編集 荒船次郎 東京大学名誉教授
江沢 洋 学習院大学名誉教授
中村 孔一 明治大学教授
米沢富美子 慶應義塾大学名誉教授
は
じ
め
に
1967年 に 提 案 さ れ た統 一 ゲ ー ジ理 論 は 非 常 な成 功 をお さめ,わ
れわれ の知
りう るす べ て の 素 粒 子 現 象 を少 な く と も原 理 的 に は 説 明 で き る.そ の 根 幹 を な す 基 礎 概 念 は素 粒 子 論 を越 え て,宇 宙 論,原 子 核 理 論 や 物 性 理 論 に まで 広 が り つ つ あ る.本 書 は,素 粒 子 標 準 理 論 の 概 要 と実 験 的 基 礎 に つ いて の解 説 書 で あ り,読 者 と して は素 粒 子 現 象 を本格 的 に学 ぼ う とす る大 学 院 学 生 も し くは研 究 者 を対 象 とす る.本 書 で は ゲー ジ理 論 の 重 要 な テ ー マ につ い て の 実 験 的検 証 に 力 点 を置 い た が,各
テ ー マ に つ い て 重 要 な概 念 や 式 は 第1原 理(ラ グ ラ ン ジア
ン)か ら 導 い て あ り,教 科 書 と して 使 え る よ う配 慮 し た.本
シ リー ズ 第3巻
『 素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅰ 』 程 度 の 学 習 レベ ル(場 の 量 子 論 の 基 礎 的 知 識)が あ れ ば,本
書 に現 れ る式 は 高 次 効 果 は別 と して 自分 で 導 け る.ま た,他
の本 を参 照
せ ず と も本 書 の 中 で話 が 閉 じる よ うに 整 合 性 を もたせ た. 本 書 で 扱 う現 象 は,統
一 ゲー ジ理 論 が提 案 さ れ て か ら発 見 さ れ た新 現 象 で,
標 準 理 論 と して確 立 す る ため に 直接 検 証 を必 要 と した テー マ で あ る.標 準 理 論 以 前 の 現 象 や,新 は,す
で に 第4巻
現 象 で あ っ て も以 前 の"古 典 的 素 粒 子 論"で
説 明 で き る現 象
『素 粒 子 物 理 学 の 基礎Ⅱ 』 で と りあ げ た.
本 書 の 構 成 は 次 の 通 りで あ る.第1章
の 導 入 の 後,第2章
で ゲ ー ジ理 論 の ラ
グ ラ ン ジア ン を構 築 す る.本 書 の最 も重要 な 部 分 で あ るが,非 常 に 抽 象 的 で数 学 的 な ゲ ー ジ理 論 の 概 念 を,読 者 が 直観 的 か つ 物 理 的 な イ メー ジ を描 け る よ う 重 力 の 幾 何 学 的 解 釈 と対 比 し な が ら説 明 す る.電 弱 統 一 のGWS(グ -ワ イ ンバ ー グ-サ ラ ム)理 論 に つ い て は,第4章,第6章 とW,Z粒
で 中性 カ レ ン ト現 象
子 の 発 見 で理 論 と して 確 立 して ゆ く過 程 を 描 き,第7章
ン生 成 崩 壊 過 程 で 高 次 効 果 を含 め てGWS理
ラ シ ョウ
のZボ
ソ
論 が デ ー タ を完 壁 に再 現 し う る こ
と,精 密 デー タの 中 に標 準 理 論 以 外 の効 果 が 入 る余 地 が ほ とん どな い こ とを示 す. 強 い 相 互 作 用 の 理 論 で あ るQCDに
関 し て は,ま
ず 第5章
でQCDの
基本を
習 得 す る.漸 近 自由 と繰 り込 み 群 方 程 式 とい う重 要 概 念 を解 説 し,発 展 方 程 式 を 立 て て 深 非 弾 性 散 乱 を記 述 す る.次 に ジ ェ ッ トが パ ー トン(ク ォー ク と グ ル ー オ ン)の ハ ドロ ン化 した もの で あ る こ と,ジ ェ ッ ト現 象 がQCDの に従 う様 子 を 第8,9章 QCDの
処 方箋
で解 説 し,最 後 を トップ クォ ー ク発 見 で締 め く く る.
前 準 備 と して 第3章
パ ー トン モ デ ル を挿 入 し た.理 由 は実 験 で は 単 独
の クォ ー ク を扱 え な い の で,ク
ォー ク複 合 体 の核 子 を標 的 とす る実 験 デ ー タ を
パ ー トン 現 象 に翻 訳 す る ため の 枠 組 み を必 要 とす るか らで あ る.既 刊 の 『素 粒 子 物 理 学 の 基 礎Ⅰ・Ⅱ 』(本 書 で は ま とめ てⅠ と引 用 す る)で 解 説 ず み で あ る が,本 書 の 中 で 議 論 を閉 じる た め に 含 め た.す で に 学 習 ず み の 読 者 は 第3章
を
ス キ ップ して よ い. 全 体 の 構 成 と して は,中 性カ レ ン ト,W,Zの QCDと
電 弱 現 象 を ま とめ て 「上 」,
ジ ェ ッ ト現 象 を ま とめ て 「下 」 と し て 分 離 す る 方 が す っ き りす る が,
Wボ ソン が 実 験 的 に はハ ドロン 現 象 の 中 で扱 わ れ る こ とが 多 い た め,QCD解 説 をWボ
ソ ン の前 に 置 い た.た だ し,W現
多 くは な い の で,そ
象 の 理 解 に 必 要 なQCDの
知 識は
こ に こだ わ ら な け れ ば,本 書 を 電 弱 理 論 部 分 とQCD部
分
とに 分 離 して使 うこ と も可 能 で あ る.学 習 目的 に 応 じて適 当 に 取 捨 選 択 して い た だ け れ ば 幸 い で あ る. 本 書 は,重
い クォ ー ク の 崩 壊 現 象 や い わ ゆ る柔ら か い過 程 な ど,QCD非
動 効 果 の 入 る現 象 は 取 り扱 い 範 囲 外 と した.非 摂 動 的QCDは,イ ン効 果 な ど新 し い概 念 を含 み,こ 現 時 点 で は格 子 ゲ ー ジ理 論,カ
摂
ンス タン ト
れ か ら発 展 の 見 込 め る重 要 な分 野 で あ るが,
イ ラ ル 摂 動 論 な ど を使 っ て現 象 論 的 に扱 わ ざ る
を えず,標 準 理 論 の 検 証 対 象 とい う よ りは,標 準 理 論 を前 提 とす る研 究 分 野 で あ る とい う理 由 に よ る.標 準 理 論 の 範 囲 内 で あ っ て も,小 林-益 川 モ デ ル と ヒ ッ グ ス粒 子 は,実 験 の結 果 次 第 で は 標 準 理 論 を越 え る可 能 性 が あ り,明 らか に標 準 理 論 を越 え る現 象 と と も に,現 代 高エ ネ ル ギー 物 理 学 の最 先 端 分 野 に位 置 す る の で,『 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 』 と して巻 を改 め て 解 説 す る予 定 で あ る.
本 書 を書 き始 め た段 階 で は,標 準 理 論 は確 立 は して い た もの の精 密 デ ー タは 集 積 途 上 で あ り,解 説 書 と し て は 数 年 で 時 代 遅 れ に な る危 険 性 を秘 め て い た. 幸 い に して精 密 デ ー タ は こ こ数 年 で 出 つ く し,学 界 の 動 向 は今 で は検 証 よ りは む し ろ標 準 理 論 か らの 差 異 を 追 求 し,新 物 理 を模 索 す る方 向 に 向 か っ て い る. 本 書 に 収 録 した トピ ッ クは,デ ー タの 小 さ な精 密 化 は これ か ら も続 くで あ ろ う が,検 証 に は十 分 な 量 と精 度 をす で に 出 し,理 論 的 に も定 着 し た分 野 に 属 す る.し たが っ て 本 書 が 解 説 書 と して 時代 遅 れ に な る こ とは な い で あ ろ う と楽 観 して い る.再 校 の段 階 で大 幅 に 改 訂 し た ため,編
集部 に は ご迷 惑 をお か け した
が,お か げ で整 合 性 の あ る教 科 書 に仕 上 げ ら れ た と 自負 して い る. 終 わ りに,本 書 を執 筆 す る機 会 を与 え て 下 さっ た 編 者 の 荒 船 次 郎 氏 と江 沢 洋 氏 に 感 謝 す る.特 に荒 船 氏 に は全 編 を通 して詳 細 に査 読 し て い た だ き,い
ろ
い ろ コ メ ン トをい た だ い た .し か し,本 書 の 不 備 な 点 に つ いて の一 切 の 責 任 は 筆 者 に あ る.読 者 に ご迷 惑 をか け な い よ う祈 る ば か りで あ る.ま た,こ の 執 筆 の た め 私 の研 究 室 ス タ ッフ 学 生 諸 氏 に は い ろ い ろ ご協 力 を い た だ い た.こ
の場
を借 りて感 謝 の 意 を表 させ て い た だ く.最 後 に,本 書 の 刊 行 に 向 け ご面 倒 をお か け した朝 倉 書 店 の 方 々 に 感 謝 の意 を表 す る. 1999年2月 大坂にて 筆
者
目
1 序
次
論
1
1.1 標 準 理 論
1
1.2
クォ ー ク と レプ トン
1.3
クォ ー ク と レプ トンの サ イ ズ
5
1.4
クォ ー ク モ デ ル と カ ラー 自由 度
7
1.4.1
ク ォー クモ デ ル
1.4.2
カ ラー 自由 度
1.4.3
閉
2 ゲ
ー
ジ 理
2
7 9
じ 込 め
10
論
15
2.1 歴 史 的 背 景
15
2.2 ゲ ー ジ理 論 の 幾 何 学 的 解 釈
18
2.2.1
ゲ ー ジ原 理
18
2.2.2
内 部 空 間
21
2.2.3
ゲ ー ジ場 の幾 何 学 的 解 釈
26
2.2.4
等 価 原 理 と共 変 微 分
30
2.3 ア ハ ロ ノ フ-ボ ー ム 効 果 2.4 ヤ ン-ミ ル ズ 場(非
34
可 換 ゲ ー ジ 場)
37
2.5 隠 さ れ た 対 称 性 2.5.1
自発 的 対 称 性 の 破 れ
2.5.2
相転移 の定式化
2.5.3
南 部-ゴ ー ル ドス トー ン ボ ソ ン
2.5.4
ヒ ッグ ス機 構
44 44 45 46
48
2.6 繰 り込 み と ゲ ー ジ 不 変 性
52
2.6.1
中 性 ボ ソ ン の役 割
52
2.6.2
繰 り込 み に お け る ヒ ッ グ ス の 役 割
54
2.7 GWS理
論
55
2.7.1
SU(2)×U(1)
55
2.7.2
フ ェ ル ミオ ン の 質 量 項
2.7.3
ワ イ ンバ ー グ角
59
2.7.4
W,Zの
60
57
質 量
2.7.5 GWS理
論の特徴
3 パ ー トン モ デ ル
62
65
3.1 フ ェ ル ミ オ ン2体
散乱
3.1.1
運 動 学 と断 面 積
3.1.2
eμ
3.1.3
e+e-→
3.1.4
偏 極eμ 散 乱
3.1.5
ニ ュ ー ト リノ クォー ク散 乱
散
乱
66 66 67
μ+μ-反 応 の 断 面 積
68 70 72
3.2 eN弾
性散 乱
73
3.3 eN深
非弾性 散乱
74
3.4 パ ー ト ン モ デ ル
75
3.5 仮 想 フ ォ トン と の 反 応
77
3.6 ニ ュ ー ト リ ノ に よ る 深 非 弾 性 散 乱
79
3.7
ドレ ル-ヤ ン 過 程
4 中 性 カ レ ン ト(GWS理
84
論 の 検 証)
4.1 中 性 カ レ ン ト反 応 の 発 見
88 88
4.2 中 性 カ レ ン ト ラ グ ラ ン ジ ア ン
92
4.3 ν-e散
乱
94
4.3.1
運
動
学
4.3.2
断
面
積
96
94
4.3.3
gV,gA,sin2θWの
4 .4 eD散
決定
97
乱 の非対称
4.5 GIM機
99
構
104
4.6 ハ ドロ ン に よ る 中 性 カ レ ン ト反 応 4.6.1
断
面
4.6.2
ワ イ ン バ ー グ角
4 .7
積
4.7.1
e-e+→ff反
4.7.2
ee→ll角
4.7.3
c,bはSU(2)2重
4.7.4
ま
5 QCD(量 5.1 は
106
106
109
領 域 のe-e+→ff反
応
110
応の一般 式 分布前後 非対称
と
110 112
項 か
め
113
118
子 色 力 学)
120
じ め に
120
5.1.1
な ぜQCDか
120
5.1.2
カラー交換 力の強 さ
5.1.3
QCDに
5.2 漸 近
お け る フ ァ イ ン マ ン規 則
121
自 由
5.3 繰 り込 み 群 方 程 式
125
129
134
5.3.1
観 測 量 のQ2依
5.3.2
QCD高
5.3.3
Λ の不 定 性
139
グル ー オ ン放 出
141
5.4
存性
134
次 補 正 と ス ケー ル依 存 性
137
5.4.1
放 出 確 率
5.4.2
赤 外 発 散
5.4.3
対 数 第1近
似
147
5.4.4
横運 動量分布
149
145
5.5 発 展 方 程 式 5.5.1
141
パ ー トン フ ラ ッ ク ス
150 150
5.5.2
DGLAPの
発 展 方程 式
5.6 発 展 方 程 式 の 解 法 5.6.1
モ ー メ ン トの 方 法
5.6.2
数 値 解 法
157
163 163 166
5.7 ド レ ル-ヤ ン過 程
172
5.8 ハ ド ロ ン-ハ ド ロ ン 衝 突 反 応
6 Wボ 6.1
ソ W,Zの
175
ン
180
発見
180
6.1.1
歴 史的背景
180
6.1.2
UA1実
181
験
6.2 崩 壊 幅 の 計 算
185
6.3
188
W,Zの
ハ ドロ ン 生 成
6.4 ス ピ ン の 決 定 6.5
Wの
質 量 と幅 の 決 定
6.5.1
質
6.5.2
ΓW
6.6 Wの
191 193
量
193 196
横運動 量分布
6.6.1
グ ル ー オ ン放 出 効 果
6.6.2
グルー オ ン 多重 発 生効 果
6.6.3
の
197 197 200
振 る舞 い
6.7 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 結 合(e+e-→W+W-反
201
応)
202
7 Zボ
ソ
7.1 Zの
生成断面積
208
7.1.1
ボル ン近 似
208
7.1.2
フ ォ トン 放 射 の 影 響
211
7.1.3
放 射 補 正 に よ る改 良 式
212
7.2 LEPの 7.2.1
ン
実験結果 Zの
質 量 と崩 壊 幅
207
217
217
7.2.2
ニ ュー ト リ ノ の 種 類 数
7.2.3
レ プ トン の 前 後 非 対 称AFBl
221
7.2.4
偏 極 ビ ー ム に よ る 左 右 非 対 称ALR
222
7.3 放 射 補 正
223
7.3.1
ワ イ ン バー グ角 の 定 義 と放 射 補 正 量Δr
7.3.2
ρパ ラ メ ター
7.3.3
ゲ ー ジ ボ ソ ンの 放 射 補 正
7.3.4 Δrの
220
223 226 227
評価
235
7.3.5
改 良 ボ ル ン近 似
242
7.3.6
ヴ ァー テ ッ ク ス補 正
7.3.7
MS処
247
方 の ワ イ ンバ ー グ角
7.4 標 準 理 論 の 彼 方
8 ジ ェ ッ トの 性 質(ジ
250 254
ェット 現 象1)
258
8.1 パ ー トン と ジ ェ ッ ト
8.1.1
ス ケ ー リ ン グ と破 砕 関 数
8.1.2
ジ ェ ッ ト変 数
8.1.3
ジ ェ ッ ト変 数 の 応 用
258 259 263 266
8.2 ハ ドロ ン 化 モ デ ル
270
8.2.1
理 論 とデ ー タの 比 較 処 方
270
8.2.2
パ ー トン シ ャ ワー の 手 法
272
8.2.3
独立破砕 モデル
276
8.2.4
紐 モ デ ル
8.2.5
ハ ド ロ ン化 モ デ ル の テ ス ト
8.3 ジ ェ ッ トの 分 離
279
282
285
8.3.1
ε,δの 方 法
285
8.3.2
ycutの 方 法
287
8.4 αs(Q2)の
8.4 包
8.4.2
決定法 含 反 応
ジ ェ ッ トの トポ ロ ジー か ら決 め る 方 法
289 289
291
8.4.3
漸 近 自由 の テ ス ト
295
8.5 グ ル ー オ ン の 性 質 ピ
296
8.5.1
ス
ン
8.5.2
ソ フ トグ ル ー オ ン と干 渉 効 果
8.5.3
グル ー オ ンの 自己結 合
8.5.4
ク ォー ク ジ ェ ッ トとの 違 い
9 高 エ ネ ル ギ ー ハ ド ロ ン 反 応(ジ
9.3 QCDの
298 302
ェ ッ ト現 象2)
9.1 大 横 運 動 量 の ジ ェ ッ ト生 成 9.2 2→2反
296
応
306
311 312 315
理 論 と実 験 の 整 合 性
323
9.3.1
ス ケー ル依 存 性
323
9.3.2
ジ ェ ッ トサ イ ズ
324
9.3.3
パ ー トン分布 関 数
327
9.4 パ ー トン の 下 層 構 造 は 見 え る か?
327
9.5 ジ ェ ッ トの 多 重 生 成
329
9.6 フ ォ トン 直 接 生 成 過 程
331
9.7 重 い ク ォ ー ク(c,b,t)の
生 成
333
9.7.1
重 い ク ォー クの 生 成 断 面 積
333
9.7.2
重 い ク ォー ク生 成 過 程 の特 徴
335
デ ー タ との 比 較
336
9.7.3 9.8
ト ッ プ ク ォー ク
9.8.1
e-e+反
応 に よ る ト ッ プ ク ォー ク 探 し
9.8.2
トップ ク ォー クの 崩 壊 モー ド
9.8.3
ト ッ プ ク ォー ク の 発 見
付
録
338 338 338 340
345
A 単 位,記
号,計 量
345
B デ ィ ラ ック 方程 式
346
C 断
面
積
350
D 回 転 と角 運 動 量
358
E C,P,T変
362
F SU(N)の
換性 数 学 的準 備
G 質 量行 列 とT,CPT変
365 換
379
H フ ィー ルツ 変 換 I
フ ァ イ ンマ ン規 則
J フ ェル ミオ ンル ー プ に よ る放 射 補 正 の計 算
索
引
382 383
388
399
1 序
1.1 標
論
準
理
論
現 在,素 粒 子 物 理 学 に 関 して は,標 準 理 論 と呼 ば れ る理 論 体 系 が あ り,少 な く も現 時 点 の 実 験 デ ー タ に 関 す る 限 りは 矛 盾 な く説 明 す る こ と に 成 功 し て い る.適 用 範 囲 を極 端 に 広 げ な い 限 り,理 論 的 に も首 尾 一 貫 す る 自 己矛 盾 の な い 閉 じた数 学 的体 系 で あ る.標 準 理 論 は,公 理 と もい うべ き次 の 二 つ の 前提 か ら な る. (1) 物 質 の 究 極 構 成 要 素 と し て の 素 粒 子 は,ク これ らは,ス
ピ ン1/2を
ォー ク と レ プ トン で あ る.
もつ フ ェ ル ミオ ン で,現 在 それ ぞれ6種
類 ず つ知 られ
て い る(表1.1). (2) 素 粒 子 間 の 力 は,ゲ ー ジ粒 子 に よ り媒 介 さ れ,そ ゲ ー ジ理 論 で あ る.標 準 理 論 の 取 り扱 う範 囲 は,強 用,弱
の数 学 的 枠 組 み は
い相 互 作 用,電
い 相 互作 用 で あ り,ゲ ー ジ粒 子 は そ れ ぞ れ グ ルー オ ン,フ
お よ びZボ
ソ ン と呼 ば れ ス ピ ン1を
もつ(表1.1).こ
磁相 互 作
ォ トン,W
の う ち,電 磁 相 互 作 用
と弱 い相 互 作 用 は統 一 され て い て 電 弱 相 互 作 用 と呼 ば れ,SU(2)×U(1)対
称
性 を もつ.電 磁 力 は電 荷 が 源 で あ り,弱 い相 互 作 用 は クォー ク と レプ トンの す べ て が もつ 弱荷(ア
イ ソス ピ ン と超 電 荷 の 組 み 合 わせ)が 源 で あ る.強 い相 互
作 用 は ク ォー ク の も つ3種 Chromo-Dynamics:略
の カ ラー 荷 を 源 と す る 場 の 量 子 論(Quantum
してQCD)に
従 い,SU(3)対
称 性 を もつ.
電 弱 相 互 作 用 の 理 論 が 現 在 の 形 で提 案 さ れ た の は1967年 の は1970年
代 後 半 で あ る.QCDも
で あ り,確 立 し た
ほ ぼ 同 時 期 に 確 立 さ れ た.前 提(1)に
い て は,ト ム ソ ンの 電 子 発 見 以 来,100年
つ
に わ た る各 種 素 粒 子 の 発 見 と試 行 錯
誤 の 歴 史 の 積 み 重 ね が あ る が,こ で,標
れ は い わ ば 標 準 理 論 形 成 の 前 夜 史 で あ るの
準 理 論 理 解 の た め に 必 要 な概 略 を こ の章 で 述 べ て お くに とどめ る.こ の
本 の 主 題 は(2)に の 適 用,そ
あ り,第2章
以 後 で,標
表1.1
$ mπ
準理 論 の骨格 とさまざ まな現 象へ
して精 密検 証 され て い る有 りさ ま を記 述 す る.
*
, mwは,正 確 に はmπc/h,mwc/hで Quantum Chromo -Dynamics
**
Quantum
#
Glashow-Weinberg-Salam
Electro
素 粒 子 の表
あ る.
-Dynamics
1.2 ク ォ ー ク と レ プ ト ン
a. ク ォ ー ク 物 質 を切 り刻 ん で い く と,物 質 を構 成 す る最 小 の単 位 に到 達 す る.こ れ を物 質(素)粒
子 と呼 ぼ う.物 質 の 性 質 を保 っ た ま ま の最 小 単 位 は 分 子 で あ る が,
分 子 は さ ら に 小 さ い 単 位 の 原 子 の 組 み 合 わ せ で で き て い る.原 る が,原
子 番 号Zと
原 子 質 量Aで
く電 子 の 雲 よ り な り,原
分 類 で き る.原
の 中 性 子(n)(ま
き さ は10-13cm×A1/3程
種 あ
子 は 原 子核 とそ れ を と りま
子 核 と電 子 は ク ー ロ ン力 に よ り 束 縛 さ れ て い る.原
の サ イ ズ は 電 子 雲 の 広 が り で 決 ま り,ほ 陽 子(p)とA-Z個
子 は100余
ぼ10-8cmで
あ る.原
と め て 核 子(N)と
度 で あ る.A個
子
子 核 はZ個
呼 ぶ)よ
の
り な り,大
の 核 子 を 原 子 核 と し て ま とめ て い る
力 は 核 力 と 呼 ば れ る 強 い 相 互 作 用 の 一 形 態 で あ る.核
力 の 担 い 手 と して π メ
ソ ン(中
年 に は フ ェル ミに よ る
間 子)が,1935年
湯 川 に よ り 提 案 さ れ た.同
弱 い 相 互 作 用 の 理 論 が 提 唱 さ れ て い る の で,現 ら 始 ま っ た と い っ て よ い で あ ろ う.原 あ る.α
子 核 は 自 然 崩 壊 に よ り相 互 転 換 が 可 能 で
崩 壊 は 強 い 相 互 作 用 で ヘ リ ウ ム の 原 子 核 を 放 出 す る 崩 壊 で あ り,γ
壊 は 電 磁 相 互 作 用 で γ線 を放 出 す る が,電 壊 は 弱 い 相 互 作 用 反 応 で あ る.加
崩
子 とニ ュー ト リノ を放 出 す る β 崩
速 器 で 高 エ ネ ル ギ ー の π メ ソ ン やKメ
が 大 量 に つ くれ る よ う に な っ て,核
子 と 反 応 さ せ る こ と に よ り,種
ン が 生 成 さ れ か つ 崩 壊 す る 過 程 を 観 測 し,強 た.ハ
代 素 粒 子 論 の歴 史 は こ の と きか
ソン
々 の ハ ドロ
い 力 と弱 い 力 の性 質 が 調 べ ら れ
ドロ ン と は 強 い 相 互 作 用 を す る 粒 子 の 総 称 で ク ォ ー ク の 複 合 体 で あ る.
半 奇 数 の ス ピ ン を もつ バ リオ ン と整 数 ス ピ ン を も つ メ ソ ン に 分 け る こ とが で き る.ク
ォ ー ク数(し
た が っ て バ リ オ ン 数 も)は
核 子 は 陽 子 電 荷 を 単 位 と し て,電 を も つdク
保 存 さ れ る.
荷+2/3を
ォ ー ク よ り構 成 さ れ る.u,
dク
も つuク
ォ ー ク と 電 荷-1/3
ォ ー ク を結 び 付 け る の は,グ
オ ン 交 換 に よ る 色 の 力 で あ る が,他
方 に お い て,u,
(ア イ ソ ス ピ ン2重
い 相 互 作 用 に 関 与 す る.さ
項 を 構 成 し て)弱
ギ ー 加 速 器 が 発 達 し て か ら は,(c, s)と(t, b)の2組
dク
ルー
ォー ク は 対 と な っ て
の2重
らに高 エネ ル 項 が クォ ー ク の
仲 間 に 加 わ っ た. b.
レ プ
ト ン
物 質 を構 成 す る 素 粒 子 で,強
い 相 互 作 用 を し な い 粒 子 を レ プ ト ン と 呼 ぶ.レ
プ ト ン は さ ら に 電 荷 を もつ 荷 電 レ プ ト ン(電
子e,ミ
プ ト ン)と
性 レ プ トン は ニ ュ ー ト リ ノ と呼 ば
れ,電
中 性 の レ プ トン に 分 け ち れ る.中
子 ニ ュ ー ト リ ノ(νe),ミ
(ντ)の3種
が あ っ て,そ
ュ ー オ ン μ,タ
ュ ー ニ ュ ー ト リ ノ(ν μ),タ
ウ(τ)レ
ウ ニ ュー ト リ ノ
れ ぞ れ 荷 電 レ プ ト ン と 対 を 組 ん で,ア
イ ソ ス ピ ン2
重 項 を構 成 して,弱
い相 互 作 用 に関 与 す る.レ プ トンは ス ピン1/2の
りレプ トン数(粒 子 に+1,反
粒 子 に-1を
粒 子であ
割 り当 て る)が 保 存 さ れ る.さ
ら
に 上 の2重 項 ご とに,独 立 に レプ トン数 が保 存 す る こ と も知 られ て お り,香 り の保 存 と呼 ば れ る. クォ ー ク と レプ トン を一 緒 に並 べ る と,3世
代 に縦 断 で き る(表1.1).わ
れ
わ れ の 宇 宙 は 第1世 代 の み で 完 成 させ る こ とが 可 能 で あ る.宇 宙 に あ る物 質 の 99.9%以
上 が 第1世 代 の 素 粒 子 で構 成 され,第2世
で 生 成 され る の み で あ る.第2,
代 以降 は高エネ ルギー反応
3世 代 は ほ とん ど第1世 代 の コ ピー とい って
よい くら い 同 じ性 質 を も ち質 量 の み が 異 な る.な ぜ 世 代 が 存 在 し,ま た世 代 数 が3で
あ る の か は 全 く理 解 で き て い な い.
ニ ュ ー トリ ノ は長 ら く実 験 の 測 定 範 囲 内 で 質 量 が ゼ ロ で あ っ た の で,標 準理 論 で は そ の よ う に 扱 う.し か し,最 近 スー パ ー カ ミ オ カ ン デ 実 験 に よ り, ニ ュ ー トリ ノが 質 量 を もつ こ と と香 りの 混 合 が 存 在 す る こ との 双 方 が 確 立 した の で1),実 験 デ ー タ に つ い て は す で に 一 部 標 準 理 論 の 境 界 を 越 え た こ と に な る.し か し,標 準 理 論 は ニ ュー ト リノ の 質 量 をゼ ロ と設 定 し た だ け で あ っ て, ゼ ロで あ るべ し と要 求 した わ け で は な い.実 際3個
もあ る量 子 状 態 が,す べ て
質 量 ゼ ロ状 態 で あ る とい うこ とは 量 子 力 学 の 常 識 に 照 ら し て不 自然 で あ っ て, ニ ュ ー トリ ノが 有 限 質 量 を もつ で あ ろ う こ とは大 抵 の理 論 物 理 学 者 が 予 想 して い た こ とで あ っ た.し か し,ニ ュー ト リノの 有 限質 量 は,新 物 理 が 出現 す るエ ネ ル ギー ス ケ ー ル と密 接 に 結 びつ い て い て,スー
パ ー カ ミオ カ ンデ の デ ー タが
どの よ うな意 味 を もつ か は 現 在 活発 な研 究 対 象 とな って い る.す
な わ ち,有 限
質 量 の 正 確 な位 置 づ け に つ い て は ま だ 定 説 が で きて い な い.標 準 理 論 か らの は み 出 し部 分 が あ る か ら と い っ て そ れ 以 外 の 部 分 を 無 効 に す る わ け で は な い の で,そ の テー マ に関 して は 第6巻 範 囲 に テー マ を絞 っ て解 説 す る.
で取 り上 げ る こ と と し,本 書 で は 標 準理 論 の
1.3
ク ォ ー ク と レ プ トン の サ イ ズ
電 子 や ミュ ー オ ン な ど荷 電 レプ トンが 大 きさ を もた な い質 点 粒 子 で あ る とい う証 拠 は,ど ん な 高 エ ネ ル ギー で あ れ,厳 密 に ラザ フ ォー ド散 乱 公 式(あ
るい
は そ の相 対 論 的 拡 張)に 従 う と い う単 純 な事 実 を 指 摘 す る の み で 十 分 で あ る が,後
の た め も う少 し定 量 化 して お こ う.話 を簡 単 化 して 非相 対 論 的 量 子 力 学
の 範 囲 で話 をす る と,ラ ザ フ ォ ー ド散 乱 断 面 積 公 式 は,フ
ェ ル ミの黄 金律
(1.1a) に,相
互 作 用 ハ ミル トニ ア ン と し て ク ー ロ ン ポ テ ン シ ャ ル
(1.2a) を入 れ てや れ ば 得 られ る.遷 移 行 列 要 素
(1.1b) は,ポ
テ ン シ ャ ル のq(=ki-kf)点
に お け る フ ー リ エ 変 換 量 で あ る.標
き さ を も て ば 電 荷 分 布 ρ(r)が 定 義 で き る.こ
的が大
の 場 合,
(1.2b) と な る か ら,ラ
ザ フ ォ ー ド散 乱 公 式 は
(1.1c) (1.3) と な っ て,広 が り を もつ 電 荷 に よ る散 乱 断 面 積 は,点 電 荷 に よ る 断 面積 に 形 状 因 子│F(q)│2を
掛 け た もの とな る.質 点 粒 子 で は 形 状 因 子 は 定 数 で あ るが,広
が り(サ イ ズ ∼a)を
もて ば,
で 形 状 因子 は定 数 で は な く な り│q│の 減
少 関 数 とな る.し た が っ て,形 状 因子 の振 る舞 い を調 べ て標 的 の 大 き さや 形 を 測 定 で き る.形 状 因 子 は 通 常,
(1.4) と い う 形 で パ ラ メ タ ー 化 し,a=1/Λ
を も っ て 大 き さ と 定 義 す る*1).q2はq2
の 相 対 論 的 拡 張 変 数 でロー off)と
レ ン ツ 不 変 量 で あ る.Λ
は 形 状 因 子 の 切 断 値(cut
も 呼 ば れ る.
測 定 対 象 や 実 験 条 件 の 違 い に よ り 形 状 因 子 は 一 つ と は 限 ら ず,ま を も パ ラ メ タ ー と し て 含 む が(こ る),基
本 的 に は,形
状 因 子 のq2依
ギ ー(∼100GeV)で
造 関 数 と い う名 が 一 般 的 で あ
存 性 が 大 き さ の 目 安 を 与 え る.高
の 電 子-陽 電 子 散 乱(Bhabha
の 与 え る 式 と 一 致 し,Λ 10-17cm以
の 場 合 は,構
の 下 限 値 が〓1TeVと
scattering)断 い う こ と が,電
た う え で,そ
の 存 在 が 確 認 さ れ て い る わ け で は な い.実
面 積 がQED 子 の大 きさが
独 に 取 り出 され
験 室 で検 出 す る段 階 で
ォ ー ク は ジ ェ ッ ト(多 数 の ハ ド ロ ン が 同 一 方 向 に 噴 出 す る 現 象)に
と考 え ら れ て お り,こ 説 す る.し
か し,質
の 詳 細 に つ い て は 第8章,第9章(ジ
点 粒 子 と し て の ク ォ ー ク の 存 在 は,状
り疑 う余 地 は な い.最
も 顕 著 な 例 は,電
点 粒 子 と し て の ク ォ ー ク(グ と の 散 乱 の 和 で あ り(パ
子 が
状 態 は クォー クの ハ ドロ ン 化 し た ュ ー ト リ ノ-核 子 非
ォ ー ク が 半 端 電 荷 を もつ こ と も確 認 さ れ
の パ ー ト ン モ デ ル の と こ ろ で ふ れ る.さ
ド ロ ン の ジ ェ ッ ト生 成 断 面 積 が,QCDの 限 値 が や は り1∼2TeVと
況 的 証 拠 が 数 多 くあ
子 と陽 子 の 散 乱 は 電 子 と 質
験 事 実 を 見 事 に 説 明 す る.ニ
弾 性 散 乱 デ ー タ と の 比 較 に よ り,ク れ に つ い て は,第3章
解
ル ー オ ン と ク ォ ー ク を ま と め て パ ー ト ン と 呼 ぶ)
ー トン モ デ ル),終
残 骸 で あ る と い う解 釈 が,実
な る
ェ ッ ト現 象)で
子-核 子 深 非 弾 性 散 乱 で あ る.核
ク ォ ー ク と グ ル ー オ ン よ り で き て い る と 仮 定 し,電
た.こ
エ ネル
下 と い う 根 拠 を 与 え る2).
物 質 の も う一 つ の 究 極 構 成 要 素 と さ れ て い る ク ォ ー ク は,単
は,ク
た他 の 変数
い う こ とが,ク
与 え る 式 に 精 度 よ く一 致 し,Λ
で あ る の で,
で もっ てサ イズ を定義 す る場合 もあ る.
の下
ォ ー ク も レ プ トン と 同 じ く ら い の 精
度 で 質 点 粒 子 で あ る と い う こ と の 根 拠 を 与 え る(第9章).
*1) ρ(r)が 球対称 分 布 をす る と き, で規
ら に,ハ
格化 す れ ば ,
1.4
1.4.1 1940年
ク ォー ク モ デル とカ ラー 自由度
ク ォークモデル 代,宇
宙 線 の 中 か ら 発 見 さ れ た ス ト レ ン ジ 粒 子 に 始 ま り,1960年
代
に は 加 速 器 と 泡 箱 の 発 展 に よ り集 積 さ れ た ハ ド ロ ン の 数 は 数 百 種 を 超 え る.こ れ に 伴 い ハ ド ロ ン を よ り基 本 的 な 構 成 粒 子 の 複 合 体 と み な す 複 合 モ デ ル が 発 達 し た.歴
史 的 に 重 要 な の は 坂 田 モ デ ル で あ る.す
イ ソ ス ピ ン,ス
ト レ ン ジ ネ ス に よ り分 類 し,複
最 小 の 単 位 と し て3個 さ れ た3).さら
の 基 本 粒 子(陽
に,池
田-大 貫-小 川 は,こ
ど 同 じ で あ る こ と に 注 目 し,ハ わ ら な い と い うSU(3)対 予 言 し た4).そ た た め に,基
子p,中
の 後p,
べ て の ハ ドロ ン を ス ピ ン,ア
合 体 と し て そ れ ら を再 現 で き る 性 子n,ラ
ム ダ 粒 子Λ)が
提案
れ ら3個
の基本粒 子の質 量が ほ とん
ド ロ ン の 性 質 は3個
の 基 本粒 子 の 入 れ 替 え で変
称 性(IOO対
称)を
n, Λ が バ リ オ ン8重
提 案 し,メ
ソ ン8重
項 の存 在 を
項 の メ ンバ ー で あ る こ とが 示 さ れ
本 粒 子 の 位 は ク ォ ー ク に ゆ ず っ た が,ク
ォー ク モデ ル の従 う数 学
的 枠 組 み は ク ォ ー ク モ デ ル 出 現 以 前 に す で に 存 在 し て い た の で あ る. SU(3)群
に は,同
ピ ン の 第3成 Yな
時 対 角 化 可 能 な 演 算 子 の 表 現 行 列 が2個
分 とハ イ パ ー チ ャ ー ジYと
名 付 け て,(I3, Y)の
あ り,ア
イ ソス
よ う に 書 く,I3,
ど ク ォ ー ク や レ プ ト ン の 種 類 を 区 別 す る 量 子 数 を 一 般 に 香 り と 呼 ぶ.
ク ォ ー ク モ デ ル で は,3個 -2/3)と
し
,バ
リ オ ン 数1/3を
反 ク ォ ー ク(qi)は,粒 ン はqiqjqkの 荷Qは
の 基 本 粒 子 をu(+1/2,+1/3),d(-1/2,+1/3),s(0, も た せ る.ま
と め てqiと
子 と 逆 の 量 子 数 を も つ の で,中
組 み 合 わ せ と な る .西
書 く こ と に す る と, 間 子 はqiqj,バ
島-ゲ ル マ ン の 法 則 に よ り,粒
リオ
子 の もつ 電
陽 子 電 荷 を単 位 と して
(1.5) で 与 えら れ る.qはSU(3)表 を3*と 表 せ ば,ク るが,組
現 空 間 の3次
元 基 底 ベ ク トル で あ る の で3,q
ォ ー ク の複 合 体qqは3×3=9次
元 の 基 底 ベ ク トル を つ く
み合 わ せ の 対 称 性 に よ り細 分 化 可 能(可 約)で
従 っ て既 約 化 す る と,
あ る.群 論 の 規 約 に
(1.6a) の よ う に分 解 で き る(付 録F).同
様 に バリ オ ン は
(1.6b) と表 せ る.バ あ り,10重
リオ ンの1重 項 は3個 の クォー クの 入 れ 替 え に 対 し完 全 反 対 称 で
項 は 完 全 対 称 で あ る.2組
の8は
混合 対 称 性 を もつ,ク
ォー ク に は
強 い相 互 作 用 が 働 い て,複 合 体 として の ハ ドロ ン に ま とめ て い る とす る と,基
(a)
(b) 図1.1 (a) 0-と1-の9重 (b) qiqjqkか
メ ソン とバ リ オ ン 多重 項
項 がqiqjで ら1/2+の8重
つ く れ る.
項 と3/2+の10重
項 が つ く れ る.
底 状 態 は 軌 道 角 運 動 量L=0のS状
態 と考 え られ る.基 底 状 態 は 香 り と ス ピ
ンの 組 み 合 わ せ で あ るか ら,ス
ピ ン上 向 き と下 向 きの クォ ー クの 入れ 替 え で,
SU(6)対
を(香
称 性 が 成 立 す るは ず で あ る.基 底ベ ク トル
り,ス
ピ ン)で
分 けて(3,1/2)の
よ う に 表 す と,メ
ソ ン とバ リオ ン は
それ ぞれ 次 の よ う な 多 重 項 に 分 類 で き る. メ
ソ
ン:
(1.7a) (1.7b)
バ リ オ ン:
(1.8a) (1.8b)
実 験 的 に は,ス せて9重
ピ ン0と1の
項 と い う),バ
メ ソ ン で は1重
リ オ ン で は 完 全 対 称 な56重
8重 項 と ス ピ ン3/2の10重
1.4.2
項 が 確 立 し て お り(合
項,す
励 起 状 態 と して,そ
リ オ ン の20,70な
の 存 在 を確 認 す る 実 験 が
粒 子 表 改 訂 作 業 が 続 け られて い る.
カ ラ ー 自 由 度
SU(3)の10重 を も ち,同
項 は,
一 粒 子3個
完 全 対 称 で あ る.ク
な どの 配 位
の 複 合 体 の 波 動 関数 が 香 り とス ピ ンの 入 れ 替 えに つ い て ォ ー ク は ス ピ ン1/2の
フ ェ ル ミ粒 子 で あ る の で,フ
統 計 を 満 た す た め に は 余 分 の 自 由 度 を 導 入 す る 必 要 性 が あ り,カ られ た.3個 度 は3で
な けれ ば な ら ず,カ
ラ ー 自 由 度 も ま たSU(3)に
と 名 付 けれ ば,ク
ォ ー ク の 種 類 は 一 挙 に3倍
増 す る.カ
カ ラ ー1重
項 はqqの
ラーの 自由
従 う,ク
ォー クは 香
をR,G,B(赤,緑,青) ラ ー 自 由 度 の 合 成 は,
香 り の 自 由 度 の 合 成 と 数 学 的 に は 全 く 同 等 で あ り,式(1.6)に リ オ ン で は 完 全 反 対 称 な1重
ェル ミ
ラ ー と名 付 け
の 粒 子 で 全 反 対 称 な 組 み 合 わ せ を つ く る た め に は,カ
り と は 独 立 に カ ラ ー 自 由 度 を も つ こ と に な り,それ
る の で,バ
わ
な わ ち ス ピ ン1/2の
項 が 確 立 して い る(図1.1).バ
ど は 混 合 対 称 性 を も ち,L≠0の 今 日 で も な さ れ,素
項 と8重
よ り分 類 され
項 の み が 実 現 されて い る こ と に な る.
組 み 合 わ せ で も 実 現 で き る こ と は,(1.6a)か
ら 明 らか
で あ る. 実 験 的 に は 単 独 の ク ォ ー ク は 発 見 され て い な い.ま
た ハ ド ロ ン に つ いて は
qqとqqqの
組 み 合 わ せ の み が 確 立 さ れ て お り,qqやqq, qqqqな
す るハ ドロ ン は 発 見 さ れ て い な い.こ くれ な い の で,ど
う や ら カ ラ ー1重
(カ ラ ー の 閉 じ 込 め).そ き る.qqqq,qqqqqで
どに 相 当
れ ら の 組 み 合 わ せ で は カ ラ ー1重
項 の み が 世 の 中 に 実 現 さ れ て い る ら しい
う とす れ ば クォー クが 単 独 で 存 在 で きな い の も 説 明 で は カ ラ ー1重
項 が つ くれ るの で そ の よ う な エ キ ゾ
テ ィ ッ ク 粒 子 が 存 在 す る は ず で あ る が,実
験 的 に は ま だ 確 立 し て い な い.
強 い 力 の 源 が す べ て の ク ォ ー ク が 等 し く も つ カ ラ ー で あ り,そ の 質 量 が ほ ぼ 等 し い な ら ば 香 り のSU(3)が さ ら に カ ラ ー ス ピ ン 交 換 力(電 作 用)を
項 はつ
して クォ ー ク
実 現 し て い る こ との 説 明 が つ く.
磁 場 の 磁 気 能率 相 互 作 用 に 対 応 す る カ ラ ー 相 互
用 い た 現 象 論 的 な 質 量 公 式 に よ る ハ ドロ ン 質 量 ス ペ ク ト ル 再 現 の 成 功
な ど で,強
い 力 の 数 学 的 枠 組 み と し てSU(3)ゲ
ー ジ理 論 が 浮 か び 上 が っ て き
た の は 自 然 な 成 りゆ き で あ っ た. カ ラ ー 自 由 度 存 在 の 証 拠 と し て は,上 ee→
ハ ド ロ ン 反 応 のR値((3.17)式),π0→2γ
Yan)過 ど,数
に 述 べ た 対 称 性 か ら の 要 求 の ほ か に,
程(§3.8参
照),W±,
Zの
多 く の 実 験 的 証 拠 が あ る.何
す るQCDが
標 準 理 論 と し て,原
崩 壊 率,ド
レ ル-ヤ ン(Drell-
ハ ド ロ ン 崩 壊 幅(第6章,第7章 よ りの 明 白 な 証 拠 は,カ
参 照)な
ラー を 力 の 源 泉 と
理 的 に は す べ て の ハ ドロ ン 現 象 を 矛 盾 な く説
明 で き る 事 実 に あ る.
1.4.3
閉
じ
込
め
ク ォ ー ク は 単 独 で 取 り 出 す こ と は で き な い(閉 そ の 理 由 づ け は 以 下 の よ う に 考 え ら れ て い る.カ (カ ラー1重
項 で な い)ク
ォ ー ク 間 に,距
じ込 め)と
考 え ら れ て い る.
ラー の 自 由 度 を あ ら わ に もつ
離 と ともにエ ネル ギーの 増加 す るボ
テ ン シ ャ ル が 働 け ば,無
限 大 の 距 離(実
験 的 に 測 定 で き る程 度 の 距 離)に
は引
き 離 せ な い で あ ろ う.こ
の ポ テ ン シ ャ ル は ク ォ ー ク を つ な ぐ紐 の 役 割 を 果 た す
(ハ ドロ ン の 紐 モ デ ル). こ の 紐 の 回 転 エ ネ ル ギ ー を 考 察 し て,角 ポ テ ン シ ャ ル の 形 を 推 察 し よ う.ク
運 動 量 と全 エ ネ ル ギ ー と の 関 係 か ら
ォ ー ク間 の ポ テ ン シ ャ ル を
(1.9) と す る.ク
ォ ー ク の 質 量 を 無 視 し て,紐
が 全 エ ネ ル ギ ー を 担 っ て い る と す る.
古 典 的 に 考 え る と,紐 ら れ て い る.こ
の 長 さdrあ
た り
の 紐 が た わ ま ず に 回 転 す れ ば,遠
安 定 状 態 を つ く る.い
ま,端(r=R)で
合,中
あ る 部 分 の 速 度υ
心 か ら 距離rに
のエ ネル ギーが 蓄 え 心 力 と紐 の 張 力 が 釣 り合 っ て
は 光 速 で 走 っ て い る と し よ う.こ はr/Rで
あ る か ら,質
量(全
の場
エ ネ ル
ギ ー)は,
(1.10a) で 与 え ら れ る.Inは
次 式 で 与 え ら れ る 定 数 で あ る.
(1.10b) 一 方
,角
運 動 量Jは,
(1.10c) とな るか ら,MとJか
らRを
消去す れば
(1.11)
図1.2 ス ピ ン以 外 の 量 子 数 の 等 し い ハ α(t)=J, t=M2で
あ る.β
レッ ジ ェ軌 跡
ド ロ ン がJ=J0+βM2の
は ど の 軌 跡 で も ほ ぼ0.93GeV-2と
関 係 に あ る.図 な る.
でRe
が 得 ら れ る.実
験 的 に は,J=J0+βM2(β=0.93GeV-2)が
て い る の で(レ
ッ ジ ェ 軌 跡 と い う:図1.2参
定数J0は
量 子 効 果 で 生 じ た と 見 な せ る.こ
動 量 の 関 係 式(1.10)から
求 め,実
良 い精度 で成立 し
照).n=1で
な け れ ば な ら な い.
の と き のkを,エ
ネ ル ギー と角 運
験 値 を入 れ る と
(1.12) す な わ ち,色
荷 を もつ ク ォー ク 同 士 に は,1fmあ
く.こ の 力 は 距 離 に 関 係 な く一 定 で あ る の で,巨 に 離 す に は14ト
た り1GeV程
度 の 力 が働
視 的 な 距 離,た
と え ば1m
ン ・mも の仕 事 が 必 要 で あ る.こ の よ う な莫 大 な エ ネ ル ギー
を ク ォー ク単 体 に 与 え る こ とは 不 可 能 で あ り,閉 じ込 め が 成 立 す る. 閉 じ込 め の 物 理 的 描 像 は,超 伝 導 体 との 類 推 か ら得 られ る.磁 気 力 の 強 さ は r-2に 比 例 す る が,こ れ は磁 極 か ら出 る磁 束 密 度 が 空 間 的 にr-2で に 対 応 して い る(電 気 力 の クー ロ ン則 と同 じ:図1.3(a)参 伝 導 体 の 中 に は,侵 入 長 δ程 度 しか 侵 入 で き な い が(マ δ程 度 の 束 に な れ ば よ り深 く侵 入 で きて,超 体).そ
の 磁 束 Φ0は2πhc/Qeの
広が るこ と
照).磁
力線 は超
イ ス ナ ー 効 果),太
伝 導 体 を貫 け る(第2種
単 位 で 量 子 化 され る(§2.3参
照).Qeは
さ
超伝導 超伝
導 を担 う場(ク ー パ ー 対)の 電 荷 で あ る.磁 束 に 沿 っ た束 の 中 で は超 伝 導 状 態 は 破 れ て い る.超 伝 導 体 内 にN(北 単 極 子)が
あ っ た とす る と,N極
極)とS(南
極)2個
か ら 出 た 磁 束 は,他
の モ ノ ポー ル(磁 気 方 のS極
に 集 結 す る.
こ の 磁 束 の つ くる 磁 場 は モ ノ ポー ル か ら〓 δ程 度 の 距 離 で は,通 常 の クー ロ ン 則 に従 うで あ ろ う.し か し,2個
の モ ノ ポ ー ル か ら十 分 離 れ て い る と き は,
磁 力 線 は太 さ δの 束 と な る(図1.3(b)).こ
の と きの 磁 束 密 度 は磁 束 に 沿 って
一 定 で あ る か ら,距 離 と と も に 減 衰 し な い 力 す な わ ち 閉 じ込 め の 力 が 得 られ る.束
とな っ た 磁 束 は あ た か も紐 の よ うに 振 る舞 い,単 位 長 さ あ た り一 定 の エ
ネ ル ギー QCDは,カ はQEDの
を もつ. ラー 自由 度 に基 づ くゲー ジ理 論 で あ るか ら,カ
ラー の つ くる 場
電 磁 場 と大 い な る類 似 性 が あ る.し か し,ゲ ー ジ場 の非 ア ー ベ ル 性
に よ り異 な る点 も あ り,真 空 は 色 電 荷 の 超 伝 導 相 状 態 に な っ て い る と考 え る. た だ し,電 気 と磁 気 の役 割 は 入 れ 換 え る.超 伝 導 を担 うの は 色磁 気 を もつ場 で あ り,紐 は 真 空 を突 き抜 け る色 荷 の 束 で あ る.閉
じ込 め の 働 く距 離 をrcと す
れ ば,紐
の 単 位 長 さ あ た り の エ ネ ル ギ ー は,k∼hc/αsrc2(αs=g2/4π
の 結 合 の 強 さ)で 1fmと
な る.こ
与 え ら れ る で あ ろ う.αs〓1と
す れ ば,(1.12)と
はQCD 比 べ てrc〓
れ は ハ ドロ ン の サ イ ズ で あ る.
(b) (a)
(c)
(d) 図1.3
閉 じ込 め の 超 伝 導 モ デ ル
(a) クー ロ ン法 則 に従 う電 気 力 線.電
束密 度∝r-2.
(b) 超 伝 導 体 内 の 磁 力 線.N極(+)か ら 出 た 磁 力 線 は 束 に な ってS極(-) につ な が る.磁 束 密 度 は 束 に 沿 っ て 一 定. (c) クォ ー ク間 に は,カ ラ ー 紐 が で き,紐 ドロ ン)が 発 生 す る.
が 切 れ て た く さ ん の ク ォー ク 対(ハ
(d) e-e+に よ り発 生 した 高 速 で180° 方 向 に 飛 び 去 る ク ォー ク対 は ハ ドロ ン 化 し て2個 の ジ ェ ッ トを発 生 す る.
高 エ ネ ル ギー で 逆 方 向 に 飛 ぶqq対(た ee→qqで ∼1GeV/fmの
つ く る)は,高
と え ば 電 子 衝 突 型 加 速 器 の 反 応:
速 で 伸 び つ つ あ る 紐 を つ く る.こ
の 紐 に は,
膨 大 なエ ネ ル ギー が 蓄 え られ る.真 空 の ゆ ら ぎで紐 の 途 中 に は
q'q'対 が 発 生 す るか ら,こ れ が も と のqも ばハ ドロ ン とな り,ハ
し くはqと
カ ラー1重 項 を つ くれ
ドロ ン間 に は 閉 じ込 め の ポ テ ン シ ャ ル は 存在 し な い.逆
に い う と,紐 が ち ぎれ て も単 独 の クォ ー ク は現 れ ず,紐
の両 端 に は 必 ず ク ォー
クが つ い て い る.こ れ は,棒 磁 石 を切 断 して も,単 独 のN極 ず に二 つ の 棒 磁 石 が 現 れ るの に似 て い る.こ の 結 果,ク
とS極
は得 られ
ォー ク間 の 距 離 が ∼1
fm程
度 を 超 え る と,距
離 を 伸 ば す よ りは 真 空 か らqq対
を 切 っ て し ま う方 が エ ネ ル ギ ー 的 に 得 す る の で,も 量 の ハ ド ロ ン(1番
を拾 い物 質 化 して 紐
と のqqを
軽 い π が 最 も つ く ら れ や す い)が
つ な ぐ線 上 に 多
発 生 す る(図1.3(c)).
こ れ ら の 多 数 の ハ ド ロ ン は も と の ク ォ ー ク の 方 向 を 覚 え て お り,そ 中 し て 出 る の で ジ ェ ッ ト と な る(図1.3(d)).グ
の 方 向 に集
ル ー オ ン も 同 じ理 由 で ジ ェ ッ
ト と し て 観 測 さ れ る. QCDを
ガ イ ド ラ イ ン と し た ジ ェ ッ ト発 生 モ ン テ カ ル ロ プ ロ グ ラ ム は,
ジ ェ ッ ト現 象 の 多 彩 な 性 質 を き わ め て よ く実 験 的 に 再 現 す る(第8章,第9章 参 照)."ク
ォ ー ク の 閉 じ込 め"法
い が,QCDの 際,非
則 は,理
論 的 に 完 全 な証 明 は ま だ で き て い な
非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論 の 性 質 から 導 け る と 信 じ ら れ て い る.実
摂 動 論 的 手 法 で あ る 格 子 ゲ ー ジ理 論 を 使 っ て,閉
に 導 く こ と に は 成 功 して い る.そ 閉 じ 込 め は,今
れ ゆ え,カ
1)
Y.Fukuda PDG(Particle
じ込 め の 性 質 を定 性 的 ォ ー ク と グ ル ー オ ン)の
日 ほ と ん ど 既 定 の 事 実 と し て 受 け 入 れ ら れ て い る.
参
2)
ラ ー(ク
考
文
献
et al.:Phys.Lett.,B436(1998)33,Phys.Rev.Lett.,81(1998)1562 Data
Group):Review
of
Particle
Properties,Phys.Rev.,D54(1996)1,
EPJ.,C3(1998)1 3)
S.Sakata:Prog.Theor.Phys.,16(1956)686
4)
M.Ikeda,S.Ogawa
and
Y.Ohnuki:Prog.Theor.Phys.,22(1959)715
2 ゲ ー
ジ 理
論
2.1 歴 史 的 背 景
1970年 代 か ら お よそ20年
間 に お け る高 エ ネ ル ギー 物 理 学 の 発 展 は,わ れ わ
れ の物 質 観 を完 全 に 変 え た.歴 史上 は じめ て わ れ わ れ は物 質 が 何 で で きて い る か,そ
れ ら を 支 配 す る法 則 は 何 か と い う疑 問 に 答 え ら れ る と感 じは じめ て い
る.こ
こ まで い い切 る こ とは 自然 に 対 す る謙 虚 さに 欠 け るの で は な いか とい う
感 想 を もた れ るか も しれ な い.し か し,そ れ ほ どに 高 エ ネ ル ギー 物 理 学 界 に お け る ゲー ジ理 論 の 成 功 と,素 粒 子 論 に お け る意 識 革 命 は 大 きか っ た の で あ る. 物 理 学 史 上,相
対 性 理 論,量
子 力 学 の 創 成 に並 ぶ エ ポ ッ ク メー キ ン グな現 象 と
い って よ い.ゲ
ー ジ原 理 は い まや 相 対 性 原理,量
子 原理 とな らぶ 宇 宙 の根 本 原
理 と見 な され て い る. し か し,こ た.マ
う し て 発 見 さ れ た ゲ ー ジ 原 理 は,決
し て新 し い もの で は な か っ
クス ウ ェ ル 理 論 が ゲ ー ジ原 理 を満 た す こ とは よ く知 られ て い た し,ワ イ
ル が 最 初 の ゲー ジ理 論 を発 表 し た の は,一 般 相 対 性 理 論 の 発 表 直 後 の1918年 で あ っ た1).ゲ ー ジ原 理 が す べ て の 力 を支 配 す る根 本 的 な 宇 宙 原 理 で あ る と理 解 す るの に,な ぜ か く も長 い 年 月 を必 要 と し た の で あ ろ うか? まず 無 矛 盾 な 場 の 量 子 論 を建 設 す る の に 大 き く時 間 を 費 や した こ とで あ る. 無 限 大 が 繰 り込 み の 手 法 に よ り処 理 可 能 で あ る こ とが 示 され,QEDが た の は1940年
代 後 半 で あ っ た.QEDは
ゲー ジ場 量 子 理 論 の 原 型 で も あ る.こ
れ を 契機 に ゲ ー ジ理 論 が も っ と発 展 を して もよ か っ たの で あ るが,い 要 因 が それ を妨 げ た.一 つ は,繰 して有 限 項 を出 す"と
完成 し
り込 み の 手 法 が"無
くつ か の
限大 か ら無 限大 を 引 き算
い うプ ロ セ ス に 頼 っ て い るた め,数
学 的 に洗 練 さ れ た 手
法 とは い え なか っ た こ と,も う一 つ は,当 時 の理 解 で は 強 い相 互 作 用 現 象 に は 摂 動 計 算 が 適 用 で きず,靴 紐 の理 論(基 本 的 な素 粒 子 は存 在 せ ず,す
べ ての粒
子 は 同 時 に ま た他 の す べ て の粒 子 の 構 成 要 素 と も な っ て お り,す べ て 同 等 で あ る とい う素 粒 子 民 主 主 義 論)な
どが 一 時 期 幅 を きかせ る な ど,場 の 理 論 に対 す
る信 頼 感 は そ れ ほ ど大 き くなか っ た. さ らに,弱 い 力 や 強 い 力 に よ る現 象 が,ゲ ー ジ理 論 な らば もつ べ き い くつ か の 特 徴 を示 さ な か っ た こ とが あ げ られ る.ゲ ー ジ 原 理 に 従 う現 象 で あ る な ら ば,第1に
クー ロ ン力 の よ うに 長 距 離 力 で な け れ ば な らな いの に ど ち ら も短 距
離 力 で あ る.現 在 は,そ て,強
れ ぞ れ 違 う原 因,弱
い力 は対 称 性 の 自発 的破 れ に よっ
い力 は 閉 じ込 め に よ っ て,本 来 もつ べ き特 徴 が 隠 さ れ て い る こ とが わ
か って い る.こ
う し た現 象 の 本 質 を把 握 しえ た の は,物 質 の 究 極 構 成 要 素 と し
て の ク ォー ク と レプ トン の 存在 の 認 識 で あ っ た.ハ と反 応 現 象,弱
ドロ ン の 多様 な ス ペ ク トル
い相 互 作 用 現 象 な どが,わ ず か2∼3種
の ク ォー クお よ び レプ
トン で 整理 す る こ とが で き て,基 本 的 な レベ ル で 力 の 働 く枠 組 み を見 通 し よ く した こ とが,力 の 本 質 を見 ぬ く大 き な要 因 で あ っ た. ゲー ジ理 論 の 第2の 特 徴 は普 遍性 に あ る.重 力や 電磁 力 の 強 さは,そ
れぞれ
質 量 お よ び電 荷 の み に よ り,物 質 の 種 類 形 態 に 無 関 係 で あ る.重 力 は 長 距 離 性,普 遍 性 と もに 満 た して い るが,一
般 相 対 性 理 論 の数 学 的 複 雑 さゆ え に これ
も ま た ゲ ー ジ理 論 の 一 形 態 で あ る こ とは,1956年
内 山2)が 指 摘 す る ま で 誰 も
気 が つ か なか っ た. 第3に
ゲー ジ力 の 源 は 保 存 量 で あ る.重 力 の 源 で あ る 質 量(エ ネ ル ギー),
電 磁 力 の 源 で あ る電 荷 は厳 密 に保 存 す る こ とが 知 られ て い る.こ れ に 反 して, 強 い 力 や 弱 い力 に は 相 当す る保 存 量 が な か った.少
な く もわ れ われ の 眼 に は見
え な か った の で あ る.そ の 原 因 は,長 距 離 力 が 近 距 離 力 に な るの と同 じ理 由 に よ る. 第4に ば,陽
強 い 力 や 弱 い 力 で は,力 が働 くこ とに よ り物 質 の変 換 が 起 こ る.例 え
子 と 中性 子 に核 力 が 働 く と互 い に 入 れ 替 わ る.こ の よ う な 場 合 に まで
ゲ ー ジ理 論 を拡 張 す るヤ ン-ミ ル ズ の 定 式 化3)が あ っ て は じめ て,強
い力や 弱
い 力 もゲー ジ理 論 と して 見 直 そ う とい う気 運 が で きた の で あ る. ま た,ゲ ー ジ理 論 に従 う力 は カ レ ン トに よ り引 き起 こ され る.カ
レ ン トとは
電 荷 お よ び電 荷 が 運 動 す る こ とに よ り生 じる電 流 を成 分 とす る ロー レ ン ツベ ク トル の こ と で あ り,こ れ に 伴 って,相 互 作 用 は,普 遍性,ベ
互 作 用 もベ ク トル 型 と な る*1).弱 い 相
ク トル 結 合 の 特 徴 を もつ こ とが ヒ ン トとな り,こ れ もま
た ゲ ー ジ理 論 に違 い な い との 確 信 が 統 一 理 論 と して のGWS理
論 の発 見 に つ な
が っ た とい っ て よ い で あ ろ う.弱 相 互 作 用 と電 磁 相 互 作 用 に は 強 い 類 似 性 が あ り,CVC仮
説*2)で 見 た よ う に 共 通 部 分 も あ る.両 者 の 融 合 は1960年
グラ
シ ョ ウ4)に よ り定 式 化 され た.し か し,ゲ ー ジ粒 子 や レプ トン な ど に 質 量 を付 加 す る機 構 が な く正 し い理 論 体 系 と して は 不 完 全 で あ っ た も の を,1967年
ワ
イ ンバ ー グ とサ ラ ム5)が 自発 的対 称 性 の破 れ を採 り入 れ て整 合 性 の あ る理 論 に 組 み 上 げ,そ
れ が 実 際 に 繰 り込 み 可 能 で あ る こ と を,1971年
に ト・フー フ トが
証 明 し て6),電 弱 統 一 理 論 が 完 成 した の で あ る. QCDに
関 し て は 誰 が 発 明 し た か そ の経緯 は あ ま りは っ き り して い な い.数
学 的 形 式 は ヤ ン-ミ ル ズ理 論 で つ きて い るの で,物 理 現 象 に お い て,カ 力 の 源 泉 で あ り,か つSU(3)対
ラー が
称 性 を もつ こ とに気 づ き さ えす れ ば よか っ た.
歴 史 的 に は,ま ず ハ ドロ ン スペ ク トロ ス コ ピー に お け る クォー ク モ デ ル の 成 功 と カ ラー の発 見 が あ り,MIT/SLACの パ ー トン描 像 の 成 功 が あ っ た .ま た,ハ したSU(3)を
深 非 弾 性 散 乱 に お け る ス ケ ー リン グ と ン-南 部 らに よ る カ ラー を力 の 源 泉 と
含 む 理 論 の 提 唱 もあ っ た7).転 回点 は,1973年
の グ ロ ス-ウ ィル
チ ェ ッ ク-ポ リ ッツ ァー に よ る漸 近 自由 の発 見 に あ り8),こ の 時 点 でQCDが
強
い 力 の 理 論 と して 浮 上 した とい え よ う. これ か らの 話 は少 し長 い道 の りに な る の で,い え で,こ
れ か らの 議 論,3段
ま ま で の考 察 の 整 理 を し た う
構 え の論 法 の 筋 道 を予告 して お こ う.
