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応 用 化 学 シリーズ
機能性セラミックス化学 掛川 山村 守吉 門間 植松 松田 …
一幸 博 佑介 英毅 敬三 元秀
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
...
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5
応 用 化 学 シリーズ
機能性セラミックス化学 掛川 山村 守吉 門間 植松 松田 …
一幸 博 佑介 英毅 敬三 元秀
…[著]
朝倉書店
応 用化 学 シ リーズ代 表 佐 々 木 義 典 千葉大学名誉教授
第5巻 執筆 者 掛
川
一
幸 千葉大学工学部共生応用化学科教授
山
村
守
吉
佑
介 法政大学工学部物質化学科教授
門
間
英
毅 工学院大学工学部マテリアル科学科教授
植
松
敬
三 長岡技術科学大学工学部化学系材料開発工学科教授
松
田
元
秀 岡山大学環境理工学部環境物質工学科助教授
博 神奈川大学工学部応用化学科教授
『応 用 化 学 シ リー ズ 』 発刊 にあたって こ の 応 用 化 学 シ リー ズ は,大 学 理 工 系 学 部2年
・3年 次 学 生 を対 象 に,
専 門 課 程 の 教 科 書 ・参 考 書 と して 企 画 さ れ た. 教 育 改 革 の 大 綱 化 を受 け,大 学 の 学 科 再 編 成 が全 国 規 模 で行 わ れ て い る. 大 学 独 自 の 方 針 に よ っ て,応 用 化 学 科 を そ の ま ま 存 続 させ て い る大 学 も あ れ ば,応
用 化 学 科 と,た
とえ ば 応 用 物 理 系 学 科 を 合 併 し,新
し く物 質 工 学
科 と し て 発 足 させ た 大 学 もあ る.応 用 化 学 と応 用 物 理 を融 合 させ 境 界 領 域 を究 明 す る効 果 をね ら っ た も の で,こ
れ か らの 理 工 系 の 流 れ を象 徴 す る も
の の よ うで もあ る.し か し,応 用 化 学 と い う分 野 は,学
科 の 名 称 が どの よ
う に 変 わ ろ う と も,そ の 重 要 性 は 変 わ ら な い の で あ る.そ し い 特 性 を もっ た化 合 物 や 材 料 が 創 製 さ れ,ま
れ ど こ ろ か,新
す ます 期 待 され る分 野 に な
りつ つ あ る. 学 生 諸 君 は,そ
れ ぞ れ の 専 攻 す る分 野 を 究 め る た め に,そ
の土 台で あ る
学 問 の 本 質 と,こ れ を基 盤 に 開 発 さ れ た 技術 な らび に そ の背 景 を理 解 す る こ とが 肝 要 で あ る.目
ま ぐ る し く変 遷 す る 時 代 で は あ るが,ど
の よ う な場
合 で も最 善 を つ く し,可 能 な 限 り専 門 を確 か な もの と し,そ の 上 に理 工 学 的 セ ン ス を 身 に つ け る こ とが 大 切 で あ る. 本 シ リー ズ は,こ
の よ うな 理 念 に 立 脚 して 編 纂,ま
執 筆 者 は教 育 経 験 が 豊 富 で,か
とめ られ た.各 巻 の
つ 研 究 者 と して 第 一 線 で 活 躍 して お られ る
専 門 家 で あ る.高 度 な 内容 を わ か りや す く解 説 し,系 統 的 に 把 握 で き る よ う に 幾 度 と な く討 論 を重 ね,こ
こに 刊 行 す るに 至 っ た.
本 シ リー ズ が 専 門 課 程 修 得 の役 割 を 果 た し,学 生 一 人 ひ と りが 志 を高 く も っ て 進 まれ る こ と を希 望 す る もの で あ る. 本 シ リー ズ刊 行 に 際 し,朝 倉 書 店 編 集 部 の ご尽 力 に 謝 意 を表 す る 次 第 で あ る. 2000年9月
シ リーズ代表 佐 々 木 義 典
は じ め に
本 書 は応 用 化 学 シ リー ズ全8巻
中 の1冊
で,応 用 化 学 系,工
業 化 学 系,物 質 化
学 系 の 大 学2, 3年 生 を対 象 に,機 能 性 セ ラ ミッ ク ス 化 学 とそ の 応 用 に関 す る知 識 と考 え方 を理 解 す る こ とを 目的 とし て編 纂 さ れ た.こ
の種 の 書 物 に お い て は,
とか く単 な る表 面 的 な 説 明 とな りが ちで あ る が,本 書 の執 筆 方 針 と して,原 理, 原 則 まで 踏 み 込 ん で 説 明 す る よ う心 が けた.ま
た,原 理 や理 論 に入 る前 に,全 体
像 をつ か む た め,ま ず 概 略 の理 解 か ら入 る よ うな構 成 と した. 材 料 の3大
柱 と して,金 属,セ
ラ ミッ ク ス,プ ラ ス チ ッ クス が 挙 げ られ る.セ
ラ ミッ ク ス は,建 築 用 の 材 料 か ら電 子 機 器 の部 品 に 至 る まで 幅 広 い使 わ れ 方 が さ れ て い る.材 料 に 関 わ る人 々 に は,何 らか の形 で セ ラ ミ ッ クス に 関 わ る こ と にな る た め,そ
の 知 識 と理 解 が 必 要 とな る.
第1章
で は,セ ラ ミ ック ス を学 ぶ に あた っ て の 導 入 部 分 と して,そ
定 義,歴
史 な ど を解 説 す る.図 表 を多 用 し,親
しみ が 湧 く よ う心 が け た.セ
ック ス は,結 晶 構 造 とその 欠 陥,結 晶 子,結 晶 粒 と粒 界,焼 層 が 存 在 す るが,粉
は,セ
結 体 な ど,多
ラミ くの 階
末,粉 体 お よび焼 結 体 の微 構 造 と密 接 に 関 係 さ せ て考 え る こ
とに よ り,全 体 像 を 明 解 に理 解 す る こ とが で き る.第2章 微 構 造,研
の具 体 例,
磨 ・エ ッ チ ン グ,気 孔,密
度,粗
で は,セ ラ ミ ッ クス の
大 傷 の 評 価 な ど を 扱 う.第3章
で
ラ ミ ッ ク ス の合 成 方 法 に 関 し,定 性 的 な面 か ら解 説 す る.そ の理 論 に つ い
て は 第4章
に まわ し,セ ラ ミ ック ス の 合 成 は どの よ う に行 うの か,合 成 プ ロ セ ス
の全 体 を現 象 的 に と ら え理 解 す る.そ の 後,第4章
の プ ロ セ ス の 理 論 に進 む こ と
に よ り,ス ム ー ズ な理 解 の 流 れ を も くろ んだ.第3章 成 と して,CVD法,PVD法
に お い て は,気 相 か らの 合
を,液 相 か らの 合 成 法 と し て,沈 殿 反 応,ゾ
ル ・ゲ
ル 法,ア
ル コキ シ ド加 水 分 解 法 な ど を解 説 す る.第4章
で 扱 う項 目 は,結 晶相 の
制 御,表
面 と界 面,成
結 の メ カニ ズ ム で あ る.
第5章
で は,セ
料,光
学 材 料,構
形 とレオ ロ ジー,欠 陥 と拡 散,焼
ラ ミ ッ ク ス の 実 際 の 応 用 と し て,誘 電 材 料,導 造 材 料,表
面 利 用 材 料,生
と,そ れ に関 す る理 論 を 述 べ る.
