パ ワーエ レクトロニクスの 基 礎 新 しい パ ワーデ バ イス とその 応 用
岸
敬 二 著
東京電機 大学出版局
本 書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ と は,著 作 権 ...
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パ ワーエ レクトロニクスの 基 礎 新 しい パ ワーデ バ イス とその 応 用
岸
敬 二 著
東京電機 大学出版局
本 書 の 全部 また は一 部 を無 断 で複 写 複 製(コ ピー)す る こ と は,著 作 権 法上 で の例 外 を除 き,禁 じ られ て い ます.小 局 は,著 者 か ら複 写 に係 る 権 利 の 管理 に つ き委 託 を受 けて い ます の で,本 書 か らの 複 写 を希 望 さ れ る場 合 は,必 ず小 局(03-5280-3422)宛 ご連 絡 くだ さ い.
ま
1947年(昭
え
和22年)12月23日,ア
実 験 机 でW.Shockley,
が
き
メ リ カ のBell
W. Brattain, J. Bardeenが
Telephone
Labolatoriesの
試 作 し た点 接 触 形 ゲ ル マ ニ ウ
ム トラ ンジ ス タ で 電 流 増 幅 作 用 を確 認 して か ら来 年 で ち ょ う ど50年 ,半 世 紀 に な る.こ の 日が 真 に 「トラ ン ジ ス タ の 誕 生 日」 で あ り,「 エ レ ク トロニ ク ス 時 代 の 幕 開 け の 日」 で あ っ た. こ の半 世 紀 を 振 り返 っ て 見 る と,集 積 回 路(IC, 展,設 計 ・製 造 技 術 の 進 歩,デ
LSI)を 含 む 半 導 体 工 学 の 発
バ イ ス の特 性 の 改 良 と種 類 の 多様 化,応
用分 野 の
拡 大 に は 正 に 目 を見 張 る もの が あ る.現 在 の わ れ わ れ の 生 活 は 半 導 体 デバ イ ス に 囲 まれ て成 り立 って い る とい っ て も過 言 で は な か ろ う.50年
前,誰
が今 日の よ
う な時 代 を予 測 した で あ ろ うか. トラ ン ジス タ は20世 紀 最 大 の 発 明 の一 つ とい え る. 筆 者 が,こ
の 図 書 と同 じ東 京 電 機 大 学 出 版 局 か ら1976年(昭
リス タ とそ の 応 用 技 術 」(昭 和52年 ょ う ど20年
和51年)に
「サ イ
度 電 気 学 会 著 作 賞)を 出 版 し て か ら今 年 は ち
に な る.こ の 「50周 年 」 に 向 け て改 め て20年
前 の この 本 を 見 る と,
そ の 内容 が あ ま りに も古 くな っ て い る こ と を痛 感 した .こ の た び,再 か ら機 会 を与 え られ,最 近 のパ ワー エ レク トロニ ク ス 技 術,特
び 同 出版 局
に デ バ イ ス の応 用
分 野 に力 点 を お い て ま とめ,「 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 基 礎 」 と改 め た.こ
の
記 念 す べ き 「50周 年 」 に 向 け て この 本 を 書 く こ とに な っ た こ と は大 変 に幸 せ で あ る. ペ ー ジ数 の 制 約 か ら,す べ て を詳 細 に解 説 し得 な か っ た が ,現 状 と将 来 動 向 を 知 る う え で参 考 に なれ ば幸 い で あ る. 1996年6月 岸 敬 二
目 次
は じめ に
第 1章
1
パ ワー エ レク トロニ クス の発 展 の経緯
1・1 パ ワー デバ イ ス の歴 史 と多 様 化 の流 れ
5
1・2 パ ワー デバ イ ス の 高 電 圧,大
6
1・3
電 流 化 の変 遷
パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の概 要
7
演 習 問 題 〔1〕
第 2章
8
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス に 関 す る 定 義, 記 号,
2・1 電 力 変 換 に 関 す る記 号,用 語,組
合 せ
2・2
性
デ バ イ ス の 分 類,用
語,記
号,特
演 習 問 題 〔2〕
第 3章
用語 9 12
24
パ ワー デバ イスの基礎
(そ の 1)
− 動 作 原 理 とデ バ イ ス の 種 類 ― 3・1 半 導 体 の性 質
25
3・2
30
パ ワ ー デバ イ スの 動 作 原 理
3・3 パ ワ ー デ バ イ ス の 種 類,構 3・4
造,特
性 お よび 実 例
シ リコ ン単 結 晶 と ウ エ ー ハ の 特 性
3・5 デバ イ ス 製 造 プ ロセ ス と特 性 の相 関 性
41 57
63
演 習 問 題 〔3〕
第 4章
69
パ ワー デバ イスの基礎 (そ の 2) ― ゲ ー ト駆 動 回 路
,安
全 動 作 領 域,熱
抵抗―
4・1 駆 動 方 法 と駆 動 回 路
70
4・2 電 力 損 失 と安 全 動 作 領 域 お よび ス ナバ 回 路
77
4・3 各 種 パ ワ ー デ バ イ ス の特 性 比 較 と適 用 分 野
95
演 習 問 題 〔4〕
97
第 5章
電力変換回路
5・1 交 流-直 流 電 力 変 換 回 路
99
5・2 交 流-交 流 電 力 変 換 回 路
116
5・3 直 流-直 流 電 力 変 換 回 路
133
5・4 直 流-交 流 電 力 変 換 回 路
144
5・5 回 路 に 関 す る諸 事 項
157
演 習 問題
168
第 6章
〔5〕
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 応 用
(そ の 1)
− 電 力 へ の応 用 − 6・1 交 流-交 流 変 換(交 流 間接 変 換)
169
6・2
201
交 流-直 流 変 換
6・3 直 流-直 流 変 換(直 流 間接 変 換)
203
6・4 直 流-交 流 変 換
206
演 習 問題
216
〔6〕
パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の 応 用
第 7章
(そ の 2)
−電動機への応用― 7・1 電 動 機 の原 理 と制 御
219
7・2 交 流 電 動 機 と そ の駆 動 方 法
236
7・3 一般 産 業 ・重 工 業 用 交 流 電 動 機 へ の 応 用
240
7・4
247
交 流 ・輸 送 シ ス テ ム へ の 応 用
演 習 問 題 〔7〕
第 8章
264
今 後のパ ワー エ レク トロニ クスの動 向
あ とが き
271
謝 辞
272
演 習 問 題 の 解答
273
索 引
277
は
1947年12月
じ
に
め
の ゲ ル マ ニ ウ ム トラ ン ジス タ は 画 期 的 な 発 明 で あ っ た が,ベ
ル研
究 所 で は 実 験 と理 論 に よ る裏 付 け お よ び応 用 機 器 を試 作 した の ち正 式 に発 表 し た の は1948年7月1日
で あ っ た.こ
トラ ンジ ス タ(Transistor)と
の年 が トラ ン ジ ス タ 元 年 と され て い る.
い う名 前 は,2 本 の針 の 間 で 電 流 を増 幅 し て伝 え
る可 変 抵 抗 とい う意 味 で,transferとresistorを
縮 め た 新 造 語 で あ る*.
この 年代 の半 導体 用 材 料 と し て ゲ ル マ ニ ウ ム単 結 晶 が 使 わ れ て い た が,す に シ リ コ ン単 結 晶 が 開 発 され た.シ で きる の で,こ
ぐ後
リコ ン トラ ン ジ ス タ の ほ うが 動 作 温 度 を高 く
の 時 代 以 降,半 導 体 の 基 本 材 料 は シ リコ ン単 結 晶 に な っ た.
この 時代 の トラ ン ジ ス タ は極 め て小 さ な信 号 を取 り扱 う程 度 で あ った が,電
子
管 増 幅 器 に 取 っ て換 わ る もの と して大 い に期 待 され た. 一 方,こ
の 時 代 の 電 力 変 換 用 の機 器 と して は,真 空 中 の水 銀 蒸 気 の ア ー ク放 電
を利 用 した 多 極 また は単 極 の 水 銀 整 流器 が 広 く使 用 され て い た.し
か し,逆 弧,
通 弧,失 弧 な どの特 有 の放 電 現 象 の た め 使 い に くい 点 が あ っ た.
1956年
に ア メ リ カGE社
ス イ ッ チ をSCR(Silicon
が シ リ コ ン を基 材 と し て 三 つ の 接 合 面 を もつ 半 導 体 Controlled
Rectifier)と
い う 名 前 で 発 売 し た.
こ の 時 の ピ ー ク 繰 返 し オ フ ・逆 電 圧 は200∼400V,オ で,大
電 力 を ス イ ッ チ さ せ る 能 力 は な か っ た が,小
SCRの
*
IEEE
のSCRの
特 性,動
作 が
れ を 契 機 と し て シ リ コ ン 単 結 晶 の 高 品 質 化,
設 計 ・製 造 技 術 の 向 上 に よ り, SCRの
Spectrum
程 度
さな 直 流 電 動 機 の速 度 制 御 お
よ び 小 型 の 電 子 ス イ ッ チ と し て 用 途 が 開 け て い っ た.こ 極 め て 魅 力 的 で あ っ た た め,こ
ン 電 流 は5∼16A
January1973,p.24-34
ピ ー ク 繰 返 し オ フ ・逆 電 圧 お よ び
オ ン電 流*は 年 ご とに増 加 した. このSCRと
い う呼 称 は,1963年
用 語 に変 更 さ れ,広
の 国 際 会 議 で サ イ リス タ(Thyristor)と
く使 わ れ て い る.
サ イ リス タ の 動 作 は,外 部 信 号(電 流,電 へ,ま
いう
圧,光)に
よ り,オ
フか ら オ ン 状 態
た オ ン か らオ フ状 態 に マ イ ク ロ秒 の オ ー ダ ー で 移 行 す る超 高 速 の 電 子 ス イ
ッチ で あ る. 初 期 の サ イ リス タ の応 用 は,機 械 的 ス イ ッ チ お よ び水 銀 整 流 器 の代 替 で あ っ た. サ イ リ ス タ の定 格 の 増 加 お よび 信頼 性 の 向 上 に よ り,ま ず 製 鉄 用 大 型 直 流 電 動 機 の速 度 制 御 に,次 な った.特
に50/60Hzの
電 力 変 換 お よ び直 流 送 電 に応 用 され る よ う に
に,高 電 圧 ・大 電 流 を取 り扱 う変 換 装 置 に は,光 で タ ー ン オ ン す る
8kV,3500A
級 の光 ト リガサ イ リス タが 使 わ れ て い る.
サ イ リス タ の優 れ た 特 性 に よっ て ベ ク トル 制 御 法 が 考 案 され,電
動機 と して か
つ て の直 流 電 動 機 か ら現 在 で は小 型 ・軽 量 で 整 流 子 の な い誘 導 電 動 機 に置 き換 え られ つ つ あ る.最 近 の 大 型 圧 延 機,送
風 機 お よ び新 幹 線 の 新 型 車 両 はす べ て誘 導
電 動 機 が 用 い られ て い る. 一 方,デ バ イ ス 内 の 電 子,正 孔 の 挙 動 が コ ン ピ ュ ー タ シ ミュ レー シ ョ ン に よ っ て明 確 に な り,よ り適 切 な デバ イ ス デ ザ イ ンが 可 能 とな っ た.さ
ら に,集 積 回 路
の 微 細 加 工 技 術 が サ イ リス タ に応 用 され て大 電 流 を タ ー ン オ フ で き るゲ ー トター ンオ フ サ イ リス タ(GTO)が
開 発 さ れ,各 種 イ ンバ ー タ に使 用 され て い る.
これ ら技 術 の進 歩 に よ っ て,ナ MOSFET(電
ノ秒 の オ ー ダ ー の超 高 速 ス イ ッチ ング が 可 能 な
界 効 果 トラ ン ジ ス タ の 一 種)やIGBT(絶
ン ジ ス タ)が 開 発 さ れ て,イ
ン バ ー タ の 高 効 率 化,小
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ 型 化 に貢 献 し,特 性 の 向 上
と と もに新 し い応 用 分 野 を開 拓 しつ つ あ る. 「パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス 」 とい う言 葉 は,1960年 に な っ た が,こ
*専
門 用 語 は,
の意 味 は 「パ ワ ー(電 力,電
第 2 章 2・
2 節 参照.
代 に 入 っ て使 わ れ る よ う
力 機 器)」 と 「エ レ ク トロ ニ ク ス(半
導体 デバ イ ス)」 と,そ れ を 「コ ン トロー ル(制 御)」 の 三 つ の技 術 で 構 成 され た 広 い技 術 分 野 で あ る. 本 書 は,「 トラ ン ジ ス タ発 明50周
年 」 に 当 た り,紙 面 の許 す 限 り,パ ワ ー エ レ
ク トロニ ク ス の 発 展 の 歴 史 を概 説 し,現 在 の 技 術 を で き る だ け広 く詳 し く解 説 す る と と も に,今 後 の発 展 動 向 を 予 測 し て い る.
第
1章
1947年12月
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 発 展 の 経 緯
に発 明 さ れ た トラ ン ジス タ は,従 来 の 電 子 管 の よ う な ヒー タ ー 電
源 お よ び余 熱 時 間 は不 要 で,振 動 に強 く,小 型 で ソ リ ッ ド構 造 の デ バ イ ス で あ る こ とが 最 大 の 特 徴 で あ っ た.半
導体 を材 料 と し て増 幅,ス
イ ッチ機 能 を も っ た 固
体 素 子 を総 称 して 半 導 体 デ バ イ ス(略 して デ バ イ ス)と い い,電 力 を 扱 うデ バ イ ス をパ ワー デバ イ ス と呼 ん で い る. 1950年 代 の トラ ン ジス タ の応 用 は,ラ
ジオ な どの 小 信 号 の増 幅 が 主 で あ っ た.
1956年 に,二 つ の トラ ン ジ ス タ を組 み 合 わ せ た構 造 と等 価 の,三
つ の接合 を
もつ デバ イ ス の 論 文 が 発 表 され た.こ れ は,信 号 を加 え る こ とに よ り,オ フ状 態 か らオ ン状 態 にス イ ッ チ して,オ
ン電 流 を 自己 保 持 で き る機 能 を もち,現 在 の サ
イ リ ス タ の構 造 と動 作 を示 唆 す る最 初 の 理 論 的 な論 文 で あ った. 1957年 に,ア はSCRと
メ リカGE社
が 初 め て 小 電 力 を ス イ ッチ で き るサ イ リス タ(当 時
呼 ば れ た)を 発 売 す る と と も に,頻 繁 に 「SCR Manual」
イ リス タ の特 徴 と その 応 用 分 野 を啓 蒙 した.ト
を出 版 し,サ
ラ ン ジ ス タ と と もに,サ
イ リス タ
の将 来 性 は 多 くの 企 業 に イ ンパ ク トを与 え,日 本 の 各 会 社 は積 極 的 に ア メ リカ か ら技 術 導 入 を行 った. そ の 後,日
本 で も小 型 の トラ ン ジ ス タ,サ
イ リス タ が 製 造 で き る よ う に な っ
た.初 期 の トラ ン ジ ス タ の 基 材 は ゲ ル マ ニ ウ ム で あ っ た が,そ わ っ て か らシ リコ ン単 結 晶 の物 性 お よび 高 純 度 化 の 研 究,結 を 介 して の電 子 と正 孔 の挙 動 の 研 究,接
の後 シ リコ ン に変
晶 内 に形 成 した 接 合
合 構 造 と不 純 物 濃 度 プ ロ フ ァイ ル の 設 計
と製 造 技 術 な どの 進 歩 に よ り,ト ラ ン ジ ス タ,サ イ リス タ の 特 性 は徐 々 に 向 上 し た. 1960年 代 は,日 本 のパ ワー エ レ ク トロ ニ クス の 黎 明 期,揺 そ の 後,パ
藍 期 と い え る.
ワー エ レ ク トロニ ク ス の核 とな る トラ ン ジ ス タ,サ
イ リス タ,す
な
わ ちパ ワ ー デ バ イ スの 進 歩 と と も に発 展 期 に入 り,日 本 のパ ワー エ レ ク トロニ ク ス 技 術 とそ の 応 用 分 野 は大 き く成 長 した . 現 在 の 日本 のパ ワー デバ イ ス の 性 能 お よび パ ワー エ レ ク トロニ クス 技 術 は世 界 の トッ プ レ ベ ル に あ る.
1
・
1
パ ワーデバ イスの歴史 と多様 化 の流れ
図 1・1は,シ
リコ ン を基 材 と した 半 導 体 デバ イ ス の 発 展 過 程 の 概 要 を 示 す .
図
図 中 の 上 部 は,パ
1・1
半導 体 デ バ イ スの 発展 の 歴 史
ワ ー トラ ン ジ ス タ,各 種 サ イ リス タか らな るパ ワー デバ イ ス
の 流 れ で あ る.図 中 下 部 の太 い 流 れ は,1961年
ご ろIC構
造 の 発 明 に よ り,上 部
の パ ワ ー デ バ イ ス の 流 れ か ら別 れ た 支 流 で,超 微 細 加 工 技 術 等 の 進 歩 と と もに IC,LSI,VLSIと
し て発 展 して い る.現 在 で は,支 流 の ほ う の製 造 個 数,売 上
金 額 が 本 流 の そ れ ら よ り も遥 か に大 き くな りつ つ あ り,将 来 に向 か っ て ます ま す
技 術 開 発 競 争,コ
ス トダ ウ ン競 争 は 熾 烈 に な っ て い る.
二 つ の 流 れ を結 ぶ 上 ・下 の 線 は,技 術 の転 用,波 及,応 用 を 示 す 流 れ で あ る. 例 えば,GTO, 形 成 技 術,微
MOSFET,
IGBTの
電 極 パ ター ン の製 造 に は, IC, LSIの 接 合
細 加 工 リゾ グ ラ フ ィー(写 真 食 刻)技 術 を応 用 し て い る.
・
2
1
パ ワーデバ イス の高電圧,大 電流化 の変遷
サ イ リス タ の 応 用 分 野 が 広 が る に従 っ て ます ます 大 きな 電 力 を取 り扱 う用途 が 増 え,こ の た め,サ
イ リ ス タ が制 御 し得 る電 圧,電
流 を増 加 させ る 強 い要 求 が あ
った. サ イ リス タ 1個 が 耐 え 得 る電 圧 を高 くす る ほ ど直 列 に接 続 す る個 数 を減 らす こ とが で き,ま た オ ン電 流 を大 き くす る ほ ど並 列 に 接続 す る個 数 を減 らす こ とが で き る.こ の た め,サ
イ リス タ 1個 当 た りの 電 圧 ・電 流 定 格 を増 加 す る ほ ど高 電
圧 ・大電 流 の 電 力 変 換 が 可 能 と な り,同 時 に変 換 装 置 を小 型 で,か を減 らす こ とが で き る利 点 が あ る.パ
つ,電 力 損 失
ワ ー デ バ イ ス の 例 と し て,図1・2(a)に
常 の サ イ リス タ 1個 の 定 格 オ フお よ び 逆 電 圧,定 格 オ ン電 流 の 変 遷 を,図(b)に
図1・2 代 表 的パ ワー デバ イス の電圧 ・電 流特 性 の変 遷
通
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ(GTO)1
個 の定 格 オ フ お よ び逆 電 圧,定
格 ゲー ト
タ ー ンオ フ 電 流(負 の ゲ ー ト電 流 で タ ー ン オ フ し得 る定 格 オ ン電 流)の 変 遷 を 示 す. この 電 圧 ・電 流 定 格 の 増 加 は,デ バ イ ス の 設 計,製
造 技 術 の 向上 の ほ か,デ バ
イ ス の 基 本 材 料 で あ る シ リコ ン単 結 晶(特 に,FZ(Floating
Zone)法
で製 造 した
単 結 晶)の 品 質 向上 と大 口径 化 が大 き く貢 献 し て い る. サ イ リス タ の 高 電 圧 ・大 電 流 化 に よっ て,現 在 で は大 電 力 送 電 系 統 に直 接 接 続 した電 力 変 換 装 置 が 多 数 運 転 され て い る.
1・3 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 概 要
「パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス 」 と い う 概 念 は,1973年
図1・3
に,ア
メ リ カ のNewell
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス と エ レ ク ト ロ ニ ク ス との 関 係
氏 が提 案 した 言 葉 で,「 パ ワー(電 力)と エ レ ク トロ ニ ク ス(半 導 体 デバ イ ス)お よ び コ ン トロー ル(制 御)の 三 つ の技 術 領 域 を結 びつ け る学 際 的 な 技 術 分 野 」 を意 味 して い る. 一 方,パ
ワ ー エ レ ク トロニ ク ス は,エ
レ ク トロ ニ ク ス全 体 か ら見 れ ば ほ ん の 一
部 で あ って,両 者 の 関 係 を明 快 に 図 示 す るの は は な は だ 難 しい. あ えて 図 示 す る と,図1・3の とい っ て もIC, LSI, VLSIを
よ うに な る.現 在 の エ レ ク トロ ニ ク ス の 中心 は何 使 用 した マ イ ク ロ コ ン ピ ュ ー タ,シ
グナル プロセ
ッサ と ソ フ トウ ェ ア技 術 で あ る.こ れ らか らそ れ ぞ れ の応 用 分 野 に 適 した信 号 処 理 ・伝 送 技 術,画 術 が 生 れ,そ
像 処 理 技 術,セ
ンサ ・ア ク チ ュエ ー タ技 術,電
力 ・動 力 制 御 技
れ ぞれ の 分 野 の発 展 の 原 動 力 に な っ て い る.
演
習
問
題
〔1〕
〔 問 題 〕 1.世 界 で 初 め て トラ ン ジ ス タ を 開 発 した の は,い
つ,誰
〔 問 題 〕 2.サ
イ リス タ の 起 源 に つ い て 述 べ よ.
〔 問 題 〕 3.パ
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス と は どの よ う な 技 術 分 野 か?
〔 問 題 〕 4.サ
イ リス タ が 高 電 圧,大
電 流 化 し た 背 景 は何 か?
が,ど
こで か?
第 2章
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス
に関 す る定 義, 記 号, 用語
・
2
1
電力変換 に関す る記号, 用 語, 組合せ
パ ワ ー デ バ イ ス を 用 い て 電 力 の 変 換 を 扱 う技 術 を(半 導 体)電 力 変 換 技 術 とい い,パ
ワー エ レク トロ ニ ク ス の 中核 技 術 で あ る.パ ワ ー デ バ イ ス の機 能 は 損 失 の
小 さい 高 速 の電 子 ス イ ッチ で あ り,そ れ 自身 で はエ ネル ギ ー を蓄 積 で き な い . パ ワー デ バ イ ス を所 定 の機 能 で 動 作 させ て電 力 変 換 を行 うた め に は,パ
ワー デ
バ イ ス と と も に制 御 回 路,保 護 回 路 ,冷 却 装 置 が 必 要 で あ り,こ れ ら を収 納 した 装 置 を(半 導 体)電 力 変 換 装 置(ま た は 変 換 ユ ニ ッ ト)とい う. 電 力 変 換 の 信 頼 性 を 強 く求 め る用 途,す
な わ ち無 停 電 電 力 変 換 装 置 で は蓄 電 池
また は大 容 量 コ ン デ ン サ をバ ッ クア ップ電 源 と して補 助 的 に用 い る. パ ワー エ レク トロニ ク ス の 電 力 変 換 シ ス テ ム を,供 給 側 電 力,応 御 に よ り大 別 す る と,図2・1の
よ うに な る.同 図 で,タ
1・
2
図
電 力変 換 シス テム の概 要
用,目
イ プ-1は,供
的,制
給 側電 力
(交流 ま た は直 流)が 安 定 して お り,電 力 の 流 れ が 順 方 向(順 変 換)お よ び逆 方 向 (電力 回 生;逆
変 換)可 能 の場 合 で あ り,タ イ プ-2 は,供 給 側 電 力 が 不 安 定 の場
合 で あ る. 電 力 変 換 装 置 と その 組 合 せ を記 号 で 示 す と図2・2と な る.図(a)の
「チ ョ ップ
部 」 は,デ バ イ ス に よ りオ ン ・オ フ の み を行 う装 置 で あ る.
(b)電 力機 器 の 記号
(a)順 ・逆 変 換 装 置 の 記号 図2・2電
力 変 換,電 力機 器 に 関す る記 号
四 角 の 中 の 斜 め の 線 は,左 上 か ら右 下 に 記 号 の よ う に電 力 が 変 換 され て 流 れ る こ と を示 して い る.図(b)は
供 給 側 お よび 負 荷 側 の 電 力 機 器 を示 して い る.
商 用 電 力 の 電 源 と して交 流 と直 流 が あ り,負 荷 が 要 求 す る電 力 と して 交 流 と直 流 が あ る.ま た,交
流 の場 合,両
者 に は,電 圧,周
波 数,力
率,波
形 に含 ま れ る
高 調 波 な どの 条 件 が 異 な るた め,入 力(電 源)側 と出 力(負 荷)側 を結 ぶ 電 力 変 換 装 置 に は種 々 の 方 式 が あ る.図2・3に
代 表 的 な変 換 方 式 を示 す.
直 流 を 交 流 に変 換 す る逆 変 換(イ ンバ ー タ)で は,確 実 な転 流 動 作 が 運 転 上 必 要 条 件 で あ る.転 流 と は,回 路 に複 数 の デ バ イ ス が接 続 さ れ て い て,デ バ イ ス 間 で 同 時 に電 流 を通 じ る期 間 を も っ て行 わ れ る電 流 の移 り変 わ りを い う. 例 え ば,二
つ の デ バ イ ス の 陰 極 が共 通 に接 続 さ れ て い て 電 源 か ら両 方 に交 流 電
圧 が 印加 され て い る と き,陽 極 の電 圧 が 高 い ほ うの デバ イ ス に電 流 が 転 流 す る.
図2・3電
力変 換 の基 本 方 式
これ を電 源 転 流 とい う.例 え ば,負 荷 側 が直 流 機 の と き,そ の逆 起 電 力 に よ り陰 極 の 電 位 が 陽極 よ り も高 くな る と,デ バ イ ス の 電 流 は転 流 す る こ とな し に消 滅 し (こ れ を消 流 とい う),陽 極 の電 位 が 高 い ほ うの デバ イ ス に 電 流 が 移 る.こ れ を 負 荷 転 流 とい う.ゲ ー ト電 流 に よ りタ ー ン オ ンす る通 常 の サ イ リス タ の よ う に,オ ン電 流 を 自 分 自身 で オ フで きな い,す で は,L
な わ ち 自己 オ ン ・オ フ機 能 が な い デ バ イ ス
と C か らな る振 動 回 路 を例 え ば サ イ リス タ に 並 列 に 接 続 す る.そ の 振
動 電 流 に よ って サ イ リス タの オ ン電 流 を強 制 的 に ゼ ロ に して オ フ 状 態 に し,他 の デバ イ ス に 電 流 を移 す.こ
の よ うな 補 助 回路 と デバ イ ス の 機 能 を組 み合 わ せ た転
流 を イ ンパ ル ス 転 流 とい う. 自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も つ デ バ イ ス,例
え ば,ト
ラ ン ジ ス タ,ゲ
フ サ イ リ ス タ で 行 う転 流 を デ バ イ ス 転 流 と い う.図2・4に
図2・4 転 流方 式 の分 類
ー トタ ー ンオ
転 流 方 式 を 示 す.
転 流 方 式 は,交 流 電 源 に よ る他 励 式 転 流 と デバ イ ス の機 能 に よ る 自励 式 転 流 に 分 け られ る.
2
・
2 デバ イス の分 類, 用 語,
記 号,
特性
パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス,す な わ ち電 力 変 換 装 置 の 主 役 は 半 導 体 デ バ イ ス で あ る.半 導 体 デ バ イ ス と は,半 導 体 材 料 を 用 い,一
方 向 のみ非 可制御 の導通 機 能
(整流 ダ イ オ ー ド)を もつ か,一 方 向 の可 制 御 の オ ン機 能(通 常 の サ イ リス タ)あ る い はオ ン ・オ フ 機 能(ス イ ッ チ モ ー ドで 動 作 さ せ る トラ ン ジ ス タ,ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ)を もつ 単 体 の 半 導 体 素 子 の 総 称 で あ る.本 書 で は,以 後 略 し て デ バ イ ス と い う こ と にす る.代 表 的 デバ イ ス の分 類,構
造 は次 の よ うで あ る.
2 ・2・ 1 デ バ イ ス の分 類 ① 整 流 ダ イ オ ー ドは,シ
リコ ン単 結 晶 ウ エ ー ハ に一 つ のpn接
合 面 を形 成 さ
せ た構 造 の通 常 の ダ イ オ ー ドと,n 形 半 導 体 に金 属 被 膜 を接 触 させ た 構 造 の シ ョ ッ トキ ー バ リア ダ イ オ ー ドが あ る(と もに 陽極,陰 ② バ イ ポ ー ラ ト ラ ン ジ ス タ は,シ npnの
3層 を 形 成 し,そ
のpn,npの
極 の 2端 子 構 造).
