編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村 孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
は
素 粒 子 物 理 学 は 今,さ
じ
め
に
ら な る飛 躍 を求 め て模 索 ...
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編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村 孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
は
素 粒 子 物 理 学 は 今,さ
じ
め
に
ら な る飛 躍 を求 め て模 索 の 段 階 に あ る.本 書 で は,高
エ ネ ル ギー 物 理 学 フ ロ ン テ ィア の最 先 端 の研 究 テー マ の 中 か ら,標 準 理 論 を超 え る新 現 象 探 索 の 試 み を 集 中的 に と りあ げ 解 説 を試 み た.現 在 ま で の と こ ろ, 標 準 理 論 に 矛 盾 す る現 象 は 皆 無 と言 っ て よい.種 々 の 実 験 デ ー タ に新 理 論 の つ け 込 む 余 地 は,た
だ 一 つ の 例 外(ニ ュ ー トリ ノ振 動 現 象)を 除 い て ほ とん ど な
く,そ れ も標 準 理 論 の 訂 正 とい う よ りは わ ず か な 拡 張 を 必要 と して い るの み と い う方 が正 し い で あ ろ う.そ の 意 味 で標 準 理 論 の 実 験 的 裏 付 け は 非 常 に 強 固 で あ る.数 学 的 に も整 合 性 の とれ た体 系 で あ り,こ れ か ら も一 つ の 学 問体 系 と し て 生 き残 りか つ 発 展 す る で あ ろ う こ とは 間違 い な い.し か し,古 典 力 学 や 電磁 気 学 の 限 界 を打 開 す る試 み か ら量 子 力 学 や 相 対 性 理 論 が 生 ま れ た よ うに,新 た な展 開 を 目指 す た め に は,標 準 理 論 を超 え る新 現 象 を見 つ け る必 要 が あ る. 標 準 理 論 に は 適 用 限 界 が あ る.エ ネ ル ギー ス ケ ー ル がTeV ト)を 超 え る現 象,ミ
ク ロの サ イ ズ に して10-17cm以
(1012電 子 ボ ル
下 の 現 象 に対 して は,標
準 理 論 の 予 言 能 力 は大 幅 に 低 下 す る.こ の 領 域 を探 検 して 手 が か りを得 るの は 一 つ の 方 法 で あ る.も う一 つ の方 法 と し て は,電 弱 強 の 大 統 一 理 論,さ らに は 重 力 を も含 む 究極 の統 一 理 論 を 目指 し,そ の試 み の 中 か ら新 物 理 へ の ヒン トを 探 す こ とで あ る.大 統 一 の 階 層 性 とい う理 論 的謎 を解 く解 決 法 の 多 くは,や りTeV領
は
域 に 新 現 象 の 出 現 を予 言 す る.し た が って,新 現 象 を発 見 す る ため
の最 も正 統 的 な 試 み は,TeV領
域 の加 速 器 をつ く り実 験 して み る こ とで あ る.
一 方,大 統 一 理 論 や 重 力 理 論 の 本 格 的 検 証 に 必 要 な,エ ネ ル ギー が1013 ∼1016TeV領 域 で の 実 験 は,近 い将 来 に は と うて い実 現 不 可 能 で あ る.幸 い な こ とに,素 粒 子 統 一 理 論 が初 期 宇 宙 の発 展解 明 につ な が る こ とが わ か り,イ
ン フ レー シ ョンの ア イ デ ア提 起 な ど宇 宙 論 を大 き く発 展 させ た.逆 に 宇 宙 論 の 発 展 が,ビ
ッ グバ ン遺 跡 の探 索 とい う,現 代 技 術 で は 到 底 実 現 不 可 能 な高 エ ネ
ル ギー 現 象 に 対 す る検 証 の 道 を 開 い た.つ
ま り狭 い な が ら も大 統 一 理 論 検 証 へ
の 窓 は開 い て お り,非 加 速 器 素 粒 子物 理 とい う新 しい 分 野 が 発 展 しつ つ あ る. 本 書 は,ま ず 標 準 理 論 の枠 内 に あ るが,実 験 の結 果 次 第 で は標 準 理 論 を超 え る可 能 性 の あ る テー マ と して,第2章 第3章
でCP非
保 存 現 象 の 小 林-益 川 モ デ ル を,
で ヒ ッ グ ス粒 子 の性 質 と発 見 法 を議 論 す る.ヒ ッ グ ス は標 準 理 論 の 根 幹
をな す 真 空相 転 移 概 念 に お け る要 の粒 子 で あ る.第4章 を,第5章
で はニ ュー ト リノ現 象
で は 大 統 一 と超 対 称 性 を解 説 し,非 加 速 器 実 験 と加 速 器 実 験 の 両 面
か ら標 準 理 論 を拡 張 しあ るい は 超 え る方 法 を模 索す る.第6章
で は,イ
ンス タ
ン トンや カ イ ラル 異 常 な ど標 準 理 論 に 内 在 す る もの の これ ま で とは 異質 の 新 概 念 を紹 介 し,自 然 現 象 との 関 わ りを述 べ る.発 展 如 何 で は 伝 統 的 物 質 観 の修 正 を 迫 られ る可 能 性 を見 て の こ と で あ る.強 い相 互 作 用 のCP保 は 第6章
で紹 介 す るア クシ オ ンの 存 在 が,ま
存 を理 解 す るに
た大 統 一 理 論 を認 め る な らば 第7
章 で 扱 う磁 気 単 極 子(モ ノ ポー ル)の 存 在 は 不 可 欠 の よ うに 思 え る.こ れ らの 未 発 見 素 粒 子 の 存 在 や ニ ュー ト リノ の質 量 問 題 は,初 期 宇 宙 の 発 展 や 暗 黒 物 質 の解 明 と密 接 に絡 ん で い るの で,第8章
で は 素 粒 子 との 関 わ りに重 点 を 置 きつ
つ ビ ッ グバ ン か ら現 在 に 至 る宇 宙 の発 展 を概 観 した.こ の 章 は,素 粒 子 物 理 を 直 接 に 扱 うわ け で は な いの で最 後 に 置 い た が,ニ
ュ ー ト リノや ア クシ オ ン さ ら
に は 暗 黒 物 質 の宇 宙 に お け る役 割 を理 解 す る ため に は,先 に 読 ん で お く方 が理 解 が 深 ま るか も しれ な い.筆
者個 人 の 主観 が 入 る に して も,本 解 説 の 中 で 取 り
上 げ た トピ ッ クの 半 数 が 非 加 速 器 物 理 の テ ー マ で あ り宇 宙 の テー マ で もあ る こ とは,21世
紀 に お け る高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 方 向 を暗 示 す る.
本 書 の 対 象 は,実 験 家 も し くは 大 学 院 の理 論 学 生 で あ る.す な わ ち,素 粒 子 物 理 の 基 本 知 識 は もつ が,個
々 の ト ピ ッ クに つ い て は こ れ か ら入 門的 知 識 を得
よ う とす る読 者 を想 定 して い る.そ の た め,本 解 説 は 各 トピ ッ ク ご とに独 立 さ せ,か
つ 読 み 切 り と して 辞 典 に 準 じた構 成 と し た.各 章 と も,非 専 門家 向 け に
ま ず 基 本 概 念 の 説 明 と可 能 な 限 り(つ ま り筆 者 の 能 力 の 範 囲 で)式 の 導 入 を行 い,そ の 後 で実 験 的検 証 の 現 状 に ふ れ た.興 味 に応 じて どの 章 や ど の節 を切 り 取 っ て読 ん で い た だ い て もよ い.本 書 に至 る前 段 階 と して,素 粒 子 物 理 学 へ の
入 門 用 に まず 朝 倉 物 理 学 大 系 の 第3巻 基 礎 を解 説 した.第4巻
「素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅰ 」で場 の 理 論 の
「素 粒 子 物 理 学 の 基 礎Ⅱ 」で は ク ォー クモ デ ル が 確 立
し標 準 理 論 が 誕 生 す る経 緯 を描 き,そ
して 第5巻
「素 粒 子 標 準 理 論 と実 験 的 基
礎 」で は ほ とん どすべ て の 実 験 事 実 を標 準 理 論 が 見 事 に 説 明 す る有 様 を解 説 し た.本 書 は,上 記 の 解 説 書 の な か で 説 明 し残 し た こ と と未 解 決 の 問題 点 を整 理 し,こ れ か らの発 展 方 向 につ い て 筆 者 な りの 見 地 で ま とめ た もの で あ る.素 粒 子 物 理 学 の 初 歩 か ら取 り組 む場 合 は4巻 全 部 を ま とめ て,素 粒 子 現 象 解 説 の 観 点 か らは 後 の3巻
を ま とめ て は じめ て 整 合 性 の あ る体 系 とな る.た だ し,各 巻
は論 理 的 に は 閉 じた構 成 に して あ り,独 立 本 と して の 体 裁 は保 つ よ う に した の で,興 味 に 応 じて適 当 に 取 捨 選 択 して い た だ い て も よ い.本 書 と合 わせ て ご 利 用 い た だ け れ ば幸 い で あ る. 本 書 の よ うに読 み切 り短 編 集 に近 い ス タ イ ル の解 説 は,通 常,テ ー マ ご とに そ の道 の 専 門家 が担 当 す る.新
しい ア イデ ア と最 新 デ ー タが 日夜 更 新 され る最
先 端 の トピ ッ ク をフ ォ ロー し,間 違 い を起 こ さ ず に 深 く掘 り下 げ るに は そ れ が 最 上 の 方 法 だ か らで あ る.に
もか か わ らず 身 の程 わ き ま えず に筆 者 が あ え て挑
戦 し た の は,対 象 とす る読 者 層 を 限 れ ば,一
人 の筆 者 が 一 つ の ス タ イル で一 つ
の体 系 を整 合 的 に描 写 す る解 説 書 に は そ れ な りの 意 義 が あ る はず と考 え たか ら で あ る.筆 者 は 実 験 家 で あ る.測 定 器 の 作 り方 や デ ー タの 解 析 法 に は 習 熟 して い て も,こ の解 説 で述 べ て あ る理 論 的 な 発 展 に何 一 つ ア イデ ア を提 供 し た こ と は な い.内 容 は す べ て他 人 の 論 文 な い しは 解 説 書 の受 け 売 りか らス ター ト した もの で あ る.実 験 デ ー タ につ い て も 自分 の 専 門以 外 は 同様 で あ る.理 論 的 に見 当違 い の論 理 を展 開 して い るか 心 配 で あ る し,実 験 的 に も その 分 野 で は常 識 の こ と を 間違 っ て 受 け 止 め て い る可 能 性 は 多 々 あ る.現 に 編 者 に よ る査 読 の段 階 で初 歩 的 な 間違 い を い くつ か 指 摘 され た.読 者 も間違 い を見 つ け た ら遠 慮 な く 筆 者 に 指 摘 して い た だ きた い. 終 わ りに,本 書 を執 筆 す る機 会 を 与 え て下 さ っ た 編 者 の 荒 船 次 郎 氏 と江 沢 洋 氏 に 感 謝 す る.特 に 荒 船 氏 に は全 編 を通 して 詳 細 に査 読 して い た だ き,い ろ い ろ コ メ ン トをい た だ い た.ま た,郷 た だ い た.言 あ る.ま
田 直輝 氏 に は第8章
に つ い て ご批 判 を い
う まで も な い こ とな が ら,本 書 の 誤 りにつ い て は 筆 者 に全 責 任 が
た,こ の執 筆 の ため 筆 者 の研 究 室 ス タ ッ フ学 生 諸 氏 に は い ろ い ろ ご協
力 を い た だ い た.こ
の場 を借 りて 感 謝 の 意 を表 させ て い た だ く.最 後 に,4冊
もの大 き な解 説 書 に な っ て し まい,そ
して初 稿 か ら最 終 稿 に 向 け て大 幅 な 書 き
直 しが あ っ た に もか か わ らず,長 期 間 に わ た っ て 快 く面 倒 を見 て い た だ い た朝 倉 書 店 の 方 々 に 感 謝 の意 を表 す る. 1999年5月 大阪にて 長 島 順 清
目
1 序
次
論
1
1.1 標 準 理 論 の 考 え 方
1
1.2 標 準 理 論 の 構 造
3
1.2.1
3
1.2.2 QCDラ
