る。 従 って,発 電
機 効 率 を η とす ると, (2・12)
と書 け る。
他 励発 電 機 に お い て も図2・20の 路 の損 失 を 仮 にpf=pf0+kIaと
よ うな 界 磁調 整 曲線 が 考 え られ るか ら,こ こで,界 磁 回 お くと,損 失 はつ ぎの よ うに 分 け られ る。
①
負 荷 電流 の 2乗 に比 例 す る損 失RaIa2
②
負 荷 電 流 に 比 例す る損 失(υb+k)Ia
③
負 荷 に無 関 係 な 損失pf0+Pm+pi
そ うして,①+②
を負 荷 損,③
を 固定 損 とみ る こ とが で き る。 た だ し,こ
こで は 回転 速
度 は 常 に一 定 で あ る とす る。 式(2・12)は つ ぎの よ うに変 形 で き る。 (2・13)
こ の効 率 はIaが 変 化 す る と き,
と な る と き最高 に な り,そ の値 は
を元 の式 へ 代 入 して, (2・14)
と な る。 〔例 題 4〕2kW,100V,4
極,1500rpmの
他 励 直 流 発 電 機 が あ る。
電 機子 お よび補 極 コイル の巻 線 抵 抗 は75℃ 械 損pm=85〔W〕
損pi=70〔W〕
お よび機
は 一定 と し,励 磁 損 は定 格 電 圧時 にpf=pf0+kIa=115+2.3Ia〔W〕
であ
らわ され る とす る。 た だ し,Iaは
に お いて0.58Ω,鉄
電機 子 電流 〔 A〕で あ る。 この発 電 機 を定 格 速 度,定 格電
圧 で 運転 す る とき の 出力 〔%〕に対 す る効 率 曲線 を 画 け,ま た効 率 の 最 大値 ηmaxお よび ηmax を生 ず る 出力 〔%〕を求 め よ。 〔 解 〕 他 励 機 で あ る か ら電 機子 電 流=負 荷 電 流 で あ り,端 子電 圧 は100V一 ら,効 率 ηは,問
定 で あ るか
題 の数 値 を入 れ る とつ ぎの ように な る。 なお,ブ ラ シ電 気損 を υb×Ia=
2×Iaと す る。
上 式 のIaを
変 え てIaに
対 す る ηの
変 化 を 求 め ら れ る 。 各Iaに
対 す る出
力 〔%〕 は(100×Ia/2000)×100〔%〕
と
す れ ば よ く,計
よ
算 結 果 は 図2・23の
う に な る 。 ま た,ηmax=77.5〔%〕,そ れ を 生 ず る 出 力 は108%と
な る。
直 流 発 電 機 の 定 格 出 力 時 の 効 率 は, 10kW級 88%,500kW級
で 約80%,100kW級
で85∼
で90∼93%で
あ る。
〔7〕 整 流 と補 極 図
直 流 機 の電 機 子 コ イル の電 流 は,そ
2・23
の コイル が 中性 帯 を通 過 す る こ とに 向 きが変 わ る。 これ を 整流(commutation)と
い い,整 流
が 円滑 に で き な い と きは,ブ ラ シと整 流 子間 に火 花 を生 じ,ブ ラシ も整 流子 もそ の面 が 荒 れ て 消耗 が は げ し くな る。 整流 中の コイ ル電 流 の 変化 を考 え るた め に,図2・7(a)の この 図 は,図2・7の
コ イル 辺番 号 1と14か
一 部 を再 び図2・24に
示 す。
らな る コイ ルの 付 近 を画 いた もの で,こ の コ イ
ル は 同図 の瞬 時 に 中性 帯 付 近 を通 過 中 で整 流 が行 わ れ つ つ あ る。 (1)理
想整流
ここで,整 流 の 現 象を 最 も簡 単 に 考 え るた め に,整 流 子 片+マ イカ の
幅 と ブ ラ シ幅 とが 等 しい 場合 を考 え る。 ブ ラシが 整流 子 片 2の真 上 に あ る瞬 時 に は 整流 子片
図2・24整
流 中 の コイ ル
2だ け を通 って ブ ラシへ 向 か う電 流2Icが 流 れ て い る が,片
1が ブ ラシに接 触 す ると片 1と 2の両 老 か らブ
ラ シへ 向 か う電 流 が流 れ るよ うに な り,こ の 瞬 時 か ら コ イル辺 1 と14か
ら な る コイル の 整 流が は じま る。
す なわ ち,い ま までIcで あ った コイル 電流 が 図2・25 の iの よ うに時 間 の経 過 とと もに 減少 し,減 少開 始 か らTc秒
の 後 に iは 逆 向 きのIcに 変 わ る。このTcを
整 流 時 間(commutating
図2・25コ
イル 電 流 の理 想 的 変化
period)と い い,こ のTcは
電 機 子 の回 転速 度,す な わ ち整 流子 面 の 周辺 速 度 お よび 整流 子 片 や ブ ラシ 幅 な どに よ って き ま る極 めて 短 か い時 間 で あ る。 例 えば,図2・24の 片 数24で
回 転速 度 を1500rpmと
す ると,整 流子
あ るか ら, Tc=
60
1 =1.66×10-3〔s〕=1
/1500× /24
.66〔ms〕
で あ る。
図2・24に
お い て,整 流子 片 1,2 とブ ラシの接 触 抵 抗 を それ ぞれR1お
ば,こ れ らの 抵抗 は 整流 子 片 との接 触 面 積S1,S2に
よ びR2と
反 比例 す る とみ る ことが で きる。
一 枚 の 整流 子片 全 面 と ブ ラシ との接 触 面 積 をS0と し,整 流 開 始瞬 時 をt=0と 意 の 時刻 tにお いて,片 S1=S0×
t /Tc,
1お よび 2と ブ ラ シの接 触 面積S1お S2=S0×
よびS2は,そ
す る と,任
れぞれ
Tc-t/ Tc
すれ
(2・15)
と書 ける。 よ って,片 Rl / R2
= S2/ S1=
1と 2の ブ ラシ との接 触 抵抗 の比 は, Tc-t /t
(2・16)
一 方に整 流 中 の コ イル は ブ ラ シで短 絡 され て いて,こ の短 絡回 路 内で 接 触抵 抗 だ けを考 え, コ イル の抵 抗 お よび ライ ザの 抵 抗 を無 視 す る と,
(2・17)
(Ic-i)R1-(Ic+i)R2=0 と な る。 こ れ よ り
(2・18)
と な る 。 式(2・18)の
電 流 変 化 は tに 対 し 直 線 状 で,図2・25の
l=Tc/2でi=0,t=Tcでi=-Icと
な る 。 式(2・18)の
を 直 線 整 流 ま た は 理 想 整 流 と い う 。 ま た , 式(2・18)の
よ う に な り,t=0でi=Ic,
よ う に,コ
イル電 流 が変 化 す る こと
よ うに接 触 抵 抗の 時 間 的変 化 が 整流
電 流 の 変 化 を 支 配 す る よ う に し て 良 好 な 整 流 を 期 待 す る 方 法 を 抵 抗 整 流(resistance tation)と (2)コ 抗 をRrと
commu
い う。 イル とラ イザ の抵 抗 を考 え た場 合 す る と,ブ
整 流 中 の コ イ ル の 抵 抗 をRc,ラ
イザ の抵
ラ シ で 短 絡 さ れ た 回 路 内 に つ ぎ の 式 が つ くれ る。
Rci+(Ic+i)(Rr+R2)-(1c-i)(Rr+R1)=0
(2・19) (2・20)
この式 は式(2・18)に
比 べ て()内
ラシ全 面 の接 触 抵抗 をR0と (2・15)の
の形 だ け が異 な り,こ れ がRc,Rrの
影 響 で あ る。 ブ
す る と,式
関 係 か ら,
と な る か ら,
(2・21) と な る。 式(2・21)の
値 は,t=0お
よび
図2・26整
流 中の 電 流変 化
t=Tcに
Rc+2Rr
お い て 0,t=Tc/ 2に
お い て最 大 で
(1+
/4R0
は 整 流 中 の iの絶 対 値 を小 さ くす るが,t=0,t=Tcに
)
と な る。 す な わ ち,Rc,Rrの
影響
お い ては 無 関係 で あ り,図2・26の
曲 線 2の よ うにな る。 (3)コ
イル の イ ンダ クタ ン スに よ る起電 力の 影 響
整 流 中の コイル電 流 の変 化 の模 様
を 捉 え る こと は難 しいが,ど の よ うな変 化 を した と して も整 流時 間Tcの
間 に2Icの 電 流変
化 を終 わ る ように 強 制 され る。 こ こで,前 項 まで は無 視 して いた 整 流 中の コイル の 自 己 イ ン ダ ク タ ンスLcの
影 響 を考 え て み る。
整 流 中 の コイ ルの 電 流が 時 間 的 に変化 す るた め に,コ イ ル 自身 にLcの 力はeL=-Lcdi/dtで,こ
れ はiが 減 少す る間 はeL>0で
, iと同 じ向 きに 生ず る。す な わ
ち,i の減 少 を 妨 げ るか ら電 流 変化 を遅 らせ よ う とす る。eLはTcの る こ とが 想像 され るが,こ れ を知 る ことは 難 し いの で,Tcの を考 え,こ れ をetと
た めに生 ず る起 電
間ある変 化 を して い
間 の平 均 の電 流 変 化率2Ic/Tc
す れ ば,
2Ic/Tc
eL=Lc
とな り,こ れ を平 均 リア クタ ン ス電 圧 とい う。 この 値 が大 きい と電 流 変化 が 遅れ,整 流 不 良 を起 こす の で,eLは く しない,Tcを
数 ボル ト以 下 に な る よ うに,Lcの
大 き い コイ ルを使 わ ない,Icを 大 き
短 か くしな い な どの考 慮 が払 われ る。 なお,後
場 合 は,eLは10Vぐ
で述 べ る補 償巻 線 を設 け る
らいま で許 され ると され て い る。
また,さ き に図2・7(a)に
示 した巻 線 図 に お いて,こ
14か ら な る整流 コイル と同 じス ロ ッ ト内 に,そ
の巻 線 は全 節巻 で,コ
イル辺 1と
れぞ れ コイル 辺 2お よび13が あ り,こ れ ら
コ イル 辺 で も整流 が 進行 中で あ り,同 じス ロ ッ ト内 にあ る か ら相互 誘 導 M を介 して起 電 力 Mdi′/dtも生 じる。こ の 起 電力 は コイ ルに 短節 巻 とす れ ば除 くことが で き る。す なわ ち,図 2・7(a)の
よ うな全 節巻 は整 流 の面 か らは好 ま し くない の であ る。
こ こで は,Lcの
み に よ る起 電 力eLを
と きは,式(2・19)にeLを
考 え,そ の 影 響 を調 べ るこ とにす る。eLを 考 えた
加 えれ ば,整 流 中 の コイル 内 で は,
eL+Rci+(Ic+i)(Rr+R2)-(Ic-i)(Rr+R1)=0 と な る。 この式 内のR1,R2は 定 性 的 に考 え る と,さ うして,図2・26の
tと と も変 化 して い るの で,i に つ いて解 くこと は難 しいが,
きに も述 べ た よ うに,eLは
電 流 の変 化 を遅 らせ る よ うに働 ら く。 そ
曲線 3の よ うに な り,整 流 時 間 の終 わ りに な って も電 流 変化 が 完了 しな
い に もか か わ らず,ブ る。
(2・22)
ラシ と整流 子 片が 引 き離 され る こと にな り,火 花 を 生 ず る ことに な
次 の項 に述 べ る補極 は,eLを
消 す た め にeLと
逆 向 き の起電 力eiを
コイル 内 につ くる た
め に設 け られ る もの で,整 流 改 善 に有 効 で あ る。 (4)補
極 と補 償 巻線
さき に電 機 子反 作 用 の項 で,補 極 は電 機 子反 作 用 のた めに無 負
荷 中性 帯 に生 じた磁 束 を 消す た め の逆 向 きの磁 束 をつ くるた めに お くと述 べ た が,実 は消 す だ けで は不 十 分 で,図2・16(d)の
補 極 に よ る磁 束 は同 図(c)の 中性 帯 の磁 束 が逆 に な るほ
どの 磁 束 をつ く らせ る必要 が あ る。 そ うして,こ の磁 束 を整 流 中 の コ イルが 切 る こ とに よ っ てeLと
反対 の起 電 力eiを
コイル 内 に生 じさせ 相 殺 させ る もので あ る。
この よ うに して,適 正 な大 き さ と向 きのeiを (voltage commutation)と
生 じさせ 良 好 な整 流 を行 う方 法 を電圧 整 流
い う。
補 極 の極 性 は,発 電 機に お いて は,図2・16お
よび 図2・24の
よ うに,電 機子 の 回 転方 向
に た ど って,次 にあ る主磁 極 と同 じ極 性 に な って い なけ れば な らない 。 また,補 極 の 強 さは 電 機子 電流 に 比例 して い な ければ な らな いの で,補 極 鉄心 には磁 気 飽 和が 起 こらな い よ う, 主 磁極 鉄心 に 比べ て 遙 かに低 い磁 束 密度 にな るよ うに設 計 して あ る。 さ らに負 荷電 流 の変 化 に 対 し,補 極 磁 束 の変 化 に時間 遅 れ を生 じな い よ う,補 極 鉄 心 を成 層 して つ くる こと もあ る 。 この よ うに,補 極 は 整流 改善 に有 効 な方 法 で,極
く小 形 機 を除 い て ほ とん どの直 流 機 に取
り付 け てあ る。 大 形 の直流 機 で 常 に急 激 な負 荷 電流 変 化 が起 こ る よう な場合 には,補 極 だ け で は 不十 分 で,補 償 巻線(compensating
winding)も
設 け る。 これは,主 磁 極 の極 面 に ス ロ ッ トを つ く
り,こ れ に導 線 を収 容 して電 機 子 電 流 を流 す 。 この電 流 の 向 き は,図2・27の
略 図 の よ うに相
対 す る電機 子 側 の電 流 と反 対 に 流 して 電機 子 反 作用 磁 束 の大 部 分 を 消 す よ うに し た も の で あ る。 この場 合,補 極 の役 割 は大 幅 (a)電 機子 と補償巻線の電流の向き に 緩 和 され る。
2・4直
図2・27補
(b)回
路
図
償 巻 線
流電 動機
直 流 電 動 機 は,直 流発 電 機 の入 力,出
力 が 逆 に な った場 合 で あ る。 図2・1に
示 した 各種
励 磁方 式 が あ り,そ れ ぞれ 特 性 が異 な るの で,用 途 に応 じて適 切 な形 式が 選 ば れ る。
〔1〕 他 励 電動 機 は じめ に 最 も基 本 的 な他 励 式 の 特 性 に つ いて 考 え る。 図2・28に
お い て あ る界磁 電 流if
を 流 し,主 磁 束 φ を生 じさせ て お き,電 機子 端 子 に電 圧Vt を 加 え る と電 機子 電 流Iaが
流 れ,式(1・5)に
示 した トル ク
を 生 じ,あ る回転 角速 度 ωrで 回転 す る。 まず,ト ル ク T に つい て 考 え る と,式(1・5)は,
この式 の各記 号 は,発 電 機 の起 電力Eaに (2・2)で
用 い た も の と 同 じ で,同
と な る が,電
つ い て示 した式
図2・28
式 の 所 で 示 し た よ う にB=Pφ/πDlで
機 子 の 並 列 回 路 数 を a とす れ ば,i=Ia/aで
他 励電 動 機
あ る か ら,
あ る か ら,
(2・23) と な る。 この式 は,電 機 子起 電 力Eaの
式 の 中 の ωrがIaに 変 わ った だ けの 形 を して い る。
この トル クに よ って電 機子 が 角 速度 ωrで定 常運 転 を す れ ば,電 機子 には起 電 力Ea=Kaφ
ωr
を 生 じ,電 機 子 に 加 えた 電 圧 と次 式 の関 係 でつ りあ いを 保つ 。 Vt=Ea+RaIa+υb=Kaφ
こ のEaは,図2・28に で,Eaを
示 し た よ う な 向 き に 生 じ,加
逆 起 電 力(counter
降 下,υbは
(2・24)
ωr+RaIa+υb
emf)と
えた 電 圧 に 対 抗 した形 で生 ず るの
い う こ とが 多 い 。 な お, RaIaは
電 機 子抵 抗 に よる電圧
ブ ラシの 接 触電 圧 降 下 であ る。
つ ぎ に,式(2・24)の vtIa=Kaφ
両 辺 にIaを
乗 ず る と,
(2・25)
ωrIa+RaIa2+υbIa
と な る。 この式 の左 辺 は 電機 子 入力 をあ らわ し,右 辺 第 1項 は電 機子 発 生動 力 とい い,電 動 機 が電 力 を機 械 動 力 に変 換 した パ ワーで あ る。 第 2項 は電 機 子 銅 損,第
3項 は ブ ラシ電 気損
で あ る。 い ま,発 生 動 力 をPaと Pa=Kaφ
と な り,Paは
お け ば,
ωrIa=(KaφIa)×
ωr
(2・26)
トル ク と回 転角 速 度 の積 に な る。
電 動 機 軸 か ら得 られ る動力 はPaか kg・mの
ωr=T×
ら 機 械 的 損 失 を 引 いた もの と な る。 な お,ト ル クは
単位 を用 い る こと も多 いが,こ
の と きの トル クを τ とす れ ば,1〔kg〕=9.8〔N〕 で
あ るか ら, τ=T/9.8〔kg・m〕
(2・27)
とな る。 トル クの 単位 にkg・mを,回
転 速 度 の単 位 にrPmを
用 い,こ れをnrと
お けば,
発 生 動 力Paは, (2・28) と な る。 つ ぎ に,式(2・24)か
ら ωrを 求 め れ ば,
(2・29) とな るが,こ の式 の 第 2項 は 第 1項 に比 べ て小 さい か ら,ωrは ほぼVtに
比 例 し,φ に 反比
例 す る とみ る こ とが で き る。 この こ とは,励 磁方 式 が異 な って もいえ る こと であ る。 な お, ブ ラ シの接 触 電 圧 降下 υbは,正 負 ブ ラシ の合 計 で約2Vで,こ
れを 無 視 して も大 局 に は あ
ま り影 響 しな いか ら,以 下 の式 で は υb=0と す る。 式(2・23)よ
り,Ia=T/(Kaφ)で
あ るか ら,こ れ を 式(2・24)へ
代入 す れ ば,
また は
(2・30)
と な る。 こ の式 の 第 1項 は 無負 荷 速 度 で,ト ル ク T が増 加 す ると第 2項 の値 だ け速 度 が低 下 す るが,Raは 式(2・29)ま
一 般 に小 さいか ら,T が 増 加す る とき の ωrの低 下 は僅 か で あ る。 た は式(2・30)に
よれ ば,速 度 ωrを 制御 す るに は,Vtか
(a)電圧制 御 図2・29
また は φ を制御 す れ
(b)界磁制 御 電 圧制 御 と界 磁制 御(無 負 荷)
(a)電
圧
制
御
(b)界
磁
制
御
図2・30
無 負荷 速 度 と負 荷 時 の速 度
ば よい。 前 者 を 電圧 制 御,後 者 を界 磁 制御 とい う。 図2・29に 図2・30は
これ らの特 性 を示 す 。 ま た,
電 圧 制御 お よび界 磁 制 御 に お け る無 負 荷時 お よび負 荷 時 の速 度 を 示 し た もの で あ
る。 な お,速 度制 御 法 に つ い て は後 で も述 べ る。
〔2〕 分 巻 電 動機 分 巻 電 動 機(shunt
motor)は,図2・31の
よ う に,電
機 子 と界磁 の 電源 が共 通 の結 線 に な
って い る。 この 形式 の もの は,界 磁 磁束 を確保 す るた め に一 般 に定 格 電圧 一定 で運 転 す る。 特 性 式 は,式(2・23)以
下 の各 式 に お いてVtを 一 定 として
考 え れ ば,そ の ま ま使 え る。 例 え ば,電 機子 回 転 速度 ωrは, 式(2・29)に
お い て υbを無 視 すれ ば,
(2・31) とな るの で あ るが,第 2項 の値 は 小 さ く,ωrは 主 と して第 1 項Vt/(Kaφ)に
よ って 決 ま る。Vtを
図2・31分
巻電 動 機
一定 に して使 用 す るか ら,速 度 制 御 は φ の加 減,す な
わ ち界 磁 制 御 に よ るの が普 通 で あ る。
界 磁 回路 を一 定 に保 った場 合 に,電 源電 圧 が 変動 す ると,そ
れ に応 じて φ も変 わ る ので.
速 度は ほぼ一 定 で あ る。 この こ とは,分 巻 電 動 機 の特 長 といえ る。 式(2・31)をVtお
よ び φ一 定 の場 合 につ いて
図 示す れ ば,図2・32の
よ うにIaの
ωrは 僅 か に低 下 して い くが,Iaの
増 加 と共 に 増 加 に伴 い,
電 機子 反 作 用 に よ る減 束 の減 少 が 影 響 して く ると ωrが 上 昇 の 傾 向 を示 す 。 図 の 破 線 で示 した 直 線 は 無 負荷 時 の 磁 束 が そ の まま負 荷 時 に も一定 に保 た れ ると した 場 合 の特 性 であ る。 Iaが 大 き くな る と速 度 が上 る傾 向が あれ ば,こ
図2・32電
機子 反 作 用 の影 響
れ が さ らに負 荷 電 流 を 増 加 させ 減磁 が さ らに進 み,不
安定 な運 転 に な る お それ が あ る。 この現 象 を 防 ぐに は,負
荷 の 増加 と共 に φ を減少
させ な い程 度 の起 磁 力 を もった 直巻 界 磁 をつ ければ よい。 この 目的 の直 巻界 磁 を安 定巻 線 と い う。 〔例 題
5〕100V,3.5kWの
直 流 分 巻 電 動 機 が あ る 。定 格 出 力 時 の 電 機 子 電 流Ia=40〔A〕.
界 磁 電 流if=2.5〔A〕,回 (a)定
転 速 度1200rpmで
抗 を0.18Ω,ブ
ラ シ電 圧 降 下 を(正
(b) こ の 機 械 の1200rpmの % か 。 た だ し,鉄 (c)
あ る。
格 出 力 時 の 発 生 動 力 〔W 〕 と トル ク 〔N・m〕
負 の 合 計 で)2Vと
す る。
と き の 機 械 損 は い く ら か 。 ま た,定
格 出 力時 の 効率 は何
負 荷 に な る と電 源 か ら取 り入 れ る 電 流 は 何 A と な る か 。 た だ し,
無 負 荷 で も 機 械 損,鉄
損 は変 わ らな い とす る。
格 出 力 時 の 逆 起 電 力 をEaと
す る と,
Ea=100-2-0.18×40=90.8〔V〕 よ って,発
生 動 力Pmは,
Pm=90.8×40=3632〔W〕 トル ク を
T と す れ ば,電
T=
3632
機 子巻 線 抵
損 は 無視 す る。
こ の 電 動 機 は,無
〔解 〕 (a)定
は い く ら か 。 た だ し,電
機 子 角 速 度 が2π ×1200/60=40π
=28,9〔N・m〕
/ 40π
(b) 定 格 出 力時 の損 失 は, 電 機 子 銅 損 pa=402×0.18=288〔W〕
〔rad/s〕で あ る か ら
ブ ラ シ 電 気 損pb=40×2=80〔W〕 機
械
損pm=3632-3500=132〔W〕
励
磁
損pf=100×2.5=250〔W〕(界
合
磁 抵 抗 器 の 損 失 も含 む)
計p=750〔W〕
よ って,効 率 を η とす れ ば,
(c)無 毛て,無
負 荷 時 に 電 機 子 電 流 はIa0=220/100=2.2〔A〕,こ 負 荷 電 流In=2.2+2.5=4.7〔A〕
れ に 界 磁 電 流if=2.5〔A〕
を加
とみ る こ とがで き る。
〔3〕 複 巻 電 動機 複 巻 に は和 動 と差 動 とが あ り,分 巻 界 磁 お よび直 巻 界磁 に よ る磁束 を それ ぞ れ φfお よび φsとす る と,φ=φf± φsと書 ける。 複 号 の正 は和 動,負 は差 動 の 場合 で あ る。 そ う して,電 機 子 の電 圧つ りあ い式 は,直 巻 界 磁 の抵 抗 をRsと Vt=Kaφ
ωr+(Ra+Rs)Ia=Ka(φf±
し,外 分 巻 複 巻 の場合 は,
φs)ωr+(Ra+Rs)Ia
(2・32)
で あ る か ら,
ωr=
Vt-(Ra+Rs)Ia / Ka(φf±
φs)
と な り,和 動 で は分 巻 機 に比 べIaの KsIaと お き,Vt/Kaφf=(Ra+Rs)/KaKsな
増 加 に よ る速 度 の低下 が 大 きい。 差動 の場 合 は,φt= ら,Iaが 変 化 して も速 度一 定 と い う式 に な るが,
実際 には電 機 子 反作 用 の影 響 もあ り,分 巻 機 の所 で述 べ た不 安 定 に な る傾 向 を差 動 の直 巻 界 磁が 助 長 す る ことに な るの で,差 動 は ほ と ん ど使 用 され な い。 電 機 子 電流Iaと
トル ク T の 関係 は,和 動 の場 合 に は,
T=KaφIa=Ka(φf+φs)Ia=KaφfIa+KaKsIa2 と な って,こ の特 性 は,分 巻 と,次 に 述 べ る直 巻 と の中 間 の特 性 に な る。 〔4〕 直 巻 電 動 機 直 巻電 動 機(series motor)は,電 りあ い式 は,式(2・32)の
機 子 と 直 巻 界 磁 とが直 列 にな って い る もの で,電 圧 つ
φfを 零 とお い て,ま た 直巻 界 磁 の抵 抗 をRsと
す れ ば,
Vt=Kaφsωr+(Ra+Rs)Ia
(2・33)
φsは直 巻 界 磁 に よ って生 ず る主 磁束 で,磁 路 が未 飽 和 な ら φs㏄Ia,著 しい飽 和 に達 す れ ば, φsはIaに か かわ らず飽 和 磁 束 値一 定 とな る。 い ま,未 飽 和時 を 考 え,φs=KsIaと Vt=KaKsIaωr+(Ra+Rs)Ia
お けば
(a) Ia-ωr特
性
(b)
図2・33直
T-ωr特
性
巻 電動 機 の 特 性
∴ と な っ て,上
(2・34) 式 の 第 2 項 は 比 較 的 小 さ い 一 定 値 で あ る か ら,ωrは
2・33(a)の
ほ ぼIa に 反 比 例 し,図
よ うに な る。
ト ル ク は,φs=KsIaな
ら,
T=KaφsIa=KaKsIa2
と な る か ら,式(2・35)は な る が,Iaの
(2・35)
図2・33(a)のIa-T曲
大 き い 所 で は,φsは
式(2・35)よ
線 の よ う に,T
一 定 値 に 近 づ くの で,T
はIa2に
比 例 す る こと に
は 直 線 に 近 く な る 。 そ う し て,
り,
と 書 け る か ら,こ
れ を 式(2・33)に
代 入 す る と,
∴ 式(2・36)は
(2・36) 図2・33(b)の
飽 和 を起 こす と みれ ば,Ksが
破 線 の よ うに な るが,T
の大 きい所 では 電 流 が大 き く,磁 気
減 少 す るこ と にな るか ら同 じ トル クを生 ず るの に ωrが 増 加
す る こ とに な る。 直 巻 電 動 機 は,図2・33(a)お
よび(b)の
よ うに,電
機 子 電流 ま たは トル クが 少 な い と
き,す な わ ち無 負 荷 に近 い と きは 著 しい高 速 度 とな るか ら,無 負荷 運 転 の 状 態 に 決 して な ら な い よ うに,負 荷 との結 合 を確 実 に して おか な けれ ば な らない 。 〔 例 題 6〕 直 流 直 巻電 動機 が あ る。 電 源電 圧400V,電
機 子電 流100Aの
と き回 転子 速 度
は1200rpmで
あ る。 電 源電 圧 を300V,電
機 子電 流50Aに
らか。 た だ し,電 機 子 お よ び直 巻界 磁 の抵 抗 の和 を0.15Ω
した とき の回 転子 速 度 は い く と し,ブ ラ シ電 庄降 下,電
機子
反作 用,磁 気 飽 和 は い ずれ も無 視す る。 PZ
〔 解〕 電 機 子 定 数 をKa= φ1,n1お
よ び φ2,n2と
/ 2πa
,始 め の 磁 束 と 回 転 速 度 と 電 圧 低 下 後 の それ らを そ れぞ れ
お い て,電
圧 つ り あ い 式 は,
〔 例 題 7〕 直 巻電 動機 が あ り,は じめ に電 機 子 と界磁 の直 列 結 線 を切 り離 し,界 磁 に電 流 I〔A〕 を流 し,電 機 子 に電 圧Vt〔V〕
を加 え,無 負 荷 運転 す る と回 転速 度 はn〔rpm〕
で,こ
の と きの 電 機 子 電 流 は無 視 で きる くらい小 さい。 つ ぎ に,直 巻 電動 機 の結 線 に し負 荷 を か け,電 圧Vt〔V〕 を 加 え,前 と同 じ電 流I〔A〕 を 流 す と き,回 転 速 度n'〔rpm〕 は い く らに な るか。 た だ し,電 機 子 と直 巻界 磁 の抵 抗 の和 を Ra+Rsと
し,電 機子 反 作 用 を無 視 す る。
〔 解 〕 は じめは 電 機子 電 流 を 無視 す るか ら,電 機 子 起 電 力EaはVtに Ea=
2π
等 しい 。 よ って,
Kaφn=Vt
/60 2πKaφ ∴ /60=
Vt/ n
直 巻 の結 線 に した と きは,
〔5〕 励 磁 方 式 と 特 性 総 括 各 励 磁方 式 に対 す るIa-T特
性 お よびIa-ωr特
性 を一 括 して 示 す と,図2・34の
よ うに
な る。 この 図 で は,Iaの 定 格 値 に対 して定 格 トル クお よ び定 格 速 度 が 得 られ る よ う励 磁 回 路 を調 整 した もの と して 比 較 した。
(a) Ia-T特
性
〔Vt一
Iar,Tr,ωrrは
図2・34励
定〕
(b)
定 格 電 流,ト
Ia-ωr特
性
〔Vt一
定〕
ル クお よ び角 速 度
磁方 式 と特 性 の比 較
この 図 に よ る と,
(a) 分 巻 ・他 励 電動 機 分 巻 お よび 他励 電 動 機 は,負 荷 の変 化 に よ る速 度 の 変化 が 少 な く,ま た 必 要 な ら界 磁電 流 の 加減 に よ って,他 励 機 では 界磁 お よび電 機 子電 圧 の加減 に よ っ て速 度 が 自由 に変 え られ,特 に界 磁 電 流 を一 定 と し,電 機子 電 圧 を制 御 す る方 式 は速 度 制 御 範 囲 が最 も広 く,後 で 述べ る よ うに レオ ナ ー ド制 御方 式 として 広 く使 用 されて い る。 (b) 複 巻 電動 機 複巻 電 動機 は,和 動複 巻 にす れ ば,分 巻 と直巻 の中 間 の特 性 を もち, 始動 トル ク も分 巻 機 よ り大 きい。 この電 動機 も広 く用 い られ る。 (c) 直 巻 電 動機 直巻 電 動 機 は,負 荷 の変 化 に 対 し速 度変 化 が大 き い変 速度 特 性 で あ る が,最 大 の 特 長 は,始 動 お よび低 速 時 に 単位 電 流 ま た は単位 入 力 当 た りの トル クが大 き い こ と,加 速 が 速 い ことで あ る。速 度制 御 は 電 機 子 十 直巻 界 磁 の回 路 に加 え る電 圧 を加 減 す る 方 法 と,直 巻 界磁 に タ ップ あ るい は分 路 を設 け る方法 が 併 用 され る。 代表 的 な適 用例 は電 気 鉄道 用 の主 電 動 機 で,日 本 で は電 車 お よび 電気 機 関 車 の電 動 機 には す べ て直 巻 電 動機 を使 用 して い る。 この ほか の 例 で は,ホ イス トな ど の荷 役機 械,ご
く小 形
高 速度 の玩 具 用 に も用 い られ る。 〔6〕 動 特 性 直流 電 動 機 を 始動,加 速 また は 減速 す る場 合 の よ うに速 度 が時 間 的 に変 わ る場合 を 考 えて み る。 (1) 他励 電 動 機 の加 速 定 励磁 の他 励 電 動機 の 電 機 子 が 静 止 して い る所へ 定 電圧Vt を 加 え ると,電 機子 電 流iaが 流 れ,ト ル ク T を生 じて加 速 す る。 この 加速 の速 さ は,負 荷 が 要 求 す る トル クTLと,負
荷 を含 む 回 転部 分 の 慣性 モ ー メ ン トJ に よ って き ま る。
加 速 中 の電 圧 つ りあ い式 は, Vt=Kaφ
ωr+Raia
(2・37)
トル クのつ りあ い 式 は,J を加速 す るた め にJ dωr/
T=Kaφia=J
dωr/ dt
の トル クを要 す るか ら
+TL
dt
(2・38)
と な る。 式(2・38)か
ら,
(2・39) こ れ を 式(2・37)へ
代 入す る と
または
(2・40) と な り,こ の微 分方 程式 の解 は,
(2・41) た だ し,τ は この系 の時定 数 で τ=
JRa
であ る
/ Ka2φ2
。
こ こ で,
と お く。 こ れ は 式(2・41)のt=∞
に お け る速 度 で あ る 。 よ って,