電 材 料,磁
性材
体 材 料 な どを と りあ げ,実 際 の応 用
本 書 で 扱 った セ ラ ミ ッ ク ス に 関 す る知 識 や考 え方 は,セ ラ ミ ッ ク ス に 限 らず, 広 く材 料 科 学 の 分 野 に通 用 す る もの で あ る.本 書 は"わ か りや す く"を 重 点 にお い て執 筆 され て い る.本 書 を通 じて,セ
ラ ミ ッ ク ス に関 して学 ぶ と と もに,材 料
科 学 全 般 の 考 え方 の基 本 を培 っ て い た だ きた い. 2004年10月
執筆 者 を代 表 して 掛 川 一 幸
目
次
1. セ ラ ミ ッ ク ス の 概 要
〔松 田 元 秀 〕 1
1.1 セ ラ ミ ッ ク ス の 定 義
1
1.2 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 徴
2
1.3 セ ラ ミ ッ ク ス の 歴 史 的 変 遷
4
1.4 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス の 種 類 と そ の 用 途
7
1.5 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス を 理 解 す る に は
2. セ ラ ミ ッ ク ス の 構 造
〔 植 松 敬 三 〕 8
2.1 種 々 の 製 品 の 構 造 2.2 微
構
7
8
造
10
2.1.1
微 構 造 の 要 素
11
2.2.2
微 構 造 と特 性 の 関係
2.3 微 構 造 の評 価 法
15
19
2.3.1
研 磨 面 の 観 察
19
2.3.2
エ ッ チ ン グ 面 の 観 察
20
2.4 気 孔,気
孔 率 お よ び 密 度
21
2.4.1
気 孔 径 と分 布
21
2.4.2
密 度 と 気 孔 率
22
2.5 粗 大 傷 の 評 価
23
3. セ ラ ミッ ク ス の合 成 プ ロ セ ス技 術 3.1 粉 末 の 合 成
〔門 間 英 毅 〕 24 24
3.1.1
液 相(溶
3.1.2
気 相 か ら の合 成
29
3.1.3
固相 か ら の合 成
31
3.2 単
結
晶
3.3 膜
合
成
液)か
ら の 合 成
24
36 36
3.3.1
液
相
法
36
3.3.2
気
相
法
37
3.4 繊 3.5
維
45
ウ ィス カ ー
3.6 成
46
形
48
3.6.1
成 形 の基 礎
3.6.2
成
3.7
形
焼
48
法
49
結
52
3.8 焼 結 体 の 加 工
53
4. セ ラ ミ ッ ク ス プ ロ セ ス の 理 論
4.1 結 晶 相 の制 御
55
〔 掛 川 一 幸 〕 55
4.1.1 変 位 型 転 移 と再 編 成 型 転 移 4.1.2
固
4.1.3 4.1.4
溶
55
体
58
共
晶
63
包
晶
66
4.1.5
ス ピノーダル分解
68
4.1.6
3成
70
分
系
4.2 表 面 と界 面
〔 松 田 元 秀 〕 72
4.2.1
表 面 張 力 お よび 界 面 張 力
4.2.2
曲面 に よ る圧 力差
77
濡
象
79
4.2.4 多 結 晶体 組 織 の幾 何 学 的 形 状
81
4.2.3
れ
現
4.3 成 形 と レ オ ロ ジ ー 4.3.1
73
〔 植 松 敬 三 〕 83
粉 体 の構 造
83
4.3.2
溶 媒 中 の粒 子
4.3.3
粒 子 間 の相 互 作 用
4.3.4
粒 子 の分 散
4.3.5
ス ラ リー の 流 動 特 性
89
4.3.6
成 形 とス ラ リー 特 性
91
4.3.7
粉
85
88
砕
4.4 格 子 欠 陥 と拡 散
87
〔山 村
92
博 〕 93
4.4.1
格 子 欠 陥 の 種 類 と濃 度
93
4.4.2 拡 散 現 象 の 巨 視 的 な取 扱 い
99
4.4.3
拡 散 の 原 子 論 的 な取 扱 い
102
4.4.4
拡 散 機 構
4.4.5
拡散 係数の種類
4.4.6
拡 散 現 象 の具 体 例
107
4.4.7
粒 界 拡 散
109
4.4.8
拡 散 に関 わ る現 象
109
105
4.5 焼 結 の メ カ ニ ズ ム 4.5.1
〔 守 吉 佑 介 〕 112
焼 結の駆動力 期
焼
103
113
4.5.2
初
結
114
4.5.3
高 密 度 焼 結 体 の製 造
117
4.5.4
液 相 焼 結
121
5. セ ラ ミ ッ ク ス の 理 論 と 応 用 5.1 誘 電 材 料
126
〔 掛 川 一 幸 〕 126
5.1.1
コ ンデ ンサ ー
5.1.2
分
5.1.3
コ ンデ ンサ ー の材 料
5.1.4
コ ンデ ンサ ー の特 性 と物 性
5.1.5
圧
電
体
137
5.1.6
焦
電
体
140
極
126
5.2 導 電 材 料
129
131 133
〔山 村
博 〕 141
5.2.1
電 子 伝 導 性 と エ ネ ル ギ ー バ ン ド構 造
5.2.2
絶
縁
性
143
5.2.3
半
導
性
144
5.2.4
セ ラ ミ ック ス の電 子 伝 導 とそ の 応 用
5.2.5
イ オ ン伝 導 体
5.2.6
イ オ ン伝 導 体 の応 用
5.3 磁 性 材 料 5.3.1
磁 性の起源
5.3.2
磁 気 モ ー メ ン トの 配 列 に よ る 磁 性 体 の 種 類
141
147
150
155 156 156
159
5.3.3
応 用 に お け る 磁 気 特 性
5.3.4
セ ラ ミ ッ ク磁 性 材 料 と そ の 特 性
165 167
5.4 光 学 材 料 5.4.1
屈
折
〔掛 川 一 幸 〕 170 率 171
5.4.2 電 気 光 学 効 果 5.4.3
光 の 減 衰
5.4.4
光 フ ァ イバ ー
5.4.5
ル ミネ ッ セ ン ス
5.4.6
レ ー ザ ー
5.4.7
SHG
174
175 176 178 181 182
5.5 構 造 材 料
〔 守 吉 佑 介 ・門 間 英 毅 〕 184
5.5.1
高靭 性材料
5.5.2
超塑性 材料
5.5.3
曲げ強度材料
187
5.5.4
ク リー プ 材 料
190
5.6 表 面 利 用 材 料
184 186
〔 松 田 元 秀 〕 193
5.6.1
吸 着 現 象
194
5.6.2
吸着 等温線
5.6.3
吸
材
198
5.6.4
触 媒 反 応
200
5.6.5
固体触媒 材料
202
5.6.6
光
着
触
媒
5.7 生 体 材 料
195
203 〔 門 間 英 毅 〕 205
5.7.1
生体材料 の歴史
205
5.7.2
バ イオ セ ラ ミ ック ス に必 要 とされ る一 般 的 性 質
206
5.7.3
腐 食 と崩 壊
5.7.4
骨欠損部 の治癒過程
5.7.5
バ イ オ セ ラ ミッ ク ス の評 価 法
5.7.6
代 表 的 な バ イ オ セ ラ ミ ッ ク ス
付
表
索
引
207 207 208 211
215 217
1 セ ラ ミ ッ ク ス の概 要
セ ラ ミ ッ ク ス とい う とま ず 思 い 浮 か べ る の は,茶 碗,皿,タ
イル や〓 瓦 とい っ
た と こ ろで あ ろ うか.こ れ らは い ず れ も古 くか ら私 た ち の 生 活 の 中 で重 宝 され て きた セ ラ ミ ッ ク ス で あ る.一 方20世
紀 に な る と,フ
ァイ ン セ ラ ミ ッ ク ス と呼 ば
れ る高 度 な 機 能 を 有 した,付 加 価 値 の 高 い セ ラ ミッ ク ス が 多 数 誕 生 した.茶 碗 や 皿 の よ うな 伝 統 的 な セ ラ ミ ック ス に対 し,フ ァイ ン セ ラ ミ ッ ク ス は電 子 材 料 や 光 学 材 料 な ど,先 端 技 術 分 野 を 中 心 に現 在 様 々 な分 野 で幅 広 く利 用 され て い る.セ ラ ミ ッ クス は い まや 金 属 や有 機 高 分 子 材 料(プ
ラ ス チ ッ ク)と
と も に,現 代 社 会
の 発 展 に と っ て な くて は な らな い 基 本 材 料 で あ る.本 書 で は そ の フ ァイ ン セ ラ ミ ック ス につ い て の 基 礎 と応 用 が 述 べ られ て お り,本 章 で はセ ラ ミ ッ クス の 一 般 的 な特 徴 や そ の歴 史 的 変 遷 な ど につ い て概 説 す る. 1.1 セ ラ ミ ッ ク ス の 定 義 セ ラ ミッ ク ス(ceramics)と
は,「 人 為 的 な熱 処 理 に よ っ て 製 造 され た 非 金 属
の無 機 質 固 体 材 料 」 を総 じて 表 す 言 葉 で,言 葉 の 語 源 は ギ リ シ ャ 語 のkeramos に 由 来 す る.こ
こで,"人
為 的 な熱 処 理 に よ っ て"と
い う言 葉 は,火 山活 動 の よ
うな 自然 現 象 の 中 で 形 成 され た 火 山岩 や天 然 石 な どは そ の ま まで はセ ラ ミ ック ス に属 さな い こ と を意 味 す る. "ceramics"に よ う に,セ
相 当 す る 日本 語 は 「窯 業 」 で あ り,そ の言 葉 の 意 味 か らわ か る
ラ ミ ッ ク ス は通 常 高 い温 度 で 製 造 さ れ る.で
必 要 か と問 わ れ る と,正 確 な 答 え は な い が600∼700℃
は,何 ℃ 以 上 の 温 度 が 以 上 と考 え て よ い.そ の
よ うな 高 い温 度 を 経 ず に 製 造 され る場 合 もあ る.「 水 熱 」 と い う特 殊 な 反 応 条 件 を使 う と,150℃
程 度 の温 度 で もセ ラ ミ ッ クス をつ くる こ とは で き る.
金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 と違 っ て,セ
ラ ミ ック ス の構 成 元 素 は 多 様 で あ る.鉄 や
表1.1
様 々 な セ ラ ミッ ク ス材 料
銅 を は じめ とす る金 属 材 料 は,一 般 に 単 一 元 素 で構 成 され て い る もの が 多 く,多 成 分 系 の合 金 に至 っ て も酸 素 や 硫 黄 な どが 構 成 元 素 と し て含 まれ る こ とは な い. 有 機 高 分 子 材 料 は炭 素 と水 素 を主 成 分 と し,そ の他 酸 素,窒 素,フ
ッ素 な どが含
まれ る場 合 もあ るが,一 般 に 数 少 な い種 類 の 元 素 で構 成 され る.こ れ に対 して セ ラ ミ ック ス は,金 属 元 素,半
金 属 元 素,非
金 属 元 素 の 中 の 少 な く と も2つ の元 素
グ ル ー プ の 間 で 形 成 され る化 合 物 か らな る.代 表 的 な セ ラ ミッ ク ス を 表1 .1に あ げ る.酸 化 物,窒
化 物,炭 化 物 な どそ の種 類 は豊 富 で あ る.こ の た め,発 現 す る
物 性 も他 の 材 料 に比 べ て多 様 と な り,用 途 の 多 様 さ に つ な が っ て い る. 1.2 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 徴 セ ラ ミッ ク ス の大 きな 特 徴 は,硬
くて,酸 化 し に く く,熱 に強 い こ とで あ る.