電 弱 相 互 作 用 の ラ グ ラ ン ジ ア ン グ ラ ン ジ ア ン
7
1.3 標 準 理 論 の 検 証
9
1.3.1 標 準 理 論 の 確 立
9
1.3.2
標 準 理 論 の 精 密 検 証
10
1.4 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 発 展 方 向
12
2 小 林-益
16
川 行 列
2.1 ヒ ッ グ ス 場 に よ る 質 量 生 成
16
2.1.1
弱 固 有 状 態 と 質 量 固 有 状 態
16
2.1.2
3世 代KM行
19
2.1.3
KM行
列
列 の パ ラ メ タ ー 化
20
2.2 小 林-益 川 行 列 要 素 の 数 値 評 価
21
2.3 ユ ニ タ リー 三 角 形
26
2.4 2粒 子 系 の 混 合
29
2.4.1
質 量 行 列 と 混 合 パ ラ メ タ ー ε
29
2.4.2
中 性K中
31
2.4.3
B中
2.4.4
混 合 パ ラ メ タ ーxd,
2.4.5
D0中
間 子 のCPパ
ラ メ ター
間 子 混 合
間 子 の 混 合
33 xs
35 40
2.5 質 量 行 列 の 理 論 評 価
40
2.5.1
K中
間 子 質 量 行 列 の 評 価
41
2.5.2
B中
間 子 質 量 行 列 の 評 価
46
2.6 ユ ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲
49
2.7 Kの
稀 崩 壊
50
2.8 B崩
壊 で のCP非
2.8.1
レ プ トン 非 対 称
52
2.8.2
CPの
53
2.8.3
崩 壊 モ ー ド とKM行
保 存 の 観 測 法
直 接 の 破 れ
2.9 非 対 称Bフ
列 の 位 相
ァ ク ト リー
52
56 59
2.9.1
xsの 測 定
59
2.9.2
CP非
62
2.10
3 ヒ
CPの
ッ
対 称 の 測 定
諸 問 題
66
ス
72
グ
3.1 ヒ ッ グ ス 粒 子 の 相 互 作 用
72
3.1.1
ラ グ ラ ン ジ ア ン
72
3.1.2
崩 壊 モ ー ド
73
3.2 ヒ ッ グ ス の 質 量
75
3.2.1
放 射 補 正 デ ー タ か ら の 推 定
75
3.2.2
理 論 的 下 限
77
3.2.3 理 論 的 上 限
80
3.3
ヒ ッ グ ス 粒 子 の 生 成
3.3.1
ee反
応 に よ る 生 成
3.3.2
ハ ド ロ ン に よ る ヒ ッ グ ス 生 成
84 84 90
3.4 超 対 称 ヒ ッ グ ス
96
3.4.1
ヒ ッ グ ス モ デ ル の 拡 張
96
3.4.2
MSSMヒ
3.5
ッ グ ス 粒 子 の 検 出
ヒ ッ グ ス は 素 粒 子 か
3.5.1
強 結 合 理 論
100 104 104
3.5.2
ヒ ッ グス 機 構解 明 の 戦 略
4 ニ ュ ー ト リ ノ
109
113
4.1 ニ ュ ー ト リ ノ 質 量 の 理 論 的 諸 問 題
114
4.1.1
質 量の上限値
4.1.2
質 量行
4.1.3
左右対称 モデ ル
列
114
116 122
4.2 レ プ トン 数 非 保 存 テ ス ト
123
4.3 ニ ュ ー ト リ ノ の 電 気 的 性 質
126
4.3.1
電 荷 分 布
126
4.3.2
磁 気 能 率
127
4.4 ニ ュ ー ト リ ノ 混 合
129
4.4.1
ニ ュー ト リノ質 量 の 直接 測 定
129
4.4.2
ニ ュ ー トリ ノ振 動
131
4.5 ニ ュ ー ト リ ノ 天 文 学
135
4.5.1
太 陽 ニ ュー ト リノの 謎
135
4.5.2
物 質 振 動
141
4.5.3
太 陽 ニ ュ ー ト リノの 謎 の解 は あ るか
149
4.6 大 気 ニ ュ ー ト リ ノ
152
4.7 超 新 星 ニ ュ ー ト リ ノ
156
4.7.1
超新 星の形成過程
157
4.7.2
超 新 星 ニ ュー ト リノ検 出
160
4.7.3
素 粒 子物 理 へ の 見 返 り
4.8 お わ り に
163 165
5 大 統 一 と 超 対 称 性
170
5.1 な ぜ 大 統 一 か
170
5.1.1
ワ イ ンバ ー グ角 の 不 定 性
5.1.2
電荷 の 量 子化
5.1.3
三角 異 常 項
171 172 172
5.2 SU(5)
175
5.2.1
大統一 のスケール
5.2.2
フ ェ ル ミオ ン の 表 現
5.2.3
ゲ ー ジ粒 子 の 表 現
5 .2.4 対 称 性 の 破 れ
183
5.2.5
186
SU(5)の
175 176 179
予 言 と破 綻
5.3 SO(10)
190
5.3.1
左 右 対 称 の世 界
190
5.3.2
新 し い 中 性 ゲ ー ジ ボ ソ ン:Z'
191
5.4 階 層 問 題
195
5.5 超 対 称 性
198
5.5.1
超 対 称 性 とは
198
5.5.2
超 粒 子 の性 質
201
5.5.3
超 対 称 大 統 一 理 論(SUSY-GUT)
204
5.6 超 対 称 モ デ ル
207
5.6.1
超粒 子の相互作用
207
5.6.2
最 小SUGRAモ
5.6.3
GMSBモ
5.6.4
質 量 ス ペ ク トル の ま と め
デル
208
デル
214 218
5.7 超 粒 子 探 索
220
5.7.1
チ ャ ー ジ ー ノ,ニ
ュ ー ト ラ リー ノ,ス
5.7.2
ス クォ ー ク とグ ル ー イ ー ノ
レ プ トン
220 224
5.8 お わ り に
6 ア 6.1
ク シ
オ
225
ン
ソ リ ト ン
230
231
6.1.1
1+1次
元 の ソ リ トン
6.1.2
1+2次
元 の ソ リ トン:う
6.1.3
巻 つ
6.1.4
ソ リ トンの 存 在 す る 時 空
き 数
231 ず糸
236 239 241
6.1.5
イ ン ス タ ン トン
243
6.1.6
θ
250
真
空
6.2 強 い 相 互 作 用 に お け るCPの 6.2.1
異
常
6.2.2
カ イ ラ ル変 換 と質 量 項
6.2.3
U(1)問
破 れ
項
題
251 251 254 256
6.3 ア ク シ オ ン の モ デ ル
257
6.3.1
PQ対
257
6.3.2
見 え な い ア ク シオ ン
称 性 と標 準 ア クシ オ ン
6.4 宇 宙 に お け る ア ク シ オ ン
262
264
6.4.1
星 の冷却剤
264
6.4.2
宇 宙の残存 ア クシオン
266
6.4.3
ア ク シ オ ン の探 索
270
6.5 電 弱 相 互 作 用 の 相 転 移 と バ リ オ ン 数 非 保 存
7 磁 気 単 極 子(モ
ノ ポ ー ル)
275
279
7.1 デ ィ ラ ッ ク モ ノ ポ ー ル
280
7.2
283
ト ・フ ー フ ト-ポ リヤ コ フ モ ノ ポ ー ル
7.2.1
は り ねず み ポ テ ン シ ャ ル
7.2.2
7.2.3
磁
7.2.4
モノポールの存在条件
モ ノポ ールの質量
7.3 大 統 一モノ
流
ポールの性質
283 286 287 288 289
7.3.1
質 量 とサ イ ズ
289
7.3.2
触 媒 作 用
290
7.3.3
ア イ ソ ス ピ ンの ス ピンへ の転 化
7.4
291
モノ ポー ル と天体 物 理 学
291
7.4.1
モ ノ ポー ル の 速 度
291
7.4.2
フ ラ ッ クス制 限
292
7.5 モ ノ ポ ー ル 探 索
294
7.5.1
磁 気 誘 導 検 出器
295
7.5.2
イ オ ン化 損 失 を 使 う 方 法
296
7.6 お わ
8 宇
宙
り に
301
論
304
8.1 フ リー ドマ ン 方 程 式
304
8.2
ビ ッ グバ ン宇 宙論
308
8.3 イ ン フ レ ー シ ョ ン
312
8.3.1
宇 宙の急速膨 張
312
8.3.2
地平 線問題
314
8.3.3
平 坦 性 問題
316
8.3.4
モ
8.3.5
宇 宙 項 問題
ノポ ール問題
317
317
8.4 残 存 ニ ュ ー ト リ ノ
319
8.5 宇 宙 の 物 質 組 成
321
8.5.1
バ リオ ン創 生
321
8.5.2
元 素 合 成
323
8.6 宇 宙 構 造 の 進 化
328
8.6.1
ジー ン ズ質 量
328
8.6.2
ゆ ら ぎの 成 長
331
8.6.3
暗黒物 質の役割
332
8.6.4
銀 河 分 布 とパ ワ ー ス ペ ク トル
334
8.6.5
宇 宙 背 景 輻 射(CMB)の
340
付
録
A ホ モ トピー
ゆ らぎ
345
345
B 宇 宙 論 補 足
352
索
359
引
1 序
論
1.1 標 準 理 論 の 考 え 方
物 質 の 究 極 構 造 物 で あ る素 粒 子 と素 粒 子 を構 造 体 に組 み 上 げ る力 の 統 一 理 論 が 提 唱 され て30年
に な る.標 準 理 論 は,極 端 な超 高 エ ネ ル ギー 現 象 を扱 わ な
い 限 りは数 学的 に整 合 性 が とれ て お り,実 験的 に は わ れ わ れ の 知 る 限 りで の 素 粒 子 現 象 を ほぼ 完璧 に記 述 す る.し か し,よ
り ミク ロ な,よ
り高 エ ネ ル ギー 現
象 を求 め て 素 粒 子 物 理 学 は現 在 も発 展 しつ つ あ る.高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 を 見 通 す ため に は,標 準 理 論 の 検 証 状 況 を まず概 観 して お く必 要 が あ ろ う.標 準 理 論 の 根 底 に あ る考 え方 を考 察 し,歴 史 学 に どの よ うに検 証 され て い った か を 眺 め る こ とに よ り,高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 へ 参 入 す る準備 をす る. 標 準 理 論 が 新 し くも た ら した 物 質 観 の な か で 最 も革 命 学 な要 素 は真 空 に 対 す る概 念 で あ ろ う.標 準 理 論 に よれ ば,真 に お け る媒 質 の よ うに 何 か(ヒ
空 は何 も な い無 の 空 間 で は な く,物 性
ッ グ ス と呼 ぶ)が 詰 まっ て い る力 学的 構 造 体 で
あ る.し たが っ て真 空 自 身 エ ネ ルギー を もつ こ とが 可 能 で あ り,環 境 変 化 に 応 じて真 空 自体 の 性 質 も変 わ り う る.ヒ
ッ グス場 は 自 己相 互 作 用 を も ち,温 度 が
下 が る と特 定 の 配位 を もつ よ う に な る(対 称 性 の 自発的 破 れ).す
な わ ち真 空
は温度 に よ って そ の相 を変 え る.標 準 理 論 の要 諦 は,わ れ わ れ の 住 む 世 界 が極 低 温 状 態 に あ り ヒ ッ グ ス粒 子 の凝 縮 した い わ ば超 伝 導 相 状 態 に あ る と認 識 す る こ とに あ る.相 転 移 に 応 じて個 々 の素 材 と して の 素 粒 子 の性 質 も変 わ り う る. 素 粒 子 の もつ 質 量 は そ の よ うに 後 天 学 に付 加 され た 力 学的 性 質 の 一 つ と見 な さ れ る.す な わ ち,標 準 理 論 は,素 粒 子 の 本 来 の 質 量は ゼ ロ で あ る と い う立場 を とる.物 質 の 根 源 要 素 で あ る フ ェ ル ミオ ン(ク ォー ク と レ プ トン)は カ イ ラ ル
不 変 性 に よ って,力
を媒 介 す るゲ ー ジ ボ ソ ン は ゲ ー ジ不 変 性 に よっ て,質 量 が
ゼ ロで あ る こ との理 論 的根 拠 を もつ.こ
れ ら の対 称 性 が 自発 的 に 破 れ(相 転 移
が 起 こ り)質 量 が 発 生 す る メ カ ニ ズ ム を ヒ ッ グ ス 機 構 とい う.現 実 の 世 界 で は,フ
ェ ル ミオ ン と電 弱相 互 作 用 の ゲー ジ ボ ソン が 質 量 を もち,カ
性 とゲ ー ジ不 変 性 が と もに破 れ て い る よ う に見 え るが,ヒ
イ ラル 不 変
ッグ ス機 構 を採 用 す
る こ とに よ り,有 限質 量 の素 粒 子 群 の相 互 作 用 を,ゲ ー ジ理 論 の範 囲 内 で 扱 う こ とが 可 能 に な る. 標 準 理 論 で 扱 う物 質 構 成 粒 子 に は 次 の3世 代6種
類 の ク ォー ク と レプ トンが
あ る.