*1) 重 力 は 力 の 源 が
,そ れ 自 身 ロ ー レ ン ツ ベ ク トル で あ る エ ネ ル ギー 運 動 量 で あ る た め,2 階 の テ ン ソ ル 型 と な る.こ の た め 力 の 伝 達 粒 子 は 通 常 ス ピ ン1を も つ が,グ ラ ヴ ィ トン
は ス ピ ン2を も つ. *2) Conserved Vector -A±
Curreut
μの よ う に 極 性(polar)ベ
A± μの 和 で あ り,か で も あ る.こ
Hypothesis:弱
相 互 作 用 の 荷 電 カ レ ン トは
ク トル 部 分V±
μと 軸 性(axial)ベ
,JW± μ=V± μ ク トル カ レ ン ト部 分
つ と も に 電 荷 を 変 え る 演 算 子(τ±)を 含 む の で ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン ト
の う ち ベ ク トル カ レ ン トが 保 存 す る(∂ μV±μ=0)と
い うの がCVC仮
説であ
る.一 方,電 磁 相 互 作 用 を 引 き起 こ す 電 流JEMμ は 中 性 ベ ク トル カ レ ン トで あ る が,JEMμ =Yμ+V3μ の よ う に ハ イ パ ー チ ャ ー ジ カ レ ン ト と ア イ ソ ス ピ ン の 第3成 分τ3に 比 例 す るV3μ
との 和 で 書 け る.CVC仮
る 成 分 で あ る こ と を 示 す.
説 はV± μ とV3μ が 一 つ の ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン トの 異 な
(1) ま ず,数 学 的 で抽 象 的 な ゲ ー ジ 原 理 の 概 念 に,重 力 現 象 との 対 応 をつ け る こ とに よ っ て幾 何 学 的 な解 釈 を施 し見 通 しを よ くす る. (2) ゲー ジ対 称 性 を ア イ ソ ス ピ ン を含 む 一 般 ゲー ジ変 換 に ま で 拡 張 す る. (1)の 幾 何 学 的解 釈 を使 え ば,ヤ と も い う)が,論
ン-ミ ル ズ ゲー ジ理 論(非 ア ー ベ ル理 論
理 的 に か つ 自然 に 導 け る こ と を示 す.非
アー ベ ル 理 論
の 定 式 化 に よ り,荷 電 カ レ ン ト現 象 で あ る 弱 相 互 作 用 を,ゲ ー ジ理 論 の 枠 組 み で 取 り扱 う こ とが 可 能 に な っ た.ま
た,非 ア ー ベ ル理 論 で は 漸 近
自 由(近 距 離 で 力 が 弱 くな る)が 実 現 す る とい う認 識 が,強 ジ理 論QCDの (3) W粒
い力 のゲー
形 成 に つ なが る.
子 は 質 量 を も ち,そ
の 結 果 と して 弱 い 力 は 短 距 離 力 と な っ て い
る.弱 相 互 作 用 が ゲー ジ理 論 に従 うに せ よ ゲ ー ジ 対 称 性 は破 れ て お り, そ の 結 果 と し て繰 り込 み不 可 能 に な っ て い る.ゲ ー ジ対 称 性 とゲ ー ジ粒 子 の質 量 を ど う両 立 させ るか とい う問 題 を,対 称 性 の 自発 的 破 れ と ヒ ッ グ ス機 構 とい う概 念 を導 入 して 解 決 す る. (4) ゲ ー ジ 対 称 性 お よ び 自発 的 対 称 性 の 破 れ の 繰 り込 み に お け る役 割 を議 論 す る. (5) 最 後 に,電 磁 力 と弱 い 力 を結 び つ け,自 せ て,無
発 的 対 称 性 の 破 れ を組 み 合 わ
矛 盾 な電 弱 統 一 理 論 をつ くる方 法 を解 説 す る.
2.2 ゲ ー ジ 理 論 の 幾 何 学 的 解 釈
2.2.1 ゲ ー ジ 原 理 ゲ ー ジ変 換 とは場 の 位 相 を変 え る 自由 度 で あ る.抽 象 的 な 概 念 で あ る の で, と りあ え ず数 学 的 な表 現 を定 義 して お い て 物 理 的 な解 釈 は後 か らつ け る こ とに しよ う.最
も簡 単 な位 相 変 換 は,ψ
を複 素 場,α
を任 意 の実 数 と し て
(2.1) で 与 え られ る.こ の よ うな変 換 をU(1)ゲ
ー ジ変 換 とい う.U(1)ゲ
ー ジ変 換 で
ラ グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 で あ れ ば ネ ー ター の 定 理 か ら保 存 カ レ ン トjμが 存 在 し
(2.2) これ か ら,第0成
分 を空 間積 分 した
(2.3) は 時 間 に よ ら な い保 存 量 で あ る こ とが 導 け る.こ れ を一 般 的 に 電 荷*3)と 呼 ぶ こ と に す る.デ
ィ ラ ッ ク場 でつ く る
ン トで あ っ た.場 の 量 子 論 で はQは
は そ の よ う な保 存 カ レ
演 算 子 で あ り,式(2.1)の
算 子 と な る.し た が っ て,位 相 角 αは 実 は 場 の 電 荷 量qに 下 はqα の よ うにqを
変換 の生成 演
比 例 す るの で,以
抜 き出 して 書 く こ とに す る.
位 相 変 換 を な ぜ ゲー ジ変 換 と い うの か?も
と も とワ イ ル が提 案 した の は,
時 空 の 各 点 で 長 さ の 基 準(ゲ ー ジ)を 変 え て も物 理 法 則 は変 わ ら な い とい う要 請 で あ っ た.こ
の 言葉 が,今
日の位 相 変 換 に も転 用 さ れ定 着 して し まっ た と い
う歴 史 的 経 緯 が あ る.わ れ わ れ の遭 遇 し た最 初 の ゲ ー ジ変 換 は マ クス ウ ェ ル 方 程 式 の ポ テ ン シ ャ ル の と りか た の 自由 度 の こ とで あ っ た.し か し,古 典 電 磁 気 学 で は ポ テ ン シ ャ ル は 物 理 的 意 味 を もた ず,時
空 の2点
に お け る ポ テ ン シ ャル
の 差 つ ま り微 分 の み が 物 理 的 意 味 を も ち,電 場 ま た は磁 場 と して 観 測 され る量 で あ る.ポ テ ン シ ャ ル そ の もの は単 な る数 学 的 手 段 と見 な され た.量 子 力学 に お け る波 動 関数 の 位 相 も同 じよ うな 意 味 合 い を もつ.波 動 関 数 は 自乗 して は じ め て 確 率 とい う物 理 的 意 味 を もつ の で,位 相 そ の もの は 物 理 的 意 味 を も た な い.し か し二 つ の 波 動 関 数 の 位 相 の 差 は 干 渉 と い う形 で観 測 可 能 な 量 で あ る. 位 相 変 換 不 変 性 か ら電荷 保 存 則 が 導 か れ る こ と,電 磁 ポ テ ン シ ャル は電 荷 が 源 に な って い る こ とを考 え る と,一 見 関係 な い複 素 場 の 位 相 と電 磁 ポ テ ン シ ャル は ど こか で結 び つ い て い る と考 え られ る.ま ず,古 典 電 磁気 学 の ゲ ー ジ変 換 は 任 意 の 時 空 点 で 自由 に 選 べ た こ と を思 い 起 こ そ う.つ
ま り,α を時 空 変数x
の 関 数 と して
(2.4) と い う 変 換 で マ ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 は 不 変 で あ っ た.そ 相 α も 任 意 の 時 空 点 で 自 由 に 選 べ る,つ う な 変 換 を 局 所 ゲ ー ジ 変 換(local
gauge
こ で 場 の 位 相 変 換 の位
ま り α→ α(x)と
し て み よ う.こ
transformation)と
べ て 場 所 に よ ら な い ゲ ー ジ 変 換 を 大 域(global)ゲ
い う.こ
,超
電 荷(ハ
れ に比
ー ジ 変 換 とい う こ とに す
る. *3) 通 常 の 電 荷 と 区 別 し た い と き は
の よ
イ パ ー チ ャ ー ジ)と
呼 ぶ.
い ま,自 由粒 子 場 の従 う方 程 式 を
(2.5a) の よ うに書 く と(Λ(∂)は,通
常 ∂の2次
まで の 多 項 式 で あ る),位 相 変 換 した
場 に対 す る微 分 演 算 は,
(2.6) と な る の で,粒 子 場 の運 動 方 程 式 は 局 所 位 相 変 換 に 対 して不 変 で は な い.一 方 電 磁 場 と相 互 作 用 して い る 系 の粒 子 場 の 方 程 式 は,解 析 力学 や シ ュ レー デ ィ ン ガ ー 方 程 式 で よ く知 られ て い る よ うに,微 分 ∂μを ∂μ+iqAμ で 置 き換 え て,
(2.5b) と して 得 ら れ る.方 程 式 が(2.5b)の ン シ ャ ルAμ の ゲ ー ジ変 換(2.4)を
形 を して い れ ば,ψ の 位 相 変 換 と ポ テ 同 じ α(x)を 使 って 同時 に行 え ば,α(x)の
微 分 か ら 出 る項 とポ テ ン シ ャ ル に よ る項 が 相 殺 され,運 動 方 程 式 は局 所 ゲ ー ジ 変 換 で 不 変 と な る.自 由 場 の 方 程 式(2.5a)に(2.5b)の 電磁 場 との相 互 作 用 が得 ら れ る こ とは,ミ 経 験 的 な事 実 で あ っ た.そ
置 き換 え を す れ ば
ニ マ ム 相 互 作 用 とい う名 で知 られ る
れ が 局 所 ゲ ー ジ不 変性 を満 た す の は 偶 然 で は な い と
す れ ば,力 学 原 理 と して の ゲー ジ原 理 が 成 り立 つ は ず で あ る. ゲ ー ジ原 理:運
動 法 則 は局 所 ゲ ー ジ変 換 で不 変 で あ る.
共 変 微 分Dμ を
(2.7) で定 義 し,ψ
お よ びDμ
の 中 のAμ
を ゲ ー ジ 変 換 し た も の を ψ',Dμ'と す れ ば
(2.8a) (2.8b) で あ る.し た が っ て,ゲ ー ジ 原理 とは 自 由場 の運 動 方 程 式
(2.5a) が 与 え られ る と き,局 所 ゲ ー ジ不 変 性 を満 たす 式
(2.9) が相 互 作 用 を す る系 の運 動 方 程 式 で あ る こ とを要 求 す る.実 際,後 磁 気 と弱 相 互 作 用 の 統 一 理 論,強 す る.ま た 内 山 は,重
い 相 互 作 用 のQCDは
に述 べ る電
すべ て この原理 に立脚
力 の 理 論 で あ る一 般 相 対 性 理 論 も ま た この ゲ ー ジ 原理 に
基 づ くこ とを証 明 した の で あ っ た.そ の よ うな 意 味 で,ゲ ー ジ原 理 は,相 対性
原理,量
子 原理 とな らぶ根 本 原 理 なの で あ る.ゲ ー ジ対 称 性 とは 非 常 に抽 象 的
な概 念 で あ るの で なか な か 解 釈 が む ず か しい.こ れ まで は数 学 的 操 作 だ け を示 して こ れが ゲ ー ジ対 称 性 で す と説 明 したが,数 式 の 背 後 に あ る物 理 的 概 念 を把 握 す る に は何 らか の 意 味づ け が 必要 で あ る.そ こ で 同 じゲ ー ジ 原 理 に立 脚 す る 理 論 で も,重 力理 論 に は 直観 的 に わ か りや す い幾 何 学 的 意 味 づ け が,す
でに一
般 化 して い るの で,一 般 相 対 論 との 比 較 を しなが らゲ ー ジ理 論 の 幾 何 学 的解 釈 を試 み よ う.
2.2.2 内
部
空
間
a. 場 は 内 部 空 間 に お け るベ ク トル 物 理 現 象 を 記 述 す る に は座 標 系 を設 け なけ れ ば な らな いが,現
象 そ の もの は
座 標 系 の と り方 に は よ らな い は ず で あ る.日 本 で実 験 して もア メ リカ で実 験 し て も物 理 結 果 は 同 じで あ るが,こ
れ を座 標 の 並 進 対 称 性 とい う.並 進 対 称 性 か
らエ ネ ル ギー 運 動 量保 存 則 が 導 け る.同
じよ うに北 を向 いて 実 験 し よ うが東 を
向 い て 実 験 しよ うが 同 じ結 果 が で る こ と を 回転 対 称 性 とい い,こ れ か ら角 運 動 量 保 存 則 が 導 け る.こ れ に 反 し て,電 荷 や ア イ ソス ピ ンの よ うな保 存 則 は時 空 座 標 とは関 係 な い 内 部 対 称 性 か ら導 か れ る と考 え られ て い る.上 の 論 法 か らす れ ば 対 応 す る 内部 座 標 が あ りそ の座 標 の と り方 に よ らな い こ とが起 源 で あ る と 考 え るの が 首 尾 一 貫 す る. 例 えば 電 荷 を もつ 粒 子 は正 と負 の 二 つ の 自由 度(粒 子 と 反粒 子)を こ で,場
もつ.そ
を構 成 す る独 立 な実 場 の成 分 を ψ1,ψ2と書 く と き,場 は これ ら を成 分
に もつ 内部 空 間 で の ベ ク トル と考 え る こ とが で きる.こ の 空 間 で の 直 交 基 準 ベ ク トル をe1,e2と す る と,実 場 ψは
(2.10) こ こ で ψ の 表 す 物 理 現 象 が 座 標 系 の と り方 によ ら な い とす れ ば,ψ を こ の2 次 元 空 間 で 回 転 し て も物 理 法 則 は 変 わ らな い.座 標 軸 を αだ け 回 転 す る と ψ → ψ'に な る とす る と,
(2.11a) (2.11b) こ こ で複 素 場 と して,
(b)
(a)
図2.1 粒 子 の運 動 は 時 間 と と もに 動 く一 つ の軌 跡 で 表せ る.そ の と き粒 子 の も つ 内部 空間 で の ベ ク トルの 方 向 も運 動 と と もに 変 わ る.内 部 空 間 座 標 系 と し て 一 つ の 全 体 に 共 通 な 座 標 系(大 域 座 標 系)を 設 定 す る 場 合(a) と,各 地 点 で独 立 に そ れ ぞ れ に 独 立 な 座 標 系(局 所 座 標 系)を 設 定 す る 場合(b)と
が あ る.
(2.12) を定 義 す れ ば,
(2.13) と な っ て,実 場 の 回 転 は複 素 場 の位 相 変 換 に 帰 着 す る. 場 が 内部 空 間 のベ ク トル で あ り,運 動 と と もに 回 転 す る の で あ れ ば,場
の運
動 を指 定 す る た め に は,時 空 で の 軌 跡 の ほ か に 内 部 空 間 で のベ ク トル の 向 き を 各 点 で 表 す 必 要 が あ る(図2.1(a)).た
だ し,こ のベ ク トル の 向 き は 内 部 空 間
の 向 き で あ り時 空 での ベ ク トル の 方 向 とは 関 係 な い が,ほ か に う ま い表 し よ う もな い の で 図2.1で
は,内 部 空 間 の座 標Ix,Iyも
同 じ実 空 間上 に 描 く こ とに す
る.大 域 ゲー ジ変 換 は,運 動 とは 関係 の な い と こ ろ で時 空全 体 で 一 斉 にベ ク ト ル の 向 き を変 え るが,局
所 ゲ ー ジ変 換 で は軌 跡 の 各 点 で 回転 角 が 異 な る.こ の
こ とは,粒 子 が 進 行 す る に つ れ 局 所 座 標 系 そ の もの が 回 転 す る こ と を意 味 す る.と
は い え位 相 は 時 空 の 連 続 関数 で あ る か ら隣 合 う点 で 滑 らか につ な が る こ
と を前 提 とす る.進 行 に つ れ 回転 す る座 標 系 とは どの よ う な意 味 が あ るの で あ ろ うか? せ っか く物 理 量 を座 標 系 を設 定 して 表 した の に,次
の瞬 間 に は 座 標
系 が 変 わ って し ま うの で は 意 味 が な い.各 時 空 点 で 異 な る座 標 系 を 扱 う と きは 両 者 の 比 較 をす る基 準 を必 要 とす る.
b. 重 力 の 幾 何 学 的 解 釈 こ こ で重 力 の 幾 何 学 的解 釈 を思 い起 こ して み よ う.ア イ ン シュ タ イ ン の一 般 相 対 論 は,力
を受 け て 軌 跡 が 曲が る とい う物 体 の 運 動 を,「 物 体 は 直 線(厳 密
に は 測 地 線)運 動 をす るが,空 間 が 曲 が っ て い るの で,曲 線 運 動 の よ う に見 え る」 と解 釈 す る.力 学 を時 空 の 幾 何 学 に 置 き換 え た の で あ る.3次 像 す るの は む ず か しい の で2次 元 空 間 で話 を す る と,図2.2(a)に に 物 体Aは,他
あ るよ う
に 力 を及 ぼ す 物 体 の 存 在 しな い と こ ろ で は 慣 性 の 法 則 に 従 い
等 速 直 線 運 動 をす る.ニ ュ ー トン 力学 の解 釈 で は,物 体Bが い て 物 体Aの
元 空間 で想
あ る と引 力 が働
軌 跡 が 曲 が る.ア イ ン シ ュ タ イ ンの 重 力 理 論 の 解 釈 で は,物 体
Bが あ る と そ の 周 りの 空 間 が ひ ず み,そ
の 結 果 と して,物 体Aは
同 じ慣 性 の
(a)
(b) 図2.2 一 般 相 対 論 に お け る重 力 の 幾 何 学 的 解 釈 (a) 物 体(エ ネ ル ギ ー)の 存 在 し ない 自由 空 間(図 で は2次 元 空 間 を示 す)は 平 坦 で直 線 直 交(デ カル ト)座 標 系 が 存 在 し,物 体Aの 運動 は等速直線運 動 をす る. (b) 引 力 中心 の 物 体Bが
存在 す る と空 間 が ゆ が む.そ
こ に は デ カ ル ト座 標 は 存
在 しな い.物 体Aは こ の 空 間 で の 直 線(測 地 線)の 軌 跡 を描 くが,元 の デ カ ル ト座 標 で 見 る と 曲 線 を描 き,物 体Aが 物 体Bの 引 力 を受 け て 曲 が っ た よ うに 見 え る.
法 則 に従 い等 速"直 線"運
動 を して い るの に も関 わ らず,空
間のひずみ のため
に 軌 跡 が 曲 が っ た よ う に 見 え る と解 釈 す る.そ の 様 子 を 図2.2(b)で
表 す.
曲 が っ た 空 間 で の 直 線 を定 義 す る と きベ ク トル の 平 行 移 動 とい う概 念 が 非 常 に 重 要 な 役 割 を果 た す. c. ベ ク トル の 並 行 移 動 と空 間 の 曲率 平 らな 平 面 また は空 間(ユ ー ク リ ッ ド空 間)で あ れ ば ベ ク トル の 平 行 移 動 は 非 常 に 明 快 な概 念 で あ る が,曲 が っ た 空 間 で の 平 行 移 動 の理 解 は い さ さか 努 力 を要 す る.円 錐 面 や 円 筒 面 は 曲 が っ て い るが,切
っ て展 開 す れ ば平 面 に な る の
で 見 か け だ け の 疑 似 曲面 とい え る.円 錐 面 上 のベ ク トル の 平 行 移 動 は 展 開 面 で 考 え れ ば 理 解 しや す い.図2.3(a),(b)で
は,平 面 上 の 平 行 ベ ク トル が 円 錐
面 上 で は ど うな るか を示 して い る.球 面 上 で のベ ク トル の 平 行 移 動 は,切
り口
が 中心 を 通 る大 円 上 で は理 解 が容 易 で あ る が,そ れ 以 外 の と こ ろ で は む ず か し い.直 観 的 に は平 ら な紙 の 上 に 平 行 なベ ク トル を墨 で た くさ ん 書 い て お い て, 球 を こ の上 で 転 が せ ば 平 行 ベ ク トル が ど の よ うに球 面 上 に 移 され る か の 見 当 が
(a) 図2.3
(b)
曲 面 上 で の ベ ク トルの 平 行 移 動.(a)は
円錐 面,(b)は
円錐 面 を 展 開 した もの.
(a),(b)で は ベ ク トルA∼Eは す べ てベ ク トルAを 直 線 に 沿 って 平 行 移 動 した も の で あ る.(b)の 点 線 は 円錐 面 の別 の 切 り口 を示 す.(イ)の 部 分 が(ロ)に 移 る.ベ ク トルA∼Eは 至 る と こ ろ平 坦 な 面 上 に あ る が,領
域全 体 と し て は 曲 が って い る の で,閉
曲 線 を1周
Aに 一 致 しな い.こ の 差 を余 剰 角 とい う. アハ ロ ノフ-ボ ー ム効 果 は,磁 場 が あ る と こ ろだ け 曲率 が0で の 通 過 す る道ABCDEは で余 剰 角(位
至 る とこ ろ で 曲率が0(B=0)で
相 差)が 生 じる の で ある.
し たベ ク トルEは
元 の ベ ク トル
な い 先 の 丸 い 円 錐 面 に対 応 す る.電 子 波
あ る が,領
域 全 体 と し て は 曲 が って い る の
(b)
(a) 図2.4 (1) ベ ク トル(白 ぬ き)を,イ(北 北 極 まで 平 行 移 動 す る(a).大
(c)
球 面 上 で のベ ク トル の 平行 移 動
極)か ら赤 道(ロ → ハ)を 通 り,再 び 子 午 線(ハ → イ)に 沿 っ て 円 に 沿 っ ては ベ ク トル の 大 円 に 対 す る角 度 は 変 わ らな い が,元 に
も ど る と余 剰 角 α1=90° を生 じて い る.イ
ロハ イ で 囲 む 面 積 πR2/2で 割 れ ば 平 均 曲 率1/R2を
得
る. (2) ベ ク トル(黒 塗 り)を 緯 度 線 に 沿 っ て平 行 移 動 す る と,ベ 周 す る と余剰角α2を 生 じる.こ
ク トル は 緯 度 線 に 相 対 的 に 回 転 し,1
の 様 子 は緯 度 線 に接 す る 円錐(b)を
切 り開 い て 展 開 面(c)を
つ
くれ ば わ か る.
つ く.例 え ば30度
の 緯 度 線(図2.4(a)のA-B-C-D-Eの
て 平 行 移 動 す るベ ク トル が,図
閉 曲 線)に 沿 っ
の 黒 塗 りのベ ク トル の よ うに 回 転 す る こ とは,
この 緯 度 線 で 接 す る 円錐 面 を切り 開 い て み れ ば理 解 で き る(図2.4(b),(c))
.
これ らの 図か ら共 通 して い え る こ とは,曲 面 上 で は あ る 閉 曲 線 に 沿 っ てベ ク ト ル を平 行 移 動 して 元 に も ど っ た と き,ベ い と い う こ とで あ る.こ
ク トル の 方 向 は一 般 に は 元 に も ど ら な
の角 度 の 差 を余 剰 角*4)と い う.こ の 余 剰 角 が 曲 面 の
曲 が り具 合 の 目安 に な る.こ の 余 剰 角 を ラ ジア ン で表 し た もの を閉 曲線 で 囲 む 領 域 の 全 曲 率 とい い,領 域 の 面 積 で 割 っ た もの を平 均 曲率 とい う. 例 え ば,半 径Rの
球 面 を考 え よ う.図2.4(a)で
北 極 点(イ)に
おける白
ぬ きのベ ク トル を,ま ず 赤 道 ま で下 ろ し(イ → ロ),次 に 赤 道 に 沿 っ て 経 度 に し て90度 動 か し(ロ → ハ),そ
こ か ら 子 午 線 に 沿 っ て 北 極 点 に も ど る(ハ →
イ)と,元
ず れ た 方 向 を 向 い て い て,イ
の ベ ク トル とは90度
積 で割 る と,平 均 曲率 が1/R2に
ロハ イで 囲む面
な る こ とが わ か る.円 錐 面 の 場 合 は 頂 点 を囲
む 閉 曲 線 の 場 合 以 外 は 全 曲 率 が0で
あ り,平 均 曲率 も頂 点 以 外 は0で
あ るの
で,見 か け は 曲 面 で も実 際 は平 ら な面 で あ る こ とが 曲 率 の値 に 正 直 に 現 れ る. *4) 原 語 はdeficit 一 す る.
angleな
ので
,欠
損 角 と訳 す の が 本 筋 か も し れ な い.こ
こで は余 剰 角 で統
直 線(曲 が っ た 空 間 で は 測 地 線 と い う)の 定 義 は2点 間 の 最 短 距 離 で あ る が, そ の 軌 跡 上 の す べ て の 接 線 ベ ク トル が 互 い に 平 行 移 動 に よ っ て得 られ る よ うな 軌 跡 とい う こ と もで きる. 微 分 幾 何 学 の 教 え る と こ ろ に よ れ ば,一 pμ(x)を 平 行 移 動 してB点(x+dx)に +dx)は,ク
般 の 座 標 系 でA点
の ベ ク トル
ま で も って い った と きの ベ ク トルp‖μ(x
リス トッフ ェ ル の 接 続 記 号(接 続 係 数)を 使 い
(2.14) と書 くこ とが で き る.こ の 式 を導 く と き に,pμ を移 動 した も の は も とのpμ か ら線 形 変 換 で得 られ,短
い 距 離 な らば 変 化 量 は 変 位dxに
比 例 す る とい う仮 定
を して い る.空 間 お よび 座 標 系 の性 質 はΓ λμν の 中 に 入 っ て お り,こ の 式 で定 義 し た平 行 移 動 は 任 意 の 空 間(曲 が っ た 空 間)で の 一 般 座 標 系 で 成 立 す る.と い う よ りは,空 間 の性 質 と,座 標 変 換 式 が 与 え られ れ ば ク リス トッ フ ェ ル の接 続 記 号 が 定 ま り,ベ ク トル の 平 行 移 動 式 が(2.14)に
よ っ て与 え ら れ る.こ の
ク リス トッ フ ェ ル の接 続 記号 が 基 準 を与 え る の で,異
な る座 標 系 で も論 理 的 に
首 尾 一 貫 し た事 象 の記 述 が 可 能 とな るの で あ る.
2.2.3 ゲ ー ジ 場 の 幾 何 学 的解 釈 a. ゲー ジ場 は 接 続 係 数 同様 の考 察 を,わ れ わ れ の 考 察 す る内 部 空 間 の ベ ク トル に 適 用 す る こ とが で き る.内 部 空 間 ベ ク トル ψ を時 空 内 で 平 行 移 動 した もの を 接 続 係 数 を使 って 定 義 で き る.一 般 座 標 系 の 接 続 ク リス トッフ ェ ル 記 号 は4次 元 時 空 の ベ ク トル pμ を つ な げ る の で 指 標 が3個
もあ り複 雑 で あ る が,幸
い な こ とに わ れ わ れ の
問 題 にす る場 の 量 は 内部 空 間 のベ ク トル で は あ っ て も,時 空 で は ス カ ラー 量 で あ る.こ の ため 時 空座 標 に 関 して は 簡 単 とな り,接 続 係 数Aμ は 指 標 を一 つ だ け もつ.平 行 移 動 の定 義 は 次 の よ うに な る.
(2.15) こ う して接 続 係 数 と して 導 入 したAμ が,実
は 電磁 場 ポ テ ン シ ャ ル に ほ か な ら
な い こ とは こ れか らの議 論 で 明 らか に な る. 接 続 の 意 味 を考 えて み よ う.空 間 が ユ ー ク リ ッ ド空 間 で あ り,座 標 系 が 直 線 直 交(デ
カル ト)座 標 系 で あ る と きは,ベ
ク トル の 成 分 は平 行 移 動 して も変 わ
ら な い の で 接 続 係 数 は あ ら ゆ る と こ ろ で0で 接 続 係 数 が 必 要 と な る.一
す る.直
基 底 とす る)で
か し,曲
線 座 標 を使 う と
例 を あ げ る と,図2.5でA点(座標x)に
ベ ク トルVA=(VA1,VA2)をB点(座 トル をVBと
あ る.し
標x+dx)ま
線 直 交(デ
お け る
で平 行 移 動 して得 られ るベ ク
カ ル ト)座 標(x,y方
向 の ベ ク トルex,eyを
は 同 じ成 分 を も つ. (VB1,VB2)=(VA1,VA2):デ
カ ル
ト座 標 系
(2.16)
しか し,極 座 標 を使 う と各 点 で の 基 準 座 標 系(各 点 で のγ 方 向 の ベ ク トルeγ と接 線 方 向 のベ ク トルeφ を基 底 とす る)は 各 点 で 異 な る.す な わ ち,座 標 系 が 移 動 に と もな って 回転 す るの で,ベ もつ.し
か し,式(2.14)の
ク トルVBは,各
地 点 で 異 な っ た成 分 を
よ うに 接 続 係 数 を使 っ てVBを
定 義 して お け ば,
図2.5 曲線 座 標 を使 う と接 続 係 数 が 現 れ る のベ ク トルVAを,B点(x+dx)に 平 行 移 動 し た も の をVBと
A点(x)で
共 通 の 直 線 直 交(デ
カル ト)座 標(x,y)を
座 標(γ,θ)を 使 う とA点
使 え ば両 者 の 成 分 は 等 しい.し
で の 基 準 座 標 系 とB点
す る. か し極
で の 基 準 座 標 系 はdθ だ け 回 転
して お り成分 は 等 し くな い.そ こ で接 続 係 数 を 使 っ て 平 行 移 動 を定 義 す る.上 の 例 で はB点 で のベ ク トル の成 分 は
複素表示 にす ると し た が っ て,接 続 係 数 は
とな る.こ
れ は 平 面(と い う空 間 の性 質)と,そ
の 上 での 回 転 角 を与 え られ た の
で,Aμ
が 計 算 で き た例 で あ る が,一
般 に はAμ を 与 え て平 行 ベ ク トル を 定 義 す
る.Aμ
の な か に 空 間 の 性 質 情 報 が 含 ま れ て い る*5).
*5) 微 分 幾 何 で は一 般 に ,反 変 ベ ク トル と共 変 ベ ク トル を定 義 す る.基 底 ベ ク トル の 長 さ も 場 所 の 関数 とな る.こ こで は,極 座 標 の 基 底ベ ク トル を単 位 ベ ク トル に とって 話 を簡 単 化 して い る.
座 標 系 が 回転 して もVBが
元 のVAと
同 じ向 き を もつ ベ ク トル で あ る こ とが 保
証 さ れ る. 各 点 で の 基 準 座 標 系 が,元 の 座 標 系 に相 対 的 に 回転 し て い る こ とが,運 動 と と もに座 標 系 が 回 転 す る とい うこ との 意 味 で あ る.こ の 例 で は も と も と平 らな 平 面 で の 違 う座 標 系 間 の 比 較 で あ るの で,デ
カル ト座 標 系 に も ど っ て み れ ば,
平 行 の 意 味 は一 目瞭 然 で あ る.し か し,こ の 面 が 球 面 で あ っ た とす れ ば こ の 空 間 はユ ー ク リ ッ ド幾 何 学 の 成 立 しな い 曲 が っ た空 間 で あ り,そ も そ もデ カ ル ト 座 標 系 は 存 在 し え な い. 例 え ば,球
面 上 で 同 緯 度 の2点
を結 ぶ最 短 距 離 は,緯 度 線 で は な く2点 を結
ぶ 大 円上 に あ る こ とは,地 球 儀 で航 空路 をな ぞ っ た こ と の あ る 人 は誰 で も知 っ て い る.接 線 ベ ク トル を軌 跡 に 沿 っ て平 行 移 動 した もの が 再 び 接 線 ベ ク トル に な っ て い る よ うな 軌 跡 が最 短 距 離 の 道(測 地 線)を 与 え るが,測 地 線 に 沿 っ て は 緯 度 線 と経 度 線 に基 づ く座 標 系 は各 点 で 連 続 的 に 回 転 して い る(回 転 の 大 き さ と方 向 は 一 定 で は な く場 所 の 関 数 で あ る). 座 標 系 は 各 地 点 で 任 意 に 設 定 で き る もの で あ る が,空
間 の 性 質 が 与 え られ,
ま た い っ た ん座 標 系 を 設 定 す る と,接 続 係 数 は ど の よ う に平 行 移 動 す れ ば よい か,ど
の よ うに 進め ば最 短 距 離 とな るか を教 え て くれ る.接 続 係 数 が 空 間 の性
質 の 情 報 を含 ん で い る とは この こ と を意 味 す る.空 間 が 曲 が って い る と どん な 座 標 変 換 を もっ て して も,デ カ ル ト座 標 に 移 る こ とは で き な い.つ
ま り,全 空
間 で接 続 係 数 を0に す る こ と は で きな い. b. 電 磁 場 は 曲 率 電 磁 場 ポ テ ン シ ャ ル が 接 続 係 数 と して の 役 割 を は た して い る な らば,接 続係 数 の もつ この 幾 何 学 的 意 味 は電 磁 場 が 存 在 す る と空 間 が 曲 が る こ と を暗 示 す る.た だ し,こ の 空 間 は4次 元 の 時 空 に 内 部 空 間 を合 わ せ た 超 空 間 で あ る.そ こ で こ の 内 部 空 間 のベ ク トル を 図2.6の
閉 曲 線 に 沿 っ て 平 行 移 動 した場 合 の余
剰 角 を求 め て み よ う.dxμdxν の つ くる 四辺 形 に 沿 っ て 回 り,ス
トー ク ス の 定
理 を使 え ば,
(2.17)
図2.6
で あ る.そ
あ る点(xμ,xν)で の平 均 曲率 を求 め るた め の 閉 曲路
の と き の 余 剰 角 をΔ α,ψ を 回 転 し た 結 果 が ψ'に な る と す る と, で あ る か ら,
に,平
で 与 え ら れ る.ゆ
え
均 曲率 は
(2.18) とな り,電 磁 場 は こ の超 空 間 で の 曲率 そ の もの で あ る こ とが わか る.し
たが っ
て,電 磁 場 が 存 在 す る こ とは この 空 間 の 曲率 が有 限 で あ る こ と,つ ま り空 間 が 歪 ん で い る こ と を意 味 す る. c. 曲 率 を決 め る方 程 式 マ クス ウ ェ ル の 方 程 式 は 電 荷 や 電 流が 存 在 す る と超 空 間 が 歪 む こ と,超 空 間 の 曲率 が 電 荷 の分 布 で決 ま る こ とを意 味 す る.
(2.19) そ こ で,次 の 解 釈 が 成 立 す る. "ゲ ー ジ場 は 時 空 と内部 空 間 を合 わせ た 超 空 間 で の 接 続 係 数 で あ り ,電 磁 場 は こ の 超 空 間 の 曲 率 で あ る.こ の 超 空 間 の 曲率 は 電 荷 分 布 に よ り決 ま る." 上 の論 理 は重 力理 論 に 完 全 に平 行 して い る.ク
リス トッ フ ェ ル の 接 続 を 閉 曲
線 上 で動 か す と,時 空 の 曲率(リ ー マ ン の 曲 率 テ ン ソル)を 得 る.ア
インシュ
タインの方程 式
(2.20) は,時 空 の 曲率 テ ン ソ ルRμν(と 曲率R=gμνRμν)を 決 め る方 程 式 で あ り,決 め る要 因 は エ ネ ル ギー 運 動 量 テ ン ソルTμν す な わ ち物 質 の 分 布 で あ る.GNは
万 有 引 力 定 数 で あ る.Rμν は リ ッチ の テ ン ソ ル とい い,リ ー マ ンの 曲率 か ら指 標 を縮 約 して 得 られ る が,こ
の 式 の 精 密 な定 義*6)は この 際 重 要 で な い.何 が
何 を決 め る とい う物 理 的 因果 関 係 の み を把 握 して ほ しい.重 力 の 方 程 式 は,時 空 の 曲率 が エ ネ ル ギー 運 動 量 テ ン ソル つ ま り物 質 の 分 布 で決 ま る こ と を意 味 す る.
2.2.4 等 価 原 理 と共 変 微 分 a. ア イ ンシ ュ タイ ンの 等 価 原 理 再 び微 分 幾 何 学 の 教 え に 習 う と,平 行 移 動 が 定 義 され れ ば一 般 座 標 系 で の微 分 が 定 義 で き る.
(2.21a) (2.15)を
使え
ば
(2.21b) これ を共 変 微 分 とい う.共 変 微 分 は接 続 係 数 が0の 場 合(直 線 直 交 座 標 系 の 場 合)通 常 の 微 分 に 一 致 す る.共 変 微 分 で 書 い た 方 程 式 は 共 変 で あ る.す
なわ
ち,方 程 式 は,任 意 の 一 般 座 標 変 換 で 同 じ形 を保 つ とい う一 般 相 対 性 原 理 を満 たす.こ
の こ と 自体 は 幾 何 学 の 問 題 で あ り物 理 的 内容 は何 もな い.物 理 は 自然
の 選 択 す る空 間 が何 か を見 きわ め,そ
の 空 間 で ど の よ うな 運 動 方 程 式 が 成 り立
つ か を決 め る こ とに あ る.時 空 の性 質 は ア イ ン シ ュ タ イ ン の 方程 式 で 決 ま る. 質 点 の運 動 方 程 式 は 次 の よ うに して 決 め られ る.ア イ ン シュ タ イ ン は,等 価 原 理"重
力 とは 加 速 系 に お け る慣 性 力 で あ る"を 要 求 した.等 価 原 理 は,ど ん な
*6) 一 般 相 対 論 で は
,時
座 標 変 換 を 扱 う.ク
で与 え られ,ベ で 定 義 さ れ る.行
空 の 計 量 を,dS2=gμν(x)dxμdxν
不 変 に す る一 般
ク トルの 平行 移 動 は 列[Γμ]ρσ=Γρσμ を 導 入 す る と,リ
チ の 曲 率 テ ン ソ ルRμν は,
で定義 され る.
で 定 義 し,dS2を
リス トッフ ェル の接 続 係 数 は
ー マ ン の 曲 率 テ ン ソ ルRρσμνと リ ッ
空 間 で あ れ 局 所 的 に は 慣 性 系(ロ ー レ ン ツ不 変 性 の 成 立 す る空 間)が 必 ず 実 現 で き る こ と,す な わ ち接 続 係 数 を0に す る座 標 変 換 が,少
な くも あ る一 点 で は
必 ず 存在 す る こ と を要 求 す る.必 ず 実 現 で き る こ とは,数 学 的 に は と もか く物 理 的 に は 次 の よ うに して わか る.ア イ ン シュ タ イ ン の示 唆 に 従 いエ レベ ー タ に 乗 っ て か ら綱 を切 るか,こ
れ で は 気 持 ち が 悪 い とい う人 は 人 工 衛 星 に 乗 れ ば よ
い.い ず れ にせ よ 自由 落 下 状 態 を実 現 す るわ け で あ り,こ こ に は重 力 が 存 在 し な い(図2.7). す な わ ち慣 性 系 が 局 所 的 に実 現 す る.慣 性 系 で の運 動 法 則
(2.22)
(b)
(a) 図2.7
等
価
原
理
(a) (ク リス トッ フ ェ ル の)接 続 係 数 を少 な く と も時 空 の 一 点(Aま た はB)で 0に す る座 標 変 換 が 存 在 す る.エ レベ ー タに 乗 り綱 を切 れ ば よ い.こ の エ レベ ー タ の 中 は無 重 力 で あ り,ロ ー レ ン ツ不 変性 が 成 立 す る. (b) しか し,重 力 が 存 在 す る と き(空 間 が 曲が っ て い る と き),A,Bを 含む広領 域 で 同 時 に 接 続 係 数 を0に す る(無 重 力 に す る)変 換 は 存 在 し な い.(b) に お け るエ レベ ー タ 内 で はA点 お よ びB点 に あ る物 体 は 時 間 が 経 つ と互 い に近 よ る こ とが観 測 さ れ るか ら,慣 性 系 で は な い.つ ま り重 力 が 存 在 す る.こ
の こ とは ロ ー レ ンツ 不 変 に す る座 標 変 換 は場 所 の 関 数 で あ る こ と を
示 す.す
な わ ち,局 所 ロ ー レ ン ツ 不 変 性 の み 成 立 し,大 域 ロー レ ン ツ不 変
性 は 成 立 しな い.(a)の 般 座 標 変 換 す れ ば(エ られ る.
エ レベ ー タ 内 で は 慣 性 の 法 則 が 成 立 し,そ れ を 一 レ ベ ー タか ら 下 りれ ば)重 力 下 で の 力 学 の 法 則 が 得
た だ し,
で,τ は 固有 時
は知 って い る
か ら,こ こ で の 微 分 を共 変 微 分 に 置 き換 えれ ば一 般 座 標 系 で 成 立 す る運 動 方程 式 と な る.重 力 の 存在 す る系 に も ど るに は エ レベ ー タか ら降 りれ ば よ い.す な わ ち,加 速 度 系 に も どれ ば(一 般 座 標 変 換 を施 せ ば)重 力 が 出 現 す る.共 変 微 分 で 書 い て あ る運 動 方 程 式 は こ の系 で も同 じ形 で成 立 す る か ら,重 力 下 の運 動 方 程 式 が 得 られ た.つ
ま り慣 性 系 で の運 動 方 程 式(2.22)の
微 分 を共 変 微 分 で
置 き換 え た
(2.23) が 重 力 の 存 在 す る空 間 で の運 動 方程 式 を与 え る.こ れ は 曲 が っ た 空 間 で の 測 地 線 を与 え る. 物 質 の 存 在 に よ り空 間 が ど の よ うに 曲 が り,曲 が っ た 空 間 で の 直 線(測 地 線)が
どの よ うに な る か を絵 画 的 に 表 し た の が 図2.2の
絵 で あ っ た.こ の 曲
が っ た 空 間 で物 体 は 測 地 線 上,慣 性 系 で あ れ ば 直 線 で あ っ た で あ ろ う線 上 を動 く. b. ゲ ー ジ 理 論 で の 等 価 原 理 ゲー ジ理 論 で の 等 価 原理 は "ど ん な接 続 係 数(ゲ ー ジ場)で
あ れ ,あ る一 点 に 限 れ ば 接 続 係 数(ゲ す る内部 座 標 変 換(ゲ ー ジ変 換)が 必 ず 存 在 す る"
ー ジ場)を0に とな る.そ の 条 件 式 は
(2.24) で 与 え ら れ,そ
こ で は 自 由場 の 方程 式
(2.25) が 成 立 す るか ら,曲 が っ た空 間(電 磁 場 が 存 在 す る と き)の 方 程 式 は,通 常 の 微 分 を共 変 微 分 で 置 き換 え た
(2.26) で なけ れ ば な らな い.す
な わ ちゲ ー ジ 原理 の 要 求 す る も の と一 致 す る.
い ま 空 間 の あ らゆ る と こ ろで 接 続 係 数 を0に す る条 件 を 求 め て み よ う.式(2.24)が が 積 分 可 能 で あ る こ と,す な わ ち
で き る よ うな ゲ ー ジ変 換 が 存 在
αにつ い て 局 所 的 に解 け る 条 件 は,α
(2.27) で あ る の で,式(2.24)と
あ わ せ て,
(2.28) を得 る.つ る.図2.4で
ま り電 磁 場 の 存 在 しな い こ とが 超 空 間 が 平 坦 で あ る こ との 条件 と な 求 め たAμ は そ の よ うな接 続 係 数 の 例 で あ る.こ の例 は,も
とも
とが 平 坦 な 空 間 に お い て 人為 的 に 曲 線 座 標 を 導 入 した結 果 と して現 れ た 接 続 係 数 で あ るか ら,適 当 な 座 標 変 換 に よ り直 線 直 交座 標 に も どれ る こ と,す な わ ち 全 空 間 で 接 続 係 数 を0に す る座 標 変 換 が 存 在 す る こ とは 明 白 で あ ろ う. c. 重 力理 論 は ゲ ー ジ理 論 重 力 理 論 をゲ ー ジ理 論 の 立場 で再 解 釈 す る と, 表2.1 ゲージ理論と一般相対性理論 との対応関係
* τは 固有 時 を表 す.dτ=(1-β2)1/2dt
"慣 性 系 で は ロー レ ン ツ不 変 性 が 成 り立 つ .ロ ー レ ン ツ 変 換 は位 相 変 換 の 形 を して お り,速 度 と回 転 角 をパ ラ メ ター と して 含 む.こ
の パ ラメ
ター は時 空 の座 標 に よ らな いの で,大 域 ゲ ー ジ変 換 に 対 応 す る.ロ ー レ ン ツ変 換 が 局 所 変 換 で あ れ ば,す
な わ ちパ ラ メ ター が 時 空 の 関数 で あ れ
ば これ は一 般 座 標 変 換 とな る.一 般 相 対 性 原 理 は局 所 ロー レ ン ツ不 変 性 とい い換 え られ る." 重 力理 論 と通 常 の ゲ ー ジ変 換 との 大 きな違 い は,ゲ ー ジ変 換 の 場 合 は 平 行 移 動 す べ き対 象 が 内部 空 間 量 で あ るた め,接 で あ り,4成
続係 数 は 時 空 に 関 して は指 標 が1個
分 の ベ ク トル の よ うに振 る舞 う.ま た超 空 間 が 歪 ん で も ロー レ ン
ツ不 変 性 は保 たれ て い る.重 力 理 論 の 場 合 は一 般 座 標 変 換 を施 す の で ロー レ ン ツ不 変 性が 成 立 しな い.す ネ ル ギ ー運 動 量]と
な わ ち 時 空 が 歪 む.ま た,平 行 移 動 す べ き量 が[エ
い う時 空 のベ ク トル で あ るた め 接 続 係 数 の指 標 が 三 つ も あ
る.た だ し,重 力 の 場合 の 接 続 係 数 は,時
空 の 計 量 テ ン ソルgρσ(xμ)の微 分 と
し て求 め られ,こ の 計 量 テ ン ソ ル が 重 力 ポ テ ン シ ャル を与 え るの で,グ トン の ス ピ ン は1で
ラヴィ
な く2で あ る.最 後 に こ れ ま で の ま とめ を 表2.1に
掲げ
る.
2.3
ア ハ ロ ノ フ-ボ ー ム 効 果
こ れ ま で の 考 察 に よ れ ば,物
質 場 の ゲ ー ジ 変 換 の 自 由 度 は,内
の と り方 の 自 由 度 と解 釈 で き る こ と が わ か っ た.接 変 わ る 量 で あ り,電 が 真 の 物 理 量 で,Aμ
続 係 数Aμ
部 空 間 の座 標
は ゲ ー ジ変 換 で
磁 場 の 情 報 は ゲ ー ジ 不 変 なFμ νに 含 ま れ て い る か ら,Fμ は 単 な る 補 助 手 段 に す ぎ な い よ う に 見 え る.古
ス ウ ェ ル 理 論 で は そ う習 っ た.し
で あ りFμν で は な い.実
理 量 で あ り,か
つFμν よ り 基 本 的 な 役 割 を 果 た し て い る こ と は,ア
フ-ボ ー ム 効 果 は,量
典 的 マ ク
か し ラ グ ラ ン ジ ア ン を眺 め る と カ レ ン トと結
合 す る の はAμ
ボ ー ム 効 果(Aharonov-Bohm
ν
際,量
effect)に
子 力 学 で はAμ
が観 測可 能 な物 ハ ロ ノ フ-
よ っ て 知 る こ と が で き る.ア
ハ ロ ノ
子 効 果 の 典 型 例 と して 有 名 な物 質 波 に よ る 干 渉 効 果 に磁
場 の 効 果 を 加 え た も の で あ る(図2.8(a)). ま ず 電 磁 場 が な い 場 合,R点(x)に
お け る 波 動 関 数 は,P点(x0)で
発 生 し
た 電 子 波 を,ス
リ ッ トQ(S)を
通 る 道 筋 をC1(C2)と
し,そ
れ ぞれの ス リッ ト
を 通 っ て き た 波 動 関 数 を ψ1,ψ2,そ の 位 相 を α1,α2とす る.R点(x)に
お け る
粒 子 分 布 は,
(2.29a) で 与 え られ る.こ の こ とから 位 相 の絶 対 値 は観 測 量 で は な いが 位 相 差 は観 測 量 で あ る こ とが わか る. 次 に,ソ
レ ノ イ ド磁 場 を図 の よ うに 電 子 の通 行 路 か ら は るか に 離 れ た とこ ろ
に お く と し よ う.コ イ ル を十 分 細 くし外 に磁 場 が 漏 れ な い よ うに 十 分 長 く して や れ ば,電
子 が 直 接 磁 場 を感 じる こ と は な い.磁 場 が 存 在 せ ず と も,ベ ク トル
ポ テ ン シ ャ ルAμ(x)が
存 在 し て もか ま わ な い.磁 場 が 存 在 し な い と き は,
の 条 件 か ら,許 され る ポ テ ン シ ャル は,
(2.30a)
(a)
(b) 図2.8
ア ハ ロ ノ フ-ボ ー ム 効 果
(a) 電 子 の 波 動 性 を示 す 実 験 で は 干 渉 パ タ ー ン が 現 れ る.電 子 の 通 路 か ら十 分 離 れ た と こ ろに,漏 れ の な い磁 場 を設 定 す る と,干 渉 パ ター ン が 変 化 す る. 磁 場 の な い と こ ろ で も電磁ポ テ ン シ ャ ル は0で
な く,電 子 の位 相 変 化 を与
え る こ とが で き る こ と を示 す. (b) 磁 束 の 量 子 化.超 伝 導 リ ン グ の 中 に 周 回 電 流 が あ る と き,リ 磁 束 は 量 子 化 され る.
ングの内側 の
と 書 け る.ポ
テ ン シ ャ ル を0か
要 求 か ら,波
動 関数 は,
ら 式(2.30a)に
変 換 す る と,ゲ
ー ジ不 変 性 の
(2.30b) と な る.式(2.30)をf(x)に
つ い て解 け ば
(2.30c) を 得 る.(2.30)を(2.29a)に
代 入 す れ ば,干
渉 パ ター ン は,
(2.29b) と な る.∮
は,C1,C2で
囲 む 閉 回 路 に つ い て の 線積分
存 在 し な け れ ば 積 分 は ゼロ と な り,干 道 筋C1,C2で
で あ る.ど
渉 パ タ ー ン は 変 わ ら な い.し
囲 む 閉 回 路 の ど こ か に 磁 場 が 存 在 す れ ば,閉
ゼ ロ で は な い.す
こ に も磁場 が か し,も
し
回路 の 中の磁 束 は
な わ ち,
(2.31) で あ り,電
子 は磁 場 の な い とこ ろ を通過 す る に も関 わ らず磁 場 の 存 在 を感知 し
て 干 渉 パ タ ー ン が 変 わ る と い う の が 式(2.29b)の
予 告 す る と こ ろ で あ る.こ
れ は 実 際 に 実 験 的 に 確 か め ら れ て い る9). も う 一 つ の 興 味 あ る 応 用 例 は,超 で あ る(図2.8b).マ い.し
か し,(2.29)に
にexp(ieΦ)だ
伝 導 体 閉 回路 に 定 常 電 流 が 流 れ て い る と き
イ ス ナ ー 効 果 に よ り超 伝 導 体 の 中 に は 磁 場 は 存 在 し な よ り周 回 し て い る 電 子 の 波 動 関 数 に は,回
け の 余 分 な 位 相 因 子 が 加 わ る こ と に な る.電
転 す るた び
子 の 波 動 関 数 が1
価 で あ る と い う要 求 か ら,
(2.32) す な わ ち,磁 束 が 量 子 化 さ れ る.こ れ も ま た実 験 的 に確 か め られ て い る10).た だ し,こ の と き の磁 束 の 値 は(2.32)の 状 態 が 電 荷2の
正 確 に1/2で
あ っ た が,こ
クー パ ー 対 に より 引 き起 こ さ れ る とい うBCS理
れ は超 伝 導
論 と整 合 して
い る. 位 相 を 内 部 空 間 の 座 標 回 転 角 度 と見 な す 幾 何 学 的 解 釈 で は,全 磁 束Φ は こ の 閉 回 路 に お け る全 曲率 と い う意 味 づ け を もつ .先 端 を丸 くし た円 錐 面 を考 え
る と(図2.3(a))ア
ハ ロ ノ フ-ボ ー ム 効 果 の理 解 が 容 易 で あ る.丸
い ところは
磁 場 の 存 在 す る と こ ろ で そ こは 空 間 が 曲 が って い る.し か し,他 の と こ ろ は平 ら な 空 間 で あ り,電 子 波 は この 平 ら な空 間 を通 る軌 跡 を描 く.し か し,円 錐 面 を切 り開 い た 図 で 見 れ ば わ か る よ うにCBA,CDEの
軌 跡 が 測 地 線 で あ り,展
開 面 上 で測 地 線 に 沿 っ た 接 線 ベ ク トル(接 続 係数Aの も円 錐 面 に も どす と,A(E)点
方 向)は 平 行 で あ って
で は道 筋 に よ り方 向 が 変 わ り余 剰 角 が 生 じて い
る.電 子 は 常 に平 ら な空 間 を通 過 して き た に もか か わ らず全 体 と して 空 間 が 曲 が って い るた め に 電 子 は そ れ を感知 し,そ の 結 果 が 干 渉 縞 の 変 化 と して現 れ る の で あ る.こ の 場 合 ベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAは
コ イ ル の 外 で0で は な い こ と
に 注 目 しよ う.全 域 に わ た っ て ポ テ ン シ ャル を0に で き る 条 件 は 磁 場 が0で る と き の み で あ り,少 な くも あ る 部 分 に 磁 場 の 存 在 す る こ とが,Aを 沿 っ て積 分 した と きに0に
あ
道筋 に
な らな い こ と を保 証 して い る.相 対 論 を認 め れ ばす
べ て の 動 作 は近 接 作 用 で なけ れ ば な らな い か ら,電 子 に 作 用 して 軌 跡 を 曲 げ る の は 磁 場 で は な くベ ク トル ポ テ ン シ ャ ルAで
な け れ ば な ら な い.す
な わ ち,
電 磁 場Fμν の み で は ア ハ ロ ノ フ-ボ ー ム 現 象 の 記 述 が 不 十 分 で あ り,Aμ わ な け れ ば な ら な い.そ の よ う な 意 味 で,Aμ ち,し
を使
の 方 が よ り大 き な 情 報 量 を も
た が っ て よ り基 本 的 な 物 理 量 で あ る とい え る.上 の 考 察 か らベ ク トル ポ
テ ン シ ャ ル もま た 絶 対 値 は観 測 不 可 能 で あ るが,二 つ の ベ ク トル ポ テ ン シ ャル の 差(曲 率)は
観 測 量 で あ る こ とが わか っ た.こ
の 観 測 量 は 式(2 .31)の 表 式
か らわ か る よ うに ゲ ー ジ不 変 量 で あ る.
2.4 ヤ ン-ミ ル ズ 場(非
い ま ま で は 内 部 空 間 は2次 元,あ 空間 の 次 元 数 を増 や して,n次
可 換 ゲ ー ジ 場)
るい は複 素1次
元 と して 扱 っ て きた.内 部
元 複 素 空 間 に拡 張 して も今 ま で の議 論 は ほ とん
ど そ の ま ま適 用 で き る.た だ し,n≧2の
複 素 空 間 に な る と,座 標 変 換 を二 重
に 施 し た と き,順 序 を 変 え る と違 う変 換 に な る(非 可 換 に な る).こ の た め ゲ ー ジ場 の 満 た す 方 程 式 が 非 線 形 とな り,数 学 的 な取 扱 い が や や 複 雑 に な る. 内 部 空 間 を2次 元 複 素 空 間 に拡 張 す る こ とは,SU(2)(ア
イ ソ ス ピ ン)対 称 性
を導 入 す る こ とに 等 しい.強 い 相 互 作 用 に お い て は ア イ ソ ス ピ ン不 変 性 が 近 似
的 に 成 立 す る.こ
れ はuク
ォ ー ク とdク
ォ ー ク の 入 れ 替 え 対 称 で あ り,
(2.33) で 表 さ れ るu',d'を の 変 換 は,一
使 っ て も運 動 方 程 式 は 変 わ ら な い と い う こ と で あ る.こ
般 性 を 失 う こ と な く,
(2.34) と 書 き 直 せ る.一
般 にSU(n)変
エ ル ミ ー ト行 列τa(生 書 け,し
換 は,n2-1個
成 子;generator)と
か も群 と し て の 性 質 は,τ
のn×nの
無 軌 跡(traceless)
実 変 数 αaを 使 っ て(2.34)の
形 に
の 表 示 を 決 め る と交 換 関 係
(2.35) に よ り本 質 的 に 決 ま る.こ 造定 数 と呼 ば れ る.SU(2)の
こ にfabcはabcに
つ い て 完 全 反 対 称 な 定 数 で,構
場 合は
(2.36) で あ る.N次
元 表 現 空 間 のN個
の 基 底 ベ ク トル で つ く るベ ク トル の座 標 成 分
は,(2.35)の
交 換 関 係 を満 た すN×Nの
表 現 行 列taに よ り変 換(回 転)を 受
け る.
(2.37) N=n(ta=τa/2)の resentation)と る が,結
と き 基 本 表 現,N=n2-1の い い 特 に 重 要 で あ る.以
論 は 一 般 のSU(n)対
場 合 を 随 伴 表 現(adjoint 下,話
はn=2の
rep
ア イ ソス ピンで進め
称 性 に 適 用 で き る.
行 列τaが 非 可 換 で あ る た めUも
ま た 非 可 換 で あ る.こ
の よ うな 対 称 群 を非
可 換 群 ま た は 非 ア ー ベ ル 群 と い う.式(2.34)のSU(2)変
換 は位 相 変 換 の 形
を し て い る こ と に 注 目 し よ う.た
イ ソ ス ピ ンIを
つ と き は,N=2I+1)行1列 列 と な っ て い る.SU(2)変
だ し,今
度 は ψ がN(ア
の 列 ベ ク トル で あ り,位
も
相 変換 演 算子 もまた行
換 で ラ グ ラ ン ジ ア ン が 不 変 で あ れ ば,ネ
ー ター の
定 理 に よ り保 存 す る ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン ト し た が っ て 保 存 量 ア イ ソ ス ピ ン が 存 在 す る.ア
イ ソ ス ピ ン変 換 の生 成 子 の 交 換 関 係 は角 運 動 量 の 交 換 関 係 とま っ た
く 同 一 で あ る か ら,内
部 空 間(ア
イ ソ ス ピ ン 空 間)で
の ア イ ソ ス ピン の演算
は,時 空 で の角 運 動 量 演 算 と数 学 的 に は ま っ た く同一 で あ り,ゲ ー ジ変 換 の 自 由度 が 座 標 回転 の 自由 度 で あ る とい う幾 何 学 的 解 釈 は,直 観 的 に は よ り受 け 入 れ られ や す い. こ こ で,ゲ ー ジ変 換 を局 所 化 す れ ば 相 互 作 用 を含 む ゲ ー ジ理 論 が 得 られ る. SU(2)群
の ゲ ー ジ場 は ヤ ン-ミ ル ズ に よ りは じめ て 与 え られ た の で ヤ ン-ミ ル
ズ場 と もい う.ゲ ー ジ場 の 導 入 は 平 行 移 動 の 式(2.15)を よ い.た
だ し,今 度 は ψ が 内部 空 間 でN個
(行 列 表 示 の と きはΨ の 行 列Aμ
そ の ま ま適 用 す れ ば
の成 分 を もつ の で,ψa(a=1∼N)
で 表 す)で 表 す こ と に す る と,接 続 係 数 も ま たN×N
とな る.生 成 子 の表 現 行 列taを 使 って 展 開 す れ ば,
(2.38) と表 さ れ るか ら,非 アー ベ ル 群 の場 合 は ゲ ー ジ場 が生 成 子 の 数 だ け あ る こ とに な る.SU(2)の
場 合 は3個,SU(3)の
場 合 は8個
で あ る.接 続 係数Aμを
使
え ば,平 行 移 動 は 行 列 形 式 で
(2.39) と定 義 で き る.た
だ し,
(2.40)
ま た は,成 分 で書 き表 せ ば,
(2.41) gはU(1)ゲ
ー ジ理 論 の 電荷eに
対 応 す る も の で,場 の もつ ア イ ソ ス ピ ン量 子
数 に 比 例 す る結 合 定 数 で あ る.対 応 す る共 変 微 分Dμ は
(2.42) で あ り,ま た局 所 ゲ ー ジ変 換
(2.43) に対 応 す る ゲー ジ場 の 変 換 は,運 動 方 程 式 を不 変 にす る とい う要 請 か ら得 られ る.Dμ →Dμ'と す る と き,
(2.44) よ り,Aμ
の 変 換 性 が 得 ら れ,
(2.45) こ こ でUと
して 微 小 変 換(α を微 小 量 と考 え る)を と り,O(α)ま
で の 項 を具
体 的 に 成 分 で書 き下 ろす と,
(2.46) と表 現 行 列tに
よ ら な い形 とな る.内 部 空 間 に つ い てベ ク トル 表 示 に す る と
(2.47) と な る.た
だ し,fabcαbAcμ
を α ×Aμ と 表 し た.こ
に は な か っ た 新 し い 項 で あ る.こ 空 間 で 回 転 す る こ と を 示 す.す 受 け る 量,い あ り,ア
い 換 え れ ばΨ
イ ソ ス ピ ン1を
対 象 と な る こ と(ゲ (2.17)と る.今
な わ ち,ゲ
ー ジ場Aμ
自 身 も内 部 空 間 で 回転 を
と同 じ く 内 部 空 間 の ベ ク トル と し て 変 換 す る 量 で
もつ こ と を 示 す.つ
ま り ゲ ー ジ 場 自 身,ゲ
ー ジ変 換 の
ー ジ 場 自 身 が 力 の 源 泉 と な り う る こ と)を 示 す.曲
が 行 列 で あ り,非
す 必 要 が あ る.簡 ど)を
の 表 式 の 意 味 は ゲ ー ジ 変 換 に よ りAμ が 内 部
同 様 に 接 続 係 数 を 小 閉 曲 線(図2.6)の
度 はAμ
の 項 が アー ベ ル ゲ ー ジ 変 換
単 の た め,x-y平
可 換 な の で,平
率 は式
周 り を 平 行 移 動 して 得 られ 行 移 動 の順 序 に 注 意 して 動 か
面 で 動 か す こ と に し,他
の 変 数(z,tな
省 略 して 書 け ば
(1) P→Qへ
の平 行 移 動
(2.48a) (2) Q→Rへ
の平行移動
(2.48b) P→Q→Rに
沿 って 平 行 移 動 して得 られ る Ψ をΨ‖PQRと 書 く と
(2.49) R→S→Pの
移 動 は,P→S→Rの
移 動 の 符 号 を 逆 に し て 得 られ,P→S
→Rの る.結
移 動 は,P→Q→Rの
移 動 の 式(2
.49)か
らx〓yの
交 換 で 得ら れ
局,
(2.50) (2.17)と
比 較 し て,ア
ー ベ ル 群 の 電 磁 場Fμν に 対 応 す る 量 は,
(2.51) と な る.第2番
目の 等 式 は 実 際 に 演 算 を実 行 して み れ ば 証 明 で き る.最 右 辺 の
式 は 見 か け 上 は微 分 演 算 子 を含 む が,交 換 関 係 を と った もの は微 分 演 算 を含 ま な い.可 換 群 の 場 合 は[Aμ, Aν]=0で
あ るの で電 磁 場 の 式 に 帰 着 す る.
(2.52) で あ る の で,Fμν
も ま たtaで
展 開 で き て,
(2.53a) (2.53b) と な る.Fの
ゲ ー ジ 変 換 式 は(2.51)よ
り,
(2.54) Fμν は 行 列 で あ る の で,Fμν
とFμν'は 等 し く な い.す
のFμν は ゲ ー ジ 不 変 量 で は な い.ゲ
な わ ち,非
ア ー ベ ル場
ー ジ不 変 な ラ グ ラ ン ジ ア ン をつ く る と き
は
(2.55) を用 い れ ば よ い.テ
ン ソル 場 の 共 変 微 分 は,図2.9の
よ う な 経 路 に 沿 って Ψ
を平 行 移 動 して や れ ば よ く,結 果 は
(2.56) と な る.第2の
等 式 は実 際 に演 算 して み れ ば わ か る.
場 を決 め る 方程 式 は マ ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 に 習 っ て
(2.57a) と す れ ば よ い.た
だ し
(2.58) は,場
を 生 み 出 す ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン トで あ る.表
現 行 列taを
分 離す る と
Aを
図2.9 Fμν の 共 変 微 分DλFμν を得 る た め の径 路 囲 む 径 路 でFμν(xμ, xν, xλ+dxλ)が 得 られ,Bを 囲 む 径 路 で-Fμν(xμ, xν, xλ)
が 得 られ る. 図 の よ う な順 序 で Ψ を平 行 移 動 して い け ば,Fμν の共 変 微 分 が得 られ る.