硬 さ に 関 し て い え ば,地 球 上 で 最 も硬 い物 質 は ダ イ ヤ モ ン ドで あ る.ダ イ ヤ モ ン ドの硬 度 を10と
す る と,立 方 晶 窒 化 ホ ウ素(c-BN),窒
化 ケ イ素(SiC),炭
化 タ ン グ ス テ ン(WC),ア
化 ケ イ 素(Si3N4),炭
ル ミナ(Al2O3)と
いった セラ ミ
ッ ク ス は硬 度9以 上 を 示 し,ダ イ ヤ モ ン ドに迫 る硬 さ を有 す る.高 硬 度 金 属 で 知 られ る タ ング ス テ ンや イ リ ジ ウ ム で さ え,硬 度 は7程 度 で あ る.こ の た め,セ
ラ
ミ ッ ク ス で つ くられ る切 削 ・研 削工 具 は,優 れ た 耐 磨 耗 性 を示 す.硬 度 が 高 い と い う こ とは,塑 性 変 形 が 起 こ りに くい こ とを意 味 す る.応 力 に よ る変 形 が 少 な く 熱 に よ る膨 張 も小 さ い の で,形 状 寸 法 の 安 定 性 が 高 い 製 品 をつ く り出 す こ とが で き る.一 方,硬
度 が 高 い こ と に よ り,金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 に比 べ て 加 工 が 難 し
い とい う欠 点 が あ る.私 た ち の 身 の周 り をみ て も,複 雑 な 形 状 を した 製 品 の 多 く は金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 で つ くられ て い る.し か し近 年,セ
ラ ミ ック ス の 成 形 加
工 技 術 は 目覚 ま し く進 歩 して お り,高 速 大 容 量 通 信 に使 わ れ る光 フ ァイ バ ー や 自 動 車 の排 ガ ス浄 化 用 触 媒 を担 持 す る た め に使 わ れ るハ ニ カ ム状 担 体(図1.1)な
図1.1
ハ ニ カ ム 状 セ ラ ミッ ク ス
ど,複 雑 な形 状 を有 す るセ ラ ミ ッ ク ス も製 造 可 能 とな っ て い る. セ ラ ミ ッ ク ス の優 れ た 耐 熱 性 は,そ の製 造 温 度 が 高 い こ とか ら容 易 に想 像 で き よ う.セ ラ ミ ック ス は 一 般 に,高 温 に至 る まで 分 解 した り溶 融 した り しな い.金 属 ア ル ミニ ウ ム は660℃ 2050℃ ま で 溶 け ず,1700℃
で 溶 け る が,ア
ル ミニ ウ ム の 酸 化 物 で あ るAl2O3は
付 近 まで の使 用 に耐 え う る材 料 で あ る.多
くの セ ラ
ミ ッ クス は金 属 の よ う に高 い伝 熱 性 を示 さ な いの で,一 度 暖 め られ た セ ラ ミ ック ス は 冷 え に く く,耐 熱 性 に加 え て 蓄 熱 性 に お い て も優 れ た性 質 を示 す. 鉄 が 錆 び る こ とは よ く知 られ て い る.こ れ は鉄 の酸 化 に よ る.一 般 に 金 属 は, そ の使 用 上 で酸 化 が し ば し ば 問題 とな る.有 機 高 分 子 材 料 にお い て も,酸 素 が 関 与 した 劣 化 反 応 が 問題 と な る.こ れ に対 して セ ラ ミ ッ クス は,高 温 で も酸 化 しに く く,表 面 近 傍 の構 造 や 化 学 組 成 は変 化 し な い.セ ラ ミッ ク ス は広 い 温 度 範 囲 に わ た っ て 長 期 間安 定 した 状 態 で使 用 で き る,唯 一 の不 変 材 料 で あ る. 一 方,セ
ラ ミ ック ス の 致 命 的 な 欠 点 は そ の 脆 さ に あ る.茶 碗 が 床 に落 ち る と簡
単 に割 れ て し ま う こ とか ら もわ か る よ うに,セ
ラ ミ ッ クス は硬 くて脆 い(脆 性)
材 料 で あ る.靭 性 強化 に関 す る最 近 の微 構 造 制 御 技 術 の 進 歩 に よ っ て,セ
ラ ミッ
ク ス の 靭 性 は大 き く向 上 し て い る.包 丁 や は さ み に使 わ れ る ジル コ ニ ア を主 成 分 と した セ ラ ミ ッ クス は,微 構 造 制 御 に よっ て靭 性 が 著 し く改 善 さ れ た代 表 的 な セ ラ ミ ッ ク ス材 料 で あ る.し か し,金 属 な み の靭 性 を示 す セ ラ ミ ック ス の 製 造 はい まだ 難 し い.こ れ は,金 属 とセ ラ ミ ック ス の 各 原 子 間 の 結 合 形 態 が 大 き く異 な る こ と に起 因 す る.セ ラ ミ ック ス の 場 合,外
力 が 加 わ る と,初 め は わ ず か に弾 性 変
表1.2
各種材料の特徴
形 が起 こ り,や が て 突 然 破 壊 す る.こ の破 壊 が い つ起 こ る か 予想 し に くい点 が セ ラ ミ ッ ク ス の 泣 き所 で あ る. 表1.2に,こ
れ らセ ラ ミッ ク ス の特 徴 を金 属 や 有 機 高 分 子 材 料 の 特 徴 と比 較 し
た 結 果 を示 す. 1.3 セ ラ ミ ッ ク ス の 歴 史 的 変 遷 セ ラ ミ ッ ク ス の 製 造 の歴 史 は古 い.わ が 国 にお け る セ ラ ミ ック ス の製 造 は,す で に縄 文 時 代 に始 ま っ て い る.遠 い 昔,人 類 は石 を単 に加 工 した石 器 を道 具 とし て 生 活 を 営 ん で い た.そ
の後 人 類 は火 を使 う こ と を知 り,あ る種 の土 を加 熱 す る
こ とに よ って 土 器 をつ くる こ とに 成 功 した .こ れ が セ ラ ミッ ク ス製 造 の始 ま りで あ る.そ の 後 時 代 の 流 れ と と もに セ ラ ミ ッ ク ス の 製 造 技 術 が 進 歩 し,や が て 陶 器,磁
器 へ と発 展 して い っ た.陶 器 は,多 孔 質 で 吸 湿 性 を 示 す 素 地 を本 体 と し,
そ の 表 面 に釉(ゆ
う)と 呼 ば れ る うわ ぐす りを塗 って つ くられ た もの で あ る.代
表 的 な 陶 器 製 器 具 に は,ト イ レ な どで使 わ れ て い る衛 生 設 備 が あ る.一 方,磁 器 とは,陶 器 よ りさ らに 高 い 温 度 で製 造 さ れ,素 地 自体 完 全 に 吸 湿 性 が な い状 態 に ま で焼 き固 め られ た もの を指 す.洋 食 器 を は じ め とす る多 くの 食 器 類 は,磁 器 に 属 す る.こ れ ら古 来 よ り伝 え られ て きた セ ラ ミ ック ス は天 然 鉱 物,例 ケ イ石 な どを原 料 と して 製 造 され る.主 な構 成 成 分 は 酸 素,ケ ム,鉄,カ
ル シ ウム,ナ
トリ ウム,カ
リウ ム,マ
え ば粘 土 や
イ 素,ア ル ミニ ウ
グ ネ シ ウ ム で あ る.天 然 原 料 を
用 い る と製 造 コ ス トは安 くす む が,同 種 の鉱 物 で も産 出 され る場 所 に よ って 化 学 組 成 や 原 料 粒 子 の 形 状 ・大 き さが 異 な り,製 造 され る セ ラ ミ ック ス の 品 質 に ば ら つ き が 生 じ る.そ の ば らつ き は,"雅"と 工 業 材 料 と し て の 応 用 を考 え た場 合,好
し て人 々 に喜 ば れ歓 迎 され て い るが, ま しい もの で は な い.
19世 紀 の 終 わ り頃 か ら,陶 磁 器 の優 れ た 電 気 絶 縁 性 と化 学 的 安 定 性 が 注 目 さ れ る よ う に な り,そ れ らの特 性 に基 づ く需 要 が 増 大 して い っ た.と 同 時 に,要 求 さ れ る条 件 は 年 々 厳 し くな り,既 存 材 料 で は 対 応 困 難 とな っ た.さ
らに20世 紀
中 頃 に な る と,エ レ ク トロ ニ ク ス 産 業 や 航 空機 産 業 な どの 発 展 に伴 って,あ
らゆ
る工 業 材 料 に対 し て高 い信 頼 性 が 求 め られ る よ うに な った.天 然 原 料 に頼 る セ ラ ミ ック ス の 製 造 で は 当然 の こ とな が らそ の よ う な 要 求 に応 え る こ と はで き ず,純 度 が 高 い 合 成 原 料 を用 い た 製造 へ の 転 換 が 余儀 な くな され た.用 組 成 か ら物 理 的 ・化 学 的 品 質 まで 厳 し く管 理 さ れ,さ
い る原 料 は化 学
ら に各 製 造 工 程 も高 度 に制
御 さ れ る よ うに な り,そ の 製 造 は古 来 よ り行 わ れ て きた もの と は大 き く異 な る も の とな っ た.そ
の 結 果,従
来 の 性 能 を は るか に上 回 るセ ラ ミ ッ クス や 新 しい機 能 表1.3
セ ラ ミ ック ス の 近 代 史
を発 現 す るセ ラ ミ ッ クス が 誕 生 し,さ
らに は 窒 化 物 や 炭 化 物 な ど,天 然 に は 存 在
しな い非 酸 化 物 系 の セ ラ ミ ック ス もつ く り出 され た.ダ
イ ヤ モ ン ドの よ うな 天 然
鉱 物 の人 工 合 成 も可 能 とな り,こ れ まで 以 上 に工 業 分 野 で の利 用 が 盛 ん に な って 今 日 に至 っ て い る.表1.3に
近 代 に お け るセ ラ ミ ッ ク ス発 展 の 変 遷 を示 す.今
表1.4 機 能 性 セ ラ ミ ック ス の 分類 と用途
日,こ れ ら高 純 度 な 合 成 原 料 か らつ く られ る セ ラ ミッ ク ス は フ ァ イ ン セ ラ ミッ ク ス や ニ ュー セ ラ ミ ッ ク ス,あ
るい は ア ドバ ンス トセ ラ ミ ック ス と呼 ばれ,電
子 ・
光 学 材 料 を は じめ と した 様 々 な 先 端 技 術 分 野 で利 用 され て い る. 1.4 フ ァ イ ン セ ラ ミ ッ ク ス の 種 類 と そ の 用 途 フ ァイ ンセ ラ ミ ッ クス を機 能 別 に分 類 す る と,次 の よ う な6つ の 種 類 に大 別 で き る. ① 電 磁 気 的 機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ② 光 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ③ 力 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス ④ 熱 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス ⑤ 化 学 的機 能 に優 れ た セ ラ ミ ッ クス ⑥ 生 体 関連 機 能 に優 れ た セ ラ ミ ック ス それ ぞ れ の セ ラ ミ ック ス が ど の よ うな と こ ろ に応 用 さ れ,ま た どの よ う な物 質 が そ の よ うな機 能 を示 す の か を表1.4に
示 す.用 途 の大 半 は,情 報 ・通 信 分 野,
環 境 ・エ ネ ル ギ ー 分 野 お よび バ イ オ分 野 に 関連 す る もの で あ る. 1.5 セ ラ ミ ッ ク ス を理 解 す る に は セ ラ ッ ミク ス は 扱 い に くい 材 料 で あ る と同 時 に,様 々 な性 質 を示 す 面 白 い 材 料 で もあ る.こ れ は セ ラ ミ ッ クス の 特 徴 で あ る構 造 の 多 様 性 に起 因 し て い る.こ の た め,セ た,セ
ラ ミ ック ス を理 解 す る上 で は構造 と物 性 に関 す る知 識 が 必 要 とな る.ま
ラ ミッ ク ス をつ く り出 す 製 造 プ ロ セ ス に対 す る理 解 も大 切 で あ る.製 造 プ
ロ セ ス は セ ラ ミ ッ ク ス の 構 造 を形 づ く り,物 性 発 現 と密 接 な 関 係 を もつ.つ
ま
り,製 造 プ ロセ ス を 学 ばず して所 望 の 機 能 を有 す るセ ラ ミ ック ス はつ くれ な い. した が っ て,セ
ラ ミ ッ ク ス に 関 す る理 解 を深 め る に は,そ れ ら三 者 の 相 互 関係 を
学 び研 究 す る こ とが 最 も効 果 的 な 勉 学 法 で あ る.