(1.1) こ こに,uL,… 標Rは
の指 標Lは
カ イ ラ ル 固 有 状 態 が 負 の 左 巻 き粒 子 を表 し,指
カ イ ラル 固有 状 態 が 正 の 右 巻 き粒 子 を表 す.d',
s',b'は,弱
い相 互 作 用
をす る と きの 固有 状 態 で,質 量 固 有 状 態 のd, s, bと は小 林-益 川行 列 で 結 び つ い て い る量 で あ る(第2章
参 照).
こ れ らの 物 質 構 成 粒 子 が,そ
れ ぞ れ の もつ 電 磁 力,弱
い 力,強
い力 に よ って
結 びつ き,物 質 構 造 をつ く りあ げ る.素 粒 子 の 相 互 作 用 を記 述 す る数 学 の 枠 組 み は ゲ ー ジ理 論 で あ る.弱 い相 互 作 用 と電 磁 相 互 作 用(合 用)は,素
わせ て 電 弱 相 互 作
粒 子 の もつ ハ イパ ー チ ャ ー ジ(超 電 荷)と ア イ ソス ピ ン に よ り引 き
起 こ さ れ る.電 弱相 互 作 用 はSU(2)×U(1)対 述 さ れ るが,上
称 性 に 従 うゲ ー ジ理 論 に よ り記
記 の ヒ ッ グ ス機 構 に よ り対 称 性 が 自発 的 に破 れ る.た だ し電磁
相 互 作 用 部 分 は厳 密 なゲ ー ジ対 称 性 が 成 立 して い て,フ ォ トンの 質 量 はゼ ロの ま ま で あ る.一 方,強 ラー に は3種
い相 互 作 用 は ク ォー クの もつ カ ラー 荷 に よ り生 じる.カ
類 あ り,SU(3)対
chromodynamics)で
称 性 に 従 う ゲ ー ジ 理 論(QCD:
quantum
は,電 弱 相 互 作 用 と違 い真 空 の 対 称 性 の 自発 的破 れ は起
きて お らず,厳 密 な ゲ ー ジ対 称 性(ゲ ー ジ粒 子 の 質 量 が0と と見 な され て い る.し か し,低 温 し カ イ ラ ル 対 称 性 が 自発 的 に破 れ る.ヒ
い う意 味)に 従 う
で は ク ォー ク対 が 凝 縮 ッ グス が 存 在 しな い に もか か わ らず 力
学的 な要 因 で ヒ ッ グス的 な力 学 構 造 が構 成 さ れ る有 りさ まは,超 伝 導 に お け る クー パ ー 対 に よ く似 て い る.カ
ラー は 左 巻 き と右 巻 き を 区別 せ ず,QCDで
は
パ リテ ィ保 存 が 成 立 す る.し か し,カ ラー カ の 自 己相 互 作 用機 能 に よ りカ ラー が 現 れ な い 閉 じ込 め 相 が 実 現 して お り,ク ォー クや ゲー ジ粒 子 の グル ー オ ン を 単 独 に は 取 り出せ な い.低 エ ネ ル ギ ー で は,ク ォ ー ク と グル ー オ ンの 多重 相 互 作 用 を扱 う必 要 が あ り,格 子 ゲー ジ理 論 な ど非 摂 動的 取 扱 い が 必 要 で あ る.高 エ ネ ル ギ ー で は クォ ー ク と グル ー オ ン(合 わせ て パ ー トン と呼 ぶ)は,ジ ト と し て観 測 さ れ る の で,QCDの
ェッ
検 証 には パ ー トン と ジ ェ ッ トの 対 応 付 け が
必 要 で あ る.理 論 的 に厳 密 な対 応づ け は ま だ で きて い な い が,QCDを
ガイ ド
ラ イ ン と し たハ ドロ ン化 モ デ ル に よ りジ ェ ッ トデ ー タ を定 量的 に再 現 す る こ と は で きて お り,QCDの
精 密 検 証 が 可 能 で あ る.
1.2 標 準 理 論 の 構 造
1.2.1 電 弱 相 互 作 用 の ラ グ ラ ン ジ ア ン 電 弱 相 互 作 用 の 従 う電 弱 統 一 理 論 は,上 記 の 物 質 構 成粒 子 群 が カ イ ラル 対 称 性 を 満 た し,SU(2)×U(1)ゲ
ー ジ 理 論 に 従 う と い う と こ ろ か ら 出 発 す る.
フ ェ ル ミオ ン の右 巻 き成 分 と左 巻 き成 分 は,そ れ ぞ れ独 立 なハ イパ ー チ ャー ジ (超 電 荷Y)と
ア イ ソ ス ピ ン(I, I3)を もつ.す
な わ ち,相 互 作 用 が 左 巻 き粒
子 と右 巻 き粒 子 で 異 な る.運 動 方程 式 の も と と な る ラ グ ラ ン ジ ア ンは ゲ ー ジ セ ク ター と ヒ ッ グ スセ クター に 分 け られ,そ に な っ て い る.ゲ ー ジ セ ク ター は,フ
れ ぞれ が ゲ ー ジ対 称 性 を満 た す よ う
ェ ル ミ オ ン(ク ォ ー ク と レ プ トン)と
ゲ ー ジ ボ ソ ン の 自 己エ ネ ル ギー お よ び相 互 作 用 部 分 で あ る.ヒ
ッグ ス セ ク ター
は ヒ ッ グ ス の 自 己エ ネ ル ギー お よ び ヒ ッ グス に結 合 す るす べ て の粒 子 の 相 互 作 用 を含 む.フ
ェ ル ミオ ン お よび ゲ ー ジ ボ ソ ンの 質 量 は,ヒ
用 に よ る真 空 の 自発的 対 称 性 の破 れ の結 果 と して,ヒ
ッグ ス の 自 己相 互 作
ッ グ ス セ ク ター に生 じる
物 理 量 で あ る.フ ェ ル ミオ ン とゲ ー ジ ボ ソ ンの 相 互 作 用 が 引 き起 こす 現 象 を計 算 す る と きは,質 量 項 を含 め る必 要 が あ るが,質
量 項 だけ を ヒ ッ グ スセ ク ター
か ら分 離 す る と,そ こ の部 分 の ゲ ー ジ不 変 性 は破 れ る.ト
リー 近 似 を扱 う場 合
は そ の 差 は重 要 で は な い が,高 次 効 果 を考 慮 す る と き は両 セ ク ター の 寄 与 を す
べ て 取 り入 れ な け れ ば な ら な い . 後 の 議 論 の た め,SU(2)対 SU(2)×U(1)対
称 の2重
項 で あ る 電 子 と ニ ュ ー ト リ ノ に つ い て,
称 性 を 満 た す 全 ラ グ ラ ン ジ ア ン を 書 き 下 ろ す .他
の2重
項 も
同 様 に 扱 う.
(1.2) (1.3a) (1.3b) (1.3c) (1.3d) (1.4a) (1.4b) 太 文 字 で 表 し た 量は ア イ ソ ス ピ ン 空 間 の ベ ク ト ル で あ る.す (Fa, a=1∼3).ラ
グ ラ ン ジ ア ン(1.2)の
目 が ヒ ッ グ ス セ ク タ ー で あ る.こ
第1行
れ にW0とBの
目 が ゲ ー ジ セ ク タ ー,第2行 混 合 を 取 り 入 れZとAで
書 き 直 し た う え で 対 称 性 の 自 発 的 破 れ を 入 れ れ ば,グ -サ ラ ム(Glashow-Weinberg-Salam)理 a.
BとW0の
BとW0は
な わ ちF=
ラ シ ョ ー-ワ イ ン バ ー グ
論 の ラ グ ラ ン ジ ア ンが 得 られ る
.
混合 同 じ フ ェ ル ミ ン 対 に 結 合 す る の で 混 合 が 生 じ,フ
中 性 の ボ ソ ン 場Zと
な る.混
合 角 をθW(ワ
イ ン バ ー グ 角)と
ォ ト ン 場Aと して
(1.5a) (1.5b) こ の 結 果,Aμ
の 結 合 す る 量 子 数(電
各 粒 子 に つ い てQL=QRが す る.こ
のZμ
とAμ
荷)は,Q=I3+Y/2と
満 た さ れ る の で,電
を代 入 し,Q=I3+Y/2を
書 き表 さ れ る.
磁 相 互 作 用 は パ リテ ィ を保 存 使 っ て 書 き 直 し,Aμ
とフェル
ミオ ン場 の 結 合 定 数 をeと
読 み 替 え る と,ゲ ー ジ セ ク ター の ラ グ ラ ン ジ ア ン
の 相 互 作 用 部 分 は 次 の よ うに変 形 され る.
(1.6a) (1.6b) ワ イ ン バ ー グ 角sin2θWは,標
準 理 論 の範 囲 で は計 算 で き な い 与 え られ た パ ラ
メ タ ー で あ り,0.22∼0.23の b.
値 を もつ .
フ ェル ミオ ン質 量 項
対 称 性 の 自発 的破 れ で,ヒ
ッ グ ス場 が真 空 期待 値υ を も ち
(1.7) と な る も の とす る.フ
ェ ル ミオ ン の 質 量 項 は,(1.2)式
3項 に 対 称 の 自 発 的 破 れ(1.7)を
の ヒ ッ グ ス セ ク ター 第
入 れ て や れ ば,
(1.8a) (1.8b) と な る.ア
イ ソ ス ピ ンI3=-1/2のdク
るだ け で 同 じ方 法 で質 量 をつ くれ る.uク い.エ
ォ ー ク の 質 量 は,結 合 定 数fを
変え
ォ ー ク質 量 発 生 に はφcを 使 え ば よ
ネ ル ギー がΛQCD以 下 の エ ネ ル ギー ス ケ ー ル に な る と,ク ォ ー ク対 が 凝
縮 して 実 効 的 に ヒ ッ グ ス 場 を 構 成 し,カ イ ラ ル 対 称 性 の 破 れ の 結 果 と し て クォ ー ク に は余 分 の 質 量 が付 加 され る. C. WとZの W± とZの
質量項 質 量 項 は ヒ ッ グ ス の運 動 エ ネ ル ギー 項((1.2)式
第2行 第1項)で
の 置 き換 え を し てや れ ば 取 り出せ て,
(1.9)
を得 る.弱 い相 互 作 用 の フ ェ ル ミ結 合 定 数 と は次 の 関 係 で 結 びつ い て い る.
(1.10) (1.11) d.
ヒッグス相互作用
(1.2)式
の ヒ ッ グ ス セ ク タ ー に(1.7)を
入 れ て や れ ば,ヒ
ッグスの 相互 作
用 が 得 ら れ る.
(1.12a) (1.12b) e.
ρ-パ ラ メ タ ー
荷 電 カ レ ン トの フ ェ ル ミ結 合 定 数GFを,式(1.10)で 性 カ レ ン トの フ ェ ル ミ結 合 定 数GNを
定 義 し た よ う に,中
次 式 で 定 義 す る.
(1.13) ρは 高 次 の効 果 を含 め た 中性 カ レ ン ト結 合 定 数 と荷 電 カ レ ン ト結合 定 数 の 比 と して 定 義 され る.
(1.14a) Δρは 高 次 の 補 正 効 果 で あ る.W,
Zゲ ー ジ ボ ソ ン の 重 い フ ェ ル ミ オ ン や ヒ ッ
グ ス の ル ー プ に よ る効 果 が 大 きい の で,ρ の精 密 デ ー タ と高 次 計 算 値 を合 わせ る こ とに よ り トップ ク ォー ク質 量 が 推 定 で き る.ト
ップ は予 想 通 りの とこ ろ で
発 見 され たの で,現 在 は ヒ ッグ ス粒 子 質 量 の 推 定 に 使 わ れ る.ヒ ッ グ ス質 量 が 決 定 した 後 は新 粒 子(す な わ ち新 物 理)の 発 見 に 有 力 な 手段 と な る.ρ は ま た
(1.14b) に よ っ て も定 義 で き る.標 準 理 論 とは 違 っ て,ヒ
ッ グ ス粒 子 が 複 数 個 あ る場 合
は,W,
Zの
質 量 は,式(1.9)の
代 わ りにυiを
中 性 ヒ ッ グ ス 場 の 真 空 期 待 値,
Iiを ヒ ッ グ ス の ア イ ソ ス ピ ン と し て,
(1.15a) (1.15b) と変 更 され るの で,ト
リー 近 似 の段 階 で は
(1.16) と な る.余 が,2重
分 に 存 在 す る ヒ ッ グ ス 場 が,3重
項 を考 え る 限り ヒ ッ グ ス 場 が 複 数 あ っ て も,ト
ρ=ρtree=ρmass=1で mz2)で
項 を 含 め ば
あ る.質
量 殻 に よ るsin2θwの
は ρ の 高 次 効 果 をsin2θwの
に よ っ て1と
1.2.2
な り,高
QCDラ
QCDは,厳 を 伴 わ な い.ク
とな る
リー 近 似 の 段 階 で は,
定 義(sin2θw≡1-mw2/
中 に 取 り込 ん で し ま う の で,ρmass,は 定 義
次 補 正 効 果 を 受 け な い.