(2.57b) と な る.ヤ
コビ の恒 等 式
(2.59) に(2.56)を
入れ れば
(2.60) が恒 常 的 に 成 立 す る.こ れ は,実 際 に源 が あ る な しに か か わ らず 成 立 す る.運 動 方程 式(2.57)を
導 くラ グ ラ ン ジ ア ン密 度 は
(2.61) で あ る.こ
れ で マ ク ス ウ ェ ル の 方 程 式 に 対 応 す るSU(2)ゲ
揃 っ た こ と に な る.ゲ
ー ジ 場 の ラ グ ラ ン ジ ア ン(2.61)に
う に 質 量 項 は 存 在 し な い.注
ー ジ場 の 方 程 式 が は,電
意 す べ き こ と は(2.53),(2.57)に
3次 の 項 が 存 在 し 非 線 形 の 方 程 式 と な っ て い る こ と で あ る.こ 身 が ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン ト を 担 い,自 る.フ
ォ トン(電
磁 場)は
磁 場 と同 じ よ はAμ
の2次,
れ は ゲ ー ジ場 自
分 自 身 で 場 を つ く り出 せ る こ と に 対 応 す
電 気 的 に は 中 性 で,自
身 で は 場(フ
ォ ト ン)を
つ く
り だ せ な か っ た の と 大 き な 違 い で あ る. 強 い 相 互 作 用 は,ク 由 度 は3で
ォ ー ク の もつ カ ラ ー が 原 因 と し て 発 生 す る.カ
あ る か ら,量
dynamics)は,SU(3)群 に つ い て は,い
ラー の 自
子 化 さ れ た カ ラ ー 力 学(QCD:quantum
chromo
に 基 づ い た 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論 で あ る.そ
ま ま で 議 論 し て き た こ と が そ の ま ま 適 用 で き る.違
の構造
い はn=2
が3に
な る こ と,そ の 結 果8個
の ゲ ー ジ粒 子(グ ル ー オ ン)が 存 在 す る こ と,
ア イ ソ ス ピ ン構 造 定 数 εabcの代 わ りにSU(3)の な ら な い な ど で あ る.QCDの
議 論 は 第5章
構 造 定数fabcを 使 わ な け れ ば で 詳 し く述 べ る こ と と す る が,
ゲ ー ジ粒 子 で あ る グル ー オ ンは 正 確 に 質 量 が0で
あ る と見 な され て お り,こ の
章 で 記 述 し た 非 アー ベ ル ゲ ー ジ場 の ラ グ ラ ン ジ ア ン が 理 論 の 出 発 点 と な る. QCDの
特 徴 で あ る漸 近 自由(ク ォ ー ク間 の 力 は 遠 距 離 で 強 い が,短
弱 くな る こ と)は,カ
距離 で は
ラー 場 が 上 に述 べ た 非 ア ー ベ ル ゲー ジ場 で あ る こ と に 原
因 が あ る.ま た クォ ー クの 閉 じ込 め(ク ォ ー ク間 の ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギー は 距 離 と と もに増 大 す るの で,引
き離 して 自由 ク ォー クを 取 り出 す こ とは で き な
い こ と)も 同 じ 原 因 か ら の 帰 結 で あ る と 見 な さ れ て い る.こ れ に 反 し て, GWS理
論 で は 非 ア ー ベ ル群 と して の 性 質 を表 だ っ て 使 う と こ ろ は 少 な く,む
しろ 次 節 で 述 べ る よ うに,ゲ ー ジ粒 子 が 質 量 を もつ 原 因 とな る対 称 性 の 自発 的 破 れ に 特 徴 が あ る. 最 後 にSU(2)対 ピ ン1)の
称 に従 う物 質 場(ア
イ ソス ピ ン1/2)と
ゲ ー ジ場(ア
イ ソス
ラ グ ラ ン ジ ア ン を ま とめ て お く.
(2.62a) (2.62b) と し て,ラ
グ ラ ン ジア ン は
(2.63) 特 に相互作用部分 は
(2.64a) (2.64b) これ か ら導 か れ る運 動 方 程 式 は,
(2.65a) (2.65b)
と な る.第2式
右 辺 が,ア
イ ソ ス ピ ン カ レ ン ト と 呼 ば れ る 量 で あ る.
2.5 隠 さ れ た 対 称 性
2.5.1
自発 的対 称 性 の破 れ
弱 相 互 作 用 が ゲー ジ原 理 に従 う と し て も,W粒
子 が 質 量 を もつ とい う事 実
は ゲ ー ジ不 変 性 が 破 れ て い る こ と を意 味 す る.質 量 を与 え る一 つ の 方 法 は起 源 は 問 わ ず ラ グ ラ ン ジ ア ン の 中 に質 量 項μ2WμWμ
を 入 れ てや り,あ らわ に ゲ ー
ジ不 変 性 を破 る こ とで あ る.こ れ は対 称 性 が 大 体 は 成 立 して い て,余 分 に 入 れ た項 が 摂 動 と見 なせ る と きは うま くい くか も しれ な い.し か し,80GeVと うW粒
子 の 質 量 は 強 い 相 互 作 用 をす る陽 子 の 質 量 の100倍
相 互 作 用 は 弱 い 相 互 作 用 の100万 とは考 え に くい.そ
合,棒
近 く もあ る.強 い
倍 も強 いの で,こ の よ うな 大 き な質 量 は摂 動
こ で 対 称 性 の 自発 的破 れ とい う考 え 方 が 登 場 す る.対 称 性
の よい 方 程 式 に は 同 じ対 称 性 を もつ 解 が 存 在 す るが,こ とは 限 ら な い.た
い
とえ ば,長
い棒 を水 平 面 に垂 直 に 立 て真 上 か ら力 を加 え る場
の 周 りの 回転 対 称 性 は 成 り立 っ て い るが,真
どち らか の 方 向 に た わ む.つ
れ が 必 ず し も安 定 な解
っ 直 ぐに 縮 む 解 は不 安 定 で
ま り成 立 し た解 は 回 転 対 称 性 を破 って い る.た だ
し,ど の 方 向 を選 ん で も同 じエ ネ ル ギー 状 態 とな っ て い る と こ ろに 回転 対 称 性 の な ご りが あ る. 場 の 理 論 に 応 用 の で き る例 と して 強磁 性 体 を考 え る.ス
ピ ン を もつ 原 子 は磁
気 能 率 を も ち,通 常 は熱 運 動 で ば らば らの 方 向 を向 い て い るが,磁 場 を か け る とス ピ ン の 方 向 が 揃 っ て磁 化 され る.磁 化 の 方 向 は 外 場 の 方 向 に 一 致 し回転 対 称 性 を破 る が,こ れ は外 か ら 回転 対 称 性 を破 る外 場 を加 え た か ら で あ る.温 度 が キ ュ リー 点 以 下 に な る と,磁 性 体 は外 場 を与 え な くて も ス ピ ンが 揃 い 永 久磁 石 とな る.こ れ は 磁 気 能 率 同 士 間 に相 互 作 用 が あ るか らで,ス
ピ ン の揃 う方 が
エ ネ ル ギー が低 く,十 分 温 度 が 低 け れ ば 熱 エ ネ ル ギー に勝 つ か ら で あ る.こ の と き磁 化 す べ き特 別 な方 向 は 存 在 しな い が,実 現 した 基 底状 態 で は磁 化 は あ る 一 定 の 方 向 を向 いて い る.ど の 方 向 で もエ ネ ル ギ ー は 同 じな の で これ は 無 限 に 縮 退 して い る状 態 で あ る.こ の よ うに 自由 度 が 大 き い 系 で,方 程 式 は対 称 性 を もつ に もか か わ らず 実 現 した 基 底 状 態 で は そ の 対 称 性 が破 れ て い る と き,対 称
性 が 自発 的 に破 れ た とい う.先 の 棒 と状 況 は 同 じで あ るが,違
うの は 自由 度 が
大 きい こ とで あ る.こ の た め 違 う二 つ の 基 底 状 態 を結 びつ け る要 素 が な く,遷 移 が 不 可 能 で あ る.す な わ ち,エ ネ ル ギ ー 的 に は縮 退 して い るに もか か わ らず い っ た ん 選 ん だ 方 向が 固定 され て し ま う.す べ て の 現 象 は この 基 底 状 態 か らの 励 起 と し て観 測 さ れ るの で,こ の 世 界 に 住 む 人 間 に とっ て は磁 化 の 方 向 は特 別 な意 味 を もち,回 転 対 称 性 は破 れ て い る と見 なす で あ ろ う.こ の よ うに 巨視 的 に 多数 の 粒 子 を含 む系 が あ る温 度 を境 に 一 つ の秩 序 状 態 に移 行 す る現 象 は物 性 の 世 界 で は始 終 見 られ る こ とで あ り,相 転 移 と呼 ば れ る.
2.5.2 相 転 移 の 定 式 化 以 上 の よ う な相 転 移 は系 の エ ネ ル ギーVが,問
題 に す る物 理 量 φの 関 数 と
して
(2.66) の よ う な 形 を し て い る と起 こ る.φ で,強 >0で,エ μ20の
, と きは,ラ
グラ
ン ジ ア ンの 中 の│φ│2項 は質 量 項 を表 し,μ は質 量 を 表 す(運 動 方 程 式 をつ く っ て み れ ば わ か る).φ4の 項 は 自 己 相 互 作 用 ま た は ポ テ ン シ ャル と解 釈 さ れ る. 低 温 で μ2∼1GeVと
た斜 線 部 分 がyに
よ ら な い部 分,濃
し て,θ2〓10-3で
角 分 布4)
ほ とん ど前 方 に 集 中す る.薄
く影 をつ け た と こ ろ が(1-y)2に
音 反 応(νμ+N→νμ+π0+N,νe+p→e++n)で
比 例 す る部 分 で,白
く影 を つ け い部分 が雑
あ る.
*2) こ の 事 実 は 天 体 ニ ュ ー ト リ ノ観 測 に お い て,ニ れ る.
験 的 に混入
陽 子 ビ ー ム に よ っ て 生 成 さ れ た2次
ブ ル ッ ク ヘ ブ ン 研 究 所 で 行 わ れ たE734実
図4.6 Ee'θ2〓2meで
れ が,実
(中 性 子)
と 分 離 す る 決 め 手 と な る.νeは,1次 中 のKか
乱 された電 子 は
ュ ー ト リ ノ の 飛 来 方 向 を知 る の に 利 用 さ
4.3.2
断
面
積
相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ン が(4.1)で mZ2≫q2と
与 え ら れ た の で,νμe散
乱 の 振 幅 は,
して
(4.10a)
(4.10b) こ こ で,伝
播 関 数 のqμqν の 項 は 保 存 カ レ ン トに 掛 か る と0に
q2をmZ2に
比 べ て 無 視 し た.分
象 論 的 に 入 れ て お く.自 く と,断
母 のimZΓZは
な る こ と を使 い
最 低 次 か ら は 出 て こ な い が,現
乗 し て ス ピ ン 和 と 平 均 を と っ た 行 列 要 素 を│M│2と
面 積 は 付 録 式(C.4),(C.12)を
書
参 照 し て,
(4.11a)
(4.11b) で 与 え ら れ る.こ 在 し な い か ら,ス い)よ
こ で 注 意 す べ き は,ニ
ュ ー ト リ ノ に は そ も そ も左 巻 き しか 存
ピ ン に つ い て は 和 を と っ た 後 平 均 を と ら な い(2で
う に 注 意 す る.付
録 式(B.19),(B.23)を
使 っ て│M│2を
割ら な
計 算 す る と,
(4.12a) νμe散乱 は,L〓Rと
す れ ば よい か ら
(4.12b) ま と め て,
(4.13a)
(4.13b) (4.13c) Eν≫meで
あ るの で(4.12)の
第3項
は通 常 は 無 視 す る が,νee散
乱 の よ うに
原 子 炉 の ニ ュ ー ト リノ を使 う反 応 で は 必 要 に な る項 な の で 残 して お い た. ニ ュ ー ト リノ と電 子 の 散 乱 は 十分 な 統 計 を得 る こ とが む ず か しい の で,上 の 式 を積 分 して 実 験 値 と比 較 す る こ とに す る.第3項
を無 視 す る近 似 で
(4.14) な お,νe(νe)e散 乱 の 断 面 積 を求 め る に は,Z0交 の 寄 与 を加 え る必 要 が あ る.W± ジア ン を考 慮 して2次
換 項 の ほ か にW±
交 換 項 が 寄 与 す る振 幅 は(4.1)の
交換 項 ラ グラ ン
の行 列 要 素 をつ くる と
(4.15) と な る が,こ
れ は フ ィー ル ツ 変 換(付
録H)す
(4.10b)で,
る と 中 性 カ レ ン トの 行 列 要 素
と し た も の に 等 し い か ら,GN=GFで
あ れ ばdσ(ν μ(νμ)e)を 表 す 式(4.12)で
の 置 き 換 え を す れ ば,荷
電 カ レ ン ト と 中 性 カ レ ン トの 両 方 の 寄 与 を 含 ん だdσ(νe(νe)e)が
4.3.3 gV, gA,
sin2θWの
得 ら れ る.
決 定
断 面 積 の 大 き さ の 目安 は
(4.16) で 与 え ら れ る.BNLのE734グ
ル ー プ は4)
(4.17a) (4.17b) を 得 た.(4.14)を
参 照 し て,こ
れ か ら,gV,gAを
解 く とgV,gA平
面 上 で 二つ
の 長 円 を 与 え る の で 解 が 四 つ あ る(図4.7(a)5)).こ
れ はgV,gAの
符号 が決 め
ら れ な い か ら で あ る.原
子 炉 か ら のνeを
使 っ て 行 っ たνee散
の ず れ た 長 円 を 与 え る の で 解 の 可 能 性 を 二 つ に 減 ら す.最 くに はe+e-→
μ+μ-を 使 え ば よ い が(図4.7(a)の
乱 デー タは中心
後 の 不 定 性 を 取 り除
中 の
で示 さ
図4.7
種 々の レ プ トン 反 応 よ り中 性 カ レ ン ト結 合 定数gA,gVを
決 め る5)
(a) 1986年 の デ ー タ (b) 1998年 時 点 の デ ー タに よ る許 容 範 囲:(a)の (後 述 §7.4)の 理 論 的 不 定 性 は,四 l+l-の 実 線 内 に あ る.ALRはSLACの
白 丸 の 部 分 拡 大 図.放
(1) νμe,νμe散乱 か ら二 つ の 長 円 が得 ら れ る の で,解
は4個
あ る.
(2) νee,νee散 乱 は別 の 二つ の 長 円 を与 え るの で,解
は2個
に な る.
(3) e-e+→ μ-μ+デ ー タ が最 終 的 に解 を一 つ に 絞 る. 歴 史 的 に はeD(偏 極 電 子 ビ ー ム)散 乱 に よ る 解 の 選 択 が 先 行 し た.現 ミュ ー オ ン と炭 素(C)散 丸 内 に あ る.GWS解
射補正
角 の 影 の 部 分 に あ り,デ ー タ の最 良値 は 偏 極 ビー ム デ ー タ(§7.2.4).
在偏極
乱 に よ る実 験 を含 め て解 は ユ ニ ー ク で あ り図(a)の
はgA=-1/2,sin2θW=0∼1の
直 線 上 に あ る.
白
れ る領 域),歴
史 的 に は偏 極 電 子(e)と
最 初 に 行 わ れ た(図 中eDと
重 水 素(D)の
あ る領 域,次
散 乱 での非対称 の測 定が
節 で議 論).こ
れ は ク ォー ク との 散
乱 を含 む の で,純 粋 に レプ トン 反 応 の み で の決 定 に は な らな い.も
ちろん統一
理 論 の 精 神 か らす れ ば両 者 に 区別 は な いが,実 験 の 検 証 と して は 純 レプ トン反 応 と クォー ク を含 む 反 応 とで 独 立 に検 証 す る の が望 ま し い こ とは い う ま で もな い.現
在 は 四 つ の 解 の う ち ど れ が 正 し い か が わ か って い る か ら,σ(νμe),
σ(νμe)より直 接 にgV,gAが
一 意 的 に 決 め られ る.E734の
れ た角 分 解 能 を利 用 し て,デ ー タ の角 分 布 を,gV,gAを 式 に合 うよ うに 決 め た.図4.6の 線 で あ る.CHARM Ⅱ
実 際 の解 析 で は,優 パ ラ メ ター と して 計 算
角 分布 に あ る ヒス トグ ラム は こ う して 得 た 曲
に よ る最 近 の デ ー タで は6),
(4.18a) (4.18b) こ こ で,結
合 定 数 は 電 子 の も の で あ る こ と を 明 記 す る た めeと
に つ け て あ る.gAの の 値 が0に
値 は,GWS理
論 の 予 言 値-1/2と
近 い と い う 事 実 は,ワ
と を 意 味 す る.sin2θWはgVか 提 を お け ば,gA=-1/2を
イ ン バ ー グ 角sin2θWが
ら 求 め ら れ る が,GWS理
い う指 標 を 特
よ く あ っ て い る.gV 非 常 に1/4に
近 い こ
論 が 正 しい と い う前
与 え た う え で,比R
(4.19) を 使 う ほ う が よ り正 確 に 求 め ら れ る7).
(4.20a) が 与 えら れ て い る.
断 面 積 の 絶 対 値 を もパ ラ メ タ ー と して 最 適 化 す る と ρを得 る こ とが で き る. 現 在 値 は7)
(4.20b) 4.4 eD散
中 性 カ レ ン トは(I3L-Qsin2θW)と レ ン トの 混 合 と な っ て い る.と
乱 の非 対 称
表 され る よ うに 電 流 とア イ ソス ピ ン 弱 カ い う こ とは 電磁 相 互 作 用 が あ る とこ ろ 必 ず 中性
カ レ ン トに よ る 弱相 互 作 用 も存在 す る こ と を意 味 す る.中 性 カ レ ン トの 存 在 は パ リテ ィ非 保 存 に よ り特 徴 づ け ら れ る.GWS理
論 が 提 唱 さ れ て よ り,そ れ ま
で は 純 粋 な電 磁 相 互 作 用 に よ る と考 え ら れ た 原 子 遷 移 に お い てパ リテ ィの 破 れ を見 つ け よ う とす る 試 み が な され た.例
え ば,ビ
ス マ ス に レー ザ ー 光 を 当 て,
わ ず か な 偏 光 面 の 回 転 を検 出 す る試 み が 行 わ れ た が,初 期 の 実 験 はGWS理 の 予 想 と合 わ な か った.今
日で は き わめ て精 密 な測 定 が な さ れ て い てGWS理
論 とよ く合 うこ とが 知 られ て い る8).中 性 カ レ ン トの 検 証 とい う点 で は,歴 的 にSLACの た.eD散
論
偏 極 電 子 ビ ー ム を 使 用 す るeD散
史
乱9)で の 非 対 称 実 験 が 先 行 し
乱 に よ る ワ イ ン バ ー グ角 決 定 の 精 度 は,ν-電 子 散 乱 に 及 ば な い が,
(1) 電 磁 相 互 作 用 にパ リ テ ィ非 保 存 項 が 混 じ る こ と を は じめ て 示 し た こ と, (2) νe散乱 で は 解 け な か っ たgV,gAの
符 号 を決 め て,一
時 期 ゆ れ 動 い たGWS
理 論 の正 当性 を立 証 して 物 理 学 史上 の 一 つ の エ ポ ッ ク と な っ て い る こ と,そ し て(3) eD散
乱 公 式 を導 く過 程 が 後 に 使 うee→ff散
乱 公 式 を 導 くの に 有 用
な ど の理 由 に よ り,こ こ で と り上 げ る こ とに す る. ビー ム は 縦 偏 極(ヘ
リ シ テ ィ)の 負(L)成
分 と正(R)成
し,原 子 核 標 的 は 偏 極 して い な い 場 合 を 考 え る.ベ
分 に分 け る こ と と
ク トル 相互 作 用 は ヘ リシ
テ ィ を 保 存 す る こ と を考 慮 す る と電 子 と原 子 核 の 中 の ク ォー クqと の 散 乱 振 幅 は,
(4.21) (4.22) a,b=Lま
た はR
こ れ よ り,ヘ mZΓZと
し て,断
考 え る.ス
*3) L
,Rは
リ シ テ ィ を 考 慮 し たeq散 面 積 と し て は 第1項
ピ ン 和 を とれ ば,付
乱 の 断 面 積 が 計 算 で き る*3).mZ2≫t, の 自 乗 と,第1項
録 式(B.23)を
カ イ ラ リテ ィ で ヘ リ シ テ ィ で は な い が,質
と2項
の干渉項 のみ を
参 照 し て,
量 を 無 視 す れ ば 同 じ と な る.
(4.23a) (4.23b) で あ る の で,
を使 え ば
(4.24) が 得 ら れ る.
と して 非 対 称Aを
計算すれ ば
(4.25) た だ し,分
母 で は 優 勢 な 第1項
ソ ス ピ ン0の
の み を 残 し,干
標 的 で あ る か ら,uク
渉 項 は 落 と し た.重
ォ ー ク とdク
水素 はア イ
ォ ー ク が 同 数 ず つ あ る の で,
と し 2を 入 れ れ ば,
(4.26) │t│≒1GeV2と
す る と
(4.27) と な る.非
対 称 値Aは
ビー ム エ ネ ル ギ ー に よ ら な い.Aが
非 常 に小 さ い の で
大 変 困 難 な 実 験 で あ る. SLAC(ス 4.8(a)に
タ ン フ ォ ト線 形 加 速 器 セ ン タ ー)で 示 す.こ
の 実 験 で は,偏
行 わ れ た 実 験9)の 結 果 を 図
光 電 子 ビー ム は 円偏 光 した レー ザ ー ビー ム
(a)
(b)
(c)
図4.8 偏 極 電 子 と重 水 素 との 散 乱 に お け る非 対 称 測定 実 験9) (a) 非 対 称 をyの
関 数 と して み る.だ
い た い 標 準 理 論 に あ う.非 対 称 が 偏 極 プ リ ズ ム を 回 転 し た り
(b), エ ネ ル ギー を変 え る(c) と変 化 し,予 想 通 りで あ る こ とに よ り実 験 の チ ェ ッ ク を す る.エ ギ ー に よ り非 対 称 が 変 わ るの は ス ピ ン 歳 差 運 動 の 周 波 数 が 磁 場(エ る こ とか ら くる.
ネ ル ギー を決 め る)に
を 電 子 と散 乱 させ て つ く り,ビ ー ム 偏 極 度Pe=0.37を る の はAPeで
あ る か ら,Peを
験 で測 定 す
変 え て 非 対 称 が 変 わ る の を見 るの は 実 験 が 正 し
く行 わ れ て い る こ との 一 つ の チ ェ ッ ク とな る.Peは を別 途 行 って,そ
得 た.実
ネル
よ り変 化 す
メ ラー 散 乱(e-e-散
乱)
の 非 対 称 から 測 定 で き る.偏 光 レー ザ ー ビー ム は最 初 線 偏 光
して い る レー ザ ー ビー ム を 円 偏 光 に変 換 して 得 るが,そ
の偏 極 度 は 途 中 に挿 入
し た 方 解 石 プ リ ズ ム を 回 転 し て 変 えら れ る.図4.8(b)は,方 度 の 関 数 と し て,非
対 称 を 描 い た も の で あ る.図4.8(c)は,ビ
ギ ー を 変 え た と き の 非 対 称 の 変 化 で あ る.A自 ら な い が,ビ
極 度Peが
こ の 結 果,ニ
よるス ピ
の 実 験 の 結 果 をgV,gAの
値
論 の 予 想 と一 致 す る こ とが 結 論 さ れ た .
の 高 エ ネ ル ギ ー 東 京 国 際 会 議 の 総 合 レ ビ ュ ー で は,す
実 を 総 合 的 に 検 討 し て,数
関
示 さ れ る 部 分 が 許 容 範 囲 と な る.
ュ ー ト リ ノ 電 子 散 乱 で の 解 の 符 号 の 不 定 性 が 解 け て,gV,gAの
が ユ ニ ー ク に 決 ま り,GWS理 1978年
常 磁 気 能率g-2に
変 化 す る の で あ る .こ
数 と し て プ ロ ッ トす る と,図4.7のeDで
ーム エ ネ ル
身 は ビー ム の エ ネ ル ギー に よ
ー ム は 磁 場 の 中 を 通 過 す る の で,異
ン 回 転 が あ り,偏
解 石 の 回転 角
あ る ゲ ー ジ 理 論 モ デ ル の 中 で,ワ
べ ての実 験事
イ ン バ ー グ-サ ラ
ム モ デ ル の み が 唯 一 の 正 し い 結 果 を 与 え る こ と,種
々 の 過 程 か ら求 め られ た
sin2θWが
.こ
が,モ
す べ て 一 致 す る こ と が 示 さ れ た(図4.910))
デ ル か ら理 論 へ と 昇 格 し た と い え る.ワ
さ れ て か ら10年
の 時 点 でGWS理
経 過 し て い た.
図4.9 種 々 の 中性 カ レ ン ト反 応 が すべ てGWS理 イ ンバ ー グ角 を与 え る こ と の証 明.こ 疑 問 の余 地 な く立 証 され た(1978年,高 で の 総 合 講 演)10)
論
イ ン バ ー グ-サ ラ ム 理 論 が 提 唱
論 の 予 想 通 りで,か れ に よ っ てGWS理
つ 同 じワ
論 の正 しさが
エネルギー物理学東京国際会議
4.5
GWS理
論 は,当
る た め に は,ク
GIM機
構
初 レ プ トン に つ い て つ く ら れ た も の で あ る.統
一理 論 であ
ォ ー ク に つ い て も 同 じ 原 理 が 適 用 さ れ な け れ ば な ら な い.と
こ
ろ で 当 時 知 ら れ て い た 唯 一 の ク ォ ー ク の 二 重 項*4)
(4.28) か ら 中 性 カ レ ン トを つ く っ て み る と,
(4.29) と な る.簡 dとsを
単 の た め ク ォ ー ク種 以 外 の 時 空 の 指 標 な ど は 省 略 し た.最 入 れ 換 え る 演 算 子 で あ る の で,電
ス が 変 わ る 中 性 カ レ ン トで あ る.こ
荷 は 変 わ ら な い が,ス
の 項 が 存 在 す る と,例
トレ ン ジ ネ
え ば
11)の よ う な 反 応 が 存 在 し な け れ ば なら な い(図4 こ れ ら の 分 岐 比 は,実
後 の項は
とか
.10(a),(b)).
験 的 に は7)
(4.30) と 非 常 に 小 さ い.少
な く も 第1近
似 で は ス トレ ン ジ ネ スの 変 わ る中性 カ レ ン ト
は 存 在 し な い と考 え て よ さ そ う で あ る.と
す れ ば(4.29)の
何 ら か の メ カ ニ ズ ム が 働 い て い な け れ ば な ら な い.そ を 導 入 し,s'と
第4項
こ で,第4の
を打 ち 消 す ク ォ ー クC
二 重 項 を つ く る と 考 え る.
(4.31) こ う す る と,Q1に
よ る 中 性 カ レ ン トの ほ か に,Q2に
よ る 中性 カ レ ン ト
が 付 加 され て,全 体 と して は
(4.32) *4) 当 時 観 測 さ れ て い た ク ォ ー ク はu れ,(u,
d')の
, d, sの3種
組 が 弱 い 相 互 作 用 を す る.
あ っ た が,カ
ビ ボ 理 論 で はd'に
ま とめ ら
と な り,ス る.こ
トレ ン ジ ネ ス を変 え る項 が な く な るか ら実 験 事 実 と矛 盾 しな くな
れ を 発 見 者 グ ラ シ ョ ウ-イ リ オ ポ ロ ス-マ イ ア ニ(Glashow-Illioupoulos-
Maiani12))に
ち な ん でGIMメ
カ ニ ズ ム と 呼 ぶ.こ
の 中 性 カ レ ン トは,電
荷 の
み な らず ス トレ ン ジ ネ スや チ ャー ム量 子 数 を も変 え な い 真 の意 味 で の 中性 カ レ ン トで あ る. ス ト レ ン ジ ネ ス の 変 わ る 中 性 カ レ ン ト反 応 が,小 は 高 次 効 果 に よ る.図4.10(c)∼(d)を ン ト反 応 の2次 き さ(gW2/4π)は (c),(d)の
参 照 す れ ば わ か る よ う に,荷
効 果 と し て 実 現 可 能 で あ る.GWS理
μ −μ+
は ず で あ る が,実
(b)
(d)
(c),(d)
K0→
K+→
π+レ
μ-μ+,K+→π+νν
GIM機
電 カ レ
との 結 合 の 大
た が っ て,図4.10
験 値 は そ れ よ りは る か に
レ
(e) 図4.10
(a),(b)
論 で はW±
電 磁 相 互 作 用 結 合 α と 同 程 度 で あ る.し
過 程 の 寄 与 はO(α2)の
(a) K0→
さ くは あ る が 存 在 す る 理 由
(c)
(f)
構 に よ る相 殺 機 構
は ス トレ ン ジ ネ ス を 変 え る 中 性 カ レ ン ト が 存 在 す れ ば 生 じ る.
は 荷 電 カ レ ン トの み で も 高 次 の 効 果 と して 起 こ る こ と を 示 す フ ァ イ ン マ ン 図.
(e),(f)は(c),(d) 消 す よ うに 働 く. (c),(d) ∝g2cosθcsinθc (e),(f) ∝-g2coscsinθc
に お い てu→cで
置 き 換 え た 図.結
合 定 数 の 符 号 に より(c),(d)の
寄 与 を打 を
低 い 値 を 与 え る.こ (e),(f)の
れ はGIMメ
過 程 が 存 在 し,(c),(d)の
ラ フ を 比 べ て み る と,違 る が,W± る.も
カ ニ ズ ム が 高 次 で も 働 い て い て,図4.10
い はuク
過 程 を 相 殺 す る こ と に よ る.両 ォ ー ク をcク
粒 子 と の 結 合 の 仕 方 に 違 い が あ り,振
しcク
あ る.質
ォ ー ク の 質 量 がuク
者 の グ
ォー クで 置 き換 え た の み で あ 幅 と して は 同 値 異 符 号 を与 え
ォー クの 質 量 と同 一 で あ れ ば 相 殺 は 完 全 で
量 の 違 う分 に よ り生 じ る 差 が 実 験 値 を 与 え る と し て,mc≫muを
仮 定
して崩 壊 振 幅 を計 算 す る と
(4.33) と な り,実 GeVが
験 値 を 再 現 す る よ う にcク
得 ら れ た13).こ
の 予 言 はcク
ク ォ ー ク の 発 見 は,GWS統
ォ ー ク の 質 量 を 調 整 す る とmc∼1.5 ォ ー ク の 発 見 さ れ る 前 に 行 わ れ た.c
一 理 論 の 基 本 的 考 え 方 で あ るSU(2)の
二 重項 構
造 が ク ォ ー ク セ ク タ ー で も成 立 し て い る こ と を 確 認 し た と い う意 味 で,単 第4の
なる
ク ォ ー ク の 存 在 と い う 以 上 の 重 要 な 意 味 合 い を も っ て い た の で あ る.次
の ス テ ッ プ は,ク
ォ ー ク セ ク タ ー で の ワ イ ン バ ー グ角 が レ プ トン セ ク タ ー で 決
め ら れ た ワ イ ン バ ー グ角 と 同 じ値 を も つ か ど うか を 確 認 す る こ と で あ る.
4.6 ハ ドロ ン に よ る 中 性 カ レ ン ト反 応
4.6.1
断
面
積
ニ ュ ー ト リ ノ と ク ォ ー ク と の 中 性 カ レ ン トに よ る 反 応 断 面 積 は,(3.33)で 与 え た.す
なわち
(4.34)
(4.35)
(4.36) sは(νq)系
の 全 エ ネ ル ギ ー で あ り,GN=ρGFで
ば レ プ トン 反 応 の ρ と 異 な る(レ の 補 正 効 果 を も つ)が,差
あ る.こ
こ の ρは 厳 密 に い え
プ ト ン 反 応 とハ ド ロ ン 反 応 で は,異
は 小 さ い の で 現 段 階 で は 同 じ と見 な す.
な る高 次
ニ ュ ー ト リ ノ と核 子(N)と の 運 動 量 変 数 をs→xsと
の 反 応 断 面 積 を 得 る に は,核
し,q(x),q(x)を
子 の 中 の クォー ク
掛 け て や れ ば よ い(§3参
照).
(4.37a)
(4.37b) x, yで
積 分 し,
(4.38a) (4.38b) と 書 け ば,
(4.39a) (4.39b) と な る. こ こ で,陽
子 の 中 のu,
dク
ォ ー ク の 分 布 関 数 をu(x),d(x)と
ン ジ ネ ス ク ォ ー ク 成 分 や チ ャ ー ム ク ォ ー ク生 成 の 寄 与 を 無 視 し た.ま の 数 と 中 性 子 の 数 が 等 し い ア イ ソ ス ピ ン=0の でu〓dと
し,ス
トレ
た,陽
子
標 的 を 使 う こ と に す れ ば,上
式
し た も の の 平 均 を と る 必 要 が あ る の で,
(4.40a) (4.40b) と 置 き 換 え て,改
め てQ=(U+D)/2と
お く と,(4.39)は
(4.41a) (4.41b) と書 き 直 せ る.一
方,荷
電 カ レ ン トに よ る 反 応 断 面 積 は,
(4.42a) (4.42b) で 与 え ら れ る(§3.6参
照).た
る 高 次 補 正 で あ る.こ
こ で,
だ し,ρcc(≒1)は
中 性 カ レ ン トで の ρ に 対 応 す
(4.43) を 定 義 す れ ば,(4.41),(4.42)を
使 って
(4.44) (4.45) が 得 ら れ る.以
上 よ り次 の 関 係 式 を 得 る14).
(4.46) (4.47) 中 性 カ レ ン ト反 応 実 験 は,荷 き る.中
電 カ レ ン ト反 応 に よ る 深 非 弾 性 散 乱 と 同 時 に で
性 カ レ ン トの 場 合 は,ニ
図4.11
ュ ー トリ ノが ミ ユー オ ンに 変 わ らず に ニ ュー
ハ ドロ ン に よ る 中 性 カ レ ン ト反 応 の 断 面 積 と荷 電 カ レ ン ト断 面 積 の 比 Rν.ν=σNCν.ν/σCCν.ν より,左
巻 き 成 分 と右 巻 き 成 分 の 結 合 定 数GLと
GRを 決 め る15).V±A.Vま た はAと み),V-A(GLの み),V,A(GLとGRが
あ るの は 純 粋 なV+A(GRの 等 量 の 場 合)の 線.GWS
理 論 で は 混 合 比 が ア イ ソ ス ピ ン と電 荷 の 組 み 合 わ せ で 決 ま る.デ ー タ はGWS理 の は,核
論 上 でsin2θW≒0.23付 近 に あ る.V±Aが 子 内 の 反 ク ォー ク成 分 のせ い で あ る.
座標軸上 に ない
ト リ ノ の ま ま で い る か ら,終 を 拾 え ば よ い.Rν,Rν
状 態 に ミュー オ ンの 存 在 し な い深 非 弾性 散 乱 現 象
の 比 よ りGL,GRが
の 予 想 と 一 致 す る こ と が 示 さ れ た.ま ト ン デ ー タ のsin2θWと
求 め ら れ(図4.1115)),GWS理
た,こ
論
れ よ り決 め ら れ たsin2θWが
一 致 し た こ と は,GWS理
論 が レ プ ト ン,ク
レプ
ォー ク両
セ ク タ ー に 通 用 す る普 遍 統 一 理 論 と し て の 性 質 を も っ て い る こ と を 実 験 的 に 示 し た こ と に な る.
4.6.2
ワ イ ンバ ー グ 角
ワ イ ン バ ー グ 角 は,Rν,Rν 値 が ほ し い と き は,Rν,Rν 的(通
常 鉄)が
の 一 方 も し くは 両 方 か ら 計 算 で き る が,精 自 身 の 精 度 を 上 げ る 必 要 が あ る.こ
ア イ ソ ス カ ラ ー で な い こ と(np≠nn),ス
寄 与,チ
ャ ー ム ク ォ ー ク の 寄 与(運
動 量 分 布,生
補 正,チ
ャ ー ム ク ォ ー ク の 質 量 補 正),放
か ら,Rν
の と き は,標
トレ ン ジ クォ ー クの
成 し き い値 付 近 で の 運 動 変 数
射 補 正(主
質 量 と ヒ ッ グ ス の 質 量 を パ ラ メ タ ー と し て 含 む)寄 あ る.CERNやFNALな
密 な
と し て トップ クォ ー ク の 与 の 補 正 な ど をす る必 要 が
ど世 界 の 深 非 弾 性 実 験 結 果 を 統 合 した 高 統 計 デー タ
の 式(4.46)の
み を 使 っ て 得 ら れ た 値 は16,17),
(4.48) 式(4.47)を
使 用 し な い 理 由 は,反
ニ ュ ー ト リ ノ ビ ー ム の 強 度 が 小 さ く,統
誤 差 が ニ ュ ー ト リ ノ ビ ー ム デ ー タ に 及 ば な い か ら で あ る.理 寄 与 はσcに 寄 与 す る チ ャ ー ム 粒 子 の 質 量(1.5±0.3GeV)の 0.004の
う ち0.003を
占 め る.残
の 不 定 性 な ど で だ い た い0.003く
り は 放 射 補 正*5)と ら い で あ る.こ
計
論的誤差 の最大の 不 定 性 から で,
ク ォー ク運 動 量 分 布 関 数
の 値 は,ν μ(νμ)e散 乱 か ら 求
め た 値 と 合 っ て い る. sin2θWの
値 を よ り 一 層 正 確 に 求 め る に は,理
論 的 不 定 性 の 少 な い(ハ
ドロ
ン の モ デ ル に よ ら な い)
(4.49) を 使 う の が よ い18).反
ニ ュ ー ト リ ノ の 統 計 数 の 制 限 か ら,こ
験 を 得 る の が 困 難 で あ っ た が,最 *5) 放 射 補 正 のmt依
れ ま で は精 密 な 実
近 フ ェ ル ミ研 究 所 の 主 入 射 器(Main
存 性 に つ い て は §7.4を
参照 せ よ
.
Injector)
の 改 良 に よ る高 強 度 の ニ ュ ー トリ ノ ビー ム 実 験 が で きて 得 ら れ た値 は
で あ る19).
4.7
領 域 のe-e+→ff反
こ こ で は,
,す
応
な わ ち ト リス タ ン やPETRA,
PEPの
エネル
ギー 領 域 で の 電 子 陽 電 子 反 応 を 扱 う.こ の領 域 で は も っ ぱ ら電 磁 相 互 作 用 と弱 相 互 作 用 の 干 渉 効 果 を見 る こ とに よ り,標 準 理 論 に よ る 中性 カ レ ン ト表 現 が 基 本 的 に 正 しい こ と を検 証 す る.同
じ電 子 陽 電 子 反 応 で もZ共
鳴領域 の物理 は
標 準 理 論 の 高 次 効 果 に まで 踏 み 込 ん だ 精 密 検 証 を行 う と と もに,標 準 理 論 か ら の ズ レ を探 し て標 準 理 論 を越 え る物 理 を め ざ す の で,改 め て 第7章
で 取 り扱
う.
4.7.1
e-e+→ff反
応 の一般 式
電 子 陽 電 子 対 消 滅 か ら フ ェ ル ミ オ ン 対 を 生 成 す る 反 応 はe-q→e-q反 交 叉 で 得 ら れ る.図4.12を p4,p2→-p3,p4→-p2と
参 照 し て,式(4.24)の
行 列 要 素Mの
す る と
(b) e-e+→qq
(a) e-q→e-q
図4.12 e-q→e-q散
乱 よ り,交
叉 に よ っ てe-e+→qqを
得 る.
散 乱 振 幅M(e-q→e-q)の
変 数(p1,p2,p3,p4)→(p1,-p3,p4,-p2)
と す れ ばM(e-e+→qq)が
得 ら れ る.す
u)=M(e-q→e-q;t,u,s)
な わ ちM(e-e+→qq;s,t,
応の 中 のp3→
(4.50a,b) 同様 に
(4.51a) (4.51b) た だ し,fabは
式(4.22)でt→sと
子 は ビ ー ム の 中 に そ れ ぞ れ1/2ず と,断
し た も の で あ る.こ
れ か ら,偏
極 した電
つ あ る こ と を 考 慮 し て 上 式 の 和 の1/4を
とる
面積 は
(4.52)
(4.53) (レ プ
ト ン),
(ク ォ ー ク)
(4.54)
(4.55) と な る.δQCDはQCDに
よ る 補 正 項 で,ト
鳴 以 下 の エ ネ ル ギ ー 領 域
リス タ ン
で は 約5%の
か らZ共
補 正 を 与 え る.q
を ク ォ ー ク種 を 表 す 指 標 と し て,
(4.56) (4.57)
(4.58) よ く使 わ れ る観 測 量 は,全 ハ ドロ ン断 面 積 とQEDに 比Rと
よ る μ対 生 成 断 面 積 との
非 対 称 パ ラ メ ター で あ る.
(4.59)
(4.60) た だ し,AFBのFとBは
散 乱 角 分 布 の 前 方(forward)と
後 方(backward)
の 意 味 で あ る.
4.7.2
ee→ll角
分布前後非対称
ト リ ス タ ン やPEP,PETRAの が,LEP実
験
で あ る.sin2θWは 1と な り,ト
で は,当
非 常 に1/4に
近 く,
か し,ト
で あ る.こ
リ ス タ ン はZ共
よ る 干 渉 効 果 が 最 大 に な る と こ ろ で あ る.こ
す.曲
線 は,
と し て,GWS理
エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を,レ c(b)ク
プ ト ン,u,
ォ ー ク の 非 対 称 はu(d)と
レ プ トン 対(ll=μμ,ττ)生 じ 式 が 使 え る.gVl〓0で
dク
の 事 実 に よ っ て,F1≒
鳴 の 裾 野 に 位 置 し,QEDと の 様 子 を 図4.13(a)に
示
論値 を用 いて計 算 した非対 称 の ォ ー ク に つ い て 示 し た もの で あ る.
同 一 で あ る. 成 の 場 合 はυq, aqをgVl,
gAlと 読 み 替 え れ ば 同
あ るか ら
(b)
(a) e+e-→l+l-,uu,ddの (b) e+e-→
項 が優勢
値 に は弱相 互作 用 の影響
(a) 図4.13
項 は無視 で き る
然 の こ と な が ら,χ02の
リ ス タ ン 以 下 の エ ネ ル ギ ー で は,Rqの
は ほ と ん ど 現 れ な い.し Zに
エ ネ ル ギ ー 領 域 で は,χ02の
μ μ
前 後 非 対 称,標
の 非 対 称 デ ー タ22).実
準 理 論 に よ る.
線 は 標 準 理 論.
(b)
(a) 図4.14
(a)e+e-→
μ+μ-,(b)e+e-→
ト リ ス タ ン ヴ ィー ナ ス グ ルー プ に よ る20).
τ+τ-の 角 分 布
実 線 は 最 適 化 曲 線 で,ダ
ッシ ュ線 は 標 準 理
論 の 予 言 値.
(4.61) と 近 似 で き る. 図4.14(a),(b)に
ト リ ス タ ン ヴ ィ ー ナ ス で 測 定 し たee→
の 角 分 布 を 示 す20).最 のs依
近 のLEP実
存 性 を 図4.13(b)22)に
μμ,τ τ 反 応 で
験 で 得 ら れ た 非 対 称21)と あ わ せ て,非
対 称
示 す が 標 準 理 論 と よ く合 っ て い る こ と が わ か
る.
4.7.3
c,bはSU(2)2重
項 か
ク ォ ー ク の 角 分 布 非 対 称 に つ い て も,レ で は 視 点 を 変 え て,非 こ と を 考 え よ う.な
対 称 デ ー タ か らc,bク
ぜ な ら ば,標
相 互 作 用 を す る と い う こ と は,実
然 ア イ ソ ス ピ ン1/2を 以 前*6)に お い て は,ト
ォー クの ア イ ソ ス ピ ン を決 め る
項 を 組 み,W±
交 換 に 際 し て はV-A型
験 的 に 証 明 さ れ て い た が,(c,s'),(t,b'),
察 の み で あ っ た か ら で あ る.cは
ニ ズ ム の 議 論 に よ っ て,s'の
こ
準 理 論 が 提 唱 さ れ た 時 点 で,(u,d'),(νe,e),
(νμ,μ)が そ れ ぞ れ ア イ ソ ス ピ ン2重
(ντ,τ)に つ い て は,推
プ ト ン と 同 じ解 析 が で き る が,こ
そ も そ も はGIMメ
カ
パ ー トナ ー と し て の 存 在 を 要 求 さ れ た の で,当
も た ね ば な ら な い.bの
ア イ ソ ス ピ ン 決 定 は,tの
発見
ップ クォー クの 存 在 を実 験 的 に 確 定 す る と い う意 味 合
い で特 に 重 要 な 意 味 を も っ て い た.
*6) ト ッ プ ク ォ ー ク は ,1994年4月
に 存 在 の 証 拠 が 与 え ら れ た23).
a. cc角
分布前後非 対称
e+e-→qq反
応 は,通
常2ジ
一 般 の 詳 し い 考 察 は 第8章 て 行 わ れ る.e+e-→
ェ ッ ト現 象 と し て 観 察 さ れ る.ジ
で 行 うが
,チ
ャー ム クォー クの 同 定 は次 の よ うに し
ハ ド ロ ン 反 応 で つ く ら れ るD*メ
高 い こ と が 観 察 さ れ て い て,e+e-→ccで ず に 真 空 か らuま 常 に 高 い.し
た は4ク
ェ ッ ト現 象
ソ ン*7)の エ ネ ル ギ ー が
で き た 最 初 のcク
ォー クが 崩 壊 せ
ォ ー ク を 拾 っ て そ の ま まハ ド ロ ン 化 し た 確 率 が 非
た が っ て,D*の
角 分 布 を も っ て そ の ま まcク
ォー クの 角 分 布 と
見 な す の は よ い 近 似 で あ ろ う.D*は,
な
ど の 崩 壊 モ ー ドで 同 定 で き る.πsのsは
特 別 な 意 味 が あ る わ け で は な い.D*
の 同定 に重 要 な役 割 を果 た す が ゆ え に 特 に 指 標 を つ け て お くだ け の こ と で あ る.こ
の πsは,
で,D*の と は,実
と 非 常 に 低 いQ値
静 止 系 でD0とπsは
方 向 と 同 一 視 す る こ と が 可 能 で あ る.D*
粒 子 が す べ て 同 定 で き る場 合 は,D*の
再 構 築 で き る の で,πsに
ルー プ に よ
完 全 再 構 築 さ れ たD*の
盛 り上 が っ て い て,上
布 を 示 し た も の で あ る.pT〓0付
記 πsの 存 在,し
た が っ てD*の
中 か ら
ル ー プ は,そ
照*8) 近 が特 に
存 在 が 裏 づ け ら れ る.
の 事 象 の み を 拾 い 上 げ,
ジ ェ ッ ト軸 の ビ ー ム 軸 に 対 す る 角 の 分 布 を 描 い た も の で あ る.こ か ら,TASSOグ
角 分布 であ
の デ ー タ サ ン プ ル の ジ ェ ッ ト軸(図4.15(b)参
に 対 す る 各 粒 子 の 横 運 動 量(pT)分
図(d)は,図(c)の
運動 変数 は完全 に
頼 る 必 要 は な い.図4.15に,TASSOグ
角 分 布 を 示 す24).図4.15(a)は
る.図4.15(c)は,別
い うこ
ほ と ん ど 並 ん で 走 っ て い る こ と を 意 味 す る.し
方 向 を も っ てD*の
の 崩 壊 し た 後 の2次
るD*の
ほ と ん ど 静 止 し た 状 態 で つ く ら れ る.と
験 室 系 で πsはD0と
た が っ て,πsの
を もつ の
れ ら の角 分 布
れ ぞ れ チ ャ ー ム の 前 後 非 対 称 パ ラ メ タ ーAFBc
に 対 し て,
(4.62a) (4.62b) を 導 く こ と が で き た.標 は,-0.157お
よ び-0.145を
準 理 論 の 計 算 値 は,そ 与 え る.JADEグ
*7) D0=cu , D+=cdの0-状 態.D'はl-状 *8) ジ ェ ッ ト軸 の 正 確 な 定 義(ス ラ ス ト軸)に
れ ぞ れ の 実 験 条 件 の も とで ル ー プ はTASSOの
態 に 対 応 す る. つ い て は,§8.1.2を
参 照 せ よ.
行 っ た 第1
(a)
(c) (b)
(d) 図4.15
チ ャー ム ク ォー ク生 成 角 分 布 に お け る非 対 称 の 測 定24)
(a) は 反 応 チ ャー ム メ ソ ンの 崩壊 粒 子 を 完 全 に再 構 築 して チ ャー ム メ ソ ン の 角 度 分 布 を と っ た もの. 実 線 は デ ー タ最 適 化 曲線,ダ ッ シ ュ線 は 非 対称 が な い と した と きの分 布 で あ る. (b) は ジ ェ ッ ト軸 に 対 す るpTの 説 明. (c) は 全 粒 子 の ジ ェ ッ ト軸 に 対 す るpT分 (d) は(c)の
布.
サ ンプ ル の 中 か らpT2
値 は 表5.1の
よ うに な
る. この 計 算 は1個
の グル ー オ ン交 換 の み の 値 で あ り,非 可 換 ゲ ー ジ理 論 の重 要
な要 素 で あ る グ ルー オ ン間 の 結 合 や,高 の で は あ るが,カ
次 の 項 な どす べ て 無 視 し た不 完 全 な も
ラー 一 重 項 に 強 い 引 力 が 働 くこ とを示 して い て,一 重 項 の み
が 束 縛 状 態 をつ く る とい う経 験 則 と論 理 的 に 話 が 合 う.qq[3*]はqqq[1]の
一
部 で あ る か ら 当 然 引 力 で な け れ ば な ら な い.qqqq[3]の
同
じ大 き さ の-2で
あ る の で,qqq[1]に
結 合 力 はqqq[1]と
さ ら に ク ォー ク を付 加 して も余 分 な 力
は働 か な い とい うこ とで あ る.
5.1.3 QCDに QCDの
お け るフ ァイ ンマ ン規 則
ラ グ ラ ン ジ ア ン は,基 本 形 は(5.1)で
与 え られ るが,量 子 化 す る と
きは修 正 が 必 要 で あ る.ゲ ー ジ変 換 の 自由 度 に よ り時 空 で の 自由 度 を2し か も た な い グ ル ー オ ン を共 変 的 に取 り扱 うた め に ラ グ ラ ン ジ ア ン に付 加 項(ゲ ー ジ 固定 項)を つ け る必 要 が あ る*1).こ の 状 況 は ゲ ー ジ理 論 に 普 遍 的 な もの で あ る が,QCDの
場 合 は さ らに 非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ理 論 で あ る こ とに伴 う付 加 項 が 余
分 に 必 要 と な り(詳 し くは 文 献1を
見 よ),量 子 化 され たQCDの
全 ラ グラ ン
ジ ア ンは,
(5.9) (5.10a) (5.10b)
(5.11a) (5.11b)
*1) QEDに
お いて も と も と物理 的 に意 味 の あ る横 偏 極 成 分 の み を量 子 化 す る方 法 は 存 在 す
る.こ の 場 合 物 理 的 イ メー ジ は 明 快 で あ るが,共 変 性 を失 うた め 計 算 が 面 倒 で あ る. ゲー ジ場 を共 変 的 に扱 うため 形 式 的 には 独 立 な4成 分 を もつ ロー レ ンツベ ク トル と して 扱 う.代 償 と して望 む 運動 方 程 式 を導 くた め に は ラ グ ラ ン ジア ン して付 加 項 が 必 要 と な り結 果 として ゲ ー ジが 固 定 され る.ま た,縦 波 フ ォ トン,ス カ ラー フォ トン な ど非 物 理 的 な フ ォ トンが 中 間状 態 に現 れ るが,最 終 的 な結 果 に は 非 物 理 的 な量 は 現 れ な い よ うに な っ て い る.詳 し くはⅠ-§4を 参照 せ よ.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e) 図5.3
QCDに
おけるファインマン規則
(a) グ ル ー オ ン 伝 播 関 数,(b) (c) g-f-fヴ (d) 3-g:グ
ル ー オ ン自 己 結 合
(e) 4-g:グ
ル ー オ ン 自 己結 合
と表 さ れ る.式(5.9)の 8×8の
フ ェ ル ミオ ン伝 播 関 数
ァー テ ッ クス
第2行
第1項
が ゲ ー ジ 固 定 項 で あ る.こ
こ に,Tcは
随 伴 表 現 行 列 で あ る.
ま た 後 に 出 て く る の で,よ 入 し て お く((F.26)参
く使 わ れ る カ ラ ー 因 子 の 記 号(TR,CA,CF)を
導
照).
(5.12) SU(3)の
場 合,
(5.13)
グル ー オ ン伝 播 関 数 グ ルー オ ン伝 播 関 数 は
(5.14) と な る.λ
の 選 択 で ゲ ー ジ が 変 わ る と と も に 伝 播 関 数 も 変 わ る.物
の あ る 量 は ゲ ー ジ 不 変 で あ る の で λ は 任 意 で よ く,議 め れ ば よ い.こ 播 関 数 は,カ
こ で は λ=1の
論 に 都 合 の よ い値 に 決
フ ァ イ ン マ ン ゲ ー ジ と す る と,グ
ラ ー 指 標 以 外 はQEDで
理的 に意 味
ルー オ ン の 伝
の フ ァ イ ン マ ン ゲ ー ジ の フ ォ トン と 同 じ
形 と な る(図5.3a). (5.9)の
最 後 に 現 れ る 場 η は,幽
霊 ス カ ラ ー(ghost
ア ー ベ ル ゲ ー ジ 理 論 に 特 有 な 場 で あ る.ス つ.共
scaler)と
呼 ば れ,非
カ ラー で あ りな が ら反 可 換 性 を も
変 ゲ ー ジ を 採 用 す る こ と に と も な う非 物 理 的 な 量 を 相 殺 す る 役 割 を 担 っ
て い る.閉
ル ー プ の 中 に の み 現 れ,物
は な い.本
書 で は,フ
取 り扱 う の で,幽
理 的 なエ ネ ル ギー 量 子 と して 現 れ る こ と
ァ イ ン マ ン 図 の 計 算 は ボ ル ン 近 似(ト
リー 近 似)の
み を
霊 粒 子 の 取 扱 い は 省 略 す る.
フ ェ ル ミ オ ン は,QEDの
と き と 同 じ で あ る が,ク
ォ ー ク 質 量 は0と
して扱
う こ と に す る. フ ェ ル ミ オ ン伝 播 関 数(図5.3(b)):
(5.15) ヴ ァ ー テ ッ ク ス は,グ g-f-fヴ
ル ー オ ン-フ ェ ル ミオ ン の 場 合 は
ァ ー テ ッ ク ス(図5.3(c)):
(5.16) カ ラ ー 因 子 は 別 と し て,QEDに
な く てQCDに
ン の 自 己 相 互 作 用 で あ る.(5.9)の
ラ グ ラ ン ジ ア ン の 中 の
書 き下 ろ す と
あ る 重 要 な 項 は,グ
ルーオ を
(5.17) こ の相 互 作 用 に 対 応 す る フ ァ イ ン マ ン規 則 は行 列 要 素 を とっ て み れ ば わ か る. 運 動 量 はす べ て ヴ ァー テ ッ クス に 入 射 す る向 き を正 とす る とき 3グ ル ー オ ン ヴ ァ ー テ ッ ク ス(図5.3(d)):
(5.18a) 4グ ル ー オ ン ヴ ァー テ ッ ク ス(図5.3(e)):
(5.18b) と な る.
ト リー 近 似 で は,グ ル ー オ ン 自 己相 互 作 用 とカ ラー 因 子 を別 に す れ ばQCD の 計 算 はQEDと
ほ とん ど 同 一 に 進 め ら れ る.本 書 で は,QCDの
理 論 的 内容
に は 深 入 りせ ず,非 ア ー ベ ル ゲー ジ理 論 と して の 物 理 的特 徴 に 力 点 を お い て解 説 を進 め るの が 主 眼 で あ るの で,断 面 積 な どQCDラ
グラ ンジアンか らファイ
ンマ ン規 則 を使 って 直 接 計 算 す る 方 が 論 理 的 に は 簡 単 な場 合 も あ るが,QED の 計 算 結 果 を可 能 な 限 り活 用 し,QEDと る こ とに す る.そ
の 類 似 と差 に 注 目 しつ つ 議 論 を進 め
こ で後 の 議 論 の た め に,QEDに
αsとの 対 応 をつ け て お こ う.図5.3(c)に
お け る α とQCDに
おけ る
あ る よ う な クォ ー ク に よ る グ ルー
オ ン放 出 を考 え る と,こ の行 列 要 素 は
(5.19) 自乗 して クォ ー クの ス ピ ン和 を と る と,γ 行 列 な ど時 空 に 関 す る部 分 はQED と同 じ結 果 を与 え る が,カ
ラー 自由 度 の 部 分 は
(5.20) と なり グ ル ー オ ン の 種 類 に よ ら な い.終
状 態 の グ ル ー オ ン の 和 を と り(×8),
始 状 態 ク ォ ー ク カ ラ ー の 平 均 を と れ ば(×1/3),こ 変換 因子 は
の 場 合 のQED→QCDの
ク ォ ー ク に よ る グ ル ー オ ン 発 生: と な る.グ
(5.21a)
ル ー オ ン に よ る ク オ ー ク 対 生 成 の 計 算 も ま た 同 様 の 結 果(グ
ン の カ ラ ー に よ ら な い)を
与 え る の で,カ
ラ ー 自 由 度 を考 慮 す る と,
グ ル ー オ ン に よ る ク ォ ー ク対 発 生: を 与 え る.以
上 の こ と か ら,QEDに
(5.21b)
対 応 す る グ ラ フ が あ る と き は,QEDの
列 要 素 を そ の ま ま 使 用 し,α →αs/2と よ い こ と が わ か る.αs/2の1/2が
ルー オ
行
置 き 換 え て カ ラ ー 因 子 を つ け 加え れ ば
生 じ る 原 因 は,(5.4)で
の 結 合 定 数 を
で 定 義 し た こ と に よ る.
5.2
漸
近
自
由
古 典 電 磁 気 学 で は,物 質 中の 電 磁 場 は誘 電 分 極 に よ り変 化 し,実 質 的 に電 荷 が ρ→ ρ/ε(ε=誘 電 率>1)に
な る と 同様 の 効 果 が 生 じ る こ と が 知 られ て い
る.真 空 も ま た ハ イゼ ンベ ル グの 不 確 定 性 原 理 の 許 す 範 囲 内 で,粒 子 反 粒 子 対 が 生 成 消 滅 を繰 り返 して お り,電 場 が 存 在 す れ ば 正 負 の 電 荷 の 偏 りつ ま り真 空 偏 極 を起 こ し,実 質 的 に誘 電体 と して の性 質 を示 す こ とが 知 られ て い る.こ れ は 電 子 が仮 想 的 に フ ォ トン の雲 を周 りにつ く りだ して お り,こ の フ ォ トンが さ ら に電 子 反 電 子 対 をつ く り,結 局 電 子 の周 りに は 正 負 の 電 荷 が た くさん 生 じて い て,電
子 の 電 荷 を外 か ら試 験 電荷 を も ち 込 ん で 測 定 し よ う とす る と き(具 体
的 に は例 え ば 外 場 を 与 え て トム ソ ン 散 乱 を させ る),そ の 試 験 電 荷 を ど こ に 置 くか(距 離γ)に
よ っ て 電 子 の 電 荷 の値 が 変 化 す る こ と を意 味 す る.遠 い と こ
ろ に 置 くほ ど遮 蔽 電 荷 の 効 果 が 大 きい の で,実 効 電 荷 が小 さ くな る.場 の理 論 で は 図5.4の
よ うに,試 験 電 荷 と測 定 し よ う とす る電 荷 の 有 効 結 合 定 数 が,高
次 効 果 で あ る電 子 対 ル ー プ の 影 響 を取 り入 れ る と変 化 す る こ と を意 味 し(こ の 効 果 は実 験 的 に は ラ ム シ フ トな ど で観 測 さ れ る),こ の 効 果 は 両 者 をつ な ぐ仮 想 フ ォ トン の 質 量Q2の
関 数(Q∼1/γ)と
し て 表 さ れ る こ とに な る.ル ー プ
の 計 算 は 無 限 大 の 発 散 積 分(紫 外 発 散)を 含 む の で 繰 り込 み の 処 方 が 必 要 とな るが,発
散 部 分 をΔ と書 い て 分 離 して お く と*2),真 空 偏 極(図5.4(c))に
る結 合 定 数(α)に
対 す る補 正 因 子B(Q2)は(付
録(J.40),(J.42)参
照)
よ
(a)
(b) 図5.4
(c)
(d)
電 荷e(a)は ト リー 近 似 で はe=e0で あ る が(b),真 空 偏 極(c),(d), … を 入 れ る と変 わ り ,運 動 量 遷 移Q2の 関 数 と な る.す な わ ちe=e (e0,Q2).
(5.22a) (5.22b) た だ し,q2=-Q20)の
仮 想 フ ォ ト ン がqqgに
崩 壊 す る 過 程 で あ る が,仮
想 フ ォ トン(運
動 量q)の
コ ン プ ト ン 散 乱 で,終
状 態 の フ ォ トン を グ ル ー オ ン
で 置 き 換え,入
射 電 子 を 交 叉(p1→-p1)さ
5.7(c),(d);終
状 態 が グ ル ー オ ン な の で,以
ト ン と呼 ぶ こ と に す る).こ
せ た も の と 見 る こ と も で き る(図 下 区 別 す る た め にQCDコ
の 見 方 を正 当 化 す る 理 由 は 次 の 通 りで あ る.
ンプ
e(k1)+e(k2)→q(p1)q(p2)g(p3)の
遷 移 行 列 要 素 は,質
量 を す べ て0と
お く
近 似 で,
(5.53) こ こ に,λqは
ク ォ ー ク の 電 荷,gはQCD結
εAνは カ ラーAを か に カ ラ ーaを
合 定 数,tAはQCD生
成 子 行 列,
も つ グ ル ー オ ン の 偏 極 ベ ク ト ル,ua(p)のaは
ス ピンの ほ
含 む も の と す る.第2項
は 負 の カ ラ ー 荷 を もつ か ら で あ る.電
の 符 号 が 負 で あ る の は,反
ク ォー ク
子 部 分 を分 離 し 自乗 して トレー ス計 算 す
る と
(5.54) Qμνはqqg部
分 か ら 得 ら れ る 量 で あ る.電
Kμνの 含 む 情 報 は, あ る か ら,終 え ば,ロ
とqの
中 に 入 っ て い る.
方 向 で あ る.
で
状 態3粒 子 の つ く る 平 面 の 向 き は 見 な い こ と に し て 積 分 し て し ま
ー レ ン ツ 不 変 性 よ り 電 子 部 分 の 寄 与 は,Kμν(k1,k2)∼Q2gμν
ば な ら な い.す
で なけれ
な わ ち は じめ の 括 弧 の 中 を フ ォ トン の 偏 極 ベ ク トル で 置 き 換 え
て 偏 極 和 を と っ た 場 合 るqqg生
子 部 分 は[…]の
成 を,仮
に 等 し い の で,電
想 フ ォ ト ン のqqg崩
そ こ で 諸 々 の 運 動 変 数 を 図5.7に トン 散 乱 振 幅 の 変数s,t,uと
子 対衝 突 に よ
壊 とみ な し て よ い こ とが 正 当 化 さ れ る. 図 示 し た よ う に 定 義 す る と,QEDコ
ンプ
γ*崩 壊 の 変 数 と 以 下 の よ う な 対 応 が つ け ら れ
る.
(5.55) QEDコ
ンプ トン散 乱 の ス ピン平 均 を とっ た 行 列 要 素 の 自乗(式 付 録(C.27))
(5.56)
(a)
(c)
(b)
(d)
図5.7 (a),(b)γ*→qqgの e+e-→qqgは
フ ァ イ ン マ ン 図,(c),(d)γ*e→γeコ 仮 想 フ ォ ト ンγ*の
(a),(b)は(c),(d)の
ン プ トン散 乱
崩 壊 過 程 と み な せ る.
入 射 電 子 を ク ォ ー ク と し て 交 叉 し,終
状 態 の フ ォ トン を グ ルー オ ン で 置 き換 え
て 得 ら れ る.
を 交 叉 し て(5.55)の Q2を
入 れ,カ
変 数 で 書 き 直 し,仮
想 フ ォ トン の 質 量k2=-Q2→q2=
ラー 量 子 数 な どの 因子 を入 れ る と
(5.57) が 得 ら れ る.λqはeを プ ト ン の 因 子2に
単 位 と し た ク ォ ー ク の 電 荷 で あ る.こ
対 し て,QCDコ
ン プ トン の 交 叉 で16倍
こ にQEDコ
の32と
ン
い う因子 の
で る 理 由 は 次 の 通 り で あ る. 16=2×2×8×(1/2) e2(QED)〓g2/2(QCD) グ ルー オン の カ ラー 自由度
始状 態 ク ォー クス ピ ン平均 な し 始状 態 フ ォ トン偏 極 平均 な し
3体 系 の 場 合,次
の よ うな重 心 系 で 無 次 元 の エ ネ ル ギ ー 変 数 を定 義 す る と便 利
な こ とが 多 い.