リ コ ン 単 結 晶 ウ エ ー ハ にpnpあ
二 つ の 接 合 で の 電 子 と正 孔 の 挙 動 で ス
イ ッ チ 動 作 を す る 自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も っ た デ バ イ ス(べ ー ス,エ コ レ ク タ の 3端 子 構 造)で あ る.ス
号 と し て,べ
ー ラ トラ ン ジ ス タ と,ゲ Oxide
Semiconductor
号 を止 め る とオ
ー ス 電 流 に よ っ て オ ン ・オ フ 動 作 す る バ イ ポ
ー ト電 圧 で オ ン ・オ フ 動 作 す るMOSFET(Metal
Field Effect
ス タ),IGBT(Insulated
ミ ッ タ,
イ ッ チ モ ー ドで オ ン ・オ フ 動 作 さ せ る 程
度 の 信 号 を べ ー ス に 流 し て い る 期 間 の み オ ン 状 態 と な り,信 フ状 態 に な る.信
る い は
Gate
Transistor;金
Bipolar
属 被 膜 電 界効 果 トラ ン ジ
Transistor;絶
縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ
ト ラ ン ジ ス タ)が あ る.
③ サ イ リス タ は,シ npn,pnpの
リ コ ン単 結 晶 ウ エ ー ハ にpnpnの
4層 を形 成 し,そ の
三 つ の 接 合 面 で の 電 子 と正 孔 の 挙 動 で ス イ ッ チ 動 作 をす る デバ
イ ス(陽 極,ゲ
ー ト,陰 極 の 3端 子 構 造)で あ る.正 の ゲ ー ト信 号 に よっ て オ
ンの み動 作 す る転 流 タ ー ンオ フ形 の通 常 の サ イ リス タ と,正
と負 の ゲ ー ト信
号 に よ っ て オ ン とオ フ の両 方 の 動 作 を す る 自己 オ ン ・オ フ機 能 を もっ た ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ(「ゲ ー ト」 を 省 略 す る こ と が あ る;略 称GTO)が あ る. ゲ ー ト信 号 の代 わ りに光 を 照射 す る こ とに よ っ て オ ン動 作 す る光 トリガサ イ リス タ(陽 極,光 ④
入 力 端 子,陰 極 の 3端 子 構 造)が あ る.
この ほ か,単 体 の パ ワ ー デ バ イ ス と して,ト
ラ イ ア ッ ク,静 電 誘 導 サ イ リ
ス タ,静 電 誘 導 トラ ンジ ス タ が あ る.ま た,一
つ の ウ エ ー ハ に整 流 ダ イ オ ー
ドとサ イ リス タ を一 体 化 した逆 導 通 サ イ リス タ あ る い は トラ ン ジ ス タ とサ イ リス タ を組 み 合 わ せ た 複 合 デ バ イ ス が あ る. 電 力変 換,特 圧,電
に 逆 変 換 に とっ て,転 流 は必 要 条件 で あ る た め,そ
流,動 作 周 波 数 の デバ イ ス を選 択 す る必 要 が あ る.図2・5に
れ に適 した電 転 流 方 式 と適
す る デ バ イ ス とそ の 記 号 を示 す.
図2・5転
流 方式 とデバ イス とその 記号
デバ イ ス を タ ー ンオ ンあ る い は タ ー ンオ フ させ るた め に は,ゲ ー トあ る い はべ ー ス に信 号 を与 え な け れ ば な ら な い.図2・6に 号,制 御 信 号 波 形 の 例 を示 す.
代 表 的 な デバ イ ス の 接 合 構 造,記
*ゲ ー トパ ル スは幅 が 狭 くて もよいが,軽 ため 広 い幅 の ほ うが よい 場合 が 多い 。
図2・6デ
負荷 で も オン状 態 を保 つ
バ イ スの接 合 構 造,記 号,制 御 信号 波 形 の例
変 換 装 置 を設 計 す る場 合,デ バ イ ス の 特 性 を表 す 用語,記 な けれ ば な ら な い.表2・1に,例
号,波 形 を知 っ て い
と し て通 常 の サ イ リス タの 特 性 を表 す 用 語,記
号 を 示 す.個 々 の デ バ イ ス の 定 格 と特 性 は,電 圧 阻 止 特 性(静 特 性),動 (動特 性),熱
的 ・機 械 的特 性 で 表 示 され る.ゲ ー トタ ー ンオ フ サ イ リス タ で は,
ター ン オ フ機 能 を表 す特 有 の 用 語,記
2
・2・
2
作特性
サ イ リ ス タ の 定 格,
特 性,
号 が あ る.
用語
定 格 と は,デ バ イ ス が 所 定 の機 能 を発 揮 す るた め,電 気 的,熱
的 お よ び使 用 条
件 に つ い て 製 作 者 が 指 定 した 値 で,そ れ ぞ れ の デバ イ ス に表 示 さ れ て い る. い か な る瞬 間 で も,こ の 定 格 値 を超 え て使 用 す る とそ の デ バ イ ス は 破 壊 す る こ とを意 味 す る.次 に,通 常 の サ イ リス タ の ス イ ッチ動 作 の順 序 に従 い,(1)オ 状 態,(2)オ
フ状 態 か らオ ン状 態 へ,(3)オ
ン状 態,(4)オ
フ
ン状 態 か ら オ フ状 態
へ に つ い て波 形 と用 語 を説 明 す る. (1)オ
フ状 態
図2・7に,陽
極 電 圧 ・電 流 特 性 と用 語 を示 す.順
・逆 方 向
とも所 定 の 電 圧 ま で電 圧 を阻 止 し,温 度 に依 存 した わ ず か の 陽 極 電 流(オ フ電 流,
表2・1サ
イ リス タ の特 性 を表 す用 語,記 号 (JEC-189,
名 称(和文)
記
号
オ フ電 圧
Off-state
voltage
電 圧
ピー ク オ フ電 圧
VDM
Peak off-state voltage
ピー ク動 作 オ フ電 圧
VDWM
Crest(peak)working
ピー ク繰 返 し オ フ 電 圧
VDRM
Repetitive
ピー ク非 繰 返 しオ フ電 圧
VDSM
Non-repetitive
ブ レー ク オ ー バ電 圧
V(BO)
Breakover
ス パ イ ク電 圧
VDSP
特
ピ ー ク電 圧
off-state voltage
peak
off-state peak
VTM
voltage
on-state
性
Reverse
voltage
voltage
ピー ク逆 電 圧
VRM
Peak
ピー ク動作逆電圧
VRWM
Crest(peak)working
ピーク繰返 し逆電圧
VRRM
Repetitive
ピー ク非 繰 返 し逆 電 圧
VRSM
Non-repetitive
臨 界オ フ電圧上昇率
dυ/dt
Critical
オ フ電流
ID IH
reverse voltage
peak
current
Holding
current
電 流
IT
On-state
ITM
Peak
平 均オ ン電流
IT(AV)
Average
実効 オ ン電流
IT(RMS)
RMS
過 負荷 オ ン電流
voltage
voltage
current on-state
current
on-state
on-state
特 性
ITM(OV)
Overload
ピー ク繰 返 しオ ン電 流
ITRM
Repetitive
サ ー ジ オ ン電 流
ITSM
Surge
ラ ッチ ン グ電 流
IL
Latching
可制御 オ ン電流
ITQ
Controllable
繰返 し可制御オ ン電 流
ITQRM
Repetitive
非繰返 し可制御オ ン電 流
ITQSM
Non-repetitive
Itai〓
Tail current
IR
Reverse
テイ ル 電 流
reverse
of rise of off-state
Off-state
ピー クオ ン電 流
reverse voltage
peak reverse voltage
rate
オ ン電 流
逆電 流
voltage
voltage
On-state Peak
VR
保 持電流
voltage
off-state
Spike voltage VT
逆 電圧
ら抜 粋)
名 称(英文) VD
オ ン電圧
JEC-2401か
current
current
on-state peak
current on-state
current
(non-repetitive)on-state
current
current on-state
current
controllable
on-state
controllable
blocking
current
current
on-state
current
電流特性 ゲート特性
名 称(和文)
記
ピー ク繰 返 しオ フ電 流
IDRM
Repe titive peak
ピ ー ク繰 返 し逆 電 流
IRRM
Repetitive
臨界 オン電 流上昇率
dit/dt
Critical rate of rise of on-state
ピ ー ク ゲ ー ト電 圧
VPGM
Peak
ゲ ー ト逆 電 圧
VRG
Reverse
ゲ ー ト トリガ 電圧
VGt
Gate
i FG
Forward
ゲ ー ト順 電 流
号
名 称(英文) off-state current
peak reverse
forward
current
gate
gate voltage voltage
trigger voltage gate current
タ ー ンオ ン特性
電力損失
ゲ ー ト トリガ 電 流
IGT
Gate
trigger current
ゲー ト順電 流上昇率
diG/dt
Rate
of rise of forward
(ゲ ー ト制 御)遅 れ 時 間
tgd(td)
Gate-controlled
delay
(ゲ ー ト制 御)立 上 り時 間
tgr(tr)
Gate-controlled
rise time
(ゲ ー ト制 御)タ ー ン オ ン時 間
tgt
Gate-controlled
turn-on
オ ン損(失)
PT
On-state
dissipation
power
Reverse
逆損(失) オ フ損(失)
PD
平 均 ゲ ー ト順 損(失)
PFG(AV)
周囲温度 ケース温度
current
power
Off-state
gate
current
time
time
dissipation
power
dissipation
Average
forward
Ta
Ambient
temperature
gate
Tc
Case
power
dissipation
temperature
熱的特 性 ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ スタ
接合温度
Tj
Virtual junction temperature
接合-周囲 間熱抵 抗
Rth(j-a)
Thermal
resistance(junction
to ambient)
接 合-ケ ー ス 間 熱 抵 抗
Rth(j-c)
Thermal
resistance(junction
to case)
ケ ー ス-周 囲 間 熱 抵 抗
Rth(c-a)
Thermal
resistance(case to ambient)
過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス
zth(t)
Transient
熱抵抗
Zth
Thermal
ゲ ー トタ ー ン オ フ電 圧
υGQ
Gate
turn-off voltage
ゲー トタ ー ン オ フ電 流
iGQ
Gate
turn-off current
ピー ク ゲ ー トタ ー ンオ フ電 流
IGQM
Peak
gate turn-off current
ゲー トタ ー ン オ フ電 流 上 昇 率
diGe/dt
Rate
of rise of gete turn-off current
(ゲー ト制御)ゲ ー トター ンオ フ電 荷
QGQ
Gate
controlled
(ゲ ー ト制 御)蓄 積 時 間
tes(ts)
Gate-controlled
storage
(ゲ ー ト制 御)下 降 時 間
tgf(tf)
Gate-controlled
fall time
(ゲ ー ト制 御)タ ー ンオ フ時 間
tgq
Gate-controlled
turn-off
thermal
impedance
resistance
gete turn-off time
time
charge
名 称(和文)
記
号
名 称(英文)
(ゲ ー ト制 御)テ イ ル時 間
tgtail (ttail)
Gate-controlled
ゲ ー ト逆 バ イ ア ス時 間
tgw
Gate
reverse
tail time biased
time
逆 阻 止 電 流)し か 流 れ な い.順 方 向 の 電 圧 が あ る 限 界 を超 え る と ブ レー クオ ー バ を起 こ して オ ン状 態 に移 行 し,逆 方 向 で は急 激 に逆 阻 止 電 流 が 増 加 す る.こ の と きの 電 圧 をブ レ ー ク オ ー バ 電 圧 お よ び逆 降 伏 電 圧 とい う.こ の 限 界 を超 え る と, サ イ リス タ は特 性 劣 化 も し くは 永 久 破 壊 す る.定 格 ピ ー ク 非繰 返 しオ フ電 圧 お よ び 逆 電 圧 の値 は,こ れ らの 限 界 以 下(例 え ば,限
界 値 の80∼90%)に
設 定 され て
い る. オ フ状 態 と は,デ バ イ スが 同 図 の 原 点 0と ブ レー ク オ ーバ 点 との 間 に相 当す る 順 方 向 電 圧 の 阻 止 状 態 を い う.
図 (2)オ (a)タ
2・7
陽極 電 圧 ・電流 特 性
フ状 態 か らオ ン状 態 へ ー ン オ ン時 間 ゲ ー ト-陰極 間 に オ ン用 ゲ ー ト トリガ 電 流 を 流 す と,
極 め て 短 時 間 で オ フ状 態 か らオ ン状 態 に切 り換 わ る.光 サ イ リス タ で は,ゲ ー ト トリガ 電 流 の代 わ りにサ イ リス タエ レ メ ン トの ゲ ー ト部 に赤 外 の パ ル ス 光 を照 射 す る こ とに よ り同様 にオ フ か らオ ン に切 り換 わ る.こ
の切 り換 え に要 す る時 間 を
(ゲ ー ト制 御)タ ー ン オ ン 時 間 と い い,遅 8(a)に
れ 時 間 と立 上 り時 間 の 和 で 表 す.図2・
タ ー ン オ ン 時 の 波 形 と 用 語 を 示 す.
(a)タ ー ン オ ン 時 の 波 形
(b)オ
ン電 流 上 昇 率,タ
ー ンオ ン損 とその 抑制 法
図2・8 ター ンオ ン時 の 波形,臨 界 オ ン電 流 上昇 率 とそ の抑 制 法
(b)タ
ー ン オ ン損,臨
ー ダ で あ るが ,オ
界 オ ン電 流 上 昇 率 タ ー ンオ ン時 間 は マ イ ク ロ秒 の オ
フ電 圧 とオ ン電 流 が 時 間 的 に変 化 す る の で,そ れ らの 積 が 電 力
損 失 と し て発 生 す る.こ れ を ター ンオ ン損 とい う.タ ー ン オ ン損 の発 生 は短 時 間 で あ るが,エ
レ メ ン トの ゲ ー ト近 傍 に 集 中 す る た め,こ れ が過 大 に な る と接 合 を
熱 的 に破 壊 して デ バ イ ス は機 能 を失 う.サ イ リス タ が 有 害 な影 響 を受 けず に耐 え 得 る こ とが で き る 最 大 の オ ン 電 流 上 昇 率 を 臨 界 オ ン 電 流 上 昇 率 と い う.図2・ 8(b)に タ ー ン オ ン損 を 示 す.電 流 上 昇 率 を低 減 す るた め,サ リア ク トル を接 続 す る.
イ リス タ に 直 列 に
(3)
オ ン状 態
(a)
ラ ッチ ング 電 流,保
持電 流
サ イ リ ス タ の タ ー ン ド ン 過 程 に お い て,ゲ
ー ト電 流 を 除去 した と き にオ ン状 態 に移 行 す る に必 要 な最 小 の 陽 極 電 流 を ラ ッ チ ング 電 流,ま
た サ イ リス タ を オ ン状 態 に維 持 す る に必 要 な最 小 の陽 極 電 流 を保 持
電 流 とい い,図2・9に
示 す.
両 者 は,サ イ リス タ を確 実 に タ ー ンオ ン状 態 を維 持 す る た め に必 要 で あ る.
(a)電 圧-電 流 特 性
(b)電 流 波 形
図
(b)
オ ン電 流
ラ ッチ ン グ電 流,保 持 電 流
2・9
トイ リス タが オ ン状 態 に あ る と きの 陽 極 電 流 を オ ン電 流 と い
い,商 用 周 波 の 正 弦 半 波 の 1サ イ ク ル に わ た る平 均 値 を平 均 オ ン電 流 とい う.平 均 オ ン電 流 は,最 高 許 容 接 合 温 度125℃(シ い)を 想 定 し,図2・10の
リ コ ンエ レ メ ン トの 温 度 と考 え て よ
よ う に,そ れ ぞれ の サ イ リス タ に つ い て 商 用 周 波 交 流 半
波 の 導 通 角 をパ ラ メ ー タ と し て平 均 オ ン損 失(発 熱 量)と の 関係 で 与 え られ る.導 通 角 を小 さ くす る ほ ど平 均 オ ン電 流 を低 減 しな けれ ば な らな い. (c)
過 負 荷 オ ン電 流,サ
ー ジ オ ン電 流
サ イ リス タお よ び 冷 却 フ ィ ン に は 熱
容 量 が あ る た め,定 格 平 均 オ ン電 流 よ り大 きな電 流 を流 して も直 ぐに は接 合 温 度 は最 高 許 容 温 度 に達 しな い.過 負 荷 オ ン電 流 の許 容 値 は,そ の直 前 の 電 流 値,通 電 時 間,冷 却 フ ィ ン温 度 に依 存 す る. サ ー ジオ ン電 流 は極 め て まれ な事 故 電 流 を想 定 した 電 流 で,そ の 定 格 値 は商 用 周 波 の 正 弦 半 波 の ピ ー ク値 で 定 義 され て い る.サ ー ジ オ ン電 流 通 電 後 は最 高 許 容 接 合 温 度 を遥 か に超 え る こ とが あ り,通 電 後 の サ イ リス タ の陽 極 電 圧 ・電 流 特 性
図2・10
図2・11
平 均 オ ン電 流 の例
定格 サ ー ジ オン電 流 の例 (サ-ジ
は 保 証 さ れ て い な い.図2・11は,商
オ ン 電 流 は,交
流 半 波 の 最 大 値 を示 す)
用 周 波50Hz,60Hzの
と き,通
電 し得 る
正 弦 半 波 の サ イ ク ル 数 と サ ー ジ オ ン電 流(ピ ー ク 値)の 例 を 示 す.
(d)オ
ン電 圧,オ
ン損 サ イ リス タが オ ン状 態 に て オ ン電 流 を通 電 して い る
とき,陽 極-陰 極 間 に 生 じ る電 圧 を オ ン電 圧 とい う.オ 物 プ ロ フ ァイ ル,デ ぐら い で,過
ン電 圧 は ウエ ー ハ の 添 加
バ イ ス の 構 造 に よ っ て 多 少 の 差 が あ る が,通
電 流 通 電 中 に は 3V 以 上 に な る こ とが あ る.オ
の 積 をオ ン損 とい う.
常1.0∼1.5V
ン電 圧 とオ ン 電 流
大 電 流 を 通 電 中 の サ イ リス タ で は エ レ メ ン トに 数kWの
損 失 が 発 生 し,発 熱
す る.こ の 熱 を冷 却 フ ィ ン に伝 え て風 冷 また は水 冷 で 冷 却 し,エ
レメ ン トの温 度
を許 容 限度 内 に抑 え る. (4)
オ ン状 態 か ら逆 阻 止 状 態 ・オ フ状 態 へ
(a)
逆回 復 特 性,逆
移 る(転 流)か,ま
回復電荷
通 電 中 の オ ン電 流 は,他
のデバ イスに電流 が
た は転 流 に よ らず 電 流 の消 滅(消 流)に よっ て 0に な る.オ
ン状
態 に あ る とき,電 源 ま た は 転 流 回路 に よ っ て逆 電 圧 を加 え る とオ ン電 流 は 0に な る が,そ の 直 後 一 時 的 に逆 電 流 が 流 れ,や が て は消 滅 し て 陽 極 一陰 極 間 に 逆 電 圧 が 加 わ る.こ の過 程 を逆 回復 特 性 とい い,逆 い う.こ の 現 象 は,エ あ って,キ
回復 電 流 の 時 間 積 分 を逆 回 復 電 荷 と
レ メ ン トの接 合 部 近 傍 の残 存 キ ャ リヤ の 消 滅 に よ る もの で
ャ リヤが 消 滅 後 サ イ リス タ は 回路 で 定 まる逆 電 圧 を 阻 止 す る よ うに な
る. 逆 回 復 電 流 は,エ たき く依 存 す る.逆
レメ ン トの構 造,オ
ン電 流,オ
ン電 流 減 少 率,接
合 部 温度 に
回復 過 程 で逆 電 流 と逆 電 圧 の 積 の 逆 損 が 発 生 す る.逆 電 流は 最
大 値 を超 え る と急 激 に 減 少 し,こ の 電 流 変 化 率 と回 路 の イ ン ダ ク タ ン ス に よ り 高い過 渡 過 電 圧 を発 生 す る .こ の よ うな 過 渡 過 電 圧 か らサ イ リス タ を保 護 す る た め,コ ンデ ンサ と抵 抗 か らな る ス ナバ 回 路 をサ イ リス タ に並 列 に接 続 しな けれ ば まらな い.図2・12に,逆
図
2・
回 復 時 の 電圧 ・電 流波 形,逆 損 と逆 回 復 電 荷 を示 す .
12
逆 回復 時 の電 圧 ・電 流 波形 お よび逆 回 復電 荷
(b)転
流 ター ン オ フ 時 間 逆 回復 過 程 が 進 行 して 逆 電 圧 を 阻 止 で きる よ う に
な っ て も,エ
レ メ ン ト内 各 接 合 の オ フ電 圧 阻 止 能 力 が 完 全 に回 復 す る ま で に は ま
だ若 干 の 時 間 を要 す る. オ ン電 流 が 0に な っ た 時 点 か らオ フ電 圧 阻 止 機 能 を回 復 し て,逆 電 圧 が ゼ ロ線 と交 差 して 順 方 向電 圧 とな る まで の 時 間 を転 流 ター ンオ フ時 間 とい う.「 転 流 」 とい う言 葉 を っ け る の は,後 述 す る ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リス タ の ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ時 間 と区 別 す る た め で あ る .転 流 タ ー ン オ フ 時 間 は,上 述 した(a)の 逆 回復 特 性 に及 ぼ す 要 因 の ほ か,逆 電 圧,オ
フ電 圧 上 昇 率,オ
フ電 圧 値 に も依 存 す
る. 図2・13に,オ
フ状 態 ― オ ン状 態 ― オ フ状 態 か らな る オ ン ・オ フ動 作 の 波 形,
用 語 を総 括 して 示 す.
図2・13サ
上 記 は,通 つ い て は,タ 特 性,波
イ リ ス タ の オ ン ・オ フ 動 作 の 波 形
常 の サ イ リ ス タ に つ い て 述 べ た が,ゲ ー ン オ フ 動 作 以 外 は 上 述 し た(1)か
形 は 基 本 的 に 同 じ で あ る.
ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ に ら(4)(a)ま
で の 用 語,記
号,
2
・
2 3 ・
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ の タ ー ンオ フ 時 の 用 語,
ゲ ー トタ ー ンオ フサ イ リス タ の場 合,オ
記 号,
特性
ン状 態 か らオ フ状 態 に 切 り換 え る に
は,オ ン状 態 の 接 合 部 に あ る キ ャ リヤ を急 峻 で 大 き な負 の ゲ ー トパ ル ス電 流 を 流 して 外 部 に吸 い 出 して 消 滅 させ,接 図2・14の よ うに,負
合 部 の オ フ電 圧 阻 止 能 力 を 回復 させ る.
の ゲ ー ト電 流 の10%の
時 点 か らオ ン電 流 に くび れ(負 の
ゲ ー ト電 流 の ピー ク値)が 生 じ る時 ま で をゲ ー ト制 御 タ ー ンオ フ 時 間tgqと い い, ゲ ー ト制 御 蓄 積 時 間tgs(ts)(オン電 流 が90%に 時 間tgf(tf)の和 で 表 す.ゲ
な る ま で の 時 間)と ゲ ー ト制 御 下 降
ー ト制 御 タ ー ンオ フ時 間 以 降 小 さ な オ ン 電 流 が 流 れ る
が,こ の 電 流 が 負 の ゲ ー ト電 圧 に よ っ て 消 滅 す る ま で(オ フ電 圧 阻 止 機 能 の 完 全 な 回復)の 時 間 をゲ ー ト制 御 テ イ ル 時 間ttailと い う.ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ時 間 は,オ
ン電 流 お よび オ ン電 流 減 少 率 の増 加 と と もに増 加 し,負 の ゲ ー トパ ル ス電
流 の ピー ク 値 の 増 加 と と も に減 少 す る.負 の ゲ ー ト電 流 の ピー ク 値IGQMに
達す
る まで の 電 流 ・時 間 積 分 を ゲ ー トタ ー ンオ フ 電 荷QGQと
ー ト
い う.QGQは,ゲ
ター ンオ フ時 の オ ン電 流 の増 加 と と もに増 加 す る.指 定 の 条 件 の も とで,ゲ ー ト 制 御 に よ りタ ー ンオ フ可 能 な ピー クゲ ー トター ンオ フ電 流 をIGQMと
図2・14ゲ
ー トタ ー ン オ フ 時 の 波 形
い う.
ゲ ー トター ンオ フ時 間 直 後 に ス パ イ ク 電 圧VDSPが 期 間 の オ ン電 流 減 少 率,ス
発 生 す る が,こ
れ はtgf(tf)
ナ バ 回路 に流 れ る電 流 の変 化 率 と その 回路 の イ ン ダ ク
タ ンス に よ る.テ イ ル 時 間 中 に ス ナ バ 回 路 の コ ン デ ン サ が 充 電 さ れ て 高 い オ フ電 圧VDMが
陽極 に加 わ る.図2・14に,ゲ
ー トタ ー ンオ フ時 の 波 形 を 示 す.
ゲ ー トター ン オ フ過 程 の オ ン電 流 とオ フ電 圧 の 積 に よ りタ ー ン オ フ損 が 発 生 す る.こ の ター ン オ フ損 は,エ
レ メ ン トの 極 く一 部 に集 中 す る の で,こ
れが過大 に
な る とエ レ メ ン トを 熱 的 に破 壊 す る.こ れ を 防止 す るた め,ス ナ バ 回路 を接 続 し て オ フ電 圧 上 昇 率 を抑 え,タ ー ンオ フ損 を軽 減 して安 全 動 作 領 域 内 で 動 作 す る よ う にす る. 以 上 は,通 常 の サ イ リス タ とゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ に つ い て 説 明 し た が,ト
ラ ン ジ ス タの 用 語,記
号,特 性 に つ い て は3・3・2項 で 解 説 す る.
演
〔 問 題 〕 1. 「 転 流 」 とは 何 か,そ
習
問
題
〔2〕
の 転 流 方 式 の 分 類 に つ い て 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 2.転
流 方 式 に適 し た デバ イ ス の 名 称 を説 明 せ よ.
〔 問 題 〕 3.サ
イ リス タ を 動 作 さ せ る に あ た っ て,超
え て は な ら な い 電 圧 と は 何 か?
ま た,電 圧 ・電 流 特 性 と用 語 を 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕4・ サ イ リス タ の タ ー ン オ ン時 の 波 形 を 書 き,用
語 を記 入 す る こ と.転 流 タ ー
ンオ フ時 の 波 形 と,ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ の タ ー ン オ フ時 の 波 形 を 書 き,用 語 を 記 入 の う え波 形 の 差 を 説 明 せ よ.
第3
パ ワ ー デ バ イ ス の基礎 (そ の 1)
章
−動 作原理 とデバ イスの種類 −
商 用 送 配 電,家 庭 用 電 源 に 直 接 あ る い は間 接 に 接 続 して 電 力 を伝 送,変
換 した
り,電 動 機 の駆 動 制 御 を扱 う半 導 体 デバ イ ス を総 称 し てパ ワ ー デ バ イス とい う.
3
・
1
3.1.1
半導体の性質
真性半導体
半 導体 とは,電 気 的 良 導 体 で あ る金 属 と絶 縁 物 との 中 間 に存 在 す る抵 抗 率(比 抵 抗)約0.01∼104Ω
・cmの 物 質 を い い,そ の 代 表 的 な 半 導 体 デ バ イ ス 用 材 料 は
シ リ コ ン,ゲ ル マ ニ ウム で あ る. 図3・1に
抵 抗 率 と 元 素 の 例,図3・2に
図3・1抵
元 素 の 周 期 表 を 示 す.
抗率 と元素 の 例
4価 の元 素 で あ る シ リコ ン は地 球 上 に豊 富 に 存 在 す るが,高 度 の 高 純 度 化 技 術 を 経 て 精 製 され た不 純 物 の 極 め て少 な い シ リ コ ン単 結 晶 は,そ の物 理 特性,デ イ ス プ ロ セ ス 技 術,経
バ
済 的 優 位 性 か らパ ワ ー デ バ イ ス の基 本 材 料 で あ る .
不 純 物 が 限 りな く少 な い か,ま
た は含 ま な い半 導体 材 料 を真 性 半 導 体 とい う.
図3・2 元素 の 周期 表
元 素 は原 子 で 構 成 され て い る.原 子 は 原 子 核 とそ の 周 囲 を 回 っ て い る い くつ か の 電 子 か ら成 り立 っ て い る.こ の 電 子 は,定
め られ た エ ネ ル ギ ー の 状 態 に対 応 し
た そ れ ぞ れ の軌 道 を 回 っ て お り,か つ,こ の 軌 道 に入 り得 る電 子 の 数 は き まっ て い る.多 数 の 電 子 が あ る場 合 は,原 子 核 に 近 い軌 道 に所 定 の個 数 の 電 子 が 満 た さ れ,順 次 外 側 の 軌 道 に電 子 が 収 ま った 状 態 で 物 質 を形 成 し て い る.シ
リコ ン の 原
子構 造 の モ デ ル と物 性 を図3・3に 示 す.