ωr=ωr(∞)(1-e‐t/τ)
と な る か ら,t/τ
(2・42)
と ωrの 関 係 を 画 け ば,図2・35(a)の
と お け ば,ωr=ωr(∞)(1-e‐1)=ωr(∞)×0.632と
よ うに な る。 こ の 図 に お い て, t=τ
な る 。 す な わ ち,τ
は ωrが
ωr(∞)の63・2%
ま で 加 速 す る に 要 す る 時 間 で あ る。 次 に,式(2・41)よ
り,
(2・43) と な り,こ れ は電 機 子 の 角加 速 度 で,t=0に
お いて 最 大 で,次 第 に零 に 近 づ く。 す な わ ち
(a) 加速 曲線(無 次元化)
(b) 加 速曲線 図2・35
定 速 度 に 近 づ く。 そ う して,
(2・44) これ は 始 動 瞬時 の角 加 速 度 であ り,も し,こ の加 速 度 を保 って 時 間 τだ け経 過 し た と す れ ば,そ の と き の速 度 は,
(2・45) と な る。す なわ ち,さ き の時 定数 とは 始 めの 角加 速 度 を保 って ωr(∞)に到達 す るま での 時間 と い う こ とに な る。 なお,ωr(∞)の 第 1項Vt/Kaφ
は,TL=0す
なわ ち無 負 荷 の ときの 最 終速 度 で あ り,ま た
第 2項 は,
と 書 け る 。IL=TL/(Kaφ)はTLの
た め に 流 れ る 最 終 電 流,υL=RaILはlLの
電 機 子 電 圧 降 下,ωL=υL/(Kaφ)は 次 に,式(2・39)へ
式(2・43)を
た めに 生 ず る
υLの た め の 最 終 速 度 の 低 下 分 で あ る。 代 入 す る と,
(2・46) と な っ て,こ
の 式 の 形 は 図2・36の
t=0でia=
Vt/ Ra
よ う に な る 。 こ の 電 流 は,
図2・36加 t→ ∞
で
速 時 の 電流 変 化 TL
励直 流 機 の 等 価 回路
=IL
ia=
/ Kaφ と い う 値 で あ る 。 な お,式(2・39)は て,ωr=ea/Kaφ(eaは
図2・37他
つ ぎ の よ う に も 書 け る 。 す な わ ち,式(2・39)に
電 機 子 起 電 力)で
おい
あ る か ら,
(2・47) と な る。 上 式 に お い て,J/(Kaφ)2は
は 充電 電 流 とみ るこ とが で き,第 2項TL/(Kaφ)は
お け ば, め に 流 れ る電 流 で,そ 係 は 図2・37の
と な っ て,Qcは
静 電 容 量 の デ ィ メ ンシ ョ ンを も ち,そ
れ ぞ れicお
よ びiLと
お け ば,ia=ic+iLと
よ う な 等 価 回 路 に 画 け る 。 そ う し て,Caに
の 値 をCa〔F〕
と
負荷 トル クのた
書 け る。 よ っ て,こ
の関
蓄 え ら れ る エ ネ ル ギ ーQcは,
慣 性 モ ー メ ン トに 蓄 え ら れ る エ ネ ル ギ ー に な る 。
〔 例 題 8〕 定 励 磁 の他 励 直流 電 動 機 に 回転 速 度 に比例 す る トル クを 要求 す る負 荷 を直 結 し て あ る。 は じめ に電 機 子 は 静止 して い た と し,電 機子 に一定 電 圧Vtを
加 えた とき の回 転速
度 ωrお よび電 機 子電 流iaの 時 間 的変 化 を調 べ よ。 た だ し,(電 機 子+負 荷)の 慣 性 モー メ ン トを J,電機 子 定数 をKa,界
磁 磁束 を φ,電 機子 抵 抗 をRaと
し,電 機 子 反 作 用 を無 視 す る。
〔 解〕 電 圧 つ りあ い式 は, Vt=Kaφ ωr+Raia トル クのつ りあ い式 は, た だ し,KLは
よ っ て,
負 荷 トル クの比 例 定 数 で あ る。
iaを 電 圧つ りあい 式 に 代 入 して,
これ を解 い て, た だ し,
JRa/
τ=
(Kaφ)2+KLRa
等 が 得 られ る。 (2)無
負 荷 他 励 電 動 機 の 始 動
無 負 荷 の と きは,前 項 のTL=0お
よびJ=Jm=電
動
機 回 転 子 の み の慣 性 モ ー メ ン トとお けば よ く,
か らiaを
消 去 し て,
た だ し,
JmRa τ= / Ka2φ2
機 で は0.25秒 最 終 速 度
で あ る。 これ を機 械 的 時定 数 とい い,電 動 機 の大 小 にか か わ らず,直 流
程 度 に な る。 ωr0(∞)はVt/Kaφ
角 加 速度 は,
で あ り,式(2・42)の
ωr(∞)よ
TLRa り / Ka2φ2
だ け高 くな る。
そ う し て,
と な って,Jm<Jで
あ るか ら,当 然 負 荷 時 よ り加 速 度 が大 き くな る。
な お,定 格 回 転速 度 で定 格 出力 と な る よ うな トル ク,す なわ ち定 格 トル クで,自 身 の回 転 子 を静 止 か ら定 格 回転 速 度 ま で 加 速 す る に要 す る時 間 を 加速 定 数 とい う。 こ こで,nrを 格 回転 速 度 〔rpm〕,そ の と きの 回 転 角速 度 を ωrr〔rad/s〕 とす れ ば,ωrr=2πnr/60で 定 格 トル クをTr〔N・m〕,定 Tr=
あ り,
速 定数 を τj〔s〕 とす れ ば,
Pr×103
〔N・m〕
/ωrr
で あ り,一
格 出力 をPr〔kW〕,加
定
定 トル ク を 作 用 させ る と き の 角 加 速 度 は 一 定 で,こ
れ を τjを 用 い て 表 せ ば,
ωrr/τj〔rad/S2〕で あ り,
Jm×
ωrr
= Pr×103
/τj
/ωrr
〔N・m〕
(2・48)
と お い て,
τj=
jm・ω2rr/
×10-3〔s〕
(2・49)
Pr
と な る 。 こ れ が 加 速 定 数 で あ る 。 な お,式(2・48)をTrと
Jm×
ωrr
書 く と,
=Tr〔N・m〕
/τj
∴
τj=
jmωrr /Tr 〔s〕=τu
(2・50)
の 形 で表 した もの を単 位 慣性 定数 と い う。 これ は加 速 定 数 と同 じで,直 流 機 で は容 量 の 大 小 に かか わ らず 6秒程 度 とい わ れ る。 〔7〕 始
動
法
静止 して い る電動 機 に電圧 を加 え,加 速 させ定 常 運 転 に 至 る間 を 始動(starting)と い う。 始 動 法 は電 源 の 状況(定 電 圧 か,可 変 電 圧 か)や,励
磁方 式 な どに よ って 異 な るが,始 動 時
の 電 流,入 力,ト ル ク,所 要 時 間 な どが 注 目され る。 一 般 には,電 流,入 力 が少 な く,ト ル クは大 き く,所 要時 間 が 短 い ことが 望 ま れ る。 前 に も述 べ た よう に,電 機 子 電 流 は 一般 に式(2・24)か
ら(νbを 無 視 して),
Ia=
ま た,ト
Vt-Ea
= Va-Kaφ
/ Ra
ωr
/ Ra
ル ク は, T=KaφIa
で あ らわ され る。 始 動 の 始 め の 瞬 時 は ωr=0で,電 小 さい の で,Vtが
流 はIas=Vt/Raで
あ り,Raは
非常に
定 格 電 圧 の と きはIasは
過 大 とな り,電 機 子 に も,電 源 に も許 され な い
値 とな る が,加 速 す る に した が い,Ea=Kaφ
ωrも次 第 に高 ま りIaは 減 少す る の で,定 常 状
態 に 近づ け ば,Raは
小 さ くて もIaは 負荷 の 軽 重 に応 じた あ る電 流 値 に お ちつ く。
よ って,始 動 瞬 時 の過 大 電 流 を 許 容 値 以 内 に 制限 す る こと が必 要 に な る。 電 流 の許 容 値 は,大 体 軽 負 荷 始 動 で は定 格 電 流 の100∼120%,重 一 方,ト ル クはT=KaφIaで され たIaに
お いて,十
負 荷始 動 では150∼200%程
度 で あ る。
表 され るか ら,始 め に十 分 の φ を生 じさ せ て お け ば,許 容
分 の始 動 トル クが得 られ 容 易 に加 速 す る。 始 動 瞬時 の加 速 度 は,式
(2・44)に 示 す よ うに,
で 表 され,Vt/Raは
始 動 電 流,KaφVt/Ra=Tmは
る トル ク,J は回 転 部 の 慣性 モ ー メ ン トで,こ
電 機 子 の始 動 トル ク,TLは
負荷が要求す
こで は J に負 荷 の慣 性 モ ー メ ン トも含 め て
考 え る。 よ って,始 めの 加 速度 はTm-TLに
比例 し,J に反 比 例 す る こと に な り,負 荷 トル クが 大
き い 場 合 お よび Jが 大 きい場 合 には 加 速度 が小 さ く,始 動 時 間が 長 び く, 従 ってTLや
J
の 値 を 制 限 し な けれ ば な らな い こ と もあ る。 始 動 は,つ ぎの よう な方 法 に よ って行 われ る。 (1)じ
か入 れ 法
数 百 W 以 下 の 小 形 電 動 機 に 限 り適 用 で き る方 法 で,は
格 電 圧 を加 え る。 始 動瞬 時 の電 流 は定 格 の10倍 (2)始
動 抵 抗 に よ る法
じめか ら定
ぐ らい まで 許 さ れ る。
電 機子 に直 列 に タ ップ つ きの 始 動抵 抗Rsを
い タ ップ位 置を 移動 し抵 抗 を減 ら し,定 常 運 転 に 入 れ ばRsを
入 れ,加 速 に伴
零 と し無 用 の抵 抗 損 を 防 ぐ。
タ ップ移 動 は,手 動 ま た は 自動 操 作 に よって 行 わ れ る。 (a)手
動始動
分巻,複 巻 お よび 直巻 の いず れ の 励磁 方 式 で も,電 源 電 圧 が定 格 値一 定
の 場 合 に手 動操 作 の 始動 抵 抗 が 用 い られ る こ とが 多 い。 図2・38は
分 巻 お よ び 複巻 電 動機 に用 い られ る 表 面 形 始 動 器 の略 図 で,r1∼r4が
抗 で あ る。 ハ ン ドルを 1の 位 置 に進 め る と界 磁 お よび 電 機子 に電 流 が 流 れ始 動 す る。
始動 抵
は じめ はr1∼r4の
全 部 の抵 抗 が 電 機子 に
直 列 に 入 る が,加 速 す るに した が い,ハ
ン
ドル を進 め て 5の位 置に至 れ ば 始動 抵 抗 が 全 部 除 か れ,運 転 中は 電 磁 石 M に よ って ハ ン ドル は この 位 置 に保 持 され る。 電 動 機 を停 止 させ る と きは 電 源 を 切 れ ば M は保 持 力 を 失 い,ハ
ン ドルは ば ね の力 で 元 の位 図2・38表
面 形 始 動器
置に もど り,次 の始 動 に 備 え る。 円 筒形 始動 器 もあ るが,こ れ は抵 抗 の タ ップ へ の接 触 を ドラム の回 転 に した が い 次第 に移 動 して行 くもの で あ る。 直 巻 電 動 機 の 始 動 に も始 動抵 抗を 用 い る が,電 車 の よ うに 2台 ま た は 4台 の電 動 機 が 常 に 同 時 に運 転 され る場合 には,始
動 時 に 電 動機 全 部 を直 列 に し,さ
らに始 動抵 抗 も加 えて 始
動 し,加 速 後 に電 動 機 を 並列 につ な ぎか え る方 式 が用 い られ る。 (b)自
動 始 動 自動 始動 に は 限流 始 動,限 時 始動 法 が あ る。
限 流始 動 は,加 速 に伴 う電 流 の減 少 を 検 出 し,あ る設 定 値 ま で電 流 が減 少 した とき に継 電 器 の動 作 に よ って 始動 抵 抗 を 除 いて い く方 式 で あ る。 なお,電 流検 出 の代 りに電 機 子 の 電圧 を検 出す る方 法 もあ る。 限 時 始 動 は,タ イ マに よ って 予 め設 定 され た 時 間 間 隔 で始 動 抵 抗 を減 ら して い く方式 で あ る 。
(3)加
減 電 圧 によ る始 動
で き る場 合 には,始
他励 電 動 機 で 電 機子 側 の電圧 を零 か ら次第 に高 め る ことが
動 中 の 電 流 を監視 しなが ら電 圧 を高 め る よ うにす れ ば ,常 に適 正 電流
で,円 滑 な始 動 を す る こ とが で き る。 後 で述 べ る レオ ナー ド方 式 に よる速 度 制 御 をす る場合 は,電 源 電 圧 を零 か ら加 え るこ とが で き る よ うに して あ るの で,始 動 は この方 法 に よ る。 (4)始
動抵抗の区分
始 動 抵 抗 は数 個 の タ ップが つ けて あ り,加 速 とと もに 次 第 に除
去 して い くの で あ るが,等 間 隔 に タ ップが あ るの で は な く,次 の よ うな 考 え方 によ って 区分 され て い る。 図2・39は
始 動抵 抗の 区 分 を示 した 略 図 で,ま た 図2・40は
始 動 中 の電 流 お よび 回転 速 度
の変 化 を 示 した もの で,抵 抗 除去 ご とに電 流 が 一 時 増 し,加 速 す れ ば電 流 が 減 ず る。 この 間 の最 大 電 流 をI1,最
小電 流 をI2と す る と,I1,I2は
接 近 して い るこ とが 好 ま し いが,こ のた
め に は抵 抗 器 の タ ップ 数 を多 くす る必 要 が あ り,抵 抗 器 お よび リレー回 路 が複 雑 にな る。 図2・40は,抵
抗 を一 部 除 去 す る ご との 増 加 す る電 流 値I1と,加
速 に よ って 減 少 した電
図2・39始
流 値I2と
が,各
動 抵抗 の 区 分
動 中 の電 流 ・回転 速 度(起 電 力)の 変 化
ステ ップで 等 し くな る とい う理想 化 した 図 で あ るが,こ
器 の 区 分 を表2・2の 表2・2を
図2・40始
の 図を も とに抵 抗
よ うに計 算 して み る。
つ くって み ると,各 段 に お い て のI1とI2と
は,5 段 目に全 抵 抗 を 除 いてRaの
を 等 し くす る とす れば(こ の 場合
み にす る と して),
(2・51)
表2・2始
動 抵 抗 器 の区 分
こ れ が,始 っ て,n
動 中 の 電 流 変 動 の 比 で あ り,一 を 大 に す れ ば(I1/I2)は
般 に n 段 に 区 分 す れ ば,(I1/I2)=(R1/Ra)1/nと
小 さ く な る 。 な お,R1はI1の
値 を指 定す れ ば決 ま る値 で
あ る。 表2・2よ
り,
(2・52) が 求 め ら れ,各
区 分 内 の 抵 抗
γ1,γ2,…,γ4は,
γ1=R1-R2,γ2=R2-R3,γ3=R3-R4,γ4=R4-Ra と し て 決 め られ る 。
〔例 題
9〕
定 格20kW,220V,100A,800rpmの
電 動 機 を 図2・41の
直流直巻
よ う な 3段 の 始 動 抵 抗 器 で 始 動 す る 。 始 動
中 の 最 大 電 流 は 定 格 電 流 の 2倍 で あ り,電
流 が定 格値 に な った
とき 抵 抗 を短 絡す る。 始 動抵 抗
γ1,γ2お よ び
γ3の 値 を 定 め よ 。 ま た,始
動抵抗全
部 を 短 絡 し 終 わ っ た 瞬 時 の 電 流 を 求 め よ 。 た だ し,電
機子回路
の 抵 抗Ra+Rs=0.15〔 〔解 〕
表2・2に
〔Ω〕,R2=0.55〔
Ω〕とす る。 な ら って 下 の よ う に 表 を つ くれ ば,R1=1.1 Ω〕,R3=0.275〔
各 区 分 内 の 抵 抗 は,
Ω 〕が 求 め ら れ る か ら,
な
図2・41直
巻電動機の 始動抵抗
γ1=R1-R2=1.1-0.55=0.55〔
Ω〕
γ2=R2-R3=0.55-0.275=0.275〔
Ω〕
γ3=R3-(Ra+Rs)=0.275-0.15=0.125〔
Ω〕
と な る。 ま た,始 動 抵 抗 を 除 去 し終 わ った瞬 時 の 電 流 は表 の 中 の よ うに計 算 して183.3Aと な る。 この 問 題 は,直 巻 電 動 機 の 始 動抵 抗 を 決 め る計 算 で あ るが,計 算 手 順 は分 巻電 動 機 の 始 動 抵 抗 区分 の 計 算 と全 く同 じで あ る。 〔8〕 速 度 制 御 法 直 流電 動 機 は,交 流 電動 機 に比 べ て 速 度 制 御 が 自 由 で,こ の点 が 交 流電 動 機 に比 べ 高 価 で,ブ
ラシ の保 守 な どに難 が あ るに もか か わ らず,直 流 機 が広 く用 い られ る理 由 で あ る。
(1)速
度 制 御 法 の 種類
直 流 電動 機 の 速度 は,式(2・29)に
で 与 え られ る。 この式 の第 2項 は,一 きま り,Vtに
示 した よ うに,
般 に第 1項 に比 べ て 小 さい の で,ωrは
比 例 し,φ に反 比 例す る。 よ って,速
度 制御 法 と して は,つ
ほぼ 第 1項 で
ぎ の各 種 が用 い
られ る。 (a)界
磁 制 御Vtを
一定 に保 って φ を変 え る方 法 で,分
巻 お よ び 複 巻 電 動 機 は,主
と して この方 法 が用 い られ る。 す なわ ち,分 巻 界 磁 回 路 の抵 抗器 を 調 整 し て φを変 え る方 法 で あ る。 この 場 合 の電 機 子 入 力 は,式(2・25)に
示 した よ うに,
VtIa=KaφIaωr+RaIa2+υbIa で あ り,こ の 式 で も第 2項 以 下 は比 較 的小 さいか ら,入 力 は 主 と し て第 1項 に よ って きま る。 界 磁 制 御 で は,φ と ωrは ほ ぼ反 比 例す るか ら,発 生 動 力KaφIaωr=T×
ωrは,同
じ電
機 子 電 流 に対 して は ωrにか か わ らず ほぼ 一定 で,定 出 力特 性 と な る。 φ を減 らせ ば高 速 に で き るが,ト ル クが 小 と な り,速 度 の不 安 定 や 整流 不 良 を 起 こす こと もあ る の で,最 高,最 低 の速 度 比 は4:1程
度 で比 較 的 せ ま い。
直 巻 電 動 機 に も界 磁 制御 が 用 い られ るが,こ
の 場 合 に は,界
磁 コイ ル に タ ップを 設 け る
か,ま た は抵 抗 分 路 を 設 け界 磁 ア ンペ ア回 数 を減 らす方 法 が と られ る。 (b)電
圧制御
界 磁 電流 を一定 に保 って電 機 子 に加 え る電 圧 を制 御 す る方 法 で,電 圧 零
か ら加 減 で き る よ うに す れ ば速 度 範 囲 も広 くな る。 この 制 御法 で は磁束 一定 で あ るか ら,同 じ電 機子 電 流 にお い て は 速度 にか か わ らず 同 じ トル クが 得 られ る定 トル ク制御 が で き,従 っ て,出 力 は速 度 に 比 例 す る。
電 動 機 に対 し専 用 の 直 流 発 電 機 を備 え,発 電 機 の 励磁 の 加 減 に よ って 速 度 制御 をす る方 式 を ワ ー ドレオ ナ ー ド(Ward
Leonard)方
式 と い い,古 くか ら広 く用 い られ て きた が,最 近 は
直 流 発電 機 に代 って 交 流 電源 か らサ イ リス タに よ って 整 流 し て得 られ る直 流 電 圧 を 用 い る方 式 が 普 及 し,こ れ を 静止 レオ ナ ー ド方式 とい う。 また,最 近 チ ョ ッパ 方 式 が実 用 化 され て い るが,こ れは 主 回路 に サ イ リス タ をお き,こ れ を断 続 させ て,電 動 機 に加 わ る平均 電 圧 を 加 減 す る電 圧 制 御法 の 一 種 で あ る。 電 車 用電 動 機 で は電 車 線電 圧 が ほ ぼ一 定 で あ るか ら,始 動 時 に は低 速 を得 るた め に,そ の 電 車 が もつ 2台 ま た は 4台 の電 動機 を直 列 に し,か つ,直 列 抵 抗(始 動 抵 抗)も 入 れて 1台 当 た りの電 圧 を 下 げ る方 法 を用 い るが,こ れ も電圧 制 御 と い え る。 なお,ブ ー ス タ とい わ れ る加 減 電圧 電 源 を 主 回路 に直 列 に入 れ て,定 電 圧 源 電 圧 とブ ー ス タ電圧 の和 を 加 減 して速 度 を 制 御す る方 式 もあ り,こ れ は速 度 範 囲 が3:1以
下 の比 較 的 せ
ま い場合 に用 い られ る。 (c)抵
抗制御
これ は定 電 圧電 源 で運 転す る分 巻,複 巻 また直 巻 電 動 機 の電 機子 回 路 に
直 列 に抵 抗 を 入 れ る方 法 で,式(2・29)のRaに
直列 抵 抗Rsを
加 えて,
と し,Rsを
加 減 し ωrを制 御 す る方 式 で,抵 抗 器 内の損 失 電 力 が大 き く,効 率 が悪 くな る こ
と と,Rsを
一定 と して お いた と き,Iaの
変 化 で ωrが 大 幅 に 変 わ り,す なわ ち速 度 変 動 が
大 きい ことが 欠 点 で あ る。 電 車 用電 動 機 に は抵 抗制 御 が広 く用 い られ る。 (2)直
流電源
直 流 電 動 機 の電 源 に は直 流 発電 機が 一 般 に用 い られ た が,最 近 は 半導
体 整流 器 の 発 達 に よ り,回 転 機 に比 べ 小 形,軽 量 で,か つ,交 流電 源 さ え あれ ば 随所 に 直 流 電 源 を得 られ る よう に な った 。 なお,以 前 は電 車 用直 流 電 源 に は水 銀 整 流 器 が盛 ん に用 い ら れ たが,こ れ は シ リコ ン整 流 器 に代 わ りつ つ あ る。 図2・42は,整
流 器 に よ って 交流 電 源 か ら直 流電 圧 を得 る代 表的 な回 路 で あ り,こ れ らの
う ち,単 相 お よ び三 相 ブ リッ ジ回路 は,シ
リコ ン整 流器 を 使 用 す る よ うに な ってか ら急速 に
普 及 した 回 路 で あ る。 交流 側 電 圧Vlと,整
流 され た 直流 平 均電 圧Ed0と
の間 には,図 中 に記 入 した よ うな 関係
が あ る。 図2・42の
例 では,交 流 側電 圧 が 一定 な ら,直 流 側 電 圧 も一 定 で あ るが,こ の 図 の 各 整流
器 を サ イ リス タ に お きか え れ ば,ゲ ー トに加 え るパ ル ス位 相 の加 減 に よ って直 流 電 圧 を零 か ら自由 に 変 え る こ とが で き る。
(a)単相 両 波 整 流 (b)三相 半 波 整 流
図2・42整
(c)単相 ブ リッ ジ
流 器 に よ る直 流電 源
(d)三相 ブ リッ ジ結 線
整 流器 に よ って 得 られ る直流 電 圧 に は脈 動分 を含 み,こ の 脈 動 は電 動 機 の 損 失 を増 し,整 流 に も悪 影 響 を 与 え るが 致命 的 な もの では な く,平 均電 圧 値 を 同 じとす れば,発 電 機 や 電 池 を 用 い る場 合 と ほぼ 同 じ特 性 が 得 られ る。 図2・42(d)の
三 相 ブ リッ ジに サ イ リス タを 用 い
る方 式 は,最 近 大 容 量 の ものが 造 られ るよ うに な り,直 流 出力 数 千kWの
もの も珍 ら し く
な い。 (3)界
磁制御法
界 磁 制 御 法 は一 つ の電 源 が あ れ ば適 用 で き る最 も簡 単 な形 で あ るの
で,数 百 W か ら数 百kWま
で の広 い 範 囲 に用 い られ る。 速 度範 囲 は,前 記 の よ うに3:1
程 度 で あ るが,最 大 幅 に と る と して4:1位
で あ り,こ の間 定 出力 特 性 を得 られ る。 始 動 は
始 動 器 を用 い,電 機子 に直 列 に始 動抵 抗 を入 れ て行 う。 定 常運 転 にお い て界 磁 回路 の 抵 抗器 内で 損失 を伴 うが,こ の 電 力 は少 な く,ど の速 度 に お い て も効 率 が よい 。 電 源 に は,電 池 も,直 流発 電 機 も用 い られ る が,整 流 器 を介 して 交 流電 源 か ら運転 す る方式 で も よい。 最 近,図2・43の
よ うに 整流 器 と分
巻 電 動機 を組 み に して一 体 構 造 と し,交 流 電源 か ら直 接 運 転 で き るよ うに した ものが 市 販 され て い る。
図2・43交
流電源か ら直接 運転す る分巻 電動機
この 場 合,速 度制 御 は界 磁 制 御 に よ っ てい る。 同図 でRfが
速 度制 御 用 抵 抗,Rsは
始動
抵 抗 で あ る。 (4)ワ
ー ドレオ ナ ー ド法
古 くか ら用 い られ て い る電 圧 制 御法 で,図2・44が
その回
路 図 で あ る 。主 電 動機 M に 対 し専 用 の 直流 発 電 機 G を備 え,G
の
励 磁 の 加 減 に よ って M の 速度 制 御 を行 う。IMは
G を運 転す る交
流 電 動 機 で,こ れ は誘導 電 動 機 を 用 い る こと が 多い 。IMに
はGの
ほ か に 小 形 の 直 流発 電 機 E も直 結 し,こ れ を定 電 圧 で発 電 し,M お よび G の励 磁 電源 にす る。 ワー ドレオ ナ ー ド方 式 は,ご 小 容 量 機 か ら数 千kWの
図2・44ワ
く
ー ドレオ ナ ー ド方 式 回路 図
大 形 機 に ま で適 用 され,速 度 の 自動 制 御 も行 われ る。 自動 制 御 を す
る場 合 に は M の 軸 に直 結 した 速 度発 電 機 の 電圧Egと,別
に 用意 した 基 準電 圧Esと
の差 を
検 出 し,G の界 磁電 流 を 加 減 す る指 示 を 出す よ うに す る。 制 御 精度 は良 く,設 定 速 度 との差 0.1%以
内 の定 速 度 運転 も可 能 で あ る。
ワー ドレオ ナー ド方 式 に お いて は,図2・45(a)の
よ う にあ る基 準 速 度 ωr0以下 で は電 圧
制 御 と し定 トル ク運 転 を行 い,ωr0以 上 で は界 磁 制 御 と し定 出力 運 転 を行 うこ とが 多 い。 も っと もこれ は 用途 に も よる の であ るが,全 速 度 範 囲 にわ た って電 圧 制 御,定
(a)定
トル クお よ び定 出力 運 転
図2・45ワ
(b)定
トル ク運 転 を行
電 圧,定 励 磁 にお け る ωr-T特 性
ー ドレオ ナー ド系 の特 性
う とす れ ば,高 速 域 に お い て 出力 が 大 と な り,M
も G も大容 量 の もの を備 え な けれ ば な ら
な い。 同 図(b)は 定電 圧,定 励 磁 の 場合 の トル クと速 度 の 関係 を 示 す もので,こ れ は Tが 増 し て も ωrの低下 が少 な い分 巻 特性 で あ る。 M の負 荷 が 急激 な変 化 を 繰 り返 す よ うな場 合 は,IMに
巻 線 形 機 を用 い,二 次 回路 に速 度
制 御 用 抵 抗 を入 れ,か つ,主 軸 に大 きい はず み車 をつ け,こ れ に 蓄 え た 回転 エ ネル ギ ー を負 荷 増 大 時 に放 出す る よ うに して,G もの をイ ル グ ナ方 式(Ilgner (5)静
お よびIMの
system)と
止 レオ ナ ー ド法
ピー ク負 荷 を 緩 和 させ る。 この よ うに した
い う。
ワ ー ドレオ ナー ド方 式 は,速 度 制 御 が広 く,制 御 精度 も よい
す ぐれ た 方式 で あ るが,専 用 の電 動 発電 機 を備 え る必 要 が あ るた め に,高 価 で据 付 け面 積 を 要 し,騒 音 も大 きい こと が難 点 で あ る。 近 年,半 導体 整 流 器 の発 達 に よ り,ワ ー ド レオ ナ ー ド方 式 の電 動 発電 機 の 代 りに,図2・46の
よ うに 整流
器 を用 いた ものが 急 速 に広 ま りつ つ あ る。 もっ と も, この 整流 器 は,以 前 は 小 規 模 の もの で は サ イ ラ トロ ン,大 形 の もの では 水 銀 整流 器 が 用 い られ,格 子 に加 え る電 圧 位 相 の制 御 に よ って,直 流 電圧 を広 範 囲 に変 え る方 式 が 用 い られ,こ れ を 静止 レオ ナー ドとい った
図2・46静
止 レオ ナ ー ド
の で あ るが,最 近 は,整 流 器 は サ イ リス タにお きか え られ,ゲ ー ト制 御 に よ って 直 流 電 圧 を 変 え る方 式 に な って い る。 サ イ リス タは直 流 出 力 の小 さ い場 合 に は 単相 ブ リッジ結 線 の もの も用 い られ るが,中
・大
出力 の もの で は,ほ とん ど が三 相 ブ リッ ジ結 線 とす る。 速 度 制 御 範 囲 は,ワ ー ドレオ ナ ー ド方 式 と同 様 に広 く,低 速 時 には電 圧 制御 に よ って定 ト ル ク特 性,高 速 で は界 磁 制 御 を行 い定 出 力特 性 に す る。 始 動 は,電 機 子 に加 え る電 圧 を 零 か ら次 第 に上 げ て い く操 作 が で き るの で,極 めて 円滑 で あ る。 (6)ブ
ー スタ に よる 制 御
ブ ー スタ(booster)は 昇 圧 機 と も いい,電
圧 を高 め る もの
と い う意 味 で,図2・47の
よ う に,例 え ば定 電 圧 の 直流 発 電 機 に,ブ ース タと な る別 の 直流
発電 機 を直 列 に入 れ,ブ
ー ス タ の 出力 電 圧 を加 減 して電 動 機 M の速 度 を 制御 す る。 この方
式 は,制 御 範 囲 が比 較 的 せ ま い場 合 に適 用 され る。 例 え ば,定 電 圧 電 源 だ けで は負 荷 の 増 加 に伴 い M の速 度 が低 下 す るの で,そ
の降 下 分 を
ブ ー ス タで 電 機子 電 圧 を 上 げ て補 償 した い よ うな場 合 で あ る。 ブー ス タ によ る速 度制 御 幅 は 界磁 制御 並 みで,広
くして も3:1ぐ
らいで あ る。
(a)ブ
ー ス タ を入 れ た速 度 制 御 回 路
(b)ブ
図2・47ブ
ー ス タ電 圧 と電 動 機速 度
ース タ制御
ブ ー ス タ電 圧 と電 動 機速 度 との 関係 は,図2・47(b)の
よ うに,ブ ー ス タ電 圧 に比 例 して
速 度 が 高 ま るが,ブ ー ス タ の極 性 を反 対 に す れ ば,VBの
増 加 によ り速 度 が下 が る特 性 も得
られ る。 図2・47(a)の
G も B も直流 機 に 限 る こ とは な く,電 池 や 整 流器 に よ って造 った 直流 電
圧 で もよ い。 B に 三相 ブ リッ ジ接 続 と した サ イ リス タを用 い,こ の ゲ ー ト制御 に よ って昇 圧 電 圧 を変 え る方 式 もあ る。 ブ ー ス タの電 圧 は,一
般 に主 電 源 G の電 圧 よ り低 い が,電 流 は
主 機 と同 じで あ るの で,低 電圧,大 電流 で,か つ,可 変 電 圧 の直 流 電 源 が ブ ー ス タと し ての 機 能 を もつ こ とに な る。 (7)チ
ョッパ に よ る制 御
チ ョ ッパ(chopper)と
は,切 り刻む もの と い う こ とで,電
動 機 に加 え る電圧 を高 速 度 で断 続 させ,“ 断 ”と “続 ”の時 間 幅 の比 を 変 え て,平 均電 圧 を変 え て,速 度 制 御 を行 う方 法 で あ る。 図2・48(a)は,チ
ョッパ制 御 の基 本 回 路 を 示す 。 直 流 電 源電 圧Vdを
通 して 電 動 機 M に加 え る。Thの Thを
休止 させ る時 間(off時
よ り,M
サ イ リス タThを
ゲ ー トに 加 え るパ ル スの 制 御 に よ って,同 図(b)の よ うに
間)と 導 通 させ る時 間(on時
間)と の 比tf/tnを 変 え る ことに
に加 わ る平均 電 圧 は,
(2・53)
で 表 され る値 に変 わ り,M の 速 度 を電 圧 制御 に よ って 変 え る ことが で き る。 tn+tf=Tを
チ ョッパ の 周 期 とい い,数ms以
保 ってtf/tnの 比 を変 え る よ うに画 いた が,tfを 図(a)に お いて,時 刻t1にThをonに そ の 模様 は,図(b)のiTの にす る とiTは
な くな るが,M
下 に選 ば れ る。 同図(b)で は,T
を一定に