(5.58) 崩壊粒 子 の質量 を無視す れば
(5.59)
こ の 変 数 を 使 っ て(5.57)を
書 き直 す と
(5.60) と書 き直せ る.仮 想 γのqqgへ
の 崩 壊 率dΓ は,次 式 を計 算 す れ ば よい.
(5.61)
演 習5.2 x1x2以
外 につ いて積 分す ると
(5.62) で あ る こ と を示 せ. 演 習5.3
エ ネ ル ギー 保 存 則 よ り
(5.63) で あ る こ と を示 せ. x1,x2,x3の
と り う る領 域 の 境 界 は,
(5.64) で あ る こ と を示 せ. 演 習5.4 を示 せ.λqは
γ*→qqの
全 崩 壊 確 率Γ(γ*→qq)は,
で与 え られ る こ と
ク ォー ク の 電 荷 で あ る.
上 記 の 演 習 結 果 を 使 う と,グ
ル ー オ ンの 放 出確 率 と して
(5.65) が 得 ら れ る.(5.64)よ
りx1,x2の
と りう る範 囲 は
(5.66) で あ る(図5.8).こ
れ か らe+e-→qqg過
程 の グ ル ー オ ン放 出 全 断 面 積 は
(5.67a) (5.67b) と な る.こ
こ にσ0は,e+e-の
全 ハ ドロ ン 生 成 断 面 積
の最
図5.8
x1,x2,x3の
許 容 範 囲
低 次 の 値 で あ る.
5.4.2
赤
外
発
散
こ の 積 分 はx1=1,x2=1で
で あ る の で,こ れ が0に
発 散 す る.ク
ォー クの 質 量 を無 視 しな け れ ば
な り発散 す る条 件 は二 つ あ る.
(1) ソフ トグ ルー オ ン放 出:E3→0 (2) 平 行(collinear)グ
ル ー オ ン放 出:mq=0,か
で(1)は
質 量 特 異 性 と も呼 ば れ る.ど
赤 外 発 散,(2)は
生 じ る こ との な い 発 散 で あ る.(1)の と同 じ性 質 の もの で あ る.QEDで い.QCDで
も厳 密 に い え ばmq≠0で
つ θ→0
発 散 はQEDに はme≠0で
ち ら もmg≠0な
らば
お い て 出 現 し た赤 外 発 散
あ る の で(2)の
あ るが,通
常 はmq=0と
困 難 は 生 じな して 取 り扱 う
の で,質 量 特 異 性 に よ る発 散 が 生 じ るの で あ る.こ の 二 つ の 条 件 はQCD過 で繰 り返 し生 じる.以 下,混 と呼 ぶ こ とに す る.QCDの
程
乱 す る恐 れ の な い とき は両 者 を ま とめ て 赤 外 発 散 赤 外 発 散 も,QEDの
赤 外 発 散 と同 じに,す べ て の
物 理 過 程 を正 し く取 り入 れ て評 価 す れ ば消 え る発 散 で あ り,そ の 起 源 も物 理 的 に解 釈 可 能 な もの で あ る.発 散 が 生 じる場 合,積 を正 則 化 す る とか い ろ い ろ な 手段 が あ るが,最
分 を切 断 す る とか,伝
播関数
もす っ き り した 方 法 は次 元 正 則
化 の 方 法 で,ロ ー レ ン ツ 共 変 性 とゲ ー ジ不 変 性 を壊 さず に正 則 化 で き る 利 点 が あ る.こ こ で は 話 を簡 単 の ため に グル ー オ ン に小 さな 質 量mgを て発 散 を避 け る こ とにす る.積 分 を実 行 す る と1),
もたせ て お い
(5.68a)
σgは αsの1次
の 量 で あ る が,ソ
5.9(a))や,高
次 過 程 で あ る 仮 想 グ ル ー オ ン を 交 換 す る 過 程(図5.9(b))と
理 的 に は 区 別 が つ け ら れ な い.仮 る が,グ
フ ト グ ル ー オ ン の 極 限 で はe+e-→qq(図
想 グ ル ー オ ン を 交 換 す る 過 程 はO(αs2)で
ル ー オ ン を 含 ま な い 過 程 図5.9(a)と
の 干 渉 でO(αs)項
物 あ
を 発 生 す る.
こ の 項(συ)を 計 算 し て み る と
(5.68b) と な り,両
者 を合 わせ る と
(5.68c) す な わ ち,σTOT(e+e-→
ハ
ド ロ ン)は
(5.69) で 与 え られ る.こ の 式 は赤 外 発 散 を含 ま な い.
(a)
(c) 図5.9
e+e-→qq,qqgの
(b)
(d) フ ァ イ ンマ ン 図
(a)はQCDの0次,(b)はQCDの2次. (c),(d)はQCDの1次 の 効 果 で あ る. (a)と(b)の
干 渉 は(c),(d)と
同 次 の 効 果 で あ る.
5.4.3 対 数 第1近
似
(5.65)は,(1-x1),(1-x2)が と解 釈 で き る量 で あ る.1個 るが,QCDに
極 端 に 小 さ くな い 限 り,グ ル ー オ ン放 出確 率 の グル ー オ ン放 出 を扱 う限 り これ は 正確 な式 で あ
特 有 な ジ ェ ッ ト現 象 す な わ ち 多数 の グル ー オ ン を放 出 す る場 合
へ 応 用 す る に は 少 々 不 便 で あ る の で,次
の よ うな 変数z(光
円錐 変 数)を 定 義
す る.
(5.70a) (5.70b) (5.70c) こ のzやtと
他 の 運 動 学 変 数 との 関 係 は 次 の よ うに な る.
(5.70d) (5.70e) (5.70f) (5.70g) 光 円 錐 変 数 を 使 っ て 式(5.65)を
書 き換 え る と,
(5.71) tの 小 さ い とこ ろす な わ ちpT2≪Q2の
とこ ろ で は 第1項
が 優 勢 で あ るの で,グ
ルー オ ン放 出確 率 は近 似 的 に
(5.72a)
図5.10
e+e-→qqg重
心 系 で の 運 動 学 変 数(光
円錐 変 数 の 導 入)
(5.72b) と 書 き 表 せ る.こ 結 合 定数αsの
れ を グ ル ー オ ン 放 出 過 程 の 対 数 第1近
計 算 の と き と 同 じLLAと
い う 言 葉 を 使 う が,意
異 な る.t∼0の
領 域 は
は,運
も つ 仮 想 ク ォ ー ク(不
動 量pを
似(LLA)と
い う.
味 合 いが若 干
の と こ ろ で も あ る の で,(5.72)
ク ォ ー ク と 縦 運 動 量(1-z)p,横
変 質 量tを
運 動 量pTの
も つ)が,縦
運 動 量zpの
グ ルー オ ン に 崩 壊 す る確 率 と 見
な せ る. こ れ は §3.5で 導 い た"電 出 す る 確 率"の
式(3.57)と
子 が 質 量Q2,運
動 量yを
よ く 似 て い る.実
と 置 き換 え,係
数4/3は
×(ク ォ ー ク カ ラ ー 自 由 度 の 平 均1/3)×(α
もつ 仮 想 フ ォ トン を 放
際
カ ラ ー 因 子(グ → αs/2)と
ル ー オ ン の 自 由 度8)
して 説 明 で き る こ と を考
慮 す る と 両 者 は 完 全 に 一 致 す る. こ のPqqは
ク ォ ー ク の 分 割 関 数(splitting
function)と
呼 ば れ る.ク
が グ ル ー オ ン を 放 出 す る と こ ろ に は 必 ず 現 れ る 普 遍 関 数 で あ る.Pqq関 ク ォ ー ク が グ ル ー オ ン を 放 出 す る 確 率 と 見 な し て も よ い し,運 ク と い う ビ ー ム が 準 備 さ れ た と き の 運 動 量zの る と解 釈 す る こ と も で き る.関 (5.65)に
動 量1の
数 は ク ォー
クォー ク の フ ラ ッ ク ス を与 え
数 の 形 は 繰 り込 み 処 方 に よ ら な い.こ
比 べ て 有 用 な の はtとzと
ォー ク
の 式が
の 変 数 分 離 が で き て い て カ ス ケ ー ド的 グ
ル ー オ ン 発 生 の 式 が 容 易 に つ く れ る か ら で あ る.(5.72)を 発 展 さ せ る 方 法 を 求 め る こ と は む ず か し く な い が,詳
使 って シ ャ ワ ー を
細 は 第8章
の ジ ェ ッ ト現
象 の と こ ろ で 述 べ る こ と とす る. こ の よ う に 中間 の 仮 想 状 態 を あ た か も 実 の 粒 子 の よ う に 考 え て,粒 B+Cの
分 岐 過 程 の 確 率 を 計 算 し て お く と便 利 な こ と が 多 い.歴
で に1934年
に ワ イ ゼ ッ カ ー-ウ ィ リア ム ス が,電
子A→
史 的に はす
子 散 乱 反 応 を電 子 が 放 出 す る
仮 想 フ ォ ト ン の 反 応 で 置 き 換 え 電 子 の 提 供 す る フ ォ トン フ ラ ッ ク ス を計 算 し て い る(付
録 式(C.38)を
与 え て あ る.
参 照).分
割 関 数 を 一 般 的 に 求 め る 方 法 は 付 録C.6に
5.4.4
横 運 動 量 分 布
e+e-→
ハ ドロ ン 反 応 の 主 な 寄 与 はqqに
れ は 互 い に180度
方 向 に 放 出 さ れ,相
よ る2ジ
対 的 に 横 運 動 量 を も た な い.横
グ ル ー オ ン を発 生 す る こ とに よ り得 ら れ,そ の 関 数 と し て 書 き換 え れ ば 得 ら れ る.い グ ル ー オ ン を1個
生 成 す る 確 率 をS(pT2)と
ン の 発 生 確 率 は(dS/dpT2)dpT2で
ェ ッ ト発 生 で あ る が,こ
の 振 る 舞 い は(5.72)を
ま,任
運動 量は 横 運動 量
意 の 横 運 動 量kΥ2≦pΥ2を
す る と,kT2=pT2を
与 え ら れ る.S(pT2)を
もつ
もつ グ ルー オ
求 め る に は,
(5.73) と い う 条 件 で,(5.72a)を に,
積 分 す れ ば 得 ら れ る.積
の 付 近 か ら く る が,こ
分 の優 勢 な寄 与 は明 らか
の 積 分 は 赤 外 発 散 を 伴 う.そ
S(pT2)の
代 わ り に,
T(pT2)を
計 算 す る こ と に す れ ば 発 散 は 避 け ら れ る.本
ず で あ り,そ
こ で,
の任 意 の運 動 量 を もつ グルー オ ン生 成 の確 率 来,S(pT2)は
有限 のは
の 場 合S(pT2)とT(pT2)は
を満 た さ な け れ ば な ら な い.
(5.74a) た だ し,z=1-zで
あ る.被
積 分 関 数 の 分 子 で はz≒1と
とす る近 似 を 使 っ た.こ
し,積
分 範 囲 は
れか ら
(5.74b) が 得 られ,微 分 す る こ とに よ って
(5.75) を得 る. 横 運 動 量 分 布 は グ ル ー オ ン 放 出 に よ り生 じ る も の で あ り,こ の 関 数 型 は LLA近
似 を と る限 りは グ ル ー オ ン放 出 の あ る とこ ろ,あ
らゆ る と こ ろ に 現 れ
る 普 遍 関 数 で あ る か ら.上 記 横 運 動 量 の 振 る舞 い もま た,QCD過
程 で はあ ら
ゆ る とこ ろ に 出 て くる普 遍 な もの で あ る.
5.5 発 展 方 程
式
5.5.1 パ ー トン フラ ッ クス パー トン モ デ ル は深 非 弾性 散 乱 の デ ー タ を よ く再 現 す る.こ の と きパ ー トン の運 動 量 分 布 関 数 は 定 性 的 に は 図5.11(d)の ほ ぼQ2に
よ らな いxの
ル の 基 本 仮 定 は,"レ
よ うな 振 る舞 い を した.こ
み の 関 数 で あ っ た(Bjorken
プ トン と核 子 の 散 乱 は,レ
れは
scaling).パ ー トン モ デ
プ トン と個 々の パ ー トンの 散
乱 の和 と して書 け る"つ ま り イ ンパ ル ス近 似 が 成 立 す る とい う こ とで あ り,そ の 前 提 は パ ー トンが核 子 の 中 で 自由 に 動 い て い る こ とつ ま りパ ー トン 同士 の相 互 作 用 は な い とい う こ とで あ った.こ
の 仮 定 はQCDの
標 準 理 論 に お い て も正 当 化 さ れ る.し か し,QCDの デ ル はQCD摂
動 量(核
しQCD効
動 の 高 次 効 果 を無 視 した もの で あ る こ と は明 白
果 を完 全 に 無視 す れ ば パ ー トン は核 子 内 で ほ ぼ一 定 の 運
子 全 体 の 運 動 量 の約1/3,つ
る(図5.11(b)).そ QCD効
観 点 に 立 つ とパ ー トン モ
動 展 開 の 第0近 似 で あ り,パ ー トン 同 士 が グル ー オ ン な ど を 交
換 し て相 互 作 用 をす るQCD摂 で あ る.も
漸 近 自由 の 発 見 に よ り
ま り
う で な くて 図5.11(d)の
を もつ は ず で あ よ う に な っ て い るの は ま さ に
果 の グル ー オ ン交 換 に よ って ク ォー ク の 運 動 量 が1/3を
中心 に ぼ け て
い るの だ と考 え られ る.こ の 分 布 は核 子 の 量 子数 を担 う価 クォー クの 寄 与 が 大 き い.し
か し,こ の グ ル ー オ ン 交 換 の 効 果 は 緩 慢 な 動 作 で あ り,レ プ トン
ク ォー ク散 乱 の 動 的過 程 に 比 べ 非 常 に 長 い 時 間 で起 き る た め,近 似 的 に分 布 関 数 を与 え られ た静 的 性 質 の もの で 置 き換 え る イ ンパ ル ス近 似 が 成 立 し た の で あ る.こ の分 布 関 数 は,多 数 の グ ルー オ ン交 換 の結 果 と して得 られ る もの で あ る か ら,算
出 に は 非 摂 動 的 計 算 を必 要 とす る.Q2は
標 的 に 与 え る衝 撃 の 強 さ,
時 空 の 変 数 で い え ば探 索 す る領 域 の プ ロー ブ と して の 分 解 能 力 を与 え るパ ラ メ ター で あ る.Q2と
い う拡 大 鏡 を 大 き く し て い け ば,つ
ま り よ り ミ ク ロ の領 域
に 入 り込 む と,ク ォー クが グル ー オ ン を交 換 した り,グ ルー オ ン が ク ォー ク対 (海 クォ ー ク)を つ くる よ うな効 果(図5.11(e))が
見 え て くる は ず で あ る.グ
図5.11
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
核 子 を仮 想 フ ォ トン とい う拡 大 鏡 で の ぞ い た と き の パ ー トン の運 動 量 分布
(a)Q2=0.1GeVで
は 核 子 は パ ー ト ン に 分 解 して 見 え な い;運
Q2=5GeV;核 子 は3個 x=1/3で あ る が(b),ク
動 量x=1,(c)
の クォ ー クに 分 離 して 見 え る.自 由 パ ー トン で あ れ ば, ォー クは グ ルー オ ン を 交 換 し て 束 縛 状 態 に あ る の で
≒1/3と な る(d).し か し グル ー オ ン 交換 は 緩 慢 な 作 用 で あ る の で 各 パ ー ト ン は 独 立 し て い る と 見 て よい.(e)Q2=100GeVに な る と ク ォー ク が グ ルー オ ン を 放 出 した り,グ ル ー オ ンが ク ォー ク対 をつ く るの が 見 え る.こ
れ らはx≒0
の小 さ い 運 動 量 を もつ.
ル ー オ ン は 質 量0の
量 子 で あ るか ら,そ の 放 出確 率 は制 動 放 射 と同 じ くdx/x
に 比 例 す るは ず で あ る.つ ろ う(図5.11(f)).Q2が
ま りxの 小 さ い と こ ろ で の 分 布 が 優 勢 に な る で あ 十 分 大 きけ れ ば エ ネ ル ギー の 大 きな グ ル ー オ ン放 出
を伴 い ジェ ッ ト現 象 に そ の 影 響 が 見 え る で あ ろ う.つ QCD効
果 が 見 え て きて,ブ
ま りQ2を
大 き くす れ ば
ヨル ケ ン の ス ケー リン グが 破 れ クォ ー ク の 分 布 関
数 が(Q2依 存 性 を 示 す は ず で あ る.こ
のQ2依
存 性 を 調 べ る こ と に よ って,
ク ォー ク と グ ル ー オ ン の 相 互 作 用 を 支 配 す る 力 学QCDの
性 質 が テ ス トで き
る. 深 非 弾 性 散 乱 は,分 布 関数 を与 えら れ た もの と して扱 えば,最 低 次 の 近 似 で は 電 弱 相 互 作 用効 果 で あ り,核 子 内 の パ ー トン が 質 量Q2を を 吸 っ て 散 乱 さ れ る過 程 で あ る(図5.12(a)).QCD過 は,こ
もつ 仮 想 フ ォ トン
程(図5.12(b)∼(e))
の過 程 へ の 補 正 と して 効 く.以 下 で は,こ の過 程 の 深 非 弾 性 散 乱 の 断面
積 に与 え る影 響 を計 算 す る こ とに よ っ て,パ ー トン分 布 関 数 のQCD補
正 を考
察 す る. 深 非 弾 性 散 乱 を仮 想 フ ォ トン の起 こす 反 応 と見 な す 立 場 を と れ ば,QCD補 正 効 果 は仮 想 フ ォ トン と ク ォー クが相 互 作 用 して グル ー オ ン を放 出 す る コン プ トン効 果 の1種 で あ り,フ ォ トン に よ る 反 応 断面 積 と,構 造 関 数 は(3.54)で 結 びつ い て い る.
(5.76a)
(5.76b)
(a)
(b)
(d)
(e) 図5.12
(c)
深 非 弾性 散 乱 の ファ イン マ ン図
(a) eq→eq:仮
想 フ ォ ト ン が ク ォ ー ク に 吸 わ れ る.
(b)∼(e)
程
QCD過
(b),(c) γ*q→qg (d),(e) γ*g→qq
QCDコ
ン プ トン 散乱
フ ォ トン ・ グ ル ー オ ン 融 合 過 程
(5.76c) ま た,(5.76a)で,
(付 録(B.30c)参
照)で
置
き換 え た 断 面 積 を σγ*と お く と,
(5.76d) ス ケ ー リ ン グ 極 限 で,
(5.77a) (5.77b) (5.77c) で あ る か ら,
(5.78a) (5.78b) (5.78c) を 得 る.σBは,ボ
ル ン 近 似 で の 仮 想 フ ォ トン に よ る 全 断 面 積 で あ る.
(5.79) パ ー トン モ デ ル で は,ク 数 は,式(3.50)に
ォ ー ク 分 布 関 数q(x)と
よ っ て 結 び つ い て い る.す
電子深非 弾性散 乱の構 造 関
な わ ち,
(5.80a) (5.80b) こ こ にλiは ク ォ ー ク の 電 荷 で あ る .パ
ー トン モ デ ル の 段 階 で は σL=0で
ク ォ ー ク 分 布 関 数 と し て, の ど れ を 使 っ て も差 は な い.高 算 を し て み る と,対
数 第1次
あ り,
あ る い は σγ*/σB 次 の 補 正 項 を 取 り入 れ れ ば 三 者 は 異 な る が,計 近 似 で はO(αs)補
正 を 入 れ て も 差 は で な い の で,
以 下 の 議 論 で は 取 扱 い の 簡 単 なσγ*/σBに 限 る. 演 習5.5 項)で
仮 想 フ ォ ト ンが ス ピ ン1/2,質
量0の
パ ー トン に 吸 わ れ る過 程(ボ
ルン
は,
(5.81a)
(5.81b) た だ し,
(5.81)
で あ る こ と を 示 せ.た
だ し,qγ,pは
仮 想 フ ォ トン と パ ー トン の4元
運 動 量 で あ り,
λqは 陽 子 電 荷 を 単 位 と した パ ー トン の 相 対 電 荷 で あ る. ヒ ン ト:(3.44)を QCD効
使 え.
果 の う ち 図5.12(b),(c)の
ン 散 乱 る.k,k'は
仮 想 フ ォ ト ン と1次
は 散 乱 角,Qは の は,パ
効 果 は,仮
で あ る の で,運
想 フ ォ トン に よ る コ ン プ ト
動 変 数 を 図5.13*5)の
よ うに定 義す
パ ー ト ン の 重 心 系 で の 散 乱 前 後 の 運 動 量,θ
仮 想 フ ォ ト ン の 質 量 で あ る.s,t,uの
よ うに ハ ッ トをつ け た
ー ト ン の 変 数 を 意 味 す る.
(5.82a)
(5.82b) (5.82c) (5.82d)
(a)
(b)
図5.13
QCDコ
ン プ トン散 乱 の 運 動 学 変 数
γ*は 仮 想 フ ォ トン で あ り,質 量 殻 上 に な い.
*5) 図5 .13(a),(b)は す な わ ちqγ2=-Q20)で
は 仮 想 フ ォ ト ン は 空 間 的, あ る こ と に 注 意.
(5.82e) パ ー トン の核 子 中 に お け る相 対 運 動 量zは
(5.83) で 与 え ら れ る.zが
こ う 書 け る 理 由 は,陽
子 標 的(運
の パ ー ト ン を 拾 う に は,
動 量P)か (式(3.47)参
ら 運 動 量xP 照)と
した
こ と を 思 い 起 こ そ う. 各 変 数 の 間 に は,次
の よ う な 関 係 が 存 在 す る.
(5.84a)
(5.84b) (5.84c) 図5.13の
コ ン プ トン散 乱 の行 列 要 素 を,上 記 変 数 を用 い て 計 算 す れ ば,
(5.85) を 得 る.こ
の 式 は,(5.56)の
し た 後, 度3で
コ ン プ ト ン 散 乱 式 か ら,フ
と し,グ
ル ー オ ン の 自 由 度 の8を
平 均 を と れ ば 得 ら れ る.こ
ァ インマ ン図 を交叉 掛 け,カ
ラー の 自由
れ よ り微 分 断 面 積 は
(5.86a) (5.86b) 深 非 弾 性 散 乱 で グ ル ー オ ン を1個 放 出 す る確 率 の 第1項 状 態 で グル ー オ ン1個
を放 出す る確 率 の 式(5.71)の
を して い る こ とに 注 意 し よ う.tに
は,e+e-→qqの
第1項
終
と ま った く同 じ形
つ い て 積 分 す れ ば,
(5.87a) (5.87b) mg2は 質 量 異 常 発 散 を避 け るた め に 当面 導 入 し た グ ル ー オ ン の質 量 で あ る.以
下 は,第2項
以 下 を 落 と し優 勢 な 対 数 項 の み を残 す 対 数 第1近
似 で 話 を進 め
る.こ の 式 は,グ ル ー オ ン の 質 量 を含 む の で,直 接 観 測 に 掛 か る物 理 量 とは 見 なせ な い.直 接 観 測 に掛 か る核 子 非 弾 性 散 乱 の 断 面積 を,パ ー トン反 応 の 式 で 書 き表 す 必 要 が あ る.ク
ォー クが 最 初 に 運 動 量yを
す る と,グ ル ー オ ン は観 測 し な い の だ か ら,y,zに
核 子の 中 で もってい た と つ い て は 足 し上 げ て や る 必
要 が あ る.ク ォ ー クが 直 接 フ ォ トン を 吸 収 す る ボ ル ン 項 を 含 め て 書 き下 ろ す と,(5.80)を
参 照 して
(5.88) と書 け る.こ こ で,qi(z)は,核
子 の 提 供 す るi番
目の パ ー トン の 運 動 量 分 布
関 数 で あ る. 上 式 の 物 理 的 な 意 味 は,観 測 に か か る核 子 中 の パ ー トン の 運 動 量xは,は じめ に核 子 が提 供 した 運 動 量yの
パ ー トンが,コ
過 を た ど る こ とに よ りさ らに 相 対 的 にzだ とで あ る.こ の 意 味 で,dP(z,Q2)は,運
ン プ トン 散 乱 な ど の 途 中 経
け 低 下 し たx=zyと
動 量1の パ ー トンの 中 に 運 動 量zの
パ ー トン を見 出 す 確 率 と解 釈 で き る.(5.88)右
辺 括 弧 内 の 第1項
提 供 す る パ ー トンが グ ル ー オ ン放 出 な どのQCD反
量0の
りに関 係 な くす べ て の
パ ー トン)に 共 通 で あ る の で,ク
よび 反 クォ ー ク)の 分 布 関数 をq(x,Q2)で
は,核 子 の
応 を経 ず に 直 接 仮 想 フ ォ ト
ン と反 応 す る効 果 で あ る.上 記 の 式 右 辺 括 弧 の 中 は,香 ク ォー ク(ス ピ ン1/2,質
な る とい うこ
ォー ク(お
代 表 させ れ ば
(5.89) とい う方 程 式 を得 る.左 辺 は 観 測 量 で あ るか ら,右 辺 の 中の グ ル ー オ ン質 量 は 見 か け 上 現 れ て い るの み で,計 算 を正 し くす れ ば,実 際 に は現 れ な い は ず で あ る.す な わ ち,q(y)の
中 に は,仮
が含 ま れ て い て,括 弧 内 の 第2項 元解 析 か らmg2に
想 グ ル ー オ ン交 換 に よ る グ ル ー オ ン 質 量 項 を相 殺 して い る と考 え るべ きで あ る.ま た 次
代 る量 が 必 要 で あ る が,こ
れ は繰 り込 み に 伴 っ て 現 れ る ス
ケ ー ル 量 μ2と 考 え られ る. 積 分 を実 行 す る と,QCD効
果 を入 れ な い第1近 似 で は
(5.90) とな り,パ ー トン モ デ ル を再 現 す る.す で に 述 べ た よ うにq(x)はQCDの 摂 動 効 果 を表 す 式 で あ り,摂 動 論 で は計 算 で きな い が,上 で 関 数
式 を,あ
が 与 え ら れ た と き に,
記 述 す る式 とみ な す こ とが で き る.こ の 場 合,第2項 よ る分 布 関 数 の補 正dqを
非
るQ2=Q02
で の振 る舞 い を がQCD最
与 え る の で,両 辺 を
低 次 の寄 与 に
で 微 分 す れ ば,
(5.91) を得 る.こ の 式 は パ ー トン モ デ ル のq(x)を,QCD効
果 を取 り入 れ たq(x,τ)
で お き換 え る こ とに よ っ て得 られ るか ら,多 重 グルー オ ン放 出効 果 を含 ん で い る.ま
た,上
式 のαsは,繰
り込 み 群 の 議 論 に 従 って,
と
して あ る.こ の 式 が 以 下 の議 論 の 基 本 と な る 方程 式 で あ り,あ るQ2の え られ た 分 布 関数 が,Q2が
値 で与
変 わ る に つ れ て ど う変 化 す る か を示 す 発 展 方 程 式
で あ る.
5.5.2
DGLAPの
発展方程 式
a. グ ル ー オ ン 分 布 関 数 さ て,こ が,核
こ まで は 仮 想 フ ォ トンの クォ ー ク との散 乱 の み を考 え た わ け で あ る
子 内 に は グ ル ー オ ン も存 在 す る の で,フ
て,qq対
ォ トン と グ ル ー オ ン と が 融 合 し
を つ く る 過 程 を も 取 り 入 れ る 必 要 が あ る(図5.12(d),(e)).図
5.12(d),(e)に
対 応 す る行 列 要 素 は,QCDコ
ン プ ト ン の 行 列 要 素(5.85)と
同 じ よ う に 求 め ら れ る.
(5.92) こ の 式 は,(5.56)の 換 え 後,グ
コ ン プ ト ン 散 乱 式 か ら,交
ル ー オ ン の 自 由 度 の 数8を
れ ば 得 ら れ る.こ
れ よ り(5.87)に
掛 け,グ
叉 とe4→e2(gs2/2)の
ル ー オ ン の 自 由 度8で
置 き 平均 を と
対 応 す る微 分 断面 積 は
(5.93)
(5.94) で 与 え ら れ る.zは(5.83)で 0とu→0の
定 義 さ れ て い る.質
双 方 に 存 在 す る の で,(5.92)は,お
の 寄 与 に 分 け て,そ
れ ぞ れtお
よ びuで
の お の の 領 域 で優 勢 な 二 つ
積 分 す る.tに
ル ー オ ン が ク ォ ー ク を 放 出 す る 分 割 関数Pqgを ク ォ ー ク を 放 出 す る 分 割 関数Pqgを
つ い て の積 分 は グ
与 え,uに
つ いて の積 分 は反
与 え る.
グ ル ー オ ン 分 布 を 含 む 場 合 に(5.91)を グ ル ー オ ン 分 布 関 数 をg(x,τ)と
量 異 常 に よ る 発 散 は,t→
拡 張 す る の は 容 易 で あ る.核
す れ ば,仮
子内の
想 フ ォ ト ン の 見 る ク ォ ー ク は,元
の 核 子 の 提 供 す る ク ォ ー ク お よ び グ ル ー オ ン よ っ て 供 給 さ れ る2次
的 な クォー
ク の 和 で あ る と い う式 を 書 け ば,
(5.95) 同 様 に グル ー オ ン分 布 関数 に 対 して は,
(5.96) が 成 り立 つ.た
だ し,Pgqは
ク ォ ー ク が グ ル ー オ ン を,Pggは
ル ー オ ン を 放 出 す る 分 割 関 数 で あ る.こ ク ォ ー ク と ク ォ ー ク を 区 別 し て,分 項 分 布 関 数 Σ,非1重
項 関数Δ
こ で,ク
グルーオ ンが グ
ォ ー ク の 香 りiお
布 関 数qi(x,τ),qi(x,τ)を
よび 反
導 入 し,一
重
を 次 式 で 定 義 す る.
(5.97) (5.98) F2,F3は
深 非 弾 性 散 乱 に 現 れ る ス ケ ー リ ン グ 関 数(3.61)で
た す 方 程 式 は,(5.95),(5.96)を
あ る.こ
れ らの 満
入 れ れ ば 得ら れ る か ら
(5.99) (5.100) (5.101) nfは
香 り の 数 で あ る.こ
程 式 は2個
の 変 数x,Q2を
の 方 程 式 をDGLAPの 含 む.Q2を
発 展 方 程 式 と 呼 ぶ6,7).こ の 方
与 え た と き,xの
変数 としての構造 関
数 はQCDで でxの
摂 動 計 算 す る こ とは で きな い.し か し,構 造 関 数 が あ るQ2=Q02
関 数 と して 与 え られ る な らば,Q2を
変 え た と き に ど う発 展 し て い くか
は 発 展 方 程 式 で完 全 に 決 ま る. 発 展 方 程 式 を解 くに あ た っ て は 分 割 関Pggを
知 る必 要 が あ る が,分 割 関
数 は 対 数 第1近 似 で は,対 象 とす る物 理 過 程 の種 類 に よ らな い 普 遍 関 数 で あ り,一 般 的 に 計 算 す る方 法 が 与 え られ て い る(文 献6,7)およ び付 録C.6).
(5.102) 対 称 性 よ り,分 割 関 数 に は 次 の 性 質 が あ る.
(5.103) こ こ で 発 展 方 程 式 に対 す る二,三
の留 意 点 を述 べ る.
b. グル ー オ ンの 偏 極 (5.99)∼(5.101)の
発 展 方 程 式 は,パ ー トン分 布 関 数 のQ2の
展 を記 述 して い る.す な わ ち,Q2に
よ る発 展 は す べ て,仮
作 用 す る前 に完 了 して い る と い う物 理 的解 釈 に 立 つ.と
変 化 に よ る発
想 フ ォ トン と相 互
こ ろ が,ク ォ ー クに よ
る グ ル ー オ ン放 出 は 始 状 態 で も終 状 態 で も可 能 で あ り,こ の 二 つ の 振 幅 を可 干 渉 的 に 足 し算 した もの の和 が(5.87)の
放 出確 率 を与 え て い る.こ の 二 つ の 可
干 渉 な振 幅 の 和 の 自乗 を,確 率 とい う言 葉 を使 っ て あ たか も一 つ の 統 計 的 に独 立 な過 程(始 状 態 パ ー トンの グル ー オ ン放 出)の よ うに 扱 うの は,い 引 に見 え るか も しれ な い.こ
さ さか 強
う した 議 論 を正 当化 す る理 由 は 次 の 通 りで あ る.
始 状 態(仮 想 フ ォ トン と相 互 作 用 す る前)の パ ー トン か らの放 出振 幅 は1/tに 比 例 す る の に 反 し,終 状 態 か らの 放 出 振 幅 は1/sに
比 例 し対 数 第1近
≫1/s)で は 無 視 し て よ い.た
比 例 す る 項 が あ る の でや
だ し干 渉 項 に は1/tに
は り始 状 態 放 出 の み で は正 し くな い よ うに 見 え る.し か し,よ
似(1/t
く観 察 す る と終
状 態 放 出 項 は,ゲ ー ジ不 変 性 を保 証 す るた め に存 在 す る の で,こ の 項 の 寄 与 は 非 物 理 的 な ス カ ラー お よび 縦 波 グ ル ー オ ン を消 去 す る ため に の み 存 在 す る.も しグ ル ー オ ン に つ い て は 物 理 的 な横 偏 極 の み 考 慮 す る こ とに す れ ば,た
とえ ば
の 共 変 ゲ ー ジ の代 わ りに,
(5.104)
で 定 義 さ れ る軸性 ゲ ー ジ(axial
gauge)を
採 用 し,nを
適 当 に 選 べ ばLLAで
は 純 粋 に始 状 態 放 出項 の み 考 慮 す れ ば よ く8),上 記 の グ ルー オ ン放 出 の 統 計 的 独 立 とい う性 質 は保 証 され る.こ の こ とは グル ー オ ン をカ ス ケ ー ドに放 出 させ る シ ャ ワー 現 象へ の 応 用 を 可 能 に す る とい う意 味 で重 要 で あ る. c. 分 割 関 数 の正 則 化 赤 外 発 散(ソ フ トグ ルー オ ン発 生)の 処 理:対 =1で
発 散 す る.こ れ は,エ
ネ ル ギー0の
角 的 なP関
数Pqq,Pggは,z
グ ルー オ ン を発 生 す る こ と に起 因 す
る 赤 外 発 散 で あ る.こ の 困難 を処 理 す る た め に,e+e-→qqg反
応 にお いて赤
外 発 散 が な か った こ との 理 由 を思 い起 こ そ う.グ ルー オ ン発 生 断 面 積 は 赤 外 発 散 項 を もつ が,全 変 数 領 域 で 積 分 す れ ば 仮 想 グル ー オ ン 交 換 効 果 と相 殺 して, 全 断 面積 に対 す る寄 与 は 有 限 な 補 正 を与 え た(式(5.69)).す
なわ ち
(5.105a) 同様 な相 殺 は電 子 非 弾 性 散 乱(eq→eqq)で
も生 じる.1グ
ル ー オ ン発 生 項 の
寄 与 と仮 想 グ ルー オ ン 交 換 項 の 効 果 を含 め た 非 弾 性 散 乱 のO(αs)ま で の 全 断 面 積σDISを,赤
外 発 散 項 を正 則 化 した 上 で正 し く計 算 す る と
(5.105b) とな る こ とが 示 せ る.電 子 陽 電 子 反 応 の 場 合 は 終 状 態 の グルー オ ン と クォ ー ク は一 重 項 状 態 に あ り,引 力 が 働 くの で 全 体 と して 正 の 補 正 を与 え たが,深 性 散 乱 の 場 合 のQCD第1次 (5.105b)を
補 正 は,負
非弾
の 補 正 で あ る こ と に 注 意 し よ う.
書 き直 す と
(5.106) こ こ で,正 則 な+(プ
ラ ス)関 数 を次 の よ うに定 義 す る と,
(5.107) グ ルー オ ン発 生 の 断 面 積 を
(5.108)
の よ うな 形 に書 き表 す こ とが で き る. 右 辺 第1項 第2項
は,z≠1の
と き,対
数 第1近
似 の 範 囲 で 式(5.88)右
辺 の 中の
に 等 し い 量 で あ る か ら,
(5.109) (5.110) こ の 定 義 し な お し たPqq(z)は,z≠1で
は(5.87b)に
等 し い が,積
分 す れ ば0
に な る と い う条件
(5.111) が つ い た 分 だ け こ れ ま でのPqq(z)と
は 異 な る.こ の 式 を成 立 させ る た め に は,
Pqq(z)を 正 則 化 しな け れ ば な ら な い が,こ
れ は 次 の よ うな 性 質 を もつ+関
数
を導 入 す る こ とに よ り達 成 さ れ る.
(5.112a) (5.112b) 条 件(5.111)と(5.112)を
使 え ば,Pqq(z)を
決 め る こ と が で き て,
(5.113) を 得 る.も
と も と 核 子 の 供 給 す る パ ー ト ン フ ラ ッ ク ス のz分
布 式(5.88)
(5.114) の 形 で 定 義 し た の で あ る か ら,パ
ー ト ン フ ラ ッ ク ス を全 部 足 し 上 げ た も の は,
元 の 核 子 が 供 給 す る も の に 等 し く な け れ ば な ら な い.dP(z,τ)をzに 積 分 し た も の は1で
な け れ ば な ら な い か ら*6),第2項
つ い て
に つ い て 条 件(5.111)
を 要 求 す る の は 理 に か な っ て い る.
*6) (5 .108)を
考 慮 す れ ば,δ(1-z)の
断 面 積 で 再 規 格 化 す れ ば,O(αs2)で
係 数 も ま た1-αs/π は(5.114)が
に 変 更 さ れ る が,補
依 然 と し て 成 立 す る.
正 された全
(5.111)は,ク が で き る.Nυ
ォ ー ク 数 保 存 則 を 意 味 す る.そ
れ は 次 の よ うに して 見 る こ と
を ヴ ァ レ ン ス ク ォ ー ク の 数 と し て,ク
ォ ー ク数 保 存 則 お よ び運
動 量 保 存 則 を 書 く と 次 の 式 が 成 立 す る か ら,
(5.115a) (5.115b) τ で 微 分 し て,(5.97)∼(5.101)を
使 え ば,(5.111)と
(5.116) が 得 ら れ る. 演 習5.6 正 則 化 し た分 割 関数 に つ い て,次
式 を 証 明せ よ.
(5.117) +関 数 を導 入 して 書 き直 した(5.108)や,(5.114)の
表 式 は,z≠1で
の表
式 と全 積 分 量 を指 定 す れ ば,完 全 に決 ま る関 数 で あ り,物 理 的 解 釈 もつ け られ る.赤 外 発 散 を回 避 す るた め に 余 分 な パ ラ メ ター を導 入 す る必 要 も な く,便 利 な簡 便 式 で あ る.た だ し,zが1に
近 い とこ ろ で は,近 似 が 悪 くな り使 用 で き
な い とい う限 界 は 心 得 て お く必 要 が あ る. d. 高次 の 寄 与 パ ー トン モ デ ル で は,パ Q2)で
ー ト ン の 運 動 量 分 布 関 数q(x,τ)をσT/σ0=2F1(x,
定 義 し て も,
果 を 入 れ て も対 数 第1近
で 定 義 し て も よ い.ま 似 を と る 限 り は 差 は 出 な い の で,こ
か っ た.し
か し,O(αs)の
量 で あ る
と き は,そ
の 差 を 問 題 に し な け れ ば な ら な い.こ
たQCD効
こで は区別 しな を考 慮 す る
の と き は,(5.86a)の
項 以 下 を 高 次 計 算 の 中 に 取 り入 れ な け れ ば い け な い.
第2
5.6 発 展 方程 式 の解 法
5.6.1
モ ー メ ン トの 方 法
a. 異 常 次 元
DGLAPの
方 程 式 を解 くの は,特 に 非 一 重 項 の場 合 は 簡 単 に な る.次 の よ う
な モ ー メ ン ト(メ ラ ン変 換)
(5.118a) (5.118b) を 定 義 す れ ば,(5.99)のDGLAP方
程 式 は,
(5.119) αs(τ)の表 式(5.30)に
留 意 す れ ば,
(5.120)
とな るの で積 分 す れ ば
(5.121a) こ こに
(5.121b) は 異 常 次 元 と呼 ば れ る量 で あ る.し た が って
(5.122) または
(5.123) す べ て のnに
つ い て モー メ ン トが わ か れ ば 逆 メ ラ ン 変 換 で 元 の 構 造 関 数 が 求
め ちれ る.こ の解 は,対 数 第1近 似 で 成 立 す る解 で あ る.こ の解 に よれ ば,構
造 関 数(の モ ー メ ン ト)の 発 展 の仕 方 は 異 常 次 元 の み で決 ま り,構 造 関 数 自 身 に は よ らな い.モ ー メ ン ト同 士 の 比 はdnの
み で 決 ま る.γnの 計 算 は
(5.124) で 与 え ら れ る.γnの
値 を い くつ か あ げ て お く と
非 一 重 項 分 布 関 数 は ニ ュ ー ト リ ノ 深 非 弾 性 散 乱 に お け るF3(x,Q2)で れ て い る の で,QCDの
予 言 と 実 験 デ ー タ を 比 較 す る こ と が 可 能 で あ る.図
5.149)は,CERNのBEBCグ
ル ー プ に よ る デ ー タ との 比 較 で あ る.
傾 き はQCDの
予 言 と よ く あ っ て い る.ス
な い.(5.123)に
よ っ て 個 々 の モ ー メ ン トMnを
可 能 で あ る が,αs(0)の 図5.15に
カ ラー グ ル ー オ ン の仮 定 とは 合 わ 直 接 デー タ と比 較 す る こ と も
値 が 必 要 で あ る な ど,よ
そ う し た 比 較 の 一 例 を あ げ る10).図
プ ロ ッ ト し た も の で あ る.αs(τ)は,LLA近 ら(5.32),LLAで
求め ら
はlnQ2の
り 多 くの 情 報 が 必 要 で あ る.
はMn-1/dnをlnQ2の
関 数 と して
似 で
で あ るか
関 数 と し て 直 線 に な る は ず で あ り,デ
ー タの範
囲 で は そ う な っ て い る. ま た,
図5.14
で あ る の で,直
非 一 重 項(non-singlet)構
造 関 数(F3)の
線 が 横 軸 を 切 る 点 が,Λ2を
モ ー メ ン ト とQCDの
比 較9)
与
え る か らΛ
に つ い て あ る 程 度 の 推 量 は で き る.し
る よ う に,変
数 をxか
ら ξ*7)に 変 え たNachtmanモ
タ と の 一 致 は よ く な る が10),Λ と は,こ
のΛ
の 値 が 変 わ る.使
ー メ ン トを 使 う と,デ
ー
の 値 が あ ま り信 用 で き な い こ と を 意 味 す る.
(b)
(a) 深 非 弾 性 散 乱 構 造 関 数 の モ ー メ ン トの 対 数 をn=3∼6に ロ ッ トした もの10).(b) は 核 子 の 質 量 効 果 を と り入 れ てx→ tmanモ
ー メ ン ト)変 数 を使 っ た もの.変
る点(こ
な お,αsを
見れば わか
う変 数 に よ り不 定 性 が あ る こ
(a) 図5.15
か し,図5.15を
つ いてプ ξ(Nach-
数 の とり 方 に よ り座 標 軸 を切
こ がΛ2の 値 を 与 え る)が 変 わ る.
τの 関 数 で な く定 数 で あ る と し た 場 合,(5.120)か
ら
(5.125) と な っ て,lnQ2で
b. Q2=∞
な くQ2の
べ き で 変 化 す る.こ
れ は デ ー タ と合 わ な い.
での 運 動 量 分 布
一 重 項 分 布 関 数 Σ と グル ー オ ン分 布 関 数 の モ ー メ ン トを計 算 す る と
(5.126) と な る.Σn,gn,γn(qq)… γn(qq)は(5.124)で
*7)
な ど は,Σ,g,Pqq,… 与 え た.同
様 の 計 算 か ら
の モ ー メ ン ト と い う 意 味 で あ る.
(5.127a) (5.127b) (5.127c) い まn=2と
す る と Σ2,G2は
ク ォ ー ク お よ び グ ル ー オ ン の 平 均 運 動 量 を 表 す.
計算結果 は
(5.127d) で,運
動 量 保 存 則(3.74)が
明 瞭 に 見 え る.こ
の 固 有 値 を 求 め る と二 つ の 解
(5.128) を 得 る.異
常 次 元 は
は,(5.123)に
で あ る.モ
ー メ ン ト
よ っ て,
の よ うに 発 展 す る の で,λ+に 対 応 す る解 はQ2→∞
で0と
な る.λ-に 対 応 す
る固有 ベ ク トル は
(5.129) で あ る の で,ク
ォ ー ク1個
は8/17と
な る.
5.6.2
数
a. QCDの
値
解
あ た り の 運 動 量 は
グルー オン
法
テ ス ト
理 論 的 に は モー メ ン トの 方 法 は わ か りや す い し,構 造 関 数 の発 展 の仕 方 も教 えて くれ る.し か し,実 際 に使 う場 合 に は,xの
非 常 に 小 さ い と こ ろ と大 きい
とこ ろ で の デ ー タ は得 難 く,正 確 な モ ー メ ン トを取 り出 す こ とが 困 難 で あ る. そ こ で,あ
るxの
値 で の 構 造 関 数 の 勾 配
で の 構 造 関数 の
値 の み に よ り決 ま る こ とに 着 目 し,測 定 値 を基 に して 決 め る こ と を 考 え よ う. 理 論 的 に も実 験 的 に も海 ク ォー クや グ ル ー オ ン の 寄 与 はxの
小 さい とこ ろに
限 ら れ る か ら,x>x0で
は,発
展 方 程 式 の 中 の 海 ク ォ ー クや グ ル ー オ ンの 寄 与
は 価 ク ォ ー ク に 比 べ て 無 視 で き,一 方 程 式 と 同 一 に な る.実 展 さ せ た 結 果 を,い と,そ BCDMSの り,そ
際 的 に は
く つ か のxに
の お の お の のxに
重 項 Σ の 発 展 方 程 式 は 非 一 重 項Δ と とれ る.こ
つ い てQ2の
れ ぞ れ のxの
く再 現 す る.ま
た,ΛMSの
構 造 関 数 がlnQ2の 換 ゲ ー ジ 群)の
発
の 図(図5.17)を,
配
値 に よ り違 う 値 を と る が,こ
で 再 現 で き る か ど う か がQCDの
の 近 似 でF2を
関 数 と し て 描 い た 図(図5.16)
つ い て 計 算 し た 勾 配
デ ー タ11)と 比 較 し て 示 し た*8) .勾
の発展
テ ス ト と な る.デ
はxの
関 数 で あ
れ が 一 つ の パ ラ メ タ ーΛMS ー タ は理 論 計 算 を非 常 に よ
値 に ど の く ら い 依 存 す る か を も 示 し た.
依 存 性 を も ち つ つ 発 展 し て い く こ と はQCD(ま
特 徴 で あ り,歴
たは非可
史 的 に は 深 非 弾 性 散 乱 の デ ー タ に よ っ てQCD
の 正 し さ が ほ ぼ 裏 づ け ら れ た.
b. グル ー オ ン分 布 関 数 の 測 定 グ ルー オ ンは 電 磁 相 互 作 用 も弱相 互 作 用 も しな い の で,深 非 弾 性 散 乱 断 面 積 に は グ ル ー オ ン 分 布 関 数 が 直 接 に 測 定 で き る 量 と し て 現 れ る こ と は な い.
図5.16
μp散 乱 構 造 関 数F2(x,Q2)の
*8) 実 際 の デ ー タ最 適 化 で は 対 数 第2近
似(NLLA)を
発 展 とQCDに
よ る比 較11)
採用 して い る
.こ
の 場 合,
とす る.こ こで 第1項 は本文 中 で与 え た対数 第1近 似 の 分 割 関数 で,第2項 され て い る12).
以 下 も計 算
(b)
(a) 図5.17
構 造 関 数F2の
対 数 微 分 をxの
(a) は 水 素 標 的 デ ー タ をQCDのΛMSを
関 数 と してみ る11)
い ろ い ろ変 え て み た もの.(b) は 水 素 標
的 と炭 素 標 的 の 比 較.
DGLAP発
展 方 程 式 を使 って,深
非 弾 性 散 乱 デ ー タ か ら決 め る こ とは 可 能 で あ
る が,こ
の 場 合,ΛMSの
値 と グル ー オ ン分 布 関 数 間 の 相 関 が 強 くな る.ま
x<x0で
の クォ ー クや グ ルー オ ンの 分 布 関 数 を正 確 に 決 め るた め に も,正
初 期 関 数 を 与 え る必 要 が あ る の で,グ
た, しい
ル ー オ ン分 布 関 数 を,少 な く もQ2の
る一 点 で 独 立 に 実 験 的 に決 め る こ とが 望 ま しい.例
あ
え ば次 の 反 応 が グ ルー オ ン
分 布 関 数 を決 め るの に使 え る.
(5.130a)
(5.130b) ハ ドロ ン反 応 で 直 接 フ ォ トン を生 成 す る過 程 は 主 と し て
(5.131a) と い うQCDコ
ン プ ト ン 反 応 が 効 く.
(5.131b) の 対 消 滅 反 応 も 寄 与 す る が,pp反 れ る フ ォ ト ン は,π0,η0,η'0生 大 き い が,pTの
大 き い と こ ろ で は 直 接 生 成 過 程 も 大 き く,π0な
ォ ト ン に よ るJ/ψ
応で観測 さ
成 と そ の 崩 壊 を通 して 生 成 さ れ る過 程 の 寄 与 が
個 の フ ォ トン で 同 定 し た う え で,分 ま た,フ
応 で は 前 者 が 優 勢 で あ る.pp反
ど の 生 成 を2
離 す る こ と は 可 能 で あ る13).
生 成 の 最 低 次 の 寄 与 は,
(5.132)
で あ る の で,や
は り核 子 の 中 の グ ル ー オ ン 分 布 が 直 接 測 定 で き る.図5.18に
チ ャ ー ム 対 生 成 か ら 求 め た グ ル ー オ ン 関 数 を 示 す14).
図5.18
σ(γN→ψx)より
求 め た グ ル ー オ ン分 布 関 数14)
実 線 はg(x)=3(1-x)5/x
c. コ ン ピ ュ ー タ ー に よ る構 造 関 数 の 計 算
現 在 で は,上 x,Q2で
記 の 数 値 解 法 を 一 般 的 に拡 張 し コ ン ピュ ー タ 化 して,任
の 構 造 関 数 を求 め る手 法 が 確 立 して い て,い
ム が 存 在 す る.こ
意の
くつ か の 標 準 的 プ ロ グ ラ
の た め に は,初 期 関 数 と し て あ る参 照 点Q0の
と こ ろ で,
クォ ー クや グ ルー オ ン分 布 関 数 の 形 を
(5.133) の よ う に 関 数 化 し て パ ラ メ タ ー を 決 め る.指 限)の
数Bはx→0(Q2→0,E→
と こ ろ で レ ッ ジ ェ 的 な 形 を 満 た す よ う に し(複
入 れ る た め にDi,Eiの う に 決 め る.反
ク ォ ー ク でC=3,海
象 解 析 で は そ の 値 の 近 傍 でCを
部 は パ ー ト ン の 加 算 則((3.71)∼(3.74))を グ ル ー オ ン 関 数 の 場 合(i=g),QCD理 で あ り,x→0で
弾 性 散 乱 を再 現 す る よ
もつ パ ー トン の 数 をnと
で 与 え ら れ る と い う 議 論 が あ り15)(価 グ ル ー オ ン でC=5),現
数 の レ ッ ジェ 項 の寄 与 を
項 が あ る),指Ciはx→1で
応 の 際 有 限 なxを
す る と,C=2n-3 ク ォ ー ク でC=7, 動 か す.係数Aの
使 っ て 決 め ら れ る. 論 の 考 察16)に よ れ ば,
大 き く増 大 す る が,
無
で は,
一
(5.134) と し て よ い 近 似 で あ る.実
際,図5.18で
は,デ
う 式 に よ く合 う こ と を 示 し て い る.し
ー タ が
とい
か し,TEVATRONやLHCな
どの高
エ ネ ル ギ ー ハ ドロ ン 衝 突 型 加 速 器 で のQCD過
程 や,HERAの
xの 非 常 に 小 さ い 値 の と こ ろ を 使 う の で,xの
小 さ い とこ ろ で の 正 し い振 る舞
い を す る 関 数 形 が 必 要 で あ る.ち で あ り,精
な み に,HERAで
密 な デ ー タ が 得 ら れ て い る.パ
発 生 や ド レ ル ーヤ ン 過 程 を も 含 め,総 法 の 微 調 整 や,ど に より 異 な り,数 (セ ッ トA)とH1グ
実験 な ど で は,
はx≒10-4ま
で到 達 可 能
ラ メ タ ー を 決 め る に あ た っ て は,光
合 的 に 決 め る 必 要 が あ る が,関
数 の近似
の デ ー タ を どれ だけ の 重 み を も って 取 り入 れ る か は グル ー プ 値 は 変 わ っ て く る.最
近 の 処 方 箋17,18)の 中 か ら,MRS.
ル ー プ に よ る 計 算 例 を 表5.2,5.3に
表5.2
示 す.
初 期 関数 形(Q2=Q02)
こ こ で,uυ,dυ は価 ク ォー クの分 布 関数 を表 す.
表5.3
MRS(A)の
MRS(A)17)とH119)のバ
初 期 値 はQ02=4GeV2,H1はQ02=5GeV2(-で
ラ メ ター セ ッ ト
表 した と こ ろ は,境
界 条 件 に より 決 め
ら れ る量 で あ る).
図5.19に
は,MRS(A)のQ2=10,104GeV2で
た 考 え 方 で 得 た 構 造 関 数 のQ2発 こ れ ら の 分 布 関 数 は,深
の 関 数 を 図 示 し た.こ
展 と デ ー タ の 整 合 性 の 例 を 図5.2019)に
う し 示 す.
非 弾 性 散 乱 実 験 デ ー タ を 再 現 す る だ け で な く,W,Z
生 成 断 面 積 を 計 算 し たり,LHCな 実 験 予 想 を 立 て る の に も使 わ れ る.
どの 高 エ ネ ル ギー ハ ドロ ン コ ラ イ ダー で の
(a) 図5.19
MSR(A)の
(b) MRS(A)パ
ー ト ン 分 布 関 数17)
パ ラ メ ター セ ッ トに よ り発 展 させ た ク ォー ク分 布 関 数(u,d,s)と
グル ー オ ン分 布 関 数(g) (a) Q2=10GeV2,
図5.20
(b) Q2=104GeV2
陽 子 構 造 関 数F2の デ ー タ と数 値 計 算(H1パ ラ メ ター)と の 比 較19〕 デ ー タはHERA(ZEUS,H1);μ-深 非 弾 性 散 乱(E665,NMC)
5.7
§3.7の
議 論 か ら,ド
ド レ ル-ヤ
ン過 程
レ ル-ヤ ン(Drell-Yan(以
下DYと
書 く))過 程
(5.135) の 生 成 断 面 積 の 式(3.80)を
こ こに 再 現 す る と
(5.136a) (5.136b) で あ っ た.こ クiの
こ に,
で あり,λiは
電 荷 を 表 す.ppの
クォー
重 心 系 に お け る パ ー トン の 運 動 量 変 数 は
(5.137) と 表 さ れ る.以 次 効 果(図5.21)を
上 は パ ー ト ン モ デ ル で 成 立 す る 式 で あ る.こ 考 慮 す る と ど う 変 わ る か を 見 よ う.パ
フ ァ イ ン マ ン 図 は 電 子 深 非 弾 性 散 乱(以
下DISと
こ で,QCDの
ー トン で 書 い た
書 く)のQCD効
果 と酷 似 し
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
(f)
(g)
(h)
図5.21
ドレル-ヤ ン過 程pp→μμ+X
(a) 最 低 次 の 過 程,最 (b)∼(h) QCDの
も 簡 単 なq+q→γ*→
高 次過 程
(c),(d) qq→γ*消
滅 過 程
(e),(f) qq→γ*g (g),(h)
グ ル ー オ ン と の コ ン プ トン 散 乱
(b)∼(f)はfqを(g),(h)はfgを 本 文,式(5.139),(5.140)を
与 え る. 参 照.
μμ
高
て い る.仮 想 フ ォ トン と クォ ー ク線 を 交 叉 す れ ば 一 方 か ら他 方 が得ら れ る し, と もに ハ ドロ ン状 態 を一 定 のQ2(た 0で,ド
だ し,深 非 弾 性 散 乱 の と き はq2=-Q2
0)で
指 定 して い る.DY過
程 の ファ
イ ン マ ン図 を計 算 し,位 相 空 間 の積 分(中 間 状 態 の仮 想 ク ォー ク質 量 に つ い て の 積 分)を 行 う と,深 非 弾 性 散 乱 と同 じよ うにln(Q2/mg2)型
の質 量異常 項 が
出 現 す る.交 差 す る以 外 は 同 じ形 の行 列 要 素 を計 算 して い る か ら,そ の 係 数 は 同 じで あ る.す な わ ち,DY過 性 散 乱 に お け るQCD補
程 の 対 数 第1近 似 で のQCD補
正 と同 じ関 数 が 現 れ る.違
始 状 態 に 二つ の パ ー トン が あ るの で,二つ
正 に は,深 非 弾
う と こ ろ は,DY過
程では
の分 布 関 数 の 積 を と らね ば な ら な い
こ とで あ る.仮 想 グ ルー オ ン の 寄 与 を も考 慮 し たO(αs)の 高 次 計 算 に よ れ ば 繰 り込 み処 方 後 の 表 現 は次 式 の よ うに な る20).
(5.138) Pqq(z),Pqg(z)は,す
で に 現 れ た も の と 同 じ 分 割 関 数 で あ る.Pqq(z)の
数2は,グ
ル ー オ ン を 放 出 で き る 始 状 態 の ク ォ ー ク が2個
対 数 第1近
似 で の 優 勢 項 以 外 の 寄 与 はDYと
る こ と に よ っ て,q(x,Q2)の
の部分
は 異 な る.ln(Q2/μ2)
繰 り 込 みq(x)→q(x,Q2)と
定 義 の 中 に 取 り 込 む こ と が で き る.繰
ケ ー ル μ 依 存 性 を 明 ら か に す る た め 以 後q(x,μ),αs(μ)の す る と,結
あ る こ と か ら く る.
い う 関 数 に ま と め た.こ
の 寄 与 は 対 応 す る 深 非 弾 性 散 乱 で の 非 優 勢 項 の 寄 与DIと の 項 は 深 非 弾 性 散 乱 の 場 合 と 同 じ く,q(x)に
前 の係
す り込 み ス
よ う に 書 くこ とに
局,
(5.139)
(5.140a)
(5.140b) と い う 形 と な っ た.す
な わ ち,QCD高
次 効 果 の う ち,ソ
フ トな部 分 は 分 離 し
て パ ー ト ン 分 布 関 数 の 中 に 繰 り 込 む こ と が で き た(factorization).ハ 部 分(fq,fg)は,ド
レ ル-ヤ ン 断 面 積 そ の も の に 対 す る 高 次 補 正 と 見 な せ る.
こ こ で 注 意 す べ き は,対 あ る.こ
ー ドな
消 滅 項 の 中 の 非 優 勢 項 の 寄 与fq(z)の
れ は 仮 想 グ ル ー オ ン の 寄 与 で,δ(1-z)に
中 の 第1項
比 例 す る の で,第0次
で の
パ ー トン 分 布 を ま っ た く変 え ず に 全 体 の 規 格 化 定 数 を
(5.141) だ け 変 え る(た だ し αs(q2)か ら くる 質 量 依 存 性 は あ る).fqの
残 りの 寄 与 お よ
び コ ンプ トン項fgは 全 体 と して 負 の 寄 与 を与 え る が 値 は 小 さ い.そ 因 子 を導 入 して,第2次
こ で,K
補 正 の 効 果 を ま とめ て
(5.142) と書 き表 す と,τ が0.2∼0.7く
ら い の 範 囲 でK∼Kδ
∼定 数 で あ る.ド
ン過 程 が よ く調 べ られ て い る 固 定 標 的 実 験 の エ ネ ル ギー 度 で は こ のKは
非 常 に 大 き く,1.5∼2.3く
レル-ヤ 程
ら い に も な る.実 際 実 験 的 に も
σexp/σ0(第3章 で は こ れ をK因
子 と定 義 し た)が そ の くら い 大 き い こ とが 確
認 され て お り(図5.2221)),QCDの
高 次 効 果 と見 な し て 話 の つ じつ ま は合 う.
Kδ の 中 の1に 対 す る補 正 項 が 大 きい 理 由 は,先 ス補 正 に お いて,q2=-Q20(DY過
程)へ
の 解 析 接 続 に よ っ て生 じ る項 の寄 与 が あ るか らで,通 常 の摂 動 の 高 次 効 果 とは 区別 され ね ば な ら な い.こ の 観 点 に 立 て ば,さ Kの
らに 高 次 の効 果 を取 り入 れ て も
値 は このKδ の 値 か らは そ れ ほ どは 動 か な い は ず で あ り,上 記 の 摂 動 計 算
結 果 を信 頼 して よ い と正 当化 で き る で あ ろ う. 実 際,WやZ生
成 が 問 題 に な る よ うなハ ドロ ン衝 突 型 加 速 器 実 験 の エ ネ ル
ギ ー 領 域 で は,K因
子 は 小 さ く な り,25%程
度 の 補 正 と な る.実
験 的 に はK
を 調 整 す べ き規 格 化 の パ ラ メ タ ー と見 な し て デ ー タ に 合 う よ う に 決 め る こ とが 多 い. 結 局,DY過 q(x,μ)と
程 に お け るQCD高 し,K因
次 の 効 果 の う ち ソ フ ト な 部 分 は,q(x)→
子 を掛 け て全 体 の フ ラ ッ ク ス を再 調 整 す る こ と に集 約 す る
こ と が で き た.深
非 弾 性 散 乱(μ2=-q2=Q2)のq(x,μ)と,ド
(μ2=q2=M2)のq(x,μ)は,対
数 第1近
レ ル-ヤ ン 過 程
似 で は ま っ た く同 じ形 を し て い る こ
と に 留 意 し よ う.
図5.22
ドレル-ヤ ン過 程 と第2次 補 正 まで 入 れ たQCD計 K=1.5±0.2(QCD計 算)21).
算 値 と の比 較
5.8 ハ ドロ ン-ハ ドロ ン衝 突 反 応
直 感 的 に考 えれ ば,深 非 弾 性 散 乱 で 導 入 さ れ た"Q2に トン分 布 関 数"と
よ って 発 展 す る パ ー
い う概 念 が 同 じ よ う にハ ドロ ン-ハ ドロ ン 反 応 に そ の ま ま適
用 で き るか ど うか は必 ず し も 自明 で は な い.な ぜ な らば,レ プ トンが プ ロ ー ブ の 場 合 は,パ ー トン分 布 は パ ー トン同 士 の 短 距 離 相 互 作 用(Q2の が 起 き る ま で 元 の 分 布 を維 持 す る と考 え られ るが,ハ
大 きい 反 応)
ドロ ン-ハ ドロ ン 反 応 の
場 合 は プ ロ ー ブ が パ ー ト ン で あ る か ら ソ フ トグ ル ー オ ン 放 出 に よ る 長 距 離 相 互 作 用 が 存 在 し,し
た が っ て,短
距 離 相 互 作 用 が 起 き る前 にパ ー トン分 布 が 変 更
さ れ て し ま う 可 能 性 が あ る か ら で あ る.し ド レ ル-ヤ ン 過 程 に は,Q2の
か し,前
節 の 議 論 に よ って 少 な く も
関 数 と し て 発 展 す る パ ー トン 分 布 関 数 と い う概 念
が 適 用 で き る こ とが 実 際 の 計 算 に よ っ て 示 さ れ た.さ つ い て も,摂
動 の 各 次 で ソ フ ト な 部 分 と ハ ー ド な 部 分 の 分 離(factorization)
が 可 能 で あ る こ と,し
た が っ て ソ フ トグ ル ー オ ン 効 果 は パ ー ト ン 関 数 に 組 み 入
れ 可 能 で あ る こ とが 証 明 さ れ て い る22).こ ン-ハ
らに す べ て の 高 次 効 果 に
の 考 察 は 拡 張 可 能 で,一
ドロ ン衝 突 反 応 に も 適 用 可 能 で あ る.ハ
ド ロ ン-ハ
般 の ハ ドロ
ドロ ン 反 応 は,パ
ー ト
ンモデルの段階 では
(5.143) と 表 さ れ る.こ は,QCDに は 平 均 を,終
こ にσ0は パ ー トン モ デ ル に よ る(ab→cx)反
よ る 最 低 次 の 摂 動 計 算 式 で あ る.σ0は,始
応 の 断 面 積 また
状 態の カラーにつ いて
状 態 の カ ラ ー に つ い て は 和 を と っ て あ る も の と す る.パ
デ ル が 適 用 で き る の は い わ ゆ る 堅 い 反 応(hard に 限 ら れ る こ と に 留 意 し て お こ う.ハ れ る と い う こ と は,図
式 的 に は 図5.23の
process, Q2の
ド ロ ン 反 応 が 式(5.143)の よ う に 表 さ れ る.