(a)原 子 構 造(シ リコ ン(Si)原 子 の モデ ル,電 子 の数14)
(b)物 性
図3・3 シ リ コンの 原子 構 造 の モデ ル と物 性
図 の よ う に,電 子 の配 列 は 原 子 核 に近 い K 軌 道 に 2個 の 電 子,次
の L軌 道 に
8個 あ り,最 外 殻 の M 軌 道 に は 8個 の 電 子 が 入 り得 る の に 4個 しか な い.K 軌
道,L 軌 道 に あ る10個
の 電 子 は原 子 核 か ら強 い 拘 束 を受 けて い る.し
か し,M
軌 道 の 4個 の 電 子 は 強 い 拘 束 を受 け て い な い の で,ほ か の 電 子 と結 合 した り,エ ネ ル ギ ー を 得 て 軌 道 か ら離 れ,自 は 電 子 4個 分 の 空 席 が あ る の で,他
由電 子 と し て 電 気 伝 導 に 関 与 す る.M
軌道に
の 原 子 の M 軌 道 か ら そ れ ぞ れ 1個 の 電 子 を
受 け取 っ て 空 席 を埋 め,互 い に結 合 す る.こ れ を共 有 結 合 と い う.図3・4(a)の よ う に,共 有 結 合 に よ りシ リコ ン原 子 が 立 体 的 に広 が っ て 真 性 シ リ コ ン単 結 晶 を 形 成 し て い る.
(a) 真 性 シ リ コ ン 図3・4
(b) n形 シ リ コ ン
(c) p形 シ リ コ ン の 結 合 模 型
真 性 シ リ コ ン と添 加 物 シ リ コ ン の 結 合 模 型
真 性 シ リ コ ン で は,こ の 共 有 結 合 の 電 子 は比 較 的 に 弱 い エ ネ ル ギ ー(1.1eV) に よ っ て拘 束 され て い る の で,こ れ を超 え る エ ネ ル ギ ー,例
え ば熱,光,電
界が
外 部 か ら与 え られ る と,電 子 の い くつ か は結 合 か ら離 れ て 自由 に動 け る よ うに な る.電 子(負 の電 荷)が 抜 け た あ と は 正 孔(正 の 電 荷)と な る.M
軌道 の正 孔 の傍
に弱 い エ ネル ギ ー の 電 子 が く る と,ク ー ロ ンカ の作 用 で 電 子 は正 孔 に引 き込 ま れ 再 び共 有 結 合 を形 成 す る.こ れ を再 結 合 とい う.
3・1・2 不 純 物 半 導 体 不 純 物 を(実 質 的 に)含 まな い真 性 半 導 体 に微 量 の 3価 また は 5価 の 元 素 を人 工 的 に添 加(ド ー ピ ン グ とい う)し た 半 導 体 を不 純 物 半 導 体 * とい い,デ バ イ ス用 と
*他 の元 素 とそ の量 を人 工 的 に添 加 す るの で あ るか ら 「 添 加 物半 導 体 」 とい うべ きで あ ろ う .
して n形 半 導 体 と p形 半 導体 が あ る. (1)n
形 半導 体
図3・4(a)の 4価 の 真 性 シ リ コ ン に 5価 の 元 素(最 外 殻
軌 道 に 5個 の 電 子 を もつ)で あ る P(リ ン)あ る い はSb(ア し,シ
ン チ モ ン)を 微 量 添 加
リ コ ン を溶 解 して 単 結 晶 を つ く る とシ リコ ンの M 軌 道 の 四 つ の 空 席 は す
べ て 5価 の元 素 の電 子 で埋 ま り,さ ら に 1個 の余 剰 電 子 が生 じ る.こ
の余 剰 電 子
に対 す る 5価 の 原 子 核 か らの 拘 束 力 は極 め て 弱 い の で,外 部 か らの 電 界 な どに よ り容 易 に動 き回 る こ とが で き る 自 由電 子 に な る.5 価 の 元 素 を添 加 した シ リ コ ン は 過 剰 な電 子(negative;負
の 電 荷)を もっ て い る の で n形 シ リ コ ン とい い,図
(b)に 示 す.添 加 した 原 子 が 電 子 を放 出 す る よ うな場 合,添
加 原 子 を ドナー とい
う. (2)p
形 半導 体
4価 の 真 性 シ リ コ ン に 3価 の 元 素(最 外 殻 軌 道 に 3個 の
電 子 を も つ)で あ るGa(ガ
リウ ム)あ る い は B(ホ ウ 素)を 微 量 添 加 し,シ
を溶 解 し て単 結 晶 を つ く る と,シ 埋 ま らず,電
リコ ン
リ コ ン の M 軌 道 の 四 つ の 空 席 の う ち三 つ しか
子 1個 が 不 足 して 空 席(正 孔)が 一 つ余 っ た ま ま と な る.こ
他 の共 有 結 合 か ら 出 た 自 由電 子 が 入 る と安 定 す るが,そ
の正 孔 に
の 電 子 が 出 た 跡 に は正 孔
が生 じ る.こ の よ うな 正 孔 の移 動 は電 気 伝 導 に関 与 す る.3 価 の 元 素 を添 加 した シ リ コ ン は過 剰 な 正 孔(positive;正 い,図(c)に
示 す.左
の 電 荷)を も っ て い る の で p形 シ リコ ン とい
孔 を生 じ させ る 3価 の 添 加 元 素 をア ク セ プ タ とい う.
n形 お よ び p形 シ リ コ ン単 結 晶 内 部 の 電 気 伝 導 は電 子 と正 孔 の 移 動 に よっ て 行 わ れ る.電 流 は電 子 の 流 れ と正 孔 の 流 れ の和 で あ り,電 流 の 方 向 は電 子 の 流 れ と は逆 で 正 孔 と は同 じ方 向 で あ る.電 流 す な わ ち過 剰 の 電 子 と正 孔(過 剰 キ ャ リヤ とい う)の 移 動 は下 記 に よ る. ①
電 界に よる移動
電 子 の移 動 は,電 子 の 移 動 度,自
る.正 孔 の移 動 は,正 孔 の 密度 と移 動 度,電 ②
密 度 差 に よ る移 動
由電 子 密 度 の 関 数 に よ
界 拡 散 定 数 に よ る.
電 子 密 度 お よ び正 孔 密 度 は高 い ほ う か ら低 い ほ う に そ
れ ぞ れ の 拡 散 定 数 に した が っ て 移 動 す る. ③
再 結 合 に よ る移 動
過 剰 の電 子 と正 孔 が結 合 し,電 子 ・正 孔 の対 はキ ャ リ
ヤ ラ イ フ タ イ ム に よっ て 指 数 関 数 的 に減 衰 し,消 滅 す る.
サ イ リス タ や トラ ンジ ス タ の タ ー ン オ ン動 作 は主 と して 「電 界 に よ るキ ャ リヤ の移 動 」 が,タ
ー ンオ フ 時 に は主 と して 「電 界 お よ び再 結 合 に よ る キ ャ リヤ の移
動 」 が 関 与 して い る. n形 あ る い は p形 の シ リコ ン単 結 晶 に 5価 あ るい は 3価 の元 素 を 拡 散 法 や 気 相 成 長 法 な どの 技 術 で 接 合 面(pn接
合 あ る い はnp接
さ の n層 あ る い は p層 を 形 成 さ せ る.そ の 後,そ の 接 合 面 を通 って 電 子,正
合 と い う)と 所 望 の 濃 度 と厚 れ ぞれの 層 に電極 を付 けて そ
孔 が 流 れ る よ う に した構 造 が デ バ イ ス の 基 本 で あ る .
パ ワー デバ イ ス の代 表 的 構 造 と は,次 の よ う な こ とで あ る. ①
シ リ コ ン ウ エ ー ハ に p層,n て,過
②
層 の 接 合 面 が 一 つ ま た は複 数 形 成 さ れ て い
剰 キ ャ リ ヤ が あ る こ と.
製 造 工 程 で ウエ ーハ へ の添 加 元 素 の濃 度,す
なわ ち電 子 密 度,正
孔 密度 と
そ の 層 の 厚 さが 制 御 で きて い る こ と. ③pn接 ④
合 を 通 っ て注 入 され るキ ャ リヤ量 に よ り電 気 伝 導 度 が 変 化 す る こ と.
p層,n 層 に 電 極 端 子 を 付 け る た め に ア ル ミ な ど の 薄 い 金 属 層 が あ る こ と.
添 加 元 素 の 量 と抵 抗 率 の 例 と し て,シ を 添 加 す る と,シ を 増 や し,シ
リ コ ン 単 結 晶 の 抵 抗 率 は 5Ω ・cmの
リ コ ン 原 子104個
そ の 層 の 抵 抗 率 は ∼0.03Ω ま た,シ
リ コ ン 原 子107個
リ コ ン 原 子106個
抵 抗 率 は ∼ 2Ω ・cmの
に ア ン チ モ ン 原 子 1個
n 形 結 晶 と な る.さ
に ア ン チ モ ン 原 子 1個 を 添 加 し た 層 を つ く る と,
・cmと
な り,通
常n+で
表 す.
に ホ ウ 素 原 子 1個 を 添 加 す る と,シ
p 形 結 晶 と な る.さ
リ コ ン単 結 晶 の
ら に 量 を 増 し て シ リ コ ン 原 子104個
ホ ウ 素 原 子 1個 を 添 加 し た 層 を つ く る と そ の 層 の 抵 抗 率 は ∼0 .05Ω ・cmと 通 常p+で
ら に量
に
な り,
表 す.
n+お よ びp+の
表 面 に 薄 い ア ル ミ層 を付 け,そ
の層 に ア ル ミ線 を超 音 波 で ボ ン
デ ン グ して電 流 の 端 子 とす る. 今 後,本
書 で は,接 合 を も た ず 製 造 工 程 に入 れ る 前 の n形 あ る い は p形 の シ
リ コ ン単 結 晶 の 円 板 を ウ エ ー ハ と呼 び,製 造 工 程 に よ っ て そ の ウ エ ー ハ に p層 あ る い は n層 の 接 合 を形 成 し て デ バ イ ス と して の機 能 を もっ た シ リ コ ン単 結 晶
円 板 を エ レ メ ン ト と呼 ぶ こ と に す る.
最 近 の パ ワ ー デバ イ ス は,一 つ の エ レ メ ン トに 複 雑 で 多 数 の 接 合 を も った 構 造 に な っ て い る が,主
た る電 流 が 流 れ る経 路 の 構 造 を見 る と,次 の よ うに 分 類 で き
る.ま た,接 合 の数 に よっ て デ バ イ ス の 機 能 が 決 ま る. ①
主 た る電 流 の経 路 に一 つ の接 合 一 整 流 ダ イ オ ー ドー 整 流 作 用 の み
②
主 た る電 流 の経 路 に二 つ の接 合 − トラ ン ジ ス タ
− 増 幅 お よび ス イ ッチ ン
グ動作 ③
主 た る電 流 の経 路 に 三 つ の接 合 一 サ イ リス タ
− オ ン の み また はオ ン ・
オ フ動 作
(a)タ
イオー
ド
(b) トラ ン ジ ス タ 図3・5一
図3・5(a)∼(c)に
(c)サ イ リス タ
(d)逆 導 通 サ イ リス タ
つ お よ び 複 数 の 接 合 を もつ デ バ イ ス
多 数 の 結 合 を も つ デ バ イ ス の 例 を 示 す.図(d)は
逆 導通 サ
イ リス タ と い い,1 枚 の ウ エ ー ハ に サ イ リ ス タ と ダ イ オ ー ドの 機 能 を 入 れ た 複 合 デ バ イ ス の 例 で あ る.
2 3
・
パ ワー デバ イス の動作 原理
3・2・1ー
つ の 接 合 が あ る デ バ イ ス(整 流 ダ イ オ ー ド)
図3・6の よ うに,p 層, n層 が 形 成 され,過 剰 キ ャ リヤ が あ る状 態 を考 え る. p層 の 電 極(陽 極 端 子)に 正,n 層 の 電 極(陰 極 端 子)に 負 の 電 圧 を加 え る と,p 層
(a)順 方 向 (注 入が 起 こ る)
(b)逆 方 向 (空乏 層 が広 が る)
図3・6一
(c)整 流特 性
(d)通 電 直 後 の 電 流 ・電圧 波 形
つ の 接 合 を も つ デ バ イ ス(整 流 ダ イ オ ー ド)の キ ャ リヤ の 挙 動
の 正 孔 は 負 電 位 に 引 か れ て n層 に移 動 し,再 結 合 す る.同 様 に,電 子 も p層 に 移 動 して 再 結 合 す る.こ の 状 態 で は,電 源 電 圧 と負 荷 抵 抗 で き ま る電 流(電 子 電 流 と正 孔 電 流 の和)が 陽 極 か ら陰 極 に 流 れ る.こ の と き陽 極-陰 極 端 子 間 に約1V の順 電圧 降 下 が 生 じ る.こ の 電 圧 と電 流 の 関係 を順 方 向 特 性 とい う. これ と は逆 に,印 加 電 圧 の 極 性 を反 転 して逆 電圧 を加 え る と,今 度 は電 子 も正 孔 も 自分 自身 の電 極 に 引 か れ る だ けで 接 合 面 を通 って 流 れ るキ ャ リヤ は極 め て 少 い.し か も,電 子,正
孔 が 両 側 の電 極 に引 き寄 せ られ る の で,接 合 部 の 近 傍 に は
電 子 も正 孔 も極 め て少 な い 空 乏 層 とい う絶 縁 部 分 が 生 じ る.絶 縁 部 分 とい っ て も 極 くわ ず か の キ ャ リヤ が残 っ て い るの で,小
さな逆 阻 止 電 流 が 流 れ る.こ の状 態
を逆 阻止 状 態 とい う.逆 電 圧 と逆 阻止 電 流 の関 係 を逆 方 向 特 性 とい う. 逆 電 圧 を さ らに 高 くす る と,空 乏 層 の わ ず か の キ ャ リヤ が 高 電 圧 で加 速 さ れ て シ リ コ ン原 子 に衝 突,電 離 し,ア バ ラ ン シ ェ(雪 崩)を 起 こ して 逆 阻 止 電 流 が 急 に 増 加 す る.こ の電 圧 を逆 降 伏 電 圧 とい う.こ の領 域 で は,逆 降 伏 電 圧 と逆 阻 止 電 流 の積 の 電 力 損 失 が 発 生 し,こ れ が あ る限 度 を超 え る と ダ イ オ ー ドは逆 阻 止 能 力 を失 い,永 久 破 壊 に至 る場 合 が あ る.逆 降 伏 電 圧 は 温度 の 上 昇 と と もに増 加 す る 傾 向 を示 す. 通 常,回
路 か ら決 ま る ピー ク動 作 逆 電 圧 は余 裕 を もっ て ダ イ オ ー ドの 逆 降 伏 電
圧 以 下 とな る よ う型 名 を選 定 す る.
順 電 流 が 流 れ て い る状 態 で 急 に逆 電 圧 を加 え る と,接 合 近 傍 に 充 満 して い る キ ャ リヤ(蓄 積 電 荷)は 逆 電 圧 に よ っ て 外 部 に 引 き 出 さ れ,過 渡 的 な 逆 電 流 が 流 れ る.こ
の 逆 電 流 の 時 間 積 分 を逆 回 復 電 荷Qrrと
は,蓄 積 電 荷 は す べ て外 部 に 引 き 出 され,同
い う. 時 間tstg(蓄 積 時 間)後 に
時 に空 乏 層 が 広 が り は じめ てttr(遷
移 時 間)後 に は完 全 に 逆 電 圧 を 阻 止 す る よ う に な る.こ の 蓄 積 時 間 と遷 移 時 間 の 和 を逆 回 復 時 間trrと い う.逆 回復 時 間 が 小 さ い ほ ど高 周 波 用 に適 す る.上 記 の 特 性 お よび 接 合 近 傍 の キ ャ リヤ の 挙 動 は デ バ イ ス の 基 本 で あ り,接 合 が 複 数 あ っ て もそ の 動 作 は 同 じで あ る.
3・2・2 二 つ の 接 合 が あ る デ バ イ ス(ト ラ ン ジ ス タ) p 層,n
層 に も う 一 つ の 層 を 付 け,そ
ジ ス タ ま た はnpnト
ラ ン ジ ス タ と な る.電
ャ リヤ で 行 わ れ る の で,こ 正 方 向 に 対 し て,n
の 中 間 の 層 に 電 極 を 付 け る とpnpト
流 の 流 れ が 電 子 と 正 孔 の 2極 性 の キ
の よ う な デ バ イ ス を バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ と い う.
と p と の 接 合 を コ レ ク タ 接 合,そ
中 間 の p 層 を べ ー ス,p
の n層 の 電 極 を コ レ ク タ,
と n と の 接 合 を エ ミ ッ タ 接 合,そ
タ と し た 構 造 がnpnト
ラ ン
ラ ン ジ ス タ で あ る.キ
の n層 の 電 極 を エ ミ ッ
ャ リ ヤ(npn構
構 造 で は 正 孔)を 放 出 す る領 域 を エ ミ ッ タ 領 域 と い い,キ
造 で は 電 子 を, pnp ャ リヤ を 集 収 す る領 域
を コ レ ク タ 領 域 と い う. 電 極 を 接 地 す る 方 式 と し て,図3・7の ミ ッ タ 接 地 が あ る.パ
よ う に,ベ
ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス で は,通
き な 電 流 を オ ン ・オ フ で き るnpnト
ー ス 接 地,コ 常,小
レ ク タ 接 地,エ
さ なべ ー ス 電 流 で 大
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 接 地 が 使 用 さ れ る.
エ ミ ッ タ 接 地 のnpnト
ラ ン ジ ス タ に つ い て 考 え る. pべ ー ス-n エ ミ ッ タ 間 に
正 の 電 圧 を 加 え る と,添
加 物 濃 度 の 高 い,す
な わ ち 電 子 密 度 の 高 い n層 の 多 数
の 電 子 は エ ミ ッ タ 接 合 を 越 え て p 層 の べ ー ス 領 域 に 入 り,そ が 増 え る.コ
レ ク タ は 正 の 電 圧 の た め,p
越 え て n層 の コ レ ク タ 領 域 に 入 り,べ コ レ ク タ か ら エ ミ ッ タ に 流 れ る.p 接 合 に と っ て 順 方 向 な の で,べ
の領 域 の キ ャ リヤ
べ ー ス に 入 っ た電 子 は コ レ ク タ接 合 を
ー ス 電 流 と電 流 増 幅 率 β で 定 ま る電 流 が
べ ー ス-n エ ミ ッ タ 間 の 正 の 電 圧 は エ ミ ッ タ
ー ス-エ
ミ ッ タ 間 の イ ン ピ ー ダ ン ス は 低 く,わ
ず
(a)べ
ー ス接 地
(b)コ
レ クタ接 地
(c)エ
ミ ッタ接地
図3・7 トラ ンジ ス タの構 造 と接地 方 式 か な 制 御 電 圧 に よ る べ ー ス 電 流 で 大 き な コ レ ク タ 電 流 を 制 御 で き る. べ ー ス 電 流 が 0の と き,コ る.こ 流Icの
レ ク タ の正 の電 圧 に よ っ て わ ず か な 漏 れ 電 流 が 流 れ
れ を コ レ ク タ 遮 断 電 流IcBOと 割 合 を α で 表 し,べ Ic=αIE+IcBO,
い う.エ
ー ス 電 流IBと
対 す る コレクタ電
の 関 係 は 次 の よ う に な る.
IB=(1-α)IE
α を べ ー ス 接 地 の 電 流 増 幅 率 と い い,通 エ ミ ッ タ 接 地 のnpnト
ミ ッ タ 電 流IEに
(3・1)
常,α
ラ ン ジ ス タ で は,べ
に 対 す る コ レ ク タ 電 流 は αIEで あ る か ら,エ
は 1に 近 い 値 で あ る.
ー ス 電 流 は(1-α)IEで
あ り,こ
れ
ミ ッ タ 接 地 の 電 流 増 幅 率 β は,次
の よ う に な る. β=α/1 -a
β は,ト
(3・2)
ラ ン ジ ス タ の n,p, n の 各 層 の キ ャ リ ヤ 濃 度 お よ び 層 の 厚 さ な ど構
造 に よ っ て 変 わ り,通
常10∼300程
度 の 間 に あ る.
ベ ー ス 電 流 を パ ラ メ ー タ と し て コ レ ク タ 電 圧 と コ レ ク タ 電 流 の 関 係 は,図3・8 の よ う に な る.
図3・8
コ レ ク タ電 圧 と コ レ ク タ 電 流 の 関 係(エ
べ ー ス 電 流 が 0 また は負 の領 域 を遮 断 領 域,コ 領 域 を飽 和 領 域,そ
ミ ッ タ接 地)
レ ク タ接 合 が 順 バ イ ア ス と な る
の 中 間 の領 域 を能 動 領 域 とい う.ト ラ ン ジ ス タ を ス イ ッチ 動
作 させ る 時 は遮 断 領 域(オ フ状 態)と 飽 和 領 域(オ ン状 態)を べ ー ス電 流 に よ り切 り 替 え て動 作 させ る.図3・8で,べ
ー ス 電 流IB=0の
と き の動 作 点 は遮 断 領 域 の A
点 に あ る.べ ー ス電 流 を増 加 させ る と能 動 領 域 を経 て 飽 和 領 域 に移 る.能 動 領 域 と飽 和 領 域 の境 界 のべ ー ス 電 流IBSを 流 す と,動 作 点 は B 点 に な る.電 源 電 圧 を V,負 荷 抵 抗 を R,コ
レ ク タ 電 流(負 荷 電 流)をIc,べ
ー ス電 流 をIB,エ
ミ ッタ
接 地 の電 流 増 幅 率 を β(β=hFE)と す れ ば,飽 和 領 域 す な わ ち オ ン状 態 に移 行 さ せ るた め のべ ー ス 電 流IBは,次
の よ う に な る. (3・3)
この 式 か ら,β が大 き い ほ ど小 さ な べ ー ス電 流 で 大 き な負 荷 電 流 を オ ン ・オ フ す る こ とが で き る. また,べ ー ス接 地 の と きの 電 流 増 幅 率 α との 関 係 は,β=α/(1-α)と
な る.
トラ ン ジ ス タ を 動 作 させ る とき の 注 意 す べ き点 は,接 合 温 度,二 次 降 伏 と安 全 動 作 領 域(SOA)で
あ る.二 次 降 伏 と は,動 作 中 に 接 合 部 の 局 部 に 電 流 が 集 中 し
て温 度 上 昇 が 起 こ り,コ レ ク タ ーエ ミ ッ タ 間 の 電 圧 が 電 子 雪 崩 降 伏 を起 こ して 瞬 時 に電 圧 ・電 流 特 性 が 低 下 す る現 象 で,デ バ イ ス は使 用 不 能 と な る.ト
ラ ンジス
タ で装 置 を設 計 す る場 合 は,ま ず この 二 次 降 伏 現 象 を 考 慮 に入 れ て コ レ ク タ-エ ミ ッタ 間電 圧 とコ レ ク タ電 流 通 電 幅 で定 ま る 「順 バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 」 内 で 動 作 させ る. この ほか,タ
ー ンオ フ の際 に べ ー ス を 逆 バ イ ア ス させ る場 合 に は 「逆 バ イ ア ス
安 全 動 作 領 域 」 が,ま た 事 故 電 流 に対 して 「短 絡 電 流 安 全 動 作 領 域 」 を考 慮 す る 必 要 が あ り,こ れ ら は それ ぞ れ の トラ ン ジ ス タ の特 性 表 お よ び デ ー タ に記 載 され て い る.図3・9に,二
次 降 伏 現 象 と順 バ イ ア ス安 全 動 作 領 域 を示 す.
(a)二 次 降伏 現 象
(b)順 バ イ ア ス安 全 動作 領 域
図3・9 二 次 降伏 現 象 と順 バ イア ス安 全動 作 領域
上 述 の よ うに,ト
ラ ン ジ ス タ をス イ ッチ 動 作 さ せ る と き,定 格 コ レ ク タ電 圧,
定 格 コ レ ク タ電 流,定 格 コ レク タ損 失 の ほ か,こ
れ ら三 つ の 安 全 動 作 領 域 を考 慮
す る必 要 が あ る. npnト
ラ ンジ ス タ の動 作 原 理,特 性 を述 べ たが, npnト
ランジス タでは電流 が
コ レク タ領 域 か らエ ミ ッタ領 域 に向 か っ て 流 れ る の に 対 し,pnpト
ラ ンジスタで
は エ ミ ッ タ領 域 か ら コ レ ク タ領 域 に流 れ る こ と以 外 は基 本 的 に 同 じで あ る. な お,べ
ー ス接 地 方 式 は電 圧 増 幅 に,コ
に 用 い ら れ る.
レ ク タ接 地 方 式 は入 ・出力 の 抵 抗 変 換
3 2 3 ・
・
三 つ の 接 合 が あ るデ バ イ ス(サ イ リス タ)
三 つ の 接 合 を も つpnpn構 10の(a),(b)の
造 は サ イ リ ス タ の 基 本 で あ る.サ
よ う に,ゲ
ー ト端 子 が n 層 に あ れ ば N ゲ ー トサ イ リ ス タ,p
層 に あ れ ば P ゲ ー トサ イ リ ス タ と い う.通 ス タ で あ る.P
常 の サ イ リ ス タ は,P
ゲ ー トサ イ リ ス タ は,図(b)の
よ う に, pnpト
ト ラ ン ジ ス タ が 組 み 合 わ さ っ て い る の と等 価 で あ る.こ よ びpBnE(J3)接 nBPcお
合 は,そ
よ びncPB(J2)接
イ リ ス タ は,図3・
れ ぞ れpnp,npnト
ゲ ー トサ イ リ
ラ ン ジ ス タ とnpn
の 図 で,PEnB(J1)接
合 お
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 接 合 と な り,
合 は コ レ ク タ 接 合 と な る.サ
イ リ ス タ は,こ
の ように二
つ の トラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ を 互 い に 相 手 の べ ー ス に 接 続 し た 構 造 と み な せ る.
(a)N
(b)P ゲ ー トサ イ リ ス タ と そ の 等 価 的 な 構 造
ゲ ー トサ イ リス タ
図3・10サ
サ イ リ ス タ の 電 子,正 (1)
オ フ状 態
イ リス タの構造
孔 の 挙 動 は,図3・11の
状 態 に 分 け る こ と が で き る.
ゲ ー ト電 流 を 流 さ ず に,PE側(陽
極)に 正,nE側(陰
極)に
負 の極 性 の電 圧 す な わ ち 順 電 圧 を 印 加 す る と,中 央 のJ2接 合 は 高 い 電 界 で 逆 バ イ ア ス さ れ て 空 乏 層 が 生 じ,極 め て小 さい オ フ電 流 が 流 れ る.こ れ が オ フ 状 態 で あ る. オ フ 電 圧 を 高 くし て ブ レ ー ク オ ー バ 電 圧 に 達 す る と,J2接 じ て オ フ電 流 が 急 増 し,オ
合 で電 子 雪崩 が生
フ電 圧 阻 止 能 力 を失 って 電 源 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る オ ン
電 流 が 流 れ る よ う にな る.こ の 状 態 を セ ル フ ター ンオ ン とい い,こ
の状 態 で 大 き
な オ ン電 流 を流 す とサ イ リス タエ レ メ ン トの 局 部 に電 流 が 集 中 し,特 性 劣 化 あ る
(a)オ
フ状 態
(b)オ フ状 態 か らオ ン状 態 へ の移 行
(c)オ ン状 態 か ら逆 阻止 状 態へ の 移 行
(d)逆 阻止 状態
図
3・11
サ イ リス タの動 作
い は破 壊 に至 る こ とが あ る. (2)
オ フ状 態 か らオ ン状 態 へ の移 行(ゲ ー ト制 御 ター ン オ ン)
と き,PB層
の ゲ ー ト端 子 に 正 の 電 圧 を 加 え る と,図3・11(b)の
トラ ン ジ ス タ で は,J3接 通 っ てncに
流 れ る.二
合 のnEか
て い る の で,npnト
らPBに
よ う に,ncpBnE
電 子 の 注 入 が 起 き,電
子 がJ2接
合 を
つ の トラ ン ジ ス タ の べ ー ス と コ レ ク タ が 互 い に 接 続 さ れ
ラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ 電 流 はpnpト
ラ ンジス タのベ ー ス電
流 と な り,こ
の トラ ン ジ ス タ の コ レ ク タ 電 流 が 増 加 す る.こ
加 は,npnト
ラ ン ジ ス タ の ベ ー ス 電 流 の 増 加 と な る.こ
イ リ ス タ の 内 部 で 増 幅 さ れ,多 孔 はJ3接
量 の 電 子,正
つ の トラ ン
さ な ゲ ー ト電 流 で も サ
孔 が 発 生 す る.こ
の 電 子 はJ1接
合
合 を 通 っ て 陰 極 に 引 き つ け ら れ 電 流 が 流 れ る.こ
の タ ー ン オ ン 過 程 を 経 て オ フ 状 態 か ら オ ン状 態 に 移 行 し,電 る オ ン 電 流 が 流 れ る.ゲ
の コ レ ク タ電 流 の 増
の よ う に,二
ジ ス タ は 正 の フ ィ ー ドバ ッ ク 回 路 を構 成 し て い る の で,小
を 通 っ て 陽 極 に,正
オ フ状 態 の
源 と負 荷 抵 抗 で き ま
ー ト電 流 に よ る タ ー ン オ ン を ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ ン と い
う. こ の タ ー ン オ ン 過 程 を 数 式 で 示 す と,次 陽 極 電 流 をIA,陰 幅 率 を α1,npnト
極 電 流 をIK,ゲ
ー ト電 流 をIG,pnpト
ラ ン ジ ス タ の 電 流 増 幅 率 を α2と す る.こ
11(b)の
よ う に な る.陽
な り,一
方,陰
極 か ら 陰 極 に 向 か っ てJ2を
極 か ら陽 極 に 向 か っ てJ2を
の ほ か わ ず か な オ フ 電 流IDが 流 をIGと
の よ う に な る. ラ ンジスタの電流 増 れ ら の 記 号 は,図3・
通 過 す る 正 孔 電 流 は α1IAと
通 過 す る 電 子 電 流 は α2Icと な る.こ
流 れ て い る.ゲ
ー ト信 号 に よ りPBに
注 入 され る電
す れ ば, Ic=IA+IG
(3・4)
J2を 通 過 す る 電 流 はIAに
等 し い か ら,
IA=α1IA+ID+α2Ic
二 つ の 式 か らIcを
(3・5)
消 し てIAを
求 め る と, (3・6)
と な る.分
母 の α1+α2が
1に 近 づ く に つ れ てIAは
大 き く な り,α1+α2=1に
な
る と,IAは
数 式 で 無 限 大,す
な わ ち電 源 電 圧 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る 電 流 まで 増 加
し,サ イ リス タ は ター ンオ ン す る.タ ー ン オ ンの 条 件 は α1+α2≧1
と な る.式(3・6)は,タ
(3・7)
ー ン オ ン 直 前 ま で 通 用 す る 式 で あ る.