一定 に保 ってtf/tnを 変 え る方 法 もあ る。
す る と,電 源 か らiTが 電動 機 へ 流入 す る。
よ うに,指 数 的 に上 昇 す る電 流 で あ る。 時 刻t2でThをoff と並列 に入 れ た環 流 ダ イ オー ドを通 してiDが
流 れ る。 これ
(a)基 本 回 路
(b)on時 間 の長 短 とM の 電圧,電 図2・48チ
は,図 のiDの
流 の相 異
ョッパ に よ る速 度 制 御
よ うに指 数的 に 減少 す る。off時 間 が長 い と,M
の電 流 が一 時零 に な る状 態
と,off時 間 が短 か く上 図 の よ うに電 流 が連 続 的 に な る場 合 とを生 ず る。 式(2・53)の
平 均直 流 電圧Vtに
Eb, 電 機子 回路 の抵 抗 をRaと
対 し,図2・48(b)の
電 流 の平 均 をIa,電
機 子起 電 力 を
すれ ば,平 滑 な 直 流電 圧 で 運 転 す る場 合 の式 が そ の ま ま使
え,す で に繰 り返 し示 した式, Vt=Ea+RaIa=Kaφ ωr=
ωr+RaIa
Vt-RaIa / Kaφ
が 成 り立 つ。 チ ョッパ方 式 は,図2・48(a)の
よ うな他 励電 動 機 の ほか に,直 巻 や 複巻 電 動 機 に も適用
で き,直 巻 の 例 に電 車 用主電 動 機 の チ ョッパ 制 御 が あ る。電 動 機 が数kW以
下 な ら,サ イ リ
ス タの 代 りにパ ワー トラ ンジス タを 用 い たチ ョ ッパ とす る ことが で き るが,サ イ リス タチ ョ ッパ で は数 百kW級
の電動 機 の制 御 が で き る。
電 動 機 の始 動 は,tf/tnの
比 を 大 き くして平 均 電 圧 を低 くして 行 う こ とが で き るの で,任
意 の設 定電 流 以 下 の 円滑 な始 動 がで き,始 動 抵抗 は い らない 。 な お,図2・48(a)の
直 流 電源 は,交 流 か ら整流 器 を通 して得 た直 流 で もよい が,こ の場
合 は脈 動 分 を 含 む 直 流 電 圧 で あ るの で,平 滑 フ ィル タを チ ョ ッパ の入 力 端子 に 並 列に 入 れ る。 (8)抵
抗 制御 法
定 電 圧電 源 で運 転 され る直 流電 動 機 で は,電 機 子 に 直列 に加 減 抵抗
Radを 入 れ て,速 度 制御 をす る 方 法 が あ る。 これ を 抵抗 制 御 と い い,Rad内
の損 失電 力 が 大 き
く,効 率 が悪 くな るが,容 易 に 実施 で き る ため,し ば しば 適用 され る。特 に,電 車 用 電 動 機 で は,チ ョ ッパ 制御 を 除 いて ほ と ん どが抵 抗 制 御 を取 り入 れ て い
(a)回 路 図 (b)T-ωr特
る。 (a)分
図2・49分 巻 電勤 機 の 抵抗 制 御
図2・49(a)の
巻 界 磁 は 定 励 磁 に し て お い た とす る と,つ Vt=Kaφ
性
よ う に,電
巻電 動 機 の抵 抗 制 御 機 子 に 直 列 にRadを
入 れ る。 分
ぎの よ うな特 性 に な る。
ωr+(Ra+Rad)Ia
T=KaφIa
(2・54) この特 性 は,同 図(b)の よ うに,T
の増 加 と共 に ωrが大 幅 に低 下 す る特 性 とな る。す な
わ ち,本 来定 速 度特 性 を もつ 分 巻電 動 機が,Radを 抗制 御 で は軽 負 荷 で T が少 ない ときはRadを
入 れ る と変 速度 電 動機 にな る。 ま た,抵
大 き くして も速 度 は あま り低 下 しな い。
電 機 子 の入 力 は, VtIa=Kaφ ωrIa+(Ra+Rad)Ia2 で,右 辺 第 1項 が 出力,第
2項 が抵 抗損 で あ り,こ の式 だ け で効 率 を考 えて み る と,
(2・55)
とな って,効 率 は抵 抗 に よる電 圧 降下(Ra+Rad)Iaと,逆 悪 くな る。
起電 力Kaφ ωrと の比 が増 す ほ ど
(b)直
巻電 動 機 の 抵抗 制 御
列 に抵 抗Radを
Vt=Kaφ
,ト
ぎの よ うに な る。 ω γ+(Rs+Ra+Rad)Ia
(2・56)
飽 和 の 状 態 な ら φ はIaに
Vt=KaKsIaω
一方
よ うに主 回路 に 直
入 れ,こ れ を加 減 す る こ とに よ って速 度 制 御が で きる。 この場 合,ト ル クと
速 度 との 関 係は,つ
直 巻 で は,未
直 巻電 動 機 にお い て も,図2・50(a)の
比 例 す る の で,φ=KsIaと
お く と,
γ+(Rs+Ra+Rad)Ia
ル ク は,
(2・57) こ の 特 性 は ほ ぼ 図2・50(b)の
よ う に な る。 な お,式(2・56)か
ら ωγを 求 め る と,
(2・58) と な って,ω γはIaに 反 比 例す る曲線 か らRadに 図2・51は,電 る。M1,M2が
よ って 変 わ る第 2項 を引 いた 形 と な る。
車用 電 動 機 の直 列,並 列切 り換 え制 御 と抵 抗 制 御 とを 行 う回 路 の略 図 で あ 主電 動 機 で あ るが,M1は
常 に 2台 直 列,M2も
常 に 2台 直列 に して合 計 4台
の 電 動 機 の場 合 も多 い。 多 くの ス イ ッチ が あ るが,こ れ は運 転 台 か ら間 接制 御 に よ って 開閉 され る接 点 であ る。 制 御 用抵 抗R1,R2,R3に
もタ ップが 出て い て,こ の 接点 も開閉 され る
(a)回路 図
(b)T-ω
図2・50直
γ特 性
巻電 動 機 の抵 抗 制 御
の であ るが,図 で は簡 略 に示 した 。 全 電 動 機 を直 列 に し,か つ,制 御 抵 抗 を 入 れて 始 動 し,加 速 に伴 い抵 抗 を減 ら し,電 動 機 を並 列 に切 り換 え る。 この よ うに 直列 接 続 に して始 動 す る ほ うが,初 め か ら全電 動機 を 並 列 に して始 動 す る よ り抵 抗 内 の損 失 電 力が 少 な くな る。 図2・52は,電
図2・51電
車 用 電 動機 の 直 並 列 お よび 抵抗 制 御
車 が 加速 を 終 り定
常 速 度 に な った後,更 に速 度 を 上 げ る際 に 用 い る界磁 制 御 の 略図 で,直 巻 界磁 コ イル に設 けた タ ップ の変 更 また は 直巻 界磁 コイ ル と並 列 に抵抗 分 路 を設 け,界 磁 ア ンペ ァ 回数 を減 図2・52弱
らす。 この よ うな 方 式 を 弱 め 界 (field-weakening)と 〔9〕 制
動
め界 磁制 御
い う。 法
電 動 機 を停 止 させ るか ま た は危 険 な高 速 度 に な ろう とす る際 には 制 動 を か け る必要 が あ る。 その方 法 に は,(a)摩
擦 制 動,(b)発
電 制 動,(c)回
生 制 動,(d)逆
相 制動 な どが あ
る。 (a)摩
擦制動
軸 に取 り付 けた プ ー リ状 の制 動輪 の 外 周 に仕 か けた 摩 擦 ブ レー キシ ュー
を電 磁 石,油 圧,空 気 圧 な ど の力 で お さえ,回 転 体 が保 有 して い るエ ネル ギ ー を摩 擦 熱 にお き か え る方法 で,低 速 時 に 確実 な ブ レー キが か け られ る。 (b)発
電制動
図2・53は,分
巻電 動 機 に 発電 制 動(dynamic
braking)を
行 う場合 の
回路 図 で,制 動 時 に は 回転 部分 の保 有 エ ネル ギ ーを 原動 力 とす る他 励 の発 電 機 と な って発 電 電力 を制 動抵 抗RB内
に消 費 させ る。 この と きの制 動特 性 は,つ ぎの よ う にな る。
回転 子 軸 に速 度 に かか わ らず一 定 の トル クTLを
要求 す る負荷 が 結 合 され て い る と し,他
は 〔6)の 動 特 性 に お いて 用 い た と同 じ記 号 を用 い る ことに す る。 図2・53に
お いて,ス イ ッチ K を 2に入 れ ると他 励磁 の発 電 機 にな り,こ の 瞬時 か ら制動
が か か る。制 動 時 に は軸 に作 用す る トル クの 総 和は 零 で あ り,
(a)回 路
図
(b)減 図2・53発
速 特 性
電 制 御
dω γ
+ KaφIB+TL=0
J=
/ dt
こ こ に,
J
(2・59)
dω γ
は慣 性 モ ー メ ン ト J を 減 速 さ せ る トル ク,KaφIBは
/dt
電 機 子 に 生 ず る トル
クであ る。 制 動 電 流IBは, kaφ ωγ=(Ra+RB)IB Kaφ
と お い て,IB=
ωr
/Ra+RB
よ っ て,式(2・59)は,
(2・60) 式(2・60)を,t=0に
お い て ωγ=ωγ0の 条 件 で 解 く と,
(2・61) と な る。 た だ し,
τ=
J(Ra+RB)
で電 機子 の 機 械的 時定 数 で あ る。
式(2・61)は,つ
/ka2φ2
ぎ の よ うに も書 ける。 τTL
ω γ=ω
回 転 速 度 をrpmで
γ0e-t/τ-
/J
表 し,こ
(2・62)
(1-e-t/τ)
れ をnγ,負
モ ー メ ン トの 代 り に は ず み 車 効 果GD2〔kg・㎡
荷 トル ク をkg・mで 〕=4Jを
表 し,こ
れ をTL′,ま
用 い る と,nγ0=(60/2π)・ω
た 慣性 γ0,TL=
9.8TL′
で あ る か ら,
(2・63) で あ る。
た だ し,
式(2・61)ま
た は 式(2・62)で
る 。 負 荷 トル クTLが
表 さ れ る 減 速 の 状 況 は,図2・53(b)の
あ れ ば,t=tLで
ωγ=0に
な る が,無
た だ し,ω γ0′ は 制 動 開 始 直 前 の 速 度 で,ω γ0′=Vs/Kaφ (c)回
生 制動
お い て,電
動 機 が 負 荷 側 か ら 駆 動 さ れ る 場 合,電
ワ ー ドレ オ ナ ー ド系 や,定
あ る 。 図2・45の
IM=
で,制
braking)と
で あ る。
動 機 の 起電 力 が端 子電 圧 を上 まわ るこ とが
γMと す る と き,Eg<EMな
回 生 制 動(regenerative
負 荷 で は ωr=ωr0′e-t/τと な る 。
電 圧 源 で 運 転 さ れ る分 巻 ま た は 複 巻 電 動 機 に
ワ ー ド レオ ナ ー ド系 に お い て,G
れ をEM=KaMφMω
曲 線 A の よ うに な
の 起 電 力 をEg=Kagφgω ら,M
γ gと し,M
のそ
か ら G へ 電 力 を返 す形 にな るの で
い う 。 こ の と き の M の 電 流IMは,
EM-Eg /Rag+RaM
動 トル クTBは, EM-E
TB=KaMφMIM=KaMφM・
g/Rag+RaM
と な り,ω γMが加 速 す れ ば,TBは (d)逆
相制動
図2・54の
大 と な り加速 が 阻 止 され る。
よ うに結 線 して,電 動 機 として 運 転 中 にス イ ッチ の切 り換 え
に よ って電 機 子 電流 の 向 き を逆 に す る。 制 動時 に は 電 流 が 過大 に な らない よ う電 機子 回 路 に 限流 抵 抗RBを
入 れ る。制動 の は じめは電 源 電 圧Vtと,
電 機 子 起電 力が 同 じ向 きに直 列 に結 ば れ るの で, 電 流 は ほ ぼ2Vt/(Ra+RB)と す れ ば電 流 はVt/(Ra+RB)と
な り,電 機子 が停 止 な る。
界 磁 側 は電 動 機状 態 の ま まに し てお く。磁 束 が 定 格 状 態 に相 当 す る量 とな って いれ ば,制 動 トル クの % は電 機 子電 流 の % に等 し くな る。 な お,
図2・54逆
相 制 動
この 方 式 で は,急 速 に制 動 がか り,停 止 に 至 るが,こ の時 点 で電 流 を切 らな い と再 び元 と反
対 の向 きに加 速 して しま う。 〔10〕 逆
転
法
直 流 電 動 機 の回転 方 向 を変 え るに は,電 機子 か 界 磁 コ イル のい ずれ か の接 続 を逆 にす れ ば よ い。 しか し,補 極 や 直巻 界 磁,補 償 巻 線 の極 性 に つい て考 慮 しな けれ ば な らな い。 (a)界
磁 コイ ル の極 性 を逆 に して逆 転 さ せ る場 合
この場 合 は,電 機子 と補 極,直 巻 界
磁 は元 の ま ま で,逆 転 後 も補 極 の極 性 は 正 し く,正 転の とき和 動 の複 巻 な ら逆 転 後 も和 動 で あ る。 (b)電
機 子 側 の結 線 を逆 にす る場 合
この場 合 は,補 極 も直巻 界 磁 も元 と反対 の電 流 に
な るよ うに しな けれ ば な らな い。 す な わ ち,電 機 子 だ けの 電流 の 向 き を反 対 にす る と逆 転 は す るが,補 極 の向 き は元 の ま まで,整 流 が 悪 くな る。 また,元 和 動複 巻 で あ った 場 合 は,逆 転 に よって差 動 複巻 に な って特 性 が 変 わ って くる。 補償 巻 線 があ れ ば,こ れ も電 機 子 と と も に 電 流 の向 きが元 と反対 にな る よ うに し な けれ ば な らな い。
2・5直
流 機 の試 験 法
据 え付 けに 関す る試験,整 流 に関 す る試 験 な ど につ い ては 省略 し,次 の各 項 につ いて 簡 単 に 述 べ る。
〔1〕 直 流発 電 機 の試 験 (1)巻
線 抵抗 測 定
電 機子 巻 線 の 抵抗 は,正 負 ブ ラシを 通 して 定 格電 流 の15%程
以 下 を流 し,ブ ラ シ抵抗 お よび接 触 抵 抗 を含 め な い よ うに,+,−
度
ブ ラシ下 の整 流 子面 で 1
極 間 隔間 の 抵 抗を 測 る。 補極,直 巻界 磁,補 償 巻 線等 は低 抵抗 で あ るか ら,ダ ブル ブ リ ッジ等 を 用 い て 慎 重 に 測 る 。界 磁 巻 線 は直 流 を流 して電 位 降 下 を測 れ ば よ い。 各 測定 は,巻 線 温 度が 周 囲 温度 に等 し い とみ られ る状 態 で 測 り,周 囲 温 度 も測 って お く。 巻 線の 抵 抗 損計 算 の と き の 抵 抗 値 は,各 測 定 抵抗 を基準 巻 線 温度(A,E,B 75℃,F,H (2)無
絶 縁 で は115℃)に
種 絶縁 では
負 荷飽 和 曲線 の 測 定
換算 した 値 を用 い る。 供試 機 を原 動機 によ り定 格速 度 で運 転 し,他 励 磁 に し て
界 磁 電流 と起 電力 の 関係 を測 る(図2・14)。 定 格 速度 が 得 られ な い場 合 は,実 現 し得 る速 度 で測 り,起 電力 を速 度 に比 例 させ て 換 算す れ は よい。 (3)外
部 特 性 曲線 測 定
定 格 速 度 一定 で 運 転 し,定 格 電 流 で定 格電 圧 とな る よ うな負
荷 をか け,以 後界 磁 の調 整 をせ ず,負 荷電 流 を 零 ま で減 少 させ た と きの端 子 電 圧 の変 化 を 測
れ ば,図2・21(c)の
よ うに励 磁方 式 に応 じた 外部 特 性 曲線 が 得 られ,電 圧 変動 率 も求 め ら
れ る。 (4) 規 約 効 率 の算 定 て,効
規 約 効率 は あ る 出力 を想 定 し,そ
の 出 力 に お ける損 失 を測 っ
率=出 力/(出 力+損 失)と し て求 めた 値 を い い,一 般 に この方 法 で 効率 計算 が 行 われ
る。 損 失 につ いて は,2・3節
〔6〕で 述 べ たが,こ
こで はJEC-54(1965)「
直 流機 」 に 従い,
損 失 の分 類 を示 し,そ れ らの測定 法 を簡 単 に述 べ る。 (a) 損 失 の 種 類 ① 固定 損 無 負荷 鉄 損,軸 受 お よび ブ ラシ摩 擦損,銅 損 の和 を固 定 損 とい う。 ② 直 接 負 荷損 直 巻界 磁,補 極 お よび補 償巻 線 等 の 抵抗 損,ブ
ラシの電 気 損,負 荷 に よ
り増減 す る鉄損 等 の 和 を直接 負 荷 損 と い う。 ③
漂遊 負 荷 損 鉄 心,鉄 材 お よび導 体 中 に生 ず る うず 電流 に よ る損 失 を い う。
④ 励磁 損 分巻 また は他 励 界 磁巻 線 の抵 抗 損 を励 磁損 と い う。 ⑤
次の よ うな損 失 は 損失 計算 に計 上 し ない。 ベ ル トや歯 車 等 の伝 導 装 置 の損 失,界 磁 抵 抗 器 の 損 失,励 磁 装 置 の損失,冷 却用 フ ァ ン,ポ ンプ等 の 動力 。
(b) 損 失 の 測 定 固定 損 は供 試 機 を,電 気動 力 計 ま たは 予 め損 失 の判 って い る電 動機 で 駆 動 し,定 格 速 度,無 負 荷 にお い て界 磁電 流 を加 減 し,起 電 力 を加 減 し,各 電圧 ご との供 試 機 の入 力 を測 る と図2・55の
よ うな 曲線 がで きる。 起 電力 が 定 格電 圧 の と きの供 試 機 の入 力
は,そ の発 電 機 の固 定 損 で あ る。 供 試 機 を 電 動機 と して無 負 荷 で運 転 し,回 転速 度 を定 格 値 に保 ち なが ら,電 機 子 に加 え る 電圧 を変 え,そ の都 度 電機 子 入力 を測 って も同様 の 曲線 が 得 られ る。 た だ し,こ の場 合 は,
図2・55
固 定損 の測定
図2・56
負 荷 に よ り変 化す る鉄損
電 機入 力 に は無 負 荷 電 流 に よ る電 機 子 銅損,ブ
ラシ電 気 損が 含 まれ るか ら,こ れ らを差 引い
た値 を曲 線 につ くる必 要 が あ る。 図2・56は,負
荷 に よ り変化 す る鉄 損 を考 え るた め の 曲線 で,さ きに得 た鉄 損 曲線 にお い
て,定 格電 圧Erに
お け る鉄損 は 無負 荷 鉄 損 がPi0で,発
機 子 の 抵 抗 降下raIaが
あ るか ら,Er+raIaに
電 機 と して負 荷 を か けた場 合 は電
お け る鉄 損PiGを
同 様 に,電 動 機 として 運 転 した場 合 は,起 電 力 はEr-raIaと piMを
負 荷時 の 鉄 損 とみ る。 な るか ら,こ の とき の鉄 損
負荷 時 の鉄 損 と み る。
(c) 効率 計 算 例 例 と して,2kW,100V,4
極,1500rpmの
分 巻発 電 機 の効 率 計算
例*を 示す 。 図2・57は,供
試 機 が 定格 出力 で運 転 され た 場 合 の略 図 で あ る。
① 巻 線 抵 抗(い
ず れ も75℃
電 機 子ra=O.348〔 磁rf=58.3〔 ② 摩 擦 損+風
に お い て)
Ω〕,補 極 巻 線ri=0.154〔
Ω 〕,分 巻 界
Ω) 損=85〔W〕,定
格 出 力 時 の 起 電 力E0=100+
0.348×21.7=107.55〔V〕,E0に
お け る 鉄 損=77〔W〕
③ 界 磁 巻 線 損 失Pf=If2rf=1.72×58.3=168.5〔W〕 ④ 電 機 子 お よび 補 極 巻 線 抵 抗 損
Pa=(0.348+0.154)×21.72=236.4(W)
⑤ ブ ラ シ 電 気 損Pb=2×1×21.7=43.4〔W〕,1 ブ ラ シ の 電 位 降 下1Vで,炭
は 一つ の
図2・57
効 率計 算
素 お よ び 黒 鉛 ブ ラ シ で は,電
機 子 電 流 の 値 に か か わ ら ず1Vと
す る。
⑥ 漂 遊 負 荷 損 は測定 困難 で あ るか ら,定 格 出力 の とき,そ の1%(補 機 では0.5%)を
2kW,100V,1500 rpm分 巻 発電 機 の
償 巻 線つ きの直 流
漂遊 負 荷 損 とみ なす 。 な お,こ の 損失 は 負荷 の 2乗 で 変 わ る もの とみ
なす 。 よ って,本 機 で は2000Wの1%で
あ る20Wを
漂遊 負 荷損 とす る。
⑦ 全 損 失 定 格 出力 時 の全 損 失 P は, P=85+77+168.5+236.4+43.4+20=630.3〔W〕 ⑧ 効 率 η よ って,定 格 出力 時 の効 率 は,
(5) 温 度試 験
直 流 機 の温 度 上昇 限 度 は絶 縁 の 種 類 に応 じ,表2・3の
* 中村 辰 二 「電 気機 械 試 験 法」p .45オ
ーム 社
よ うにJEC-54
表2・3
*全
閉形の場合は
,こ の 値 よ り5℃
直 流機 の 温度 上 昇 限度 〔 ℃〕
高 く定 め る。
(1965)で 決 め られ てい る。 温 度 試 験 は供 試 機 に定 格 負 荷 をか け,巻 線,鉄
心 そ の他 の部 分の 温 度上 昇 が表2・3の
値
を 超 え な い こ とを調 べ る試 験 で,負 荷 を か け る方 法 に は実 負 荷 と返 還 負荷 法 とが あ るが,一 般 に後 者 が 用 い られ る。 これ は試 験 の た めの 電力 量 が少 くて すむ か らで あ る。 図2・58は
返還 負 荷 法 の一 つ の方 式 で,Kapp法
といわ れ る回 路 図 で あ る。
返還 負 荷 法 は ほ ぼ 同 じ定 格 の 機械 が 2 台 用意 で き る場合 に適 用 で き る方 法 で, 試験 のた め の電 源 容 量 は両 機 の損 失 が供 給 で き るだ けあ れ ば足 り る点 に大 き な特 長 が あ る。 図2・58に
お いて,G は供 試発 電 機,
M は ほぼ 同 じ定 格 の 補助 機 で,電 動 機 と
図2・58
Kappの
返還負荷法
して運 転 す る。 G と M は直 結す る。 この回 路 を用 いて G に負 荷 をか け るには,次 の よS うに 操作 す る。 は じめ に M を電 動 機 と して始 動 し,速 度 を定 格速 度 ま で上 げ る。 次 に,Rfgを G の起 電 力 を高 め,M 列 に結 ぶ。Rfgを ま でRfgを
調整 して
の電 圧(定 格電 圧)と 等 し くな った ことを電 圧計 で 確 認 し,両 機 を 並
さ らに 減 らす とIgが M へ 向か って流 れ るか ら,こ の値 が定 格 電 流 に な る
調 整す る。 速度 が 変化 した ら,Rfmの
継 続 して温 度 上 昇 を調 べ る。
調 整 に よ り定 格 速 度 と して,こ
の状 態 を
Kapp法
で は,両 機 の 損失 分 を供 給す る電源 が 必 要 で あ るが,M
お よび G の結 合 軸 に第
三 の電 動 機(両 機 の 損失 を供給 で き る容 量 の もの)を 結 合 し,こ れに よ り両 機 を定 格速 度 で 駆 動 し,Rfm,Rfgの
調 整 に よ り,G を 発電 機 と して,定 格電 圧,定 格電 流 の状 態 を つ くっ
て も よい。 この方 法 をHopkinson法 (6) 絶 縁 耐 力試 験
と い う。
直流 機 の 絶縁 耐
表2・4 一般直流機絶縁耐力試験電圧
力試 験 は,正 弦波 交 流 電 圧 を 1分 間加 え て 行 う。 一 般直 流 機 の試 験 電 圧 は,そ の 機械 の定 格 出力,定
格電 圧 E に 応 じて,表2・4の
よ うに決 め られて い る。 〔2〕 直 流 電 動 機 の 試 験 直 流 電 動機 に お いて も抵 抗 測定,飽 和 曲 線 測 定,損 失 測 定 が 行 わ れ るが,こ れ らは 発 電 機 の場 合 と同 様 に行 えば よい。 電 動 機特 有 の試 験 は負 荷 に対 す る速度 特 性 お よび トル ク の測 定 で あ る。 速度 特性 は実 負荷 また は返 還 負 荷法 で 測 れ る。 トル クは動 力 計 を負 荷 に し て運 転 で き れ ば直 接測 れ るが,入 力 か らそ の とき の損 失 を 引 いて 出 力 を計 算 し て,次 の よ う に して求 めて もよ い。 例 え ば,直 流 分巻 電 動 機 にお いて, 定 格 電圧Vr〔V〕,電
源 か らの流入 電 流Il〔A〕,無
損Pi′(無 負 荷 鉄 損Pi0はpnに
負 荷 損Pn,負
含 まれ る),電 機 子 銅 損Pc,励
荷 に よ って変 化 す る鉄
磁 損Pf,ブ
ラシ電 気 損Pb
(それ ぞ れ 〔 W 〕の 単位 で)な ら,出 力P0〔W〕 は, P0=VrIl-(Pn+Pi′+Pc+Pf+Pb)〔W〕 この 出力 にお け る漂 遊 負 荷 損 をPs〔W〕,速
度 をn〔rpm〕
とすれ ば,ト ル ク T は,
と して 求 め られ る。 温 度 試験,絶 縁 耐 力試 験 等 も,発 電機 で述 べた こ とと 同 じで あ る。
2・6
直 流発 電機 の並 列運 転
2台 以上 の 発電 機 を 同一 母 線 に接 続 して,各 機 の 出力 を母 線 を 通 して 負荷 へ 送 る状 態 を並 列 運 転 とい う。 〔1〕 分 巻 発 電 機 の 並 列 運 転 図2・59は,発
電 機 2台 の 並 列 運転 の 略 図 で,は じめにG1の
給 して い る とす る。 次 に,G2を
並 列 に結 ぶ た め には,G2が
み 運転 され負 荷 に電 力 を供
生 ず る起電 力 の 極性 は も ちろ ん,
そ の値 も母線 側 の それ らと 一 致 した ことを 確 認 した 後 で な けれ ばS2を 投 入 す る ことは 危険 で あ る。 電圧 値 を一 致 させ るに は,界 磁 電 流 の調 整 をす れ ば よ い。
(b) 並列投入時の両機の外 部特性
(a) 並 列 運転 略 図 図2・59
分 巻 発 電機 の並 列 運転(電 圧Vr一
並 列 に投 入 後 に負 荷 分 担 させ るに は,G2の
(c) G1がI1を,G2がI2を 分 担 す る と きの外 部 特 性 定)
界 磁 電 流 を さ らに 増す 必 要 が あ る。 し か し,
負荷 が 一 定 な らG2が 負 荷 を分 担 したた めにG1の 負 荷 は軽 くな り,母 線電 圧 が 高 ま る。 これ を一 定 に保 つ にはG2の 界 磁電 流 を 増す 操 作 と 同時 にG1の 界 磁 電流 を減 らさ な けれ ば な らな い。 図2・59(b)は,G2が
並 列 に 結 ばれ た 直後 の両 機 の外 部特 性 曲線 で,G1は
を供 給 し,端 子 電 圧 は定 格 値Vrと
す る。G2は
電 圧 はVrに
あ る。 同 図(c)は,G2の
励 磁 を増 し(外 部 特性 曲 線 を上 げ る),G1の
性 を下 げ る),電 圧Vr一
定 お よび負 荷 電 流 も一 定 に保 ち,分 担電 流I1お
態 で あ る。 さ らに 励磁 の 調 整 を進 め れ ば,I1=0,I2=ILと
既 に 電流IL
な って い るが 分担 電 流 は零 で 励 磁 を減 ら し(外 部 特 よ びI2と
した状
す るこ と もで き る。 この 間負 荷 の
電圧,電 流 に何 等影 響 を 与 え ない 。 並列 運 転 を行 うG1,G2の
容 量 が異 な る とき は,横 軸 の電 流 を各 機 の定 格 電 流 を100と す
る % 目盛 に し考 察す れ ば よ い。 ま た,%
目盛 で示 した と きの外 部 特 性 曲線 の形 が 相似 して
い る ことが 望 ま し い。す な わ ち,両 機 の電 圧 変 動率 が ほ ぼ等 しい こ とが望 ま しい 。 これ は 負
荷分担 の制御が最 も容易に行えるか らである。 〔2〕 複巻 発 電機 の並 列運 転 複巻 発 電機 で外 部特 性 曲線 が 負荷 増 加 と と もに端 子電 圧 が 上 昇す る特性 の場 合 は,負 荷 分 担 が 安定 に継 続 で き な い。 あ る負荷 分 担 を きめ て も何 らか の 原 因 で,分 担 電 流 の変 化 が 生 ず れ ば,そ の変 化 は止 らず,つ い に一 方 は過 負 荷,一 方 は電 動 機 の状 態 に な る。 分巻 発 電 機 の並 列 運転 では,こ の よ うな不 安定 はな く,負 荷分 担 に 変化 が 生 じて も,そ の 変 化 は元 へ もど され る。 これ は分 巻 機 の外 部 の 性が 負 荷電 流 の 増加 に伴 い低 下 す る特 性 を も って い るか らで あ る。 複巻 機の 並列 運 転 に お い て 負 荷分 担 を 安定 させ るに は,図2・60の
よ う に,均 圧 母 線(equalizing
bus‐bar)Bで両 機 の直 巻 界 磁 コイ ルを 並列 に結 べば よ い。 この よ うにす れ ば,一 方 の直 巻 界磁 の 電 流が 図2・60複
増 加 を は じめ れば 他方 も増 加 す る ので,分 担 電 流が
巻 発 電 機 の並 列 運 転
限 りな く移 動す る不 安定 は除 か れ,分 巻界 磁 電 流 の制 御 に よ って任 意 の負 荷 分 担 を させ る こ とが で き る。
2・7特
殊構 造 の直 流 機
こ こで,特 殊構 造 の 直流 機 の例 につ いて 簡単 に述 べ る。 〔1〕 単 極 発 電 機 普 通 の直 流 発電 機 は電 機子 コ イル に交 流 起電 力 を つ くり,こ れ を 整流 子 と ブ ラシ の作用 に よ って 直流 に して取 り出 す の であ るが,単 極(uni-polar)発
電 機 は 直 流起 電 力 をつ くり,こ
れ をそ の ま ま ブ ラシ を通 して取 り出す ので,整 流 の必 要 が な い直 流 発電 機 で あ る。 図2・61は
単 極発 電 機 の 二つ の 形 式 で,図(a)を
並 軸 形,図(b)を
放 射形 とい う。 しか
し,図(b)は
歴 史 に名 が あ るだ けで,現 在 で も造 られ るの は 図(a)の 形 で あ る。 全 体 は 円 筒
形 を して いて,電 機 子 導 体 も銅 の 円筒 で,こ れが 外 力 で駆 動 され る。界 磁 巻 線 は 固定 側 に あ り,図 の例 では 界磁 の磁 束 は 軸 中心 か ら半 径 方 向 に放 射状 に 生 ず る。 この磁 束 を 銅 の 円筒 が 回転 す ると きは に切 って 起電 力 を生 ず る。 起 電 力 は図 の よ うにお い た +,− の ブ ラシか ら取 り出す 。 円筒 の周辺 速 度 を υ〔m/s〕,軸方 向 の長 さをl〔m〕,円 筒 の 周 辺の 位 置 での 磁 束密 度 をB 〔T〕とすれ ば,+,−
間 に生 ず る起電 力 はe=Blυ
出す だ けで,普 通形 の よ うに,多
〔V〕で,単 極 機 では 単 一 のBlυ
くの導体 に生 ず るBlυ
を取 り
を直列 に加 え る ことが で きな いの
(a)並軸 形
(b)放射 形 図2・61単
極発 電 機
で,低 電圧 の発 電機 しか つ くれ な い。 例 え ば,B=1(T〕,l=0.5〔m〕,υ=50〔m/s〕
とした 場 合,e=25〔V〕
げ,B を高 め るよ うに して も単 極 機 で得 られ る電 圧 は50Vく 電 流 が 得 られ10万
と な る。 速度 を 上
らい とい われ る。 し か し,大
A 以上 と い う例 もあ る。
原理 上,完 全 な直 流 電圧 が 得 られ るはず であ るが,実 際 は ブ ラシ を通 して取 り出す の で, 脈動 が 入 る こ と もあ る。 〔2〕 直 流 電 気 動 力 計 直 流 機 形電 気動 力 計 は,図2・62の
よ うに,普 通 の直 流機 と似 て い るが,異 る のは,固 定
子 が あ る角 度 だ け 自 由に 回転 で き る よ うに 二 重 の 軸受 に な って い る。 固定 子 の横 に は 腕 が 出 して あ り,軸 中心 か らl〔m〕 の所 に は か りが おか れ る。 直 流機 が 発 電 機 と して 動作 す る場 合 は, 固 定 子 は電 機 子 の 回転 と同方 向に,電 動 機 と して 動作 す る場合 は,反 対 の方 向 に力 を うけ るの で,こ の 力G〔kg〕
をは か りで 読 図2・62直
流 霞 気 動力 計
み,腕 の 長 さ lとの 積 を とれ ば,ト ル クを 知 る こ とが で き,一 方 回 転速 度n〔rpm〕 Pm=9.8×Gl×
2πn / 60
か らPmが
求 め ら れ,こ
を 測れ ば,そ の と きの動 力Pmは,
〔W〕
の こ と か ら動 力 計(dynamometer)と
よ ば れ る。
練
習
問
題
2.