グ ラ ンジ ア ン
密 なSU(3)対
称 性 を も つ ゲ ー ジ 理 論 で あ り対 称 性 の 自 発 的 破 れ
ォ ー ク を ψ=(R,G,B)の
よ う に 表 す と,QCDラ
グ ラン ジア
ン は,
(1.17a) (1.17b) (1.17c) で 与 え られ る.t=(tk;k=1∼8),
tk=λk/2は 生 成 子 の3×3表
現 行 列 で あ る.
量 子 場 の 場 合 は,ゲ ー ジ 固定 項 や 幽 霊 ス カ ラー 項 が 付 加 さ れ る.QCDは 換 ゲ ー ジ理 論 で あ り,Fμν はΑ μの 非 線 形 項 を 含 む.QCD特
非可
有 の種 々の 力学
的 性 質 は この 性 質 に 帰 着 で き るこ とが 多 い. ⅰ) 漸 近 自 由 と繰 り込 み 群 方程 式
QCDの
義 さ れ,反 応 の最 低 次(ト
は定 数 で あ るが,高
リー 近 似)で
結 合 定 数 は,αs≡g2/4π で 定 次 効 果 を取 り入 れ
る と 関 与 す る エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ルQの coupling
constant).高
償 と し て,繰
関 数 と な る(実
効 結 合 定 数:running
次 効 果 計 算 に 出 現 す る 無 限 大 の 発 散 を 繰 り込 む と,代
り込 み ス ケ ー ル エ ネ ル ギ ー μ を 導 入 せ ざ る を え な く な る.観
量は 繰 り込 み 点 μ2の と り方 に 依 存 し て は い け な い か ら,物
理 量 の μ2に よ る 変
化 は αsの 変 化 と相 殺 し な け れ ば なら な い.物
理 量 をPと
現 れ る エ ネ ル ギ ー ス ケ ー ル をQと
元 解 析 に よ りPは
の 関 数 と な り,繰
す る と,次
測
し て,そ
の物理 量が τ=ln(Q2/μ2)
り込 み 群 方 程 式
(1.18a) が成 立 し な け れ ば な らな い.こ れ は
(1.18b) と い う 形 に 書 き 直 せ る.た
だ し,β
関数は
(1.19) で定 義 され る 関数 で あ る.β 関 数 は 実 際的 に は摂 動 論 に よ っ て の み 計 算 可 能 で あ るの で,次
の よ うに展 開 す る.
(1.20) こ こ で 新 し い 関 数 αs(τ)を
(1.21) で定 義 し境 界 条 件 と して
(1.22) と 設 定 す る と,αs(τ)は
次 の 方 程 式 を 満 た す.
(1.23) こ れ を(1.18b)と
比 較 す れ ば,(1.18b)は
一般 解 と して
(1.24) を もつ こ とが わ か る.す な わ ち繰 り込 み群 方 程 式 は,QCDに μ2依 存 性 が す べ て αs(μ2)の中 に あ る こ と を示 す.た
お け る観 測 量 の
だ し,摂 動 展 開 を し た場
合 は,高
次 の 残 余 項 に μ 依 存 性 が 残 る.asのQ依
を(1.19)に
存 性 を 求 め る の に,(1.20)
入れ ると
(1.25) とな る.摂 動 の 最 低 次 を と る と
(1.26a) あ る い は,
(1.26b) に よ っ て,ス ケ ー ル に よ らな い普 遍 定 数Λ を導 入 す れ ば
(1.27) が 得 られ る.Λ
は ∼200MeV程
で あ り,αs(Q)はQの
度 の 値 を もつ.非
可 換 ゲ ー ジ群 で は,β0>0
減 少 関数 で あ る.す な わ ち漸 近 自由 が 成 立 す る.
ⅱ) ク ォー クの 閉 じ込 め
QCDに
は ヒ ッグ ス場 に よ る真 空 の 自発 的 対 称
性 の 破 れ は な く,厳 密 な 意 味 で ゲー ジ対 称 性 が 成 立 し て い る(mg=0と
して
よ い).し か し,非 可 換 ゲ ー ジ対 称 理 論 に 特 有 の グ ルー オ ンの 自 己 相 互 作 用 の お か げ で,ク
ォー クや グ ルー オ ンに は,通 常 の クー ロ ン型 の ポ テ ン シ ャ ル の ほ
か に 距 離 に 比 例 す る ポ テ ン シ ャ ル が 生 じ,自 己 エ ネ ル ギー を もつ 紐 でつ な が れ た状 態 に な る.こ の 結 果,ク
ォ ー クや グ ルー オ ン を大 き く引 き離 そ う とす る と
真 空 か ら ク ォー ク対 を拾 っ て た くさん の ハ ドロ ンが つ く られ,紐 ち ぎれ る.す な わ ち,ク
はば らば らに
ォー クや グル ー オ ン は単 独 で は 分 離 で きず,ジ
ェット
と して観測 され る こ とに な る.
1.3 標 準 理 論 の 検 証*1)
1.3.1 標 準 理 論 の 確 定 電 弱 相 互 作 用 の 標 準 理 論 が 提 案 され た の は1967年 *1) 標 準 理論 の実 験 的 検証 の詳 細 に つ い ては
で あ るが,注
目 を浴 び る
,本 シ リー ズ第5巻 の 『 素 粒 子 標 準 理 論 と実 験 的 基礎 』 を参 照 され た い.以 下 本 書 では第3, 4巻 の 『 素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅰ,Ⅱ 』 を文 献Ⅰ,第5巻 を文 献Ⅱ と して 引用 す る.
よ う に な っ た の は1971年
に ト ・フ ー フ トに よ り繰 り込 み 可 能 で あ る こ とが 証 明
さ れ て か ら で あ る.1973年
に は 欧 州 原 子 核 研 究 機 構CERNの
ガー ガ メル 泡箱
ニ ュ ー ト リ ノ 実 験 で 最 初 の 中 性 カ レ ン ト現 象 が 発 見 さ れ た.そ
の 後,各
種 中性
カ レ ン ト反 応 が す べ て 同 じ ワ イ ン バ ー グ 角 を 与 え る こ と が 証 明 さ れ て,1970 年 代 の 終 わ り ま で に は,グ
ラ シ ョ ー-ワ イ ン バ ー グ-サ ラ ム(GWS)モ
デ ルが
た く さ ん の モ デ ル の 中 か ら 唯 一 正 し い モ デ ル と 認 識 さ れ た.1970年 1980年
代 に か け て は,電
の ペ ッ プ(PEP),日 (1974),タ
子 コ ラ イ ダ ー で は ド イ ツ の ペ トラ(PETRA),米
本 の
ウ(1975),bク
ト リ ス タ ン(TRISTAN)が ォ ー ク(1978)の
称 性 な ど の 精 密 測 定 で,SU(2)×U(1)構 が 行 わ れ た.1983年 ダ ー(Spps)でW,
に は,セ Zを
こ にSU(2)×U(1)ゲ
代 か ら
発 見 し,予
活 躍 し,チ
発 見 と,生
UA2グ
ャーム
成 断 面積 や 角 分 布 非 対
造 の 精 密 検 証 とZ,
ル ン のUA1,
国
W質
量値 の 予言
ルー プ が ハ ドロ ン コ ラ イ
言 通 りの 質 量 値 を もつ こ と を確 認 し て,こ
ー ジ理 論 は モ デ ル か ら電 弱 相 互 作 用 の 標 準理 論 へ と昇 格
し た の で あ る. 一 方,強
い 相 互 作 用 反 応 で は カ ラ ーSU(3)に
く つ か 提 唱 さ れ て い た.1973年
よ る モ デ ル が1964年
に 漸 近 自 由 が 発 見 さ れ,QCDが
物 理 の 理 論 と し て 急 浮 上 す る.1969年
のMIT/SLACに
頃 か らい
強 い相 互 作 用
よ る深 非 弾 性 散 乱 で
の ブ ヨ ル ケ ン ス ケ ー リ ン グ 発 見 に 始 ま る 一 連 の 深 非 弾 性 散 乱 デ ー タ は,QCD 検 証 に 大 い に 貢 献 し た.1975年 発 見 さ れ,さ 験 でQCD力
に はPEPの
実 験 で ク ォ ー ク の ジ ェ ッ ト構 造 が
ら に チ ャ ー ム ス ペ ク トロ ス コ ピ ー や ニ ュ ー ト リ ノ/ミ ュ ー オ ン 実 学 や 漸 近 自 由 の 証 拠 が 蓄 積 さ れ た.1979年
ル ー オ ン が 発 見 さ れ て,QCDも
ま た1970年
代 終 わ り ま で に は,ク
互 作 用 を 記 述 す る 標 準 理 論 と し て の 地 位 を 確 立 し た.こ ン 加 速 器 は ブ ル ッ ク ヘ ブ ン 研 究 所 の30GeV Synchrotron)加 ミ研 究 所 の200GeV
速 器,セ PSで
ル ン の24GeV
に はPETRAで
PS
AGS (Proton
グ
ォー クの 相
の 時 期 活 躍 し た ハ ドロ (Alternating Synchrotron),フ
Gradient ェル
あ る.
1.3.2 標 準 理 論 の 精 密 検 証 1980年 代 後 半 セ ル ン のLEP
とフ ェル ミ研 究 所 の テ
ヴ ァ トロ ン(TEVATRON:
)の 稼 働 開始 に よ っ て,標 準 理 論 の
研 究 は 高 次 効 果 を含 む精 密 検 証 の 時 期 に 入 っ た.電 子-陽 電 子 反 応 に よ るZ生 成 の 大 きな 断 面 積 は,Z生
成 に 伴 う各 種 反 応 の精 密 測 定 を可 能 に し,高 次 効
果 を テ ス トす るの に 十 分 な 精 度 を も た ら し た.Zの
見 え な い チ ャ ネ ルへ の 崩
壊 幅 よ り,軽 い ニ ュー トリ ノの数 が(し た が っ て たぶ ん世 代 数 も)正 確 に3で あ る こ とが 確 認 さ れ た.ワ
イ ン バ ー グ角sin2θwに は,ト
リー レベ ル で は 同 等
な い くつ か の定 義 が あ り,高 次効 果 を入 れ る と差 が で て くる.ス タ ン フ ォー ド 線 形 加 速 器 セ ン ター(SLAC)のSLC ムやLEPデ
(Stanford Linear Collider)の 偏 極 ビー
ー タ は,こ れ らが す べ て理 論 の 予 想 通 りで あ る こ と を示 した.標
準 理 論 の一 つ の 特 徴 と して,高 次効 果 に は も っ ぱ ら質 量 の 大 きい 粒 子 の寄 与 が 優 勢 で あ る こ とが あ げ られ る.こ の 結 果,精
密 デー タ と高 次 計 算 を比 較 す る こ
とに よ り トップ と ヒ ッ グス の 質 量値 が 予 言 で き る.ト トロ ン で発 見 され,予
ップ は1984年
言通 りの 質 量 値 で あ る こ とが確 認 され た.ト
ク の 質 量 が 決 ま っ てか らは,ヒ
に テヴ ァ ップ ク ォー
ッ グ ス の質 量 値 予 想 に 使 わ れ て い る(第3章
参
照). 閉 じ込 め 効 果 に よ り クォー ク を単 独 に取 り出 せ な い の で,ク ォ ー ク反応 を定 量 的 に 扱 うの に は 当初 は か な りの 困難 を伴 っ た.理 論 で の パ ー トン計 算 と実 験 で の ジ ェ ッ ト現 象 との対 応 が つ け に くか った の で あ る.こ の 状 況 に対 応す る た め,パ
ー トン か らハ ドロ ン を発 生 させ る種 々 の 現 象 論 的 な ハ ドロ ン化 モ デ ル が
提 案 さ れ た.電 子 反 応 に お け る ジ ェ ッ ト現 象 デ ー タ に 合 わ せ,QCDを ラ イ ン と して種 々 の 改 良 を施 した 結 果,ジ
ガイ ド
ェ ッ トデ ー タの 再 現 性 は ほ ぼ満 足 で
き る もの とな っ た.こ の結 果 ジ ェ ッ ト構 造 が 明 らか に な る と と も にQCDの
精
密 検 証 が 可 能 と な っ た.現 在 で は グル ー オ ン ジ ェ ッ ト とクォ ー クジ ェ ッ トの 違 い,QCDの
非 ア ー ベ ル構 造(グ ルー オ ン の 自 己相 互 作 用),漸 近 自 由,グ ル ー
オ ン の 紐 構 造 な どが テ ス トされ,す べ て理 論 の 予 言 通 りで あ る こ とが確 認 され て い る. ハ ドロ ン 同 士 の 反 応 に つ い て は,ク
ォ ー クや グ ル ー オ ン(ま とめ てパ ー ト
ン)反 応 成 分 の う ち 柔 らか い部 分 をハ ドロ ン 内 の パ ー トン分 布 関数 に 繰 り込 み,パ ー トン レベ ル で の 固 い 反 応(運 動 量 遷 移 の 大 き い 反 応)を 分 離 で き る こ
と(factorization)がQCDを
使 って 証 明 さ れ,実 験 デ ー タ と理 論 と の 比 較 検
証 は 大 い に 進 展 し た.ニ ュ ー ト リ ノや 電 子/ミ ュ ー オ ン に よ る深 非 弾 性 散 乱 デ ー タか らパ ー トン 分 布 関 数 を 決 め,発 展 方 程 式 を使 う こ とに よ りQ2の い とこ ろ で の 分 布 関 数 が 正 確 に計 算 で き る.こ の 結 果,高 反 応 か らパ ー トン 反 応 を抽 出 しQCDの で あ る.現 在 のQCDは,ジ
大き
エ ネ ル ギー ハ ドロ ン
高次効果 の精密検 証 が可能 となったの
ェ ッ トの 包 含 反 応 率 が 運 動 変 数 の 関 数 と し て9桁
も変 わ る状 況 を見 事 に 再 現 す る こ とが で き る.こ の こ と は ま た,ハ
ドロ ン反 応
を使 用 して 電 弱 相 互 作 用 反 応 検 証 が行 え る こ とを意 味 す る.例 え ば ハ ドロ ン コ ラ イ ダーLHC
(Large
Hadron
Collider:
)を 使 って ヒ ッ グス を
発 見 す る こ と を 考 え よ う.ヒ ッ グ ス 生 成 反 応 断 面 積(∼10pb× QCD反
応 断 面積(∼100mb)に
分 岐 比)は
比 べ て非 常 に小 さ く,信 号 対 雑 音 比 は10桁 以
上 に もな る.そ れ で い て ヒ ッ グ ス信 号 抽 出 が 可 能 な の は,圧 倒 的 に数 の 大 きい QCD雑
音 を正 確 に評 価 で き るか らで あ る(第3章
参 照).