α1,α2は電 流 依 存 性 が あ っ て,式(3・7)の
条 件 の と き,ゲ
ー ト電 流 が な く て も オ
ン状 態 は 持 続 す る. ま た,J2接
合 に お け る 電 流 増 倍 係 数(正 孔 と電 子 に 対 す る 値 を 簡 単 の た め 等 し
い と す る)を M 同 じ く正 孔,電
と し,pnp,npnト
ラ ン ジ ス タ の エ ミ ッ タ 効 率 を γ1,γ2,お よ び
子 の 到 達 率 を αT1,αT2と す る と,
α1+α2=M(γ1・
αT1+γ2・
αT2)
(3・8)
の 関 係 が あ る.こ れ ら の 係 数 はす べ て 各 層 の 添 加 元 素 の 量(過 剰 な 電 子,正 密度),層
の 厚 さ とそ の横 方 向抵 抗,密 度 の勾 配 に 関係 が あ る.図3・12に
を示 す.上 述 した 過 程 を経 て 電 子,正
孔の
そ の例
孔 が 流 れ オ フ状 態 か らオ ン状 態 に移 行 す る
た め に μsの オ ー ダ の 時 間 を要 し,こ れ が タ ー ンオ ン時 間 とな る.
図3・12 層の構 造 と添加 物 濃度 の例
(3)
オ ン状態
陽 極 に正 の 電 圧 が 加 わ り,電 源 と負 荷 抵 抗 で 定 ま る 電 流
(オ ン電 流)が ラ ッチ ン グ電 流 以 上 で あ れ ば電 流 に応 じた 量 の電 子,正
孔が各接合
を通 っ て 注 入 さ れ,電 流 の担 い手 と な っ て 電 子 は 陽極 に,正 孔 は陰 極 に 流 れ る. この と き,陽 極-陰 極 間 に オ ン電 圧 が 発 生 す る.オ
ン電 圧 とオ ン電 流 の 積 の オ ン
損 が 発 生 し,接 合 部 の 温 度 が 上 昇 す る. (4)
オ ン状 態 か ら逆 阻 止 状 態 へ の 移 行(転 流 夕一 ン オ フ)
ゲ ー トタ ー ン オ
フサ イ リス タ を除 き,通 常 の サ イ リス タ をオ ン状 態 か ら逆 阻止 状 態 に す る に は, まず ゲ ー ト電 流 を停 止 し,同 時 に 何 らか の 方 法 で オ ン電 流 を 0に し な け れ ば な ら な い.こ
の た め,電 源転 流 か また はオ ン電 流 を保 持 電 流 以 下 に す る か あ るい は 図
3・13の 強 制 転 流 回路 を使 用 す る.電 流 が 0に な っ た 直 後 のt0か ら陽 極-陰 極 間 に 逆 電 圧 が 加 わ る. 図3・11(c)の
よ う に,t0か
らt1の 期 間 A で は オ ン 電 流 の 名 残 に よ り三 つ の 接
合 の キ ャ リ ヤ 密 度 は 極 め て 高 く,逆
t1以 降 の期 間 B で は,J3の
電 流 と な っ て 外 部 回 路 に 流 れ る.
キ ャ リヤ が 消 滅 し,J3は
逆 バ イ アス され て空 乏層
が 広 が り逆 電 圧 を受 け持 つ よ うに な る.
図3・13 強制 転 流 回路 の 例
t2以 降 の 期 間 C で は,キ
ャ リヤ が 消 滅 して 逆 電 流 の 減 衰 と と も にJ1の 空 乏 層
が広 が っ て逆 電 圧 阻 止 能 力 が 回 復 して い く. t3で は,逆 電 流 が 消 滅 し て逆 電 圧 阻 止 能 力 は完 全 に 回 復 す る.し か し,J2近 のnB層
傍
に残 存 す る キ ャ リヤ の た め,こ の 時 点 で も し順 電 圧 が 加 わ る とタ ー ン オ
ン して し ま っ て 順 方 向電 圧 の 阻 止 能 力 はな い. t4で は,キ
ャ リヤ は 完 全 に 消 滅 してJ2の 順 方 向 電 圧 の 阻 止 能 力 は完 全 に 回 復
す る.t0∼t4を
転 流 タ ー ン オ フ 時 間 と い う.転
流 タ ー ン オ フ は,逆
電 圧が加 わ る
こ と と 同 時 に, α1十 α2VT
MOSFETの
記 号,構
造,動
(c)
VG>VT,
VD0゜
相 回 路 の(1)はp=3,(2)はp と きp=3,(4)はp=6で
あ る.
こ れ らの 回 路 よ り も直 流 電 圧 波 形 お よ び 交 流 電 流 波 形 に含 まれ る高 調 波 を減 ら す た め に は,直 流 側 の パ ル ス数 pを増 や す 方 法 が と られ る.例
え ば,図5・8の
よ う に,変 圧 器 の巻 線 を 互 い に 位 相 をず ら し た 十 二 相 変 換 回 路(p=12)を る方 法 が と られ る.図(a)は した 回路,図(b)は
構成す
二 つ の 三 相 ブ リッ ジ を相 間 リア ク トル で並 列 に接 続
二 つ の三 相 ブ リッ ジ を直 列 に接 続 した 回路,図(c)は
二つ の
二 重 星 形 を相 間 リア ク トル を 介 して 並 列 に 接 続 した 回 路 で あ る.図(b)は,例 ば,高 電 圧 大 電 力 の 直 流 送 電 お よび 周 波 数 変 換 に,図(c)は
え
低 電圧大電 流の電解
工 業 用 電 源 に使 用 され る. さ らに,高 調 波 成 分 を減 ら した い場 合 は,さ
らに 変 圧 器 直 流 巻 線 の相 数 を増 や
(a)三
相 ブ リッ ジの並 列
(b)三
相 ブ リ ッジの 直列
(c)二 重 星 形 の並 列 図5・8十
して 二 十 四 相(p=24)に
二相 電 力 変換 回路 の 例
す る.
主 な 電 力 変 換 回 路 の特 性 比 較 を 表5・2に 示 す.
5・1・3重 (1)重
な り角 を 考 慮 した 直 流 電 圧(平 均 値)の 一 般 式 な り角 前 述 した 各 種 の 電 力 変 換 回 路 の 波 形 お よ び 電 圧 制 御 特 性
は,変 圧 器 お よ び交 流側 の イ ン ダ ク タ ン ス を無 視 して説 明 した.実
際 に は,変 圧
器 お よ び交 流 系 統 に イ ン ダ ク タ ンス が 存 在 し,ま た 事 故 時 の サ ー ジ 電 流 抑 制 の た め,あ
る程 度 の イ ン ダ ク タ ン ス を 入 れ て お か な けれ ば な らな い.
この イ ン ダ ク タ ン ス に よ っ て,電 源 転 流 時 に サ イ リス タ の オ ン電 流 は急 に は 0 に な らず,重
な り角 μ を経 て次 の サ イ リス タ に 転 流 す る.こ の 現 象 を 図5・9で
説 明 す る.L1∼L3は,変
圧 器 お よ び 交 流 系統 の一 相 当 た りの イ ン ダ ク タ ン ス の
和 を直 流 巻 線 側 か ら見 た イ ン ダ ク タ ンス で,転 流 イ ン ダ ク タ ンス とい う. 図(a)の 三 相 星 形 回 路 で,通 電 中 の サ イ リス タS1の 電 流 をS2に 移 す べ く制 御
表
〔注 〕 V:交 流 電 圧(実 効 値),Id:直 δ:全
5・2
主 な電 力 変
流 電 流(平 均 値),α:制
振 幅 脈 動 率(α=μ=0),ka=√1−
α/π,Pdo=Vdo
御 角, Id
換 回 路 の特 性 比 較
μ:重 な り角,X:転 *印:直
流 リア ク タ ン ス, f:電 源 周 波 数,
流電 流 平 滑 の場 合
(a)回 路
(b)重 な り期 間 中 の 波 形
(c)α と μの 関 係
図5・9
遅 れ 角 αでS2を ず,図(b)の
転 流 イ ン ダ ク タ ン ス と重 な り 角(三 相 星 形 回 路)
オ ン さ せ る と,転 流 イ ン ダ ク タ ン ス の た め 電 流 は直 ち に転 流 せ
よ う にS1とS2が
同 時 に通 電 す る期 間,重
な り角 μ を経 て 電 流 は
S2に 移 る.こ の 重 な り期 間 中 は U 相 と V 相 が 短 絡 と な る の で,直 U 相 と V 相 の 平 均 値,す 順 変 換 の場 合,図(b)の
な わ ち(eu+eυ)/2と
流 電 圧 波形 は
な る.
斜 線 の 面 積 だ け転 流 イ ン ダ ク タ ン ス を 無 視 した場 合 よ
り も直 流 電 圧(平 均 値)は 低 くな る.こ の 面 積 を 1サ イ ク ル 当 た りの 平 均 値 に した 値 が 転 流 リア ク タ ン ス 降 下dxと な る. 一般 に ,転 流 イ ン ダ ク タ ンスL と重 な り角 μ と の 関 係 は,転 流 リア ク タ ンス X=ωL(ω
は電 源 周 波 数),直
流 電 流 をId,直
流 側 の パ ル ス 数 を p,無 負 荷 無 制
御 時 の 直 流 電 圧(平 均 値)をVd0と
す れ ば, (5・19)
式(5・19)の 右 辺 を K とす れ ば,K
をパ ラ メ ー タ と して,制 御 角 α と重 な り角
μ の 関係 は 図(c)の よ う に な る.な
お,こ の 図 に は逆 変 換 領 域(α ≧π/2)の 関 係
も示 して い る. 制 御 角 を一 定 と した と き,転 流 イ ン ダ ク タ ン ス の増 加 と と もに,ま
た直流電 流
の 増 加 と共 に 重 な り角 は増 加 し,転 流 リア ク タ ンス 降下 は増 加 す る. (2)直
流 電圧(平 均 値)の 一 般 式 直 流 側 の イ ンダ ク タ ン ス が 大 き く,直 流
電 流 が 平 滑 で あ る と して 次 式 とな る. Vd=Vd0
cos α-dx-dr-da
(5・20)
こ こ で,
Vd0;無
負荷 無 制 御 時 の 直 流電 圧(平 均値)〔V 〕 (π/p)
Vs;変 圧 器 直 流 巻 線 の星 形 電 圧 〔 V〕 p;直 流 側 の パ ル ス 数(表5・1参
照)
α;制 御 遅 れ 角 dx;転
流 リア ク タ ン ス に よ る電 圧 降 下 〔 V〕
X;X=ωL(ω
は 電 源 の 周 波 数, L は変 圧 器 直 流 巻 線 側 か ら電 源 側
を 見 た 一 相 当 た りの転 流 イ ン ダ クタ ンス)〔Ω〕 Id;直
流 電 流 〔A 〕
μ;重
な り角
dr;変
圧 器,電 源 系 統 の抵 抗 分 の 電 圧 降下 〔V〕
da;サ
イ リ ス タ(ダ イ オ ー ド)の オ ン 電 圧 〔V 〕
5・2 交 流-交 流電 力変換 回路 交 流 電 源 か ら負 荷 側 に所 望 の 交 流 電 力 を供 給 し,そ の電 力 を制 御 す る場 合 は 次 の 回 路 が あ る.こ の 場 合,「 電 源-負 荷 」 の 間 で相 数,電 圧,周
波 数 が 異 な る場 合
も あ る.
① 交 流電力 調整 回路 ② 交 流電力直 接変換 回路 ③ 交 流電力 間接変換 回路 ま た,「 電 源-負 荷 」 の 問 の 周 波 数 変 換 と そ の制 御 に,次 の 方 式 が あ る. ①CF-CF(Constant-Frequency-Constant-Frequency)変 例 え ば,ヨ
換
ー ロ ッ パ の50Hz-16・2/3Hz鉄
道 電 化
②CF-VF(Constant-Frequency-Variable-Frequency)変 主 な 用 途 は,交
流 誘 導 電 動 機 お よ び 交 流 同 期 電 動 機 の速 度 制 御
③ VF-CF(Variable-Frequency-Constant 例 え ば,航 ④
換
Frequency)変
換
空 機 の エ ン ジ ン に 直 結 し た 交 流 発 電 機 か ら定 周 波 の 交 流 へ 変 換
VF-VF(Variable-Frequency-Variable-Frequency)変 主 な 用 途 は,②
換
と同 じ
負 荷 側 の 周 波 数 制 御(一 定 また は可 変)と 同 時 に,負 荷 側 の交 流 電 圧 も同時 に 制 御(一 定 また は 可 変)す る方 式 が あ る. 負 荷 側 の電 圧 と周 波 数 を同 時 に 制御 す る た め に次 の 方 式 が あ る. ⑤ CVCF(Constant 主 な 用 途 は,無 ⑥ VVVF(Variable 主 な 用 途 は,交
Voltage, Constant
Frequency)制
御
停電電源装 置 Voltage, Variabule 流 誘 導 電 動 機,同
Frequency)制
御
期電動 機の速度制 御
5・2・1 交 流 電 力 調 整 回 路 図5・10の
よ う に,ト
ラ イ ア ッ ク また は サ イ リス タ を 逆 並 列 に す れ ば
制 御 交 流 ス イ ッ チ 」 と な り,ト IGBTを
「オ ン 可
ラ ン ジ ス タ ま た は ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ,
逆 並 列 す れ ば 「オ ン ・オ フ 可 制 御 交 流 ス イ ッ チ 」 と な る.
図5・10
交 流 スイ ッチ の例
(1) オ ン可 制 御 交 流 ス イ ッ チ に よ る単 相 電 力制 御 (a) 抵 抗 負 荷 図5・11の(a)の
単 相 回 路 で,オ
ン可 制 御 交 流 ス イ ッチ の 制
(a) 回 路
(c) 波 形
(b) 制御特性 図5・11 単 相 回路(抵 抗 負荷)の 制御 特 性 と波 形
御 角 α に よ って 負 荷 側 の 交 流 電 圧 を制 御 で き る.交 流 電 源 電 圧 の 実 効 値 をVs, 負荷 側 の そ れ をV〓 とす れ ば, (5・21)
と な る.制
御 角 α とV〓/Vsの
関 係 は 図(b),波
形 は 図(c)と
な る.
制 御 角 αの制 御 に よ り負 荷 へ の 電 力 を 0か ら最 大 まで 連 続 的 に制 御 で き る. (b) 誘 導 性 負 荷 負 荷 の イ ン ダ ク タ ン ス を L,抵 と す れ ば,基
本 波 力率 角
φ は φ=tan-1(2πf・L/R)と
の 大 小 関 係 で 波 形 が 変 わ る.αemで
あ れ ば,電
電 動 機 は 減 速 ・回 生(第
(7・3)
動 機 は 力 行(第 二 象 限)運
一 象 限)運
転 で あ り,υa<emで
あ れ ば,
転 を 意 味 す る.
回転 速 度 n は,電 機 子 導体 総 数 を z,電 機 子 回 路 対 数 を a とす る と, (7・4)
直 流 電 動 機 の 回 転 数 と電 機 子 電 圧,界 磁 電 流,ト
ル ク の 関 係 を図7・6に 示 す.
この 図 で,界 磁 電 流 が 一 定 の 領 域 で は, 回 転 数 に 関 係 な く電 機 子 電 流 と発 生 トル ク は比 例 した 定 トル ク領 域 を示 し,逆 起 電 力 が 一 定 な 領 域 で は 回転 数 に関 係 な く 電 機 子 電 流 と出 力 が 比 例 す る定 出 力 領 域 図7・6 他 励 直 流電 動 機 の特 性
とな る.
(2) 直流電 動機の 可変速運転 お よび可逆運転 (a) 可 変 速(非
可 逆)運
転(第 一 象 限 運 転)
サ イ リス タ と直 流 電 動 機 を組
み合 わ せ た 回転 数 制 御 シス テム をサ イ リス タ レ オ ナ ー ドとい う.そ の 基 本 的 制 御 系 を 図7・7(a)に 示 す.直 流 電 動 機 の 回転 数 は,軸 に 直 結 し た 速 度 検 出器 か ら速 度 に比 例 した 電 圧 また はパ ル ス 数 を比 較 信 号 と して制 御 回路 に入 れ て速 度 指 令 信 号 と比 較 し,両 者 の 差 が 0とな る よ うに サ イ リス タ の ゲ ー ト位 相 を制 御 し,直 流 電 圧 す なわ ち 電 機 子 電 圧 を制 御 す る.
(a) サ イ リ ス タ レ オ ナ ー ド
(b) チ ョ ッ パ
(c) トラ ン ジ ス タ レ オ ナ ー ド
図7・7 直 流電 動 機 の 可変 速(非 可 逆)運 転 の主 回 路 と制 御 系
この 図 で は,界 磁 電 流,電 機 子 電 流 と も に一 方 向 な の で,逆 転 ・回生 運 転 は で きず,第 一 象 限 の み の 可 変 速 運 転 しか で き な い.電 機 子 回 路 に ス イ ッチ と抵 抗 を 付 け れ ば 発 電 制 動 に よ る減 速 はで き る. 同 図 の サ イ リス タ ブ リ ッ ジ の 代 わ りに,PWM制 MOSFET,IGBTか で き る.図(a)で
御 した チ ョ ッパ,あ
るいは
ら な る可 変 直 流 電 源 を使 用 して も同様 な第 一 象 限 の 運 転 が は,サ イ リス タ の制 御 角 に よっ て 交 流 電 源 の 所 要 無 効 電 力 は 変
化 す る が,図(b),(c)で
は 力 率 を ほ ぼ 1に 保 ち な が ら電 機 子 電 圧 をPWM制
御 で 可 変 で き,直 流 電 動 機 の 回 転 数 を制 御 で き る.
(b) 可逆運転(全 象限運 転) 1) サ イ リス タ ブ リ ッジ 回 路 直 流 電 動 機 を 四象 限運 転,す 加 速 ・減 速(回 か,ま
な わ ち正 ・逆 転,
生 制 動)運 転 す る た め に は,電 機 子 端 子 電 圧 の 極 性 を切 り換 え る
た は界 磁 端 子 電 圧 の極 性 を切 り換 え る必 要 が あ る.こ の た め に は図7・8の
方 法 が あ る.図(a)は
2組 の サ イ リス タ ブ リ ッ ジ を循 環 電 流制 限 用 リア ク トル を
介 し て十 字 結 線 と し,一 方 を順 変 換 動 作,他 流(通 常 は 定 格 電 流 の数 % 程 度)を
方 を逆 変 換 動 作 させ て小 さ な循 環 電
両 ブ リッ ジ 回 路 に 流 す こ と に よ っ て 直 流 電
動 機 を 円 滑 に全 象 限 の運 転 を行 う.図(b)は
循 環 電 流 制 限 用 リア ク トル を省 略 し
(a) 十 字結 線 式
(b) 逆 並 列結 線 式
(c) 電 機子 切 換 式
(d) 界磁 切換 式
図7・8 直流 電動 機 の 可逆 運 転 の 主 回路
て二 つ の ブ リ ッ ジ回 路 を 逆 並 列 に接 続 し た 方 法 で,両
回路 が 短 絡 しな い よ うに 互
い にゲ ー ト位 相 を制 御 す る.こ の制 御 上 の デ ッ ドタ イ ム の た め に 象 限 の 移 行 に わ ず か の 時 間 を要 し,可 逆 運 転 の 円 滑 さ は図(a)よ り劣 る.図(c)は
電 機 子 回路 に
機 械 的 切 換 ス イ ッ チ を接 続 し,運 転 指 令 に よ りス イ ッチ を動 作 さ せ て 電 機 子 電 圧 の極 性 を切 り換 え て可 逆 運 転 させ る方 法 で あ る.1 組 の 三 相 ブ リ ッジ 回 路 は切 換 指 令 に よ り順 変 換,逆 変 換 の 両 方 の 動作 を す る.1 組 の ブ リ ッジ 回路 で 済 む利 点 は あ るが,機 械 的 ス イ ッチ の 切 換 動 作 時 間 遅 れ,騒 音,保 る例 は見 な い.図(d)は
守 の た め 実 用 され て い
界磁 巻 線 に 2組 の サ イ リス タ ブ リッ ジ回 路 を逆 並 列 接 続
して 界 磁 電 流 の 方 向 を切 り換 え る方 法 で あ る.電 機 子 電 流 を通 電 中 に 界 磁 電 流 を 切 り換 え る と,一 時 的 に 弱 め界 磁 と な っ て 回転 数 が 異 常 に高 くな る恐 れ が あ る た め,電 機 子 電 流 を い っ た ん 0に して か ら切 り換 え る. 2) 可 逆PWM回
路 図7・9の よ う に,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を持 っ た デ バ イ
ス(バ
イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ,MOSFET,IGBT,ゲ
タ)を
ブ リ ッ ジ に接 続 し,そ の 中間 に直 流 電 動 機 を接 続 す る.こ の ブ リッ ジ 回路
の 出 力 電 圧,す
ー トタ ー ン オ フ サ イ リス
なわ ち電 機 子 電 圧 の極 性 は,正 転 ・逆 転 の 指 令 に応 じて 正 ま た は
負 に な る よ う にPWM制
御 す る.
図7・9 可 逆PWM制
ブ リ ッ ジ 回路 の 出 力 電 圧,出 直 流 電 動 機 の 回 生 制 動,逆
御 に よ る直流 電動 機 の 可 逆運 転
力 電 流 は いず れ の 方 向 も と る こ とが で き る の で,
転 が 可 能 で あ り,四 象 限運 転 が 可 能 で あ る.
デ バ イ ス の 特 性 に よ るが,PWM周 る の で,サ
波 数 を1∼20kHz程
度 に選 ぶ こ とが で き
イ リス タ レオ ナ ー ド方 式 に比 べ て電 動 機 の 速 応 制 御 性 に 優 れ て い る.
3) PLL(Phase で は,PWM制
Locked Loop;位
相 同 期 ル ー プ)速 度 制 御 図7・9の 回 路
御 に よ り トル ク,す な わ ち電 機 子 電 流 を精 度 よ くか つ 応 答 よ く制
御 で き る.PLL速
度 制 御 と は,回 転 位 相 指 令 と実 際 の 回 転 位 相 の 差 に比 例 した
トル ク を発 生 させ る こ と に よ り,回 転 位 相 指 令 に 同期 して電 動 機 を回 転 さ せ る も の で あ る.PWM制
御 の 特 徴 で あ る機 能 にPLL制
御 を 加 え て,電
動 機 を高 精 度
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス に よ る 誘 導 電 動 機 の 速 度 制 御 は,1970年
代 に実用 化
の 回 転 数 制 御 を行 う 方法 で あ る.
7・1・2 誘 導 電 動 機
が 始 ま っ た.こ able Frequency)イ
の 頃 は,可
変 電 圧 可 変 周 波 数(VVVF;Variable
ン バ ー タ と し て,交
流出力電圧
Voltage Vari-
V と そ の 周 波 数 f の 比V/f
を 一 定 に し つ つ f を 可 変 と し た 誘 導 電 動 機 の 電 源 と し て 応 用 さ れ た.
1970年 代 後 半 に,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を もっ た 大 電 力 の デ バ イ ス が 開 発 さ れ, それ を使 用 したPWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タが 誘 導 電 動 機 の駆 動 に 実 用 さ れ る
よ う に な っ た.こ の 頃,誘
導 電 動 機 を直 流 電 動 機 並 に応 答 よ く トル ク制 御 で き る
「ベ ク トル 制 御 」 が 開 発 さ れ た.こ
の技 術 が 電 圧 形 イ ンバ ー タ と結 び 付 い て,従
来 の サ イ リス タ レオ ナ ー ドに よ る直 流 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム か ら,ベ ク トル 制 御 の 誘 導 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム が 重 工 業,一
般 産 業 用,交 通 ・輸 送 用 な ど広 い 分 野 に応
用 さ れ る よ う に な っ た.現 在 で は,こ の シス テ ムが パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス の電 動 機 へ の 応 用 の 主 役 に な っ て い る.
(1)誘 導電動機 の等 価 回路 か ご形誘 導電動 機 の原理 と等価 回路 を図7・ 10に 示 す.
(b)等 価 回路
(a)構 造 の原 理
(c)図(b)の
ベ ク トル 図
図7・10 か ご形誘 導 電動 機 の 原理 と等価 回路
か ご形 誘 導 電 動 機 の場 合,固
定 子 巻 線 に 三 相 交 流 電 圧 を 印 加 す る と電 流 が 流
れ,磁 束 φMの 回 転 磁 界 が 生 じ,励 磁 リア ク タ ン ス をXM,励
磁 電 流 をIMと
す
れ ば, (7・5)
φM=XMIM
と な る.誘 導 電 動 機 が 無 負 荷 の と き,そ の 電 流 はIMに は,φMは
ほ ぼ 等 し い(直 流 機 で
界 磁 電 流 に よ る磁 束 に相 当 す る).
この 励 磁 電 流IMに
よ る回転 磁 界 を か ご形 回 転 子 の 導 体 バ ー が 横 切 る と回 転 子
に 起 電 力 が 誘 起 して 二 次 電 流I2が 流 れ る.こ の 電 流 と回 転 磁 界 との 間 に,フ ミ ン グの 法則 に よ っ て トル クがTeが
発 生 す る(直 流 機 で は,I2は
レ
電機子 電流 に
相 当 し,こ の 電 機 子 電 流 と界 磁 磁 束 に よ り トル ク を発 生 す る). この トル ク は,回 転 子 導 体 バ ー の 鎖 交磁 束 と二 次 電 流 の積 に よっ て 決 ま り,ト ル ク を発 生 す るた め に はIM,I2が 必 要 で あ る. 交 流 電 源 か ら電 動 機 に流 れ る電 流I1は,ベ
ク トル 表 示 す れ ば,
I1=IM+I2
(7・6)
I1の 絶 体 値 と,そ の 角 度 を θ とす れ ば,次 の 式 とな る. (7・7)
(7・8)
二 次 電 流I2が 流 れ る た め に は,回 転 磁 界 の 周 波 数(交 回転 子 の 回転 周 波 数frに 差 が な けれ ば な ら な い.そ
流 電 圧 の 周 波 数)f
と
の差 が す べ り sで あ り, (7・9)
とな る.s=0,す
な わ ちf=frで
は,回 転 子 導 体 バ ー は 回転 磁 界 を横 切 らな い の
で トル ク は発 生 し な い.同 期 速 度 N は,電 動 機 の 極 数 を p とす れ ば (7・10)
ま た,回
転 子 の 回 転Nrは,s=(N-Nr)/Nか
ら,次
式 と な る.
Nr=N(1-s) 従 っ て,回
転 数Nrを
(7・11)
制 御 す る に は,f
あ る い は s を 制 御 す れ ば よ い.
トル クTeは,定
数 をK1,K2, K3,電
動 機 出 力 を P と し て,次
の 関 係 が あ る.