2 セ ラ ミック スの構 造
セ ラ ミッ ク ス の 用途 は非 常 に 広 く,必 要 な 特 性 は応 用分 野 ご とに異 な る.特 性 の 適 切 な 設 定 に は,材 質 の種 類 を適 切 に選 定 す る だ けで な く,構 造 を制 御 す る こ とが 非 常 に重 要 で あ る.こ
こで は まず,セ
ラ ミ ッ クス の代 表 的 な製 品 に お け る構
造 を説 明 し,次 に セ ラ ミ ック ス の 構 造 の詳 細 を説 明 す る.さ
らに そ れ らの 評 価 法
も記 す. 2.1 種 々 の 製 品 の 構 造 ア ル ミナ セ ラ ミッ ク ス は 多種 多 様 の用 途 に用 い られ て お り,そ の構 造 は用 途 ご と に適 切 に制 御 され る.こ
こで は,透 明 発 光 管,構 造 部 材 お よ び耐 火 断 熱 材 を例
に と り,そ れ らの構 造 を調 べ て み よ う. 図2.1は,発
光 管 用 透 明 ア ル ミナ セ ラ ミ ッ ク ス と,こ れ を 用 い た ラ ン プ で あ
る.こ の ラ ン プ は,ナ
トリウ ム 蒸 気 中 の放 電 で 黄 色 の光 を 出 す もの で,発 光 効 率
が 非 常 に高 く,高 速 道 路 や広 場 の 照 明 な ど に広 く用 い られ て い る.ア ル ミナ が使 わ れ るの は,高 温 に耐 え られ るの と,ナ
ト リウ ム蒸 気 と反 応 しな い こ とに よ る.
ア ル ミナ は,物 質 的 に は サ フ ァ イ ア と同 じで あ り無 色 透 明 で あ るが,こ
図2.1 透 明 アル ミナ管 とそ れ を用 い た ナ トリウ ム ラ ンプ
のセ ラ
図2.2
図2.3
ミ ッ クス は一 般 に は 白 く不 透 明 で 光 を ほ とん ど通 さ な い.不 透 明 の原 因 は,材 料 中 に 多 数 の微 細 な 気 孔 が 残 り,図2.2の る.つ
とお り,そ れ らが 光 を散 乱 す る こ とに あ
ま り気 孔 が 不 透 明 の原 因 と な る の は,泡 立 つ滝 壷 で は微 細 な空 気 の 泡 が 光
を散 乱 して 水 が 白 く不 透 明 に な るの と同 じ こ とで あ る.そ れ らの 気 孔 は 図2.3に 示 した とお り,製 造 プ ロセ ス に お い て,原 料 粉 体 を 固 め た 成 形 体 を高 温 で焼 成 し て 製 造 す る際 に,粉 体 粒 子 間 の 隙 間 が 取 り残 され て生 じた もの で あ る. 米 国GE社
のCobleは,不
透 明 性 が 材 料 中 の 多 数 の 気 孔 に起 因 す る点 に着 目
し,セ ラ ミッ ク ス で も気 孔 を極 力 排 除 す れ ば透 明 に な る と考 えた.こ
う して 開 発
され た セ ラ ミ ック ス が,透 光 性 ア ル ミナ で あ る*1.い まで は,構 造 中 の 気 孔 を排 除 す る こ と に よ り,種 々 の 材 料 が 透 明 化 で き る こ と は常 識 で あ る.レ ー ザ ー基 材 と して 使 用 可 能 な,非 常 に 透 明 性 の 高 い セ ラ ミ ッ クス さ え つ くられ て い る. 図2.4は,半
導 体 製 造 装 置 の 中 核 部 材 と して使 用 され る ア ル ミナ セ ラ ミ ッ ク ス
で あ る.一 般 に材 料 の強 度 は,質
中 に 小 さ な 気 孔 が 少 々(1体
積%程
い て も ほ とん ど低 下 しな い た め,高 強 度 構 造 用 材 料 の 製 造 で は,小 理 に す べ て除 去 す る必 要 は な い.む
度)残
って
さな 気 孔 を無
しろ 強 度 を高 め る上 で 最 も重 要 な の は,材 質
中 の粒 子 を細 か くす る こ と と,特 に後 で詳 し く説 明 す るが,粗 大 な気 孔 や 粒 子 を 含 ま な い こ とで あ る.一 方,気 *1 当 時(1950年
頃)は
,セ
孔 を完 全 に 除 去 し透 明性 を得 る に は,高 温 で 長 時
ラ ミ ック ス を透 明 化 す る こ とは 不 可 能 で あ る と考 え られ て い た.こ
識 を 本 文 中 の よ うな 科 学 的 考 察 に基 づ き打 破 し,セ こ とは,セ
の常
ラ ミ ッ ク ス で も科 学 が 非 常 に役 立 つ こ と を実 証 した
ラ ミ ック ス の 歴 史 に お け る画 期 的 な 業 績 で あ る.
図2.4 半 導体 製造 用 ア ル ミナ 部 材
間焼 成 す る必 要 が あ り,そ の間 に構 造 中 の 粒 子 が 粗 大 に成 長 して し ま う.し たが っ て,透 明 に は な っ て も,強 度 は最 高 と はな ら な い.高 強 度 ア ル ミナ セ ラ ミ ック ス で は気 孔 の 残 留 は若 干 犠 牲 に して,粗 大 粒 子 の な い細 か な粒 子 か らな る構 造 を 得 る こ とが 最 も重 要 な 点 で あ る.も ち ろん,こ
の材 料 は不 透 明 で あ る.
耐 火 断 熱 材 で は耐 熱 性 と と もに,熱 伝 導 性 を下 げ る こ とが 最 重 要 で あ る.ほ
と
ん どの 応 用 で は,強 度 は使 用 中 に材 料 が簡 単 に崩 れ な い 程 度 以 上 あ れ ば よ い.こ れ に は,気 孔 を 多 くし た 構 造 を つ く る.気 孔 は まず,熱
伝 導 を下 げ る 作 用 を も
つ.そ れ は,微 細 な気 孔 内 で は 内部 の気 体 は対 流 で きず,ま た 静 止 した 気 体 は一 般 に非 常 に低 い 熱 伝 導 しか もた な い か らで あ る.多 孔 材 料 で は,熱 が 気 孔 を通 過 す る に は,気 孔 の 一 方 の 面 か ら反 対 側 の面 へ の 輻 射,あ
るい は気 孔 の 周 囲 の 物 質
に お け る熱 伝 導 しか な い が,前 者 は非 常 な 高 温 以 外 は非 常 に低 い.こ れ に よ り, 多 孔 体 で は熱 伝 導 が 非 常 に低 い. た だ し,超 高 温 用 の 断熱 材 で は,ま た別 の構 造 が 必 要 で あ る.そ れ は 白 熱 す る 高 温 で は,熱
は輻 射 に よ り気 孔 の 一 方 の 面 か ら他 の 面 へ と非 常 に よ く伝 わ るの
で,気 孔 は熱 伝 達 に対 す る障 害 とな らな くな るた めで あ る.気 孔 の 断熱 性 能 は温 度 上 昇 と と もに 急 激 に低 下 す るた め,断 熱 性 を 得 る に は別 の 手 段 が 必 要 で あ る. セ ラ ミ ッ ク ス は 上 で 説 明 した 以 外 に,電 気 ・電 子 材 料,磁
性 材 料,生 体 材 料 な
ど,多 種 多様 な 用途 に用 い られ るが,そ れ らの 用 途 で も,適 切 な性 能 を得 る に は 材 料 の構 造 の制 御 が 非 常 に重 要 で あ る. 2.2 微
構
造
セ ラ ミ ッ ク ス に は す で に述 べ た微 細 な結 晶 粒 や 気 孔 以 外 に,ガ
ラ ス相,気
孔や
き裂 な どが 存 在 す る.こ れ ら構 成 要 素 が つ くる構 造 を,微 構 造 と呼 ぶ.す
でに図
2.3に 示 した とお り,微 構 造 はセ ラ ミ ック ス を製 造 す る 際 に,粉 体 粒 子 の 集 合 体 か ら な る成 形 体 を 高 温 で 焼 成 す る際 に形 成 され た もの で あ る.ま た,原 料 粉 体 と 製 造 プ ロ セ ス に よ り,広 範 囲 に変 化 し う る も の で あ る.し た が って 適切 な制 御 に よ り,望 ま しい もの とす る こ とが 可 能 で あ る.セ ラ ミッ ク ス の特 性 が構 造 と密 接 に 関 係 す る こ と は す で に説 明 した.ま た,特 性 を す べ て の 点 で 同 時 に最 高 とす る の は非 常 に難 し い こ と も述 べ た.あ
る特 性 を最 良 に す る に は,何 か別 の 特 性 を犠
牲 に しな くて は な らな い.材 料 開 発 の重 点 は,犠 牲 を 最 小 限 と して,必 要 な特 性 を 最 高 とす る こ とに あ る.こ れ に は,セ
ラ ミッ ク ス の構 造 を理 解 し,ま た 構 造 と
特 性 の 関 係 を正 確 に理 解 し な くて は な らな い. 2.2.1 微 構 造 の 要 素 図2.5に,セ
ラ ミ ッ クス の 微 構 造 を形 成 す る主 要 な構 成 要 素 を模 式 的 に示 す.