1.ブ ラ シを無 負 荷 中性帯 に おい た補 極 つ き和 動 複巻 発電 機 が あ り,こ れ を複 巻電 動 機 と し て使 い たい 。 内部 接続 を変 え な い と して,こ の 電 動 機 は 和 動,差 動 の い ずれ に な る か。 補 極 の極 性 は正 しいか 。 回転 方 向 は発 電 機 の と きと同 じ,ま た は反 対 の いず れ にす べ き か。 2.補 極 つ き の和 動 内分 巻複 巻 発電 機 が あ る。 この発 電 機 を停 め て分 巻 界 磁 を 逆 に つ な ぎ,元 と反 対 の方 向 に回転 させ た場 合,定 格 電 圧 ま で 自己励 磁 に よ って電 圧 が 上昇 した 。 (a)発
電 機 端子 の 極性 は前 と同 じか 。
(b)元
の よ うに和 動複 巻 に な るか。
(c)補
極 の 極性 は 正 し い とい え るか 。
3.200V,1500rpmの
直流 分 巻 発電 機 が あ る。 電 機子 巻 線 の抵 抗 は0.1Ω,ブ
触電 圧 降 下 は電 流 に関 らず正 負 合 計 で2Vと 発電 機 と して200V,1500rpm,電
ラ シの接
す る。
機 子電 流100Aの
状 態 が 得 られ るよ うに界 磁 回路
を 調 整 し,界 磁 を この ま ま と して電 動 機 と して運 転 し,電 機子 の電圧200V,電
流100A
に した場 合,回 転 速 度は い く らにな るか 。 た だ し,電 機 子 反作 用 を無 視 す る。 4.10kW,200Vの
直流 分巻 電 動 機 が あ る。 電 機 子抵 抗 は0.18Ω,界
100Ω で あ る。200V無
負 荷 で,回 転 速 度1200rpm,電
定 格 出力 時 に電 源 か ら取 り入れ る電 流 は60Aで 磁 束 が,無
負 荷時 に比 べ て4%減
機子 電 流3.2Aで
磁 回路 の 抵 抗 は あ る200V,
あ り,電 機 子反 作 用 のた め に ギ ャ ップ
少 す る とい う。 定 格 出力 時 の速 度 はい くらか 。 た だ
し,ブ ラシ の接触 電 圧 降下 を無 視 す る。 5.220V,80Aの
と き750rpmと
コ イル の抵 抗 は0.10Ω して,220V,20Aの
な る直巻 電 動機 が あ る。 電 機子 抵 抗 は0.14Ω,界
で あ る。電 流20Aの
とき の磁束 が80Aの40%に
磁
な る もの と
と き の回転 速 度 を 求 め よ。
6.定 格 値 が それ ぞ れ37kW,220V,190A,600rpmの
直 巻電 動 機 が あ る。定 格 運転 時
の損 失 は入 力 に対 す る % で表 す と,電 機 子 およ び 直 巻 界 磁 の 銅 損 が それ ぞれ3.7%お よび3.2%,機
械 損 と鉄 損 の和 は4.6%,電
機子 反 作 用 を無 視 し,主 磁束 は電 機 子 電 流
に比 例 し,ま た機 械 損 と鉄 損 の和 は速 度 に比 例す る もの とす る。220V,95Aで
運転す
ると きの 回転 速 度 お よび 出力 は そ れぞ れ い くらに な るか 。 7.直 流 分 巻電 動 機 と直 流 直巻 電 動 機が 全 負 荷 で 運 転 してい ると きい ずれ も電 流 が50A, 回転 速 度 が1000rpmで
あ る とす る。 負 荷 トル クが半 減 した場 合,電 流 お よび 回転 速 度
は そ れ ぞれ お よ そ い くらに な るか 。 8.一 定 トル ク の負荷 を もつ直 流分 巻 電 動機 が あ る。 電 源電 圧E1〔V〕
の と き,電 機子 電
流 はI1〔A〕,ま た 回転 速 度 はN1〔rpm〕 で あ った 。 い ま,電 源 電 圧 をE2〔V〕
に変 化 した とす れ ば,電 機 子 電 流I2〔A〕 お よび 回転 速 度
N2〔rpm〕 はい くらに な るか。 た だ し,電 機 子 と直 列 に あ る全 内 部抵 抗 をR〔 Ω〕と し, 磁 気 飽 和 お よび 電 機子 反 作 用 は無 視 す る もの とす る。 9.10kW,200Vの
直 流分 巻 電 動機 が あ り,定 格 出 力時 の 電 機子 電 流 は60Aで
の電 動 機 の始 動 時 の電 機 子電 流 の最 大 を定 格 出力時 の180%,最
小100%の
あ る。 こ 電 流変 化 で
始 動 で きる よ うに 始 動抵 抗 を きめ た い。抵 抗 器 の 区分 段 数 と,各 区分 内の抵 抗 値 を何 Ω とす れ ば よ い か。 た だ し,電 機子 回路 の抵 抗 を0.16Ω 10.ワ
とす る。
ー ドレオ ナ ー ド装 置が あ って,一 定 トル クの 負荷 を運転 し てい る。 端子 電 圧210V,
電 流 は100A,回
転 速度 は1000rpmで
あ る。 この とき発 電 機 の界 磁 磁 束を75%に
減
じる と電 動 機 の 回転 速度 はい く らに な るか を計 算 せ よ。 た だ し,発 電機 お よび電 動 機 の 内 部抵 抗 は い ずれ も0.1Ω,電
動 機 の界 磁電 流 は 一定 と し,無 負 荷 損 お よび 接続 導 体 の
損失 は無 視 す る もの とす る。 11.可
変速 度 運 転 を す る他 励直 流電 動 機 A と Bが あ る。 速 度 範 囲 は最 高1200rpm,最
400rpmで
低
あ り,A は 全速 度 範囲 で定 出力 を要 す る負荷 に,B は常 に定 トル クを要 す る
負 荷 に結 合 され て い る。 すべ て の損 失 お よび 電機 子 反作 用 を無 視 す る もの と し,下 記 に 答 え よ。 界
磁 制
御
の 堀 合
電
(1)1200rpmに
お い て両 機 とも電 機 子
電 流50Aで 400rpmで
出力 が等 しか った。 は A 機 お よ び B 機 の電 機
子 電 流Iaお
圧 制
(1)左
と同文
(2)左
と同 文
御
の 場 合
よ びIbは それ ぞ れ い く ら
か。 (2)400rpmに
お いて 両 機 と も電 機子 電
流50Aで 出力 が 等 しか った 。1200rpm にお い てIaお よ びIbは それ ぞ れ い く らか 。
12.2
台 の同 じの 性 の直 流機 が あ り,両 機 と も定 格 電 圧230V,定
格 電 流 は17A,励
磁方
式 は 他励 で あ る。 この一方 を発 電機 とし,他 方 を電 動 機 と し ワー ドレオ ナー ド系 をつ く った 。発 電 機 は定 速 度1200rpmで 抵 抗 は0.48Ω,ま
同 期電 動 機 に よ り駆 動 され る。各 機 の電 機 子 回路 の
た両 機 の磁 化 曲線 は1200rpmに
お い て 問図2・ 1の 形 を して い る。
電 機 子 反作 用 を無 視 して, (1)電
動 機 の 界磁 電 流 を0.9A,電
電 流 を17Aそ
機子
れ ぞれ 一定 に保 つ と き,
電 動 機 の速 度 を300∼1200rpmの
範
囲 に変 え る ため の発 電 機 の界 磁電 流 の 最 小 値 お よび 最 大値 を求 めよ。 (2)(1)の
条 件 で,最 低 お よび最 高 速 度
に おい て の速 度変 動 率 はそ れ ぞれ 何% か。 (3)発
13.定
電 機 の界 磁 を1.1Aま
で 増 し,電 問 図2・1
動 機 の 界磁 は0.2Aま
で 減 らす と し
て,電 機 子 電 流17Aに
お い て得 られ る最 高 速度 は い く らか 。
格 出力5kW,定
格 電 圧100V,定
格 速度1500rpmの
他 励 直流 発 電機 があ る。 こ
の発 電 機 を定 格 状 態 で運 転 して い る と き,界 磁 電流 お よび負 荷 の抵抗 値 を変 え な い で, 回 転 速度 を1200rpmに
した場 合,発 電 機 の端 子 電 圧 お よび 負荷 電 流 は それ ぞれ い くら
にな るか 。 た だ し,電 機 子 回路 の抵 抗 はブ ラ シの抵 抗 を 含 め0.15Ω
と し,電 機 子反 作 用 の影 響
を無 視 す る もの とす る。 14.電
機 子 回 路 の抵 抗0.40Ω,界
格 電 圧110Vを
磁 回路 の抵 抗55Ω
の直 流 分 巻電 動機 があ る。 これ に定
加 え た と き始 動 電流 はい く らにな る か。 また,始 動電 流 を 定 格 電 流 の
1.5倍 に制 限す るに は電機 子 回 路 にい くらの始 動抵 抗 を入 れれ ば よい か。 ただ し,定 格 状 態 で 運転 して い る と きの逆 起電 力 を100Vと 15.直
流 分 巻 電動 機 が あ る。端 子 電 圧 が215V,電
が0.1Ω,回
転 速度 が1500rpmで
す る。 機 子電 流 が50A,電
機 子 回路 の抵 抗
あ る と き,発 生 トル ク 〔kg・m〕 はい くらか 。
また,界 磁 電 流 を変 えず に負 荷が 減少 して 電 機子 電 流 が25Aに
な った と き,回 転 速
度 〔rpm〕お よび発 生 トル ク 〔kg・m〕 は い くらにな るか。 16.定
格 出力Pr〔kW〕
転 速 度 をnr〔rpm)と τj=2.741×
の直 流電 動 機 の電 機 子 の はず み 車効 果 をGD2〔kg・m2〕,定 す る とき,式(2・49)の GD×nr2
格回
加 速定 数 τjは,
×10-6(s〕
/ Pr
で表 され る こ とを 証明 せ よ。 た だ し,は ず み 車効 果GD2は
実際 面 で し ば し ば 用 い ら〔A〕
れ,慣
17.一
性 モ ー メ ン トjm=
GD2 /4
で あ る。
定 励 磁 の他 励 直 流 電 動機 が あ る。 電機 子 が 静止 して い る とき に,直 流 電 圧100Vを
電 機 子端 子 へ 加 え る と き,電 機 子 の角 速 度 は,
で表 され る とい う。電 機 子 の抵 抗 を1.25Ω
一 定,ま た ブ ラシ の接触 抵 抗 を無 視 す る と
して, (1)電
機 子 の過 渡 電流ia〔A〕 を 表す 式 をつ くれ。
(2)電
機子 軸 の慣性 モ ーメ ン トをJ〔kg・ ㎡ 〕 とす る とき,J
(3)電
機 子 が定 常 速 度 にな った後 に,J に蓄 え られ る回 転 エ ネ ルギ ー 〔J〕を求 め よ。
(4)始
動 電流 を制 限 す るた め に,電 機子 に 直列 に一 定 抵 抗Rs=3.75〔
の値 はい く らか 。
き,始 動 過渡 電 流ia′,お よび 角 速度 ω′,〔rad/s〕 を 表す 式 を つ くれ 。
Ω〕を 加 えた と
第 3章
変
圧
器
変 圧器 は,送 電 網,配 電 網 の中 の至 る所 に あ って電 力 系統 の運用 に重 要 な役 割 を果 して い る。 主 要 送電 線 路 を見 ると,発 電 機 に よ って 得 られ た 三相 電 圧 は3∼20kV(線 が,こ れ を変 圧 器 を通 して60∼500kVに
間 電 圧)で あ る
昇 圧 して,送 電 線 路 の電 圧 にす る。 この よ うに 高
電 圧 に す る こ とに よ り,同 じ送電 電 力 に対 して送電 線 の電 流 を減 らす ことが で き,線 路用 導 体 お よび送 電 損 失 を 減少 させ る。 受 電 端 で は再 び 変 圧 器 に よ り60∼30kVに
下 げ,需 要 地域 に近 い変 電 所 へ 送 る。 さ らに,
第 二,第 三 の変 電 所 を経 る ご とに電 圧 を下 げ,最 終段 階 で は200Vの
動 力 回路 また は100V
の電 燈 回路 と な って 需 要家 に至 る。 変 圧 器 の発 達 は 送 電 線路 の発 達 を促 し,一 方 には 線路 を拡 充 させ るた め に信 頼 され る変圧 器が 要 求 され る とい うよ うに,電 力 系 統 の中 に変 圧 器 は欠 か せ な い。 3・1変
圧 器 の基 本性 質
〔1〕 主 要 な用 語 図3・1は,二
巻 線 変 圧 器 の略 図で,電 源 に結 ばれ る側 を一 次(primary),負
側 を二 次(secondary)と る と き,n1/n2=aを a>1は
い う。 一 次 お よび二 次 コイ ルの巻 数 をそ れ ぞ れn1お 巻 数 比(turn
電 圧 を 下 げ る 変 圧 器,aV2の
場 合)
書 く。
大 文 字 Dは 高 電圧 側 が△ 結 線,小 文 字 dは低 電 圧 側 が△ 結 線 で あ り,0 は角 変 位 が 0゚であ る こと を示 す 。 Dd0結
線 にお け る一 次,二
次 の 電 圧,電
流 の 大 き さの 関 係 は,図
る。 そ うして,変 圧 器 群 と して の容 量 √3V1I1=t√3V2I2は
中 に記 入 した よ う に な
変 圧 器 1台 の容 量 の 3倍 に な
る。 (2)△-〓
結線
図3・19(a)は
に得 られ る電圧V2はV1/a×
√3と
量 の 3倍 とな る こと は,△-△
この結 線 図 を示 す もの で,巻 数 比 が aの 場 合,二 次 な る。 群 容 量 は √3V1I1=√3V2I2で,各
変 圧 器 の容
結線
の場 合 と同 じで あ る。 同 図(b)は 一 次 お よび 二 次電 圧の ベ ク トル 図で, この 結 線 で は 二 次電 圧 が一 次 電 圧 よ り30゚位 相 が進 む。 この こと を角 変 位30゚と
(a)結
線
図
い った が,JEC-168(1966)
の規 格 か ら,つ ぎの よ うな表 し方 が 定 め られ た。 角 変 位 は,電 圧 の 高 い ほ うの巻 線 の電 圧 ベ ク トル を時 計 の分 針(長 針) と み な し,電 圧 の低 い ほ うの巻 線 の
(c)角変 位 の 判 定 (b)ベク トル 図 図3・19△-〓
電 圧 ベ ク トル を時 針(短 針)と み な した 場 合,長 針 が12時
結 線(V1>v2の
場 合)
の位 置 に な る よ うに した場 合 の短
針 の 示 す 数 字 を角 変 位 時 数 と い う。 同 図(c)の よ うに時 計 を 画 い て,一 次 の U と中点 お よび 二 次 の uと 中点 とを結 ぶ電 圧 ベ ク トル を そ れぞ れ 時 計 の長 針 お よ び短 針 に合 ね せ,長 針 を12 時 に す る と短 針 は11を 指 す ので,角 され る。
変 位 時 数 は11,よ
って この結 線 の略 号 はDy11と
表
(3)〓-△
結線
図3・16が
〓-△ 結 線 で,こ の結 線 で は一 次 電圧V1,巻
き,二 次 に 得 られ る 三相 電圧V2はV1/(√3a)で ル 図 か ら 1(時)で あ り,略 号 ではYd1と (4)V-V結
線
数 比 aの と
あ る。 角変 位 時 数 は,同 図(b)の ベ ク ト
な る。
この 結線 は単 に V結 線 と もい い,△-△
結 線 の 一 台が 故 障 した場 合,
十 分 な 空 間 が な い所 で 二 台 だ けで 三相 変 圧 を 行 う場 合 に用 い られ る。 結 線 図 お よび ベ ク トル 図 を 図3・20に
示 す 。 この結 線 で は,ベ ク トル 図 で わか る よ うに 角変 位 は 0で あ る。
(a)結
線
(b)ベク トル 図
図 図3・20
V
ま た,変 圧 器 巻 線,外 部線 路 と もに 同 じ電 流,電 =√3V2I2と
な るの に 対 し,変
で は な く,元
の
線
圧 と な るの で,負 荷 の 容 量が √3V1I1
圧器 容 量 の 和 は2V1I1と
量/(変 圧 器 2台 の容 量)=√3/2=0.866と す な わ ち,△-△
結
な り,利 用 率が 悪 くな り,群 容
な る。
結 線 の一 台 が 故 障 して V結 線 に し た場 合 は,群
√3VI/=l/√3に
容 量 は 元 の2/3に な る の
減 る。
3VI
〔3〕 ス コ ッ ト(Scott)結 線 ス コ ッ ト結 線 は,三 相 電圧 か ら二相 電 圧 を得 るた め に用 い られ る方 式 で,図3・21の
よう
に 二 台 の変 圧器 X,Y を用 い る。 三相 回路 で は容 量 の大 きい 単 相負 荷 が 2線 の間 に か か る と 著 しい不 平 衡 を生 じ好 ま し くない 。 ス コ ッ ト結線 にす る と,二 次二 相 側 の 各相 に等 しい単 相 負 荷 をか け た場 合,三 相 側 は平 衡 状態 と な るの で,交 流 電 気 鉄 道用 変 電 所 や 大容 量 の 電気 炉 を設 置す る所 な ど に この結 線 が 用 い られ る。
(a)結
線
(b)ベク トル 図
図 図3・21
ス コ ッ ト結 線
図3・21の
結 線 図 にお い て,UW間
に結 ぶ 変 圧 器 X を主 座 変 圧器,VM間
Y を T座 変圧 器 とい う。 二次 に電 圧 値 の等 しい 二 相電 圧 を 得 るた め には,X に 対 し,Y の巻 数比 を0.866a:1と
に結 ぶ変 圧 器 の巻 数比a:1
し な けれ ば な らな い。
電 圧 ベ ク トル 図 は同 図(b)の よ うに な り,三 相 の 線 間電 圧Vuv,Vvw,Vwuに 圧 器 の起 電 力EX,EYお EX
Vuv=
よびEx,Eyは -EY
/2
つ ぎの 関係 に な る。 EX/
Vvw=EY+
,
対 し,各 変
VWU=-EX
2,
そ うし て,二 次 起 電 力 は, EX=
EX
EY /O.866a
, Ey=
/a
と な り,│EX│=│Ey│,Ey=-jExで 一次 22の
,二
二 相 電 圧 とな る。
次 の 電 流 関 係 は,図3・
よ う に な る。
負 荷 二 つ の 相 と も 等 し く,力 遅 相 でcosψ Iyが
(3・30)
率は
と す る と,二 次 電 流Ix,
き ま り,一
次 電 流 は,
IX=Ix/a IY=Iy/(0.866a)
}
(3・31)
図3・22ス
そ う して,線 路 側 の 電 流 は, Iu=IX-
IY / 2,
IV=IY,
IW=-IX+
コ ッ ト結 線 の 電 流 ベ ク トル 図
IY/ 2
(3・32)
とな って,こ れ らは対 称 三相 電 流 で あ る。 〔4〕 並 列 結 線 (1)単
相 変圧 器 の並 列 結線
図3・23(a)の
よ うに,二 台 の 変圧 器A,Bの
一次 およ
び 二 次 をそ れ ぞ れ並 列 に結 ん で,一 つ の負 荷 に電 力 を供 給 す る状 態 を並 列 結線(pallarel con nection)と
い う。
この場 合,A
と Bは極 性 が 等 し い こ との ほ か に,
①
一次 お よび 二 次定 格 電 圧 が それ ぞ れ等 し い。
②
各変 圧 器 の イ ンピー ダ ンス電 圧 が 等 しい。
③
イ ン ピー ダ ンスの位 相 角 が等 し い。
こ とが,2 台 の変 圧 器 容 量 の和 に 等 し い負 荷 を か け得 るた め の条 件 で あ る。
(a)結
線 図
(b)等 図3・23並
列
結
価 回路
線
な お,A と Bは容 量 は異 な って もよ く,上 記 の 条 件が 整 えば 負 荷 分担 が 容 量 の 比 に な る。 ① は,並 列 に した ときに 両 変 圧器 間 を循 環 す る電 流 を生 じさせ な いた め の条 件 で あ る。 例 え ば,変 圧 器 に タ ップが あ って,A,B
が異 な った タ ップを 用 い た と し,タ
ップ電 圧 の差 が,
両 変 圧 器 の イ ンピー ダ ンス電 圧 の 和 に等 し くな る と,循 環 電 流 だ けで定 格 電 流 に 達 す る の で,こ の よ うな こ とは さ け な けれ ば な らな い。 ② は,負
荷 分 担 を 容 量 の 比 に 行 わ せ る た め に 必 要 で,並
よ う に な り,IA,IBの
比 はIA/IB=zB/zAと
る た め に はIArzA=IBrzB,す ③ は,IA,IBの な る が,等
担 し たkVAの (2)三
な る か ら,IA,IBが
同 時 に 定 格 電 流IAr,IBrと
な
な わ ち イ ン ピー ダ ンス 電 圧 が 等 し くな け れ ば な ら な い 。
位 相 を 等 し くす るた め に 必 要 で,位
し くな い と{│IA│+│IB│}>│IL│と
比 に な っ て い て,IA,IBが
列 時 の 等 価 回 路 は 図3・23(b)の
相 が 等 し け れ ば,│IA│+│IB│=│IL│と
な っ て,③
の 条 件 が 整 い,負
同 時 に 定 格 電 流 に な っ た と き,ILはIA,IBの
和 が 負 荷 のkVAよ
り大 き く な る か ら,利
相 変 圧 器群 の並 列 結線
荷分 担 が 容 量 の 和 よ り小 さ く,分
用 率 が低 下す る。
三 相 変 圧 器 群 に お い て も,つ
ぎ の条 件 が 整 えば 並 列 に
結 ぶ こ と が で き る。
① 変 圧 比 が 等 しい。 ② 角 変 位 が等 し い。 ③ イ ン ピーダ ンス電 圧 〔%〕 が等 しい か,異 な って も差 異 が平 均 値 の1/10以 ④ 容 量 の 比 が1:3以
内で あ る 。
内で あ る。
な お,角 変 位 が 異 な って も,二 次 の 三つ の端 子 を 順 次づ らせ て 結 ぶ こ と に よ り,並 列 に で き る場 合 が あ る。 この こと に つ いて は,JEC-168(1966)付
3・3変
録 に詳 し く説 明 され て い る。
圧 器 の 構造
変 圧 器 の構 造 に つ い て は,1・4節
お よ び1・5節
で僅 か に ふ れ た だ けで あ るの で,こ こで
(a)単相 内 鉄 形 積 み 鉄心
(b)単 相 内鉄形巻鉄 心
(d)三相 内 鉄 形 積 み鉄 心
(c)単相 外 鉄 形 積 み鉄 心
(e)三相 外鉄 形 積 み 鉄 心 図3・24
変圧 器 の 鉄心 構 成 の 例
改 め て述 べ る。 〔1〕 鉄
心
変 圧 器 鉄心 の材 料 は,表1・1に
示 した材 料 の うち,方
素 鋼 帯 お よ び冷 間 圧 延 け い素 鋼 板(S14, S12等)が 鉄 心 の 形 の お も な例 は,図3・24の
向性 けい
用 い られ る。
よ うに別 け られ る。 鋼 板 を 組 み
立 て るには,予 め 短 冊形 に切 って,こ れ を 交 互に 積 み重 ねて,同 図 (a)ま た は(c)の 3・25の
よ う な形 につ くる方 法 と,額 縁 形 と い って,図
よ うに 隅 を斜 めに切 って,交
互 に 重 ね接 合 して 隙 間 を生 じ 図3・25
な い よ うに 組 む方 法 が あ る。 巻 鉄 心 は,図3・24(b)の
額 縁 形 鉄心 組 み
よ うに,長 尺 の鋼 帯 を,必 要 な厚 み に な る まで テ ー プを巻 くよ
う に巻 い て い く。 形 を 決 めた 後,接 着 固定 して か ら左 右 の足 の 中 央部 で切 断 して 上 下二 つ に 割 る。 予め 造 った コ イル を収 めた 後,鉄 心 を 元の 形 に す る。 切 断 の所 に隙 間 を生 じない よ う に,切 kVAま
断 面 は 完 全 な平 面 に な る よ うにす る。 こ の鉄心 は 配 電 用変 圧 器 に 広 く用 い られ,50 での 容 量 の ものがJISに
規 格 化 されて い る。
巻 鉄 心 の特 長 は,鋼 帯 の透 磁 率 が高 いの で励 磁電 流 が 少 な く,ま た 鉄損 が 少 な いの で効 率 が良 い こ とで あ る。JISC4304(1969)「 を取 り出 し,表3・2の それ の 約2/3,無
小形6kV油
入変 圧 器」 に示 され た 特 性 表 の一 部
ように作 って み ると,巻 鉄 心 変 圧器 の無 負 荷 損は 積 み鉄 心 変圧 器 の
負荷 電 流 は前 者 が 後者 の約1/2で あ る。 効 率 は前 者 が 僅 か に よい程 度 で あ
るが,配 電 用 の よ うに 台数 が 非 常 に多 く,か つ,連 続 的 に使 用 す る場 合 は,無 負 荷 損 の減少
表3・2巻
鉄 心,積 み 鉄心 変 圧 器 の 特性 比 較(50Hz,単
相 変圧 器)
の た め に節 約 で き る電 力 量 は 非常 に大 き い。 図3・26は,中
容 量 の外 鉄 形単 相 変圧
器 の 鉄心 脚 部 の断 面 で,コ イル を 円筒形 につ く り,鉄 心は,こ の 円筒 形 内面 に接 す る段形 と し,大 体 円 に近 い 断面 に な る よ うに,幾 通 りもの短 冊 幅 の 鋼板 を用 い て組 み立 て て あ る。 〔2〕 巻 (1)巻
線 線 構成
変 圧 器 の巻 線 には
銅線 が用 い られ,一 部 に アル ミニ ウ ム線
図3・26単
相変 圧 器 の 脚 部 断面
が用 い られ るこ とが あ る。巻 線 の 素 線 は,低 圧で は ホル マル被 覆 線 な どが 用 い られ る ことが あ るが,一 般 には厚 さ0.1mm前
後 の ク ラ フ ト紙 を巻 いた紙 巻 線 が用 い られ る。
導 線 の電 流 密 度 は,小 容量 器 で2∼3〔A/mm2〕,大
容 量器 で は3∼4〔A/mm2〕
に 選 ばれ,電
流 密 度 と,容 量 と電 圧 で き ま る定 格電 流 とか ら導線 断面 積 が きめ られ る。導 線 直 径 が3mm 位 ま では 丸線 が用 い られ るが,断 面 積が 大 き くなれ ば,長 方 形 断 面 の平 角線 を用 い,こ れ を 電 流 値 に応 じて 多数 並 列 に し て大 電 流用 の 巻線 にす る。 図3・27は,小
容 量,積 み鉄 心 内 鉄形 の 場合 の コイル 配 置 を示 し,図3・28は
形 の コ イル配 置を示 した もの であ る。 大 容 量 にな ると,図3・29の
中 容量 外 鉄
よ うな 円板 状 や,多 重 同
心巻 な どが用 い られ る。 多 数 の素 線 を並 列 に 束 ねて 大 電 流 用の コ イルを造 る場合 は,交 流 抵 抗 が 増 さな い よ うに 鉄
図3・27内
図3・28外
鉄 形(250kVA)の コイ ル配 置
鉄形 の コイル 配 置
(a)円 板 状巻 線 (b)多 重 同 心 巻線 図3・29大 容量 変 圧 器 の巻 線 例
心 に対す る素線 の 位 置 を交 代 させ なが ら巻 いて行 くよ うにす る。 これを 転位 とい う。 コ イル と鉄心 間,コ イル 相互 間 は,巻 線電 圧 に応 じた絶 縁 をす る こと は も ち ろ ん で あ る が,外 部 か ら侵 入 す る異 常 電圧 に対 し,巻 線 長 さに沿 う電 位分 布 が一 様 に な る よ うな工 夫 が 加 え られ る。 油入変 圧 器 では,コ
イルが 完成 した後,完 全 に 乾燥 し絶 縁油 が 入 れ られ,絶 縁 物 が空 気 に
触 れな い よ うに して 使用 され る。 乾 式変 圧 器で は,乾 燥 の後 ワニ ス処理 して,空 気 中 の水 分 お よび 塵 に よ って絶 縁耐 力 が低 下 しな い よ うに固定 した コイル にす る。 絶縁 に は,表1・3に (2)抵
示 した 種別 が あ り,種 別 に応 じ最高 温 度が お さえ られ る。
抗 と漏 れ リア ク タ ンス
積q〔 ㎡ 〕,長 さlmT(lmは r=ρ・
/q lmT 〔
巻 線 の 直流 抵 抗 は,導 線 材料 の抵 抗 率 ρ 〔 Ω・m〕,断 面
巻 数 1回の 平均 長 さ 〔 m〕,T は巻 数)か Ω〕
ら,
(3・33)
か ら計 算 さ れ る 。 交 流 抵 抗 は,転
位 な ど 導 線 配 置 に 工 夫 を 加 え て も,直
〔%〕 増 す も の と み な け れ ば な ら な い 。 ρ は,銅 115℃
に お い て 約0.0237×10-6で
漏 れ リア ク タ ン ス は,つ
線 の 場 合,75℃
流 抵 抗 よ り10∼20
に お い て 約0.021×10-6,
あ る。
ぎ の よ う に し て 計 算 さ れ る 。 図3・30は
単相 内鉄 形 変圧 器 の脚 の
部 分 を 示す もの で あ る。 い ま 二次 を短 絡 し,一 次 か らあ る電 圧 を加 え,一 次,二 次 の電 流 が それ ぞれi1お よびi2 に な って い る とす る。i1,i2の 向 きを〓,〓 で あ らわ せば, i2に よる起 磁 力 は下 向 きに,i1に よ る起 磁 力 は上 向 き に 働 き,鉄 心 の部 分 で は両 者が 相殺 され,磁 束 は な い と見 る ことが で きるが,両 コイル に厚 さ δ1およ び δ2があ るため に,図 の よう な台 形 の起 磁力 が残 り,漏 れ 磁 束 を生 ず る。 い ま,一 次,二 次 の 漏れ イ ンダ クタ ンス を それ ぞれl1 お よ びl2と す る と,図 の 状 態 で 蓄積 され て い る エ ネル ギ ー Qは,
(3・34) 図3・30短 と な る。 た だ し,a=巻
数 比,l=l1+a2l2=一
れ た 全 漏 れ イ ン ダ ク タ ンス で あ る。 よ っ て,Q 次 か ら み た 漏 れ リア ク タ ンス は,x=2πfl〔 図3・30の 図3・27で
を 知 れ ばl=2Q/il2と
はm=4で
に 亘 る 空 間 に 働 く と み られ る か ら,一
し て 求 め られ,ま
た一
Ω〕 と して求 め られ る。
台 形 の 起 磁 力 の 最 高 はi1×(T1/m)〔AT〕(m はm=2,図3・28で
絡 され た 内 鉄形 変 圧 器 の起 磁 力
次 に換 算 さ
は,一
あ る 。)で あ り,台
相 の 巻 線 が 分 割 され る数 で, 形 起 磁 力 は コ イ ル 高 さh〔m〕
次 コ イ ル の 外 周 か らx〔m〕
の と こ ろ で は,磁
界 の強
さは,
(3・35) で表 され る。 このHxは に厚 さdx〔m〕 Qx= で あ り,厚
鉄 心 を と りま く漏 れ磁 路(長 さlm1〔m〕)に 生 じて いて,x の位 置
を考 え,こ の微 小厚 さ 内に 蓄え られ るエ ネル ギ ーQxは, μ/ 2×Hx2×hlm1dx〔J〕
さ δ1〔m〕 内 に は,
(3・36)
(3・37) 同 様 に,一
次,二
次 間 の 厚 さ δ0内 に は,
厚 さ δ2内 に は,
の エネ ル ギー が蓄 え られ る。 これ らの和 を Q とす ると,
(3・38) lm0,lm1,lm2は,そ
れ ぞれ
の で 平 均 値 をlmと
し,ま
δ0,δ1,δ2の部 分 を 一 周 す る 長 さ で あ る が,こ
た 空 気 の 透 磁 率 μ を4π
×10-7と
れ らは大 体 等 しい
み る と,
(3・39) (3・40) よ っ て,一
相 の 漏 れ リア ク タ ン ス x は,
(3・41) と な る。 な お,こ
の 値 は コ イ ル 厚 さ δ1+δ0+δ2と
数k=1-δ1+δ0+δ2/πhを
コ イ ル 高 さ と の 比 に 応 じ,つ
ぎの 修 正係
乗 ず る 必 要 が あ る と い わ れ る。
(3・42) この kをRogowskiの
係 数 と い う。
〔3〕 油 入 変圧 器 電 力用 変 圧 器 の大 部 分 は 油入 式 で,鉄
心 と 巻 線 と が 組 み立 て られ た本 体 を タ ンク 内に入
れ,絶 縁油 を入 れ,本 体 は 常 に 油 に あ る よ うに して 用 い る。 これ を油 入 変圧 器(oil immersed transformer)と い う。 これ に対 し油 を 用 い な い で本 体 を 空気 に さ らした状 態 で使 用 す る もの
を 乾 式 変圧 器(dry
type transformer)と
い う。
本 体 を 油 中 に お くこ とに よ り,絶 縁 物 が 長 期 間良 好 な状 態 に保 たれ,一 方 タ ンク内 を油 が 流 動 す る こと に よ り,鉄 損 お よび 銅損 のた め に生 じた 熱 を移 動 させ 冷 却 効果 をあ げ る。 絶 縁 油 は そ れ 自体 良 好 な絶 縁 物 で な けれ ば な らず,実 際 使 わ れ る油 は,油 中 に お いた2.5mm間 隙 の 球電 極 間 で の絶 縁 破 壊電 圧 が30kV以