図5.23 ハ ドロ ン 反 応(A+B→C+X)の パ ー トン描 像 ハ ドロ ンA(B)の 中の パ ー トンa(b)がxaPA(xbPB)の 運 動量 を もっ て QCD反
応a+b→c+Xを
行 う.
ー トンモ
大 き い 反 応) よ うに 表 さ
QCDを
考 慮 したハ ドロ ン-ハ ドロ ン 反 応 の 断 面 積 は上 式 か ら
(5.144a) (5.144b) と 置 き 換 え た も の と な る.す
なわ ち
(5.145) こ こ に,深
非 弾 性 散 乱 で の パ ー ト ン 分 布 と 同 じ くfAa(xa,μ)は,fAa(xa)か
DGLAP発
展 方 程 式 の 処 方 で,μ
り,σ(ab→cx)は,QCDのn次 あ る.ス
ら,
ま で 発 展 させ て 得 ら れ る パ ー トン 分 布 で あ の 摂 動 計 算 に よ る短 距 離 相 互 作 用 断 面 積 で
ケ ー ル 変 数 μ は,ド
レ ル-ヤ ン 過 程 な ら ば μ 対 の 不 変 質 量,Wや
い ク ォ ー ク 生 成 な ら ば そ の 質 量,ジ
重
ェ ッ ト反 応 で あ れ ば 横 運 動 量p⊥ に と る の
が 普 通 で あ る. こ こ で,(5.13(b))を
拡 張 し て,次
の よ う な パ ー ト ン ル ミ ノ シ テ ィLを
定
義 す る.
(5.146) σ がs=τsに
の み 依 存 す る とす れ ば,パ
ー トン の 断 面 積 は 次 の よ う に 書 き換 え
ら れ る.
(5.147) 入 射 パ ー トン 系 は 重 心 系 で は な い の で,ロ 測 量 を使 う の が 望 ま し い.例 xF=xa-xbの
ほ か に,ラ
の もつ エ ネ ル ギ ーEab,運
え ば,観
ー レ ン ツ ブ ー ス トに 関 し不 変 な 観
測 量 と し て はab系
ピ デ ィ テ ィyな
の 縦 運 動 量
ど が よ く 使 わ れ る.パ
ー ト ンa,b系
動 量Pabは
(5.148a) (5.148b) で あ るの で
(5.149) xa,xbは,τ(=s/s),xF(=Eパ ギ ー)が
ートン/E;Eパ
ートンは パ ー
ト ン2体
系 の 全
エ ネ ル
わ か っ て い る と き は,
(5.150a) か ら 求 め ら れ る が,τ
とyが
わか ってい るときは
(5.150b) を 使 う.ラ
ピ デ ィ テ ィ を 使 え ば,
(5.151) ま とめ る と,QCDの
高 次 効 果 の う ち,ソ フ トな 部 分(長 距 離 相 互 作 用)は
"Q2に よ り発 展 させ たパ ー トン分 布"と 繰 り込 む こ とが で き る.K因
子 は 先 に も述 べ た よ うに 対 数 近 似 第2次
は あ るが,そ の 主 要 寄 与 は,Q20(生
の項 で
成)へ の 解 析 接 続
ドロ ン 生 成 過 程 に は 共 通 し て 現 れ る.ま たσ の 高 次 効 果
の ハ ー ドな部 分 は,パ ー トン を供 給 す るハ ドロ ンの 種 類 や ハ ドロ ン の 波 動 関 数 な ど の低 エ ネ ル ギー 効 果 に 依 存 せ ず,対 象 とす る素 過 程 に特 有 の 効 果 で あ る こ とがQCDに
よ って 示 さ れ た こ とに な る.こ の よ う に,ハ
応 に お い て も,Q2で
ドロ ン-ハ ドロ ン 反
発 展 させ たパ ー ト ン モ デ ル を使 っ て よ い こ とがQCDに
よ っ て裏 づ け られ た わ け で あ る.
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F.E.Paige:Phys.Rev.,D19(1979)221 Bellac,J.L.Meunier
and
G.Plaut:Nucl.Phys.,B1175(1980)
251 G.Altarelli,R.K.Ellis
and
G.Martinelli:Nucl.Phys.,B143(1978)521;Nucl.Phys.,
B146(1978)544(e);Nucl.Phys.,B147(1979)461 21)
R.K.Ellis
and
W.J.Stirling:Fermilab-Conf-90/104
E605;C.Brown A.D.Martin 22)
J.C.Collins
et et and
675
G.Parisi:Nucl.Phys.,B126(1977)298
al.:Phys.Rev.Lett.,63(1989)2639
al.:Phys.Lett.,B206(1988)327 D.E.Soper:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,37(1987)383
6 Wボ
6.1
6.1.1
歴
史
的
ソ
W,Zの
ン
発
見
背 景
ニ ュ ー ト リ ノ 反 応 に お け る 中 性 カ レ ン トの 発 見 で,GWS理
論 は実 験 的 な裏
づ け を 得 た よ う に 思 え る.し
ー ジ ボ ソン その
も の の 発 見 に あ る.中 とWの
質 量 は80GeV程
CERNのSPS;
super
あ っ た が,衝
定 的 な 証 拠 はW,Zゲ
性 カ レ ン ト実 験 か ら 得 ら れ たsin2θWの 度 と な る.当 proton
synchrotron)の
で あ り,W生
に は こ の 少 な く も3倍
collider:
CERNのe+e-衝
ビ ア 達 は,W生 速 器SPSを
(intersecting
storage
ring)は,
時,計
突 型 加 速 器, 現 は1980年
)は
electron
エ ネ ルギー的 に は
固定 標 的 用 陽 子 加 突 型 に は ビ ー ム が2
定 標 的 用 陽 子 加 速 器 に は ビ ー ム を 通 す パ イ プ は1個
画 は 中 止 に な っ た.
=32.5
代 後 半 と 見 込 ま れ 遠 い 将 来 の 話 で あ っ た.ル
衝 突 型 に 転 換 で き な い も の か と 考 え た1).衝
,計
時
画 中の イザ ベ ル (large
成 を 早 く実 現 す る た め に 現 存 す るCERNの
本 必 要 で あ る が,固
成
験 室 系 エ ネ ル ギー と して は 約
突 型 加 速 器, )や,LEP
十 分 で あ っ た が,実
*1) そ の 後
成 に は 到 底 足 り な か っ た.W生
や は り エ ネ ル ギ ー が 不 足 で あ っ た.当
(ISABELLE*1):pp衝
れ る最 高 重 心 エ ネ ル
た が っ て 衝 突 型 加 速 器 を 使 う の が 有 利 で あ る が,当
存 在 し た 陽 子 衝 突 型 加 速 器 のISR +32.5GeVで
最 高 エ ネ ル ギ ー は300GeVで
以 上 の 重 心 エ ネ ル ギ ー,実
も 必 要 で あ る.し
値 か ら推 察 す る
時 稼 働 し て い た 陽 子 加 速 器(Fermilab,
突 型 で は な く 固 定 標 的 を 使 用 し た か ら,得ら
ギー
10倍
か し,決
しか な
い の で,一 は,他
つ の 加 速 器 で2種
の粒 子 を逆方 向 に まわ して衝突 型 にす るため に
の 粒 子 は 反 陽 子 で な け れ ば な ら な い.衝
シ テ ィL(衝
突 断 面 積 をσ と し て,N=Lσ
倒 的 に 小 さ い.し
か も,反
子 と し て つ く る の で,生 成 さ れ の で,加
突 型 は 固定 標 的 型 に 比ベ ル ミノ
が 計 数 率 を 与 え る よ う な 量)が
圧
陽 子 は 高 エ ネ ル ギ ー 陽 子 を 物 質 標 的 に 当 て て2次
粒
成 量 が 小 さ い う え に 運 動 量 ・方 向 の 両 者 と も 乱 雑 に 生
速 に 適 し た 良 好 な ビ ー ム*2)と は 到 底 い え な い.こ
決 し た の が ヴ ァ ン ・デ ア ・メ ー ア(Van
der Meer)に
よ る ビー ム 冷 却 お よび 貯
蔵 の 方 法 で あ る2).こ
の 提 案 はCERNの
して,
の 陽 子 反 陽 子 衝 突 型 加 速 器(SppS)と
にWお
よ びZ粒
の 問 題 を解
採 用 す る と こ ろ と な り,SPSを
子 の 発 見 に 導 い た の で あ っ た.こ
し,1983年
転 換 に見 事
の 功 績 で ル ビ ア とヴ ァ ン ・
デ ア ・ メー ア は ノ ー ベ ル 賞 を 授 け ら れ て い る.
6.1.2
UA1実
W±,Z0生
験
成 反 応 は 陽 子 中 の ク ォ ー ク お よ び 反 陽 子 中 の 反 ク ォ ー ク に よ り引
き 起 こ さ れ る.
(6.1a) W,Zの
崩 壊 モ ー ドは,上 式 の逆 反 応 お よ び レ プ トン崩 壊 反 応
(6.1b) で あ る.W,Zの
同定 は 崩 壊 生 成 物 を再 構 築 し て行 わ れ る.ク ォー クへ の 分 岐
比 の 方 が 大 きい が,ク で,香
ォー クは単 独 で は 検 出 で きず ジ ェ ッ トと して 認 識 す るの
りを同 定 す る の は む ず か しい*3).ま た,ジ ェ ッ トの運 動 学 変 数 の再 構 築
*2) 良 好 な ビ ー ム と は
,ビ
ー ム の 中 の 粒 子 の 速 さ と 方 向 が 揃 っ て い る こ と.専
ビ ー ム 中 心 軌 道 か ら の 位 置 ズ レ をΔx(Δy),方
門 的 に は,
向 の ビ ー ム 軸 か ら の ズ レ をΔx'(Δy')と
し,粒 子 群 が(Δx,Δx')((Δy,Δy'))空 間 で 占 め る体 積 を エ ミ ッ タ ン ス と い う.エ ミッタ ン ス の 小 さ い ビー ム が 望 ま し い. *3) 最 近 の 測 定 器 は ,マ イ ク ロ ヴ ァ ー テ ッ ク ス 検 出 器,ま た はRICH (ring image Cheren kov counter)を 装 備 し て,bク ォ ー ク や チ ャ ー ム ク ォ ー ク を 含 む ハ ドロ ン を 同 定 で き る よ う に で き て い る.前 者 は 衝 突 地 点 近 く に10∼50μmの 位 置分 解 能 を もつ半 導体 素 子 よ りな る 検 出 器 を 配 備 し,10-12∼10-13secの 寿命 を もつ 粒 子 が 崩壊 す る 際 につ くる キ ン ク (折 れ 曲 が り)も し く はV字 形 の 軌 跡 パ タ ー ン を 検 出 す る こ と に よ り,bも し く はc ク ォ ー ク を 同 定 し よ う とす る もの で あ る.RICHは 高速 荷 電粒 子 が 発 す るチ ェ レ ンコ フ
に 関 して は 誤 差 が 大 きい.一 方,レ
プ トン の 方 は 分 岐 比 は小 さ い もの の,粒 子
同 定 お よ び運 動 学 変 数 の再 構 築 が 比 較 的 容 易 で あ るの で雑 音 の 少 な い きれ い な サ ンプ ル を得 や す く,〓10GeV以
上 の2次 粒 子 が で き る よ う な高 エ ネ ル ギー
反 応 で は,レ プ トン 同定 に狙 い を絞 るの が 常 套 手 段 で あ る.2粒 壊 は,2粒
子 の エ ネ ル ギ ー 運 動 量(E1;p1,E2;p2)を
ギー 運 動 量
子状 態へ の崩
同 定 す れ ば,親
の エ ネル
お よ び 質 量mυ が,原 理 的 に は 次 式 に
よ り再 構 築 可 能 で あ る.
(6.2a) (6.2b) 最 初 にW,
Zを 検 出 したUA1測
定 器 の 各 粒 子 の 簡 単 な 検 出 原理 を述 べ る.
a. 電 子 と フ ォ トン レ プ トンの う ち,電 子 は 荷 電 粒 子 で あ り磁 場 内 の 軌 跡 か ら運 動 量pが る.ま
た電 磁 カ ロ リメ ター で シ ャ ワー を起 こ す の で,エ
で き る.そ の 比E/pは
電 子 な ら ば=1を
与 え るが,他
ネ ル ギーEを
測れ も測 定
の粒 子特 に非常 に大 き
な雑 音 源 で あ る π は,電 磁 カ ロ リ メー タ に は ほ とん ど エ ネ ル ギー を 落 と さ ず E/p≪1と
な るの で,基 本 的 に は こ れ で 電 子 同定 が 可 能 で あ る.軌 跡 を残 さ ず
電 磁 シ ャ ワー を起 こす 粒 子 が フ ォ トン(ほ
とん どは π0の 崩 壊 γ)で あ る.
b. ハ ド ロ ン 電 磁 カ ロ リメ ター 内 で シ ャ ワ ー を起 こ さず ハ ドロ ン カ ロ リ メ ター 内 で シ ャ ワー を起 こ す 粒 子 が ハ ドロ ン で あ る.ほ
と ん どが π粒 子 で あ る.エ
ネ ル ギー
と方 向 が 測 れ る. c. ミュー オ ン(μ) μ は 物 質 との相 互 作 用 で は イ オ ン化 損 失 反 応 しか起 こ さ な い.一 方 ハ ドロ ン や γ,電 子 は カ ロ リメ ター 内 で物 質 と相 互 作 用 して シ ャ ワー を起 こ して ほ ぼ 全 エ ネ ル ギー を失 うの で,十
分 な 量 の 物 質(カ
ロ リ メ タ ー+電 磁 石 の鉄 ヨー ク)
を通 過 して な お か つ 生 き残 る粒 子 を μ と同 定 す る.
*3) の つ づ き
光 を半 導 体 の 光 セ ン サ で 検 出 す る こ と に よ り,粒
子 種,特
に π/K/pを
別 す る.b,cク ォ ー ク を含 む ハ ド ロ ン の 特 徴 的 な 崩 壊 モ ー ド を 見 る こ と に よ っ て,b,c ク ォ ー ク を 同 定 す る も の で あ る.
識
d. ニ ュ ー ト リ ノ(ν) ν は 見 え な い エ ネ ル ギ ー(Eと 量 の 和 は0で ドロ ン)の
あ る の で,観
書 く)と
エ ネ ル ギ ー ベ ク トル(エ
ネ ル ギ ー と 方 向 が 測 定 で き る)の
粒 子(ま
析 に あ た っ て は,同
た は π)と 見 な す の で,個
ネ ル ギ ー ベ ク トル と運 動 量 ベ ク トル は 同 じ で あ る.見 に 測 定 す る に は,密
運動
と中 性 ハ ベ ク トル
え な い エ ネ ル ギ ー の ベ ク トル を 与 え る.た
々 の 粒 子 の 同 定 は 不 可 能 で あ り,解
て の 粒 子 を 質 量0の
心 系 で は,全
測 さ れ る す べ て の 荷 電 粒 子 と 中 性 粒 子(γ
和 の 符 号 を 逆 に し た も の が,見 し,個
し て 検 出 す る.重
閉 性(hermeticity),つ
定 不 可 能 なす べ
々 の粒 子 に 関 して は エ え な い エ ネ ル ギ ー を精 密
ま り どん な 粒 子 を も見 逃 さ な い よ
う に 測 定 器 に 死 角 を つ く ら な い こ と が 大 事 で あ る.そ 逃 げ る 粒 子 は 防 げ な い の で,ビ
だ
れ で も,ビ
ー ム 軸 に 垂 直 な 成 分ETに
ームパ イプに
つ い てのみ 測定 で
き る. 図6.1と
図6.2にUA1お
Z0→e+e-反
よ びUA2測
応 の 事 象 を 示 す3).図6.1(a)で
い る よ う に 見 え る が,ほ 放 出 に よ るQCD雑 GeV)を
は,粒
音)で,ビ
の こ と は η-φ 平 面(η
運 動 量pT>15
は ラ ピ デ ィ テ ィ,
落 ち た エ ネ ル ギ ー を 図 示 す る と(図6.1(b),図6.2(a),こ 目 瞭 然 で あ る.特
の
にZ0→e+e-の
場合 は
方 向 に エ ネ ル ギ ー の 等 し い 粒 子 が 出 て い る こ と が わ か か る.Zの
は,式(6.2b)に
よ る 質 量 決 定 が 容 易 で ∼90GeVと
こ れ に 比 べ る と,W崩 る.W崩
決 め ら れ た.
壊 で の 見 え な い エ ネ ル ギ ー が 確 か にWか
大 き さ が 同 じ で,ビ
い る こ と や,EeTとETの い こ と な ど か らW→eν か く し て,Wお
ら崩 壊 した ニ ュー ト リ ノ
え な い エ ネ ル ギ ー の ベ ク トル の 方 向 と大 き さ の 電
子 の エ ネ ル ギ ー ベ ク トル に 対 す る 相 関 を 図6.3に EeTとETの
場合
壊 は ニ ュー ト リノ を含 む た め に 同 定 が や や 困 難 で あ
で あ る こ と を 示 す た め に,見
れ,し
フ トグ ル ー オ ン
ー ム 軸 に 垂 直 な 大 き な 運 動 量(横
よ う な 図 を レ ゴ プ ロ ッ ト と 呼 ぶ)一
と
子 が た く さ ん放 出 さ れ て
と ん ど は 低 エ ネ ル ギ ー の π 粒 子(ソ
要 求 す る と 消 え て し ま う.こ
φ は 方 位 角)に
180度
定 器 で 得 ら れ た 典 型 的 なW→eν
示 す.電
子 の 横 エ ネ ル ギー
ー ム 軸 に 垂 直 な 平 面 上 で180度
和 の 最 大 値 が ∼80GeVでWの
逆 方向 に出 て
質 量 値 に ほ ぼ等 し
で あ る と確 認 で き る.
よ びZと
い うGWS理
論 に お け る最 も重 要 な 粒 子 が 発 見 さ
か も そ の 質 量 値 は 中 性 カ レ ン ト反 応 か ら得 ら れ たsin2θWの
値 を使 って
図6.1 (a) 荷 電 子 粒 子 の 軌 跡.矢
UA1に
印 はPTの
よ るW粒
子生 成3)
大 き な電 子.
(b) 各粒 子 の エ ネ ル ギー を η-φ平 面 に ヒ ス トグ ラ ム と して 表 した もの(レ ゴプ ロ ッ ト).η は ラ ピデ ィ テ ィで あ る.1個 の 電 子 だ け が き わ め て 大 き いPT を もつ こ とが わ か る.
(b) (a)
図6.2
UA2測
定 器 に よ るZ0→ee過
程3)
(a) φ-θ面 で の レ ゴ プ ロ ッ ト.2個 の 電 子 の,ビ ー ム軸 に 垂 直 な エ ネ ル ギーETが,180° 方 向(φ が 180°異 な る)方 向 に放 出 さ れ た の が わ か る.ビ ー ム 軸 に 平 行 な方 向の 角 度(θ)に は180° の差 は な い.
(b) 14例
のZ0崩
壊 事 象 に お け るe+e-の
不 変 質 量 分 布.MZ≒93.0GeVと
わ か る.
(a)
(b) 図6.3 qq'→W±
→e±+ν
反 応 の 同 定3)
(a) 見 え な い エ ネ ル ギー と電 子 の 方 向 との 相 関.電
子 と反 対 方 向 に 出 て い る.
(b) 見 え な い エ ネ ル ギー と電 子 エ ネ ル ギ ー の 相 関. (a),(b)よ りEν=-Ee,max(Eν+ET)∼MW≒80GeVが
予 言 した値(mW=37.5/sinθW)と
一致 した.GWS理
余 地 な く検 証 し た もの と い え る.こ れ 以 後GWS理
わか る.
論 の正 し い こ と を疑 い の 論 は(電 弱相 互 作 用 の)標
準 理 論 と呼 ば れ る よ うに な る.
6.2 崩 壊 幅 の 計 算
GWS標
準 理 論 に よれ ば ゲー ジ ボ ソ ン と フ ェ ル ミオ ン の 相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ
ア ンは
(6.3a) (6.3b) (6.4a) (6.4b) (6.4c) (6.4d)
(6.5a) (6.5b) (6.5c) で 与 え ら れ る.I3Lは I3eL=-1/2,I3eR=0で の 大 き さ,Vijは
あ る.Qは
s'=V2jdj…
レ プ ト ン の と き はVij=δij)で
り 重 い か ら,W粒
あ る.
子 が 実 際 に 崩 壊 して で き る粒 子 対
μ,μ),(ντ,τ),(u,d'),(c,s')に
限 ら れ る.こ
こ にd'=V1jdj,
で あ る.
ま ずWの は,W粒
えば
陽 子 電 荷 を単 位 と した フ ェ ル ミオ ン の電 荷
小 林-益 川 行 列(i,jが
ト ッ プ ク ォ ー ク はWよ は,(νe,e),(ν
左 巻 き 成 分 に の み 作 用 す る と い う 意 味 で あ る.例
レ プ ト ン 崩 壊 を 考 え よ う.W+(q)→l+(p1)ν(p2)反
応 の崩壊 行 列
子 の 偏 光 ベ ク トル を εμ と し て
(6.6a) (6.6b) で 与 えら れ る.こ れ か ら崩 壊 率 を計 算 す る と
(6.7) (6.8) と な る.た
だ し Σ は ス ピ ン 和 と偏 極 の 平 均 を 示 す.フ
ス ピ ン 和 は 付 録(B.19),(B.23)を
ェ ル ミオ ン 波 動 関 数 の
使 って
(6.9) と な る. 演 習6.1
W-→e-ν
の 場 合 は(6.9)の[…]の
中 の 第4項
の 符 号 が変 わ るのみ
で あ る こ と を 示 せ. 演 習6.2
レプ トンの 質 量 を 無 視 す る と,(6.9)はW+の
静 止 系 では
(6.10) と な る.こ
れ か らWの
偏 極 状 態 λ=±1,0に
対 し て,∼((1±cosθ)/2)2,
対 応 し て レプ ト ンの 角 分 布 は 偏 極 軸 に
sin2θ の よ う に な る こ と を 示 せ.
Wが偏 極 して い な い場 合 は,偏 極 につ い て の 平 均 を とる 必要 が あ る.
(6.11) こ れ は,指
標 μν に つ い て 対 称 で あ る の で(6.9)の
ら に レ プ ト ン の 質 量 が0の
近 似 で はqμKLμν=0で
3で あ る こ と が 示 せ る.行
第4項
は 寄 与 し な い.さ
あ る こ と を 使 う と,U=8q2/
列 要 素 が 角 度 依 存 性 を 含 ま な い の で,dLIPSは
ま ま 積 分 で き て,dLIPS=1/8π
と な る.結
その
局
(6.12) 同様 に ク ォー クへ 崩 壊 す る と きは,や
は り質 量 を無 視 す る近 似 で
(6.13) た だ し,Ncは 演 習6.3
カ ラ ー 因 子 で あ る. W→qiqjと
し,mi, mjを
無 視 しな い と きは
(6.14) (6.15) で あ る こ と を 示 せ(付
録(C.24)を
精 密 な値 を求 め る と きは,QCD補
使 え).
正 を考 慮 す る 必 要 が あ り,
(6.16) と す る.QCD補
正 は
使 って 計 算 したW崩
程 度 で あ る.こ れ ら の 式 を
壊 の 部 分 幅 と分 岐 比 を表6.1に
示 す.
表6.1
Wボ
ソ ン の 崩壊 幅 と分 岐 比 の 計 算 値(mW=79.9GeV)
6.3
Zのe+e-反 応 で のWお
W,Zの
ハ ドロン生成
応 に よ る 生 成 は 第7章 よ びZ0の
で 述 べ る こ と に し,こ
生 成 に つ い て 述 べ る.ま
ずZの
こ で は ハ ドロ ン 反
生 成 を扱 う こ と に す
る.
(6.17) の 遷 移 行 列 お よび 生 成 断 面 積 は,次 式 の よ うに表 せ る.
(6.18)
(6.19a) (6.19b)
こ こ で, 視 す れ ば λ=1で
は フ ラ ッ ク ス 因 子 で,パ あ る.sで
な くsと
記 し た の は,入
ー トン の 質 量 を 無
射 粒 子 が パ ー トン で あ る
こ とに 注 意 を喚 起 す るた め で あ る.偏 極 和 の 前 の1/3,1/4は
カ ラー お よ び ス ピ
ンの 平 均 を とる こ とか ら くる 因 子 で あ る.偏 極 和 の計 算 は 崩壊 幅 の計 算 の と き とま っ た く同 一 で あ るか ら容 易 に 実 行 で きて,
(6.20) Wの
ハ ドロ ン生 成
の 断 面 積 は,
(6.21) と置 き換 えれ ば よ い か ら
(6.22) pp反
応 で は,p,pの
運 動 量 をpA,pBと
を もつ パ ー トン が 反 応 し てV=W,Zを (6.22)の
断 面 積 で,δ(s-mZ2)を
き*4),(5.145)のQCDの
お き,そ
の 中 のxapA,xbpBの
生 成 す る.s=(pA+pB)2と δ(xaxbS-mV2)と
運動 量 し,(6.20),
書 き 直 し た も の をσ と お
式 を 入 れ て,
(6.23) (6.24a) (6.24b) こ こ に,Kは,ド QCDの
レ ル-ヤ ン 効 果 に 現 れ た の と 同 じK因
高 次 効 果 を含 め る と 現 れ る 因 子 で あ る.計
子(5.141)で
あ り,
算 に よ れ ば4,5)
(6.25) (6.26) *4) 実 際 のW
,Zに
は 幅 が あ る の で,
の よ う な 置 き 換 え を す る.
実 際 の 観 測 は,W+→e+ν よ びZ→e+e-(分
とW-→e-ν
岐 比3.34%)モ
こ と に よ っ て 行 っ た.計 し,QCD計
モ ー ドの 和(分
ー ドを 通 し,電
算 結 果 と実 験 値 を 図6.4お
算 は,グ
ル ー オ ン 放 出 を 含 むO(αs)ま
採 用 し て い る.QCDの
高 次 効 果 ま で 含 め たW,Zの
岐 比10.8%×2),お
子 お よび 陽 電 子 を観 察 す る よ び 表6.2に で の 近 似(後
示 す.た 述,§6.6)を
生 成断 面積計 算 はデー タ
を ほ ぼ 再 現 す る と い っ て よ い で あ ろ う.
図6.4
(a) σ(pp→W)BR(W→eν) (b) σ(pp→Z)BR(Z→ee)の
デ ー タ とQCD計
計 算 の パ ラ メ ター はMW=80,MZ=91.16GeV,パ (B).ダ
ッ シ ュ線 は ±10%の
理 論 的 不 定 性.主
表6.2
と し てO(αs2)QCD補
σ(pp→WX)BR(W→eν),σ(pp→ZX)BR(Z→e+e-)のUA26,8), CDF7)の
デ ー タ と 計 算 値9)
算 値6,7)
ー ト ン 分 布 関 数 はHMRS
数 の 不 定性 が 原 因.
だ
正 と分 布 関
6.4 ス ピ ン の 決 定
Wの
ス ピ ン を知 るに は,Wか
る.中 間 状 態 と してWを
ら崩 壊 して 出 る電 子 の 角 分 布 をみ る 必 要 が あ
経 過 す る とい う条 件 で,2体
反応
(6.27a) (6.27b) の 断 面 積 を計 算 す る.
(6.28) レ プ ト ンや ク ォ ー ク の 質 量 を 無 視 す る と,
(6.29a)
(6.29b) 付 録(B.23)を
使 えば
(6.30a)
(6.30b) で あ る か ら,
(6.31) を 得 る.た 式 はu→t,す は(6.31)を
だ し θ はd(す な わ ち
な わ ち 陽 子)とe-が
な す 角 で あ る.陽 と し て 得 ら れ る.全
電子 生成 の 断 面 積 σW→e
積 分 して
(6.32)
(a)
(b)
(c)
図6.5 p+p→W〓X→e〓ν (p方 向 をz軸 巻 きが,反
で 角 分 布 が(1±cosθ)2に
に と る).弱 相 互 作 用 の もつV-A結
なる ことの定性 的説 明 合 に よ り,粒 子 は 左
粒 子 は右 巻 き の み が 関 与 す る.
(a) d+u→W-,u+d→W+い ず れ もへリ シ テ ィ は 逆 方 向,ス は 陽 子 の進 む の と逆 方 向.Jz=-1の み.
ピンの 向 き
(b) e-ν がJz=-1を つ くる ため に は 電 子 が 前 方 に,(c) e+ν がJz=-1を つ くる ため に は 陽電 子 が 後 方 に放 出 さ れ れ ば 角 運 動 量 は 完 全 に保 存 す る.こ の 説 明 は νe→νe,νe→νeで
角 分 布 が 等 方 的,(1+cosθ)2に
じ理 由 で あ る こ と を示 す(注:V+Aで
な るの と同
も同 じ角 分 布 に な る こ と に注 意).
(b)
(a) 図6.6
(a)UA1デ
ー タ6).W→eレ
の 入 射 陽 子 に対 す る角 分 布.(1+cosθ)2に
作 用 で あ る こ とを示 す. (b)CDF10)
Z→ee分
布.曲
線 はsin2θw=0.231と
し た標 準 理 論 値.
合 い.V±A型
相互
(6.31)の
角 分 布(1±cosθ)2は,回
留 意 し よ う.こ き る.電
転 関 数
の 自乗 に 比例 す る こ と に
の 事 実 は 弱 い 相 互 作 用 の 特 徴 のV-A構
子 は
よ り,陽
ら れ る.V-Aに
よ っ て,d,uの
あ る か ら,W〓
は 陽 子pの
れ る(図6.5参
照).e-(e+)は
造 か ら容 易 に理 解 が で
電 子 は
よ りつ く
ヘ リ シ テ ィ は 負,u,dの
方 向 をz軸
ヘ リシ テ ィは 正 で
と し た と き にSz=-1を
負(正)の
も って つ く ら
ヘ リ シ テ ィ を も つ か らe-(e+)は
0°(180°)の 方 向 に 出 る と き 角 運 動 量 の 第3成
θ=
分 が 保 存 さ れ,θ=180°(0°)の
と き
に 角 運 動 量 が 保 存 し な い. qq→Z→eeの
散 乱 断 面 積 も同様 の 計 算 に よ り
(6.33a)
(6.33b) と求 め ら れ る.W,Z崩 す.デ
ー タ は,理
と,ま
たWはV-A,ZはV,Aの
壊 か ら の レ プ ト ン 角 分 布 デ ー タ との 比 較 を 図6.6に
論 予 想 値 と よ く あ っ て お り,W,Zの
ス ピ ン が1で
示
あ る こ
線 型和 の 相 互 作 用 をす る こ とな ど を示 し て
い る.
6.5
6.5.1
質
Wの
質 量 と幅 の 決 定
量
a. 崩 壊 レ プ ト ン の 横 運 動 量 分 布 式(6.31),(6.32)か
ら
(6.34) と書 け るか ら,電 子 の 横 運 動 量pT分
布は
(6.35) を使 えば
(6.36) pTは
θ〓 π-θ で 対 称 で あ る か らcosθ
の と こ ろ で 無 限 大 に な る .こ と 呼 ば れ,2体
の 無 限 大 は ジ ャ コ ビ ア ン 頂 上(Jacobian
決 定 に 役 に 立 つ.も
ト ン が 横 運 動 量 を も た な け れ ば,実 等 し い.実
の は や や む ず か し く な る.こ
に,Wが
上 で与
の と き は,pT分
横 運 動 量 を も つ と す る と,
布 か らWの
質 量 を正 確 に 決 め る
布 に左 右 さ れ に くい変 数 と し て
使 う.
(a) 図6.7
つ くるパ ー
際 は パ ー トン の 分 布 に つ い て 積 分 す る の で 特 異 性 は な く
布 が さ ら に ぼ け る の でpT分
次 の 横 質 量mTを
しWを
peak) 布 がmW/2
験 室 で 観 察 さ れ る 崩 壊 電 子 のpTは
な り 有 限 の 高 さ と な る(図6.7(b)).次 そ の 分 だ けpT分
式 は
の 反 応 に よ く現 れ る 特 徴 で あ る(図6.7(a)).pT分
の と こ ろ で 急 激 に 切 れ る た め,mWの
え たpTに
項 は 寄 与 し な い.上
(a) ud→W-→e-ν (b) ΓW,pWTの
(b) の ジ ャ コ ビ ア ン 頂上
図.
あ る お か げ で 滑 ら か な 曲 線 に な る.デ
ー タ はUA26,8).
b. 横 質 量 分 布 衝 突 型 加 速 器 実 験 で は ビー ム パ イ プ の 存在 の た め 前 方 に放 出 され た ジ ェ ッ ト を 完全 に 捕 まえ る の は む ず か し く,反 応2次 生 成 粒 子 の 縦 方 向 の 運 動 量 バ ラ ン ス は得 られ な い.し か し,横 方 向 の運 動 量 は効 率 よ く観 測 で き るの で,見 い運 動 量pT=-(見 W→eν
え る 運 動 量 ベ ク トル の 総 和)は
反 応 の 場 合 は,ν の横 運 動 量 と見 なせ る.す
えな
貴 重 な 情 報 で あ り,特 に な わ ち,pT=pνTで
あ
る.そ
こ で 横 質 量mTを
(6.37) で 定 義 す る.た
だ し,Δ φ は ビー ム 軸 に 垂 直 な 平 面 に お け るpνTとpeTと
す 角 で あ る.正
確 な不変質量
の な
(6.38) と 比 較 す れ ばmTは0とmWの は,mTは2│peT│に
間 に あ る こ と が 示 せ る.特
等 し い の で,mT分
の に 等 し く,pT分
にpWT=0の
布 は,(6.36)のpT→mT/2と
布 と 同 じ よ う に ジ ャ コ ビ ア ン 頂 上 が 現 れ る.こ
と き した も
の とき
(6.39) と 表 さ れ る.Wが い か ら,mT分 ら れ る(た
横 運 動 量 も っ て い る 場 合 で もMax(mT)=mW/2は 布 の 終 端 点 付 近 の 分 布 か ら,mWがpT分
だ し,崩
壊 幅 ΓWに
よ る 広 が り効 果 は 考 慮 に い れ る 必 要 が あ る).
デ ー タ の 精 度 が 十 分 上 が れ ば,ΓWも UA2グ
変わ らな
布 よ りは 正 確 に 求 め
ル ー プ の デ ー タ8)とmW,ΓWを
決 め る こ と が で き る で あ ろ う.図6.8に 適 切 に と っ た と き の 理 論 値 を 示 す.実
験 的 に決 め られ た値 は
分布 か ら
(6.40)
分布 か ら 分布 か ら mT分
布 か ら得 られ る 質 量 値 が 最 も小 さい 統 計 誤 差 と系 統 誤 差 を もつ こ とが わ
図6.8
W→eν
のmT分
布(デ
ー タ,図6.7に
同 じ)
か る.ま
とめ て sys
scat
こ こで(6.41)の
ス ケー ル誤 差 とは電 子 の 運 動 量 と見 え な い 運 動 量 の 絶 対 値 を
決 め る た め,同 るLEPのZの
(6.41)
scale
じ測 定 器 でZの
質 量 を測 り,そ れ を一 番 信 頼 で き る と思 わ れ
質 量 値 と比較 し て補 正 す る こ とに よ る誤 差 で あ る.こ の 方 法 に
よ り決 め たW質
量 の 最 近 の世 界 値 は11)
(6.42) と な る.
6.5.2 ΓW mT分
布 に お い て,mWとΓWを
こ と が で き る.CDFグ
パ ラ メ タ ー とす る こ と に よ り,ΓWを
ル ー プ はmT分
決め る
布 を だ した 同 じデ ー タか ら
stat
(6.43)
sys
を得 て い る12).し か し 多少 の理 論 情 報 を 使 え ば,は
るか に正 確 にΓWを 決 め る
こ とが で き る.こ れ は 観 測 量 の 絶 対 値 を正 確 に決 め る こ とは む ず か しい が,比 は 比 較 的容 易 に 決 めら れ る こ と を利 用 す る.RをW崩
壊 とZ崩
壊 か ら得 ら
れ る電 子 数 の 比 とす る と
の崩壊数/ の崩壊数
(6.44)
レプ トン崩 壊幅 の 比 の 理 論 計 算 は 信 頼 して よ い で あ ろ う.W,Z生 理 論 計 算 に は,パ ー トン分 布 そ の 他 の 不 定 性 は あ る もの の,比
成 断面積 の に 関 して はか な
り誤 差 の 評 価 が 可 能 で あ る.例 え ば,理 論 評 価 と して は13),
(6.45) を 使 い,Rの
実 験 値14) stat
を 入 れ てΓW/ΓZを
計 算 し た 上 で,ΓZと
sys
し て 最 近 のLEPデ
(6.46)
ー タ の15)
(6.47a) (6.47b) を代 入 す る と
(6.48) が 得 ら れ る11).こ 合 っ て い る.実
れ ら は い ず れ も標 準 理 論 に よ る 計 算(表6.1)と
験 的 に,よ
り正 確 な ΓWの 値 は,LEP200*5)に
成 か ら 決 め ら れ る で あ ろ う が,そ
非常 に よ く お い てW対
生
れ まで は こ の 方 法 が 最 も よい 精 度 を与 え る と
考 え ら れ る.
6.6
6.6.1 QCD効
Wの
横運動量分布
グル ー オ ン放 出効 果 果 を 入 れ てQ2発
展 を と り 入 れ た パ ー ト ン 分 布 で も,ク
行 に 放 出 さ れ た グ ル ー オ ン の 効 果 し か 入 っ て い な い か ら,最 +q→W)を
考 え る 限 り,パ
を も た な い.す
な わ ち 理 論 的 に は,ハ
も っ て い る 運 動 量(primordial
momentum∼350MeV)*6)は,こ
布 を 導 入 す る た め にQCDの
図6.9
(a),(b)
ー ト ン がQCD過
qq→Wg
(c),(d)
程 に 関 係 な く本 来 こで は無視
高 次 効 果 を 考 え る.ク
ォ ー ク消 滅 過
(c)
(d)
(b)
ハ ドロ ン に よ るW生 成 のQCDのO(αs)効 ン効 果 お よび そ の 交 叉 と見 なせ る.
横 運 動 量pT
ー ドグ ル ー オ ン 放 出 を 入 れ て は じ め て 横
だ し,パ
(a)
低 次 の 効 果(q
ー トン 衝 突 反 応 で 生 成 さ れ たWは
運 動 量 の 導 入 が 可 能 と な る.た
す る.pT分
ォー クに平
果 は,仮
想W粒
子 と グル ー オ ン に よ る コ ン プ ト
qg→Wq
*5) LEPの
エ ネ ル ギー を , に増 強す る計 画 *6) 深 非 弾 性 散 乱 デ ー タ よ り ク ォ ー ク の も つ 平 均 運 動 量 は 核 子 の ∼1/3で
あ る か ら,ナ
イー
ヴ に 考 え る と,
で あ る.生 成 反応 で は2個 の クォー クが 関与 す る の で, の値 は,高 エ ネ ル ギーpp反 応 で生 成 され る π が平 均 横 運 動 量 ∼350MeVを 実 と も整 合 す る.
とな る.こ もつ 実 験 事
程 と グ ル ー オ ン コ ン プ ト ン 散 乱(図6.9)に
よ るW生
散 乱 で 考 慮 し た 高 次 過 程 の 交 叉(γ*〓W)か
成 断 面 積 は,深
非 弾性
ら 得 ら れ る か ら(図5.13参
照),
断 面 積 は 次 の よ う に 書 け る5).
(6.49) (6.50) 後 で 使 う の で,S,t,uをqq→gW重
心 系 の 変 数 で書 き直 して お くと
(6.51) で あ る.た 量,散
だ し,│p│,│k│,cosθ
は,qq→gWの
乱 角 で あ る.(6.49),(6.50)の
特 異 項 を 与 え る の で,O(αs)の 外 発 散 の 一 例 で あ り,高
重心 系 で の散 乱 前 後 の運 動
ど ち ら もpT→0でdσ
み を と る 限 りpT→0で
∼pT-2の
発 散 す る.こ
よ うな れ は,赤
次 効 果 を正 し く 計 算 す れ ば 消 え る は ず の も の で あ る.
こ の こ と を 念 頭 に お い て,第5章
で 導 入 し た プ ラ ス 関 数 を 用 い,pT→0で
集
束 す る よ う な 形 に 書 き 直 す こ とが で き下 記 の よ う な 形 を と る16).
(6.52) こ の 表 式 に はO(αs2)ま
で の 計 算 結 果 を も 含 め て あ る.こ
似 の 全 断 面 積 で あ り,Aは B,Cは,αsのpT依
こ で,σ0は
ボ ル ン近
後 で 全 断 面 積 が デ ー タ を 再 現 す る よ う に 決 め る.
存 性 を 無 視 す る 限 りO(αs2)ま
でpTに
よらな い定数 で あ
る.Eの
寄 与 は 数 値 的 に は 重 要 で な い.δ(pT2)は
はpT2=0で
正 則 な 関 数 で あ る.B,C項
の+関
限 に な る よ う に 正 則 化 し た 関 数 で,g(x)を
デ ル タ 関 数 で あ り,Y関
数 は,pT2に
数
関 しての積分 が有
性 質 の よ い任 意 の 関 数 と して
(6.53) で 与 え ら れ る.(6.52)を
積 分 す れ ば,
(6.54) と な る の で,デ
ー タ と 比 較 し てAを
え る と い う 図 式 はQCDの 対 数 第1近
ルー オ ン放 出 が 横 運 動 量 を 与
一 般 的 特 徴 で あ る.(6.52)の
似 で 求 め たe+e-→qq+グ
ル ー オ ン のpT分
留 意 し よ う(第5章QCD(5.75)参 pp反
決 め る.グ
表 式 の 中 のB項
布 と同 じで あ る こ とに
照).
応 に よ る 断 面 積 は,上
記 の 断 面 積 にQ2=mW2ま
で発 展 さ せ た パ ー ト
ン 分 布 を 掛 け て 積 分 す れ ば 得 ら れ る.図6.10(a)にCDFデ のO(αs2)計
は,
算18)と の 比 較 を 示 す.pT2の
ー タ17)とQCD
大 き い と こ ろ で の デ ー タ の再 現 性 は
よ い.
(b) (a) 図6.10
W生
成 のdN/dpT2分
布
(a) で のCDFデ ー タ17),(b) ,pT≒0付 近 のUA2デ 2近 似 計 算 と比 較 す る.(b)図 の 計 算 は,ソ フ トグ ルー オ ン和 を考 慮 した もの.
ー タ6)をQCD第
(a) 図6.11
(b)
dσ/dpT2(pp→W±X)生
成 断 面 積 の ス ケ ー ル(μ=M)依
図(a)はpT=20GeV,図(b)はpT=100GeVで (MeV単
位)を
6.6.2 pTの
の 値 を 示 す.3種
グル ー オ ン 多 重 発 生 効 果
大 き い と こ ろ(pTがmWに
pT≪mWの
比 べ て そ れ ほ ど小 さ く な い と き)は,pT分 摂 動 計 算 で よ く再 現 さ れ る.し
と き は 再 現 性 が よ く な い.こ
性 を 見 て も わ か る.図6.11に は,ス
の こ と は,QCD計
の 原 因 は,摂
と き は,こ
算 の スケール依 存
動 計算 の近似 が悪
動 計 算 で 切 り捨 て た 項 はpT2〓mW2
の と き の み 無 視 で き る と い う事 情 に よ る.pTが ン の 多 重 発 生
小 さ く な る と ソ フ トグ ル ー オ
が 無 視 で き な い.幸
い な こ と に,pT2→0の
れ ら の 項 の 和 を と る こ と が で き て 有 限 な 項 を 与 え る.そ 対 応 す るpT分
か し,
断 面 積 の ス ケ ー ル 依 存 性 を 示 す が18),pT〓20
ケ ー ル 依 存 性 に よ る 不 定 性 が 大 き く,QCD摂
く な る こ と を 示 し て い る.こ
(6.52)に
値
変 え た と きの 変 化 であ る.
布 お よ び 全 断 面 積 はO(αs)とO(αs2)の
GeVで
存 性18)
類 の 曲 線 は そ れ ぞ れΛMSの
の 場 合,
布 は 次 の よ う に 変 更 さ れ る16).
(6.55a)
(6.55b) と な る.J0は0次 つpT2の
の べ ッ セ ル 関 数 で あ る.上
式 は,pT2=0で
大 き い と こ ろ で は 摂 動 計 算 の 式(6.52)を
つ.(6.55)をpT2に
正 則 で あ り,か
再 現 す る とい う特 徴 を も
つ い て 積 分 す る と δ2(b)が で て く る の で,S(0)=0を
考慮
す れ ば,
(6.56) と な っ て,(6.54)を
再 現 す る.図6.10(b)に,pTの
タ6)と の 比 較 を 示 す.デ
6.6.3 の pT2の
小 さ い と こ ろ で の デー
ー タ を よ く再 現 し て い る こ と が わ か る.
振 る舞 い
平 均 値は
式(6.55)か
ら 求 め る こ と が で き19),
(6.57) と い う 形 を も つ.こ
の 関 係 式 は τを 固 定 し た と き
の こ と は 定 性 的 に は,摂 で き る こ と で あ る.な か つpT2max≒Sで て い る の で,摂
を 意 味 す る.こ
動 計 算 式 の 振 る 舞 い(dσ/dpT2∼pT-2)か ぜ な ら,は,pT2に
あ る か ら.一
方,pT2の
ら容 易 に 理 解
断 面 積 を 掛 け 積 分 し て 得 ら れ, 小 さ い と こ ろ は べ き級 数 の 和 を と っ
動 論 か ら予 想 さ れ る 線 形 関 係 か らず れ て くる こ とが 期 待 さ れ
る. こ こ でW生
成 過 程 は,ド
レ ル-ヤ ン 過 程 で 仮 想 フ ォ ト ン をWで
も の と 同 等 で あ る こ と に 着 目 す る.ド 対 の 不 変 質 量mがmWに
レ ル-ヤ ン 過 程 とW放
置 き代 わ る ほ か は,ク
置 き換 え た
出 過 程 の 差 は,μ
ォ ー ク との結 合 が
(6.58) に 変 わ る の み で あ る.γ μγ5の 寄 与 は,Wの 同 じ で,単 O(αs)を
に 断 面 積 を2倍
偏 極 を 見 な い と き はγμ の 寄 与 と
に す る の み で あ る の で,W放
問 題 に す る 限 り,ド
出 のQCD効
レ ル-ヤ ン 過 程 と定 数 し か 違 わ ず,最
積 で 規 格 化 す れ ば 同 一 で あ る.し
た が っ てWのpT分
ヤ ン 過 程 と理 論 上 は ま っ た く 同 一 で あ る の で,ド
果 は
低 次 の断 面
布 やは,ド
レ ル-
レ ル-ヤ ン 過 程 も 理 論 の テ ス
トに 使 え る. 図6.12に,ド
レ ル-ヤ ン 過 程 の デ ー タ も 含 め たの
の 小 さ い と こ ろ ま で,式(6.57)が
デ ー タ を 示 す6).pT2
デ ー タ を よ く再 現 し て い る こ と が わ か る.
の 関 係 は,高
エ ネ ル ギ ー 領 域 で は か な り よ く成 立 し て い る.一
の 極 限 で は,pTはQCD効 て い る横 運 動 量(primordial
方,
果 に 関 係 な くパ ー トン が 核 子 内 で 本 来 も っ momentum∼350MeV)に
近 づ く は ず で あ る が,
図 は そ の 予 想 を 比 較 的 よ く再 現 し て い る と い え る.
図6.12
ハ
ド ロ ン に よ る レ プ ト ン 対 生 成 の
ISR,FERMILABは,ド 付 近 はW,Z生
6.7
に 基 づ く の で,W,Zの
ベ ル 群 の 特 徴 と し て の 自 己 相 互 作 用 を も つ .電 e+e-→W+W-に
は,図6.13に
典 的 な 図6.13(a)の 比 例 し,sの
用 で は,Z0W+W-お
対 の.
成 か ら のeν,ee対.
非 ア ー ベ ル ゲ ー ジ 結 合(e+e-→W+W-反
標 準 理 論 はSU(2)×U(1)群
ギーsに
曲 線6)
レ ル-ヤ ン 過 程 に よ り 生 成 さ れ たμμ
応)
ゲー ジ ボ ソンは非 アー
子 陽 電 子 反 応 に よ るW対
示 す よ う に 最 低 次 で は3種
グ ラ フ の み で はe-e+→W+W-の
の 過 程 が 効 く.古 断 面 積 は全 エ ネ ル
大 き い と こ ろ で ユ ニ タ リ テ ィ を 超 え る が,ゲ よ びγW+W-結
ー ジ相 互 作
合 が ちょ うどそれ を打 ち消 す よ うに作
用 し て 高 エ ネ ル ギ ー で の 振 る 舞 い を コ ン ト ロ ー ル す る.し で 実 験 と理 論 を 比 較 す る こ と は3-ゲ
生 成
た が っ て,こ
ー ジ ボ ソ ン 結 合(Z-W-W)の
の反応
存 在 お よび
大 き さ を決 め る う え で 良 好 の テ ス ト と な る. ゲ ー ジ場 の 自 己 相 互 作 用 ラ グ ラ ン ジ ア ン は(2.100)で
与 え ら れ て い る.
(a)CC 図6.13 (a) CCは (b) EMは (c) NCは
(b)EM e-e+→W-W+生
(c)NC
成 反 応 に 寄 与 す る最 低 次 の過 程
荷 電 カ レ ン トに よ るニ ュー ト リ ノ中 間状 態 電磁 相 互 作 用 に よ る フ ォ トン 中間 状 態 中性 カ レ ン トに よ るZ0中
間状態
お の お の の過 程 はσ∼sの よ うに 増 加 す る が,干 エ ネ ル ギー で の 振 る舞 い が よ くな る.
V=Zま
渉 項 が 打 ち 消 す よ うに 働 き,高
図6.14 非 ア ーベ ル ゲー ジ理 論 の3-ベ ク トル結 合 た は γ.運 動 量 は す べ て 内向 きに と る.k+q1+q2=0
(6.59)
し た が っ て,W3=cosθWZ+sinθWAを
考 慮 す れ ば,WWV(V=Z,γ)の
結
合 ヴ ァー テ ッ ク ス は
(6.60) と な る.こ
こ で,gμν は ロー レ ン ツ 変 換 の 計 量 テ ン ソ ル で あ り,k,q1,q2の
動 学 変 数 は 図6.14に
示 す よ う に 定 義 す る.運
動 量保 存 に よ り
運
が 成 立 す る.こ 定 義 さ れ るWの
れ か ら σ(e+e-→W+W-)を
計 算 す る こ と が で き る .次
式 で
重 心 系 に お け る 速 度 β,λ,xW
(6.61) を 使 う と20)
(6.62) と な る.し 第1項
き い 値 付 近 で は β≪1で
あ り,こ
の と き は 上 の 断 面 積 で{‥}の
中の
が 優 勢 と な り,
(6.63) (6.62)で
与 え ら れ る 断 面 積 の 極 大 値 は17pbで
も 超 え る と(β ∼0.16),σ ∼7pbと わ か る.こ
き い 値 を1GeV
な る よ うに 断 面 積 は 急 速 に 立 ち上 が る こ とが
の よ う な 場 合 は 幅ΓWに
s=(2mW)2よ
あ る の で,し
よ る 効 果 が 無 視 で き な い が,ΓWの
り低 い エ ネ ル ギ ー でWW生
ず か に 滑 ら か に な る こ と く ら い で あ り,大
影 響 は
成 が 始 ま る こ と,断
面積 の曲線が わ
勢 に 影 響 は な い.も
ち ろ ん,mWを
決 め る と き は こ の わ ず か な 差 を 細 心 に 考 慮 し な け れ ば な ら な い. s→∞
の 極 限 で は,や
は り最 初 の 第1項
が効 い て
(6.64) とな る.こ
れ は ν交 換 項 に起 因 す る 項 で あ る.も
交 換 過 程 の み で あ れ ば,断
し,3-ゲ ー ジ結 合 が な く ν
面積 は
(6.65) で 増 加 し,エ
ネ ル ギ ー の 高 い と こ ろ で ユ ニ タ リ テ ィ極 限 を 破 る.3-ゲ
が あ る と き と な い と き の 比 較 を 図6.15に
示 す21,22).断 面 積 は,ビ
ギ ー が し き い 値 を 超 え た と こ ろ で 急 速 に 立 ち 上 が り,最 て か ら後 は ゆ っ く り と 対 数 的 に 減 少 す る.
ー ジ結 合 ー ムエ ネル
高 値 σ∼17pbを
とっ
図6.15 e+e-→W+W-全
断 面 積 の エ ネ ル ギ ー 依 存 性21,22)
標 準 理 論(実 線),ZWW交 換 項 を 入 れ な い場 合(ダ 換 の み の 場 合(点 線)と デ ー タの 比 較.
Wの
質 量 値(mW)の
決 定 精 度 に つ い て は,上
振 る 舞 い の ほ か,W→eν mW(W→2ジ 500pb-1で
ッ シ ュ線),ニ
ュー ト リノ 交
記全 断面積 の しきい値付 近 の
の エ ネ ル ギ ー ス ペ ク ト ル の 終 端 部 の 振 る 舞 い,
ェ ッ ト),mW(W→eν)な 誤 差30∼40MeVに
ど を 総 合 し て 積 分 ル ミ ノ シ テ ィ
で き る と考え ら れ て い る23).
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PDG(Particle
Data
Group):Phys.Rev.,D54(1996)207,EPJ,C3(1998)
12) CDF;Phys.Rev.Lett.,74(1995)342 13)
A.D.Martin,W.J.Stirling
14)
CDF;Phys.Rev.Lett.,73(1994)220,phys.Rev.,D52(1995)2624
15)
The
16)
G.Altarelli,R.K.Ellis,M.Greco
LEP
and
R.G.Roberts:Phys.Lett.,B228(1989)149
Collaboration;Phys.Lett.,B276(1992)247 and
G.Martinelli:Nucl.Phys.,B246(1984)12;Z.
Phys.,C27(1985)617 P.B.Arnold 17)
CDF;F.Abe
18)
P.Arnold
and et and
R.P.Kaufman:Nucl.Phys.,B349(1991)381 al.:Phys.Rev.Lett.,66(1991)2951;67(1991)2937
H.Reno:Nucl.Phys.,B319(1989)737;B330(1990)284
R.Gonsalves,J.Pawowski 19)
and
G.Altarelli,R.K.Ellis
and
C.-F.Wai:Phys.Rev.,D40(1989)2245
G.Martinelli:Phys.Lett.,B151(1985)457;Z.Phys.,C27
(1985)617 G.Altarelli:Phys.Rep.,81(1980)1 20) O.P.Sushkov W.Alles
et
al.:Sov.J.Nucl.Phys.,20(1975)537
et al.:Nucl.Phys.,B119(1977)125
21)
A.Denner:Fortschritte
22)
M.W.Grunwald:Talk
der
Physik,41(1993)307
at Int.Conf.on
High
Energy
Physics
at
Vanconver,July 23-
29,1998 23)
G.Altarelli of
et al.:Interim
LEP2,CERN-TH951-151
report
on
the
Physics
Motivations
for
Energy
Up
grade
7 Zボ
前 章 に 引 き 続 い て,も る.W粒
子 の 場 合,生
ソ
ン
う一 つ の ゲー ジ ボ ソ ン で あ るZ0粒
子 の性 質 を調べ
成 が ハ ドロ ン に よ る こ と,調 査 対 象 の レ プ ト ン 崩 壊
モ ー ドが ニ ュ ー ト リノ を含 ん で い る こ とか ら,実 験 的 測 定 精 度 に 限 度 が あ り, そ の 性 質 と標 準 理 論 との 比較 は,あ れ に 反 して,Zはe+e-反
る程 度 定 性 的 に な ら ざ る を え な か っ た.こ
応 で 生 成 で き,崩 壊 モー ドに お い て 関 与 す るす べ て
の 粒 子 の 結合 定 数 の 精 度 よい 測 定 が 可 能 で あ る.理 論 との比 較 も最 低 次 の ボ ル ン近 似 か ら一 歩 踏 み込 ん で,高 次 効 果 す な わ ち放 射 補 正 を含 め た理 論 計 算 との 比 較 が で き る.し た が っ て,Z共 可 能 と し,さ
鳴 の 諸 性 質 測 定 は標 準 理 論 の 精 密 テ ス トを
らに一 歩踏 み 込 ん で 標 準 理 論 か らの ズ レ を検 出 す る こ とに よ り新
理 論 展 開 の 糸 口 をつ か む 可 能 性 を秘 め る.そ
こ で この 章 で は,Z0の
崩 壊幅 な
ど を ま ず ボ ル ン近 似 で 算 出 し,次 い で放 射 補 正 の 効 果 を含 め た 改 良 ボ ル ン近 似 の 式 を 与 え,実 験 デ ー タ と比 較 す る.こ の 章 の 後 半 に お い て は 放 射 補 正 の議 論 をす る.放 射 補 正 効 果 に は い ろ い ろ あ るが,こ
こ で は 特 に効 果 の 大 きい ゲ ー ジ
ボ ソ ン の 自 己 エ ネ ル ギー 補 正 に 重 点 を お い て 議 論 を す る.数 値 的 に は この効 果 の み で ほ とん ど決 着 が つ く.ま た 未 発 見 の ヒ ッ グ ス粒 子 や 新 理 論 の影 響 は 主 と して この ゲ ー ジボ ソ ンの ルー プ 補 正 を通 じて 現 れ る の で,直 接 生 成 が 可 能 に な る ま で は ヒ ッ グス粒 子 の 質 量 を予 測 した り,新 理 論 の 可 否 を検 証 す る有 効 な 手 段 に も な る.
7.1
7.1.1 a.
ボ 崩
壊
ル
ン 近
Zの
生成断面積
似
幅
中 性 カ レ ン ト の ラ グ ラ ン ジ ア ン は(6.3)で f(p1)f(p2)と
す れ ば,Wの
与 え ら れ て い る.Z(q,ε)→
崩 壊 計 算((6.6)∼(6.15))ま
で の 議 論 と同 じ よ う
に して
(7.1)
ス ピン
(7.2a) (7.2b) で あ るか ら,偏 極 の 平 均 とス ピ ン和 を計 算 す れ ば た だ ち に
(7.3a) (レ プ ト ン)
(7.3b)
(ク ォ ー ク) が 得 ら れ る.た
だ し,GN=ρGF,x=m2/mZ2で
あ り,mは
フ ェ ル ミオ ン の 質
量 で あ る.δQED,δQCDは,
(7.3c) (7.3d) で 与 え られ るQEDお
よ びQCD補
正 で あ る.ク ォー クや レ プ トン の 質 量 を 無
視す れば
(7.4a) が 得 ら れ る.た
だ し,
(7.4b) は,1種
類 の ニ ュ ー ト リ ノ 対 へ の 崩 壊 幅 で あ る.
表7.1に →eeへ
式(7.3a)を
使 っ て 計 算 し た 崩 壊 の 分 岐 比 を 示 す.こ
の 崩 壊 分 岐 比BR(Z→ee)は3
.3%で
モ ー ドへ の 分 岐 比 はBR
Z→ffの
測 に 掛 か ら な いν ν
で あ る こ と が わ か る.LEPに
お い て は,mZ,ΓZ,BR(ff)な 表7.1
あ り,観
の 表 か らZ
ど が 精 密 に 測 ら れ て い る(後
崩 壊 幅 と 分 岐 比(mZ=91.19GeV,QCD補
述 表7.2).
正(1+αs(mZ)/π)を
含 む)
b. 生 成 断 面 積 と非 対 称 の 表 式 e+e-反
応 は,ハ
ドロ ン 反 応 と 違 っ て 大 き なQCDバ
ッ ク グ ラ ウ ン ドが な く,
理 論 計 算 値 と実 験 と の 精 密 比 較 が で き る 強 み が あ る.LEPの で は,フ
ォ ト ン 交 換 過 程 に 比 べ,Z交
断 面 積 の 導 き 方 は,す す る と,(4.52),(4.56)か
で に 第4章
エ ネ ル ギー 領 域
換 の 寄 与 が 圧 倒 的 に 優 勢 で あ る.生
で 議 論 し た.終
成
状 態 の フ ェ ル ミオ ン種 を 特 定
ら
(7.5) (7.6a) (7.6b)
(7.6c)
(7.6d) を 得 る.た
だ し,gV=υe,gA=aeで
項 を 表 し,s=mZ2で 使 っ てs≒mZ2で
あ る.dσγZは
γ 交 換 項 とZ交
は 消 え る.dσγ の 寄 与 はdσZの1%以 のZに
換 項 の干 渉
下 で あ る.(7.4)を
よ る 断 面 積 σZを 部 分 幅 で 書 き 直 す と,
(7.7a) (7.7b) と い う よ く知 ら れ た 共 鳴 散 乱 の 式 と な る.s=mZ2で 面 積σQED=4π
α2/3sとZ共
は,μ
対 生 成 のQED断
鳴 断面 積 の 比 は
(7.8) こ れ は 非 常 に 大 き い 数 で あ る.図7.11)に を示 す.実
験 で 観 測 さ れ る σ(ee→
く な る の で,純
粋 なQED過
μμ)はZ交
程 のσ(ee→
験 デ ー タ は 予 想 通 りの 振 る舞 い を 示 し,巨
図7.1
e+e-→
ハ
ド ロ ン,μ+μ-の
和 で 示 さ れ る.ee→
σ(ee→
換 項 を 含 みZ共
μμ)
鳴 付 近 で大 き
γγ)を 比 較 の た め に 載 せ て あ る.実 大 なZ共
断 面 積 はQEDの
γγ はQEDの
ハ ド ロ ン),σ(ee→
み でZ共
鳴 の 山 の 存 在 を確 認 し た.
寄 与(∝1/s)とZ共 鳴 は な い1,9)
鳴 の
7.1.2 フォ トン放 射 の 影 響 LEPで
の 精 密 実 験 デ ー タ を 解 析 す る た め に は,(7.5)の
ボ ル ン近 似 で は 不
十 分 で あ り,放 射 補 正 を考 慮 しな け れ ば な らな い.放 射 補 正 に は (1) QCD補
正(主
と して終 状 態 か らの グ ルー オ ン放 出)
(2) QED効
果(主
と して始 状 態 か らの フ ォ トン放 出)
(3) 電 弱 相 互 作 用 に よ る高 次補 正 の3種 類 が あ る. グ ル ー オ ン 放 射 の 補 正 は す で にNcfの
中 に 考 慮 した(7.3).QED効
果 は他
の 効 果 と は 分 離 で き,独 立 に 計 算 可 能 で あ る2,3).式 の 形 は 簡 単 で は な い が, 厳 密 な理 論 的 な 取扱 いが よ く理 解 で き て い るの で,実 験 デ ー タ の結 果 は,純 粋 なQEDに
よ る補 正 効 果 は 切 り離 し た う え で 提 供 さ れ る こ とが 多 い.QED効
果 の 中 で は,始
状 態 か ら の フ ォ トン放 出 が 特 に 大 き い.QED効
果はエネル
ギ ー に依 存 す る補 正 と して次 の よ う な形 に 表 され る*1).
(7.9) kmaxは,実
験 条 件 に よ り決 ま る 放 出 フ ォ トン エ ネ ル ギー の 上 限 値 で あ る.定
性 的 な議 論 をす れ ば,フ
ォ トン放 出 効 果 は,
(1) 共 鳴 の 山 頂 を低 くす る (2) 山頂 の位 置 をずら す (3) 高 エ ネ ル ギー 側 に裾 野 をつ くる な ど と して 現 れ る(図7.2参
照).O(α)の
式 の 主 要 な項 の み を考 慮 す る と,断
面 積 の頂 上 値 は 元 の値 の
(7.10a) 倍 と な る こ と が 示 せ る.電 正 値 は ∼0.6に
子 の 質 量 値 が 小 さ い の でln(mZ2/me2)が
も な り非 常 に 大 き い.始
態 か ら の フ ォ トン 放 出 は0.17%の
大 き く,補
状 態 の フ ォ トン 放 出 に 比 べ る と,終
補 正 を 与 え る に す ぎ な い.し
か し,O(α)補
正 の み を 考 慮 し た 上 式 は 補 正 の しす ぎ で あ る こ と が 知 ら れ て い て,実 *1) 終 状 態 の 放 射 補 正 は が っ て,(7.9)に 注 意 す る.