1.4 高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の 発 展 方 向
以 下,本 書 で 取 り上 げ るテ ー マ を概 観 す る.現 在,標 て残 って い る大 き な テ ー マ はCP非 ろ う.CP非 て い るが,こ
準理 論 の 中 の 課 題 とし
保 存現 象 の解 明 と ヒ ッ グ ス粒 子 の 発 見 で あ
保 存 現 象 に つ い て は,小 林-益 川 モ デ ル が 標 準 理 論 に 組 み 込 まれ れ 以 外 の 可 能 性 に つ い て も種 々 の モ デ ル が 提 唱 さ れ て お り,実 験
に よ る検 証 が 待 た れ る.1999年
に は 日本 の 高 エ ネ ル ギ ー 加 速 器 研 究 機 構 や ス
タ ン フ ォー ド線 形 加 速 器 セ ン ター のB-フ ハ ドロ ン コ ラ イ ダ ー で のB物
理 ,HERA-Bな
ァ ク トリー が 稼 働 予 定 で あ り,ま た ど も計 画 さ れ て い るの で,こ の
方 面 で の 大 きな 進 展 が 近 い 将 来 に 見 込 まれ る.小 林-益 川 モ デ ル は標 準 理 論 の 中 に あ る もの の,実
験 デー タの 出 方 次 第 で はCP非
保 存 効 果 が 標 準 理 論 を超 え
る可 能 性 を提 供 す る とい う意 味 で,高 エ ネ ル ギ ー 物 理 学 の発 展 とい う本 書 の 主 題 を担 う先 鋒 を務 め る に ふ さわ し い(→
第2章).
統 一 理 論 で は,従 来 は 素 粒 子 に 付 随 す る 固有 の 物 理 量 とみ な され た 質 量 を, 真 空 の 相 転 移 の 結 果 と し て後 天 的 に 素 粒 子 に 付 加 さ れ た 力 学 的 な 性 質 と 見 な す.真
空 を空 虚 な 無 の 空 間 で は な くヒ ッ グ ス の凝 縮 し た 力学 的 構 造 体 とみ な す
とい う点 に お い て,革 命 的 な思 想 を持 ち込 ん だ とい え る.こ の 結 果 と して ゲ ー ジ ボ ソ ンが 有 限 質 量 を もつ 場 合 で もゲー ジ不 変 性 を保 ち繰 り込 み 可 能 な 理 論 が で きて,大
統 一 理 論 や 重 力 を含 む 超 大 統 一 ま で研 究 対 象 と し て 扱 え る よ う に
な っ た.し か し,質 量 問題 に 関 して は質 量 パ ラ メ ター が ヒ ッ グ ス粒 子 との 相 互 作 用 結 合 定 数 と い うパ ラ メ ター に置 き換 わ っ た だけ で,質 量 発 生 メカ ニ ズ ム に 対 して は な ん ら本 質 的 な解 決 法 を与 え て い な い.こ の た め に は ヒ ッ グス 粒 子 を 発 見 し て,そ の 性 質 を調 べ な け れ ば な ら な い.LEPII(欧
州 原 子核 研 究機 構
CERNで
量 値 が〓105GeV
稼 働 中 の100+100GeV
e-e+コ
ラ イ ダ ー)は,質
ま で の ヒ ッ グ ス粒 子 な ら ば 発 見 す る 能 力 が あ る.同 LHC(
,2004年
ス 粒 子 な らば,1TeVま
稼 働 予 定)で は,標
じ くセ ル ン で 建 設 中 の
準 理 論 で予 想 さ れ る ヒ ッグ
で の 発 見 能 力 が あ る.電 弱 反 応 デー タ の総 合 解 析 や
超 対 称 性 理 論 か らは,mH〓150GeVぐ
らい で あ る 可 能 性 が 強 い と予 想 され て
お り,ヒ ッ グ ス の質 量値 を決 め る こ とは,単 る とい うだ け に と ど ま らず,質
に一 つ の 素 粒 子 パ ラ メ ター を決 め
量値 そ の も の が素 粒 子 の 階 層 性 や 次 世 代 の新 物
理 の 有 り さ ま を具 現 して い る とい う点 で 大 き な 意 味 を もつ.第3章
では ヒッグ
ス発 見 法 と質 量 値 に よ り変 わ る将 来 像 に つ い て議 論 す る. ニ ュー ト リノ は,素 粒 子 の 中 で い ろ い ろ な 意 味 で特 別 な地 位 を 占め る.強 い 相 互 作 用 を し な い 中性 の 粒 子 とい う性 質 の た め に,1970年
代 に は 中性 カ レ ン
トの 発 見 で 電 弱 統 一 理 論 確 立 の 先 駆 け とな り,つ い で深 非 弾性 散 乱 で クォー ク の 存 在 と漸 近 自由 を 確 立 し,QCD確
立 に も先 駆 的 な 役 割 を 果 た し て い る.
ニ ュー ト リノ の現 時 点 で の役 割 は,ま ず は 自己 の もつ 質 量 値 の 小 さ さ の解 明 を 通 して,ヒ
ッ グ ス解 明 とは別 の観 点 か ら質 量 問 題 に 明 り を灯 す こ とに あ る.標
準 理 論 で は,質 量 値 は ヒ ッ グ ス の 真 空期 待 値(246GeV)と
ヒ ッ グ ス との 相 互
作 用 の 強 さfの 積 と して 与 え られ る.ニ ュー ト リノ は 極 端 に 小 さ いfの 値 を もつ が ゆ え に,標 準 理 論 で は 便 宜 上 質 量 をゼ ロ と し て 扱 わ ざ る を え なか っ た. こ の小 さ さ を 説 明 す る もっ と も ら しい 説 明 は シー ソー メ カ ニ ズ ム で あ るが,こ れ は 非 常 に 大 きい エ ネ ル ギー ス ケー ル した が って 新 物 理 の 潜 在 的 存 在 を暗 示 す る.1998年
の 岐 阜 神 岡 の ス ー パ ー カ ミオ カ ン デ検 出 器 に よ る大 気 ニ ュー ト リ
ノの ニ ュ ー ト リノ振 動 の発 見 は,ニ ュー ト リノの 質 量 の 存 在 を通 して標 準 理 論
を超 え る最 初 の実 験 デ ー タ を提 供 した とい う意 味 で画 期 的 な 意 味 を もつ.大 気 ニ ュー ト リノ振 動 結 果 の もつ 意 味 に つ い て は,現 在 活 発 な研 究 が行 わ れ つ つ あ る の で,こ
こ で こ れ まで の ニ ュー ト リノ物 理 を総 括 を し,発 展 方 向 を探 る こ と
は 重 要 で あ る(→
第4章).
ニ ュー ト リ ノの もつ 第2の 役 割 は,素 粒 子 と宇 宙/天 体 物 理 学 との橋 渡 し で あ る.ビ
ッ グバ ン以 来 の宇 宙 残 存 ニ ュ ー ト リノ の ゆ え に,ニ
値 を決 め る こ と 自身,そ
ュー トリ ノの 質 量
の ま ま宇 宙 の 暗 黒 物 質 解 明 に 大 き な役 割 を果 た す こ と
に も な る.し か し,宇 宙 論 に も役 立 つ とい う間 接 的 な役 割 を超 え て,ニ ュ ー ト リ ノ 自身 を天 体 物 理 学 の 手 段 と し て 使 う道 が 開 け た こ とは 大 きい.も
と もと
ニ ュ ー トリノ の質 量 値 が 極 端 に小 さ い とい う理 由 の た め,加 速 器 に よ る質 量 測 定 実 験 に は 限 界 が あ り,天 体 ニ ュー ト リ ノ に そ の 活 路 を求 め ざ る を え な か っ た.し か し,こ の結 果,太 陽 ニ ュ ー トリ ノや 超 新 星 ニ ュー ト リノ観 測 を通 じて ニ ュー ト リノ天 文 学 とい う新 分 野 が 切 り開 け た の で あ る.さ
らに,従 来 は もっ
ぱ ら加 速 器 を主 た る道具 と して きた素 粒 子 物 理 解 明 に 非 加 速 器 素 粒 子 物 理 とい う新 しい分 野 を開 き,ビ ッ グバ ン 直 後 の 超 高 エ ネ ル ギー 現 象 の解 明 に 通 じる 窓 を開 い た 意 義 は大 きい. 大 統 一 は い う ま で もな くQCDと
電 弱 理 論 を統 合 す る試 み で あ る.そ の エ ネ
ル ギー ス ケ ー ル〓1016GeVが,近
い 将 来 に 加 速 器 で実 現 で き る可 能 性 は な く
本 格 的 な実 験 は 不 可 能 で あ るが,ビ
ッ グバ ン以 来 の 残 留 化 石 を調 べ た り(例;
モ ノ ポー ル探 索),低 エ ネ ル ギー 現 象 と して 顔 を出 した り(例;量
子 崩 壊),ま
た ニ ュ ー トリ ノ質 量 問題 な どで の検 証 可 能 性 な ど い くつ か の 窓 が 開 い て い る. さ らに,大 統 一 や 超 大 統 一 理 論 をつ く る試 み の 中 か ら生 まれ た 超 対 称 性 の 性 質 な ど,現 在 の標 準 統 一 理 論 の 欠 点 を補 い,新
し い分 野 に 進 展 す る可 能 性 を秘 め
て い る.高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 将 来 の 発 展 方 向 性 を見 きわ め る最 も直 接 的 な テー マ と い え る(→
第5章).