上 もあ る。 絶 縁 油 はJIS
C23201(1966)に
化 され て いて,1,2,3号 油 の区 別 が あ るが,変 圧 器 は 2号 油 で,比 重0.92以 ℃ 以 上,流
動 点-27.5℃
以下,抵
抗率10×10-14〔 Ω・cm〕 以 上,そ
規格
下,引 火 点130
の他 の数値 が示 され
て い る。 小 容 量 の 配 電 用 変 圧器 では,タ
ンクは 単 に蓋 を して あ る だ けで,タ
ン ク内の本 体 上 部 に 空
気 の部 分 が あ るが,変 圧 器 は 負 荷変 化 に よ る温 度 変 化 に応 じ,空 気 の膨 張,収 縮 が 起 こ り, タ ンク と蓋 の 間 を通 して空 気 の 出入 が お こる。 これ を呼 吸 作 用 とい い,外 部 空気 を吸 入す る 際 に湿 気 や 塵 を 取 り入 れ るお そ れが あ る。 これ を 防 ぐ た め 蓋 の 下 面 に パ ッキ ング が お い て あ る。 中 容 量 以 上 の変 圧 器 では,図3・ 31の よ うに タ ン ク内は 油 を 満 し,主 タ ン クの上 部 にお いた 補 助 タ ンクの 上 部 に だ け空 気 が あ る よ うに し,空 気 の 出入 は その 通 路 に お いた 乾 燥 剤 を通 った 空 気 だ けが 出 入す る よ うに
図3・31
コ ンサベ ー タ
す る。 この 補 助 タ ンクを 油保 存 槽 ま た は コ ンサ ベ ー タ(conservator)と 最 近 は,コ
い う。
ン サベ ー タ の空 気 部分 を 窒 素 ガ ス に した 窒 素封 入 式 の もの が広 く用 い られて い
る。 〔4〕 ブ ッ シ ング 変 圧 器 本 体 の 巻線 端 子 は タ ンク外 へ 引 き出 さな けれ ば な らない が,高 電 圧 の場合 は高 電 位 の リー ド線 とタ ン クの間 の 絶 縁が 重 大 な 問題 で大 形 のが い しが 使 わ れ る。 これ を ブ ッシ ング (bushing)と 3kV,6kV級
い う。 な らブ ッシ ングの寸 法 は 目立 つ ほ どの 大 き さ で な く済 む が,100kV級
以上
に な ると非 常 に大 き な もの に な る。 ブ ッシ ング は磁 器 で つ く られ,高 電 圧 の リー ド線 と タ ン ク との間 の距 離 が 短 か い の で,ブ ッシ ング内 の電 位 傾 度 を 均 一 にす るた め,ブ
ッシ ング本 体
の 絶 縁構 成 を多 層 の絶 縁 層 に わ け,リ ー ド線 と タ ンク との 間 に コ ンデ ンサ が直 列 に な る形 に
図3・32ブ
ッシ ング各 種
し,各 層 の コ ンデ ンサ容 量 の配 分 を工 夫 した 構 造 の もの もあ る。 図3・32は
ブ ッシ ング の例
を示 した もの で あ る。 ブ ッシ ング は,次 の よ うに分 類 され る。 (1)単
一 形30kV以
(2)油
入形
下 の 電圧 の低 い 所 に用 い られ,最
も構 造 が 簡 単 な もの で あ る。
内部 に筒 形 の 成 層絶 縁 物 を お き,こ の 間 に絶 縁 油 を 入 れた もの で,こ の
油 が 空 気 に触 れ な い よ うに 窒素 ガス を入 れ 密 封 した もの が 多 く使 われ る。 (3)コ
ンデ ンサ 形
前 記 の よ うに コ ンデ ンサ を なす 層 をつ くり,電 位 傾 度 を 均等 化 す
るよ うに し た もので,乾 式 コ ンデ ンサ形 と,絶 縁 油 を入 れ 密 封 し た湿 式 の ものが あ り,後 者 は 超 高 圧 の変 圧 器 に も使 わ れ る。 な お,変 圧 器 が直 接 ケ ー ブ ルに結 ばれ る場 合 に,タ い,タ
ン ク内 で,ケ ー ブル と巻 線 端子 とを 結 び,ブ
ンク 内ま で ケ ー ブル を 引 き入 れ て し ま
ッシ ングを省 く場 合 が あ る。 これ は,タ
ン クの 横 か らケ ー ブル が 出 る ので,象 の姿 に 似て い るた め エ レフ ァン ト形 変 圧 器 とい う。 〔5〕 温 度 上 昇 と冷 却方 式 変 圧 器 も運 転 中は 損 失 の ため に巻 線,鉄 心 お よ び油 の 温 度 が高 ま る が,油 入 式 の場 合 の 温 度上 昇 の 限 度 は,巻 線 につ いて は 抵 抗 法 で測 っ て 自冷 式 で は55℃,油
を強 制 循環 させ る変圧 器 では60℃,油
て は温 度 計 で 計 って50℃(油
につ い
が 外部 空 気 と接 触 し ない 場 合 は55℃)
と 決 め られ て い る。 乾 式 変圧 器 では 絶 縁 の種 別 に応 じて,抵 抗 法 で測 った 温 度 上昇 限 度 が 表3・3の
よ うに 決 め られ て い る。
表3・3 乾式変圧器の 温度上昇限度
変 圧 器 の 温度 上 昇 を上 記 の 限度 内 にす るた め に放 熱が 積 極 的 に行 われ な けれ ば な らな い。 も っと も同 じ容 量,同
じ発熱 で も本 体 の 寸法 を 大 き くし,油 量 を多 くす る よ うな設 計 が され
れ ば 温 度上 昇 は少 な くな るが,こ れ は変 圧 器 価 格 を高 め る こと に な るの で,経 済 的 な 設 計 で, か つ 温度 上 昇 をお さえ るた め に種 々 の冷 却 方 式 が採 用 され る。 小 容量 の変 圧 器 で は,タ
ンク壁 を通 して 放 熱 を行 うだ け で十 分 で あ るが,中 容 量 以 上 に な
る とタ ンク側 面 に 冷却 管 や放 熱 器 を取 り付 けた り,さ らに放 熱 器 に 風 を送 って冷 す 方式 が 用 い られ,冷 却方 式 の油 入 式 の 場合 表3・4の 表3・4変
これ らの冷 却 方 式 を表 す の に,JEC-168で
よ うに 分 け られ る。 圧 器 の 冷却 方 式
は次 の よ うな記 号 を 決 め て い る。
鉱 油を 冷 却 油 に 用 い る ものに O,空 気 を冷 却 媒体 とす るも の にA,水 を冷 却 媒 体 とす る も の にW,冷 却 媒 体 を 自然 循 環 させ るも の にN,強 制 循 環 させ る もの に Fを付 す こ とに し,前 の表 の中 に 記 号化 した 冷 却 方 式 の 区別 も示 し た。 乾 式 で は 自冷 と風 冷 とが あ り,記 号 で はANとAFに
3・4電
な る。
圧 調 整
変 圧 器 の大 部 分 は,定 電 圧 で運 用 す る ことを 原 則 とす る送 配電 系統 に結 ば れ るの で,線 路 の 電 圧 降下 に よ り,受 電 端電 圧 が 変 動 した 場 合 は そ の変 動 を修 正 し,一 定 値 に し,次 の線 路 へ 送 られ る。 この た め に変 圧 器 の 一 次 また は二 次 に タ ップ を つ け て
,そ の 位 置変 更 に よ って
電 圧調 整 が 行 わ れ る。 〔1〕 タ ップ 電圧 タ ップ とは,変 圧 器 一 次 また は 二 次巻 線 の途 中か ら引 き 出 され る端 子(全 巻 数 の 所 か ら引 出す 端 子 も含 む)で,タ
ップ数 は 5以 内 とされ て い る。 表3・5は
標 準 タ ップ電 圧 を示 す 。
こ の表 に お い て, ① 分 類 A,B,C,Dの 区 別 は,変 圧 器 の機 能 に よ って,次 の よ うに分 け られ た もの で あ る。 A は,発 電 機 電 圧 か ら高 圧 ま た は特 別高 圧 に昇 圧す る変 圧 器
表3・5標
準 タ ップ電 圧
Bは,特 別 高圧 か ら他 の特 別 高圧 に降圧 す る変 圧 器 C は,特 別 高圧 か ら高 圧 に,ま た は高圧 か ら高 圧 に降圧 す る変 圧 器 D は,高 圧 か ら低 圧 に 降圧 す る変 圧器 な お,特 別 高圧 と は7000Vを 交 流600V以
超 え る電 圧,高
下(直 流 で は750V以
線 路 で は,140kVが
な お,公
称 電 圧 と は,送
タ ップ に は,銘
あ る。)と,全 tap)が
圧 とは
し て 表 し た もの で あ る 。 例 え ば,公
称電 圧
こ の 表 の100に
当 る。
配 電 路 の標 準 電 圧 の こ と で,日
77,110,154,187,220,275,500kVが ③
下 の 電 圧,低
下)の 電 圧 を い う。
② この 表 の 電 圧 は 公 称 電 圧 の1/1.1を100と 154kVの
圧 とは7000V以
本 の 送 電 線 で は11,22,33,66,
決 め られ て い る。
板 に 記 載 さ れ た 定 格 電 圧 に 対 応 す る 基 準 タ ッ プ(表3・5は
容 量 タ ッ プ(full
capacity
tap)お
R と付 して
よ び 低 減 容 量 タ ッ プ(reduced
capacity
あ る。
全容 量 タ ップ は,指 定 の 温 度上 昇(3・3節 で き る タ ップ電 圧 を い い,表3・5に は,定 格 容 量 以下 のkVA出
〔5〕参 照)を 超 え る こと な く定 格容 量 で 使用
は タ ップ電 圧 に Fと付 して あ る。 ま た,低 減 容 量 タ ップ
力で な けれ ば 指定 の 温 度上 昇 を 超 え る こ とな く運 転 で きな い タ
ップ電 圧 を い う。 〔2〕 タ ップ切 り換 え (1) 無 電 圧 タ ップ切 り換 え
これは変 圧 器 が無 電 圧 の と き にだ け タ ップ切 り換 え が で
き る方 式 の もの で,配 電 用 変圧 器 の 場合 の例 を図3・33に 本体 上 面 に タ ップ盤 が あ り,こ れ に1∼6の
示 す 。 これ は,タ
ンク内の 変圧 器
タ ップ端 子 が 出 して あ る。 この うち の二 つ の端
図3・33配
電 用 変圧 器 タ ップ
子 を 金 属片 で つ な ぐ こと に よ り,一 次 電圧 の一 つ が決 ま る。 この方 式 は,変 圧 器 の蓋 を と らな い とタ ップ切 り換え が で きな いが,タ
ップ切 換器 を外 部
にお き,手 動 ま たは 電 動操 作 で容 易 に切 り換 えが で き るよ うに な って い る もの もあ る。 (2)負
荷 時 タ ップ 切 り換 え
変 圧 器 を 通 電 の ま ま,す
プ切 り 換 え が で き る よ う に し た も の で,こ (on-load
tap-changing
こ の 場 合,巻
transformer)と
線 は 図3・34の
れ る 。 図3・35は,タ プ の リー ド線 端 子
な わ ち 停 電 させ る こ と な く タ ッ
の機 能 を備 え た変 圧 器 を負 荷時 タ ップ切 換 変 圧 器 い う。
よ う に 主 巻 線 と タ ッ プ 巻 線 と に分 け,後
ッ プ巻 線 と タ ッ プ 切 換 機 構 を 示 す 略 図 で,K1,K2が a,b が そ れ ぞ れ3,3′
へ 結 ば れ て い れ ば,一
者 か ら タ ップが 出 さ 閉 じ られ,タ
つ の 定 常 の 状 態 で あ る。 こ
の タ ップ を4,4′ へ 移 す に は, ①K1を
開 き,a
を 4へ 移 す 。
図3・34タ
ップ巻 線
図3・35負
ッ
荷 時 タ ップ切 り換 え
②K1を
閉 じる。
③K2を
開 き,b
④K2を
閉 じる。
を4′ へ 移 す 。
の よ うに進 め られ る。 この 順序 の うち② か ら③ へ の 間 は タ ップ 3と 4の間 の電 圧 に よ って リ ア ク トル を通 る循環 電 流 が 流れ るが,そ の値 は リア ク トル の リア ク タ ンス値 の選 定 に よ って 適 正 値 に お さえ られ る。① か ら④ ま で の間,瞬 時 の 停電 も起 こらな い。 な お,図3・35は
リア ク トル式 で あ るが,リ ア ク トル の代 りに抵 抗 を用 い た 抵抗 式 もあ る。
〔3〕 負 荷 時 電圧 調 整 器 負 荷 時 電圧 調 整 器(regulating 直 列 変 圧 器(ST)お
transformer)は,図3・36の
よび負 荷 時 タ ップ切 換 器(TC)と
る電 圧 νを 線路 の電 圧V1に
よ うに,調 整変 圧 器(RT),
か らな り,直 列変 圧 器 の二 次 に 得 られ
加 え また は差 引 きして 出力 側 の電 圧 をV1±
あ る。 νの正 負 の変 更 は,同 図(a)の よ うに,RTの
ν に変 え る もの で
二 次 の極 性 を 反転 す る こと に よ って行
われ る。 図3・36で
は直 列 変圧 器 が 出力 側 に あ るが,こ の接 続 は入 力電 圧V1が
一 定 で,出 力 側 に
可変 電 圧 を得 た い 場合 の 接 続 で あ る。 もし入 力電 圧 が変 動 し,こ の変 動 を負 荷 時電 圧 調 整器 で定 電 圧 に修 正 す るよ う な場合 は,調 整変 圧 器 を 出力 側端 子 間 に結 ぶ。こ れ を 逆接 続 とい う。 図3・36(a)お 位 相 はV1と
よび(b)の 構 成 では νの大 き さ は タ ップ切 り換 え に よ って 加 減 で き るが,
同相 か,逆 位 相 に しか で き な い。 従 って,出 力 側電 圧 の大 き さをV1を
上 下 させ るだ けで あ るが,V1と
中心に
直 角 の電 圧 も直 列 変圧 器 の 一次 に加 え,出 力 電 圧の 位 相 を
加減 で き る ように した もの を負 荷 時 電圧 位 相 調整 器 とい う。 これ によ れ ば電 力 系統 の有 効 お よび無 効 電 力の 流 れ の制 御 が で き る。
(a)二
鉄 心 四巻 線 形 図3・36負
(b)二 鉄心三巻線形 荷 時電 圧 調整 器
3・5単
巻 変 圧器
単 巻 変 圧 器(autotransformer)は,図3・37の 通 が あ り,直
列 巻 線abと
分 路 巻 線bcか
よ う に,入
力 側 と 出 力 側 が 絶 縁 さ れ ず,導
ら な る 変 圧 器 を い う。
単巻 変 圧 器 を二 巻 線 変圧 器 と 比 べ た 場 合,同
じ負 荷 容量 に 対
し単 巻 の ほ うが小 形 に で き る と い う特 長 が あ るが,入 力,出 力 の 電 圧 比 が大 きい(図(a))お よび 小 さい(同 図(b))場 合 は あ ま り小形 に な らな い。
従来は,単 巻変圧器 は配電線
(a)降
圧用 ab… 直 列巻 線bc…
の昇圧器や交流電動機の始動用
図3・37単
(b)昇 分路 巻 線
圧用
巻変圧器
な どに 使 われ,電 力 系統 で主 要 な 役割 をす る形 で は 使 われ な か った の で あ るが,近 年 中性 点 を 直 接 接地 す る送電 方 式 が 採用 され る よ うに な って,高 電 圧,大 容 量 の もの が造 られ て い る。 〔l〕 自己 容 量 と負 荷 容量 図3・37に
おい て,直 列巻 線 お よび分路 巻 線 の 巻 数 を それ ぞれ ηsお よび ηcと す る と,
両 者 同 じ巻 き方 向 な ら,
(3・43)
で あ り,arは
単巻 変 圧 器 の巻 数 分比 とい われ る。
ま た,励 磁 電 流 を無 視す れ ば,直 列 巻線 と分 路巻 線 の ア ンペ ア回 数 の相 殺 は,つ ぎの よ う に行 われ る。 ηsIh=(Il-Ih)ηc
(3・44)
よ っ て,
ま たはVhlh=VlIl と な って,入 力 側 と出力 側 の ボ ル トア ンペ ア が等 しい 。 そ う して,
(3・45)
と書 け る。
式(3・45)に
お い て, VlIl=VhIh=QLを
負 荷 容 量,
(Vh-Vl)Ih=Qsを
自 己 容 量(self-capacity)
とい う。 そ う して,自 己容 量 と負荷 容 量 の 比 は,
(3・46) と な り,自 己容 量 は負 荷 容 量 に巻 数分 比 を 乗 じた もの に な る。 〔2〕 二 巻 線 変圧 器 の 単 巻変 圧 器化 い ま,一 V1,I1お
次 お よ び 二 次 の 定 格 電 圧,電 よ びV2,I2の
流 が,そ
れぞれ
二 巻 線 変 圧 器 を 図3・38の
よう
に 結 ぶ 場 合 を 考 え る。 こ の 変 圧 器 の 容 量 を4kVA,V1=200〔V〕,I1=20 〔A〕,V2=25〔V〕,I2=160〔A〕
と 仮 定 す る と,
Vh=200+25=225〔V〕, 図3・38二 Vl=200〔V〕
巻 線変 圧 器 の 単 巻 変圧 器 化
Ih=160〔A〕,
nc+ns
Il=Ih×
V1+V2
=Ih×
/ nc
/ V1
=160×
225 /200
=180〔A〕
とな って,負 荷 容 量 は, VlIl=200×180=36×103=36〔kVA〕 VhIh=225×160=36×103=36(kVA)
分 路 巻 線(二 巻線 変 圧 器 の と き の 一 次 巻 線)の 電 流 は,Il-Ih=180-160=20〔A〕
とな
る。 これ らの数 値 を見 る と,ど の 巻線 に も過 電 圧,過 36kVAの
負 荷 が か け られ る。 この4kVAが
量,36kVAが 46)で 1/9で
電流 が な く,4kVAの
変圧 器 を 通 して
自 己容
負 荷 容 量 で あ る 。 両 者 の 関 係 は 式(3・
あ り,巻 数 分 比ar=ns/(nc+ns)=25/(200+25)= あ る か ら, i
負荷容量= /ar × 自己容 量=9×4 =36(kVA) と な って い る。
〔3〕 タ ップ を もつ単 巻 変圧 器
図3・39タ
ップ を もつ単 巻 変 圧 器
図3・39の
よ う に,降
圧 用 の 単 巻 変 圧 器 が 入 力 側,出
入 力 側 の 最 高 タ ップ 電 圧 をVhmax,出 の 最 高 電 圧 はVhmax-Vlminで
力 側 に と も に タ ッ プ を も つ と き は,
力 側 の 最 低 タ ッ プ 電 圧 をVlminと
あ り,自
己 容 量 の 最 大Qsmaxと,負
す る と,直 荷 容 量QLと
列巻 線 の 関係
は,
QSmax=QL×
と な り,タ
Vhmax-Vlmin / Vhmax
(3・47)
ッ プ 範 囲 が 広 い と,QSmaxとQLと
が 接 近 し て く る。
定 電 圧 か ら可 変 電 圧 を 得 る の に 便 利 な 摺 動 変 圧 器(商 品 名:ス 定 タ ッ プ で,出 =QLと
ラ イ ダ ッ ク)は,入
力 側 タ ッ プ が ほ ぼ 連 続 的 に 変 え られ る も の で,Vl min=0で
力 側 が固
あ る か ら,QSmax
な る。
〔4〕 単相誘導電圧調整器(分 路巻線が回転できる単巻変圧器) 単 巻 変 圧 器 に お いて,図3・40の
よ うに分 路巻 線 軸 の 直列 巻 線 軸 に対 す る角 度 θを 任 意 に
変 え られ る よ うに して お くと,一定 の入 力電 圧V1に る(また は,V1が
対 し,出 力 電圧V2が
連 続 的 に変 え られ
変 動 す ると
きθの 変 化 に よ ってV2を
一
定値 に 直 せ る)。 この 構成 は, 単相誘 導 電 圧 調 整 器(single phase induction
regulator)
といい,構 造 は 回転 機 の よう こ円筒 形 の 固定 子 お よび 回転 子鉄 心 が あ り,固 定 子 側 に直 (a)巻
町巻 線,回 転子 側 に分 路 巻線
線配置
図3・40分
をお く,た て軸 構 造 で θを手
(b)電
流関係
路 巻 線 が 回 転す る単 巻変 圧 器
(単相誘導電圧調整器)
動 また は 電 動機 操 作 で0°∼180° の 範囲 に変 え られ るよ うに な って い る。 回 転 子 側 に は第 3の巻 線 が,分 路 巻 線 軸 と90° ず れ た位 置に お いて あ る。 これ を短 絡 巻線 (short-circuit winding)と (1)入
い う。
力,出 力電 圧 関係
図3・40(b)の
よ うに,点 Oか ら外 に向 か う電 流 を各 巻線
の正 の電 流 とす る と き,θ=0° で分 路 巻線 と直列 巻 線 間 の結 合 が正 であ るとす る と,θ=0° で V2>V1,θ=180°
でV2<V1に
な る。
θ=0° に お いて の 結合 リア ク タ ンス をXMと Xm=XMcosθ
す る と,任 意 の θ で は 結合 リア クタ ンスは
で 表 され る。 分路 巻 線 め リア クタ ンスをXcと
し,漏 れ 磁束 を無 視す る と,
直 列 巻 線 の 電圧Vsは, XMcosθ
Vs=V1×
=V1×
nscosθ
/xc
/n c
とな り,出 力 電 圧V2は, ns
1(1+
V2=V1+Vs=V
cosθ)
(3・48)
/ nc
と な って,V2は(ns/nc)とcosθ よ って 変 わ り,図3・41の る。ns/nc=1に 2V1の
に よ うに な
す れ ば,V2は0∼
範 囲 に 変 わ る が ,θ
に対す る
変 化 は 余 弦 変 化 で,θ=0° お よ び180° 付 近 で はdV2/dθ (2)電
流 関係
荷 を 結 び 電 流I2を 直 列,分
が 小 さ くな る。 出力 端子 に負 流 し た とす れ ば,
路 お よび 短 絡巻 線 に それ ぞ
れI2,(I2-I1)お
よ びItが
流 れ,
固 定 子 お よ び 回 転 子 に 生 ず る起 磁 力 の 相 殺 は,つ
ぎの式 の関 係 で行 わ れ
る。
図3・41単
相 誘導 電 圧 調 整器 の 出 力電 圧
nsI2+nc(I2-I1)cosθ+ntItcos(θ+90°)=0
また は
(nccosθ+ns)I2=ncI1cosθ+ntItsinθ
θ=0°
で は(nc+ns)I2=ncI1
θ=90°
で はnsl2=ntIt
短 絡巻 線 は,式(3・49)の
(3・49)
関 係 を満 す電 流Itを
流 す た め に お くもの で,Itが
流 れ る こと
に よ り任 意 の θに お いて 常 に起 磁 力 の相 殺 が行 わ れ る。 短 絡巻 線 が ない と,θ=0° お よ び180° 以 外 で は起 磁 力 の相 殺 が で きず,特 に θ=90° に お い て は,固 定 子 起磁 力nsI2お
よび 回転 子 起磁 力nc(I2-I1)の
両 者 は,互 い に直角 に働 ら く
か ら,相 殺 が 全 くで きず,そ れ ぞ れ の起 磁力 に よ って生 ず る磁束 は漏 れ磁 束 にな り,漏 れ リ プ ク タ ンス 降 下が 著 し く,I2の 変 化 に対 す る電圧 変 動 が 激 しい特 性 とな る。 (3)自
己 容 量 と負 荷 容 量
単 相誘 導 電圧 調 整 器 の負 荷 容 量 は θ=0° で最大 と なる。 直
列 お よ び分 路 巻 線 の定 格 電 圧,電 流 を それ ぞ れVs,Isお お いて 負 荷 電 圧 が最 大 値Vh=Vl+Vsに
よ びVc,Icと
な り,負 荷 電 流 の限 度 はIh=Isで
すれば
θ=0° に
あ るか ら,
負 荷容 量=VhIh Vc+Vs/ vs
=(Vc+Vs)Is= =vc+vs/ Vs
×VsIs
×自 己容 量
(3・50)
と い う関係 にな る。 〔5〕 三 相 誘導 電 圧 調 整 器 三 相 誘導 電 圧調 整器 は,定 電 圧 の 三相 電 源 か ら可変 電 圧 を得 た い場 合,ま たは 変 動す る三 相 電 圧 を定 電 圧 に修 正 した い場 合 に 便利 な装 置で,図3・42に この 回路 は,三 相 巻 線形 誘導 電 動 機(第 4章1・4節 で き る。UVWは
回転 子 三 相巻 線,uvwは
略 図 を示 す。
参 照)の 変則 的 な使 い方 とみ るこ とが
固定 子 三相 巻線 で,両 巻 線 は 図 の よ うに三 相 単
巻 変 圧器 の よ うに結 ばれ る。 θ は可 変 角で,手 動 ま たは 電 動操 作 で0°∼180° の 範 囲 に変 え られ る。 極 数 は 2極,か つ 立 て 軸構 造 で あ る。 回 転子 一 相 の巻 数 と固 定子 一 相 の巻 数 との 割合 は 電 圧 調 整 範囲 に応 じて 選 ば れ,巻 数 比 が1:1な の変 化 に応 じて0∼2V1の 図3・42(c)は,定
ら電 源 電 圧V1に
対 し,二 次 出力 側電 圧 は θ
範 囲 に連 続 的 に変 え る ことが で きる。
相 の ベ ク トル 図 を示 し,U相
の印 加 電圧Vuoを
基 準 に と ると,固 定
(b)銘板 に示 され る 結線図 (a)結
線
図
(c)u 相 の ベ ク トル図 図3・42三
相 誘導 電 圧 調 整器
子 u相 の 起 電 力Vuxは,図
の よ う にVuoよ
り θ だ け位 相 が 進 む 。 従 っ て,出
力側 の 相電
圧 は,
た だ し,ae=Vux/Vuoで,こ
れ を 有 効 巻 数 比 と よ べ ば, ae=1な
囲 に 変 え ら れ,ae=0.5な
ら0.5Vuo∼1.5Vuoの
三 相 誘 導 電 圧 調 整 器 で は,ベ れ が θ と と も に 変 わ る が,二
らVuoは0∼2Vuoの
範
範 囲 に変 え る ことが で き る。
ク トル 図 に 示 す よ う に,入
出 力 側 電 圧 に 位 相 差 ρを 生 じ,こ
次 に 結 ぶ 負 荷 が 電 動 機 ま た は 変 圧 器 で,そ
れ らが一 次 側 回路 と
関 連 が な け れ ば 問 題 は 起 こ らな い 。
vc+Vs/ vs
最 大 負 荷 容 量QL=(Vc+Vs)Is=VsIs×
∴QL=Qs× こ こ に,Qsは
nc+ns/
Qs
ns=
/ ar
自 己 容 量,arは
巻 数 分 比 で あ る。 ま た は,
Qs=ar×QL
(3・51)
これ は,さ きに 示 し た式(3・46)の
関 係 で あ る。 す な わ ち,負 荷 容 量 が大 き くて も巻 数分 比
が 小 さけれ ば(電 圧 調 整 範 囲 がせ ま けれ ば),自 己容 量が 小 さ く,調 整器 の 容 積,重 量 な ど も 少 な くな る。
3・6 図 3・43の
三 巻線 変 圧器 よ う に,同
じ鉄 心 に 一 次,二
を か け る 変 圧 器 を 三 巻 線 変 圧 器(three
図3・43三
次 お よ び 三 次 巻 線 を 巻 き,二 次,三
winding
transformer)と
次 に別 個 に負 荷
い う。 大 容 量 の 三 巻 線 変 圧
巻 線 変 圧器
図3・44大
容 量三 巻 線 変圧 器 の 例
器 の例 に,図3・44の
よ うに主 要送 電 線 の受 電 端 に お く三相 三 巻線 変 圧 器が あ る。 この場合
は,三 次巻 線(tertiary winding)に (1) 電流 関係 図3・43の
は進 相 コ ンデ ンサや 変電 所 内電 力 が負 荷 とし て結 ば れ る。 変 圧 器を 減 極性 と し,各 巻 数 をn1,n2お
よびn3と
すれ
ば,ア ンペ ア回数 の相殺 は,次 の 式 の よ うに行 われ る(ただ し,一 次 の 励 磁電 流 を無 視 して)。
(3・52) た だ し,I2′,I3′
は 一 次 か ら み た 二 次 お よ び 三 次 電 流 で,I2′=(n2/n1)I2,I3′=(n3/n1)I3で
あ
る。
三次 側 に は90° 進 相 の コ ンデ ンサ負 荷,二 次 側 に は 力 率cosψ2の と,一
次電 流 のベ ク トル は 図3・45の
い うこ とか ら,|I1│はI3が 次 巻 線 のkVAが
遅 相負 荷 が あ る とす る
よ うに 作 図 して求 め られ る。I3が90°
進相 で あ ると
ない場 合 に比 べ小 さ くな って い る。 二 巻線 変圧 器 で は一 次,二
等 しい が,三 巻 線 変圧 器 で は,二 次,三 次 のkVAの
和 が一 次 のkVAに
等 し くな ると は限 らない 。
図4・45 三巻線変圧器の電流関係
図3・46 三巻線変圧器の等価回路
(2) 等 価 回 路 と電 圧変 動 率 三巻 線 変圧 器 の等 価 回 路 は,二巻 線 変 圧 器の それ に,第 三 の 巻 線 の 回路 を追 加 し,図3・46の
よ うに表 され る。 た だ し,こ の 図 の r,x お よ び電 圧,
電 流 は,す べ て 一次 に 換 算 した 値 で あ る。 これ らを求 め るに は,つ ぎの ように 進 め る。 (a) 負 荷 損 の決 定 一 次,二 次 間,一 次,三 次 間 お よび 二次,三 次 間 で短 絡 試 験 を行 い, これ ら試 験 に お け る負荷 損 を 基 準のkVA(例 式(3・19)に
え ば,一 次 のkVA容
量)に 換 算 し,さ らに
よ って 基 準巻 線 温 度 に換 算 した値 を そ れぞ れp12T,p13Tお
た だ し,こ れ らはkWの
よびp23Tと
単位 に して お く。
一 次 ,二 次 お よび 三 次巻 線 の 負荷 損 を それ ぞ れp1T, p2Tお よびp3Tと
す れ ば,
す る。
p1T=p123T-p23T,
p2T=p123T-p13T,
p3T=p123T-p12T
1/
た だ し,p123T=
(p12T+p23T+p13T)で
2
あ る 。
(b) 抵抗 電圧 率 の決 定 基準 容 量 をP〔kVA〕
とす れ ば,一 次,二 次 お よび三 次 の抵
抗電 圧 率 は, qr1=
p1T/ P,
p2T
qr2=
/ P,
p3T/
qr3=
P
か ら求 め られ る。 (c) 漏 れ リア ク タ ンス電 圧 率 の決 定 さ きの 各短 絡 試験 時 の イ ン ピーダ ンス電 圧 を基 準 kVAに
換算 して,そ れ ぞれV12,V13,V23〔
V〕 とす る。
ま た,測 定 時 の 温 度 に お け る負 荷 損 を そ れ ぞ れP12t,p13t,P23tと 一 次 三 次 間 お よ び 二 次 三 次 間 の 漏 れ リア ク タ ンス 電 圧 率 を そ れ ぞ れq
す る と,一
次 二 次 間,
x12,qx13,qx23と
すれ
ば,
各 巻 線 の 漏 れ リア ク タ ン ス電 圧 率 をqx1,qx2,qx3と qx1=qx123-q23,
す れ ば,
qx2=qx123-qx13,qx3=qx123-q12
と し て 求 ま る。 た だ し,qx123=
1/ 2
(qx12+qx13+qx23)で
あ る 。
(d) 各 巻線 の イ ン ピーダ ン ス電 圧 基 準 巻 線温 度,基 準kVAに
お け る イ ンピーダ ンス
電圧 の% は,
と して求 め られ る。 (e) 電 圧 変 動 率 の 計 算 各 巻 線 の 力 率 をcosψ1, cosψ2,cosψ3と 基 準kVAの
そ れ ぞ れn1,n2,n3倍
の と き,各
巻線 ご との電 圧 変 動率
し,各
巻 線 のkVAが
ε1,ε2,ε3は,
で あ り,一
次 二 次 間,一
次 三 次 間,二
ε12=ε1+ε2,
ε13=ε1+ε3,
次 三 次 間 の 電 圧 変 動 率 ε12,ε13,ε23は,そ れ ぞ れ, ε23=ε3-ε2
と して 求 め られ る。
3・7 試 験 用 変 圧器 絶 縁 物,巻 線 な ど の交流 絶 縁 耐力 試 験 や コ ロ ナな どの 高電 圧 現 象 研究 の た めの 電源 とす る 変圧 器 で,電 圧 は高 いが容 量が 小 さいの が特 長 で あ る。 一 般 に,高 電圧 側 巻 線の 一 端 は接 地 して 用 い る。 油入 構 造 と し,30分
ま た は 1時 間の 短 時 間定 格 で あ り,単 器で500kVく
ら
い まで つ くられ る。 さ らに,高 い 電圧 とす る場 合 に は 2台,3 台 と縦 続 接続 し,2 段 目,3 段 目の変 圧 器 は台 座 を絶 縁 構造 と し,巻 線 の 絶縁 が ぼ う大 に な る のを 防 ぐ,こ の方 式 で2000kV ぐ らい まで つ くられ る。 図3・47は,100kV程