,理
解 し や す い よ う に 式(7.3)に
際 上 は,
あ ら わ に 取 り 込 ん で あ る.し
よ っ て フ ォ トン 放 射 の 効 果 を 計 算 す る と き は,二
状
た
重 に な ら ない よ う に
(7.10a)を
指 数 の 肩 に 入 れ る こ と に よ り,よ
と議 論 さ れ て い る3,4).す な わ ち(7.10a)の
り 高 次 の 効 果 を 取 り入 れ ら れ る 代 わ りに
(7.10b) を 使 う.よ
り精 密 な 計 算 式 に よ れ ば,減
の 位 置 変 動
は,ほ
衰 率 は74%に
留 ま る(図7.2).山
頂
ぼ
(7.10c) で 与 え られ る.共 鳴 幅 の 変 化 は 小 さ い.
図7.2 QED高 次 補 正 に よ る断 面積(ee→ μμ)の 変 化2) 一 番 上 の ダ ッ シ ュ 線 が 補 正 前,下 の ダ ッ シ ュ線 がO(α)の 補 正 後,実 線 がO(α2) の 補 正 後 の 変 化.
7.1.3 放 射 補 正 に よ る改 良 式 フ ォ トン放 出 に よ るQED補 まれ て い な い.こ
正 は大 きい が,興
味 の あ る新 しい物 理 内容 は 含
れ に対 し て,電 弱 相 互 作 用 に よ る 高 次 補 正*2)は 標 準 理 論 の
検 証 の 一 部 と して考 慮 さ れ るべ き もの で あ る.電 弱 相 互 作 用 補 正 効 果 は,次 三 つ に 分 類 され る. (1) ゲ ー ジ ボ ソ ン の伝 播 関 数 補 正(普 遍 的補 正) *2) フ ォ ト ン とZやWが
混 在 す る効 果 は
,電
弱 相 互 作 用 効 果 と し て 扱 う.
の
(2) ヴ ァ ー テ ッ ク ス 補 正(香 (3) 箱 型 図 の 寄 与(過
り に 依 存 す る 補 正)
程 ご と に 異 な る 補 正)
a. 実 効 パ ラ メ タ ー の 導 入 伝 播 関 数 の 補 正 は,電 こ の 効 果 は,か
荷 や 中 性 カ レ ン ト結 合 定 数 な ど を 変 え る 効 果 を も つ.
な り 大 き く ∼6%く
合 定 数(running
coupling
ら い あ る が,エ
constant)α(μ)を
ネ ル ギー に依 存 す る実 効 結
導 入 し て,ボ
ル ン近 似 の 結 合 定数
の 中 に 繰 り込 む こ と が で き る(後
述 §7.3) .ス
反 応 の 場 合 は μ2=sに
鳴 付 近 の デ ー タ を 扱 う と き は μ=mZと
と り,Z共
ケ ー ル パ ラ メ タ ー μ は,e+eす
る.
(7.11a) (7.11b) ゲ ー ジ ボ ソ ン の 自 己 エ ネ ル ギ ー 効 果 で あ る フ ェ ル ミ オ ン ル ー プ は,Z,γ ち ら に も 結 合 で き る から,高 こ と に な る.γ-Z混
次 補 正 を 取 り入 れ る とγ-Z混
の ど
合効 果 が出現す る
合 効 果 は 中 性 カ レ ン トの 中 の 電 磁 カ レ ン トの 部 分 に 繰 り
入 れ る こ とが 可 能 で あ り,中
性 カ レ ン トの 中 に 現 れ る ワ イ ン バ ー グ 角 を,実
効
ワ イ ン バ ー グ 角sin2θW
(7.12) に 置 き 換 え る こ と と 同 等 で あ る こ と が 示 せ る(後 バ ー グ角 も ま た ス ケ ー ル μ の 関 数 で あ る が,実 ヴ ァ ー テ ッ ク ス に よ る 補 正 は,終 を 与 え る の で,そ
用 上 は μ=mZで
状 態 の フ ェ ル ミ オ ンfに
の 修 正 後 の 量 をsin2θf,ま
る 寄 与 を 与 え る の で,最
述,§7.3).こ
の実効 ワイン 定 義 す る. よ り異 な る 寄 与
た箱 型 図 の 寄 与 は 反 応 ご とに 異 な
終 的 な 結 果 をsin2θeff,fと 書 く と
(7.13a) *3) PDG6)で υf,afか
は
,Sf2≡sin2θefffと い う 記 号 を 使 う.こ れ の 定 義 は 放 射 補 正 を 入 れ て 決 め た ら ト リー 近 似 の 式(7.31)を 使 っ て 求 め たsin2θWで あ る.厳 密 に 言え ば
(7.13)で の 定 義 とや や 異 な る が,実 とは な い.
用上 は 実 験 的 に も理 論 的 に も こ の 差 が 問 題 と な る こ
(7.13b) と書 く こ と に す る.数 →ff反
値 的 に 主 た る 寄 与 は 伝 播 関 数 か ら く る.特
応 に 限 る と き は,箱
型 図 に よ る 補 正 を 無 視 し,(sin2θeff,f,ρeff,f)と
(sin2θf,ρf)を 同 等 に 扱 う こ と に し て よ い.実 い の で,(sin2θf,ρf)と(sin2θW,ρse)も =bの
と き はtク
に 考 え る(後
は ヴ ァー テ ッ ク ス 補 正 量 も 小 さ
ほ と ん ど 同 じ で あ る が 例 外 も あ る.f
ォ ー ク に よ る ヴ ァ ー テ ッ ク ス 補 正 が 無 視 で き な い の で,別
個
述 §7.3.6b).
ヴ ァ ー テ ッ ク ス お よ び 箱 型 図 に よ る 補 正 効 果 は,sin2θWや な い が,概
に,ee→Z
し て 小 さ な 補 正 で あ る の で,必
ρだ け に は 限 ら
要 に 応 じて結 果 の み を付 記 す るに 止
め る こ と に し て 詳 し い 議 論 は こ れ 以 上 行 わ な い こ と に す る. b. エ ネ ル ギ ー に 依 存 す る 崩 壊 幅 Z生 の で,伝
成 の 断 面 積 はO(α2)効
果 で あ る が,共
鳴 の 頂 上 付 近 で はO(α0)と
播 関 数 の 中 に 現 れ る 崩 壊 幅 Γ に 対 す る 補 正 と し て はO(α2)の
で 取 り 入 れ る 必 要 が あ る.崩 メ タ ー 補 正 の ほ か に,固
壊 幅 に 対 す る 高 次 効 果 の 影 響 は,上
定 幅mZΓZにs依
な る 効 果 ま
に 述 べ たパ ラ
存性 を取 り入 れ た 次 式
(7.14) とい う置 き換 え で 非 常 に よ い 近 似 と な っ て い る こ とが 示 さ れ る4).こ の 高 次 補 正 効 果 に よ っ て 共 鳴 の 形 が ど う変 わ るか を見 るた め に,
(7.15) (7.16a)
(7.16b) (7.16c) と お け ば,(7.7a)の
断 面 積 は,
(7.17) に 変 更 され るの で,同 効 果 は,断
じ形 の 断 面 積 を再 現 す る.す な わ ち,sに
依 存 す る幅 の
面 積 の 形 と頂 上 の 高 さ は 変 え な い で,見 か け の 質 量 と幅 と を,mZ
=mZ-34MeV
,
公 式(7.7)の mZか
だ け 変 更 す る だ け で あ る.一
見 か け 上 の 山 頂 位 置(dσ/dS=0で
方,元
決 め ら れ る)は,mZで
の共 鳴 は な く
ら
ほ
ど 上 方 に あ る の で,(7.14)の と な る.よ て,式(7.14)にQED補
補 正 後 の 見 か け 上 の 山 の 位 置 は, い 近 似 で あ る と の 意 味 は,mZを
正 を 組 み 合 わ せ て,実
適 化 す れ ば 精 度 の よ いmZの
パ ラ メ ター と し
験 断 面 積 の 形 に 合 う よ うに 最
値 が 得 ら れ る と い う こ と で あ る*4).QEDを
め た 全 補 正 の 後 の 共 鳴 の 山 頂 の 位 置(図7.2)は
も含
次 式 で 与 え ら れ る3).
(7.18a) ま た,放 射 補 正 は チ ャ ネ ル ご とに異 な る こ とを 留 意 して お く必 要 が あ る.例 ば,ハ
え
ドロ ン チ ャ ネ ル と μμチ ャ ネ ル で は,半 値 全 幅 Γ は 見 か け 上 の σmaxの
半 値 の 値 を と る位 置
と
ハ
ドロ ン
(7.18b) の 関 係 に あ る(た だ し,mt=120,mH=100GeVと
し た).
c. 改 良 ボ ル ン 近 似 上 記 の 実 効 パ ラ メ タ ー を 使 っ て,ボ 結 合 定 数 をGN=GFか
らGN=GFρ
ル ン 近 似 の 式 を 書 き直 し,中 と し,伝
を 取 り込 む(mZΓZ→SΓZ/mZ)と,重 に 含 ま れ て い る.こ は,O(α)の
*4) PDG6)で 子 は,散
れ を"改
播 関 数 中 の 崩 壊 幅 Γfにs依
は
,式(7.14)を
存性
要 な 放 射 補 正 効 果 は ほ とん ど こ の 式 の 中 良 ボ ル ン 近 似 の 式"と
い う.改
放 射 補 正 を す べ て 取 り 入 れ た 正 確 な 式 と0.5%以
も っ てmZと
乱 振 幅 の 複 素s平
性 カレン ト
ΓZの 定 義 式 と し て い る.理
面 上 で のs0と
良 ボル ン近似 式 内 の 精 度 で合 っ
論 的 に は,不
安 定粒
して 定 義 さ れ る5).
すなわち
こ のMは,(7.14)で
定 義 し たmZと
の 関 係 に あ り,Mよ
り 約25MeV小
は
さ い.Γ
と 小 さ く現 時 点 で は 誤 差 の 範 囲 内 で あ る.
も ま た ΓZよ
り 小 さ い が,差
は1.2MeV
て い る4).改
良 ボ ル ン 近 似 の 式 の 導 き方 は 後 の §7.3.5で
議 論 す る こ と に し て,
上 記 の 改 良 を施 し た 結 果 の 断 面 積 は 次 の よ う に 表 さ れ る.
(7.19)
(7.20a) (7.20b) (7.20c) (7.20d) こ の 式 は 伝 播 関 数 の 分 母 以 外 は(7.5)∼(7.6)と α,gν,gA,υf,afの
定 義 が 異 な る の み で あ る.こ
ま っ た く同 じ 形 を し て い て, れ ら の 式 を 使 っ て,デ
ー タ と比
較 す る こ と に よ り ρf,sin2θfが 求 め られ る. Z共
鳴 上 で の 非 対 称 を 表 す 式 は,第4章
ら 導 く こ とが で き る.偏
極Pを
中 性 カ レ ン トの(4.50),(4.51)か
もつ ビー ム に よ る断 面 積 は
(7.21a) (7.21b) で 与 え られ る.偏 極 して い な い ビー ム に よ る散 乱 角 分 布 の 前 後 非 対 称AFBは, ηfを
(7.22) で定 義 す る と
(7.23) で 与 え ら れ る.た あ る.L-R非
だ し,積
対 称ALRは,Lま
分 の 上 下 限 はcosθ た はRに
の 値 を 示 す.ηeは
電 子 の ηfで
偏 極 し た ビ ー ム を 使 っ て,
(7.24) ま た,偏
極 ビ ー ム に よ る 前 後 非 対 称AFBPOlは,
(7.25) で 与 え ら れ る.い
ず れ も ボ ル ン 近 似 の 式 で あ る が,先
の 中 のsin2θWをsin2θfで
の 議 論 に よ っ てυfやaf
置 き 換 え て や る こ と に よ り放 射 補 正 が 取 り入 れ ら れ
る. 上 式 か ら わ か る よ う に 偏 極 し た ビ ー ム に よ る 非 対 称 は,ηeも う 直 接sin2θfに
関 係 し て い る 量 を 測 る の で,sin2θfの
し くは ηfと い
最 も 精 密 な 測 定,つ
り 理 論 的 実 験 的 不 定 性 の 小 さ な き れ い な テ ス トが で き る.sin2θfと sin2θWと
の 関 係 に つ い て は,§7.3の
sin2θfはZ共
鳴 に お け る 非 対 称AFBな
はsin2θWとsin2θfの
通 常 の
放 射 補 正 の 項 で 詳 細 に 述 べ る が,ど
も観 測 量 か ら直 接 決 めら れ る 量 で あ る.つ
ま りsin2θWは
質 量mWとmZか
ど か ら 求 め ら れ る .最
ちら ら,
近 の実験 の精 度
わ ず か の 差 を 感 知 で き る ほ ど よ く な っ て い る.こ
種 々 のsin2θWは,Zの
ま
れ ら
質 量 な どの 観 測 量 か ら放 射 補 正 を 入 れ て 理 論 的 に 計 算
で き る 量 で あ る の で,実
験 値 と 比 べ る こ と に よ り,標
準 理 論 そ の もの の 検 証 も
し く は ヒ ッ グ ス の 質 量 の 予 測 な ど に 使 う の で あ る.
7.2
7.2.1
Zの
LEPの
実 験 結 果6∼9)
質 量 と崩 壊 幅
各 種 終 状 態 の 中 で,統 断 面 積 のs=mZ2で
計 的 に は ハ ド ロ ン事 象 が 圧 倒 的 に 多 い.ハ
ドロ ン生 成
の 値 は,
(7.26) で 与 え ら れ る.デ
ー タ で 得 ら れ た 各 種 断 面 積 の 形(図7.3,図7.4)を
理論 式
に 合 う よ う に,mZ,ΓZ,σh0,Γe/Γh,Γμ/Γh,Γτ/Γhを 最 適 化 す る こ と に よ っ て,こ Zの
パ ラ メ タ ー と して 同 時 に
れ ら パ ラ メ タ ー の 実 験 値 が 決 め ら れ る(表7.2).
質 量 値 の 誤 差 の 最 大 の 原 因 は,エ
ネ ル ギ ー 絶 対 値 の 測 定 の 不 定 性 から
く
る. エ ネ ル ギ ー の 測 定 は 次 の よ う に す る10).ま と陽 子 を 入 射 加 速 器 の 中 で 回 し て,そ 値 を 決 定 す る.次
ず,20GeVの
の 回 転 周 波 数 の 差 から エ ネ ル ギ ー の 絶 対
に 主 加 速 器 磁 場 の 値 を20GeVお
よ び45GeV相
す る と き の カ レ ン ト積 分 値 を 比 較 し て,45GeVで る.そ
の と き の 誤 差 は2.4×10-4す
げ る に は,電
な わ ち20MeVで
子 の ス ピ ン 回 転(precession)周
ー ム エ ネ ルギー
偏 極 が 消 滅 す る.電
当 ま で励 起
の エ ネ ル ギー 絶 対 値 を 得 あ る.こ
れ 以 上 精 度 を上
波 数 を 測 る.電
子 ビー ム が シ ン
ク ロ ト ロ ン 放 射 に よ っ て 自然 に 横 偏 極 を も つ の で,こ て や る と,ビ
エ ネ ル ギー で 電 子
こで 弱 い振 動 磁 場 をか け
に よ っ て決 ま るあ る共 鳴条 件 が 成 立 す る と こ ろ で
子 の 偏 極 度 は レ ー ザ ー ビ ー ム を あ て て コ ン プ トン 散 乱 を 起
こ す こ と に よ り 測 定 で き る の で,共
鳴 条 件 を 探 す こ と に よ り絶 対 誤 差5MeV
以 下 で エ ネ ル ギ ー が 決 め ら れ る の で あ る.
表7.2
余 談 で あ るが,こ
LEPに
お け るZの
質 量,崩
壊 幅 の 測 定 結 果6)
の エ ネ ル ギー 測 定 の 精 度 が いか に よい か は,エ ネ ル ギー 測
定 結 果 に 月の 潮 汐 効 果 が 見 え る こ と で わ か る.月 の 潮 汐 力 は 地球 の半 径 を1日
実 線 がNν=3と
図7.3 e+e-→Z→ ハ ドロ ンの 全 断 面 積 した と きの 標 準 理 論 値.Nν=2,4の 曲 線 も示 して あ る8).
図7.4
e+e-→Z→llの
全 断 面 積8)
実 線 は 標 準 理 論 値(sin2θW=0.232)
2回 伸 び 縮 み させ る効 果 を もつ.こ LEPの
半 径R=4.24kmが0.15mm変
の 結 果 地 表 も ま た 膨 張 収 縮 を 繰 り返 し, 化 す る の で,ビ ー ム の 加 速 周 波 数fに
も変 化 が で る.
ビ ー ム の 運 動 量 変 化 は こ れ を あ る 定 数 αc=3.87×10-4で
割 っ て,
の 変 化 が 高 潮 か ら 引 き 潮 の 間 に 見 ら れ る(図7.5).
図7.5
潮 汐 力 に よ るエ ネ ル ギー 変 化10)
潮 汐 力 に よ りLEPの
7.2.2
周 長 が 変 化 し,エ
ニ ュ ー ト リノの 種 類 数
ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 がmZ/2よ ら,軽
い ニ ュ ー ト リ ノ1種
粒 子 を 含 む 崩 壊 モ ー ド)か は,実
験的 に
り小 さ い と き は,Z→νν
類 に つ き,Γν 分 だ け 全 幅ΓZが
い 崩 壊 モ ー ドへ の 崩 壊 幅Γinvは,観
種 類 数Nν
ネル ギー も変 化 す る.
測 可 能 な チ ャ ネ ル(全
が 可能 で あ るか 大 き く な る.見 断 面 積,お
ら 引 き 算 に よ っ て 算 出 で き る か ら,ニ
え な
よ び荷 電
ュ ー ト リノの
(7.27) か ら決 め られ て,
(7.28) と な っ た.図7.3に し て あ る.明
はNν
を 変 え た と き のZ断
ら か にNν=3が
よ い.
こ れ ま で に も 宇 宙 論 や,ハ ≒3-4と
推 測 さ れ て い た が,そ
ド ロ ン に よ るW,Z生
あ れ ば,Zの
の事 実
つ き て い る こ と を 強 く示 唆 す る.mν>
崩 壊 に は 寄 与 し な い の で,世
定 す る わ け で は な い が,こ あ る と き,第4番
成 デ ー タ か ら は す で にNν
れ を は っ き り と 示 し た こ と に な る.こ
は ク ォ ー ク と レ プ トン の 世 代 数 が3で mZ/2で
面 積 の 形 が ど う変 わ る か を示
代 数 が4以
上 の 可 能 性 を否
れ ま で の 既 知 の ニ ュ ー ト リ ノ の 質 量 が す べ て ≒0で
目の ニ ュー ト リノか ら急 激 に 大 き な質 量 を もつ こ とは考 え に
く い.
7.2.3
レ プ ト ン の 前 後 非 対 称AFBl
ビ ー ム が 偏 極 し て い な い と き で も,弱
相 互 作 用 の 性 質 よ り崩 壊 の 角 分 布 に は
前 後 非 対 称 が 生 じ る こ と は す で に 論 じ た(§4.7.2).た は 消 滅 す る.図7.6にDELPHIグ 子,μ,τ
だ し,s=mZで
ル ー プ の μμ の 非 対 称 測 定11)を 示 す.電
の 別 々 の 測 定 で も 互 い の 一 致 は 非 常 に よ く,e-μ-τ
して い る.計
非 対称
算 値 と の 一 致 は 非 常 に よ い.実
の普 遍性 は成立
験値 は
(7.29) で 与 え ら れ る6,9).AFBl∝υl=-(1/2-2sin2θl)で く,AFBlも
ま た0に
近 い が,デ
こ こ で の デ ー タ は,PETRAや す る も の で あ り,ま
あ る の で,υlは
ー タ は 有 意 に0と
非 常 に0に
近
異 な る 結 果 を 示 し て い る.
ト リ ス タ ン で の デ ー タ を補 完 し よ り一 層 精 密 化
た 違 う エ ネ ル ギ ー で の 標 準 理 論 の テ ス ト と も な っ て い る.
結 果 は 標 準 理 論 の 正 し さ を 裏 づ け て い る(図4.13(b)参 レ プ ト ン 結 合 定 数:レ
プ トン へ の 崩 壊 幅 と レ プ トン の 角 分 布 非 対 称 か ら,ベ
ク トル お よ び 軸 性 ベ ク トル 結 合 定 数gV,gA(上 め る こ と が で き る.3種
照).
の 式 で はυl,al,l=e,μ,τ)を
求
の レ プ ト ン 崩 壊 よ り決 め ら れ た 値 の 平 均 を と り9)
(7.30a)
図7.6
=mZで
非 対 称 が0と
e-e+→
な り,
μ-μ+角
分 布 前 後 非 対 称データ11)
>mZ, <mZで
符 号 を 変 えて い る こ とが わか る.
(7.30b) と決 め ら れ る.こ
れか ら
(7.31a) (7.31b) を 使 っ て 求 め た ワ イ ン バ ー グ 角 は(mt=173±4GeV,mH=300GeV)と
い う
条 件 で6)
(7.32) sin2θlとsin2θWと
7.2.4
の 関 係 に つ い て は,§7.3で
偏 極 ビ ー ム に よ る 左 右 非 対 称ALR
ワ イ ン バ ー グ 角 の 最 も 精 密 な 測 定 は,sin2θfと い て い る 物 理 量,す
測 定 量 とが最 も直接 に 結 び つ
な わ ち 偏 極 ビ ー ム に よ る 前 後 方 非 対 称 か ら得 ら れ る と期 待
さ れ る((7.24),(7.25)).現 SLCで
議 論 す る.
在 のLEPで
の 実 験 値 は 表7.2に
は 非 常 に 良 好 な 偏 極 ビ ー ム を も つ 利 点 を い か し て,
与 え て あ る が,
(7.33) と精 度 の よ い 値 を だ し て い る12).こ LEPの
値(表7.2)と
は,mZか
の 値 はAFBや
ほ ぼ 合 っ て い る.将来
ら放 射 補 正 式(後
程 度 の 精 度 を も ち,mW値
タ ウ 崩 壊 な どか ら算 出 した
的 に は,こ
述 式(7.43))を
の 方 法 で 得 ら れ る精 度
使 っ て 得 ら れ るsin2θWの
と あ わ せ れ ば,標
値 と同
準 理 論 の も っ と も厳 密 な テ ス トに
な る と期 待 さ れ る13).
7.3
こ れ まで の 議 論 で,GWS理
放
射
補
正14,15)
論 が 論 理 的 に無 矛 盾 で,現 象 的 に も種 々 の 弱 相
互 作 用 デ ー タ を よ く再 現 す る こ とが わ か った.統 一 理 論 で あ る こ と を証 明す る た め に は,い
ろ い ろ な基 本 的 関 係 を チ ェ ッ クす る必 要 が あ っ た が,あ
らゆ る と
こ ろ に現 れ る パ ラ メ ター ワ イ ンバ ー グ角sin2θWが 常 に 同 一 の値 を と る とい う 事 実 がGWS理
論 が普 遍 原 理 に 基づ く統 一 理 論 で あ る こ との 有 力 な論 拠 の 一 つ
で あ っ た.し
か し実 験 技 術 が 進 ん で 精 密 測 定 が 可 能 に な っ て くる と高 次 の効 果
(radiative correction:放
射 補 正)が 見 え て くる よ う に な る.放 射 補 正 を含 め
た理 論 値 が デ ー タ と合 え ば,GWS理 う.そ
う した意 味 でGWS理
論 に 対 す る信 頼 は ゆ る ぎな い もの と な ろ
論 に お け る放 射 補 正 の テ ス トは,QEDで
に匹 敵 す る役 割 を演 ず る とい え る.さ
らに,標 準 理 論 を使 え ば,未 発 見 の ヒ ッ
グ ス の 質 量 に対 す る制 限 が つ け られ る.ま た,標 が,新
のg-2
準 理 論 値 か らの 小 さ な ズ レ
し い現 象 発 見 に つ な が る こ と も期 待 され る.
7.3.1
ワ イ ン バ ー グ 角 の 定 義 と放 射 補 正 量Δr
放 射 補 正 は考 察 す る過 程 に よ り異 な るが,こ で あ るWお
よびZボ
の 結 合 定 数,ワ
ソ ン の 質 量,荷
こ で は 弱 相 互 作 用 の 基 本 的 な量
電 カ レ ン トの 結 合 定 数,中
イ ンバ ー グ 角sin2θWの間
性 カ レン ト
の 関 係 式 を考 慮 し よ う.第2章
での
ゲ ー ジ理 論 の 議 論 か ら最 低 次 の ボル ン近 似 で は次 の 関係 が 成 立 した.
(7.34)
(7.35) (7.36) (7.37) た だ し,gW(gB)は,W(B)ゲ
ー ジ ボ ソ ン と フ ェ ル ミ オ ン の 結 合 定 数,υ
ヒ ッ グ ス の 真 空 期 待 値 で あ る.放
射 補 正 を 考 慮 す る と,元
現 れ た パ ラ メ タ ー す な わ ち 裸 の 質 量m0,裸 の で,真
の 観 測 量m,e,gWで
と お く.も と,放
射 補 正 を 受 け た あ と のgB,gW,υ
の 結 合 定数e0,g0が
変 更 を受 け る
の3個
で あ るこ とを考慮 す る
か ら つ く れ る 独 立 な 物 理 量 は や は り3
象 的 な考 察 に は 実 験 で精 密 に 決 め ら れ る量 か ら 出発 す るの が 便 利
で あ る か ら,gB,gW,υ sin2θWは
の ラ グ ラ ン ジ ア ンに
書 き 直 して
と も と独 立 な パ ラ メ タ ー はgB,gW,υ
個 で あ る.現
は
の 代 わ り に α,mW,mZを
こ れ ら か ら 計 算 で き る 量 と な る.す
独 立 に 与 え る 量 と す れ ば,GF, なわ ち
(7.38a) (7.38b) こ こ に,mtやmHが
入 る の は,放 射 補 正 の 中 に トップ クォー クや ヒ ッ グ ス 粒
子 が 仮 想 粒 子 と して現 れ るか らで あ る.他 の粒 子 も現 れ る が 自発 的 に対 称 性 が 破 れ る理 論 で は 結 合 定 数 が 質 量 に 比 例 す る の で数 値 的 に重 要 で な い.実 験 的 に は α,GF,mZが
非 常 に 精 度 よ く決 め られ て い るの で,こ れ を入 力 と して 他 を求
め る こ とに な る. sin2θWは(7.34)∼(7.36)を
使 え ば,
定義1 と い う 関 係 式 が 成 立 す る16).こ
(7.39) れ は,ボ
ル ン 近 似 で 成 立 す る 式 で あ る が,右
を実 験 で 与 え ら れ る 質 量 と 拡 大 定 義 す る と き,(7.39)を お け るsin2θWと 義 し たsin2θWは,定
い う.質
質 量 殻(on
辺
shell)に
量 は 実 験 で 一 義 的 に 決 め ら れ る か ら,観
測 質 量 で定
数 で あ り 繰り 込 み ス ケ ー ル μ に よ ら な い.観
測値 にはす
べ て の 高 次 の 効 果 が 入 っ て い る か ら,sin2θW自
身 もす で に す べ て の 高 次 効 果
を含 ん で い る こ とに な り,こ れ 以 上 の放 射 補 正 を受 け な い.そ の 意 味 で,質
量
殻 に よ る定 義 は,物 理 量 との 関 連 が 最 も明 快 な概 念 で あ る. 次 に,ラ
グ ラ ン ジ ア ン の 中 の 中 性 カ レ ン トの 中 に 現 れ るsin2θWが
あ る.
(7.40)
定義2
こ の 式 は反 応 の 断 面 積 の 中 に 現 れ る か ら,断 面 積 や 非 対 称 の実 験 測 定 値 か ら直 接 決 め られ る量 で あ る.高 次 補 正 効 果 を含 ん で お り,ワ イ ンバ ー グ角 は ス ケ ー ル 因 子 μ(典 型 的 に は 運 動 量 遷 移Q)の
関 数 で あ る.例 え ば,§7.1.3で
議論
し た 改 良 ボ ル ン近 似 式 を使 っ て 決 め た ワ イ ン バ ー グ角 は こ れ に あ た る(μ= mZ).ま
た,第4章
で 議 論 し た νμe散 乱 の 反 応 か ら求 め たsin2θW(νe)は,こ
れ の 低 エ ネ ル ギー 版 で あ る. さ らに,次
の よ う に,結 合 定 数 に よ って 第3のsin2θWを
定 義 す る こ とが で
き る.放 射 補 正 を入 れ る と,結 合 定 数 は 一 般 に繰 り込 み ス ケー ル の パ ラ メ ター μ の 関 数 と な る の で,
(7.41)
定義3 特 に 紫 外 発 散 項 をQCDと
同 じ くMS方
=sin2θW=sW2と
の 定 義 は 直 接 観 測 量 に は 結 び つ き に く い も の の,繰
書 く.こ
り込 み 処 方 がQCDと
式 で 処 理 し た と き のsin2θWをsin2θMS
共 通 で 理 論 的 解 析 に は 便 利 で あ り,大
統 一 理 論 との 関 連
を 議 論 す る と き な ど よ く 使 わ れ る. ボ ル ン 近 似 の 段 階 で は,こ い が,放
射 補 正 を 入 れ る と,関
受 け 方 が 異 な る の で,数
れ ら のsin2θWは
定 義 の 仕 方 に よ らず す べ て 等 し
与 す る フ ェ ル ミ オ ン 種 や 反 応 過 程 に よ り補 正 の
値 的 に 差 が で て く る.以
下 はsin2θWは(7.39)で
義 さ れ た も の を 標 準 に す る こ と に し て 話 を 進 め る.い す る 場 合,GF,sin2θWは
ま,α,mW,mZか
定 ら出 発
導 か れ る 量 で あ る か ら,
(7.42)
に よ っ て,放 ら,α
射 補 正 量Δrを
定 義 す る16).こ
こ にGFは
は 電 子 の トム ソ ン 散 乱 か ら決 め ら れ る か ら,繰
数 と 見 た 場 合 そ れ ぞ れ μ=mμ
≒0,お
よ び μ=0で
ミュ ー オ ン の 崩 壊 か り込 み ス ケ ー ル μ の 関
定 義 さ れ て い る 量 で あ る.
一 方
,sin2θWは,質
量 に よ り定 義 さ れ る か ら,繰
た 場 合 の 自 然 な ス ケ ー ル はmZで
あ る.Δrは
この 二 つ の エ ネ ル ギー ス ケ ー ル
間 の 橋 渡 し の 役 を つ とめ る 量 と 見 な せ る.Δrは 度 の 値 で あ る の で,実 実 験 的 に はmZが
り込 み ス ケ ー ル の 関 数 とみ
後 に 計 算 す る よ う に ∼0.04程
験 的 に 十 分 チ ェ ッ ク で き る 大 き さ で あ る.
非 常 に 精 密 に 測 定 で き る の に 反 し,mWや,sin2θWの
は そ れ ほ ど で も な い.そ
こ で,見
方 を 変 え て,(7.42)をmWとsin2θWを
に 決 め る た め の 計 算 式 とみ な す こ と も で き る.こ
精 度 精 密
の場合
(7.43a) (7.43b) と な る.実 際,現 を使 い,mZの Wの
時 点 で の最 も精 密 なmWとsin2θWの
値 は,Δrに
は理 論値
実 験 値 か らこ の 式 に よ っ て求 め た もの で あ る.
質 量 のΔrに 対 す る感 度 は,
(7.44a) で あ る の で,仮
にΔrを0.04と
す る と
(7.44b) mWは
現 在 誤 差100MeV程
の 変 化 は そ の6倍
度 の 精 度 で 求 め ら れ て い る.放 射 補 正 に よ るmW
以 上 あ り,標 準 理 論 の 高 次 補 正 の テ ス トに な る こ とが わ か
る.
7.3.2
ρ パ
こ こ で,後
ラ メ
タ ー
の 議 論 の た め 中 性 カ レ ン トを 扱 う場 合 に 現 れ る ρパ ラ メ ター を
定 義 して お こ う.ρ は,高 次 の 効 果 を含 め た 中性 カ レ ン ト結 合 定 数 と荷 電 カ レ ン ト結 合 定 数 の 比 と して 定 義 さ れ る.
(7.45a) Δρは 高 次 の 補 正 効 果 で あ る.ρ は ま た
(7.45b)
に よ っ て も 定 義 で き る.標 は,W,Zの
準 理 論 と は 違 っ て,ヒ
質 量((7.34),(7.35))は,υiを
ッグ ス 粒 子 が 複 数 個 あ る場 合
中 性 ヒ ッ グ ス 場 の 真 空 期 待 値,Ii
を ヒ ッ グ ス の ア イ ソ ス ピ ン と し て,
(7.46) (7.47) と変 更 され る の で,ボ
ル ン近 似 の段 階 で は
(7.48) と な る.余 が,二
分 に 存 在 す る ヒ ッ グ ス 場 が,三
重 項 を 含 め ば1/2≦
重 項 を 考 え る 限 り ヒ ッ グ ス 場 が 複 数 あ っ て も,ボ で あ る.質
効 果 をsin2θWの
量 殻 に よ るsin2θWの
中 に 取 り込 ん で し ま う の で,ρmassは
ρmass≦1と な る
ル ン 近 似 の 段 階 で は,
定 義(7.39)で
は ρの 高 次
定 義 に よ っ て1と
な り高
次 補 正 効 果 を 受 け な い.
7.3.3
ゲー ジ ボ ソ ン の 放 射 補 正
a. 繰 り 込 み 処 方
放 射 補 正 に は,無 限 大 の 発 散 が 現 れ るの で繰 り込 み を し な け れ ば な ら な い. 一 番 簡 単 な方 法 は最 小 引 き算 法 と呼 ば れ る.こ れ は 発 散 積 分 を次 元 正 則 化 の 方 法 で 処 理 し,結 果 の 中 か ら発 散 部 分 の み を 引 き算 す る方 法 で あ る(付 録J). こ の 方 法 は簡 単 で あ るが,エ
ネ ル ギー の 次 元 を もつ 不 定 の ス ケー ル パ ラ メ ター
μ が つ け加 わ る とい う代 償 を支 払 う.μ の 値 さ え指 定 す れ ば 個 々 の 物 理 量 の 計 算 結 果 の 数 値 化 が 可 能 で あ る.閉 明確 に 定 義 で き な いQCDで
じ込 め の た め ク ォー クや グ ルー オ ンの 質 量 が
は,基 本 的 に こ の 方 法 を採 用 し て い る.電 弱 相 互
作 用 で は事 情 が 異 な り,電 荷 や ゲ ー ジ ボ ソ ン の 質 量 値 が 実 験 的 に 明確 に 定 義 で き る.も
と も との ラ グ ラ ン ジ ア ン に 入 って い るパ ラ メ ター(質 量 や 結 合 定 数)
は,放 射 補 正 を加 え た 後 は 無 限 大 の 発 散 項 を含 み 切 断 の と り方 に よ って 変 わ る 量 で あ る の で,真
の 物 理 量 で は な く裸 の質 量,裸 の 結 合 定数 と呼 ば れ る.し か
し,無 限大 の 発 散 を これ らパ ラ メ ター に繰 り込 ん だ うえ で の 物 理 量 同 士 の 相 互 関 係 式 に は 無 限 大 の 発 散 量 は な く,実 験 で検 証 可 能 な予 言 が で き るの で あ る.
この と き裸 の パ ラ メ ター つ ま り無 限 大 の 発 散 量 は 質 量 殻 上 に あ る実 粒 子 の 質 量 な ど を 基 準 に とっ て 表 現 す る の で,こ scheme)と
の 方 法 は 質 量 殻 処 理 法(on-shell
呼 ば れ る.こ の と き どの 物 理 量 を 基 準 に と るか に よ っ て 繰り 込 み
処 方 が 異 な る. QEDで
は,高 次 効 果 に お け る発 散 量 は,波 動 関 数 の 繰 り込 み(再 規 格 化)
と質 量 と電 荷 の 繰 り込 み(再 定 義)に
よ っ て 吸 収 で き る こ とが 知 ら れ て い る
(Ⅰ-§5.8参 照).電 弱 相 互 作 用 理 論 は カ イ ラ ル非 ア ー ベ ル 理 論 で あ る こ とに よ り繰 り込 み処 方 は い さ さか 複 雑 とな る.無 限 大 の処 理 は,ゲ ー ジ条件 を 明 らか に し一 般 に は ゴー ス トな ど非 物 理 的粒 子 の 寄 与 を も入 れ て 行 い,フ
ェル ミオ ン
は左 巻 き部 分 と右 巻 き部 分 に分 け 別 々 に 取 り扱 わ な け れ ば な らな い.し か し, 詳 しい 議 論 は 本 書 の 範 囲 を 逸 脱 す る の で,こ
こ で は 物理 的 背 景 の理 解 に 必 要 な
繰 り込 み 処 方 の 筋 道 の 概 略 を述 べ る に 止 め,詳
しい 計 算 は 省 略 す る.ま た考 慮
対 象 とす る重 要 な 反 応 と して は ゲ ー ジ ボ ソ ン を1個 交 換 す る4-フ ェ ル ミオ ン 反 応 過 程
に 限 る.こ の場
合 現 象 的 に は,ゲ ー ジ ボ ソ ンの 自 己 エ ネ ル ギー 効 果,そ
れ もフ ェ ル ミオ ン ル ー
プ の効 果 を考 察 す るの み で主 要 な放 射 補 正 効 果 は取 り入 れ られ る. 繰 り込 み(無 限大 の 発 散 項 を差 し引 く)の 質 量 殻 処 理 法 は 次 の 通 りで あ る. 簡 単 の た め,当 初 の ラ グ ラ ン ジ ア ン に 現 れ る裸 の 結 合 定 数 をg0,裸 m02,場
の質 量 を
を φ0で代 表 させ る こ と に し よ う.高 次 の ルー プ 補 正 を 計 算 す る と,
無 限大 の 発 散 項 を含 む 式 とな る.無 限大 を処 理 す る た め に は,発 散 を含 む 関数 を正 則 化 し て か ら計 算 を実 行 し,発 散 項 を一 定 の処 方 に従 って 引 き算 し,最 後 に 切 断 パ ラ メ ター を無 限 大 に も って い く.無 限 大 を論 理 的 に矛 盾 な く処 理 す る た め に は,引 で あ る.裸
き算 項 をあ らか じめ ラ グ ラ ン ジア ン の 中 に 取 り入 れ て お く と便 利 の 結 合 定 数g0,裸
の 質 量m02,裸
δm2,δZを 補 正 した 後 の 結 合 定 数g,場
の 場 φ0に 無 限 大 の 引 き算 項δg,
φ を物 理 的 な量 と定 義 し直 す と,
(7.49) (7.50) ラ グ ラ ン ジ ア ン は,
(7.51) と分 割 で き る.こ の 結 果 得 ら れ る余 分 の 項 δLに 算 して,Lを
よ る散 乱 振 幅 を も同 時 に 計
使 っ て求 め た 高 次 補 正 項 に加 え る の で あ る.そ
うす る と,各 引
き算 項(δg,δm2,δZ)が 高 次 の 寄 与 と 自動 的 に正 しい 組 み 合 わせ で現 れ,有
限
な結 果 が 得 られ る よ うに な っ て い る. 質 量 殻 処 理 法 に 限 っ て も,繰
り込 み 処 方(Lと
ろ い ろ の ヴ ァ ラ エ テ ィ が あ る14).例 え ば,場
δLに 分 け るや り方)に は い
の 繰 り込 み は 行 わ ず に,パ
ラメ
ター(質 量 と結 合 定 数)の 繰 り込 み に よ る引 き算 だ け を行 う方 法 が あ る16).こ の や り方 で は,す べ て の伝 播 関 数 や ヴ ァー テ ッ クス 関 数 を,単 独 で は 有 限 に は で きな いが,散
乱行 列 を計 算 す れ ば,各 種 の 無 限大 が 相 殺 し,正 しい 式 が 得 ら
れ る こ とが 広 義 の ワ ー ド恒 等 式 に よ っ て保 証 さ れ て い る.た だ し,こ の 場 合 で も理 論 を無 矛 盾 とす る ため の外 線(散 乱 の 前 後 に 現 れ る 粒 子)の 波 動 関 数 の 繰 り込 み(再 規 格 化)は 必 要 で あ る. 以 下 の議 論 は次 の 方 法 に 従 う.す な わ ち,ラ ラ メ ター をe,mW,mZの3個 が,そ
グ ラ ン ジア ンに 現 れ る独 立 なパ
に と り,ゲ ー ジ場 の 波 動 関 数 の 繰 り込 み も行 う
の数 は 最 小 限 に と どめ(元 々 の 出 発 点 に あ っ たWとBの2種
の場 のみ
再 規 格 化 を行 う),個 々 の 伝 播 関 数 を有 限 に す る処 方 に従 う.本 来 は フ ェ ル ミ オ ン場 や ヒ ッ グ ス場 の繰 り込 み も必 要 で あ る が,考 慮 す る過 程 を4フ ェ ル ミ反 応 に 限 れ ば フ ェ ル ミオ ン の伝 播 関 数 を必 要 と しな い.た
だ し,繰
り込 み 処 理 を
無 矛 盾 に 行 うた め の 外 線 の 波 動 関 数 の再 規 格 化 は考 慮 す る 必要 が あ るが,こ は 一 般 化 した ワ ー ド恒 等 式 に よ って,ヴ
ァー テ ッ ク ス部 分 の再 規 格 化 部 分 と相
殺 して あ ら わ に で て くる こ とは な い の で,こ は,ゲ
れ
こ で は 議 論 か ら外 す.ヒ
ッグ ス
ー ジ ボ ソ ン の 自 己 エ ネ ル ギー ル ー プ に 寄 与 す る一 員 と して 重 要 で あ る
が,簡 単 の ため に フ ェル ミオ ンル ー プ の み を議 論 し,ヒ ッ グ ス につ い て は 結 果 の み を 引 用 す る こ とに す る. この ほ か に も繰 り込 み 処 方 は い ろ い ろ あ る.種 々 の処 理 法 は無 限大 の 発 散 項 を 除 去 す る 点 で は 同 等 で あ るが,無
限 大 を 差 し引 い た 後 の有 限 項 に は 差 が あ
る.摂 動 の 無 限 次 ま で 計 算 す れ ば,計 算 さ れ た 物 理 量 は繰 り込 み 処 方 に よ ら な い は ず で あ るが,計
算 をn次
に よ る結 果 の 差 は,(n+1)次
で 止 め る と き は こ の 限 り で は な く,処 方 の 違 い の オー ダ ー で あ る.
b. 伝 播 関 数 の 繰 り込 み まず 最 初 に,ゲ
ー ジ ボ ソ ン の伝 播 関数 に お け る繰 り込 み処 方 お よ び 引 き算 項
の 入 れ 方 を 眺 め て み よ う.ベ
ク トル ボ ソ ンV(V=W±,Z,γ)の
伝 播 関 数 は,
第1近 似 で は 一 般 に,
(7.52a) と表 さ れ る.Bは
ゲー ジの と り方 に よっ て 変 わ る量 で あ る が,観 測 量 で あ る
散 乱 振 幅 に は,常
に カ レ ン トに 挟 ま れ る形 で で て くる.そ の 場 合Bに
る項 は,0(ベ
比例 す
ク トル カ レ ン ト)ま た は 反 応 に 関 与 す る粒 子 の 質 量(軸 性 ベ ク
トル カ レ ン ト)に 比 例 す る量 を与 え る.い ず れ に しろ電 子 反 応 で は0と お い て よ いか ら,以 下 の 考 察 か らは外 して,
(7.52b) を 考 え る こ と に す る.こ
れ を 図 式 的 に 図7.7(g)の
し て は,O(gV2)の
フ ェ ル ミ オ ン ル ー プ(図7.7(a))の
(付 録 の 式(J.5))と
す る と,上
(a)
よ う に 表 す.高
次過程 と
補 正 効 果 を ΣVV(q2)
記 の 伝 播 関数 が
(b)
(c)
(d)
(g)
(h)
(i)
(e)
(f) 図7.7
ゲ ー ジボ ソ ンの 自己 エ ネ ル ギー と引 き算 項 の フ ァ イ ンマ ン図
(a) フ ェ ル ミオ ン ルー プ に よ る 自 己エ ネ ル ギー,(b) 質 量 引 き 算 項,(c),(d) 波 動 関 数 繰 り込 み に よ る 引 き 算 項,(e) 正 則 化 した フ ェ ル ミオ ン ル ー プ,(f) ル ー プ の 繰 り返 しに つ い て 和 を とっ た 後 の 伝 播 関 数,(g)
裸 の伝 播 関 数.
(7.53) の よ う に 補 正 さ れ る(図7.7(g)+(a)).こ ン ジ ア ン δLを
の ほ か に,引
き算 項 を含 む ラ グ ラ
使 っ て 得 られ る フ ァ イ ンマ ン グ ラ フ の 寄 与 を計 算 して つ け 加
え る 必 要 が あ る.δLの る 役 目 を す る.こ
中 の 質 量 補 正 項 δmV2VμVμ
の 寄 与 は,ル
は 直 接VとVを
ー プ の 寄 与(-iΣVV)を
換 え た も の と 等 し い(図7.7(b)).ま
つ な げ
定 数(+iδmV2)で
置 き
た 物 理 的 な 場 で つ く っ た 伝 播 関 数DVは
裸 の 場 で つ く っ た 伝 播 関DV0と
(7.54) と い う関 係 に あ る の で,δLの 関 数(7.52b)に(1-δZV)を す る す べ て のO(α)の
中 の δZV部 分 に よ る 寄 与 は,も 掛 け 算 す る こ と に 等 し い.結
と も と の伝 播
局,伝
播 関数 に対
補 正 を 考 慮 す る と 次 の よ う な 形 に な る.
(7.55) δZVに 端(散
よ る 寄 与 を 図7.8(c),(d)の
よ う に 表 す.(1/2)δZVが
乱 振 幅 の 中 で は ヴ ァ ー テ ッ ク ス)に
る.ΣVVは,q2で
つ く.両
展 開 し た 場 合,第1項,第2項
各 伝播 関数 の
方 合 わ せ て δZVの 寄 与 と な が 対 数 発 散 量 を 含 む*5).す
な わ ち, ΣVV(q2)=A+Bq2+有 と い う 形 で あ る(式(J.27)∼(J.32)を
限 の寄 与 参 照).A,Bが
と δZVを 適 切 に 選 ぶ こ と に よ っ て,ΣVV(q2)の 数 に す る こ と が で き る.す
な わ ち,引
発 散 項 を 含 む の で δmV2
中 の 発 散 項 を 打 ち 消 し有 限 な 関
き 算 項 を 導 入 す る こ とに よ っ て,繰
り込
まれた有限 なルー プ関数
(7.56) が 定 義 で き る(図7.7(e)).こ も ど る が,今
入 れ る と,再
度 は す べ て 有 限 な 関 数 の み で 書 け て い る.こ
返 し(図7.7(i))を ΣVV(q2)を
れ を(7.55)に
も 考 慮 に 入 れ て 級 数 和 を と る と,結
付 加 し た も の に 等 し い.す
*5) 形 式 的 にq2の
べ き を 数 え る と1次
か な ら な い こ と が 保 証 さ れ て い る.
,2次
び(7.53)の
こ で,ル
形 に
ープの繰 り
果 はDVの
分 母 に
な わ ち ベ ク ト ル 粒 子 の 伝 播 関 数 のO(α)
の 発 散 と な る が,ゲ
ー ジ理 論 で は 対 数 発 散 に し
の ル ー プ補 正 の 最 終 的 な 形 は, ルー プ補 正 (7.57)
で 与 え られ る(図7.7(f)). 観 測 に か か る物 理 的 な 質 量mV2は,伝
播 関 数DVの
極 の 実 数 部 と して 定 義
され る か ら
(7.58) を 満 た さ な け れ ば な ら な い.δZVの
決 め 方 は 後 で 述 べ る.こ
こで
(7.59a) (7.59b) に よ って,Π
関 数 を導 入 して 書 き直 す と,ル ー プ の 繰 り返 し も含 め たDVの
最 終 の 形 はO(α)で
(7.60) と い う 形 に 書 き 直 せ る.た
だ し,
(7.61) 実 際 の 過 程,例
えば μ 崩 壊 過 程 でWボ
ソ ン の 交 換 が 行 わ れ る と きは,上
記
伝 播 関 数 は 弱 カ レ ン トに 挟 まれ て で て くるの で,伝 播 関 数 に は 結合 定 数gW2が 掛 か る.結 局,ゲ
ー ジ ボ ソ ン の 放 射 補 正 は,結 合 定 数gV2を,q2に
依 存す る
実 効 結 合 定 数gV2(q2)
(7.62) に 置 き換 え,か つ 質 量 幅 Γ を導 入す る効 果 を もつ こ と とな る. c. γ-Z混
合
電 弱 相 互 作 用 の 場 合 は,フ き る の で,γ-Z混
ェ ル ミ オ ン ル ー プ は フ ォ ト ン に もZに
合 効 果(Σ γZと書 く)が 現 れ る(図7.8(a)).し
き 算 の 必 要 な ル ー プ 関 数 は ΣWW,Σ γ γ,ΣZZ,ΣγZの4種 あ る が,も ジ ボ ソ ン はBとWの2種 に 関 連 し て い る.そ
で あ る か ら,こ の 関 連 を 見 る た め に,ま
も結 合 で たが って 引
と も との ゲ ー
れ らの 関 数 お よ び 引 き算 項 は互 い ずZボ
ソン と γの定 義 式
(7.63a)
(a)
(b)
(c)
(d) 図7.8
γ-Z混
合 効 果
(a) Zと γに 結 合 す る フ ェ ル ミオ ン ルー プ,(b) γに 混 入 す るZは 直 接Jγ に 結 合 す る,(c) Zに 混 入 す る γは 直接JNに 結 合 す る,(d) 正 則 化 し た フ ェ ル ミオ ン ルー プ
(7.63b) お よ び,BとW場
の 繰 り込 み 関 係 式
(7.64a) (7.64b) か ら,Aμ
とZμ に 対 す る 繰 り込 み の 引 き 算 項 が 導 け て,次
の よ う に 表 せ る.
(7.65)
(7.66) (7.67a) (7.67b)
(7.68) た だ し,sW2=sin2θW,cW2=cos2θWで sin2θWの
定 義 式(7.39)を
と を 示 し,Zボ 7.8(b)).同
あ り,最
使 っ た.δZAZは,Z成
後 の 式 を 導 く に あ た っ て は, 分 がAの
中に 混 入す る こ
ソ ン が 直 接 電 磁 カ レ ン トJγμ と結 合 す る 相 互 作 用 を 与 え る(図 様 に δZZAは,フ
ォ ト ン が 直 接 中 性 カ レ ン トJNμ と結 合 す る 項 を
与 え る(図7.8(c)).ど
ち ら も,高
次 ル ー プ 効 果 と し て 現 れ る γ-Z混
ΣγZ(q2)の 引 き 算 項 と し て 現 れ る.結
局,O(α)の
ル ー プ と 引 き 算 項 の 寄 与 を,式(7.55)に
合 項
高 次 補 正 を入 れ た伝 播 関 数 の
対 応 す る形 で 書 く と次 の よ う に要
約 で き る.
(7.69) こ こ に,a,bはW,Z,A(=γ)を は,ゲ
表 し,δZaa=δZaで
ー ジ 不 変 性 に よ り Σγ γ(0)=0が
は 必 要 な い.引
あ る.フ
保 証 さ れ て い る の で,質
ォ トンの 場 合 量 引 き算 項 δmγ2
き 算 項 を 入 れ て 正 則 化 し た ル ー プ 関 数 を 下 に ま とめ て お く.
(7.70a) (7.70b)
(7.70c) (7.70d) 引 き 算 項 は 次 の 条 件 を 要 求 し て 決 め ら れ る.ま mZに
ず,3個
の パ ラ メ タ ーe,mW,
対 して
(1) 電 子 の 結 合 定数eは テ ッ ク ス で のq2=0に (2),(3) W,Zの
トム ソ ン 散 乱 で 決 ま る 値,す
な わ ちe-e-γ
ヴ ァー
お け る値 で 定 義 さ れ る.
伝 播 関 数 が,q2=mW2,mZ2で
波 動 関 数 繰 り込 み 条 件 は,QEDで (4) フ ォ ト ン の 伝 播 関 数 が,質
極 を もつ.
の 繰 り込 み 議 論 に 合 わ せ る よ う に し て, 量 殻 上(q2→0)で-igμν/q2に
な る よ うに
規 格 化 す る. (5) 実 フ ォ ト ン に はZボ
ソ ン の 混 合 が な い.
と い う 条 件 を 課 す. 条 件(2),(3)は,
(7.71a) (7.71b) を 与 え る.条
件(4)は
(7.72) 条 件(5)は,
(7.73) 他 の 引 き 算 項 は,(7.65)∼(7.68)の
関 係 式 か ら 導 け る.ま
とめ る と
(7.74a) (7.74b) (7.74c) (7.74d) (7.75a) (7.75b)
(7.75c) 最 後 に,条 件(1)に
よ る電 荷 繰 り込 み の 条 件 をみ よ う.こ れ に は ヴ ァ ー テ ッ
クス 関 数 の 計 算 を必 要 とす るが,一 般 化 した ワ ー ド恒 等 式 に よ りフ ェ ル ミオ ン の 波動 関 数 の 再 規 格 化 部 分 と関 係 が つ き,結 果 は フ ェ ル ミオ ン種 に 関 係 な く
(7.76) と な る14).フ で(付
録J.42a),上
7.3.4 Δrの a. Δrを
ェ ル ミオ ン ル ー プ の み を 問 題 に す る 場 合 は,ΣγZ(0)=0で の 関 係 式 はQEDの
評
あ るの
電 荷 の 繰 り込 み 条 件 と 同 じに な る.
価
ミュ ー オ ン崩 壊 計 算 す る た め に,ま
ずGFの
ミ 相 互 作 用 の ボ ル ン 近 似(付 録(C.49)参
定 義 を 思 い 起 こ そ う.GFは,4-フ 照)にQED補
ェル
正 を加 え た 式 が μ 崩 壊
の 実 験 値 を 与 え る と い う 条 件 で 定 義 さ れ る17).
(7.77a) (7.77b)
(a)
(b)
(c) 図7.9 μ-崩壊 に お け る さ ま ざ ま な 高次 補 正 図 (a) Wの
自 己エ ネ ル ギー,(b)
ヴ ァー テ ッ クス 補 正,(c)
箱型図
(7.77c) こ の 定 義 式 に は,純 粋 な電磁 相 互 作 用 の 補 正 は 入 っ て い るが,電 弱 相 互 作 用 の 補 正 は 入 っ て い な い(仮 想 フ ォ トン とW,Zの
混 在 す る補 正 は電 弱 相 互 作 用 補
正 の 中 に含 め る).μ 崩 壊 に対 す る 弱 い 相 互 作 用 の 高 次 補 正 に は, (1) Wの
伝 播 関 数 の 自 己 エ ネ ル ギー 補 正(と
ば れ る.図7.9(a)) (2) ヴ ァー テ ッ ク ス補 正(図7.9(b))
きに 間 接(oblique)補
正 と呼
(3) 箱 型 図 に よ る補 正(図7.9(c)) の3種
類 が あ る.(2),(3)を
(2),(3)の
ま とめ て,直
寄 与 は 小 さ い の で,以
接(direct)補
正 と 呼 ぶ こ と も あ る.
下 の 議 論 か ら は は ず し必 要 に 応 じて 結 果 の
み つ け 加 え る こ と に す る. ミュ ー オ ン 崩 壊 の 振 幅 を 標 準 理 論 で 書 き 下 ろ し,Wボ
ソ ンの 自 己エ ネ ル
ギー を取 り入 れ る と
(7.78) こ こ に,JW-
JW+は
し た も の で あ る.す
デ ィ ラ ッ ク の 平 面 波 解 に よ る カ レ ン トの 積 を 形 式 的 に 表 なわ ち
(7.79) 一方
,4フ
ェ ル ミ相 互 作 用 に よ る ボ ル ン 近 似 式 は
(7.80) で あ る の で,(7.42)のΔrの
定 義 式 と比 較 し て,
(7.81a) と 表 さ れ る.こ
こ で,…
はWの
型 図 か ら の 補 正 を 表 し,第2行 (7.74),(7.75)を
自 己 エ ネ ル ギ ー 以 外 の ヴ ァ ー テ ッ ク ス や,箱 目 を 導 く に は(7.59b),(7.75b)を
使 っ た.
使 っ て 書 き 直 す と,
(7.81b) た だ し,こ は,Wの
こ で は Σ はReΣ
の こ と と 了 解 す る.上
自 己 エ ネ ル ギ ー 効 果 の ほ か に,フ
式 を 眺 め れ ば,Δrの
中に
ォ ト ン の 自 己 エ ネ ル ギ ー,Zの
自
己 エ ネ ル ギ ー が 入 っ て い て,こ
れ らが す べ て互 い に関 連 しあ っ て い る こ とが わ
か る.こ
ェ ル ミ オ ン な ど の ル ー プ か ら計 算 で き る(付
J14)).
れ ら の 関 数 Σabは,フ
録
最 後 の 項 は す で に 述べ たΔ ρに 等 し い.こ れ を見 る に は,荷 電 ボ ソ ン結 合 定 数 がW伝
播 関 数 の補 正ΠW(q2)を
受 け,中 性 カ レ ン ト結 合 定 数 はZの
数 の 補 正ΠZ(q2)を 受 け る こ とに 着 目 して,ρ の定 義 式(7.45)か
伝播 関
ら
(7.82) と な る が,一
般 に はq2=0で
の 値 を以 っ て ρ と定 義 す る の で,上
式 でq2=0と
お くと
(7.83) が 得 ら れ る.実
際 の 計 算 に よ れ ば,q2≪mt2で
差 は 無 視 で き る.Z共
あ る 限 りΔ ρ(q2)とΔ
鳴 以 下 の エ ネ ル ギ ー で は,こ
ρ(0)と の
のΔ ρ が 放 射 補 正 の 主 役 を
演 じ る. Zの
フ ェ ル ミ オ ン ル ー プ に よ る 自 己 エ ネ ル ギ ー は,実
項 に 属 す る ア イ ソ ス ピ ン カ レ ン トの 寄 与 と,電 よ り な っ て い る.そ
こ で,相
際 は,Wと
同 じ 多重
磁 カ レ ン トの 寄 与 と そ の 干 渉 項
互 関 係 を 明 ら か に す る た め に,
で あ る こ とに 留 意 し て 結 合 定 数 部 分 を 抜 き 出 し て
(7.84a) (7.84b)
(7.84c) (7.84d) の よ う に 書 き 直 す.Σ11や
Σ33は,ゲ
イ ソ ス ピ ン 成 分 を 示 す.(7.83)に
ー ジ ボ ソ ン に 結 合 す る フ ェ ル ミオ ン の ア
入れ る と
(7.85) こ れ か ら,Δ ρ は ア イ ソ ス ピ ン の 破 れ を 表 す 量 で あ る こ と が わ か る.ア ピ ン 部 分 は,カ
イ ラ ル 結 合 で あ る の で,フ
(Σ11(0)や Σ33(0))はmf2/mW2に 以 外 の 寄 与 は 無 視 し て よ い.ア =Σ33で
あ り,Δ ρ=0と
な る.実
比 例 す る.こ
イソス
ェル ミオ ン ルー プ か らの 寄 与 の 場 合 ト ッ プ と ボ トム の 二 重 項
イ ソ ス ピ ン が 破 れ て い な け れ ば(mt=mb),Σ11 際 の 計 算 に よ る と,mt≫mbを
考 慮 し て,
(7.86) に な る(付 録(J.46a)).
(7.87) と い う 簡 略 式 を 定 義 す れ ば,Δγ
の 式(7.81)は,
(7.88) と書 き直 せ る.電 磁 相 互 作 用 の 有 効 結 合 定 数 は
(7.89) で あ る か ら,
を使 っ て 書 き直 し
(7.90) を入 れ れ ば
(7.91) た だ し,ε2,ε3は 次 式 で 定 義 さ れ る 量 で あ る.
(7.92a) (7.92b) こ こ で Σ3Q'の 係 数 は 実 はQI3で
あ り,2重
等 し く な る こ と を 使 っ た.(7.91)の (付 録J参
照).第3項
*6) α の 代 わ り にGFで 照),区
項 に つ い て 和 を と る と Σ33'の 係 数 と
各 項(Δ α,Δρ,ε2,ε3)はす べ て 有 限 で あ る
以 下 は 小 さ い 量 で あ る の で,ま 書 いた 量 は
,あ
と め て,
る種 の 補 正 が す で に 入 っ て お り(§7.3.5の
別 す る た め にΔ ρ と書 くこ と も あ る.
議 論 を参
(7.93) と書 く.要 約 す る と,Δrの
中 身 は,微
細 構 造 定 数 α をq2=0か
で 動 か し た ス ケー ル 変 化 に 対 応 す る純 粋 なQED補
らq2=mZ2ま
正 部 分 と,(t,b)を
ループ
とす る ゲ ー ジ ボ ソ ンの 真 空 偏 極 効 果 が 主 要 項 で あ る こ とが わか っ た. b. 電 磁 相 互 作 用 の 有 効 結合 定 数 Δα に対 す る フ ェ ル ミオ ン ルー プ の 寄 与 は,
(7.94) で 与 え ら れ る(付 録(J.44)).こ が で き る が,ク
の 式 は,レ プ トン に 関 して は 正 確 な 数 値 計 算
ォ ー クの 質 量 に は不 定 性 が あ るの で,こ の ま ま で は正 確 な 評価
が で き な い.し か し,幸 い な こ とに分 散 式 を使 え ば 実 験 測 定値 で書 き直す こ と が で き る.
(7.95) 光 学 定 理 に よれ ば 前 方散 乱 振 幅 の 虚 数 部 分 は全 断 面 積 に 比例 す る.散 乱 振 幅 は ボ ル ン近 似 で は 虚 数 部 を含 まず,高 じめ て 虚 数 部 が 出 現 す る.す
次 の 項 つ ま りル ー プ の 寄 与 Σ を 入 れ て は
な わ ちImΣγγとee→
ハ ドロ ン全 断 面 積 の 間 に
は あ る関 係 が 存 在 す る.簡 単 な 計 算 に よ り
(7.96) が 示 せ る.σ ∼1/sで
あ る か ら,積
分 の 収 束 を 考 え て,1回
引 き算 を し た 分 散
式 を 使 う と, ハ
こ の 式 を 使 え ば,
ド ロ ン
(7.97)
の ハ ドロ ン部 分 は実 験 値 か ら
計 算 で き る14,15). (ハ ドロ ン)
(7.98) 形 式 的 に は,式(7.94)に とQCD補
正 因 子 を,
よ っ て 上 の 数 値 を 再 現 す る よ う に,ク
ォー クの 質 量
(7.99)
と 決 め る こ と が で き る.ト は,mt2≫mZ2の
ッ プ ク ォ ー ク は 十 分 重 い の で,Δ
極 限 で(mZ2/mt2)α
に 比 例 し無 視 で き る.レ
αに 対 す る寄 与 プ トン とハ ドロ
ン の 両 方 の 寄 与 を ま とめ る と
(7.100) c. 高 次 効 果 と数 値 評 価 以 下 に,さら
に 高 次 の 補 正 を 考 慮 し た う え で,Δρ
に対 す る トップ の ル ー プ
と ヒ ッ グ ス の ル ー プ の 数 値 的 に 無 視 で き な い 寄 与 を 示 す14,15).
(7.101) (7.102) γに 対 す るΔ ρの 寄 与 は
(7.103) で 与 え ら れ る.Δ
γに は ゲー ジ ボ ソ ン の 自 己 エ ネ ル ギー 効 果 の ほ か に ヴ ァー
テ ッ ク ス 補 正 や 箱 型 図 か ら の 寄 与 も あ る(図7.9(b),(c))の
で,一
緒 に ま と
め て
(7.104) と書 く こ と に す る.ヒ
ッ グ ス の 寄 与 はlnmHに
比 例 す る の で,放
射 補正 の
ヒ ッ グ ス質 量 に 対 す る感 度 は非 常 に 悪 い.数 値 的 に は,
(7.105) Δ γremはΔγHiggsの 中 に 含 め た.こ
の 数 値 評 価 か ら わ か る よ う に補 正 の 大 部 分
は,電
磁 微 細 構 造 定 数 α(μ)の ス ケ ー ル0か
を 通 じ て の,ト 7.10にΔγ
をmtの
し て,す
の 移 動 に 伴 う 変 化 と,ρ
ッ プ 質 量 の ル ー プ 補 正 に 伴 う 寄 与 で あ る こ と が わ か る.図 関 数 と し て 図 示 し た14).ま
外 の 定 義 を 使 っ た と き のΔγ GeVと
らmZ2へ
た,sin2θWと
し て 式(7.39)以
も 図 示 し て あ る.mt=175±5GeV,mH=mZ
べ て の 寄 与 を 合 計 す る と6)
(7.106) Δ γの 不 定 性 は,第1の の 誤 差 がee→
誤 差 が ト ッ プ 質 量 の 不 定 性(175±5GeV)か
ハ ド ロ ン 断 面 績 の 実 験 デ ー タ に 起 因 す る α(mZ)の
ら,第2 不 定 性
か ら く る.