(7・12)
(2)
か ご形誘導 電動機 の可変速運転
(a)
基本特性
交 流 電 圧,周 波 数 が 定 ま っ た 交 流 電 源 で 誘 導 電 動 機 を駆 動 し
て い る時 の 特 性 を 図7・11(a)に 示 す.負 荷 を 駆 動 す る に 必 要 な トル ク に達 す る と こ ろ まで 電 動 機 電 流 が 増 加 して トル ク を発 生 し,電 動 機 は そ の 時 の 回 転 数,す べ り sで 回 転 す る.同 期 速 度 で は,ト ル ク は 0で あ る. 電 動 機 の 回転 数 が 同 期 速 度 で 決 ま る回 転 数 よ り も高 くな る と,ト ル ク は 負 とな って 制 動 力 が 生 じ る.電 源 回 路 に 回 生 能 力 が あ れ ば 回 転 エ ネ ル ギ ー は電 源 に 回生
(a)基 本特 性
(c)V/f一
図
定制御 7・11
(b)端 子 電圧 特 性
(d)V/f一 定+端 子電 圧 制 御 誘 導電 動 機 の 回転 数-ト ル ク特 性
さ れ て 減 速 す る.従 っ て,イ
ンバ ー タ回 路 の 出 力 周 波 数 を電 動 機 の 回 転 数 で 決 ま
る 周 波 数 よ り も下 げ る よ うに 制 御 す れ ば,電
動 機 に制 動 トル クが 生 じ,減 速 す
る. (b)
す.発
電 動機 の端 子電 圧制 御
図(b)に 端 子 電 圧 を 制 御 し た と き の特 性 を 示
生 トル ク は端 子 電 圧 の ほ ぼ 2乗 に比 例 す る.こ の 制御 法 は送 風 機 の よ う な
負 荷 に は適 す るが,定 V/f一 定 制 御
トル ク負 荷 で は狭 い範 囲 で の 回転 数制 御 しか で き な い. こ の 方 法 で は,図(c)の
よ う に,周 波 数 の 低 下 と共 に
最 大 トル ク は減 少 す る.こ の 方 法 は,送 風 機,ポ
ン プ な ど,低 速 度 で所 要 トル ク
(c)
が 小 さ くて済 む 用途 に適 す る.工 作 機,ク
レ ー ンの よ う に低 速 度 領 域 で も大 きな
トル ク を必 要 とす る よ うな 用途 に は,電 動 機 の端 子 電 圧 を高 め て,図(d)の
よう
に,低 速 度 で も最 大 トル ク が で る よ うな 制 御 法 を用 い る. 回転 数 制 御 に 当 た っ て,電 動 機 の 軸 か ら検 出 した 回 転 数 信 号 を制 御 シス テ ム に 加 え て 回転 数 補 正 した のが(セ
ンサ 付 き)ベ ク トル 制 御 で,一 方,回 転 数 信 号 の
代 わ り に電 動 機 電 流 か ら回転 数 を推 測 して 回 転 数 補 正 した の が セ ンサ レス ベ ク ト ル 制 御 で あ る. (3)
巻 線形誘導 電動機の可 変速 運転 (サ イ リス タセ ル ビウ ス 方 式)
形 誘 導 電 動 機 で は,か
巻線
ご形 と同様 に電 動 機 端 子 電 圧 また は そ の 周 波 数 に よ っ て,
あ る い は二 次 側 の巻 線 に誘 起 す る電 圧 を制 御 す る こ とに よ っ て 回 転 数,ト
ル クを
制 御 す る.巻 線 形 誘 導 電 動 機 が す べ り sで 回 転 し て い る と き,そ の 二 次 巻 線 に は sに 比 例 した 二 次 電 圧 が 誘 起 し,負 荷 トル ク で 定 ま る二 次 電 流 が そ の 巻 線 に 流 れ る.従
っ て,こ の誘 起 電 圧 を二 次 巻 線 に 接 続 した 外 部 回 路 に よ っ て制 御 す れ
ば,負 荷 トル ク に見 合 った 回転 数-ト ル ク特 性 で 回 転 す る.す な わ ち,図7・12の よ う に,二 次 巻 線 に 接 続 した 抵 抗 の 制 御,あ
る い は 二 次 誘 起 電 力 を 交 流-交 流 変
換 で 交 流 電 源 に 回生 す れ ば効 率 よ く回 転 数 を制 御 す る こ とが で き る. この よ うな 回 転 数 制 御 方 式 を セ ル ビ ウス 方 式 とい い,ポ
ン プ,送 風 機 な どの 比
較 的 大 容 量 の 巻 線 形 誘 導 電 動 機 を狭 い 回 転 数 制 御 範 囲 で 運 転 す る の に適 す る.
図
(4)
7・12
巻線形誘導電動機の可変速運転
電圧 形イ ンバ ー タによるか ご形誘導電 動機の可 変速運転
交 流 電 力 間 接 変 換 電 圧 形 イ ン バ ー タ(イ 主 回路 と制 御 回 路 の構 成 を示 す.イ
ンバ ー タ をPWM制
御 しな い場 合)の
ンバ ー タ の 交 流 出力 電 圧 は直 流 電 圧 に比 例 す
る の で,順 変 換 回 路 の位 相 角 制 御 に よ る直 流 可 変 電 圧,ま のPWM制
図7・13に,
御 に よ る直 流 可 変 電 圧 で 制 御 す る.イ
た は直 流 チ ョ ッパ 回路
ンバ ー タ の 出 力 周 波 数 は 制 御
回路 の 周 波 数 指 令 に よ っ て 決 ま る.電 圧 形 イ ンバ ー タで あ るか ら交 流 出 力 電 圧 波 形 は矩 形 波 状 とな り,電 流 波 形 は正 弦 波状 とな る.
図
7・13
電 圧 形 イ ンバ-タ に よるか ご形誘 導 電動 機 の可 変速 運 転 の 回路構 成
始 動 の 際 は,電 動 機 の 電 流 が 規 定 値 を超 え な い よ う に徐 々 に 周 波 数 を高 め て い く.電 動 機 の イ ン ダ ク タ ン ス の エ ネ ル ギ ー を電 源 に帰 環 させ るダ イ オ ー ドを イ ン バ ー タ 用 デ バ イ ス に 逆 並 列 に 接 続 す る. 電 動 機 の 制 動 に は,直 流 回路 に接 続 した デバ イ ス(ス イ ッチ)と 抵 抗 か らな る 制 動 回路 に よ り電 動 機 の エ ネ ル ギ ー を 消 費 させ る.さ
ら に大 きな エ ネ ル ギ ー を電
源 に 回生 させ るた め に は,順 変 換 回路 に 逆 並 列 に イ ンバ ー タ 回路 を接 続 す る. 電 動 機 の 正 転 ・逆 転 は リ ング カ ウ ンタ の シー ケ ンス,す
なわち出力三 相交流 の
相 回転 を切 り換 え る こ と に よ り行 う. 電 圧 形 イ ンバ ー タ は,そ
の直 流 回路 の 大 き な コ ンデ ンサ に よ って 電 動 機 側 か ら
電 源 側 をみ た イ ン ピー ダ ン ス が 小 さ い た め,負 荷 側 に 多 数 の誘 導 電 動 機 を並 列 に 接 続 して も相 互 干 渉 や 自己 励 磁 現 象 が 起 こ りに く く,誘 導 電 動 機 の グ ル ー プ制 御 に適 して い る. (5)
電流 形 インバ ー タによ るか ご形誘 導電動機の 可変速運転
図7・14は,
交 流 電 力 間 接 変 換 電 流形 イ ンバ ー タ の 主 回 路 で,電 流 検 出 信 号 を制 御 回 路 に入 れ る以 外 は 動作 は基 本 的 に電 圧 形 と同 じで あ る.
図7・14 電 流 形 イ ンバ ー タに よ るか ご形 誘導 電動 機 の 可変 速 運転
誘 導電 動機 の 漏 れ イ ンダ ク タ ン ス の エ ネ ル ギ ー に よ っ て転 流 コ ン デ ンサ の 電 圧 が 高 くな るの で,こ
れ を 吸 収 す るた め の付 加 回 路 を必 要 とす る.
電 流 形 イ ンバ ー タ で は,順 変 換 側 お よ び 逆 変 換 側 の ゲ ー ト位 相 制 御 に よ り電 力 の 流 れ る方 向 を変 え られ るの で,誘 導 電 動 機 の 制 動,回 生 運 転 が 可 能 で あ る.
電 流 形 イ ンバ ー タ で あ る か ら交 流 出 力 電 流 波 形 は矩 形 波 とな り,電 圧 波 形 は正 弦 波 状 とな る. 正 転 ・逆 転 は相 回転 を変 え る こ と に よ っ て 制 御 す る. 電 流 形 イ ンバ ー タ で は,直 流 回路 の 大 きな リア ク トル のた め に 電 動 機 側 か ら み た 電 源 側 の イ ン ピ ー ダ ン スが 大 きい の で,誘
導 電 動 機 群 の グ ル ー プ 制 御 に は適 さ
な い.こ の た め,こ の 回 路 は主 と して 電 動 機 の 単 機 可 変 速 運 転 に 用 い られ る. (6)PWM制 運転
御 電 圧 形/電 流 形 イ ン バ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 の 可 逆 ・可 変 速
誘 導 電 動 機 を駆 動 す る場 合,負
荷 転 流 に よ りオ フす る通 常 の サ イ リス タ
で は な く,自 己 オ ン ・オ フ機 能 を もつMOSFET,IGBT,ゲ イ リス タ(GTO)を PWM制
使 っ てPWM制
ー トタ ー ン オ フ サ
御 す る と主 回路 の 選 択 の幅 が 広 が る.
御 に よ る 電 圧 形 あ る い は 電 流 形 イ ンバ ー タ は誘 導 電 動 機 の 駆 動 に適 し
て い る.PWM制
御 電圧 形 イ ンバ ー タで,電
動 機 の電 流 を検 出 して フ ィ ー ドバ ッ
クす る電 流 制 御 方 式 が あ る.こ の電 流 制 御 方 式 は,次 項 の 「ベ ク トル 制 御 」 で 説 明 す る. 図7・15に,単
相 のPWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ 回 路 と波 形 を 示 す.こ
の 動 作 は,5・4・3項 で説 明 した よ うに,イ る こ とに よ り誘 導 電 動機 の 可 逆,可 か ら,出 力 電 圧 は ゼ ロ とVdの る.PWMの
ンバ ー タ側,順
変 換 側 をPWM制
の回路 御す
変 速 運 転 が で き る.電 圧 形 イ ンバ ー タ で あ る
間 をPWMの
パ タ ー ンで 往 復 す る櫛 状 の 波 形 と な
動 作 周 波 数 を高 くす る ほ ど電 圧 波 形 に含 まれ る低 次 高調 波 成 分 は 減
少 し,残 存 す る高 次 高 調 波 成 分 は小 型 の 高 調 波 用 フ ィル タで 除 去 で き る.
図7・15単
相PWM制
御 電圧 形 イ ンバー タ
図7・16に,直 形 を 示 す.こ
流 電 圧 に 中 点 を つ け た 三 相PWM電 の 回 路 で は,合
正 弦 波 に 近 く な る.こ Clamped)方
圧 形 イ ン バ ー タ の 回 路 と波
成 し た 線 間 電 圧 は 段 の あ る 櫛 状 の 波 形 と な り,よ
の イ ン バ ー タ 回 路 構 成 を 3 レ ベ ルNPC(Neutral
式PWMイ
り
Point
ン バ ー タ と い う.
(a)回
路
(b)波 形 図7・163
レベ ルNPC式PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ
電 動 機 を 回生 制 御 させ る と き は イ ンバ ー タ の 出 力 周 波 数 を電 動 機 の 回転 周 波 数 よ り低 く し,誘 導 起 電 力 を電 流 とし て電 動 機 か ら取 り出 せ ば よい. 電圧 形 で は,誘 導 起 電 力 は帰 還 ダ イ オ ー ドを通 っ て直 流 回 路 の コ ンデ ン サ を充 電 し,直 流 電 圧 を高 め る こ とに よ っ て電 動 機 は減 速 す る.こ
の コ ン デ ンサ の端 子
電 圧 が 規 定 値 よ り高 くな る場 合 は,直 流 回路 に イ ンバ ー タ回 路 を接 続 して 誘 導起
電 力 を交 流 電 源 に 回 生 す る.電 流 形 で は,順 変 換 回 路 に可 制 御 デ バ イ ス を使 用 し,そ れ を イ ンバ ー タ動 作 させ る こ と に よ り交 流 電 源 側 に誘 導 起 電 力 を 回 生 し て 減 速 す る.順 変 換 側 をPWM制
御 す れ ば,交
流 入 力 電 流 の 力 率 を1.0に
が ら直 流電 圧,電 流 を制 御 で き る.電 動 機 の可 逆 運 転 は,PWM制
保 ちな
御 シー ケ ン ス
に よ っ て 出 力 電 圧 の相 回 転 を逆 にす れ ば 四 象 限 運 転 が 可 能 とな る. (7)ベ
ク トル 制 御 に よ る誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転
「ベ ク トル 制 御 」 は,
か ご形 誘 導 電 動 機 を直 流機 と同等 の 特 性 を もた せ る こ と を 目的 と して い る.ベ ク トル 制 御 とは,先
に述 べ た誘 導 電 動機 の トル ク発 生 原 理,す
ク に応 じた 電 動 機 電 流(直
な わ ち 所 要 負 荷 トル
交 す る励 磁 電 流 と二 次 電 流 の ベ ク トル の 和)と
(a)ベ
ク トル 図
(b)制 御 ブ ロ ッ ク 図 図7・17ベ
ク トル 制 御 法 の ベ ク トル 図 と 制 御 ブ ロ ッ ク 図
周波
数,お
よ び位 相 を イ ンバ ー タが 出力 して 電 動 機 を駆 動 す る,い わ ば 「電 動 機 の 特
性 とイ ンバ ー タの 機 能 を一 体 化 した トー タル 制 御 シ ス テ ム 」 とい え る.こ の一 体 化 制 御 シ ス テ ム が 単 な る可 変 電 圧 可 変 周 波 数(VVVF)電
源 と異 な る点 で あ る.
図7・17(a)に ベ ク トル 制 御 の 原 理 を示 す.速 度 指 令 信 号 と速 度 セ ンサ か らの フ ィー ドバ ッ ク信 号 に よ り速 度 制 御 を行 い,ト 磁 束 演 算 に よ り磁 束 電 流 基 準IMを 一 次電 流 基準
得 る.こ れ らの 値 か ら,式(7・7)の
よ うに,一
次 電 流 位 相 θ=tan-1(I2/IM)の
よ び 式(7・12)の 負 荷 トル ク に 見 あ っ た ス リ ッ プ周 波 数fsを 演 算 し,こ
れ と速 度 セ ンサ か ら の電 動 機 の 回 転 周 波 数frと f=fr+fsを
よ う に,
の 演 算 を 行 い ,「 ベ ク トル 演 算 回 路 」 に 入 力 す る.
「ベ ク トル 演 算 回 路 」 で は,式(7・8)の 演 算,お
ル ク 電 流 基 準I2を 得 る.一 方,
得 て,一
を加 算 し て,電 動 機 一 次 周 波 数
次 電 流 基 準I1を 出 力 す る.
この よ うな 演 算 に よ り,PWM信
号 を介 して 電 流 制 御 信 号 と周 波 数 制 御 信 号 を
デ バ イ ス に与 え て誘 導 電 動 機 を イ ンバ ー タ で 可 変 速 運 転 す る. 図7・17(b)に,ベ
ク トル制 御 法 の 制 御 ブ ロ ッ ク 図 を示 す.
7・1・3 同 期 電 動 機 同 期 電 動 機 は,電 源 周 波 数f〔Hz〕,極
対 数 を p と して,同 期 速 度 N で 回 転 す
る. (7・13)
従 っ て,同 期 電 動 機 を可 変 速 運 転 す る た め に は,脱 調 し な い よ う に電 動 機 の 電 圧 と電 流 を制 御 しな が らイ ンバ ー タ あ る い は サ イ ク ロ コ ンバ ー タの 出 力 周 波 数 を 可 変 制 御 す る. 同 期 電 動 機 の可 変 速 駆 動 に あ た っ て,回 路 を構 成 す る デバ イ ス の 転 流 動 作 か ら,次 の 方 式 が あ る. ①
同期 電 動 機 の 逆 起 電 力 で通 常 の サ イ リス タ を 負荷 転 流 させ る他 励 式
②
自 己 オ ン ・オ フ機 能 を も った デバ イ ス の 転 流 で 交 流 電 圧 を発 生 させ る 自励 式
また,そ ①
の ゲ ー ト制 御 に は,次
の 方 式 が あ る.
界 磁 の位 置 に 関 係 な く,イ ンバ ー タ制 御 装 置 の 可 変 周 波 数 で駆 動 す る他 制 式
②
回転 磁 界 形 同 期 電 動 機 の軸 に直 結 した セ ン サ で界 磁 の 位 置 を検 出 し,そ の 位 置 に応 じて 交 流 出 力 電 圧 の 周 波 数 を変 え て駆 動 す る 自制 式
(1)他
励 自制 式PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る同 期 電 動 機 の 可 変 速 駆 動
基 本 的 に は,7・1・2項 の(4)で 述 べ た誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転 と同 じ主 回路 で あ る.電 圧 形 イ ンバ ー タ で駆 動 す る と電 動 機 電 流 は正 弦 波 に 近 くな る の で,回 転 界 磁 の 位 置 を正 確 に セ ン サ で 検 出 して駆 動 す れ ば,電 流 は す べ て有 効 な トル ク と な る.こ の 回路 で は,直 流 回 路 の ス イ ッチ と制 動 抵 抗 に よ り回 生 エ ネ ル ギ ー を 消 費 させ て電 動 機 を減 速 で き る が,誘 導 起 電 力 の交 流電 源 へ の 回 生 は で き な い. 電 源 へ 回 生 させ る た め に は,順 変 換 回路 に並 列 に イ ンバ ー タ 回 路 を 接 続 す る必 要 が あ る. 電 動機 が 減 速 ・停 止 した 後,PWM制
御 パ ター ン に よ っ て交 流 出 力 電 圧 の 相 回
転 を変 えれ ば逆 転 が 可 能 で あ る. (2)他
励 自 制 式 電 流 形 イ ンバ ー タ に よ る 同 期 電 動 機 の 可 変 速 運 転
図7・
18の よ う に,電 流 形 交 流 電 力 間 接 変 換 回 路 の順 変 換 ブ リ ッ ジ 回 路 で 直 流 電 圧 を 制 御 す る.一 方,回
図7・18同
転 磁 界 位 置 検 出信 号 を制 御 回路 に入 れ,イ
ンバ ー タ の デバ イ
期 電 動機 の可 変 速運 転(無 整 流子 電動 機;サ イ リス タモー タ)
ス を オ ン ・オ フ制 御 して所 望 の 周 波 数 の 交 流 電 圧 を発 生 させ て 同期 電 動 機 を 可 変 速 運 転 す る.順 変 換 ブ リッ ジ とイ ンバ ー タ ブ リ ッジ の ゲ ー ト位 相 を協 調 して 制 御 し,か つ,相
回 転 を制 御 す れ ば,正 転 ・逆 転,加
速 ・減 速 の 四 象 限 運 転 が で き
る.こ の よ うな 駆 動 方 式 を 無 整 流 子 電 動 機 また はサ イ リス タモ ー タ と い う.こ の 方 式 は,例 え ば,大 容 量 の 水 力 発 電 機 を揚 水 用 ポ ン プ と して 始 動 させ る た め の 可 変 周 波 交 流 電 源 と し て実 用 され て い る.
2 7
・
交流電動機 とその駆動方法
7・2・1 交 流 電 動 機 の 利 点 現 代 で は,パ 機,同
ワー エ レク トロニ ク ス で 駆 動 さ れ る電 動 機 の ほ とん どが誘 導 電 動
期 電 動 機 で あ り,そ の 出 力 は数100W
こ の 主 た る 理 由 は,次
①
か ら10MW以
上 に お よぶ.
の よ う で あ る.
直 流 機 に必 要 な コ ミュ テ ー タ と ブ ラ シが 不 要 で,保 守 ・点 検 が 容 易 とな る.
②
直 流 機 と同 等 の 回転 数 精 度,応 答 性 が 得 られ,か 容 量 の 出 力 が 可 能,過 GD2が
つ,電 気 的 に は 単 機 で 大
負 荷 耐 量 が 大 き く,効 率 が よ い.機 械 的 に は外 形,
小 さ く,重 量 が 軽 い の で 基 礎 工 事 が 経 済 的 で,騒 音 ・振 動 が 小 さい.
図7・19に,例
と し て サ イ ク ロ コ ンバ ー タ で 駆 動 され る4180kW級
の主 圧延
機 駆 動 用 の 同期 電 動 機 と,そ れ と同 等 の 直 流 電 動 機 との 比 較 を示 す. この よ う に,電 動 機 の 出力 が 等 し い時,GD2,外
形,全
重 量,kW当
た りの重
量 で誘 導 電 動 機 お よび 同 期 電 動 機 の ほ うが 直 流 電 動 機 よ り有 利 で あ る.直 流 電 動 機 は単 基 の 製 作 限 界 は 低 く,中
・高 速 機 で2∼3000kWを
直 結 した構 成 とな るが,交 流 電 動 機 で は,10MWで
超 え る と,2∼3台
も単 基 で製 作 可 能 で あ る.
を
直 流 電 動 機(2 台 直 結) 出 力4180kW GD2 41540 kgm2 トル ク 2377kW・s ロー タ重 量 29.5t 固 定 子 重 量 44.1t 1kW当
た りの 乗 量19 kg/kW
同 期 電 勤 機(単
基)
出 力4370kW GD2
29300 kgm2
トル ク 2377kW・s ロ ー タ 重 量 21.8t 固 定 子 重 量 27.2t 1kW当
た りの 重 量12 kg/kW
図7・19 大 容 量 同期 電 動機 と直 流電 動 機 の 比 較
7・2・2 交 流 電 動 機 と駆 動 回 路 (1)電
動 機 の 出 力 と駆 動 回 路 パ ワ ー エ レ ク ノ ロ ニ ク ス を電 動 機 に応 用 す
る に 当 た っ て,用 途 に適 した 「交 流 電 動 機 の 種 類(誘
導 電 動 機,同
期 電 動 機)と
出 力 」 が あ り,そ の 出 力 に 適 し た 「イ ンバ ー タ 回路 とパ ワー デバ イ ス 」 が あ る. 主 な用 途 と交 流 電 動 機 の 出 力 に対 す る イ ンバ ー タ 回 路 お よ び パ ワ ー デバ イ スの 種 類 の関 係 の 概 略 を図7・20に 示 す.○ 図7・20は,出
は代 表 的 回 路 の記 号 で あ る.
力 電 圧,出 力 容 量 と イ ンバ ー タ回 路 の 関 係 を示 した が,回 転 数,
出 力 容 量 と イ ンバ ー タ 回路 の 関 係 は図7・21の よ う に な る. (2)用
途,駆
動 回 路 とパ ワー デ バ イ ス 多 様 な 用 途 と,そ れ に適 す る電 動
機 の種 類 と出 力,そ
の 電 動 機 を駆 動 す る回 路 とデ バ イ ス を表7・1に 示 す.
図7・20
出 力 電 圧,出
力容 量 と インバ ー タ回路 の 関係
図7・21 出 力周 波数,出 力 容 量 と イ ンバー タ回路 の 関係 (○ は 前 図の 回路 の 記号)
表7
7
・
3
7 ・3 ・1
1
・
用途,電 動機 駆 動 回 路 とパ ワー デ バ イ ス
一般産 業 ・重工 業用交 流電動機 への応 用
一般産業用交流電動機の可変速運転
次 に,具 体 的 な 用 途,電
動 機 出力 と回 路 構 成,使
用 して い るパ ワー デ バ イ ス に
つ い て 実例 を解 説 す る. (1)工
作 機 械 用 高 周 波 イ ン バ ー タ(∼1500Hz,30kVA)マ
シー ニ ン
グ セ ンタ な ど の高 性 能 ・高 速 工 作 機 械 で は,超 高速 の ス ピ ン ドル 回転 で 被 加 工 物 を研 削,研 磨,仕 上 げ 加 工 す る場 合 が あ る.こ の よ う な用 途 に は,高 周 波 イ ンバ ー タ に よ る電 動 機 の 広 範 囲 な 可 変 速 駆 動 が 必 要 とな る. 図7・22は そ の 回路 の例 で,順 ョ ッパ 回 路,IGBTを
変 換 回 路,ダ
イ ナ ミッ ク ブ レ ー キ 回 路,直
使 用 し た 電 圧 形PWMイ
ンバ ー タ 回 路,同
流チ
期 電 動機 界 磁
用 チ ョ ッパ 回 路 で 構 成 され て い る.
図
商 用 周 波 の 三 相200V PWMイ
7・22
工 作 機械 用 高 周 波 イ ンバ ー タの主 回路
を 変 圧 器 を 介 し て 整 流 し,そ の 直 流 電 力 を 電 圧 形
ンバ ー タ 回 路 で 三 相,120V,最
て 同 期 電 動 機 を可 変 速 運 転 す る.チ
高 周 波 数1500Hz,30kVAに
変換 し
ョ ッパ 回路 は,直 流 電 圧 の制 御 と同 時 に,電
動 機 の 回生 エ ネ ル ギ ー を昇 圧 さ せ て 制 動 抵 抗 で 消 費 させ て 電 動 機 を 減 速 させ る た め の 昇 ・降 圧 チ ョ ッパ の 機 能 を も た せ て い る.チ
ョ ッ ピ ン グ 周 波 数5kHzの
こ
の チ ョ ッパ 回路 に よ り,電 源 電 圧 変 動,負 荷 変 動 に対 して直 流 電 圧 を一 定 に制 御 し,一 方,イ
ンバ ー タ 回 路 はPWMス
波 数 と出 力 波 形 を 制 御 し て い る.イ を,チ
ョ ッパ 回路 に は1200V,400A
(2)汎
用 三 相400V,160kW級
7・23に 回 路 を 示 す.三
イ ッ チ ン グ 周 波 数5∼8kHzに ン バ ー タ 回 路 に は600V,400A のIGBTを
よっ て周 のIGBT
用 い て い る.
イ ン バ ー タ(∼75Hz,160kVA)図
相 商 用 電 源 を ダ イ オ ー ド ブ リ ッ ジ で 整 流 し,電
解 コ ンデ
図
三 相400V,160kW級IGBT電
7・23
圧 形PWMイ
ン サ を 充 電 して 電 圧 形 イ ンバ ー タ とす る.PWM制 各 ア ー ム は1200V,300A IGBTは
のIGBTを
ンバ ー タ
御 三 相 ブ リ ッ ジイ ンバ ー タ の
3個 並 列 し て い る.
可 聴 周 波 の 限 界 に近 い20kHz程
度 でPWM制
御 し,か ご形 誘 導 電 動
機 に対 してV/f制 御 す る.こ の結 果,出 力 波 形 お よ び 騒 音 レベ ル は従 来 の バ イ ポーラ トラ ン ジ ス タ イ ンバ ー タ に比 べ て 大 幅 に改 善 さ れ て い る .電 動 機 の 回生 エ ネ ル ギ ー が 小 さ い場 合 は,直 流 回路 のIGBTス
イ ッ チ で 投 入 され る制 動 抵 抗 で
消 費 さ せ る.負 荷 が 多 数 の 電 動 機 で 回生 電 力 が大 き い場 合 は,順 変 換 回路 に逆 並 列 の サ イ リス タ 三 相 ブ リ ッ ジ を接 続 し,そ の 電 力 を商 用 電 源 に変 換 す る. この 装 置 の 性 能 は,最 高 出 力 周 波 数 は75Hz,速 度 制 御 精 度 は ±0.01%,速
度 制 御 範 囲 は0∼100%,速
度 制 御 応 答 は60rad/s,定
負 荷 トル ク特 性 が 得 られ
て い る. (3)
一 般 産 業 用 三 相 イ ン バ ー タ(0∼120Hz
例 え ば抄 紙 機,鉄 る300kVA級
・非 鉄 圧 延 の 補 機,コ
,300kVA)一
ンベ ア,ク
の ベ ク トル 制 御 三 相PWMイ
般 産 業 用,
レ ー ンな どの 用 途 で 用 い られ
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 の 可 変 速
駆 動 回 路 を図7・24に 示 す. 主 回 路 は 電 圧 形 イ ンバ ー タ で,順 換 した 後,IGBTを 数0∼120Hz可
使 用 したPWM制
変 換 回 路 に よ り交 流 入 力 を直 流600V 御 の三 相 ブ リ ッ ジ 回路 で 交 流400V,周
変 の電 力 に 変 換 す る.ベ
に変 波
ク トル 制 御 の た め,電 流 セ ン サ に よ り
イ ンバ ー タ の 出力 電 流 の 瞬 時 値 を検 出 し,一 方,速 度 セ ンサ に よ り電 動 機 の 回転
図
一 般 産 業 用300kVAベ
7・24
速 度 を検 出 して 両 者 をPWM制
ク トル 制 御 イ ン バ ー タ
御 回 路 に フ ィ ー ドバ ッ ク し,最 適 な トル ク を 発
生 させ て 電 動 機 を所 望 の 回転 数 で駆 動 す る. 回転 数 の 制 御 精 度 は ±0.01%,回
転 数 制 御 応 答 は60rad/sで
あ る.出 力 電 流
波 形 は正 弦 波 に近 い た め,ト ル ク リ ップ ル は極 め て 小 さ い. 順 変 換 回路 は,電 動 機 か らの 電 力 回 生 を 行 わ な い 場 合 は ダ イ オ ー ドを 使 用 す る.回 生 を行 う場 合 はPWMイ
ンバ ー タ機 能 を もっ た逆 変 換 回路 を接 続 す る.