図3・47
度 の試 験 用変 圧 器 と
その 付 属 器 の略 図 で,一 次 側 に電 圧 調 整用 に誘導 電 圧調 整器IRが
3・8
試
験
試 験用 変 圧 器
お かれ る。
法
二巻 線 変 圧 器 の試 験 法 に つい て概 要 を 述べ る。 試 験 項 目 につ い て は,JEC-168に
明記 して あ り,つ ぎ の各 項 が あ る。
(1) 巻 線 抵抗 測定 油 入 変 圧器 で は 油 と巻 線 の温 度 が等 し い とみ られ る状 態 で,そ の 温 度 と各 巻 線 の抵 抗 を測 る。 タ ップ が あ る場 合 には 各 タ ップに お け る抵 抗 を測 る。 (2) 変 圧 比 測 定 変 圧比 とは定 格 電 圧 の低 い ほ うの巻 線 の電 圧 を基 準 として 表 した 無 負 荷 端子 電 圧 の 比 を い い,こ の値 を各 巻 線 につ いて,タ
ップが あれ ば す べて の タ ップ につ い
て 測 る。 (3) イ ン ピーダ ンス試 験(短 絡試 験)
一 方 の 巻線 を短 絡 し,他 の巻 線 か ら定 格 周波 数
の電 圧 を加 え,定 格 電流 とな る と きの電 圧(イ
ン ピー ダ ンス電 圧)と 負 荷 損 とを測 る。
定 格電 流 を流 す こ とが で きな い場 合 は,定 格 の25%以
上 の電 流 が 流 せれ ば,こ の電 流 に
お け る測 定 で代 用 して よ く,こ の場 合 は イ ン ピーダ ンス電 圧 は電 流 に 比例 し,負 荷 損 は電 流 の 2乗 に 比 例す る と して定 格電 流 時 の値 に 換算 す る。
(4) 無負 荷 試 験 一方 の巻 線 を 開路 し,他 の巻 線 に定 格 周波 数 の定 格 電 圧 を加 え,無 負 荷 電 流 と入 力 を 測 る。 (5) 温度 試 験 各 巻 線 が定 格 電圧,定 格電 流 で あ る状 態 を つ く り,温 度 が一 定 にな っ た と見 られ る まで 続 け る。 (a) 試験 項 目 油 の温 度 上昇 お よ び巻 線 の温 度 上 昇 を測 る。 前者 は温 度計 に よ り,後 者 は抵 抗 法 に よ り測 る。 (b) 試験 時 間 つ ぎのい ず れか で決 め る。 ① 1時 間 当た りの 油 の温 度上 昇 が1℃ 以 内 の状 態 が 3時 間 続 いた ら終了 とす る。 ② 巻 線 の温 度 上 昇 の 増加 が 1時 間 当 た り3℃ 以 内 にな った ら終 了 とす る。 (c) 負荷 方 法 (ⅰ) 実 負 荷 法 実 負 荷 を か け,定 格 電 圧,定 格 電 流 の状 態 とす る方 法 で あ るが,試 験 の た め の電 源,負 荷 の準 備 お よび 試験 時 間 中 の所 要 電 力量 が 大 き くな るの で,こ の方 法 は 工 場 試 験 に お いて は ほ とん ど行 わ れ な い。 (ⅱ) 返 還 負 荷 法 同 じ定 格 の 変圧 器 が 2台以 上 あ る場 合,そ れ らを並 列 に して定 格 電 圧 を 加 え鉄 損 を供 給 し,一 次二 次何 れか の 側 か ら並 列 にす る回路 を開 い て,そ の端 子 か ら イ ン ピーダ ンス電 圧 を加 え 銅 損を供 給 す る。 図3・48は,返
還 負 荷 法(loading-back
同 図(a)は,変
圧器
配 電 用 変 圧 器 で あ る と す れ ば,無 下,イ
ン ピー ダ ン ス 電 圧3%前
無 負 荷 損 源 は210V側 圧 は210Vあ
よ る温 度 試 験 の 回 路 を 示 す 。
A,B 2台 を 試 験 す る 回 路 で,例
6.3kV/210V,50Hzの 損 は 各150W以
method)に
と し,そ
れ ば 足 り,負
380×3.2=1200〔VA〕
負 荷 電 流 は 各3%以
後 と み る と,次
量 は,定
下,無
負荷
の よ うな 電 源 で 足 り る。
の 電 源 容 量 は20×0.03×2=1.2〔kVA〕
荷 損 は6300V側
6300×0.03×2≒380〔V〕,容
え ば, A,B が い ず れ も20kVA,
か ら 供 給 す る と し て,必
格 電 流 が20×103/6300≒3.2〔A〕
程 度,そ
の電
要 な 電 圧Vcは, で あ る か ら,
あれ ば足 りる。
この よ うに,返 還負 荷 法 に よれ ば極 めて 小 さい電 源 容 量 で試 験 を行 う こ とがで き,実 負 荷 法 に比べ て電 力 量 が著 し く節 約 で きる。 同 図(b)は,無 kVA2
負 荷損 お よ び負 荷 損 を 同 じ側 か ら供 給 す る方 法 で,A
台 で あ る と し,210V側
13〔V〕,し か し,電 流 容 量 は20×103/210≒95〔A〕 同図(c)は,A,B
とBが 前記 の20
か ら無 負 荷 損 を供 給 し,負 荷 損 源 はVc≒210×0.03×2≒
の タ ップ に差 を つ け,そ
を 要 す る。
の電 圧 差 が 2台 分 の イ ン ピー ダ ンス電 圧 に
近 い 値 で あ る場 合 に適 用 で き る方 法 で,電 源 一つ で 足 り る。
(a) Vi,Vcを
両 側 か ら供 給す る方 法
(b) Vi,Vcを 法
同 じ側 か ら供 給 す る方
(c) タ ップ 電圧 差 によ っ て 循 環 電流 を 流 す方 法
(d) 三相変圧器の返還負荷法 図3・48
同 図(d)は,三
返 還負 荷 法 に よ る温 度試 験
相 〓-△ 結線 の変 圧器 A,B を返 還負 荷 法 で試 験 す る回 路で,両
次,二 次 を それ ぞ れ並 列 に結 び,〓 結 線 側 か ら無 負荷 損 を 供給 す る とすれ ば,Viは 電 圧 に し,△ 結 線 側 に負 荷 損源 を結 ぶ。Vcの
者 の一 定格
大 き さ は,△ 側 か らみ た 1台 の イ ン ピー ダ
ンス電 圧 の 2倍 だ け あれ ば足 りる。 (d) 温 度 測 定 法
抵 抗 法 に よ って測 る。抵 抗 測 定 は試 験 中 の電 源 を一 旦 切 って手 早 く測
る。 温度 上 昇 は 抵抗 値 の 変 化か ら,式(1・13)で
求 め られ るが,同 式 に お いて,ta=tな
ら,
巻 線 温度T〔 ℃ 〕 は, T=
Rr /Rt
(234.5+t)-234.5〔
℃ 〕
で求 め られ る。 この抵 抗 測定 は,電 源 を切 った 後直 ちに行 うの で あ るが,こ の 間 温度 が 下 が るので,電 源 を切 った 瞬 時 の抵 抗 値 を 求 め る方 法(例 え ば,抵 抗値 と し ゃ断 後 の 経過 時 間 の 関係 曲 線 を求
め,時 間 零 の点 へ 延 長 す る)を 講 じる必 要 が あ る。 (6)耐
電圧試験
耐 電 圧試 験 は,(a)加 圧 試験,(b)誘
導 試 験,(c)衝
撃電 圧試 験 に
わ け られ る。 (a)加 70Hz)を
圧試験
この試 験 は,各 巻 線 と大 地 との間 に表3・6の
交 流電 圧(周 波 数 は40∼
1分 間 加 え る試 験 で あ る。 被 試 験巻 線 以 外 の 巻 線 端 子 はす べ て タ ンクと と も に接
地 して お く。 試 験 は表3・6の
試 験 電圧 の1/3以 下 の電 圧 を まず 加 え,そ
の後 電 圧計 が 確 実
に 読 め る範 囲 の で き るだ け早 い速 度 で試 験電 圧 値 まで 上 げ,1 分 間継 続 す る。 試 験後 は 手早 く試験 電 圧 の1/3以 下 に下 げ,回 路 を切 る。 表3・6(a)
表3・6(b)
乾式変圧器および衝撃電圧 に耐 え る設計としない油入変圧器の 交流試験電圧
衝撃電圧試験に耐える設計の油入変圧器巻線の 交流試験電圧
*B を付 した 階 級 は ,雷 の ひ ん度 が 少 な い場 所 に 設 置 され る変 圧器 に適 用 す る。
(b)誘
導試験
この 試 験 は,コ イル の タ ー ン間,タ
ップ間 な どに常 規 の ほ ぼ 2倍 の電 圧
を 誘 起 させ て 耐 電圧 を調 べ るた あに行 う もので,電 圧 は 試 験 され る巻 線 の端子 間 に加 え る。 定 格周 波 数 で は 励磁 電 流 が 過大 にな るの で,周 波 数の 高 い電 圧 を加 え る。 試験 時 間 は,定 格 周波 数 の 2倍以 下 の場 合 は 1分 間 とし,2 倍 以 上 の周 波 数 を用 い る場 合 の 試験 時 間 は, 試験 時 間(秒)=120×
定格周波数/ 試験周波数
と す る。 (c)衝
撃電 圧 試 験
巻 線が 雷 の よ うな衝 撃 性 の電 圧 を加 え られ た場 合 の絶 縁 強 度 を調 べ
る試 験 で,接 地 試 験 と非 接 地試験 にわ け られ,前 者 は さ らに さい 断波 試験 と全 波 試験 に別 け られ る。
表3・7衝
(ⅰ)接
地 試験
図3・49の
撃 試 験 電圧
よう に,供 試巻 線 の一 端 を接 地 し,他端 か らさ い断波 お よび
全波 衝 撃電 圧 を加 え る試 験 で あ る。非 供 試巻 線 端 子 は数 百 Ω の抵 抗 を通 して接 地 してお く。 試 験 電 圧の 波 形は,図3・50に に,波
頭長Tf=1〔
〔 μs〕で,電 表3・7の
示す よう
μs〕,波 尾 長Tt=40
圧波 高 値 は絶 縁 階 級 に応 じて
値 とす る。 さ い 断波 とは,同
の破 線 の よ うに波 尾 長 以 内 のTcの
図
瞬時に
突然 零 に な る よ うな電 圧 を い う。 さい 断波 試 験 は,変 圧器 入 口端子 付 近, 図3・49接
地試験
例 えば が い し,ブ ッシ ング な どで フ ラ ッシ オ ーバ を起 こ した場 合 の よ うに,衝 撃 性 で かつ 波 尾 が急 に零 に な るよ うな 電圧 に対 す る巻 線 の絶 縁 強度 を 調 べ るた め に行 う。
図3・50衝
撃 電 圧 波形
図3・51非
接地試験
接地 試 験 は,は じめ に さい 断 波試 験 を,次 に 全波 試 験 を行 う。 (ⅱ)非
接地 試 験 図3・51の
よ う に,供 試 巻線 の 一 端 に全 波 の衝 撃 電圧 を加 え る試 験
で あ る。 巻 線 の他 端 は 開放,ま た,非 供試 巻 線 端子 は 完全 に接 地 して お く。 電 圧 波形 お よ び波高 値 は 接地 試 験 と同 じで あ り,全 波試 験 だ け を行 う。 (ⅲ) 電 気設 備 技 術 基準 に よ る絶縁 耐 力試 験 変圧 器 が現 地 に据 え付 け完 了 した と き に 行 わ れ る試 験 で,同 省 令第16条
に詳 し く記 され て い る。 にの試験 は10分 間 加 圧 され る。
練
1.出 力2kWお
よび8kW(い
習
問
題
3.
ず れ も力 率100%)の
と き,同 じ効 率96%と
な る単相
柱 上変 圧 器 が あ る。 (a)出
力8kWに
(b)最
大 効 率は い く らの 出力 で得 られ るか 。
(c)最
大 効 率 の値 は い く らか。
2.あ
お け る銅 損 お よび鉄 損 は い くらか。
る変 圧 器 の 効率 が85%の
負荷 で最 大 に な ると い う。 全 負 荷 お よ び1/2負 荷 にお け
る銅 損 と鉄 損 の 比 を求 め よ。 3.あ
る変 圧 器 の 一定 力 率 負 荷 にお け る効 率 は3/4の 負 荷 に お いて 最大 とな り,力 率80%
の とき の最 大 効 率 は97.5%で
あ ると い う。 この変 圧 器 は力 率100%,全
負 荷 に おい て
効率 は何%に な るか 。 4.定 格 出力3000kVA,電 の負 荷 で2.0%,力 圧,%漏
圧 比20kV/3kVの
率80%(遅
単相 変 圧 器 の電 圧 変動 率 が,力 率100%
れ)の 負 荷 で5.0%で
あ ると き,に の変 圧 器 の%抵 抗 電
れ リア クタ ンス電圧 お よび にれ らを二 次 に 換算 した値 は そ れ ぞれ 何 Ωか。
5.遅 れ 力率75%の
定 格 負 荷 にお い て,電 圧変 動 率 が5%と
変 圧 器 が あ る。 この変 圧 器 に60Hzの らにな るか 。 た だ し,定
な る定格 周 波 数50Hzの
同 じ条件 の 負 荷 を か けた と き 電 圧 変 動率 は い く
格状 態 に お け る漏 れ リア クタ ンス電 圧 は 抵 抗電 圧 の10倍
とす
る。 6.容 量15000kVA,電
圧66kV/11kVの
単相 変 圧 器 の イ ン ピーダ ンス試 験 を行 い,低
電 圧 側 か ら定 格 電流 を流 した と き, イ ン ピーダ ンス電 圧 V2s=600〔V〕, で あ った 。 この変 圧 器 の遅 れ 力 率80%に
イ ン ピー ダ ンス ワ ッ ト=100〔kW〕
お け る電 圧 変動 率 を求 め よ。
7. 一 次,二 次 の定 格電 圧 の等 しい 2台 の変 圧 器が あ る。 一 台 は容 量10kVA,イ ダ ンス電 圧5%,他
は容 量30kVA,イ
ンピー ダ ンス電 圧3%で
ンピー
あ る。 また,実 効 抵 抗
と漏 れ リア ク タ ンス の比 は等 しい。 この 変圧 器 を並 列 に接 続 して,二 次 側 に30kVAの 負 荷 を か けた と きの各 変 圧器 の 負荷 分 担 を求 め よ。 8. 一 次 に換 算 し た漏 れ イ ン ピー ダ ンス が3+j2〔
Ω 〕 であ る等 しい定 格 の変 圧 器 に並 列
に運 転 され て い る。 そ の うち 1台 を漏 れ イ ン ピー ダ ンスが2+j3〔
Ω〕 で あ る同 じ定 格
の変 圧 器 に取 り換 えた とき,負 荷電 流 を 同 じとす れ ば,各 変圧 器 の電 流 は ど う変 化す る か 。 9.
問 図3・1の
よ う に 変 圧 器 2台 を 並 行 運 転
し て い る。 こ の う ち 1台 は 定 格 出 力10000 kVA,イ
ン ピー ダ ン ス6%,他
20000kVA,イ
ン ピ ー ダ ン ス8%で
荷 電 流 を200Aと
す れ ばI1,I2は
は 定 格 出力 あ る。 負 各 い く らか 問 図3・1
を 計 算 せ よ。
10. 一 次 お よび 二 次 の定 格電 圧 が相 等 しい A,B 2台 の単 相変 圧 器が あ る。 A変 圧器 は, 定 格 出 力30kVA,イ
ン ピー ダ ンス 電圧3%,B
変 圧 器 は,定 格 出 力50kVA,
イン
ピーダ ンス電 圧5%で
あ る。 にの 両 変圧 器 を並 列 に接 続 して,二 次 に70kVAを
負荷
す る場合,A 変圧 器 は何%の 過負 荷 とな るか 。 た だ し,両 変 圧 器 の実 効 抵抗 と漏れ リア ク タ ンス の比 は それ ぞ れ相 等 しい もの とす る。
第 4章
誘 導 機(induction
machine)の
誘
導
機
うち三相 誘 導 電 動機 は,第 1章 で も述 べ た よ うに,最 も広
く用 い られ て い る電 動 機 で あ る。三 相 誘 導電 動 機 に は,回 転子 の構 造 に巻 線形(wound-rotor type)と か ご形(squirrel-cage
rotor type)が あ り,後 者 は 構 造簡 単,頑 丈 で,効 率,力 率
も よ く,定 周 波 電源 で 運転 し,速 度 制 御 を しない 場合 は最 もよい電 動 機 とされ て い た。 しか し,最 近 は,可 変周 波 電源 が 比 較的 容 易 に作 れ るよ うにな り,可 変 速 度 運転 を す る場 合 に も か ご形 の良 さが 発揮 で きる よ うに な って きて い る。 一方
,巻 線 形 機 は,大 き い始 動 トル クを得 る こ とが で き,か つ,速 度制 御 が で き るた め,
大 容 量 の誘 導 電 動機 に広 く用 い られ て い る。 この章 で は,は
じめ に三 相 誘 導電 動 機 の構 造,特 性,始 動,速 度制 御 な ど の問題 を考 え,
後 で単 相 誘 導 機 につ いて述 べ る。
4・1三
相誘 導 機 の構 造
三 相誘 導 機 の主 要 部 は,電 気 的に は 一次 巻 線 と二 次 巻線 とで 構成 され,一 般 に一 次 巻 線 は 固定 子 側 に,二 次 巻 線 は回 転 子側 に お かれ る。 それ ぞ れ が成 層 鉄心 に 設 け た ス ロ ッ ト内 に収 め られ る。 二 次巻 線 の構 造 は前 記 の よ うに巻 線 形 とか ご形 に分 け られ る。 〔1〕 固 定子 鉄 心 固定 子 鉄心 は,小 形 機 の 例 で は図4・1の
よ うに,け い素 鋼板 ま たは け い素鋼 帯(総 称 して
電気 鉄 板 と もい う)を 打 ちぬ いて積 み重 ね て つ く る。 これ を成 層 鉄 心 とい う。 素 板 の厚 さは0.35 ㎜
ま た は0.5㎜
S23∼S18な
で,表1・2の
けい素 鋼 帯 の
どが よ く用 い られ る。 図4・1の
よ
うに 固定 子 鉄 心 の 内側 に ス ロ ッ トを つ くり,こ れ に一 次 三 相 巻線 を入 れ る。 ス ロ ッ ト断 面 の形 は 電 動機 の電 圧 に よ って異 な り,図 の例 は 低圧 用 で, 半 閉 ス ロ ッ トといい,ス て い る。 図4・2は
ロッ ト入 口が せ ま くな っ
高圧 電 動 機 の ス ロ ッ トの例 で,
図4・1小
形 三 相 誘 導機 の 鉄 心例
(b)1コ イ ル の 形
(a)軸方 向 か ら み た 固 定 子 断面 略 図 図4・2100kW,6
極,3000Vか
ご
図4・3三
相,4
極,24ス
ロ ッ ト(q=2)
の 一 相 分 の 巻線
形 機 の 固定 子 鉄 心 例(全 ス ロ ッ ト数54)
こ れ は開 放 ス ロ ッ トで あ る。高 圧 で は電 機子 コ イル の絶 縁 を 終 わ って 固 く型 造 った コ イル を スロ ッ トに入 れ るた め に開 放 ス ロ ッ トを 用 い る。 固定 子 鉄 心 全 体 の ス ロ ッ ト数 は(3× 極 数)の 整 数倍 の もの が多 い。 す な わ ち,全 ス ロッ ト 数 を(3× 極 数)で 割 った値 qは整 数 で,こ れ を毎 極毎 相 の ス ロ ッ ト数 とい う。 qは大 容 量 で 2極機 の場 合 は7∼10な
ど も用 い られ るが,中,小
容 量 の もの で は 3ない し 4が 多 く用 い ら
れ る。
〔2〕 固 定 子 巻線 固 定 子 に 設 け ら れ る 三 相 巻 線 に は,二 の コ イ ル 辺 を 入 れ る 巻 き 方,後
層 巻 と単 層 巻 と が あ り,前
単 な 二 層 巻 三 相 巻 線 の 例 を 図 4 ・3に 示 す 。 図 は 全 ス ロ ッ ト数24,4 ッ ト
qは 2で あ る。
図4・3の
1 コ イ ル の 形 は,同
図(b)の
例 で は 1極 当 た り の ス ロ ッ ト数 は 6で,コ
で 電 気 的 に180° う 。 な お,180°
で あ る が,一
極 で,毎
よ うで あ る こ と は 図1・6で
例 の よ う にq〓2を
pitch)巻
極毎 相 のス ロ も示 した 。
イ ル の 広 が り 幅 b は 6 ス ロ ッ ト分 の 幅
般 に 幅 b は180° 以 下 に す る 。 こ れ を 短 節(short
に 等 し い 場 合 を 全 節(full
ま た,図4・3の
者 は 1ス ロ ッ ト内 に 二 つ
者 は 1ス ロ ッ トに 一 つ の コ イ ル 辺 を 入 れ る 巻 き 方 で あ る 。 簡
pitch)巻
とい
と い う。
分 布(distributed)巻
と い い,q=1を
集 中(concentra-
ted)巻 と い う。 短 節 巻 も 分 布 巻 も 巻 線 に 流 れ る 三 相 電 流 に よ っ て 生 ず る ギ ャ ップ の 起 磁 力 分 布を正 弦 波 に近 づ け るた め に用 い るので あ る。 図4・3で
は,三
る 。 す な わ ち,三
相 の う ち 一 相 だ け を 示 し,他
の 二 つ の 相 は 巻 き始 め の 位 置 だ け が 示 して あ
相 巻 線 と は 三 つ の 巻 線 を 空 間 的 に120°
ず つ ず ら して 配 置 した 巻 線 で あ る 。
図4・4は
図4・3の
図4・5は,最
略 図 を別 の形 で 示 した もの で,こ れ を 展 開 図 とい う。
近 広 く用 い られ てい る機 械巻 の三 相 巻線 の例 で,ド
ラムか ら引 き出 され た
電 線 が巻 線 機 を経 て 固定 子 鉄心 の ス ロ ッ ト内へ 入 り,人 手 を 経 ない で 三相 巻 線 が 巻 き込 ま れ る 。 機 械巻 で は単 層 巻 が 用 い られ,図 の 例 は,4 極,全
ス ロ ッ ト数36,q=3,か
つ,全 節
巻 で あ る。 各 相巻 線 の巻 き始 め にはUVW の記 号 を,巻 き終 わ りに はxyzの 記 号 を 用 い て あ り,こ れ らの端 子 間 の 結 び方 に よ り,図4・5(b)に 示 す よ うに,〓 ま た は△ 結 線 に で き る。 実 際 の巻 線 に は〓 お よび△ の 両 結線 が 用 い られ,ど ち らを 選 ぶ か は,電 動機 の定 格 出力,定 格 電 圧 等 に よ って 決 め られ る。 例 え 図4・4図4・3の
(a)4
(b)図(a)の
極36ス
ロ ッ ト,単 層,三
巻 線 の 展 開図(一
巻線構成
相巻線の例
図4・5三
相 単層 巻 巻 線
相 分 の み示 す)
表4・1固
ば,低 圧 で数 十kWと
定 子 〓 ま た は△ 結 線 の例
い うよ うな場 合 は線 路 電 流 が大 き くな るの で,巻 線 電 流 を 少 な くす
るた め に △結 線 と し,か つ,極 数 に 応 じて多 重 △ とす る。 表4・1は
人 ま た は△ 結 線 の 例 で
あ る。 な お,図4・3(図4・4も
同 じ)の よ うに,六 角形 の コ イル が 1ス ロ ッ トずつ ず れて 次 々 に
重 ね られ る形 の 巻線 を 重 ね巻 とい い,図4・5の
よ うに,広
が り幅 の 異 な るい くつ か の コイ
ル で一 相 分 とす る巻 き方 を くさ り巻 と い う。 ただ し,図4・5の
例はUか ら
xへ通 る電 流 は等 しいか ら,図 の 幅 b を コ イル 幅 とみれ ば,全 節 巻 で あ る。 〔3〕 巻 線 の起 磁 力 こ こで,固 定 子 三 相 巻 線 に 三相 電 流 が流 れ る とき は に生 ず る起 磁 力 に つ いて
(a)分布 の原 形 と基 本 波 分
考 え て み る。 (1)単
ー コ イル に よ る起 磁 力
図4・6は,巻
数 n回 の全 節 の コ イル
ー つ が あ り,こ
れ に 電流i〔A〕
を流
した 場 合 の起 磁 力 を考 え た もの で,固
(b)第3高調 波 分
定 子 お よび回 転 子 鉄心 の磁 気 抵 抗 を 無 視 し,起 磁 力 の す べ て が ギ ャ ップ に 費 や され る と し,か つ,ギ ャ ップ 長 さを 一 様 とす れば ,起 磁 力分 布 は,高 さni 〔AT〕 の矩 形 波状 と な る。
(c)第5高 調 波 分 図4・6全
節 の単 一 コイ ル に よ る起 磁 力 分 布
この矩 形 波 を フー リェ級数 は につ くる と,
(4・1) とな り,こ の級 数 は 奇 数 高 調波 だ けで 表 され る。 そ う して,4/πnisinθ を 起 磁力 の 基 本 波 とい い,第
2項 以 下 を 高調 波 とい う。 高 調 波 の 振
幅 は,そ の次 数 に反 比 例 して小 さ くな って い る。 図4・6の
矩 形 波 の高 さは 電 流 iに比 例 す るの で,i が 正 弦 波交 流 で, i=Imsinωt
で 表 され るな らば,起 磁 力 の 高 さniは F1=
4/
時 間 に対 し正 弦状 に変 化 し,そ の 基 本 波 分 は,
πnImsinωtsinθ=F0sinωtsinθ
た だ し, F0=
4/
(4・2)
πnIm
と な って,時 間 的 に も空 間的 に も正 弦状 に変 化 す る。 (2) 各 相 1コイ ル の 三相 巻 線 に よ る起 磁 力
図4・7は,各
相 に 全 節 巻 の コ イルー つ
だ けを もつ 2極 の 三 相巻 線 の略 図 で,こ の よ うに コ イル 数 の少 ない 電 動 機 は 実際 には 使 われ な い が,起 磁 力 の 分 布 を 考 え る一 段 階 と して 仮 定 した もの で あ る。 図4・8の
よ うな 対 称 三 相 電流 を 図4・7の
の合成 は時 刻 に よ って 異 な り,図4・8の
iu=Im,
図4・7各
- Im iv=
iw=
/ 2'
三 相 巻線 に流 した 場合,各 相 に よる起 磁 力 分 布 ωt=α=π/2の 瞬 時 を考 え る と,
-Im /2
相に全節巻のコイ ル 1個 だ け を お い た 2極,三
相巻線
図4・8対
称 三相 電 流
で あ り,u,v,w各
相 に よ って つ くられ る 図4・6の
よ うな矩 形 波起 磁 力 分布 を合 成 して み る
と,図4・9(a)の
よ う に な る 。 つ ぎ に ωt=β=2π/3の
瞬 時 に は,
(a) ωt=a=π/2 の瞬 時
で あ り,こ の 瞬 時 の合 成 起 磁 力 の分 布 は,図4・9(b)の
よ うに な る。
図4・9(a)と(b)を
比 べ る と起 磁
力 分 布 波 形 が異 な る だ けで な く,分 布
(b) ωt=β=2π3
波 形 の 中心 が 図(b)は 図(a)よ り π/6 の瞬 時
だ け移 動 して い る。 この 移 動 は,ωtを さ ら に5π/6,π,… … な ど に と って 合 成 起 磁 力 分 布 を つ くって み る と,時 間 と と もに θの増 大 す る側 へ 移 り,電 流 が 1サ イ クル す る 間 に θ=2π だ け 移 動 す る こ とが わ か る。 い ま,図4・9の
図4・9
図4・7の
電 動 機 の ギ ャ ップ 合 成 起 磁 力
起 磁 力 を各 相 の 基 本波 分 だ けを とっ て考 え る と,つ ぎの よ うに なる 。
u相 に よる起 磁 力 の 基本 波 分
た だ し,
一相の起磁力の基本波分最大値
v相 に よ る起 磁 力 の基 本 波 分
(4・3)
w相 に よ る起 磁 力 の基 本 波分
式(4・3)の 各 起 磁力 の 合成 をF1と
す る と,
(4・4) π/2
と な る。 この起 磁 力 分布 は,
ωt=α=
の瞬 時 に は,
(4・5)
基 本 波 分 で あ る 。 ま た,
ωt=β=
2π/
3
と な る 。 こ れ は 図4・9(a)の
の 瞬時 に は,
(4・6) これ は,図4・9(b)の 図4・9(a)と(b)は
起 磁 力 の 基 本 波分 で あ る。 最 高 高 さの 比 は2:√3と
を と って 合成 してみ る と,式(4・5)お (3)回
転起磁力
式(4・4)は
の 振 幅 はF0×3/2で,こ
な って い るが,各 相 の起 磁 力 の 基 本 波分
よ び式(4・6)と
同 じよ うに な る。
回 転起 磁 力 を 表 す式 で,空 間 に対 す る分布 は正 弦 波,そ
れ をFm1と
す れ ば,このFm1を
振 幅 とす る正弦 分 布 の 起 磁 力 が時
間 tと とも に θの増 加 す る方 向へ 移 動 して い る。 F1=Fm1と
な る よ う な 位 置 は ωt-θ=0,す
の 移 動 す る 速 度 はdθ/dt=ω=2πf〔rad/s〕
な わ ち θ=ωtの
所 で あ り,こ
2f
こ こ で,v
相 の コ イ ル にiwを,w
磁 力 はつ ぎの よ うに な る。 Fu1=F0sinωtsinθ
〔rad〕
な る。 これ が
表せ ば,
Ns=120f/P〔rpm〕 と な る 。 こ れ を 同 期 速 度(synchronous
×2π=Pπ
〔s〕 で あ る 。
あ り,毎 分 で は60×(2f/P)=120f/Pと
基本 波 回転 起 磁 力 の回 転 速度 で,Nsで
P/ 2
で あ る か ら,一 周 に要 す る時 間 はPπ/2πf=
P/
電 動機 の極 数 が P の場 合 は,ギ ャ ップ を 一周 す る長 さを 電気 角 で 表 せ ば
よ って,毎 秒 の回 転 数 は2f/Pで
の よ うな位 置 θ
で あ る。
(4・7)
speed)と
い う。
相 の コ イ ル にiuを
流 し た 場 合 を 考 え る と,基
本波起
F1=Fu1+Fv1+Fw1 =3F0/
cos(ωt+θ)
2
(4・8)
とな って,こ の 起 磁 力 は,式(4・4)と 転 の向 きは 式(4・4)と
反 対 で あ る。
三 相 誘 導 機 の 回 転子 は,後 が,式(4・8)の
同 じ大 き さ,同 じ速 度 で,同 期 速 度 で 回転 す るが,回
で も述 べ る よ うに,回
転起 磁 力 の 回 転 方 向 へ 回わ るので あ る
よ うに.三 相 電 流 の うち,二 つ を 入 れ かえ る こ とに よ り逆 転 す る起 磁力 が つ
くれ る。 この こ とか ら,実 際 の電 動 機 の運 転 にお い て は,三 相 の 3線 の う ち任 意 の 2線 を 入 れ か え て,動 機 へ結 ぶ こ とに よ り,電 動 機 の回 転 方 向 を変 え る こ とがで き る。 (4)単
層 全 節 三 相 巻線 に よる起 磁 力
図4・5に
示 した 三 相巻 線 に三 相電 流 を 流 した
π
図4・10(a)は,図4・8の
三相 電 流 の
ωt=α=
/2
の瞬 時, す な わ ちiu=Im,iv=iw=
Im / 2
場合の起磁力を考え る。
と な って い る 場 合 の電 流 分 布 を示 し,同図(b)は この瞬 時 の起 磁 力分 希 を 示 した もの で あ る。 この 図 の(b)の 起 磁 力 の基 本 波分F1は,次
の よ うに して 求 め られ る。
(a) iu-Imの 瞬 時 の電 流分布
(b) iu=Imの 瞬 時 の起 磁力分布
(c) iu=√3/2Im
i ω
√3 I / 2 m
iυ=0
の瞬時の 起磁 力分布
図4・10三
相 くさ り巻 単層 巻 線 に 三相 電 流 を 流 した と きの起 磁 力
(4・9)
ま た,同 図(c)の 起 磁 力 の基 本 波分F1は,
(4・10)
と な る。
ま た は,図4・10(a)の 央 の 所 を θ=0に
電流 分 布 か ら直 接 求 め る と,ま ず u相 の三 つ の コ イル の うちの 中
と る と,iu=Imの
瞬時 に u相 の 三つ の コイ ル が作 る起磁 力 の 基本 波 分 は,
Fu2=F0sinθ
よ っ て,こ
れ ら の 和 は,
Fu=Fu1+Fu2+Fu3
(4・11)
ま た,同
じ時 刻 に v相 が つ くる起 磁力 の 基本 波 分 は,
(4・12)
同 様 に して,w 相 が つ くる起 磁 力 の基本 波分 の和 は,
/
(4・13)
よ っ て,u,v,w相
の 起 磁 力 の 基 本 波 分 の 和 は,
(4・14)
と な り,式(4・14)は
式(4・9)と
な お,式(4・11)に
同 じで あ る 。
お い て,2.879と
い う係 数 が あ る が,こ
れ は 同 じ相 に 属 す る コ イ ル が 三
つ の ス ロ ッ トに 別 け て お か れ た た め に 生 じ た も の で あ る 。 こ れ は,三
コ イル が 一 箇所 に 集 中
して お か れ れ ば 3 と な る べ き も の で あ る。 そ う して, 2.8794/3=0.9598 を 分 布 係 数(distribution (5)二
層,短
factor)と
い う。
節三 相 巻 線 の 起 磁力
図4・3お
よ び 図4・4に
(a) ωt=π 2の
瞬時の電 流分布
(b) ωt=
π /2
の
瞬時の起 磁力分布
(c) ωt=2