7.3.5 次 にZ交
改 良 ボ ル ン 近 似14,15) 換 反 応,特
にLEPで
フ ォ ト ン の 関 係 を 考 察 す る.ま ン 交 換 過 程 の み が 効 く.高 は す で に 述 べ た.中
のe+e-→Z→ ず,最
μμ 反 応 を 例 と し て,Zと
低 次 で は,1個
次 効 果 の う ち,自
性 カ レ ン トの 場 合 は,フ
図7.10
のZ交
換お よび フ ォ ト
己 エ ネ ル ギー に よ る補 正 の 取 扱 い ォ ト ン もZも
ともに同 じフェル
の 定 義 に よ る放 射 補 正 Δγ のmt依
存 性14)
Δγ:sin2θW=[1-(mW2/mZ2)] ΔγW:sin2θW=sin2θWMS Δ γ:sin2θW ΔγLR:ALRよ
り決 め るsin2θl
ミ オ ン 対 に 結 合 で き る か ら,Zと
γ の 混 合 が 起 き る.つ
離 し て 議 論 で き な い と こ ろ がW交 合 の 反 応 とZ交 (c))を
換 の 場 合 と 異 な る.γ
ま り,γ
とZを
切 り
交 換 に よ るJγμJγμ 結
換 に よ るJNμJNμ 結 合 の 反 応 の ほ か に,JNμJγ μ結 合(図7.11
も 含 む よ う に な る.
(b)
(a)
図7.11
(d)
(c) ee→ff反
(a) γ交換 項,(b)
Z交
応での中間状態 換 項,(c),(d)
γ-Z混 合 項
a. 実 効 ワ イ ン バ ー グ 角 ee→ff散
乱 振 幅 を 書 き 下 ろ し て み よ う.フ
ェ ル ミオ ン波 動 関 数 で つ くっ
た カ レ ン トの 積 をJγ Jγ(左 側 が 外 向 き カ レ ン ト,右 で 表 し,O(α2)の
側 が 入 射 カ レ ン ト)な
ど
補 正 を 入 れ た 式 を 書 き下 ろ す と
(7.107) (7.108a) (7.108b) (7.108c) と な る の で,γ-Z混 ン トJNの
合 効 果 はZボ
ソ ン か ら み た 場 合,Zの
中 のJγ が 変 化 し て,JN→JNに
=J3Lμ-QsW2Jγ
結 合 す る 中性 カ レ
な っ た と見 な す こ と が で き る.JNμ
μで あ る こ と を 考 慮 す る と,こ
れ は ワ イ ンバ ー グ角 の 置 き換 え
(7.109) と 同 等 で あ る.Z共
鳴 の とこ ろ で は
(7.110) で あ る が(付
録(J.41)),第2,
3項 は 小 さ い の で,
(7.111a) (7.111b) と な る.以
上 の 議 論 か ら,γ-Zの
ン バ ー グ 角sW2を
混 合 効 果 は,中
再 定 義 し てsW2と
性 カ レ ン ト中 に 現 れ る ワ イ
置 き換 え る こ と と 同 等 で あ る こ と が わ
か っ た. b. 改 良 ボ ル ン 近 似:実 次 に,式(7.108)の 式(7.42)に,Δ
効結合定 数
有 効 結 合 定 数 の 性 質 を 明 ら か に す る た め に,Δ
γの 定 義
γ の 計 算 式 を代 入 し て み よ う.
(7.112) こ の 式 を 変 形 し て(7.111a)を
入れれば
(7.113a) と な る.
(7.114) を考 慮 す る と,
(7.113b) が 成 立 す る. 次 に,実 効 結 合 定 数
を 評 価 す る.s〓mZ2と
す る と,
の 主 要 な寄 与 は 引 き算 項 の 中 に あ り,
(7.115)
が 示 せ るの で,実 効 結 合 定 数 は
(7.116) 結 局,散
乱 振 幅 の 式(7.107)は,s≒mZ2付
近 で
(7.117) と書 き 直 せ る こ と に な り,放 え ば,実
射 補 正 を 入 れ た 結 合 定 数α,sW2,伝
播関数 を使
効 的 に ボ ル ン 近 似 の 式 を 再 現 す る.
c. αかGFか? こ こ で 興 味 深 い の は,Z交
換 の 結 合 定 数 と し て,出
発 点 をgZ=e/sWcWに
と った と きの 放 射 補 正 は
(7.118) こ れ は Δα を 含 ん で い て 相 当 大 き い(∼4%).と
こ ろ が,結
合 定 数 をGFmZ2で
書 き 直 し た 場 合 の 放 射 補 正 は,
(7.119) で あ り,出
発 点 の ボ ル ン 近 似GFmZ2か
こ と で あ る.こ
の こ とは,繰
り込 み ス ケ ー ル μ を0か
α は 大 き な 補 正 を 受 け る の に 反 し,GFは つ ま り,出 なQED補
ら の 変 化 は,Δ
ρ(∼1%)だ らmZ2ま
け しか な い で 変 え た と き,
ほ と ん ど 補 正 を 受 け な い こ と を 示 す.
発 点 の ボ ル ン 近 似 の 段 階 で α の 代 わ りにGFを
使 っ た 場 合 は,純
粋
正 は 最 初 か ら 取 り 込 ん で い る こ と に 相 当 す る.
と も あ れ,ボ
ル ン 近 似 の 式 で あ っ て も,sW2有
GNmZ2=ρGFmZ2を
使 っ て も 同 等 で あ る)を
効 微 細 構 造 定 数α(あ
使 用 す れ ば,自
る補 正 は す べ て 取 り 入 れ ら れ て い る こ とが わ か っ た.こ
るいは
己 エ ネ ル ギー に よ
れ に,伝
播 関数 内 の 崩
壊 幅 に エ ネ ル ギ ー 依 存 性 を 付 加 す る こ と に よ り放 射 補 正 の 重 要 部 分 は す べ て 取 り 入 れ る こ と が で き て,前
節 のCERN,
LEPで
の デ ー タ 解 析 に 改 良 ボ ル ン近
似 式 を 使 用 す る こ と の 正 当 性 が 示 せ た こ と に な る.
d. トッ プ ク ォ ー ク の 効 果 ワ イ ンバ ー グ角 の放 射 補 正 値 を求 め,観 測 値 と比 較 す る に あ た っ て,mWが 大 き な不 定 性 を もつ 現 在,初 期 値 と し て 次 式 で定 義 され るs0か ら 出 発 す る の が 便 利 で あ る(sMZと
も書 く6)).こ のs0は 定 義 に よ って トップ ク ォー クの 寄 与
を含 まな い.
(7.120a) 数値 を入れ る と
(7.120b) で 主 要 な 誤 差 は,mZの
値 か ら で は な くα す な わ ち(ee→
積 の 実 験 的 誤 差 か ら く る.s02は(7.43)で,Δ か ら,sW2=1-mW2/mZ2と
ハ ドロ ン)の
断面
γ=Δ α と し た と き の 値 で あ る
の 関 係 は,
(7.121) sW2の
測 定 精 度 はmW2で
決 ま り不 定 性 が 大 き い か ら,よ
き る 観 測 量 と し て,Zの (7.31)を
と り あ げ る.放
り精 密 な 測 定 の で
レ プ ト ン 崩 壊 や 非 対 称 か ら 直 接 決 め ら れ るsin2θl 射 補 正 と し て ゲ ー ジ ボ ソ ン の 真 空 偏 極 補 正 が 大 き く,
ヴ ァ ー テ ッ ク ス 補 正(κl)と 箱 型 図 補 正(κbox)は 小 さ い と し て 無 視 す る 近 似 で は,
で あ る か ら,sW2の
(7.91)と(7.110)を
表 式(7.109)を
入 れ,
使 って書 き替え る と
(7.122) と な る.第3項
は 第2項
に 比 べ 小 さ い の で,こ
プ と ヒ ッ グ ス の 寄 与 は 式(7.101)に 正 項 は ∼1%程
度 で あ る の で,そ
こ と に よ っ て,ト
よ っ て 与 え ら れ て い る.ト
ップ に よ る補
れ を上 回 る精 度 の 実 験 を して上 式 と比 較 す る
ッ プ に よ る 放 射 補 正 効 果,し
る こ と が 可 能 で あ る.1990年
こ で は 無 視 す る.Δ ρ へ の ト ッ
代 前 半 は,こ
た が っ て ト ッ プ の 質 量 を推 定 す
の よ う な 問 題 意 識 で 議 論 さ れ た が,
ハ ド ロ ン 反 応 に よ る 生 成 で ,ト
ッ プ がCDFグ
れ,質
決 め ら れ た の で6,18),そ れ 以 後 は ヒ ッ グ ス 粒
量 がmtop=175±5GeVと
子 の 寄 与 に 関 心 が 移 っ た.ト
ル ー プ に よ り1994年
ップ の 質 量 値 を 固 定 す れ ば,今
春 発 見 さ
度 は ヒ ッグ ス粒 子
の 質 量 を 推 定 す る こ と が 可 能 と な る((7.102)を
(a)
(b)
(c)
(d)
図7.12 全体(a)は
7.3.6
参 照 せ よ).
Zffヴ
(e)
ァー テ ッ クス の 補 正
ボ ル ン項(b)と
高 次 の 項(c)∼(e)の
ヴ ァ ー テ ッ クス 補 正
a. ν μe散 乱 とZの
レ プ トン 崩 壊
レ プ トン に 関 し て ヴ ァ ー テ ッ ク ス 補 正(図7.12)を sin2θl(l=レ
プ ト ン 種),さ
似 のsin2θlに
焼 き 直 し た 量 を,実
る.第4章
求 め る の み な ら ず,断
ン トに 現 れ るsin2θWの れ ば,sin2θW(νe)は,Z共 る こ と が わ か る.細
κlsW2=
効 的 ワ イ ン バ ー グ 角sin2θeff,l≡sl2を
量殻
面 積 を ボ ル ン 近 似 式 で 表 した と き中 性 カ レ
値(=sin2θW(νe))を
か い こ と を い え ば,ニ
も求 め て お い た .上
の 議 論 か らす
み 異 な る低 エ ネ ル ギ ー 版 で あ
ュ ー トリ ノ の ヴ ァ ー テ ッ ク ス に は
ニ ュ ー ト リ ノ の 荷 電 半 径 に よ る 寄 与 が 効 き ,ee反 が 効 く と い う 差 が あ る が,両
定義 す
ュ ー ト リ ノ散 乱 の デ ー タ か ら,質
鳴 で のsin2θeのq2の
果 と し て,mtの
施 す と,sW2→
ら に す べ て の 理 論 的 補 正 を 入 れ た う え で ト リー 近
の 中 性 カ レ ン トの 章 で は,ニ
のsin2θWを
る14).結
和
応 のsin2θeに
は γ-Z混
合
者 は ほ と ん ど キ ャ ン セ ル して 差 は わ ず か で あ
値 に よ らず に
(7.123) が 成 立 す る.CHARMII19)の
値(420a)
(7.124) の 値 は,Z共
鳴 に お い て レ プ トン の 前 後 非 対 称AFBlな
ど か ら決 め た 値sl2=
0.2322±0.0016,9)と b. b-ヴ
よ く あ っ て い る.
ァーテ ックス
ヴ ァ ー テ ッ ク ス の 補 正 は 通 常 は 非 常 に 小 さ い.た ク ォ ー ク 中 間 状 態 が 効 くた め に,例
だ し,f=bの
と き はt
外 的 に 大 き く な る(図7.1320)).
(7.125a)
(7.125b) こ れ ら の 効 果 は,b以
外 の 場 合 の ρ やsin2θWを
知 っ て い る と き は,上
式 を知
らず と も
(7.126a)
(a)
図7.13
(b) Zbbヴ
ァー テ ッ ク スの 補 正
〓クォ ー クの 中 間 状 態 が あ るの で 大 き な補 正 とな る.
図7.14
ワ イ ン バ ー グ 角 のmt依
存 性14)
点 線:sinzBw=1−(mw2/mZ2) 実 線:sin2θl(レ
プ ト ン)
破 線:sin2θb(b−
ク ォ ー ク)
(7.126b) に よ っ て,簡
単 に 計 算 で き る.b-ヴ
ァ ー テ ッ ク ス が,Zの
片 側 に の み あ る場
合 の 振 幅 に つ い て は,
(7.127) と す れ ば よ い.図7.14に
各 種sin2θfと
よ り ど う 変 わ る か を 示 し た14).こ 比 べ て,は
る か にmt依
質 量 殻 で 定 義 し たsin2θWが,補
の 図 か ら わ か る よ う に,sin2θfはsin2θWに
存性 が 小 さ い こ と が わ か る.ま
た 図7.15に
ど の 補 正 に よ る 影 響 を 図 示 す る9).
(a)
(c)
図7.15 Γz,Γl,Rh,l,υl2/al2のmt,mH依
mHの
中 央 値 は300GeVで100∼1000GeVの
正 に
(b)
(d) 存 性9)
変 化 を 帯 で 示 す.αs=0.118±0.008
崩壊 幅 な
7.3.7 MS処
方 の ワイ ンバ ー グ 角14,21)
い ま ま で議 論 し たsin2θW,sW2,sin2θfは,電
弱 標 準 理 論 の 枠 内 に 閉 じて い
る場 合 は,非 常 に 定 義 が 明 快 で あ り実 験 的 に も正 確 に決 め られ る 量で あ る.し か し,大 統 一 理 論 を論 じた り,標 準 理 論 を越 え る新 しい 現 象 の 探 索 な ど を問 題 に す る と き は,必 ず し も便 利 で は な い.大 統 一 理 論 を議 論 す る場 合 は 明 らか に QCDで
の 処 方 と合 わ せ た方 が有 利 で あ る.QCDで
は 閉 じ込 め 効 果 の た め 質 量
は 明確 に 定 義 で き る概 念 で は な く,基 準 点 が な い た め 質 量 殻 で の繰 り込 み 処 方 は不 可 能 で あ り,通 常"修 J).MS処
正 最 小 引 き算(MS)の
処 方"が
用 い ら れ る(付 録
方 で は,発 散 の 処 理 が 個 々 に 行 え る の で 計 算処 理 は 簡 単 で あ る が,
代 償 と して 各 物 理 量 は μ依 存 性 を も ち,観 測 量 との 関 係 は 自明 で は な い. 以 下,MS処 MS処
方 に お け るパ ラ メ ター は ハ ッ ト(^)を
方 で発 散 を処 理 した 放 射 補 正 量 に はMSの
つ け て 表 す こ とに し,
指 標 を つ け て,質
の 量 と区 別 す る もの とす る.質 量 殻 処 方 の 諸 量 との 関 係 は,MS処 mや
電 荷eに
量殻処 方 方での質量
放 射 補 正 を 入 れ た 後 の 電 荷(の トム ソ ン極 限)や 質 量 が,観
測値
を与 え る とい う条 件 で得 られ る.す な わ ち
(7.128a) (7.128b) (7.129) こ れ ら の 関 係 式 は,質 て い る.こ
の 式 か ら,e,
が わ か る.Z共 用 す る と,上 値 で あ る が,完 MS処
量 殻 処 方 で の 放 射 補 正 関 係 式(7.71),(7.76)に mも
ま た μ の 関 数(e=e(μ),m=m(μ))で
対応 し あ るこ と
鳴 で の デ ー タ を 扱 う と き の 自 然 な ス ケ ー ル と し て μ=mZを 式 か ら 求 め たα=e2/4π
は,質
量 殻 処 方 で のα
採
と ほ とん ど 同 じ
全 に 同 値 で は な い(α-1=128.88±0.09,α-1=127.88±0.09).
方 の パ ラ メ タ ー も ま た,ボ
係 式 を 満 た す の で,結
ル ン近 似 で は 質 量 殻 処 方 に お け る と 同 じ 関
合 定 数 の 比 でsin2θWを
定 義 し て,こ
れ をsin2θMSと
表
した と き
(7.130) sin2θMSは,sin2θW,sW2と
書 く こ と も あ る.μ=mZに
お け るsWをsZ2と
書 く
こ と に す る と,Sz2と に(7.128)を
質 量 殻 上 の
と の 関 係 は,式(7.130)
入 れ れ ば 関 係 づ け る こ と が で き て,O(α)で
は14,21),
(7.131a) (7.131b)
(7.132) で あ る.Δ
ρ とΔρ と の 差 はO(α2)で
あ る.(7.111)と
比 較 す れ ば,
(7.133) Sz2とSw2は(7.42)に
よ っ て も関 係 づ け る こ と が で き る.す
なわち
(7.134a) (7.134b) (7.134c) Δγ は 質 量 殻 処 方 のΔγ に 対 応 す るMS処 出 発 点 に(α,GF,mz)を
方 の 量 で あ る.Δγ
と る か(α,GF,mw)を
とΔγwの
と る か の 違 い で あ る.主
差 は, 要 項 の
み を書 き下 ろす と
(7.135a) (7.135b) と な り,mt依
存 性 がΔγ
と 異 な る こ と が わ か る.図7.10に
図 示 し て あ る が,Δγwのmt依 表7.3に 第1行
は,式(7.43)か
ドロ ン コ ラ イ ダ ー に よ るW生 のmt依
存 性 を 図7.16に
成 で のmwの
掲 げ る6).種 々 の 過 程 か ら 求 め たSz2の
結 合 定数αs(Mz)も
得 ら れ た が,こ
0.122±0.007と
のMwと
は,ハ
値 が 整合 す る よ
得 ら れ,CDF/D0グ
ル
よ く合 っ て い る こ と が わ か る6).さ
ら
パ ラ メ タ ー と して 同 時 最 適 化 し0.1214±
れ は ジ ェ ッ ト現 象(後
よ く合 っ て い る.す
掲 げ る6).
測 定 値 を 使 う 方 法 で あ る.sin2θMS
う に ト ッ プ 質 量 の 範 囲 を 決 め る とmt=173±4GeVが
0.0031が
よ びsin2θMSを
ら 求 め る 方 法 で あ り,第2行
ー プ に よ る 直 接 生 成 の 値175±5GeVと に こ の と きQCDの
も
存 性 は ほ とん ど な い こ とが わ か る.
主 な 過 程 の 実 験 値 か ら 計 算 し たsin2θwお
のMzと
はΔγ, Δγwを
述 第8章)か
ら得 ら れ る 値
な わ ち 種 々 の 過 程 か ら求 め た ワ イ ン バ ー グ角,
図7.16
sin2θw(Mz)の 種 々 の 過 程 よ り定 め た 最 適 値(黒 塗 部 分)はCDF/D0 グ ル ー プ に よ るmtの 直 接 測 定 と整 合 して い る6).
表7.3 種 々 の 過 程 よ り決 め た ワ イ ンバ ー グ 角6)
各 種 反 応 デ ー タ を 総 合 的 に 最 適 化 し て 決 め た 値. 計 算 で は,mH=mz, mt=173±4GeV, た.
αs=0.1214±0.0031を
仮 定 し
ト ッ プ 質 量,αs(Mz)の 一 致す る
.GWS理
値 な ど が,す
べ て 電 弱 標 準 理 論 の 予 言 と誤 差 範 囲 内 で
論 の 実 験 デ ー タ に 裏 づ け ら れ た 正 当 性 は,い
ま やQEDに
匹 敵 す る と い っ て も 過 言 で は な い で あ ろ う. Sz2, Sw2sin2θlの 世 界 の 平 均 値 は,
(7.136a) (7.136b) (7.136c) で あ る6).理
論 的 に はsin2θl=Sz2+0.00029が
と っ たS02に
は も と も とee→
性 が あ り(式(7.120b)参
値 評 価 の 出発 に
ハ ドロ ン の 断 面 積 か ら く る0.00022だ
照),こ
で あ る の で,Sf2=sin2θfとSz2は
言 え る が,数
けの不 定
の 不 定 性 は す べ て の ワ イ ンバ ー グ角 に 共 通 実 用 上 は ほ とん ど 区 別 せ ず に 同一 視 して よ
い.
い ま まで に,い
ろ い ろ な種 類 のsin2θwの 定 義 が で て き た.ど れ か 一 つ 決 め
れ ば 他 は計 算 で き る量 で あ る の で,ど の 定 義 も数 学 的 に は 同 等 で あ る.考 慮 の 対 象 とす る物 理 的 過 程 に よ っ て 異 な っ た値 を与 え るの で,慣 れ な い うち は 混 乱 す るが,ま
とめ る と次 の よ うに い え る.放 射 補 正 の う ち,大
に 電 磁 相 互 作 用 に よ る
きな 寄 与 は,純 粋
とゲ ー ジ ボ ソ ン の 自 己 エ ネ ル ギー 補
正 の 中 の トップ ク ォー クに よ る寄与Δρtopの み で あ り,そ れ 以 外 の 補 正 を小 さ い と して無 視 す る 限 り
(7.137) が 成 り立 つ.し
たが っ て,非 常 に 細 か い議 論 をす るの で な い 限 り,は じめ の 二
つ の 定 義 に よ る ワ イ ン バ ー グ角 は 同 等 で あ る と考 え て よ い で あ ろ う.考 慮 す る 過 程 に よ り値 の 変 わ るsin2θwは,基
本 的 な 物 理 量 と い う よ りは 現 象 描 写 に 便
利 な パ ラ メ ター と見 な す の が 正 し い.質 量 殻 に よ る 定 義 は質 量 の 単 な る 置 き換 え で あ り,何 ら新 しい 情 報 を も た らす も の で は な い.ま
た,sin2θwとS02=SMZ2,
Sf2=sin2θfはZ共
鳴 と い う限 られ た領 域 で の
実 験 量 を表 す の に便 利 な パ ラ メ ター と見 るべ き で あ ろ う.そ の 意 味 で エ ネ ル ギ ー ス ケー ル μ の依 存 性 を含 むsin2θMSは,観
測 値 との 直 接 対 応 は つ け に くい
もの の,統 一 理 論 を議 論 す る の に は 便 利 で あ り,大 統 一 理 論 との 関 連 に お い て 有 用 性 が あ る.
7.4 標 準 理 論 の 彼 方
これ ま で の 議 論 か ら,標 準 理 論 の正 し さ は疑 問 の 余 地 な く実 験 的 に裏 づ け ら れ た と い っ て よ い で あ ろ う.と す れ ば 次 に わ れ わ れ の と る べ き態 度 は,精
密
デ ー タ の標 準 理 論 予 想 値 か らの ず れ を 追 求 し,そ こか ら標 準 理 論 で は 説 明 で き な い新 現 象 や 標 準 理 論 を越 え る新 理 論 の 手 が か りをつ か む こ とで あ る.新 現 象 は通 常 現 在 の エ ネ ル ギー ス ケ ー ル を越 え た とこ ろ に あ る と考 え られ,大
きな質
量 を もつ 新 粒 子 と して現 れ る.大 き な 質 量 効 果 は,放 射 補 正 の真 空 偏 極 効 果 を 通 し て 見 る こ と が で き る の で,新 S, T, U(ま
現 象 を 探 る の に 便 利 な パ ラ メ ター と して,
た は ε1,ε2,ε3)が提 唱 さ れ た22),*7).
(7.138a) (7.138b) (7.138c) Δρ, ε2, ε3は 既 出 の パ ラ メ タ ー で あ り,標 ヒ ッ グ ス の 寄 与 は 付 録(J.50)に (あ る い は,ε1, ε2,ε3)は,通 し て 定 義 さ れ(す を 表 す.た
与 え て あ る.こ
だ し,ヒ
Zの
*7) MS処
と表 す.
法では
ど),そ
T, U
れ ぞ れ 異 な っ た種 類 の効 果
ッ グ ス が 未 発 見 の 現 状 で はSTUを
崩 壊 幅Γl,前
を 与 え れ ばυlとαlが
こ で 新 し く導 入 し たS,
常 標 準 理 論 以 外 の新 理 論 に お け る真 空 偏 極 効 果 と
な わ ち,Snew=S-SSMな
る 手 段 と し て 使 う こ と も で き る.S, え ばmw2,
準 理 論 で の トップ クォ ー ク お よ び
T,
Uは,実
後 非 対 称AFBを
決 め ら れ,
ヒ ッ グ ス の質 量 を決 め
験 的 に は 三 つ の 観 測 量,例
与 え れ ば 決 め ら れ る.ΓlとAFB
(7.139a) (7.139b) で あ る か ら((7.31)参
照),Δρ(=αT)とsin2θlが
決 ま り,
(7.140a)
(7.140b) か ら,S, Uが
決 め ら れ る((7.44),(7.91),(7.122)参
に 比 べ て 小 さ い.S, う 近 似 で は,Z共
T,
Uは,放
照).通
常Uは,S,
T
射 補正 は真 空偏極 の寄 与 が優 勢で あ る とい
鳴 の 諸 観 測 量 に 共 通 し て 現 れ る 普 遍 的 な パ ラ メ タ ー で あ り,
他 の 観 測 量 か ら も 決 め ら れ る. Tは
ア イ ソ ス ピ ン の 破 れ を 表 す 量 で,質
ばTに
寄 与 す る.Sは
量 差 の 大 きい 新 二 重 項 が 存 在 す れ
質 量 項 に よ る カ イ ラ ル 対 称 の 破 れ を 特 徴 づ け る 量 で,
二 重 項 の 質 量 が 縮 退 し て い て も値 が 大 き け れ ば 有 意 な 寄 与 を 与 え る.例 質 量 の 大 き い 二 重 項(N,
E)が
え ば,
存 在 す る と23),
(7.141) た だ し, 与 は0と
と す る.質
な る がSへ
量 が 縮 退 し て い る と,T, Uへ
の 寄 与 は 大 き い.図7.17に,T(∼
ε1)とS(∼
の寄
ε3)の2次
元 プ ロ ッ ト と標 準 理 論 お よ び テ ク ニ カ ラ ー モ デ ル の 予 言 と の 比 較 を 考 察 し た 一 例 を 示 す24).こ mH, mtを
の 図 は 標 準 理 論 の 検 証 と 見 な す こ と も で き る し,デ
推 測 す る の に も 使 え る.図
ー タか ら
か ら は 簡 単 な テ ク ニ カ ラ ー モ デ ル*8)は 否
定 で き る こ と が わ か る.
*8) ヒ ッ グ ス 粒 子 を 複 合 粒 子 と 見 な す モ デ ル の 代 表 例 ニ フ ェ ル ミオ ン と い う)が 互 作 用 を す る.テ を 生 じ る が,こ
存 在 し,テ
.質 量 の 大 き な フ ェ ル ミオ ン 族(テ ク ク ニ カ ラ ー(自 由 度NTC)を も っ てQCDと 類似相
クニ カ ラ ー 力 に よ りテ ク ニ フ ェ ル ミ オ ン 対 が 凝 縮 し て テ ク ニ パ イ オ ン れ が 標 準 モ デ ル に お け る ヒ ッ グ ス 粒 子 で あ る と す る モ デ ル.QCDと
じ く た く さ ん の テ ク ニ ハ ドロ ン共 鳴 が,質 言 す る.
量 ス ケ ー ル ∼O(1TeV)に
同
存 在 す る こ と を予
図7.17
S-T変
数 に よ る標 準 モデ ル,新
デ ー タは 楕 円 で,標 準 理 論(SM)はmtとmHを
モデ ル の テ ス ト24)
パ ラ メ タ ー と し た 四 角 で示 して
あ る.ま た1重 項 が 一 つ あ る テ クニ カ ラー モ デ ルSU(Nc)22)をNc=2,3,4に い てmtの 値 を変 え て示 して あ る. を標 準 と してδα
つ
変 え る と ど の くら い 変 わ る か も示
して あ る.
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et al.:Phys.Rev.Lett.,73(1994)25,ibid.,78(1997)2075 et
al.:ECFA
Hoogland,CERN 14)
Energy
Scan,CERN-PPE/95-10
Workshop
on
Phys.with
LEP200,ed.A.Bohm
and
W.
87-08
K.Aoki et al.:Sup.Prog.Theor.Phys.,73(1981)1-219 W.Hollik:Fortschr.Phys.,38(1990)165 W.Hollik:Precision tions
in
Tests
High
M.Bohm
Energy
and
of
the
the
Workshop
1-12,1991,ed.,M.A.P'erez
and
F.Jegerlehner:"Renormalizing
the
Advanced
Study
Institute
M.Cvetic
and P.Langacker,World
Standard
in Elementary
F.Jegerlehner:Physics
of
Advanced
Series
on
Direc
Scientific;P.Langacker,editor
A.Denner:Proc.of
Mexico,July
Standard Model,in
Physics,World
on
High
Energy
R.Herta,World
Phenomenology, Scientific
Model"in
Proc.1990
Theoretical
Physics,Boulder,Colorado,June,1990,eds. Scientific
Precision
Experiments
with
Z's,in
Prog.Part
.Nucl.
Phys.,1992,ed.A.Fassler 15)
Z
Physics
at
LEP1,ed.G.Altarelli,CERN
89-08(1989)
H.Burkhardt,F.Jegerlehner,G.Penzo 16)
A.Sirlin:Phys.Rev.,D22(1980)971 and
and
17)
W.J.Marciano
18)
CDF:Phys.Rev.Lett.,73(1994)225;Phys.Rev.,D50(1994)2966
19)
CHARM;P.Vilain
20)
A.A.Akhundov
21)
W.J.Marciano:Phys,Rev.,D20(1979)274
A.Sirlin:Phys.Rev.Lett.,61(1988)1815
et et
W.Beenakker
and
C.Verzgnassi:Z.Phys.,C43(1984)497
al.:Phys.Lett.,B335(1994)246
al.:Nucl.Phys.,B276(1986)1 W.Hollik:Z.Phys.,C40(1988)141
A.Sirlin:Phys.Lett.,B232(1989)123 S.Franchiotti
and
A.Sirlin:Phys.Rev.,D41(1990)319
G.Degrassi,S.Franchiotti 22)
M.E.Peskin
and
and
A.Sirlin:Nucl.Phys.,B351(1991)49
T.Takeuchi:Phys.Rev.Lett.,65(1990)964;Phys.Rev.,D46
(1991)381 G.Altarelli 23)
J.Ellis,G.L.Fpgli
24)
K.Hagiwara
and
K.Hagiwara:Talkat
R.Barbieri:Phys.Lett.,B253(1990)161;Nucl.Phys.,B405(1993)3 and
and
E.Lisi:CERN-TH
7448/94
A.Sirlin:Phys.Rev.Lett.,61(1988)1815 LP95,17th
Int.Symp.on
Lepton-Photon
Int.,Aug.,1995,
Beijing K.Hagiwara,D.Haidt 06331
and
S.Matsumoto:KEK-TH-512,DESY96-192,Hep
ph/97
8 ジ ェ ッ トの 性 質(ジ
8.1
わ れ わ れ は 第5章
で,QCDで
パ ー トン と ジ ェ ッ ト
は 漸 近 自 由 が 成 立 し,Q2の
摂 動 の 手 法 が 使 え る こ と を 学 ん だ.し QCD計
ェ ッ ト現 象1)
算 で 取 り扱 う パ ー ト ン(ク
か し 理 論 結 果 を 実 験 で 検 証 す る に は,
ォ ー ク と グ ル ー オ ン)と
ハ ドロ ン と の 対 応 を つ け る 必 要 が あ る .パ 測 さ れ た の は1975年 あ っ た1).ジ
ェ ッ ト と は,た
れ る 現 象 で あ る.そ さ れ た.今
で,SLACに
ー トンが ジ ェ ッ トと し て は じめ て観
お け るe++e-→q+q反
て も,現
応 にお い て で
ェ ッ トは 電 子 の 深 非 弾 性 散 乱 やpp反
日 で は エ ネ ル ギ ー が ∼5GeVを
部 分 で のQCDが 理 的 に はQCDの
応 で も観 測
超 え る よ う な パ ー ト ン は 日常 的 に
ハ ドロ ン ジ ェ ッ ト と し て 観 測 さ れ て い る .パ
な と こ ろ で,原
実 際 に 観 測 され る
くさん の ハ ドロ ン が 特 定 の 方 向 に 集 中 して 放 出 さ
の 後,ジ
は(Q2→0(7GeV/c).実
PT6GeV/c, 応 で 得 ら れ た も の を示 す.
えに
(8.7a) (8.7b)
(8.7c) (8.7d) が 成 り立つ で あ ろ う.ニ と し て(3.64)を
ュ ー ト リ ノ 反 応 の 場 合 は 特 に 簡 単 な 式 と な る.h=π
±
参 照 す れ ば,
(8.8a) こ こ に 核 子 の 中 のsク
ォ ー ク や チ ャ ー ム 生 成 の 寄 与 は 無 視 し,第2式
式 へ の 移 行 に は(8.7)を
使 っ た.同
か ら 第3
様 に
(8.8b) と な っ て,破
8.1.2
砕 関 数 が 直 接 実 験 的 に 決 め ら れ る.
ジ ェ ッ ト変 数
a. ス ラ ス ト と ふ く ら み 指 数 ジ ェ ッ ト現 象 を 記 述 す る に は,ジ ジ ー 変 数,形
態 変 数(shape
利 で あ る.高
エ ネ ル ギ ー のe+e-反
ジ ェ ッ トを 生 成 す る で あ ろ う.こ れ る.一
ェ ッ ト の 形 態 を 特 徴 づ け る 変 数(ト
variable)な
ど)を,い
応 で は 軽 い ク ォ ー ク 対qqは,2個
の
の 場 合 粒 子 は特 定 の 軸 方 向 に集 中 して 生 成 さ
方 グ ル ー オ ン 放 出 を 伴 う 場 合 は3ジ
合3個
ポ ロ
くつ か 定 義 し て お く と便
ェ ッ トに な る と 考 え ら れ,そ
の場
の ジ ェ ッ トは 平 面 内 に あ るか ら粒 子 はパ ンケ ー キ の よ うに平 らに 分 布 す
る で あ ろ う.こ
れ ら の トポ ロ ジ ー を 区 別 す る 量 と し て よ く使 わ れ る変 数 に ス ラ
ス ト(thrust)Tと
ふ く ら み 指 数(acoplanarity)Aが
あ る4).定
義は
(8.9)
(8.10) で あ る.こ eT(eA)を
こ にpiは
あ る 事 象 の 中 に あ るi番目
動 か し てT(A)が
ト軸 と い う.ス
最 大(最
な る よ う に 調 節 す る.eTを
ラ ス トは 生 成 粒 子 群 が ジ ェ ッ ト軸(=ス
揃 っ て い る か の 目 安 を 与 え る.す の 場 合 にT=1と
小)に
の 粒 子 の 運 動 量 で あ り,軸
な り,粒
ラ ス ト軸)に
ス ラス どれだけ
べ て の 粒 子 が 一 つ の 軸 方 向 に 揃 う2ジ
ェッ ト
子 群 が 完 全 に 等 方 的 に 生 産 さ れ る と き にT=0.5と
な る.一
方Aは
あ り,完
全 な 等 方(平
演 習8.1
粒 子 の 分 布 が どれ だ け ふ くらむ か ひ し ゃ げ るか を 表 す 目安 で 面)分
布 の と き にA=1(0)と
な る.
粒 子 の 分 布 が 等 方 的 な と き にT=0.5,A=1と
ス ラ ス ト軸eTを axis)e2を,次
定 義 し た 後,反
の 量Fmajorが
な る こ と を 証 明せ よ.
応 面 内 で,そ
れ に 対 し 垂 直 な 主 軸(major
最 大 に な る よ う に 決 め,
(8.11a) 第3の
軸(従
軸=minor
axis)e3を,eT,e2双
方 に 垂 直 な よ う に と り,Fminor
を
(8.11b) と定 義 す る.e3は
反 応 面 に 垂 直 な 軸 で あ る.グ
数(acoplanarity)の
代 わ りに,偏
ルー プ に よ って は ふ く らみ 指
平 度(oblateness)O
(8.12) を 使 う場 合 も あ る. b. Q-プ
ロッ ト
よ く使 わ れ る も う1組
の 量 は,運
動量 テ ンソル
(8.13) の 固 有 値Qj(Q1θ3,θ4>θ5>θ6>θ7>θ8)に よ り干 渉 効 果 を取 り入 れ る こ とが で き る. (b) ク ラス ター モ デ ル:QλTな い.QCDの
ら ば 電 荷 は は っ き り と分 か れ る か ら フ ォ ト ン 放 出 は 抑 制 さ れ な 場 合 は,親
が グ ル ー オ ン の と き な ど 全 カ ラ ー 荷 が0に
で あ っ て も グ ル ー オ ン放 出 が0で
は な い が,同
は な らず
じよ う な議 論 が 可 能 で
あ る14). c. ハ ド ロ ン 化 パ ー ト ン は 最 終 的 に は ハ ドロ ン に 変 換 す る が,ハ
ドロ ン種 を 選 択 す る た め に
は 香 り と ス ピ ン を 指 定 し な け れ ば な ら な い.パ
ー トン を ハ ドロ ン に 変 換 す る 最
も 簡 単 な 方 法 は ク ラ ス タ ー モ デ ル と呼 ば れ,次
の よ う に す る.ま
ン は 強 制 的 にqq対
に 変 換 し て か ら,カ
間 内 で 最 も 近 いqqの
ラ ー が 中 性 に な る よ う に,か
組 み 合 わ せ を 選 ぶ(ク
こ の と き,真
空 か らq'q'ま
ク ォ ー ク)を
す べ て 同 じ確 率 で 選 ん で,qq',
ン ま た はqq'q',
qq'q'の
た はq'q'q'q'(q'はc,
bを q'qの
量 子 数 を も つ2個
つ位相 空
も含 む 任 意 の 香 りの
量 子 数 を も つ2個
の メ ソ
の バ リ オ ン に 崩 壊 さ せ る.崩
壊先
に 比 例 し た 重 み を つ け る.
壊 は 等 方 的 に 起 き る.S1,
S2は
ク ラ ス タ の 質 量 が 軽 す ぎ て そ の よ う な2体
崩 壊 先 ハ ド ロ ン の ス ピ ン で あ る.
の 崩 壊 先 が 存 在 し な い と き は,qq'
の 量 子 数 を も つ ハ ドロ ン に そ の ま ま 移 行 さ せ る.変 合 は さ ら に 崩 壊 させ る.ク
ルーオ
ラ ス タ ー と い う.図8.11(b)).
の 選 択 に は 位 相 空 間 体 積 す な わ ち,崩
ず,グ
換 先 の ハ ドロ ンが 共 鳴 の場
ラ ス タ モ デ ル の 特 徴 は,変
つ け る 以 外 は 等 加 重 で あ り,調
換 先が位相体 積の重 み を
整 す べ きパ ラ メ タ ー を も た な い と い う非 常 に 単
純 明 快 な 手 法 を 採 用 し て い る こ と で あ る. 干 渉 効 果 を 入 れ た 最 初 の パ ー ト ン シ ャ ワ ー モ デ ル(Webberモ は,シ
ャ ワ ー を止 め た後 のハ ドロ ン化 モ デ ル と し て クラ ス ター モ デ ル を採 用 し
た.Webberモ ΛMSく
デ ル の 使 う パ ラ メ タ ー の 数 は,Q0
ら い の も の で あ り,実
(virtuality
cut)お
よ び
験 デ ー タ の 試 練 に 耐 え て い ま ま で生 き残 って い
る の は 驚 嘆 す べ き こ と で あ る.さ
す が に 元 の 素 朴 な モ デ ル で は あ ま りに 単 純 す
ぎ て 不 都 合 な 点 も で た の で 改 良 は さ れ て い る が,他 ラ メ タ ー の 少 な い 特 徴 は 残 っ て い る.ハ タ ー モ デ ル に 限 る 必 要 は な く,現 い.
デ ル15))で
の モ デ ル に比 べ 桁違 い にパ
ドロ ン化 モ デ ル と し て は 特 に ク ラ ス
在 で は 紐 モ デ ル と 組 み 合 わ せ て 使 う場 合 が 多
8.2.3
独 立 破 砕 モ デ ル16)
独 立 破 砕 モ デ ル(independent す)は
fragmentation
model,以
ハ ドロ ン 化 モ デ ル に 先 鞭 を つ け た も の で あ り,ジ
と し てDESYに こ で,開
お け るPETRAの
下IFモ
デ ル と略
ェ ッ ト研 究 の 初 期,主
デ ー タ を 解 析 す る の に 威 力 を 発 揮 し た.こ
発 さ れ た 基 本 的 手 法 は 各 種 モ デ ル に 受 け 継 が れ 今 日 で も生 き て い る. (a)
(b)
図8.12
独 立 破 砕 モ デ ル(independent
fragmentation
model)
最 初 の ク ォー クq1が 真 空 中 よ りq2q2を 拾 い 上 げ,M1=q1q2と い う メ ソ ン をつ くる.残 っ たq2は 再 び真 空 中 よ りq3q3を 拾 い上 げ とい うよ う に,各 ク ォー ク は ま っ た く独 立 に しか し 同 じ よ う に 真 空 か らqiqiを 拾 い上 げ る.こ の 過 程 は 残 り の ク ォー ク エ ネ ル ギー が 小 さ くな りも はや ハ ドロ ン をつ くれ な くな る ま で繰 り返 す.
a. 破 砕 関 数 こ の モ デ ル は,縦
運 動 量 に つ い て は ス ケ ー リ ン グ が 成 立 し,横
エ ネ ル ギ ー に 独 立 と い う 経 験 則 を 織 り込 ん だ も の で あ る.い を0と
し,横
る 確 率f(z)dzを =zpq‖ -z)p
運 動 量pTを
無 視 す る と,縦
運 動 量pq‖
も っ て 真 空 中 に あ るqi+1qi+1か
を もつ メ ソ ンM(qiqi+1)を
つ く り,残
q‖ を も っ て 進 行 を 継 続 す る(図8.12(a),IFモ
な と き は 運 動 量 の 代 わ りに(E+p‖)と が よ く 使 わ れ る.こ セ ス で,パ
ー トンqiとqjは
を も つ パ ー ト ンqiは,あ
らqi+1を
拾 っ て 縦 運 動 量pMz
り の パ ー トンqi+1は
縦 運 動 量(1
デ ル の 図).質
い う光 円 錐 変 数(light
の と き は,
運 動 量分 布 は
まパ ー トンの 質 量
cone
量 が有 限 variable)
で 定 義 す る.各
プ ロ
ま っ た く独 立 に ハ ド ロ ン 化 す る とす れ ば,繰
り返
し の 方 法 が 使 え て モ ン テ カ ル ロ 計 算 が 可 能 と な る(図8.12(b)).ハ
ドロ ン 化
の 繰 り返 しは パ ー ト ン の エ ネ ル ギ ー が 小 さ く な っ て こ れ 以 上 ハ ドロ ン が で き な く な る ま で 続 け る.こ
の エ ネ ル ギ ー は,た
く さ ん 存 在 す る ハ ドロ ン 共 鳴 の 質 量
付 近 ∼O(1GeV)に
と る こ とが 多 い.最
初 の パ ー ト ン が ハ ドロ ン 化 す る 全 確
率D(z)dzは,こ
の パ ー ト ン が 最 初 の ハ ド ロ ン化 で 運 動 量zの
メ ソ ン に な る確
率f(z)dzに,残
りの パ ー ト ン が ハ ド ロ ン 化 す る 全 確 率 を 加 え た も の で あ る か
ら,
(8.25a)
(8.25b) と い う 方 程 式 が 成 立 す る.(8.25b)は はz→0でD(z)≒dz/zの
運 動 量 保 存 則(8.6)を
よ う な 解 を も つ の で,ラ
保 証 す る.こ
れ
ピデ ィ テ ィ η
(8.26)
の 分 布 と し て は,η ≒0付 近 で 平 坦 と な る.1/zの
振 る舞 い は,高 エ ネ ル ギー
で ハ ドロ ン発 生 の平 均 多 重 度 が 対 数 的 に増 加 す る と い う経 験 則 に 適 合 す るた め に 必 要 で あ る.f関
数 と して は 香 りがu,d,sの
軽 い ク ォー クの 場 合
(8.27a) が よ く使 わ れ る(図8.13(a)に〓 よ).こ
げ た 実 際 の π,K生
成 の デ ー タ17)と 比 較 せ
の と き は,
(8.28) と な る.香
り がcま
た はbの
重 い ク ォ ー ク の 場 合 は,ピ
ー ター ソ ン 関 数18)
(8.27b) が よ く使 わ れ る. こ の 関 数 の 由 来 は 次 の よ う に 考 え ら れ て い る.c, は,真
空 か らu,
d, sな
ど の 重 い ク ォ ー クQ
どの 軽 い ク ォ ー ク を拾 って メ ソ ン をつ くっ て も ほ と ん
ど エ ネ ル ギ ー を変 え な い か ら, ΔE-1に
bな
比 例 す る.MM≒MQと
の 振 幅 は エ ネ ル ギー 差 の 逆 数
して
(8.29)
(a)
(b)
図8.13
破 砕 関 数 パ ラ メ ター 化 の デ ー タ資 料17)
(a) (1/σβ)(dσ/dx)(e+e-→hX),h=π
(b) cク
ォ ー ク の 破 砕 関 数1).実
±,K±,pp,
線 は ε を パ ラ メ タ ー と し た ピ ー ター ソ ン 曲 線.
ε=0.135±0.010(D0)と
ε=0.078±0.008(D*)
実 験 的 に は (b)17)).こ
が 成 立 し て い る(図8.13
の 関 数 形 はmQが
の 場 合(mt≫mb)の
大 き く な る と 山 がz∼1付
場 合 は ほ とん ど δ(1-z)に
近 に 移 動 し,tク
ォー ク
近 い と考 え て よ い.
b. グ ル ー オ ン の 取 扱 い グ ル ー オ ン の 取 扱 い は,ク
ォ ー ク と ま っ た く 同 じ と す る か19),ま
数 に 従 いqqに
記 の ハ ドロ ン 化 を 適 用 す る20).
分 け て 後,上
た は分 割 関
c. 横 運 動 量pT IFモ
デ ル は 基 本 的 に 縦 運 動 量 の み 扱 う の で,横
運 動 量 は 独 立 に 発 生 さ せ る.
発 生 確 率 は 実 験 経験 式 か ら
(8.30) と す る.σq≒0.3GeVで
あ る.こ
のpTはq'とq'と
の間 で局所 的 に保存 す る
よ う に 決 め る. d. 香 り と ス ピ ン の 選 択 u,d,s,c,bを 割 合 と す る.こ
拾 う確 率 は,デ の 数 は,c,bの
ー タ を 再 現 す る よ う に,1:1:0.3:0:0の 重 い ク ォー ク は 最 初 の 反 応 で 直 接 生 成 さ れ な
い 限 りハ ドロ ン 終 状 態 に は 現 れ な い こ と を 意 味 す る .ス ク トル メ ソ ンVの
統 計 的 な 重 み は,単
純 に 考 え る と1:3で
メ ソ ン は 通 常 重 く て 位 相 体 積 で 損 を す る の で,生 ∼0 .6く ら い に と る.ス
ピ ン が2以
色 のqqqま
た はqqqを
ば,ハ
ド ロ ン 化 し た 後 の 落 ち 着 く先(共
ベ
ク トル
成 相 対 確 率 をV/(V+P) 率 を適 当 に 割 り
常 は 無 視 す る.バ
香 り に 応 じ て 一 定 の 確 率(qq/q∼0.08)で
し,無
ま る.共
あ る が,ベ
上 の テ ン ソ ル 粒 子 も,確
振 っ て 発 生 さ せ る こ と は 可 能 で あ る が,通 ク ォ ー ク 対qqqqを
カ ラ ー メ ソ ンPと
つ く っ て 発 生 さ せ る.香
リ オ ン は2個
の
真 空 か ら拾 い だ りとス ピ ンが決 まれ
鳴 ま た は 安 定 ハ ドロ ン)は
一 義 的 に決
鳴 の 場 合 は さ ら に 崩 壊 さ せ る.
こ の モ デ ル は,ジ
ェ ッ ト生 成 の 取 扱 い を 初 め て 定 量 化 し た と い う 点 で 大 き な
歴 史 的 意 義 が あ り,ジ あ る.こ
ェ ッ トの 細 か い 構 造 を 問 題 に し な い 限 り現 在 で も 有 効 で
の モ デ ル の 欠 点 は,ロ
ー レ ン ツ 不 変 で な い こ と,qq対
が独立 に生成
さ れ る た め エ ネ ル ギ ー と運 動 量 が 保 存 し な い こ と な ど で あ る.エ
ネ ル ギー 運 動
量 の保 存 は最 後 に全 体 の 重 心 系 で全 体 の ス ケ ー ル を調 節 して か ら 元 の 系 に も ど す こ と で 成 立 さ せ て い る.ま
た ク ォ ー ク と グ ル ー オ ン の 差 が な く,後
紐 効 果 も再 現 で き な い の で 最 近 は あ ま り使 わ れ な い が,基
に述べ る
本 的 な発 想 は 現 在 で
も生 き て い る.
8.2.4
紐
a. 破
砕
モ 関
紐 モ デ ル(string
デ
ル21)
数 fragmentation
取 り 入 れ た 点 で 画 期 的 で あ る が,モ の で あ り,パ Lundモ
model;
デ ル)は,QCDの
紐概 念 を
デ ル の 手 法 か ら い え ばIFの
流 れ を汲 む も
ー ト ン シ ャ ワ ー モ デ ル と は 発 想 が 根 本 的 に 異 な る.初
デ ル と も 呼 ば れ た.qqがt=x=0で
ら ば,と
SFモ
も にt2-x2=0の
発 生 す る と,そ
光 円 錐 に 沿 っ て 移 動 す る が,qqの
し た ポ テ ン シ ャ ル エ ネ ル ギ ー がqqを
の 後 はm=0な 間 に距離 に比例
結 ぶ 線 の 間 に 蓄 え ら れ る とす る.紐
え ら れ る エ ネ ル ギ ー は, は,初
ト ン(質
量m)の
に蓄
で あ る.qq
期 運 動 量 に よ り紐 を 引 き 延 ば す が,紐
元 に も ど る と い う 振 動 を 繰 り返 す.紐
期 に は
の 張 力 に よ り減 速 さ れ,や
が ては
の 端 に あ り右 方 向 に 進 む 有 限 質 量 の パ ー
エ ネ ル ギ ー 運 動 量 は,相
対論的運 動方程 式か ら
(8.31) で 与 え ら れ る.た る.し
だ し,p0はt=0に
た が っ て,軌
パ ー トン が も って い た 初 期 運 動 量 で あ
跡 は 一 般 に 双 曲 線 で あ る.m=0の
と き は 直 線 と な る が,
運 動 エ ネ ル ギ ー が な く な る と今 度 は 左 方 向 に 進 む の で,図8.14(a)に う な ジ グ ザ グ の 軌 跡(ヨ (b)の
よ う に な る.最
初 のqqの
ギ ー も 大 き く な り,真 る.こ
の と き,ク
ー ヨー と い う)と
な る.ロ
あ るよ
ー レ ン ツ ブ ー ス トす る と
エ ネ ル ギ ー が 大 き い と紐 に 与 え ら れ る エ ネ ル
空 か らq'q'を
物 質 化 し て紐 を ち ぎ る こ とが 可 能 と な
ォ ー ク 対 発 生 率 は,
(8.32a) (8.32b) に 比 例 す る こ とが 導 け る*2).m2の 由 度 し か な い こ と に よ る.こ qが
代 わ りにmT2を
の 形 は,エ
あ る 一 点 で 発 生 す る の で は な く,質
が1次
量 に見 合 った距離 だけ 離 れて生 成 さ デ ル で はqi'qi'を
つ 独 立 に 発 生 させ て い き,残
破 砕 関 数 は,ク
ド ロ ン)が
紐 の上 に
りの 紐 の エ ネ ル ギ ー が 小
さ く な りす ぎ て も は や ハ ドロ ン を 生 成 で き な く な る ま で 続 け る.こ さ ん の ヨ ー ヨー(ハ
元の 自
ネ ル ギ ー 保 存 則 を 満 た す た め に は,q
れ る こ と に よ る ト ン ネ ル 効 果 と して 理 解 さ れ る.モ 端 か ら順 に 無 秩 序 に,か
使 う の は,紐
う して た く
発 生 す る(図8.14(c)).
ォ ー ク 対 の 発 生 が1次
元 紐 の上 で 一 様 か つ 対 称 と要 求 す る と
ほ ぼ 一 義 的 に 形 が 決 ま り23),
(8.33a)
(8.33b) と い う 形 と な る.指
標Mは
生 成 メ ソ ン,qは
ク ォ ー ク を 示 す.a,
に 合 わ せ るべ き 自 由 パ ラ メ タ ー で,a≒1,b≒0.7GeV-2程 こ の 関 数 は ま た 重 い ク ォ ー ク に 対 し て はz∼1の *2) 強 い電 場 が あ る と真 空 が不 安 定 とな りe+e-が
bは デ ー タ
度 で あ る. 方 に重 み が か か る よ うに
発生 す る とい う よ く知 られ た 類 似 の 現 象
が あ る.そ の場 合 の電 子 対 発生 率 は,電 子質 量 をm,電
場 の 強 さをEと
して
に 比 例 す る22).同 様 の 取 扱 い を 線 形 ポ テ ン シ ャ ル に 適 用 す る と こ の 式 が 導 け る.
(a)
(b)
(c) 図8.14
(a) 紐 の エ ネ ル ギ ー は 小 さ く,分 (b) (a)を
ー ヨ ー と い う.
ロ ー レ ン ツ プ ー ス ト し た も の.
(c) 紐 が 長 く な る と,ち
図8.15
紐 モデルの模式図 裂 せ ず に 振 動 を 繰 り返 す.ヨ
ぎ れ て た く さ ん ヨー ヨ ー が で き る.
紐 モデ ルで は グル ー オ ン は紐 の キ ン ク(折 れ 曲 が り)と して 表 され る
な っ て い て,(8.27b)の
形 に 近 い 分 布 が 自 動 的 に で る よ う に な っ て い る.
b. グ ル ー オ ン グ ル ー オ ン は 紐 の 中 の キ ン ク(折 ドロ ン は グ ル ー オ ン を 頂 点 と す る2本
れ 曲 が り)と
の 紐 の 上 に 分 布 す る.こ
ン 破 砕 関 数 の 性 質 は 自動 的 に 決 ま り,余 だ し,発
の ため グル ー オ
分 の パ ラ メ タ ー が 入 る余 地 は な い.た
散 を 避 け る た め グ ル ー オ ン の 運 動 量 の あ る 切 断 値(Q0∼5-10GeV)
以 下 の と き はqqと
し て 扱 う.こ
扱 い が 非 対 称 と な る.独 べ て,際
し て 扱 う の で(図8.15),ハ
の こ と に よ っ て,ク
立 破 砕 モ デ ル が,基
ォー ク と グル ー オ ン の取
本 的 に は 両 者 を 区別 し ない の に 比
立 つ た違 い を見 せ て い る.
c. pT,香
り,ス
ピ ンの 分 配
ト ン ネ ル 効 果 に よ り,横
運 動 量 は ガ ウ ス 分 布(8.32)に
従 う.ま
ク ォ ー ク に 対 し て は 自 動 的 に 抑 圧 因 子 が か か る よ う に な っ て い る.ク
た,重
い
ォー クの
質 量 を 代 入 す る とu:d:s:c∼1:1:0.3:10-11と (c,bク
な り,実
験 値 を再 現 す る
ォ ー ク 対 が 真 空 か ら 拾 い 上 げ ら れ る 確 率 は 事 実 上0に
ル で は 手 で 入 れ て い た 確 率 分 布 が,紐 い る.し
か し,デ
ー タ と の 一 致 を よ くす る た め に,こ
モ デ ル と 同 じ よ う に 手 で 入 れ る 場 合 も あ る.ス はIFモ
な る).IFモ
デ
モ デ ル の 中 に は は じめ か ら組 み 込 ま れ て れ ら の パ ラ メ タ ー をIF
ピ ンの 入 れ 方や バ リオ ン の発 生
デ ル と 同 様 に 行 う.
紐 モ デ ル で は,QCDの
紐 効 果 と ク ォ ー ク の 質 量 効 果 が 取 り入 れ られ て お り,
か つ ロ ー レ ン ツ 不 変 性,エ
ネ ル ギ ー 運 動 量 の 保 存 が 成 立 し て い る な ど,IFモ
デ ル に 比 べ て 進 歩 し て い る と い え る.ま
た,す
ぐ後 に 示 す よ う に デ ー タ の 再 現
性 に お い て も優 れ て い る.
8.2.5
ハ ドロ ン化 モ デ ル の テ ス ト
ハ ドロ ン 化 モ デ ル は,か わ た る デ ー タ の 蓄 積 とQCD理 な り,非
な り荒 っ ぽ い 議 論 に 基 づ い て は い る も の の 何 年 に も 論 を指 導 原理 とす る 改 良 に よ って 精 巧 な もの と
常 に 広 範 囲 の デ ー タ を 説 明 で き る よ う に な っ て い る.個
デ ル の 比 較 は 後 ほ ど行 う と し て,モ (dσ/dx,dσ/dpT,粒 ほ か)の
デ ル の パ ラ メ タ ー は,種
子 の 多 重 度n,ス
全 体 構 造(global
ギ ー で はPEPのMARKIIデ
event
ラ ス ト,非
shape)を
ー タ(
使 っ て い た が,SLC,LEPの
々 の 過 程 とモ
々の観測量 デー タ
平 面 指 数(AP=aplanarity)
再 現 す る よ う に 決 め る.低
エ ネル
)に 合 わ せ た パ ラ メ タ ー24)を
デ ー タ(
)が
で て か ら,低
エ ネ ル
ギ ー で の デ ー タ と 高 エ ネ ル ギ ー で の デ ー タ の 整 合 性 が 調 べ ら れ た25). ハ ドロ ン 化 モ デ ル の 検 証 例 と し て は,ジ
ェ ッ ト変数AとTの
げ る.ハ
象 の ジ ェ ッ ト構 造 とnジ
ドロ ン 終 状 態 の 全 体 的 形 状 は,事
相 対 的 な 重 み に よ る と こ ろ が 大 き く,ス
ラ ス トTと
非 平 面 指 数APは
の 種 々 の 分 布 の 違 い を 見 分 け る の に 特 に 有 用 で あ る.例 トが 出 て 丸 く な る 事 象(T,AP→0.5),3ジ 2/3,AP≒0),180度
ェ ッ トの ハ ドロ ン
え ば た くさ ん の ジェ ッ
ェ ッ ト の 円 盤 状 に な る事 象(T≒
正 反 対 方 向 に 出 る2ジ ェ ッ ト事 象(T=1,A=0)な
特 徴 が 盛 り込 ま れ る.図8.16(a)は,LEPで を,低
分 布 を取 り上
のOPAL25)の
どの
非 平面指数 デー タ
エ ネ ル ギー で合 わ せ たパ ラ メ ター を そ の ま ま使 っ た モ デ ル計 算 と比べ た
(a)
(b) 図8.16
(a) aplanarity:低
(b) ス ラ ス ト:LEPで
も の で あ る.ま
合 わせ た パ ラ メ ター の モデ ル で,種
た,(b)は
タ ー を 合 わ せ て,ど で あ る.図
ハ ドロ ン化 モ デ ル の 検 証25)
エ ネ ル ギ ー で の パ ラ メ ター を使 っ た モデ ルで,LEP/OPALデ
逆 に91GeVに
ー タ を合 わせ る.
々 の エ ネ ル ギー デー タ と比 較.
お け るOPALの
デー タ で パ ラ メ
の く ら い 低 エ ネ ルギー デ ー タ を再 現 で き る か を 試 み た も の
は ス ラ ス ト の 例 を 示 し て あ る.各
種 の 異 な る モ デ ル が,低
エ ネル
ギ ー デ ー タ と 同 じ く高 エ ネ ル ギ ー デ ー タ を も よ く再 現 す る こ と が わ か る.た だ,解
析 的 に 行 列 要 素 を 計 算 し て パ ー トン シ ャ ワ ー を 経 ず に そ の ま ま ハ ド ロ ン
化 さ せ る 方 法(図8.16のERT)は,APの
大 き い と こ ろ(反
た と こ ろ で の 運 動 量 の 流 れ の 目安)の れ は,ハ
応 平 面 をは ず れ
デ ー タ の 再 現 が う ま くで き て い な い.こ
ドロ ン 化 の は じ ま る エ ネ ル ギ ー が パ ー トン シ ャ ワ ー モ デ ル に 比 べ て 非
常 に 高 く(Z0共
鳴 に お け る エ ネ ル ギ ー 領 域 で は ∼10GeV)摂
動QCD部
分 に
比 ベ モ デ ル の 比 重 が 大 き く な り す ぎ る せ い と考 え ら れ て い る. こ れ ら の 比 較 か ら い え る こ と は,ハ ギー に よ ら な い こ と,低
エ ネ ル ギ ー で の 現 象 と高 エ ネ ル ギ ー 現 象 の 差 はQCD
パ ー トン シ ャ ワ ー モ デ ル の 中 のΛ こ と を 示 す.つ
ま り,漸
ドロ ン化 モ デ ル の パ ラ メ ター は エ ネ ル
で 表 し た αs(Q2)の 中 に す べ て 含 ま れ て い る
近 自 由 を 入 れ た 一 つ の 結 合 定 数 で,低
エ ネ ル ギ ー と高
エ ネ ル ギ ー の デ ー タ が 統 一 的 に 説 明 で き る こ と を示 す. ハ ドロ ン 化 モ デ ル が ど の く ら い 精 緻 に 練 ら れ て い る か を 試 す た め に,ジ ト現 象 と 直 接 関 係 は な い が,ハ 8.17は,
え ば,lund(紐)モ
も の パ ラ メ タ ー を 必 要 と す る.こ
本 的 に は パ ラ メ ター の 数 は0で 再 現 性 が 一 番 よ い が,パ し,そ berモ
ハ ドロ ン 生 成 に お け る ハ ドロ ン の 平 均 数
ド ロ ン の ス ペ ク トル を再 現 す る に は 相 当 多 く の パ ラ メ
タ ー の 調 整 を 必 要 と す る.例 か に5個
ド ロ ン ス ペ ク ト ル の 再 現 性 を 見 て み よ う.図
で のe+e-→
を 見 た も の で あ る26).ハ
デ ル で は,ク
ォー ク質 量 の ほ
れ に 引 き 替 えWebberモ
あ る.図8.17を
デ ルは 基
眺 め る と紐(lund)モ
デル の
ラ メ タ ー の 数 の 多 さ を 考 え れ ば 当 然 で は あ る.し
れ で も テ ン ソ ル メ ソ ン に つ い て は ま っ た く予 言 力 が な い.一 デ ル で は 再 現 性 が 悪 く,や
し て い る.し
ェ ッ
は りパ ラ メ タ ー数0で
か し 全 体 的 に 見 れ ば,ハ
か
方,Web
は 無 理 が あ る こ とを示
ドロ ン 化 モ デ ル が 基 本 的 に は,ジ
ェ ッ ト
の 特 徴 の み な ら ず 粒 子 ス ペ ク ト ル ま で 含 め て か な り よ く再 現 し て い る と い うべ き で あ ろ う.
図8.17
1回 のe+e-反
応 で 生 成 され る平 均 ハ ドロ ン数26)
(デ ー タはPEPとPETRAの 平 均 値) ハ ドロ ン スペ ク トル を再 現 す るた め に た くさ ん のパ ラ メタ ー調 整 が 行 わ れ る .紐 モデ ル で は,mqの は基 本 的 に は0パ
ほ か に ≒5個.た ラ メ ター.