イ ンバ ー タ ブ リ ッジ の 各 ア ー ム は1200V,400A して あ る.IGBTの 較 的 低 い1.5kHz程
級 のIGBTを
数個 並列接 続
ス イ ッチ ン グ損 失 を低 く抑 え る た め, PWM動
作周 波数 を比
度 に して い る.ス イ ッチ ン グ 時 の 電 流 変 化 率 が 大 き い の で
過 渡 振 動 電 圧 と誘 導 障 害 を発 生 しや す い.こ
れ を抑 制 す る た め,IGBTに
は適 切
な ス ナ バ 回 路 を最 短 配 線 で 接 続 し,ま た デバ イ ス 周 辺 の配 線 を短 く,振 動 電 圧 を 誘 起 しな い よ う配 置 お よ び シ ー ル ドして あ る.
7・3・2重 工業 用 交流 電 動機 の 可変 速 運 転 (1)形
鋼 仕 上 げ 圧 延 用 三 相 イ ンバ ー タ(2500kW)H形,L
げ圧 延 す る場 合,通
常,複
数 の 圧 延 ス タ ン ドを 通 過 さ せ て 形 状,寸
る.ゲ ー トター ンオ フ サ イ リス タ(GTO)を ー タ で 仕 上 げ圧 延 用2500kW三 る.
形 鋼 を仕 上
使 用 したPWM制
法 を整形 す
御 電 圧 形 イ ンバ
相 誘 導 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て い る 例 を述 べ
回 路 構 成 は,製 鉄 所 内 の三 相 交 流 をNPC(Neutral PWM制
御GTOに
るPWM方
式の
よ る順 変 換 回 路 で 中 性 点 付 の 直 流 電 圧 に 変 換 す る.
逆 変 換 回 路 は,順 変 換 回 路 と同 様 に,3 御GTO電
Point Clamped)方
レ ベ ル のNPC方
圧 形 イ ン バ ー タ 回 路 を形 成 し て い る.こ のNPC方 式 に比 べ て,交
流 電 圧,電
式 に よ るPWM制 式 に よ っ て,単
な
流 波 形 は さ ら に正 弦 波 に近 くな り,高 調
波 フ ィ ル タ は小 型 ・軽 量 とな り,ま た トル ク リ ップ ル も小 さ くな る利 点 が あ る. NPC・PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ の 各 ア ー ム に は4500V,4000AGTOを
して あ る.PWMス は1kHzの
接続
イ ッ チ ン グ の 位 相 を 互 い に ず らす こ とに よ って,電
動機 側 で
高 調 波 を含 む波 形 に し,容 量 に フ ィル タ で高 調 波 を除 去 して い る.
負 荷 は2500kW,過
負 荷175%1
分 間 の 三 相 か ご形 誘 導 電 動 機 で あ る.こ
圧 延 設 備 の 制 御 性 能 は,停 止 状 態 か ら トッ プ速 度 ま で10∼20秒,速 は約30rad/sで
の
度 応答 時 間
あ る.
こ の 回 路 構 成 で は,誘 導 電 動 機 の 急 速 な 減 速,制
動 お よ び電 力 回 生 が 可能 で あ
る. こ の 圧 延 設 備 に も し直 流 電 動 機 を使 う とす れ ば,GD2は 倍 で,速
度 応 答 時 間 は10∼15rad/sが
誘 導 電 動 機 の 約1.5
予 想 さ れ る.
も し圧 延 機 用 電 動 機 が 比 較 的小 さ く,か つ,多
数 あ る場 合 は,圧 延 ラ イ ン に対
して 順 変 換 回 路 を一 括 し て ま とめ る場 合 が あ る.
図 7・25 に,3
レベ ルNPC方
式PWM電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る2500kW誘
導電動機 の可変速運転 の主 回路 を示す.
図
7・25
型 鋼 仕 上 げ 圧 延 用2500kW,NPC・PWMイ
ンバ ー タ
(2)熱
間 圧 延 用 三 相 サ イ ク ロコ ンバ ー タ(10MW,可
逆 ・可 変速 運 転)
熱 間 圧 延 設 備 の 粗 ス タ ン ド用 電 動 機 は,比 較 的 低 速 で あ るが,大 か つ 急 速 な可 逆 運 転 を行 う.例
と して,熱
容 量 で,頻 繁
間圧 延 粗 ス タ ン ド用 大 容 量 電 動 機 可 逆
運 転 設 備 に つ い て 述 べ る. 10MW同
期 電 動 機 は 過 負 荷 耐 量225%1
路 構 成 は,図7・26の で72あ
分 間,回 転 数 は100rpmで
サ イ ク ロ コ ンバ ー タ で,三
る.各 ア ー ム に は6kV,2.5kAの
あ る.回
相 ブ リッジのアー ムの数 は合計
光 ト リガ サ イ リス タ が 接 続 され て い
る. GD2は
同 容 量 の 直 流 電 動 機 の 約1/2の
た め 応 答 は よ く,速 度 制 御 応 答 は25
rad/s程 度 で,正 転 の トッ プ速 度 か ら逆 転 の トッ プ速 度 まで 約 4秒 で あ る. 図7・26に,大
(a)
型 同 期 電 動 機 の 例 と駆 動 用 サ イ ク ロ コ ンバ ー タ の 回 路 を示 す.
大型誘導電動機の例 図
(3)340MW級 て,340MW級
7・26
(b) 10MW誘
導電 動 機 用 サ イク ロ コンバ ー タ
大 型 誘 導 電動 機 と駆動 用 サ イ クロ コンバ ー タ の例
大 容 量 水 力発 電 電 動 機 の 可 変 速 運 転(1)揚
水 発電所 におい
の 発 電 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て 系 統 の 周 波 数 制 御 を行 う可 変 速
揚 水 発 電 シス テ ム が1996年
に運 転 に入 っ た.
発 電 電 動 機 は巻 線 形 誘 導 電 動 機 と基 本 的 に 同 じ構 造 で あ り,そ の 二 次 巻 線 を低 周 波 三 相 交 流 電 源 で励 磁 す る こ と に よ り,発 電 電 動 機 を電 力 系 統 に同 期 させ た ま ま回 転 数 を 可 変 させ る もの で あ る. 通 常 の揚 水 発 電 所 で は,揚 水 時 は同 期 電 動 機 と てて 同期 速 度 で 回 転 す るが,こ の 方 式 は次 の特 徴 が あ る. ①
水 力 発 電 運 転 時 の落 差 変 動 に 対 して高 効 率,広
範 囲 の運 転 が 可 能
②
揚 水 運 転 時 の 入 力 調 整 が 可 能 で,系 統 の周 波 数 調 整 に有 効
③
同 期 調 相 機 と して系 統 の 有 効 電 力,無 効 電 力 を高 速,か
つ,独
立 して制 御
可能 ④
他 の 揚 水 用 電 動機 と同様,二
次 励 磁 装 置 で滑 らか な始 動 が 可 能
図7・27に 可 変速 揚 水 発 電 シ ス テ ム の 構 成 を示 す.
図7・27 可変 速 揚 水発 電 システ ムの 構成
こ の 可 変 速 シ ス テ ム は,(1)商
用 周 波 交 流 電 力(16.5kV,50
力 に 変 換 す る ゲ ー ト タ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(GTO)を
Hz)を
使 用 し たPWMコ
直 流電 ンバー
タ,(2)直
流 電 圧 の 過 電 圧 を 抑 制 す るGTOチ
流 電 力(3040V,2.5Hz)に イ ンバ ー タ,(4)水 (a)GTOコ
ョ ッパ,(3)直
流 電 力 を低 周 波 交
変 換 して 電 動 機 の 二 次 巻 線 を励 磁 す る低 周 波GTO
力 発 電 ・電 動 機 で構 成 さ れ て い る.
ン バ ー タ 交 流 入 力 電 圧(16.5kV)を
変 圧 器 で 2グ ル ー プ の
単 相 巻 線 群 に分 割 し降 圧 す る.単 相 ブ リッ ジ 3組 を並 列 に 接 続 した 回路 の 二 つ を 1グ ル ー プ と して 直 流 電 圧 の 正 を,も
う一 つ の グル ー プ で直 流 電 圧 の 負 を受 け持
ち,全 体 で 四 つ の 回 路 群 で構 成 さ れ て い る.順 変 換 部 の 定 格 容 量 は5MW×4で 20MWで
あ る.
各 単 相 ブ リ ッ ジの 各 ア ー ム は4500V,3000 あ る.各GTOの
A のGTOを
ス イ ッチ ン グ周 波 数 は500 Hzで
交 流 側 か ら見 れ ば2kHzの 常 に 交 流 側 の 力 率 を1.0に
2個 直 列 に接 続 して
あ る が,四 つ の 回路 群 の た め,
ス イ ッチ ン グ と等 価 と な る. GTOのPWM制
御で
して い る.
(b)GTOチ
ョ ッパ 発 電 機 の 出 力 交 流 系 統 に事 故 が 発 生 す る と,故 障 電 流
が変 圧 器,発
電機 を通 っ て 直 流 回 路 に侵 入 し,直 流 コ ンデ ンサ を充 電 し,そ の電
圧 を高 め る.直 流 電 圧 が規 定 値 を超 え な い よ う にGTOチ
ョ ッパ で コ ン デ ンサ の
電 荷 を放 電 させ て 直 流 電 圧 の 上 昇 を 防 ぐ. (c)GTOイ ルNPC式
ンバ ー タ部
直 流 電 圧 の 中 点 を ゼ ロ電 位 に ク ラ ン プ す る 3レベ
イ ン バ ー タ を 6回 路 並 列 に 接 続 し て全 体 と して 高 調 波 を低 減 し て い
る.各 ア ー ム は4500V,3000 (d)発
4個 直 列 に接 続 して あ る.
電 電 動 機 の 定 格 発 電 電 動 機 の 定 格 は,発 電 機 の と き345MVA,電
動 機 の と き340MVA,定 は ±5%,周
A のGTOを
波 数50Hzで
格 電 圧16.5kV,回
転 数407∼450 rpmで,可
変速 幅
あ る.
7・4 交 通 ・輸 送 シ ス テ ム へ の 応 用
物 資 の 大 量 か つ 高 速 輸 送,お
よ び旅 客 の 安 全,高
速 で快 適 な 旅 行,良 好 な サ ー
ビス は 国 の 経 済 発 展 お よ び 国 民 の 活 力 の 源 泉 で あ る.戦 後,わ
が 国の鉄 道 事業
は,こ れ ら を念 頭 に お き,国 を あ げ て技 術 開 発 と建 設 に 多大 な 努 力 を傾 注 し て,
1964年10月
に東 京-新 大 阪 間 を 4時 間 で 結 ぶ 新 幹 線 「ひ か り」(0系;最
210km/h)が
開 業 した.そ
み 」(300系;同270km/h)に
の 後 もた ゆ まぬ 努 力 が 続 け られ,1992年 よ り 2時 間30分
高速 度
に は 「の ぞ
に短 縮 され た.
現 在 で は,営 業 運 転 を 目指 した 多 数 の 新 型 超 高 速 電 車 が 開 発,試
運 転 され つ つ
あ り,さ ら に21世 紀 に期 待 され る超 電 導磁 気 浮 上 列 車 へ と夢 が 膨 らん で い る. これ ら超 高 速 電 車 の 駆 動 シ ス テ ム は,そ の 時 代 の 最 新 パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス で 構 成 され て い る.
7・4・1 最 新 型 電 車 の 駆 動 シ ス テ ム(2),(3),(4)
例 え は,本 格 的 にパ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス を応 用 した1981年 東 北 ・上 越 新 幹 線 電 車 で は,単 相 交 流25kV,50Hzの
開 業 の200系
架 線電 圧 を床下 の単相 変
圧 器 の 一 次 側 に加 え,二 次側 の 複 数 の低 圧 巻 線 に接 続 し た単 相 サ イ リス タ ブ リッ ジ を互 い に カ ス ケ ー ドに接 続 し て各 サ イ リス タ を位 相 制 御 す る こ とに よ っ て直 流 出 力 電 圧 を可 変 と し,駆 動 用 直 流 電 動 機 を可 変 速 運 転 し て い た. その 後,300系 たPWM制
で は,こ れ まで に な い最 新 の パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス を応 用 し
御 のVVVF電
圧 形 イ ンバ ー タ に よ る三 相 か ご形 誘 導 電 動 機 駆 動 シヌ
テ ム を採 用 した.こ
の 方 式 を採 用 した理 由 は,次 の よ うで あ る.
① 力 率1.0制
流 回 生 ブ レ ー キ に よ る省 エ ネ ル ギ ー
御,交
② 電 動 機 の 高 速 化,制 御 機 器 の 集 約 化 に よ る小 型 ・軽 量 化 ③ 直 流 機 の よ うな 整 流 子,ブ
ラ シ を な く し,主 回 路 の 無 接 点 化 に よ る保 守 ・
点 検 の省 力 化 ④ PWM制
御 に よ る架 線 側 高 調 波 電 流 の低 減
⑤ 空 転 時 の 再 粘 着 特 性 の 改 善 ⑥ 誘 導 電 動 機 の駆 動 シ ス テ ム に は技 術 的 発 展 性 が 期 待 で き る. (1) 東 海 道 新 幹 線 「の ぞ み 」 の 駆 動 シ ス テ ム 歴 代 の東 海 道 新 幹 線 用 超 高 速 電 車 の要 点 と駆 動 シス テ ム の 変 遷 を表7・2に 示 す.
300
表 7・2
*現 在(1996年)で
は 3台
**現 在(1996年)で
は 2台
系 「の ぞ み 」
東海道新幹線用超高速電車の要点 と駆動 システム
特 に,電 気 関 係 で は,同
じ16両 編 成 で も初 期 の 0系 と約28年
を比 べ る と,1 編 成 当 た りで は,総 重 量 は約27%軽
経 過 後 の300系
量 化 し,最 高 速 度 が1.23倍
に な った に もか か わ らず 所 要 電 力 は ほ ぼ 同 じ,主 電 動 機 の 数 は64台(直 電 動 機)か
ら40台(三
相 か ご形 誘 導 電 動 機)に
減 少 し,パ
流直 巻
ン タ グ ラ フ の数 は 技
術 開 発 と騒 音 防 止 の た め 8台 か ら 2台 に 減 少 した.電 動 機 駆 動 シ ステ ム は,低 圧 タ ッ プ切 換 段 制 御 か らPWM制 (a)
御VVVFイ
ンバ ー タ に変 わ っ た.
「の ぞ み 」 の 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム 300系16両
テ ム の車 両 配 置 を 図7・28に 示 す.こ 線 電 圧 単 相 交 流25kV,60Hzを
の 図 で,1
受 電 し,そ れ をVVVFイ
変 換 す る主 変 圧 器 な ど を床 下 に 取 り付 け た変 圧 器 車,そ ぞ れ の車 両 の 電 動 機 4台 を駆 動 す るVVVFイ 車(M1,2)で 車,こ
あ る.す
な わ ち,16両
図7・29に,変
図7・28
明,制
の 両 側 のM1,M2は
御 用 な どのCVCF補
300系
が イ ンバ ー タ
編 成 で あ る.床 下 の 7台 の[SC]は,6・4・ 助 電 源 で あ る.
「の ぞ み 」16両 の 機 能 別 車 両 編 成(現
図7・29
それ
ンバ ー タ を 取 り付 け た イ ン バ ー タ
圧 器 車 1両 と イ ン バ ー タ 車 2両 か ら な る300kW電
300系
架
ン バ ー タ用 の 電 圧 に
の う ち 5両 が 変 圧 器 車 で10両
れ に付 随 車 を加 え て10M6Tの
2項 で 述 べ た 空 調,照
編 成 に お け る駆 動 シ ス
号 車 の T は付 随 車 で,Tpは
動 機 8台 の
在 は パ ン タ グ ラ フ 2台)
「の ぞ み 」 の 電 動 機 駆 動 シ ス テ ム
可 変 速 駆 動 シ ス テ ム の 主 回路 を示 す. (b) 「の ぞ み 」 の 主 要 機 器 の 要 点 1)主
変 圧 器 パ ン タ グ ラ フ で 受 電 し た 電 圧 は,2900kVA,一
116A,二
次(885V,706A)×4,(三
次 は 省 略)の
の 分 割 4巻 線 は 等 し い 電 圧(885V)に PWM制
次25kV,
主 変 圧 器 に よ っ て,二
な る よ う に 変 圧 し,そ
次側
れぞ れの巻線 には
御 単 相 ブ リ ッ ジ 順 変 換 回 路 を 接 続 す る.
2)順 頃変 換 部 順 変 換 回 路 の ゲ ー トタ ー ン オ フサ イ リ ス タ(GTO)のPWM 制 御 と,変 圧 器 の漏 れ リア ク タ ン ス に よ って,昇 圧 チ ョ ッパ の動 作 を させ て 直 流 電 圧 を得 る.二 つ の 順 変 換 回 路 を 並 列 に して 直 流 電 力1900V,708A(主 機 が定 格 の 時)に 変 換 し,直 流 フ ィ ル タ で 平 滑 化 して 電 圧 形VVVFイ
電動 ンバ ー タ
の 電 源 とす る.順 変 換 回 路 を 2組 並 列 に接 続 し て い る の は,順 変 換 回 路 間 で PWMの
位 相 差 運 転 を行 っ て架 線 電 流 に含 まれ る高 調 波 電 流 を低 減 す る た め で あ
る.PWM制
御 に よ り直 流 出 力 電 圧 一 定 制 御,交
流 側 力 率1.0制
主 電 動 機 が 定 格 の と き,順 変 換 部 の変 換 効 率 は95%以 単 相 ブ リ ッ ジ の 各 ア ー ム は 1個 の4500V,3000A ス タ(GTO)と,そ
れ に逆 並 列 の4500V,800A
構 成 さ れ て い る.各 々 の 順 変 換 部 は,回 PWM制
上 で あ る. ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ
フ ラ イ ホ イ ー ル ダ イ オ ー ドで
生 ブ レ ー キ 時 に は こ れ ら のGTOを
御 す る こ とに よ っ て力 率 を ほ ぼ-1.0に
保 ち な が ら直 流 電 力 を 架 線 に 回
生 す る イ ンバ ー タ の 機 能 を も っ て い る.す な わ ち,GTOの て,力 行 と回生 運 転,前 3)PWM制
御 を行 う.
ゲ ー ト制 御 に よ っ
進 と後 進 運 転 が 自 由 に行 え る.
御 電 圧 形VVVFイ
ンバ-タ
け て,三 相 の 定 格 出 力 電 圧1430V,同
順 変 換 部 出 力 の直 流1900V
出 力 電 流620A,周
波 数0∼200Hzに
換 す る.三 相 ブ リッ ジ 回路 の 各 ア ー ム は 1個 の4500V,3000AGTOと 逆 並 列 の フ ラ イ ホ イ ー ル ダ イ オ ー ド4500V,800A
を受 変 それ に
で構 成 され て い る.
これ らの デ バ イ ス は 2)の デ バ イ ス も含 め,塩 素 を含 め な い フ ロ リナ ー トを冷 媒 とし て沸 騰 冷 却 方 式 で 冷 却 して い る. PWM制
御 の よ りV/fー
定 制 御,す
制 御 を行 っ て い る.こ のPWM制
べ り補 正 に よ る定 電 流 制 御,空
転 再 粘着
御 に よ る 四 象 限 電 圧 形 イ ンバ ー タ の 動 作 は,
5・4・3項に説 明 した.主 97%以
電 動 機 が 定 格 運 転 の と き,イ
上 で あ る.
4)電
動 機
定 格 電 圧1430V,定
回 転 数3825rpm(130Hz,す で,他
ン バ ー タ部 の 変 換 効 率 は
の 0 系,100系
格 電 流155A,定
べ り1.9%),H
格 出 力300kW,4
極,
種 絶 縁 の 三 相 か ご形 誘 導 電 動 機
の 電 動 機 に 比 べ て 単 位 出 力 当 た り の 重 量 は 表7・3の
よ うに
最 も小 さ い.
1台 当 た りの体 積 も最 も小 さ く,ま た ブ ラ シ な ど の 点 検 スペ ー ス も不 要 な の で,台
車 に 電 動 機 を コ ンパ ク トに収 納 して あ る.「 の ぞ み 」 で は,こ の 電 動 機 を
1編 成10両
の イ ン バ ー タ車(M
車)の
駆 動 輪 す べ て に,す な わ ち 合 計 で40台
取 り付 け て あ る. 表7・3新
幹 線 用電 動 機 の 比 較
な お,「 の ぞ み 」 と同 様 な駆 動 方 式 に さ ら に 改 良 を 加 えたJR東 「START 21」 は,1993年 試 作 車 は443km/hの 図7・30に,主
上 越 新 幹 線 で425km/hを,1996年
世 界 第 2位 の 記 録 を出 した.
な駆 動 用 電 気 ・電 子 ユ ニ ッ トを示 す.
日本 の 試 験 車
にJR東
海(株)の
図7・30
(2)通
300系
「の ぞ み 」 の 電 気 ・電 子 ユ ニ ッ ト
勤 電 車 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ ム(5),(6) 東 京 圏 の 通 勤 人 口 は,1960
年 代 の 高 度 経 済 成 長 期 と共 に 増 加 の 一 途 をた ど っ て きた.東 1987年 の 国鉄 民 営 化 に よ り,JR東 代 化 の コ ン セ プ トは,軽 量 化,省
京 圏 の通勤 輸送 は
日本 が そ の 業 務 を引 き継 い だ.通 エ ネル ギ ー,メ
勤電車 の近
ン テ ナ ン ス フ リー 化,空
調など
の快 適 さ,コ ス トダ ウ ン と い え る. 通 勤 電 軍 の近 代 化 は,1960∼70年
代 に か けて 量 産 され た101系,103系
り,現 在 の201系(中
央 線),205系(山
線)へ 続 い て い る.こ
こで,こ
手 線)を
経 て 最 新 の209系(京
に始 ま 浜東北
の最 新 の 通 勤 電 車 で あ る 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ
ム に っ い て 説 明 す る. (a)通
勤 電 車 の 駆 動 シ ス テ ムの 動 向 表7・4に 駆 動 シス テ ム の 動 向 を示 す.
チ ョ ッパ を 応 用 し た駆 動 シ ス テ ム は,1981年 1986年 にPWM制
御 のVVVF電
に採 用 さ れ た.そ
圧 形 イ ンバ ー タ が207系
さ らに技 術 的 改 良 が 加 え られ て1991年
の よ うで あ る.
の 後,
に 採 用 さ れ,そ
れに
か ら209系 が 運 転 され て い る.
(b) 「209系 」 の 駆 動 シ ス テ ムVVVFイ を採 用 した 理 由 は,次
に201系
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 駆 動
表7・4 通 勤 電 車 の要 点 と駆 動 シス テ ム の動 向
①
高 粘 着 特 性 が 期 待 で き る.
②
1編 成(10両)の
総 重 量 と して軽 量 化 が 期 待 で き る*(表7・4参
③
省 エ ネ ル ギー が期 待 で き る.
④
メ ン テ ナ ン ス フ リー が 期 待 で き る**.
ま た,VVVFイ
ンバ ー タ に よ る誘 導 電 動 機 駆 動 に,次
照).
の三 つ の 方 式 が 試 作 さ
れ た. ①1200V,300A
パ ワ ー ト ラ ン ジ ス タ に よ る 電 動 機 4台 の 個 別 制 御
②4500V,500A
GTOに
③2500V,2000A
GTOモ
よ る電 動 機 4台 の 分 散 制 御 ジ ュ ー ル を 使 用 し,3
レベ ル イ ンバ ー タ に よ る
電 動 機 4台 の一 括 制 御 これ ら の方 式 を性 能 確 認,走 力 回 生 ・省 エ ネ ル ギ ー 性,乗 *線 **メ
行 比 較 試 験 した結 果,力 行 性能,再 り心 地,保
粘 着 性 能,電
守 な どか ら③ の 駆 動 方 式 を209系
の量産
路 の メ ン テナ ンス費 の低 減 に効 果 が あ る. ンテ ナ ン ス削減 のた め の トの 達 成.
「13年 間,200万km走
行 まで オ ーバ ー ホ ー ル不 要 」 の コ ンセ プ
車 と し た.図7・31に,10両 置 を示 す.イ
編 成(4 M 6T)の 京 浜 東 北 線209系
の動 力車 の配
ンバ ー タ駆 動 の動 力 車 は 4両 で あ る.
図7・31京
図7・32に,GTOを
浜 東北 線
「209系 」 の 動 力 車 の 配 置
使 用 し た 3 レ ベ ルNPC式
三 相PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ
ー タの 主 回路 を示 す. パ ン タ グ ラ フ か ら 受 電 し た 直 流1500V
に 対 し て,GTOと
ド を 封 入 し た モ ジ ュ ー ル を 4個 直 列 に 接 続 し て い る.そ 500V
逆 並列 のダ イオ ー の 2個 直 列 の 端 子 は,1
を フ ィ ル タ コ ン デ ン サ で 二 分 し た 中 性 点 に ク ラ ン プ ダ イ オ ー ドで 接 続 し て
い て,モ GTOの
ジ ュ ー ル に は750V
の 電 圧 が 加 わ る.
定 格 は2500V,2000
A,ダ
イ オ ー ド の 定 格 は2500V,500A
で あ
る. こ れ ら の モ ジ ュ ー ル は 塩 素 を 含 ま な い パ ー フ ロ ロ カ ー ボ ン を使 用 し た ヒ ー トパ イ プ で 冷 却 し て い る. 誘 導 電 動 機 の 定 格 は,出 4個 をVVVFイ
力95kW,電
圧1100V,電
ン バ ー タ 1セ ッ トで 可 変 速 駆 動 す る.
流68A
で,こ
の 電動 機
図7・32
「209系 」 の PWM電
圧 形VVVFイ
ンバ ー タの主 回 路
7・4・2 そ の 他 の 輸 送 機 器 (1)山
梨 超 電 導 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 の 駆 動 シ ス テ ム(7) 1972年 に,わ
が 国 最 初 の超 電 導 磁 気 浮 上 ・推 進 モ デ ル 車 が 約200m 実 用 化 に 向 け て 研 究 開 発 が 進 め られ て い る.1979年 験 線(7km)に
お い て,無
400.8km/hを km/hの
人 に て517km/hを,1987年
達 成 し た.現 在,21世
の 実 験 線 で 走 行 し て 以 来, に,宮 崎 県 日 向 市 の 宮 崎 実 に は人 間 が 乗 車 して
紀 の 実 用 化 を 目指 し て,目 標 最 高 速 度550
磁 気 浮 上 鉄 道 の 開 発 が 進 め られ て い る.こ の た め,山 梨 県 甲府 市 を始 点
とす る約43kmの (a)浮
実 験 線 が 選 定 され た.
上 ・推 進 の 原 理 磁 気 浮 上 鉄 道 の構 造 を 図7・33に 示 す.U
型 の軌道
の両 壁 面 に浮 上 コイ ル と推 進 コ イ ル を規 則 正 し く配 置 し,推 進 コイ ル 群 に 順 次 電 流 を流 す こ とに よ っ て車 両 の 側 面 に付 けた 超 電 導磁 石 と作 用 して 車 両 は 浮 上 し,
推 進 す る.
図7・33 軌 道 の構 造 と浮 上 ・推 進 の 原理
(b)浮
上 ・推 進 用 電 力 シ ス テ ム 図7・34に 電 力 シ ス テ ム の 概 要 を 示 す.電
力 シ ス テ ム は順 変 換 装 置,チ
ョ ッパ 装 置,逆
変 換 装 置 で 構 成 さ れ て い る.
山梨 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 で は走 行 コイ ル を 3系 統 に区 分 し,3 系 統 の 逆 変 換 装 置 か ら順 次 電 力 を供 給 す る こ とに よ って 車 両 の 走 行 を制 御 す る. 1) 順 変 換 装 置 順 変 換 装 置 は66kVの
交 流 電 力 か ら6000V,2500A
ト リガ サ イ リス タ を使 用 した 二 十 四相 の 整 流 回 路 で 直 流 電 圧 ±3450V,直 流10000A
の直 流 電 力69 MWに
変 換 す る.
図7・34 山梨 磁気 浮 上 リニ ア 実験 線 の 駆動 シス テム の概 要
の光 流電
2)チ
ョ ッパ 回 路 チ ョ ッパ 回路 は,車 両 側 か ら の 回 生 電 力 を チ ョ ッパ 回 路
を通 して 抵 抗 器 で 消 費 させ て 制 動 力 を確 保 す る役 目 を もつ.こ 定 格 は,直 流 電 圧7110V,直
流 電 流2672A,容
ス イ ッチ と し て,4500V,3000A
のGTO2
量19MWで,チ
ョ ッパ 回 路 の
個 直 列 の ユ ニ ッ トを 5ユ ニ ッ ト並
列 と し,キ ャ リア周 波 数300HzのPWM制 3)逆
の チ ョ ッパ 回路 の
御 で 制 動 力 を確 保 す る.
変 換 回 路 逆 変 換 回路 は,PWM制
御 単 相 ブ リ ッ ジ 回 路 を三 相 4段 で
構 成 し,こ の 4段 を 出 力 変 圧 器 で 縦 続 接 続 して い る. 1系 統 当 た りの 出 力 は,出 力 電 力38MVA,出 960A,出
力 周 波 数 は0∼56.6Hzで
主 回 路 は,1
力 電 圧3530V
×4,出 力 電 流
あ る.