ア ク シオ ン は,強 い相 互 作 用 に お け るCP問
題 の 解 決 の た め に 創 作 され た粒
子 で あ る.残 念 な が ら標 準 ア クシ オ ンの 存 在 は 否 定 され,宇
宙論 的 な見 え な い
ア ク シ オ ンの 存 在 可 能 性 も 目々 そ の 窓 が 閉 じ られ つ つ あ る.し か し,ア ン存 在 の 理 論 的 動 機 は 非 常 に 強 く,ソ
リ トン,イ
ク シオ
ン ス タ ン トン効 果,θ 真 空,
電 弱 相 互 作 用 相 転 移 時 の バ リオ ン数 保 存 の 破 れ な ど,優 れ て理 論 的 な 課 題 と密
接 に結 び つ い て い る.宇 宙 の 暗 黒物 質 の 候 補 の 一 つ で あ るこ と を含 め,ま
た通
常 の加 速 器 実 験 とは か け 離 れ た発 見 手 法 な ど,分 野 を超 え た テ ー マ が 集 中 して い る が ゆ え に,高
エ ネ ル ギー 物 理 学 発 展 の た め の 学 習 意 義 は 大 きい(→
第6
章). 磁 気 単 極 子(モ
ノポ ー ル)は,本
来 は 電 荷 に対 す る磁 荷 と い う概 念 か ら出 発
し た が,現 代 の ゲ ー ジ理 論 で は電 磁 場 と共 存 す る ソ リ トンの こ と を指 す.有
限
な大 き さ を もつ 構 造 体 で あ るが,十 分 離 れ た と こ ろで は 点 磁 荷 と同 じ磁 場 をつ くる.大 統 一 が 存 在 す るな らば,電
弱 強相 互 作 用 に分 化 す る と きに 必 ず 出 現 す
る こ とが 理 論 的 に い え る.こ の ため 精 力 的 に モ ノポー ル探 索 が 行 わ れ た が,い まだ に見 つ か っ て い な い.理 論 的 な 流 れ と して は,第6章
の ソ リ トン の1セ
シ ョ ン に含 め る方 が 整 合 性 が とれ るが,実
験 的 探 索 自体,一
う る の で 独 立 な 章 と し た(→
お,イ
第7章).な
ク
つ の テー マ とな り
ン フ レー シ ョ ン モ デ ル は,当
初 モ ノ ポー ル の 不 在 を説 明す るた め に提 案 され た もの で あ る. 大 統 一 理 論 は 宇 宙 論 に イ ン フ レー シ ョン と い うア イ デ ア を提 供 し,ビ ッ グバ ン宇 宙 論 に 内在 し たい くつ か の根 源 的 な 問題 を解 決 した.さ
らに 宇 宙 構 造 創 成
の も っ と も ら しい シナ リオ を も提 供 して い る.宇 宙 の 誕 生 後 わ ず か10-40秒 近 く まで 逆 上 っ て議 論 が で き る の も全 く大 統 一 理 論 の お か げ で あ る.逆 に宇 宙論 の 発 展 が 素 粒 子 論 に も 多 くの 好 ま し い影 響 を及 ぼ した.大 統 一 ス ケー ル の エ ネ ル ギー を人 工 的 に 製 造 す る こ とが 不 可 能 で あ るに もか か わ らず,わ れ われ が大 統 一 理 論 や 超 対 称 理 論 の 実 験 的 検 証 を検 討 す る こ とが で きる の は,ま グバ ン宇 宙 論 の お か げ で あ る.こ の 意 味 で,ビ
さにビ ッ
ッ グバ ン宇 宙 論 の 基 本 を理 解
し,素 粒 子 物 理 学 との接 点 に ふ れ て お くこ とは 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の発 展 を 洞 察 す る た め に 不 可 欠 で あ る(→
第8章).
2 小林-益 川行列
2.1 ヒ ッ グ ス 場 に よ る質 量 生 成
2.1.1 弱 固 有 状 態 と質 量 固 有 状 態 こ の 章 で は,標 準 理 論 に お い てCP非
保 存 が どの よ うに 取 り扱 わ れ る か を見
て み よ う.標 準理 論 に お い て 現 れ る場 は,ク ォ ー ク と レプ トンの デ ィ ラ ッ ク場 ψ,ゲ ー ジ 場WμとBμ,そ し て ヒ ッ グ ス場 φで あ る.こ れ ら はCPに 対 して 一 定 の 変 換 性 を もつ(Ⅱ-付 録E参 照) .自 由 場 の ラ グ ラ ン ジ ア ン は も と も と こ の変 換 で不 変 な よ うに で きて い る.問 題 は相 互 作 用 項 が どの よ うに変 換 す る か で あ る.こ の た め に ま ず クォ ー クの質 量 項 か ら眺 め て み よ う.ク ォー ク場 と ヒ ッ グ ス場 を
(2.1) と し て,ク
ォ ー ク と ヒ ッ グ ス 場 のSU(2)不
一般化 すれば
変 な 相 互 作 用LI(ψ,φ)(1.2)を,
,
(2.2) と 書 け る.上
式 は,φ0が
真 空 期 待 値 を も っ た と き に,そ
質 量 が 生 じ る よ う ア レ ン ジ し て あ る.こ … を表 す
.ク
ォ ー ク 場 に'を
の 場 で あ り,必 弱 固 有 状 態(weak
れ ぞ れ,uj'とdk'に
こ にuj'=u',c',t',…,dj'=d',s',b',
つ け た の は,こ
れ らが 弱 い相 互 作 用 をす る と き
ず し も 物 理 的 な ク ォ ー ク に 対 応 し て い な い か ら で あ る.こ eigenstate)と
呼 ぼ う.Mjk, Mjk'は
れを
クォ ー ク場 と ヒ ッ グ ス
場 との 結 合 定 数 で あ り,
は 後 の 便 宜 の た め に 導 入 した もの で あ る.自 発
的対 称 性 の 破 れ に よ り ヒ ッ グス 場 が 真 空期 待 値
を もつ
と,(2.2)は,
(2.3a) (2.3b)
(2.3c)
と な っ て クォ ー ク場 の 質 量 項 が 出現 す る.… は ヒ ッグ ス との 相 互 作 用 項 で 以 下 の議 論 に は 必 要 な い.弱 固 有 状 態 は一 般 的 に は 質 量 の 固 有 状 態(mass state)で は な い.物 理 現 象 を記 述 す るに は(2.3)を
eigen-
対 角 化 して 質 量 固 有 状 態
に 直 さ なけ れ ば な ら な い. 行 列 理 論 に よ れ ば ど ん な(N×N)行
列(エ
ル ミー トで な く と も よ い)で
個 の ユ ニ タ リー 行 列 を 使 っ て 対 角 化 が 可 能 で あ る か ら,AL,
AR†, BL, BR†
も2 を4
個 の ユ ニ タ リー 行 列 と し て,
(2.4a)
(2.4b)
と で き る.こ …
, md, ms,
*1) miは
こ で ユ ニ タ リ ー 行 列AL, mb,
… は 正 の 実 数*1)に
一 般 に複 素 数 で あ るが
,カ
AR,
BL,
BRを
う ま く選 ぶ とmu, mc,
で き る.
イ ラ ル 変 換 で 実 数 に で き る(§6.2.2参
照).
mt ,
(2.5)
を つ くる と
(2.6a) (2.6b) で あ る の で,AL,
ARは,そ
れ ぞ れ エ ル ミー ト行 列 で あ るMUMU†,
を対 角 化 す る ユ ニ タ リー 行 列 で あ る こ と が わ か る.(2.4)を
MU†MU
使 う と(2.3)は,
(2.7) と な る.こ て,質
れ は ま さ に,望
む フ ェ ル ミオ ン の 質 量 項 の 形 を して い る.し
量 固 有 状 態 の ク ォ ー ク は,弱
たが っ
固有 状 態 か ら
(2.8) の よ うに ユ ニ タ リー 変 換 し た も の で あ る こ とが わ か る.自 由 ラ グ ラ ン ジ ア ン や,中
性 カ レ ン ト相 互 作 用 の よ う に,ク ォ ー クの 香 りqj'に つ い て は じめ か ら
対 角 化 さ れ て あ る もの は,こ
の ユ ニ タ リー 変 換 に よ っ て,qj'→qjと
変 わ るの
み で あ り,弱 固 有 状 態 で表 し た ラ グ ラ ン ジア ン と質 量 固有 状 態 で表 した ラ グ ラ ン ジ ア ン は 同 一 形 を保 つ.こ 述 で あ る.し か し,香 相 互 作 用Lcは
れ は 中性 カ レ ン トに お け るGIM機
構 の一般 的記
りに つ い て の 非 対 角 要 素 を結 び つ け て い る荷 電 カ レ ン ト
事 情 が 異 な る.Lcに
つ い て 弱 固有 状 態 を 質 量 固有 状 態 で 書 き
直す と
(2.9a) とな り,相 互 作 用 が各 二 重 項 の 中 で 閉 じず に世 代 間 の 混 合 が 起 き る.こ の行 列
(2.10) を小 林-益 川(略 こ れ にCP変
してKM)行 換(Ⅰ,Ⅱ-付
列 と呼 ぶ1). 録E参
照)を 施 す と
(2.9b) とな るの で,CP不
変 性 が 成 立 す る ため に は,Vが
実行列 でなけれ ばな らない
こ とが わ か る.
2.1.2 3世 代KM行 一 般 に(N×N)ユ N2次
列 ニ タ リー 行 列 に はN2個
の 独 立 な実 変 数 が 存 在 す る.こ の
元 の 実 変 数 空 間 に お い て,NC2=N(N-1)/2個
の実 空 間 回 転 が 定 義 で き
る の で,行 列 要 素 の う ち,こ の 個 数 だ け は 回 転 角 θjを使 っ て 書 き表 せ る.残 りは位 相 角 φjと な る.一 方,2N個
の ク ォー ク場 に は 質 量 項 を変 化 させ な い
位 相 変 換 の 自由 度
(2.11a)
(2.11b)
が あ る の で,こ
の 変 換 に よ っ て,
(2.12a) つ ま り
(2.12b) とな る の で,全 体 に 共 通 な1個
の 位 相 を除 い た(2N-1)個
の位 相 は クォ ー ク
場 の 再 定 義 で 吸 収 で き る.結 局
(2.13)
だ け の 位 相 が 残 る.し た が って,N≦2の 数 で 書 き直 せ るの で,CP非 の で,N≧3で
場合 はKM行
保 存 効 果 は現 れ な い.現 実 に はCPが
な け れ ば な ら な い とい う の が,そ
動 機 で あ っ た.LEPで
のZ共
な お,u,
破 れ てい る 列 を導 入 した
ニ ュー ト リノは3
考 え る の が 自 然 で あ ろ う.こ の と
列 は3個 の 回転 角 と1個 の位 相 角 で表 す こ とが で き る. c, tク ォ ー ク 間,ま
れ ば 必 ず し もCPが とsが
も そ もKM行
鳴 幅 の 測 定 か らmν<mz/2の
個 しか な い と わ か っ て い る か ら,N=3と き,KM行
列 要 素Vijを す べ て実
た はd,
破 れ な く な る.そ
縮 退 し て い る と し よ う.そ
s, bク ォ ー ク の 間 で 質 量 が 縮 退 し て い れ は 次 の よ う に し て い え る.例
う す る とdとsの
え ば,d
代 わ りに任 意 のユ ニ タ
リー 変 換 し た 組 み 合 わ せ を つ く っ て も や は り 質 量 の 固 有 状 態 で あ る か ら, ク ォ ー ク群Dは,対
角 位 相 変 換(2.11b)よ
り大 き な 変 換 の 自 由 度
(2.14) を もつ.こ
の こ と に よ っ て,位
列 に な っ て し ま いCPが
2.1.3
KM行
KM行
相 を さ ら に 一 つ 減 らせ る の で,行
列Vは
実行
保 存 す る の で あ る.
列のパ ラメター化
列 の 表 し 方 は い ろ い ろ あ る が,こ
こ で はPDG2)の
基 準 に従 い
(2.15a)
(2.15b) と 書 く こ と に す る.こ
の 表 式 の 特 徴 は θ2=θ3→0の
き て カ ビ ボ 回 転(θc=θI)に
な る こ と,ク
を す べ て 正 に で き る こ と な ど で あ る.つ
と き,第3世
代 が分離 で
ォ ー ク 場 の 適 当 な 再 定 義 に よ りci, si ま り,
(2.16) と し て よ い.c2-1の
く で き る か らεB=0と
な り,混
た が っ て,CPの
あ る こ と が わ か る.ImM12,
位 相 角 を 適 当 に 選 べ ば,q/pは1に
合 に よ るCPの
M12と
等 し
破 れ は 存 在 し な い.εBの
破 れ が 小 さ い と き,小 ImΓ12が
し 完 全 に 同 じ位 相 純 粋 な位 相 に な り,
部 は 位 相 の 再 定 義 で 変 化 す る の で 観 測 量 で は な く,Re εBの も つ.し
第2
虚数
みが物理 的意 味を
さ く な る 方 法 と し て は2通
と も に 小 さ く て│ε│が 小 さ い か,ま
Γ12が ほ ぼ 同 じ位 相 を も っ て,ε
た は,
が 純 虚 数 に 近 く な る か で あ る.わ
れわ
れ の 採 用 し た 小 林-益 川 行 列 の パ ラ メ タ ー 形 式 に よ る 位 相 の と り 方 で は,前 がKで
実 現 し,後
者 がBで
実 現 す る の で あ る.後
者 の 場 合(2.51)よ
り
者
り,
(2.118) さ て,ΔΓB≪ΓBと
実 験 デ ー タ(2.85)(xd=ΔmB/ΓB=0.723±0.032)を
使 え
ば,
(2.119) が モ デ ル に よ ら ず に 成 立 し な け れ ば な ら な い が,(2.118),
(2.117)よ
り,
(2.120) で あ り,KMモ
デ ル は 実 験 デ ー タ に 矛 盾 し な い.歴
大 き な 値 を も つ と わ か っ た 時 点 で,ト (mt≫mb)と c. xd, xsの xはΔmとΓ
史 的 に はxdが
∼1程 度 の
ップ クォ ー ク の 質 量 が 予 想 外 に 大 き い
い う こ と が 認 識 さ れ た の で あ る. 評価 の 比 で あ るか ら,Δmの
表 式(2.118),
(2.110)を
使 えば
(2.121)
qはdま
た はsの
意 味 で あ る.こ
の 式 はBdとBsに
共 通であ り
(2.122) で あ る と 考 え ら れ る の で,τBd∼τBs=τBと
お く と,
(2.123) と な り,実 験 値(2.91)と
は矛 盾 しな い.