π/ 3
の
瞬時 の起 磁 力分布
図4・11二
層,短 節 三 相 巻線 の 起 磁力 分 布
示 し た,二
層,短
節,q=2
の三 相 巻 線 の 起 磁 力 の 基本 波 は,つ ぎ の よ うに な る。
ωt=
π/2
図4・11(a)は,図4・3の
巻 線 に流 れ る三 相巻 線 の 電 流 がiu=Imと
な る瞬 時,す な わ ち
の 瞬 時 の 電 流分 布 を示 し,同 図(b)は 同 じ瞬 時 の起 磁 力 分 布 を示 す。 この 分布 の基
本 波 分 は,
(4・15) また,同 図(c)の 起 磁 力 の基 本 波 分 は,
(4・16) π/ 6
と お き,こ
π / 2=
factor)と
だ け時 間 が経 過 す る間 に,そ の 分 布
だ け移 動,す な わ ち同期 速 度 で移 動 して い る。
な お,式(4・15)お ding
2 π/3-
位 置 が θ=
π/ 6
とな って,基 本 波 分 の大 き さは一 定 のま ま ωt=
よ び 式(4・16)に
含 ま れ る 係 数0.933を
基 本 波 に 対 す る 巻 線 係 数(win-
い う。 そ う して,
こ に,neはne=0.933×4nで ne=巻
あ る 。 一 般 的 に は,
線 係 数 ×実 際 の 直 列 巻 数
を 有 効 巻 数 ま た は 実 効 巻 数 と いい,分 布 巻 お よび短 節 巻 とな って い る巻 線 の代 りに,巻 数ne の 単 一 コ イル に お きか え,考 察 を 簡単 にす る こ とがで き る。 さ き の係 数0.933は,次
の 項 で 述 べ る分 布 係数kdと
係 数 は基 本 波 に 対 して はkd1=0.9659で ト分 だ けせ ま くした短 節巻 で,q=2の
短 節 係数kpの
あ る。 ま た,図4・11の
積 で,q=2の
分布
巻 線 は コ イル 幅 を 1ス ロ ッ
と きは 1極 当 た りのス ロ ッ ト数 は 6で,コ イル 幅 は 5
ス ロ ッ ト分 で あ り,こ の 場 合5/6の 短 節巻 とい う。 この場 合 の 短 節係 数 は,基 本波 に対 して
はkp1=sin(5/6)×(π/2)=0.9659で
あ り,基
本 波 に 対 す る巻 線 係 数kw1は,
kw1=0.9659×0.9659=0.9330 と して得 られ た もので あ る。 (6)分
布 係 数 と 短 節 係 数 分 布 係 数 は,同
じ 相 に 属 す る コ イ ル が q個 の ス ロ ッ トに 別
け て 配 置 さ れ る こ と に よ っ て 生 ず る 起 磁 力 の 和 が,q=1す
なわ ち 集 中巻 に した 場 合 に比 べ
て 減少 す る こ とを表 す 係 数 で あ る。 1ス ロ ッ トご と の 幅(こ 対 して は π/(3q)〔rad〕 た も の と,q
れ を ス ロ ッ トピ ッ チ と い う)を
で あ り,分
布係数は
π/(3q)だ
電 気 角 で 表 せ ば,基
本波起磁力に
け 位 相 の 異 な る 起 磁 力 波 を q個 加 え
個 が す べ て 同 じ位 相 の と き の 総 和 と の 比 で,図4・12の
よ う に ベ ク トル で 考 え
るこ とが で きる。 三 相 機 で は 一 相 に 属 す る ス ロ ッ トは π/3の 範 囲 に 割 り 当 て られ る 。こ れ を 相 帯(phase と い う 。 図4・12はq=4の で,一
場 合 で,四
つ の 起 磁 力 はAB=2sinπ/(2×3×q)で
つ の 起 磁 力AB,BC,CD,DEの あ る か ら,分
belt)
ベ ク トル 和 はAE
布 係 数kdは,
(4・17)
とな る。 これ が基 本 波 に対 す る分 布 係 数で,q の 値 の変 化 に 対す るkdの 4・2の
値 を 求 め る と,表
よ うに な る。
qが 非 常 に大 き くな ると,kdは
弧 の 長 さAEと
弦 の 長 さACEと
の比 に 近 づ き,q=∞
で は,
とな る。 表4・2基
図4・12分
布 係 数 を求 め る作 図
本 波 に対 す る 分布係数
短 節 係 数(short と に よ り,コ
pitch
factor)は,一
つ の コ イ ル の 幅 b(図4・13)を180゜
イ ル 辺 a,a′に 生 ず る起 電 力ea,ea′
に 生 ず る 起 電 力e0=ea+ea′
が2│ea│=2│ea′│よ
が 同 相 と な ら な い た め に,コ
以 下 にす る こ イ ル 端 子 t,t′
り小 さ くな る こ と を 表 す 係 数 で,図4・13
よ り,
∴
短 節係 数kp
(4・18)
た だ し, α=1-
b /τ
図4・13
この値 のb/τ の 変 化 に対 す る変 化 は,表4・3の を 小 さ くす る とkpが
短節 係 数
よ うに な る。 こ の表 で み る よ うに,b/τ
小 さ くな るので,コ イ ル巻 数 を 減 ら した こ とと等 価 に な り,無 駄 の よ
うで あ る が,後 で述 べ る よ うに,高 調 波 磁 界 に対 す る短 節係 数 は あ るb/τ に お いて 非 常 に 小 さ くな り,高 調 波 起 磁力 を除 くの に有 効 で あ る。 図4・14は,種
々 の コイル ピッチ に対 す る
各 調 波 の短 節 係 数 を示 す 。
図4・14
(7)高
調 波起 磁 力
図4・5の
短 節 係数
矩 形 波 起磁 力 は,式(4・1)の
よ うに 基 本 波の ほか に す
べ て の 奇数 次 の 空 間高 調 波 を 含 ん で い る。 た だ し,そ の 振 幅 は高 調 波 次数 に反 比 例 して小 さ
表4・3
基本 波 に対 す る短 節係 数
くな って い る。 三 相 の各 相 コイ ル が この よ うな高 調 波 を 含 む と き,三 相 分 の 合成 起 磁 力 が ど うな るか を 考 え て み る。 第 3高 調波 につ い て は,u,v,w各 相 の 第 3高 調 波 起 磁力 を,そ れ ぞ れFu3,Fv3,Fw3と 書 け ば,
で あ る か ら,
(4・19) と な って,第 3高 調波 起 磁 力 は u,v,wの三 相 分 を 合成 す る と消 滅 す る。 この こ と は,3 の倍 数 の 奇 数 高 調 波 につ いて も同 じで,す な わ ち第 9,第15,第21,… 第 5高 調 波起 磁 力 の合成 は,つ ぎの よ うに な る。 Fu5=1/
5F0sinωtsin5θ
… 等 の す べ てが 消 滅 す る。
(4・20)
とな って,F5は
回 転起 磁 力 とな るが,振 幅 は基 本 波 の そ れ の1/5,そ の速 度 はdθ/dt=-ω/5
で,基 本波 の1/5の 速 度 で あ り,t の経 過 と と もに 基本 波 起 磁 力 と反 対 の 方 向へ 回 転 す る。 同様 に して,第
7高 調波 を 合 成 す る と,
(4・21)
と な っ て,F7の
振 幅 は 基 本 波 の1/7,そ
の 速 度 も1/7で
あ り,回
転方 向 は基 本 波 のそ れ と同
じで あ る。 高 調 波 の 次 数 を h と し,h=2g+1と g=0は
して 表 す と,
基本波
g=1,4,7,10…
…
g=2,5,8,11…
で は,3
… で は,逆 波 の1/hで
g=3,6,9,12…
…
で は,正
の 倍 数 の調 波 で 合成 起 磁 力 は 零 転 す る 回 転 起 磁 力 と な り,そ ある 方 向 に 回 転 す る 起 磁 力 と な り,そ
基 本 波 の1/hで よ っ て,図4・9の
F7=
1 /5 1 /7
3
ある
の大 き さの基 本 波
/2
F0×
F0×
3 /2 3 /2
の大 き さの 第 5高 調 波
の大 き さの 第 7高調 波
一 般 に は,
の 第2g+1次
高 調 波(た
だ し,g=1,4,7,10…
を含 ん で い る。 図4・10の
の振 幅 お よび速 度 は
起 磁 力 は,
F1=F0×
F5=
の 振 幅 お よび 速度 は基 本
起 磁 力 に は, F1=3F0×
F5=3F0×
3
×0.9598
/2 3 /2
×
1 /5
×0.2175の
の大 き さ の基 本 波
大 き さ の 第 5高 調 波
…
を 除 く)
3
F7=3F0×
/2
×1/ 7
×0.1773の
大 き さ の 第 7高 調 波
を そ れ ぞれ 含 ん で い る。 な お,F5お
よびF7に
含 まれ る数 値0.2175お
よび0.1773は,後
で 述 べ る よ うに,そ
れ ぞ れ第 5高 調 波 お よび第 7高 調 波 に対 す る分 布 係 数 で あ る。 ま た,F1に は,表4・2に
示 した よ うにq=3の
つ ぎに,図3・11の
含 ま れ る0.9598
場 合 の 基本 波 に 対 す る分 布 係 数 で あ る。
起 磁 力 の大 き さは,
等 を それ ぞ れ 含 ん で い る。 な お,F1に
含 ま れ る0.9330は,q=2の
の 短 節 係 数0.9659と るkdhとkphの
(8)高
場 合 の 分 布 係 数0.9659と,b/τ=5/6の
の 積 で あ る 。 な お,F5,F7に
含 ま れ る0.06698は,次
場合 の 項 で も述 べ
積 で あ る。
調 波 起 磁 力 に対 す る分 布 係 数 と短 節 係 数 h次 の 空間 高 調 波 に 対 す る空 間角 は
基 本 波 の そ れ の h倍 に な るか ら,h 次 の 高 調波 に対 して は,図4・11の π/3qはhπ/3qと
な る ので,式(4・17)の
π/3はhπ/3に,
分布 係 数 は,h 次 の 高 調波 に対 して は,
(4・22)
で 表 され,こ
の 値 は 表4・4の
よ う に な る。 ま た,図4・13の
表4・4高
調波に対する分布係数
角 α
π/2
は,h 次 の高 調 波 に 対
π/
して はhα
2
と な るか ら h次 の高 調 波 に対 す る短 節係 数 は,
kph=cos( hα
π/
2
)
(4・23)
とな る 。 〔4〕 回転 子 の 構 成 回 転 子 に はか ご形 と巻 線 形 とが あ るこ と は前 に も述 べ た が,ど の形 で も回 転子 鉄 心 は 固定 子 と同 様 に,素 板 の厚 さ0.35ま (1)か
ご形 回転 子
(a)か
たは0.5mmの
か ご形 回 転 子 は,図4・15(a)の
ご形回転子の鉄心素板 図4・15か
(a)深
電 気 鉄 板 が 用 い られ る。
み ぞ か ご形 の ス ロ ッ トお よ び 導体例 図4・16特
(b)200V,8
よ うに鉄 心 外 周 に 沿 って 設 けた
極,3.7kWの
例
ご形 回 転 子
(b)二 重か ご形 回転子の 鉄心素板 殊 か ご形 回転 子
(c)
ス ロ ッ ト内 に,裸 の導 体 を 入 れ,図4・15(b)の
よ うに 導 体 の端 部 を 端絡 環(end
ring)で 短
絡 して 電気 回 路 を つ くる。 この 形 が か ご の形 を して い るので か ご形 とよ ばれ る。 導 体 は,図4・15(b)の
よ うな 丸棒 の ほか に角 棒 も用 い られ るが,図4・16(a)の
よ うに
帯 状 の も の も用 い られ,半 径 方 向 に 深 い ス ロ ッ ト内に入 れ る方 式 もあ り,こ れ を 深 み ぞか ご 形 とい い,ま た 同 図(b)の よ うに,外 側 お よび 内側 の 二重 にか ご形 を お く方 式 もあ る。 これ を 二 重 か ご形 とい う。 小 お よび 中容 量 のか ご形 機 に,ア ル ミニ ウム を導 体 と した もの が 広 く用 い られ て い る。 こ れ は成 層鉄 心 を つ くり,ス
ロ ッ ト内 へ 高 温 で 溶 か した アル ミニ ウムを 流 し込 ん で,端
絡環
も同 時 に鋳 物 と して つ くり上 げ る もので,ア ル ミダイ カ ス ト回 転 子 と い う。 従 って,か ご形 はつ ぎの よ うに分 類 で き る。 {普通か ご形 … …… …
かご形回転子
小容量機 のみ
深 み ぞ(deep-slot)か
特殊か ご形
{
二 重 か ご 形(double
ご形 … …5kW程 squirrel-cage
type)…
度以上 〃
か ご形 回 転 子 に は,一 次 巻線 の回 転 起 磁 力 に よ って生 じた回 転磁 界 が,回 転 子 各導 体 に起 電 力 を生 じ,こ れ に よ って ほぼ正 弦 状 に 分 布す る電 流 が流 れ て,こ の電 流 と回転 磁 界 の 間 に トル クを生 ず る。 誘 導 機 とい う名 は同 期 速度 で回 転 す る基 本波 回 転 磁界 の 中に お かれ た 回 転 子 に電 磁 誘 導 に よ って 起 電 力 お よ び電 流 を生 じ トル クを 生 ず る こ とか ら名 づ け られ た もの で,回 転子 の 速度 Nrは,一
般 に 同期 速 度Nsよ
s=
り数 % 低 い速 度 で 回 転 す る。 そ う して,
Ns-Nγ/
Ns
を す べ り(slip)と い い,こ の値 が 特 性 を左 右 す る重 要 な因 子 で あ る。 一 次 電 流 の周 波 数 は もち ろ ん電 源 周 波数 で あ るが,回 転 子電 流 のそ れ は 電源 周 波 数 に sを 乗 じた値 に な り,こ れ を す べ り周 波 数 とい う。 普 通 の 運転 状 態 で は sは小 さい の で,す べ り周 波数 は 数Hz以
下 で 直 流 に近 い。
か ご形 の全 周 の 棒 の数 は,ギ ャ ップ の磁 束 分 布 が完 全 な 正弦 波 形 で あ れ ば,何 本 で も よい ので あ るが,空 間 高 調 波起 磁 力 が あ るた め に,あ る棒 数 に お い て異 常 な トル クや 騒 音,振 動 を生 ず る ことが あ る。 従 って,棒 の 数 は 自 由に は選 べな い 。何 本 が 適 切 で あ るか を 解 析 的 に 求 め る に とは非 常 に 困難 で あ る。 異 常 な特 性 を 生ず るの は,固 定 子 と回 転子 の ス ロ ッ ト数 の 組 み 合 わ せ に大 きな 関係 が あ り,例 え ば 棒 数 が 固 定 子 ス ロ ッ ト数 と同 じ組 み 合 わ せは必 ず とい って よい ほ ど悪 い特 性 と な る。 表4・5は,実
際 に 造 られ特 に 異 常 が な い例 で あ る。
表4・5か
ご形 回転 子 の 棒数N2と
固 定子 ス ロ ッ ト数N1
特 殊 か ご形 機 は,誘 導 機 の二 次 回路 の 周波 数 がす べ りに比 例 す る こ とを 利 用 し,周 波数 が 高 い始 動 時 に,表 皮 作 用 に よる 二 次抵 抗 の 増 加 を起 こ させ,運 動 時 に は極 く低 周 波 とな る の で 表 皮 作 用 が な くな り,低 い 抵抗 と な る よ うに工 夫 され た もの で,始 動 時 の特 性 が 普 通 か ご に 比 べ て 若 千良 い 。 (2)巻
線形 回転 子 巻 線 形 回 転子(wound-rotor)は,絶
縁 した コイル を 用 い た 三相 巻
線 を ス ロ ッ トに収 め る。 普 通 は波 巻 巻 線 が 用 い られ,星 形 結 線 と し,そ の 三 つ の 端 子 は主 軸 の端 に設 け られ た三 個 の ス リップ リン グに結 んで あ る。 ス リ ップ リング は ブ ラシを 通 して 回 転 子回 路 を外 部 へ 導 び くた め の装 置で,外 部 に可 変 抵 抗 器を つ な ぐと か,ス
リ ップ リングを
通 して外 部 か ら三 相 電 圧 を 加 え る こと もで き る。 図4・17は,巻
線 形 回 転 子 の鉄 心 の例 を,図4・18は
電 気 回 路 を示 す。 こ の回 路 図 の表 し
方 は特 性 解 析 に しば しば 用 い られ る。 図 の θは u,u′ の 巻 線 軸 間 のず れ の 角 で,電 動 機 が 定 速度 で 回 転 して い る 場合 を 考 え る と,θ=0゜ に な った 瞬 時 をt=0と e=P/2×(2πNγ/60
して,任 意 時 刻t に お いて θは,
)t(rad)
(4・24)
で 表 され る。 図4・19は,3000V,6
極,37.5kWの
巻 線 形 回 転 子 の 例 を 示 す も の で,全
ス ロ ッ ト数
図4・17巻
線形 回転子の 鉄心素板例 図4・18巻
図4・19巻 72(毎 極,毎 相 で はq2=4),巻 数 は2×6×4=48本
線形電動機の電気回路
線形 回転子の巻線例
線 は波 巻,1 ス ロ ッ ト内の 導 線数 は 2本 で,一 相 の直 列導 線
で あ る。
これ に対 し,一 次 の一 相 の 有 効直 列 導 線 数 は1188本
で,1188/48=24.8を
導 線 数比 また
は 巻数 比 とい う。 〔5〕 ギ ャ ッ プ 固定 子 と回 転 子 の 間 の隙 間 を 空隙 また は ギ ャ ップ(gap)と
い い,誘 導機 は直 流機 や同 期 機
に 比 べ 著 し くせ ま い。 ギ ャ ップを 広 くす る と機 械 工 作 上 は好 都 合 で あ る が,回 転磁 界 を つ く るた め の電 流す な わ ち励磁 電 流 が 多 くな り,電 動 機 の 主要 特 性 の う ち力率 が 悪 くな る。
ま た,ギ
ャ ップは 全 周 に わた って 一様 で あ るべ きで,不 平 等 が あ る と磁気 的 な力 の不 平 衡
を 生 じ振 動 や 騒音 の原 因 とな る。 一 方,ギ ャ ップ が不 当 にせ ま い と後 で 述べ る漏 れ リア クタ ン スが 大 き くな り,最 大 出力 や 最大 トル クを 低 下 させ,鉄 損 も増 すの で,ギ ャ ップ 長 の 決定 は 設 計 上重 要 な問 題 で あ る。
図4・20
ギ ャ ップ 長 さ(中 村 辰 二 博 士 に よ る)
実 際 の 電 動機 のギ ャ ップ長 は お よそ 図4・20の
4・2
よ うな値 で あ る。
三 相誘 導 機 の特 性
三 相 誘 導 機 が1880年
代 に発 明 され て以 来,構
造 の進 歩 と と もに,動
作理 論 の解 析 に つ い
て も早 くか ら急 速 に進 め られ た 。 は じめ は対 称 三 相電 圧 が 加 え られ,定 常運 転 され る場 合 の 特 性 追 究 が主 で あ った が,電 源 電 圧 の不 平 衡 や,電 動機 側の 巻 線定 数 の 不平 衡 が あ る場 合 の 特 性,さ
らに始 動 時 の よ うに電 圧 を 急 に加 え た 場 合 の電 気 的 お よび機 械 的 な過 渡 現 象,電 圧
や 負 荷 が 急 に変 化 した 場合 の過 渡現 象 の解 析 も行 われ た。 巻 線 の 起 磁力 に含 まれ る高 調 波 分 の影 響 や,ギ
ャ ップ に面 して ス ロ ッ トが あ る こ とに よ る
磁 気 抵 抗 の 不平 等 な どを考 慮 に入 れ た解 析 は,古
くか ら行 わ れ た が,困 難 な 問題 の 一 つ で あ
る。 近 年 に な って 印加 電 圧 に著 し くひず み が あ る場 合 や,従 来 ほ とん どが 定 周波 数 の 電 源 を用 い た ので あ る が,可 変 周 波数 で,か つ,ひ ず み波 電 圧 を加 え る例 が多 くな り,こ の よ うな場 合 の特 性 検 討 が 行 わ れて い る。
誘 導 機 は,変 圧 器 の よ うに一 次 と二 次 の 回路 が あ って,二 次 は 一 次 か らの誘導 に よ って 電 流 が流 れ て 動 作 す るの で あ るが,変 圧 器 と異 な るの は,二 次 回 路 が 回転 す る こ とで あ り,ま た二 次 回 路 の 周 波 数 が さき に も述 べ た よ うにす べ り周 波数 とな って い る ことで あ る。 この こ とを計 算 上 どの よ うに 扱 うか に よ って,解 析 の と りか か り方 は一 通 りで は ない 。 〔1〕 巻線 の イ ン ダ クタ ン ス (1)有
効 イ ン ダ ク タ ンス
さき に巻 線 係数 の所 で述 べ た よ うに,誘 導 機 の 一相 の 巻線
は 一極 分 だ けを 見 て もい くつ かの ス ロ ッ トに 分布 して 入 れ られ るの で あ る が,こ れ を集 中 し た 一 つ の巻 線 にお きか え,実 際 の 巻 数 の代 わ りに 有 効巻 数 を考 え る こ とがで き る。 図4・21は
この 仮 想 集 中巻 巻 線 で,こ の 巻
線 に 電 流i1〔A〕 は,ギ
を 流 す とき に生 ず る起 磁 力
ャ ップ部 分 で は図4・4(a)の
よ うに
図4・21一
相を代表す る仮想集中巻巻線
な り,有 効 巻 数 をne1と す ると起 磁 力 の基 本 波分 の最 大 値 は,4ne1i1/π とな る こ とは さ きに 述 べ た 。 こ の起 磁 力 の す べ てが 長 さ δ〔m〕の ギ ャ ップ 部 分 に働 ら くと し,す な わ ち固 定 子 お よび 回 転 子鉄 心 の磁 気 抵 抗 を無 視 す ると,起 磁 力 の平 均 値Favは
最 大 値 の2/π 倍 で,
(4・25) であ る。 この起 磁 力 が 面 積 τli〔 ㎡ 〕,長 さ2δ 〔m〕の磁 路 に 働 ら く(た だ し,τ は一 極 間 隔 〔m〕,liは 鉄 心 の軸 方 向 の 有効 長 さ 〔 m〕)と きに生 ず る磁 束 を φ 〔Wb〕 とす る と,
(4・26)
で表 され る。 た だ し,μ0=4π ×10-7は 真 空 の透 磁 率 で,空 気 の 比透 磁 率 を 1とす る。 図4・21の
巻 線 の 基 本 波磁 束 か ら求 めた 有効 イ ン ダ ク タ ン スL1は,式(4・26)のi1=1
〔A〕当 た りの磁 束 に よ って生 ず る鎖 交 数 で あ るか ら,
(4・27) とな る 。す な わ ち,L1はne12に (2)一
比 例 し,δ に反 比 例 す る。
次 二次 間 の相 互 イ ンダ ク タ ンス
図4・22は
一次 お よび 二 次 巻線 の 一 相 ずつ を
示 し,二 次 の 中心 が 一 次 の 中 心 と θ〔rad〕だ けず れ て い る瞬 時 を 画 い た もの で あ る。 一 次 に 電 流i1が 流 れ る とき に ギ ャ ップ に生 ず る磁 束 数 は,式(4・26)で
表 され,平 均 磁 束
密 度 をbavと
す る と,
この 分布 の 最 大 値 をbmと
す る と,
図4・22一
次,二 次 間 の相 互 イ ンダ ク タ ンス
とな る。 こ の値 を 最 大 とす る磁束 密 度 分 布 を 図4・22の
正 弦 曲線 で示 す 。 この磁 束 が二 次 巻線 との間 に生 ず る鎮 交数 を 求 め るた め
に,コ イル 辺 の位 置 か ら任 意 の距 離x〔m〕 あ り,二 次 と鎖 交 す る磁 束 φ21は,x=
の 所 に幅dx〔m〕
τ/ π θ
から
を 考 え る と,dφ=blidxで
τ/
θ+τ ま で積 分 す れ ば 求 め られ る。
π
(4・28) よ っ て,図4・22の
瞬 時 の 一 次,二
次 間 の 相 互 イ ン ダ ク タ ン ス をM21と
す る と, (4・29)
(4・30)
た だ し,
で,θ=0の 図4・22の
とき の一 次,二 次 間 の 相互 イ ンダ クタ ンスで あ る。 よ うに,一 次,二 次 と も全 節巻 の コ イル を考 え れ ば,相 互 イ ンダ ク タンス は両
コイル の 中心 軸 間 の余 弦 に比 例 す る と い う関係 は 重 要で あ る。 図4・18の
よ うに,一 次,二 次 とも に三相 巻 線 を もつ場 合 を考 え る と,各 相の 相互 イ ンダ
クタ ン スは,式(4・29)か
ら考 え て つ ぎの ように 表 す こ とが で き る。
(4・31)
(3)一
次 各相 間 の 相互 イ ンダ ク タ ン ス
三相 巻 線 は 各 相 の 巻 線軸 が2π/3ず つ ず ら し
た配 置 にな って い るか ら,図4・18のuv間,vw間,wu間
の相互 イ ンダ クタ ン スは,つ
ぎの よ うに な る。
(4・32)
(4)二 27)の
次 各 相 の有 効 イ ン ダ クタ ンス
巻 数ne1の
二 次 各 相 の 有 効 イ ン ダ ク タ ン スL2は,式(4・
代 り に 二 次 の 巻 数ne2と
お け ば よ く,
(4・33) (5)二
次 各 相 間の 相亙 イ ン ダ クタ ン ス
式(4・32)と
同様 に考 え て,次 の よ うに な る。
(4・34)
(6)漏
れ イ ン ダ ク タ ンス
に 示 し た よ う に,ギ
回 転 機 の 巻 線 に 電 流 を 流 す と き に 生 ず る磁 束 は,図4・21
ャ ッ プ を 通 して 一 次,二
次 の 両 巻 線 に 鎮 交 す る 磁 束 の ほ か に,ス
内 だ け お よ び コ イ ル 端 部 だ け に 生 ず る磁 束 が あ り,こ 漏 れ 磁 束 の お も な も の は,つ (a)ス
ロ ッ ト漏 れ(slot
(b)ジ
れ は 図4・21の
flux)と
い う。
ぎ の よ う に 別 け られ る 。 leakage)磁
流 に よ って 生 ず る 磁 束 の う ち,ギ φsで,こ
れ を 漏 れ 磁 束(leakage
ロッ ト
束
図4・23(a)の
ャ ッ プ ま で 出 な い で,巻
よ う に,ス
ロ ッ ト内 の 巻 線 の 電
線 を 取 り巻 く小 範 囲 に 生 ず る 磁 束
磁 束 と は 別 で あ る。
グ ザ グ 漏 れ(zig-zag
leakage)磁
通 っ て 相 手 側 の 鉄 心 に は 到 着 す る が,歯
束
図4・23(a)の
端 を 渡 っ て 生 じ,相
φzの
よ う に,ギ
ャ ップを
手 側 の巻 線 に は鎖 交 しない磁 束
が あ る 。 こ れ を 千 鳥 漏 れ 磁 束 と も い う。 (c)コ
イ ル 端 漏 れ(coil-end
分 に 生 ず る 磁 束 で,こ
leakage)磁
れ も 図4・21の
束
図4・23(b)の
磁 束 とは別 の もので あ る。
φeの よ う に,コ
イル端 部
(a)ス
ロ ッ ト漏 れ 磁 束 φsと 千 鳥 漏 れ 磁束 φz
(b)コ
図4・23漏
(d)ベ
イル 端 漏 れ磁 束 φsと ス ロ ッ ト漏 れ磁 粛 φs
れ 磁束 の 例
ル ト磁 気 漏 れ(belt leakage)磁 束
これ は 巻線 形 機 にの み 生 ず る 漏 れ磁束 であ
る。三相 巻 線 の各 相 は π/3の相 帯 幅 内 にあ る ス ロ ッ トに 収 め られ るが,一 次 と二次 の 相帯 は, 回 転子 位 置 の変 化 に応 じ,両 者 が 一致 した り,ず れた りを繰 り返 して い る。両 相帯 が 一致 し た とき は両 巻線 の電 流 に よって 生 ず る磁 束 は相 殺 す るが,ず れ て い る と きは相 殺で きず 漏 れ 磁 束 と な る。 これ らの 漏 れ磁 束 は,一 次 お よび二 次 巻線 の それ ぞれ に生 じ,そ れ ぞれ 一 次 漏 れ磁 束 お よ び 二 次漏 れ 磁 束 とい う。 一 次 の一 相 に電 流i1を
流 す とき,i1に
よ って生 ず る漏 れ磁 束 の 合 計 φl1に よ る一 次 巻 線
の鎖 交数 をnelφl1と お くと き, l1=
ne1φl1
(4・35) /i1
を 一 次 の 漏 れ イ ン ダ ク タ ン ス と い い,ま 同 様 に,二
次 の 一 相 に 電 流i2を
た ωl1=x1を
一 次 漏 れ リア ク タ ン ス と い う。
流 す と き 漏 れ 磁 束 φ12に よ る鎖 交 数 をne2φl2と
お く と き,
ne2φ12
l2=
(4・36) /i2
を 二 次 の 漏 れ イ ン ダ ク タ ン ス と い う 。 ま た,ωl2=x2を l1は,式(4・27)のL1に 程 度 の 小 さ い 値 で あ る が,誘
比 べ,ま
たl2は
二 次 漏 れ リ ア ク タ ン ス と い う。
式(4・33)のL2に
導 機 に お い て は,こ
れ らl1,l2の
比 べ,そ 大 小 が,最
れ ぞ れ1/20∼1/30 大 出 力や 最大 ト
ル クの 値 に 直 接 影 響 す る 重 要 な 値 で あ る 。
〔2〕 二 次 開 放 時の 電 流 と起 電 力 図4・18の
よ うな一 次,二 次 ともに 三相 の 誘導 電 動機 の 二 次 を開 放 し,一 次 か ら対 称 三相
電圧 を 加 え た場 合 を考 え る(図4・24)。 一 次 に加 え る電 圧 を
た だ し,鉄 損 は こ こで は無 視 し,後 で 考 慮す る。
(4・37) と お き,こ iwoと
の 電 圧 に よ っ て 一 次 各 相 に 流 れ る電 流 をiuo,ivo,
お く と,u
相 に つ い て は,つ
ぎ の 式 が 成 り立 つ 。
(4・38) 図4・24の
回 路 で は,ivo+iwo=-iuoの
関 係 が あ るか ら,
上 式 は つ ぎ の よ うに簡 単 に な る。
(4・39) こ こ で,電 びIuoと
圧,電
流 を ベ ク トル で 表 し,そ
お き,d/dt=jω
れ ぞ れVuお
と お くと,式(4・39)は
よ 図4・24一
つぎのよ
次,二 次 と も に 三相 の 誘導 機
うに な る。
(4・40)
で,さ
た だ し, ス で あ り,x1′
き に 述 べ た よ う にx1は
漏 れ リア ク タン
は 励 磁 リ ア ク タ ン ス と い う。 上 式 か ら,
(4・41)
と な り,他
の 相 の 電 流Ivoお
お よ びVwと
よ びIwoは,υvお
よ び υwを
ベ ク トル で 表 し,そ れ ぞ れVv
お く と,
と書 け る。 二 次 は開 放 して あ るか ら電流 は流 れず トル ク も生 じな い が,回 転 子 を外 力 で 同期 速 度Ns よ り低 い あ る速度Nrで t=0に
相 順 の方 向に 駆 動 して や った とす る。
お い て,図4・18の
u相 と u′相 の軸 が一 致 して い た とす ると。
と書 け る 。 た だ し,こ こ の と き,二
こ で は 2極 の 電 動 機 を 考 え る こ と に す る 。
次 の u′相 に 生 ず る 起 電 力 をeu′
eu′=-d
/dt
とす る と,
{Mu′uiuo+Mu′vivo+Mu′wiwo}
(4・42)
で表 され る。
こ こ で,
と お き,式(4・41)のIuoお
よ びIvo,Iwoを
瞬 時値 の形 へ もどせ ば,
(4・43)
と書 け る 。 こ の 関 係 と 式(4・31)と
を 用 い て 式(4・42)を
簡 単 に す る と,
(4・44) と な る 。 た だ
し,s=(ω-ω
γ)/ω=(Ns-Nγ)/Nsで,す
こ こ で,3ωM/2=Xm,V1/Z1=Io,XmIo=Eu′oと eu′o=S×
べ りで あ る。 お
く と,
√2Eu′osin(Sωt-ψ0)
と書 け,他 の 相 につ い ては,
(4・45)
と な る 。 た だ し,Ev′o=Ew′o=XmI0で
あ る 。
これ ら二 次 各 相 の起 電 力 は対 称三 相 で あ るが,そ の角 周 波数 はsω で,一 次 の電 圧,電 流 の角 周 淀数 ωのs倍 で あ る。 二 次 回路 が 閉 じ られ,あ るす べ り sで 運 転 され て い る場 合 も,二 次 には す べ り周 波 数 の起 電 力 を 生 ず るか ら,二 次 電流 もす べ り周 波 数 とな る。 ま た,式(4・40)は
つ ぎ の よ う に も書 け る 。
Vu=(γ1+jX1)Iuo=(r1+jx1)Iuo+jX1′Iuo=(γ1+jx1)Iuo+Euo
と お く と,Euoは
u相 の 逆 起 電 力,(γ1+jx1)Iuoは
(4・46)
漏 れ イ ン ピー ダ ン ス 降 下 で あ る 。そ う し