この 図 に は 多 くの 構 成 要 素 を ま とめ て記 して あ る が,1つ
の セ ラ ミッ ク ス 中 に こ
れ らの 構 造 が 必 ず 同 時 に 存 在 す る とは 限 らな い.図2.6は
微 構 造 の一 例 とし て,
固相 焼 結 で作 製 し た 高 密 度 ア ル ミナ セ ラ ミ ッ クス の 断 面 の 顕 微 鏡 写 真*2を 示 す. 多 角 形 の 領 域 が 個 々 の粒 子 で あ り,結 晶粒 と呼 ば れ る.こ の 微 構 造 で は,ガ ラ ス 相 や き裂 は認 め られ な い. 結 晶 粒 とは,1∼100μm程
度 の 大 き さ を もつ 結 晶 で あ る.そ れ ら の 内 部 に お
け る原 子 あ る い は イ オ ンの 充〓 状 態 は,そ の 物 質 の単 結 晶 の それ と同 じで あ る.
図2.5
微構造模式図
*2 セ ラ ミ ック ス の 断 面 を研 磨 した 後 に,腐 食 処 理(エ る.エ
図2.6
ア ル ミナ 微 構 造 写 真
ッ チ ング と い う)を 行 っ て か ら顕 微 鏡 観 察 す
ッ チ ン グ す る こ と に よ り,結 晶 粒 子 の境 界 が は っ き り と現 れ る(2.3.2項
参 照).
当 然 な が ら,結 晶 粒 の もつ 密 度,比
熱,格
子 定 数 な ど,他 の 多 くの 性 質 は単 結 晶
の そ れ と同 じ で あ る.結 晶 粒 の大 き さ お よ び そ の 分 布 は,そ れ ぞ れ 粒 径 お よび 粒 径 分 布 と呼 ばれ る.こ れ ら粒 子 は,図2.3に
示 し た と お り,原 料 粉 体 中 の 粒 子
が,焼 成 中 に そ の寸 法 や 形 状 を変 え て形 成 され た も の で あ る.な お,結 般 に双 晶 と呼 ばれ る もの が あ る の と同 様,結
晶 に は一
晶 子 も双 晶 か らな る こ とが あ る.双
晶 は2個 の 結 晶 が 特 定 の 角 度 関係 で 結 合 した もの で あ り,厳 密 に は単 結 晶 で は な い が,性 質 は結 晶 とほ ぼ 同 様 で あ るた め,以 後 特 別 の ケ ー ス以 外 に は単 結 晶 と同 様 に扱 う. 気 孔 は粉 末 成 形 に お い て 粉 体 粒 子 の 間 に存 在 した 空 間 が,焼
結 後 に残 され た も
の で あ る(図2.3).材
料 表 面 とつ な が っ て い る もの を 開 気 孔,外
れ た もの を閉 気 孔(孤
立 気 孔)と
した.ま
い う.図2.7に,閉
部 か ら隔 離 さ
気 孔 と開 気 孔 を模 式 的 に示
た,結 晶 子 の 間 に存 在 す る も の を粒 界 気 孔,結 晶 子 内部 に存 在 す る もの
を粒 内気 孔 と呼 ぶ.気
孔 の 形,量
非 常 に 大 きな 影 響 を及 ぼ す.フ
お よ び そ れ らの 分 布 は,セ ラ ミッ ク ス の特 性 に ィル タ ー,ガ
ス セ ンサ ー お よ び触 媒 坦 体 な どで
は,気 体 や 液体 が 材 料 内 部 に入 れ な くて は な らな いた め,特 性 は開 気 孔 と密 接 に 関 係 す る.ま た 気 孔 は 断 熱 性 能 を上 げ る が,材 料 の 強 度,電 気 絶 縁 耐 力 な ど多 く の 特 性 を下 げ る.し た が って,多
くの 応 用 で は,気 孔 は少 な い 方 が よ い.材 料 中
の 気 孔 の割 合 は,材 料 の 見 か け の 密 度 と密 接 に関 係 す る.し た が って,材 料 の 密 度 は特 性 を反 映 す る便 利 な 尺 度 で あ り,広 く測 定 され る もの で あ る.こ の点 につ い て は2.4.2項
で さ らに詳 し く説 明 す る.
粒 界 は結 晶粒 の 間 の 結 合 す る部 分 で あ り,そ の 代 表 は図2.5の る もので あ る.こ れ らの 線 は,2個
中 で 線 で表 され
の粒 子 の結 合 面 を観 察 面 で 切 断 した と きの 交
線 で あ る.実 際 に は これ ら は三 次 元 空 間 中 に 広 が る面 の一 部 で あ る.厳 密 に は二
図2.7
セ ラ ミ ッ クス の 気 孔
粒 子 粒 界 と呼 ば れ る.図 に は3個 の粒 子 が 出 会 う粒 界 もあ る.こ れ は三 粒 子 粒 界 で あ り,三 重 点 と も呼 ば れ る.三 粒 子 粒 界 は空 間 的 に は線 で あ る.4個
の粒 子 が
出 会 う粒 界 は 空 間 的 に は点 で あ り,四 粒 子 粒 界,あ
ばれ る もの
るい は四 重 点 と呼
で あ る.こ れ が 実 際 に認 識 され る こ と は まれ で あ る が,現 実 に は微 構 造 中 に は多 数 存 在 す る. これ ら粒 界 で の 原 子 配 列 は,図2.8に
示 す とお り結 晶 内 部 の もの と は異 な る.
した が っ て,粒 界 付 近 の原 子 間 結 合 や電 子 の エ ネル ギ ー状 態 な どは,結 晶 内 部 の もの とは異 な る と予 想 さ れ る.ま た,原 子 間 の 距 離 は局 所 的 に通 常 の 結 晶 内 の も の と は異 な り,し た が っ て 原 子 間 の空 隙 も大 小 様 々 で あ る.一 般 に セ ラ ミ ッ ク ス は 種 々 の不 純 物 を含 むが,そ
れ らの 中 で 寸 法 の大 きな 原 子 や イオ ンは,結 晶 内 に
入 る際 に は周 囲 の 原 子 を押 しや り,自 身 の 入 る空 間 を 広 め る必 要 が あ るた め,粒 界 の 大 き な 隙 間 に 入 る傾 向 が あ る.ま た,小
さ な もの は小 さ な隙 間 に 入 る.し た
が っ て,不 純 物 は通 常 の結 晶 格 子 内 に均 一 の 分 布 す る よ り,む しろ粒 界 に集 ま る 傾 向 が あ る.図2.9に
示 した とお り,粒 界 に は不 純 物 が濃 縮 され,粒
界 付 近 の化
学 組 成 は結 晶 内 と は し ば しば 異 な る. 粒 界 の もつ 種 々 の 性 質 は,し い.セ
た が っ て 結 晶 の そ れ と は 非 常 に異 な る 場 合 が 多
ラ ミ ック ス 全 体 の性 質 は し ば しば 粒 界 に よ り支 配 され,粒 界 の 影 響 が 特 に
大 き い とき に は,ほ
ぼ粒 界 だ け の性 質 で 決 ま る こ と もあ る.粒 界 の性 質 が 強 く現
れ る とき に は,5.2.4項
で紹 介 す るバ リス タ やPTCRな
どの よ う に,セ ラ ミ ッ ク
ス の 性 質 を結 晶 自体 の 性 質 だ けで は全 く説 明 で きな い こ と さ え あ る.双 晶 に お け
(a) 接合前
(b) 接 合後
図2.8 粒 界 の構 造
図2.9 粒 界 の不 純 物 偏 析
図2.10 FCC格 太 枠 が 単 位 胞.太
る結 晶 の 結 合 面 は図2.10に
子 の 双 晶粒 界
線 の 球 は紙 面 の上 下 に ずれ て い る.