上 式 か ら わ か る よ う に,xsはCPの リー 三 角 形 の 頂 点 の位 置 をρ=1か
破 れ を 表 す 変 数 で は な い が,ユ
ニタ
らの 半 円 周 上 に 固定 す る こ とが わ か る.ま
た,│Vub│は
原 点 に 中 心 を もつ 半 径(ρ2+η2)1/2の 円 を 与 え る.し た が って,xs
とb→ulν
の 崩 壊 率 を精 密 に 測 定 す れ ば,ユ
の で,CPの
ニ タ リー 三 角 形 の 頂 点 が 決 ま る
破 れ が 非 対称 実 験 で 直 接 検 出 さ れ な く も,間 接 的 に決 め られ る.
そ の 意 味 で,xsお
よ びb→ulν
の 精 密 測 定 はCPの
破 れ の 測 定 と同 様 に 重 要
で あ る.
2.6 ユ ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲
こ れ ま で に 考 察 し た 知 識 を 使 っ て,ユ
ニ タ リー 三 角 形 の 許 容 範 囲 を 評 価 し て
み よ う29,30).ま ず,(2.30a)の│Vub/Vcb│=0.08±0.02は,ρ-η
平 面 で一 つ の 円
を 与 え る.
(2.124) 次 に,(2.108)よ
り,BKの
値(2.96)を
入れて
(2.125) な の で,│ε│は
ρ-η平 面 上 で 双 曲 線 を与 え る こ と に な る.ま
た,(2.109)
(2.126) に よ っ て,η Bd-Bd混
に 対 し て あ る 幅 の 値 を 与 え る. 合(2.121)は,
(2.127) と い う 形 に 書 け る の で,ρ=1,η=0を
中 心 とす る 円 を 与 え る.
し た が っ て,上 図2.8に,こ
記 四 つ の 条 件 か ら,実
れ ま で の 実 験 値 と理 論 最 良 推 定 値 を 使 っ て 許 さ れ る ユ ニ タ リ
テ ィ三 角 形 の 許 容 範 囲(黒
影 部 分)を
限 は あ ま り強 くは な い.あ き く,例
験 誤 差 内 で ρ-η の 許 容 範 囲 が 決 ま る.
え ばBd-Bd混
示 す2).た
だ し,こ
の 解 析 か ら得 られ る 制
く ま で も 目安 と考 え る べ き で あ る.理
合 で は,fB=175±25MeV,│ε│で
論 的誤差が大
は,BK=0.75±0.15
程 度 の 不 定 性 が あ る.
図2.8
小 林-益 川 行 列 とユ ニ タ リテ ィ
図 はCPの 破 れ をKM行 列 で 表 す とき,種 つ け て 囲 ん だ領 域 内 が 許 され る.
2.7 Kの
CP非
々 の 実 験 か ら制 限 され る ρ,ηの 値.影
稀
を
崩 壊
保 存 パ ラ メ ター を決 め る に 適 す る過 程 は,こ
の ほか に い ろい ろ あ る
が,比 較 的 近 未 来 に 検 証 が 期 待 さ れ る過 程 と して,Kの
稀 崩壊 反 応 をあげて
お こ う. a. KL→ CP保
π0ee
存 が 成 立 して い る と き は,CPが
正 のK10は,1フ
通 して π0eeに 崩壊 で きる(γ1崩 壊).CPが
ォ トン 中 間 状 態 を
負 のK20は,2個
の フ ォ トン放 出
を通 して の み π0eeに 崩 壊 で き る の で(γ2崩 壊),振 幅 は相 対 的 に α程 度 小 さ い.CPの
破 れ が あ る と,KLの
崩 壊 で き る の で,CPの
中 に εだ け あ るK10成 分 か ら γ1過 程 を通 して
間 接 的 破 れ に よ る崩 壊 は,CP保
γ2崩 壊 よ り大 き い と期 待 され る.KL→
存 過 程 のK20成
π0γ γの 実 験 値 を取 り入 れ てCP保
分の 存
成 分 を 評 価 し た 結 果 は,分 の 崩 壊 振 幅 は,K+→
岐 比 が10-12よ
π+ee崩
り小 さ い と し て い る31).K10→
壊 と 結 び つ い て お り,
π0ee
の実験 デー
タ と理 論 値 の 比 較 か ら
(2.128) が い え る.K20成
分 が 直 接 的CPの
破 れ に よ り崩 壊 す る分 岐 比 は
(2.129) と評 価 され て い る32)の で,KL→
π0ee崩 壊 か ら直接 のCPの
破 れ効 果 を検 出
で き る可 能 性 が あ る.現 在 の 実 験 値 は
(2.130) で あ る33).
b.K+→
π+νν
この 過 程 に は,い わ ゆ る長 距 離 相 互 作 用 効 果 が な く,図2.9に
表 され る よ う
な 箱 型 の 寄 与 が 主 で あ り,理 論 的 な不 定 性 が 小 さ い と い う特 徴 が あ り,KM 行 列 要 素 に 対 して 独 立 の 実 験 情 報 を 与 え る.計 算 式 は,K+→
π0eνの 式 との
比 を と り理 論 的 不 定 性 を軽 減 し た もの で34),
(2.131a) (2.131b)
(a) 図2.9
(b) K+→
π+νν過 程 に 寄 与 す る グ ラ フ
XlNLとF(xt)は ∼10-10で
ル ー プ 計 算 に 使 う 量 で あ る.崩
あ る .
壊 分 岐 比 の理 論 推 定 値 は
モ ー ドの デ ー タ は,ρ-η
平 面 で,ρ0≒1.4を
中心
と す る 円 を 与 え る. 実 験 的 に は 反 応 例 を 一 事 象 見 つ け た と し て い る35).分 を 与 え る の で,理 論 を す る に は も う1桁 c.K0L→ CPが も,こ
岐 比 を計 算 して み る と
論 予 想 値 と 矛 盾 は し な い が,確
定 的 な議
ほ ど感 度 を上 げ る 必 要 が あ る.
π0νν 保 存 し て い れ ば 存 在 し な い 崩 壊 モ ー ドで あ る.し
の 反 応 を 確 認 で き れ ば,CPの
証 拠 と な る.K0L→
破 れ が⊿S=1の
π0νν崩 壊 振 幅 は,K+→
た が っ て,一
例 で
崩 壊 に 存 在 す る こ との
π+νν 崩 壊 振 幅 と ア イ ソ ス ピ ン
に よ っ て 関 係 づ け ら れ て い る.
(2.132) CPの
間 接 の 破 れ す な わ ち 混 合 効 果 に よ る 分 岐 比 は ∼10-15と
り36),直
見積 もられて お
接 の 破 れ 効 果 に よ る 分 岐 比37)
(2.133) の 方 が 圧 倒 的 に 大 きい の で,CPの るが,困
直 接 の破 れ を検 証 す るの に最 適 の 反 応 で あ
難 な 実 験 で あ るの で理 論 との 比 較 が 可 能 に な る に は,ま だ しば ら く時
間 が か か るで あ ろ う.現 在 の 上 限値 は5.9×10-7で
2.8 B崩
2.8.1 CPの
壊 で のCP非
あ る38).
保存の観測法
レプ トン非 対 称 破 れ は,非
対称
(2.134) を検 出 す る こ と に よ りそ の 存 在 が 検 証 で き る. fを
レ プ トン と す れ ば,(2.75),(2.76)を
参 照 し て,
(2.135) ま た(2.50)と(2.120)か
ら
(2.136) こ れ よ り(2.117)を
参 照 して
(2.137a)39) で,K中
間 子 の 場 合 の ε よ り1桁 は小 さ い と予 想 さ れ る.B中
短 くか つBLとBsを
分 離 す る こ とは ほ とん ど不 可 能 な の で,K中
と違 っ て εBを 直 接 測 定 す る の は 困 難 で あ る.し か しCPの 行 列 に の み あ る場 合,つ は,CP非
間子 の寿 命が
ま り超 弱(super
weak
間 子 の場 合
破 れの 原因が質 量
interaction)理
論 で あ る場 合
保 存 の検 証 に は こ う し た ε効 果 を 直 接 見 られ る 反 応 は 重 要 で あ る.
実験 値
(2.137b)2) は理 論 予 想 値 と矛 盾 しな い.
2.8.2 CPの CPの
直接の破 れ
破 れ がKM行
反 応 に お い てCPが CPTが
列 起 因 で あ る場 合 は,CPの
直 接 の破 れ,す
な わ ち崩 壊
保 存 し な い可 能 性 が あ る の で 実 験 の 選 択 肢 は 大 き く増 す.
保 存 しか つ 終 状 態fを
特 定 した場 合 の 崩 壊 振 幅 は,
(2.138a) (2.138b) と書 け る(Ⅰ,Ⅱ-付
録G19).こ
こ に,iは
異 な る 中 間 状 態 を示 し,φwは
弱い
相 互 作 用 振 幅 の位 相,δsは 終 状 態 粒 子 の 強 い相 互 作 用 に よ る散 乱 の位 相 の ず れ で あ る.CPの 条件
直接 の 破 れ が あ る と き は
で あ る.実 験 検 証 に 必 要 な
(2.139) を満 た す ため に は,干 渉効 果 の存 在 が 必 要 で あ り,こ の た め に は少 な く も2種 類 の 干 渉 振 幅 が 必 要 で あ る.
(2.140) と す れ ば,
(2.141) で あ る.上 記 の 式 か ら わか る よ うに,CPの の 振 幅 の 弱 い 相 互 作 用 の 位 相,散 い.中 性K粒
直 接 の破 れ を見 る た め に は,2種
乱 の位 相 と もに 異 な っ て い な け れ ば な らな
子 の 崩 壊 の場 合 の ππ 終 状 態 に は,I=0,2の2種
り,こ の条 件 を満 た して い た.一 方,K± か 存 在 せ ず,CP非
→ π±π0で は,終 状 態 にI=2状
保 存 効 果 は 見 る こ とが で きな い.Bの
で も,例 え ば,B-→K-ρ0の
類 の振 幅が あ 態し
場 合は荷電 粒子崩壊
よ うに,Wの
交 換 に よ る ト リー 型 振 幅 とペ ン ギ
ン型 振 幅 を と もに も ち,か つ 終 状 態 が2種
類 以 上 の 振 幅 に分 解 で き る と き は,
CP非
保 存効 果 が 原 理 的 に は観 察 可 能 で あ る.し か し,位 相 差(φw1− φw2)を
知 る ため に,少 な くも2個 の未 知 量│D1/D2│と(δs1− δs2)の知 識 が 必 要 で あ り, 一 般 的 に考 え て 分 離 は容 易 で は な い. こ こ で,中 性B粒
子 の と き は 混 合 効 果 に よ り,A(B→f)とA(B→B→
f)の 干 渉 が 生 じ る こ と に注 目す る.特 に終 状 態 のfとfと
してCPの
固有状
態
(2.142) を選 ぶ と,た だ1種 類 の 振 幅 が寄 与 す る場 合 で も弱 い相 互 作 用 の位 相 が 取 り出 せ る こ とを示 そ う40). (2.67a,b)か
ら,終
状 態f,お
よ びfへ
の崩 壊 幅 を計 算 す る と
(2.143a)
(2.143b)
た だ し,
(2.144) で あ り,β,β
は 次 の よ う に 定 義 さ れ る*7).