だ し,2+は
入 って い な い,Webberモ
デル
8.3
8.3.1
ε,δ の
ジ ェ ッ トの 分 離
方 法
パ ー ト ン は ジ ェ ッ トに な る こ と,お す る こ と は わ か っ た が,こ ロ ッ ト上(図8
.8)で
例 え ば,2,3ジ
ェ ッ トか ら3ジ をnジ
理 的 に は 図8.18の
放 出 さ れ る と(collinear
gluon)2ジ
あ っ た27).ジ
フ ト グ ル ー オ ン),ク
ェ ッ トの 識 別 変 数 を ε,δ と し,図8.19に 対 比 を1-ε
の 円 錐 を つ く る.e+e-反
ト ン が と ら え ら れ る 断 面 積 を2ジ 計 算 す る と,ε,δ≪1の
ェ ッ トの 定
タ ー マ ン-ワ イ ン バ ー グ(Sterman-Wein
ジ ェ ッ トの ほ ぼ す べ て の エ ネ ル ギ ー(相 に 半 頂 角 δ の2個
あ る よ う に,2
と し て ε≪1)を
包む よ う
応 で こ の 円錐 の 中 に す べ て の パ ー
ェ ッ トの 断 面 積 と し て,O(αs)の
近 似(qq
極 限 で
(a)
(b)
(c) 図8.18
図8.19で
ジ ェ ッ ト円錐 を定 義 し た と き に ジェ ッ ト成 分 に寄 与 す る フ ァ
イ ンマ ン グ ラフ,(c)で ネ ル ギー 小)か,ま し ま う部 分 は,一
か し,
ォ ー ク と平 行 に
ェ ット と 区 別 が つ か な い.ジ
量 的 取 扱 い を 最 初 に 与 え た の は,ス
+qqg)で
フ ァイ ンマ ン グ ラ フ
の パ ー ト ン 放 出 過 程 と し て 記 述 で き る は ず で あ る.し
グ ル ー オ ン の エ ネ ル ギ ー が 小 さ い か(ソ
berg)で
ェ ッ トへ は 連 続 的 に 移 行 し て い
ェ ッ ト と 呼 ぶ か は 不 定 性 の あ る 問 題 で あ る.
ェ ッ ト発 生 過 程 は,原
で 示 し た2,3個
ェ ッ ト構 造 が 存 在
の 区 分 け が 常 に 明 瞭 に で き る と は 限 ら な い.Q-プ
は,2ジ
て 境 界 が 定 か で は な く,何
よ び 実 験 的 に2,3ジ
は実 の グ ルー オ ン を放 出 す るが,柔
らか い(エ
た は ジ ェ ッ ト軸 に平 行 で 半 頂 角 δの 円 錐 に 入 っ て つ の ジ ェ ッ トの 成 分 に 入 る.
図8.19
ス ター マ ン-ワ イ ン バー グ の δ,εに よ る ジ ェ ッ ト識 別 変 数 ε=半 頂 角 δの 中に 入 ら な いエ ネ ル ギー の相 対 比.
(8.34) (8.35) と な る.た
だ し,非
常 に 小 さ な εや δ に 対 し て は,(8.34)は
負 にな るの で こ
の 式 は 使 え な い こ と に 留 意 し て お く必 要 が あ る.こ
れ は 第5章,QCDで
た 赤 外 発 散 や 質 量 特 異 性 に よ る も の で あ る.O(αs)の
全 断 面 積 は,
述べ
(8.36) で あ る から,こ
の 式 とσ2jetと の 差 は σ3jetを与 え る は ず で あ る.す
なわ ち
(8.37) (8.34)と(8.37)は,ε
と δ を 指 定 す れ ば,2ジ
ェ ッ ト と3ジ
面 積 が 少 な く も理 論 的 に は 定 量 的 に 扱 え る こ と を 示 す.た が 実 験 的 に 観 測 さ れ る2ジ
ェ ッ トの 生 成 断
だ し,σ2-jetや
σ3-jet
ェ ッ ト断 面 積 そ の も の か ど う か は 定 か で は な い.実
験 で テ ス トす る と き に は 理 論 式 が ハ ド ロ ン 化 モ デ ル を 通 る と い う 不 定 性 が つ き ま と う か ら で あ る.今 に お い て 使 わ れ る.
日 で は,ε,δ
の 方 法 は も っ ぱ ら ハ ド ロ ン-ハ
ドロ ン 反 応
8.3.2 ycutの 第2の
方
法
そ し てe+e-反
応 で 主 と し て 使 わ れ る ジ ェ ッ ト識 別 変数yは,ジ
トの 不 変 質 量 に 関 連 す る.パ
ー ト ンi,jが
ェ ッ
存 在 す る と き,yijを
(8.38a) で 定 義 す る.パ
ー ト ンi,jの
質 量 が0で
あ る な ら ば,パ
ー ト ンi,jの
不変 質量
は 次 の 量 と 同 等 で あ る.
(8.38b) y>yminを
要 求 す る こ と に よ り 赤 外 発 散 が 防 げ る.全
量 はyminと
独 立 で あ る が,個
断面積 な ど包含的 な測定
々 の ジ ェ ッ トの 発 生 断 面 積σn-jetな
ど はyminに
依 存 す る.σ2jetはO(αs)で28),
(8.39) O(y)の
項 は数 値 的 に は 重 要 で デ ー タ との 比 較 に は 入 れ る 必 要 が あ る.(ε,δ)
処 方 と同 じ く,yが
小 さ く な りす ぎ る と(8.39)は
負 に な るの で,あ
る大 き さ
以 上 で使 用 し なけ れ ば な ら な い,高 次 の項 を正 確 に 考 慮 す れ ば 発 散 は な い は ず で あ るか ら,y→0で
の 発 散 を 避 け る一 つ の 処 方 箋 は,第1,第2の
近似 項 の
み を と り指 数 化 して し ま うこ とで あ る.す な わ ち
(8.40) とす れ ば,y→0で
有 限 と な る.た
寄 与 が 大 き く な る の で,(8.39)の
だ しyの
全 部 の 式 を 使 わ な け れ ば な ら な い.n
ジ ェ ッ ト生 成 断 面 積 に つ い て は,O(αs2)ま 積Rnを
大 きい と こ ろ で は 無 視 し た 項 の
で 計 算 さ れ て い る29).相
対 的 断面
σnjet/σTOTで定 義 す れ ば
(8.41) e+e-反 はf=1に
応 で はQ2=fSと
と る.fは
繰 り込 み 点 の ス ケ ー ル パ ラ メ タ ー で,通
常
と る.
実 験 レ ベ ル で の ジ ェ ッ トの 再 構 築 に はJADEグ
ル ー プ30)の 処 法 が よ く 使 わ
れ る.そ
の 方 法 は,ま
ず ハ ド ロ ンi,jから
一 つ の 準 粒 子(指
標ij)を
構 成 し,
運動 量変数 を
(8.42) の よ う に 組 み 合 わ せ る.yijyminに
ら ば,一
も っ て き て,pijk=(pi+pj)+pkを よ りyijkを つ く る.こ
な る ま で 続 け る.y>yminを
ジ ェ ッ ト と 見 な す の で あ る*3).同 の 関 数 と し て 求 め る.こ 較 す る に は,パ
つ くり,ijとkの間
で,再
の 作 業 を す べ て の 準 粒 子 に 対 し て 行 い, 満 た す 準 粒 子i,j…kの
組 全 体 を1個
の
じ操 作 を 理 論 的 な パ ー ト ン に つ い て も,ymin
の 理 論 上 で のRn-partonと
実 験 的 に 決 め たRnjetと
デ ル に 頼 ら ざ る を え な い.
を比
ト リ ス タ ンAMY測
れ
,ymin>0.04
ド ロ ン 化 モ デ ル に あ ま り よ ら ず に,
モ ン テ カ ル ロ に よ り示 さ れ て い る の で,安 図8.20は
与 え る よ う な 第3
ー トン の ハ ド ロ ン 化 効 果 の 影 響 を 計 算 す る 必 要 が あ る が,こ
は 非 摂 動 効 果 で あ り,モ な ら ば,ハ
番 小 さ なyijkを
で あ る こ とが
定 し た 理 論 と 実 験 の 比 較 が で き る.
定 器 で 得 ら れ たnジ
ェ ッ ト断 面 積 で あ り,ycut
が あ ま り小 さ く な い 限 りモ ン テ カ ル ロ 計 算 は 実 験 値 を よ く再 現 し て い る31). 留 意 す べ き は,Rnは の ジ ェ ッ ト"と
明 ら か にyminの
い う 言 葉 のnは
る 量 で 不 動 の 数 で は な い.ま
関 数 で あ る と い う こ と で あ り,"n個
最 初 に 述 べ た よ う に,パ たQ2=fSの
デ ー タ の 再 現 性 が 微 妙 に 変 わ る.こ
ラ メ タ ー に よ り変 わ
ス ケ ー ルパ ラ メ ター の と り方 に よ り
れ は 現 象 的 に 高 次 効 果 を と り入 れ る こ とに
相 当 す る.
*3) こ の 方 法 で は
,各 段 階 で の 準 粒 子 の エ ネ ル ギ ー 運 動 量 は,各 ハ ドロ ン の エ ネ ル ギ ー 運 動 量 の 和 で あ っ て 保 存 して い る.し か し,y変 数 を つ く る と き は,式 で わ か る よ う に 前 段 階 の 準 粒 子 の 質 量 は0と
見 な し て い て,本
理 論 上 は パ ー ト ン の 質 量 が0で Ej2)(1-cosθij)/sで 段 階 で,ど
来 の 不 変 質 量m2=E2-p2と は 違 う .こ れ は あ る と い う こ と に 合 わ せ た も の で あ る.yij=2Min(Ei2,
定 義 す る場 合 も あ る(Durham計
の パ ラ メ タ ー を 保 存 させ る か,ど
的 に 最 良 結 果 を 与 え る の が 本 文 の 方 法 で あ る が,理 望 ま し い と さ れ て い る30,33).
量).ジ
ェ ッ ト を構 築 す る過 程 の 各
の 計 量 を 使 用 す る か の 選 択 肢 の 中 で,実 論 的 に はDurhamの
験
計 量 を 使 うの が
図8.20
n個
の ジ ェ ッ トへ の 分 岐 比 をycutの
実 線 はNLLAパー =sと
包
し た 場 合,点
線 はQ2
した と きの 値 で あ る.
8.4
8.4.1
関 数 と し て プ ロ ッ ト し た も の31)
ト ン シ ャ ワ ー モ デ ル で,Q2=0.0021sと
含
反
αs(Q2)の
決 定 法
応
αsま た は 同 じ こ と で あ る がΛMSを
決 め る に は,ハ
ドロ ン化 モ デ ル や ジ ェ ッ
ト識 別 変 数 に 依 存 し な い 過 程 で 決 め る の が 理 想 的 で あ る.こ て は 包 含 反 応 が あ り,e+e-反 ΓZに 対 す るQCD補
の よ うな過 程 と し
応 の ハ ド ロ ン 生 成 相 対 断 面 積RやZ粒
正 お よ び 深 非 弾 性 散 乱 のQ2発
子 の幅
展 式 が あ る.
a. R,ΓZ R,ΓzはO(αs3)の
計 算 が で き て い る32).
(8.43)
式(8.43)を
使 っ て,35GeV領
域 で 実 験 値 に 合 わ せ れ ば33)
(8.44a) (8.44b) LEPの
実 験 デ ー タ(表7.2のR=Γh/Γl)を
入 れ て 解 け ば31)
(8.44c) を 得 る. b. Rτ の 方 法 τ崩 壊 の ハ ド ロ ン 部 分,す
な わ ち,
に つ い て 同 様 な 方 法 が 適 用 で き る33,34).こ れ は い ま の と こ ろ 最 も 低 いQ値 (mτ)で の αs(Q)を
与 え る.
(8.45) 上 の 方 法 は,理 論 的 に は最 も不 定 性 の な い値 が 得 られ る方 法 で あ るが,残 念 な こ とに これ らは 主 過 程 が 電 弱 相 互 作 用 で あ り,QCD効 入 るの で(δR/R,δΓz/Γzは
果 は 補 正 と して の み
と も に ∼5%程 度)実 験 的 に 精 密 に 決 め る の は 容
易 で な い. c. 深 非 弾 性 散 乱 深 非 弾性 散 乱 を使 っ てΛMSを 決 め る方 法(QCD§5.6)は,最
初 の そ して 現
在 も最 も正 確 な方 法 の 一 つ で あ る.こ の過 程 は,包 含 反 応 で あ り ク ォー クや グ ル ー オ ン の ハ ドロ ン化 に伴 う不 定 性 を含 まな い こ とは,e+e-反 情 が 似 て い る.し か し,R値
に お け るQCD効
応 のR値
果 は 主要 寄 与 に 対 す る補 正 で あ
り実 験 的 に 小 さ い 量 を扱 うの に 対 し,こ こ で は 構 造 関 数 のQ2発 い る.さ
らに 深 非 弾 性 散 乱 で はxを
と事
展 を 直接 見 て
パ ラ メ ター と し,原 理 的 に は 無 限 個 の 一
連 の構 造 関 数 の 総 合 テ ス トとな って い る こ とに も留 意 し よ う.た だ し,ツ イ ス ト項(1/Q2に
比 例 す る項)の 不 定 性 な どは 存 在 す る の で,理 論 的 明快 さ とい
う点 で は 一 歩 ゆ ず る.最 近 の ミュー オ ン とニ ュ ー トリ ノデ ー タ を使 い,ま た総 合 的解 析 の 結 果 を μ=mZに
とめ
外 挿 す る と17)
(8.46a)
(8.46b) と な っ て い る.な 反 応 や,ハ
お,深
非 弾 性 散 乱 で 求 め たΛMS=ΛMS(4)で
あ る の で,e+e-
ド ロ ン コ ラ イ ダ ー の μ2∼Sの 大 き い と こ ろ で 求 め るΛ=ΛMS(5)と
比 較 す る と き は,(5.51)に
よ っ て 変 換 し な け れ ば な ら な い.
8.4.2
ジ ェ ッ トの トポ ロ ジ ー か ら 決 め る方 法
包 含 反 応 で 決 め る 方 法 は,理 が,実
験 的 観 点 か ら は,個
論 的 曖 昧 さ が な く原 理 的 に 優 れ て い る と い え る
々 の ジ ェ ッ ト現 象 や そ の 特 徴 を 表 す パ ラ メ タ ー か ら
決 め る 方 が 有 利 な こ と も 多 い.ま
た,個
々 の 現 象 の 再 現 性 や,そ
αsを 与 え る か ど う か の チ ェ ッ ク も 必 要 で あ る.ジ 表 す 形 態 変 数(shape 量,ス gy
ラ ス ト,エ
correlation36))な
variable)と
し て は,ジ
ネ ル ギ ー 相 関35),3点 ど が あ る が,こ
ら の 量 を 表 す 理 論 式 は,ee→qqgの
れ らが 共 通 の
ェ ッ トの さ ま ざ ま の 性 質 を
ェ ッ ト 多 重 度,平
均 ジ ェ ッ ト質
エ ネ ル ギ ー 相 関(planer
triple-ener
こ で は 二 つ の 例 を あ げ る に 止 め る.こ 断 面 積 の 式(5.65)を
れ
適 当 に変数変 換 し
て 得 ら れ る. a. nジ nジ
ェッ ト
ェ ッ トの 式 の 形 は(8.41)で
与 え た.実
験 との 比 較 は 行 列 要 素 の 方 法 と
パ ー ト ン シ ャ ワ ー の 方 法 い ず れ も 可 能 で あ る が,パ は,ΛMSを
ー トン シ ャ ワ ー の 方 法 で
入 力 と し て シ ャ ワ ー を 発 生 させ る の で ΛMSが
れ か ら,式(5.45)を
使 っ て αsが 計 算 で き る.次
タ を 使 っ て 決 め たΛMSと
直 接 求 め ら れ る.そ
の 値 は,ヴ
ィー ナ ス の デ ー
αsで あ る37).
(8.47a) (8.47b) b. エ ネ ル ギ ー 相 関35) e+e-反
応 で の ハ ドロ ン 生 成 物 を 互 い に 角 度 で β だ け 離 れ た2個
タ ー で 同 時 測 定 す る 場 合(図8.21)の
相 関 量 を,実
の カ ロ リメ
験的 に
(8.48)
(8.49) で 定 義 す る.Δ
は 測 定 器 の も つχ の 幅 で あ る.i, jは
で あ り,EECの
計 算 に は す べ て の 事 象(event)の
Energy
Corelation,
AEECはAsymmetry
of EECの
一 つ の 事 象 中 の粒 子 番 号 和 を と る.EECはEnergy略 で あ る.理
論 的 には
(8.50a)
(8.50b) を計 算 して得 られ る.実 験 的 に は た い て い の 場 合,θ(測 ビー ム 軸 に 対 す る角 度)で 積 分 した 平 均 のEECを
定 器 を 置 い た地 点 の
だ す の で,上 式 を θ で積 分
す る と,相 関 関 数 は
(8.51a) (8.51b) で 与 え ら れ る.
図8.21
エ ネ ル ギ ー 相 関 を 測 る.EEC,
2ジ ェ ッ ト配 位 の 場 合,ハ る か ら,2粒 (8.51)が
子 は β=0,π ξ=0,1に
定
ドロ ン は 主 と し て180度
方 向 に た く さん 放 出 され
の 方 向 す な わ ち ξ=0,1の
と こ ろ に 集 中 す る.式
特 異 点 を もつ の は そ れ を 反 映 し て い る.ソ
放 出 も ま た ほ ぼ 対 称 と 考 え ら れ る が,ハ き は 中 間 の0E3>E4と
(a) 図8.32 (a)θBZ分
す る.
(b) グ ルー オ ン 自 己結 合 の 証 拠 デ ー タ
布/OPALデ
ー タ54),(b)θNR分
布/L3デ
ー タ55)
(8.66a) (8.66b) と 定 義 さ れ る53).図8.32にOPAL54)とL355)の
結 果 を 示 す が,デ
ー タは 明瞭
に ア ー ベ ル 理 論 を 否 定 し て い る. こ こ で,ゲ 図8.30の
ー ジ 群 をSU(3)に
限 定 せ ず,一
般 的 に 群 の パ ラ メ ター を 使 っ て
各 グ ラ フの 寄 与 を表 す と
図8.30(a)の
寄 与
∝CAσA
(8.67a)
図8.30(b)の 図8.30(c),(d)の
寄 与 ∝TR・nf・ 寄 与
∝CF・
と 書 き表 す こ とが で き る.σA∼
で あ り,表8.1の
(8.67b)
σD+(CF-CA/2)σE
(8.67c)
σEは 各 群 に 共 通 な 量 で あ る.各
CA=Nc:g→ggの
結合 定 数(の
自乗 平 均)
CF:q→gqの
結 合 定 数(の
自 乗 平 均)
TR:g→qqの
結 合 定 数(の
自 乗 平 均)
よ う な 値 を も つ.し
決 め る こ と が で き る.こ せ ず,し
σB+(CF-CA/2)σc
た が っ て,原
カ ラー 因 子 は
理 的 に はSU(N)のNを
れ を 図 示 し た の が 図8.33で
あ る33).SU(3)と
か も 相 当 数 の 群 を 除 外 で き る こ と が わ か る. 表8.2
図8.33
ゲ ー ジ群 の カ ラー 因 子
グル ー オ ン の 自己 結 合 の 証 拠
各 種 ゲ ー ジ 群 のNc/CFとTR/CFの
比 較.デ
ー タ はSU(3)と
合 う33).
は矛盾
8.5.4
ク ォ ー ク ジ ェ ッ トと の 違 い
グ ル ー オ ン は ク ォ ー ク よ り大 き な カ ラ ー 電 荷 を も つ の で,相 く,シ
ャ ワ ー も ク ォ ー ク よ り は 起 こ し や す い で あ ろ う.こ
互 作用 が 大 き
の こ と か ら 直 ち に,
グ ル ー オ ン ジ ェ ッ トは 同 じ エ ネ ル ギ ー の ク ォ ー ク ジ ェ ッ ト に 比 べ,柔 (
が
小),ジ
ェ ッ ト軸 を 中 心 に 広 が っ て い て(ま
度 が 大 き い(が で,QCDで
大)と
い う 推 察 が で き る.実
は/=CA/CF=9/4が
た はが
際,理
らか で
大),多
論 的 に は
予 言 で き る56).こ
重
→ ∞
の 比 は,グ
ルー
オ ンの カ ラー 電荷 の 自乗 平 均 を ク ォー クの カ ラー 荷 の 自乗 平 均 で 割 っ た量 で あ る.干 ee反 れ ば3ジ
渉 効 果 を 取 り入 れ れ ば,こ 応 で は,グ
ル ー オ ン は 第3の
ェ ッ ト現 象 の 中 で,最
な して 第1,第2の
の 比 は1に
近 づ く.
ジ ェ ッ ト と し て 現 れ る か ら,簡
もエ ネ ル ギー の低 い ジ ェ ッ トを グル ー オ ン と見
ジ ェ ッ ト と 比 較 す れ ば よ い.し
シ ャ ワ ー が 十 分 発 達 せ ず,グ に 見 え る と は 限 ら な い.実
か し,エ
ネル ギーが低 い と
ル ー オ ン と クォー クの 差 が ハ ドロ ン レベ ル で 顕 著 際,初
期 の
試 み は 結 果 が ま ち ま ち で あ り57), え る よ う に な っ た58).こ
単 に考 え
(DESY,
PETRA)で
の ト リ ス タ ン で よ う や く差 が 見
の 場 合 で も,グ
ル ー オ ン と クォー ク を 区別 す る た め に
は 運 動 学 的 条 件 を 適 切 に 選 ぶ 必 要 が あ り,例
え ば ヴ ィ ー ナ ス グ ル ー プ は,対
図8.34 ク ォー クジ ェ ッ トと グ ルー オ ン ジェ ッ ト内の 各 運 動 量 分 布 の 比 較60) LEPとTEVATRONで の ジ ェ ッ トを条 件 をほ ぼ 同 じ く して 比 較 し た.LEPで は,E=45GeVの 65GeVの
ジ ェ ッ ト,TEVATRONで
ジェ ッ トを拾 い,η(ラ
を中 心 に,E≧35GeV,R=(Δ ル ギー 分 布 を測 定 して,ジ
の
は,40<ET=
ピデ ィ テ ィ)-φ(方 位 角)平
面 で,ジ
ェ ッ ト軸
η2+Δφ2)1/2≦1の中 に 入 る ジ ェ ッ ト内粒 子 の エ ネ ェ ッ ト中 心 か ら 半 径r内 に 含 まれ る ジ ェ ッ トエ ネ ル
ギー量の相対比 ψ(γ)≡[∫E(x≦γ)dx]/[∫E(x≦R)dx]を 示す.
称
3ジ ェ ッ ト 現 象(qqg)と
γ+2ジ
ェ ッ ト現 象(qqγ)を
選 択 した うえで ジェ ッ ト
の 性 質 を 比 較 し て い る. エ ネ ル ギ ー が 高 く な れ ば 差 は 見 や す く な る.e+e-反 成 さ れ,グ
ル ー オ ン は ク ォ ー ク か ら2次
ギ ー 領 域 で は ジ ェ ッ トの80%以 応,特
に
応 で はqq対
的 に 放 出 さ れ る の で,LEPエ
上 が ク ォ ー ク 起 源 で あ る.一
の 大 き い 反 応 で は グ ル ー オ ン に よ る2パ
応 が 優 勢 で あ り(後
述 第9章),テ
に お け る デ ー タ で は,ジ
ΔR≦0.4の
ル ー プ は,解
示 す よ う に,ク
ル ー オ ン(CDFデ
ネ ル ギ ー が 高 く な る と,ク
方,ハ
ドロ ン 反
ー トン →2ジ
ェ ッ ト反 )
上 が グ ル ー オ ン 起 源 で あ る59).こ の こ 析 条 件 を 同 じ に し て,CDFデ
ォ ー ク ジ ェ ッ ト(OPALデ
中 心 部 に エ ネ ル ギ ー の90%(ΔR≦1の
を 含 む が,グ
ネ ル
バ ト ロ ン(TEVATRON:
ェ ッ トの80%以
と に 着 目 し て,OPALグ べ た .図8.3460)に
が ま ず生
ー タ)は75%し
ー タ と比
ー タ)の
場 合 は
総 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 比) か 含 ま な い.こ
の よ う に,エ
ォ ー ク ジ ェ ッ ト と グ ル ー オ ン ジ ェ ッ トの 差 は 非 常 に
顕 著 で あ る.
参
1)
R.F.Schwitters
et
G.G.Hanson
et
考
文
献
al.:Phys.Rev.Lett.,35(1975)1320
al.:Phys.Rev.Lett.,35(1975)1609
2) VENUS;R.Arai
et
al.:Nucl.Instr.Methods,217(1983)181
3) TASSO;R.Brandelik
et
al.:Phys.Lett.,B114(1982)65;Z.Phys.,C22(1984)307
P.Darriulat:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,30(1980)159 4)
E.Farhi:Phys.Rev.Lett.,39(1977)1587 J.D.Bjorken
and
5) D.P.B.Barker 6)
et
S.J.Brodsky:Phys.Rev.,D1(1970)1416 al.:Phys.Rev.Lett.,43(1979)830
J.Steinberger:Phys.Report,203(1991)345 L3:Paper
submitted
to Int.Conf.on
High
Energy
1998 7)
TASSO;M.Althoff
8)
VENUS;Phys.Lett.,B198(1987)570
9)
T.Sjostrand:Comput.Phys.Commun.,39(1986)347 T.Sjostrand
et
and
al.:Z.Phys.,C22(1984)307
M.Bengtsson:Comput.Phys.Commun.,43(1987)367
T.Sjostrand:Int.J.Mod.Phys.,A3(1988)751 10)
G.Marchesini
11)
K.Kato
and and
B.R.Webber:Nucl.Phys.,B310(1988)461
T.Munehisa:Phys.Rev.,D36(1987)61
Physics
at
Vancouver,July
23-29,
12)
L.A.Gribov
et
al.:Phys.Rep.,100(1983)1
A.Bassetto
et
al.:Phys.Rep.,100(1983)201
B.R.Webber:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,36(1986)253 13)A.H.Muller:Phys.Lett.,B104(1981)161 B.J.Ermolaev:JETP
Lett.,33(1981)269
Yu.L.Dokshitzer:Sov.J.Nucl.Phys.,47(1988)1384 14)
Yu.L.Dokshitzer,V.A.Khoze R.K.Ellis
and
Physics,CERN 15)
and
S.I.Troyan:Rev.Mod.Phys.,60(1988)373
W.J.Stirling:Fermilab-Conf-90/164-T
1988
CERN
91-01
G.Marchesini
and
B.R.Webber:Nucl.Phys.,B238(1984)1
B.R.Webber:Nucl.Phys.,B238(1984)492 16)
R.D.Field
17)
Particle
and
R.P.Feynman:Nucl.Phys.,B136(1978)1
18)
C.Peterson
et
19)
P.Hoyer et
al.:Nucl.Phys.,B161(1979)349
20)
A.Ali
21)
X.Artu
Data
Group:Phys.Rev.,D54(1996),EPJ.,C3(1998) al.:Phys.Rev.,D27(1983)105
et al.:Phys.Lett.,B93(1980)155 and
G.Mennessier:Nucl.Phys.,B70(1974)93
X.Artu:Phys.Rep.,B97(1983)147-171 T.Sjostrand
and
M.Bengtsson:Comput.Phys.Communi.,43(1987)367
P.Mattig:Phys.Rep.,177(1989)142 22)
J.Schwinger:Phys.Rev.,82(1951)664;ibid.,93(1954)615 E.Brezin
23)
and
B.Anderson
C.Itzykson:Phys,Rev.,D2(1970)1191 et al.:Z.Phys.,C20(1983)317
X.Artru:Z.Phys.,C26(1984)83 B.Anderson,G.Gustavson,G.Ingelman
and
T.Sjostrand:Phys.Rep.,97(1983)31-
146 24)
G.Abrams
25)
OPAL:Z.Phys.,C47(1990)505
et
al.:Phys.Rev.Lett.,63(1989)1558
26)
W.Hoffman:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,38(1988)279
27)
G.Sterman
28)
G.Kramer
29)
Z.Kunst:Phys.Lett.,B99(1981)429
DELPHI:Phys.Lett.,B240(1990)271
and and
K.Fabricius et
al.:Z.Phys.,C11(1982)315
F.Gutbrod B.Lampe
S.Weinberg:Phys.Rev.Lett.,39(1977)1436 B.Lampe:Z.Phys.,C34(1987)497
et and
al.:Z.Phys.,C21(1984)235 G.Kramer:Prog.Theor.Phys.,76(1986)1340;Z.Phys.,C34(1987)
497 30)
JADE;Phys.Lett.,B213(1988)235
31)
AMY;I.H.Park
S.Bethke
SLD;K.Abe 32)
L.R.Surguladze
et
al.:Nucl.Phys.,B370(1998)310 et
al.:Phys.Rev.Lett.,71(1993)2578
et al.:Phys.Rev.,D51(1995)962 and
M.A.Samuel:Phys.Rev.Lett.,66(1991)560
School
of
Erratum:ibid.,2416 S.Gorishny,A.L.Kataev 33)
S.Bethke
and
34)
E.Braaten,S.Narrison
35)
C.Basham
and
S.A.Larin:Phys.Lett.,B259(1991)144
J.E.Pilcher:Ann.Rev.Nucl.Part.Sci.,42(1992)
M.Schmelling:Physica
et
Scripta,51(1995)683 and
A.Pich:Nucl.Phys.,B373(1992)581
al.:Phys.Rev.Lett.,41(1978)1585;Phys.Rev.,D19(1979)2018;
Phys.Rev.,D24(1981)2382 A.Ali
and
F.Barreiro:Phys.Lett.,B118(1982)155
D.G.Richards
et
N.K.Falk
and
Z.Kunst
et
36)
F.Ciskor
37)
VENUS;K.Abe
al.:Phys.Lett.,B119(1982)193;Nucl.Phys.,B229(1983)317
G.Kramer:Z.Phys.,C42(1989)459
al.:Z.Phys.at
et
LEP,vol.1,CERN
89-08
al.:Phys.Rev.,D31(1985)1025 et
al.:Phys.Lett.,B240(1990)232
VENUS;A.Suzuki,Ph.D.Thesis,Osaka 38)
Univ.,1992
OPAL;Phys.Lett.,B252(1990)159 DELPHI;Phys.Lett.,B252(1990)1491 L3;Phys.Lett.,B257(1991)471
39)
FK;N.K.Falck
and
AB;A.Ali
and
KN;Z.Kunst
G.Kramer:Z.Phys.,C42(1989)459
F.Barreiro:Nucl.Phys.,B236(1984)269 et al.:Z.Phys.at
LEP,vol.1,CERN89-08,1989
RSE;D.G.Richards,W.J.Stirling
and
40)
J.Ellis et al.:Nucl.Phys.,B111(1976)253
41)
J.Ellis,M.K.Gaillard
42)
J.Ellis
43)
TASSO;R.Brandelik
44)
Ya.I.Azimov,Yu.L.Dokshitzer,V.A.Khoze
and
and
S.D.Eliis:Phys.Lett.,B119(1982)193
G.G.Ross:Nucl.Phys.,B111(1976)253
I.Karliner:Nucl.Phys.,B148(1979)141 et al.;Phys.Lett.,B97(1980)453 and
S.I.Troyan:Z.Phys.,C27(1986)
213;Phys.Lett.,B115(1982)242;Rev.Mod Phys.,60(1988)373 45)
Ya.I.Azimov
et
al.:Phys.Lett.,B165(1985)147
R.K.Ellis,D.A.Ross
and
Terrano:Phys.Rev.Lett.,45(1980)1226,Nucl.Phys
.,
B178(1981)421 46)
TPC;H.Aihara
et al.:Phys.Rev.,57(1986)945
MARKII,P.D.Sheldon,et
al.;Phys.Rev.Lett.,57(1986)945
47)
JADE;W.Bartel et al.:Phys.Lett.,B101(1981)129;Phys.Lett.,B134(1985)31
48)
A.H.Mueller:Nucl.Phys.,B213(1983)85 Ya.I.Azimov,Yu.L.Dokshitzer,V.A.Khoze
and
S.I.Troyan:Z.Phys.,C31(1986)
213 C.P.Fong
and
Yu.L.Dokshitzer 49)
B.R.Webker:Nucl.Phys.,B335(1991)54 et
al.:Rev.Mod.Phys.,60(1988)373
OPAL;M.Z.Akrawy
et
al.:Phys.Lett.,B247(1990)617
M.G.Albrow:Fermilab.Conf.97/073,QCD SLAC 50)
Summer
G.Altarelli
Institute and
in on
Particle
Hadron-Hadron
Physics,Aug.19-30,1996
G.Parisi:Nucl.Phys.,B126(1977)298
Collisions
,Talk
at
51)
AMY;Phys.Rev.Lett.,62(1989)1713
52)
S.Bethke
53)
M.Bengtson
et al.:Z.Phys.,C49(1991)59 and
O.Nachtman
and
P.Zerwas:Phys.Lett.,B208(1988)306 A.Reiter:Z.Phys.,C16(1982)45
54)
OPAL;M.Z.Akrawy
55)
L3;B.Adeva
et
al.:Z.Phys.,C49(1991)49
56)
S.J.Brodsky
57)
JADE;W.Bartel
et al.:Phys.Lett.,B123(1983)460
UA2;P.Bagnaia
et
et al.:Phys.Lett.,B248(1990)227 and
J.Gunion:Phys.Rev.Lett.,37(1976)402
al.:Phys.Lett.,B144(1984)291
HRS;M.Derrick et
al.:Phys.Lett.,B165(1985)449
MKII;A.Peterson UA1;G.Arnison
et et
al.:Phys.Rev.Lett.,55(1985)1954
al.:Nucl.Phys.,B276(1986)253
TASSO;W.Braunschweig
et
al.:Z.Phys.,C45(1989)1
58)
AMY;Phys.Rev.Lett.,63(1989)1772
59)
CDF;Phys.Rev.Lett.,70(1993)713
60)
OPAL;Phys.Lett.,B265(1991)462;Z.Physik.,C63(1994)197
VENUS;H.Takaki
et
al.:Phys.Rev.Lett.,71(1993)38
9 高 エ ネ ルギー ハ ドロ ン 反 応(ジ
ハ ドロ ン 反 応 の 大 部 分,す
な わ ち全 断 面 積 に寄 与 す る部 分 は,そ の ほ とん ど
が い わ ゆ る"柔 らか い過 程=soft 反 応"で
あ る.こ れ はQCDで
process=エ
ネ ル ギー 損 失 や 散 乱 角 が 小 さ い
は 非 摂 動 部 分 に あ た り,ま だ 第1原 理 か ら は い
ま だ 計 算 不 可 能 な 部 分 で あ る.柔 つ.第1は,エ
ェ ッ ト現 象2)
らか い過 程 は,次
の よ うに二つ の特徴 を も
ネ ル ギー が 上 が って ビー ム 方 向 に位 相 空 間 が増 大 した と き,位
相 空 間 の 特 定 の部 分 を選 択 す る力 学 的 要 因 は な く2次 粒 子 は位 相 空 間 内 に一 様 に 分 布 す る.高 エ ネ ル ギ ー 反 応 の 運 動 学 的 変 数 と して,ラ
ピデ ィテ ィ
(9.1) と,横 運 動 量pT,方
位 角 φ を使 う と便 利 な の は,ロ ー レ ン ツ 変 換 に 関 し て簡
単 な変 換 性 を もつ こ との ほ か に,こ れ らの 変 数 を使 えば,位 相 空 間体 積 要 素 が
(9.2) と 表 さ れ る の で,粒 図9.1(a),(b)に
子 分 布 が η に 関 し て 一 様 に な る と期 待 で き る こ と に よ る. 高 エ ネ ル ギ ー 反 応 の デ ー タ1,2)を 示 す が,上
け る も の と な っ て い る.ま ら ば 全 粒 子 数Nは
の範 囲 で生成粒 子 の数 が ほぼ一 様 な
ηmaxに 比 例 す る で あ ろ う.
で あ る の で,N∼lnsの 論 的 に は,N〓ln2sと
た,
記 の 期 待 を裏 づ
よ うに 成 長 す る答 で あ り,デ ー タ をほ ぼ再 現 す る.理 い うフ ロ ア ッサ ー ル上 限 が 存 在 す る.
第2の 特 徴 と して,柔
らか い過 程 で は 運 動 量 遷 移 が 小 さ い ため2次 粒 子 の 横
運 動 量 は 小 さ く(∼300MeV),pTが
増大 す るにつ れ指数 関数 的 に反 応率
が 減 衰 す る.し
か し,実
際 の 高 エ ネ ル ギ ー ハ ドロ ン 反 応 に は,指
少 し な い い わ ゆ る 大 き なpTの pTの
事 象(high
小 さ い と こ ろ と 大 き い と こ ろ を 区 別 し て み よ).こ
大 き なpT事
象 で あ り,QCDの
大 き なpTの
ring;
た4).し SppS
pp
か し,ISRで
pp-collider)を
の 章 で 扱 う の は,こ
の
ハ ド ロ ン 現 象 で ジ ェ ッ トが 観 測 さ れ る で あ ろ う こ と は 理 論 的 に
24+24GeV
(super
存 在 す る(図9.1(c),
摂 動 計 算 が 適 用 で き る 反 応 で あ る.
予 想 さ れ て い た こ と で あり3),歴 age
pT events)が
数 関数 的 に減
史 的 に はCERNのISR
collider, 1972稼
動)で
(intersecting
最 初 の ジ ェ ッ トが 観 測 さ れ
は ジ ェ ッ トは ま れ な 現 象 で,多
proton
antiproton
synchrotron,
待 た ね ば な ら な か っ た.陽
量 の ジ ェ ッ ト観 測 に は
=570GeV後
に630GeV;
子 の 中 の パ ー トン の 運 動 量 は 平 均
と し て 陽 子 の1/6程
度 し か な い の で,ISRで
GeV程
ェ ッ ト現 象 を 観 察 す る に は エ ネ ルギー
度 と な り,ジ
stor
は,パ
ー ト ン の 運 動 量 は〓4 が,し
た が っ てpT
も ま た 低 す ぎ た の で あ る. (c) (a)
(b)
図9.1
高 エ ネ ル ギ ー ハ ドロ ン反 応2次 (a),(b)と
横 運 動 量(pT)分
粒 子 の ラ ピ デ ィテ ィ(η)分 布
布(c)2)
9.1 大 横 運 動 量 の ジェッ
ハ ドロ ン衝 突 型 加 速 器SppSで 50GeVを
ト生 成
は,パ ー トン1個 あ た りの エ ネ ル ギー が優 に
超 え る の で 非 常 に 明 瞭 で 見 誤 り よ うの な い ジ ェ ッ ト現 象 を 多発 す
る.特 に 横 運 動 量 が ∼100GeVを
超 え る大 角 度 散 乱 現 象 は そ の ほ と ん どが
ジ ェ ッ ト を 含 む 反 応 で あ り,そ
の 中 で も2個
の パ ー トン が 弾 性 散 乱 を す る2→
2ジ ェ ッ ト反 応 が 大 部 分 を 占 め る. 図9.2に
は 初 期 のUA2グ
ル ー プ に よ っ て 得 ら れ た デ ー タ2,5)を 示 す.横
動 量pT(ま
た は ほ と ん ど 同 じ こ と で あ る が 横 エ ネ ル ギ ーET)が,∼75GeV
を 超 え る と球 形 指 数(sphericity)が を 表 し て く る こ と,ま
た2ジ
る こ と を示 し て い る.し
急 激 に 小 さ く なり ジ ェ ッ ト と し て の 特 徴
ェ ッ ト現 象 が 占 め る エ ネ ル ギ ー の 割 合 が 大 き くな
か も,優
に 放 出 さ れ て い る.こ
運
勢 な2個
の ジ ェ ッ トは ほ ぼ180度
れ ら の デ ー タ か ら,横
領 域 で は ほ ぼ す べ て が ジ ェ ッ ト現 象,そ
正 反対方 向
運 動 量 の 大 き い(pT〓100GeV)
れ も ほ と ん ど が2ジ
ェ ッ トの2体
反 応
で あ る と こ と が わ か る.
(a)
(b) 図9.2
ETが
(a) ET>75GeVでsphericityが
(c)
大 き くな る と ジ ェ ッ ト現 象 が 増 え る2,3)
急 速 に 小 さ く な る.
(b) h2=(ET1+ET2)/ΣET分
布.2本
の ジ ェ ッ トの エ ネ ル ギ ー がET>180GeVを
超 え る と優 勢 に な
る. (c) 2個
の ジ ェ ッ トの つ く る 方 位 角 の 差 の 分 布5).180°
こ れ ら の 現 象 は,図 Aの
式 的 に は 図9.3の
中 の パ ー ト ン の 一 つ が,ハ
乱 を し た 後,2個
方 向 に 出 る こ と は2体
よ う な 過 程 と 理 解 さ れ る.ハ
ドロ ンBの
観 者 パ ー ト ン:spectator
ま 前 方 に 進 ん で ビ ー ム ジ ェ ッ ト と な る が,こ か ら で な い の で,測 る の で,こ
ドロ ン
中 の パ ー ト ン と 反 応 し て,2体
の パ ー ト ン が ジ ェ ッ ト を 形 成 す る(2→2反
ら な か っ た 残 り の パ ー ト ン(傍
反 応 で あ る こ と を 示 す.
応).反 parton)は,そ
散
応 に加 わ の ま
れ は相 当部 分 が ビー ム パ イ プ の 中
定 器 に 捉 え ら れ る こ と が 少 な く,定
れ か ら の 考 察 の 対 象 か ら は 外 す こ と に す る.
量 的 取 扱 い が 困難 で あ
図9.3
ハ ド ロ ン 反 応 に お け る大 角2→2反 傍 観 者(spectator)パ
応 が 大 角 ジ ェ ッ ト を つ く る.残
りの
ー ト ン が ビ ー ム ジ ェ ッ ト を つ く る.
(a)
(b) 図9.4
ハ ド ロ ン コ ラ イ ダ ー に お け る ジ ェ ッ ト現 象6)
(a) 2→2ジ ェ ッ ト,(b) 2→3ジ ェット CDFグ ル ー プ の観 測 した ジ ェ ッ トを,η=-lntanθ/2と もつETを
の 円 を 描 き,こ とす る.
φ の 平 面 に ジ ェ ッ トの
高 さ と して プ ロ ッ ト した も の.η-φ 平 面 の 一 つ の ジ ェ ッ トの 周 囲 に の 円 内 の エ ネ ル ギ ー を ジェ ッ トエ ネ ル ギ ー
衝 突 型 加 速 器 実 験 の 場 合,測
定 器 は 衝 突 点 を 囲 む よ うに つ く る の で,粒
布 を衝 突 点 か ら の 極 角 θ と 方 位 角 φ で 方 向 を 表 す こ と が で き る.放 分 布 は θ で 表 す よ り,通
常 は ラ ピ デ ィ テ ィ(ま
デ ィ テ ィ η=lncot(θ/2))と トグ ラ ム(通
方 位 角 φ の2次
た は質 量 を無 視 す る疑 似 ラ ピ
よ く使 わ れ る.2次
粒子 の大部
平 面 で 一 様 に 分 布 す る か ら,こ
面 上 の あ る 特 定 領 域 に エ ネ ル ギ ー が 集 中 し た と き(energy ギ ー の 塊),そ
出粒 子 の
元 平 面 で の エ ネ ル ギー 分 布 の ヒス
常 レ ゴ プ ロ ッ ト*1)と い わ れ る)が
分 を 占 め る 柔 ら か い 過 程 の 粒 子 は,η-φ
cluster=エ
れ を ジ ェ ッ ト と見 な す の は 理 に か な っ て い る.図9.4に
ロ ッ ト に よ る2, 3ジ ェ ッ トの 一 例 を 示 す6).図9.4の 円 が 描 い て あ る が,こ
子分
れ は
の平 ネ ル レゴプ
ジ ェ ッ トの 一 つ の 根 元 に の 円 で,CDFグ
ループ
は こ の 中 に あ る エ ネ ル ギ ー を ジ ェ ッ トの エ ネ ル ギ ー と 定 義 し て い る.図9.4 (b)は,高
エ ネ ル ギ ー の パ ー トン の 一 つ が グ ル ー オ ン を 放 出 し て3個
トに な っ た と解 釈 で き る が(2→3反
応),囲
の ジェ ッ
い 込 み の 円 を 大 き く と れ ば2→2
反 応 と 見 な す こ と も で き る.
9.2
a. 断
面
パ ー ト ン2体
2→2反
応
積 反 応 のO(αs2)の
の 中 の パ ー ト ンaと
フ ァ イ ン マ ン 図 を 図9.5に
ハ ドロ ンBの
中 の パ ー ト ンbと
示 す.ハ
ド ロ ンA
が 衝 突 し て パ ー ト ンcと
dを 放 出 す る 包 含 反 応 を 考 え よ う.
(9.3) ab→cd反
応 が 堅 い(pTが
大 き い)場
合 の 反 応 断 面 積 は,(5.145)で
与 え ら
れ て い る.
(9.4) こ こ にσ は,パ
*1) Z=f(x
ー ト ン 反 応(ab→cd)の
,y)と す る と き,x-y平 で 表 す 表 示 の こ と.
断 面 積 で 始 状 態 の カ ラ ー につ い て は
面 を 四 角 な マ ス で 区 切 り,Zを
そ の マ ス上 の 柱 の 高 さ
平 均 を,終
状 態 の カ ラ ー に つ い て は 和 を と っ て あ る も の と す る.パ
系 の 全 エ ネ ル ギ ー をsと
ー ト ンab
す る と
(9.5) で あ る.パ ー トンの 散 乱 断 面 積 は
(9.6) で与 え られ る.δcdは 同 一 粒 子 の場 合 の 統 計 因子 で あ る. と す れ ば,
(9.7a) (9.7b) 4元 運 動 量pμ を,pT,方
位 角 φ,ラ
ピデ ィテ ィ で ηで 表 す と
(9.8) パ ー ト ンc, が,ハ
dの
ラ ピ デ ィ テ ィ を ηc,ηdと す れ ば,パ
ー ト ン 系 の2粒
子 重心 系
ド ロ ン 重 心 系 で もつ ラ ピ デ ィ テ ィ η とハ ド ロ ン 重 心 系 で の2粒
子 の相
対 ラ ピ デ ィ テ ィ(Δy)は
(9.9) で あ り,質
量0のパ
ー トンcの
パ ー トン 重 心 系 で の 散 乱 角 θ*は
(9.10a)
(9.10b) で 与 え ら れ る.生
成 さ れ た ジ ェ ッ トの ラ ピ デ ィ テ ィyc, ydが,パ
デ ィ テ ィ ηc,ηdと 同 じ で あ る と す れ ば,全
体(粒
子AB)の
ー トン の ラ ピ
重心 系 でのパー ト
ンの 運 動 量
(9.11) お よび エ ネ ル ギー 運 動 量 保 存 則 か ら,縦 運 動 量xa, xbと 横 運 動 量 は
(9.12a)
(9.12b) とい う関 係 式 か ら計 算 で き る.ま た2個
の ジェ ッ トの 不 変 質 量Mjj2は
(9.13) これ ら の変 数 を使 え ば,断 面 積 は
(9.14) ま た,
(9.15) を 使 え ば,
(9.16a) (9.16b) と も 表 さ れ る.さ
ら に(9.13)を
使 い,Mjj2/s=τ
と お い て,2ジ
ェ ッ ト生 成
断 面 積 を書 き表 す と
(9.17)
(a)
(b)
(c)
(d)
(f)
(g)
(h)
(i)
図9.5 (a) qq散 (h),(i) gg散
乱,(b),(c) qq散 乱
2→2反
(e)
応 に お け るO(αs2)過 程
乱,(d) qq→gg,
(e) gg→qq,
(f),(g) qg散
乱,
と な る.
(9.18) は,ハ る.た 〓uと
ド ロ ンAとBの だ し,親
反 応 に お け る パ ー ト ンa,
に よ る ジ ェ ッ トの 区 別 は で き な い の で,c=dの
し た 項 を 加 え るが
表9.1に,図9.5の 表9.1で
b衝 突 の ル ミ ノ シ テ ィ で あ
,角
度 に つ い て の 積 分 は90度
場 合 以 外 はt
で 止 め る こ と と す る.
フ ァ イ ン マ ン グ ラ フ に 対 応 す る 反 応 の│M│2を
注 目 す べ き は,大
与 え る7).
き な 断 面 積 を 与 え る の は 弾 性 散 乱 で あ り,特
ル ー オ ン が 関 与 す る と こ の 特 徴 が 著 し い.こ
に グ
れ は グルー オ ンが カ ラー を二 重 に
も っ て お り結 合 が 大 き い こ とか ら く る. 表9.1 2→2パ ー トン反 応 の 不 変 行 列 要 素 Σ│M│27) パ ー トン 質 量 は0と し,カ ラー と ス ピ ン につ い て は 始 状 態 の 平 均 と終 状 態 の和 を とっ て い る.g2=4π
αsで あ り,右 側 の列 の 数 値 は90度
で の 相 対 値 を示 す.
b. 実 験 と の 比 較 横 運 動 量 の 大 き い 現 象 を 捕 ら え る と,ジ た.こ
れ はSppSで
のUA1,
UA2グ
高 い エ ネ ル ギ ー を もつ テ バ トロ ン( に 比 べ て3倍 の エ ネ ル ギ ー で あ る)で
=1.8TeV,こ
ηdに つ い て 積 分 し,改
ら ば,は
れ はSppSの
るか に
∼630GeV
とに か くジ ェ ッ トを一 つ 捕 ま え て横 運 動
量 の 関 数 と し て ど う 振 る 舞 うか 調 べ よ う.こ で,(9.14)を
ェ ッ トが 際 だ っ て く る こ と は 述 べ
ル ー プ の 経 験 で あ る.な
れ は ジ ェ ッ トの 包 含 反 応 で あ る の
め て ηc=η と お き,さ
ら に ジ ェ ッ トの 質
量 を0と お く近 似 で
(9.19) 図9.6(a),(b)は,UA2, す8,9).UA2グ
CDFグ
ル ー プ に よ るpp衝
ル ー プ の デ ー タ は 第1近
O(αs2(Q2))の
寄 与 で 表9.1に
(NLO:
leading
next
似(LO: leading
与 え た も の)の
order=O(αs3(Q2)))10)の
突 で の 実 験 デ ー タ を示 order,す
計 算 と,CDFデ
な わ ち
ー タ は 第2近
計 算 と比 較 し て あ る.第1近
似 似
で ほ ぼ 満 足 す べ き 結 果 を与 え る も の の η の 大 き い と こ ろ で は や や ず れ て く る. 第2近
似 計 算 が9桁
に も わ た る デ ー タ を ±20%の
事 で あ る.図9.7に れ もQCDの
断 面 積 を2ジ
精 度 で再 現 して い る の は 見
ェ ッ トの 不 変 質 量 の 関 数 と し て 描 い た が,こ
予 想 値 と合 っ て い る9).
散 乱 角 θ*を 固 定 し た 場 合 の ジ ェ ッ ト質 量Mjj(=xaxbs)分 布 関 数 のx依 qqの
存 性 に よ り決 ま る.図9.8に
相 対 寄 与 を2ジ
優 勢 で あ る の は,xの
ー トン 分
各 過 程gg→gg,gq→gq,qq→
ェ ッ ト質 量 の 関 数 と し て 示 す.次
ジ ェ ッ ト生 成 は 弾 性 散 乱 過 程 が 主 成 分 で あ り,か と ん ど 関 係 な く一 定 で あ る.Mjjの
布 は,パ
節 に 示 す よ う に,2
つ 各 過 程 の 相 対 比 は角 度 に ほ
小 さ い と こ ろ(Mjj≦50GeV)でgg過
程 が
小 さ い と こ ろ で グ ル ー オ ン 分 布 関 数 が 大 き く,ま
散 乱 断 面 積 自 身 も 大 き い こ と に よ る.100〓Mjj〓200GeVで
(a)
はgq過
たgg 程 が,
(b) 図9.6 包 含 反 応d2σ/dpTdη
(a) UA2デ
ー タ8),(b) CDFデ
ー タ9)
(a)で は 実 線 でQCD第1近 似 計 算 結 果 を,(b)で は 実 線 でQCD第2近 は,Λ=1.4TeVと した 場 合 の 下 層 構 造 を付 加 した モ デ ル を示 す.
似 計 算 を示 し た.(b)の
点線
図9.7
dσ/dMjj:2ジ 分 布9) ー タ とQCD計
CDFデ
図9.8
2体
ェ ッ ト不 変 質 量 算 との 比較.
反 応 に お け る各 過 程
(GG;グ ルー オ ン-グ ル ー オ ン 融 合,GQ;グ ル ー オ ンク ォー ク反 応,QQ;ク
ォー ク-
ク ォー ク反 応)の 相 対 寄 与 をMjj の 関 数 と して表 す.
Mjj〓250GeVで
はqq過
程 が 優 勢 に な る の は,xし
た が っ てMjjが
こ ろ で ク ォ ー ク 分 布 関 数 が 大 き い こ と を 反 映 し て い る.2ジ が,表9.1の は,グ
大 きい と
ェ ッ ト生 成 断 面 積
中 に あ る 過 程 を 正 し く考 慮 し て デ ー タ が 説 明 で き る と い う こ と
ル ー オ ン の 関 与 す る 散 乱 す な わ ち グ ル ー オ ン-グ ル ー オ ン 結 合 の 存 在 の
明 白 な 証 拠 で あ り,QCDの c. 歴 史 は 繰 り 返 す(ジ
非 ア ー ベ ル 的 性 質 の 間 接 的 証 拠 と な っ て い る. ェ ッ トの ラ ザ フ ォ ー ド散 乱)
ジ ェ ッ ト現 象 が パ ー ト ン レ ベ ル で は2体
反 応 で あ り,QCDに
離 で は ク ー ロ ン 型 で あ る こ と を 考 慮 す る な ら ば,ラ
よ る力 は 近 距
ザ フ ォ ー ド散 乱 の 特 徴 を備
え て い る は ず で あ る.表9.1の
各 チ ャ ネ ル の 角 分 布 は そ れ ぞ れ 微 妙 に 違 う が,
θ〓90度
ャ ネ ル 交 換 項((1-cosθ*)-2に
で は,優
勢 な 項 はtチ
あ る こ と を 考 慮 す る と実 は ほ とん ど変 わ ら な い.そ
比 例 す る 項)で
こ で,qq→qq,qg→qg,
gg→ggの gg反
角 分 布 は ほ と ん ど 同 一 で あ る と し て,2→2反
応 で 代 表 さ せ る こ と が で き る10).こ
の 場 合,全
分 布 関 数 を 分 離 す る こ と が で き る.表9.1か
ら,各
応 の 角 分 布 は,gg→ 体 の 断 面 積 か らパ ー トン
チャネルの寄与 は
(9.20) で与 え られ る の で
(9.21) (9.22) (9.23) と な る.し
た が っ て,θ
∼0付
近 で,
と な り,よ
知 ら れ た ラ ザ フ ォ ー ド散 乱 と 同 じ形 に な る.小
く
角 で の デ ー タ比 較 に は 変 数 を
(9.24) に 変 え る と,
(9.25) と な り,χ>2で θ*とdσ/dχ π/2)で,断
ほ と ん ど 定 数 と な る の で 見 や す く な る.図9.9に,dσ/dcos の デ ー タ を 示 す が11,12),QCD計
算 と よ く合 っ て い る.χ
面 積 が 上 向 き に 転 じ る の は,sチ
ャ ネ ル 寄 与 の せ い で あ る.
個 々 の パ ー トン 断 面 積 を 外 に 取 り 出 す こ と に よ り,パ で き る の で,2ジ
ェ ッ ト散 乱 デ ー タ か ら パ ー ト ン 分 布 関 数F(x)が
る.図9.10に,Q2=20GeV2で ト ン 分 布 関 数(図9.10の
と の 比 較 を 示 す14).こ
実 線)か
ら,(Q2=2000GeV2ま
の よ う に 高 いpT領
で 発 展 させ た 曲 線 デ ー タ か ら 決 め たF(x)
域 で は 構 造 関 数 は ほ と ん ど指 数 関 数
目す べ き はg+(4/9)(q+q)と(4/9)(q+q)と
ン の 寄 与(gg,gq,gq散
決 め られ
深 非 弾 性 散 乱 その 他 の デ ー タか ら決 め た パ ー
(点 線;Duke-Owens13))と,UA1のpT>70GeVの
的 で あ る.注
ー トン 分 布 関 数 が 分 離
乱)が
大 き い こ と を 示 し て い る.図
の 差 で,グ
ルー オ
に よ れ ば,xの
小
さ い と こ ろ で は ほ ぼ 純 粋 な グ ル ー オ ン ジ ェ ッ トが 取 り 出 せ る こ と,xの
大 きい
と こ ろ か ら は ほ ぼ 純 粋 な ク ォ ー ク ジ ェ ッ トが 取 り 出 せ る こ と を 示 す.ま
た,発
展 方 程 式 か ら 計 算 で 決 め た パ ー トン の 分 布 関 数(§5.6.2の
議 論 を参 照)が,
Q2発 展 を含 め て 正 し く実 験 値 を再 現 す る こ と を示 して い る.
(b)
(a) 図9.9 (a) dσ/dcosθ* (b) dσ/dχ
(a)で は,実 曲 線,(b)で
応 に お け る 角 分 布11,12)
Mij>635GeV,D0.
線 がQCD第1近 似,ダ は,実 線 がQCD第2近
図9.10 g:グ
2-2反
Mij>275GeV,D0.
2→2ジ
ル ー オ ン 分 布,q,q:ク
ッシ ュ 線 は パ ー トン モ デ ル で,ス ケー リ ン グ が 成 り立 つ と し た 似,ダ ッ シ ュ線 が 複 合 モ デ ル(Λc=2TeV)付 加 し た も の.
ェ ッ ト反 応 に よ り 求 め た パ ー ト ン 分 布 関14) ォー ク分 布
―:Q2=20GeV2,―:Q2=2000GeV2のDuke-Owensに
よ る パ ラ メ タ ー 化.
9.3 QCDの
理 論 と実 験 の 整 合 性15)
理 論 計 算 は デ ー タ の形 は正 確 に再 現 す る もの の絶 対 誤 差 は まだ 大 き く,特 に 対 数 第1近 似 の み で は,最 高2倍 か ら1/2く 在,測
らい の 範 囲 内 で不 定 性 が あ る.現
定 器 の性 能,デ ー タの 統 計 量 は 非 常 に 向上 して い て,理 論 的 不 定 性 の 方
が 大 きい.不
定 性 に は 次 の よ う な い くつ か の 原 因 が あ り,小 さ くす る努 力 が 続
け られ て い る.
9.3.1
スケ ール依存性
ハ ドロ ン 反 応 の 断 面 積 を算 出 す る と き は,素 過 程 の パ ー トン 反 応 断 面 積 に, μ に よ っ て 発 展 させ た ル ミノ シ テ ィ関 数 を掛 け 合 わせ る.素 過 程 の 計 算 に も, 繰 り込 み 点 の ス ケ ー ル μの 値 の不 定 性 が あ る.
(9.26) 物 理 量 は,μ に 依 存 しな い は ず で あ るか ら,
(9.27) パ ー ト ン 分 布 関 数 の μ 依 存 性 は,そ 反 応(第1近
似)に
トお よ びcollinear部
も そ も は パ ー ト ン の 素 過 程 と し て の2体
グ ル ー オ ン 発 生 を 考 慮 し(第2近 分 を,素
似),グ
過 程 か ら 切 り 離 し て 分 布 関 数 の 方 に 繰 り入 れ る
こ と に よ っ て 得 ら れ た も の で あ っ た(factorization).し の 計 算 に も 第2近
た が っ て,行
列 要素
似 ま で 含 め て は じめ て 整 合 性 の あ る 式 が 得 ら れ る.パ
ー トン
反 応 行 列 要 素 の μ(≡ μM)に
よ る 依 存 性 が,分
布 関 数 の μ(≡ μP;μPと
発 生 原 因 が 異 な る か ら 必 ず し も 同 じ も の と は 限 ら な い が,通 依 存 性 を,相
ルー オン の ソ フ
常 は 等 し く と る)
殺 し て 全 体 で μ 依 存 性 を 小 さ く す る と 期 待 さ れ る.ジ
含 反 応d2σ/dηdET計
算 の 第1近
ケ ー ル 依 存 性 を 図9.1115)に
似(O(αs2))と
示 す.第2近
善 さ れ て い る こ と が わ か る.μ
の 値 は,通
第2近
μMは,
似(O(αs3))の
ェ ッ ト包
計 算値 の ス
似 で は μ に 対 す る依 存 性 が 著 し く改 常ET∼ET/2の
間 で デー タに合 う
よ うに 決 め る. 上 記 の 過 程 に 限 ら ず 一 般 にQCD計
算 に お い て は,第2近
似(O(αs3))の ス
ケ ー ル 不 定 性 はO(αs4)と 期 待 され るか ら,不 定 性 の 少 な い理 論 計 算 に は,第 2近 似 まで 進 め る こ とが 大 切 で あ る こ とが わ か る で あ ろ う.
d2σ/dETdη
図9.11 QCD計 算 の スケ ー ル依 存 性15) をQCDO(αs2)計 算(LO,一 点 鎖 線)とO(αs3)計 算(NLO,実
で 比 較 す る.NLOま
9.3.2
線)と
でい くと μ に 対す る安 定 性 が よ くな る.
ジ ェ ッ トサ イ ズ
図9.12はUA1の
測 定 し た ジ ェ ッ ト
と,将
来 の 大 型 加 速 器 で 予 想 さ れ る ジ ェ ッ ト
に含 まれ
る エ ネ ル ギ ー の プ ロ フ ィ ー ル で あ る16).こ の 図 か ら 明 ら か な よ う に ジ ェ ッ トの エ ネ ル ギ ー は,η-φ
平 面 で 相 当 遠 く ま で 広 が っ て い る.ジ
物 は バ ッ ク グ ラ ウ ン ド と し て 紛 れ 込 ん で い る が,柔 て,η-φ
らか い 過 程 の 寄 与 を 含 め
平 面 で は 平 坦 な 分 布 を し て い る と 考 え ら れ る.切
ジ ェ ッ ト を 同 定 し て エ ネ ル ギ ー の 値 を 定 め る と き,ジ 何%を
ェ ッ ト以 外 の 生 成
捕 ら え て い る か,ジ
断 条 件 を定 め
ェ ッ トの エ ネ ル ギ ー の
ェ ッ ト以 外 の 寄 与 を ど れ だ け 取 り込 ん で い る か は,
ハ ドロ ン 化 モ デ ル の モ ン テ カ ル ロ で 計 算 す る .こ モ デ ル の 種 類 に よ っ て 差 が 生 じ る.ま
の と き,使
用 す る ハ ドロ ン化
た 一 つ の ジ ェ ッ トの 中 で い くつ か の 不 連
続 また は連 続 的 に 連 な って い る エ ネ ル ギー の 塊 を ど うつ な げ るか とい うジ ェ ッ トの 構 成 手 順(jet
clustering
algorithm:実
験 グ ル ー プ に よ り異 な る)に
て も で き あ が っ た ジ ェ ッ トの 中 身 は 異 な る*2).ジ
よっ
ェ ッ ト取 扱 い の 初 期 は こ う
し た ジ ェ ッ トの 内 容 に 対 す る 理 解 不 足 か ら く る 不 定 性 要 因 が 大 き か っ た. 低 エ ネ ル ギ ー ジ ェ ッ トで は,ハ
ドロ ン化 の モ デ ル が まだ 十 分 に は 理 解 で きて
い な い こ とか ら く る 理 論 的 不 定 性 が 大 き い が,高 は,堅
エ ネ ル ギ ー ジ ェ ッ トの 場 合
い グ ル ー オ ン 放 出 に よ る 広 が り が 大 き い.QCDの
ジ ェ ッ トサ イ ズRに
第1近
よ る 差 は 原 理 的 に 見 る こ と は で き な い.な
似 で は,
ぜ な ら,第1
近 似 で は ジ ェ ッ トは1個 の パ ー ト ン で あ り 空 間 的 に 広 が っ て い な い か ら,測
定
効 率 は 測 定 器 側 の 受 容 開 口 角 の 大 き さ に 無 関 係 と な る か ら で あ る.第2近
似,
す な わ ち グ ル ー オ ン 放 出 を 取 り入 れ る と放 出 グ ル ー オ ン と の 間 の 開 口角 に よ る ジ ェ ッ トサ イ ズ の 変 化 を 取 り入 れ ら れ る の で あ る.図9.13(a)は 化 を ジ ェ ッ ト を 同 定 す る た め のR切
断 の 関 数 と し て 描 い た も の で,理
と デ ー タ9)を 比 較 し た も の で あ る.R=0.7と 小 さ く で き る こ と か ら,CDFグ 切 断 値 と し て い る.た
断 面積 の変 論15,17)
とれ ば 理 論 に よ る不 定 性 を最 も
ル ー プ は,R=0.7を
ジ ェ ッ ト再 構 成 の 標 準
だ し対 象 と す る 過 程 が 異 な る と き は 別 の 値,例
図9.12
え ば 多重
ジエ ッ トエ ネ ル ギ ー の プ ロ フ ァ イ ル16)
黒 い ヒ ス ト グ ラ ム:UA1デ GeVでET>35GeVの ス ト グ ラ ム:モ ン;
ー タ: ジ ェ ッ ト.白
い ヒ
ン テ カ ル ロ シ ミュ レー シ ョ TeVで2<ET