示 した とお り,粒 界 の特 別 な もの で あ る.こ こで の 原
子 配 列 の 乱 れ は,一 般 の粒 界 の もの よ り少 な い.し
た が って,そ
の性 質 は通 常 の
粒 界 の もの とは 非 常 に異 な るた め,一 般 の粒 界 と同様 に は取 り扱 わ な い.す で に 説 明 した とお り,双 晶 は む し ろ1個 の 結 晶 子 と同 様 に取 り扱 わ れ る こ とが 多 い. マ ト リッ ク ス を構 成 す る,主 要 相 と は異 な る結 晶 相 や ガ ラス 相 の こ とを二 次相 と呼 ぶ.二
次 相 は,粒 子 内 お よ び粒 界 の いず れ に も認 め られ る.ガ ラ ス相 は酸 化
ケ イ 素 や 酸 化 ホ ウ 素 な ど,ガ ラ ス を形 成 す る傾 向 を もつ物 質 を含 む系 で は しば し ば認 め られ る.こ れ らの 物 質 の起 源 に は,焼 結 を容 易 に す るた め 意 図 的 に添 加 さ れ る焼 結 助 剤,不
純 物 と して 混 入 した もの,な
らび に窒 化 ケ イ 素 や 炭 化 ケ イ素 な
どの 非 酸 化 物 材 料 で は,粉 体 の 製 造,保 管 中 あ るい は製 造 時 に表 面 が 酸 化 して生 成 した 酸 化 物 が あ る.例
えば,耐 熱 材 料 の ガ ラ ス 層 が す べ て の粒 界 に フ ィル ム状
に存 在 す る と,高 温 で は そ の軟 化 の た め粒 子 が 滑 り,材 料 の強 度 が 低 下 す る.二 次 相 の形 態 や 分 布 は,特 性 と密 接 に関 係 す る.熱 伝 導 に及 ぼ す例 に つ い て は,後 述 す る. 界 面 とは,結 晶 粒 ど う しの 間,あ る.ま
る い は結 晶 粒 と二 次 相 との 間 の 結 合 面 で あ
た表 面 とは,結 晶 粒 や二 次相 と気 孔 との境 界 で あ る.界 面 や 表 面 は,不 純
物 が 濃 縮 さ れ る,あ
る い は排 除 さ れ る場 で あ る な ど,多
くの 面 で 粒 界 と同様 に特
異 な性 質 を もつ. 粒 界,表 面,界
面 に は それ ぞれ エ ネ ル ギ ー が 付 随 す る.身 近 な例 は表 面 エ ネ ル
ギ ー で あ る.表 面 エ ネ ル ギ ー とは,単 位 面 積 の表 面 を つ く るの に必 要 な エ ネ ル ギ
ー で あ る dEと
.す
な わ ち,新
す る と,表
た に 形 成 す る 表 面 の 面 積 をdA,必
要 なエ ネル ギ ー を
面 エ ネ ル ギ ー γ は 次 式 で 与 え られ る. γ=dE/dA
同 様 に,粒 界 お よび 界 面 の形 成 に はエ ネ ル ギ ー が 必 要 で あ り,そ れ ぞ れ粒 界 エ ネ ル ギ ー γGBお よび 界 面 エ ネ ル ギ ー γBが付 随 す る.多 結 晶 セ ラ ミ ッ ク ス の もつ 全 エ ネ ル ギ ー は表 面,粒 高 い.こ
界 お よび界 面 の エ ネ ル ギ ー の分 だ け,単 結 晶 の もの よ り
れ らエ ネ ル ギ ー は後 述 す る とお り,セ ラ ミ ック ス の焼 結 に お け る駆 動 力
とな る.つ
ま り,系 は そ れ らエ ネ ル ギ ー を下 げ る よ う変 化 す る.ま た,粒 界 や 表
面 に不 純 物 が 集 ま る の は,そ れ に よ りこれ ら領 域 の エ ネ ル ギ ー を下 げ られ る か ら で あ る.つ
ま り,不 純 物 は寸 法 や 電 荷 が 結 晶 内 の 正 規 の イ オ ン とは異 な る た め,
結 晶 内 に い る よ り,イ オ ン配 列 が 乱 れ た粒 界 や 表 面 に位 置 す る方 が 安 定 だ か らで あ る. マ ト リ ッ ク ス粒 子 に比 較 して 異 常 に大 き い結 晶 子 を異 常 成 長 粒 子,あ 大 粒 子 な ど と呼 ぶ.こ
るいは巨
れ らの 巨 大 粒 子 は,原 料 粉 体 中 の一 部 の粒 子 が粒 成 長 に よ
り製 造 過 程 中 に大 き く成 長 して 形 成 され た もの で あ る.そ れ ら は多 くの 特 性 に悪 影 響 を及 ぼ す た め,セ ラ ミッ ク スの 製 造 で は そ の形 成 を防 止 す る必 要 が あ る. そ の 他,微 構 造 中 に は,き 裂 が 存 在 す る こ と もあ る.き 裂 の 多 くは不 適 切 な製 造 操 作 で 生 じ る もの で,種 々 の 特 性 に非 常 に悪 い影 響 を及 ぼ す.し か し例 え ば チ タ ン酸 アル ミニ ウム な ど,結 晶 の 熱 膨 張 の 異 方 性 が きわ め て大 きい 特 別 の 物 質 で は,焼 成 温 度 か らの 冷 却 時 に 各粒 子 の 熱 収 縮 に よ り粒 界 に は大 きな 内 部 応 力 が 発 生 す るた め,良 品 で あ っ て も結 晶 子 間 に無 数 の 微 細 な き裂 を含 む こ と も あ る. 強 磁 性 体 や 強誘 電 体 で は,さ
ら に ドメ イ ン と呼 ば れ る構 造 が 存 在 す る.ド メ イ
ン 中 で は,磁 化 や 電 気 分 極 の 方 向 が そ ろ って い る.磁 性 体 中 の ドメ イ ン は,外 部 か ら印 可 され る磁 界 に よ り容 易 に 変 化 す る. 2.2.2 微 構 造 と特 性 の 関 係 セ ラ ミ ッ ク ス の 特 性 に は表2.1に
示 す とお り,微 構 造 に よ り非 常 に強 い 影 響 を
受 け る もの と,あ ま り受 け な い もの が あ る.前 者 を構 造 敏 感 な特 性,後
者 を構 造
鈍 感 な特 性 と呼 ぶ. a. 構 造 敏 感 な特 性
これ ら特 性 は,構 造 が 材 料 全 体 の 特 性 に対 して 決 定
的 な 影 響 を及 ぼ す もの で あ る.特 性 は電 気 伝 導性 の よ う に,微 構 造 の わ ず か な違 い で 何 億 倍 以 上 も変 化 す る こ と さえ あ る.構 造 敏 感 な 特 性 は構 成 要 素 の 平 均 値 で
表2.1 性 質 の分 類
決 ま らず,加 成 性 に従 わ な い もの で あ る.こ の強 い構 造 依 存 性 は,そ れ ら特 性 を 支 配 す る要 因 か ら理 解 で き る. ⅰ) 強 度 特 性:セ
ラ ミ ッ ク ス の 破 壊 は,材 料 中 に お け る原 子 間 結 合 の 切 断
に よ り生 じ る もの で あ り,強 度 は原 子 間 結 合 を切 る た め の 力 と密 接 に関 係 す る. セ ラ ミ ッ ク ス 中 の 原 子 は,イ オ ン性 や 共 有 性 の 強 い化 学 結 合 で 結 ば れ て い る た め,そ
の切 断 に は一 般 に 数 十GPa(1mm2当
た り数 万N)の
応 力 を必 要 とす る.
これ は,通 常 の 鉄 鋼 材 料 よ り数 十 倍 高 い 値 で あ る. 一 方,現 実 の セ ラ ミ ッ クス で は,上 の 値 の1%程
度 の応 力 で 壊 れ て し ま う.こ
れ は,セ ラ ミ ッ ク ス の破 壊 強 度 が 微 構 造 中 の 破 壊 源,具 体 的 に は材 料 中 の傷 の存 在 に非 常 に敏 感 な た め で あ る.例 え ば図2.11の
とお り,き 裂 を 含 む セ ラ ミ ック
ス に応 力 が か か る と き,そ の 先 端 に は 応 力 集 中 現 象 に よ り力 が 集 中 す る.材 料 に か か る平 均 の応 力 が 低 い と きで も,こ の 集 中 応 力 は物 質 中 の 化 学 結 合 を切 断 す る レベ ル に達 して し ま うの で あ る.言 い換 え る と,そ れ ら傷 の 先 端 に は,平 均 値 よ り100倍 程 度 高 い 応 力 が 容 易 に発 生 す る.身 近 な例 は,ガ
ラスを 「 切 る」 こ とで
あ る.傷 の な い ガ ラ ス管 は簡 単 に は割 れ な い が,表 面 に小 さ な傷 を 入 れ る と,容 易 に切 る こ とが で き る.応 力 集 中 の 原 因 に は,き 裂 以 外 に気 孔 や 粗 大粒 子,二
次
相 な ど,種 々 の 微 構 造 因 子 が あ る.一 般 に 応 力 集 中源 が 幾 何 学 的 に相 似 形 の と
図2.11
き裂 周 辺 の 応 力 分 布
き,応 力 集 中 の 程 度 は,そ の 応 力 集 中 源 の 寸 法 の1/2乗
に 比 例 す る.し た が っ
て,強 度 は き裂 な どの 寸 法 が 増 す ほ ど下 が る.こ れ は,微 構 造 中 の そ れ らの 応 力 集 中 要 因 の寸 法 を小 さ くす る と,セ ラ ミッ ク ス の強 度 が 増 す こ とを意 味 す る.も し応 力 集 中源 の 寸 法 を 原 子 と同 じ程 度 にで き る と,も はや 応 力 集 中 は起 こ らず, セ ラ ミッ ク ス の も つ本 来 の きわ め て高 い 強 度 が 実 現 で き る. な お 経 験 的 に,セ
ラ ミッ ク ス の強 度 は結 晶 粒 の寸 法,つ
ま り粒 径 が 小 さ くな る
ほ ど高 くな る こ とが 知 られ て い る.こ れ は最 近 の研 究 に よ る と,粒 径 を小 さ くす る と材 質 中 の 破 壊 源 の寸 法 も小 さ くな る傾 向 が あ る た め で あ る.こ の こ と に よ り,高 強 度 材 料 の 開 発 で は,粒 径 を で き るだ け細 か くす る努 力 が な され る. ⅱ) 電 気 伝 導 性:結
晶 自体 が 高 い 電 気 伝 導 性 を もつ 場 合 で も,材 料 全 体 と
して の 電 気 伝 導 性 が 高 い と は限 ら な い.図2.12に
示 す とお り,そ れ ら結 晶 子 が
薄 い 絶 縁 層 で 囲 まれ て し ま う と,材 料 は全 体 と し て は電 気 を 通 せ ず 絶 縁 体 とな る.そ れ ら絶 縁 体 が 孤 立 した 粒 子 と して材 料 中 に点 在 す る場 合 に は,電 気 伝 導体 とな る. 粒 界 は,そ
こ に特 に粒 界 層 が 認 め られ な い場 合 で も,し ば し ば電 気 伝 導 性 に非
常 に強 い 影 響 を 及 ぼ す.こ れ は,粒 界 の不 純 物 偏 析 や粒 界 の 電 子 的 エ ネル ギ ー順 位 と関 係 す る.こ れ らの 現 象 は,後 述 の バ リ ス タ ー,PTCRお
よ び粒 界 絶 縁 層
型 コ ンデ ン サ ー な ど に利 用 され て い る. 図2.13に
示 す とお り,導 電 性 の粒 子 と絶 縁 性 の粒 子 が 混 在 す る と き,材 料 全
体 の 電 気 伝 導 性 はパ ー コ レ ー シ ョ ン理 論 で 説 明 さ れ る.簡 単 の た め,図 の とお り,正 方 形 の 同 じ寸 法 の板 状 粒 子 が 二 次 元 的 に並 ぶ と き を考 え よ う.各 粒 子 は絶 縁 体,ま
た は導 電 体 で あ る.電 気 は粒 子 が 辺 で 接 す る と き に は そ れ ら の粒 子 間 を
流 れ られ るが,隅
で 接 す る と き に は流 れ られ な い とす る.こ
こで,各 粒 子 の位 置
に どち らの 粒 子 が 入 る か は,そ の 存 在 割 合 で 決 ま る.こ の場 合,絶
図2.12 粒 界の絶縁相 の分布 と電気伝導性
縁 粒 子 の量 が
図2.13 伝 導 相 と絶 縁 相 の 割 合 に よ る材 料 と しての 伝 導 の変 化 黒 の伝 導相 は,そ
の 割 合 が 増 す に従 い急 激 に連 続 した相 を形 成 す る.