ア ー ム4500V,3000A
のGTO4
個 直 列 か ら な る単 相 ブ リ ッ ジ
イ ンバ ー タ を 三 相 と し,そ れ を 4段 縦 続 に構 成 し て 1系 統 に し て あ る.各 々 の GTOは
キ ャ リア周 波 数500 HzでPWM制
御 し て お り,単 相 の 各 ア ー ム お よ び
4段 縦 続 構 成 の ス イ ッ チ ン グ位 相 をず ら し て 等 価 的 に4kHzと
して出力側 の 高
調 波 を低 減 し て い る. (2)高 い,エ
層 ビル 用 高 速 エ レベ ー タ(8),(9) 近 年 の オ フ ィ ス ビル の 高 層 化 に 伴
レベ ー タ に は 高 速 で 乗 り心 地 の よ く,大 量 輸 送 可 能 で,高
効 率,高
い安
全 ・信 頼 性 が 要 求 さ れ る. 従 来 の上 昇 ・降 下 の 最 高 速 度 は540m/min程 換 と逆 変 換 の両 方 にIGBTを 最 高600m/minで
度 で あ っ た が,現
在 で は,順 変
使 用 し,三 相 誘 導 電 動 機 を 可 逆 ・可 変 速 制 御 し て
運 転 す る エ レベ ー タ が あ る.図7・35に
その 主 回 路 を示 し,そ
の特 徴 は次 の よ うで あ る. ①
従 来 の バ イ ポ ー ラ パ ワー トラ ンジ ス タ(PWM周 に代 え て 周 波 数 を8kHzに
波 数1.2kHz)をIGBT
高 周 波 化 す る こ と に よ り高 調 波 成 分 を 低 減 す る
と と も に フ ィル タ を小 型 ・軽 量 化 して い る. ②
③
順 変 換 側 のIGBTモ
ジ ュー ル を 3並 列,逆
よ り電 動 機 容 量100kWま
で制 御 で き る.
変 換 側 を 5並 列 に す る こ とに
モ ジ ュー ル を ヒー トパ イ プ に よ る沸 騰 冷 却 ・強 制 冷 却 す る こ とに よ り,デ バ イ ス の 温 度 上 昇 は 最 大 負 荷 で の 連 続 運 転 で も規 定 値 以 内 に 維 持 され て い
図7・35600m/min級
高 速 エ レベ ー タ の 主 回 路
る.
④16ビ
ッ トCPUに
よ る全 デ ジ タル 信 号 化 に よ っ て,順 変 換 側,逆
PWM制
御 し て い る.ベ
PWM制
御,電
ク トル 制 御 に よ る 速 度 制 御 の ほ か,電
変 換側 を 流 制 御,
圧 制 御 を デ ジ タ ル化 す る こ と に よ っ て運 転 の 安 定 性 と精 度 が
向 上 し,全 走 行 範 囲 で優 れ た 乗 り心 地 が 得 られ て い る. 図7・36に,高
速 エ レベ ー タ 用 巻 上 機 と誘 導 電 動 機 お よ び そ の 駆 動 回 路,そ
の
走 行 特 性 を 示 す. (3)電
気 自動 車(10) 1970年 代 に入 って 環 境 汚 染 と省 エ ネ ル ギ ー 対 策 の た
め に,電 気 自動 車 の 開 発 の機 運 が 高 まっ た が,エ 能 向上,蓄
ン ジ ン 自動 車 の 排 ガ ス 対 策 の 性
電 池 性 能 の 制 約 な どか ら下 火 に な っ た.1980年
代 後 半 に な る と,再
び 自動 車 の大 気 汚 染 が世 界 規 模 で 問 題 に な り,そ れ に カル フ ォル ニ ア規 制(販 車 両 全 体 に対 す る無 公 害 車 販 売 割 合 の%規 制)が 加 わ って,再
売
び 電 気 自動 車 開 発
に拍 車 が か か った. 電 気 自動 車 の 性 能 は蓄 電 池 の 性 能 に大 き く依 存 し,重 量 当 た りの エ ネ ル ギ ー 蓄 積 量 が 大 き く,充
・放 電 寿 命 が 長 く,短 時 間 充 電 が可 能 な蓄 電 池 が 要 求 さ れ る.
現 在,高 性 能 の 鉛 電 池 お よ び ニ ッ ケ ル ・水 素 電 池 の研 究 開 発 が 進 め られ て い る. 電 気 自動 車 の 車 輪 駆 動 系 お よび 車 載 機 器 を概 説 す る と,次 の よ う に な る.
(a)巻 上 機,誘 導 電動 機,駆 動 回路
(b)走 行 特性 の 例 図7・36高
速 エ レベ ー タの主 要 機 器 と走行 特性 の例
①
車 輪 駆 動 系 と し て 図7・37が 考 え られ て い る.図(a)は
現 在 の エ ン ジ ン車
の 変 形 で,1 組 の 「イ ンバ ー タ ・電 動 機 」 で駆 動 す る 方 法,図(b)は 「イ ンバ ー タ ・電 動 機 」 で 別 々 に車 輪 を駆 動 す る 方 法,図(c)は
2組 の
図(b)の 変
形 で,各 車 輪 に電 動 機 を組 み込 ん だ 構 造 で あ る.
(b)
(a)
図
②
7・37
電 動 機 出 力 は数10kW級 ッパ+直
(c)
電 気 自動 車 の車 輪 駆動 系 の例
で あ る.車 輪 を駆 動 す る電 動 機 に は,(a)「 チ ョ
流 電 動 機 」,(b)「 イ ンバ ー タ+誘
導 電 動 機 」,(c)「 イ ンバ ー タ
+同 期 電 動 機 」 が あ る.現 在 開 発 中 の 電 気 自動 車 の 多 くは(b)方 式 で あ る. 高 磁 束 密 度 の 希 土 類 永 久 磁 石 を使 用 した(c)方 式 は将 来 性 が あ る.
③
直 流 電 圧 は蓄 電 池 エ レメ ン トを何 個 直 列 ・並 列 に接 続 す る か で 決 ま り,そ の最 大 直 流 電 圧 は 充 電 時 の 電 圧 で 決 ま る.例 の と き,最 大 電 池 電 圧 は448V程
え ば,公 称 電 池 電 圧 が336V
度 に な る.主 蓄 電 池 は 変 動 の 大 き い 直 流
電源 で あ る.
④
直 流-交 流 変 換 は,出 力 数10kWの
三 相PWM制
御 電 圧 形 イ ンバ ー タ で
あ る.デ バ イ ス と して オ ン ・オ フ ス イ ッチ ン グ損 失 お よ び オ ン損 失 が 小 さ い 600∼700V級IGBTを
⑤
補 助 電 源 と して,エ
使 用 す る. ン ジ ン車 と同 じ12Vの
蓄 電 池 を積 載 し,こ れ を電 源
と して計 装,照
明,エ
ア コ ン(1 ∼ 2kW)を
の 大 き い 主 蓄 電 池 電 圧 を 安 定 化 し た12V PWMコ
⑥
操 作 す る.こ の た め,電 圧 変 動 に 変 換 す る約 1kWの
直 流-直 流
ンバ ー タ を心 要 とす る.
1回 の充 電 で 走 行 で き る距 離 と最 高 速 度,お 動車 普 及 の 重 要 項 目 で あ る.図7・38に
図
よ び充 電 所 要 時 間 は,電 気 自
走 行 距 離 と最 高速 度 の関 係 を示 す .
1回の 充電 走 行 距離 と最 高速 度 の関 係
7・38
充 電 時 間 を短 縮 す る ほ ど充 電 電 力 の 最 大 値 は 大 き く(現 状 で は15∼30分 100kVA程
度)な
る.家 庭 用 の100/200V
時 間 充 電 率 で は 1kW程
度 の 単 相PWMコ
コ ン セ ン トか ら の10時
で
間 充 電 率∼5
ンバ ー タ(充 電 器)が 必 要 とな る.
この コ ンバ ー タ は 車 載 部 品 の 一 つ で あ る. 電 気 自動 車 の普 及 ・発 展 に は,蓄 電 池 の 性 能 向上 を初 め と して,駆 動 シス テ ム の高 効 率 化 と電 気 シス テ ム 全 体 の 軽 量 化,低
価 格 化 と と も に,社 会 全 般 の整 備 が
必 要 条 件 で あ る. 以 上,特
に 「7・4交 通 ・輸 送 シ ス テ ム 」 で 解 説 した パ ワー エ レ ク トロ ニ ク ス
の 応 用 は,小 型 ・軽 量,高 特 に,7・4節
効 率,高 性 能 の 制 御 性 を追 求 した 実 例 で あ る.
の 実 例 は,す べ て 「人 を 乗 せ て 動 く機 器 」 で あ る た め,通
据 置型 の 電 動 機 駆 動 と異 な り,ま ず 第 一 に,(1)人 シ ス テ ム ・部 品 の 冗 長 度,信
頼 性,次
に,(2)乗
常の
命 に対 す る安 全 ・保 護 機 能 と り心 地 の 良 さ,快 適 さ,楽
し
さ,(3)激
し い加 ・減 速,振 動 に対 す る低 振 動,低 騒 音 の機 械 設 計,(4)あ
らゆ
る気 象 条 件 に対 す る機 器 の 安 全 確 保 な ど,「 交 通 ・輸 送 シ ス テ ム 」 は 多 くの 関 連 す る技 術 分 野 を結 集 した 「ス ー パ ー ・パ ワ ー エ レ ク トロニ ク ス 」 とい え る.
引
用
文
献
金 井 ほ か;「 可 変 速 揚 水 発 電 電 動 機 励 磁 用GTO変
(1)
No.4,'96,東
(2)
石 川 ほ か;「 110巻
芝
換 器 」, P.10∼12, Vol.51,
レ ビ ュ ー
新幹 線
2号,'90,電
「ス ー パ ー ひ か り」 のACド
ラ イ ブ シ ス テ ム 」, P.105∼112,
気学 会雑 誌
小 林 ;「世 界 の 高 速 鉄 道 」,P.238∼243,114巻
(3) (4)
4号,'94,電
大 山 ;「 高 速 鉄 道 の 電 車 シ ス テ ム 」,P. 11∼14,
気学 会雑 誌
Vol. 50, No.1,'95,東
芝
レ ビュー (5)
由 川 ;「通 勤 電 車 の 新 し い
'95 ,電
ト レ ン ド を 作 る 」,P.102∼105,115巻
2号,
気学 会雑 誌
古 賀 ;「鉄 道 車 両 用 機 器 の 技 術 動 向 と当 社 の 取 組 み 」,P.844∼848, Vol.46,
(6)
No.11,'91,東
(7)
武 政 ほ か;「
芝
レ ビ ュ ー
山 梨 リ ニ ア 実 験 線 シ ス テ ム 」,P.38∼42,
Vol.50,
No.1,'95,東
Vol.49,
No.9,'94,東
芝 レ ビュー (8)
中 川 ほ か;「 超 高 速 エ レ ベ ー タ の 技 術 」,P.620∼623, 芝 レ ビュー
(9)
門 倉 ;「エ レ ベ ー タ 制 御 装 置 」,P.52∼53,
Vol.33,
No.10,'91,電
(10)
木下 ;「電気 自動 車 と電気 自動車 用電 力 変換 器 の現 状 と動 向 」 9月 2日,'94
第 7回電気 自動車 用パ ワー エ レク トロニ クス調査 専 門委 員会 資料
子技術
演
習
問
題
〔7 〕
〔 問 題 〕1. 電 動機 の 四象 限運転 とは何 か? 直流 電動機 の場 合 に つい て説 明せ よ.
〔 問 題 〕2. 3レベ ルNPC式PWM制
御 部 は 何 か?
波 形 を書 い て 説 明 せ よ.
〔 問 題 〕3. ベ ク トル 制 御 と は何 か?
〔 問 題 〕4. 直 流電 動機 が誘 導電 動機 に変 わ りつ つあ る理 由は何 か?
第 8章
( 1)
今 後 の パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 動 向
1947年 に ゲ ル マ ニ ウム 点 接 触 トラ ン ジ ス タ が 発 明 さ
わ が国 の立場
れ て 以 来,ち
ょ う ど半世 紀 が 経 過 した.こ
の 間,わ
早 くか らパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 有 用 性,将
が 国 で は産 業 界,電
力業界 は
来 性 に着 目 し,デ バ イ ス/装 置 を
作 る立 場 の メ ー カ ー と,装 置 を使 う立 場 の ユ ー ザ ー が 互 い に 刺 激 し,協 力 し合 い,た
ゆ まぬ 努 力 の結 果,こ
の分 野 で 世 界 の トッ プ レベ ル の技 術 と実 績 を もち,
指 導 的 立 場 にな る に 至 った. そ の 現 れ と し て,1983年,電 tronics
Conference)が
気 学 会 主 催 のIPEC(International
東 京 で 開 催 さ れ た の を 初 め と し て,電
通 信 学 会 お よ びIEEE(The
Institute
of
が 協 力 し 合 い,ISPSD(International Devices
and
ICs),
Synposium
PESC(Power
INTELEC(International
Electronics
Telecommunications
が 国 主 導 の も と,多
く の 国 際 会 議,シ
質,討
く,毎
論 の 内 容 は高
Electrical
and on
Power 気 学 会,電
Electronics
Elec 子 情 報
Engineers)
Power
Semiconductor
Speciarist
Conference),
Energy
Conference)な
ン ポ シ ウ ム が 日 本 で 開 催 さ れ,そ
ど,わ の 論 文 の
回 盛 会 で あ っ た.
1985年,科
学 技 術 庁,資
源 調 査 会 の 「電 力 周 波 数 の 変 換 利 用 に 関 す る調 査 報
告;第105号
」 で は,わ が 国 と諸 外 国 との 技 術 比 較,わ
が 国 の進 む べ き方 向 と施
策,諸
外 国 へ の 技 術 協 力 につ き調 査 ・研 究 し,答 申 書 を科 学 技 術 庁 長 官 に 提 出 し
た.こ
の答 申 書 に は,「 こ れ か ら の 世 界 の エ ネ ル ギ ー の需 要 を考 え る と き,わ が
国 の パ ワ ー エ レ ク トロニ クス 技 術 を国 内 だ け に温 存 す るの で は な く,さ ら に技 術 を 高 め る と と も に,こ の 分 野 の技 術 を発 展 途 上 の 国 々 に広 め て世 界 の 省 エ ネ,省 資 源 に貢 献 す べ き で あ る」 と提 案 して い る.
(2 ) 21%(2000年
エ ネ ル ギ ー の需 給 の 予 想)を
現 在,東
占 め る 中 国,お
南 ア ジ ア諸 国 を は じ め,世 界 の人 口の 約 よ び 約16%(同)を
占 め る イ ン ドは 急
速 に経 済 発 展 を遂 げ つ つ あ る.そ れ に 伴 い,エ
ネ ル ギ ー 消 費 が 急 増 し て世 界 的 需
給 ア ンバ ラ ン ス と近 い将 来 の 化 石 燃 料 の 枯 渇 が 強 く懸 念 さ れ て い る. 一 方 で は,排 ガ ス 増 加 に伴 う大 気 汚 染 お よ び地 球 温 暖 化 に よ り,人 類 の生 活 へ の影 響,動
・植 物 生 態 系 の 変 化 も懸念 され て い る.
電 気 エ ネル ギ ー に関 して は,発 電 効 率 を少 しで も高 め,送
・配 電 系 統 お よび 末
端 の電 力 機 器 の 電 力 損 失 を少 しで も減 らす と同 時 に,脱 化 石 エ ネ ル ギ ー 源(例 ば,太 陽 エ ネ ル ギ ー,風
え
力 ・波 力 エ ネ ル ギ ー の 利 用,電 気 自動 車 の普 及 な ど),
お よび新 エ ネ ル ギ ー 源 の 開 発 と経 済 的 に受 け入 れ られ る装 置 の 開 発 ・実 用 化 とそ の普 及 は,各 国 の 緊 急 か つ21世 紀 の テ ー マ で あ る.こ の よ う な エ ネ ル ギ ー 動 向 は,今 後 のパ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 方 向 を示 唆 して い る. (3)
デ バ イ ス お よ び それ を使 用 し
電力変換 装置の 電力損失低減,省 材料
た電 力 変 換 装 置 で は,高
い電 力 変 換 効 率 で あ る こ と は言 う まで もな く,装 置 に は
ス ペ シ ア リ テ イ 材 料(金,銀,ニ
ッ ケ ル,コ バ ル ト,タ ン グ ス テ ン,モ
ン,チ タ ン な ど)を で き る だ け使 わ ず,コ
モ デ テ イ 材 料(鉄,銅,ガ
子材 料 な ど)で 構 成 して 省 資 源,省 材 料 で,か リサ イ クル 可 能 で あ る こ とが 望 まれ る.例
リブデ
ラ ス,高 分
つ,装 置 更 新 時 に は 材 料,部
え ば,図3・33の
品は
断 面 図 の よ う に,従
来 の 方 法 の 厚 い タ ン グ ス テ ン板 を ウ エ ー ハ に合 金 接 着 す る代 わ りに,図3・34の よ うに,薄 るが)は,ス 通 常,変
い モ リブ デ ン板 で 圧 接 した構 造(大
口径 と熱 歪 み を 改 善 す る 目的 で あ
ペ シア リテ イ 材 料 の節 約 とい え る. 換 装 置 を小 型 ・軽 量 に 設 計 で き る と言 う こ と は,部
品 の 発 熱 は小 さ
く,電 力 変 換 効 率 は 高 くて冷 却 の た め の スペ ー ス が 小 さ い こ とを意 味 す る.例 ば,高 電 圧 大 電 力 変 換 装 置 に つ い て は,図6・17の
え
よ うに,1 個 の サ イ リス タ の
定 格 電 圧 が 高 くな る ほ ど,直 列 接 続 の 個 数 を減 ら し得 る の で,電 力 損 失 お よび 変 換 装 置 を小 さ くで き,省 電 力,省
材 料 とな る.
変 換 装 置 で発 生 す る 電 力 損 失 の大 部 分 は デ バ イ ス の 分 圧(ス
ナ バ)回 路 で あ
る.デ バ イ ス の オ ン ・オ フ動 作 に 伴 い,分 圧 回 路 の コ ンデ ンサ の充 ・放 電 エ ネ ル ギー は デバ イ ス と,コ ン デ ンサ に 直 列 の抵 抗 で 消 費 され,発 の 容 量 は,高 電 圧 の 光 ト リガ サ イ リス タ で は1∼5μF,大
熱 す る.コ
ンデ ンサ
電 流 ゲ ー トタ ー ンオ フ
サ イ リ ス タ で は3∼6μFで
あ る.コ
ンデ
ンサ の 容 量 を小 さ くす る た め に は,デ バ イ ス の デ ザ イ ン を改 良 す る必 要 が あ る. 図8・1の よ うに,付 加 コ ンデ ンサ に エ ネ ル ギ ー を蓄 積 し,そ のエ ネ ル ギー を回 生 回路 で 電 源 に フ ィー ドバ ッ ク し て電 力 損 図8・1 スナ バ 回路 の 電 力 回生
失 を減 ら す方 法 もあ る. パ ワ ー エ レ ク トロニ クス の応 用
(4)
4・3・2項 の 図4・28に
現 在 の応 用 分
野 を 示 した.応 用 分 野 の 動 向 は,主 と し て ユ ー ザ ー 主 導 で 進 め られ るが,そ
れを
経 済 性 を もっ て機 能 と性 能 を実 現 させ る た めに は,そ れ に適 し た デ バ イ ス が 必 要 で あ る.「 応 用 」 と 「デ バ イ ス 」 は車 の 両 輪 とい え る. 今 後 の発 展 す るで あ ろ う分 野 は,① の た めの 高 電 圧 大 電 流 変 換 装 置(直 電 力 制 御,ア
両,通
勤 電 車,電
高性 能,低
波 数 変 換,交
り有 効 な 系 統 運 用
流 系 統 の 連 系,無
効
一 般 産 業 用 順 ・逆 変 装 置 の 高精 度 制 御 と
電 力 損 失 の 交 通,輸
送 機 器(新 幹 線 用 新 型 高 速 車
気 自動 車 な ど)が 考 え られ る.
こ の よ う な 予 想 か ら,デ 図8・2の
流 送 電,周
ク テ ブ フ ィル タ な ど),②
低 電 力 損 失 化,③
電 力 系 統 の整 備 と,よ
バ イ ス に 要 求 さ れ る 電 気 的 特 性 を 図4・28に
加 え る と,
よ う に な る.
これ らの 電 力 変 換 装 置 に要 求 され る事 項 は,① 信 頼 性 と制 御 の安 定 性,③ 響 を 与 え な い,④
無 騒 音,無
小 型 ・軽 量,省
振 動,電
材 料,⑤
高 い電 力 変 換 効 率,②
装置 の
磁 波,誘 導 障 害 な ど,環 境 に影
メ ン テ ナ ン ス フ リー,⑥
低 価格 で
あ る. 電 力 変 換 回路 と し て は,高 調 波 成 分 が 少 な く,交 流 側 の 力 率 が よ い 3 レベ ル NPC式PWM制
御 を主 体 と して,デ バ イ ス の 高 周 波 動 作 特 性 の 向 上 と共 に,よ
り高 度 の 波 形 整 形 で,か う.
つ,ス イ ッチ ング 損 失 の小 さい 方 式 が 使 用 さ れ るで あ ろ
図
(5)
8・2
応 用 分野 の 動 向か ら予 想 され るパ ワー デバ イ スの 特性
パ ワ ー デ バ イ ス に 要 求 さ れ る事 項 は,①
パ ワ ー デ バ イ ス(1),(2)
オ フ お よび 逆 電 圧 阻 止 能 力,② 動 作 領 域,④
低 電 力 損 失(ス
大 き い オ ン電 流 と過 電 流 通 電 能 力,③ イ ツ チ ン グ損 失,オ
ン電 流 損 失),⑤
のた め の 短 い キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム とタ ー ンオ フ 時 間,⑥ き ま た は保 護 の容 易 さ 今 後,特
ー ト タ-ン
高電 圧化
高周 波動 作
デ バ イ ス保 護 機 能 付
後 述 す るIEGTで,次
オ フ サ イ リ ス タ,MOSFETで
これ らの 電 気 的 特 性 の相 関 関 係 は,図3・34の (a)
広 い安 全
で あ る.
性 改 善 の 可 能 性 が あ る デ バ イ ス はIGBTと
光 ト リ ガ サ イ リ ス タ,ゲ
高い
に
あ ろ う.
よ う に複 雑 で あ る.
電 気 的 特 性 との トレー ドオ フ に 依 存 す るが,現 在 の サ イ リス
タ で は定 格 ピ ー ク繰 返 しオ フ電 圧 お よ び逆 電 圧 は8kVで,こ
れ 以 上 の電 圧 阻 止
能 力 の 向上 は期 待 で き よ う.特 性 の トレー ドオ フ に よ って は,直 列 接 続 を利 用 す るほ うが 変 換 装 置 と し て有 利 の場 合 が あ ろ う. IGBTで
は2.5∼5kV級
が 開 発 され,例
電 動 機 駆 動 用 イ ンバ ー タ に使 用 され る.
え ば,き 電 電 圧1500V
の電車 の誘 導
(b) 大 電 流 化 現 在 の 最 大 級 の オ ン電 流(平 ウエ ーハ を使 用 した8kV級
均 値)は,直
径150mmのFZ
の 光 ト リガ サ イ リス タ で3500A
の 大 き い電 流 に対 して は,①
で あ る.こ れ 以 上
サ イ リス タ を複 数 並 列 に接 続 す る,②
さ ら に,大
口径 の ウ エ ー ハ を使 用 す る 方 法 が あ る.② は ウエ ー ハ に つ い て は技 術 的 に可 能 で あ ろ うが,デ
バ イ ス メー カ ー に とっ て は大 きな 設 備 投 資 を必 要 と し,か つ,面
内 均 質 な製 造 プ ロ セ ス,電 極,熱 て,②
歪 み な ど解 決 す べ き技 術 的 問 題 点 が 多 い.従
っ
は そ れ な りの必 要 理 由 が な け れ ば実 現 は 先 と な ろ う.
(c)タ
ー ン オ フ タ イ ム の 短 縮 高 周 波 の イ ンバ ー タ運 転 お よ びPWM制
御
に とっ て,デ バ イ ス の キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム を 短 く,逆 回復 電 荷 量 を小 さ くす る 必 要 が あ る.逆 回 復 電 荷 量 の 減 少 に よ っ て,ス ナ バ 回路 の コ ン デ ン サ容 量 を小 さ くで き,同 時 に ス ナ バ 回 路 の 損 失 を低 減 で き る.サ イ リ ス タ の 場 合,nB層
にプ
ロ トンや ヘ リウ ム の イ オ ン を照 射 す る こ とに よ り,局 部 的 に そ の 層 の キ ャ リヤ ラ イ フ タ イ ム を制 御 す る方 法 が 効 果 を上 げ て い る. (d) 自 己 オ ン ・オ フ 機 能 を も っ た パ ワ ー デ バ イ ス ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リ ス タ(GTO)はIGBTよ 常,1
り デ バ イ ス 構 造 が 簡 単 の た め,大
ウ エ ー ハ 1デ バ イ ス で あ る.現
は 近 い う ち に8kV,8kA程 め,大
在 の 直 径150mmウ
度 に は な る で あ ろ う.IGBTは
電 流 用 で は 1 ウ エ ー ハ 1デ バ イ ス に な り に く い.多
に 圧 接 ・接 続 し た 構 造 の パ ッ ケ ー ジ で2500V,1000A
電 流GTOで
は,通
エ ー ハ の6kV,6kA パ タ ー ンが 微 細 な た 数 の エ レ メ ン トを 並列 が 開 発 さ れ て お り,こ
の 方 法 で 電 流 増 加 は 可 能 で あ る(3). 最 近,ト
レ ン チ 構 造 のMOSゲ
(Injection Enhanced
Insulated Gate Bipola Transistor)が
の 電 圧 阻 止 能 力 を も ち,電 こ のIEGTは,電
ー ト を 微 細 加 工 で 多 数 埋 め 込 ん だIEGT(4)
流 密 度100A/cm2で
オ ン 電 圧2.5V
開 発 さ れ,4500V の 特 性 を 示 し た.
子 の 注 入 効 率 を 高 め る エ ミ ッ タ 構 造 を 持 ち,オ
リ ス タ と 同 様 な キ ャ リ ヤ 分 布 が 得 ら れ る の で,ト
ン状 態 で サ イ
ラ ン ジ ス タ な が ら この よ うに オ
ン電 圧 が 低 い 特 徴 が あ る. こ のIEGTは,GTO,IGBTと 一 つであ る
.
ともに将来期 待 しうるハ イパ ワー デバ イ スの
高 電 圧,大
電 流 の 高 速 ス イ ッチ ン グ を行 う ほ ど誘 導 障 害,電
原 因 とな り,電 子 機 器 に影 響 を 与 え る.対 策 と して,ス
磁波 ノイズの発生
イ ッチ ン グ回 路 の ス トレ
イ ン ダ ク タ ン ス を小 さ く,配 線 が 電 磁 結 合 し な い よ う に す る と と も に,発 生 部 分 を電 磁 波 シ ー ル ド材 で 遮 蔽 す る必 要 が あ る. (6) SiC(シ
リコ ン カ ー バ イ ド)基 板 材 料 最 近,昇
た 直 径30mmの6H-お
よ び 4H-SiCウ
の ウエ ー ハ の 絶 縁 破 壊 電 界 強 度 は,シ
エ ー ハ が 市 販 さ れ る よ う に な っ た.こ リ コ ン単 結 晶 ウエ ー ハ よ り も 1桁 大 きい.
さ ら に,特 殊 な ス テ ッ プ エ ピタ キ シ ア ル 法 に よ っ てSiC面 せ る こ とが で き る よ う に な っ た.こ タ,ト
ラ ン ジ ス タ,ダ
華 法 に よ って 製 作 し
上 に単結 晶 を成長 さ
の技術 に よっ て高 温度 で動作 す るサ イ リス
イ オ ー ドが 報 告 さ れ て い る.
SiC基 板 は,最 大 降服 電 界 強 度,キ
ャ リヤ 移 動 度,高
温度動作 の点 で魅力 あ る
基板 材 料 と い え る.
引用 文献
(1)中
川;「
パ ワ ー デ バ イ ス は こ こ ま で 進 ん だ 」,P.161∼166,Vo1.114,No.3,'94,電
気 学会 雑誌
(2)電
子 デ バ イ ス 技 術 委 員 会;「 先 端 技 術 セ ミ ナ ー テ キ ス ト」3月27日,'96,電
気 学会
(3)関
ほ か;「
芝 レ ビ
自 己 消 弧 デ バ イ ス と そ の 応 用 動 向 」,P.4∼9,Vol.51,No.4,東
ユ ー (4)Kitagawa,etal;「 tor」
Technical
A 4500V Digest,
IEGT
International
Operating
in
Electron
Device
a
Mode
Simular
Meeting,
to IEDM,1993
a
Thyris
あ
浅 学 非 才 の 身 を顧 み ず,多
と
が
き
くの 方 々 か らの 励 ま し,ご 支 援 を 得 て,一 応 の 目標
とす る枚 数 を超 え る まで ま とめ る こ とが で きた. 筆 者 と して は,読 者 が 「パ ワー エ レク トロニ ク ス 」 を理 解 し,興 味 を も ち,親 しみ を感 じや す い よ う に,歴 史 的 背 景,技 術 発 展 の経 緯 を折 り込 み な が ら,入 手 し得 た 最 も新 しい 資 料,情
報 を も と に,多
くの 図,表,写
真 を 掲 載 し,解 説 し
た.