(2.145) こ こ で,た
だ一 種 の 散 乱 振 幅 が 寄 与 しか つ 終 状 態f,fがCPの
る と しよ う.こ の 条 件 を満 た す と き,ρf,ρfは
固有 状 態 で あ
と も に純 粋 な位 相 で あ り,
(2.146) と 書 き 直 せ る. q/pに
のCP固
つ い て は,(2.136)よ
と が 保 証 さ れ て い る.い で あ る か ら│q/p│=1と の で,そ
り,絶
有 値 で あ る. 対 値 が ほ と ん ど1で
純 粋 な位 相 に近 い こ
ま は 非 対 称 が 十 分 大 き い と い う状 況 を 考 察 し て い る の お い て よ い.す
の 位 相 を-2φMと
な わ ち,q/pも
また純粋 な位相 であ る
書 け ば,(2.50)と(2.110)か
ら
Bdの 場 合 Bsの 場 合
(2.147)
し たが っ て
(2.148) と な り,(2.143)に
入 れれば
(2.149a) (2.149b) し たが っ て 非 対 称 パ ラ メ タ ー は
(2.150) 時 間 変 化 を見 な い 場 合 は,積 分 した 量 の 比 を と り
(2.151) す な わ ち,考 く,最
察 中 の 非 対 称 パ ラ メ タ ー に は,強
大x/(1+x2);(Bdの
場 合 ∼0.47)く
念 の た め に 繰 り 返 す が,(2.147)のq/pの *7) │p/q│≠1が
間 接 な破 れ
,│A/A│≠1が
崩 壊 の 干 渉 に よ る 破 れ と い わ れ る.
い相 互 作 用 に よ る不 定 性 が な
ら い ま で の 値 が 可 能 で あ る. 位 相 はKM行
列 と し て(2.15)
直 接 の 破 れ と い わ れ る の に 対 し,Imβ
≠0は
混合 と
を採 用 し た こ とか ら生 じた 特 殊 事 情 で あ る.q/pの
位 相 は
義 で 吸 収 で き る の で,そ れ 自身 は 観 測 量 で は な い が,ρfを 変 換 で 不 変 で((2.103)の
の 位 相 の再 定
掛 け た もの は位 相
脚 注 を参 照),観 測 可 能 な物 理 量 な の で あ る.
な お,非 対 称 の 時 間 変 化 が 正 弦 関数 で あ る こ と は一 般 的 な議 論 か ら い え る. CP=Tで
あ るか ら,CPの
反 し混合 はCP非
2.8.3
あ り,質
量 行 列 に あ る 効 果(q/p)と
ρfの 位 相 で
崩 壊 振 幅 に あ る 効 果 ρfを 組 み 合 わ せ た も
々 の 反 応 を観 測 す る こ と に よ っ て,ユ
立 に 決 め ら れ る.CPの よ う.こ
列の位相
混 合 を 利 用 し て 調 べ ら れ る 物 理 量 φ は,β=(q/p)・
の で あ る.種
れに
保 存 に は 関 係 し な い の で余 弦 関 数 とな るの で あ る.
崩 壊 モ ー ド とKM行
中 性Bの
破 れ は 時 間 の 奇 関 数 で な け れ ば な らな い.こ
ニ タ リー 三 角 形 の 頂 角 が 独
破 れ を 見 る 反 応 と し て,
の 反 応 を考 え
の 反 応 に 優 勢 に 効 くフ ァ イ ン マ ン 図 を 図2.10(a)に
示 す.
こ の 図 か ら 明 ら か な よ う に 崩 壊 過 程 はb→c遷
移 で あ り,振
を 含 む.し
比 例 す る.KM行
た が っ て,ρfは(VcbVcs*/Vcb*Vcs)に
ル フ ェ ン シ ュ タ イ ン 表 示(2.18)のO(λ3)ま 位 相 を 含 ま な い が,q/pがVtd/Vtd*を
幅 はVcbVcs* 列の ウォ
で の 近 似 を と る 限 り,こ 含 む の で,Bd→J/ψ+Ksに
の ρfは お け る非
対 称 の 中 の 位 相 角 φ は,
(2.152) か ら 決 め ら れ る.こ
の 場 合 の 位 相 φ は,混
φ1,φ2,φ3は 図2.2で
定 義 し た ユ ニ タ リー 三 角 形 の 頂 角 で あ る.
次 に,Bd→
π+π-反 応(図2.10(c))を
遷 移 で,
合 パ ラ メ タ ー(q/p)の
見 て み よ う.こ
位 相 で あ る.
の 過 程 はb→uの
を含 む の で
(2.153) こ の場 合 の位 相 角 φ は 混合 パ ラ メ ター の 位 相 角 φMと 崩 壊 振 幅 の 位 相 角 φwの 両 方 の 和 で あ る.同 様 に
反 応 で のCP非
保存の
位 相 は そ れ ぞ れ,
(2.154)
(a)
(b)
(c)
(d)
図2.10
CPの
破 れ に よ る非 対 称 とKM位
相 を決 め るの に 有 用 な 過 程,右
(e)
側
は左 側 と同 じ崩 壊 モー ドを与 え る ペ ン ギ ン図
(f) (a),(b)
が 測 れ る. (c),(d) が 測 れ る. (e),(f)
(g)
が 測 れ る.
(h) (g),(h)
が測 れ る.
(2.155) とな る.こ の最 後 の過 程 で はCPの CPの
破 れ をKM行
破 れ に よ る 非 対 称 は存 在 し な いが,そ
性 を立 証 す る に は,こ
列 に 求 め た こ とか ら生 じた こ と で あ り,KM行
れは
列 の正 当
の過 程 で の非 対 称 の 欠 如 は他 の過 程 の非 対 称 の 検 出 に劣
らず 重 要 で あ る.表2.2に
これ ら 四つ の 反 応 を ま とめ る.こ れ らの 反 応 で非 対
称 パ ラ メ ター を 決 定 す る こ とが 可 能 な らば,ユ ニ タ リー 三 角 形 の頂 角 をす べ て 表2.2
CPの
破 れ を見 る反 応 例
決 め ら れ るの で,単
にCPの
破 れ の み な らずKM行
列 の 全 容 を知 る こ とが 可
能 で あ る. 雑 音過 程
話 を 混 乱 させ な い た め に,上
の 考 察 で は あ る 特 定 の 振 幅(図
2.10の 左 側 に掲 げ た 崩 壊 の ト リー 図)の み が き く と した.も
ち ろ ん,世
の中
は そ れ ほ ど簡 単 で は な い.上 記 の 崩 壊 過 程 図 に 対 応 して,強 い 相 互 作 用 を含 む 振 幅 が 存 在 す る.そ の うち 最 も簡 単 な も の は ペ ン ギ ン図 で あ り,図2.10の 側 に 掲 げ る.主 過 程 の ト リー 型 崩 壊 振 幅 をAT,ペ
右
ン ギ ン 図 の 振 幅 をAPと
し,そ れ ぞれ の 位 相 を αT,αPとす る と,非 対 称Aは,
(2.156) 程 度 の 変 更 を 受 け る.ペ 場 合 は 運 動 量 遷 移 がmb程
ン ギ ン 図 の 中 間 状 態 に は,u,c,tが 度 で あ り,KM行
き く が,u,cの
列 以外の力学過程 に
(2.157) に 比 例 す る ほ ぼ 同 じ だ け の 寄 与 を 与 え る41).ユ
ニ タ リテ ィ に よ り
(2.158) で あ るか ら,u,c中 な わ ちAPの
間 状 態 の 振 幅 和 はt中 間 状 態 振 幅 と 同 じ位 相 を もつ.す
位 相 はtク
b→scc崩
b→duu崩
で あ り,b→sccの
ォー クで 決 ま る こ とに な る.
壊
の 場 合 は,
壊
の 場 合 は,
場 合 は,上
に 示 す よ うに ト リー 崩 壊 図 とペ ン ギ ン 図 の位
相 が 同 じな の で,影 響 は小 さ く非 対 称 の 変 更 量 は小 さ い と期 待 され る.し か し,b→duuの
場 合 は,位 相 が 異 な るの で,ペ ン ギ ン 図 過 程 の ト リー 崩 壊 過
程 に対 す る相 対 的 大 き さ に よ っ て は,非 対 称 が 大 き く変 更 さ れ る 可 能 性 が あ る. ペ ン ギ ン図 の 大 き さ は,グ ル ー オ ン 交 換 に よ り(2.157)の
抑 圧 因子 がか か
るの で,単 純 に 考 え れ ば ト リー 崩 壊 図 に 比 べ て 小 さ い と考 え ら れ るが,裸
の
ク ォ ー ク 図 と実 際 に 観 測 さ れ る メ ソ ン 過 程 の 関 係 は 正 確 に 評 価 す る こ と が む ず か し い.モ
デ ル に よ っ て は,
と見 積 も ら れ る 場 合 が あ る.実
計 算 に よ れ ば, が,Bd→
で は 非 対 称 量 の 変 更 は 小 さ く数%以
π+π-は,最
高20%の
下 で あ る
変 更 を 受 け る と さ れ て い る42).た
場 合 で も ア イ ソ ス ピ ン 解 析 を 行 う こ と に よ り,す
際 の
だ し,こ
の
な わ ち,
の6種 の 崩 壊 率 を 測 定 比 較 す る こ と に よ り,ペ
ンギ ン
図 を 分 離 す る こ と が で き る43).
2.9
2.9.1 xsの a. 2体
測
非 対 称Bフ
ァ ク ト リー
定
の 相 関
こ れ ま で は 論 理 の 筋 道 を 明 らか に す る た め,親 る と し て話 を進 め て きた.し 産 さ れ,B0か
ら もB0か
のB0,B0状
態 はわか って い
か し実 際 の 実 験 条 件 で は,B0とB0は
と もに 生
ら も崩 壊 可 能 な モー ドの 非 対 称 を測 定 す る と きは 親
の 状 態 を同 定 す る必 要 が あ る.レ プ トン崩 壊 モ ー ドは崩 壊 状 態 を同 定 す る だ け で親 の 区 別 も同時 に 自動 的 に で き るが,崩 壊 状 態 と してCPの
固有 状 態 を観 測
す る と き は,親 の 同 定 が 欠 か せ な い 。 した が っ て,BBの
対 生 成 の 一 方 をB
ま た はBと
突 型 加 速 器 で実 験
同 定 した 上 で他 方 の 崩 壊 を測 定 す る.e+e-衝
を 行 う と き は,Υ(4S)(ス (ス ピ ン0-と1-の
ピ ン0の
中 間 子B0B0がL=1の
中 間 子BB*がL=1の
光 子 状 態 を 経 由 す る の で,C=P=-,CP=+状 状 態 は,軌 道 角 運 動 量Lが
Υ(5S)
状 態)を 通 す と,軌 道 角 運 動 量 状 態
を確 定 で き るの で ク リー ン な実 験 が 可 能 と な る.e+e-反
子B0B0の
状 態)や
応 で は ほ とん どが1
態 に あ る.し た が っ て2粒 偶 ま た は 奇 に よ って,
(2.159a) そ こ で,粒
子1(2)が
と す る.た
だ し
い ま,時
刻t1に,粒
時 刻t1(t2)に
量 子 状 態k1(k2)に
あ る 波動 関 数 を
(2.159b)
れ は
は(2.67)で 子1が
与 え ら れ て い る.
量 子 状 態k1でB0と
し て 崩 壊 し た と す る と(こ
の よ う な 終 状 態 を 選 ぶ こ と,例
え ばl+が
観
測 さ れ る こ と を 意 味 す る.こ
の と き 終 状 態 がgで
あ れ ば,B0と
し て観 測 さ れ
た こ と に な る).
(2.160) さ らに 第2の 粒 子 が,時 刻t2に 量 子 状 態k2でB0と
して 崩壊 した とす る と
(2.161a) 第2の
粒 子 が,時
刻t2に
量 子 状 態k2でB0と
し て 崩 壊 し た とす る と
(2.161b) 同様 に
(2.161c) (2.161d) B0B0状
態 を 終 状 態 の レ プ ト ン で 同 定 す る こ と に し て,g=l+νh,g=l-νhと
書 けば
(2.162) 時 間 変 化 を見 な い とき は,積 分 をす る必 要 が あ るの で,
(2.163a) (2.163b) を考 慮 す る と,
L=偶
数
L=奇
数
(2.164)
と な り,L=奇
数 の 場 合 の 逆 符 号 レ プ ト ン 数 比 は2体
の 式(2.76)と
一 致 す る.r(4S)はL=1で
あ る か ら,1体
使 っ て よ か っ た 理 由 は こ こ に あ る.こ ボ ー ス 統 計 か ら 導 か れ る.L=奇 らB0B0,
B0B0状
の 相 関 を考 慮 し な い と き
の 一 致 は 偶 然 で は な く,B中
数 で あ れ ば2体
態 は 存 在 し え な い.し
た が っ て,時
し か あ り え な い.し
刻t1に
子2はB0で
壊 す る 確 率 は1粒
子 状 態 のB0→B0の
確 率 と 同 じ で あ る.
な お こ れ は2粒
子 を 十 分 離 れ た2点
で 独 立 にB0ま
関 が 存 在 す る は ず が な い(cΔt