多 い と,伝 導 粒 子 が連 結 で きず,材 値 に達 す る と(図 で は60%程
料 は絶 縁 体 で あ る.伝 導 粒 子 の量 が あ る臨 界
度),電
気 は伝 導 粒 子 を伝 わ り,一 方 の 端 か ら他 端
に到 達 可 能 とな る.伝 導粒 子 の量 が 臨 界 値 を超 え る と,粒 子 の量 と と も に そ れ ら が 互 い に連 結 す る確 率 は飛 躍 的 に 高 ま り,し た が って 材 料 全 体 と して の 伝 導 性 は 急 激 に増 す. ⅲ) 熱 伝 導 性:電
気 伝 導 性 と同 様 に,結 晶 子 自体 の 熱 伝 導 性 が 非 常 に高 く
て も,そ れ らが 熱 伝 導 性 の低 い二 次相 で 囲 ま れ て い る と,材 料 と して の 熱 伝 導 性 は非 常 に低 くな る.そ の た め,最 近 の 高 熱 伝 導 性 セ ラ ミッ ク ス の 開発 で は,微 構 造 の 設 計 が 非 常 に重 要 で あ る. 高 い 熱 伝 導 は,IC基
板 や パ ワー モ ジ ュ ー ル 基 板 な どの温 度 上 昇 を最 小 限 に抑
え る の に必 要 で あ る.一 般 に,多
くの セ ラ ミ ック ス は,金 属 よ り熱 伝 導性 が 低 い
が,窒 化 ア ル ミニ ウ ム セ ラ ミッ ク ス は,理 論 的 に は 金 属 ア ル ミニ ウ ム に 匹 敵 す る 高 い 熱 伝 導 性 と電 気 絶 縁 性 を もつ た め,こ の 用 途 に最 適 で あ る.図2.14の
模式
図 の とお り,窒 化 アル ミニ ウム 粉 体 に 含 まれ る微 量 の 酸 素 は熱 伝 導 を 阻 害 す る た め,そ
の ま まセ ラ ミ ック ス に し て も高 い 熱 伝 導 性 は得 られ な い.窒 化 ア ル ミニ ウ
ム セ ラ ミ ック ス で は それ を 除 去 す る た め,焼 結 助 剤 と して 酸 化 イ ッ トリ ウム を添 加 して あ る.酸 化 イ ッ トリ ウム は,焼 結 時 に粉 体 中 の 酸 素 と反 応 して ガ ー ネ ッ ト を形 成 し,そ の 結 晶 は窒 化 ア ル ミニ ウ ム粒 子 の粒 界 三 重 点 や 四 重 点,す
な わ ち3
個 あ る い は4個 の 粒 子 が 出会 う部 分 に析 出 し,粒 子 の 接触 面 す なわ ち二 粒 子 粒 界 に は析 出 し な い.そ
の た め,図2.14に
示 し た とお り,酸 素 を 除 去 さ れ た 高 熱 伝
導 性 の 窒 化 ア ル ミニ ウム 粒 子 が粒 界 を介 して 直 接 結 合 し,セ ラ ミッ ク ス全 体 と し て高 い 熱 伝 導 性 が 実 現 され る. b. 構 造 鈍 感 な性 質
構 造 鈍 感 な 性 質 に は,比 熱,比
重,熱
膨 張,弾
性率
図2.14
微 構 造 と熱 伝 導
な どが あ る.こ れ らは,材 料 全 体 の特 性 が,構 造 中 の 主 相 の特 性 で 支 配 され る も の で あ り,微 構 造 に よ る影 響 は ほ と ん どの もの で は 多 くて も10%程 10倍 に も変 化 す る こ とは な い.例
え ば,同 一 物 質 の 比 熱 は材 料 の 形 態 が 単 結 晶,
焼 結 体 あ る い は粉 体 の状 態 で あ っ て も,ほ い て,こ
度 で あ る.
とん ど影 響 され な い.材 料 の 応 用 に お
れ ら構 造 鈍 感 な特 性 だ けが 必 要 な 場 合 に は,微 構 造 の制 御 は あ ま り重 要
で は な い. 2.3 微 構 造 の 評 価 法 微 構 造 の 調 べ 方 に は い くつ か あ る.簡 単 に 調 べ る に は,セ ラ ミ ッ ク ス を 破 壊 し,そ の 破 面 を走 査 型 電 子 顕 微 鏡 な どで観 察 す る.構 造 を定 量 的 に調 べ る に は, 研 磨 面 や そ の エ ッチ ン グ面 を光 学 顕 微 鏡 や走 査 型 電 子 顕 微 鏡 で 観 察 す る が,こ
れ
はや や手 間 が か か る.微 構 造 を調 べ る の に,最 近 で は透 過 観 察 法 も利 用 され 始 め て い る. 2.3.1 研 磨 面 の 観 察 セ ラ ミッ ク ス は硬 い た め,小 さ な 試 料 を手 で 保 持 して 削 るの は難 しい.研 磨 で は試 料 を樹 脂 な どに埋 め 込 み,こ れ を ダ イ ヤ モ ン ド砥 粒 を 用 い,そ
の粒 径 を徐 々
に 細 か くし て削 る.最 終 的 に は鏡 面 が 得 られ る まで 研 磨 す る.こ の 際,高 材 料 は特 に硬 い た め,自 動 研 磨 器 が 望 ま しい が,多
温構造
くの電 子 材 料 用 セ ラ ミ ッ ク ス
は 硬 度 が 比 較 的 低 く,半 手 動 で も研 磨 可 能 で あ る. 得 られ た研 磨 面 を光 学 顕 微 鏡 で 観 察 す る と,気 孔 や 二 次 相 の存 在 が 認 め ら れ
図2.15
三 次 元 構 造 の 研 磨 面 に よ る観 察
三 次 元 構 造 を任 意 の 平 面 で 切 る と き,平 面 上 の 面積 割 合 は,そ 体 積 中 の体 積 分 率 に等 しい.こ えや す い.平
の構造 の
れ は立 体 を小 さ な ピ クセ ル に分 け る と考
面 で 切 り取 られ る ピ ク セ ル は,確
率的にその立体の全体積
に 占 め る ピ ク セル 割 合 に等 し い.