て,EuoとEu′oと
の 関 係 は,次
の よ う に な る。
(4・47)
〔3〕 定 常運 転 中 の 電圧,電 流,電 力 関係 図4・24の
二 次 回 路 が閉 じられ,一 次 に対 称三 相 電 圧 が加 え られ,あ るす べ り sで定 常 運
転 して い る場 合 を 考 え る。 この場 合,二 次 各 相 には す べ り周 波 数 の起 電 力 を生 じ,二 次電 流 の周 波数 もす べ り周 波 数 と な って い る。 (1)電
圧 っ りあ いの 式
一 次,二
次 の 電 流 は 対 称 三 相 と な る か ら,そ
れ ぞれ の 電流 を
つ ぎ の よ う に お く。 こ の よ う な 電 流 が 流 れ る た め の 電 圧 の 式 を 導 び くこ と に す る 。 図4・24に
お い て,一
次 の 各 電 流 をiu,iv,iw,二
次 の 各 電 流 をiu′,iv′,iw′ と お き,
iu=√2I1sinωt
(4・48)
とお く。 ただ し,β は未 知 の角 で あ る が,こ れは 後 で 決定 で き る。 一次 u相 に つ い て は
,つ ぎ の式 が つ くれ る。
(4・49)
二 次 は 短 絡 して あ るか ら印 加 電圧 を 零 と し,u′ 相 に つ いて は,
(4・50)
と な る 。 た だ
(2)ベ
し,式(4・49),(4・50)に
ク トル 図
お い て,θ=(1-s)ωtで
式(4・49)は,つ
あ る 。
ぎの よ うに も書 け る。
(4・51)
ま た,式(4・50)は
つ ぎの よ うに書 け る。
(4・52)
は,二
た だ し,
次 全 自 己 リア ク タ ン ス で あ る。
式(4・52)は,√2I2sin(sωt-β)=iu′
を 基 準 ベ ク トル に と っ て,図4・25(a)の
よ うな
ベ ク トル 図 が つ くれ る 。 ま た,式(4・51)は
√2I1sinωt=iuを
基 準 ベ ク トル に 取 り,図4・25(b)の
よ うなベ ク
トル 図 が つ くれ る 。 式(4・52)の
第 3項 は 一 次 電 流 に 関 す る 量 で あ る が,そ
ま た 式(4・51)の
の 周 波 数 は す べ り周 波 数 で あ り,
右 辺 第 3項 は 二 次 電 流 に 関 す る 量 で あ る が,周
そ う して,図4・25(a)よ
β=
π /2
+ψ2
波数 は 電 源 周波 数 で あ る。
り,
∴sinβ=cosψ2,
cosβ=-sinψ2
で あ る 。 た だ し,ψ2=tan-1(sX2/γ2) よ っ て,未 4・25(a)の
知 の 角 β は 二 次 回 路 の 定 数 とす べ り s と か ら な る 。 そ う して,β ベ ク トル 図 中 のI1お
よ び 同 図(b)のI2の
位 相 が きま る。
に よ って図
(a)二
次 回路 の ベ ク トル 図 。 た だ し,I1は 二 次 か らみ た ベ ク トル 図4・25一
(3)一
式(4・53)か
次 回 路 の ベ ク トル 図 。 た だ し,I2は 一 次 か らみ た ベ ク トル
次 お よび二 次 回路 の ベ ク トル 図
次 か ら見 た一 相 の イ ン ピーダ ンス
お よ び 同 図(b)よ
(b)一
図4・25(a)よ
り,
らI2を
り,
(4・53)
消 去 す れ ば,
(4・54)
Z1tは,電
源 か らみ た一 相 の イ ン ピーダ ンスで あ る。
ま た,I2とI1の
関 係 は,式(4・53)よ
り
(4・55)
で 表 され る。 (4)入
力 と銅 損
し て,同
図4・25(b)に
お い て,ψ1はI1がV1よ
り遅れ る角 で あ る。 そ う
図 よ り, V1cosψ1=γ1I1+XmI2sinβ
で あ り,両
辺 に3I1を
乗 ず る と,
3V1I1cosψ1=3γ1I12+3XmI1I2sinβ と な る が,上
式 の 左 辺 は 明 らか に 三 相 分 の 入 力,右
(4・56) 辺 第 1項 は 一 次 の 銅 損 で あ り,第
2項 は
二 次 入 力 と い い,一 る と,式(4・55)を
次 か ら二 次 へ 伝 え ら れ る パ ワ ー で あ る 。 つ ぎ に,二
次 銅 損 をpc2と
す
用 い て,
(4・57) で あ り,ま た,二 次 入 力 は つ ぎの よ うに書 きか え られ る。
(4・58) 二 次入 力 か ら二 次 銅 損 を 引 い た もの は 機 械的 出 力 で,こ れ をP0と
す れ ば,
(4・59) と な る。
2 (5)ト
ルク
トル ク T は,出
力P0と
回転 子 角 速 度
ωr=
/P
×ω(1-s)と
の 比 で あ り,
つ ぎの よ うに な る。 た だ し,P は極 数 で あ る。
(4・60) と な る。 入 力 以下,出 力,ト ル ク等 の式 の 検討 は後 で 改 め て行 う。
〔4〕 漏れ係数 と主要特性式 式(4・40)以
降 の 式 の 中 で,
お よび
を,そ
れ ぞれ 一 次 の 全 自 己 リア ク タン ス,二 次 の 全 自己 リア ク タン ス お よび 一 次二 次 間 の 全相 互 リ ア ク タン ス とい う こ とは 前 に述 べ た 。 そ うして,
(4・61)
を,そ れ ぞ れ一 次 お よび 二 次 の漏 れ係 数 とい う。 ま た,
を 漏 れ 係 数 とい う。 こ の σは,電 動 機 の特 性 に重 要 な影 響 を 及 ぼ す係 数 で あ る。 ま た,σ1,σ2と σの 関係 は, M2=L1L2で
あ るか ら,
(4・62)
と な る 。 こ の σ は,後 σ2は
で 述 べ る よ う に 実 測 で き る 値 で あ り,一
σ の ほ ぼ1/2前
後 と 想 像 で き る か ら,σ1×
σ2は
般 に0.06∼0.1で
あ る 。 σ1,
σ1お よ び σ2に 比 べ て 非 常 に 小 さ く,
σ≒ σ1+σ2
と お くこ と が で き る 。 こ の 漏 れ 係 数 σ を 用 い る と,式(4・54)の
イ ン ピー ダ ン スZ1tは,つ
ぎ の よ うに 書 け る。
(4・63) よ っ て,
(4・64) 式(4・59)に│I1│2を
代 入 す れ ば,
(4・65) ま た,ト
ル ク の 式(4・60)は
つ ぎの よ うに な る。
(4・66) これ ら出 力P0や
トル クTが す べ り sに よ って どの よ うに変 化 す るか は,次
の項 で等 価 回
路 を 求 め た 後で 検 討 す る。
4・3等
価回 路 と特 性 式
三 相 誘 導 機 の 銅損 以 外 の 損失 を無 視 した 場 合 の 等 価 回 路 は,式(4・54)の Z1tか
イ ン ピー ダ ン ス
らつ くる こ とが で き る。 この 回 路 に鉄 損 や機 械 損 を考 慮 した修 正 を 加 え れ ば,実 用 的
な等 価 回路 を つ くれ る。 〔1〕 等 価 回 路 の原 形 とベ ク トル図 式(4・54)のZ1tと
は,つ
ぎ の形 の イ ン ピー ダ ンス で あ る。
(4・67) こ こ で,さ
き に も式(4・40)以
降 で 使 用 した よ う に,X1,X2を
漏 れ リア ク タ ン ス と全 有 効
リア ク タ ン ス と に 別 け る 。 X1=x1+X1′,X2=x2+X2′,X1′X2′=Xm2
よ っ て,式(4・67)は,つ
(4・68)
ぎ の よ うに変 形 で き る。
(4・69)
と な る 。 上 式 で,
(有 効 巻 数 比)2 で あ り,ae2γ2=γ2′
お よ びae2x2=x2′
は,一 次 に換 算 した(ま た は一 次 側 か ら見 た)二 次 抵 抗 お よび 二 次 漏れ リア ク タ ンスで あ る。 式(4・69)は
図4・26(a)の
よ うに画 くことが で き る。 これ を 等 価回 路 の 原 形 と称 してお く。
原 形 の回 路 に お いて,
と書 け るか ら,原 形 の 回路 は 同 図(b)の よ うに 画 け る。 図4・26(b)の
回 路 を み る と,こ
の形 は変 圧 器 の 等 価 回路 〔 図3・3(a)〕
て,誘 導 機 の 等価 回 路 は,変 圧器 の等 価 回 路 の負 荷 イ ン ピー ダ ン スの所 に抵 抗
に相 似 して い 1-s /s
(a)原
(b)二
形 図4・26三
相 誘 導 機 の 等 価 回路
次抵抗を分離
γ2′を お
図4・27三
相 誘 導 機 の等 価 負 荷 抵 抗
図4・28T
形 等 価 回 路 の べ ク トル 図
い た も の と同 じで あ る。 こ の抵 抗 は,す べ り sに よ って 図4・27の に,s=0∼0・05の
よ うに変 化 す る 。特 に,実 際 の定 常 運 転 の よ う
あ た りで は sの 変 化 に 対 す る
1-s/
γ2′ の変 化 が大 き く, sの わず か な変
s
化 が,一 次 端 子 にお け る電 流 や入 力に 大 幅 な変 化 を 生 ず る。 原 形 の 回路 か ら図4・28の
よ うな ベ ク トル 図 が画 け る。 この図 は一相 の 印加 電圧V1を
準 と して 画 いた もの で,V1に
対 す るI1の 位 相 差 ψ は 図4・25(b)の
図4・26(a)の
回 路 に お いて,I1は
励 磁 電 流I0と
一 次 負 荷電 流I1と
ψ1と同 じで あ る。 に別 け られ る。
基
(4・70)
(4・71)
そ う して,式(4・55)の
関 係 か ら,
(4・72) とな るか ら,I1′ はI2を
有 効 巻 数比 で 除 した値 にな る。 こ の点 は,変 圧器 に おけ る一 次 負
荷 電 流 と同様 の性 質 を もつ こ とに なる。 こ こ で,
図4・28参
照
図4・25(a)参 と お ケ ば,I0はI1よ 図4・28の
ベ ク トル 図 か ら,入
果 は 式(4・56)以 な お,さ
り(ψ2-ρ2)位
照
椙 が 遅 れ,I1′
力,出
力,ト
はI1よ
示 したI0は,つ
相 が准 む 。
ル ク等 を 求 め る こ とが で き る が,そ
下 と 同 じ 形 に な る だ け で あ る か ら,こ
き に 式(4・70)に
り(90゜-ψ2)位
れ らの 結
こ で は 繰 り返 さ な い 。
ぎ の よ うに 変 形 で き る 。
(4・73)
と な る か ら,乙
のI0はs=0に
お い て つ み 式(4・41)に
上 式 の 分 母 第 2項 に は 一 欠 漏 れ イ ン ピ ー ダ ン ス γl+jx1が
って,I0が
示 したI0と あ る の で,こ
一 致 す る。
の値 は小 さい 。従
sの変 化 に 応 じて大 き さお よび位 相 が 変 化 す る程度 は僅 か で,I0は
次 全 自己 リア ク タ ンスX1で
決 ま る。
ま た,ベ
定 常 運転 中の 一 次逆 起 電 力 とい うべ き もの で,
ク トル 図 のE1は
しか し,
主 と して一
(4・74)
と な る が,こ
のE1も
式(4・46)に
示 し たE1と
は 僅 か に 異 な り,s=0の
場 合 だ け一 致 す る。
〔2〕 鉄 損 等 を考 慮 した等 価 回 路 さき に式(4・46)に
示 したEuoは,
で あ る。 そ う して,式(4・26)に φmはs≒0で
お い て,i1=√2Iuoの
ときの 磁束 の3/2倍 を φmと お くと,
運 転 中の 電 動機 内に生 ず る基 本 波 回転 磁 束 の一 極 分 の磁 束 量 で,こ
れ は時 間
に対 して 一定 で あ り,ま た負 荷 時 にお い て も ほぼ この 値 が保 たれ る。
式(4・27)よ
り,i1=√2Iuoの
で表 され,
と き は,
(4・75) で あ っ て,こ
∴
の 値 は 負 荷 の 軽 重 に よ っ てEuoは
φm≒
多 少 変 化 す る が,ほ
ぼV1に
近 い。
V1/
4.44ne1f
す な わ ち,電 動機 の ギ ャ ップ お よび鉄 心 内 に生 ず る磁 束 は,V1/f一 に かか わ らず ほぼ一 定 値 φmに な る。 従 って,鉄
定 な ら,負 荷 の軽 重
心 内の 最大 磁 束 密度Bmも
一定 とみ る こ
とがで き る。 一方,一
般 に回 転 機 の 鉄 損 は,ヒ
B㎡ に 比 例 し,後 者 は 理論 上B㎡
ス テ リシス損 と うず電 流 損 とに別 け られ,前
者 は ほぼ
に比 例 す るか ら,鉄 損 を つ ぎの よ うに 表 す こ とがで き る。
pi=Bm2{σh×f+σe×d2×f2}×Gi〔
W 〕
(4・76)
ただ し,f は周 波 数 〔Hz〕,d は鉄心 素 板 の厚 さ 〔mm〕,Giは
鉄 心 重量 〔kg〕で あ り,
σh,σeはそれ ぞ れ ヒス テ リ シス損係 数 お よび うず電 流 損係 数 で,鉄 心 材 料 に よ って 大体 きま る。 小 中容 量 の 電 動機 に用 い られ る けい素 鋼 帯S23,S20で 継 鉄 部 に お い て,σh=0.04∼0.05,σe=(3∼4)×10-3 歯 部 に お い て,σh=O.07∼0.08,σe=(6∼7)×10-3
は,
程 度 で あ る。 す な わ ち,同 じ材 料 で も継 鉄部,歯 部 にお い て係 数 が 異 な る と され る。 これ は 歯 部 に お け る磁束 の状 態 が複 雑 で,鉄 損 が増 す か らで あ る。 Giは
鉄 心 重 量 〔kg〕で,こ れ は一 次側 で あ る固 定子 鉄 心 重 量 で あ る。 二次 鉄 心 に おい て
は,そ こを 通 る磁 束 の周 波数 が,す べ り周波 数 で非 常 に低 い ので,鉄 損 は無 視 す るの が普 通 で あ る。 この よ うに考 え る と,定 電圧,定 周波 で 運転 され る電 動 機 はBmが
ほ ぼ一 定 で あ るか ら,
鉄 損 は固 定 損 の一 部 とみ なせ る。 ま た,機 械 損 に は,風 損 と軸 受,ブ ラ シ等 の摩 擦 損が あ るが,か ご形機 で は 後者 は な く, 一般 に誘 導 機 は
,無 負 荷 時 と定 格 出 力時 の 速度 の 相 違 は数%以 下で あ るか ら,機 械 損pmも
固 定 損 の 一 部 とみ なせ る。 そ こで,図4・26の
等 価 回路 に おい て,負 荷 に か かわ らず ほ ぼ一 定 の 電 流 が 流 れ るX1′ の
回 路 に直 列 に抵 抗Rmを Rm=
入 れ,そ の値 を
pi+pm /3I02
に 選 ん で,図4・29(a)の
よ うにRmを
加 え る ことに よ り鉄 損 お よ び機 械損 を考 え た回 路
を つ くる こ とがで き る。 この回 路 を T形 等価 回路 とい う。 T形 回路 のRm,X1′
を電 源端 子 に 移 し,図4・29(b)の
よ うに すれ ば,計 算 が 著 し く簡単
に な る。 た だ し,近 似 回路 とな る ので,T 形 回路 よ り誤 差 が 若 干多 い と予想 され るが,そ の 程 度 は 僅 かで あ るか ら,特 性 計算 には この 回路 が 広 く用 い られ る。 図4・29(b)の
回 路 を L形等 価 回 路 とい う。
〔3〕 L形 等 価 回 路 に よ る特 性 算 式 (1)基
本特性
図4・29(b)か
ら電 流,入 力,出 力等 を 求 め る と,次 の よ うに なる。
た だ し,こ こ に示 す 式 は さ きの(4・64)以
(a)T
降 の 各式 とは一 致 しない。
(b)L
形 等 価 回路 図4・29
鉄 損等 を 考慮 した 等 価 回路
形 等 価 回路
無 負
荷 電 流
一 次 負 荷 電 流
一
次 全 電
た だ し,
流
三 相 分 の入 力
(4・77)
鉄
損+機
械 損
一次 お よび 二 次銅 損
二
次
入
力
的 出
力
ル
ク
機 械
ト
等 が得 られ る。 以 上 の各 式 の うち重 要 な量 に つ い て検 討 を加 え る。 (2)出
力
(4・78)
と な る 。 こ こ で,
と お く と,
上 式 は,
1-s
=Zs′
/s
/ r2′'
または
r2′
s=
=spに
お い て 最 大 と な り,そ
/r2′+Zs′
の 値Pomは,
(4・79) を 得 る。 よ って,任 意 のす べ りに お け る出力 は,
(4・80)
と な る 。 図4・30は,上
r2′
式 の 中 のcosψs′=0.4,
=0.2を
/Zs′
仮 定 し, Po / Pom
を 計 算 した もの
で あ る。
図4・30出
(3)ト
ル ク
次 に,ト
力
曲
線
ル クを 調 べ る。
(4・81)
こ の トル ク は,
に おい て最 大 値Tmに
な り,そ の値 は,
(4・82) とな る 。この値 が 二 次抵 抗 に無 関係 で あ る ことは 興 味 あ るこ とで,ま た 重要 な性 質 で も ある。 Tmの
式 に お いて,一 次 抵 抗r1を
無視 す れ ば,
とい う簡 単 な形 に な る。そ う して,こ れが 漏 れ リア ク タン スに 反比 例 す る こ とも重要 な性 質 で あ る。 次 に,Tmを
生 ず るす べ りSmを
用 いて 式(4・81)を
変 形 す れ ば,
(4・83)
と な る が,こ
こで
と お く と,
(4・84)
とい う形 もつ くれ る。 図4・31は,式(4・84)に
つ い てSm=0.16,h=0.20を
仮 定 し,s
T の値を計 / Tm
に対 す る
算 した もので あ る。 つ ぎに,式(4・81)の
と な る 。 す な わ ち,ト に T の 代 り にP2を ク と い う。P2を
両 辺 に 同期 角速 度
2ω
/ P
を乗 ず れ ば,
ル ク は 二 次 入 力 に 比 例 す る。 こ の こ とか ら 誘 導 機 で は トル クを 表 す の
用 い る こ と が 多 い 。 こ れ を 同 期 ワ ッ ト(synchronous 知 って T を 求 め た い と き は,P2に
図4・31ト
P
watt)で
を乗 ず れ ば よい。
/ 2ω
ル ク 曲線
表 した トル
つ ぎ に,二
次 入 力P2,機
械 的 出 力P0お
よ び 二 次 銅 損pc2と
の 間 に は,式(4・77)よ
P2:P0:pc2=1:1-s:s
り,
(4・85)
とい う簡 単 な関 係 が あ る。 ま た は,つ ぎの よ うに も書 け る。 P0 =1-s, / P2 P0 / P2
=s pc2 / P0 /1-s
pc2 =s, / P2
(4・86)
を二 次 効 率 とい う ことが あ る。
(4)ト
ル クの比 例推 移
式(4・81)に
合 を 考 え る。 その 一次 換 算 値 をae2R2=R2′
お いて,二 次 回 路 の各 相 に 抵抗R2を
追 加 した場
とお け ば,ト ル クは,
と な り,二 次回 路 全 体 の抵 抗 が元 の m倍 に な った とき,す べ り sもm 倍 に なれ ば Tは 元 と 同 じで あ る。 この こ とを トル クの比 例 推 移 とい う。 この 性 質 が始 動 時の 特 性改 善 や速 度 制 御 に利 用 され る。 図4・32は,ト
ル クの比 例 推移 の 関係 を
示 した もの で,二 次 抵抗 が m 倍 にな れば, 同一 トル クを生 ず るす べ りが す べ て m 倍 に な っ てい る。
4・4
図4・32ト
ル クの比 例 推移
L 形 円線 図
L形 等 価 回路 に お い て,一 次 電 流I1は,
(4・87)
で表 され るこ とは,式(4・77)の
中に示 した 。
誘 導 電 動機 が一 定 電圧,一 定周 波数 の電 源 に結 ば れ て定 常 運転 して い る と し,す べ り sだ けが 変 化 す る場 合 を考 え る と,I0は
定 ベ ク トル とな る が,I1′ は半 径V1/2xの円軌 跡 を 画 くの
で,I1の 軌 跡 も円 に な る。 この 円 は L形 等 価 回路 につ いて 得 られ る軌 跡 円で あ るか らL形 円
線図 とい う。 L形 円線 図 の性 質 を 調 べ る と電 動機 の特 性 を 求 め る こ とがで き る。 す なわ ち,与 え られ た 電動 機 につ い て L形 円線 図 を画 け ば実 負 荷試 験 に よ る こ とな く必 要 な特 性 が 求 め られ る。 〔1〕 L形 円線 図 の性 質 式(4・87)は,図4・33の ばI1の
よ うに 作 図 す れ
軌 跡 が 定 円 C と なる こ とが わか る。
(1)L
形 円線 図
同 図 に おい て,ま ず
原点 をOと す る直 角 座 標 を つ くり,ri+r2′/s+ jxの
sに対 す る変 化 を画 けば,実 軸 に平 行
な 直線mnで
あ る 〔た だ し,s の値 をsVな (4)V曲 5・41の
線
ら進 み 力率 に な る。
定 出力 で励 磁 を変 え る場 合Efの
大 き さとI=oaの
関係 を画 くと,図
よ うに な る。 す な わ ち,あ る出 力一 定 で 運転 し,界 磁電 流 を 次 第 に大 き くす ると I
は い った ん 減少 し,最 低 点 を経 て 再 び大 き くな る。 最 小 電 流 とな る所 は 力 率 1で,こ れ よ りEfが 相 力 率 とな る。 負 荷 が 重 い(P0が
少 な い と き遅 相力 率,Efが
大 きい とき進
大)と き も同 様 な 変化 をす るが,最 小電 流 が軽 負 荷 時 の そ
れ よ り大 き くな る。 こ の曲 線 を 同期 電 動 機 の位 相 特性 曲 線 また は V 曲線(V-curve)と で あ る。 な お,界 磁 電 流ifを
い い,重 要 な 特 性 曲線
横軸 に と って も同様 な曲 線 が 得 られ,こ れ もV曲 線 と い うが,
ifの 大 きい所 で は磁 気 飽和 の影 響 で進 相 側 で は 曲線 の傾 斜 が小 さ くな る。 (5)ブ
ロン デル 線 図
い ま ま で の ベ ク トル 図 や特 性
式 で は 電 機子 抵 抗 を無 視 してい た が,こ れ を 考 慮 し て改 め て ベ ク トル 図 を画 くと,図5・42の
よ う に な る。 この図
か ら入 力 を求 め る と,
図5・42γ1を 無 視 しな い場 合 の ベ ク トル 図
(5・58) 一方
,ベ
ク トル 図 か ら,つ
ぎ の 関 係 も つ く られ る 。
(5・59) 上 式 をIcosζ
お よ びIsinζ
た だ し,
同期 イ ンピー ダ ンスで あ る。
Icosζ,Isinζ
P1= また,銅
に つ い て 解 く と,
を 式(5・58)へ 3V/ Zs
損 をPcと
入 れ て 整 理 す れ ば,
{Efsin(δ-a)+V・sinα}
す れ ば,
(5・60)
(5・61) よ っ て,出
力 は,
(5・62) と な る。 つ ぎ に,図5・43の
よ うに V を基 準 に と
っ て 再 び ベ ク トル 図 を つ く り,ま た V を 底 辺 と し,頂 る。
角2α
の 2等 辺 三 角 形oacを
こ の と きoc=ac=V/(2sina)と
い ま,Efの 下 し,そ
つ く
ベ ク トル 端 か らocに
な る。 垂線を
の 足 を d と す る と,
図5・43ブ
ロ ンデ ル の 作図
(5・63) と な る。 よ って,V
お よびP0一
定 な らcp一
定 で,Efの
変化 に応 じ P点 は式(5・63)
を 半 径 とす る円周 上 を移 動 す る。 この 円 を ブ ロ ンデル(Blondel)の
出 力 円 とい う。
この作 図 は 基 に な っ て い る二等 辺 主 角 形 の斜 辺 の長 さが 電 機 子 抵抗 に反 比 例 す る ので,実 際 の 数 値 を 代 入 して み る と非 常 に細 長 い 三 角形 とな り,実 用 的 で な い。 また,巻 線 温 度 が高 ま り抵 抗 が 増 せ ば,三 角 形 の形 も変 わ ると い う問題 もあ る。 さ らに,cpを も,分 母 にsinα
表す 式(5・63)
す な わ ち電 機子 抵 抗 に 比例 す る項 が あ るの で,わ ず か な抵 抗 の 変 化 がcp
の長 さを 大 き く変 化 させ る とい う点 も問題 であ る。
この よ うに,ブ ロ ンデ ル の 出力 円 は実 際に適 用 して 作 図 し よ う とす ると不 便 な面 が あ るが, 宣性 的 に次 の よ う な事 柄 を 考 え るに は役 に立つ 。 ①
半 径cpは,無
②
∠cap=ψ
負 荷 ではcaに
と な るか ら,P0一
等 し くな り,負 荷 が 増 す に伴 いcpは 定 でEfを
は は じめ大 き く,力 率 が悪 い が,ap線 %,さ
らにEfを
短 くな る。
小 さい 値 か ら次 第 に 増加 させ た場 合,∠cap
がac線
に 重 な る と き ψ=0゜,す な わ ち力 率100
増加 させ れ ば ψ は 進 み側 に変 わ る。
この よ う な変 化 の 間 のap=ZsIの
変 化 を見 れ ば,Efに
対 す る Iの変 化,す
なわち
V 曲線 の 特 性 を ブ ロ ンデ ル の 図 か ら調 べ る こ とが で き る。 ③Efの
ベ ク トル 端 p点 の移 動 で き る範 囲 の限 界 は,
ⅰ)Efの
大 き い側 は,界 磁 電流 を最 大 に した と きに 生ず るEfの
高 々oaの ⅱ)出
値 まで で,こ れ は,
〓1.5倍程 度 で あ る。
力 一 定 のま まEf轍
らす と,ト
2
ルク δが ます ます 大 き くな るが,δ は(π/
-a)
まで が 限 度 で,そ れ以 上 の δ では 運転 で き ない 。 と い う のは 出 力 の式(5・62)に い て, dP0
=3VEf
/ dδ
/ Zs
cos(δ+a)
これ は,δ の 増 分 に対 す る出力 の増 分 を表 す 値 で,同
期 化力 と い う。 この 値 は δ=
(π/2)-α に お い て零 とな り,そ れ 以上 の δに お いて は δ が 増 して もPaの
増加がな
く,同 期 外 れ を起 こす か らで あ る。 ⅲ)pa=ZsIは,I
が定 格 電 流 に お さえ られ れ ば,お よ そZsI 〓V程
らな い(短 絡 比K,≒1と (6)突
度 で な けれ ば な
仮 定 して)。
極 を もつ 同期 電 動 機 の特 性
三相 同期 電 動 機 の多 くは突 極形 磁 極 で あ り,い ま
まで 述 べ た 円 筒磁 極 につ いて の計 算 で は,近 似 的 な 解 し か得 られ な い。 突 極 機 で はEfと
同相 の 電 流Iq(横
軸
電 流)に 対 して は,同 期 リア ク タ ンスが 小 さ く,Efと
位 相 が π12異 な る電 流Id(直
軸 電 流)に 対 して は,同 期 リア クタ ンスが 大 き い ので,そ れ ぞ れ横 軸 お よび 直軸 同 期 リア ク タ ンス(Xqお
よびXd)と
区別 し
て扱 う必 要 が あ る こ とは発 電 機 の 項 で も述
図5・44突
極 機 の 場合 の ペ ク トル図
べ た。 突 極 を もつ同 期 電 動 機 に お いて も,こ の 区別 が 必要 で,ベ ク トル 図 で 示 す と図5・44の うに な る。 この 作 図 で は,I の で,Efを
をEfと
よ
同 相 の成 分,90゜ 異 な る成 分 に 別 け な け れば な らな い
基 準 とし て作 図 して あ る。 この ベ ク トルの 関係 は 下 式 で も表 せ る。 V=(Ef+γ1Iq+XdId)+j(-γ1Id+XqIq)
=Vcosδ+jVsinδ(5・64)
(5・64)
と な るが,簡 単 にす る た め電 機 子 抵 抗 γ1を無 視 す れ ば,上 式 の 実 数部,虚 数 部 を そ れぞ れ 等 しい と お いて , Ef+XdId=VCOSδ
= Voosδ-Ef
∴Id
/ Xd
XqIq=Vsinδ
Vsinδ ∴Iq= / Xq
ベ ク トル 図 よ り パ ワ ー を 求 め る と ,
P0=EfIq+(XdId)xIq-(XqIq)xId
(5・65) 三 相分 のパ ワー は上 式 の 3倍 で,γ1を
無 視 したか ら,上 式 は 入 力 で あ り,ま た 出 力 を も
表 す。 す な わ ち,突 極 を もつ 同期 電 動 機 の 出力 は,円 筒極 機 の 出力 と同 じ式(5・52)の 第 2項 の 出力 が あ る。 第 2項 はV2に
比 例 し,Efに
は無 関係 で あ る。 従 って,第 2項 だ け
で も電 動 機 として 動 作 させ る ことが で き る。 これ を 反作 用 電 動 機(reaction reluctance motor)と
ほか に,
motorま
たは
い う。 反 作 用 電 動 機 は 界 磁巻 線 が な く,突 極構 造 で あれ ば よ く,構 造
は簡 単 で あ るが,大 出力 は 期待 で きず,小 形 機 に のみ この形 が 実 用化 され て い る。 ま た,式(5・65)は,突
極 を もつ 発 電 機 の 出力 の 式(5・36)と
トル ク角 δ の変 化 に 対 す る出 力 の変 化 も,図5・24の
同 じ形 を して い るか ら,
横 軸(電 力角)を
トル ク角 に読 み換
え れ ば,同 図 が そ の ま ま突 極 を もつ 同 期 電 動 機 の 出力 特性 曲線 お よび トル ク特 性 曲 線 と な る。 〔3〕 始
動
法
この章 の は じめ に も述 べ た よ うに,同 期 電動 機 は同 期速 度 に お いて の み トル クを生 ず る機 械 で,始 動 トル クが な い。 この た め に,普 通 は磁 極 表 面 にか ご形巻 線 を 入 れ て お き,始 動 時 は か ご形 誘 導 電 動機 と して 加 速 させ,同 期 速 度 に近 づ い た時 に直 流 励磁 を与 え て 同期 速 度 に入
れ る。 これ を前 記 の よ う に同 期化,ま た は同期 引 き入 れ(pull into synchronism)と
もい う。
同期 引 き入 れ が 成功 す るか ど うか は,直 流 励磁 を 与 え る瞬 時 のす べ り,回 転子 位 置,お よ び 回転 部 分 の慣 性 モ ー メ ン トの大 き さ等 によ って きま るの で,同 期電 動 機 の 始動 は 誘 導電 動 機 の それ よ り煩 わ し い。 (1)始
動 時 の トル ク特 性
同期電 動 機 の始 動 トル クは,か ご形 巻 線 に よ る トル ク,閉
路 され た界 磁 巻 線 回路 に よ る トル クお よ び界磁 鉄 心 内 に生ず る うず電 流 に よ る トル ク等 の総 合 で決 ま る。 (a)か
ご形 巻線 に よ る トル ク
磁極 面 に導 体 数本 ない し10本
程 度 を 入 れ てつ くられた
か ご形 回路 は,磁 極 間 に導 体 が欠 けて い る部 分 が あ る特 殊 なか ご形 回路 で あ るが,大 体 か ご 形 誘 導 電動 機 の トル ク特 性 と同 じと考 え る ことが で き る。黄 銅,け い銅 など の高 抵 抗 か ご形 にす れ ば,ト ル クの比 例 推 移 の原 理 に よ って始 動 トル クは 増す が,加 速 後 のす べ りが大 き く, 同期 引 き入 れ に不 利 とな る。 なお,同 期 化 の後 は,か ご形巻 線 は 乱調(回 転 子 速 度 が 同期 速 度 を 中心 に動 揺 す る現 象)に ブ レー キ をか け る制 動巻 線 として 役立 つ が,こ の 場 合 は,低 抵 抗 か ご形 ほど有 利 であ る。 (b)閉
路 さ れ た界 磁 巻線 に よる トル ク
始 動 時 に界 磁巻 線 は 図5・45の
よ うに放 電 抵抗
を通 じて 閉路 され るが,こ れ は単 相 回路 で,一 次 三相 回路 との 組 み合 わ せ を考 え ると,一 次 三 相,二 次 単相 の電 動 機 とな り,こ の特 性 は非 常 に悪 く,ト ル ク曲線 は 図5・46の 期 速 度 の約1/2で
トル ク零,s