一 般 産 業 へ の 応 用 を 「パ ワー エ レ ク トロニ ク ス」 とい う な らば,交 通 ・輸 送 機 器 へ の 応 用 は人 命 に直 接 ・間 接 に 関 係 す る た め,特 段 の 信 頼 性 が 要 求 され る の で,「 ス ー パ ー ・パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス 」 と し,ま た,高 電 圧 ・大 電 力 を取 り 扱 う周 波 数 変換,直
流 送 電 へ の 応 用 は,雷 サ ー ジ,開 閉 サ ー ジ の 過 電 圧 に 耐 え,
か つ,電 力 の安 定 供 給 の 責 務 を 果 た す た め,さ
ら に 多 くの 技 術 分 野 を 包 含 し た
「ウル トラ ・パ ワ ー エ レク トロ ニ ク ス 」 と位 置 付 け た.
本 書 で は,デ バ イ ス の 種 類 と原 理,シ の 動 作 ・波 形 を解 説 した.さ
表 的 回 路 とそ
ら に,実 例 と して わ が 国 の 周 波 数 変 換,直
は じめ,重 工 業,一 般 産 業,交 に力 点 を置 き,多
リコ ン ウ エ ー ハ の 製 法,代
流送電 を
通 ・輸 送 機 器 へ の パ ワー エ レ ク トロニ ク ス の 応 用
くの ペ ー ジ を割 い て紹 介 した.そ
の結 果,残 念 な こ とに,家 電
用 機 器 へ の応 用 に つ い て 割 愛 せ ざ る を え な か った. 記 述 に お い て,説
明 不 足,間
機 会 に よ り正 確 に,ま た,よ りで あ る.
違 い が あ る と思 わ れ る が,次
の改 訂 版 を 出版 す る
り広 い 分 野 か ら多 くの実 例 を厳 選 し,解 説 す るつ も
謝 この 著 書 を ま と め る に あ た っ て,次
辞 の 方 々 を始 め,多
くの 方 か らの ご支 援,有
益 か つ 新 しい 資 料,ご 助 言,ご 教 示 を頂 き,ま た,文 献,資 料 の 引用 を さ せ て 頂 い た. 特 に, 周 波 数 変 換 と直 流 送 電 に つ い て,
東京電 力株式会 社殿
電源 開発株 式会社殿
中部電 力株式会 社殿
関西電 力株 式会社殿
四 国雷 力株式会 社殿 JR東 日本 株式会社殿 JR東 海株 式会社殿
交 通 関係 に つ い て, 全 般 に つ い て,
豊 田工 業大学 今井 孝二 教授殿 佐 伯 修 三 技監殿
竹 内 南 主幹殿
〃
大橋 弘通 技監殿
小 宮山富雄部 長 附殿
芝
関 長 隆 技 監殿
小林 淳 男技監殿
〃
堀 内 恒 郎 主幹殿
国吉 真 照主査殿
〃
羽片 日出夫 主査殿
デバ イ ス に つ い て,東
電 力 変 換 に つ い て,東
交 通 機 器 に つ い て,東
芝
芝
山屋 貴 嗣事業 部長殿
高原 英 明主幹殿
こ こ に改 め て 皆 様 に 深 く感 謝 とお 礼 の 意 を表 す. 1996年9月
岸
敬二
演習問題 の解答
第 1章 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 発 展 の 経 緯 〔問 題 〕1.1947年12月23日,ア Brattain(1956年 確 認 し,ト
メ リ カ,ベ
ノ ー ベ ル 賞)が
ラ ン ジ ス タ と名 づ けた.(IEEE
〔 問 題 〕2.pnpnの
ル 研 究 所 に てShockley,
Bardeen,
ゲ ル マニ ウム 点接 触 形 デバ イ ス で増 幅 作 用 を Spectrum, January,1973,
P.24-33)
4層 構 造 に て ゲ ー ト電 流 に よ り電 流 が ラ ッ チ ア ッ プ す る現 象 を論 文
発 表 し た の は1956年.ア
メ リカ のGE社
売 開 始 し た.1963年,SCRと
は,1957年
い う 呼 称 は,サ
にSCRと
い う商 品 名 で 発
イ リ ス タ(Thyristor)に
変更 さ
れ た. 〔 問 題 〕3. 「パ ワ ー(電
力,電
力 機 器)」 を 「エ レ ク トロ ニ ク ス(半
よ っ て 「コ ン トロ ール(制 〔 問 題 〕4.サ れ,よ
イ リス タ の 特 徴(低
損 失 で 高 速 の ス イ ッ チ 動 作,高
り高 い 電 力 へ の 応 用 の 強 い 要 望 が あ っ た こ と.こ
ン単 結 晶 の 大 口径 化,高
導 体 デ バ イ ス)」 に
御)」 す る 三 つ の 分 野 で構 成 さ れ た 広 い技 術 分 野. 信 頼 性 な ど)が 認 知 さ れ に 応 え る た め,シ
品 質 化 技 術 の ほ か デ バ イ ス の 設 計 ・製 造 技 術,応
リコ
用技 術
が 進 歩 し,実 績 を積 み 重 ね て き た た め.
第 2章
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス に 関 す る定 義,
〔問 題 〕1.転 流 と は(一
記 号,
用語
つ の 回 路 に 複 数 の デ バ イ ス が 接 続 さ れ て い て),同
時 に電 流 を
通 じ る期 間 を も っ て 行 わ れ る 電 流 の 移 り変 わ りを い う. 転 流 方 式 の 分 類 は,図2・4参 〔 問 題 〕2.図2・5参
照
〔 問 題 〕3.順 方 向;ピ 逆 方 向;ピ
照.
ー ク非 繰 返 し オ フ 電 圧 お よび ブ レ ー ク オ ー バ 電 圧. ー ク 非 繰 返 し逆 電 圧 お よ び 逆 降 伏 電 圧.
(電 圧 ・電 流 特 性 は,図2・7参 ゲ ー ト;ピ ー ク ゲ ー ト電 圧,ゲ 〔 問 題 〕4.タ
ー ン オ ン 時 は 図2・8(a),タ
照)
ー ト逆 電 圧 お よ び ゲ ー ト ト リガ 電 圧 ー ン オ フ時 は 図2・13お
よ び 図2・14を 参 照.
第 3章
パ ワ ー デ バ イ ス の 基 礎(そ
〔 問 題 〕1.図3・11の(b)お 〔 問 題 〕2.図3・23参 〔問 題 〕 3.製 FZ法
の 1)― 動 作 原 理 と デ バ イ ス の 種 類 ―
よ び(c)参 照.
照.
法 上 の 違 い は 図3・28お
よ び 図3・29参 照.
で は 不 純 物 の 混 入 は ほ とん ど な く,抵 抗 率 は 比 較 的 高 い 値 を 製 造 で き
る.た だ し,直 径 の 大 口 径 化 は や や 困 難. CZ法
で は,石
英 る つ ぼ か ら の 溶 け込 み が あ り,高 い 抵 抗 率 の も の を 製 造 す る
の は比 較 的 に 困 難.大 〔問 題 〕4.構
口 径 化 は 比 較 的 に 容 易.
造 上 の 違 い は 図3・16と
共 通 点 は,両
図3・19.
者 と も電 圧 駆 動.相
違 点 は,MOSFETは
多 数 キ ャ リヤ デ バ イ ス
の た め キ ャ リヤ 蓄 積 時 間 が な い の で ター ンオ ン,タ ー ン オ フ 時 間 が 短 く,高 周 波 の ス イ ッ チ ン グ が 可 能 で あ る. 特 性 比 較 は 図4・28参
照.
第 4章 パ ワー デ バ イ ス の 基礎(そ の 2) ― ゲ ー ト駆 動 回路 〔 問 題 〕1.図4・19の
よ う に,ス
ナ バ 回 路 が な い と,オ
,安 全 動 作 領 域,熱
抵抗 ―
ン電 流 が 減 少 す る 過 程 で 電 源 回
路 の イ ン ダ ク タ ン ス の た め に 高 い 過 渡 電 圧 が 発 生 し,そ れ が 陽 極-陰 極 間 に 加 わ る.オ
ン電 流 と この 電 圧 の 積 が 電 力 損 と な っ て エ レ メ ン トの 局 部 に 集 中 して ホ ッ
トス ポ ッ トが 発 生 し,そ れ が あ る 限 度(図4・19の バ イ ス は 特 性 劣 化,破
壊 に 至 る.オ
安 全 動 作 領 域)を
超 え る とデ
フ電 圧 上 昇 率 を抑 え,こ の 領 域 内 で 動 作 す る
よ う ス ナ バ 回 路 の定 数 を選 定 し,接 続 す る. 〔 問 題 〕2.デ バ イ ス 単 体 お よ び 多 種 類 の 回 路 が 互 い に絶 縁 され て モ ー ル ド さ れ て お り, 「集 積 化 さ れ た パ ワ ー ユ ニ ッ ト」 で あ る.回 路 お よ び 電 圧,電 い.モ
流 の選 択 の幅 が 広
ジ ュー ル の上 面 に は電 極 端 子 とゲ ー ト/べ ー ス の 制 御 端 子 が 付 い て お り,
そ の 下 面 に は一 括 した ヒー トシ ン ク が 付 い て い て,こ け る こ とに よ っ て組 立 配 線,交 〔 問 題 〕3.図4・28参
照.
の 面 を 冷 却 フ ィ ン に取 り付
換 作 業 が 極 め て 容 易 と な る.
第 5章
電 力 変 換 回路
〔 問 題 〕1.表5・1参 〔 問 題 〕2.商
照.
用 周 波 正 弦(sin)波
cosと な り,式 にcosの
の 一 部 分 に つ き積 分 し て 平 均 値 を 求 め る た めsinが
項 が 入 る.
解図 1 三 相 星 形 の と き の 波 形 は,図5・4参
照.
〔 問 題 〕3.交 流 側 線 間 電 圧(実 効 値)をVas,同
線 電 流(実
効 値)をIacの
と き,交
流側
電 力Pacは,
直 流 電 圧 をVd,直
流 電 流 をIdの
と き,直 流 電 力Pdcは,
Pdc=(3√2/π)VacId
上 式 か ら,
と な る(表5・2参
照).
〔 問 題 〕4.回 路 構 成 は 図5・22,運 道-本 州 直 流 送 電 設 備,新
転 特 性 は 表5・3参 信 濃50/60Hz周
照.応
用 例 は,他
波 数 変 換 設 備.自
励 自 制 式 は北 海
励 他 制 式 は大 形 コ
ン ピ ュ ー タ 用 無 停 電 電 源 装 置. 〔 問 題 〕5.表5・4参 〔 問 題 〕6.図5・30参
照. 照.
〔 問 題 〕7.交 流 回 路 の 動 作 周 波 数 を,例 ①
え ば20kHz以
人 間 の 可 聴 周 波 の 限 界 で あ る 約20kHzよ
上 に す る の は, り も高 くす る こ と に よ り可 聴 騒
音 を 減 らす. ②
高 周 波 化 す る ほ ど部 品 お よ び 装 置 を小 形 ・軽 量 化 で き,ま
た変換 効率 を高
め ら れ る. ③
電 圧 駆 動 で 高 速 動 作 のMOSFET,
IGBTの
電 圧,電
流 定 格 が 増 加 し,ス
イ ッ チ ン グ 性 能 が 向 上 し た. 〔 問 題 〕8.電 力 変 換 の 特 徴 は5・4・3項 参 照. 制 御 方式 は
第 6章
①
パ ル ス振幅 変調
②
パ ル ス幅変 調
③
パ ル ス周波 数変 調
パ ワ ー エ レ ク ト ロ ニ ク ス の 応 用(そ
の 1)― 電 力 へ の 応 用 ―
〔 問 題 〕1.6・1・3項 参 照 〔 問 題 〕2.図6・18お
よ び 図6・20参 照
〔 問 題 〕3.6・1・6項 参 照 〔 問題 〕 4.6・4・1項 参 照 お よ び 図6・35参 照
第
7章
パ ワ ー エ レ ク
ト ロ ニ ク ス の 応 用(そ
〔問 題 〕1.7・1節,図7・4,図7・7,図7・8参 〔問 題 〕2.図7・16参 〔問 題 〕3.7・1・2項
照 の(7)参
〔問 題 〕4.7・2・1項,表7・3参
照 照
照
の
2)― 電 動 機 へ の 応 用 ―
索 引 あ行 IGBT
オ ン電 流
19
遅 れ時 間
73
12,46,72,82
ア ク セ プ タ ア ク テ ィ ブパ ワ ー フ ィル タ 安全 動作 領域
28 199 34,78
か行 か ご形 誘 導 電 動 機 の 可 変 速 運 転
227
可 逆PWM回
223
転
可 逆運 転 イ ンパ ル ス転 流
11
位相 遅 れ角 一 石 フ ォ ワ ー ド形 間 接 変 換 回 路
99 139
一 般 産 業 用 三 相 イ ンバ ー タ
242
医 用 機 器 用 直 流 高 電 圧 電 源 装 置
205
222,231
重 な り角 過 渡 熱 イ ン ピー ダ ン ス
111 89,90
過 負 荷 オ ン電 流
19
可 変速運 転 221, 227, 229, 230, 231, 233, 235, 240, 243, 245
ウエーハ
29
ウエーハ 化 プ ロセス
61
運転 特性
128
間接 変換 回路
126
紀 伊 水 道 サ イ リ ス タ 直 流 連 系 設 備
182
逆 回復 時 間 AIN基
93
逆 回復 電 荷
59
逆 回復 特 性
32
逆 降伏 電 圧
np接 合
29
逆 阻 止 3端 子 サ イ リス タ
N ゲ ー トサ イ リ ス タ
36
逆 阻止 状 態
n形 シ リ コ ン
28
逆損
n形 半 導体
28
逆 導 通 3端 子 サ イ リス タ
SBD
43
逆 導 通 サ イ リス タ
FZ法 npnト
板 ラ ンジ スタ
SCR
1
逆 バ イア ス安全動 作領 域
エ ミ ッ タ接 地
32
逆 方向 特性
エ ミ ッタ 領 域
32
共振 形 逆変換 回路
エ レ メ ン ト
30
共 有結 合
32 21,32 21 17,31 49 31,41 21 50 13,30,50 80,82 31 147 27
金 属 酸 化 膜 電 界 効 果 トラ ン ジ ス タ44,71 オ フ状 態
14,36
オ ン状 態
19,39
空 乏層
オ ン損
20,40
駆 動 シ ス テ ム
オ ン電 圧
20
31 248
ゲ ー トタ ー ン オ フ サ イ リス タ53,76,84
さ行
ゲ ー トタ ー ン オ フ トラ ン ジ ス タ 13,23 ゲ ー トタ ー ン オ フ 電 荷
23,54
ゲ ー ト ト リガ シ ス テ ム ゲ ー ト位 相
189 127,128
3レベ ルNPC方
式PWMイ
ンバ ータ
232
サー ジオ ン電流
19
ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ フ 時 間
23
サ イ ク ロ コ ンバ ー タ
ゲ ー ト制 御 タ ー ン オ ン
38
サ イ リス タ
ゲ ー ト制 御 テ イ ル 時 間
23
サ イ リス タ セ ル ビ ウ ス 制 御
228
サ イ リス タ ブ リ ッ ジ 回 路
222
サ イ リス タ モ ー タ
236
形 鋼 仕 上 げ 圧 延 用 三 相 イ ンバ ー タ 243
2,12,36,49,73
コ レ ク タ遮 断 電 流
33
サ イ リス タ レ オ ナ ー ド
コ レ ク タ接 地
32
サ イ リス タ 変 換 装 置
32
再 結合
コ レ ク タ領 域 降 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,134
122
221 173,180 27
佐 久 間 サ イ リ ス タ周 波 数 変 換 所
175
航 空機 整備 用交 流電 源
210
三 相 ブ リ ッ ジ回 路
105
工 作 機 械 用 高 周 波 イ ン バ ー タ
241
三相 交 流電源
104
高 層 ビル 用 高 速 エ レベ ー タ
258
三 相 混 合 ブ リ ッ ジ回 路
108
高 速 サ イ リス タ
49
三相 星形 回路
104
高 速 ダ イ オ ー ド
43
三相 電 力制御
119
三相 二 重星形 回路
108
高 調波
157
高 調 波 フ ィル タ
162
高 電 圧 大 電 流 サ イ リス タ 変 換 装 置
186
高 電 圧 大 電 流 ダ イ オ ー ド
41
CZ法
59
GTO
53
交 流 回 路 用 フ ィ ル タ
163
シ ョ ッ トキ ー バ リア ダ イ オ ー ド 12,43
交 流間 接変換
169
シ リコン単結 晶
交 流 系 統 連 系 用 サ イ リス タ変 換 装 置177
事故 電流
交 流式 無効電 力補 償 装置
197
写真 食刻
交 流-交 流 電 力 変 換 回 路
116
車両 用補助 電 源
交 流-交 流 変 換
169
遮断領 域
交 流-直 流 電 力 変 換 回 路
99
59,60 165 64 209 34
周 波 数 変 換 用 サ イ リス タ変 換 装 置
交 流-直 流 変 換
201
交 流 電 力 間 接 変 換 回路
125
循環電 流 方式
交 流 電 力 供 給 シ ス テ ム
214
順 バ イ ア ス 安 全 動 作 領 域
交 流電力 制御
197
順 変 換-逆
交 流電力 調整 回路
117
順 方 向特性
交 流電力 直接 変換 回路
122
昇 ・降 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,136
昇 圧 チ ョ ッパ 回 路
133,135
171,184
変換 動 作
122 79,81,82 127 31
消流
11
端 子 電 圧 制 御(電
動 機 の)
228
自励 式
126
単 相 セ ン タ タ ップ 回 路
102
自励 式 四 象 限 電 圧 形 イ ンバ ー タ
156
単 相 均 一 ブ リ ッ ジ回 路
102
自励 式 電 力 変 換
130
単相 交流電 源
99
自励 式 無 効 電 力 補 償 装 置
198
単相電 力制 御
117
自励 他 制 式 逆 変 換 回 路
146
単相 半波 回路
新 信 濃 サ イ リス タ 周 波 数 変 換 所
171
短絡安 全動 作領 域
進相 電力
127
スイ ッチ ング レギ ュレー タ
203
スナバ 回路
86
セル ビウス方式
228
セ ル フ タ ー ンオ ン セ ン サ レ ス ベ ク トル 制 御
36 228
制御進 み角
127
整 流 ダ イ オ ー ド
12,30,41
99 80,84
チ ョ ッパ 回 路
133
蓄電 池
145
窒 化 ア ル ミニ ウ ム 基 板
93
直 流-交 流 電 力 変 換 回 路
144
直 流-交 流 変 換
206
直 流-直 流 電 力 変 換 回 路
133
直 流-直 流 変 換
203
直 流 回 路 用 フ ィル タ
162
直流 間接 変換
203
静 電 誘 導 サ イ リス タ
13
直流 間接 変換 回路
138
静 電 誘 導 トラ ン ジ ス タ
13
直 流機
144
直 流 送 電 用 サ イ リス タ変 換 装 置179,184
絶 縁 ゲ ー トバ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ 46,72
た行
直 流短絡 事故
165
直 流直接 変換 回路
133
直 流定電 圧電 源
203
ダー リ ン トン形 バ イ ポ ー ラ パ ワ ー トラ ン
直 流電源
144
ジ ス タ
直 流電動 機
220
直 流電動 機 の可逆運 転
221
タ ー ンオ ン時 間
43 17,73
タ ー ンオ ン損
18
直 流電動 機 の可変速 運転
221
ダ イ オ ー ド
12
直 列 共 振 逆 変 換 回路
147
直 列 共 振 形 間 接 変 換 回路
142
通 勤電車
253
太 陽 光 発 電 シ ス テ ム
211
太陽 電池
144
多 象 限 チ ョ ッパ 回 路
133,137
多 相 チ ョ ッパ 回 路
137
多 相 多 重 チ ョ ッパ
134
多相 電力変 換 回路
110
立 上 り時 間 他励 式 他励 式電 力変換
73
「209系 」 駆 動 シ ス テ ム
通 流率
135
テイ ル時間
54
デ ィレー テ ング
80
126
デ バ イ ス
129
デバ イス転流
4 11
定 比 式 サ イ ク ロ コ ン バ ー タ
124
転流
10
転 流 イ ン ダ ク タ ンス
111
転 流 タ ー ン オ フ サ イ リス タ
73
転 流 タ ー ンオ フ時 間
22,41
転 流電 圧
ネ ガ テ ィ ブベ ベ ル
65
熱 間 圧 延 用 三 相 サ イ ク ロ コ ンバ ー タ 245 熱抵抗
88,90
燃料電 池
145
能動領域
34
128
転 流方 式
126
電 圧 形 イ ン バ ー タ
126,130,149
は行
電圧 形 方形 波逆 変換 回路
149
電 気 自動 車
259
ハ ー フ ブ リ ッ ジ 形 間 接 変 換 回 路
電 車 用 直 流 き電 電 源
202
バ イ ポ ー ラ トラ ン ジ ス タ
電動 機駆 動 回路
237
パ タ ー ンニ ン グ
139
パ ルス周 波数 変 調
155
パル ス振 幅変 調
155
パル ス制御
154
パル ス幅 変調
155
電 流 オ ン ・オ フ形 間 接 変 換 回路 電 流 共 振 形 間 接 変 換 回 路 電 流 形 イ ンバ ー タ
139,142
126,130,151
電 流形 方形 波逆 変 換 回路
151
電 流増 幅率
33
140 12 ,32 64
パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス
電 力 シ ステム
213
パ ワ ー デ バ イ ス
電 力 の制御
129
パ ワ ー トラ ン ジ ス タ
電 力 の流れ
129
半 導 体 デ バ イ ス
電 力制御
121
汎 用 三 相400V,160
電 力制御 回路
153
電力 変換 回路
98
2 4,25 70 4
kW級
イ ンバ ー タ 241
電力 変換 技術
9
PLL速
電力 変換 装置
9
度制 御
224
pn接 合
29
P ゲ ー トサ イ リ ス タ
36
ドナ ー
28
p形 シ リ コ ン
28
トラ イ ア ッ ク
13
p形 半 導 体
28
トラ ン ジ ス タ
1,32,43,70
ピー ク ゲ ー トタ ー ン オ フ電 流
23
東 海 道 新 幹 線 「の ぞ み 」 駆 動 シ ス テ ム
光 ト リガ サ イ リ ス タ
13,51,75
248
光露 光 技術
同期電 動機
234
東 清 水 サ イ リ ス タ周 波 数 変 換 所
176
同 期電 動機 の可 変速 運転
235
非循 環電 流 方式
123
避雷 器
193
V/f一 定 制 御
228
プ ッ シ ュ プ ル 形 間 接 変 換 回 路
139
64
な行 二 次降伏 二 象 限 チ ョ ッパ
34 137
フ ラ イ バ ッ ク形 間 接 変 換 回 路
141
無効 電力
フル ブ リ ッ ジ形 間 接 変 換 回 路
140
無効 電力 補償 装置
197
129
ブレー クオ ーバ電 圧
17
無 効 電 力 補 償 用 サ イ リ ス タ装 置
195
不純物 半 導体
27
無停 電電 源装 置
206
負荷 転流
11
負性 半導体
25
MOSFET
複 合 デ バ イ ス
13
モ ジ ュール
ベ ー ス接 地
12,44,71,81 92
や行
32
ベ ク トル制 御
228,233
ベベ ル構造
山 梨 超 電 導 磁 気 浮 上 リニ ア 実 験 線 駆 動 シ 65
並列 共振 逆変換 回路
148
並 列 共 振 形 間接 変 換 回 路
143
変 換 ユ ニ ッ ト
ス テ ム
256
誘 導電動 機
224
余裕 角
128
四 象 限 チ ョ ッパ
137
9
ポ ジ テ ィブ ベ ベ ル
65
保持 電流
19
方形 波逆 変換 回路
ら行
149 34
ラ ッ チ ン グ電 流
19
179
リソグラ フィー
64
飽和 領域 北 海 道 − 本 州 サ イ リス タ直 流 送 電 設 備
ま行 巻線 形誘 導電動 機 の可 変速 運転
228
リ ン ギ ン グ チ ョ ー ク コ ンバ ー タ
141
力率
129
力率 の制御 臨界 オ ン電流上 昇率
156 17,18
〈 著 者 紹 介〉
岸 学
敬二 歴
職
歴
慶 応 義 塾大 学 工 学部 電 気 工学 科 卒 業(1952) 工 学博 士(1969) 東 芝鶴 見工 場 東 芝研 究 開発 セ ンター 次 長 東 芝材 料 本 部材 料 企 画 室長 東 芝 セ ラ ミッ クス株 式 会社 取 締 役 中央 研 究所 長 チ ェ コ共 和 国 プ ラハ 市Czech Technical University教 授 日本工 業 大 学教 授
理工学講座 パ ワ ー エ レ ク トロ ニ ク ス の 基 礎 ―新 しいパ ワー デバ イ ス とその応用 ― 1996年11月10日
2003年5月20日
第 1版 1刷 発 行
著 者
岸 敬二
発行者
学校法人 東 京 電 機 大 学 代 表者 丸 山 孝 一 郎
発行所
東 京 電 機 大 〒101-8457
第 1版 3刷 発 行
学 出 版 局
東 京 都 千 代 田 区 神 田 錦 町2-2 振 替 口 座00160-5-71715
印刷 三 美印刷㈱ 製本 渡辺製本㈱
電 話 (03)5280-3433(営
業)
(03)5280-3422(編
集)
〓Kishi Printed
Keiji 1996 in Japan
*無 断 で転 載 す る こ とを禁 じます 。 *落 丁 ・乱 丁 本 は お取 替 え い た し ます。 ISBN4-501-10710-3
C3054
電気工学図書 理工学講座 基礎 電気 ・電子工学
理 工学 講座
宮 入 庄 太/磯 部 直吉 監修 前 田明志 他 著 A5判308頁 2色刷
宇 野 辛 一/磯 部 直 吉 共 著 A5判318頁
改 訂 交 流 回 路
電 気 ・電子技術 全般 を理解 で きるよ うに編集 した。 大学理 工学 部の基礎課程のテ キス トに最適。 2色刷
交流現象の理論的な解説 と計算法を詳述 した名 著 「 交 流回路」 を,時 代の要求に沿っていて親 しみや すく, かつ理解 しやすい よ うに全面的 に見直 した改訂版。
新 テキ ス ト
新 テキ ス ト
電 気 回 路 I 直 流 回路 ・交 流 回 路
電 気 回 路II 四 端 子 回路 ・波形 応答 ・過渡 現 象
専 門 教育 研 究 会 編 A5判 198頁
専 門 教育 研 究会 編 A5判188頁
電気工学の基礎理論をや さしく,正確 に解説 した 「 新 テ キス ト」シ リー ズの 1冊。 回路理論の基 礎につい て,身 につ き使 い こなせ るよ うに解説。
電気回路の うち四端子回路,波 形応答,過 渡現象 を 豊富な例題 によってや さしく解説 した。短大,高 専, 専修学校のテキス トに最適。
理 工学講 座
新 テキス ト
電 磁 気 学
電 磁 気 学
東 京 電機 大 学 編 A5判266頁 理 工系大学の 基礎課 程の ための教科 書 として編 集。 講義 と学生 の演 習の便宜を考 えて,豊 富に例題や演 習問題 を用意 した。 理 工学講 座
専 門教 育 研 究会 編 A5判224頁 短大,高 専,専 修学校の学生を対象 に,電 磁現象の理 解に重点をおいてや さ しく,し かも正確 に解説 した。
電磁気学の基礎
高 周 波 電 磁 気 学 P.ハ モ ン ド 著 秋 月影雄 他 訳 A5判192頁
三輪 進 著 A5判228頁 電磁気学 を基礎 に,ア ンテナ,電 波伝搬,高 周波回 路等 を理解す るのに必要 な理論 を簡潔 に解説。
高度 な数 式演 算に終始 している従 来の電磁気学 を改 め,ベ ク トル を用 いず に物理 現象 の理解に重点 をお いて解説 した良書 の翻訳 書。
理工 学講 座
理工学講 座
照明工学講義 新訂版
電 気 機 器 要 論 磯部直吉 著 A5判370頁
関 重 広 著 A5判210頁 長 年読者か ら愛用 され信頼 を得てい る前著 を最新 ・ 最良の資料 をと り入れて全面的 に見直 した。
大学における著者の20年 余の電気機 器の講義 と研 究 から得た経験 を基 にして執筆 した。 大学専門学科 の 教科書 と して最適であ る。
*定 価,図 書目録 のお問い合わせ ・ご要望 は出版局 までお願い致 します. A-54