る.そ の 一 例 を図2.6に
示 して あ る.黒
くみ え る も の が 気 孔 で あ る.図2.15に
示 す とお り,材 料 中 に お け る そ れ ら各 相 の存 在 量 は画 像 の 解 析 で 定 量 的 に求 め ら れ る.つ
ま り,材 料 中 の そ れ らの 存 在 量(体 積 分 率)は 面 積 分 率,す
面 の 面 積 に 占 め る そ れ ら構 造 の面 積 で 与 え られ る.例 え ば,多 は約2%程
度 の気 孔 を含 む が,こ
の場 合 に は,研 磨 面 の2%を
なわち研磨
くの セ ラ ミッ ク ス 気孔部 分が 占め る
こ と とな る. 2.3.2 エ ッチ ン グ 面 の 観 察 こ の観 察 で は,各 結 晶 子 の形 状 が 明 瞭 とな り,そ れ らの 形 や 寸 法 を調 べ る こ と が で き る.エ
ッチ ン グ に は,化 学 的 方 法 と熱 的 方 法 が あ るが,後 者 が 一 般 的 で あ
る.標 準 的 な 処 理 条 件 は,焼 結 温 度 よ り50∼100℃ 例 を図2.6に
低 温 で1時 間 で あ る.す で に
示 した とお り,構 造 が 可 視 化 さ れ るの は,い ず れ も粒 界 や粒 子 の 性
図2.16
セ ラ ミ ック ス の研 磨 とエ ッチ ン グ に よ る粒 界 溝 の形 成
質 が そ の 方 位 に よ り変 化 す る こ とや,図2.16の
よ う に 粒 界 の もつ 特 異 な性 質 を
利 用 す る もの で あ る. 等 方 的 な構 造,す
な わ ち方 向依 存 性 の な い構 造 を もつ セ ラ ミ ック ス で は,平 均
粒 径 を次 の とお り求 め られ る.ま ず,得
られ た写 真 上 に 円 また は直 線 を 引 く.次
に,直 線 と粒 界 との 交 点 の 数 を数 え る.直 線 が3個 きに は,こ れ を1.5と を計 算 す る.こ
して 数 え る.次 に 交 点1個
の粒 子 の 交 わ った 点 を通 る と
当 た りの 弧 あ る い は直 線 の長 さ
の値 は 平 均 粒 径 で は な い.直 線 の長 さ は粒 子 の 直 径 よ り常 に小 さ
い か らで あ る.結 晶 粒 を球 形 を仮 定 す る と,平 均 粒 径 は この 長 さ の1.5倍
であ
る. 2.4 気 孔,気
孔 率 お よび 密度
セ ラ ミ ック ス で は,気 孔 の 量 や 寸 法 お よび それ らの 分 布 は特 性 に非 常 に大 きな 影 響 を 及 ぼ す.し
た が っ て,そ れ らを適 切 に評 価 す る必 要 が あ る.こ れ に は高 密
度 焼 結 体 で は微 構 造 観 察 も利 用 で き るが,多
孔 体 を含 む 一 般 的 な もの で は,気 孔
の 直 接 評 価 や 密 度 測 定 が一 般 的 で あ る. 2.4.1 気 孔 径 と分 布 気 孔 の 寸 法,量
お よ び そ の 分 布 を調 べ る に は,水 銀 圧 入 法 が 用 い られ る.こ の
方 法 は,水 銀 が セ ラ ミ ック ス に よ りは じか れ る性 質 を利 用 す る もの で あ る.す な わ ち,水 銀 を セ ラ ミッ ク ス気 孔 な どの 細 孔 中 に 押 し込 む に は,圧 力 を か け る必 要 が あ る.こ の 圧 力 は,細 孔 の寸 法 が 小 さ くな る ほ ど高 い.し た が っ て,細 孔 の 評 価 を行 うに は,試 料 を水 銀 の入 っ た 高 圧 容 器 に 入 れ,こ
れ に圧 力 を加 え る.こ の
と き の試 料 中 へ の水 銀 の浸 入 量 と圧 力 との関 係 を求 め,こ れ を解 析 して細 孔 の 寸
図2.17
気 孔 径 分 布(累
積 曲線 と微 分 曲 線)
法 とそ の量 を求 め る もの で あ る. デ ー タ は一 般 に 図2.17の
とお り,累 積 気 孔 径 分 布,あ
るい は微 分 気 孔 径 と し
て 図 示 され る.前 者 は,気 孔 径 を横 軸 に と り,縦 軸 に は そ の気 孔 よ り大 き な気 孔 の 量 を示 す もの で あ る.後 者 は,各 気 孔 の量 を気 孔 径 に対 して プ ロ ッ トした もの で あ る. 2.4.2 密 度 と気 孔 率 セ ラ ミッ ク ス に は 開 気 孔,閉 気 孔 が 含 まれ る.密 度 とは物 体 単 位 体 積 当 た りの 質 量 で あ るが,そ
の体 積 と して選 ぶ も の に よ り,真 密 度,見
か け密 度 お よ びか さ
密 度 が あ る. 真 密 度 と は,セ ラ ミッ ク ス の体 積 と して,図2.7の
固 体 の部 分 だ け を とる もの
で あ る.こ れ は固 体 部 分 に つ い て の 実 際 の 密 度 とな るた め,こ
う呼 ば れ る.当 然
な が ら真 密 度 は,微 構 造 に よ り影 響 され な い.見 か け密 度 と は,図2.7の
開気孔
を 除 く体 積 当 た りの 質 量 で あ る.か さ密 度 と は,図2.7の
す べ て の気 孔 を含 め た
物 体 の体 積 当 た りの 質 量 で あ る.こ の体 積 は 球,角 柱,板
な ど単 純 形 状 の物 体 で
は,そ の 外 形 寸 法 か ら求 め る もの と同 じで あ る.相 対 密 度 と は,見 か け密 度 や か さ 密度 と,真 密 度 との 比 で あ る.気 孔 を 含 ま な い 物 体 で は,相 対 密 度 は1,あ い は100%で
る
あ る.
全 気 孔 率 とは,す べ て の気 孔 を含 め た物 体 単 位 体 積 中 に 含 まれ る気 孔 の割 合 で あ る.見 か け気 孔 率 とは,開 気 孔 を除 く物 体 の 単 位 体 積 当 た りに含 まれ る 閉気 孔 の割 合 で あ る. 密度 や 気 孔 率 の測 定 は水 銀 圧 入 法 も使 わ れ るが,よ
り簡 単 に は空 気 中 や水 中 で
の重 量 測 定 に よ る方 法 が 用 い られ る.こ の 方 法 で は,ま ず 乾 燥 試 料 の質 量Wを 求 め る.次
に これ を水 中 で5時
W1を 求 め,さ
間 煮 沸 後,水
中 で 冷 却 す る.そ
の水 中 での質量
ら に試 料 表 面 の 水 を軽 く拭 った 後 の空 気 中 で の質 量W2を
これ らの 値 か ら,水 の比 重 を1,空 密 度 は次 の とお り求 ま る. み か け 密 度:W/(W−W1),
相 対 み か け密 度: み か け 気 孔 率:
求 め る.
気 の質 量 を無 視 し,真 密 度 を ρ とす る と,各
か さ 密 度:W/(W2−W1)
相 対 か さ密 度: 全 気 孔 率:
2.5 粗 大 傷 の 評 価 例 えば傷 つ い た ガ ラス が 非 常 に脆 弱 で あ る よ う に,セ ラ ミッ ク ス で は粗 大 な傷 が1個
で も存 在 す る と,他 の微 構 造 が 均 質 で きわ め て 優 れ た もの で も,そ の 強 度
は非 常 に低 い.し
た が っ て,セ ラ ミッ ク ス の強 度 特 性 を理 解 す るた め に,粗 大 な
傷 を調 べ る こ と は非 常 に重 要 で あ る.粗 大 な傷 は,き わ め て小 数 で あ る た め,そ れ をみ つ け るに は材 料 全 体 を調 べ る必 要 が あ る.こ れ に は,透 過 法 に よ る評 価 が 必 要 不 可 欠 で あ る. 透 過 法 に は,X線,超
音 波 お よ び 光 を 使 う方 法 が あ る.X線
を使 う 方 法 は,
医 学 の 分 野 で 普 及 した トモ グ ラ フ ィー 法 や レ ン トゲ ン写 真 法 と 同 様 な も の で あ り,し ば し ば製 品 の 最 終 検 査 に使 わ れ る.し か し,小 さ な傷 を発 見 す るの は難 し い,ま た 装 置 が 高 価 で あ る な どの 問 題 が あ る.超 音 波 を用 い る方 法 に は,い か の 手 法 が あ る.代 表 的 な もの は,レ
くつ
ー ダ ー の よ う に超 音 波 ビー ム を ス キ ャ ン
し,傷 か らの 反 射 波 を用 い て傷 の 映 像 を求 め る もの と,対 象 物 体 中 を通 る超 音 波 の 減 衰 に よ り傷 を調 べ る もの で あ る.い ず れ も分 解 能 は 低 く,装 置 は高 価 で あ る.光 を用 い る方 法 は,セ
ラ ミ ッ クス の 多 くが 透 明体 で あ る点 を活 用 す る もの で
あ り,最 近 使 わ れ 始 め た も の で あ る.こ の 方 法 で は,セ mm程
ラ ミ ッ ク ス か ら厚 さ0 .1
度 の 薄 片 試 料 を切 り出 し,こ れ を透 過 観 察 して 内部 構 造 を調 べ る も の で
あ る.従 来 の研 磨 面 観 察 で は傷 は ほ とん ど認 め られ な い と きで も,透 過 法 観 察 で は大 き な傷 が わ か る.こ の 方 法 は,破 壊 検 査 で あ るが,製 非 常 に大 き な力 を 発 揮 す る と期 待 さ れ て い る.
造 プロセスの開発 では
3 セ ラ ミックス の合成 プ ロセ ス技術
セ ラ ミッ ク ス は,一 般 に は 「粉 末 原 料 調 製 → 成 形 → 焼 結 → 加 工 」 の プ ロ セ ス に よ っ て つ く られ る.セ ラ ミ ック ス 特 有 の耐 熱 性,機 導 性,誘
電 性,化
学 的 安 定 性 とい った 性 質 は,セ
械 的 強 度,電 気 的 絶 縁 性 ・半 ラ ミ ッ クス の 微 視 か ら巨視 にわ
た る焼 結 微 構 造 に 強 く依 存 す る の で,微 構 造 の 設 計 ・制御 に粉 体 原 料 の粒 子 の 大 き さ,粒 度 分 布,形
態 な どの粒 子 性 状 の制 御 はた い へ ん 重 要 とな る.原 料 粉 末 の
合 成 法 は液 相 法,気 相 法,固 相 法 に大 別 され る. 3.1 粉 末 の 合 成 3.1.1 液 相(溶
液)か
らの 合 成
a. 沈 殿 反 応 の 熱 力 学
液 相 法 は,合 成 した い 物 質 の構 成 イ オ ン を溶 か し
た 溶 液 か ら析 出 させ る 方 法 で あ る.飽 和 溶 液 お よ び 溶 解 度 積 以 下 の溶 液 で は,均 一 核 生 成 ・成 長 に よ る沈 殿 は起 こ らな い(佐 々 木 義 典 ,他:結 化 学 シ リー ズ12),pp.80-90,朝 きな状 態(過 衡)に
飽 和 状 態)が
あ る状 態Aを
ΔC/Ceは
必 要 とな る.図3.1に
平 衡 温 度Teか
却 度ΔT=Te−Tお
倉 書 店,1999参
ら温 度Tに
照).そ
こで,溶 解 度 積 よ り大
お い て,溶 解 度 曲 線 上(溶 解 平 冷 や した 溶 液 状 態Bで
よ び 過 飽 和 量 ΔC=C−Ce(σ=C/Ceは
過 飽 和 度,の
よ うな 定 義 もあ るが,い
晶化 学 入 門(基 本
は,過 冷
過 飽 和 比,σ ′=
ず れ も過 飽 和 の 程 度 を表 す)の
状 態 に な る様 子 を模 式 的 に示 し た.平 衡 状 態 と過 飽 和 状 態 との 自 由エ ネ ル ギ ー 差 (ΔG)と
過 飽 和 の程 度 とは,熱 力 学 的 に ΔG=−RTln(σ)=−RTln(1+σ
の 関 係 が あ る.図 中 の 過 溶 解 度 曲 線 は,こ 度,す
′)